忠犬と飼い主~IF~もしもオリ主が相棒世界のあの人の関係者だったら? (herz)
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IF① 再会 前編



 本作品を読む前に、1度読んで欲しい注意書きです!


・この作品は二次創作小説です。あらゆる妄想を詰め込んでいます。ご都合主義、捏造過多です。

・キャラ崩壊あり。

・オリ主が登場します。

・作者は名探偵コナンの原作を読んでいません。アニメも見ていません。
(映画を少し見た程度。あとはpixiv内のコナンの小説から得た情報のみです。)

・作者は相棒について名探偵コナン以上に知りません。

・相棒の時系列はシーズン15あたり、名探偵コナンの時系列は黒の組織壊滅後。まだFBIがアメリカに帰国していない時期。

・本作では警察庁は名探偵コナン寄り、警視庁は相棒寄りに設定しています。

・基本的にオリ主視点。たまに別のキャラの視点。

・登場人物の口調がおかしいかもしれません。

・「」の中は日本語、『』の中は英語を話しています。

・忠犬と飼い主~本編~から派生したIF設定の話です。

・作者に文才はありません!


 以上の注意書きを読み、それでも構わない!という方は、どうぞ!

 楽しんで読んでいただければ幸いです(*´∀`)





・事件(似非)が起きて人が1人亡くなります。

・オリ主視点。

・前編と後編に分かれています。




 黒の組織壊滅作戦が終わり、後始末に追われていたある日のこと。

 

 

「和哉さん。よかったら、今日の昼食はここで食べませんか?」

 

 

 そう言って、秀一がスマホの画面を見せてきた。……そこには、あるレストランのホームページが。

 俺は、そのレストランの事知っていた。

 

 

「その店、パスタがうまいって評判の店じゃねぇか。それも予約制の……」

 

「今日の昼に、2人席を予約してあります」

 

「……マジで?」

 

「はい」

 

「……よくやった!」

 

 

 思わず、目の前にあった秀一の頭を撫でていた。1回食べてみたかったんだよ、この店のパスタ!

 

 

「でも、何でいきなり?」

 

「和哉さんが数日前に1度は食べてみたいと言っていた事を思い出して昨日電話してみたら、運良く2人席のキャンセルが出ていたので、そこに予約を入れました」

 

「そうだったのか」

 

 

 全く、こいつは本当に良くできた弟子だな!最近の後始末の疲れが一気に吹っ飛んだ。

 

 

「そうゆう事なら、午前中のやるべき仕事はさっさと終わらせちまおう!」

 

「はい」

 

 

 ……俄然やる気を出して仕事を捌き始めた俺を見て、秀一を含めた幹部や仲間達が安堵する様子を見せた事を、俺は知らない。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 仕事を一段落させて、秀一が予約したレストランに向かった。合同捜査本部があるビルからもそこまで遠くないため、ゆっくり食べても問題ない。……むしろ、仲間達からはゆっくり食べて休憩してくる事を勧められた。

 

 

 自覚はそこまでなかったが、最近の俺は働き過ぎだと思われていたらしい。だから、食事の時ぐらいはゆっくりしてきて欲しい、と心配された。

 既に秀一が根回ししていたらしく、俺が知らないうちにうまく仕事を割り振る事で、俺がゆっくりできる時間を作っていたようだ。

 

 

「――俺は良くできた弟子と、優しい仲間達に恵まれているんだな……」

 

 

 しみじみとそう言えば、弟子と仲間達から微笑ましいとでも言いたげな視線を向けられた。

 

 

 閑話休題。……レストランに到着し、店員に案内された席に座った。窓際の席だった。

 このレストランはある高層ビルの中にあり、それだけに窓際席からは眺めの良い景色が見える。

 

 

「ここは夜になると、夜景がとても綺麗に見えるらしいです。……本当はその時間帯で予約したかったのですが、生憎とそちらは全て埋まっていました。申し訳ないです」

 

「いや、構わないさ。……昼でも充分、いい景色だ」

 

 

 眼下では米粒のようではあるが人の往来が見え、それよりも上に視線を向ければ、ビル内で仕事をしている様子の人達も見える。……彼ら彼女らは、いつも通りの日常を送っている。

 

 

「むしろ昼にこの席を予約してくれて良かった。そのおかげで、明るいからよく見えるぜ。彼ら彼女らの平和な日常風景が……」

 

 

 ――黒の組織を壊滅させるために、頑張った甲斐があった。

 

 

「――俺達の手で守ったものを、この目で再確認する事ができて……安心したよ」

 

「――――」

 

 

 そう言って笑えば、秀一は目を見開き、それからすぐに真顔になった。

 

 

「和哉さん」

 

「何だ?」

 

「あなたは――聖人か何かでしょうか」

 

「は?」

 

「いつものようにポーカーフェイスを取っ払ってあなたを讃える言葉を羅列したいところですが……ここは外なので、頑張って自重します。非常に残念です」

 

「…………はぁ?」

 

 

 何言ってんだこいつは?

 

 

「お待たせいたしました――」

 

 

 その時。店員が注文していた料理を届けてくれたため、とりあえず食べる事にした。

 

 

「……うまい」

 

 

 パスタがうまいと評判になっている理由がよく分かった。これは本当にうまい。思わず、口元が緩む。

 するとクスクスと、小さな笑い声が目の前から聞こえた。

 

 

「……何だよ、秀一」

 

「ふふ……いえ、失礼しました。あなたが、幸せそうに味わって食べている事が微笑ましくて、つい」

 

「…………うまいものをうまいと言って、何が悪い。笑うんじゃねぇ」

 

「はいはい」

 

 

 俺が睨むと、秀一は軽く両手を上げた。しかし、僅かに笑っている。……照れ隠しだとバレてやがる。くそ。

 

 

「お前も冷めないうちに食べろ。本当にうまいぞ」

 

「そうします」

 

 

 それから、ゆっくり昼食を食べつつ秀一と談笑していると……

 

 

「…………やっぱり、お前と2人で一般人達がいる場所に来ると、いつも以上に視線が痛く感じる……」

 

「……あぁ……そうですね。和哉さんは美人ですし、俺も顔は整ってますから」

 

「美人言うな、この二枚目野郎」

 

「ありがとうございます」

 

「褒めてない」

 

 

 こいつと一緒にいると、1人でいる時よりも周囲の視線が集まる。特に女性。……耳を澄ますと、"カッコいい"だとか"キレイ"だとか"どうゆう関係だろう?"とか……いろいろ聞こえてくる。

 

 

 ……その時、何かが割れる音と、何かが倒れる音がした。

 

 

「――う"ぁ!?あぁっ、がぁ、ぁ…………」

 

 

 俺と秀一が座っている席の隣……4人席に座っていた若い男女4名のうちの男性1人が、急に椅子ごと床に倒れ、苦しみ……動かなくなった。

 それを見た俺と秀一が席から立ち上がり、男性の元に駆け寄ろうとして――

 

 

「――失礼!」

 

 

 それよりも先に、50代くらいの眼鏡を掛けた男性が駆け寄り、的確に倒れた男性の脈を確かめる。そして同じように駆け寄ってきた、40代くらいの長身で顔立ちの整った男性が、脈を測っている男性を呼ぶ。

 

 

「――右京さん、彼は……」

 

「……手遅れ、ですねぇ。――亡くなっています」

 

「……そん、な、嘘……嘘よ……嘘でしょ、――――さんっ!!」

 

 

 亡くなった男性の隣に座っていた女性が、悲鳴を上げるように男性の名前を呼び、その体にしがみついて泣き出した。

 そんな女性の泣き叫ぶ声を聞きつつ、周辺の観察をしながら……頭は、別の事を考えていた。

 

 

(――何故、()がここにいるんだ……!?)

 

 

 いや、レストランにいるのは()だって飯を食べに来たんだろうし、ここは日本だからいてもおかしくはない。しかしだからって、まさかこんな形で再会する事になるなんて!

 

 ……とりあえず今は関係ない事だし、混乱を招かないよう、せめてこの事件が解決するまでは初対面の振りをしておこう。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「――では、こちらの件が終わり次第、そちらに戻る。……あぁ。了解した」

 

 

 秀一が電話を終わらせて、こちらに戻って来た。

 

 

「和哉さん。連絡してきました。あまり無理はしないように、との事です」

 

「ん、ありがとう」

 

 

 事件に巻き込まれてしまった以上、いつ合同捜査本部に戻れるかは不明となってしまった。よって、秀一にはその旨をジェイムズに報告して欲しいと頼んだのだ。

 

 

「それから……事情聴取にはしっかり応じる事。また、身分を明かしても構わない、だそうです」

 

「……了解」

 

 

 ……やがて、店員の通報によって警視庁の人間がぞろぞろとやって来た。

 

 

「――なっ!?警部殿に冠城!?」

 

「何でここにいるんですか!?」

 

「あ、伊丹さんに芹沢さん。どうも。……ここのパスタを食べてみたくて、僕が予約を取って、ついでに右京さんを誘ったんですよ」

 

「僕もこのレストランのパスタはとても美味しいと聞いた事があったので、冠城君の誘いを受けてここへ……」

 

「……けっ。昼食にイタリアンですか。優雅なことで!」

 

「……特命係のいるところに事件あり、ですね……死神かよ」

 

「芹沢さん、それはさすがに心外です!右京さんはともかく僕は違いますよ」

 

「そんな事はどうだっていい!とにかく、我々捜査一課の邪魔はしないようにな、特命係……!」

 

 

 警視庁からやって来た2人の男が、右京さんと呼ばれていた男と、冠城と呼ばれた男を見て驚いていた。……伊丹さんと芹沢さんと呼ばれていた2人の男は、彼らの事をあまり良く思っていないようだ。特に、伊丹という男は。

 

 

「…………彼らは、部署が違う人間同士のようですね」

 

「……そうだな」

 

 

 秀一と小さな声で話しながら、様子を窺う。

 その後。事件発生時に被害者の近くにいた若い男女3名――ショートヘアの女性、穏やかそうな細身の男性、体格がガッシリとしている男性――や俺達2人は、その場所に留まったままでは検死等の邪魔になるため、店内の隅で待機するようにと言われ、そちらに移動した。

 

 

