if~人生とは分岐点の連続だ (雪音)
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●設定●
世界設定
なお、こちらのページは話の流れによって更新されます!!
●攘夷戦争参加者について
まず、攘夷戦争参加者として銀時・桂・高杉・坂本は絶対となりますが、これにプラスで陸奥、そして鬼兵隊幹部(河上・来島・武市)も攘夷戦争参加者とします。なので、河上達も銀時のことを白夜叉と呼ぶのではなく、銀時と名前で呼びます。……自分で想像して、ちょっと鳥肌立ちましたけど←
忍たまサイドの攘夷戦争参戦者は、雑渡達を始めとしたタソガレドキ忍者隊と、ドクタケ忍者隊、あと攘夷戦争参戦というよりは人探しですが利吉君が銀時を探して攘夷戦争の戦地を行き来していたという設定になります。忍術学園の生徒は、実習として攘夷戦争に参加しますが、本格的な戦ではなくただの実践訓練です。
●攘夷戦争後の幼馴染+坂本について
ほぼ原作のままですが、桂は元から穏健派、高杉は過激派と穏健派の中間ぐらいで、原作ほど過激なテロ活動は行っていない設定です。鬼兵隊は存在しますが、高杉が筆頭の鬼兵隊ではなく、別のオリキャラが筆頭のなんちゃって鬼兵隊です。高杉達は桂同様、“高杉一派”という括りになります。鬼兵隊の幹部や隊員達もオリジナルの設定です。原作の高杉達が行っていたことを、この鬼兵隊が行います。桂と高杉はこの鬼兵隊を止めることを自分達の義務だと思っています。坂本と陸奥は原作通り、快援隊です。
●JOY4と真選組の関係
桂達と真選組の関係につきましては、原作ほど敵対はしていません。小説中にも書きますが、JOY4と真選組のメンバーは攘夷戦争中に出会う設定になってます。捕縛対象ではありますが、彼等が何を思って攘夷活動を行っているのかを知っているので、あまり厳しくはありません。
●呼び方
第一章では、チビ高杉達は土井先生の事を“土井先生”と呼んでいましたが、攘夷戦争後は…まぁ、桂はともかくとして高杉が先生とつけて呼ぶのはちと違和感があるなーと思い、高杉は銀時同様、半助と呼びます。桂は頭固いと思うので、そのまま土井先生です(笑)他の先生方については、まぁ…追々ということで。ただ、銀時を傷付けた、とある先生だけは酷く嫌ってます。呼び方もヒドイです(笑)
あと、先ほども書きましたが河上達も銀時の事は白夜叉呼びではなく銀時と呼びます。武市と来島は銀時様と呼びますが、例の如く河上だけは呼び捨てです。
設定上、陸奥と辰馬だけちょっとみんなよりも年上設定です。辰馬の事は普通に辰馬と呼びますが、陸奥の事は“陸奥姉”と呼びます。
●友好関係
JOY4の友好関係ですが、まぁ原作ほど酷くは無く、むしろ良い方だと思っていただければ幸いです^^桂・高杉・坂本・陸奥は銀時バカです、はい(笑)
●銀魂キャラの設定
この話を書くにあたって、悩みに悩んだ末に決まった銀魂キャラの設定をザックリと説明致します。
・真選組・見廻組はそのまま
・お庭番は御役御免で廃業。さっちゃんと全蔵はオリキャラの結と協力関係にある。
・新八は真選組副長補佐(近藤の職権乱用です/笑)
・神楽は高杉一派の一員で河上らと同様に幹部
・お登勢や長谷川さん、お妙はそのままの設定。ただし、お登勢と銀時の出会いは無し
・その他銀魂キャラの設定は、特に考えていないのでそのままの設定。何か別設定が出来たら、その都度小説で書きます。
・神威はシスコン(ここ重要w)神威は高杉一派の一員として神楽と共に幹部の座にいます。春雨とは無縁です。
●忍たま・落乱キャラの設定
あまり変わりはありませんが、ちょいちょい設定を弄っているのでその辺りを書きます。
・ほぼ原作(忍たま・落乱)のまま
・城同士の争いも原作のままだが、内容は天人が関わってきたりするため若干変わる
・真選組とも見廻組ともよく会う(同じ幕臣なので会わない方が不自然です^^;)
・学園長とお登勢は知り合い
・全蔵の父親と学園長は互いに腕を競い合った仲
・半助ときり丸が住んでる家は、長屋ではなく銀魂原作で万事屋がある場所
2012.09.10 初期設定
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●第一章● 出会い
01:屍を食らう鬼
銀時を拾うのは松陽先生ではありません!!例の出会い方はしますが、その時に銀時を拾うのは松陽先生ではありません!!や、確かに拾うんですが…育てるのは松陽先生ではありません!!
