改変プリコネ部 スタイリッシュアクションの裏技 (イイネ!ホルマリン漬け王者決定戦)
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#1
アニメのエリコめっちゃ可愛い。みんな推してけ。
次→気が向いたら
覇瞳皇帝との決戦から一週間が過ぎ、王都にも漸く平和が戻ってきた頃。ユウキは一人王宮の鍛錬場に潜り込んでいた。
「今日は……ここまでだろうな。もう日が暮れる頃だろ」
『おい!誰かいるのか!今は訓練などしている場合ではないだろう!発見次第貴様は免職だ!どこに隠れている!』
「おっと、見つかっちまうひと足お先に帰らせてもらうぜ。それと使えそうな装備も頂戴して……じゃあな」
「あぁ……最近はコッコロが五月蝿いんだよな、もうガキじゃねェってのによ。……聞かれてないよな?」
「主さま、今日はちゃんとお帰りになりましたね。鍛錬に精を出されるのもよろしいですが、サレンさまなどの心配する方もおられますし」
「(うわでた)あ、ああ、うん。気を付けるよ」
例の決戦以来、コッコロが四六時中着いて回るようになった。なんでも「私の知らないところで死なれたら困る」らしい。このままでは「今まで無能に近かったから、新たな力を手に入れて俺も戦う」という目的を告げたところで「主さまが前線に出る必要はありません」と一蹴されるだろう(暗に毎日説教されているが)。最近は事情を知ったサレンも釘を刺しているので針のむしろだ。
「(最初にあのクソッタレの自称皇帝と殺りあった時から、俺には力がなかった。固有能力の代償とはいえ、鍛えていなかったのも事実。そして次に対峙した時、俺は心臓に穴空けられて死んだ。力が、なかったから……)」
「ちょっとあんた、顔色悪いんじゃない?早めに休んだら?」
「お言葉に甘えて、なんて言うとでも思ったか?オツムが赤ちゃんじゃなくなってからはやる事が多くてな。借りは返すもんだろ?」
「それはまあ、そうだけど。あと、今日の夕食担当はスズメよ?」
「食えるなら大丈夫だ。ペコリーヌに付き合ってたら無駄に丈夫になってたんでね」
「ああそうだ。飯で思い出したんだが、ペコリーヌ、当分抜けれそうにないらしいぞ。親御さんの目が覚めないんだと。なんとか時間を捻出しようとしてるらしいが、マジに余裕なさそうだな」
「それでしたら、ギルドマスターを主さまに変更なさるとか」
「いや……美食殿の目的がなくなっちまったら、どう考えても解散だろう。そんときゃ新しくギルドを作るか、ここ(サレンディア救護院)に入れさせてもらうか、だ」
「えっあんたがここに?それはちょっと遠慮願いたいわね」
「えっと、あの、前のお兄ちゃんじゃないと、その……」
『アヤネ、何かあったら俺を全力でブン回すんだぞ?この手合いのは簡単に信用しちゃ駄目だ』「わかってるよ、ぷうきち」
「@×@」
「おいおい、冗談だよ。ま、ペコリーヌだってずっと宮勤めじゃ丸くなっちまうだろうし、いずれ自分から脱走してくるだろ?そうなりゃ解散もしなくて済むぜ」
「それ、本人の前で言わないようにね?」
「あン?多分気にしてねェと思うが、覚えとくよ」
「早起きできるようになったのはいいが、最近はアメスにも会えてねェな。向こうでなんかあったか……?いないといないで寂しいもんだな」
「主さま……またお一人で私より先に起きられるとは。最近はちっとも甘えてくださりませんね……?」
「(は?前の俺のどこがいいんだ?)悪かったよ、次はもっと長めに寝とくからさ」
「いえ、同じ布団で寝れば解決致します。主さまの寝顔も拝見できますし」
「……マジで言ってんの?俺もう記憶とか知識とか戻ってんだけど?倫理的に問題しかないだろ、それ」
「???あの時から主さまは髄分と変わられましたね……赤ちゃんであった頃が遠い昔のようです」
「その文句はラビリスタに言うんだな。復活の代償が『これ』だとは思わなんだ」
