ダンガンロンパPRISON (M.T.)
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プロローグ 16人のロストパーソン
プロローグ①


プロローグタイトル元ネタ『24人のビリー・ミーガン』です。

今作は小説&映画タイトル縛りでいきたいと思います。


「さよなら。」

 

30年前までは、世界は絶望的だったという。

大量に人が死に、秩序が崩壊し、『希望』なんて何もない世界。

しかし、『未来機関』によって世界の秩序を乱した者達は処分され、世界に平和が戻ったという。

 

僕も、改変される前の世界に生まれていたなら、こんなに苦しい思いをしなくて済んだのだろうか。

…そんな事を今更考えたって、現在(いま)が変わるわけじゃないのに。

 

僕はこの世界に絶望した。

だから命を断つ事にした。

 

見慣れた屋上。

僕はここで、何度も踏みとどまった。

勇気がなかったから、ここまで生き延びてしまった。

でも、それも今日で終わりにしよう。

 

飛んだ。

世界の色が、筆で伸ばしたような模様を描きながら撹拌される。

もう、今まで抱えていた苦しみも、吹きつける風の冷たさも、何も感じなくなった。

これが、死ぬって事なのか…

 

 

 

 

 

うぷぷ、そんな簡単に終わらせていいのかい?

 

…誰だ、僕を呼ぶのは。

 

ーいい物見せてあげるよ。ここで死ぬなんて、もったいないだろ?

無いなら、作ってあげるよ。キミが望むセカイを…

 

僕の…望む…セカイ…?

 

僕の視界は、白くまばゆい光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はっ、あぁあっ!!?」

…はぁ、変な夢見ちゃったなぁ。

よりによって、こんな大事な日に自殺する夢見るなんて…

やっぱり、僕ってツイてないのかなぁ。

…でもまぁ、現実も似たようなものか。

 

僕の名前は景見(カゲミ)凶夜(キョウヤ)。【超高校級の不運】だ。

その名の通り、僕はものすごくツイてない。

テロリストに人質にされたり、楽しみにしていたイベントの日に限って怪我や病気をしたり…僕の場合、当たるといえば車か雷か食あたりだ。

とにかく、生きているのが奇跡なんじゃないかっていうくらいの不運に見舞われた僕は、希望ヶ峰学園の100期生としてスカウトされた。

高校では、平和な3年間を送ろうと思ってたのに、超人ばっかりの超エリート校に入学させられるなんて、僕はなんて不運なんだ。

僕は、入学式のために正門に向かい、門をくぐった…

…はずなんだけど。

どういうわけか、僕は今全く知らない部屋の中にいる。

なんでここにいるのか、そもそもここは一体どこなのか、全くわからない。

…これって、拉致監禁じゃないのか?

とりあえず、警察に連絡…

あ。携帯が無い…

どっかで落としたのかな。ホント、ツイてないな。

とりあえず、現状を把握するために、部屋の中をよく見てみる事にした。

 

 

 

 

…なるほど、大体把握できた。

ここは、どうやらホテルの個室のような空間らしい。

ベッドや洗面所、ユニットバスなどがあった。

ただ気になるのは、窓が鉄板のようなもので封じられている事、そして棚の中にロープや洗剤、睡眠薬などが置かれている事だった。

…これで自殺しろって事かな?

まあ、こっちとしても、ずっと死にたい気分だったわけだし…

死なせてくれるっていうんだったら、好都合…なのかな?

せっかく道具があるんだし、ちょっと首でも括ってみるか…

今まで勇気がなくて何度も死に損なったけど、今度こそ…

 

 

 

「誰かいるのかな?…開けてみるか。たのもー!!」

いきなり、女の人の声が聞こえた。

「って!?わぁあああああ、ちょっとちょっとちょっと!!キミ、何やってんの!?」

その女の人は、いきなり僕の部屋に入ってくると、僕に駆け寄ってきた。

「…え?」

「ホント、ビックリしたぁ…せっかく人に会えたと思ったのに、首吊ろうとしてるんだもん!…あ、制服…キミ、もしかして学生さん?」

その人はハンチング帽を被っていて、ワイシャツの上に探検隊のようなジャケットという、おかしな格好をした人だった。

さらに、帽子から飛び出た触角のような髪の毛が、彼女らしさを強調している。

外見から察するに、多分僕と同じ高校生だ。

綺麗なショートの黒髪で、今まで出会った事のないような魅力を持っていた。

その人は、碧い瞳を輝かせながら僕を見つめてくる。

と思うと、その人は予想外のリアクションをした。

 

「わああ、ラッキー!!誰もいないんじゃないかって不安だったけど、人に会えて…しかも、ボクと同じ年代の子に会えたなんて!ボクって、ホントツイてるなぁ!」

え?え??

言っている意味が本当にわからない。

この人は、何を言っているんだ?

拉致監禁されて、ラッキーだと?

どういう思考回路を辿ったらその考えに行き着くんだ。

この人、どんだけ明るいのかなぁ…

「あ、あの…あなたは…」

「あ、ごめん。自己紹介がまだだったね。ボクは狛研(コマトギ)(カナエ)。【超高校級の幸運】だよ!よろしくね!」

「ちょ、超高校級の…幸運…?」

「あ、ごめん。言ってなかったね。ボク、【超高校級の幸運】として希望ヶ峰学園にスカウトされたんだ!」

超高校級の幸運…

確か、平均的な高校生の中から1人だけランダムに選んでスカウトする制度…だっけ。

超高校級って言ったら、僕と同じ…

「ねえねえ、君の事も教えてよ!」

「え、ええっと…」

 

「僕は、景見凶夜…【超高校級の不運】です…」

「【超高校級の不運】?って事は、もしかして希望ヶ峰学園の新入生!?」

「は、はい…」

「うっわぁ!ボクと同じじゃん!嬉しいなぁ…!凶夜クン!やっぱり、ボク達って運が良いね!ねえ、その【超高校級の不運】ってさ、何なの?教えて!」

「…そのままですよ。僕は今まで、死にたくなるくらい不運に見舞われてきたんです。乗ったバスはバスジャックされるわ、未知のウイルスに感染して治るまでずっと隔離されるわ、生きてるのが不思議なくらい運が悪いんです。だから僕は、希望ヶ峰学園にスカウトされたんです。ホント、皮肉ですよね。こんな不幸体質のおかげで希望ヶ峰に進学できるなんて…」

「でもさ、生きてるのが奇跡っていうくらいの不運に遭っても、キミはこうして生きてるわけでしょ?それに、スカウトのおかげでボク達がこうして出会えたんだからさ!やっぱり、ボク達はツイてるんだね!」

狛研さん…やっぱり、この人かなり変わってるなぁ…

僕がラッキーだなんて…そんな事言われたの、初めてだよ。

「あの、狛研さん…」

「叶でいいよ!」

「叶さんは、なんでそんなに前向きなんですか…?」

「うーん…なんでって言われてもねぇ。まあ、人生いい事ばっかりじゃないからさ!なんでもポジティブに考えた方がウルトラハッピーって事だよ!」

「…すごい、ですね。叶さんは。僕は、そこまで前向きにはなれない…です。」

「ボクだって、別に無理して前向きでいろとは言ってないよ?でもさ、一日一個でもいい事見つけていけたら、今より人生楽しくなると思わない?」

「え、ええと…」

「たとえば、ほら!ボクと友達になれた事、とかさ!」

叶さんは、僕の手を握って引っ張った。

「さ、一回外に出よ!いつまでも部屋の中に閉じこもってたって、息が詰まるだけだよ!」

「あ、ちょっと待って…」

僕は、叶さんと一緒に部屋の外に出た。

 

 

 

 

「…!」

部屋の外は、見たこともない光景が広がっていた。

僕がいた場所は、部屋が環状に並んだ建物の6階建てだった。そして、円柱状の建物の真ん中には、噴水があった。

「…なんだ、ここは…」

「ここ、面白いよね!こんな構造の建物、見た事無いよ!」

叶さんは、一度この景色を見ているはずなのに、何故か初見の僕よりもテンションが上がっていた。

…この人、ホント変わってるよなぁ。

「ねえねえ!この水、飲めると思う?喉が渇いちゃってさ!なんか飲みたいんだけど!」

えぇ…

叶さん…なんでこの状況で噴水の水が飲めるかどうか聞いてくんの?

なんで僕達がここにいるのかとか…

そもそもここはどこなのかとか…

もっと気にする事いろいろあるでしょ。

 

「あら。この状況で、よくそんなふざけた事が言えるわね。頭にカビでも生えてるのかしら。」

後ろから、女の人の声が聞こえてきた。

「うわっ…すごい美人…」

絹のように艶と透明感のあるセミロングの黒髪。

吸い込まれそうになるほど澄んだ明るい菫色の瞳。

全体的に暗い色の制服とは対照的に、雪のように白い肌。

その人の持つ、この世のものとは思えないような美しさは、神が創り出した最高傑作と言わんばかりだった。

「…。」

「あら。人の顔をジロジロと見るなんて、失礼なんじゃなくって?まあ、私の美しさに見惚れるのは無理ないのですけれど。」

「あ、ご、ごめんなさい…」

「あらぁ!あなたって、本当に鈍臭いのね!視界に映るだけで不愉快だから、早く消えてくださらないかしら?」

「凶夜クンは鈍臭くないよ!ただ、ちょっとドジなだけだよ!」

叶さん、ほぼ同義だから。フォローになってないから。

「はぁ、なんなの?わけのわからないままこんな所に連れてこられて、人に会ったと思ったら鈍臭い白髪男と、男遊びの激しそうな、下品で頭の軽い女しかいないじゃない。まさか、ここにいるのがこの3人だけって事ないでしょうね?」

その人は、ぶつくさと文句を言い始めた。

…この人、超絶美人なのに、口悪いなぁ…。

黙っていれば完璧なのに…

「ねえキミ、名前は?ボクは狛研叶。【超高校級の幸運】だよ、よろしくね!」

「あ、僕は景見凶夜って言います…【超高校級の不運】です…」

「フン、私があなた達ごときに名前を名乗るわけがないでしょう?ホント、下品で不愉快ね。早く消えて頂戴。」

「ふぅん、白鳥麗美ちゃんって言うんだ。よろしくね!」

叶さんは、綺麗な人が出てきた部屋のネームプレートを見て、あいさつをした。

「ちょっと!あんた、何人の部屋を勝手に見てんのよ!非常識にも程があるでしょ!?」

そもそも、なんでこの距離でネームプレートの文字が読めるの?

叶さんって、目が良いんだな。

「フン、まあいいわ。どうせ名前がバレてるんだったら、言っても言わなくても同じよ。あんた達には特別に、私の事を教えてあげるわ。そのついてるのかついてないのかわからない耳でよく聞きなさい。私は白鳥(シラトリ)麗美(レイミ)。【超高校級のマドンナ】よ。」

あっ…超高校級のマドンナ…聞いた事あるな。

確か、世界一美しい高校生と言われていて、目の大きさや鼻の高さなどの顔のパーツからこの人の持つありとあらゆる技能まで、『美しさ』という面において全てが理想的で、『女の完全体』とか、『歩く黄金比』とか呼ばれている超絶美少女だ。

噂によると、白鳥さんの眼を見た人は、その美しさに魅了されて絶対服従する僕と化し、白鳥さんが訪れた店は人がごった返して人の圧で潰れる(物理)とか…会員数1000万人を超えるファンクラブがあるとか…

そんな嘘みたいな噂も、この美貌が謎の説得力になってるんだよなぁ。

…とても綺麗な人だけど、僕は正直苦手だな。

口が悪いのもあるけど、綺麗すぎて一緒にいると気まずいんだよな。

叶さんがいなかったら、絶対心が折れてたよ。

「まったく、あんた達ときたら、本当に下品で不愉快極まりないわね。私の美しさを台無しにする気なら、ここにいる価値なんて無いから早く消えて?」

いくら美人だからって、言っていい事と悪い事とあるよね。

ほら、叶さんだって怒りのあまりプルプル震えてるし…

「すっごーい!!まさか、2人も【超高校級】に会えるなんて!嬉しいなぁ…ねえねえ、もしかして、麗美ちゃんって希望ヶ峰の新入生!?」

「な、何よあんた…!だったら何!?不愉快!消えて!」

「え!?やっぱり!?新入生なんだ〜!ボクと凶夜クンもなんだよー!新入生が3人も同じ場所に集まるなんて、すっごくラッキーだね!」

僕にとっては、アンラッキーなんだよなぁ。

白鳥さんにグイグイ食いついていける叶さんって、ある意味すごいなぁ。

「う、うるさいわね!不愉快なのよあんた!グイグイ近づくな!」

うわぁ…

なんか、女子ばっかりで気まずいなぁ…

まさかとは思うけど、この建物にいるのこの3人だけって事無いよね?

お願いだから、誰か男の人来てよ…

女子2人に男1人って、すごい居づらいんだけど…

この2人とどう接したらいいのかわかんないよ…

 

ガチャ

 

白鳥さんの隣の部屋から、西洋貴族風の男が出てきた。

長い金髪に、綺麗な青い瞳、そして白鳥さんと同じくらい白い肌の華奢な人だ。

…良かった。やっと男の人に会えた。

女子2人しかいない空間にいて、気まずさと緊張で吐きそうだったからな。

「あ、また誰か出てきたね!今度は…なんか、すごいゴージャスな人が来たよ!どっかの国の王様とかかな?」

叶さん、そんなわけないでしょ。

確かに貴族風の人ではあるけど、さすがに王族ではないでしょ。

王族を拉致監禁なんてしたら、国が動くって。

…それにしても、綺麗な人だなぁ。

でも、この人絶対外国人だよね。

僕、英語とか全然わかんないし…どうしよう?

話、通じるかな…

「ねえねえ、キミは誰?ボクは、狛研叶だよ!よろしくね!」

さすが叶さん…初対面の西洋貴族相手にもグイグイいくなぁ。

日本語通じないんだから、話できないってば。

「…なんだ貴様は。この俺を誰だと思っている、無礼者が。」

え!!?

待って、日本語通じた!?

しかも、日本語で返してきた!?

この人、日本語上手くない!?

「え!?あ、え!?」

「…なんだ貴様。もしかして、俺が日本語を話している事に腰を抜かしているのか?だとしたら、貴様は相当勉強不足だな。この俺が誰かも分からぬとは…」

えぇ…初対面ですっごいバカにされたんだけど…

「ご、ごめんなさい…」

「…まあいい。おい貴様ら。名を名乗れ。そうだな。そこの帽子にはもう名を聞いたし…おい、そこの白髪赤眼のお前、名を名乗れ。」

「え、ぼ、僕ですか…?ぼ、僕は…景見凶夜って言います…」

「なんだ貴様は。男のくせに、ナヨナヨしおって。恥ずかしくないのか。…大体、貴様はそうやって人の前に立つ事をしないから貧相な見た目なんだ。」

そう言われましても…

「まあいい。おい、次は貴様だ。女、名を名乗れ。」

「はぁ?何よあなた。私が誰だかわからないのかしら?ホント、不愉快な男ね。」

「いいから名乗れ。俺に盾つくなら、不敬罪で処罰するぞ。」

ん?不敬罪?

「何よあんた。私にそんな生意気な口を利く男、初めて見たわ。…でもまあ、私は優しいからね。教えてあげるわ。私は白鳥麗美。【超高校級のマドンナ】よ。私の名前を知らないなんて、どうかしてるわよあんた。そのふざけた金髪は、ロングパスタでできてるのかしら?」

うわああああああ!!白鳥さん、言い過ぎ言い過ぎ!!

無闇に初対面の相手を怒らせちゃダメだってば!!

「そう言われても、知らんものは知らん。…全く、日本人の女は大和撫子だと聞いていたんだが…貴様やあそこの触角帽子を見る限り、俺の思い違いだったようだな。」

「触角帽子ってボクの事言ってるの?ボクのこの帽子はね、ボクの大事な宝物なんだよー。」

「貴様の宝物の話などどうでもいい。これ以上俺に無礼を働くな。不愉快だ。」

この人もこの人で、いちいち発言にトゲがあるなぁ。

さっきから名前を教えてくれないし…

「あ、あの…とりあえず、名前だけでも教えていただけませんか…?」

僕は、勇気を振り絞ってその人に聞いてみた。

「なんだ貴様。まだいたのか。さっきから気配が無いものだから、てっきり尻尾巻いて部屋に逃げ込んだのかと思っていたぞ。」

気配が無いって…

影が薄いって事か…まあ、否定はしないけどさぁ。

「本来、俺の名前を知らないなど、あってはならない事なんだがな。まあいい、改めて教えてやろう。俺の名は、ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン。シルヴェンノイネン王国の現国王だ。今年、【超高校級の国王】として希望ヶ峰学園に進学する予定だった。」

あっ…!聞いた事ある…確か、シルヴェンノイネン王国の国王が、今年【超高校級の国王】として入学するって…

シルヴェンノイネン王国は北欧に位置する小国で、工業や農業に力を入れていて、国民は皆豊かな国だと言われている。確か、鰊の塩漬けとウォッカが名産だったはずだ。数年前に先代国王が若くして亡くなり、その長男だったラッセ様が即位したらしい。ラッセ様はまだ子供にもかかわらず国をまとめ上げ、先進国の国々にも劣らない国力をつけたらしいけど…なんか、イメージと全然違うな。

もっと、人当たりが良くて頼りがいのある人だと思ってたんだけど…

「すごーい!ラッセクンは、ホントに王様だったんだね!なんか、王様と一緒にいるって不思議な感じだね!よろしく!」

「…気安く話しかけるな。俺は国王だぞ。本来、庶民の女と同じ空間にいるべきではないんだ。」

「あら、国王ですって?具体的に、どの辺が?あなたみたいな器の小さい男が国王だなんて、国民もかわいそうね。えっと…確か、シラミノミゴキブリ王国だったかしら?」

白鳥さん、一国の王様に対してズバズバ言い過ぎだよね?

本当に不敬罪で罰せられちゃうよ?

「…貴様、俺の国や国民達を馬鹿にするなよ。確かに昔は戦争で負け続け、脆い国だった。だが今は、国民達の努力の末、逞しく豊かな国になったのだ。国民達が支えてくれなければ、今の王国は存在しなかった。俺の国の国民達を侮辱する事は、この俺が許さん。」

ラッセ様も、やっぱり一国の国王なんだな。

こういうとき、ちゃんとまともな事言うんだね。

「あらあら。随分とまあ論点をすり替えるのがお得意なんですね。確かに、私はあなたの国や国民をバカにしたけれど、でもそれ以上に一番バカだと思ってるのはあなた自身なのよ?少しは自覚なさい?」

「…貴様、俺を敵に回すとは、いい度胸だな。国王を本気で怒らせるとどうなるのか、教えてやる。」

「あら、国王のくせにこの程度で怒るんですか?本当に器が小さいのね!」

うわぁ…すっかり喧嘩モードだよ。

白鳥さんとラッセ様、性格は似てるけどお互いの相性は最悪なんだな。

どうしよう…二人とも、おっかなくて止められないよ…

ああもう、なんで3人もいてまともな人が一人もいないんだよ。

やっぱり、これも『不運』なのかなぁ。

「あ、鳥だ。」

ちょっと、叶さん。

小鳥追っかけてないで、二人のケンカを止めて…

 

「ピィ、ピィ!」

 

浅葱色の小鳥がバサバサと翼を動かしながら暴れ、ケンカをしている二人に突っ込んでいった。

「きゃあっ、ちょっと!なんなのよ!!鳥!?」

「なんだこの鳥!おい、暴れるな!このっ!」

 

「ダメだよきみ達、ケンカなんかしちゃ!翠が泣いてるよ!」

小鳥が出てきた部屋から、小柄な女の子が出てきた。

うっすらと桜色がかった銀髪に、ペリドットのように黄緑色の瞳の、少し幼い顔立ちの女の子だ。

パステルカラーのセーラー服の上に、小鳥のワッペンをつけた白衣を着ている。

髪型や制服からはお嬢様のような雰囲気が窺えるが、どこかメルヘンチックな雰囲気を醸し出している不思議な子だ。

「翠、こっちおいで!」

「ピィ!」

女の子が呼ぶと、小鳥は女の子の指に停まった。

「よしよし、翠、二人のケンカを止めようとしてたんだね。お前は優しい子だね。」

「ピィ!」

女の子が小鳥の頭を撫でると、小鳥は嬉しそうな声で鳴いた。

「ちょっと、なんなのよあんた!今の鳥、あんたのペットなの?だったらちゃんと人を襲わないようにしつけておきなさいよ!せっかく2時間かけてセットした髪がグシャグシャになっちゃったじゃない!」

「全くだ。おい小娘。飼い主なら、自分のペットの管理くらいきちんとこなせ。貴様がきちんとしつけないから、その鳥が俺を襲ったんだぞ。」

「ちがうよ。翠は、ペットじゃなくてお友達だよ。それに、翠は無闇に人を襲ったりしないよ。翠は賢い子だもん。翠は、きみ達に仲直りしてほしかったんだよ。ね、翠。」

「ピィ!」

「ねえねえ、その鳥、翠ちゃんっていうの?かわいいね!」

「ホント?ありがとう。翠も喜んでるよ。」

「え、キミ、翠ちゃんの気持ちがわかるの?」

「うん、わかるよ。だって、わたし達はお友達だもん。ね!」

「ピィ!」

「わぁ、すごい!息ピッタリ!ねえねえ、キミ、名前は?ボクは狛研叶!【超高校級の幸運】だよ。キミの事も教えてよ。ボク、キミの事もっと知りたいな!」

「いいよ。わたしは日暮(ヒグラシ)彩蝶(アゲハ)。【超高校級の生物学者】だよ。この子は、セキセイインコの(スイ)だよ。よろしくね、かなえちゃん。」

日暮彩蝶…聞いた事あるな。確か、生物学において世界屈指の知識を持つ天才で、どんな動物とでも心を通わせる事ができるらしい。大震災の時に動物園の動物達を安全な場所に避難させて、多くの人や動物達の命を救った功績が認められて、【超高校級の生物学者】としてスカウトされたらしい。どんな凄い女の人かと思ってたけど、まさかこんなに小さくて可愛らしい子だったとは…

「彩蝶ちゃんも希望ヶ峰学園の新入生なの?」

「そうだよ。」

「えー!?すっごーい!!新入生がボクの他に4人も!それに、小鳥の翠ちゃんも!こんなにすぐに友達ができるなんて、もしかしてボクって、めちゃくちゃラッキーなんじゃない!?」

「そうだねぇ。わたしも、かなえちゃんとお友達になれて嬉しいよ。翠も、かなえちゃんとお友達になれて嬉しいって。…ねえ、そっちの白い頭の子は?」

「あ、僕は景見凶夜です。【超高校級の不運】です。」

「へえ、きょうやくんね。なんか、きょうやくんってウサギさんみたいだね。」

「う、ウサギ…?」

「うん。髪が真っ白で、目が赤くって…ウサギさんみたいでかわいい!」

「あ、ありがとう…」

今までこの見た目のせいでからかわれてきたから、そう言われるとちょっと調子狂うな…

「ねえねえ、ボクは!?何っぽい?」

「うーんっと、かなえちゃんはテリア系かな。元気いっぱいだし。」

「テリアって犬?わーい!ボク、ワンちゃん大好きだよー!」

「ねえ、そっちの綺麗な子は?」

「私?…ホント、なんでどいつもこいつも私の事を知らないのかしら。…白鳥麗美。【超高校級のマドンナ】よ。ウフフ、私の美しさに見惚れてもいいのよ?」

「しらとり?うーん、れいみちゃんは白鳥っぽくはないよね。どちらかっていうと、むしろコクチョウだよ。」

「ちょっと!あんた、何勝手に私を動物で例えてるのよ!私は私!動物で例えられるわけないでしょ!?バカなの!?」

「れいみちゃん、ちょっと静かにしてくれないかな。翠がうるさいって言ってるよ。」

「私の声のどこがうるさいのよ!!あんた、その頭のねじりハチマキ引きちぎるわよ!!」

ねじりハチマキって…編み込みでしょ。

引きちぎるって…口悪いなあ、白鳥さん…

なんか、白鳥さん、だんだん性格がひどくなってってるような気がするんだけど…

「ねえ、そっちの外国人の子は?」

「フン、貴様も俺の事を知らないとはな。日本では、俺の国はニュースで扱わないのか?…まあいい。俺の名はラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン。【超高校級の国王】だ。貴様ら、4人もいて全員俺の事を知らないとは…無礼にも程があるだろう。シルヴェンノイネン王国の国王だぞ。俺の名をその胸に刻んでおけ。」

「ラッセくんね。ラッセくんは、やっぱりキツネ?」

「おい。貴様、一国の国王を動物に例えるなど、無礼極まりないぞ。今すぐ首を垂れて今の発言を訂正しろ。」

「ええ…ラッセくん、言ってる事が難しすぎてよくわかんないよ。」

「貴様、どこまで俺を愚弄する気だ!!不敬罪で極刑に処すぞ!!」

わぁ…日暮さんは大胆すぎだけど、ラッセ様も器が小さいなぁ…

せっかく一旦平和になったと思ったのに、また乱してどうすんのさ。

「ピィ!」

翠ちゃんは、いきなりラッセ君に襲い掛かった。

「わっ!おい、なんだこの鳥は!!おい銀髪!!今すぐこの鳥をどうにかしろ!!」

「あ、ちょっと!翠!ダメだよ!ラッセくんを攻撃したら!…いい?わたしに怒鳴ってきたからって、怒っちゃダメだよ?ケンカはダメっていつも言ってるでしょ。」

「ピィ。」

うーん、どいつもこいつもキャラが濃すぎなんだよなぁ。

なんでもかんでもラッキーだと思っちゃう叶さんに、自分以外の人間を見下してる白鳥さんに,王様なのにどこか子供っぽいラッセ様に、翠ちゃんで攻撃してくる日暮さん…

このメンバーで、平和になんて過ごせるわけないんだよなぁ。

…やっぱり僕って、不運だなぁ。

 



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プロローグ②

叶さん、白鳥さん、ラッセ様、日暮さんの4人が部屋から出てきた。

正直、みんなキャラが濃すぎて、僕はどうしたらいいのかわからない。

お願いだから、誰かこのカオスな場をどうにかして…

 

ガチャ

 

「…おや、ここは一体…」

和服を着た男の人が、部屋の中から出てきた。

叶さんと同じかそれより少し長いくらいの黒髪で、黒い瞳を持った人だ。

とても落ち着いた雰囲気で、和服も青系の色で統一されている。

そして、何故か黒い布で包まれた筒状の物を背負っている。

僕やラッセ様より背が高くて、顔もどこか色気のある美人顔だ。

僕は、思わず声を漏らした。

「…綺麗。」

その人は、懐から扇子を取り出すと、パタパタと仰いだ。

動作一つ一つが洗練されていて、とても美しい。

その人は、僕達に気がついて、こっちに向かってきた。

「おや、私の他にも人がいましたか。はじめまして、皆さん。」

その人はパチンと扇子を閉じ、懐にしまうと、深く頭を下げて挨拶をした。

「ねえねえ、キミもここに連れてこられたの!?ボクは、狛研叶だよ!希望ヶ峰学園の新入生で、【超高校級の幸運】なんだ!よろしくね!!」

叶さんは、真っ先にその人に食いついた。

「フン、なんだ。俺以外にも男がいたか。」

あれっ?

ラッセ様?僕をカウントするの忘れてませんか?

「…俺はラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン。【超高校級の国王】だ。」

「あっ、結構イケメン…は、はじめまして。私は白鳥麗美。【超高校級のマドンナ】と申しますの。よろしくお願いしますね。」

おい。

思いっきりキャラ変わってるよ、白鳥さん。

でもツッコんだらロクな目に遭わなさそうだし、言わないでおこう。

「はじめまして、わたしは日暮彩蝶。【超高校級の生物学者】だよ。こっちは、わたしのお友達の翠。よろしくね。」

その人は、髪を手でかき分けると、話し始めた。

「…はじめまして、皆さん。私は不動院(フドウイン)(ツルギ)と申します。」

「ふぅん、つるぎくんっていうんだ。よろしくね。」

「まあ、ここまで来ればそのパターンでしょうけど…あの、あなたも、希望ヶ峰学園の新入生なのかしら?」

「はい。私は、【超高校級の侍】として希望ヶ峰学園にスカウトされました。」

【超高校級の侍】…!?

聞いた事あるな。確か不動院家は、平安時代から続く名門の家系で、数多くの超人を輩出してきた一族だ。その中でも【超高校級の侍】不動院剣は、不動院家の最高傑作とも呼ばれていて、世界一の剣豪とも噂されている。大震災の時も崩れた建物を真っ二つにして多くの人を救い、有名になってたな。…噂だと、居合でライフルの弾丸をも真っ二つにできるらしいけど…もうそれ、人間じゃないよね。

あれ?じゃあ、背中に背負ってるのって、もしかして…

「ねえ、剣クン!もしかして、背負ってるのって、刀!?」

「はい。我が愛刀、鬼津正宗です。近年は世間の目がありますからね。こうして、布で包んで隠しているんです。」

「へー!カッコいいね!!」

「ありがとうございます。…ここで出会えたのも、きっと何かの縁です。よろしくお願いしますね、皆さん。」

不動院君は、ゆっくりとイケメンスマイルを浮かべた。

…良かった、まともそうな人だ…!

「フン、今の世の中で、まだ侍が存在していたとはな。20以上年前に子孫諸共滅んだ絶滅種じゃなかったのか?」

おいおい…ラッセ様。自分が王様だからって、言い方がキツすぎやしませんかね?

「…まあ、否定はしません。20年以上前に世界が絶望に満ちてからは、武士の子孫を名乗る者はほとんどいなくなってしまいましたからね。希少価値、という褒め言葉として受け取っておきましょう。」

うわああ…イケメンだ…!

いいなぁ、僕も不動院君みたいになれたらなぁ。

「すごーい!!本物の侍に会えるなんて、ボクってやっぱめっちゃラッキーだね!!仲良くしようね、剣君!」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。」

「あ、あら不動院さん。こんなところで本物のお侍様に会えるなんて、私嬉しくて感激しておりますの。よろしくお願いしますね?」

「はい、よろしくお願いします。白鳥殿。」

「あのー、ところで、不動院さんってお強いんですよね?私、あなたに守っていただきたいなー、なーんて…」

「ご安心ください。白鳥殿に何かあれば、私がお守りします。」

「ありがとうございます♡」

おい、白鳥さん。

思いっきりキャラ変わってるよ。

僕達の前では、そんなにお上品な口調じゃなかったよね?

語尾にハートまでつけちゃって…

…この人、割と面食いなんだな。

「おい、ダークパープル女。貴様、その侍に媚を売ろうったって無駄だぞ。俺達は、お前の本性を知ってるんだからな。お前は、ルックスだけの下品で凶暴な腹黒女だ。」

「不動院さん、あちらの方の妄言は無視してくださいな?あの方は、虚言癖と被害妄想が激しいんです。」

「は、はあ…」

おいおい、不動院君が困ってるよ。

二人とも、お互いの足引っ張り合うのやめようよ…

「煩いぞダークパープルめ。国王に喧嘩を売るとは、いい度胸だな。」

「何よあんた!今、不動院さんと話してるんだから邪魔すんじゃないわよロングパスタ!!」

ああ、もう白鳥さんの中ではラッセ様のあだ名はロングパスタで固定なんだね。

小国とはいえ国王様相手にロングパスタって…白鳥さんって、悪い意味で度胸あるなぁ。

「もう、最悪!あんたのせいで、不動院さんの中での私の第一印象が最悪じゃないの!」

白鳥さん、安心してください。

不動院君はもう、別の事に興味が移っています。

「そのインコは翠殿というのですね。私は不動院剣と申します。以後お見知り置きを。」

「ピィ!」

「つるぎくん!翠は、つるぎくんとお友達になれて嬉しいって言ってるよ!」

「それは何よりです。翠さん、よろしくお願いしますね?」

「ピィピィ!」

「えへへ、つるぎくんよろしく、だって!」

不動院君は、叶さんや日暮さん、翠ちゃんと楽しそうにおしゃべりをしていた。

…それに比べて。

「あんた、黙ってなさいよ!!ロングパスタ!!」

「国王に対して黙れだと?貴様には重い処罰が必要なようだな。ダークパープルめ!」

なんだ、あの地獄絵図は。

同じ空間で、温度差が大きすぎでしょ。

 

ガチャ

 

「んあ?んだよ、どこだここは?」

部屋から、また一人出てきた。

今度は、大柄でいかつい男の人だ。

黒髪のリーゼントヘアーで、学ランを羽織っていて、サラシにドカンといった特徴的な格好だ。

逞しい胸板には、傷痕がいくつもついていた。

さらに、サングラスの向こうからは銀色の瞳が覗いていた。

絶対あの人ヤンキーだよ。

ヤンキーと言えば、お母さんがああいうのとはつるんじゃダメって言ってたなぁ…

とりあえず、関わらないのが得策かな…

「…あぁ?」

「ヒッ…!」

ヤバい、どうしよう…

今、完全に目をつけられたよね!?

「何見てんだテメェ…オイ!」

ヤバいヤバいヤバい!!

マジでどうしよう!?

ちょっと視界に入っただけなのに…

僕って、やっぱり本当にツイてないよぉ…!

そうだ、褒めちぎれるだけ褒めちぎっておこう!!

そしたら、機嫌が直ってくれるかもしれないし…

「え、ええとですね!?その、あなたの格好がものすごくカッコ良かったもので、つい見惚れてしまいました!!ホント、男らしくてイカしてます!!すごくエネルギッシュです!!」

「…テメェ。」

その人は、威嚇するような声でボソリと呟き、僕の方に右手を伸ばしてきた。

ヤバい、どうしよう!?怒らせちゃったよ!!

これ、絶対殴られるよね!?

…南無三…!

「わかってくれるか、なァオイ!?いやー、そこまで褒められちまうと、なんか照れんな!」

…は、はは…

よ、良かった…助かった…

「お前とは、なんか気が合いそうな気がするぜ!俺は、舞田(マイダ)成威斗(ナイト)っつうんだよ!!お前は!?」

「か、景見凶夜です…ちょ、【超高校級の不運】って呼ばれてます…」

「そうか、凶夜か!!よろしく頼むぜ、相棒!!」

あ、相棒…

「…ふぅ。」

「あれ?おい、どうした凶夜?大丈夫か?」

「あ、はい…」

なんか、緊張が解けて急に力が抜けちゃったみたいだ。

それに、なんか変な汗がどっと出たな。

「ねえねえ、君、成威斗クンっていうの?ボクは狛研叶!【超高校級の幸運】だよ!よろしくね!」

「私は、不動院剣と申します。【超高校級の侍】です。」

「わたしは日暮彩蝶だよ。【超高校級の生物学者】なんだ。こっちは、お友達の翠ね。よろしく。」

「お前ら、【超高校級】って…もしかして、お前らも希望ヶ峰の生徒なのか?」

「も、という事は、貴方もなのですか?」

「ああ、俺は新入生だけどな。俺は舞田成威斗。【超高校級の喧嘩番長】だ!!」

【超高校級の喧嘩番長】…聞いた事あるな。確か、不良の巣窟って呼ばれてる『天下一中学校』の元番長で、他校のライバル達をなぎ倒して手下にして、県内一のヤンキーとしての伝説を築いたって言われている…噂によると、鉄パイプで頭を100発殴られても立っていられるとか、金属バットで電柱をへし折れるとか、学ランの総重量が100kgあるとか…とにかく、不動院さんと同じく、この人も人間じゃないんだよなぁ。でも、手当たり次第に喧嘩を仕掛けてくるっていうイメージだったけど…意外といい人っぽいな。

「叶に剣に彩蝶に翠か!よろしくな!!」

「成威斗クン!!なんか、アツいね!!漢って感じだね!!ファイトって感じだね!ボク、そういうの大好きだよ!!」

「わかってくれるか叶!!?」

うわぁ…あの二人、メチャクチャ波長が合うじゃん。

もう、僕じゃなくて叶さんが相棒の方がいいんじゃないかな。

「剣!なんか、お前は俺と同じものを感じるな。お前とは仲良くやっていけそうな気がするぜ!!」

「舞田殿、実は私も同じ事を考えておりました。貴方からは、武士の魂と近しい物を感じます。」

「おお、そうか!!」

「ねえ、ないとくん。翠が怒ってないから、きっときみは心がきれいなんだね。わたし、きみと仲良くなりたいな。」

「おう!!今日から俺達はダチだ!!」

「あらあら。随分と大きい人間がいるんですね。でも、声がうるさすぎて鼓膜が保たないから、黙っててくれるかしら?」

「うおっ、すげえ美人…あ、アンタ、名前は?」

「はじめまして。私は白鳥麗美。【超高校級のマドンナ】よ。」

「し、白鳥さんか。よろしくお願いします…」

舞田君、なんで敬語になってるの。

…まあ、白鳥さんはすごく美人だもんね。

見惚れるのも無理ないよ。

…中身はアレだけど。

「舞田君、声が大きいので静かにしてくれないかしら?」

「は、はい…」

チョロいな。

舞田君って、もしかして割と単純…?

「おい、そこのデカいの。俺を無視するとは何事だ。」

「あ、悪い。…と、お前は誰だ?」

「…はぁ、全く…これだから日本人は。俺の事を知らない奴が多すぎるだろう。…俺はラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン。【超高校級の国王】だ。よく覚えておけ。」

「へえ、お前国王だったのか。よろしくな!」

「触るな!俺は王族だぞ。貴様のような奴と馴れ合う気はない。早く俺の視界から消えろ。下衆が。」

「おい…テメェ、今なんつった…?」

「下衆だと言ったんだ。俺は、何も間違った事は言っていない。貴様のような男は、とても下品で不愉快だ。まずそのカマキリの卵のような頭をどうにかしろ。今にも孵化した幼虫が湧いてきそうで不愉快極まりない。」

ラッセ様、無闇に喧嘩ふっかけるのやめましょうよ…

わざわざ敵を増やすようなマネをして、何がしたいんですかあなたは…

「テメェ…言いやがったな!!?歯ァ食いしばれやコラァ!!」

「ほう、暴力か。どうやら、貴様の脳ミソの出来はミジンコ並みのようだな。」

「うるせェ!!ブン殴るぞテメェ!!」

「ちょっと、やめてくださいよ…舞田君…!」

「止めるな相棒!!コイツは今、俺をバカにしやがった!!国王だろうとなんだろうと関係無え!!ブン殴ってその腐りきった根性、叩き直してやる!!」

「ダメですって!!落ち着いてください!!」

「そうだよ!やめてよ二人とも!翠も、やめてって言ってるよ!」

「ギャギャギャギャ!!」

「二人とも、ダメだよケンカなんかしちゃ!一回落ち着きなよ!」

「やめなさい、お二人共!!」

「…ここでケンカを止めれば、みんなの私への高感度アップは間違い無しね!…もうやめて舞田君!私、あなたが暴力を振るうところなんて見たくないの!」

…聞いてないな。

白鳥さんの渾身の演技も耳に入らないくらい、頭に血が上っているらしい。

どうすんだこれ…誰にもこの二人を止められないのか…?

 

ガチャ

 

「…あっ。」

部屋のドアが開いて、女の人がこっちを覗いているのが見えた。

「…えーっと…待って?これ、どういう状況?目が覚めて、ちょっと状況を確認しようと思って部屋の外に出たら、外がメッチャ修羅場なんだけど…もしかしてアタシ、今出ていかない方が良かったりする?」

女の人は、ブツブツと独り言を言っていた。

「あぁ?」

舞田君が、覗いている女の人に気づいたらしい。

「おい、お前何覗いてんだ!!隠れてねぇで出てこい!!」

「ちょっと、なんなのよぉ!!変な所に連れてこられたと思ったら、いきなりヤンキーに怒鳴りつけられて…何もしないから、そんなにすごむなよ!」

女の人は、ビクビクしながら部屋から出てきた。

その人は、ミカン色の髪の毛を肩につくくらいの長さのツインテールにして、前髪をヘアピンで留めていた。

瞳は明るめの茶色で、少しキツめの顔立ちだった。

その人は、制服を着崩していて、右手にはシュシュをつけていた。

ヤンキーの次はギャルか。

…ギャルと言えば、中学生の時、財布の中身をカツアゲされたなぁ。

僕って、なんでああいう類の人達に狙われるんだろ。

「って!?ヤンキーの他にも、6人もいんじゃん!!何これ!?どうなってんの!?」

「ねえ、キミ、お名前は?ボクは狛研叶!希望ヶ峰学園の新入生で、【超高校級の幸運】って呼ばれてるんだ!よろしく!」

「わたしは、日暮彩蝶っていうんだ。【超高校級の生物学者】なの。こっちは、お友達の翠ね。」

「え、待って!?【超高校級】!?え、どうなってんの!?アンタらも!!?」

「え!?アンタらも、って事は、もしかしてキミも!?」

「ああ。アタシは羽澄(ハズミ)踊子(ヨウコ)ってんだ。【超高校級のダンサー】だよ。」

【超高校級のダンサー】か。確か、踊ってみた動画で一躍有名になった、今をときめく若手ダンサー…だっけ。その国の伝統的な踊りから、流行りのダンスまで、なんでも完璧に踊れるらしい。噂によると、CGのキャラクターに踊らせるような、どう考えても人間じゃ踊れないような動きの速いダンスも、完璧に踊って世界中を沸かせたんじゃなかったっけ。

「踊子ちゃんね、よろしく!」

「ねえ、そこのアンタは?」

「ぼ、僕ですか…?か、景見凶夜です…【超高校級の不運】って呼ばれてます…」

「ふぅん、カナエにアゲハにキョウヤね。よろしく。」

「は、はい…」

「ところでさ、アンタの【超高校級の不運】って、なんなの?」

「ああ、そのままの意味です。僕は、生まれつきことごとくツイてないので、そう呼ばれているんです。ツイてないって事以外は、みんなみたいな才能とか全然無いので、希望ヶ峰の生徒を名乗っていいのかどうかは微妙ですけど…」

「へぇ…アンタも苦労してきたのね。そんな死んだ魚みたいな目してないで、元気出しな。」

「は、はい…ありがとうございます…」

「そうだ、ちょっと踊ってみなよ。いい気分転換になるよ。」

「ぼ、僕は踊れないんで…」

「そうなんだ。…ま、そのうちいい事あるから気にすんなって。」

「はい…」

なんか、ギャルだからって無意識に避けてたけど…

案外いい人なんだな。

「次は私の番ですかね。はじめまして、私は不動院剣と申します。【超高校級の侍】です。以後お見知り置きを。」

「え、待ってヤバい!クッソイケメンなんだけど!目元とかヤッバ!え、しかも侍!?何それ!マジエモみMAXじゃん!いやぁ、マジテライケメンだわツルギ!」

「え、えも…?てら…?」

羽澄さんは、ありえないくらいテンションが上がっていた。

不動院君も、聞き慣れない単語のオンパレードに困惑している。

…羽澄さんって、面食いなんだな。

あれ?なんかデジャヴ…

「よっしゃ、次は俺の番だな。俺は、【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗だ!!」

「ヒッ…!?」

「お、おい。そんなにビビるなよ。さっき怒鳴った事なら、悪かったよ。イライラしてたから、ついキツく当たっちまったんだよ。もういきなり怒鳴ったりしねえから、そんなにビビんなよ。」

「そ、そんなの信用できるかよ…!アタシは、あの時ボコられるんじゃないかと思ってすごいビビったんだからな!?」

まあ、舞田君の見た目で謝られても、説得力が無いよね…

「悪い!!俺は、女とはケンカしねえって決めてんのに…つい怒鳴っちまった!!本当にごめん!!」

舞田君は、いきなり頭を下げて謝り始めた。

「は!?え、ちょっと待ってよ…いきなり、そんなメッチャ謝られても…逆に困るってゆーか…」

羽澄さんも、いきなり舞田君が土下座なんかしたもんだから、すごい慌てふためいてるよ。

そりゃあ、さっきまで自分が怖がってた相手がいきなり土下座してきたら、普通びっくりするよね。

「もういいよ!ビビりすぎたアタシが悪かったから!そんな謝んなよ!」

…舞田君って、喧嘩っ早いイメージだったけど…自分に非がある時はちゃんと謝るんだな。

「ちょっと、何よあなた。そのふざけた格好と態度は?生きてて恥ずかしくないのかしら?」

「うわっ!今度はめっちゃ美女!!え、神並に可愛いんだけど!!?ねえ、もしかしてアンタ、【超高校級のマドンナ】白鳥麗美じゃない!?」

「あら。やっと私を知ってる人に会えたわ。あなた、下品で不愉快な女だと思ってたけど…ちゃんと知っておくべき事は知ってるのね。」

「なんか、こんな可愛い子にそんな事言われると照れるな…よろしくな、レイミ。」

おっ、珍しく白鳥さんが煽ってこないな。

良かった。また喧嘩にならずに済んで。

「おい、そこのミカン頭。貴様、そこのダークパープルの事を知っているなら、当然俺の事も知ってるよな?」

「え、ミカン頭ってアタシの事?…やー、ごめん。ちょっと知らないかなぁ。」

「…そうか。だったら教えてやる!俺は、ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン。【超高校級の国王】だ!シルヴェンノイネン王国の国王だぞ!」

「ごめん。どこそこ?アタシ、地理ニガテだから、メジャーな国10コくらいしか知らないんだわ。ゴメ!」

「羽澄殿。銀叙耎(シルヴェンノイネン)は、芬蘭(フィンランド)の北側にある島国です。」

「そうなんだ。ありがとツルギ。」

「フン、侍。貴様、時代遅れな格好をしているくせに、世界地理はちゃんと勉強しているんだな。感心したぞ。」

「恐縮です。」

不動院君は、扇子で顔を仰いだ。

ホント、カッコいいなぁ…

 

ガチャ

 

「うーん、ここはどこなのかなぁ。まるでわからないや。」

部屋から、また男の人が出てきた。

「…あっ。」

出てきたのは、不動院君と互角の美形男子だった。

でも、不動院君が中性的な美少年なら、この人は男顔の美形だな。

その人は、焦げ茶色の髪に、少し紫がかった青い瞳の美少年だった。

その人は、ライトグリーンのタートルネックの上に、グレーのジャケットを羽織っていて、おしゃれな雰囲気だった。

「やあ、はじめまして!ボクはボクは狛研叶!【超高校級の幸運】さ!よろしくね!」

「私は、不動院剣と申します。【超高校級の侍】です。」

「わたしは日暮彩蝶だよ。【超高校級の生物学者】なんだ。こっちは、お友達の翠ね。よろしく。」

「おう!!俺は、舞田成威斗!!【超高校級の喧嘩番長】だ!!」

「やっば!こっちもイケメン!あ、アタシは羽澄踊子。【超高校級のダンサー】だよ。よろしく!」

「お、結構イケメン…私は、白鳥麗美よ。【超高校級のマドンナ】。よろしくね。」

おいおい、みんな矢継ぎ早すぎでしょ。

部屋から出てきたばっかりで、いきなり一斉に自己紹介されたら混乱するって。

「うんうん、狛研さんに不動院君に日暮さんに翠ちゃんに舞田君に羽澄さんに白鳥さんね。みんな、面白い才能だねえ。すごく興味深いなぁ…」

え、嘘でしょ!?

今ので全員把握できたの!?

そういえば、昔の歴史の教科書に載ってた聖徳太子って人が、10人が同時に喋ったのを全部聞き取ったらしいって昔お父さんが言ってたけど…まさかね。

「ねえ、キミの事も教えてくれるかな?」

「うん、いいよ。僕は穴雲(アナグモ)星也(セイヤ)。【超高校級のアナウンサー】だよ。」

【超高校級のアナウンサー】か…聞いた事あるな。確か、高校生にして朝のニュース番組『めざますテレビ』の人気アナウンサーで、話題の面白さとか、誰に対しても神対応な所とかが注目されているんだっけ。週刊チューズデーに掲載されてた『女性会社員が選ぶ、最近注目している男性アナウンサーランキング』で毎回トップ3なんだよな。噂によると、彼が出演てからは『めざますテレビ』の平均視聴率は50%を超えたとか…

「ねえ、そこの君。名前を教えてもらってもいいかな?」

「あ、えと…景見凶夜…です…。」

穴雲君から放たれる、輝かしいイケメンオーラに、ついたじろいでしまった。

「景見君…ね。君は、確か【超高校級の不運】だっけ。テロリストに人質にされたり、飛行機の墜落事故に遭ったり、雷が頭上に落ちたり…もはや生きているのが奇跡って言われる程の不運に見舞われた、『奇跡の不運』だよね?僕は今まで色んな【超高校級】に取材をしてきたけど、君みたいな面白い才能を持った人は初めてだよ!君の事、もっと教えてくれないかな!?」

穴雲君は、グイグイと僕に聞いてきた。

普段は神対応だけど、一度スイッチが入っちゃうと途端にベラベラと喋りだすんだね。

「え、えっと…僕、自分の才能が嫌いで…こんな呪われた気質のせいで、周りの人にも迷惑をかけたし…僕自身、人生で一度も『生きていて良かった』って思えた事が無いんです。だから、あんまり『不運』の話はしないでいただけるとありがたいです…」

「あ、ごめんね。傷つけるつもりじゃなかったんだけど…そうだね。今のはデリカシーが無さすぎたね。ごめんね、景見君。」

「いえ…穴雲君は、悪くないんです。悪いのは全部僕で…」

「そうやって卑屈になるのは、君の悪い癖だよ。そうやっていじけてたって、運が良くなったりはしないんだからさ。幸運は、自分で見つけないとダメだよ。」

「…は、はい…」

幸運を自分で見つける、か。

多分、それを自然とできてるのが、叶さんなんだよな…

僕も、叶さんみたいになれたら、世界の見え方も全然違ったのかな。

「穴雲さぁん!私の事も、取材してくれないんですか?」

「えっ…」

「私、穴雲さんに取材されたいですぅ。私の事、好きなだけ根掘り葉掘り聞いてほしいな、なーんて…」

「うーん…嬉しいけど、君への取材はまた今度にしておこうかな。僕に興味を持ってくれてありがとう。」

わあ…白鳥さんがフラれた…

こんな光景、あっていいのかなぁ?

穴雲君は、早速叶さんに質問をしていた。

「狛研さんは、抽選で希望ヶ峰学園にスカウトされたんだよね?…でも、君からは、何か特別なものを感じるんだよね。君は、何か幸運に関する才能を持ってるのかな?」

うんうん、そうなんだよね。

叶さんからは、何か不思議なオーラを感じるんだ。

「んー…才能っていうのかよくわかんないんだけど、ボクの周りではラッキーな事がよく起こるんだ!だから、それが才能って事なんじゃないかな?」

「…両親が幼い頃に交通事故で死亡、さらには引き取られた先の家ではネグレクトを受け、最終的に施設に預けられた…これほど不幸な人生を歩んでいて、なんで君は自分がラッキーだって言えるのかな?」

えっ?

「…。」

「おっと、これ以上聞くのは野暮かな。ごめんね、ちょっと詮索しすぎたみたいだ。忘れてくれ。」

「全然気にしてないよ!ボクは、今のボクが幸せならそれでいいもん!」

「ははっ、君は本当に明るいね。」

なんか、二人とも楽しそうだな。

「そうだな…あと気になるのは…」

穴雲君は、ラッセ様の方に歩いていった。

「あの、あなたは、シルヴェンノイネン王国の国王様ですよね?」

「…なんだ貴様。この俺を知っているのか。」

あ、ちょっと嬉しそうだな。

自分の事を知ってる人に会えたからかな?

「当然です。あなたほど若くして王位に就き、そしてこれほどまでに国を発展させた国王はいませんからね。…是非とも、政策についてのお話や、即位された時のお話を伺いたいのですが。」

「ほう…貴様、俺に興味があるのか。フフッ、良かろう。貴様には、特別に俺の話をしてやろう。」

ラッセ様は、嬉しそうに語り始めた。

なんか、さっきまで笑った顔を見た事がなかったけど…普通に笑ったりとかするんだな。

…これで9人か。

なんか、どんどんキャラが濃くなってくなぁ。



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プロローグ③

叶さん、白鳥さん、ラッセ様、日暮さん、不動院君、舞田君、羽澄さん、穴雲君が仲間(?)になった。

みんなキャラがブッ飛びすぎてて、もうカオスだよ…

まともそうな人は不動院君と穴雲君くらいしかいないし…

 

ガチャッ

 

「あれ?ここぁどこだ?オレ、なんでこんな所に…」

また男の人が部屋から出てきた。

明るい茶髪で、ダークグリーンの瞳を持った人だ。

耳にピアスを開けてて、腕や首に装飾品をジャラジャラとつけている。

白いTシャツのを着ていて、腰に深緑色の制服を巻いている。

いわゆるチャラ男ってやつかな。

お母さんが、ああいうのになっちゃダメっていっつも言ってたなぁ…

別になりたいわけじゃないのに…なんでそういう事いちいち言ってくるかなぁ。

「あああ、クッソ…思い出せねェ…!チクショウ、オレはなんでここにいんだよ!…ん?」

その人は、周りをキョロキョロと見回した。

そして…

「わーお!!カワイ子ちゃん!!ねえねえ、君達、お名前は?」

いきなり女子達の方に走っていった。

えぇえ…

さっきまで、状況が飲み込めなくて慌ててたくせに。

この状況で何考えてんだあの人。

「はじめまして!ボクは狛研叶!【超高校級の幸運】さ!よろしくね!」

「わたしは、日暮彩蝶。【超高校級の生物学者】だよ。こっちは、お友達の翠ね。」

「ピィ?」

「あぁ?んだよ、誰が出てきたのかと思えば、チャラ男かよ。アタシは、羽澄踊子。【超高校級のダンサー】だよ。とりま、よろ。」

「ちょっとぉ!なんなのよあなた!いきなり初対面の女性に飛びついてくるなんて、失礼なんじゃなくって?」

「グヘヘへ…」

僕も、一応挨拶した方がいいかな?

「…あ、あの、はじめまして。僕、景見凶夜っていいます。【超高校級の不運】です。」

「あぁ!?うるせェ!!野郎はどうでもいいんだよ。今、どの娘がいいか選んでるとこなんだから、引っ込んでろ!!」

えぇ…

初対面でいきなり怒鳴られたよ。

僕って、ことごとくツイてないなぁ。

「ねえ、キミの名前はなんて言うんだい?ボク、キミの事がもっと知りたいな!」

「え、そ、そうかい?」

おいおい…口調がコロコロ変わるなぁ。

まるで誰かさんみたいだ。

「オレは、(サカエ)陽一(ヨウイチ)。【超高校級の栄養士】だ。」

【超高校級の栄養士】か…なんか、見た目からは想像つかない才能だな…

でも、聞いた事あるぞ。確か、トップアスリートの朱鳥(アスカ)凛奈(リンナ)の管理栄養士で、彼女を食事面でサポートして五輪で大活躍させたんだっけ。自分でお店も経営してて、その店が安い・美味い・体にいいの三拍子揃ってて、今予約が取れない程大人気なんだよな。その才能から、『料理界のエンジニア』って呼ばれてるらしい。

「えー!?陽一クンって、栄養士なの!?すごいねー!!料理もできたりするの?」

「ああ、なんか言ってくれりゃあ、その場でパパッと作るぜ!」

「すっごーい!」

「あのさ、よういちくんは、栄養学に詳しいんでしょ?もしかして、人間以外の生物の食事の栄養とかもわかったりする?」

「ああ、なんたってオレは『料理界のエンジニア』だからな!」

「すごーい!」

「グヘヘ…」

うわぁ、鼻の下伸ばしちゃって…

僕への態度と全然違う気が…

「あの、栄殿。そろそろ、私が自己紹介してもよろしいですかね?」

ほらぁ…不動院君も困ってんじゃん。

「うるせェな、野郎は引っ込んでろ!今はどの娘がいいか選んで…」

「いや、ヨウイチ。アンタね。話くらいは聞いてあげなさいよ。」

「えぇ?わぁったよ…」

羽澄さんグッジョブ!!

「羽澄殿、ありがとうございます。…では、改めまして自己紹介をさせていただきます。私、【超高校級の侍】不動院剣と申します。以後お見知り置きを。」

「うーんっと、次は僕の番かなぁ。僕は、穴雲星也。【超高校級のアナウンサー】ね。よろしく。」

「チッ…どいつもこいつもイケメンだな…羨ましいぜ全く…」

おいおい、心の声がダダ漏れだよ。

大丈夫なのかなぁ、あの人…

「なあ、次は俺が言ってもいいか?」

「ヒッ、ヤ、ヤンキーがいんじゃねえかよ!!お、お金でもなんでも出しますからどうかご勘弁くださいぃいい!!」

栄君は、後ずさりをすると、そのまま土下座をした。

カッコ悪いなぁ…

まあ、こんな巨漢のヤンキーを見たら普通はこうなるよね。

「いや、何も取らねえよ。俺は、一般人にはケンカを売らねえって決めてんだ。まぁ、売られたケンカなら買ってやるけどな。俺は、舞田成威斗。【超高校級の喧嘩番長】だ!!俺達は、ここに連れてこられたモン同士だ!!仲良くしようぜ!!」

「あ、ハイ…」

栄君は、急に緊張から解放されたのか、間の抜けた表情をしていた。

「おい、なんだ貴様は。部屋から出てきたかと思ったらいきなり女の方に突っ込んでいきおって…ものすごく下品で不愉快だな。普通、庶民の女よりまず先に俺に挨拶をすべきだろう。」

「な、なんだテメェは!!ロングパスタみてェな頭しやがって…ナニモンだテメェ!!」

みんな、ラッセ様の事ロングパスタって言うよね。

そんなにパスタに見えるかなぁ。

「フン、貴様も俺の事を知らぬとはな。まあいい。教えてやろう。俺は…「【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン陛下だよ。シルヴェンノイネン王国の国王陛下だよ。」

穴雲君が、割り込んで説明をした。

「お、おい…穴雲、貴様…誰が割り込んでいいと…お、俺の立場は…」

ラッセ様は、いきなり割り込まれて少しパニックになっていた。

「なあ、そういやアンタの名前を聞いてなかったな!!?アンタ、名前は!?」

「おい。」

栄君は、ラッセ様の自己紹介を真面目に聞かずに、白鳥さんの方に走って行った。

「なあなあ、アンタ、かわいいな!!名前は!?」

「フン、私に見惚れるのは当然だけれど…あなた、私を口説こうなんておこがましいんじゃないかしら?まあいいわ、名前くらいは教えてあげても良くってよ。私は、白鳥麗美。【超高校級のマドンナ】よ。」

「グヘヘ、さすがマドンナ様はかわいいなぁ…!なあ、今度一緒にお茶しねえか?」

「ちょ、ちょっと!なんなのよあなた!あなた如きがこの私をお茶に誘うなんて、分不相応だと思わないのかしら!?」

「なあなあ、いいじゃねえかよ!な?ちょっとだけ!!」

栄君は、白鳥さんにグイグイと詰め寄った。

すると…

 

 

 

「アチョーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

 

 

「グホァッ!!!」

栄君は、いきなり飛び出してきた女の子に顔面を蹴られて、数メートル吹っ飛ばされた。

我不会原谅你(ワタシはオマエを許しません)‼︎ヘンタイ、シネ!!」

その子は、カンフーのような構えをして、栄君を睨んでいた。

黒髪を大きなお団子にしていて、猫のような金色の瞳が特徴的な女の子だ。

赤い中華風の服を着ていて、動く度に頭についた鈴が鳴っている。

「アナタ、大丈夫ですか!?サキはヘンタイに絡まれて災難でしたネ!ワターシが倒したノデ、安心してクダサイ!アナタ、名前、なんていいマスカ?」

「し、白鳥麗美…な、なんなのよ…!あんた…!」

突然の出来事に、白鳥さんは腰を抜かしていた。

那个(えっと)…ワターシは、(ヂュ)雪梅(シュエメイ)です!北京カラ来ました!日本、一番の高校、キボーガミネ入るために日本来ました!【超高校級の曲芸師】呼ばれてマス!」

女の子は、カタコトの日本語で自己紹介をした。

「【超高校級の曲芸師】…?」

(はい)!朱雑技団って知テマスカ?ワタシ、その団長やてます。」

【超高校級の曲芸師】か…聞いた事あるな。

確か、世界的に有名な朱雑技団の団長で、人間業とは思えないアクロバティックな芸で世界中を沸かせた若き天才曲芸師、だっけ。朱雑技団は、数年前までは無名だったのが、今や大人気のパフォーマーなんだよな。年々芸の過激さが増してて、それが大人気の理由らしい。最初の頃はちょっとした芸だったのが、今は体に火をつけたまま芸をやったり、高層ビルを利用した命綱無しの芸を披露したり、命知らずな事ばっかりやってるらしい。

「へー!雪梅ちゃんは、サーカスの団長さんなんだね!すごーい!そんな人と会えるなんて、ラッキーだね!ボクは、【超高校級の幸運】狛研叶!よろしくね!」

「わたしは、日暮彩蝶。【超高校級の生物学者】だよ。こっちは、お友達の翠ね。」

「ピィ!」

「叶サン、彩蝶サン、翠サンですか!ヨロシクお願いします!」

「私は、【超高校級の侍】不動院剣と申します。朱殿。以後、お見知り置きを。」

「僕も自己紹介いいかな?僕は穴雲星也。【超高校級のアナウンサー】だよ。」

「剣サン、星也サン!二人とも、カコイイですね!ヨロシク!」

「え、そう?照れるなぁ。」

「剣サン!剣サンは、侍なんデスカ!?ワタシ、本物の侍初メテ見ました!」

「左様ですか。最近は、武士の子孫を名乗る方はほとんどいらっしゃらないので…よく言われますね。」

「そうなんデスカ。カコイイのに…」

「ありがとうございます。」

朱さん、いきなり飛び出して栄君に飛び蹴りを喰らわせたかと思ったら、もうみんなに馴染んでるな。

元気があって、面白い子だな。

「麗美サン!アナタもキボーガミネですか?」

「そ、そうよ…【超高校級のマドンナ】っていうの。」

「麗美サンもキボーガミネでしたか!ワタシ達と同じですネ!」

「え、ええ…」

「なあ、次は俺が自己紹介してもいいか!?俺は、舞田成威斗!!【超高校級の喧嘩番長】だ!!」

「成威斗サン!ワタシ、漫画で読ンダ事あります!成威斗サンは、ヤンキーですか?漢気パワーで悪を殴りマスカ?」

「そうだな、俺は売られたケンカなら買ってやるぜ!ケンカなら、誰にも負けねェ!!」

「カコイイですね!」

「ねえ、次はアタシが言ってもいいかな?アタシは、羽澄踊子。【超高校級のダンサー】ね。」

「ダンサーですか!ワタシと似た才能ですね!アナタは、どんな踊りしますか?」

「そうねえ…いろいろよ。伝統的な舞踊とか、あとはまあポップとか…いろんなジャンル踊ってるよ。」

「アノ、ワターシと踊りの話しませんか?ワタシ、アナタの踊り、興味あります!」

「そう?そう言われるとなんか照れるっつーか…」

「おい、中華娘。そのミカン頭に夢中になるのはいいが、俺の事を忘れているわけじゃあるまいな?」

「わー!アナタ、担担麺みたいな頭シテますね!アナタも、キボーガミネですか?」

今度は担担麺か。

ラッセ様の頭を麺類で例えなきゃいけないっていうルールでもあるんだろうか。

「た、担担麺…貴様…俺を誰だと思っている。俺は、【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン!!シルヴェンノイネン王国の国王であるぞ!!俺に敬意を払え、無礼者!!」

「シル…どこデスカそこ?ワターシ、テレビあんまり見ないので、難しい外国の地名、ワカリマセン。」

「ぐっ…貴様もか…!クソッ…俺の国は、中国でも知名度低いのか…!」

うわぁ…涙目になっちゃってるよ。でもシルヴェンノイネンは、最近発展してきたとは言え、地図でも見落とされがちな小国だもん。

しょうがないよ。

「アノ、そこの白髪のアナタ。アナタもキボーガミネですか?」

「ぼ、僕ですか…?ま、まあ…希望ヶ峰の学生って言えるのかどうかは微妙ですけど…」

「微妙、とハ?」

「僕は、景見凶夜です。【超高校級の不運】って呼ばれてます…」

「不運…もしかして、運悪すぎてキボーガミネ、入りましたか?」

「…まあ、そんな感じです。」

「あちゃー…ま、気ニする事ナイです!笑う角には福来たる、デス!とにかく、笑いマショウ!」

「は、はあ…」

朱さんは、僕の肩を何度も強く叩いた。

「ぶっ…ヂ、ヂュちゃん…なんで、オレを蹴って…」

壁に叩きつけられてボロボロになった栄君が、死にかけのセミのようにピクピクと動いていた。

「うるさいです!!ワタシ、女の子いじめる男、許せないでス!変態には死ヲ、天誅です!」

「び、びどい…」

「我が父カラ教わった拳法の数々、今ココでお見舞いシテくれます!雑技団ヤテいなければ、【超高校級の武術家】トしてスカート?されていたであろうワターシの技を喰らいナサイ!」

「え、ちょっと待って!?それ以上やられたら俺死んじゃうんだけど!?ちょっ、やめ!!」

「アチョー!!」

「ぎゃああああああああああああ!!!」

うわぁあああああ…ちょっと、朱さん!?

いきなり死者出してどうすんのさ!

ここがどこなのかとか、全然わかってないのにさぁ!

 

「あっはっは、阿鼻叫喚だねえ。」

 

「!!?」

後ろから、男の人の声が聞こえた。

どうなってるんだ!?

全く、後ろにいるのに気が付かなかった…!

その人は、僕より頭ひとつ分くらい背が高いのに、幼くて可愛らしい顔立ちの人だった。

叶さんと似たような髪型の黒髪に、透明感のある翡翠色の瞳を持った人だ。

陶器のような白い肌は、彼の美しさと不気味さを強調している。

耳にはピアスを開けていて、赤いシャツに黒いカーディガンとネクタイといった服装だった。

その人は口角を上げながら、ボソリと呟いた。

「…1分40秒。きっかり100秒だね。」

は?

え、何が…?

「俺が部屋から出てから、キミ達のうちの誰か一人でも僕に気づくまでの時間だよ。俺は、気配を消してずっと君達の中に紛れ込んでたんだよ。」

「えっ、な、何が…?」

なんだこの人…ここには、時計なんてない…なのに、なんで時間が正確にわかるんだ…?

それに、一体何のために気配を消したりなんか…

「みんなが朱サンと話してて盛り上がってたから、ちょっとビックリさせてやろうと思ってね。」

「な、なんでそんな事を…?」

っていうか、さっきからなんだこの違和感は…聞いたことに対して全然見当違いの事を言ってきてるし…

「さっきから質問の内容と答えの内容が噛み合ってないって?当然だよ。俺は、キミが次にする質問に対して答えてるんだからね。」

「…はぇ?」

「おっと、言わなくていいよ。大体何を言いたいのか想像できるから。なんで俺が、キミの次の行動を予測できるのか、だろ?簡単だよ。俺は、エスパーなんだよ。」

「え、エスパー!?」

なんなんだこの人…!

いきなり後ろから声を出してビビらせてきたと思ったら、わけのわかんない事言ってきて…

え、エスパーだって!?そんなの信じられるわけ…

「だいぶ混乱してるねえ。フフッ、安心しなよ。エスパーっていうのは冗談だから。ま、人の心が読めるのは本当だけどネ。」

「え…?」

「この世界は、常に定められた法則性によって動いてるんだ。たとえ、偶然だと思えるような事でもね。その法則性さえ見つけられれば、人の心を読む事なんて造作もない事なのさ。」

なんなんだ、この人は…

よくわからないけど、なんか不気味だな…

「ねえ、ところで、キミは今注目してる株とかある?」

「か、株…?」

いきなり話が飛躍したなぁ…

株の話なんてされても、僕株とか詳しくないし…

「まあ、素人には難しいよね。ちなみに、俺のオススメは大崎製薬だよ。今は大した株価じゃないけど、今買っておけば数年後今の10万倍の値段で売れるよ〜。」

「あ、あの…あなたは…?」

「おっと、ごめんごめん。自己紹介がまだだったね。俺は、【超高校級の資産家】財原(サイバラ)天理(テンリ)だよ。よろしくね〜。」

【超高校級の資産家】…聞いた事あるな。数年前、小学生が投資で大儲けしたって…それから、投資や起業を繰り返して巨万の富を築き上げ、世界で一、二を争う大金持ちになったらしい。僕の好きなゲームの会社も、財原君が起業した会社だ。噂によると、彼は世界の約10%の企業に投資をしていて、そのうち3分の1は彼が買い取ったらしい。さらに、世界の約1%の企業は、彼が一から経営していたとか…

「キミは、【超高校級の不運】だろ?面白いなぁ、その才能。…ねえ、いくら出したら売ってくれる?」

「え、売る…?」

「キミの才能を買い取るには、一体どれだけのお金を出せば買えるのかって聞いてるんだ。なあ、頼むよ。売ってくれよ。一生のお願い!」

「え、でも…才能って、お金で買えるものじゃないんじゃ…」

「それは凡人の考え方だね。世の中、お金で買えない物なんて無いんだよ。ま、あくまでこれは自論だけどね。」

「は、はあ…」

「それじゃ、才能を売ってくれる気になったらいつでも言ってくれよ?…ああ、そうそう。一ついい事を教えてあげるよ。…その人間がどんな末路を辿るのか、それはその人の眼を見ればわかるのさ。俺は、キミが愚かな末路を辿らない事を祈ってるよん♪」

「…。」

その人は、何事もなかったかのようにみんなの方に歩いていった。

「やあ、キミ達。何か面白そうな話をしているね。俺も混ぜてよ。」

「あっ、キミもここに連れてこられたんだね!ボクは…」

「【超高校級の幸運】狛研叶サンに、【超高校級の生物学者】日暮彩蝶サンでしょ?それと、インコの翠ちゃん。俺は【超高校級の資産家】財原天理。よろしく。」

「すごーい!ボクの事知ってるんだー!」

「翠の事まで知ってるなんて、てんりくんは物知りだね。」

「な、何よあなた…!いきなり現れて…」

「おい貴様!何者だ!名を名乗れ!」

「【超高校級のマドンナ】白鳥麗美サンに、【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン陛下ね。いやあ、それにしても豪華なメンツだねぇ。」

「あら、私の事を知ってるのね。感心したわ。」

「き、貴様…俺の事を知っているのか…!」

「うん、二人とも有名人だもの。」

「アナタ、誰ですか!?」

朱雪梅、你好 。(朱雪梅サン、こんにちは。)我叫财原天理。(俺は財原天理だよ。)我是【超高校级的有钱人】。(【超高校級の資産家】ね。)

「天理サンですか!ヨロシクお願いします!」

「えっと…財原君、だっけ?君、中国語話せるんだね。」

「まあ、簡単なのしかわかんないけどね。よろしく、穴雲クン。」

「僕の事知ってるんだね。嬉しいなぁ。こちらこそよろしく、財原君。」

「お、なんだ新入りか!俺は…」

「【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗クンだろ?よろしく。」

「お、おう…」

「それから、そこのキミは【超高校級の侍】不動院剣クンだね、よろしく。」

「はい…よろしくお願いします…あの…」

「ん?なんだい?」

「よくご存知ですね。白鳥殿やラッセ王の事だけでなく、私の事までご存知とは…」

「当然だろ。キミ達は【超高校級】だからね。」

「アンタ、随分と物知りなのね。」

「チッ、またイケメンが来やがった…」

「はじめまして羽澄踊子サン。それから栄陽一クン。ねえねえ、ところで、キミ達はどの通貨が好み?やっぱりユーロ?それともドル?」

「ちょっ、なんなのよアンタ!急に変な事聞いて来ないでよ!」

「どの通貨が好みかなんて考えた事ねェよ!」

「いやいや、意外と好みとか考えてみると面白いもんだよ?騙されたと思ってやってみ?」

「なんだこの野郎…気持ち悪りいな…」

 

ガチャ

 

お、また誰か来たみたいだな。

「むぅ…騒がしいな。どこなんだここは…まるで記憶がないぞ…」

今度は女の子か。

僕よりも背が低そうだな。

水色の髪をヘアバンドでポニーテールにしていて、大きな水色の瞳を持った子だ。

頭から生えている稲妻型のアホ毛が特徴的だな。

身の丈に合わないブカブカの白衣の下に、ブラウスとサスペンダー付きの短パンといった格好だ。

そして、背中に茶色いランドセルを背負っている。

どう見ても、小学校高学年くらいにしか見えない。

「おい、そこのオマエ!!さっきから、ずっと僕ちゃんを見ているだろう!?僕ちゃんに何か言いたいなら、見てないで口に出して言え!」

「あ、えっと…ごめんね。僕も、今の状況がよくわかってなくて…で、でも女の子なんだし、そんな乱暴な喋り方しちゃダメだよ…」

「む!?僕ちゃんが女の子だと!?何を言っているんだオマエは!!僕ちゃんは、れっきとした男だぞ!!」

えっ、男!?

髪とまつ毛が長いから女の子にしか見えなかったよ…

「あ、え、ご、ごめん…」

「ふんっ、まあいい。オマエ、名は何という?」

「え、えっと…僕は景見凶夜。【超高校級の不運】だよ。その名の通り、ものすごくツイてないんだ僕は。」

「ふんっ、なんだそのウザすぎる才能は!」

う、ウザいって…

ひどいなぁ…まあ、否定はしないけど…

「あの、君は…?」

「僕ちゃんか?僕ちゃんは、【超高校級の工学者】入田(イリタ)才刃(サイバ)だぞ!その名を胸に刻み込め!」

【超高校級の工学者】…聞いたことあるな。中学生の時にノーベル物理学賞を受賞した天才で、工学界でその名を知らない者はいないらしい。その豊富な知識と柔軟な発想力で数々の発明品を生み出し、世の中のあらゆる課題を解決してきたそうだ。その知能がとにかく人間離れしていて、噂によると、物を見ただけでその物を作るのに必要な計算式が全て思いつくらしい。

「【超高校級】?入田君、高校生なの!?」

「いかにも!僕ちゃんは、高校生だけど天才なんだぞ!オマエは、サイバーレンズって聞いた事あるか!?」

サイバーレンズ…確か、コンタクトレンズ型の小型マイクロチップだ。

普通に視力を矯正できるだけじゃなくて、どのネット回線とも繋がれるインターネット媒体だったっけ。

僕も、あれが欲しいってねだったっけな。

「あれは、僕ちゃんが作ったのだ!まあ、あんなものは所詮失敗作だが。」

「し、失敗作…?」

「『コンタクトレンズは、目が悪い奴向けの商品だ』っていう先入観のせいで、健常者には売れなかったのだ!あんなもの、僕ちゃんのコンセプトに合わないただのガラクタだ!」

「コンセプト…?」

「僕ちゃんは、子供の頃に見たSF映画の世界観を再現すべく、日々研究に研究を重ねているのだ!今は、時空の壁を越えられるスニーカーを開発しているところなのだ。完成したら、オマエも買ってみるといい!」

「は、はぁ…」

なんか、頭はいいんだろうけど、ちょっとズレてるっていうか…

なんでか知らないけど、天才ってそういう人多いよね。

「わぁ、今度はちっちゃい子だー!かわいいー!ボクは、【超高校級の幸運】狛研叶だよ!よろしくね!」

「僕ちゃんがちっちゃい子だと!?バカ言え!!僕ちゃんは、れっきとした高校生だぞ!!」

「でも、ランドセル背負ってるよね?中に何が入ってんの!?」

「やめろ!触るなバカ!これは、ランドセルじゃなくてカバン型全自動お手伝いマシーンだ!!中に色々な仕掛けがあって、僕ちゃんが忙しい時とかに代わりに仕事をしてくれるんだぞ!」

「へー…」

「って!?オマエ、話を聞いてたのか!?何ボタンを押そうとしてるんだ!!やめろ!!」

「押しちゃダメなの?」

「押したそうな顔をするな!中にマシンガンとか入ってるから、うかつに触ると死ぬぞオマエ!」

「しょうがないなぁ、死んじゃうなら押すわけにはいかないよねぇ。」

「そうだ。だから諦めて…」

「隙あり!!」

ポチッ

「あ、おいコラ!!何勝手に押してるんだ!」

「うわっ!機械の手が伸びた!おもしろーい!」

「人の発明品で遊ぶな!!ええと、制御装置は…」

うわぁああああああ…

叶さん、何やってんの…

「きゃああああああ!!?ちょっと、機械の手が襲ってくるんだけど!?」

「おお、カオスカオス。」

「やむを得ません。…皆さん、私の後ろにいてください!私が食い止めます!」

不動院君が、背負っていた刀を抜こうとした。

「はぁ、あ!?おい、オマエ!何人の発明品を斬ろうとしてるんだ!待ってくれ!今止めるから、斬らないでくれ!!」

入田君は、パニックになりながらもランドセルを下ろし、中のパソコンをカタカタと叩いた。

「破アッ!!」

不動院君は、素早く刀を抜いた。

…だが、入田君の制御装置が作動する方が少し早かったようだ。

機械でできたアームが、日本刀が触れるスレスレで、入田君のランドセルの中に引っ込んだ。

「…ふー。危なかった。あと0.02秒反応するのが遅かったら、僕ちゃん自慢の『ガシッとアーム君』が真っ二つにされてるところだったよ。」

「ひ、引っ込んだ…」

「やれやれ、どうやら私の出る幕ではなかったようですね。…大事な発明品を斬ろうとしてしまい、申し訳ございませんでした。…ええと。」

「僕ちゃんは、【超高校級の工学者】入田才刃様なのだ!」

「…入田殿、誠に申し訳ございません。」

「全く、次僕ちゃんの発明品を切ろうとしたら、弁償してもらうからな!」

「あっはははは!今、ランドセルから手が伸びたね!おもしろーい!!ねえねえ、他にはどんな仕掛けがあるのー!?」

「おい!オマエがうかつに触るから、そこのバカ侍が僕ちゃんの発明品を斬ろうとしたんだろうが!」

「ごめんねー。だって、押したかったんだもん。」

「押したかったもん、じゃねーよ!もうオマエには、絶対触らせないからな!」

「はぁい。」

叶さんは、わかりやすくしょんぼりした。

…ホント、叶さんはトラブルしか起こさないなぁ。

ホント、高校生とは思えないくらい子供っぽいんだよなぁ…

栄君に、朱さんに、財原君に、入田君…これで13人か。

頼むから、もうこれ以上トラブルを起こさないでくれよ…

 



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プロローグ④

新たに栄君、朱さん、財原君、入田君が仲間に加わった。

さすが【超高校級】…みんなキャラが濃いな…

僕、正直ここで生きていける気がしないよ…

 

ガチャ

 

「ここは…」

お、また誰か出てきたな…

…今度は女の子か。

その子は、ピンクがかった赤い髪の毛をサイドテールにしていて、ザクロ色の瞳を持った子だった。

白と紺を基調としたセーラー服を着ていて、上にクリーム色のカーディガンを羽織っていた。

「わっ、13人も…人がいた、よかったぁ。」

「あ、また誰か来たよ!今度は女の子かぁ。はじめまして!ボクは狛研叶!【超高校級の幸運】さ!よろしく!」

「はじめまして。私、【超高校級の侍】不動院剣と申します。」

「あのね、わたしは【超高校級の生物学者】っていうんだよ。こっちは、お友達の翠ね。」

「你好!ワターシは、【超高校級の曲芸師】朱雪梅ですヨー!」

「えっと…」

女の子は、オロオロしていた。

多分、みんなが一斉に自己紹介したから、誰にどう返せばいいのか分からなくなってるんだな。

「うーん、みんな。ちょっとこの子が困ってるみたいだから、とりあえず一回静かにしてあげよっか。」

穴雲君は、みんなを黙らせた。

「さ、みんなに自己紹介してくれるかな?」

「…わかりました。私は、癒川(ユカワ)治奈(ハルナ)といいます。【超高校級の看護師】と呼ばれていて、希望ヶ峰学園というところに入学しようとしていたところです。」

【超高校級の看護師】…聞いた事あるな。高校生とは思えないほど医学に詳しくて、大震災の時も現地の医者の手伝いをして、多くの人の命を救ったらしい。噂によると、死後1分以内なら、どんなに大怪我を負った患者でも蘇生する事が可能らしい。…見た目は普通の女の子なんだけど、やっぱり【超高校級】ってだけあって、人間離れしてるなぁ。

「やっぱり、治奈ちゃんも希望ヶ峰の新入生だったんだね!これから、仲良くしようね!」

「あ、はい…よろしくお願いします…」

「ピィ!」

「あ…」

「翠が、よろしくって言ってるよー。はるなちゃんすごいね。翠がここまでわたし以外に懐いたの、はるなちゃんが初めてだよ。」

「そう、なんですか。」

癒川さんは、翠ちゃんに懐かれて嬉しそうにしている。

なんか、微笑ましい光景だな。

「あの…」

「ん?なんだい?…あ、ごめん。僕の自己紹介がまだだったね。僕は【超高校級のアナウンサー】穴雲星也だよ。よろしくね、癒川さん。」

「穴雲さん、先程はありがとうございました。」

「いいって。僕は、当然の事をしただけだし。」

「いえ、本当にありがとうございました。」

癒川さんは、深々と頭を下げた。

「いいって言ってるんだけどなぁ。」

「なあなあ、そろそろオレが自己紹介してもいいか!?オレは、【超高校級の栄養士】栄陽一っつーんだ!よろしくな、癒川ちゃん!」

「はい、よろしくお願いします。栄さん。」

「なあ、ところでよ。癒川ちゃんって、どんなタイプが好みとかある?」

おいおい。

初対面でいきなりその質問かよ。

ちょっとは自重するって事を覚えなよ、栄君…

「えっと、ごめんなさい。よくわからないです…」

「またまた〜!ねえ、好きなタイプ教えてよ!あ、もしかして、オレ?」

「アチョー!!」

ベシッ

「べしょアッ!!」

栄君は、朱さんに思いっきりビンタされた。

「ワターシ、ヘンタイ、ユルサナイ!大丈夫ですか、治奈サン!」

「はい…」

「なあ、次は俺の番か?俺は、舞田成威斗!【超高校級の喧嘩番長】だ!」

「はい、よろしくお願いします。舞田さん。」

「ん?順番的には、次はアタシ?アタシは、羽澄踊子。【超高校級のダンサー】ね。」

「羽澄さん、ですか。よろしくお願いします。」

癒川さんは、二人に向かってペコリとおじぎをした。

…礼儀正しい子なんだな。

「あの…人違いだったら申し訳ないんですけど、もしかしてあなたは、シルヴェンノイネン王国の国王陛下ではありませんか?」

「…小娘、貴様、私の事を知っているのか。」

「はい、写真を見ただけですけれど…お会いできて光栄です。」

「フン、小娘よ。貴様は、他の奴らと違って気が利くな。特別に、俺の正妻にしてやってもいいぞ。」

「いえ…国王陛下の正妻なんて、私にはもったいないです…私、全然礼儀作法とか、詳しくないですし…」

「…そうか。」

「プッ、フラれてやんの。」

「黙れダークパープル。貴様には極刑を下してやる。」

「そっちこそお黙りロングパスタ。国王だからって、いきなり初対面の女の子を口説くなんて、いい趣味してるじゃない。」

「あの…あなたは?」

「何よ、ロングパスタの事は知ってるくせに、私の事は知らないのね。私は、【超高校級のマドンナ】白鳥麗美よ。」

「白鳥さんですか。よろしくお願いします。」

「次は僕ちゃんの番だな!?僕ちゃんは、【超高校級の工学者】入田才刃様なのだ!!」

「入田さん、よろしくお願いします。」

「んー。次は俺かなぁ。やあ、はじめまして癒川サン。俺は【超高校級の資産家】財原天理ね。ヨロシク。」

「財原さん、ですか。よろしくお願いします。」

「ねえ、ちょっと聞きたいんだけどさ。癒川サンって、ドルとポンドどっちが好み?」

「え、好み、ですか?」

「やっぱ、使いやすさで言ったらドルだよねー。でも、1ポンド硬貨のデザインも捨てがたいんだよなぁー。」

「はあ…」

おいおい、いきなり何マニアックなトーク始めてるんだよ財原君。

「あ、そうそう。最近のお気に入りは、やっぱルピアかな。まあ、マイナーだからほとんど使わないんだけどさ。あ、もし良かったらいい通貨とか株とか紹介してあげるけど。好みとかある?」

なんでこの人通貨や株を女の人みたいに言うの?

…やっぱり、この人は変人だよ。

「…。」

「ん?癒川サン。彼が気になるかい?彼は、景見凶夜クン。【超高校級の不運】ね。…さて、話の続きをしようか。」

「はぁ…」

それだけ?

僕の紹介軽すぎない?

 

「ふんふ〜ん♪」

 

今度は、男の子が楽器を弾きながら出てきた。

ライムグリーンの髪に、開いているのか開いていないのかわからない細い目の男の子だ。

羽根つきの緑色の帽子に、緑を基調とした服、そして抱えているリュートはまさに吟遊詩人を彷彿とさせる。

何より特徴的だったのは、彼が日暮さんや入田君よりもずっと背が低い事だ。

「オイラは風の妖精。自由気ままに旅をして、行く先は誰にもわからないのさ〜♪」

その子は、いきなりリュートを弾いて歌い始めた。

「わあ、君、歌が上手なんだね!ボクは【超高校級の幸運】狛研叶さ!よろしくね!」

「ねえ、きみ、お名前は何ていうのかな?わたしは日暮彩蝶。【超高校級の生物学者】だよ。翠がね、きみの歌を気に入ったみたいなんだ。きみの歌、もっと聴かせてくれるかな?」

「オイラに名前なんてないさ、ただ風に揺られてさまようだけ〜♫」

「何コイツ。名前聞かれてんのに答えないなんて、どういう神経してるのかしら。はぁ、聴いてんの!!?」

白鳥さんが、その子の耳元で思いっきり怒鳴った。

「おっと、すまないね。今、捗ってたんだ。オイラは、一度スイッチが入ると、歌に浸っちゃうクセがあるんだよね。」

「なんだ、そのウザすぎる癖は…」

「ウザいって、ひどいなぁ。」

「あの、君。君も、もしかして希望ヶ峰の新入生なのかな?」

「も、という事は君達もか。そうさ。オイラは、【超高校級の詩人】として希望ヶ峰にスカウトされた、詩名(シイナ)柳人(リュウト)さ。よろしく。」

【超高校級の詩人】か。聞いた事あるな。彼は歌いながら世界中を彷徨う旅人で、旅行先で歌や詩を残し、それが現地の人達の間で話題になったとかいう…詩や和歌、俳句など、色々なジャンルの韻文の創作を得意とし、彼の作った詩は必ず国語の教科書に載るらしい。噂によると、かの有名なラッパー、フィリップ・ジェイソンも、彼の影響を受けたとか…

「何よコイツ!私を無視するなんて…私の魅力が通じないっていうの!?」

「悪いね。オイラは、盲目なんでね。生憎、君の魅力とやらはさっぱりわからないのさ。」

え、詩名君って、目が見えないの?

それは初耳だったな。

「やあ、君は?」

詩名君は、僕の方に顔を向けた。

「あ、僕は景見凶夜。【超高校級の不運】です。」

「へぇ、不運ねえ。ま、人生なんてものは、空模様のように気まぐれさ。そんなに暗くならずに、気楽に生きるんだね〜♪」

「は、はぁ…」

「はじめまして、私は【超高校級の侍】不動院剣と申します。」

「ワターシは、【超高校級の曲芸師】朱雪梅ですヨー!雑技団の団長ヤテまーす!」

「不動院君に朱君ね。よく覚えておくよ〜♪」

「次は僕の番かな?僕は【超高校級のアナウンサー】穴雲星也だよ。よろしくね、詩名君。」

「僕ちゃんは、【超高校級の工学者】入田才刃様なのだ!!」

「俺は、舞田成威斗!【超高校級の喧嘩番長】だ!」

「ふんふん、穴雲君に入田君に舞田君か〜、さすが希望ヶ峰。面白い才能ばっかりだねぇ〜。」

「アタシは羽澄踊子。【超高校級のダンサー】ね。」

「ブフッ、おい。詩名っつったっけ?お前、入田よりちっせえじゃんwww」

「うるさいのだ!!おい、栄!オマエも自己紹介するのだ!」

「悪りい悪りいw俺は、【超高校級の栄養士】栄陽一だよ。」

「【超高校級の看護師】癒川治奈です。よろしくお願いします。」

「ふぅん、栄君に癒川君ね。それから、その近くにいる2人は?」

「私は、【超高校級のマドンナ】白鳥麗美よ!覚えておきなさい!」

「やれやれ、貴様も俺を知らぬとは…【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネンだ。」

「白鳥君にラッセ君かぁ。あと、今オイラの目の前にいる君は?」

「ようやく俺のターンか。俺は、【超高校級の資産家】財原天理だよ。よろしく。」

「…へぇ、財原君、ねェ…君、なんか臭くないかい?」

「え、そうかなぁ。俺、一応風呂には毎日入ってるんだけどなぁ。」

「…君、本当に自分でわかっていないのかい?」

「うーん。なんでそんな事を言われてるのか、心当たりがまるでないなあ。」

「…そうか。今のは、オイラの思い過ごしかな。忘れてくれ。」

「まあ、忘れてくれって言われたら、あんまり詮索はしないけどね〜。」

臭い…?

どういう事なんだろう。

確かに、財原君は、他のみんなとは少し違うような気がするけど…

 

ガチャ

 

「…あ。」

部屋から女の子が出てきた。

綺麗なロングヘアーの黒髪で、深紅の瞳と、薄気味悪く感じるほどに白く美しい肌を持った子だ。

ピンク色と紺色の、明治から大正にかけての女学生のような服装で、どこか浮世離れした雰囲気を醸し出している。

「…む。」

その子は、僕の方に駆け寄ると、僕の顔を覗き込んできた。

「…?」

とても可愛らしい女の子の顔が0距離にあるので、思わず恥ずかしさで顔が火照ってしまった。

「あ、えと…」

「……………名前。」

「へ?」

「……………名前。」

もしかして僕、名前を聞かれてるのか?

「あ、えっと、僕は景見凶夜だよ。」

「……………才能。」

え、才能も?

「才能って言っていいのかはわかんないけど…一応、【超高校級の不運】って呼ばれてるよ。」

「…不運。」

女の子は、満足したのか、一歩引いた。

「君は?」

「…‥……‥…神座(カムクラ)ゐをり(ヰヲリ)。…喋るのは嫌い。以上。」

神座さんは、それだけ言うと、噴水の方に走っていった。

…なんか、変わった子だな。

「ねえねえ!キミも、希望ヶ峰学園の生徒なのかい?」

「…………。」

「わーい、やっぱりだー!あ、ボクは狛研叶!【超高校級の幸運】さ!よろしくね!君の名前はなんて言うんだい?」

「………………神座ゐをり。」

「へー!ゐをりちゃんっていうんだー!面白い名前だね!」

「………幸運。」

「あれ?また誰か来たね。今度は女の子か。わたしは【超高校級の生物学者】日暮彩蝶だよ。こっちは、お友達の翠ね。」

「ピィ!」

「……………生物学者………翠。」

「はじめまして、ええと…」

「神座ゐをりちゃんだって。」

「はじめまして、神座殿。私は、【超高校級の侍】不動院剣と申します。」

「………………不動、院……………侍?」

神座さんは、嬉しそうに不動院君の着物の袖を引っ張った。

「………………。」

「あ、もしかして、私の着物がお気に召したのですか?」

「………。」

「そうですか、そう言って頂けると嬉しいですね。」

「………。」

「なんなのだ!!この子供は!!ここには、希望ヶ峰学園の生徒しかいないはずなのだ!!こんな子供がいちゃダメなのだ!!」

「いやいや、入田クン。キミも十分子供じゃないか。」

「なんだと!?オマエ、財原とか言ったな!オマエ、僕ちゃんを子供扱いするとはいい度胸だな!!」

「あーあー、悪かったよ。ホラ。今ハンカチで作ったライダーマンマスクやるから。それで機嫌直してよ。」

「わーい、ライダーマンマスクなのだー!」

「ほーらやっぱり子供だ♪」

「なんだとー!!?」

「君達、喧嘩はその辺にしておこうか。色々と収拾つかなくなっちゃうからさぁ。はじめまして、神座さん。僕は【超高校級のアナウンサー】穴雲星也だよ。よろしく。」

「俺は【超高校級の資産家】財原天理だよ〜。」

「僕ちゃんは、【超高校級の工学者】入田才刃なのだ!!」

「……………放送員……………資産家……………工学者。」

「ねえ、ゐをりちゃんさ、さっき希望ヶ峰の生徒だって言ってたよね!?だったら才能があるんでしょ!?ねえ、教えて!?」

「……………。」

神座さんは、そっぽを向いた。

「言いたくないみたいだね。これ以上の詮索はよそうか。」

「えー…」

「ハイハーイ!次はワターシの番ですネ!?ワタシは、【超高校級の曲芸師】朱雪梅デスよー!ヰヲリサン、でしたっけ?ヨロシクですよー!」

「おっしゃ、次は俺だな!俺は【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗だ!!」

「わーおかわい子ちゃん!!オレ、【超高校級の栄養士】栄陽一っつーんだよ!ねえ君、今度一緒にお茶しな「アチョーーーー!!」

「……………曲芸師…………喧嘩番長………………栄養士…蹴られた。」

「ねえ、そろそろアタシ言ってもいい?アタシは、【超高校級のダンサー】羽澄踊子だよ。とりまよろ。」

「この流れでいくと、次はオイラだね。オイラは、【超高校級の詩人】詩名柳人さ。」

「………………舞踊家…………………詩人。」

「何よあなた。私に何かご用?」

「………………名前。……………才能。」

「ちょ、なんなのよあんた!いきなり初対面の相手に顔を近づけて質問するなんて、失礼だと思わないのかしら!?そんなに知りたいなら、先にあんたが名乗りなさいよ!」

「…………………神座ゐをり……………才能……言い、たくない………」

「何よそれ。…まあいいわ。私が誰か教えてあげる。私は【超高校級のマドンナ】白鳥麗美よ。」

「………美女。」

「フン、おいどけダークパープル。次は俺の番だ。」

「どけって何よ、どけって!」

「俺は、【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネンだ。」

「………国王。」

「あの…私、癒川治奈っていいます…【超高校級の看護師】です。」

「………看護師。」

「うんうん、自己紹介は終わったみたいだね。…これで全員かな?」

「うん!そうみたい。部屋のネームプレートが全部で16枚だったし。多分、それで全員なんだと思うよ!」

叶さん…いつの間に調べたのか。

「あの…ところで、さっきからずっと言おうと思っていた事があるのですが…」

癒川さんが、何かを言いたそうにしていた。

「…私達の首に付いているこれ、一体なんなのでしょうか?」

…あ。

そういえば、何か違和感があると思ったんだ。

首を触ると、細いリングのような物が付けられている事がわかった。

「なんだ、これは…」

「わ!ホントだ!何これ!?首輪?」

「あれ?どうなってんだ!?クッソ、取れねェ!!」

栄君が、自分の首輪を強引に外そうとした、その時だった。

 

 

 

『ああ、ダメダメ!それ、無理に外そうとしたら爆発しちゃうよ!』

 

 

 

いきなり、ダミ声が建物内に響き渡った。

「なんだ、この声は…!?」

僕達が、今の声の音源を探していた、ちょうどまさにその時ー…

 

『うっぷぷぷぷぷぷぷぷ!!はじめまして、()()のみんな!!とうっ!』

 

いきなり、噴水の中から白黒のクマのぬいぐるみが飛び出してきた。

「わっ、あぁああああああああ!!?で、でたぁああああああ!!」

「ぬいぐるみがしゃべったぁああ!!?な、なんなんだよこれ!!」

『ちょっと、いくらなんでもオマエラビビりすぎでしょ!魔法少女がぬいぐるみと喋るところは何の抵抗もなく見てるくせにさ!』

「あ、確かに。」

叶さん?何納得してるの?

『まあ、小難しい話はこれからするとして…とりあえず、おはようございます!!オマエラ!!』

ぬいぐるみが、僕達に向かってあいさつをしてきた。

「んー…おはようございます?」

「ピィ。」

「翠がおはよう、だって。」

「おはようございます。」

「早安!」

叶さん、翠ちゃん、不動院君、朱さんがあいさつを返した。

『あれ?なんか少なくない?オマエラ、3人と1匹しかいなかったっけ?あいさつをされたら返事をしましょうって小学校で習わなかったの?』

それどころじゃなくて、状況がよく飲み込めてないんだよ…

「うるせェ!!今はそんな事どうでもいいんだよ!!テメェ、一体ナニモンなんだ!!なんで俺達はここにいんだよ!!答えろ!!」

『ちょっと、舞田クン!一度にたくさん質問しないでよ!混乱するからさァ!』

「ねえ、今、舞田クンって言ったよね?君は、もしかして僕達の事を知っているのかい?」

『うん。まあ、知ってるも何も、オマエラをここに連れて来たのはボクだからね。』

「はぁあ!?テメェがオレ達をここに連れてきただと!?おい、どういう事だ!ちゃんと説明しろ!」

『あー、もう!うるさいなぁ全く!やっぱり、ボク一匹じゃ限界があったクマね。ここで、助っ人を呼んじゃいましょう!看守長〜!!』

ぬいぐるみが叫ぶと、噴水の水が左右に割れた。

 

『フフフ…フハハハハハハハハハハ!!ようやくワタクシの出番ですねぇ。』

 

水の柱の間から、またぬいぐるみが出てきた。

今度は、さっきのぬいぐるとは少し違うようだ。

大きな牙が剥き出しになっていて、身体にトラの模様があった。

まるで、サーベルタイガーだ。

『全く、アナタという方は…だから、最初に二匹で説明しようと言ったではありませんか。』

『いいじゃん!ちょっと先に出て、みんなをビビらせてやろうと思ったんだよ!』

二匹は、ヒソヒソと内緒話を始めた。

…全部丸聞こえだ。

何がしたいのかなぁ、このぬいぐるみ達は…

「…ねえ、アタシらは一体何を見せられてるの?」

『おっと、ごめんごめん!自己紹介が遅れたね!ボクはモノクマ。この才監学園の、学園長なのだ!』

『そしてワタクシは、看守長のモノベルと申します。以後、お見知り置きを。』

「さ、才監学園…?なんだよそれ…!」

「それに今、看守長って言ったよね?どういう事なのかな?俺達、希望ヶ峰学園の入学式に出ようとしてたはずなんだけどなぁ。」

『ご説明しましょう!アナタ達は、本来希望ヶ峰学園の生徒として、輝かしい学生生活を謳歌する予定でした。…しかーし!!アナタ達は全員、とある重大な問題を犯していた事が判明したのです!それで急遽、この『才能矯正監獄学園』、略して『才監学園』に編入する事になったのです!』

「才監学園…?」

『希望ヶ峰学園は、表向きは本科と予備学科の二つの学科があるって事になってるんだけど、実はそうじゃないんだな!あんまり知られてないけど、実は一度問題行動を犯した希望ヶ峰学園の生徒用の学科があるんだよ。それがこの『才監学園』、通称『【超高校級】の刑務所』です!』

【超高校級】の…刑務所…?

「わたし達が問題を起こしたって、どういう事なの?そもそも、わたし達はまだ入学すらしてないはずだよね?」

『おや、記憶にございませんか。あんな大問題を起こしておいて、記憶に無いなんて…滑稽ですねぇ。ワタクシの口からは、おぞましすぎて言える事ではないのですがねぇ。』

『オマエラには、その罪を償うため、ここで秩序正しい生活を送ってもらいます!』

「あはは、あくまで教える気はないみたいだね。じゃあ、この際問題についてはいいや。俺達は、どうやったらここから出られるのかな?」

『うぷぷ、安心してください?ここから出られる方法は、二つあります!』

「二つ、ですか。」

『一つは、刑期を終えてここを出る方法です。アナタ達はその瞬間『釈放』され、晴れて希望ヶ峰学園の本科生に戻る事ができます。』

「ふうん。…で、その刑期って、具体的にどれくらいなのさ?」

『うぷぷ…まあ、一番軽い問題で1ヶ月ってとこかな。でも、オマエラの場合、起こした問題が問題だからなぁ。ちょっといつ出してあげられるかはわかんないかなー。』

「そんな、何よそれ…じゃあ、一生ここで過ごす事になるかもしれないって事!?いつまでもこんな場所で待ってられるものですか、もう一つの方法ってのは!?」

『うぷぷ、こっちは確実だし、すぐにでもここから出る事ができるよ。その名も、『退学』ルール!』

退学ルール…?

『いくら刑務所だからって、秩序を破った行動を取られると、学園の評判に響きますからねぇ。そんな救いようのない生徒には、もう希望ヶ峰学園から出て行ってもらいましょう!…というルールです。』

「秩序を破るって…一体、何をすればいいんだい?」

『うぷぷ…それはね…』

 

 

 

 

 

『…人を殺す事だよ。』

 

…。

…。

…。

…は?

『刺殺射殺撲殺絞殺扼殺焼殺毒殺圧殺斬殺爆殺なんでもいいよ!とにかく、仲間のうち誰かを殺したら、オマエラはこの才監学園から出られるって事!』

「はぁ!?なんだよそれ!そんな事、できるわけないじゃん!」

「そんな事言って、何が目的なのかな?」

『うぷぷ、だってさ…【超高校級】という『希望』同士が殺し合う、『絶望的シチュエーション』…最高だと思わない?』

「どこが最高なんだ!!最低だろうがよ!!」

「僕達に殺人犯になれっていうのかい?君達が約束を守る保証もないのに?」

『…全く、やかましいですね!とにかく、殺せばいいんですよ。』

「チッ、話にならねぇ。…おい、お前ら。ちょっと下がってろ。」

舞田君は、ポキポキと拳を鳴らしながら二匹に歩み寄った。

「俺に難しい話はわからねぇ。…だからよ、拳で語らせてもらうぜ!!オラァアアアアアアアアアアア!!!」

舞田君が右の拳を振りかぶって、二匹に突進した。

『キャー!学園長と看守長への暴力は、ルール違反だよ!?』

『全く、愚かですねぇ。思い知りなさい!』

モノベルが叫んだ瞬間…

 

ピピピピピピピピピピピピピピピ…

 

「あ?」

舞田君の首輪から音が鳴った。

『フッフッフ、ワタクシ達からの、心ばかりのプレゼントですよ。』

「なんなんだよこの音は!?」

「ねえ、まさかとは思うけど、爆発するパターンじゃないよね!?」

「えぇえ!?ちょ、待って!ここにいたら巻き添えになるじゃない!」

「はぁああああ!?おい、ふざけんな!!クソッ、外れろ!!」

『フン、無駄な足掻きですねぇ!その首輪は特殊製で、つけた本人じゃないと外せないんですよ!』

「なんだそのクソみてェな仕掛けは!!クソが!!」

「…やむを得ません。舞田殿、そこから動かないでください。私が爆発する前に斬ります!」

どうしよう…!?

このままだと、舞田君が…

…あれ?

どういうわけか、叶さん、財原君、入田君、神座さんの4人は全く慌てるそぶりを見せなかった。

「おい、バカ侍!そんな事しなくても、爆発なんてしないのだ!」

「…え?」

「これ、ただの音だよ。」

『うぷぷぷ!さすがは狛研サンと入田クン!いやあ、舞田クンがあまりに生意気な態度を取るから、ちょっと脅かしてあげたんだよね!今回は警告音だけで許すけど、気をつけてよね!』

「…。」

あの舞田君が腰を抜かしていた。

本当に死ぬと思っていた緊張から解放されて、身体が急に疲れたんだろう。

「テメェ…!脅かしやがって、本当に爆発すんのかと思ったじゃねえかよ!!」

『フッフッフ、騙されるアナタ達が悪いんですよ!』

「成威斗クン、大丈夫かい?」

「…あ、ああ…」

「あはは、本当に悪趣味だねぇ。」

…機械に詳しい入田君ならともかく、なんで叶さんと財原君は、首輪が爆発しないってわかったんだろう。

『フフフ、モノクマ&モノベルは、この才監学園のいたる所に設置されております。もしルール違反をしたら、首輪がドカーン!!…ですよ。』

「要は、キミ達には逆らわない方が得策って事だね。」

『そういう事!財原クンは理解が早くて助かるよ!』

「ところで、この首輪は一体なんなのかな?」

『それは、才監学園の首輪型生徒手帳です!どうせ誰か失くすだろうと思って、首輪という形にさせていただきました!それは、収監生活を送る上での重要な情報や、ルール違反のおしおきを兼ねています!』

『手帳の情報は、前にあるボタンを押す事で見る事ができます。』

『それじゃあ、まったねー!』

『フッフッフ、アナタ達を絶望のどん底へと誘って差し上げましょう!』

モノクマとモノベルが去っていった。

「クソッ、なんだったんだアイツらは!!」

「あはは。いやぁ、びっくりしたね。」

「ねえ、とりあえず、生徒手帳とやらを確認しないかい?」

「そ、そうだね…」

穴雲君の提案で、みんなが自分の手帳を確認した。

「わっ!」

ボタンを押すと、目の前に画面が現れた。

僕は、生徒手帳の『校則』という項目を確認した。

 

 

 

1.生徒達はこの才監学園だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はお教えできません。

2.夜10時から朝7時までを『夜時間』とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

3.就寝は学園内に設けられた個室でのみ可能です。他の場所での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。

4.希望ヶ峰学園及び才監学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

5.学園長ことモノクマと、看守長ことモノベルへの暴力を禁じます。監視カメラの破壊を禁じます。その他、学園内のシステムを故意に乱す行為を禁じます。

6.仲間の誰かを殺したクロは『退学』となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

7.なお、校則は順次増えていく場合があります。

 

 

 

「あれ?」

6番の校則は、どういう意味なのかな?

「うーん…誰かを殺したのがバレたら、殺されるんじゃね?」

え!?

急に恐ろしい事言わないでよ財原君!

あと、しれっと心を読まないで!

