μ'sとの日常 (Miroku)
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本編
どこだここ...
「...ここは...?」
俺は桜井悠。音ノ木坂学院の2年生。前までは女子高だったが、去年から共学になった。そして俺は、音ノ木坂学院スクールアイドルμ'sのマネージャーをやっている。先日、ことりの留学騒動が終わり、講堂で9人揃ってライブをした。二年生組しかいなかったファーストライブのときの「START:DASH!!」を曲にしていたが、9人でやるこの曲もかなり良かった。そして無事ライブが終了し、家に帰っていた。
その途中、車に引かれそうな小学生くらいの子がいた。俺は気がつくと走っており、その子を守って車に轢かれたはず。そこからの記憶がないが、生きているということは、誰かが救急車を呼んでくれたのだろう。となればここは病院か...
「あっ!!悠くん!!」
声が聞こえた方に振り向くと、μ'sのみんながいた。みんな泣いていたのか、目が少し腫れている。ここまで心配をかけてしまうとは...申し訳ない。
みんなを見ているとマネージャーを始めた時を思い出す。物心ついたときには親が居なかった俺は孤児院にいた俺は、家族がいるクラスメイトが羨ましかった。高校に行ってアルバイトをしながら過ごす日々を繰り返すうちに、だんだん元気が無くなっていった。そんなときに、校門で配っていたファーストライブのビラを見て講堂に見に行った。巷で噂のA-RISEよりかは歌もダンスも上手くない。しかし、彼女たちを見たときは、A-RISEとは違う何かを感じた。そこで驚いた俺はマネージャーにさせてくれと頼んだんだっけ。...しかし、なんでここに...?
「ほ、穂乃果?それにみんなも...」
「良かった...本当に良かったよ...!」
「ありがとうみんな。そして心配かけてごめんな」
「バカっ!!にこたちがどれだけ心配したかわかってるの!?」
「本当にごめん。今度は絶対にみんなに心配させないようにする」
「いま、言質取りましたからね。絶対ですよ?」
海末が怖い顔で言ってくる。俺でよければいいんだけど。
「ああ、もちろんだ。で、ここは...?」
「ここは西木野総合病院よ。あなたが倒れていたのを凛と花陽が見つけたの。もう3日も寝ていたのよ?パ...お父さんに聞いたけど、かなり危ない状態だったの。本当に目を覚まさないかもって...心配して、心配して...」
真姫の話を聞く限り、死ぬまで後少しのところで助かったみたいだな...危なかった。俺だってまだまだ生きたいし、死にたくはない。μ'sのマネージャーも続けたい。なにより、みんなを悲しませたくない。真姫のお父さんには感謝しないと。おっと、気になることがあったんだった。
「あっ、あの車の運転手は...?」
「警察に逮捕されたわ。μ'sのファンだったみたいで、私たちと話しているあなたをみて嫉妬して事故を起こしたみたい。...許せない。...許せない!!」
突然真姫が大声を出した。他のみんなも同じ気持ちなのだろう。ハイライトが消えた目で俺を見ている。
「あの人、悠くんが事故にあった後笑っていたの。凛とかよちんを見たとき、顔がとっても気持ち悪い顔で見てきて怖かったにゃ...でも、もう大丈夫。あの人が刑務所から出ることはないから。だから安心して?」
おそらく真姫の手回しだろう、だけど別にそこまでしなくても...
「確かに事故にあわされたことは嫌だが、そこまでしなくても...」
「ダメだよ...」
穂乃果は聞いたことがないほど冷えきった声で言った。...みんなが怖い。
「穂乃果は悠くんをこんなふうにしたやつは絶対許さない。悠くんの命を奪おうとしたんだもん。」
「そこで、もう二度とこんなふうな事にならないようにどうするか、みんなで考えたの」
『みんなで悠くんを独占しようって』
独占...?どういうことだ?俺は独占されるほどの人ではないが...。
「穂乃果...どういうことだ?俺はそこまでされるようなやつじゃない」
「私たち、悠くんの過去をすべて知ってるの」
「っ!?一体どこで!」
かなり動揺した。今まで俺は過去を話したことはない。どこで知ったんだ...!?