この時点で「あ、無理」って方は即行ブラウザバックしてください^^;
OKですか?では、ifの世界をご堪能下さい☆
年齢設定
・子銀時→10歳
・子利吉→8歳
・子半助→15歳(忍術学園六年生)
勝手に年齢を決めました!!(笑)利吉君と土井先生については成長すれば原作通りになりますが、銀時は公式の年齢が20代という設定しかないので…こちらで勝手に弄らせてもらいました(笑)
「お呼びですかな、学園長先生?」
「おお、山田先生!!忙しいところすまぬな!!」
「おや、そちらの御客人は?」
ここは山奥にある忍者を育てるための学校、その名も忍術学園。
そしてこの部屋は、その忍術学園の創立者にして学園長である、大川 平次渦正である。その学園長室にいるのは、学園長と…たった今彼が“山田先生”と呼んだこの学園の教師である山田 伝蔵、そして…
「こちらは萩で私塾を開いておられる御仁で、ワシの知人じゃ」
「初めまして、松陽塾の塾長をしております、吉田 松陽です」
ふわりと…それこそ子供に好かれそうな笑みで微笑んだのは、萩で私塾を開いているという男だった。互いの自己紹介を終え、伝蔵と松陽は握手を交わす。
「しかしまた、何故こんな山奥まで…?」
「えぇ、実は攘夷戦争のことで…学園長先生の見解をお伺いしたくて。あと…少し、気になることも小耳にはさみましてね」
優しく微笑む松陽に、気になること?と伝蔵が首を傾げれば、学園長も「うむ」と頷きながら口を開く。
「天人が戦をしかけているご時世じゃ。何がおっても不思議ではないとは思っておる。が…噂が噂なだけにのう」
「して、その噂とは?」
「戦場に“
「鬼、ですか…」
鬼と聞けば、絵巻物などで見るあの鬼だ。赤だったり青だったり、角が1本だったり2本だったり……鬼の絵は様々である。忍術学園の図書室にある書物にも鬼を描いたものはいくつもあるが、やはりどれも姿は一致しない。
それは、この世界に存在しない…空想の生き物だからだ。
もっとも、
「にわかには信じられない話ですな」
忍とは常に目に見えるものを信じ、そして怪談や幽霊など…そういった非現実的なものを信じたり怖れたりはしない。
「ただ、火のないところに煙は立たぬ、とも言います…」
「そこでじゃ。学園の上級生の個人実践授業も兼ねて、松陽と共に戦場に行ってはもらえんじゃろうか?」
「はい!?学園長、今何と!?」
「……学園長先生、さすがに生徒さんを戦場にお連れするのは…」
またとんでもないことを言い出したと伝蔵は頭を抱え、さも当然のように言いきった学園長に対し松陽も少し困ったように視線を巡らせる。松陽も私塾で生徒に自分の教えを説いている者。だから、生徒をむやみに危険な地へ連れてなど行きたくはない。それは自分の生徒では無くても同じである。
「ほっほっ、松陽…ワシの生徒達を甘く見てもらっちゃ困るぞ?どうじゃ、山田先生?」
「…は~~、私が嫌だと言っても学園長命令なのでしょう?まぁ、こう言っちゃ不謹慎ではありますが…個人の実践授業に攘夷戦争はもってこいですからな」
やれやれと頭を抱えながらも、学園長の言葉には逆らわない。むしろ、それを授業の一環とする。なるほど、と松陽は苦笑を洩らした。
「どうやら私は、忍を育成する学校を少々甘く見ていたようですね…」
「いやいや、気になさらんで下さい。まぁ、これも忍となるには避けて通れない道なのですよ」
松陽は平和的解決を求める思想家。常に幕府にそのことを進言し続けてきたが故に、今となっては幕府から睨まれる存在となってしまった。しかし…やはり、松陽は戦など望んではいないし、自分の教え子たちが戦に出ることも望んでなどいなかった。
しかしここは違う。ここは…忍を育成する学校であり、それはすなわち、人を殺めるための方法を教える学校なのだ。
「まぁ、学園長先生の思い付きなど今に始まった事ではありませんからな。上級生はこちらで見つくろいましょう」
「うむ、頼みましたぞ山田先生。さて、それまでの間…松陽は長旅の疲れをいやすとよいじゃろう」
「ではお言葉に甘えますね。それにしても…急な
「ははっ、松陽殿は生徒さんに好かれておられるようですなァ!!」
攘夷戦争の最中でも、こうして笑える日常はある。
だからこそ、松陽はその笑顔を護るために教え子達に色々なことを教えている。
だからこそ、忍術学園はその笑顔を護れるようにその
形は違えど、未来のために…。
その為に、彼らは未来を担う子供達に教えを説いているのだ。
それから丸1日が経過したころ。松陽と学園長は、食堂で茶と茶菓子を頂きながら他愛ない話をしていた。時折、外からは生徒達の声が聞こえてくる。
と、その時だった。
「学園長先生!!」
「おぉ、半助か」
「…おや、生徒さんですか?」
「うむ、六年い組の生徒じゃ」
「六年い組、土井 半助と言います!!」
「私は吉田 松陽と言います。……では、彼が同行する生徒さんですね?」
「半助、山田先生からは聞いておるな?」
「はい、鬼退治に行くとか…!!」
話の流れで、伝蔵が実践学習に連れて行くのは半助であることは分かった。
が…鬼退治とはまた、随分と肝心な部分をへし折ったものだと松陽は苦笑する。
「なぁに、鬼なんて居やしませんよ。鬼は所詮、人が作りだした空想の生き物であり、恐怖の対象…。現に天人だって、見てくれは皆鬼のように見えます。しかし、我々と同じ人の姿をした天人とています。人間も天人も等しく生き物であり、鬼などではないのです。」
にこりと笑いながらそう説く松陽の言葉は、半助にとってはとても新鮮な言葉だった。半助ら学園の人間は、どのようにして敵を制するか…それしか習わない。
しかし、目の前にいる男は違う。
