英国異聞帯~黄金日本教国 (羽撃鬼)
しおりを挟む

EP0

再度衝動書き物、気分がのるまで書きます。


転生。

 

死んで生まれ変わる。

 

物語ではありふれたことだが実際に起こるとは彼も理解できなかった。

 

 

「だがこれは何だ?」

 

 

眼前にあるのはPCである。

 

画面には、

 

【○○様、貴方は○○人目の転生者です。】

 

【転生先は変更不可です。】

 

【転生先:■■■■■■■■】

 

【※上記の■は、文字数は一致していません】

 

【転生される場合は画面に触れてください】

 

 

表記された様に画面に触れてみると、

特典と思われる一覧が浮かんだ。一部は選べないようだが、特典は3つまで選べるようだった。

 

 

【特典① 】

 

【特典② 】

 

【特典③ 】

 

 

と画面には表示され、下に検索機能も備わっていた。

試しに、全ての星辰光(アステリズム)と打ったが弾かれ、既存のものは二つまでと表示された。

そこで、

 

 

【特典① 星辰光を複数習得できる適性】

 

【特典② 】

 

【特典③ 】

 

 

弾かれなかったので受理されたようだ。

それから二つ目も入力してみた。

 

【特典① 星辰光を複数習得できる適性】

 

【特典② シルヴァリオサーガの技術】

 

【特典③ 】

 

 

これも大丈夫のようだ。

ふと思い検索機能を使用したところ。

大きすぎる力は弾かれるか、ただ一人にしか付与されないようだ。

現状、型月の物が多くとられているようだった。確かに対界宝具なんて強力なものは複数人持てば世界は終わるだろうから。

 

ならば個人に影響する能力、そして他の特典と同系統のもの。戦闘する上で生存しやすい能力を選んだ。

 

 

【特典① 星辰光を複数習得できる適性】

 

【特典② シルヴァリオサーガの技術】

 

【特典③ 神祖(カミ)の力】

 

 

入力した瞬間、何かに書き換えられていく様に感じた。

そして、意識が閉じた(ブラックアウトした)

 

そして、彼が転生したのを見送った神がいた。

 

 

さあ、世界よ。

 

欲深き転生者達よ。

 

強敵が現れたぞ。

 

君達の工夫で彼の研鑽が超えられるかな?

 

君達の劇を楽しみにしておこう。

 

なに、彼には世界を相手できる強敵(ラスボス)として君臨してもらうのだから

 

 

「さあ!今宵の恐怖劇(グランギニョル)を始めよう!」

 

 

「ん?間違えたか?」

 

 

「これで良し、では改めて(殴……『いい加減にしろォ!』グフェァ!」

 

 

『さっきから聞いていりゃあ水銀の真似してんじゃねぇ。』

 

『それに転生場所間違えているだろうが!』

 

「いや、大丈夫だよ。」

 

『あん?』

 

「彼の特典が得られるようにまた、経験も積めるようにしたからね。では改めて、」

 

 

人類史を守った英雄の導き手達よ!

 

新たに現れるのは未来の技術を持った者達!

 

星見の者達よ、彼らの研鑽を超えてみよ!

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP1 始まり

転生して産まれたのは【日本】。

 

更に言えば、死んだ時代よりさらに未来である。

 

特典は、知識と技術のみが有効化している。

 

能力元の原作が思い出せないが、

 

 

「まぁ、そのお陰で今の職場に入れているんだが。」

 

 

彼がいるのはとある研究チーム。

 

新しく発見されたエネルギーを効率よく生産運用を目的としている。

 

 

「にしても、これは。」

 

 

今、彼が見ているのは過去の資料。

 

今現在は電子媒体のばかりの為、残っている数少ない紙媒体の資料である。

 

内容としては、

 

 

(アラタ)、珍しいな。紙媒体の資料か。」

 

「ん?榛士(ハルト)か。過去あった世界規模の事件のやつだ。」

 

 

同研究チームの九条(クジョウ)榛士(ハルト)が声を掛けてきた為、返事をし資料を見せた。

 

 

「気づいたら一年過ぎていたのと、世界が白紙化したとか言われていたやつか。」

 

「ああ。」

 

「しかし、今さらどうしてこれを?」

 

 

彼の質問に馬鹿正直には答えることができないが、

 

前者はFGOにおける【人理焼却】

 

後者は同じく【人理再編】にあたるものである。

 

だからこそ今の職場は軍に関わらなければ、詳しい資料をあると思ったが、推測がだらだらと書いてある今持つ資料しかなかったのだ。

 

 

「いや、ふと思い出して気になってな。業務に集中できなかったんでこうやって解消中。」

 

 

そうか、と榛士は理解したように反応した。

 

そして、ふと思いだしたように、

 

 

「ああ、そうだ。来月新しい人員が入る。まだ若いから何かあったら相談にのってやって来れ。」

 

 

一月後、榛士が言っていた新人が入ってきた。

 

彼は、我々の前で自己紹介した。

 

 

(スメラギ)優也(ユウヤ)です。まだ、若輩者ですがよろしくお願いします。」

 

 

彼がチームに入ったのを皮切りに、研究がさらに進みだした。

 

目的のエネルギーを生成する動力炉である【次元間相転移式核融合】も徐々に造り出されていく。

 

そしてこのまま【日本】は発展していくに思われた。が、

 

ある時、研究所にサイレンが響き渡った。

 

 

「何が起こった!」

 

「【次元間相転移式核融合】の一番機(オリジン)が暴走しています。」

 

 

俺は急いた。

 

そして榛士達の元へ辿り着いた。

 

 

「榛士!どうなっている?」

 

「わからん!こちらの信号も受け付けん!」

 

 

【警告 一番機が間もなく臨界に達します。付近の人々は退避をお願いします。】

 

 

警告音声が響き渡った。

 

それを聞き、榛士と共にいた妹の御先(ミサキ)が一番機の元へ駆け出した。

 

 

「御先!もう間に合わない。」

 

「榛士!私には責任がある。」

 

 

瞬間、一番機がある方向から光にのまれていった。

 

 

「ミサキィィィィ!」

 

 

榛士の断末魔にも似た絶叫を耳に意識が途絶えた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP2 覚醒

「うわぁぁぁぁぁ、?」

 

 

気づけば見知らぬ深い森の中にいた。

 

 

「ここは何処だ?」

 

 

ふと思い周りを見渡した。

 

 

「榛士、御先、優也、凰華(オウカ)伊佐奈(イザナ)はどうなった!」

 

 

声をあげても周りには森の静けさしかない。

 

いや、何か音が聞こえてきた。

 

 

「これは、人の声か。」

 

 

彼の後方よりさらに先から人の争う声がした。

 