 ……やがて、捜査一課の2人の刑事がやって来る。2人はまず、俺達に声を掛けてきた。……見せられた警察手帳には、伊丹憲一と、芹沢慶二という名前が記されている。

 

 

「警視庁捜査一課の、伊丹と申します」

 

「同じく、芹沢です」

 

「お2人が被害男性とこちらの3名が座っていた席の、隣にある2人席に座っていた事は、間違いないですね?」

 

「えぇ」

 

「間違いありません」

 

「……では話を聞く前に、お2人のお名前とご職業を教えていただきたい」

 

「分かりました。……しかし、その前に――1つ、お願いしたい事があるのですが」

 

「……んん?」

 

 

 俺の言葉に、伊丹刑事が眉をひそめる。

 

 

「あなた方にも、被害男性のお知り合いである男女3名の方にも…………あー、そちらの眼鏡を掛けた警察の方と長身の警察の方にも、お願いします。――我々の職業を知っても、あまり大きな声を上げないように」

 

「…………よく、分かりませんが……まぁ、いいでしょう」

 

 

 伊丹刑事がそう言って頷くと、他の人達も頷いた。

 

 

「……秀一」

 

「はい」

 

 

 秀一と2人で、懐から身分証を取り出した。

 

 

「――FBI捜査官の、荒垣和哉と申します」

 

「――同じく、赤井秀一です」

 

「「Fび、ムグ!?」」

 

 

 全員驚愕していた中で、芹沢刑事と"冠城"が大声を上げそうになったところ、それぞれ伊丹刑事と"右京さん"がその口を片手で塞いだ。

 

 

「なるほど…………荒垣さん、でしたか?」

 

「……はい」

 

「あなたが大声をあげないようにと言った理由、理解しました。……確かに、今まさに世間で話題になっているFBIの方々がいる事が周囲に広まれば、大事になりますからねぇ……」

 

「――ご配慮に、感謝します」

 

 

 そう。黒の組織が壊滅し、組織のボスと幹部のラムを逮捕した後。"世界的に活動していた凶悪な犯罪組織が、日本の公安警察とアメリカのFBIによる合同作戦によって壊滅した"、と世界中に大々的に報告されたため、俺達FBIと公安警察はかなり有名になっている。

 よって……ここで大声を上げられると、いろいろと困った事になってしまうのだ。

 

 

「……FBIの方々が、何故こんなところに?」

 

「何故、と言われましても……部下の赤井がこの店を予約してくれて、昼食を取るためにここへ……」

 

「上司が、1度はここのパスタが食べてみたい、と言っていたので」

 

「…………あんた達もかよ……」

 

 

 うんざりとした表情で、伊丹刑事がそう言った。

 

 

「にしても……ハーフに見える赤井秀一さんはともかく、荒垣和哉さんは純日本人でしょうか?」

 

「……えぇ。そうですよ」

 

「それが、FBIねぇ……純日本人なのに、アメリカの犬をやってるんですか。それはそれは、」

 

「――ホー……?」

 

「っ!?」

 

 

 秀一の声が常より低くなり、口の端がつり上がる。……しかし、目は笑っていない。きっと、ここに一般人がいなければ殺気まで出していただろう。

 そんな秀一の凄みに、伊丹刑事と芹沢刑事の肩が震えた。"右京さん"と"冠城"は身構えている。

 

 

「秀一。落ち着け」

 

「しかし、」

 

「――秀一」

 

「…………すみませんでした」

 

 

 俺が再度呼ぶと、秀一は大人しく引き下がった。

 

 

「……私の部下が大変失礼いたしました。……ところで、我々に聞きたい事があるのでは?」

 

「あ、……そう、でしたね、はい…………では、事件が起きた時の事を聞かせてください」

 

「分かりました。それでは――」

 

 

 話を本題に戻し、事件が起きた時の状況について伊丹刑事に質問され、それに秀一と2人で答えていく。

 

 

「――なるほど。ご協力、ありがとうございました。もう結構で、」

 

「あぁ、すみません。僕からも質問があるのですが……」

 

 

 と、"右京さん"が割り込んできた。

 

 

「っ、警部殿……!!」

 

「すみませんねぇ、伊丹さん。……お2人にお聞きしたいのですが――こちらの男女3名と被害男性が席を立った順番や回数を、覚えていますか?」

 

「!」

 

 

 ――へぇ。

 

 

「――もちろん、覚えていますよ。我々の方が先に店内にいたので、彼らが4人席に座った時から……最初から全て、記憶しています。……お前も覚えてるよな?秀一」

 

「はい。全て覚えています」

 

「え」

 

「何ぃっ!?」

 

「えぇっ!?」

 

 

 "冠城"と、刑事の2人がぎょっとした表情で俺達を見る。若い男女3名も同じ表情だった。……俺も秀一も職業柄、周りを常に観察する癖がついていただけなのだが……そんなに驚く事か?

 

 

「素晴らしい。……では、最初からお答えしてもらえませんか?」

 

「いいですよ。……秀一。とりあえず俺が話していくから、もしも何か間違いや抜けている部分があったら、言ってくれ」

 

「了解しました。……もっとも、あなたに限ってそれはないと思いますが……」

 

「念のためだ。……さて。まずは――」

 

 

 それから、彼ら4名の席を立った順番や回数について、彼らが席に座ってから事件が起きるまでの、全てを答えた。……秀一からの指摘がないので、おそらくこれで合っているはず。

 

 

「――これで、以上です」

 

「ありがとうございました。……皆さん。彼の言葉に、間違いはありませんか?」

 

「……は、はい……間違いありません……」

 

「ぼ、……僕も改めて思い返してみた、けど……その人の話の中に間違いは……全く、なかった」

 

「あぁ……その通りだったぜ。間違いない」

 

「マジ、かよ」

 

「すっげぇ記憶力……!!」

 

「…………凄いな……もしかして、記憶力は右京さん並み……?」

 

 

 俺の話を3人が肯定し、刑事2名と"冠城"がそんな声を上げる。

 

 

(……俺の話が肯定されたという事は、被害者と彼ら3人の事件前から事件直後の行動は、これで確定……か)

 

 

 よし。これで――

 

 

「――これで、毒物が仕込まれた時がいつなのか、探り易くなりましたねぇ……荒垣さん。改めてお礼を言います」

 

「っ、……いえ。お役に立てたようで、何よりです」

 

 

 "右京さん"が、静かにそう言った。……やはりな。それを探り易くするために、俺に聞いてきたのか。

 そして、"右京さん"の声が聞こえたのか、伊丹刑事が彼に問い掛ける。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください、警部殿!……毒物ってのは?」

 

「言葉の通りですよ。……僕の見立てでは被害者の死の直前の様子からして……死因はおそらく、何らかの方法で毒物を仕込まれた事による、毒殺だと思われます」

 

「……つまり、右京さん。あなたは――犯人が彼ら3人の中にいると、そう言いたいわけですか?」

 

「その可能性は、高いと思っていますよ。あとは、鑑識の検死結果次第ですねぇ」

 

 

 ……なんて言っているが、おそらくはもう確信しているのだろう。

 

 被害者は――他殺である、と。

 

 

「……ところで……警部殿、と呼ばれているようですが、あなたのお名前は?……それに、横にいる長身の警官の名前もまだ聞いていません。ついでに教えてもらえますか?」

 

「ついで、って……はっきり言いますね」

 

 

 ……おっと?どうやら秀一は"右京さん"に興味を示したらしい。"冠城"にも名前を聞いたのは、ついでのようだが。

 こいつが自分から他人の名前を聞く時は、大体がその相手に何らかの興味を示した時だからな。

 

 

「あぁ……これは失礼いたしました。――警視庁特命係の、杉下右京と申します」

 

ついでに(・・・・)名乗りましょう。――同じく、特命係の……冠城亘です」

 

「……その、特命係とは?」

 

「ただの、窓際部署ですよ」

 

「――窓際部署、ねぇ……?」

 

 

 似合わない、というか。――似合う、というか……

 

 

(まぁ――らしいといえば、らしいかな……)

 

 

 

 

 

 



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IF① 再会 後編


・事件捜査の描写はほとんど飛ばされています。あっさり犯人が判明します。

・オリ主視点。




 

 ……その後。検死結果から、被害者が死亡したのは、毒殺によるものだと判明した。……そこからの展開は、早かった。

 

 俺達が手を出すまでもなく、杉下警部達が犯人を特定したのだ。……犯人は、被害者の友人である男性2人のうち、穏やかそうな細身の男性の方だった。

 

 簡単に言えば、被害者の恋人であるショートヘアの女性に、犯人である男性は横恋慕しており……それに関する被害者への嫉妬がきっかけとなったらしい。

 4人で食事をする日が決まった時から準備を始めて、今日に備えて毒物等を用意し、犯行に及んだのだ。

 

 

「酷い……酷いよ!私も、――――さんも、あなたの事を信じていたのに!!あの人、ずっと今日が来る日を楽しみにしていたのに……!」

 

「なんで、なんでそんな事をしたんだ!お前、そんなに彼女を――――から奪いたかったのか!?」

 

 

 被害者の恋人ともう1人の友人である体格のいい男性が、悲痛な声を上げる。それに対して犯人は、身勝手な言葉を告げた。

 

 

「彼女と、―――と出会ったのは、僕の方が先だった!僕の方が先に好きになったんだ!それをあいつが横取りしたんだ!!許せるわけがない!!」

 

 

 すると、犯人の目の前に立った杉下警部が、口を開く。

 

 

「……僕は生憎と、恋愛には疎いのですが……それでも、これだけは分かります。

 たとえ、自分が恋をしていた相手と自分の友人が恋仲になり、あなたがその友人に嫉妬するようになったのだとしても――

 

 ――あなたの友人であると同時に、あなたが恋をしている女性の大切な存在でもある男性を、殺してもいい理由にはなりませんよ!!」

 

「っ、うるさい……うるさいうるさいうるさい!!……そうだ、あんたのせいだ……あんたのせいで計画が台無しだ――!!」

 

「っ、右京さんっ!!」

 

「「警部殿!!」」

 

 

 そう叫んだ犯人が、懐から折り畳み式のナイフを取り出して、杉下警部に飛び掛かった。冠城巡査と刑事の2人も叫ぶ。……その時、既に俺と秀一は動いていた。

 

 俺は杉下警部と犯人の間に割り込み、犯人が持っていたナイフを叩き落とす。

 その瞬間。犯人の背後を取っていた秀一が、犯人の両腕を取って取り押さえた。

 

 

「よし。そのまま捕まえとけよ、秀一」

 

「了解」

 

「くそぉっ!離せ、離せぇっ!!」

 

「――おい、てめぇ」

 

「ひっ!?」

 

 

 犯人が俺の顔を見て、悲鳴を上げた。……きっと今の俺は、相当冷たく、恐ろしい表情をしているのだろう。現に同じように俺の顔を見た秀一が、見事に固まった。そして、その表情が少し青くなる。

 

 ……それでも犯人をしっかり押さえているあたり、こいつはやはり優秀である。

 

 

「自分の失敗の責任を、他人に押し付けるな。ましてや、その他人にナイフを向けるなんざ正気の沙汰じゃねぇ。そして何よりも――

 

 ――この俺の目の前で、()に手を出そうとしやがったな?