「うーん…あのクマさん達の目的が何かはまだわかんないけど…とりあえず、探索でもしてみない?」

「そうだね、じゃあ、グループ分けを決めようか。」

叶さんと穴雲君が、みんなを仕切った。

 

…コロシアイ収監生活か。

僕には平穏は訪れないのか…

 

 

 

ー才監学園生存者名簿(50音順)ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上16名+1匹ー

 

 

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登場人物プロフィール

CHARAT様で作成した挿絵を追加しました。
外見の剥離はお許しください。
それとプロフィールを少し編集しました。

入田の画像が表示されなくなってしまったため、作り直しました。


【超高校級の不運】景見(カゲミ)凶夜(キョウヤ) 

 

「才能って言っていいのかはわかんないけど…一応、【超高校級の不運】って呼ばれてるよ。」

 

性別:男

身長:168cm

体重:48kg

胸囲:78cm

誕生日:4月13日(金曜日かつ仏滅)

星座:おひつじ座

血液型:AB型(Rh−)

好きな物:桜餅、オンラインゲーム

嫌いな物:柏餅、不運、いさかい

利き手:左

出身校:烏谷高校

ICV:井上麻里奈

外見:ほとんど無色に近い銀髪(周りからは白髪と呼ばれている)。ボブカット。頭頂部からアホ毛が生えている。瞳は透明に近い赤色。目の下に隈がある。肌は青白く、不健康そうに見える。体格は貧弱。

服装:白いワイシャツ、黒いスラックスの上に、ダークグレーのベストと黒いジャケット。えんじ色のネクタイを着用。靴は、茶色いローファー。

人称:僕/君、あなた/あの人、あの子/男:苗字+君、女:苗字+さん(例外…狛研:叶さん、ラッセ:ラッセ様)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

本作のヒロイン主人公。超不幸体質で、テロリストに人質にされる、留守番中に侵入してきた放火魔に遭遇する、飛行機の墜落事故に遭う、雷が頭上に落ちるなどの、生きているのが奇跡というレベルの不運に見舞われてきた少年。自分の不運のせいで何度も人に迷惑をかけてきたため、自分に生きる価値が無いと思っており、才監学園に収監される前は何度も自殺を図っていた。温厚で常識人だが、その境遇のせいか、卑屈で内向的な性格。自分の命をどこか軽く見ている。自身とは真逆の人物像である狛研に憧れを抱いている。初対面の相手には基本的に敬語で話すが、入田や神座のようなロリショタ枠や、親しい間柄の人とはタメ口で話す。

 

 

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【超高校級の幸運】狛研(コマトギ)(カナエ)

 

「一日一個でもいい事見つけていけたら、今より人生楽しくなると思わない?」

 

性別:女

身長:166cm

体重:52kg

胸囲:92cm

誕生日:7月7日

星座:かに座

血液型:O型

好きな物:手羽先、旅行

嫌いな物:自己犠牲

利き手:右

出身校:三栖照高校

ICV:石原夏織

外見:藍色がかった黒髪のショートヘアー。右耳の付け根あたりから渦巻き状のアホ毛が生えている。瞳は澄んだ青色。ショタ顔。スタイル抜群。ちなみにGカップ。

服装:白いワイシャツとカーキ色の短パンの上に、カーキ色の探検隊風のジャケット。小物類は、緑色のネクタイとカーキ色のハンチング帽。黒いニーハイソックスを履いており、靴は黄色いスニーカー。

人称:ボク/キミ/あの子/男:名前+クン、女:名前+ちゃんモノクマ、モノベル:クマさん、ベルさん

 

本作の二人目の主人公。景見とは、色々な意味で正反対の人物。ボクっ娘。ボーイッシュで明るい性格だが、どこかミステリアスな雰囲気が漂う少女。ド天然でドジっ子。幼い頃に両親を失っているため、人の命がどれほど大事かを実感しており、自己犠牲の精神が大嫌い。普段は子供のように無邪気に振る舞っているが、二面性があり、深刻な事態になればなるほど本来の潜在能力が引き出され、常人離れした判断力や洞察力が発揮される。実は、景見ほどではないが、かなりの不幸体質。しかし、どんな不幸に見舞われてもそれを『ラッキー』と捉えてしまうほどポジティブな思考の持ち主。

 

 

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【超高校級のマドンナ】白鳥(シラトリ)麗美(レイミ)

 

「あら。この状況で、よくそんなふざけた事が言えるわね。頭にカビでも生えてるのかしら。」

 

性別:女

身長:158cm

体重:45kg

胸囲:80cm

誕生日:1月5日(シンデレラの日)

星座:やぎ座

血液型:B型

好きな物:シフォンケーキ、美しい物

嫌いな物:駄菓子、不潔な物、虫

利き手:右

出身校:聖蓮堂女学院高等部

ICV:Lynn

外見:菫色のグラデーションがかかった、艶のある黒髪。セミロング。宝石のように綺麗な菫色の瞳。肌は、雪のような白色。絶世の美少女。適度に細身。

服装:黒を基調としたセーラー服。リボンの色は白。金色のダマスク模様がついた黒いハイソックス。靴は、黒いロングブーツ。

人称:【通常時】私/あなた/あの人/男:苗字+君、女:苗字+さん(例外…不動院:不動院さん、穴雲:穴雲さん、ラッセ:国王陛下)

【本性時】私/あんた/アイツ/男女共に苗字呼び捨て(例外… 不動院:不動院さん、穴雲:穴雲さん、ラッセ:ロングパスタ)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

世界一美しい高校生と呼ばれている超絶美少女。見た目はもちろんの事、やる事なす事全てが美しく完璧な美少女で、『女の完全体』とも呼ばれる。表向きは気高く礼儀正しいお嬢様だが、本来は尊大で腹黒い性格。常に自分の思い通りにならないと気が済まない性格だが、コロシアイ生活では、自分の本性がバレているため、うまくいかない事が多い。ラッセとは犬猿の仲で、彼を『ロングパスタ』と呼んでバカにしている。面食いで、不動院と穴雲がお気に入り。

 

 

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【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

        (Lasse Edvard Silvennoinen)

 

「…気安く話しかけるな。俺は国王だぞ。本来、庶民の女と同じ空間にいるべきではないんだ。」

 

性別:男

身長:174cm

体重:62kg

胸囲:82cm

誕生日:12月6日(フィンランド独立記念日)

星座:いて座

血液型:A型

好きな物:鰊の塩漬け、骨董品、祖国の国民達

嫌いな物:パスタ料理、口うるさい女

利き手:右

出身校:王立アスピヴァーラ学院

ICV:梅原裕一郎

外見:金髪のロングヘアーを後ろで束ねている。瞳は明るい青色。鼻は高め。色白で、線は細め。

服装:白と金の学ラン風の軍服を改造して高級感のある服装にしている。白い手袋をつけており、靴は黒いロングブーツ。小物類は、王冠とルビーのブローチ。

人称:俺/貴様/アイツ/男女共に苗字呼び捨て又はあだ名(景見→白髪赤眼、白鳥→ダークパープルなど。)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

北欧の小国シルヴェンノイネン王国の若き国王。幼い頃に先代国王である父親が病死してまもなく王位を継承し、国の政治を取り仕切り、先進国にも負けない国力をつけた名君。自分の国や国民達を誇りに思っており、バカにされる事が何よりも許せない。自分の国の知名度が低い事を密かに気にしている。王族の生まれのためか、非常にプライドが高く猜疑心の強い性格で、人との距離がなかなか縮められない。なぜかよく頭髪をパスタに喩えられる(朱は担担麺と言っている)。白鳥とは犬猿の仲。

 

 

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【超高校級の生物学者】日暮(ヒグラシ)彩蝶(アゲハ)

 

「ダメだよきみ達、ケンカなんかしちゃ!翠が泣いてるよ!」

 

性別:女

身長:146cm

体重:47kg

胸囲:77cm

誕生日:5月22日(国際生物多様性の日)

星座:ふたご座

血液型:O型

好きな物:パンケーキ、動物(特に翠)

嫌いな物:肉料理、動物を大切にしない人

利き手:右

出身校:星ノ宮女子学園

ICV:大久保瑠美

外見:桜色がかった銀髪。両サイドを編み込んだ長髪のハーフアップ。後ろに虹色の蝶の髪飾り。瞳は、黄緑色。小学生のような体型。

服装:白とピンクを基調としたセーラー服の上に、小鳥のワッペンがついた白衣を着ている。黒いソックスと茶色いローファー。小物類は、赤いフチのメガネ。

人称:わたし/きみ/あの人、あの子/男:名前(ひらがな)+くん、女:名前(ひらがな)+ちゃん(例外…翠:翠)モノクマ、モノベル:クマちゃん、ベルちゃん

 

生物学において並の学者を軽く超える知識を持ち、どんな動物とでもすぐに仲良くなれる。一番仲良しなのは、鳥類らしい。大震災の際に多くの動物達を救ったという功績が認められてスカウトされた。セキセイインコの翠は一番の友達。両親が医者で、良家のお嬢様。見た目や話し方からは穏やかな人物だと思われがちだが、実はお転婆娘で、興味を持った事はすぐに行動に移す思い切りの良さがある。愛されやすいタイプで、動物だけでなく、人間の友達を作るのも得意。乱暴な人や動物を大切にしない人が嫌いで、翠と一緒に説教をする事もしばしば。

 

 

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【セキセイインコ】(スイ)

 

「ピィ!」

 

性別:メス

身長:10cm

体重:20g

誕生日:5月4日(みどりの日)

星座:おうし座

好きな物:ヒエ、日暮彩蝶、優しい人間

嫌いな物:ケンカ、怖い人間

ICV:南里侑香

外見:浅葱色の体毛。まだ子供なので、普通のセキセイインコに比べてかなり小さい。

 

日暮の親友。日暮と一緒に才監学園に収監された。大震災の時に母親と元の飼い主を失ってから日暮に引き取られ、今では彼女の良きパートナーとなっている。ケンカが嫌いで、生徒達がケンカをしているところを見ると、悲しんだり、怒って暴れたりする。

 

 

 

【超高校級の侍】不動院(フドウイン)(ツルギ)

 

「…ここで出会えたのも、きっと何かの縁です。よろしくお願いしますね、皆さん。」

 

性別:男

身長:177cm

体重:65kg

胸囲:85cm

誕生日:12月14日(忠臣蔵の日)

星座:いて座

血液型:A型

好きな物:筑前煮、水仙、日本刀

嫌いな物:ジャンクフード、不浄な物

利き手:左

出身校:仙宮寺学院高等部

ICV:高乃麗

外見:美人顔。艶のある黒髪。前髪が長く、右目が少し隠れ気味。ミディアムヘアー。瞳は黒。肌が白く、頬は紅をさしたような淡い赤色。

服装:水色の着物、紺色の袴の上に黒い上着を羽織っている。背中に黒い布で包まれた、鬼津正宗という名刀を背負っている。懐には、白い扇子と短刀を忍ばせている。

人称:【通常時】私/貴方、貴女/あの方/男女共に苗字+殿。(例外…ラッセ:ラッセ王、国王陛下)

【逆鱗モード】拙者/貴様/彼奴/男女共に苗字呼び捨て。モノクマ、モノベル:白黒熊、白黒虎

 

平安時代から続く名門不動院家の御曹司。世界一の剣豪と呼ばれており、その剣技はまさに神業と言われている。男である景見が思わず見惚れる程の美少年。名家で英才教育を受けたため、行動一つ一つが洗練されていて、礼儀正しい。誰に対しても常に敬語で話し、物腰柔らかく接する。しかし、逆鱗に触れると性格が一変し、口調が変わる。正義感の強い性格で、仲間が窮地に陥ったら危険を顧みずに助けようとする。幼い頃から俗世間とはかけ離れた環境で暮らしていたため、流行や精密機器などには疎い。

 

 

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【超高校級の喧嘩番長】舞田(マイダ)成威斗(ナイト)

 

「なんか、お前は俺と同じものを感じるな。お前とは仲良くやっていけそうな気がするぜ!!」

 

性別:男

身長:208cm

体重:113kg

胸囲:128cm

誕生日:8月19日(バイクの日)

星座:しし座

血液型:B型

好きな物:牛丼、バイク、漢気

嫌いな物:根性が曲がった奴

利き手:右

出身校:天上高校

ICV:羽多野渉

外見:黒髪をリーゼントヘアーにしている。瞳は、暗い銀色。大柄で筋肉質。褐色肌。全身にケンカの際にできた古傷がある。

服装:黒い学ランを羽織っている。腹にサラシを巻いており、黒いドカンを履いている。小物類は、黒いサングラス。靴は、黒いスニーカー。

人称:俺/お前、テメェ/アイツ/男女共に名前呼び捨て。(例外…白鳥:白鳥さん、たまに麗美)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

天下一中学校の元番長で、他校のライバル達をなぎ倒し、県内一のヤンキーとして恐れられていた。その武勇伝が県外でも有名になってスカウトされた。あまり頭脳労働が得意ではなく、すぐに頭に血が上りがち。しかし、曲がった事が嫌いで、女性や一般人には自分からはケンカを売らないと決めている。非常に仲間想いな性格。自分の服装に謎の自信があり、景見がベタ褒めした時には彼のセンスを認め、相棒と呼んだ。(ラッセには『カマキリの卵みたいな頭』、白鳥には『ダサい』と酷評を受けている。)

 

 

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【超高校級のダンサー】羽澄(ハズミ)踊子(ヨウコ)

 

「そうだ、ちょっと踊ってみなよ。いい気分転換になるよ。」

 

性別:女

身長:170cm

体重:55kg

胸囲:90cm

誕生日:9月9日(POPの日)

星座:おとめ座

血液型:AB型

好きな物:菓子パン、ダンス

嫌いな物:バナナ、湿気

利き手:右

出身校:四ツ川高校

ICV:伊藤かな恵

外見:ミカン色の髪の毛をツインテールにしている。瞳は、明るい茶色。ツリ目。巨乳。

服装:白いブラウス、赤と緑のボーダーのネクタイ、灰色のタータンチェックスカートの上に黒いブレザー。右手に水色のシュシュをつけている。黒いくるぶしソックスに、ライムグリーンのスニーカー。小物類は、白と黒のヘアピンと右耳のイヤリング。

人称:アタシ/アンタ/アイツ/男女共に名前(カタカナ)呼び捨て。モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

明るい性格で、ダンスが好きなギャル。本人曰く、頭よりも先に体が動くタイプ。伝統的な舞踊から、流行りのダンスまでなんでも踊れるダンサー少女。人間業とは思えないような素早い動きを必要とするダンスを完璧に踊り切った事から、世界中から注目を浴びた。流行に敏感で、最新のファッション誌を必ず読むようにしている。そのため、白鳥の事を知っていた。人当たりはややキツめだが、姉御肌で頼りがいがある。作中では、割と常識人。面食いで、イケメンを見るとテンションが上がる。

 

 

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【超高校級のアナウンサー】穴雲(アナグモ)星也(セイヤ)

 

「君みたいな面白い才能を持った人は初めてだよ!君の事、もっと教えてくれないかな!?」

 

性別:男

身長:186cm

体重:74kg

胸囲:87cm

誕生日:2月1日(テレビ放送記念日)

星座:みずがめ座

血液型:O型

好きな物:エスプレッソ、ニュース番組

嫌いな物:カフェオレ、スキャンダル

利き手:右

出身校:西城学院高等部

ICV:入野自由

外見:顔立ちの整った美少年。暗めの茶髪のウルフカット。瞳は、紫に近い青。長身痩躯。

服装:ライトグリーンのタートルネックの上に、ダークグレーのジャケットとスラックス。小物類は、フチなしメガネ。靴は、黒い革靴。

人称:僕/君/あの人、あの子/男:苗字+君、女:苗字+さん。(例外…ラッセ:国王陛下)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

笑顔の絶えない知的な好青年。皆を取り仕切る司令塔的存在。高校生にして朝のニュース番組『めざますテレビ』の人気アナウンサー。優れたトークスキルを持ち、誰に対しても神対応。その容姿や紳士ぶりから、主に女性ファンから絶大な支持を受けている。職業柄、【超高校級】についての知識も豊富。ニュース番組は、見るのも出演するのも好きだが、最近は芸能人のスキャンダルばかり取り上げられいるため、あまり快く思っていない。エスプレッソが大のお気に入りで、飲み方にこだわりがある。怒ると怖い。

 

 

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【超高校級の栄養士】(サカエ)陽一(ヨウイチ)

 

「なんか言ってくれりゃあ、その場でパパッと作るぜ!」

 

性別:男

身長:190cm

体重:81kg

胸囲:93cm

誕生日:10月16日(世界食糧デー)

星座:てんびん座

血液型:A型

好きな物:食える物全般、かわいい女子

嫌いな物:食い物を粗末にする奴、ムサい野郎

利き手:右

出身校:東風井高校

ICV:内山昴輝

外見:明るめの茶髪。ボサボサに広がったショートヘアー。前髪は長め。瞳は、ダークグリーン。三白眼。やや筋肉質な体型。

服装:白いTシャツに深緑のスラックス。腰に深緑の学ランを巻いている。靴は、ダークグレーのスニーカー。ピアスやネックレス、チェーンのブレスレット、指輪などアクセサリーをたくさんつけている。

人称:オレ/お前、テメェ/アイツ、あの子/男:苗字呼び捨て、女:苗字+ちゃん(例外…ラッセ:ラッセ)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

チャラ男だが、その見た目に反して栄養士としての才能を持つ。トップアスリートの朱鳥凛奈の管理栄養士でもあり、彼女を食事面でサポートして、五輪優勝へと導いた。自身で飲食店を経営しており、予約が取れないほどの人気店となっている。料理全般得意で、言われた物をすぐに作れるという特技を持つ。女好きで、よく女性陣を口説こうとしているが、朱に阻止される。しかし、それでもめげない強いメンタルの持ち主。料理に対しては並々ならぬ情熱を注いでおり、食べ物を粗末にする人が大嫌い。

 

 

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【超高校級の曲芸師】(ヂュ)雪梅(シュエメイ)

 

「うるさいです!!ワタシ、女の子いじめる男、許せないでス!変態には死ヲ、天誅です!」

 

性別:女

身長:163cm

体重:47kg

胸囲:95cm

誕生日:1月25日(中華まんの日)

星座:みずがめ座

血液型:B型

好きな物:小籠包、雑技

嫌いな物:ラーメン、変態

利き手:右

出身校:梁鳳高中

ICV:折笠富美子

外見:黒髪を両サイドでシニヨンにしていて、前髪を切り揃えている。瞳は、猫のような金色。肌は、うっすらと日焼けしている。細身で、巨乳。

服装:赤いチャイナ服。ズボンは、くるぶしの部分がすぼまったタイプで、色は白。靴は黒いぺたんこ靴。小物類は、鈴がついた白いお団子カバー。

人称:ワタシ、ワターシ/アナタ/アノ人/男女共に名前+サン。(例外…栄は呼び捨て。)モノクマ、モノベル:白黒熊、白黒虎

 

北京から来た女の子。日本語を勉強し始めて日が浅いので、カタコト。敬語で話しているのは、まだ丁寧な日本語しか勉強していないかららしい。『朱雑技団』の団長を務めている。数年前までは無名だったが、人間離れしたアクロバティックな芸が話題を呼び、世界的に有名なアーティストとなった。命知らずと言われるような、スリリングで超高難易度の芸を得意とする。社交的で人懐っこい。正義感の強い性格で、特に変態が大嫌い。よく変態(特に栄)を、父親から教わった拳法で撃退している。また、料理も得意で、中華料理は全て作れる。

 

 

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【超高校級の資産家】財原(サイバラ)天理(テンリ)

 

「それは凡人の考え方だね。世の中、お金で買えない物なんて無いんだよ。ま、あくまでこれは自論だけどね。」

 

性別:男

身長:182cm

体重:64kg

胸囲:84cm

誕生日:3月12日(財布の日)

星座:うお座

血液型:AB型

好きな物:ガリ●リ君、通貨、株、散財

嫌いな物:キャビア、貯金

利き手:両手

出身校:帝鄕学院高等部

ICV:浪川大輔

外見:青緑がかった黒髪。癖っ毛のミディアムヘアー。基本的に前髪で目が隠れている。瞳はエメラルドグリーン。左目に泣きぼくろがある。八重歯。頭頂部から細いアンテナが生えている。童顔で女顔。肌は不気味なほど白い。左肩に$の刺青がある。

服装:赤いシャツ、黒いネクタイ、ダークグレーのスラックスの上に、黒いカーディガン。靴は黒いローファー。小物類は両耳のピアスと右手中指の指輪。

人称:俺/キミ/あの子、アイツ/男:苗字+クン、女:苗字+サン(例外…ラッセ:国王陛下)モノクマ、モノベル:クマちゃん、ベルちゃん

 

どこかミステリアスで不気味な雰囲気が漂う美少年。高校生にして世界屈指の資産家。小学生の頃に株で大儲けした事で有名になった。投資オタクで、隙あらばすぐに株や通貨の話をしてくる。イタズラ好きで考えが読めないが、言いたい事はハッキリ言うタイプ。中国語が話せたり、多少人の思考が読めたり、ギャンブルが得意だったりと割と多才。正確な体内時計を持っているが、寝坊の常習犯で、いつも眠そうにしている。意外にも貧乏舌。また、浪費家でお金の管理が苦手。

 

 

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【超高校級の工学者】入田(イリタ)才刃(サイバ)

 

「僕ちゃんがちっちゃい子だと!?バカ言え!!僕ちゃんは、れっきとした高校生だぞ!!」

 

性別:男

身長:150cm

体重:42kg

胸囲:66cm

誕生日:11月21日(インターネット記念日)

星座:さそり座

血液型:O型

好きな物:飴、メカ、特撮

嫌いな物:コンソメ味、機械オンチ

利き手:右

出身校:湊工業大学附属高校

ICV:田村ゆかり

外見:ショタ枠。水色の髪を、ヘアバンドでポニーテールにしている。瞳は、澄んだ水色。頭頂部に稲妻型のアホ毛。

服装:白いブラウス、サスペンダー付きの黒い短パンの上にブカブカの白衣。背中にランドセル型のメカを背負っている。靴は、黒いロングブーツ。

人称:僕ちゃん/オマエ/アイツ/男女共に苗字呼び捨て。(例外…ラッセ:王様)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

小学生にしか見えないが、れっきとした高校生。中学生の時にノーベル物理学賞を受賞した天才児。機械全般に強く、ハッキングやコンピューターゲームのプロでもある。自分の才能に絶大な自信があり、周りの人間を小バカにしがちだが、自身の研究を世界への貢献のために使うという、科学者としての心得はきちんと重じている。子供っぽい性格で、予想外の事があると泣きがち。夢は、自身の発明でSFの世界を再現する事。ランドセル型のメカが、自身の最高傑作らしい。

 

 

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【超高校級の看護師】癒川(ユカワ)治奈(ハルナ)

 

「私、皆さんのお役に立てるように頑張ります。」

 

性別:女

身長:153cm

体重:41kg

胸囲:83cm

誕生日:5月12日(ナイチンゲールデー)

星座:おうし座

血液型:A型

好きな物:いちご、動物

嫌いな物:レモン、命を粗末にする人

利き手:右

出身校:明條女学院高等部

ICV:原由実

外見:ピンクがかった赤い髪を左側でサイドテールにしている。前髪は切り揃えている。瞳は、ザクロ色。左口元にホクロがある。

服装:白と紺を基調としたセーラー服の上に、クリーム色のカーディガン。黒いソックスに茶色いローファー。

人称:私/あなた/あの人/男女共に苗字+さん。(例外…ラッセ:国王陛下)モノクマ、モノベル:学園長、看守長

 

温厚で真面目な女子生徒。優れた医療技術を持ち、大震災の時も現地の医者の手伝いをして多くの人々の命を救った。並の看護師より優秀だが、本人は自分の才能を過小評価している。人の役に立つ事が何よりも幸福だと考えており、そのための努力は惜しまない。礼儀正しく、誰に対しても敬語で話す。アドリブが苦手で、予想外の事が起こると過呼吸を起こしてしまう事がある。謝り癖があり、本人が全く悪くない場面でも、相手が止めるまでずっと謝り続けてしまう。小動物が好きで、特に翠がお気に入り。

 

 

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【超高校級の詩人】詩名(シイナ)柳人(リュウト)

 

「オイラは風の妖精。自由気ままに旅をして、行く先は誰にもわからないのさ〜♪」

 

性別:男

身長:100cm

体重:28kg

胸囲:62cm

誕生日:6月6日(楽器の日)

星座:ふたご座

血液型:B型

好きな物:サラダ、旅行、詩歌

嫌いな物:ステーキ

利き手:右

出身校:河谷梛高校

ICV:堀江瞬

外見:外ハネのライムグリーンの髪。目は、開いているのかわからないくらい細い。

服装:緑とクリーム色を基調とした、吟遊詩人のような格好。リュートを持っている。

人称:オイラ/君/アイツ/男女共に苗字+君。(例外…ラッセ:国王様、たまにラッセ君)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

幼稚園児のような体格の少年。世界中を彷徨いながら詩歌を作り続ける盲目の吟遊詩人。詩歌の名人で、彼が残した詩歌は必ず現地で話題となり、多くの著名なアーティストに影響を与えてきた。気分屋で自由人。一度自分の世界に入ると、周りの声が全く聞こえなくなり、自身の集中力が切れるまでずっと歌い続けてしまうという癖がある。そのタイミングは、自分ですらわからないらしい。聴覚と霊感が人一倍優れているため、目が見えなくても生活にはあまり困っていないらしい。ちなみに、最近の歌のテーマは『風』らしい。

 

 

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【超高校級の???】神座(カムクラ)ゐをり(ヰヲリ)

 

「…喋るのは嫌い。以上。」

 

性別:女

身長:140cm

体重:26kg

胸囲:65cm

誕生日:11月15日(きものの日)

星座:さそり座

血液型:AB型

好きな物:和菓子

嫌いな物:揚げ物、会話

利き手:右

出身校:不明

ICV:上田麗奈

外見:艶のある黒髪ロング。瞳は、ルビーのような真紅。低体重。ロリ枠。肌は、陶器のような白。

服装:ピンクと紺の女学生のような着物。上に、白い羽織を着ている。頭に、椿の髪飾りをつけている。

人称:私/あなた/あの人/才能の日本名(景見→不運、白鳥→美女、羽澄→舞踊家など。)モノクマ、モノベル:白黒熊、白黒虎

 

まるで明治時代か大正時代からタイムスリップしてきたかのような、浮世離れした雰囲気の謎多き美少女。本人は希望ヶ峰学園の学生だと言っているが、実際のところは素性が全くわかっていない。口数が少なく、ほとんど話そうとしない。不動院以上に流行や精密機器に疎く、携帯を握った事すらないらしい。カタカナの外国語もあまり好まないらしく、外国語なども無理矢理日本語にして言う。他の生徒の才能が気になる様子で、特に景見の事が気になっているらしい。不動院とは趣味が似通っているため、仲良し。

 

 

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【学園長】モノクマ

 

『うぷぷ、だってさ…【超高校級】という『希望』同士が殺し合う、『絶望的シチュエーション』…最高だと思わない?』

 

性別:なし

身長:65cm

体重:不明

胸囲:不明

誕生日:不明

血液型:なし

好きな物:絶望

嫌いな物:希望

ICV:大山のぶ代orTARAKO

外見:左右で色が白黒に分かれているクマ。左目が悪魔の羽のような形をしている。

人称:ボク/キミ、オマエ/みんな、オマエラ/男:苗字+クン、女:苗字+サン(例外…ラッセ:ラッセクン)

 

自称才監学園の学園長。景見ら16人を才監学園に収監した張本人。【超高校級】という『希望』が殺し合うという『絶望的シチュエーション』を楽しんでいる。よくモノベルと一緒に茶番劇漫才を披露しているので、生徒達からは呆れられている。

 

 

 

【看守長】モノベル

 

『フッフッフ、アナタ達を絶望のどん底へと誘って差し上げましょう!』

 

性別:なし

身長:70cm

体重:不明

胸囲:不明

誕生日:不明

血液型:なし

好きな物:絶望

嫌いな物:希望

ICV:中尾隆聖

外見:左右で白黒が反転しているサーベルタイガーのぬいぐるみ。モノクマより一回り大きい。

人称:ワタクシ/アナタ/アナタ達/男女共に苗字+様。(例外…ラッセ:ラッセ様)

 

自称才監学園の看守長。モノクマの助手的存在。礼儀正しく、紳士的な振る舞いをするが、あくまでそれはポーズ。本性は、人が絶望に堕ちるのを見て喜ぶ、悪魔のような性格。よくモノクマと一緒に漫才を披露している。

 

 

 

ラッセクンのあだ名

穴雲…メガネ

入田…子供、メカ

景見…白髪、白髪赤眼

神座…和服

狛研…触角帽子

財原…成金

栄…料理バカ

詩名…盲目

白鳥…ダークパープル

翠…鳥

朱…中華娘

羽澄…ミカン頭

日暮…銀髪、鳥娘

不動院…侍

舞田…カマキリの卵

癒川…小娘、赤髪




一応、原作とのICVの被りを避けてます。
ゲームの方しか確認してないので、アニメの方は考えてません。

あと、後で計算したら詩名クンのデブ度がヤバかったので編集しましたw
神座ちゃんは一応ロリ枠ですが、明治〜大正あたりの女学生の身長を考えると、そこまで小さいわけではないんですよね。せいぜい3、4センチ低いくらいです。

嫌いな食べ物が書かれていないキャラは、基本的に好き嫌いがありません。


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第1章 終焉(エンド)はある日突然に
第1章(非)日常編①


タイトル元ネタ『フェリスはある朝突然に』です。

それから、5月12日は癒川ちゃんの誕生日です!
本人からメッセージをいただいております。

癒川「皆さん、興味は無いと思いますけど…今日は、私の誕生日です。実はこの日は、私の尊敬する偉人、フローレンス・ナイチンゲールの生誕の日でもあるんです。私が彼女と同じ誕生日なんて、なんだかおこがましい気もしますが…【超高校級の看護師】の名に恥じぬよう、精一杯努めてまいります。」







穴雲君と叶さんの提案で、僕達は才監学園を探索する事になった。

「って言っても、この建物結構広いよね。どうやって探索しようか。」

「マップを見たんだけど、どうやら内エリアと外エリアに分かれてるみたいだね。」

「担当分けはどうすんの?」

「そうだね…僕がざっくり決めておいたから、その分け方でいいかな?」

穴雲君は、メモ帳とペンをポケットから出して、何かを書いてからみんなに見せた。

「はい。」

 

 

 

内エリア1…僕、財原君、白鳥さん、癒川さん

内エリア2…狛研さん、不動院君、詩名君、景見君

外エリア1…舞田君、国王陛下、日暮さん、神座さん

外エリア2…栄君、入田君、朱さん、羽澄さん

 

 

 

「…こんな感じに決めてみたんだけど、どうかな?」

「わーい!同じグループだね、凶夜クン!」

「う、うん…」

叶さんと同じグループか…

そういえば、最初に僕が会ったのも叶さんだったな。

真逆の才能を持つ者同士、何か引かれ合うものがあったりするのかな。

「よろしくお願いします、皆さん。」

「ああ、よろしく。不動院君。ふんふ〜ん♪」

「あはは、白鳥サンよろしくね〜?さりげなくタッチっと。」

「ちょっと、触らないで!制服が腐るわ!」

「おいおい、俺はゾンビか何かかい?ひどいなぁ。俺、泣いちゃうよ?」

「財原君。君はちょっと気になるところがあるから、僕と一緒にいてもらうよ。」

「へいへい。」

「癒川さんもよろしく。」

「はい… 私、皆さんのお役に立てるように頑張ります。」

「おう、ラッセ!同じグループだな!!」

「気安く俺に触るな。カマキリの卵が。俺は昆虫と馴れ合う気はない。」

「なんだと!?」

「舞田君、そんな事ないわ!あなたの格好、とても素敵だと思うわ!(ダッサw)」

「そ、そうか…?へへへ…」

舞田君、完全に白鳥さんにデレデレじゃん。

なぜか、不動院君は呆れたような目で見てるし…

「…………………………。」

「ゐをりちゃん、よろしくね?」

「ピィ!」

「………………生物学者……………翠………よろ、しく…………………。」

「アタシは、この変態と同じグループ?」

「へへへ、そんな事言わず、仲良くしようぜ羽澄ちゃん!」

「アチョー!!」

「へぶぉあっ!!」

「アンタがいれば安心ね。ありがとシュエメイ。」

「ワタシ、踊子サンに何かあっタラ必ずお守りシマす!」

「朱ちゃん…俺にだけ当たりがキツくない…?オレ、今日だけで2回は殺されかけたんだけど…」

「うるさいです!!ヘンタイ、シネ!!」

「オマエラ、僕ちゃんと同じグループになれて良かったな!グループ長は、当然僕ちゃんだろうな!?」

「そうねえ。アタシ、バカだからリーダーとかそういうのあんま向いてないと思うわ。サイバ、アンタがやってくれると助かるわ。」

「えっ…」

「ワターシも、才刃サンがリーダー、いいト思イます!ワターシは、ヘンタイ成敗スルので、忙シイです!」

「朱ちゃん…思いっきり肘がめり込んでるんだけど…」

「え、えええ…なんか、そう言われると逆に調子狂うっていうか…」

入田君、自分でリーダーやりたいって言い出したくせに、何言ってんの。

「うんうん、異論がないみたいで良かったよ。それじゃあ、そうだな…昼の12時には一旦ここに集まって、報告会をしようか。」

「そだねぇ。」

「じゃ、みんな解散!」

全員が、各自の持ち場に向かった。

「じゃ、ボク達も行こうか凶夜クン。」

「あ、うん…」

僕は、叶さんに手を引っ張られて持ち場に向かった。

 

 

 

 

【内エリア 1F】

 

「ここは、ボク達がいた個室だね。」

「うん…」

部屋のドアの横には、ネームプレートとインターホンが取り付けられていた。

ネームプレートには、景見凶夜と書かれていて、その下に筆記体でKyoya Kagemiと書かれていた。

「部屋は、全部で16部屋…おや、いつの間にか鍵がかかっていますね。」

「あ、ホントだ…これ、どうやって開けんの?」

『フッフッフ。ズバリお教えしましょう。』

いきなりモノベルが現れた。

「わっ!ベルさん!」

「まーた君かい?」

「曲者!!皆さん、私の後ろにいてください!」

『フッフッフ。怖いですねェ。別に、取って食ったりしませんよ。ワタクシは、アナタ達に独房の開閉の方法を教えに来たのですよ。』

「そうなの?」

『ええ。アナタ達が、開閉の方法がわからず困っていたそうなので。その独房は、アナタ達が首につけている生徒手帳でのみ、開閉が可能なのです。景見様、試しに扉の前に近づいてみてください?』

「あ、はい…」

僕は、自分の部屋に近づいてみた。

 

ガチャ

 

鍵が開いた音が聞こえた。

『景見様、部屋を開けてみてください。』

「あ、はい…」

ドアノブに手をかけ、ドアを押すと、ドアが開いた。

「…あ。」

「わ!開いた!」

『その独房は今、生徒手帳から放たれる特殊な電磁波に反応して、自動で鍵が解除されたのです。基本的に、独房の開閉は、本人の生徒手帳でないとできないのでご注意ください。』

「…基本的には?まるで、他人の部屋に入れる方法があるみたいな言い方じゃないか。」

『フッフッフ、さすが詩名様は勘がいいですねぇ。ズバリ、その独房の収監者本人が入室を許可すれば入る事ができます。誰を入室させるかは選ぶ事ができ、入室許可を解除する事もできます。…ただし、同時に複数人の入室を許可する事はできないため、ご注意ください。』

「なるほど…」

『あ、そうそう。交友を深めるため、2階以上のにある『研究室』は、初日限定でオープンしております。明日になれば本人しか開閉できなくなってしまうので、興味があれば、是非今日中に現在解放されている研究室に向かってみては?』

研究室…?

そう言えば、マップにそんな部屋があるって説明があった気が…

『では、ワタクシはこれで失礼します。』

「ホントに、神出鬼没だねェ〜♪」

詩名君、今は歌う場面じゃないと思うなぁ。

「では、確実部屋の探索を行いましょうか。何かまた新たに見つかるかもしれません。」

「そう、ですね…」

「じゃ、凶夜クン!ボクは、自分の部屋見てくるから!」

「あ、叶さん…」

行っちゃった。

ホント、マイペースな人だなぁ。

僕も、自分の部屋を調べてみようかな。

 

 

 

 

【景見凶夜の独房】

 

部屋は、割と広くて開放感のある空間だった。

まるで高級ホテルのように快適な空間だが、部屋がコンクリートでできていたり、窓には鉄板がはめられていたりと、どこか監獄を思わせるような雰囲気だ。

クローゼットの中の服は、どれも僕のお気に入りの服だ。

それと、掃除用のコロコロも入っていた。

大きな本棚もあり、中には教科書や僕の好きな小説や漫画、そして自殺マニュアルなどが置かれていた。

僕の家のベッドや勉強机に似ているベッドや机が置かれていて、割と馴染みやすい。

独房を思わせるような雰囲気と、我が家を思わせるような雰囲気が混在していて、なんだか不思議な空間だった。

さらに、テレビの前に置かれている低いテーブルには、白い箱が置いてあった。

箱を開けると、中に桜餅が入っていた。

一緒に入っていた紙には、『ご自由にお食べください』と書かれていた。

「…。」

ここに置いてあるから、どう考えても怪しいけど…

おいしそうだし、食べてみたいな。

…どうせ何か入ってても、僕が勝手に死ぬだけだしね。

僕は、桜餅を一つ食べてみた。

…普通においしい。

どうやら、毒は入っていなかったようだ。

って、何をやってるんだ僕は。

みんなが探索してるってのに、こんな事してる場合じゃないよ。

その他には、特にこれといってめぼしい物がなかったので、部屋を出た。

 

 

 

 

「あ、凶夜クン!」

部屋を出ると、すでにみんな集まっていた。

「叶さん…もしかして、僕が一番最後だった?待たせちゃって、ごめんなさい。」

「構いませんよ。私も先程出てきたばかりですから。」

ホントイケメンだなぁ、不動院君は。

…それにしても、なんかちょっと上機嫌じゃないか?

「ねえねえ、聞いて凶夜クン!剣クンの部屋、和室だったんだって!」

「フフ、独房とは思えないほど快適でしたよ。置いてあったお茶やお菓子も美味しかったですしね。」

なるほど、それで上機嫌だったのか。

なんか不動院君って、本当に機嫌が良い時の笑顔がちょっと可愛いんだな。

って、何を考えてるんだ僕は。相手は男の人だよ?

これじゃあまるでそっちの気があるみたいじゃないか。

…僕は別にアブノーマルじゃないし。

「全く、独房じゃなくてゲストルームの間違いじゃないのかな〜♬」

詩名君は、またリュートを弾き始めた。

この人も、ホントマイペースだなぁ。

「ねえ、部屋の探索終わったけど、どこ行く?」

「そうですね…2階が開放されているようなので、行ってみましょう。」

僕達は、2階の探索をする事にした。

 

 

 

 

【内エリア 2F】

 

2階にあるのは、倉庫、食堂、娯楽室、浴場だった。

それから、どうやら研究室が3部屋あるようだった。

「浴場と倉庫と食堂の探索は、穴雲君達がやってるからね。オイラ達は娯楽室と研究室の探索をしようか。」

「…そ、そうですね。」

僕達は、まず娯楽室に向かう事にした。

 

 

 

 

【娯楽室】

 

娯楽室には、ボウリングや卓球、ビリヤードなどのゲームが置いてあった。

部屋の隅には、自動販売機と、違う種類の謎の機械が2台置かれていた。

一つは、叶さんが使っている箱型の白い機械だ。

もう一つは、金色のガチャガチャのようなものだった。

なんだ、あの機械は…

「ねえ、見てこれ!」

叶さんは、コインのようなものを僕に見せてきた。

「コイン…?これ、どうしたんですか?」

「そこに両替機っていうのがあったから、ちょっと色々触ってみたの!そしたら、コインがジャラジャラ出てきたんだ!」

「へ、へぇ…」

ちょっと色々触ってみたって…

叶さん、ちょっと後先考えなさすぎじゃないかなぁ…

「このコインさあ、どうやって使えばいいのかな?」

「さ、さぁ…」

『うぷぷぷ!ズバリお答えしましょう!』

今度はモノクマが出てきた。

…ホントに神出鬼没だなぁ。

「貴方、どこから湧いて出たのですか!?」

『ひどいなぁ、不動院クン!クマをゴキブリかなんかみたいに言わないでよ!』

「別にどっちでもいいさ。…で?狛研君が持っているというコインは、一体何なんだい?」

『うぷぷぷ、それは、モノクマメダルです!』

「モノクマメダル?」

『ここにある自販機で飲み物を買ったり、モノモノマシーンで遊ぶのに必要なメダルだよ!』

「モノモノマシーンって、もしかしてこのガチャガチャの事かい?」

『ザッツライ!そのモノモノマシーンでは、普通のルートじゃ手に入らないような変わりダネがゲットできるよ!メダル一枚あれば一回引けるから、ちょっと試しに遊んでみなよ!』

「じゃあ、ボクちょっと引いてみよっかな?」

叶さんが、ガチャを引いた。

「わっ!なんか出てきた!…鉄砲?」

叶さんが引いたのは、金ピカのリボルバー式の拳銃だった。

『うぷぷ!それは、6連変わりダネリボルバーだよ!中身は全部で6種類あって、何が出るかはお楽しみのビックリ銃だよ!気になる殿方にでもあげてみるといいよ!』

「へー、おもしろーい!」

叶さんは、次々とガチャを引いた。

「わぁ、ホントにいろいろ出てくるね!…あ、メダルがなくなっちゃった。そうだ、さっきの両替機で…あれ?メダルが出てこない。」

『そりゃそうだよ!狛研サンは、さっきので『ウォレット』のメダルを全部引き出しちゃったんだから!』

「『ウォレット』?」

『オマエラの持ってる手帳に、『ウォレット機能』があるでしょ?それは、モノクマメダルを管理するための機能なのだ!両替機を使って、『ウォレット』の中のメダルを好きなだけ引き出せるって事!最初は、特別に一人につき10枚入ってるから、10枚までは換金できるよ!』

「そっかー、じゃあボクはもうガチャガチャで遊べないんだね。」

『ウォレット機能』か…まだ確認してなかったな。

あとでちゃんと確認しておかないと…

「なるほど、ATMみたいなシステムだね〜♪」

「えーてぃーえむ?詩名殿、それは一体なんなのですか?」

マジか…不動院君、ATMも知らないのか。

「簡単に言っちゃうと、自分の口座にあるお金を引き出したり預けたりする機械の事だね〜♬」

「なるほど、ありがとうございます詩名殿。」

「ねえねえ、ところで気になったんだけど、柳人クンって、目が見えないんでしょ?手帳の操作とか、どうしてるの?」

「ああ、手帳の音声ガイド機能を使ってるのさ♫この手帳、すごく優秀でね。脳波を測定して、勝手に開きたいアプリを起動してくれるようになってるのさ♪」

「へえ、便利だね!」

「あぷり…?なんでしょうかそれは…」

不動院君、アプリも知らないのか。

もしかして、携帯とか持ってないのか?

このご時世、それでよく今まで生きてこられたな…

詩名君は、不動院君にアプリの説明をしていた。

「なるほど、アプリケーションとは、そういうものなのですね。」

「ま、詳しい事が知りたきゃ入田君あたりに聞いてくれ。彼の方が、オイラより詳しいだろうからさ♬…さて、そろそろ娯楽室の探索も終わったし、研究室にでも行ってみようか?」

「そうですね…」

 

 

 

 

僕達は、研究室と書かれた、錆びた鉄のドアの前に立った。

「…ここは?」

「うーん、誰の研究室かまではわからないね。とりあえず、中に入ってみようよ。」

「あ、はい…」

僕は、ドアを開けてみた。

中は、薄暗い部屋だった。

全体的に暗い色合いで、壁にはなぜか血塗れのカラスや黒猫の絵や燃えた鳥が空から落ちる絵が飾られていた。

棚の上に置いてある市松人形は目や腕などが欠けていて、全部で13体いる。

よく見ると髪の長さが全部違い、服装も死装束だ。

その隣には、地球儀…ではなく、金星の模型があった。

その模型には、鉈が刺さっていた。

…なるほど、棚の上の人形や模型は、『13日の金曜日』を表しているのか。

あとは、不気味なタイトルの映画や推理小説が置かれていたり、自殺用と思われる色々な種類の薬品や拷問器具などが置かれていた。

極め付けは、部屋の奥に置いてある、黒い百合の絵が描かれたギロチンだった。

さらに、部屋に置かれた壊れかけの古い蓄音機から流れる短調の曲が、部屋の不気味さを強調している。

…こんな陰惨な雰囲気の研究室に似合う才能なんて、一つしか思いつかない。

「うわぁ…まさに地獄絵図ですね。」

「ここ、誰の研究室なんだろうね?」

「…あの、多分僕の研究室だと思います。」

「え、凶夜クンの?すごーい、トップバッターじゃん!」

「確かに、『不運』っぽい研究室ではありますね…」

うっ…

「あ、ええと…別に景見殿の悪口を言ったわけではありませんよ!?こんなのは、ただの決めつけです!気にしないでください!」

僕の暗い心象を察した不動院君は、慌てて僕をフォローした。

「別にいいですよ。事実ですし。本当、僕に合った部屋だと思います。この部屋は、僕の今までの人生をそっくり表したような部屋ですよ。」

「あはは、景見君。君って、ホント笑っちゃうくらい卑屈だよねぇ♫」

うぅ…事実すぎて返す言葉が見つからない…

「詩名殿。景見殿に失礼ですよ。」

「おっと、ごめんよ景見君♩」

…それにしても、本当にある意味よくできた部屋だな。

ここまで『不運』を一つの部屋に詰め込まれて見せつけられると、もう逆に尊敬の念すら覚えるよ。

でも、こんなのが僕の人生だって知られたら、絶対叶さんに嫌われちゃうだろうなぁ。

「…ねえ凶夜クン!この部屋はよくないね!ボク、この部屋キライ!さ、次行こ次!」

「え、ちょっと!?叶さん!?」

叶さんは、いきなり僕の手を引いて僕を部屋の外に連れ出した。

「まーったく、あんな部屋にいたら息が詰まっちゃうよ。」

叶さんは、背伸びをしながら言った。

「叶さん…なんでまた急に…」

「うん。ボクね、あの部屋にいてすごく居心地が悪かったの。だって、完全に凶夜クンの事をバカにしたような部屋だったじゃない。ボク、凶夜クンは、あんな雰囲気の子じゃないと思うよ。」

「叶さん…」

「ほら、元気出して!まだ研究室は2つもあるんだから!早く次行こ次!」

「あ、はい…」

叶さんは、次の研究室の方へと走っていった。

 

 

 

 

「今度は、誰の研究室なんだろうね?」

「さ、さぁ…」

今度は、さっきの錆びたドアとは違い、清潔感のあるドアだった。

「では、開けますね。狛研殿、下がっていてください。」

「あ、うん。」

こういうところで気を遣えるところがホントイケメンなんだよなぁ、不動院君は。

部屋の中は、さっきとは打って変わって、カラフルな色合いだった。

まず目に留まったのは、そこに置かれている食材の数々だった。

リンゴやトマトなどのメジャーな食材から、トリュフやキャビアなどの高級食材、さらにはそもそも食べられるのかすらわからないものまであった。

部屋は、全体的に巨大なキッチンのようになっていて、ほとんど全ての調理法ができるような造りだった。

本棚には、料理のレシピや栄養学についての本が置いてある。

さらには、部屋の奥には体重計や血圧計など、健康状態を自動で測ってくれる機械がいくつもあった。

計測結果は、部屋に設置されたタブレットで見られるようになっているらしい。

この研究室に合った才能は、多分あの人だろうな。

「ふむ…恐らく、【超高校級の栄養士】の研究室でしょうか。」

「チェッ、またボクの研究室じゃないのかぁ。いいなあ、凶夜クンと陽一クンは!ボクも、早く自分の研究室見たいよー。」

叶さんの研究室か…僕もちょっと見てみたいな。

きっと、僕の研究室なんかとは比べ物にならないくらい、素敵な部屋なんだろうな。

「まあ、狛研殿。そう焦らず。まだ二部屋しか見ておりませんから。むしろ、最初に研究室を確認できた景見殿が、運が良かったのです。」

「そっかぁ、凶夜クンがラッキーだったんだね!」

「へえ、【超高校級の不運】がラッキーって、なんかおかしいね♫」

「詩名殿。今はそういう事を言う場面ではありません。」

「おっと失礼♬」

初っ端からみんなにあんなこの世の終わりみたいな研究室を見られたって事自体、僕にとってはアンラッキーなんだけど…

栄君の研究室はこんなにちゃんとしてるのに、なんで僕の研究室はあんなに地獄絵図だったんだ。

…まあ僕自身、実力で希望ヶ峰学園に入れたわけじゃないから、文句を言える立場じゃないんだけど。

「わぁー!すごいね!見てこれ!流しそうめんに使う竹筒まであるよ!ボク、流しそうめんやってみたい!」

「狛研殿、ここは栄殿の研究室ですよ。あまり迂闊に触らない方がいいと思います。」

「わかってるって。」

叶さんは、絶対わかってない返事をした。

「わぁ、いろんな種類の包丁があるね!わ、これとかカッコイイ!…そうだ!」

叶さん、今度は何をする気だ…?

叶さんは、両手に柳刃包丁を持ち、口にもう一本包丁を咥えながらこっちを振り返った。

みへ(見て)はんほぉうぅ(三刀流)!!」

叶さん!?何やってんの!?

不動院君の話、まるで聞いてないよね!?

っていうか危なくて見てられないからやめてよ!

「ちょ、何をなさっているんですか狛研殿!!私の話を聞いていましたか!?先程、栄殿の研究室の物に触るなと申しましたよね!?」

「…ふが。」

「危ないから今すぐやめてください!これ以上勝手な事をするようなら、狛研殿はもう出禁にしますよ!?」

不動院君は、慌てて叶さんから包丁を取り上げた。

「えぇ〜!?出禁はヤダ!なんだよ、ちょっと凶夜クンを笑わせてあげようとしただけじゃないか!」

笑いどころか、恐怖と混乱しか湧かなかったよ。

「全く…せっかくの包丁を、こんな事に使ってしまって…後で栄殿に怒られても知りませんからね!?」

「いや、女好きの栄君の場合、むしろ女子高生エキスがついた包丁とか言って喜んで使いそうだけどね〜♪」

「詩名殿!!」

「冗談だってば。そんなに怒るなよ不動院君♩」

マイペースな詩名君と、何考えてるのかまるで読めない叶さん…

まともなのは不動院君だけじゃん、このグループ…

なんか、先が思いやられるなぁ。

「…さて、研究室の探索も大方終わった事ですし、そろそろ次の研究室へ行きましょうか。」

「今度は誰の研究室かなぁ。楽しみだなー。」

僕達は、栄君の研究室を後にし、次の研究室に向かった。

 

 

 

 

「うわぁ…ゴージャス…」

次の研究室は、僕や栄君の研究室と比べて、見るからに高級感のある両開きの扉だった。

ドアの表面はダマスク模様に彫られていて、エレガントな雰囲気を醸し出していた。

…あ、察した。

多分、あの人の研究室だろうな。

「おや、これはまた豪勢な…では、開けますね。」

不動院君がドアを開けた。

部屋の中は、白や金、ピンクなどの色で装飾されていて、ゴージャスかつメルヘンチックな雰囲気の部屋だった。

置いてある家具は全て超高級品で、カーペットはドアと同じダマスク模様、カーテンにはこれでもかというほどフリルが装飾されていた。

本棚の中には、礼儀作法の本や、女子が好みそうなメルヘンな本が置かれている。

クローゼットの中にはシルク製の美しいドレスやトゥーシューズなどが入っており、テーブルの上に置いてあるティーカップとティーポットには、お揃いのバラの模様が描かれている。

鏡の前に置いてある化粧台の上の化粧セットはどれも高級品だ。

…わぁ、バラ庭園まであるのか。

扉の時点で察してはいたけど、この豪華な部屋は間違いなくあの人の研究室だろう。

「チェッ。またボクの研究室じゃないのかぁ。ちょっと期待したんだけどな。」

「…えっと…ここは、【超高校級のマドンナ】の研究室でしょうか…?」

「そのようですね。…ッ。」

不動院君は、急に目頭を押さえた。

「あれ?剣クン、どうしたの?」

「…いえ、私、こういった煌びやかなお部屋に入った事がございませんゆえ…少し目が疲れてしまいました。私には、刺激が強すぎましたかね…」

目疲れって…確かに、ゴージャスすぎて目がチカチカするけど…

これでそのダメージって…不動院君、アプリやATMも知らなかったみたいだし、実は箱入り娘ならぬ箱入り息子だったりする?

白鳥さんの研究室でこのクオリティって…ラッセ様の研究室とか、一体どうなってるんだ。

そんなの見せたら、不動院君絶対卒倒しそうだよな…

「さすが麗美ちゃんの研究室だねぇ。キングオブお嬢様って感じ?」

なんだ、その不思議な英語風の言葉は。

「狛研君。それを言うならクイーンオブ、じゃないかい?」

「あ、そっか。麗美ちゃん女の子だもんね。ボク、うっかりしてたなー!」

二人とも、ふざけてないで真面目に探索しようよ…

「ふんふん、部屋に入った時の香りでわかるよ。花の香り?女子ってこういうの好きなのかなぁ。」

「少なくとも、白鳥殿は好みそうですよね。私は、鼻が曲がってしまいそうですが…」

「白鳥君って、そんなに美人なのかい?オイラにはさっぱりわからないけど♫」

「うん、麗美ちゃんはメッチャ美人だよ!それで希望ヶ峰に入れたんだもん!」

「まさに絶世の美女、というべきでしょうか…」

性格はアレだけどね。

「へえ、オイラも、その絶世の美女とやらの顔を拝みたいもんだ。今まで目が見えなくて困った事はあんまりないけど、久々に目が見えるようになりたいって思ったね♬」

詩名君は、ゆっくりとリュートを弾き始めた。

「今夜は、嗚呼…北風が吹きつける…君はどうして去っていくの〜♪」

詩名君は、リュートを弾きながら歌い出した。

ああ、またスイッチが入っちゃったよ。

どうしよう…もう、探索どころじゃなくなっちゃったよ…

するとそこへ…

 

 

「ちょっと!!うるっさいのよ!!あんた達、何勝手に人の研究室に入ってんのよ!!」

 

 

白鳥さんが、研究室の中に入ってきた。

「ご、ごめんなさい…つい、興味本位で…」

「はあ、ホント最悪!私の研究室は、私が一番に見たかったのに!…あんた達、ここにあるものに触ったりしてないでしょうね!?」

「触ってないよー?」

叶さんは、クローゼットの中をゴソゴソと漁りながら答えた。

叶さん…度胸あるなぁ。

「思いっきり触ってんじゃない!!やめなさいよあんた!!人の物に勝手に触るとか、どういう神経してんの!?」

叶さんをクローゼットから引き剥がそうとする白鳥さんに、不動院君が話しかけた。

「…あの、白鳥さん。」

「あ、不動院さん…!」

「貴女が自分の研究室に来たということは、そちらの探索はもうお済みなのですか?」

「え、ええ…まあ…」

 

 

「うっわぁ、楽器弾いたりギャーギャー言ったり…どんなおもしろバンドだよ、キミ達。」

「みんな、お疲れ様。」

「あの…これは一体…」

財原君、穴雲君、癒川さんが研究室の外にいた。

「あ、天理クンに星也クンに治奈ちゃん!おつかれー!」

「皆さん、探索お疲れ様です。私達も今、探索を終えたところなのですよ。」

「そうかい、それはちょうど良かったね。じゃあ、8人で噴水の場所まで行こうか。」

「さんせー!」

「そう、ですね…」

探索を終えた穴雲君グループが加わり、僕達は噴水の前に向かった。

 

 



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第1章(非)日常編②

ちょっと才監学園の広さを計算してみたんですけど、めちゃくちゃ広いw


16人全員が噴水前に集まった。

「おう、悪いな!!待たせた!!」

「フン。」

「みんなおまたせ〜。」

「ピィ!」

「………………。」

「あ、成威斗サン達が来ましタ!」

「朱ちゃん…そろそろオレを殴るのやめてくれない…?オレ、ミンチになっちゃうんだけど…」

「汚物は消毒デス!!踊子サンに近づかナイデください!!」

「やっと全員集まった。」

「オマエラ、遅いのだ!」

「みんな集まったね。…ねえ、星也クン。」

「どうしたんだい?狛研さん。」

「ボク、喉渇いちゃった。なんか飲みたいなー。ねえ、この水飲んじゃダメ?」

まだ言ってるよ叶さん…

「うーん、さすがにそれは汚いしやめときなよ。」

「栄クンあたりが立ちションした後の水かもよ〜?」

「財原、テメェは黙ってろ!!」

「え、陽一クン立ちションしたの?」

「狛研ちゃん!!やめて!?冤罪だから!オレ、そんな事してねェから!!」

「じゃ、立ちション野郎は一旦置いといて、食堂見つけたしそこで報告会やらね?俺も喉渇いちゃってさ。思いっきり炭酸のきいたコーラ飲みたいよ。」

「うん、そうだね。このままじゃみんな報告会に集中できないだろうし…集まってもらって悪いけど、食堂で報告会しよっか。」

財原君と穴雲君の提案で、僕達は急遽食堂で報告会をする事になった。

 

 

 

 

【食堂】

 

「どうぞ。」

「あ、ありがとうございます…」

癒川さんが、全員にそれぞれのお気に入りの飲み物を出してくれた。

僕、不動院君、神座さんは緑茶、狛研さん、舞田君、栄君は麦茶、白鳥さん、羽澄さんはロイヤルミルクティー、日暮さん、詩名君はハーブティー、朱さんはウーロン茶、入田君はオレンジジュース、財原君はコーラ、そして穴雲君はコーヒーを出してもらった。

ラッセ様は、喉は乾いていないと言って、癒川さんが淹れてくれたお茶を拒否していた。

「どうぞ、穴雲さん。」

「お、ありがとう癒川さん。気が利くね。…うん、エスプレッソか。僕の大好物だ。」

「それは良かったです。」

「ぶっはぁ〜!やっぱこれだわー!生き返るー!!」

「ちょっと、テンリ。アンタおっさんかよ。」

「狛研サン、俺のコーラ一口あげるからちょっと麦茶ちょうだい。」

「いいよー。どうぞ!」

「サンキュー。うん、麦茶もおいしいねェ。」

「わーい、コーラ貰ったー。いただきまーす。」

ちょっと、叶さん!?何やってんの!?

それって、完全にか、かかかかか…間接キ…

「ん?凶夜クンもコーラいる?天理クンの飲みかけだけど。」

「い、いいよ僕は!!え、遠慮しときます…」

「そっかぁ。うん、コーラもおいしいね!ありがと天理クン!」

「いえいえ。…ハンッ。」

うわっ…財原君、こっち見て鼻で笑ってるよ…。

今のも、完全に僕への挑発だよね?

…あれっ。なんで僕は今ちょっとイラッときたんだ…?

「…さて、まったりするのもこれくらいにして、そろそろ報告会を始めようか。」

「そう、ですね…」

「そうだな…じゃあまず、国王陛下。探索の結果を報告していただけないでしょうか?」

「…俺に命令するな。」

「あ、ごめんせいやくん。ラッセくんは、自分で探索するって言って聞かなかったんだ。わたしが代わりに報告するね。」

そう言うと、日暮さんは大きな紙を取り出した。

そこには、この建物の上から見た図が書かれていた。

「わたし達はこの建物の、ここを探索したんだ。」

日暮さんは、マーカーで一番外側の線の内側を指した。

「それで、探索した結果はどうだったの?」

「えっとね…外エリアは4つに区切られてて、それぞれ4つの季節をイメージしたエリアらしいんだ。それと、ぐるっと環状に囲ってる大きな壁があったの。」

「壁?」

「うん。あと、天井もね。壁と天井に、本物そっくりの空の絵が書かれてるの。」

「なるほどね…壁の大きさとか、どれくらい外エリアが広いのかとか、わかる?」

「うーん…大体内壁と外壁の距離が500m、壁の高さが100mくらいかなぁ。」

「外エリアなのに屋内って、なんかおかしいね!」

「あはは、まるで大きなペットケージで飼われてるみたいじゃん。檻の中のウサギとかハムスターも、こんな気分だったのかなぁ?」

叶さん、財原君…なんか、ツッコみどころがズレてない?

「壁には継ぎ目も無いし、起伏もなかったよ。出口らしきものもなかったし…多分、あの建物から出るのは、クマちゃんとベルちゃんの力を借りないと無理だと思うよ。…わたしからの報告はこれくらいかなぁ。」

「なるほどね…じゃあ次は入田君。報告してくれるかな?」

「僕ちゃんにお任せなのだ!えっとな、僕ちゃんが見つけたのは、大きなゴミ処理場だったぞ!」

「ゴミ処理場…ねえ。」

「コインランドリーっぽい建物もあったよ。コインを入れる所がなかったし、多分タダで使えるんだと思う。」

「へぇ…」

「あと、試しに外部との連絡が取れないか確認してみたんだけど、やっぱり外には繋がらなかったのだ!」

「なんだ、繋がらなかったのかよ。だったら自慢げに言うなよなー。入田クン、もしかして意外とポンコツ?」

「なんだとー!?」

「そんな事ないよ財原君。入田君のおかげで、僕達をここに閉じ込めた犯人には、僕らをここから出すつもりがないって事が再確認できたんじゃないか。」

「そうなのだ!エッヘン!」

「うんうん、ありがとう入田君。じゃあ次は、狛研さん。報告してくれるかな?」

「はーい!あのね、ボク達がいた部屋をもう一回調べてみたんだけど、本人の生徒手帳で鍵が開閉できるようになってたんだ!」

「じゃあ、部屋にこっそり入ったりとかできねぇのかよ…クソッ。」

栄君が何か言ってるよ。

「陽一!!アナタ、今何か言いマシタか!?」

「いや…何も…ってか朱ちゃん、なんでオレだけ呼び捨てなの…?」

「アナタは邪な考えヲ持ってるカラです!!アチョー!!」

「理不尽ッ!!」

あはは…栄君の成敗は朱さんに任せよっかな。

「あの、話の続きをしてもよろしいですか?」

「あ、ごめんね不動院君。続けて?」

「私達のいた部屋は、本人が許可をすれば、他人でも部屋に入る事が可能だそうですよ。」

「それと、オイラ達がいた部屋なんだけど、完全防音になってたね〜♪」

完全防音か…それは気づかなかったな。

さすが詩名君だ。

「あとねあとね、2階には凶夜クンと陽一クンと麗美ちゃんの研究室があったよ!」

「マジか!?オレの研究室!?ソイツは楽しみだな!!」

「なぁんだ、俺の研究室じゃなくて、立ちション野郎の研究室かよー。至極残念なりー。」

「おい財原!その呼び方いつまで引きずる気だ!」

「はぁ、最悪。私の研究室は、自分で最初に見つけたかったのに。」

白鳥さん…まだ根に持ってるなぁ。

「景見君、君も研究室を確認したんだろ?」

「あ、はい…でも、あんまり見て欲しくないです…」

「なんだ、景見!なんかヤラシーモンでも置いてあったのか!?」

「…ゴホン、栄君。」

「あ、悪りい…」

「それから娯楽室ですが、十柱戯や撞球などの道具が置かれていましたね。」

「うんうん、ボウリングとビリヤードね。」

「あと、モノモノマシーンっていうガチャガチャがあったよ!ボク達の手帳の『ウォレット』の中にあるメダルを、両替機を使って引き出して使うんだって!」

「モノモノマシーン?」

「まあ、変わり種のガチャガチャだね〜♪オイラ達も、あんまり中身を把握してないから、気になるなら自分で確かめてみるといいよ。」

「なるほどね。ありがとうみんな。じゃあ、次は僕の班からの報告ね。この建物は、2階までしか行き来できないみたいなんだ。エレベーターが、1階と2階にしか止まらなかったよ。」

「3階以降が見たきゃ試しに誰か殺してみろってさ。ホント悪趣味だよねー。」

「うんうん、なるほどね!」

「次は、この食堂についての報告ね。この食堂は、厨房がついてるんだ。」

「不足した食糧の追加と消費期限切れの食糧の廃棄は、毎日自動で行われるそうです。」

「じゃあ、飢え死にの心配は無ェって事か!」

「そういう事だね。あと、大浴場にも行ってみたんだけど、割と広くて開放感がある空間だったよ。温泉が使われてるらしいから、後で疲れを取りに行ってみたいね。」

「マジ!?最アンド高じゃん!」

一応表向きは監獄って事になってるはずなんだけど…

なんでこんな快適空間なんだろう。

「あー、はいはーい。あとねえ、倉庫にも行ったよー。」

「倉庫には、様々な物が置いてありました。日用品から、爆薬、大砲のような物まで…欲しい物は、食材などの生物以外なら大体倉庫で手に入るかと。種類も膨大で、歯磨き粉だけでも50種類以上はありましたね。」

「えぇー。すごい。でも、それだけ種類があって、在庫は大丈夫なの?」

「置いてある物の量も膨大なので、しばらくは物が尽きるという事は無いかと思われます。なくなり次第、自動で補充されるそうですし。」

「そうそう。そこで見つけたんだけど、こんな物もあったよ〜♪」

財原君は、ズボンの両ポケットから手のひらサイズの箱を取り出して、みんなに見せびらかした。

財原君が両手に持っていた箱には、『極薄!快感の0.01mm』と書かれていた。

「はぁっ、あぁ!?ちょ、ちょっと!?財原君!?何やってんの!?」

「奥の方に色んな種類あったから持ってきちゃった。てへ☆あ、ブツブツタイプのもあるよ〜♪みんなの好みのヤツが置いてあるかもね。」

「ちょっと黙ってて!!全く、油断も隙もないね君は!!」

全くだよ。何やってんだよ財原君!!

いつも冷静で紳士的な穴雲君も、さすがにこれには動揺していた。

「うわぁ…引くわ…」

「マジかよ…そんなモンまで置いてあんのかよ。」

「サイアクなのだ…完全にセクハラなのだ。」

「ホントに不潔!!毛根根こそぎ燃やすわよ!!」

「やめてー。」

舞田君と羽澄さんと入田君もドン引きしていた。

白鳥さんにいたっては、赤面しながら財原君の胸ぐらを掴んでいる。

「あわわわわわわわわわわ…」

「うん、わたしは何も見てないよ。ね、翠。」

「ピィ?」

癒川さんは、顔を真っ赤にしながら狼狽している。

日暮さんは、見なかった事にしたようだ。それが賢明な判断かな。

「へへっ、女子がエロいモン見て顔真っ赤にしてんのって、なんか萌えるなw」

「わかるよ、栄君。オイラは声しか聞こえないけどね〜。」

栄君は、よだれ垂らしながら女子を舐め回すように見てるし…

詩名君もなんか嬉しそうだな。

詩名君って、もしかして隠れスケベ?

「ねえねえ、凶夜クン!天理クンが持ってる箱、何が入ってんの?」

ちょっと、叶さん!?

なんで僕に振るの!?

「あら、あなたこれ知らないの?男遊びが激しそうだと思ったけれど…案外そうでもなかったのね。」

余計な事言わないでよ白鳥さん!!

「え、待って?どういう事?遊びって…何?遊ぶための道具でも入ってんの?ねえ、凶夜クン!」

「あ、えっと!あれだよあれ!み、水風船だよ!」

「水風船?ボクね、水風船で遊ぶの好きだよ。夏とか、しょっちゅう遊んじゃうんだ!」

よかった…なんとかごまかせた。

…別に、水風船として使えなくはないから嘘はついてないよね?

叶さんに変な事吹き込みたくないし…

叶さんの他にも、不動院君、ラッセ様、朱さん、神座さんも、見た事ないものを見るような目で見ていた。

「なんだあれは。」

「私も存じ上げません。何に使うんでしょうか?」

「なんデスカあれはー?皆さんは、知てるんデスカ?」

「………………?」

嘘でしょ?

朱さんや神座さんはともかく、ラッセ様と不動院君も知らないのか…

どんだけ俗世間から隔絶されて育てられてきたんだか…

「あの、景見殿。あの箱がなんなのか、ご存知なのですか?ご存知でしたら、教えていただきたいのですが。」

だから、なんで僕に振るんだよ!

あ、ラッセ様には、栄君が教えたのか。

「なっ…なんて下品な…」

ラッセ様、すごい汚物を見るような目で箱を見てるな。

「ラッセ…お前、知らなかったのかよ。」

「知る機会がなかったからな。まさか、庶民の間でこんな低俗なものが出回っていたとは思わなかったぞ。」

「景見殿。私にも教えてください。お願いします。」

うわああああ…やめてよ不動院君、そんな純粋な瞳で聞かないでよ…

っていうか不動院君、どんだけ箱入りなの。

…一応、不動院君も男の人だし、教えてあげた方がいいのかな?

「…不動院君、耳貸して…」

「?…はい。」

「ゴニョゴニョ…」

「!!?」

不動院君は、耳まで真っ赤にしながらワナワナと震えていた。

「あ…あ…」

すると、いきなり刀を抜いて、財原君が持っていた箱をバッサリと両断した。

財原君の頬にも刀の先が掠り、右頬に一筋の赤い線ができた。

赤い線から血が滲んで頬をつたった。

「ひえ〜…あっぶねェ〜…」

財原君も、さすがにこれには顔を真っ青にして冷や汗をかいていた。

「ふ、ふふふ…不浄なッ!!そんな不浄な物の存在を許してなるものか!!おのれ白黒熊に白黒虎め!!よくもこの場を穢し、拙者を辱めてくれたな!!この不動院剣、武士の名において一太刀にて貴様らを斬り捨ててくれようぞ!!」

不動院君は、涙目になって、顔を真っ赤にしながら刀を構えていた。

刀身がガタガタと震えていて、尋常じゃない怒りが伝わってくる。

「わぁああああ!?ちょっと、不動院君!?落ち着いて!!」

「そうだよ!モノクマとモノベルを攻撃したりなんかしたら、不動院君がお仕置きされちゃうよ!」

「黙れ!!拙者は、拙者を辱めた者を生かしてはおけぬ!!奴等を斬り捨てた後、拙者も腹を切って死ぬ所存!!」

うわああああ…どうしよう、口調変わっちゃってるし…完全に正気じゃないよ。

「あはは、言ってる事がメチャクチャだよぉ〜。」

「テンリ!元はと言えばアンタのせいでしょ!なんとかしなさいよ!」

「えぇえ〜。」

舞田君、穴雲君、栄君の3人でなんとか荒れ狂う不動院君をなんとか押さえ込んだ。

…一流の剣豪とだけあって、押さえ込むのに苦労したみたいだ。

 

 

 

 

「…大変失礼しました。私とした事が、取り乱してしまいました。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」

不動院君は、赤面しながらお茶を飲んでいた。

不動院君、いつもは冷静で誰に対しても物腰柔らかく接してくるイメージだけど…

一度変なスイッチが入っちゃうと暴走しちゃうんだね。

…それにしても、不動院君がここまでエロに免疫が無かったとは。

栄君からしたら考えられないだろうな…

「あっはは、不動院クンは怒らせると怖いねー。」

「財原君。誰のせいでこうなったと思ってるのかな?」

「しいましぇーん。」

「財原さん、動かないでください。お薬がうまく塗れません。」

「いってー。滲みるー。」

財原君は、癒川さんに治療をしてもらっていた。

さっきあんな目にあったのに、まだみんなをからかう余裕があるらしい。

「財原殿、いきなり斬りかかってしまい、申し訳ございませんでした。」

「いいよいいよ〜。ほっぺた掠っただけだし。それに、不動院クンの見事な剣さばきを見られた上に、今こうして癒川サンの治療を受けられてるわけだからね。一石二鳥だよ。」

財原君…殺されかけたっていうのに、あっけらかんとしてるなぁ。

一日で何十億稼ぐ人は、やっぱりそこら辺が凡人とは違うのかな。

「…………………………お腹すいた。」

「!!?」

神座さん、さっきまであんな地獄絵図だったのに、よくそんな事言えるね!?

「あー、確かにもうそんな時間ね。どうする?そろそろ昼食べる?」

「そうだな…うっし、じゃあ俺が作るか!」

「私もお手伝いします。」

「え、マジ?デュフフ…」

「アナタ、治奈サンに何かスル気でしょう!?ワタシも手伝いマス!」

「げっ…」

やっぱり、栄君には朱さんがいた方が安心だね。

 

 

 

 

僕達は、3人が用意してくれた昼食を食べた。

やっぱり、【超高校級】の才能を持つ栄君が作った食事ってだけあって、美味しかった。

「おいしいね、凶夜クン!」

「そう、ですね…」

「この卵焼き、誰が作ったの?」

「私です。お口に合いませんでしたか?」

「いや、おいしいんだけどさ。甘い卵焼き食べるの久しぶりだなーって。自分で作る時はしょっぱいやつしか作らないからね。治奈ちゃん、後で作り方教えてよ。」

「え、叶さん料理できるんですか…?」

「うん。お母さんが事故で死んじゃってからは、自分でお弁当とか作ってたからね。意外だった?」

「は、はい…まあ…」

叶さんの手料理か…ちょっと食べてみたいな。

「おい、ラッセ。お前は全然食わねえのか?」

「…フン、卑しい男が作った飯など、食欲が湧かん。…それに。」

 

「貴様ら、料理に毒が盛られているとは考えなかったのか?」

「!!?」

え、毒!?

こんな時に何言ってんのラッセ様!?

「え!?嘘、毒!?どうすんのよ!アタシ、もう食べちゃったんだけど!」

「ぼ、僕ちゃんは物理選択だから、解毒剤の作り方なんて知らないのだ!!ど、どうすれば…!こんなところでこの天才の僕ちゃんが死ぬなんて、あっちゃダメな事なのに!!」

「いや…!私、こんなところで死にたくない…!あんた達、まずは私を助けなさいよ…!」

「みんな、落ち着いて…!」

「ヒュ〜♪カオスカオス〜。」

みんな、ラッセ様の口からとんでもない事を語られて慌てふためいていた。

「ラッセテメェ!!何言ってんだ!!なんの根拠があってそんな事言ってやがる!?」

舞田君は、怒りのあまりラッセ様の胸ぐらを掴んだ。

「フン。貴様ら、さすがは日本人だな。噂通り、警戒心の無さは世界一の民族のようだ。俺達がおかれている状況をもう忘れたのか?これは殺し合いだぞ?一歩間違えば、自分が殺される…そういう状況に置かれているという事を、少しは自覚したらどうだ。」

「ラッセテメェ!!オレの事を疑ってるってのか!?オレは、これでも料理人の端くれなんだよ!!毒を盛るなんて、メシへの冒涜だ!!オレがそんなダセェ事すると本気で思ってんのか!?」

「貴様の感情論など何のアテにもならん。人間、極限まで追い詰められると何をするかわかったもんじゃない。それに、貴様が毒を盛っていなくても、あのインチキ臭いクマ共が食材や食器に毒を盛ったという可能性も十分あり得るだろう?」

「うーん、国王陛下ぁ。お言葉ですけど、それはないんじゃないっすかねぇ?」

「…何?」

「あのクマちゃんが俺達にさせたいのは、あくまで殺し合いだよ?食材に毒を盛るなんてそんなナンセンスな事するくらいだったら、とっくに俺達に何かしてると思うけどね〜。」

「…うん、天理クンの言う通りだよ。ボクも、クマさんは食材に毒を盛ったりなんかしてないと思う。」

「国王陛下は警戒心が強すぎんだよなー。こんな時に毒を盛るなんてつまんねー事する奴がいるかっての。」

財原君…たまには正しい事言うんだな。

「私も財原殿に賛成です。先程私が独房で召し上がったお茶菓子も、毒は入っていませんでしたからね。」

「は!?オマエ、僕ちゃんが必死こいて脱出の手がかり探してる時に、呑気にくつろいでたってのか!?」

「ご、誤解です入田殿…!私がしたのは毒見と言いまして、主に出される飲食物を家臣が先に少し食し、毒が入っていないか確認する重要な役目でして…」

嘘つけよ不動院君。

ちゃっかりティータイムを楽しんでたって顔に書いてあるよ。

まあ、僕も人の事言えないんだよな。

僕の食べた桜餅にも毒は入ってなかったし…

…一応、ここにある食材は信用して大丈夫なのかな。

「みんな、せっかく3人が作ってくれたんだ。食べなきゃもったいないよ。」

「穴雲さん…」

「そ、そうよね…」

「…フン、勝手にしろ。俺は、貴様らと共倒れなど御免だ。そんなに仲間を信じたきゃ、勝手に信じ合って勝手に死ね。」

ラッセ様、冷たいなぁ。

なんでそこまでみんなの事を信用できないんだ?

やっぱり、王族として育ったっていうのが大きいのかなぁ。

 

 

 

 

「ごちそうさまでした。」

全員が食事を終えた。

「この後どうする?」

「そうだねぇ。やる事も特に無いし、自由時間にしよっか。」

自由時間か…何をしようかな。

 

 

 

 

【娯楽室】

 

特にやる事もないし、モノモノマシーンでも引いてみようかな。

僕は、手帳のメダルを一枚換金した。

確か、メダルが一枚あれば遊べるんだったな。

さっそく遊んでみるか。

僕は、メダルをマシーンに入れてガチャを引いた。

…カプセルが出てきたな。

中身を確認してみよう。

カプセルを開けると、粉が入った小瓶が入っていた。

小瓶に貼ってあるラベルに何か書いてある。

…字が達筆すぎてなんて書いてあるのか読めないな。

見たところ、調味料の類っぽいけど…

うーん、どのみち自分では使わなさそうだな。

誰かにあげられるといいんだけど。

 

「…あ。」

 

娯楽室には、すでに先客がいた。

「くっ…今度こそ!!赤こい赤!!」

「じゃあ俺は黒に賭けよーっと。」

「二人とも、それでいい?」

どうやら、栄君、財原君、羽澄さんがルーレットで遊んでいるようだった。

「よういちくんがんばれー。」

「ピィ、ピィ!」

「ふふふ、ここまで立て続けに負けてると、無様すぎて笑えるわ。」

日暮さんと白鳥さんは栄君の応援係か。

「栄君、頑張って!あなたなら勝てるわ!」

「白鳥ちゃんと日暮ちゃんの応援!…フフッ、見てな二人とも!オレは、いつだっていざって時には勝負に勝ってきた男だ。このオレが負けるわけないだろ!?」

栄君、それ思いっきりフラグ…

「さあ、赤こい赤ァアアアアアアアアア!!!」

クルクルと回る球がルーレットの溝に落ちた。

「…黒の35。」

「チクショオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

「m9(^Д^)プギャーwww」

「クッソ!!さっきやったスロットではメッチャツイてたのに!!」

「ヒャハハハハハハハハ!!ダッセェwwwやべェ…ちょっと待って、ツボった…誰か助けて…お腹痛い…ブフッ…グフッ…ギャハハハハハハハハ!!」

財原君、めっちゃ笑ってるなぁ。

あの人の笑いのツボがわかんないよ。

「なんでだ、なんでコイツには一回も勝てねェんだよぉおおおお!!!」

あーあ、栄君、見事に負けフラグ回収をしちゃったよ。

もう半狂乱になっちゃってるし…

あの反応から察するに、かなり負け続けたのかな。

「なあ、羽澄ちゃん。まさかとは思うけど、コイツとグルなんじゃないよな!?」

「んなワケないでしょバカ。」

「おい、財原テメェ!!イカサマしてるんじゃないだろうな!?」

栄君は、財原君の服の中を血眼で探した。

「ちょっとー。やめてよ栄クンのエッチー。」

「クッソ、なんでだ!なんでイカサマの道具が出てこねェんだ!!」

「栄君、あなた…負けたからって、それはいくらなんでもカッコ悪いわよ。」

「なっ…違うんだ、白鳥ちゃん!」

何がどう違うんだろうか。

「あの…」

「あっ!景見!ちょうどよかった!あのな?今な?財原の野郎とな?ルーレットで遊んでたんだけど、アイツがイカサマしてくるせいで、オレ一回も勝てないんだよぉおおおお!!うわぁあああああああ!!」

栄君が僕にしがみついて愚痴ってきた。

わぁ…色んな汁で顔がグチャグチャだよ。

そんなに悔しかったのか。

「やだなあ、栄クン。イカサマとは人聞きの悪い。俺は、イカサマなんてしてねーよ。」

「財原、テメェどんな手を使いやがった!?吐け!!」

「企業秘密〜♬」

「はぁあ!?」

「ねえ、きょうやくん。てんりくんすごいんだよ。毎回、球が落ちるところをピッタリ当てちゃうの。」

「へ、へぇ…」

「ま、見てもらったほうが早いかな?羽澄サン、球投げて。」

「…ほい。」

羽澄さんがルーレットに球を投げると、球がルーレットの周りをクルクルと回り始める。

「…はいはい。うーんっと、赤の36…いや、黒の13かな?うん、黒の13で。」

球の回転が止まり、球が赤の36と黒の13の間で少しカタカタと揺れたあと、黒の13のポケットに落ちた。

「な?」

「すごい…数字までピッタリ当てるなんて…」

さすが【超高校級の資産家】…ギャンブラーとしても超一流だな。

「…フフフッ、見てたぞ。」

栄君が、ニヤニヤしながら財原君の顔を覗き込んだ。

「…お前、予想する前に耳触ってただろ。…音だな。音で予想してたんだろお前?」

「どうだろうねぇ。そうだと思うなら、もう一回やってみれば?」

「よっしゃ!やってやろうじゃねえか!羽澄ちゃん!球投げてくれ!」

「またぁ?…しょうがないわね。」

「景見クンもやる?」

「あ、いや…僕は…」

「予想するだけしてみなよ。別に何も賭けなくていいからさ。」

「あ、はい…」

うーん…自信無いけど…赤、かなぁ?

「よっしゃ!決めたぜ!この音は…黒だな!」

「てんりくんは?」

「うーん。『どこにも入らない』かな。」

「ハァア!?んだよその賭け方は!!自信ないからって変な事言ってんじゃねえぞ!」

「まあ、見てなって。」

財原君…ずいぶんと思い切った予想をしたけど…

「ピィ、ピィ!」

「あ、翠!みんなが遊んでるんだから、邪魔しちゃダメだよ!」

「きゃ!ちょっと、何すんのよこのバカ鳥!…あっ!」

翠ちゃんに驚いた白鳥さんは、驚いて持っていたジュースの缶を手放した。

白鳥さんが持っていたジュースは、ルーレットの中に落ちて回っていた球をルーレットの外に弾き出した。

「あっ!!」

弾き飛ばされた球が、思いっきり僕の眉間にめり込んだ。

「痛ッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!」

「うわぁ…すごいピ●ゴラスイッチだね。」

「ほらね。」

「ほらね、じゃないでしょ!キョウヤ大丈夫!?」

…うぅ、やっぱり僕はとことんツイてないなぁ。




狛研ちゃんは、実は今までの作品の中で初めてのメシウマ主人公です。
景見クンは、運が悪すぎて厨房破壊しちゃうのでまず料理をさせてもらえません。


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第1章(非)日常編③

今回もふざけ倒しました。
下品なシーンが苦手な方は、今すぐブラウザバックしてくださいw


ルーレットでは、持ち前の不運が発動して酷い目に遭った。

「なあ、景見。大丈夫か?」

「ああ、うん…ありがとう栄君。」

「いやー…それにしても、財原の野郎、まさかこうなる事も予想してたとはな。アイツ、予知能力者なんじゃねえか?」

栄君、どんだけ財原君の勝ちが認められないんだよ。

「…まさか。勘が鋭いだけじゃないですかね。」

確かに、財原君は、どこか不気味なんだよな…

僕の心を読んだ事といい、球がポケットに入らない事まで予想できたなんて…

世界の法則性がどうのこうのって言ってたけど、何か関係あるのかな?

「よっしゃ!景見!絶対あのスカした童顔野郎をギャフンと言わせてやろうぜ!!」

「ギャフンw」

財原君は、鼻で笑いながら言った。

「なッ…て、テメェ!!そういうところがムカつくんだよ!!見てろよ!!絶対ギャンブルの腕上げて、テメェを見返してやるからな!!この通貨オタク変態野郎!!行くぞ景見!!オレと一緒に、アイツに勝てるように作戦練るぞ!!」

「あ、ちょっと…栄君…!」

「そんな事してる暇があるなら、栄養学の勉強しろよ〜。キミ、【超高校級のギャンブラー】じゃなくて、【超高校級の栄養士】だろ?」

「うるせェ!!覚えてろよ財原!!」

栄君は、僕の腕を引っ張って、研究室の中に引きずり込んできた。

 

 

 

 

【超高校級の栄養士】の研究室

 

「ジャジャーン!!ここがオレの研究室だ!!…って、お前はもうここに来てるんだったな。」

「あ、はい…」

「おいおい、そんなにカタくなんなって。オレ達一応クラスメイトなんだからさ。無理して敬語使わなくていいよ。」

「あ、うん…」

そういえば、改めて栄君とちゃんと話したのって、これが初めてかな?

前は自己紹介程度だったし…

どうしよう、何を話せばいいのかわかんないな。

そもそも、僕なんかが栄君と話なんてしていいのか…

今までも、下手に地雷に触れたせいで嫌われて、友達が一人もできなかったもんな。

こんな逃げ場のない場所で嫌われたら僕、どうしたらいいのかわかんないよ…

…あ、そうだ。

「あ、あのさ…栄君。」

「ん?どうした?」

「えっと…栄君にプレゼントしたい物があるんだけど…受け取ってくれるかな…?」

「オレにプレゼント?なんかくれんのか?」

「あの…これなんだけど…」

僕は、ガチャで引いた小瓶を栄君にプレゼントした。

「うぉああああああああああああああああああっ!!?」

栄君は、勢いよく席から立ち上がり、叫び声を上げた。

「!!?」

ど、どうしよう…

また地雷に触れちゃったかな…

いつもそうだ。

僕が初対面の人と話す時、僕が自己紹介の次にする質問は話し相手の地雷だって相場が決まってるもん…

絶対絶交とかされるパターンだよ。

…でも、仕方ないか。

本来、僕みたいな疫病神が、未来ある【超高校級】のみんなと同じ監獄に収監されてる事自体おかしな事なんだから…

「うっっわ!!スゲェ!!これ、伝説の料理人『鯖木馬吾郎』が作ったって言われてる、秘伝の調味料じゃねえかよ!!あらゆる旨味成分が凝縮されてて、何にかけても旨い万能調味料なんだぞ!?あまりにも希少すぎて、ある大富豪が5億円払っても買い取れなかったって言われてんのに…そんなモン貰っちまっていいのかよ!?」

え、そんなにすごい物だったの、この粉…

僕、知らないでポケットの中にぞんざいに入れちゃってたんだけど…

「え、あ…うん。たまたまガチャを引いたら出てきたんだけど、僕は使わないし…栄君にあげようと思ってたんだけど…ほら、そういうの詳しい人が持ってた方がいいかなって…」

「いや〜、ありがとう!!でも、こんなお宝貰っちまってなんか悪いな…そうだ、なんかして欲しい事とかあるか?礼をさせてくれよ!」

「いや、僕は別に…じゃあ…栄君の話をちょっと聞きたいかな…」

「え?そんなんでいいのか?」

「うん…えっと…僕みたいなのが【超高校級】のみんなと同じ空間にいるってだけで、すごい事ですから…何かをねだるなんて、そんな恐れ多い事…」

「おい、そんな謙遜すんなって!スカウトされた理由はなんであれ、お前もオレ達と同じ【超高校級】なんだからよ!」

「あ、うん…」

良かった…

初対面の人にプレゼントしてここまで喜ばれたの、初めてだよ。

いっつも、気に入らない物を贈ったせいで次の日から仲間外れにされたりとかしてたし…

今回は、珍しく不運が働かなかったな。

「じゃあ、何が知りたい?知りたい事があれば、なんでも教えてやるよ!」

「えっと…じゃあ、栄君がなんで【超高校級】になったのか、教えてくれないかな?」

「おう、いいぞ!オレは、ガキの頃から飯とか作んのが好きでよ。それで、将来はそういう関係の仕事とかしてみてェなって思って、栄養学の勉強始めたんだよ。そしたらメチャクチャハマってさァ!夢中になってずっと勉強して、資格を取ってよ。そしたら、オレの噂を聞いた朱鳥凛奈っつーアスリートから声をかけられて、その人の管理栄養士になったんだよ。」

「ああ、五輪で優勝したトップアスリートね。」

「そうそう!もちろん、オレは喜んでオファーを受けたよ。そんな有名なアスリートにずっとやってみたかった仕事の依頼を受けたのがすげェ嬉しかったし、あとは…」

「あとは?」

「朱鳥ちゃん、メッチャ可愛いんだよ!いやー。あの時は、嬉しすぎて目玉飛び出そうになったな。あんな可愛い子に依頼してもらったら、そりゃ断れねェだろ!あの美脚がエロいのなんのって…」

おいおい…そんな有名なアスリートをそんな目で見ちゃダメでしょ。

まさかとは思うけど、そっちがメインの理由じゃないでしょうね?

「んで、朱鳥ちゃんが五輪で優勝した事で、オレの功績が認められて、【超高校級の栄養士】としてスカウトされたってワケ。」

…栄君、なんかチャラチャラした感じだと思ってたけど…

ちゃんと自分なりの考えとか、料理に対する情熱とか持ってるんだな。

…それに比べて僕は…

「ん?どうした景見?」

「…あ、いや…なんでもない。」

「そっか。なあ、他に知りたい事とかあるか?」

「えっと…そうだなぁ…」

僕は、自然と栄君が身につけているネックレスやブレスレットに目がいった。

「ん?どした?あ、もしかして、これ気になる?」

栄君は、身に付けていたアクセサリーを指して言った。

「カッコいいだろ?飾れば飾るほど、男はイカして見えんだよ。あと、実は髪も染めてんだぜ。」

「ああ、そう…」

僕はそうは思わないけど…

そういえば、財原君とか舞田君とかも個性的な服装してたな。

…もしかして、僕の方が感覚ズレてる?

「あ、さすがに飯作るときは、ブレスレットと指輪は外してっから。」

「へ、へえ…」

意外とそこら辺はちゃんとしてるんだな。

「まあでも、このペンダントだけは絶対外さねェけどな。」

「それ、栄君にとって大切な物なの?」

「まあな。オレのばあちゃんが気に入ってたペンダントなんだよ。オレが資格取った時、譲ってもらったんだ。…その後、すぐ死んじまったんだけどな。」

「そうなんだ…」

「ばあちゃんはボロい定食屋をたった一人で切り盛りしててよ。オレも、そんなばあちゃんの影響受けて料理が好きになったのかもな。」

栄君って、おばあちゃん子だったんだね。

ちょっと意外だったな。

「…とまあ、オレの話はこれくらいでいいか?」

「うん。ありがとう。いろいろと話してくれて。」

「よっしゃ、じゃああのキナくさい原をギャフンと言わせるために、作戦練るぞ!」

そういえば、そんな事言ってたね。

キナクサイ原って…ひどいあだ名だなぁ。

 

 

 

 

「あー、クッソ!!どうしてもあのうるさい原に勝てる方法が思いつかねェ!!」

「無茶だよ…だって、相手は超一流のギャンブラーだよ?僕達じゃ絶対勝てないって…」

「諦めんな!そんなの、やってみなきゃわかんねェだろ!!見てろ、次こそ絶対あのうさんくさい原を負かしてやるぞ!!」

「誰がうさんくさい原だって?」

「くぁwせdrftgyふじこlp!!?」

後ろから、財原君が栄君の顔を覗き込んできた。

「ざ、財原君…!?」

「て、テメェ…!いきなり脅かしてくんじゃねえよ!!」

「いちいちビビりすぎっしょ栄クン。そろそろ夕飯作る時間だろ?早く厨房来いよ。」

そう言うと、財原君は研究室から出て行った。

…なんだ、呼びに来てくれたのか。

「えっと…栄君、厨房に行こっか。」

「お、おう…」

栄君と二人で厨房に向かった。

 

《栄陽一の好感度が1上がった》

 

 

 

 

「よっしゃ!できたぜ!」

栄君は、夕食を作ってくれた。

今日の夕食は、洋風か。

昼は和風だったもんね。

「…………………野菜と鶏肉の牛乳煮込み?」

神座さんは、不思議そうな顔でシチューを眺めていた。

「マジかよ…神座ちゃん、シチューも知らねえのか。」

「ゐをりちゃん、面白いね!ねえ、どこから来たの?」

「……………。」

「あら、そういう話題はだんまり?可愛くないわね。」

確かに、神座さんは色々と謎が多いよな。

現代人なのに、シチューも知らないなんて…

それってまるで…

「もしかして、ゐをりちゃん、タイムトラベラーだったりして!?」

叶さんは、目を輝かせながら言った。

「んなワケないでしょ。」

「…………………たいむ?」

「ええと、時間旅行者…ですかね?」

「……………む。」

「ねえ。ところで、さっきから気になってたんだけど…ラッセくんのお皿の上の黒い塊、何?」

「…フン。」

日暮さんがラッセ様の方を指差した。

ラッセ様のお皿の上には、黒くて臭い得体の知れない何かが乗っていた。

「ああ、これか。いや、実はな。ラッセの野郎が、オレの作った飯は信用できねェっつって自分で作ったんだよ。でもコイツ、料理のセンスが壊滅的でさ。気がついたら、得体の知れないナニカが出来上がってたんだよ。」

「うわぁ…」

「匂いだけで有害物質だってわかるね〜♪」

「おぞましいのだ…食べれるのか?それ…」

「せっかくの食べ物を粗末にしてはいけません!」

「きったねw」

羽澄さんと詩名君と入田君は、顔を真っ青にしてドン引きしていた。

不動院君は得体の知れないナニカに対して憤り、財原君はお腹を抱えながら笑っていた。

「フン、笑いたければ笑うがいい。毒が入っているかもしれないという不安に怯えるよりは自炊した方が100倍マシだ。…国王である俺がこんな事をしなければならないのは癪だがな。」

いや…毒うんぬんの前に、そんなの食べたら間違いなく命の保証はないでしょ。

「おい、なんだその目は。」

「えっ…」

なんか、目をつけられたんだけど…

「貴様の国王の手料理に対しての不届きな態度について言っているのだ。貴様、まさかとは思うが、『不味そう』って思ったわけではないよな?」

「え、や、やだなぁ…そんな事、思ってるわけないじゃないですか…すごく美味しそうですよ…」

「…そうか。じゃあ食ってみろ。」

ゑ゛?

「どうした?美味そうなんだろ?特別に食わせてやるから、食ってみろ。」

なんでこうなるの!?

さっきまで死にたいと思ってたとはいえ、さすがに死因が殺人飯なんてごめんだよ!!

「い、いえ…そんな、国王様がお作りになったものを僕なんかが召し上がるなんて、恐れ多すぎてできませんよ…」

「貴様、俺の命令が聞けないのか?いいから食え。」

「むぐっ!!?」

口の中に、独特の風味が広がる。

棘で刺されるような激痛と形容しがたい不快感が、口全体に伝わって…

「…う゛。」

ドサッ

「凶夜ああああああああ!!!大丈夫か!?しっかりしろ!!」

「ちょ、いきなり犠牲者出ちゃったんだけど!?」

「……………不運…………死んだ。」

「哇啊啊啊啊!!?凶夜サン!?と、とりあえずお金ヲ燃やしマショウ!!」

「羽澄さん、神座さん、朱さん。勝手に景見君を殺さないであげて。」

「わ、私…どうしたら…!」

「癒川さん、落ち着いて。気を失ってるだけだから。」

「凶夜クン!大丈夫!?」

「…う?」

なんとか意識を取り戻したようだ。

…口の中がこの上なく気持ち悪い。

「良かった。ほら、水飲んで…」

「あ、ありがとう…」

叶さんにコップの水を飲ませてもらってなんとか回復した。

「き、綺麗な川が見えた…」

「それ三途の川じゃん。大丈夫かよアンタ?」

「ま、まあね…」

「貴様、俺の作った飯を食った直後に死んだフリなど…失礼極まりないとは思わんのか。」

死んだフリっていうか、ホントに死にかけたんですよラッセ様。

「フン、俺の料理の味がわからないとは…味音痴は哀しいな。」

「あんたが言うか。」

 

 

 

 

みんなが夕食を食べ終わった。

「ねえ、みんな。ボクからひとつ提案があるんだけど!」

叶さんが手を上げて言った。

「あとで、みんなで一緒にお風呂入らない?」

「はぁ?なんでよ。」

「探索で疲れたし、温泉行きたいじゃん?それに、親睦を深めるって意味でもさ。いいと思わない?ほら、裸の付き合いってやつ!」

「温泉かぁ。わたしも行きたーい!」

「いんじゃね?アタシも賛成。」

「ワタシも行きマス!」

「私も、皆さんが行かれるのなら…」

「フン、くだらない。勝手にやってれば。」

「じゃあ、れいみちゃんはお留守番しててねー。」

「そーね。皿洗いよろしくー。」

「はぁ!?ちょっと!私を仲間外れにするんじゃないわよ!」

「アンタ、行きたいのか行きたくないのかどっちなのよ。」

「……………。」

「あれ?ゐをりちゃんは来ないの?」

「……………うるさいの、嫌い…」

「そっか。じゃ、6人で行こっか。」

「なんだ、女子は女子で楽しそうな話してんじゃねえか!よし、俺達も一緒に風呂入るぞ!!」

「もちろん、オレも行くぞ。」

栄君、鼻血垂れてるよ。

…絶対何かする気でしょ。

「うんうん、いいねえ。楽しそうで。オイラも行こうかな。」

「僕ちゃんも行くのだ!!」

「俺も行くよー。景見クンも来るよな?」

「う、うん…」

財原君に肩を組まれて、ついOKしてしまった。

銭湯か…行くの久しぶりだな。

あの時は足を滑らせて、浴槽にダイブして溺れたっけ。

あれは死ぬかと思ったなぁ…

「なあラッセー。お前も来いよ!」

「気安く触るな。俺は、貴様らと同じ湯には入らんぞ。気持ち悪い。」

「不動院クンは?」

「失礼ながら、私も遠慮させていただきます。自ら無防備な状態になるのは、あまり気が進まないもので…」

「あはは、用心深いね。穴雲クンはー?」

「僕は、お皿を洗っておくよ。終わったら合流しようかな。」

「穴雲殿、お手伝いします。」

「ありがとう不動院君。じゃあ、みんな楽しんできてね。」

結局、ラッセ様、不動院君、穴雲君、神座さん以外の全員で大浴場に行く事になった。

 

 

 

 

【男湯】

 

「うぅ。」

これだからあんまり来たくなかったんだ。

「おい、何してんだ凶夜!早く行こうぜ!!」

「お、財原。お前、肩にタトゥーしてんのかよ。」

「まーね。カックイイでしょ?」

舞田君、栄君、財原君はいい体してるなぁ。

…それに比べて僕は貧弱だなぁ。

「うっほー!!広いのだー!!」

「うん、色んな香りが入り混じってるねェ。」

入田君と詩名君は、肉付きがちょうどいいから可愛らしく見えるけど…

僕は、骨の上に皮がくっついてるだけだもんな。

僕は、舞田君に引っ張られて大浴場に入った。

「…わぁ。」

予想の1、2ランクは上だな。

数十種類の温泉があって、一度じゃ全部入り切れないよ。

足湯にサウナに岩盤浴…ドクターフィッシュまであるのか。

室内なのに露天風呂っぽいお風呂があるのが、日本人としての心を揺さぶられるな。

「あー、気持ちええぞい。」

「おいおい、ダメじゃないか財原君。まずは身体を洗ってからだね…」

「へっへーん。もう入っちゃったよーだ。」

 

「きゃっ!!コラ!やめなさい!!」

「へへーん、水鉄砲ー!もう一発喰らえー!」

「やっぱりニッポンのお風呂ハ最高デスねー!」

「皆さん、楽しそうですね。」

「かなえちゃんも、シュエメイちゃんも、ようこちゃんもみんな大きいねー。」

「アゲハ、アンタは背が小さいわね。まずはもうちょっと背を伸ばしたら?」

「あうー。」

 

「…なあ、聞こえたか?」

栄君が、ニヤニヤしながら僕の肩に手を置いた。

「え?」

「あそこだ。」

栄君は、仕切りを指差した。

「あの仕切り、多分上から女湯が覗けるようになってるんだ。」

「は、はぁあ!?」

な、何言ってんの栄君!?

「シッ、バカ!声がでけェよ!…あの仕切り、ゴツゴツしてるから多分うまくやれば登れるんだよ。オレが何言ってんのかわかるよな?」

わかんないよ!!

いや、わかるけど全然わかりたくないよ!!

「おー?なんか面白そうな話してんじゃん。俺も混ぜてよ。」

財原君まで!?

「おう陽一!俺も混ぜてくれ!」

「ま、舞田君まで!?漢気は一体どこいったのさ!」

「何言ってんだ相棒!こういう青春っぽい事をしたくなるのが、不良の(さが)ってもんよ!俺の学校は男子校だったから、一回はこういう事やってみたかったんだよ!」

「シッ!声がでけェっての!」

「何!?のぞきとな!?」

入田君が反応してるな。

栄君達にガツンと言ってやってよ。

「それを早く言わんか!僕ちゃんももちろん参加するぞ!」

えええええええ!!?

入田君、純粋そうに見えて実はエロガキ!?

「詩名クンは?」

「参加したいのはやまやまだけど、どのみち見えないからね。オイラは声だけで楽しませてもらうよ〜♫」

「そっかぁ。ねえ景見クン。景見クンももちろん参加するよね?」

ゑ?

「い、いや…僕はいいです…」

「ふーん。狛研サンの入浴シーン、見たくないんだ?」

「み、見ませんよ!」

「わー怒った。やっぱり見たいんだ♪」

「うっ…」

「言っとくけど、俺達の会話を聞いた時点でキミも共犯だからね?」

うぅ…

ここで共犯にならなかったら、裏切り者になっちゃうよね…?

 

 

 

 

うぅ…結局共犯になっちゃったよ。

栄君、舞田君、財原君は器用に仕切りを登った。

僕は栄君に、入田君は財原君に抱えてもらった。

「クッソ…湯気が邪魔でよく見えない…」

 

「コラ!狛研!!アンタいい加減にしなさいよ!!」

 

白鳥さんの声が聞こえた。

財原君がおんぶしている入田君の体が邪魔で見えないけど…

「うっほー。さすが白鳥サン。磨き抜かれた宝石のようだねェ。」

「おい、財原。お前、その位置だとお前と入田が邪魔でオレが見えねェんだよ。もうちょい右にズレろよ。」

「!!?」

 

ブバッ!!

 

ちょ、ええ!?

舞田君、いきなり鼻血吹いたよ!?

「ぐっ…すまねェ相棒…俺はもう無理みてェだ。後を頼んだ…」

頼まれましても。

「無理するな舞田。お前の無念は、オレ達が引き受ける。」

こんな史上最低のシーンを感動シーンっぽくするのやめよう?

なんか、自分でも何をさせられているのかわからなくなってきたよ…

「フン、修行が足らん小僧め。」

何言ってんの入田君。

「ほうほう、やっぱ朱サンと羽澄サンは出るとこ出てるねェ。癒川サンもそれなりだし…日暮サンはまだ成長途中かにゃ?」

財原君は、舞田君を無視して冷静に観察を続けている。

…すごいなこの人。

「うむ。みんな捨てがたいのだ。朱や羽澄みたいなミサイルおっぱいや白鳥みたいな美しいボディラインはもちろん大好物だけど、癒川の小柄ながら少し大きめの胸や日暮の控えめな体型も、正直嫌いじゃないのだ。」

入田君も、プロみたいな表情で観察してるよ。

…二人とも、さては常習犯?

「おい、財原。どけよ。オレがよく見えねェだろ。」

「やだ。ここは俺の特等席だもん♪あ、やっと狛研サンが見えた。…うっはー。エッロ。」

え!?

「おい、痛えな景見!髪を掴むな!お前、やっぱり興味あんじゃねえかよ!」

湯気で視界が遮られる中、うっすらと叶さんの姿が見えた。

 

「えへへ。麗美ちゃん、お湯かけちゃうぞー!」

 

豊満なバスト、引き締まったウエスト、はち切れんばかりのヒップ…その全てに、僕の目は釘付けになった。

あ…ヤバい…来そう…

 

「へくしゅっ!!」

「か、景見…!?」

「あ。」

朱さんがこっちを睨んでいる。

…しまった。

興奮するとくしゃみをしちゃう癖がまた出ちゃった…

どうしよう、僕のせいでバレちゃったよ…!

やっぱり、僕ってツイてないなぁ…!

「ヤベッ…バレた…」

「死ネ!!」

 

ゴッ

 

「ぐほぁっ!!」

朱さんが投げた風呂桶が、栄君の顔面にヒットした。

「栄ー!!」

「わあー、ヤッベー。これ、皆殺しコースっすわぁ…みんな、とりあえずトンズラしよっかー。」

「逃げるのだー!!」

「あ、ちょっと…待ってよ二人とも!」

 

「…やあ。どこに行こうっていうのかな?」

「げっ!!?」

目の前に穴雲君が立ち塞がった。

「やあ、穴雲クーン、今日は天気がいいねェ。ちょっとお散歩でもしてこよっかなー。」

適当にごまかして逃げようとする財原君の肩を穴雲君が掴んだ。

「…財原君、ちょっと君達と話したい事があるんだけど…いいよね?」

穴雲君は、ニッコリと笑顔を浮かべた。

でも、その裏に隠された怒気が強烈なまでに伝わり、全身に寒気が襲った。

この時、僕は激しく後悔した。

…僕達は、一番怒らせてはいけない相手を怒らせてしまった。

 

 

 

 

僕達は、強制的に食堂に連行されて、穴雲君に説教を喰らった。

ついでに、食堂にいた不動院君とお風呂上がりの朱さんにボコボコにされた。

怒らせたら怖い人を3人も怒らせるなんて…

自分がした事の愚かさをいやでも自覚させられた。

「…さて、みんな。ちゃんと反省した?」

穴雲君は、怖い笑みを浮かべた。

「ご、ごべんなざび(ごめんなさい)ぼぶでぃどどじばぜん(もう二度としません)…」

顔中が膨れ上がって、人間の顔じゃなくなった栄君が掠れるような声で謝った。

「あっはは〜、酷い目に遭った〜。」

財原君は、あれだけ説教と断罪を喰らって、ピンピンしていた。

よくあれだけ痛い目見て心が折れずにいられるよね。

…あの人のメンタルと耐久力は桁違いだな。

「…本当に不潔極まりないですね。見損ないましたよ皆さん。」

不動院君は、汚物を見るような目で僕達を見た。

ぶどぶびん(不動院)ぼばべぼぼどごだど(お前も男だろ)ぢょっどばでがげんじでぐででぼ(ちょっとは手加減してくれても)…」

「何を仰っているのか理解しかねます。女性の皆さんを辱めた罰として、潔く腹を切ってください。」

ぞんだぜっじょぶだ(そんな殺生な)…!」

容赦ないなぁ、不動院君…

「…………………変態。」

ぐっ…

神座さん、辛辣だなぁ…

「はあ、貴様らにモラルというものは無いのか?恥を知れ愚か者共め。」

ラッセ様にも、呆れたような目で見られた。

「皆サン、揃イモ揃ってヘンタイだったんですネ!!」

「ホントに気持ち悪い!!最悪!!」

「うーん、みんなひどいよねぇ。翠もそう思うでしょ?」

「ピィ」

「アンタ達、マジでキモいよ?うん。」

「えっと…皆さん、お顔の腫れがひどいので、お薬を…」

「癒川さん。治療ならしなくていいよ。彼らがこうなったのは、自業自得なんだもの。」

「でも…」

「もぐもぐ…」

叶さん、こんな時にアイス食べてるよ。

マイペースだなぁ。

…じゃなくて、栄君達に付き合わされたとはいえ、無許可で裸を見ちゃったんだからちゃんと謝らないと…。

「凶夜クンもアイス食べる?」

「あ、えっと…叶さん…その…ごめんなさい…」

どうしよう…あんなの見ちゃったら、もうまともに叶さんの顔見れないよ…

ちゃんと謝らなきゃいけないのに…

「え?何が?」

「え?」

あれ?叶さん…もしかして、今回ののぞきの件について何も知らない?

「凶夜クンは、たまたまあの場にいただけなんでしょ?ボク、凶夜クンはのぞきなんてしないって信じてるから!」

「か、叶さん…」

叶さんは、本当に心が綺麗な人だ。

こんな僕を、信頼してくれていたなんて。

それに比べて、僕は最低だ。

信じてくれた叶さんを裏切るような事をして…

「…うぅっ。」

「さ、一緒にアイスでも食べよ?…あれ?どしたの?アイス嫌い?」

「ごめんなさい…!」

「もういいって。ほら、元気出してよ。」

「…なあ、なんか景見だけ扱いが甘くね?」

「わかるー。一発ずつビンタされただけだもんねー。あれだけ狛研サンの事ガン見してたくせにさー。」

「オレなんか、お前と入田のせいで全く見えなかったってのに…クソッ。」

「…おや。お二人とも、まだお仕置きが足りないようですね?」

「ちょ、待ってよ不動院クン。二人で楽しくおしゃべりしてただけじゃねーかよぉ。」

「反省しなさい!!」

ベシッ

「財原ー!!」

財原君は、不動院君の渾身のビンタを喰らった。

「いってー。さすが世界一の剣豪。一撃が重いねー。」

「マジかよ…お前、今ので平気だったのかよ。強いな。」

「えへへ〜。」

 

 

 

 

あの後、僕は個人的に女子一人一人に謝りに行った。

…白鳥さんと朱さんは、なかなか許してくれなかったなぁ。

まあ、それだけ最低な事をしたわけだから、当然か。

さてと、今日はもう疲れたし寝るか。

 

…なんか、すごく忙しい一日だったなぁ。

急に変な所に連れてこられて、でも新しいクラスメイトと出会って…

今までロクな事が無い人生だと思ってたけど、久々に生きてるって実感できた気がする。

…おかしな話だよね。檻に閉じ込められて初めて幸せを実感するなんて。

こんな僕だけど、みんなと友達になれるかな…?