「真姫ちゃんのお父さんが調べてくれたの。ずっと大変だったよね...クラスメートからはいじめられ、親もいない。ずっと一人で...でももう大丈夫。これからは私たちがずっと一緒だから!」
ーーー初めて優しくされた。初めて人に理解された。初めて、初めて、初めて...俺を救ってくれた彼女たちには感謝しかない。すると俺は涙が溢れてきた。本当に...感謝しかない。
「うっ...うわぁぁぁぁん!!...さびしかったよぉ...!」
「よしよし...好きなだけ泣いていいよ」
「...すこし羨ましいにゃ...」
俺は気が済むまで赤子のように泣いていた。
*
「すまない穂乃果。こんなに服を汚してしまって」
「ううん、大丈夫。じゃあ穂乃果たちは帰るね」
「今日はありがとう」
みんなの笑顔を見ると、早く退院したいと思った。
投稿するのって...大変ですね。
シリアスはしばらくないです。
次回からは、μ'sのみんなが彼と過ごす日常を書いていきたいと思います。あ、多分アニメ順序でいきます。
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プレッシャーほど怖いものはない
俺が目覚めた日から数週間がたった。最初はリハビリが大変だったが、μ'sのマネージャーに復帰するために毎日頑張った結果、生活にほぼ支障なく動かすことが出来るようになった。そうしているうちに、遂に退院することになった。
退院後、自宅に帰ったのだが...何故か綺麗なまま放置されていた。最初は仲のいい大家さんが掃除してくれていたのかと思っていたが、違うらしい。なら一体誰が...?まぁ掃除をしてくれる分には有難い。誰かは知らないが感謝しないとな。
「今日はμ'sの練習がある日か」
今日はμ'sの練習がある日だから、今日から復帰しようと思ってる。入院中に聞いたのだが、第二回ラブライブが開催されるらしい。今回は前とは違ってランキング制ではなく、ライブ次第で出場が出来る。つまり、パフォーマンス次第では出場できる可能性があるわけだ。まぁウチの地区にはA-RISEがいるのだが...でもみんなならきっと大丈夫だろう。俺は出来ることをやるだけだ。しかし、本選は3月か...3年生にとっては最後のチャンスだな。卒業したらスクールアイドルでは無くなる。その時、μ'sはどうなるのだろうか...そんなことを考えながら部室に入った。
「この部室も久しぶりだな...」
「あ、悠くん!体のほうは大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ。無理しすぎないようにしてる。これからもみんなのために頑張らなきゃダメだからな!」
「そこまで考えてくれていたなんて...いい夫になりますね♪」
海末にはそう言われたが、マネージャーとして当然のことだからな。これくらいはやらせてほしい。...いい夫っていうのは少し気になるけど。
「た、大変です!」
「どうした花陽?」
「今回のラブライブの予選なんですが...未発表の曲しか使用が出来ないみたいです...」
「今までの曲が使えないってことか...」
「なんでも、希望するチームが多く、中にはプロのコピーをするグループがあるからだそうです」
「ようするに見極めるってことね」
今までの曲が使えないとなると...必然的に新曲を作らないといけない。予選まであまり時間はないし、この状況を打破するためにはどうすれば...あ、これなら曲を作ることが出来るかもしれないな...
「1つ提案なんだが...合宿をしてみないか?」
「奇遇ね...私もそう考えていたところよ」
どうやら絵里も同じことを考えていたらしい。問題は合宿場所だが...真姫に頼めるなら頼みたいところだ。
「ということで、真姫...頼む!」
「...しょうがないわねぇ...」
これで合宿場所は確保できた。真姫の家は本当にすごいのだと改めて認識する。...少し羨ましい。
「じゃあ決まりね。今度のこの日程でいくから、準備しておいてね」
夏の合宿とは違い、海ではなく山だからな...まぁ登るわけではないと思うが、一応準備は万全にしておこう。こうしてμ'sの合宿は始まった。
*
「おお...!すごい綺麗な場所だな」
「真姫ちゃんすっごいにゃー!」
「ま、まあこれくらい普通よ」
真姫は相変わらず素直じゃないが、普通にすごくいい場所だ。景色は綺麗で空気も澄んでいる。これほど合宿に向いている場所は無いだろう。ところで...海末が重装備なのが気になる。まさか山マニアなのか...?