「主さまのお世話ができなくなるくらいなら……」
「(すまんなラビリスタ。多分刺されるけど俺は知らん)」
そのうち監禁や四肢切断もしてくるんだろうな、と心の中で毒づく。時折コッコロの目から光が失せているので、そう遠くない未来に起こりうるだろう。ある意味覇瞳皇帝よりタチが悪いのでかなり困る。
「……そこに突っ立ってられると着替えにくいんだが」
「お手伝い致しますよ、主さま」
「もう終わったぞ(早業)。それと私物全部まとめとけ」
「主さま、今日はどこかにお出かけですか?ああ、寝癖がそのままじゃないですか。私にお任せ下さいね」
「(寝癖はノーマークだった……)お出かけっつーか、引越しな。俺達も自分のギルドハウスに住む。これ以上今の俺がここに世話になるわけにはいかねェ」
「お待ちください主さま。サレンさまにはお話をされたのですか?何も言わずに出ていくのは、少々気が引けると言いますか……」
「いいんだよこれで。他のガキ共もビビってンだし、向こうは向こうで迷惑だろうしな。正直サレンの出ていけオーラに耐えられない」
「なるほど……ところで最近、主さまは一人立ちされようと躍起になられてますよね?」
「残念がるなよ、当然だろ。これに関してはアメスも賛成すると思うぜ?」
「…………」
犬の俺(わんわんの主さま)も連れて早急にサレンディア救護院を去る用意をする。こういうのは見られると案外面倒くさいのだ。
「書き置きは俺がする。コッコロは先にギルドハウスに行っててくれ。すぐに追い付く」
「私は主さまと肩を並べて歩きたいのです。それにサレンさまへの挨拶もしなくては」
「私がなんだって?それとその荷物は何?」
「いいタイミングだな。俺達は自分のギルドハウスに引っ越すぜ。頭ン中元通りになったらガキ共ビビっちまったし」
「それは主さまの態度の問題かと……」
「あー、やっぱり伝わってなかったみたいね。私は別に嫌いになったとか、そういうのじゃないのよ。ちょっと子供たちの情操教育によくない程度で」
「無理もねェよ。俺だっていきなりイカつい奴が乱入してきたらキレるしな。まあなんだ……たまに顔見せに来るからさ、それで勘弁してくれ」
「ええいいわよ。落ち着いたらあの子たちだって貴方を受け入れることもできるでしょうし」
「意外とすんなり話が通りましたね……」
「あぁ、長期戦は覚悟してたからな。っと、マジにもう行かねえとカリンがキレちまう。じゃあなサレン」
「失礼致しますサレンさま。お世話になりました」
「私も週に一度は帰れるようにするわ。積もる話はその時ね……」
「(来てくれないと何しちゃうかわからないもの)」
「!!!?この感覚は……」
「主さま?」
「な、なんでもない。気のせいだハハッ」
去り際にサレンから感じた気配に一瞬慄くが、疲れてるだけだと自分に言い聞かせて疑念を振り払う。
その気配は最近のコッコロからよく感じるものに酷似していた。
「(腰の使い物にならねェなまくら、置いて行ったらみんなの強化はできねェのか?まあそれならそれで普段使う分を背負って、無能剣は腰のままにしておこう)……」
「主さま、主さま?」
「(その辺にあるようなもんじゃねェ、俺の専用装備を揃えねば……少なくとも今は装備に頼らねェと生き残れん)……どうした?」
「主さまがお探しになっていたキャルさまが向こうに」
「……?ああ、ホントだ」
ギルドハウスの壁向こうで見知った尻尾が揺れ動く。久しぶりに戻ってみたら誰もいないので困惑してるとか、そんなとこだろう。
「ようキャル、久しぶりだな?会えなきゃ会えないで物足りなかったんだぜ、どこ行ってたんだよ?とりあえず中に入っちまおう。俺達も荷物を降ろしたいしな」
「噂通り真逆の性格になってるわね……ちょっと見ない間にどうしちゃったのよ」
「知らねェよ、生き返ったらこんなんなってた。慣れてもらうしかねェ。で、俺の質問に答えてもらおうか?」
