BanG Dream!〜私が送る音楽ライフはいろいろ楽しすぎる!!〜 (レイ1020)
しおりを挟む

第1章 花女での出会い
プロローグ 自己紹介は楽しすぎる!!


今回からこちらのサイトさんで投稿させてもらうことになりました!
まだまだ投稿歴が浅いため不備等もあるため指摘していただけるとありがたいです!


はーい!どうも皆さんこんにちは!朝の人は、おはよう!夜の人は、こんばんわ!早速だけど自己紹介するね!

 

 

私は池田美久。趣味は楽器弾くことと料理!最近はこの2つにめちゃくちゃハマってるんだ!オススメだからみんなもやってみてね!苦手なのは早起き。朝だけは弱いんだよね......。で、今は中学生だけどもうすぐ高校生になるんだ!もう楽しみでしょうが無くて最近はずっと寝れないんだー!通うのは今私がいる横浜から少し離れた東京にある”花咲川女子学園”。制服が可愛くて何度も何度も着ちゃったんだよね!

 

 

それでなんで離れた学校に通うことになったかと言うとね、お父さんの仕事の都合でそっちに行くことになったからなんだ。うちはお父さん、お母さん、お兄ちゃん、美樹と私の5人家族で、さすがにお父さんだけで東京に行かすのは可哀想というお母さんの意見もあって結果としてみんなと一緒に東京に行くことにしたの!あ、ちなみにさっきの”美樹”って言うのは私の一つしたの妹ね。お兄ちゃんは一つ上。

 

 

 

あ、そういえば言い忘れてたけど、私たちが引越す所って実は前住んでたところなんだ。多分10年以上前だったと思うけどこの横浜に来る前まで私たちは東京に住んでて小学校に上がる前に横浜に引っ越したの。その頃仲よかった友達とかと別れるのは悲しかったけどお父さんの仕事ならしょうがないと思って割り切れたんだよね。当時の私をめちゃくちゃ褒めてやりたい!話逸らしちゃったけどつまりあそこはわたしの思い出もある場所だから余計に行くのが楽しみなんだ!最初に楽しみすぎて寝れなかったって話したけど理解できたかな?そういえばこっちのわたしの友達も何人か同じ学校に来るって言ってたっけ?それはそれで嬉しいけどね!知り合いが多いに越したことはないから!

 

 

そういえばあっちにいた頃、よく遊んでた友達がいたんだけど名前何だったっけな?いわゆる幼馴染って感じかな?2人いたんだけど一人は歌がすごく上手い子でもう一人は面倒見がいい子だったな〜。まあ、あっちに行ったらそのうち会えるでしょ!

 

 

次は最初に言った趣味について話そうかな。まずは楽器を弾いてるとこから。私がやってるのはギター、ドラム、ベース、キーボード。どれも人並みにはできるよ。まあ趣味で始めたようなもんだしそこまで高みは目指してないけどね。楽しければなんでもいいし、なんか楽器弾いてるとめちゃくちゃ楽しくなってついつい時間忘れて没頭しちゃうんだよね。ちなみにバンドはやってないよ。バンドってなんか堅苦しくて周りに合わせなきゃいけないイメージだからやらないんだよね。

 

 

料理は最近趣味になったかな?よく作るのはクッキー、ドーナツ、バウンドケーキかな?お菓子作ることが多いけど、普通に料理もできるよ!一番好きなのは酢豚かな?機会があれば今度見せてあげるね!

 

 

 

これはどうでも良いかもだけど”花女”......あ、花咲川女子学園の略ね。花女の入試試験ってそこまで難しく無かったんだよね。別に嫌味じゃないよ。勉強が得意って自分で言うと自惚れって思われそうだから言わないけど、成績は結構良かったんだよね。それと花女に行きたいって気持ちが強かった事もあってほとんどつまずく事もないまま試験を終われたの。すっごく嬉しかったよ!一番手応えがあったからね!

 

 

 

そんなわけでそろそろ、自己紹介を終ろうと思います!ほとんど趣味とか学校の話になっちゃったけど聞いてくれてありがとね!これからいよいよ東京に引っ越すよ!ここから私の新しい学校生活が始まるの!みんな楽しみにしてて!

 

 

 

それでは......本編、スタート!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戻ってきた場所は面白すぎる!!

本編スタートです!


一応ここには前回のあらすじを書きたいと思います。今回は自己紹介だったので無しです。


次回からそうします!


よろしくお願いします!




 

 

母「美久〜?もう少しで着くから起きなさい」

 

 

 

美久「んにゃ?」

 

 

 

車の中で気持ちよく寝てる中お母さんに起こされた。そのあと、お兄ちゃんと美樹も起こした。

 

 

 

父「お前達、ここら辺覚えてるか?昔よく俺が連れてきて散歩してたぞ」

 

 

 

車を運転しながらお父さんが言った。窓の外を見てみると、東京に入ったことを意識させるみたいにたくさんの建物とかビルがたくさん並んでいた。でもお父さんの言う通り、少し忘れかけてるけど何個かの建物は覚えてた。

 

 

 

蓮「俺は微妙だな」

 

 

 

美樹「あたしも〜」

 

 

 

美久「私はちょっとなら覚えてる」

 

 

 

父「まあ無理もないな。10年以上も前の話だからな」

 

 

 

私たち家族は10年以上前までこの地域に住んでたんだよね。でもお父さんの仕事で引っ越すことになっちゃって一家全員で横浜に行くことになったんだ。そんでもって今回またお父さんの仕事でこっちに戻ってくることになったから戻ってきたってわけ。

 

 

 

 

母「あ、見えてきたわね。ほら見て、あの家よ」

 

 

 

お母さんが指さした方を見るとそこには一つの一軒家があった。どうやらあそこが私たちの住むところみたい。見た感じ綺麗だしよかった!

 

 

 

父「よし!じゃあ、10年以上ほったらかしだったけど無事に戻ってこれた事も踏まえてまずはみんなでこの家に挨拶するか!」

 

 

 

母「あら、いいわね」

 

 

 

美久「そうだね!やっぱり何事も挨拶だからね!」

 

 

 

蓮「なんか恥ずかしくないか?」

 

 

 

美樹「まあでもこうなっちゃったらやるしかないか......」

 

 

 

そんなこんなで家の前に一列で立った私たち家族は全員で挨拶した!

 

 

 

 

「「「「「ただいま!そしてこれからよろしく!」」」」」

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!とりあえず部屋はこんなもんでよし!」

 

 

 

部屋に荷物を入れて整理した私は改めて部屋を見渡してみた。まず目に入るのはスカイブルーのギター。このギターは中学1年生の時誕生日プレゼントでお父さんが買ってくれたんだ。その頃から楽器に興味持ってたからね!名前はスイレン。私、楽器にはお世話になるから名前つけるようにしてるんだ!一番スイレンが付き合い長いかな?

 

 

その隣には橙色のボディをしてるベースのマリーが置いてあるんだ。このマリーはマリーゴールドから取ったんだ。その頃の私は花の名前をつけてたんだよね。理由は単に花が好きなだけだから。このベースは自分でお小遣いを貯めて買ったよ!初めて自分のお金で買った事もあって手入れとかもすごく念入りにやってるよ!

 

 

ベッドの隣にキーボードのサクラが置いてある。このサクラ実はお母さんのお下がりなんだ。お母さん、実は昔バンドやっててその時担当してたのがキーボードだったんだって。バンドを辞めた後、そのままサクラを放置してたみたいだったんだけど、私が欲しいって言ったら喜んでくれた。所々古いところもあるけどそれでも全然いい音でるし、それになんかお母さんとも一緒に演奏できてる気がしていいんだよね!

 

 

本当はドラムのサザンカも部屋に入れたかったんだけど大きいから無理だったんだよね。だからしょうがないからお父さんの部屋に置かせてもらったの。普通ダメって言われそうだけどお父さんも音楽が大好きだからたまに叩くのを条件としてオーケーしてくれた。このサザンカがこの中でいちばんの新入り!中学3年生の時に自分のお小遣いで買ったから付き合いはまだ1年もないんだ。でもこれからももっと触れ合っていけたらいいな!

 

 

後は私のデスクとベッドとかがあるくらいかな?とりあえずこれで部屋整理はおしまい!

 

 

 

美久「さて、終わった事だし2人の部屋でもみに行ってみようかな!」

 

 

 

暇になった私は部屋を出てお兄ちゃんと美樹の部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

美樹「ここら辺って昔は何も無かったよね?」

 

 

 

蓮「ああ、うろ覚えだがここら辺は更地だったはずだ。10年も経てばそれなりに変わるもんだな」

 

 

 

美久「じゃあさじゃあさ!他のとこもいろいろ変わってるかもよ!早く行ってみよ!」

 

 

 

部屋整理を終えた後、街を探検してきなさいとお母さんのお達しもあったから、3兄妹で街の商店街に来ていた。昔の風景と今の風景で結構違いが沢山あったから、正直戻ってきたって感覚が無かったんだよね。2人も同じみたいだし。

 

 

美久「あ!山吹ベーカリー!懐かし〜!昔とあんまり変わってないね〜!」

 

 

見つけたのは山吹ベーカリー。その名の通りパン屋さんなんだ。昔からあって、当時はよくここのパンを買ってみんなで食べてたな〜。

 

 

美樹「本当だー!確かに山吹ベーカリーだ!ああ...見てたらなんかお腹が...」

 

 

蓮「確かに腹減ってきたが、時間が時間だしな...今日はやめとこう。今食ったら晩飯が食えなくなる」

 

 

美久&美樹「そ、そんな〜〜」

 

 

今の時間は午後5時。確かに今ここのパンを食べちゃったら晩ご飯が食べられなくなっちゃう。晩ご飯はと言うか出されたものは必ず完食すると言うのがうちの掟なんだ。残したら完食するまで席を立てないと言う地獄が待ってる。それが分かってるからかも知れないけど私はともかく美樹も潔くお兄ちゃんの言う事を聞いた。そのままそこを後にした。また今度食べに来ようね!と言う約束をしながらね!

 

 

 

ーーView Change ?ーー

 

 

?「ふ〜、お買い物終了っと。さて、帰りますか」

 

 

私はお母さんからお買い物を頼まれて今買い物中だったんだけど、今それが終わった。もうそろそろ暗くなってくる頃だし早く帰ろうと思って急ぎ足で家に戻った。

 

 

 

 

 

?「さて、やっと家に...ん?」

 

 

家に戻ってきたはいいんだけどなんだか私の家、”山吹ベーカリー”の前で立ち止まってる人達がいるんだけど?なんだろう?お客さんなら入ってくれてもいいのに?

 

 

?「あ、帰っちゃった...なんだったんだろう?」

 

 

結局その人達は何もしないまま帰ってった。見たところ私と同じくらいの歳の子達だね。ここら辺の子かな?でもあんな子達いたかな?

 

 

?「ん〜?でもなんかどこかであった気もするような...?」

 

 

何かその子達に妙な懐かしさを覚えながらも結局答えが出ないまま私は家の中に入りうやむやにした。覚えてないくらいなら大した事じゃないでしょ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この回の登場人物の紹介!


池田美久   高校1年生 誕生日7月3日 血液型A型

何事にも手を抜かず全力で取り組む超元気な少女。池田家の長女で上に蓮が下に美樹がいる。バンドには興味を持たないものの楽器に至っては全般天才的に弾け、たまに蓮と美樹と一緒にセッションしている。ちなみに3人でバンドを組みたいとは思ってないらしい。春から花咲川女子学園に入学する。元気だが抜けているところもある為、度々蓮に世話を焼かせてる。その性格の割には料理が趣味でよくクラスメイトに差し入れでお菓子を作っていた。その人懐っこい振る舞いもあって友達も多い。将来は何か音楽に関係のある仕事につきたいと思っている(今は)。



池田美樹   中学3年生 誕生日2月22日 血液型A型

何事もそつなくこなし、常に周りを気にかける優しい性格をした少女。蓮と美久の妹。歌を歌うことが好きでたまに蓮と美久と一緒にセッションをしている。歌唱力に関しては相当なもので以前、何処かから聞きつけたのか知らないがスカウトの話が来ていたのだが興味がありませんと言って断った。春から羽丘女子学園中等部に転入することになってる。家族以外に対しては毅然としていて誰に対しても平等に優しく接しているが、家族に対しては多少態度を緩めるが、それでもしっかりした態度は緩めない。姉の美久に対しては特によく注意をしているがその反面、美久のことを深く慕っている。



池田蓮    高校2年生 誕生日3月12日 血液型A型

美久とは対照的に人と戯れるのが苦手で、どちらかと言うと一人が好きな少年。美久と美樹の兄。漫画を読むのが好きで漫画喫茶にもよく足を運んでいる。親と妹達の影響もあって少し前からベースを始めた。時間が空いた時に美久と美樹と一緒にセッションをしている。春から青嵐学園に転入することになっている。人付き合いが苦手だがその分、勉強ができる。美久と美樹に対しては平等に優しくしてるが、時々兄らしく注意したり悩みを聞いたりしている。



池田剛    誕生日4月26日 血液型AB型 

普段はおちゃらけてることが多いが、いざと言うときは頼りになる男性。蓮と美久と美樹の父親。音楽鑑賞が趣味で昔はそのために全国を飛び回ってたらしい。昔、妻である美優を含めて5人でバンドを組んでいてドラムをしていた。引退後は美優と結婚し、音楽制作関係の仕事に就いた。自分の部屋に置いてある美久のドラム、サザンカを時々叩いて昔を懐かしんでいる。基本的に家族に対しては甘い。特に子供に対しては親バカな一面を度々出している。それを出すたびに蓮や美樹からは「きもい」と蔑まれている。美久は受け入れてる。



池田美優   誕生日12月23日 血液型A型

年齢には不相応なほどの美貌を持ち、子供のことを優先的に考えて行動している女性。蓮と美久と美樹の母親。昔は剛とともにバンドを結成していた。担当楽器はキーボード。引退して結婚して子供を授かった後はもう弾かないと思って捨てようとしたキーボードだったがそれは今、美久がサクラとして大事に使っている。誰に対しても優しいが、怒るとすごく怖い。家族は美優が機嫌が悪いときは怒らせないよう常に配慮しながら行動している。


?はまた次の機会ということで!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

花女の制服は可愛すぎる!!

前回のあらすじ



約10年ぶりに東京に戻ってきた池田家。10年経った後の街並みを見て驚きを隠せない美久達。そんな時、山吹ベーカリーをずっと見ている美久達3兄妹を見つめる謎の少女がいた事に美久達は気づかなかった...。


 

 

ーーView Change 美久ーー

 

 

山吹ベーカリーのパンの欲求になんとか打ち勝った後、私たちは商店街のいろんなとこをまわった。北沢精肉店、羽沢珈琲店、公園、市役所、このほかにも行ったけど長くなりそうだから省くね。

 

大体商店街を一周したところでキリがいいとお兄ちゃんが言ったからそのまま家に帰った。時間も18時を過ぎてたしちょうどよかったね。家に帰ってからも私たちはテンション高めでお父さんとお母さんに変わってたところと変わってなかったところの話を沢山した。喋り過ぎて晩ご飯のことも忘れちゃってたとこは反省しなくちゃね!

 

 

 

 

 

晩ご飯の後、私たちはそれぞれの部屋に戻って自由に過ごした。お兄ちゃんは多分漫画読んでる。美樹は3年生だから勉強してるかな?私は何するかっていうと......楽器を弾くの!いつものことをしようと思って、準備しようと部屋の余計なものはさっさと片付けた。

 

 

美久「さて、今日は日曜だからランダムで決める日かな。じゃ、ど〜れ〜にし〜よ〜か〜な!(ビシッ)」

 

 

決まったのはギターのスイレンだった。

 

 

美久「今日はスイレンか、昨日はマリーだったから被らなくてよかった!」

 

 

私って曜日によって演奏する楽器変えてるんだ。月曜日はサザンカ(ドラム)、火曜日はスイレン(ギター)、水曜日はサクラ(キーボード)、木曜日はマリー(ベース)、金曜日から日曜日はその日の気分で決めてる。今日みたいに当てずっぽうで決めてる時もあれば気分で決めてる時もある。その方が飽きなくて楽しいでしょ!

 

 

美久「じゃ、今日も楽しんでいこー!」

 

 

いつもの様にギターを構えて自由気ままに弾く!これが私のいちばんの楽しみ!この音が私と一体化している感じが堪らなく好き!もうこんなのやめられないよ〜!

 

 

美久「は〜!サイッコー!!!」

 

 

この日も夜遅くまで弾いてた。そんでいつもの様に「うるさい」と美樹に注意され、お母さんに「早く寝なさい」と言われた。もはやお馴染みになっちゃったな、てへへ〜〜。それでまた朝起きて楽器とか料理とかやりたい事を沢山やって満足したらご飯食べて寝る。これが私の日常!めちゃくちゃ楽しい!!

 

 

そんな日々を続けて2日後、いよいよ花咲川女子学園に入学する日が来た!楽しみ!

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

美久「ん〜〜〜よく寝た〜〜っと」

 

 

いつもよりも早くに起きることが出来た。私にしては珍しいかもだけど、それは当然!なぜならーーー

 

 

美久「今日からこの制服着るんだよね〜!ほんっとサイッコー!!」

 

 

そう!今日は入学式!花咲川女子学園の入学式の日なんだ!そしてこの可愛い制服を着て通えるんだから尚更なんだ。私の新たな学校ライフの始まり、そんな胸の高まりもあって今日は気合入ってたみたいでちゃんと起きることが出来た。自分で自分を褒めたい!

 

 

美樹「(ガチャ)おねーちゃん?そろそろ起きて...え?もう起きてる?」

 

 

美久「あ、美樹!おはよ!うん、今日は入学式だからね!寝坊なんてしないよ!」

 

 

美樹「それならいいんだけど...いつもそういう風に起きてもらえるとこっちも助かるんだけどね〜」

 

 

私を起こしに来た美樹と軽く挨拶した後、着替えるから先行っててと美樹を部屋から出し、真新しい制服に袖を通した。制服は黄土色を基調としていて赤いリボンが可愛い。制服自体もワンピースみたいな作りだから余計に可愛い!これを目的としてここを受けたと言っても過言じゃないんだよね!

 

 

美久「よし!制服よし、髪よし、持ち物よし、バッチリ!」

 

 

準備完了したため、持ち物が入った鞄を持って下に降りた。下には既に家族全員が席に着いて朝ご飯を食べてた。私も早く食べよって思ってすぐに鞄を置いて席に着いた。

 

 

父「おお、美久!すっごく似合ってるな、その制服!あとで写真撮らせてくれ!」

 

 

母「もうタケちゃんたら...入学式の後でも撮れるでしょうに、ほんと子供の事になるといつに泣く真剣になるんだから」

 

 

美久「時間あるから大丈夫だよ。後で一緒に撮ろうね、お父さん」

 

 

父「おう!」

 

 

制服の感想を聞きながら朝ご飯を頬張った。

 

 

美久「そういえば、お兄ちゃんと美樹は何で着替えてないの?」

 

 

そう言って未だに寝巻きのままの2人の方を見た。何でだろう?

 

 

蓮「俺と美樹はまだ始まんないんだ。始業式は3日後だからまだ先だな」

 

 

美久「あれ?そうだっけ?」

 

 

美樹「ってか前、おねーちゃんに話したよね?忘れちゃったの?」

 

 

美久「ん〜?多分忘れちゃってた。ごめんね!」

 

 

美樹「全然反省してる様子がないんだけど...」

 

 

蓮「まーいつものことだしな...」

 

 

理由を確認した後、2人と時間までおしゃべりして時間潰してた。

 

 

時間になって、鞄を持って家を出た後、家を出る時にみんなに見送られながら私は入学式に向かった。

 

 

さて、いよいよ私の高校生活のスタート!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はいよいよ美久が花女に入学します。そろそろキャラとも絡ませたいと思います。
それではお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

市ヶ谷さんは謎すぎる!!

前回のあらすじ

戻ってきた街を十分に探検した美久達。そして、いよいよ美久の高校入学の日が来る。これからの美久達の学園生活にどんな出会いがあるのか?


 

美久「はぁぁ〜〜、やっぱり大きいね花女は!」

 

 

家から向かう事約10分。私は目的地の花咲川女子学園に着いた。ここに来るのは合格発表の時以来だから1ヶ月ぶりくらいかな。

 

 

美久「今日からここに通うんだよね〜。ほんとっワクワクしてきちゃった!」

 

 

周りの目なんか気にしないでめちゃくちゃはしゃいじゃってた。そのときは恥ずかしさよりも嬉しさの方が上回ってたからね。反省反省っと!

 

校門をくぐって私は入学式が行われる体育館に向かった。体育館の前にクラス分けの表が張り出されていて、そのクラスに該当するところに移動するらしい。

 

 

美久「私の名前は...あった!Bクラス!」

 

 

私はBクラスだった。1年B組池田美久!なんかかっこいい!

 

 

美久「私の後ろは...市ヶ谷...ありさかな?」

 

 

ふと前後が気になって確認してみた。前後って言っても私は出席番号が一番だったから前の人いないんだよね。だから後ろの人だけ確認したところあった名前が市ヶ谷有咲だったって事。

 

 

美久「ま、とりあえずいっか。それよりも中に入ろ!早いとこ席着いた方が良さそうだし」

 

 

そのまま私はB組の先生がいる場所まで行き、椅子に座った。もう既に何人か座ってる人もいてみんなどこか緊張していた。入学式ならではの光景だよね。私は緊張と言うよりはワクワクしてるけどね。

 

10分後、入学式が始まったんだけど一つ疑問があるんだよね。何故か隣の席が空席なの。隣の席は確か市ヶ谷さんだったはずなんだけどいない。なんでだろ?体調でも崩したのかな?

 

 

教頭「次は新入生代表の言葉です。新入生代表の市ヶ谷さん!」

 

 

(シーン...)

 

 

教頭「ん?新入生代表!市ヶ谷有咲さん!」

 

 

(シーーン...)

 

 

何度呼んでも市ヶ谷さんは立たない。そりゃそうだ。いないんだから。

 

 

美久「(でも教頭先生のあの反応...もしかしていないの知らなかったのかな?)」

 

 

結局その後、市ヶ谷さんが来なかったのもあって新入生代表の言葉は省かれた。それから先はなんの問題も無く入学式は進んだ。

 

 

 

入学式の後は私たちの教室に行ってこれからやる事を聞かされた。と言っても自己紹介だけどね。だから私はいつもの感じで自己紹介したよ(私の自己紹介が見たい人は最初のプロローグを見てね!)!

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

美久「ん〜それにしても結局市ヶ谷さん来なかったなー。何でだろ〜?」

 

 

入学式を無事に終えて家に帰り、晩ご飯とお風呂を済ませた後、部屋でスイレン(ギター)を弾きながらそんな事を考えていた。だって花女だよ?入学式だよ?そんな大事な行事をほっぽり出すなんて...何を考えてるんだろ?

 

 

美久「ま、考えててもしょうがないか。今度会った時にでも聞けばいい話だし」

 

 

考える事を放棄した私は、そのまま弾く事に没頭した。今日もいい音だせた!

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

花女に通い始めて1週間経った。あれから私は毎日が楽しくてしょうがなくてたまらなかった。新しい環境に新しい仲間。そんなのに囲まれてたら楽しいよ!何人かの子とはもう友達になれたし学校にも慣れてきた。早い気もするけど私も花女に染まったってことかな!でも一つだけ気がかりなことがあるんだ...。

 

 

美久「市ヶ谷さん今日も来なかったな〜」

 

 

そう。私の後ろの席の市ヶ谷さんが未だに学校に来てないんだ。先生に話を聞いてもわからないの一点ばりだし。友達の子に聞いても知らないと返されるだけだった。

 

でも何個かわかったことがある。それはーー

 

 

友人A「市ヶ谷さんってあんまり学校来てないらしいよ?」

 

 

友人B「でも頭はすっごくいいんだって!」

 

 

この2つだ。わかったことは市ヶ谷さんは何故か学校にあまり来ないけど頭はいいってことぐらい。屋上でスイレン(ギター)を弾きながら情報を整理していた。なんで屋上にいるかって言うと、ここが一番楽器弾くのに学校に迷惑かけないと思ったから。言ってなかったけど花女でも楽器は弾くよ!なんか違った場所で弾くのもいいなって思ったからね!もちろん学校の許可は取ってあるから問題なし!

 

 

美久「でもな〜、いくら情報集めても本人が来ないんじゃ話できないよね〜...」

 

 

結局考えもまとまらないまま、昼休み終わりの時間が近づいてきた。準備もあるから私はいつも余裕もって教室に戻ってるんだ。

 

 

美久「そろそろ戻ろう......ん?」

 

 

スイレン(ギター)を片付けようとしたら突然屋上の扉が開いた。そこから出てきたのは猫耳のような形をした髪型をしている女の子だった。屋上に来たのは初めてだったのか、あたりを見回して目をキラキラ輝かせていた。

 

 

猫耳の女の子「わー!ここってすっごく気持ちいい!!景色もいいな〜...あれ?」

 

 

どうやらあっちも私に気づいたらしい。ここは挨拶しないとね。

 

 

美久「ほんとそうだよね。ここは風通しもいいからすっごく過ごしやすいから私もここ気に入ってるんだ」

 

 

猫耳の女の子「それわかる!私もここ初めてきたけどすぐに気に入っちゃったもん!」

 

 

美久「それなら私たち、同志だね!」

 

 

猫耳の女の子「うん!同志!」

 

 

何故か握手してるけど、楽しいからいいや!

 

 

美久「ねえ、名前なんていうの?私は池田美久。B組にはいなかったよね?」

 

 

猫耳の女の子「うん!私A組だからね!私、戸山香澄。よろしくね!みっく!」

 

 

これが私と香澄との初めての出会いだった。ここから私はいろんな出会いをするんだけど、それはまだ先の話。

 

 

 

 

 




とうとう香澄と出会いました今後の展開に期待です。

次回はもう少しポピパのメンバーと絡ませられたらいいなって思ってます。
では次回でお会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

市ヶ谷さんが心配すぎる!!

前回のあらすじ

無事に入学式を終えて高校生活を満喫していた美久。だが未だにクラスメイトである市ヶ谷有咲には会えずじまい。そんな時美久は戸山香澄に出会った。


美久「へ〜、香澄も外部生だったんだ〜。なんか仲間って感じでいいね!」

 

 

香澄「うん。私この花女に通うの憧れてたから勉強がんばったんだ〜!」

 

 

美久「そっか。入れてよかったね」

 

 

香澄「うん!よかった!」

 

 

教室に向かう途中、香澄と楽しく話していた。親睦を深めるにはこれが一番!

 

 

香澄「ふふ。でも昨日はほんとに楽しかったな〜」

 

 

美久「...?何か楽しいことでもあったの?」

 

 

香澄「ああ、うん!昨日ねSPACEっていうライブハウスでね初めて生のライブ見たの!そのライブがほんとにキラキラドキドキしててすごかったんだー!」

 

 

美久「へ〜ライブハウスかー。最近行ってないな〜。ねえ?そこには一人で行ったの?」

 

 

ライブハウスはどこにでもある所じゃないから最近は行く回数減ってたんだよね。今度そのライブハウス行ってみよ。

 

 

香澄「ううん。有咲と一緒に行ったの。って言っても本当は私、ギターが弾ける場所がライブハウスだって有咲から聞いて行っただけだから最初ライブハウスがどんなところか分かんなかったんだよね」

 

 

美久「あはは!まあわからなくもな...ん?有咲?」

 

 

なんだか聞き覚えのある名前のような気が...。

 

 

香澄「それでね!私そこで見つけたんだー!」

 

 

美久「何を?」

 

 

香澄「バンド!私がキラキラドキドキ出来ること!今までそれをずっと探してたんだけどやっと見つかったんだー!それでね私、有咲と一緒にバンドする事にしたんだー!」

 

 

美久「香澄がいいならそれでいいけどさ、ちょっと聞いていい?」

 

 

香澄「ん?何?」

 

 

美久「その”有咲”ってもしかして市ヶ谷さん?」

 

 

香澄「え?あ〜確か朝有咲の家に行った時、表札に市ヶ谷って書いてあった気がするけどー?」

 

 

美久「やっぱり!」

 

 

思った通り、香澄が言う”有咲”は私のクラスメイトの市ヶ谷有咲で間違い無いみたいだった。

 

 

香澄「あれ?みっくって有咲のこと知ってるの?」

 

 

美久「ううん。直接面識はないけどクラスメイトの中ではそれなりの有名人らしいからね。...いろんな意味で」

 

 

そう、面識がない状態なのにここまで市ヶ谷さんのことを知ってしまってるんだからすごいと思わない?

 

 

香澄「そっか、じゃあまだ有咲には会った事ないって事?」

 

 

美久「そう。だって本人が学校に来ないと会えないでしょ?」

 

 

香澄「そんな事ないよ!会えないなら直接会いに行けば良いんだから!」

 

 

美久「ん?」

 

 

香澄「今日放課後また有咲の家に行くんだー!一緒に行こう?有咲に会えるよ!」

 

 

美久「そっか、その手があったね!じゃあわかった!放課後私も付き合うよ!」

 

 

こうして私と香澄は市ヶ谷さんの家に突撃することになった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

香澄「あ〜り〜さ〜!来たよ!」

 

 

?「うわっ!またお前か!不法侵入だって言っただろ!」

 

 

放課後約束通り私と香澄は市ヶ谷さんの家に行った。行く途中香澄から聞いたけど、市ヶ谷さんの家は流星堂って言う骨董品とかそんな類のものを取り扱ってる店を経営してるらしいんだ。もしかすると店の関係で学校に来れないのかな?

 

 

香澄「ごめんごめん〜!でも今日は有咲に会いたいって子がいたから連れてきたんだ〜!」

 

 

?「はあ!?おま、何勝手に!!」

 

 

香澄「みっく!来ていいよ」

 

 

呼ばれた為、私は香澄の横に立った。そして簡単に自己紹介した。

 

 

美久「こんにちは市ヶ谷さん!私は池田美久。市ヶ谷さんと一緒のB組だよ。よろしく!」

 

 

有咲「よ......よろしく...お願いします...」

 

 

ぎこちないけどちゃんと挨拶返してくれた。それだけでも嬉しいな!

 

 

香澄「有咲〜固くならなくても平気だよー。みっくは有咲の事心配して来てくれたんだから」

 

 

有咲「う...うるっせーな...初対面の人だと緊張するんだよ...ってか心配って言ったけど何で?別にあんたと私、別に面識なんてないでしょ?」

 

 

美久「そりゃ心配するよ!と言うかクラスのみんな心配してるよ?市ヶ谷さんいつ来るのかな〜とか、もしかしたら病気なんじゃないか〜とかすっごく心配してたんだからね?」

 

 

有咲「あ〜その心配には及ばないよ。店の手伝いとかで行けなかっただけだから明日からはちゃんと行くよ」

 

 

美久&香澄「「ほんとに!?」」

 

 

有咲「お、お前ら2人して顔近付けてくんな!暑苦しい!」

 

 

市ヶ谷さんが苦しそうだったから私たちはゆっくり離れた。どうやらほんとに店の手伝いだったみたい。これなら問題ないね。

 

 

美久「さて、市ヶ谷さんの顔も見れた事だし私、帰るね」

 

 

香澄「ええ?もう帰っちゃうの?」

 

 

美久「うん。だって今回は市ヶ谷さんが何で休んでるのか知れれば十分だったし、聞き足らないことは明日学校で聞けばいいしね、っと言う事でじゃあね!」

 

 

目的を果たした私はそのまま帰路についた。なんかやる事やった後は気持ちいいな!今日はいい音出せるね!

 

 

有咲「なあ、あの人物好きだな...」

 

 

香澄「そうかな?みっくはすっごくいい人だよ!」

 

 

有咲「そう言うことを言ってるんじゃねえ!でもああ言う人は......何て言うか......嫌いじゃねーんだよな」

 

 

香澄「ん?有咲?最後なんて言ったの?」

 

 

有咲「う、うっせーな!何でもねえ!ってかお前もさっさと帰れ!」

 

 

香澄「え〜?じゃあその前に昨日のギター見せて!!」

 

 

有咲「か・え・れ〜〜〜〜!!!!」

 

 

後ろで何やら言い争っていたが関係ないと思ったからそのまま家に帰った。明日からまた楽しみだ!

 

 

 




有咲登場です!順調に絡みを入れることができてます。そろそろ他のメンバーとも絡ませたいな。

次回は少し話を進めたいと思います。

お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

昔の幼馴染が懐かし過ぎる!!

前回のあらすじ

有咲のことを心配していた美久に助け舟を出した香澄。それは有咲の家に直接行くというものだった。2人で有咲の家に赴き、欠席の理由を聞いた美久はほっとして家を後にするのだった。


 

 

 

結果として、市ヶ谷さんは次の日から学校に来るようになった。昨日言ってたことは嘘じゃなかったんだって正直嬉しかったね!そこからは徐々に距離を縮めていった。最初はまだぎこちなく接してたけど今ではそれなりにまともに会話が出来るくらいにまでなった。

 

もっともっと市ヶ谷さんと仲良くなれたいいな!

 

 

 

 

 

そんなある日、私が屋上でマリー(ベース)を弾いてたときにまた香澄が来た。でも今回は香澄だけじゃなかった。

 

 

香澄「みっく!来たよー!」

 

 

美久「あれ?香澄と市ヶ谷さん?それとえっと...?」

 

 

でも今回は香澄だけじゃなかった。私が確認できたのは香澄と市ヶ谷さん、それともう2人の女の子だった。

 

 

有咲「ほらみろ!やっぱ池田さん困ってるじゃねーか。だからやめとけって言ったんだ」

 

 

市ヶ谷さん私のこと考えてくれてたんだ〜。何だかすっごく嬉しい!

 

 

美久「大丈夫!香澄達の友達なら大歓迎だから!」

 

 

有咲「やっぱ池田さんって少し変わってんな...」

 

 

香澄「まあまあ、みっくの許しも出た事だしいいよね!」

 

 

美久「うん!じゃあ名前教えて!」

 

 

そう言って私は髪をポニーテールで縛ってる女の子の方を見た。でもなんかこの子見覚えがある気が...?

 

 

ポニーテールの女の子「うん、よろしく...と言うか久しぶり?かな。美久。覚えてる?私、沙綾だよ山吹沙綾。小さい頃よくうちにパン買いに来てたよね?」

 

 

美久「え?あ、そういえばあのさやちんに似てる気が...」

 

 

沙綾「そのさやちんだよ。こっちが覚えてるのにそっちが忘れてるだなんて何と言うか複雑だね」

 

 

そう言って苦笑いをこぼしたさやちん。どうやらほんとにあのさやちんらしい。

 

 

美久「ごめんね〜。まさかここで会えるっておもてなかったからさー。それにしてもほんとに久しぶりだね!いつ以来かな?」

 

 

沙綾「そうだね、小学校に上がる前だったから10年ぶりくらいだね」

 

 

香澄「ねえねえ、さーやとみっくってそんな前から知り合いだったの?」

 

 

美久「知り合いっていうか、私は山吹ベーカリーの常連客だったからさ、そのときに知り合ったんだよね」

 

 

沙綾「うん。いつも3人一緒になって来てたっけ。そういえば、2人は元気?」

 

 

美久「すっごく元気!成長したとこもあるけど変わってないとこもあるかな?」

 

 

沙綾「あはは、そっかよかった!」

 

 

ついつい懐かしくって話し込んじゃった。もう一人の子がいるのも忘れて。

 

 

有咲「あの〜お2人さん?いいところ悪いんだけど一旦やめてくれ。このままだと牛込さんが何も話さないで終わっちまう」

 

 

市ヶ谷さんに言われてようやく気づいた。よく見ると牛込さんと呼ばれた女の子はどこか居心地が悪そうにしていた。なんか悪いことしちゃったな...。

 

 

牛込さん「う、ううん。気にしなくていいよ。私のことは後でもいいから」

 

 

美久「そんなわけにいかないよ!私、牛込さんとも仲良くなりたいし!だから名前教えて!」

 

 

牛込さん「そ、そう?そ、それじゃあ...私、牛込りみ。よろしくね美久ちゃん」

 

 

美久「こちらこそよろしく!りみ!」

 

 

途中で少し話がずれちゃったけど何とかお互いに自己紹介が済んだところで香澄達がここに来た理由を聞いた。

 

 

美久「そういえばだけど今日はどうしたの?」

 

 

香澄「それはね、みっくにお願いがあって来たんだ〜!」

 

 

美久「お願い?何かな?」

 

 

香澄「私、今りみりんと有咲でバンド組んでるんだー!りみりんがベースで有咲がキーボード、私がボーカルとギターやってるの!」

 

 

美久「そっか!すごいじゃん!沙綾はやってないの?」

 

 

香澄がさっき言った時に沙綾の名前が出てこなかったから沙綾に聞いてみた。

 

 

沙綾「うん。私はお店の手伝いとかもあるしそんな余裕無いんだ」

 

 

なぜか一瞬悲しそうな顔になったけど気のせいかな?

 

 

香澄「それでここからが本題!」

 

 

急に真剣な顔になった香澄。こんな顔もできるのかと初めて思った。

 

 

香澄「みっく!私たちと一緒にバンドやろ!」

 

 

香澄の口から出た言葉は私はバンドに勧誘する言葉だった......。その答えはーーーー

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

美樹「ふ〜ん、っでやっぱり断ったんだ」

 

 

屋上で香澄の誘いに返答した後、そのまま授業を受けて家に帰って来た。今は晩ご飯前でその前に美樹に話しておこうと思って居間に美樹を呼んで軽くバンドに誘われたことを話した。お兄ちゃんには後で話しておこう。

 

 

美久「うん。私って楽器弾くのは好きでもさ、バンドにはそこまで興味無いんだよね。なんか周りに合わせなくちゃとかいろんなことを考えなくちゃいけない気がして息が詰まりそうなんだもん。だから今までだって断って来たんだから」

 

 

美樹「まあそれはあたしも同感だけど」

 

 

美樹も同じ考えみたいだ。やっぱり姉妹って考えも似るもんなんだね。

 

私達3兄妹がバンドにスカウトされたのは1回や2回だけじゃ無かった。正直数えきれないほどされた気がする。だからむしろこの引越しは嬉しかったんだよね。ここまでくればスカウトの人も来ないだろうしバンドに誘われることもない。そう思ってた矢先、香澄からバンドに誘われた。もちろんその話も断った。

 

 

美樹「でもさ、その話聞く限りさ、その香澄って人?多分簡単には諦めてくれなさそうじゃ無い?今後も何回も誘って来そうな気がする」

 

 

美久「そこなんだよね。香澄って一度決めるとほんとに頑固になるからね〜。何かいい方法あるといいんだけど...」

 

 

う〜ん。とふたりして首を傾げながら考えた。どうしたら香澄達を距離を開けずにバンドの誘いを放棄させるか。それを考えるのに30分かかった。そして一つの結論が出た。

 

 

美久「よし!これでいこう!!」

 

 

確かな手応えを感じ、出た案を胸に刻み込んだ!そして今決めたことを香澄達に伝える!そう決めた私だった。




ポピパの4人とついに対面しましたね!後一人です!頑張っていきましょう!

次回は美久が出した案を明らかにし、おたえちゃんも絡ませていきたいと思います!

お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

美樹の提案が妥当すぎる!!

前回のあらすじ

突然バンドに誘われた美久。だが本人にはそんな気はまるで無いらしく?そんな中、美樹と出したある提案を香澄達に持ちかけようと意気込む美久だった。


 

 

翌日、学校についた私は1限目が終わった後、香澄達に昨日考えた事を伝えようとA組に向かおうとしたんだけど、それはする必要が無くなった。何でかっていうと...

 

 

香澄「みっく!やっぱり一緒にバンドやろうよ!絶対楽しいからさ!」

 

 

うちのクラスに香澄が来てたから。まあ何となく予想してた事だしね。そこまで驚きはしなかったよ。

 

 

有咲「香澄!やめとけって、お前は少し自重ってもんを考えろ!」

 

 

香澄「え〜、でもやっぱりみっくには入ってもらいたいよ〜。有咲だってそう思うでしょ?」

 

 

有咲「は、はあ!?お前、何勝手に決めつけて...」

 

 

うん。この感じは市ヶ谷さんも絶対そう思ってるね。意外とわかりやすいね市ヶ谷さんって。

 

 

美久「気持ち的にはすっごく嬉しいよ!誘ってくれてありがと!」

 

 

香澄「じゃあ!?」

 

 

美久「でもやっぱりバンドには興味無いから入る気にはならないな」

 

 

香澄「え〜?そんな〜」

 

 

さっき言ったことは嘘じゃ無いよ?ほんとに嬉しかった。でもやっぱりバンドには拒否反応があるんだよね。だからこそここで昨日出した提案が生きてくるんだよね。

 

 

美久「でもその代わりにギター教えてあげるよ。香澄ってつい最近ギター始めたばっかりなんでしょ?わからないこと多いと思うから、コードとか弾き方とかわかりやすく教えてあげるからさ?それで妥協してくれない?」

 

 

香澄「え?ギターを?」

 

 

美久「そう!」

 

 

昨日美樹と出した提案って言うのがこれ。香澄がギター初心者って言うのを美樹に話したところ、「だったらその香澄さんにギターを教えるってことで妥協して貰えばいいんじゃない?」って言う意見を貰ったんだ。その提案を丸々採用させてもらったんだ!美樹に感謝!後で何か奢ってあげよ!

 

 

有咲「ん?でもさ、昨日池田さんが屋上で弾いてたのってベースだったよな?池田さんってギターもベースも弾けるのか?」

 

 

美久「ああ、そういえば言ってなかったっけ?私ってギターもベースもドラムもキーボードもだいたい出来るんだ。私ってバンドには興味無いけど楽器演奏するのは好きだからいろんな楽器やってるうちに全部出来るようになってたんだよね〜えへへ!」

 

 

ついつい調子に乗って楽器いろんなの出来るって言っちゃったけどそれでも別にいいや。隠す気なんて無かったわけだし、むしろ友達同士で隠し事はよく無いって言うお母さんの教えもあったからこの際言っちゃった!

 

 

有咲「いや、笑ってるけどお前、相当やべーぞ?」

 

 

美久「ん?そうかな?私的にはいつもこんな感じだから気にして無かったけど?」

 

 

有咲「...やっぱお前って変わってんな」

 

 

香澄「すっごーーい!みっくって何でも出来るんだねー!教えて!ギター教えてー!」

 

 

すごい勢いで教えを乞うて来た香澄。朝から元気でいいことだね。

 

 

美久「わかったわかった。じゃあそう言うことでいい?」

 

 

香澄「うん!バンドに入らないのは少し残念だけどそれで全然いいよ!と言うわけでみっく先生!これからどうぞよろしくお願いします!」

 

 

美久「あはは!ほんと香澄ってサイッコー!うん!こちらこそよろしく!市ヶ谷さんも何かあったら言ってね!力になるから!」

 

 

有咲「お、おう...ってかよくあの香澄のテンションについてけるな...なんか池田さんがすごく見えて来たわ...」

 

 

 

なんか色々あったけど何とか妥協してもらえたみたいだ。よかった。ここで、妥協してもらえたお礼みたいなことでもう一つ香澄達に提案してみよう。

 

 

美久「それでさ、今どのパートがかけてるんだっけ?」

 

 

香澄「ギターとドラムかな?その2つが揃えばオッケー!」

 

 

美久「ドラムは知らないけどギターだったら香澄達のクラスにギター持ってる子がいたよ。その子誘ってみたら?」

 

 

香澄「ええ!?そうなの!?」

 

 

有咲「おい?何で同じクラスのお前が知らねーんだよ?普通気づくだろ!?」

 

 

香澄「いや〜...みっくを誘うのに夢中で〜あはは...」

 

 

見たって言うのはつい最近のこと。ほんとにたまたまなんだけど帰る時にギターを持ったロングヘアーの子がA組から出て来てたんだよね。その時からこの考えはあった。

 

 

香澄「わかった!ありがと、早速誘ってみるね!」

 

 

有咲「ちょ!?おい香澄!?」

 

 

市ヶ谷さんの制止も無視してすごい勢いで教室から出て行った香澄。ほんとに元気だね。

 

 

有咲「池田さんも大変なの引き受けちまったな...。ほんと物好きだよな」

 

 

美久「そうかな?単に楽しそうだと思ったからだけどね!」

 

 

有咲「それが物好きだってーの!」

 

 

その後、昼休みにまた香澄達と会って何故か私に泣きついて来た。なんかそのギターの子に変態だとかギターコード違うだとか言われたんだって。まあ正確には香澄が持ってたランダムスター(ギター)のことを言ってたらしいみたいだけどね。でもギターは上手いらしく誘ったところ上向きに考えてくれてるらしい。

 

 

 

後はドラムだけか...。見つかるといいね!香澄!

 

 

陰ながら応援しようと決めた私は香澄にエールを送るんだった。

 

 

 

 

 

 




何とか美久の提案で妥協してくれた香澄達。そしてようやくおたえちゃんとの絡みも少しずつ出て来ました!

次回はまだ考え中です。違うバンドとの絡みかポピパの絡みを続けるか考えてます。

なので次回は未定ってことにしときます!

お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2章 Roseliaの結成
兄妹喧嘩は日常的すぎる!!


前回のあらすじ

バンドに入らない代わりに楽器を教えるという条件で納得してもらった美久。今後は微力ながら霞達の力になろうと決意する美久だった。


私が花女に入学して半月ほど経った。まだ半月だって言うのにいろんなことがあった。学校不登校だった市ヶ谷さんと友達になったり、幼馴染のさやちんと再開したり、香澄からバンドに誘われたり、色々と慌ただしかった。それでも楽しかったからいいんだけどね!

 

今私はお兄ちゃんと美樹でショッピングモールに買い物に来ていた。何でかって言うと、今日が土曜日でみんな特に用事もなかったからたまには3人で出かけようと私が言い出したからだ。意外とすんなり2人共オーケーしてくれたから嬉しかったな!

 

 

蓮「そういえば最近美久って友達に楽器教えてるって言ってたっけ?」

 

 

美久「うん。そうだよ」

 

 

蓮「でもお前って今まで人に教えたことってなく無いか?そんなんで教えられるのか?」

 

 

美久「意外と大丈夫だったよ?相手目線で考えながら教えたりしてるから問題なく教えられてるし、香澄達もわかりやすいって言ってくれてたよ?」

 

 

美樹「まぁ、お姉ちゃんって抜けてるように見えてやるときはしっかりやるから大丈夫だと思うよ?おにーちゃん」

 

 

蓮「あ、ああ。それならいいんだがな...」

 

 

なんか歯切れのある言い方だったからちょっと追求してみることにした。

 

 

美久「でも何でそんなこと聞くの?」

 

 

蓮「いやさ、友達には教えて何で俺にはベース教えてくれないんかな?って思ってさ...お前俺よりベース歴長いんだから教えてくれてもいいんじゃ無いか?」

 

 

美久&美樹「「???」」

 

 

私と美樹はお兄ちゃんの言ってることができなかった。何でかって言うと、

 

 

蓮「おい...何で2人して首を傾げる?」

 

 

美樹「だって...ねえ?」

 

 

美久「うん。だって別に私が教えなくてもお兄ちゃんもう十分すぎるくらい上手いじゃん。この間だってバンドに誘われてたでしょ?」

 

 

これはお世辞じゃなくて本心。私よりもベース始めたのは遅いくせにもう立派なベーシストになってる。私よりも...とまでは言う気はないけど、それでももう何も教える必要はない気がする。それは美樹も分かってる。

 

 

蓮「そうなんだが、なんつーか、実力が同じくらいの奴とベース弾き合うとなんか楽しいっつーか何と言うか...まあつまりだ!たまには俺と一緒にベース弾かねーかって話だ!」

 

 

...なんか実力が同じって言われたことがちょっと釈。

 

 

美久「ふ〜ん?お兄ちゃんは私と実力が同じって言いたいんだ〜。私の方が早くベース始めたのに〜?」

 

 

蓮「始めた時期なんて関係ないな。要は実力があれば問題ないわけだ。それを考えても俺は美久に劣ってる気はしないな!」

 

 

美久「よ〜し!それなら勝負しよ!どっちが上かはっきりさせてあげる!」

 

 

蓮「おう上等だ!返りうちにしてやるよ!」

 

 

美樹「は〜、また始まった...」

 

 

こんな私とお兄ちゃんとの衝突は日常茶飯事だ。こうなった場合、負けを認めるか、お互いが疲れるかしない限り治まらない。美樹も半ば呆れながら私たちの様子を伺っていた。

 

結局その勝負はお店の人の仲裁が入ってしまった為、一旦中止になった。とりあえず店の迷惑になりそうだったから外に出た。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

ーーView Change ?ーー

 

 

 

 

私はこの歌で、音楽で頂点を取って見せる!そう決めたのはいつの事だったかしら?おそらく、あの時、お父さんのバンドがFUTURE WORLD FESに出た後ぐらいから。あの時、お父さんのバンドの音は荒んでいた。いや、正確にはあの曲のせいでお父さん達の音がねじ曲がってしまっていた。お父さんは曲の作り手のせいで自分の音楽を踏みにじられて音楽の道を断念した。その時のお父さんの顔を思い出すたびに怒りがこみ上げてくる...。その時決心した。私がお父さんのなし得なかったFUTURE WORLD FES優勝の夢を代わりに成し遂げるんだって。その為ならどんな犠牲も厭わない。学校生活だとか遊びだとか、そんな事音楽には必要のない事...そう思ってた。あの子と出会うまでは...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「練習時間は3時から...まだ少し余裕があるわね...」

 

 

決意を決めてから3年ほど経った。あれ以降、私は自分の歌の実力を高める為にひたすら練習を重ねていた。もちろん喉のケアもかかしたことは無い。バンドを作るためにまず自分の実力を上げることを優先的にして来た。ライブも何度か出た事がある。そして周りからの評価も変わって来た。私のことを【孤高の歌姫】だとか、【10年に一人の逸材】だとか言ってるのを耳にした事がある。でもそんな評価どうだって良い。いくら評価が良くたって本番で悪かったら意味なんて無いから。だから今日も私は歌の練習に精を出す。自分が納得するまで......。

 

 

?「あっ!友希那ー!今日は一人でどうしたのー?」

 

 

友希那「...?リサ?」

 

 

練習する為にライブハウスに向かっていた時、後ろから声をかけられた。声を掛けてきたのは幼馴染の今井リサだった。

 

 

リサ「もしかしてまた歌の練習?頑張ってるのは良いと思うけど頑張りすぎると行き詰まっちゃうからたまには息抜きも大事だよ☆」

 

 

友希那「別に無理なんてしてるつもりはないわ。自分のためにやってる事なのだからリサが心配する必要なんてないわ」

 

 

リサ「でもさでもさ、やっぱり歌の練習だけじゃ面白くないじゃん?たまにはどっかに買い物行ったりとかさ、遊びに行ったりとかさした方がいいと思うんだけどな〜?」

 

 

こんな調子でリサはいつも私のことを心配してくれてる。その気遣いは嬉しいのだけど一度決めたのだから妥協なんてしない。妥協してしまったらこれまで築き上げてきたものが全て台無しになってしまう。そんな予感がした。

 

 

友希那「私のために言ってくれてると言うのは分かっているわ。でもこれは私の問題なの。これ以上の口出しはしないでほしいわ」

 

 

リサ「う〜...じ、じゃあさ、これから友希那ってライブハウスに行くんでしょ?私も同じ方向に用事があるからさ、途中まで一緒に行こうよ!たまには幼馴染に構ってよ〜?」

 

 

友希那「...はぁ、分かったわ。それじゃ早く行きましょう?時間がもったいないわ」

 

 

リサ「わ〜友希那〜待ってよー!」

 

 

結局私はリサの押しに負けて途中まで一緒に行くことになった。その途中話をしたのだけど、ほとんど一方的にリサが話している状態で私は自分の世界に入っていた。そんなリサの話をほとんど聞き流している状態でしばらく歩いていると前から何か言い争いながらこちらに歩いてくる3人の人達が見えた。最初はうるさい人達だと言う感想しかなかったけど、その人達に近ずくにつれて何故かどこかで会ったことあったようなと言った疑問が出て来た。でも今はそんなことはどうでもいいと思って再び、自分の世界に入った。でもその人達とすれ違ったときに聞こえた名前に私はまた自分の世界から出た。

 

 

蓮「今日こそ俺が勝つからな美久!」

 

 

美久「ふん!負けないからお兄ちゃん!」

 

 

友希那「...美久?」

 

 

その名前が聞こえた途端咄嗟に振り返った。リサも同じタイミングで振り返った。何でその名前が...?

 

 

友希那「10年以上前に引っ越したはず...」

 

 

そう呟き私はゆっくりとリサの方へ視線を向けた......。

 

 

 

 

 

 




はい、いつもよりもちょっと長めでいきました!今回からRoselia編に入っていけたらと思います。なのでもしかするとポピパのメンバーは出る回数少なくなるかもです。そこはご了承ください!

次回は美久達3兄妹と友希那&リサの関係について書けたらって思います!

では、次回をお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再会した幼馴染は訳ありすぎる!!

前回のあらすじ

些細なことで喧嘩になった美久と蓮。勝負しようとするも店の中ではダメだと言われ、外でやる羽目になった。一方で父の音楽の無念を晴らすために自身の歌の向上とバンドを作ることを考えている友希那は幼馴染のリサとともにライブハウスに向かっていた。そんなとき、美久達と出会った...。


ーーView Change リサーー

 

 

 

 

友希那はあの時から変わった。友希那のお父さんがバンドを辞めたあの日から。あの時の友希那の表情は今まで見せてた優しい笑顔とは対極な強い怒りの表情だった。そこからはもうあまり思い出したくない。今まであれだけ楽しく歌ってた友希那が無表情で歌うようになり、学校や日常生活も、必要最低限のこと以外は音楽に費やしていた。何でそうしてるのかって聞いてみたところ、「音楽をやるのにそんなこと必要ない」そう言われた。そして、あたしと過ごす時間も徐々に減っていった。その時あたしはすっごく悔しかったんだ。本当はそんな顔して歌なんて歌いたくないって分かってるのに、何もしてあげる事が出来ない自分にね。でも離れちゃったら、もうこの関係が修復出来なくなっちゃうかもしれないって自分でも思ってたんだ。だから少しでも友希那の力になりたくていろんなことしてるんだけど、どれもカラぶってばかりなんだ...。もしかしたらずっとこのままの関係なのかもしれない。そんなふうに暗い気持ちに打ちひしがれそうになってた時だった。美久達と出会ったのは...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ「あっ!友希那ー!今日は一人でどうしたのー?」

 

 

今日は土曜日だから買い物にでも行こうって思って外に出たらちょうど友希那に会った。どうしたのかと聞いたが、その身なりですぐにあたしは察しがついた。

 

 

リサ「もしかしてまた歌の練習?頑張ってるのは良いと思うけど頑張り過ぎると行き詰まっちゃうからたまには息抜きも大事だぞ☆」

 

 

友希那「別に無理なんてしてるつもりはないわ。自分のためにやってることなのだからリサが心配する必要なんてないわ」

 

 

やっぱりと言うか分かってたけどねその反応。今まで何回もそう言う反応で返されてたもんね。でもそんな簡単にめげないよ!

 

 

リサ「でもさでもさ、やっぱり歌の練習だけじゃ面白くないじゃん?たまにはどっかに買い物行ったりとかさ、遊びに行ったりとか、した方が良いと思うんだけどな〜?」

 

 

友希那「私のために言ってくれてると言うのは分かっているわ。でもこれは私の問題なの。これ以上の口出しはしないでほしいわ」

 

 

...やっぱり今日も無理っぽいな。でもこのまま行くのはなんか釈だしちょっとは抵抗させてもらうよ!

 

 

リサ「う〜...じ、じゃあさ、これから友希那ってライブハウスに行くんでしょ?私も同じ方向に用事があるからさ、途中まで一緒に行こうよ!たまには幼馴染にも構ってよ〜?」

 

 

友希那「...はぁ、分かったわ。それじゃ早く行きましょう?時間がもったいないわ」

 

 

少し嫌そうな顔をしたけど何とか説得できた。友希那が突き放そうとしてもあたしは離れない。今は少しでも友希那のそばにいてあげたい。それが今あたしにできる数少ないことだからさ。

 

そのことを頭で整理して、あたし達はライブハウスに向かった。

 

 

 

 

ライブハウスに向かってる間、あたし達は軽くおしゃべりしていた......と言ってもほとんどあたしが一方的に喋ってるんだけどね。でもそれだけでも楽しかった。友希那も多分自分の世界に入ってるかもだけど問い掛ければちゃんと相槌打ってくれるし、それだけでも十分だった。こうしていればいつかまた前と同じような関係になれる。根拠はなかったけど、そう思いたかったんだ。今はそれを信じて頑張ろう!そう思って歩いているとなんか前から言い争いをしてる3人の子達がこっちに向かって歩いて来ていた。見る限り、言い争ってるのは薄茶色の髪をした男の子と、それより少し濃いめの茶色の髪をした女の子だった。もう一人の赤茶色の髪をした女の子は2人を宥めてるように見えた。

 

 

リサ「(あたし達と同じくらいの子だなぁ、でも何だろう?あの子達、どこか見覚えがあるような...?)」

 

 

ふと隣を見てみると友希那もその3人のことを凝視していた。やっぱり友希那も何か感じるものがあったんだ。

 

 

そうこうしてるうちに3人が私たちとすれ違った。気のせいかと思ってそのまま言ってしまおうと思っていたんだけど男の子から発せられた名前にあたしは思わず振り返った!