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第1章(非)日常編④

5月22日は日暮ちゃんの誕生日です!
本人からメッセージをいただいております。

日暮「あのね、今日はわたしの誕生日なんだ。実は、今日は国際生物多様性の日でもあるんだよ。生物の多様性が失われつつある事や、その他の生物に関する問題をみんなに認知してもらうために国際連合が制定した記念日なんだって。みんな、今日は生物についてよく考えて、動物さんや植物を大切にしてくれると嬉しいな。」





収監生活2日目。

昨日は、ひどい目に遭った…

まあ、のぞきなんてバカな事をした僕が悪いんだけどさ。

 

『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』

 

朝からモノクマのアナウンスが流れる。

…うるさいなぁ。

僕は、ベッドから起き上がって着替えを済ませた。

時計を見ると、7時過ぎを指していた。

…昨日は案外よく眠れたな。

 

ピンポーン

 

インターホンが鳴った。

「…はい。」

「おはよう凶夜クン!陽一クンが、朝ごはんの支度できたって。早く行こ!」

「あ、うん…」

叶さん…朝から元気だなぁ。

 

 

 

 

【食堂】

 

「おはよーみんな!!」

「お、おはようございます…」

食堂には、すでに栄君はもちろんの事、不動院君、穴雲君、朱さん、癒川さん、詩名君、神座さんがいた。

「おう、おはよう!狛研ちゃんに景見!」

「おはよう、二人とも。狛研さんは朝から元気だねェ。」

「おはようございます。お二人とも。」

「…………………………。」

「オハヨーございます!」

「おはよう、二人とも。今日も朝の空気がおいしいね〜♪」

「おはようございます。」

みんな、挨拶を返してくれた。

そして、少し遅れて舞田君と羽澄さんと入田君が来た。

「よお!おはよう、相棒!!」

舞田君は、いきなり僕の頭を掴んできた。

「あ、お、おはようございます…」

「おはよ。」

「おはよう踊子ちゃん!」

「おはよーなのだ!!オマエラ、朝から僕ちゃんの顔を拝めて、運がいいな!!」

いきなり入田君に絡まれた。

「あ、あはは…そうだね…」

さらに遅れてラッセ様と白鳥さんが来た。

「ホンット最悪。あんたとかち合うなんて。朝からその小麦臭い髪見せないでちょうだい、ロングパスタ。」

「それはこちらのセリフだ。ダークパープルめ。朝から国王に向かって暴言とは…いい度胸だな。」

二人は相変わらず仲悪いなぁ。

そして、さらに遅れて日暮さんと財原君が来た。

「おはよう、みんな。ごめんね。遅くなっちゃったぁ。」

「ピィ!」

「ふわぁ〜あ。クッソねみー。ん?ああ、おはよーみんな。」

財原君は、大きなあくびをした。

…っていうか、何その格好。

サンタ帽に枕って…

「うぅん…」

日暮さんも、少しウトウトしている。

「彩蝶ちゃん、大丈夫?」

「ああ、ごめんね。わたし、朝が弱いんだ。」

「ふわぁあ…ねむ。ねえ、ちょっと寝ていい?」

財原君は、枕に顔をうずめながら言った。

「オマエ、何言ってるのだ!!個室以外の故意の就寝は校則違反だって書いてあったのを忘れたのか!?」

「ああー、そういえばそうだったねぇ。俺、いっつも8時起きだからさぁー。7時起きとかキツいんだよねー。ふわぁああぁ…」

なるほど、道理で寝癖にパジャマ姿…

ってか、8時起きって…学校とかどうしてたんだろ。

「気持ちは分からなくもないけど、食堂にその格好でくるのはやめようね?」

「ええー?なんで?いいじゃん別に。ウチでは、パジャマのまま朝飯食ってるよ?」

「我流が過ぎるでしょ。どんだけマイペースなのよアンタ。」

「えへへー。」

「褒めてないから。」

全員が席についたので、僕達は朝食をとった。

やっぱり、栄君の作った料理は美味しいな。

「あれ?ラッセ。お前、今日はちゃんと食うのな。」

「フン、お前に毒を盛れるだけの頭がないという事は、もうわかり切った事だからな。」

「どういう意味だそれ!」

「まあまあ…」

「俺は、貴様らと馴れ合う気は毛頭無い。」

ラッセ様…相変わらず冷たいなぁ。

 

 

 

 

全員、朝食を食べ終わった。

「ごちそうさまでしたっ!!」

「…ねえ、僕から一つ提案があるんだけど。」

穴雲君が、手を挙げて提案した。

「なんでしょうか…?」

「あのさ、校則に、『夜時間中の移動は原則禁止』というルールを追加しないかい?」

「なんでそんなルールを追加するのだ?」

「だって、夜中も警戒しながら寝なきゃいけないなんて、精神衛生上よくないだろ?さすがに夜くらいはゆっくり寝たいんだけど。」

「フン、バカバカしい…そんなルールを守る奴がいると本気で思って…」

「いいんじゃない?ボクは全然それでいいよー。」

「私も賛成です。」

「いんじゃね?部屋から出なきゃいいんでしょ?」

思ったより賛成派の人が多いな…

「マジかよ…メシの準備とかどうすりゃいいんだよ…」

「えー。夜中ギャンブルしたりできねーの?」

「…そんな事してるから、8時に起きなきゃいけない体になるんだろ。」

「しぃましぇーん。…あ、そうそう。ついでに、俺からも言いたい事があるんだけど。」

「言いたい事?」

「あのさぁ、朝メシは8時半以降に食いてェんだけど。俺ちゃん、朝は低血圧で動けんのだー。」

「オマエ!僕ちゃんの口調をパクるな!!」

「にゃぱぱー。」

「8時半か…出歩いていいのが7時以降なら、それでちょうどいいかもな。」

「じゃあ、夜時間は出歩き禁止、朝食は8時半って事でいいかな?」

「うーん…だったら、ついでに昼ごはんと晩ごはんの時間も決めちゃおうよ。」

「そうだな…昼は12時半、夜は6時半でどうだ?」

「かなり早いねー。俺、いっつも晩メシは9時なんだけど。」

「…君、生活リズム崩れすぎだろ。」

「えへへー。」

 

 

 

 

【娯楽室】

 

メダルがまだ余ってるし、ガチャを引いてみよう。

ガチャを2回引くと、今後は赤い宝石が付いた指輪と四つ葉のクローバーのペンダントが出てきた。

指輪は、サイズ的には女の人用かな?

誰にあげるか考えておかないとなぁ。

「あら、そんな所で何をしてるのかしら?」

後ろから、白鳥さんが声をかけてきた。

「白鳥さん…えっと…ガチャを引いてて…」

「あっそ。邪魔よ。どきなさい。」

「あ、うん…ごめん、なさい…」

相変わらず言い方がキツいなぁ、白鳥さんは。

「…はぁ、最悪。なんで全然欲しくもないガラクタしか出てこないのかしら。こんな変な人形とか、誰が欲しがるってのよ。」

白鳥さんは、イライラしながらゴミ箱に人形を捨てた。

白鳥さんが捨てたのは、ライダーマンマスクのフィギュアだった。

…入田君とかなら欲しがりそうだけど。

「あ、あの…」

「何よ。」

「えっと…これ…白鳥さん、欲しいかなって思うんだけど…」

「何それ。指輪?…あれ?ちょっとそれ見せなさい。」

「あ、はい…」

白鳥さんは、指輪をひったくると光にかざしたり、顔に近づけてじっくり観察したりした。

「…間違いないわ。これはアレキサンドライトね。」

「あ、アレキサンドライト…?」

「知らないの?光の種類によって変色する宝石で、ダイアモンドより希少価値が高いのよ。まさか、こんな所で実物が手に入るなんて思わなかったわ。しかも、すごく大きいわね。」

「そ、そうなんですか…」

「あんた、どこでこれを手に入れたのよ?」

「えっと…ガチャを引いたら出てきて…」

「あら。不運のくせに、こういう所ではくじ運いいのね。でも大丈夫?不運じゃなくなったらあんた、個性死んじゃうわよ?」

白鳥さんは、せせら笑いながら僕に嫌味を言った。

…さっきのガチャでストレス溜まってるのかな。

「ま、いいわ。私に貢ぎ物を寄越すのは当然なのだけれど、こんなに高価な貢ぎ物を貰ったのは1年ぶりね。せっかくプレゼントを貰ったんだし、ちょっとだけなら研究室を見せてあげても良くってよ?この私の研究室に入れるなんて、これ以上ない幸せなんじゃなくって?ありがたく思いなさい。」

「あ、ありがとうございます…」

白鳥さんと二人きりか。

すごく気まずいんだけど…

この人、綺麗すぎるし、もう僕は内面を知っちゃってるもんな。

本性を知る前なら、すごく喜んだんだろうけど…

やっぱり僕ってツイてないのかなぁ。

 

 

 

 

【超高校級のマドンナ】の研究室

 

「さ、入るなら早く入りなさい。私、あんたみたいな鈍臭い男は嫌いなの。」

「あ、す、すみません…」

白鳥さんは、部屋に入るなり僕を威圧してきた。

「…何をボサッとしてるの?」

「え?」

「姫が喉が乾いてるっていうのに放っとく召使いがどこにいるのかしら?ほら、早くして。」

「す、すみません…今すぐお茶を淹れます…」

いつの間に召使い扱いになってるし…

っていうか、僕、一応客だよね?なんで僕がお茶淹れてるんだろ…

僕は不満を抱えつつも、部屋の中にあったティーセットでお茶を淹れた。

「あっつ!」

ポットの中の紅茶を服にぶちまけてしまった。

「チッ、鈍臭いわね。」

白鳥さんは、指でテーブルを小刻みに叩いて僕を急かした。

「…す、すみません。」

急いでお湯を沸かし直した。

…急かされてるし、まだ沸騰してないけど、そのまま注いじゃっていいよね?

僕は、白鳥さんにお茶を出した。

「ど、どうぞ…」

「は?ナメてんの?」

「え?」

「まず、紅茶をコーヒーカップに入れて出す神経がわからないわ。それから、こんなぬるくてうっすい紅茶を出すなんて信じらんない。私が紅茶を飲みたいって言ったら、牛乳を茶葉で煮出したロイヤルミルクティーでしょうが。…ったく、ちょっとは空気読みなさいよ。一からやり直して。」

空気読めって言われても…

好みなんて、言われなきゃわかんないよ。

僕は、白鳥さんに言われてお茶を作り直した。

「…フン、まあ及第点ね。でも、これを一回でできないなら、私の下僕にはなれないわよ?」

「は、はぁ…」

別に下僕になりたいなんて一言も言ってないんだけど…

「…今日はすこぶる気分がいいわ。暇だし、あんたと話してあげても良くってよ?」

「は、はい…」

「私の事が気になるのなら、どんどん質問してくれていいのよ?この私に見惚れるのは、もはや自然の摂理だもの。」

そこまで言うか。

白鳥さんって、すごく自信家なんだなぁ。

「ええっと…では、白鳥さんはどうして【超高校級のマドンナ】に?」

「どうしてって言われてもね。私が誰よりも完璧な美少女だったから。これで満足?」

相変わらず素っ気ないなぁ。

なんか、入学生プロフィールで知ったイメージとは全然違う気が…

「何よ?もしかして…イメージと違う、とか思ってるんじゃないでしょうね?」

「い、いや…そんな事は…」

「…まあ、イメージと違うって言われるのも無理ないわね。私、表向きは美人で優しくて教養があって学校の成績は全部トップのお嬢様って事になってるんだけど…」

すごい自分の事過大評価するなぁ。

「それって実は演技なのよね。」

知ってた。

「ホントは、完璧な美少女を演じるのに疲れてんのよね。また希望ヶ峰学園でも、完璧な美少女を演じなきゃいけないのかって思ってちょっとブルーになってたの。正直、こういう状況の方が、本音を言えるから楽だったりするのよ。」

「は、はぁ…」

「でも、天は二物を与えずって言うじゃない。これで私が本物の完璧な美少女になっちゃったら、もはやそれは女神よ。私が女神だったら、恐れ多すぎてまともに話しかけられないでしょ?むしろ、ちょっとトゲがあるくらいの方が、親近感が湧くものだと思うの。」

言動にトゲがある自覚はちゃんとあったんだな。

「ま、でもせっかくの美貌を活かさないのはもったいないし?どうせ注目されるなら、完璧を演じたいって思ったの。だから、ちゃんとした場面では、イメージを壊さないように言動ひとつひとつに細心の注意を払うようにしてるのよ。」

…白鳥さんって、すごく美人だってだけで希望ヶ峰にスカウトされたのかと思ってたけど…

実は意外と努力家だったんだな。

「…あ。」

部屋に飾ってあった写真立てに目がいった。

写真には、小太りの中年男と、綺麗な女の人と、女の子が二人写っていた。

1人は白鳥さんで、もう1人は白鳥さんとは似ても似つかない、お世辞にもかわいいとは言えない醜悪な子だった。

男の人と女の人は、白鳥さんのお父さんとお母さんかな?

じゃあ、この子は…

「ちょっと!何勝手に人の写真を見てんのよ!!」

「あ、ご、ごめんなさい…」

「ったく…」

「あの…もしかして、ご家族の写真…ですか?」

「だったら何!?」

「あの…その子…お姉さんか妹さんですか…?」

白鳥さんは、少しの間黙った。

そして、口を開いた。

「…ええ。そうよ。私、実は双子なのよ。そのかわいくない方の子は、私の妹よ。双子なのに、全然似てなくて…鈍臭いし、わがままだし、何をやらせても才能が無いし…正直、こんな妹の姉を名乗るのも恥ずかしいわよ。ま、小学校に上がる前に事故で死んだんだけど。ホント、あんな奴死んでせいせいしたわ。あんな奴、私の顔に泥を塗るだけだもの。」

実の妹にそこまで言わなくても…

「…。」

「何よ?その目は。」

「…いえ、なんでもないです…」

「はあ、あんたのせいで思い出したくもない事思い出しちゃったじゃない。二度とこの話はしないで。…あと、この事を誰かにしゃべったらタダじゃおかないから。」

「…はい。」

白鳥さん…顔はすごく綺麗なのに、なんですごむとこんなに怖いんだろう。

「あーあ、もうあんたとの無駄話にも飽きちゃったわ。」

「はぁ…」

「ま、でも、久々に本音吐き出せたわ。また気が向いたら、研究室に呼んであげる。それまでに、ちゃんと美味しくお茶を入れられるようにしておきなさいよ?」

「…は、はい…」

意外と色々話してもらえたな。

「あ…」

白鳥さんとお話してて忘れかけてたけど、そういえば制服に思いっきり紅茶ぶちまけちゃったんだった。

…ランドリールームに行って洗濯しないと。

 

《白鳥麗美の好感度が1上がった》

 

 

 

 

【ランドリールーム】

 

クローゼットの中に替えの制服があって良かった。

洗濯が終わるまであと30分か…

「…ん!?」

うわっ!どうしよう…

もう12時半過ぎてるよ…!

白鳥さんの話を聞いてて、全然時計を見てなかったからなぁ。

急いで食堂に行かないと、みんなを待たせちゃうよ…!

 

 

 

 

【食堂】

 

「ごめんなさい、お待たせしました…!」

僕は、食堂の中に駆け込んだ。

「…なんだ貴様。時計を見れないのか?」

ラッセ様が舌打ちをしながら僕を見た。

「ご、ごめんなさい…」

「景見君、なんで昼食の集合に遅れたのかな?」

「それは…服を汚しちゃって、ランドリールームに寄ってて…」

「そっか。次からは気をつけてね。」

「…はい。」

「でも残念。どうやら、ビリッケツは君じゃないみたいだよ〜♫」

「え?」

 

「ほわぁあ…」

その数秒後に、財原君が食堂に入ってきた。

「ごめん。寝直してたわぁ〜。ねっむ…」

「アナタ、昼食の集合時間はちゃんト守てクダサイ!!」

「ごめんねぇ〜?布団の誘惑につい負けちゃったよ〜。」

「こんな時に、呑気な奴なのだ。」

「ほへぇ…」

財原君、今までずっと寝てたのか。

「やあ景見クン、キミも遅刻かい?仲間だねー。」

「え、と…」

財原君は、僕と肩を組んできた。

「じゃ、お昼食べちゃおっかぁ。あれ?みんな食わねーの?」

「君を待ってたんだよ、財原君。」

「ごめーん。」

「じゃあ、全員揃ったし食べよっか。」

「そうだね。わたし、お腹すいちゃったよ。」

「いただきます。」

みんな、お昼ごはんを食べ始めた。

「ねえ、これおいしいね!」

「お、そうか?そいつぁ良かった!」

やっぱり、栄君の作った料理は美味しいな。

「ぐへへへ、日暮ちゃん…オレ、動物用のエサも作れるんだけど…興味ない?」

「え、そうなの!?」

「ぐへへ…」

「…貴方、反省してませんよね?」

「…すみません。」

うーん、こういう所が無ければなぁ。

 

 

 

 

「ごちそうさまでした。」

全員、昼食を食べ終わった。

そろそろ、洗濯が終わってる頃かな?

制服を取りに行こう。

 

 

 

 

【ランドリールーム】

良かった。ちゃんと汚れが落ちてる。

「おう、相棒!!ここにいたのか!!」

「あ、舞田君…」

舞田君も、洗濯しに来たのかな?

「お前も洗濯しに来たのか!?」

「えっと…洗濯しに来たっていうか、洗濯物を取りにきたんです。舞田君は、せ、洗濯に…?」

「おう、ちと学ランを汚しちまってな。」

舞田君が持っていた学ランには、真っ赤なシミがあった。

「ヒッ…!?」

ま、まさか…誰かとケンカして…!?

「あ?どうした相棒?」

「あ、あああ…!」

「ん?ああ、これか。多分、お前勘違いしてんな。昼メシのハンバーグのトマトソースをつけちまったんだよ。別に、ドンパチしたわけじゃねえから安心しろ。俺はな、一般人にはケンカ売らねえって決めてんだ。」

よ、良かった…

舞田君は、洗濯機の中に学ランを放り込んだ。

…やっぱり、いい体してるなぁ。

身体中に傷があるし…いかにも喧嘩番長って感じだ。

「お!?どうした相棒!?」

「…いえ。」

「しっかし、お前ホントに細いな!ちゃんと食ってんのか?」

「ひ、人並には…」

「ちゃんと食って動かねえからそんな細いんだよ!そうだ、学ランが乾くまでの間、一緒に走らねえか!?」

「えっ…」

「ただ走るだけじゃ大した運動になんねえし、これ付けて走るぞ!!」

舞田君は、鉄球がついた足枷を取り出した。

…いやいや、それ、囚人の動きを封じるための鉄球だから。

それつけて走るとか、無理でしょ…

っていうかそもそもなんでそんなもの持ち歩いてんの?

「お前の分もあるからな!」

ゑ。

「よし!表出るぞ相棒!!」

嘘でしょ?

 

 

 

 

【外エリア】

 

「っはは!!久々に思いっきり体動かしたぜ!!」

「はっ…はっ…」

え、ちょっと待って…

舞田君、なんであれで普通に走れんの…!?

僕なんて、歩くのもしんどいんだけど…

もう、肺が痛いし、意識が朦朧としてきた…

「…きゅう。」

「あっ!?おい、どうした相棒!?しっかりしろ!!」

「どうかなさいましたか?」

「あ、治奈!!ちょうど良かった!相棒が、一緒に走ってたら急に倒れたんだよ!!」

「ちょっと見せてください。…ああ、脱水症状ですね。涼しい場所で休ませて、水分を補給すれば大丈夫です。」

「すまねえ…ありがとな、治奈!!」

 

 

 

 

「…あう?」

気がつくと、知らない部屋にいた。

「ここは…」

「おお!!目が覚めたか相棒!!良かった!!」

「舞田君…」

「景見さん、目が覚めましたか?」

「あ、癒川さん…」

「あなたが脱水症状で倒れていたので、舞田さんに私の部屋まで運んでもらったんです。…ダメですよ?水分も摂らずに急に過激な運動をしたら。」

「ご、ごめんなさい…」

「相棒は悪くねえんだ!俺が無理矢理やらせたから…」

「舞田さん、普通の人は鉄球をつけて1時間も走るなんて無理です。これに懲りて、もう景見さんに無茶をさせないでください。」

「わ、悪い…」

「あの…癒川さん、舞田君…ありがとう、ございます…」

「いえ、私は、皆さんのお役に立ちたいだけですので。お礼なんてとても…」

「凶夜、ホントにごめんな!?」

「い、いえ…そんな…」

2人に助けて貰っちゃって…情けないな。

僕が弱いから、みんなに迷惑かけて…

せめて、みんなの足を引っ張らないようにしないと。

 

 

 

 

体調が回復したので、暇潰しに食堂に向かった。

食堂には、入田君と不動院君と神座さんがいた。

…何やってるんだろう?

「ここを押すとほら、ウォレットが使えるのだ。」

「なるほど…ありがとうございます入田殿。参考になりました。」

「……………財布、使えた………」

「あの…何をしているんですか…?」

「なんだ、オマエか景見!!今、この機械オンチ共に、手帳の操作方法を教えていたのだ!!」

「へ、へぇ…」

「私、こういったいんたぁねっと?という物を使った事がないので…入田殿に教えていただくまでは、自動販売機の飲み物すら買えませんでしたよ。」

「……………。」

「フン、オマエラ、今のご時世よくそれで生きてこられたな!!この情報化社会に、電子機器の一台も持っていないなんて、致命的だぞ!!」

「……………………。」

神座さんは、入田君のランドセルをバシバシ叩いた。

「わっ!何をする!!やめろ!これ、精密機器だぞ!!」

「神座殿、やめてください!向こうで、一緒に面子で遊びましょう?それでどうでしょうか?」

「…………………。」

神座さんは機嫌が直ったのか、不動院君の羽織を引っ張った。

…なんか、あの二人仲良いな。

古風同士、波長が合うのかな?

「よお、古風コンビにもやしコンビ!」

栄君が、食堂に入ってきた。

「もやしって、僕ちゃんの事か!?オマエ、僕ちゃんを愚弄するとはいい度胸だな!!」

「わ、悪かったって。冗談だろ?」

「それで!?何しに来たのだ!!」

「何って…晩メシの下ごしらえだよ。」

もう?早いな…けっこう時間かかるのかな?

 

「キャアアアアアアアアアアアアア!!!」

白鳥さんの声…?

「なっ!?白鳥ちゃんがピンチだ!!…噴水の方か。野郎共、噴水に行くぞ!!」

「え、あ、うん…」

「白鳥殿の危機…私も同行します!」

「…………。」

「ちょ、置いていくなぁ!!」

全員で噴水に向かった。

 

 

 

 

【噴水前】

 

「白鳥ちゃん!どうした!?」

白鳥さんは、顔面蒼白になって地べたに座りながら、指を差した。

「あ、ああああ…」

「ーーーーーーーーッ!!」

白鳥さんが指を差した先には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

噴水の前で、大量の血を流しながら力なく横たわった【超高校級の資産家】財原天理君がいた。

 

 

 

 

 

財原君は、お腹に包丁を刺されて、血塗れになって横たわっていた。

血の気も完全に引いていて、生きているとは思えなかった。

「さ…財原…君…?」

「うわぁあああぁあああ!!さ、財原が死んでるのだぁ!!」

「そんな…財原殿が…!」

「ひでぇ…!一体誰がこんな事を…!」

「……………。」

 

「なんだ?おい、何があった?」

「皆さん、一体何が…」

「れいみちゃん!大丈夫!?」

「麗美サンの声が聞コエました!!ご無事ですか麗美サン!!」

「ちょっと、何!?何があったの!?」

舞田君、癒川さん、日暮さん、朱さん、羽澄さんが駆けつけた。

「白鳥さん!?何があったんだい!?」

「麗美ちゃん!!どうしたの!?」

「何かあったのかい?」

「…全く、騒がしいな。」

穴雲君、叶さん、詩名君、ラッセ様も遅れて到着した。

「お、オマエラぁあ!!し、死人が出たのだぁあ!」

入田君は、泣きながら舞田君にしがみついた。

「は!?え、おい、嘘だろ!?天理!?」

「そんな、財原さんが…!」

「哇啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊!!?て、天理サン!?」

「そんな、てんりくんが、てんりくんがぁ…!」

「嘘でしょ!?そんな、テンリ…なんでアンタが…!」

「おい、白鳥ィ!!オマエが財原を殺したんだろ!?白状しろ!!」

「し、知らないわよ!私が発見した時には、すでに死んでたわよ!」

「嘘をつくな!!オマエが第一発見者なら、オマエが一番怪しいのだ!!」

「違うって言ってんでしょ!?このドチビポニーテールが!!」

「ちょっと!やめなさいよサイバ!!自殺の可能性だってあるでしょ!?」

「そんな…!」

穴雲君、叶さん、詩名君、ラッセ様、神座さんは落ち着いていた。

「あれっ…?叶さん…?」

「みんな、一旦落ち着いて。」

「こんな時に落ち着いていられるか!!天理が死んだんだぞ!!?」

「落ち着けと言っている。カマキリの卵が。…全く、こんな子供騙しに騙されるとは、貴様らは知能がサル以下なのか?」

「子供騙しだと!?テメェ、何を言って…」

「みんな、安心して。天理クンは、死んでないよ。」

「…え?」

「財原君。いくらみんなを騙せても、呼吸音が聞こえるオイラまでは騙せないよ〜♪もうバレてるから、そろそろ起きなよ〜♬」

 

 

 

「…プッ。」

 

「ギャハハハハハハハハハハハハハハハ!!!あー、ケッサクケッサク!!」

財原君は、一人で大笑いしていた。

「…は?」

「あーあ、もうちょっと騙せると思ったんだけど。案外バレるの早かったね。」

「財原…?お前、死んだんじゃなかったのか…?」

「なーに言ってるのさ栄クン!全部演技だよーだ!あ、これは全部血ノリで、血色がなかったのは血流操作ね?」

財原君は、ヘラヘラしながら種明かしをした。

「いっやぁ、キミ達の慌てふためいた顔といったらもう…!笑い堪えるの必死だったよ!」

「…。」

不動院君と朱さんが、殺気のこもったドス黒いオーラを放ちながら財原君に歩み寄った。

「天理サン、さきはよくも騙シテくれましたネ?…覚悟、できてますカ?」

「巫山戯た真似を…!武士の名において、貴様を成敗してくれる!」

「やだなぁ。俺はだよ?こんなすさんだ収監生活の清涼剤になればと思って…」

「言い訳など聞きとうない。潔く散れい!」

「うわぁ…ちょっと待ってー?俺、もしかして今晩のおかずになっちゃうパティーン?ねえ、ちょっとお話しようよ二人共…」

「覚悟!!」

「アチョーーーーー!!!」

「ぎゃー。フルボッコだドンー。」

わあああ…容赦ないな二人とも…

 

 

 

 

【食堂】

 

「あっはっは、いやー死ぬかと思った。いや、実際一回死んだね。うん。」

財原君…さっきまで原型無かったのに、ほとんど治っちゃったよ。

あの人の回復力どうなってるんだ。

「ねえねえ、不動院クン。もうしないから許してチョンマゲ!」

「…。」

「おお、こわいこわい。」

…メンタルの回復も早いみたいだ。

みんなで食べた晩ご飯はおいしかった。

ご飯の後は、大浴場に寄ってから部屋に戻った。

 

 

 

 

…今日は、白鳥さんにこき使われるわ、舞田君に鬼のようなトレーニングに付き合わされるわ、財原君が死んだフリするわ、すごく疲れる一日だったな。

…僕に平穏は訪れないのだろうか。






最原クンと財原クンは苗字が似てますが、読み方が微妙に違います。
最原クンは『サイハラ』で、財原クンは『サイバラ』です。
ここテストに出るよ!(大嘘)


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第1章(非)日常編⑤

収監生活3日目。

…今日も疲れる1日だった。

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

…今日はモノベルかぁ。

朝から口悪いな。

8時半までまだ時間あるし、適当に時間を潰そう。

 

 

 

 

【食堂】

 

「お、おはようございます。」

5分前に着いた。

「おはよー、凶夜クン!」

「オハヨーございます!!」

「おはようございます、景見殿。」

「おはよう。」

「おはよう〜♪」

「おはようございます。」

「おはよう、相棒!!」

叶さん、朱さん、不動院君、穴雲君、詩名君、癒川さん、舞田君が返事をしてくれた。

「…フン。」

ラッセ様は、食堂の隅でふんぞり返っていた。

…栄君は、厨房にいるのかな。

時間ぴったりに、白鳥さん、入田君、羽澄さん、神座さんが来た。

少し遅れて日暮さんが来て、15分遅れて財原君が来た。

「はぁ…君ね、ちょっとは時間を守って行動してよ。」

「ふわぁ…ごめんねぇ?」

全員が揃ったので、朝食を食べた。

 

 

 

 

食事の後は、癒川さんが淹れてくれたお茶を飲んで、みんなでティータイムを満喫していた。

「うん、おいしいね。」

「それは良かったです。」

「はぁー。ホントに、幸せだねぇ。収監されてるとは思えないや。この時間がずっと続けばいいのになぁ。」

 

『そうは問屋が卸さないよ!!』

不快なダミ声が鳴り響いた。

そして、二匹のぬいぐるみが、回転しながら飛び出してきた。

『呼ばれて出てきてなんとやらー!モノクマ学園長、参・上☆』

『フッフッフ。ご機嫌よう皆様。』

「あーあ、うるさいのが来たよ。」

「皆サン、こんなウルサイぬいぐるみは無視しましょう!」

『うわっ!羽澄サンも朱サンもひっど!クマあたりとトラあたりがキツくない!?』

「フン、貴様らの茶番に付き合う気はない。…大体、俺達をここに閉じ込めてふんぞり返っているようだが、今すぐ俺を解放しないと、痛い目を見るぞ。俺を拉致監禁なんかしたら、俺の国の軍隊が動くぞ。」

「そうだよ。こんな事をして、警察が動くとは考えなかったのかい?」

『フッフッフ。軍隊に警察ですか。何をそんな物をアテにしているんですかねぇ?』

『残念でしたー!!ここへは、警察救助隊陸軍海軍空軍自衛隊だーれも、未来永劫辿り着く事すらできません!!オマエラは、何があってもコロシアイを続けられるから、安心しなよ!』

「うそ…!」

「…で?用件はそれだけ?私達に、そんな事を伝えにきたの?」

『チッチッチ!本題はまだ残ってるんだな!』

「本題?」

『…オマエラさあ、もう3日だよ!?なんで誰一人として死んでないわけ!?昨日は、コロシアイが起きたのかと思ってちょっと期待したけど、結局ガキくさい原のいたずらだったしさぁ!』

『アナタ達には、まるで緊張感というものがありませんね。外に出たいとは、少しも思わないのですか?』

「そりゃあ外には出たいけど…アタシらに殺人犯になれっていうのかよ!?」

「モノクマ!モノベル!テメェらは、俺達にコロシアイなんてくだらねェ事させたいようだが、俺達は何があっても絶対仲間を殺したりなんかしねェ!!」

 

『うぷぷ…仲間、ねえ。オマエラは、本当に16人全員が仲間だと思ってるの?』

「…え!?」

『フッフッフ。この中に、裏切り者がいるとは考えなかったのですか?』

「う、裏切り者…!?」

「そんな…」

みんなが、お互いの顔を見合わせた。

この中に、裏切り者が…!?

「フン、くだらないな。貴様は、そんな事を言ってコロシアイをさせようという魂胆なのだろう?言っておくが、俺はその程度で人を殺すほど理性のない獣に成り下がった覚えはないぞ。」

『まあ、当然そうなるよね!いきなりクラスメイトを殺せって言われても、さすがに抵抗があるよね!まだ、足りない物があったんだよ。』

「足りない物…?」

 

 

 

動機だよ!!動機が足りなかったんだ。』

 

「動機…?」

『今回アナタ達にプレゼントする動機…それはズバリ、『希望ヶ峰学園への再入学資格』です!!』

「さ、再入学…?」

『オマエラは、問題を起こしたせいでここにいるの。もう、不良生徒通り越して極悪生徒だね!本来、刑期を終えない限り、希望ヶ峰学園に再入学する事はできません!しかし、今回は特例中の特例!なんと、今回の入学生の定員に一人空きが出たのです!そこで!今回に限り、最初に誰かを殺した生徒のみをその枠に入れてあげるよ!』

「人を殺したら退学だって言ってたのに…すごく都合いいね。」

『それだけではございません!誰かを殺した生徒は、今までの罪を全て無かった事にして、希望ヶ峰学園の中でもエリートを寄せ集めたクラスに入学させて差し上げます!』

「へぇ〜。じゃあ誰かを殺せば、俺らみたいな社会のゴミでも、希望ヶ峰の優等生になれるんだ〜?」

『そういう事!…オマエラも、今頃親や友達に失望されてるかもよ?その信用を取り戻すチャンスだよ?』

『ああ、そうそう。言い忘れていましたが、実は別の学校の優等生をスカウトするという案も出ているのですよ。誰を定員の枠に入れるかは、明日の午前8時に行われる職員会議で決まります。職員会議までに犠牲者が出なければ、今の話は無かったことになりますので、もし再入学を狙っているなら早く行動した方がいいですよ?』

「なっ…!」

 

二匹が僕達に提案してきた内容。

それは、明日の午前8時までに誰かを殺した人だけが、希望ヶ峰学園のエリートになれるというものだった。

僕は、もともとこの忌々しい才能でスカウトされたんだ。

だから、誰かを殺してまで再入学したいという気持ちはわかなかった。

でも、もし誰かがどうしても再入学したいんだったら…

「再入学だと!?くだらねェ、俺達がそんなモンのために人を殺すとでも思ってんのか!?」

『うん、絶対殺すね。舞田クンにとっては関係ない話だろうけど、すでにこの中に殺人を計画してる人がいるはずだよ…うぷぷぷ!それじゃ、まったねー!』

『フッフッフ、ご機嫌よう皆様!!』

二匹は、意気揚々と去っていった。

 

「クソッ!!アイツら、好き勝手言いやがって…!」

「しかも裏切り者って…!誰なんだよ…!?」

みんな、パニック状態になっていた。

「神座!!オマエが裏切り者なんじゃないだろうな!?」

「…………?」

「やめてください入田殿!!一体何の根拠があって、神座殿を裏切り者扱いするのですか!?」

「だって、コイツは唯一自分の才能を明かしてないのだ!!それに、このご時世ネットを知らないのもおかしいだろ!?」

「……………。」

「だからって、神座殿が裏切り者だとは限りません!」

「そうだよ入田君。落ち着きなよぉ。」

みんなが裏切り者探しをしている中、栄君は呟いた。

 

「…な、なぁ…ほ、本当に、誰かを殺したら…再入学できんのかな…?」

「なっ!?テメェ、何言ってんだ陽一!!テメェ、冗談でも許さねェぞ!!」

「でも、オレ達は、元々冤罪でここに閉じ込められてんだろ!?再入学すりゃあ、無実を証明できるかもしれねェし、汚名を返上できんだぞ!?」

「なんだと!!?」

「ピィ!ピィピィ!!」

「ちょっと、やめてよないとくん!よういちくん!翠もやめてって言ってるよ!!」

「…フン、下衆が。まるで獣だな。付き合いきれん。」

「お待ちください国王陛下!!」

「止めるなメガネ。自分の身くらい、自分で守る。」

「ヒュー♪修羅場修羅場ー♫」

どうしよう…

みんなパニックになってるし、ラッセ様はどっか行こうとしちゃうし…

どうすれば…

「あ、あの…」

僕は、勇気を出して発言した。

全員が、僕の方を見た。

「…えっと…僕、この中の誰かがどうしても再入学したいんだったら、犠牲になっても…」

僕がそう言った瞬間…

 

 

 

ピシャッ

 

 

 

…え。

 

左頬に痛みが走った。

目の前を見ると、叶さんが僕を睨んでいた。

…僕は、叶さんに叩かれたのか。

「か、叶さん…?」

「命を粗末にしないで。キミが死んで一体何になるっていうの。」

叶さんは、僕の目を見て力強く言った。

「…みんなも、一旦落ち着いて。そうやって言い争ってたら、クマさん達の思うツボだよ。」

「けどよ、狛研ちゃん!この状況、どうすりゃあいいんだよ!?裏切り者がいるかもしれねえんだぞ!」

「そうなのだ!!それに、誰かが僕ちゃん達の中の誰かを殺すかもしれないんだぞ!?」

「クマさん達は、そうやってボク達が疑心暗鬼になるのを狙ってそんな事を言ったんだよ。現に、裏切り者がいるっていう証拠も、クマさん達が殺人犯を希望ヶ峰の生徒として受け入れる保証も無いじゃない。」

「それは…そうだけど…」

「ボクはね、この中に裏切り者がいたとしても、16人全員でここを出たいと思ってるよ。」

「何を甘ったれた事を言っているんだ貴様は。そんな事、無理に決まって…」

「無理でも甘くたっていいよ。ボクは、誰に何と言われようと、絶対にこの意見は変えない。でも、それを現実にできるかどうかはみんな次第なんだよ。今みたいにみんなが言い争ってたら、16人全員でここを出るなんて、本当に無理になっちゃうんだよ!だから、こういう時こそ、みんなで一致団結しないとダメなんだよ!!」

「…。」

叶さんの発言の後、しばらく沈黙が続いた。

「…っあー、ダセェ。さっきのオレ、完全にダサかったわ。オレも、やっぱりこの中の誰かが欠けるなんて嫌だよ!」

「俺もそう思ってたぜ、叶!!コロシアイなんて、そんなくだらねェ事に躍らされてる場合じゃねえよな!!」

「ったく、カナエ!アンタが言わなきゃ、アタシが言おうと思ってたんだからね?」

「わたしも、かなえちゃんに賛成!やっぱり、みんな一緒がいいよね!」

「皆さん、協力してここから脱出しましょう!」

「ワタシ達【超高校級】が揃ってイテ、できない事ナンテありませン!やりましょう皆サン!」

「私も、皆さんのお役に立ちたいです。」

「…。」

「全く!オマエラは、僕ちゃんがいないとまるでダメなのだ!!」

「うんうん、やっぱり平和が一番だねェ。」

「…フン、勝手にしろ。」

「わ、私だけ仲間外れとか、ナシだからね!?」

「俺もみんなの事大好きだよー。」

「お前、それ本当かよ嘘くさい原!」

…みんな、叶さんの意見に賛成のようだ。

 

「…狛研さん。君の意見は、完全に理想論だよね?」

そう言ったのは、穴雲君だった。

「おい、穴雲!テメェ、何言って…」

「…でも、そんな理想論だからこそ、叶えたいって思っちゃうよね。もちろん、僕は賛成だよ。協力させてくれ。」

「…もちろん!」

穴雲君…いい事言うなぁ。

 

「おい、みんな!今日の晩メシはご馳走だから、ちゃんと腹空かせとけよ!」

「じゃあ、昼は抜きでいいかな?」

「えー?それだとお腹減って逆に気持ち悪くなるでしょ?」

「じゃあ、各自で適当に何かつまむ感じでいいんじゃね?」

「そうだね、じゃあとりあえず自由時間にしよっか。6時半に、食堂に集合ね。」

 

 

 

 

自由時間になったので、僕は早速叶さんに声をかけた。

「あの…叶さん。」

「ん?あ、凶夜クン。どうしたの?…あ、もしかして、さっきの事で怒ってる?さっきは引っ叩いちゃってごめんね?」

「いや…そうじゃなくて…少し、お話しませんか…?」

「お話?いいよー。じゃあさ、とりあえずボクの部屋で話さない?」

「か、叶さんの部屋で、ですか…!?」

「え、何?マズかった?」

「いや…全然そんな事はないんですけど…」

「じゃ、早く行こうよ!」

「あ、待ってください…!」

 

 

 

 

【狛研叶の独房】

 

「ここがボクの部屋だよ。ゆっくりしてって!」

「は、はい…」

ここが叶さんの部屋…

部屋は、僕の部屋と似た感じだな。

多少は女の人用の造りにはなってるけど…

テーブルにはスナック菓子が、本棚には教科書と漫画と推理小説が入っている。

…推理小説とか読むのかな。

…ん?

浅野蘭馬…?

「あはは、ボク、推理小説とか全然読まないんだけどね。一応、お父さんの作品だから置いてあるのかな?」

「あ、あの…叶さん。」

「ん?なあに?」

「あの…これ、い、いりませんか…?」

僕は、四つ葉のクローバーのペンダントを渡した。

「え?ボクに?いいの?」

「えっと…これを渡したくて、声をかけたんです。」

「ありがとう!大切にするね!わ、四つ葉だ!ボク、四つ葉のクローバーなんて初めて見たよ!」

「き、気に入ったなら良かった、です…」

 

「あのさ。」

「へっ!?」

緊張して、つい変な返事をしてしまった。

…カッコ悪いなぁ。

「プレゼント貰った後で質問するのも悪いけど…なんでさっき、あんな事言ったの?」

叶さんは、僕に詰め寄って質問してきた。

「あ、あんな事…?」

「誰かが再入学したいなら、自分は死んでもいいとか言ってたでしょ?ねえ、なんでそんな事言ったの?ちゃんと答えてよ。」

「…だって、僕は【超高校級の不運】だから…僕の不運は、自分以外の人も巻き込む不運なんです。…僕なんて、本当は生きてちゃいけないんです。だから、ここに来る前は、何度も死のうとしました。でも、勇気がなくて、いつも失敗しました。僕が死んだって別にどうでもいいし、それで誰も不幸にならないなら、僕は殺されてもいいと思って…」

「何言ってんの?」

「…え?」

「キミが死んだって別にどうでもいい?それで誰も不幸にならない?何バカな事言ってんの?キミが死んだら悲しむ人がどれだけいるかって、考えた事ある?キミの事を大事に思ってる人の気持ちを考えた事ある?キミは、その人達の思いを踏みにじろうとしてるんだよ。その事を、ちゃんと自覚してよ。」

「…そんな人、いるわけないじゃないですか。友達なんていないし、家族も僕に関心がない…僕なんて、いない方がいいんです。」

 

「そんな事ないよ。僕は、凶夜クンが死んじゃったら嫌だよ。」

「…え。」

「言ったじゃん。ボク達はもう友達だって。友達が死んで悲しまない人がどこにいるっていうのさ?みんなで一緒に生きてここを出るって約束したでしょ?」

「…!!」

そんな事を言われたのは、生まれて初めてだった。

誰も、僕を必要としてくれる人なんていなかった。

でも叶さんは、たった3日間同じ学園で過ごしただけの僕を、友達と呼んでくれた。

こんな呪われた才能を持つ僕に、一緒に生きようと言ってくれた。

僕は、涙が溢れて止まらなかった。

「…叶さんは、なんで…そんな事を言ってくれるんですか…?」

「なんでって…別に、思った事をそのまま言っただけだよ。まあ、強いて言うなら…キミのその態度が気に入らなかったからだよ!」

「ぼ、僕の…態度が…?」

「星也クンが言ってたから知ってると思うけど、ボク、事故でお父さんとお母さんを亡くしてるんだ。だから、自分の命を大切にしない人が嫌いなの。」

「あの…叶さんのお父さんって…」

「えへへ、気になる?実はね、ボクのお父さんは、かの有名な名探偵『浅野蘭馬』なんだよ!」

「えっ、あっ、え!!?」

浅野蘭馬…

確か、10年以上前に大活躍した、世界中を旅してはありとあらゆる難事件を立ち所に解決した名探偵だよね。

その天才的な推理力と柔軟な発想力から、『現代日本版シャーロック・ホームズ』とも呼ばれた程の偉人だ。

趣味で書いたシリーズ物の推理小説『バートン伯爵のティータイム』が大ヒットして、1億部以上売れたんだよな。

確か、名門貴族のバートン家のお坊っちゃまでありながら、助手兼執事のセバスと一緒に活動をしている私立探偵のアレクサンダー・ロイ・バートン伯爵が、午後3時のティータイムまでに事件を解決するというストーリーだ。

トリックや伏線回収がきちんと作り込まれていて、かつちょっとしたギャグシーンもあって、老若男女が楽しめる名作だ。

そんなすごい人が、叶さんのお父さんだったとは…

ちょうど10年前、交通事故で亡くなったらしいけど…

「あれ?でも、苗字…」

「ああ。引き取られる時苗字変えたからね。ボクの元の名前は、浅野叶だよ。」

「そう、なんですか…」

「…お父さんとお母さんはね、事故に遭った時、ボクを庇って死んじゃったんだ。」

「えっ…」

「ボクは、生まれつき運が悪くて…よく、お父さんとお母さんにも迷惑かけてたんだ。だから、お父さんとお母さんが事故に遭ったのも、きっとボクのせいだって思った。でもね、お父さんが死ぬ前に言ったんだ。立ち止まってもいい。どんな時でも、前を向いて生きろ。そうすれば、きっと幸せになれるからって。…この帽子も、その時にお父さんに譲ってもらったんだ。お父さんが言ってくれたから、どんな逆境も前向きに考える事にしたんだ。お父さんの言葉のおかげで、今のボクがあるんだ。凶夜クンも、前向きになろうよ!」

「…強いね、叶さんは。僕は、そこまで前向きになれないよ…」

「違うよ。ボクがこうやって前向きでいられるのは、キミのおかげなんだよ?」

「…え?」

「はじめは自殺なんて考えてたキミが、みんなと仲良くしたり、ここから出ようと頑張ったりしてたから、ボクも負けてられないぞー!って思ったんだよ?」

「そんな…僕なんて、とても…」

「あ、そうだ。これあげるよ。」

叶さんは、ボクにペンダントをくれた。

さっき叶さんにあげたのは、クローバーの押し花の、金のペンダントだったけど、貰ったのは白いアネモネの押し花の、銀のペンダントだった。

「さっきくれたプレゼントと被っちゃってごめんね?ガチャを引いたら出てきたんだ。凶夜クンにあげるよ。」

「なんで僕に…」

「白いアネモネの花言葉は『希望』なんだって。キミには、もっと希望を持って欲しいからさ!」

「あ、ありがとうございます…」

「それにホラ!お揃いでしょ?」

叶さんは、手帳の機能を使っていきなり写真を撮った。

「わっ、ちょっ…勝手に撮らないでください…!」

「えへへ。…あのさ、前から思ってたけど、もう敬語使うのやめない?」

「えっ…」

「ボク達、友達同士でしょ?友達に敬語なんて、堅苦しいよ!お互い、これからはタメ口で話そうよ!」

「は、はい…」

「はいじゃなくてうん、でしょ?」

「…う、うん。」

「あはは、凶夜クンと一緒にいると楽しいね!今日は、色々話してくれてありがと!」

「…ぼ、僕も、叶さんの話が聞けてよかったよ。…あ。そろそろ夕ご飯の時間だし、食堂にいかない…?」

「あ、ホントだ!一緒に行こ!」

僕達は、二人で食堂に向かった。

 

《狛研叶の好感度が1上がった》

 

 

 

 

「お、来たなお前ら!」

今回の夕食は、穴雲君、朱さん、癒川さんも手伝ったのか。

テーブルの上には、色々な料理が並んでいた。

…ステーキに、パスタ、唐揚げ、お寿司、小籠包…ホントに色々あるなぁ。

「今日は食い放題だ!!好きなだけ食ってくれ!!」

「みんな、モノクマ達に余計な事言われて気分が落ち込んでるでしょ?だから、今日はパーティーでもして気分を盛り上げようと思ってさ。さすがに、これだけの量となると、4人で作らないと大変だったけどね。」

「おう!遠慮せずどんどん食え!残したら許さねェぞ!」

「わーい!!」

みんな、テーブルの料理を取り皿に取り始めた。

「よっしゃ!どんどん食うぞ!陽一、おかわりはあるんだろうな!?」

「もちろん!リクエストがあればソッコーで出してやるよ!」

「わー、このオムレツふわふわだね!」

「どれもマジうまそうなんだけど!?うっわー迷う!」

「…ほう。ロールキャベツに、鰊とジャガイモの炒め物まであるのか。」

「あら。パスタは食べなくていいの?」

「黙れ。俺はパスタは好まん。」

「そうよね。共食いになっちゃうもの。」

「…貴様、いい加減にしろ。」

「フライドチキンとカレーは絶対食べるのだ!」

「ふむ、寿司に田楽に冷奴…和食の種類も豊富ですね。神座殿、何が食べた…」

「イェーイ!おでんツーンツン!」

「やめなさい財原殿!!」

「……………。」

「うーん、どれも美味しそうな匂いだねぇ。目で楽しめないのが残念だよ。」

みんな、楽しそうだなぁ。

「ねえ見て凶夜クン!向こうにチーズフォンデュがあるよ!タワーのやつ!」

「う、うん…」

僕は、叶さんに誘われて、料理を取りに行った。

「…こんな感じかな。」

「凶夜クン!一緒に食べよ!」

「わっ…」

叶さんは、料理がてんこ盛りのお皿を両手に持ってきた。

「叶さん…そんなに食べれるの?」

「え?これくらい普通だよ。デザートも食べたいから、ちょっと控えめによそっちゃった。」

…これで控えめって。

叶さんって、大食いだったんだね。

「いっただっきまーす!!…んー!おいひー!凶夜クンも食べてみなよ!めっちゃおいしいよ!」

「う、うん…」

僕は、叶さんと一緒にパーティーの料理を食べた。

パーティーの料理は、すごくおいしかった。

…とてもおいしくて、涙が溢れてきた。

「…あの、叶さん。」

「何?」

「…絶対、みんなで一緒に出ようね。」

「もちろん!!約束だよ!!」

「…うん!」

「あ、じゃあボクデザート取ってくるから!凶夜クンも何か欲しい物ある?」

「あ、えと…じゃあ、小さめのケーキをいくつか…」

「オッケー!」

叶さんは、デザートのコーナーに走っていった。

 

…叶さんは、こんな僕に、一緒に生きようと言ってくれた唯一の人だ。

今まで、誰もが僕の事を疫病神みたいに忌み嫌ってきた。

誰も僕の事を望んでくれなかった。

僕も、自分なんていない方がいいと思っていた。

でも、僕を必要としてくれる人はここにいた。

叶さんが言ってくれたから、僕は生きたいって思えたんだ。

僕にとって、叶さんは希望そのものだ。

…うまく言葉にできないけど、僕は彼女の事が…

 

「お待たせ!」

「わっ…」

「ん?どうしたの?」

「な、なんでも…ないよ…」

「あはは、なんか凶夜クンって面白いね!」

「お、面白い…?」

「ボク、キミと友達になれてよかったよ。」

「えっと…僕も…」

「ホント!?」

叶さんと一緒に喋りながら、デザートを食べた。

パーティーの食事が全部なくなった頃、みんな解散して自分の部屋に戻った。

 

 

 

 

【独房】

 

…今日は楽しかったな。

パーティーなんて、参加したのは久しぶりだよ。

…それに何より、僕なんかが叶さんの友達になれた。

僕は、やっぱり生きたい。

みんなで一緒にここを出たい。

…そして、やらなきゃいけない事もできた。

今は恥ずかしくて言えないけど、無事出られたらちゃんと叶さんに伝えるんだ。

僕は君の事が好きだ。君と一緒に生きたいって。

 

 

 

スッ

 

…?

 

なんだろう、これは…

紙?

誰かが挟んだのかな?

 

…え。

 

 

 

 

【独房】

 

あー、ちょっと食べすぎちゃったよ。

陽一クンのご飯が美味しすぎて、つい調子乗っちゃった。

凶夜クンとのお話も楽しかったし…今日は、ホントに最高の一日だったなぁ。

そうだ。また陽一クンに、パーティーやりたいってお願いしてみよっかな?

ここから出たら、今日よりもっとすごいパーティーを開いて…

あ、そうだ。凶夜クンの好きな食べ物とか聞いとかないとね。

あの子、ひとりじゃ陽一クンに好みとか言い出せないだろうし…

今度のパーティーは、あの子に好きな物食べさせてあげたいな!

 

 

◇◇◇

 

 

収監生活4日目。

うーん、今日も目覚めのいい朝だね!

…って言っても、やる事特に無いし、漫画でも読もっかな。

えーっと、確か24巻まで読んだっけ。

 

『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』

 

うーん、今日もクマさんの放送がうるさいね!

昨日はベルさんだったけど…もしかして、ローテーションしてる?

…まあいいや。

せっかく朝早く起きたわけだし、たまには陽一クンを手伝いに行こっかな!

そうだ、凶夜クンも一緒に連れて行こっと!

 

 

 

 

【景見凶夜の独房】

 

ピンポーン

 

あれ?返事がない…

いつもは、インターホンを一回鳴らしたら返事してくれるのに…

 

ピンポンンピンポンピンポーン

 

…。

寝てるのかな?

それとも、すでに別の場所にいるとか…

まあいいや、何も無理に一緒に行く事ないよね。

今日は一人で行こっと!

 

 

 

 

【食堂】

 

食堂にいたのは、陽一クンだけだった。

「おはよう陽一クン!」

「…。」

陽一クンは、なぜかボクを疑いの目で見てきた。

「陽一クン?どうかした?」

「あ、ううん!?なんでもねえよ!おはよう狛研ちゃん!」

「うん、おはよう!…って。」

陽一クンは、後頭部を押さえた。

「大丈夫?」

「あ、いや…これは、ちょっと転んで床に頭をぶつけちまって…大した事ねェよ!」

「…ならいいんだけど。」

「それより、今日の朝メシは、オリジナルの超健康メニュー考えたから、それにしようと思ってんだ!」

「へえ、楽しみ!」

「ヘヘッ。本来なら、そんなに人に見せびらかしたりはしねェんだけど…オレの次に来た狛研ちゃんには、特別に見せてやるよ!研究室に置いてあるから、一緒に見てくれ!」

「わーい!」

陽一クンが一から考えたレシピかぁ。

どんなのか楽しみだな!

 

 

 

 

【超高校級の栄養士】の研究室

 

陽一クンは、部屋の鍵を開けた。

「さっ、遠慮なく入ってくれ!…フフン、ここはオレにとってのアトリエだぜ。料理をする時は、常に情熱を持って…」

陽一クンは、天狗になって延々と研究室自慢をした。

…その時だった。

 

 

 

「ーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

 

 

陽一クンは、目を見開いて顔を真っ青にしていた。

「…ん?陽一クン?どうし…」

 

「見るな!!」

 

陽一クンは、顔面蒼白になりながらも、力強く叫んだ。

「見るなって…一体何を…」

ボクは、興味本位で研究室を少し覗いた。

 

 

 

 

 

「ッ…!!」

 

ボクの目には、信じられない光景が飛び込んできた。

10年前のあの日を鮮明に思い出させるような、強烈な緋色。

わずかに匂う、思わず吐き気を催すような腥い匂い。

深く突き刺さった包丁が、照明の光を浴びて不気味なほどギラギラと輝く。

その全てが、ボクの中の何もかもを容赦なく破壊した。

 

…昨日まで、元気だったのに。

 

まるで、昨日までの出来事が虚構だったかのように。

その人は、糸が切れた操り人形のように、力無く横たわっていた。

そして、何も映さなくなった瞳を、ボクの方に向けていた。

 

…どうしてキミが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の不運】景見凶夜クンは、そこで死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上15名+1匹ー

 

 

【挿絵表示】

 



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第1章 非日常編①(捜査編)

…嘘でしょ。

 

なんで凶夜クンが…

 

昨日まで、一緒におしゃべりしたり、ご飯食べたりしてたのに。

絶対にみんなでここを出るって約束したのに。

みんなでパーティーを開いて、楽しい事いろいろやって…まだ、キミと話したい事だってあったのに。

なんでキミがこんな事に…!

 

「嘘でしょ…ねえ、凶夜クン!起きてよ!!…本当は死んでなんかないんでしょ?ねえ!!」

 

ボクは、凶夜クンをゆすり起こそうとした。

凶夜クンの身体には、体温が無かった。

ボクの方に向けられたその目は、瞳孔が開ききっていた。

「そんな…!いやだ、いやだいやだいやだ!起きてよ…お願いだから、起きてよ凶夜クン!!」

ボクも、本当はわかっていた。

凶夜クンは目覚めるわけがないって事は。

でもその事実を、受け入れたくなかった。

 

「クッソ…!景見…なんでだよ…!チクショウッ!!」

 

『うっぷぷぷぷ!!早速犠牲者が出ちゃったね!』

『フッフッフ。アナタ達、仲良しクラブじゃなかったんですか?【超高校級】ともあろう者が、こんなにあっさり殺されて…情けないですね全く!』

「テメェら…!一体何しに来やがった!?景見に何をした!!」

『ちょっと!やめてよね栄クン!ボク達は、景見クンを殺したりなんかしてないよ!冤罪だよ冤罪!』

「うるせェ!!テメェらの差し金だろうが!!」

『全く…人が1人死んだだけでこれですか。…それにしても、【不運】が最初の犠牲者になるとは…やはり、彼は最期まで自分の運命に抗えなかったようですねェ。おお、愚か愚か。』

「黙れ!!」

『おやぁ?狛研サン?』

「凶夜クンを…ボクの親友をバカにするな!!」

『うぷぷ、親友…ねえ。そんな甘ったれた事言ってるから、クラスメイト一人守る事すらできなかったんでしょ?ほら。悔しかったら何か面白い事してみなよ。…ま、何の才能もないくせにラッキーで希望ヶ峰にスカウトされたキミじゃムリだろうけど!』

「ッ…!!」

何もしなかった。

…いや、何もできなかった。

ここで攻撃したらどうなるかは、考えるまでもなかった。

『おや、耐えますか。案外利口じゃないですか。…それとも、ただの意気地なしですかね?』

「テメェ!!」

『おお、こわいこわい。狛研様と違って、栄様は血気盛んですねェ。』

「…それで、キミ達は一体何をしに来たの。」

『おやぁ?狛研サン、仲間を殺されたってのにやけに冷静じゃん。やっぱり、その状況把握能力は名探偵の父親譲りかな?』

「いいから答えて!!」

『…仕方ないですねェ。それは今から説明しますから、少々お待ちください。』

 

「ねえ、何があったんだい?」

後ろから星也クンが話しかけてきた。

「穴雲…!!」

「栄君が食堂にいないから心配で見に来たんだけど、中で何が…」

星也クンが、部屋の中を覗いた。

「ッ…!?」

星也クンは、顔を真っ青にして、口を手で押さえた。

「嘘だろ…!?…それ、景見君…だよね?」

『…フッフッフ。これで3人目ですね。』

「モノベル!?それに、モノクマ…!?何がどうなって…」

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『オマエラ、死体が発見されました!!2階の【超高校級の栄養士】の研究室にお集まりください!!』

 

「なんだ…!?今の放送は…!」

『うぷぷ、死体発見アナウンスだよ。このアナウンスは、3人以上が死体を発見した際に流れます!』

「3人…?なんですぐに放送しないの?」

『うぷぷ…それは後でわかる事だよ。…おっと、全員揃ったみたいだね。』

「きゃあぁああああああああ!!?」

「嘘でしょ…!いやっ…!きょうやくんが…なんで…!」

「ピィ!ピィピィピィ!」

「そんな…景見殿…!」

「ひぃいいぃい!!ひ、人がし、死んでるのだぁあ!うぷっ…」

「嘘でしょ…なんでキョウヤが…アタシ、こんなの無理…!」

「嘘だろ…!?そんな、相棒…おい、凶夜…起きろよ…凶夜ぁあああああああ!!!」

「そんな…!景見さんが…!」

「…フン。これだから凡愚は…」

「…この匂い…もしかして、人が死んだのかい?」

「っわー!早速景見クンが他界他界しちゃったねー。脱落者1名ーっと!」

「………………。」

驚きのあまり悲鳴を上げる麗美ちゃん。

その場に座り込んで泣く彩蝶ちゃん。

凶夜クンの遺体の前で鳴く翠ちゃん。

顔を真っ青にしながら凶夜クンを見る剣クン。

あまりの出来事に、泣きながら嘔吐する才刃クン。

顔を真っ白にして倒れ込む踊子ちゃん。

泣き叫びながら凶夜クンに駆け寄る成威斗クン。

顔を両手で覆う治奈ちゃん。

腕を組んでそっぽを向くラッセクン。

戸惑いながら状況を確認する柳人クン。

余裕な様子の天理クン。

黙ったままのゐをりちゃん。

「…癒川さん。」

「ッ…!ダメ…!亡くなってから時間が経ちすぎていて、蘇生できません…!」

「そんな…」

「はっはっは!天理サンの次は凶夜サンですカ!?全く、二人トモ死んだフリなんて、悪趣味ですネ!その手のイタズラにハもう騙サレませんヨ!起きナサイ凶夜サン!」

雪梅ちゃんは、今回もいたずらだと思っているみたいだ。

「朱さん、違うんだ。景見君は本当に…」

『うぷぷ、イタズラ?バカじゃないの?本当に死んでるに決まってんじゃん!』

「っえ…!?ウソ、ウソですよネ!?凶夜サン!?凶夜サン!起きてクダサイ!!」

『フッフッフ。無駄ですよ。このご時世、実は生きてましたなんてオチが許されるわけないでしょう。』

闭嘴(黙れ)‼︎アナタ達、凶夜サンに何しましタ!?ワタシ、オマエラ許さないでス!!」

「テメェら、よくも俺の相棒を…ブン殴ってやらぁあああああああああ!!!」

『ちょっとちょっと!言い掛かりはよしてよ朱サンに舞田クン!本当はもうわかってるでしょ?』

 

『景見クンを殺したのは、オマエラの中の誰かなんだよ!』

 

「…そんな!」

『フッフッフ。午前8時までに犠牲者が出たので、犯人の方を希望ヶ峰学園のエリートクラスに編入させて差し上げます!』

「クソッ…犯人の野郎…!景見を殺して、ここから出ようってのかよ…!」

『おやあ?悔しいみたいだね、栄クン!そんなキミに朗ー報ー!!』

「…朗報?」

『オマエラ、校則の6番目を覚えてる?』

「…『仲間の誰かを殺したクロは『退学』となるが、自分がクロだと他の生徒に知られてはならない』…だったか?」

『その通り!今から、クロがちゃんとその校則を守れていたかどうかの審査を行うのです!オマエラには、今から景見クンを殺した犯人が誰なのか、一定時間捜査してもらうよ!』

『捜査時間を過ぎたら、全員参加型の『学級裁判』を執り行います。そこでクロが誰なのかを議論し、最終的に投票でクロを決めていただきます。多数決の結果、そのクロが正解だった場合、校則第6項目めに違反したとみなし、クロの生徒をおしおき…つまりは処刑させていただきます。』

「なっ…!?なんだよそのルール!聞いてねェぞ!!完全に後付けじゃねえか!!」

『うぷぷ、殺人犯をみすみす逃すわけないじゃん。ルールを守れなかったんなら、ちゃんとそれ相応の罰は受けてもらうよ!』

「今、正解だったら…と仰いましたけど…もし不正解だった場合はどうなるのですか?」

『フッフッフ。その場合は、クロは約束通りエリートクラスへの進学、そしてそれ以外の皆様を処刑します!』

「はぁ!?何よそれ…!アタシ達に死ねって言ってるようなもんじゃん!」

『うるさいなぁ!そんなに死にたくないなら、クロを見つければいいんだよ!!』

「見つけるって言っても…俺達は、探偵や警察じゃないんだぜ?ハッキリ言って無理ゲーだろ。」

『あ、そう?じゃあ、いい物プレゼントしてあげるよ!ザ・モノクマファイル!!』

 

ヴーーーーーーッ

 

手帳が鳴ったので確認すると、手帳に新しいアプリが入れられていた。

『そのファイルに、事件当時の詳細が書かれてあるから、参考にしてみるといいよ!』

『フッフッフ。それでは、ご機嫌よう!!学級裁判でまた会いましょう!!』

クマさんとベルさんは、笑いながら去っていった。

「どうしよう…犯人を見つけられなかったら、アタシらが処刑されちゃうよ…!」

「わたし、まだきょうやくんが死んだ事で、全然頭が回らないのに…!」

「…フン。捜査したくない奴は勝手にしろ。その代わり、捜査を拒否するなら、学級裁判に参加する資格も無いと思え。」

「そーそー。自分は何もしないくせに、言いたい事だけ言おうなんて自分勝手なマネさせるかっつーの。あ、言っとくけど、俺は問答無用で捜査に参加しなかった奴に投票するからねー?」

「っえ…!?それって、いくら発言しても勝手に犯人にされちゃうって事なのか!?そんなの嫌なのだ!!僕ちゃんは、捜査やるぞ!!」

「私も…こんな所で死ぬわけにはいきません。捜査をお手伝いします…!」

「私も、犯人の捜索に尽力致します。武士たる者、たとえ級友であろうと、悪行を働いた者を赦す訳には参りません。」

「俺はもちろん参加するぞ!!相棒を殺した奴は、誰であろうと許さねえ!!凶夜の仇!!」

 

ボクは、凶夜クンを…親友を失って、心の整理ができていなかった。

ここに来て初めてできた友達を殺されたんだ。

冷静でいられるわけがなかった。

泣きたい。叫びたい。怒りたい。

だけど、そんな甘えは許されない。

ボクは、絶対に犯人を見つけ出す。

生き残るため、そして凶夜クンの仇を討つために。

…お願い、お父さん。

ボクに力を貸して。

ボクは、お父さんの帽子を深く被り直して、決意を固めた。

 

 

 

 

ー《捜査開始》ー

 

「どうする?」

まずはモノクマファイルとやらを確認しよう。

 

 

モノクマファイル①

 

被害者は【超高校級の不運】景見凶夜。

死体発見現場は、内エリア2階の【超高校級の栄養士】の研究室。

死亡推定時刻は、21時40分頃。

死因は、腹部からの出血による失血死。

腹部に刃物で刺したと思われる傷が一つある。

 

コトダマゲット!【モノクマファイル①】

 

「このファイルだけど…どう思う?」

ボクは、星也クンに聞いてみた。

「うーん。なんとも言えないけど…モノクマ達が用意したファイルだからね…あんまり信用はできないかな。一応、癒川さんに検視をお願いしようかな?」

「はい…私、がんばります。」

「おい、待て。この小娘が不正をしないとも限らん。誰か見張りをつけろ。」

「見張りかぁ。わたしがやろっか?」

「彩蝶ちゃん?いいの?」

「うん。わたしも、生物学は得意だから。一緒に検視できるでしょ?」

「…そうだね。日暮さんがいるなら安心だね。じゃあ、みんな捜査をしようか。」

ボクも、捜査しないとな。

まずは、現場の確認でもしてみるか。

 

ボクは、部屋を隅々まで調べた。

…部屋は、少し散らかってはいるけど、あまりいじられていないな。

この部屋には、通気口があるけど、蓋を開けられた形跡は無いし…

隠し通路とかも見つからない。

犯人は、正面のドアから入ってきたと考えるのが妥当だろう。

ドアを無理矢理こじ開けた形跡は無い…

陽一クンが何の違和感も抱かずに部屋の鍵を開けていた事から察するに、犯人は鍵を開けて部屋に入って、鍵を閉めたって事か?

 

コトダマゲット!【入室・退室の方法】

部屋には隠し扉等が無くドアを無理矢理こじ開けた痕跡もない事から、犯人は鍵を開けて部屋に入り、凶夜クンを殺した後部屋の鍵を閉めた…?

 

…ん?

この部屋の照明…景見クンの研究室や麗美ちゃんの研究室とちょっと違うな。

普通の白熱電球じゃないのか?

「へえ、なるほどね。ちゃんと細かいところまで、気が利いてるね。この研究室は。」

天理クンが、天井を見上げながら何か言っていた。

「天理クン、どうしたの?」

「ああ、この部屋の照明、太陽光に似た光源が使われてんだよ。外エリアの照明も、同じヤツだね。多分、部屋の野菜の苗を育てるための工夫なんだろうけど。」

太陽光に似た光源か…

 

コトダマゲット!【研究室の照明】

太陽光に似た光が使われている。

 

「天理クンは、事件当時何してたの?」

「ん?俺?温泉で温泉卵作ってたけど?夜食に食おうと思って。」

温泉卵かぁ。

ボクも食べたいなぁ。

…はっ!!いけないいけない。

「…そっか。ありがとう。」

「えへへ、俺に色々聞きたいんだったら、とりあえず付き合っちゃう?なーんつってwww」

「付き合う?どこに?」

「…悪い、今の聞かなかったことにして。」

…?変なの。

 

あとは、部屋を探索している才刃クンと陽一クンにも話を聞きたいな…

「ねえ、陽一クン。」

「ん?狛研ちゃん?どうした?」

「ねえ、陽一クン。何か知ってる事があったら教えてくれないかな?」

「おう、いいぜ。」

「あのさ、陽一クンは、犯行が起こった時、何してたの?」

「えっと…それなんだけど、多分気絶してた。」

「…え?」

「なんか、後ろからガツーンって殴られてよ。それで、気を失っちまったんだよ。…20分くらいかなぁ。それで、気がついたら廊下で寝てて…」

「大丈夫なの?」

「ああ、ちょっと頭から血が出ちまったけど、大した事ねェよ。」

「犯人の顔は見てないかい?」

「…やー、ごめん。見てないかな。」

なるほど、だからさっき頭を押さえながらボクの事を疑いの目で見てたんだね。

 

コトダマゲット!【陽一クンの証言】

後ろからいきなり殴られたらしい。気を失っていた時間は、約20分。

 

「ねえ、陽一クン。」

「ん?まだ何か聞きてェ事があんのか?」

「うん…あのさ、殴られた事なんだけど、心当たりは無い?」

「あるわけねェだろ!なんでオレが殴られなきゃなんねェんだよ!…あー。もしかして、アレか?風呂覗いちまった事か?」

「それが原因じゃないといいけどね。殴られた前の行動にヒントがあるかも…ねえ、殴られる前は何をしてたの?」

「えっと、さっき話してたレシピを作ってたよ。それで、出来上がったんで部屋に戻って寝る支度しようとしたら、いきなり後ろから殴られたってワケよ。」

「部屋を出る時、ちゃんと鍵は閉めた?」

「おう。それは間違いねェ。」

「…なるほどね。…レシピ、かぁ。ねえ、そのレシピちょっと見せて。」

「おう、いいけど…」

ボクは、調理台の上にあったレシピに目を通した。

…ふうん、なるほどね。

季節の焼き魚に、レンコンの煮物に、炊き込みご飯…魚の付け合わせはもみじおろしかぁ。

どれも美味しそうだな…じゅるり。

じゃなくて!!

今は捜査中だよ!!

「このレシピ、誰かに見せたりした?」

「いやぁ?見せてねェけど?」

「…そっか。ありがと。」

 

コトダマゲット!【陽一クンのレシピ】

今日の朝ごはんのメニュー兼レシピ。ボク以外には、誰にも見せていないらしい。

 

「ねえ、最後に一個だけ確認いい?」

「確認?何を?」

「手帳で誰かの入室を許可したりした?」

「いや、してねェけど。2日目までは女の子を一人ずつ入室許可したりしてたけど、狛研ちゃんと日暮ちゃん以外誰も部屋に来てくれないからもう諦めたんだよ。癒川ちゃんには、穴雲と話があるからっつってやんわり断られたしよ…クソッ。」

「ふんふん。つまり、今この部屋の開閉をできるのは陽一クンだけって事だね?」

「そうだな。」

「わかった。ありがとう。」

 

コトダマゲット!【手帳のロック機能】

研究室や独房の住人本人と、住人に入室を許可された生徒一人だけが、部屋の鍵を開閉できる。陽一クンは、昨日からずっと誰も入室許可をしていない。

 

…うーん。

手帳の機能については、ボクもよくわからないなぁ。

才刃クンに聞いてみよう。

「ねえ、才刃クン。」

「ん!?なんだ、誰かと思えばオマエか!この僕ちゃんに何の用だ!!」

「あのさ、才刃クンって、機械に詳しいんでしょ?だったら、この手帳に関しても詳しかったりする?」

「はぁ!?オマエ、何をほざいているのだ!?この僕ちゃんに不可能なんてない!!バカ侍とガキに手帳の操作方法を教えてやったのは僕ちゃんだぞ!!」

「そうなんだ。」

「アイツら、あまりにも機械オンチすぎるからな!最初のうちは僕ちゃんが代わりに操作してやったのだ!!」

「えっ?じゃあ、二人の手帳を、才刃クンが操作したって事?」

「む!?そうだが!?」

「…なるほどね。ありがとう。」

 

コトダマゲット!【才刃クンの証言】

剣クンとゐをりちゃんの手帳を代わりに操作した事があるらしい。

 

「ところで、才刃クンは事件当時何してたの?」

「む?僕ちゃんか?僕ちゃんはだな。食堂で、機械オンチ共と一緒に折り紙折ってたぞ!アイツらが、手帳の操作方法を教えてくれた礼にと折り方を教えてくれたのだ!」

「…なるほど。ありがとう。」

もう少し部屋を調べてみよう。

…調理台が怪しいかな。

ん?

流しにおろし金が置いてあるな。

陽一クンなら、調理器具をこんな乱雑な扱い方しないだろうし…犯人か凶夜クンが置いたのかな?

おろし金に何かついてるな。

…これは、大根?

 

コトダマゲット!【おろし金】

流しに放置されていた。わずかに大根が付着している。

 

一緒に調理台を捜査している星也クンにも話を聞いてみよう。

「ねえ、星也クン。何か気付いた事はあったかい?」

「えっとね、これを見て欲しいんだ。」

星也クンは、調理台の下の引き出しを指差した。

「見て。包丁が一本足りないでしょ?」

「ホントだ。」

 

コトダマゲット!【調理台の包丁立て】

包丁立てから包丁が一本なくなっていた。

 

「ねえ、星也クンは、事件当時何してたの?」

「癒川さんと一緒に、外エリアの春部屋で話してたよ。」

「その時、誰か出入りしたりした?」

「ううん?」

「…そっか。ありがとう。」

調理台の捜査は終わったし、誰かの証言を聞こうかな。

 

 

 

 

【景見凶夜の独房】

 

凶夜クンの独房では、柳人クン、成威斗クン、剣クン、ゐをりちゃんが捜査をしていた。

「みんな、何かわかった事はある?」

「そうですね…特に部屋が荒らされたといった様子もありませんでしたし、この部屋に何者かが侵入した可能性は無いと思われます。」

 

コトダマゲット!【独房の様子】

部屋はほとんど荒らされておらず、何者かが侵入した形跡は無い。

 

「剣クンは、事件当時何してたの?」

「入田殿と神座殿と一緒に折り紙で遊んでおりましたが。」

さっきの才刃クンの証言は嘘じゃなかったっぽいね。

「成威斗クンは?」

「俺は、特に手がかりとかは見つけられなかったな。ごめんな叶。」

「じゃあ、事件当時何してたかだけでも教えて貰えない?」

「おう、いいぞ。俺は、外エリアの夏部屋で筋トレしてたぜ。」

「誰も入ってきたりしなかった?」

「ああ。入って来てねえけど。」

「ありがとう。…柳斗クンは?」

「オイラはそもそも目が見えないからねぇ。捜査の役に立てなくてごめんよ〜?」

「じゃあ、事件当時は何してたの?」

「秋部屋で、日暮君と歌ってたよ〜♪…あ、そうそう。実は、事件のちょっと前…9時35分くらいかな?飲み物を買おうと思って娯楽室に行った時、『ゴッ』ていう音が聴こえたんだよね。」

「どんな音だった?」

「何か硬いものを衝突されたような…そんな音だったよ。」

「…転んで頭をぶつけた音、とかではなかったよね?」

「いや、違うね。もっと重くて大きな音だったよ。ちょうど、鈍器で頭を殴ったような音かな。おっと、誤解しないでくれよ?ドラマでその音を聴いたことがあるから知ってるだけだからね。」

「…なるほどね。その後は、秋部屋に戻ったのかい?」

「ああ。戻ったのは、9時40分頃だね。」

 

コトダマゲット!【柳人クンの証言】

事件発生直前、鈍器で頭を殴られるような音を聴いていたという。

 

「………。」

ゐをりちゃんが、服を引っ張った。

「ゐをりちゃん?どうしたの?」

「……………見つけた。」

ゐをりちゃんは、紙切れを見せた。

何か書かれてるな…

 

景見へ

ちょっと話したい事があるから9時40分にオレの研究室に来てくれ。

栄陽一

 

定規で文字が書かれていて、誰が書いたのかわからないな。

「ありがとうゐをりちゃん。」

「………。」

 

コトダマゲット!【紙切れ】

凶夜クンに宛てた手紙のような物だ。定規で書かれていて、誰が書いたのかは不明。

 

さてと、ここで手に入る情報はこれくらいかな。

 

 

 

 

【娯楽室】

 

娯楽室では、雪梅ちゃん、麗美ちゃん、踊子ちゃん、ラッセクンが捜査をしていた。

「ラッセクン。何か手がかりはあった。」

「…これを見ろ。」

ラッセクンは、ボウリングのピンを見せてきた。

「それがどうしたの?」

「よく見ろ。このピン、僅かだが血液が付着している。」

「あ、ホントだ。」

 

コトダマゲット!【血のついたピン】

一本だけ、わずかに血液が付着したピンが置いてあった。

 

「ラッセクンは、事件当時何してたの?」

「そういう貴様は、何をしていたんだ?」

「部屋でお父さんの小説読んでたよ。ラッセクンは?」

「…冬部屋で考え事をしていた。」

「誰かが入ってきたりはした?」

「してないな。」

「そっか、ありがとう。」

次は、麗美ちゃんに話を聞こうかな。

「麗美ちゃん、何か知ってる事があったら教えてくれないかな?」

「別に、何も知らないわよ!」

「じゃあ、せめて事件当時何をしてたのかは教えてくれないかい?」

「娯楽室で、羽澄さんのダンスを朱さんと一緒に見てたわよ。あ、でも途中、忘れ物を取りに行くために外に出たわね。」

「忘れ物?」

「ハンカチを研究室に忘れて来ちゃったのよ。」

「なるほどね。…あれ?その赤い指輪、綺麗だね。どうしたの?」

「2日目に景見君に貰ったの。この宝石、アレキサンドライトっていうのよ。」

「ふぅん。」

 

コトダマゲット!【指輪】

麗美ちゃんの指輪。赤色のアレキサンドライトが付いている。

 

次は、雪梅ちゃんと踊子ちゃんに話を聞いてみよう。

「ねえ、二人とも。何か知ってる事があったら教えてくれないかな?」

「ゴメンナサイ叶サン。ワターシ、手がかり、見つけられマセンでした。」

「アタシもよ。」

「じゃあ、二人とも事件当時はの状況を教えてくれないかな?」

「えとですね、踊子サンのダンスを、麗美サンと一緒に見ていましタ!でも、9時半くらいに麗美サンが途中でハンカチを取りに外に出テ…それからしばらくして、踊子サンがトイレ行きましタ!その後、麗美サンがハンカチ持て戻テきましタ。踊子サンが戻テきたの、その後でス。」

「麗美ちゃんと踊子ちゃんが外に出てたのは、どれくらいかわかる?」

「麗美サンは20分くらい、踊子サンは5分くらいでス!」

麗美ちゃんが忘れ物を取りに行ったのは本当だったんだね。

「途中で、柳人クンが娯楽室に入ってきたりした?」

「ハイ!ちょうど麗美サンが外に出た後ですネ!柳人サン、来ましたヨ!」

柳人クンも、嘘をついてなかったみたいだね。

「踊子ちゃんは?」

「まあ、シュエメイの証言通りよ。あ、そうそう。アタシがトイレに行く途中、レイミとすれ違ったよ。」

「それ、本当?」

「うん。そういやぁあの子、エモい指輪してたんだよね。だからちゃんと覚えてるよ。」

「エモい指輪?」

「ああ。緑の宝石がついた、鬼エモい指輪だよ!」

…緑の指輪?

ちょっと気になるな。

 

コトダマゲット!【踊子ちゃんの証言】

麗美ちゃんとすれ違った時、緑色の宝石がついた指輪をしていたらしい。

 

4人から情報は得られたし、そろそろ検視の結果を知りたいな。

 

 

 

 

【超高校級の栄養士】の研究室

 

「二人とも、お疲れ。検視結果はどうだった?」

「モノクマファイルに書いてある通りです。どうやら、このファイルに嘘は書かれていなかったようですね。腹部に、刺し傷が一ヶ所ありました。大動脈を貫通しており、おそらくこの傷が死因だと思われます。」

 

コトダマゲット!【治奈ちゃんの検視結果】

凶夜クンの腹部に刺し傷が一ヶ所だけあった。

 

「それと、腹部に刺さっていた刃物ですが、刃渡り21cm程の調理用の包丁だという事が判明しました。」

「そっか。犯人が誰かまでは、わからないかな?」

「…申し訳ございません。犯人に関する手がかりは、見つかりませんでした。すみません、すみません…!」

「い、いや、いいよ!そうだよね、犯人が都合よく証拠を残してくれてるわけないよね!?うん、治奈ちゃんはよくやってくれたよ!そうだ、治奈ちゃんは事件当時何してたの?」

「春部屋で穴雲さんとお話をしておりましたが。」

「誰か部屋に入ってきたりはしなかったかい?」

「誰も入ってきていません。」

「そっか、ありがとう。」

 

コトダマゲット!【包丁】

凶夜クンの腹部に刺さっていた。刃渡り21cmの調理用包丁だと思われる。

 

「ねえ、彩蝶ちゃん。治奈ちゃんに怪しい動きは無かったかい?」

「全然?はるなちゃんは、普通に検視をしてただけだよ。」

「そっか。じゃあ、事件当時は何してたか教えてくれる?」

「いいよ。あのね、りゅうとくんと翠と一緒に秋部屋でお歌を歌ってたんだ。あ、でもりゅうとくんが、9時半過ぎくらい?に娯楽室に行くって言って外に出て、10分後くらいに戻ってきてたよ。」

「柳人クン以外に、秋部屋に入ってきた人はいなかったかい?」

「ううん?いなかったよ?」

「そっか、ありがとう。」

 

コトダマゲット!【外エリア組の証言】

ラッセクン、彩蝶ちゃん、成威斗クン、星也クン、治奈ちゃん、柳人クンは外エリアにいた。その他に外エリアに入ってきた人はいなかったらしい。

 

ちょっと凶夜クンの死体を調べてみよう。

…ん?

手元に何か書いてあるな…

これは…

 

VDNDH

 

なんだこれは…どういう意味なんだろう?

 

コトダマゲット!【ダイイングメッセージ】

凶夜クンの手元に血文字でVDNDHと書かれている。

 

あとは…

「ねえ、クマさん。ちょっと聞きたい事があるんだけど。」

『ほえ?何?』

「死体発見アナウンスは、3人が死体を発見した時点で流れるって言ってたよね?」

『そうだけど?』

「それって、犯人を除く3人なのかな?」

『犯人を除くっていうか、厳密には、死体を発見した人数が3人を超えたら、だね。だからクロは数には入らないよ。ただ、第一発見者が、目撃者のフリをしたクロだった場合は、ちゃんと人数にカウントされるから、それだけは気をつけてね!』

「なるほどね。でも、なんで3人が死体を見てからなんだい?」

『クロとシロの立場を公平にするためです!』

「そっか。ありがとう。もう行っていいよ。」

『ちょっと!何それ!クマあたりがキツいよ狛研サン!』

 

コトダマゲット!【死体発見アナウンス】

3人以上が死体を発見した際に放送される。基本的に被害者を殺したクロは数には入らないが、3人の目撃者の中にクロが紛れ込んでいた場合は、この限りでない。

 

あとは、全員分のアリバイをまとめておこう。

 

コトダマゲット!【全員分のアリバイ】

ボクは独房にいた。

星也クンと治奈ちゃんは、春部屋にいた。

才刃クンとゐをりちゃんと剣クンは、食堂にいた。

天理クンは、温泉にいた。

陽一クンは、廊下で気絶していた。

麗美ちゃん、雪梅ちゃん、踊子ちゃんは娯楽室にいて、麗美ちゃんがハンカチを取りに20分間外に出ていて、踊子ちゃんはトイレに行くために5分間外に出ていた。

柳人クンと彩蝶ちゃんは、秋部屋にいて、柳人クンが9時半頃に娯楽室に行って、10分後に秋部屋に戻ってきた。

成威斗クンは、夏部屋にいた。

ラッセクンは、冬部屋にいた。

 

 

 

 

『オマエラ、時間切れです!ついにこの時がやってきました!お待ちかねの学級裁判、始めるよ〜!5分以内に、内エリア1階の噴水まで集合してね〜!』

『遅刻欠席は許しませんよ!校則違反とみなし、問答無用でおしおきさせていただきます!』

…もう時間か。

ボクは、噴水に向かった。

 

 

 

 

【噴水】

 

「オマエラ、遅いのだ!」

「そういうあんたはビビりじゃないの。」

どうやら、一番乗りは才刃クンだったようだ。

そして、一番遅く来たのは天理クンは、5秒前に来た。

噴水の前には、クマさんとベルさんが待機していた。

『うぷぷ、全員揃ったみたいだね。じゃ、裁判場行きのエレベーターに乗ってね!』

「エレベーター?そんなの、どこにもないけど…」

『うぷぷ、まあ見ててよ。』

クマさんがパチン、と指を鳴らすと、噴水の中から赤い扉が出現した。

「んなっ…!」

「どんなトリックを使いやがった…!?」

『そんなのどうでもいいじゃん。さ、早く乗りな。』

赤い扉が開き、豪華なエレベーターの籠が止まっていた。

クマさんに急かされて、ボク達はエレベーターに乗った。

 

 

 

 

エレベーターが動き出した。

震えが止まらない。

一歩間違えば、自分が死ぬ。

生き残りたかったら、考えろ。

この事件の真相を。

…待ってて、凶夜クン。

必ず、この謎を解き明かしてみせるから!!

 

 

 

 

 


 

 

 

『フッフッフ。さァて、ここでクイズのお時間ですよ。景見様を殺した犯人は、一体誰だと思いますか?』

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

『…そうですか。次回は学級裁判前編でございます。お楽しみに。』




ミスがあったのでちょっと編集。

文字数がw


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第1章 非日常編②(学級裁判前編)

エレベーターが止まり、ドアが開いた。

全員がエレベーターから降りた。

目の前には、裁判場のような空間が広がっていた。

「まさか地下にこんな空間があったとは…」

「あの輪っかに並んだ証言台は、なんなんだろうね?」

彩蝶ちゃんが指を差した先には、輪っかに並んだ証言台があった。

ちょうど16台あり、ご丁寧に台に名前が彫られていた。

「ちゃんと翠の証言台もあるね。」

「ピィ!」

彩蝶ちゃんの証言台の上には、翠ちゃん用のミニチュアの証言台があった。

席は、時計回りに星也クン➡︎才刃クン➡︎凶夜クン➡︎ゐをりちゃん➡︎ボク➡︎天理クン➡︎陽一クン➡︎柳人クン➡︎麗美ちゃん➡︎雪梅ちゃん➡︎踊子ちゃん➡︎彩蝶ちゃん➡︎剣クン➡︎成威斗クン➡︎治奈ちゃん➡︎ラッセクンの順番に並んでいた。

全員が、自分の席についた。

『うっぷぷぷぷ!全員揃ったみたいだね!』

『フッフッフ。どうです?この神聖な裁判場は!!』

「…あの。あれは一体何ですか?」

治奈ちゃんが指を差したのは、凶夜クンの証言台だった。

凶夜クンの証言台には、赤いペンキでバツ印を書かれた凶夜クンの遺影が立っていた。

『何って…見ての通りだけど?』

「ふざけんな!!テメェら、こんな事して一体何のマネだ!!」

『うぷぷ、だってさぁ。景見クンは、仮にもオマエラの仲間だったわけじゃん?仲間をのけ者にしちゃかわいそうでしょ?』

『フッフッフ。景見様が見守っていらっしゃるようで心強いでしょう?』

「そんなわけあるか!!凶夜クンの死を弄ぶな!!」

『おーこわ!狛研サン、もしかしてカルシウム不足?ちゃんと小魚食べな!』

『…とまあ、全員揃ったようですし、そろそろ裁判を始めましょうか。』

 

 


 

コトダマ一覧

 

 

【モノクマファイル①】

被害者は【超高校級の不運】景見凶夜。

死体発見現場は、内エリア2階の【超高校級の栄養士】の研究室。

死亡推定時刻は、21時40分頃。

死因は、腹部からの出血による失血死。

腹部に刃物で刺したと思われる傷が一つある。

 

【入室・退室の方法】

部屋には隠し扉等が無くドアを無理矢理こじ開けた痕跡もない事から、犯人は鍵を開けて部屋に入り、凶夜クンを殺した後部屋の鍵を閉めた…?

 

【研究室の照明】

太陽光に似た光が使われている。

 

【陽一クンの証言】

後ろからいきなり殴られたらしい。気を失っていた時間は、約20分。

 

【陽一クンのレシピ】

今日の朝ごはんのメニュー兼レシピ。ボク以外には、誰にも見せていないらしい。

 

【手帳のロック機能】

研究室や独房の住人本人と、住人に入室を許可された生徒一人だけが、部屋の鍵を開閉できる。陽一クンは、昨日からずっと誰も入室許可をしていない。

 

【才刃クンの証言】

剣クンとゐをりちゃんの手帳を代わりに操作した事があるらしい。

 

【おろし金】

流しに放置されていた。わずかに大根が付着している。

 

【調理台の包丁立て】

包丁立てから包丁が一本なくなっていた。

 

【独房の様子】

部屋はほとんど荒らされておらず、何者かが侵入した形跡は無い。

 

【柳人クンの証言】

事件発生直前、鈍器で頭を殴られるような音を聴いていたという。

 

【紙切れ】

凶夜クンに宛てた手紙のような物だ。定規で書かれていて、誰が書いたのかは不明。

 

【血のついたピン】

一本だけ、わずかに血液が付着したピンが置いてあった。

 

【指輪】

麗美ちゃんの指輪。赤色のアレキサンドライトが付いている。

 

【踊子ちゃんの証言】

麗美ちゃんとすれ違った時、緑色の宝石がついた指輪をしていたらしい。

 

【治奈ちゃんの検視結果】

凶夜クンの腹部に刺し傷が一ヶ所だけあった。

 

【包丁】

凶夜クンの腹部に刺さっていた。刃渡り21cmの調理用包丁だと思われる。

 

【外エリア組の証言】

ラッセクン、彩蝶ちゃん、成威斗クン、星也クン、治奈ちゃん、柳人クンは外エリアにいた。その他に外エリアに入ってきた人はいなかったらしい。

 

【ダイイングメッセージ】

凶夜クンの手元に血文字でVDNDHと書かれている。

 

【死体発見アナウンス】

3人以上が死体を発見した際に放送される。基本的に被害者を殺したクロは数には入らないが、3人の目撃者の中にクロが紛れ込んでいた場合は、この限りでない。

 

【全員分のアリバイ】

ボクは独房にいた。

星也クンと治奈ちゃんは、春部屋にいた。

才刃クンとゐをりちゃんと剣クンは、食堂にいた。

天理クンは、温泉にいた。

陽一クンは、廊下で気絶していた。

麗美ちゃん、雪梅ちゃん、踊子ちゃんは娯楽室にいて、麗美ちゃんがハンカチを取りに20分間外に出ていて、踊子ちゃんはトイレに行くために5分間外に出ていた。

柳人クンと彩蝶ちゃんは、秋部屋にいて、柳人クンが9時半頃に娯楽室に行って、10分後に秋部屋に戻ってきた。

成威斗クンは、夏部屋にいた。

ラッセクンは、冬部屋にいた。

 


 

 

 

学級裁判開廷!

 

モノクマ『それじゃあ、好きに議論を進めてくだっさーい!!』

白鳥「議論って…どうすりゃあいいのよ!」

穴雲「とりあえず、まずはファイルを確認しようよ。」

狛研「そうだね。ボクは星也クンに賛成。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

穴雲「じゃあ、僕がファイルを読もうかな。被害者は【超高校級の不運】景見凶夜。死体発見場所は、2階の【超高校級の栄養士】の研究室。

ラッセ「不運が最初に死ぬとはな。ヤツも、自分の運命に逆らえなかったという事か。」

穴雲「死亡推定時刻は21時40分頃。死因は、腹部からの出血による失血死。腹部に刺したと思われる傷があり。以上だよ。」

不動院「犯人は、どうやって景見殿を殺害なさったのでしょうか…」

財原「いきなり背後から襲いかかったとかぁ?」

不動院「んなっ…!不意打ちとは、卑怯な…!」

今の天理クンの発言はおかしい!!

 

背後から襲いかかった⬅︎【モノクマファイル①】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

財原「んん〜?何が違うっていうのかなぁ?」

狛研「犯人は、背後から凶夜クンを刺し殺したんじゃないと思うよ。」

財原「なんで?」

狛研「モノクマファイルをよく読んで。腹部に刺し傷があるって書いてあるでしょ?背後から刺したんだったら、腹部じゃなくて背中に刺し傷ができるはずだよ。」

財原「あ、そっかぁ。ごめんごめん。俺、うっかりしてたわ。」

羽澄「…つまり犯人は、正面からキョウヤをブッ刺したってコト?」

狛研「そうなるね。」

詩名「なるほどねぇ。じゃあ次は、凶器の特定かな?」

狛研「そうだね。凶器について考えてみよう。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

羽澄「刃物?え、何?ポン刀とか?ほら。ツルギは刀持ってるじゃん。」

不動院「羽澄殿、私は犯人ではありません。武士たる者、罪のない級友を刺し殺すなんて卑劣な事は決して致しません。」

詩名「武士うんぬんの前に、日本刀なんて扱いづらい物を凶器として使うとは考えにくいよねぇ。」

舞田「ポケットナイフとかはどうだ?」

穴雲「…それだと刃が短すぎないかい?」

財原「だろ絶対。不運だけに、ジ●イソンにブッ殺されたんだよ〜♪」

白鳥「真面目に考えなさいよ!!そもそも形状が違うじゃない!」

財原「てへっ☆」

日暮「包丁とかじゃないかなぁ。刃渡りも十分だし…」

彩蝶ちゃんの意見に賛成したい。

 

包丁⬅︎【包丁】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「凶夜クンを刺し殺した凶器は多分包丁だと思うよ。」

朱「そーなんですカ!?」

狛研「うん。その可能性が高いよ。」

ラッセ「それを裏付ける証拠は?」

狛研「凶夜クンのお腹に、包丁が刺さってたんだ。凶器は包丁で間違いないよ。」

 

「その推理、バグだらけだぞ!!」

 

反論

 

 

 

狛研「…才刃クン?」

入田「狛研!オマエは、腹部に刺さっていた包丁が凶器だと…そう言ったな!?そもそも、その前提が間違っているとは思わなかったのか!?」

栄「はぁ?どういう事だよそれは?」

入田「フンッ!凡愚には、僕ちゃんの天才的な思考についてこれまい!猿にもわかるように説明してやるから、耳かっぽじってよく聞いておけ!」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

入田「もし、景見を殺したのが別の凶器で、犯人がそれを隠すために腹部の傷に包丁を刺し直し、本物の凶器を処分したとしたら!?」

癒川「そんな事をするメリットが思い浮かびませんが…」

穴雲「そうだよ。わざわざ凶器を増やすなんて、デメリットしかないんじゃないかな?」

入田「この際、メリットデメリットに縛られている場合じゃないだろう!!凶器が包丁じゃない可能性が1%でもある以上、僕ちゃんは凶器が包丁だとは認めないぞ!!」

羽澄「いや、そんな重箱の隅を突くような反論…」

入田「なんとでも言うがいい!!そんな事言っても、本当は僕ちゃんの意見に言い返せないんだろう!?だったら、僕ちゃんの主張が正しいと認めたようなものだ!!景見を殺した凶器は他にある!それが僕ちゃんの答えだ!!」

今の才刃クンの発言はおかしい!!

 

腹部の傷に包丁を刺し直し⬅︎【治奈ちゃんの検視結果】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「才刃クン、キミが今言った方法だと、どうしても説明できない事があるんだ。」

入田「なんだと!?そんなの、あるわけないだろう!!この僕ちゃんが、間違うわけがない!!」

狛研「あのね、よく聞いて。腹部の傷は、一ヶ所しかなかったんだよ?凶器を刺し直したりなんてしたら、傷がもう一つできるはずなんだよ。でも、腹部には刺し直したような傷は無かった…この事についてはどう説明するの?」

入田「そ、それは…すごく綺麗に刺したのかもしれないだろう!!」

癒川「その他の傷が残らないほど綺麗に刺し直すなんて、ほとんど不可能です。そんな事をするのは、ピッキングより数倍難しいです。そんな難易度の高い事を私達高校生が短時間でやるなんて、現実的ではないと思うんですが。」

入田「ぐぬぬ…!」

財原「ロンパされてやんのw」

入田「う、うるさいのだ!!オマエだって、狛研に論破されてただろ!!」

財原「わー怒った!やーいお子ちゃま!」

入田「なんだとー!!?」

穴雲「はいそこ、喧嘩しない。」

入田「だ、だって…財原のヤツが!」

穴雲「…入田君?反省して。」

入田「…ごめんなのだ。」

日暮「ねえ、かなえちゃん。わたしからひとつ質問いいかなぁ?」

狛研「何?彩蝶ちゃん?」

日暮「凶器が包丁だったのはいいけど、犯人はどこからその包丁を持ってきたの?」

狛研「それについてなら、一つ心当たりがあるよ。」

犯人は、どこから凶器の包丁を調達したのか…それは…

 

コトダマ提示!

 

【調理台の包丁立て】

 

「これだ!!」

 

狛研「犯人は、研究室の調理台の引き出しにあった包丁立てに刺してあった包丁を使ったんだと思うよ。」

ラッセ「何を根拠にそんな事を言うのだ?」

狛研「調理台の包丁立てに刺してあった包丁が一本足りなかったんだよ。星也クンが調べてくれたから、間違いないよ。」

不動院「真でございますか、穴雲殿?」

穴雲「うん。本当だよ。狛研さんに言う通り、確かに包丁が一本無くなってたよ。」

栄「マジかよ!?オレの大事な包丁が、ンな事に使われてたのかよ!?クッソ、犯人の野郎!!許さねェ!!」

羽澄「いや、ヨウイチ。キレるポイントそこじゃないから。今、キョウヤを殺した犯人について議論してるんでしょうが。」

財原「そうだよ料理バカ。んなくだらない事でキレてる暇があったら、議論に参加しろよ。今から()()()のは、魚じゃなくて殺人犯なんだからよ?」

詩名「財原君も、うまい事言わなくていいよ。」

財原「えへへ。」

朱「アノ、そろそろ犯人について議論シマセンカ?凶器については、わかたワケですシ。」

狛研「そうだね。そろそろ、犯人について議論しよっか。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

朱「まずは、アリババ?」

詩名「それは開けゴマだねぇ。アリバイ、だろ?」

朱「それでした!皆サンのアリバイ、聞きたいでス!皆サン、事件当時何してマシタ!?」

狛研「ボクは、部屋でお父さんの本を読んでたよ。」

日暮「わたしは、秋部屋でりゅうとくんと翠と歌ってたよ。ね、翠。」

翠「ピィ!」

神座「…………… 折り紙。

穴雲「短っ!?他に言う事は無いのかい?まあいいや、僕は春部屋で癒川さんとお話してたよ。

不動院「私も、神座殿や入田殿と一緒に食堂におりましたが…」

栄「嘘つけ!!お前が犯人だろ!?」

不動院「な、何故ですか!?」

栄「だって、テメェは侍じゃねえか!人を殺した事ぐらいあんだろ!テメェが殺したんじゃねえのか!?ポン刀持ち歩いてる時点で怪しいんだよ!」

不動院「言いがかりです!先程、凶器は包丁という事になったではありませんか!」

栄「それとこれとは話が別だろ!!本当は、テメェが景見を殺したんだろ!!」

今の陽一クンの発言はおかしい!

 

テメェが景見を殺した⬅︎【全員分のアリバイ】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

栄「狛研ちゃん!!オレの発言のどこがおかしいってんだよ!!」

狛研「剣クンは、嘘をついてないよ。彼のアリバイは、ちゃんと才刃クンとゐをりちゃんが証明してるもの。」

入田「うむ!僕ちゃんは確かにその時間、バカ侍と、子供と一緒に折り紙を折っていたぞ!」

神座「………侍………不運……殺して、ない………」

栄「なっ…そ、そうだったのか…悪りィ不動院。疑っちまって。」

不動院「疑いが晴れたのなら何よりです。狛研殿、入田殿、神座殿。私の無実を証明していただき、ありがとうございます。」

狛研「いいって事よ!剣クンが凶夜クンを殺してないって事は、ちゃんとわかってるから!!」

財原「どうしようねぇ。話がフリダシに戻っちゃったよ。」

狛研「うーん、もう一回議論し直してみよっか。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「まずさぁ。死体を発見した時の状況を確認しようよ。俺は、アナウンスで呼び出されて死体を発見したんだけど…他のみんなは?」

穴雲「僕は、アナウンスが流れる前に死体を発見したよ。厨房に栄君がいないものだから、心配になって一応研究室を探しに行ったのさ。僕が到着した時には、既に栄君と狛研さんがいたね。」

日暮「 3人が死体を発見したらアナウンスが流れるんだよね?」

狛研「そうだけど…」

詩名「だとしたら、犯人が絞れないかい?」

舞田「どういう事だ?」

詩名「3人が死体を見たらアナウンスが流れるんだろ?だったら、そのうちの1人は犯人って事じゃないか。つまり、栄君か狛研君か穴雲君…この3人のうち、誰かが犯人って事さ。」

羽澄「そうなの?」

白鳥「誰よ犯人は!!早く白状しなさいよ!!」

朱「ソウデス!早く名乗り出ナサイ!ワターシ、今なら半殺しで許しマス!」

不動院「白鳥殿、朱殿…脅しで名乗り出るようなら、とっくに名乗り出ていると思うのですが…」

狛研「あはは…」

でも、一つ分かった事がある。

今の柳人クンの発言はおかしい!

 

そのうちの1人は犯人⬅︎【死体発見アナウンス】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

詩名「狛研君?オイラ、何かおかしな事言ったかい?」

狛研「うん。今のキミの発言には、おかしな点があったんだ。死体発見アナウンスは、基本的に犯人はカウントされないんだよ。…まあ、犯人が発見者のフリをしていた場合は、普通にカウントするらしいけど…」

白鳥「つまり、死体発見アナウンスが流れる前に死体を発見した3人の中に犯人がいるとは限らないって事?」

狛研「うん。犯人が別にいる可能性は捨て切れてないんだよ。」

舞田「そ、そうなのか…」

癒川「あの…犯行現場について話し合いませんか?犯行現場になら、犯人の手がかりがあるはずです。」

狛研「…そうだね。そろそろ話題を変えよっか。」

癒川「とりあえず、犯行現場は栄さんの研究室と考えてよさそうですね…」

舞田「…だな。相棒は、そこで死んでたわけだしな。」

入田「と、なると…問題は、侵入方法か。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「ワープだってばー。」

穴雲「…真面目に考えないと、発言禁止にするよ?」

財原「ひーん。」

ラッセ「隠し扉を使ったのかもな。」

不動院「まるで忍者屋敷ですね。」

舞田「逆に、普通にドアから入ったって事はねえか?」

成威斗クンの意見に賛成したい。

 

普通にドアから入った⬅︎【入室・退室の方法】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「成威斗クンの言う通り、犯人は普通にドアから入ったんだと思うよ。」

舞田「なっ…!?そうなのか!?」

ラッセ「…貴様、何も考えずに発言したのか。愚の骨頂だな。」

舞田「わ、悪りい…」

癒川「では、犯人は、何らかの方法でドアの鍵を開けて部屋に入ったという事ですか?」

狛研「そうなるね。」

 

「その推理、ノれてないよ!」

 

反論

 

 

 

狛研「踊子ちゃん?」

羽澄「そもそもさ、犯行現場が研究室っていう前提自体が間違ってんじゃないの?」

癒川「と、言うと…?」

羽澄「アタシが主張(リード)したげる。できるもんなら反論(エンカウント)してみな!」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

羽澄「そもそも、犯行現場が研究室だとは限らなくない?別の場所で殺したっつー可能性は?例えば、独房とか…」

日暮「でも、きょうやくんが発見されたのは、研究室だよ?」

羽澄「だからって研究室が犯行現場とは限らないっしょ。独房で殺してから運んだっつー可能性だってあんじゃん。だって実際、犯行現場が研究室だって言い切れる証拠がねェじゃんよ。証拠も無いのに判断すっとか、マジガン萎えなんだけど!」

今の踊子ちゃんの発言はおかしい!

 

独房で殺してから運んだ⬅︎【独房の様子】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「踊子ちゃん。凶夜クンは、独房で殺されたんじゃないと思うよ。」

羽澄「はぁ!?証拠はあんのかよ!」

狛研「だって、独房は荒らされた形跡が無かったんだよ?普通、急に知らない人が部屋に上がり込んできたら、抵抗するよね?」

羽澄「いや、抵抗できずに殺されたのかも…例えば、寝てる時とか…」

狛研「だとしても、侵入した形跡が残るはずだよ。その痕跡が全く無いって事は、凶夜クンが独房で殺された可能性は低いって事だよ。」

羽澄「…うっ。」

朱「じゃあ、犯行現場は研究室でヨロシイですね?」

狛研「うん。そう考えるのが自然だよ。」

不動院「…でも、少し気になる事が。」

狛研「何かな?剣クン。」

不動院「部屋に侵入した形跡が無いという事は、景見殿が自ら栄殿の研究室に向かったという事ですよね?」

狛研「…そうだと思うけど。」

不動院「なぜ景見殿は、栄殿の研究室に行ったのでしょうか?」

穴雲「…おびき寄せられた、とか…」

不動院「だとすると、景見殿を研究室に行かせた物…それがまだわからないのですが。」

凶夜クンが研究室に行ったのは、アレが原因だろう。

 

コトダマ提示!

 

【紙切れ】

 

「これだ!!」

 

狛研「凶夜クンの部屋に、紙切れが落ちてたんだ。そこに、陽一クンの研究室に来るように書かれてたんだ。文字は定規で書かれてて、誰が書いたのかまではわからないけどね。」

白鳥「普通に考えれば、さっき狛研さんが提示してくれたアリバイで、証明できる人がいない人が犯人よね…?」

入田「そうなると、狛研、ラッセ、舞田、栄、財原の5人か…」

栄「お、オレじゃねえよ!!」

ラッセ「俺は冬部屋にいた。白髪の事など知らん。」

舞田「俺はずっと筋トレしてたんだよ!!まさか、相棒が殺されてたなんて思わなかったよ!!」

狛研「ボクも、凶夜クンを殺したりなんかしてないよ。」

財原「…。」

白鳥「財原君、あなたは何も反論しないのかしら?だったら、自分が犯人だって認めたようなものよね?」

財原「あっはは、まっさかぁ。俺が怪しいのは事実だから反論しなかっただけだよ。でも、冤罪で吊られんのは嫌だしなー。一人くらい足引っ張っとくか。」

穴雲「君は一体何を言いたいんだい?」

財原「…俺、実は犯人知ってるんだよね。」

入田「はっ!?お、オマエ…!?なんでそれを早く言わなかった!!」

財原「だって、事件の概要も明らかになってないのに言ったところで、(はてな)になるだけだろ?だから、事件の概要がある程度明らかになったら言おうと思ってたんだよ。」

白鳥「何それ…!信じらんない…!」

入田「なんでもいいから、知ってる事全部吐け!!一体誰が犯人なのだ!?」

財原「まぁまぁ、落ち着けよ。今回の事件を起こした真犯人…それは…」

 

 

 

 

 

財原「…オマエだよ、栄陽一ィ!!」

栄「…ん!?オレ!?」

陽一クンは、自分の名前が呼ばれた事に驚いていた。

栄「おい、ま、待てよ財原!!オレはホントに殺ってねェんだよ!!」

財原「嘘ばっかりー。俺、栄クンが犯人だって知ってるもんねー。ほら。狛研サンだって、栄クンが犯人だって言ってるよ?」

狛研「言ってないけど…」

財原「じゃあ、今から、栄クンが犯人だって証明してやるよ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「どーせ栄クンが犯人なんだろぉー?」

栄「違げェっての!!」

財原「嘘つけよー。現に、あの場で研究室に入れたのはキミだけだろ?」

栄「んな事ねェよ!!研究室になんて、入ろうと思えば誰でも入れるだろうが!!」

今の陽一クンの発言はおかしい!