「あー、どこ行ってたかってやつ?その辺プラプラしてただけよ。特に理由なんてないわ」
「はて、主さまが手を尽くしてキャルさまの居所をお調べになってましたが、今の今まで何の手がかりもございませんでしたよ?」
「えっなんでストーカーしてんのコイツら。純粋に怖いんだけど」
「お前がいねェと美食殿解体が早まんだよ。ペコリーヌはまあ……なんとかなるだろ?だが俺らはそうも言ってられん。やることやってねェんだし、まずはここに住んでだな」
「私は主さまと寝食を共にできるなら異存ございません」
「はぁ!!??あんたら何言ってるか分かってんの!?あたしはそんなの御免よ!」
「どこが嫌なんだよ?俺がこうなったからか?直に慣れるだろこんなの」
「そうじゃないわよ!ぶっ殺すぞ!?あのね、いい歳した男女が同じ屋根の下なんて普通しないのよ!?」
「はて、サレンディア救護院でも同じことを言われましたが、どこが問題なのでしょう……」
「この通りだ。野宿だって着いてくるんだし、仕方ないだろ?」
「そーいやコロ助ってそういうとこおかしいんだったわね……」
「まあ最終的な意思決定は自分にしかできねェから、無理にとは言わん。寝心地のいいベッドと旨い飯(not魔物&虫)がなくなるだけだ」
「あんたね……そんな条件出されたら飲むしかないでしょ?そーいうの、卑怯って言うのよ」
「そりゃ結構なことだ。暗くならないうちに自分の部屋決めとけよ?コッコロも俺と一緒の部屋は無理だから、隣にするといい」
「分かりました、では今すぐ壁の一部をドアに致しますね」
「やべェな……」
「ヤバいわよ……」
コッコロはきっと、男女の営みを知ったら毎晩仕掛けてきそうだ。好みのタイプとは言えないのでたまったものじゃないが。壁の補強材も調達しないとな、などの不安要素を抱えたままその日は眠りについた。……壁を削る音が聞こえたのは気のせいだろう。
「さて今日はパクった装備をそれと分からないように改造して、試運転と行くか。真っ先に必要なのは……遠距離攻撃武器だな。義手になっちまえば後付けが楽なんだろうがなあ……。それは後暗い連中に任せるしかねェな。鎧は一部をとっ払って型取っておいて、鍛冶屋に受注すりゃいいか」
「主さま、何をなさってるのですか?朝食が冷めてしまいますよ」
「あー、今日は勝手に食っとくよ。先に装着型のボウガン作っておきたいんでね」
「そんなもの、食後でもいいじゃないですか。それに主さまがわざわざ前に出る必要なんてありませんし……」
「そう言うなって。俺も討伐の依頼をこなせりゃ金の心配もないだろ?相手によっちゃ食材にもなるはずだしな」
「なかなか来ないから呼びに来てみたら何?あんた魔物食べるって言うの?はぁ~、アホリーヌが増えたみたいで嫌になるわ」
「食うのは俺だ。戦いつつ補給ができれば無限に戦えるしな。しかしまあ、キャルまで来ちまったならしょうがねェ、飯にするか」
「ねえ、あんた本当に戦うの?あんたはあたしがいないと何もできないでしょ?できないよね?考え直してよ、せめてあたしの後ろにいなさい。もしかしてあたしを捨てるつもりなの?」
「おっとォ?朝イチでくっそやべー地雷ぶち抜いたな?安心しろ、まだ俺1人じゃどこ行っても死んじまうよ。元からみんな連れてくつもりだったさ」
「そ、そう……ならいいわ」
「危なくなったら喚いても連れ帰りますからね、お覚悟のほどよろしくお願いします」
「(多分無理だと思うが……)あーうん、それでいいや。そうそう、出発前に俺の装備だけ整えさせてくれ」
そう告げるとユウキは片付けもそこそこに自室へと急ぐ。左腕部に固定するための台座を取り付けた小型軽量ボウガン、いつものなまくらに代わる長剣(王宮の兵士詰所から盗んだものの外見を弄っただけ)、爆発魔法を仕込んだ炸裂弾、大型のナイフ、丈夫なロープに巻き取り機能を付けたワイヤーフック。そして動きやすさを重視した鎧(肩、胸当て、腿の上部と腰周りのみ)。腰には矢筒と雑多なアイテムの収納用のバッグを縛る。マントはそういった装備を隠すために、以前のものより大きなものを調達しておいた。