 

 

蓮「今日こそは俺が勝つからな美久!」

 

 

美久「ふん!負けないからお兄ちゃん!」

 

 

リサ「え!?」

 

 

一瞬聴き間違えかと思ったけどそうじゃない。しっかりと聞こえた。10年くらい前に引っ越した()()()の名前が...。

 

 

リサ「友希那...今の人たちって...」

 

 

あたしが友希那の方を向くと、友希那もまたあたしの顔を見ていた。どうやら友希那にも聞こえていたみたい。

 

 

友希那「リサ、少し私に付き合って」

 

 

リサ「確認しに行くんだね?あの人たちがあたし達の幼馴染かどうかを」

 

 

友希那「ええ、行くわよリサ」

 

 

あたし達はあの3人を追って来た道を引き返した。もし美久達だったら、今の友希那のこと救ってくれるかも知れない。そんな淡い期待を込めながら後を追った......。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

ーーView Change 美久ーー

 

 

 

 

ショッピングモールから移動した私達はベースの対決をするため家に取りに戻ってる最中だった。その間も喧嘩は続いていた。

 

 

美久「お兄ちゃんが私に勝つなんて絶対にないよ。私ってベースの腕だったらすっごく自信あるもん!」

 

 

蓮「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ!ベースは歴じゃねえって事わからせてやる!」

 

 

美樹「二人とも...ここ住宅街だから、そんな声で喧嘩してたら近所迷惑だよ...?」

 

 

蓮&美久「「だって(お兄ちゃんが)美久が!!」

 

 

美樹「はあぁぁーーー」

 

 

そんな言い争いを続けてるうちに家にだんだん近づいて来た。やっと勝負できる、そう思ったのか、お兄ちゃんがまた勝利宣言して来た。

 

 

蓮「今日こそは俺が勝つからな美久!」

 

 

そんな高々と宣言されてはこっちも黙ってはいられない!そう思った私は周りの目も気にせず高らかに言ってやった!

 

 

美久「ふん!負けないからお兄ちゃん!」

 

 

何だか少しスッキリした気がする。やっぱり大きな声を出すって気持ちいいね!美樹は頭を抱抱えてた。なんかごめんね?そういえばさっきすれ違った私たちと同じくらいの子達にも思いっきり聞かれちゃったな...まぁ、終わった事だからもういいや!

 

少しスッキリした気分で家に向かってた時だった。後ろから声を掛けられた。

 

 

友希那「ちょっといいかしら?」

 

 

3人「「「???」」」

 

 

振り返ってみると、そこにはさっきすれ違った銀色の髪を背中まで伸ばしてる女の子と、茶色の髪をポニーテールで束ねて可愛いウサギのピアスをつけた今時の女子高生みたいな女の子が立っていた。でも何だろう?この2人、何だか懐かしい雰囲気があるような?

 

 

蓮「俺らに何か用か?」

 

 

友希那「ええ、ちょっとあなた達に確認したい事があるの」

 

 

美樹「確認したい事?」

 

 

リサ「ああ、大丈夫そんな難しいこと聞くわけじゃないから☆」

 

 

何だろう?そう思って2人の次の言葉を待った。すると銀髪の子が私の方を向いた。何で私の方を向くんだろう?何か言いたいことでもあるのかな?でも、そんな彼女から出た言葉は私たちにとってすっごく予想外だった。

 

 

友希那「あなた......美久?」

 

 

美久「へ!?」

 

 

リサ「その反応だと図星らしいね!」

 

 

何で初対面なのに私の名前知ってるの.!?..ん?初対面?でも考えてみるとこの2人って初めて見た時から初対面って感じしなかったんだよね...。どこかで会ったこと...銀髪...茶髪...ん?

 

 

美久「あ!?」

 

 

リサ「ふふ、思い出した?」

 

 

美久「もしかしてゆき姉とリサ姉!?」

 

 

リサ「大せいか〜い!久しぶりだねみんな!」

 

 

茶髪の女の子改め、リサ姉が私たちに抱きついて来た。ここに来て半月、私達は2人の幼馴染に再会した。

 

 

ほんとにここに来ていろんな事があるね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とうとう再会を果たしました。ここからRoseliaの話が進んでいきます!お見逃しのないように!

次回は友希那とリサとの関係について書けていければって思ってます!

次回をお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お兄ちゃんのベースがうますぎる!!

前回のあらすじ

蓮とベース対決をするために家に戻ろうとする美久達。その最中何やら見たことのある女の子2人とすれ違った。その2人が昔の幼馴染の友希那とリサだった......。


ゆき姉とリサ姉。この2人はさやちんと同じく、私たちの幼馴染だ。親同士が音楽関連で仲が良かったため、頻繁に会っていたから、自然と仲良くなっていったんだよね。小さい頃は5人でよく一緒に遊んでて、よく鬼ごっことか砂遊びとかして遊んでたな〜。引っ越すって分かった時は悲しかったけど、ゆき姉がまた会えるってそう言ってくれたから耐えれたんだよね。ほんとあの時のゆき姉には感謝しよ!

 

 

 

蓮「でも改めてみると二人ともだいぶ変わったよな...友希那なんて昔は髪短めだったのに今は結構伸ばしてるんだな」

 

 

友希那「ええ、まあ髪型に関しては変えたわね。理由は覚えてないけど」

 

 

リサ「でもさ、そういう3人も十分変わってるよ?あんなに可愛かった美久や美樹が随分と大人びてたり、女顔だった蓮がすっごくイケメンになってたりしてるんだもん」

 

 

美樹「そうかな?自分だとあんまり自覚ないけど?」

 

 

相変わらずお姉ちゃんみたいに私たちの成長を喜んでくれてるリサ姉。と言うかゆき姉もリサ姉も私よりも1つ年上だからお姉ちゃんといえばお姉ちゃんなのか?お兄ちゃんとは同い年だけど。

 

 

友希那「いつこっちに戻って来たの?」

 

 

美久「4月の始めくらい。お父さんの仕事の都合で東京に来ることになったからこっちの高校に通うってことになって、中学卒業した後、いろいろ準備とかしてこっちにまた戻って来たってこと。私は花女で、お兄ちゃんは青嵐、美樹は羽女の中等部に通ってるよ。ちなみに2人は転入って形だけどね」

 

 

リサ「そっか〜、あ、ってことは美樹とは来年一緒になれるね!」

 

 

美樹「ちょっとリサ姉!?抱きつかないで!」

 

 

何だかこう言うの懐かしいな。そんなことを思ってるとゆき姉が何か思ったかのようにして尋ねてきた。

 

 

友希那「そういえば、さっきは何で言い争っていたの?」

 

 

蓮&美久「「え!?いや〜その〜?」」

 

 

私達はことの発端について説明した。でも改めて考えてみるとすっごく下らないことで喧嘩してたんだな私達って。

 

 

リサ「へ〜つまり、ベースの対決をするから今から家にベースをとりに行ってそれからやろうって考えたわけね」

 

 

美樹「そういうわけ。でもこんなことしょっちゅうあるからあたしはもう慣れたよ...」

 

 

リサ「あはは...美樹も大変だね...」

 

 

リサ姉が美樹に同情してる中、ゆき姉は私とお兄ちゃんのことを何故か品定めするような目つきで見てきた。

 

 

美久「どうしたの?ゆき姉?」

 

 

友希那「あなた達、ベースが弾けるの?」

 

 

唐突にそんなことを言ってきた。

 

 

蓮「ああ、俺はベースしか弾けないが、美久は他のパートもできるぞ」

 

 

美久「うん!その日によってやるパート決めてるんだよね」

 

 

リサ「でもさ?2人っていつから楽器始めたの?小さい頃は楽器なんて興味なさそうだったのに?」

 

 

美久「私は中1から、お兄ちゃんは中3からかな。その頃は何か打ち込めるものないかなって探してたら楽器に出会ったから始めたかな?」

 

 

軽く、私たちが楽器を始めた経緯みたいなのを2人に話した。でも、さっきのゆき姉のあの目は何だろう?そう少し疑問を感じているとゆき姉が私たちに言った。

 

 

友希那「よければなのだけど、あなた達のベースを聞かせてもらえないかしら?」

 

 

蓮&美久「「はい?」」

 

 

兄妹そろって素っ頓狂な声が出た。美樹も意味がわからないと言った顔をしていて、リサ姉は何か意図を感じたのか納得の顔をしていた。

 

 

美久「まぁ、別にいいけどいいの?ゆき姉達どっか行く予定あったんじゃないの?」

 

 

友希那「問題ないわ。まだ時間があるから。それじゃ、お願いするわ」

 

 

蓮「なら一旦家に戻らせてくれ。ベース取ってくるからさ。美樹はリサ達と一緒に公園で待ってくれ」

 

 

美樹「わかった」

 

 

リサ「りょーかい☆じゃあ私達は近くの公園で待ってるから」

 

 

結局その後、ゆき姉とリサ姉と美樹と一旦別れて、私達は家にベースを取りに行った。その際にお父さん達にゆき姉達にあったと伝えようと思ったけど、生憎留守にしてたから、できなかった。まあ、晩ご飯の時にでもいえばいいか!そう決めて、私達はベースを持ってゆき姉達がいる近所の公園に向かった。

 

 

その道中、

 

 

蓮「美久。今回の勝負、勝敗は友希那達に決めて貰うってのはどうだ?」

 

 

美久「なに?どういうこと?」

 

 

蓮「簡単な話だ。あいつらの前で俺たちが一人ずつベースを弾いてどっちがうまかったかをあいつらに決めて貰うんだよ。その方がはっきりしてて良いと思わないか?」

 

 

美久「ふ〜ん。良いんじゃない?それで白黒はっきり付くなら」

 

 

蓮「よし!じゃあそれでいく!ぜってー負けねえから!」

 

 

美久「私だって負けない!」

 

 

いつの間にかゆき姉達まで巻き込んじゃってるな...。ごめんね、ゆき姉、リサ姉。

 

 

そのまま私達は公園に急いだ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

リサ「あ!きたきた!おーい、ここ!」

 

 

公園の中に入るとリサ姉が手を振って迎えてくれた。ゆき姉はリサ姉の隣に静かに座っていてその隣に美樹が座っていた。

 

 

美久「やる前にさ、2人に頼みがあるんだ〜!聞いてくれる?」

 

 

友希那「?なにかしら?」

 

 

私とお兄ちゃんはここにくるまでに決めたことを2人に説明した。どちらが良かったか決めて欲しいという。

 

 

蓮「それで良いか?」

 

 

友希那「私は構わないわ」

 

 

リサ「良いは良いんだけど、良いの?負けた方はそれはそれでショックじゃない?」

 

 

美久「良いんだよリサ姉!これはお兄ちゃんが言い出した事なんだし相当自信あるんじゃない?だから負けても問題ないよ!」

 

 

リサ「勝つ事前提なんだ...」

 

 

何で私がこんなに余裕なのかっていうと、今までお兄ちゃんにはこの類の勝負には負けた事がないから。大抵の場合私が勝つ。だからと言って油断してるわけじゃないよ?前にも言ったと思うけどお兄ちゃんは本当に上手いから油断してると足元救われちゃうから。だから今回も油断しないで頑張ろう!

 

 

 

 

友希那「準備できたかしら?」

 

 

ゆき姉の確認の声に私達は「オーケー」と答えた。ちなみに演奏順はお兄ちゃん→私っていう順ね。

 

 

蓮「じゃあまず俺からだ!行くぜ!!」

 

 

お兄ちゃんが弾いたのは「カルマ」だった。独特のベース捌きで難しい箇所も難なく弾いて見せていた。やっぱりお兄ちゃんは上手だ。ちらっとゆき姉達の方を見ていると、ゆき姉は少し表情を和らげながら目を瞑って静かに聞いていた。

リサ姉は「すごーい」だとか「さっきのかっこいい!」だとかいろんな感想を言っていた。美樹はいつも聞いてるから特に反応は示さなかった。

 

そして1分弱の演奏が終わった。

 

 

蓮「どうだった!?」

 

 

お兄ちゃんがやりきったような顔でゆき姉達に感想を求めていた。

 

 

リサ「凄すぎ!蓮ってこんなにベース弾けたんだ。見直しちゃったかも!」

 

 

蓮「まじで!?サンキュ!友希那は?」

 

 

友希那「ええ、素晴らしい演奏だったわ。ベースを弾くテクニック、技術、どれをとっても申し分なかったわ。良い演奏聞かせてくれてありがとう」

 

 

蓮「よっしゃ!じゃ、次は美久の番だな!期待してるぜー!」

 

 

なんか最後の言い方、挑発されたように聞こえたな。よし、こてんぱんにしよ!そう決めた私はゆき姉達の前に立つのだった......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、きりがいいところなので今回はここまでにしておきます。友希那達の前で初めて演奏した美久達。それが友希那の目にどう映ったのか?次回が楽しみになってきましたね。

次回は美久の演奏が始まります。そしてRoseliaメンバーも登場するかも?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ゆき姉がかわいそすぎる...

前回のあらすじ

急に友希那からベースを聞かせてくれと頼まれた美久と蓮。一人一人でベースを弾きどっちが良かったかを友希那とりさに決めてもらうことにした2人。先陣をきって演奏した蓮は2人から高評価を得た。果たして美久は?


 

 

 

美久「ふ〜〜。ほい、終了っと!どうだった、私の演奏!」

 

 

1分弱の短い演奏を終えた私は感想を聞くために2人に問いかけてみた。

 

 

友希那&リサ「「.......」」

 

 

あれ?固まってる?もう一回声かけてみよ。

 

 

美久「ゆき姉!リサ姉!感想聞かせて!」

 

 

リサ「うぇ!?あ、あぁ演奏終わってたのか....ぜ、全然気付かなかった...」

 

 

美久「もうしっかりしてよ!2人には勝敗つけて貰わなくちゃいけないんだから!」

 

 

こんな様子だったのにちゃんと聞いてくれてたのか心配になっちゃったけど大丈夫かな?

 

 

蓮「美久、お前、前聞いた時と音が全然違ったんだが...?」

 

 

美樹「おにーちゃん気付いてなかったの?いつもあたしたちとやってる時おねーちゃんってセッションしやすいように調整してくれてたんだよ?」

 

 

蓮「ってことは?」

 

 

美樹「そういうこと、おにーちゃんがいつも聞いてるのはおにーちゃんに合わせた音だったってこと。本来ならさっきみたいな曲調でやってるはずだよ?」

 

 

あ〜あ、美樹、言っちゃったね。隠しておこうって思ってたのに。ま、いいけど。

 

 

蓮「つまり俺は、手を抜いてる美久に勝ったつもりでいたってことか?」

 

 

美樹「残念ながらそういうこと」

 

 

蓮「ち...ち...ちくしょ〜〜!!悔し〜〜!!!」

 

 

やっぱり発狂した。しばらくはそっとしておいた方がいいね。

 

 

リサ「ねえ、美樹って結構Sだよね?」

 

 

美久「うん。多分本人は分かってないかもだけどね」

 

 

発狂して蹲ってるお兄ちゃんをからかってる美樹を後ろから見ていると今まで黙ってたゆき姉がこっちに近づいてきた。やっと感想言ってくれるのかな?

 

 

友希那「美久...」

 

 

美久「ゆき姉どうだったかな?私の演奏!ってか、リサ姉も感想聞いてない!教えてよ〜!」

 

 

リサ「いや、正確にはあの時、言えなかったんだよね。凄すぎて圧倒されてたから...」

 

 

美久「え?そうなの?」

 

 

友希那「ええ、私もあそこまで圧倒されたのは初めてだわ」

 

 

美久「本当に?やったー!」

 

 

何だか幼馴染に褒められると本当に嬉しいな。今日はベース弾けて良かった!でも2人とも圧倒されたってことは音楽知ってるのかな?聞いてみよ。

 

 

美久「そういえばさ?2人って音楽何かやってるの?」

 

 

友希那「?ええ、私は歌い手...ボーカルをやっているわ」

 

 

リサ「あたしはちょっと前までベースやってたかな?今はやめちゃったけど」

 

 

美久「へ〜そうなんだ〜」

 

 

意外ではなかったかな。小さい頃からゆき姉は歌う事が大好きで将来はお父さんみたいなボーカリストになりたいって言ってたし、リサ姉はゆき姉と一緒にバンド組みたいって言ってたし、今は音楽をやっていても何ら不思議じゃない。リサ姉がベース辞めたってのが少し気になったけど、何か訳ありそうだから触れないでおこう。

 

 

友希那「でも何でそんなこと聞くの?」

 

 

美久「いやさ〜、さっきの私の演奏を聞く姿勢がさ、何というか音楽やってる人のそれっぽかったから何となく音楽やってるのかな〜って思ってさ!聞いてみたんだ〜!」

 

 

リサ「あはは!美久らしいね!」

 

 

美久「でもやっぱり、ゆき姉は歌が大好きなんだね!」

 

 

友希那「...どうしてそう思うのかしら?」

 

 

何故か不思議そうな顔をされた。まあいいけど。

 

 

美久「だってさ、歌が好きじゃなかったら今も歌なんて歌ってないでしょ?だから思ったんだ、歌が好きなんだって!」

 

 

友希那「そ、それは...」

 

 

美久「それに言ってたもんねゆき姉。将来はお父さんみたいなボーカリストになるって!どう?少しは近づいた?」

 

 

友希那「!!!」

 

 

その瞬間ゆき姉の体がびくっと震えた。どうしたんだろう?

 

 

美久「ゆき姉?どうかした?」

 

 

友希那「い、いえ...何でもないわ。...そろそろ私は行かないとだからこれで失礼するわ。それじゃあ...」

 

 

それだけ言ってゆき姉は公園から出ていった。最後だけ少し様子がおかしかった気がする。

 

 

美樹「ゆき姉どうしたの?おねーちゃん?」

 

 

美久「わかんない。なんかゆきパパ(ゆき姉のお父さん)の話したら難しい顔して行っちゃった」

 

 

蓮「なんかあったんじゃないか?」

 

 

いつの間にかお兄ちゃんが復活してた。意外と回復早いね。

 

 

リサ「みんな、ちょっといいかな?」

 

 

3人「「「?」」」

 

 

突然リサ姉が口を開いた。

 

 

リサ「少しあたしの話聞いてくれるかな?あたし達の過去の話」

 

 

蓮「何だ?やっぱりあいつ(友希那)に何かあったのか?よければ聞かせてみろ」

 

 

美樹「あたしも聞きたい」

 

 

美久「私もー!」

 

 

その後、私達はリサ姉からこれまであったことを聞かせて貰った。ゆきパパのバンドが既に解散していたことと、その原因が曲の作り手のせいによるものだと言うことと、ゆき姉がゆきパパの音楽を認めなかったFUTURE WORLD FESに自ら出て優勝するために今まで努力してきた事など色々聞かせて貰った。

 

 

蓮「なるほどな...」

 

 

美樹「この10年でそんな事が...」

 

 

お兄ちゃんと美樹は話を聞いて少し思う事があったのか、考え込んでいた。

 

 

リサ「今の友希那は音楽のことを高みに登るための道具のようにしか考えてない。だから、昔みたいに笑って歌うこともなく無表情で歌ってる。音楽に必要ないことは絶対にやろうとしない。正直今の友希那が見てられないんだよね...」

 

 

ポロリとリサ姉の目から一滴の涙が流れた。それだけゆき姉のこと心配してたんだね。

 

 

リサ「(グスッ)ごめんね、それで、ここからが本題なんだ」

 

 

3人「「「......」」」

 

 

私達は黙って次の言葉を待った。

 

 

リサ「蓮、美久、美樹、友希那を助けてあげて!」

 

 

気持ちのこもった声でリサ姉が言ってきた。ゆき姉を助けてほしいと...。

 

 

 

 

 

 




はい、少しシリアスな展開となりましたね。こんな展開のシーンもまた大事になってきますからね。

次回はバンドのことについてかけたらいいと思っています!

次回をお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リサ姉の知り合いの2人は個性的すぎる!!

前回のあらすじ

兄妹対決は美久の勝利で終わった。だが喜んでいられたのは束の間だった。今度は友希那の過去の問題が浮き彫りになった。そんな友希那の壮絶な過去をリサから聞かされた美久達は、友希那のために出来ることを探そうと決意するのだった。


 

 

父「そうか...助けてほしいね...」

 

 

リサ姉から助けを求められた後、少し考えさせてと話を保留にして家に戻ってきた。それで、ちょうど家に帰ってきていたお父さんに相談してみることにした。

 

 

美久「うん。何か私たちに出来ること無いかなって思ったんだけど何にも思いつかなくてさ、だからお父さんなら何かいい方法知ってるんじゃ無いかって思ったの」

 

 

父「ん〜そうだなぁ...」

 

 

お父さんは少し考え込んだ。そして何か思い立ったのか、ゆっくりとこちらに視線を向けてきた。そしてこう言った。

 

 

父「友希那ちゃんは今バンドの仲間を探してるって言ってたな?」

 

 

蓮「ああ、FUTURE WORLD FESに出るために自分と方向性が同じメンバーを集めるって言ってたな」

 

 

なんか嫌な予感がする...。

 

 

父「だったら、そのバンドメンバーを集める手助けをしてやればいいんじゃないか?」

 

 

ああ、そっちね。てっきりゆき姉のバンドに入ってやれ的なこと言われるかと思った。

 

 

美樹「でもそれとゆき姉を助けるのと何の関係が?」

 

 

父「いいか?今友希那ちゃんがそうなったってのはただ過去のことだけが原因って訳じゃ無いって思う」

 

 

美久「どう言うこと?」

 

 

さらに追求してみることにした。

 

 

父「恐らく、その苦しみを一緒に共有できる仲間を作らなかったってのがいちばんの原因だ」

 

 

蓮「仲間?」

 

 

父「そうだ。人ってのは1人1人はちっぽけな力しかなくて脆いもんだ。1人でいろんなもん抱えこんじまうと一気にそいつは壊れちまう。だったら2人ならどうだ?その抱えこんじまったもんを半分にする事ができる。そいつの負担が減る。それでも足りなけりゃ3人、まだ足りなけりゃ4人、そう言って仲間を増やしていく。そうする事で負担を軽減させていくんだ。つまり何が言いたいかって言うとだ。1人で抱え込まないで仲間を頼れって事だよ。だから俺はバンドのメンバー集め、手助けしてやれって言ったんだよ」

 

 

何となく言ってることは理解できた...と思う。

 

 

父「ってなわけで俺が言えるのはここまでだな。後はお前たちが自分達で決めろ」

 

 

そう言ってお父さんは自分の部屋に行っちゃった。自分たちで決めろ...か。そんなの決まってるじゃん!

 

 

美久「手伝ってあげよ?バンドメンバー集め!」

 

 

蓮「そうだな。幼馴染のためだし、こっちも一肌脱ぐか」

 

 

美樹「まずは虱潰しに探してみよう!」

 

 

こうして、ゆき姉のバンドメンバー集めをスタートさせる私達だった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

美久「また不発か〜。これで何回目だろ?」

 

 

花女の屋上でひとり、そんなことを呟く私。あれから2日、何人かのギターをやってる子を誘ってみたけど、既にバンドを組んでたり、バンドを組む相手がゆき姉だと知ると一瞬で断るかの2択で撃沈していた。さっき、お兄ちゃんと美樹にも確認したけどあっちも収穫なしだったみたい。

 

 

美久「はあ〜〜、なんかぱっとしないな〜。こんな時はギターでも弾いて気分転換しよっと!」

 

 

気分転換というかほとんど腹いせみたいな感じでギターを弾いてた。いつも屋上で弾いてるギターの音量を遥かに通り越して。でも私は気づかなかったんだよね。なんかだんだん楽しくなってきちゃってて。

 

そんな大音量の演奏をしばらく続けてたら突然屋上の扉が開いた。

 

 

?「誰ですか!?迷惑な音を出している人は!?」

 

 

入ってきたのはライトグリーンの髪を背中まで伸ばした女の人だった。あの振る舞いから見て先輩だな。その人はこちらに気づくとツカツカとこちらに近づいてきた。そして私の目の前まで来て止まった。

 

 

?「貴方ですか?屋上で大きな音を出してたという生徒は?」

 

 

美久「へ?大きな音?」

 

 

?「ええ、先ほど一部の生徒から苦情が来たんですよ。屋上からうるさい音が聞こえていると。だからこうしてきてみたところ貴方がいたというわけです」

 

 

全然気づかなかったな...。とりあえずここは謝っておこう。

 

 

美久「えっと...すいません?」

 

 

?「くれぐれも今後はこのような事がないようにしてください。風紀が乱れることはよろしくありませんから。いいですね?」

 

 

美久「は、はい」

 

 

 

その先輩は、私に注意した後、屋上から出て行った。なんていうか少し怖そうな人だったな。

 

 

そのまま、残ってギターを弾くのは何というかまずい気がしたから今日はそのまま教室に戻ることにした。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

放課後、帰ろうとした時、スマホがなってるのを耳にしたため、画面を確認してみた。画面にはリサ姉の名前が出ていた。実はこの前会った時にリサ姉と電話番号とアドレスを交換しておいたんだ。でも電話をくれたのは今回が初めてだな?

 

 

美久「もしもし?」

 

 

リサ『あ、美久?今日って何か予定ある?』

 

 

美久「今日?ううん、特にないよ?」

 

 

リサ『今日さ、友希那がライブするんだ。よければ一緒に見に行かない?』

 

 

美久「ゆき姉が!?行く!」

 

 

リサ『じゃあこの前の公園の前で待ち合わせって事で』

 

 

美久「りょうかーい!」

 

 

ゆき姉のバンドメンバーを集めようとしてるけど、肝心のゆき姉の歌って聞いた事ないんだよね。いい機会だからどこまですごいのか聞きに行ってみよう!

 

私はウキウキしながら家に向かった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

リサ「ここだよ」

 

 

美久「ライブハウス【CIRCLE】か、ライブハウスなんていつ以来だろ?」

 

 

予定通り、リサ姉と合流した私はゆき姉がライブするライブハウス【CIRCLE】に来ていた。お兄ちゃんと美樹は用事があったため来れなかった。

 

 

リサ「今回は友希那の他にもいろんなバンドがライブするんだって。もしかしたらその中に良さそうな人がいたらスカウトしようって友希那言ってたけど...大丈夫かな?」

 

 

美久「その行動力はすごいね」

 

 

本当に音楽のためなら妥協しないんだな〜。本当にその情熱には感服するよ。

 

 

リサ「せっかくだし、他のバンドの演奏も見ていこうよ。来る機会あんまりないかもしれないし」

 

 

美久「うん!そうしよ!」

 

 

リサ「よし、じゃあ中に...あれ?あそこにいるのって?」

 

 

中に入ろうと入り口に向かってた時、なんか入り口の前で2人の女の子が揉めてる?いや、よく見ると、1人の紫色の髪をツインテールにした女の子がもう1人の黒髪ロングの髪をした大人しそうな女の子の手を掴んで中に入れようとしてる。何してるんだ?

 

 

美久「ねえリサ姉?あれ何なの?」

 

 

リサ「ごめん、ちょっと行ってくる。多分知り合いだから」

 

 

そう言って私から離れてその2人の所に向かったリサ姉。気になったから私も向かうことにした。

 

 

リサ「あこ〜?ここで何してんの?」

 

 

あこ「あれ?リサ姉!何でここにいるの?偶然だね〜!」

 

 

あこ、とリサ姉が呼んだ紫色の髪を持った女の子はリサ姉の知り合いだったらしい。

 

 

リサ「あたしは美久と一緒に友希那の歌を聞きに来たんだ〜」

 

 

あこ「美久?」

 

 

美久「それは私のことだよ」

 

 

あこ「わああっ!!?」

 

 

別に驚かせるつもりはなかったのにな。なんか悪いことしちゃったかな?

 

 

リサ「そんなに驚かなくていいのに。紹介するね、この子は池田美久。小さい頃、よく一緒に遊んでた仲だよ。まあいわゆる幼馴染ってやつ」

 

 

あこ「そ、そうなんだ。あ、さっきは驚いてすいませんでした!」

 

 

ペコっと頭を下げてきたあこちゃん。なんか可愛いな。

 

 

美久「いいって、そんなこと。それより名前教えて!」

 

 

あこ「はい!我の名は...この世界を統べる全ての堕天使の長、聖堕天使あこ姫なり!今宵は其方を禍へと誘おうぞ!」

 

 

うん、この子中二病だね。普通に断定できた。

 

 

?「あ...あこちゃん、そ、それじゃ... わからないと...思うよ?」

 

 

あこ「あ、ごめんなさい。いつもの癖でつい...」

 

 

美久「いや、面白かったからいいよ!」

 

 

本心でそう言ってる。何度見ても飽きなそう。というかもう一人の子、やっと喋ってくれた。

 

 

あこ「改めて、宇田川あこって言います。羽女の中等部3年生です。よろしくお願いします。池田さん!ほら、りんりんも挨拶しよ!」

 

 

りんりん?「む、無理だよ...私...人と話すのは...」

 

 

あこ「そんなこと言ってたらいつまで経っても変われないよ?りんりん!ほら、勇気出して!」

 

 

どうやらこのりんりんって子は人と話す事が苦手らしい。

 

 

りんりん?「え...えっ... と、し...白金...燐子...と言います。よ、よろしく...お願い...します」

 

 

美久「よろしく!燐子!」

 

 

私は手を差し出した。こういう子は握手する事で緊張が和らぐって聞いた事があるからやってみよ!でも手を取ってくれなかったら意味ないんだけどね。

 

 

燐子「え...えっと、よ...よろしく、お願い...しますね、池田さん」

 

 

でもそれは杞憂に終わった。燐子は一瞬戸惑ってたけど、最後は薄く笑顔を浮かべながら握手してくれた。何だか嬉しいな。

 

 

リサ「さて、自己紹介も済んだ事だし、さっさと中に入ろっか!早くしないと終わっちゃうから!」

 

 

リサ姉の号令のもと、私達は中に入った。いよいよ、ゆき姉の歌が聞けるんだ!楽しみ!

 

 

胸を躍らせながら私はCIRCLEの中に入った...。

 

 

 

 




はい、少し長めに書かせてもらいました。この回だけで一気にRoseliaのメンバーを出しました。いちいち喋り方を変えなくてはならないため疲れました。


次回はいよいよバンドメンバーが入ります!


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ゆき姉の歌は凄すぎる!!

前回のあらすじ

友希那のバンドメンバー集めを手伝うことにした美久達。だがそれは決して簡単な事ではなかった。誘っては断られる、そんな毎日を過ごしていた際に、リサから友希那のライブを見に行かないかと誘われた。美久はまだ聞いた事がない友希那の歌に興味を持ち、ライブハウス【CIRCLE】に向かうのだった。


CIRCLEの中は意外と広かった。今までライブハウスには何回か行ったことあったけど、ここまで広いライブハウスに来たのは久しぶりだな。

 

 

美久「(来たことは無かったけど、結構賑わってるんだね。)」

 

 

ドリンクチケットを貰って飲み物と交換してもらった後、私達はライブ会場に向かった。そこには既に結構な数のギャラリーが入っていた。

 

 

リサ「やっぱり人入るな〜。それだけ期待されてるってことだけど、そんな中で普通に歌ってる友希那はやっぱりすごいな〜」

 

 

美久「そんなにすごいんだ?」

 

 

リサ「うん。最近だと、友希那のことを【孤高の歌姫】って噂してる人もいるくらいだからね」

 

 

美久「へ〜、それならなおさら聞かないとだね!」

 

 

リサ姉の話でますますゆき姉の歌に興味が出てきた。そう思ってると、隣にいたあこちゃんが驚くことを口にした。

 

 

あこ「あこ、このライブが終わったら友希那さんにバンドに入れて欲しいって頼むんだ〜!」

 

 

美久&リサ「「はい!?」」

 

 

今、何って言った?バンドに入る?あこちゃんがゆき姉のバンドに?

 

 

美久「ちなみに何だけど、あこちゃんって何か楽器やってるの?」

 

 

あこ「はい、ドラムやってます!」

 

 

リサ「あこ、何で友希那のバンドに入ろうって思ったの?」

 

 

あこ「うん、実はね、あこって前からずっと友希那さんのファンだったんだ。初めて聞いたときからなんかこう...胸が...バーーンって感じになって一気にファンになったの!そんな時にさ、聞いちゃったんだ〜。友希那さんがバンドのメンバーを探してるって!友希那さんとバンドが組めるなんて夢みたいって思ったからさ、入りたいって思ったんだよね!」

 

 

す、すっごく単純な動機!でもらしいっていえばらしいな...。

 

 

リサ「あこらしい理由だね。でもさ、あの友希那はそう簡単に受け入れてくれるとは思えないよ?それでも頼むの?」

 

 

あこ「断られたら、入れてもらえるまで何度も頼みに行く!あこって意外と強情だから入れてもらえるまで諦めないんだから!」

 

 

すっごいなこの子。ゆき姉の実力を知っていてなおバンドに入りたいって言うんだ。

 

 

やっと見つけた...ゆき姉のバンドのメンバーが!

 

 

美久「()()!」

 

 

あこ「はい?」

 

 

美久「バンドに入るの、私も協力してあげる!何かあったら私を頼って!」

 

 

リサ「へ?美久、何言って...」

 

 

あこ「本当ですか!?ありがとうございます!美久さん!」

 

 

こうして、私はあこをバンドメンバーにするために協力することを決めた。

 

 

リサ「美久、いいの?あんなこと言っちゃって?」

 

 

美久「だーいじょうぶだって、心配しなくたっていいよ!それにリサ姉言ってたでしょ?助けて欲しいって」

 

 

リサ「!?美久...」

 

 

美久「でも、リサ姉にも手伝ってもらうからね!私だけじゃできないことだってあるんだから!」

 

 

何だかまた泣きそうな顔になってたから、ニカっと笑って答えてあげた。

 

 

リサ「ありがと、美久」

 

 

美久「どういたしましてー!」

 

 

話がひと段落したところで、今度こそライブに耳を傾けた。

 

 

今やってるのは4人のガールズバンドか...。演奏は悪く無いと思うけど、何だろう?

 

 

美久「(ギターの人以外、音に迫力がないと言うか面白味がないと言うか、パッとしない音なんだよね...)」

 

 

何と言うかギターの人の技術に他の人が追いついてない感じがする。ギターの人もなんかやりにくそうにしてるし。

 

 

そうこうしてる内に演奏が終わった。なんか釈然としない演奏だったな〜。

 

 

美久「でもなんかあのギターの人どこかで見覚えが...あ、次ゆき姉か」

 

 

次がゆき姉の番らしい。さ〜て、10年ぶりに聴くゆき姉の歌はどんなものかな?楽しみ!

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

あこ「友希那さん、やっぱり、超超超ちょ〜カッコ良かった!ね?りんりん!」

 

 

燐子「う、うん。私も...すっごく...感動した...」

 

 

2人ともゆき姉の歌を聴いて感動してるみたいだった。私もリサ姉もだけどね。ゆき姉の歌は凄かった。体の奥にまで透き通って来そうな歌声に、観客を魅了するゆき姉の存在感、それがマッチして私たちに響くようなすっごいライブになってた。これは想像以上だったな〜。でもやっぱり、リサ姉の言った通り、笑って歌っては無いね。

 

 

リサ「どうだった?久しぶりに聴く友希那の歌は?」

 

 

美久「凄かった!昔もすごくきれいな歌だって思ってたけど、まさかここまでなんて思ってなかった!サイッコーだね!欲を言えば、昔みたいに笑って歌って欲しかったけどね」

 

 

リサ「まあ、いつか、そうなるよ!それより、そろそろ出よっか!」

 

 

そう促されたから、私達はゆき姉を待つために、CIRCLEの外に出た。しばらくして、ゆき姉がCIRCLEの中から出てきた。でも、何故かもう一人、ゆき姉に付き添うようにして一緒に出てきた人がいた。

 

 

美久「(ゆき姉の隣の人って、さっき出てたバンドのギターの人?何で一緒に?...っと言うかちょっと待って?なんかあの人、どっかで見覚えが...)」

 

 

先輩「あら?貴方は確か屋上にいた...?」

 

 

美久「屋上?あっ!」

 

 

思い出したって言うか完全に忘れてた!この人今日、ギターのことで注意してきた学校の先輩だよ!っと言うかこの人、ギターやってたんだね。人は見かけに寄らないって言うけど、まさにその通りだね。

 

 

美久「き、今日はすいませんでした...」

 

 

先輩「いえ、反省しているならそれでいいです。次からは気をつけてくださいね」

 

 

美久「はい!」

 

 

うう...やっぱりこの先輩苦手...。先輩の苦手意識を改めて実感してると、ゆき姉が口を開いた。

 

 

友希那「来ていたのね。貴方達」

 

 

美久「うん!ゆき姉の歌が聴けるって聞いたから!でも凄かったよ!やっぱりゆき姉の歌は大好き!」

 

 

友希那「そう、ありがと」

 

 

ゆき姉らしい返答。恥ずかしがらなくてもいいのに。

 

 

リサ「そういえばさ、隣の子って誰?友希那の知り合い?」

 

 

私が言おうと思ってた事をリサ姉が代わりに言ってくれた。私もずっと気になってたんだよね。

 

 

友希那「彼女は氷川紗夜。私は彼女とバンドを組むことにしたわ」

 

 

美久、リサ、あこ「「「......」」」

 

 

友希那「?どうかしたの?」

 

 

一瞬何を言ってるのかわからなかった?でもちょっと経って意味を理解した時私たちは同時に...

 

 

美久、リサ、あこ「「「えええええーーーーー!!!!」」」

 

 

思いっきり叫んでいた...。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、とうとうRoseliaの一人目、紗夜さんが加入しました!ここからバンバン加入させていきますのでよろしくお願いします!

次回は、あこをRoseliaに加入させられたらって思っています。


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ゆき姉のバンド勧誘は突然すぎる!!

前回のあらすじ

友希那のライブを見に、CIRCLEに訪れた美久達。そこで聴かされた友希那の歌はその場にいるもの全てを魅了するような凄まじい歌だった。ライブの後、友希那の歌に感傷に浸っていると、何故か友希那が一人の女の人と共にCIRCLEから出てきた。どう言うことなのかと聞いたところ、友希那はその人とバンドを組むと宣言したのだった。



 

 

リサ「友希那、それってほんと!?」

 

 

驚いたままリサ姉が尋ねた。

 

 

友希那「ええ、紗夜は私と似たような方向性がある。それにギターの技術も申し分無いものだったわ。だからスカウトしたのよ」

 

 

美久「で、でもさ?氷川先輩ってバンド組んでるじゃないですか。そっちは良いんですか?」

 

 

紗夜「それに関しては問題ないわ。先ほど、バンドを脱退してきましたので」

 

 

美久「ええ!?なんで!?」

 

 

紗夜「どうもあの方達とはバンドに対する観点が違いすぎたようなので。先ほども私の事を仲間などと馴れ合いの仲間にしようとしたんです。そんな馴れ合い必要ないです。そんな暇があるのならばひたすら技術を高めるのが望ましいと思いますので。だから抜けたんです」

 

 

リサ、美久「「......」」

 

 

黙って最後まで氷川先輩の話を聞いてたけど、思ったことがある。この人、ゆき姉と考え方似てるな〜って。

 

 

友希那「そういえば、美久には前から言いたいことがあったんだったわ」

 

 

美久「ん?なに?」

 

 

その言い方だと怒ってるように聞こえるんだけど...何か気に触ること言ったかな?でもその考えは間違いだった。

 

 

友希那「美久、私と一緒に、バンドを組んでくれないかしら?」

 

 

美久「へ!?」

 

 

今、なに言われた?バンド?ゆき姉のバンドに?入れって!?そんな無茶苦茶な!周りを見るとリサ姉もあこも驚きすぎていて固まっていた。燐子は少し目を見開きながら驚いていた。

 

 

頭の中が混乱してきた。そりゃそうだろう。急にバンドにスカウトされたんだから。しかも相手はあのゆき姉だ。普通の人ならすぐさまオーケー出すだろうけど、私は入る気なんてまず無い。ゆき姉には悪いけどここは...

 

 

美久「私を選んでくれたのはすっごく嬉しいよ!ゆき姉!」

 

 

友希那「それなら...」

 

 

美久「でもごめん!私、どのバンドにも加入するつもりないんだ」

 

 

リサ「ええ!?なんで!?」

 

 

友希那「...理由を聞かせてもらえるかしら?」

 

 

ゆき姉は断られたのが意外だったのか少し驚いていたが、すぐに平常に戻り理由を聞いてきた。リサ姉もまさか断るとは思ってなかったんだろうね。信じられないって顔してる。ってか、この理由話すのも何度目だろ?

 

 

美久「私はね、別にバンドを組みたいから楽器やってるわけじゃないんだ。1人で好きな時に弾いて、好きな時にやめる。そうやって自由気ままに楽しく弾きたいから始めたんだよね。だから、バンドみたいに自分の時間が制限されたり、周りに気を遣わなきゃいけないようなグループには参加したくないの」

 

 

友希那「私たちは別に貴方の時間を制限するつもりはないわ。弾きたいときに弾けばいい。自由に弾いたって構わないから。だから考え直してくれないかしら?」

 

 

美久「メンバーにそんな自由を許すの?特別扱いするの?そんなことしたら他のメンバーはどう思う?何であの子だけ、みたいな空気になると思うよ?そうなったらバンドどころの話じゃなくなると思うけど?先に言っておくと、私は音楽に対してはゆき姉みたいに妥協しないんだ。私の信念を曲げるつもりも無い。だから私を入れてもプラスになんてならないよ!だからごめんね、ゆき姉」

 

 

いつもバンドに入るのを断るときに使うセリフ(...いや、今回はちょっとだけ盛ったかな?)を言って、最後にゆき姉に謝った。ゆき姉は少し難しい顔をしていた。リサ姉も氷川先輩も似たような顔をしていた。でも、そんな顔をすぐに変えさせてあげるよ!

 

 

そう心に決めると、今まで黙ってたあこを私の前に引っ張ってきた。あこは戸惑ってたけどこの際、気にしなかった。そしてこう言った。

 

 

美久「その代わりさ、このあこがバンドに入るから!私の推薦で!」

 

 

あこ「え!!?美久さん...」

 

 

最初は驚いてたあこだったけど、ライブが始まる前に私が言った事を思い出したのか、嬉しそうに微笑んできた。ほんとに笑った顔可愛いな〜。

 

 

友希那「......」

 

 

ゆき姉を見ると、私たちと初めて会ったときみたいにあこの事を品定めするような目でじっと観察していた。そして、観察が終わった後、ゆっくりとゆき姉が口を開いた。

 

 

友希那「貴方の名前を教えて?」

 

 

あこ「は、はい、宇田川あこって言います!」

 

 

友希那「担当パートは?」

 

 

あこ「ドラムです!」

 

 

友希那「ドラムを始めたのはいつから?」

 

 

あこ「中学1年生からです!」

 

 

その後もいくつもの質問をあこにしてきたゆき姉。10回くらいしたかな?

 

 

友希那「最後の質問よ。貴方は私のバンドに入ってなにを目指すの?」

 

 

あこ「はい!あこは、世界で2番目にかっこいいドラマーを目指したいと思ってます!」

 

 

友希那「... 2番目?」

 

 

あ、あこ、その答えはまずい気がする...。

 

 

あこ「はい!あこのお姉ちゃんもドラムをやってるんですけど、お姉ちゃんが1番かっこいいドラマーで、あこがお姉ちゃんみたいにかっこいいドラマーになるために2番目にかっこいいドラマーになるって言うのがあこの目指してる事です!」

 

 

言い切ったと満足そうな顔をしているあこ。満足そうなのはいいと思うけど、多分、今の答えだと...

 

 

友希那「わかったわ、ありがとう。結果を伝えるわ」

 

 

あこ「はい!」

 

 

友希那「不合格よ。美久の推薦だけど、あなたにはこのバンドのドラムは務まらないわ」

 

 

あこ「え!?」

 

 

まあ、そうなるよね。多分あこの言いたいことがゆき姉たちに伝わらなかったんだ。

 

 

ショックでその場から動けなくなってるあこの肩をそっと叩いてあげた。そして小声で言ってあげた。

 

 

美久「大丈夫。多分、あこの言いたいことがゆき姉たちに伝わらなかっただけだから。ちゃんと伝わればきっとゆき姉たちも許可してくれるって!頑張ろ?ね!」

 

 

あこ「は、はい...」

 

 

よし!っと肩をパンと叩いて再び前を向いた。

 

 

友希那「美久...今日は諦めるけど私はいつでも待ってるから。気が向いたらいつでも声をかけて頂戴、それじゃ...」

 

 

私が何か言う前にゆき姉は帰ってった。まあ気が変わることはないけど、何かあったら言ってもらいたいな。

 

 

リサ「なんか変な空気になっちゃったけど、とりあえず帰ろっか」

 

 

リサ姉の言う通り変な空気の状態のまま、私たちは帰路についた。その際、私は密かに心に決めた。

 

 

美久「(あことリサ姉にはなにが何でもバンドに入ってもらおう!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、あこが見事に撃沈しまして美久までバンドに誘われましたね!次回はどんなふうに書こうか考えています。
なぜリサ姉を加入させようとするのかは次回を見ていただければわかります!

次回はバンドに進展があるかも?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

断られた理由は単純すぎる!!

前回のあらすじ

友希那にバンドに誘われた美久だったが、本人は全くそんな気はないらしく、断った。代わりにあこをバンドに入れようと美久が試みるが友希那に断られてしまう。この後起こす美久の行動とは?


 

 

ゆき姉たちと別れた後、私は少し話があると言ってリサ姉とあこと一緒に近所の公園に来ていた。燐子には先に帰ってもらった。

 

 

リサ「それで美久、話って?」

 

 

美久「うん。ゆき姉のバンドメンバーについて何だけど...」

 

 

”バンドメンバー”という単語に一瞬あこが反応した気がするけど、気にしないことにした。

 

 

美久「私的にはそのメンバーにはあこはもちろん、リサ姉にも加わって欲しいな!」

 

 

あこ、リサ「「はい!?」」

 

 

案の定驚かれた。当たり前だよね。

 

 

リサ「ち、ちょっと待って、あこはわかるけど何で私なの?私なんて何も出来ないし...」

 

 

美久「嘘なくせに〜。リサ姉って今でもベース弾いてるんでしょ?何も出来ないことないって〜!」

 

 

あこ「ええ!?リサ姉、ベース弾けたの!?」

 

 

リサ「ど、どこでその事を...?」

 

 

美久「お母さんから聞いた!」

 

 

リサ姉がベースをやってたって知ったのはゆき姉のバンドメンバーを集めようと決めた2日前だった。あの後、お母さんが帰ってきて、どこに行ってたのか聞いたところ、リサママ(リサ姉のお母さん)ゆきママ(ゆき姉のお母さん)に会いに行ってたらしい。そのとき、話をしてたときに聞いてたらしい。リサ姉が今でも時々、ベースを弾いてる事を。それをお母さんから教えてもらったって知ったんだよね。

 

実はこのときからもう決めてたんだ〜。リサ姉にはバンドに入ってもらうって。

 

 

リサ「美久ママ(美久のお母さん)ったら余計な事を...」

 

 

美久「まあまあそんなことよりさ、リサ姉ってさ、前にゆき姉が心配だから傍にいてあげたいって言ってたよね?」

 

 

リサ「うん、言ったけど...?」

 

 

美久「だったらさ!リサ姉がバンドに入ればいつだってゆき姉の傍にいられるし、その時はもうただの幼馴染としてじゃなくて、バンドの仲間としてゆき姉を支えることができるよ?」

 

 

リサ「......」

 

 

押し黙っちゃったね。まあ考えてることは何となく理解できるけど。だからそんな考えを汲み取ってあげよう!

 

 

美久「そこで、ここからが本題ね!あこもしっかり聞いて!」

 

 

あこ「は、はい!」

 

 

2人の顔を見ながら私は言った。

 

 

美久「さっきあこには言ったけど、自分の気持ちを相手が分かってくれないと相手には響かないの。さっき、あこの気持ちが伝わらなかったのは多分”2番目”って言ったからだと思うけど...」

 

 

あこ「ええ!?何でですか?あこしっかり伝えたつもりでしたよ!?」

 

 

リサ「うん...多分だけど、友希那は頂点を目指してるからそんな1番を目指してないような子とは組めないって思ったんじゃないかな?」

 

 

あこ「あこ、そんなつもりなかったのに...」

 

 

リサ姉の言ってることが正しいね。私もさっき同じところに反応したんだから。でもそれは筋違いだよ?ゆき姉。

 

 

美久「あこにそんな気があったわけじゃないって事は知ってるよ?要はゆき姉は早とちりしたの」

 

 

リサ「どういう事?」

 

 

美久「さっき、あこは世界で2番目に()()()()()ドラマーになるってことしか言ってなかった。別にあこはバンドで頂点を目指してないって言ったわけじゃないんだよ。だから早とちりだって言ったの。そうでしょ?あこ」

 

 

あこ「はい、あこ、確かに2番目にかっこいいドラマーになりたいって言いましたけど、バンドでは友希那さんたちと一緒に大きなライブに出て1番になりたいって思ってます」

 

 

やっと本音が聞けたね。それなら後は簡単だ。

 

 

美久「話がそれちゃったけど、言うね。2日後、2人でゆき姉たちにセッションをお願いして?」

 

 

リサ、あこ「「え!?」」

 

 

何で?って顔してる。そうだね説明しないと。

 

 

美久「さっき、気持ちを伝えることが大事って言ったけど、何も全部が全部言葉だけで伝えられるものじゃないと思うんだよね」

 

 

あこ「じゃあどうやって伝えるんですか?」

 

 

美久「セッションお願いした時点でわからない?音楽で伝えるの!自分の音で今自分はこんな気持ちですって語りかけるの!目は口ほどに物を言うみたいに、音楽も言葉以上に気持ちを伝えることができるの!だから一度音を合わせてみて?きっと伝わると思うから!」

 

 

リサ、あこ「「......」」

 

 

美久「?どうしたの2人とも?」

 

 

あれ?なんか黙ってる?なんかわからないとこでもあったかな?

 

 

あこ「い、いえ...ただ何というか〜?」

 

 

リサ「うん...バンド入った事ない子が言うことにしては妙に説得力があるって言うか〜、ねえ、実はやっぱりバンドに入ってたってことは無い?」

 

 

美久「だから無いって〜!別に不思議じゃ無いでしょ?そんなの相手の気持ちになって考えれば簡単に出てくるって」

 

 

あこ、リサ「「そ、そうなんだ〜...」」

 

 

なんか最後は少しムッとしちゃったけど2人が理解してくれたならいいや。話が終わった後、帰る前に2人にゆき姉のバンドの曲の練習をしておくように釘を刺しておいて、今度こそほんとに帰路についた。

 

 

美久「(2日後が楽しみだ!頑張れ!2人とも!)」

 

 

 

 

 

 




はい、今回はほとんど3人の会話で終わってしまいましたが、次から長くなりそうなので区切らせてもらいました。

次回はついに4人のセッションが始まります!

お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初めてのセッションは神すぎる!!

前回のあらすじ

友希那のバンドに入るようリサとあこに勧めた美久。そしてバンドに入るには音楽で実力を示せばいいと美久は伝えた。その方法で友希那の許可が下りるのだろうか?


 

 

2日後、私達はまたゆき姉に頼みに行くために羽女に来ていた。と言っても2人は元々羽女で授業を受けてから来たから実質来たってのは私だけなんだけどね。今いるのは羽女の校門だ。

 

 

美久「2人ともちゃんと練習してきた?」

 

 

リサ「うん。ばっちり☆」

 

 

あこ「あこも今まで以上に頑張りました!」

 

 

美久「じゃ、後はやるだけだね!」

 

 

私が言った事をちゃんとやってきたかを確認して、ゆき姉のことを待った。

 

 

リサ「あ、友希那来た!」

 

 

数分後、ゆき姉が昇降口から出てくるのが見えた。そしてゆっくりとこっちに近づいてきた。

 

 

友希那「あら?あなたたち、どうしてここに?」

 

 

リサ「え、えっとね〜、あはは...」

 

 

なんかまだ心の準備が出来てなかったみたいで、リサ姉がしどろもどろになってた。仕方なく、あこから話して!って言う気持ちをこめて肘で軽くあこのことをこづいてあげた。

 

私の意図を察したのかあこが軽く頷いた。

 

 

あこ「友希那さん!何度でも言います!バンドに入らせてください!」

 

 

友希那「...また貴方?何度も言わせないで。あなたとはバンドは組まない。以上よ」

 

 

そのまま立ち去ろうとするゆき姉。私が引き止めてもいいんだけどそれだと意味がない気がするんだよね。だってバンドに入りたいのはリサ姉とあこなんだし、部外者な私は本来関わっちゃいけない。私ができることはやったんだし、後は2人に任せよう!

 

そう決め、私は2人を見守ることに決めた。リサ姉も私が考えてることに気づいたみたいだ。ここが正念場だよ!2人とも!

 

 

リサ「待って、友希那。それはさ、演奏を聞いてからでも遅くはないんじゃないかな?」

 

 

友希那「何を言ってるのリサ?そんなことしたって時間の無駄よ。頂点を目指してないドラマーの音なんてたかが知れてるわ」

 

 

あこ「演奏を聞いてもいないのにそんなこと言わないでください!演奏を聞いてもらえれば分かってもらえます!あこのドラムがどんな音なのか!お願いします友希那さん!一緒にセッションしてください!それでだめでしたら諦めますので!だから!」

 

 

友希那「......」

 

 

ゆき姉は少し考え始めた。もう一押しってとこかな?まあ、一押しくらいならいいよね?そう思って私はスッと前に出た。

 

 

美久「ゆき姉、私からも頼むよ。あこはこの日のために一生懸命ドラムの練習してきたの。ゆき姉のバンドに入るためにね。ゆき姉のためにここまでしてくれるドラマーはいないと思うよ?だからせめて、演奏はさせてあげて欲しいな。お願い!」

 

 

友希那「美久......分かったわ。でも一度だけよ?それで駄目だったら諦めてもらうわ」

 

 

あこ「!!!ありがとうございます!」

 

 

とりあえず、何とかセッションしてくれることになったか。よかった!あ、そういえばリサ姉はまだセッションしたいってゆき姉に言ってな-----

 

 

友希那「リサ、悪いんだけど付き合って、セッションの時にベースを弾いてもらいたいの。できるかしら?」

 

 

リサ「え!?あ、うん!もちろんいいよ!」

 

 

どうやらそれは省かれたみたい。ゆき姉のあの様子だと、ゆきママにでも聞いてたかな?

 

 

私達はセッションするためにCIRCLEに向かった。成功するといいな!

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

CIRCLEに着いた時、既に氷川先輩も来ていた。ゆき姉に事情を聞かされ、少し難しい顔をしてたけど、最後には納得してくれた。その後、私達はスタジオに入って準備をした。無論私も手伝った。

 

 

紗夜「今井さん?でしたよね?あなた、ベースを弾くのにその指のネイルはどうかと思いますが?」

 

 

リサ「ああ、それなら大丈夫☆あたし、指弾きしないから」

 

 

私も思ってたな〜。リサ姉あのネイルしたまま演奏するかと思ってたけど流石にそんなことしないよね。

 

 

友希那「それじゃ、いくわよ!」

 

 

セッションが始まった。そして始まって少し経ってから私を含めて全員が気づいた。

 

 

”音がシンクロしている”と。

 

 

友希那「(...!!何?この感じ!?)」

 

 

紗夜「(見えない何かの力に引っ張られて...指が勝手に...)」

 

 

リサ「(あたし、この前ようやく弾き始めたばかりだって言うのに、思ってたより...?)」

 

 

あこ「(練習の時よりうまく叩けてる気がする....って、あれ?何だろ?この不思議な感覚?)」

 

 

美久「(みんなの音が一つに纏まってる。何かに沿って全員が一つになって演奏してる。これがゆき姉たちのバンドの音か...いいね!)」

 

 

そして夢のような時間が終わった。ゆき姉はあことリサ姉の方を向いた。

 

 

友希那「あこ、合格よ。これからあなたは私のバンドのドラムよ」

 

 

あこ「いやったああーーー!!!」

 

 

あこが大はしゃぎした。よかったね、あこ!

 

 

友希那「紗夜も異存はないわね?」

 

 

紗夜「ええ...私も同意見です。ただ...その...」

 

 

あこ「なんか凄かった!友希那さんたちとは初めて合わせたのに勝手に手が動いて!!」

 

 

リサ「!あたしも...。あこもそう思ったんだ!なんか、なんかいい演奏だったよね!......ってことは2人も?」

 

 

リサ姉がゆき姉と氷川先輩に問いかけた。多分答えは......