「だからこそ……奪われていい命など無いのです。人間も、天人も…命あるものは等しく生きる権利はある。ただ…天人は少々、我々の国で暴れすぎました…。だから、このような攘夷戦争など…悲しい戦が起きているのです」
すべての生き物を尊く思っており、そして等しく生きる権利があるのだと…そう言った。
「…っと、いけませんね。他の学校に来て…しかも他の学校の生徒さんにまで授業をしてしまうなんて…」
「ほっほっほっ、実に松陽らしい考えじゃ!!お主は本当に平和主義じゃなぁ!!」
「このご時世、私の言葉がいかに綺麗事で…そして戯言であるか、重々承知しておりますよ」
一瞬にして魅入られた。そしてもっと知りたいと思った。
松陽は一体、私塾でどのような事を教えているのかと…。
「こら半助、何を呆けておるのじゃ」
「え!?あ、す、すみません…!!松陽殿のお言葉があまりにも…」
「戯言過ぎて笑っちゃうでしょう?」
「とんでもございません…!!とても美しいと思いました…!!」
「ふむ、やはり松陽は人を惹きつける天才じゃ!!」
呆けていた半助は我に返り、慌てて違うのだと首を振る。そんな彼を学園長は至極楽しそうに、そして松陽は否定されなかったことに安心しながらもどこか嬉しそうに微笑んでいた。
「貴方は優しい生徒さんのようだ…。貴方のように優しい子が育ってくれれば、私の戯言も…未来では戯言ではなく当たり前になるのかもしれませんね」
そして、と…松陽は半助を見つめたまま続ける。
「できることなら、私のこの綺麗事が…綺麗事ではない、現実になればいいと…そう思っています」
だから、私の言葉を聞いて貴方が何かを感じたのであれば…どうかそれを忘れず、ずっと胸に秘めていてくださいな。
松陽の言葉に、「はい!!」と半助は元気よく返事をしてニコリと笑う。そんな2人のやり取りを、学園長は微笑ましく見守っていた。
「すみません、遅くなりました。半助はもう……おお、来ておったか」
「山田先生!!」
どうやら準備に手間取ったらしい。ちょうど話を終えた頃に伝蔵が食堂に顔を出す。
「その様子では、もううちの生徒とは自己紹介は終えたようですな」
「えぇ、山田先生はとても優れた先生ですねェ…。彼はとても優しく、そして強い生徒さんです。話してすぐに分かりましたよ?」
「いやいや、松陽殿に比べると私などまだまだですよ」
「いえ、山田先生はとても優れた先生です!!ただ……」
「…ただ、何ですか?」
「いえ……なんでもありません…」
伝蔵の事は尊敬しているし、攘夷戦争の最中で自分を救ってくれた伝蔵には恩も感じている。だが…
(あの女装姿は何度見ても…不気味だ…)
彼の女装した姿…彼曰くの伝子さんだけが、伝蔵を心から尊敬できない大きな要因であった。遠い目をしている半助に首を傾げる松陽である。本人も分かっていないらしく「ただ何なんだ?」と同じように首を傾げていた。ただ1人…
(無自覚とは恐ろしいのう…)
学園長だけが半助の言わんとする事を理解したらしく、小さくため息を吐いていた。
そして松陽・伝蔵・半助の3人は学園を発った。
目的地は…攘夷戦争戦地。
屍を喰らう鬼が出ると言われる…その場所だ。
戦場は…何度見ても見慣れない。
まさに、血の海という言葉がふさわしい場所だった。
「まだこの辺りは新しいですね」
松陽が辺りを見回しながら、悲しげに呟く。そこに折り重なるようにして倒れているのは、天人だったり人間だったり、どちらか分からない…見た目では判断の出来ない者だったり。
「まずは情報収集が先ですかな?」
「えぇ、そうですね…。ただ、こうも広いと、どこから探したらよいのやら…」
「先生、私が先行して情報を…」
集めてきます、と言いかけた半助の言葉を、松陽が片手をあげて制する。
「どうされましたか?」
訝しげに問うてくる半助に松陽は視線を向ける。しかし声は発さない。代わりに視線だけで、「向こうを見てごらんなさい」と示した。それにならい、半助と伝蔵は視線の先を追う。そこには…
(…子供…!?こんな戦場に子供だと…!?)
(銀色の髪の子供……天人か…?けど歳はちょうど一年生ぐらいだな…)
己の身長よりも大きな刀を抱えて歩く…1人の子供。その子供の容姿は…一言で片付ければ…“異端”だった。見た目だけでは人間なのか、天人なのか…判断が出来ない。
が…それ以上に、伝蔵は言い知れない恐怖のようなものを感じた。
この戦場で、子供が刀を片手に歩いている姿など見たことがない。
半助を助けた時も、彼は恐怖で震えていたし泣いていた。
しかし少し離れたところにいる子供はどうだ?まるでそれが当たり前とでも言わんばかりに歩いている。死体の山を…まるで野山を歩くかのように平然と歩いている。
【山田先生、あの子は天人でしょうか?】
その時、伝蔵に小さな音が届いた。忍者同士だけで会話をする時に用いる手段
【分からん。が……何か言い知れないものを感じる…】
いつも明確な答えをくれる伝蔵が、言葉を濁すことが珍しく驚いたが…それも一時と続かなかった。
「おうおう、餓鬼ィ!!いっちょ前に刀なんぞ持ちやがって」
先ほどの子供の前に、天人の集団が現れたのだ。ざっと見ても、10はいるだろう。思わず半助は飛び出そうとしたが、それを松陽が止める。何故?という意味を込めて視線をやれば松陽は首を横に振った。今は危険だと…そう言っているのだろう。
【半助、松陽殿の判断は正しい。今飛び込んで行っても、殺されに行くようなものだ】
【けど、先生!!早くしないとあの子供が殺されてしまいます!!】
助けなければ…
早く、あの子供を助けなければ…
天人だろうと人間だろうと構わない
あの小さな命を奪っていい理由などどこにある…?