 

 ……ふざけんじゃねぇぞ、このクソガキがぁっ!!」

 

「ひぃぃっ!?」

 

 

 ……頭に血が上っている。それは理解しているが、どうしても怒鳴らずにはいられなかった。

 だって、()は俺の――

 

 

「――和哉君(・・・)

 

「っ!!」

 

 

 背後から、肩に手を置かれた。振り返ると、()が――右京さん(・・・・)が微笑んでいる。

 

 

「落ち着きなさい。……この通り、君のおかげで僕は無事ですから」

 

「…………」

 

 

 ……そうだな。落ち着こう。……深呼吸をして、頭を切り替える事にした。

 

 

「……すみません。取り乱しました」

 

「いえいえ、構いませんよ。……それより、君に怪我はありませんか?」

 

「ありません。ナイフには当たっていませんよ」

 

「……それは良かった。――大事な甥っ子(・・・)に怪我をさせたとなれば、君の叔父(・・)としての立場がなくなりますからねぇ……」

 

「…………ホー……」

 

「えっ、」

 

「んん!?」

 

「…………右京、さん?今……荒垣さんを、何て呼びました……?」

 

「甥っ子、と呼びましたが……それが何か?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

「「「――えぇぇぇぇっ!?」」」

 

 

 ……ある程度混乱するだろうとは思っていたが、まさかここまで驚かれるとは思わなかった。

 それに対して、秀一は目を見開いているものの、そこまで驚いていない。

 

 

「……和哉さんの態度から、おそらくあなたと杉下警部の間には何らかの関係があると考えていましたが……まさか、血縁関係にあったとは……」

 

 

 ……さすがだな。俺と右京さんが顔見知りである事には気づいていたのか。

 

 

「叔父と、甥っ子!?」

 

「こ、こんな若造が警部殿の甥っ子、だと!?いくらなんでも若過ぎる…」

 

「あぁ……和哉君はこう見えて、38歳の立派な中年男性ですよ?」

 

「はあっ!?」

 

「さ、38って、えっ?……えっ!?」

 

「いやいやいやいや!?どう見ても20代にしか見えないんですが!?……あ、荒垣さん。本当なんですか……?」

 

「……えぇ。本当ですよ、冠城巡査。

 

 というか右京さん。なんで今バラしてしまったんですか?そのせいで、皆さん大混乱してますよ。せめて事件が完全に解決するまでは黙っていて欲しかったんですが?」

 

「おや?もう"右京叔父ちゃん"とは呼んでくれないんですか?」

 

「っ、いつの話してんだよあんたは!!」

 

 

 それはまだ俺がガキだった頃の話だろうが!!

 

 

「…………"右京叔父ちゃん"」

 

「お前は復唱すんじゃねぇよ、秀一!」

 

 

 それからその目を止めろ。"微笑ましい"とか"かわいい"とか思うな!!

 

 

「とりあえず捜査一課の人!この犯人どうします?」

 

「お、おう!そうだったな!……おい!こいつを連れて行け!!」

 

 

 伊丹刑事達とは別の捜査一課の人達が、犯人を連行して行った。

 その後、まず一般人であるショートヘアの女性と体格のいい男性は、後日調書を取るために呼び出す場合がある事など、その他もろもろを伝えられてから、解放された。

 他の捜査一課の人達も撤収作業に入り、この場には俺と秀一、伊丹刑事と芹沢刑事、それから右京さんと冠城巡査が残る。

 

 芹沢刑事が俺達に向き直り、口を開いた。

 

 

「……まずは捜査へのご協力、ありがとうございました。……お2人も後日、調書を取るためにお呼び出ししますので……面倒だからといって逃げたりしないよう、お願いしますよ?」

 

「もちろん、分かっていますよ。我々も警官ですし、調書の重要性はよく知っていますから」

 

「我々のボスからも、そちらに協力するようにと言われています」

 

「……それなら、いいですけどね……」

 

 

 芹沢刑事が引き下がると、今度は伊丹刑事が俺を見据えて口を開く。

 

 

「……あんた達も、特命係のように首を突っ込んでくるのでは、と警戒していたが……なるほど。警部殿の甥っ子ともなれば、警部殿の能力についてはよく知っているだろうし、自分達が手を出すまでもなく、放っておけば自分の叔父上が解決してくれるだろうと……そう考えたわけですか」

 

「…………ん?」

 

 

 ……どうやら、盛大に勘違いされているらしい。

 

 

「……失礼ながら申し上げますが、伊丹刑事。あなたは勘違いしています」

 

「…………何?」

 

 

 訝しげに俺を見ている彼に、俺は苦笑いを向ける。

 

 

「――日本警察は、優秀です。我々FBIは、日本の公安の方々にとても助けられました。……だから、彼らと同じく日本警察に所属しているあなた方の捜査に首を突っ込む事なんて、しません。邪魔になってしまいます。……私は、あなた方の邪魔はしたくありません。そんな事をすれば、我々の同士となってくれた公安の方々に申し訳が立ちませんから。

 

 まぁ、そもそも手を出す必要性がないと考えていたんですが、ね。だって、俺は右京さんだけを信じていたわけではなく、あなた方全員を――日本の警察官を、信じていたんですよ?」

 

「――――」

 

「――俺の本来の故郷を守ってくれる、立派な警察官であるあなた方を信じるのは、おかしい事ですか?」

 

 

 ……すると伊丹刑事は、唖然。……目付きの悪い強面の顔がコミカルな表情に変わって、なかなか面白い。

 

 

「せ、先輩先輩!ちょっと……!」

 

 

 芹沢刑事が、そんな彼の腕を引っ張って一緒に離れて行った。その先で、ひそひそと話をしている。……どうしたんだ?

 

 

 

 

「……どうするんですか!」

 

「どうする、って……」

 

「だって先輩、あんなに俺達の事を信頼してくれてる人に、滅茶苦茶失礼な事言ったでしょう!?」

 

「ぐっ……」

 

「確かに、言ってましたよね。"純日本人なのにアメリカの犬をやってる"とか、"こんな若造が"とか、その他もろもろ……」

 

「うおっ、……ヌルッと会話に入ってくんな冠城……!」

 

「――えぇ、全くですねぇ。僕の大事な大事な甥っ子に、とても失礼な事を言っていましたよねぇ……?伊丹刑事」

 

「ひぇ」

 

「け、警部、殿」

 

「もちろん――謝りますよ、ねぇ?」

 

「…………ハ、ハイ……!い、いくぞ芹沢!」

 

「えっ、俺も!?」

 

「先輩の俺が謝るんだから後輩のお前も謝るんだよ!連帯責任だ!!」

 

「理不尽!?」

 

 

 

 

 ……途中で冠城巡査と右京さんも一緒に、何かを話していたようだが、突然、伊丹刑事が芹沢刑事を引きずりながら、俺の前にやって来た。

 

 

「……あー、その……えー……」

 

「……先輩!」

 

「分かってる!……その、――すみませんでした」

 

「すみませんでした!」

 

「…………えっと?」

 

 

 2人が、俺に向かって頭を下げた。……いきなりどうしたんだ?

 

 

「……日本の警察官を信頼してくれるあなたに対して、大変失礼な真似をしました。申し訳ございませんでした」

 

「大変失礼いたしました!申し訳ございません!」

 

 

 すると、背後で殺気が膨れ上がった。……今は一般人もいないから、歯止めが利かなくなったんだな。

 頭を下げている刑事2人は体が震え、俺達を見守っている右京さん達は冷や汗を流している。

 

 

「――今さらか?あれだけ和哉さんを貶しておきながら、今さら謝罪など……!」

 

「秀一……」

 

「……俺は認めない。確かに我々は日本警察に煙たがれてもおかしくはないが……それでも彼を……和哉さんを侮辱するなんて――万死に値するぞ」

 

「秀一、」

 

『せっかく――いつも頑張っている和哉さんのために同士達が時間を作ってくれて、和哉さんだってあんなに楽しそうにしてたのに、殺人事件でそれを台無しにされるわ俺の唯一無二を侮辱されるわ――今の俺は最高に機嫌が悪いんだよ……!!』

 

「――――」

 

 

 …………なんだ。こいつ、そんな事を考えていたのか。――同士達と、俺のために、こんなに怒っているのか。

 

 だがしかし。そうだとしてもやり過ぎなので、

 

 

「――赤井秀一」

 

「っ、」

 

「――Stay(待て)

 

「――――Yes,master(はい、ご主人様)

 

 

 外だけど、今回ばかりは仕方ないので、いつものように犬扱い。

 

 

「……伊丹刑事、芹沢刑事。頭を上げてください。……私の部下が、度々申し訳ない事をしてしまいました。すみません」

 

「えっ、あ……いえ……」

 

「さて、謝罪についてですが。もちろん、ありがたく受け取ります。……また、先ほどまでの部下の行動について、改めて謝罪します。……申し訳ございませんでした」

 

「……先ほどは、失礼いたしました」

 

 

 俺が頭をを下げると、それに合わせて秀一も頭を下げる。……ちゃんと頭は冷えているようだ。よし。

 

 

「……あー、……えー……っ、我々も、あなた方の謝罪を受け取ります。ですので、頭を上げてくれませんか?」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 俺達が頭を上げると、2人は神妙な面持ちをしていた。伊丹刑事が口を開く。

 

 

「……荒垣さん」

 

「何でしょう?」

 