俺はそちらに向かってみることにした。

 

しかし、彼は非力な研究員でしかない。だが、

 

 

「何だ、力が溢れてくる。これなら使える。」

 

 

溢れてくるのは星辰体(アストラル)。特典で選んだ知識から彼が再誕した世界を理解する。

 

星の力を纏い彼は飛翔するがごとく声の元へ辿り着いた。

 

一人の男が複数の人間?に襲われている。

 

 

「あれは、【マリスビリー・アニムスフィア】?まさかここは!」

 

 

彼は、襲われている人物の前に降り立った。

 

 

「君は!何処から、」

 

 

襲われてた人物が何か言っているが、無視して相対しているもの達で実験を開始した。

 

 

「創生せよ、天に描いた極晃をーー我らは神世の流れ星。神慮拝聴、憑星開始」

 

 

星が自らの中に駆け回るように感じた。何処から、いやかの次元の第二太陽(アマテラス)に繋がっているのだろう。

 

 

「現実と電脳の狭間の結晶よ、我らに世界を見せてくれ」

 

「世界を統べる世界樹よ、汝が騎士を借り受けよう」

 

 

星の力により、周囲の環境か改編されていく。

 

 

「星に仇なす侵略者に、光の力を焼き付けよう」

 

 

ああ、そうだ。俺は必ずアイツ等の元へ戻る。そして、絶対に神殺しなんかに殺させない。

諦めない、絶対に、勝つのは『俺』だ!

 

気合いと共に右目が蒼く輝く。

 

 

さあ!世界樹よ(イグドラシルの)闇も嘆きも我らは認めない(起動を確認)ならばこそ我らは彼等を取り戻そう(履歴よりバックアップをリード)

 

 

再びあの輝かしい日常を取り戻すために!

 

 

ここに空想の根は降り立った(データより再構築を開始)新な歴史を刻み(完了)、希望の溢れる新世界を取り戻す」

 

 

抱いた星を掲げ、新西暦(セカイ)には未だ現れる筈のない力を解き放った。

 

 

我らの幻想を現実に(ワールズキーの使用を確認)ーー大和万歳(コンプリート)

 

 

超新星(Metalnova)ーー構成言語(Override)新世界創造録(World's odyssey)

 

 

収束性 E

拡散性 A

付属性 AA

干渉性 EX

維持性 EX

操縦性 A

 

 

この世界はプログラムで構成されている。

 

この条件を前提として発動したのは、

 

星辰体結晶化能力・改編型

 

自らの領域を思うかままに上書きする。

 

 

「何だこれは。」

 

 

前方の集団と後方の人物は初めて事象に固まった。

 

周囲が結晶に覆われていく。

 

 

「試しにこれだ。」

 

 

結晶が砕けると視覚的には何も変わってなかった。

 

ただ、新西暦と同じ環境と変化しただけである。

 

総てが星辰体に依存した世界に

 

 

「どういうことだ!霊脈を感じない。」

 

「いやそれ以上に自然に魔力が存在しない。」

 

 

前方の集団は、限定的とはいえ世界を塗り替えるといった所業に対して酷く驚いていた。

 

 

「これでチェックだな。」

 

 

周囲の木が結晶に覆われ、砕ける。

 

現れるのは、彼等を囲む数多の剣群。

 

 

「待て、止めろ。」

 

「嫌だ、死にたくない。」

 

 

前方の集団は命乞いを始めた。が、

 

 

「いや、終わりだ。」

 

 

数多の剣により彼等は貫かれ絶命した。

 

そうして後方の男に話しかけた。

 

この出来事、金の亡者と化した魔術師集団から彼を守ったことで、カルデアに誘われ、所属することになった。

 

その後、無事Aチームに配属された。

 

特異点攻略前に爆破された。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP3 神祖の誕生

爆発により全身が吹き飛ぶ。

 

しかし、この身は神祖。

 

直ぐに復活する。

 

虚無の筈の空間に、

 

 

「何故だ。ここは何だ。」

 

 

隣にはAチームリーダーであるキリシュタリアもいた。

 

そして、何処からか声が聞こえてきた。

 

曰く、自分は異星の神と、

 

それからの話はキリシュタリアに任せていた。

 

話は終わり、キリシュタリアは自らで対価を払い他7人を復活させた。

 

しかし異聞帯を形成する上で空想樹の種が七つしかないとの事。

 

 

「そうか、なら俺はいらん。異聞帯は奪い合いになる。ならば、異聞帯を維持する機能を俺自身に貰おう。」

 

 

異星の神は可能だと、こちらに何かを付与した。

 

 

「何、他の異聞帯を奪った時、空想樹を残して上書きする様にでは可能か?」

 

 

異星の神は肯定する。

 

 

「ならば縁がある所に跳ばしてくれ。ではなキリシュタリア、精々他の皆に最初に奪われるのは気を付けるように言っておいてくれ。」

 

 

そう言って俺は何処かへ転移された。

 

 

 

 

そして、次に目を開けたところは、

 

次元間相転移式核融合・一番機(オリジン)の前。

 

 

「ィィィィーーーッ!」

 

 

目の前で叫びながら榛士が再生された。

 

次々に他の三人も再生した。

 

榛士も他三人も暫く呆然としていた。

 

 

 

それからの数百年後

 

 

「国が出来てからというもの。何だ、あの英霊とか言うやつらが現れだしたな。」

 

「グレン、アラタの提案で霊脈を枯渇させてるから彼等は用意に仲間を増やすことは出来ないとはいえ、こうも現れると面倒だね。」

 

 

榛士(グレンファルト)(スメラギ)は、最近出現しだした英霊について議論する。

 

 

「それで、オウカ。捕まえた英霊の研究はどうだ?」

 

「今の機材では解析は難しいけど、興味深い存在だわ。そう言えばアラタ、使徒化した英霊はどうなってる?」

 

 

イザナは、オウカに問いかけ、オウカはアラタに問いかける。

 

 

「基本駄目だな。奴等はこの世界の排除が目的であって相容れん。まあ、戦闘狂の類いは屈服した上での使徒化は成功している。」

 

「アラタ、スペック的にはどうだ?」

 

「身体能力の向上。通常の使徒の再生力。受肉しているわけではないので不老。そして、星辰体(アストラル)の運用。まぁ、最後に関してはまだ研究段階だな。」

 

 

今現在行っているのは、凡人類史の英霊の対処、及び研究である。

 

この数百年、未来に我らの邪魔となる存在の排除など。

 

例えば、リベラーティの殲滅。

 

例えば、国会議事堂地下の次元間相転移式核融合・七番機の確保。

 

例えば、いずれアドラーと呼ばれる国のカグツチ壱型の排除。

 