 

 

紗夜「ええ......これは......」

 

 

友希那「その場所、曲、機材......メンバー。技術やコンディションではない、その時、その瞬間にしか揃い得ない状況下でだけ奏でることができる『音』......」

 

 

紗夜「バンドの...醍醐味とでも言うのかしら、ミュージシャンの誰もが体験できるものではない......雑誌のインタビューで見たことがあったけど、まさか......」

 

 

”キセキの音”、多分今演奏したのはそれが出たのかも知れない。私も雑誌で見たことがある。選ばれた人間、運命に結ばれた人同士が音を重ねることで、今まで自分が出せなかった信じられないような音が出せるようになるのだとか。それはまるで何か不思議な力がメンバーを引っ張っていってるように感じるらしい。

 

 

あこ「なんか、それって”キセキ”みたい!」

 

 

リサ「うん!マジックって感じ♪」

 

 

マジックって......それは言い過ぎな気もするけど...。

 

 

紗夜「その言い方は肯定できないけれど......でも、そうね。皆さん貴重な体験をありがとう。後はベースとキーボードのメンバーさえいれば......」

 

 

あこ「ベースならここにリサ姉がいますよ?」

 

 

リサ「ええ!?でもあたし、みんなより演奏下手だし、みんなに迷惑かけるかもだし......」

 

 

リサ姉...あれだけ入るって意気込んでたのに...。

 

 

紗夜「今井さんは湊さんの幼馴染で友達として、あくまで宇田川さんのオーディションに付き合うために弾いただけですよね?」

 

 

あこ「でも、バンドメンバー探してるんですよね?さっきだってすっごくいい演奏ができたのに、どうしてメンバーにしないんですか......?」

 

 

そうそう!あこ、もっと言って、もっと言って!

 

 

友希那「そうね......確かに技術面で見てもまだバンドのメンバーとしては認められないわ」

 

 

リサ「!あ......そ、そりゃそうだよね、あはは......」

 

 

ゆき姉の辛辣な言葉に顔が暗くなったリサ姉。なんとかしてあげたいけどな〜。

 

 

友希那「ただ......足りないところはあるけど、それでも先ほどのセッションは良かった。......それは紗夜も認めるでしょう?」

 

 

紗夜「私は......!今の曲に関してはよかったですが......」

 

 

あこ「ならバンド組もうよ!この4人で!」

 

 

友希那「......」

 

 

リサ「え......マジで!?」

 

 

ゆき姉は何か考えていたがすぐに考えがまとまったらしく顔をあげた。

 

 

友希那「いいわ。この4人でバンドを組みましょう」

 

 

あこ「やったああーーー!!」

 

 

リサ「まあ、なんだかんだ言って入れたからいいとしますか!」

 

 

紗夜「湊さんが良いのであれば私は特に......」

 

 

どうやら無事に成功したみたい。よかったねリサ姉。あこ。さて、この後バンド内で話し合いもあるだろうから私はさっさと出よ......

 

 

友希那「美久?どこへ行くの?まだあなたの感想を聞いてないわ」

 

 

美久「......」

 

 

私が帰れるのはもう少し先になるかな...あはは。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、あことリサのメンバー加入が決まりました!残すは燐子のみとなります。この後の展開をどうしようか悩んでます。

次回は美久の感想と燐子のことについてです。


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

私が入った演奏は酷すぎる...

前回のあらすじ

友希那とセッションをすることになったあことリサ。そこで奏でられたのは誰しもが奏でられるものではないキセキの音だった。それを実感した友希那はあことリサのバンド加入を認めるのだった。


 

 

 

 

美久「私の感想も一緒かな?みんなが一つにまとまって演奏出来てて、こっちまで痺れてくるようなすっごい演奏だった!」

 

 

友希那「美久もそう感じたらしいわね。それならよかったわ」

 

 

感想を求められたため、軽く私が思ったことを伝えてみた。ゆき姉はそれで満足したみたいで、少し頬を緩めていた。久しぶりに見たなぁ、あの顔。

 

 

紗夜「そういえば、池田さんは今日何故ここに?バンドに入るためではないのでしょう?」

 

 

美久「私はただの付き添いですよ。リサ姉とあこには少し手助けもしましたし、ちゃんとバンドに入る瞬間を見ておきたいなって思ったので!」

 

 

紗夜「そうですか...それならいいのですが...」

 

 

氷川先輩も納得したことだし、そろそろ帰ろ......

 

 

友希那「美久、せっかくスタジオに来たのだから少し演奏していったらどうかしら?」

 

 

あこ「そうですよ!せっかく来たのに何もしないで帰るなんて勿体無いですよ!あこ、美久さんの演奏聴いてみたいです!」

 

 

......せっかく帰れるかと思ったのに...ちょっとリサ姉に助けを......。

 

 

そうしてリサ姉の方に視線を向けるが、何故かリサ姉は苦笑いをして両手を合わせて【ごめんね】というポーズをしてきた。

 

 

美久「で、でも私の演奏なんてそうでもないよ?趣味程度で弾いてるくらいだし、氷川先輩もそんな人の演奏聴きたくないですよね?」

 

 

一縷の望みを掛けて氷川先輩に訴えかけた。だが......

 

 

紗夜「私も貴方の演奏には興味があります。湊さんが認める貴方の技術が知れるチャンスですから」

 

 

美久「......」

 

 

もうやるしかないね。しょうがない、腹を決めよう。

 

 

美久「分かった。やる。で?何が聴きたいの?」

 

 

友希那「じゃあ、キーボードを...」

 

 

美久「りょーかい。ちょっと準備するから待ってて!」

 

 

準備するために私は荷物を置いて、キーボードを借りに行った。ここで借りるのは初めてだね。サクラじゃないのがちょっとあれだけど......。

 

 

私がキーボードを借りに行ってる間、スタジオ内では......

 

 

紗夜「湊さん、先ほどの池田さんの言い方ですと、彼女はキーボード以外のパートも弾けるということですか?」

 

 

あこ「それ!あこも気になりました!美久さんってどれだけ弾けるんですか?」

 

 

友希那「あの子はバンドの楽器全てをこなすことが出来るわ。この前はベースを聞かせてもらったわ」

 

 

リサ「そうそう!あの時の美久の演奏はマジでヤバかったよ!あたしも友希那も衝撃的すぎて演奏終わったの気付かなかったぐらいだもん!」

 

 

紗夜「それは...とても興味深いわね...」

 

 

そんなことを話し合ってた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

美久「さて!準備オーケーっと!そっちはもう始めてもいい感じかな?」

 

 

準備を終え、ゆき姉たちに確認をとった。

 

 

友希那「ええ、いいわ。始めて」

 

 

美久「よし!じゃ!行くよ!」

 

 

自分で自分に掛け声をかけて、私はキーボードに指を踊らせた。サクラじゃないけど意外と問題無かった。弾く曲は『そばかす』。結構気に入ってる曲だからよく演奏してる曲。いつもの私のペースで、激しくだけど、すっごく楽しく、Enjoyしながら演奏した。

 

 

美久「(やっぱり、音楽ってのはこうでなくちゃね!)」

 

 

その調子のまま、私は最後まで演奏を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

美久「ふ〜〜!やっぱり楽しいね〜!」

 

 

演奏を終えて、1人楽しさに興奮してると、ふと視線が気になった。もちろん、ゆき姉達の視線が...。

 

 

美久「ん?どうしたの?」

 

 

友希那「いえ......やっぱり貴方を諦めるのは惜しいと思っていただけよ...」

 

 

紗夜「はい、これは想像以上でしたね。湊さんが認めるのも納得だわ...」

 

 

あこ「あこもそう思います!なんかこう...目覚めし闇の力が神来を解き放ち......えっと...なんかこう...バーンってなってましたよ!」

 

 

リサ「あはは!あこ〜それじゃわからないって!でもあたしも改めて実感したな〜。美久ってすっごいミュージシャンだってことが!」

 

 

みんなそれぞれ思ったことを言ってくれた。そのほとんどが私のことを褒めるようなことばっかりだったけど...。

 

 

友希那「美久、少しお願いがあるのだけどいいかしら?」

 

 

美久「バンドに入れってお願い以外だったらいいよ!」

 

 

友希那「一緒にセッションをお願いしてもらってもいいかしら?私たち4人と」

 

 

3人「「「!!!」」」

 

 

3人同時に驚いていた。そりゃそうだ。

 

 

美久「いいけど?何で?」

 

 

友希那「もしかしたら、貴方とやってみればまた何か掴めるような気がしたの。だからお願いできるかしら?」

 

 

美久「ん〜、でも多分、ゆき姉の考えてるみたいなことにはならないと思うけど、いいよ!やろう!みんなもそれでいい?」

 

 

他の3人に確認を取り、みんな了承してくれたから、さっさと準備にとりかかった。

 

 

友希那「じゃあ、行くわよ!」

 

 

さっきと同じ掛け声で演奏が始まった。結果はわかっていたことだけど、さっきのキセキの音は一度も奏でられる事は無かった。原因は私だね。完全に。

 

 

美久「ね、やっぱりこうなったでしょ?やっぱり私はこのバンドには相応しくないよ」

 

 

友希那「そうは思えないけど...でも何故かしら?さっきの演奏と比べると美久の演奏が...」

 

 

私の演奏がどうかしたのかな?

 

 

紗夜「ええ、私も同意見です。池田さんの演奏が先ほどよりも迫力に欠けていました」

 

 

あこ「はい...あこもそう思いました...」

 

 

リサ「美久...何か隠してない?何か問題があったら言ってよ?」

 

 

美久「いや、だから単純な話だって。私の演奏はゆき姉のバンドには合わない。それだけだよ」

 

 

本当は理由知ってるんだけど、ここでいう必要ないよね。だから私は黙ってた。

 

 

美久「だからさ、私以外のキーボードの子見つけなよ!それじゃ!」

 

 

リサ「あ!ちょっと美久!?」

 

 

後ろでリサ姉が何か言った気がしたけど聞かなかったことにして私はスタジオを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、と言うわけで美久はRoseliaに相応しくないと自分で言い放ち、バンドには入らないと言う展開にして見ました。その理由は次の話で明らかになります。

次回はその理由について書けたらと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

美久は仲間思いすぎる!!

前回のあらすじ

友希那の頼みで4人と一緒にセッションすることになった美久。だが、美久が加わった演奏はキセキの音とは到底呼べるものでは無かった。そして、自分以外のキーボードの子を探すように釘を刺し、美久はスタジオを後にするのだった。


 

ーーView Change リサーー

 

 

あたしとあこがバンドに加入することになって数日経った。あの日からあたしは少し考え事をしてる。美久がセッションした時のあたし達の音について考えてたんだ。何で4人の時は良かったのに美久が入った途端にダメになっちゃったんだろ?それがわからなかった。

 

 

リサ「(美久は自分の音があたし達の音に合ってないって言ってたけど、そんなことないよ。美久の音はあたし達にもしっかり響いてた。合ってないわけじゃない。じゃあ...何で?)」

 

 

いまだに答えに辿り着けずにいると、あこから動画が送られてきた。多分、前セッションした時、隠れて撮影してたんだね。動画は3つ送られてきた。

 

 

リサ「えっと...これはあたし達のセッションの動画でこれは、美久の演奏の時のか......やっぱりこの美久、迫力が違うね〜。実際、あたし達みんな痺れてたもんね。それで最後は......5人でセッションした時のか......やっぱり音が違う。美久の演奏も迫力に欠けてる...何でだろ?」

 

 

この動画を見ても何であたし達と美久の演奏が噛み合わないのかわからなかった。でもそんな時、あたしにいい考えが浮かんだんだ!

 

 

リサ「もしかしたら、()()()たちなら......」

 

 

あたしはすぐにその子達のところに向かった。これで何かわかればいいけど...。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

蓮「それで?」

 

 

美樹「あたし達に話って?」

 

 

リサ「うん、それはね......」

 

 

あたしが向かったのは美久の兄妹の蓮と美樹の家だった。さっき、家に美久がいるかって聞いた時、ちょうど出かけてるって聞いたから飛んで来たんだ。全ては2人に会って、この動画の演奏のことをどう見るか聞いてみたかったからだ。

2人なら、もしかしたら何が原因か分かるかもしれない。そう思った。

 

 

そして、今に至る。2人に来た理由を話したところ快くいいと言ってくれた。2人は本当に優しいな〜。

 

 

リサ「これなんだけど......」

 

 

セッションした時の動画を2人に見せた直後、2人はすぐに何かわかったみたいに、なるほど〜、ってな感じの顔をした。

 

 

リサ「何かわかったの?」

 

 

美樹「わかったって言うか......やっぱりおねーちゃんだな〜って思って」

 

 

蓮「あいつのことだからそんなこったろうと思ってたがやっぱりそうか」

 

 

2人だけ納得した空気になってる...。あたしにも教えてもらいたいな...。

 

 

リサ「どう言うことなの?」

 

 

美樹「うん。リサ姉たちはさ、おねーちゃんが一人で演奏した時はすごいって思ったんだよね?で、セッションした時はそうは感じなかった...」

 

 

リサ「うん、そうだけど?」

 

 

美樹「それはね、おねーちゃんがみんなのレベルに合わせて演奏してたからだよ。演奏を乱さないために」

 

 

リサ「!.....え?」

 

 

美樹「おねーちゃんは一度見れば、そのバンドがどのくらいのレベルの演奏をしてるかって大体わかるの。だから、もし自分がサポートに入る時は、自分で割り出したそのバンドと同等レベルの演奏をして、その場を凌いでいたの」

 

 

どう言うこと?つまりそれって?

 

 

蓮「つまりだ。最初にお前らが聴いたのが美久の本当の『音』で、お前らと一緒に演奏した時に聴いた美久の『音』は半分くらいの力で出したものだったってことだ。要はお前らが合わせやすいように演奏してたんだよ。美久は」

 

 

リサ「うそ...そんなことって」

 

 

美樹「嘘じゃないよ、リサ姉。もう一度動画を見てみ?1人で演奏してる時とセッションしてる時のおねーちゃんに決定的な違いがあるの。何だと思う?」

 

 

何って言われても...こう見ても大して差なんて......ん?あっ......。

 

 

蓮「気づいたか?」

 

 

リサ「...うん」

 

 

あたしは気づいた。いや、気づかされちゃったかな?美久の”決定的な違い”に。

 

 

リサ「美久...あたし達と演奏してる時、()()()()()()()()......」

 

 

そう、笑ってないんだ。1人の時は太陽みたいな笑顔を見せながら楽しそうに演奏してるのに、まるで演奏がつまらないっと言ってるみたいに冷たい顔になってた。

 

 

美樹「これでわかった?リサ姉達とおねーちゃんの音が合わないわけが?」

 

 

リサ「...うん」

 

 

蓮「バンドってのは全員が一つになって100%の力を出すことで、そのバンドだけの音が出る。お前ら4人がそれになりつつあるってことだ。だが、1人でも全力で演奏してないと、音がぶれる。リズムもおかしくなる」

 

 

美樹「だったらおねーちゃんが本気でやればいいじゃんって思うんだけど、そうすると余計に音がバラバラになっちゃうんだ。おねーちゃん、多分それがわかってて、周りに合わせてるんだと思う。おねーちゃんああ見えて、他人のことすっごく心配するから、リミッターを外して、周りを無視して演奏する事はないと思うよ」

 

 

美久ってば、そんなこと考えてたんだ...。あたしって、美久の幼馴染なのに全然分かってあげてなかった。

 

 

蓮「俺たちから言えるのはこれぐらいだな。後はお前達の行動次第だ。ま、でもあいつのことだから、全部伝えたとしてもバンドには入らねーと思うけどな」

 

 

美樹「今までどんなバンドにだって入らなかったんだからね〜。だから、バンドとは違った形で関わり合えばいいんじゃないの?」

 

 

2人なりに応援してくれてるんだろうな...。ありがと。2人とも。

 

 

リサ「2人とも、ありがと!じゃああたし行くから!お邪魔しました!!」

 

 

みんなにこのことを伝えるためにあたしは外に出た。連絡を入れようとスマホを取り出すと、画面に数分前にメッセージが届いたと出ていた。開いてみると、その内容は意外なものだった。

 

 

リサ「燐子が......オーディション?」

 

 

内容は燐子がバンドのオーディシィンを受けるからCIRCLEに来てと言う友希那の呼び出しだった。

 

 

 

 

 

 

 




はい、また少しシリアスな展開となりました。多分ですけど、美久はそこまで深く考えてないと思います。本人もわかってたと言ってましたので。


次回は燐子がいよいよRoseliaに?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

教えるのは楽しすぎる!!

前回のあらすじ

美久と4人の演奏が合わなかった原因を探るために、美樹と蓮の家に向かったリサ。そこで2人に、美久は4人に合わせるためにレベルを落として演奏していたと明かされた。その真実を知ったリサは、他の3人に伝えるために外に出たが、その際に、燐子がオーディションを受けることを聞かされて...?


 

ーーView Change 美久ーー

 

 

美久「ふ〜〜、今日も楽しかったな〜!」

 

 

夕方、私は家に戻っていた。今日は香澄達に楽器を教える約束をしていたから、学校が終わった後、そのまま香澄達と一緒に有咲(前から市ヶ谷さんのことは名前で呼んでいる)の家の蔵に行った。

 

 

美久「それにしても、おたえってほんとギター上手いな〜。まあ、小学生から弾いてたんだから、当たり前って言ったら当たり前か。教えること特に無いんじゃ無いかな?」

 

 

おたえって言うのは、この前、香澄達のバンドに新しく入ることになった、花園たえちゃんのこと。みんなおたえって呼んでるから私もそう呼んでる。その子ってば、ギター凄くうまくて、それにすっごく面白い子だったんだよね!つい最近だって......

 

 

たえ「美久〜、昨日ギター教えてくれたお礼に、このキャベツあげるね〜」

 

 

美久「あはは、お礼に備え付けのキャベツか〜、おたえって結構面白いね〜」

 

 

有咲「おたえもおたえだが......そのノリに対応できてる美久もヤベーな...」

 

 

ってなことがあったんだよね。いわゆる天然キャラなのかな?おたえって?

 

 

美久「最近は楽しいことばっかでいいな〜、教えるのもなんか楽しいって思えてるし、なんか新しく楽しいこと見つけちゃったな〜!」

 

 

教えることが楽しいって思えるようになったのは、香澄達に教えるようになってから。最初は成り行きで教えることになっちゃったって思ってたけど、今では教えるために蔵に行くのが楽しみになってた。

 

 

美久「さ〜て!遅くなっちゃあれだし、さっさとかえ......ん?」

 

 

帰ろうとしたけど、スマホが鳴ったから立ち止まった。

 

 

美久「メッセージ、ゆき姉?」

 

 

メッセージの差出人はゆき姉だった。珍しいな...?

 

 

美久「なになに?『今すぐCIRCLEに来て』?...それだけ!?」

 

 

ゆき姉ったら...珍しく連絡してきたと思ったら、用件だけなんだもんな〜。まあ、いいんだけどね。

 

 

美久「それにしても、会うのあの時のセッションの時以来か〜。あの時はちょっと悪いことしちゃったけど、みんな許してくれるかな〜?」

 

 

セッションから2日経ったけど、あれから4人とは連絡のやり取りはしてない。あんなことがあったからね。でもなんで急に?

 

 

 

美久「細かいことはいいや!とりあえず、CIRCLEに行こ!」

 

 

深く考えるのは嫌いだから、私は考えることをやめてCIRCLEに向かった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

美久「来たよー」

 

 

CIRCLEについた私は、中の人にゆき姉達のいるスタジオを教えてもらった。

 

 

友希那「美久、ごめんなさい。急に呼び出したりして」

 

 

美久「別に大丈夫だよ。それで?4人勢揃いで何を......ってあれ?なんで燐子が一緒にいるの?」

 

 

スタジオにいたのはゆき姉、リサ姉、氷川先輩、あこ、そして...燐子。この5人だった。最初の4人は分かるけど、燐子がいるのは何で?

 

 

燐子「え...えっと...私は...その...えっと...」

 

 

友希那「それは私から話すわ」

 

 

そう言ってゆき姉はこうなった経緯を話し始めた。話をまとめるとこうだったみたい。きっかけはあこがネットで燐子とやりとりしてる時に、燐子がピアノを習っていたってことがわかって、だったらバンドに入らないかと燐子を誘ったことらしい。最初は萎縮してたみたいだけど、燐子もあこ同様、ゆき姉の歌を聞いてファンになってたらしく、結局、オーディションを受けることになったみたい。

 

 

美久「ーーそれで今に至るってことか〜。何だかすごいことになってきたね」

 

 

リサ「そうそう。あたしも連絡受けた時は何事かって思ったよ〜」

 

 

紗夜「私も同感です。そう言ったことは一度相談してもらわないと...こちらとしても準備というものがありますから」

 

 

...なんかそれぞれ愚痴り始めた。みんなも急だったんだね...。

 

 

あこ「でもよかったね!りんりん!オーディション受けさせてくれて!」

 

 

燐子「う...うん。し...正直、断られるかと...思った」

 

 

友希那「キーボードができると聞いたからよ。もし、ダメだったら、バンドに入るのは諦めて頂戴。いいわね?」

 

 

燐子「は...はい!」

 

 

どうやら気持ちは固まったみたいだね。ってことは今回私が呼ばれた理由も多分...。

 

 

美久「んじゃ、私は演奏を見させてもらうね。どんな演奏だったか外野からも聞きたいでしょ?」

 

 

友希那「ええ、お願いするわ」

 

 

こうして、私はまた演奏を見ることになった。燐子がゆき姉のバンドにあってるのか、見極めようか!

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、ここから長くなりそうなんで短いですが区切らせてもらいました。

次回はいよいよ燐子、Roselia加入へ!

お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Roseliaの誕生は感激すぎる!!

前回のあらすじ

突然友希那からCIRCLEに呼び出された美久。美久が向かうと、そこには友希那、紗夜、リサ、あこ、そして燐子の5人の姿があった。友希那に訳を聞くと、燐子のオーディションをするから曲を聞いて欲しいというわけらしい。何か歩に落ちないが、大人しく燐子を入れた5人の演奏に耳を傾ける美久だった。


 

 

5人の演奏が終わった。演奏の感想は1つしかなかった。っていうかそれで十分!

 

 

美久「(何となくというか薄々感づいてたけど、やっぱり出たね、”キセキの音”が!)」

 

 

そう。出たの!”キセキの音”が!私が入った時と違って燐子の演奏は、リズムも呼吸も初めて合わせたとは思えないくらいにみんなと合ってたし、音がぶれることも無かった。まさに完璧な演奏!まだ荒削りなところもあるけど、この先もっと練習すればもっと伸びる!私はこの時そう思った。

 

 

美久「(ゆき姉、よかったね!これでメンバーは揃ったよ!)」

 

 

そう思ったのは、私だけじゃ無かったみたいで、5人とも前の4人で演奏した時と同じ顔をしていた。多分気づいたんだね。この5人で”キセキの音”が出せたことが...。

 

 

友希那「今の演奏...この前と同じ...」

 

 

紗夜「前の時よりもさらに自在に指が動いて...」

 

 

リサ「うん...なんかヤバかった...」

 

 

あこ「すごいすごーーい!これってまたキセキが起こったってことですよね!?」

 

 

燐子「私も...こんなに楽しく...弾けたのは...初めてです...」

 

 

その後、一悶着?あって、燐子のバンド入りが決まった。これで5人揃った。ここからスタートするのか...ゆき姉たちの戦いが...。

 

無事にやること全部を終わらせて、みんなに帰ろうと促そうとしたんだけど、先にゆき姉が口を挟んだから出来なかった。

 

 

友希那「美久...今日は来てくれてありがとう。あなたの意見、とても参考になったわ」

 

 

美久「そう?それならよかった」

 

 

私の意見でも参考になったらよかった。...なんか心がポカポカしてきた。

 

 

美久「じゃあそろそろ帰ろーよ。遅くなっちゃうし」

 

 

リサ「ちょっと待って美久!」

 

 

美久「?」

 

 

何故かリサ姉に呼び止められた。するとみんなが私の前に1列に並んで立った。ん?何、この光景?この光景に私が疑問を抱いている中、ゆっくりとゆき姉が口を開いた。

 

 

友希那「今日あなたを呼んだのは演奏を聞いてもらうためでもあったのだけれど、実は...もう1つあったの」

 

 

美久「ん?何かな?」

 

 

一応確認して見たけど、見当はついてるな〜。

 

 

友希那「先日のセッションの時に私たちがした行いについてよ」

 

 

やっぱりね。

 

 

美久「うん」

 

 

友希那「リサから聞いたわ、あなた、私たちの演奏が崩れないように演奏レベルを私たちに合わせて演奏していたんですって?」

 

 

美久「リサ姉知ってたんだ?」

 

 

リサ「蓮と美樹に聞いたんだ...。動画を見たらあの2人すぐに美久の演奏がおかしいことに気がついて...」

 

 

美久「まあ、2人とはよく一緒にセッションしてるからね。私の音がわかるんだね、多分」

 

 

この分だと他の4人も知ってるな。兄妹だから許すけど、だからってそんな簡単に話すってどうなんだろ?そんな愚痴をここにはいない兄妹たちに呟いてると、突然、私には信じられないことが起こった。それは...

 

 

友希那「あなたに辛いことをさせてしまったわ。あの時気づけなくて...ごめんなさい」

 

 

...ゆき姉が頭を下げたことだった。びっくりしてものも言えなかった。でもすぐに平静に戻ったからゆき姉に言った。

 

 

美久「ゆき姉、顔上げて?私、別にあの時辛いって思ってないよ?」

 

 

友希那「え......?」

 

 

ゆっくりとゆき姉が顔を上げた。

 

 

美久「確かにあの時はみんなの演奏に合わせて演奏しなくちゃいけないって思ってて気が進まなかったよ?」

 

 

友希那「...っ!だったら...」

 

 

美久「でも辛くは無かったよ?だって、”キセキの音”を出せたバンドと一緒に演奏できたんだから!むしろ楽しかったよ!」

 

 

そう私が言った途端、5人とも驚愕の顔をした。みんなったら...そんなに私が辛そうに見えたの?

 

 

リサ「た、楽しかったって...でも動画見る限り笑ってるようには見えないけど?」

 

 

ああ、なるほど、それが原因だっだわけね。

 

 

美久「ごめんごめん先に言っておけばよかったね。私って誰かと一緒に演奏する時って、周りに合わせることに集中しすぎちゃってそんな顔になっちゃうんだ。だから笑ってないからって辛いなんてことないよ」

 

 

リサ「そ、そうだったんだ...よかった...」

 

 

どうやら納得してくれたみたいだね。みんな安心した顔になった。みんな早とちりが過ぎるって、私、そんな事で塞ぎ込んだりしないから。

 

 

美久「でもこれで5人揃ったね。あ、そう言えばさ?ゆき姉」

 

 

友希那「なに?」

 

 

美久「バンドの名前ってどうするの?せっかくバンドが完成したんだから名前がないと悲しくない?」

 

 

あこ「あ、そう言えばそうだった!」

 

 

これからどんな名前でライブする気だったの?こんな調子で大丈夫なのかって思ってたけどそれは心配なさそうだった。

 

 

友希那「バンド名なら既に考えてきてるわ」

 

 

リサ「へ〜、どんな名前?」

 

 

友希那「......Roseliaよ」

 

 

Roseliaか...。どんな意味でつけたんだろ?

 

 

友希那「薔薇のRoseと椿のCameliaを1つにまとめて見たの。簡単に言えばこのRoseliaが持つ意味は”青薔薇”。私たちにぴったりだと思ったからこの名前にしたの。.......どうかしら?」

 

 

あこ「Roselia...カッコいい!あこはRoseliaでいいと思います!りんりんは!?」

 

 

燐子「私も...凄く...いい名前だと...思います」

 

 

紗夜「私も賛成です。青薔薇の花言葉は確か...『奇跡』。湊さんも随分と縁起のいい名前にしましたね...」

 

 

リサ「奇跡か〜、私たちにとってぴったりな名前じゃん♪私もさんせー!」

 

 

みんな気に入ったみたい。ゆき姉、よかったね。暖かい目でゆき姉の方を見ていると、目線で、「あなたはどう?」と語ってきた。だから私は「うん!いいと思う!」とお返しとばかりに目で言ってやった。理解したのか、ゆき姉はまた4人の方を見た。そして言った。

 

 

友希那「今日から私たちはRoseliaよ。この5人で頂点を目指しましょう!」

 

 

リサ「うん!」

 

 

紗夜「はい」

 

 

あこ「はい!」

 

 

燐子「は... はい...」

 

 

こうしてここにRoseliaという新たなバンドが誕生した。その瞬間を見れた私はすっごく幸運だね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、第2章完結でございます。皆さんいかがでしたでしょうか?ここからRoseliaは苦難の連続になるのですが、一旦Roseliaの話は区切らせてもらいます。このまま行くとしばらくほかのバンドの子と絡めなさそうなので...。

次回から第3章に入っていきます。次に関わるのはどのバンドか!?


それは次回までお楽しみに、です!


それでは次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3章 パスパレのアイドルへの道
初ライブが大失敗すぎる!!


前回のあらすじ

燐子のバンド加入が決まり、友希那のバンドメンバー探しは終了となった。新たにRoseliaとバンド名を決め、友希那、紗夜、リサ、あこ、燐子の5人は新たなるスタートを切ったのだった。


 

 

 

Roseliaの結成から2日経った。あれからバンドの方針を話し合ったらしい。まぁ、そこまで肩入れするつもりはなかったから、その場にはいなかったけどね。一応何かあったら力になるとは言っておいたけど。ま、しばらくは問題ないでしょ!

 

 

美久「さて、特に用事もないし、どうするお兄ちゃん?」

 

 

蓮「どうって言われてもな...とりあえず散歩か?」

 

 

美久「ま、それもたまには良いかもね」

 

 

今日は日曜日だからお兄ちゃんと出かけてたんだけど、特にあてもなく出ちゃったから行くとこに迷ってた。で、今は適当に周辺をブラブラしてた。そんな時、1つのポスターが目に入った。

 

 

美久「お兄ちゃん、これなんだろ?Pastel...Palettes?」

 

 

目に入ったのは1つのアイドルグループのポスターだった。ただ、普通のアイドルとは少し違っていた。何故なら...

 

 

蓮「全員、楽器を持ってるな。いわゆるアイドルバンドってやつか?」

 

 

そう。楽器持ってるんだよね。アイドルがバンドやるっていうのも珍しいことだね。この子たち見る限り私たちと同じくらいの歳だし。最近やたらとガールズバンドに関わってる気がするな〜。

 

 

美久「今日この近くのホールでデビューライブするみたい。気になるし行ってみない?」

 

 

蓮「そうだな、行くとこも特に無いし、暇つぶしにはなるだろ」

 

 

美久「じゃあ決まり!早く行こ!」

 

 

こうして私たちはそのアイドルバンドの演奏を見るために近所のホールに向かった。この後、まさかあんなことが起こるなんて思いもしなかったけどね。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

近所のホールは初めて来たけど意外と大きかった。多分定員1000人ってところかな?

 

 

美久「こういうライブに来るのっていつ以来だっけ?」

 

 

蓮「俺もそこまで詳しくは覚えてねーよ。覚えてるっつったら俺が中一のときに行ったライブくらいだな」

 

 

美久「そんな前だったんだ〜。なんか久々で楽しみ!」

 

 

ライブとかそう言った類のものはあまりうちは行ったことがないんだ。何故かライブっていうのが昔は好きになれなかったからだ。今はそうでもないけど。そう思っていると、入り口が開いた。入場できるらしい。

 

 

蓮「中に入れるみたいだな。チケット入り口で見せれば良いんだっけか?」

 

 

美久「うん。早く行こ!」

 

 

ゾロゾロと観客が入っていく中、私たちもそれに連れ立って中に入った。

 

 

 

 

中にはすでに百単位ほどの人が入っていた。やっぱり想像以上にでかいな〜ここって。ライブにはまだ時間があったから、時間になるまで私たちは、中の売店とかに行って時間を潰した。

 

 

ライブの時間になり、戻ってきた私たちはステージに注目した。ステージに出てきたのはポスターに載ってた5人の女の子だった。その中の1人のピンク色の髪をした女の子がMCをし始めた。

 

 

ピンク髪の女の子「皆さ〜ん!今日は私たちの初ライブに来てくださってありがとうございます!私たち...」

 

 

5人「「「「「Pastel*Palettes(パステルパレット)です!」」」」」

 

 

ピンク髪の女の子「まずは1曲聴いてください!『しゅわりん☆どり〜みん!』」

 

 

演奏が始まった。演奏はまあまあってとこ。アイドルにしては結構上手いかな?...でもなんだろ?なんかこの演奏、違和感を感じる...。そう思ったのは私だけじゃなかったみたい。

 

 

蓮「美久、なんかあいつらの演奏変じゃないか?なんていうか...演奏してる指とか音とかがなんか出てる音となんかずれてるように見えるっていうか...」

 

 

美久「うん。変だよね...」

 

 

お兄ちゃんの言う通り、彼女たちの演奏にはその場で出せるような音が出せてない。と言うかそもそも出しているのか?と思いたくなるくらいだ。その疑問が尽きないまま曲が終盤に入った。だがそこで私たちの疑問の理由が明らかになった。その理由は...。

 

 

蓮「!演奏が......止まった?」

 

 

美久「やっぱりそう言うことだったんだね」

 

 

急に彼女達の演奏が止まった。しかもとても不自然な止まり方だ。およそ、その場で演奏してるバンドの止まり方ではなかった。つまり...。

 

 

蓮「これは問題だな...アテフリとか...」

 

 

それはバンドマンとしては絶対にやってはいけないことだ。だってその場で実際に演奏してないんだから。事前で録っておいた曲で観客を騙すなんてバンドマンとして失格だと思う。多分、それは彼女達が言い出したことではないと思うけどね。大方、事務所の上の人にでもそうやれって言われたんだろうな〜。

 

 

ベースの女の子「機材トラブルが発生しましたので少々お待ちください!」

 

 

ベースの子がそう言ってたが、周りの人はすでに感づいていた。これがアテフリだと言うことに。気がつくと観客達からは罵声とブーイングが起こっていた。そりゃそうなるよね...。

 

 

結局その後は演奏続行不可能となったため、そのままライブも中止になった。私たちはなんか後味が悪いまま帰路についていた。

 

 

美久「あの子達大丈夫かな〜?」

 

 

蓮「大丈夫ではないだろ。あんだけ盛大にやらかしたんだから。しばらく活動はないかもしれないな」

 

 

なんか彼女達が心配になり、家に帰るまでの間、終始彼女達のことを心配する私だった。

 

 

 

 

 

 




はい、パスパレ編突入です。いきなり初ライブの話に入りました。ここからどう絡ませるか考えてます。

次回はメンバーの誰かと絡ませます!


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

急に現れた先輩は面白すぎる!?

前回のあらすじ

あるアイドルバンドのライブがあると聞いてホール会場にやってきた美久と蓮。だが、そこで行われた演奏はアテレコという前代未聞な演奏とは言えない代物だった。美久は周りから非難されていたそのアイドルバンド、パステルパレットの身を案じるが...?


美久「あちゃ〜、やっぱりこうなるよね〜...」

 

 

翌日、学校帰りに私は本屋に立ち寄っていた。ちょっと見たい雑誌を買おうとしたんだけど、その最中に見つけちゃったんだよね。()()アイドルバンドが載ってる雑誌を。しかも載ってるって言っても悪い方の意味でだ。

 

 

美久「『パスパレの演奏は嘘!?』『アテフリバンド』『事務所の意向か?』こうしてみてみるとすっごいこと書かれてるな〜。まあ結構期待も大きかったみたいだし、それにあんな大きな会場であんな醜態晒したらこうなることは避けられないよね...」

 

 

散々言われててちょっとパスパレ(Pastel*Palettesの略)のことがかわいそうに思えてきた。そう思いながらもそろそろ雑誌を買って帰りたいと思ったから雑誌を置こうとした。そんな時だった。

 

 

?「あれ〜?それってあたし達の雑誌じゃん!見てくれてるんだ〜!」

 

 

美久「ん?」

 

 

後ろから急に声をかけられた。振り返ってみると、そこにはライトグリーンの髪を耳のところで三つ編みにしてて、とても可愛げな女の子が立っていた。見るとその人は羽女の制服を着てた。羽女の生徒らしいね。

 

 

美久「はい、見てましたけど...ってあれ?あなたって確かパスパレにいた...?」

 

 

?「そうそう!パスパレのギター担当の氷川日菜!よろしく〜!」

 

 

美久「そうですか...あなたが...」

 

 

あのアテフリバンドの...とは言わないことにした。さすがに本人の前で言うのはまずいから。でも違うことならいいよね?そう自分で決め、日菜さんに質問した。

 

 

美久「日菜さん、私あのデビューライブの時、その場にいたんですけど、アテフリと言うのは上の人が決めたんですよね?あなた達が独自の判断でアテフリをしようなどとは言わなそうだったので」

 

 

日菜「あはは!まあその通りなんだけどね。あたし達も最初は自分達で演奏した方がいいってスタッフさんに話したんだけどさ、時間とかが間に合いそうにないからって却下されちゃったんだよね」

 

 

美久「やっぱりそうですよね...私は正直言って、その判断は間違ってると思いますね」

 

 

少し、怒気を込めて言っちゃったな...。別に日菜さん達が悪いわけじゃないのに。そう少し反省してると、日菜さんが...。

 

 

日菜「あたしもそう思うよ?だってあの時全然、るんっ!ってしなかったもん!」

 

 

美久「るん...るんって何ですか?」

 

 

普通に聞き返しちゃった。るんってほんとになに?

 

 

日菜「るんはるんだよ!それよりもさ名前教えてよ!その制服、花女のでしょ?近いからもしかしたらまた会うかもしれないからさ!」

 

 

簡単に流された...。まあいっか。

 

 

美久「池田美久です。花女の1年生です。日菜さんは2年生ですか?」

 

 

日菜「うんそうだよ!美久ちゃんか〜、よろしくね!」

 

 

その場で握手した。羽女に知り合いができるのってゆき姉とリサ姉抜いて初めてじゃないかな?

 

 

日菜「そう言えばさ〜、美久ちゃんが背負ってる楽器ってギター?」

 

 

美久「?はい、そうですけど?」

 

 

日菜「バンドとかってやってたりするの?」

 

 

随分とぐいぐいくるなこの人...何と言うか香澄に近いな...。

 

 

美久「いえ、いつも学校で弾くために持ってってるだけなんで。バンドには入ってないですよ。1人で弾く方が好きなんで」

 

 

日菜「そっか〜。ねえねえ!良ければギター聴かせてよ!今日は何の予定もないから暇なんだ〜」

 

 

唐突にそんなことを言ってきた日菜さん。まあ、聴かせるぶんには構わないんだけどね。でもその前に...。

 

 

美久「いいですよ!ただ、ちょっと待っててもらっていいですか?欲しい雑誌があるので」

 

 

日菜「わかった!じゃあお店の外で待ってるね〜!」

 

 

とりあえず、目当ての雑誌を確保するために一旦日菜さんを店の外に出した。そして買い終わった後、私たちは近くの公園に向かった。その間はひたすら日菜さんに質問されまくってた。楽しかったけどね。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

美久「ふ〜〜、どうでしたか?」

 

 

公園につき、いつものようにギターを演奏した。ここ最近はよく人の前で演奏するな〜。

 

 

日菜「サイッコー!すっごくるんっ!てきた!」

 

 

美久「そうですか、ならよかったです」

 

 

るんっ!についてはこの際流すことにした。聞いても無駄な気がしたから。

 

 

日菜「特にさっきのギターをギュイイーーンってやったとことか、ジャガジャーンって弦鳴らしたとこ!どうやってたの?」

 

 

あ、今のは何となくわかった。だからとりあえず教えることにした。もはやあれが分かるようになっちゃったら、なんか怖いもん無しな気がしてきた。実際、香澄のキラキラドキドキも最近少しずつ理解できるようになってきてるし。そして大方教え終わった後、日菜さんが言った。

 

 

日菜「美久ちゃんってギターもうまいけど教え方も上手だね〜!うちの事務所の先生より上手かもよ?」

 

 

美久「そうですか?そう言ってもらうとすっごく嬉しいです!」

 

 

そこは謙遜せずに素直に喜んだ。一回謙遜したら、お兄ちゃんにすっごく怒られたから。

 

 

日菜「何でそんなに教え方うまいのかな?さっき、学校でギター弾いてるって聞いたけど、それとカンケーある?」

 

 

美久「特にないです。学校でギター弾いてるのは楽しいからですし、それにギターだけじゃなくてベースも弾いてます。教え方がうまいってのは多分日頃からいろんな子に楽器を教えてるからかもしれません」

 

 

日菜「へ〜、美久ちゃんってベースも弾けるんだ〜。なんかすごいね!美久ちゃんって!」

 

 

美久「それだけじゃないですよ?ドラムもキーボードもできます!」

 

 

日菜「すっごーい!美久ちゃんって本当に凄い!るるるんっ!てきた!」

 

 

おー、”る”の数が増えた。相当凄いって感じたみたい。そんなこんなでしばらく日菜さんと会話に夢中になってるとスマホがなった。お母さんからのメッセージだった。見ると、『早く帰ってきなさい』とあった。確かにそろそろ帰らないと心配させちゃう。そう思い、私はベンチから腰をあげた。

 

 

美久「ごめんなさい、日菜さん。私そろそろ帰らないとなので...」

 

 

日菜「ああ本当だ、結構時間経っちゃってたね。それじゃ帰ろっか!」

 

 

そのまま、途中まで日菜さんと一緒に帰った。日菜さん...始めは少しめんどくさい人だなって思ったけど、意外と話しやすくて良い人だってわかったから今はそうは思わないな。

 

 

 

美久「それじゃ、私はこれで」

 

 

日菜「うん!じゃあね〜!」

 

 

分かれ道になったため、そこで私たちは別れた。日菜さん、また会えたら良いな〜。その思いに胸を膨らませながら私は帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回はここで終了になります。日菜ちゃんと遂に絡みました。ここからどんな展開になるのか楽しみです。


次回はパスパレにもう少し踏み込めたらと思います。


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パスパレの今後は未確定すぎる!!

前回のあらすじ

雑誌を買おうと本屋を訪れていた美久は偶然そこでパスパレの日菜と会った。そこで2人は意気投合し、美久は日菜にギターを聞かせて欲しいと頼まれ、近くの公園で聴かせた。それによって美久の実力を知った日菜はさらに美久に興味を示すようになった...。


 

 

ーーView Change 日菜ーー

 

 

 

美久ちゃんと会った次の日、学校の後、事務所で今後のパスパレの活動について話があるって言ってたからあたしは今、事務所の会議室にいるの。

 

 

?「うぅ〜〜、もしパスパレ解散!だなんて言われたらどうしよ〜」

 

 

日菜「あはは!彩ちゃん大袈裟だって〜!いくら何でもそんな簡単には解散はしないよ」

 

 

この今にも緊張しすぎて倒れちゃいそうになってるのはボーカルの丸山彩ちゃん。このパスパレのリーダー!ダンスとか何度やってもなかなか出来なくて、何で出来ないのかあたしにはわからないんだけど、彩ちゃんってすっごく面白いんだよね!前だってMCの練習してた時に何度も噛んでたし、特に『よろひくお願いしましゅ!』は傑作だったな〜!

 

 

?「日菜ちゃんの言う通りよ、彩ちゃん。まだ始まったばかりなのだし、ここで解散にしても事務所としてもなにも利益はないわ。だから今は待ちましょう?」

 

 

この子はベースの白鷺千聖ちゃん。しっかりしてて、彩ちゃんがまとめきれないとこはいつも千聖ちゃんがまとめてくれてるかな。まあ簡単に言うとサブリーダーみたいな感じかな?実は千聖ちゃんって昔から子役として活躍してて、今も女優業をこなしてるんだって。

 

 

?「そうですよ!アヤさん!パスパレはまだ始まったばかりです。失敗は成功のもとと言いますし、この失敗を糧にして次につなげましょう!まさにブシドーです!」

 

 

この子はキーボードの若宮イヴちゃん。ブシドーが口癖でいつも日本のいろんなとこに興味持ってるみたい。フィンランドから日本の侍に憧れて来たみたいで、よく木刀を持って来てるんだよね〜!それがイヴちゃんのよくわからないとこで面白いとこなんだよね!

 

 

?「イヴさん...ことわざの使い方はあっていたっスけど、最後のブシドーはいらなかった気が...」

 

 

最後にこの子はドラムの大和麻耶ちゃん。しっかりはしてるんだけど、機械の話になるとめちゃくちゃ話始めるんだよね!実は麻耶ちゃんって、最初は正式なパスパレの一員じゃなくて、サポートとして最初は入ってたんだよね。でもドラムの子が見つからなかったのと、千聖ちゃんが麻耶ちゃんのことをスタッフさんに薦めたこともあって、結局麻耶ちゃんはパスパレに正式に加わることになったんだ〜。

 

ちなみにあたしはギター担当で、事務所に入ったのは暇つぶしで、オーディション受けて受かっちゃったからパスパレに入ることになったんだけどね。あたし昔から一度見れば大抵のことはすぐに出来ちゃうからさ〜。だから新しいこと初めてもすぐに飽きちゃうんだよね〜。だから今回もすぐに飽きちゃうのかな〜?

 

 

それからあたし達は数分、会議室でスタッフさんがくるのを待ってた。それで数分後、やっとスタッフさんが来た。

 

 

事務所スタッフ「お待たせしました。それでは今後のパスパレの方針について説明します」

 

 

ゴクリっ... 。誰かの喉の音が鳴った。多分彩ちゃんだね。

 

 

事務所スタッフ「まず、この前お話しした通り、今後予定されてたイベント等は全てキャンセルになりました」

 

 

千聖「はい、これ以上醜態をさらさないためにもその判断は正しかったと」

 

 

事務所スタッフ「その原因となった機材のトラブルについては今でも原因を探ってる状態です。なので今後も、もしかするとこう言ったトラブルが起こるかもしれません。なので皆さんには、今後こう言ったトラブルに対応できるように、楽器の練習をしてもらいます。レッスンの先生には知らせておきますので明日、レッスンスタジオに来てください。それでは以上です」

 

 

へ〜、ライブ前までは演奏の練習なんかしなくていいって言ってたのに、今度は練習しろか〜。なんかるんっ!ってしないな〜。そんな理不尽なことを言われて、イヴちゃんと彩ちゃんが少しスタッフさんのこと睨んでたけど、結局なにも言えなくてそのまま説明が終わってスタッフさんが出て行っちゃった。それで、どうしようかってみんなで話し合おうとしたんだけど、なんか外でスタッフさんが慌てた様子で誰かと話してるのが聞こえたんだよね。聞こえて来たのは、『予定が重なって来れない?そこを何とか!』って言うふうに聞こえたんだよね。それからすぐに、またスタッフさんが入って来た。

 

 

事務所スタッフ「も、申し訳ございません!何かの手違いでレッスンの先生が来れないと連絡を受けまして...」

 

 

彩、イヴ、麻耶「「「えええ!!!」」」

 

 

3人がすっごく大きな声で叫んだ。3人ともさっきのドア越しの会話聞こえてなかったんだ〜。

 

 

千聖「それではどうするのですか?先生なしでは楽器を練習することは難しいですよ?」

 

 

事務所スタッフ「今から探しますので少しお待ちください...」

 

 

そう言ってスタッフさんはまたどこかに電話をかけ始めた。でもこんな時にパスパレの先生なんて見つかるのかな〜?あんなことあったし、そんな楽器を弾ける先生なんて......あれ?

 

 

日菜「そういえば!」

 

 

彩「どうかしたの?日菜ちゃん?」

 

 

あたしはふと()()()の顔が浮かんだ!先生って()()でもオーケーかな?

あたしは確認するためにスタッフさんに聞いてみることにした。

 

 

日菜「ねーねー!その先生ってあたし達に楽器教えられるんならどんな人でもいいの?」

 

 

事務所スタッフ「どんな人というわけでは...その先生が私たちの水準に合った技量を持ってなければお断りさせていただくこともありますが...」

 

 

日菜「ああ、それなら大丈夫!あの子すっごく上手だし教えることも上手だから!」

 

 

事務所スタッフ「日菜さんがそこまでいうのであれば......分かりました。では明日、その方と一緒に事務所にお越しください」

 

 

日菜「わーい!ありがとー!」

 

 

これであの子に教えてもらえるね!嬉しー!1人で喜んでると、他のみんながあたしのとこに寄って来た。

 

 

彩「日菜ちゃん、その先生ってどんな人なの?怖い人かな?」

 

 

日菜「あはは!怖くないよ〜!大丈夫!あたし達と同じ女子高生だから!」

 

 

千聖「女子高生?私たちと同年代ってこと?本当にその子に教える力があるのかしら?」

 

 

イヴ「でも、その人、とっても気になりますね。ヒナさんが推薦するんですから!」

 

 

麻耶「ジブンもそう思うっス!ジブンらと同年代なら、どれだけの技量があるのか楽しみなので!」

 

 

みんな納得してくれたみたいだね!よかった。

 

 

それからあたしはスマホで”昨日登録したばかりの名前”にコールした。

 

 

 

 

 

 

 




はい、パスパレ勢揃いしました。Roseliaの時と違って最初から全員揃ってるので出会いとか書かなくていいので書きやすいです。


次回は美久がパスパレの先生になる?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

突然の連行は怖すぎる!!

前回のあらすじ

事務所で今後のパスパレの方針を聞いたパスパレ5人。そこで聞かされたのは楽器の練習、ミスへの対処など、今までとは全く逆とも取れるような方針だった。5人はそれぞれ不快感を覚えていたが、それしか手がないと悟ったため、素直に従うことに。だが、急遽楽器を教えてもらうことになってた先生が来れなくなり、日菜はとっさにある人へ連絡を入れるのだった...。


 

 

ーーView Change 美久ーー

 

 

 

美久「それで?今日はどこに連れてくつもりですか?」

 

 

日菜「それは行ってからのお楽しみに〜!」

 

 

今私は、日菜さんに連れられて何処かに向かってる。ことの発端は昨日の日菜さんからの電話だった。

 

 

ーー昨日ーー

 

 

美久「もしもし?」

 

 

日菜『あ、美久ちゃん?』

 

 

美久「日菜さん?どうかしました?」

 

 

日菜『うん!明日、学校が終わったら羽女まで来て!時間厳守ね!じゃあね!』

 

 

美久「...きられた。何だったんだ?」

 

 

ーー現在ーー

 

 

という何とも一方的に約束を決め込まれて、今に至るってわけ。どこに行くのかも教えないなんて、ほんと日菜さんらしいっていうかなんていうか...。この際諦めて大人しくヒナさんについていくことにした。

 

 

 

日菜「着いたよ〜!ここだよ!」

 

 

美久「着いたって...ここは?」

 

 

到着したところはすっごく立派な大きな建物だった。

 

 

日菜「あたし達の事務所だよ!」

 

 

美久「へ〜事務所か〜......事務所!?何で!?」

 

 

何で私が事務所に連れてこられるんだ〜?意味がわからない!頭の中が混乱してると、日菜さんに腕を掴まれた。

 

 

日菜「細かいことはいいから〜!早く入ろ!スタッフさん待ってるから!」

 

 

美久「す、スタッフ!?何が何だか...ってか日菜さん!そんなに引っ張らないでください〜〜!!」

 

 

訳もわからないまま、私は日菜さんに事務所の中に連れ込まれ...いや、拉致られた。私一体何されるんだ〜?

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

日菜「スタッフさーん!連れて来たよ〜!」

 

 

日菜さんに連れられ、私たちは一つの部屋の中に入った。そこにいたのはスタッフと呼ばれた1人の女性の人がいた。

 

 

事務所スタッフ「日菜さん、お待ちしてました。その方が日菜さんの言っていた先生をしてもらう方ですか?」

 

 

日菜「そうそう!美久ちゃんっていうんだ〜!」

 

 

せ...先生?もはや何が何だか...せめて何か説明を...。すると、私の様子に気づいたのか、スタッフの人が声をかけて来た。

 

 

事務所スタッフ「失礼ですが、もしかして日菜さん...何も説明してないまま連れて来たのですか?」

 

 

日菜「ああ、そういえば何で事務所に行くのか話してなかった。ごめんね!美久ちゃん」

 

 

美久「いえ...大丈夫です」

 

 

もはや開き直った方が楽だと思ったから、このことは水に流すことに決めた。冷静になり、平常を取り戻した私はどういうことなのかスタッフさんに聞いてみた。

 

 

事務所スタッフ「実はーーー」

 

 

それから私は事情を知った。パスパレは今後演奏の練習を本格的にやることと、その為に呼んだ楽器の先生が急遽来れなくなったことなど。その他にもいろいろ聞いた。それで何となく悟った。

 

 

美久「つまり、その先生がしばらく来れないから、誰か呼ぼうとしたけど誰も予定が空いてなかった。だから日菜さんが私を呼んだってことですか?」

 

 

事務所スタッフ「すいませんが、そういうことになります...」

 

 

やっぱりね...。だったらせめて説明くらいしてもいいのに〜、っと日菜さんの方を一瞥したけど日菜さんは意に介してもなく、ニヤニヤしていた。

 

 

事務所スタッフ「申し遅れました。私、Pastel*Palettesのスタッフ兼マネージャーをしております、篠田と申します」

 

 

美久「池田美久です。よろしくお願いします」

 

 

相手が丁寧だからこっちも丁寧に挨拶した。

 

 

美久「それで篠田さん、こんな知らない女子高生なんかにパスパレの指導を任せてもいいんですか?」

 

 

篠田「言いわけではありません。やはり指導してもらうならそれなりの技術を持った人にしてもらいたいですから。ですので、テストさせてください」

 

 

美久「テスト?」

 

 

篠田「はい、これからスタジオに向かいます。そこで軽く楽器を演奏してもらいます。その演奏技術が我々の水準を超えていれば、指導は貴方に任せます」

 

 

そんな事でいいんだ〜。もっと指導者としての力を示せ!みたいなこと言われるのかと思ってたけど。でも仮にこれでパスパレにも楽器教えることになったら、一体私って何人の子に教えてることになってるんだろ?

 

 

日菜「美久ちゃんならよゆーだよ!それなら早く行こーよ〜!」

 

 

日菜さんから促されたこともあり、私たちは足早に事務所のレッスンスタジオに向かった。スタジオの中にはすでに楽器が置いてあり、いかにもバンドに力を入れてる事務所だって分かるくらいだった。何からやろうか迷ったけど今日はマリー持って来てたから、やっぱり最初は...。

 

 

美久「それじゃあ、とりあえずベースは持って来てるのでベースでお願いします!」

 

 

ベースでいくことにした!

 

 

篠田「分かりました。それではお願いします」

 

 

始めていいという合図が出たから、その場でチューニングをした後、私は軽く演奏した。いつもみたいに楽しくね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠田「す... すごい...」

 

 

日菜「やっぱり美久ちゃんってすっごいね〜!るんっ!ってきた!」

 

 

1分ほどの演奏を終えて、2人をみると、篠田さんは驚いて口をパクパクさせていた。日菜さんは前ギター聞かせてあげた時みたいな顔になってた。こういうの見ると、なんかもっとこうさせたいって欲が出てくるんだよね〜。私も美樹のこと言えないな〜。

 

 

美久「どうします?他のも見たいですか?」

 

 

そう言った途端、篠田さんの目がさらに見開いた!なんか魚みたい。

 

 

篠田「え!?他の楽器も弾けるのですか?」

 

 

日菜「美久ちゃん、全部の楽器弾けるんだって〜。すごいよね〜!」

 

 

いやすごいって...日菜さんギターとベースしか聴いてないよね?

 

 

そう日菜さんに心の中で突っ込んでると、篠田さんが口を開いた。

 

 

篠田「いえ、もう結構です。あなたの実力は十分わかりましたので...」

 

 

日菜「ってことは〜?」

 

 

篠田さんが私の方を見て答えた。そしてゆっくりと頭を下げて来た。

 

 

篠田「池田美久さん、どうかPastel*Palettesに力を貸してください!」

 

 

マネージャーさんにここまでされたら断れるものも断れないよね。まあしょうがない!私も腹決めますか!そうして私は篠田さんと日菜さんの方を見て言った。

 

 

美久「わかりました!私で良ければ力になりましょう!」

 

 

今日から私は、臨時でパスパレの指導者になることが決まった。さて...今後どうなることやら...。

 

 

 

 




はい、今回は終了です!美久のパスパレの先生就任が決定しました。これからガンガンメンバーと絡ませていくのでよろしくお願いします!

次回は、パスパレの4人とご対面です!

お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パスパレの5人は個性的すぎる!!