「あなたは、何故我々に怒りをぶつけないんですか?……俺としてはあなたの部下の反応こそが……まぁ、少し過剰ではあるものの、当然の事だと思いましたがね」

 

「……それは……私も赤井も、自分自身の事を侮辱された程度では、別に怒りませんよ。その程度なら我慢すればいいだけの話です。……しかし――自分以外の、大切な存在を侮辱されたら、そうはいきません」

 

「…………」

 

「だから赤井は……少々過剰ですが、怒りました。私のためにね。……そして私も、もしあなた方が彼を侮辱していたら――烈火の如く、激怒していたでしょうね。それこそ、先ほど犯人が私の叔父にナイフを向けた時のように、怒鳴っていたはずです。……あなたも、部下や仲間を侮辱されたら、同じように怒るのでは?」

 

「…………まぁ……そう、ですね」

 

「それと同じ事ですよ。……それに、私は先ほど言いましたよね?あなた方の邪魔をしたくない、と。無駄に感情を爆発させて、あなた方の邪魔になるような事をしたくなかったんですよ」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 ……黙り込んだまま、伊丹刑事と芹沢刑事が顔を見合わせて、それからまた俺を見た。

 

 

「……荒垣さん。失礼な事を聞くようで、申し訳ないのですが――あなた、本当に杉下警部の甥っ子ですか?」

 

「え?」

 

「いやね。あなたが常識人過ぎて、先輩も俺もちょっと疑い始めてるんですよ。本当にあの警部殿と血が繋がっているのかって…あ、違いますよ!?別に警部殿を侮辱するつもりは全くなくて……!!」

 

「……あー……――"細かいところまで気になるのが、僕の悪い癖"、"妙ですねぇ"、"一つよろしいでしょうか"、"最後に、もう一つだけ"……といった右京さんの口癖に聞き覚えは、」

 

「「あります!!」」

 

「なるほど――理解しました。あなた方も彼に振り回されてますね?……この言葉は、目上の方に使うべき言葉ではないと分かっていますが……あえて、使わせていただきます。――心中、お察しいたします」

 

「……荒垣さん……!」

 

「荒垣さん、あんた良い人だな!!」

 

 

 2人の俺を見る目ががらりと変わった。……いやー単純、ゲフン。……素直な人達だなぁ。気持ちはよーく分かるが。

 

 

「……和哉君。いろいろと物申したい事があるのですが、」

 

「今俺は伊丹刑事達と話をしてる途中なんだ。ちょっと静かにしてくれ右京叔父さん(・・・・・・)

 

「…………君にそう言われては、仕方ないですねぇ……」

 

「「「えっ」」」

 

 

 右京さんが引き下がると、冠城巡査達が彼を2度見した。……俺は滅多に叔父さんと呼ばないから、ここぞという時に叔父さんと呼ぶと、この人は意外と従ってくれるのだ。

 

 

「で、本題に戻しますが……確かに私は、彼の甥ですよ。私の母が彼の姉でして。……彼には私がまだ日本に住んでいた頃に、何度か遊んでもらいました。

 それ以降も、ごく稀に私が来日しては彼と会って話をしたり、時には彼の方からアメリカにある私の実家に遊びに来てくれたり……それなりに交流を続けていました」

 

「へ、へぇー……」

 

「…………全く、想像できないんですが」

 

「……それにしても、君がFBIになる前に1度会った日以降、会う事はありませんでしたが……まさかこんな形で再会する事になるとは……最初に見た時は、最後に会った時と見た目がほとんど変わっていなかったので、驚きましたよ」

 

「童顔で悪かったな!!」

 

「そうは言ってませんよ……」

 

 

 その時。俺の携帯に着信があった。

 

 

「おっと。……失礼」

 

 

 秀一達から離れて、電話に出る。……相手はジェイムズだった。俺達の状況が気になって電話を掛けてきたらしい。

 事件が解決した事と、後日調書を取るために警視庁に行く事、これから合同捜査本部に戻る事を伝えた。

 

 電話を終えてから彼らの元に戻り、まず秀一に声を掛ける。

 

 

「ボスからの電話だった。……仲間達もみんな心配しているようだ。そろそろ戻ろう」

 

「はい」

 

「……では。我々はそろそろ失礼します」

 

「あぁ、ご協力ありがとうございました」

 

「ありがとうございました!」

 

 

 それから。秀一と共に店の出口に向かおうとして……ふと、振り返った。

 

 

「そうだ、右京さん」

 

「何ですか?」

 

「おふくろが心配してましたよ」

 

「…………はいぃ?」

 

「最近、連絡の1つも寄越さないって。……俺とはたまにメールのやり取りするのに、おふくろとはやらないんですか?」

 

「……彼女は、苦手なんですがねぇ……」

 

「まぁ、あの人はマイペースなんで、その気持ちは分かりますが……あまり、俺のおふくろに心配させないでくださいよ、叔父さん」

 

「む……」

 

「それに……おそらく無いとは思いますが、おふくろの明らかに沈んだ様子を見たら、そのうち親父が介入するかも…」

 

「近いうちに彼女に連絡します」

 

「賢明な判断だと思います。……では、失礼します」

 

 

 今度こそ、秀一と共にその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「…………さて。……言ってしまったからには、近いうちに連絡しないとですねぇ……」

 

「……右京さんにも、苦手な人っているんですね。……彼の母だというあなたの姉や、彼の父親って……どんな人達なんです?」

 

「そうですね…………僕の姉にして、彼の母親である彼女は、マイペースで穏やかで……心配性な女性です。そして父親……僕の義理の兄は――読めない人、です」

 

「…………読めない……?右京さんが?」

 

「えぇ。……既に引退してしまったものの、FBIではかなりの敏腕捜査官として有名だったと聞いています。……和哉君は間違いなくその血を引いていますから、いずれ父親と同様に、有名になるでしょうねぇ……」

 

「……へぇー……」

 

「……ただ。彼の父親について、1つ、分かっている事があります」

 

「ほう?」

 

「もしも万が一、僕の姉や和哉君の身に何らかの危害を加えられた時……彼の父親は――悪鬼羅刹の如く怒り狂い、彼らに危害を加えた原因を、尽く潰しに掛かるでしょう……」

 

「…………え?……ちょ、右京さん?荒垣さんの父親って……そんなにおっかない人なんですか!?」

 

「えぇ。それはもう……僕も絶対に、怒らせたくない人なんですよ。……そんな恐ろしい人の息子である和哉君もまた、怒らせると怖いんです」

 

「それは……彼が右京さんを守った時に、その片鱗が見えましたね……僕、あの絶対零度の目には思わず震えました」

 

「彼の父親が怒った時は、あれの数倍は恐ろしいと思ってください」

 

「…………ひぇー……おっかない…………で、右京さんはもしかして、その人の事を怒らせた事があるんですか?」

 

「――ノーコメント」

 

「それ、答え言ってますよね?ねぇ?」

 

「――――ノーコメント」

 

 

 

 

 

 





・警視庁一の変人の甥っ子である飼い主

 ――細かいところまで気になるのが、俺の悪い癖……なんてな。

 最近お疲れ気味だったため、息抜きのために赤井と共に1度行ってみたかったレストランへ。相変わらず赤井のハートを撃ち抜きつつ楽しく会話をしていたら、事件に巻き込まれた。おのれ犯人……!
 杉下とのまさかの再会に驚いたが、とりあえず場を混乱させないために初対面を装っていた。……しかし、目の前で犯人が杉下にナイフを向けたため、激怒。俺の身内に何してくれてんだ!!
(# ゜Д゜)

 伊丹刑事の嫌味にも、全く動じない。いやいや、俺は日本の警察官の事を信じているんですよ?何かおかしいですか?……あ、そのコミカルな表情面白い。
 刑事2人組に頭を下げられ、それから赤井の言葉を聞き、"やっぱりこいつ良くできた弟子だな"とちょっと照れ臭くなった。――だがしかし。お前は少しやり過ぎだ、ステイ!

 杉下との血縁関係を疑われ、あっ(察し)。――心中お察しいたします(´・ω・`)。
 そして叔父さん(・・・・)と呼ぶだけである程度杉下をコントロールする事が可能という、杉下をよく知る者なら愕然とする程の能力を持つ。
 最後に、自身の母親が杉下を心配している事を伝えた。苦手なのは分かるけど、ちょっとぐらい安心させてやってくれ。放っておくと親父が首を突っ込む、かも?


・実は最高に機嫌が悪くなっていた忠犬

 ――俺の和哉さんは、聖人か天使か神か、もしくはその全てだと思う(真顔)

 和哉さんのためにいろいろとセッティングして、その甲斐あって和哉さんが良い感じにリラックスしていたのに――おのれ、殺人事件
<●><●>カッ

 伊丹がオリ主を侮辱したため、1度はキレる寸前までいったものの、オリ主に止められたため、ギリギリで抑えた。(なお、表面上はほぼ無表情)
 犯人を取り押さえた際、オリ主がぶちギレてびっくり。その後、オリ主と杉下の関係を聞いてオリ主がキレた理由を知る。なるほど、それは和哉さんならキレて当然ですね。……それにしても"右京叔父ちゃん"、ですか……(内心ニコニコ)

 刑事2人組がオリ主に今さら謝った事で、ついに堪忍袋の緒が切れる。――俺は今、最高に機嫌が悪いんだよ!!(ライ顔)だがしかし。即座に飼い主の命令で鎮圧。和哉さんの命令は?ゼッターイ!
 刑事2人組に謝ってからは静かだった。……というのも頭は冷えていたが、機嫌がまだ完全には直っていなかったため。オリ主がジェイムズとの電話から戻って来て、赤井に声を掛けたあたりでようやく冷静になった。

 ……はっ!そういえば和哉さんの身内に改めて挨拶する事を忘れていた!!どうしよう!?
( ̄□ ̄;)!!