危険の要素の根絶。

 

いつか戦うカルデアに対して勝ち道を一つずつ確実に潰していく作業だ。

 

それに平行して、自分達の弱点の克服、能力の向上。

 

更に、時代を先駆けて星辰奏者(エスペラント)の誕生である。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP4 塗り替えられた日

次話も半分以上書けたので投稿です。ストックがないと書く気も失せる様なので、投稿分の次話が書け次第していきます。


クリプター達の会談前日

 

 

「何だ?アレ。」

 

 

イギリス異聞帯担当ベリル・ガットは早朝自らの治める異聞帯の有りとあらゆる所が結晶に覆われていくのを眼にした。

 

彼は急いで事態を修めようとするが、既に遅く異聞帯は彼と空想樹を除いて塗り替えられた。

 

 

「あれ貴方何処から現れました?」

 

 

上書きした異聞帯の住人らしき者は世界に異常等は感じてないようだった。

 

 

「テメェ、ちょっと来い!」

 

「えっと、何するんですか!誰か助けて!」

 

 

ベリルは情報を得ようと住人を連れ去ろうとした。そこに

 

 

「待て、悪党!」

 

 

金の髪をした青年が立ちふさがる。

 

 

「あれは、まさか!」

 

「ザンブレイブ卿が来てくれたぞ!」

 

 

大剣を構えその男、ルーファス・ザンブレイブはベリル(悪党)に向け叫ぶ。

 

 

「市民に対す、その様な行いはこの【ルーファス・ザンブレイブ】が許さない!」

(敵は星辰奏者でもない。ならば傭兵か?)

 

「さあ!悪しき者よ、我が剣で汝を討とう!」

(まぁ、こいつ程度には苦戦しないだろう。良し、功績がやって来たぞ。)

 

「行くぞぉ!」

 

 

優男な見た目の青年(ルーファス)は内心小物な考えをしながら、悪党(ベリル)に剣を振るう。

 

 

「うぉっと。」

 

 

ベリルは、ルーファスの剣を避ける。

 

 

「へぇ、結構速いんじゃないの。」

(何故だ?魔力が上手く使えない。こいつはヤバイな。あの男だけなら何とかなりそうだが周りの奴等がな。)

 

 

ルーファスの後ろには、銃を持つ兵士が数十人存在し、こちらに向けて構えていた。

あの男(ルーファス)の指示待ちか、構えるだけであったが。

 

 

(ちょっと仕掛けてみるか。)

「なぁ、兄ちゃんよ。ここいら手打ちにしないか?俺もこんなところに急に投げ出されて動揺したんだよ。あんたもすまなかったな。」

 

 

ベリルは、ルーファスに対して一言申し、連れ去ろうとした住人に対して謝った。

 

 

「んっ?そうなのか?だが、規律上事情聴取は免れん。来てもらうぞ。」

 

「オーケー、オーケー。俺も事態を知れるならそれに越したことはねぇよ。」

 

 

ルーファスは、剣を下ろし、ベリルに近づいた。

ベリルは、笑顔を浮かべながら、ルーファスの方に歩いていった。片手を背に隠し、

 

 

「何てなァ!」

 

 

十分に近づいたルーファスに向けて拳を放った。

 

 

「なっ!」

 

 

本来なら彼の拳は鎧を着ているとはいえルーファスの身体を打ち抜くに十分な威力を秘めていたが、なにかを察知したベリルは後方に跳んだ。

 

 

「ーーーーォォォォ、ミョルニィィィルゥゥゥーーーッ!!!」

 

 

先程、ベリルがいた場所に何かが叩き付けられた。

そこにはクレーターが出来、更には衝撃が彼等を襲った。

 

 

「ガッハッハッハ、騎士ルーファスよ。この様な輩の嘘に騙されおって、まだまだ貴様は青いな。」

 

 

青い鎧を纏った大柄の男が巨大な槌(ハンマー)を担いでそこにいた。

 

 

「ガラハッド卿。」

 

(マジかよ、マシュに取りついた円卓の騎士がこんな豪快なオッサンだったなんて。)

「いや、どうしたものか。ん?」

 

 

ベリルはどう行動するか悩んでいると、

 

 

「ベリル様、こちらに早く!」

 

「コヤンスカヤか!助かる!」

 

 

突如現れた桃色髪の美女と共に、その場に最初から居なかったように消え失せた。

 

 

「えっと、これは逃がしたと言うことか。」

(あれ功績は?)

 

「ガッハッハッハッ!応とも!その様だな!なんと見事な手際よ!さて、騎士ルーファスよ、調査に入ろうぞ!」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP5 クリプター会談

ある異聞帯の一室

 

 

そこには、円卓上の机が置かれ、八つの椅子が置かれていたが、生身の人間は二人しかいなかった。

 

他は立体画像の様に椅子に座るように投影されていた。

 

生身の人間の一人である金色の長髪をした貴族服を身に纏った男、

【キリシュタリア・ヴォーダイム】は、話し始めた。

 

「さて、それぞれ落ち着いた頃だとは思うが、」

 

 

彼の問いを受け、それぞれが自らの治める異聞帯について説明をし、残り二人となった所で、

 

 

「では、空想樹の種が足りなく異聞帯の上書きされる可能性の話だが、丁度昨日のことだ。ベリルの異聞帯が上書きされた。」

 

 

他のクリプター達が声をあげる。

 

 

「えっと、と言うことはベリルはリタイアしたってことか?」

 

 

カドックは、ベリルの方に視線を向けつつキリシュタリアに問いかけ、

 

オフェリアは、信じられないという表情で、尊敬するキリシュタリアを見る。

 

 

「 」

 

 

普段と共に飄々としているペペは、口を開けて呆然としていた。

 

芥子とデイビットは、無言だが眼は驚いていた。

 

 

「ああ、その通りだ。カドック。彼には私の異聞帯で保護しているよ。」

 

「だが、君達もこれからは争う仲だ。その事を注意しておくように。」

 

 

キリシュタリアは無言で佇んでいるベリルに促した。

 

 

「ああ、お前ら、今はキリシュタリアのとこでゆっくりさせて貰っているよ。まぁ、何だ?文明的に終わっているような異聞帯だったからここでの生活は天国みたいなんだが。」

 

 

何か落ち込んでいるようなベリルにカドックが、

 

 

「ベリル。あんたが落ち込むなんて調子が狂う。おい!どうやってここまで落ち込むようなしたんだ?」

 

 

最後の一人に対して問いかけた。

すると、他のクリプターも最後の一人の方を向いた。

 

 

「ん?特に何も。まさかあんなにも簡単には異聞帯を奪えるとは思ってなかったな。計画上用意していた数万の計画が水の泡になったよ。」

 