前回のあらすじ

日菜に何も知らされずに事務所に来させられた美久。戸惑うも、状況を理解した後は腹を決め、パスパレの臨時の楽器の指導者になるために事務所のスタッフ、篠田と、日菜の目の前で演奏することになった。演奏後、美久の実力を認めた篠田と日菜は改めて、美久にパスパレの指導者をお願いするのだった。


 

私のパスパレ指導が決まった後、篠田さんと日菜さんが他の4人がいる会議室に挨拶を兼ねて行く、と言ってきたため、私は2人の後ろを付いて行った。

 

 

篠田「ここです。私達が呼んだら入って来てください」

 

 

美久「わかりました」

 

 

日菜「みんなどんな反応するかな〜?特に彩ちゃんが楽しみかな〜!」

 

 

全くこの人は...。彩さん大丈夫かな〜?そうこう思ってるうちに篠田さんが中に入ってった。日菜さんもそれに連れ立って中に入った。

 

 

篠田「皆さん、お疲れ様です。先日話しました、レッスンの先生についてはやはり予定により、しばらく来ることが出来ないとのことです」

 

 

彩「それじゃあ、練習の方はどうなるんですか!?」

 

 

千聖「彩ちゃん...とりあえず落ち着きましょう?スタッフさんが喋れないわ」

 

 

先生が来ることが出来ないことを聞いた途端、彩さんが焦った様子で篠田さんに問いかけていた。まあ、後が無いってわかってるからなおさらだよね。

 

 

篠田「それについては大変申し訳ありませんでした。ですが、代わりに臨時としてですが先生をお呼びしておりますのでご安心を...」

 

 

イヴ「それって昨日ヒナさんがおっしゃっていた、ワタシ達と同年代の先生ですか?」

 

 

日菜「そういうこと!っというわけで、美久ちゃん!入って来て〜!」

 

 

呼ばれたため、ゆっくりと私は中に入った。そして篠田さんの隣に立った。

 

 

篠田「この方が今回から先生が来るまでの間、臨時として楽器の指導をしていただく先生になります。それでは美久さん。自己紹介をお願いします」

 

 

自己紹介を促されたけど、4人とも私のことずっと見てるな〜。そりゃそうか。自分たちとほぼ同い年の子に教わるだなんて普通はあまり考えないよね。しかもパスパレの未来がかかってるこんな時に。

 

 

まあ、とりあえず挨拶しておこう。私は一歩前に出た。

 

 

美久「本日から臨時として皆さんの指導をさせていただくことになりました、池田美久と言います。よろしくお願いします」

 

 

軽く礼をした。すると、その後5人から拍手を贈られた。どうやら認めてくれたみたいだね。よかった。

 

 

篠田「美久さんは今日ここに来たばかりでわからないこともあるでしょうから、皆さん美久さんにいろいろ教えてあげてください。それでは、早速スタジオに向かってください。私は譜面等を取りに行って来ますので、先に出させてもらいます。それでは失礼します」

 

 

そうして篠田さんは会議室を出て行った。残ったのは私とパスパレの5人。日菜さん以外は初対面なこともあって、みんな私に興味を持ってくれてるみたい。すると、彩さんが話しかけて来た。

 

 

彩「えっと、美久ちゃんだっけ?よろしくね!私は彩、丸山彩だよ〜!」

 

 

なんか変なポーズしてるけど、触れるとめんどくさくなりそうだから触れないことにした。

 

 

美久「よろしくお願いします。彩さん」

 

 

千聖「白鷺千聖よ。美久ちゃんでいいわね?貴方、花女の生徒だったのね。私と同じよ」

 

 

美久「そうなんですか?千聖さんと一緒は嬉しいですね」

 

 

次に声をかけて来たのはベースの千聖さんだった。やっぱり雰囲気が違うな〜。なんかこれぞ女優って感じの雰囲気が出てる。

 

 

イヴ「こんにちは!ミクさん!若宮イヴです!今後ともどうかオミ知りゆきを!」

 

 

美久「よろしくお願いしますイヴさん。こちらこそ!」

 

 

その次はキーボードのイヴさん。ヒナさんに聞いたところ、フィンランドから来たって言ったから日本語通じるかって思ってたけど、全然ペラペラじゃん!めちゃくちゃ勉強したな?

 

 

麻耶「美久さん。大和麻耶です。上から読んでも下から読んでも”やまとまや”なんですよ?なんか凄くないっスか?」

 

 

美久「よろしくお願いします麻耶さん。そうですね、なかなかいませんよね、そういう人」

 

 

最後はドラムの麻耶さん。人懐っこそうで話しやすそうな人だな〜。でもさっきの名前の話はいらなかった気がする...。

 

 

日菜「あはは!ね?みんなちょっと変わってるでしょ?だから面白いんだ〜!」

 

 

日菜以外の5人「「「「「それはあなた!!!」」」」」

 

 

5人の声が見事にハモった。みんな考えてることは同じだった。この人たちとはうまくやれそうだね。そう改めて実感し、私たちはレッスンスタジオに移動した。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

彩「へ〜、美久ちゃんって花女の1年生だったんだ〜。つまり私の後輩ってことになるのか...」

 

 

美久「はい、他の皆さんはどこの学校に通ってるんですか?」

 

 

彩「私と千聖ちゃんとイヴちゃんが花女で、日菜ちゃんと麻耶ちゃんが羽女だよ。イヴちゃんが美久ちゃんと同じ1年生で、それ以外はみんな2年生なんだ〜」

 

 

スタジオに着き、篠田さんを待ってる間、私たちは会議室での会話の続きをしていた。

 

 

千聖「日菜ちゃんとはいつ知り合ったのかしら?」

 

 

美久「それが...本当につい最近なんですよ」

 

 

麻耶「ええ!?そんなまだあって間もない人のためにこの話引き受けてくれたんですか?」

 

 

イヴ「ミクさんのウツワはとっても広いんですね!」

 

 

美久「いや、器はともかく...引き受けたというよりは強引に連れてこられたというか...」

 

 

その後、私がこの話を引き受けることになった経緯についてみんなに話した。案の定、みんな呆れた顔をした。

 

 

彩「美久ちゃん......なんか?ごめんね?」

 

 

同情までしちゃったよこの人!?なんかそこまでされると惨めに思えてくるんですけど!?

 

 

美久「き、気にしないでいいですよ。それにこんな機会なかなかないですし、むしろよかったって思ってますよ!」

 

 

千聖「そ、それなら良いのだけど...」

 

 

なんとかこの話をまとめた後、ようやく篠田さんが来た。篠田さんは私に曲の譜面を渡し、練習時間を教えた後、「それではよろしくお願いします」と言って、スタジオを出ていった。なんか緊張して来たな...。

 

 

美久「え〜、それではこれから楽器の練習を始めますけど...」

 

 

日菜「美久ちゃん固い固い!普段の感じでやってくれて大丈夫だからさ〜!」

 

 

そんなこと言われてもな〜。一応先生と生徒っていう関係だしな〜。

 

 

千聖「大丈夫よ。自分のやりやすい形でやって頂戴。その方があなたも気が楽でしょう?」

 

 

美久「みんながそういうのであれば......わかりました!ではそうさせて貰います!」

 

 

みんながそう言ったんだからいいんだ!そう自分で勝手に決めて、そのまま進めることにした。

 

 

美久「まずは、みんなの今の実力が知りたいので、1度通して演奏してみてくれませんか?」

 

 

私は先に、パスパレのみんなの演奏を聴いてみることにした。今のパスパレはどのレベルなのかを知るために...。

 

 




はい、今回は以上です。美久がパスパレと対面しました。ここから美久はどんな指導をするんでしょうね?楽しみです!

次回はパスパレの練習を書けたらと思います。


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パスパレの演奏はなんとも言えなさすぎる...

前回のあらすじ

パスパレの5人と対面した美久。最初は受け入れてくれるのかと心配していた美久だが、そんな心配は杞憂に終わり、みんなは暖かく迎えてくれた。意気投合した後、全員でレッスンスタジオに向かい、美久は今のパスパレの実力を知るために、演奏をさせるのだった。


 

彩「ふ〜、どうだったかな美久ちゃん?私たちの演奏」

 

 

演奏を通しでやって貰い、終わった後、彩さんが感想を求めて来た。そうだなぁ...。

 

 

美久「演奏としてはそこまで悪いものではないですよ。むしろいいと呼べるものです」

 

 

彩「本当に!?じゃあ!」

 

 

美久「ですが、それでもまだ人前でできるような演奏ではないですね」

 

 

5人「「「「「......」」」」」

 

 

私の厳しい意見にみんな黙りこくっちゃった。でもこればっかりは事実だからな〜。ここははっきりと伝えた方がいいよね。そう決め、また私は口を開いた。

 

 

美久「まず彩さん。歌唱力は問題ないんですが時折音程がズレてます。そこを直さない限り、ボーカルとしてファンの方達に認められることなないと思いますよ?まずは発声練習を練習前に必ずやって声をしっかりと出す練習をしてください。音程の合わせ方はそれから教えますので」

 

 

彩「うう〜〜、美久ちゃんって結構厳しいね...」

 

 

美久「これぐらい、みんなを思えば当たり前のことです!」

 

 

あの程度で厳しいなんて言ってたらこの先バンドなんてやっていくなんて不可能だと思う。だからこれぐらいには耐えてもらわないと。そうして私は次に千聖さんの方を向いた。

 

 

美久「次に千聖さん。ベース初心者にしてはフレーズもしっかりと弾けてましたし特に問題はありません。ですが、どこか1人で全部やろうと考えてないですか?時々音が他の人よりも先走ってるところがたくさんありましたよ?なので千聖さんにはもう少し周りに合わせた演奏をしてもらうことと、バンドに対する認識を変えてもらう必要があります。それについては後で説明します」

 

 

千聖「わかったわ...。ありがとう」

 

 

少し言った意味が理解できなかったのか少し戸惑った顔をした千聖さん。まあとりあえず後回しにして...次はイヴだね。

 

 

美久「次はイヴ。演奏技術は正直まだまだなとこもあるけど、練習すればもっといい音が出ると思う。キーボードに大事なのは指を鍵盤の上で踊らせることができる技量があるかどうかなんだ。もしその気があるなら、練習の後でもやり方とか指のケアの仕方とか教えるから声かけてね」

 

 

イヴ「はい!では、練習の後にお声をかけさせて貰います!」

 

 

おー、イヴは元気に答えてくれたな〜。まあそれがイヴのいいところでもあるけどね!次は麻耶さんか...。

 

 

美久「次に麻耶さん。演奏技術はサポートミュージシャンやってただけあって申し分ないです。ただ、たまに演奏が雑になってたりするのでそこはきっちりと直してください。少しでも雑になると演奏の音全体がぶれる可能性があるので」

 

 

麻耶「わかりました。貴重な意見ありがとうございます」

 

 

丁寧に答えてくれてありがとうございます。じゃ、最後は......あの人か...。

 

 

美久「じゃあ最後、日菜さん」

 

 

日菜「はいはーい!美久ちゃんの意見聞かせてー!」

 

 

美久「はいはい、日菜さんに関しては特に言うことは無いです。正直本当にギター初心者?って思えるくらいの技術は持ってます。なので今後も指のケアとか練習に精を出してください。何かあれば言ってください。わかる範囲で教えますので」

 

 

日菜「ほんとー!?美久ちゃんがそう言うならそうなんだよね!わかった!」

 

 

本当にわかってるのかこの人?まあこの際追求はしないけど...。とりあえず、こんなもんでいいか。全員の技量を理解した私はみんなの方を見た。

 

 

美久「年下の私に厳しいこと言われるのは釈かもしれませんが、これもみんなを思って言ってることだと思って理解してください。一人一人が良くても肝心の音が噛み合わなければ演奏は成り立ちません。今のみんなはそんな感じです。なので今後は本番をイメージした練習をしながら、みんなのレベル上げを図りたいと思います。それでいいですか?」

 

 

彩「うん!」

 

 

千聖「それでいいわ」

 

 

日菜「あたしも全然いいよ!」

 

 

イヴ「よろしくお願いします!」

 

 

麻耶「自分もいいと思います!」

 

 

みんなの了承を得た。よし!後は私がみんなを教えるだけだ。頑張ろ!その後私は練習時間終了まで、みんなにつきっきりで指導をしたのだった。

 

 

 

 

 

 




はい、短いんですが今回は終わりになります。次回から事態が動きます。


次回は千聖と確執!?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

千聖さんの考えは分からなすぎる...

前回のあらすじ

パスパレの演奏を聴いた美久はそれぞれに意見や改善点を指摘していった。美久は年下の自分に言われるのは不愉快では無いかと思っていたが、パスパレは受け入れてくれた。それが嬉しかった美久は、今後もパスパレの力になると改めて誓ったのであった。


 

 

 

美久「今日も来ないか〜...」

 

 

レッスンスタジオの中でみんなの練習を見ていた際、私は今、ある1つの問題のことを考えていた。それは...

 

 

彩「しょうがないと思うよ?千聖ちゃん、この他にもたくさん仕事入ってるみたいだから」

 

 

美久「それはそうですけど...」

 

 

1つの問題、それは千聖さんの練習の欠席率の高さだ。千聖さんが有名な女優なのは知ってた。だからそれなりに忙しいことも。でも、だからと言って私たちに何も言わないで練習をほっぽり出すと言うのはどうなんだ?それもここ最近毎日だ。これ以上休まれるとバンド全体の練習ができない。今後のパスパレにも支障が出る。さすがにこれは看過できない。

 

そう思った私は、千聖さんに連絡を入れることにした。だがやっぱり、何回コールしても電話には出なかった。

 

 

美久「妙だな...」

 

 

イヴ「どうかしましたか?ミクさん?」

 

 

私が呟いた一言が、イヴには聞こえてたらしく、声をかけられた。

 

 

美久「いや...なんと言うかここ最近の千聖さんの行動に少し違和感がね...]

 

 

麻耶「違和感?ですか?」

 

 

美久「はい、もし千聖さんがパスパレのことを思ってるのであれば、まずはパスパレのことを優先的に考えてるはずです。それはメンバーとしては当然のことですよね?」

 

 

彩さんに問いかけてみた。

 

 

彩「う、うん。そうだね...」

 

 

美久「ですが、ここ最近の千聖さんがしていることはとてもメンバーとは呼べるものでは無いですし、パスパレのことを考えてるようには見えません」

 

 

そう、これがここ最近の千聖さんの行動を見て思って来たことだ。千聖さんはどうも、他のことばかりを優先している気がする。それがずっと頭を離れなかった。すると、私の今の発言を聞いた彩さんが反論してきた。

 

 

彩「ま、待って美久ちゃん!確かに最近は千聖ちゃん、練習に来てないけどそれでもパスパレのこと何も思ってないわけないよ!」

 

 

美久「じゃあ聞きますけど、私が初めて練習を見た初日を除いて千聖さんはここまでで4日間連続で練習を休んでます。さすがに女優さんと言えど、まだ学生である千聖さんにそんな無理をさせるほど事務所の人も馬鹿ではないと思いますけど?むしろこう考えたくなりませんか?パスパレの練習に出るよりも少しでも演技の練習をしたい、休みたい。そう考えてるようにしか私は思えなくなってるんですよ」

 

 

彩、イヴ、麻耶「「「......」」」

 

少し強めの口調で言ったせいか3人ともだまっちゃったね。でもそれだけ私も千聖さんに対して思うところがあるってことだってわかってほしい。

 

 

日菜「ん〜、でも確かに美久ちゃんの言ってることは正しいかもしれないよ?」

 

 

彩「ひ、日菜ちゃん...?」

 

 

日菜「この前さ、事務所の中で千聖ちゃんにあったんだけどさ〜、その時になんかあたし千聖ちゃんの様子見て思ったとこあったんだ〜」

 

 

美久「それはどんなことですか?」

 

 

大事なことだから追求した。

 

 

日菜「あくまであたしが思ったことだけど、千聖ちゃんってパスパレの別の選択肢を探してるんじゃないかって思ったんだよね〜。気のせいだと思うけど」

 

 

日菜以外の4人「「「「......」」」」

 

 

みんな何も言えずに黙った。私も一緒だ。日菜さんの直感ってよく当たるから、いい加減にいったようにはどうしても思えなかった。だからこそ、事態は深刻になりつつあるんだ。

 

 

イヴ「ワタシはそうは思いません!チサトさんは誰よりもパスパレのことを愛してると思っています!ですから、きっと戻ってきてくれます!それまでワタシたちは信じて待ちませんか?」

 

 

イヴが突然そう言ってきた。まあ、そうだね...今ここにいない人のこと考えてても時間の無駄だよね...。私はそう割り切り、みんなに言った。

 

 

美久「そうですね。ここはイヴの言うとおり、千聖さんがくるまで待ちましょう。そして来たときにはみんなで話を聞きましょう。それでいいですか?」

 

 

彩「う、うん!わかった!」

 

 

日菜「異議なーし!」

 

 

イヴ「了解です!」

 

 

麻耶「わかりました!」

 

 

美久「それじゃ、練習の続きを始めましょう!」

 

 

考えを一つにまとめ、私達はその後の練習に精を出した。みんなだんだん上手くなってきてるな〜。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

千聖「みんな、お疲れ様」

 

 

彩「あ...千聖ちゃん...」

 

 

2日後、ようやく千聖さんが練習に来た。6日ぶりくらいかな?彩さんが何か言いたげにしてたけど、やめたみたい。そこまでする度胸がなかったんだね...。なら、私から言おう。そう決め、私は千聖さんの前に立った。

 

 

美久「千聖さん、お久しぶりです。女優の仕事が忙しいんですって?」

 

 

千聖「美久ちゃん...ええ、最近はいろいろな仕事が重なってこちらには顔を出せなかったのよ、ごめんなさいね?」

 

 

謝ってきたがどうも上っ面で謝ってるようにしか見えなかった。だから私はさらに千聖さんを追求した。

 

 

美久「ちなみにこれまではどちらに仕事に行ってたんですか?」

 

 

千聖「......それはあなたに喋る必要があるのかしら?私のマネージャーでもないのーーー」

 

 

美久「いいから答えてください。どちらで仕事をしていたのですか?簡単にで構いません。教えてください」

 

 

千聖さんの言葉を遮って私はさっきより少し強めに言った。こうでも言わないと言わなそうだったからだ。その様子を見て千聖さんは諦めた様子で話した。

 

 

千聖「ここ3日間はドラマの打ち合わせに行ってたわ。もうすぐ撮影が始まるから...」

 

 

これを聞いた途端、私は今まで思ってたことに確信が持てた。なぜならーーー

 

 

美久「へ〜、ドラマの打ち合わせ、ですか〜?」

 

 

千聖「何か問題あるかしら?」

 

 

美久「篠田さんに聞いたところ、それなら4日前には終わってるとのことでしたよ?その後の予定は特になかったと」

 

 

千聖「な...!?」

 

 

図星みたいだね。信じたくはなかったけど、やっぱりそう言うことだったのか...。確信を持ってしまって少し悲しくなってしまったが、私は千聖さんに言った。

 

 

美久「...なんで嘘ついたんですか?話してください」

 

 

千聖「......」

 

 

私の問いかけにも応じないで、しばらく千聖さんは黙っていた。そして意を結したのか、ゆっくりと口を開いた。

 

 

千聖「私は...確実な道を歩いていきたいのよ...」

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了でーす!今回は終始美久が怒り口調で話していましたが、こう言った美久もたまには出るって言うのをわかってもらいたいです。


次回は千聖の悩みについて書きます。


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

千聖さんの説得は大変すぎる...

前回にあらすじ

練習に来ない千聖に憤りを覚える美久。そのため、千聖のことを信じられなくなった美久とパスパレの4人。練習に千聖が来たときに問い詰めてみるが、やはり、美久の読みは正しかったようで...。




 

 

 

 

 

 

美久「”確実な道”...ですか...聞きますが千聖さんの言う”確実な道”ってのはなんですか?」

 

 

確実な道というのが気になったため、千聖さんが望んでいるその道とはどんなものか聞いてみた。

 

 

千聖「そのままの意味よ。確実に成功する道、それ以外に何物ではないわ」

 

 

美久「...たとえどんな犠牲を払ってもその道をいくんですか?」

 

 

千聖「ええ、その通りよ!」

 

 

美久「パスパレのこともですか?」

 

 

千聖「っ...」

 

 

パスパレを見捨てるのかと聞いたとき、千聖さんは言葉に詰まった。これでもし即答でそうだと言われたら手遅れだったけど、これならまだ望みはある。

 

 

彩「千聖ちゃん、今までパスパレでずっとステージに立つためにずっと努力してきたでしょ?せっかくここまで努力してきたんだから今からでも頑張ってみようよ!ね?」

 

 

千聖「彩ちゃん、努力したからって必ずしもその人が報われる訳じゃないのよ?努力をした人が偉いなんて考えは捨てたほうがいいわ。それで本番結果が出せなかったら意味なんてないでしょ?」

 

 

彩「べ...別に私はそんなつもりで言ったんじゃ...」

 

 

このままじゃ彩さんが泣き出してしまいそうだったから、フォローすることにした。

 

 

美久「千聖さん、今のは彩さんの方が正しいです。確かに努力した人が必ず結果を出せるわけではありません。ですが、努力をして失敗するのと努力しないで失敗するのは全く意味が違ってきます。それは後悔です。自分が精一杯努力して持てる力全てを出してそれが失敗に終わったとしてもその人は後悔しません。全力でやったんですから。逆に何もしないで失敗したら、あの時やっておけば良かったみたいな後悔が後になって襲ってきます。ですから、努力というのはやっていて決して無駄ということはないんですよ?」

 

 

彩「美久ちゃん...」

 

 

千聖「......」

 

 

彩さんのフォローが終わったため、次に私が言いたいことを言うことにした。

 

 

美久「千聖さん。少しは自分の意志も優先してみてもいいんじゃないですか?」

 

 

千聖「意志?」

 

 

美久「千聖さんが選んでたっていう”確実な道”は言い方を変えると、”逃げの道”とも言えます」

 

 

千聖「逃げ...ですって...?」

 

 

逃げ、という単語に反応したのか、千聖さんが言葉に怒気をのせながら言った。まあだからと言ってびびる訳じゃないけど。そのまま私は続けた。

 

 

美久「はい。千聖さんは自分の意志、夢から逃げてます。自分は女優なんだから失敗したらいけない。だから夢なんか持ってはいけない、とか思ってるんじゃないですか?」

 

 

千聖「......」

 

 

美久「そう思ってるなら考え方を変えてください。女優が夢を持ってはいけないなんてルールないですよ?別に失敗したっていいじゃないですか。女優さんだってこれまでに失敗してこなかった人なんて1人もいないと思いますよ。失敗して人っていうのは強くなっていくんですから。彩さんを見習ってください。今も時々失敗してるけど前よりは確実に減ってますよ?」

 

 

彩「み、美久ちゃん!?それって褒めてるんだよね...?」

 

 

ここで彩さんを引き合いに出すのは申し訳ないと思ったけど、これも千聖さんのため。許してください彩さん。なんか日菜さんはすっごく笑ってるけど。

 

 

千聖「美久ちゃん...ありがとう、でもやっぱりこの生き方を変えるのは...」

 

 

イヴ「これから変えていけばいいじゃないですか!」

 

 

突然イヴが声をあげた。

 

 

千聖「イヴ...ちゃん?」

 

 

イヴ「今から変えるというのはとても難しいことだと思います。ブシドーも同じです!決して緩やかな道のりではないのは確かです!ですが、変えることを諦めてしまってはチサトさんはずっとこのまま成長できないままになってしまうんですよ?何か辛いことがあればワタシたちを頼ってください!そこは”持ちつ持たれつ”です!」

 

 

日菜「あはは!イヴちゃーん?そこは”困った時はお互い様”のほうが正しいよ〜!まああたしは夢とかよくわかんないけど、でも変われるんだったら変わっておいたほうが楽しいって思うな〜!そのほうが、るんっ!ってすると思うよ〜?だから、一緒にパスパレやろーよ!千聖ちゃん!」

 

 

麻耶「ジブンもそう思うっス。ジブン、千聖さんに言われてパスパレに入りましたが、入ってみるととても楽しくて今ではパスパレに入れて良かったと思ってるっス!だから、ジブンが入るきっかけになった千聖さんには感謝してるんっス!ですから、できれば今後も千聖さんと一緒にパスパレをやっていけたらと思っています!」

 

 

3人がそれぞれ思ってることを話してくれた。最後は彩さんだけど...あ、あ〜とうとう泣いちゃったか〜。

 

 

彩「(グスッ)私も...千聖ちゃんと一緒にやりたい。(ヒグッ)だから...だがら〜、やめないで〜、千聖ちゃ〜ん!!」

 

 

千聖「彩ちゃん、落ち着いて!やめるなんて一言も言ってないでしょ?だから泣き止みましょう?ね?」

 

 

しまいには千聖さんに慰めてもらってる彩さん。ほんとこの人って面白いな〜。

 

 

彩さんを泣き止ませた後、千聖さんは私たちの方を向いた。

 

 

千聖「みんなありがとね。こんな自分勝手な私のために」

 

 

彩「気にしなくていいよ、仲間でしょ?」

 

 

千聖「『仲間』ね...今まで私にはそんな人いなかったわ。いつも1人で仕事をこなしてたわ。それに慣れてたからかもしれないわね。こんなふうに振る舞っていたのは...」

 

 

やっぱり、今まで千聖さんは孤独だったんだ。それで急に一緒に仕事をする仲間ができて、どう接していいか分からないから今回みたいなことをしたと...。

 

 

千聖「実はね...私、脱退を申し出てたの...」

 

 

日菜以外の4人「「「「「!!!!」」」」

 

 

実際に脱退を申し出てると本人の口から発せられたため私を含めたパスパレのみんなは驚きを隠せないでいた。日菜さんはある程度予想できていたのか大して驚いていなかった。

 

 

千聖「でもそれは、撤回するわ」

 

 

彩「え?」

 

 

彩さんがまた驚きながら、どう言うことなの?みたいな顔をした。

 

 

千聖「私、白鷺千聖は、パスパレの一員として活動していくと決めたわ!みんな、身勝手な私だけど、受け入れてくれるかしら?」

 

 

彩「受け入れるもないよ!だって千智ちゃんはパスパレの一員なんだから!」

 

 

日菜「やっと千聖ちゃん笑ったね〜。今までむむ〜っとした顔しかしてなかったから。そんな千聖ちゃんならあたしは大歓迎だよ!」

 

 

イヴ「そうです!チサトさんはれっきとしたパスパレのベーシストで、仲間です!受け入れないのはブシの情けに反します!」

 

 

麻耶「使い方が違うような気がしますが...まあとにかく、千聖さん!そんなこと聞くまでもありませんよ?ジブンたちは千聖さんの味方っスから受け入れないなんてことないっスよ!」

 

 

どうやら、これで一件落着かな?とりあえず安心した...。これで分裂なんてしたらどうしようもなかったからね。そう思っていると、千聖さんが私の方に視線を向けた。

 

 

千聖「美久ちゃん。今回は助かったわ。あなたの説得がなかったら、私はまたいつもの私みたいに逃げ出してたわ。改めてお礼を言わせて頂戴。ありがと、美久ちゃん!」

 

 

美久「はい。どういたしまして!これからは周りも頼りましょうね!」

 

 

こうして千聖さんがパスパレに戻って来た。この件でパスパレはさらに1つになった気がする。その後、千聖さんを加えて、本番に向けた練習に臨んだ。次のライブでパスパレの名前を世に知らしめるために!

 

 




はい、無事に千聖ちゃんの問題が解決したところで今回は終了です!


次回はいよいよ2度目のパスパレのライブです!


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パスパレのライブはサイッコーすぎる!!

前回のあらすじ

千聖が練習に来ない理由を問い詰めた美久達。千聖の口からは安全な道を進んで失敗をしないようにするためにパスパレのことを後回しにしてた、とでた。それに美久は猛反発して千聖を説得し、最初は揺るがなかった千聖も徐々に美久の言ってることが理解できるようになり、他のメンバーからの熱い言葉もあり、千聖はパスパレに戻ってくることに決めたのだった。


 

それからはいろんなことがあった。千聖さんが戻って来てすぐに篠田さんからライブの開催を発表されたり、ライブのために観客を呼ぼうとチラシを配ったりとか、ここんとこ忙しいな〜。

 

 

チラシ配りとかライブの下準備が終わった後は、ライブに向けて練習を積むだけだから、これまで以上に気合を入れて頑張った。せっかく汚名返上するいい機会だもんね!絶対みんなには成功させてあげたいし!ライブまであと1週間!私も全力で行かせてもらうよ!その後1週間はパスパレのみんな曰く、”美久の地獄のレッスン期間”だったらしい...。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

1週間後、私はパスパレのライブが開催される会場に来ていた。チラシ配りをしているパスパレメンバーの画像がSNSに上がっていて、それを見た人たちからの好感度が上がっていたこともあり、会場内にはたくさんの客が来ていた。チケットは完売。滑り出しとしては問題ない(ちなみに私は篠田さんからチケットをもらってる)。後は演奏で客を惹きつければいいだけだ。私はそう思った。周りからは『今日も口パクかな?』とか『アテフリでしょ?』と噂してる人たちもいたが、私はそんな人たちに言ってやりたかった。『今から演奏するパスパレの演奏を聴いてからものを言え!』とね!

 

それから私は時間までグッズとかを見てこようと思っていたけど、その時スマホが鳴った。画面を見てみると、篠田さんの名前が出ていた。ライブ前に何だ?と思って電話に出た。

 

 

美久「もしもし?篠田さんですか?」

 

 

篠田「あ、美久さんですか?その...申し訳ないのですが...今からこちらの控え室に来てもらえませんか?」

 

 

美久「はい?」

 

 

事情が飲み込めなかった。何で急に?

 

 

篠田「事情はこちらで説明しますのでとりあえず来てください!お願いしますね!」

 

 

美久「え!?あ...ちょっと!?」

 

 

私が何か言う前に切られた。訳がわからん。でもなんか慌ててる様子だったしな〜。

 

 

美久「まあいいか。控え室はあっちだよね?」

 

 

なんかよくわかんないけど、とりあえず控え室に向かうことにした。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

控え室前に着いた私は何か中が騒がしくなってる様子に疑問を感じていた。ライブ前の緊張で静かになってるならまだしも、こんなに外にまで聞こえるくらい騒がしく、しかも剣呑な雰囲気まで出てることからただ事ではないなと瞬時に判断できた。どうやら篠田さんはこれの応援にきて欲しかったんだな〜。正直こう言うのってめんどくさいけど、これで演奏に支障が出たら元の子もないから、止めに入ることにしよう。そして私は3回ノックして中に入った。

 

 

美久「失礼しまーす。篠田さんに呼ばれて伺った池田ですけ...ど?」

 

 

中にいたのはパスパレの5人と篠田さん、そしてもう1人多分、別のスタッフさんがいた。見る限り言い争ってるのはパスパレの5人とそのスタッフさんだった。

 

 

彩「お願いします!今日まで必死に練習して来たんです!だからどうか...()()()()ください!」

 

 

スタッフ「ですが...確実な方を選んでおいた方がパスパレの未来にも繋がると思いますが...」

 

 

彩さんがスタッフさんに詰め寄っていた。歌わせてくれってどう言う意味だ?私はさらに聴いてみた。

 

 

千聖「以前にもそうして機材トラブルが起こったことは覚えていますよね?それに対応するために私たちは今日まで頑張って来たんです。それを...()()()()だけ歌わせないだなんて、あなたたちは私たちに2度もあんな思いをさせようと言うのですか!?」

 

 

美久「......」

 

 

やばい...キレそう...。でもここでキレても何も変わんないし、ここは抑えよう...。そして話が途切れたところで私が割って入った。

 

 

スタッフ「わ...私は別に...」

 

 

美久「ちょっといいですか?」

 

 

彩「み、美久ちゃん?」

 

 

今まで話に夢中で私に気付いてなかったみたいでみんな急に現れた私に驚いていた。

 

 

スタッフ「えっと〜、君は?」

 

 

美久「パスパレの楽器の指導をしていました、池田美久っていいます。まず、何をパスパレのみんなに言ったのか聞かせてください」

 

 

スタッフ「そうか...君が臨時の...でも、その君がどうしてここに?」

 

 

篠田「私が呼んだのです。彼女の方がパスパレのメンバーのことをよくわかっていますから。そして、なぜパスパレの方々はここまで必死になっているのか?彼女に聞けばわかると思いますよ?まずは彼女に説明してください。お願いします」

 

 

スタッフ「わかりました」

 

 

篠田さんに言われたこともあり、スタッフさんは内容を話してくれた。簡単にまとめるとこう。パスパレのみんなが準備をしていたときに、スタッフさんが来て突然、アドリブや本番に弱い彩さんだけ前のようにアテフリでいこうと話を持ちかけたことがこうなった原因らしい。

 

それを聞いて私は徐々に体の熱が上がって行ってることに気付いたが、とりあえずまだ抑えることができた。いや...でもやっぱり少しは出ちゃうかも...。そしてスタッフさんに視線を向けた。

 

 

美久「なるほど...だいたい分かりました。あなたが...彩さんのことを舐めてるってことがね!」

 

 

スタッフ「な...何を!?」

 

 

美久「あなたが言ってるのは一番最初にライブをしたときの彩さんのことですよね?それだけを見て今でも彩さんは本番に弱くてアドリブもきかない人だって思ってるんですよね?今までの...彩さんの努力も知らないで!!」

 

 

パスパレの5人「「「「「!!!」」」」」

 

 

私から出た初めての怒鳴り声にみんなすっごく驚いていた。私も不覚だな〜。怒るつもりなんてなかったのに...。まあこうなったらなるようになれだ!

 

 

美久「あなたは知らないでしょうけど、今の彩さんは以前とは比べ物にならないほどに成長してるんですよ?本番にだって以前に比べればずっとマシになってます!それは、今日まで彩さんが努力して来たからですよ!誰に何を言われてもめげずに頑張った!その結果が今の彩さんになってるんです!アテフリなんて必要ありません!そして今日のこのライブが彩さんや他のメンバーの今までの成果を発揮する場所なんです!その成果を発揮できる場所をあなたのような人のことをしっかりと見てない人なんかが奪っていいはずない!!...何か間違ってますか?」

 

 

スタッフ「......」

 

 

私が言ったことに言葉を無くしたスタッフさん。私もここまで人に対して言ったのは久しぶりかも...。そう思ってると、篠田さんが私のとこにきた。

 

 

篠田「美久さん、ありがとうございました、やはり呼んで正解でしたね。...それで、どうしますか?あなたよりもパスパレのことをずっと間近で見て来た美久さんの意見はパスパレにアテフリは必要ないとのことですが?」

 

 

篠田さんがスタッフさんに問いかけた。スタッフさんは俯いていたが、すぐに顔を起こした。そして言った。

 

 

スタッフ「分かりました。どうやら私はパスパレのことをどこか信用してなかったようですね。今までのパスパレしか見てなくて、今のパスパレを知ってなかった。その子の言う通りです。パスパレには余計な小細工は必要ないですね。今日のライブは皆さん、自分たちの演奏をしてください」

 

 

パスパレの5人「「「「「!!!!!」」」」」

 

 

みんな驚いていた。でもすぐにそれは喜びに変わった。

 

 

彩「あ、ありがとうございます〜!」

 

 

日菜「あはは!も〜彩ちゃんってば、それよりもさ、お礼を言う相手が違うんじゃない?」

 

 

千聖「そうね。しっかりとお礼を言わなくてはね?」

 

 

イヴ「はい!その通りです!」

 

 

麻耶「みんなでお礼を言いましょう!」

 

 

そしてみんなが私の方を向いた。なんかこう言うの前にもあったような...?

 

 

5人「「「「「「ありがと(ございます)!!美久ちゃん(さん)!!」」」」」

 

 

美久「はは!こんなの、みんなの先生なんだから当然ですよ!」

 

 

そして、私はみんなに『頑張って!』と言い残して客席に戻った。

 

 

そしてその後始まったパスパレのライブは無事に大成功で幕を閉じた。無事に汚名返上ができ、私はすっごく嬉しく思った。満足した気分のまま、帰路につく私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、パスパレ回も次でラストになります。いろいろありましたが書いていてとても楽しかったです。


次回、大成功後のパスパレは?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

事務所のオーディションは激アツすぎる!!

前回のあらすじ

パスパレのライブを見にきた美久だが、急遽パスパレの控え室にくるよう篠田から連絡があり、美久は嫌な予感がして足早に向かった。その予感は的中し、スタッフに彩だけ前のようにアテフリでいこうと意見されていたのだ。それをみた美久は初めてみんなの前で声を荒げてスタッフに詰め寄った。美久が必死の思いで今まで彩がどれだけ努力してきて、このステージにかけてるのかを告げると、スタッフは納得した。そして、彩を含めたパスパレ全員が嘘偽りない彼女たちの音を出せたライブは大成功で幕を閉じるのだった。


 

美久「今日でみんなとここで会うことも無いんだよね〜。なんかライブまでいろいろあった気がするけど、意外とあっという間だったんだよねー」

 

 

ライブの次の日、私はライブの成功をライブに関わった全ての人たちと祝したいと篠田さんから事務所に呼ばれたため、事務所に向かっていた。そして、私が臨時の先生としてこの事務所に来るのはこれで最後。これからは元の先生が戻ってくるらしく、私の役目は終わったみたい。少し寂しい気がするけど、ライブは大成功したからそれで私は満足だった。

 

 

美久「っと、早く行かないと始まっちゃうな!」

 

 

今までのことを考えてたせいで、歩く足が知らないうちにゆっくりになってたみたいだ。それに気づいた私は、歩くスピードをあげ、事務所に向かった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

篠田「まずは、Pastel*Palettesの皆さん。ライブ、素晴らしい演奏でした。この短い期間でよくあそこまで仕上げてくれました。本当に感謝します」

 

 

会議室に集まったのはパスパレのみんな、私、篠田さん、その他のスタッフ数人だった。その中には昨日彩さんにアテフリを提案してきたスタッフさんもいた。

 

 

篠田「今回のライブでパスパレの人気は急激に伸びています。そして、雑誌のインタビューやテレビの出演のオファーもたくさん来ています。これも全て、皆さんの演奏がすべての方達に届いたからですよ」

 

 

日菜「えへへ〜、だってさ!彩ちゃん!」

 

 

彩「うぅ〜〜...(グスッ)ほ...ほんとによかったぁ〜...」

 

 

それを聞いた彩さんは思いっきり泣いてた。よく見ると、イヴも少し泣いてた。イヴもすっごく頑張ったもんね。そりゃ嬉しいよ。

 

 

篠田「これから皆さんはとても忙しくなります。忙しくなるということは、皆さんがメディアにたくさん取り上げられることになります。そうなれば期待も昨日のライブよりももっと高くなります。そのため、皆さんには昨日のライブのことで慢心せずに、もう次への準備をしてもらいます。いいですか?」

 

 

パスパレ「「「「「はい!」」」」」

 

 

篠田さんの言葉にみんなは気持ちを込めて返事を返した。なんか1つになってる感じあっていいな〜。返事を確認した篠田さんは次に私の方を見た。

 

 

篠田「それでなのですけど、以前予定が入りましてこれなくなってしまった楽器の先生が戻ってきたとのことですので、今後はその先生に指導をお願いするということでよろしいですね?」

 

 

彩「え......?」

 

 

それを聞いた途端、彩さんや他のみんなが私の方を見た。臨時なんだし、そりゃそうなるよ。私だってもっとみんなにいろいろ教えてあげたいけど、これは決まりだからね。みんなが私を見る視線に気づいたのか、少し言いずらそうに篠田さんは言った。

 

 

篠田「皆さん...美久さんは今回のライブのために非常によく頑張ってくれてました。皆さんの演奏技術がそこまで上がったのは美久さんのおかげです。それに関しては美久さんには感謝しかありません。本当にありがとうございました美久さん。ですが、あくまで美久さんは臨時の先生として皆さんの指導にあたっていました。本来の先生が戻ってくるまでの間だけという...」

 

 

パスパレ「「「「「......」」」」」

 

 

みんな何も言えずにいた。正論に何も言えないみたいだね。だがそれでも...。

 

 

千聖「......パスパレが美久ちゃんに指導をしてもらうことを願っていてもですか?」

 

 

千聖さんはなんとか篠田さんに尋ねることができた。だがそれでも事態は好転しそうに無い。だが、次の篠田さんが言った一言で状況が一変する。

 

 

篠田「美久さんは()()()です。ですが皆さんは()()()という立場にあたります。この事務所では、教える側と教わる側の立場は()()でなければならないという決まりがあります。もちろんその先生も芸能人です。ですので分かってください。美久さんは今日でーーーー」

 

 

日菜「それなら簡単じゃん!美久ちゃんが芸能人になればいいんだよ!」

 

 

美久、篠田「「はい!?」」

 

 

私と篠田さんが日菜さんの爆弾宣言に同時に驚いた。

 

 

美久「ひ、日菜さん?何いって...」

 

 

彩「そうだよ!その手があった!日菜ちゃーん!ありがと〜!」

 

 

彩さんまで納得しちゃってるし!?ここはやっぱり千聖さんに助けを...。

 

 

美久「千聖さん!なんとか言ってーーー」

 

 

千聖「私としたことが...焦ってそんな簡単なことを考えられなかったなんて...ね?」

 

 

いやいや!千聖さんまでそっち側に行かないでくださいよ!?このままだと私が大変なことになる!そう思って残ったイヴと麻耶さんに助けを求めたが、2人ともやっぱり、日菜さんの意見に賛成だった...。

 

 

美久「いや...そんなこと言っても、芸能人なんてそう簡単になれるもんじゃ無いでしょ......。どうなんですか?篠田さん?」

 

 

篠田「そうですね...一応、この事務所に所属している方が推薦された方でしたら、オーディションに合格されればなることは可能です」

 

 

美久「いや...意外と簡単なんですね...」

 

 

篠田「何をいうんです?そのオーディションというのは非常に合格する確率が低いんですよ?試験官に納得されるようなパフォーマンスを見せない限り、合格することは不可能ですよ!」

 

 

篠田さんはそういうけど、なんかそういう”低い可能性”って聞くと昔の癖でチャレンジしたくなっちゃうんだよね。昔なんて、駄菓子屋で低い確率で当たりが出るっていうガムをお父さんの手持ちが無くなるまで買いまくったってことがあったってくらいだ(ちなみに最後に当たりは出た)。なんかそういうので成功したらなんかカッコよく無い?すっごく子供じみた理屈だけど、これが私なんだからしょうがない。その時の私は芸能人のことなんて考えてなくて、ただただそのオーディションに合格したいという欲が勝ってしまっていた。

 

 

そう思ったら行動が早いのが私だ。すぐに篠田さんに言った。

 

 

美久「篠田さん!そのオーディション?受けさせてもらっていいですか?」

 

 

篠田「受けるのは構いませんが...可能性は低いですよ?まぁ...それでも、美久さんなら問題なさそうですけどね」

 

 

ふふ、と笑いながら答えた篠田さん。

 

 

美久「へ〜?なんでそう思うんですか?」

 

 

篠田「実際に貴方の演奏を聴いているからですよ。あの演奏レベルならば私なら即合格を言い渡しますね」

 

 

美久「そうなんですか?よくわかんないですけど、とにかくお願いします!」

 

 

篠田「わかりました。社長に伝えてきますから少々お待ちください」

 

 

その後、篠田さんはオーディションの準備をするためこの事務所の社長さんのところに行った。オーディションを待ってる間、パスパレのみんなにオーディションのことを聞いておいた。主に確率のことを...。

 

 

簡単にまとめると、試験官は3人で1人は社長さんらしい。それで内容に関しては自分の得意なことをアピールすればいいだけらしい。私なら楽器でいいね!それで一番聞きたかった確率は10倍以上あるらしい。つまり、10人に1人しか合格しない......何それ...すっごくテンション上がるんですけど!?そんなか合格したらサイッコーに気持ちいいじゃん!決めた!絶対合格する!そう改めて決めた私はオーディションに臨んだ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

社長「それではオーディションを始めます。よろしく」

 

 

急遽決まったオーディションだったのにしっかり対応してくれるのはこの事務所の対応の良さが出てるな。社長は中年の男の人でお父さんと同じくらいの人かな?やっぱり芸能事務所の社長さんなだけあっておしゃれだ。私が座ってる椅子の対面に社長と2人の男の人が座っていた。そんなことを考えてる間に次の質問がされた。

 

 

社長「今回はパスパレに協力してくれたんだってね?ありがとう」

 

 

美久「?はい、ありがとうございます」

 

 

何故か社長自らお礼を言ってきたことに疑問を覚えたが、気にせずこちらも返事を返した。

 

 

社長「だが、それとこれとは話が別だ。いくらパスパレに貢献しようが、パスパレに推薦されようがこちらの水準に見合ったことをしてもらわない限り合格にはしない。それを肝に命じてくれ」

 

 

なんだ、そんなことか。そんなの気にしてない。だって...ただオーディションに受かりたいからだもん!

 

 

美久「そんなことですか、それなら問題ありません」

 

 

社長「”そんなこと”...か、面白い子だ...」

 

 

社長が何か言った気がしたが、この際いいやと思って気にしないことにした。そしてついにオーディションが始まった。

 

 

社長「さて、それではこれからオーディションを始めさせてもらいます。君は楽器が弾けるようだから楽器の演奏でいいかな?」

 

 

美久「はい!ぜひそれで!」

 

 

そう言って私はさっき篠田さんから借りたギターを手に取り、演奏準備をした。いつも通り、チューニングをして弾く前に準備運動をした。その様子を何故か社長さんに見られてた気がしたけど無視することに決めた。そして準備が整った。よし!バッチリ!

 

 

美久「大丈夫です!」

 

 

社長「では、お願いします」

 

 

私は社長さんや他の2人のことは気にしないでいつも通り、自分の演奏をした。それが私の音だ。誰にも縛られない、自分だけの音を楽しむ!それが私のモットー!時々入れるアレンジは自分なりにこうしたら楽しいとかそんなノリで考えてたんだけど案外しっくりくるんだよね!

 

 

社長「(...なんて演奏だ...。これでまだ高校生なのか?)」

 

 

演奏中社長さんはじっと私の演奏を観察していた。その目はまるで興味をそそられるようなものを見つけた子供みたいにキラキラと輝いていた。

 

 

そして、演奏は終了した。私としては楽しかったけど、どうかな?そう思い、社長さんたちの方を見た。すると3人ともどこか魂が抜けてるような表情をしていた。とりあえず声をかけることにした。

 

 

美久「あの〜?終わりましたけど?」

 

 

社長「お!?ああ、すまない。ボーッとしてしまって...」

 

 

社長でもあんな顔するんだ〜。なんかさっきの顔ちょっと面白かったけどね〜。と、心の中でからかうのはそこまでにして社長の次の言葉を待った。すると、社長の口から出たのは予想外の一言だった。

 

 

社長「え〜と、単刀直入で悪いんだけど、君、”合格”ね」

 

 

美久「え?そんな簡単に決まるもんなんですか?」

 

 

意外と早く出た”合格”に違和感を感じたが、それはすぐに納得することになった。

 

 

社長「君は特別だよ。あんな高校生離れした体の芯にまで響く演奏されたら合格だと言わざるを得ないよ。こんなに早く合格を言い渡したのは氷川以来だな」

 

 

日菜さん...やっぱりあの人、ただもんじゃ無いな...。心の中で後で日菜さんに聞いてみようと思った私だった。

 

 

その後、今後の予定や事務所の決まり事などを説明された後、私は戻った。中にいたパスパレのみんなや篠田さんに合格したことを伝えると、みんな大喜びで抱きついてきた。篠田さんは静かに「おめでとうございます。これからよろしくお願いしますね」と握手してきた。

 

 

なんかよくわかんない形だけど、私、池田美久は、芸能人になりました!

 

 

......ってお父さんたちになんて話そうかな〜...。パスパレのみんなにもみくちゃにされながら1人、そんなことを考える私だった(案の定、家でみんなには驚かれた。でも意外にすんなり受け入れてくれた)。

 

 

 

 

 

 




はい、パスパレ編終了です!本当にいい回だったと自分的にそう思ってます。美久が芸能人になるという形で幕を下ろしますが今後も芸能人として活躍する美久の姿をどうか見届けてください!


次回からAfterglow編に入ります。さて、どんな形にしようか考え中です!


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4章 Afterglowのいつも通り
羽沢珈琲店のケーキは美味しすぎる!!


前回のあらすじ

パスパレのライブの成功を祝うため、事務所に呼ばれた美久。そこで美久は今日で臨時の指導者としてパスパレを指導することは終わりにすると言われた。それにパスパレの5人が必死に抗議するが、一般人の美久には指導をさせることはできないと篠田が一蹴した。だが、それを聞いた日菜が、美久に芸能人になるべくオーディションを勧めてきた。美久は持ち前の好奇心から、そのオーディションで受かる確率が低いという理由で受けることにしたのだ。そして、そこで社長に美久の演奏が認められ、美久は芸能人になるのだった。




 

 

美久「やれやれ、芸能人になった時はどうなることやらって思ってたけど、案外問題になんなくてよかった〜」

 

 

私、池田美久はつい最近近くの芸能事務所に所属することになった。つまり、私は芸能人になったんだ。私なんてそこに関しては素人なのに、社長さんはこれから慣れていけば良いって言ってくれた。ほんと社長さんが優しい人でよかったよ〜。これから私はパスパレの演奏を見つつ、個人としても活動していく予定らしい。多分1人で弾き語りとかサポートミュージシャンとして活躍していくと思うんだけど、そこに関してはまだ未定らしい。

 

 

日菜「ま〜でも、あたしは美久ちゃんが入ってくれてほんとに嬉しかったけどな〜!だって、パスパレのみんなも好きだけど、美久ちゃんのことも同じくらい好きだからさ!」

 

 

美久「そう言ってもらえるのは嬉しいですね。今後も頼りにさせてもらいますよ?」

 

 

日菜「あはは!うんうん!先輩に任せろー!」

 

 

そうは言ったけど、日菜さんを頼るのは逆に危険と感じる私がいた。なんで今日菜さんと一緒にいるかっていうと、なんか日菜さんが私の芸能界入りを祝いたいとか言って商店街の羽沢珈琲店に向かっているからだ。ほんとは他のみんなも誘ってたみたいだけど、みんな仕事とかバイトが入ってたみたいで来れないらしい。

 

 

日菜「でもみんなつれないな〜。せっかくみんなで美久ちゃんのこと祝おうとしたのに〜」

 

 

美久「いやいや、日菜さんが急すぎるんですって...私だって聞かされたの今日ですからね?みんな予定が必ず空いてるわけじゃないんですから」

 

 

日菜「そうかな〜?まあそれならしょうがないんだけど」

 

 

日菜さんのいつものぶっ飛んだ行動にツッコミを入れながら私たちは羽沢珈琲店に向かった。そこは昔からあったんだけど私は1回か2回くらいしか行ったことないんだよね。だから今回行くのはほんとに久しぶりだ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

店員「いらっしゃいませ〜。こちらのお席にどうぞ!」

 

 

羽沢珈琲店に入った私たちは、私たちと同じくらいの茶色の髪をした女の子に席へ案内してもらい席についた。バイトの子かなと思っていると、不意に日菜さんがその子に声をかけた。

 

 

日菜「つぐちゃん!今日も頑張ってるね〜!」

 

 

つぐちゃん?「日菜先輩、声が大きいですよ〜!?他のお客さんもいるのでもう少し静かにですね...」

 

 

日菜「えへへ〜。ごめんごめん!つぐちゃん!いつもの頂戴!あと美久ちゃんにも同じのね!」

 

 

美久「日菜さん...そのいつものってなんですか?」

 

 

なんか無性に気になってきたので聞いてみることにした。だが答えたのはつぐちゃんと呼ばれた店員さんだった。ってかこの2人知り合いだったんだ。

 

 

つぐちゃん?「当店人気のケーキセットです。日菜先輩だけでなく、いろんなお客さんが注文される人気のメニューなんですよ?ぜひどうですか?」

 

 

美久「そうなんだ〜。それじゃあ私もそれで」

 

 

つぐちゃん「かしこまりました!少し待っていてくださいね!」

 

 

そう言ってつぐちゃん?は裏に下がっていった。ケーキが来る前に日菜さんに聞いておきたいことがある。無論、あの店員の子のことだ。

 

 

美久「日菜さん、あの店員のこと知り合いなんですか?」

 

 

日菜「うん。あの子は羽沢つぐみちゃん。あたしはつぐちゃんって呼んでる。この店の子でいつも店の手伝いしてるんだよね」

 

 

美久「なるほど、それじゃあ日菜さんは結構顔見知りなことから、結構ここに来てるんですか?」

 

 

日菜「うん。それもあるけど、つぐちゃんって羽女に通ってる1年生だからさ、あたしの後輩ちゃんなんだ〜。だから学校でもよく会うし、生徒会にも入ってるから部活関係でも接点があったから自然と仲良くなっていったんだよね」

 

 

美久「へ〜、そんな関係が〜」

 

 

あの子は羽女の子だったんだ〜。で、私と同い年。そこで得た情報を軽く頭の中で整理しておいた。もし彼女と話すときにごった返さないようにだ。その後は、芸能事務所のことや芸能人のやることなどを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「はい、お待たせしました」

 

 

10分後、つぐみがケーキセットを運んできた。コーヒーとショートケーキというセットらしい。確かに美味しそうだ。ケーキも思ってたより大きいし、コーヒーも私の好きなブレンドだ。これは良いなと食べる前から絶賛していた私だった。

 

 

美久「すっごく美味しそう!特にケーキが!」

 

 

つぐみ「このケーキは当店の人気の品なんですよ。きっと気にいると思いますよ」

 

 

美久「うん!ゆっくり味わって食べるから!()()()

 

 

つぐみ「え?」

 

 

なんか不思議そうな顔をしたつぐみ。何か変なこと言ったかな?

 

 

つぐみ「何でわたしの名前を?名前言いましたっけ?」

 

 

あ〜、そういえば無意識に名前呼んじゃってたな〜。びっくりさせちゃったかな?

 

 

日菜「あたしが教えたの!つぐちゃん美久ちゃんと同い年だから仲良くなれるかな〜って思ってさ!」

 

 

つぐみ「そうだったんですね。すいませんね?なんか変な顔しちゃって...」

 

 

美久「いや、私も急に名前で呼んじゃったからね。びっくりさせちゃったよね?ごめん。改めて、私は池田美久。花女の1年生だから、変に敬語とかいらないよ?普通に接してくれると嬉しいかな?」

 

 

まだこっちが自己紹介してなかったから、とりあえず軽くすることにした。するとつぐみが笑顔を向けて私に言った。

 

 

つぐみ「美久ちゃんだね。これからよろしくね!」

 

 

美久「うん。よろしく」

 

 

そこで私は新たにつぐみという新しい友達ができるのだった。そしてその後はケーキを食べながら話に花を咲かせるのだった。ちなみにケーキもコーヒーもすっごく美味しかった!

 

 

 




はい、今回は以上で終了になります。とりあえず今回はつぐだけ出してみました。全員揃うのはもう少し後かな?それまでお楽しみに!


次回は、つぐみのバンドのことを知る?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

公園で聴かせる演奏は楽しすぎる!!

前回のあらすじ

美久の芸能界入りを祝うために日菜に羽沢珈琲店に誘われた美久。そこで出迎えてくれたのは日菜の後輩でその店の子であるつぐみだった。日菜関係で仲良くなった美久とつぐみはお互いに自己紹介をして親睦を深めるのだった。


 

 

 

美久「ご馳走様でしたー。また今度も寄らせてもらうね!」

 

 

ケーキセットを平らげ、十分に日菜さんに話を聞けたところで私たちは店を出た。ちゃんと挨拶を忘れずにね!

 

 

つぐみ「はい、またのご来店お待ちしてます!」

 

 

日菜「よかったねつぐちゃん!常連さんが出来て!」

 

 

いや、勝手に常連って言わないでくださいよ......。まあ、この分だと私もその常連になっちゃうと思うけど...。

 

 

美久「それじゃ、帰るね。じゃあね!」

 

 

日菜、つぐみ「「じゃあね〜!」」

 

 

2人に見送られながら私は家に帰った。家では羽沢珈琲店の自慢話をたくさんさせて貰った。案の定、次はみんなで行こうという話になった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

美久「ちょっと山吹ベーカリー寄って行こうかな?」

 

 

次の日、学校に行く前に山吹ベーカリーに行くことにした。何だか今日はあそこのメロンパンが食べたい気分だったからだ。朝ご飯は食べてるから昼にでも食べよう。そう考えて私は山吹ベーカリーに向かった。

 

 

沙綾「いらっしゃいま...あれ?美久じゃん?朝に来るなんて珍しいね?」

 

 

美久「いやね?何か急にここのメロンパンが食べたいって思ったからさ、時間もあったし寄っていくか〜って思ってさ〜」

 

 

沙綾「それなら連絡くれればよかったのに?そうすれば学校に持っていってあげたよ?」

 

 

美久「いや、それだと何となくさやちんに悪いかなって思ったからさ」

 

 

さやちんと軽く喋りながら、パンを受け取ることにした。ちなみにさやちんは学校に行く前までお店の手伝いをしてるみたい。何でもお母さんの手助けだとか。そうしてメロンパンを紙袋に包んでもらい、少しあったかい状態で受け取った。

 

 

美久「ありがと!それじゃ私行く...」

 

 

?「ほうほーう?パンの匂いがモカちゃんを呼んでますな〜」

 

 

行くね!と言おうとしたと同時に店のドアが開いた。どうやらお客みたいだ。入ってきたのは銀色に近い白髪をした女の子だった。見たところ、羽女の制服を着てたから彼女は羽女の生徒らしい。

 

 

沙綾「ああ、モカ。いらっしゃい。今焼きたてのパンもあるからたくさん見ていってね」

 

 

モカ?「おおー、それはモカちゃんにとってはとてつもない朗報ですな〜。ではでは〜、拝見させていただきます〜」

 

 

なんか鑑定士みたいなこと言い出したけどこの子?でもさやちんの知り合いみたいだし、変な子ではないんだろうけど...。何か彼女のことが気になったからさやちんに聞いてみることにした。

 

 

美久「ねえ?あの子ってさやちんの知り合い?」

 

 

沙綾「うん。あの子は青葉モカ。うちの常連さんなんだ〜。よくうちにパン買いに来てくれてそのうち仲良くなったの。ちなみにわたしたちと同い年だからね?」

 

 

モカ「そのとーり。モカちゃんはこの山吹ベーカリーの常連さんなのだ〜。というわけで沙綾〜、これよろしくね〜」

 

 

いつの間にかモカが大量のパンをトレーに乗せてが後ろに立っていた。見た感じ10個以上は乗ってるな...。

 

 

美久「そんなに食べるんだ...」

 

 

モカ「こんなのモカちゃんなら当然のことよ〜」

 

 

沙綾「美久、モカっていつもこんぐらい買ってってくれてるからいつもそんな感じで驚いてたらキリが無いよ〜?」

 

 

美久「そうなんだ...。覚えとかなきゃね...」

 

 

沙綾からしっかりと大食らいモカの忠告を受けた私だった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

美久「ふ〜。終わった終わった。今日は特に予定無いし、このまま帰るかな?」

 

 

授業が全て終わり、予定がないことを確認した私は今日はそのまま帰ることにした。最近は芸能人になったこともあっていろんな手続きやら証明写真やら色々予定があったからこうして何もない日があるのは久しぶりなんだ。だからゆっくりしたいってわけ。

 

 

美久「あ〜...でも今日って昼にちょっと用事入っちゃってスイレン(ギター)弾けなかったんだよね〜」

 

 

そう。今日はなぜか知らないが昼休みに先生の書類運びを手伝わされたんだ。多分ちょうどその場にいたのが私だったってだけなんだろうけど。おかげでお昼をとってスイレンを弾く時間がなくなっちゃったんだ。

 

 

美久「さすがに何も弾かないで帰るのはちょっと嫌だから近くの公園にでも行こう」

 

 

今まで私は家以外で楽器を弾いてから帰るという決まりを自分に課していた。何でかっていうと、単純に家以外で楽器を弾くと心が落ち着いて楽しい気分になるからだ。もちろん家で弾くのも楽しいけど違ったところで弾くのもまた楽しいって思ってるからそうしてるんだよね。最近は結構忙しかったから疲れてる。そんなときだからこそ、楽器でも弾いて気分転換しないとね!

