Cross World (星の塵)
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序章 若者たちの新たな目覚め
それぞれが大切な「何か」の為に戦った者たちの物語。
そして、これは...
「決意」、そして「信念」を抱き続けたちっぽけで、それでいて偉大な者たちによる、面白くて、ユーモラスで、ちょっぴりせつない、そんな物語。
ここは、軍事大国として発展したデルガタール王国。人口は約2000万に達し、各地の交易の中継地点にもなっている国だ。
その国に、僕...イレブンは仲間の6人とともに来ていた。
「ここに来るのは久しぶりだね...」
「あんたは心配性よね。もう捕まる心配はないから、あんたは堂々としていていいのよ。」
「その通りだぜ、相棒。お前は「悪魔の子」なんかじゃない。周りの人達も、お前のことを受け入れてくれているんだからな。」
ベロニカとカミュがそう言った。
...そう。
僕はかつて、この国に追われていた。
「悪魔の子」と人々から罵られ、何度もピンチに陥り、何度も心が折れそうになった。
だが、ここにいる仲間がいたから、そして僕たちを必要としている人達がいたから、魔王ウルノーガ...いやウラヌスと、邪神ニズゼルファを倒すことができたんだ。
(ちなみに僕は、ウルノーガを倒した後、過去に戻り、再び戦っている。前の時間軸でベロニカを失っているからだ。)
「ユグノア王国の再建も進んでいるようだし、このまま平和が続いていけばいいけど...」
「姫様、ご心配なく。このまま続いて行きますとも。もはやわしらがおらずとも、この世界は平和であり続けるじゃろう。」
そう言うのはデルガタール王女であるマルティナと、僕の実の祖父であるロウだ。
そういえば、グレイグは元気にしているかな?グレイグは、僕の最後の仲間で、この王国の重役を努めている。
今日はそんなグレイグに挨拶しに行こうと、そう思ってきた。
「この城に入るのも久しぶりですわね。」
「いつみても豪華な城よね。アタシ、いつも圧倒されちゃう!」
セーニャとシルビアはそう言った。
僕もそう思う。
この国の繁栄の象徴とまで言われるこの城に入る時は、いつも緊張してしまう。
そうして、入ろうとした...
その時。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴっ!!
「地震だ!!」
ひとまず物陰に伏せた僕達は、地震が収まるまでスクルトで防御していた。
「...ふう。収まったみたいだ。」
「でも、少し揺れかたがおかしかったぜ?」
そういえば、この揺れは、どこかおかしかった。地震というのは、最初に少し揺れてから、大きな揺れが来るものだ。
しかし。
今回はそういった初期微動が無かったのだ。
何か嫌な予感がする...と思ったその時。
カァァァァァッ!!!
「「「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」
辺り一面に謎の閃光が国中、いや世界中に広がり、僕達は有無を言わさず気絶した。
そして...
「×××、大丈夫!?怪我は無い...?」
「大丈夫だ。...何だ、今の地震は!?」
「分からないわ...町の様子を見てきましょうか?」
「いや、僕が行くよ。君はここで待っていて...」
カァァァァァッ!!!
「「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
「不気味な揺れであったな...皆の者、無事か!?」
「は、はい×××様...そちらは大丈夫なのですか?」
「うむ、特に問題は...っ!?」
カァァァァァッ!!!
「きゃぁぁぁぁっ!!?」
「ぬぉぉぉぉぉぉ!!」
「もう良いわよ、出てらっしゃい××××。」
「うん、××××母さん。でも、何か変...!?」
「大丈夫よ、何があっても私が貴方を守ってあげる...!貴方が皆にそうした様にっ!」
「××××母さん...大袈裟だなぁ。...!?」
カァァァァァッ!!!
「「!?うぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
「ダメ、行っちゃダメっ...!!行かないで!!」
『これ...あげるよ。持ってて。』
「でも...でももう、「これ」も消えちゃうんでしょう?私とあなたとの繋がりも!忘れてしまうんでしょ!?」
『大丈夫だよ。もしかしたら起こるかも知れないよ?望んでいいと思うよ、これくらいの奇跡は。...だって、◯◯◯◯は、本当は夢と希望を与えるモノなんだか...っ!?危ないっ!!』
カァァァァァッ!!!
「!?...×××!やめてっ、×××ーっ!!」
「皆、大丈夫?転んでない?」
「平気よ、安心して××。」
「尻餅はついたけど、怪我はしてない。」
「...むむ、何やら怪しい感じが...っ!?」
カァァァァァッ!!!
「「「「うわぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」」
「何よ今の地震...。何かの前触れかしら。」
「おっ、××。異変の匂いか?」
「匂うわね。胡散臭いほどに匂うわね。」
「だったら今回は私にも手伝わせてくれないかしら?×××のサポートということで。」
「いらないわよ×××。いつも通り私一人で...」
カァァァァァッ!!!
「「「いぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」
「何だ今の地震は!?×××××っ!?」
「ご心配なく。町への被害は、ほぼゼロのようです。ご安心下さい、×××様。」
「(嫌な予感がする...お前もそう思うだろ?×××。)」
『(そうですね、私もそう思います。どうされますかマスター?)』
「(どうするもこうするも、何が起こるか分からない。まず皆を召集...)」
カァァァァァッ!!!
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「狼狽えるな皆!地震は小さい!」
「×××、今日は終戦記念日の祭典だ。しかしこれじゃ大混乱が続くぞ!」
「ウチは地震は滅多に起きないからな...この場が大混乱になるのも仕方ないだろ。頼むぞ、×××。」
「分かった!×××も僕便りにせず頑張ってくれ!...苦手だろうけど!...ん?」
カァァァァァッ!!!
「「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
「ここの奥地の調査を頼みたい。これはお前たち二人にしか頼めない、重大な物だ。...やれるか?」
「分っかりましたっ!早速行きましょう、××!」
「やってくれるか、助かる!報酬は多めにしておこう。」
「はいっ!それでは行って来ま...」
カァァァァァッ!!!
「うわぁぁぁぁぁぁ!!?」
「ぬぅぅぁぁぁぁ!!!」
「何なんだ、あちこちで異変が生じてる...まさか、◯◯◯◯◯の、復活...!?いや、そんな訳は無い。」
「いや?もしかしたらあるかも知れないわよ?×××?」
「...何かが起きる。間違いない!!今のうちに手を打たなければっ...!?」
カァァァァァッ!!!
「うぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「くっ...イヤァァァァァァ!!」
「何!?今の地震...。(××...)」
「何突っ立ってるんですか!急ぎましょうよ!××さん!」
「まだショックなのかい...仕方ないけど。」
「××××には...バレてたか?立ち直りたいけど...どうしても、ね。」
「それは、時間でしか癒せないモノなのかも知れませんね...っと、急ぎま...」
カァァァァァッ!!!
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」
「う、うわ...うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「大丈夫?×くん...」
「俺は大丈夫だ、しかしファイトはまだ...」
「揺れからしておかしいとは感じなかったの!?流石に不気味で...」
「この程度で不気味と言うな、続けるぞ×××。」
カァァァァァッ!!!
「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」
「なんか揺れた気がするが構わねぇ!続行だぁ!」
「おうっ!!来いっ××!!」
「×××××で、ダイレクトアタックっ!!」
「くっ、かくめ...」
カァァァァァッ!!!
「「ぬぅわぁぁぁぁぁぁ!!?」」
「何なの!?今の揺れ...」
『××、分かんない...』
「うん、そうよね、そうだよね...。」
「×××!なーんか変な揺れだったよね...どう思う?」
「えっ!?いやいや、流石に関係はないと思うよ?」
「どーだか。もしかしたらもしかすると...」
カァァァァァッ!!!
「「イヤァァァァァァァ!!」」
「風が...おかしい。何かの異変を告げているのかな。」
「さっきの揺れから、顕著だな...××××、より詳しく探れるか?お前の風を読む力は規格外。何か分かるか?」
「ちょっと待ってね、父さん...。!?やっぱり何かおかし...」
カァァァァァッ!!!
「ぬぅぅぁぁぁぁっ!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
あらゆる
ここから、物語は始まる...
「う、うーん...」
気がついた時には僕は森の中にいた。
「こ、ここは一体...」
立ち上がって、周りを見渡す。
しかし。
仲間たちの姿は、何処にも見当たらなかった。
「そんな...まずはデルガダールの町を探してみよう。デルガダールからはそこまで離れて無いはず。何かが...分かるかもしれない!」
焦燥感が身を走るのと同時に、正直何故か心の奥底ではワクワクがこみ上げていた。
今まで築き上げてきた平和が今、このように崩されたと理解してはいても、その感情を消すことはできなかった。
こうして、僕の新たな冒険は、幕を開ける。
あとがき
ども、星の塵です。
如何だったでしょうか、Cross Worldの序章。
お目汚しになってなければ良いのですが。
ともかく、少しでも目に止めて貰えればと思っております。
このクロスオーバー小説は、Pixivの方に連載していた物を内容を少し厚くした物です。要はリメイクです。
今後、基本的な主人公は2人で進んでいきます。
せっかちな方々はPixivの方で何とかたどり着いて下さい。
何で自分がこのようなクロスオーバー小説を書いてるかと申しますと、ただ「好き」なだけです。
書いてる他の皆様方もそうだと思います。
何故クロスオーバーが好きなのかといいますと、妄想だけでは無く、可能性を産むことができるからです。
アイツとコイツがもしその場に居合わせたら?
もしアイツらが仲良くなったらどうなるのか?
そういった物語が産まれると、更にそこからまた物語を産み出せる...それがクロスオーバーの素晴らしい所だと思います。
だから皆様も、挑戦してみては如何でしょう。
「好き」と「好き」を融合すると、核爆発以上の勢いで物語が産まれると思いますよ?
では、ここらへんであとがきを締めさせて頂きます。
今回はCross Worldを最後まで見て下さり、本当にありがとうございます。
気にいった方は、是非とも感想をよろしくお願いいたします。
そして、イレブンやその仲間たちが皆様の心に留まり続け、皆様の決意を満たし続けることを切に願い。
今回はここで、指と言う名の筆を置かせて頂きます。
皆様、今回は本当にありがとうございました!
次回もあるので、お楽しみ!
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第一章 発現する力
仲間と共にデルガタール王城に向かっていたところ、奇妙な地震と謎の閃光により気絶したイレブン。
彼が目を覚ますと...
そこには見知らぬ世界が広がっていた。しかし、そこに仲間はいない...。
「...やっぱり、誰もいない...」
僕はしばらく辺りを歩き回り仲間たちを探していた。しかし、やはりいないようだ。
もう少し探そうと思ったけど、気づいたら日も暮れ掛かっていた。だから...
「近くのキャンプ場は...?」
と野営のために設置されているはずのキャンプ場に行くために、僕は移動用の呪文、ルーラを唱えようとする。
しかし。
「...!?いや、そんなまさかっ!?」
思わず僕はもう一度呪文を唱えた。しかし自身に感じる浮遊感どころか、術の発動すら起こらない。
「なんで、ルーラが使えないんだ...!?」
いくら何でもおかしい。おかしすぎる。
いや、そもそも。
ここは一体何処なんだ?何で僕はこんな所にいるんだ?意味が分からない。
デルガダールの付近の森の風景は、こんな感じじゃなかった。かといって、僕が旅してきた他の場所とも雰囲気は違う。
「はぁ...」
そうこうしている内に、日はどんどん沈んでいく。
皆は今どうしているだろう。不安で仕方ない。
「...悩んでてもしょうがない。町を探すか...」
恐らく、僕、いや僕たちは何者かにあの光によってそれぞれ別の場所に飛ばされたのだろうと、考えをまとめた...
その時。
「(結合された世界が安定しました。これより、結合された世界の法則を一つに纏め、そこに『世界の言葉』を加え、この世界の法則を最適化します。)」
という言葉が、頭の中に響いてくる。
これは一体...という僕の疑問を他所に、頭に響くこの声、恐らく『世界の言葉』なのだろう...は続く。
「(...成功しました。続けて、この世界に集った者の中から条件を満たす者たちを選定します。...成功しました。その者たちのユニークスキルの獲得...成功しました。)」
えっ...どういうことだ?結合って、ユニークスキルって何だ!?
しかし、無情な事にそこで『世界の言葉』は途切れてしまった...。
「待て...状況を整理しよう。」
そう言って僕は歩きながら考えた。
『世界の言葉』は「結合された世界」と言っていた。とても信じがたい話だが...どうやら、僕の世界は他の世界と結合して、改変されてしまったようだ。
また、結合の影響によってこの世界は不安定だったが、たった今安定化したみたいだ。それにより、結合された世界の法則が一つに纏まり、その影響で「世界の言葉」というシステムが追加され、それによって「ユニークスキル」が条件を満たす者たちに与えられた。そして恐らく、その中に僕も含まれているようだ。
そして、見渡す限りではこの一連の影響によりそれぞれの元々の世界の面影がほとんど無くなっている可能性がある。...つまり以前の世界の部分が見受けられても地形が変わっている可能性が高い。
結論として。
この世界...結合世界は誰も知らない、新たな世界だということに僕の思考はたどり着いたのだった。
「そんなことがあるものなのか...?皆は本当に大丈夫なのか!?」
そう言って、僕は歩みを早める。そしてこれからやるべきことを考えた。
一つは、離ればなれになった仲間たちとの合流。これは急を要する。『世界の言葉』のメッセージが全て真実なら、仲間たちはまだ生きているはず。皆はそう簡単に殺されたりはしないはずだが、ベロニカの一件もある。何があるか分からない。
二つは世界を結合させた黒幕の特定、そしてそいつを倒すこと。これは一つ目を成し遂げてからの話になるが、絶対にやらなければならない。当たり前だ。敵の強さがどれ程かは不明だけど、仲間がいれば乗り越えられる筈だ。
...それよりも今は、町を探すことを優先しよう。
「「「グギィィィィッ!!」」」
「わぁっ!?」
森を出るため歩いていたら、すっかり夜になってしまった。その中での魔物からの襲撃である。この世界に来てから、何回か魔物に襲われたが、さほど強くなかった。
その中でには見たことのない魔物もいたが、全て「火炎斬り」で薙ぎ払った。
しかし。
今回は歩き疲れている状態で、集団での不意討ち。僕は不覚にも、一撃を食らってしまう。
「うわっ!!...っ!」
初めて見る敵だ。僕は敵を観察する。
体色は緑色。人型で、貧弱だが武器を携え連携をとりあって行動する魔物のようだ。だが、どうにも知性は低そうだ...。
そんなことを考えていると、
脳内に敵の情報が送り込まれて来る感覚を感じ取った。そしてその情報が、「ゴブリン」という魔物の情報として脳内で自動的に整理されたのだ。
「もしかしてこれが...「ユニークスキル」なのか?...いや今は、敵に集中だ!」
そして、その情報に従って、僕は二本の勇者の剣で「剣の舞」を放ち、ゴブリンたちを倒した。その後...
「...どうやったらさっきの力を使えるんだ?こうかな?」
僕は歩きつつ、動いてくれ、と念じた。すると、さっきと同じ感覚が脳内を駆け巡った。そして、僕の新たな力...「ユニークスキル」の詳細に留まらす、自分の力を全て知ることができた。
キャラクター紹介・ステータス
個体名 イレブン(登場 ドラゴンクエスト11)
種族 仙人 (人間が何らかの影響で進化した種族。寿命が大幅に伸び、内包する魔力量も人間とは桁違いである。)
職業 勇者 (光もしくは闇の精霊と契約する必要があるのだが、元の世界でそう呼ばれているため、それに応じて精霊の力が世界の結合の時に宿り、それにふさわしい状態になっている。)
加護 ロトの紋章 (加護とは、自分とその仲間に与えられる力。種類によって差はあるが、若干身体能力などに補正がかかる。誰かから加護を与えられているという事は、与えている者の存在を証明することにもなる。)
称号 ロトの勇者 (称号とは、その者の人々からの通り名のこと。)
魔法 異界魔法〜元素系統・・・回復、炎、雷(「世界の言葉」が存在していた世界にとって、全く新たな魔法。その中でも、メラやホイミなどを指すようだ。)
ユニークスキル 取戻者《トリモドスモノ》 権能としては思考加速、解析鑑定、並列演算、森羅万象、確率操作の五つ。
五つの権能は、こんな感じだった。よく分からないが、かなり凄いと思う。
思考加速・・・自分の思考速度千倍まで加速可能。状況を判断する時や、魔法の多重発動などに応用可能な能力。
解析鑑定・・・対象を解析し、鑑定する。
敵の情報がまるわかりになる(例外あり)ような、頼もしい能力。
並列演算・・・二つまでの事柄を、自分の思考とは関係なく、同時に演算できる能力。
森羅万象・・・今までに判明している法則を、開示可能な能力。
確率操作・・・ある一つの事柄の起こりうる確率を±30%まで操作できる。
エクストラスキル 魔力感知、思念伝達
(エクストラスキルとは、ユニークスキルには劣るが、本人に宿っている権能の種類の一つ。)
魔力感知・・・魔力が宿った存在を感知可能。この世界の人々には強弱あれど魔力が内包されているため、強大な力を持つ者や身近にいる者の捕捉に便利。
思念伝達・・・対象に対して、思念を送れる能力。仲間同士でのコミュニケーションに使える。
耐性(耐性とは、特定の攻撃などを効きずらくしたり、無効化したりする能力。)
状態異常耐性・・・毒や麻痺などが効きずらくなる。
精神攻撃耐性・・・精神攻撃が効きずらくなる。
聖魔攻撃耐性・・・聖属性や魔属性の攻撃が効きずらくなる。
右手に勇者の痣を宿して「いた」若者。現在18歳。今は滅び、現在再建が進むユグノア王国の王族。王位継承権は第1位。しかし彼は王位継承を望んでいないようだ。
2年前、人々やデルガダール王国から「悪魔の子」と汚名を着せられ逃亡や戦いを繰り広げたが、先代勇者ローシュの仲間にして、ローシュを殺害した魔導師ウラヌス(ウルノーガ)を策謀の真犯人として討つことで、汚名返上を果たす。そしてその直後、ウラヌスの凶行の原因にして諸悪の根源である脅威、邪神ニズゼルファを仲間と共に打ち破った。勇敢さと優しさを兼ね備えた性格。幼なじみのエマを妻としている。
...しかしまぁ、僕にいきなりこんな力が宿るなんて思いもしなかった。
それに...僕はもはや、人間としての枠組みを越えた「仙人」になっているようだ。世界が結合した時に、知らず知らずの内に精霊の力が宿ったのか?
ちなみに、能力の使用方法は使いたいと思えば発動できるようだ。
町に着いたら、まず能力に慣れる必要がありそうだ。そして、今まで覚えた技(
そうこうしている内に、森を抜けた。向こうに見える山から出てきた朝日が、僕を照らす。その麓には、町が。僕がこの世界で初めてみる、人々の営みが見えた。
新たな力を得た僕は、その足を力強く踏み出す。新たな世界の、本当の入り口へと...
あとがき
ども、星の塵です。
今回もCross Worldを見て下さり、ありがとうございます。
今回の創作テーマは「発現」です。
感づいた方も多いと思いますが、あの作品の世界観のベースを組み入れたのが、この作品になります。ですので、能力の発現に関しては、Pixiv版だと書き方が甘いと思ったので、文章を添削して自然な感じに仕上げました。...ちゃんと仕上がってる?大丈夫かな?
不安で仕方ありません。
さて、あとがきは短いほうがいいです、そろそろ締めさせて頂きましょう。
今回もCross Worldを最後まで見て下さり、本当にありがとうございました。
少しでも面白い、続きが気になる!...という方は是非とも評価をよろしくお願いいたします。辛口評価でもドンドンよろしくです!
Pixiv版を先に見て、評価して下さっても構いません!
ではでは、イレブンやその仲間たちが、皆様の心に留まり続け、皆様の決意を満たし続ける事を切に願い。
今回はここで、指と言う名の筆を置かせて頂きます。
皆様、ありがとうございました!
次回もよろしくお願いいたします!
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第二章 清き光の聖戦士
謎の地震と閃光により、世界が結合するという、とんでもない事態となった。
そんな中イレブンは、『世界の言葉』を聞く。それによるとイレブンは新たな力、『ユニークスキル』を得たとのこと。
彼は『ユニークスキル』の発現に困惑したが、それでもそれを物にしてみせることを決意。
仲間との合流と黒幕の撃破に向け、森を抜けた彼の足は麓の町へと動き出す。
その正面から、朝日がイレブンを照らしていた...。
ここはバロン王国。
イレブンの世界のデルガタール王国と同じく、軍事大国である。
人口は3500万人。主要産業は飛空挺の生産だ。しかし、今はそのような状況が終わろうとしていた。
この国の現国王、セシル・ハーヴィの手によって。
彼が推進しているのは、軍縮政策だ。
彼は『光の戦士』である。そんな彼は、かつて仲間たちと共に大いなる闇、『完全暗黒物質』ゼロムスを打ち倒しているのだ。
彼と、その妻ローザによって国は再び元通りの平穏を取り戻そうとしていた時に...
世界の結合は、起こったのだ。
僕はようやく、町についた。遠目からみた時にも感じたけど、かなり大きな町だ。大きな城もある。かなり戦時の時を意識した造りだ。ここなら、もしかしたら誰か1人ぐらいはいるかもしれない。
衛兵に聞くと、ここはバロン王国という国らしい。王国だったのか!
だが。
「やっぱり国中混乱してるな...」
そんな中で、ようやく今日の宿を取ろうとしたが...
どうしよう?
全く別世界の人に、僕の世界の言葉が通じるのか?そして、支払いはゴールドで大丈夫なのか!?