 

問いの答えにカドックは言葉を失った。

彼は更に続ける。

 

 

「そして、抵抗すら無かったからな。たかが魔力が枯渇した程度で反撃できないとは、見通しが悪いにも程がある。魔力の使用を前提とした戦いをしているんだ。なら、それが使えなくなった場合も考えて行動すべきだろ?」

 

 

先に対象の魔力の枯渇、つまり霊脈を瞬時に枯らしたことに他のクリプターも唖然とした。

だが彼はまだ、

 

 

「そもそも異聞帯に移動してから数千年の月日が有ったのに、何の対処もしていないなんて、それこそあり得んだろう?」

 

 

彼以外のクリプター達は、驚きを隠せなかった。

クリプターのツッコミ役(カドック)は、彼との認識及び事実の違いに叫ぶ。

 

 

「数千年?何を言っている!僕達が復活してまだ3ヶ月しか経っていないだろう!」

 

 

そもそも経験が異なっていたのだから。

だが、彼は、

 

 

「3ヶ月か。それでは異聞帯の王とも友好を築けないのも納得は出来るな。しかし、何故だ?時間が足らないのなら、もっと有効的に時間を使わない?そこは理解できん。」

 

「来るべき脅威が有るのなら、慢心などしていないで具体策の千の二千は用意すべきだろう。なら何故行動せん。」

 

「やはり君達に無いのは危機感だな。人間は可能性の化け物だ。既に少人数となったカルデアの者達対して慢心しているのがその証拠だな。」

 

「どうせ。奴等は『気合い』だの『根性』だので限界を超えてくるのだ。何故その事も考慮しない。今までもそうして人理焼却を防いだのだから。」

 

 

彼の言葉にクリプター達は完全に思考を手放していた。

最後に、

 

 

「これはうちのリーダーの言葉だが、」

 

「『数多の犠牲を、数多の喪失を、無限の希望と絶望を重ねたからこそ。』」

 

「『完勝以外許されん。我々には世界を変えた責任があるのだからな。ならばこそ、我らの歴史をこの星の未来とする!』以上だ。」

 

 

呆然とした彼等を残して彼は席を立った。

立体画像は消えた。

 

 

その後、キリシュタリアは自らのサーヴァントである【カイニス】に英国異聞帯へ向かってもらったが、魔力枯渇における消費魔力の増大により、異聞帯を調査できず帰還することとなった。

 




カルデアに対しての認識の違い

ラスボスガチ勢と格下への慢心


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP6 星見の生き残り

時間は飛び、キリシュタリアの異聞帯を攻略したカルデアはブリーフィングを行っていた。

 

 

「次の異聞帯攻略だけど、おすすめは有るかな?キリシュタリアくん?」

 

 

ロリンチ(ダヴィンチ)ちゃんが捕虜となったクリプターのリーダーであるキリシュタリアに話し掛けた。

 

 

「それを私に聞くのか?確かに情報を統括していた私はある程度、他の異聞帯の情報を持っているが、仮にも私は捕虜なのだが。」

 

 

ギリシャ異聞帯で捕縛したクリプターは、彼とカドック、そしてペペロンチーノ。ベリルはデイビットの異聞帯にコヤンスカヤと共に逃げたとの事。

 

 

「キリシュタリア、このお人好し達に正論を言っても無駄だ。だろう?」

 

「そうね。分かってるじゃな~い、カドックも。」

 

「ふん!ぺぺ、あんたほど打ち解けている訳ではないがな。」

 

 

同じく捕虜となっているクリプターも割と自由にしている。監視は就いているようだが、何故か信頼されているようだ。

 

 

「残る異聞帯は二つ。デイビットの異聞帯と(アラタ)の異聞帯だ。」

 

 

その言葉にカルデア勢は疑問を覚えた。

代表としてマシュが問いかけた。

 

 

「あのキリシュタリアさん、三つの間違いでは?」

 

 

カルデア勢の認識としては、攻略が残っているのは、

先程二つとベリルの異聞帯のはず。

 

 

「何も間違っていない。ベリルはカルデアとは関係ない所で異聞帯を失っている。」

 

 

この言葉にカルデア勢は沈黙した。

 

 

「そもそも空想樹の種は七つ。そしてクリプターは八人。数が合わないだろう?そこで、一人のみ指定した異聞帯と交戦し空想樹を奪い取れるようにしたのだ。」

 

「その結果が、ベリルの早期敗退となったのだ。まぁ、もっとも交戦らしい交戦も無く、全ては一瞬の出来事だったらしいが。」

 

 

カルデア勢は驚きを隠せない。

今まで彼等は異聞帯を一つ攻略するのに長い時間を掛けていたのに、一瞬で異聞帯を攻略することが出来るほどの力を持っている異聞帯があることを。

 

 

「おい!君達、朗報ではないかな!既に一つ、墜ちているのだ。時間の短縮になっていいだろう?」

 

 

カルデアの新所長は能天気に言いはなった。

マシュが、

 

 

「あの新所長?一つ減っていても強大な力を持つ異聞帯が有るだけで大変なのでは?」

 

 

マシュの言葉に対し、キリシュタリアが、

 

 

「その事で追加で言いたいことがあるのだが、良いかな?」

 

 

カルデア勢は返事を促した。

 

 

「それでは、そのベリルの異聞帯はイギリスの異聞帯で、上書きしたのは(アラタ)の異聞帯でこちらもイギリスの異聞帯なのだ。」

 

「君達は、彼の異聞帯対し何か情報を持っているかな?」

 

 

キリシュタリアの問いかけに対し、

 

 

「そう言えばコヤンスカヤが言っていましたが、サーヴァントとして存在しにくいとの事ですが。後は、その構成上魔獣が売れないと、不満を漏らしていたのを聞きました。」

 

 

キリシュタリアはそこ発言に頷き、

 

 

「ああ、その通りだ。サーヴァントが存在しにくい、つまり魔力自体がないという一点は正しい。彼が言うには数千年前には霊脈及び星に存在した魔力が枯渇したとの事だ。」

 

 

魔力が無い=サーヴァントの存在維持が難しい、いや出来ないと言っても過言ではない。

 

 

「これだけでも常軌を逸していると言えるだろう。君達には言っておくが私は定期的に異星の神と交信していた。だが、それは半年前に何の連絡も無しに途絶えた。」

 

「確か、言峰神父も村正さんも異星の神と連絡がつかないと戦闘中溢していました。」

 

 

人理再編、クリプター達にそれを促した存在の連絡途絶を聞き、カルデアの名誉顧問は、

 

 

「それは…やはり…」

 

 