 

入ろうと思えば誰でも入れる⬅︎ 【手帳のロック機能】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

栄「んなっ…!おい、狛研ちゃん…!狛研ちゃんまで、このキナくさい原の味方をする気かよ!?」

狛研「うーん、ごめんね陽一クン。別に天理クンの味方をするわけじゃないけど、キミの発言におかしな点があったのがどうしても気になっちゃってさ。」

栄「おかしな点だと!?」

狛研「あのね、陽一クン。キミも知ってると思うけど、手帳の鍵は、誰かの入室を許可しない限り、その部屋を使ってる人本人しか開け閉めできないんだよ。」

栄「あっ…」

狛研「そして、事件発生当時は、キミは誰も入室許可していなかった。そう言ったのは、陽一クン。キミ自身だよ?」

栄「ぐっ…!」

財原「その条件だと、研究室に入れるのは栄クンだけって事になるじゃん?ほーらね!やっぱり栄クンが犯人だったんだー!!」

栄「テメェ…!いい加減にしねェとブン殴るぞ!!」

財原「あっそ。殴れば?でも、殴って解決するんだったら、ここまで裁判長引いてないよね?」

栄「…クソッ!!」

財原「それだけじゃないんだな!栄クンが犯人だって裏付ける証拠があるんだよ!」

朱「証拠!?なんですカそれは!!」

財原「ねえ、狛研サン。栄クンの研究室で、変な物を見つけなかったかい?」

変な物…?

もしかして、アレの事かな…?

 

コトダマ提示!

 

【ダイイングメッセージ】

 

「これだ!!」

 

狛研「それって、ダイイングメッセージの事?」

財原「ピンポンピンポーン!そうだよ!ダイイングメッセージ!なんだ、わかってんじゃん!」

狛研「なんで天理クンが知ってんの…?」

財原「狛研サンが調べてるのを見て、俺も調べてみたんだよ。」

狛研「…だから集合が一番遅かったんだね。」

財原「で、そのダイイングメッセージなんだけど…こう書かれてたんだよね?」

 

VDNDH

 

財原「… 狛研サン。この暗号が一体なんなのか、もうわかるよね?」

狛研「…。」

 

 

 

ー閃きアナグラム開始!ー

 

頭の中に、文字が次々と思い浮かぶ。

それを正確に掴んで、パズルのように組み合わせる…!

 

「これだ!!」

 

シ ー ザ ー ア ン ゴ ウ

 

【シーザー暗号】

 

狛研「…シーザー暗号でしょ。」

財原「そう!これは、実はシーザー暗号になってたんだよ!」

白鳥「ちょっと、勝手に話を進めてるけど、シーザー暗号って一体何なの?」

狛研「…文字を3つ戻って解読する暗号だよ。お父さんの小説にも出てきた。」

財原「景見クンは、『バートン伯爵のティータイム』のファンだったからね。作中の暗号を使って、狛研サンに犯人を教えようとしてたんだねェ。」

舞田「で、どうやって解読すんだよ!!」

財原「簡単だよ!文字を、3つずつ戻せばいいの!例えば、1文字目のVなら、3つ戻ってS、といった具合にね!」

不動院「羅甸文字は得意ではありませんが…ええと、Dの3つ前はA、でしょうか?」

穴雲「合ってるよ、不動院君。」

舞田「えっと…Nの3つ前は、Lか?」

ラッセ「Kだバカ者。貴様は、脳味噌までカマキリの卵か?」

舞田「んだとゴルァ!!」

狛研「やめなよ2人共。…で、この暗号を解読すると…」

 

 

 

 

 

ー人物指定ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎【超高校級の栄養士】栄陽一

 

「このダイイングメッセージが示す名前…それはキミだ!!」

 

 

 

栄「はっ、はぁああああ!!?」

狛研「この暗号を解読すると、SAKAE…つまり、栄陽一クン…キミの名前になるんだよ!!」

栄「ふざけんな!!きっと何かの間違いだ!!オレは犯人じゃねえ!!」

財原「見苦しいよー、いい加減認めたら?」

栄「だから、オレは犯人じゃねえっつってんだろ!!」

朱「信用できマセン!ワターシ、ヘンタイ、許しマセン!」

栄「それとこれとは話が別だろ!!なあ、誰か信じてくれよ!!オレ、本当に殺ってねェんだよ!!」

ラッセ「…疑われるような行動をした貴様が悪い。いい加減、自分の罪を認めろ。」

栄「ちげェよぉ…!オレ、本当に何も知らねェんだよぉおおおおおおお!!!」

財原「あーあ、泣いちゃった。」

入田「フン!見苦しいのだ!さっさと地獄に堕ちろ!」

栄「いやだ、オレは、認めねェぞ…!頼むよ…誰か、信じてくれよぉお!!」

白鳥「栄君。可哀想だけど、諦めなさい。あなたを信じる人なんて、誰も…」

 

狛研「ボクは信じるよ。」

ラッセ「…何?」

栄「狛研ちゃん…!」

財原「はぁ?今更何言っちゃってんの?狛研サン、栄クンの発言がおかしいって言ってたじゃん。」

狛研「陽一クンが変な発言をしたのには反論したけど、ボクは陽一クンが犯人だなんて一言も言ってないよ。」

入田「何を言っているのだ!!ダイイングメッセージの名前が栄だって言ったのは狛研!オマエだぞ!」

狛研「そうなんだけどね。…うまく言えないけど、ボクはどうしても陽一クンが犯人だとは思えないんだ。ダイイングメッセージだって、本当にアテにしていいのかもわかんないし。みんな、もう一回ちゃんと議論してみようよ!!」

 

 

 

 

 

学級裁判中断!



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第1章 非日常編③(学級裁判後編)

栄「狛研ちゃん…!」

財原「議論し直す?これ以上話す事なんて何も無いよ。」

狛研「本当にそうかな?ちゃんと話し合ってみようよ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「どうせ栄クンが景見クンを殺したんでしょ?」

栄「違げェっつってんだろ!!オレは、何も知らねェんだよ!!」

財原「嘘つけー!」

栄「嘘じゃねえよ!!」

…陽一クンの意見に賛成したい。

 

何も知らねェ⬅︎【陽一クンの証言】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「天理クン。陽一クンは、本当に何も知らないんだと思うよ。」

財原「なんでそう言いきれんの?」

狛研「陽一クンは、事件前に頭を殴られて気絶してたんだよ。だったら、事件の事を知らなくてもおかしくないよね?」

栄「そうだよ!!オレは誰かに殴られて気を失ってたんだ!!なんか、物陰にメダルが落ちてたから拾おうとしたら、いきなり殴られたんだよ!オレガ景見を殺せるワケねェだろ!!」

日暮「うーん、そうなのかなぁ。」

 

「あなたの推理、美しくないわね。」

 

反論

 

 

 

狛研「…麗美ちゃん?」

白鳥「あなたの推理は穴だらけなのよ。」

日暮「れいみちゃん、かなえちゃんの推理のどこが穴だらけなの?」

白鳥「いいわ。私が証明するわ。その醜い推理、崩してあげる!」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

白鳥「そもそも、栄君が誰かに殴られたっていうのが、嘘の証言だとは考えなかったの?」

栄「し、白鳥ちゃん…!オレ、嘘なんてついてねェよ!」

狛研「陽一クンの頭には、ちゃんと殴られたような痕があったよ?」

白鳥「そんなの、殴られたと思わせるための偽装工作かもしれないじゃない。そのつもりがなくても、もしかしたら自分で勝手に転んで頭を打ったのかもしれないし。」

日暮「よういちくんが偽装工作なんてできるとは思えないんだけど…」

白鳥「反論になってないわよ。現に、それを証明できる人はいないでしょう?」

狛研「そうとは言い切れないんじゃないかな?」

 

それを証明できる人はいない⬅︎【柳人クンの証言】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!」

 

論破

 

狛研「陽一クンが殴られた件についてだけど…証明できる人がいるよ。」

白鳥「誰よそれは?」

狛研「柳人クンだよ。」

白鳥「はぁ?詩名君は、目が見えないでしょう?どうやって証明するっていうのよ。」

狛研「…音だよ。柳人クンは、陽一クンが殴られた時の音を聞いてたんだよ。」

羽澄「そうなの?」

詩名「ああ。間違いないよ。頭を鈍器で殴るような音だったねェ。」

ラッセ「聞き間違いという可能性は?」

詩名「ないよ。オイラは、耳には自信があるからね。確かに、頭を鈍器で殴るような音だったよ。」

狛研「それに、陽一クンが殴られた事を裏付ける証拠があるんだよ。」

 

コトダマ提示!

 

【血のついたピン】

 

「これだ!!」

 

狛研「ラッセクンが、娯楽室で血のついたボウリングのピンを見つけてくれたんだ。多分、それが陽一クンを殴った凶器だよ。」

穴雲「確かに、重さも長さも十分だもんね。凶器としては申し分ないんじゃないかな?」

狛研「そうだね。凶器が見つかったって事は、陽一クンが殴られたのは間違いないよ!」

日暮「凶器が見つかったって事は、殴られたのは間違いないよねぇ。」

舞田「でも、誰が何のために陽一を殴ったんだ?」

狛研「…多分、陽一クンを殴ったのは、凶夜クンを殺した犯人だよ。」

癒川「景見さんだけでなく、栄さんまで…なぜそんな事を…!」

狛研「…それは。」

 

 

 

犯人が陽一クンを殴った理由は?

 

1.口封じ

2.陽一クンの手帳を操作するため

3.ムシャクシャした

 

 

 

➡︎2.陽一クンの手帳を操作するため

 

「これだ!!」

 

狛研「犯人は、陽一クンの手帳に用があったんだよ。」

栄「お、オレの手帳に…?」

狛研「うん。犯人は、陽一クンを気絶させて、陽一クンの手帳を操作したんだよ!」

朱「はぇ!?手帳を他人ガ操作ァ!?ソンナ事、可能なんですカァ!?」

狛研「うん。できるはずだよ。それを証明してくれてる人がいるんだ。」

 

コトダマ提示!

 

【才刃クンの証言】

 

「これだ!!」

 

狛研「才刃クンは、手帳の扱いが慣れていない剣クンとゐをりちゃんのために、代わりに手帳を操作してあげた事があるんだって。だよね才刃クン?」

才刃「そうなのだ!!機械オンチ共のために、僕ちゃんが代わりに操作してやったのだ!」

狛研「つまり、手帳の操作は本人じゃなくてもできるんだよ。」

白鳥「だから何?まだ、肝心な点が説明できてないわよ!栄君が犯人じゃないなら、犯人はどうやって研究室に入ったのよ!わかるように説明しなさいよ!」

狛研「…犯人が研究室に入った方法。それは…」

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ニ ュ ウ シ ツ キ ョ カ

 

【入室許可】

 

「これだ!!」

 

 

 

狛研「犯人は、陽一クンを気絶させて、陽一クンの手帳の設定を変更したんだ。そうやって、犯人は自分の入室を許可した。これで、犯人は自分の手帳で陽一クンの研究室に入れるようになった。そこへ景見クンを呼びつけて刺し殺した後、陽一クンが目覚める前に手帳の設定を元に戻した…これが、犯人が陽一クンの部屋に入ったトリックだよ。」

財原「ふーん、なるほどねェー。」

栄「ほらな!オレは犯人じゃねえんだよ!!」

 

 

 

財原「…は?オマエ、何調子に乗ってんの?」

栄「え…?」

財原「キミが犯人だって可能性が消えてない事、忘れてんじゃないの?言っとくけど、俺はまだキミの事を疑ってるから。」

白鳥「そうよ。栄君が犯人だって可能性は捨て切れないわ。やっぱり、栄君が犯人よ。」

ラッセ「同感だ。栄陽一、貴様が一番怪しいという事実は、まだ覆ってはいないぞ。」

栄「そんな…!」

財原「ねえねえー、もうダルいから投票しちゃおうよー。俺、早く部屋に戻ってガリ●リ君食いたいんだけど。」

狛研「待ってよ!本当に陽一クンが犯人かどうか、ちゃんと議論するべきだよ!」

羽澄「いや、でも、今のところヨウイチが一番怪しいし…」

穴雲「判断を誤れば、僕らが死ぬんだよ?もっと慎重に議論を進めるべきだ。」

日暮「どうしよう…意見が割れちゃったよ。」

 

モノクマ『うぷぷぷ!意見が割れた?そんな時は、ボク達の出番だね!』

モノベル『フッフッフ。この時を待っていましたよ。ではでは、フォーメーションチェンジ!!』

 

ベルさんが席の装置を操作すると、ボク達の証言台が宙に浮いた。

 

入田「うっひょぉおおおおおお!!楽しいのだー!!」

白鳥「ひぃいいいいいい!!ちょっと、降ろしてよぉお!!」

 

証言台が二つの陣営に分かれた。

 

 

 

意見対立

 

 

 

《栄陽一は犯人か?》

 

【犯人だ!】入田、神座、財原、白鳥、朱、羽澄、不動院、ラッセ

 

【犯人じゃない!】穴雲、狛研、栄、詩名、翠、日暮、舞田、癒川

 

 

 

ー議論スクラム 開始ー

 

財原「だ、か、らぁ!栄クンが犯人だっつってんじゃーん!」

「陽一クン!」

栄「オレは犯人じゃねえっつってんだろ!」

神座「不運、死んだの………栄養士の研究室………栄養士、犯人…」

「彩蝶ちゃん、翠ちゃん!」

日暮「研究室で死んでたからって、よういちくんが犯人だとは限らないと思うよ。ね、翠。」

翠「ピィ、ピィピィ(他の人が研究室に入ったのかもしれないよ)!」

入田「現に、景見は、紙切れで栄におびき寄せられたんだろうが!!」

「星也クン!」

穴雲「あの紙は、筆跡が特定できなかったはずだよ。紙切れに栄君の名前が書いてあったからって、景見君をおびき寄せたのが栄君だとは限らないよ。」

不動院「栄殿は、ご自分が殴られた事を、裁判の冒頭で打ち明けなかったのですよ?」

「柳人クン!」

詩名「栄君は、言っても信じてもらえないと思ったから事件の概要が明らかになるまで黙ってたんだと思うけど?」

朱「研究室、本人シカ入れないはずデス!」

「ボクが!」

狛研「ボクが言ったトリックを使えば、本人じゃなくても研究室に入れるんだよ!」

ラッセ「ダイイングメッセージは、栄陽一が犯人だと言っているのだぞ。」

「治奈ちゃん!」

癒川「ダイイングメッセージに書かれていたからといって犯人だとは限りません!」

羽澄「ヨウイチが殴られたっつーのも、ヨウイチのかもしんねーじゃん!」

「成威斗クン!」

舞田「陽一はなんてついてねェ!さっき叶が証明しただろ!!」

白鳥「は全て解明されたのよ?これ以上の議論は無意味よ。」

「ボクが!」

狛研「まだ、解き明かすべきは残ってるんだ!!」

 

 

 

全論破

 

穴雲「これが僕らの答えだ!」

狛研「これがボク達の答えだよ!」

栄「これがオレ達の答えだぜ!」

詩名「これがオイラ達の答えだよ〜♪」

翠「ピィ(これが私達の答えだよ)!」

日暮「これがわたし達の答えだよ!」

舞田「これが俺達の答えだ!」

癒川「これが私達の答えです!」

 

 

 

狛研「まだ、解明できていない謎が残っている以上、議論は続けるべきだよ。」

羽澄「でも、解き明かすべき謎なんてあったっけ?」

狛研「この犯行を全て陽一クンがやったとすると、一つ不自然な点があるんだ。」

不自然な点…それは…

 

コトダマ提示!

 

【おろし金】

 

「これだ!!」

 

狛研「調理台の流しに、おろし金が放置されていたんだ。陽一クンなら、調理器具をぞんざいに扱ったりしないよね?つまり、あの部屋には、陽一クンと凶夜クン以外の誰かがいたんじゃないかな?」

朱「おろし金、ですカ。何に使ったんでしょうカ?」

狛研「おろし金に大根が付着してたから、大根をすり下ろしたんじゃない?」

不動院「何のためにそんな事を…」

白鳥「フンッ、どうせ栄君がご自慢の朝ご飯のメニューの下ごしらえでもしてたんでしょ。」

ラッセ「…どれだけ食い意地が張ってるんだ貴様は。」

栄「オレじゃねえっつーの!」

狛研「うーん、犯人が大根をすり下ろした理由か…」

 

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

フ ク ニ ツ イ タ チ ノ シ ミ ヌ キ

 

【服についた血のシミ抜き】

 

「これだ!!」

 

狛研「ねえ、みんな。人を刃物で刺したら、どうなると思う?」

栄「えっと…そりゃあ、血がドバッと出て…」

狛研「そうだね、血がドバッと出るよね。そうしたら、犯人はどうなると思う?」

癒川「えっと…服や手に血が付きますよね…あっ!」

狛研「そう。治奈ちゃんはもう気付いたみたいだね。犯人は、大根で服に付いた血のシミを抜いたんだよ!」

栄「大根には、ジアスターゼっつー酵素が含まれてるからな。血が付いた範囲が狭ければ、血のシミはキレイに落ちるぞ。」

舞田「何ぃいいいい!!?だ、大根でシミ抜きを!?」

朱「だから誰も凶夜サンを殺した犯人に気付かなかったんデスネ!」

穴雲「それを知っていたとなると、犯人はそれなりの知識と応用力の高さを兼ね備えた人物って事になるね。」

財原「それでいて、ここまで議論して俺達に犯人だと悟らせなかった計画力と演技力…なるほど、だったら栄クンが犯人だって可能性は一気に低くなるね。」

栄「どういう意味だコラァ!」

ラッセ「…しかし、割と大雑把な性格だと思われるな。血の付いたピンやおろし金、そして気絶した料理バカを放置しておくあたり、あまり几帳面な性格とは言えないだろう。おおよそ、知能はあるがその場の流れで事を進めがちな人物と言ったところか。」

不動院「そんな条件に当てはまる方、いらっしゃったでしょうか…?」

 

狛研「…1人、心当たりがあるよ。」

羽澄「え?ホント?」

入田「誰なのだそれは!!早く教えるのだ!!」

 

…1人、いたはずだ。

星也クン、天理クン、ラッセクンが言ってくれた条件に全部当てはまる人が。

そして、その人はさっき不自然な発言をした。

その人は、なんで()()を知っていたんだろうか…?

 

 

 

 

 

ー人物指定ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎【超高校級のマドンナ】白鳥麗美

 

狛研「…キミが犯人だったんだね、麗美ちゃん。」

白鳥「………………はぁ?私!?」

麗美ちゃんは、自分が指名された事に驚いていた。

舞田「何ぃいいいいいい!!?あ、あの女神みてェにマブい白鳥さんが犯人だとぉおおおおおおおおお!?そんなバカな話、信じられるわけねェだろ!!」

朱「ソウデス!麗美サンは、生きるお宝デス!麗美サンのように美しい人が凶夜サンを殺したナンテ、ありえマセン!」

栄「二人の言う通りだよ、狛研ちゃん!天使みたいに可愛い白鳥ちゃんが犯人なワケないだろ!バカな事言うなよ!」

ラッセ「バカは貴様らだ。ダークパープルもここにいる以上、容疑者である事に変わりはない。裁判に私情を挟むな愚か者が。」

狛研「ラッセクンの言う通りだよ。麗美ちゃんが犯人だっていう根拠は、ちゃんとあるんだよ!」

白鳥「根拠って何!?私、何も知らないわよ!!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

白鳥「私が犯人だって言いたいの!?そんなわけないでしょ!私は犯人じゃないわよ!」

狛研「でも、麗美ちゃんが犯人だっていう根拠はちゃんとあったんだよ。」

白鳥「だから、その根拠って何よ?私、何も不自然な事はしてないでしょ!?」

今の麗美ちゃんの発言はおかしい!

 

何も不自然な事はしてない⬅︎【陽一クンのレシピ】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「…麗美ちゃん。さっき、陽一クンが自慢のレシピで朝ごはんの下ごしらえをしてたんじゃないかって言ってたよね?」

白鳥「それがどうしたのよ!」

狛研「陽一クンは、レシピの事を誰にも話してないって言ってたよ。…なのに、なんでキミはレシピの事を知ってたの!?」

白鳥「…だから?たまたまあんた達の会話を聞いてただけよ!悪い!?」

財原「白鳥サンは、独房を捜査してただろ?なんで狛研サンと栄クンの会話が聞こえたの?」

白鳥「…うっ!」

財原「それにね?俺、もう一個気になる事があるんだぁ。白鳥サンさぁ、ハンカチを取りにいくために娯楽室を20分間抜け出したって言ってたけど…ハンカチを取りにいくだけで普通20分もかからなくない?20分間、本当は何してたの?」

白鳥「へ、部屋が散らかってたから探すのに時間がかかったのよ!」

不動院「私がお部屋にお伺いした時は、部屋は綺麗に整頓されていましたが。」

白鳥「ぐっ…」

財原「本当の事を言えよ白鳥サーン。本当は、研究室で景見クンをブッ殺してたんだろー?」

白鳥「………。」

狛研「麗美ちゃん。もうキミが犯人としか考えられないんだよ。いい加減、認めて…」

 

 

 

白鳥「うるっさいわねェ!!」

 

反論

 

 

 

財原「ふにゃあ〜?」

白鳥「黙って聞いてれば、醜い暴論ばっかり…!あああ、醜い醜い醜い!!あんたが間違ってるって事、今から証明してあげるわ!!」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

白鳥「何を根拠に私が犯人だって言ってるのよ!ふざけんじゃないわよ!!」

日暮「でもれいみちゃんは、かなえちゃんとよういちくんしか知らないはずの情報を知ってたよね?」

白鳥「そんな揚げ足取りに踊らされてたまるものですか!!私が犯人だっていう決定的な証拠が無いじゃない!!」

財原「あっはは、往生際が悪いねー。」

白鳥「そりゃそうよ!!私は犯人じゃないもの!!」

朱「麗美サン…」

白鳥「ほらほら!!私が犯人だっていう根拠があるなら言ってみなさいよ!!」

狛研「…。」

白鳥「どうしたの?もしかして、言えないの!?あはは!そりゃあそうよね!だって、私は犯人じゃないものね!」

麗美ちゃんが犯人だっていう証拠…

アレが手がかりになるかもしれない!

 

根拠⬅︎【踊子ちゃんの証言】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!」

 

論破

 

狛研「麗美ちゃん、途中、踊子ちゃんとすれ違ったよね?」

白鳥「え?ええ、すれ違ったわよ。それがどうしたっていうの!?」

狛研「踊子ちゃんの証言によると、麗美ちゃんはその時緑色の宝石が付いた指輪をしていたらしいんだ。ね、踊子ちゃん。」

羽澄「ああ、間違いないよ。レイミは、緑色のエモい指輪をしてたね。」

白鳥「緑色の指輪ってなんの事!?私、そんなの知らないわよ!」

狛研「その指輪なら、今麗美ちゃんが付けてるでしょ?」

白鳥「付けてないわよ!緑色の指輪なんて!ほら、やっぱり証拠があるなんてハッタリじゃないの!」

狛研「今から、全ての謎を解き明かすよ!」

 

コトダマ提示!

 

【指輪】

 

「これだ!!」

 

狛研「麗美ちゃん、踊子ちゃんが言ってた緑の指輪は、多分麗美ちゃんが今付けてる指輪の事だよ。」

白鳥「はぁ!?何言ってんのあんた!!どう見ても、私が今付けてる指輪は赤でしょ!!あんた、色盲なの!?それともバカ!?」

羽澄「確かに、アタシが見た指輪は、レイミが今付けてる指輪と同じデザインでエモかったけど…でも、レイミの言う通り、どう見ても赤だよね?」

狛研「…ねえ、みんな。突然だけど、『アレキサンドライト』って知ってる?」

不動院「あれき…なんですかそれは?」

穴雲「確か、光の種類によって色が変わる宝石だったよね。太陽光なら緑、白熱灯なら赤っていった具合に…」

狛研「そう。麗美ちゃんが付けてる指輪は、アレキサンドライトなんだ。多分、光の種類の違いによって宝石の色が変わっちゃったんじゃないかな?」

日暮「じゃあ、れいみちゃんは、内エリアの部屋とは違う照明が使われてる場所にいたって事?そんな場所、あったっけ?」

…多分、あそこしかないだろうな。

 

コトダマ提示!

 

【研究室の照明】

 

「これだ!!」

 

狛研「実は、内エリアの中に一部屋だけ、別の種類の照明が使われてた部屋があったんだ。」

羽澄「どこなのさ、それは?」

狛研「陽一クンの研究室だよ。」

舞田「え!?ホントなのか!?」

財原「うん。確か、陽一クンの部屋だけは太陽光に近い波長の照明が使われてたよ。野菜の苗を育てるための工夫だろうねぇ。」

狛研「内エリアの中で、この種類の照明が使われてたのは陽一クンの研究室だけ…つまり、踊子ちゃんが見た緑色のアレキサンドライトこそが、麗美ちゃんが陽一クンの研究室にいた事の証明だよ!!」

白鳥「ぐっ…!ま、まだよ!まだ議論は終わらせないわよ!!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

白鳥「アンタ今、内エリアはって言ったわよね!?」

狛研「言ったけど…」

白鳥「外エリアは!?外エリアはどうなのよ!!」

財原「あー、確かに外エリアにも、太陽光に似た照明は使われてるねぇ。」

白鳥「でしょ!?ほら、やっぱり私が栄の研究室に行ってたとは限らないじゃない!!」

詩名「仮にそうだったとしても、じゃあ今度は朱君達に嘘をついて外エリアに行ってたって事になるよねぇ?どっちみち怪しいじゃないか。」

白鳥「うるさいうるさいうるさい!!私は犯人じゃないって何度言えばわかるのよ!!私は、外エリアに行ってたのよ!!」

狛研「ううん。麗美ちゃんは、陽一クンの研究室に行ってたんだよ。」

白鳥「なんでそう言い切れるの!?私は栄の研究室になんて行ってないって言ってるでしょ!!」

ボクは、知っているはずだ。麗美ちゃんが犯人だっていう、決定的な証拠を…!

 

 

 

白鳥「私が犯人だっていう証拠を出しなさいよ!!」⬅︎ 【外エリア組の証言】

 

「これで終わりだよ!!」

 

 

 

狛研「麗美ちゃん、麗美ちゃんは、外エリアに行ってたって言ったよね?」

白鳥「そうよ!!」

狛研「でもね、外エリアにいた人の中で、麗美ちゃんが外エリアを出入りしたところを見たっていう人は1人もいないんだよ!!この矛盾は、どうやって説明するの!?」

白鳥「ーーーーーーーーーーッ!!!」

財原「まさかとは思うけど、実は忍者か透明人間でしたー、なんて苦しい言い訳はナシだよ?」

狛研「この中で、凶夜クンを殺せたのはただ1人…麗美ちゃん、キミだよ!!」

白鳥「ま、まだよ!!」

神座「……………しつこい。」

白鳥「黙れクソガキ!!今私が話してんでしょうが!!まだ、説明できてない事があるわよ!!私が犯人だっていうなら、あのダイイングメッセージはなんだって言うのよ!?」

朱「確かに…メッセージは、陽一の名前デシタ!」

白鳥「ほらね!?やっぱり、栄が犯人…」

 

 

 

財原「…うっせぇなぁ。」

 

「!!?」

 

全員が、天理クンの方を見た。

彼から放たれていたのは、悪意…いや、殺気だった。

 

財原「…あーあー、スマートじゃねえなぁ。もうちょっと()()()を楽しませてくれると思ってたのに…興醒めだよ。ったくよぉ。」

白鳥「あ、あんた…何を言って…」

財原「キミには失望したって言ってんの。白鳥麗美サン…いや、」

 

 

 

 

財原「()()()()()()。」

 

 

 

白鳥「ッーーーーーーーー!!あ、あんた、なんでそれを…!!」

財原「風のた、よ、り♡」

羽澄「ねえ、今サカエって言ったよね!?どういう事なの…!?」

 

 

 

狛研「… 偽名。もしかして、白鳥麗美っていうのは、偽名なんじゃないの?麗美ちゃんの本名は、サカエちゃん…凶夜クンが書いたのは、陽一クンの名前じゃなくて、麗美ちゃんの本名だったんだよ!」

日暮「でも、なんできょうやくんがれいみちゃんの本名を知ってたの…!?」

狛研「…多分、何かのはずみで麗美ちゃんの手帳の画面が表示されたんだと思う。もし仮にそうなら、麗美ちゃんの手帳に本名が書かれてるはずだよ!」

白鳥「はぁあああああああああ!!?ふっざけんなぁあ!!私は白鳥麗美よ!!サカエなんてダサい名前が私の名前なわけないでしょうがぁあああ!!!」

狛研「じゃあ、手帳の画面を見せてよ。」

白鳥「…は?」

狛研「ほら、早く手帳を見せて。本当にキミの本名が白鳥麗美なら、手帳を見せられるよね?」

白鳥「…ッ!!」

ラッセ「…終わったな。」

狛研「…麗美ちゃん。最後に、事件を振り返るよ。」

白鳥「いや…やめて…やめろ…やめろっつってんだろうがぁああああああああああ!!!」

狛研「これが事件の真相だよ!」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

Act.1

まず、事件の発端は、クマさん達が発表した『動機』だった。

ボク達の中で、1人だけ、どうしても再入学資格が欲しいと考えた人がいた。

それが、今回の事件の犯人だった。

みんなが結束を強める中、犯人は水面下で殺人の計画を練っていたんだ。

 

Act.2

ターゲットに選ばれたのは、今回の事件の被害者の凶夜クンだった。

そして、事件を都合よく進めるためのコマに選ばれたのは、陽一クンだった。

陽一クンが決まった時間に研究室から部屋に行くのを知っていた犯人は、何らかの方法で紙切れを凶夜クンに渡し、凶夜クンが陽一クンの研究室に行くように誘導した。

事件直前、犯人は娯楽室からボウリングのピンを盗み、ハンカチを取りに行くと言って娯楽室を抜け出した。

そして、レシピを書き終わって研究室から出てきた陽一クンを、メダルを使って物陰におびき寄せ、背後からピンで殴った。

この時、殴った音を詩名クンに聞かれていたものの、計画は順調に進んでいた。

 

Act.3

陽一クンを気絶させた後、犯人は陽一クンの手帳の設定を変更して、自分の手帳で研究室に入れるようにしたんだ。

そして、犯人は、研究室の中で待ち伏せた。

不運な事に、凶夜クンは研究室に来てしまったんだ。

…中で犯人が自分を殺す準備をしているとも知らずにね。

そして犯人は、研究室に入ってきた凶夜クンを、持っていた包丁で刺し殺した。

 

Act.4

…でも、凶夜クンは、この時すぐには死ななかったんだ。

凶夜クンは、刺された直後に犯人に抵抗した。

その時、たまたま犯人の手帳の画面が表示されて、凶夜クンは犯人の名前を知る事になったんだ。

凶夜クンは、犯人にバレないように、犯人の本名を暗号化してメッセージとして残した。

でもその直後、事切れてしまったんだ。

 

Act.5

そして、そこで犯人にとって予想外の出来事が起こったんだ。

凶夜クンが抵抗したせいで、犯人の服に血が付いてしまった。

犯人は、それを落とすために研究室に置いてあった大根をすり下ろして、服の血を落としたんだ。

この時、たまたま犯人は陽一クンが書いたレシピを見た。

それが、後で犯人にとって仇となっちゃうんだけどね。

 

Act.6

部屋を出て鍵を閉めた犯人は、陽一クンの手帳の設定を戻して、ピンを元の場所に戻し、何事も無かったかのように元の居場所に戻った。

でも、犯人はそこでミスを犯してしまったんだ。

ピンを回収しに行く途中、踊子ちゃんとすれ違って指輪を見られてしまった。

指輪が部屋の照明のせいで変色している事に気付かなかった犯人は、指輪をつけたまま部屋の外に出てしまったんだ。

結果、それが、犯人が凶夜クンを殺した決定的な証拠となってしまった。

 

「これが事件の真相だ!…そうだよね?」

 

 

 

「【超高校級のマドンナ】白鳥麗美ちゃん!!!」

 

 

 

白鳥「ぎっ、ぐぅうううううううううううう!!!ち、違うぅうう!!私は、私はぁああああ!!」

財原「はっふー。やっと終わったよー。ねえ、クマちゃん。俺もう喉渇いちゃったから、早く投票始めちゃってよ。」

モノクマ『うぷぷ、そうだね。もう答えは出たみたいだし、始めよっか!投票ターイム!』

モノベル『必ず、一人一票投票してくださいね。もし投票しなかったら、校則違反とみなしておしおきします!』

 

証言台にボタンが現れた。

本当に投票していいのだろうか。

…でも、投票しなければ自分が死ぬ。

ボクは、麗美ちゃんに投票した。

 

モノクマ『うぷぷ、全員投票し終わったようだね?ではでは…結果発表ー!!』

モノベル『皆様の運命や如何に!?』

 

 

 

モニターにVOTEと書かれたスロットが表示され、ドラムロールと共にボク達の顔のドット絵が描かれたリールが回転する。

リールの回転が遅くなり、ついに止まった。

 

リールには、麗美ちゃんの顔が3つ並んでいた。

スロットからは、ボク達の勝利を祝福…いや、嘲笑うかのように、ファンファーレと共に大量のメダルが吐き出された。

 

 

 

 

 

学級裁判閉廷!




閃きアナグラムやりすぎw

…もうちょっと捜査中のコトダマを増やせば良かったと反省中。


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第1章 非日常編④(おしおき編)

VOTE

 

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美 15票

 

【超高校級の栄養士】栄陽一 1票

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也 0票

 

【超高校級の工学者】入田才刃 0票

 

【超高校級の不運】景見凶夜 0票

 

【超高校級の???】神座ゐをり 0票

 

【超高校級の幸運】狛研叶 0票

 

【超高校級の資産家】財原天理 0票

 

【超高校級の詩人】詩名柳人 0票

 

【セキセイインコ】翠 0票

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅 0票

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子 0票

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶 0票

 

【超高校級の侍】不動院剣 0票

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗 0票

 

【超高校級の看護師】癒川治奈 0票

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン 0票

 

 

 

『うぷぷぷ!!お見事大正解ーーー!!!【超高校級の不運】景見凶夜クンを殺したのは、ななななんと!女神のように美しい完璧な美少女の皮を被った、本性真っ黒の悪女【超高校級のマドンナ】白鳥麗美サン…もとい、白鳥隥恵サンでしたー!!』

『フッフッフ。今回は、クロの白鳥様以外は全員満場一致で白鳥様に投票していました!』

 

麗美ちゃんは、項垂れながら肩を震わせていた。

その表情は、髪の毛で隠れてよく見えなかった。

 

「そんな、嘘…ですよネ?麗美サンが凶夜サン殺したなんて、嘘デス!!」

「そんな…違うよな?何かの間違いだよな…?なあ、そうだと言ってくれよ…!」

 

「ふ…ふぅっ…うぅっ…」

麗美ちゃんは、顔を上げた。

顔を押さえていた両手を下げて、顔を露わにした。

 

 

 

 

 

「ふふっ…あはは…あはははははは…!」

その顔は、笑っていた。

 

「れ、れいみ…ちゃん…?」

 

「…あーあ。うまく騙せてたと思ったのに。人間、絶望のドン底まで突き落とされると逆に笑うしかなくなっちゃうわね。」

麗美ちゃんは、天井を見上げながら言った。

「はぁーあ。もう、何もかも疲れちゃった。いい子のフリをするのも、案外楽じゃないわね。ほら、始めなさいよ。おしおきとやらを。」

『おやぁ?随分と潔いですね!さっきまで、あんなに慌てふためいてたのに!』

「もう足掻く術がないって悟ったもの。どうせ死ぬなら、美しいまま死にたいわ。ほら、早くしてよ。」

「待って!」

「…はぁ?」

ボクは、麗美ちゃんを睨みながら言った。

「…ひとつだけ聞かせて。なんで凶夜クンを殺したの…?凶夜クンに恨みでもあったわけ…!?」

「…ああ、その事ね。…簡単な話よ。」

麗美ちゃんは、口角をゆっくりと上げてニタリと笑った。

 

 

 

 

 

「目障りだったから。理由はこれで十分かしら?」

 

 

 

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?

 

「なにそれ…どういう意味よ…。」

「私は、どうしても再入学資格が欲しかった。だって、この美しい私がこんな所に閉じ込められてるなんて、あっちゃいけない事なんだもの。だから、誰かを殺す必要があった。別に殺せれば誰でも良かったんだけど、アイツがあまりにも不愉快だったから、殺す事にしたのよ。」

「目障りだって…?一体、どういう事なのかな?」

「だって、アイツは【超高校級の不運】よ?何の役にも立たない【幸運】ならまだしも、アイツの才能は、役に立たないどころか人の足を引っ張る才能なのよ?生きてるだけで周りの人間を不幸にする…そんなヤツ、死んだ方が世のためでしょ?」

麗美ちゃんは、ニッコリと笑みを浮かべた。

でも、その笑みはいつもの笑みとは違う…

強烈な“悪意”を孕んだ笑みだった。

「なにそれ…凶夜クンの才能が【不運】だった…たったそれだけの理由であの子を殺したの…?」

「そうよ?あんな生きてるだけで迷惑なヤツ、生きてる価値なんてないから。美しい私に殺されるなんて、名誉な事なんじゃなくって?」

 

「黙れ!!!」

 

気がつくと、ボクは麗美ちゃんの胸ぐらを掴んでいた。

「キミは、自分が何をやったかわかってるの!?目障りだから殺しただと!?ふざけんな!!」

「あら。なんであなたがそんなに怒ってるのよ?アイツが死にたいって言ってたの、忘れた?死にたい死にたいうるっさいから、お望み通り殺してあげたまでよ。優しいでしょ?」

「違う!!凶夜クンは、約束してくれたんだ!!全員でここを出るって…!」

「それでこのザマ?ふふっ、甘すぎるのよあなた。いい加減現実見なさい。」

「黙れ!もう、キミの声なんか聞きたくない!!」

「ふふっ、あーあ。嫌われちゃったわね。さ、モノクマ。早くおしおき始めちゃって?」

『え、もういいの?じゃあ、白鳥サンも死にたがってるし、早くおしおき始めちゃおっか!ではでは、おしおきター…』

 

 

 

「はいストーップ。」

天理クンは、眠そうにしながらのっそりと右手を挙げた。

 

「…財原君?」

「ねえクマちゃん。なんで白鳥サンは偽名を名乗ってたの?」

「………は?」

麗美ちゃんの顔は、今までの不気味な笑顔から、急に無表情になった。

「俺、スッゲー気になるんだけど。ねーねー、クマちゃんおーしーえーてー!」

天理クンは、バタバタと暴れながら子供のように駄々をこねた。

『あー、もう!わかったよ!そうだよね!知りたいよね!ではでは、特別に教えてあげましょう!』

「やったー☆」

「ちょっと待って…!お願い、言わないで!」

麗美ちゃんはクマさんにしがみついて制止しようとしたけど、クマさんは聞く耳を持たず話を続けた。

『実は、彼女が景見クンを殺してまで再入学を望んだのには、深〜いワケがあるのです!』

「やめて…お願いします…やめてください…!」

麗美ちゃんは、涙目になりながら土下座までしてクマさんの発言を止めようとした。

『やだ。それじゃ、VTRスタートッ!!』

 

「いやぁああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

昔々ある所に、とある夫婦がいました。

夫はお金持ちの社長、妻はとても綺麗な女性でした。

そんな理想の夫婦の間に、双子の女の子が産まれました!

姉はお母さんに似てとても可愛らしい女の子、そして妹はこの世のものとは思えないほど醜い顔の女の子でした!

夫婦は、姉に『麗美』、妹に『隥恵』と名付けました!

 

そして数年後、二人はすくすくと育ちました!

麗美サンは、賢く、気高く、そして美しい女の子へと成長しました。

一方、隥恵サンは、何をやらせても大した才能が無く、卑屈な性格に育ってしまいました。

両親が、可愛くて才能がある麗美サンばかりを可愛がった事もあって、隥恵サンは姉に対する劣等感を膨らませていました。

 

しかし、彼女達の日常はある日突然終わりを告げました!

なんと、彼女達の家に飛行機が突っ込んできて、隥恵サン以外の全員が亡くなってしまったのです!

命からがら生き残った隥恵サンも、全身が潰れて原型がわからない程の重傷を負って病院に搬送されました。

 

そして、彼女が目覚めた時、彼女にとって信じられない事が起こりました。

なんと彼女は姉そっくりの美少女になっていました!

彼女を助けた医師は、彼女を麗美サンだと勘違いして、重傷を負った隥恵サンを麗美サンそっくりの顔に整形してしまったのです!

親族の人達はみんな、麗美サンが助かったと大喜びしました。

喜ぶ親族達の顔を見て、隥恵サンは、自分は本当は麗美サンじゃないと言い出す事ができませんでした。

周りはみんな、麗美サンが生き残り、隥恵サンが死んだと思い込んでいました。

…しかし、現実というものは皮肉なものですねぇ。実際はその逆だったのです。

 

こうして隥恵サンは、麗美サンとして生きる事となったのです。

しかし、姉の麗美サンと彼女の才能は、雲泥の差でした。

彼女は、姉に嫉妬すると同時に、心の奥底では憧れていたのです。

だからこそ彼女は、姉である麗美サンになり代わろうとしました。

彼女は、姉のレベルに追いつくため、血の滲むような努力を重ねました。

 

そして約10年の月日が流れ、まるで姉の麗美サンのような完璧な美少女へと生まれ変わった隥恵サンは、【超高校級のマドンナ】として希望ヶ峰学園にスカウトされました!

しかし、あくまでそれは仮の姿。

その本性は、死にものぐるいで居もしない偶像になり代わろうとする、ただの凡人だったのです!

彼女の『白鳥麗美になり切らなければ』という思いは、もはや病気の域まで達していました!

「本物の白鳥麗美なら、こんなところに閉じ込められずに、今頃希望ヶ峰学園のエリートになっているはずだ。」

その思いが強迫観念となり、彼女は姉になり切ろうとするあまり、クラスメイトを殺害してしまったのです!

 

ちなみに隥恵サンが景見クンを殺したのには、もっとちゃんとした理由があったんだよね!

彼女が死ぬ程の努力をしてやっと手に入れた【超高校級】の才能を、他人に迷惑ばかりかけて生きてきた景見クンが何の努力もせずに手に入れた事が許せなかったんだよ!

ま、そんなの知るかっつー話なんだけどね!

 

そういうわけで白鳥隥恵サンは、完璧な美少女どころか最低最悪の殺人鬼と化してしまいました!

でめたしでめたし!

 

 

 


 

「…そんな。」

「嘘でしょ…その話、本当なの…!?」

『フッフッフ!本当ですよ!ワタクシ達がウソをつくわけないでしょう!そんなに気になるなら、本人に聞いてみてはどうです?』

 

「うぅう…うぅっ、うぁあああぁああああ…あ゛ぁああああああああああああああああああああ!!!」

真相を暴露された麗美ちゃん…もとい隥恵ちゃんは、その場に座り込んで泣き喚いていた。

「白鳥ちゃん…今の話、ホントなのか…?」

 

「ち、がう…」

隥恵ちゃんは、ボソリと呟いた。

「…レイミ?」

 

 

 

「ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがあ゛ぁああああああああう!!!」

 

 

 

隥恵ちゃんは、大声で泣き叫んだ。

顔は涙と鼻水と涎でグチャグチャになり、真っ赤に腫れ上がった頬に乱れた髪の毛が貼り付いていた。

その顔はもはや、美しかった『白鳥麗美』の顔ではなかった。

 

「ちがう!!あんなの、ちがう!!わたしは、白鳥麗美…!!サカエなんて、ダサくてかわいくない女がわたしなわけない!!わたしが、わたしだけが、“白鳥麗美”なんだよぉおおおおおおお!!!」

 

「うっわ、壊れたw」

「幼児退行しちゃったね…」

「れいみちゃん…」

みんな、隥恵ちゃんを哀れみの目で見ていた。

今の彼女は、完璧な美少女じゃない。

ただの、泣き喚いて駄々をこねている子供だ。

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美は、たった今死んだんだ。

…いや、そんな人間、最初からいなかった。

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美は、隥恵ちゃんが作り出したただの幻影だった。

 

「わたしは、完璧な美少女なの!!このわたしが、こんな所で死ぬわけがない!!そうだ、景見くんが死んだのも、全部嘘だったんだよ!完璧なわたしが人を殺すわけがない!!ほんとうは景見くんは生きてて、裁判の結果は全部まちがいだったんだよ!そうに決まってる!!だって、わたしは、【超高校級のマドンナ】白鳥麗美だもん!!」

隥恵ちゃんは、わけのわからない事を言い出した。

きっと、抑え込んでいたものが一気に爆発して、心が壊れちゃったんだ。

 

「…白鳥サン。」

「ねえ、財原くん!財原くんからも何か言ってよぉお!!わたし、誰も殺してないよね!?何もまちがってないよねぇ!?」

隥恵ちゃんは、天理クンにしがみついた。

 

「うるせェ。」

天理クンは、隥恵ちゃんの前髪を掴んで、顔を覗き込んだ。

「キミなら、もっとこのゲームを盛り上げてくれると思ってたのに…このザマはなぁに?俺のお楽しみをブチ壊してんじゃねえよ。」

「あ、え…?」

何を言われているのかわかっていない様子の隥恵ちゃんに、さらに天理クンは言葉を浴びせた。

 

 

 

 

「あんまり俺を失望させるなよ。」

 

「ッ!!!」

天理クンは、威圧するような目で隥恵ちゃんを睨んだ。

隥恵ちゃんは、天理クンに気圧されたのか、それ以上何も言わなくなった。

「はーい、もう敗者さんに用はありませーん!服が汚れるからそろそろ離れてくれる?」

天理クンは、またいつものあっけらかんとした笑顔に戻り、隥恵ちゃんを投げ捨てた。

「あ、う…!」

隥恵ちゃんは、ラッセクンの証言台の前まで投げ出された。

隥恵ちゃんは、訴えかけるような目でラッセクンを見た。

「ら、ラッセくん…」

 

「気安く俺に話しかけるな。」

 

ラッセクンは、失望や哀れみ、軽蔑…そういった感情が混ざり合った目で隥恵ちゃんを見た。

「ッ、うぐっ…えぐっ…う、あぅ…!」

見捨てられたのがよっぽどショックだったのか、隥恵ちゃんはうまく言葉を紡げないようだった。

 

『あーあー、見苦しいね全く!ちょっと昔話をしてあげただけでコレだよ!じゃ、あんまり神聖な裁判場を汚されるのも不愉快なんで、とっととおしおきしちゃうよ!』

『フッフッフ!全く、哀れですねェ!所詮、アナタはただの身代わり(ゴースト)…本物になんてなれるわけなかったんですよ!罪人は罪人らしく、負けを認めて大人しく死になさい!』

「いやだぁ!わたしは、完璧な美少女なのにぃい!なんで死ねとか殺すとかいうの!?ねえ、狛研さん!何か言ってよ!わたしを助けてよぉおお!」

 

「…ごめんね。もっと早く、ボク達に本音を打ち明けてほしかった。」

 

「ッ…!!」

 

『それでは!【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵サンのために!スペシャルなおしおきを用意しました!』

 

「いやだ…やめて…いやっ…死にたくない…!やめて…」

 

 

『ではでは…おしおきターイム!!』

 

 

 

「いやだぁあああああぁあああああああああああああああああああぁあああああああああああ!!!」

 

クマさんはハンマーを取り出すと、せり上がってきた赤いボタンをピコっと押した。

ボタンの画面に、ドット絵の隥恵ちゃんが連れ去らせる様子が表示された。

 

 

 


 

 

GAME OVER

 

シラトリさんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

 

 

白鳥の下の床がパカッと開き、白鳥が下に落ちる。

白鳥は、暗闇の中に吸い込まれていき、姿が見えなくなった。

するとモニターの画面が切り替わり、薔薇庭園のような空間が映し出される。

白鳥は、薔薇庭園の中の椅子に固定される。

その近くには、メイドの格好をしたモノクマとモノベルが立っていた。

モニターに、文字が表示される。

 

 

 

悪ノ華 無惨ニ散ル

 

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美 処刑執行

 

 

 

庭園のテーブルの上には、小さな鏡が置かれていた。

その鏡に、まるで昔の白鳥のような醜悪な顔が映し出された。

それを見たモノクマとモノベルは、ポケットからハンマーやペンチなどの道具を取り出した。

そして、モノクマは白鳥の左頬をハンマーで思い切り殴った。

そして、モノベルは、ペンチで右のまぶたを引っ張った。

あまりの激痛に白鳥は泣き叫ぶ。

だが、モニターの向こうにいる仲間にその声が届く事はなかった。

モノクマとモノベルは、ペンチやハンマーを使って、白鳥の顔を鏡の顔そっくりに変形させていく。

そして、白鳥の顔は鏡の顔そっくりに仕上がった。

さらに、モノクマが鏡に蹴りを入れると、鏡が割れて鏡の破片が白鳥の顔に突き刺さる。

たった今、白鳥の美貌が失われた。

それを見たモノベルは、指笛を吹いた。

すると、庭園の奥から茨が伸びて、白鳥の体を縛った。

茨の棘が、白鳥の身体中に突き刺さる。

そして、茨は白鳥を庭園の奥へと引きずり込んだ。

白鳥は、茨に縛られたまま、下を見下ろした。

すると、巨大な薔薇の花が開いていた。

その中央には、ブクブクと泡立った酸の池がある。

茨は、酸の池の中に白鳥を落とそうと、茨を思い切り振り下ろす。

そして、ギリギリのところで、今度は勢いよく上に振り上げた。

その衝撃で白鳥の身体は悲鳴を上げ、血反吐をブチ撒けた。

振り下ろしては振り上げ、振り下ろしては振り上げ…

何十回、何百回と繰り返される激しい運動が、白鳥の身体にダメージを蓄積させていく。

するとそこへ木こりの格好をしたモノクマが現れ、茨を斧で斬り落とした。

白鳥の身体は宙を舞った。

やっと解放されたと思ったのも束の間、真下には、巨大なアイアンメイデンが待ち構えていた。

妖精の格好をしたモノベルが、笑いながらアイアンメイデンの扉を開いた。

 

そして、

 

 

 

落ちた。

 

白鳥の最期の顔は、絶望で染まっていた。

 

アイアンメイデンの扉が勢いよく閉まり、扉に開いた穴からは赤い液体が流れ出た。

茨は、アイアンメイデンを掴んで持ち上げると、薔薇の中の酸の池に落とした。

食事を終えた薔薇は、花をすぼめながらゲップをした。

その様子を、妖精のモノクマとモノベルがフワフワと宙を舞い、笑いながら見ていた。

 

 


 

 

 

『イヤッホォオオーイ!!エクストリィイイイイム!!いやー、サイッコーだねぇ!!』

『フッフッフ…ハッハッハッハッハッハッハ!!!いやぁ、傑作傑作!!きっと今夜の夕食はおいしいですよ!』

 

隥恵ちゃんが死んだ。

ボク達の大事な友達が殺された。

確かに隥恵ちゃんは、凶夜クンを殺した殺人犯だ。

でも、その罰は、犯した罪に対してあまりにも残酷すぎた。

 

「ひぐっ、ぐすっ、いやだぁ…!嘘でしょ、そんな、れいみちゃんがあぁああ…!」

「ピィ…ピィピィ…!」

「白鳥殿…」

「クッソ!!麗美…チクショウ!!」

「あ、あああ…レイミが、レイミが…!」

「なんて悪趣味な…!」

「嘘だろ…?白鳥ちゃん…?う゛っ!?おえ゛ぇっ、ゲホッ…」

「啊啊…啊啊啊…れ、麗美サンが…!」

「…。」

「マジかよ…!?こんな残酷な殺され方するなんて、聞いてないのだ…!う、うげぇっ…!」

「そんな、白鳥さん…!いや、こんなの…!はぁっ、はぁっ、はぁっ…!」

「うん、オイラにもわかるよ。白鳥君、よっぽど残酷な殺され方をしたみたいだね。」

「……………。」

みんな、反応は様々だった。

泣き出す彩蝶ちゃんを、翠ちゃんは慰めていた。

雪梅ちゃんと踊子ちゃんは、顔を真っ青にしながら呆然とモニターを見ていた。

剣クンは、モニターから目を逸らした。

成威斗クンは、仲間をまた失ってしまった事を、地団駄を踏んで悔しがった。

穴雲クンは、怒りに震えていた。

陽一クンと才刃クンは、吐き気を催して嘔吐した。

天理クンは、俯きながら肩を震わせていた。

治奈ちゃんは、ショックで過呼吸を起こしていた。

柳人クンとゐをりちゃんは、みんなの事が心配そうな様子だった。

「…白鳥隥恵。俺は貴様の事を、数少ない対等な立場で語り合える友だと思っていた。…非常に残念だ。」

ラッセクンは、俯きながら両目を右手で押さえていた。

…そっか。

ラッセクンは隥恵ちゃんといつもケンカしてたけど、本当は友達だと思ってたんだな。

王様のラッセクンにとっては、対等にケンカし合える友達が死んじゃったのは辛いよね。

 

『うっぷぷぷぷ!いやあ、オマエラホントよくがんばったよね!お見事お見事!じゃ、ご褒美にスロットのメダルあげるから、みんなで好きに使ってちょーよ!』

『フッフッフッフ!アナタ達、何をそんなお通夜みたいな表情していらっしゃるんですか!クロが処刑されたんですよ?もっと喜びましょう!』

「テメェら…よくも、よくもぉおおおおおおおおおおおお!!!」

「巫山戯るな!よくも拙者の級友達の命を弄んでくれたな!武士の名において、貴様らを此処で斬り捨てる!!」

隥恵ちゃんの死を嘲笑ったクマさんとベルさんに怒った成威斗クンと剣クンは、二匹に立ち向かった。

 

「待って!!」

ボクは、二人と二匹の間に入った。

「なっ…!叶!!邪魔すんじゃねえ!!俺は今から、この根性のねじ曲がったクソヌイグルミ共をブッ飛ばすんだよ!!そこどけ!!」

「狛研殿!級友である貴女を斬りたくはありません!どいてください!!」

「二人とも、そんな事したら、死んじゃうんだよ!?お願いだから、もう誰も命を粗末にしないで…!!ボクは、キミ達が死ぬ所なんて見たくないんだ!!」

「ッ!!」

その言葉を聞いた二人は、二匹を攻撃するのをやめてくれた。

「…申し訳ございません、狛研殿…少し、頭に血が上っていたみたいです。」

「悪りい、叶。俺達のために止めてくれたんだな。」

『えぇー?やめちゃうの?つまんねーの!ボクとしては、暴れてほしかったっていう気持ちが半分あるんだけど!』

「…キミ達、うるさいよ。これ以上みんなをバカにするようなら、今度はボクがキレる。」

『おお、こわいこわい!せっかく、アナタ達にちょっとしたプレゼントを差し上げようと思っていたのに!』

「…プレゼント?」

『ズバリ、先日お伝えした、『裏切り者』に関するヒントです!』

「ヒント…?」

『うん!裁判を頑張ったオマエラに、ちょっとだけ情報をあげるって言ってるの!それでは、発表します!』

 

 

 

『ズバリ、この中に『第二の才能』を隠している方がいらっしゃいます!』

 

「だ、第二の才能…?」

『実はですね!ごく稀に、二つ以上の才能で希望ヶ峰学園にスカウトされる生徒がいるのです!皆様の中にも、そういう多才な方がいらっしゃるんですよ!』

『ま、その多才サンが裏切り者とは限らないけどね!それじゃ、ヒントはあげた事だし、ボク達はそろそろオサラバするよ!それじゃ、まったねー!!』

『フッフッフ!ご機嫌よう皆様!またお会いしましょう!』

クマさんとベルさんは、上機嫌で去っていった。

 

「そんな、第二の才能だって…?」

「マジかよ…そんなヤツがいんのかよ…!」

みんな、隥恵ちゃんの死を目の当たりにした直後で、いきなり才能の話をされて、頭が追いついていない様子だった。

 

「…。」

天理クンは、ずっと俯いたままだった。

「てんりくん…大丈夫?」

「テンリ、ツラいかもしんないけど、そろそろ校舎内に…」

「…ふふっ。」

「?」

「…ふふっ、はははっ…」

 

 

 

「あっははははははっはっはははははははははっはははははははっはははははははははは!!!」

天理クンは、お腹を抱えてケタケタと笑い出した。

「なっ…何がオカシイですか、アナタ!!」

「あっはははははは!!いやあ、マジで傑作だわ!こんなRー18モノのスプラッタを生で拝めるとはな!ホント笑えるわ。はー、腹痛てェ!」

「テメェ…!!この状況わかってんのかよ!?白鳥ちゃんが死んだんだぞ!?」

「いや、わかってるからこそ笑ってんだけど。そんな事もわかんねェの?バカなの?死ぬの?」

「ちょっと、テンリ!!アンタ、不謹慎にも程があんだろ!!アンタ、なんでそんなに笑ってられんのよ!!」

「なんでって言われてもねェ。うーん、強いて言うなら、楽しいから?あ、でも、白鳥サンをエロい目で見られなくなっちゃったのはちょっと萎えたかなー。」

ヘラヘラしながら言う天理クンの胸ぐらを、成威斗クンが掴んだ。

「ざけんじゃねェ!!このクソイカレ野郎が!!ブン殴ってやる!!」

「へぇー、いきなり暴力?いいよ。殴りたきゃ好きなだけ殴れば?一撃目は反撃しないでやるからよ。でも、俺を殴ったところで、白鳥サンが生き返るわけじゃないだろ?」

「何…!?」

「てか、んな事よりみんなもっと喜べよ!一歩間違えば、俺達がああなってた…でも結果はどうだ?俺達は、白鳥サンが死んでくれたおかげで生き残った…あー、ホント生きてて良かった!!勝手に死んだ白鳥サンの事は忘れて、生き残ったお祝いに、今日はパーッと盛り上がろうぜ!」

 

「いい加減にしなさい!!」

 

ビシッ

 

乾いた音が鳴り響いた。

剣クンが、天理クンの頬を叩いた。

「人の命を粗末にしないでください!!白鳥殿の死を笑う事は、この私が許しません!!」

「ははっ、人の命を粗末に…ねェ。心外だなぁ、不動院クン。俺は、別に命を粗末だなんて全然思ってないよ?」

「なっ…」

「大事な大事な命が危険に晒されて、それでも生き残ったからこそ、生きてるって実感できるんだろ?」

「好き勝手言いやがって…このサイコ野郎が!!」

「ねえ、財原君。君は、裁判中に変な発言ばかりしてたよね?でも、君は誰よりも早く事件の真相に辿り着いていた…だったら、なんでわざわざ裁判の進行を遅らせるような事をしたの?」

天理クンは、ニタリと笑って答えた。

 

「…だって、その方が楽しいだろ?」

 

「…は?」

 

「俺は、もっと刺激が欲しいのさ。下手すりゃあ自分が死ぬような危ないゲームで勝って、快感を味わいたいんだよ。自分の勝率が低いゲームの方が、よりスリリングで楽しいだろ?」

「…それだけのために裁判をかき乱して、ボク達に間違った投票をさせようとしてたの…!?」

「まあそうなるね。だって、面白くなりそうだったんだもーん!」

「ダメだね、完全に正気じゃない。正論がまるで通じないや。」

「ははっ、最高の褒め言葉をありがとよ、穴雲クン。これはあくまで自論だけど、人生を本気で楽しめるヤツらってのは、正気じゃないヤツらなんだよ。…さてと、喋りすぎて喉痛いから、部屋に戻ってファ●タでも飲もっかな。あ、喉痛いのに炭酸飲んだら逆効果かw」

天理クンは、スキップしながらエレベーターに乗り込んだ。

 

「クッソ、なんなんだあのサイコ野郎は…!!」

「うーん、財原君の事は、僕が監視しておく必要があるかなぁ。」

「…あの、もう、この話はやめませんか?私、誰かが死ぬとか…そんな話、耐えられないです…」

治奈ちゃんの発言に、誰も反対しなかった。

「…そうだね。とりあえず、みんな部屋に戻ろうか。」

 

 

 

ボク達は、エレベーターに乗り込んで裁判場を後にした。

たった4日間で、仲間を2人も失ってしまった。

正直、ボクは何度も心が折れそうになった。

…それでも、ボクは絶対に生きる。

約束してくれた凶夜クン、そして隥恵ちゃんのために…!

 

 

 

 

 

第1章 終焉(エンド)はある日突然に ー完ー

 

 

 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上14名+1匹ー

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

Chapter.1クリアの証

 

『アネモネのペンダント』

景見凶夜の遺品。収監生活での思い出が詰まっている。

 

『家族写真』

白鳥隥恵の遺品。白鳥の家族の思い出が詰まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

【???の独房】

 

っひっひひひひひひひ…!

 

ああ、斬りたい…裂きたい…引きちぎりたい…!

 

ひひひっ、また、ブッ殺してェなぁ…あの日みたいに…

 

 

 

 

 

第2章 上弦の月を喰べる影

 

To be continued…




遺品回収を忘れてたぁー!!


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第1章 真相編

クッソ見にくかったので元に戻しました。


【景見凶夜編】

 

今思えば、僕の人生はロクな事がなかった。

僕は、自分の才能が嫌いだった。

【超高校級の不運】なんて称号、欲しくなんかなかった。

何かをすれば必ず悪い事が起こって、毎日のようにひどい目に遭った。

僕だけならまだいい。でも、僕の『不運』はまわりの人達にまで迷惑をかけた。

周りの人達はみんな、僕を呪いのように忌み嫌ってきた。

学校ではクラスメイトから無視されて、ついには親からも見放された。

でも、全部『不運』なんて才能を持って生まれた僕が悪いんだと思っていた。

こんな僕に、生きてる価値なんて無いと思っていた。

僕は、生きてるだけでみんなを不幸にする。

僕が死んだところで、悲しむ人なんて誰もいない。

僕なんて、生まれて来なければ良かったんだ。

僕は、自分自身に絶望して、何度も死のうとした。

でも、そんな度胸もなくて、いつも死に損なった。

今度こそ死のう、そう思った時、君に出会った。

 

…叶さん。

 

僕は、君がいたから生きられた。

 

君は、こんな救いようのない僕に、生きろと言ってくれた。

生まれて初めて、こんな僕を望んでくれる人に出会えた。

今まで死にたくなるような人生だったけど、君のおかげで生きたいって思えた。

僕は、君に会えて本当によかった。

君が、ずっと暗闇にいた僕を照らしてくれたから。

君が僕に、希望を与えてくれたから。

君と…いや、みんなと出会えた事が、僕にとって最初で最期の『幸運』だった。

僕は、これからもずっとみんなと共に歩みたかった。

 

 

 

【景見凶夜の独房】

 

…今日は楽しかったな。

パーティーなんて、参加したのは久しぶりだよ。

…それに何より、僕なんかが叶さんの友達になれた。

僕は、やっぱり生きたい。

みんなで一緒にここを出たい。

…そして、やらなきゃいけない事もできた。

今は恥ずかしくて言えないけど、無事出られたらちゃんと叶さんに伝えるんだ。

僕は君の事が好きだ。君と一緒に生きたいって。

 

 

 

スッ

 

…?

 

なんだろう、これは…

紙?

誰かが挟んだのかな?

 

…え。

 

景見へ

ちょっと話したい事があるから9時40分にオレの研究室に来てくれ。

栄陽一

 

栄君が…?

僕に話したい事ってなんだろう?

でも、わざわざこうやって紙切れに書いて持ってきてくれたわけだから、きっと重大な用件だよね。

栄君が、僕なんかに重要な相談を持ちかけてくれてるんだ。

その気持ちを無下にするなんて失礼だし、何より彼の力になりたい。

いつも迷惑をかけてる僕でも、彼の役に立てるかもしれない。

おこがましいかもしれないけど、クラスのみんなを少しでも助ける事ができるんだったら、それは何よりも嬉しい事だ。

どんな用件かはわからないけど、とりあえず9時40分に栄君の研究室に行こう。

 

 

 

 

【超高校級の栄養士】の研究室

 

ここだったよね。

一応インターホンを鳴らして入ろう。

 

ピンポーン

 

「栄君、いる?」

…。

返事がない。

確かに呼ばれたんだけどな。

今何かしてて忙しいのかな?

…まさか、呼んだ事を忘れられてたりとかは…ないよね?

「…あ。」

開いてる…

中に入っていいって事なのかな?

「…お邪魔します。」

僕は、ドアを開けて部屋の中に入った。

「…あれ?」

部屋には電気が付いているのに誰もいない。

この時間に僕を部屋に呼んだってことは、研究室にいると思ったんだけどな…

栄君、どこにいるんだろう?

…呼んでみよう。

「栄君、景見です。呼ばれてここに来たんだけど…」

 

ザクッ

 

「ッ、え?」

お腹に、ズキズキと痛みが走る。

痛みが走った部分から、温かい何かが流れ出る感じがして、視界が少し歪んだ。

口から何か温かくて生臭い物が溢れ出た。

僕は、()()を触って確かめた。

 

…血?

 

目線を下に下ろすと、白鳥さんが僕を何かで刺していた。

「…死ねよ。」

ようやく状況を理解した。

僕は、白鳥さんに殺されているんだ。

 

…なんで?

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

 

なんで!!?

なんで白鳥さんが栄君の研究室にいるの!?

あれは、僕をおびき寄せるための罠だったの…!?

なんで…信じてたのに…

なんで白鳥さんは、僕を殺そうとしてるの…?

…僕が何か悪い事をしたから?

僕の【不運】に白鳥さんを巻き込んだから?

わけがわからない。

いやだ、いやだいやだいやだ!!

僕は、こんな所で死ねないんだ!!

 

「う゛ぁあああああああぁあああああああああぁああああああああああああ!!!」

「キャッ!?ちょっと!あんた、何を…」

 

いやだ、死にたくない…

僕は、叶さんと、みんなと一緒にここを出るって約束したんだ…!

ここを出るまでは…叶さんに想いを伝えるまでは、絶対に死ねないんだ!

 

とりあえず白鳥さんをなんとかして、早く手当てしないと…

まずは止血…このままだと、本当に死んじゃう…!

いや、まだ痛みがある…今手当てすれば、助かるかもしれない。

癒川さん達を呼ばなきゃ…

僕は、こんなところでは死なない。

叶さんが、みんなが約束してくれたから。

僕は、何がなんでも絶対に生き残るんだ…!

「あっ…!」

僕の手が触れたはずみで、白鳥さんの手帳の画面が表示された。

手帳には、白鳥隥恵と表示されていた。

「さ、かえ…?」

 

「調子に乗ってんじゃねェよ雑魚がぁああああああああああ!!!」

「ぐあっ!!」

僕は白鳥さんに引き剥がされ、突き飛ばされた。

 

「あっ…かっ…はぁ、あっ…」

お腹から血が抜けて、意識が朦朧とする。

もう、視界が歪んでまともに立てない。

手足に力も入らない。

いやだ、まだ死にたくない…

いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ

いやだいやだ

 

いやだ!

僕は、生きたいんだ!

こんな所で死んでたまるか!

何か、何か方法は…

…まずい、血を流しすぎて頭が回らない…

僕は、まだ死ねないのに…

 

「あっ…がっ…」

まだ死ねないのに、もう身体が動かない。

もう、痛みすら感じない。

暗い…冷たい…

水の底に沈んでいく…

…僕は、死ぬのか…

まだ、みんなとの約束を果たしてない…

さっき見つけたばっかりだけど、これからやりたい事もまだあるのに…

 

「…あぐっ、かっ…」

…無理だ。

どんなに力を入れても、身体が動かない。

意識も朦朧としてきた。

まともに声も出せない。

誰かを呼ぶ事もできない。

もう、僕はきっと死ぬしかないんだ。

でも、どうせ死ぬなら、ただでは死なない。

叶さんは、頭が良くて勇気がある。

きっと、僕を殺した犯人を見つけてくれるはずだ。

だったら、僕に今できる事は、叶さんに犯人を見つけてもらうために、少しでも多くの情報を遺す事だ。

でも、普通に遺すんじゃ、白鳥さんにバレて終わりだ。

…そうだ、『バートン伯爵のティータイム』…!

あれに出てきた暗号なら、叶さんはきっと解いてくれるはずだ。

…サカエ。

手帳に書いてあった名前を、メッセージとして遺そう。

Sの3つ後ろはV、Aの3つ後ろはD、Kの3つ後ろはN、D、Eの3つ後ろはH…

 

VDNDH

 

…書けた。

叶さん、ごめん。

本当は、君と一緒に生きたかった。

みんなと一緒に外に出たかった。

君に想いを伝えたかった。

でも、僕はここまでみたいだ…

約束、守れなくなっちゃってごめんなさい。

どうか犯人を見つけ出して、僕の無念を晴らして…

 

「か、なえ…さん…ご、めん…やく、そく…守れ…な、かっ…た………」

 

もう、視界がぼやけて何も見えない。

身体の感覚がなくなっていく。

最期に感じたのは、目から溢れて頬をつたう温かい何かだった。

それを最後に、僕の意識は途切れた。

 

「…。」

 

「はぁっ、はぁっ…やっと死んだ…手間かけさせるんじゃないわよ…!」

 

 

 

 

 

「あーあ、死んじゃったよ。なーにが『全員で外に出る』だよ、そんなの無理に決まってんじゃん!自分の身も自分で守れないような無能だったからオマエは死んだんだよ!【不運】のクセに、不相応な夢を見るなよ。オマエには、夢を叶える事なんてできないし、夢を見る資格も無いんだよ!恨むなら、望まれない才能を持って生まれた自分を恨む事だね!」

 

 

 

 

 


 

 

 

【白鳥隥恵編】

 

私には、双子のお姉様がいた。

お姉様はお母様に似て、とても賢くて気品があって、絢爛華麗な人だった。

それに比べて私は、見た目も内面も醜かった。

だから私は、いつもお姉様と比べられて惨めな思いをした。

 

「あなたって、何もできないのね。麗美はこんなにいい子なのに。」

 

「これ以上私達を失望させるな。私は、麗美だけでも良かったんだ。」

 

両親は、なんでもできて親孝行なお姉様ばかりを可愛がった。

ただでさえ醜悪な上になんの才能もない私は、のけ者にされた。

私をお姉様と同等に愛してくれた事は一度も無かった。

 

「お前、麗美の妹のクセに、なんでそんなにブッサイクなんだよ!」

 

「双子なのにこんなに似てないって笑えるよな!どんなクリーチャーだよw」

 

「やーい、ブースブース!」

 

幼稚園のクラスメイトのほとんど全員からもいじめられた。

私の味方なんて誰もいないと思っていた。

でも、たった一人だけ、私の味方がいた。

 

「やめなさいあなた達!これ以上隥恵をいじめたら許さないわよ!」

 

他でもない、お姉様だった。

お姉様は、私がいじめられるたびに、いつも庇ってくれた。

 

「お姉様、どうして…」

 

「だって隥恵は、かわいい私の妹だもの。またいじめられたらすぐ助けてあげるから!」

 

お姉様は、この世界で唯一私を人間扱いしてくれた。

お父様とお母様に怒られた時は慰めてくれた。

おもちゃや洋服をいつも私に譲ってくれた。

私は、いつもお姉様に救われた。

私にとって、お姉様は憧れの存在だった。

 

…私は、そんなお姉様が大嫌いだった。

 

双子なのに、私とは何もかもが正反対だった。

誰よりも美しく全てにおいて完璧なお姉様と、誰よりも醜く何の才能もない私。

お姉様と私は、住む世界が全く違う。

それなのにお姉様は、私を妹として可愛がった。

私にとっては、それが何よりも許せなかった。

むしろ、軽蔑された方がまだ良かった。

優しくなんてされたら、差が浮き彫りになって私が惨めになるだけだった。

私にとって、お姉様は眩しすぎた。

私は、お姉様に憧れると同時に嫉妬していた。

お姉様さえいなければ、私がここまで酷い目に遭う事もなかったのに。

…殺したい。

お姉様がいなくなれば、私は『白鳥麗美の妹』じゃなくなる。

そうすれば、きっと私は私になれる。

そう思った矢先だった。

 

 

 

飛行機が、炎を上げながら家に突っ込んできた。

家は全壊し、お父様とお母様はあっけなく死んだ。

私も大怪我を負い、気を失った。

 

目が覚めると、そこは病院の一室だった。

私の周りを、親戚だけじゃなくて知らない人達まで囲んでいた。

 

「良かった、目が覚めて。1週間眠ったままだったのよ。」

 

1週間…

…そうか。

私は、助かったのか。

…良かった、生きてて。

 

 

 

「…え。」

目の前の鏡に、私の顔が映った。

それは、お姉様の顔そのものだった。

 

うそ、うそうそうそ…

何これ、どういう事…!?

こんなの、私の顔じゃない…!

なんで私がお姉様の顔になってるの?

きっと夢か何かよね、ねえ、そうよね!?

 

「…良かったわね、()()()()()。」

…は?

みんな何を言ってるの?

違う、私はお姉様じゃない…

じゃあ、お姉様は…!?

 

「麗美ちゃん…ご両親と隥恵ちゃんの事は残念だったけど、元気出してね。」

隥恵…?

違う、それは私の名前だ…

…じゃあ、まさか、お姉様は…!

「そんな…いやっ…いやぁあああああああぁあああああああああああああ!!!」

 

 

 

「…隥恵、良かった…生きてて…」

「お姉様…!?お姉様…!!」

 

…思い出した。

今私が生きてるのは、あの時お姉様が護ってくれたからだ。

お姉様は、私を庇って死んだ。

この時、私は2つの事を学んだ。

大切なものは、失って初めて気づく事。

そして、一度失ったものは後でどんなに後悔したって、嘆いたって、決して元には戻らないという事。

失ってしまったのなら、私にできる事はそれを埋め合わせる事だけだった。

 

私は、その日から必死でお姉様を演じた。

私なんかがお姉様に才能で勝てるわけがなかった。

だから、追いつけるように必死で努力した。

お姉様なら、もっとできる。

お姉様なら、こんなに出来の悪い子じゃない。

そうやって、自分を追い込んで必死にお姉様に追いつき、追い越そうとした。

隥恵なんてダサい名前はもう捨てた。

白鳥隥恵は、あの日の事故で()()()んだ。

私が、私だけが、『白鳥麗美』なんだ。

 

そして数年の月日が流れ、私は【超高校級のマドンナ】として希望ヶ峰学園にスカウトされた。

私は、誰もが羨む憧れの的に、完璧な美少女に生まれ変わった。

誰も、私の本当の正体に気づく人はいなかった。

…いや、『本当の正体』はおかしいか。

だって、私こそが本物の『白鳥麗美』なんだから。

私は、【超高校級のマドンナ】白鳥麗美として希望ヶ峰に入学する…

…はずだった。

 

気がつくと、私は知らない場所に監禁されていた。

そこには、私以外に15人の高校生がいた。

私達16人を閉じ込めた2匹のぬいぐるみが言う事には、私達は重大な罪を犯し、囚人として才監学園に収監されたという事だった。

私は、信じられなかった。

『白鳥麗美』が、罪を犯すわけがない。

きっと何かの間違いだ。

この私が、こんなところにいていいわけがない。

でも、釈放以外に希望ヶ峰に行く方法は無かった。

こんな所早く抜け出したかったけど、人を殺したら退学になる。

そうなったら、希望ヶ峰に行く道は完全に潰える。

それだけは、絶対にあっちゃいけない事だった。

諦めて釈放を待とうと考え始めたその時、モノクマとモノベルはとある提案をしてきた。

人を殺した生徒には、『再入学資格』を与え、さらにエリートクラスに編入させると。

私は思った。

『白鳥麗美』なら、こんなところに閉じ込められずに希望ヶ峰のエリートになっているはずだと。

そして、それを現実にするチャンスは目の前に転がっている。

だったら、それを利用しない手はない。

モノクマとモノベルは期限を決めてきたけど、私にはそんな物必要なかった。

悩むまでもない。私の答えはすでに決まっている。

誰かを殺してでも、私は希望ヶ峰に行く。

それで私が『白鳥麗美』でいられるのなら、リスクなんてどうでもいい。

あの日誓った。

私のせいで失ってしまったものを、一生をかけて埋め合わせると。

たとえそれがどんなに険しくて苦しかったとしても、最期まで『白鳥麗美』として生き、最期は『白鳥麗美』として美しく散ると。

私の『あるべき姿』を貫き通すためなら、たとえ誰を何人犠牲にしようと、どれだけ自分の手を汚そうと構わない。

私が『私』であり続ける。これが、私にできる唯一の償いだ。

 

 

 

さて、誰を殺そうか。

…決めた。

景見を殺そう。

アイツは、自分の不運のせいでいつも他人に迷惑をかけて生きてきた。

そのくせ、なんの努力もせずに【超高校級】の称号を手に入れた。

何が【超高校級の不運】だ。

鈍臭いってだけでスカウトされた奴が、私と同じ空間にいていいわけがなかった。

その上、死にたい死にたいって耳障りだ。

あんな奴、視界に入るだけで不愉快だ。

…そんなに死にたいなら、望み通り殺してやる。

私は、お前を踏み台にして這い上がってやる。

 

 

 

 

【娯楽室】

 

私は、アリバイの信憑性を上げるために朱と一緒に羽澄のダンスを見た。

誰かを殺した生徒は再入学できるって言われたけど、校則の6番目に自分がクロだと知られちゃいけないって書いてあった。

もし知られたらどうなるのかを、アイツらは説明しなかった。

だったら、バレないように殺せばいい。

念には念を入れてアリバイ工作と誰かに罪をなすりつけるための証拠作りはやっておかないとね。

「どうよ!アンタ達も踊ってみたくなってきたでしょ?」

「スゴイですね!サスガは踊子サンでス!」

「…。」

私は、席を立ち上がって娯楽室の最奥の部屋を抜け出した。

「あれ?麗美サン、どこ行くんデスカ?」

「…ああ、研究室にハンカチを忘れてきちゃって…ちょっと取ってくる。二人は、そのまま続けてて。」

「ああ、うん…」

「了解デス!」

…うまく抜け出せた。まずは、ピンを盗んで…

栄を殴って手帳を操作しよう。

アイツはバカだから、簡単に騙せるはずよ。

メダルを道の死角に投げて…

 

チャリーン

 

「んお?なんの音だ?」

…バカね。

引っ掛かったわ。

「うおっ!メダルが落ちてんじゃねえか!ラッキー!!これで、キナくさい原に搾り取られた分取り戻せるぜ!…んあ?」

私は、奴がしゃがみ込んだ時背後に忍び寄って、思いっきり頭をピンで殴った。

 

ゴッ

 

「ぐあっ…!」

…ふぅ。

なんとか一発でオチてくれたわね。

さてと、手帳の設定を変更して…

これで良しと。

…途中で目覚められたら厄介だから、縛って顔にテープでも巻いておきましょ。

コイツが目を覚ましたら、全部コイツのせいにして私は一人で再入学を果たすわ。

…悪く思わないでね。全部、こんなあからさまな罠にかかったあんたが悪いのよ。

さてと、これでコイツの研究室に入れるはずよ。

私は、研究室の中に入った。

そして、包丁を取り出して物陰に隠れた。

紙をドアの見えやすい位置に挟んでおいたから、もう少ししたら景見が来るはずよ。

 

ピンポーン

 

ガチャッ

 

「…あれ?」

計算通り、景見が部屋の中に入ってきた。

アイツは、キョロキョロと部屋中を見回している。

栄を探してるのね。

バカね。アイツは、部屋の外で寝てるわよ。

「栄君、景見です。呼ばれてここに来たんだけど…」

今だ!!

 

ザクッ

 

「ッ、え?」

私は物陰から飛び出し、一気に距離を詰めて包丁で奴を突き刺した。

景見に反応させずに包丁をうまく刺せた。

包丁は、急所に深々と刺さった。

あとは、出血多量で勝手におっ死ぬのを待つだけよ。

「…死ねよ。」

すると、景見はいきなり大声を上げて私の腕を掴んだ。

 

「う゛ぁあああああああぁあああああああああぁああああああああああああ!!!」

「キャッ!?ちょっと!あんた、何を…」

痛っ…!?

何コイツ、細いクセになんでこんなバカ力なのよ!?

…まさか、火事場の馬鹿力…!?

マズい、このままだと本当に腕を折られる…!

「あっ…!」

景見が手を滑らせて、私の手帳に触れた。

その瞬間、私の手帳の画面が表示された。

ヤツは、私の手帳の画面を見て、一瞬手の力を緩めた。

 

「さ、かえ…?」

 

振りほどくなら今しかないと思い、思いっきり突き飛ばした。

 

「調子に乗ってんじゃねェよ雑魚がぁああああああああああ!!!」

「ぐあっ!!」

景見はよろけて、その場に倒れ込んだ。

ああああああああ!!!最悪!!本っ当に不愉快!!気持ち悪い!!

この私が、こんな何の才能もなくて人に迷惑しかかけない愚図に一瞬でも反撃を許すなんて…!

ホンット信じられない!!っていうか、逆になんでコイツ今まで生きてたの?マジであり得ないんだけど!

 

「あっ…かっ…はぁ、あっ…」

え、嘘でしょ!?

コイツ、まだ意識あんの!?

確かに急所を刺したはずよ!?

出血量だって、気絶どころかもう死んでてもおかしくない量なのに…

【不運】のクセに、なんで生命力だけは無駄に人一倍強いのよ!

「あっ…がっ…」

何よコイツ…ホントに、見てるだけで不愉快!!

早く死ねよ!!

「…あぐっ、かっ…」

景見は、仰向けのままズリズリと身体を動かした。

コイツ、ゴキブリ並みにしぶといわね。

ホントに見苦しいわ。

早く死にたいんじゃなかったの?

なんでそうやって抵抗すんのよ…!

あー、こんな事ならもっと確実に殺せる方法にすれば良かった。

そうだ、今から心臓を刺して…

 

「か、なえ…さん…ご、めん…やく、そく…守れ…な、かっ…た………」

景見は、聞こえるか聞こえないかくらいの声で何か言った。

は?何泣いてんのよコイツ。

ホントシラけるわ。

…あ。

「…。」

気がつくと、景見は私の足元で動かなくなっていた。

瞳孔は開ききって、完全に何も言葉を発さなくなった。

「はぁっ、はぁっ…やっと死んだ…手間かけさせるんじゃないわよ…!」

…目の前に死体が転がっている。

私は今、人を殺したんだ。

…でも、どうしてだろう。

全く心が痛まない。

…むしろ。

「…ははっ。あははっ。あーっはっはっはっははははははははははははははははははははははははははは!!!」

やった!!

やったわ!!人を殺したから、再入学できるわ!!

これで私は、本物の『白鳥麗美』になれる!!

そうよ、私は希望ヶ峰のエリートなのよ!!

私は何も間違ってない!!

私が…私こそが、勝者にふさわしい!!

「ははははは…あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

…あ。

私は、自分の身体を見た時初めて気づいた。

景見に抵抗されたせいで、袖に血がべったりついている事に。

マズい、早く汚れを落とさないと…!

私は、服の汚れを落とせる物がないか探した。

「…あれだ!」

私は、大根をすり下ろして、それを使って服の血を落とした。

幸い、血は綺麗さっぱり落ちた。

あとは、ガスコンロを使って軽く服を乾かして…

…これで良し。

これで、私が殺したって事はバレないはずよ。

私は、外に誰もいない事を確認してから、研究室の外に出た。

 

 

 

 

栄の手帳の設定を元に戻して、ピンを回収しないと…

…!!

嘘でしょ。

羽澄が来たんだけど!

アイツ、朱に踊りを見せてるんじゃなかったの…?

…いえ、落ち着くのよ。

ここで動揺したら、逆に怪しまれるわ。

私は、平然を装って羽澄とすれ違った。

…良かった。

景見を刺し殺した事はバレてないわね。

さっさと手帳を元に戻して、ピンを回収しちゃいましょう。

私は、栄を放置した物陰に戻って、栄の手帳の設定を元に戻し、拘束を解いた。

あとは、ピンを回収して…

 

 

 

 

【娯楽室】

 

ピンは元に戻したわ。

あとは、何事もなかったかのように元の場所に戻るだけよ。

「麗美サーン!遅かたですネ!踊子サン、今トイレ行てますヨ!」

「ごめん。部屋が散らかってて、探すのに手間取っちゃったの。もう見つけたから大丈夫よ。ほら。」

証拠として、ハンカチを見せた。

この子は、私の部屋をまだ見てないからね。

散らかってたって言えばうまくごまかせるわ。

「ならよかたでス!あ、踊子サン来ましたヨー!」

「ごめ。ちょっとトイレ行ってた。あ、レイミ戻ってたんだ。」

「ええ…」

「ハンカチは見つかった?」

「ええ、見つかったわ。」

え、何…

なんか、羽澄がすごいこっち見てくるんだけど…

まさか、バレたわけじゃない…よね?

「あっそ、ならいいんだけど。…あ、もう遅い時間だし、そろそろ部屋戻らね?」

「そうね。夜時間は出歩いちゃいけない事になってるしね。」

「もうチョト踊子サンの踊り見たカタですケド…夜時間ダカラ仕方ありませんネ!」

私達は、部屋に戻った。

 

 

 

 

…大丈夫よ。

きっと、誰にもバレないわ。

だって、私は完璧な美少女『白鳥麗美』なの。

こんな所でしくじるわけがないわ。

…人を殺したから、これで希望ヶ峰に再入学できるのよね?

大丈夫、私は何も間違ったことはしていない。

私は無罪だ。

私は、自分の本来あるべき姿を取り戻すために、行動を起こしただけだ。

私は何も悪くない。

私は、『白鳥麗美』。私は希望ヶ峰のエリート。私は完璧な美少女。

私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美私は白鳥麗美

 

 

 

 

 

「うぷぷ…あーあ、殺っちゃったよ。『私は白鳥麗美』?はぁ?何言っちゃってんのかな?白鳥麗美なら、10年前に死んでんじゃん!オマエは、ただのシスコンを拗らせたキチガイだろーが!もうありもしない偶像に成り代わろうとするなんて、ホント愚の骨頂だよね!うっぷぷ、人っていうのは、うわべだけ取り繕っても本性までは成り代われないよね?オマエはずっとドブスな性悪女のままなんだよ。いい加減身の程をわきまえろ!」

 

 

 

「うっぷぷ、ねえねえ、今どんな気持ち?ちゃんと絶望してくれた?…って、もう死んでたか。せいぜい、あの世で自分の過ちを悔いるんだね。身の程知らずの愚か者共が。」



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第2章 上弦の月を喰べる影
第2章(非)日常編①


章タイトル元ネタ『上弦の月を喰べる獅子』です。
本章からもたまに視点替えを取り入れていきたいと思います。
説明を忘れていましたが、◇が場面切り替え、◆が語り手切り替えのサインです。
◇◇◇は、日付をまたぐ時のサインです。


『僕も、叶さんの話が聞けてよかったよ。』

 

『私の美しさの前にひれ伏しなさい。』

 

 

 

「…。」

目が覚めた。

その直後、ベルさんの声が鳴り響く。

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

…そうだった。

昨日、学級裁判で疲れてそのまま寝たんだった。

たっぷり寝たらお腹すいちゃったから、朝ごはん食べないとね!

そうだ、今日は凶夜クンと一緒に行こう!

…あ。

…そうだった。

凶夜クンはもう、いないんだった。

お父さんには、前向きでいろって言われたけど、大事な友達を亡くした後じゃ、前向きになんてなれないよ。

ボクは、暗い気分のまま食堂に向かった。

 

 

 

食堂には、星也クン、剣クン、治奈ちゃんがいた。

三人とも、昨日あんな事があったからか暗い顔をしていた。

このままじゃいけない、そう思ったボクは元気に挨拶をした。

「おはよ!」

「…うん、おはよう。狛研さん。」

「おはようございます、狛研殿。」

「おはようございます。」

三人とも、表情は暗いままだったけど、挨拶を返してくれた。

「陽一クンは?」

「栄さんは、今厨房で朝ご飯を作っています。」

「そっかぁ。…それにしても、みんな来るの早いね!」

「私は、普段5時に起きて修行をしますからね。」

「僕は、朝早くにめざますテレビのスタジオに行かなきゃいけなかったからねぇ。3時起き4時起きは当たり前だったよ。」

「へぇ〜…ボク、その時間は寝てるかなー。治奈ちゃんは?」

「えっと…いつもは6時起きですかね。」

「ふーん。やっぱみんな朝早いね!」

そんな話をしていると、雪梅ちゃん、柳人クン、ゐをりちゃんが来た。

「オハヨーございます、皆サン。」

「おはよぉ、みんな。」

「………………。」

三人とも、元気がなかった。

「おはよっ!」

「あれ?狛研君がいるのかい?珍しいね。いつもオイラより遅いのに。」

「うん。今日は、早く目が覚めちゃって!」

「そっかぁ。」

「叶サン、元気ですネ。」

「そうかな?」

「…………。」

時間ぴったりに、成威斗クン、ラッセクン、才刃クン、踊子ちゃんが来た。

「…おはよう、お前ら。」

「…おはよ。」

「フン。」

「…。」

成威斗クン、踊子ちゃんは元気がないながらも挨拶をしてくれた。

ラッセクンと才刃クンは黙ったままだった。

そして、集合時刻に遅れて天理クンと彩蝶ちゃんが来た。

「ふわぁ〜…ねみー。ほはよぉ、みんなぁ。」

「…おはよう。」

天理クンは、あくびをしていた。

彩蝶ちゃんは、元気が無さそうだった。

陽一クンが、厨房から出てきた。

「おはよう、二人とも!うん、これで全員揃ったね!!あ、陽一クン!おはよー!」

「お、おう…おはよう、狛研ちゃん。」

陽一クンは、戸惑いながらも挨拶を返してくれた。

「ねえ、今日の朝ごはん何?」

すると、踊子ちゃんが不機嫌そうな顔で言った。

「…ねえ、カナエ。アンタさぁ、やけに元気だね。昨日あんな事があったのに。」

「うん、わかってるよ。でももう終わった事じゃん。ボク達は、二人の死を乗り越えて生きていかなきゃ。」

「なっ…!何よそれ…!アンタ、二人が死んだ事、何とも思ってないわけ!?ちったぁ空気読めよ!!」

「そうですヨ!叶サン、元気すぎまス!おかしいでス!」

「かなえちゃん、なんでそんなに平気でいられるの…?」

踊子ちゃん、雪梅ちゃん、彩蝶ちゃんに責められた。

「かなえちゃんは、きょうやくんとれいみちゃんが殺されちゃって、何も思わなかったの!?ひどいよ!この人でなし…」

 

「やめろ!!!」

 

声を上げたのは、成威斗クンだった。

「俺、バカだから難しい事はよくわかんねェけどよ…でも、これだけは俺にもわかるぞ。叶は、俺達のために無理して元気なフリしてんだよ!!」

「アタシ達の…ため…?」

「…狛研さんは、お二人が亡くなって傷ついた私達に生きる気力を与えるために、自分は元気に振る舞っているんです。」

「叶が二人の事をなんとも思ってないわけないだろ!!叶の事を悪く言うヤツは、俺が許さねェ!!」

「…ありがとう成威斗クン。」

「いいって事よ!お前が仲間の事を考えてるヤツだって事は、俺がちゃんとわかってっからよ!」

「うんうん、ありがとう狛研君。君のおかげで、オイラも少し元気が出たよ。」

「リュウト…アンタ、気付いてたの?」

「まあね。狛研君の心の音は、爆発しそうなものを押さえ込んでるような音だったからね〜。」

「そっか…カナエ、ごめんね。アンタはアタシらの事まで考えてくれてたのに、アタシは自分の事ばっかで…」

「ゴメンナサイ、叶サン。」

「かなえちゃん、さっきはあんな事言っちゃってごめんね。ひどいのはわたしの方だったね。」

「いや、そんな…」

 

「ふわぁ…なーんか、眠くなっちゃいそうな茶番劇だねェ。どうでもいいから早く食べようよ。冷めちゃうよ。」

「なっ…!財原、テメェ!!」

「オマエ、ホントにサイコパスだな!財原!!」

「コイツの味方をするわけではないが、貴様ら、くだらない事に時間を割くな。1日にどれだけ人が死んでいると思ってるんだ。今更1人や2人死んだからってガタガタ騒ぐな。」

「王様!オマエもサイコパスだったのか!!」

「俺をこんな成金と一緒にするな。俺はただ事実を言ったまでだ。」

「テメェ…!!」

「みんな、一旦落ち着いて。ケンカしたって、何の解決にもならない。そうだろ?」

「…チッ。」

星也クンの一言で、みんなケンカをやめてご飯を食べ始めた。

…やっぱ、星也クンはすごいや。ボクも見習わなきゃ。

 

 

 

 

「どうぞ。」

「ありがとう。」

…ふぅ。

やっぱり、治奈ちゃんが淹れてくれたお茶はおいしいね。

『うっぷぷ!オマエラ、朝ごはんはおいしかった?』

「この耳障りな声は…」

 

『やっほー!!』

『フッフッフ!!ご機嫌麗しゅう囚人の皆様!!』

クマさんとベルさんがいきなり飛び出してきた。

「…失せろ。不愉快だ。」

『わっ!ラッセクンったら、辛辣ゥ!!』

『フッフッフ。最近の若者はこれだから…おや?ところで、アナタ達、いつもより元気が無いんじゃありません?』

「…テメェらのした事は絶対許さねェかんな。」

『えー。そんな事、ボク達に言われてもねェ。ボク達はただ、この学園のルールに従って殺人犯を罰しただけなんだけどなー?てかさ、オマエラ、景見クンを殺したのは白鳥サンだって事忘れてない?』

「だから何?全部アンタ達の差し金だろうが!!」

『おやおや。いけませんよ羽澄様。女子がそんな下品な口調で話しては。』

「うるせェ黙ってろ!!」

『おお、こわいこわい。』

「…で?君は、僕らに何か用があるから来たんだろ?さっさと用件を済ませて、視界から消えてくれないかな?」

『穴雲クンまで!みんなひどいや!せっかく、オマエラにいいものをプレゼントしてあげようと思ってたのに!』

「どうせロクでもねーモンなんだろ?」

『いやいや!オマエラも、きっと気にいると思うよ!』

『フッフッフ。皆様、校舎用エレベーターの前にいらしてください。』

校舎用エレベーター…一体、何があるっていうんだ?

 

 

 

 

【エレベーター前】

 

『うぷぷ、オマエラ、何か前と変わったところがあるのに気がつかない?』

「…もしかして。」

「うん、多分そうだろうね。」

ボクと星也クンは、エレベーターに乗った。

「…やっぱり。3階に行けるようになってる。」

『フッフッフ。ささやかながら、ワタクシ達からのプレゼントです。裁判を頑張った皆様のために、新たなエリアを開放しました。』

「へー。もしかして、また誰か死んだらまた上の階開放してくれんの?」

『うぷぷ…気になるなら、そこら辺にいる誰かを殺してみたら?』

「いや、俺はいいよ。おしおきなんてごめんだからねー。あーあ。誰か、俺以外の奴を殺してくれねーかなー。」

「テメェ、このクサレ外道が!!」

「さーてと。一応マップも確認しないとねー。」

「無視すんな!!」

天理クンに言われて、マップを確認してみた。

…今回解放されたのは、図書室と映画館と生物室か。

それから、研究室が4つ解放されてるな。

今度こそ、ボクの研究室があるといいな…

「ねえ、用件はそれだけかい?だったら、早く消えてくれるとありがたいんだけど。」

『わーん!どいつもこいつもクマあたりとトラあたりがキツいよー!!』

『フン!失礼ですね、アナタ達!用件はそれだけですが、それが何か!?』

「なんか逆ギレしてますネ…」

『ふーんだ!!もういいよーだ!!みんなのバカ!もう知らない!』

『フッフッフ。ご機嫌よう皆様。』

クマさんとベルさんは、不機嫌そうに帰っていった。

「あーあ、朝から嫌な物見ちゃったねぇ。」

「みんな、それより探索の話をしよう。」

「そだねー。」

「…フン。」

「今回も、ボクが今担当を考えたから、見てほしいんだけど。」

 

図書室…財原君、国王陛下、僕

映画館…入田君、舞田君、不動院君

生物室…栄君、朱さん、羽澄さん、日暮さん

研究室…神座さん、狛研さん、詩名君、癒川さん

 

「うっひょー!!ウハウハハーレムじゃねえか!!」

「…陽一、ヘンタイな事したら半殺しにシマス。」

「くっ…オレが朱ちゃんと同じグループにされるのは、もはや定めなのか…」

「何カ問題でモ?」

「い、いえ…」

「ようこちゃんと一緒だ。よろしくね、ようこちゃん。」

「ピィ!」

「ああ、よろしく、アゲハ。」

「栄クンはまだいいじゃない。俺のグループ、野郎しかいねーんだけど。至極残念なりー。」

「財原君。君の事は僕が見張る。変な動きをしたら、どうなるかわかるよね?」

「…おお、怖い怖い。」

「フン。」

「柳人クン、また同じグループになったね!」

「うん。またまたよろしくね、狛研君。」

「よろしくお願いします、皆さん。」

「………………………………幸運、詩人、看護師。」

「フン!オマエラ、僕ちゃんと同じグループになれてラッキーだったな!!」

「よろしくお願いします、舞田殿。」

「おう!よろしくな、剣!」

「聞けよ!!」

「それじゃ、担当は決まった事だし、探索を始めよう。12時に食堂に集合でいいかな?」

「いいよー!じゃ、解散ー!」

ボク達は、それぞれの持ち場を調べた。

 

 

 

 

【内エリア 3F】

 

「わぁ、3階も広いねぇ。」

「あの、皆さん。この研究室、誰の研究室でしょうか…?」

治奈ちゃんが指を差したのは、ガラス張りで、ネオンサインで装飾が施されたドアだった。

「ボクの研究室かな!?」

「……………絶対ちがう。」

「えぇ〜?そうかなぁー。」

「とりあえず、中に入ってみないかい?」

「…そうですね。」

ボク達は、研究室の中に入ってみた。

「…わぁ。」

部屋は少し薄暗くて、てっぺんにミラーボールがあった。

真ん中の台が少し高くなってて、端っこによくわかんない機械とかが置いてある。

「なんだろうね、これ…」

「ミラーボールにダンスステージにDJ機材…多分、【超高校級のダンサー】の研究室ですね。」

「踊子ちゃんの?へえ、道理でカッコいいわけだ!…あ!」

クローゼットの中には、キラキラした衣装とかボロボロの服とか、いろんな服が入っていた。

「わっ!オンボロ!」

「それ、ダメージジーンズですよ。わざと傷をつけるのがおしゃれなんだそうです。」

「ふーん。変なの。」

「うんうん、音の反射で大体どんな部屋なのかは把握したよ。まるでディスコみたいな部屋だねェ。」

「ディスコ?え、何それ?チョコレート?」

「P●rfumeじゃないですかそれは。ディスコというのは、一種のダンスホールの事です。」

「へー。そうなんだ。治奈ちゃん、そういうの詳しいね。興味あるの?」

「…いえ。たまたま知っていただけです。」

治奈ちゃんが、少し視線を右下にずらしたような気がした。

「…。」

「どうかなさいましたか?」

「ううん?なんでもない。」

気のせい、だよね。

「うん、探索も終わった事だし、そろそろ行こっか。」

ボク達は、踊子ちゃんの研究室を後にした。

 

 

 

 

研究室はあと3つか…

次は、誰の研究室かな?

そろそろボクの研究室だったりしないかな!?

「……………?」

ゐをりちゃんが立ち止まったのは、中華風の装飾が施されたドアだった。

赤い扉に、金色の花や龍がデザインされている。

「…ああ、はい。」

ちょっと、治奈ちゃん!?

なに一人で納得してんの!?

誰の研究室か気になるんだけど!!

ボク達は、研究室の中に入った。

「…わぁ。」

部屋には、大きな舞台があった。

後ろには幕があって、映像が映し出せるようになってるらしい。

サーカス用の小道具とか、豪華な衣装とかが置いてある。

「…この雰囲気は、間違いなく【超高校級の曲芸師】の研究室ですね。」

「雪梅ちゃんの?ボクの研究室じゃないのかー。」

「………幸運、私も………研究室、ない………」

「あ、そっか。ごめん。」

そういえば、ここにいるみんなはまだ自分の研究室を見てないんだったね。

おっ!

「探索も終わった事ですし、そろそろ次の研究室に行きましょう。」

「そうだねぇ。」

「………ん。」

「ねえ見て!皿回し!」

「なっ…!狛研さん!!何やってるんですか!!」

「いつもより多く回してるよ〜!」

「落として割ったらどうするんですか!それは朱さんの研究室の物ですよ!?」

「大丈夫だって!…あっ!」

やべっ!

手が滑っちゃった…!

「きゃっ!!」

「なんの!」

ボクは、ギリギリお皿をキャッチした。

「ね?大丈夫だったでしょ?」

「結果論じゃないですか!!もう出禁にしますよ!?」

「出禁はやだー!治奈ちゃんのいじわる!!」

「い、いじわ…!?」

「うーん、これ以上は収拾つかなくなりそうだから、そろそろ次の研究室行こうよ。」

「そうですね。ほら、行きますよ狛研さん。」

「ぶー。」

ボク達は、雪梅ちゃんの研究室を後にした。

 

 

 

 

「次は、この研究室ですかね…」

治奈ちゃんが指を差したのは、木製のドアだった。

小鳥やうさぎの絵が描かれていて、ドアがブドウのツルで装飾されている。

「この可愛らしい研究室は…」

「ボクの研究室かな!?」

「狛研君。違うと何度言ったらわかるんだい?」

「だってー。」

「………………入る。」

「あ、はい。そうですね…」

ボク達は、研究室に入った。

「わぁ…」

部屋の中には、いろんな種類の植物があった。

動物のエサとかおもちゃとかもあって、動物用の薬とかも置いてある。

部屋に置かれた本棚の中身は、全部生き物に関する本だ。

「すごいですね、生き物の生態を見るためのプロジェクションマッピングまであるんですか。…これは、【超高校級の生物学者】の研究室で間違いなさそうですね。」

「ちぇっ、またボクの研究室じゃないのかー。」

「……………しつこい。」

「うっ。…あ、このキャットフード、今人気のやつらしいよ!前に友達が言ってた!」

「ええ、栄養バランスも優れていて、今一番買うのが難しいキャットフードらしいですね。噂によると、人間にとっても美味しいからふりかけにしてしまう人までいらっしゃるそうで…」

「へー。(ペロペロチュー」

「狛研さん!勝手に触るなって言いましたよね!?日暮さんに怒られちゃいますよ!あと、美味しいからって食べないでください!そもそも人間用の食べ物じゃないんですから!」

「はーい。」

「そう言いながらちゃっかりネコババしようとしてるじゃないですか!いい加減にしてくださいよ!」

「ごめんなさーい。」

「うん、予想はしてたよ。狛研君ったら、また何かやらかしたんだね?」

「日暮さんの研究室に置いてあったキャットフードを食べちゃったんです!」

「…うん、想像以上に頭おかしかったよ。もう不思議ちゃんってレベルじゃないねェ。」

「いやいや!頭おかしくないから!そこにおいしそうな物があったから試しに食べた!それだけ!」

「それを世間一般では頭おかしいって言うんですよ、狛研さん。」

「でもほら!毒が入ってるかもしれないじゃん?毒見だよ毒見!」

「狛研さんがやっても意味ありません。さ、これ以上部屋を荒らす前に、次に行きましょう。」

「ほーい。」

ボク達は、彩蝶ちゃんの研究室を後にした。

 

 

 

 

次が最後か…

「今度は和室かぁ…」

ボクの目の前にあるのは、木製の引き戸だ。

「………。」

「ゐをりちゃんの研究室かもね!」

「狛研さん。次研究室の物で遊んだら、私本気で怒りますよ。」

「うっ…」

「とりあえず、中に入ろうよ♪」

「そうですね…」

ボク達は、研究室の中に入った。

「へぇ…」

中は、和室になっていて、掛け軸とか水仙の花とかがあった。

奥の方には庭があって、えっと…なんだっけあれ。カポーンって鳴るやつ!も、置いてあった!

「ししおどしね。」

「あ、ししおどしって言うんだ。ありがと柳人クン。」

「…………私の、研究室…?」

「ええと、すみません神座さん。多分違うと思います。剣の稽古用のスペースや刀の研ぎ石があるので、おそらく【超高校級の侍】の研究室かと。」

「………。」

「す、すみません…!気分を害してしまいましたよね、すみません、すみません…!」

「…治奈ちゃん。」

「あっ…」

治奈ちゃん、また謝り癖が出ちゃったんだね。

お!