・飼い主の叔父上

 相棒に誘われてついて行った先のレストランで、まさかの再会に思わずポーカーフェイスを崩しそうになった。おやおや?何故こんなところに……!?
 しかし、とりあえず事件の解決が優先。また、オリ主がまだ自分達の関係を明かすつもりはない事を察して、それに合わせた。
 オリ主に被害者達が席を立った順番や回数を聞いたのは、オリ主なら覚えているはずだと確信していたため。この僕の甥っ子ですからねぇ……これぐらいはあっさり答えてもらわないと。
 犯人が飛び掛かって来た時、甥っ子が自分を庇ってくれた事が実はかなり嬉しかった叔父上。ついつい、"大事な甥っ子"と"叔父"という言葉を口にしてしまった。

 心から自分や日本の警察官を信じてくれているオリ主に、ほっこり。
 ――さて、伊丹刑事?僕の大事な甥っ子はこんなにも尊いのですから、しっかりと謝罪してくださいねぇ……?(威圧)

 そして、オリ主の部下から放たれるヤバい殺気に、冷や汗。和哉君。君はいつの間にそんな凶悪な部下を持ったんですか?しかも犬扱いですか?……そういえば"赤井秀一"という名はどこかで聞いた事があるような……?
 好き勝手言われた事に対して、オリ主に物申したかったが、右京叔父さんと呼ばれて大人しく引き下がった。そう呼ばれてしまっては、仕方ないですねぇ……

 姉が苦手。義兄はもっと苦手。義兄が本気で怒るとどうなるかをよく知っている。……はいぃ?何故知っているのか、ですか?――ノーコメントで。


・捜査一課コンビ

 はぁ?アメリカの犬かよ、けっ!と、思っていたら……警部殿の甥っ子?えっ?――えっ!?全然似てない!!

 というか常識人!超良い人だ!?貶してごめんなさい!!(盛大な手のひら返し)

 そして部下が恐い……!!((( ;゚Д゚)))殺気ヤバい!下手な犯罪者よりも恐い!!


・叔父上の相棒

 あれ?俺あんまり出番なくね?あれ?

 オリ主の父親がいかに恐ろしいかを杉下から聞いて、震える。まさか右京さんにも苦手な人とか読めない人が存在したとは……!?

 オリ主と一緒に酒が飲みたくなった。右京さんの愚痴を聞いてもらいたい!







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IF② 花の里にて 前編


・相棒側の登場人物達のキャラ崩壊あり。

・オリ主視点

・前編と後編に分かれています。


 

 

 例のレストランで起こった殺人事件から数日後の、夜中。……俺は秀一と共に、あの事件の事情聴取を受けるために警視庁に来ていた。調書作成のための事情聴取という事で、それなりに時間を取られるのだろう。

 念のために俺も秀一も、今日終わらせる必要がある仕事は全て片付けてある。この事情聴取さえ終われば、今日中にやるべき事が全て終わるのだ。……秀一とは、もしも予定より早めに終わったら、久々に2人でどこかに飲みにでも行こうと話していた。

 

 

 警視庁内にて。俺達はそれぞれ別の部屋で事情聴取を受ける事になった。俺には伊丹刑事が、秀一には芹沢刑事が取調を行う。

 ……やがて、俺の方は特に問題なく終わった。まだ秀一の方が終わっていないため、伊丹刑事と共にそれが終わるのを待つ事に。

 

 

「……あなた方もお忙しいでしょうに、こちらの都合でこんな夜中に事情聴取をさせる事になってしまって、大変申し訳ない……」

 

「あぁ、いやいや。荒垣さん達もいろいろと忙しいんでしょう。お互い様ですよ。……むしろ、こちらとしては久々にまともな取調を行う事ができて、安心しました」

 

「……それは、どうゆう事です……?」

 

「…………ここだけの話ですがね。……今までに何度も、取調中に乱入された事があるんですよ――あなたの、叔父上に」

 

 

 それを聞いた瞬間。俺は即座に頭を下げた。内心では土下座していた。うちの叔父が本当に申し訳ありませんでした!!

 

 誠心誠意謝罪していたら、逆に伊丹刑事の方が焦ってしまった。頭を上げて欲しいと言われたため、渋々それに従う。

 

 

「……私の叔父が大変失礼な事を……!今度叔父と顔を合わせる機会があった時に、よーく、言い聞かせておきますので……!!」

 

「あ、それは是非お願いします!!」

 

「はい、お任せください。……それから、叔父が暴走した時に"甥っ子に言い付けますよ!"とでも言ってもらえれば、多少は効果が見られるはずですから……万が一の時はそう言ってみてください」

 

「ありがとうございます……!万が一の時の切り札としてありがたく使わせていただきます……!!」

 

 

 伊丹刑事と、がっちりと握手を交わした。

 

 

 ……その後。取調を終えた秀一と合流し、伊丹刑事と芹沢刑事に見送られて警視庁を後にした。……すると、前方に見覚えのある人影が2つ。

 秀一を見ると……軽く頷いて了承してくれたので、2つの後ろ姿を目指して駆け寄る。

 

 

「――右京さん!冠城巡査!」

 

「おや?」

 

「あれ!?荒垣さんに……赤井さん?どうしてここに?」

 

 

 俺が声を掛けると2人――右京さんと冠城巡査が振り向き、それぞれが驚く。

 

 

「例の事件の事情聴取を受けるために、ここに来ていたんです」

 

「なるほど、そうでしたか……」

 

「右京さん達はこれからどちらに?」

 

「僕達の行き付けの店に行くところですよ。……あぁ、そうだ。もし良かったら、君達も一緒に行きませんか?もちろん、何も用事が無ければですが……」

 

「…………あー……」

 

 

 叔父の誘いはありがたいし、久々に飲み食いしながらいろいろ話したい。

 しかし……先に秀一と2人で飲みに行く約束をしたからな……

 

 そう思って、秀一を見ると……目が合った。秀一は黙ったまま小さく微笑み、"あなたのお好きなように"と伝えてくる。……ごめんな。ありがとう。

 

 

「……ありがとうございます。俺達も是非、ご一緒させてください」

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 右京さん達の案内で、"花の里"という小料理店にやって来た。……元々、彼から行き付けの店の事はよく聞いていたが……確かに右京さんが好みそうな、良い雰囲気の店だな。

 

 右京さん達に続いて中に入ると、1人の女性がいた。……彼女が月本幸子さんかな?右京さんに聞いていた通り、美人な女将さんだ。

 

 

「いらっしゃいませ。……あら?そちらの方々は……?」

 

「僕がここに誘いました。彼らは、FBIの優秀な捜査官達なんです」

 

「え、FBI!?今ニュースで話題になっている、あの?」

 

「えぇ、そうです。……とりあえず、座りましょうか。……あ、冠城君。君、今日はいつもの席を交換してください。君がいつも座っている席を、僕が使いますから」

 

「えっ?……あぁ、なるほど。分かりました。どうぞどうぞ」

 

 

 店内のカウンター席に、俺と右京さんを間に挟むようにして並んで座る事になった。俺の隣に秀一。右京さんの隣の角の席に、冠城巡査が座る。

 

 

「珍しいですね……右京さんが冠城さんと席を交代するなんて……」

 

「それはそうですよ、幸子さん。今日は荒垣さんがいますし」

 

「荒垣さん……?」

 

 

 おっと。そういえば自己紹介がまだだったな。

 

 

「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。FBI捜査官の、荒垣和哉です」

 

「同じく、赤井秀一と申します」

 

「月本幸子さん、ですよね?あなたの事は、叔父からよく話を聞いていました。とても美人な女将さんだと……」

 

「あ、あら……それはありがとうございま、す……?」

 

 

 首を傾げた女将さんは、恐る恐る俺に問い掛ける。

 

 

「……あのぉ……叔父、って……?」

 

「僕の事ですよ」

 

「え」

 

「……叔父の言う通り、私は彼の甥なんです。私の母親が彼の姉でして……母方の叔父、という事になりますね」

 

「ちなみに先手を打って言っておくと、荒垣さんは今年で38だそうですよ?」

 

「――――」

 

 

 …………女将さんは、見事に固まってしまった。頭の理解が追い付かないのだろう。それを見兼ねた右京さんが、彼女に声を掛けて再起動させた。

 我に返った彼女は、俺と右京さんを交互に見て目を白黒させる。

 

 

「え、えぇぇぇっ!?ほ、本当に右京さんの甥っ子さんなんですか!?それも38!?うそ、全然似てないし見えない!!どう見ても20代半ばか後半ぐらいにしか…って、あ、ごめんなさいっ!!」

 

「ぶふっ!?」

 

 

 冠城巡査が噴き出した。多分、全然似てないというところに笑ったのだろう。

 

 

「ふ、ははははっ……!!っ、全然、似てないって!バッサリ…、あっはははは!!」

 

 

 腹を抱えて大爆笑している。……隣から、冷気が発せられた。

 

 

「――冠城君……?」

 

「あ、ハイすみませんでした!!」

 

 

 即座に笑いを止めて謝った。……上下関係はとっくに決まっているようだ。まぁ、右京さん怒ると怖いからな。

 

 

 さて。気を取り直して、女将さんにそれぞれ料理や酒――冠城巡査と秀一がワイン、俺と右京さんは日本酒――を注文した。

 先に注文した酒が行き渡ったので、俺は右京さんの目の前にある徳利を持つ。

 

 

「右京さん。お酌しますよ」

 

「おや、ありがとうございます」

 

 

 右京さんが持つお猪口に酒を注ぐ。……何故か、彼は上機嫌だ。

 

 

「……君とお酒を飲める日が来るとは……感慨深いです……」

 

「そんな年寄り臭い事を……」

 

「実際に、もう年ですからねぇ……」

 

「なに、あなたならまだまだいけるでしょう」

 

「……君にそう言われると、不思議とそう思えてきますねぇ……もう少し頑張ってみますよ」

 

「そうしてください」

 

 

 会話の途中、秀一の手が俺の前にあった徳利を掴んだため、その意を察してお猪口を持つ。……ちょうどいいところまで注いでくれた後、徳利を置いた秀一に視線を送って礼を伝えた。

 その礼代わりに俺も秀一のグラスにワインを注いでやろうとしたが、首を横に振って遠慮してきたので、仕方なく引き下がる。

 

 その後。注文した料理も行き渡り、飲み食いをしながら会話を始める。

 

 

「……ほう……冠城巡査は元々法務省にいたんですか」

 

「えぇ、まぁ……いろいろあって退官して、右京さんがいる特命係に所属する事になりまして」

 

「所属する事になった、というよりも……無理矢理戻って来た、という表現の方が正しいですねぇ」

 