思うことは3人とも同じだった。が…なんにしても今は歩が悪い。天人は見たこともない武器を駆使してくる上に、数でも圧倒的に負けているのだ。隙を見つけて攻撃を仕掛ける…。それが短時間の間で3人が交わした作戦だった。伝蔵と半助が手裏剣や苦無で敵を制し、松陽が一気に敵の懐に入り込んで刀で斬る。そして子供を救いだして…その場から離れる。それが最善だと…そう、思った。
が…
その作戦は…
「ギャァァァァァッ!!」
天人の断末魔によって、霧散する。何事かと3人が声のした方に視線をやれば…
「な…!?」
先ほどの子供が、刀を抜き…天人の1人を斬り殺していたところだった。
「貴様、餓鬼だと思って優しくしてやりゃ図に乗りやがって…!!」
「おい、ちょっと待て…この餓鬼、例の噂の…!?」
「……!!あ、紅い目に…銀髪の人間の子供……!!」
先ほどまで強気だった天人達の間に、急に動揺が走りだす。
そして…
「こ、この餓鬼……“屍を喰らう鬼”だ……!!」
天人の言葉に、3人は思わず目を見開いた。
今…あの天人は何と言っただろうか?
今…“屍を喰らう鬼”と…そう言わなかったか…?
「あ、あの子が…あの子供が……!?」
信じられないと言わんばかりに半助が呟く。その驚きも最もで、半助同様、伝蔵もかなり驚いている。
ただ、松陽だけが…
悲しげな目で、“屍を喰らう鬼”を見つめていた。
「け、けど…所詮は餓鬼だ!!テメェら、全員で掛れェ!!」
「オオォォォッ!!!」
目の前の子供に一度はひるんだものの、すぐに我に返った天人達は一斉に子供に攻撃を仕掛ける。
見ていただけだった3人も、さすがに危ないと…子供を助けに入ろうとした。
が……
目の前で、小さな子供が、まるで舞いでも踊るかのように刀を振りながら…
1人、また1人と…天人を斬り伏せていった。
太刀筋はメチャメチャで型などあったものではない、完全な我流。しかし…その切っ先は…確実に天人達の命を奪っていく。
その光景を、ただ…茫然と見つめる事しか出来なかった。
助けに入るハズだったのに…
「ひ、ひぃぃぃぃ」
「うるさい、しね」
感情の欠落した子供の一声と血肉を斬り裂く音で、あっけなく幕を下ろした。
やがて子供は刀を鞘におさめ、自分の斬り殺した天人の懐を漁り始める。
【何を…しているのでしょうか…?】
【恐らくは…食料を探しているのだろう…】
小さな体で、自分の斬り殺した天人達の死体を漁り、そして…
「あった…めし」
見つけたのは握り飯。それも、天人の血で穢れている。だが…子供にとって穢れていようがいまいが、それは関係なかった。
ただ空腹を満たせれば、それでいい。食べられれば、穢れていようが味が無かろうが構わない。
「なるほど、これが……“屍を喰らう鬼”の正体ですか…」
悲しげな松陽の声を聞き、2人が松陽に視線を向けた時には既に松陽は動いていた。
「しょ…松陽殿!!」
伝蔵は慌てて松陽を追い、それを慌てて半助が追う。
子供は握り飯に夢中らしく、3人が近付いている事には気付いていない。もっとも、3人とも気配を完全に殺しているから…ちょっとやそっとでは勘付かれる事も無いのだが。
やがて、松陽は…そっと、その子供の頭を撫でた。
そこで初めて…子供は松陽の存在に気付く。握り飯を口に運ぶ手が止まった。
「屍を喰らう鬼が出るときいて来てみれば…君がそう?またずい分とカワイイ鬼がいたものですね」
松陽の声は…とても優しく、一瞬だけ…子供の警戒が解けたが、次の瞬間には松陽の手を払いのけ、間合いを取った。それを見た伝蔵は「ほう」と思わず感心する。
(この子供…剣客の基本中の基本である間合いを心得ているか。もっとも、戦で己の身を護るために身に付けた本能…と言った方が正しいのだろうが…)
さて困ったと伝蔵が腕を組んでいる横では、半助がいつでも反撃できるように、苦無を手に忍ばせていた。だが、相変わらず松陽は…刀に手を掛けようとはしない。
「
そこで初めて、松陽が刀に手を掛ける。子供も…キッと殺気の籠った視線をこちらに向けた。一瞬…半助はその殺気に呑まれそうになる。
(…これが…本当に子供の発する殺気か…!?一年の忍たまと変わらない年頃の子供が発する空気か…!?)