「さて、探索は一通り終わりましたし、そろそろ報告に…」

「ねえ見て!お茶淹れる道具があるんだけど!」

「狛研さん!!いい加減にしてください!!」

「いいじゃん。ちょっとだけ!ね、いいでしょ?」

「ダメです!あなたの研究室じゃないんですよ!?」

「………あの、幸運。」

「いいじゃーん!剣クンはここにいないんだしさ!」

「うーん、狛研君。その不動院君なんだけど…今、君の後ろにいるよ。」

「へ?」

振り返ると、剣クンがボクの後ろに立っていた。

「…嫌な予感がしたから急いで来てみれば… 狛研殿、貴女という方は…!」

「剣クン!そんなに怒らないでよ!今、捜査中なの!あ、そうだ。剣クンもお茶飲む?」

「狛研さん、それ、逆効果です。」

「… 狛研殿、私、初日に言いましたよね?人の研究室の物に触るなと…」

「えっと…」

「どうやら貴女にはきついお仕置きが必要なようですね。」

「うん、オイラ達は今のうちに逃げよう。」

「そ、そうですね…」

「……………。」

「え、ちょっと待って。剣クン、お仕置きって…ボク一体何されるの?」

「反省しなさい!!」

 

 

 

 

その後、30分くらい正座のまますっごく苦いお茶を飲まされた。

おかげで、足が痺れてまともに立てない。

「ひーん…」

「次同じ事をしたら、今度は1時間正座させますからね。」

「そんなぁ…」

「…さて、無駄話はこの辺にして、そろそろ報告に参りましょうか。」

「そ、そだね…」

「既に入田殿と舞田殿は食堂にいます。私達も急ぎましょう。」

ボク達は、食堂に向かった。

 

 

 

 

ー数時間前ー

 

みんな、ちゃんと探索進めてるかなぁ。

ちょっと嫌な予感がするんだけど…特に狛研さんあたりが。

「ねえ、穴雲クン。何やってんの?早く入ろうぜ?」

「そうだね。ごめん。」

ここが図書室か…

ガラスの引き戸に本の絵が書かれていて、いかにもって感じだな。

とりあえず、中に入ってみよう。

「…!」

予想の1ランク、いや2ランクは上だった。

「うっほぉー!!広っれぇー!!」

「…俺の国で一番広い図書館より広いな。」

「うわ!マジか!漫画コーナーまであんのかよ!!」

「…財原君。図書館内では静かにね。」

「しいましぇーん。」

 

『うぷぷ、全くだよ。図書館内では静かにって小学校で習わなかったの?人としての常識だよね?』

「…モノクマ!」

「あ、クマちゃん。」

いきなりモノクマが本棚の影から飛び出してきた。

「…貴様、一体何の用だ。」

『わっ!ラッセクンってば、なにその目!怖いんですけどー!』

「無駄口を叩く暇があるならさっさと要件を話せと言っている。早くしろ、時間の無駄だ。」

『ちぇっ、そんなにツンケンしなくていいじゃん!ボクは、この図書室の説明に来たの!』

「…説明?」

『そ!この図書室、ボクが言うのもなんだけど、かなり広いでしょ?だから、読みたい本をすぐに探せなくてストレスだったりする事もあるかなぁって!そこで!キミ達に朗報です!』

「朗報?」

『ほいっ!』

モノクマがパチン、と指を鳴らした。

 

ヴーーーーーーーーーーーーッ

 

手帳が鳴ったので確認すると、新しいアプリが増えていた。

「何これ?」

『『ライブラリ機能』です!その機能を使って検索をかければ、読みたい本がすぐにその受け取りボックスから出てくるよ!ここには、古今東西ありとあらゆる本が置かれてるから、読みたい本があればほぼ100%出てくるよ!』

「へー。例えばこんなのとか?あポチッとな。」

財原君が手帳をいじると、ボックスから変な音が聞こえた。

そして、ゴトっと何かが落ちる音が聞こえた。

「何したの?」

「試しに本を一冊注文してみたんだよ。ジャーン!やっぱり出てきた!」

財原君は、ボックスからエロ本を取り出した。

「何やってんだよ君は!!真面目に探索しようよ!!」

「え、だってあったんだもん。」

「あったんだもん、じゃないだろ!っていうか、こんなもの置いてる方も置いてる方だよ!!モノクマ、これは一体どういうつもり…」

「アイツ、説明終わったからってそそくさと帰っていったぞ。」

「なっ…!都合悪いところは説明しないつもり!?ホントに、あのクマは…!」

全く…どいつもこいつも、油断も隙も無いよ!

 

 

 

 

ー数時間前ー

 

私達は映画館の探索ですか…

…ここが映画館ですね。

「うむ!まるでシネマみたいな造りなのだ!!」

「死ね…?いけませんよ入田殿。そんな乱暴な言葉を使っては。」

「む!?オマエ、何か勘違いしてるな!?シネマも知らないのか!映画館の事だよ!」

「あ、そうなんですね。失礼しました。」

 

ゴチンッ

 

「んあっ!?痛ってェ!!」

「おや、舞田殿、どうかしましたか?」

「ん?ああ、この廊下、奥が鏡になってるのに気づかなくてよ。鏡にぶつかっちまったんだよ。」

「フン、おそらく、部屋数が多いように見せるために突き当たりの壁が鏡になってるんだろう。全く、セコい発想だ。」

16部屋あるように見えたのですが…実際には、8部屋しかないみたいですね。

…なんか、内装が“はいから”な感じがしますね!

「…不動院。オマエ、心なしかワクワクしてないか?」

「へ?」

「フン、まあいいのだ。とにかく、部屋を調べるぞ。」

「おう!!」

私達は、映画館の中を調べてみました。

「フンッ、どこの部屋も似たような感じだな。だがどの部屋も、14席しかないな。」

「そうだな。見たとこ、それ以外は普通の映画館だよな?」

「わぁあ!見てくださいお二人とも!大きな画面です!椅子もフカフカで…これが“映画館”なのですか!?」

「お、おう…剣、お前、映画館行った事ねェのか?」

「はい!あの、入田殿!これは一体何ですか!?」

「…ポップコーンを入れるためのカップホルダーだ。」

「なるほど、玉蜀黍の炒り菓子ですか!俗世間にこんなに素晴らしい物があったとは…!」

「不動院!!」

「あっ…」

「…今は探索中だ。真面目にやれ。」

「…ゴホン、失礼しました。」

私とした事が、つい燥いでしまいました。

「ところで、一つ気になった事があるのですが。」

「気になった事?なんだ、剣?」

「映画を見るには一体どうしたらいいのでしょうか?」

「えぇ?お前、んな事も知らねえのか?チケットを買えば、俺らは何もしなくても、勝手に上映されんだよ!」

「…いや、何もしなくても上映されるというわけではなさそうだ。チケット売り場や上映時間のリストが無いからな。そこの所、ちゃんと説明してもらおうか!?モノクマ!」

『やっほー!呼ばれて出てきてなんとやら!え?なになに?映画の見方がわかんないって?』

「曲者!!」

『わわわっ!?ちょっと、やめてよ不動院クン!ボクは、この学園の学園長なんだぞ!別に不審者ならぬ不審クマじゃないクマ!』

「フンッ!で?映画を見るにはどうしたらいい?」

『うぷぷ!まあまあ、そう急かさないでよ!』

白黒熊が指を鳴らすと、私達の手帳が鳴りました。

「むっ!?なんだこの新しいアプリは!」

『それは、『シアター機能』です!見たい映画と時間を選択すれば、自動的に空いてる部屋で上映が行われるよ!ただし、一度に上映できるのは8部屋までだから、みんなで仲良く使ってね!』

「フンッ、なるほどな。…なんと。ポルノ映画まであるのか。どうなってるんだ。おい、ちゃんと説明しろ…」

「才刃。あのクマ、もう説明終わったからって帰ってったぞ。」

「フンッ、あくまで都合悪い事は説明しない気か。」

お二人は何の話をなさっているのでしょうか?

…ん?何か嫌な予感が…

「あの、お二人とも。探索は終わった事ですし、先に食堂に向かっていていただけませんか?」

「んお?なんでだ?なんかやり残した事でもあんのか?」

「…少し、気になる事が。すぐに終わりますので、ご安心を。」

「フン、余計な詮索は野暮だろうな。いくぞ舞田。」

「お、おう…」

…この気配は、向こうの部屋からですね。

最悪な事になる前に、急いで向かわねば!

 

 

 

 

ー数時間前ー

 

【生物室】

 

…あーあ、せっかくウハウハハーレムだと思ったのに…

朱ちゃんに睨まれて、何もできねェよ…

「むっ!?(ギロッ」

何もしてないのに睨まれたんだけど…

「プレパラートに、顕微鏡…うん、設備は充実してるね。」

「人体模型モありますヨ!」

オレの中学校の生物室の10倍は広いな。

「ねえ、見てこれ。デッカい水槽があんだけど!水族館かよ!」

「ホントだ。デケェな。」

生物室の壁一面が水槽になってんな。

横幅はざっと20m、高さ10m、幅10mか。

いろんな種類の魚がいて、海藻とかも生えてんな。

「熱帯魚もいるね!かわいい〜!」

「美味そうだな…」

「よういちくん!?」

「…冗談だよ。」

『フッフッフ。どうです?この学園の自慢の生物室は。』

「あっ…!テメェは…!」

後ろからいきなりクソトラが出てきやがった。

『おお、こわいこわい!ワタクシはただ、この生物室の説明に参っただけですのに!』

「せつめいー?」

『はい!実はですね。この水槽は、水温や水量、水の鮮度などを全てAIが管理しているのです!』

「そうなの?」

『はい。ちなみにですが、上の小部屋には、水槽を管理するための管理室がございます。水槽上部のフタを開ければ、中の魚や海藻を獲る事も可能です。』

「マジか!食えんのか!」

「よういちくん!」

「ピィ!ピィピィ!!」

「だから、冗談だって。そんな怒んなよ。」

「アンタ、目がマジだったよ。」

『フッフッフ。気に入って頂けたなら何よりです。おっと、言い忘れるところでした。皆様に、ひとつ注意事項をお教えしておきましょう。』

「あぁ?」

『実はこの管理室、夜時間中は鍵がかかります。』

「じゃあ入れないね。」

『そうではございません。こちらをご覧ください。」

モノベルは、管理室の隣にあった、窓の部分に鉄格子がはめられたドアを開けた。

『こちらは、生物室を厳重に管理するための鍵が揃った保管室でございます。夜時間中に管理室に入りたい場合は、ワタクシ共にお声がけください。そうすれば、保管室の鍵を開けて直接鍵を渡して差し上げます。』

「なんで最初から保管室を開けといてくれないの?」

『フッフッフ。アナタ達の事です。そんな事をしたら、鍵を失くしたりネコババしたりするでしょう?ワタクシ達には、鍵を管理する義務がございますゆえ。』

「へぇー。」

『それでは、説明は大方終わった事ですし、ワタクシはこれにて失礼します。』

「おう!どっか行っちまえ!」

『おやおや。つれないですねえ。』

モノベルは、ぶつくさと文句を言いながら去っていった。

「ねえ、とりあえず、探索は終わったし報告行かね?」

「お、そうだな!」

うっし!とりあえず、探索結果はまとめといたし、報告に行くか!

 




不思議系主人公って、難しいんですよね。
感性が人とはかけ離れてるためあんまり心象描写ができないので、結局はセリフの量が多くなってしまうんですよ。でも、乗り掛かった船だ!完走すっぞ!

作者の中で少しずつ株が上がりつつあるキャラ1人目癒川ちゃん。
謝り癖があったり、想定外の事態に弱かったりと、脆そうなイメージですが、生活力が高かったりツッコミ不在の時は積極的にツッコミに回ったりなど、案外しっかりした子です。
2人目ロングパスタ…もといラッセ様。
冷たい人物に思われがちですが、あくまで極度な合理主義者というだけです。そのため、他人の意見をバッサリ切り捨てるというわけではなく、理にかなっていればそれなりに聞く耳は持ってくれます。


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第2章(非)日常編②

今日は詩名クンの誕生日です。
本人からメッセージをいただいております。

詩名「やぁ♪今日は、オイラの誕生日なのさ。実は、この日は楽器の日って呼ばれてるんだけど…なんでか知ってるかい?これは、『芸事の稽古の習い始めは6歳の6月6日からにする』という昔の慣わしにちなんで、全国楽器協会が定めた記念日なんだってさ♬芸事の記念日…普段から弾き語りしてるオイラにとっては、自分の誕生日がそんな日だっていうのは、ちょっと嬉しいねぇ♫」





全員が食堂に集まって、報告会を開いた。

「じゃあ、それぞれ探索の結果を報告してくれないかな?まずは入田君達から。」

「む!?僕ちゃんがトップバッターか!?ははは!おい、穴雲!よくわかってるじゃないか!一番こそ、僕ちゃんにふさわしい順番なのだ!!」

「フツーの映画館だったぜ?奥が鏡張りになってたけどな。」

「おい、舞田!!僕ちゃんの出番を取るな!!」

「鏡張り?ああ、奥行きがあるように見せるためか。」

「何そのセコい発想。」

「っと、あとはアレだな。映画用のアプリが追加されたぜ。それで映画が見られるらしい。」

「あ、ほんとだ。新しいアプリが入ってるね。」

「部屋は全部で8部屋です。上映時間中は、その部屋で他の映画を見る事が出来ないので仲良く使うように、との事です。」

「剣、お前、めっちゃはしゃいでたよな。ハイカラがなんとかって…」

「そ、それは忘れてください!」

「…………侍、顔………真っ赤…。」

「…うぅ。」

剣クンがはしゃいでた…?

なんか、見た目からは想像できないんだけど。

でも剣クンって、男の子だけど笑ったり慌てたりするとかわいいよね。

「うんうん、なるほどね。他のみんなは?そうだな…栄君。報告してくれる?」

「おう!っとなぁ、すげェ広かったぜ。フツーの生物室の10倍の広さはあったな。」

「顕微鏡とか人体模型とか、色々ありマシタ!」

「あとはあれだ。デケェ水槽があったよ。」

「お魚がいっぱいいて可愛かったんだぁ。」

「ピィ!」

「美味そうな魚がたくさんいたぜ。食いたかったらいつでも獲って捌いてやるぜ!焼き魚に刺身に寿司…活け造りもイケるぜ!」

「よういちくん!お魚さん達がかわいそうだよ!!」

「ギィ!!ギィギィ!!」

「わっ、おい!やめろ!!冗談だっつうの!!」

陽一クン、翠ちゃんに襲われてるなぁ…

彩蝶ちゃんと翠ちゃんは、大好きなお魚を陽一クンに捌かれたくないんだね。

「いや、思いっきり魚捌いて食いたいって顔に書いてあるけど。」

「うっ…」

「あはは…ええっと、じゃあ次は癒川さん。報告してくれるかな?」

「はい。今回開放された研究室は、羽澄さん、朱さん、日暮さん、不動院さんの研究室です。」

「マジ!?アタシの研究室!?やった!後で見にいこ!」

「ワタシの研究室ですカ!?楽しみでス!」

「先程は、狛研殿の所為で研究室をゆっくり見られませんでしたし、後で改めて拝見しましょうかね。」

「ねえ、かなえちゃん。わたしの研究室見たんでしょ?どんな感じだった?」

「えっとね、葉っぱとかがいっぱいあったよ。あと、ペットフードも。あ、そうそう。確か翠ちゃん用のお家もあったかな。」

「ホント!?よかったね翠!後で研究室行こっか!」

「ピィ!」

「なるほどね。報告ありがとう。じゃあ、そろそろ僕も報告しようかな。図書室は、かなり広かったよ。読みたい本は、アプリで注文するんだって。そうしたら、図書室にあるボックスに本が入れられるから、それを取りに行くだけでいいんだってさ。」

「本の種類は色々あるよ。漫画とか参考書とかもあるし…もちろん、そっち系の本もね♪」

「君は黙ってて!!」

「へーい。」

「?そっち系の本?なにそれ?」

「えっとだね、それは…」

「あー!あーあーあー!!」

星也クンが、大声を出して天理クンの発言を遮った。

…急にどうしちゃったんだろ?

天理クンが何を言ったのか、すごい気になるんだけど。

「フン、下衆め。」

ラッセクンは、二人を呆れたような目で見ていた。

「フフフ、なるほどな。後で手帳をチェックしておくか。」

「君、本当に下心丸出しだよね。」

「……………?」

陽一クン、なんか嬉しそうじゃない?

なぜか鼻血垂れてるし。

今ので何を納得したんだろうか。

え、もしかして、わかってないのボクだけ?

ちょっと、ボクだけ仲間外れなんてやだよー!

誰か、天理クンが何を言おうとしてたのか教えてよー!!

「うんうん、報告は終わったみたいだし…そろそろお昼休憩にしようか。」

「賛成ー!」

「…勝手にしろ。」

 

 

 

 

陽一クンが作ってくれたご飯を、みんなで食べた。

やっぱ、陽一クンのご飯はおいしいね!

陽一クンの料理をおかずの炊飯器10杯分くらいご飯食べれちゃうよ!

さてと、ご飯は食べ終わったし、これから何をしよっかな?

…あ。

陽一クンが、暗い面持ちで研究室に入った。

「陽一クン…」

「…あ、狛研ちゃん…」

「どしたの?」

「…いや、この部屋で景見が死んじまったって思うと、入りづらくてよ…」

「…そっか。でも、せっかく研究室があるんだから入ろうよ。…まだ、凶夜クンの弔いもできてないし。」

「そ、そうだな…」

ボクは、陽一クンと一緒に研究室に入った。

「…え。」

研究室の中は、綺麗に片付いていた。

床には、凶夜クンの死体どころか、血の一滴も落ちていなかった。

まるで、凶夜クンがここで死んでいたという事実を否定するかのように、部屋の中の何もかもが元通りになっていた。

「どうなってんだコレ…?誰か掃除したのか…?」

「…多分。」

ボクは、後ろに目をやった。

「…キミがやったんだろ?」

後ろには、ベルさんが立っていた。

『フッフッフ。如何にも。景見様のご遺体は、ワタクシ共で片付けさせていただきました。いつまでもご遺体を放ったらかしたままでは、学園生活に支障をきたすと思いまして。ささやかながら、ワタクシ共からの清掃サービスです。』

「テメェら…!景見の事を何だと思ってやがる…!」

『はいはい、臭い台詞はもう聞き飽きました。そんな事より、せっかく清掃して差し上げたのですから、少しは感謝していただきたいものです。』

「…もういい。早く陽一クンの研究室から出てけよ。」

『おや。随分と嫌われたものですねェ。この研究室を提供して差し上げたのは、ワタクシ共なのですが。…まあいいです。存分に、健全で陰惨たる習慣生活を楽しんでくださいな。ワタクシはこれにて失礼しますよ。』

ベルさんは、笑いながらどっかに行った。

「あ、コラ!待て!!」

「…陽一クン。あんな奴追いかける事ないよ。それよりも。」

ボクは、凶夜クンが死んでいたあたりの床に目をやった。

「…ごめんね。せっかく約束してくれたのに。助けてあげられなくてごめん。ボクは…いや、ボク達は、キミの分まで生きるから。」

ボクは、膝をついて手を合わせた。

「…。」

陽一クンは、瓶に水を入れて、中に花を挿した。

それを、テーブルの上に置いた。

「オレにできる事はこれくらいしかねェけどよ。…景見。オレは、絶対に生き残ってこんな所から抜け出してやるから。オレ達の事、見守っててくれ。」

「…陽一クン。」

「おっと、悪い。暗くなっちまったな。オレ達がこんなんじゃ、景見も浮かばれねェよな!さてと、今日の晩メシの下ごしらえしねェとな!」

「…うん。じゃ、ボクはそろそろ行くね。」

「おう!」

ボクも、凶夜クンの事を思い出してちょっとしんみりしちゃったな。

明るいのがボクの取り柄だもんね、もっと元気出さなきゃ!

その方が、きっと凶夜クンも喜んでくれるよ!

 

《栄陽一の好感度が1上がった》

 

 

 

 

さてと、せっかく4人の研究室が開放されたんだし、ちょっと様子を見に行こうかな?

まずは、剣クンのところに行こーっと!

ボクは、剣クンの研究室を見に行った。

「…剣クーン!いるー?」

「…はい。…おや、狛研殿。貴女でしたか。」

剣クンは、研究室の中から顔を出した。

手には、なんでかわかんないけど竹刀を持っている。

「あ、剣クンいたぁ!ねえ、ちょっとお話しようよ!」

「はい。私で良ければ、話し相手になりましょうか。」

「やった!」

「あ、その前に、少し片付けをしてきてよろしいですか?」

「いいよー。」

「ありがとうございます。少々お待ちください。」

そう言うと剣クンは、中に入っていった。

何分か経った頃、剣クンはまた顔を出した。

「では、中へどうぞ。あ、くれぐれも部屋の中の物には触らないでくださいね。」

「はーい!!」

「…触ったら冗談抜きで1時間正座ですからね。」

「わ、わかってるって…」

剣クンは、ボクを研究室の中に入れて、お茶とお菓子を出してくれた。

なんか、白と黒のようかんっぽいお菓子だった。

まるでクマさんとベルさんみたい!

「どうぞ。」

「わーい、ありがと!…ねえ、ところで、さっき竹刀持ってたけど、あれは何をやってたの?」

「…ああ、剣の修行をしていたのですよ。ここに来てから修行が出来ていなかったもので、腕が鈍っていたので…」

「ふーん。いつもの刀じゃないんだね。」

「普通、稽古の時は真剣は使わないのですよ。まあ、真剣道となれば話は別ですが。」

「そーなんだ。あ、そうだ!」

「はい、何でしょう?」

ボクは、この前ガチャでゲットした短刀を見せた。

「これ、この前ガチャでゲットしたんだけどさぁ、ぶっちゃけ使い道に困ってて…ちょっと短いけど、剣クンいる?」

「!!?」

剣クンは、いきなり立ち上がってボクの手を掴んできた。

「狛研殿!!その刀、よく見せてください!!」

「えっ!?あ、うん…」

剣クンは、興奮気味に刀を隅々まで見ていた。

「この模様は…間違いありません…本物です…!!こんな所でお目にかかれるとは…!」

「え、何?どしたの?」

「これは、光雪左文字と呼ばれる名刀で、かつて富丘重国という武将がこの刀で天を斬り裂いたという逸話で有名な短刀です!!そしてこの特殊な鍛錬法が生み出した美しい刃の模様は、まさに芸術品です!!こんな名刀、私が受け取ってしまってよろしいのでしょうか…!?」

わぁ…すごく喰いついてくるね。

剣クンって、刀が大好きなんだね。

ところで、やっぱり剣クンって、感情がむき出しになってる時が一番かわいいね。

「いや、いいよ。ボクには刀の価値なんてわかんないし。剣クンが持ってた方がいいんじゃない?」

「…ありがとうございます!大切に保管しておきます。しかし、貰いっぱなしでは私の気が収まりません。何かお礼をしなければ…!」

「いいよ、お礼なんて。お腹が膨れるわけじゃないし。ボクは、剣クンと話がしたかっただけなんだからさぁ。」

「そういう訳には参りません。何かお礼をさせてください!!」

「…そうだな、じゃあ、ボクはキミに色々と聞きたい事があるんだけど…答えてくれるかな?」

「はい!聞きたい事がございましたら、何でも仰ってください!!」

「じゃあ早速聞くけど…」

「はい。」

「剣クンは、なんで【超高校級の侍】になったの?」

「そうですね…強いて言うなら、私が不動院家の者だったから…でしょうか。私の家は、大名の一族ですので。明治維新以降は、世間の目もあって、俗世間に出る事は少なくなったそうですが…」

「へー。他にやりたい事とかはなかったの?」

「ええ。士族の家で暮らしてきた事もあってか、家を継ぐ以外の選択肢はありませんでしたね。幼い頃から、父の跡を継ぐ事だけを目標に剣の腕を磨いてきましたし。日々修行を重ねていたら、いつの間にか【超高校級の侍】と呼ばれていた…それだけの話です。」

「そっかぁ。」

「ですが、この才監学園に閉じ込められた事で俗世間の物に触れる機会を得た事は、大変嬉しく思っております。先程の映画館も、新鮮な感じがして、感動を抑え切れませんでした。」

「剣クンって、映画館行った事ないの?」

「ございません。テレビ?という物の存在も、この前初めて知りました。」

「ふーん。」

「他に何かご質問は?」

剣クンは、左手で扇子を扇いだ。

「そうだなぁ。えーっと…あれっ?」

「…どうなさいましたか?」

「剣クン、左利き?箸とかは右手で持ってたけど…」

「…あっ。失礼しました。幼い頃から矯正されてきたのですが…今でも気を抜くと左手を使ってしまう癖が直っていないみたいです…」

剣クンは、顔を赤くしながら慌てて扇子を右手に持ちかえた。

「いや、別に全然いいんだけどさぁ…右手だと生活しづらくないの?」

「…コホン。少し不便ではありますが、もう慣れましたね。」

「そうなんだ。」

剣クン、ホントは左利きだったんだ。ちょっと意外だったな。

ボク、この5日間でみんなの事を知った気になってたけど…意外とみんなの事をちゃんと知らないんだなぁ。

「ねえ、剣クン。」

「はい、なんでしょうか。」

「前から気になってたんだけど…いっつも背負ってる刀あるじゃん。あれは何?」

「ああ、鬼津正宗の事ですか。私の父が、亡くなる前に私に譲ってくれた名刀です。父の形見ですので、何処へ行く時も必ず持ち歩くようにしております。」

「お父さんの形見かぁ。ボクと同じだね!」

「おや、そうなのですか?…もしや、その帽子が…」

「そうだよ!これは、お父さんの帽子なんだぁ〜。ねえ、剣クンは、お父さんの事好きだった?」

「はい。厳しかったですが…私は、父を親として、そして師として尊敬しておりました。」

「そっかぁ。」

「私は、どうしてもここを出なければなりません。不動院家の名誉のため、そして私を待ってくださっている家臣達のためにも、私がここで倒れる訳には参りません。」

「そうだよね!みんなで一緒にここを出ようって約束したもんね!」

「狛研殿…私の話を聞いてくださって、ありがとうございました。」

「いいよいいよ!ボクが聞きたくて質問したんだからさぁ!」

「ですが、私が話してばかりでは…」

「いや、ホントにいいから!ボク、自分の話するより人の話聞く方が好きだから!」

「左様ですか…」

「そうなの!ところで、このお菓子おいしいね。」

「はい。私のお気に入りで…って!?狛研殿!?何をなさっているのですか!?」

「はぇ!?」

「懐紙まで食べないでください!それは食べ物ではありませんよ!今すぐ吐き出してください!!」

「ん?え、嘘!?ゴメン、話に夢中で気づかなかった!道理で紙の味がすると思った!」

「普通触った時点で気付くでしょう!!何故全部食べてしまうのですか!!」

「ホントに気づかなかったんだって!」

 

 

 

 

「…全く、貴女という方は…」

「えへへ、ごめんね?」

「…はぁ。」

「あ、じゃあボクそろそろ行くね!」

「はい。」

「あれ?」

キレイな黒い引き出しが視界に入った。

「ねえ、これ…何が入ってるの?」

「あ、それは…」

「えーい!ご開帳ー!!」

ボクが引き出しを開けると、中に簪が入っていた。

「…え?」

 

バンッ

 

剣クンは、引き出しを勢いよく閉めた。

「…狛研殿、部屋の中の物には絶対に触るなと約束しましたよね?」

「あ、ご、ごめん…ちょっと興味本位で…」

「まあ、貴女には色々とご恩があるので、今回は無かった事に致しましょう。」

「あの、剣クン…これは…」

「…母の物です。気を病んで屋敷に篭るようになってから、母の部屋にあった物の一部は私が保管しておりましたので。それだけの事です。」

「そうなんだ…」

「狛研殿、この度は私に贈り物を下さった上に、私の話を聞いていただきありがとうございました。またお話する機会がございましたら、またいらしてください。」

「うん。じゃあ、また食堂で会おうね!」

ボクは、剣クンの研究室を後にした。

 

《不動院剣の好感度が1上がった》

 

 

 

 

さーてとっ!剣クンからお話聞けたし、何して過ごそっかなぁ〜!

「…あ。」

ウォレットにメダルが何枚か入ってるし、娯楽室で遊ぼうっと。

 

 

 

 

【娯楽室】

 

「…あ。」

既に先客がいたかぁ。

「いぇーい!!ガッポガッポだぜー☆」

「天理クンじゃん。何してんの?」

「あ、狛研サンじゃーん!今ねェ、スロットで遊んでんの。でも、今日はカモがいねェからつまんねーなぁ。」

「カモ?」

「栄クンの事だよ!アイツ、俺に勝てない事わかってるくせに何回もチャレンジしてくるもんねー。アイツは、俺のギャンブル用のお財布なんだー。」

「へぇ、そうなんだぁ。」

 

 

 

 

【食堂】

 

「えっきし!!」

「わぁあ!?汚あっ!?陽一、料理中にクシャミなんて信じられないデス!」

「わ、悪い…」

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ…」

「きっと誰かが栄君の噂をしてるんだね。」

「マジか!?いやぁ、かわいい娘がオレの噂してんのかなぁ。へへへっ。」

「…陽一、顔汚いでス。」

「朱ちゃん!?そんな汚物を見るような目で見るのやめて!?」

 

 

 

 

【娯楽室】

 

「ねえ、天理クン。」

「ほにゃ?」

「そのスロットって、メダルいっぱい稼げるの!?」

「ん?ああ、まあね。俺はこれで1500枚稼いだよ。」

「そんなに!?」

「1枚で遊べるし、勝った時に稼げる金額も大きいからオススメだよ。ちなみに、賭ける枚数が多ければ多いほどいろんな特典がつくし、一回あたりに稼げる枚数も多くなるよ。」

「へぇー!ねえ、ちょっとやってみていいかな!?」

「どーぞお好きに。」

「やった!」

ボクは、天理クンがオススメしてくれたスロットで遊んでみた。

メダル一枚で遊べるんだね。

よーし、この機会にたっぷり稼ぐぞー!

「コイン入れたら、そこのレバーが引けるようになるから引いてみそ。」

「うん…わっ!回った!ねえ、このクルクル回ってるのはどうすればいいの?」

「そのまま放っとけばいいんだよ。そのうち止まるから。」

「へー。」

そういえば、裁判の時もこんな感じのスロットが出てきたっけ?

スロットのリールの回転が遅くなって、止まった。

「あーあ、残念でした。」

「え、どゆこと?」

「見てみ。ここに、得点表があるでしょ?その柄の並びは得点表に載ってないから、メダルは一枚も貰えないんだよ。」

「えぇえー!?何それ!せっかくメダル入れたのに、損しちゃったって事!?」

「まあ、ギャンブルってそういうもんだからねぇ。損をするリスクも考えなきゃ。」

「そんなー!」

「まあしょうがねーよ。ああ、言い忘れてたけどそのスロット、勝ったらすごい稼げるけど、その代わり勝率そんなに高くないから。一番貰えるメダルが少ないやつでも、出るのは5%以下だぜ。」

「えぇー!それ、早く言ってよ!」

「でもまあ、勝率が5%もあるなら割と良心的な方じゃない。こんなのより勝率低いギャンブルなんて、ざらにあるからね。」

天理クンは、頭をボリボリ掻きながらヘラヘラ笑っていた。

「そうなんだぁ。…あーあ、もっとやりたかったのに…もうメダル全然無いよ…」

「あーあ、しょうがねーなぁ。俺がメダルを貸してやるよ。」

「え、貸すって…そんな事できんの!?」

「うん。ほら。ウォレットにボタンがあるでしょ?それをタッチすれば、好きな枚数貸せるんだよ。」

「へぇー!ねえ天理クン、ホントに貸してくれんの!?」

「もちろん。困った時はお互い様だろ?で、貸してやるから何枚欲しい?」

「やった!ありがと!えーっと、じゃあねえ…100枚くらい貸して!」

「おっと、いいの?そんなに借りちゃって。ちゃんと返せんの?」

「へ?」

「言ったじゃん。貸すって。借りたって事は、返す義務が発生するの知らないの?ちゃんと110枚にして返してネ☆」

「なんで10枚増えてんだよ!」

「利子ってモンを知らねーの?物を借りた時は、それにちょっと上乗せして返さなきゃいけないの。と、いうわけで、ここから出るまでにちゃんと110枚返してね。」

「えぇ〜!無理だよ!110枚も返せないってー!」

「そっかぁー…でも、俺は優しいから今回だけ特別サービスしてあげる。」

「ホント!?」

「うん。ちゃんと払ってくれたらメダル100枚あげるよ。」

天理クンは、ニヤニヤしながらズボンのベルトを外し始めた。

「…体で♡」

「うん、いいよ。」

「え?」

「あ、ちょうど夕ご飯の時間だね。乗って。運んであげる!」

「あのー…狛研サン?」

「最近運動不足だったからちょうどいいや!さーてと!走るぞー!!」

ボクは、天理クンをおんぶして走った。

 

 

 

 

【食堂】

 

「お待たせー!!」

「ふにゃあ〜。」

「おう、来たか狛研ちゃん…って、狛研ちゃん、なんで財原の野郎をおんぶしてんだよ?」

「だって、天理クンが、メダル貸して欲しかったら体で払って言うから。今お支払い中なの!」

「…あのさ、狛研さん。体で払うの意味間違えてるよね。」

「へ?そーなの?」

「…まあ、君は知らなくていい事だよ。さてと、ご飯にしよっか。」

「はーい!…ねえ、天理クン。」

「ほにゃっ?」

「約束は守ったからちゃんと100枚貸してね!」

「うーん…俺的には約束守ったうちには入らないんだけどなぁ…まあでも、俺にとっちゃはした金同然だし100枚くらいあげるよ。」

「わーい!」

ラッキー!

天理クンにメダル貰っちゃった!

やったね!

これでたくさん遊べるよー!

 

 

 

 

【娯楽室】

 

さーてとっ!

ご飯食べてお腹いっぱいになったし、お風呂ももう入ったし、もう一回遊ぶか!

…あ、そうだ。

たまにはガチャで遊んでみよっかな。

最近、金欠ならぬメダル欠で全然遊べてなかったし。

この前、ガチャで何引いたっけ。

えーっと、金ピカの拳銃でしょ?それからペンダントに、剣クンにあげた短刀に…

うーん、全部遊んで消耗するか誰かにあげるかしちゃったなー。

とりあえず、天理クンにメダルいっぱいもらったし、一回引いてみよっと。

今度は何が出るかな…?

おっ。

なんかよくわかんないけど、靴が出てきたよ。

黒くてピカピカしたぺたんこ靴だ。

こんなの、よくガチャガチャの中に入ったなぁ。

うーん。微妙にサイズ合わないし…誰かにあげよっかな。

 

…うん?

向こうで何かやってるな…

何やってんだろ。

「…ふぅ。こんなもんかな。」

「お前すげェな星也!!」

「そんな事無いよ。」

「フン。」

「さすがです。」

「……………。」

星也クン、成威斗クン、ラッセクン、治奈ちゃんにゐをりちゃんかぁ。

珍しい組み合わせだなぁ。

「みんな、何やってんの?」

「あ、狛研さん。実はね、みんなでダーツをやってたんだ。」

「そうなんだぁ。」

「叶!あのな、星也のヤツ、すげェ上手いんだよ!!」

「ちょっと、やめてよ舞田君。僕なんて全然凄くないから。」

「あのな、コイツ、マジでスゲェから!ホントに!」

「フン、まるで自慢みたいだな。貴様が凄いわけではなかろうに。」

「いいじゃねえかよ!仲間にすげえ奴がいるっつーのは、俺は嬉しいぜ?」

「フン、カマキリの卵は脳味噌までおめでたいようで何よりだ。」

「まあまあ…」

そんなにすごいんだ…

「ふーん。ねえ、星也クン。ちょっとやってみせてよ。」

「えぇ…恥ずかしいから、一回だけだよ?」

「わーい!」

星也クンは、ダーツの矢を持って、的から数メートル離れた所に立った。

星也クンは、目を細めて狙いを定めた。

そして、放った。

星也クンの放った矢は、的のど真ん中に当たった。

「わ!ホントだ!すごーい!!」

「そんな…まぐれだよ。」

「まぐれで10回連続真ん中に当たるかよ!」

10回も!?

星也クンってすごいんだねェ。

「…ねえ、ボクもやってみていい?」

「どうぞ?」

「やった!よーし、真ん中に当てるぞー!!えいっ!!」

ボクは、矢を的めがけて投げた。

矢は、真ん中より少しズレた所に当たった。

「あっれー!?なんで!?ちゃんと真ん中狙ったのに…」

「うーん、狛研さん。構える時に手首に力が入り過ぎてたからじゃないかな?構える時に力を抜くだけで、かなり良くなると思うよ。」

「へえ、そうなんだ。ありがとう星也クン。やっぱ、上手い人は詳しいんだね。」

「いや、僕なんて全然凄くないから…」

星也クンは、照れながら言った。

上手いのは事実なんだし、そんなに謙遜しなくていいのに。

「ねえ、狛研さん。ダーツやるのは、これが初めて?」

「え、うん。初めてだけど…なんで?」

「だったら、多分僕より才能あるよ。普通、初心者は的にすら当てられないのに…ほとんど中心じゃない。」

「え、そうなの!?」

「マジか!?叶、お前天才だってよ!!やるなぁ!!」

「フン。」

「えへへ…」

なんか、褒められると照れちゃうなぁ…

よーし、もう一回投げてみよーっと!

ちゃんと星也クンのアドバイス通り、最初は力を抜いて…

「えいっ!」

 

トスッ

 

「んなっ…!」

今度は、的のど真ん中に当たった。

「わーい!当たったー!!」

「叶!!お前すげェな!!」

「さすがです、狛研さん!!」

「……………。」

「えへへ…」

「二回目で真ん中に当てるなんて…君は間違いなく天才だよ。」

「フン、まぐれだろ。」

すごいみんなに褒められちゃったよ…

やっぱり、すごいって言われるのって、ちょっと恥ずかしいけど嬉しいね。

 

 

 

 

【独房】

 

あー、あの後調子乗ってすごい遊んじゃったよ。

ホント楽しかったなー。

 

…凶夜クン、隥恵ちゃん。

キミ達がいたら、多分もっと楽しかったよね。

コロシアイさえ無ければ、今頃16人でもっと楽しく過ごせてたはずなのに。

もうキミ達は、ボク達のところに戻ってきてはくれないんだよね。

あの時、みんなでここから出ようって約束したのに…

止めてあげられなくて…助けてあげられなくて本当にごめんね。

 

…あーあ。

あの時、いつでも前向きでいようって決めたのに。

どんなに頑張って楽しく振る舞ったって、どうしても二人の事を思い出すと、つい泣きたくなっちゃう。

やっぱり、二人が死んじゃって、前向きになんてなれないや。

お父さん…あの時ボクに、どんな時でも前向きでいろって言ってくれたけど…

…たまには、泣いたっていいよね?




※注意
作中に登場した刀は、会津正宗と江雪左文字がモデルで、実在しない刀です。
交流イベント中に出てくるプレゼントは、どれも超高級品という設定ですが、どれも現実には存在しません。


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第2章(非)日常編③

収監生活6日目。

うーん!

よく寝たぁ…

やっぱり、ちょっと泣いちゃった後で寝るとスッキリするよね!

今は…7時ちょっと前か。

って事はもうすぐ…

 

『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』

 

やっぱり、今日はクマさんかぁ。

まったく、毎朝毎朝うるさいね!

いちいちローテーションしなくていいから!

ふわぁ…

まだちょっと時間あるなぁ…

朝ご飯はまだだし…何しよっかなぁ…

そうだ!

ちょっと走ろーっと!

最近運動不足だし、全然動き足りてないからね!

たまにはちゃんと体を動かさないと!

ボクは、着替えて夏部屋に行った。

 

 

 

 

【夏部屋】

 

うーん、やっぱり朝走ると気分がいいね!

今思ったけど、ちゃんと走るのって久しぶりだなぁー。

…あ。

どうやら、先客がいたみたいだねぇ。

「一!!二!!三!!四!!五!!六!!うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

あれは…成威斗クンか。

何してんだろ。

「おはよう成威斗クン!」

「んあっ、叶か。おはよう。で、どうした?」

「成威斗クン、そこで何してんの?」

「ああ。俺はな、今あのクソみてェなクマとトラをブッ飛ばすために鍛えてんだよ。俺は、強くなってあんな奴らをブッ飛ばしてやんなきゃなんねェんだ!!」

「へぇ〜。」

「叶も一緒にやるか!?」

「え、いいの!?」

「おうよ!」

「わーい!やるやるー!」

成威斗クンと筋トレかぁ。

なんか楽しそう!

ボクは、成威斗クンと一緒に筋トレをする事になった。

 

 

 

 

うーん、やっぱりキツいなぁ。

ボク、そろそろ限界かも…

でも成威斗クンは、まだまだ全然大丈夫そうなんだよね。

さすが【超高校級の喧嘩番長】だね!

「くぅー…結構キツいね!これをスイスイできる成威斗クンって、やっぱすごいね!」

「そうか!?まあ、俺は元々県内一の喧嘩番長だったからな!!これくらい楽勝だぜ!!」

「すっごーい!よーし!ボクも頑張らなきゃ!」

 

ガチャッ

 

あ、誰か来たみたいだね。

ラッセクンかぁ。

「…フン、誰かと思えばカマキリの卵に触角帽子か。貴様ら、そこで何をしているんだ。」

「ラッセクン!おはよー!!今ねぇ、成威斗クンと筋トレしてたとこなの!」

「ほう。脳筋らしい発想だな。」

「おい、ラッセ!お前もちったぁ鍛えろよ!あんまり鍛えねェから、ちょっと根性曲がってんだよ!」

「余計なお世話だ。…貴様、一国の王に対して無礼が過ぎるぞ。だがまあ、運動で心身を鍛えるという発想は理にかなってはいるな。俺も最近運動不足だし、たまには貴様らのお遊びに付き合ってやろう。で?何をすればいい。」

「っとなぁ、まずは、これ持ち上げてみろ。」

成威斗クンは、足元にダンベルを投げた。

ダンベルには、100KGと書かれている。

「…は?…おいおい、悪い冗談はよせ。」

「いやいや!冗談じゃねえって!試しに持ち上げてみろよ!」

「無理に決まっておろうが。これをどう持ち上げろというのだ。」

「…叶はそれくらいフツーに持ち上げてたけどなぁ。」

「…。」

ラッセクンは、顔を真っ青にしながらボク達を見た。

「…貴様ら、ボディービルダーか何かになるつもりか?」

「別に、そういうわけじゃないけど…」

「だったら、陸軍にでも入るつもりか?」

「軍隊にも入らないかなー。」

「やれやれ、貴様らの話を真面目に聞いた俺が馬鹿だったようだ。邪魔したな、あとは好きにしろ脳筋共。」

「待てよ。」

「…は?」

「せっかくここに来たんだし、お前も鍛えろよラッセ!」

「だから、断ると言っている。貴様らのような馬鹿力のレベルに合わせられては、命がいくつあっても足りん。」

「細けェこたぁどうでもいいだろ!!さ、早速鍛えるぞ!!」

「おい、ちょっと待て。何故国王の俺がそんな拷問紛いの事をやらされなければならない!?嫌に決まっておろうが!おい、触角帽子!貴様も見てないで助け…」

「ラッセクン!ファイトー!!」

「ふざけるな!」

「うっし、ラッセ!鍛えて俺と一緒にあのムカつくクマとトラをブッ飛ばそうぜ!!」

 

 

 

 

「…。」

ラッセクンは、真っ白に燃え尽きていた。

「あれっ!?ラッセ、もう動けねえのか!?情けねえなぁ!まだ1セット目だぞ!?あと4セット残ってんだから、立てよ!」

「その辺でやめてあげなよ。」

後ろに、柳人クンがいた。

「国王様は、元々常人なんだから、君達のレベルについてこられるわけがないだろ♪何事もやりすぎは良くないよ。強すぎる肥料が、かえって花の根をダメにしてしまうようにね。」

「柳人クン!おはよう!何しに来たの?」

「そろそろ朝食の時間だから、君達を呼びに来たのさ♬」

「あ、そっか。もうそんな時間だった。筋トレに夢中で全然時計見てなかった!行こ、成威斗クン!ラッセクン!」

「おう!」

「…。」

成威斗クンは、灰になったラッセクンを担いで食堂に向かった。

ヤバい、ボクも急がないと遅刻しちゃう…っていうか、とっくに遅刻してるよ!

走れーっ!!

 

 

 

 

【食堂】

 

…ふぅ。

全然時間に間に合ってないけど、なんとか4人とも食堂に着いた。

「ごめーん!みんなお待たせー!」

「もぉ〜。遅いよ3人とも〜。」

「お前が言うな!」

「痛てっ!」

天理クンの頭を、陽一クンが引っ叩いた。

「おう、狛研ちゃんに舞田にラッセ!朝飯の支度できてるぞ!」

「わーい!」

今日も美味しそうな朝ご飯だなー!

なんか、見てるだけでお腹空いてきたよ!

成威斗クンと筋トレした後だし、余計美味しそうに見える…

…おっと、よだれが…

「じゃあ、全員揃ったし食べよっか。」

「おう、そうだな!」

「いただきまーす!!」

うん、やっぱり陽一クンのご飯はおいしいね!

まるで超高級レストランのご飯みたい!

って、ボク、超高級レストランのご飯なんて食べた事無いんだけどね!

「ふわぁ…眠みー…」

「うーん…眠いなぁ…」

「ちょっと、アンタ達、船漕ぎながら食べるんじゃないよ。」

「ふわぁあ…ごめんね、ようこちゃん。気をつけ、る…」

「しいましぇーん。(カクッ」

「言ったそばから…」

「天理クン、ソース付いてるよ。」

「え、どこ?ちょっと取って。」

天理クンの口にソースが付いてたから、ナプキンで拭き取ってあげた。

「はい取れた。」

「あははー。ありがと狛研サーン。」

「フン、全く。行儀が悪いのだ。少しは僕ちゃんを見習って…」

「入田さんもですよ。お口にパンくずが付いてます。」

「んあっ?」

才刃クンの口を、治奈ちゃんが拭いてあげていた。

「チッキショー!!二人とも羨ましいぜ全く!!あ、そうだ。ねえねえ、オレの口にもソース付いちゃったから誰か拭き取ってよ!」

「陽一、アナタ、何やってるですカ?自分で取レバ良いでしょうガ。」

「いいじゃねえかよ!誰か、オレにも羨まけしからん事してくれ…」

 

キュッ

 

星也クンが、陽一クンの口を拭いた。

「…くだらない事やってないで、朝ご飯食べよっか。」

星也クンは、ニッコリと笑顔を浮かべた。

「…へい。」

陽一クンが黙った…

星也クンって、笑顔なのになんか怖いよね。

「せいやくん、こわいねぇ。」

「アゲハ、アンタそろそろ起きな。おしおきされるよ?」

「あ、うん…ありがとうようこちゃん…」

なんか、彩蝶ちゃんと踊子ちゃんって仲良いね。

 

 

 

 

「ごちそうさまでしたー!!」

さてと、朝ご飯食べ終わったし、何しよっかな?

昨日は娯楽室に行ったし…たまには別の場所に行こっかな?

そうだ、新しく開放された生物室に行ってみよっと!

 

 

 

 

【生物室】

 

わぁあ…!

ホントに色んな種類のお魚さんがいっぱいいるねー!

なんか、特にあの子とか綺麗な色してるよね!

「かなえちゃん。あの子、かわいいよね。」

隣にいた彩蝶ちゃんが話しかけてきた。

「あ、彩蝶ちゃん。あのお魚、なんて言うの?」

「ああ、あれはね、アフリカン・シクリッドっていうんだ。スズキ目シクリッド科のお魚さんでね、色んな種類の色があってかわいいんだー。」

「そうなんだー。」

「陸の動物さん達もいいけど、海の生き物もずっと見てられるよねー。まさに、自然が作り出した神秘だよねぇ。」

「うんうん、確かに、みんな可愛いよねぇ。」

「ピィ!ピィピィ!」

「あれ?翠ちゃん、どうしたの?」

「えへへ、翠がね。水槽のみんなとお友達になりたいって。」

「ふーん。翠ちゃんも、お魚さん好きなの?」

「ピィ!」

「大好きだよ、だって!」

「そっかぁ。あ、ナマコだ。」

「ナマコさんもかわいいよねー。ふにふにした感触が癒されるんだー。」

「ねえ、ナマコがいるんだったら、タラコもいるんじゃないの?タラコはどこ?」

「…え?」

「ボク、知ってるよ。タラコって、キ●ーピーの顔が生えてて、ピョンピョン跳んだりクルクル回ったりするんでしょ?ねえ、タラコはどこにいるの?」

「…。」

彩蝶ちゃんは、呆れたような目でボクを見た。

「え、何?」

「…あのね、かなえちゃん。タラコは、タラの卵なんだよ。あれ単体で生き物じゃないから。」

「そうなんだー。え、じゃああの跳ねてるヤツは?」

「あれは、タラコじゃなくて、タラコっぽいCMのキャラクターだよ。アレが海にいるわけないじゃない。」

「そうなんだー。」

タラコって、ああいう生き物じゃなかったんだ。

っていうか、CMのアレはタラコじゃなかったんだ。

勉強になったなー。

 

「やっぱりここにいた。」

「あ、ようこちゃん。」

「踊子ちゃん!今ねぇ、お魚さん見てたんだー。」

「知ってるよ。アンタらの声、外まで聞こえてたから。」

「え、じゃああのタラコのくだりも聞こえてた?」

「そりゃあもうバッチリ。…アンタ、キュ●ピータラコが水槽の中で跳ねて動いてると思ってたワケ?バカじゃないの?」

「うっ…」

「ようこちゃんも人の事言えないよー。ようこちゃんねえ、油揚げをキツネの皮を揚げたものだと思ってたんだって。」

「うっ、うっさいなぁ!今更蒸し返さないでよ!」

「え、違うの?」

「…まさか、かなえちゃんもそうだと思ってたの?」

「うん。」

「…。」

え、油揚げって、キツネの皮を揚げた料理じゃなかったんだ。

じゃああれは何を揚げてるのかなぁ。

「ねえ、二人ともなんか仲良いよね。」

「えへへ、そぉ?なんかね、ようこちゃんと一緒にいるとねー、わたしにお姉ちゃんができたみたいで安心するんだー。」

「アタシがお姉ちゃん?バカ言わないでよ。」

「ようこお姉ちゃーん!」

「やめてよ。アタシはアンタのお姉ちゃんじゃないってば。もう…」

確かに踊子ちゃんって、背が高いし意外と几帳面だし、なんかお姉ちゃんみたいだよね。

「ねえ、お姉ちゃん。一緒にお魚さん見ようよ!」

「カナエ、アンタまで?アタシはアンタらのお姉ちゃんじゃないよ!むしろ、このメンバーの中では一番遅く生まれてんだけど!」

「そうなの?」

「アンタ、7月生まれでしょ?アタシ、9月生まれだよ。」

「へー。でも、お姉ちゃんっぽいよね!」

「やめてってば…」

「踊子ちゃんは、兄弟とかいるの?」

「アタシ?一応1コ上の兄貴がいるけど…」

「え、お兄ちゃん!?弟じゃなくて!?意外〜!彩蝶ちゃんは?」

「わたしはひとりっこだよ。シュエメイちゃんは妹が、はるなちゃんは弟がいるんだって。わたしも兄弟が欲しかったな〜。」

「わかるー!」

「え、カナエ。アンタもひとりっ子なの?」

「うん!」

「アタシはアンタらが羨ましいかな。兄弟なんて、いい事ないよ?ウザいしムカつくし…」

「そうなの?」

「そういうもんなの。あ、良かったらウチの兄貴貸してあげよっか?なーんて…」

「え!?貸してくれるの?やったー!踊子ちゃんのお兄ちゃんかー…楽しみー!!」

「いや、冗談で言ったんだけど…」

 

 

 

 

3人で話してたら、いつの間にかお昼の時間になってたよ!

お昼ご飯食べに行こーっと。

 

《羽澄踊子の好感度が1上がった》

 

《日暮彩蝶の好感度が1上がった》

 

 

 

 

【食堂】

 

「みんなお待たせー!」

「フン。」

「あ、狛研さんに羽澄さんに日暮さん。」

「はるなちゃんお待たせー。」

「えっと…どうやら皆さんが最後じゃないみたいです。」

「え?」

遅れて天理クンが来た。

「ごみーん。倉庫で探し物してたら、棚から色々落ちてきて生き埋めになってたわー。」

「え、だ、大丈夫だったんですか?」

「うっそー☆」

「んなっ…」

「天理サン!治奈サンいじめタラ許サナイです!」

「いじめてないってばぁー。ちょっとからかっただけじゃん。」

「さ、くだらない事やってないで、席につこうか。」

「穴雲クン怖ーい。そりゃあ、彼女んぬがからかわれたら妬いちゃうよねー。」

「財原君。」

「だから、冗談だってば〜。そないな怖い目ぇせんといて〜。」

星也クンに怖い笑顔を向けられた天理クンは、笑いながらエセ関西弁を喋った。

「天理、アンタ、その喋り方キモいよ?」

「何ゆうとんねん!ワイのどこがキモいんじゃボケ!」

「…もう、君という人間が理解できないよ。」

「確かに、財原のノリは意味不明なのだ!!」

「あははー。最高の褒め言葉をどうもありがとうー。」

あ、標準語に戻った。

「うっし、じゃあ全員揃ったし、食うか!!」

「わーい!」

 

 

 

 

うーん、昼ご飯もおいしかったぁ。

あんなにおいしいご飯が毎日出てくるって、幸せだね!

お腹いっぱいになったし、誰かの研究室にでも遊びに行こーっと。

今度は、誰の研究室に行こっかなぁ。

あ、そうだ!雪梅ちゃんの研究室に行こっと!

この前ガチャで引いたプレゼントもあげたいしね。

 

 

 

 

【超高校級の曲芸師】の研究室

 

ピンポーン

 

「雪梅ちゃーん。いるぅー?」

ボクは、インターホンを鳴らして雪梅ちゃんを呼んだ。

その直後、雪梅ちゃんが部屋から顔を出した。

「む、叶サンでしたか!どうしましたカ?まさか、ヘンタイ、来てますカ!?ワタシ、退治しますヨ!アチョー!!」

雪梅ちゃんは、その場で身構えた。

そういえば、この子拳法やってるんだっけ。

「変態はいないよ?ボクは、雪梅ちゃんと話がしたくてここに来たんだ!」

原来如此啊(なるほど)劳驾(失礼しました)。」

「?」

なんて言ったのかな?

「叶サン、ワタシのお友達でス。叶サン、研究室、入ってドウゾ!」

「え、入っていいの!?わーい!」

雪梅ちゃんは、ボクを研究室の中に入れて、お茶を出してくれた。

「ドウゾ。」

「ありがと!」

これ、アレだよね。

中華料理屋に置いてあるやつ。

お茶の中にお花が入ってるなんて、面白いね!

「ソレデ、叶サン!お話というのハ?」

「あ、そうそう!あのさ、雪梅ちゃん。昨日ガチャでゲットしたんだけどね、これ、ボクはどうもサイズ合わないみたいなんだ。まだ履いてないし、良かったらあげるよ。」

「叶サン!?それ、よく見せてクダサイ!!」

「え、あ、うん…いいけど…」

「わぁあ…!本物デス…!!」

「え、何。その靴、そんなにすごいの?」

「ハイ!これは、超有名なパフォーマー王神美の靴なんでス!」

「わん…?あ、聞いた事ある!結構前にテレビに出てた人だよね!」

「ハイ!これハ、王神美のために、有名ナ靴職人の胡英峰が作った、雑技用の超高級靴なんでス!こんなところでお目にかかれるトハ…」

「そんな高級品だったんだ、その靴。」

「それはもう、超高級デス!高すぎテ、ファンでも買えないんですヨ!!」

道理で革の照りとかがキレイなわけだ。

「王神美ハ、ワタシの憧れデス!ワタシ、彼女を尊敬シテ、曲芸師なりまシタ!叶サン!ありがとうゴザイマス!!」

雪梅ちゃんは、嬉しそうに胸の前で手を組んだ。

憧れの人の品かぁ。

野球選手のサイン入りボールみたいなものかな?

ボクも、そういうの欲しいなぁ。

「叶サン、ワタシ、アナタニお礼したいでス!何か欲しい物、ありますカ!?」

「え、お礼なんていいよ。お腹いっぱいになんないし。」

「なるほど、お腹いっぱい、デスカ!わかりマシタ!ワタシ、料理得意デス!今度、料理作りマス!叶サン、それ食べるヨロシイです!」

「え、ホント!?料理作ってくれんの!?」

「ハイ!宝物のお礼でス!」

「ありがとー!!めっちゃ楽しみ!!」

雪梅ちゃんの料理かぁ…絶対めっちゃおいしいよね!

…おっと、いかんいかん。

想像したらよだれが…

「…ねえ、雪梅ちゃん。」

「なんでしょうカ?」

「せっかくだし、ちょっとお話しない?」

「ハイ!ワタシ、叶サンとのお話ナラ大歓迎デス!」

「ありがとう!じゃあさ、早速お話したいんだけどね、雪梅ちゃんはなんで【超高校級の曲芸師】になったのかな?」

「えとですネ、サキも言タと思うんですケド、ワタシ、王神美尊敬してマシタ。ワタシ、彼女みたいなりたくテ、いろいろ芸覚えましタ。仲間達、支えてくれテ、雑技団の団長やりマシタ。そしたらワタシの雑技団、有名ニなって、ワタシ、【超高校級】なりマシタ。」

「そうなんだー。」

憧れから始まった才能かぁ。

ボク、そういう話好きだな!

「叶サンは?」

「ああ、いや…ボクは、ラッキーで入っただけだからね。でもアレだよ!ラッキーだったら、誰にも負けない自信あるから!」

「叶サンらしいですネ!」

「えへへ…」

いやあ、なんか照れますなぁ。

「ねえ、その服、オシャレだけど…もしかして、サーカスの服?」

(はい)!ワタシの雑技団ノ公演用の衣装デス。普段、私服ですケド…希望ヶ峰入れるの嬉しくテ、来てきましタ!」

「そうなんだー。ねえ、そういえばさぁ。全然関係ない話になるんだけど、雪梅ちゃんて妹いるんでしょ?彩蝶ちゃんから聞いたよ。」

「ハイ!ワタシ、妹いますヨ!雪兰ていいマス。この前10歳なったばかりデ、かわいいですヨ!」

「雪兰ちゃんかぁ…会ってみたいなぁ。」

「写真ありますヨ。」

「ホント!?」

雪梅ちゃんは、雪兰ちゃんの写真を見せてくれた。

雪兰ちゃんは、ちっちゃくてとってもかわいかった。

「わー!!かわいいー!!」

「デショ?ワタシの自慢の妹デス!」

「めっちゃかわいいね!お人形さんみたい!!」

「…叶サン。」

「ん?」

「ワタシ、雪兰一人ニできマセン。家帰って、雪兰会いたいデス。」

「…家族か。いいなぁ、雪梅ちゃんは。ちゃんと外に出る理由があって。」

「叶サン、外出る理由無いデスか?」

「無いわけじゃないと思うけど…探し中ってとこかな!」

「見つかるトいいですネ!」

「えへへ、ありがと。雪梅ちゃんも、雪兰ちゃんに会えるといいね!」

「ハイ!」

「よーし!そうと決まったら、今度こそ絶対みんなで外に出るぞー!!」

「ワタシ、皆サンと外出たいデス!」

「ボク達【超高校級】が束になれば、できない事なんて無いよ!絶対、ここから脱出できる!」

「ハイ!ワタシ、皆サンの敵、倒しマス!アチョー!!」

 

 

 

 

「あははっ。なんか、雪梅ちゃんと話してたら元気出たよ!ありがと!」

「いえいえ、それはコチラの台詞デス。ワタシ、叶サンと話して、楽しかたデス!宝物、もらいましたシ!今日ハありがとうゴザイマシタ。」

「どういたしまして。…あ、そろそろ小腹が空いたなぁ。」

「それは丁度良かたデス!ワタシ、料理シマス。食堂、行きマショウ!」

「わーい!行く行くー!!」

ボク達は、食堂に行った。

雪梅ちゃんの料理、楽しみだなー。

考えただけですごいお腹空いてきちゃった!

 

《朱雪梅の好感度が1上がった》

 

 

 

 

【食堂】

 

「んあ。」

食堂には、先客がいた。

柳人クンが、席に座って歌を歌っていた。

「ふんふ〜ん♪」

「ねえ、柳人クン。何やってんの?」

「やあ、狛研君に朱君。今、日暮君と神座君がおやつを作ってくれるっていうから、ここで歌を歌って待ってるのさ♪」

「へー。」

厨房は先に彩蝶ちゃんとゐをりちゃんが使ってたんだね。

じゃあ、雪梅ちゃんにはまた今度ご飯を作ってもらおうっと。

「ところで、君達。さっきより仲が良さそうだけど…何かあったのかい?」

「えへへ、わかる?さっきね、雪梅ちゃんの研究室でね、二人でお話してたんだー。」

「叶サン、王神美の靴くれましタ!」

「…狛研君。朱君に靴をあげたのかい?」

「したよ?何か問題?」

「…あのねぇ。狛研君。人に靴を贈るのって、あんまり縁起が良くないんだよ。」

「えぇっ!?そうなの!?ごめん雪梅ちゃん!ボク、全然そういうの考えないであげちゃった!」

「全然気にしませんヨ!むしろ、宝物貰エテ嬉しかたでス!ワタシ、叶サンの贈り物なら大歓迎ですヨー!」

「ホント!?良かったぁ。」

「まあ、本人が気にしてないんだったら、わざわざオイラが口を挟む事じゃなかったね。良かったね、朱君。素敵な贈り物を貰って。」

「ハイ!叶サンの贈り物、大切にシマス!」

雪梅ちゃん、ボクのプレゼント、そんなに気に入ってくれたんだね。

やっぱり、プレゼントして良かった!

「…ところで、柳人クン。さっき、彩蝶ちゃんとゐをりちゃんがおやつを作ってくれるって言ってたけど…」

「そうなんだよね。そろそろ出来上がるって言ってたけど…楽しみだねぇ。」

彩蝶ちゃんとゐをりちゃんかぁ…あの二人が料理って、ちょっと意外だったなぁ。

…二人が作ったおやつ、ちょっと気になるな。

「りゅうとくーん!!みんなー!!おやつできたよー!!」

彩蝶ちゃんの声が聞こえた後、駆けつけるような足音が聞こえた。

「日暮ちゃん!おやつ作ったって、マジか!?」

駆けつけてきたのは、陽一クンだった。

「よういちくん!あのね、今ゐをりちゃんと一緒におやつ作ってたの!みんなにもっと仲良くなってもらおうと思って、心を込めて作ったから、食べてくれると嬉しいな!」

「おう!日暮ちゃんと神座ちゃんのおやつなら、いくらでも食えるぜ!」

「ホント!?じゃあ、早速食べてくれる?わたし達の手作りクッキー!!」

彩蝶ちゃんは、お皿に盛られた焼きたてのクッキーを陽一クンにあげた。

「うっほー!旨そうだな!どれ…」

陽一クンは、クッキーを勢いよく口の中に放り込んだ。

 

ガリッ…

 

その瞬間、陽一クンの顔は、赤くなったり青くなったり黒くなったり、ありえない変色のしかたをした。

口からはカニみたいに泡を吹いて、白目をひん剥いていた。

「#¥*〒々〆※$€£&◆@〜!!?」

陽一クンは、よくわからない声を出して絶叫した。

そして、その場で倒れた。

「…あれっ?陽一クン?どうしたの?おーい…」

「脈が無いね。」

「嘘ぉ!?え、ちょっと待って!?嘘でしょ!?こんな死に方ある!?」

「陽一!ふざケテないで起きナサイ!!」

「…。」

「ダメだ。完全に生気が無いよ。ボク,ちょっとお水汲んでくる。」

「お願いシマス!」

「え、何?よういちくん、どうしたの?具合悪いの?」

「……………。」

「日暮君、神座君。栄君は、君達が丹精込めて作ったクッキーが美味しすぎて昇天しちゃったみたいだよ。はは…」

柳人クンは、震え声で言った。

「わたしの作ったクッキー、そんなにおいしかったんだね!」

「………。」

ゐをりちゃんは、彩蝶ちゃんの後ろに隠れて少し笑っていた。

…褒めてもらえたのが嬉しかったのかなぁ?

「陽一クン、お水持ってきたよ。」

ボクは、陽一クンにコップの水を飲ませた。

「…う。あれ、何してたんだ俺…綺麗な川が見えたような気が…」

「あ、陽一クン。良かった、気がついて…キミ、彩蝶ちゃんとゐをりちゃんのクッキーを食べた途端、倒れちゃったんだよ?」

「あ…ちょっと思い出してきた…そういえばそうだったような気が…」

「よういちくん、わたし達が作ったクッキー、おいしかった?」

「え?あ、うん!そりゃあもう!すげェ旨かったよ!」

「ほんと!?良かったぁ!」

「…栄君、君ホントすごいねぇ。」

「いやあ、めっちゃ旨かったよ!うん。でも、あれだけしか焼いてないからオレの分がもう無いのは残念だなー。」

「…………まだ、たくさん………ある。………全部、食べて……くれると……嬉しい、な………。」

「ぱぇ?」

ゐをりちゃんは、大量のクッキーを厨房から持ってきた。

「…………栄養士、私の焼き菓子……おいしいって…………言った………全部、食べて…………くれる…よね………?」

ゐをりちゃんは、訴えかけるような目で陽一クンを見た。

「…う゛ん♡」

陽一クンは、この世の終わりみたいな顔をしていた。

陽一クンの目からは、血の涙が流れていた。

「あーあ、ご愁傷様。こうなっちゃったらもうどうしようもないね。」

 

 

 

 

彩蝶ちゃんとゐをりちゃんのクッキーを食べて胃がズタボロになった陽一クンは、独房のベッドに運ばれた。

陽一クンが回復するまでの間、急遽雪梅ちゃんがご飯を作ってくれる事になった。

「ヘンタイが痛い目見たの、イイ気味ですケド…料理する人、いなくナタラ困りマス。ワタシ、料理シマス。」

「ありがと雪梅ちゃん!」

「宝物のお礼デス!タクサン作ります!遠慮せず食べてクダサイ!」

「わーい!!」

ボク達は、雪梅ちゃんが作ってくれた夕ご飯を食べた。

陽一クンのご飯もおいしいけど、雪梅ちゃんのご飯もおいしいね!

今度、作り方教えて貰おっかな。

 

 

 

 

【独房】

 

やぁー、今日も楽しかったなー。

…ラッセクンが灰になっちゃったり陽一クンが倒れちゃったりっていうハプニングはあったけどね。

うん、なんか、昨日よりちょっとだけだけど元気になった気がする!

明日はもっと元気いっぱい頑張らなきゃね!

さてと、今日はもう寝よーっと!

 



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第2章(非)日常編④

お話の都合上ちょいと編集。


うーん、よく寝たぁ…

収監生活も、これで6日目かぁ。

今日は、何して遊ぼっかな〜。

 

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

 

…あーあ。

毎朝毎朝うるさいね。

ホント、ローテーションまでしてよく飽きないね。

さてと、気分転換に娯楽室にでも行こーっと。

ボクは、着替えて娯楽室に行った。

 

 

 

 

【娯楽室】

 

天理クンにいっぱいメダル貰ったし、ガチャで遊ぼーっと。

今度は何が出るかな?

お、なんだこれ。

石…?

なんか、魚みたいな模様だな。

なんなんだろ。

なんかの化石かなにか?

魚といえば、彩蝶ちゃんがこういうの詳しそうだよね。あとでこれがなんなのか聞いてみよっと。

 

まだメダルあるし、もう一回引こっかな?

今度は何が…

おっ、これは…キャップ?

なんか、ボロくて文字が書いてあるな…

こういうの、踊子ちゃん好きかな?

おっと、そろそろ朝ご飯の時間だね。

食堂に行かなきゃ。

ボクもうお腹ペコペコだよぉ〜。

 

 

 

 

【食堂】

 

「みんなおはよー!」

「おはよう、狛研さん。」

「おはようございます、狛研さん。」

「ふむ…おはようございます狛研殿。」

「おはよう、狛研君。」

「オハヨーございます!叶サン!」

今いるのは、星也クン、治奈ちゃん、剣クン、柳人クン、雪梅ちゃんかぁ。

陽一クンは、厨房にいるのかな?

今は8時20分…ご飯まであと10分だね。

おっ。

「…フン。」

ラッセクンが来た。

それから10分後、集合時刻ちょうどに才刃クン、成威斗クン、踊子ちゃん、ゐをりちゃんの順番に来た。

「ふんっ!僕ちゃんが来てやったぞ!!」

「お前ら、おはよう!!」

「………………。」

「おはよ。ホラ、ヰヲリ。アタシの後ろに隠れてないで、中入んな。」

「………。」

ゐをりちゃんは、目をこすりながら食堂に入った。

…まだ眠いのかな?

「みんな、おはよ。」

あ、陽一クン。

やっぱり厨房にいたんだね。

昨日、彩蝶ちゃんとゐをりちゃんのクッキー食べて死にかけてたけど、ちゃんと回復したんだね。

「…チッ、鳥娘と成金は何をやっているんだ。アイツら、時計が読めんのか?」

「まあまあ、国王陛下。落ち着いてください。」

ラッセクンは、爪先と指をトントンと動かしながら舌打ちしていた。

…そういえば、まだ二人が来てないねぇ。

 

結局、集合時刻の5分後に彩蝶ちゃんが、15分後に天理クンが来た。

「ごめんねぇ〜。また寝過ごしたー。」

「…アンタ、どんな生活送ってたらそんなに遅刻できんのよ。」

「そんな事言われても、眠いものは眠いんだもぉ〜ん。ゆっくり寝させてよぉ〜。」

「てんりくん、遅刻はダメだよ〜。」

「いや、アゲハ。アンタも人の事言えないから。」

「そうだねぇ…ごめんね、ようこちゃん。」

この二人、毎日遅刻してくるよね。

朝が弱いのかな?

ボクなんて、朝になったらすぐ起きたくなっちゃうけどね!

「アンタらなんでそんなに起きるのが遅いのよ。夜更かししてるんじゃないでしょうね?」

「してないよぉ。いっつも、8時には寝てるんだぁ。」

「8時!?って事は、ほぼ半日寝てるって事!?アンタそれ寝すぎでしょ!!」

「ごめんね?わたし、ちゃんと寝ないと動けないんだ。」

「俺も、初日は夜までギャンブルやってたけど、2日目からはちゃんと10時に寝てるよー。でも、なんでかわかんないけどクッソ眠いんだよねー。」

「わたしも、ちょっと眠いかも…」

「…オマエラ、ナマケモノみたいなのだ。」

「みんな、おしゃべりはその辺にして席につこうね。全員揃ったし、ご飯食べよっか。」

「賛成ー。もうお腹ペコペコだよぉ〜。」

「遅れてきたお前が言うな。みんな、お前を待ってたんだぞ。」

「てへっ☆…いただきまーす。」

今日もみんなで陽一クンが作ってくれた朝ご飯を食べた。

今日も、やっぱり陽一クンの朝ご飯はおいしいね!

昨日のクッキーで体調を崩しちゃったのか、いつもよりちょっとしょっぱかったけどね。

「ヨウイチ、アンタ昨日倒れたって聞いたけど…大丈夫なの?」

「ああ、大した事ねェよ!一晩寝たらほら、この通り!」

「元気そうで何よりだねぇ。オイラは君が羨ましいよ。」

「フン、聞いたぞ。鳥娘と和服の残飯クッキーで腹を壊したのだろう?全く、まさかそんな殺人飯を作れる奴がこの世に存在したとはな。」

「王様、それ、特大ブーメランなのだ。」

「は?」

うんうん、彩蝶ちゃんとゐをりちゃんはひどいけど…ラッセクンもたいがいだよね。

どうやったらあんな風に料理できるんだろ。

 

 

 

 

「ごちそうさまでしたー!」

さてと、これからどうしよ?

研究室に行こうと思ってたけど、図書室も気になるな。

研究室に寄るか、図書室に寄るか、どっちにしよっかなぁ〜…。

うーん、迷う…

よし、まずは図書室に行こっと。

 

 

 

【図書室】

 

「わぁあ…!」

図書室にはいろんな本があって、すっごく広かった。

こんなに本があったら、どんなに本好きでも読み切れないよね!

マンガもあるんだね!ボク、マンガ大好き!

何の本読もっかなぁ〜?

ボクは、図書室を探検した。

なんか、図書室の中って、迷路みたいで面白いよね!

でも、ちゃんと本がジャンル順に並んでるから、迷子の心配はないね!

…どこに何のジャンルの本があったかを覚えてれば、だけどね。

…あ。

ボクは、『希望ヶ峰学園の在校生に関する記録』という項目に目がいった。

…なんだろ、これ。

何が書かれてるのかな?

ボクは、本を一冊手に取った。

その本は、『希望ヶ峰学園100期生名簿』と書かれていた。

ああ、なるほどね。

全員の名前と才能が見開き1ページずつ書かれてるんだ。

まるで図鑑みたいだね!

…あ。

ボクは、一番最初のページを見た。

 

 

 

【超高校級の人狼】(アカツキ)裴駑(ハイド)

 

5年前、八ツ阪小学校の5年1組で起こった『八ツ阪小学校虐殺事件』を引き起こした真犯人。

夜な夜な街を彷徨いては鎌鼬に人を無差別に切り裂く殺人鬼だと言われている。

月夜にしか現れず、人を惨殺して去っていく事からこの通り名が付けられた。

素性がほとんどわかっておらず、暁裴駑についての情報は、高校生である事と今までの被害者の数は約500人という事のみであった。

暁は人を殺した後一切証拠を残さないため捜査が難航したが、ついにその正体を突き止める事に成功した。

暁は、素性を隠して別の名前と才能で希望ヶ峰学園に入学していた事が発覚した。

なお、現在暁は才監学園に収監中である。

 

 

 

なんだ、これ…

【超高校級の人狼】…?

そんな才能を持ったヤツが、ボク達と一緒に入学してきたって事?

しかも、この学園にいるって…

何がどうなってるんだ…?

 

…あ。

 

本から、破れたページが落ちた。

…新しそうな本に見えるけど、ページが破れたりするんだね。

ボクは、破れたページを拾い上げた。

 

 

 

【超高校級の知能犯】

 

世界的な規模の犯罪組織『NOAHS』の頭領にして、裏社会を牛耳る天才詐欺師。

かつての【超高校級の詐欺師】に匹敵する技量を持ち、世界三大凶悪犯の一人に数えられている。

凶悪犯罪者にもかかわらず直接事件を起こした事は一度も無く、実際の事件は【超高校級の知能犯】の息がかかった犯罪者が起こしている。

その仕事ぶりは、非常に残忍かつ狡猾。過去の有名な殺人事件には、【超高校級の知能犯】がきっかけを作った事件が数多く存在する。

全く素性がわかっておらず、NOAHSの構成員ですら、頭領の顔を知らないという。

唯一分かっている情報は、現役の高校生であるという事のみである。

【超高校級の知能犯】として希望ヶ峰学園に入学したが、現在は別の才能で才監学園に収監されている。

 

 

 

超高校級の…知能犯…?

そんなヤツまでこの学園にいるんだ…

そういえば、クマさん達が、才能を二つ持ってる生徒がいるって言ってたけど…

もしかして、【超高校級の人狼】と【超高校級の知能犯】の事?

 

…あ。

 

ボクは、破れたページの裏を見た。

 

【超高校級の絶望】【超高校級の勝者】

 

あれ?

この二つは、才能の説明がない…

どういう事なんだろ?

 

…ボク、この学園のみんなの事は知った気になってたけど、本当は何も知らないんだな…

 

 

 

 

調べ物したらお腹空いちゃったよ。

珍しく頭も使ったしね。

…って、そろそろお昼の時間だね。

今日の昼ご飯は何かな?

楽しみだなぁ…

さーてと、食堂に行きますか!

 

 

 

 

【食堂】

 

「ごめーん!みんな、待ったー?」

「全然?まだ、10分前だよ。」

「……………。」

ボクの視界にゐをりちゃんの姿が入った。

ゐをりちゃん、才能を明かしてないけど…どんな才能なのかな?

…まさか、【超高校級の人狼】か【超高校級の知能犯】だったり…しないよね?

「………何。」

「あ、ううん。なんでもないよ。」

そんなわけないかぁ!

うん、ゐをりちゃんが犯罪者なわけないよ!

ボクってば、友達を疑っちゃって…ホントダメダメだね!

集合時刻に遅れて天理クンが来た。

「ごめーん。寝過ごしたー。」

「天理サン!アナタ、何度目デスカ!!」

「ごめんってばぁ〜。お布団の誘惑に勝てなかったんよ〜。」

「…全く、何度言っても懲りないね君は。じゃあ全員揃ったし、お昼にしよっか。」

「そうですね…」

ボク、もうお腹ペコペコだよぉ〜。

早くお昼ご飯食べたーい!

 

 

 

 

うーん、おいしかった!

やっぱり陽一クンのご飯は最高だね。

つい調子乗ってご飯一斗くらい食べちゃったよ。

さっき図書室に行ったし、今度は彩蝶ちゃんの研究室に行こうっと!

 

 

 

 

【超高校級の生物学者】の研究室

 

ピンポーン

 

「彩蝶ちゃーん!いるぅー?」

ボクは、インターホンを鳴らして彩蝶ちゃんを呼んだ。

「…あ、かなえちゃん!」

彩蝶ちゃんは、研究室の中から顔を出した。

「来てくれたの?ありがとう!遠慮せず中見てって!」

「うん!」

彩蝶ちゃんは、ボクの手を引っ張った。

 

「えへへ、かなえちゃんが来てくれるなんて嬉しいね。あ、そうだ。翠、おいで!」

「ピィ!」

翠ちゃんは、彩蝶ちゃんの声を聞いて小屋から飛び出してきた。

「よしよし、いい子いい子。」

「ピィ!」

「キミ達、本当に仲良しだね。」

「えへへ、でしょ?翠はね、わたしの一番のお友達なんだ。震災の時にね、この子のお母さんと飼い主さんが死んじゃって…それでわたしが引き取ったんだ。最初は全然心を開いてくれなかったんだけど、一緒に過ごしてるうちに仲良くなったんだよね。」

「そうなんだぁ。翠ちゃんは、彩蝶ちゃんの事好き?」

「ピィ!ピィピィ!」

「えへへ、ありがとう翠。」

「そっかぁ、大好きか!一番のお友達だもんね!」

「かなえちゃん、翠の言葉がわかるの?」

「なんとなく!」

「わたし、翠の気持ちがわかるようになるのに半年かかったよ?かなえちゃんはすごいね!」

「んー。ボク、田舎の施設にいたから、動物さん達と触れ合う事が多かったんだよね。だからっていうのもあるのかなー?」

「へぇー。なんていう施設だったの?」

「『あすなろの子』っていう施設だよ。」

「あ、わたしがアライグマさんの研究に行こうと思ってたところだ!夏休みに行こうと思ってたんだー。」

「そうなの?こんな偶然ってあるんだね!」

「ねえ、かなえちゃんは動物さん好き?」

「大好きだよ!」

「何の動物さんが一番好きなの?」

「んー…三毛猫とタヌキかなぁ。よく施設にいた時に見たんだ。」

「そうなんだー!」

「あ、そうそう、彩蝶ちゃんに見せたい物があるんだ。」

「え、なになに?」

 

「はい!彩蝶ちゃん、動物好きでしょ?」

ボクは、彩蝶ちゃんにガチャでゲットした石を渡した。

「えっ!?ちょっと待って!?かなえちゃん、それよく見せて!!」

「え、うん…」

彩蝶ちゃんは、興奮しながらボクの手を掴んできた。

そして、石を虫眼鏡で入念に調べ出した。

「やっぱり…すごい、本物だ!!」

「そんなにすごいの?その石。」

「うん!!これはね、オシリスピスの化石なんだ!」

「おしり…?何それ。」

「オシリスピスはね、カンブリア紀に生息してたと考えられてるお魚さんなんだ!魚類は、4億年くらい前に出現した生物だって考えられてたんだけど、世界的に有名な生物学者『マルコ・ヴィンケル』と研究仲間達が、5億年以上前から生息してた魚類を発見したんだって!最近になってその研究結果の信憑性が高いって事が判明して、世界中の生物学者が化石を探してるところだったんだよね!ふぁあ…!想像図しか見た事ないけど、実物はこんなにきれいなんだね!はぁあ…ずっと見てられるなぁ…」

「え、じゃあ、それは世界最古のお魚さんの化石って事?」

「そうだよ!まさか、かなえちゃんが持ってたなんてね!ありがとうかなえちゃん!」

「ガチャで引いただけだけどね。彩蝶ちゃんは物知りだねぇ。」

「えへへ…生物以外は全然からっきしだけどね。」

 

「ねえ、彩蝶ちゃん。ちょっと質問いいかな?」

「ん?なあに?」

「彩蝶ちゃんはなんで【超高校級の生物学者】になったの?」

「えっとね、わたし、家族がお医者さんなんだぁ。だから、無意識に生物学に興味を持ってたのかも。」

「じゃあお医者さんにはならなかったの?」

「うーん。わたし、どちらかというと人間のお医者さんより、獣医さんになりたかったんだ。ちっちゃい頃から動物さんが大好きだったからね。それで、獣医さんになるために動物さん達のお勉強をしてたら、いつの間にか【超高校級の生物学者】って呼ばれるようになったんだぁ。」

「へえ、すごいね!」

「ううん、わたしなんてまだまだだよ。世界には、もっとすごい研究者さん達がいっぱいいるもん。わたしの夢はね、全部の生物学の教科書に、わたしの名前が載る事なんだぁ。まあ、その前に、世界中の動物さん達を絶滅の危機から救うっていう目標もあるんだけどね。そのためには、もっと勉強しないと!」

彩蝶ちゃんって、ふわっとしたイメージだったけど、ちゃんと将来の目標とかあるんだね。

案外、ボクが思ってるよりしっかりしてる子なのかもね。

「すごい夢だね!ボク、応援してるよ!」

「えへへ、ありがとう。」

 

「ところで…そのワッペンは何?」

「ああ、これ?これはね、去年の誕生日にパパが買ってくれたの。わたしの宝物なんだ!」

「そっかぁ。…あっ。」

「どうしたの?」

「その髪飾り、虹色でかわいいね。それはどうしたの?」

「えーっとね、これは、わたしが10歳くらいの時かなぁ…クラスの女の子にもらったんだ。」

「そうなんだ。なんて子なの?」

「うーん。それが、全然覚えてないんだよね。」

「そうなの?」

「とっても仲良しだったと思うんだけど…顔も名前も思い出せないんだよね。でも、お友達からもらった宝物だから、大事にしてるんだ。」

「ふーん。そうなんだー。ホントにかわいいね。」

「えへへ、ありがとう。」

 

「あ、いけない。忘れるところだった!」

「どうしたの?」

「わたし、お薬飲まなきゃいけなかったんだった。ちょっとごめんね。」

彩蝶ちゃんは、白衣のポケットから錠剤を取り出すと、口に含んでペットボトルの水で流し込んだ。

「…ごっくん。…ごめんね。お話遮っちゃって。わたし、ちょっと忘れっぽいから、思い出したらすぐやらないと忘れちゃうんだ。」

「そうなんだぁ。ねえ、それ、なんの薬なの?」

「んーっとねぇ。なんだったかなぁ…確か、精神安定剤だったかな。」

「え?彩蝶ちゃん、病気なの?」

「わたしは違うと思ってるんだけどねー。ぶっちゃけ、なんでこのお薬飲んでるのか、自分でもわかってないんだ。パパが毎日飲めっていうから飲んでるんだ。わたし、別にどこも病気してないんだけど…でも、パパがいうから飲んだ方がいいんだよね、多分。」

「彩蝶ちゃんはお父さんの事好きなの?」

「大好きだよ。どんな病気でも治しちゃうすごいお医者さんで、とっても優しいんだ。」

「そっかぁ。いいなぁ、いいお父さんがいて。」

「あ、かなえちゃんは、パパが死んじゃってるんだっけ。」

「うん。ボクの自慢のお父さんだったんだけどね。」

 

『かなえちゃん。元気出して。』

「…え?」

今の、彩蝶ちゃんの声じゃないよね?

じゃあ、誰が…

「すごいね、翠がしゃべってくれるのは、とっても大好きな人だけなんだよ。」

「え、って事はもしかして…」

「言ってなかったっけ。翠はね、ちょっとだけだけどおしゃべりできるんだ。でも、本当はすごく大好きな人にしかおしゃべりしないんだけどなぁ…きっと、翠はかなえちゃんの事が大好きなんだね!」

『あげは、私、かなえちゃんの事、大好き。』

「そっかぁ。わたしもかなえちゃんの事大好きだよー。」

「えへへ、ありがとう。翠ちゃんに彩蝶ちゃん。おかげで、ちょっと元気出た!」

「そっかぁ。よかった!」

『かなえちゃん、元気出た。私、嬉しい。』

「翠ちゃんありがと!そうだ、新しい言葉教えてあげる!」

「新しい言葉?」

「うん。翠ちゃん、“アルサジャート・リ”って言ってみて?」

「なにそれ。」

「お父さんが教えてくれたおまじないだよ。挫けそうな時とか、元気が出ない時に何回も心の中で唱えるんだって。お父さんの小説にも出てきたんだ。」

「そうなんだ。翠、よかったね。おまじない教えてもらえて。」

『アルサジャート・リ?』

「早速使ってるね。翠、このおまじない気に入ったみたい。」

「そっかぁ。良かった!あ、じゃあボクそろそろ行くね。お邪魔しましたー。」

「うん。また来てねー。」

 

《日暮彩蝶の好感度が1上がった》

 

《翠の好感度が1上がった》

 

 

 

 

【図書室】

 

やー、彩蝶ちゃんとのお話が楽しくってつい盛り上がっちゃったな。

まだ時間あるし、図書室で本でも読もっかな。

…ん?

あれは、陽一クンと才刃クン?

何やってんだろ。

「おい、見ろよコレ。」

「ひゃー!すごいのだ!!」

陽一クンは、手に水着を着た女の人が表紙の本を持っていた。

あれ、なんの本なんだろ?

ちょっと気になるなー。

「へへへ、やっぱあいにゃんのわがままボディは最高だぜ。」

「同感なのだ。確かに、倉日愛菜の爆乳は、右に出る者がいないのだ。でも僕ちゃんは、江口兎津里の方が好きだぞ。」

「うつりんかぁ。確かに、うつりんもエロいよな。お前、ガキのくせにいい趣味してんじゃねえか。」

「ガキとは失礼な!僕ちゃんは、オマエと同い年だぞ!!」

「はいはい。」

うーん、よくわかんないけど…あの本に載ってる女の人について話してるのかな?

なんか面白そうだから、ちょっと離れた所から見てよっと。

 

あ、剣クンが来た。

「あ、不動院が来たのだ!」

「げっ!おい、隠せ!」

「なんでなのだ?別に男同士だし、いいだろ。なんで困る事があるのだ。」

「いや、アイツは…」

「む。」

剣クンは、二人が読んでいる本を見た。

「お、遅かった…」

「…貴方方、そんな如何わしい物を読んでいて、恥ずかしくないのですか?」

剣クンは、腐ったミカンを見るような目で陽一クンと才刃クンを見ると、一言だけ言って図書室の奥の方に行った。

「なんなのだ?アイツ。男のくせに、エロ本に興味が無いなんてどうかしてるのだ。」

「多分女嫌いなんだろ。だから隠せっつったんだよ。」

「この世にそんな男がいたとはな。僕ちゃん的にはありえないのだ。」

「だよな。不動院といい穴雲といい…女の子に興味無いなんて、人生の9割損してんだろ。」

「同感なのだ。」

え、剣クンが女嫌い?

そんなイメージ無かったけどなぁ…

ゐをりちゃんとも仲良くしてたし。

でも、確かに剣クンはちょっと気になるよねー。

ボク、もっとあの子の事知りたいなぁ。

 

 

 

 

【食堂】

 

「やっほー。お待たせー。」

ボクは、みんなに声をかけて席についた。

ボクの後に、成威斗クン、踊子ちゃん、才刃クン、ゐをりちゃん、彩蝶ちゃん、天理クンが来た。

「またビリッケツはオマエか!!財原!!」

「ごめんなちゃーい。以後気をつけまーちゅ。」

「君ねぇ…それで気をつけた事が今までに一度でもあったかい?」

「わー。反論できねーわー刺さるー」

「…うん、これで全員揃ったね。じゃあ、席についてご飯にしよっか。」

「俺もう腹減って死にそうだよぉー。」

「一番遅れてきたアンタが言うんじゃないよ。」

「しぃましぇーん。」

 

 

 

 

うーん、夜ご飯も美味しかった!

あ、そうだ!

いい事思いついた!

「ねえ、みんな。今晩さぁ、みんなでお風呂入りに行こうよ!」

「お風呂‥?」

「いいですネ!最近、別々に入ってマシタからネ!」

「わたしも賛成ー。またみんなで一緒にお風呂入りに行きたいなー。」

「アタシも行くよー。」

「皆さんが行かれるのなら私も…」

「ゐをりちゃんは?」

「…いい。」

やっぱダメかー。

たまには混ざればいいのに!

「神座殿。では、私と一緒に遊びましょう。」

「………。」

あの二人、ホント仲良くて羨ましいなぁ。

ボクもゐをりちゃんとお話してみたいんだけど…

「じゃあ、行くのはこの5人でいいのね?」

「そうだねー。」

 

 

 

 

【大浴場】

 

うーん、やっぱり大浴場の温泉は広くて気持ちいいー!

種類がいっぱいありすぎてコンプリートできないや。

「ひゃっほーう!!」

「ちょっと、カナエ!先に体洗いなさいよ!!」

「いや、つっこむ所そこですか?お風呂場で走ったら危ないという事ではなく…」

「…そ、それもそうね。走ると危ないわよ!!」

「皆サン!安心してクダサイ!!またヘンタイが覗いてきたら、ワタシが退治シマス!!」

「あ、うん。ありがとシュエメイ。」

「あーあ、みんなおっきくていいなぁ。ちっちゃいの、わたしだけだよぉ…」

「アンタはまず背を伸ばしたほうがいいと思うよ。その身長で巨乳だったら、重くて肩が疲れるだけだよ。」

「あぅうー…みんな、おおきいからってそうやってすぐに肩凝りアピールして…ずるいよぉ。」

「いや、アピールっていうかただの事実なのよ?アタシも、もっと身軽な方が踊りやすくて良かったよ。」

「そうなの?」

「そうなの。アタシは、アンタが羨ましいわ。ほら、えっと…隣のなんとかってヤツよ。」

「隣の芝生は青い、ですか?」

「そう、それ。とにかく、今の自分に自信を持ちな。」

「自信かぁあー…」

「さ、落ち込んでないで、一緒に風呂入ろ。」

 

バシャッ

 

「ぎゃっ!え、ちょっと、今お湯ぶっかけたの誰よ!!」

「へへへ、ボクだよー!」

「カナエ!!アンタ、よくもやったね!?このっ…!」

「わーっ!踊子ちゃんが怒ったー!!逃げろー!」

「楽しそー!わたしもやるー!」

「アゲハ、一緒にカナエにお湯かけてやろ!!」

「うんっ!」

「あの、皆さん…はしたないですよ。少しは静かにしてください。…ほら、朱さんからも何か言ってあげてください。」

「2対1ですカ!ダッタら参加しますヨ!叶サン!」

「わーい!雪梅ちゃんが仲間になったよー!」

「…はぁ。」

 

「えいっ!」

バシャッ

「わー、やられたー。」

「このっ!」

バシャバシャッ

「わっ!」

「任せてクダサイ!」

バシャッ

「ちょっと、待ちなさいよ!それはナシでしょ!?」

「そんなルール無いもんねー。」

「ワタシ達に敵なしでス!…むっ!?」

雪梅ちゃんが、仕切りの方を振り向いた。

「ん?どうかした!?」

「不届き者がイルみたいデス!!アチョーーーーーー!!!」

雪梅ちゃんは、仕切りにお湯をぶっかけた。

 

「ぎゃあぁああぁあああああ!!?カ、カメラが壊れた!!クッソー!!」

「もー。だから防水加工のやつにしとけって言ったじゃーん。栄クンのバカァ!」

「ふんっ!全く、オマエは使えないのだ!!」

「う、うるせェなぁ!!大体よぉ…ん?ゲッ!朱ちゃん!?に、逃げろ!!」

「待ちなよ。逃がさないよ、みんな。」

「ゲッ…穴雲まで!!な、なんでバレた!?」

「君達のやろうとしてる事なんてお見通しだよ。…みんな、覚悟は出来てるよね?」

 

「ぎゃあぁあああぁああああああああぁああああああああああああああ!!!」

 

「フン、いい気味デス!」

「ったく、アイツら何やってんだか。ホント懲りないよね。」

「ギィ!ギィギィ!!」

「だよね。みんな、ひどいよね翠。」

「なんかデジャヴですね…」

「え、なに?みんな、何があったの?」

「…カナエ、アンタは呑気でいいわね。」

「え?どゆこと?」

ちょっと待って。

状況が全然飲み込めてないんだけど。

 

 

 

 

【食堂】

 

お風呂の後は、みんなで食堂に行った。

食堂では、天理クン、陽一クン、才刃クンが星也クンに土下座させられていた。

「君達、これで2回目だよ?そろそろ懲りようね。」

「…はい。すいませんでした。」

「ぐ…穴雲に睨まれると何も言えないのだ。」

「あーあ。まーた失敗しちゃったね。」

「財原君。反省して。」

「ごめんなちゃーい。」

「え、何?みんなどしたの?」

「フン。このバカ共が、また覗きをやらかしたらしい。」

「え、そうなの?」

なんか、前にもこんな事あったよね。

「呆れて物も言えませんね。貴方方には殆愛想が尽きました。」

「ぐっ…」

陽一クンと才刃クンは、星也クンと剣クンに睨まれて何も言えなくなっていた。

「あーあ。嫌われちゃったよぉ〜。ねえねえ、ご機嫌直してよ、つ、る、ぎ、クーン。」

ベシッ

「ぶぎゃっ」

「財原ー!!」

「馴れ馴れしく触らないでください。不愉快です。」

あはは、相変わらず剣クンは容赦ないなぁ。

でも、なんで剣クンが怒ってるんだろ。

剣クンが覗かれたわけじゃないのに。

 

 

 

 

【独房】

 

あー。

今日も楽しかったなぁ。

こんな時間がずっと続けばいいのに…

…なーんて、甘えてられないかぁ。

ボク達は、絶対にここから出なきゃいけないんだもんね。

そのためには、明日も元気出さなきゃ!




日暮ちゃんが調べたうちの子達の好きな動物は、こんな感じです。

景見…黒猫
狛研…三毛猫、タヌキ
ラッセ…ハクチョウ
白鳥…ペルシャ猫、ポメラニアン
日暮…動物全て(特に鳥類)
不動院…鶴
舞田…牛
羽澄…イルカ
穴雲…犬
栄…オオカミ
朱…パンダ
財原…ネズミ、カラス
入田…ライオン、チーター
癒川…小鳥全般、ウサギ
詩名…カナリア
神座…文鳥

ちなみに、作中に出てきたおまじないは作者のオリジナルで、アラビア語で『勇気を私に』という意味です。


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第2章(非)日常編⑤

平和な時間もそろそろおあずけでい!





「んあっ…」

独房で目が覚めた。

収監生活も、今日で1週間かぁ…

さぁてと、ちょっと着替えておこうっと。

 

『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』

 

あーあ、せっかく気持ちのいい朝だったのに。

台無しにすんのやめてよクマさん!

…いけないいけない。

朝から機嫌悪くなっちゃったよ。

さてと、ご飯の時間まで適当に時間潰そっと。

 

 

 

 

【食堂】

 

食堂に行くと、いつもの5人がいた。

「おはよう、狛研さん。」

「おはようございます。」

「おはようございます、狛研殿。」

「おはよ〜♪」

「オハヨーございます!!」

「おはよ…あれっ?」

「んおっ、おはよう狛研ちゃん。」

陽一クンが、食堂で座っていた。

「陽一クン、今日は朝ご飯作らないの?」

「あー、それなんだけど…」

「?」

陽一クンは、厨房を指差した。

ボクは、厨房に行ってみた。

 

 

 

 

【厨房】

 

うん?

なんか、厨房から甘い香りがするなぁ…

「あ、狛研サンおはよぉ。」

「え!?あ、おはよ…」

ボクは、思わず声を大にして驚いた。

厨房では、天理クンがでっかいフライパンで黄色い何かを作っていた。

「天理クン、珍しく早起きだね。」

「えへへ、俺はやるときはやる男なのさぁ〜。」

「ねえ、何作ってんの?」

「ああ、これね。ジャーン!」

天理クンは、フライパンを指差してボクに見せびらかした。

「ビッグカステラです!」

あ、これ…もしかして。

「あの、絵本の?」

「ご名答!いやぁ、一回やってみたかったんだよね。」

「えへへ、おいしそうだなぁ…」

「そろそろ8時半でしょ?これ切り分けて、持ってくの手伝ってよ。」

「はーい!」

ボクは、天理クンと一緒にカステラを切り分けた。

…一人分じゃ足りないから、ボクの分はちょっと多めに切り分けちゃおっと。

 

 

 

 

「みんなー!ご飯できたよー!!」

ボクは、カステラを食堂に持っていった。

残りの6人も、食堂に来ていた。

「わっ…何それ!」

「うんうん、なんか甘い香りがするねぇ。今日の朝ご飯はお菓子かい?」

「…なんだその変な黄色い食い物は。パンケーキの親分か?」

「これ、カステラなんだって!」

「え!?カステラ!?」

「……………………私、卵糖………好き………」

「おいしそうでしょ?天理クンが作ってくれたんだよー。」

「カステラ?ふーん。テンリって、飯作れたんだ。」

「えへへ、まぁねー。」

「…これ、見た目美味そうなのに味は最悪っていう罠じゃねえよな?」

「失礼なー。味もちゃんと美味しいはずだぜー。…多分。」

「多分!?」

「卵糖、ですか…でも、私が知っている卵糖とは違う気が…」

「ねえ、てんりくん。これ、もしかして絵本の…」

「そ!ぐ●とぐらの特大カステラだよー。」

「…まさか、アレを実際に作る人がいるとはね。」

「えへへ、驚いた?いやあ、俺案外Y●uTuberの才能あるかもねー。」

「オマエはすぐ居眠りするから無理なのだ!そんな事より早くカステラよこせ!」

「はいはい。」

「わーい!おいしそー!」

「いただきまーす!」

うーん!おいしいー!

「なんだコレ、普通に美味いじゃねえか。おい、財原。お前が料理できるなんて意外だったぞ。」

「意外とは失礼なー。俺だって、生活力0じゃねーっつーの。あ、そうそう。みんな知ってる?カステラって、ポルトガルの菓子じゃなくて長崎発祥の和菓子らしいよー。」

「へぇ〜、そうなんだぁ。てんりくん物知りだね。」

「えへへ。」

「ウンチクを披露するのはいいけど、口に食べ物が入ったまま喋るのはやめようね。」

「ごめんなちゃーい。」

「あれ?彩蝶ちゃん、今日はひよこ柄の白衣?どうしたのそれ。」

「ああ、これ?実はね、この白衣リバーシブルなんだぁ。今日は、こっちの面の気分なの。」

「へー。」

それは意外だったな…

「えへへ、誕生日にママが作ってくれた、世界にひとつしかない宝物なんだよ〜。」

「そうなんだ。」

 

 

 

 

うーん、おいしかったぁ!

天理クンって、料理上手なんだね。

まあ、陽一クンや雪梅ちゃんほどじゃないけどね。

「ちょっと、カナエ!」

「ん?」

「アンタ、いくらなんでも食べ過ぎよ。フライパン半分ぐらい食べたでしょ?」

「だってお腹空いてたんだもーん。」

「…ホント、アンタの大食らいには呆れるわ。」

「えへへ。」

「褒めてないから。」

踊子ちゃんて、お姉ちゃんみたいで憧れちゃうよね!

 

さーてと、朝ご飯は食べた事だし、何して遊ぼっかなぁ?

映画は今見る気分じゃないし…

そうだ!また娯楽室行こうっと。

 

 

 

 

【娯楽室】

 

うーん。

今日はギャンブルの気分じゃないし…

あれ?あそこにいるのは…才刃クンと陽一クンと成威斗クンと天理クン?

何やってんのかな?

「っし、どうよ!」

「陽一!すげェなお前!ストライクじゃねえか!!」

「キャー栄クンすごーいかっこいー抱いてー」

「棒読みじゃねえか!!」

「ふんっ、ストライクなんて、球の軌道さえ計算できれば、誰でもできるのだ。」

「なっ…!お前なぁ!偉そうな事言うなら、お前がやってみろよ。」

「ふんっ!いいだろう!僕ちゃんの勇姿をその目に刻み込んでおけ!」

「いいから早くやれよ。」

「やれやれー。入田クンのハイパーファイアーボール見せてやれー!」

「なんだよそのダセェ名前。」

「ふふん、僕ちゃんの計算によると、この位置から時速25kmで投げればストライクになるはずだ。いざ!」

才刃クンは、ボールを思いっきり振りかぶった。

「…ぐっ!」

才刃クンは、肩を押さえながらボールを前に投げた。

ボールは才刃クンの足元に落ち、そのままガターに落ちた。

「プッ、ダッセェwそんなモンかよ、クソガキ!」

「m9(^Д^)プギャーwww」

「お前、さっきの威勢はどうした?」

「う、うるさいのだ!!今のはちょっとした手違いで…くっ、天才な僕ちゃんの計算が狂うはずがないのに…!」

「うんうん、計算は間違ってなかったと思うよ?ただ、それを実行できるだけの筋力が無かっただけだよねwww」

「コラァ!!笑うな財原!!」

 

「ねえ、みんな何やってんの?」

「お、叶!今な、みんなでボウリングやってたんだよ!お前もやるか!?」

「へー!楽しそう!やるやるー!ボクも混ぜてー!!」

「おい狛研!!男同士の勝負に何割り込んでるのだ!!女は引っ込んでろ!!」

「別にいんじゃね?俺は狛研サンのかっこいいところ見たいなー。」

「あ、おいコラ抜け駆けすんな財原!狛研ちゃん!良かったら俺がコツ教えてあげるよ!」

「ねえ、よくわかんないけど、重い方がいいんでしょ?一番重いのコレ?」

「そうだけど…あんまり自分の筋力に合わないボールにしないほうがいいぞ?かえって投げにくいだけだから。」

「うん、ちょうどいいや。コレにする!」

「マジかよ…それ、一番重いヤツ…」

さーてと、投げるぞー!!

そぉーれっ!!

ボクは、球を投げた。

球は、ピンを全部なぎ倒して後ろに落ちた。

「やったー!!ストライクだー!!」

「んなっ…マジかよ…!狛研ちゃん、天才かよ…」

「叶、お前すげェな…!」

「ぐわー。女子に負けるとか屈辱だわー。ホント、生きてて惨めなだけだわー。」

「僕ちゃんを見ながら言うな!!なぜだ…!僕ちゃんは、ちゃんと全部計算し尽くして投げたのに…なんで何も考えずに投げた狛研がストライクなのだ…!納得いかないのだ!!」

「だから、自分の筋力の無さを計算に入れてなかったからだろー?ちったぁ鍛えろよおチビちゃん!」

「う、うるさいのだ!!僕ちゃんには、機械工学があるから別にいいのだ!!」

「わー言い訳したー。プークスクスwww」

「っと、悪い。オレ、そろそろ飯の支度しねェと。」

「お、そうなのか!?また美味い昼飯を作ってくれよ、陽一!」

「おう!楽しみにしとけ!」

そういえば、あと1時間半でご飯だね。

楽しみだなぁ…

今度は何が出てくるんだろ?

 

 

 

 

【食堂】

 

うーん、もうお腹ペコペコだよぉー。

早く何か食べたーい!!

「待たせたな、お前ら!」

わーい!!

陽一クンのご飯だー!!

「へぇ、今度はヨウイチのご飯なのね。」

「ちょっとー。俺のカステラはイマイチだったって言いたいわけー?」

「そういうわけじゃないけど、やっぱりプロは違うよねぇ。」

「おいしそー!!いっただきまーす!!」

 

 

 

 

 

【超高校級のダンサー】の研究室

 

ピンポーン

 

「もしもーし。踊子ちゃんいるぅー?」

ボクは、インターホンを鳴らして踊子ちゃんを呼んだ。

「あ、カナエ。来てたのね。」

踊子ちゃんが、ドアの隙間から顔を出した。

「ねえねえ、踊子ちゃんの研究室見たいんだけど!」

「え、アタシの?いいけど…でも、特に面白い物とかないよ?」

「ボクは、踊子ちゃんとおしゃべりがしたーいの!」

「へえ、アンタ、変わってるね。アタシとおしゃべりがしたくて来るなんて。とりあえず、中入んな。」

「やった!」

踊子ちゃんは、ボクを研究室の中に入れてくれた。

「ま、気にいるかどうかはわかんねーけど、ゆっくりしてってよ。」

「わーい、ありがとう踊子ちゃん!あ、そうだ!」

「ん?何?」

 

「あのさ、踊子ちゃん!これ、いる?」

ボクは、踊子ちゃんにキャップを渡した。

「え、ちょっと待って!!カナエ、それよく見せて!!」

「え、あ、うん…」

「すごい、ホンモノだわ…アンタ、なんでこれ持ってんの?」

「んーっとね、ガチャ引いたら出てきたんだよ。それ、そんなにすごいものなの?」

「すごいも何も、伝説のヒップホップダンサー『アントニー・ケリーズ』が使ってたキャップじゃん!ほら!ここに本人のサインがあんじゃん!アタシ、アントニーの大ファンなんだよ!!カナエ、ありがとー!!」

踊子ちゃんは、ボクに抱きついてきた。

「えへへ…」

踊子ちゃんの憧れの人かぁ。

ボクの憧れの人は、やっぱお父さんかな?

「ねえ、カナエ。何か欲しい物ある!?アタシ、奢ったげる!」

「え、いいよ…」

「遠慮すんなって!」

「でも、今特に欲しい物とか無いんだよなぁ。あ、そうだ。じゃあさ、代わりに踊子ちゃんの事を教えてよ!」

「え、そんなんでいいの?」

「いいよいいよー。ボクは、踊子ちゃんと仲良くなりたいんだ!」

「そ、そう…そういう事なら、あ、アンタにアタシの事…教えてあげるよ。」

踊子ちゃんは、人差し指をチョンチョンしながらわかりやすく照れた。

踊子ちゃん、かわいい…

 

「ねえ、踊子ちゃん。早速聞きたいんだけどね、踊子ちゃんは、なんで【超高校級のダンサー】になったの?」

「んーっと、まあ、強いて言うならダンスが大好きだからかな?小さい頃からダンサーになるのが夢だったんだ。」

「そうなんだぁ。」

「アタシ、バカだからあんまし将来の事とかちゃんと考えた事無いんだよね。ほら、アタシって、考えるより先に体が動いちゃうタイプじゃん?ダンサーになったのも、やりたい事ずっとやってたら自然と結果がついてきたってだけだし。」

「へぇー。」

 

「…でも、アタシが【超高校級】になれたのは、ある医者のおかげなんだ。」

「え?」

「アタシ、小さい頃は病気がちでね。医者には、10歳までしか生きられないって言われてたんだ。アタシは泣く泣く夢を諦めたよ。でも、ある医者が、アタシの病気を完治させてくれたんだ。アタシは、今までの病気が嘘みたいに元気になって、アタシは夢を叶える事ができたんだ。あの人がいなかったら、アタシは夢を叶えるどころか、この世にいなかった。あの人には、感謝してもしきれないよ。」

「…そっかぁ。」

踊子ちゃんにそんな過去があったんだね。

「アタシは、絶対にここから出てやるんだ。そしたら、メッチャすげェダンサーになって、あの人にアタシのダンスを見せてあげるんだ!それまでは、絶対死ねないよ。」

「踊子ちゃん、ボクもその夢、応援するよ。お医者さんにまた会えるといいね。」

「…ありがと。アタシは、あの人に貰った命を無駄にしたくないから。なんとしてでも生き残って、恩返ししないと!」

「踊子ちゃん、カッコいい〜!」

「そ、そんな事ないってば…」

またまたー、謙遜しちゃって!

 

「ねえねえ、そういえばさぁ。」

「ん?」

「話変わるけど…踊子ちゃんって、お兄ちゃんいるんでしょ?」

「…チッ、写真あるけど見る?」

「え、見たい見たい!」

踊子ちゃんは、クローゼットの中を漁った。

「…ったく、なんでここにゴミクソなんかの写真が置いてあるんだっつーの。気分悪くなるから置くのやめろよモノクマの奴…」

なんかぶつくさ言ってるな…

「ほらよ。」

わぁ…

やっぱり、踊子ちゃんのお兄ちゃんだね。

踊子ちゃんに似ててイケメンだなぁ。

「この人が踊子ちゃんのお兄ちゃん?どんな人なの?」

「ああ、とにかくクソ兄貴だよ!アタシに嫌がらせしてくるし、音楽の趣味も合わないし…すぐにアタシのダンスをバカにしてくるんだ!」

「…そうなんだ。」

「そうだよ!アタシがダンサーになりたいって言った時も、やめとけって言ってきたし、どっか行った時はしつこくどこ行ったのか聞いてくるし…ホント、なんなのアイツ!!?」

「へー。いいなぁ。」

「は!?どこが!?」

「今の話聞いてた限りだと…お兄ちゃんが踊子ちゃんの事を心配してるように聞こえたけど?ダンスをやめろって言ったのも、行き先を聞いてくるのも、全部踊子ちゃんのためを思って言ってるんじゃないの?まあ、人の夢にまで首を突っ込むのはちょっと嫌だけど…」

「アイツがアタシの心配!?無い無い無い無い!!マジであり得ないんだけど!!?は!?キモ!!」

「そう?ボクは、本気で心配してくれる人がいる踊子ちゃんが羨ましいけどなぁ。」

「アンタは、兄弟がいないからそんな事言って…ホントに、兄弟とか邪魔なだけだよ?」

「えー。そんな事無いよー。」

踊子ちゃんのお兄ちゃんかぁ。ちょっと会ってみたいかも。

 

「あっ。」

「何?どしたの?」

「そのヘアピンかわいいね!どうしたの?」

「あ、これ?小学生の頃に、同級生に貰ったんだよ。」

「そうなの?」

「うん。その子が大切にしてたピンでね。友達になった印に貰ったのさ。せっかく貰ったから、今でも大切にしてるんだよ。」

「そうなんだ…」

あれ?