一人で戦争でも起こせそうだな、と心の中で呟き、二人が待つロビーへと急ぐ。
なお、コッコロは変わり果てたユウキを見て気を失った。
「急造品でどこまでやれるか……まあやってく内に何揃えるべきかわかるだろ」
「あるじさまぁ~~えへへっ」
「コロ助……今はあんたに同情するわ……ほんとに誰よあんた」
「あン?俺は俺だよ。ちょいと頭ン中に浮かんできたものを形にしただけだぜ」
「ペコリーヌに見せられないわね……」
「ああ。もっと強くなってからじゃねェとまた嘲笑らわれちまうからな」
「そーいうことじゃないんだけどね?ってかアイツ嘲笑らってないと思うんだけど」
多分暫くは使い物にならないコッコロを背負い、受注待ちのクエストを探しに行く。目当ては金も経験も得られる探索や護衛系だが、やはり人気なのだろう、ほとんどが受領済みになっている。
「仕方ねェ、勝手に洞窟に潜るか山を登るかしかないな。野生の魔物には貴重な糧になってもらってさ」
「帰れなくなったらあんたのせいだからね?コロ助が起きる気配もないし」
「じゃあ回復と支援ができるやつを連れていくか。やたら目を回すあいつが適任だ」
「きっききき騎士クン!?どうしたのその格好!?」
「未だかつて無い威圧感だよね……」
「正直今でも偽物なんじゃないかと疑ってるよ……」
「ここにゃ俺の噂は届いてねェのか?あの決戦を生き延びた奴らならみんな知ってるとばかり思ったが」
「いや、ちゃんと知ってるさ。ユイとヒヨリが三日三晩寝込んだだけで」
「そうかい、なら生き返らせたやつに会えたら言っとけ。『ユウキを元に戻せ』ってな。聞いてくれるかは保証できねェが」
「そ、それで騎士クンは何の用なの?」
「俺の鍛錬に着いてきて欲しい。現状回復と支援を頼めるのはユイ、お前だけだ。死ぬ前に回復してくれりゃいいからさ。あとコッコロが俺のギャップに耐えきれなかったみたいで起きなくてな、ここで預かって欲しい。子守番はレイとヒヨリに頼むぜ」
「それはいいけど、何の特訓なんだ?私達には知る権利があるだろう」
「俺は今よりも強くなれるなら何だってするさ……。クソッタレの自称皇帝に二回も負けてんだ、当然だろ?今度こそ、何も
「そう、なんだ……ちょっと(騎士クンが)怖いけど、頑張るねっ!」
「ちょっとちょっと、思いっきり引かれてるじゃない。大丈夫なの?」
「いないよりマシだ」
多少の不安要素は残るものの、ひとまずヒーラーも加わった。次に必要なのは、直接的な戦闘経験とまともに戦える剣といったところか。正直盗んできた剣だとバレたらマジに鉄格子と石畳が恋人になってしまう。そこで閃いたのが加速用推進剤噴射装置のついた剣だ。理屈は分からないが、生き返ったあの時からアイデアがあふれでてとまらない。それに応えるように力を求める声が脳内で木霊している。俺を弱者と縛める鎖は早急に断たねばならない。
だが、そんな思惑はある意味で予想できた相手に打ち砕かれる事になる。
「そこの少年、どこへ行こうとしてるのかな?悪いけど、キミのステータスはほとんど上がらないんだ」
Q.全然スタイリッシュアクションしてねえじゃねえか馬鹿じゃねぇの?(嘲笑)
A.すいません!許してください!お願いします!なんでもしますから!(なんでもするとは言ってない)
Q.色々雑なんだよね、それ一番言われてるから
A.許してヒヤシンス
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#2
A.GE:Rのアリサちゃんクソ可愛いので許し亭許して。
Q.文体変わりすぎィ!読みづらいってはっきり分かんだね
A.もう一回デビルメイクライ読んでたらマジでこんな感じなのでお兄さん許して!頭壊れちゃ^~う!