 

 

そう決めた私はいつもの公園に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美久「さて...みんな、今日は何が聴きたい?」

 

 

公園内で私は5、6人の子供たちにそう言った。

 

 

子供1「じゃあ『散歩』!」

 

 

美久「はいよ!それじゃ行くよ!」

 

 

リクエストを受けた私はそのまま曲を演奏した。演奏中、子供たちは手拍子やら一緒に歌ってくれたりやら盛り上がってくれた。この子たちはこの近所の子供達で、よくこの公園に遊びに来てるらしい。私が演奏を聞かせるようになったのはつい最近のこと。私が公園でギターを弾いてるのを見た子供たちがワラワラと寄ってきて次第に私の演奏をたくさん聴かせて欲しいって言ってきたんだ。それから私は時々この公園に来てみんなに演奏を聴かせてる。

 

 

それから私は子供たちが気が済むまでリクエストに応えてあげた。こういうのも楽しいしね。

 

 

美久「ふい〜、みんな今日は楽しかった?」

 

 

子供達「「「「「楽しかったー!」」」」」

 

 

美久「そっか!じゃ、また今度来たら聴かせてあげるね!それじゃ今日はもう帰りな?」

 

 

子供達「「「「「はーい!」」」」」

 

 

子供たちは満足した顔でそのまま帰ってった。あー言う顔見るとこっちまで良い気分になるな〜。

 

 

美久「さて、私も帰ろーか...な?」

 

 

帰ろうとしてスイレンをケースにしまおうとした時、ふと視線を感じたため、そっちに視線を向けた。するとそこには羽女の制服を着た女の子5人組がそこにはいた。どうやらさっきからの視線の主はあの子達みたいだ。そう思った私は声をかけることにした。

 

 

美久「あのー、何か?」

 

 

?「え!?あ、えーと...ごめんなさい。なんかこの公園から歌声とかギターの音とかが聞こえてきたからちょっと見に行こうって話になって...それで〜...え〜と?」

 

 

美久「?」

 

 

真ん中にいた薄いピンク色の髪をした女の子が何か言ってるみたいだけど最後は声が小さくて聞き取れなかった。すると、後ろから見覚えのある顔が姿を見せた。

 

 

つぐみ「美久ちゃん、昨日ぶりだね」

 

 

美久「つぐみ?あれ?何でここにいるの?羽女ってこことは真逆だよね?」

 

 

出てきたのは昨日羽沢珈琲店で会ったつぐみだった。知っている顔がいてほっとしたがまだ本題が解決してない。何でつぐみたちがここにいるのかだ。この公園は羽女とは真逆の方向に位置してるんだ。普通ならここには来ない。だから気になってるんだ。

 

 

つぐみ「うん。そうなんだけど、帰りにモカちゃんが山吹ベーカリーに寄りたいって言って今行ってきたところだったの。その帰り道に偶然ここを通りかかったら美久ちゃんと子供達が一緒になって楽しくセッションしてる姿が見えたから、ちょこっと見させて貰ってただけだよ」

 

 

美久「ああ、なるほどね。やっとわかった」

 

 

つぐみの説明で何とか理解することができた。まあ早い話、ただ私たちのことが気になってみてただけってことか。それなら問題ないけど、さっきまた知ってる名前が出たような......?その予想は的中した。

 

 

モカ「いや〜、誰かと思いましたが〜、朝に会った沙綾のお友達さんではないですか〜。きぐーですな〜」

 

 

美久「やっぱりモカだった...」

 

 

朝、山吹ベーカリーで会った大食らいモカがそこにいた。見ると、両手がパンが入った紙袋で埋まっていた。多分今朝と同じくらい......いや、もっとあるかも...。あれだけ食べてよく太らないな〜?そんなことを考えてると、赤いロングヘアーをした背の高い子が話しかけてきた。みた感じ私よりあるな。

 

 

赤髪の子「なあ、あんた?2人と知り合いなのか?」

 

 

美久「まあ知り合いかな。つい最近知り合ったばかりだけどね」

 

 

赤髪の子「そっか〜。って言うかさ、あんたのギター凄かったな!なんかこっちまで楽しくなってたぜ?」

 

 

美久「そりゃそうだよ。だって楽しくなるような歌と弾き方してたんだから」

 

 

そう言った私の言葉に今度は赤メッシュの入った黒髪の子が反応した。

 

 

赤メッシュの子「楽しくする弾き方?」

 

 

美久「そう!楽器っていうのは弾き方とか姿勢とかで演奏に違いが出るんだ。例えばギターで言えば、強く弦を弾けば力強く元気で迫力のある演奏ができるし、逆に優しく弾けば心が安らいだり気持ちが落ち着く演奏ができる。私がさっきやった演奏は前者。子供達には元気が1番だから、盛り上がる弾き方をしたの。時と場合によってその2つを弾き分けると演奏するのがより楽しくなるよ?」

 

 

とりあえずわかりやすいように教えた。と言ってもほとんどお父さんの受け織りだけどね。

 

 

 

赤メッシュの子「なるほどね、あんた結構やるじゃん?名前は?」

 

 

美久「美久、池田美久。みんなと同じ1年生だからよろしく!」

 

 

赤メッシュの子「美久、か...よろしく。あたしは美竹蘭」

 

 

赤髪の子「アタシは宇田川巴。よろしくな」

 

 

宇田川?あれ?それってあこの名字だったような?聞いてみるか。

 

 

美久「巴...で良いかな?下に妹とかって居たりする?」

 

 

巴「?いるけど何でだ?」

 

 

美久「その妹ってあこって名前だったりする?」

 

 

巴「あこのこと知ってるのか?あいつはアタシの妹だ」

 

 

やっぱりね。何となく目元が似てる気がしてたんだよね。とりあえずわかったところで最後の子の名前を聞こうか。そうして私はピンクの髪の子に視線を向けた。

 

 

ピンクの髪の子「上原ひまり。だけどの5人のリーダーだよ!よろしくね!」

 

 

美久「はい!?リーダー?どういうこと?」

 

 

いきなりリーダーなんて言われたら誰だってそうなるでしょ!?何、この5人ってそういう関係だったの!?私の考えてることに察しがついたのかモカが助け舟を出した。

 

 

モカ「ちょっと、ひーちゃん?主語がないよ?主語が。それじゃみーちゃん、何言ってるかわかんないと思うけど〜?」

 

 

みーちゃん?私ってことで良いのかな?

 

 

つぐみ「ごめんね。実はわたし達バンドやってるの。『Afterglow』っていうバンドをね。ひまりちゃんはその『Afterglow』の中でリーダーっていう意味。わかってくれたかな?」

 

 

美久「うん。バンドの中のリーダーね。そりゃそうだよね。一瞬変な考えが思い浮かんじゃったけど...」

 

 

ひまり「うぅ〜〜。なんかごめんね〜?私って人に説明するのって苦手で〜」

 

 

美久「別に良いよ。気にしてないから。とにかくよろしく!ひまり」

 

 

ひまりとは変な空気になっちゃったけど、とりあえずお互いに自己紹介を終えることができた。

 

 

蘭「それで何だけどさ?美久っていつもここで子供達に曲聞かせてあげてるの?」

 

 

美久「ああ...それはね...」

 

 

蘭から聞かれたことについて私は丁寧に説明することにした。

 




はい、今回は終了です。やっぱり早く絡ませたいってことで一気に全員投入させました!


次回は、もう少しAfterglowと親睦を深めたらと思います。


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

私の武勇伝はエグすぎる!?

前回のあらすじ

学校帰りに近くの公園に寄った美久はその場にいた子供達にギターを聴かせていた。その時、偶然通り掛かったAfterglowのメンバーと遭遇する。その中には知り合ったばかりのつぐみやモカの姿もあり......。


 

 

 

私は5人にこうなったきっかけについて軽く説明した。最近忙しくてこの公園で気分転換に楽器を弾いてた時に子供達に声を掛けられて、演奏を聴かせて欲しいと言われたことなど、大雑把にだが説明した。

 

 

つぐみ「そうだったんだ。美久ちゃんもなんて言うか...大変だったね」

 

 

美久「別に大変じゃないよ?誰かに私の演奏聞かせてその人が楽しんでくれるなら嬉しいし、私の練習にもなるし、むしろ良いって思ってるよ?」

 

 

ひまり「それなら良いんだけど...無理はしないでね?」

 

 

美久「うん、ありがとね!」

 

 

ひまりが心配したように言ってきた。別に無理してるわけじゃないけど...なんか悪いことしちゃったかな?そう思っていると、今度は蘭が口を開いた。

 

 

蘭「でもさ?美久って1年生でしょ?まだ入ったばかりなのにそんなに忙しいなんて、何かやってる?生徒会に入ってるとか?」

 

 

生徒会か...確かにあるけど興味ないんだよね〜。

 

 

美久「ううん。入ってない。忙しいって言っても学校関連じゃないんだよね」

 

 

巴「習い事とかか?」

 

 

美久「ん〜、少し違う。最近だと証明写真の撮影とか、いろんな決まり事の説明を受けたぐらいかな?」

 

 

モカ「ほほ〜う?証明写真ですか〜。何か免許でもとるつもり〜?」

 

 

いやいや、なんか話が違う方に行ってるし...。早いとこ修正しておこう。

 

 

美久「違う違う。事務所所属の証明として撮影しただけ。別に深い意味はないよ?」

 

 

5人「「「「「事務所?」」」」」

 

 

5人の声がシンクロした。そう言えば言ってなかったね。

 

 

美久「ごめんごめん。最初に言っておけばよかったね。私、つい最近から近くの芸能事務所に所属することになったんだ〜。証明写真っていうのはその事務所で必要なものだから撮ったってこと。わかった?」

 

 

5人「「「「「......」」」」」

 

 

返事が無かった。なんかみんな固まってる。もう一度声をかけてみる事にした。

 

 

美久「おーい?みんな〜?」

 

 

ひまり「へ!?あ、あ〜ごめんね?何だかびっくりしちゃってさ...」

 

 

つぐみ「うん...わたしもびっくりした。美久ちゃん...今の話って本当なの?」

 

 

美久「そっか、前会ったときも話さなかったもんね。うん、ほんと。そうだね...みんな頭混乱してるみたいだから、説明するけど...びっくりはしないでね?」

 

 

びっくりしないでね?と言うわたしの言葉に怪訝な反応を見せたAfterglowのみんなだったが、それでもしっかりと頷いてくれた。それから私は芸能人になった流れを説明した。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

美久「っとまあこんな感じだけど、わかってくれた?」

 

 

一通り説明を終えた後、みんなに聞いてみた。あの壮絶すぎる出来事の連続を理解してくれたかどうかを...。

 

 

蘭「一部よくわかんなかったけど、とりあえず、美久がすごいってことだけはよくわかったかな?」

 

 

モカ「って言うかさ〜?やっぱみーちゃんって抜けてるように見えてやっぱすごかったんだね〜。モカちゃんの目に狂いは無かったよ〜」

 

 

ひまり「も〜、モカは美久と知り合ったの今日でしょ?でも、話を聞いてるとオーディションに一発で合格しちゃったりパスパレの指導したりしてる美久ってすごい子なんじゃ...?」

 

 

巴「ああ、アタシもそう思う。美久が嘘つくような奴には見えないし、さっきの演奏見たら事実だって嫌でもわかっちまうな...」

 

 

つぐみ「全部はわかんなかったけど、それでも美久ちゃんは今までいろんなことをしてきたから、今すっごく忙しいってことで良いんだよね?」

 

 

5人それぞれ思っていたことを言ってくれた。なんか私がすごいって意見がたくさん出てたけど、あの時は夢中になってて何をしたんだかいまいちピンときてないんだよね。とりあえず、最後のつぐみの質問に答えようと口を開いた。

 

 

美久「まあそう言うことで良いよ。そんなわけでいろいろ忙しかったからここで楽器弾いてたってわけ」

 

 

蘭「なんか大変だったね...」

 

 

美久「まあ慣れれば問題ないよ。そんじゃさ、次はみんなのこと聞かせてよ!みんなのバンド...Afterglowだっけ?どんなバンドか教えて!」

 

 

ひまり「そうだね。私たちだけ聞くのもおかしいよね?じゃあ次は私たちのことについて話すね!」

 

 

そこからひまりからAfterglowのことについて教えてもらった。まずこの5人は昔からずっと一緒にいる幼馴染でその5人で組んだバンドがAfterglowというわけらしい。バンドを始めたきっかけが、中学の時に蘭だけクラスが離れてしまい、少し寂しい思いをしてた時に、つぐみが何かみんなで集まって一つのことをすれば良いんじゃないかって提案し、その時出てきたのがバンド活動だったみたい。それがきっかけで5人はバンドを始めることになったらしい。バンド名はみんなが”夕焼け”に思い入れがあるみたいでそれを別の言い方にしてAfterglowにしたみたいだ。とりあえずそんなところかな?

 

 

ひまり「だいたい話したけど、何か他に聞きたいことある?」

 

 

美久「ん〜、じゃあみんなの担当楽器教えて!」

 

 

ひまり「うん、良いよ。私はベース」

 

 

蘭「あたしはギターボーカル」

 

 

モカ「あたしはギタ〜」

 

 

巴「アタシはドラムな」

 

 

つぐみ「わたしはキーボードだよ」

 

 

なるほどね...。みんな見た感じ演奏技術はなかなか良いものを持ってそうだ。私は直感的にそう思った。何というかバンドマンの空気みたいなものがみんなから出てるんだよね。パスパレのみんなはまだここまで出てるわけじゃない。少なくとも、演奏技術で言えばAfterglowの方が上だな。そう思った。

 

 

ひまり「他にはある?」

 

 

美久「じゃあーーー」

 

 

その後、私は気が済むまでみんなにいろんなことを質問し続けた。日が落ちるのも気にせずにだ...。

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。Afterglowについて話した回でした。


次回はAfterglowの練習を見る?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蘭の音が違和感すぎる!?

前回のあらすじ

自分が芸能人であることを明かした美久。Afterglowの5人の反応はやはり驚いた様子で、そこから美久は5人に質問攻めにあった。その代わりとして美久もAfterglowのことを教えてもらうのだった。


 

 

 

美久「で?私は何でここに呼ばれてるの?」

 

 

私は昨日の5人組【Afterglow】に聞いた。何で今私はCIRCLEに来ているのかをだ。来たと言っても呼ばれただけなんだけどね。

 

 

ひまり「だって昨日、今日は予定ないって言ってたでしょ?それならって、あの後みんなで話し合って美久に練習見てもらおうってことにしたの。美久ってパスパレとか他の子にも楽器教えてるんでしょ?そんな美久に練習見てもらったら私たち、もっと演奏が上手くなるかもって思ったからさ!」

 

 

美久「だからって、いきなり『CIRCLEに来て』はないでしょ!?それ以外何も言われなかったから特に何も準備してこなかったし!」

 

 

連絡を受けたのは今朝。今日も特に予定はなかったから、何をしようと考えてた時にスマホが鳴った。無論ひまりからだ。それでさっき言ったように用件だけを話して、きられた。

 

 

蘭「なんかごめん?迷惑だった?」

 

 

美久「いや...別に迷惑ではないけど、できればもう少し電話で説明して欲しかったな〜ってくらい」

 

 

そう言ってチラッとひまりに視線を向けた。視線に気づいたひまりは『ごめんなさーい』と謝ってきた。っとまあこの際気にしてないけど。そんなことパスパレではしょっちゅうあったからね(主に日菜さんが原因だけど...)。

 

 

美久「まあとりあえず、練習を見るのはオーケーだからスタジオ入らない?時間なくなっちゃうよ?」

 

 

私はそう促し、5人はスタジオに入って行った。私も後に続いた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

美久「へ〜...なるほどね〜」

 

 

Afterglowの練習を見学?させてもらいながら、いつものように私は頭の中でこのバンドの演奏レベルを測っていた。測ったところ昨日思った通り、結構良い演奏技術を持ってる。ただ1つだけ気になることがある。それは、さっきから蘭のギターの音がどこか迷いがあるような音に聞こえてくることだ。前に、気持ちは音に現れるって言ったけど今回はまさにその通り。どこか集中しきれてないというか、別のことを考えてるような音に聞こえてくる。何かあったのかな?そう思っていると、練習が休憩に入り、みんな水分をとったり汗を拭いたりしていた。私はみんなのところに行き、話を聞くことにした。

 

 

美久「お疲れ〜、すっごい良い演奏してるね。聴いていても気持ちよかったよ!」

 

 

巴「はは、そっか?ならよかったよ。せっかく来てもらってるのに変な演奏なんてできないからな」

 

 

美久「ただ...」

 

 

モカ「?ただ〜?」

 

 

私がさっきまでとは違って少し神妙な顔をしたため、みんな少し不思議そうな顔をした。とりあえずそのまま続けることにした。

 

 

美久「蘭の音がなんか変に聞こえた。なんていうか...集中しきれてないっていうか、入り込めてないっていうか、そんな音が私には聞こえてきたかな?」

 

 

蘭の方に視線を移しながら話した。当の蘭は、何か思い当たる節があるのか、少し俯きながら黙ってしまっていた。

 

 

つぐみ「美久ちゃん、本当にそんな風に聞こえたの?私たちにはそんなふうには聞こえなかったけど?」

 

 

美久「私にはわかるんだ〜。多分いろんなミュージシャンとか音を聴いてきたからかもしれないけどね。音っていうのはね?その人の気持ち次第で変わっちゃうんだ〜。簡単な話、気持ちはダイレクトに音で現れるってこと。演奏者が明るく演奏してたらその明るさが音に乗って現れるし、逆に演奏者が暗い気持ちで演奏すると、その暗い気持ちが音になって出ちゃうんだ。だからこれだけは覚えておいて?これは今後にも絶対に役立つことだと思うから!」

 

 

一呼吸置いてから私は言った。

 

 

美久「悩んでるなら仲間を頼れ!1人で抱え込むんじゃなくてみんなで一緒に抱えこめ!そうすれば悩みなんてすぐに消えて明るい演奏に戻れるよ!」

 

 

5人「「「「「......」」」」」

 

 

私の出したアドバイスにみんなは何て言ったら良いのかわからないみたいで、黙りこくってしまっていた。でも、すぐに口を開いた子がいた。

 

 

蘭「ありがとね美久。そうだね...確かにあたし、どこか集中できてなかったかも。みんなごめんね?こっからちゃんとギア入れるから!」

 

 

巴「いや...アタシ達も悪かったよ...。蘭の様子がおかしいことに気づけなかったなんて。...何か悩みがあるなら遠慮せずに言えよ?」

 

 

蘭「わかってる。美久...さっきのアドバイス、忘れないからね」

 

 

少し吹っ切れたような顔で言ってきた。まあとりあえず一旦は大丈夫かな?

 

 

美久「当たり前!忘れたら、承知しないからね!」

 

 

蘭「はいはい。じゃあみんな?練習始めよっか!」

 

 

ひまり「ちょっと〜?それって私の役目なんですけど〜!」

 

 

そんな感じで、その後の練習は何事もなく終えることができた。終わった後は、途中までみんなと一緒に雑談をしながら帰った。話して思ったんだけど、本当にみんなって仲良いんだよね〜。幼稚園ぐらいからの付き合いだって言ってたからかれこれ10年以上の付き合いってことになる。それだけ長く一緒にいれば仲だっていいよね。なんか友情ってものを感じるもん。それが今、Afterglowに抱いた感想だった。だが、近いうちにその友情が崩壊しうるほどの出来事が起きることを、この時はまだ誰も知らなかった...。




はい、今回は終了です!Afterglowの練習を美久が見学する回でした。


次回は、メンバーの1人にアクシデント発生!?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

つぐみが心配すぎる...

前回のあらすじ

急遽、Afterglowの練習を見学させてもらうことになった美久。そこで美久は、蘭の音が妙に抜けたように聞こえてたため、聞いてみるのだった。悩みを部外者の自分が聞くのは野暮だと感じた美久は、「仲間に頼ること!」というアドバイスをした。そこでとりあえずは収めることができた。だが、やはりことの悩みは尽きることはないようで...。


 

 

 

 

美久「ん〜、結局”あの音”の正体は何だったんだろう?蘭ったらそんな音が出ちゃうほど悩んでるってことなのかな〜?」

 

 

学校の休み時間、1人私は教室の自分の席で考え込んでいた。この前の蘭の”あの音”のことだ。Afterglowのみんなには気持ちは音に出るって言ったけど、あそこまであからさまに音に出てたのはあまり見たことがない。つまり相当悩んでるってことだ。

 

 

有咲「何の話だ?」

 

 

美久「ん?いや...それがさ〜?」

 

 

後ろに座っていた有咲が私が呻いてることに気付いたのか、声をかけてきた。とりあえず、この前あったことを簡単に説明した。全部話し終えた後、有咲は少し考えながら言った。

 

 

有咲「まぁ〜人が悩んでるってなら気になっても仕方ねーと思うけどさ?でも言わねーってことは自分で何とか出来るって思ってるからじゃねーのか?だったら無理に顔突っ込まなくてもいい気がするんだが?」

 

 

美久「そういうもんかな?」

 

 

有咲「そういうもんだ。そーゆー問題は個人か、バンドの仲間達に任せるべきだ。それに言ったんだろ?『仲間を頼れ!』って。だったらもう美久にできんのはねーよ。見守るってのが唯一できることだな」

 

 

有咲が言ったことに私は少し考えさせられた。確かに私は部外者。何でもかんでも首を突っ込むのは良くない。バンドの仲間の悩みはバンド内で解決するべきだ。そうしないとそのバンドは成長できない。それに思い立った時、私の考えは固まった。『とりあえず見守る!』と。もし万が一、取り返しのつかないような事態になりかけたときはヘルプに行くけど、それ以外なら手は出さない。それなら問題ないと自分で勝手に思っていた。よし!じゃあ次の授業の準備しよう!としたのだが、ふと先ほどの有咲のことを思い出した。ちょっと聞いてみたくなったため、私は後ろを振り向いた。

 

 

美久「ねえ有咲?さっきは珍しくいいこと言ってたじゃん!有咲ってばそんなことも言えるんだね〜!」

 

 

有咲「は、はあ!?べ、別に私はいいことなんて言ったつもりはねえ!つーか、そのにたんだ顔をやめろー!!」

 

 

その後は有咲をからかうのを楽しみながら休み時間を過ごした。ほんと有咲って面白い!

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

いつもの帰り道、私は前方に見覚えのある後ろ姿が目に入ったため、声をかけに行った。

 

 

美久「ひまり、巴!今帰り?」

 

 

巴「ん?ああ美久か、そうだな今日は帰りだ」

 

 

美久「そっか、他のみんなは?」

 

 

ひまり「蘭は家の用事、モカはなんか行きたいとこあるからって先に帰って、つぐは生徒会の仕事があるから今日は2人で帰ってたの」

 

 

蘭とつぐみはわかるけど、モカのいきたいとこって何なんだろ?って考えると夜になっちゃいそうだからスルーすることにした。

 

 

美久「ってか、つぐみが生徒会って大丈夫かな〜?」

 

 

巴「?何でだ?つぐはしっかりして頑張り屋だから生徒会でも頑張っていけてるぞ?」

 

 

美久「その”頑張り屋”が問題なんだよ。生徒会って資料運びとか作成とか活動忙しいらしいし、それオンリーならまだしも、バンドと掛け持ちってなると相当キツくならない?だから大丈夫かな〜って言ったの」

 

 

ひまり「た、確かに...」

 

 

少し心配そうな顔になりながらひまりは答えた。それは巴も同じだった。つぐみが頑張り屋というのは幼馴染の2人なら知っていて当然だ。だからこそ思っているのかも知れない。無理をしているんじゃないかと。それは私も思った。つぐみってなんか...【頑張る=凄い】みたいに思ってる節があるんだ。別にそれが悪いって言ってるわけじゃないけど、頑張っても倒れたら意味がない。それをわかってもらいたいんだ。だから私は2人に言った。

 

 

美久「2人とも、蘭のことも気にかけてもらってるとこ悪いんだけど、できるだけつぐみのことも見てあげて?無理しないように。ってか見て!」

 

 

巴「ああ、わかってる」

 

 

ひまり「任せておいてー!...というか、美久ってなんかお母さんみたいなこと言うよね?」

 

 

美久「そう言われても全然嬉しくないね...」

 

 

謎のお母さん発言された私は、少しヘコみながら2人と一緒に家に帰った。つぐみのことも気にかけるように言ったけど何事もないといいんだけどな...。だが、私のその思いは報われることは無かった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

ーーView Change つぐみーー

 

美久ちゃんに練習を見てもらってから少し経った。あれからわたし達は蘭ちゃんのことをいつも以上に気にかけるようになった。本人はやりすぎって言ってるけどね...。

わたしは今、生徒会役員として資料の制作や持ち運び、その他の活動等をこなしている。わたしは昔からこういう学校のみんなのために出来ることをしたいって思っていたから、生徒会に入ったのは正解だって思ってるんだ。その代わり、バンドと掛け持ちするのは本当に大変だけどね...。

 

 

つぐみ「次は...挨拶運動の資料かな?」

 

 

生徒会室に戻って次の仕事を探していると、机の上に山積みになっているプリントの山があった。これは、来週から生徒会が行う挨拶運動の説明を載せたプリントなんだけど、全生徒分あるせいか、プリントが幾つにも重なっていた。これを職員室まで運ぶ必要があるんだ。

 

 

生徒会役員「羽沢さん、無理に全部運ばなくてもいいからね?途中で切り上げてもいいから、遅くならないうちに帰ってね?」

 

 

つぐみ「はい、大丈夫です。さて..とりあえずこっちのプリントから......」

 

 

(グラッ)

 

 

つぐみ「?」

 

 

プリントに手を伸ばしたとき、なぜか一瞬身体がふらついた。よくわからなかったけど、すぐに治ったから気にすることもないって思ってそのままわたしはプリントを運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「ふ〜、これで最後かな?」

 

 

4つあったプリントの山は残り一つになっていた。今はもう部活動の終了時刻になっていて部活を終えて帰ってる子もちらほらいた。わたしもさっさとプリントを運んで帰ろう、そう思って最後のプリントの山を抱えた、そのときだった。

 

 

(グラッ)

 

 

つぐみ「っ、あ... れ?」

 

 

また体がふらついた。しかも今度は視界がぼやけるというおまけまでついてきた。思わずわたしは1度プリントを置いた。そしてもう1度確認する。今はさっきの症状はない。でも代わりに体にだるさというか、倦怠感を覚えていた。体調がおかしいと自分でも悟っていた。本来ならここで大事をとって帰るべきだったのだけど、自分の性格もあって中途半端に投げ出したく無かったわたしは、そのままプリントを運ぶことにしたんだ。

 

 

つぐみ「ハァ...ハァ...ハァ...」

 

 

プリントを運んでいる最中も、体調はさらに悪化していった。だるさも増してきた。だけど、後少しで職員室。そう自分で自分を励ましながら何とか最後のプリントを運び終えることができた。先生に挨拶した後、職員室を出て、生徒会室に戻った。やっと帰れる......そう...思っていたんだけどね...。

 

 

生徒会役員「お疲れ様。ありがとね、あんな量のプリント全部任せちゃって。こっちも色々資料とかで手が離せなくて...」

 

 

つぐみ「いえ...気にしないでください...。それじゃ...わたしは...こ... れ...で...」(バタッ)

 

 

生徒会役員「?羽沢さん?どうかし......!?羽沢さん!?どうしたの!?しっかりして!!羽沢さん!!」

 

 

先輩の役員の人がわたしを呼びかける中、わたしの意識はそこで途絶えた......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。つぐみのアクシデントで幕を閉じさせてもらいました。シリアス展開なんですが、次回もシリアスになるかもです。


次回は、つぐみが入院!?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

私がつぐみに言ったことは辛辣すぎる!!

前回のあらすじ

蘭の様子だけでなく、つぐみも心配をした方がいいとひまりと巴に忠告した美久。だが、その忠告は無駄に終わった。つぐみは、生徒会の仕事とバンドの掛け持ちというハードな日程で活動してたせいで、生徒会の活動中に倒れてしまうのだった。


 

 

ーーView Change 美久ーー

 

 

美久「やれやれ...やっぱりこうなっちゃったか〜...」

 

 

つぐみが倒れた...。そう知らせが来たのは昨日のことだった。サザンカ(ドラム)を叩いてた時にスマホが鳴って、見てみるとひまりからだったため、いったん叩くのを中断して電話に出た。そしてさっき言ったことを聞かされた。でもその時の私は意外と冷静でいられた。何というか、予想できてたことだったから。あれだけの無理をしてるんだから倒れない方がおかしい。その後は、ひまりから詳しい情報を聞かせてもらった。病院の場所や倒れた原因など。「明日お見舞いに行くから一緒に行かない?」と誘わられたが、断った。そこはメンバーだけで行って、話し合うべきだと思ったからだ。でも、見舞いに行かないってわけじゃないよ?ちゃんとその後行く予定だから。そうしてその日はこれ以上叩く気になれなかったから、そのまま寝た。

 

 

そして今に至る。学校を終えた私は、つぐみが入院している病院に向かった。お見舞いも持ってね!

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

美久「つぐみ〜?入るよ〜」

 

 

つぐみ「あ、はい...って美久ちゃん!来てくれたの?」

 

 

美久「まあそりゃくるよ。他のみんなは?」

 

 

つぐみ「さっき帰ったよ、みんな心配してくれて何だか申し訳なくなっちゃった...」

 

 

美久「そりゃ心配もするよ。とりあえず、はいこれ」

 

 

そう言ってお見舞いの果物を横においた。

 

 

つぐみ「ありがとね。それと...なんかごめんね?心配させちゃったみたいで」

 

 

美久「?別に心配なんてしてないけど?」

 

 

つぐみ「ええ!?」

 

 

相当驚いたみたいで、ケホケホと咳をしたつぐみ。そんな体の状態で叫ぶからだよ...。まあ、そうさせたの私何だけどね...。とりあえず私から言いたいことあるから言わせてもらおうかな?そう決め、ベッドの横にあった椅子に座った。そしてゆっくりと話した。

 

 

美久「つぐみが倒れたって聞いた時さ、私思っちゃったんだよね、やっぱりって。だってそうでしょ?ただでさえ忙しい生徒会に加えてバンドも掛け持ちしてるんだもの。他のみんなにも生徒会の大変さを話してなかったみたいだし、みんなを責めることはできないよ。それに、そんな過密日程で体壊さない方がおかしいよ。だから今回は甘やかさないからね?自業自得なんだから」

 

 

つぐみ「うん......わかってる」

 

 

言いたいことは言った。あとはこれをつぐみがどう受け止めるかだ。あ、そうだ...。

 

 

美久「みんなは何か言ってた?ごめんねとか...」

 

 

つぐみ「うん...みんな気付いてあげられなくてごめんとか、口から出てくるのはほとんどごめんねぐらいだったかな...」

 

 

美久「それだけ?今後について何か話し合わなかったの?」

 

 

つぐみ「?うん、少しだけ学校のことを聞いたくらいで他は特に何も...

 

 

美久「そっか...ねえ、見舞いにはこれからもみんなって来る?」

 

 

私はこれだけは聞いておいておきたかった。何でかっていうと...。

 

 

つぐみ「明日も来るって言ってたけど?何で?」

 

 

美久「明日来た時にでもいいから、一旦みんなで今後について話し合ってみて?そうしないとまたこんなことが起こるかもしれないから。今のうちに問題点を解決しておいた方がいいよ?」

 

 

つぐみ「問題点......蘭ちゃんのこと?」

 

 

まあ半分正解で半分間違いだね。でもここで答えを言っちゃうのはおかしいからヒントだけ出すことにした。

 

 

美久「蘭の問題っていうか...Afterglowの問題かな?それを解決できればさらに上にいけると思うよ」

 

 

つぐみ「...Afterglowの問題?それって一体...?」

 

 

美久「悪いけど私が言えるのはここまで。後は自分たちで考えて。それじゃ、今日は帰るね。お大事に!」

 

 

そう言い残し、私は病室を後にした。ここから先はバンド間で解決するべき問題だ。これ以上はやめておくべきだ。そう決めた私は、少しスカッとした気分のまま帰路についた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

ーーView Change つぐみーー

 

 

 

つぐみ「......」

 

 

美久ちゃんが帰った後、わたしは誰もいない病室の中で1人、さっき美久ちゃんに言われたことを考えていた。

 

 

つぐみ「Afterglowの問題...って何だろ?わたしには見当もつかないや...」

 

 

問題が蘭ちゃんのことだったらまだわかったかもしれないけど、わたし達全体の問題となってくると、本当にわかんない。みんないつも通りだし、楽しくバンドもできてる。なのに、問題があるの?

 

 

つぐみ「わたし達の問題ってどういうことなの...美久ちゃん...」

 

 

すでに帰った美久ちゃんの名前を呼びながらわたしはまた考えるのだった。

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。つぐみに辛辣な言葉を浴びせた美久。なかなかない光景ですね。


次回はAfterglowの問題が解決!?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Afterglowの問題は簡単なことすぎる!!

前回のあらすじ

つぐみが倒れたという知らせを受けた美久は見舞いに向かった。そこで美久が言ったことは心配するでも慰めるためのような言葉ではなく、厳しい言葉をつぐみに告げた。つぐみは戸惑っていたが、美久の心理を理解したのか、黙って言葉の全てを受け止めた。その後、美久からAfterglowの問題点をみんなと一緒に話し合って欲しいと言われたつぐみは、美久が帰ってからもその言葉の意味をずっと考えているのだった。


 

 

ーーView Change 美久ーー

 

 

日菜「へ〜、つぐちゃんがね〜?それで?美久ちゃんは何て言ったの?」

 

 

美久「少し叱りました。『無理しすぎたせいだ!』って」

 

 

彩「なんか美久ちゃんって時々お母さんみたいになるよね。私たちの時もいろいろ言ってくれてたし」

 

 

美久「そうですかね?」

 

 

最近、お母さんみたいって言われること多いな...。お母さんには逆に「いつまでも子供ね」ってよく言われてるんだけどな〜。つぐみの見舞いに行ってから3日経った。あれから私は見舞いには行ってない。というのも2日後には退院するって話だったから無理にこれ以上行く必要はないって思ったからなんだけどね。問題解決できてたらいいんだけどな〜。そんなことを考えていた今日、パスパレの練習を見ている時に日菜さんから声をかけられた。日菜さん曰く、「なんか、むむ〜〜って顔してたよ〜?」らしい。つまり考えてたってことだよね?隠してもしょうがないから、その場にいた日菜さんと彩さんには話すことにした。他のみんなは用事と仕事で席を外していた。

 

 

で、今に至るわけ。それについて話したら彩さんにお母さんみたいって言われた。別に言われるのは構わないけど何だかこそばゆくなる。

 

 

美久「別に言いたいことを言っただけですよ。あんな無茶してたら体壊すなんて当たり前だし、自己管理もなってなかったからそう言っただけですよ」

 

 

日菜「ま〜そうかもね。つぐちゃんってそういうとこあるから。...あ、そういえばさ?さっき言ってた”Afterglowの問題”って何なの?」

 

 

美久「ああ、まあでも簡単に解決できる問題ですけどね。それはーーー」

 

 

私は2人には話してもいいと思ったから、その問題について話すことにした。そして、その問題を聞かせたところ、2人はなんか拍子抜けみたいな顔をした。

 

 

彩「そんな簡単なことが問題なの?」

 

 

日菜「そうそう。もっと難しそうなことかと思ってたけど、そうでもないんだね〜?」

 

 

美久「いや...言っちゃうと前のパスパレもそんな感じでしたからね?人のこと言えませんよ?」

 

 

2人はそろって頭にクエスチョンマークを浮かべていた。自覚ないみたいだ。まあ大体解決してるからもういいんだけどね。

 

 

美久「とにかくですね?Afterglowはそんな簡単なことを問題にしてるんです。なので、それなら自分達でも解決できると思ったので後は他のメンバーに任せることにして、私は自分のことを優先することに決めたんです」

 

 

日菜「美久ちゃんが決めたんだったらそれでいいと思うよー!」

 

 

彩「うん!私は美久ちゃんの考えに賛成!」

 

 

美久「ありがとうございます。さて、そろそろ練習再開しましょ!今日は2人しかいないですからいつもよりキツめに指導して行きますからね!覚悟を!」

 

 

彩、日菜「「えええ〜〜〜!!?」」

 

 

その後は私と2人のレッスンを夜まで続けた。後日、2人は筋肉痛になったらしい。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

翌日、事務所での打ち合わせがあったため、私は事務所に行っていた。そろそろ私にも”仕事”が入るようだった。社長が前言ってたけど、私のルックスと容姿は意外と良いらしい。そんなこと思っても無かったけど、社長が言うことならそう言うことなんだろうって思って受け止めることにした。そんなわけで、私に来ている仕事は、モデルの仕事と今度のアイドルのライブのバックミュージシャンの仕事だった。

どんな仕事でも私は初めてだから正直「どうなることやら〜」って思ってる。でもその反面、初めてやる事にワクワクしている自分も居た。

 

 

美久「ま、楽しんでいこ!」

 

 

事務所からの帰り道、1人そんなことを言ってみる私だった。そんな時、前に見知った後ろ姿が5つ目に入った。なんかデジャブ...。5人と会うのも久しぶりな感じもするけど、とりあえず声をかける事にした...んけど、その前にあっちに気づかれたからその手間が省かれた。

 

 

ひまり「美久?」

 

 

美久「よ!みんなして今日はどうしたの?」

 

 

みんながこっちを振り返った。見ると、みんなどこかすっきりと言うか、吹っ切れたような顔つきをしていた。どうやら問題は解決したみたいだね。よかった。でもよく見てみると、みんな目元が少し赤く腫れていた。相当いろんなことがあったみたいだ。とりあえず、話を聞いてみるとしますか!

 

 

つぐみ「美久ちゃん...」

 

 

美久「つぐみ、私が言った”Afterglowの問題”、解決した?」

 

 

これだけは聞いておかないとね。つぐみは少し笑みを浮かべながら答えた。

 

 

つぐみ「うん!簡単なことだったんだよね?わたし達これまで自分の言いたいことを言い合ってきたつもりでいたけど、そんなことなくて、みんなどこか自分の本当の考えを隠していたんだよね?みんなのことをお互い気遣いあってたから...。つまり、美久ちゃんは単に私たちに”素直になれ”って言いたかったんでしょ?素直になってみんなに本当の気持ちを話してみんなでその事について考える。そうすればバンドはもっと1つになる。......そう言う事だったんだね?」

 

 

美久「はいはい。正解...っと言うかやっと気づいたんだね。私はすぐ気付いたよ?音でね」

 

 

5人「「「「「音?」」」」」

 

 

5人揃って私が言った事に疑問を持ったみたいだ。説明してあげるかな?

 

 

あの時気づいたみんなの音についてね。そうして私はみんなにあの時のことを話した。

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。Afterglowの問題は何とか解決したようでよかったですね!


次回はガルジャム開催!


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Afterglowの決意は固すぎる!!

前回のあらすじ

事務所の帰り道にAfterglowの5人と遭遇した美久。久しぶりに見るみんなの顔は以前に比べてどこか吹っ切れたような顔つきになっていた。美久はつぐみにあの問題のことについて聞いたところ、無事に解決できたと言われた。そう言われてほっと息を吐く美久だった。


 

 

 

それから私は、Afterglowのみんなに私が”その問題”に気付いた時のことを話した。

 

 

と言ってもそんなに話すこともないんだよね...。だって、あの時のみんなの音で気づいたんだから。特に内容のある話じゃない。あ、あの時ってのは私がみんなの練習を見学した時のことね。あの時、みんなには蘭の音が変としか言ってなかったけど、実は他のみんなの音もどこか変とまではいかないけど、なんかよそよそしいって言うか、みんなどこか遠慮してる感じが音に出てたんだよね...。前に出るのを抑えてるみたいな感じで。そのせいで、バンド全体の音のクオリティを下げてることにも気付いちゃったんだよね。

 

 

その時だったかな?このバンド、みんなお互いに本音で意見をぶつけてないって感じたのは。つまり人に素直になれてないってこと。まあ、良い言い方なら周りを気遣ってるって捉えられるけど、悪い言い方だと消極的とも言える。みんな的には前者かもしれないけど、私的にみれば後者かな?人は消極的になればなるほど本当のことを言えなくなる。みんなそんな状況だったんだと思う。本人達は自覚してなかったかもだけどね。このままだとずっとこのままでバンド活動していくことになる。それは何と言うかこの子達がかわいそうに思えたから私は助け舟を出した。と言ってもアドバイスしただけだけどね。

 

 

そのアドバイスだけで答えを導き出したみんなはすごいと思った。幼馴染ってのもあると思うけど、バンドの絆ってのもあったのかもしれないね!

 

 

まあ、こんなところかな?こんな感じで今まで私が抱いてたAfterglowの印象とアドバイスをした経緯をみんなに話した。みんなは最後まで私のことを見て聞いていてくれた。そして話終わった後、蘭が一歩前に出た。

 

 

蘭「美久...そこまであたし達のこと思ってアドバイス出してくれたんだ?...そのアドバイスのおかげで、あたし達バラバラにならずに済んだよ...。その...ありがと...」

 

 

美久「ん〜〜?最後なんて言ったのかな〜?」

 

 

蘭「う、うるさいな!もう良いでしょ!」

 

 

ははっ、とみんな照れた蘭を見て笑った。なんか笑った顔見るの久しぶりだな〜。それにしてもやっぱりからかいがあるね〜蘭は〜。

 

 

美久「それじゃ次は私から。みんなの方はどんなことがあったわけ?聞かせて!」

 

 

モカ「ほうほう?聞きたいですかな?あたし達の壮絶な物語を〜?」

 

 

巴「壮絶なってな〜お前......いや、合ってはいるな...」

 

 

否定しようとした巴が急にモカの言ってることを肯定した。何だったんだ?ってか壮絶って...。

 

 

美久「そんなにすごかったんだ?」

 

 

ひまり「それはそれは凄かったと言うか、大変だったんだから〜!」

 

 

つぐみ「うん...本当に大変だったね...」

 

 

少し疲弊気味に2人が答えた。そんな状態で言われたら気になる。とにかく私はもう一度言った。

 

 

美久「聞かせて!みんなに起こったこと!」

 

 

今度はみんな頷いてくれ、そこから私は今までにAfterglowに起こった出来事全てを聞かせてもらった。

 

 

長すぎたから、まとめて説明させてもらうね!

 

 

まず、私がアドバイスをした次の日にAfterglowのみんなが見舞いに来たらしい。その時に、つぐみが私の言った問題について話し合おうとみんなに言って、少し話し合ったものの全く見当もつかないまま時間が過ぎていって、終いには今までのちょっとしたすれ違いなどが災いして、蘭と巴が言い争いを始めてしまったらしい。その時は他のみんなが抑えて何とか止めることができたみたいだけど、今話し合いをするのは無理だと悟ったためそのままみんなには帰ってもらったらしい(なんかその時に抑えようとしたモカが『バーカ』って言ったらしいんだけど、もしその場に私がいたら思いっきり吹き出してたかもしれないな〜)。

 

 

次の日、つぐみが無事に退院してみんなが集まれるようになったから、改めてもう一度みんなで話し合うためにCIRCLEのスタジオに集まったみたい。それで昨日の続きってことで話し合いをすることになったみたいだけど、やっぱり昨日のことがあったせいか空気が重かったらしい。でもそんな時につぐみとひまりが何とかして話し合えるようにしようとひとまず昨日のことを巴と蘭に謝らせることにしたらしい。2人とも渋るかと思ったみたいだけど、思いの外素直に応じてくれたみたい。昨日のことを反省したからかな?ってなわけでまた話し合ったみたいだけど、やっぱり答えが見つからなく戸惑ったらしい。そんな時だった、蘭が自分が何で悩んでいるのかを話し始めたのは。

 

 

蘭の家は、華道の名家で将来は蘭もその道を歩んで欲しいと蘭のお父さんがしつこく頼んでいたらしいんだ。蘭にはもっぱらそんな気はないらしく、いつもつっぱねてたらしいがそれでも全く聞く耳を持たないお父さんに不愉快にも近い感情を持つようになってしまったことが悩む原因だったらしい。中でもバンドのことを”ごっこ遊び”と比喩されたことが何より許せなかったみたい。まあそんなこと言われたら誰でも怒るよね...。そして、そうまで言われてもバンド続けたいと蘭はみんなに訴えた。居場所をなくしたくないと。今まで気持ちを押し殺していた蘭だったが、この時は気持ちが緩んでいたのか、つい本音が出てしまったのかもしれない。でも、これがその問題を解決するきっかけとなった...。

 

 

初めて知った蘭の本当の気持ちにみんな心を打たれていた。そしてそれからは連鎖反応したみたいに『本当は私も...』みたいな感じで次々と本当の気持ちを伝えるようになったようだ。そして全員が本音を言った後、みんな感じたらしい。何か心に引っかかってたものが取り除かれたような感覚を。その時にみんな察したらしい。

 

 

5人「(これがAfterglowの問題点だったんだ...)」と。

 

 

 

 

 

 

 

美久「で、それからみんなは、蘭のお父さんのとこに行って説得しようって話になったってわけね?」

 

 

つぐみ「うん...それで、その説得に行ったって言うのがついさっきだったんだよね...」

 

 

美久「そっか、それで?どうだったの?」

 

 

私は蘭に聞いてみることにした。当の蘭は、少し笑みを浮かべながら話した。

 

 

蘭「父さんには、今度私たちが出るガルジャムっていうイベントのライブを見に来てって言ってきた。『そのライブを見てから私たちのバンドが”ごっこ遊び”かどうか判断して!』って思いっきり言ってやったよ。父さんは頷いてくれたからきっと来る。だからこれからあたし達、そのガルジャムに向けて今まで以上に完璧に仕上げるつもりでいる」

 

 

美久「そっか、意思は固まったってことか。本当よかったよ〜。もし今でもみんな本当のこと言わないでウジウジしてたら喝入れようかな〜って思ってたんだけど、その必要はなさそうだね!」

 

 

みんなコクン、と頷いた。というか、最初にみんなの顔見てその必要はないって悟ったんだけどね。とりあえずよかった!

 

 

美久「なら、私もそのガルジャム?見にいくよ!みんながどこまですごいライブするか楽しみにしてるからね!」

 

 

蘭「もちろん。楽しみにしてて。最高のライブにして見せるから...」

 

 

その後、5人ともガルジャムのことで話し合いたいことがあるらしく、そこで別れた。前まではなんかふに落ちないような印象があったけど、今はそんな印象は微塵もわかない。成長したってことだな〜。私も楽しみにしてよ!

 

 

そうして私は帰路についた。ガルジャムを楽しみにしつつ。

 

 

 

 




はい、今回はここまでです。Afterglow編も終盤に入ってきました。クライマックスも近いです。


次回は、ガルジャム開催!


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ガルジャムは盛り上がりすぎる!!

前回のあらすじ

Afterglowに起こった出来事を聞いた美久。その出来事が元で問題を解決することができたAfterglowは、ガルジャムで最高のライブをすると約束をした。そして美久もそのライブを楽しみに待つのだった。


 

美久「さてさて、受付は〜っと?」

 

 

美樹「あっちじゃない?とりあえず行ってみよ?」

 

 

ガルジャム当日、私は美樹と一緒に会場に来ていた。お兄ちゃんも誘ったんだけど、用事があって無理だったみたい。

 

 

美久「それにしてもさ?美樹ってこーゆーとこあんま好きじゃないんじゃなかったっけ?誘っておいて何だけど」

 

 

美樹「まあそこまで好きではないよ?でもたまには良いかなって思ったからさ。それに出るバンドにおねーちゃんの知り合いがいるんでしょ?それだったら少し見てみたいって思ったの」

 

 

美久「そっか。なら今回は楽しも!じゃあ受付いこっか!」

 

 

それから私たちは受付でチケットを買い、中に入った。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

美樹「次がそのAfterglow?ってバンド?おねーちゃんの知り合いの」

 

 

美久「そ!あの子達とは少しあったけど、どれだけ成長したか見ものだね〜!」

 

 

あれから蘭のお父さんに認めてもらうために練習を重ねたみたいだけど、一体どれだけのものになったか楽しみで仕方がなかった。多分会場のどこかにお父さん来てるんだろうな〜。そう思ってるうちにみんながステージに上がってきた。みんなやることは全てやったって顔をしてた。良い顔つきになってる。

 

 

美久「(頑張れ!みんな!)」

 

 

心の中でみんなにエールを送った。

 

 

蘭「こんにちは!Afterglowです!まずは1曲...聞いてください!『That Is How I Roll!』!」

 

 

この曲は以前聞かせてもらった曲だ。以前はどこか実力を音に出しきれてなかったけど、今回は違った。今持ってる実力全てを音に載せていた。どうやら本家登場みたいだね!この演奏が、この音こそが、彼女達Afterglowの音なんだ。そう思うと自分のテンションも絶好に上がってきてずっとジャンプやらサイリウムやらをずっとやってた。美樹は静かにだが、みんなの演奏を聴きながらサイリウムを振っていた。みんなやっぱり成長してるよ!蘭のお父さん...ちゃんとみてくれてると良いな〜。そう思いながら私は曲が終わるまでずっと声を出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「次で最後!付いてきて!『True Color』!」

 

 

お、これは新曲かな?最初の曲と似た感じの曲だけど、どこかみんなの今の想いが詰まったような曲に思えるな〜。特にサビの『ほんと気持ちを〜』のところだけでもこの曲にかける想いが伝わってくる。...誰に伝えたいのかもね!True Color...いい曲じゃん!その後もAfterglowの演奏は盛り上がった。そしてガルジャム自体もだ。全てのバンドの演奏が終わった時にはさすがにちょっと疲れた。美樹に至っては今にも倒れそうなぐらい疲れ切っていた。これは早く帰らせた方が良さそうだね。

 

 

美久「美樹、先帰ってていいよ?私ちょっとAfterglowのみんなに会いたいから」

 

 

美樹「大丈夫、あたしそんなにやわじゃないから。それにあたしもあの人たちと話してみたかったし」

 

 

美久「そう?ならいいけど...無理しないでね?」

 

 

美樹がそう言ったため、2人でAfterglowのみんなを待つことにした。

 

 

 

待つこと10分、入り口に移動して待っていた私たちだったが、不意に声をかけてきた人がいた。蘭達かな?と思って呼ばれた方を見てみるが、そこにいたのは1人の女性だった。

 

 

美久「?何か用ですか?美樹、知ってる?」

 

 

美樹「う〜ん?知らないと思うけどなんか見たことあるような...」

 

 

どうやら美樹も知らないみたいだ。私も知らない。でも、美樹の言ったようにどこかで見たことある気がするんだよね......この人。すると、目の前の女性の人が私たちのことを見ながら言った。

 

 

女性「お久しぶりですね。美久さん、美樹さん。こんなところで会えるとは思いませんでした。今日は蓮さんはご一緒ではないんですか?」

 

 

美樹「何で私たちのことを?」

 

 

美樹が問い返した。私も気になった。親戚にしてもこんな人知らないしな...。

 

 

女性「思い出せませんよね...。無理もありません。あの時()()()()した時は一蹴されてしまいましたからね。皆さんにとって私はその程度の存在です...」

 

 

美久、美樹「「スカウト?」」

 

 

スカウトという単語に反応した私と美樹。この人にスカウト?されたっけな〜?確かに私たち兄妹はあっち(横浜)にいた頃はいろんなバンドや団体からスカウトされてたけどどこも蹴っていた。バンドはめんどくさいからね〜。つまりこの人は私たちが蹴ったスカウトの人の1人ってことか。やれやれ、懲りずにまたスカウトに来たのかな?

 

 

美久「で?そのあなたが何でここに?」

 

 

女性「はい、今日ここでガルジャムと呼ばれるたくさんのバンドがライブをするイベントがあると聞きましたので、見に来たのです。場合によってはそこでスカウトをさせてもらうことも考えていました。そんな時にあなた達に会いました」

 

 

美樹「ふ〜ん、で?」

 

 

美樹が気のない返事をした。もう興味がなくなったみたいだね。私もだけど。

 

 

女性「もう1度スカウトの件、考え直してくれませんか?私たちも最前のサポートをさせてもらいますので!」

 

 

美久、美樹「「お断りです」」

 

 

即答した。当たり前だし。ってか一回断ったんだから諦めて欲しかったな〜。とりあえずこれ以上付き纏われるのは迷惑だから諦めてもらおう。そう思って私はスカウトの人に言った。

 

 

美久「これ以上は言いませんからね?私たちは好きで楽器をしてるんです。バンドをやるために楽器をやってるわけじゃありません。だから何度言われようと同じことです。私たちはその話は受けません」

 

 

美樹「そういうわけです。わかったらさっさと帰ってください。これ以上付き纏ったらこっちもそれなりの対応しますんで...」

 

 

美樹の脅迫じみた言葉にスカウトの人が少し慌てた。そして諦めたのか、『わかりました...それでは...』と言い残しその場を去っていった。

 

 

美久「やれやれ、ここでもスカウトが来るなんてね〜...なんか疲れた」

 

 

美樹「もう来ないことを祈りたいね...」

 

 

蘭達に会う前に余計な体力を使ってしまった私たちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。次回でAfterglow編ラストになります。見逃すな!


次回、いつも通りの演奏。


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Afterglowの再出発はいつも通りすぎる!!

前回のあらすじ

ガルジャムでAfterglowの演奏の成長を痛感した美久。Afterglowに会おうと会場の入り口で待っていると、美久と美樹に声をかけてきた女性がいた。その女性は以前、池田3兄弟をスカウトしにきた人物だった。女性はスカウトの件を考えて直してほしいと願ってきたが、美久達は即刻断った。美久達の信念の固さは健在なのだった。


 

 

 

蘭「美久?」

 

 

美久「ん?」

 

 

スカウトの人を追い返して少し疲れていたところに、蘭から声をかけられた。見ると、他のAfterglowのみんなもいた。どうやら私たちが話してるうちに来ちゃってたみたいだね。

 

 

巴「さっきの人誰だ?なんか言い争ってたみたいだったけど?」

 

 

美久「ああ...あの人はねーーー」

 

 

私は簡単にさっきの女性のことを話した。以前あの人からスカウトされたこと、そしてもう一度スカウトの件を考え直してほしいと懇願されていたこと、今回はガルジャムでめぼしいバンドを探しに来ていたことなど。

 

 

ひまり「そうだったんだ、やっぱり美久達ってすごかったんだね......ところでそっちの子は?」

 

 

ひまりが美樹の方を向いて言った。そういえばまだ紹介してなかったね。

 

 

美久「ああ、この子は私の妹の美樹。仲良くしてくれると嬉しいな〜」

 

 

美樹「姉がいつもお世話になってます。迷惑とかかけてないですか?」

 

 

なんか失礼なこと言ったな〜。美樹ったら私のことなんだと思ってるんだろ?

 

 

モカ「いえいえ〜。みーちゃんにはお世話になりっぱなしですよ〜」

 

 

つぐみ「うん。美久ちゃんのおかげで今回のライブができたようなものだからね!」

 

 

美久「2人共持ち上げ過ぎ......」

 

 

さすがにそこまで言われるとこそばゆくなる。とりあえず話題を変えようと決め、みんなに話した。

 

 

美久「それよりさ?私達はみんなのライブすっごく良かったって思ってるけどさ、結局お父さんには認めてもらったの?」

 

 

蘭「うん...実はーーー」

 

 

蘭から聞かされたのはライブの後の話だった。ライブの後控え室で帰る支度をしてる時に蘭のお父さんが来たらしい。その時に言われたらしい。『素晴らしい演奏だった。お前の言うバンドがごっこ遊びでないことはよくわかった。今後は好きなようにやりなさい』と。事実上これでお父さんに認められたことになった。それを聞いて私は嬉しいと言うよりも安心の方が強かった。今までずっと不安でしかたなかったからだ。これで気兼ねなくバンドができるね、蘭!