何かを、考えていた。

すると、ブリーフィングを行っていた部屋にスタッフが駆け込んできた。

 

 

「大変です!アメリカの異聞帯が消失!イギリスの異聞帯が今はゆっくりですが拡大を始めています!」

 

 




キリ公生存(捕虜)ルート


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP7 魔神襲来

その日、アメリカの異聞帯はかの物に埋め尽くされた。

 

迫り来るのは数多の魔星。

 

一機一機が英霊を勝る存在。

 

 

『この異聞帯に住む君達には悪いんだけど、性能テストを始めよう。何、恨んでくれてもいいんだよ。君達の犠牲は未来の誰かのためになるからね。』

 

 

魔星の操り手は、これから行うとしている惨劇には特に思い入れ無く実行に移した。

 

 

『それじゃあ、実験を開始する。自動戦闘モードに移行。』

 

 

「了解。これよりアメノクラト各機、星辰光(アステリズム)の発動を開始します。」

 

 

異聞帯に侵略を開始した数万体のアメノクラトは、敵の本丸を囲むように星の詠唱(ランゲージ)を唱え始めた。

 

 

「「「創生せよ、天に描いた極晃を───我らは神世の流れ星。神慮拝聴・憑星開始」」」

 

 

 

「「「高天原に神留坐す神漏伎(戦闘システム起動)神漏美の命以て(任務を遂行する)

皇親神伊邪那岐乃大神(抹殺対象が日本国民以外と確認)筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原に(これにより三原則を撤廃)

禊祓ひ給ふ時に生坐る祓戸の大神等(殲滅に伴うあらゆる倫理的制約の解除を完了)」」」

 

 

「「「諸々の禍事罪穢を祓へ給ひ(特殊兵装アステリズム発現用に)清め給ふと申す事の由を(出力確保の必要有り)」」」

 

 

「「「天津神(次元間)国津神(相転移)八百万の神等共に聞こし食せと(エネルギーの供給源を第二開発者に設定)恐み恐み白す(パスコードの入力に移行する)」」」

 

 

「「「汝子等事代主神、建御名方神二神者。隨天神音御子之命。 勿違白訖。故汝心奈何──大和万歳(コンプリート)」」」

 

 

「「「超新星(Metalnova)───第五次世界大戦用星辰兵器(High-Astral)天之闇戸(Generator)」」」

 

 

集束性 AA 

拡散性 AA 

操縦性 AAA 

付属性 AA 

維持性 AAA 

干渉性 AAA

 

 

異聞帯が塗り替えられていく。

 

 

数多の魔星が出力にものをいわせ、アメリカ異聞帯を領域を剥奪(ハッキング)していく。

 

 

人も、動物も、森も、大地も剥奪されて塗り替えられて全てが結晶となる。

 

 

なすすべもなく世界が変わるその姿はまるで白紙化される人理の様に、異聞帯も同様に外敵によって塗り替えられたのだ。

 

 

『うんうん。テストは成功のようだね。問題としては、星辰光(アステリズム)に耐えられる個体がいなかったことかな。そういう輩への対処法が得られなかったのが一番痛いね。』

 

 

『最後に、この異聞帯を構成している魔力《リソース》を星辰体(アストラル)に変えて、高位次元から地球を膜で覆うように拡げてっと。よし、今までの分とこれで外宇宙からの干渉を防げると。』

 

 

魔星を操る者は、外敵が介入できぬ状態をつくる。全ては、カルデアと対決(本番)に向けて。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP8 侵入と洗礼

『虚数空間よりストームボーダー、浮上します』

 

 

船内にアナウンスが流れた。

 

遂にカルデアは、最後の異聞帯に侵入した。

 

 

「やはり、キリシュタリアくんが言っていたようにこの異聞帯は、魔力が全く感知できない。」

 

 

ロリンチちゃんに「これからどうします?」と聞こうとした時、

 

 

「『見つけたぞ』」

 

 

轟音と共に船が揺れた。

 

 

「これは砲撃?何処からだ!」

 

 

キャプテン・ネモは、管制員達に周囲の状況を探らせた。

 

 

「わかりました。ストームボーダーの周囲に結晶なような物が浮かんでいます!それから今もなお砲撃が……ウワァッ!」

 

 

船が大きく揺れた。

 

その後、聞こえる轟音、轟音、そして船体が軋む音。

 

 

「緊急潜水、砲撃を避けろォォォーーーッ!」

 

 

海に潜った所、轟音は止んだ。

 

 

 

 

カンタベリー聖教国内

 

首都中枢

 

次元間相転移式核融合炉・一番機(オリジン)の前にて

 

 

「ふん。奴等はアレでは墜ちんか。」

 

 

ストームボーダーが浮上してきた場所よりさらに離れた場所からカルデアの者達を観測及び攻撃していた神祖(カミ)は、冷静に言葉を発した。

 

 

「想定したより、アレの強度が高かったようだね。」

 

 

「私としてはアレを破壊しなかっただけでも良かったと思うけどね。何せアレは研究対象として今からでも鹵獲したいくらいですものね。」

 

 

彼女以外の他2名の神祖(スメラギとオウカ)からは特に責を問うことはなかった。

 

 

「それで、グレンとアラタは?」

 

 

「アラタは研究所に行ってる。グレンは……またいつもの。」

 

 

イザナは、他の二人が何処にいるかを聞いたが分かったのは、アラタだけだった。

というか、

 

 

「またアレか。」

 

 

「そうアレ。まぁ、ベルグシュラインを連れ出しているから大丈夫だとは思うけど。」

 

 

何時ものリーダーの気紛れに、ずっと付き合っている彼等は呆れ果てていた。

 

彼女はふと思い出し、

 

 

「そうだ。あの小娘の行方はどうなっている。」

 

 

「わからない。まだあの謎のサーヴァントと逃亡中。」

 

 

「ああ、あの星辰体(アストラル)を使う英霊ね。研究対象として早く捕まえてほしいんだけど。」

 

 

神祖達は愚かにも自分達に反逆を行った女に対して溢す。これは初めてではない。長く統治するに当たって割りと良く出るので彼らも、ああまたか。と呆れていた。

 

 

「母胎として小娘は、優れていたのにこうもままならんとな。しかし、藤丸立香とマシュ・キリエライトか………ジュルッ」

 

 

鬼子母神(イザナ・フォン・ザンブレイブ)は、自らの肉欲のために対象の捕獲を、そしてその後を考え笑みを浮かべた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP9 彼と彼女の出会い

カルデア以外の反逆者の誕生回です。


何故こんなことになったのだろう。

 

 

自問しながら少女は走る。

 

 

国の中核を担っていた少女は自らに課せられた運命を友に話した。

 

 