なんかこの話、デジャヴだな…どっかで聞いた気が…

ま、気のせいかぁ!

「ねえ、踊子ちゃん!」

「何?」

「またダンス見せてよ!ボク、踊子ちゃんのダンス好きなんだぁ!」

「そ、そう…?じゃあ、もしここから出られたら、アンタにも見せてあげるよ。超一流のダンサーになったアタシのダンスをね。」

「わぁい、楽しみー!!」

はははっ、なんか、踊子ちゃんと話してたら盛り上がっちゃったなぁ。

「えへへ、話してくれてありがとう踊子ちゃん。じゃあ、ボクそろそろ行くね。」

「うん、また来いよ!」

「うん!」

 

《羽澄踊子の好感度が1上がった》

 

 

 

 

踊子ちゃんとお話してたら、夕ご飯の時間になっちゃったよ。

今晩のご飯は何かなー?

メッチャ楽しみ!

 

 

 

 

【食堂】

 

「みんなお待たせー!!」

食堂には、星也クンと治奈ちゃんがいた。

「全然待ってないよ。」

「ねえ、なんか手伝う事ある?」

「そうだな…じゃあ、お皿並べるの手伝ってくれる?」

「アイアイサー!」

ボク達がお皿を並べてる間に、みんなが集まってきた。

やっぱり、彩蝶ちゃんと天理クンは遅刻してきた。

「おせぇぞ遅刻組!!」

「ごめんねー?以後気をつけまーす。」

「フン、今朝は珍しく早起きしたと思ったらいつも通り遅刻か。懲りないな貴様も。」

「てへっ☆」

「じゃあ、全員揃ったしご飯食べよっか。」

「賛成ー!いっただっきまーす!!」

 

 

 

 

治奈ちゃんが、食後のお茶を淹れてくれた。

あー、今日もおいしかった!

やっぱり陽一クンのご飯はおいしいね!

つい調子乗っていっぱい食べちゃったよ。

でも、これくらいは食べないと後で動けなくなっちゃうよね。

 

『うっぷぷ、狛研サン!育ち盛りなのはいいけど、ちょっとは我慢しないと太るよ?』

『フッフッフ。全く、行儀が悪いですね!』

 

「なっ…!テメェらは…!」

『やっほー!みんな、ご飯はおいしかった?』

『皆様、お変わりは無いご様子ですねぇ。』

クマさんとベルさんは、いきなり食堂に現れた。

「このクサレ畜生共が!!何しに来やがった!!」

『うっわ!栄クン口わっる!ボク、言葉の暴力で死んじゃうよー!』

『全くです。逆パワハラで訴えますよ!?』

「うるせェ!!黙ってろ!!」

「栄君。気持ちはすごくわかるけど落ち着いて。…君達がここに来たって事は、僕らに何かをさせたいんだよね?今度は何がしたいんだい?」

『フッフッフ。流石穴雲様。勘がよろしいですね。…いや、実はですね。ワタクシ共は今非常に機嫌が悪いのです。』

「貴方方の機嫌など、知った事ではありませんが。」

『うわっ!不動院クンこっわ!そんなんじゃ、女の子に嫌われるよー?』

「…チッ、余計なお世話です。」

剣クンは、珍しく舌打ちをした。

『おっと、いけないいけない!脱線しちゃった。では、問題です!なんで今ボク達は機嫌が悪いのでしょうか!?』

「何それ。どうでもいいわよ。」

「…コロシアイが起きてないからぁ〜?」

 

『ピンポンピンポーン!!財原クン大正解ー!!キミには特別に花丸をあげましょう!』

「やったー。」

『そうです!オマエラがお変わり無さすぎて、こちとらストレス溜まりまくりなんだよ!そろそろ誰か死ねよっていう天からの声のせいで、胃がキリキリ痛んでんの!』

「いや、どうでもいいし。」

「きみ達にも胃があるんだねー。」

「いや、アゲハ。ツッコむとこ、そこじゃないから。」

「てかさ、天からの声って何?」

「狛研さん、それ以上ツッコむのは、色々とマズいからやめようか。うん。」

『というわけで、皆様にはそろそろコロシアイをしていただきたく、第二の動機を持って参りました。』

「…第二の、動機…?」

『そっ!今から送るねー!』

クマさんが指を鳴らすと、ムービー機能に新しい映像が入れられていた。

『それは、動機ビデオです!映像は映画館で観れるから、今すぐ観てくるといいよ!それじゃ、まったねー!』

『フッフッフ。ご機嫌よう皆様!!』

二匹は、高らかに笑いながら去っていった。

「なんだったんだ、今の…」

「ねえ、この動機ビデオとやら、見なきゃダメなのかな…?」

「何を言っているんだい?羽澄君。」

「だって、ここに人を殺したくなるような内容が映ってるんでしょ!?だったら、そんなの見たくないんだけど!」

「確かに…罠かもしれませんし、見ない方がいいかもしれませんね…」

 

「ボク、見てくるよ。」

「…え?」

「だって、この映像がなんなのかわからないままじゃ気持ち悪いでしょ?安心してよ。ボクは、何があってもみんなを殺したりしないから!」

「でも、貴女にそんな事をさせる訳には…」

「止めるな侍。コイツが、自分で見たいと言っているのだ。別に好きにさせてやれば良かろう。ただ、万が一それで変な気を起こそうものなら、俺は黙っちゃいないがな。」

「ありがとうラッセクン。じゃあ、行ってくる。」

ボクは、映画館に行って映像を流した。

 

 

 

 

【映画館】

 

椅子に座った途端、映画館の照明が全て消え、音が鳴った。

 

ブーーーーーーーーーーッ

 

…映像が始まる合図かな。

ボクは、覚悟を決めてスクリーンを見た。

スクリーンに映像が映し出される。

 

 

 

 

 


 

 

 

スクリーンには、森の風景が映った。

その中に見える家…

…見覚えがある。

そこは、ボクが引き取られた施設だった。

 

場面が、施設の中に切り替わる。

映像には、園長先生が映っていた。

 

『叶ちゃん、希望ヶ峰の進学おめでとう。ここに希望ヶ峰からの入学通知が届いた時、私、何度も何度も入学通知を見て、大喜びしちゃったわ。ここに引き取られた時は暗かったあなたが、こんなに立派に成長して…私、嬉しくて嬉しくて…』

『おいおい、泣くなよエンチョー先生!叶ねーちゃん!希望ヶ峰の進学おめでとう!しばらくの間会えないけど、向こうでも頑張れよ!あと、たまにはここに顔見せに来いよな!』

『叶ちゃん、希望ヶ峰に行ったら、新しい友達をたくさん作って、勉強も頑張るのよ。』

ザッ…ザザッ…

『あなたなら、きtttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttt

…あっ、あなっあnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnn…』

「!?」

映像が急に乱れ、画面が砂嵐になった。

 

ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ

 

 

 

プツン

 

砂嵐が止んで、映像が元に戻った。

でも、そこにはさっきまでの施設はなかった。

森は焼き払われ、施設の窓ガラスや家具は壊され、所々に赤い何かが飛び散っていた。

…あれ、まさか…血、じゃないよね…?

 

次の瞬間、目を疑うものが目に飛び込んできた。

 

 

 

園長先生が、みんなが、血塗れになって床に倒れていた。

 

「…嘘でしょ…」

 

そこで映像は終わっていた。

映像は切り替わり、劇場のような場所が映し出された。

劇場の幕の前には、クマさんが立っていた。

 

『両親が亡くなり、里親の元で虐待を受け、施設に引き取られた狛研叶サン!いやぁ、実に微笑ましい光景でしたね!しかし、施設で共に過ごした彼らに何かあったようですね。では、ここで問題です!!施設の皆さんに、一体何があったのでしょうかっ!!正解は、自分の目で確かめてみてねー!!』

 

 

 


 

 

 

 

 

映像はそこで終わっていた。

そんな…なんでみんながあんな事に…

なんで…なんでなんだよ…!

ボクは、地団駄を踏んでやり場のない感情をぶつけた。

そして、映画館を出た。

すると、映画館の前で待っていたみんながボクに詰め寄ってきた。

「おい!!狛研!!動機ビデオとやらは、一体何が映っていたのだ!?教えろ!!」

「…ボクの大切な人達が、血塗れで倒れてた。」

「!!?」

それを聞いたみんなは、一斉に映画館に入っていった。

 

 

 

 

映像を見終わったみんなは、虚ろな顔をしていた。

「…嘘だろ。あんなの…」

「なんでだよ…なんでオレ達がこんな目に遭わなきゃなんねェんだよ!!オレ達が一体何したってんだよ!!」

「ひどいよ…あんなの、あんまりだよぉ…」

絶望する者、怒り狂う者、泣き叫ぶ者…反応は様々だった。

…みんな、よっぽどひどい映像を見せられたんだろうな。

「みんな…」

 

「ねえ、みんな。…こんな時にこんな事言うのは違うかもしれないけど…とりあえず落ち着こうよ。」

「星也…お前は、なんでそんな余裕なんだよ!!?テメェは、自分の映像を見て何も思わなかったのか!?」

「ちょっと、ナイト!?やめなって…!」

成威斗クンは、星也クンの胸ぐらを掴んだ。

「…何も思わなかった?そんなわけ無いだろ。僕も、大切な人が理不尽にあんな目に遭って、悔しいよ。だけど、だからって冷静さを失って暴れ回るようじゃ、全員でここから出るなんて無理だ。生き延びたいなら、こういう時こそ冷静になれ。」

「ッ…!」

成威斗クンは、星也クンの胸ぐらを掴んでいた手を離した。

「…。」

 

「そうだ、ワタシいい事思いつきマシタ!」

「…え?」

「ワタシと踊子サンで、ダンスします!そしたら皆サン元気出ますデショ!?」

「な…何言ってんだよ朱ちゃん!この状況、わかってんのか!?」

「わかってマスヨ!ワタシ、星也サンと同じ意見デス!暗いの、ダメ!」

「雪梅ちゃん…」

「実はワタシ、踊子サンとダンスの練習、してマシタ!踊子サン、皆サン、元気づけマショウ!」

「シュエメイ…わかった。じゃあ、明日の朝、シュエメイと二人でダンス披露してあげる!」

「集合場所、生物室にしまショウ!ワタシ、水槽、パフォーマンス、やりたいデス!」

「いいねそれ!よし、じゃあ、明日の7時半、生物室に集合ね!みんな、遅れるんじゃないよ!特にテンリ!」

「へいへい。」

「うんうん、二人のダンスかぁ。このジメジメした空気を吹き飛ばすにはいいかもね。」

「ああ、さっきまでくよくよしてたオレがバカみてえだぜ!」

「楽しみにしてるぜ、二人とも!」

「…フン。勝手にしろ。」

…良かった。

二人のおかげで、みんな元気を取り戻してくれた。

二人のパフォーマンスかぁ…楽しみだな!

「うん、みんな冷静さを取り戻してくれたみたいで良かったよ。じゃあもう遅い時間だし、練習がある二人は仕方ないとして、それ以外のみんなは部屋に戻ろうか。」

「はーい!」

ボク達は、二人を残して独房に戻った。

 

 

 

 

【独房】

 

…みんな、なんであんな事になっちゃったんだろう。

死んじゃってたり…しないよね。

うん、絶対生きてるはず!

とにかく今は、ここからみんなで出る方法を考えないと!

とりあえず、今日はもう遅い時間だから寝よっかなぁ。

おやすみなさーい。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

収監生活8日目。

今日は、7時半から二人のダンスが見られるんだよね。

楽しみだなぁ。

 

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

 

あーあ、毎朝毎朝うるさいね全く!

朝から気分悪い放送かけないでよ!

っと、支度して生物室行かないとね。

 

 

 

 

…7時15分か。

早めに行こうっと。

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『オマエラ、死体が発見されました!!3階の生物室にお集まりください!!』

 

 

 

…え。

嘘でしょ…

ちょっと待って、死体…?

どういう事…!?

 

ボクは、生物室に向かって走った。

 

 

 

 

【生物室】

 

「みんな、何があったの!!?」

生物室には、星也クン、雪梅ちゃん、治奈ちゃんがいた。

「あ…あああああ…」

「…。」

「っ、ううっ…」

治奈ちゃんは、泣きながら指を差した。

「?」

ボクは、治奈ちゃんが指を差した方を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ」

 

 

ボクは、目を疑った。

ボクが見たのは、巨大な水槽だった。

そこには、あるはずのないものがあった。

()()は、あまりにも無慈悲に、ボク達に残酷な現実を突きつけてきた。

…どうしてキミが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全身をバラバラにされた【超高校級のダンサー】羽澄踊子ちゃんが、水槽の中で漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上13名+1匹ー

 

 

【挿絵表示】

 



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第2章 非日常編①(捜査編)

『もしここから出られたら、アンタにも見せてあげるよ。超一流のダンサーになったアタシのダンスをね。』

 

 

 

嘘だ。

なんで踊子ちゃんが…

なんで…

 

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…

 

昨日まで、一緒におしゃべりしたりしてたのに…

 

外に出たらダンスを見せてくれるって言ってたのに…

なんで…

なんでこんな事に…

 

「うおぁあああああああぁあああああああああああああああああああああああああああ!!?」

「あ…あああああああああ…そんな…羽澄殿が…!」

「…今度は羽澄君かい。…全く、悪趣味な事をする奴がいたもんだ。」

「おい!!嘘だろ…そんな…踊子!!踊子ぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「…フン、今度はミカン頭か。」

「そ、そんな…羽澄が…うぷっ…」

「……………………舞踊家…。」

「嘘…!そんな、ようこちゃんが…なんでぇっ…!!」

「あーあ。こうなると思ったよ。羽澄サン死亡フラグ立ちまくりだったからどうせすぐ死ぬと思ってたけど…まさかこんなすぐ死ぬとはねー。はい、また一名脱落ー。」

残りのみんなが集まってきた。

陽一クンは、慌てふためいて腰を抜かした。

剣クンは、惨事を目の前にして動揺した。

柳人クンは、犯人やクマさん達に対して嫌悪感を示していた。

成威斗クンは、水槽にしがみ付いて泣いた。

ラッセクンは、呆れたように遠くから傍観した。

才刃クンは、顔を真っ青にして吐き気を催していた。

ゐをりちゃんは、少し驚いた表情で水槽を見ていた。

彩蝶ちゃんは、その場に座り込んで泣いた。

天理クンは、平常運転だった。

 

『うっぷぷぷぷぷぷ!あーあ、また死人が出ちゃったね!』

『フハハハハハハ!!今度は羽澄様ですか!おお、愉快愉快!』

クマさんとベルさんが、空中で回転しながら飛び出してきた。

「テメェら…!!」

『おっと舞田クン!ボクを睨むのはお門違いだよ!?羽澄サンを殺したのは、オマエラの中の誰かなんだからさぁ!!』

「ッ…」

成威斗クンは、悔しそうにうつむいた。

「ほいで?今回も、モノクマファイルとやらをくれるんでしょ?ねえ、クマちゃん。早くファイルプーリーイーズー!」

天理クンが、クマさんを急かした。

『ちょっと!今話してる途中なんだから急かすんじゃないよこの成金サイコパスが!!』

『まあまあ。学園長、そう言わず。積極的な方がいて、ワタクシは非常に嬉しいですよ。フッフッフ。急かさずとも、今すぐ送りますよ!』

ボク達の手帳が鳴った。

また、手帳にファイルが送られてきていた。

「ありがとベルちゃん愛してるー。えへへ、これでまた捜査ができるね。俺、探偵ごっこ大好きー。」

「…。」

みんなが踊子ちゃんの死を受けて動けずにいる中、ラッセクンは動き出した。

「おい、貴様ら。何をそこでボサッと突っ立っている。捜査の邪魔だ。どけ。」

「なっ…!ラッセ、テメェなぁ!!羽澄ちゃんがこんな事になったってのに、何も思わなかったのかよ!?」

「フン、勘違いするな。愚か者が。俺も、級友の死をなんとも思わない程図太くはないぞ。時間と命を粗末にするなと言っている。俺は、祖国の国民達のためにも、ここで死ぬわけにはいかんのだ。」

「…!…わぁったよ。お前ら、協力して羽澄ちゃんを殺した犯人を探すぞ!!」

「そうだね…羽澄さんのためにも、こんな所で立ち止まるわけにはいかないよ。」

「ワタシ、踊子サン殺した犯人、許せマセン!絶対犯人見ツケます!」

「俺もまだ色々とやんなきゃいけない事あるし?こんな所で死ねないんだよネ。」

「踊子!!お前の仇は、俺達が討ってやるからな!!!」

 

一体、誰が踊子ちゃんをこんな目に遭わせたのかはわからないけど…

ボクは、踊子ちゃんを殺した犯人を突き止めるために、全力を尽くそう。

生き残るため、そして踊子ちゃんの無念を晴らすために。

勇気をボクに(アルサジャート・リ)

お願いお父さん。

ボクに勇気を…力を貸して。

 

 

 

 

ー《捜査開始》ー

 

「どうする?」

まずはモノクマファイルを確認しよう。

 

 

モノクマファイル②

 

被害者は【超高校級のダンサー】羽澄踊子。

死体発見現場は、内エリア3階の生物室水槽内。

死亡推定時刻は、23時40分頃。

死因は溺死。

死体発見時、死体は頭部、胴部、四肢の6つに切り離されていた。頭に打撲痕が、手首には紐状の物で縛られた痕がある。

 

コトダマゲット!【モノクマファイル②】

 

「捜査はどうする?」

「そうだね…今回も、癒川さんと日暮さんにお願いしようか。」

「はい。私、できる限りの手がかりを見つけます。」

「わたしも、ようこちゃんを殺した犯人は許せないからね。はるなちゃんと一緒に検視するよ。」

そっか。彩蝶ちゃんは、踊子ちゃんと一番仲良かったもんね。

友達があんな殺され方して…許せないよね。

「でも、これ…どうやって検視すんだよ。」

「確かに…水槽を壊すわけにもいきませんし…如何致しましょうか。」

「なんでだ?壊すとマズいのか?」

「フン、バカ者。そんな事をすれば、捜査どころか、俺達が流されるではないか。後先を考えられぬのか。」

「俺、さすがにトイレの中のウンコにはなりたくないんだけど。どうすりゃいいの?」

 

『うっぷぷぷ!そういう時はボクの出番だね!はいポチッとな!』

 

クマさんが何かのボタンを押すと、水槽の水位が下がった。

「うおっ…」

『ほい!これで捜査できるでしょ?この水槽に入りたかったら、管理室に行ってね!』

「なるほど…では、私は日暮さんと一緒に…」

「じゃあ、わたしは先に水槽に入ってるよ。」

「そうだね。えっと…じゃあ、管理室の捜査と別の場所の捜査の人に分けようか。」

「……………賛成。」

 

結局、ボク、星也クン、治奈ちゃん、彩蝶ちゃん、成威斗クン、天理クン、ラッセクンが管理室と水槽を、才刃クン、ゐをりちゃん、剣クン、雪梅ちゃん、柳人クン、陽一クンが生物室やその他周辺を調べる事になった。

 

 

 

 

【管理室】

 

とりあえず、まずは調べられるだけ調べてみよう。

「わぁあ!!?」

ドシッ

「いっっっっっったぁああ〜…!!」

ボクは、足を滑らせて管理室の中でつまづいた。

「大丈夫!?狛研さん!」

「フン、間抜けが。」

「ちょっと、どうなってんのさこれ〜!」

『フッフッフ。言い忘れておりましたが、この管理室、実は外と中で床の高さが違うのですよ。ですから初めて入る方はお気をつけて…と申し上げようとしたのですが、遅かったようですねェ。』

嘘つけ!絶対わざと教えなかったんだろ!

「あははー。俺達は、狛研サンみたくならないように気をつけないとねー。」

7人が管理室に入り、各自気になる所を調べた。

「ねえ、ベルさん。」

『はい、どういったご用件でしょうか、狛研様?』

「あのさ、この管理室について教えて欲しいんだけど。ほら、ボク、この管理室に入った事無いから。」

『フッフッフ。そういう事ですか。いいでしょう。特別に、管理室の仕組みをお教えします。』

「うん。お願い。」

『この管理室には、水槽内の水位を調節したり、水槽の蓋を開けたりする機械がございます。』

「へー。ここって、夜時間はどうなってんの?」

『夜時間には、管理室に鍵がかかります。一応、鍵を開ければ入る事はできるのですが、見ての通り鍵はこの保管室に保管されております。』

「どれどれ?」

…あ、なるほどね。

確かに、これは盗めないかもね。

ドアについてる柵も、人が通れそうな幅じゃないし…

「じゃあ、夜時間中はどうやって中に入るの?」

『ワタクシ共に一声かけていただければ、保管室を解錠します。』

「つまり、キミ達の許可が降りなければ、鍵を取れないって事?」

『…そうなりますね。まあ、よほどの用事じゃなければ基本的に却下しますがね。』

「…あのさぁ。それ、二度手間じゃないの?なんでそういうシステムにしたのさ。めんどくさいなぁ。」

『夜時間中にこっそり忍びこんでいかがわしい事をするのを未然に防止するためですよ。そのためにあえて二度手間にしているのです。警備が厳重な建物ほど、鍵を何重にもかけたりするでしょう?それと同じです。』

なんだそれ。

「…一応確認だけど、キミ達に声をかけてきた人はいた?」

『…ふむ。それくらいなら答えてもよろしいでしょうかね。結論から申し上げますと、いません。誰一人として、保管室の鍵を開けるようにお願いされた方はいらっしゃいませんでしたよ。』

…なるほどね。

つまり、夜時間中に管理室に入る事はできなかったって事ね。

「ボクはこの説明聞いてないんだけど、知ってる人はいる?」

『そうですね。ここの探索をしていらっしゃった栄様、朱様、日暮様ならご存知の筈です。』

「ふぅん。…ところで、さっき水槽の水とお魚さんが引いて行ったけど…あれ、どこ行ったの?」

『地下にある貯水タンクに一時的に移動させました。』

「それは、ボク達は入れないの?」

『無理ですね。開放していませんから。』

「そっかぁ。ありがと。もう行っていいよ。」

『とほほ…トラ使いが荒いですね。』

 

コトダマゲット!

 

【夜時間】

夜時間中は、クマさん達に保管室の鍵を開けてもらって、保管室にある鍵を使って管理室に入らきゃいけないらしい。

クマさん達に声をかけてきた人はいなかったから、夜時間中は誰も保管室や管理室に入れなかったと言う事になる。

 

コトダマゲット!

 

【保管室】

ドアに鍵がかかっていて、中に管理室の鍵が保管してある。

ドアの上の方に柵付きの隙間があるが、人が通れるスペースは無い。

 

コトダマゲット!

 

【探索メンバー】

生物室を探索していたのは、陽一クン、雪梅ちゃん、彩蝶ちゃん。

保管室の鍵の事を知っていたのはこの3人だけ。

 

コトダマゲット!

 

【貯水タンク】

水や魚を一時的に移動させておくための水槽。

ボク達は入れない。

 

ちょっと保管室の中も見てみようかな。

何か手がかりがあるかもしれないし。

ボクは、保管室を開けた。

 

「…あ。」

 

部屋の中には、成威斗クンと天理クンがいた。

「はぁい。狛研サンいらっしゃい♡」

「悪いな叶。捜査中で鍵が開いてたみたいだったから、入って調べてたんだよ。」

「そうなんだね。何か気付いた事とかある?」

「そうだな…鍵をかけるトコに鍵が無い事とかかな。」

「あ、確かに…鍵が無いね。」

 

コトダマゲット!

 

【消えた鍵】

保管室にあった管理室の鍵がなくなっていた。

 

「天理クンは何か見つけた?」

「えーっとねぇ、つまんない物で申し訳無いんだけどー、一応こんなの見つけたんだぁ。」

天理クンは、緑色の羽根を見せた。

なんだろう…鳥の羽根?

「何これ?」

「俺が知るかよー。ここに落ちてたんだぁ。」

「あ、そうなんだ…」

 

コトダマゲット!

 

【緑色の羽根】

天理クン曰く、保管室に落ちていたらしい。

 

「なるほどね…二人とも、事件当時は何してたの?」

「俺は寝てたぜ。夜時間中だったからな。」

「俺も寝てたよー。あのね、昨日ね?栄クンが妖精さんに靴べらで引っ叩かれる夢見たんだー。」

「すっごくどうでもいいね。」

「ひどいなー。」

「…うん。二人ともありがとう。」

「いえいえー。お役に立てて嬉しい限りですわぁ。」

 

 

 

 

「へっくし!!」

「陽一!汚いデス!!」

「そうですよ。ちゃんと手拭いで口を押さえるなどしてください。」

「わ、悪い…オレ、風邪引いてんのかな…」

「………………………不潔。」

「ぐっ…神座ちゃんのが一番刺さるぜ…」

 

 

 

 

そろそろラッセクンと星也クンにも捜査結果を聞きたいね。

「ねえ、星也クン、ラッセクン。」

「あ、狛研さん。どうしたの?」

「えっと…あのさぁ、何かわかった事とかあれば教えてくれる?」

「…フン。事件と関係があるかはわからんが…水槽の中でこんな物を見つけた。」

…これは、生物室にあった小さい水槽だね。

全部で6個あるな…

なんでこんな物が水槽から出てきたんだろ?

…ん?内側に、血の塊がついてるな。

この中に踊子ちゃんの死体を入れてたって事かな?

 

コトダマゲット!

 

【小さな水槽】

巨大水槽の中に落ちていた。

 

「…あ。」

小さな水槽に、シールのようなものが貼られている。

何、これ…

「それ、シールミラーだね。貼るタイプの鏡。」

「貼るタイプの鏡、か…」

なんでこんな物が貼られてるのかな?

ちょっと気になるなぁ…

 

コトダマゲット!

 

【シールミラー】

小さな水槽に貼られていた。

 

「あれ?何これ。」

水槽のフチに何かついていた。

これは…魚のエサ?

なんでこんなものがここに…

 

コトダマゲット!

 

【魚のエサ】

水に溶けないタイプ。

水槽のフチに付いていた。

 

うん、調べられる情報はこのくらいかな…

「そういえば、二人は事件当時何してたの?」

「部屋で本を読んでたよ。」

「…俺も、まあそんなところだ。」

「なるほどね。ありがとう!」

やっぱり、夜時間だからみんな部屋にいるかぁー。

「ねえ、ちょっと生物室の探索をしている子達にも話を聞いてきていいかい?」

「うん、ここには特に他に手がかりも無いし…どうぞお好きに。」

星也クンから許可を貰ったので、生物室の探索に行った。

 

 

 

 

【生物室】

 

さてと、ここもよくチェックしておかないとな。

ん?

…うげ。

よく見てみると、床に少量の血が付いていた。

…多分、踊子ちゃんの血かな?

 

コトダマゲット!

 

【生物室の血】

生物室に血痕があった。踊子ちゃんの血…?

 

そして、床にノコギリが落ちていた。

刃の部分に、びっしりと血が付いている。

…ん?

よく見ると、刃の部分だけじゃなくて、柄の部分にもわずかに血が付着している。

これは一体…?

 

コトダマゲット!

 

【ノコギリ】

生物室に落ちていた。刃だけでなく、柄の部分にもわずかに血液が付着している。

 

…あとは。

気になったのは、びしょ濡れの流し台かな。

ん?この流し、何か詰まってるな。

…これは、踊子ちゃんの髪の毛…?

 

コトダマゲット!

 

【流し台】

踊子ちゃんの髪の毛が詰まっていた。

 

「ねえみんな。何か気付いた事とかある?あったら教えて欲しいんだけど。」

「えっとなぁ…アレだ。こんなモンを見つけたぜ。」

「?」

「流しのとこに落ちてたから回収しといたんだよ。」

陽一クンは、何かの切れ端を見せた。

…これは、ロープ?

 

コトダマゲット!

 

【ロープの切れ端】

陽一クンが見つけてくれた。

 

「ねえ、陽一クン。事件当時は、何してたの?」

「えっとなぁ、部屋で寝てたんだけど、一回映画館に行ったな。」

「…なんで夜時間中に外出てんのさ。」

「うっ…それは…ゴニョゴニョ…」

「何?」

「なんでもありません…あ、そうだ。映画館に行く途中なんだけど、ちょうど11時40分くらい?に、朱ちゃんが研究室に入るのを見たぞ。」

「本当に?」

「ああ、確かに研究室に入ってったな。時間も、時計見て確認したから間違いねェよ。」

「特に変わった所とか無かった?」

「無かったよ。」

「…なるほどね。ありがとう。」

「おう。」

 

あとは…

「ねえ、雪梅ちゃん。」

「ハイ!なんでしょうカ!?」

「何か気付いた事とかある?」

「スミマセン、特にありませんネ…」

「じゃあ、事件当時は何してたの?」

「えーと、研究室、ショーの準備、してマシタ。」

「準備?」

「ハイ。11時半すぎくらいニ、踊子サンと別れてカラ、ショーで使う小道具、準備してマシタ。1時間くらいだたト思いマス。」

「なるほどね。その後は?」

「一応、生物室、最終確認してカラ、部屋、戻りマシタ。あ、そうそう。研究室カラ生物室ニ最終確認に行く途中、彩蝶サン、見ましタ。」

「彩蝶ちゃんを?」

「ハイ。」

「彩蝶ちゃん、その後どこ行ったのかとかわかる?」

「スミません、わかりマセン。」

「彩蝶ちゃんに特におかしな点とかは無かった?」

「ありませんデシタガ…どうしてそんな事聞きマスカ?」

「ごめんね。特に怪しいところがなかったら、それでいいの。」

「そうデスカ。」

「ところで、雪梅ちゃん。」

「なんですカ!?」

「最終確認したって言ってたけど…その時は、生物室に死体は無かったの?」

「ハイ。生物室ニモ、水槽ニモありませんデシタヨ。もし見てたら皆サン呼んでますヨ!!」

「…そっか、やっぱりそうだよね。ありがと。」

 

コトダマゲット!

 

【雪梅ちゃんの証言】

夜の時点では、死体は生物室にも水槽にも無かった。

 

さてと、そろそろ他の人にも話を聞きたいね。

 

「ねえ、柳人クン。何かわかった事とかある?」

「うーん、ごめんよ狛研君。オイラからは特に無いかな。」

「じゃあ、事件当時は何してたの?」

「寝てたねぇ。」

「そっか、ありがと。剣クンとゐをりちゃんは何か気付いた事ある?」

「はい。一応、私共はゴミ処理場を確認してきたのですが、少々不可解な物を発見しました。」

「不可解?」

「これです。」

剣クンは、焦げかけの青いビニールシートを広げた。

「ビニールシート?」

「こちらをご覧頂きたく。」

剣クンがボクに見せた面には、血がびっしりと付いていた。

「い゛っ!!?」

「…恐らく、今回の事件に使われた物かと。」

 

コトダマゲット!

 

【ビニールシート】

ゴミ処理場に捨てられていた。血がびっしりと付いている。

 

「なるほどね、ありがとう。二人はその時何してたの?」

「私は寝ておりましたが…」

「………………私も。」

「ふんふん。教えてくれてありがとね。」

 

次は、才刃クンに話を聞こうかな?

「ねえ、才刃クン。」

「む!?なんなのだ!!」

「何かわかった事とかあった?」

「ふんっ、天才である僕ちゃんがこんな事を言うのはすっごい屈辱的だが…特に手がかりらしい手がかりはなかったぞ!」

「そっかぁ、じゃあ、事件当時は何してたの?」

「ふんっ、倉庫にいたが、それがどうした!!」

「どうした、じゃないよ…なんで夜時間中に外に出てたんだよ。」

「ふんっ、歯磨き粉が切れたから取りに行ってただけだ!それの何が悪い!」

「…そうなんだ。」

「ところで、オマエは管理室の担当のクセに、なんでこんなところをほっつき歩いてるのだ!?」

「星也クンが、特にこれ以上の発見は無いし、生物室を見てきていいよって言ったから…だから、生物室で何か調べられればなって思ったんだけど。」

「じゃあそっちの捜査は終わってるって事なのか!?どれ、僕ちゃんも行ってみるとしよう!」

…なんか、才刃クン、心なしか楽しそうじゃない?

「何しに行くの?」

「決まっているだろう!!管理室の機械を見に行くのだ!さっきからずっと見たくてうずうずしてたからな!」

「えぇ…」

「ふん!ここが管理室か…おわぁあっ!!」

才刃クンは、管理室の入り口でコケた。

「いったたたた…な、なんだこれは!どうなっているのだ!?」

「…あ。ごめん。管理室の床、ちょっと低くなってるんだけど、教えるの忘れてた。」

「なんだと!?それを早く言えバカチンが!!」

「ごめんってば…」

 

コトダマゲット!

 

【管理室の入り口】

外からの見かけよりも床が低くなっている。

その事を知らずに転んだのは、ボクと才刃クンだけ。

 

 

 

 

【水槽内部】

 

 

…さてと。

そろそろ二人が検視を終えてる頃かな。

ちょっと話を聞いてみよう。

「二人とも、捜査は終わった?」

「うん、終わったよー。」

「じゃあ、検視結果を教えてくれる?」

「はい、ええとですね…モノクマファイルに書いてある通りでした。肺に水が入り込んだ形跡があるため、やはり溺死のようです。」

 

コトダマゲット!

 

【治奈ちゃんの検視結果】

肺に水が入り込んだ形跡がある事から、死因は溺死と考えられる。

 

「あと、見ての通り身体が6つの部位に切断されていました。」

「けっこう切り口がきれいだったから、刃物で切られたのかなぁ。」

「なるほどね。ねえ、踊子ちゃんの遺体はそれで全部?」

「はい。これで全部です。欠損している部位はありませんでした。」

 

コトダマゲット!

 

【踊子ちゃんの遺体】

遺体がきれいに切断されているため、刃物で切られたと思われる。

また、無くなっている部位は無かったとの事。

 

「それから、頭部に打撲痕がありました。何か、細い棒状の物で突かれたような痕ですね。」

「棒状…?」

「はい、頭から出血しているので、多分相当強く殴られたんだと思います。あとは…手首にきつく縛られたような痕ですね。恐らくロープのようなものだと思われます。」

「ふーん、なるほどね。ありがとう。」

 

コトダマゲット!

 

【打撲痕】

踊子ちゃんの頭部にあった傷。

細い棒状の物で突かれたような痕だったらしい。

 

コトダマゲット!

 

【手首の痕】

何かできつく縛られたような痕があったらしい。

 

「ねえ、彩蝶ちゃん。」

「なあに、かなえちゃん?」

「その白衣…いつも付けてるの?」

「うん。いっつもつけてるよー。世界にひとつしかない宝物だからね。」

「そうなんだ…」

 

コトダマゲット!

 

【彩蝶ちゃんの白衣】

誕生日にお母さんが作ってくれた、世界にひとつしかない宝物らしい。

いつも身につけているそうだ。

 

「ピィイ…」

「あれ?翠ちゃん、元気無いね。どうしたの?」

「ピ、イ…」

翠ちゃんは、いきなり何かを吐き出した。

「わっ!?」

「あ、こら!翠、ダメでしょ!お行儀が悪いよ!」

「ピィ…」

「…あれ?」

翠ちゃんが吐き出したのは、小さな金属の輪っかだった。

「?なんだろうこれ。」

「っえ!?なにこれ!?翠、何を飲み込んじゃったの!?今すぐ全部吐き出して!」

「ピィ、イ…」

翠ちゃんは、頑なにそれ以外のものを吐き出すのを拒んだ。

…さっき吐くのをやめろって言われたからかな?

 

コトダマゲット!

 

【翠ちゃん】

なんか元気が無いと思ったら、いきなり金属の輪っかを吐き出した。

 

「なるほどね…ねえ、二人は事件当時何してたの?」

「私は、部屋で寝ていましたが…すみません、アリバイの証明になりませんよね…」

「いや、いいよ。正直に言ってくれればさ。彩蝶ちゃんは?」

「えっとねぇ、わたしは、研究室に行ってたよ。」

「研究室?夜時間中は外出ちゃダメじゃなかった?」

「うーん、ごめんねかなえちゃん。翠が、夜中にお腹すいたって言ったから…ごはんあげに行ってたんだ。」

「部屋にはごはんはなかったの?」

「ちょうど切れてたんだぁ。わたしのアリバイは、シュエメイちゃんが証明してくれてるはずだよー。」

「なるほどね。ありがとう彩蝶ちゃん。」

「いえいえー。」

 

さてと、捜査は大体終わったし、あとは全員分のアリバイをまとめておくだけだね。

 

コトダマゲット!

 

【全員分のアリバイ】

ボク、星也クン、ゐをりちゃん、天理クン、柳人クン、剣クン、成威斗クン、治奈ちゃん、ラッセクンは部屋にいた。

才刃クンは、倉庫にいた。歯磨き粉を取りに行っていたらしい。

陽一クンは、映画館にいた。23時40分に、雪梅ちゃんの姿を見ている。

雪梅ちゃんは、研究室でショーの準備をした後、最終確認のために生物室に行った。途中、彩蝶ちゃんとすれ違った。

彩蝶ちゃんは、翠ちゃんにご飯をあげるために研究室に行っていたらしい。

 

 

 

 

『オマエラ、時間切れです!ついにこの時がやってきました!お待ちかねの学級裁判、始めるよ〜!5分以内に、内エリア1階の噴水まで集合してね〜!』

『遅刻欠席は許しませんよ!校則違反とみなし、問答無用でおしおきさせていただきます!』

…もう時間か。

ボクは、噴水に向かった。

 

 

 

 

【噴水】

 

「オマエラ、遅いのだ!もっと早く来んか!」

やっぱり、今回も才刃クンが一番乗りか。

それ以降は陽一クン、ラッセクン、星也クン、治奈ちゃん、剣クン、柳人クン、雪梅ちゃん、成威斗クン、彩蝶ちゃん、ゐをりちゃん、ボク、天理クンの順に来たようだ。

「…財原君。君、いっつも遅れてくるよねぇ。遅刻しないと死ぬ病気なのかい?」

「だってタリィんだもーん。」

『うぷぷ、全員揃ったみたいだね。じゃ、裁判場行きのエレベーターに乗ってね!』

クマさんが指を鳴らすと、噴水の中からエレベーターが現れた。

クマさんに急かされて、ボク達はエレベーターに乗った。

 

 

 

 

エレベーターが動き出した。

2回目なのに、全然慣れない。

慣れるわけがなかった。

この中に、踊子ちゃんを…ボク達の仲間を殺した犯人がいる。

それが誰だかわからなければ、ボク達が死ぬ。

…考えろ。

誰がどうやって踊子ちゃんを殺したのか…

踊子ちゃん、この謎は、ボク達が必ず解き明かしてみせる!!

 

 

 

 


 

 

 

『フッフッフ。さァて、ここでクイズのお時間ですよ。羽澄様を殺した犯人は、一体誰だと思いますか?』

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

『…そうですか。次回は学級裁判前編でございます。お楽しみに。』



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第2章 非日常編②(学級裁判前編)

エレベーターが止まり、ドアが開いた。

全員がエレベーターから降りた。

証言台には、遺影が2つ増えていた。

とてもかわいらしい笑みを浮かべている隥恵ちゃんの遺影と、屈託のない笑みを浮かべている踊子ちゃんの遺影だ。

「隥恵ちゃん…踊子ちゃん…」

「クッソ、白鳥ちゃん…羽澄ちゃん…!」

「白鳥殿、羽澄殿…」

「うっ…ひぐっ…ぐすっ…れいみちゃん…ようこちゃあん…」

みんな、二人の死を思い出して、悔しがったり悲しんだりしていた。

『あれあれあれ?なんかみんなご機嫌斜めじゃない?どしたの?』

「…一体誰のせいだと思ってるんだい?」

『それは、羽澄様を殺した犯人のせいでしょう?いちいちワタクシ達に八つ当たりされても困りますよ。』

「ちげぇよ!!テメェらのせいだよ!!」

『えー。なにそれ。ボク達、そんな嫌われるような事してないじゃん!ちょっと刺激的なビデオをプレゼントしただけじゃんか!それで勝手に羽澄サンが殺されただけでしょ!?オマエラの醜い仲間割れをボク達のせいにしないでくだっさぁーい!!』

「あはは、どの口が言うかって話だねー。まあでも確かに、今は感傷に浸ってる場合じゃないよね。」

「なっ、財原テメェ…」

「熱くなって判断を誤るなっつってんの。言っとくけど、俺はお前らがヘマしたせいで死ぬなんてごめんだからね?」

天理クンが正しい。

ボクだって、言いたい事は山ほどある。

でも、感情に任せて判断を誤ったら負けだ。

…考えろ。

こういう時こそ、冷静になれ。

『まあいいや、全員揃ったっぽいし、始めちゃおっか!ドキドキワクワクの学級裁判を!』

 

 


 

コトダマ一覧

 

 

【モノクマファイル②】

被害者は【超高校級のダンサー】羽澄踊子。

死体発見現場は、内エリア3階の生物室水槽内。

死亡推定時刻は、23時40分頃。

死因は溺死。

死体発見時、死体は頭部、胴部、四肢の6つに切り離されていた。頭に打撲痕が、手首には紐状の物で縛られた痕がある。

 

【夜時間】

夜時間中は、クマさん達に保管室の鍵を開けてもらって、保管室にある鍵を使って管理室に入らきゃいけないらしい。

クマさん達に声をかけてきた人はいなかったから、夜時間中は誰も保管室や管理室に入れなかったと言う事になる。

 

【保管室】

ドアに鍵がかかっていて、中に管理室の鍵が保管してある。

ドアの上の方に柵付きの隙間があるが、人が通れるスペースは無い。

 

【探索メンバー】

生物室を探索していたのは、陽一クン、雪梅ちゃん、彩蝶ちゃん。

保管室の鍵の事を知っていたのはこの3人だけ。

 

【貯水タンク】

水や魚を一時的に移動させておくための水槽。

ボク達は入れない。

 

【消えた鍵】

保管室にあった管理室の鍵がなくなっていた。

 

【緑色の羽根】

天理クン曰く、保管室に落ちていたらしい。

 

【小さな水槽】

巨大水槽の中に落ちていた。

 

【シールミラー】

小さな水槽に貼られていた。

 

【魚のエサ】

水に溶けないタイプ。

水槽のフチに付いていた。

 

【生物室の血】

生物室に血痕があった。踊子ちゃんの血…?

 

【ノコギリ】

生物室に落ちていた。刃だけでなく、柄の部分にもわずかに血液が付着している。

 

【流し台】

踊子ちゃんの髪の毛が詰まっていた。

 

【ロープの切れ端】

陽一クンが見つけてくれた。

 

【雪梅ちゃんの証言】

夜の時点では、死体は生物室にも水槽にも無かった。

 

【ビニールシート】

ゴミ処理場に捨てられていた。血がびっしりと付いている。

 

【管理室の入り口】

外からの見かけよりも床が低くなっている。

その事を知らずに転んだのは、ボクと才刃クンだけ。

 

【治奈ちゃんの検視結果】

肺に水が入り込んだ形跡がある事から、死因は溺死と考えられる。

 

【踊子ちゃんの遺体】

遺体がきれいに切断されているため、刃物で切られたと思われる。

また、無くなっている部位は無かったとの事。

 

【打撲痕】

踊子ちゃんの頭部にあった傷。

細い棒状の物で突かれたような痕だったらしい。

 

【手首の痕】

何かできつく縛られたような痕があったらしい。

 

【彩蝶ちゃんの白衣】

誕生日にお母さんが作ってくれた、世界にひとつしかない宝物らしい。

いつも身につけているそうだ。

 

【翠ちゃん】

なんか元気が無いと思ったら、いきなり金属の輪っかを吐き出した。

 

【全員分のアリバイ】

ボク、星也クン、ゐをりちゃん、天理クン、柳人クン、剣クン、成威斗クン、治奈ちゃん、ラッセクンは部屋にいた。

才刃クンは、倉庫にいた。歯磨き粉を取りに行っていたらしい。

陽一クンは、映画館にいた。23時40分に、雪梅ちゃんの姿を見ている。

雪梅ちゃんは、研究室でショーの準備をした後、最終確認のために生物室に行った。途中、彩蝶ちゃんとすれ違った。

彩蝶ちゃんは、翠ちゃんにご飯をあげるために研究室に行っていたらしい。

 

 


 

 

 

学級裁判開廷!

 

モノクマ『それじゃあ、好きに議論を進めてくだっさーい!!』

穴雲「とりあえず、まずはファイルを確認しようか。」

狛研「そうだね。今回は、誰がファイルを読む?」

不動院「そうですね…では、私が読みましょうか。」

穴雲「うん。じゃあお願いしようかな、不動院君。」

不動院「任せてください!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

不動院「被害者は【超高校級のダンサー】羽澄踊子。死体発見場所は、3階生物室の水槽内部。

朱「踊子サン…なんでこんな事に…!」

ラッセ「…フン。所詮はアイツも弱者だった。それだけだろ。死者に問う事に何の意味がある。」

日暮「ようこちゃん…」

不動院「…続けますね。死亡推定時刻は23時40分頃。死因は、溺死。死体発見時、死体は頭部、胴部、四肢の6つに切り離されていた。頭に打撲痕が、手首には紐状の物で縛られた痕がある。…以上です。」

詩名「うーん。死因はわかったわけだし、次は殺害方法かな?」

栄「頭に殴られた痕があるっつー事は、撲殺じゃねえのか?」

舞田「そうなのか!?じゃあ、死因は撲殺で決まりだな!!」

今の陽一クンの発言はおかしい!

 

撲殺⬅︎【治奈ちゃんの検視結果】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

栄「ハァ!?オレの発言のどこがおかしいっていうんだよ!!」

狛研「陽一クン、踊子ちゃんの死因は撲殺じゃないよ。ね、治奈ちゃん。」

癒川「はい。肺に水が入り込んだ形跡があったので、死因は溺死で間違いありません。打撲痕は、羽澄さんが溺死する前にできた怪我です。直接の死因とは何ら関係ありません。」

栄「そ、そうだったのか。オレ、早とちりしちまった。」

財原「モノクマファイルにも溺死ってはっきり書いてあっただろ?栄クンって、もしかしてアホ?」

栄「う、うっせェな!!ちょっと勘違いしただけだろ!」

財原「はいはい。みんな、こういう類のアホは無視ちまちょうね〜。」

栄「なんだその小馬鹿にした顔は!そういうところがムカつくんだよテメェ!」

穴雲「二人ともやめな。今は喧嘩してる場合じゃないだろ。」

栄「わ、悪い…」

財原「ごめんよ。許してネ☆」

癒川「では、次は殺害時の状況ですかね…」

穴雲「そうだね。犯人はどうやって羽澄さんを殺して、死体を水槽内に出現させたのか…考えないとね。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

舞田「溺れて死んだんだから、水槽に突き落として殺したんじゃねえのか?」

不動院「不意打ちとはなんと卑劣な…許せません!」

穴雲「いや、別の場所で意識を奪ってから水槽内に羽澄さんを運んだという線も…」

財原「うっかり足滑らせて水槽に落ちたとかじゃねーの?」

ラッセ「なんでうっかり足を滑らせるという事があり得るのだ。貴様、いい加減真面目に考えろ。」

星也クンの意見に賛成したい。

 

別の場所で意識を奪ってから水槽内に羽澄さんを運んだ⬅︎【生物室の血】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「二人とも。多分だけど星也クンの言う通り、踊子ちゃんは、水槽に落ちた時にはもうすでに意識がなかったんじゃないかな?」

舞田「え、そうなのか?」

狛研「うん。生物室には、少量だけど血がついてたんだ。これって、踊子ちゃんが生物室で殴られて気絶させられたって事じゃない?」

舞田「…あ、そっか。」

財原「へー。うっかりバナナ踏んづけて水槽に落っこちたんじゃなかったのかー。」

栄「なんだよその漫画みたいなシチュエーションは…殺人事件だっつってんだろ。」

朱「…ん!?ちょっと待ってクダサイ!ワタシ、犯人が絞れマシタ!」

舞田「ホントか!?雪梅!!」

朱「ハイ!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

入田「どういう事なのだ?説明してみろ。」

朱「皆サン、よく考えてクダサイ!犯人、踊子サン、水槽運んで、入れたんデスヨ!?死体、重いデス。力無い人、犯人チガイマス!!」

癒川「羽澄さんの体重はおおよそ50〜60kgですから…死体を水槽まで持ち運ぶとなると、確かに殺害可能な人物が絞られてきますね。」

詩名「この中で、そんな重量持ち上げるのは無理って人はいるかい?オイラは持てるけど。」

朱「ワタシは大丈夫ですヨ!」

舞田「楽勝だろんなもんよ!」

栄「オレもそれくらいなら持てるけど。」

狛研「ボクも。」

ラッセ「フン、バカにするな。」

不動院「私も、それくらいなら余裕ですね。」

穴雲「僕も、ちょっと頑張れば持てると思うな。」

財原「俺は絶対無理だねー。」

入田「嘘つけ!僕ちゃんをおんぶした事あるだろ!」

財原「そーだっけ?」

入田「うむ。僕ちゃんもそれくらい余裕だぞ!」

財原「嘘つけよー。ボウリングのボールもまともに持てないくせにさー。イキがるなよおチビちゃん。」

入田「ぐっ…」

癒川「私は無理かもしれませんね…」

神座「……………………無理。」

日暮「うーん、わたしも無理かなぁ。」

不動院「という事は、神座殿、日暮殿、入田殿、癒川殿の4人は犯人候補から外れるという事ですね。」

ん?今の発言、ちょっとおかしくなかった?

 

力無い人、犯人チガイマス⬅︎【モノクマファイル②】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「雪梅ちゃん、思い出して。死体はバラバラになってたんだよ?もし踊子ちゃんを、バラバラにしてから水槽に入れたんだとしたら、力持ちじゃなくても死体を水槽に運べるよね?」

朱「確カに…」

財原「一番重い胴体でも25kgくらいだよね。いや、血が抜けてるからもうちょっと軽いかな?まあでもそれくらいなら、今言った4人でも持てるんじゃないの?25kgっつったら、ちょうど小学2年生一人分くらいの重さなんだけど。」

癒川「その程度なら、確かに私でも持てますね。」

入田「僕ちゃんも、頑張れば持てるのだ。」

日暮「うーん、わたしも持てるかなぁ。」

神座「……………頑張れば。」

不動院「という事は、全員に犯行が可能という訳ですね。…あらら、議論が振り出しに戻ってしまいましたね。」

 

 

我切那个字(その言葉、斬ります)!!」

 

反論

 

 

 

狛研「…雪梅ちゃん?」

朱「叶サン、アナタのいう事、まだ納得デキマセン。」

財原「えー。朱サン、どう納得できないっていうのかなぁ?」

日暮「そうだよ。かなえちゃんの推理のどこが間違ってるの?」

朱「いいでス。ワタシが、その綱渡りミタイに危ナイ推理を崩しマス!!」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

朱「叶サン、アナタの言う通りナラ、確かニ力ノ無い人、踊子サン殺セます。デモ、アナタ、肝心な事忘れてマス!」

狛研「肝心な事?」

朱「水槽、大型の魚、イマシタ!もし、踊子サンの死体、魚が食イちぎってバラバラにしたとシタラ…そうシタラ、犯人が踊子サンの死体をソノママ入れた可能性がありますヨネ!?」

日暮「ちょっと、やめてよシュエメイちゃん!お魚さん達をそんな風に言わないで!あそこにいたお魚さんは、人を食べたりしないんだから!」

詩名「うーん、日暮君。今はそういう事気にしてる場合じゃないと思うなぁ。」

朱「トニカク、まだ死体がソノママ水槽に入れラレタ可能性ガあるので、アナタの推理、正しくアリマセン!踊子サン、魚ニ食イチギラレました!!これがワタシの答えデス!」

今の雪梅ちゃんの発言はおかしい!

 

魚ニ食イチギラレました ⬅︎【踊子ちゃんの遺体】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「雪梅ちゃん、それはちょっとおかしいと思うよ。」

朱「オカシイ?どういう事デスカ!?」

狛研「だってさ、魚に食いちぎられたにしては断面が綺麗すぎじゃない?それに、体のパーツが全部見つかった事から考えると、雪梅ちゃんの言ってる事はやっぱり変だよ。」

ラッセ「確かに、ミカン頭が本当に魚に食われたんなら、身体のパーツがどこかなくなっている方が自然だからな。どこも食われていない事から考えると、ミカン頭の身体は犯人によって刃物のようなもので解体されたと考えるのが自然だ。」

朱「なるほど…スミマセン、勘違いシマシタ。」

舞田「じゃあ、次は何を話し合うよ?」

詩名「羽澄君が殺された時の状況を話し合うのはどうだい?例えば、羽澄君はどこで溺れ死んだのか…とか。」

狛研「そうだね。じゃあ、踊子ちゃんがどこで溺れ死んだのか、考えてみようか。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

舞田「溺れて死んだんだから、やっぱ水槽じゃねえのか?」

不動院「舞田殿。先程、羽澄殿は解体されてから水槽に入れられたという話になったではありませんか。」

日暮「ランドリールームにあった洗濯機とかはー?」

癒川「生物室から遠すぎませんか…?」

入田「それ以前に、人が溺死するような構造になってないから無理なのだ。」

財原「トイレかもよー?あはは、ばっちいー。」

ラッセ「真面目に考えろ。低俗な餓鬼が。」

穴雲「…本当に、発言禁止にするよ?」

詩名「生物室の流し台は?水槽との距離的にもちょうどいいと思うけど。」

柳人クンの意見に賛成したい。

 

生物室の流し台⬅︎【流し台】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「踊子ちゃんが溺れ死んだのは、多分生物室の流し台だと思うよ。」

栄「そうなのか?」

狛研「うん。流しに、踊子ちゃんの髪の毛が詰まってたんだ。これって、踊子ちゃんの顔を流しの中に突っ込んだ時に絡まっちゃったって事じゃない?」

詩名「なるほどね。やっぱり、犯行現場は流しと見て良さそうだ。」

穴雲「そうだね。…でも、ちょっと不自然じゃないか?」

入田「何がだ?」

穴雲「水槽に全身が浸かっているならまだわかるけど、羽澄さんは顔しか水に浸かっていなかったんだよ?そんな状態だったら、抵抗すると思うんだけど。」

癒川「あ、確かに…」

狛研「…抵抗できないようにされてたとか。」

栄「抵抗できないように?そりゃあどういう意味だ?狛研ちゃん。」

狛研「それは…」

 

コトダマ提示!

 

【ロープの切れ端】【手首の痕】

 

「これだ!!」

 

狛研「踊子ちゃんは、多分殺された時に手首を縛られてたんじゃないかな?だから、抵抗できずに殺されちゃったんだと思うよ。踊子ちゃんの手首に、縛られた痕があったんだ。あと、ロープの切れ端が落ちてた。多分、ロープを解こうと暴れた時にちょっとちぎれちゃったんじゃないかな。」

栄「ひでぇ…!」

不動院「同感です。女性を殴って気絶させた上に、両手を縛って溺れさせるとは…なんと卑劣な…!」

詩名「確かに、まともな人間がやる事じゃないよねぇ。」

財原「わかるー。俺だったら、そんなマネ絶対できねーわー。あー、思い出したら血の気引いてきたー。」

栄「嘘つけよお前…お前さっきまで平気だったくせに。」

財原「はてさて、なんの事かな?」

穴雲「なるほどね…ありがとう狛研さん。これで謎が解けたよ。じゃあ、次は凶器の特定かな…羽澄さんを解体したのは、どんな凶器だと思う?」

…それは。

 

コトダマ提示!

 

【ノコギリ】

 

「これだ!!」

 

狛研「それは多分ノコギリじゃないかな。」

舞田「ノコギリぃ!?」

狛研「うん。犯行現場にあった、血がついたノコギリ…多分あれで解体したんじゃないかな?」

入田「うげぇ…グロいのだ…」

穴雲「なるほどね。これで、凶器は一つ判明したね。あとは、羽澄さんを殴った凶器の特定かな?」

狛研「そうだね。踊子ちゃんを殴った凶器も特定しないと…」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「犯人は一体どうやって羽澄サンを殴ったのかなー?」

日暮「よくわかんないけど…多分、生物室のものを使って殴ったんじゃないのかなぁ。」

栄「生物室のものぉ?…そうだなぁ、アレとか?」

不動院「アレではわかりません。ちゃんと口に出して話してください。」

栄「ほら、アレだよ。ホル…なんとか。」

日暮「ホルマリン漬けの事?」

栄「そう!それ!犯人は、ホルマリン漬けで羽澄ちゃんを殴ったんじゃねえか!?」

財原「ホルマリン漬けって言いたいだけだろ?バカ丸出しだなぁ。」

栄「ち、ちげェよ!!」

今の陽一クンの発言はおかしい!

 

ホルマリン漬け⬅︎【打撲痕】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「陽一クン、踊子ちゃんを殴った凶器は、ホルマリン漬けじゃないよ。」

栄「なっ、そ、そうなのか?」

狛研「うん。だって、踊子ちゃんの打撲痕は、細い棒状の何かで頭を突かれたような痕だったんだよ?それって、ホルマリン漬けで殴った時の打撲痕と違うよね?」

栄「あっ…悪い、オレ、また早とちりしちまったわ。」

財原「まあ、ホルマリン漬けの容器なんかで人の頭を殴ったら、ガラスがバッキバキに割れてガラスや標本がそこら辺に飛び散ってるはずだしね。事件現場の状況から察するに、ホルマリン漬けの容器で殴ったっていうのはバカの発想だよね?」

栄「バカって言うなし!バカっていう方がバカなんだよバーカ!!」

詩名「栄君。それ、自分にも返ってるからね?」

穴雲「まあまあ…じゃあ、羽澄さんを殴って気絶させた凶器は一体何なんだろうね?」

踊子ちゃんを殴った凶器…

一体なんだ…?

…考えろ。

考えれば、答えは出てくるはずなんだ。

 

 

 

ー閃きアナグラム開始!ー

 

頭の中に、文字が次々と思い浮かぶ。

それを正確に掴んで、パズルのように組み合わせる…!

 

「これだ!!」

 

ノ コ ギ リ ノ エ ノ ブ ブ ン

 

【ノコギリの柄の部分】

 

狛研「…ノコギリの柄の部分。犯人が踊子ちゃんを殴った凶器は、多分これだよ!!」

不動院「の、ノコギリの柄、ですか!?」

狛研「うん。ノコギリの柄に、ちょっとだけど血が付いてたんだ。多分、これで踊子ちゃんを殴ったんだよ!ちょうど、打撲痕の特徴とも一致するしね。」

癒川「細くて棒状…あ、確かに…。」

栄「まあ、確かにこれで凶器はわかったけどよぉ。血はどう説明すんだよ?」

神座「…………………………血?」

栄「ほら、身体を掻っ捌いたんだったら、血がドバドバ出んだろ?どうやって生物室に血が付かないようにしたのかって事だよ。」

朱「ワタシが確認に来た時モ、血、ありませんデシタ。」

狛研「それなら簡単だよ。敷物の上で捌いたんだよ。そうすれば、床に血がつかないでしょ?」

栄「敷物?んな敷物になるようなモンなんかあったか?」

狛研「それは…」

 

コトダマ提示!

 

【ビニールシート】

 

「これだ!!」

 

狛研「犯人は多分、ビニールシートの上で踊子ちゃんを捌いたんじゃないかな?」

栄「ビニールシート?」

狛研「うん。剣クンがゴミ処理場で見つけてきてくれたんだ。ほら、血がべったりついてるでしょ?」

日暮「あ、ほんとだぁ…」

狛研「ビニールシートの上で死体を捌けば、床に血が付かないから、短時間で証拠隠滅ができるってわけ。」

舞田「なるほどな…じゃあ、次は犯人探しか。」

狛研「えっ、まだ事件のトリックとか全然わかってないんだけど…」

舞田「でもよぉ、これ以上話し合っても何も進展しねぇだろ!?とりあえず、犯人を絞れるだけ絞ってみようぜ!!」

狛研「うーん…」

本当にそれでいいのかなぁ。

 

 

 

議論開始!

 

 

 

舞田「まずは、適当に犯人絞ってくか!」

詩名「適当じゃダメだろ…」

舞田「そうか?」

日暮「でもさぁ、ぶっちゃけ…誰が犯人なのかわかんないよね?だって、わたしの推理だと、誰もようこちゃんを殺せない事になっちゃうもん。」

ラッセ「は?何を訳のわからない事を言っているんだ鳥娘。ミカン頭ごとき、誰にでも殺せるだろ。」

日暮「違うんだよ、ラッセくん。犯人は、管理室に入れないんだよ?」

ラッセ「だから、さっきから何を訳のわからない事を言っているんだ。」

日暮「だって、ようこちゃんが死んじゃったのは夜時間だったじゃない。」

詩名「確かに、夜時間中は原則出歩き禁止ってルールだったもんね。」

ラッセ「それは貴様らが勝手に決めたルールであろうが。王である俺が守る必要は無い。たとえ夜時間中であろうと関係無い。入ろうと思えば誰でも入れたんだ。…違うか?」

今のラッセクンの発言はおかしい!

 

入ろうと思えば誰でも入れた⬅︎【夜時間】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「…いや、彩蝶ちゃんの言う通りだよ、ラッセクン。」

ラッセ「…何?」

狛研「夜時間中は、管理室に鍵がかかってて入れないんだよ。だから、誰でも入れたっていうのはちょっと違うんじゃない?」

ラッセ「…フン。それを早く言え。」

不動院「でも、入る方法が0という訳ではないのでしょう?」

ラッセ「…何?」

不動院「夜時間中でも、管理室に入る方法はあったのでは?」

狛研「まあ、方法が無いわけじゃないよね。」

癒川「そうなんですか?それはどんな方法ですか?」

それは…

 

コトダマ提示!

 

【保管室】

 

「これだ!!」

 

狛研「保管室に、管理室の鍵が保管されてるらしいんだ。その鍵を使えば、夜時間中でも管理室に入れるよ。まあでも、その時はクマさんに許可をとらないといけないんだって。」

財原「で?実際、許可取った奴はいたわけ?」

狛研「いなかったよ。」

財原「じゃあ、夜時間中に保管室に入る方法は無かったという訳ですなぁ。はい事件は迷宮入りー。」

穴雲「そうでもないよ。モノクマファイルに死亡時刻が書かれている以上、羽澄さんがその時間に殺されたのは間違いないんだ。その時間帯のみんなの行動を考えれば、おのずと犯人が絞れるんじゃないかな?」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「はいはぁーい!俺、朱サンが犯人だと思いまーす!」

朱「な、なんでデスカ!?」

財原「だってさ、キミ、夜時間中外出歩いてたんだろ?怪しいに決まってるよ。」

朱「それハ、ダンスの準備ノためデス!」

財原「どうだかねー。それに、キミは生物室の探索の担当だろ?夜時間中に保管室に忍び込む方法も知ってたんじゃねーの?」

朱「知りマセン、そんなノ!」

財原「いい加減認めろよ。怪しいんだよオマエよー。犯人は朱サンで決っまりー!」

狛研「いや、ちょっと違うんじゃないかな?」

 

犯人は朱サン⬅︎【全員分のアリバイ】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「天理クン、雪梅ちゃんには、踊子ちゃんを殺せないんだよ。」

財原「にゃんでー?」

狛研「その時間、ちょうど陽一クンが雪梅ちゃんを見てるんだよ。つまり、雪梅ちゃんと陽一クンにはアリバイがあった。雪梅ちゃんにも、陽一クンにも、踊子ちゃんを殺す事はできなかったんだよ!」

財原「あっそー。ってかさぁ、栄クン、オマエは夜時間中に何ほっつき歩いてんだよ。」

栄「えっと…それは…ゴニョゴニョ…」

財原「どーせエッチな映画でも見てたんだろ?っはー、エロバカは手に取るように考えがわかるわー。」

栄「な、なんでわかった!?…あっ。」

財原「あっはは!そーら簡単に引っかかった!」

穴雲「…財原君。その辺にしようか。議論が進まないだろ。」

財原「そだねー。まあでも、これでこのおバカちんには羽澄サンを殺せない事がよーくわかったね!」

栄「んだとコラァ!!」

穴雲「…二人とも、いい加減にしないと発言禁止にするよ。」

栄「…ごめんなさい。」

詩名「でも、確かに夜時間中に外を出歩くのはどう考えても怪しいよねぇ。誰か、外を出歩いていて、かつアリバイが無い人はいないかい?」

狛研「…一人だけ、心当たりがある。」

 

 

 

ー人物指定ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎【超高校級の工学者】入田才刃

 

狛研「才刃クン、キミって事になるんだけど…」

入田「はぁあああ!?ぼ、僕ちゃんが!?な、何言ってんだオマエは!!僕ちゃんは、羽澄を殺してなんかいないぞ!!」

狛研「だったら、その時間何してたのか、正直にみんなに話して?」

入田「僕ちゃんは、倉庫で歯磨き粉を選んでた!!それがどうした!!」

日暮「でもさぁ、さいばくん。わたし、ちょっと気になる事があるんだ。普通、歯磨き粉を選びに行っただけなら、数分で戻って来られるよね?でも、みんなの中でさいばくんを見たって人は一人もいないよ?なんでなの?」

入田「だから、歯磨き粉を選んでたって言ってるだろ。種類と数が多すぎて、決めるのに時間が掛かったのだ。」

日暮「でも、わたしたちの中の誰もさいばくんの姿を見てないっていうのは、おかしいんじゃないの?さいばくん、ほんとうはどこで何してたの?」

入田「だから、歯磨き粉を選んでたんだよ!嘘じゃないもん!」

日暮「うーん、ちょっと信じられないかなぁ。みんなはどう思う?」

財原「俺もそう思う♬はい入田クン犯人確定〜♪」

神座「………工学者……決まり……………破った……疑われて、当然…」

入田「だから違うってぇええええぇええええええ!!うっ、うえ゛ぇえええええぇえええええええええぇええええええん!!!」

日暮「あ…泣いちゃった…」

財原「あはは。泣き落とし?きったねー。いいかい?よく覚えときなガキンチョ。」

 

 

 

財原「世の中ね、泣けば済む程甘くねーの。」

狛研「…!」

財原「あ、でも、お金があるなら話は別だよ?俺の事、いくらで買収してみる?ねえ、犯人さん!」

入田「うわぁあああああああん!!!ちがうちがうちがうちがぁああああう!!!ぼく、ひぐっ、じゃあ…っ、ない、もん…!!」

不動院「ここまで仰るようですと、なんだか少し不憫ですね。嘘を吐くような方とは思えませんし…」

ラッセ「フン。同情するなバカ侍。コイツは、自分の無実を証明できなかった。だからこれは当然の結果だ。」

不動院「しかし…」

正直、才刃クンは一番怪しい。

でも、なんだこの違和感は…

やっぱり、もっと議論を続けるべきなんじゃないかな?

『おやおや?そろそろ犯人が決まったみたいですね?ではでは、投票ターーーー…』

 

 

 

 

 

「待って!!」

財原「…あ?」

入田「狛研ぃいい…!」

狛研「この事件は、まだ真相にたどり着いてない!!」

 

 

 

 

 

学級裁判中断!



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第2章 非日常編③(学級裁判後編)

狛研「この事件は、まだ真実にたどり着いてないんだ!!」

財原「何言ってんの?犯人は入田クン。はい終わり。」

入田「ぐすっ、ちがう…僕じゃないもん…」

詩名「あーあ、完全に戦意喪失しちゃったね。」

日暮「口調もオドオドしちゃってるし…もう投票に移っていいんじゃないの?」

狛研「良くない!!本当に才刃クンが犯人なのか、ちゃんと話し合わないと!!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

狛研「ねえ、才刃クン。事件当時何してたのか、詳しく教えてくれる?みんな、才刃クンが何をしてたのかわかってないから、混乱してるんだよ。」

入田「ぐすん…えっと、倉庫で歯磨き粉を選んでたんだ。部屋の歯磨き粉が切れちゃったからね。それで…ついでにお菓子を何個か持ってって、研究中に食べようと思ってたんだ。」

狛研「…って言ってるけど。」

不動院「確かに、入田殿が嘘をついているようには思えませんね…」

財原「信用できるワケないだろー?そんなの、嘘に決まってるよ。

入田「嘘じゃない!!僕、本当に何も知らないんだよ!!」

財原「またまたー。とっぼけちゃってー。」

入田「なんでぇ!?なんでそういう事いうの!?僕、夜時間中に管理室に入る方法も知らなかったんだよ!?」

財原「そんなワケないじゃん。本当は保管室に入る方法も知ってたんだろ?」

今の天理クンの発言はおかしい!

 

保管室に入る方法も知ってたんだろ ⬅︎【探索メンバー】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「天理クン、それはちょっと違うんじゃない?」

財原「違うって、何が?」

狛研「だって、才刃クンは管理室の探索をしてないんだよ?夜時間中に管理室に入る方法なんて知ってるわけないよ。」

財原「それだって、入田クンの嘘かもよ?ホントは、こっそり持ち場を離れて生物室を探索してたのかもしんねーじゃん。」

不動院「それはないと思います。入田殿は、私共と一緒に探索をしていた所をこの目ではっきりと確認しましたので。」

財原「あ、そう。」

不動院「やはり、入田殿には犯行は無理だったという事ですね…」

 

 

「その言葉、ブッ飛ばしてやるぜ!!」

 

反論

 

 

 

狛研「…成威斗クン?」

舞田「俺、バカだから難しい事はわかんねェけどよ。叶。お前の推理はおかしいぞ!!」

財原「そーだそーだ!」

入田「おかしいって…僕は嘘なんてついてないよぉ…」

舞田「悪い才刃。それは、俺の考えを証明してから考えさせてくれ。かかってこい!!一対一(サシ)で勝負してやんよ!!」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

舞田「確かに、叶。お前の言う通り、才刃は夜時間中に保管室だっけ?に入る事はできなかった。それはいい。」

入田「そうだよぉ。僕は、管理室に入れないんだよぉ…」

舞田「けどな!!!」

入田「ヒッ…!(ビクッ」

舞田「死体を入れたのが夜時間じゃなかったとしたらどうよ!?才刃は、死体を生物室に隠して、朝に取り出して水槽に入れた !!これが俺の答えだ!!」

今の成威斗クンの発言はおかしい!

 

生物室に隠して、朝に取り出して水槽に入れた⬅︎【雪梅ちゃんの証言】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「成威斗クン。それはあり得ないと思うよ。」

舞田「なんでだ!?」

狛研「だって、生物室の点検に来た雪梅ちゃんが、生物室に死体は無かったって言ってたんだよ?だから、生物室に死体を隠して朝に水槽に入れたっていうのは無理があるよ。」

財原「でもさぁ、点検に来たなら、なんで羽澄サンの血には気付かなかったの?」

狛研「…雪梅ちゃん。生物室を点検した時、部屋の電気は付けた?」

朱「イイエ。懐中電灯持って、グルっと一周したダケデス。」

狛研「だったら、血に気付かなくても無理ないよ。血が付いたっていってもたった数滴だし、しかも机の死角だったからね。でも、死体がなかったのは確かなんでしょ?」

朱「ハイ!死体あったら、皆サン呼んでマス!」

狛研「ほらね。やっぱり、死体を生物室に隠しておくのは無理だったんだよ。」

財原「ふーん。でもさぁ、だからって入田クンの疑いが晴れるわけじゃないだろ?」

入田「だから、僕じゃないよ…!」

財原「オマエは黙ってろ殺人犯。俺は今狛研サンに聞いてんの。」

狛研「どうしても才刃クンを犯人にしたいのかい?」

財原「だってコイツ、クロ臭漂う怪しさMAXサイコドチビじゃん。俺は間違ってないね。」

入田「そんな、ひどい…」

財原「うるさいよゴミが。とにかくさぁ、どっちが正しいのか白黒ハッキリさせようぜ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「さっき、朱サンが死体は無かったって言ってたけど、もしかしたら入田クンとグルなのかもよ?」

朱「ワタシ、才刃サン庇う理由アリマセン!」

財原「ふーん。じゃあさぁ、朱サンの知らないような隠し扉とかに死体を隠してたとか…」

入田「そんなの知らないよぉ…!」

不動院「忍者屋敷じゃないんですから…」

財原「まあ、何にせよ入田クンが羽澄サンをお料理した後、管理室に忍び込んで死体を水槽の中にブチ込んだのは間違いないよね?」

狛研「うーん。それはちょっと違うんじゃないかな?」

 

管理室に忍び込んで⬅︎【管理室の入り口】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「それはあり得ないと思うよ。」

財原「にゃんでー?」

狛研「だって、才刃クンは、管理室に入った事が無いんだよ?」

財原「どーゆー事?」

狛研「あの管理室、外から見た床の高さと、中から見た床の高さが微妙に違うんだ。ボクも、それに気付かなくて最初転んじゃったしね。それでね、実は、ボクと同じ失敗をした人がもう一人いたんだよ。」

不動院「もしかして…」

狛研「そう。才刃クンは捜査中、それに気付かずに管理室に入ろうとして転んじゃったんだよ。もし一回管理室に入った事があるなら、こんなミスしないよね?だから、才刃クンは管理室に入った事がなかったんだよ!」

財原「そんなの、入田クンの演技かもしれないだろー?本当は入った事があるけど、狛研サンを騙すためにわざと転んだのかもしんねーじゃん。」

入田「そんな事してないよぉ…本当に、知らなくて転んじゃったんだよ!」

財原「嘘つけよ。殺人犯の戯言なんて信用できるワケねーだろーが。まー、じゃあ100不可思議歩譲ってそこのシリアルキラーが管理室に入った事がなかったとするよ?でも、管理室に入らずに死体を水槽に入れる方法があったとしたら?」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「みんなさぁ、捜査の前半で、クマちゃんが何したか覚えてる?」

癒川「ええと… 水槽内の魚の移動…でしょうか?」

財原「そっ!つまりだよ?魚を移動させる先があったって事じゃん!入田クンは、お魚さんが移動される場所に死体をブチ込んだんだよ!」

なるほど、貯水タンクを使った犯行か。

確かに、それなら管理室に入らなくても犯行は可能だし、一見筋が通ってるように思える。

…だけど。

 

お魚さんが移動される場所に死体をブチ込んだ⬅︎【貯水タンク】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「残念だけど、その仮説は間違ってるよ。」

財原「えー?なんでー?」

狛研「確かに、魚と水を移動させておくための貯水タンクはあったよ。でも、そこは普段開放されてないんだよ。ボク達が入れるわけないよ。」

財原「あ、そっかー。まあ、言われてみればその通りっすわー。はーい、よかったねでちゅね入田クーン。チミの無実が証明されまちたー!」

入田「黙れ成金クソヤロー!!散々僕ちゃんを悪者扱いしやがって!!5億回土下座しても許さんぞ!!」

財原「うるせぇなあ。別に土下座する気無いし許してもらうつもりもねーから。慰謝料やるからそれでいいだろ。ほい金。」

入田「お金の問題じゃないのだ!!そんなもので簡単に踊らされる僕ちゃんじゃ…え、嘘。こんなに…?」

詩名「おい。」

穴雲「うーん。じゃあ、とりあえず入田君の疑いは晴れたって事でいいのかな。ところで、犯人が羽澄さんを水槽に入れたのは一体いつなんだろうね?僕は夜だと思うんだけど。」

日暮「いやいや、朝だよ。だって、夜時間は管理室に入れないじゃん。それに、夜時間はみんな寝ちゃってるしねー。」

不動院「そう思わせる為の罠かもしれません。私も、穴雲殿に賛成です。」

詩名「あーあ、意見が分かれちゃったねぇ。」

栄「と、いう事は…マジかー。オレ、アレ嫌いなんだよなぁ。」

 

『フッフッフ!また意見が分かれましたか!アナタ達、本当に喧嘩が大好きですねぇ!!そういう時は、ワタクシの出番です!あポチッとな!!』

 

ベルさんが席の装置を操作すると、ボク達の証言台が宙に浮いた。

 

入田「うっひょぉおおおおおお!!やっぱこれ楽しいのだー!!」

栄「うぇええええ…酔う…マジで下ろして…」

 

証言台が二つの陣営に分かれた。

 

 

 

意見対立

 

 

 

《水槽に死体を入れたのはいつ?》

 

【今朝だ!】財原、栄、詩名、日暮、翠、舞田、癒川

 

【昨晩だ!】穴雲、入田、神座、狛研、朱、不動院、ラッセ

 

 

 

ー議論スクラム 開始ー

 

財原「だ、か、らぁ!死体を入れたのは今朝だっつってんじゃーん!」

「星也クン!」

穴雲「僕は、今朝一番に来たけど、誰かが何かしてる様子は無かったよ?」

日暮「だと、みんな寝ちゃってるから犯行は無理なんじゃないの?」

翠「ピィ!ピィピィ!(あげはの言う通りだよ!夜時間は管理室に入れないよ!)」

「ラッセクン!」

ラッセ「貴様と一緒にするな。現に、に外をほっつき歩いてた奴がいただろう。」

詩名「管理室に入れないなら、死体を入れられないだろ〜♪」

「ゐをりちゃん!」

神座「…夜、管理室………入る、方法、ある…かも…」

栄「やっぱ、舞田や財原の言う通り、生物室に死体を隠してたんじゃねえの?」

「雪梅ちゃん!」

朱「ワタシ、生物室点検シマシタ!死体、ありませんデシタ!」

癒川「ですが、水槽に死体があったら普通気付きませんか…?」

「剣クン!」

不動院「朱殿が生物室を点検した時と違って、直接探してはいませんから… 水槽の中に入っていても、死角になっていた可能性はあります。」

舞田「けどよぉ。夜に外を歩いてた奴は、アリバイが証明されたんだろ?」

「才刃クン!」

入田「まだ完全にアリバイが証明されてない奴がいるかもしれないだろ!!」

日暮「みんなしつこいよぉ。もう昨日死体を入れた可能性は潰れたじゃない。」

翠「ピィピィピィ!!(みんないい加減にしてよ!!)」

「ボクが!!」

狛研「可能性が残っている以上、議論は続けるべきだよ!!」

 

 

 

全論破

 

穴雲「これが僕らの答えだ!」

入田「これが僕ちゃん達の答えなのだ!」

神座「………これが、…………私、達の……こた、え……」

狛研「これがボク達の答えだよ!」

朱「これがワタシ達の答えデス!」

不動院「これが私達の答えです!」

ラッセ「これが俺達の答えだ!」

 

 

 

狛研「まだ、昨日死体を入れた可能性が残っている以上、議論は続けるべきだよ。」

穴雲「そうだよ。みんな、もっとちゃんと考えようよ。」

栄「けどよぉ。やっぱまだわかんねぇよ。犯人がどうやって水槽か生物室に死体を隠したのか、よぉ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「んー。わかんね。ス●スケの実とかぁ?」

癒川「ふざけてないで真面目に考えてください…」

舞田「やっぱ隠し扉だろ!」

詩名「んなバカな…」

不動院「硝子のような物で包んで水槽に入れたとか…」

入田「いや、普通にバレるだろ。」

財原「これがウワサのバミューダトライアングルかっ!!」

穴雲「…君、本当にいい加減にしようね?」

剣クンの意見に賛成したい。

 

硝子⬅︎【小さな水槽】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「いや、才刃クン。剣クンの言う通り、犯人はガラスで死体を包んだんだと思うよ。巨大水槽の中にあった水槽がその証拠だよ。犯人は、生物室にあった、人体のパーツがちょうど入るサイズの水槽を6つ用意して、その中に死体を入れて巨大水槽の中に沈めたんだよ。」

入田「はぁああああああああ!!?まさかとは思うが、ガラスが水の中に入って見えなくなったとでも言う気か!?屈折率が全然違うんだからすぐバレるに決まってるだろう!!そんなふざけた推理がまかり通ると思ってるのか!!」

狛研「確かに、普通に水槽に入れたらバレるに決まってるよね。犯人は、死体を入れた水槽に細工をしたんだよ。」

 

コトダマ提示!

 

【シールミラー】

 

「これだ!!」

 

狛研「…シールミラー。犯人は、これを使って水槽の中に死体を隠したんだよ。シールミラーを、死体を入れた6つの水槽全部に貼って、巨大水槽の中に沈めたの。そうすれば、水槽の中にあってもわからないでしょ?」

癒川「シールミラーって…あの、お風呂場とかに貼る薄い鏡ですか…?」

詩名「そうだよ〜♫」

穴雲「なるほどね。水槽には外の魚と水が映るから、外から見れば奥行きと魚の群れに紛れて気付かないって寸法か。仮に水槽の中に鏡がある事に気づいたとしても、まさか鏡の中に死体が入ってるとは思わないだろうし。…でも、仮にそうだったとして、犯人はどうやって朝に死体を出現させたんだい?」

栄「あ、そっか。水槽に死体を入れてから死体が見つかるまで、犯人はずっと水槽の中に死体を隠してたんだもんな。どうやってずっと死体を隠してたんだろうな?」

狛研「…それは。」

 

 

 

死体が朝まで発見されなかった理由は?

 

1.見落とし

2.魚が飲み込んでいた

3.水槽に蓋をしていた

 

 

 

➡︎3.水槽に蓋をしていた

 

「これだ!!」

 

狛研「犯人は、水槽に蓋をしてたんだよ。だから、死体が朝まで発見されなかったんだ。」

穴雲「でも、そうなると逆に死体を出現させる方法がわからなくないかい?わざわざ水槽に入って蓋を開けに行ったわけじゃないんだろうしさ。」

狛研「違うよ。水槽の蓋を開けたのは、犯人じゃないんだよ。」

穴雲「どういう事?」

狛研「犯人は、水槽の中にいるお魚さん達に蓋を開けてもらったんだよ!」

詩名「それって…おいおい、嘘だろ?そんな事できるのかい!?」

狛研「柳人クンは気付いたみたいだね。これが、死体出現トリックのタネだよ!」

 

コトダマ提示!

 

【魚のエサ】

 

「これだ!!」

 

狛研「犯人は、魚のエサでフタをしてたんだよ!!」

舞田「な、なにぃいいいいいい!!?え、エサでフタだと!!?」

狛研「水に溶けないタイプの魚のエサ…犯人は、お魚さん達がフタのエサを食べる時間を計算して、朝に死体が現れるようにフタを作って水槽の中に入れたんだよ!!」

詩名「嘘だろ!?予行演習もなしにそんな事、できるわけがないだろ!」

狛研「確かに、普通の人なら成立し得ないトリックだろうね。でも一人だけ、このトリックが使えた人がいるんじゃないかな?」

…そう。

普通の人なら、仮に思い付いても絶対実行できないようなトリック。

でも、そのトリックを、ただ一人だけ実行できた人がいた。

でも、正直この人が犯人だなんて信じたくなかった。

それでも真実を暴かなきゃ、ボク達は生き残れない。

この事件の真犯人…それは…

 

 

 

 

 

ー人物指定ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

狛研「…キミが犯人だったんだね、彩蝶ちゃん。」

日暮「ほにゃっ…え、わたし…?」

朱「ソンナ、彩蝶サンが犯人!?そんなの、信じられマセン!!」

栄「そうだぜ。こんなにみんなに優しくて虫も殺さないような子が羽澄ちゃんを殺しただなんて…正直ありえねェだろ!」

ラッセ「フン。貴様ら、殺人犯に同情する気か?おい、触角帽子。この鳥娘が犯人だというなら、その証拠がある…そうなんだな?」

狛研「うん。だって、よく考えてみてよ。魚のエサで蓋をしてちょうどいいタイミングで死体を出現させるなんて、よっぽどお魚さんに詳しい人じゃないと実行できないよね?それができるだけの知識を持ってる人は、彩蝶ちゃん。キミだけなんだけど。」

日暮「うーん…かなえちゃん。ごめんね?ちょっと言ってる事がよくわからないかなぁ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

日暮「なんでわたしが犯人になるの? わたしは犯人じゃないって言ってるでしょ?」

狛研「いいや、キミ以外あり得ない。」

日暮「あのさぁ。わたしはその時間、翠にごはんをあげてたって言ったよね?かなえちゃん、なんでわたしの事信じてくれないの?」

翠「ピィ!ピィピィ!ピィ!(あげはの言う通りだよ!私はちゃんとごはんをもらったよ!信じてよかなえちゃん!)」

狛研「あのね、彩蝶ちゃん。そもそも夜時間に外にいた事自体怪しいの。生物室の探索の担当で、夜時間に外に出た事を認めてて、かつ無実が証明されてないのはキミだけなんだよ。」

日暮「シュエメイちゃんが見てたって言ってるじゃん!」

狛研「事件発生から1時間後に、でしょ?そんなの、アリバイを証明してるうちに入らないよ。」

日暮「わたし、ほんとうに犯人じゃないから。だって、わたしは管理室に入れないじゃない。」

 

わたしは管理室に入れない⬅︎【消えた鍵】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「彩蝶ちゃん。キミなら夜時間中でも管理室に入れたよね?」

日暮「なんで?じゃあ、どうやって入ったっていうのさ。」

狛研「保管室から無くなってた鍵…あれ、盗んだのキミだよね?」

日暮「なにそれ。どういう事?」

狛研「キミは、何らかの方法で保管室から鍵を盗み出して、盗んだ鍵で管理室に入ったって事。違う?」

日暮「はぁ…」

 

 

「まるでスズドリの鳴き声みたいな推理だねぇ。」

 

反論

 

 

 

狛研「…彩蝶ちゃん?」

日暮「きみの推理は、スズドリの鳴き声みたいにうるさいって言ってるの。あ、こんな事言ったらスズドリさんに失礼か。とにかく、ただうるさいだけの戯言に意味はないの。」

狛研「そこまで言うなら、反論してみてよ。」

日暮「いいよー。きみのうるさい推理なんて、わたしが大人しくさせてあげる。」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

日暮「あのさぁ。きみはわたしが保管室から鍵を盗んで管理室の鍵を開けたって疑ってるみたいだけど…どこにそんな証拠があるの?」

狛研「それは…」

日暮「ほらね?何も言い返せないでしょ?だってわたしは犯人じゃないもんね。そもそも保管室にすら入れないんだから、わたしにようこちゃんを殺して死体を隠すなんて事、できるわけないよね?そこまで言うなら、ほら、見せてみてよ。わたしが保管室の鍵を盗んだっていう決定的な証拠をさぁ!」

 

決定的な証拠⬅︎【緑色の羽根】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「…ねえ、彩蝶ちゃん…これ、何?」

日暮「…え?」

狛研「これ、保管室に落ちてたんだけど。翠ちゃんの羽根じゃないの?」

日暮「嘘っ…なんで落ちて…!?…あっ。」

狛研「そう、嘘だよ。引っかかってくれてありがとう。本当はこれ、天理クンが見つけてボクに預けてくれただけなんだよね。そうでしょ?」

財原「そうだよ。実は、俺が保管室で羽根を見つけたっていうのも嘘なんだけどネ☆事前にそこのクソとりっぴの羽根を回収して、わざと落として自分で拾ったんだ♪」

日暮「そんな…てんりくんサイテー!!」

狛研「うん。それはボクも思う。」

財原「えー。」

狛研「でも、これでハッキリしたね。やっぱり、踊子ちゃんを殺した真犯人はキミだったんだよ!!」

日暮「ッ、2人で翠の事を利用してわたしを騙したの!?ひどい!!」

財原「うんうん、ひどいひどい。…けどさぁ。もっとひどいのは、羽澄サンを殺しておきながら、何も知らないフリをして自分だけ助かろうとしてるオマエだろ?いい加減自分の罪を認めろよ殺人犯。」

日暮「やだ!!絶対認めない!!わたしは犯人じゃないもん!!」

財原「あっそ。」

狛研「でも、これでわかったよ。やっぱり、キミは翠ちゃんに鍵を盗ませたんだね。」

朱「確かニ、翠サンなら保管室の扉のスキマ、抜けられマス!」

日暮「違うもん!!翠は関係ない!!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

日暮「わたしが翠に鍵を盗ませた!?バカな事言わないで!!」

狛研「でも、キミの反応を見る限り、そうとしか考えられないよ?」

日暮「違うって言ってるじゃん!!わたしも翠も鍵を盗んでなんかない!!!」

 

鍵を盗んでなんかない⬅︎【翠ちゃん】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「彩蝶ちゃん。翠ちゃんが具合悪そうだけど、どうしたの?」

日暮「えっ…?」

狛研「そういえば、さっきも金属の輪っかを吐き出してたよね?何か飲み込んじゃったんじゃないの?もしかして、鍵とか…」

ボクは、翠ちゃんが吐き出した輪っかを見せた。

財原「あー。確かに、保管室で見た他の鍵のリングと同じ形してるー。じゃあ犯人はそこのカスとりぴっぴで決まりだね。」

日暮「それも嘘でしょ!?こんな形のリング、どこにでもあるじゃない!!」

財原「てへっ。バレちゃった。」

日暮「とにかく、翠は犯人じゃない!!」

彩蝶ちゃん、やけに動揺してるな…

もしかして、翠ちゃんが鍵を飲み込んじゃった事は想定外だったのかな?

日暮「翠、大丈夫!?」

翠「ピ、ィ…」

財原「っはー。人殺しとクズ鳥類のくっさいドラマっすかぁ。いやー、全米が鼻で笑うぜこんなの。はっはっは。しっかし、翠ちゃんもこんな無能なご主人様に拾われちゃって、不憫だよねー。アーカワイソ。」

翠「ギィ!ギィギィ!!(黙れ!あげはをバカにするな!!)」

翠ちゃんは、天理クンの方へ飛んで行った。

財原「お?やんのか?っと、狛研サン。このクソ鳥は俺に任せて、早く日暮サンにトドメ刺しちゃってよ。俺、裁判が長引くの嫌いだからさー。」

狛研「う、うん…」

天理クンのやり方は納得できないけど…

でも、やらなきゃボク達が殺されちゃうんだ。

だったらやるしかない!!

 

 

 

議論開始!

 

 

 

日暮「みんな、翠をいじめてひどい…!!絶対許さないから!!」

入田「いじめてるのは財原だけなのだ!僕ちゃんを巻き込むな!!」

日暮「うるさいうるさいうるさい!!じゃあ言わせてもらうけど、わたしがシュエメイちゃんと会った時、シュエメイちゃんがすぐにわたしの事を報告しなかったのはなんで!?」

穴雲「確かに…人を解体した後なら、返り血を浴びてるはずだもんね。いくら暗いとはいえ、血がべったりついてたら流石に気付くよね?」

朱「ソウですヨ。ワタシが見た彩蝶サン、血、付いてマセンでしタ。」

狛研「それは…」

人を解体した後なのに、彩蝶ちゃんが血を浴びてなかったのはなんでだ…?

…考えろ。

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

「これだ!!」

 

リ バ ー シ ブ ル ノ フ ク

 

【リバーシブルの服】

 

狛研「リバーシブル…表裏どっちでも着られる服を着てたんだよ!!血の付いた面を内側にして着れば、血が着いた事がわからないでしょ?」

癒川「確かに…日暮さんのリバーシブルの服…ひとつしか考えられませんね。」

日暮「何それ!!わたしそんなの知らないもん!!」

狛研「じゃあ教えてあげる。キミが着てたリバーシブルの服をね。」

 

 

 

日暮「リバーシブルの服!?何それ!わたしは犯人じゃない!!」⬅︎ 【彩蝶ちゃんの白衣】

 

「これで終わりだよ!!」

 

 

 

狛研「彩蝶ちゃん。その白衣、リバーシブルで、お母さんが作ってくれた宝物だって言ってたよね?」

日暮「あっ…!!」

狛研「世界に一つしかないなら、もう替えは無いでしょ?夜時間中はランドリールームは使えないし…だったら、その白衣の内側の面に、血が付いてるんじゃないの!?」

日暮「違う!!そんなの、ハッタリだよ!!」

ラッセ「だったら、今すぐ白衣を見せろ。」

日暮「え…?」

ラッセ「貴様がミカン頭を殺してないというなら、その白衣を見せられるだろう?ほら、早くしろ。」

日暮「やだ!!やだやだやだ!!!」

彩蝶ちゃんは、白衣を見せるのを頑なに拒んだ。

 

財原「ったく、しょうがねえなぁ。俺がオマエの罪を認めさせてやるよ。」

天理クンは、左手に翠ちゃんを握っていた。

日暮「翠!!」

財原「…言え。自分がやった事を正直にな。じゃないと、このインコ握り潰すよ?」

癒川「やめてください!!そんなの、卑怯です!!」

財原「はっはは!癒川サン、聖人にでも話しかけてんの?この状況ちゃんと理解してる?コイツに罪を認めさせなきゃ、俺達が死んじゃうんだよ?卑怯もらっきょもあるかよ。さーてと、早くしないと俺の左手にハンバーグができちゃうよ?はい、ごぉ!!」

翠「ビッ…ピギィッ!!」

天理クンが左手に力を入れると、翠ちゃんは鍵を吐き出した。

財原「あっはは、やっぱり飲み込んでたー!はい、よぉん!!」

天理クンは、握る力を少しずつ強くしていく。

財原「さぁん!!」

翠「ギッ…ピギッ…」

財原「にぃ!!」

狛研「やめろ!!!」

財原「いぃち!!」

 

 

 

 

 

「もうやめて!!」

 

 

 

財原「…あ?」

日暮「そうだよ…わたしがようこちゃんを殺したんだよ…だからもうやめて…!翠は、こんなひどい友達を助けようとしてくれてただけなの!!翠は何も悪くない!!やるならわたしを殺して!!」

翠「ピ、ィ…」

財原「ははっ、あははっ!ぎゃはははははははは!!ウケる!こんなおかしな事あるかよ!!コイツ、鳥を助けるためにあっさり白状しやがった!!」

狛研「黙れ!!…彩蝶ちゃん。ボクが引導を渡してあげる。」

日暮「うっ、うぅっ…」

狛研「これが事件の真相だよ!」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

Act.1

事の発端は、ボク達に配られた動機ビデオだった。

多分、犯人にとってそこに重要な何かが映り込んでたんだろうね。

犯人は、みんなが寝てる間に一人、殺人事件の計画を立ててたんだ。

そのターゲットは、ダンスの練習で生物室に残っていた踊子ちゃんだった。

 

Act.2

犯人は、雪梅ちゃんが生物室から出て行くタイミングを狙って、生物室に忍び込んだ。

そして、あらかじめ用意していたノコギリの柄で踊子ちゃんの頭を殴った。

でも、それでトドメを刺せなかったんだ。

だから犯人は、気絶した踊子ちゃんの手をロープで縛って、生物室の流しに顔を突っ込んで溺死させた。

 

Act.3

踊子ちゃんが死んだ事を確認した犯人は、床にビニールシートを敷いて、その上で踊子ちゃんをノコギリで解体した。

そして、十分な大きさの生物室の水槽を6つ用意して、それに踊子ちゃんの死体を詰めた。

その後、あらかじめ用意しておいたシールミラーをガラス面に貼った。

この時、犯人は自動で水槽の蓋が外れる仕掛けを作ったんだ。

犯人は、固めた魚のエサで水槽を蓋した。

 

Act.4

管理室に入るために犯人は、翠ちゃんに保管室にある鍵を盗ませたんだ。

そして、管理室の鍵を開けた犯人は、水槽を一個ずつ運んで、巨大水槽の中に落とした。

全ての水槽を巨大水槽の中に隠し終えた犯人は、ビニールシートを回収し、血のついた白衣を裏返して着て外に出た。

この時、ノコギリの回収と床に付いた血の証拠隠滅を忘れていたのが、犯人の致命的なミスだったね。

まあ無理もない。犯人は、普段は少しふわっとしてる人だったからね。

 

Act.5

そして、犯人は何事もなかったかのように生物室から出ていった。

そして、帰り道に雪梅ちゃんとすれ違った。

この時雪梅ちゃんが犯人の犯行に気付かなかったのは、犯人がリバーシブルの白衣を着てたからなんだろうね。

そして、犯人はゴミ処理場にビニールシートを捨てに行って、そのまま独房に戻った。

 

Act.6

翌朝、巨大水槽の中の魚達が、水槽の蓋になっていたエサを全部食べ尽くして、蓋がなくなった水槽から踊子ちゃんの死体が浮き出てきた。

それを星也クン達が見て、その後犯人もアナウンスを聞きつけて何食わぬ顔で踊子ちゃんの死体を見ていたというわけさ。

でも、実は事件が終わった後、犯人にとって想定外の出来事が起こっていた。

なんと、翠ちゃんが管理室の鍵を飲み込んじゃってたんだ。

きっと、友達の犯人を庇おうとして飲み込んじゃったんだろうね。でもそれが、結果的に犯人を追い詰めてしまっていたんだ。

 

「これが事件の真相だ!…そうだよね?」

 

 

 

「【超高校級の生物学者】日暮彩蝶ちゃん!!!」

 

 

 

日暮「うっ、うぅっ…ごめん、ごめんなさい、ようこちゃん…翠…うっ、うぁああああああぁあああああああああああぁあああああああああ!!!」

財原「あーあ、なかなか往生際の悪い女だったね。さーてと、しょーもない事に貴重な時間を割いちゃったし、巻きでいこ巻きで!クマちゃん!投票始めちゃっていいよー!」

モノクマ『うぷぷ、もー、せっかちだなー。でももう答えは出たみたいだし、始めよっか!投票ターイム!』

モノベル『必ず、一人一票投票してくださいね。もし投票しなかったら、校則違反とみなしておしおきします!』

 

証言台にボタンが現れた。

ボクは、迷いながらも彩蝶ちゃんに投票した。

 

モノクマ『うぷぷ、全員投票し終わったようだね?ではでは…結果発表ー!!』

モノベル『皆様の運命や如何に!?』

 

 

 

モニターにVOTEと書かれたスロットが表示され、ドラムロールと共にボク達の顔のドット絵が描かれたリールが回転する。

リールの回転が遅くなり、ついに止まった。

 

リールには、彩蝶ちゃんの顔が3つ並んでいた。

スロットからは、ボク達の勝利を祝福…いや、嘲笑うかのように、ファンファーレと共に大量のメダルが吐き出された。

 

 

 

 

 

学級裁判閉廷!



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第2章 非日常編④(おしおき編)

ちょっとマズい表現があった自覚があるので、編集しました。


【???】

 

 

 

ザッ…

 

「そうだよ。アタシがーーーーーーーだったの。」

 

ザザッ…

 

ザザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

VOTE

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶 13票

 

【超高校級の資産家】財原天理 1票

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也 0票

 

【超高校級の工学者】入田才刃 0票

 

【超高校級の不運】景見凶夜 0票

 

【超高校級の???】神座ゐをり 0票

 

【超高校級の幸運】狛研叶 0票

 

【超高校級の栄養士】栄陽一 0票

 

【超高校級の詩人】詩名柳人 0票

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵 0票

 

【セキセイインコ】翠 0票

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅 0票

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子 0票

 

【超高校級の侍】不動院剣 0票

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗 0票

 

【超高校級の看護師】癒川治奈 0票

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン 0票

 

 

 

『うぷぷぷ!!お見事大正解ーーー!!!【超高校級のダンサー】羽澄踊子サンを殺したのは、ななななんと!動物大好きな優しくてひたむきなお嬢様の皮を被った殺意MAXイカレ殺人鬼、【超高校級の生物学者】日暮彩蝶サンでしたー!!』

『フッフッフ。今回は、翠様以外は全員満場一致で日暮様に投票していました!』

 

 

「ごめん…ごめんなさい…うっ、うぁああぁああ…」

 

彩蝶ちゃんは、証言台にしがみつきながら泣いていた。

「日暮殿…どうして…どうして羽澄殿を殺してしまったのですか!?」

「そうデスヨ!!ナンデ…二人とも、すごく仲良しダッタじゃナイデスカ!!」

 

「…ごめん、みんな゛…わだし、おも゛いだしたの…」

 

「思い出した…?一体何を…」

『うぷぷぷ!気になるよね!なんでこの女が、一番の親友だった羽澄サンを殺しちゃったのか!それを教える前に、ひとつオマエラに教えておかなきゃいけない事があるんだ!』

「何ですか…それは…」

『実はね、羽澄サンと日暮サンは、出逢ったのがこれで初めてじゃないんだな!』

「どういう事だ…!?」

『実はこの二人、小学校時代のクラスメイト同士だったんだよね。元々身体の弱かった羽澄サンを、日暮サンの両親が治療して、日暮サン自身も彼女が早く元気になるように羽澄サンを励ましていたのです!そんな事があってから、二人は宝物を交換するほどの大親友になったんだよ!』

『フッフッフ。尤も、その事を覚えていたのは羽澄様だけだったようですが。全く、親友の事を忘れるなんて、酷い女ですねぇ!!』

「そんな…だったら何故、日暮殿はご親友であった羽澄殿を殺してしまったのですか!?」

『それは、二人が通ってた小学校で起こった、『八ツ阪小学校虐殺事件』が大いに関係してるんだよ!』

『八ツ阪小学校虐殺事件』…?

確か、当時八ツ阪小学校の5年1組に在籍してた【超高校級の人狼】暁裴駑が、クラスメイトと教師を皆殺しにした事件だよね…

それが、二人とどう関係してるっていうの…?

『今から流すのは、日暮サンにお配りした動機ビデオです!詳しくは、こちらの映像をご覧ください!!』

 

 

 

 

 


 

 

 

スクリーンには、小学校の映像が映った。

校庭では、小学校高学年くらいの女の子が、他の女の子達に鳥を手懐けているところを見せている。

…多分、彩蝶ちゃんだ。

『すごーい!あげはちゃん、そんなにたくさん鳥さんとお話できて!』

『ねえねえ、あたしにもできる!?』

『うん、この子達は、人懐っこいからね!すぐにみんなとお友達になれるよ!』

『すごーい!』

『ねえ、この後うちに来ない?わたしのママが、今日ケーキ焼いてくれるんだってー。』

『わーい!行く行く!』

『あげはちゃんは、かわいくって頭が良くて、動物さんたちと仲良しで、しかもお金持ちのお嬢さま!ホント憧れちゃうよねー!』

『えへへ…』

『ねえ、あげはちゃん!今度、みんなでピクニックにでもいkkkkkkkkkkkkkkk…あっ、い、いかnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnn…』

「!?」

映像が急に乱れ、画面が砂嵐になった。

 

ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ

 

 

 

プツン

 

砂嵐が止んで、映像が元に戻った。

でも、そこにはさっきまでの小学校はなかった。

教室は真っ赤に染まり、床には子供達の無惨な亡骸が転がっていた。

そこには、ただひとりの黒い影があった。

その影は、甲高い声で不気味に笑う。

 

『きひっ…ひひっ…ひひひひひひっ…あははははははははははは…!』

 

画面がまた切り替わり、何かの部屋が映った。

そこには、二人の大人と踊子ちゃんと思われる女の子がいた。

 

『本当に、君が殺したのかい?』

踊子ちゃんは、笑いながら答えた。

 

『…そうだよ。アタシが殺したんだ。アタシが暁裴駑だったの。』

『!!?』

『なんであんな事したんだ!!』

『あのさぁ、殺人鬼にそんな質問する意味ある?…殺したかった。ただそれだけよ。』

『…!!』

『ひひっ、きひひっ…ははっ、あはははははははははは!!』

踊子ちゃんは、不気味な笑みを浮かべながら高笑いした。

 

そこで映像は終わっていた。

映像は切り替わり、劇場のような場所が映し出された。

劇場の幕の前には、クマさんが立っていた。

 

『クラスのみんなの人気者で、クラスのアイドル的存在だった日暮彩蝶サン!いやあ、実に可愛らしいですね!しかし、クラスメイトに何かあったようですね!?その中でひとり笑う影…そして、羽澄サンがまさかの自白!?では、ここで問題です!!日暮サンの大好きだったクラスのみんなを皆殺しにした犯人は、一体誰だったのでしょうかっ!!正解は、自分の目で確かめてみてねー!!』

 

 

 


 

 

 

 

 

映像はそこで終わっていた。

頭が追いつかなかった。

そんな、踊子ちゃんが…暁裴駑…!?

「では、まさか…」

 

「…ごめんみんな。わたし、どうしてもクラスのみんなのかたきを討ちたかったの。」

 

彩蝶ちゃんは、涙を流しながら語り始めた。

「みんなと過ごした時間は、すっごく楽しかった。ありがとう。…でもね、わたしの本当の友達は、あの日殺されちゃったみんなだけなんだ。わたしは、みんなを殺した犯人をずっと許せなかった。いつか絶対犯人を同じ目に遭わせてやろう、そう思いながら今まで生きてきた。忘れちゃってたけど、この映像を見てそれをはっきり思い出した。あの事件の犯人はようこちゃんだった。」

「彩蝶ちゃん…」

「だから殺したの!!みんなを…わたしの友達を殺しておいてのうのうと生きてるあの子が許せなかった!!それで、今までの色んな気持ちが溢れ出して、目の前が真っ赤になって…気がついたら、ようこちゃんを殺しちゃってた!!でも、わたしは間違ってない!!みんなのかたきを討ったんだもん…!人の命をなんとも思ってない…あんな子、生きてちゃいけないんだよ!!」

「そんな…ただの私怨じゃないですか…!羽澄殿が過去に何をしていようと、関係ありません!貴女は人を殺したんですよ!?」

剣クンは、涙を流しながら彩蝶ちゃんに訴えかけた。

「…関係ない?そんなわけないじゃん!!!きみにわたしのなにがわかるの!!?ゆいちゃんも、まきちゃんも、たろうくんも、しゅんくんも…みんなあの子が殺したんだよ!!もうみんなは戻ってこない…わたしの友達を返して…返してよぉお!!!うわぁああああああああん!!!」

「ッ…!」

「ピ、ィ…!あ、げは…!」

「翠、こんなわたしが友達で本当にごめんね。わたしが友達にならなきゃ、きみはもっと幸せに生きられたはずなのに…」

「ピィ!ピィピィピィ!(そんな事ない!私はあげはと一緒にいて楽しかった!)」

「…嬉しいなぁ、そう言ってくれて。わたしはもう助からないけど、どうかきみだけは逃げて。生きて、みんなと一緒に外に出て。」

「ピィピィピィ!(あげはと一緒じゃなきゃいやだ!)」

「ダメ。ようこちゃんを殺したわたしは、おしおきを受けなきゃいけない。…さあ、クマちゃん。始めちゃって。」

 

 

 

「くくく…はははっ…ギャハハハハハハハハハ!!!ヒャーッハッハッハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

 

天理クンは、ひとりお腹を抱えて大笑いしていた。

「あーっはははは!!ウケる!!っはー、こんな事ってある!?マジで面白いんだけど!」

「てんりくん!何がおかしいの!?」

「いやあ、世の中こんな皮肉な事ってあるんだね。あー、ケッサクケッサク!」

「皮肉…?どういう意味よ!?」

「…それは、オマエ自身の胸に手を当ててよーく考えてみろよ。」

天理クンはさっきから何を言ってるんだろう…?

 

 

 

『はーいストップ!!そこまで!!ったく、もうちょっとこの茶番劇を楽しもうと思ってたのに…全くもう、ネタバレすんのが早いようさんくさい原クン!!』

「しいましぇーん。」

「クマちゃん…!?一体何を言って…!」

『全く、オマエはほんっとうに救いようのないクズ女だよねぇ!!皮肉とはまさにこの事だよ!!』

 

 

 

 

 

『羽澄サンは、オマエのためにあんな事言ったっていうのにさぁ!!』

 

 

 

 

 

…え?