「そこまでして戻って来た僕の事を褒めてくれてもいいんですよ?」

 

「それはあり得ません」

 

「はっはっは、手厳しい」

 

 

 ……会話に遠慮がないな。どうやら、右京さんはある程度彼の事を信頼しているらしい。

 

 

「そうだ、荒垣さん。右京さんに関する面白い話とかがあったら是非!教えて欲しいんですが……何かありませんか?」

 

「あ、それは私も気になります!」

 

「…………和哉君。余計な話はしないでください」

 

「そうですね…………昔、俺にFBIになってもらいたい父と、日本の警察官になってもらいたい叔父の間で、ちょっとした小競り合いがあったらしいんですが……その話でもしますか?」

 

「何それ超気になります!!」

 

「ちょっと待ちなさい。君、一体誰からその話を聞いたんですか?」

 

「お袋からです」

 

「あの人は……!」

 

 

 それからも楽しい会話――なお、叔父は冷や汗をかいている――が続いたが、会話の方向性を変えるためか、叔父が別の話題を切り出す。

 

 

「ところで、僕としては君達の話も聞きたいのですが。……特に――かの有名な、FBIの銀の弾丸(シルバーブレット)の話は気になりますねぇ……ちょうどその本人である赤井さんがいらっしゃいますし、是非ともお話を伺いたい……」

 

「……ホー……俺の事を知っているんですか」

 

「右京さん。一体どこからその情報を……?」

 

「僕にもいろいろと、つてがありますから」

 

「シルバーブレット……?何ですか、それ」

 

 

 疑問を口にした冠城さんの方へ振り返り、彼は口を開く。

 

 

「赤井さんの通り名ですよ。狼人間を唯一殺す事ができる銀の弾丸になぞらえているのだとか……FBIの銀の弾丸(シルバーブレット)といえば、凄腕のスナイパーとして広く知られています。

 さらに、今までに数多くの難事件を解決に導いており、FBI捜査官としても一流だそうで……」

 

「……恐縮です」

 

「……そして、本人がその実力を鼻にかける事がなく、出世にも興味がないのでは?という話も聞きましたが……その様子を見るに、噂は事実のようですねぇ」

 

「現場の方が性に合っていますから」

 

「…………赤井さんはそんなに凄い人だったんですか。知りませんでした」

 

 

 冠城さんがそう言って、興味津々といった様子で秀一を見る。……秀一はというと、それとは真逆で興味無しといった様子でワインを口にしている。

 そこでグラスの中身が空になったので、今度こそ俺が注いでやった。秀一は黙って軽く頭を下げた。礼には及ばない。

 

 すると、俺が気になっていた鯖の味噌煮を、自分の皿から少し分けてくれた。……弟子にそんな事をされては、師匠の面子が保てない。だから、俺も秀一が気にしていた天ぷらを分けてやる。……申し訳なさそうな顔をされた。いいから遠慮せずに食え食え!

 

 

「……で、そんな赤井さんが尊敬しているという事は、荒垣さんも相当凄い人だという事ですよね?」

 

「それは、」

 

「それはそうですよ。彼は俺の自慢の師匠ですから」

 

 

 否定しようとしたら、秀一に先手を打たれた。……相変わらず俺が関係しているとレスポンスが早い!

 

 

「師匠?……和哉君が、あなたの……?」

 

「えぇ。……俺に狙撃の技術や、パルクールの技術。事件捜査のいろはやFBIとしての心構えなどを教えてくれたのは、和哉さんです。もちろん、その技術等を磨いたのは俺自身である事は認めますが……それは、和哉さんによる教育という基盤があったからこそです。それがあったから、ここまで磨き上げる事ができたんですよ。

 ――和哉さんの存在があったから、今の俺はここに存在している」

 

「は、はぁ……」

 

「俺は和哉さんの唯一の弟子である事を心の底から誇りに思っています。……それなのに、この人はいつも謙遜するんです。確かに、既に狙撃能力や戦闘能力、捜査能力等は俺の方が上です。それは認めます。しかしそれは俺が和哉さんの背中を追い掛け続けた結果であり、この人が俺の師匠で、俺がその唯一の弟子である事に変わりは無い。一時期は免許皆伝なんて言って俺から離れようとしましたが、そうはいきません。俺にはまだ、和哉さんから学びたい事が山ほどあるんですから」

 

「そう、ですか」

 

「和哉さんはまだまだ、俺が会得していない技術を数多く手にしています。それらを全て教えてもらいたいですし、これから先も共に成長していきたいんです。この人の存在は俺にあらゆる刺激を与えてくれます。この人が側にいてくれたら、きっと俺はもっと成長する事ができる。

 ……だから、それを邪魔する奴は問答無用で抹殺――」

 

「――Quiet(静かに)

 

「……Yes,master (はい、ご主人様)

 

 

 ……止めるのが遅過ぎたようだ。右京さんも冠城さんも月本さんも、みんな面を食らっている。……あまり効果は無いだろうが、一度咳払いをしてから取り繕う。

 

 

「あー、驚かせてしまって申し訳ない。こいつは酒が入ると饒舌になり、何故か俺を大袈裟に褒める言葉を毎回口にするんです」

 

 

 いつもは酒が入っていなくても普通に口にするけどな!……つい、秀一を睨んでしまった。

 

 ここは外だぞ外!お前の通常運転(忠犬モード)を知らない人達と一緒にいるんだから自重しろ!かろうじて表情は対外向けに無表情を保ってはいるが、その表情でさっきまで無口だった奴がいきなり饒舌になったらドン引きしてもおかしくないから!!

 

 

「秀一……お前本当に自重してくれよ?頼むから」

 

「…………すみませんでした。……でも、先ほどまでの言葉は全て本心ですよ」

 

「はいはい」

 

「……本当ですからね?」

 

「分かった分かった」

 

「本当に分かってますか?」

 

「分かってるって言ってんだろ。つーかそんなもんはとっくに知ってるんだよ。いちいち言われなくてもな」

 

 

 それこそ毎日のように聞いてるから、こいつが本気だって事はもう分かってる。

 

 

「……今日、君達と警視庁の前で会った時から思っていましたが……君達は本当に仲が良いですねぇ。先ほどから言葉もなく意志疎通をしていて、その仲の良さは窺い知る事ができましたが……師弟というのは、そんなにも仲が深まるものなんですか?」

 

 

 …………え?

 

 

「え?……お2人ってそんな事してましたっけ……?」

 

「してましたよ。警視庁の前で会った時は何やらアイコンタクトで互いの意思を確認していたようですし……ここに来てからも、会話もなく当たり前のように赤井さんが和哉君にお酌をして、和哉君も黙ってそれを受け入れていました。それからつい先ほど、互いの注文した料理をこれまた会話もなく分け合っていて……まさしく、阿吽の呼吸でした。

 

 ……おや、どうしました?和哉君」

 

 

 自身の叔父の言葉を聞き、俺は両手で頭を抱えた。

 

 

(――完っ全に、無意識だった……!!)

 

 

 確かにそんな事をしていたよう、な?……駄目だな。うろ覚えだ。……秀一に自重しろって言ってた俺がそれでどうすんだよ……

 

 

「和哉君?」

 

「あ、あぁ……すみません。ちょっと入りやすそうな穴があったらすぐにでも入りたいという気持ちにさせられただけでして」

 

「はいぃ?」

 

「いえ、何でもないです。そっとしておいてください……」

 

「はぁ……?」

 

 

 右京さん達は不思議そうにしていたが、秀一は俺の心情を察したようで、俺の肩をポンポンと叩いてきた。同情はいらねぇんだよ、とその手を払ったら今度は頭を撫でてきた。それも払った。

 

 

「――調子に乗るんじゃねぇぞ馬鹿弟子」

 

「おっと、すみません」

 

 

 口では謝っていても、目が”微笑ましい“と言っている。……この野郎。後で覚えとけよ……!!

 

 

「……ふふ。……確かに右京さんの言う通り、とても仲が良いんですね……」

 

 

 月本さんにまで似たような目で見られた。居たたまれない……だがしかし、逃げるわけにもいかない。

 

 

 と、いうわけで。

 

 

「……あ、そうだ右京さん!伊丹刑事から聞きましたよ?あなたが今までに何度も彼らの取調中に乱入していたと!」

 

 

 話をすり替える事にした。

 

 

「駄目じゃないですか!真面目に仕事をしている彼らの邪魔をしないであげてください!」

 

「いや、しかし和哉君、」

 

「いやもしかしも無い!確かにあんたは子供のように好奇心旺盛だし細かいところが気になるのがあんたの悪い癖だという事も知っている。でもな、あんたのその行動に困っている人達がいるって事をいい加減理解してくれ!」

 

「う、」

 

「大体なぁ、あんたはきっと自分がどう見られるかなんて気にしてないだろうが――俺とお袋は、嫌なんだよ。俺にとっては大事な叔父で、お袋にとっては大事な弟であるあんたが、周りから腫れ物扱いされてるところなんて――本当は見たくないんだぜ?」

 

「――――」

 

「だから、ほんの少しだけでもいいから――俺達のためにも、自分のそうゆう行動を省みてくれよ。右京叔父さん」

 

 

 思わず、情けない声を出してしまった。……この自由奔放な叔父は俺とお袋をよく心配させる。きっとこの言葉も、効果は少ししかないだろう。……それでも、言わずにはいられなかった。

 

 

「…………そう、ですね。――すみませんでした、和哉君。……少し、気を付けてみます」

 

「ん。ありがとう」

 

 

 どうやら、少しは心に届いたようだ。今はこれで充分だろう。……ふと、視線を向けると……月本さんと冠城さんが、唖然とした表情で右京さんを凝視していた。……どうかしたのか?

 

 

「あの右京さんが素直に反省してる……!?」

 

「明日は槍でも降るのか!?いや、それどころか天変地異の前触れ……!?」

 

 

 …………おい、叔父上よ。あんた一体普段はどんな振る舞いをしてるんだ……?