「大丈夫ですの、アンジー(親友)一人私が守ってあげますの。」

 

 

いつもと違う彼女が話した与太にしか思えない話を聞いても彼女は変わらなかった。

 

それどころか、頼ってくれて嬉しそうに、宣言する始末。

 

 

少女と親友は緻密に計画を練り、国を出る準備を進めた。

 

しかし、実行に移そうとした前日、奴等は現れた。

 

 

「何処に行く?いや、分かっていて聞いても無駄か。」

 

 

少女の祖にして彼女にとって受け入れがたい運命の相手が配下を連れて現れたのだ。

 

少女を庇うように親友が立ちはだかる。

 

 

「こんな夜中に何様ですの?ザンブレイブ夫人?」

 

 

この国の神祖(カミ)の一人であるイザナ・フォン・ザンブレイブは庇われている少女に向けて、

 

 

「いい具合に育ったのに残念じゃないか。なあ!アンジェリカ!私はこうなって悲しいよ。」

 

 

イザナは笑顔でそう言い放った。対して、

 

 

「悲しい?冗談は止してください、お母様。私は素よりクソ食らえですわ。貴女に抱かれるなんて!」

 

 

少女、アンジェリカに担う運命とは、神祖(カミ)の血を引く子と神祖(カミ)の間に出来る子がどの様な存在になるかの実験。そして、神祖(カミ)の子を宿す今代の胎盤である。

 

成長するに当たって彼女はその忌むべき運命を覆そうと、表では忠実な神祖(カミ)の配下として、裏では神祖(カミ)を抹殺できる人物を探していた。

 

しかし、努力虚しく彼女の願いは叶えられなかった。

 

気を落とした彼女は闇を知らない親友を頼るに至ったのだ。

 

 

「アンジー、ここは私が引き受けますの!貴女だけでも幸せになって!」

 

 

親友、パトリシア・フォン・クイーングラスに言われて、

 

 

「ダメよ、パティ!貴女では敵いっこないわ。」

 

 

アンジェリカは当然、相手の実力は分かっている。親友であるパトリシアにもそれは伝えていたのだが、

 

 

「私の星は足止めに向いてますの。だからこそ貴女が逃げる時間くらいは稼いで見せますの。だから早く行けェェェーーーッ!」

 

 

走るアンジェリカの後ろで銃声がなる。

 

 

「クックックッ、アンジェリカも面白い友人を持ったものだ。だが始末するのが勿体無いな。そうだ!使徒ルーファス。」

 

 

名を呼ばれイザナの隣に騎士が現れる。

 

 

「さぁ、ルーファス。あの少女をお前にやろう。殺しても良いし、生かしても良い。さぁ、お前の好きにして見せろ。」

 

 

イザナの神と言うより悪魔の誘いのごとく彼の耳元で呟いた。

 

ここには白馬の王子様のような潔癖な男はいない。イザナに教えられた肉欲にまみれた男がいた。

 

 

「さて、クイーングラス卿。国家に反逆するなど騎士として黙っておれん。」

 

 

ルーファスは最もらしい理由を述べてパトリシアに相対するように位置をとる。

 

ルーファスが構えるは大剣。

 

パトリシアが構えるは銃。

 

時代が時代では勝つのは後者だろう。されど彼等達、星辰奏者(エスペラント)はその理屈は当てはまらない。

 

星の担い手達は基本となる詠唱(ランゲージ)を唱えた。

 

 

「「創星せよ、天に描いた星辰をーー我らは煌めく流れ星!!!」」

 

 

彼女も聖騎士(エスペラント)として実戦経験がある以上、才能が乏しい筈のルーファス相手には勝てると思っていた。

 

されど、ルーファスは使徒である。かつての自分(ルーファス・ブラウン)ではなく現在の自分(ルーファス・ザンブレイブ)彼女(パトリシア)の想像を優位に超えていた。

 

神祖(カミ)から流れる莫大な星辰体(エネルギー)を受け取る使徒相手に勝てるはずもなく彼女(パトリシア)神祖(イザナ)の手に落ちた。

 

 

 

 

親友の助けを得て彼女は既に皇都を抜けていた。

 

始めに用意していた手段は、神祖(カミ)にバレた時点で使えない。それ故に彼女が向かうのは反逆者の目撃があった場所。

 

しかし、やはりそれも読まれていたようで、

 

 

「まさか伊賦夜(いぶや)衆まで配置されていたなんて。」

 

 

彼女はイザナ・フォン・ザンブレイブの手足である伊賦夜(いぶや)衆に囲まれていた。

 

 

「やぁ、アンジェリカ。鬼ごっこはこれで終わりか?」

 

 

イザナは再び彼女の前に現れた。そして悪どい笑みを浮かべながら、

 

 

「お前の友人。確かパトリシアと言ったかな。」

 

 

アンジェリカはその笑みに恐怖を感じた。

 

 

「ああ、昨夜楽しませてもらったよ。今はルーファスが味わっていると思うがね。」

 

 

それは親友が既にイザナの手に落ちたことを意味していた。

 

アンジェリカは膝から崩れ落ちた。

 

そして彼女はまるで幼子の様に泣き叫んだ。

 

 

「嫌だ、嫌だ、嫌だ。私は………。」

 

 

イザナはその様子に、

 

 

「ああ、アンジェリカ。可哀想な娘、本当に昂ってくる。」

 

 

後付けした生体装置(バイオプラント)を起動させアンジェリカに近づく。

 

アンジェリカは、遂に、

 

 

「助けて!」

 

 

と叫んだ。

 

そんな彼女をイザナは、助けなど来る筈もないと嘲笑う。

 

この国に彼女を助ける者はここには存在しない。

 

親友も既に敵の手に落ちている。

 

 

されどここに奇跡は舞い降りた。

 

 

時空を越え(光のため)世界を越え(未来のため)一人の少女(自分以外の誰か)の為に、鋼の巨人は顕れる。

 

 

「良いぜ、お嬢!」

 

 

アンジェリカを颯爽と抱え、包囲網の外に着地する。

 

 

「貴方は?」

 

 

自らを救った男にアンジェリカは問いかける。

 

 

「帝国のバーサーカーと名乗っておこうか。まあ、お嬢には神殺し(オーバードライブ)と読んで欲しいがね。」

 

 

自らの腕の中にいるアンジェリカに青髪の巨漢は答える。

 

 

「待て、アンジェリカ!お前達やつらを捕らえろ!」

 

 

イザナは伊賦夜(いぶや)衆に指示し、アンジェリカ達を捕まえようした。

 

 

「いきなりで悪いが逃げさせてもらうぜ。おい!お前ら、俺とお嬢の為に死んでくれ。」

 

 

次の瞬間、敵との間に数人の兵士が現れた。

 