 

 

 

「わたしのため!?一体どういう意味!?」

『羽澄サンは、本当はクラスメイトを一人も殺してないのに、あえて自分が殺したって言ったって事!…そりゃあ、恩人の娘を庇いたくもなるよね!だって…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『暁裴駑の正体は、何を隠そう日暮サン本人だったんだから。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?

 

 

 

 

 

『【超高校級の人狼】暁裴駑は、月夜にのみ現れて無差別に人を斬り裂く殺人鬼です。その正体は誰にもわからなかったのですが、実は暁裴駑が現れる場所には、必ずとある少女がいるという事が分かったのです。その人物こそ、何を隠そう日暮様でした!』

『うっぷぷぷ!ネタバレしちゃうと、日暮サンはね、実は夢遊病だったのです!暁裴駑は、日暮サンが完全に眠りについた時に現れる別人格…つまりは二重人格だったんだよ!あの日クラスのみんなを皆殺しにしたのは、他の誰でもない…暁裴駑としての日暮サンだったのです!』

「そんな…!」

『では、なぜ羽澄サンが、自分が暁裴駑だと言ったのか…それはこちらのVTRをご覧ください!』

 

 

 

 

 


 

 

 

スクリーンには、小学校の映像が映った。

教室は真っ赤に染まり、床には子供達の無惨な亡骸が転がっていた。

そこには、ただひとりの黒い影があった。

その影は、甲高い声で不気味に笑う。

 

『きひっ…ひひっ…ひひひひひひっ…あははははははははははは…!』

 

その影は、彩蝶ちゃんだった。

 

 

 

『…。』

そこへ、踊子ちゃんが教室に入ってきた。

『…!!?…あ、あああ…アゲハ…!?アンタ、何やってんのよ…!』

『…。』

彩蝶ちゃんは、不気味な表情からいつもの表情に切り替わった。

『…あれっ?よ、ようこちゃん…?…え、何これ…一体どうなってるの…!?みんな、起きてよ!ねえ、ねえ!!』

『…もしかして、またハイドが現れたのか?』

『ハイド?何それ…わたし、何も知らない!!気付いたら、みんながこんな事になってて…』

踊子ちゃんは、あたりを見回して、そして何か覚悟を決めたような表情で言った。

『…そうだよ。アンタは何も知らない。何もしてない。みんなを殺したのはアタシだ。』

『…え!?ちょっと待って、何言ってるの…!?何考えてるのよようこちゃん!!』

『アゲハ、この大量の死体をどうにかするのは無理だ。みんなはアタシが殺したって事にしておくから、アンタは今のうちに逃げな。』

『なんで!?ねえ、なんでそんな事言うの!?ようこちゃんは、みんなを殺したりしてないのに…!!』

『…アゲハ、アタシはアンタのお父さんに…日暮先生に助けられた。そして、アンタにも元気を貰った。アンタのおかげでアタシは生きられた。アンタ達がいたから、アタシは諦めかけてた夢を追いかける事ができた。アタシに、夢をくれてありがとう。』

『ようこちゃん…!』

『…だから今度はアタシがアンタの夢を守る番だ。アンタ、獣医になるって夢があるんだろ?こんな所で台無しにしていいのかよ!?』

『でも、ようこちゃんはどうなるの…!?』

『アタシの事なら心配すんな。アタシは、アンタに十分すぎるくらいたくさん貰った。今度はアタシがそれを返す番だ。ほら、人が来る前に早く逃げな!!』

『ッ…!!』

 

彩蝶ちゃんは、学校を飛び出してただひたすら走った。

『ようこちゃん…ごめん、ごめんね…!』

 

 

 


 

 

 

 

 

「そんな…!」

「嘘でしょ…こんな事って…」

「うっ、うぅううううう…踊子サァン…!」

剣クン、治奈ちゃん、雪梅ちゃんは涙を流しながら映像を見ていた。

「クッソ…こんなのあんまりじゃねえかよ…!」

「うぉおおおおおおおおお!!踊子ぉおおおおおおおおおおお!!!」

「…誰も幸せになれない…哀しい話だね。」

「皮肉とはまさにこの事だねぇ。」

陽一クンと成威斗クンは涙を流しながら悔しがっていた。

星也クンはメガネを押さえながらモニターから目を逸らした。

柳人クンは帽子を深く被った。

「こんなのって…あんまりなのだ…!」

「世の中とは、常に理不尽で不条理だ。…悪い意味で勉強になったな。」

「…………………………舞踊家。」

「何この茶番劇。はー、くっさw」

才刃クンは、驚きながら映像を見ていた。

ラッセクンとゐをりちゃんは、少し離れたところで傍観していた。

天理クンは、これを面白がって見ていた。

『全く、恩を仇で返すとはまさにこの事だね!自分を庇ってくれた親友を逆恨みして殺しちゃうなんてさぁ!!』

『フハハハハハ!羽澄様は、自分を助け、さらにダンサーになるという夢を応援してくれた日暮親子に心の底から感謝していて、いつか恩返しがしたいと考えていました!そして、あの惨状に、クラスメイトの屍の上でうろたえる日暮様…羽澄様は、あの場で何が起こったのかを一瞬で察しました。そして、恩人である日暮様への恩返しのため、自ら罪を被ったのです!その後、羽澄様は殺人犯として周りから責められ、家族もろとも迫害を受けました。それでも羽澄様は迫害に耐え、自分が犯人だと言い続けました。全ては、自分に夢を与えてくれた恩人のためにね。』

『一方で、当の真犯人の日暮サンは、暁裴駑が出現した影響で事件の詳細は全く覚えておらず、それどころかなんとも都合が良いことに、事件のショックで羽澄サンが罪を被ったくだりの記憶が全てすっぽりと抜け落ちてしまったのです!もちろん、彼女の両親は娘の病気の事を知っていましたが、自分達の面子を保つため、娘の病気を()()()()()にしてしまいました!こうしてほとぼりがおさまり、全てを綺麗さっぱり忘れた日暮サンは両親に愛されながらすくすくと…もとい、のうのうと立派に育ちました!』

『そして数年後、羽澄様と日暮様はこの学園で再会しました。日暮様は、羽澄様が元クラスメイトだとも知らずに、羽澄様と仲良くなりました。しかーし!彼女は思い出してしまったのです!あの日の出来事を…しかも、自分の都合が良いように記憶を捏造してね!!こうして、大恩人を勝手に逆恨みし、挙げ句の果てにその手にかけてしまったのです!でめたしでめたし!』

勝手に逆恨み…?

ふざけるな!

コイツら、絶対こうなるように仕向けたんだ…許せない…!

 

 

 

「嘘でしょ…じゃあ、わたしがした事って…」

彩蝶ちゃんの目からは、大粒の涙がこぼれた。

その表情は、絶望で染まっていた。

 

 

 

 

 

「うぁあ゛ぁああああああああああああああああああああああぁあああああああああああああああああぁあああああああああああぁあああああああああああぁああああああああ!!!」

 

 

 

 

彩蝶ちゃんは、頭を掻き毟って、証言台に何度も顔を叩きつけた。

顔は血塗れになり、メガネはバキバキに割れていた。

そこにはもう、天使のように優しくてかわいい彩蝶ちゃんの姿は無かった。

「うっわ、壊れたw」

『うっぷぷぷぷぷ!やっと自分のした事の愚かさに気づいたよ!!オマエみたいなシリアルキラーゴミ女が、人様と同じ空気を吸えるわけないの!と、いうわけで、神聖な裁判場にいつまでもゴキブリがいられちゃ不愉快なので、おしおきを始めちゃいまーす!!』

「あぁああああああああぁぁぁ…ごべんなざい…ごべんなざい…!」

『フッフッフ!今更反省しても遅いですよ!もう羽澄様は戻ってきません!おや、これは何方のセリフでしたっけ?』

『それでは!【超高校級の生物学者】日暮彩蝶サンのために!スペシャルなおしおきを用意しました!』

 

「ごべんだざい、ようごちゃん…ごべんなざい…」

 

『ではでは…おしおきターイム!!』

 

 

 

「こ゛め゛ん゛な゛さ゛ぁ゛あ゛ああああああああああああああああああああああい!!!」

 

 

クマさんはハンマーを取り出すと、せり上がってきた赤いボタンをピコっと押した。

ボタンの画面に、ドット絵の彩蝶ちゃんが連れ去らせる様子が表示された。

さらに、連れ去られる彩蝶ちゃんについていく翠ちゃんの様子も表示された。

 

 

 


 

 

GAME OVER

 

ヒグラシさんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

 

 

日暮は、首に首輪のようなものを付けられ、上へ上へと昇っていった。

翠も、連れ去られる日暮に、財原に握り潰された羽を羽ばたかせ、よろめきながらついていく。

日暮を釣り上げていたワイヤーが突然切れ、日暮は干し草やタイヤや水飲み場などが設置された場所へと落ちた。

あたりを見渡すと、どうやら動物園の檻のような空間になっているらしい。

目の前には鳥カゴを持った、飼育員のような服を着たモノベルがいた。

鳥カゴの中には翠がいる。

檻の向こう側には、小学生の格好をしたモノクマ達がニヤニヤしながら檻の中の様子を見ていた。

そこで文字が映し出される。

 

 

 

ようこそ絶望パークへ!

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

処刑執行

 

 

 

モノベルは、服のポケットをゴソゴソと漁ると、注射器のような物を取り出した。

モノベルは、ニヤニヤしながらカゴの中の翠を取り出し、注射器を翠に刺した。

日暮は、翠を助けようと、モノベルに立ち向かおうとしたが、手足につけられた鎖がそれを許さなかった。

注射を刺された翠は、目をグルグルと回し、穴という穴から汁を吹いた。

そして、ボコボコと内側から膨れ上がり、元のサイズの10倍以上に膨れ上がった。

目の焦点は合わず、羽はところどころ抜け落ち、口からはボタボタと異臭のする涎を垂らすその姿には、もはや翠の面影は無かった。

さすがの日暮も、これには顔を真っ青にしながら失禁していた。

モノベルは、それを確認するとすぐさま檻から出て行った。

すると、翠はけたたましい鳴き声を上げながら、ドスドスと歩を進め、日暮の右肩に喰らいついた。

翠は、そのまま日暮の右肩を喰いちぎった。

日暮は、血飛沫とともに悲鳴を上げた。

しかし、その声は外にいる仲間達に届く事は無かった。

痛みで意識が飛びそうになるなか、日暮の視界にボウガンが映る。

ボウガンは、手を伸ばせば届く位置にあった。

日暮は、自分が今置かれている状況を理解した。

 

翠を撃ち殺せば、自分が助かる。

 

日暮は、ボウガンに手を伸ばそうとしたがためらった。

その瞬間、翠は脇腹に喰らい付いた。

日暮は、それでもボウガンを手に取らなかった。

日暮は、さらに翠に喰われた。

翠が、一方的に日暮の身体を貪っていく。

日暮は、どんなに喰われても、決して親友を撃ち殺すという決断には至れなかった。

日暮は、全身を啄まれ、満身創痍になっていた。

翠に突かれた衝撃で、胸の小鳥のワッペンが落ちた。

翠は、それをお構いなしに踏み潰し、日暮に突進した。

 

 

 

プツン

 

 

その瞬間、日暮の中で大事な何かが切れた。

日暮は、躊躇なくボウガンを手に取ると、寸分の狂いもなく翠の右目にボウガンの矢を撃ち込んだ。

日暮は、壊れたような笑みを浮かべながら、何度もボウガンの矢を放った。

これに激昂した翠は、日暮の頭に齧り付き、嘴で日暮の頭を潰した。

日暮は、脳漿をブチ撒けながら息絶えた。

翠は、けたたましい鳴き声を上げながら、動かなくなった日暮を骨も残さず貪った。

それを見たモノクマ小学生のうちの一匹が白衣に早着替えし、手元にあるドクロマークが描かれたボタンを押した。

すると、檻の手前でシャッターが閉まり、四隅に設置された換気扇から紫色の煙が出た。

部屋中が煙に包まれると、翠は血反吐を吐いてその場に倒れた。

煙が晴れる頃、翠は力尽きて横たわっていた。

その表情は、絶望で染まっていた。

それを見たモノクマとモノベルは、大笑いしながらハイタッチした。

 

 

 


 

 

 

『イヤッホォオオーイ!!エクストリィイイイイム!!いやー、サイッコーだねぇ!!』

『フッフッフ…フハハハハハハハハハハハ!!!いやはや、実に清々しい気分ですよ!!殺人鬼の人狼が処刑されたのですから!!皆様、もっと喜んでください!!』

「嘘…そんな、日暮さんと翠さんが…!」

「彩蝶サン…翠サァン…!!」

「クッソ…なんでこうなっちまうんだよ…クソッ!!」

「テメェら…よくも彩蝶と翠を…絶対許さねェ!!!」

「うげぇっ…気分の悪いもの見たのだ…」

「…フン、下衆め。」

「そんな…幼い動物にまでこんな外道な事をするとは…」

「日暮さん…翠ちゃん…」

「…日暮君、翠君。よっぽど酷い殺され方をしたんだね。」

「………生物学者、翠……………」

「いやー、今回も楽しかったなー。」

治奈ちゃんと雪梅ちゃんは、その場で泣き崩れた。

才刃クンは、目の前の惨事に吐き気を催していた。

陽一クン、成威斗クン、ラッセクン、剣クンは、クマさん達に怒りと敵意を向けた。

星也クン、柳人クン、ゐをりちゃんは力なくその場で俯いていた。

唯一、天理クンだけはこの状況を楽しんでいた。

『いやー、オマエラ、今回もホントよく頑張ったよ!オマエラにはメダルをプレゼントします!それ持ってとっとと出て行ってください!』

『フッフッフ。ワタクシ達は、これから宴会の準備がございますゆえ。』

「宴会だと!!?ふざけんじゃねえ!!テメェら、人の命をなんだと思ってやがる!!」

「よしなよ、舞田君。ここで怒れば、アイツらの思う壺だよ。」

「………クソッ!!」

「ねえ、みんな。裁判は無事終わった事だし、早く戻ろーぜ。俺喉渇いちゃって死にそうなんだわ。あと、鳥握り潰したら手が汚れちゃった。洗ってきていい?」

天理クンは、ヘラヘラしながら翠ちゃんの血が滲んだ左手を開いた。

「え?なんかみんな怒ってない?ねえ、なんで怒ってんの?殺人鬼が死んだんだよ?そこはもっとこう…宴会でも開くところでしょ!」

すると…

 

 

 

ビシッ

 

 

 

「…。」

剣クンが、目に涙を浮かべながら天理クンの右頬を叩いた。

「…どうして教えて差し上げなかったのですか!!?」

剣クンは、涙を流しながら天理クンを睨んだ。

天理クンは、剣クンに叩かれた衝撃で口から血を流していた。

「…教える?何を?」

「惚けないでください!!貴方は、日暮殿の正体を…羽澄殿が殺人鬼ではないという事を、本当は知っていたんでしょう!?だったら、何故その事を日暮殿に伝えなかったのですか!!そうすれば、こんな事にならなかったのに…貴方の所為で、日暮殿が羽澄殿を殺したんですよ!!?」

「っはー、くっだらねぇ。知ってたから何?それを言うも言わないも俺の自由で、それと同じように羽澄サンを殺すも殺さないも日暮サンの自由だったわけでしょ?」

「んだと…!?」

「日暮サンが、動機や自分の記憶に少しでも疑問を持って、羽澄サンに確認しに行けばこうはならなかった。全部それをしなかった日暮サンと、バカな主人に付き合ったバカ鳥が悪い。何もかも俺のせいにすんなよなー。俺はどこぞの妖怪じゃないんだからさぁ。あー、痛ってー。口の中切れてんじゃねえか。ねえ、癒川サン!治して?一生のお願い!」

「ッ!!」

 

バキッ

 

剣クンは、今度は天理クンの左頬を拳で殴った。

「ってー。さすが【超高校級の侍】。一撃一撃が重いっすわぁ〜。でも、どうせなら左右対称にしてよ。見栄え悪いじゃん。」

「ッ、黙れ!!貴様の声などもう聞きとうない!!」

「あーあ、嫌われちゃった。でも怒った顔もイケメンだねー。よっ、色男!」

「…ねえ、財原君。」

「何?」

「君は、随分と余裕そうだね。まるでこれから起こる事が全部わかってるみたいじゃないか。」

「まあ、俺は未来人だからねー。」

「…は?」

「なんちって!はいバーンバーンバーン!…にししっ!」

天理クンは、素早く成威斗クン、雪梅ちゃん、剣クンに向かって指で拳銃をつくって撃つフリをした。

「ミッションコンプリィート!じゃ、俺は戻ってフ●ンタ飲むから。あ、欲しがってもあげないからネ。」

「いらねぇよ。早く視界から消えろ。」

「はいはいドロンドロン。」

天理クンは、また一人エレベーターに乗っていった。

全員が部屋に戻ったのは、それから数十分後だった。

 

 

 

ボク達は、この裁判を勝ち抜いた。

…でも、どうしてだろう。

勝った気が全くしない。

結果的に、被害者の踊子ちゃんも、加害者の彩蝶ちゃんや翠ちゃんも、そしてボク達も、誰一人として得をした人はいなかった。

…二度と、コロシアイなんて起こっちゃいけない。

そう、強く思った。

志半ばで死んでいった、踊子ちゃんと彩蝶ちゃん、そして翠ちゃんのために。

 

 

 

 

 

第2章 上弦の月を喰べる影 ー完ー

 

 

 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上12名

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

Chapter.2クリアの証

 

『白黒のピン』

元々は日暮の宝物。小学生時代に、羽澄が日暮に貰った宝物。

 

『蝶の髪飾り』

元々は羽澄の宝物。小学生時代に、日暮が羽澄に貰った宝物。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

【???の独房】

 

本当に胸糞の悪い映像だった。吐き気がする。

 

…しかし、アイツは本当に魅力的だなぁ。

 

もしかしたら惚れちゃうかもな。

 

 

 

 

 

第3章 恋は儚し堕ちよ乙女

 

To be continued…



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第2章 真相編

【日暮彩蝶編】

 

わたしは、ここに来てからみんなと色んな事をした。

それはすっごく楽しかった。

でも、わたしのほんとうの友達と呼べるひとは、一人もいなかった。

わたしのほんとうのお友達は、あの日全員死んじゃったんだ。

みんな、あの子に殺された。

…ようこちゃんに。

だからわたしは、あの子に復讐することにした。

 

 

 


 

 

 

スクリーンには、小学校の映像が映った。

『すごーい!あげはちゃん、そんなにたくさん鳥さんとお話できて!』

『ねえねえ、あたしにもできる!?』

『うん、この子達は、人懐っこいからね!すぐにみんなとお友達になれるよ!』

『すごーい!』

『ねえ、この後うちに来ない?わたしのママが、今日ケーキ焼いてくれるんだってー。』

『わーい!行く行く!』

『あげはちゃんは、かわいくって頭が良くて、動物さんたちと仲良しで、しかもお金持ちのお嬢さま!ホント憧れちゃうよねー!』

『えへへ…』

『ねえ、あげはちゃん!今度、みんなでピクニックにでもいkkkkkkkkkkkkkkk…あっ、い、いかnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnn…』

「!?」

映像が急に乱れ、画面が砂嵐になった。

 

ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ

 

 

 

プツン

 

砂嵐が止んで、映像が元に戻った。

でも、そこにはさっきまでの小学校はなかった。

教室は真っ赤に染まり、床には子供達の無惨な亡骸が転がっていた。

そこには、ただひとりの黒い影があった。

その影は、甲高い声で不気味に笑う。

 

『きひっ…ひひっ…ひひひひひひっ…あははははははははははは…!』

 

画面がまた切り替わり、何かの部屋が映った。

そこには、二人の大人とようこちゃんと思われる女の子がいた。

 

『本当に、君が殺したのかい?』

ようこちゃんは、笑いながら答えた。

 

『…そうだよ。アタシが殺したんだ。アタシが暁裴駑だったの。』

『!!?』

『なんであんな事したんだ!!』

『あのさぁ、殺人鬼にそんな質問する意味ある?…殺したかった。ただそれだけよ。』

『…!!』

『ひひっ、きひひっ…ははっ、あはははははははははは!!』

ようこちゃんは、不気味な笑みを浮かべながら高笑いした。

 

そこで映像は終わっていた。

映像は切り替わり、劇場のような場所が映し出された。

劇場の幕の前には、クマちゃんが立っていた。

 

『クラスのみんなの人気者で、クラスのアイドル的存在だった日暮彩蝶サン!いやあ、実に可愛らしいですね!しかし、クラスメイトに何かあったようですね!?その中でひとり笑う影…そして、羽澄サンがまさかの自白!?では、ここで問題です!!日暮サンの大好きだったクラスのみんなを皆殺しにした犯人は、一体誰だったのでしょうかっ!!正解は、自分の目で確かめてみてねー!!』

 

 

 


 

 

 

 

 

…!

 

うそ、うそうそうそうそうそうそ…!

 

そんな、こんな事って…!

 

 

 

この時、わたしは思い出した。

ようこちゃんは、わたしのクラスメイトだった。

そして、みんなを殺した犯人がようこちゃんだって事を。

じゃあ、ようこちゃんは、わたしがクラスメイトだって知ってて、今まで…

そんな…

 

…許せない。

あの子が、ゆいちゃんを…まきちゃんを…たろうくんをしゅんくんを…

絶対許さない。

 

そうだ。お前はあの女を許さない。違うか?

 

!!?

いきなり誰かがわたしに呼びかけてきた。

きみは誰!?

 

俺はお前。お前は俺。お前と俺は、ふたりでひとつ。俺達は、生まれた時からずっと一緒にいる。

 

きみが…わたし?

 

そうだ。俺にはわかる。お前の全てが。もちろん、お前があのギャルを恨んでいる事もな。

 

…そう。わたしはようこちゃんを許せない。許せない、けど…

 

だったらよぉ、お前…どうしたいんだよ?

 

…あの子に、みんなの痛みを思い知らせてやりたい。

みんなを…わたしの友達を奪ってのうのうと生きてるあの子が許せない。

 

そうだよなぁ。…許せないよなぁ。

 

 

 

 

 

 

だったら、殺っちゃえばいいじゃん?

 

 

 

…わたしが、ようこちゃんを…殺す…?

 

そうだよ。殺しちゃえよ。この前疫病神を殺したブスみたいによぉ…俺がちょっと力を貸してやるから。なあ、殺しちゃえって。

 

…わたしは。ようこちゃんを殺す。

 

殺す。

 

殺す殺す殺す。

 

絶対に殺す!

 

 

 

『あげは、大丈夫?』

 

「翠…」

 

いつのまにか溢れていた涙を拭いてくれたのは、翠だった。

…今思えば、これが踏み止まる最後のチャンスだったんだ。

「…ありがとう翠。」

『ねえ、あげは。さっきの映像だけど…本当に、あげはのおともだちにひどい事をしたのは、ようこちゃんなの?』

「…え?」

『私の知ってるようこちゃんは、悪い子じゃないよ。きっと、なにかわけがあるんだよ。一回ようこちゃんと話し合ってみようよ。』

「…そうだね。うん、翠の言う通りだよ。わたし、どうかしてた。…そうだよね。ようこちゃんは、何の理由もなくわたしのお友達を殺すような子じゃないもんね。」

『そうだよ!』

「…決めた。わたし、やっぱりようこちゃんと話にい…」

 

 

 

 

 

本当ニソレデイイノカ?

 

 

 

「!!?」

 

いいか、俺は、お前自身に聞いてるんだ。…お前、本当はそれで納得してねぇんだろ?

 

ちがう、わたしは、ようこちゃんとお話しに行くんだ。

お話しに行って、ちゃんと疑っちゃってごめんなさいって謝るんだ。

『そうだよ、あげは!ようこちゃんはきっと許してくれるよ!』

…そうだよね。あの子なら、きっと許してくれるよね。

 

あの女がお前を許す?脳内お花畑も大概にしろ。人を許せない奴が許されるわけねえだろ。

 

わたしは、許され、ない…?

『そんな事ない!あげはもようこちゃんも悪い子じゃないもん!謝って、ふたりで仲直りしようよ!』

仲直り…

 

そんなの無理に決まってんだろ。…どうせ許されねえ罪なら、どうすりゃあいいと思う?

 

 

 

踏み倒しちまえばいいんだよ、そんな罪。

 

なあに、簡単な事さ。あの女を殺しちまえば、あの女が罪を犯していようといまいと一緒だろ。

 

…罪を、踏み倒す?

わたしが、ようこちゃんを殺人鬼扱いした事が、無かった事になる?

『それは違うよ!ようこちゃんを殺したって、全部が無かった事になるわけないよ!』

 

なあ、本当はアイツが憎いんだろ?ほら、いい加減目を覚ませ。お前のドス黒い本性を曝け出してみろ。

 

『あげは!がんばれ!あげはの心の中にいる悪いヤツなんかに負けないで!また一緒にお歌を歌おうよ!』

 

おい、クソ鳥。お前何勝手にピーピーわめいて俺の片割れの心を乱してくれてんだ。俺達の心をどうにかしていいのは、俺達だけだ。たった数ヶ月一緒に過ごしてきただけのテメェが割り込んできていい領域じゃねえんだよ。

 

『きみがあげはとようこちゃんをケンカさせようとしてるんだね!?きみとあげはが同じなわけない!きみなんか、あげはじゃないよ!』

 

何言ってんだよ。日常生活はほぼそっちの人格を表に出してやってるってのによぉ。目障りなんだよ身の程知らずの畜生が。

 

『きみこそ、あげはにひどい事をさせちゃダメだよ!私、あげはとようこちゃんをケンカさせるような奴なんて大っ嫌い!』

 

ピーチクパーチクうるっせぇんだよ!!お前は黙ってろクソ鳥がぁあ!!!

 

…ッうるさい!!!

 

「ピギャッ!!」

…あ。

気がつくと、わたしは翠を叩いていた。

「あっ…ごめん、ごめんね翠!わざとじゃないの!ごめん、許して!」

「ピィ、あげは…」

 

で?結局、お前はどうしたいんだよ。殺すのか?

 

…っえ。

 

殺しはいいぞ?スカッとする!イヤな事とか、全部忘れられるぜ。

 

そんな事…

 

それに、お前は憎いんだろ?友達を全員ブチ殺したあのギャルが!!

 

ちがう…

 

違わねえさ。俺の声が聞こえてんのがその証拠だ。お前は羽澄踊子が憎い。そうだろ?

 

…そうだ。

 

わたしは、ようこちゃんが憎い。

 

わたしはようこちゃんが憎いわたしはようこちゃんが憎いわたしはようこちゃんが憎いわたしはようこちゃんが憎いわたしはようこちゃんが憎いわたしはようこちゃんが憎いわたしはようこちゃんが憎いわたしはようこちゃんが憎いわたしはようこちゃんが憎いわたしはようこちゃんが憎い

 

なら、やる事はひとつだろ?

 

…殺す。

 

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころす

 

『ダメ…!あげは、おねがい…正気に戻って!』

 

「…。」

『…あげは?』

「翠、どうしたの?怖い顔して。ごめんね、さっきの事…まだ怒ってる?」

『良かった、いつものあげはだ!こわいナニカじゃない!』

「…あのね、翠。ちょっと考えたんだけど、翠に話さなきゃいけない事があるんだ。」

『お話?なあに、あげは?』

「…わたし、ようこちゃんを殺す。」

『…え!?』

「きっと、翠の言う通り、ようこちゃんに確かめに行くのが()()なんだと思う。」

『だったら…!』

「だけど、それはわたしにとっての()()じゃない。わたしは心のどこかで、そんなの間違ってるって叫んでるんだ。その気持ちをなかった事にはできない。わたしは、本当は…みんなを殺したようこちゃんの事が許せないんだ。」

『もし、あの映像が嘘だったら!?あげはは取り返しのつかない事をしちゃうんだよ!?』

「でも、わたしの記憶がそうだって言ってるんだもん!!それに、殺すなら今しかないんだ!!早くしないと、他の誰かがようこちゃんを殺すか、ようこちゃんが他の誰かを殺すかしちゃうでしょ!?そうしたら、わたしは復讐のチャンスを失っちゃうんだよ!?ようこちゃんが殺人鬼かなんて悩んでる暇は無いんだよ!!」

『あげは…!』

「…翠、わたしのお友達なら、わたしの事助けてくれるよね?誰が、赤ちゃんだったきみを助けて今まで育ててあげたと思ってるの?」

『…わかった、私はあげはを手伝う…』

「ありがとう翠。ごめんね。本当はこんな脅し文句、使いたくなかったけど…でも、復讐のためだもん。わかってくれるよね?」

『…。』

「決まりだね。」

 

決めた。

わたしはようこちゃんを殺す。

クラスのみんなのかたきを討つんだ。

…これで良かったんだ。

これで良かった。

 

 

 

…良かった?

 

 

 

 

 

「あーあ、殺っちゃったよ!全く、クラスメイトを殺したのは自分の裏人格だってのに…簡単に闇落ちして大恩人を殺しちゃうなんて、真性のドクズ女だよね!!せっかく親友のインコが止めてくれたってのに、結局殺人の道具にしちゃってさぁ…そんなゴミみたいに性根が腐った女は、地獄の底ででも朽ち果ててろ!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

【羽澄踊子編】

 

アタシは、アゲハのおかげで生きられた。

病気で夢を諦めかけてたアタシを、あの子のお父さんが治してくれた。

あの子にも、アタシが病気と闘ってる間ずっと励ましてもらった。

アタシは、あの子に夢を貰った。

アタシは、あの子がいたからつらい闘病生活も耐えられた。

あの子がいなかったら、生きる事も、夢を叶える事もできなかった。

だから、この恩はちゃんと返さなきゃいけない。

アタシは、アゲハのためならなんだってできるしなんだってする。

だからアタシは…

 

 

 

その日は、ウチのクラスでやる白雪姫の劇の役決めの日だった。

アタシはその日、たまたま体調を崩して学校を遅刻した。

後から聞いた話だと、役決めでかなり揉めたらしかった。

 

…どうせ魔女役を押しつけられてるんだろうな。

 

アタシは、憂鬱な気分で教室に入った。

 

 

 

「ッーーーー!!」

そこには、信じられない光景が広がっていた。

赤く染まった教室。床にはクラスメイト達の無惨な亡骸が転がっていた。

そこには、ただひとりの黒い影があった。

その影は、甲高い声で不気味に笑う。

 

「きひっ…ひひっ…ひひひひひひっ…あははははははははははは…!」

 

その影は、アゲハ…いや、ハイドだった。

 

 

 

「…。」

何が起こったのか全く理解できなかった。

アタシは、思わず声を漏らした。

「…!!?…あ、あああ…アゲハ…!?アンタ、何やってんのよ…!」

「…。」

アゲハが、不気味な表情からいつもの表情に切り替わった。

…ハイドからアゲハに切り替わったのか?

「…あれっ?よ、ようこちゃん…?…え、何これ…一体どうなってるの…!?みんな、起きてよ!ねえ、ねえ!!」

「…もしかして、またハイドが現れたのか?」

「ハイド?何それ…わたし、何も知らない!!気付いたら、みんながこんな事になってて…」

アゲハの奴…かなり混乱してるな。

そりゃあそうだ。ハイドがいる間、アゲハはなにも覚えてないんだから。

アタシにはわかってた。これをやったのは、全部ハイドだって事を。

アタシは、覚悟を決めた。

アタシは、アゲハに恩返しがしたい。

…やるべき事は決まっていた。

「…そうだよ。アンタは何も知らない。何もしてない。みんなを殺したのはアタシだ。」

「…え!?ちょっと待って、何言ってるの…!?何考えてるのよようこちゃん!!」

「アゲハ、この大量の死体をどうにかするのは無理だ。みんなはアタシが殺したって事にしておくから、アンタは今のうちに逃げな。」

「なんで!?ねえ、なんでそんな事言うの!?ようこちゃんは、みんなを殺したりしてないのに…!!」

「…アゲハ、アタシはアンタのお父さんに…日暮先生に助けられた。そして、アンタにも元気を貰った。アンタのおかげでアタシは生きられた。アンタ達がいたから、アタシは諦めかけてた夢を追いかける事ができた。アタシに、夢をくれてありがとう。」

「ようこちゃん…!」

「…だから今度はアタシがアンタの夢を守る番だ。アンタ、獣医になるって夢があるんだろ?こんな所で台無しにしていいのかよ!?」

「でも、ようこちゃんはどうなるの…!?」

「アタシの事なら心配すんな。アタシは、アンタに十分すぎるくらいたくさん貰った。今度はアタシがそれを返す番だ。ほら、人が来る前に早く逃げな!!」

「ッ…!!」

アゲハは、泣きながらひたすら走った。

「…誰が犯人かわからない程度には荒らしとくか。」

「おい君!!何やってるんだ!!」

「…。」

…これでいい。

アタシは、元々ここにいるはずじゃなかったんだ。夢は叶わなかったけど、それはいい。

アゲハが…あの子が幸せに生きてくれさえすれば。

あの子の幸せがこんなところで終わるくらいなら、アタシが代わりに罰を受ける。

それがどんなにつらい事だったとしてもかまわない。

アタシは、あの子のためなら悪魔だろうと魔女だろうと、何にでもなってやる。

 

 

 

それからすぐに事件の事がニュースになった。

ニュースではアタシの名前は公開されなかったけど、大勢の人達が、アタシが犯人だって事に気付いた。

あの日から、アタシは殺人犯として責められながら生きてきた。

でも、そんな事はどうでも良かった。

アゲハが、幸せに生きてくれているから。

…家族のみんなにまで迷惑をかけたのは申し訳なかったけど。

でもみんな、アタシは犯人じゃないって知ってたから、あえて何も言わないでくれていた。

みんなの遺族の人達も、何人かは同じだった。

アタシは、ほんの少しの優しい人達に助けられながら、どんなひどい仕打ちにも耐えてきた。

 

それからしばらくして、ほとぼりがさめて、小学校で起こった事件が話題にあがらなくなった。

アタシは転校を繰り返して、髪の色やメイクを変えた。

おかげで、街でアタシを見かけても、アタシだって気付く人はほとんどいなくなった。

そんな時、クラスメイトからたまたま動画サイトでダンス動画をアップするのを勧められた。

アタシは、勧められるまま動画をアップした。

すると、その動画がどういうわけかめっちゃバズった。

それから、アタシは動画を何本か投稿したけど、どれもめっちゃ大好評だった。

中にはアタシの正体に気付いて殺人犯だとか悪口を書き込む奴がいたけど、大絶賛のコメントの嵐に埋もれてかき消された。

アタシは【超高校級のダンサー】として一躍有名になって、家族の暮らしも前よりだいぶ良くなった。

…やっぱり、あの時のアタシの判断は間違ってなかった。

色んな人に迷惑をかける事になったけど、恩返しはできたし、夢も叶えられたんだ。

…ホントは、アタシは夢を叶える資格も無いのかもしんないけどね。

 

ありがとうアゲハ。

アンタがアタシを生かしてくれたから、アタシは夢を叶えられたんだ。

 

 

 

それから数ヶ月が経って、アタシはこの学園に収監された。

そこには、信じられない光景が広がっていた。

 

一緒にいたアゲハが、他の奴らと楽しそうにしている。

 

アタシは、正直メッチャ嬉しかった。

あの子が幸せでいてくれた。

それが何よりだった。

アタシは、アゲハが幸せなら、もう何もいらないとさえ思えた。

本当はすぐに昔みたいに楽しく喋ったりしたかったけど、あの子の幸せを邪魔したくない。

だからアタシは、あの子の前では他人のフリをした。

 

アゲハ、アタシは…アンタさえいればそれでいいの。

だって、アンタはいつでもアタシの光だった。

アンタは、アタシの…

 

 

 

 

 

 

アタシは、シュエメイと一緒にダンスの仕上げをした。

ダンスの練習メニューが全部終わって、アタシ達は解散する事になった。

「ジャ、ワターシ、研究室デ準備してから寝マス!」

「そっか。じゃあ、アタシはもうしばらくここで踊ってよっかな?なんか今ノリにノってるし。」

シュエメイが出て行ってからしばらく経った頃だった。

「…ふぅ。こんなとこかな。そろそろアタシも寝よっと。」

上着を拾って着ようとした、その時だった。

誰かの気配がした。

アタシは、咄嗟に振り向いた。

 

「!!?」

 

 

 

そこには、ノコギリを構えたアゲハと、白衣のポケットに入ったスイがいた。

「あ、アゲ…ハ…!?なんだよ、アンタ…い、一体、どういうつもり…」

「…ようこちゃん。ごめんね。わたしはクラスのみんなのかたきを討つんだ。」

「仇…!?アンタまさか、あの時の事を思い出して…」

「言い訳なんて聞きたくないよ!とにかく、死んで!!」

アゲハは、猛突進してきた。

「やぁああああああああああ!!!」

でも、いくら相手がアゲハだからって、黙ってやられるアタシじゃない。

アタシは、難なくアゲハを蹴り飛ばしてノコギリを奪った。

アタシに押さえつけられたアゲハは、子供みたいにバタバタと暴れた。

「あぁあああ、あああああああ!!そんな、あとちょっとだったのに!!あとちょっとでみんなのかたきが討てたのに!!」

「…超一流のダンサーナメんなよ。アタシがアンタみたいなチビに殺されるわけないでしょ?」

「か、返して…!」

「返してって言われてはいどうぞって素直に返すわけねーじゃん。…このまま殺されるくらいなら、アタシがアンタを殺してやるけど?」

「ヒッ…!?」

「何ビビってんだよ。アンタだって元々その覚悟で来たんだろ?人を殺す気なら、自分が殺される覚悟くらいしろよ。」

「やだ!!やだやだやだ!!」

「うるせえな。今楽にしてやるよ!」

 

「…え?」

あれっ?

なんで…なんで目の前が滲んで揺れてんだよ。

…クソッ。やっぱり、無理に決まってるじゃんよ。

「…なんてな。…アンタを殺すなんて事、できるわけないじゃん…!」

「ようこちゃん…」

アタシは、アゲハにノコギリを返した。

「…そんなに仇が討ちたいなら殺れよ。」

「…え。」

「そりゃあ、アタシだって死にたくないけど…でも、どうせ誰かに殺されるんなら、殺される相手くらいは選びたい。アゲハ、アタシはアンタになら殺されてもいい。…ただ。」

「なに…?」

「アゲハ…痛くしないでね?」

「ッ、うぁあああああああああ!!!」

 

ゴッ

 

「…あ。」

視界がぼやけて、頭に鈍い痛みがある。

アタシ、殴られた…のか…

そこで意識が途切れた。

 

「ようこちゃん、ごめん…ごめんね!!」

ザブンッ

 

 

 

ゴポゴポゴポ…

 

 

 

 

 

 

アゲハ、今までありがとう。

 

アンタは、アタシの希望だった。

 

 

 

 

 

「あーあ、死んじゃったよ!せっかく恩人のために自分を犠牲にしてまで冷酷な殺人鬼を演じたっていうのに恩を仇で返すような事されちゃってさぁ!世の中こんな皮肉な事ってあるんだね!まあ何にせよ、恨むならあんなキチガイに関わって勝手に自分の希望だと勘違いした自分を恨むんだね!」

 

 

 

 

 


 

 

 

【翠編】

 

私のお母さんとお母さんの飼い主さんは、私が生まれてすぐに死んじゃった。

私の兄弟も、みんな死んじゃった。

数ヶ月前に起こった大震災のせいで。

私のお父さんは、震災が起こる前に事故で死んじゃってたらしい。

私は、震災で家族をみんな失って、私もがれきの下で死にかけてた。

そんな私を助け出して、まだ赤ちゃんだった私を引き取ってくれたのは、あげはだった。

あげはは、まだ高校生なのに、日本で一番すごい生物学者だった。

あげはは、私を治して、私に翠っていう名前をつけてくれた。

あげはは、私に新しい居場所と名前をくれた。

あげはは、私にとっては友達で、お姉さんで、そしてお母さんだった。

あげはが笑ってる時は一緒に笑って、あげはが泣いてる時は一緒に泣いた。

私は、あげはと一緒にいてとっても楽しかった。

私は、あげはの事が誰よりも大好きだった。

 

 

 

そんなあげはが、おかしくなった。

クマのぬいぐるみに変なビデオを貰って、それを映画館で見てからというもの、あげはは急に様子が変になった。

あげはは、急にようこちゃんが人殺しだと言い出した。

それに、あげはの中にもうひとり、誰かがいるような気がする…

あげはの中にいる悪い奴が、あげはに悪い事を言ってあげはにひどい事をさせようとしてるんだ。

私は、そんな奴を許せない。

あげはもようこちゃんも、本当はとってもいい子なのに。

なんでコロシアイなんてひどい事をさせようとしてるの?

私、もうきょうやくんやさかえちゃんみたいに、ひどい死に方をする人を見たくないのに。

みんなの中の誰かひとりでも欠けたら私、悲しいよ。

絶対に、あげはがようこちゃんを殺すのを止めなきゃ!

私は、みんなで仲良く一緒にお歌を歌いたいんだ!

 

『ダメ…!あげは、おねがい…正気に戻って!』

「…。」

『…あげは?』

「翠、どうしたの?怖い顔して。ごめんね、さっきの事…まだ怒ってる?」

『良かった、いつものあげはだ!こわいナニカじゃない!』

「…あのね、翠。ちょっと考えたんだけど、翠に話さなきゃいけない事があるんだ。」

『お話?なあに、あげは?』

「…わたし、ようこちゃんを殺す。」

『…え!?』

「きっと、翠の言う通り、ようこちゃんに確かめに行くのが()()なんだと思う。」

『だったら…!』

「だけど、それはわたしにとっての()()じゃない。わたしは心のどこかで、そんなの間違ってるって叫んでるんだ。その気持ちをなかった事にはできない。わたしは、本当は…みんなを殺したようこちゃんの事が許せないんだ。」

『もし、あの映像が嘘だったら!?あげはは取り返しのつかない事をしちゃうんだよ!?』

「でも、わたしの記憶がそうだって言ってるんだもん!!それに、殺すなら今しかないんだ!!早くしないと、他の誰かがようこちゃんを殺すか、ようこちゃんが他の誰かを殺すかしちゃうでしょ!?そうしたら、わたしは復讐のチャンスを失っちゃうんだよ!?ようこちゃんが殺人鬼かなんて悩んでる暇は無いんだよ!!」

『あげは…!』

「…翠、わたしのお友達なら、わたしの事助けてくれるよね?誰が、赤ちゃんだったきみを助けて今まで育ててあげたと思ってるの?」

『…わかった、私はあげはを手伝う…』

私は、あげはの言葉に逆らえなかった。

反対したら、あげははきっとひとりでようこちゃんを殺しちゃう。

…それか、返り討ちに遭ってようこちゃんに殺される。

私にできる事なんてたかが知れてるけど、あげはが私を置いてひとりで危険な道に行こうとしてるなら、私もついていかなきゃいけない。

ごめんね、あげは。

ごめんね、ようこちゃん。

…ケンカ、止められなかった。

 

 

 

 

「…はぁ、はぁ…これでなんとかようこちゃんの死体を隠せたね。」

『ねえ、あげは…本当にうまくいくの…?』

「うん。わたしの計算が正しければね。」

『…そう。』

私にはわかる。

このままじゃ、きっとあげははクロだってバレちゃう。

だったら、友達の私がやる事は決まっていた。

 

『…。』

 

「翠?何やってるの?」

『別に?何もしてないよ?』

「そっか。…シュエメイちゃんが戻ってきちゃうかもしれない。そろそろ引き上げないと…」

『そうだね。』

私は、保管室の鍵を飲み込んだ。

これが無ければ、きっとあげはを犯人だって疑う証拠が無くなる。

そうすれば、きっとあげはは生き残れる。

他のみんなは死んじゃうけど、私はあげはが一番大事。

あげはの事は、私が守る。

 

 

 

 

 

…そう思ってたのに。

 

 

 

 

あげはが、上へ上へと昇っていく。

私は、あげはについていった。

てんりに…あの悪魔に羽を握り潰されたせいで、うまく羽ばたけないけど…

おしおきなんて、絶対させない!

私があげはを守る!

そう思った時、目の前に袋みたいなものが迫ってきた。

目の前が真っ暗になった。

 

 

 

急に目の前が明るくなった。

目の前には細い柵が見える。

くちばしで噛み切ろうとしても、硬くてビクともしない。

柵の隙間から、あげはが見えた。

あげはは、手足を鎖で繋がれていた。

あげはは、不安そうに周りをキョロキョロと見回した後、泣き喚いた。

 

…ごめんね、あげは。

わたしが、きみがようこちゃんを殺すのをちゃんと止めていれば…

わたしが、証拠の隠滅をちゃんとしていれば…

わたしが、あの悪魔に捕まりさえしなければ…

全部、私のせいだね。

せっかく今まで育ててもらったのに、迷惑ばっかりかけて本当にごめんね。

 

 

 

『フッフッフ。さあ、エサの時間ですよ。』

トラが、私を鳥カゴから出した。

…お前達のせいで、きょうやくんが、さかえちゃんが、そしてようこちゃんが…!

許さない、許さない!

私はトラの手に噛み付いた。

『フン!全く、小生意気な鳥ですね!そんなアナタにはキッツゥいおしおきをプレゼントして差し上げましょう!!』

トラは、注射器を取り出した。

一体何する気…!?

 

 

 

ブスッ

 

 

!!?

 

 

 

 

 

あぶぉいうえもあうんゔぉううぇるせこつやぢぽぉじゅげくぉずちゃぽびゅあぁあああああああああああああああああああ!!!!!

 

『フッフッフ。ワタクシの指なんかよりもっと美味しいエサがあちらにございます。そちらでお腹を満たしてくださいな。』

 

 

 

「ギャオ゛オオオォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 

 

 

 

「あーあ、死んじゃったよ!いっつも日暮サンについてって一緒に色々やってた割には、彼女の事何もわかってなかったよね?結局さぁ。オマエは、見捨てられて独りぼっちになるのが怖かっただけなんだよ!せいぜい地獄で可愛がってもらいな!…あ、その醜悪な姿じゃ、可愛がってもらうなんて永遠に無理かw」



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第3章 恋は儚し堕ちよ乙女
第3章(非)日常編①


章タイトル元ネタ『夜は短し歩けよ乙女』です。


『もしここから出られたら、アンタにも見せてあげるよ。超一流のダンサーになったアタシのダンスをね。』

 

『ダメだよきみ達、ケンカなんかしちゃ!翠が泣いてるよ!』

 

『あげは、私、かなえちゃんの事、大好き。』

 

目の前に、2人と翠ちゃんがいた。

奥の方には、凶夜クンと隥恵ちゃんがいる。

「…みんな。」

そうだ。

本当は、誰も死んでなかったんだ。

学級裁判なんて…おしおきなんてなかった。

ボクは、踊子ちゃんの腕を掴んだ。

「…?」

踊子ちゃんの手は、ありえないくらい湿っていた。…いや、濡れていた。

 

ゴトッ

 

嫌な音がした。

掴んでいた腕が落ちて、それにつられるように首ともう片方の腕も落ち、踊子ちゃんの身体はその場で崩れた。

「…え。」

周りをよく見てみると、隥恵ちゃんと彩蝶ちゃんがいた場所には血溜まりができていた。

凶夜クンはお腹に包丁が刺さったまま立っていた。翠ちゃんは、ボコボコで気持ち悪い怪物になっていた。

「ひっ…!!?」

ボクは、走って逃げた。

振り返らずに、ひたすら走った。

後ろがどうなっているかなんて、考えたくもなかった。

 

「あっ。」

 

いきなり後ろから足を掴まれて転んだ。

「…え?」

振り返ると、踊子ちゃんの手がボクの足首を掴んでいた。

踊子ちゃんの首が転がってきて、言った。

 

 

 

イカナイデ

 

 

 

 

 

「…!!」

あたりを見回すと、そこは独房だった。

「…夢か。」

 

『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』

 

…そうだった。

あの後、すぐに解散して寝たんだった。

…朝ご飯までまだ時間あるし、散歩に行こう。

 

 

 

 

【超高校級のダンサー】の研究室

 

研究室は、前より広くて暗い感じがした。

…もう、踊子ちゃんはいないんだもんね。

ごめんね、踊子ちゃん。

何もしてあげられなかったね。

…助けてあげられなくてごめんなさい。

でも、ボク達はキミの分まで生きてここから出てみせるから。

だから、どうか見守っていて。

ボクは、踊子ちゃんの写真の前で手を合わせた。

 

「…さてと、次は彩蝶ちゃんの部屋だね。」

 

 

 

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶の研究室

 

可愛い雰囲気の研究室は、なぜか無機質で冷たい感じがした。

…彩蝶ちゃんがいない。

もう、この世のどこにもいない。

ボク達は、とっても大事な人を失ってしまった。

 

「…あ。」

 

翠ちゃんの家の中には、翠ちゃんの羽根が落ちていた。

まだ翠ちゃんが生活してた痕がある。

翠ちゃんの温もりが残っている。

容器に入っているご飯も食べかけだ。

…裁判から帰ってきたら食べるつもりだったんだろうな。

 

「…あれ?」

 

おかしいな…何があっても笑顔でいようって決めたはずなのに。

拭っても拭っても、涙が次から次へと溢れて止まらない。

…やっぱり無理だよ。

友達を失って、平気でいられるわけがない。

「…彩蝶ちゃん、翠ちゃん。裁判ではひどい事言ってごめんね。ボク、絶対みんなで生き残るから。」

ボクは、回収したちょうちょの髪留めを握りしめて言った。

 

…そろそろ時間だ。食堂に行こう。

 

 

 

 

【食堂】

 

「…みんなおはよう。」

食堂には、星也クン、剣クン、雪梅ちゃん、柳人クン、ラッセクン、成威斗クン、才刃クン、ゐをりちゃんがいた。

やっぱりみんな見るからに元気が無かった。

「…おはよう、狛研さん。」

「おはようございます。」

「おはようゴザイマス。」

「おはよう。」

「…フン。」

「ああ、おはよう叶。」

「オマエも珍しく遅いな。」

「………………。」

「…あれ?」

おかしいな。

治奈ちゃんがいない。

いっつも早く来るはずなんだけど…

 

 

 

「ピィ!ピィピィ!」

 

…この声は。

翠ちゃ…

 

振り返ると、そこには翠ちゃんそっくりのぬいぐるみがあった。

治奈ちゃんは、そのぬいぐるみを右手に持って、後ろに立っていた。

「…おはようございます。…びっくりしましたか?」

「治奈ちゃん…それ…」

「…はい、昨日夜なべして作ったんです。皆さんの心の穴を埋めるために私ができる事は、これくらいしかないと思って…」

「そっか。治奈ちゃん、翠ちゃんの事大好きだったもんね。」

「…ええ。ここにこうやって置いておけば…翠さんが戻ってきてくれたような気がしませんか?」

「そうだね。」

「………かわいい。」

ゐをりちゃんは、ぬいぐるみの翠ちゃんを撫でた。

「ありがとう、癒川さん。君のおかげで平和が戻ったよ。」

「いえ、そんな…」

「お前ら、飯出来たぞーって。え!?日暮ちゃんのインコじゃねえか!?え、生きてたの!?嘘だろぉお!?」

厨房から出てきた陽一クンがオーバーリアクションをした。

「フン、マヌケめ。ただのぬいぐるみなのだ。」

「…あ、ごめん。」

 

「グーテンモルゲン、アラーシーツ!!あ、みんなおはようって意味ねー?」

天理クンが、のこのこと食堂に入ってきた。

みんなは、天理クンを睨んでいた。

「え?なに?みんなどったん?あ、なんで今ドイツ語で挨拶したんだよって?気分だよ気分!はー、ねっみー。」

「テメェ、何しにここに来やがった!!」

「え、何って?メシ食うためだけど?それとも何?ここメシ食う場所じゃねえの?じゃあ何?便所?」

天理クンは、わざとらしくとぼけた。

「テメェに食わせるメシは無ェ!!とっとと出てけ!!」

「ひどーい。俺、なんでそんなに嫌われてんの?」

「とぼけるなよ。裁判中、あんな最低な事をしておいてさぁ。」

「最低?何が?あ、冷めちゃうから食べるね?いただきまーす。」

天理クンは、勝手にテーブルの上のご飯を食べ始めた。

「マジかよコイツ…引くわ…」

「…財原君。確かに、君のおかげで僕達は真犯人を特定できた。だけど、やり方が良くないよね?あれじゃあモノクマと同類だよ。」

「いや、クマと人間様を一緒にすんなし。っていうかさ、なんでキミ達アイツらの事を庇うわけ?日暮サンは殺人犯で、翠ちゃんは窃盗犯だったんだよ?俺なんかより100京倍酷くね?」

「日暮さんや翠さんの罪と、あなたが彼女達にした非道な仕打ちは関係ありません!彼女達に謝ってください!」

「やだ。死人に謝るなんてバカバカしいよ。それに俺は悪くないからねー。」

「テメェ、このクズが!!」

「はいはいドクズで結構。あ、このぬいぐるみ何?」

「…うるせぇ。これ以上口を開くんじゃねえ。」

「えぇ〜。このままにしておいたら、お腹空かしちゃってかわいそうだよぉ〜。そうだ。ほら、皿に残ったカレールウをお飲み。」

天理クンは、お皿の上のルウを翠ちゃんで拭いた。

 

ピシャッ

 

治奈ちゃんが、涙を流しながら天理クンのほっぺを叩いた。

「ってー。何すんだよ癒川サン。ってかどいつもこいつも俺の事叩きすぎじゃない?ストレス溜まってるからって、俺をサンドバッグにすんなよなー。」

「あなたは一体どれだけ死者を冒涜すれば気が済むんですか!!」

「俺は別に死者を冒涜したつもりは無いんだけど。ただ、この子がお腹空かしてかわいそうだから食い物を恵んでやっただけじゃんよー。あ、食い物じゃなくて飲み物かw」

「…もういい。早く食堂から出て行け。」

星也クンも、天理クンを見限った。

「言われなくともそうしますよっと。」

天理クンが食堂から去ろうとしたその時…

 

『そうは問屋が卸さないよ!!』

 

クマさんとベルさんが現れた。

『フッフッフ。皆様、すこぶる仲が悪くありません?初日の威勢はどうしましたか!』

「フン。貴様ら、本当に不愉快だ。目障りだから早く消えろ。」

『えー。なにそれひっどーい!せっかくオマエラのためにに新しいエリアを開放してやったってのにさぁ!!』

「じゃあそのエリアとやらを発表して早く消えてくれる?」

『おやおや!穴雲様まで!…まあいいでしょう。今回解放した4階には、プールに体育館、更衣室、ゲームエリア、それから研究室が3部屋ございます。』

『あ、あとそれと、校則もう一個追加ね!』

「…追加?」

『そっ!今から、1人のクロが殺していいのは2人までとします!』

「なんでー?」

『そうしないと、自分以外の全員を殺そうなどと考える方がいらっしゃるかもしれないからです。』

「なるほどねー。」

『用件はそれだけだよ!それじゃ、健全で陰惨なコロシアイライフを!』

そう言うと、クマさんとベルさんは去っていった。

「いちいち目障りなぬいぐるみだぜ、全くよぉ!!」

「まあまあ、舞田君。落ち着いて。…それより、今回の探索だけど…担当を決めたから見てほしいんだ。」

 

プール…舞田君、不動院君

体育館…詩名君、神座さん

ゲームエリア…入田君、朱さん

更衣室(男子)…僕、財原君

更衣室(女子)…狛研さん、癒川さん

研究室…国王陛下、栄君

 

「今回は研究室の担当じゃないんだねぇ。」

「当たり前です。狛研さん、すぐに人の研究室の物に触るじゃないですか。」

「おう、また一緒になったな!!剣!!」

「はい、お願いします。舞田殿。」

「……………詩人、私が………助け、る…。」

「それは頼もしいね、神座君。」

「うむ!オマエの相手は僕ちゃんか!」

「ハイ!ヨロシクお願いします才刃サン!」

「にゃぱぱー、まぁた穴雲クンと一緒だー。穴雲クン、もしかして俺の事好き♂なの?俺、そっちの気は無いんだけど。」

「うるさい。君は僕が見張る。怪しい行動なんてできないと思え。」

「えぇーい。」

「………フン。何故俺が愚民の研究室などを…」

「うっせぇな!こっちも野郎と探索なんざ願い下げだよ!あーあ、いいよな入田と詩名はよぉ!!」

「うん、みんな不満は無いみたいだね。それじゃあ、今回も12時集合でいいかな?」

「はーい!」

ボク達は、流れ解散となった。

みんながそれぞれの持ち場に向かった。

「じゃ、ボク達も行こっか治奈ちゃん。」

「…そうですね。」

 

 

 

 

「…ねえ。」

「はい、なんでしょうか狛研さん?」

「治奈ちゃんはさぁー。ここに来る前、どんな生活してたの?」

「…と、仰いますと?」

「例えば、なんか趣味とかあったのかなー…とか、友達とか彼氏とかいたのかなー…とか。いろいろ気になったから聞いてみたんだけど。」

「…はあ。」

「で、そこんとこどうなの?」

治奈ちゃんは、少し俯いて言った。

「…別に、普通…ですよ。」

「普通?」

「はい、普通です。特にこれといって面白みのある話ができないので…これでいいですよね?」

「えー…じゃあ友達は?」

「まあ、仲のいい子が数人…」

「彼氏は?」

「…いません。」

「そっか。」

「狛研さんは?」

「んー。ボクもそんな感じ。」

「奇遇、ですね。」

「そうだねー。あ。ここじゃない?」

目の前に、トイレのマークみたいなのが描かれた扉が見えた。

「…これ、どうやって開けんのかな?」

「さぁ…」

ボクが部屋に一歩近づくと、ドアが横にスライドした。

「わ!!?」

「これ、自動ドアだったんですね…」

 

『うっぷぷぷ!その通ーり!』

 

「あ、クマさん。」

「学園長…いたんですね。」

『あれ?二人とも反応薄くない?もっとド肝抜かしていいんだよ?』

「もう慣れたし。」

『あっそう。』

「で?何しに来たんだい?」

『ああ、この更衣室の説明に来たんだよ!この更衣室は、女子生徒しか入れないのでご注意ください!』

「そりゃあそうですよ…何を今更…」

『ちなみに、男子が入ろうとしたら上に設置されたガトリングガンが火を吹くから。逆もまた然り、女子が男子更衣室に入ろうとした時も同じだよ!』

「…物騒ですね。」

『そう?この学園の誇る超厳重かつ最先端のセキュリティーって言って欲しいんだけどなぁ!』

「これのどこが最先端なんですか。」

『うっさい!文句は受け付けないよ!それじゃあね!』

「…行っちゃった。」

「狛研さん。私達は私達で探索を進めましょう。」

「…そだね。」

ボク達は、探索を始めた。

女子更衣室の中は、割と綺麗だった。

ロッカーがちょうど8個あって、壁にはポスターが貼られている。

ポスターは、カッコいい男の人…の体にクマさんの顔をコラージュした写真だった。

「…なんですかこの気色悪いコラ画像は。この胴体の方の人、国民的アイドル『五十嵐』の丹宮和矢さんですよね?」

「へー。」

「知らないんですか?」

「ボク、あんましアイドル興味ないから。」

「へぇ…」

「それにしても、この画像ホント変だよね。あ、そうだ。写真撮っちゃお。」

「え、この気持ち悪いポスター、写真に残すんですか?」

「だって、男子はここは入れないんだよ?このポスター見せてあげたいじゃん。」

「いいですよそんな事しなくて。こんな気持ち悪い写真見せられて、一体誰が得をするっていうんですか。探索も終わった事ですし、そろそろ皆さんと合流しましょう。」

「えー。そんなに言うほど気持ち悪いかなぁ?待ってよ治奈ちゃん!」

 

 

 

 

「ふんふんふ〜ん♪」

あーあ。やっとあのジンギスカンキャラメル並みにマズい空気から抜け出せたよ。

「…君、随分と余裕そうじゃないか。」

「だって、俺は今の所死ぬ予定無いもんねー。」

「…予定?ねえ、今予定って言った?」

やべっ。

「あ、これ、言っちゃいけないヤツだった。今のナシで。」

「そんなのまかり通るわけないだろ!君、やっぱりこのゲームについて何か知ってるんだろ?言え!」

「…しゃあねえなぁ。じゃあ、ヒント。今回死人が出るのは、このフロア内のどこかだよ。」

「なっ…」

「おっと、これ以上は何も言わねえよん?…あ。更衣室だ。そうだよ俺達は探索に来たんだよ。道草食ってる場合じゃねーだろー?」

「…全く。後できっちり問い詰めるから、覚悟しといてね。」

「はーい。」

しっかし、ヘッタクソな絵だなー。なんだこのトイレのマークみてーなラクガキはよ。

つかこれどうやって開けんの?

…もしかして、近づいたら勝手に開いたりとかして。

なーんて…

 

ガーーーー…

 

あ、開いた。

「ねえ、勝手に開いたんだけど。」

「僕も見てたよ。このドア、自動ドアだったんだね。」

『フッフッフ。ご説明しましょう!』

「あ、ベルちゃん。」

「はあ、うるさいのが来たよ。」

『おや。うるさいとは誰の事です?穴雲様。』

「君の事だよ。それより、何しに来たんだい?」

『ワタクシは、アナタ達にこの更衣室の説明をしに参りました。この更衣室は、男子生徒しか入れないのでご注意ください!』

「…どういう事だい?」

『女子がここに入ろうとした場合、上に設置されたガトリングガンが火を吹きます。逆もまた然り、男子が女子更衣室に入ろうとした時も同じです。』

「えー。じゃあ、女子更衣室には入れないって事?至極残念なりー。」

「入ろうとすんなよ。…バカな事考えてないで、探索するよ。」

「うぃーっす。」

穴雲クンは怒ると怖いからねー。

俺達は、更衣室の中に入った。

「ほーん。」

中は、割と清潔感があった。

ロッカーがちょうど8個あって、壁にはポスターが貼られていた。

ポスターは、ベルちゃんの顔が貼られた、おっぱいのデカいねーちゃんが写っていた。

「何これ。気持ち悪っ。」

「…見てるだけで吐き気を催すね。」

「あ、でも顔隠したらイケるね。そうだ。修正ペンで水着消して代わりにマジックで乳首描いちゃえ。」

「そういうくだらない事するの、本当にやめようね?」

「ごめんなちゃーい。」

「…そろそろ行くよ。もう探索も終わったしね。」

「ほーい。」

 

 

 

 

俺は、剣と一緒にプールを探索することになった。

「うっし、俺達も行くぜ剣。」

「…。」

「剣?聞いてんのか?」

「へ?…あ、申し訳ございません。少し考え事を…」

…大丈夫かコイツ?

なんか、元から赤い顔がもっと赤くなってんぞ。

「剣、お前大丈夫かよ?熱とかあんじゃねえだろうな?」

「ね、ねねね熱なんてありませんよ!ささ、皆さんを待たせてしまっては申し訳ないですし!早く探索を終わらせてしまいましょう!!」

なんかよくわかんねーけど、急に早足で歩き出したぞ。

なんなんだアイツ。

 

 

 

 

【プール】

 

「…わぁあ。」

剣は、スッゲェ目をキラキラさせながらプールを見渡していた。

「…剣。お前、まさかとは思うけど、プール行った事無えのか?」

「はい、ございません。私は、ぷぅる?という場所に入るのはこれで初めてでございます。なんだか湯屋のようですが…中に入っているのは水ですか?」

…マジかよ、そんな事も知らねえのか。

しっかし…どデケェプールだな。

波の出るプールに、流れるプールに…スライダーまであんのかよ。

と●まえんかってんだよ。マジで。

「あの大蛇のようなものは何ですか?」

「あれは、スライダーっつって、上から滑って遊ぶんだよ。」

「そうなのですか!?上の様子を見てみたいです!」

「あ、おい!!」

はしゃぎすぎだろコイツ。

「わぁ、上はこのようになっていたのですね!!…わっ!?」

剣のヤツが、上で足を滑らせたらしい。

そのまま下に真っ逆さまに落っこちてきた。

「剣!!!」

俺は、ギリギリのところで剣をキャッチした。

「…っと、危ねえ。」

「ま、舞田殿…あ、ありがとうございます…」

「いいって事よ!気にすんな!!」

…ん?

なんだコイツ。

見た目の割に軽りィぞ。

それに、なんか丸っこくて柔けェな。

何食ったらこんな体になるんだ?

「あ、あの…そ、そろそろ降ろしていただけませんか…?」

剣は、顔を真っ赤にして、目を逸らしながら言った。

「あっ…悪い。」

俺は、剣をゆっくり降ろした。

「あ、あの…舞田殿。この度は、私の身勝手のせいで迷惑をかけてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」

「気にすんなって!次から気をつけろよ!!」

「はい。…ですが、今回の事を何かお詫びしなければ…」

「いや、いいっつってんだろ。そろそろ探索も終わったし、行くぞ。」

落ちてきたところを助けたくらいで、大袈裟な野郎だな。

剣って、なんか色々変な奴だよな。

 

 

 

 

……………私、詩人と………探索……

「じゃあ、行こうか神座君。何か目ぼしい物があったら報告してくれ。」

「………。」

…………………………体育館、行く……

 

 

 

 

【体育館】

 

………体育館、ドア、絵………描いて、ある……

「ん?どうしたんだい?神座君?」

「………のっぺら、ぼう…………球、持ってる、絵、描かれて…ある………」

「のっぺらぼう…ああ、ピクトグラムか。ボール…って事はここが体育館で良さそうだね。早速入ってみようか?」

「……………。」

体育館、入った………

 

…………………………広い。

「うん、広いね。」

「………上、登れる…みたい。」

「ん?上に行けるのかい?」

「…………私、行く………」

「ん?そうかい?じゃあ、頼むよ。」

「………。」

 

……………………上、足場………狭い………。

特に、何も………落ちて、ない…

…………これ、は…機械…?

なんだろう……………

 

ガーーーーーーーーー…

 

「ん?何の音かな?」

あ…天井の金具、動いた…

…これ、止めるの…どう、やるんだろう…

…これかな?

 

ガコンッ

 

…止まった。

「……………詩人のところ、行く…」

 

「神座君、今の音は一体…?」

「………上にあった、機械………触ったら、天井の金具…動いた………」

「…なるほどね。ありがとう神座君。…ところで、こっちにもう一部屋あるみたいなんだけど。」

「……………入る?」

「そうだね。入ってみよっか。」

「………うん。」

 

…………ここ、暗い…

明かり、ないのかな……

…あ、これかな…?

 

カチッ

 

……………明かり、付いた…

…なに、ここは…

なんか、色々………置いて、ある……

……………球、網……あと、何、これ……板…?

「わっと。…うん。ここは体育館倉庫ってところかな?」

「………そう、なの?」

「うん。ボールとか、バレーのネットとか…スポーツに必要なものが色々置いてあるんだよ。」

「………蹴鞠は?」

「いや、さすがに鞠はないと思うよ。サッカーボールならあるけど…」

「……………あった。」

「あるのかい!?…今日一番の衝撃の事実だな。」

「………………詩人、これ…何?」

「…ん?どれどれ?ああ、これは得点板だよ。スポーツ競技をする時、どっちのチームが何点取ったのかっていうのをこれに記録するんだよ。」

「スポーツ…?チーム………?」

「あ、えっと…スポーツっていうのは、体を動かす遊びの事。で、チームっていうのは、ある種類のスポーツをする時に作る仲間の事。わかった?」

「………うん。」

……………詩人と、探索………楽しい………。

 

 

 

 

ワタシは、才刃サンとゲームエリアに行く事になりましたヨ!

「才刃サン!ヨロシクお願いします!」

「うむ!僕ちゃんにお任せなのだ!僕ちゃんは、こう見えてもeスポーツの世界大会で準優勝したほどの実力者なんだぞ!!」

「へー!スゴイですねー!優勝は、誰だたんデスカ?」

「【超高校級のゲーマー】とかいう変な女だったよ!なんなのだアイツは!!普段はノロノロ眠そうにしてるくせに、ゲームになった途端キレッキレに動きやがって!!」

ゲームの世界てスゴイんですネー。

あ、ここデスネ。

…それにしても、いろんな種類のゲームがアリマスネ!

「ワタシ、ゲームあんまりヤタ事ないでス。」

「ふんっ!初心者がそう簡単に上手くなれるわけがなかろう。」

「そーですヨネ…あ、これ、見た事アリマス!」

「それはダンスゲームだ。この前のゲーム大会では、予選がダンスゲームだったな。まあ、僕ちゃんが完膚なきまでに相手のザコを叩き潰したが。」

「才刃サンすごいデスネ!運動音痴なのにダンスゲームは得意ナンデスネー!」

「一言余計なのだ!オマエの未熟な脳味噌に有線LANを繋いでやろうか!!」

「それはやめてクダサイ。」

「ふんっ、手本を見せてやる。見とけ。」

「ハイ、お願いシマス。」

「さあ、ショータイムといこうか!!」

才刃サンは、最小限の動きで、スピーディーかつ正確にノーツを捌いていますネ。

「…ふんっ、所詮は子供の遊びなのだ。退屈しのぎにもならんぞ。」

わー。足の動きが速スギテ何やてんのかワカンナイでス。

「ふん、まあこんなもんか。」

「さすが才刃サンです!あ、あれはなんですカ!?あれも見た事アリマス!」

「あれはパズルゲームだな。まあ見とけ。」

「ハイ!」

「ここをこうやって…これを動かすとほら。」

画面に映てたゼリーが、一気に全部消えましたヨ!

「ふんっ、その程度のレベルで僕ちゃんをゲームオーバーさせられるとでも思っているのか。僕ちゃんを負かしたきゃ、もっとハイレベルなゲームプログラムをしてみる事だな。」

「才刃サンかこいいデス!」

「ふんっ!当然だ。僕ちゃんは天才だからな。」

才刃サンにコンナ才能があったなんてビックリです!

…あ、ゲームで遊んでタラ、あっという間に時間にナチャイマシタネ。

特に報告スル事も無いデスガ、とりあえず報告行きマショウ。

 

 

 

 

…判らぬ。

俺はなぜこの料理バカと一緒に他人の研究室の探索などやっているのだろうか。

「あーあ、最高の気分だぜ!ったくよぉ!!オララッセ!さっさと探索終わらせっぞ!!」

「俺に命令するな。言われなくともそのつもりだ。」

「あっそ!!…んあ。」

…なんだこの扉は。

錆びかけの汚い扉に、スプレーで装飾がされているな。

この部屋は、おそらく…

全く、愚民の研究室に入るのは乗り気がしないが…

「入るぞ。」

「…おう。」

…なるほど。

それにしても、汚い部屋だな。

落書きだらけじゃないか。

部屋にバイクが置いてあるぞ。

…全く、室内に乗り物を持ち込むなど…

それに、なんだこの部屋。

金属バットに、鉄パイプに、メリケンサックに…まるで武器庫だな。

「おい、ここ…もしかして…」

「ああ、癪だが…俺も同じ事を考えていた。…おそらく、【超高校級の喧嘩番長】の研究室だ。」

「やっぱりな。そうだろうと思ったぜ。」

「…行くぞ。探索が終わったのなら、もうここに用はない。」

「うっせ!俺はお前の召使いじゃねーっつーの!このお坊っちゃんがよぉ!!」

 

 

 

 

「…次はここか。」

む。この部屋は、さっきとは打って変わって清潔感のあるドアだな。

透明度の低いガラスのドアになっているようだ。

「ここ、誰の研究室なのかな?」

「さぁな。…入るぞ。」

「…躊躇しねぇのな、お前。」

「当たり前だ。王である俺が何を躊躇する事がある。」

「そうかいそうかい。」

…ほう。

部屋には、無数のコンピュータが設置されている。

さらには、ホワイトボードや学術書も置かれているな。

…この部屋が似合う人間は、俺は1人しか知らんな。

「…【超高校級の工学者】の研究室か。」

「だな。」

「フン、用は済んだ。行くぞ。」

「…ったく、愛想が無えなあ。お前はよお。」

 

 

 

 

「…最後はこの部屋か。」

なんだこの無駄に高級感のある扉は。

「この感じ…お前の研究室かもな。」

「無い。こんな趣味の悪い扉が、俺の研究室なわけないだろ。…それに、大方誰の研究室か予想がつく。」

「あっそーですか。」

「入るぞ。」

…フン。

やはりアイツの研究室か。

赤と黒のチェックの床に、少し暗めの照明…

無駄に凝った、無駄に高級感のある家具が揃っている。

壁には、株のレートが表示されたモニターが取り付けてある。

さらには、本棚には経済学に関する本や、株や競馬の新聞が置かれている。

無駄に高級感のある棚には、各国の全種類の硬貨がコレクションされているな。

…俺の国の通貨もあるぞ。

「なんだこれ。札風呂まであんじゃねえか。なんかルーレットの形になってんのが無駄に凝ってて腹立つな。…って、嘘だろ!?これ、よく見たら本物の万札じゃねえか!!」

「…この無駄に凝ってて腹の立つ部屋が似合う奴は一人しか知らんな。おそらく【超高校級の資産家】の研究室だ。」

「はー…道理で無駄にイカしてて腹立つわけだ。」

 

 

 

 

「ぶえっきし!!」

「…汚いな。ちゃんと口を押さえなよ。」

「ごめんなちゃーい。なんか、誰かに無駄に凝ってて腹立つって言われてるような気がするんだー。」

「随分と具体的な噂じゃないか。普段から人に嫌われるような事してるから噂されるんだよ。」

「はーい。」

 

 

 

 

「そろそろ時間だ。行くぞ。」

「お、おう…」

俺達は、食堂に向かった。



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第3章(非)日常編②

「お待たせー!!」

ボクと治奈ちゃんは、食堂に入った。

「おせーよ二人ともー。」

「君が言うな。お疲れ様2人とも。」

星也クンと天理クンが一番乗りだったようだ。

「おう!待ったか?」

「…フン。」

次に、陽一クンとラッセクンが来た。

「やあ、お待たせみんな〜♪」

「………………戻った。」

時間ぴったりに柳人クンとゐをりちゃんが来た。

「すみません皆サン!遅れマシタ!!」

「うむ!!」

「おう、悪いなお前ら!!待たせた!!」

「申し訳ございません。探索に手間取ってしまいました。」

集合時刻に1分遅れて雪梅ちゃんと才刃クンが、3分遅れて成威斗クンと剣クンが来た。

「遅いよ4人ともー。何やってたの?」

「スミマセン、才刃サンがゲームに夢中になってましタ。」

「僕ちゃんのせいにすんな!!」

「悪い悪い。ちょっとしたアクシデントがあってよ。…な。」

「…そうですね。」

剣クンは、顔を真っ赤にしながら横を向いた。

「?」

「なあおい、もしかして不動院って、そっちの気が…」

ドスッ

「ぐえっ!!」

陽一クンがラッセクンにどつかれた。

「うんうん。じゃあ全員揃ったみたいだし報告会始めよっか。全員席について。」

「ハイ!」

星也クンの一言でみんな席についた。

「よし、じゃあ報告会を始めようか。そうだな…まずは栄君。報告してくれる?」

「おう。今回解放されてたのは、入田、財原、舞田の研究室だぜ。」

「っしゃあ!!やっと俺の研究室が開放されたぜ!!」

「ふんっ!やっと僕ちゃんの研究室か!!遅すぎなのだ!!」

「わーいやったぁ。俺の研究室〜。」

「ちぇっ、今回もボクの研究室じゃないのかぁ。」

一体いつになったらボクの研究室は開放されるのさ!

「まーまー狛研サン!そう気を落とすなって。多分、生きてるうちに自分の研究室見られるからさ!」

「…そうだね!うん、前向きに考えないとね!」

「切り替え早っ!!」

「それじゃあ、次は詩名君。報告お願いできるかな?」

「うーんっと、ほとんど神座君が調べてくれたのをそのまま発表する事になるけど…それでもいいかい?」

「構わないよ。」

「じゃあ報告するよ。体育館は、かなり広かったよ。中に体育館倉庫もあって、いろんな道具が入ってたみたいだね〜。あとはね、体育館の中が、上の方に登れるなってるのと、そこに天井の金具を動かす機械があったって事かな。報告は以上さ♬」

「ありがとう。じゃあ、入田君。報告お願い。」

「うむ!たくさんの種類のゲーム機があったな!!まあ、どれもさほど難易度は高くない。オマエラも、暇があったらやってみるといい。」

「ちょっと待って?なんで入田クン、ゲームの難易度まで知ってんの?」

「それは、実際にプレイしてみたからに決まっておろう!(キリッ」

「わー。皆さん聞きましたかー?コイツ、探索サボってゲームしてましたぁー!!」

「なっ!!断じて違うぞ!僕ちゃんはだな、そのゲームが安全なものかどうかを確かめただけで…」

「何も違いませんよね?…朱さんは何をなさっていたんですか?」

「スミマセン、才刃サンのゲームの腕が凄すぎて見惚れてマシタ。」

「まあでも、ゲームエリアの構造が大体把握できただけでも御の字かな。舞田君は?」

「おう。なんか、色々プールがあったぜ。波の出るやつとか、スライダーとか…」

「とし●えんじゃん。」

「スライダーで思い出したんだけどよ、実はさっき剣のヤツが…」

「舞田殿!!それは言わないでください!!」

「なんでだ?」

「…とにかく、お願いします!!」

「お、おう。わかった。」

剣クン?急にどしたんだろ。

まーいーや。

「うーん。本人が言いたくなさそうだから詮索はしないでおこうかな。狛研さん達は?」

「えっとね、更衣室がねぇ、女子しか入れないようになってたよ。男子が入ろうとするとガトリングガンで撃たれちゃうんだって。」

「物騒ですね…」

「マジかよ!!じゃあこっそり忍び込んだりできねぇじゃんよぉ!!」

「…。(ギロッ」

「…スイマセン。」

雪梅ちゃんに睨まれて、陽一クンは大人しくなった。

「あとはあれかな。こんなものがあったよ。」

ボクは、撮った写真をみんなに見せた。

「え、なんですかこの気持ち悪い合成写真は…」

「更衣室に貼ってあったんだ。」

「なんでこういう余計な事するんだよ、あのクマは…」

「男子更衣室の方はどうなってたんだい?」

「ああ、えっとね…似たような感じだったよ。女子が入ろうとすると、撃たれちゃうんだって。」

「わーお。」

「あとねー、こんなものがあったよぉー。」

天理クンは、ベルさんの顔がコラージュされた女の人の写真を見せてきた。

「なんだよこの気色悪りいコラ画像は!!せっかくのおっぱい美女が台無しじゃねえか!!」

「それじゃあ、そそられるものもそそられないのだ。」

「…………………………汚い。」

「神座殿。あまり見続けてはいけません。目が腐ってしまいます。」

「………。」

剣クンがゐをりちゃんの目を塞いだ。

「うーん。神座君と不動院君が一番辛辣だね。」

「…よし、じゃあ報告会も終わった事だし、そろそろお昼ご飯にしようか。栄君。何か作ってくれる?」

「おうともよ!」

わーい!

陽一クンのご飯ー!!

楽しみー!!

 

 

 

 

「ごちそうさまでした!!」

さてと、お腹いっぱいになったし、どこ行こうかな?

んー。メダルいっぱいあるし、娯楽室に行こっかな?

今度は何が出てくるのかな。

…あ。なんか出てきた。

あれ?

コイン?

どこの国かわかんないけど…多分本物のお金だよね?

まだ余ってるし、もっと引いちゃおっと。

今度は何が出るかな?

これは…なにこれ?服?

あ、学ランか。

こんなものまで入ってるのか…

あとは…

何これ?ヒーローのおもちゃ?

さっきからよくわかんないものばっかり出てくるなぁ。

ん?あれは…天理クンじゃん。

あんな所で何してんだろ。

…って、フツーにギャンブルか。

「っしゃー!!当たったー!!」

「天理クン、何やってんの?」

「んあっ、狛研サン。いや、実はね。今これやってたんだよ。」

「?」

天理クンが指を差したのは、馬が映った映像だった。

「なにこれ。」

「競馬だよ競馬!狛研サンもやる?楽しいよ。」

「競馬って、あれでしょ?どの馬が一番先にゴールするのか予想するやつだよね?面白そう!ボクもやるー!」

「やるって言ってもいろんな賭け方あるからね。初心者にはこれがオススメかなー。」

「ふんふん。あれ?天理クンがさっきやってた賭け方は?」

「ああ、三連単?でもあれ当てにいくのちょいムズいよ?その分勝ったら得するけど。」

「へー。」

「で、どれにするか決めた?」

「うん!こんな感じ。」

天理クンは、ボクの顔を見て苦笑いした。

「…それ、ホントに大丈夫?」

「え?大丈夫だよ!結構自信あるし。」

「自信って…キミ初心者だろ。まあ、どうしてもそれでいいんだったら止めないけど。」

「大丈夫だって!天理クンは心配性だなぁ!!」

 

 

 

 

ー数分後

 

「勝ったー!!」

「負けたー…なんでぇ〜?」

「だから言ったじゃん。やめとけって。こうなるだろうと思ってたよ。」

「あーあ。自信あったんだけどなー!」

「まあまあ、そう気を落とすなって。あ、そうだ。向こうで口直しにポーカーでもやる?」

「えー…?まだギャンブルやるのー?」

「あれ?今日はいつになく慎重じゃん。…まあ、2回も大負けすれば慎重にもなるか。」

「ボク、全然運ないんだよね。」

「でも、ちょっとはいい経験になったでしょ?もし本格的なギャンブルで大負けしようものなら、身体の中身売ったり地下行ったりする羽目になってたかもよ?そうならなくてラッキーだったね。」

「まあ、見方を変えればそう言えなくもない…のか?」

「ねえ、この後時間ある?」

「なんで?」

「いや、唐突に話がしたくなったんだけど。そうだ。俺の研究室来ない?」

「天理クンの研究室か…そういえば、今回は研究室の探索じゃなかったから、どんな感じか見てないんだよなぁ。行きたい!」

「そぉ?じゃ、一緒に4階まで行こっかぁ。」

 

 

 

 

【内エリア 4F】

 

「ほいついた。ここが俺の研究室だよ。」

「…ふーん。」

なんか、隥恵ちゃんの時とはまた別の意味でゴージャスなドアだなぁ。

【超高校級の資産家】だから?

「さ、どーぞ入って入ってー。」

「…わーお。」

なんか、すっごく無駄に凝った部屋だなー。

うわっ、なんか動物の檻みたいなのまであるし。

「あ、それね。人間を飼う用の檻なんだって。」

「へー。…へぁっ!!?」

人間を飼うって…何それどゆこと!?

…あ。

この赤と黒のチェックはなんなんだろ?

「あ、床の模様ね、実はデッカいチェス盤になってるんだー。」

「そうなの!!?」

嘘でしょ!?

今日一番のビックリ出ちゃったよ。

「この部屋ねえ、マジで俺好みの部屋なんだよ。なんでか知らんけどデスゲームのGMの部屋っぽいし、仮面とか服とかあるし、俺の好きな通貨とか株の新聞とか揃ってるし…あと、冷蔵庫にはガリ●リ君とファ●タが大量に入ってるんだぁ〜。」

「へー。」

やっぱり、研究室ってその人の好みに合わせて作られてるんだね。

「あ、そーだ。お風呂もあるけどちょっと見てく?アクアリウムに囲まれながら、テレビを見て風呂に入るのが最高なんだよねー。ここ来る前に見てたのは、カ●ジの22話だよ。部屋にあった鉄板で焼き肉しながら見たんだ〜。」

天理クンが指差した鉄板は、ちょうどテレビに映っていた鉄板と同じ形をしていた。

「え、これで焼肉やってたの?」

「まあね。」

マジかー。

「あ、泡風呂、源泉風呂、札束風呂、血風呂、コーラメントス風呂があるけどどれがいい?」

いくつか変なの混じってるね。

「札束風呂ってなんなの?」

「あ、見てみたい?」

天理クンは、ルーレットみたいな形のお風呂の横の機械をいじった。

すると、浴槽に開いた穴から札束がドバドバ出てきた。

「わーすごい。」

「ちなみにこれ、全部本物の諭吉だよ。」

「…マジ?」

 

「さてと、お部屋自慢も終わった事だし、そろそろお話しよっかぁ。」

「そうだね。…あ、そうだ。」

「ん?何?どうしたの?」

「さっきねぇ、ガチャでこれをゲットしたんだ。天理クン通貨好きでしょ?」

ボクは、天理クンにコインを見せた。

「えっ!!?マジ!?嘘だろ!?」

天理クンは席から立ち上がると、興奮気味にボクの手を掴んできた。

「これ、1ノブル硬貨じゃんよ!!」

「何それ。」

「知らねえのかよ!!50年以上前にノヴォセリック王国で使われてた通貨なんだけど、廃止されてからは一気に見なくなって、今では超激レアコインとしてコレクターの間で有名な代物なんだぜ!!?18金以上の純度の高い金だけで作られてて、その希少価値から、一枚だけで100万円は下らないって言われてんのに…こんなところでお目にかかれるとはな!!いやー、ホント久々に感動したわ。俺の研究室にあったコインコレクションにも、これだけはなかったからねー。」

「へー。すごいんだね。」

「いやー、ありがとう狛研サン。お礼に何かしてあげよっか?メダル欲しい?それとも肩でも揉もうか?」

あの天理クンがこんなに腰が低くなるって…どんなお宝だったんだろあのコイン。

「天理クン。キミの話を聞きたいんだけど。いいかな?」

「もち!なんでも聞いて?」

「天理クンて、なんで【超高校級の資産家】になったわけ?」

「んー…なんでなんだろ。俺は、適当にギャンブルやって勝ったり,高騰しそうな株を適当に買って高騰したら売ったり、起業したい奴に適当に投資したりしたらたまたまソイツが大成功して俺もおこぼれ貰ったりとかしてただけなんだけどねー。なんでか知らんけど、いつの間にか億万長者になってたねー。宝くじとかも、当たりすぎてもう飽きたって感じ?」

「じゃあ、ここまで来たのは全部自分の才能のおかげって事?」

「そーね。俺さあ、大体次に何が起こるのかって読めるんだよね。ウイルスがバカみたいに流行った時も、事前にマスクの工場作って、マスク大量に売ってボロ儲けしたしー。あと、震災の時も防災グッズ売り捌いたらちょっとぼったくってもみんな買ってくれたよ。あっはっは。」

「なにそれ。まるで未来予知じゃん。」

「そうだよ。俺はエスパーだからね。人の心を読んだり未来を予知したりすんのはお茶の子さいさいなの。今狛研サンが考えてる事も当ててあげよっか?」

「え、ガチで?」

「うん。ガチで。今さあ、エスパーならビームでも出せるんじゃねとか考えてたっしょ?」

「!!!」

「ほら当たりー。ホント、わかりやすいなぁ。あ、言っとくけどさすがにビームは出せないからね。」

「えー。つまんなーい。なんか地味ー。」

「地味言うな。予知能力者ってめっちゃ需要あんだかんな。」

「そうなの?」

「だってさ、次何が起こるか全部わかってるんだったら、世界を掌の上で転がすようなモンじゃん。実際に未来が読める俺が言うのもなんだけど、誰もが欲しがる能力だと思うけどねー。」

「へー。…あ、その指輪は何?」

「ん?ああこれ?なんか忘れたけど、どっかの国の大富豪にウチの工場で作ってる高級チョコプレゼントしたお礼に貰ったんだー。なんか、レアメタルで出来てるらしいの。なんて言うんだっけ?」

「ふーん。ちょっと見せて?」

「ダーメッ!!」

「わっ!もー!!天理クンのドケチ!!」

「これは俺の宝物だからね。誰にも貸してあげないよーだ!」

「ぶー。」

「さーてと。俺の話はこれくらいでいいかな?じゃあ、次は俺がキミに質問する番ね?キミさぁ、今お気に入りの通貨とか株とかある?良かったらいいの紹介してあげるけど。」

「えー。ボク、そういうのあんまり興味ないかなー。」

「ところでさぁ、今はもうほとんど出回ってないけど、硬貨で買うタイプの自販機っていいと思わね?っていうか硬貨ってマジでいいよね。」

「興味ないって言ってんじゃん。」

「一円硬貨ってさぁ、よく財布の中に溜まりまくってウザいなーっていう奴よくいるけど、俺はあの柄とか結構好みなんだよね。シンプルだけど若木の柄っていうのがイカしてるし…あ、知ってる?一円硬貨は純アルミニウム製で、日本の硬貨の中で唯一銅が使われてない硬貨なんだよ。」

「…。」

「あとあと、五十円硬貨って、昭和62年のヤツがマニアの間でしか出回ってない激レアコインだって知ってた?その年発行された枚数が77万5000枚しかなくって、コレクターの間では5000円以上で取り引きされてるんだよ。俺も持ってるけどね。あとは、穴が無いヤツとかズレてるヤツとかも人気だね。どれも50円以上の価値があるから、見つけたらケースかなんかに入れて大事にしとくか、友達にぼったくり価格で売るかしてみるといいよ。こういうのって、知らないとかなり損だよー?俺のクラスの奴も、ギザ十を知らずに普通に使っちゃってたからね。まあ後で俺が回収しといたけど。」

「…。」

「でも、やっぱり今注目してんのはなんだかんだ言ってルピアかなー。あ、ルピアっていうのはインドネシアで使われてる通貨で、1ルピアが0.0075円なんだけど…」

「…。」

その後も、天理クンの地獄の通貨&株トークは延々と続いた。

通貨や株の歴史、それらを巡った国際問題、そもそもお金とは何か、果てには宇宙の真理との関係性まで語り出した。

この子、考古学者か社会学者…それか哲学者にでもなるつもりなんだろうか。

「…と、いうわけで、俺の導き出した結論は、やっぱり貨幣の導入によって発展した文明は偉大だという事で…」

「…はあ。」

「あ、やべっ。もう6時半じゃん。急がないと穴雲クンに怒られるー!」

「え…って事は、ぶっ続けで5時間以上は話してたって事?」

「んー…そうなるね。ごめーん。俺、熱中しちゃうと周りが見えなくなっちゃうんだ。許して?」

「…。」

周りが見えないにも程がある。

「じゃ、食堂行こっか。俺もうお腹ペコペコだよぉ〜。」

「…そだね。」

 

《財原天理の好感度が1上がった》

 

 

 

 

【食堂】

 

「ごめんねー?みんなお待たせー。」

「…お待たせ。」

「あれっ?狛研ちゃん、なんかやつれてね?どうしたの?」

「あのねあのねー。俺、狛研サンと一緒に楽しくおしゃべりしてたんだぁー。」

「…あ、うん、はい。」

陽一クンは、何かを察した様子だった。

「…狛研ちゃん、ごめん。アイツは関わんない方がいいって言っとけばよかったな。」

「…うん。」

ああ…なるほど。

陽一クンも被害者なのね。

「なあおい。話ってなんだよ。お前ら、何話してたんだ?俺にも聞かせろよ。」

「おいバカやめろ舞田!!」

「あー、聞きたい?じゃあみんなにも話してあげるね?」

「むっ…!?なんなのだこの悪寒は…なんかすっごい嫌な予感がするのだ…!」

「おい!やめろ財原!せっかくの飯がマズくなんだろ!」

「えー?俺的にはむしろメシウマな話なんだけど。まずはねー…」

 

「みんな、とりあえず席につこうよ。」

星也クンは、にっこりと笑みを浮かべた。

「えー、でも穴雲クン。俺の話はー」

「楽しくお喋りするのはいいけど、ちゃんとご飯は食べようね?」

「…はい。」

「なっ…て、天理サンが大人シク席に座っタ…!?星也サン、おっかないデス…」

「じゃあ、みんな席についたし食べよっか。」

「はーい!」

 

 

 

 

「はーうまっ。バリウマっすわ。あ、誰か醤油取って。」

「…あまり口を開くな。飯がマズくなる。」

「やーん!陛下のイ、ケ、ズぅ!」

「…チッ、なんで俺はコイツの隣なんだ。せっかくの飯に蝿が集っているような気分だ。」

「同感です。私は、まだこの方の事は許しておりません。」

「陛下も剣クンもひどーい。」

「まあ、財原君の隣で気分がいい人なんていないよねー。」

「ひーん。」

「私は別に気にしませんが…」

「ボクも。天理クン、話は長いし朝のアレはちょっとどうかと思うけど、一応ボク達の仲間だしね。」

「わーん、癒川サンに狛研サン!そう言ってくれるのはキミ達だけだよー!!」

「ふんっ、ただの社交辞令だろ。オマエラ、こんな成金に気を遣う必要なんてないぞ。」

「どいつもこいつもひどいわね。まるで俺に人権が無いみたいじゃん。」

「逆にあると思ってたのかい?」

「わー詩名クン辛辣ー。…あれ?そのインコどしたん?洗ったの?」

「癒川さんがもう一匹作ってくれたんだよ。」

「ふーん。お疲れ様。」

「…君が汚したせいでね。」

「にゃぱぱー。ごめんなちゃーい。」

凶夜クン、隥恵ちゃん、踊子ちゃんの席には花の入った花瓶が、そして彩蝶ちゃんの席には花瓶と翠ちゃんのぬいぐるみが置いてある。

…やっぱり4人もいなくなっちゃうと、食堂も広く感じるなぁ。

「…うん、おいしかった。ごちそうさま。」

「あれ?天理クン。もう行っちゃうの?」

「だって、俺はこの場じゃ悪者みたいだからねー。ドロン。なんつって。あ、これおまけね。」

そう言うと天理クンは、高いところから思いっきり醤油をお皿にぶちまけてから去っていった。

「…アイツ、最後に嫌がらせして帰っていったのだ。」

「なんだありゃ。あとで皿とテーブルクロスを洗う俺への嫌がらせかよ!?」

「チッ、俺のところまで跳ねてるじゃないか。不愉快なマネをしおって。」

「みんな、無視しよっか。気にしてたらご飯がマズくなっちゃうよ。」

「…………………………ん。」

星也クンとゐをりちゃんは気にしない様子でご飯を食べ続けた。

 

 

 

 

あー、お腹いっぱい。

うーん。まだ夜時間までちょっとあるなー。

今夜は何して遊ぼっかな?

あ、そうだ。新しく開放されたゲームエリアにでも行ってみよっかな?

 

 

 

 

【ゲームエリア】

 

ん、もうすでに先客がいたみたいだね。

あれは…才刃クンと雪梅ちゃん、それに剣クンとゐをりちゃんか。

何やってんだろ?

「わー、才刃サンすごいですネ!!」

「ふん、これくらい余裕なのだ。」

「私には、何がどうなっているのかさっぱりです…」

「……………私も。」

「ねえ、みんな何やってんの?」

「おや、狛研殿。ちょうどいい所に。実はですね、入田殿がげえむ?で遊んでいる所を、私達が拝見していたのです。」

「へー。才刃クン、ゲーム好きなの?」

「ふんっ!オマエラのような低次元な脳味噌ではボクちゃんの凄さがわからんだろ!!」

「今やってるのは何?」

「ふんっ。テ●リスなのだ。」

「これ、めっちゃ溜まっちゃってるよ?いいの?」

「ソーデスヨ!!あと一回でなんとかシナイトゲームオーバーになっちゃいマスヨ!!」

「ふん、ガタガタ騒ぐなド素人共が。全部計算通りなのだ。」

才刃クンは、落ちてきたピースを溝に埋めた。

すると…

「なっ…!!全部消えましたよ!!先程まであんなに溜まっていたのに…どうなっているのですか!?」

「ふんっ!これが僕ちゃんの十八番、全消しスペシャルなのだ。どうだ見たか猿共め。」

「才刃クンすごーい!!」

「ふんっ、だが…対戦する相手がいないとつまらんな。そうだ狛研。僕ちゃんと勝負しろ。稽古をつけてやる。」

「え!?ホント!?ボク、ゲーム大好きだよ!」

ゲームかぁ。確か、凶夜クンも好きだったよね。

一緒にゲームとかできればよかったんだけどなぁ。

「ふんっ、威勢があるのはいい事だ。…どれ。あれで遊んでやろう。」

「何あれ?」

「ふんっ、VRの格ゲーなのだ。実際の動きが、ゲーム内のキャラの動きに反映される。」

「へー。面白そう!このゴーグル付けて遊べばいいんだよね。」

「うむ!」

わっ!

なんか、よくわかんない画面が出てきた。

これでキャラを選べばいいのかな?

とりあえず、強そうだからこのキャラにしてみよ!

わっと!

目の前に、なんかリングみたいな景色が広がった。

目の前には、なんかムッキムキのオジサンが立っている。

プレイヤー1…あ、このオジサンが才刃クンのキャラなのね。

しっかし、すっごいデカいなー。

3mくらいあんじゃない?

 

『ROUND1 Go fight』

 

カーン

 

あ、ゴングが鳴った。

これで始まったって事でいいのかな?

…へ?

 

バキッ

 

わぁあああっ!!?

ちょっと待って!?

速っ!?え、待って!?このオジサン、見た目重そうなのになんでこんな動き速いの!?

ズバババババッ

わっ、わわっ!次々と攻撃が来るよ!

「ほう、避けるか。なかなかいい身のこなしだ。…だが。」

 

ズビシッ

 

へ?

 

オジサンに足元を蹴られて、よろめいた。

その瞬間…

 

ゴスッ

 

「あぐっ!!?」

 

オジサンに顔を殴られたと思った瞬間…

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

1HIT 2HIT 3HIT 4HIT 5HIT…

 

108HIT Critical!

 

「あああああああぁぁぁぁ…」

 

K.O.

 

『WINNER PLAYER1 PERFECT』

 

「ひーん、才刃クン強すぎー…」

「ふん、初心者にしてはいい線いってたが、僕ちゃんの前では象に立ちはだかる蟻も同然よ。」

「インドネシア式ジャンケンでは、アリの方が強いデスケド。」

「細かい事はいいのだ!!さ、狛研!何をボサッとしているのだ!!早く第二ラウンド始めるぞ!!」

「え、まだやるの!?」

「何を言ってる。格ゲーは1ラウンドだけじゃないんだぞ。」

「ボクもう疲れたー。そうだ、剣クン代わりにやってよ。」

「え、私ですか…?」

「いい考えデスネ!ワタシ、剣サンのカコイイとこ見てみたいデス!」

「は、はぁ…私、げえむ?などという物はやった事がないのですが…」

「やってみたら意外と楽しいって!ささ、早く早く!」

「皆さんがそこまで仰るのならやりますけど…」

「ククク、バカめ!!わざわざバカ侍を代表選手にしてくれるとは…いくら本物に近い格闘ゲームであるとはいえ、ゲームである以上は必要とされるのは本人の体力より頭脳やプレイスキル…この勝負もらった!」

「ええと、この眼鏡をかければ良いのですね?…ややッ!!?目の前に、肖像画のようなものが見えます!!」

「それで、プレイヤーを選ぶんだよ。好きなキャラを選んで?」

「ぷれいやぁ?きゃら?」

「えっと…才刃クンと戦ってくれる人を、その絵の中から選ぶの。」

「えっと…こう、ですかね。…わっ!?今度は円形の台?が見えます!」

ボク達が見ている画面に、剣クンが選んだキャラが入ってくる。

…侍キャラか。剣クンらしいな。

「あ、プレイヤーは選べたんだね。じゃあ、合図が出たら、とにかく体を動かしまくって。そしたら、剣クンが今選んだ人も、同じように動いてくれるから。」

「…なるほど、やり方は大体理解しました。…いざ!!」

 

『ROUND2 Go fight』

 

カーン

 

「わっ!?ややっ!!?」

ゲーム開始と同時に、オジサン才刃クンは侍剣クンに連続で攻撃を仕掛ける。

剣クンは、慌てふためいて回避も防御も出来ず、攻撃を喰らってしまう。

リアルの才刃クンは、素早いキックやパンチを繰り出していた。

…才刃クン、普段は運動音痴なのにゲームになるとキレッキレだね。

「ほらほらほらぁ!!!どうしたどうしたどうしたぁ!!あと一押しで勝負がついちゃうぞ!!」

 

ピキッ…

 

剣クンの気配が変わった。

なんか、すっごいオーラ?みたいなのが強くなってる気が…

…もしかして剣クン、キレた?

「…破ァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

リアル剣クンは、リアル才刃クンに一気に詰め寄ると、重い蹴りを喰らわせた。

「ぐあっ…!?」

才刃クンは、数メートル吹っ飛ばされて壁に思いっきり叩きつけられた。

「がふっ!!」

 

「…。」

 

それを見ていた全員が絶句した。

「やった!やりましたよ皆さん!!私、入田殿に一撃喰らわせました!!」

状況が理解できていない剣クンは、ゴーグルをつけたまま一人ではしゃいでいた。

「…おや?どうしました皆さん?」

「剣クン…その、さぁ。キミ、本当に一撃喰らわせちゃったみたい…」

「?…入田殿!!?ご無事ですか!?」

剣クンは、ゴーグルを外すと急いで才刃クンに駆け寄った。

「入田殿、申し訳ございません!!私、つい興奮して…」

「ぐ…なかなかいい蹴りだったぞ、ふどう、い、ん…(ガクッ」

「入田殿ーッ!!!」

「…ドウシマス?」

「とりあえず、治奈ちゃん呼ぼっか。」

「……………私、看護師………呼ぶ………」

「ありがとうゐをりちゃん。」

 

結局、ゐをりちゃんが治奈ちゃんを呼んできてくれたおかげで才刃クンは一命を取り留めた。

…それにしても、剣クンは怒らせると怖いね。

さすがは【超高校級】…もはや人間業じゃないね。

まさか、ゲームエリアを開放して1日目でこんな事になるとは…やっぱり【超高校級】のみんなが集まると面白いね!



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第3章(非)日常編③

雑学大好き。
気がつくと、結構雑学を作中で書いちゃってる。


「ふわぁああ…」

よく寝たぁ。

ボクは、独房で目を覚ました。

その直後、ベルさんの声が鳴り響く。

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

うーん、相変わらず口悪いなぁ、ベルさんは。

とりあえず、着替えて食堂に行くかぁ。

 

 

 

 

【食堂】

 

「おっはよー!」

「おはよう。狛研さん。」

「おはようございます、狛研殿。」

「おはようございます。」

「オハヨーございます!!」

「おはよ〜♪」

いつもの5人だ!

この5人が揃ってると、朝が始まったーって感じがするね!

8時半まであと5分かぁ。

「おう、おはよう狛研ちゃん。」

「あ、おはよう陽一クン!」

わぁあ!陽一クンの作ってくれた朝ご飯は、今日も美味しそうだね!

これ食べたら朝から元気100倍だよ!

あっ、ちょうど8時半になったね。

 

「おう、おはようお前ら!!」

「………………。」

「フン。全く、毎朝毎朝煩いな。」

「ふんっ、オマエラ!今日も僕ちゃんが来てやったぞ!!」

成威斗クン、ゐをりちゃん、ラッセクン、才刃クンが時間ぴったりに来た。

「…フン、あの成金はまた遅刻か。」

「そうみたいですね。もう少し待ちましょう、陛下。」

「…チッ。」

「ふわぁ〜あ。ごめんね〜?まぁた遅刻だぁ〜。あー、クッソねみー。」

「…もう、叱る気すら起こりませんね。」

「逆に、彼が時間通りに来たことあったかい?」

「おいおい、一回あるじゃん。カステラ作ってやったろー?」

「…ああ、そういえばそうでしたね。」

「忘れてんじゃねーよぉ。ってか、これ以上突っ立ってると寝ちゃいそうだし、早く朝ご飯食べようよぉお。」

「君を待っていたせいで遅れたんだけどね。…まあいいや。全員揃ったし、ご飯食べちゃおうか。」

星也クンの一言で、みんな席についた。

 

今日はあっさりとした和食で、朝から元気いっぱいだね!

「…なんだこの黒くて気持ち悪い物体は。これ、本当に食えるのか?」

「気持ち悪い言うな。…お前、海苔の佃煮も知らねえのかよ。」

「なんだそれは。聞いた事ないぞ。」

「あぁ…海苔食べるのって、一部のアジア地域だけだからね。陛下が知らないのも無理ないよー。」

「そうなんだー。」

 

 

 

 

はー、お腹いっぱい!ごちそうさま!!

今日は何して遊ぼっかな?

そうだ!またゲームエリアに行こっと!