苦無を隠し持っていた手がカタカタと震える。
半助は瞬時に理解した。
今、自分は…目の前にいる“屍を喰らう鬼”に恐怖を抱いていると。
その紅い瞳が自分を射殺さんと睨みつけている…それすらも、恐ろしいと。そんな半助に気付いた伝蔵が、ポンと彼の肩に手を置いた。伝蔵を見上げればただ頷き…そして松陽に視線をやった。
どうやら、松陽にすべて任せておけと…そういう意味らしい。
そうしている間にも、松陽は子供に話しかけている。
「そんな剣もういりませんよ。
ニコリと松陽が笑う。が…子供は刀を構えたまま、松陽を睨んでいる。
松陽は腰に下げていた刀を抜いていた。
そして…
「え…っ…!?」
「松陽殿、何を…!!」
松陽は鞘ごと抜きとった己の刀を…子供に投げやった。
松陽は何を考えているのだろうか?てっきり、自分の刀であの子供を制するのだと思っていた。それは、半助だけではなく伝蔵も同じだったらしく…松陽の行動に驚きを隠せずにいる。そんな2人の方を振り返り、ただ松陽はふわりと笑う。
「いいんですよ、これで。あの子のことは少し…私に預けてくださいな。なぁに…大丈夫、あの子は決して私の刀を抜いたりはしません」
何故…この男はそう言い切るのだろうか?
だが不思議と…松陽の言葉は、恐怖で凍りついていた半助を落ち着かせ、動揺していた伝蔵に平常心を取り戻させた。
それほどまでに…松陽の言葉には説得力があったのだ。
再び、松陽は子供に視線を向ける。
「くれてあげますよ、私の剣…。
子供は…何が起きたのか分からないのか、飛んできた剣を受け取ったままの体勢でただ呆けている。が…ただ、呆けているだけではない。
何も映していなかったその空虚な紅い瞳が少しだけ、揺れた。
それに気付いたらしい伝蔵も、松陽に
「うむ、この人の言う通りだ…。己のためにのみ振るう剣は、いつかは自分を滅ぼしてしまう。君くらい小さいと、尚更だ」
伝蔵の言葉で、更に子供の瞳は揺らいだ。
その子供を…“屍を食らう鬼”を見て、半助は思った。
(まるで……昔の私を見ているようだ……)
伝蔵に救われる前まで、この子供と同じように自分も適当な武器を片手に逃げ回っていた。もっとも、この子ほど強くはなかったし…自分はいつ死んでもいいとすら思っていた。
既にその時、半助の心は壊れかけていたのかもしれない。
そんな時、戦火から救い出してくれたのが伝蔵だった。そして、自分に“忍術学園”という道を示してくれたのもまた、伝蔵だった。
もし伝蔵に出会わなければ…自分は今、伝蔵が言った通り己の剣で己を殺していたのかもしれない。
目の前にいる子は…まるで鏡に映る過去の己のように見えた。
「……君がどんな日々をおくってきたのかは、私には分からない。けれど……私も君と同じだった。……戦場で生きていた……」
半助は少年の目線に合わせるように腰を落とし、その紅い瞳をまっすぐと見つめる。先ほどまであんなに怖かった瞳が、今では全然恐ろしくない。血のように赤いと思ったそれは、よく見ると夕焼けのそれと同じ…優しい紅だった。
伝蔵と半助の言葉、そして松陽の言葉は…子供にとって初めての言葉で意味は理解できない。
だが…
――嫌だ、気持ち悪い…!!
――鬼だ、鬼子だ!!
――村から出ていけ!!
今まで浴びせられた、罵倒とは違う…何かを感じた。
そう、それは…
――ふふっ…貴方は私達の宝よ
――お前の髪は俺に、瞳は母さんにそっくりだ
――顔は貴方にそっくりでとてもカッコいいわ
――何を言う、お前にそっくりでとても美しい
まだ両親が生きていた頃の…優しい言葉。
ぐらぐらと心が揺らぐ。
いつも優しい言葉に騙されて何度も何度も殺されかけた。
もう人間は信じないと思った。
なのに…
目の前にいる3人は…違う…
「敵を斬るためではない弱き己を斬るために…」
刀を投げて寄こした男は、優しく微笑みながら…
「己を護るのではない己の魂を護るために…」
子供の閉ざしていた心を…ゆっくりと開いていく。
「………そっち、いっても、きる、ない…?」
初めて子供が発した言葉は、あまりにもたどたどしく…幼く感じた。
「山田先生、この子は…」
「ふむ、恐らくは言葉を上手く話せないのだろう…」
子供を見た時、伝蔵も半助も1年~2年ぐらいの忍たまと同い年ぐらいだと判断した。だが…その言葉は、見た目とは裏腹にとても稚拙である。
どうやら、戦地で暮らしていた時期が長かったらしい。
彼は剣以外のすべてを知らないのだろう。
不安そうな子供に、松陽はふわりと微笑む。
「大丈夫です、君を斬る人は…ここには誰もいません。さあ…こんな場所、すぐに離れちゃいましょう?」
「ここ、はなれる…、したら…、おれ、しぬ」
「いいえ、君は死んだりしませんよ。君は生きるために…
すると松陽はスッと立ち上がり、少年に背中を向ける。半助と伝蔵が松陽に視線をやれば、ニコリと微笑んだ。そして背中越しに振り返り、松陽は子供に言う。
「あとは、君自身で選びなさい。
この子供をこの場から無理矢理連れ出す事は簡単だ。大人2人についこの前元服を向かえた青年が1人。強いとは言っても相手は子供。プロの忍と、プロに近い忍、そして優れた剣客。子供1人を制するのにそれほど苦労はしないだろう。
しかし松陽はあえてそれをせずに、子供に選ばせたのだ。
そう、それが重要な選択肢だから。
もし彼がここに残るというのであれば、それを止める事はできない。例え、自分達がどんなにそれを望まなくても、この子自身が戦場から離れる事を望まなければ…連れ帰ってもきっと、この子供は心を開いてはくれない。
(松陽殿はそこまで考えて、あえてこの子に選択をさせたのか…?)