 

「「「応さ(ポジティブ)!今度は何度でも隊長達のためにこの命使ってやらァ!ふははははッ!!!」」」

 

「「「我ら破壊弩(バリスタ)、鋼の巨人に栄光あれ!!!」」」

 

 

この日、この国に最大の反逆者が誕生した。

 

機械の巨人達こと、機甲巨人化創星録(フルメタルギガース)

 

不死身の限界突破(オーバードライブ)、ここに有りと。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP10 上陸と真実

皇都クルセイダルよりかなり離れた辺境の地に彼等は上陸した。

 

異聞帯に侵入直後に攻撃を受け、逃げに徹するしかなかったカルデア一行。

 

彼等は本日正しくこの地に足をついたのだ。

 

されど彼等まだ、知らないことが多いそれ故に辺境の町へ足を運んだ。

 

 

「うわぁぁぁ。綺麗な町並みだな。」

 

 

「辺境の町っていっても現代の町に似ていますね。それも資料で見た日本の町(、、、、)に。」

 

 

町の景観を人類最後のマスター(フジマル・リツカ)その相棒的な後輩(マシュ・キリエライト)はそう感嘆する。

 

彼女の言ったその言葉が疑問として放たれる。

 

 

「何でこんなにも日本に似ているんだ。」

 

 

住んでいる民は明らかに日本人ではない。

 

されど、彼らの生活に、彼らの周囲に明らかに日本の残影(、、、、、)を見る。

 

 

「どうしましたか先輩?」

 

 

マシュが心配するように此方を見る。

 

 

「あ、いや。絶対に汎人類史を取り戻すって再確認してたから。」

 

 

初めて見る世界(シッテイル)初めて見る文化(シッテイル)、遥か先に見える見知った建物……………えっ?

 

 

「先輩?」

 

 

「マシュ……アレは……何で!……ここはイギリスの筈だろ!……アレは、アレは。」

 

 

彼の眼前には彼が生まれた国(ニホン)の象徴、本来では古都プラーガに移っていたそれは、この世界ではこの地にあった。

 

日本の政治が行われる場所。

 

国会議事堂。

 

彼に対しても馴染みの深いそれ(、、)が建っていたのだ。

 

 

唐突に彼は走る。走る。走る。

 

 

「待ってください先輩?」

 

 

何時もは直ぐに気づく筈の制止の声も聞こえない。

 

彼は目的の場所(国会議事堂)に辿り着く。

 

そこには説明書きがあり、こう記されていた。

 

 

【かつて日本(ヤマト)の政治の中心を担っていた場所。西暦が終わる(、、、、、、)もとになった大破壊(カタストロフ)の影響でこの世界にバラバラに置換された日本(ヤマト)の遺物。】

 

 

「西暦が終わった世界?それじゃあ、ここは剪定された(過去から別れた)世界ではなく、剪定される可能性のある(まだ至らない)世界。」

 

 

異聞帯の破壊者(カルデア一行)は、事実を認識する。

 

敵の情報は無いに等しい。

 

過去からの別れた世界では、別れた時点までの歴史(きろく)を漁れば対処の一つも出来るだろう。

 

未来に生きた彼等だからこそ、赦された特権だった。

 

しかし、この異聞帯ではそれは通じない。

 

過去に生きる者(汎人類史)に対して今を生きる者(異聞帯の民)が得る特権となる。

 

即ち、この地では彼等は無力に等しいのだ。

 

今まで巡った異聞帯は総じて汎人類史よりも過去に転換期が起きたもの。

 

重ねた歴史という面ではギリシャのそれより長いものはないだろう。

 

されど、ここは未来からの侵略者。

 

本来存在しないクリプター(イレギュラー)によって、異星の神も予想していない異聞帯(イレギュラー)

 

この地の支配者(カミガミ)にとっては、空にうがぶ第二太陽(アマテラス)もこの星に降臨しようとする異星の神も等しく彼らの未来の礎(リソース)にすぎない。

 

 

彼等を見下ろす者がいた。

 

 

「あ~あ、絶望しちまってるな。ありゃあ。」

 

 

神祖(カミ)相手に共にと戦う戦友と成り得る可能性を持つ者を見に来た男達は落胆していた。

 

 

「確かに駄目だな、気持ちが負けている。」

 

 

「隊長、やっぱムズいんじゃないですか?アレ。」

 

 

眼前の二人は何の力も感じられない。

 

神祖(カミ)を鏖殺するために顕現した彼等は、眼前の二人を生前の仲間と比べてしまう。

 

されど、この地にいない。

 

終焉吼竜(ニーズホッグ)も、葬想月華(ツクヨミ)呪怨継ぎ(リベラーティ)

 

確かに彼等と比べれば………

 

 

「いや、駄目だな。先入観に囚われるな。俺達はまだアイツラことは知らん。お前らは監視を続けていろ!」

 

 

「「「了解(ポジティブ)。」」」

 

 

この場を去ろうとする男に監視を命じられた一人が、

 

 

「おっと隊長は何処に?」

 

 

隊長と呼ばれた男は、ふっ!と笑い、

 

 

「お嬢のとこだよ。まだ本調子じゃねぇみたいだからな。」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP11 星見への侵入者

カルデア一行が無事に異聞帯に上陸した頃

 

 

「いやはや、旧暦の文明にしては発達しているな。」

 

 

「そうですね。」

 

 

カルデアの現在の本拠地【ノウム・カルデア】に二人の侵入者が現れた。

 

一人は英国異聞帯における神祖(カミ)の一柱である。

 

 

【グレンファルト・フォン・ヴェラチュール】

 

 

もう一人はその神祖(カミ)に絶対の忠誠を誓う者。

 

 

【ウィリアム・ベルグシュライン】

 

 

この主従が現れた目的は、実は特に無い。

 

面白い敵がいる。

気になる。

見に行くか。

着いてこい!ベルグシュライン!