 

 

 

 

 

 



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IF② 花の里にて 後編


・いろいろ捏造あり。

・右京さん視点。


 

 

 花の里で飲み食いを始めてからそれなりの時間が経過した現在。飲み過ぎたのか、我が甥はカウンターテーブルに顔を伏せて眠ってしまった。そんな彼の肩に、赤井さんが自分のジャケットを掛ける。

 

 

「……杉下警部は、和哉さんと一緒に飲むのは初めてですか?」

 

「?……えぇ、そうですが……」

 

 

 質問の意図が読めなかったが、赤井さんの問いに対してそう答えた。すると、彼は相変わらずあまり動かない表情をこちらに向けて……しかし、なんとなく複雑そうな様子で、こう言った。

 

 

「…………和哉さんが、こんなにも無防備な状態で眠っているのを見たのは――これが初めてです」

 

「…………」

 

「きっと、あなたがいるから……安心して、眠っているのだと思います。普段ならこうはなりません。俺が知っている限り、例え酒を飲んでいたとしても酔い潰れて眠ってしまう事は、一度もありませんでした。……この人は、人一倍警戒心が強いんです」

 

 

 そう言いながら、彼は和哉君の頭をそっと撫でた。……まるで、壊れ物を扱うかのような手付きで。

 

 

「……そうなんですか?僕にはそうは見えなかったんですけど……今日を合わせてまだ2回しか会った事がない僕に対しても、結構気さくに話し掛けてきましたよね?」

 

「確かに、そうですよね……私も、凄くフレンドリーな方だと思ってました」

 

「ですよね?」

 

 

 冠城君と幸子さんが互いに頷き合っている。……彼らはまだ和哉君の事を良く知らないため、そう思うのも無理はない。

 

 

「和哉さんは基本、敵対している相手や犯罪者……または、自分の大切な存在を害するような相手でない限り、誰に対しても友好的に接します。……しかし、それは決して警戒していないわけではありません。

 彼が本当に気を許す相手は、おそらくほんの一握り……そしてその一握りに含まれる人間こそ、和哉さんが心の底から信頼している人間だ」

 

「……なるほど。やはり彼の性質は、今でも変わっていないようですね……」

 

「……という事は、もしや和哉さんは昔から……?」

 

「えぇ……子供の頃は人見知りな子でしたが……それは、他人を警戒しているからこその人見知りでした」

 

 

 そう。彼は昔から、子供にしては他人への警戒心が強過ぎた。

 

 

 彼の顔立ちはとても整っている。見た目は僕の姉に似たようで、言っては悪いが女性寄りの顔だ。……だからこそ、小さい頃の容姿はとにかく中性的で、女の子だと勘違いされる事も多かった。

 そんな容姿に惹かれたのか……子供の頃、彼と何らかの形で関わろうとする子供や大人が、たくさんいた。……しかし、彼は誰に対しても気を許さなかった。――両親を除いて。

 

 彼は、今も昔も変わらず、両親を愛している。他人には決して見せない表情や態度を、両親の前では隠す事なく素直に見せていた。両親の前でのみ年相応の子供になり、その警戒を解くのだ。また、僕に対しても両親ほどではないが、その傾向が見られた。

 小学校に入学してからは、徐々に誰に対しても分け隔てなく接するようになっていったが……警戒心は強いままだった。ある程度は気を許す事ができる友人が数名できたようだが……僕の姉によると、例え友人を相手にしても完全に気を許す事はなく、密かに線引きをしていたらしい。

 

 つまり。和哉君に本当の意味で信頼される事は、非常に難しい事なのだ。

 

 ……義兄曰く、そうゆうところは自分に良く似ている、との事。義兄も幼い頃から警戒心が強かったようで、子供時代の和哉君と似たような行動を取る事があったそうだ。以前、“自分の悪い部分が受け継がれてしまった”、とため息混じりにぼやいていた。

 しかし、義兄は現役時代にその強い警戒心に助けられた事が何度もあったという。……きっと、和哉君も同じだろう。その性質は決して悪いだけではなく、良い面もある。義兄が責任を感じる必要は無いと思うが……それはともかく。

 

 

「……そんな事があったんですね……でも、やっぱり荒垣さんの様子を見る限り、そんな線引きをしているようには見えないんですけど……」

 

「彼との付き合いが長くなると、自然と見えてくるんですよ」

 

「……もしかして、右京さんにも似たんじゃないですか?右京さんにも少なからず、そうゆう部分がありますよね?」

 

「…………それは心外ですねぇ……」

 

 

 冠城君の言葉に眉をひそめた時。ふと、赤井さんが口を開いた。

 

 

「――羨ましいです。……和哉さんのご両親や、叔父である杉下警部の事が」

 

「……はいぃ?」

 

「……最近になってようやく、和哉さんが俺の事を他の人間よりも信頼してくれていると実感するようになりましたが……それはまだ、彼の家族であるあなた方には及ばない。……その場にいるのが俺だけだったら、こんなにも無防備な姿を見せてはくれる事はなかったと思います」

 

「…………」

 

「本当に――羨ましい」

 

 

 そう言った彼の様子を見て、僕はつい笑ってしまった。その様子が――まるで、飼い主に構ってもらえなくて拗ねている、犬のように見えたから。

 

 

「……何がおかしいんですか」

 

「あぁ、すみません……決して馬鹿にしたわけではありませんよ。……ところで、彼が本当の意味で信頼している、一握りの人間についてですが――そこに、僕は含まれていないと思います」

 

「……何?」

 

 

 赤井さんが訝しげにこちらを見る。……疑われているようだ。

 

 

「さらに言えば、和哉君が今無防備な姿をさらしているのは僕がいるからではなく――あなたがいるからではないかと」

 

「……何を根拠にそんな事を……」

 

「根拠は、今から見せますよ」

 

 

 僕はそう言って、和哉君の頭に触れようと手を伸ばした。僕の予想が正しければ――

 

 

「――っ!?」

 

 

 

 

 

 

 ――気が付いた時には既に、動きを封じられていた。

 

 

 ……今の僕は、和哉君に触れようとしていた手を彼の片手に掴まれ、彼のもう片方の手に握られているボールペンの先を、自身の喉に突き付けられている。…………正直、予想以上だった。

 

 

「――なっ!?」

 

「「――右京さんっ!?」」

 

「2人共落ち着きなさい。僕は大丈夫ですから」

 

 

 慌てた様子を見せる冠城君と幸子さんに声を掛け、押し止める。……それと同時に、顔を上げた和哉君と目が合った。――虚ろな目が、僕を見据える。

 

 

「――え?…………っ、あ……!?」

 

 

 しかし、その直後に目に光が戻った。彼は慌てた様子で僕の手を放し、ボールペンを下げる。

 

 

「っ、すみません!すみません、すみませんすみません本当にごめんなさい……!!」

 

「君も落ち着きなさい、和哉君。……眠っている君に不用意に触れようとした、僕が悪いんです」

 

 

 和哉君は顔を青ざめさせて、必死に謝っている。……その様子を見て、故意ではなかった事を察した冠城君と幸子さんや、今まで唖然としていたが我に返った赤井さんが、共に彼を落ち着かせてくれた。

 

 

「…………すみません……本当に、すみません叔父さん……」

 

「もう謝らないでください。君がわざとやったわけではない事は、よく分かっていますから」

 

 

 そう言ってしばらく頭を撫でてやると、ようやく落ち着いたようだ。

 

 

「……和哉君は眠っていた時、僅かに体の右側に力を入れていました。……そう、僕が座っている側の方です。しかしそれとは反対に、左側の力は抜けていました。そう――赤井さんが座っている側の方です」

 

「っ、」

 

「さらに。赤井さんが彼の肩にジャケットを掛けてあげても、頭を撫でても、彼は全く起きませんでした。しかし僕が触れると……結果は先ほどのように、見事に動きを封じてきました。……それから、もう1つ。……赤井さんは和哉君がどちらに顔を向けて眠っていたか、覚えていますよね?」

 

「…………杉下警部の、方に」

 

「その通りです。彼は僕の方に顔を向けて眠っていました。よって――首の後ろという、人体の急所をあなたの方に向けて、眠っていたんです。人一倍警戒心の強い、和哉君が。

 

 ……それはつまり――そうゆう事なのではありませんか?」

 

「――――」

 

 

 ……これまで表情を大きく変えなかった赤井さんが、初めて分かりやすく表情を変えた。酷く驚いている。

 

 

「……秀一?どうした?」

 

「っ、――っ!!」

 

 

 和哉君に声を掛けられ、その肩が跳ねる。……それから、腕で顔を隠すようにして勢いよくカウンターテーブルに伏せた。……僅かに見える耳が真っ赤になっている事から、その感情を大体察する事ができた。

 

 

「……おい、本当にどうした……?」

 

「…………今の俺の顔を、見られたくないんです……そっとしておいてください……」

 

「…………はぁ?」

 

 

 困惑した様子の和哉君は、僕達の方へ振り向く。

 

 

「……俺が寝ている間に、何があったんですか?」

 

「……いろいろあったんですよ」

 

「うん。いろいろありました」

 

「いろいろありましたよー」

 

「…………はぁ……?」

 

 

 首を傾げる和哉君と、未だに顔を伏せたままでいる赤井さんを見て、微笑ましく思う。

 

 

(きっと和哉君にとって――赤井さんはとっくに、線引きの内側に入っている存在なのでしょう)

 

 

 本人が自覚しているかどうかは分からないが、和哉君は間違いなく、赤井さんの事を本当の意味で信頼している。……今まで両親以外の人間を線引きの内側に入れる事が無かった、かつての人見知りの子供が。

 

 

「……赤井さん……いえ、赤井君」

 

「…………はい、何でしょう?」

 

 

 次に顔を上げた時には、先ほどまでの無表情に戻っていた。……さすがはFBIのエース。ポーカーフェイスはお手のもの、ですか。

 

 

「――君に、和哉君の事を任せてもいいでしょうか?」

 

「!?」

 

「和哉君の両親以外で、線引きの内側に迎え入れられた存在は、君が初めてです。――君になら、この子を任せられる」

 

「――――」

 

「……お願いできますか?」

 

 

 

 

 

 

「――はい。お任せを」

 

 

 ……彼はまるで西洋の騎士のように、片手を胸に当てて、恭しく一礼して見せる。……その表情もまた使命を与えられた騎士の如く希望に満ち、今までに見たどの人間よりも、真剣なものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんか、まるで娘を嫁にやる瞬間みたいですよね、これ」

 

「滅多な事言わないでくださいこいつが本気にしたらどうしてくれるんですか!?」

 

「え、あ、ハイ、すみません……!?」

 