次→GER詰んだら
「ステータス……?何言ってんだアンタ。最初に会った時から胡散臭ェヤツだと思ってたが、今度はボケ始めたか?」
聞きなれない単語と、成長しないという宣言が怒りを誘う。まださしたる改造を施していない、背負ったままの長剣に手をかけているだけで済んでいる事に感謝して欲しい。
「キミが言えたことじゃないよね、それ。あと人の話は最後まで聞くものって教わってないのかい?」
「いいや、よく知ってるさ。『怪しいヤツの言うことを聞いてはいけない』までな。そうそう、説明が上手いやつってのは、俺みたいなのにも分かりやすく説明できるらしいぜ?」
そう
「やはり、プリンセスナイトの力は返すんじゃなかったかな。酷いバグだ……人格に影響が出てる……」
思惑通り、説明らしい説明は帰ってこない。これだから頭脳派だとかいう連中は嫌いなのだ。自称皇帝も何言ってるかサッパリ分からなかった。
「おい、質問には何らかの返答をするのが大人ってもんじゃねェのか?見た目通りのイカれたやつだってんなら納得はできるんだけどな」
「いや、生き返らせた感謝くらいはするべきじゃないかな?」
会話にならねェなら黙ってて欲しいが、その願いは叶いそうにないので剣を抜いて赤髪のイカれたバーさん(確かラビリスタとか言ってた)に突きつける。
後ろでキャルとユイが悲鳴を漏らすが、気にしている場合ではない。ぶっちゃけそんなことに構っていたら時間などいくらあっても足りない。俺には時間が無いのだ。
が、
「こ~ら、弟君、ダメでしょ?そんな危ないものを人に向けちゃ」
二度と会いたくないと思っていた人物に遭遇したことで、思わず舌打ちをする。前にバレンタインデーだとかで無限にチョコを食わされたり、一挙手一投足を管理してくる様に震え上がったものだ。
どうしたものかと思考を巡らせていると、不意に後ろから知能がかつての自分以下みたいな声がする。
「お兄ちゃん!今日は私もいるんですよ!」
「げっ、お前もかよ……」
思わず考えていたことを口にしてしまう。リノとシズルのコンビを出されると、流石の俺でも手こずる。
唯一の救いは、リノが俺の意図に気づかなかったことくらいか。
「なんかしらの説明逃れはすると思ったがな、天敵をぶつけるなんて随分と
「んー、一応説明はしてもいいんだけどね、ほとんどの人が何それってなるから言っても無駄かと思って」
「あ?さっき言ったろ、誰にでも分かるように説明しろってな」
剣を収めつつ煽ってみるが、芳しい結果とはいかなかった。どうにもこのギルドの連中とは気が合う気配すらしない。
「ご要望通り簡単に言うとだね、キミの体力や筋力は今を超えられないってこと」
なんとなくそんな気はしていたが(原因はわからないけど)、はっきり言われると案外刺さってくる。
とはいえ、経験そのものは無駄にはならないだろうし、何より使えるものは使っていけばいい。ちょっと後暗い連中に「手伝って」もらえば、俺専用の装備も楽に揃えられるはずだ。
そうこうしている内に、シズルがごく自然に俺をギルドハウスに連れて行こうとしていたので、「抱き枕に腰でも振ってろ」と吐き捨て、放心状態のキャルとユイを回収した。
「性格が質量でも持ってんのかね……」
そう呟いたところで二人が起きてくれるわけでもない。仕方がないので、予定を変更して先に装備の作成を依頼しに行く。
場所が場所なので先にキャル達を預けたいと思っていたところ、見回り中の
「よう、ユウキ。珍しいなこんなとこで」
「ああ、色々あってな。今日は私用でさ、この先に行きたいから、二人を
「この先……ってお前、正気か!?ランドソルでも指折りのスラムだぞ!?なあ考え直せって、お前が死んだらユイがどうなるか……」
どうやら発作を引き起こしてしまったようだ。俺の中ではマコトもユイが好きなんだと思うようにしている。勝手に盛ってて欲しいが、そう上手く行くことは全くない。