御意。

 

という彼らの仲間にはよくあるリーダーの奇行である。

 

 

「ここには数多の英雄がいる。お前の運命もいるかもしれんぞ?」

 

 

「ええ、少しは期待しています。来ましたね。」

 

 

漸く彼等の侵入に気づいた英霊達(サーヴァント)が集まり始めた。

 

 

「侵入者ですか。捕らえさせて頂きます!」

 

 

弱小人斬りサークルの姫(沖田総司)が先陣を切った。

 

音速に至るその踏み込みは侵入者には反応できないと思われた。

 

 

斬空真剣(ティルフィング)。」

 

 

「御意。」

 

 

斬。斬、斬、斬、斬、斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬

 

 

「ちょっ、ちょっ、ま、待ってぇ!」

 

 

高速戦が得意な英霊である沖田総司は、侵入者から放たれる数多の剣擊に突如防戦一方になる。

 

彼女は英霊、そして侵入者は生身の人間。

 

この事実が彼女に判断を間違わせた。

 

 

「私以上の天才とか、聞いてないんですけど~!土方さん、ヘルプ~。」

 

 

それ故に彼女らに危機感は無い。

 

侵入者はたった二人。

 

この地に数多といる英霊達が束にならぬとも一掃できるだろう。本来なれば、

 

 

「ふむ。奴等は本気を出さないのか。では、本気にならざるを得なくしてやろう。ベルグシュライン、総じて断ち切れ!」

 

 

もう一人の侵入者(グレンファルト)は、戦闘している従者にそう命令した。

 

 

「御意。」

 

 

その瞬間、ウィリアム・ベルグシュライン(侵入者)から謎のエネルギー(アストラル)が検出された。

 

 

「創生せよ、天に描いた星辰を──我らは煌めく流れ星。」

 

 

身の程もある太刀を構え、

 

 

(つるぎ)の閃き、限りなく。黄金(こがね)の柄に鋭き刃、鋼を両断する度に。王器を彩る栄光が地平の果てまで鳴り響く。三度振るえば訪れる破滅の波など知りはしない。」

 

 

「我が所有者こそ絶対神。侏儒(ひきうど)鍛冶(かぬち)が遺せし呪怨など、至高の神威は跳ね除けん。断ち切る魔物を御示しあれ。八つ頸唸る邪竜とて、語らず、逸らず、粛々と。」

 

 

「一切斬滅。唯其れのみ。此れより神敵、調伏致す。」

 

 

超新星(Metalnova)──抜刀・天羽々斬空真剣(Orotinoaramasa Tyrfing)。」

 

 

集束性:AA 

拡散性:E 

操縦性:A 

付属性:A 

維持性:D 

干渉性:E

 

 

発動した星辰光(アステリズム)の能力は、斬閃延長能力。

 

されどそれはあくまで射程が伸びるだけのもの。

 

しかし、絶対剣士たるこの男が振るえば、

 

 

「「「えっ?」」」

 

 

数多の斬閃が彼らを襲うがその身は傷一つ無い。

 

彼等が驚くのは、

 

 

「「「マスターとの繋がり(パス)が消失しただとぉ!!!」」」

 

 

サーヴァント(彼等)は、マスターである藤丸立香を経由してこのカルデアより魔力を与えられ、その身を維持している。

 

それ故に、消費が激しい者は抗っているがその身は退去の光に包まれている。

 

藤丸立香と繋がっていたからこそ、正気を保っていた者達は、暴走し始めた。

 

 

この日、ノウム・カルデアは抗うすべの殆どを失った。

 

切っ掛けは、敵のものだったが、

 

その本質は、

 

マスターの不在による(バーサーカーな英霊達への)コミュニケーション能力不足だった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EP12 星辰奏者

この異聞帯の真実を知ったカルデア一行。

 

絶望に飲まれても彼等にこの地での安息の場は無い。今もなお、

 

 

「居たぞ!反逆者だ。」

 

「大和の血筋の者は捕らえろ。それ以外は殺せ。」

 

「「「我等、大和の遺せし御心のままに!!!」」」

 

 

この地の騎士達が迫り来る。

 

カルデア一行も数多の経験を積んだ者達、彼等騎士達の対処は可能だが手数が足りない。

 

頼みの綱の英霊も何故かこの地では召喚ができない。

 

そんな中に騎士達の上空から何か降りてくる。

 

青を基調とした白銀の鎧を身に纏った戦乙女。

 

 

「は~い。みんな大丈夫?」

 

 

現れたのはカンタベリー聖教皇国第四軍団・紅玉騎士団(カーネリアン)に所属している聖騎士(パラディン)(フォース)である【ミステル・バレンタイン】。

 

 

「ボクたちが何で反逆しているかは分からないけど、ほら命は助けてあげるからね?おとなしくお縄につこうか?」

 

 

慈愛の笑顔を浮かべ、カルデア一行に提案する。

 

されど、自らの使命を再確認した藤丸立香は、

 

 

「いいえ、その提案はお断りします。俺達は俺達の世界を取り戻すために、大切な誰か(仲間や友人、家族)の為に、負けるわけにはいかないんだ!」

 

「先輩!」

 

自らの気持ちを言い放った。

 

 

「フーン。そうかなら仕方ないな。」

 

 

ミステルは、片手に持つ槍を彼等に向け、

 

 

「総員、基本値(アベレージ)から発動値(ドライブ)に移行。反逆者達を鎮圧せよ!我等大和の遺せし御心のままに!」

 

「「「了解、我等大和の遺せし御心のままに!!!」」」

 

「「「創星せよ、天に描いた星辰をーー我等は煌めく流れ星」」」

 

 

カルデア一行は始めてみる星辰奏者(エスペラント)に硬直した。

 

その間にも騎士達は力を高めていく。

 

 

 

 

ーーーーパチン

 

 

ゆびをならす音が聞こえた

 

 

次の瞬間、騎士達の周りが弾けた。

 

 

「な、何が起こった!」

 

 

ーーーーパチン

 

 

再び音がなる。そして起こるは爆発。

 

 

「いやはや、普段民を守ると豪語する君がこんなことをするなど愛しの彼(イカロス)はどう思うだろう?」

 

 

ミステルとカルデア一行の間に現れない男は、彼女の方へ向きながら言う。

 

 

「ああ、そうか。すまない、この世界線の君は出会わない筈だったな。」

 

 

 

男の言葉を理解出来ないと彼女は槍を構える。

 

 

「何を言っているのかは分からないけど、貴方、今話題の機甲巨人化創星録(フルメタルギガース)ね。」

 

 

「ほう、彼も来ているのか。私達だけではないようだね。だけど残念だが私は違うのだよ。まあ、同僚ではあるがね?」

 

 

男は眼鏡を光らせながら答える。

そして背後のカルデア一行に向けて、

 

 

「さあ、星見の者達よ。今は撤退を推奨する。何、殿は私が勤めよう。」

 

 

この言葉を聞き、彼等はお互いを見て頷き即座に駆け出した。

その動きを見たミステル達は捕らえようと動こうとするが男に遮られる。

 

 

「貴方、何者?」

 

 

ミステルは彼女等を足止めしている男に問いかける。

 

 

「彼等風に言うならば、帝国のセイバー。」

 

 

男、帝国のセイバーは剣を抜き彼女等に向ける。

 

 

「そしてこれらが血染処女(バルゴ)だ。」

 

 

次の瞬間、帝国のセイバーに後ろに武装した集団が顕れた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。