 

 

美久「そっか〜。良かったじゃん!認められて!でもまあ当然でしょ。あんな凄いライブを見せつけたんだからさ」

 

 

蘭「うん...まぁ、悪くなかったかな。あたし達のいつも通りの演奏ができたし」

 

 

モカ「はい〜、蘭の”悪くない”いただきました〜。今日はよかったってことだよね〜?全く素直じゃないんだからな〜」

 

 

蘭「モカ、うるさい...」

 

 

少し顔を赤らめながら茶化したモカに言い寄った蘭。なんか少し可愛らしい...。

 

 

ひまり「とにかくさ?無事にバンドも認められてガルジャムも大成功で終わったことだし、みんなで打ち上げしない?美久達も一緒にさ!」

 

 

美久「私たちもいいの?」

 

 

美樹「せっかくの打ち上げに邪魔じゃないですか?」

 

 

巴「何言ってんだよ。打ち上げなら人が多い方が盛り上がるだろ?それに今日はあたし達の演奏を聞きに来てくれたんだしな。その感想も聞きたかったんだ。良ければ参加してくれないか?」

 

 

そこまで言われたらもう断ることはできない。いや、むしろここまで言わせといて断るのは人としてどうかと思うから、この時点で私たちには”断る”という選択肢は消えていた。

 

 

美久「わかった!じゃあ行こっか!美樹もいいよね?」

 

 

美樹「うん。あたしも皆さんとは話してみたかったので」

 

 

ひまり「それじゃけってーい!みんなで楽しい打ち上げにするぞ〜!えい、えい、おー!!」

 

 

ひまり以外の6人「「「「「「......」」」」」」

 

 

ひまり「みんなもやってよーー!!」

 

 

こうして、Afterglowのみんなは無事にバンド活動を継続させることができるようになり、ガルジャムも大成功という形で幕を閉じた。これから先、みんなにはどんな困難が待っているかわからない。今回みたいにメンバー同士でぶつかることになるかもしれない。道を踏み外すかもしれない。でも私は確信していた。今のみんなであれば、どんな困難も乗り越えることができると。

 

 

つぐみ「ん?美久ちゃん、どうしたの?早く行こ?」

 

 

美久「ああ、ごめんごめん!今行く!」

 

 

でも今は打ち上げを楽しもう!そう決め、私はAfterglowとの打ち上げのためにファミレスに向かうのだった。

 

 

 

 

ちなみに打ち上げは盛大に盛り上がった!

 

 

 

 

 

 




はい、Afterglow編これにて終了です。いかがでしたでしょうか?Afterglowに関しては美久は直接的に関わることはせずに、アドバイスなどをして遠くから見守るというポジションで通させてもらいました。Afterglowは幼馴染で作ったバンドですからね。自分たちで解決させたいと言う自分の気持ちを優先させました。


次回からはこころワー......ハローハッピーワールド編に入っていきます。こころ達の破天荒な行動とそれに引き摺り回されている花音さんや美咲ちゃん達を書かせてもらいます!


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5章 世界を笑顔にハローハッピーワールド!
元気を貰えるバンドは破天荒すぎる!?


前回のあらすじ

無事にガルジャムを終えることができたAfterglow。そして正式に蘭はお父さんにバンドをすることを認めさせることができた。こうして、Afterglowにいつも通りの日常が戻ってくるのであった。


美久「さて...と、今日は事務所で仕事があるんだっけ?」

 

 

ある日、私は事務所で仕事がある為、事務所に向かっていた。でも、正直今の私の気持ちは複雑だった。

 

 

美久「興味はあるけど、大丈夫かなぁ...私って”モデル”なんてやったことないしな〜」

 

 

そう、この”モデル”の仕事が私の気持ちを複雑にしてくれてる。前にも言ったと思うけど、モデルには興味があった。でも代わりに私に務まるの?という考えもあった。一旦そのことについては吹っ切れたつもりだったけどいざやろうとするとまたその時の気持ちが出てきた。

 

 

美久「なんか気分転換にでもなることでもあればいいんだけど......ん?」

 

 

気を紛らわせようと何か興味がそそられそうな物を見つけようと周りをキョロキョロしていた時、何やら駅前の方が騒がしかった。何事?と思って視線を向けてみると、どうやらそこでは軽いミニライブを開催しているようだった。駅前では少しひらけたところがあり、許可を取ればそこでライブをすることも可能なんだ。

 

 

美久「でもライブなんて久しぶりじゃないかな?ここでするの」

 

 

基本的に駅前でやるのはギターとかキーボードなどで弾き語りをするのが多い。ライブというのは言ってしまえば滅多にいない。みんなどことなく注目されるのを嫌っているからかもしれない。

 

 

美久「まだ時間あるし、ちょっと見ていくかな」

 

 

気晴らしになっていいと思って寄ることにした。ステージに立っていたのはみんなそれぞれ楽器を持った5人の女の子?たちだった。歳は私と同じくらい。ボーカルが金色の髪をした女の子、ギターが紫色の髪をした長身の女の子、ベースが橙色の髪をした女の子、ドラムが水色の髪をした女の子、そしてここで私の頭の上にクエスチョンマークが出た。なんでかって?まず、もう1人と言えるのかわからないがもう1人はDJだった。この時点で珍しいなとは思っていたが、問題はそこではなかった。担当する人?が......”熊”?

 

 

美久「なんで熊?」

 

 

そう、熊。熊なの。何でここに動物がいるわけ?いや......着ぐるみなんだろうけど、それでも着ぐるみでライブするってどういうこと?私の疑問は尽きることを知らなかった。そうやって私が疑問を抱いてる間に演奏が始まってしまったみたいだった。とりあえず熊のことは一旦置いておくことにして演奏を聞くことにした。演奏自体は問題ない。というか、なんか聞いてると体の中がほわ〜ってするっていうか、元気が出てくるような感じがする。

 

 

美久「(聴いてるとなんか元気が湧いてくるな〜。こんな演奏は今まで聞いたことないな...)」

 

 

ここまで演奏で元気をもらったことはあまりない。特にボーカルの子のあのダイナミックな動き(バク転とかダンスとかとにかくずっと動きまくってた)に余計パワーをもらった。よく歌いながらあんな動き出来るなと思わず感心しちゃったくらいだ。他の子たちもいい演奏をしていた。それでDJなんだけど......意外と問題なさそうだった。あんな巨体でもしっかりDJとしてやっていけてたしバンドの一員として溶け込めていた。それには違う意味で感心しちゃった。そして演奏が終わった。するとボーカルの元気な女の子が話し始めた。

 

 

金髪の女の子「みんなー!今日は来てくれてほんっと〜にうれしいわ!私たち〜〜?」

 

 

5人「「「「「ハローハッピーワールドです」」」」」

 

 

掛け声とともにバンド名をメンバー全員で言った。ハローハッピーワールドね...。

 

 

金髪の女の子「私たち、世界を笑顔にするために活動してるの!もし、笑顔になれない人達がいるなら、その時は私たちに任せなさい!私たちがきっとあなたたちを笑顔にして見せるわ!」

 

 

美久「......」

 

 

おお...なんて活動目的だ...。すごい目的で活動してるんだな...大丈夫かなこのバンド?なんかやぱめな感じの人いないかな?いや......すでに着ぐるみのメンバーがいる時点でやばそうなバンドか...。でも、

 

 

美久「元気はもらったかな。来てよかった!」

 

 

なんかさっきまでとは違ってモヤモヤした気分が消え去り、すっきりした気分になっていた。この分ならモデルの仕事も頑張れるだろう。

 

 

美久「さて、そろそろ行かないと怒られちゃうからね。行こ」

 

 

まだライブは続くようだったけど、これ以上いると遅れちゃうと思ったため、名残惜しいがその場を後にした。今度は最初から聴きに来たいな...。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

美久「ふぅ〜〜、意外と簡単でよかった...」

 

 

モデルの仕事を無事に終え、事務車からの帰り道そう呟いていた。

 

 

美久「イヴには感謝しないと...イヴいなかったら大変だったし...」

 

 

事務所に着いた時、仕事場にはイヴがいた。なんでいるのかと聞いたところ、私にモデルのやり方を教えにきたと言ってきた。聞いたところ、イヴはパスパレに入る前はモデルをやってたらしくモデルのことに関しては詳しかったらしい。その言葉に甘えることにした私はイヴの言う通りにポーズや仕草などをした。撮影の人や私の着飾りをしてくれた人も私に合わせて丁寧に教えたり接したりしてくれた。ここの事務所って本当にいい人ばかりだな〜。

 

途中、彩さんが撮影場所に来て「美久ちゃん可愛い〜!」と言いながら抱きついてきたのはまた別の話。

 

 

美久「後で何か奢ってあげるかな...どんなのが良いか......な?」

 

 

イヴに何を奢るか考えていた時、道の真ん中で何やらオロオロしている人物がいたためその場で止まった。よく見ると、その人はさっきのハローハッピーワールドというバンドのドラムをしていた人だった。そんなオロオロしてたら不審に思われちゃうと思うけどな....とりあえず困ってそうだから声をかけることにした。

 

 

水色の髪の女の子「ふえぇぇ〜〜、ここ...どこ〜〜?」

 

 

美久「あの...どうかしました?」

 

 

水色の髪の女の子「ふぇ?」

 

 

私の声に気づいたこの人がゆっくりと振り返った。よく見ると綺麗な顔してるな。

 

 

水色の髪の女の子「え〜と...はい、ここがどこか分からなくて迷っちゃいまして...帰れなくなっちゃったんです...」

 

 

美久「どこまで行けばわかりますか?良ければそこまで案内しますよ?」

 

 

水色の髪の女の子「す...すいません。じゃあ、この入り組んだ道を抜けたところまでお願い出来ますか?」

 

 

美久「りょーかいです。じゃあ、行きましょうか!」

 

 

そのまま放置するのもかわいそうだったから、とりあえず道がわかるところまで案内することにした。

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。ハロハピ編ついに開幕です!どんな展開が生まれるのか楽しみですね!


次回、花音は方向音痴!?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

花音さんは方向音痴すぎる!!

前回のあらすじ

事務所に仕事をするために向かっていた美久は駅前で行われていたハロハピのライブに興味が湧き聞いていくことにした。ハロハピの元気あふれるライブに元気をもらった美久はそのまま仕事に向かった。仕事が終わった後、帰ろうとした美久は道に迷ったハロハピのドラムの子と出くわすのだった。


 

 

何かよくわからないけど道案内をすることになった私は、とりあえず道がわかりやすい場所まで一緒にいくことにした。それで、ただ一緒にいくのはつまらないからさっきのライブの話をしようと思った。感想話した方が当人も喜ぶと思ったからね!

 

 

美久「そういえば、さっきのライブ凄かったですよ。なんかパワーを貰いました!」

 

 

水色の髪の女の子「え!?さっきのライブ見に来てたんですか!?」

 

 

美久「?そうですけど...何かまずかったですか?」

 

 

...なんで少し取り乱してるんだろ?そう思ったから聞いてみることにした。だが、答えはあまりにもぶっ飛んだものだった。

 

 

水色の髪の女の子「はい...正直、恥ずかしかったので...」

 

 

美久「恥ずかしい?それじゃあなんであそこでライブしたんですか?」

 

 

水色の髪の女の子「それが...あそこでやろうと言い出したのはこころちゃんでーーー」

 

 

それから事情を聞かせて貰った。どうやらあそこ(駅前)でやるというのはメンバー全員が承諾していたわけではなかったみたいだった。話を聞いたところ、その...こころ?が駅前でライブをやろうと突然言い出し、メンバー全員が戸惑いをみせ......無かったみたいでギターの紫の髪をした人とベースの橙色の髪をした人は大賛成と乗り出したらしい。目の前にいるこの人と、あの熊の着ぐるみ着た人はもう反対したみたいだったけど、結局強行開催されることになってしまったらしい。そりゃ恥ずかしいよね...。

 

 

美久「...なんか大変だったみたいですね?」

 

 

水色の髪の女の子「はい...でも、楽しんでもらえたのならよかったです。恥ずかしかったけど...それでも精一杯の演奏はできたと思っていたので」

 

 

美久「そうですよ。皆さんすっごく良いというか魂みたいのがこもった演奏をしてたので、見てるこっちとしても楽しかったですよ!また見たいくらいです!」

 

 

今まで見てきたバンドとはまた違った演奏だったからか、いつもよりあの時はテンションが上がってたんだよね。

 

 

水色の髪の女の子「ふふ、また見にきてくださいね」

 

 

美久「はい!あ... そうだ、すいません名前を聞いても良いですか?」

 

 

花音「はい、私は松原花音って言います。ハロハピのドラム担当です」

 

 

美久「花音さんですね。私は池田美久です。これからも()()がなければ見に行くのでご贔屓にお願いします!」

 

 

花音「仕事...?ああはい、今度も是非見にきてください」

 

 

”仕事がない時は見に行く”という約束を交わした後、目的の場所までたどり着いたためそこで別れることにした。

 

 

美久「じゃあ私はこれで......もう道に迷わないでくださいね〜」

 

 

花音「はい、ありがとうございました。気をつけますね。それじゃあ...」

 

 

その場で花音さんと私は別れた。今日はいろんなことがあったけど、ハロハピの花音さんとも会えたし良い日だったな〜。今日は良いフレーズ思いつきそう!そうウキウキしながら帰路についた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

ーーView Change 花音ーー

 

 

 

花音「さっきの人...良い人でよかったな〜。もし怖い人だったらどうしようと思ったよ...」

 

 

私は池田さんに道がわかる場所まで案内してもらい、今は無事に帰路につくことができている。本当にあの時会ってよかった...。

 

 

花音「でも...ふふ、また道に迷ったなんて言ったら千聖ちゃん、笑うだろうな。全く...いつになったら直るんだろ?」

 

 

自分でそう言ってみたが、今のところその目処は立ってない。むしろこのまま治らないんじゃないかとも思っている。私って本当にダメダメだよね...。

 

 

そう、少し自分の不甲斐なさに打ちひしがれながら家に帰った(少し遅れちゃったから、お母さんに少し怒られちゃった...迷ってて時間のこと忘れてたな〜...)。

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、私は千聖ちゃんとお茶をする約束をしてたため、羽沢珈琲店に来ていた。私が来たときには既に千聖ちゃんは来ていて、1人何かの台本みたいなものを読んでいた。

 

 

花音「千聖ちゃん!お待たせ。待たせちゃったかな?」

 

 

千聖「あら花音。いいえそんなことはないわよ。私が早くに来ただけだから」

 

 

そういうと千聖ちゃんは読んでいた台本をしまって、すでに注文していた紅茶を一口飲んだ。私も座ろうと千聖ちゃんの座ってる席の隣に座った。さっきの台本?が気になったため聞いてみることにした。

 

 

花音「さっき読んでたのって台本?また何かお仕事でもあるの?」

 

 

千聖「ええ、ドラマの撮影が近々あるの。これはその台本。でも、さっきまではこっちのも読んでいたのよ?」

 

 

そうして千聖ちゃんは鞄の中からもう1つの冊子を取り出した。中身を確認するとーーー。

 

 

花音「これって...楽譜?」

 

 

千聖「そうよ、次の演奏する曲の楽譜。時間のあるうちに覚えておこうと思って」

 

 

花音「そうだったんだ...」

 

 

少し意外だった。何が意外だったかというと、中に書いてあったのは楽譜だった。そこまでは特に驚きはしなかった。千聖ちゃんがパスパレでベースをやっているのは前に聞かせて貰ってたから知ってるからだ。問題はその楽譜を千聖ちゃんはここに持ってきていてここで読んでいるということだ。以前の千聖ちゃんは持ってきていても台本ぐらいだった。逆にそれ以外のものを持ってきているのを私はみたことが無かった。だからこそ驚いているんだ。その千聖ちゃんが楽譜を真剣に読み込んでいることに。

 

 

千聖「?どうかしたの、花音?」

 

 

いつの間にか難しい顔をしてしまってたみたいで千聖ちゃんに心配されちゃったみたいだった。反省反省。

 

 

花音「ううん、少し意外って思っただけだよ。千聖ちゃんが台本以外のものを読んでるのって初めて見たから...」

 

 

千聖「確かにそうね...でもこれは私たちの()()からの課題だからやらないわけにはいかないのよ。でも受け身でやってるわけじゃないのよ?私たちもしっかりと受け入れてやってるし、その先生もそのことを考えてこの課題を出してくれたから。そのおかげもあって私自身も少しだけパスパレとして自覚を持てるようになったわ」

 

 

花音「そっか...千聖ちゃんはちゃんと成長してるんだね。それに比べて私は......」

 

 

千聖「あら?もしかして、また道に迷ったのかしら?」

 

 

花音「うっ......」

 

 

思いっきし図星だった。千里ちゃんって鋭いからちょっとした仕草とか行動でわかっちゃうんだよね。この際正直に話しちゃおう。そう決め、私は昨日の出来事を話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「花音は相変わらずね...そんなところが好きなのだけどね」

 

 

花音「そう言われても嬉しくないような...?」

 

 

話を聞いた後、千聖ちゃんは少し微笑みながらそう言ってきた。馬鹿にしてるのか褒めてるのかよくわからない。

 

 

千聖「その”案内してくれた人”には感謝しないといけないわね。そのままだと花音きっと、夜になってもお家に帰ることはできなかったでしょうね」

 

 

花音「うう〜...否定できない...。でも、()()さんには本当に感謝しないといけないね」

 

 

千聖「池田さん?それってその”案内してくれた人”のこと?」

 

 

花音「?そうだけど?」

 

 

池田さんの名前を出した途端、千聖ちゃんが何か考え込むようにして黙りこくってしまった。そして何か思いついたのか千聖ちゃんが私に聞いてきた。

 

 

千聖「花音、その子の下の名前、”美久”って言わなかった?」

 

 

花音「へ?うん、そうだよ?池田美久さん」

 

 

千聖「やっぱり...美久ちゃんには後でお礼を言っておかないと...」

 

 

小さな声で何かボソボソ言ってたけど聞き取る事はできなかった。

 

 

花音「あの...千聖ちゃん?」

 

 

千聖「ああ、ごめんなさいね。それでなのだけど、花音が会ったっていう池田美久さんはね...」

 

 

花音「うん」

 

 

少しためながら何かいたずらを思いついたみたいな顔をした千聖ちゃん。何を言い出す気なんだろ?そして次に言われたことに私は少なからず驚いた。

 

 

千聖「さっき言った私達の先生なのよ」

 

 

花音「え?......え、ええぇぇーー!!??」

 

 

店中なのに盛大に叫んでしまった私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。花音ちゃんと美久が出会い、そして美久の正体を千聖に明かされるという展開でした。


次回、花咲川の異空間?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

こころは面白すぎる!!

前回のあらすじ

道に迷った花音を見つけた美久は、放置するのはかわいそうと思い、一緒にわかる道まで案内する事にした。後日、花音は千聖に、案内をしてもらった”池田さん”と言う人は自分たちの先生だと言うことを聞かされ、盛大に驚くのだった。


 

 

 

ーーView Change 美久ーー

 

 

美久「ふわぁぁ〜〜あ、眠い〜〜...」

 

 

有咲「今にも寝そうだな......ゆうべ何してたんだよ...?」

 

 

眠すぎて教室で机に突っ伏した私に、後ろから有咲に声をかけてきた。

 

 

美久「いやさ、昨日はいいフレーズがたくさん出てきてすっごく調子良かったから、時間なんて気にしないでスイレン弾きまくってたらいつの間にか朝方になってたんだよね〜」

 

 

有咲「...ったく、お前のその音楽バカは相変わらずだよな...。にも関わらず成績は良いとか...いったいいつ勉強してんだよ?」

 

 

美久「楽器弾く合間かな?それ以外の時間は何もやってないよ?」

 

 

これは本当のことだ。実際今は仕事とかいろいろ予定もあるし、楽器も弾きたいから勉強はその合間にしかやってない。それでも自分なりには効率よくは勉強できてると思ってる。実際、授業には問題なくついていけてるし。

 

 

それに昨日は花音さんに会えてテンションも上がってたから余計に調子良かったんだよね...は〜〜眠い......。

 

 

美久「ってなわけで、次の授業の時間になったら起こしてね〜よろしく......すやぁ......」

 

 

有咲「寝るな〜!!ってか次、移動教室!!寝てないでさっさと準備しろーー!!」

 

 

結局その後、私と有咲は授業に遅れてきた罰として、みんなよりも多くの課題を出させられる事になった...。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

有咲「ったく...お前のせいで私まで課題増えちまったじゃねーか...」

 

 

美久「ごめんごめん!でも1人だけじゃないでしょ?今回は私も一緒だからさ!」

 

 

有咲「そう言う問題じゃねー!!」

 

 

昼休み、増えてしまった課題のことを有咲と話し合い?ながら香澄たちが待つ中庭に向かっていた。この後の予定としては、香澄達とお昼を取った後、屋上でいつものようにマリーを弾く予定だった。まぁ、ここ最近はいつもこんな流れだけど、今日はそれは予定だけで終わることとなった。

 

 

美久「香澄〜、おまた...せ?」

 

 

?「あら?あなたたち、もしかしてさっき香澄が話してた美久と有咲かしら?あたし、弦巻こころ!世界を笑顔にするためにバンド活動してるの!それでーーー」

 

 

?「ストップこころ!一旦落ち着いて!2人とも困ってるから!」

 

 

私たちが中庭で目にしたのは、いつものメンバー、香澄、りみ、おたえ、沙綾、そしてもう2人見知らぬ人たちがいた。1人の金髪の子のマシンガントークに若干引いたけど、元気な子で良いなって思ったかな。有咲は既に理解不能っ的な顔をしてるけどね。でも待てよ?あの金髪の子、確か昨日...。まあでもとりあえず...。

 

 

美久「大丈大丈夫。とりあえず座って良いかな?それからゆっくり話聞かせて貰うから。座ろ?有咲」

 

 

有咲「お...おう...」

 

 

そう言って私と有咲は中庭のベンチに腰掛けた。私たちが座るや否や、香澄が私たちのとこに来た。

 

 

香澄「あの子は私たちと同じクラスのこころんって言ってね、今日一緒にお昼食べようって声かけてきてくれたから一緒に食べる事にしたの!それで、隣にいるのは同じクラスの美咲ちゃん。美咲ちゃんも私たちと一緒に食べる事になったんだ〜。みっくも有咲も良い?」

 

 

美久「私は良いよ?」

 

 

有咲「私も別に構わないけど...あいつ大丈夫か?」

 

 

有咲が視線だけこころに向ける。その目はまるで何か怖いものを見たような目をしていた。

 

 

香澄「大丈夫!こころは誰にでも仲良くしてくれるからきっと有咲も友達になれるよ!」

 

 

有咲「いや...私が言いてーのはそう言う事じゃ...」

 

 

こころ「何の話をしてるのかしら?あたしも混ぜてちょうだい!」

 

 

有咲「うわあ!!?」

 

 

突然話に入り込んできたこころにすっごい声を出して有咲が驚いた。あんな声初めて聞いたかも...。

 

 

美久「私と有咲がこころと友達になりたいって話してただけだよ。こころ、私たちと友達になって!」

 

 

有咲「おまっ!?何勝手に!?」

 

 

こころ「もちろん大歓迎だわ!今日からあたし達は友達よ!」

 

 

美久「良かったね〜、あ・り・さ!」

 

 

有咲「うるせーー!!」

 

 

有咲の叫び声と同時にその場が笑いに包まれた。何とか場を和ませられたか...そう思ってると、ふと視線を感じた。視線の主は......美咲だった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

美咲「池田さん...で良いんだよね?ちょっと良いかな?」

 

 

美久「ん?何?」

 

 

お昼をとった後、こころたちと親睦を深めてると、後ろから美咲に声をかけられた。そう言えば美咲とはほとんど喋ってなかったな〜。良い機会だと思って誘いに乗っておこう。

 

 

美咲「こころのことなんだけどさ...池田さん、よくあんな一緒にいると疲れそうな子と友達になるって言ってくれたよね...。正直尊敬しちゃうよ...」

 

 

美久「そう言われてもね...見たところ良い子だし。友達になったらいろいろ面白そうだからなっただけだよ?」

 

 

美咲「そこが凄いの。こころって花女だと【花女の異空間】だって呼ばれてるくらい破天荒な行動ばっかりしてるから、進んで友達になってくる子なんてほとんどいないんだよ?だから、池田さんはすごいって思ったんだ...」

 

 

美久「ふ〜ん?」

 

 

”異空間”か〜。まあ確かにそう思われてそうだけど、私ってそんな事気にしないんだよね。だってそう言われてる=悪い子ってわけじゃないし。むしろすっごく良い子かもしれないじゃん?だから私は肩書きには惑わされないんだよね。ってか思ったんだけど...。

 

 

美久「美咲って結構こころのこと気にかけてるんだね〜。自分では迷惑そうにしてるけど、本心では気にかけてあげてるんじゃん。美咲も結構良い子だね!」

 

 

美咲「!?い、いや...わたしはこころが他の人に迷惑かけないように気にかけてるだけで、そう言う意味じゃ...」

 

 

美久「はいはい、わかった。ってなわけでさ?美咲もさ、私たちと友達になろ!美咲のこともっと知りたいし!」

 

 

美咲「私のことなんて特に面白いこともないけど...うん、いいよ」

 

 

こうして私は、新たに2人友達を作る事ができたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。こころと美咲を登場させました。次回でも登場させるかもです。


次回、花音先輩!?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

花音さんが先輩はびっくりすぎる!!

前回のあらすじ

中庭で待たせてる香澄達のもとへ急いだ美久と有咲。中庭に着いたと思ったらそこにいたのは、金髪元気少女のこころとそれを抑える美咲の姿があった。有咲はその2人、特にこころに対して苦手意識を出していたが、美久は面白いと感じていた。そして美久はその2人に友達になろうと言い、友達になるのだった。


 

 

 

 

沙綾「美久、今日も屋上で弾くの?」

 

 

話がひと段落したところで、さやちんが唐突にそう言ってきた。弾きたいところなんだけど...せっかくこころ達と仲良くお話ししようとしてたところだしな〜。今日はやっぱり...。

 

 

やめよう。そう言おうとしたけど、それは叶わなかった。なぜならーーー

 

 

こころ「あら?何を弾くのかしら?」

 

 

りみ「今日はマリーかな?あ、マリーっていうのは美久ちゃんのベースのことね。美久ちゃん楽器に名前をつけてるの」

 

 

こころ「そうなの〜!それならあたしも聞いてみたいわ!早く屋上へ行きましょー!」

 

 

美久「......」

 

 

さすがにここまで言われたら断れないよね...。こころって何にでも興味示しそうだから食いついてくるとは思ってたけどここまでとはね...。ま...別にいっか。みられて減るもんでもないし。

 

 

結局その後、みんなで屋上に行って私のベースをみんなに聞かせた。香澄達は相変わらず『上手で楽しそうに演奏するね!』と言って褒めてくれ、こころに関しては『マリーを弾いてる時の美久の顔、とっても素敵な笑顔だったわよ!』と絶賛してくれた。もうちょっと音の方を褒めてくれてもよかったんだけどね...。美咲も最初は嫌々というかしょうがなくついてきた感じだったけど、演奏の後は『すっごくいい演奏聞けたよ。来てよかった』と言ってくれた。

 

 

美久「なんか気持ち良いな〜!人に聞かせるってのも悪くないかもね!」

 

 

そう小声で呟きながら私は次の移動教室に向かっていた。あの後はそのままそこで解散となってそれぞれ教室に戻っていった。今回の移動教室は有咲とは違うクラスだったから、一緒ではない。

 

 

美久「さて...と気持ち切り替えて次の授業に......ってあれ?」

 

 

次の教室が近くなってきたところで、なぜか廊下の隅でみる限りあたふたしている人がいた。そんな風にしてたら注目浴びますよー!っと心の中でそう言った。

 

 

美久「(でもなんかあの人見覚えが...あれ?)」

 

 

見覚えがあると思ってその人を観察してけど、直後誰かその人に話しかけていた。誰だと思って話しかけた方の人を見てみるとーーー

 

 

美久「千聖さん?」

 

 

そう。話しかけたのは千聖さんだった。千聖さんが花女に通ってるのは知ってたがこうして学校で見かけるのはあまりなかった。というか階層も違うからあまり合わないのも無理はないのだけどね...。とりあえず、挨拶ぐらいした方がいいよね?

 

 

そう思い、私は千聖さんともう1人のところに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美久「千聖さん!こんにちは!学校で会うのってなんか新鮮ですね」

 

 

千聖「あら、美久ちゃん。こんにちは。そうね、学校ではあまり会ったことはなかったわね。ふふ、確かに新鮮ね」

 

 

事務所でいつもするような挨拶をこの場でもした。まあ、お決まりみたいなものだしたいして気にしなかったけどね。それよりも...。

 

 

美久「千聖さん、そういえばこの人......って花音さん!?」

 

 

花音「え!?あれ?池田さん?どうしてここに?」

 

 

千聖「あら?2人とも、どこの学校に通っているのか話してなかったの?」

 

 

美久、花音「「話してない(よ)です!」」

 

 

同時にそう言った。確かにあの時はライブのことしかほとんど話さなかったし...お互いのことよく知らないよね。その後、私は花女に通う1年生だと明かし、花音さんは1つ上の2年生だというのを明かしてくれた。これからは先輩呼びしないと...。

 

 

花音「なんだかごめんなさい池田さん...。あの時は私、色々と手一杯でして...」

 

 

美久「美久でいいですよ花音先輩。それに敬語もいらないです。私後輩ですから。まあ、道に迷ったら誰だってそうなりますから気にしないでください!」

 

 

花音「ふえ!?え、え〜と...でも...」

 

 

千聖「ふふ、大丈夫よ花音。美久ちゃんは信用できる子よ。何せ、私たち(パスパレ)の先生だもの。だから固くならないでいいわよ?」

 

 

花音「そう...なのかな?...ううん!そうだよね。あの時助けてくれた池田......美久ちゃん、すっごく親切に接してくれてたし、優しかった。美久ちゃん...これからはどうかよろしくね」

 

 

美久「こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

千聖さんのフォローのおかげでなんとかカノンさんとの間を取り持つことができた。後でお礼言っておかないと。でもまあ、とりあえずよかった〜〜......ん?何か忘れてるような......。

 

 

千聖「そういえば美久ちゃん、今日はなんでここに?()()()()でもあるの?」

 

 

美久「......」

 

 

......完全に忘れてた。時間はギリギリ...これはまずい......。

 

 

美久「すいません!私はこれにて!!」

 

 

千聖、花音「「あ...」」

 

 

2人を残して私は次の授業の教室へ猛ダッシュした。先生に見つかったらアウトだなこりゃ...。

 

 

結局、時間には間に合ったがダッシュしてきたせいで息を整えるのに時間がかかり、しばらくは授業に専念できなかった私だった(余談だけど、さっき花音先輩がおどおどしてたのは単に教室の場所が分からなくなっててああなってたらしい。1年この学校にいてまだ場所把握できてないんだねあの人...)。

 

 




はい、今回は終了です。花音が先輩であることがわかりましたね!


次回、3バカ到来!?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3バカの相手はしんどすぎる!!

前回のあらすじ

昼休みの後、移動教室で移動をしていた美久は偶然にも道中に千聖と花音に会った。そこで花音が花女に通う2年生だと明かされ、心底驚いた美久だったが、その反面嬉しさもあった為その場でよろしくの挨拶をして別れるのだった。


 

 

美久「なに......この状況?」

 

 

私は、大きな()()()()の中でずっとそのことを考えていた。本当にどういう状況?これ?

 

 

ことの発端はついさっきのことだった。

 

 

 

ーー数時間前ーー

 

 

美久「さて、今日はどうするかな?」

 

 

私は今日は特に用事もなかったから、適当にぶらぶらしてた。特にあてもなくいろんなところを回っていた。基本的に私は休日は大抵予定がない日は外をぶらぶらするか楽器弾いてるかのどっちかだ。それ以外は特に興味もなかったし。

 

そんなときだった。私のスマホが鳴ったのは。画面を見てみると、電話の相手はこころだった。こころとは中庭で会ったときにメアドと電話番号は交換しておいた。いざってとき連絡するのに必要だって思ったから(ちなみに美咲ともしたよ)。何だろう?遊びの誘いか?と思って電話に出た。

 

 

美久「もしもし?こころ?」

 

 

こころ『美久!今って予定あるかしら?」

 

 

急に大声で名前を呼ばれたもんだから若干、耳がキーンとしてる。次からは気をつけないと......って予定の話だっけ?え〜と......。

 

 

美久「特にないよ?何かあるの?」

 

 

こころ『ええ!今からハロハピのみんなで素敵なところに行こうと思ってるのだけど、よければ美久もどうかしら?』

 

 

美久「へ〜、面白そう!わかった行く!待ち合わせ場所ってどこかな?」

 

 

いくとは言ったけど、みんなと会わなきゃ始まんないしね。でも、こころから言われたのは私が望んだ答えとは違ったものだった。

 

 

こころ『安心して頂戴!もうすぐ迎えが来ると思うから!それじゃ!待ってるわね!』

 

 

美久「はい!?え、ちょっとこころ!!?......きれた」

 

 

せめてどういうことなのか説明してもらいたい。迎えってどういうこと?主語がないからほんとに訳がわからない。こころの言ったことが理解できずにいると、何故かしらないが向こうからすっごく大きなリムジンが走ってきた。そのリムジンは本当に大げさとかじゃなくて大きくて、人だったら20人近くは乗れるんじゃないかってくらい大きい。外装もとても綺麗で黒色なんだけど光沢がすごくて太陽から反射した光がとても眩しかった。こんな凄い車初めて見たな〜...と呑気にそんなことを考えていると、そのリムジンが私の目の前で止まった。

 

 

美久「え......なに?」

 

 

私が少し不審に思っていると、中から黒服を着た女の人たち数人が出てきた。そしてこっちに来た。なにこれ?すっごく怖いんですけど?万一の時は......逃げよう...そう決め逃げ道を探していると、黒服の人がこう言った。

 

 

黒服の人「池田様ですね。こころお嬢様の命により、お迎えに参りました」

 

 

美久「へ?」

 

 

突然言われた、”迎え”という言葉に素っ頓狂な声を漏らした私だった。でも、さっきこころの名前出てたし迎えって言ってたし、つまりこれがこころの言ってた迎えってことかな?よくわかんないな〜...

 

 

黒服の人「では、こちらへどうぞ」

 

 

美久「え?ああ、はい?」

 

 

とりあえず、従っておこうと思い案内されるがままに私はリムジンに乗った。それから、目的の場所に向けてリムジンが発進した(中は思ってた以上に広かった)。

 

 

 

ーー現在ーー

 

 

そして現在に戻る。どういう状況なんだろうこれ?こんな一般人な私が、大統領や総理大臣が乗るような立派なリムジンに乗ってていいんだろうか?さっきからずっと考えていた。

 

 

美久「あとどのくらいですか?」

 

 

黒服の人「もうすぐでございます。お嬢様方一行ももう時期ご到着なされるはずですので」

 

 

美久「は〜い」

 

 

さっきまではずっとなんだこれ?ってことずっと考えてきたけどさすがにもう慣れた。慣れたらあとはもう今の時間を楽しむしかないでしょ!そう決めた私は、目的地に着くまでリムジンでお金持ち気分を味わい尽くすのだった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

黒服の人「池田様、到着でございます。お嬢様方はあちらにいらっしゃられますので」

 

 

美久「ありがとうございまーす!って...ええ!?」

 

 

私はリムジンから出て、目の前の物にいきなり大きな声で叫んだ。何で叫んだかっていうと、

 

 

美久「これって...”クルーズ船”?いや、それにしてもでかすぎるでしょ!?」

 

 

目の前の物、それは巨大な旅客船だった。さっきから巨大なものばかり見てきてるけどこの船はスケールが違いすぎる。定員何人いけるんだってくらいだ。多分...万単位かな?まさかこれに乗るっての?ほんとに!?

 

 

こころ「美久ー!待ってたわよ!今日は楽しみましょうねー!!」

 

 

美久「こころ...よかった。とにかくまずは説明をしーーー」

 

 

こころ「早速中に入りましょ!」

 

 

説明をしてもらおうとしたけど、その前に船の中に入っていってしまったこころ。ちゃんと説明してもらいたいんだが...。

 

 

?「おや?どうしたんだい子猫ちゃん。そんなうかない顔をして。よければ話を聞こうか?」

 

 

美久「あなたは...確かギター担当の瀬田...薫さんでいいんでしたっけ?」

 

 

薫「ああ、そうさ。私は瀬田薫。君は美久だね。こころから聞いてるよ。思った通り、君はとても...儚い...ね」

 

 

美久「儚い?まあとにかく今回のことを説明してもらえますか?私なにもわかってないので」

 

 

少し変わった人だけど、悪い人ではなさそうだし、この人に聞こう。そう思ってた、だが...。

 

 

薫「そうか...今回こころが提案したのはね、『とても楽しい船旅をしよう』ということらしい。つまり...そういうことさ」

 

 

美久「......」

 

 

うん。全然わけわかんない。つまりそういうこと...じゃないし、絶対に薫さんもわかってないよね?この人は瀬田薫さん。羽女に通ってる二年生(この情報は美咲と花音さんから)。ギターはつい最近始めたばかりらしい。しょうがない...別の人に...。

 

 

?「あ〜、みっくんだ!おーい!」

 

 

美久「あれ?はぐみ?あーそっか、なんか見たことあるって思ってたけどベースってはぐみだったってわけね」

 

 

はぐみ「よかったらはぐみが説明してあげよっか?こころんの言ってることわかった気がするし」

 

 

美久「そうなの?じゃあお願い」

 

 

この子は北沢はぐみ。香澄達と同じクラスの子だ。はぐみの家の北沢精肉店にはよく足を運んでいて、そこではぐみとは知り合った。前ライブを見た時は遠くて気づかなかったけど、ハロハピでベースをやってるみたいだね。

 

 

はぐみ「船に乗って楽しく遊ぶ!以上!」

 

 

美久「絶対わかってないよね!?絶対に!は〜〜やれやれ...」

 

 

薫さんとはぐみに付き合ったおかげで余計な体力を使わされた。船に乗る前からこんな調子で大丈夫かな私?少しフラフラしながら私は”安全な2人”のところに向かった。

 

 

美咲「お疲れ様。3バカを相手に大変だったでしょ?これからは気をつけたほうが身のためだよ?」

 

 

美久「3バカ?ああ...納得かもね...あはは」

 

 

花音「あはは...」

 

 

3バカ(こころ 薫 はぐみ)を相手にした私は大幅に体力を削られてしまった。残り体力は残りわずか!最後まで持つのか!?......というゲームの実況者みたいなことを頭の中で叫びながら、美咲と花音さんから今回のことについて説明を受ける私なのだった。

 

 

 




はい、今回は終了です。ハロハピ終結でございます。次回が楽しみですね!


次回、怪盗ハロハッピー参上!?


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怪盗ハロハッピーとお姫様花音さんの登場は過激すぎる!!

前回のあらすじ

休日を満喫していた美久だったが、こころから急に誘いの電話を受け、なにも分からないまま黒服の人たちによって目的の場所に行くことになった。その目的の場所というのは弦巻家が所有しているクルーズ船のことだった。


 

 

美久「なるほどね〜...薫さん達が言ってたことも満更間違いではなかったみたいだね...」

 

 

 

美咲「そういうこと。この際開き直って楽しんだほうが楽だと思うよ?あたしもそうだし」

 

 

 

船の中に入ったあと、美咲からこうなった経緯について説明してもらった。とは言っても、単にこころが急に船旅がしたいと言い出してそれにみんながついてきたというだけなんだとか?さっきの薫さんやはぐみの言ってたこともあってはいたみたい。

 

 

 

美久「うん。そうしようかな......ん?あれ?花音さんは?」

 

 

 

はぐみ「あれ?薫くんもいないよ?おーい、薫くーん!」

 

 

 

美咲「2人ともどこ行ったわけ?こんな広い船の中で迷ったら大変なんだけど?」

 

 

 

船に乗る前までは確かにいた花音さんと薫さんの姿がない。こころはさっき自前のドレスに着替えて戻ってきた。オレンジ色のワンピースだ。結構似合ってるな。

 

 

 

こころ「2人とも、もしかしてかくれんぼをしてるんじゃないかしら?とーっても楽しそうじゃない!早速2人を見つけましょ!」

 

 

 

美咲「いや...こんなとこでかくれんぼなんてするわけないでしょ?...はあ、花音さーん?薫さーん?」

 

 

 

それから少し探したけどやっぱり2人は見つからなかった。困っていると、不意にどこから声が聞こえてきた。

 

 

 

?「はーーはっはっはっは!!ようこそ!我が船へ!」

 

 

 

4人「「「「!?」」」」

 

 

 

声がした方を見てみるとそこにいたのは、目元を隠すタイプの仮面をした好青年の人が立っていた。でもあの姿、あの格好、どう見ても...。

 

 

 

美咲「怪盗?」

 

 

 

美久「だよね...」

 

 

 

思いっきり怪盗だった。そう決め付けていると、また怪盗?の人が話し始めた。

 

 

 

怪盗「私の名は、怪盗ハロハッピー!今宵は私と儚い勝負を楽しんでいってもらおうではないか!」

 

 

 

こころ「勝負?面白そうね!ええ、望むところだわ!」

 

 

 

はぐみ「うん!はぐみも望むところだよ!なんか燃えてきた!」

 

 

 

...約2名はやる気全開なんですけどね。まあ、暇つぶしにはなるかな?でも何だろう?あの喋り方に聞き覚えがあるような?

 

 

 

ハロハッピー「では早速始めようと思うのだが、まずはこちらをご覧いただこう!」

 

 

 

ハロハッピーがそう言うと、ふとスポットライトがハロハッピーのすぐ隣を照らした。照らされた場所にいたのは優雅な水色のドレスを纏った可愛らしい女の人だった。普通なら可愛いって言うところだけど、今回はそうは言ってられなかった。なぜかと言うと...。

 

 

 

美久「花音さん......何してるんですか?」

 

 

 

そのドレスを纏った女の人というのがさっきまで行方を眩ませていた花音さんだったからだ。見た感じ、本人も何が何だかよくわかってない感じだった。大方、黒服の人たちに指示されてあのドレスを着たんだと思うな。

 

 

 

はぐみ「かのちゃん先輩!?なんで?何でお姫様みたいになってるの?」

 

 

 

花音「わ...私にも何が何だか...っ!?」

 

 

 

花音さんが言い切る前にハロハッピーが花音さんをお姫様抱っこの要領で持ち上げた。そしてこう言った。

 

 

 

ハロハッピー「突然だが、この麗しいお姫様を拐わせてもらうよ。返して欲しければ私についてくるがいい。さあ、今からゲームスタートだ!ははははは!!」

 

 

 

花音さんを抱えたままハロハッピーは奥へと進んでいった。要はハロハッピーとの勝負に勝たなきゃ花音さんは帰って来ないってことね。上等じゃん!

 

 

 

美咲「なんかとんでもないことになったね。でも行かないと花音さんを助けることはできないし......行くしかないか」

 

 

 

美久「そうみたいだね。花音さんを渡すわけにはいかないし、人肌脱ぎますか!」

 

 

 

こころ「そうね!みんなで怪盗さんから花音を取り戻しましょう!」

 

 

 

4人「「「「おーー!!」」」」

 

 

 

こうして、怪盗ハロハッピーと私たちによる花音さん争奪戦がスタートするのだった。

 

 

 

 

 

 




はい、短いですが今回は終了です。ハロハッピーが登場しましたので次回からその内容を書けたらと思ってます。


次回、ハロハッピーとの勝負!


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怪盗ハロハッピーとの勝負は意味不明すぎる!?

前回のあらすじ

船に乗り込んだ美久達は、中の広さに呆気にとられていたが、なぜかその場にいなかった花音と薫に違和感を覚えた。すると、突如として美久達の前に現れた怪盗、ハロハッピーが同じく姫の装いをした花音を連れ去ってしまう。怪盗曰く、姫を返して欲しくば私と勝負をして勝つことだと言う。自分たちにこの勝負を受けないという選択肢が無かった美久達は怪盗ハロハッピーの元へ急ぐのだった。


 

それから私たちは、怪盗ハロハッピーの後を追って船の奥に入っていった。そして、様々な勝負をした。結果として言うと、未だに花音さんは取り返せていない。つまりずっと負け越していると言うことだ、

 

 

まず始めの対決はカジノで勝負というものだった。お互いに赤か黒、どちらかの色に賭け、ルーレットの玉が入ったポケットの色で勝敗を決めるというものらしい。これは完全に運次第だった。運が良ければ勝てるし、悪ければ負ける。まさにギャンブルだった。私たちは”赤”を選択した。こころ曰く、『黒は暗くて笑顔になれないわ!ボールさんもきっと赤に止まるはずだわ!』らしく、ここは信じて赤にすることに決めたんだ。

 

 

ーーーで、負けたのよこれが。私たちが予想した赤のポケットをするりと抜けた玉は吸い込まれるようにして”黒”のポケットに入った。決着がついたと見るや、ハロハッピーはーーー

 

 

ハロハッピー『勝負は私の勝ちだね。残念だがお姫様を返すわけにはいかないね。では、さらばだ!』

 

 

と言って、さらに奥へと姿を消した。私たちは後を追うべく奥へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

次の場所は、船の中にあるショッピング街だった。最初に来たとき、本当に船の中?って思うくらい大きな場所だったから逆に少し引いたんだよね...。他のみんな(こころを除いて)も同じく驚きを隠せないでいた。そんな中、またハロハッピーが現れ、勝負を挑んできた。今度は何の勝負だったかっていうとーーー

 

 

4人「「「「ハロハッピーが望むものを探す?」」」」

 

 

そう。今回はハロハッピーが出したお題のものをこのショッピング街で探すというものらしかった。お題のものを持ってきて、ハロハッピーが丸を出せば私たちの価値という勝負だ。それならお題によって勝敗が決まると思ってたんだけど、そのお題が意味不明だったから今回も負けたのかもしれない。

 

 

ハロハッピー「今回私が求めるもの、それは......”儚い”。さあ、私の元に”美しく儚いもの”を持ってきたまえ。そうすればお姫様は返してあげよう。制限時間は10分だ。では...スタート!」

 

 

これが今回のお題、【儚いもの】ね?意味わかんないでしょ?何で儚いものなの?それに時間10分って短すぎ!そんな短時間で儚いものなんて見つかりっこないでしょ!?ヒントを貰おうとしたけど、なんかシェイクスピアが何だとか言い始めたからやめた。美咲もすでに頭抱えて項垂れてるし...はぐみとこころはすでに探し始めてるけど...見当はついてないみたいだし......ええい!悩んでても仕方ないし、とりあえず探してみよう!

 

 

そう決めて探してみたは良いものの、結局ハロハッピーを唸らせるような”儚いもの”は見つける事は出来なかった。見つけたのは、深海魚のぬいぐるみという儚さもまるっきり無い物と、小さなスノードーム、そしてどっかの部族が被ってそうな儚いとは正反対のお面だった。これじゃ勝負になんて勝てるわけないでしょ!というか途中からはぐみ達はただショッピングを楽しんでただけだったような気も...。美咲も終始、その2人に突っ込んでて疲れ果ててるみたいだったし。私も何だか別の意味で疲れてきた...主に精神的に。

 

 

結局花音さんを取り戻す事はできず、次はシアターで待ってるとハロハッピーは言い残して、その場から姿を消した。もはや勝てる気がしないんだが...という気持ちを少なからず持っていた私だったが、これに付き合わされている花音さんも大変だろうから、最後まで付き合うことにした。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

そして今に至る。今私たちはこの船のシアターにきてる。シアターと言っても舞台会場みたいなところで定員1000人以上はあるくらいの広さだった。

 

 

はぐみ「すっごく広いねここ!1万人くらい入るんじゃないかなー?」

 

 

美咲「いやいや...さすがにそんなに入ったら船が沈没しちゃうから...」

 

 

こころ「そういえば、怪盗さんはどこかしら?ここにいるって言ってたわよね?」

 

 

こころの言うとおり、ハロハッピーの姿が無かった。ここにいるとは言ってたはずなんだけどな...。とその時、舞台の幕が突如上がった。すると、中から現れたのはーーー

 

 

ハロハッピー「やあ諸君。お待たせしたね。今度の勝負は少し変わったことをしようと思ってね。今回はお姫様にも協力してもらうことにするよ」

 

 

花音「ふえ!?わ、私もですか...?」

 

 

怪盗ハロハッピーと花音さんだった。花音さんあれからどこにいたんだろ?さらわれてからかなり時間経ってると思うけど?...っと余計なことを気にしてないで勝負の内容を聞かないとね。

 

 

こころ「待ってなさい花音!今すぐ助けてあげるわ!怪盗さん!次はどんなことをするのかしら?」

 

 

ハロハッピー「次は、演技力で勝負をさせてもらうよ」

 

 

美久「演技力?何を演技するわけ?」

 

 

一重に演技力と言われてもわからない。ここはもう少し詳しく説明を...。

 

 

ハロハッピー「今回は、ここにいるお姫様に”愛の告白”をしてくれ。その演技力を見させてもらうよ」

 

 

美久、美咲「「はい!?」」

 

 

私と美咲が同時に叫んだ。愛の告白!?それって...『僕は君のことが好き...』っ的なやつのこと!?それも何で花音さんに向かって...いや、まだ男じゃないだけ良いか。男だと、そのまま一線超えちゃいそうな気がするし...。そんな呑気なことを考えていると、ハロハッピーがこちらを指差してきた。

 

 

ハロハッピー「今回の相手は”君”だ()()()の綺麗なお姉さん」

 

 

美久、こころ、はぐみ「「「(ジーー)」」」

 

 

私たちは無言で”黒髪の人”の方へ視線を送った。この4人の中で黒髪なのはただ1人、こころは金髪、はぐみはオレンジ色、私は茶髪、そして......黒髪の美咲。そう。勝負の相手は美咲だった。

 

 

美咲「へ!?何であたし!?」

 

 

ハロハッピー「君とはまだ勝負をしてないだろう?そろそろやっておきたいと思ったのさ」

 

 

美咲「それなら池田さんだってーーー」ハロハッピー「さあ、舞台へ上がってきてくれ!」

 

 

問答無用で舞台へ上がらそうとするハロハッピー。確かに私もまともには勝負してない。だからもしかすると私が呼ばれるんじゃないかって思ってたけど、その予想はハズレだったみたいだね。

 

 

こころ「美咲!花音のことはあなたに任せるわよ!勝負に勝って花音を救って頂戴!」

 

 

はぐみ「みーくんお願い!かのちゃん先輩のために頑張って!」

 

 

美咲「う......」

 

 

美咲の目が『そんな目で私を見ないで!」的な感じになっていた。最後に私の方を見た。大方助けてほしいと言ったとことかな?だけどごめん。これも花音さんのためだから。

 

 

美久「美咲...諦めな?もう行くしか道は無いらしいよ?」

 

 

美咲「......だよね。はああぁぁ〜〜...わかった!やれば良いんでしょ!?」

 

 

腹を決めた美咲は舞台に上がった。そして、早速、花音さんに向けて愛の告白をするように言った。

 

 

花音「美咲ちゃん......頑張って......」

 

 

美咲「花音さん...はあ...何でこんな目に...」

 

 

ハロハッピー「では、スタート!」

 

 

美咲「ええい!......お、お姫様......わ、わたしはずっと...あなたのこと......好きでした。良ければ...お付き合いしてください。......これで良いでしょ!?もう終わり終わり!」

 

 

美久、こころ、はぐみ「「「......」」」

 

 

最後の方何言ってるのかわからなかった。言っていくうちにどんどん声が小さくなってくんだよね。これだととても...。

 

 

こころ「美咲、あれだと花音に気持ちが伝わってないかもしれないわよ?最後の方は声が聞こえずらかったわ」

 

 

はぐみ「はぐみも今回は負けだと思う。これってどうなるんだろう?」

 

 

確かにこれだとどうなるんだろ?この後の流れがどうなるのかわからないでいると、ハロハッピーが口を開いた。

 

 

ハロハッピー「演技としては悪く無いが、これでは勝ちとは言えないね。今回も私の勝ちだ。それでは失礼するよ!」

 

 

花音「きゃっ!!」

 

 

そう言うとハロハッピーは花音さんを抱え、姿を消した。その場に残った私たちは再びハロハッピーを追うべく、シアターを出るのだった。

 

 




はい、今回は終了です。ハロハッピーとの追いかけっこももう時期終了です。


次回、ハロハッピーが求めた物。


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怪盗の正体が予想通りすぎる!!

前回のあらすじ

怪盗ハロハッピーとの勝負に悉く敗北を喫していた美久達。舞台での演技勝負に美咲が挑んだものの、持ち前の性格もあったせいか、まるっきりお世辞にも良いとは言えない演技を披露してしまったことによって再び敗北を喫してしまうのだった。


 

 

 

こころ「とうとう追い詰めたわよ!観念して花音を返しなさい!」

 

 

シアターを出た後、私たちはハロハッピーの後を追った。そして現状、私たちはハロハッピーを追い詰めていた。なぜならここが船のデッキだったから。どこにも逃げられる場所はない。詰みの状態だった。

 

 

ハロハッピー「はーはっはっは!よくぞ私を追い詰めたね。褒めてあげるよ!」

 

 

はぐみ「笑ってないで早くかのちゃん先輩を返してよ!」

 

 

こころ「そうよ!それにもうすぐご飯の時間なのよ!花音もお腹が空いてるはずだから!」

 

 

美咲「いや...そう言う問題なの!?」

 

 

美久「ははは......」

 

 

いつも通りのショート漫才をしながらじりじりと間合いを詰めていく私たち。するとハロハッピーが意外なことを口にした。

 

 

ハロハッピー「お姫様もどうやらみんなの元に戻りたいようだから、最後に私からクイズを出させてもらうよ?」

 

 

4人「「「「クイズ?」」」」

 

 

ハロハッピー「問題だ。今、私が欲しかった物とは何か?それを答えてくれたならこのお姫様は返そう」

 

 

美咲「またそんな抽象的な...そんなの誰もわからなーーー」

 

 

こころ「わかったわ!」

 

 

こころが大きな声でそう宣言した。あれだけでわかるってほんとにすごいな...あまり期待してないけどね。

 

 

こころ「今までのあたし達との時間よ!怪盗さん、あの追いかけっこがすっごく楽しかったんじゃないかしら?つまり、【楽しい時間】が答えよ!どうかしら?」

 

 

美久「こころにしては筋が通ってるけど、どうなんですか?」

 

 

聞いてみると、ハロハッピーは仮面越しだがゆっくりと微笑んだ。そしてこう言った。

 

 

ハロハッピー「大正解だ。そうさ。私は君たちと楽しい時間を過ごせたことを嬉しく思っているんだ。今日はありがとう。クイズに正解したんだ、約束通りお姫様は返すよ。さあ、どうぞ子猫ちゃん」

 

 

花音「え?あ...はい(さっきの喋り方...どこかで?)」

 

 

ハロハッピーから解放された花音さんが戻ってきた。美咲やこころが大丈夫?と心配してるが特に問題はなかったみたいだった。

 

 

ハロハッピー「ではさらばだ!またどこかで会おう!」

 

 

(ボンッ)

 

 

ハロハッピーがそう言った途端、あたり一面に煙幕が広がった。こんな演出までするの?と心の中で思いながら煙幕がなくなるのを待った。

 

 

 

数分後、煙幕は無くなった。後は薫さんだけだけど、正直見当はついてる。美咲もどうやら感づいてるみたいだ。他の3人は気付いてないみたいだけど、まあ知らないなら知らないでそれはそれで良いかな?そんなこんなで、ハロハピメンバー&私VS怪盗ハロハッピーによる追いかけっこは無事に解決で幕を閉じた。それから私たちは船の食堂で食事を取るため、そこに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「そう言えば、さらわれてる時ってどんな感じだったのかのちゃん先輩?」

 

 

花音「うーん?特別怖いって感じはしなかったかな?何だか怪盗さんが良い人そうと言うか、前から会ってた人みたいだった気がするんだよね」

 

 

はぐみ「えー?誰だろー?」

 

 

レストランに向かう途中そんな会話をしていた私たち。やっぱり私と美咲以外気づいてないみたいだね。あんな特徴的な喋り方と行動だったらすぐにわかると思うんだけどな〜?すると、横から美咲から肩を叩かれた。何だろう?