「ユイユイうるせェな。丁度いいぜ、そのユイがいるんだ、ちゃんと面倒見とけよ?」
「あっおい!待てコラ……!おい!」
埒があかなくなる前にキャルとユイをマコトに押し付け、違法改造や密造を専門とするショップへと足を運ぶ。元より防具関連はここで調達しようと決めていたため、ショップの所在地も合言葉も既に調べが付いている。
改造ショップ『知恵と度胸の店』は、スラムの街道から二本ほど入り込んだ、生気すら失せた路地のさらに奥にある。
普段の自分ならあっという間にカモにされてしまうが、今回は勝手が違った。ユウキが最も信頼を置いているギルドの「トワイライトキャラバン」がガサ入れをした直後なので、荒事師達はまとめて病院送りにされていたのだ。
「『
合言葉を唱えると壁の一部が
「……珍しい客だな」
出迎えた職人の言葉は短く、そっけない。
「頑丈な鎧を頼む。関節と腰、胸が守れる程度のものでいい。それと、推進剤を噴き出す特殊な剣もオーダーしたい。どちらも設計図は既に出来上がっている。納期はなるはやだが、その分は前金でな」
職人――名を
「じゃ、失礼させてもらうぜ」
ユウキの返答もまた、短い。その堂々たる振る舞いが、この異空間でも受け入れられる要因なのだろう。最も、彼自身は小さなランプが映し出した己の影に気付かず終いだったが。
「人を辞めようとする者を見るのは、都合八十六回目か……」
ぜノルドが呟いた声は、己以外の存在が失せた工房に小さな木霊となって消えた。
(道を変えて正解だったな。マコトのやつ、律儀に張り込んじまってまあ……)
オーダーを終え、ホクホク気分の俺をお迎えしやがったのは、濃厚な
普段ならなんら意識してない匂いが、妙に鼻腔を
(どうせ引っ捕まえてご高説垂れるつもりだろうがな、俺はもうお前らとは関われないんでね……サヨナラだ)
獣人は五感が俺らヒューマンとはえらい違いなので、見つからずにギルドハウスに帰るなんてのはどだい無理な話だ。それなら、なるたけ追い付かれない道を行くより無い。
退路のために、と(トワイライトキャラバンにタレ込んだ影響で)人気が失せた建物を登る。屋根なら、いかに跳躍力が高くとも簡単には登れないはずだ。
案の定、下から
「やっと見つけたぞユウキ!降りてこい、説教の時間だ!」
と吠えられる。
犬は嫌いじゃないが、こういう時だけは勘弁してほしい。
「だったら捕まえてみるんだな。ドッグランは得意だろ?」
屋根を伝いつつ、冷静に煽る。が、ここで計算違いが起きた。
端的に言えば、スラム街を抜けてしまった。家主に見つかったらお咎めで済まないだろう。
こうなった以上、降りざるを得なくなってしまうが、その為の保険も一応ある。相手の予想を上回る手を隠し持ってないなければ、同じ轍を踏むだけだ。
「やれやれ、こんな体力じゃワンちゃんコンテンストは望めねェな」
「ハァ……ハァ……そ、そんなこと、今は、いいだろ……。さあ、ユイが、待ってる……早く、行くぞ?」
「あ?ユイに言っとけ、私用で顔を見せるな、ってね」
激しい爆発音と閃光が辺りを包む。本来は戦闘中に使う閃光弾だけに、その効果はお墨付きである。
「じゃあな、身体には気を付けろよ?つってももう聞こえてないだろうがな」
やがて来るであろう一般騎士に捕まる前に、俺は足早に現場を去った。
ギルドハウスに戻る道すがら、雑誌で読んだ服屋に寄る。確かここはツムギが店主をやっていたはずだ。
とはいえ、未だに確執は消えておらず、隙あらば吹っかけてくるのだが。
「よ、随分出世したんだな。シャレオツな雑誌の巻頭特集だぜ?」
「え、誰なんですか貴方。そんな馴れ馴れしい人知りませんよ」
参った。これから会う奴全員に説明するのかと思うと気が滅入る。しかも大体信じてくれないので、余計に疲れる。
「この格好見て気付かないか?あと俺しか使えない剣も。なんならレイでも連れてくるか?」