「ところで、みんなはどうして軽い荷物なんですか!?山を登るには向いていませんよ!?」
「あの...山に登るために来たわけじゃないからさ...」
そんな会話をしているうちに、何かを忘れていることに気づく。
「なんか足りないような...あっ!ほ、穂乃果は!?」
「アイツ絶対寝てるだろうな...今頃焦っているだろうし、少し待っておくか」
そして数分後...やっときた。
「みんなひどいよぉぉ!」
「いや普通に忘れてたわ。ごめんな?」
「...帰ったらデート一回ね」
頼むからハイライトの無い目で見ないでくれ...普通に怖い。
「あ、ああ...わかった。だが、今は合宿に集中しよう」
夏の合宿の時も驚いたが、こっちの別荘も豪華だな...
中に入ってみると、大きな煙突が目に入った。冬につけると暖かそうだ。まだつける季節じゃないけどな。てか、ここもピアノがあるけど、他の別荘にもピアノが1台あるのか...?
「真姫ちゃんすっごいにゃー!」
「暖炉に火を...」
「つけないわよ...つけたらサンタさんが来ないじゃない。この暖炉はずっと私が掃除してきたの。ほら、中を見てみて」
中を覗くと、サンタの絵と、メッセージが書かれていた。いいお父さんじゃないか...
「ぷぷっ...あの真姫がサンタだなんて...!」
「にこ!それは絶対言ってはいけない!それだけはダメだ!」
「そうだよ!それは有罪だよ!」
なんとかにこを止めることに成功した。...絶対に言わせないからな!
「じゃあ、早速練習開始よ!」
*
別荘についてから早々に練習を開始した。真姫、海末、ことりの三人は別荘で作業し、残りの6人は外で練習に励んでいる。俺は休憩中に、あらかじめクーラーボックスに入れていたスポーツドリンクを渡し、みんなの練習風景を見ている。いつも以上に気合いが入っているため、みんなの体調が心配だが...大丈夫だろう。
しかし、別荘にいる3人が気になるな...後で飲み物でも渡しにいこうか。そう思って飲み物を渡しに別荘に戻ったのだが...
「「「はぁ...」」」
外でため息をついている3人を見つけた。一体どうしたのだろうか...?
「どうしたんだ3人とも?」
「実は、スランプに陥ってしまいまして...」
「スランプねぇ...一体どうして?」
「予選に向けてのプレッシャーだと思いますが...なかなかいい詞が浮かばないのです」
予選まで時間はないし、なによりこの3人がスランプになるとまずいな...どうにかしたいのだが...と、そこで練習をしていたみんなが帰ってきた。みんなに事情を話してみたところ...
「それぞれ3人で別れて考えるのはどう?くじ引きで決めた3人で考えるの。これならいい案が浮かぶと思うのだけど...」
「なるほど...いい案だと思う。じゃあ早速くじ引きで決めていくか」
そして、くじ引きの結果...