そんな不安の中で交渉してみたのだが...
「ああ、あんたさん、大丈夫じゃ。その得体の知れない銅貨16枚(16ゴールド相当)で大丈夫じゃよ。」
「いいんですか?」
「構わんよ。この国では80ギルに相当しそうなものじゃし...何より、あんたさんみたいな訳ありが、あの光と地震のあと増えたからのう。」
「そうですか、ありがとうございます!」
やった!
通じた、よかった!...んん?
「...何で通じたんだろう?」
僕はそう思い、新たに手にいれたこのユニークスキル...「取戻者」を起動する。
使うのはまだ慣れないが、なんとか権能の一つ、「森羅万象」を使って調べると。
(解析系統のスキルを持つ者は、意味ある発音、理性ある発音は、自らが判る言語として認識される)
と出た。
「そうなんだ...まずは辺りを調べてみるかな。」
宿を出ると、様々な会話が聞こえてくる。
「俺達、本当に大丈夫なのか!?」
「焦んなって焦んなって!!...まぁ俺も不安で仕方ないけどよ...。」
「×××様...私たち、大丈夫ですよね...?」
概ね今の状況に対する不安の声ばかりだ。そんな中だけど、食料を買おうと思う。幸いにも、所持金は減っていなかった。
僕は市場に向かう。そこには、宿の前よりも混乱の色が見受けられた。しかしそんな中でも、商売を根気よく続ける人達も一定数いる。
「すみません、これはいくらですか?」
この国の物の価値はまだよく分からない。だけどさっきの宿の話から、僕の世界の『ゴールド』よりも『ギル』の方が価値は低いし、出費は少なく済むかも。
「...んん?なんだいその見たこともない銅貨は。まぁいいか、この銅貨30枚でパンと野菜の1セットとしよう。...それでどうだ?」
「ありがとうございます!助かります!」
「いいってことよ!『アレ』以降本当にお前さんみたいな訳ありが増えたからなぁ。臨機応変にいかんとな!」
パンと野菜を入手できた。僕がとった宿では、ご飯は出ない。自費で調達するしかないのだ。だから余計にありがたく感じる。
その後は町全体の散策にでかけた。本当にいないのか?この町には...。
そう思ってあちこちを探したが、とうとう見つからなかった。
...もしかしたら、この国には、いない...!?
そんな思いはあったのだが、気づくと夜になっていたので、宿に戻って寝床についた。
そうして、この世界の二日目は過ぎ去った。
そして次の日。三日目である。
「どうしよう...仲間はどこだろう?」
これだけの大きな国なら、一人ぐらいいそうなものだが、やはりここにはいないようだ。
...しかし、ここで何の収穫も無しには終われない!
「...こうなったら、あの手を使うか...。」
僕はそう言って、歩き始める。
目的地は、王城だ。
「止まれ!」
「貴様、何しにここへ来た!」
城に入ろうとする。しかし予想通りというか何というか、2人の門番の兵士がそれを阻む。
「国王様に会いたい!頼む、通してくれ!」
「会いたいだと?この状況でよくそんな口をきけたものだ!」
「どうせ貴様は、この混乱に乗じて国王様を暗殺しようとしているのだろう!そうだろう!?」
僕は本心からの言葉を兵士に伝えたつもりだったのだけど...気が立っている。これでは会うどころの話では無い。だけど...伝えるしか無いんだ!
「暗殺なんてするなら...正面から来てないっ!信じて欲しい!僕は仲間の動向を知りたい!そして協力してくれる人が欲しいんだ!!」
「「むっ...。」」
さすがに狼狽えたようだ。2人はお互いに相談しあっている。そして...
「...分かった。その思いに免じて信じよう。但し!国王様の許しがあるまで城内には入れさせん!分かったか!」
「...!ありがとう!」
やがて、門番の1人が城内に入っていった。
「私に会いたいと申す者がいる?」
そう言うのは、バロン国王、セシル・ハーヴィ。 「はっ!その者は仲間を探しておるそうで、国王様のお力を借りたいと申しておりますが...このような時に来るなど、あなた様のお命が奪われかねません!!」
近衛兵はそんなことを言っているが、
セシルはこの時、何かを感じていた。
混乱したこの国に何かをもたらしてくれるような、そんな気配を感じ取っていたのだ。
そして彼には、それ以上に心配な事があった。
ここで動かなければ、いつまでも今のままだ。そう考えて...
「会おう。その者を玉座の間へ!」
「なっ...宜しいのですか!?」
「国王として命ずる。早くその者を連れてくるがよい!」
「はっ!!」
その運命の出会いは、間近に迫っていた。
バロン王城。
デルガタール王城とは違い、やはり実戦向きの堅牢な城のようだ。
あの城を見慣れてしまったせいか、中も少し地味に感じた。
自分でも無茶だと思っていたけど、王様が寛容なのか、忙しい筈なのに意外と早く通して貰えた。
そして。
今目の前に立っているのがこの国の国王。
セシル・ハーヴィ、その人だ。
「皆の者、一旦下がるのだ。」
その言葉で、周りの兵士が部屋から一斉に退出する。
そして彼は、気が抜けたかのように深いため息をついた後、
「...そんな縮こまらなくていいんだ。」
「は、はい。」
そんなやり取りをした。
この人、実は気さくな人柄なのかなと考えていると、
「では改めて。初めまして、僕はセシル。セシル・ハーヴィだ。セシルと呼んでくれ。君は?」
ここは相手に合わせよう。
「初めまして、僕はイレブンだ。」
「イレブンか...とてもいい名前だね。」
こうして僕達は、握手しあった。
そして、これが僕にとって、この世界で初めての...運命の出会いとなったのだ。
「ひとまず、場所を変えよう。ここじゃ兵士たちが聞いたらいけない事もあるだろうから。」
そのあと、セシルは小声で、
「(僕はまだ、国王となって日が浅いんだ。こういうのはまだ苦手だからね...)」
と言った。
僕はセシルに、かなり親近感を抱く。もしかしたら僕と同じで、あまり王位継承を望んでなかったのかも知れない。
「座ってくれ。」
「失礼します...」
ここは、セシルの私室。バロン城の中では珍しく、かなり豪華な部屋だった。
僕は改めてセシルを見る。
身長が僕よりもかなり高く、178センチ位だろうか。(ちなみに僕は162センチ。)
鎧は白と淡い青色で、髪は白。
責任感が強そうにみえる、そんな感じがした。
そして、僕は自分の身の上を語る。
自分は今回の件でこの結合した世界にきたこと。
元の世界では「勇者」と呼ばれていたこと。
そして、この町に来た経緯を。セシルも、自分の身の上を語ってくれた。
「世界の結合については、あの『世界の言葉』から聞いたよ。ほら、突然脳内に響いてきた...」
「僕にも聞こえたよ。ちなみにセシルは何処かに飛ばされていた、なんてことは起きてないようだけど...もしかして僕だけなのかな?」
「うーん、よく分からないな。何にせよ情報が圧倒的に足りない。もっと何か情報はないのかい?」
そんな会話がしばらく続いたあと...
いよいよ本題だ。
「それで、仲間を探していると言っていたね。」
「ああ、今回の件で仲間とはぐれてしまって...」
「なるほど。奇遇にも僕と同じみたいだね。」
うん?もしかして...
「僕も今回の件で、仲間が三人、行方が分からなくなっている。世界の結合の影響で、僕が知っている国の位置も掴めなくなったんだ。...僕はこれから、ローザにしばらく国を預けて、仲間たちを探しにいこうとしたところに...」
「同じ目的を持った僕がきた、という事でいいのかな?」
僕がそう言うと、セシルは頷きながら、
「僕たちは同じ志を持っている。そして君となら何でもやれる気がするんだ。だから、僕と一緒に来て欲しいんだ!」
何だって!?それは...!
「...!願ってもない話だ!よろしくお願いするよ、セシル!」
「ああ、こちらこそよろしく頼むよ、イレブン!」
こうして、セシルがこれから先の旅に加わることとなったのだ。
そしてその日は、城内で一夜を過ごすこととなった。
「君の実力、試させて貰うよ!」
「来い!セシル!」
夜の8時頃、セシルから呼び出された。なんでも、訓練に付き合って欲しいとの事。
セシルの剣も、僕の剣も訓練用の剣だ。
「へぇ...二刀流なんだね、イレブン。」
「その方がやり易いからね。」
そう言葉を交わし、そして。
「でりゃあぁぁぁぁぁ!!」
「はあぁぁぁぁぁぁ!!」
お互いの剣がぶつかり合う!
ガン!ガン!ギン!
端から見れば、お互いに互角だろう。まぁ実際そうなんだけど...やはり、やりにくかった。
「(一撃一撃が重いっ...下手すれば折られるっ!)」
だが僕は、ある弱点を見つけることができた。それは...
「隙あり!僕の勝ちだ、イレブン!」
「それはどうかなっ?」
そう、僕はセシルの剣撃の衝撃でフラついた...ように何とかみせかけたのだ。
するとセシルは思った通り、その隙を逃さずに追撃する。
「そこだっ!!」
僕はセシルの攻撃を予測して、その攻撃線上から反れる形でスライディングをして背後に回った。
「!しまったっ!!」
「これで、僕の勝ちだ!!」
ガンッ!!
鈍い音と共に、セシルの胴に一本入った。
「負けた!負けたよ、今回は君の勝ちだ。...勝てたと思ったんだけど...早計だったみたいだね。」
「こっちだって、危なかったよ。攻撃速度なら、間違いなく僕が上だろうけど...攻撃力は間違いなくセシルが上だ。剣が折られるかと思ったよ。でも、『あの時』勝負を急いだのが、君の敗因かな?」
「そうだね、僕の今後の反省点だ。...次は負けないぞ。」
「今後も、こうやってお互いを高めあっていきたいものだね!僕だって、今後の勝ちを譲るつもりはない!」
「「アッハハハハハハッ!!!」」
すっかり仲良くなれて良かった。
そして、気づいたら10時になっていた。僕たちは急いで、ベッドへと転がりこんだ...。
翌日。
城の中で旅の準備を整え、出発しよう...という時に、セシルの妻、ローザが駆けこんできた。
「セシル...やっぱり行ってしまうのね。」
「ローザ...すまない、しばらく城を空ける事になる。待っていてくれるかい?」
「どうしても?私、あなたのことを思うと不安で不安で...!!」
「...すまない。でも、カインやリディア、エッジが心配なんだ。この状況を何とかするには、あの三人が必要なんだ。だけど、ローザまで国を出たら誰がこの国をまとめるんだ?それに...セオドアはどうするんだ?」
「!!...それは...。」
「大丈夫だ、すぐに戻ってくる。」
「...わかった、信じるわ。あなたを...私の大切なセシルを。絶対に、戻ってきてね...!!」
それにセシルがゆっくり頷くと、僕達は城を出る。
新たな仲間も加わった。そして準備も整った。
「あなた!私の事はもう大丈夫、バロンは任せて!」
強いな、ローザは...
そんな呟きが、セシルから聞こえてきた。
さあ、出発の時だ。
「行こう、セシル。」
「あてにしてるよ、イレブン。」
「ああ、任せてくれ!」
その足は、まだ見ぬ世界へと歩み始める。大いなる使命のために...。
キャラクター紹介・ステータス
個体名 セシル・ハーヴィ(登場 ファイナルファンタジーⅣ)
種族 仙人
職業 パラディン(聖なる力を宿した騎士。 回復魔法にも精通し、魔法に強く、馬を駆るのも得意。槍と剣を扱う。)
加護 クリスタルの加護
称号 光の戦士
魔法 異界魔法〜結晶系統・・・回復、補助(世界の言葉が適用していない世界の魔法。その中でも、ケアルやメテオなどを指すようだ。)
ユニークスキル 『
聖魔反転・・・自らの攻撃に含まれる聖属性を魔属性にすることができる。また、逆も可能である。あらゆる敵に対応することができる。
法則操作・・・魔法を発動するのに欠かせない「魔素」を操作できる。魔法での戦いで圧倒的有利をとれる。
エクストラスキル 魔力感知(一章を参照)
耐性 状態異常耐性 聖魔攻撃耐性 精神攻撃耐性(一章を参照)
バロン王国の現国王。即位から1年経過している。現在20歳。温厚だが、気を背負い込みやすい性格。元々は前国王の元でバロンの最大戦力とも呼べる飛空挺団『赤き翼』の隊長を務めていたが、前国王の命令で各国のクリスタル強奪に関与していたが、耐えきれずに離反。それ以降、クリスタルを巡る戦いに身を投じ、最終的には戦いの中で出会った仲間と共に『完全暗黒物質』ゼロムスを葬りさることに成功した。
あとがき
ども、星の塵です。
今回もCross Worldを見て下さり、ありがとうございます。
今回のテーマは「追加」です。
作品を盛り上げる為に、Pixiv版では無かったシーンを入れてみました!
主に、イレブンとセシルの友情の始まりを意識して書いたつもりです。
どうでしょう、上手くできてますでしょうか。
それではあとがきを締めさせて頂きましょう。
今回もCross Worldを最後まで見て下さり、本当にありがとうございました!
この作品が面白い、と思ったら、忌憚無い感想や評価を是非お願い致します!
そして、イレブンやその仲間たちが、皆様の心に留まり続け、皆様の決意を満たし続けることを切に願い。
今回はここで、指と言う名の筆を置かせて頂きましょう。
皆様ありがとうございました!次回もお楽しみに!!
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第三章 決意と円環
あらすじ
軍事大国バロン王国にたどり着いたイレブン。彼はここで、今の世界の現状を分かりやすい形で知ることとなった。また、どうやら仲間はこの国にはいないことも。
彼は意を決し、王城に出向くことにした。その結果、彼は現国王、セシルと運命の出会いを果たす。
イレブンがかつて「勇者」と呼ばれる存在ならば、 彼は「光の戦士」と呼ばれる存在であった。
そして翌日、すっかり意気投合し出発の時。
「行こう、セシル。」
「当てにしてるよ、イレブン。」
「ああ、任せてくれ!」
彼らは歩み続ける。大切な仲間の為に。そして、全ての世界の為に...
彼らの胸には、そう「信念」が宿っていた。
そしてこの世界ではまた一つ。彼らの知られざる所で。
「決意」の物語が始まっていた...。
君は、「奇跡」を信じるか?
意見は分かれるかも知れない。しかし大抵の人の答えはNO、だろう。
ある世界。そこは一見普通で、特筆すべき所も無い世界だ。
しかしその世界の裏では、それぞれの「願い」の為に壮絶な闘いが繰り広げられていた。そしてそこでは幾多の血が流れ、絶望の感情が渦巻いていた。
真実へと辿り着いたある者は、「運命」を変える為に、そしてその者が守りたい者の為に真の闘いへと身を投じる。
しかしその者を嘲笑うかの如く、世の理は現実を突きつける。
それでもその者は不屈の心で抗った。諦められなかった。...しかし結末は同じ。
これが、「運命」だと、言わんばかりに。諦めろと言わんばかりに。
それでも...その者は闘った。諦めなかった。
その者の中には、間違いなくある
やがて、そんな世界に変革の光が差そうとしていた。
それは過去、そして現在の悲劇が全て無と帰し、未来を繋ぐ。「奇跡」とでも言うべき、そんな光だ。
しかし「等価交換」という、どの世界でも不変にして絶対である理からは逃れられない。それを願い、導いた者はその光を、「奇跡」を生んだ代償を払うこととなる。それはその者にも分かっていた。覚悟していた。
この時、その者にも。間違いなくある
しかし、どうやら世界というのは物語を光の中に完結させてやるほど甘くはないようである。
その者が生み出す光の中。その中に間違いなく侵食していった別の光があった。
それこそ...
さて、話が長くなった。ここで最初の質問とはちょっと変わった質問をしよう。
君は...君たちは「決意」を、信じるか?
これは、勇敢に進む者たちの「信念」の物語とやがて交わる、少年たちの「決意」の物語である。
「う、うーん...」
僕はフリスク。ニンゲンの町で暮らしていた、そこらへんにいそうな子供に過ぎない...けど...
これはどういう状況だろう?
僕はニンゲンの町で暮らしていた、と言った。つまり、前は違うという事なんだ。
僕は...地下でモンスターたちとしばらくの間、過ごしていたんだ。
モンスターたちは、アボット山の地下にニンゲンたちに封印されていたんだ。
僕はアボット山の地下に落ちた、という訳なんだ。
僕だって、最初は警戒したけどすぐに気づいたんだ。
モンスターたちは、皆優しいんだって。
だから、僕は彼らが好きになった。そして、この地下から出してあげたい、モンスターとニンゲンが共に仲良く暮らせる世界を見てみたい...って思ったんだ。
僕には、「決意」という力が人よりもたくさん宿っているらしい。運命を変えようとする力...生きたいと思う力...それが「決意」。
パピルス、サンズ、アンダイン、アルフィス、メタトン、アズゴア父さん、トリエル母さん、フラウィー...いや、アズリエル。そして、地下に囚われているモンスターたちの為に、僕は、「決意」を抱き続け、進み続けた。
だけど...僕はあの時、僕の友達、アズリエルを...救うことができなかったんだ。
アズリエルは今、あの地下の中で...魂《ソウル》を持たず、意思のみを持つお花、フラウィーとして生き続けている。
地上に上がる時、アズリエルがフラウィーになる前に、僕は彼を迎えに行った。一緒に行こう、って。そしたら彼は、寂しそうに首を振ったんだ。
責任を感じてるからなのかも知れない。
もう十分救われたんだ、とも言っていた。
違うよ、救われてない...って言おうとしたけど、その時には彼は目の前から消えていたから、よく分からない。
だから彼にも...あの朝日を見せたかったな。
今でも、彼を真に救えなかったことを後悔してるんだ。
......。
今はそんな感傷に浸っている場合ではなかったね。
話を戻そうか。
今僕は、洞窟の中にいる。地下じゃない。
あの地震と光のあと、僕は若干浅い、洞窟の中にいた。草も生えている。
しかし、その回りの光景の中で最も異質な存在感を放っている物があったんだ。それは...
綺麗な服を着た、桃髪の女の子だった。
身長は145ぐらいかな?あちこち傷だらけだが、今はまだ、大丈夫そうだ。あちこちに装飾がある。こんな派手なのを着て、よく恥ずかしくないな、と思った。
...って!観察してる場合じゃない!
すぐに行動に移らなきゃ!
「大丈夫?起きれるかい!?」
「う、ううっ!?あ、あああぁぁぁぁっ!!」
「!!?」
明らかに異常な状態だ。うなされているというか、苦しんでいるみたいだ。
今、自分は何も持っていない...訳ではないけど、この局面では使えないものばかりだ。
ならば、彼女の持ち物で、役に立ちそうな物はないかな...?
よく見ると、彼女の胸の部分に埋め込まれている宝石の様な物があった。
「!?...これはヤバい...!!急がないと!」
僕なら分かる。あの宝石みたいな物の正体は...
この子の、
その得体の知れない
それにこの場所。僕にはサッパリ見覚えはない。あの地下にこんな場所なんて無かったハズだ。もしかしてこの子が関係してるのか?それすらも分からない。ああもう!分からないことだらけじゃないか...。
...そういえばこの子からは、さっきから不思議な何かを体中から感じていたけど、一言で言えば...
トリエル母さんが使っていた、「魔法」の力に近い。
この子は、もしかして自分の魂を削って「魔法」を使って戦っていたんだろうか...?
魂を削れば、その影響で人が誰しも持っている「決意」も、どんどん壊れてしまうんだ。そして壊れた「決意」はそのまま精神を汚してしまう...だとすれば納得できる。
この子の決意は、まるで建物が古くなったなり地震に見舞われたなりでボロボロになったかのような、今までにない壊れ方をしていた。
この子は、限界まで魂を削ったんだろう、このまま何もしなければ、もうすぐ死んでしまう。でも、このまま黙って見過ごす訳にはいかない。
...だったら、こうするしか無い!
ズオオォォォォォォッ!!
「(う、ヴゥゥッ...まだ、まだだっ...!!意識を、意識を保てっ...!持ってくれっ...!!)」
そんな音がした後、この子は遂に大人しくなった。
「ハァッ...ハァッ...ハァッ...!!」
荒療治で、こんなの初めてだけど...上手くいって良かった...。
彼女が持っていた
何をしたかのか、って?
答えは簡単、自分の「決意」をこの子の
...最も、彼女の
下手すれば、自分が死にかねなかった。だけど、やっぱりこの子を捨て置ける訳、無いじゃないか...!!
僕の治療が終わったあとびっくりしたのが、彼女の服が、光をたたえたあとジャパンの学生服になった。
ということは、彼女は日本人なのかな?考えていても始まらない。
「おーい、大丈夫かい...?」
「......。」
反応は、無い。一応、脈は正常だ。トリエル母さんに脈の測り方なんかも、教えて貰ってたんだ。
その時。
「ヴぅっ...目眩っ...。ダメだっ、意識が...。」
やっぱり...やっぱり、無理しすぎてた...みたい、だ...。
「...夫?」
あれから、何分たったんだろう。何時間だろう。よく、分からないや...。
「大...夫?...きて...起...。」
誰かが、呼んでる?誰、だろう...。トリエル母さん、じゃないな...。
「...大丈夫?起きて、起きて!」
いや、この声は。もしかして...!
目を覚ますと、あの子が座ってこっちを見ていた。
「...いつ、目を覚ましたんだい?」
「さっき、かな。でも...」
次の言葉を言うのを躊躇しているのかな...?
そんな事を思っていると、
「私...なんでここにいるの?私は、私はあの時...。」
あの時?