「あー分かりました。騎士さんなのは分かったんですが、何があったんですか?」
「それこそレイ達に聞いとけ。俺からいくら説明しても納得はせんだろうしな。まあ、そんなことよりこのくたびれた服を一新したいんだが、頼めるか?」
「そんなこと……?でもまあ、レイ様に会えるならよしとします。ええと、そうですね……
「……そうか。驚くなよ?」
あの日、俺は知能と一部の記憶が戻る代わりに、傷跡が身体に残ってしまった。
「えっ…………なんですかこれは。本当に生きてるんですか?」
「人を
「そ、そですね……!」
唐突にツムギの態度が変わったが、気付かないふりを決め込む。この先世話になるから、裸くらい慣れてもらわないと困るってもんだ。
「んー、色々変わっちゃったみたいですけど、どんな服が好みです?一から作った方がいいでしょうし」
「なら、まずは赤いフード付きのノースリーブシャツが一つ欲しいな」
「うん……うん!?」
「インナーは黒くて伸縮性の高いものを三つ」
「えっ……」
「で、黒いレザーバンツ……これは一つでいい」
「この時期に……?」
「あと、寒冷地対策にレザーコートが欲しい。表は濃紺で裏地をバーガンディーに仕上げてくれないか?」
「独創的ですね……」
「そうそう、白とワインレッドの半袖シャツも一つずつ頼むぜ。完成イメージ、置いとくよ。流石に服を作れるほど器用じゃないんでな」
「…………あの、本当に騎士さんなんですよね?」
まだ疑っていたのか。
まあ、確かに以前の俺なら絶対に着ないであろうというデザインだらけなので無理もないが……。
それに、絶対にツムギには言えないが、袖の一部は装備を合わせた際に切断する予定でいる。
なんというか、切れ端がかっこいいと思うのだ。絶対理解されないが。
「そいつらは仕上がったら知らせてくれればいい。それまで着る服は今買っちまうぜ」
「あ、いえ、型紙作ればすぐなので、そんなにかからないと思いますが……。って、そのジーンズとジャケットは……その、売れ残りなんですけど」
「サイズ的にこれしかないだろ?さっきまで着てたやつは着たくねェんだよ」
俺が手に取ったのは、深緑のジャケットにベルト付きのジーンズだった。
明らかに似合ってないが、何も着ないよりはマシだろう。それに、ツムギも早く仕上がると言ってるわけだし、気にする必要はあまりないと思う。
「そんなの初老で銀髪でもないと似合いませんよ……だから売れ残ってるわけですし」
「分かったよ、大人しく出来上がるまで待ってるさ。それなら、このマントより少し大きい布が欲しい。色は黒だ」
「え、キモっ」
黒いマントに大剣にボウガンなんて、イカしたファッションは理解されなかったみたいだ。
「金は置いていくぜ、じゃあな」
(しまった、貯めてた小遣いがなくなったか……服と飯と武装代、稼がないとな……)
老人の頭髪並に寂しくなった財布を握り、ポケットに突っ込む。どうやら散財しすぎたらしいが、ロマンには敵わない。
腹の虫も泣き叫び始めた辺りで、俺は
――ギルドハウス前にキャルとコッコロ、トゥインクルウィッシュとカォンのメンバーが揃っていたからだ――
Q.貴方を詐欺罪で訴えます!理由はもちろん、お分かりですね?
A.5~6k字に抑えるとアクション削るしかなかったゾ……ほんへデビルメイクライ小説は、アクション描写が野獣先輩のBBくらいあるんだから、多少はね?それとも10k字超えるか?覚悟は出来てる(一転攻勢)
Q.職人の名前
A.「nico(ニコ)」と「godo(ゴドー)」と「neel(ニール)」(綴り合ってるか知らねえけど)をいい感じにねるねるねるねしました。文句あるならもっといい案を送ってくれよな^~頼むよ^~(強気)
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