だからあえて、松陽はこの難しい選択肢を彼に与えた。
もっとも、松陽には確信があった。
彼はきっと…付いてきてくれるだろうという確信が。
「おれ、そっちいっても…きる、ない?おれ、しぬ…しない?」
「えぇ、もちろん。もし君がここから離れたいと願うのであれば、私達は君をここから連れ出し、君に生きる場所を与えます。私達は君を斬りませんし、死ぬ事もありません。君は生きていいんです。」
「…いい…?おれ、いきて…いい…?」
「はい、もちろん」
「けど、みんな、おれに…しね、いう。おに、いう。おに、いきてたらだめ。だから、おれ…しぬ……」
「…そんなわけないだろう!!君は…人間だ…!!君は…ッ!!」
目の前の小さな子供の言葉があまりに悲しく…思わず半助はその子を力強く抱き絞めていた。一瞬、子供の体は強張ったが…
「君は…生きていいんだ…!!」
半助の言葉に、身体の力が抜けた。
「……、…たぃ…」
「うん…?」
耳元で聞こえた言葉がか細すぎて聞こえなかった半助は、反射的に聞き返す。紅く綺麗なその瞳は、真っ直ぐに半助を捉え…
「おれ、いきたい……いい?」
そう言った。
その言葉に、伝蔵と松陽は互いに視線を交わし合って満足げに頷く。半助は「もちろんだ!!」と笑いながらその小さな体を力強く抱き絞めた。
そして子供は、戸惑いながらも…
「いきたい…、しぬ、こわい…。やだ、いや…っ、ふえっ…ひっ…く…!!」
その小さな頭を半助の胸に埋める。
そして…
生きたいと、そう言いながら…泣いた。
「では、決まりだな」
「そうですね、この辺りに天人はいないようですが…さっきのようなことも有り得るでしょう。一刻も早く立ち去った方がいいですね」
「ですな。半助、行くぞ」
「はい!!さぁ、行こう!!」
涙に濡れたその目元を半助は笑いながら己の忍装束で拭ってやる。そして手を差し伸べれば、戸惑いながらも子供は半助の手を取った。
こうして…“屍を喰らう鬼”は攘夷戦争の地を後にする。
それは、子供が“鬼”から“人”に戻った瞬間でもあった。
はい、というわけで本当に始まってしまいました…!!(笑)
土井先生を忍術学園の生徒にしたのは、まぁ…銀時と何らかの形で繋がりを持たせたかったからです(笑)あと、一応松陽先生と銀時の出会いは原作のままにしましたが…この後からが原作と大きく違ってきます!!さて、どうなる事やら…(=∀=;)見切り発車、得意ですb←
あと、この小説での銀時の両親の設定としましては…両親は銀時の事を愛していたけど、村人に“鬼子を生んだ”と蔑まれて殺される、という設定にしております。それを目の前で見た銀時は理性がブチギレて村人を殺した…って、この設定原作の土方さんの過去とほぼ同じやん(=∀=;)って設定を決めて気付きましたが…まぁ、いっか← なので、この小説では“銀時”という名前は親から与えられた名前という設定です^^問題は苗字の“坂田”をどうするか、ですね…(笑)さて、どうしよう?元から坂田銀時だったという設定にしますか…!!
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02:銀色の時を刻む子
あと、若干土井先生の仕草やリアクションが子供っぽいですが…まぁ、現在の年齢設定が15歳なので昆奈門…じゃなかった、こんなもんかなと(笑)
戦地から少し離れた村まで辿り着いたところで、一旦茶店に入った。一応半助と伝蔵は、授業の一環で戦地に来ている。当初の目的であった“屍を喰らう鬼”の調査もこの幼子だった為、もう調べる必要は無い。あとは、この子を安全な場所まで連れ帰るだけだった。4人で相談した結果…
「とりあえず、松陽殿はその子を連れて忍術学園へ」
「はい、分りました。学園長先生には私の方からお話ししましょう」
彼を忍術学園へ連れて行き、今後についてそこで改めて話し合うこととなった。この場で決めるにはあまりにも状況が複雑すぎる。大人2人が真剣に話している時、半助と子供は出された団子を頬張っていた。もっとも、子供は出されたそれが何なのか分らず、暫く団子と睨めっこをしていたが。
「どうした、食べないのか?」
半助が聞くと、子供は困ったように半助を見上げる。
「これ、たべる?おれ、しらない。たべれる?」
今までは握り飯など、戦場で兵士達が所持していた軽食しか食べた事が無かった。故に、彼にとって団子は未知なる食べ物だったのだ。食べられるものであれば、空腹を満たすために何でも食べる。が…しかし、桃色・緑色・白の三色団子は…子供にとって食べ物というにはあまりにも見慣れないものだった。
「ははっ、団子というんだよ。甘くて美味いぞ?」
「う…?だんご、あまい…?」
団子という単語も、甘いと言う単語も理解できない彼はただただ首を傾げるだけだ。それを微笑ましく見守っていた半助は、自分の皿に乗っていた団子を頬張る。それを見ていた彼も、同じように口に運んだ。