...やっぱり訳アリか。
「よく分からないけど...とにかくキミが助かって良かったよ。」
「助けて、くれたの...?」
「困ってる誰かを助けるのは、当たり前じゃないか。...キミ、名前は?」
「...見滝原中学二年の、
「僕はフリスク。そんじょそこらにいる、ただの子供だよ。よろしくね。」
「う、うん...。」
この出会いが、必然かあるいは偶然かは、分からない。そして今、僕たちがどんな状況に陥っているのかも、分からない。分からないことだらけだ。
だけど、それでも...
僕は、目の前のまどかの命を救うことはできた。まずはそれを素直に、喜ぶぐらいは許される、よね?
あとがき
ども、星の塵です。
今回も、Cross Worldを見て下さり、ありがとうございます。
今回から別陣営、フリスク編です。この作品はイレブン編とフリスク編、そして途中で差し込まれる外伝で構成していく予定です。皆様、どうかよろしくお願いいたします!
今回のテーマは「願い」です。
自分の解釈では、「願い」というのは「決意」の形成における重要なモノであると考えています。
皆様はどう思いますでしょうか。ここら辺の話題は結構複雑で解釈もそれぞれで違いますからね。
皆様の意見を聞いてみたいものです。
さて、そろそろあとがきを締めさせて頂きましょう。
今回もCross Worldを最後まで見て下さり、本当にありがとうございました!
本当に少しずつですが、心の何処かで応援してくださる方が増えてきたように思います。
それを支えに、これからも頑張っていきたいと思います!
そして、この作品が面白いと思ったのなら、ぜひ感想をよろしくお願いいたします!
イレブンやフリスク、その仲間たちが、皆様の心に留まり続け、皆様の決意を満たし続けることを切に願い。
今回はここで、指という名の筆を置かせて頂きます。
皆様、次回もまたお楽しみに!
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第四章 絶対決意
イレブンたちが旅立ったころ、遠く離れた場所でもう一つの物語が始まっていた。
少年フリスクと、少女まどか。この二人の出会いが、二人に、あるいはイレブンたちに、結合したこの世界に、何をもたらすのだろうか...。
「...で、ここは何処なの?」
「わからないけど...地下洞窟みたいだね。まあ、僕にとっては、見慣れた光景だけど。」
「...えーっと、フリスク、君?」
「フリスクでいいよ。呼び捨ての方が、聞き慣れてるからね。」
歩き出した僕たちは、そんな会話をしていた。会話は続く。
「洞窟が見慣れた光景って、洞窟の中にでも住んでいたの?」
「そんなわけないじゃん。確かに、一時期地下にいたけど、今は町で暮らしているさ。...そういえばさ。」
「な...なに?」
「僕はあの光と地震の後に気を失って、ここにいたんだよ。キミもそうなのかい?」
「...私は...。」
すると、まどかは言い淀んだ。
「(私は...あの時消えた筈じゃなかったの...?)」
僕は、言い淀み悶々と悩み始めたまどかを見て、
「(これは相当な心の闇を抱えていそうだ...。解決には時間がかかりそうだよ。)」
と、くせで解決策を模索していた。相手のことも全く何も知らないくせにね。やっぱりお人好しだなぁ、と自分でも思ってる。
一方、心優しい少女まどかはというと、
「(言える筈もないよね、あの事を。誰にも背負わせたくないよ...。)」
まどかは、あの出来事を絶対にフリスクに話さないと決めた。話したら、自分の命を救ってくれたあの少年は、間違いなく重荷を背負うことになる...
そう思っての、判断だった。
それぞれが思案しているうちに、光が見えてきた。ようやく、洞窟から出られるのだ。
「外が見えてきたよ!」
「よーし、気を引き締めていこう!」
洞窟の中で、ある程度互いの事を理解することができた僕たちは、そのまま洞窟から出ようとして...
「っ!?な、なんだよこいつら!!」
僕は思わず叫んだ。
洞窟の出口に、たちふさがった者がいたからだ。
人の形をしているが、明らかに人ではないことが分かる。何故なら、体は腐り果てて、まともに生きているとは思えないからだ。
「こ、こいつらまさか...。」
「う、うん...!」
...二人はまだ、世界が結合していることを知らない。二人が目覚める前に「世界の言葉」がそう宣言したのだが...分かる筈もない。だが、ゲームがある世界に住む者たちだ、その正体を看破するのに、そう時間は掛からなかった。
「「ゾ、ゾンビだっ...!!」」
僕たちは頷く間もなく、逃亡に移った。
僕たちは人間だ。人である以上、あの姿に嫌悪感を抱かない方がおかしいのだ。
僕たちは何とかゾンビたちを撒いた。相手の足が遅いのが味方したみたいだ...。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ...何でだよ!地下にはあんなのいなかったよ!」
「分かんないよ、私にも!」
へとへとになった僕たちは、座り込んだ。
...しっかし、浅いとはいえ、結局洞窟の奥まで進んじゃったよ。...ん?
「...!危ない、伏せ...!」
くそっ!遅かった...!!
今度は、何処からともなく、火球が飛んできたんだ。狙いは間違いなく...まどかだ!
「あ、あぁぁ...!!」
...どうやらまどかは、とっさの恐怖で火球がゆっくりに見えているみたい。何にせよ、まどかが火だるまになるのは防がなきゃ...!!
「(確認しました。個体名 鹿目まどかにユニークスキル『
その時。まどかは突然、ぎこちない動きで両手を前に突きだした。
すると。
ボゥゥンッ!!!
「あ、あれ?...」
実行した本人、まどかは思わず間抜けな声を出す。
...今、一体何が起こったんだ...!?火球を打ち消すなんて、普通じゃ出来ないよ。
僕がそんな事を考え始めた矢先、おぞましい姿をした「何者」かがやってきた。火球を放ったのはこいつらしい。
「くけけけっ。こいつ、俺の
今度は悪魔か...。悪魔と言うと、人を誘惑するだとか、高位の魔法を使うだとか、そういう認識だ。
ゾンビにしても、悪魔にしても、あの地下王国にはいなかったハズなんだけどな!本当にどうなってるんだ。
「...本当、なんなんだろここは。化け物だらけだよ。」
「悠長にしてる場合じゃないよ!どうするの!?」
まどかがそう叫ぶ。そうだよ、そんな事言って現実から目を背けてる場合じゃない。
だけど、いつも通りの戦法が使えない。後ろにいるまどかを守りつつ、目の前の脅威をすり抜けるなんて僕には無理だ。
何故なら休んだとはいえ、決意の放出のせいで体力も消耗してるし、体の動きも悪い。よく見ればセーブ場所なんて所も今まで見かけていない...。
手詰まり...?つまり、それは...。
本当の意味で、死ぬかも...!?
...嫌だ。嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
何も分からないまま、ここで死ぬのはゴメンだっ!!
...その時。聞こえてきた。
「(確認しました。個体名 フリスクにユニークスキル『
そして、感じた。気づいた。その瞬間、体の調子が完全に戻っていたことに。
「(行けるっ...!!)」
だから、いつものように。
悪魔に近づいて見ることにした。
「何してるの!殺されちゃうよ!」
しかし、僕は意に介さない。
そこに、悪魔の氷魔法が僕の目の前に飛来するが、
僕は、首を傾けただけでそれを避ける。
「...このクソガキがぁぁぁぁ!!」
突然近づき、そして難なく魔法を回避する僕にムカついたのか、全力で悪魔は魔法を連射した。
どうやらこの悪魔、大分沸点が低いみたいだ。まどかには目もくれてない。そのおかげで、まどかは一応安全なところまで退避できたみたいだ。これなら巻き込む心配は要らないね。
それに、体の調子が戻ったこともあって攻撃をかわすことは余裕だった。
僕はかわしつづける。近づきながら。
「こんなの、アンダインの槍より楽勝だよ!」
「凄い...」
まどかはあり得ない目でフリスクを見ていた。
自らにも戦闘経験はあるが、できればもう戦いたくない。そして、あれを至近距離でかわしきれるかと言われるとそれは無理だ、と思案して、
「(やっぱり、この子只者じゃない...。何者だろう?)」
ここにきてから、疑問は尽きない。
自分のことも、友達のことも、フリスクのことも。
だが、今は。
フリスクの戦いを、見ることしかできない。
そして、フリスクと悪魔の戦いの決着は呆気なくついた。
フリスクと悪魔の距離がほぼゼロ距離になったと同時に、フリスクは誰もが想像することができない行動をとったのだ。
それは。
「キミの上司は怒っているみたいだよ?元の場所に戻った方がいいんじゃないかなぁ?」
「は...??」
「えっ...??」
フリスクは、悪魔を口説き始めたのだ。
普通なら、通用する筈もない。
だが。
「えっ...そんな...まさか...
上位悪魔(グレーターデーモン)様がお怒りだと!?」
「そうみたいだねぇ?早くしないと、ヤバいんじゃないかなぁ?」
「嫌だ...滅ぼされるのは嫌だぁぁぁぁ!!」
しゅん!!と音がしたかと思うと、既に悪魔はいなくなっていた。
「「......」」
ちょっとした戦いの後。
僕たち二人には、驚きの感情しかなかった。
「「ユニークスキルって...何?」」
まどかは、火球を知らぬ間に打ち消した。
僕は、いつものように口説いてみたけど...まさかあそこまで効くとは思わなかったよ。
よく考えてみたら、最初からおかしかったんだ。
自分たちの住んでいた場所、いや、地球上に存在する訳がない生物だらけだった。
更に。
周りの風景は、紫色の水晶だとか、変な色の草など、現実にあるわけがないものばかりだった。
そして、脳内に響いてきた、無機質な声。何もかもが、現実離れしていた。
つまり...
僕たちが知っている言葉で表すならば。
「ここって...」
「もしかして...」
「「異世界...!?」」
その言葉しか、浮かばなかった。
僕たちはその事実を悟ると、急いで自分たちのユニークスキルとやらを確認しようとする。
しかし、方法がわからない。
色々と試してみたのだが、どれもダメだった。
そして、約10分後。
「精神を集中させてみようよ。もしかしたら...」
僕の案を、早速試してみることにした。
すると、僕の脳内に情報が流れ込んで来たんだ!
「こ、これは...!」
僕たちは自分たちのユニークスキルを確認することに成功した。そして、今の自分たちの状態、及び世界の状態までも知ることができたんだ。
キャラクター紹介・ステータス
個体名 フリスク
種族 人間
職業 すっぴん(いわゆるフリーター。特筆する部分はない。)
加護 決意の紋章
称号 決意の申し子
魔法 なし
ユニークスキル 「絶対決意」(ユルガヌケツイ)・・・決意操作、運命変更
決意操作・・・決意を操作、あるいは別の力(魔力や腕力)に変換可能。かなり万能。
運命変更・・・1日一度限り、確実に死ぬ攻撃などを受けても、死なない。
耐性 痛覚無効・・・(痛みを感じなくなる)
精神攻撃無効・・・(精神攻撃が効かなくなる)
見た目だけなら、どこにでもいそうなアメリカの男の子。年齢は9歳。現在は義母であるトリエルに養育して貰っている。
1年前、アボット山の地下に転落し、そこから彼の奇妙で壮大な地下王国での物語が幕を開ける。彼は道行く先々で沢山のモンスターと出会い、友達となった。
やがて彼はアボット山のモンスターや、今では義母のトリエルと、当時アボットの地下王国の国王であったアズゴア、そして2人の子供であるアズリエルについての真実を知ることとなり、最終的にモンスター達を地下から解放することに成功した。
学校での成績はトリエルの教育もあってか、学年トップクラスである。
個体名 鹿目まどか
種族 人間→仙人(魔法少女の時のみ)
職業 すっぴん→魔法少女(攻撃方法及び得意分野は個人ごとに違うが、契約により強大な魔法の力を得た少女。)
加護 円環の紋章
称号 魔法少女
魔法 なし→異界魔法〜円環系統・・・聖、補助(世界の言葉がない世界の魔法の一つ。)
元素魔法・・・火炎系統(世界の言葉がある世界の魔法。長い詠唱がネックだが、魔力が持つ限り自在に規模や威力を調整できる。)
ユニークスキル 「契約者」(ムスブモノ)
・・・魔力操作、多重結界、森羅万象、確率操作
魔力操作・・・法則操作の下位互換。だが魔法を扱う者の強い味方。魔素を自在に操作できる。
多重結界・・・自分の体の周りに何重にも結界を張ることができる。防御面でとても有能。
森羅万象、確率操作(二章を参照)
耐性 聖魔攻撃耐性(二章を参照)
桃髪とリボンを除けば特筆すべきこともないような中学2年の女の子。日本の群馬県、見滝原中学に通っている。学校での成績は、良くも悪くも、普通である。
ある日彼女は謎の地球外生命体、インキュベーターを保護したことから、インキュベーターから自身に「魔法少女」としての資質があることを告げられ、是非とも契約して欲しい、とも言われた。
しかし「魔法少女」の実態は、インキュベーターによる宇宙救済の為のエネルギー回収計画の一端であり、やがて彼女はその計画の中心に据えられてしまう。
様々な惨劇や理不尽を目にした彼女はついに決断し、インキュベーターと契約を結び、「魔法少女」となる。
そして、その身を高次元の存在、即ち概念へと昇華することで、過去及び現在の惨劇が無かった世界線へと導き、世界の理すらも改変したハズだったが...?
凄い。凄い、けど...
あまりにもいきなりで、感情が追い付かない!
世界が結合してたり、新しい力に目覚めたりで、もうどう反応すればいいかすらも、分からない。
隣を見ると、まどかも同じみたいだ。
それでも、この力...ユニークスキルに関しては、慎重に扱わないといけないってのは、すぐに分かった。
これくらいじゃないと、生き残れないのかも知れないし、これから先、頼りになるのは間違いない。
だけど、その力に振り回されて人やモンスターを殺めたら元の木阿弥だ。Loveが溜まってしまう。
だから、早めに把握しとかないとね。『
ようやく、洞窟を出た。ゾンビはいなくなってた。
僕たちがやるべきことはたくさんある。
まず、町を見つけよう。そして、仲間と合流して世界を結合させた奴をどうにかする。
今回の一件、多分だけど地下での出来事とは格が違う。もしもの時は...いや、そんな事は考えちゃダメだ。
こうして、僕たちの物語は続いていく。
その先に遥かな想いをのせて...
あとがき
ども、星の塵です。
今回もCross Worldを見て頂き、ありがとうございます。
現在はフリスク編ですが、外伝とかそういう扱いでは無いです。普通にフリスクとまどかはレギュラーです!
という訳で、フリスク編はあと1回で一旦切って、イレブン編に戻します。
今回のテーマは『発現過程』です。
どんなささいなことでも、『なろう』とかではすぐ力が発現します。
今回はそれを意識してみました。流行りに乗っかってばかりだと、かの悪名高い異世界ス○ホになってしまうぞ、と思われる方ももしかしたらいるかも知れませんね。
大丈夫です!何とか善処したいと思います。
ではここら辺であとがきを締めさせて頂きましょう。
今回もCross Worldを最後まで見て下さり、本当にありがとうございました!
だんだん見てくれる人が増えてきた様に思います。だからこれからも頑張っていきたいです!
このシリーズが面白い、と思った方は、是非是非感想をよろしくお願いいたします!
そして、イレブンやフリスク、その仲間たちが皆様の心に留まり続け、皆様の決意を満たし続けることを切に願い。
今回はここで、指という名の筆を置かせて頂きましょう。
皆様、次回もよろしくお願いいたします!!
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第五章 封印の剣
あらすじ
結合世界にて、少年フリスクは魂の炎が尽きかけていた少女まどかを救い、運命的な出会いを果たした。そして、その後の悪魔との戦いでユニークスキル、そして現在の世界の状況を知ることができた。
そして、フリスクは一つの決意を抱く。
この世界を、元に戻してみせる...と。
「...今でも信じられないよ、ホントに。」
「僕もだよ。トリエル母さんやサンズたちが心配だよ。」
「私は...」
世界が結合したことについて、二人は話していた。
その会話の中で、あの記憶が脳裏によぎったまどかは、思わずうつむいてしまう。
成す術無く無惨に死んでいく友達。結局守れなかった皆の日常。
あの日、いや永劫の時を自分のために捧げ最後まで戦った、最高の友達。
それら全てが、彼女の脳裏を巡る。
「...まどか?」
フリスクが名前を呼ぶ。
「...ううん、大丈夫だよ。」
「だったらいいけどね。辛いときは、いつでも相談してくれよ。だってさ、僕たちはもう...」
フリスクは、その後、こう言った...
「友達なんだからさ。」
思わず目を見開いた。
会ってからまだそんなに経っていないのに、友達だと言ってくれた。
「...いやゴメン。結構クサイ台詞吐いちゃった。」
そんな事は無い、むしろ嬉しい。だけど、止めて欲しい。そんな事を言ったら、すぐに誰の手の届かないところへ行ってしまう...
そう思ったまどかは、再びうつむく。
そして、誰にも聞こえないように、
「ほむらちゃん...」
そう、呟いた。
僕は、まどかと話をして分かった事があるんだ。
彼女は...「友達」というものに相当な思い入れがあること。
そして、その「友達」に、何かが起きたこと。
あの姿も、何か関係しているのかも知れないね。
今は考えてもわからないけど、目の前のことを精一杯やれば、見えてくる筈。
僕はユニークスキル「絶対決意」(ユルガヌケツイ)の練習をしながら、歩き続けた。
...うん?
「まどか!危ない!」
「...えっ?」
遅かった。
既に、まどかは地面に落ちていた物に足を引っかけて、派手に転んでしまった。
「痛っ...た...」
「大丈夫!?」
まどかは足をケガしていた。
そこで僕は「絶対決意」(ユルガヌケツイ)の「決意操作」を応用させ、出血を止めた。
実はこの「決意操作」、かなり万能なんだ。
決意は、魔力にも、筋力にもなったりするんだ。
魔法を覚えれば、決意を魔力がわりにできるかも知れない。...まぁ覚えてないから、僕の場合は決意を直接相手の肉体に与えてその人の自己治癒力を底上げするぐらいしか出来ないんだけども。
まどかもどうやら、回復魔法は持っていないようなので、こうしたんだ。
...最も回復魔法を使いそうなイメージを持っていた、というのは本人に話すと気まずくなりそうだから、止めておくのがいいよね!
「ありがとうフリスク...あれ?」
「どうした...ってうわっ!?なんだこれ?」
まどかが見たもの、それは落ちていた剣だ。
これに引っかけて転んだみたいだけど...
「凄く豪華な剣だね...」
「アンダインにあげたら喜びそうだ...」
それだけではない。この剣は異常だ。
ただならぬ決意が宿っているんだ。
「...これ、凄い魔力だよ。何でこんな所にこんな剣があるの?」
決意だけではなく、魔力もこもっていたみたい。
そうやって暫く観察して見ると。
「光った!?」
僕がそう叫んだ後、その剣は浮いた。そして...
その剣は、まどかの手元まできて、静止したんだ。
思わずその剣を取るまどか。
取った瞬間、その剣は一層光輝き、やがて収まった。
まどかが取ったその剣は、少し重く感じた。
「何なの...今の。」
「分からない...だけど、僕にはまるでこの剣が、まどかを選んだように見えたんだ。」
「えっ?」
「持っていこうよ。もしそうだったのなら、この剣は、この先まどかの助けになると思うんだ。」
「でも私、剣なんてどうやって振るえばいいか、分からないんだけど...。」
「町に行って考えようよ。色々とできることはある。仲間を探したり、ユニークスキルの練習だったり、長旅の準備だったりとかね。色々あるよ。」
「...そうだね。分かったよ。」
剣の鞘部分もあったので、それにその剣をまどかは直した。
そして、僕たちはまた歩き始めた。
「...フン!気に入らない。気に入らないな。何であんなヤツがあんな剣に?」
あれこそ俺が手にするべき物だろ、と青年と少年の境目ぐらいの年頃の男は口を尖らせる。
「仕方ない。...奪うか。あれがあればもしかすると義母上も...」
そして、その男は動き出す。
無駄の無い、俊敏な動きで。
「!危ないっ!!」
真横からの、突然の剣撃。僕とまどかは慌てて回避する。振り下ろされた剣は空振りとなったが、ソイツは慌てる素振りを見せなかった。
「俺の名はアバンス。頂くぞ...その剣を!」
現れたのは、紅と灰が混ざった髪色の男。子供にも見えなくもないけど、殆んど大人だろう。その手には、片手剣が握られていた。
きっと一部始終を見てたんだろうけど...そうはいかない。その剣はきっと、誰かに奪われてはいけない大切な物だ。
だから諦めて貰う為に、そしてまだ体が十分回復してないまどかの代わりに僕が相手をするしかない。
「その剣はまどかを選んだんだ。奪われてたまるか!」
「ああ、見てたよ。だが納得がいかないしこっちだってその剣を欲するそれなりの理由はある。」
「...その目を見れば分かるよ。だけど、だからといって今のまどかを傷つけさせたく無い!だから僕が代わりに相手になってやる!」
「いや、そいつと戦わせろ。俺の方がふさわしいんだとその剣に教えてやれば良い。」
「...ダメだ!まどかに、手は出させない!」
「用があるのは、その剣だけだ!...安心しろ。まどか、って言ったか?そいつにはできる限り傷はつけないし、他には何も望まない。これならいいだろう?」
ダメだ。
何も言い返せない。
「一対一の真剣勝負だ!...行くぞ!」
「逃げるんだまどか!今のキミじゃ、アイツに勝てない!」
フリスクが逃げるんだ、と叫んでいたが、
まどかは動けなかった。
足が震える。どうしよう。
このままだと、間違いなくやられる。
そして...