 

 

美咲「池田さんは気付いてる?あの怪盗の正体に」

 

 

美久「ん?あ〜...絶対()()()だよね...。ってかあんな”儚い”連発する人なんてそうそういないし。普通はわかると思うけど?」

 

 

美咲「それはごもっとも...でもあっちの3人は気付いてないみたいだけどね...」

 

 

美久「そこは...触れないでおこう...」

 

 

?「何にだい?」

 

 

美久、美咲「「うわぁ!?」」

 

 

突如聞こえた第3者の声に思わず悲鳴に近い声を上げた私と美咲。その声がした方を見るとーーー

 

 

こころ「薫!今までどこにいたのかしら?ずっと探してたのよ?」

 

 

薫「?私はずっと一緒にいたが?」

 

 

はぐみ「え?ほんと?全然気づかなかったよ〜」

 

 

声の正体は薫さんだった。ずっと一緒にいたってのは間違ってはない。むしろ合ってる。()()としてではないけどね。

 

 

薫「それよりも、レストランに向かっているのだろう?早く行かないか?私もお腹が空いてきた頃だ」

 

 

こころ「そうね!早くいきましょ!そうだわ!せっかくなら競争していきましょ!はぐみ、勝負しましょ!」

 

 

はぐみ「うん!はぐみ、ご飯のためなら頑張れるもん!負けないよ〜!」

 

 

花音「ふ、2人とも〜、待って〜〜!」

 

 

勢いよく走り出したこころとはぐみ、それを追いかける花音さん。何と言うか...元気で良いことだ。

 

 

美久「元気はまだあるんだね。どんな体力してるんだか...」

 

 

薫「まあ良いことじゃないか。元気がある方が子猫ちゃん達は可愛らしい」

 

 

美咲「その元気をあなたに吸われかけられましたけどね?何で怪盗なんてやってたの薫さん?」

 

 

私が聞きたかったことを美咲が代弁してくれた。でも理由は意外とシンプルな物だった。

 

 

薫「ここに来る車の中で黒服の人に頼まれたんだ。『怪盗になって場を盛り上げてもらいたい』とね。怪盗になり切れるのは私しかいなかったから快くオーケーを出したよ。私としても素晴らしい体験ができたよ。あぁ...儚い」

 

 

美久「ま、こっちとしても楽しめたんで良かったですけどね。なかなかこういうこと体験できませんから」

 

 

美咲「あたしも...まあ演技はともかく、いろんなことできて楽しくなかったって言えば嘘になりますけど...」

 

 

つまり楽しかったわけね。美咲も案外ツンデレなとこあるんだね。有咲みたいだ。話しながらレストランに向かっていたんだけど、何故か先に行った3人が戻ってきた。

 

 

美久「どうかしたの?」

 

 

こころ「ミッシェルのお土産を買うのを忘れたわ!買いに行かないと!」

 

 

はぐみ「うん!何も買っていってあげないのはかわいそうだから!」

 

 

ミッシェル...つまりハロハピのDJのあの熊のことか。でもあれって着ぐるみじゃ...?

 

 

美久「でもミッシェルって着ぐるみじゃーーー」

 

 

美咲「はいはい!それは後で買うから先にレストラン行こ!ね!?」

 

 

なぜか凄い勢いで、話をはし折ってきた美咲。この反応...もしかして?何か思い当たり小声で美咲に聞いてみることにした。

 

 

美久「(もしかして、ミッシェルって美咲だったりする?)」

 

 

美咲「(...そう。残念ながら、ハロハピの中でそれに気付いてるの、花音さんしかいないけどね...)」

 

 

美久「(なんか...苦労してるんだね、美咲って)」

 

 

美咲「(もう慣れたよ......あはは)」

 

 

笑ってるけど目が笑ってない笑みをした美咲は心底疲れ切った様子だった。あれだけあの2人(こころとはぐみ)に引き摺り回されてたらそうなるよね...。とりあえず、心の中でお疲れ様と言っておいた。

 

 

そうして、私たちは船のレストランに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。ハロハピ回も次回でラストです。最後までお楽しみに!


次回、ゴーカ、ゴーカイ!?ファントムシーフ!!


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハロハピの新曲は超絶楽しすぎる!!

前回のあらすじ

怪盗ハロハッピーから無事に花音を救出した美久達は、レストランに向かう途中、今まで姿を消していた薫と再会する。美久と美咲は怪盗ハロハッピーの正体を感づいていたため、薫に怪盗になった理由を聞いた。その理由に拍子抜けした2人だったが、実は自分たちは思ってた以上に楽しめていたということを実感するのだった。


 

 

 

美久「『CIRCLEに来て』って言ってたけど、何だろう?」

 

 

豪華客船での海の旅から5日後、美咲からそう言われた私はCIRCLEに向かっていた。CIRCLEにいるってことは演奏の練習だろうけど、なんかそれだけじゃない気がするんだよね...。

 

 

美久「ま、行けばわかることでしょ!」

 

 

そうして私はCIRCLEに向けて歩を進めたのだった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

美久「こころ〜?おまた......せ?」

 

 

こころ「美久!待ってたわよ!早くここに座って頂戴!」

 

 

美久「ちょ!?わ、わかったから引っ張らないで〜!!」

 

 

スタジオに入った途端、こころに手を引かれて用意してあった椅子に腰掛けられた。何?この状況?

 

 

美咲「池田さん、急に呼び出してごめん...。こころがどうしても池田さんを呼ぶって聞かなくてさ...」

 

 

美久「別に良いけど、まずは何で私が呼ばれたのかを聞かせてもらえないかな?このままだと頭混乱したままいることになっちゃうから」

 

 

なぜだろう?船に乗る前もこんな感じだったような気がする...。ハロハピのみんなって用件だけ伝えて詳しくは後でって感じだからいつもこうなるんだよね...。この際もう良いけど...。

 

 

はぐみ「はぐみたちの新曲を聞いてもらうためだよ!この曲って”スマイル号”に乗った時の楽しいことをそのまま歌にしたから、みっくんにも聞いてもらいたかったんだ〜!」

 

 

薫「ふふ...この素晴らしい曲をあの時一緒に協力をし合った子猫ちゃんに聞かせないのはおかしいとこころが言うものでね。でも、それは私も同じ気持ちだ。美久、今日は私たちの素晴らしく儚い演奏をどうか聞いていってくれ」

 

 

あの船”スマイル号”って名前だったんだね。全然知らなかった...。それにしても新曲か〜、あの時のことを歌にしたって聞いたけどどんな曲になってるんだろ?音楽に関しては自分で言うのも何だけど”バカ”がつくほどに大好きだから、バンドの新曲ってのは自然とテンション上がっちゃうんだよね。

 

 

花音「あれから結構練習したんだよ?帰った途端にこころちゃんが曲を思い起こし始めて、それを美咲ちゃんが曲に変えて、そこから歌詞を加えて......ってなんか今日まで大変な毎日だったかな...?あはは...」

 

 

苦笑いを浮かべてる花音さんを見てまず思った。『相当大変だったのだ』と。とりあえず”お疲れ様です”と言っておいた。

 

 

美久「大体わかった。そう言うことならぜひ聞かせて!みんなの演奏もまともに聞くのは初めてだし!」

 

 

こころ「わかったわ!それじゃ美咲!ミッシェルを呼んできて頂戴!」

 

 

美咲「......はいはい。ちょっと待っててね...はぁ〜」

 

 

そう言って美咲はミッシェルを呼びに?行った。やっぱりこころ達は気付いてないみたいだね。多分今頃着替えてる頃だな...。

 

 

数分後、美咲改めミッシェルがスタジオに入ってきた。改めて近くで見ると意外と大きいんだね。

 

 

ミッシェル「みんな〜!今日はよろしく〜!ミッシェルも頑張るよ〜!!」

 

 

美久「(おお〜...キャラになりきってる...普段はあんな感じなのに...)」

 

 

こころ「ミッシェル〜!待ってたわよ!今日は美久に素晴らしい演奏を見せるから一緒に頑張りましょうね!」

 

 

ミッシェル「うん!()()()()()のためにミッシェルも頑張るぞ〜!!」

 

 

美久ちゃん...いつも名字読みの美咲からは考えられないな...。よくキャラ作ってるよ美咲は。

 

 

 

 

それから各々に準備に取り掛かり終了すると、それぞれが配置についた。

 

 

 

こころ「それじゃ!みんな、準備はいいかしら?」

 

 

はぐみ「オッケー!」

 

 

薫「私もいつでも大丈夫だ」

 

 

花音「わ、私も大丈夫だよ」

 

 

ミッシェル「盛り上がっていこー!」

 

 

こころが全員に確認を取った後、改めて前を向いた。そして私を向きながら言った。

 

 

こころ「美久!私たちの演奏であなたをとびっきりの笑顔にして見せるわ!それじゃいくわよ!【ゴーカ! ごーかい!? ファントムシーフ!】」

 

 

演奏が始まった。最初からテンポが速く、そして何より音に楽しさが乗っていてこっちまで楽しい気分になる。この気分は前にハロハピのライブを観に行った時と同じ感じだ。他のバンドとはまた違うハロハピだけが持っている”音”。こころの言う通りこの演奏にさらに磨きをかければ”世界を笑顔に”と言う夢も現実になるんじゃないかと思わせるくらいだ。歌詞の中にも船の中を思わせるような物が入っていた。スマイル号の中でのことを体験した私にとっては、その時のことを思い出せるような良い曲!そう思えた。このまましばらく聞いていたい...そう思いながらしばらく演奏に耳を傾けていた私なのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「どうだったかしら?」あたし達の演奏!」

 

 

演奏が終わった途端、こころが私に感想を求めてきた。まだまだ元気だね。私の感想はもちろん!

 

 

美久「すっごく良かった!こころの言った通り、とびっきりの笑顔になって楽しめたよ!」

 

 

こころ「それなら良かったわ!あたし達もすっごく楽しかったもの!ね!みんな!」

 

 

4人「「「「うん(ああ)!」」」」

 

 

みんなそれぞれ満足そうな顔をしていた。自分でも良い演奏ができたんだって思ってるんだろうな〜。演奏に関しては改善するべきとこもあるけど、今はそこに触れなくても良いよね?とりあえず今はこの空気を楽しまないと!

 

 

はぐみ「そうだ!はぐみ、次のライブに向けてここであの”おまじない”やっておきたい!今回はみっくんもいるし、効果抜群だと思うよ!」

 

 

薫「それは名案だね。せっかく美久もこの場にいるんだ。一緒にやってもらおうじゃないか」

 

 

こころ「良いわね!美久、あなたも一緒にやりましょう!」

 

 

美久「はい?あの〜?」

 

 

だから説明してって!意味がわかんないし!主語を入れてって!何おまじないって?なんか儀式でもする気?この人たち...もしかして国語苦手か?

 

 

花音「あはは...おまじないっていうのはね、ハロハピの中で使ってる合言葉みたいなものだよ。これをみんなで一緒に言うと元気が湧いてくるの。合言葉は...【ハッピー!ラッキー!スマイル!イェーイ!!】。これを良ければ美久ちゃんにも言って欲しいなって」

 

 

ミッシェル「この際だから付き合ってあげてよ...このままだと私たちしばらく帰れなくなっちゃうから...」

 

 

美久「そう言うことね。うん、良いよ!」

 

 

一緒に言うことで士気が高められるんならやろう!そう腹を決めた私はこころにそう言った。

 

 

こころ「みんな行くわよ〜〜!!せーの!!」

 

 

全員「「「「「「ハッピー!ラッキー!スマイル!イェーイ!!」」」」」」

 

 

スタジオ内に私たち全員の声が響き渡り、みんなの気持ちが引き締まった。これがいつものハロハピらしい。みんなで掛け声を出すことでバンド内士気を上げる。良い方法だと思った。今度は違うバンドにでも試させようと、少し悪だくみ?を考えながら、その後のハロハピの練習にも付き合う私なのだった。

 

 

 

 

その練習の最中、ふと思ったことがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美久「そういえばもう時期、”文化祭”だな〜」

 

 

 




はい、ハロハピ編終了です。いかがでしたでしょうか?次回からは違うバンドの話になります。ヒントは最後の美久の一言です。勘の良い方は察したと思います。


次回、文化祭開催に向けて!


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6章 PoppinPartyの誕生
文化祭の開催は楽しみすぎる!!


前回のあらすじ

ハロハピのメンバーに新曲を披露してもらった美久。自分が体験したスマイル号での出来事を一気に振り返れるその新曲に気持ちを揺すぶられた美久は、ハロハピとともに大いに盛り上がるのだった。


 

 

 

 

香澄「もうすぐ文化祭だね〜」

 

 

昼休み、屋上でいつものようにスイレンを弾いていた私に唐突にそんなことを言ってくる香澄に聞き返した(ちなみにいつものメンバー、おたえ、りみ、さやちん、有咲もいるよ!)。

 

 

美久「そういえばそんな時期だね〜。香澄達のクラスは何の出し物するの?」

 

 

たえ「ウサギの触れ合い!」

 

 

有咲「はあ!?なんでウサギ......ってかそれっておたえがやりたいだけだろ!?」

 

 

相変わらずの鋭いツッコミ...。この2人でコンビ組めるんじゃないかな?

 

 

沙綾「あはは、私たちのクラスは購買かな?いろんな食べ歩きができるような食べ物を売るんだ〜。やまぶきベーカリーのパンも販売するよ」

 

 

りみ「え!?じゃあチョココロネもあるの?」

 

 

沙綾「もちろん!他にもいろんな種類持ってくるから楽しみにしてて!」

 

 

やまぶきベーカリーのパンか〜、購買で買えるのは嬉しいな。その日になったら寄ろう!話しているとどんどん文化祭が楽しみになってきた私たちだった。

 

 

香澄「みっくと有咲のクラスは?」

 

 

有咲「うちは休憩所だな。何か買ったものを持ってきて食べたり、おしゃべりしたりできる共用スペースみたいなもんだ」

 

 

美久「水とかは常備してあるから、飲み物が欲しくなったら来てみてね。中も飾り付けとかするみたいだからさ」

 

 

うちのクラスは、本当はお化け屋敷を希望してたんだけど、抽選で外れちゃったから休憩所になった。正直すっごくやりたかったけどね。

 

 

美久「あ、そういえば香澄達って文化祭のライブって出たりするわけ?」

 

 

文化祭のライブというのは体育館でダンスや演劇、そしてバンドなどが演奏や講演をする催しのことだ。その日のために、学校内では下校時間ギリギリまで練習に明け暮れてる生徒もいるだとか。香澄達も出るのかな?

 

 

香澄「うん出るよ!ライブだもん、出ないわけにはいかないよ!」

 

 

美久「そっか、ライブって前言ってた”クライブ”以来?」

 

 

たえ「うんそうだよ」

 

 

さっき言った”クライブ”というのは、少し前に有咲の蔵の中で行われたミニライブのことだ。蔵の中でライブ...略して”クライブ”らしい。もちろん蔵だったため、人もそんなに多く入れるわけじゃなかったみたいだから、呼んだのはさやちんを含めた5〜6人ほどだったみたい。私も呼ばれてたんだけど、その日は仕事があったから行けなかったんだよね。香澄達に楽器を教えてる身としては行きたかったけど残念だったな〜。

 

 

美久「それならやっと香澄達の演奏がライブで聴けるってことか!ますます楽しみになってきた!」

 

 

有咲「お前...あんまりハードル上げるなよ...。こっちが緊張してきちまうだろ?」

 

 

香澄「大丈夫だよ有咲〜!私たちたくさん練習したんだから!みっくもきっとすごいって言ってくれるよ!」

 

 

有咲「わかったからすり寄ってくんな〜!!」

 

 

相変わらず2人は仲がいいこと......って有咲に言ったらめちゃくちゃ怒られるだろうな〜......っと、話に夢中で弾く手が止まってたね。また最初から弾こう。

 

 

そう決め、またゆっくりとスイレンを弾き始めた私だった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

美久「さて、久しぶりだけど、何か教えて欲しいとこあれば聞くよ?」

 

 

放課後、少し久しぶりになってたけど有咲の蔵で香澄たちに楽器を教えに来た。それから少しの間はみんなに楽器の弾き方や細かいポイントとかを教えた。ポイントを押さえておくと、体力の消耗を減らせたり、演奏に支障が出ない弾き方にできたりするから意外と重要なんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

美久「よし!じゃあ一回通しでやってみようか!みんなの演奏聴くの久しぶりだから、どんな感じなのか確認してから指摘とかしたいから」

 

 

私がそういうと、みんなそれぞれ配置についた。そして演奏がスタートした。この曲は『私の心はチョココロネ』か〜、確かりみとりみのお姉ちゃんが作った曲って言ってたかな?曲調はゆったりで難易度もそこまで高くは無い。みんなには理に適ってる曲だね。そして一通り演奏が終わったところで私は言った。

 

 

美久「うん。前聞いた時よりは格段に上手くなってきてる。このまま練習を重ねれば文化祭でもいい演奏できるよ!ただ......」

 

 

香澄「?ただ...?」

 

 

みんなが首を傾げた。とりあえず続けることにした。

 

 

美久「やっぱり”ドラム”がいないと迫力が失われちゃうっていうか、演奏にも少し違和感があるよね...」

 

 

4人「「「「......」」」」

 

 

ずばりと正論を言われたせいか、みんな黙ってしまった。でも事実だからな〜。

 

 

香澄「うん、それは知ってるよ?私だってドラムがいた方がいいと思うけど...(ちらっ)」

 

 

たえ「ドラムやってる人いないんだよ...(ちらっ)」

 

 

りみ「本番は音だけでも撮ったのを流せばいいと思うんだけど...(ちらっ)」

 

 

有咲「そんな都合よくやってるやつが見つかるわけねーよな?(ちらっ)」

 

 

美久「......」

 

 

......何で私の方ちらちら見るの...?まあ、いいたい事はわかるけどね。大方私にドラムとして参加して欲しいっていいたいんだろうけど。もちろん協力はしてあげたい。友達だし。でも私が参加すると問題が出る可能性があるんだよね...。”前科”あるし...。とりあえず聞いてみることにする。

 

 

美久「()()としてなら、私がドラムをやってもいいよ?」

 

 

香澄「え!?ほんと!?」

 

 

そう言った途端、私に抱きついてこようとする香澄。話を最後まで聞いて欲しいんだけどね。

 

 

美久「でも、これは体験談なんだけど、前に私がサポートで入ったバンドはバンドの音が変わっちゃったの。私が入る前までは普通だったのに。多分私の演奏に問題があったんだ。そのバンドに合わない演奏をしたせいで。だから、もしかするとみんなと一緒にやってもみんなの”音”じゃなくなっちゃうかもしれない。もちろん可能性があるって話だからね?絶対になるわけじゃ無いけど、そうなる可能性もあるってこと。それでもいいなら私が少しの間、ドラムやるよ!」

 

 

例に出したバンドは無論Roselia。あの時はバンドの音を台無しにしちゃったからね。

 

 

香澄「ほんとに!?やったー!みっくと一緒にバンドできる〜!!」

 

 

有咲「ちょ!?おま、話聞いてたのかよ!?私たちの音じゃなくなっちまうかもしれねーんだぞ!そうなったらどうするつもりだよ!?」

 

 

香澄「その時はその時だよ〜!それよりもみっくと一緒に演奏できるのが嬉しいでしょ!有咲もそう思うでしょ?」

 

 

有咲「ぐ...そ、そりゃそうだけど......はぁ〜〜ったく、お前はほんとにあと先考えてないっていうかなんていうか...」

 

 

美久「......」

 

 

え〜と?結局はどっち?

 

 

香澄「おたえもりみりんもいいでしょ?」

 

 

たえ「うんいいよ!」

 

 

りみ「私も、美久ちゃんと演奏してみたい」

 

 

香澄「そういうわけだからみっく、一緒にやろ!」

 

 

やれやれ、まあ香澄たちならそう言うと思ってたけどね。しょうがない、ここは一肌脱ぎますか!

 

 

美久「わかった。どこまでできるかわかんないけど、最善のサポートはするから!みんな少しの間よろしく!」

 

 

こうして私は文化祭が終わるまで、香澄たちのサポートをすることになった。私ができることを精一杯やろう!

 

 

 




はい、今回は終了です!ついにポピパ誕生の章が始まりました!文化祭という単語でわかった人もいるかと思います!


次回、身近のドラマー。


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お探しのドラマーは灯台下暗しすぎる!!

前回のあらすじ

文化祭の開催が待ち遠しく感じる美久達。文化祭のライブに向けて練習に精を出すが、美久の言ったドラムの不在が香澄達に重くのしかかっていた。その空気を察した美久は、臨時として香澄達に力を貸すべくドラムをやることを決意したのだった。


 

 

沙綾「へ〜、結局ドラムすることにしたんだ?」

 

 

美久「少しの間ね。ドラムの子が見つかるまでの間だけ」

 

 

翌日、学校に行く前にやまぶきベーカリーに寄った私は、さやちんにドラムをすることを話した。

 

 

沙綾「でも何で急にやるって決めたの?今までずっと断ってたのに?」

 

 

美久「ん〜〜...何ていうか放って置けなかったんだよね。友達が困ってるのに何もしないのはおかしいって思ったからさ。少しでも香澄達の力になれるっていうなら私は何でもするよ」

 

 

沙綾「あはは、美久はやっぱり優しいね」

 

 

美久「そうかな?でもやっぱり私ができるのはこれが限界なんだよ。あくまで臨時として加わるしか無い。あ〜あ、()()()()()()()()()()()()良かったのに〜。それだったら香澄達だって喜んだのに〜」

 

 

沙綾「え!?」

 

 

......なぜかすっごく驚いた様子でさやちんが私の方を見ていた。なんか変なこと言ったかな?

 

 

美久「ん?どうかした?」

 

 

沙綾「う...ううん!何でも無いよ?それよりも、今日は何買うのーーー」

 

 

はぐらかされちゃったか。ま、気にすることもないって思ってたけど、なんか...”何でも無い”って言った時のさやちんの顔がどこか暗い顔というか悲しそうな顔をしてたんだよね...。本人は無自覚かもしれないけど、わかりやすく表情に出てた。

 

 

美久「(ま、その話はまた違う機会にでも聞こう)」

 

 

そう決め、いつものようにメロンパンを買っていい匂いが漂ってくる紙袋を持ったまま『学校でねー』とテンション高く店の外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「......ごめん。私はもう......ドラムは......やらない」

 

 

 

私が出て行ったあと、沙綾が呟いたその言葉は、力なくその場に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し日にちが経った。今は文化祭1週間前、文化祭の準備もだいぶ進んできていて、いよいよという雰囲気が学校中に漂っていた。私も何日かは仕事があって学校に行けなかった日があったけど、それでもクラスのためにいろんな飾り付けとかを協力し合いながら手伝った。そんな時だった。香澄から『私たちのポスターが出来たよ!』と知らせを受けたのは。

 

 

とりあえず香澄達のところに向かうと、B組の教室の中に香澄達はいた。何かさやちんと香澄が話してるけど何かな?気になったため、私は中に入って香澄達のもとに近づいていった。

 

 

美久「ポスターできたんだって?私にも見せーーー」

 

 

沙綾「美久!美久からも何とか言ってよー。私別にポピパのメンバーでも無いのにポスターに私の名前を載せてるんだよ?香澄ってば...。美久も変だと思わない?」

 

 

みんなのとこに行ったと思ったらいきなりさやちんからそんなことを言われた。急にそんなこと言われても...(ちなみに”ポピパ”っていうのは”Poppin’Party”の略。香澄達のバンド名だ。以前私がいない間に考えておいたのだとか)。

 

 

香澄「そんなことないってば〜!さーや今までポピパのためにいろんな時に助けてくれたでしょ!もうバンドのメンバー同然だよ!」

 

 

沙綾「恥ずかしいんだって...ポスターが出回る前に修正を...」

 

 

たえ「もういくつかの教室には貼ってきたよ?」

 

 

沙綾「ええ!?」

 

 

有咲「おまっ、いつの間に...」

 

 

あ〜あ、さやちん...もはや諦めた方が良さそうだよ。心の中で思っていると、最終的にさやちんも折れて『わかったよ...』と承諾した。そう気に病む必要もないと思うけどね。さやちんも立派なポピパのメンバーだよ。

 

 

りみ「それじゃあ、早速貼りにいこ?結構枚数多いし早めに貼っておかないと日が暮れちゃう」

 

 

そのあと、私たちは学校中にポピパのポスターを貼りに行った。6人でやっても時間がかかり、終わったのが放課後10分前だった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

美久「やれやれ、まさかあんなに時間掛かるとは思ってなかったな〜」

 

 

ポスターを貼り終えた私達は、各々に帰宅を始めた。私も今日は寄り道しないで帰ろうって決めてたからそのまま帰路につこうとしていた......はずだったんだけど、校門を出たところでその予定は変更することとなった。何でか?それはーーー

 

 

?「美久......ちょっといいかな?」

 

 

美久「ん?あれ?夏希じゃん。どうかした?」

 

 

同じクラスの海野夏希に会ったからだ。この子とは音楽友達だ。夏希自身、バンドでギターをやっているらしく、よく私にアドバイスを貰いに屋上まで来てたこともあった。その時から友達として付き合っていた。今日もバンドのことかな?そう思っていたけど、どうやら違うらしい。夏希の妙に深刻そうで悲しそうな表情を見てしまったら、どうしてもそうは思えなかった。

 

 

美久「...何かあった?」

 

 

夏希「え?」

 

 

美久「なんか夏希、辛そうな顔してたからさ。もし良かったら話聞くよ?」

 

 

そう聞くと、少しホッとした様子で夏希が言った。

 

 

夏希「ありがと。それじゃ、少し場所を変えようか。ここじゃ目立っちゃうし」

 

 

美久「そうしよっか。早く行こ!」

 

 

そうして私たちは場所を変えるべく移動をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

連れてこられたのはいつもの公園。ここもずいぶんと来る頻度が上がったな〜。私と夏希はカバンを近くのベンチに置いて、ブランコに腰を下ろした。

 

 

美久「で?話ってなに?バンドのこと?」

 

 

夏希「ううん。今日は違うよ。え〜と......沙綾のことなんだけどさ...?」

 

 

美久「さやちん?さやちんがどうかした?」

 

 

夏希とさやちんは中学の頃からの友達だったらしい。だから夏希はさやちんのことを知ってるんだけど、夏希がさやちんのことを話す時はいつも暗い顔をするんだよね。今回も同じだ。また暗い顔をしてる。

 

 

夏希「沙綾、バンド始めたの?」

 

 

美久「バンド?あ、もしかしてポピパのポスター見た感じ?ん〜、でも沙綾はバンドには入ってないよ?あれは香澄達が入れたくて入れたみたいな感じだから」

 

 

夏希「...やっぱりそうだよね」

 

 

美久「?」

 

 

さっきよりさらに暗い顔になった夏希。ほんとになにがあったんだろ?

 

 

夏希「今日、沙綾に会ったの。その時言ったんだ。『()()バンド始めたんだ』って。でも『それは無いよ。私はもうやらないから』って言われちゃったんだよね...。その言葉がすっごくショックで、どうしたらいいかわからなくなっちゃって......それで気づいたら美久のところに...」

 

 

美久「また?さやちんって昔バンドやってたの?」

 

 

夏希「うんそうだよ。私達【CHiSPA】の()()()()としてね......」

 

 

美久「......」

 

 

夏希から聞かされた、”さやちんがドラマー”という言葉にどう返していいかわからなくなっていた私だった。

 

 




はい、今回は終了です。美久だけ先に真相を聞かされました。この後の展開を楽しみにしてください!


次回、【沙綾の過去】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

さやちんの過去は悲しすぎる...

前回のあらすじ

文化祭の準備が着実に進んでいき、美久もクラスのために尽力していた。そんな時、同じクラスメイトの夏希に話があると声をかけられた。夏希の顔が妙に深刻そうだったため、話を聞くことにした美久だったが、その内容は沙綾が昔ドラムをやっていて、今はやめてしまったことだった。


 

 

 

 

美久「...詳しく話してくれる?さやちんに何があったか」

 

 

夏希「うん...あれはーーー」

 

 

夏希から聞かされたのは今から1年ほど前の話だった。当時さやちんは夏希と他の2人を加えた4人でバンドを組んでいたらしい。夏希がさっき言ってた【CHiSPA】というバンドを。もともとその4人は仲が良く、楽器もみんな好きだったため、バンドを組むことにしたらしい。最初の頃は問題なくバンドをやれていて、楽しかったみたい。お互いに意思疎通が取れていて、いつかは大きなライブに出ようと誓いあったんだって。でも”ある出来事”がきっかけでその夢は崩れ去った。

 

 

美久「何なの?その”出来事”って?」

 

 

夏希「うん...あれはほんとに急だったよ...あの時ーーー」

 

 

それは、CHiSPAが町内のイベントに出てた時の話だった。いつものように事前の打ち合わせを終え、ライブに向けて気を引き締めた時だったらしい。もうすぐCHiSPAの出番だ!という時に、不意にさやちんの携帯が鳴った。......純くんからだったみたい。純くんはさやちんの弟。そしてもう1人紗南という妹がいる。その瞬間さやちんは何か嫌な予感を感じ取って、電話に出た。......その予感は的中してしまい、さやちんのお母さんが倒れたと泣きながら電話先で言われたらしい。言われた途端、さやちんは血相を変えて、他のみんなに事情を話した。夏希達は迷わず『行ってあげて!』と言ったらしい。それからさやちんは踵を返して運び込まれたという病院に向かった。医師の診断によれば過労による貧血が原因だったとか。どのみち命に別状はなかったらしい。さやちんからそのことを伝えられた夏希達はホッとしたが......それも次のさやちんの一言で打ち消された。

 

 

夏希「『バンドやめる。これ以上迷惑はかけられないから』って言われちゃったんだよね...はは...」

 

 

美久「......」

 

 

夏希が力なく笑っていた。私はどう返していいかわからなくなってた。

 

 

夏希「私達も何度も呼び止めたんだけど...結局戻ってこなかった......」

 

 

美久「そっか、だからポスターを見てさやちんがまたバンド始めたのかって思って嬉しかったんだ?」

 

 

夏希「うん...違ったみたいだけどね...」

 

 

とうとう、俯きながら黙ってしまった夏希。今はそっとしておこう。その間、私はある計画を練っていた。それはーーー

 

 

美久「(さやちんを......ポピパに加入させよう......)」

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

美久「もう大丈夫?」

 

 

少し時間が経ち、そろそろ大丈夫かなと夏希に声をかけた。

 

 

夏希「うん...なんかごめんね?」

 

 

美久「大丈夫!さ、遅くなっちゃうし帰ろ?」

 

 

夏希「そうだね...。あのさ...少し頼まれてくれないかな?」

 

 

美久「ん?なに?」

 

 

すると、夏希は私の手を両手で優しく握ってきた。そして言った。

 

 

夏希「沙綾の事...助けてあげて?もう美久しか頼れる人いなくて...」

 

 

美久「はは、当たり前!任せておいて!さやちんは絶対にドラムやらせたる!」

 

 

私はそう言いながらその上からさらにもう片方の手を添えた。もうこう言ってしまった手前、やるしか無いね!幼馴染のため!絶対にやり遂げてみせる!そう胸に決めた私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日は土曜日だったから、ポピパのメンバーには集まってもらった。江戸川楽器店という楽器店に。ここには休憩スペースもあり、集まるにはちょうどいいかなって思ってここにした。みんなにも予定があるだろうから、集まったのは昼過ぎだった。

 

 

ちょうどみんな集まったとこで、昨日夏希から聞かせてもらったさやちんの過去について話した。それを聞いた途端、香澄とりみは驚き、有咲とおたえはどう答えたらいいかわからないって感じだった。

 

 

香澄「さーや、ドラムやってたんだね...」

 

 

有咲「でも何となく覚えがあったな...山吹さん、楽譜とか読めてたし...」

 

 

りみ「でも、昔そんなことがあったなんて...」

 

 

たえ「うん...大変だったみたいだね」

 

 

それぞれ思うところがあったみたいだ。私も薄々変だとは思ってた。バンドの話をするとさやちん、どこか寂しい顔をしてたし。過去にあんなことがあったらそんな顔になるよね...。

 

 

美久「それで何だけど...今日みんなに集まってもらったのは一緒にさやちんをーーー」

 

 

香澄「私、ちょっと行ってくる!!」

 

 

有咲「ちょ、おい香澄!!?」

 

 

本題を聞かす前に香澄が店を出て行った。『行ってくる』か......。どこに向かったかは見当がつくね。

 

 

美久「しょうがない、私達も向かおっか!()()()()の家に...」

 

 

私達は、香澄のあとを追うため、江戸川楽器店を飛び出した。待っててね......さやちん。

 

 

 

 




はい、今回は終了です!いよいよ沙綾を説得に行きます。なので次回はシリアスになるかもです。


次回、【互いの気持ち】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

互いの気持ちが交差しすぎる...

前回のあらすじ

夏希から沙綾の過去の事を聞かされた美久。それを聞いた美久は、どうにかして沙綾にドラムをやらせたい、そしてポピパに加入させたい!と考えるようになった。そして次の日、ポピパのメンバーにその事を話したら、香澄が勢いよく店の外に出て行った。美久達は香澄の後を追うべく店を出るのだった。


 

 

ーーView Change 香澄ーー

 

 

 

 

みっくから話を聞いた後、私はいてもたってもいられなくなって、気がついたらさーやの家に向かっていた。さーやがドラム?バンドをやってた?そんな事を聞かされたらじっとなんかしてられないよ!やっぱりさーやとは一緒にバンドしたい!絶対に説得する!そう胸に決めた私は、さっきよりも走るスピードを上げてさーやの家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「はぁ...はぁ...はぁ」

 

 

 

沙綾「ど、どうしたの香澄!?そんなに息切らして?」

 

 

 

さーやの家の前に着いた時にはすっごく息が切れてた。呼び鈴を押してさーやに出てきてもらったのに、なかなか本題を切り出すことができなかった。さーやにも心配させちゃってるし...。そして何とか息が整ったから私は思い切って切り出してみることにした。

 

 

 

香澄「さーや、聞いたよ?さーや昔バンドでドラムやってたんでしょ?だから私たちと一緒にーーー」

 

 

 

沙綾「ストップ!」

 

 

 

香澄「え?」

 

 

 

私が言い切る間にさーやが遮ってきた。まるで”その先は言わせない”って言ってるみたいに。

 

 

 

沙綾「部屋行こ?話はそこで...」

 

 

 

香澄「うん...」

 

 

 

言われるがままに、私はさーやの部屋に案内された。こうしてさーやの部屋に入るのは初めてかもしれないな〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「そっか...美久から聞いたんだ...」

 

 

 

部屋に案内された後、私は過去の話をみっくから聞いた事を話した。聞いてる時のさーやはすっごく暗い顔をしてた。

 

 

 

香澄「みっくは夏希ちゃんに聞いたらしいよ?」

 

 

 

沙綾「やっぱり...まぁ、夏希ならそう考えるとは思ってたけどね...はは...」

 

 

 

さーやは笑ってるけど目が全然笑ってなかった。やっぱりどう返していいかわかんないよね。ここは手早く済ませよう!そう決めた私はさーやに言った。

 

 

 

香澄「さーや、一緒にバンドやろ!絶対に楽しいから!私もみんなもさーやが入ってくれるならすっごく嬉しいよ!」

 

 

 

沙綾「うん...ありがとね。誘ってくれてるのはすごく嬉しいよ...」

 

 

 

香澄「じゃあ...」

 

 

 

沙綾「でも...ごめん。私がいない間にまた()()()()()()()()のなんてもう懲り懲りなの。それに今加入してもみんなには迷惑しかかけないよ...。それで演奏を壊したくない。だから...ごめん」

 

 

 

香澄「......っ」

 

 

 

言葉に詰まった...。そうだよね。あんな辛い過去があったら簡単には頷くことはできない。それはわかってる...わかってるけど、やっぱり諦められないよ!

 

 

 

香澄「大丈夫だよ!お店の手伝いとかなら私たちも一緒にするし、じゅんじゅんもさーなんも私たちが面倒見るよ!これからはみんなで協力するよ!演奏の方も大丈夫!みんなで一緒に練習すれば今からでも間に合うから!だからさーーー」

 

 

 

沙綾「ごめん......他の人探して...」

 

 

 

やっぱり首を縦には振ってくれなかった。やっぱりダメなの...?私はそこで少し弱気になっちゃったんだ。それがまずかった。そのせいで、私は”言ってはいけない事”を言ってしまったんだから...。

 

 

 

 

 

 

 

香澄「...何でダメなの?()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

沙綾「っ!!そんなわけないじゃん!!!」

 

 

 

その言葉を私は言っちゃった...。言ってしまった。それを聞いたさーやは目を大きく見開いて大きな声を上げて私を睨みつけていた...。

 

 

 

沙綾「香澄にはわかんないよ!自分の独りよがりのせいでライブを壊しておいて、今更戻れると思う?できるわけないでしょ!?あの時みんながどれだけ傷付いたかどれだけみんなに迷惑かけたか、香澄にはわかるの!!?」

 

 

 

香澄「さーや......私は......」

 

 

 

沙綾「夏希達も香澄と同じこと言ってたよ、『沙綾は悪くない、これはみんなの責任。私たちも一緒に手伝う』って。私にはそれがすっごく辛かった!みんな好きな事我慢して私に合わせてくれてる!自分のしたいことも曲げてね!それで楽しいの!?それがやりたいことなの?みんながそんな状況なのに私1人だけ好きなことするなんて良いことなの!?良いわけないじゃん!!」

 

 

 

さーやは次第に涙を流し始めていた。よっぽど辛かったんだね...辛かったよね......。私は黙って聞いた。

 

 

 

沙綾「香澄達も、私に構ってる暇があるなら練習しなよ!もう時間がないんでしょ?香澄達なんてまだまだだよ!これからもっともっと練習しないと!私になんか構わないで!私はもう......バンドは......ドラムは......出来ないんだから...」

 

 

 

言いたいことはこれで終わりと言わんばかりに、さーやは俯いた。ボロボロと涙を零しながら...肩を震わせながらだ。さーやの気持ちはよくわかった。でも......これだけは言いたい!私はさーやの手をそっと握った。

 

 

 

香澄「出来るよ!」

 

 

 

沙綾「出来ない!!」

 

 

 

香澄「出来る!!何でもかんでも自分1人で決めるのずるい!!ずるいよさーや!!私たち友達でしょ!?一緒に......考えさせてよ......」

 

 

 

ついに私も堪え切れずに涙を流した。さーやもどう返して良いのかわからないみたいでただただ泣いていた。少し剣呑な空気が流れる中、ガチャっと誰かが部屋に入ってきた。音に気づいた私とさーやがドアの方を見てみると、そこにいたのはーーー

 

 

 

美久「よ!話は終わった?」

 

 

 

いつもの雰囲気を醸し出してるみっくだった。




はい、今回は終了です。このシーンは何度聞いても胸が締め付けられますね。次回は美久も参戦です。


次回、【本心はいかに?】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

さやちんは自分勝手すぎる!!

前回のあらすじ

沙綾の家に向かった香澄。そこで沙綾にバンドの加入を勧めたが、頑なに断ってくる沙綾に香澄は心ない言葉を浴びせてしまう。それがきっかけで沙綾の今まで秘めてた気持ちが爆発した。香澄はその言葉を最後まで聞き、それでも諦め切れなかった香澄はひたすら声をかけ続けた。だが、自体は急転しそうはなかった。そんな時、2人の前に美久が現れた。


 

 

 

ーーView Change 美久ーー

 

 

 

香澄が出て行った後、私たちもすぐに後を追った。香澄が向かった先は恐らくさやちんの家だ。それがわかってるなら話が早い。目的地に向けて私たちは急ぎ足で向かった(途中、有咲とりみがバテて大変だったけどね)。

 

 

 

さやちんの家についた私達は、さやちんのお母さん(私はさやママって呼んでるけど)に事情を説明し、待たせてもらうことにした。本当は私も香澄とさやちんが降りてくるまで待とうと思ってたんだけど...。

 

 

 

さやママ「美久ちゃん...声をかけに行ってあげてくれないかしら?美久ちゃんの言葉なら伝わるかも知れないから...」

 

 

 

と、さやママに言われちゃったから、これから上に上がろうとしてるんだよね。そんな時だった。上からさやちんの怒鳴り声が聞こえてきたのは。その怒鳴り声のせいで、今にいた純と紗南は店の方に避難していっちゃった。

 

 

 

美久「(全く......弟と妹を怖がらせるなんて、なんて悪いお姉ちゃんだ事。お説教も含めて声をかけにいきますか!)」

 

 

 

そう決めた私は、みんなに『2人のとこ言ってくる』と言い残し、上に上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美久「よ!話は終わった?」

 

 

 

さやちんの部屋に入ってみると、まず目に入ったのは”泣いてる”2人だった。こりゃ相当な事言いあったんだな〜と1人で考えてると、さやちんが涙を拭いて言った。

 

 

 

沙綾「美久...どうして?」

 

 

 

美久「ん?香澄の後を追ってきたらここについたからかな?そんで持って、純と紗南を怖がらせた悪〜いお姉ちゃんに説教しようと思ってね!」

 

 

 

沙綾「......」

 

 

 

怖がらせたというとこに思い当たる節があるのか、さやちんは黙ってしまった。見たところ、香澄との話は終わったってとこかな?じゃ、ここからは私の出番かな?そう割り振り、香澄には部屋から出ていくよう言った。意外と渋るかと思ってたけど、今回は素直に言う通りに従ってくれた。今はさやちんと面と向かって話したくないんだろうね。

 

 

そうして私達は2人きりになった。こうして2人きりになるのは再開して初めてじゃないかな?ま、とりあえず私の言いたい事を言おう。そう決め、沙綾の方を見た。

 

 

 

美久「こうして2人きりになるの久しぶりだね」

 

 

 

沙綾「うん...そうだね」

 

 

 

美久「...さやちんさ?私たちのこと”友達だって思って無い”?」

 

 

 

沙綾「え?」

 

 

 

急に予想外のことを言われたせいか、目を見開いて私を見たさやちん。ま、急にそんなこと言われたら誰でもそうなるよね。

 

 

 

沙綾「何言ってんの?美久も香澄達もみんな友達だよ?何でそんなこと聞くの?」

 

 

 

美久「本当にそう思ってんの?私たちにはなーんにも相談にこなかったのに。”友達”の私たちに。さやちんは私達には自分の秘密を話さなくても良いと思ってたんじゃ無いの?話したところで何も解決しないって決めつけて」

 

 

 

沙綾「それは、みんなに迷惑がかかると思って...」

 

 

 

美久「話しても無いのに何で迷惑だって決めつけてるの?それはさやちんの勝手な思い込みでしょ?話さなきゃ何も始まんないでしょーが?それとも何?さやちんは、私達は”友達の悩みを受け止めることの出来ない小さい人達”とでも思ってるわけ?」

 

 

 

沙綾「そ、そんなことーーー」

 

 

 

美久「さやちんのやってきたことはそう言うことだよ?他人に迷惑かけないようにするってのは良い心がけだよ?でも逆に言えば、それは友達の良心を踏みにじってるってことなんだからね?良かれと思ってやってることが誤解を生む可能性もあるんだよ?さっき香澄が言ってたこともそう。何で頼らないわけ?1人で解決しようとしても限度があるんだからさ?今のさやちんに必要なことは、仲間、つまり友達に頼ること!1人で抱え込まないでみんなで解決するの!それが出来ないんならさやちんはこれからもずっと、過去を引きずったまま過ごすことになるよ?」

 

 

 

沙綾「......」

 

 

 

さやちんは黙って聞いていた。私はさらに続けた。

 

 

 

美久「夏希達のことだってそう。誰が辛いなんて言ったの?やりたく無いなんて言った?何でさやちんに協力したいって言ったの?さやちんの力になりたかったからだよ?だって同じ仲間なんだから!仲間なら1人のために力を貸すのは当然じゃ無いの?それをさやちんは自分から切り離しちゃったんだよ...。今さやちんはまた同じことを繰り返そうとしてるよ?どうするの?また同じように切り離す?それとも?」

 

 

 

沙綾「わかった...わかったから少しそっとしておいてくれる...?」

 

 

 

美久「.......うん、わかった。少ししたら下に来な?みんな待ってるから」

 

 

 

そう言い残して私は下に降りた。言いたいことは言った。あとはさやちんがどう動くかによる。下に降りて数分後、さやちんが降りてきた。あのあと少し泣いたのか、目元が少し赤くなっていた。

 

 

 

沙綾「みんな......」

 

 

 

4人「「「「......」」」」

 

 

 

みんな何を言って良いのかわからないみたいだね。頼みの香澄も同じ感じみたいだし。ともあれ、こんな状況じゃまともに会話なんてできないね。しょうがない。

 

 

 

美久「今日は帰ろっか!」

 

 

 

有咲「私も賛成だな......」

 

 

 

香澄「え?でも......」

 

 

 

有咲「こんな状況で話し合いなんてできないだろ?まーでも、知らない人よりは私は山吹さんに入ってもらったほうが嬉しいかな...」

 

 

 

りみ「私も、沙綾ちゃんと一緒にバンドしたい!」

 

 

 

たえ「曲のデータ、送っておいた」

 

 

 

そう言って次々に家を後にするポピパのメンバー。みんなもやっぱりさやちんとバンド組みたいんだね。

 

 

 

沙綾「だから...私には...」

 

 

 

香澄「待ってる!待ってるから!!」

 

 

 

最後に香澄がそう言い残して去っていった。残されたのは私とさやちん。私が言えることはもう何も無い。ただ一つ言えるのは...。

 

 

 

美久「さやちん。どんなことがあっても私達は友達だよ?困ったらいつでも頼りに来な?それじゃ!」

 

 

 

そう言い残して私は家から出た。さやちん、あとは自分次第だからね?

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。美久の言ったことを沙綾がどのように受け止めたかですね!


次回、【文化祭開幕】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

突然の搬送は予想外すぎる...

前回のあらすじ

沙綾の家についた美久は、沙綾の部屋に押しかけ、沙綾と2人きりで話し合った。美久は今自分が抱いている沙綾の印象を中心に伝えたいことを伝えた。全てを話し終わった後、最後に沙綾に『何かあったら友達を頼れ!』そう言って家を後にするのだった。



 

 

 

私達がさやちんの家に押し掛けてから1週間後、ついに文化祭が始まった。学校の外観もすっかり変わっていて、いかにも文化祭っという感じに華やかな感じになってた。香澄達も、この日に向けてこの1週間、必死に準備したりライブに向けて演奏の練習を頑張ってた。

 

 

私はというと、実は午前中は事務所から仕事を貰っちゃってて、午前中は文化祭に参加することができないんだよね。ライブは午後からだから問題なく参加できるんだけど、やっぱり本音を言えば最初から楽しみたかったな〜。それに私もみんなと文化祭回ったりライブしたりしたいわけだし、これは早くに終わらせて向かわないとね!もちろんこのことは先生にもクラスのみんなにも話してある。無論香澄達にもね。

 

 

さやちんに関しては、あの時以来、まともに話せてない。どこか避けられてる感じがするんだけど、ま、しょうがないよね。今は自分だけで考えたい時なのかも知れないし、そっとしておこうと、私もそこまで触れなかった。さやちん、新曲の練習してくれてると良いんだけどな〜。

 

 

 

 

 

美久「っと、あまりのんびりしてると間に合わなくなっちゃうよね。とりあえず急がないと!」

 

 

 

今私は、仕事を終えて学園祭に向かってる途中だ。そのまま花女に向かおうとしたんだけど、その前にやまぶきベーカリーに寄った。何で寄ったかっていうと、さっき香澄から連絡があって、販売してたパンが売り切れたって聞いたから。パンを食べれないのは寂しいと思って少し時間があったから寄る事にしたんだ。

 

 

 

さやママ「いらっしゃいま...あら、美久ちゃん。学園祭はどうしたの?」

 

 

 

美久「仕事があったから先にそっちを済ませてきたの。学園祭にはこれから向かうよ。それよりさ?販売してたパンが売り切れちゃったみたいだから、こっちで少し買わせてもらうね〜」

 

 

 

さやママ「わかったわ。少し待っててね」

 

 

 

さやママはそう言うと、一旦中に戻っていった。紙袋がきれてたみたいで取りに行ったみたいだ。少し待ってみたが、一向にさやママは戻って来なかった。紙袋なんていつも補充してるだろうから探してるってことはないはずだけど...。

 

 

 

美久「どうしたんだろ?ちょっと中に...」

 

 

 

純「美久お姉ちゃん!!大変!お母さんが...お母さんが!!」

 

 

 

違和感を覚え、中に入ろうとした時、突然純が私に抱きついてきた。......なんか深刻な状況らしい。

 

 

 

美久「ど、どうしたの純?何があったの?」

 

 

 

純「お母さんが...お母さんが倒れちゃったーー!!」

 

 

 

美久「っ!!」

 

 

 

そう言われ、慌てて中に入ってみると、そこには床に倒れ伏していたさやママの姿があった。私はその時、とっさに119番通報をした。この時は本能で動いたんだと思うけどよくは覚えていなかった。ここの住所と状況を説明し、直ちに救急車ををよこすよう言った。救急車が来るまでの間、さやママを居間に運び、横に寝かせた。

 

 

 

紗南「お母さん...大丈夫なの?」

 

 

 

美久「多分過労による貧血かも知れない。顔が真っ青だし、最近少し無理してたって聞いてたし。医者に行って問題がなければ大丈夫だよ...」

 

 

 

そう言って純と紗南を優しく抱きしめた。2人は抱きしめられると、すぐに大きな声を上げて泣き始めた。2人は不安でしかたなかったんだろう。お母さんがまたいつか倒れてしまうんじゃないかという。もし私がこの場にいなかったら大変な事になってただろう。今回ばかりは寄り道した自分に感謝しないとね。

 

 

 

 

 

 

10分後、ようやく救急車が来た。私は状態を説明して一刻も早く病院に連れていって欲しいと伝えた。すぐさま担架が運び込まれ、さやママを担架に乗せて救急車の中に運び込んだ。とりあえずはこれで安心だ。

 

 

 

救急要員「申し訳ないのですが、できれば付き添いとして一緒に同乗していただけるとありがたいのですが?」

 

 

 

美久「......わかりました」

 

 

 

そう言って私は純と紗南を連れて、救急車に乗り込んだ。それから、私達は病院に向かって移動を始めた。私はこの時悟ったんだ。

 

 

 

美久「(ライブには間に合わない......。そう伝えないと......)」

 

 

 

そう思い、移動中私は香澄に電話をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

ーーView Change 香澄ーー

 

 

 

 

香澄「ありがとうございましたー!」

 

 

 

午後になっても私たちのクラスの売り上げはすっごく伸びていた。さーやの家のパンなんて午前中に無くなっちゃうくらいだしね!

 

 

 

香澄「ふ〜〜、それにしても、みっくまだかな?午後になったら来るって言ってたのに〜」

 

 

 

そう思って少し教室の外に出てみたけど、やっぱりみっくは居なかった。でも代わりにいたのがーーー

 

 

 

沙綾「香澄?どうしたの?誰か探してる?」

 

 

 

香澄「あ、さーや。みっく来てないかな〜って思っちゃって...」

 

 

 

廊下にいたのはさーやだった。あれ以来さーやはバンドについては触れてこなくなった。でも不思議と嫌な気はしなかった。さーやはきっとわかってくれる!そう信じてたからかも知れない。だから、できれば今日のライブで私たちの気持ちを伝えられたらって思うんだよね!だから、みっくには早くきてもらいたいんだけど...。

 

 

 

沙綾「確かに遅いね?何かあったのかな?」

 

 

 

香澄「う〜ん......ん?ちょっとごめん。電話」

 

 

 

考え込んでると、電話が鳴った。画面を見ると相手はみっくからだった。私は急いで電話に出たんだけど、みっくから言われた一言に戸惑いを覚えた。

 

 

 

香澄「いけなくなったってどう言う事?何かあったの?説明して?」

 

 

 

私が聞いたのは、『ライブには間に合いそうにない』それだけだった。それでもみっくの声はどこか悲しげだった。とりあえず理由を聞いたんだけど、それを聞いてさらに胸が......いや、正確には()()()をみて胸が痛んだ。でも...伝えないと。

 

 

 

沙綾「どうかしたの?」

 

 

 

香澄「電話みっくからだったんだけど、もしかしたらライブに間に合わないかもって...」

 

 

 

沙綾「え!?何で!?」

 

 

 

香澄「さーや、落ち着いて聞いてね......?さーやのお母さんが倒れたって...」

 

 

 

沙綾「!!!え......?」

 

 

 

さーやが大きく目を見開いて驚いた。信じられないって感じの顔でね。

 

 

 

香澄「みっくがやまぶきベーカリーに寄った時に倒れたんだって...。お母さんは無事に病院に運ばれたけどまだ目を覚さないみたいだよ...。今みっくはお母さんに付き添って病院にいるの......。だから間に合わないかもって...」

 

 

 

沙綾「香澄ごめん!!私行かないと!みんなにはうまく話しておいて!」

 

 

 

そう言ったさーやは私が何か言う前にその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。最近シリアス回が続いていて、心苦しいですね。早く脱したいです。


次回、【美久の思惑】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

美久の計画は腹黒すぎる!!

前回のあらすじ

学園祭に行く前にやまぶきベーカリーに寄った美久は、沙綾のお母さんにパンを頼んだ。しかし、その時沙綾のお母さんは過労で倒れてしまう。美久は急いで救急車を呼び、純と紗南とともに病院に向かった。その事を香澄と沙綾に伝えた途端、沙綾は血相を変えて学校を飛び出していったのだった。


 

 

 

ーーView Change 美久ーー

 

 

 

 

沙綾「お母さん!!」

 

 

 

病院の病室内にさやちんの声が響き渡った。私たちはさっきまで医者の先生に今回の倒れた原因を聞かせてもらっていた。原因はやっぱり過労による貧血。それに加えて熱が出たもんだから倒れちゃったんだとか。幸い命に別状はなく、しばらく病院で点滴を打ってもらい、一晩ぐっすり休めば明日には家に帰れるみたい。それを聞いてとりあえずは安心した。純も紗南も『良かった〜』と安堵の表情を浮かべていた。

 

 

そして今に至る。病室に運ばれたさやママの看病をしてた時に、病室にさやちんが入ってきた。......すっごく険しそうな顔をしてね。

 

 

 

美久「さやちん...」

 

 

 

沙綾「美久!お母さんは...お母さんは大丈夫なの!?」

 

 

 

美久「大丈夫。過労で倒れただけみたいだから。一晩休めば元気になるって」

 

 

 

沙綾「そっか...よかった」

 

 

 

さやちんも少し安心したのか表情を少し和らげていた。純と紗南はさやちんが来たと知ると、すぐにさやちんに抱きついていった。相当辛かったんだね...。

 

 

 

沙綾「美久...ありがとね。もし美久がいなかったら今頃...」

 

 

 

美久「私は当然のことをしただけ。お礼を言われることなんてないよ?」

 

 

 

沙綾「でも......そうだ、何か頼みがあるなら聞いてあげるよ?何か用意して欲しいとか何か欲しいとか」

 

 

 

美久「......」

 

 

 

私はこの時思っていた。『予想通り!』と。そう、ここまでは私の計画通りだ。もちろんさやママが倒れたのは偶然だよ?私の計画はその後からの話。と言っても、この計画を始めるきっかけになったのは......さやママなんだけどね...。

 

 

 

ーー数十分前ーー

 

 

 

美久「さやママ、大丈夫?」

 

 

 

さやママ「ええ......ごめんなさいね美久ちゃん。あなたにこんな迷惑かけちゃって...」

 

 

 

美久「気にしないで。むしろよかったよ。もしあの場に私がいなかったらって思うと...」

 

 

 

さやママ「ふふ、やっぱり美久ちゃんは優しいわね。昔からちっとも変わってない。そんな美久ちゃんだから沙綾も好きになれたんでしょうね」

 

 

 

数十分前まではさやママは起きていたんだ。目は少し虚だったけど、意識ははっきりしていた。

 

 

 

さやママ「ねえ...美久ちゃん?お願いがあるんだけど?」

 

 

 

美久「なに?」

 

 

 

さやママ「沙綾を...香澄ちゃん達のバンドに入れさせて欲しいの...」

 

 

 

美久「......」

 

 

 

それを聞いた私は素直に頷くことが出来なかった。確かにさやちんをポピパに加入させたいとは思ってる。でもそれはやっぱり自分の意思で入るか入らないかを決めるべきなんじゃないか?その気持ちがあるせいで行動に移すことが出来ないでいるんだ。

 

 

 

さやママ「難しいことはわかっているわ。でもやっぱり...私は、ドラムをやってる沙綾の方が好きだから。最近の沙綾、みていて辛いのよ...。ずっと好きなことを我慢して私のことを気遣って生活してる。私はそんな沙綾を見たくないのよ。だからお願い。私のことを利用しても構わないわ。だから、もう一度沙綾に”居場所”を与えさせてあげて...」

 

 

 

 

美久「さやママ...」

 

 

 

さやママはそう言うと、静かに寝息をたて始めた。これは当分起きそうに無いな。それから私は、さやママから託された願いを叶えるために計画を練った。”さやちんをポピパに加入させる計画”をね!