「綺麗にユニットごとで別れたな...」
「じゃあこの3人で決定ね。それで、悠は...」
「俺はここに残って夕飯の準備をしておくよ。何かあったら呼んでくれ」
「わかったわ。じゃあみんな別れて動きましょう」
こうして俺達の合宿は本格的に始まった。
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夕飯を考えるのは楽しい
「さぁ、夕飯は何にしようか...」
主婦のようなこと言ってしまうな...みんな何が食べたいんだろう。無難にカレーとかかな?いや、それだと夏の合宿の時と被ってしまう。...バーベキューはどうだろうか?夏に食べるべきものだが...秋でもキャンプするし、大丈夫だろう。そうと決まれば早速用意をしますか。
「お、いい肉あるじゃん。野菜も鮮度抜群だ。あまり使われていないと思っていたが、定期的に掃除とか食材の調達とかやってるのかねぇ...お、塩コショウもめっちゃあるじゃん」
そんなことを考えながら夕飯の準備を進めていると、いつの間にかみんなが戻ってきてた。まだ夕飯には少し早いような気がするが...まあいいか。用意していた肉を焼く。...うん、いい香りがする。一口いただこう。
「「「いただきます!」」」
「うん、おいしい!」
「おいしいにゃー!」
「おいしいです!!」
「そうか、それならよかった」
夕飯はバーベキューで正解だな。みんなの口に合ったようでなによりだ。
「それで、どうだ?曲作りと衣装作りは...順調か?」
「うーん...それがうまくいってないの」
「ずっと考えていたのですが...アイデアが浮かばなくて...」
「私もよ...」
「そうか...時間はまだあるし、少しゆっくり考えてみるのもいいんじゃないか?」
時間がないとは言ったが、それでもまだ十分時間はある。でも、3人がここまで悩むのは珍しいな...一体どうして...
*
夕飯を食べ終わったあと、俺は一足先に風呂に入った。こういうのは女の子から入るものだと思ったが...いいのかな。
ガタッ!!
「あー、癒される...ん?」
今、脱衣場で音がしたような...いや、まさかね...
すると、急に扉が空いた。
「悠くん!背中を流しに来たよ!」
俺の後ろには、バスタオル姿のμ'sのみんながいた。...えっ?
「な、なんでみんながここに?」
「悠くん、今日疲れてるみたいだから、穂乃果たちが背中を流しにいこうってなったの」
ええ...みんなの姿は目の保養になるけどさ。流石にまずいですよ!
「さ、流石にまずいと思うんだが...」
「大丈夫だよ...ここには穂乃果たちしかいないから...ね?」
そう言われて俺は、穂乃果たちに体を洗われた。
*
体の疲れはとれたけど...精神的に疲れたよ。風呂には入ったし、もう寝ようか。
「よーし、そろそろ寝るぞー。布団は敷いたか?」
「うん!ちゃんと悠くんの分もあるで」
「おいおい、女の園に男が入るのはまずいでしょ。俺は違う部屋を借り...」
「ダメだよ」
穂乃果がハイライトのない目で見てきた。まっすぐ俺の目を見て...
「だって、悠くんは目を離したらことりたちから離れるから...」
「大丈夫だって、離れないよ」
「...なら、私たちと寝ても問題ないですよね?だって、私たちから離れないって言ったんですから」
そう来たか...仕方ない。
「わかったよ...一緒に寝ようか」
「じゃあ、電気消すわよ」
俺は今日あった出来事を振り返りながら眠りについた。
*
朝起きると、穂乃果が俺の上に乗っていた。胸の柔らかさに感動しつつ、穂乃果をゆっくり離し、ランニングの準備をし、みんなを起こさないように外に出る。ランニングは俺の最近の日課だ。退院してすぐなのであまり長くは走らないが、体力がつくからやっている。ここの風は心地いいな...もっと走っていたいくらいだ。
「朝日が昇ってきたな...いい時間だし戻るか」
俺が別荘に戻ると、入り口の前にみんなが待っていた。っていうか、いつの間に曲と衣装が出来たんだ...?
「...悠くん。なんで勝手に外に出ていくの?心配しちゃったじゃん!」
「す、すまん。忘れてたわ...」
「やっぱり、悠くんは穂乃果たちが見ていないと...(ボソッ」
「...?何か言ったか?」
「ううん、なんでもないよ」
「それならいいけど。てか、太陽が綺麗だな...こんなところで告白するなら、めっちゃ映えそう」
「...悠くんには告白する相手とか近くにいそうだけどね」
...絶対μ'sの誰かのこと言ってるでしょ。誰か一人を選ぶと後が怖いし、鈍感のふりしとこう...
「えぇ?まさかそんな人いるわけないじゃん」
「...」
そんな殺意のこもった目で見ないでくれ。
「ま、まぁとりあえず準備して帰ろうか」
「...うん、そうだね」
曲も出来たし、目的達成だな。
このあと色々準備をしてから俺達は別荘をあとにした。
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