「覚悟は出来たか?...シッ!!」
その言葉と共に、アバンスが動いた。
まどかは襲いかかるであろう激痛に耐えるため思わず目を瞑ろうとした、その時。
謎の赤髪の精悍な男が、その剣を振るう
それを見たとき、自分でも不思議ことにまどかの行動は変わっていた。
剣にソウルジェムの魔力をほんの少し流し込む。すると、その剣に灼熱の炎が宿る。
そして、その男がどのように振るっていたのかを思いだし。
(...こうだっ!)
一気に、振り下ろした。
勝負は一瞬でついた。
まどかが、勝ったんだ。
灼熱に染まった剣がアバンスの剣に触れた瞬間、なんとそのアバンスの剣が一瞬にして焼滅した。
そしてそのまま、アバンスの肩を切り裂いたあと、その傷口から発火した。
更にあまりの威力のせいか、衝撃波まで発生させアバンスを吹き飛ばしたのだ。
しかし、それでもアバンスは生きていた。しかも、虫の息ですらないのだ。どうやらかなりの強者みたい。
「...チッ!仕方ない、ここは引いてやる。...いいか、こっちだって背負う物背負ってるんだ。その剣を諦めることは出来ない。それを心の片隅に刻んで置くことだ。いいな!」
と言って去っていった。
「私...勝ったの?」
「あ...ああ、そうだよ。まどかが勝ったんだよ。予想外だった。」
「私、あの時...あの人の姿が見えなかったら間違いなく負けてた。」
「あの人?」
「うん。赤髪で、たくましい男の子。その人が、この剣を振るっているのが見えたの。」
「この剣の...前の使い手かな...。」
その人がいなかったら、まどかは負けていた。
その事を思い、僕はその人に想いを馳せる。
「よし、決めた!」
「どうしたのフリスク?
「いや、この剣の名前だよ。何か無い?...そうだ!」
「...決めるの随分速いんだね。即決だよ。」
「僕には、大したネーミングセンスはないから、大したものは付けてやることができない。でもこの剣は最初、誰かに知られる事無くそこにあった。少し大袈裟だけど、大昔に封印されていたかのようにね。だから、僕はこの剣を...」
「この剣を?」
「...『封印の剣』とでも呼ぶことにするよ。」
こうして、人知れずその剣はまどかの手に渡った。
何の因果かは分からないけど、この『封印の剣』はこれからの僕たちにとって大きな力になってくれるはず。
そして、僕達は歩く足を速めた。このとんでもなく壮大な旅はまだ、始まったばかりだ。
あとがき
お久しぶりです、星の塵です。
今回もCross Worldを見て下さり、ありがとうございます。
しばらくPixiv側での編集に時間をとっていたので、本当に申し訳ありませんでした。
それはそうとして、第五章はいかがだったでしょうか?
今回は大分短かいと感じた方も多いでしょうが、その分Pixiv版との違いを作ることに集中しました。
例えば、Pixiv版での襲撃者は『ファイナルファンタジーⅤ』のギルガメッシュだったのですが、このハーメルン版では『遊戯王デュエルターミナル』のリチュア・アバンスにしました。
アバンスはこれからも何度か再登場させる予定です。
また、フリスクの会話量や内容も変更したり増やしたりしました。当時手探り状態だったPixiv版に比べて大分良くなったと思います。
今回のテーマは割愛!よってそのままあとがきを締めます!
まず、Cross Worldを最後まで見て下さった皆様、本当にありがとうございました!
この物語が面白いと感じたなら、是非とも評価をよろしくお願いいたします。そして、Pixiv版のほうも見てやって下さい。
最後に、イレブンやフリスク、その仲間たちが皆様の心に留まり続け、皆様の決意を満たし続けることを切に願い。
今回はここで、指という名の筆を置かせて頂きます。
皆様ありがとうございました!次回もお楽しみに!
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第六章 陰陽師と歌姫
あらすじ
フリスクとまどかの二人は、一つの不思議な出来事を体験することになった。
まどかを選んだ剣を狙い、襲いかかって来た青年アバンスと決闘することに。
剣の心得が無いまどかの敗北は必至かと思われたのだが、この剣から流れ込んで来た記憶を頼りに勝利を得た。
フリスクはこの光景と、アバンスの戦闘後の妙な倦怠感、まるで力を抑えたかのような...から、この剣に一つの名を付けた。
...『封印の剣』と...
そして、あの勇者たちも、動き出していた...
僕...イレブンはバロン王国を出て、二日経つ。
新たな仲間セシルは本当に真面目で、優しい人みたいだ。
野営の時も、僕に任せずに、機材の設置や火起こしを積極的に手伝ってる。
僕も負けじと全力で作業をするけど、追い付けない。
こういうのは、僕よりも慣れているのかも知れないな。
...そんなわけで。
今は川に沿って歩いている。
なぜなら。
地図もコンパスも、宛にならなくなったこの世界でも、共通することがあるんだ。
町や国は、川や海の近くに出来やすいこと。文明を発展させる際に、どうしても必要になってくるのが、水。そして食料。
それらを比較的容易に入手できるのが、川や海なんだ。
なので、川に沿って歩いていけば、町にたどり着けるかもしれない、という訳なんだ。
そんなわけで、僕たちは進む...
「魔の牙には裁きの雷を与えん、ライデイン!!...セシル!!」
「分かった、バイブレイ・スラッシュ!!」
僕の放ったライデインが、オークやボムといった敵を焼き焦がしていく。
上手くかわした敵も、セシルの「バイブレイ・スラッシュ」でまとめて切り裂かれていく。
僕たちの勝利だ。
「よし、やったなセシル!」
「素晴らしかったよ、イレブン!」
お互いを称えあい、お互いの絆が深まるのを感じる。この感覚が、僕はとても好きだ。
「...ぐるるるぅぅ」
うめき声が聞こえた。
先ほど倒した筈のオークみたいだ。
そのオークは僕たちに一矢報いんと襲いかかってくるかと思いきや。
...走って逃げていったんだ。
「...いいのかい?見逃して。」
「良いんだよ。僕たちは急がないといけないし、それに...」
「それに?」
「もう敵意がない生き物を...倒す気にはなれないよ。セシルだって、そうだろう?」
「ハハ...そうだね。彼らだって生きている。」
「さあ、急ごう。食料も無限じゃない。」
「よし、それじゃあ行こう!」
こうして、僕たちの絆は深まっていく。
「あっ、あれは!」
「どうしたんだセシル?」
「一人の男の人が...襲われてる!」
「なんだって!?急いで助けに行かないと!!」
「分かってる...行こう!!」
見た所、敵はデンデン竜。それも三体。この世界には敵ごとにランクが分けられているらしく、こいつはCランク。国の正式部隊の兵士一人から二人分に相当するらしいんだ。これはユニークスキル『
僕たちは急いでその男の人の元へ向かう。
たどり着くまでに、そう時間は掛からなかった。
「うぬう...この状況は一体...。」
その男、矢部野ピコ麻呂は困惑していた。
あの『テラカオス異変』から二年。
EDF(地球防衛軍)の一員として、共に戦った三十二人の勇者たちと共に世界中を飛び回り、テラカオスや仲間の一人である高町なのはの心に巣食っていた魔王やその残党たちを追討していったのはもはやいい思い出。
異変から一年後には、全員元の世界へと、仲間との別れを惜しみながら帰っていった。仲間の中でも最も堅物である、海馬でさえも目頭を暑くさせていた。
しかし、元の世界に帰ったあと、こなたは遊戯の世界にちょくちょく遊びに行ったり、谷口となのはなどもかなり仲が良さそうだ。ロックマンとミクは、先ほど述べた者たちよりも絆が深まり、お互いにある恋愛感情にそれぞれ気づきつつある程にまで、交流が深まっていた。
海馬に至っては、自らの力だけで幻想入りを果たしてしまい、海馬ランドの建設許可も取り付けた程だった(かなり交渉は難航したようだが)。
その他の者たちも、戦いが終わった後も交流を続けていた。
こういった異世界同士の交流の恒常化に伴い、彼らの世界同士で、それぞれの世界の国際機関同士で公式に条約を作り、異世界交流を許可、及び貿易や戦争などに至るまで、異世界同士で通用するルールを作ろう...という意見が大多数を占めるようになった。
この話はトントン拍子で進み、更になのはが所属している組織『時空管理局』とピコ麻呂たちが臨時で所属していた『
そして。
こうしてピコ麻呂たちの世界の国際組織、国際連合の元で、新たに『異世界交流基本条約』の締結と、それに伴い新たに発足する『
あの謎の地震と光によって、こんな場所に飛ばされた。
また新たな魔王が出現したのではないか、テラカオスが復活したのではないか...など、疑問は深まるばかり。
しかし、今は。
「この者たちを何とかせねば、先に進めんようじゃ。...うん?あれは...」
遠くから走って来る者たちがいた。
「無事ですか!?」
「助けに来ました!」
助けに来てくれた人の様だ。
ピコ麻呂はその者たちのことを、何故か心強く感じたのだった。
「無事ですか!?」
「助けに来ました!」
そう言って、僕たちは黒い変わった服を着ていた男の人の前に立った。
そして戦いが始まろうとした、その時。
「わしにもやらせてくれんか?腕にはそれなりに自信があるのじゃ。」
そう男の人が言った。
「本当ですか?無理しないで...
セシルがそう言うが、その男の人は構わずこう言った。
「そういえば名前を聞いておらんかったな。お主ら、名は?」
「僕は、イレブンだけど...」
「セシル。セシル・ハーヴィー...」
僕たちはその男の余裕の態度に思わず呆然としていた。そして。
「わしは矢部野ピコ麻呂。人はわしを...
...陰陽師と呼ぶ!」
そういった瞬間。
その男...ピコ麻呂の手に光が集まった。そして。
「成仏しろよ!」
その声と共に、手から光が放たれた。
その瞬間に...デンデン竜の一体が、消し炭と化していたのだ。
その後。
戦いは終始優勢のまま僕たちが勝利した。
セシルが全員に「マイティガード」をかけ、その防壁と僕のメラゾーマとピコ麻呂の「どーまんせーまん」により圧勝をおさめた。
「よし、勝てたな。お主ら、礼を言うぞ。」
「ピコ麻呂さん、強いんですね。その魔法は一体どこで...」
セシルがそう言うと、ピコ麻呂は、
「魔法、と呼ぶか。...やはりここは異世界か。近くに町はないかのう?」
「僕たちも今探しているんですけども...」
「...あれは!セシル!ピコ麻呂さん!町が見えたよ!」
「分かった。お主ら、なにか知っている事があるのじゃろう?あの町の宿で、話そうではないか。」
「分かりました。行きましょう、ピコ麻呂さん。」
「着いたな...」
「うむ。ここならしばらく、休めそうじゃ。」
ここはとても小さい村で、建物の数から人口は200人も居ないみたいだ。襲撃の痕もあるが、宿屋はあった。
しかし、気になる点があった。
そんな村なのに、やけに人が多い。
しばらく村の中を歩いていると、人だかりと綺麗な歌声が聴こえて来た。
「何か行事とか、やっているのかな?」
「分からぬが、ひとまず行って...む!?この歌声...まさかそなたもこの世界に...!」
セシルがピコ麻呂に訪ねると、ピコ麻呂はこう答え、歩く速度を速めた。僕たちも、後に続く。
「メ〜ルト溶けてしまい〜そう〜好きだな〜んて...」
特設された会場から響く歌声。
その声の主の名は、初音ミク。VOCALOIDと呼ばれるロボットであり、ピコ麻呂と共に戦った、32人の勇者のうちの一人である。
彼女もまた、あの謎の光と地震によってこの結合した世界にやって来た。
彼女は、同じく勇者の一人であるロックマンと共に買い物をしていた。
ロックマンは誰に対しても優しく、EDFの仕事も誰よりも率先して行う。阿部さんに対しては、かなり厳しい態度をとっている様だが。
ミクは『テラカオス異変』の後、傷ついた人たちの手当てや、PTSD(いわゆるトラウマ)に陥ったEDF隊員たちの心のアフターケアなどに献身的に力を入れていた。
そんな二人は、かつてニコニコ市場に共に買い物に行ったことをきっかけに、何かと一緒に行動することが多かった。
タイガーモス号、ニコニコ世界の古城エリア。四天王の内の一将、技巧の将を食い止める役も、この二人が真っ先に請け負った。
数々の苦難を乗り越え、二人の絆は誰よりも深い物となっていたのだ。
それぞれの世界に帰った後も、彼らはちょくちょくお互いの世界に遊びに行ったりしていた。また、Dr.ワイリーの企みを共に阻止したり、ミクのライブにロックマンとの共演を実現させたりなど、お互いにとって結構重要なことにも関わってきた。
そして今回も共に買い物に行こうとした矢先に...あの謎の光と地震が起き、ミクはこの結合した世界にたどり着いたのだった。
彼女がこの世界で見た、初めての見た人の表情。
それは「絶望」である。
突如現れた何度も見知らぬ魔物や悪霊などの襲撃が続き、生きる希望すら失いかけている、村の人たち。
「私に出来ること...そうだ!」
自分には歌がある。その歌で、この村の人たちを助けたい...そう思ったのだ。
彼女の歌声は、村の中でもすぐさま評判となった。やがて周辺の地図を作っていた人たちにも評判が集まり、この村の周辺にあった村の人たちも集まってきた。
そして、今に至るのである。
「ミクよ、ミクで間違いないな!?」
彼女の歌が終わった後、ピコ麻呂はステージの上にいる長い髪の女の子にそう声をかけた。どうやら知り合いみたいだ。
「ピ...ピコ麻呂さん!?どうしてあなたが...」
その女の子は、ステージから降りてそう言った。
「恐らくだが、お主と同じじゃ。あの光と地震を体験したのじゃろう?」
「はい、その通りです...そこのお二人の名前は?」
「僕の名はイレブン。ピコ麻呂さんとはさっきそこで出会ったんだ。」
「僕はセシル。セシル・ハーヴィーだ、よろしく。君は?」
「私は初音ミクです。VOCALOIDで、歌を歌うことが得意です。ピコ麻呂さんとは共に戦った仲間なんですよ。」
初音ミクと名乗ったこの女の子。共に戦ったと言っているが、戦いの心得なんて、全くなさそうに見えるんだ。
「どういうことなんだ、ピコ麻呂?」
「うむ...話すと長くなる。お主らにもわしらに話すことが山ほどあるのじゃろう?一度、情報交換といこうではないか。」
こうして僕たちは宿屋の部屋を借り、情報交換を行うことになった。
「僕から話してもいいかな?」
「構わぬ。話してみるがよい。」
そう言って、僕はこの結合した世界に来るまでの顛末と、この世界の真実。そしてユニークスキルなどのこと。セシルとの出会いなんかも話した。
「なんと...そのような事態になっていたとは...」
「そんな...世界がつながってしまったなんて...」
二人とも、びっくりしていた。
そりゃあ、いきなりこんな話をしたら、びっくりするのも当然かな。
「それにしても勇者、か。まさか他の世界にもまだこのような存在がいたのか...二人とも凄まじい神力を秘めておるな。」
「そこまで誉められた者じゃないよ。勇者が生まれると、因果が巡り魔王も生まれる。それを理由に、一時期大国に追われていた時期もあったからね。今も、その考え方をしている人もたくさんいる。」
「なるほどのう...辛いこともたくさんあったのじゃろう。よくぞ耐えたものじゃ。それに負けず乗り越えたお主こそ、正に勇者じゃ。」
「そう言ってもらえるなんて・・・ありがとうございます。」
僕とピコ麻呂さんはそう言葉を交わした。
その後、セシルも同じようなことを話した。
「光の戦士か...イレブンとは少し違った力を感じるな。しかしその本質は、全くと言っていい程変わっていない。」
「そう...かも知れないですね。ですが、僕がイレブンを守り、イレブンが攻撃する...という戦いが多かったです。僕は仲間を守ることが、今の使命だと感じています。」
「いい心意気じゃな。...さて、そろそろわしらのことも話そうかの...」
聞いて、びっくりした。
なんと、二年前にピコ麻呂とミクを含めて、三十二人で数多の世界を守る為に世界を越えて戦ってきたらしい。
そして、数多の世界を救った彼らは、今や勇者的存在になっている、とのことだった。
そして、その上でこう言った。
「魔王は、まだ生きておる。今までは我々の仲間の一人が、その者の心に巣食う魔王の意識を抑えていただけで、その者の心から逃げ出した今、このような所業に及ぶのにも、納得できる。本来の魔王は残虐非道な性格だからな。」
ピコ麻呂さんの世界にも、魔王がいるのか...と内心で呟き、そして、
「もしかして、その魔王が今回の黒幕だと見ているのですか?」
と質問した。
「その通りよ。奴とは元より決着を着けねばならんと思っておる。」
僕たちの目的。それはそれぞれの仲間と合流し、黒幕を倒すこと。...だったら。
「だったらピコ麻呂さん...一つ、提案があります。」
「...!お主ら、まさか...。」
「その通りですよ。僕たちも、魔王を倒すのに協力します。」
僕の提案に反応したピコ麻呂さんを見て、セシルが続けた。
「僕たちは今、散り散りになった仲間達を集めています。ピコ麻呂さん達がいてくれればとても頼もしいし、利害も一致しています。魔王を倒すためにも、僕たちと一緒に来てくれませんか?」
ピコ麻呂はしばらく僕の顔を正面から見据えて、その後、
「成る程のぅ...分かった!これからはお主らと共に行くとしよう。よろしく頼むぞイレブン、セシルよ。...ミクよ、異論はないな?」
「ありません!よろしくお願いします、イレブンさん、セシルさん!」
「ありがとう、ピコ麻呂さん、ミクさん!こちらこそよろしくお願いします!」
こうして僕たちは、二人の新たな仲間を得た。僕たちの旅はより賑わいを増して、続いていくんだ。
ステータス
個体名 矢部野ピコ麻呂(登場 新・豪血寺一族、ニコニコRPG、MMDDFF)
種族 仙人
職業 陰陽師...陰陽術を扱う者。魔法や回復もできる。(ピコ麻呂は回復術を扱えない。)魔導書と杖を扱える。
称号 安倍晴明の再来
加護 胡散臭き陰陽の紋
魔法 異界魔法〜陰陽系統...光 「世界の言葉」がない世界の魔法の一種。「どーまんせーまん」や「うううううううううう」などの魔法を扱える。
精霊魔法〜水流系統 「世界の言葉」がある世界の魔法。精霊を呼び出し、魔法を行使させることに長ける魔法。詠唱が短く、魔力消費が少ないのが利点。
ユニークスキル『
超直感...何かの悪意などをコンマ0.01秒程の速さで察知できる。暗殺などを防ぐのに有効。
軍勢鼓舞...自分の指揮下にある者全てに補正をかける。集団戦で有利。
耐性 呪い無効、聖魔攻撃耐性
呪い無効...呪いや怨念による影響を無効化する。
プロフィール
ある世界において名を馳せる陰陽師。『三十二人の勇者』の一人であり、筆頭。時空管理局と彼が臨時で所属していたEDFの統合機関、TGFのリーダーになるのではと言われていた。今も生きているグランドソードの魔王とは、因縁の相手である。性格は真面目で、ルールに厳しい。
個体名 初音ミク(登場 VOCALOIDⅡ、ニコニコRPG)
種族 メタロイド...人間の意思と姿を持った鋼の人形。ロボットとも言う。
職業 歌姫...歌を歌うことにかけては天才。仲間を癒したりする。剣と銃を扱える。
称号 電子の歌姫
加護 電子の加護
魔法 なし
ユニークスキル『
治癒増幅...指定した対象の自然治癒能力を上げる。
精神操作...相手の精神を意のままに操ることができる。相手を発狂させることも可能。
耐性...物理攻撃耐性、状態異常無効
物理攻撃耐性...物理攻撃によるダメージを軽減する。
状態異常無効...あらゆる状態異常を無効化する。
プロフィール
ある世界で名を馳せる歌姫。歌を歌うことに優れたロボットにしてシステム、「VOCALOID」の二代目である。
『三十二人の勇者』の一人。沢山の兄弟姉妹がいる。勇者として戦う以前から異世界人との繋がりがある。性格は慈愛溢れる性格だが、天然な面もみられる。ロックマンとは恋人の関係にある。
あとがき
皆様お久しぶりです、星の塵と申します。
久しぶりに投稿した訳ですが、今回のCross Worldは如何でしたでしょうか。
今回はPixiv版の第七章と第八章をまとめたもので、内容に大きな変更点はありません。
この作品では『ニコニコRPG』について扱っておりますが、ツクールMVリメイク版を正史としています。よって原作とは大きな違いが存在していることを先にお伝えしておこうと思います。
それは、原作よりもキャラクターが多いことです。原作では『二十四人の勇者』という称号がピコ麻呂たちにはあったのですが、リメイク版では『三十二人の勇者』と増えているため、この小説でもそちらを採用しています。
さて堅苦しい話はここまでにして、あとがきを締めると致しましょう。
今回もCross Worldを最後まで見て下さり、本当にありがとうございました。
面白いな!...と思った方は是非とも、感想や投票をよろしくお願いいたします。
そして最後に、イレブンやフリスク、その仲間たちが皆様の決意を満たし続け、皆様の心に留まり続けることを切に願い。
今回はここで、指という名の筆をおかせて頂きます。
皆様、見て下さり本当にありがとうございました!
次回も気長にお待ち下さい!!