 

 ……冠城君と和哉君の言葉を聞き、前言を撤回したくなったのは……ここだけの話だ。

 

 

 

 

 

 






・実は無意識に忠犬を超信頼していた飼い主

 例の殺人事件の取調を受けた後に叔父とその相棒を見つけた。行き付けのお店に誘われ、赤井との約束と天秤に掛けて悩んだが、叔父とはまだ一度も酒を飲んだ事が無い事を思い出し、そちらを優先した。ごめんな、秀一。また今度2人で行こうぜ※無言のやり取り。

 花の里にて、自分と杉下の関係を知った後の女将の言葉に、苦笑い。まぁ、驚くよなぁ……俺の見た目はお袋似で、お袋の見た目は叔父と全然似てないし……( ̄▽ ̄;)
 叔父にお酌をしてあげた。なに年寄り臭い事言ってんだ。あんたはまだまだいけるって!……ん、秀一?俺の分もお酌してくれるのか?ありがとな。じゃあお前の分も……え?遠慮します?……しょうがねぇな……※無言の(ry

 叔父のマル秘エピソードの数々を暴露していたが、途中で赤井の話題に。右京さんがどこでその情報を手入れたのかが気になる。……おっと、グラス空になったな。入れてやるよ。礼はいらねぇぞ。……お、それ俺が気になってたやつ!ありがとう!じゃあ俺はお前が気になってたこれをあげよう。……いやいや遠慮すんな。食え食え!※無言(ry
 杉下に自身の無意識の行動について指摘され、頭を抱える。……どこかにちょうどいい穴が無いかなぁ……(現実逃避)しかし、めげずに話題を変えて叔父をターゲットにした。少しでもいいから反省しようぜ、叔父さん(上目遣い)

 珍しく飲み会中に熟睡。普段なら強すぎる警戒心により、眠ってしまう事はない。
 FBIになってからしばらくして、睡眠中に完全に信頼している人物以外に触れられそうになると即座に察知してそれを防ぐ、という離れ業を身に付けた。

 よって無意識に杉下の動きを封じ、我に返ってパニック状態に陥る。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめん叔父さんごめん……(´;ω;`)
 なお、オリ主が赤井に両親と同等の信頼を寄せている事に気づくのは、まだ先の事である。

 は?娘を嫁にやる瞬間!?駄犬が本気にするかもしれないので止めてください!!――てめぇも馬鹿な事考えんじゃねぇぞ赤井秀一ぃぃ……!!


・オリ主の心からの信頼に気づいていなかった忠犬

 取調後、オリ主の叔父に誘われて行き付けの店に行く事に。大丈夫ですよ、あなたのお好きなように。また今度2人だけで行きましょう※無言(ry

 花の里にて。オリ主と叔父の交流を邪魔しないように、話を振られない限りは黙っていた。楽しそうにしている和哉さんの邪魔をするなんてとんでもない!
 それはそれとして、お酌しますよ。いえ、礼には及びません。……え、俺もですか?いやいや。師匠兼飼い主にそんな事をやらせるわけにはいかないので、遠慮させてください※無言(ry

 楽しそうにしているオリ主の様子を酒の肴にして飲み食いしていたら、自分の話題になった。
 別に大した事ではない。俺が有名になったのは和哉さんのおかげであって……あぁ、ありがとうございます。では先ほどから気にしていたようなので、これをどうぞ。……あ、それは俺が気になっていたもの!?しかし申し訳な……って、遠慮するな?……すみません。いただきます(´・ω・`)※無言(ry

 オリ主の話題となったので、ここぞとばかりにオリ主自慢。俺の師匠兼飼い主にして唯一無二は本当に凄いんだ!(無表情マシンガントーク)しかし、オリ主に止められて不完全燃焼。語り足りない……!!
 実は赤井も無言のやり取りについては無意識だった。自分で自重しろと俺に言っておきながら自分もまた自重していない事に気づき、恥ずかしがって落ち込む和哉さん……あぁ、かわいいですね。よしよし。(なでなで)

 眠ってしまったオリ主に、愕然。俺の前ではこんな無防備な姿を見せた事なんて無かったのに!……しかし、それはあくまでも今までは、の話。
 オリ主の両親と叔父に嫉妬していたら、まさかの事態が起こり、唖然。その後、オリ主の今までに見た事が無いほどの取り乱した姿を見て、我に返った。

 それから杉下に指摘され、自分がオリ主の引いた線の内側に入っていた事に気づき、驚愕歓喜困惑羞恥といった感情がごちゃ混ぜになり、赤面。その顔をオリ主に見られないよう、咄嗟に顔を伏せて隠した。――その信頼が、尊い……!!
 杉下にオリ主の事を頼まれ、使命を受けた騎士のような振る舞いを見せた。だがしかし、内心超絶フィーバー。まさかの身内公認!![[rb:I did it > やったぜ]]!!Yes!!

 娘を嫁にやる瞬間……!?なるほどつまり叔父上様、甥っ子さんを俺にくださ――あ、すみませんすみません調子に乗ってごめんなさい和哉さん……!!ガクガク(((;゚Д゚)))ブルブル


・甥っ子の事を忠犬に任せた叔父上

 甥っ子とその部下を誘い、花の里へ。実は幸子さんに”似てない!”と言われて地味にショックを受けていた。笑わないでください冠城君。しかし、オリ主にお酌をされて機嫌を直す。これ、夢だったんですよ(* ´ ▽ ` *)
 オリ主からいろいろと暴露されて、冷や汗を流す。待ってください和哉君。そんなにいろいろ話さないでください!……と、とりあえず話題を変えましょう!ちょうど赤井さんがいますし。

 と、話題を変えたらマシンガントークが返ってきた。さすがの杉下も困惑。……我が甥はかの有名なスナイパーに相当尊敬されているらしい……
 いや、しかし。それだけ和哉君が素晴らしい人物であるという事だろう。叔父としては鼻が高い。大切な甥っ子を尊敬してくれている事が嬉しい。先ほどから無言のやり取りができる程に仲が良いようだし……おや?和哉君、どうかしたんですか?
 オリ主に怒られて、少しだけ反省。……しかし、この効力が続くのはオリ主が日本にいる間だけ。アメリカに帰ったらまたいつも通りになるでしょう。

 赤井が誤解していたので、それを解こうとして……予想以上の事態が起こり、驚愕。……和哉君には悪い事をしてしまいました……(´・ω・`)……その後。気を取り直して自身の推理を話し、誤解を解いた。分かりやすい反応を示した赤井と困惑するオリ主を見て、ほっこり。
 赤井なら大丈夫だろう、と考えてオリ主の事を任せた。しかし、冠城とオリ主の言葉に不安を感じた。

 任せても、大丈夫――ですよねぇ……?







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IF② 花の里にて おまけ


・後日談的なおまけ。

・いろいろ捏造あり。

・オリ主視点。




 

「そういえば。聞きそびれていましたが……昨日一緒に飲みに行ったという荒垣さんの叔父って、どんな人なんですか?」

 

 

 会議室にて。俺は秀一、降谷、風見と共に書類仕事を片付けていた。周囲には他にも数名の公安の仲間達がいる。

 

 そんな時。息抜きのためか、降谷が俺にそう聞いてきた。

 

 

「……そうか。まだ話してなかったか。……まず、俺の叔父は警視庁に所属していて――」

 

「えっ!?」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!……日本警察に、荒垣さんの血縁者が!?」

 

「あぁ……まぁ、叔父は身内については公表していないし、俺もそうだから……他には言い触らすなよ?」

 

「それはもちろん」

 

「分かっていますよ。……お前達も、今から聞く話を漏洩しないようにしろ。いいな?」

 

 

 風見と降谷は神妙な顔付きで頷いた。それから降谷が他の部下達にそう言って、部下達もそれに対して頷き返す。

 

 

「……では、続きを聞かせてください。是非!」

 

「お、おう。……で、俺の叔父はお袋の弟でな。俺が子供の頃に何度か遊んでもらったり、アメリカに行った後もたまに会って話をしたりして……それなりに仲は良好だ」

 

「へぇ……」

 

「ただ、なぁ……どうも周りからは腫れ物扱いされてるらしい。確かにあの人はかなりの変人だが……普通の人間よりも数倍は頭が良くて推理力も抜群。正義感も強くて、紳士的。……決して悪い人ではないんだ」

 

「……和哉さんの言う通り、変わってはいるが良い人だったぞ。彼は、甥っ子である和哉さんの事をとても可愛がっていた。……昨日も別れ際に、”これからも甥っ子の事をよろしくお願いします”と丁寧に頼まれたからな」

 

「ほう……ちなみに、その方の名前や所属、階級などは?」

 

 

 

 

 

 

「――杉下右京警部。特命係という窓際部署の係長だとか」

 

 

 

 

 

 

 ――瞬間。ある者はお茶を溢して”熱い!”と悲鳴を上げ、ある者は足を縺れさせて転んで重要書類をぶちまけ、またある者はパソコンのキーボードを押し間違えて全ての文章を削除してしまい、叫ぶ。

 

 風見は飲んでいたコーヒーを噴き出し、降谷もコーヒーを喉に詰まらせて盛大に咳き込んだ。その拍子に、オフィスデスクの上に積み上げられていた数々の書類が雪崩を起こして床に散らばる。

 

 

 ――大 惨 事。

 

 

 

 

 

 

「――あの変人の甥っ子!?はぁ!?」

 

「似てない似てない全然似てない!!」

 

「あれのどこに荒垣さん要素が!?」

 

「むしろ荒垣さんのどこに変人要素が!?」

 

「荒垣さんに変人要素が受け継がれなくて良かった!本っ当に良かった!!」

 

「というか本当に血の繋がりがあるのか!?変人の杉下右京と、頼れる男前上司である我らが荒垣和哉との間に!!」

 

「…………俺は叔父上の人望の無さに嘆いたらいいのか?それとも自分の人望の厚さに喜べばいいのか?」

 

「とりあえず全員ぶん殴って正気に戻せばいいと思います。いや、俺がぶん殴りましょう」

 

「待て待て待て秀一Stay(待て)!!」

 

 

 

 

 

 

 その後。俺への質問責めやら、大惨事の片付けやらで、全く仕事にならなかったのは――言うまでもない。

 

 

 

 

 

 



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