「……!!」
「どうだ、美味いだろ?」
「たべたことない!!これ…あじ、しらない…!!」
今まで食べてきた塩辛い握り飯とは違う、初めて食べるもの(それがのちに、彼を糖尿病予備軍に
「だったらこれもお食べなさいな」
そんな彼らを見ていた松陽が、余っていた自分の団子を彼に差し出す。それをじっと見ていた彼は、団子から松陽に視線を移す。まるで顔色を伺うようかのようなその仕草に、松陽はただ優しく微笑んでいた。
「……これ、たべる…いい?」
「ええ、どうぞ」
おずおずとそれを受け取ると、さっきと同じように団子を口に頬張った。そしてその甘みに幸せそうに微笑む。
「ははっ、何とも微笑ましい光景ですねぇ」
「全くですな。半助が兄、その子が弟のように見えるぞ?」
「わ、私が兄ですか…!?」
まさかそんな事を言われると思っていなかった半助は、恥ずかしそうに頬を赤く染める。
「ははっ、利吉も半助の事を兄のように慕っているからなぁ」
「……?」
「あぁ、利吉は私の息子ですよ。歳は今年で8つになります」
「おや、そうだったのですか。丁度その子と同じぐらいですかね…?」
口をもぐもぐと動かしている子供を見つめながら「そうですな」と伝蔵も笑った。
「恐らくこの子よりは下でしょう。…まあ、幼さで言えばこの子の方が幼く見えますがな」
今頃妻と共に、山奥の秘境の地で暮らしているであろう息子を思うと、自然と顔も綻ぶ。そこまで思い…ふと、伝蔵の脳裏にある事が過ぎった。
そう、思えばまだこの子供の名前を彼らは知らないのだ。
「美味そうに団子を頬張っているところすまんが…」
「ふえ?」
もぐもぐと口を動かしながら首を傾げる姿はあどけなく、とても先ほどまで尋常じゃない殺気をかもし出していた張本人とは思えない。その姿に伝蔵のみならず、松陽もまた顔を綻ばせた。
「急がなくていいのですよ?ゆっくりお食べなさいな。じゃないと、喉に詰まらせてしまいますからね」
その時彼が思い出したのは、2人の生徒。どちらもやんちゃだが、とても仲がいい2人。そんな仲の良い2人の片方が団子を喉に詰まらせ、もう片方が慌てながら「先生、ヅラが死んじまう!!どうしよう!!」と泣き付いてきたのは…まだ新しい記憶だ。
「丁度、小太郎や晋助と同い年ぐらいですかねぇ…」
この子供の姿が、そんな彼らと重なった。歳もあまり変わらないだろう。もっとも、伝蔵の言う通り…精神的な年齢は幼いが実年齢は恐らく自分の教え子たちと同じぐらいだろう。
「松陽殿の教え子ですかな?」
どうやら伝蔵には松陽の言葉が聞こえていたらしい。その問いに、松陽は微笑む。
「はい、どちらも剣の才に長けている子で、塾生の中でもこの2人は飛びぬけて強いんですよ?」
「ははっ、まるで我が子の事を自慢しているようですなぁ!!」
「子供達からも“親バカ”だとよく言われます」
自分の塾生達を我が子のように可愛がっていることは、塾生達のみならず塾生達の親も知っている。だからこそ、松陽になら預けられるという親御も多いのだ。これも松陽の人徳だろうと伝蔵は思った。
「………こた…、しん…?」
松陽が口にした2人の塾生の名前を、子供が復唱する。すると、「あぁ」と松陽が微笑んだ。
「私の教え子達です。私は塾の先生をしているので」
「せんせ…?」
「えぇ、そうです。小太郎と晋助はちょうど君と同じくらいの歳だから…もしかしたら、君と仲良くなれるかもしれませんね」
そっとその銀色の頭を撫でると、少しだけ身体を強張らせたが…すぐに気持ちよさそうにフニャリと笑う。こうしていると、本当に年相応の子供だと…そこにいた3人が思った。
「っと、そうだった。まだ君の名前を聞いていなかったことを思い出してな。自分の名前は分かるかな?」
忘れるところだったと付け加えて聞けば…
「……、おに、しね……、…?」
彼は首を傾げながらそう答える。
「…それは、名前ではないよ…」
「おれ…ずっと、そういわれた。……けど、ちがう?」
「うん、違う…それは名前ではない…」
半助が首を横に振ってそれをやんわりと否定すると、子供はコテンと首を傾げる。
「松陽殿、山田先生…この子はもしや…」
「名前を与えられなかった、か…」
「……君のご両親は…お父上とお母上は…?」
両親の事を聞かれると、子供は目いっぱいに目を開く。その反応にいち早く気付いたのは松陽だった。
「どうしました?」
「……しんだ……」
「え…?」
まっすぐと見上げる紅い瞳が一瞬、揺れる。そこで初めて、伝蔵と半助も子供の異変に気付いた。その瞳が…不安からか、ユラユラと揺れているのだ。聞いてはならないことを聞いてしまったと、松陽は自己嫌悪しながら…あえて両親の死因には触れず、子供を安心させるように微笑みながら続けた。
「では…君のご両親がまだ元気だったころ…両親は、君のことを何と呼んでいましたか?」
問われ、子供は黙る。
やはり、この子供に名前は無いのだろうか?