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第七章 洞窟での攻防戦
あらすじ
32人の勇者の内の二人たる『胡散臭い陰陽師』矢部野ピコ麻呂、『電子世界の歌姫』初音ミクの二人と出会ったイレブンたち。
彼らは二人から彼らの世界をはじめとする多数の世界を巡り、人々を苦しめていた魔王の存在を知る。
魔王の悪行をお互いに経験している彼ら四人は意気投合し、共に魔王を倒すことを決意したのであった。
「ピコ麻呂さんは元の世界で何をしていたんですか?ミクさんは歌を歌っていたと言っていましたけど。」
「わしは陰陽師。この世の悪霊や魑魅魍魎を成仏させ、世の中を平安に保つのがわしの役目じゃ。祈祷や占いも得意としておる。」
僕がそう質問すると、ピコ麻呂さんは詳しく答えてくれた。ピコ麻呂さんのあの攻撃...呪文とは違うし、セシルの世界にある所謂『白魔法』とも違う。あの攻撃は悪霊や魑魅魍魎を成仏させることに特化した技なのかも知れないな。
「気をつけて行きましょう。あの村の人たちに聞き込みをしたんですけど、この近くに魔物が蔓延る洞窟が見つかったんだそうですよ。...ほら、あの洞窟です。」
ミクさんがそう注意喚起する。
「そうだね、気をつけて行かないと...待った!!」
「いきなりどうしたんだい?イレブン?」
僕はあることに気がついた。僕の突然の焦りにも似た声にセシルが反応する。
「皆、お金を今、どれくらい持ってる...?」
「「「...!!」」」
「後少ししか残っていないみたいだ...」
「わしも、残金が残り少ないみたいじゃ...」
「私もです...」
三人ともまずい、という顔になっていた。
この世界では、全く違う世界の通貨を利用しても目利きの利く人たち、そうでない人たちも、それらを何とか自分たちの世界の通貨の価値に換算してくれる。その理由は、生きる為にはああだこうだとも言ってられないからだ。
更に、異世界の人々同士で言葉が通じなくてもジェスチャーや黒板に記号を書いて伝わるように工夫をしている者もいた。
『解析鑑定』を持つ僕もその光景を見ていて、(解析系統のスキルを持つ者は、理性ある発音は自分が理解できる言葉に変換される。また、ユニークスキルなんかを持っていると、解析系統でなくとも変換が可能になるようだ。)これはとても感心させられるコミュニケーション術だな、と思ったよ。
つまりどんな通貨でも買い物や取引が可能なんだ。逆に言えば、お金がなければ何もできない。宿屋に泊まることも、物資を買うことも。だからお金を稼がないといけない。その為には魔物を倒してお金を得るか、働くかのどちらかになる。
働いて稼ぐのは論外。何故なら僕たちは急がなければならないから。魔王を倒し、この結合世界を元に戻す。
立ち止まってなんかいられないんだ。
それに...洞窟の近くにはあの村がある。襲われる前に何とかした方がいい。
もっともっと自分たちのユニークスキルに慣れる必要もあるし、可能性はかなり低いけど魔王の情報も得られるかも知れない。
だからあの洞窟に入って、探索してみるのがいい。
その旨を仲間たちに伝えた。すると...
「分かった。そういう事なら君の提案に賛成するよ。」
「なるほどのう、資金を得るのと同時にあの村を守れる...と。イレブンよ、素晴らしい意見じゃ。」
「戦うのは怖いけど、私だってやって見せます!」
満場一致で賛成してくれたみたいだ。
「よし!それじゃ約束してくれ。どんな敵が来ても油断しないこと、そしてきつくなったらすぐに逃げること...いい?」
「分かった、イレブン!」
「了解じゃ。」
「精一杯、頑張ります!」
その返事がとても頼もしく感じられる。
「皆、死ぬなよ!それじゃあ行こう!」
こうして僕達は意気揚々と洞窟の中に入って行った。
「...むむっ!人間の気配がするぞっ!しかも中々楽しめそうな気配がっ!」
その影はワクワクした声でそう言った。
「地上に出てしばらく退屈だったが...まさかこのようなことになるとは、予想もつかなかったぞっ!」
あの謎の光と地震。そして新たな世界。
それは平和な日々でしばらく退屈していた『彼女』にとって、とても刺激的な出来事となった。
見たことのない同胞が何の躊躇いもなく次々と襲って来るのには驚いたが...そこは『彼女』自身の修行という名の建前の元、叩き潰した。(ちなみにその同胞たちは全員無事である。...が、別に操られている訳でもないので、無駄なのであった)
そしてこの洞窟で修行の続きをしていたところに、やって来たこの気配。
『彼女』の気合は十分。
「来るぞピコ麻呂さん!」
「分かっておる!ぷよぷよするなぁ!」
ピコ麻呂さんが腐った死体の『ぷよぷよ』というよく分からない物を禁じた。
だがその後その腐った死体の様子が変わった。激昂し、僕たちに攻撃を当てられる状態じゃなくなったのだ。
その隙を見逃さず、ミクが歌った。
「みっくみっくにしてやんよ〜♪」
その一節を歌っただけで何やら大きく、そして透明な生物が二体程召喚され、その腐った死体に向けてパンチを浴びせ続けたのだ。
ミクさん曰く、アスキーアート・・・とやらを具現化しているのだと。
そして、腐った死体は動かなくなる。
「よし!凄いなピコ麻呂さん!ミクさん!」
「ああ、とても個性的だけどとても強い...!」
「お主たちこそ、先程の魍魎たちを凪ぎ払ってくれて助かったぞ。」
僕たちだって、負けていない。
襲ってきたCランク相当の魍魎4体を、僕のベギラゴンとセシルのエアロガで一斉に倒したのだ。
「さて、お金は...あれ?」
出てこない。おかしい。
体を譲ってみても、出てこない。
「ええ...。この世界じゃ、魔物を倒してもお金は手に入らないみたいだ。」
「ならば、この角や皮...何かに使えんか?持っていくことを提案するぞ。」
ピコ麻呂さんがそう言った。なるほど、これを町で売ったりして稼ぐのか。
「それしかないか...それじゃこの皮を...」
どうやらこの世界では倒したらお金が出てくる...なんてことがなかったので、倒した魔物から換金出来そうな物(魔物の角や爪など)を剥ぎ取ったり、身に付けている物を回収したりする事にした。
そして、更に進むと...
「扉だ。」
「大きいな。そして水の音も聞こえるぞ。」
「この先に、何があるんでしょうね?」
三者それぞれに呟いた。それを聞いて、
「皆、準備はいいかい?」
と僕は皆に確認をとった。
「大丈夫だ、イレブン。」
「気をつけて進むぞ。」
「行きましょう。」
皆、準備は万端のようだ。
「それじゃあ、行こう!」
ギギギィ...と重々しく扉が開く。
その先に待っていたのは...
「待っていたぞ...人間!」
「誰だ!!」
僕の問いに、その声の主はこう答えた。
「私はアンダイン!アズゴア王が治めて『いた』地下王国の元ロイヤル・ガード隊長...って所だな。」
アンダインと名乗ったその女騎士。
見た感じ、僕の世界にはいない魔物だ。
だけど
解析鑑定も行って見た。
その結果...限りなく特Aランクに近いAランクの個体だと分かった。
特Aランクというのは、一体いるだけで小国なら国家転覆の事態に陥れるだけの力を持っているらしいんだ。
通称
「こんな所で一体何をしていたんだ?」
「修行だよ、修行。」
あっさりと答えてくれた。
「私は平和続きの地上生活で、少し体がなまっていたんだ。そしたらあの光と地震が起こってこの場所に飛ばされた。そしたら見たことのない同胞たちが何故か襲ってきたので、叩き潰しつつ修行していたんだ...。そしたらお前たちが来たものだから、ここでの修行の総仕上げの相手として待ち構えていたというわけなのだ!」
なるほど、このアンダインもこの結合世界に迷いこんだ一人みたいだ。
ただ、ここが一種の異世界であることに気づいてないようだけど。
ただ...最後の確認はしておきたい。
この質問次第では、このアンダインを成敗する必要があるからだ。
「君は、人間にとって良からぬことをしようと考えている訳じゃないんだな?」
そう、僕らの世界では基本的に魔物や魔王は実害をもたらす絶対悪として捉えられている。
セシルやピコ麻呂さんの世界でも、そんな捉え方をしている。
だが、アンダインは目をふせて、
「...私はニンゲンはあまり好きではない。だが『アイツ』と出会ってから、心優しいヤツもいることを知る事が出来た。だからニンゲンと敵対する意思なんて、何処にもありはしないぞ。」
と、何かを思いつつそう言ったのだ。『アイツ』って誰だろう...とは思ってはいるけどね。
別に僕は人間至上主義というわけではないし、魔物と心を通わせた例も決して少なくない。
「そうか...だったら」
「だがっ!」
と、ここでアンダインは僕の発言を遮った。
「言っただろう?修行だと。ここまで来たからには付き合って貰おうか。」
......。
アンダインはかなりの武闘派みたいだ。多分だけど、強者と正々堂々と戦うのが好きみたいだ。
「...そう言われても、今僕たちは、急いでいるんだよ。早く行かないと...」
「なに心配するな。一回だけだ。」
そこまで僕たちとの勝負を望むなんて...まあ、いいや。
僕たちもこの世界での実戦経験は積んでおきたいし、ちょうどいい。
「分かったよ...で、ルールはどうする?」
「一騎討ちだ。その方が公平だろう?」
「一騎討ちか...よし。」
そう言って、僕は剣を抜く。
銀河の剣。そして天命の剣。
この世界では剣にもランクがあり、
僕のこの二振りの剣は、どちらも
普段はこれを近接戦闘で使おうと考えている。
二振りの勇者の剣はどちらとも
これは正念場の時に使う切り札だ。
そんな訳で、アンダインと対峙する。
するとアンダインが目を光らせて、
「...おお、凄い!これが私が求めていた伝説の剣だ!なぁなぁ、私が勝ったらどちらか一本くれ!いいだろ?」
と言ってきたのだ。
それは...戦いが終わってから考えよう。
「よし、行くぞ!!」
「威勢がいいことだな、来い!!」
こうして僕は強者に挑む。
どちらが勝つなんて考えない。
ただただ、目の前の事に集中するだけだ。
「用意はいいか?」
「できてるさ!行くぞアンダイン!」
先手必勝、まずはこっちからだ。
右手には銀河の剣、左手には天命の剣。
僕は前傾姿勢を保ちながら、一気に詰めより一気に斬りかかった。
「(相手は丸腰、格闘が得意なのか...?)」
そう思った瞬間。
ガィィィィン...!!という音がした。
「(あれは...!?)」
気づけばアンダインは青色の槍を握っていた。
「動揺している暇はないぞっ!」
そう言ってアンダインは槍を振るう。
「危...ないっ!!」
今のは危なかった。
そしてすぐに
「喰らえ、『超・隼斬り』!!」
元々は僕の仲間の一人、グレイグの技だ。
だけどグレイグの動きを見ているうちに、出来るかもと思って練習した技なのだが...
「甘い!その程度かっ!」
放った四連撃は見事な槍捌きによって対処され、すぐに返しの三連突きが放たれる。
至近距離。普通なら蜂の巣になるのがオチなのだが...
「(『確率操作』-50%発動...よし!)」
『確率操作』によって確率を変動させた後、僕はすぐさまバックステップをとり、何とか回避に成功したようだ。
だけど... お互いじり貧だ...
「(まさか、ここまで強いなんてな...)」
正直これはドッキリか...とも思い始めたアンダイン。
実力は拮抗している。だがそれは表向きだ...というのがアンダインがイレブンに抱いた感想だ。
槍で最初の一撃を受け止めたとき、腕がかなり痺れたのだ。つまり相当の力とスピードの持ち主だ...と彼女は判断した。
そしてその剣捌きと身のこなし、これもまた厄介だ。今まで全ての攻撃をかわしているし、また攻撃も的確だ。
アンダインは少なくとも、今のままでは勝てないだろう...と思った。
だからこそ、奥の手を使うことにした。
「(絶対にあの剣を手に入れて見せる!)」
その奥の手とは...
「強いな...オマエ、名前は?」
「イレブン。かつて『勇者』だった、ただの人間!」
「成程、道理で...だが舐めて貰っては困るぞ!中々強いようだが...勝ったと思うのはまだ早いぞイレブン!!」
そう言ってアンダインは突然槍を虚空に振った。すると...
「何だっ...?体が動かない...!」
これは一体、何なんだ?剣も持てない...
「ただのニンゲンには見えるまい!その緑色になった
「
「ただこれではつまらんので...イレブン、オマエにはこの槍を渡してやろう。...さあ行くぞ!」
アンダインはそう言うと青い槍を渡してきた。これは持てるみたいだ。
だけど。
動けないのであれば、間違いなく負ける...!
「喰らえ!」
アンダインがそう叫ぶと、虚空に青い槍が沢山精製され、取り囲むように飛んでくる。
既に『解析鑑定』は終了している。その結果、あの攻撃はユニークスキルによるものではなくアンダインの元の世界での攻撃手段らしい。対策としては槍で弾くこと...らしいが、あの槍の数。弾ききれるのか...?いや、それは問題じゃない。
負けても命は取られない、だけど僕の大切な天命の剣を賭けている。
それに。
ここで負ける程度では、魔王を倒すなど論外なんだ...!
「イレブンよ!負けるでない!」
「イレブン!」
「イレブンさん...!」
ピコ麻呂、セシル、ミクが、負けるな...!と応援してくれている。
僕はそれに、必ず応えてみせる!
「おぉおおおおあっ!」
僕は全力で槍を振るい、飛んできた槍を全て弾く。
「なに...!これならどうだ!」
再び槍が精製され、飛んで来る。
「負けない!せぃっ、はぁっ!」
飛んできた槍を弾き、弾き、また弾く。
いつかはチャンスが来る。そう思い態勢を整えようとした、その時...
横から爆音がしたのと同時に、僕とアンダインは吹き飛ばされた。
「痛っ...一体、何が...」
「こっちもさっぱりだ、どうなってやがる...」
僕とアンダインはお互いにそう言った。
その時土煙の向こうから怒声が聞こえた。ピコ麻呂の声だ。
「貴様は...魔王!!」
「初めましての者もいるが、久しぶりだなピコ麻呂よ。」
「ピコ麻呂を知っている...?まさかお前が...魔王か!?」
僕は巨漢の魔人に言った。
「その通り。ワシが魔王だ。」
「この結合世界は貴様が作りだしたのか!」
ピコ麻呂が問う。
「そうだとも言えるが、そうではないとも言えるな。」
「どういう意味だ...!」
セシルも加わり態勢を整える。ミクとアンダインも警戒しているようだ。
「お前たちが知る必要はない。それよりもお前たちはワシを倒したいのだろう?なのでここに直々に来てやったのだ!」
「...今の貴様にはわしらを倒せるのか?グランドソードは既に失われている。今の貴様には決定打はないはずじゃ!」
ピコ麻呂はそう言うと呪印を組み始めた。
グランドソードというのが気になったが、今はそれどころじゃない。
僕は剣を魔王に向けた。他の仲間たちやアンダインも戦闘態勢だ。
「貴様はいつから...ワシがグランドソードを持っていないと錯覚していたのだ...?」
「...!!まさか、貴様っ!」
「あれから二年も経っているのだぞ。その間に造り出すなど造作もないことよ!」
そう言うと魔王は一本の禍々しく、しかしどことなくダサく見える剣を手に取った。
あれがグランドソード、『解析鑑定』結果は伝説級(レジェンド)最上位。僕の勇者の剣と全く同じ位ぐらい。
「グランドソードよ、時空を開くがよい!」
魔王がグランドソードを薙いだ。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ!!という音と共に、時空の狭間が出現する。
「ヤバい...吸い込まれる!!」
「ダメです!!逃げられません!!」
セシルとミクが、焦燥気味にそう叫ぶ。
ダメだ...あれは本当にヤバい!
あれに吸い込まれたらどうなるかなんて、言うまでもない。
「念には念を込めて、前回よりも強力な物を作って正解であったな。さらばだ!」
「魔王...!貴様ぁっ!!」
このままだと死は免れない。どうすれば、この状況を...
と思った矢先に。
バキィィン!!という音がした。
その音と共に、時空の狭間は消滅する。
「話は聞かせて貰ったぜ...魔王!」
その声の方向...魔王の目の前に目を向けると、16・7歳位のツンツン頭の少年がいた。
「...!お主もこの世界に来ておったのか...!?」
ピコ麻呂が信じられないような物をみる目でその少年に聞いた。どうやら知り合いみたいだ。
「久しぶりだなピコ麻呂さん。あんたもここに来てたのか。」
「君は一体...?」
思わずセシルが尋ねるが...。
「そういうのは後だ!...魔王、てめえがこの世界を好き勝手にできると思ってんのなら...」
「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」
彼は魔王に向かって、そう宣言した。
これが、魔王との戦いの始まりの合図となった。
「ほう?貴様か上条当麻...その右手、
「無駄口を叩いてる暇はないぜ、さっさと終わらせる!」
そう言ってその少年...上条はすぐに魔王の懐に潜り込んだ。幻想殺しとやらを警戒しているのか、放たれた拳を腕を交差させて防ぐ。
僕もそれに続くように魔王に向かう。それは他の仲間たちやアンダインも一緒だ。
「有象無象が少し増えたところで、ワシには敵わぬ!第一、一度に飛び掛かれるのは四人...うおおおおぉぉぉぁぉ!?」
同時に僕とアンダイン含む五人が上条に続いて攻撃を仕掛けるといった構図になっている。
...しかしこの魔王、えらく強い攻撃を出せるのにどこか抜けてるみたいだ。敵に言うのは何だが、大丈夫かな?
「笑止!この世界は結合世界、我らの世界とは異なることを忘れておるのか!今までの貴様のその理論は通用せぬ!」
ピコ麻呂はそう言って、槍にも見える武器を取り出した。
「穿心角よ、わしに力を!」
ピコ麻呂の魔力が膨れ上がったのを感じた。
「穿心角・突!!」
「...ふん!先程は油断したが、甘い!次元断・黒天!!」
ピコ麻呂の魔力を纏った穿心角と、魔王のグランドソードがぶつかり合う。
それだけで辺りに衝撃波が発生し岩が砕け、地下湖に大きな波紋が広がる。
「うぉぉぉっ!?」
しかしピコ麻呂は吹き飛ばされた。体格に開きもあったこともあり、魔王の力に押されてしまったみたいだ。
「ミク、ピコ麻呂の治療を!」
「はい、分かりました!」
僕はミクに傷ついたピコ麻呂の治療を任せることにした。
「行くぞ魔王!ギガスラッシュ!!」
「バイブレイ・ライト!!」
そして僕とセシルは魔王に攻撃を仕掛ける。
「そこじゃ!グランドソードよ、時空を今一度開くがよい!」
まずい!
かなり近い距離で、時空の狭間が出現し、ズゴゴゴゴゴゴゴゴ!!という音が聞こえる。
しかし、バキィィン!!という音と共に狭間は再び消滅する。
「時空の狭間は俺が防いでやる!あんたらはあいつを!!」
「「分かった!!」」
再び魔王に接近する。
「何度やったところで変わらぬよ...!グランドソードよ、時空を開けっ!」
目の前で時空の狭間が出現する。しかし、僕たちは意に介さない。
バキィィン!!
その音と共に道が開いた。
「行くぞっ!セシル!」
「分かった!」
僕の勇者の剣に力を込める。そしてセシルの持つ宝剣アルテマウェポンにも、力が込められる。その力を敵の一点に!!