 

 

 

 

ーー現在ーー

 

 

 

そして今、に至るってわけ。さっきの予想通りっていうのは、さやちんが言った一言、『何か頼みがあるなら聞くよ!』だ。義理堅いさやちんなら絶対言うと思ってたセリフを見事に言ってくれた時に、心の中で密かにガッツポーズをした私だった。こうなったら後は簡単だった。計画もクライマックスに入ろうとしていた。

 

 

 

美久「頼み...ね。あるよ」

 

 

 

沙綾「なに?なんでも言って」

 

 

 

なんでも...その言葉に少しにやけながら私は言った。

 

 

 

 

美久「()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

沙綾「え......?」

 

 

 

なにを言ってるの?とでも言いたいのか、怪訝な顔をしたさやちん。むしろこっちがなんでそんな顔してるのって聞きたいんだけどね。

 

 

 

美久「私この後いろいろ医者の先生にその時の状態とか状況とかいろいろ話さなくちゃいけないの。だからライブにはいけなくなっちゃったんだよね〜。だからさ?さやちんが私の代わりとしてライブに出てよ。今からなら最後の新曲には間に合うかもだから」

 

 

 

ちなみにこのことは真っ赤な嘘だ。説明ならさっきした。いつでも帰って良いと言う状態だ、今の私は。

 

 

沙綾「で、でも私ーーー」

 

 

 

美久「『()()()()言って』って言ったよね〜?だからさやちんには断る選択肢はないよ〜?大丈夫!さやママは私が看病しておくし、純も紗南もどうやら私と同じ気持ちみたいだよ?」

 

 

 

そう言って、2人を前に出した。

 

 

 

純「お姉ちゃん!俺もうお姉ちゃん無しでも救急車呼べるから!番号も覚えた!だから、お姉ちゃん行ってよ!」

 

 

 

紗南「あたし達もうそこまで子供じゃないよ!自分のことは自分でする!お母さんの手伝いもたくさんする!だからお姉ちゃん!気にしないで行ってきて!」

 

 

 

沙綾「純...紗南...」

 

 

 

下の弟と妹から言われた初めての言葉にポロポロと涙をこぼしたさやちん。無論2人の言ってることは本心だ。前から2人もさやちんのことを気にかけてたみたい。

 

 

 

美久「2人がこう言ってるんだよ?これを無下にしたら、今度は説教じゃなくて大説教するからね?」

 

 

 

沙綾「はは...美久ってほんとお母さんみたいになる時あるよね...。うん!わかった!私...やるよ!」

 

 

 

美久「そうなら早く行きな!時間ないよ!」

 

 

 

沙綾「うん!」

 

 

 

そう言って、さやちんは勢いよく飛び出していった。今の時間だと...ギリギリだね。最後の新曲に間に合うかどうか...。いや、信じよう!さやちんならきっとやってくれる!そう信じて、私は純と紗南に『また来るね』と言い、静かに病室を出た。学園祭でポピパの演奏を見るために!

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。いよいよポピパの誕生になります!次回をお楽しみにあれ!


次回【PoppinParty誕生!】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ポピパのライブは感激すぎる!!

前回のあらすじ

無事に沙綾のお母さんを病院に運び、看病をしていた美久。そこに沙綾が現れお母さんの無事を知らせた。その際、美久は沙綾のお母さんとの間で計画した、沙綾をポピパに加入させるというのを実行した。その計画はうまくいき、美久に学園祭でポピパの演奏に自分の代わりに参加するよう言われた沙綾は一目散に花女に向けて走り出したのだった。




 

 

 

美久「やれやれ......やっと戻ってこれた〜。今ならまだ演奏してるよね?早く行こっと!」

 

 

 

あの後、さやママのことは純と紗南に任せて花女に戻ってきた私は、真っ先にライブが行われている体育館に向かった。時間的に考えると、既に最後の曲が始まってるはず。早くしないと終わっちゃうね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美久「ふ〜〜着いたっと。さてさて、ライブは......オッケー、まだやってるね!」

 

 

 

ライブが終わってたらって思うと不安だったけど、杞憂に終わったみたいだね。何とか香澄たちの新曲が終わる前にたどり着けた。

 

 

 

美久「さやちん......間に合ったみたいだね。よかった。へへ...やっぱりあの5人で演奏するのが一番いいね!【音】も今までの発展途上の【音】じゃなくなってる......。あの5人でしか奏でることのできない一つの【音】になってる。これが......これこそがPoppinPartyの演奏なんだ!」

 

 

 

ステージに立っている5()()を見て私は感慨にふけっていた。さやちんを含めたあの5人だからこそ奏でられる【音】が心に響いたから。そして何より、さやちんが心の底から笑っているのが何より嬉しかった。

 

 

 

美久「よかったねさやちん。【居場所】を見つけることが出来て。これからもいろんなことがあるかも知れないけど、今はただ......ライブを楽しみな!」

 

 

 

それから私は、ポピパの新曲【STAR BEAT!〜ホシノコドウ〜】を目を瞑って静かに聴いた。その時間はサイッコーに楽しかったな〜!

 

 

 

美久「約束は守ったからね?さやママ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブが終わり、学園祭も終わりに近づき、片付けの時間になったところで教室に戻り香澄達と合流した。

 

 

 

美久「お疲れ〜!」

 

 

 

香澄「みっく!大丈夫だったの?さーやのお母さんは?」

 

 

 

美久「うん。今日一日入院すれば良くなるって。だから安心していいよさやちん?」

 

 

 

そう言ってさやちんの方を見た。さやちんは少しほっとした様子で頷いてくれた。もう心配ないみたいだね。

 

 

 

香澄「よかった〜!あ、それでね?さーやと一緒にライブしたんだよ!最後の新曲だけだったけどすっごく楽しかった〜!それでさーやもポピパに加入することになったんだけどねーーー」

 

 

 

有咲「少し落ち着け!興奮しすぎだ!」

 

 

 

興奮が冷め上がらない香澄にたまらずツッコミを入れた有咲。相変わらず仲がいいこと。

 

 

 

たえ「でもさ?よく来てくれたよね?前までずっと断ってたのに」

 

 

 

りみ「うん......私もてっきり来ないかと......」

 

 

 

沙綾「うん......私もまさか一緒にやるとは思ってなかったけどね......。さっきまでずっと迷ってた。このまま香澄達と一緒にバンドして良いのかとか、またドラムやって良いのかな?とか.......。でも、美久や香澄達が私のことを引っ張り出してくれたんだ!ずっと沈み込んでた私の心を。私にはそれがすっごく嬉しかった!もしかしたら待ってたのかも知れないね...ずっと...。こうして無理やりにでも私のことを表舞台に連れ出してくれる人を...。だから、みんなには感謝してる。改めてお礼を言わせて!ありがと!こんな私に【居場所】を与えてくれて!」

 

 

 

さやちんの言ったことを黙って聞いていた私たち。そっか...今までずっとそんなことをずっと抱え込んで生活してたんだね...。でも、そんな生活も今日でさよならだ。今日からさやちんは新たなスタートをきるんだから!

 

 

 

香澄「さ〜や〜!ありがと〜!これからはずっと一緒だよ〜!!」

 

 

 

沙綾「わっぷ!も〜香澄〜泣かないの〜」

 

 

 

美久「はは、ほらほら2人とも?2人で抱き合ってないで片付け片付け!早く終わりにしないと日が暮れるよ〜!」

 

 

 

抱き合ってる2人を尻目に、私たちは片付けを始めた。とりあえず、無事に終わって本当によかった。だが......私はこの時重要なことを忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美久「そういえば私、学園祭ほとんど参加出来なかったんだけど〜〜!!」

 

 

 

 




はい、時間が空きましたがこれにてポピパ編は終了です。ポピパは既に弟1章で触れてたので少し短めです。次回からは少し路線を変えてみようと思います。どんな内容かはお楽しみに!


次回、【暇なときの過ごし方】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7章 池田兄妹の介入
休日はだらだらしたすぎる!!


前回のあらすじ

沙綾のお母さんの看病を無事に終えた美久は、ポピパのライブを見るために大急ぎで花女の体育館に向かった。体育館に着いた美久が見たのは沙綾を含めた5人のポピパのメンバーがステージでライブをしている姿だった。何とか沙綾にバンドという居場所を与えることが出来た美久はホッと息をつくのだった。


 

 

 

学園祭から少し経ち、中間テストも近づいてきたこの頃、私は勉強と楽器、事務所の仕事をいろいろこなしてきていたけど、今日は何にも予定がない土曜日だった。つまり暇ってこと。で、私は何やってるかっていうとーーー

 

 

 

蓮「お前......昼間からゴロゴロしてるとか......何かすることないのかよ?」

 

 

 

そう!ゴロゴロしてる!何もやることない時はこうしてだらける!これが私の楽しみ!

 

 

 

美樹「そーゆーおにーちゃんも、さっきからずっと寝そべって漫画読んでるだけじゃん...」

 

 

 

蓮「ソファーに寝そべって動画見てるお前に人のこと言えるのか...?」

 

 

 

今状況を説明すると、私はリビングの床に寝っ転がってゴロゴロしてて、お兄ちゃんは寝そべって漫画読んでて、美樹はソファーに寝そべって動画を見てた。

 

 

簡単に言うと、私たちは今、絶賛だらけモード!でも、こんなことは休日よくあることで、何も予定がない日は大抵こうしてる。

 

 

 

美久「別に良いでしょ〜?私いつもはいろいろ忙しいし、たまにはこうして何にもしない日があってもさ〜?美樹は良いわけ?勉強しなくて?」

 

 

 

美樹「もう今日のノルマは終わってるから良いのー。根詰めすぎてやり過ぎても能率悪いしね」

 

 

 

蓮「ったく...若いんだからもう少し若者らしくしたらどうなんだよ...?」

 

 

 

美久、美樹「「それはどの口が言ってるの〜?」」

 

 

 

蓮「......」

 

 

 

と、いつもの会話を交わしながら今日も変わらず過ごしていくんだと思ってたけど、今日はそうはいかなかった。

 

 

 

母「3人とも、ちょっと良い?」

 

 

 

3人「「「ん?」」」

 

 

 

お母さんが唐突に聞いてきた。何かと私たちはお母さんの方を向いた。

 

 

 

母「知り合いからもらったんだけどね、予定が入って今日行けなくなっちゃったんだって。だから良ければ3人で行ってきなさいよ?暇でしょ?」

 

 

 

美久「ん?チケット?」

 

 

 

お母さんから手渡されたのは3つのライブチケットだった。内容を見ると【SPASEライブ開催!】と出てた。

 

 

 

美樹「SPASE......確かライブハウスだったよね?”ガールズバンドの聖地”って呼ばれてる...」

 

 

 

蓮「いろんなバンドが出るみたいだな。お、知ってるバンドもあるな」

 

 

 

見ると確かに雑誌とかで取り上げられてるバンドもあった。SPASEはそこまで規模は大きくないけど”ガールズバンドの聖地”と呼ばれてるだけあってよくライブが行われているんだとか。

 

 

 

母「で、行くの?行かないの?」

 

 

 

美久「ライブ自体はそこまで興味ないけど......せっかくあるのに行かないともったいないよね...?」

 

 

 

蓮「せっかくだし...行ってみるか?」

 

 

 

美樹「ま、気分転換がてら良いんじゃない?」

 

 

 

美久「じゃ、行くってことで!」

 

 

 

と言うわけで、3人でSPASEのライブに行くことにした私たち。でもまさかこの後、あんなことになるとは思ってなかったけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SPASEについた私たちはチケットとドリンクを交換してもらい、中に入った。中にはすでに結構な数の客が入っていた。やっぱりそれなりに注目高かったんだね。

 

 

そんな時、見慣れた後ろ姿が目に入ったため、声をかけに行った。

 

 

 

 

美久「香澄〜、有咲〜!」

 

 

 

香澄「あれ?みっく!みっくも来てたの?」

 

 

 

美久「そ!今日は2人なわけ?」

 

 

 

有咲「ああ、本当は他の3人も誘ってたんだけど、予定があったみたいでな...」

 

 

 

いたのはポピパの香澄と有咲だった。話を聞いたところ、知り合いのバンドがライブに出ると聞いてきたため来たのだとか。

 

 

 

有咲「そういうお前は1人か?」

 

 

 

美久「ううん?お兄ちゃんと美樹もいるよ!ほら!」

 

 

 

そう言って私は後ろを指した。そうしてゆっくりと私のほうに来た2人は軽く会釈した。

 

 

 

香澄「みっきー!なんか久しぶり!」

 

 

 

美樹「香澄さん...その呼び方は某人気キャラの呼び名みたいなんでやめて下さい...」

 

 

 

香澄「え〜?可愛くて良いでしょ〜!」

 

 

 

美樹「はぁ〜もう好きに呼んでください...」

 

 

 

早くも諦めた美樹。美樹は一応、香澄と有咲とは面識がある。前に一度うちに遊びに来たときに会っていたから。

 

 

 

蓮「俺は初めてだよな?よろしく。美久がお世話になってるな」

 

 

 

有咲「い...いえ......その...よろしくお願いします?」

 

 

 

美久「何かたくなってんの有咲?大丈夫。お兄ちゃんは害はないから!」

 

 

 

蓮「誤解を生む言い方をするな!」

 

 

 

香澄「あはは!よろしくお願いしますね。蓮さんで良いんですよね?」

 

 

 

蓮「ああ、それで頼む」

 

 

 

有咲はもう少しかかりそうだけど、何とか打ち解けた私たちはライブを見るため、ステージの方へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

ライブが始まって二時間近くが経ち、ライブも終盤になっていた。どのバンドもいい演奏をしていて、見ていて楽しくなっていた。それはみんなも同じみたいで大はしゃぎしていた。でもそんなとき、香澄が少し深刻そうな顔をした。気になったため、声をかけることにした。

 

 

 

美久「香澄?どうかした?」

 

 

 

香澄「うん......私たちが知ってるバンド、【GlitterGreen】がまだ会場入りしてないって聞いちゃってさ?聞いたところ、ゆり先輩たち修学旅行で乗ってた飛行機が台風のせいで遅れちゃってるみたいで、もしかしたら間に合わないかもって...」

 

 

 

美久「それさ?ちょっとまずくない?」

 

 

 

【GlitterGreen】花女の3年性が組んでいるバンドのことだ。ゆり先輩というのはリーダーの牛込ゆりさんのこと。あのりみのお姉さんだ。確かに3年性は今、修学旅行に行っていて今日帰ってくることになっている。でも今日はあいにく台風が迫っていて、飛行機もいくつかは欠航となっている。ゆり先輩たちが乗ってる飛行機も台風の影響で時間を遅らして出発したんだろう。

 

 

 

蓮「いくら台風とはいえ、時間に来なかったらいろいろとまずいぞ?」

 

 

 

美樹「うん。このイベントだけじゃなくて、【GlitterGreen】自体の問題にも繋がっちゃうね...」

 

 

 

香澄「っ!私、ちょっと行ってくる!」

 

 

 

有咲「お、おい香澄!?どこ行くんだよ!?」

 

 

 

慌てて何処かに向かった香澄を有咲は追いかけて行った。とりあえず、私たちも向かうことにした。

 




はい、今回は終了です。今回から新たな章に突入します。簡単に言えば、この章は池田兄妹が様々なバンドに介入していき問題を解決していくという章になっていきます。もしかすると池田兄妹に変化が生まれるかもです。
次をお楽しみに!


次回【飛び入り参戦!?】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

飛び入り参加は楽しすぎる!!

前回のあらすじ

暇な休日を満喫していた美久達は、SPASEのライブチケットをもらったため、SPASEに向かった。偶然SPASEに来ていた香澄と有咲とも合流し、ライブを満喫していたのだが、香澄の元に届いた【GlitterGreen】の問題が発覚するや否や、香澄はある場所に向かって走っていってしまうのだった。


 

 

 

香澄と有咲を追いかけて向かった先は、ステージの舞台袖だった。そこには音声さんや照明さん、そして白髪の少し年配の女の人がいた。見ると、香澄がなにやらその人に言っていた。

 

 

 

香澄「もうすぐ来るって言ってくれてるんです!だからもう少し待って下さいオーナー!」

 

 

 

オーナー?「ダメだね。どんな理由があろうと、時間通りに来ないようなバンドはステージには立たさない。今やってるバンドで最後だ。もし、この演奏が終わるまでに来なかったなら今日はこれで終いにするよ」

 

 

 

香澄「そ...そんな〜...」

 

 

 

肩を落としながら落胆した香澄。そっか、あの人オーナーだったんだね。

 

 

 

有咲「まだなのかよ...?もう曲終盤に入ってるぞ?このままだと...」

 

 

 

間に合わない。この場にいる人は全員そう思ったかもしれない。準備等も含めて今の段階でこの場にいないとまず間に合わない。というか、仮にいたとしてもこんなバタバタした状況でまともに演奏できるとは到底思えなかった。正直詰みの状態だった。

 

 

 

そして...無情にも......。

 

 

 

美久「終わっちゃったか......。残念だけど...ここまでだね」

 

 

 

曲が終わり、挨拶を終えて演奏をしていたバンドが戻ってきてしまっていた。もうこれ以上は無理だ。諦めるしかない。誰もがそう思っていた。でもそんな中、()()()の突拍子のない行動に私を含めたみんなが驚きを隠せなかった。なにをしたかっていうとーーー

 

 

 

香澄「私、戸山香澄です!グリグリの繋ぎとして一曲歌わせてもらいます!」

 

 

 

4人「「「「はあぁぁーーー!!?」」」」

 

 

 

目を疑っていた。だって香澄が急にステージに飛び出していってグリグリに繋ぐとか言い出すんだもん!しかも今歌ってるの【キラキラ星】だし。も〜、香澄ったらこーゆー所はホンットーに後先考えてないんだから!

 

 

 

香澄「ほらほら!有咲も来てー!」

 

 

 

有咲「ちょ!?おま、引っ張るなって〜!!」

 

 

 

そう言って、有咲まで引っ張り出される始末だった。2人で【きらきら星】を歌う光景......なんというか新鮮。お客さんも何人かは手拍子してくれていた。

 

 

 

スタッフ「オ、オーナー...これは?早いとこ締めたい所なんですけど...」

 

 

 

オーナー「まぁ......もう少しだけ待ってやりな...」

 

 

 

どうやら香澄達のおかげでもう少しは時間に猶予をくれるみたいだった。でもさすがに限度というものがある。いくらなんでも【きらきら星】だけで時間を稼ぐには無理があった。他に何かいい手は......あ!

 

 

 

美久「お兄ちゃん!美樹!ちょっといい?」

 

 

 

蓮「......おい美久。まさかとは思うが...」

 

 

 

美久「うん!そのまさか!」

 

 

 

美樹「いや...そもそもなにやるの?カバーでもするの?」

 

 

 

美久「なんでもいいから!香澄達には説明するから!とりあえず時間が惜しいからは〜や〜く!」

 

 

 

私が出した提案に渋々だけど乗ってくれた2人。そうと決まったらーーー

 

 

 

美久「オーナー!楽器かしてくれませんか?()()()()()()!」

 

 

 

オーナー「...あんたら、楽器弾けるのかい?」

 

 

 

蓮「ま、そういうわけです。時間稼ぎくらいにはなりますよ?」

 

 

 

美樹「目立つことはあんまりやりたくないけどね...香澄さん達のためですし?やりますよ」

 

 

 

オーナー「そこに置いてあるのを使いな。チューニングはしてあるから問題はないよ」

 

 

 

3人「「「ありがとうございまーす!!」」」

 

 

 

そうして私はギター、お兄ちゃんはベース、美樹はマイクを持ってステージにでた。もうここまで来たらなにをしようとしてるのかわかるよね!

 

 

 

美久「はいはーいちゅーもーく!!」

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

香澄「みっく!?それに蓮さんとみっきーも!」

 

 

 

有咲「3人とも...なんで...?」

 

 

 

楽器を持った私たちがステージに出てきたのには2人も心底驚いたみたいだね!私もまさかこんなことすると思ってなかったけどね〜。

 

 

 

美久「香澄達ばっかりにいいとこは取らせないよ〜!せっかく繋ぎなんだから私たちもやらせてよ〜!」

 

 

 

蓮「ったく、お前ら突っ走りすぎだろ?少しは自重しろや...」

 

 

 

美樹「ほんとです。ま、でも時間稼ぎにはなってましたし、結果オーライですね!」

 

 

 

そう言いながら、私たちは持ち場についた。お客さんも新たに出てきた私たちに興味を持ち始めてるみたいだった。

 

 

 

蓮「で?なにやるんだ?」

 

 

 

美樹「やっぱり盛り上げるなら【GO!!】じゃない?」

 

 

 

美久「オッケー!それでいこっか!香澄達それ歌える?」

 

 

 

香澄「私は歌えるよ!」

 

 

 

有咲「少しなら...」

 

 

 

美久「じゃあ決まり!私が掛け声出すからそれに続いてね!」

 

 

 

私たちがやる曲は【GO!!】に決まった。この曲は私たちが結構好きな曲だから何回も演奏してる。正直目を瞑ってても弾ける。ま、今回は盛り上げるからいつもよりも激しく弾かせてもらいますか!

 

 

そう決め、軽くギターを持ち直した。みんなも準備完了したみたいだった。

 

 

 

美久「じゃ!繋ぎとして1曲やりまーす!【GO!!】!ワン、ツー、スリー、フォー!」

 

 

 

そこからは時間を忘れ、ただひたすらにこの場にいるみんなと私たちが楽しくなるように弾いた。人に合わせるのはあんまり好きじゃないけど、たまにはこーゆーのもいいよね。それにお兄ちゃんと美樹なら私のことをよく知ってる。私がどんな感じで弾くのか、どこでアレンジを入れるのか、それを全て理解してくれて演奏してくれてる。だから私はお兄ちゃんと美樹となら安心して演奏できるんだよね。見ると香澄と有咲も最初は少し戸惑ってたけど、今では美樹と一緒になって気持ちよさそうに歌ってくれている。美樹もなんか楽しそうだし。お兄ちゃんも私に負けじとばかりにアレンジを加えていた。いるのかそこ?ってとこもあったけど勢いで押し切っていた。

 

 

私?私はいつも通り、楽しく弾いてるだけ。自分の好きなようにアレンジしたりたまにサポート入ったりして楽しんでる。それにお客さんも随分と楽しそうにジャンプしたり掛け声出したりしてくれてるんだもん!こっちだって楽しくなっちゃうよ!

 

 

 

 

 

 

 

2分弱の演奏を終え、少し息をついていると、会場内から次第にこんな歓声が出始めた。

 

 

 

観客「「「「「アンコール!アンコール!アンコール!」」」」」

 

 

 

大きな大きなアンコールコールだった。やばい......グリグリの前にこんなに盛り上げちゃってよかったのかな?

 

 

 

香澄「す...すごい!」

 

 

 

有咲「なんだよこれ...?」

 

 

 

蓮「おい......どうすんだこれ?」

 

 

 

美樹「観客を横取りしちゃった気分だね...」

 

 

 

美久「う〜ん?」

 

 

 

どうしようか?とりあえず、こう言ってもらえてるわけだしもう一曲......。と言おうとしたんだけど、不意に誰かに肩を叩かれた。誰だ?と思って振り返ってみるとーーー

 

 

 

ゆり「こらこ〜ら!私たちのお客さんを勝手に取られたら困っちゃうよ!もう大丈夫だから、後は私たちに任せておきなさい!」

 

 

 

香澄「ゆり先輩!」

 

 

 

この人が...。確かにりみに似てるな〜。ってそんなこと考えてる暇ないか。

 

 

 

美久「ちゃんと繋げておきましたからね!後はお願いします!」

 

 

 

そう言ってゆり先輩とハイタッチをした。そのまま私たちはステージをゆっくりと後にした。そして残りのグリグリのメンバーも入れ替わると同時に入ってきた。

 

 

 

ゆり「遅れてごめんねー!この失態は演奏で返すからー!みんな〜!今日も盛り上がっていこー!」

 

 

 

そうしてグリグリの演奏が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

演奏終了後、私たちはグリグリの人たちとスタッフさんにしっかりとお灸を据えてもらった。ま、あんな身勝手なことすればそりゃそうなるよね......。あはは、反省反省っと。

 

 

 

香澄「えへへ、怒られちゃったけど、私はすっごく楽しかったよ!」

 

 

 

美久「そう?ならよかった!私も楽しかったし!」

 

 

 

SPASEの入り口で今日やった演奏をみんなで振り返っていた時、何故か声をかけてきた人がいた。それはーーー

 

 

 

美久「オーナー?」

 

 

 

SPASEのオーナーだった。なぜかこっちをじっと観察してるように見えるけど?

 

 

 

オーナー「今日のライブ。お前達......やりきったかい?」

 

 

 

美久「やりきった?はいもちろん!私たちの演奏全てを出して楽しく演奏できました!」

 

 

 

蓮「だな」

 

 

 

美樹「うん」

 

 

 

香澄「私もー!」

 

 

 

有咲「わ...私もです」

 

 

 

私たちの返答を聞くとオーナーは満足した顔で言った。

 

 

 

オーナー「いい演奏だった。またいつでも来な」

 

 

 

5人「「「「「ありがとうございましたーー」」」」」

 

 

 

そうお礼を言って、出ようとしたけど、何故かまた呼び止められた。しかも今度は私とお兄ちゃんと美樹のことを呼び止めた。なんだろうとまたオーナーの方を見ると、その口から耳を疑う発言が飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

オーナー「あんたら......”鋼の3兄妹”だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーナーから出たのは今まで私たちが言われてた()()()()の通り名だった。

 

 

 

 




はい、今回は終了です。今回はSPASEでの問題を解決しました。次はまだ決まってません。


次回【池田兄妹の過去】



お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

昔の通り名は恥ずかしすぎる...

前回のあらすじ

グリグリのメンバーがまだ来てないと知った香澄がステージに飛び出し、時間稼ぎを始めた。それを見た美久達は自分たちも協力するべく楽器を持ち出し、繋ぎとして演奏をした。なんとかグリグリが来るまで場を維持し続けることができた美久達は無事に到着したグリグリに後を託した。
そして帰り際に言われたオーナーの一言に美久達は戸惑いを覚えたのだった。


 

 

 

”鋼の3兄妹”、それは私たちが横浜にいた頃に呼ばれていた通り名だった。由来としては、どこのスカウトも団体もスカウトしに行っても、絶対に首を縦に振って了承しない鋼のような頑固さと意志を持っているが故のこの通り名らしい。正直迷惑この上ないんだよね〜。別に鋼じゃないし、しつこいから断ってるだけだし。入る気もさらさらないから断ってるだけだし。ま、こう思ってるのはお兄ちゃんも美樹も同じだしね。今更どうでもいいと忘れていたんだけど、さっきオーナーから出たその名にまた思い出されちゃったな...。

 

 

 

結局あの後は適当にはぐらかしてそのまま帰った。でも、気分はあまり良くなかった。嫌なことを思い出しちゃったからかな?お兄ちゃんも美樹も同じ感じだった。道中、香澄達にさっきの”通り名”について聞かれたけど、オーナーの勘違いということにしておき、はぐらかした。別に話すほどのことでもないからね。所詮名前だし。そのうちみんな忘れるでしょ!

 

 

 

でも、その考えが間違いだと気づいたのは翌日だった。

 

 

 

 

美樹「おねーちゃん...昨日のSPASEについての口コミ見たんだけどね?」

 

 

 

美久「うん、どうかした?」

 

 

 

美樹「どれも、私たちがやった演奏がすごくよかったって声が上がってて、すごいことになってるんだよね...」

 

 

 

美久「......」

 

 

 

まさかとは思ってたけど、こうなるとはね...。いや、なんとなく多少だったら覚悟してたけど、さすがにこれは...。

 

 

 

蓮「中には俺らが横浜にいた頃から知ってる奴もいて、思いっきり”鋼の3兄妹”だって言いふらしてやがる...」

 

 

 

美樹「身バレしちゃったじゃん...。やだよあたし、またスカウトとかがいっぱい来るの...」

 

 

 

美久「でも幸い、まだこのサイトにしか出てないわけだし、拡散はしないでしょ!とりあえずはこの件は一旦保留にしておこっか!」

 

 

 

これ以上考えていても効果的な方法が思いつかなかったため、一旦このことは忘れることにした。

 

 

 

 

美久「とりあえず今日は私も仕事あるから、もう行くね。大丈夫!きっとすぐにみんな忘れるって!」

 

 

 

蓮「......だといいがな」

 

 

 

そのまま私はふたりを残して事務所に向かった。だが事務所で私を出迎えたのは、あるサイトを見て驚いていたパスパレのみんなと篠田さんだった。

 

 

 

美久「お疲れ様でー......どうかしたんですか皆さん?」

 

 

 

彩「あ、美久ちゃんおはよう。実は、私が知ってる音楽のサイトに美久ちゃんが写ってるのを見ちゃってさ、それでよく見たら美久ちゃんってば横浜では有名なミュージシャンだったって書いてあるんだもん。みんなそれ見て少し驚いてたの」

 

 

 

美久「......はぁぁ〜〜〜......」

 

 

 

やっぱりこうなった。見ると、画面には【”鋼の3兄妹”SPASEに降臨!】とでっかく書かれていた。しかも写真付きで。さっき2人ああ言ったのは少しでも安心させるために言ったんだけど、本当はこうなることは想像できてた。今のご時世、少しでも話題になれば一気に拡散する。もはやこうなることは確定事項だったと見てよかった。

 

 

 

美久「それについてはあんまり触れないでください......。私としても今思えばすっごくやらかしたと思ってるので......」

 

 

 

千聖「何をしたのかしら?美久ちゃん?」

 

 

 

美久「実は......」

 

 

 

とりあえずざっくりことの顛末をその場にいるみんなに話した。それを聞いた後、納得する人もいれば、訝しげな表情を浮かべる人もいた。それは主に千聖さんと篠田さんだけど。

 

 

 

篠田「なるほど......。つまり、バンドが来るまでの時間稼ぎを美久さん達兄妹が引き受けたところ、その演奏に観客の皆さんが呑まれてしまい、このような事態になったと......」

 

 

 

美久「そういうことです。まさかあそこまでになるなんて思いませんでしたけどね...」

 

 

 

千聖「美久ちゃん。そう言った行動は控えてもらわないと困るわよ?今のあなたは歴とした芸能人なのだから、変に目立って事務所に迷惑をかけるようなことはしてはならないわ。そこを肝に銘じなさい?」

 

 

 

美久「迂闊な行動でした......」

 

 

 

少し剣呑な雰囲気を纏いながら千聖さんは言った。千聖さんはこの事務所に入って長い。長いからこそ恩義ある事務所に迷惑をかけることは許せないって思ってるんだろう。私も自覚が足りなかったってことか......。

 

 

 

麻耶「それで......この”鋼の3兄妹”というのはどういう意味なのですか?」

 

 

 

美久「ああ......それは......」

 

 

 

そのことについても話した。私たちのことを話す機会なんてあんまりなかったからうまく説明できるかわからなかったけど、意外としっかり説明することができた。

 

 

 

日菜「ん?でもさ?美久ちゃんって今うちの事務所に所属してるじゃん。なんで向こうの事務所とかには所属しなかったの?」

 

 

 

美久「今まで私たちのとこにきたスカウトはどこもその事務所の理念とか方針ばかりを押し付けてきてて、私たちの気持ちだとかそんなのどうでも良くてただただ、うちのために働いてくれって言ってるようなものだったんで。そんなとこでなんかやりたくないですよ」

 

 

 

イヴ「ではなんでこの事務所には入ったのですか?」

 

 

 

美久「簡単な話だよ。この事務所は他のとことは違って私に無理難題や方針を押し付けることが無かったからですよ。それになんとなく居心地も良くって、仕事も楽しいって思えるようになったのが大きいですね。それと......」

 

 

 

次に言うことはもしかすると、みんなに気を悪くさせちゃうかもしれなかったけど、言っておいた方がいいと判断したため、いうことにした。

 

 

 

美久「ここに所属しておけばもうスカウトの話もこないかな〜って思いまして......。もちろんそれはついでの理由ですからね?あくまでおまけということで......」

 

 

 

篠田「ふふ...わかっていますよ。でも、改めて美久さんをこの事務所に迎え入れてよかったと実感しました」

 

 

 

美久「そうですか?ならよかったですけど......」

 

 

 

彩「けど?」

 

 

 

私自身はそれで問題はないかもしれないが、でもそれは()()()の話だ。”鋼の3兄妹”と呼ばれているのは私だけじゃない。

 

 

 

千聖「お兄さんと妹さんのことでしょう?」

 

 

 

美久「......はい。私はこの事務所に守られているから多少は大丈夫かもしれないですけど、2人は何も守られるものがありません。私はそこを悩んでるんです」

 

 

 

2人を犠牲になんて出来ない。万一の時は私にも考えはあるけど......。そう、今後のことを考えていると、突然日菜さんが口を開いた。

 

 

 

日菜「それなら2人もうちの事務所に連れてくればいいんだよ!そうしたら2人も守れるし、るるるんっ!でしょ!」

 

 

 

美久「え!?いや......それは......」

 

 

 

確かにその考えも私の中にはあった。でも、そのことを2人は了承するのか?それだけが気がかりで言い出せなかったんだ。でも確かにそれが最善の手だ。

 

 

 

篠田「私どもも、できればうちに加入させてはあげたいのですが、こればっかりは私の一存では決められませんので一度社長に確認を入れさせてください。話はそれからです」

 

 

 

美久「わかりました。お願いします」

 

 

 

それから篠田さんは社長さんに確認をしに一度部屋を出て行った。そして戻ってきて開口一番に言われたのは、問題ないという社長の許可の旨だった。




はい、今回は終了です。蓮と美樹の今後が気になりますね!


次回、【鋼の3兄妹、事務所へ】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

兄妹の意見が合わなすぎる

前回のあらすじ

SPASEで披露したライブが思いがけない反響を招き、以前のように注目をされてしまった美久達。次第に注目は薄れていくと楽観視していたものの、その考え虚しく噂は広がる一方だった。その問題を事務所に掛け合ってみたところ、蓮と美樹を事務所に加入させるという提案を事務所に飲んでもらうことに成功したのだった。


 

 

 

 

美久「ってなわけで、明日私と一緒に事務所に来て欲しいんだけど......良いかな?」

 

 

 

 

私は事務所から戻った後、篠田さんから言われたことを細かく2人に説明した。まず明日、2人は事務所に来てもらい、話し合いをしてもらう。そして話し合い次第で事務所のオーディションを受けさせることも考えているということも2人は伝えた。

 

 

 

 

蓮、美樹「......」

 

 

 

 

美久「勝手なことしちゃってごめんね。でもこうした方が私たちのためだって思ったから......。それに、私だけ事務所に守られてて、2人だけを犠牲になんてできない。だからお願い!話だけでも聞きに行って?」

 

 

 

私はすっと頭を下げた。家族に頭を下げるなんて初めてかもしれない。でもこの際手段を問いてる場合ではないってのは分かってる。だからこそ頭を下げてでも2人を事務所に行かせたかったんだ。

 

 

 

 

美樹「おねーちゃん。頭上げて?」

 

 

 

 

美樹にそう囁かれ、私はゆっくりと頭をあげた。

 

 

 

 

美樹「おねーちゃんがそこまでしてあたしたちのことをその事務所のとこにいかせたいって気持ちはわかったよ?でも......やっぱり少し拒否感があるかな?」

 

 

 

 

蓮「俺もだな。そんな事務所やスカウトなんかとは何度も話をしてるが、どこも同じようなとこばかりだった。人を飼殺しにするような奴らにバックを任せることなんてできない。お前の事務所だってそうなんじゃないのか?」

 

 

 

お兄ちゃんにそう言われ、私は少しムッとした。私を含めたパスパレのみんなも所属しているあの事務所を他の事務所と同類に見られたことに腹が立ったからだ。

 

 

 

美久「そんなこと......」

 

 

 

 

蓮「無いなんて言い切れるか?お前はまだ所属して日が浅いから知らないだけかもしれないだろ?事務所なんて所詮俺らみたいのは道具のようにしか思ってねーんだよ。金稼ぎと事務所の宣伝のためのな。そして、そんな奴らの下にいる連中もろくな奴がいない。どの連中も上のやつの犬になっていつも事務所のために命令をただただ聞いてるだけだろ?そんなとこなんかに俺らがーーー」

 

 

 

 

美久「っ!いい加減にして!!」

 

 

 

 

蓮、美樹「「!?」」

 

 

 

部屋の中に私の怒声が響き渡った。近所迷惑になるんじゃ無いかってくらいにね。でも今の私にはそんなことを考えている余裕はなかった。...許せなかったんだ。私が初めて信用した事務所を、そしてかけがえのない仲間を......友達を馬鹿にされたことが......。

 

 

 

美久「2人に何がわかるの!?私たちの事務所をそこらの事務所と一緒になんかしないで!金稼ぎ?宣伝?もちろんそれもあるよ!芸能事務所だもん!でも、それをぶら下げて所属している人たちを飼殺しになんてしてない!そんでもって誰も道具なんかじゃない!一人の人間として誇りを持ってその事務所で働いてる!誰が犬よ!?誰が道具よ!?事務所の中のことも何も知らない人が......私の......私たちの事務所と仲間を馬鹿にするな!!」

 

 

 

 

蓮、美樹「......」

 

 

 

 

普段、滅多に怒らない私が怒ったことが余程意外だったみたいで2人とも言葉をなくしていた。いや......違う意味でもまた言葉をなくしていたのかもしれない。でも、それを問いただすような冷静さを今の私は持っていなかった。

 

 

 

 

美久「......もう知らないから」

 

 

 

 

 

美樹「あ......おねーちゃ...」

 

 

 

 

 

美樹が何か言いかけていたけど聞かなかったことにして私は家を飛び出した。今、2人の顔を見て話し合える状態じゃないと判断したからだ。最もそれは私自身もだけどね......。

 

 

 

 

美久「少し頭冷やそう......」

 

 

 

 

そう決めた私はどこに行くでもなく、適当にぶらぶらすることに決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回は終了です。池田姉妹間で不穏な空気が.......。この後どうなるか......。


次回【亀裂】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

バラバラなRoseliaは不器用すぎる!

前回のあらすじ

蓮と美樹に自分が所属している事務所に入って欲しいとお願いした美久。だが、2人は今までの経験もあって素直に首を縦には振らなかった。それに加えて自分の所属している事務所や中ものことを愚弄された美久は2人に激怒し、その場から逃げ出してしまう......。


 

 

 

美久「はぁ〜〜〜......何やってるんだろ私......」

 

 

 

家から飛び出した後、私は少なからず後悔していた。いくら感情的になってしまったとは言え、あそこで飛び出したのはいただけなかった。別にあの時飛び出さなくてもよかったんではないか?感情的にならなくてよかったんじゃないか?そんな考えが頭の中をめぐっていた。

 

 

 

美久「やっちゃったものはしょうがないし...少しぶらぶらしよう......ってあれ?」

 

 

 

とりあえずどこかに行こう。そう決め歩いていたら、反対側の歩道に見知った人を発見した。私は声をかけようとその人のもとに向かった。

 

 

 

 

 

 

美久「こんにちは...氷川先輩」

 

 

 

紗夜「っ?......池田さん?」

 

 

 

いたのは氷川先輩だった。でも何だろう?なんか氷川先輩の顔が妙に引き攣ってるっていうか......強張ってる気がする。ギターを背負ってるとこから見てRoseliaの練習の帰りらしいけど......。

 

 

 

美久「どうしたんですか?なんか妙に顔が強張ってますけど?」

 

 

 

紗夜「いえ......別に。......というか、池田さんの方こそ何かあったんですか?お言葉を返すようですが、顔が強張ってますよ?」

 

 

 

美久「え......?」

 

 

 

私......そんな顔してたの?無自覚でそんな顔にしちゃってたのかな?でも......ここは素直に話しておいた方がいいのかな?でもとりあえず、聞きたいことがあったから聞いてみることにした。

 

 

 

美久「それよりも、もう練習は終わったんですか?Roseliaにしては随分と短い練習時間ですね?何か予定でもありました?」

 

 

 

紗夜「......私は、もうあのバンドでギターを弾きたくないんです」

 

 

 

美久「はい!?」

 

 

 

私は言ってる意味がまるでわかんなかった。なんで?急にどうして!?

 

 

 

美久「......Roseliaで何があったんですか?良ければ教えてください」

 

 

 

紗夜「......」

 

 

 

氷川先輩は少し嫌そうな顔をしたけど、最終的には話してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美久「ゆき姉がね......」

 

 

 

氷川先輩から話を聞いた私は最初、なんて言ったら良いのかわかんなかった。簡単にまとめれば、ゆき姉が個人的に別の事務所にスカウトされ、Roseliaを捨てて自分一人でFUTURE WORLD FESに出ようとしてたことがメンバーにばれ、メンバー間で亀裂が発生して現状バンド活動を続けることが難しいほどバラバラになってしまうというのが今氷川先輩に聞かされた話だ。

 

 

 

紗夜「湊さんは、FUTURE WORLD FESに出れればそれでよかったのよ。メンバーなんて誰でも良い。もともと私たちのことなんてFUTURE WORLD FESに出るための使い捨ての道具のようにしか思ってなかったんでしょうね」

 

 

 

 

美久「......それは違うんじゃないですか?」

 

 

 

確かにゆき姉のやったことはメンバーを裏切る行為で決してやってはいけないことだ。でも、私にはどうしてもそれがゆき姉の本心でやったとは思えなかった。いくら昔とは変わったとは言え、少なくともメンバーのことを蔑ろにするような人ではないことは私がよくわかってる。

 

 

 

紗夜「なぜそう言い切れるんですか?現に湊さんはスカウトのことを否定しなかったんですよ?それが何よりの証拠では?」

 

 

 

美久「あぁ......多分それは......素直になれてないからだと思いますよ?」

 

 

 

紗夜「素直に?」

 

 

 

美久「はい。正確には、自分の本当の気持ちに気付いてないって言った方が正解ですかね?」

 

 

 

紗夜「自分の気持ち......」

 

 

 

氷川先輩は何かを考えこむように黙り込んでしまった。でも、私は気にせず続けた。

 

 

 

美久「私、ゆき姉がRoseliaを結成した時、少なからずですがゆき姉の決意が見えたんです。このバンドで必ず頂点を掴んで見せる!みたいな。本当に一瞬だったんですけどね......。多分なんですけど、ゆき姉はまだ不安なのかもしれません......」

 

 

 

紗夜「不安?何を?」

 

 

 

美久「Roseliaのメンバー全員が自分と同じ気持ち同じ志を持ってバンドをしているかです。だからゆき姉は、あえて試したんじゃないですかね?もし志が同じならきっとこの危機も乗り越えられる。跳ね除けられる。そう信じているからこそ今回みたいなことをしたんじゃないですかね?......あくまで私の予想ですけどね」

 

 

 

紗夜「......」

 

 

 

私の言ったことに思い当たる節でもあるのか、氷川先輩は手を顎に当てて何かを考えていた。

 

 

 

美久「氷川先輩。先輩の気持ちはどうなんですか?」

 

 

 

v「私は......」

 

 

 

絞り出したような声で氷川先輩は答えた。

 

 

 

 

紗夜「私は、今まで妹を見返すため、妹に邪魔されないためにギター......バンドに励んできました。ですが......私は今まで一度もRoseliaというバンドに向き合わないで自分の殻に閉じこもり、自分勝手に演奏してきたんです。バンドなんてはいたって何処も同じ.......そう思っていたんですがこのバンドに入り、バンドが楽しいと思えるようになったんです。こんなバンドもう巡り合えないかもしれない......もう離れたくない。そう思ってるんです......。なので!」

 

 

 

 

何かを決意したような顔で氷川先輩は言い放った。

 

 

 

紗夜「私は、Roseliaでバンドを続けたいです!そしてこのバンドでFUTURE WORLD FESに出たい!」

 

 

 

美久「そうですか。なら、その気持ちをメンバーにぶつけてください。きっとみんなも同じ気持ちだと思いますよ?」

 

 

 

紗夜「ええ......ありがとうございます。池田さんに話したおかげで自分の気持ちに納得がいきました」

 

 

 

美久「はい。頑張ってください」

 

 

 

氷川先輩はそういうと、ゆっくりとその場を後にした。もう氷川先輩は大丈夫だろう。それにしても妹か?氷川先輩の妹......あれ?なんかあの顔にすごい見覚えがある気も......。

 

 

 

美久「とにかく良いか......。とりあえず......」

 

 

 

一旦そのことは置いておき、私はある人に電話した。ことの真意を聞いておきたいからね。




はい、今回は終了です。Roseliaに関与していく美久。どう言った結末になるのか?


次回【本当の気持ち】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

仲直りは感激すぎる!!

前回のあらすじ

家を飛び出した美久は、街中で何か不穏な空気を出した紗夜と出会した。何かあったのかと話を聞いたところ、友希那にスカウトの話が来ていて、それで友希那が自分たちを捨ててそのスカウトを受けてしまうんじゃ無いかという事実に激怒してしまったらしい。それを聞いた美久は、友希那の本心を自分なりに紗夜に伝え、自分も素直に気持ちを伝えるべきだと、アドバイスをするのだった。


 

 

私は氷川先輩と別れた後、事の深刻さを聞くために、ある人に電話をかけた。その相手はーーー

 

 

 

美久「もしもし?リサ姉?」

 

 

 

リサ『......美久?どうしたの?』

 

 

 

私の幼馴染のリサ姉だった。やっぱりだと思ったけど、リサ姉もいつものような元気は無かった。バンドが解散しちゃうかもって時だもんね。無理もないか......。

 

 

 

美久「さっき......氷川先輩に会ったよ?」

 

 

 

リサ『!!......まさか、聞いた?』

 

 

 

美久「ある程度はね。いつも冷静な氷川先輩があんなことになったなんて、相当ショックだったんだろうね?」

 

 

 

リサ『......それは』

 

 

 

何を言ったらいいのかわからないのか、リサ姉は黙り込んでしまった。

 

 

 

美久「でも、氷川先輩はもう大丈夫だと思うよ?私も話してみたけど、氷川先輩の意志は変わってなかったみたいだし。またすぐに戻ってくるよ」

 

 

 

リサ『!ほんとに......?』

 

 

 

美久「ほんと。それでさ?リサ姉はゆき姉のことどう思ってるの?ひどいって思ってる?」

 

 

 

これはどうしても聞いておきたかった。リサ姉は心の中ではゆき姉のことをどう思ってるのか聞きたかったから。

 

 

 

リサ『そんなこと思ってないよ。友希那だって本心で言ってるわけじゃないと思うし、Roseliaだって友希那にとってきっとーーー』

 

 

 

美久「うん、それはわかった。リサ姉もゆき姉のことはよく見てるんだね。......でもさ?さっきからゆき姉のことばかり言ってるけど、リサ姉はどうなの?」

 

 

 

リサ『?どうって......?』

 

 

 

美久「Roselia......続けたいの?」

 

 

 

リサ『!!』

 

 

 

私のその一言にリサ姉は驚きの声を上げた。

 

 

 

リサ『何言ってんの?続けたいに決まってるでしょ?だってRoseliaは友希那のーーー』

 

 

 

美久「はぁ〜......またそれ。私は今、リサ姉に聞いてるの。ゆき姉にじゃない。もう一度聞くよ?リサ姉はどうしたいの?」

 

 

 

リサ『っ......』

 

 

 

またしても黙ってしまうリサ姉。さすがに少し私もイライラ感が出て来ていた。

 

 

 

美久「リサ姉にはさ?自分の意思はないわけ?いつも友希那、友希那って......リサ姉はゆき姉の判断を仰がないと何も決断できない人なわけ?子供じゃないんだから少しは自分の気持ちを尊重しなって。ゆき姉だって同じだよ、今回のことはきっと何か考えがあって起こしたことだって思ってる。だからこそ私はゆき姉を信じてる。そこまで過保護にしなくてもゆき姉ならきっと自分で解決して見せるよ。だからさ?今リサ姉がやるべきなのはゆき姉を擁護する事じゃない。ゆき姉とともに並んで一緒に前に進んでいってくれる仲間になるって事なんじゃないの?その覚悟が無いんだったら......私が推薦しておいてなんだけど、Roseliaから抜けたほうがいいって思う。......違う?」

 

 

 

リサ『......』

 

 

 

美久「偉そうなこと言ってるけど、私が思うのはリサ姉に足りないのは気持ち。自分がRoseliaで頂点をつかもうってする気持ちが足りないって思う。そこを整理すれば、きっとリサ姉もRoseliaも、前に進めるよ!......私に言えることはここまで。後は、自分たちで解決してね。......じゃあ!」

 

 

 

リサ『あっ......』

 

 

 

リサ姉が何かいう前に、私は電話を切った。これで、何か変わってくれると......私も嬉しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ姉と話した後、少し帰りづらいけど家に戻ることにした。少し外に出て頭を冷やしたこともあって気持ちは落ち着いている。とりあえず家に帰ったら二人に謝ろう。そう決め私は家の中に入った。

 

 

 

美久「ただいま......」

 

 

 

美樹「あっ......おかえりおねーちゃん......」

 

 

 

美樹が出迎えてきてくれたけどどうも顔色が悪い。やっぱりさっきのことまだ引き摺ってるみたいだね。

 

 

 

美久「美樹......さっきはーーー」

 

 

 

美樹「おねーちゃん、ちょっと来て。話したいことがあるから......」

 

 

 

美久「へ?」

 

 

 

美樹はそう言うと私の手を引き、リビングに向かった。リビングに入るとお兄ちゃんが椅子に座ってこちらを見ていた。お兄ちゃんの方もどこか表情が曇っているように見えた。

 

 

 

美久「お兄ちゃん?」

 

 

 

蓮「......とりあえず座れ。話したいことがある」

 

 

 

美久「......うん」

 

 

 

言われるがまま、私はお兄ちゃんと美樹と向かい合うようにして座った。多分話したいことっていうのはさっきのことなんだと思うけど......。

 

 

 

蓮「まず始めにだ。美久......さっきは悪かったな。お前の事務所のこと何も知らないのに自分の価値観だけで評価してたわ。それがお前のことを傷つけることも知らずにな......すまなかった」

 

 

 

美久「っ......」

 

 

 

美樹「あたしもごめん......。おねーちゃんが信頼してる事務所を何の根拠もないのに疑っちゃったりして......ほんとにごめんなさい......」

 

 

 

美久「二人とも......」

 

 

 

思わぬ展開だった。私の方が先に謝ろうとしたのに二人に先を越されてしまった。でも、どこかほっとしてる自分がいた。これでまだ私の事務所を罵倒でもして来ようならもう私は止まらなかったかもしれなかったからだ。

 

 

 

美久「私もごめんね?二人が今までどれだけその類の人たちから迷惑を受けてたことも知ってたのに自分勝手に事務所に誘っちゃって......。そのことならもういいから、それとは別の考えで対策を......」

 

 

 

蓮「待て美久。まずは俺たちの話を聞け」

 

 

 

美久「?......わかった」

 

 

 

そういえばまだ二人の話したいことっていうのを聞いてなかった。......何だろう?

 

 

 

蓮「単刀直入に言う。俺たちでもお前の事務所に入る事は出来るか?」

 

 

 

美久「......!!それって......?」

 

 

 

美樹「そう言う事。あたしたちあれから話し合って、不安だけどおねーちゃんが信頼してる事務所なら問題はないって結論になって、おねーちゃんに相談しようって事になったの!......改めて聞くけど、あたし達その事務所入れる?」

 

 

 

またまたまさかの展開!あれだけ拒んでた二人が事務所行きを承諾してくれたんだから!空いた口が閉じなくなるくらい驚くのも久しぶりだな......。

 

 

 

美久「う、うん。一応社長さんには話を通してあるよ?それでオーディションで合格すれば所属させるって話だよ」

 

 

 

蓮「なるほどな。美久はそのオーディションは一発で合格したんだよな?」

 

 

 

美久「うん。その場で合格って言われた」

 

 

 

蓮「なら大丈夫だ。お前に出来たことが俺たちに出来ないなんてことないからな!」

 

 

 

美久「なんか下に見られてるみたいでイラってくる......」

 

 

 

美樹「はは......。でも、ありがと。こんな私たちのために話を通してくれて......」

 

 

 

頭を下げお礼を言ってくる美樹。その光景を見た私はそっと美樹の頭に手を乗せ優しく撫でた。

 

 

 

美久「大事な家族なんだから当然でしょ?話を通してくれたのは事務所のスタッフさん達だよ?二人のことを話したらすぐに行動に移してくれたよ。......ほんと、あの人たちには感謝しかないよ」

 

 

 

蓮「......そっか。俺もオーディション合格したらお礼を言わないとな」

 

 

 

美久「お礼言いそびれないようにしてよ〜?」

 

 

 

蓮「うっせ!わかってるわ!」

 

 

 

こうして私たちの考えは一つにまとまり、今週の休みに二人は私の事務所にオーディションを受けに行く事になったのだった。

 




はい、今回は終了です。次の回で二人が事務所に赴きます。


次回【新たなる仲間】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二人の覚悟は固すぎる!!

前回のあらすじ

リサに自分の考えを伝え、家に戻った美久は蓮と美樹との関係の修復に成功する。そして、二人からは自分から提案した事務所に所属すると言う決断が聞かされ、心底美久は喜びに浸った。


 

翌日、事前に事務所に連絡を入れておいた私は、お兄ちゃんと美樹を連れて事務所まで来ていた。パスパレのみんなも初めてみる二人の姿に興味津々な様子で声をかけたり観察をしていた。

 

 

 

日菜「ねーねー!蓮くんって同い年でしょ?どこの学校に通ってるのー?」

 

 

 

彩「美樹ちゃんっていい香りするし、可愛い顔してるよね!絶対にいいアイドルになれるよ!」

 

 

 

......とまあこんな感じで二人の質問攻めが激しいわけで、お兄ちゃんも美樹もドン引きに近い感じになっちゃってるんだけどね。

 

 

 

千聖「二人とも?そんなに一度に聞いたら二人も戸惑うわよ?少し落ち着きましょう?」

 

 

 

彩、日菜「「はーい」」

 

 

 

美久「あはは......大丈夫二人とも?」

 

 

 

蓮「......オーディションやる前から既に体力がつきそうなんだが?」

 

 

 

美樹「あたしも......」

 

 

 

疲労困憊の様子の二人に私は苦笑いを浮かべるしかなかった。......なんかごめんね?

 

 

 

千聖「それにしても、本当にいいのかしら?ここまで来た以上、もう引き下がれないけど......二人は覚悟はできているのでしょうね?」

 

 

 

蓮、美樹「「覚悟?」」

 

 

 

千聖さんは少し強い口調でそう言った。覚悟か......確かにそれが無いとこの業界ではやっていけないよね?

 

 

 

千聖「ええ。この厳しい芸能界......いつどこで振り落とされ、墜ちる......そして激しい競争の世界へと足を踏み込める覚悟はある?それが無いのであれば今からでもまだ遅くは無いわ。辞退なさい......」

 

 

 

二人は黙って最後までその話を聞いていた。だけど、それを聞いて萎縮するかと思えば全然そんなことはなく、むしろ瞳に宿していた炎がさらに燃え上がったかのように勇ましい姿へとなっていた。

 

 

 

蓮「んなのあるに決まってるだろ?ここがどんなに厳しい世界ってことは美久から聞かされてるから知ってる。それがわかっていてもなおこの事務所に入ろうって決めたんだ!今更尻尾を巻いて逃げ出すなんて真似はしねーよ」

 

 

 

美樹「はい。あたしだって同じです。正直まだ芸能界っていうとこがどんな風なのかわかんなくて怖いって思ってるあたしもいるけど、それでもここに入ればあたしの中でも何か見つけられるかもしれないし、あたしだけの夢だって見つけられるかもしれないって思えたんです!だから......あたしはこの事務所に入るために本気でオーディションを受けようと思っています!」

 

 

 

そう言い切る二人の姿はまさしく覚悟を決めた人のそれだった。もはや顔に一ミリの曇りもなく、晴々とした表情へと変わっていた。

 

 

 

イヴ「レンさん!ミキさん!ワタシ、お二人と一緒にお仕事をしてみたいです!ですから、絶対に合格してくださいね!」

 

 

 

麻弥「ジブンもです!もっとお二人のこと知りたいですし、一緒に語り合いたいこともあります!応援しますから、頑張ってください!」

 

 

 

イヴと麻弥さんがエールを送って二人を鼓舞した。

 

 

 

日菜「あはは!いいじゃんいいじゃんその意気だよ!大丈夫!きっと二人なら受かるからさ!」

 

 

 

彩「私、二人ともっといろんなことしたい。ここでしか味わえないこと......辛いことも悲しいこともあるかもしれないけど......それでも、一緒に乗り越えられるって信じてるからさ!だから!......オーディション、頑張ってきて!」

 

 

 

日菜さんと彩さんも同じようにして二人を鼓舞した。

 

 

 

千聖「ふふ......余計な心配だったみたいね。......貴方たちの覚悟、確かに見させてもらったわ。......行ってきなさい。私たちはずっと応援しているわ」

 

 

 

最後に千聖さんが二人にそう言い残し、私へと視線を向けた。......何か言えってことかな?わかった......。

 

 

 

美久「二人とも......今回は私のわがままに付き合ってくれてありがとね。ほんとはさ?二人を守るってだけじゃなくて、私の私的な理由で二人と一緒に同じ事務所で働けたらなって思ってたんだ......。ほんとにごめんね?だけど、ここは二人が思ってる以上に楽しくてやりがいのあるところだから、きっと二人も気にいると思う!だから......頑張ってきて!そして......一緒に互いを高めあおうよ!」

 

 

 

蓮「わかってるよ。ここまで妹に言わせたんだ。ここで落ちたら恥以外のなんでも無いだろ?宣言してやるよ!俺は絶対に受かる!」

 

 

 

美樹「もうおにーちゃんは......。ありがとおねーちゃん。大丈夫!二人して揃って合格してくるからさ!」

 

 

 

自信たっぷりの笑顔でそういう二人にもう私は何も言わなかった。なぜか知らないけど、もう大丈夫だと思えたからだ。その後、控室に篠田さんがやってきて、オーディションの準備が整ったとのことを受け、二人は私たちを残しオーディションの部屋へと向かっていった。

 

 

 

美久「(頑張って......お兄ちゃん......美樹......)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして1時間後、私たちのもとに届いた報告で二人が”合格”したと知り、私たちは大いに喜んだのだった。




はい、今回は終了です!次回は二人の仕事についてです。


次回【二人の仕事】


お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。