そう思ったが…
「ぎんいろが、たくさんのひとに、やさしさを…あたえられるように。ぎんいろが、きざむときが…えがおであふれるように…」
「それは…?」
「ははうえ、おれに…いつもいってたこと。ちちうえ、ははうえ…おれのこと、“ぎんとき”…いった」
その心配は杞憂に終わった。この子の両親は、ちゃんと子供に意味のある名前を与えていた。それだけが恐らく、この子の救いであり心の支えだったに違いない。
「…この子の言葉…恐らくは、“銀色が沢山の人に優しさを与えられるように。銀色の刻む時が笑顔で溢れるように”でしょう。それで両親が“ぎんとき”と呼んでいたのであれば……」
松陽は懐から紙と筆を出し、すらすらと紙に文字を書く。
「“銀”色の“時”と書いて…“銀時”……」
これが子供の名前なのだろうか?否、子供自身がそう言ったのだからそうに違いない。
「本当は名字の方も分かるとこの子の住んでいた場所など分かるのかもしれませんが…」
「まぁ、この様子では…住んでいた村にこの子を帰すのは得策ではないでしょう」
「ですな」
名字は身分と出身の土地を示すものだ。もちろん、名字だけで分からない場合もあるが大抵は分かる。だが…分かったとしても、この子…銀時の場合は彼の村に帰すべきでなはいと、そう松陽達は判断した。
「あとは学園長先生の判断を仰ぎますか…」
「それがよいでしょうな」
松陽と伝蔵がそう結論を出した頃、半助は銀時と話をしていた。
「銀時か…いい名だな!!」
「……?いい…?」
「ああ、とてもいい名だ!!」
こういうとき、どういう反応をしてどういう言葉を返したらよいのか分からない銀時はただ首を傾げるだけだった。
「改めて…私の名は半助というんだ」
「……はんすけ……」
「そう、半助だ…覚えたか?」
「はんすけ、おぼえた!!」
「ははっ、偉いぞー!!」
初めて覚えた言葉を褒められて、よほど嬉しかったのだろう。銀時は笑いながら半助に飛び付く。その光景は、先ほど伝蔵が言った通り…まるで兄弟のようだった。
「それでは、私と銀時は先に学園の方へ戻ります」
「はい、道中お気を付けて。松陽殿も幕府より狙われている身と学園長よりお聞きましたので…」
「ありがとうございます。なぁに大丈夫。こちらはこちらで何とかしますよ。この子1人護るくらい造作もありません」
やがて、伝蔵達はもう一つの目的である実践授業を行うために再び攘夷戦争の戦地へと戻ることとなった。そして、松陽は銀時を連れて一足先に学園へ戻ることとなる。
「……はんすけと、やまだせんせ……いない?いっしょ、ちがう…?」
「えぇ、あの2人は少し用事があるので一緒には帰れませんが…しばらくすればまた、学園で会えますよ」
半助や伝蔵との別れを惜しんでいるのか、銀時が寂しそうな表情を見せる。もしかしたら、この子はもう一生会えないとか…そういうレベルで2人を見ているのかもしれないと思い、松陽はやんわりと再会できることを伝えた。すると、暗かったその表情はパッと明るくなった。
「ははっ、私のことも覚えてくれたのか。いやはや、嬉しいなぁ」
「銀時、大丈夫だ!!私も山田先生も、用事を終えたらすぐに戻る!!」
別れが名残惜しくもあったが、授業の一環で来ている以上、何もしないで学園に戻るわけにもいかない。後ろ髪を引かれる思いではあったが、伝蔵と半助は松陽に一礼して再び戦地へと戻っていった。残された松陽と銀時は…
「では、私達も行きましょうか。まだまだ学園までは道のりが長いですから…そうですねぇ…」
「………?」
「ほら、銀時…私の背中におぶさりなさい。今日は色々あって疲れたでしょう?」
銀時に背中を向けておぶさるように促す。銀時は少し戸惑っていたが、やがて松陽の背中にトンと重心が掛った。
「では、行きましょうか」
「せんせ、いく、どこ?」
「忍術学園という場所です」
「…にん…?」
そして2人は忍術学園へと向かう。道中、2人は色々な話をした。もっとも、銀時は言葉がうまく使えないため…会話もたどたどしかったが、それでも松陽は銀時との会話を絶やさなかった。
この子が少しでも言葉を覚えるように…
そう願いながら、松陽はいろんなことを銀時に話して聞かせた。
「せんせのなまえ、しょうよう…」
「はい、よくできましたね」
「はんすけ、やまだせんせ、しょうようせんせ…」
「そうです、銀時は覚えるのが早いですねぇ」
幼い子供に言葉を教えるように、ひとつできればその度に褒めながら…
2人は忍術学園へと足を進めた。
今回はちょっと短めにまとめました^^
ちょっとちっさい銀時の言葉にいろいろムラがあるような気もしますが……まぁ気にしない、気にしない…!!←
現在、こちらの小説で万事屋の子供達と真選組の面々をどのようにして絡めるか考え中です(笑)真選組の面々は何となく浮かんだけど、万事屋の子供達が…^^;万事屋を営んでこそのあの3人って感じもするので…む、難しい(=∀=;)新八を「剣術の腕を上達させるため」という理由で忍術学園に…って思ったけど、それだと金吾とかぶるなーとか思ったり、その前に志村家にそんな金がないだろ、とか思ったり…(笑)まぁ、その辺りは何とか考えます^^やっぱり、新八や神楽、真選組が出てこその銀魂ですからね!!忍たま寄りのクロスオーバー小説と言っても、銀魂メインメンバーはやっぱり出したいです♪
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