「「受けてみろ!!『バイブレイ・クロスブレイク』っ!!」」
光と雷撃の斬撃が交差し、魔王を切り裂き吹き飛ばす。
「ガハッ!!...中々やるではないか...!だがこれしきで倒れる魔王ではないわぁぁぁぁっ!」
そう言って態勢を建て直した魔王は、すぐさま僕たちを大地を踏みしめ地面を揺らす。この世界に存在する
「っ!しまった!」
僕がそういうのもつかの間、震央の付近にいたことで怯んだ僕とセシルに大きな拳が振るわれる。
「ヴァッ!!」
「ガァッ!!」
僕たちは吹き飛ばされるが、何とか態勢を建て直す。
と、そこに。
「私を忘れるなよっ!人の勝負を邪魔しやがって!!」
アンダインが激昂しながら一気に距離を詰める。そして槍を虚空に振り、魔王の動きを止める。
「ぬ、ぬぅぅっ!!う、動けん...!!」
そしてそこに、上条がアンダインの横にきた。
「一緒に行くぞ、えーっと...」
「アンダインだこのツンツン頭!」
それだけ言って二人は動けない魔王の懐に潜り込み、
「「そのふざけた決意をぶち壊す!!」」
と、魔王の顔面に強烈な拳を叩き込んだ。
「ぐほぉぉぉ!!」
肉と骨を打つ音と共に、魔王は再び吹き飛ばされた。だがさすがは魔王、傷ついたが余裕はまだありそうだ。
「ワシはまだまだやれるぞ!」
「よし、今度はわしの番じゃ!」
「ピコ麻呂ぉぉ...」
忌々しい目で、魔王はミクの治療が終わったピコ麻呂を睨んだ。
「貴様は、貴様だけはこの場で殺す!!今度こそ陰陽道1000年の終焉を迎えるが良い!!グランド...バスターァァァァァァ!!」
魔王の魔力がグランドソードに集中する。そしてそれを一気に解き放った。
「おい!アレはヤバいぞ!!」
アンダインの言う通り、アレはとんでもない威力だ。時空を切り裂くグランドソードの効果も相まって、直撃すれば「存在概念の消滅」は避けられない。(ユニークスキル『
「ピコ麻呂!!」
僕は思わず叫んでいた。
「(あの攻撃...なのは殿の魔力砲、『ディバインバスター』を模したものか...ならば!)」
「上条よ!!」
「分かってるぜピコ麻呂さん!」
バキィィン!!という音が洞窟の大空洞に響き渡った。しかし、今度ばかりはすぐには打ち消せない。
「これは貴様でも打ち消せまい、上条当麻!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁあ!!」
「無駄よ...死ねぃ!!」
「アイツらが腹を空かせて待ってんだ...!俺は、こんなところじゃ終われねえんだよ!!」
上条が魔王の極大攻撃を対処している間に、ピコ麻呂は動いていた。
「行くぞ!ミクよ!」
「分かりました!!初音ミク、行きます!」
ピコ麻呂とミクは、お互いの魔力に近しいもの(本人たちは霊力と呼んでいる)を練り、穿心角に込めた。
「行くぞ!魔王よ!!」
「何ぃ!ピコ麻呂ぉぉぉぉっ!」
魔王の後ろに回り込み、そして高く飛び上がった。
「「成仏させてやんよっ!!」」
と、強力な穿心角・突を放った。
その一撃で、魔王は戦闘不能の致命傷を負った。
魔王はここまでだろう。ピコ麻呂の攻撃が魔王にとって弱点だったのも大きい。...ここから逆転できる要素なんてどこにもないハズだ。
「ガハァッ...。まさかここまでやるとはな...確かに今のワシはあの時ほど強くはない。あの時は高町なのはの魔力も扱えたからな...」
「ここまでじゃ...!成仏するが良い!」
「しかしワシはここでは終わらぬ...!ここでワシは退散させてもらおう...。」
「逃さぬ!成仏しろよ!」
しかし一歩遅かったみたいだ。転移魔法を習得していたらしく、事前に用意しておいた術式を即座に発動して脱出したようみたいだ。
「...転移魔法とは迂闊であったな。じゃが次は逃さぬ。覚悟するが良いぞ...」
落胆したようにそう呟くピコ麻呂。
「まあいいじゃねぇか。こうやって今生きてるんだし。」
「それで今後、どうするんですか?」
ミクが僕に尋ねてきた。そんなの決まってる。
「魔王を追おう。そしてこの世界を元に戻そう!!」
「分かっておる。皆の者、行くぞ!」
セシルはアンダインと上条にこう言った。
「君たちも行くか?」
「あの魔王には勝負を邪魔されたんだ。だからワタシも行かせて貰おうっ!」
「当たり前だろ、かつての仲間を見捨てられるか!...紹介が遅れたな、俺は上条当麻。よろしく頼むぜ。」
「よろしくお願いするよ、上条。僕はイレブン。」
「僕はセシル。セシル・ハーヴィだ。よろしく。」
こうして大波乱の洞窟攻略は幕を閉じた。新たな仲間も増え、僕達の旅は続いていく。
ステータス
個体名 アンダイン(登場 Undertale)
種族
職業 魔勇者...魔物の身でありながら勇者にふさわしい力を持つ。剣と槍を扱う。
称号 魔物のヒーロー
加護 決意の紋章(フリスク)
魔法 異界魔法〜決意系統 正義...『世界の言葉』がない世界の魔法。異界魔法の中でも謎が多い。
ユニークスキル
剛力...自分の腕力を増強する。単純な勝負ならばこれがあるだけで勝ててしまう。
金剛身体...自分の肉体を硬質化することができる。
超速再生...負った傷や失った体の部位を魂がある限り回復することができる。
コモンスキル(エクストラスキルよりも下位のスキル。)...遠視
遠視...遠くを見ることができる。
耐性 自然影響耐性
自然影響耐性...自然環境による肉体的な影響を軽減できる。
プロフィール
フリスクの世界にあるアボット山の地下王国の近衛部隊、『ロイヤル・ガード』の元隊長。地下王国での人気は非常に高く、モンスターの子供たちからは英雄的扱いを受けている。性格に難があり、また立場上親友と呼べる存在が少なかったがフリスクとの交流の中で友も増えた様だ。アズゴア王を尊敬している。地上に出てからは修行不足に苛まれていたようだ。
魔王によってイレブンとのエキシビションマッチに水を差されたこともあり、イレブンと行動を共にする。
個体名 上条当麻(『とある』シリーズ、ニコニコRPGMV版)
種族 人間
職業 すっぴん
称号
加護 神上の紋章
魔法 なし
ユニークスキル なし(世界を渡っても獲得できない場合もある)
耐性 物理攻撃耐性、精神攻撃耐性、聖魔攻撃耐性、痛覚無効
物理攻撃耐性...物理攻撃によるダメージを軽減できる。
*超特異体質
プロフィール
超能力と魔術の勢力がせめぎあう世界の高校一年。『三十二人の勇者』の一人。彼の右手はありとあらゆる異能を打ち消す
ども、星の塵です。
今回もCross Worldをここまで見て下さってありがとうございます。
今回の内容はPixiv版で言う所の第九章、第十章、第十一章に当たります。内容自体には大きな変化はありませんが、戦闘の描写をより細かくしました。
そして今回仲間入りを果たしたのは、『Undertale』よりアンダイン、『とある』シリーズの上条当麻でした!
上条は今回『ニコニコRPGMV版』の設定が加味されています。よって原作よりも戦闘が上手いとして進めていきますので、よろしくお願いいたします。
さて、短いですがそろそろあとがきを締めると致しましょう。
今回もCross Worldを最後まで見て下さり、本当にありがとうございました。
今章は如何でしたでしょうか。是非とも忌憚なき目で評価や投票をして頂けると嬉しいです。
そして、イレブンやフリスク、その仲間たちが皆様の決意を満たし続け、皆様の心に留まり続けることを切に願い。
今回はここで、指という名の筆を置かせて頂きます。
皆様、最後まで本当にありがとうございました!次回もお楽しみに!!
...クロスオーバーって中々伸びないよね。あんまり好きじゃないのかな?書くにしても何も考えなければ敷居は低いとは思うし。
皆様はどう思いますか?後どうしたら伸びるんですかね?
...すみません、自己顕示欲の塊なモノで。
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第八章 魔国での出会い
ピコ麻呂とミクを仲間に加えたイレブンとセシルは、資金確保と付近の村の安全確保の為魔物が出没する洞窟に侵入した。そしてその洞窟の奥にて、
時空を切り裂く魔剣グランドソードを振るう魔王の前に、イレブンたちは成す術もなく敗れると思われたのだが...『テラカオス異変』を鎮めた三十二人の勇者の一人、その手に
そして、あの二人の旅もまた続いていた。
青年アバンス襲撃の後も色々あったけど...今目の前にある光景は、それすら霞むものなんだ。
「まるで東京...こんな大都市が何でこんなところに...?」
「幻覚かな...?こんなところにこんな大都市なんてある訳...」
僕...フリスクはそんな風に今立ち尽くしている。その隣にいるのは桃髪の少女、鹿目まどか。彼女もまた、この世界においては初めて見る現代都市を見て立ち尽くしているみたい。
「...とにかく行こうよまどか。まずあの町で、情報を集めないと。」
「今でも信じられないよ...今までが今までだけに...」
そうなんだ。
今まで僕達はここにたどり着くまでに、様々な敵と戦ったんだ。
小さな強盗団やスライムなどの『妖魔』、僕の世界にもいたモンスターもいたんだ。宇宙人みたいな敵もいたんだよ。
...勿論だけど、殺してない。僕はこの世界でも「誰も殺さない」ことを信条にしているんだ。
ユニークスキル『
でも、まどかも後ろから見ていた訳じゃないんだ。
この世界には僕の世界にはいない『理性がない』狂暴なモンスターもいたんだ。言葉による撃退が不可能だから、正直言って今でも相手したくない。
相対した時は僕の『
このような時も絶対に殺さない。相手を殺すのではなく撃退するのが僕達の戦い。
そのためまどかはより自分の力(ユニークスキルなど)をコントロールできるように日々努力しているみたいだ。
いつも寝る前に封印の剣を振っていたり、自分のスキルを僕以上に研究に励んでる。
「私はさ...意気地無しだからさ。前の世界でも肝心な所で何も出来なかったんだよ。たった一人、でもとても大切な友達も守れなかったから、今度こそ誰かを守れるようになりたいんだ...」
理由を聞いたときに、そう答えたんだ。
余程のことがあったんだろうね...
話がずいぶん逸れたみたいだね。話を戻そう。
そんな戦い続きの僕達からしたら、目の前に広がる街は違和感しか感じさせなかった。
一言で言うならば、場違い。
どんな危険なところにドン!と建ち並ぶ、やけに現代的な街。
しかしそれでいて僕達が知らない何かがありそうな雰囲気が漂う、そんな街。
まあでも、ここまできたならば入る以外に道はないよね。
そんなわけで、僕たちは街に入ろうとしたのだが...
「待つんだ君たち!不法入国は厳禁だ!!」
肩をポン!と叩かれ、驚いた。
トカゲの鱗が体を覆う人型モンスターの兵士が、そう僕達に注意したからだ。
そして、それ以上に...
「「この街が...国!?」」
その後、僕達はそのモンスター...蜥蜴人(リザードマン)にその国...ジュラ・テンペスト連邦国、略して
厳しいチェックがあるんだろうな...と僕は思っていたけど、案外そう厳しくなかったんだ。
ある程度の所持品チェックはあったけれど、僕がこっそりと持っている(使ったことがない)ナイフどころか、まどかの封印の剣も没収されなかったんだ。
...ちなみに税関の豚頭の人型モンスターが(僕のゲーム知識が正しければ、多分
...迷宮?
そんなことがあったが、割とすんなり国に入れた。周りを見渡すと...
僕にとって、最高の光景を見ることができたんだ!
モンスター、モンスター、人間、モンスター、人間。
魔国というだけあって、モンスターが多かった。しかし人間は、怯えることなくモンスターと他愛ない世間話をしている。
僕達の世界で目指すべき、そんな空間が広がっていたんだ。...見習わなきゃね。まだまだ僕達の世界は、こんな感じじゃないから。
...今はお互い若干、焦っているようだけど。
話の内容を考えて、街の外がおかしい、どうなってるんだコレ、だとか、・・・様が何とかしてくれるとかそんな声が聞こえてくる。
そんな中...
「キャァァァァァッ!!」
悲鳴が突如聞こえた!
「行こう、まどか!!」
「う、うん!」
僕達はすぐに、目的地に向かった...
着いた。
そこでは一人の男...モンスターが暴れていた。そいつからはなんだか、マンガで見たヒャッハーと同じ匂いがしたけど。...しかもそのモンスターはどうやら、この国の国民ではないみたいだ。
「ハッハーッ!!今からこの俺が、この国を乗っ取ってやるぜぇぇぇぇっ!」
いきなり放たれる痛い台詞。この混乱に乗じて騒ぎを起こすとは...まさしく不良といえるだろうね。
「ねぇフリスク...近寄っちゃダメな感じがするよ。」
「放っておいても大丈夫そうだけどね。...ほら来た。」
ドン引きである。僕の世界には多分こんな愚か者はいない。それはまどかも同じだろうけど。
「逮捕だっ!リムル様に不敬だぞ!しかも街中で叫ぶとは...キチガイか貴様!」
走ってきたのはこの国の『警察』。この国の警備も兼ねてるみたいだ。
「警備ごときに負けるものかよ!!」
そういってキチガイヒャッハーは、大鎌を取り出し全力で振るった。
このキチガイヒャッハーは力があるみたいで、なんと警察を吹き飛ばしていた。そして下卑た笑いを浮かべ、
「ハッハッハッ!!その程度かよーッ!」
...と嘲笑う。
~っ!!あぁもう、黙ってられない!
「...ちょっと僕はあのキチガイをふんじばってお巡りさんに引き渡すから、まどかはここで...」
「う、うん...!!」
まどかが震え上がっていたが、手荒な真似はしない。ただね、今の僕はお灸は据えなきゃ気が済まないんだ!
...そういってキチガイヒャッハーのところに行こうとすると...
「パラライシス...α!!」
「!?」
その声がしたのと同時に、キチガイヒャッハーに電気の糸が絡みついていた。
「アババババァァッ!!」
電流が流れ、キチガイヒャッハーは気絶した。
その声の主は...
赤基調の帽子、僕と似たようなストライプシャツ、色は黄と青。年は12歳ぐらいかな?その手にはバットが握られていた。
「ふぅ、これでよし!...っと大丈夫?ライフアップ!」
その子は僕にもよく分からない何かしらの力を使って、警察の人たちに治療を行った。決意の力ではないみたいだけど...
その子はこの場から去ろうとして...突如驚いたようにしてこっちに来た。
「君たちもしかして...別の世界から来た人?」
「!?何で分かったんだ!?」
「だって他の人たちとは、何か違う気配がしたから...超能力とも、この世界にある魔法とも。」
「あなたは一体...」
まどかが尋ねた。
「僕はネス。...君たちは?」
「フリスク。この国にはさっき来た所だよ。」
「鹿目まどか、よろしくね。」
「ひとまず場所を移そうか。さっきいいホテルを見つけたから、そこで話がしたい。」
ネスが何の遠慮も無く、そう言って来た。
...ホテル?
「ねぇ、キミはホテルに入れる程のお金を持ってるの?」
「えっ?」
そういって僕と同じぐらいの背丈の男の子...ネスはバッグから大きい財布を取り出して見せてきた。...って!
「キミ...大金持ちじゃないかっ!!」
「こんなにお金を持ってるの!?盗られたりしてないの?」
僕は思わず叫び、まどかは思わず心配してそう訪ねたけど、
「いや?盗られたことはないし前の世界ではこれでも足りなかったよ?」
...ちなみに僕の世界の地上でも、共通通貨は$だ。
僕の世界の平行世界が存在してるのかな?
ちなみにネスが持っていた総額は10000$。まどかがいた世界の
「...道理で入れるわけだよ。でも万が一の事もあるから、気をつけた方がいいよ?」
忠告のつもりでネスに言う。
「ハハハ...よくお母さんにも言われるんだけどね...」
肩を竦めてネスが言った。金銭感覚が少しずれてるのは間違いなさそう。
ネスがホテルのチェックインの手続きを終わらせたようだ。
「いいよ、二階の203号室!」
「行こう、まどか。」
「うん。」
そんな訳で、部屋に入った。途中にはエレベーターもあった。けどどうせ二階だから、という事で使わなかったんだけどね。
「それにしても...綺麗な部屋だね。」
まどかがそう呟く。
「このホテルは結構お金持ちの人が入るホテルらしいけど失敗したね...今ので300$使っちゃった!」
「...そろそろいいかなぁ?」
場所的にもそろそろ話すべきだ。
「うん、僕のことでしょ。分かってる。」
「僕達のことも話さないとね。じゃあ情報交換の時間といきますか。」
「...という事なんだ。」
やはりこの子もただ者じゃなかったみたい。
なんとネスは前の世界では宇宙人を撃退して、英雄扱いを受けていたらしい。それを成し遂げたのは彼に宿る力...超能力なんだって。
そして三人の友達が、彼を支えた。名前はそれぞれポーラ、ジェフ、プー。ポーラとプーは超能力...PSIの達人で、ジェフは機械や兵器を扱うのに長けた人なんだって。
ある日彼らはネスの生まれ故郷に集まって、旅行の計画を練っていた。そしたら突然謎の地震と光が襲ってきて、そのまま気絶。気がついたらネスだけがこの街の隅っこにいたんだってさ。
「まどかは覚えていないそうだけど...僕もその地震と光を経験したんだよ。」
「本当!?」
「うん。モンスターと人間が共存できるようになって一年後ってタイミングだった。」
「共存?一体どういうことなんだ?」
「ああ、そういやまだ話してなかったね。」
そういって僕は今までのこと、元の世界のことも全て話した。
「...そう、そうか。そうなんだ...。」
話が終わった時、ネスは...
...何かを思い返したかのように顔が正面からは見えないほど帽子を深く被り、うつむいた...
...まるで、溢れ出る感情を抑えるかのように。
ネスはすぐに僕たちの方に向き直り、
「...君たちは、これからどうするんだい?」
と、尋ねてきた。...そんなの決まってるさ。
「友達を探すよ。そしてこの世界を何とかして元に戻すんだ。」
...あまりその状況を考えたくはないけど、自分のloveを上げざるを得ない場面が出てくるかも知れない。大切な人を、この世界を守る為に、誰かを殺めることが今の僕に出来るだろうか?
...多分、答えはその時にならないと出ないと思う。でも世界を元通りにする為には、ひたすら進むしかないんだ。どんなに遠回りでもね。
「僕も連れていってくれないかな。」
「...えっ?いいの?」
「僕にも大切な友達がいる。君たちと一緒に探せば、きっと見つかると思うんだ。...構わないよね?」
「...!!大歓迎だよ!...まどか、僕たちの新しい仲間だ!」
「う、うん!よろしくね、ネス!」
「こちらこそよろしく、まどか!」
僕たちは握手をしてこの出会いを喜びあった。
そして、僕は次の話を切り出す。
「...それでこれからどうしよう?他の街の場所が分からない以上、動くのは不味い気がするんだ。」
「そうだよね...かといって、動かないと始まらないよ?」
まどかはそう意見を述べた。
「う〜〜〜〜ん...そうだ!!自由に動けるようにすればいいかもしれない!」
「「??」」
「行こう!」
「「う、うん...」」
ネスには考えがあるみたい。
ネスについていく形で、僕達はすぐにその場所に行った。
そこは...
「本当に、ここでいいの?」
「ちょっと、正気なの...?」
僕とまどかの疑いの目が、ネスに向く。
当たり前じゃないか。
今いるこの場所、どう考えても子供が来る場所じゃないから...
「不動産って、家かマンションでも借りるの...?」
「今から買うんだよ、家を。」
...え?え?借りるどころか、買う?
「そう。この国を僕達の拠点として、ここから周りの街や、国を探すんだよ。」
「えっでも、借りるだけで良くない...?」
するとネスは口を尖らせて、自信ありげにこう言った。
「分かってないなぁフリスク。今回の一件、一月や二月じゃ解決できるものじゃない。借りるにしたって僕たちは遠出する身なんだ。借家を管理する人の事を考えたら、いっその事買ったほうがいいってね。」
「...いや、家を、本当に買えるの?」
ネスの答えに、まどかがそう返す。
「大丈夫だよ。たった今、候補を決めたから。」
「...えぇっ!この物件と土地を買いたいと?」
「そうです、無理ですか?」
「...無理ではありません。ただ...子供だけで大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です!慣れてますから!」
ネス、かなり手慣れてるなぁ。今現在、絶賛交渉中。
買う家は、金貨9枚...ネスの世界と僕の地上世界の単価で9000$ぐらいだって。(僕達のような異世界人との対応に慣れているのかもしれない。$で通じたのがその証拠だろうね。)
広さはそこそこのログハウス。ログハウス式がとても安い上に、この国はやけに不動産の価格が安いからこの値段で買えるんだって。(しかもトイレやキッチンスペース完備。)
そうこうしているうちに話が終わった。場所はこの国の商業エリア近く。そこに空き地があった。ここに新しい家が建つことになる。
「すぐに工事が終わります、半日程頂きます。」
「(えっ、半日...?)分かりました!」
「ほい!そういや迷宮には行ってないのかい?いいぞ、あそこは...」
迷宮かぁ...まぁ、その前にやるべきことがあるけどね。
それだけで半日使いそうだから。
「本当に家が建つなんて...ありがとう、ネス!」
「うん、どういたしまして。時間は半日程あるけど、どうするんだい?」
ネスの問いに対し、しばらくしてまどかが答えた。
「う~ん...まずは挨拶回りしとかないといけないんじゃないかな?しばらくはお世話になるとは思うし。」
「それは名案だ!...よし、2人とも行こう!!」
コンコン!...とノックをする。材質がいいのか小気味いい音が鳴る。
「はーい、どちら様ですか?」
ガラガラガラ、とドアが開けられた。
この家に住んでいる奥さんみたいだ。
「こんにちは。今日からこの近くに住むことになったので、挨拶しに来ました。」
「あらあらご苦労様!三人ともまだ子供なのに...ってあなたたち、『異世界人』?」
「その、『異世界人』って何ですか?」
まどかがそう尋ねる。
「読んで字の如くね。私たちとは違う世界から意図せずに来た人たちのこと。つまりあなたたちのことよ。最近よく見かけるのよねぇ、あの一件以降。」
やはり普通の人たちも巻き込まれてるんだ...
「あなたたち、名前は?」
「フリスク。こっちの女の子がまどか、僕と色違いの服を着ているのがネスです。」
「鹿目まどかです、よろしくお願いします。」
「ネスといいます。よろしく!」
二人とも、挨拶を交わした。
「よろしくねぇ!フリスクくん、まどかちゃん、ネスくん!」
そんなこんなで、挨拶回りが進んでいく。
それから二時間後...
僕たちは近所の人たちへの挨拶を済ませた。...けど何か、やってないことがあるような...
「ねぇ。」
「うん。」
「僕たちって一応はここに住むことになったよね。」
「うん。」
「ちゃんとお偉いさんにさ、伝えてないと駄目じゃないのかなぁ?」
「...オーノー、すっかり忘れてた。」
僕はネスに肝心なことを伝えた。というか、ちゃんと戸籍登録しないと...
「捕まっちゃう、てことかな?」
まどかが少し冷や汗を流しながらそう言った。...確かに、最悪の場合それは間違いないかも。
僕は二人の手を繋ぎ、
「走れ-っ!手遅れ(前科持ち)になる前に!」
大慌てで走る僕たち。
「待ってよフリスク!足が、足がっ...」
「フリスク!いきなり走らされちゃ足がつるじゃないか!」
目的地は役所。歩きで一時間、走り続けて30分。
「「「ハァ、ハァ、ハァッ...」」」
疲れたよ...さすがに30分走るのは身体中に堪える。でも、何とか役所についた。
「ね、ねぇ...ちょっと休憩しない?」
まどかが少し勘弁してくれ、と言った目でこちらを見る。
「足がつるとこだった...」
「ご、ごめんね...。」
ネスも疲労困憊みたい。流石に迷惑すぎたので頭を下げる。...休憩をとった方がよさそう。
近くにベンチがあったのでそこに腰かける。その近くには...
「ん?これは自動販売機!?まさかこんなところにあるなんて思わなかったな...。」
ネスがそう驚きの声をあげた。この国には驚かされてばかり。僕たちの国の生活と遜色ないレベルで変わらないみたいだ。
「何飲む?」
「$や円が使えるのか?」
「使えないみたいだよ?」
僕とネスとまどかはそう言い合う。さすがに機械相手には別世界の通貨は通用しないかぁ。
僕たちは諦めて、十五分程ベンチで休んだ。
どれ程時間が経ったんだろう。さすがにこの国の戸籍を得る、となると様々な手続きを要するみたいだ。
僕はあまりこのような手続きの場面は得意じゃないから、ネスが色々やっている。
特定の地区の戸籍表に名前が載るだけじゃない。それは名義上はこの国の国民になることを意味している。(僕たちにとっては旅の拠点としての意味合いが強いけど)それにこの国のルールや様々な仕組みについても説明なんかがあると思うし...
一時間程で手続きが終わった。これで捕まることなくやるべきことをやれる。
「どうする?まどか、ネス?」
「迷宮を皆しておすすめしてたよね。いってみる?」
「うーん...一回帰って工事の進捗状況を見に行く、とか?」
「いやここは...」
やいのやいのと話し合いが加速して行く...と思いきや。
「「「\グゥゥゥゥゥゥ.../」」」
腹がなる音と共に話し合いムードがガラガラと瓦解した。
「...ご飯、食べよっか。」
「「ハハハ...。」
まどかの声でやることが決まった。因みに現時刻は5時半。これだけ歩き回ればそりゃお腹は空くよね。
やって来たのは役所から歩いて十五分の人が疎らなレストラン。
店名は『気ままなそよ風』だった気がする。
店長は洋食と中華が得意らしく、メニュー表にはそういった定番メニューから、少し高級感溢れる物まである。
そんなわけで僕たちが頼んだ物は...
「店長の気まぐれパイと気まぐれキッシュで!」
「シーザーサラダとささ身フライ、あと苺豆腐をお願いします。」
「ビーフ100%ハンバーグセットで。それとみんなにお冷やをよろしくお願いします。」
という注文内容だった。総額、銅貨50枚。日本円にして5000円、$50。これによりネスの残り残金は$650。(僕とまどかはお金を持っていないんだ。)
そして...
「久しぶりの美味しいご飯だぁぁぁ!」
「こんなにまともな食事は久しぶり...!」
「良かったね、二人とも。...僕はテンペストの近くにいたから、すぐに美味しいご飯にありつけたけど...って、フリスクさんにまどかさん?何を冷めた目でこちらを...?」
「僕たちは魔物やを追い払ってようやくここまできたんだ。それまではね...」
「手持ちのカロリーメイトや海茶、杏子ちゃんから貰ったままになってたお菓子だけで食い繋いでいたんだよ?結構ひもじい思いをしていた私たちの気持ち...」
「「この気持ち、分かります?」」
「...なんかすいませんでした。口が滑ってしまって。」
ネスは土下座も辞さないような顔つきでそう言った。
ま、あまり気にして無いんだけど。
それ以上に...
「この国でバタースコッチパイが食べられるなんて、思わなかったなぁ...。」
トリエル母さんがいつも作ってくれたバタースコッチパイ。味は母さんが作ってくれた物とは少し違うけど、やっぱり、美味しい。
...ああ、会いたいな。
...いや、会うんだ。絶対に。
時刻は6時を回っていた。
それから僕たちはきた道を戻り、家が建つ場所に帰って来た。そこには...
「これは...」
「凄い...」
「立派だ...」
本当にたったこれだけの時間で家を完成させるなんて、凄い以外に何と言えばいいのか。
「御三方、どうぞ入って下せぇ!」
大工の棟梁さんがそう言って中に入るように言った。
中はとても明るい感じに仕上がっていた。そもそもの木が、明るい木目の物を使っているみたい。
水道、キッチン、トイレスペース、風呂が完備されている。二階立てで、二階が寝室として設計したようだ。
「ありがとうございました!すみません、僕たちみたいな子供に、こんなことに付き合わせてしまって...」
「いいってことよ!気にすんな、少年!」
そう言って棟梁はガハハと豪快に笑った。
家具はさすがに置いていなかったが、ベットはあった。三人分。
「今日一日で、色々あったね...」
「うん。この世界に来てから驚いてばかりだよ。」
「今日はもう寝よう。色々あったし疲れたぁ...」
現時刻は午後7時。しかし僕たちはもう寝ることにした。というか疲れて考える気力も無くなったんだ。
...お休みなさい。
...あれ?何か重要なことを忘れているような...?
一方その頃フリスクたちが「泊まっていた」ホテルでは...
「お客様三名様が行方不明です!一体どちらへっ...!」
「急いで警察に連絡を!手遅れになる前に、早く!!」
「お客様方-っ!居られますか-っ!!」
このような大騒ぎになっていた。
その後、フリスクたちは警察に厳重注意を食らい、ホテルから迷惑料として銀貨5枚を取られ、(日本円にして五万円、$500程)ネスの残金が残り、$150となったのだった。
「「ナンテコッタイ...」」
「あ、あはは...ドンマイ?」
まどかとしてはそれぐらいしかかける言葉が見つからない。
早朝5時にいきなり罰金と厳重注意を食らい現在午前6時半。
食事は家近くの小さなレストランで済ませた。(この過程でネスの残金残り$125。)
僕は今のこの状況を非常にヤバいと感じた。それは他二名も感じていることみたい。
「$125じゃ、家具が一切買えやしないじゃないか!買えるのは精々...」
「食料、調味料、調理器具とかかな...?」
ネスとまどかがそう嘆き、首をガクリと落とす。
「何とかしてお金を稼がないと...うん?」
「フリスク...?」
「何かいい案でもあるのかい?」
まどかとネスがそう聞いてくる。その答えとして今僕が考えていたのは...
「
「当ては...?」
ネスの問いに、僕は意見を述べる。
「迷宮って皆がおすすめしてたよね?ここまでおすすめするからには、何か凄いものでもあるかも知れない!」
「でも、景品がお金関係とは限らないよ。それにこの世界のことだから...」
「戦う羽目になるかも知れない。もしかしたら死ぬかも知れない。フリスク、君はそれでも行くのかい?」
「行かないよりかは行ってみた方がいいよ、絶対に。」
彼らの懸念は分かるんだ。この世界がまさしく「殺るか、殺られるか」の世界であるのは間違いない。僕の世界でのやり方が全く通用しない世界であることも。それでも、やっぱり行かなきゃ始まらないと思うんだ。
「...分かった。それじゃまず買い出しに出かけますか!」
ネスの一声でこの案件の決定が決まった。今はまだこの世界での生活は波乱続きだ。だけどやるべきことの為に、この世界を元に戻す為に頑張らないと。
僕たちの生活と旅はまだまだ始まったばかりなんだから。
ステータス
個体名 ネス(登場 MOTHER2ギーグの逆襲、大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ)
種族 人間
職業 超能力者(暫定 原石Level5・・・Levelとは、どこかの異界に存在すると言われる超能力機関によっえ決められた能力の強さの指標。)何かしらの要因で魔法とも違う攻撃を行える。扱える武器には個人差があり、ネスはバット・ヨーヨーを扱う。(恐らく斧も扱えるかもしれない)能力名は不明。
称号 超能力の少年
加護 博愛の紋章
魔法 なし
ユニークスキル『
地脈操作・・・地面に流れるエネルギーを操作できる。思いがけぬ力を発揮できる。
守護・・・防御力を大いに高める。盾として優秀な力。
代役・・・誰かが受けた痛みやダメージを肩代わりできる。
耐性 物理攻撃耐性、自然影響耐性、聖魔攻撃耐性
プロフィール
ある世界にある、イーグルランドの町オネット郊外に住む少年。生まれつきで超能力を扱うことができ、学校でも人気者だったようだ。野球とヨーヨーを趣味とし友達も多い。ある日未来からの使者ブンブーンによってお告げが下され、それを機に旅をはじめ最終的に仲間四人と共に宇宙人の親玉、ギーグを倒すことに成功した。性格は好奇心旺盛で積極的に行動するが、やや腹黒い。だが、確かな優しさも兼ね備える強い少年。
ども、星の塵です。
今回もCross Worldを読んで下さり、ありがとうございます。
今章はPixiv版の第十二章、第十三章、第一四章をまとめたものとなります。内容には大きく違いはありません。
そして今回の新キャラは『MOTHER2』よりネスです!スマブラで知った方も多いのではないでしょうか。彼の超能力はフリスクの旅にどのような影響を与えるのか、是非楽しみにしておいて下さい。
今回は短いですが、ここであとがきを締めと致しましょう。
今回もCross Worldを最後まで読んで下さり、本当にありがとうございました!今章はいかがでしたでしょうか?是非是非忌憚無き目で評価や感想をお寄せ下さい。
そして、イレブンやフリスク、その仲間たちが皆様の決意を満たし続け、皆様の心に留まり続けることを切に願い。
今回はここで、指と言う名の筆を置かせて頂きます。
皆様本当にありがとうございました!次回もお楽しみに!
あ、最後にメイン作品の時系列を紹介しておきます!
ドラクエ11・・・ストーリー終了、大乱闘参加を経て一年後
FF4・・・TAストーリー終了の一年後
ファイアーエムブレム覚醒・・・ストーリー終了、その後に立て続けに起きた異界の軍の侵攻や、大乱闘参加を経て一年半後
Undertale・・・真Pルート終了の二年後
魔法少女まどか☆マギカ・・・アニメストーリー終了、その直後
MOTHER2・・・ストーリー終了、大乱闘参加を経て二年後
東方・・・ニコニコRPGの関係上、永夜抄ストーリー終了の一年後
転生したらスライムだった件・・・書籍版の設定を前提に、ストーリー終了の二年後
ニコニコRPG・・・MV版、テラカオス討伐までのストーリー終了の二年後(内部作品についてはある程度揃い次第紹介する。)
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第九章 魔国の迷宮
魔国連邦(テンペスト)でしばらく暮らすことにしたフリスクたち。
様々なトラブルに遭いながらも拠点を確保したのだが...度重なる出費によりネスの貯金は残り125$。
家具を買わないといけないので、これではとても足りない。
そこで一行は迷宮へと向かうことになった...
魔国連邦において一番の人気を誇る場所、
「お客さんが多いね...」
「この国で一番人気なのもあるけど、良いものがたくさん手に入るんだってさ!だから皆来るんだよ。」
「良いものって何だろう?お金?食べ物?」
まどか、ネス、僕はそう言い合っていた。
「ネスはどういった武器を持ってるの?」
まどかが今使っている武器は封印の剣なので、迷宮でもかなり通用すると思うんだ。
さぁて、ネスは何を使うんだろう...
「僕は...これだ!」
取り出したのは、バットとヨーヨー。
......。
予想外の武器だけど、何か安心した。
まどかの封印の剣を見ると、まさしく『神剣』みたいな感じがしてちょっと嫉妬してしまう。だけどネスの武器ラインナップは本当に普通だからかそれを鎮めてくれる。何だかありがたいなぁ。
...因みに僕は...
「バットとヨーヨーかぁ...フリスクの武器はネスよりも変わってるって、今更ながらに思うんだ。例えば...」
「それ以上はいけないまどかっ!」
「え、あ、うん...何かごめんね。」
そう。
ナイフは極力使わないから論外だけど、もし交渉が全く通じない相手の対策として、一応いくつか持ってきてるけど...
そのラインナップが...
玩具ナイフ、グローブ、バレエのチュチュ、ボロボロのノート、フライパン、弾丸が空の拳銃。
玩具ナイフやグローブ、フライパンは敵を気絶させることに役立ったし、武器として使っても大丈夫な物。
拳銃は実弾を入れたら不味いけど、代わりに決意を弾丸代わりにすることで、ダメージを極力抑えることができるんだ。
だけど、ねぇ...
ノート。軽いから何回でも叩けるけど、普通にバシバシと叩いてもハリセンみたいなもの。
極め付きはバレエのチュチュ。確かにヒール部分を使った攻撃は強いし、上手く使えばすぐに相手を気絶させられるけど...
...恥ずかしいんだよ。こんな物を着て戦うなんて...
できれば、今後は使いたくないっ...!
使うとしても、絶対に見ないで、まどか、ネス...!
ようやく、僕たちの順が回ってきた。
入場料は子供で銅貨五十枚($50)...あれ?
ヤバい、足りない!二人入場可能だけど、後一人はダメだ!
まけてくれるかな...
「入場料は子供で銅貨五十枚です。...と、あなた方は見ない顔ですね。初入場ですか?」
「...あ、はい!」
「初入場の方は入場料は半額となります。一人、銅貨二十五枚($25)お願いします。」
良かった、ラッキー!
まどかもネスも同じ気持ちなのか、ホッと胸を撫で下ろしていた。
合計75$払い(残り50$)迷宮に入った。さてこれからだ。気を引き締めていこう!
僕は思う。
目の前の光景を見てこう思わずにはいられない。
こんなの絶対おかしいよ、と。
何があったのかと言うと...
僕たちはあの後、別の係員さんからあるものを渡されたんだけど、それは『復活の腕輪』と言うみたい。
その効力は、何と...
着けている者が死亡した時に、指定された場所で復活する(使い捨て)...というものなんだ。
因みにこれは初入場者は無料配布なんだってさ。
「迷宮内では絶対に、ぜーったいに外さないで下さい!これはあなた方の命を守る為です。もし外したまま死亡する事態になっても責任を負えないので。ご了承下さい!スタートはあちらですよ。」
その説明を聞いて僕たちは...
「嘘に決まってる...!多分だけど迷宮に入った人たちを安心させる為の嘘なんだよ。」
ネスが不信感を露にしてそう言った。
「死んだ人が生き返るわけが無いんだよ。信じられるかと言われたら信じられない。信じられる訳がないよ...」
まどかもそれに賛同しているみたいだ。
勿論僕もそんな都合のいい話は到底信じられない。
だけど...
「...そうだね。一瞬凄いなと思ったけど、そんなものがあるわけないよね。だけどさ...」
「「だけど...?」」
「どうせ無料で貰ったんだし御守りにはなるんじゃない?」
「それもそうだね。気にしても仕方ないか。」
ネスはそう言って笑った。ふと思ったけどネスは僕よりも笑顔が似合う感じがする。
まどかもその意見に賛成なのかこれ以上は何も言わないみたいだ。
そんな訳で第一階層からスタート。その最初の一歩を踏み出そうとして...
瞬間。
隣にいたまどかの首が跳ねられた。
...そして今に戻る。
「...え」
「...ッ!!まどかぁっ!!」
まどかの首を跳ねたのはトラップから射出される、円盤状の刃だった。
ポケットに入っていた謎の宝石が落ちた。そしてそれはドス黒く変色していき、形状も禍々しく変化していく。
正しく命の輝きが消え、別の穢れによって塗りつぶされるように。
そしてその宝石は何が生み出してはならないものを、今にも生み出してしまうような禍々しさを放っていた。
...今はそんなことは関係ないっ!
「駄目だ...これじゃ僕のライフアップも効かないっ...!...うっ!?」
ネスが顔を青ざめながら、そう言った。
首と頭の境目から、おびただしい程の鮮血が噴水のように噴き出している。
「...そんな、そんな、そんなっ...!僕のせいでっ...!!」
初めて、初めて出来た、大切な人間の友達なのに。僕の軽々しさと甘さのせいで、こんな...!!
ネスはあまりの光景に耐えられなくなったのか、吐いてすらいる。
...諦めたくない。僕が起こした過ちだ、僕が何とかしないと...でも、一体どうすればいいんだ...!!
その時、迷宮の中でのみ起きる奇跡が僕たちの前で起きたんだ。僕たちの今の願いを叶えるかのように。
突如まどかの頭と体、そして宝石が光となって消えた。
そして後方10メートル、係員がいる場所から。優しい光が後ろから照りつけられ...
光の後、僕たちの後ろに。僕たちの仲間で友達の。
まごうことなき鹿目まどかがそこにいた。
「...あれ?私は何でフリスクたちとこんなに離れてるのかな?」
「......ま、まど、か...。」
「......これは?」
本当に生き返った...?
これは...クローン?それともコピー?それとも...いや違う。見違えるもんか。
他の人とは少し雰囲気が違う感じがするのはまどかぐらいしかいないから。これは本人に違いない!!
「良かった...無事で...!」
まどかの元に急いで駆け出す僕たち。
しかしそれはまどかにとってどのような光景に見えたんまろうか。
その考えに辿り着く間もなく...
バカン!!
「落とし穴ァぁぁぁぁぁ!?グガァッ!」
「嘘だァぁぁぁぁぁっ!?...ぎゃぁぁっ!」
...落とし穴+槍襖によって、僕たちの意識は暗転した...
...気づけばまどかの隣に立っていた。本当に復活したんだ。もう反論の余地が全くない。
「ああ、そうそう!スタートはこっちだよ。」
復活の腕輪を渡した係員さんが何の悪びれもなくそう言い放った。
「...何であんなことしたんですか!」
若干の怒りとツッコミを混ぜてそう問い詰める。
「考えてみたら分かると思いますよ?『これを着ければ一回だけ復活します』...なんて、初めての人が信用するわけ無いじゃないですか。だからドッキリ形式で『迷宮内での死亡を体感する』という形で、復活の腕輪の効果を信用してくれるように宣伝しているんですよ!」
それを聞くとネスが肩を落としながら、
「それを早く言ってください...」
と呆れ混じりに言った。分かる。その気持ち。
「言ったら逆にやらないでしょ?」
その返しは不覚にも、ごもっともと思わされた。
「...まさか本当に復活するなんて...何というか、私の闘いが少し否定された気がして、なんか...」
何の事だか分からないけど、まどかは複雑な表情でそう言った。
ま、今後話してくれるかな。
...そんな訳で僕たちは係員さんに復活の腕輪を着け直して貰って、第一階層に足を踏み入れたのだった。
第一階層は挑戦者たちの練習場としての意味合いが強いみたいだね。
魔物は出現しない。そして数々の武器の訓練部屋がある。
そしてチュートリアル。これはこの迷宮でのルールをミッション形式で説明する...というもの。このチュートリアルは何度でも受けられるみたい。
なので...
「集合場所は第二階層への階段前で!」
「うん。」
「分かった!それじゃ行ってくる!」
僕がそう言うと、まどかとネスは別々に行動を開始する。
「さーて何をしようかな...うわっ!」
誰かにぶつかった。と同時に何かがばらまかれた。それは...カード?
「す、すみません!」
「ああ、気にすることはないぜ。こんなど真ん中でデッキ構築をやってる俺も悪いしな。」
「デッキ...?」
「興味あるのか?見せてやるよ、ほら。」
そのカードに描かれていたのは、黒い魔術師みたいな感じの人や、赤いドラゴン。その他諸々。
「これは何ですか?」
「!?このご時世でデュエルモンスターズを知らないなんて、珍し...!いや、もしかしてお前は異世界からきたのか?」
「!!まさか、あなたも...!」
「お待たせ〜っ!遊戯くん待たせちゃってごめんね。でデッキどうなったの?見せて見せて。...遊戯くん、あの人は知り合い?」
「ああ、泉さん少し離れててくれ。」
「分かった。じゃあそれまでケータイでギャルゲして暇潰しだ〜!」
泉さんと呼ばれたジャパニーズ制服の小柄な女の子はそう言って離れて言った。
「さてと...それでお前の名前は?俺は遊戯、武藤遊戯だ。」
「フリスクと言います。」
どんなところにも思いがけぬ出会いがあった。彼は、僕たちに何をもたらすんだろう?
フリスクが遊戯と出会ったちょうどその頃、まどかは一つの部屋のドアの前に佇んでいた。
その部屋の看板には『初心者の為の魔法講習』...と書かれていた。だがドア越しから聞こえてくる声は無い。
使われていないのか、または開講時間ではないのか...
彼女が何故ここにいるのか。それは少しでも戦い方を学ぶ為であった。
魔法とは何から成り立つものなのか。彼女の知らない事だがそれは世界によって違う。...とはいっても大きく分ければ二つだが。
一つは個人の
もう一つは神話や歴史といった過去から成り立つ物。神話や宗教史といったものをベースに、一つ一つ魔術的要素を抽出して術式を構築する。これが主軸とする世界では詠唱などに時間がかかるものの、術式により詳しい情報を与えられるため威力が強く、発展もしやすい。ただこれにも欠点があり、術式の発動に時間がかかるため事前に準備しておいて隠し玉として使うことが多い。そのため隠し玉が攻略されてしまった場合などは、すぐに敗北に繋がってしまう。ただ
まどかの世界は前者にあたる。しかも極端なまでにイメージを重視するため、詠唱は基本必要なかったりする。
しかしこの世界においては恐らくあらゆる魔法・魔術が行使可能だろう。
即ち魔法・魔術はそういった成り立ち、術式の構成、様々な魔術的要素も理解して初めて真価を発揮するのである。
そんな訳でまどかは魔法に関しては素人同然だ。魔法少女として扱う魔法(異界魔法〜円環系統)もその本質が全くわからない。あの時はがむしゃらに物事に当たったので、自分がどういった魔法を使ったのかすら曖昧なのだ。
この世界に来て何故か最初から覚えていた元素魔法。しかしいくら使っても出るのは小さい炎だけ。あまり攻撃として機能せずフリスクに迷惑をかけたこともあった。
「(それじゃダメなんだ。私は強くなりたい。強くならなくちゃ、いけない...)」
戦いたくない。だけど、それを許さないのがこの世界。
そんな世界の中で果敢に敵と向き合うフリスク。彼は優しい。そんな彼は。
自分の命を救ってくれた彼は。どんな敵でも絶対に殺さない彼は。
...多分自分では遠く及ばない本当の『ヒーロー』なんだろうな、とまどかは思う。
そんな彼を失いたくない、と純粋に思う。なら戦おう。戦い抜き、皆で生き延びよう。そもそもあの時、あの瞬間に戦う覚悟は決めてたはずだ。
そういう訳でこの場所にきたのだが...
...本当に、開催されてるのか?何も音がない。試しにノックしてみる。
コンコンコン!
「...すみませーん、誰かいませんか...?」
恐る恐るそう言った。すると...
「はーい、どうぞー。」
声がした。
そして、まどかはその中へ入っていった...
一方ネスはというと。
「凄いなぁ、本当に異世界なんだ。凄そうな鎧がこんなにあるなんて...夢でもみてる気分だ。」
ふと立ち寄った店に入って目を輝かせながら沢山の鎧を眺めていた。
とはいってもそこは防具屋ではない。向こうで武器も売っているがこれも売ってある訳じゃない。
ここは防具や武器を売るのではなく。
「貸す」ための店なのだ。
このいわゆる『レンタル武具屋』は、格安で武器や防具を貸してくれる。
あくまで「貸す」のが商売なので、壊したら弁償である。
『解析鑑定』を持たないネスには分からなかったがこの『レンタル武具屋』、貸している武器や防具の性能は非常に高い。
システムとしては、まず初回無料で
ずっと無料なのが
まあ
そんなハイリスクかつハイリターンな店は常に賑わっている。
そんなこんなで店内を回ったネスはこの店が気に入った。
が、時間が無くなってきた。それでも、
「今度またここに来ることがあったら、二人をここに連れていこう!」
ネスはワクワクしながら合流場所に向かった。
結局彼はどこまでいっても夢見る少年なのだった。
僕と遊戯さんは少し場所を移し、自分たちのことについて話しあっていたんだけど...。
やっぱりこの人もただ者じゃなかった。
何でも異世界で起きた大事件、『テラカオス異変』を解決した『三十二人の勇者』の一人なんだって。
僕はその事件についてよく分からなかったけど、まどかやネスは知ってるのかな?
「まぁ経緯は省くが、俺は突然起きたあの地震と光のあと...」
「遊戯さんも!?」
「!?...ビックリしたぜ。まさかフリスク、お前もか?」
「うん、僕も突然に...」
「そうだったのか...いや待てよ?」
「遊戯さん?」
「待ってくれフリスク。考える時間をくれ。それと俺のことは遊戯でいいぜ。」
「あ、うん。分かったよ遊戯。」
遊戯は何かしらの心当たりがあるのかな?今回の一件の解決に繋がる何かが...
「多分なんだが...今回の一件を引き起こした黒幕が分かった気がするぜ。」
「!!それは、一体!?」
「魔王だ...」
「魔王?」
遊戯がいう魔王って、一体どんな...
「俺たちや他の仲間の世界を散々引っ掻き回した奴だ。あいつならあり得る。あり得るぜ...。」
「じゃあ魔王を倒せば、元に戻るってこと?」
「確定はできない。だが俺を含めた『三十二人の勇者』の内の二人が今ここにいるんだ。恐らく他の三十人もこの世界にいる筈だぜ。」
そうなんだ...って、二人?
「そうか、こうなった以上泉さんにもこれからの事を話しておくか。泉さんいるか?」
遊戯がそう呼ぶと小柄な青髪の女の子がひょこっと出てきた。その子の頭にはとても目立つアホ毛が出ている。
「遊戯くん、終わったー?」
「紹介するぜ、この人も『三十二人の勇者』の一人で、今では俺の親友だ。」
「泉こなただよー、よろしく!あなたは?」
「フリスクです、よろしく。」
「よろしくねフリスクくん!」
僕とこなたはお互いに握手した。...しかし、この子も勇者なんだ...
「それで、二人はどうするの?」
「そうだな、俺たちはひとまずあの時の仲間たちを探すことにする。できればEDFか、時空管理局の誰かに連絡を取れれば良かったんだが...」
...色々分からない単語があったけど、仲間を探すってことは分かった。...だったら!
「遊戯、こなた、提案があるんだけど...」
「んー?何々?」
「提案?」
「僕たちと一緒に来ない?」
「僕たち?一人じゃないの?」
「うん、あと二人いる。そろそろ合流しないといけないしついてきてよ。」
僕は遊戯とこなたを引き連れて合流場所に向かった。
ネスが先に来てたみたいだ。
「フリスク、後ろの二人は?」
「うん、後で紹介するよ。...まどかは?」
「探したんだけどどこにもいないんだ。フリスク心当たりはあるかい?」
「無いなぁ...探しに行こう!」
あのまどかに限って先に行ったとかはないだろう。方向音痴でも無さそうだし。どこかの部屋にでも入っているのかな?
そんな訳で探すこと十分。残ったのはこの部屋。看板には『初心者の為の魔法講習』とある。
「本当にここで間違いないのか?」
「何か音はするよ?でも別人じゃないの?」
遊戯とこなたはそう言う。でももうここしか無い。
コンコンコン!とノックする。
「すみません、ここにまどかって言う女の子は...」
すると突然、まどかの慌てた声が!!
「あっ、危ない!」
その瞬間、僕の体は大きな炎の玉と共に五メートル程吹き飛ばされ、そして壁に叩きつけられた。
「ご、ごめんねフリスク!わざとじゃないよ?」
いくら僕でも不意討ちは避けられない。
「まどかはもしかしてあの中で魔法の練習でもしてたのかい?」
「うん、講師の先生が色々教えてくれて...」
その先生とは
その先生によると...
「まどかさんは確かに知識は素人同然ですー。でもみる限り魔法の資質、そして将来的な魔力量においてはこの先三万年で現れるかどうかの逸材なんですー。...正直、ビックリしましたよー。だから思わず自分の全てを叩き込みたくなっちゃって...物覚えもそれなりに良かったから、きっと大成しますよー、彼女は。」
実際その片鱗は見たことがあるんだ。封印の剣によるあの攻撃。如何にあの剣が凄い性能を秘めていても剣だけであそこまでの威力は出ないと思う。
...今考えても仕方ないか。とりあえず遊戯とこなたの紹介はしておかないと。
そんな訳で互いに自己紹介。
「武藤遊戯。元の世界では
「泉こなただよ、私はただのオタクだったけど、『テラカオス異変』の時は他の皆と一緒に戦っていたんだー。」
二人がそう自己紹介をする。
「改めまして、フリスクです。」
「はじめまして、鹿目まどかといいます。」
「ネスです、よろしくお願いします!」
僕たち三人も挨拶する。
「...それでどうするか決めた?僕たちも仲間を探してる。目的も一致するし僕たちとしても心強いけど。」
そう尋ねると。
「色々二人で考えたんだが...君達と一緒についていった方が俺達としてもありがたい。」
「それじゃあ...」
「ああ、よろしく頼むぜ、フリスク。」
「よろしくね~。フリスクくん、まどかさん、ネスくん?」
「ありがとう遊戯!こなた!」
「遊戯さん、こなたさん、よろしくお願いします!」
「心強いです、これからよろしく!」
こうして僕たちの仲間は五人になった。そして僕たちは深い迷宮へと足を踏み入れる...
お久しぶりです、星の塵です。
今回もCross Worldをここまで読んで下さり、ありがとうございます。
暫くPixiv側で細々とやっていましたが、こっちも手を抜けないなと思いつつ、この第九章を公開しました。
この第九章は、Pixiv版の第十五章、第十六章を繋げ多少手直ししたものとなります。大筋は全く変わっていませんが、魔法の説明などに記述を追加しています。
...というか、自分でやっててどれだけ内容がペラペラなのかがよく分かります。毎回毎回、ハーメルン版ではPixiv版の章をくっつけてるんですからね!
...さて、そろそらあとがきを締めさせて頂きましょうか。皆様今回もCross Worldを最後まで読んで下さり、本当にありがとうございました!今章の物語は如何でしたでしょうか。もし気にいったならば忌憚無い評価や感想をお寄せ下さい。
そしてイレブンやフリスク、その仲間たちが皆様の決意を満たし続け、皆様の心の中に留まり続けることを切に願い。
今回はここで、指という名の筆を置かせて頂きます。
皆様ありがとうございました!また次回もよろしくお願いいたします!!良いお年をお迎え下さい!!
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第十章 迷宮を進む
あらすじ
フリスクは迷宮第一階層にて『三十二人の勇者』の内の二人、遊戯とこなたと出会う。
そして魔法講習を受け、かなり強くなったまどかと第一階層を一通り回ったネスと合流し、遊戯とこなたを仲間に引き入れる。
そしていよいよ本番の第二階層へと足を踏み入れるのであった。
僕たちは遊戯とこなたを仲間に引き入れ第二階層に入った。目につくのは石畳の通路。正に迷宮だ。
「単純だけど何があるか分からない。注意して行かなきゃね。」
「分かった、気をつけるよ。」
「そうだよね、何があるか分からないから。」
まどかとネスは頷きながらそう言った。
「ダンジョン探索の基本ってやつだね~、私ワクワクしてきたよ!」
「おいおい油断禁物だぜ泉さん、気を引き締めるんだ。」
遊戯とこなたは最初から分かっているみたいで(こなたの空気が緩んでいるようだけど)、本当に頼もしいな。
しかし最初に会った時から思っていたけど...
「遊戯とこなたって一体どういう関係なの?」
ちょっと失礼かな...と少しばかり考えつつそう質問してみる。
「ん?そうだねぇ...あれだ、オタク仲間って感じかな?」
「...俺は自分をオタクだと思ったことは無いんだがな。でも泉さんは実際凄いんだ。俺との
「何言ってるんだよ~遊戯くん、それはオシリス抜きの話でしょー。」
...その後。
彼らの会話は熱を増していき収拾がつかなくなった。もう何言ってるか分からない。
でもデュエルモンスターズかぁ...何か面白そうだなぁ。
今度遊戯から教えてもらおうかな。
そんなこんなでしばらく歩いて第三階層。奇跡的に第二階層には敵は見かけなかったんだけど...途中で見つけた二つの宝箱には一つめに果物ジュースと
「レバ剣拾ったっ!これで勝つる!」
「あはは...」
こなたがこれを貰うと宣言し、僕は苦笑いでOKを出した。まぁ今剣をまともに使えるのはこなたぐらいだし...まどかはまだまだだろうしね。
「この剣の性能分かる人いないかな?」
こなたがそう言った。
「分からない...別に気にすることもないと思うけどね。」
「ごめんね、私には分からない...」
「フリスクの言うとおり、気にする必要はないと思うなぁ。」
僕とまどかにネスには分からない。当たり前のことだ。...ところが。
「...いや、俺なら分かるぜ。これはこの世界でいうところの
「!?...分かるのかい、遊戯?」
ネスがそう遊戯に聞いた。
「ユニークスキル、ってあるだろ。俺のユニークスキルは『
「そういや私も何か獲得してたような...確か『
「確認してみたら?精神を研ぎ澄まして念じてみればいいと思う。動いてくれ...みたいな感じで。」
僕がこなたに助言するとこなたは意識を集中させ始めた。遊戯も確認のため精神を研ぎ澄ましていく...
ステータス・キャラクター紹介(今回より既に紹介したスキルなどは省略する。)
個体名 武藤遊戯(登場 遊戯王デュエルモンスターズ)
種族 人間
職業
称号 名も無きファラオ
加護 ファラオの守護
魔法 なし
ユニークスキル『
・・・思考加速、解析鑑定、最適行動、予測演算
最適行動・・・自分が置かれている状況を分析し、最適解の道を提示する。
予測演算・・・対象の次の行動を予測し、演算する。回避や連撃を仕掛けるのに便利なスキル。
耐性 精神攻撃無効・・・精神攻撃が効かなくなる。
他の世界にも名が知れ渡っている、伝説の
個体名 泉こなた
種族 人間
職業 すっぴん
称号 つっぱしるオタク少女
加護 幸運星の紋章
魔法 なし
ユニークスキル『
・・・不測効果、精神弛緩、賢者
不測効果・・・発動対象に何かしらの状態異常を発生させる。ランダムなため賭けの要素が強いが、敵を石化させたり、発狂させたりも可能。
精神弛緩・・・発動対象の精神に干渉し、対象の感情を抑える。敵の無血制圧などに有用。
賢者・・・思考加速と詠唱破棄を兼ね備えたスキル。
耐性 状態異常耐性
『三十二人の勇者』の一人。『テラカオス異変』の解決後、元の学校がボロボロになったため別次元の『県立北高校』に友達皆とともに転校した。そこには嘗ての『三十二人の勇者』メンバーたちがいた。元々その高校出身だったという者もいれば、こなたたちと同じような理由で転校、引っ越してきた者もいた。生粋のギャルゲオタクでカードゲームにも詳しく、ゆる~い性格をしている。何故か剣術が使えるが、本人は何故だかは分からない様だ。
遊戯とこなたのスキル確認が終わったみたい。...っ!
「危ない!!」
僕は急いで『
「ふっ!!」
決意を障壁に変えて不意討ちから皆を守る。危なかった...もしもの時のための『決意操作』を応用したレーダーが無かったら大変なことになってたよ。ユニークスキル『
襲ってきたのは少し大型のコウモリが三体。レーダーによると、推定Dランクの
それでも油断はできない。戦いでは何があるか分からないから。
「すまん、迷惑かけたみたいだ。」
「確認をさっさと終わらせていれば良かったよ~、ごめんね?」
気にしないで、と答える。
「来るよ!」
「任せて、ユニークスキル『
まどかの言葉に反応してネスが囮となるように前に出る。
下位蝙蝠がネスに一斉に攻撃を仕掛ける。しかし、
「『
その声と同時にネスの体が光の膜に包まれ、レッサーバットの攻撃を難なく凌いだ後、
『PKフラッシュα!』
再度突撃してくるレッサーバットに超能力による眩しい光を放った。
そして後衛に控えたまどか、遊戯、こなた、そして僕が攻撃準備をする。っと、大切な事をいい忘れてた。
「待って皆、個人の勝手なわがままだけど...」
「何だフリスク。」
「どうしたの、いきなり?」
遊戯とまどかがそう言った。
「どんな敵でも絶対に、絶対に殺さないで欲しい。撃退か、最低でも気絶ぐらいにして欲しいんだけど...。」
ウーン、別の世界の人に聞き入れてくれるかな...?
「...そう言うだろうと思ったぜ、分かった。」
「殺されるのはゴメンだけど、殺すのはもっと嫌なんだよね。分かるよ、私も同じ...!」
「フリスクが言いたいこと、大体分かってた。大丈夫だよ。」
良かった、僕は出来るだけ彼らのLoveが上がるのは見たくないんだ。彼らの心の輝きが曇るのも。
...それじゃ!
「吹き抜ける風よ、我が敵を切り裂け!...お願い、『
「エルフの剣士、召喚!いけ、攻撃だ!!」
「あっぷっぷぇ!二段斬り!!」
まどかが習得した風魔法が、遊戯のエルフの剣士の攻撃が、こなたの剣捌きがそれぞれ命中する。どれも狙ったように急所を外している。
そして。
「...今だ、峰打ち!!」
まだ動こうとする
「よし、初勝利だ!」
「良かった...上手くいって。」
「ま、当然だよね~。」
「この調子でいこう!」
僕は今凄く嬉しい。あの地下世界は基本一人で歩いてた。でも今は違う。隣に、周りに、『いつも』仲間がいる!!
「まだまだ先は長いみたいだね。出発しよう!」
...だけどここは迷宮。浮かれずに先に進まなきゃ!
戦いを重ねるごとに皆の役割も決まってきた。ネスが囮と防御を務め、まどかは魔法攻撃、遊戯がモンスター召喚や補助カードによるサポート、こなたはトリッキーかつテクニシャンな動きで敵を撹乱し、僕が止めを刺す...こんな感じの連携が成り立つようになったんだ。
お宝も大分手に入れた。
ちなみに。
折角だし無いよりはマシということで、防具を着けていくことに決めたけど、僕が鎖かたびら、まどかがローブ、ネスがブーツ、遊戯がコート、こなたが籠手を着けることになった。
...僕やネス、こなたはあまり印象が変わらなかったけど、まどかと遊戯の見た時の印象の変わりようが凄いな。
どこかシュールにも感じる。二人とも学生服の上に、ローブ、そしてコートを羽織っているものだから...
やがて僕たちは十階層にたどり着いた。この階層の最後の部屋に、
...僕たちは今その階層守護者の部屋の前にいる。
「準備と覚悟は?」
皆が大きく頷く。
「それじゃ...行くよ!」
僕は扉を堂々と開く。
そこに居たのは...3メートル位の巨体。硬い外骨格。そして...
黒く、凶暴性を露にした蜘蛛だった。
ブラックスパイダー。
Bランクのモンスターで、人間の小さな村なら壊滅に追い込めるという強力なモンスター。
遊戯が『解析鑑定』でそう教えてくれた。
僕たちはユニークスキルを持っているけどそれでも本質は人間だ。少しでも気を抜けば殺される。
...それでもやることは変わらない!
「こっちだ!!」
ネスがブラックスパイダーを引き付ける。
「『守護』併用、『PKシールド』!!」
光の膜に包まれるネス。そしてブラックスパイダーの攻撃を防ぐ。
「『パラライシスα』だっ!!」
電気の糸がブラックスパイダーに巻き付く。ブラックスパイダーは動きを封じられた...が。
「!!ヤバいっ!」
ブラックスパイダーは何と強引に拘束を解いてしまった。
「皆、気をつけるんだ!」
「今更だねぇ、分かってるよリーダー?」
こなたがそう応じた。まどかと遊戯も問題無さそうだ。
「散開っ!!」
僕の声で皆は四方に散る。硬い外骨格の脚による一撃をかわし、それぞれ攻撃に転じる。
「当たって、『
「行けブラック・マジシャン!『
「ついてこれるかな~?『
「決意を弾丸に変化、『Justiceブレッド』!!」
全ての攻撃が脚に見事命中、敵の動きが鈍る。そこに...
「皆離れて!『PK...キアイβ』!!」
ネスの声だ!
その声と同時に、皆が退避する。
ネスが放ったのは念動波の圧縮砲。圧縮された念動波は解放時に、圧縮した分だけの爆発を産み出す。
彼を表す代名詞であり威力は強大。
広範囲殲滅PSI、それが『PKキアイ』なのだ。
ネスが放った『PKキアイβ』によって、ブラックスパイダーは再起不能状態になった。
だけど扉は開かない。まさか、殺さないと開かないとか...?
「どうしよう...」
ブラックスパイダーに
「だったら消しちゃえば良いじゃん。」
こなたが突然そんな事を言い出した。
「殺す、ってこと?そんな事...!」
「いやいやいや、消すとは言っても、『この部屋』からだよ~!」
あっ、成程!!この部屋から出せば大丈夫って事か。
「それじゃ早速移動させよう!」
ネスの声と共に、作業が始まった。
こうして扉が開いた。しかし...
「つ、疲れたよ...。トホホ...。」
「力作業は慣れてないから、あまりやりたくないんだけどね...。」
まどかとこなたがそう疲労困憊の様子でそう言った。何とかなったけど皆疲れたみたいだ。
「す、少し休憩しないか?ヘトヘトだぜ...」
「そうだね...そこの宝箱をとってから休憩しようか...。」
宝箱の中身は...幻想的な細身の手槍が入っていた。後で遊戯に調べて貰った所、
あのブラックスパイダーの外骨格から作られた強そうで美しい一品。使わないとは思うけど、迷宮で手に入れた思い出の宝物にしようかな。
それはそうとして。
一人銀貨1枚(日本円一万円、$100)で入れる絶対安全地帯...九十五階層の
「ここなら他のモンスターも出ないから、安心できるね...zzz...」
「しばらくお休み、皆...フワァァ。」
こうして僕たちはしばらくの安息を享受するのだった...。
ども、お久しぶりです。星の塵です。今回もCross Worldを読んで下さり、ありがとうございます。
何だかんだ忙しい日々が続きまして、投稿が非常に遅れてしまいました。申し訳ありません。
さて今回はPixiv版でいう所の第十七章にあたりますが、Pixiv版に比べてオリジナル技を減らしてあります。理由は展開をより自然にする為です。勿論原作の雰囲気を尊重する意味合いもあります。
さて、短いですがそろそろあとがきを締めに致しましょう。
今回も最後までCross Worldを読んで下さり、本当にありがとうございました。もし良ければ、投票機能を使って忌憚なき一票をお願いすると共に、是非とも感想をお寄せ下さい。
そして、イレブンやフリスク、その仲間たちが皆様の決意を満たし続け、皆様の心に留まり続けることを切に願い。
今回はここで、指という名の筆を置かせて頂きます。
皆様ありがとうございました!また次回もよろしくお願いいたします!
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