 

 

 

 

【ゲームエリア】

 

「ぐわぁあああああああ!!!チキショー!!なんでだ…結構ゲームの腕は自信あったのに…!」

「ふんっ。オマエの自信とはその程度か?オマエのプレイスキルなんて、ゴミも同然よ。」

才刃クン、今度は陽一クンと遊んでるんだね。

「才刃クン、またゲームやってるの?」

「む。狛研か。なんだ、また僕ちゃんにボコられに来たのか!?」

「才刃クン、初っ端からすごい攻めてくるからイヤ!」

「ふんっ。それも作戦のうちだ。初見だからなど、言い訳にしかならん。」

そんなぁ。

 

「半分正解で半分不正解だね。入田君。確かに、ゲームにおいて作戦は重要だよ。…だけど、女の子を一方的に負かすのはどうかと思うな。」

「なっ…穴雲!!オマエには関係ないだろ!!」

「僕には関係ないかもしれないけど、狛研さんが困ってるのを放っておけないだろ。」

「ふんっ!そこまで言うなら、オマエが勝負してみるか!?」

「うーん。参ったなぁ。僕としては、無駄な争いはしたくないんだけど…でも、いいよ。そうしないと君が満足しないんだろ?」

「ふんっ!わかればいいのだ!!じゃあ、何で勝負しようか!?」

「うーん。引き受けちゃったのはいいけど、僕あんまりゲームは得意じゃないんだよなぁ。」

「ねえ、アレは?シューティングゲーム。星也クン、ダーツ得意だったでしょ?」

「ふんっ。なるほど、シューティングゲームか。いいだろう。穴雲、オマエのそのスカしたメガネ面を崩してやるぞ!!」

「スカしてるつもりはないんだけど…やれやれ、しょうがないなぁ。」

星也クンは、ゲーム用の銃を構えた。

「ふんっ!さあ、地獄を楽しみな!!」

二人のゲーム対決が始まった。

「星也クンがんばれー!!」

「やっちまえ穴雲!!そんなムカつくチビやっつけちまえ!!」

「ふぁいとー。」

「あはは…まあ、できるだけ高いスコアを稼げるようには頑張るよ。」

 

 

 

 

ー3分後ー

 

「フハハハハハハハハハ!!!どうしたどうしたぁ!!もっとガンガン来んか!!準備運動にもならんぞ!!」

「…うーん、骨が折れるなぁ。こりゃキリがないよ。」

「なんだコイツら…どっちもすげェぞ!!」

「わーすごい。銃弾のゲリラ豪雨やー。」

「どわぁあああっ!!?さ、財原!?お前、いつの間にここにいたのかよ!?」

「結構前からいたよ?気づかなかった?」

「マジかよ…」

「天理クン、この二人すごいよね!どっちが勝つかな!?」

「さぁね。どっちだろうねー。あ、決着がついたみたいだよ。」

「うーん、まあ、ベストは尽くした…かな。」

「990000点…ふんっ、まあまあだな。さて穴雲。オマエは…プッ、なんだオマエ!たったの99500点しか稼げてないのか!10万点もいかないって…オマエ、どんだけヘタクソなんだよ!!あっははははは!!!」

 

「入田クン。キミ、一桁0を数え忘れてるよ。」

「ん?何…?って事は、嘘だろ!?995000点!!?」

「じゃあ、星也クンの勝ちって事!?星也クンすっごーい!!」

「あはは…勝っちゃった。たまたま射的が得意なのが役に立ったみたいだね。」

「わーすごいパチパチパチ。」

「やるな穴雲!!あの怪物ゲーマー入田を倒した奴が現れたぜ!!」

「くっ…今のはナシだ!!ちょっと油断しただけだ!!次はそうはいかんぞ!!」

「往生際が悪いよオマエよー。穴雲クンはオマエより圧倒的に不利な条件でオマエに勝ったんだから、ちゃんと認めろよなー。」

「うるさいのだ!!オマエ、いっつも上から見下した感じでムカつくんだよ成金クソヤロー!!」

「オマエが下だから見下してるに決まってんだろプークスクスwww」

「何をー!?」

「全く、娯楽室のゲームじゃ俺に一回も勝てなかったクセに偉そうにすんなよなー。」

「え、そうなの?」

「そうだよ。コイツね、こういうデジタルのゲームは強いけど、アナログのゲームはマジでフツーなんだよ。にゃはは。」

「うるさい!!ゲーマー同士、勝負してやる財原!!かかってこい!!」

「やだ。俺、今喉渇いてるから。キンキンに冷えたコーラ飲んでくるね。」

「逃げるなー!!」

天理クンは、そそくさと研究室に戻っていった。

「なんだよ!!どいつもこいつも僕ちゃんをコケにしやがって!!」

「コケにはしてないけど…」

「うるさい!!オマエは黙ってろ穴雲!!」

「えぇ…」

 

「ねえ、才刃クン。」

「なんなのだ!?オマエまで僕ちゃんを愚弄する気か!?」

「そういうつもりじゃないけど…ちょっと気分転換に話さない?」

「むっ!?オマエ、僕ちゃんに興味があるとな!?そういう事なら話してやらん事もないぞ!僕ちゃんは寛大だからな!!感謝しろ!!」

「わーい!」

「とりあえず、僕ちゃんの研究室に来い。話はそれからだ。」

 

 

 

 

【超高校級の工学者】の研究室

 

「ここが僕ちゃんの研究室だ。どうだ!?すごいだろ!!」

「わぁ…!」

才刃クンの研究室には、よくわかんない機械がいっぱいあった。

部屋の端っこにはホワイトボードが置かれていて、よくわかんない数式が書いてある。

机の上には、いろんな種類の飴が置いてある。

「わ、おいしそー!才刃クン飴好きなの?」

「ふんっ、まあな。ところで狛研よ。僕ちゃんのように賢くなるために必要な栄養素は何かわかるか?」

「えーっと…」

「糖分だよ糖分!!甘いものに含まれるグルコースは、脳のエネルギー源になるんだ。だから、僕ちゃんのように頭をよく使えば、いくら甘い物を食べても太らないんだぞ!」

そう言うと才刃クンは、机の上の飴をバリバリ食べ始めた。

「ほう、スモモ味にパイン味…むっ!?ハッカ味なのだ!スースーするのだ!!」

才刃クンって、飴を噛む派だったのね。

「うむ!狛研よ。僕ちゃんと話がしたいと言っていたな。言ってみろ。」

 

「あ、そうそう。その前に、才刃クンに渡したい物があるんだけど。」

「むむ!?なんだ!?僕ちゃんに貢物とな!?」

「はいこれ。才刃クン、確かヒーローとか好きだったよね?」

「ぬあぁああああああああっ!!?そ、そそそそそそそれは!!僕ちゃんがずっと探してた、ライダーマンマスクのライダーゴールドのフィギュアじゃないか!!どうしたんだそれは!!」

「ガチャで引いたら出てきたんだ。気に入ってくれるといいんだけど。」

「あのな!?ライダーゴールドはな!?ライダーマンマスクシリーズで一番人気があって、フィギュアもすぐ売れちゃうんだぞ!!だからどこのト●ざらスに行っても売ってなかったのに…狛研!!オマエにしちゃあ上出来だぞ!!」

「えへへ、そりゃどうも。」

「まさか、オマエがこれをくれるとは思わなかったぞ!!そうだ、礼に何かしてやろう。何か欲しい物とかあるか?」

「うーん。今は無いかな。あ、そうだ。じゃあさ、才刃クンのお話聞かせてよ。」

「む?僕ちゃんの話とな?はははは!いいぞ!!僕ちゃんに興味があるのはいい事だ!!さ、どんどん質問したまえ!!」

 

「じゃあ早速聞くけど…あのさ、才刃クンて、なんで【超高校級の工学者】になったの?」

「うむ。それは、僕ちゃんが圧倒的に天才だったからだな。あのな、もう知ってると思うが僕ちゃんは、めっちゃ天才なんだぞ!!僕ちゃんは、特に工学の分野で大いに才能を発揮してな。それが世界中から認められたから、工学者になったというわけなのだ。」

「へー。」

「だが、勘違いするなよ?この天才の僕ちゃんでも、一人だけならここまで上り詰める事はできなかっただろう。僕ちゃんの研究を手伝ってくれた研究仲間には、大いに感謝しているのだ。」

「研究仲間か…才刃クンのお友達?」

「別にお友達って間柄じゃないのだ。みんな四、五十代のオッサンだしな。」

「え、お、オッサ…」

「む?何を驚いているのだ?僕ちゃんと同年代の研究仲間なんているわけがなかろうが。僕ちゃんは天才だから高校生で工学者になれたが、著名な科学者といったらそれくらいはいってるのが普通だぞ。ま、彼らと肩を並べられる僕ちゃんがいかにすごいかがわかっただろ!」

「うん!…あれ?向こうにあるのは何?」

「ああ、あれか。僕ちゃんの発明品なのだ。ま、どれも失敗作だがな。」

「あ、これ知ってる!洗濯しなくていい服シリーズだ!あとは、らくらくカバンにどこでもデスク!どこでもデスクって、確か世界で初めて時空の切り取りに成功した発明品として、世界で注目されたんだよね!?」

「そうだ。その引き出しの中から、別の空間にあるものを取り出すことができるというアイテムだ。ど●でもドアの発明のためのオマケで作ったものを試しに一部の金持ちに売ってみたんだが…予想以上に売れてな。そのまま商品化しちゃったのだ。」

「へー。でも、なんでこれが失敗作なの?」

「昔、赤ん坊が間違えてデスクの中に入って迷子になるという事故があってな。行き先がわからなければ移動できないようにプログラミングしたはずなんだが、バクっちゃったらしくてな。人を事故に巻き込むものなど、ただのガラクタだ!」

「へ、へえ…才刃クンって、意外とそういうとこ真面目なんだね。」

「当たり前だろう!!僕ちゃんをただの天才と見紛うな!!僕ちゃんは研究者なんだぞ!!世界への貢献のため、持ちうる限りの頭脳をフル回転させて新たな発見をするのが科学者としての使命だろうが!!」

「そっかぁ。」

才刃クンって、こう見えて実はけっこういい子なんだね。

 

「あれ?」

「む、なんだ?」

「そのヘアバンドは何?かわいいけど。」

「む、これか。これはな。弟が誕生日プレゼントに買ってくれたのだ。にーちゃんは髪がボサボサだからーってな。」

「え!?才刃クン弟いたの!?」

「む。そうだが?僕ちゃんと違ってバカで能天気だが、僕ちゃんを慕ってくれてる大事な弟なのだ。…僕ちゃんは、外で待ってる研究仲間や弟のためにも、ここで死ぬわけにはいかんのだ。」

「才刃クンの弟!?え、見たい見たい!!」

「ほら。写真なのだ。」

「えっ、嘘!?」

ちょっと待って!?

背高い!イケメン!この子が本当に才刃クンの弟なの!?

「わーすごい。似てないね。」

「よく言われるのだ。…くっ、ウチの家系はみんなモデル体型なのに、なんで僕ちゃんだけ…」

「…才刃クン?泣いてる?」

「泣いてないのだ!!まだだ!!まだ勝負はこれからなのだ!!」

なんの勝負かなぁ。

「あ、そろそろお昼の時間だ。行こっか才刃クン。今日はいろいろ話してくれてありがとね。」

「うむ!!」

 

《入田才刃の好感度が1上がった》

 

 

 

 

【食堂】

 

「お待たせー!」

時間より少し早く食堂に着いた。

「む…」

「才刃クン?どうしたの?」

「あ、いや…時間より早く来た事がなかったからな。」

「そっか。そういえば、いっつも時間ピッタリに来てたもんね。あ、成威斗クン達が来たよ。」

「おう!!待たせたな、お前ら!!」

「…フン。」

「………………。」

そして、集合時刻に20分遅れて天理クンが来た。

「ふわぁ〜あ。お待たせしましたぁ。」

「全くなのだ。オマエは、毎度毎度人を待たせすぎなのだ。」

「しぃましぇーん。」

 

 

 

 

あー、朝ご飯も美味しかった!!

お腹も膨れたし、ちょっと運動しよっかな?

そうだ!!新しく開放された体育館に行ってみよっと!!

 

 

 

 

【体育館】

 

「………ッ!!………ッ!!」

ん?なんか誰かの声がするなぁ。

もしかして、もう先客がいたかな?

ボクは、体育館を覗いてみた。

 

「一!!二!!三!!四!!五!!六!!」

 

わぁ、成威斗クンがめっちゃ鍛えてるね。

しっかし、すごいや成威斗クンは。身体も大きいし、何やったらあんな風になるんだろ。

「成威斗クン!!」

「んおっ、おお。叶か。どうした?」

「んー。まあ、ちょっと遊びに来ただけ。」

「おう、そうか。」

「ねえ、ちょっと遊んでていい?」

「いいぞ!!」

「やった!」

ボクは、しばらくの間体育館で遊ぶ事にした。

 

あ!この体育館、登るやつがあるよ!最近、これがあるとこあんまり無いから…なんか登りたくなってきた!

「よーし、一番上まで登るぞ!よっ、ほっ!」

久々にやったけど、やっぱコレ楽しいね!

そうだ!このまま上の足場まで行けるかな?

よっ!

っと。行けた!

わぁ、高ーい!!

「やっほー!!成ー威ー斗ークーン!!」

「おう、叶、どうした…って!?何やってんだお前!!?」

「えへへ、そこから登って来たんだ。これ楽しいよー!」

「危ねーだろうが!!戻れ!!」

「大丈夫だよー!!…あっ。」

 

「あっ!!」

わー、やっちゃった。

手が滑った。

「っと!あっぶねー。」

ギリギリのところで成威斗クンがキャッチしてくれた。

「ふぅ、間に合った。おい叶。危ねえからこういう事すんのやめろよな。」

「あはは、ごめーん。あ、そうだ成威斗クン。」

「おう、なんだ叶?」

「この後さ、ちょっとお話しようよ。」

「話?なんでだ?」

「ちょっと成威斗クンの事知っておきたいなーって思って。せっかくキミの研究室が開放されたし、ちょっと覗いてみたいっていうのもあるんだけどね。」

「おう、いいぜ。じゃあ、俺の研究室来いよ!」

「うん!」

 

 

 

 

【超高校級の喧嘩番長】の研究室

 

「ここが俺の研究室だ!!遠慮なく入ってくれ!!」

「じゃあお邪魔しまーす。」

わぁ、やっぱ成威斗クンの研究室って感じだね!

バイクとか…あと、色んな武器とか置いてあるし、なんか壁に貼ってあるポスターとかがカッコいいね!!

「いいね成威斗クン!!こういうの、男らしくってボク好きだよ!!」

「おう、そうか!!気に入ったか!!」

「なんか頑張れーって感じがしていいよね!」

「なんだ、わかってくれるか叶!!ラッセや天理には暑苦しいって言われたけどよ…やっぱ、男なら求めるものは情熱だよな!、」

「うんうん、いいねそういうの!」

「ところで叶。お前よぉ、俺に話があるっつってたよな?なんだ?」

「ああ。えっとね…ちょっとプレゼントしたいものがあるんだ。これ、成威斗クンいる?」

ボクは、昨日ゲットした学ランを渡した。

 

「おわぁあっ!!?おい叶!!それ、ちょっとよく見せろ!!」

「え、あ、うん。」

「すげェ!!ホンモノじゃねえか!!」

「え、何が?」

「これ、俺が好きな俳優の『米里軒咲磨』が、ヤンキー役で使ってた学ランなんだぜ!!」

「そうなの?」

「米里軒はな、俺がヤンキーになったきっかけでもあるんだよ!!名作映画でヤンキー役を演じて有名になって…それから、ずっと米里軒のファンなんだよ!!ほら、ここに本人のサインがあんだろ!?」

「そうなんだ。」

成威斗クンって、俳優とか好きなんだね。

それは意外だったなぁ。

「ありがとな叶!!礼と言っちゃあなんだが、何かさせてくれ!!」

「えぇー、いいよお礼なんて。お腹いっぱいにならないじゃん。あ、じゃあさ、成威斗クンの話聞かせてよ!」

「え、そんなんでいいのか?」

「うん!ボクねえ、人の話聞くの好きなんだー。あ、長話は嫌いだけどね。」

「おっしゃ!そういう事ならなんでも話してやるぜ!!遠慮なく聞いてくれ!!」

「うーんっとねえ。じゃあさぁ、成威斗クンはなんで【超高校級の喧嘩番長】になったの?」

「そうだなぁ。さっきも言った通り、俺ァガキの頃から米里軒に憧れててよぉ。ガキの頃から、ずっとあんな男になりてェって思ってたんだよな。それで、小学校ん時にクラスの弱ェヤツいじめて調子乗ってるヤツがいてよ。ムカついたからソイツの事ブン殴ったんだよ。米里軒が演じたヤンキーは正義の味方でよ。俺もああいう風になりてェって思って、その日からクラスで調子乗ってるヤツを次々とボコってったんだよ。そしたら、小学校で一番ケンカが強くなって、中学では喧嘩番長になったんだよな。」

「へー、成威斗クンすごいねぇ。」

「んで、他校のヤツらにケンカ売られたから片っ端からブン殴ってったら、いつの間にか【超高校級の喧嘩番長】になってたってわけよ。」

「そうなんだぁ。ところで、その米里軒さんってそんなにすごい人なのかい?」

「ああ、すげェよ!!過激なアクションとかも、余裕でこなしちまうんだぜ!!体格はちょっとチビだけど…でも、風格?があって、そこらの役者とは、全然違げえんだよ!!この格好も、米里軒をモデルにしてんだぜ!!」

「へぇ。」

成威斗クンが好きな役者さんか。

後で調べてみよっと。

 

「ところで成威斗クン。」

「おう、なんだ?」

「成威斗クンはさぁ、大切な人とかいるの?」

「あぁ?んだよその質問。」

「ほら、みんな少なからず外に出たら会いたい人とかいるかなーって思って。成威斗クンには、そういう人はいないの?」

「んあー…一応いるぜ。」

「え、誰?」

「兄貴だよ。10歳年の離れた兄貴がいんだよ。外に出たら、まずは兄貴に会いてェな。」

「え!?成威斗クン、お兄ちゃんがいたの!?」

「まあな。意外か?」

「うん。」

「ハッキリ言うなお前!?」

「で、成威斗クンのお兄ちゃんってどんな人なの?」

「…俺とは違って、真面目な人だったよ。ガキの頃から、誰かを助けたいっつって医者を目指してたよ。ったく…自分がひ弱なクセに、無茶しすぎなんだよあのバカ兄貴は…」

そんな人が成威斗クンのお兄ちゃんだとは…これまた意外だねぇ。

…ん?

「…()()()?…まさか。」

「あーあー、勝手に殺すなっつーの!!安心しろ、死んでねえよ!!…ただ、最近ちょっと疎遠になってただけだよ。最近全然会えてねえし、たまには顔出してやりてェなって思ってよ。」

「なぁんだ…」

「ってか、さっき会いに行きたいっつったろ?どういう意味だと思ってたんだよ。」

「お墓参りかと…」

「縁起でもねェ事言うな!!」

「ごめん…」

 

「…でも、似たようなモンか。」

 

「なんか言った?」

「いや、何も言ってねえけど?」

「成威斗クン、今日はありがと。一緒にお話できて楽しかったよ。」

「ああ、俺の方こそ、プレゼントくれた上に話聞いてくれてありがとな!!」

「そろそろ夕ご飯の時間だね。行こっか。」

「おう。」

 

《舞田成威斗の好感度が1上がった》

 

 

 

 

【食堂】

 

「おう、待たせたなお前ら!!」

「みんなお待たせー!!待った?」

「いや、全然?」

いつもの5人は、すでに席についていた。

陽一クンは、夕ご飯の準備をしている。

「…フン。」

「……………。」

「なんだ舞田!!今日はいつになく早いな!!」

「ああ、叶と一緒に来たからな。」

「道理で。」

「あぁ!?どういう意味だよ陽一!!」

天理クンは、30分遅れてきた。

「ほにゃー。皆さん大変長らくお待たせ致しましたぁ。」

「貴様、いい加減にしろ。もう7時だぞ。」

「にゃぱぱー。ごめんなちゃーい。ついト●ガワを見てたら時間を忘れちゃいましたぁー。」

「カ●ジの次はトネ●ワかよ。お前、ホントギャンブル漫画好きだよな。」

「まーね。ラ●アーゲームのドラマも見たよー。」

「さてと、じゃあ全員揃ったしご飯にしよっか。みんなお腹空いてるでしょ?」

「うん!腹ペコ!!」

「俺もー。腹減りすぎて死にそうー。」

「お前が言うな!!じゃあ、全員席つけ!飯食うぞ!」

「はーい。」

みんなが席についてご飯を食べた。

 

「わーお、デリシャース。ソーテイスティー。」

「全く、煩いなそこの成金は。テーブルマナーも知らんのか。」

「だって俺、陛下とは違って元々平民の出だもーん。金持ちだからってみんながみんな育ちがいいかっつったらそうじゃないんだなー。」

「そういうのを世間一般じゃ成金って言うんだよ。ほら、食事中に肘つくな。」

「いや、肘をつく以前にまず座り方が問題では…?」

「あ、気付いた?デ●ノートのL座りだよぉー。この座り方、一回は真似してみたくなるじゃん?」

「行儀悪いよ。ちゃんと座ろうね。」

「すいませーん。」

「ふんっ、行儀が悪いのは勘弁なのだ。オマエラ、少しは僕ちゃんを見習え…」

「入田さん。お口の周りが汚れてますよ。」

「んあっ。」

「チッキショー!!なんで入田ばっかり!!ガキだからか!!?」

「栄君。うるさいよ。一回落ち着こうか。」

「これが落ち着いていられるか!!チキショウ!!なんでアイツばっかりうらやまけしからん事を…!!」

「…ちょっと静かにしようね?」

「…はい。」

「にゃははー。穴雲クンは怒ると怖いねー。」

「財原君も、ふざけてないで行儀良く食べようか。」

「ぱーい。」

「チッ、煩いな。これだから庶民との食事は…」

 

 

 

 

「ふー、お腹いっぱーい。ごっそさん。」

みんながご飯を食べ終わった。

「ねえ、みんな。今日はちょっとみんなに提案があるんだけど…」

「ん?提案?なあに狛研サン?」

「あのさあ、せっかくプールが開放されたわけだし、明日みんなで行ってみない?」

「イイデスネそれ!!ワタシ、賛成デス!!」

「うん、僕も行きたいかな。」

「俺はもちろん行くぜ!!お前らは!!?」

「プール!?僕ちゃんはもちろん行くのだ!!」

「うんうん、みんな楽しそうだねえ。オイラも行くよー。」

「うっひょー!!俺はもちろん行くぞ!!いやあ、女子の水着姿が楽しみでたまりませんな…」

「アチョー!!」

「ぐほぁっ!!」

「俺も行こっかなー。トビウオになってやらー。」

「なんだ財原。お前、泳げんのか?」

「まーね。それなりには。」

「…あ、そう。」

陽一クンは、いきなり不機嫌になった。

…なんかマズい事でもあるのかな?

「わ、私も…皆さんが行かれるのなら…」

「フン、バカバカしい。俺は行かんぞ。貴様らと馴れ合う気は無い。」

「あっそう。じゃあ留守番頼むぜラッセ。」

「なっ…お、王に向かって何だその態度は!!いいだろう、そこまで言うなら行ってやらん事もないぞ!!」

「いや、来いなんて一言も言ってねーけど。…まあいっか。」

ラッセクン、こう見えて実は寂しがり屋なのかな?

「……………私は………。」

「ヰヲリサンも行きましょう!キト楽しいデスヨ!」

「そうだぜ神座ちゃん!来いよ来いよ!ぐへへ…」

「俺が泳ぎ方教えてあげよっかー?」

「黙りナサイ変態共!!アチョー!!」

「ぐはぁっ!!」

「ぎゃー。」

やられてるやられてる。

「……………。」

ゐをりちゃんも来るのか。

あの子の事あんまりよく知らないし、明日は仲良くなるチャンスかな!

 

「…あの、私は遠慮させていただいても?」

剣クンは言いにくそうに言った。

「なんでだ剣?お前も来いよ!!お前、プール見たときはしゃいでたろ?」

「そ、それは忘れてください!!…いや、あのですね…私、泳げないんですよ。」

剣クンは、恥ずかしそうに呟いた。

「何ー!?不動院、オマエ泳げないのか!?」

「はい。全く。」

「んだよそれ!!」

なんでか知らないけど、陽一クンがキレてるよ。

「だったら、見てるだけでもいいんじゃないかい?とりあえず、みんな行くんだから不動院君も来なよー。」

「…分かりました。では、ご一緒しましょうかね。」

わーい!剣クンも来てくれる事になったよー!!

明日は全員でプールだー!

楽しみー!!

そうだ、明日はたくさん泳げるように、今日は早く寝ちゃおーっと!






米里軒さんは、作中では不良役で定評のある役者ということになっています。
名前の由来は、もちろんメリケンサックです。


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第3章(非)日常編④

思いっきりふざけ倒しました。


「うーん…!」

ボクは、独房で目が覚めた。

今日は、みんなでプールで泳ぐ日だったよね!

あー、楽しみー!!

 

『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』

 

あーあ、毎朝毎朝うるさいなあ全く。

よく飽きないね。

さてと。支度して行かなきゃ。

 

 

 

 

「みんなおはよー。」

「おはよう狛研さん。」

「おはようございます、狛研殿。」

「おはようございます。」

「オハヨーございます!!」

「うん、おはよう〜♪」

1、2、3、4、5…6?

「うむ!やっと来たか狛研!!」

「あれ?才刃クン、今日は朝が早いね。どうしたの?」

「はははははっ!!当然だろう!!今日はプールの日だからな!!早起きして来たのだ!!ちなみに、下にはもう水着を着てるぞ!!」

「準備万端だねぇ♪入田君は、プールが好きなのかい?」

「うむ!」

 

「あーあ、いいよなお子様は元気そうでよぉ…!」

「誰がお子様だ!!…って、栄?」

陽一クンは、ゲッソリとした表情で厨房から出てきた。

ホントに、どうしたんだろ陽一クン。

「チッ、あーあ。なんかお前らがハイテンションなの見ると、イライラすんなぁ。」

「いや、なんでだい?」

「うるせェ!!どうでもいいだろンな事!!」

「えぇ…気になるから聞いたのに…」

あ、そろそろ8時半だね。

「おう!!おはようお前ら!!」

「…フン。」

「……………。」

成威斗クン、ラッセクン、ゐをりちゃんが来た。

やっぱり天理クンは遅刻かぁ。

…あれ?

今入ってきた3人の後ろに、天理クンがいた。

「やっほぉ。みんなお待ちどぉさまー。朝ご飯冷めちゃうから早く食べようよぉ〜。」

「なっ…さささ財原!?お前、なんでいるんだよ!!」

「やーね、いちゃ悪いかい?」

「……………悪い。」

「神座サンひどいよぉ〜。せっかくたまには早く来てやろうと思って来たのによー。」

「一体どういう風に吹き回しだい?」

「俺はやる時はやる男だからねー。早起きしようと思えばできるんだよ。」

「だったら毎日やりなよ♬」

「さーせん。」

「じゃあ、みんな揃ったし朝ご飯食べよっか。」

 

 

 

 

うーん、おいしかった!!

さすがは陽一クン!毎日、おいしいご飯をいっぱい作ってくれるね!

ボクなんて調子乗って炊飯器10杯くらいご飯食べちゃったよ!

周りのみんなはすっごい変な物を見るような目で見てたような気がするけど…逆にこれくらい食べないと元気出なくない?

お腹いっぱいになったし、そろそろ更衣室に行こっかな!

 

 

 

 

【更衣室】

 

「みんなお待たせー!」

「来ましたネ叶サン!」

「あ…狛研さん。私達、先に行ってますね。」

「……………。」

みんな早いなー。

もう着替えちゃってるよ。

雪梅ちゃんは上下が分かれてるタイプの水着、治奈ちゃんはスクール水着か。

ゐをりちゃんは…上にパーカーを羽織ってるね。

ボクも着替えないとなぁ。

 

 

 

 

うぅぅ…チクショウめ。

なんでオレこんな事してんだ…?

女子の水着姿が見たくてつい行くって言っちまったけど…

正直、憂鬱だわ…

「おや、どうしたのかい栄キュン。随分と元気がないじょのいこ。」

後ろからいきなり財原が顔を覗き込んできた。

…しっかし、コイツめっちゃ細いな。

ちゃんと食ってんのかな?

あと、肩のタトゥーが無駄にイカしてんのも腹立つ。

「さ、財原…いや、なんでもねェよ。」

「あっそ。なら良くなかった。」

「良くなかったんかい!!」

おっと、ついツッコんじまった。

「おいお前ら。準備出来たんだったら、喋ってねェで行くぞ。」

「ごめーん。」

クッソ、舞田のヤツめっちゃいい身体してんじゃねえか。

コイツ、絶対泳ぐのも得意だろ。

あーあ、なんか嫌になってきた。

 

「ぐ…」

「?おい、陽一。どうした?」

「ちょっと腹痛てェ…」

「マジか!?大丈夫かよ!!ちょっと休むか?」

「ああ、その方がいいかも…」

「いやいや。大丈夫だよ舞田クン。俺がなんとかするから先行っててよ。」

「そうか?じゃあ任せたぞ天理。」

「イェッサー!」

「おい待て財原…オレ、本当に腹が…」

「…マイクロビキニ。(ボソッ」

 

ズビュンッ

 

「速あっ!!?おい、陽一テメェ!!腹痛いって絶対嘘だろ!!」

「ぐへへへへへへ…待ってろよ女子のみんな!俺が口説いてやっからよ!!ぐへへへへへへ…!!」

「にゃははー。速い速い。女子が絡むとすっごく元気になるね。さてと俺様も行きますかー。」

 

 

 

 

【プール】

 

「あ、来たね3人とも。」

「遅いのだオマエラ!!」

「全くだよ。何してたんだい?」

「…フン。」

まあ、分かってはいたけど入田と詩名はドチビだな。

オレもコイツらになら勝てるかもな。

しっかし、穴雲もホントいい身体してんな。

ラッセは、背はチビだけど身体つきはまあまあだな。

「おい貴様。何をジロジロ見ている。本当に気色悪いな。」

うっせ。ちょっと視界に入っただけで、別に誰もお前の身体に興味無えっつーの。

ご丁寧にローブまで着ちゃってよ。このお坊ちゃんめ。

「皆さん、お待たせしました。」

お、不動院か。

アイツ、頑なに温泉行こうとしなかったからな。

ここに来て初めての裸の付き合いってわけか。

さーてと、どんなモンか見てやろ…

 

「あれっ!!?」

おい、なんでコイツ普段着で来てんだよ!

「おい、不動院!!テメェどういうつもりだ!!普段着で来る奴があるかよ!何考えてんだお前!!」

「え…行きはしますが泳がないと申し上げましたよね?泳がないなら普段着でも構わないと思ったのですが…」

マジかよ。

その手があったか。

オレとした事が、一生の不覚だよ。

 

「皆サン、お待たせシマシタ。」

「あ、皆さんもう来られてたんですね。」

「……………。」

ブッヒョーーーーー!!!

女だ!!女がいるぞ!!

うおおおおおおおおおお!!

燃えてキター!!

「栄さん。先程は体調が優れないとおっしゃっていましたが…大丈夫ですか?」

「ん!?な、ななななんの話だ!?オレはいたって元気だぜ!?ホラ、ピンピンしてるぜ!」

うおおおおおおおお癒川ちゃん近けぇえええええええええええ!!

え、待ってかっわい!!スク水エッッッッッロ!!!

「……………?」

神座ちゃんも、パーカーの隙間から見える腹出しフリルがたまんねーぜ!!

「む!?陽一、アナタ、何治奈サンとヰヲリサンをジロジロ見てマスカ。」

「え、いや…あの…」

「ワターシ、変態、許しマセン!!アチョーーーー!!!」

「ぎゃあああああああ!!!」

ぐっ…

クソッ…。

何が悔しいかって、ボコられた事じゃない。

せっかく女子の中で一番爆乳な朱ちゃんが、色気のいの字もない水着を着てる事だ。

「くっ…朱ちゃん、なんでそういう露出度の低い水着着てくるわけ?せっかくなんだからもっとエロい水着着てきてほしかっ…ぐほぁっ!!!」

「うるさいでス!!ワタシ、泳ぎにキマシタ!変態、見せニ来た、違いマスヨ!!」

「まあ、そうなんだけどさぁ…ほら、男のロマンってものがあるじゃん?それとも何?朱サン、わざわざそういうの選んできたって事は、自分がエロい目で見られるのを想定してたって事?わー、自意識過剰ー。」

「アチョーーーー!!」

「ぎゃー。」

「陽一!!天理サン!!アナタ達、いい加減シナイとシバきマスヨ!!」

「朱ちゃん…もうシバいてるから…」

 

「ふんっ、栄はまだ未熟なのだ。露出だけがエロじゃないぞ。むしろ、隠した事で逆にそこにロマンという名の小宇宙(コスモ)が…」

「入田君、それ以上はやめておこうか。肋骨が全滅しちゃうよ〜♫」

「フン、下衆共が…女なんて何がいいんだ。俺はもう見飽きてるぞ。」

「何を!!?」

「にゃはは、やってるやってるー。」

「…。」

「あ、鼻血…大丈夫かい、舞田君?」

「あ、ああ…悪い。」

「舞田殿、大丈夫ですか?あちらで休んでいた方が宜しいのでは?」

「いや、大丈夫だ。ありがとな剣。」

「…左様ですか。」

あれ?不動院のヤツ、なんかスネてね?

なんで不機嫌なんだよアイツ。

…ってか、不動院のヤツはなんで女子にこれっぽっちも興味を示さねえんだ?

フツー、男なら水着の女の子がいたら煩悩に負けるだろ。

やっぱアイツ女嫌いなのかなぁ。

 

「ごめーん!!みんなお待たせー!!」

「ぬぉあああああああああっ!!?」

「え、何?どしたの陽一クン?」

え、待って!?

狛研ちゃんエッロ!!

その身体でビキニって…完全に発育の暴力じゃねえかよ!!

オレを煩悩ラッシュで悩殺する気か!!

「うーん。ちょっとサイズ小さかったかな。でも、これより大きいサイズ無かったんだよなぁ。あれ?みんなどしたの?」

「きゃー。狛研サンてば大胆ー!」

「うん…ちょっと刺激が強いかな。」

「むぅ…悪くない。」

「あーあ、見えないのが残念だよ。」

「…フン。こんなもので騒ぎおって。下衆が。」

「ぐはぁっ!!」

「舞田殿!!大丈夫ですか!!?ひどい出血ですよ!!?」

いや、鼻血て。

リアクション古っ。

「んー…よくわかんないけど、みんな揃ったみたいだしボクも泳いじゃおっかな?」

 

 

 

 

「いやっほーい!!」

いやぁ、やっぱりプールは楽しいね!!

「……………っ。」

ゐをりちゃん、さっきから何やってんだろ?

プール入ればいいのに!気持ちいいよ!

「なあなあ、癒川ちゃん。向こうで一緒にお喋りしねえか?」

「あ、えっと…」

「アチョーーーー!!!」

「ぐはぁっ!!」

「治奈サンに気安く話しかけないクダサイ!!治奈サン!大丈夫デスカ!?」

「グッジョブ朱さん。大丈夫かい、癒川さん?」

「あ、はい…」

「じゃあ、不届き者はいなくなった事だし、一緒に泳ぎに行こうか。」

「…そうですね。」

「治奈サン!また変態、何かサレタラ、ワタシお助けシマス!」

「あ、ありがとうございます…」

みんな、それぞれ楽しんでるみたいだねぇ。

…男子は何やってんのかな?

 

「入田クーン。オマエ、そんなガキンチョ体型でちゃんと泳げんのかよー。」

「うるさいのだ財原!!オマエ、僕ちゃんをナメてると痛い目みるぞ!!」

「あー、はいはい。じゃあさぁ、この際もうガチンコ勝負で白黒ハッキリさせちゃおーよ。」

「望むところなのだ!!」

「おっしゃ!!俺もやるぞ!!」

「オイラはもちろんパスさ。危ないからね。」

「フン、くだらんな。俺はやらんぞ。」

「あー!陛下、もしかして負けるのが怖いんすかー?クソダサいっすね!もう陛下じゃなくて屁以下っすね!」

「なっ…おのれ貴様!!よくもこの俺を愚弄しおったな!?いいだろう、望み通り勝負をしてやろうではないか!!」

「ヒュー、その意気その意気ー。栄クンはー!?」

「ぐへへへへ…激写ァッ!!」

パシャパシャパシャッ

「あーあ、聞いてないね。」

「君達何を言い争っているんだい?」

「あ、穴雲クンも水泳対決やる?」

「僕は無駄な争いはしたくないんだ。みんなで楽しくやっててよ。」

「ゔぇえええええええええええ!!!そんなぁああああああ!!ひどいよ穴雲クゥン!!俺達、ズッ友だと思ってたのによぉおおお!!ゔぇえええええええん!!」

「出た。絶対嘘泣きなのだ。」

「さすが成金。いろんな意味で汚いな。」

「わぁあ…どうしよう。うーん、じゃあ一回だけだよ?」

「よっしゃー☆」

 

「ねえ、みんなこれから競争するの?楽しそー!ボクも混ぜて?」

「なっ…おい狛研!!これは男同士の勝負だぞ!!女のオマエが出る幕じゃないのだ!!引っ込め!!」

「いいじゃん!才刃クンのドケチ!!」

「そうだよ入田クン。本人がやりたいって言ってんだからやらせてやろうぜー。あ、そうだ。いい事思いついた。」

「む、なんなのだ?」

「この勝負で1番になったヤツは、狛研サンを好きにしていいっていうのはどう?」

「え!?なんだよそれ!聞いてないよ財原君!やめろよ、狛研さんが可哀想じゃないか!」

「やだ。今決めたもんね。で、どうすんの狛研サン?嫌だったら別に棄権してもいいんだよ?」

「やるよー。楽しそうだし!」

「ぬおおおおおお!!なんか急にやる気出てきたのだ!!」

「フン、庶民の女に興味は無いが…俺が優勝した暁には召使いにしてやろう。」

「他の人が優勝したら、狛研さんが碌な目に遭わなさそうだね。なんとしてでも僕が優勝しないと!」

「ヒュー、その意気だぜ野郎共ー。じゃあお前ら全員位置につけー。詩名クン、合図お願い。」

「しょうがないなぁ。じゃあ、位置についてー。用意…スタート!」

開始の合図と同時にみんな一斉に泳ぎ始めた。

わっ、みんな速いなぁ。

よーし、ボクだって負けないぞー!!

 

 

 

 

「みんな、結果が出たよ。」

「マジか!?誰が優勝だったんだ!?」

「えーっとね、こんな感じだよ。」

 

1位 狛研

2位 舞田

3位 穴雲

4位 財原

5位 入田

6位 ラッセ

 

「わーい!!やったー!ボクの勝ちだー!!」

「なっ…叶、お前すげえな!!」

「良かった…狛研さんが優勝してくれて一安心だよ。」

「わちゃー。全員女子に負けるってどゆこと?」

「ぐぬぬ…僕ちゃんが5位だと!?嘘だ!!」

「そんなバカな、俺が最下位だと!?ふざけるな!!こんな結果、間違いだ!!…おい詩名。俺のタイムを20秒減らせ。国王命令だ!!」

「え、じゃあ俺は5億やるから30秒減らして。」

「それ、タイム無くなっちゃうよ?」

「君達、カッコ悪いだけだからやめようね?」

 

「いやぁ、みんな速かったな。特に叶!アイツ、女なのにすげェな。」

「お疲れ様です舞田殿。お水、いりませんか?」

「ああ、サンキュな剣。」

「あの…少し向こうで休憩しませんか?泳いで疲れたでしょう?」

「いや、まだそんな疲れてねェしいいかな。」

「…左様ですか。」

「成威斗サン!ちょと来てクダサイ!」

「ああ、今行く!!じゃあな剣。俺、呼ばれてっから。」

「はい…」

 

「ねえ、結局栄クンは来なかったけど…アイツ何やってんの?」

「さっきから監視台の上でずっとカメラ構えてるけど…」

「ふーん。俺、ちょっと声掛けてくるわ。」

「ああ、うん…」

 

「ぐへへへ…やっぱ隠し撮りは最高だぜ。」

「さーかーえークーン。何やってんの?」

「ん?ああ、財原か。今隠し撮りの最中なんだから邪魔すんじゃねえよ。」

「あっそ。」

「あ!いましたネ陽一!また盗撮デスカ!?ワタシ、変態許しマセン!これでも喰らいナサイ!!」

バシャッ

「きゃんっ!!」

…え?

何、今の声。

「…へぇー。」

「おい、何ニヤニヤしてんだよ財原。」

「別に?」

 

ガタガタガタッ

 

天理クンは、監視台の足を持って揺らした。

「きゃあっ!!お、落ちる!!やめてぇっ!!」

なんか、陽一クンが乙女チックな声出してるよ。どうしたんだろ?

「えいっ。」

「ぎゃああああああああ!!!」

 

ドボンッ

 

「あびゃばびゃばいあばうばべばばべうあばいあ!!!」

陽一クンは、プールに落ちてバタバタと暴れていた。

 

…もしかして、陽一クンって…泳げない?

 

「…やっぱりね。あ、いい事思いついた。」

天理クンは、水の中に潜ると陽一クンの足を引っ張った。

「あぶぅおあんぶやぼべうばやおべぼやべうあ!!!」

陽一クンは、さらに激しく暴れた。

「ちょっと!何やってんだよ財原君!!栄君大丈夫!?」

星也クンは、溺れる陽一クンを引き上げた。

「ガハッ、ゲホッ…マジで死ぬかと思った…クソッ、財原の野郎絶対許さねェ…」

「…あの、栄君…君…」

「ん?あっ!!オレの海パンが無え!!」

「へっへーん、ここだよヴァーカ!!」

天理クンは、陽一クンの海パンを持ってプールサイドを走っていた。

「あっ、財原テメェ!!さてはさっき水中で脱がしやがったな!?返せテメェコラ!!」

「鬼さんこちらー。手の鳴る方へー。」

「待ちやがれ!!」

「おお、こわいこわいw」

逃げ回る天理クンを、全裸の陽一クンが追いかけた。

「ウワァ…」

「……………不潔。」

これには、雪梅ちゃんとゐをりちゃんもドン引きしていた。

 

「…。」

「にゃははー。」

剣クンの前を、天理クンが通り過ぎる。

そして…

「テメェ待てコラ!!」

「!!?」

陽一クンが剣クンの前を通り過ぎようとした瞬間…

「獣物ッ!!」

「がはっ!!」

陽一クンは、剣クンに思いっきり蹴り飛ばされた。

陽一クンは反対側の壁まで吹っ飛んで、思いっきり叩きつけられた。

「理不尽ッ!!」

 

「はぁっ、はぁっ…」

剣クンは、耳まで真っ赤にして涙目になっていた。

「ひぇええ…おっかないなぁ、不動院クンは。」

 

 

 

 

あー、楽しかった。

色々と変なアクシデントはあったけどね。

「あ、狛研さん。ちょうど良かった。」

「星也クン。どしたの?」

「栄君が、夏部屋に来てだって。今、みんなに伝えて回ってるところなんだ。」

「へー。」

夏部屋…

陽一クン、今度は何するんだろ?

ちょっと行ってみよーっと。

 

 

 

 

【外エリア 夏部屋】

 

…ん?

なんかいい匂いがするなぁ。

これって、もしや…

「おう、来たか狛研ちゃん!」

「陽一クン!今日のご飯って、もしかして…」

「ああ、今日の晩メシはバーベキューだぜ!ちゃんと腹空かしてきたか!?」

「わーい!!」

「あの、栄さん。食材を持ってきました。」

「ああ、ありがと癒川ちゃん。」

「陽一、アナタ邪魔デス。ワタシ受け取りマス。」

「ひでえや朱ちゃん!」

陽一クンと雪梅ちゃんが焼く係、治奈ちゃんが食材を用意する係か。

「ねえ、ボクも手伝う事ある?」

「ああ、じゃあ癒川ちゃんと一緒に食材の準備してくれ。」

「りょーかいっ!!」

そんなこんなでみんな集まってきた。

 

「うおっ!!美味そうだな!!」

「ひゃー!美味しそうなのだー!!」

「うんうん、香りでも楽しめるねぇ。」

「おや、これはまた美味しそうな…」

「……………。」

「…服装失敗したな。後で匂いがつくぞこれ。」

「わー、おいしそー。栄クン、フルチン野郎のクセに随分と粋な計らいじょのいこ。」

「一言余計だバカ!!お前ら、焼けたヤツからどんどん取ってけ!おかわりはまだいっぱいあるから残すんじゃねェぞ!!」

「やったー☆」

ズバババババッ

「あっ!!テメェ、俺が狙ってた肉を!!卑怯だぞ天理!!」

「へっへーん。早い者勝ちですよーだ。」

「貴様、行儀が悪いぞ!ねぶった箸でマーキングするとは、卑劣な下衆め!」

「やだなぁ、天才的な作戦って言ってほしいっすわ。」

「これのどこが天才なんだ。ふざけるなよ愚民が。」

「あの、私の分食べていいですから喧嘩しないでください。」

「わ、悪い治奈。」

「フン、赤髪。貴様は愚民の中でも最も気が利くな。感心したぞ。」

「えー、じゃあ遠慮なく。」

「やめろお前!おかわりあるから自分の食え!!」

「へーい。」

「癒川さん、狛研さん。君達の分取っておいたから食べてきなよ。僕が代わるから。」

「わーい!!」

「あ、ありがとうございます…」

「あの…舞田殿。」

「雪梅!お前の分ここに取り分けといたから、キリが良くなったら食えよ!」

「ありがとうゴザイマス成威斗サン!」

「…。」

「……………侍。」

「おや、どうしましたか神座殿。」

「……………私、侍と……一緒に、食べたい………」

「そうですか。ありがとうございます神座殿。では、向こうで一緒に召し上がりましょうか。」

うーん、美味しそう!!

いっただっきまーす!!

 

 

 

 

うーん、お腹いっぱーい!

つい調子乗ってご飯一斗くらい食べちゃった。

「貴様、食い過ぎだろ。その身体は一体どうなってるんだ。」

「100合は軽く食べてましたよね…」

「まるでブラックホールなのだ。」

「えっへへ〜。」

 

『やあ!!オマエラ、今日は楽しかった!?』

 

「も、モノクマ!!?」

「…貴様、空気を読むという事を知らんのか。」

『何言ってんのラッセクン。空気は読むものじゃなくて吸うものでしょ?』

『フッフッフ。アナタ達が楽しく学園生活を送っているようで、ワタクシ共は嬉しい限りですよ。』

「嘘つけ!!」

「入田君、ツッコむだけ無駄だよ。」

「テメェら…よくも彩蝶と翠を…!!」

『何わけわかんない事言ってんの?全部、勝手に勘違いして恩人をブチ殺した日暮サンの自業自得じゃない!』

「なぜ、殺人犯でもない翠さんまで殺したんですか!?」

『ああ、日暮サンのオマケの鳥の事?だってアイツ、犯人を知ってたクセに犯人の日暮サンの味方をして、挙句の果てにボク達の所有物の鍵を飲み込んだんだよ!?鳥類の分際で学園の鍵を飲み込んだ上に神聖な学級裁判をかき乱すなんて、調子に乗りすぎ!目障りなのでお望み通りご主人様と一緒におしおきしちゃいました!』

『おっと、ワタクシ達に怒りを向けるのはナシですよ?ルールを破ったあの方々が悪いのです。』

「君達のやってる事はルール以前に、道徳的に踏み外してるだろ。」

『まあまあ、そう冷たい事言わずに!今日は、せっかくオマエラのためにスペシャルな第3の動機を持ってきてやったんだからさ!』

『今回皆様にお配りする動機…それは。』

 

 

 

『『秘密』でございます。』

「秘密…?」

『人は誰しも、絶対に人に知られたくない秘密というものを一つや二つ抱えているものでございます。今回は、皆様の秘密を手帳にお配りします。』

「はぁ?ンなモン、誰も誰かに教えなきゃいいだけだろうが。な?」

「オマエラ、もし秘密をバラそうなどと考えようものなら、脳味噌に直接有線LANケーブル繋ぐぞ!!」

『おや、皆様何か勘違いをされていませんか?』

「勘違い?」

『あのさぁ。誰も、本人の秘密を配るなんて一言も言ってないんだけど。』

「…まさか。」

『そうです!今回はオマエラに、この中の誰か1人の秘密をランダムでオマエラに配ります!もし秘密をバラされたくないなら…やる事は一つだよね?』

「なっ…汚ねェぞテメェら!!」

「…栄君。僕達は、今までもそうやって彼らの汚い手に踊らされてきたんだろ。今更何を言っても無駄だよ。」

「…チッ。」

『安心しなよ。ちゃんとプライバシーに配慮して、午前0時に秘密を送ってあげるからさ!』

『それなら、秘密を知った事を誰にも知られる事は無いでしょう?…もっとも、本人に隠す気があればの話ですが。』

『じゃあ、動機の説明も終わったしボク達はこれにてオサラバするよ!それじゃ、また明日ー!』

『フハハハハハハ!では皆様、引き続き悪夢をお楽しみくださいませ。』

クマさんとベルさんは、高らかに笑いながら去っていった。

 

「そんな、秘密をバラすって…そんな事されたら私…!」

「大丈夫だよ、癒川さん。大丈夫だから…」

星也クンは、泣きじゃくる治奈ちゃんを慰めた。

「…ねえみんな。わかってると思うけど、本人に秘密の事について聞きにいったりなんてしちゃダメだよ?」

「はぁ!?なんでだよ!」

「君もわかってるでしょ?もしその本人が、聞いてきた人に殺意を抱いたらどうするんだい?」

「みんなに限ってそんな事、あり得ねえだろ!!」

「…みんなに限ってそんな事はあり得ない。そう思い込んで、結局僕達は景見君や羽澄さんを救えなかったんだろ。いいかい栄君。人にはね。絶対に人に知られたくない秘密があるんだよ。たとえ、口封じのために誰かを殺す事になったとしてもね。」

「そんな事…」

「…僕は、仕事柄そういう人を過去にたくさん見てきたんだ。僕は、みんなを同じ目に遭わせたくない。だから頼む。誰にも秘密を教えないって約束してくれ…」

「できねえよそんな約束。オレはやっぱり、本人に言うべきだと思う。どうせ隠してたっていつかはバレちまうんだしよ。…それに、自分だけソイツの秘密を知っておいて知らないフリをしてるなんて、お互いのためにならねえだろ。こういうのって、みんなで弱さを乗り越えて立ち向かっていくモンなんじゃねえの?オレは、誰のどんな秘密が来ようと、本人に伝えに行くぞ。」

「フン、俺はメガネに賛成だ。わざわざ敵を増やすような真似をしてどうする。」

「僕ちゃんは言うぞ!だって、人の秘密を抱えたままなんて気持ち悪いからな!」

「俺も言うかなー。だって、逆に伝えといた方が万が一殺されそうになった時のための対策ができんじゃん。不意打ちで殺されるなんて俺はやだね。」

「本人が知られたくない秘密なら、言わない方がいいのでは…」

「オイラもそう思う。やっぱり、黙っておくのがお互いのためだね〜♪」

「私も穴雲殿に賛成です。やはり、人の弱みにそう易々と首を突っ込んでいいものではありませんよ。」

「ワタシ、陽一の意見、賛成デス。弱み隠シテル、お互いのタメ、ならないデス。」

「俺も陽一の意見に賛成だ!!ダチ同士、お互いの弱みを打ち明けあって助け合うべきだろ!!」

「あっそうですか!」

剣クンは、ほっぺを膨らませた。

「おい、不動院。お前何拗ねてんだよ。」

「拗ねてませんから!!」

「キレんなって。」

 

「狛研さんはどう思うの?」

「うーん…ボクは本人に伝えた方がいいと思う。だって、その弱みがもし嘘…それか歪曲された事実だったらどうするの?本人に伝えなかったら、誤解を解くチャンスがなくなっちゃうよ。」

「…そう。」

 

結局、言う派が才刃クン、ボク、天理クン、陽一クン、雪梅ちゃん、成威斗クン。

言わない派が星也クン、ゐをりちゃん、柳人クン、剣クン、治奈ちゃん、ラッセクンだった。

 

「…意見が真っ二つに割れちゃったね。」

「そうだね。みんな、自分の意見は変わらないだろうし…多数決をしても意味ないだろうね。みんな、とりあえず今日は一回休んで頭を冷やそうか。秘密の事をどうするかは、それぞれ明日までにちゃんと考えてきてね。」

「うん…」

 

 

 

 

【独房】

 

ボクは、シャワーを浴びたあとベッドに飛び込んだ。

…秘密、か。

誰の秘密を見る事になるのかはわかんないけど…とにかく、誰の秘密を見たとしてもちゃんと伝えなきゃ。

ボクは一体、誰の秘密を見る事になるんだろう?

ボクは目を瞑ったまま考えた。

 

 

 

 

ー午前0時ー

 

ヴーーーーーーッ

 

手帳のバイブで、ボクは目を覚ました。

手帳のアプリには、新しいファイルが入っていた。

動機③…これか。

ボクは、動機を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…え。

 

 

 

 

【???の独房】

 

…まさか、今回の動機が秘密だとはな。

随分と悪趣味なこった。

…多分、あの事も誰かに知られちゃうんだろうな。

いっそ、口封じするか…

 

ヴーーーーーーッ

 

…おっと、早速誰かの秘密が来たようだ。

誰の秘密を見る事になるんだ?

 

 

 

 

 

【超高校級の幸運】狛研叶サンの秘密!

 

 

 

 

 

…え。

 

 

 

 

 

…嘘だろ?

 

そんなバカな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狛研叶は16人の中で唯一のイレギュラーであり、このコロシアイを引き起こした原因でもある。



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第3章(非)日常編⑤

…え。

 

そんな、嘘だ…

 

こんな事って…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅サンの秘密!

 

朱雪梅は、人を殺した事がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな、雪梅ちゃんが人を…?

きっと何かの間違いだ。

本人に確かめに行けばわかるはずだ。

行ってみよう。

…ごめん、星也クン。

今日だけは約束…破っちゃうね。

 

 

 

 

【朱雪梅の独房】

 

ピンポーン

 

「雪梅ちゃんいるー?」

「ハイ、なんですか叶サン。」

「…あのさ。ちょっと話したい事があるんだけど…いいかな?」

雪梅ちゃんは、何かを察した様子だった。

そして、少し考えてから言った。

「…ドウゾ。お入りクダサイ。」

「お邪魔します。」

 

「それで、話ってナンデスカ?叶サン。」

…言わなきゃ。

雪梅ちゃんに、ちゃんと秘密の事を伝えないと。

誤解を解かなきゃ。

「…あの、さ。単刀直入に言うけど…ボク、キミの秘密を見ちゃったんだ。」

「そうですカ。それで?」

「キミが、人を殺した事があるって書いてあったんだけど…何かの間違いだよね?キミの口から本当の事が聞きたいんだ。どういう事か、説明してくれる?」

「…ウソ、ナンデそれヲ…」

雪梅ちゃんは、一瞬驚いた。

「…わかりましタ。話しマス。叶サン、アナタの手帳、書いてあたワタシの秘密、本当デス。」

「…え?」

「…今から5年前の話デス。ワタシ、王神美、憧れテ、曲芸師目指しマシタ。自分の団持つ前ハ、他の団ノお手伝い、してマシタ。ワタシ、所属してタ雑技団、ライバル、イマシタ。その子、意地悪、嫌な感じデシタ。その子、他の子イジメて、楽しんでマシタ。ワタシ、ソイツ嫌いデシタ。」

「うんうん。」

ジ●イアンタイプの子ね。

まあ、学校でも習い事でも、そういう子って1人や2人はいるもんなのかな?

「ソレデ、ワタシ、頭にキテ、仕返しシテやろうト思いマシタ。綱渡り、使うロープ、弱くナテタの、ワタシ、知テテソイツに教えマセンでしタ。デモ、それ、間違いデシタ。」

「…まさか。」

 

「ハイ。ソイツ、演技の最中、ロープ切れて落ちマシタ。それで、打ち所悪クテ亡くなりマシタ。」

「そんな…」

「ワタシ、ちょとイタズラしただけ、つもりだたんデス。それで、ケガしてイジメ懲りる、思いマシタ。でも、マサカ死ぬなんて思テなくテ…ちゃんとロープの事、伝えておけば良カタ。今でも、後悔シテマス。」

「ちょっと待ってよ。それ、ただの事故じゃない。別に雪梅ちゃんだけが悪いわけじゃないよ。」

「イイエ。ワタシ、アイツ殺しマシタ。ワタシ、ちゃんと言てイレバ、アイツ死ななカタ。ワタシのセイデ、アイツ死にマシタ。」

「…ボクはそんな事ないと思う。誰も、雪梅ちゃんがその子を殺したなんて思わないよ。そりゃあさ、嫌なヤツにちょっとオイタをしたくなる事くらいあるよ。でもそれってそんなに悪い事?雪梅ちゃんだって、その子の事を殺そうと思って教えなかったわけじゃないんでしょ?」

「…デモ、」

「とにかく、雪梅ちゃんは人殺しじゃないから。ボクが保証するよ。」

「叶サン…」

「雪梅ちゃん、話してくれてありがとう。今までつらかったね。もう自分の事を責めなくてもいいんだよ。」

「叶サン、ありがとうゴザイマス。ワタシ、本当はズト辛かたでス。でも、アナタ、話せて少し楽になりマシタ。謝謝(ありがとう)。」

「いいんだよ、ボクは人の話聞くの好きだし…それにボク達お友達でしょ?嫌な事があったらいつでも相談してよ。」

「…ハイ。」

 

やっぱり雪梅ちゃんは人殺しなんかじゃなかったんじゃん。

星也クンには秘密の事について何も話すなって言われたけど…

困ってる子に一人でつらい思いをさせるなんて良くないよ。

やっぱり、ちゃんと雪梅ちゃんに話せてよかった。

 

「雪梅ちゃん、今日は夜遅くに突然部屋に来ちゃってごめんね。」

「イエ。ワタシも、今から秘密の事、聞きに行こうと思テタ所デス。」

「そうなの?」

「ハイ。成威斗サン、秘密、話そうと思テましタ。」

「成威斗クンに…ね。ちゃんと話せるといいね。」

「ハイ。では、ワタシ行テキマス。叶サン、今日、ありがとうゴザイマシタ。」

「うん、じゃあまた明日。おやすみなさい。」

 

《朱雪梅の好感度が1上がった》

 

 

 

 

雪梅ちゃんは、ちゃんと成威斗クンに伝えに行ったみたいだね。

…さてと、ボクもそろそろ部屋に戻ろうかな?

「いやぁああああああああああああああ!!!」

…え?

今の、もしかして治奈ちゃんの声…?

2階からだ。どうしたんだろう?

まさか、事件に巻き込まれてるんじゃ…

急がなきゃ、助けなきゃ…!

気がつくと、勝手に足が動いていた。

止まれない。

止まるわけにはいかない。

ボクはもう、仲間が死ぬのは嫌なんだ…!!

誰も死なせない、その思いだけを胸にボクは走った。

 

 

 

 

【内エリア 2F】

 

今の声、どこから聞こえた…!?

…あ、陽一クンの研究室が開いてる…あそこからか!?

ボクは、陽一クンの研究室の中に駆け込んだ。

「ッ…!!」

信じられない光景が目に飛び込んできた。

陽一クンの研究室の中では…

 

 

 

 

 

星也クンが、血を流して倒れていた。

 

「星也クン!!」

ボクは、星也クンに駆け寄った。

「星也クン!!ねえ、しっかりして!!何があったの!?」

返事がない。

星也クンのお腹には、包丁が深々と刺さっていた。

「…良かった、ちゃんと脈はある…治奈ちゃんは!?」

 

「あ、ああああ…」

治奈ちゃんは、顔を真っ青にしてその場に座り込んでいた。

その後ろでは、陽一クンが放心状態で腰を抜かしていた。

「治奈ちゃん!!星也クンがケガしてるの!!このままじゃ危ないよ、なんとかしてあげて!!」

「…ッ。」

「何してるの!!?早く助けてあげてよ!!早くしないと星也クンが死んじゃうよ!!」

「…あっ、すみません…!」

治奈ちゃんは、我に返って星也クンに駆け寄った。

そして、冷静さを欠きながらも適切な応急手当をした。

「穴雲さん…しっかりしてください!!…すみません、私のせいで…ごめんなさい、ごめんなさい…!」

 

「…う。」

「穴雲さん…良かった、目が覚めて…ごめんなさい、私のせいでこんな事に…」

「癒、川…さん…よかった、生きて…」

「お、おい…どうすんだよ穴雲の奴…!このままじゃマズいんじゃねえのか!?どうすりゃいいんだ癒川ちゃん…!」

「そうですね…しばらくは絶対安静ですね。栄さん、穴雲さんをお部屋まで運んでいただけませんか?」

「お、おう…」

「…それから、先程の事は本当に申し訳ありませんでした。」

「え、あ…いや、もういいよ。それより、穴雲だ。早く寝かせてやんなきゃだろ?」

「…そうですね。」

「あれ?陽一クン、ところどころ血が出てない?大丈夫?」

「ああ、これか。後で話すわ。とりあえず、今は穴雲をなんとかしよう。」

「あ、そだね…ごめん。」

ボク達は、星也クンを部屋まで運んであげた。

 

 

 

 

【穴雲星也の独房】

 

「…一応、今できる処置は全て終わりました。このまま安静にしていれば、明日の昼には歩けるようになるはずです。」

「良かったぁ…」

「んー、まあ、これで一件落着って事でいいのかな?」

「あの…栄さん。先程は、本当に申し訳ありませんでした。私は、あなたに償っても償いきれない仕打ちをしてしまいました。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…っ!」

「いや、確かにちょっとビックリしたけど…もういいって。終わった事なんだしよ。」

「いえ、そういうわけにはいきません。お詫びと言ってはなんですが…私の事を好きにしていただいて…なんなら、殺していただいても構いません…!それで許されるとは思っていませんが…どうか、私に重い罰を与えてください!!」

「いや、いやいやいやいや!!もういいって言ってんだろ!そんな事言うなって!」

「うーん、治奈ちゃん。とりあえず、陽一クンの手当てをしてあげようよ。ケガしてるみたいだし。」

「あっ…そうですよね。すみません…!」

 

治奈ちゃんは、陽一クンの手当てをした。

そうだ、今のうちに陽一クンに何があったのか聞いておこうかな?

「ねえ、陽一クン。」

「なんだ?狛研ちゃん。」

「あのさ、キミの研究室で何があったの?どう見ても只事じゃないけど…」

「…ああ、その事か。癒川ちゃん、話してもいいか?」

「…はい。私には拒否する資格がありません。真実をそのまま話してください。」

「じゃあ話すぞ。…今から数分前の話になるんだけど…」

 

 

 

 

ー数分前ー

 

…マジかよ、これが…癒川ちゃんの秘密…?

嘘だろ…こんなの、信じられるかよ…

きっと何かの間違いだ。

やっぱり、ちゃんと本人に伝えに行こう。

本人に聞けば、きっと誤解だってわかるはずだ。

そうだ、手帳のチャット機能を使って癒川ちゃんを呼び出して話そう。

 

 

 

《癒川ちゃん。ちょっと今から話したい事があるんだけど…今すぐオレの研究室に来てくれるか?》

 

《…わかりました。すぐに向かいます。》

 

 

 

…これでよし。

悪い、穴雲。

約束、破っちまうわ。

やっぱり、秘密を伝えないでおくなんて…そんなの、良くねえよ。

 

 

 

 

【超高校級の栄養士】の研究室

 

…しっかし、癒川ちゃん遅せェな…

普段はちゃんと時間を守る娘なのに…

何やってんだろ?

 

「お待たせしました栄さん。…ごめんなさい、遅くなってしまって。」

「いや、こっちこそ急に呼び出しちまって悪かったよ。」

「いえ、特に急用もありませんし…ところで栄さん。お話というのは…」

「…ああ、あのさ。癒川ちゃんはもうわかってると思うけど、秘密についての話だ。…オレ、癒川ちゃんの秘密を見ちまったんだ。」

「…そう、ですか。」

オレは、癒川ちゃんの秘密を本人に伝えた。

癒川ちゃんは、なんで知ってるんだ、と言いたげな表情だった。

「…なあ、癒川ちゃん。これ、何かの間違いだよな?オレ、癒川ちゃんがそんな事するような娘だとはとても…」

「全て真実ですよ。」

「…え?」

癒川ちゃんは、ちょっと気味の悪い笑顔を浮かべた。

「人は見かけによらないって言うでしょう?私、本当はあなたが思ってるような女の子じゃないんです。」

「癒川ちゃん…」

「…それで、その秘密をどうするつもりですか?誰かに密告しますか?それとも皆さんの前で声を大にして言いふらしますか?」

「そんな事するかよ!癒川ちゃんがたとえどんな娘でも、人の秘密をそう易々と言いふらしたりは…」

 

ドスッ

 

「!!?」

反射的に手が動いた。

オレの両手は、癒川ちゃんの手を掴んでいた。

…その手には、包丁が握られていた。

「…ねえ栄さん。なぜ私があなたの呼び出しに応じたのか…まだわかりませんか?」

「癒川ちゃ…何を…」

「…栄さん、私、あなたとここで出逢えて良かったです。あなたのおかげで、私はとても楽しかった。」

 

 

 

「栄さん、ありがとうございました。死んでください。」

 

癒川ちゃんは、オレの手を振り解くと包丁を構えて、突きを放った。

「ひっ…!」

 

ザクッ

 

包丁がオレの肩に刺さった。

「ッ、ぐあぁあっ!!」

オレは逃げた。

こんな所で死にたくない。

癒川ちゃんは殺意のこもった目でオレを睨みながら追いかけてきて、何度も逃げるオレを刺した。

「ぐっ、あぁああ…!!」

「逃げないでくださいよ栄さん。私、あなたを苦しませたくないんです。大人しくしてくだされば、即死させて差し上げられるのに。」

「ぐっ、癒川ちゃん…どうしちまったんだよ…!?君、そんな事する娘じゃなかっただろ…なんで…!?」

「あなたが知ってしまった秘密は、私がたとえ死んでも他の誰かに知られたくないものだったんです。それを知られてしまったのなら、もうあなたを生かす理由はありません。」

「そんな…誰にも言わないって言っただろ!?落ち着けって…」

「うるさい!!そんな嘘が通用すると思ってるんですか!?あなたは私の秘密を知ってしまった。…もう終わりです。あなたを殺して私も死ぬわ!!」

ダメだ、完全に正気じゃねェ…

もう、痛みと出血でまともに逃げらんねェ…

いやだ、オレはこんな所で死ぬなんて嫌だぞ!?

頼む、誰か助けて…

「やっと観念しましたね。トドメを刺してあげます。…死ねッ!!」

 

「やめろ!!!」

 

グサッ

 

 

 

…ん?

 

あれっ?

痛みが無い。

どこも刺されてねェ…

なんで…

 

「…ッ!!」

 

「あ、あああああ…」

「くっ…良かった、間に合って…」

穴雲が、オレを庇って癒川ちゃんに刺されていた。

腹には、深々と包丁が刺さっている。

「いや…嘘…そんな、なんで…!」

癒川ちゃんは、穴雲の傷を見て怯んだ。

「君が部屋を出ていくのを見たから…何かあると思って駆けつけて正解だった…良かった、二人とも…生きて…」

穴雲は、その場で倒れた。

「いや…嘘でしょ…私のせいで…いやっ… いやぁああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

「…ってワケなんだ。」

「…そっか。それは災難だったね。」

「ああ。オレ、なんで穴雲がアン時あんな事言ったのかわかったよ。…オレ、甘かった。まさかこんな事になるなんて…オレの軽率な判断のせいで、癒川ちゃんを殺人犯にしちまうなんて…穴雲を傷つけちまうなんて思わなかった。ごめんな癒川ちゃん。オレ、君が抱えてるモンの重さも知らずに、軽々と首を突っ込んじまって…」

「…いえ、謝らなければならないのは私の方です。私のわがままで栄さんを殺そうとしてしまい…本当に申し訳ございませんでした。」

「あのさ…こういう事聞くのはちょっと野暮かもしんないけど…治奈ちゃんの秘密って一体なんなの?あ、別に言いたくなかったら言わなくていいんだけどさ。」

「…いえ、いずれは話さなければならないと思っていた事ですし…栄さんを殺そうとしておいてまだ秘密を隠し通そうとするなんて、まかり通るわけありませんから。…私の才能に関する秘密でもありますしね。」

「じゃあ、話してくれるかな…?」

「わかりました。…実はですね、私は、その…えっと…援助交際に手を染めていた事があるんです。」

「…えっ。」

「…私、年の離れた弟がいたんですけど…ある重病を患っていたんです。都会の総合病院に行かないと延命措置すらできず、治療には数千万円以上のお金がかかる病気でした。うちは貧乏でそんなお金ありませんでしたし、親は父親が亡くなっているので母親一人だけで…その母親も、怪しい仕事をしては稼いできたお金をほとんど私達の生活費や学費に充てず、ほとんど全てをギャンブルやお酒…怪しい薬に使ってしまうような禄でもない母親だったので、当然数千万なんて金額を用意できるわけがありませんでした。」

「じゃあ…」

「…はい。弟の治療費を稼ぐために、近所のお店を手伝ってお小遣いを貰ったり…それでも足りないので、ほぼ毎日夜な夜な街に出歩いて体目当ての男の人についていってお金を貰ったりしていました。毎日、とても怖くて気分が悪かったですが…それでもお金を稼ぐためには仕方のない事でした。そんな生活を続けて数年後、ついに弟を治せるだけのお金が貯まりました。…でも、もう既に遅かった。」

「…まさか。」

「私が、貯めたお金を鞄に詰めて病院に向かっている途中でした。弟の容態が突然悪化し、あっという間に亡くなったそうです。私は、この時大事な事を学びました。誰かが助けてくれると思ってはいけない…本当に大切なものがあるなら、自分一人で守れるくらい強くならなければならないのだと。だから私はその日から、稼いだお金を学費や教材に注ぎ込んで、必死に医学や看護の勉強をしました。もし将来私にとって命に代えても守りたい大切な人が現れた時、二度と失わないように、何があっても絶対に救えるように、努力を重ねました。そして、医者になるための勉強として地元の小さな病院を手伝っていたら、その事が話題となってスカウトされたんです。」

「…そっか。ありがとう、話してくれて。」

「…はい。話したら少し楽になりました。こんな私の話なんかを聞いてくださって、ありがとうございます。」

治奈ちゃんは、安心したのか涙を流しながら微笑んだ。

 

「…癒川さんは真面目だね。」

「あ、穴雲さん!?聞いてたんですか!?」

「ぼんやりとね。…癒川さん。ありがとうね。本音、話してくれて。」

「…はい。」

「そうそう。癒川さん。ずっと前から言おうと思ってたんだけど…僕ね、君の事が好きなんだ。良かったら、付き合ってくれないかな?」

「はぁ!?え!?穴雲さん、今の話聞いてましたか!?今ので私のどこを好きになるんですか!!私と穴雲さんじゃ、絶対釣り合わないですよ…!私はその、汚れてるし…」

星也クンは、治奈ちゃんを抱き寄せた。

「そんなのどうでもいいよ。僕は、君じゃなきゃ嫌なんだ。」

「…えっと、あの…本当に私なんかでいいんですか…?」

「当たり前だろ。何度も言わせないでよ。」

「…あの、私…穴雲さんを幸せにできる自信がないんですけど…それでも良ければ…」

「ありがとう。絶対に僕が君を幸せにする。」

「マジかよ!!?いきなりカップル成立かよ!!羨ましいなチクショウめ!!クッソー、癒川ちゃんはオレが唾つけてたのに…って!?なんで狛研ちゃんが泣いてんの!?」

「ううう、良かったね、治奈ちゃあああん…」

「二人とも、癒川さんと一緒に僕の事を介抱してくれたんだって?ありがとう。」

「いや、そんな…」

「じゃあ、ボク達はお邪魔みたいだから部屋に戻るね?」

「そ、そうだな。仲良くしろよ、お前ら。」

「え、もう行っちゃうの?」

「うん。明日も早いし…ね、陽一クン。」

「ああ、狛研ちゃん。」

ボクと陽一クンは、ウインクで合図をした。

「じゃ、そういうわけでおやすみ、二人とも。」

 

バタン

 

「…別に空気読まなくて良かったのに。」

「そうですね…」

 

《穴雲星也の好感度が1上がった》

 

《栄陽一の好感度が1上がった》

 

《癒川治奈の好感度が1上がった》

 

 

 

 

なんか色々とトラブっちゃったけど、なんだかんだでみんな和解できて良かったね。

さてと、明日は朝早いし、そろそろ寝ますか。

おやすみなさーい。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「うーん。」

ボクは、独房で目が覚めた。

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

あーあ、うるさいね全く。

おっと、いけないいいけない。

朝から不機嫌になっちゃったよ。

支度して食堂行かないとな。

 

 

 

 

【食堂】

 

「おはよー!」

「おや、おはようございます。狛研殿。」

「おはよ〜♪」

「オハヨーございます!!」

「おはよ、狛研ちゃん。」

「あれ?星也クンと治奈ちゃんは?」

「あの二人は、今日は部屋で飯食うってさ。全く、イチャイチャしてて羨ましいぜ。」

「仕方ないよ。星也クン、ケガしたんだもん。」

「え?そうなのかい?」

「何かアタんですカ?」

「ああ、ちょっとな。昨日ケンカしちまったらしくってよ。夫婦喧嘩もいい加減にしろよなー。」

「夫婦?お二人はご結婚されていたのですか?」

「あーあー、違う違う!ものの例えだよ!ほら、仲睦まじくて羨ましいなーって。」

「なるほど。」

おっ、時間になったな。

 

「おう!おはようお前ら!」

「…フン。」

「……………。」

「…。」

成威斗クン、ラッセクン、ゐをりちゃん、才刃クンが来た。

「みんなおはよう!…あれ?才刃クン、元気ないじゃん。どうしたの?」

「…うるさいのだ。話しかけるな。」

「え…?」

才刃クン、なんか今日機嫌悪くない?

どうしちゃったんだろ。

 

「ほにゃあぁあ…ごめんなちゃーい。遅れまちたぁ。」

天理クンは、やっぱり集合時刻に20分遅れてきた。

「…貴様、いい加減にしろ。」

「ちぃまちぇーん。あれ?バカップルが来てねーじゃん。どしたん?」

「星也クンと治奈ちゃんの事?あの二人は、星也クンが昨日怪我しちゃったから部屋で食べるって。」

「ほーん。え、何?痴話喧嘩?」

「おい財原。からかってやるな。二人の仲に口出しは無用だ。」

陽一クンだって、散々からかってたじゃん。

「さてと、じゃあ全員揃ったし飯にすっか。」

「だねー。お腹空いちゃったよぉ〜。」

 

 

 

 

うーん、おいしい!

やっぱり陽一クンのご飯は最高だね!!

「…。」

あれ?才刃クン全然食べてないじゃん。

どうしたのかな?

「ねえ、才刃クン…」

「うるさいのだ。馴れ馴れしく話しかけるな。飯が不味くなる。」

「えっ…?」

「チッ、おい才刃!!なんなんだよテメェ!!お前、今日なんかメチャクチャ感じ悪いぞ!?」

「そうだぜ入田。お前、なんか今日狛研ちゃんにだけ当たりが強くねえか?どうしちまったんだよ。」

 

「ふんっ。…逆にオマエラ、よくこのゲームの黒幕と一緒に楽しく飯が食えるな。」

 

「えっ…?」

ボクが黒幕?

才刃クンは、一体何を言ってるのかな?

「おい、それは一体どういう事だ。説明しろ子供。」

「…昨日僕ちゃんに配られたのは、狛研の秘密だった。そこには、コイツがこのコロシアイの元凶だと書かれてたんだ。」

「なっ…!」

「でもさぁ、それってクマちゃんが用意した動機でしょ?嘘っぱちかもしんねーじゃん。」

「そうだよ…ボクは黒幕じゃないよ!」

「…僕ちゃんだって、最初はそう思ったのだ。でも、コイツが黒幕だと仮定すると、全てのつじつまが合うんだ。」

「どういう事だい?」

「オマエラ、おかしいと思わなかったのか?初めて来た場所にもかかわらず、コイツは臆する事なくこの学園に馴染んだ。普通だったらもっと警戒するだろ?」

「あー、確かにねー。狛研サンは、色々と怪スィーもんねー。」

「…そうだな。俺も、子供の意見に賛成だ。触角帽子が一番怪しいと思うぞ。思い出してみろ。コイツの空気の読めない言動や喋り方…どこかモノクマに似てるとは思わんか?」

「あ、確かに…」

「それに、コイツが裁判で指名した奴は、必ず悲惨な末路を遂げる。」

「それは違うよ!!ボクはただ、事件の犯人を解き明かしてただけで…」

「言い訳か?見苦しいぞ下衆が。散々俺達を弄んでくれたんだ。それ相応の罰を受ける覚悟はできているんだろうな?」

「違うよ!!ボクは、本当に黒幕じゃ…」

 

 

 

「やめろお前ら!!!」

 

 

 

「…成威斗クン?」

「俺には難しい事はよくわかんねェけどよ…叶は、今まで俺達と一緒に過ごしてきた仲間だろ!?それに、俺達はコイツに色々と助けられたじゃねえかよ!!コイツが犯人を見つけてくれなけりゃ、俺達は今ここにはいねェだろ!!だったらまず、疑うより先に礼を言うのが筋ってモンじゃねえのかよ!!?」

「だから貴様は馬鹿なんだ。疑うという事を知らんのか。そのうち死ぬぞ、馬鹿め。」

「ああ、俺はバカだ。けどよ、それがなんだってんだ!!?俺は、死んでもダチは疑わねえ!!!」

「…チッ、じゃあ勝手に信じて勝手に死ね。馬鹿が。」

「言っとくけど狛研!!僕ちゃんはまだオマエを疑ってるからな!!」

ラッセクンと才刃クンは、食堂を出て行った。

 

「チッ、なんなんだアイツら。せっかく作った朝メシを残しやがってよ。」

「いや、栄君。気にするとこ、そこじゃないだろ〜♬」

「狛研殿!私は、貴女を信じていますからね。だから気を落とさず…」

 

「うん、やっぱこれおいしいね。」

 

「狛研殿!?何故この状況で食べるのですか!!?」

「えー、だって。二人が朝ご飯残しちゃったんだもん。食べなきゃもったいないでしょ。」

「だよな!?ったく、オレのメシを残すなんてアイツらどうかしてるぜ!」

「お黙りフルチン立ちションお財布料理バカ。」

「財原!テメェ、オレの事くさしすぎだろ!?」

「だってキミはフルチン野郎で立ちション野郎で俺のギャンブル用のお財布で料理バカだろ?全部事実じゃん。まあそれは置いといて。…あのさー、狛研サン。今置かれてる状況わかってる?キミ、黒幕なんじゃないかって疑われてんだぜ?」

「知ってるよ。聞いてたもん。」

「では、なぜ…」

「だってさぁ、しょうがないじゃん?ボクが黒幕じゃないって証明できる手段はないし。あの二人が一人になりたいって言ってるんだから、たまにはそっとしてあげた方がいいんじゃないかな。」

「まあ、そうだけどよ…」

「んー、じゃあそろそろ俺も行こっかな?ごちそうさまー。」

天理クンも席を立った。

 

「あ、そうそう。一個忠告しとくよ。…みんな、“スペードのジャック”には気をつけた方がいいよ?」

…え?今、なんて…?

「おい、財原、なんだ今の!」

「うーん、ただの独り言。じゃ、俺は研究室でトネ●ワ見てくるから。」

「…なんなんだアイツ。いきなりワケわかんねェ事言いやがって。」

「まあ、あの方のする事は読めませんから…皆さん、無視しましょう。」

「そうだねぇ。」

スペードのジャック…

天理クン、やっぱり何か知ってるんじゃないのかな?

「あの、皆さん。これから何をされるご予定ですか?」

「んー。ボクは、星也クン達の様子を見に行くよ。心配だからね。」

「オイラは、外エリアを散歩でもしようかな?暇だからねぇ。」

「……………私も、そんな感じ………」

「ワタシ、星也サン、早く回復するヨウニ、おいしい料理、作りマス!」

「いいなそれ!オレも手伝うぜ!」

「俺はとりあえず体育館で鍛えてっかな。」

「…そうですか。」

うんうん、みんなそんな感じね。

ボクはそろそろ二人の様子を見に行こうっと。

 

 

 

 

【穴雲星也の独房】

 

「たのもー!」

「あ、狛研さん。おはよう。」

「おはようございます。」

「うん、おはよ。どう?星也クン。元気になった?」

「うん、まあね。」

「聞いて!あのさ、雪梅ちゃんが、星也クンのためにおいしいご飯作ってくれるんだって!」

「へえ、それは楽しみだね。」

「治奈ちゃん。星也クンの容態は?」

「良好です。そろそろ歩き始めても良い頃合いでしょうか…」

「あのね、癒川さんはすごいんだよ。命に関わるような大怪我も、たった半日で治しちゃうんだ。」

「そんな…大袈裟ですよ穴雲さん…!」

「昨日も、寝ずに看病してくれて…本当、いい恋人を持ったもんだよ。」

「や、やめてください…恥ずかしいですから…」

のろけるねぇ。

「なんか元気そうで一安心だよ。あ、ムベ持ってきたから置いとくね。」

「ムベ!!?随分とマイナーなところ突きますね!?普通差し入れって、リンゴとかバナナとかですよね!?」

「そう?」

「…ありがとう狛研さん。」

星也クンは、引きつった笑顔を浮かべた。

ちぇっ、おいしいから良かれと思って持ってきたのに。

「じゃあ、元気そうだしボクそろそろ行くね。」

「あ、うん。ありがとね狛研さん。」

「いいって!じゃ、また後で。」

さてと。どうしよ。暇になっちゃったな。

そうだ。みんなの研究室に遊びに行こーっと。

 

 

 

 

【超高校級の工学者】の研究室

 

ピンポーン

 

「才刃クンいるぅー?」

「…チッ、なんなのだ。不審者。」

「ひどいよ〜。あ、それなにやってるの?」

「オマエには関係ない。僕ちゃんが初めて書いた論文…人工心肺に関する論文を読んでいたのだ。研究室の中を整理してたら懐かしくなってな。」

「ふーん。」

「はっ…、しまった。僕ちゃんとした事が喋りすぎてしまった。もういいだろ。早く出て行け。」

「ひーん。」

あーあ、結局話すら聞いて貰えなかったよ。

ふーんだ、じゃあ天理クンのとこ行こーっと。

 

 

 

 

【超高校級の資産家】の研究室

 

ピンポーン

 

「天理クンいるぅー?」

「やあ、我が城へようこそ黒幕さん。」

「天理クンまで!ひどいよ〜!!」

「冗談冗談。ねえ、暇だからちょっと遊んでよ。」

「テレビ見てたんじゃないの?」

「もう全部見ちゃったんだもーん。ねえ、構ってよー。」

「ボクも暇だったし、いいけど…」

「わーい。」

 

 

 

 

「チェックメイト。」

「わーん、負けたー!天理クン強すぎー!」

「えへへ。面白いでしょ?この巨大チェス。遊ぶ相手がいなかったからずっと遊べずじまいだったんだ。」

「そっかー。…あー、そろそろお昼の時間だね。」

「えー。もうちょっと遊ぼうよー。あと1時間だけでいいからさー。」

「ダメ。みんなを待たせちゃうよ。ほら行くよ。」

「ひーん。」

 

 

 

 

【食堂】

 

「来たよー。」

「にゃははー。」

「おや、お二人ともいらっしゃいましたか。」

「財原。お前、今日は珍しく早いな。」

「狛研君と一緒に来たからだろ〜♪」

「……………。」

時間ぴったりにラッセクンと才刃クンが来た。

「…チッ、今回も来ているのか。この不審者は。」

「全くなのだ。せっかくの飯が不味くなる。」

「お前らなぁ、いい加減に…」

 

「ごめん、みんなお待たせ。」

「お待たせしました…」

少し遅れて星也クンと治奈ちゃんが来た。

「穴雲。お前、もう大丈夫なのか?」

「うん。だいぶ回復したよ。…ところで、今日は朱さんがお昼ご飯を作ってくれるって聞いてるんだけど?」

「おう、そうだったな。」

「あれ?陽一クン、雪梅ちゃんはどうしたの?それに、成威斗クンもいないけど。」

「ああ、朱ちゃんなら、メシができたから舞田を呼んでくるって言ってたけど…さすがに遅いな。何やってんだろ?」

「ボク、体育館を探してみるよ。みんなも、手分けして二人を探してくれる?」

「アイアイサー。」

 

 

 

 

【体育館前】

 

何やってんだろ二人とも…

成威斗クンってば、まだ筋トレやってんのかな?

…んっ?

あれっ?

開かない…

まさか、鍵がかかってる?

「どうしましたか狛研殿。」

「あ、いや…体育館の鍵が開かなくって…成威斗クン、この中にいるんだよね?閉じ込められてたりとかしてるんじゃないの?」

「なっ…やむを得ません、下がっていてください狛研殿。私が扉を斬ります!!」

『わぁあああああああっと!!ストップ、ストップ!!』

いきなりクマさんが現れた。

『ったく、不動院クン!何でもかんでもすぐに斬ろうとするんじゃないよ!!この一刀両断男!!今鍵を開けるからちょっと待っててよ!』

クマさんは、ドアの前で何かをガチャガチャやった。

すると、体育館のドアが開いた。

『はいどうぞ。じゃ、ボクはこれにて退散ーっと。』

クマさんは、そそくさと帰っていった。

「…呼んでみよっか。」

「そうですね。」

「成威斗クーン。いるぅー?」

 

…。

返事がない。

 

「ちょっと、中入ってみようよ。」

「…そうですね、入りましょう。下がってください狛研殿。私が先に入ります。」

「あ、うん…」

「舞田殿?いらっしゃいますか?一体今まで何を…」

 

 

 

「ッーーーーー。」

 

「ん?どうしたの剣クン?」

「こちらに来てはなりません、狛研殿!!」

「え、一体どういう…」

 

 

 

 

 

「ッーーーーーーーーーー!!!」

 

信じられない光景が目に飛び込んできた。

…嘘だ、そんなわけがない。

さっきまであんなに元気だったのに。

そこには、天井から首を吊って動かなくなっている一つの影があった。

なんでキミが…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗クンは、そこで死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな、成威斗クン…!」

「嘘、ですよね…舞田殿が…!」

 

「キャアァアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「!!?」

治奈ちゃんの声…!?

一体何が…

「剣クン!そこにいて。ボクは治奈ちゃんのところに行ってくる!!」

「は、はい…承知しました…!」

今の声、女子更衣室からだよね…?

一体何が…

 

 

 

 

【女子更衣室】

 

治奈ちゃんは、更衣室の前で腰を抜かしていた。

「治奈ちゃん!!」

「…。」

「治奈ちゃん!!一体何があったの!?」

「あ、ああああああああ…」

治奈ちゃんは、青ざめた顔で更衣室の中を指差した。

「?」

 

 

 

 

 

「ッーーーーーーーーーー!!!」

 

また信じられない光景が目に飛び込んできた。

昨日まで普通だった更衣室には、赤い色が散らばっていた。

床には、さっきまで元気だった仲間の亡骸が転がっていた。

…どうしてキミが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅ちゃんは、そこで死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上10名

 

 

【挿絵表示】

 

 




平和な時間もお預けよ!
やー、ギスギスして参りました。


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第3章 非日常編①(捜査編)

『叶の事を悪く言うヤツは、俺が許さねェ!!』

 

『ワタシ、皆サンの敵、倒しマス!アチョー!!』

 

 

 

そんな…

 

嘘だ。

 

なんで成威斗クンと雪梅ちゃんが…

さっきまであんなに元気だったのに…なんで…

一体誰が、なんでこんな酷い事を…

 

「おい、不動院!二人は見つかったか…って、おわぁああああああああっ!!?」

今のは陽一クンの声か。

成威斗クンの死体を見ちゃったんだね。

「癒川さん…大丈夫?…ッ!!?」

治奈ちゃんの様子を見に来た星也クンも、雪梅ちゃんの死体を見てしまった。

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『オマエラ、死体が発見されました!!4階の体育館又は女子更衣室にお集まりください!!』

 

「……………なにが、あった……の………」

「フン、騒がしいぞ。何があった。」

「………!………曲芸師。」

「…今度は中華娘か。フン、これだから凡愚は。自分の身すら自分で守れんのか。」

放送を聞きつけて、ゐをりちゃんとラッセクンが来た。

二人とも、少し驚いた様子だった。

『うぷぷぷぷ!まーた死人が出ちゃったよ!ボク達の事を倒すだとかなんとか言ってたけど、このザマは何かな?なっさけないね全く!』

目の前にクマさんが現れた。

「チッ…また貴様か。おい、触角帽子。貴様がコイツを動かしているんじゃないのか?」

「違うってば。ボクは黒幕じゃないって言ってるでしょ。」

『え?なになに?何の話?』

「とぼけるな。貴様の正体は、そこの触角帽子なのだろう?そんな薄汚いぬいぐるみ越しに話しかけたって無駄だ。いい加減正体を現せ。モノクマ…いや、狛研叶。」

『ギ、ギックゥ!!?そ、そそそそんなバカな!?なんでバレた!?そ、そーだよ!ボクの正体は、狛研叶だったのだー!!いやぁ、お見事ラッセクン!ボクの正体を見破っちゃうなんてさ!ボクとした事が、久々にアンラッキーだね!…どう?似てる?』

「…チッ、不愉快な演技でごまかしおって。今に貴様の化けの皮を剥いでやる。」

うん、確かにボクのマネをされるのは不愉快だね。

ボクは黒幕じゃないのに…

『うーん。まあそれは勝手にすればいいと思うけど…オマエ、何か大事な事見失ってない?』

「…何?」

『はい殺人事件が起きました!犯人はまだわかりません!オマエラがやらなきゃいけない事はなんでしょう!?』

「わかってるから早くファイルを頂戴よ。」

『あー、はいはいわかりましたよ!急かさないでよもうっ!!ほらファイル。あと、更衣室のガトリングのセンサーをオフにしといたから、男子も捜査ができるよ。』

ボク達の手帳にファイルが送られてきた。

『捜査ができるよ!やったねかなえちゃん!』

「それ、たえちゃ…」

「黙れ貴様。ふざけているのか。」

『じゃ、ファイルはもう配ったので好きに捜査しちゃってくださーい!』

クマさんは上機嫌で去っていった。

「じゃあ、ファイル貰ったし、捜査を始めちゃおっか。」

「…おい。貴様、やけに落ち着いてるな。やはり、貴様が黒幕…」

「じゃあ逆に聞くけど、この状況で生き残りたいならどうすればいいわけ?キミももうわかってるでしょ?できる限り頭をフル回転させて、真実を暴かないと。」

「…チッ。癪だが、俺も貴様と同じ意見のようだ。俺は祖国の民のためにも、ここで死ぬわけにはいかん。もしもの事があれば狛研叶。俺は貴様を踏み台にしていく。そのつもりでいろ。」

「うん。わかってる。協力してくれてありがとうラッセクン。」

ボクは、こんな所で死ぬわけにはいかないんだ。

なんとしてでもここで情報を集めて、真相を解き明かさなきゃ!

 

 

 

 

おーおー。

やっぱり事件が起こっちゃいましたか。

だから気をつけろって言ったのに。

やっぱり今回はクラブのジャックとハートのジャックか。

ったく、あーだりィ。

これから捜査とかせにゃならんのかー。

とりま、体育館行こーっと。

 

 

 

 

【体育館】

 

「うっ、うぅっ…舞田殿…」

「あ、あああああああ…」

「嘘だろ…?そんな、舞田…うぷっ。」

「…今度は舞田君か。全く、酷い事をするね。」

おー。もうみんな集まってる感じー?

不動院クンとフルチンカモ…もとい栄クンはやっぱ狼狽てるわね。

入田クンはまーたゲロか。きったねw

もはや名人芸でしょアレ。

詩名クンは通常運転だねー。あーあ。盲目ってこういう時羨ましいっすわ。

さーてと、俺様もテキトーにリアクションしちゃいますZOY☆

「ヴェエエエエエエエエ!!!嘘ぉおおおん!!俺の大好きな舞田クンが死んじゃったよぉおおおお!!ねえ舞田クゥウウウン!!てるてる坊主になってないで起きてよぉおおおおおお!!ヴェエエエエエエエエエエエエ!!!」

おーおー。みんないい感じにイライラしてくれてるねぇ。あー楽し。

『フッフッフ。集まりましたね、皆様。全く、ワタクシ達を倒すとかほざいていたのはどこのどいつでしょうかねえ?フハハハハ!』

わお!ベルちゃん当場ー♪

今日もフ●ーザ様ボイスが素敵ー(棒)

「またオマエか!でも、僕ちゃん知ってるぞ!どうせオマエ、狛研なんだろ!?そんな気持ち悪いぬいぐるみ越しに話しかけたって無駄だぞ!!」

『ギ、ギックゥ!!?バ、ババババレたァ!!?そ、そそそーだよ!ボクが黒幕だったんだー。いやぁ、さっすが才刃クン!ボクの正体を見破っちゃうなんてね!…どうです?そっくりでしょう?』

「声がフリ●ザ様な時点でアウトだね。いや、ば●きんまんか。はいヘタクソ0点落第点。」

『おやおや。厳しいですねぇ、財原様は。』

「やめるんだーばいき●まんー。元気100倍成金パーンチ。」

『ハーヒフーヘホー…っと、ふざけてないで早く捜査を始めてください。』

「君もノリノリだったじゃないか。」

「舞田殿がこんな事になっているというのに…貴方は何を巫山戯ているのですか!!」

いや、朱サンの事も忘れないであげなよ不動院s…あっぶね、つい心の声が漏れるところだった。

『どうでもいいでしょうそんな事は。さて、そろそろ学園長がファイルを配る頃だと思うのですが…』

「お、来た。」

ファイルが来たねー。

今回も探偵ごっこができるね。キャハッ☆

「うーっすみんな捜査始めるべー。」

「オマエ、なんでそんなに落ち着いているのだ!?まさかオマエが黒幕…」

「ちょっとー。もう当たり屋じゃんか入田クンよぉー。俺は、こんなところで死にたくにゃーいの。おいじゃーとっとと捜査してスペードのジャックを見つけちゃうわよー。」

「さっきから何わけのわかんねェ事言ってんだテメ…」

「ダメじゃん、栄クン。死にたくなかったら、口より先に頭を動かさないと♥︎」

「チッ、キメェんだよテメェ!!」

「あらひどい。」

さーてと。

俺もこんな所で死にたくないからねー。

…まあ、俺がここで死なないのは確定事項なんだけど。

とっとと犯人見つけて部屋でガリ●リ君食いたいんだよなー。

さぁてと、犯人をどう料理してやろうかな?

覚悟しときなよー、スペードのジャックさん♪

 

 

 

 

 

 

ー《捜査開始》ー

 

「どうする?」

まずはモノクマファイルを確認しよう。

まずは成威斗クンのファイルからかな。

 

 

モノクマファイル③

 

1人目の被害者は【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗。

死体発見現場は、内エリア4階の体育館。

死亡推定時刻は、11時20分頃。

死因は絞殺による窒息死。

死体発見時、死体はロープで天井から吊るされていた。また、首には吉川線が見られる。

右足首には、うっすらと半環状の傷が見られる。

 

コトダマゲット!【モノクマファイル③】

 

「なるほど。じゃあ次は雪梅ちゃんのファイルを見てみよう。」

 

モノクマファイル④

 

2人目の被害者は【超高校級の曲芸師】朱雪梅。

死体発見現場は、内エリア4階の女子更衣室。

死亡推定時刻は、11時30分頃。

死因は失血死。

何かで斬り付けられたような傷が胴部と右腕に一ヶ所ずつある。

おそらく、胴部の怪我が致命傷になったと考えられる。

 

コトダマゲット!【モノクマファイル④】

 

「…なるほどね。検視は、治奈ちゃんにお願いしようかな?」

「はい…私、できる限り手がかりを見つけられるよう頑張ります。」

「おい、コイツに見張りをつけなくていいのか?この小娘が証拠を隠滅しないとも限らんぞ。」

「うーん。今回は人数が限られてるし、見張りをつけたくてもつけられないよね?仕方ない、癒川さんを信じるしかないよ。検視は癒川さんに任せて、みんなは捜査に専念しよう。」

「そうだね。」

とりあえず、自分でも調べられるだけ調べてみよう。

何か手がかりが掴めるかもしれない。

うーん、酷い殺され方してるなぁ…雪梅ちゃん。

一体誰がこんな事を…

あれ?待てよ?

今回の犯行現場って、女子更衣室だよね?

だったら…

 

コトダマゲット!

 

【校則】

女子は男子更衣室に、男子は女子更衣室に入る事ができない。仮に入ろうとしたらガトリングガンで蜂の巣にされる。

 

「今回の事件は、女子更衣室で起こったから犯人は女の子なのかな?」

「うーん。そうとは言い切れないかもしれないけどね。」

「どういう事?」

「ほら、他の人の手帳を使ったりとかすれば…」

「うーん、それは無理っぽくない?だって、この首輪はクマさん達じゃないと外せないし。」

「そうだね。じゃあ、僕が今言ったトリックを使うのは無理そうだね。」

 

コトダマゲット!

 

【首輪】

その人の情報が詰まっている。クマさん達しか取り外しができない。ハッキングも不可能。

 

「なるほどね…」

ちょっと気になったところを調べてみよう。

ん?

これは…血?

外まで続いてるな…

…そういえば、焦ってて見落としてたけど、体育館からここに来る途中、廊下に血が落ちてたような…

 

コトダマゲット!

 

【廊下の血】

体育館から女子更衣室の間の廊下に付いていた。

おそらく、雪梅ちゃんのものと思われる。

 

「おい、触角帽子。」

「何?ラッセクン。」

「貴様と話すのは非常に不本意だが…今回の動機はなんだと思う?」

「うーん。やっぱり秘密じゃないのかな?」

「秘密、か。なら、カマキリの卵と中華娘の手帳を確認すれば犯人候補が絞れるのではないか?」

「あ、その手があったか。」

確か、雪梅ちゃんが見た秘密は成威斗クンの秘密だったよね?

治奈ちゃんの検視が終わったら確認しよっと。

「ねえ、ラッセクンは、犯行当時何やってたの?」

「冬部屋で考え事をしていた。貴様は?」

「ボクは天理クンの研究室にいたよ。一緒にチェスとかやってたんだ。」

「フン、類は友を呼ぶとはまさにこの事だな。不審者同士仲良くやってろ。」

「ひどいよラッセクン。ちょっとは信用してくれてもいいじゃない。」

「ふざけるな。誰が貴様を信用するか。」

うーん、これ以上は話にならないからそろそろ別の人に話を聞こうかな?

 

「ねえ、ゐをりちゃん。」

「……………何。」

「何か手がかりは見つかった?」

「……………………特に何も。」

「じゃあ、事件当時何をしてたのか教えてくれる?」

「……………詩人と、一緒に………いた………本人、聞けば…………わかる、と……思う………」

「そっか、ありがとう。」

 

そろそろ治奈ちゃんの検視が終わった頃かなぁ?

「治奈ちゃん、どう?検視した結果は。」

「ええと…やはり、ファイルに嘘はなかったようです。朱さんは、胴部と右腕を斬りつけられています。傷の深さから推測するに、刃渡り50cm以上の刃物で斬りつけられたのかと。」

「どっちの方が早くできた傷かはわかる?」

「ええと…ほとんど傷の古さに差が無いので、自信はありませんが…多分、腕の方が先にできた傷だと思います。」

「なるほどね。」

 

コトダマゲット!

 

【雪梅ちゃんの怪我】

胴部と右腕を負傷している。致命傷となったのは胴部の怪我で、刃渡り50cm以上の刃物で斬りつけられたものと思われる。

また、少しではあるが右腕の傷の方が古い。

 

「ところで治奈ちゃん。星也クンの怪我は大丈夫なの?」

「はい。体調は非常に安定しています。」

「…あのさ、さすがに人を斬りつけたり、死体を運んだりする元気はまだないよね?」

「狛研さん、僕の事を疑ってるのかい?…まあ、それは仕方のない事だけれど。」

「いや、確認だよ。で、治奈ちゃん。それはどうなの?」

「ええと…流石にそれは無理だと思います。穴雲さんは今、歩き回るのがやっとですから…そんな事をすれば、傷が開いてしまいます。」

「そっか。」

「一応、カルテを見ますか?」

「うん、お願い。」

治奈ちゃんは、手書きのカルテを見せてくれた。

…なるほど、体温や血圧…その他にも色々と情報が書いてあって、かなり信憑性の高い資料だな。

 

コトダマゲット!

 

【治奈ちゃんのカルテ】

星也クンを治療した時に書いたもの。

このカルテに書かれている情報によると、星也クンは今歩いたり少し動いたりするのがやっとらしい。

 

「ねえ、一応確認だけど…二人は、成威斗クン達が殺された時、何してたの?」

「私は、ずっと穴雲さんの看病をしていました。」

「うん。間違いないよ。」

「そっか、ありがとう。」

 

さてと、検視は終わったみたいだし、ちょっと雪梅ちゃんを調べてみよう。

さっき言ってた秘密も確認しなきゃだし…

ボクは、雪梅ちゃんの手帳を起動した。

雪梅ちゃんの手帳には、成威斗クンの秘密が書かれていた。

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗クンの秘密!

 

舞田成威斗は臆病者である。

 

成威斗クンが臆病者…?

一体どういう事なんだろ。

…いや、今はそれを考えてる場合じゃないな。

もっとたくさん情報を集めないと。

 

コトダマゲット!

 

【秘密】

今回の動機。雪梅ちゃんは、成威斗クンの秘密を見ている。

 

よし、ここで集められる情報は集まったかな。

ちょっと体育館の方がどうなってるのか見てみよう。

 

 

 

 

【体育館】

 

こっちは大方捜査は終わってるのかな?

ボクは、陽一クンに話を聞いてみる事にした。

「ねえ、陽一クン。何か気付いた事はある?」

「んあ?気づいた事?そうだな…舞田が天井からロープで吊るされてるっつー事かな?」

「…なるほど、ありがとう。」

 

コトダマゲット!

 

【ロープ】

成威斗クンは、天井からロープで首を吊っていた。

 

「あとは、あれだ。扉の上にある通気口あるだろ?あれの蓋が開いてたんだよ。」

「通気口の蓋…か。」

どれどれ?

うーん。

通気口の高さは、大体床から2.5mくらいか。

ドアの取手がちょうど柳人クンの身長と同じくらいの高さだから…

ちょうど取手から1.5mくらい?

 

…っと。あ、ホントだ。蓋が開いてるね。

でも、どう見ても人が出入りできる大きさじゃないよね?

これは出入りの手段に使われたとは考えられないかな。

…ん?何この傷。

 

コトダマゲット!

 

【通気口】

蓋が開いていた。人が出入りできる大きさではない。縁の部分に何かを擦ったような痕がある。

 

…それにしてもこの傷、一体なんなんだろ。

深く削れて塗料がハゲちゃってんじゃん。

 

コトダマゲット!

 

【塗料】

通気口の塗料がハゲていた。

 

「陽一クンは、事件当時何してたの?」

「オレか?オレは昼メシの下ごしらえしてたけど。」

「そっか、ありがとう。」

 

「あとは…ねえ、才刃クン。」

「…チッ、何の用だ不審者め。」

「ひどいなぁ…ねえ、何かわかった事はある?」

「ふんっ。オマエに言う事は何もないのだ。」

「でも、そんな事してたら裁判で間違えてみんな死んじゃうよ?…まあ、才刃クンが犯人なら話は別だけど。」

「…オマエ、僕ちゃんを疑ってるのか?なんて無礼な奴だ。…オマエと情報を共有するのは正直メッチャ不本意だけど、背に腹は変えられんからな。特別に僕ちゃんが証言してやろう。実は、舞田に配られた秘密を見れば犯人がわかるんじゃないかと思って、手帳を確認したのだ。僕ちゃんは天才だからな!凡人にはない発想ができるのだ。」

ラッセクンも同じ事考えてたけどね。

「それで?」

「舞田の手帳が、壊れてて使えなかったのだ!!クッソ、手帳さえ見れれば犯人が分かったのに…!」

「うーん、まあそういう事もあるよ。」

「それでな、なんで手帳が壊れたのか、僕ちゃんなりに分析してみたのだ。」

「うんうん。」

「実はこの手帳、電圧や衝撃には強いが、熱変化には弱いのだ!!」

「そうなの?」

『フッフッフ!!ズバリ、その通りでございます!!』

「あ、ベルさん。」

『入田様の言う通り、この手帳は電圧や水圧、衝撃などありとあらゆる外的要素に耐性を持っております。しかし、唯一弱点がございます。それが、熱です!!この手帳は、電源が入ったまま長時間高温にさらされると、熱暴走を起こして壊れてしまうのです!!…あ、くれぐれも真似して壊したりしないでくださいね?』

「あと、それともう一個聞きたい事があるんだけど。」

『なんでございましょう?』

「体育館の扉ってさ、どうやって鍵をかけるの?」

『フッフッフ。ズバリお答えします。内側からなら、扉に付いている回転式のラッチ錠で開け閉め可能です。ですが、外側からとなると、ワタクシ共が管理している鍵を使わなければ開け閉めする事ができません。』

「なるほどね、よくわかったよ。もう行っていいよ。」

『とほほ…相変わらずトラ使いが荒いですね。』

 

コトダマゲット!

 

【手帳の弱点】

電源が入ったまま高温にさらされると熱暴走を起こして壊れてしまう。

 

コトダマゲット!

 

【扉の鍵】

内側からなら、回転式のラッチ錠で開閉可能。外側からは、クマさん達しか施錠できない。

 

「ねえ、才刃クン。才刃クンは、事件当時何してたの?」

「むぅ、僕ちゃんか?研究室で発明品の整理をしていた。…あ、そうそう。ちょうど舞田が殺された時刻、朱が僕ちゃんの研究室の前を通るのを見たぞ。」

「それ、本当?」

「なんだオマエ。不審者の分際で僕ちゃんを疑うのか?僕ちゃんは、くだらない嘘などつかんぞ。」

「なるほどね、よくわかったよ。ありがとう才刃クン。」

 

コトダマゲット!

 

【才刃クンの証言】

成威斗クンが殺された時、雪梅ちゃんの姿を見ていた。

 

「あとは…ねえ、柳人クン。」

「ん?なんだい?」

「何か気付いた事はない?」

「うーん、そうだねぇ。ごめんよ。特には無いかな。」

「そっかぁ。」

「でも、ちょっと考えてた事はあるかな?」

「え、何?」

「ほら、死体は天井の真ん中に吊るされてるらしいじゃないか。天井まで届く脚立なんてないし、やっぱりアレを使って吊るしたのかな?」

「アレ?」

「天井の金具を移動させる機械さ。あれを使えば、天井に舞田君の死体を吊るせるんじゃないかい?」

「機械か…ありがとう。」

 

コトダマゲット!

 

【体育館の機械】

体育館に、天井の金具を移動させる機械があった。犯人は、それを使って成威斗クンを天井に吊るした…?

 

「ねえ、柳人クン。成威斗クン達が殺された時、キミは何してたの?」

「神座君と一緒に春エリアを散歩してたよ。」

「…あっ。」

「ん?なんだい?」

「大事な事聞くの忘れてた。ねえ、成威斗クン、体育館に行く前にどこに行ったのか知ってる?」

「そうだねぇ…あ、そういえば、ちょっとサウナに行ってくるって言ってたような…」

「…サウナか。」

「ま、本当に行ったのかどうかは定かじゃないけどね。」

 

コトダマゲット!

 

【サウナ】

事件が起こる前、成威斗クンがサウナに行っていたらしい。

 

「…うんうん。よくわかったよ。ありがとう柳人クン。」

「お役に立てたなら何よりさ〜♪」

じゃあ、次は天理クンに話を聞いてみようかな?

「天理クン。」

「ふにゃっ。なぁに?狛研さぁん。」

「あのさ。何か気づいた事があれば教えてほしいんだけど。」

「いいよぉ〜。あのね、俺、一応舞田クンを検視したのね?」

「うん。」

「それで、ちょっと変な事に気付いたんだぁ。」

「変な事?」

「うん。あのねあのね?舞田クンの首にかかってたロープの結び方なんだけど…これ、変じゃない?」

「…あっ。…逆?」

「そっ。これ、左利きのヤツが結んだって事じゃないの?」

「…なるほどね。」

 

コトダマゲット!

 

【ロープの結び方】

ロープの結び目が逆になっている。犯人は左利き…?

 

「でもさ。天理クンって確か両利きだったよね?キミならこういう結び方できるんじゃないの?」

「まあそうなんだけどさぁ。あれっ!?もしかして狛研サン、ボクの事疑ってる!?」

「そういうわけじゃ…」

「ひーどーいー!!俺、犯行時刻はずっとキミと一緒にいたよね!?それなのに疑うなんて…ひどいよー!!」

「ごめん、そうだったね。」

 

コトダマゲット!

 

【天理クンのアリバイ】

天理クンは、犯行時刻にはボクと一緒にチェスをしていた。

 

「あ、あとね。」

「立ち直り早いね。…もしかして、さっきの嘘泣き…」

「そんな事どうでもいいじゃん。それより、これを見てよ。狛研サンに見てもらいたくて持ってきたんだからよ。」

「何これ?布の切れ端?」

見たところハンカチっぽいけど…

 

コトダマゲット!

 

【布の切れ端】

天理クンが体育館で見つけてくれた。見たところハンカチっぽいけど?

 

さてと、天理クンから集められる情報はこのくらいかな?

そろそろ剣クンの情報も聞きたいね。

「ねえ、剣クン。」

「はい、なんでございましょう、狛研殿?」

「何かわかった事はない?」

「そうですね…ああ、あれがありました。」

「あれ?」

「はい。この足場の柵をご覧ください。こことここに、よく見ると傷がありませんか?」

「あ、そうだね。」

柵には、傷が二つあった。

一つは手すりの部分にある、比較的小さな傷だ。

もう一つは、柵の部分にある金属を擦ったような傷だな。

うん?よく見ると、輪っかみたいな傷だな。

「私が独自で入手した情報は以上です。あとは、皆さんが入手した情報と同じかと。」

 

コトダマゲット!

 

【柵の傷】

体育館の足場の柵に小さな傷が二種類ある。

一つは手すり部分の小さな傷。もう一つは柵の部分にある金属同士を擦ったような傷で、よく見ると輪っかの形をしている。

 

「剣クンは事件当時何してたの?」

「娯楽室におりました。証拠の写真がございますが…見ますか?」

「写真?」

「はい、入田殿に教わった“自撮り”というものをしてみたのです。ほら。」

剣クンが見せてくれた写真には、娯楽室にいる剣クンが写っていた。

後ろにあるデジタル時計には、11時20分と表示されている。

…あれ?この写真、何か違和感があるな。

よく見ると、微妙に物の配置とかが違う気が…

 

コトダマゲット!

 

【写真】

剣クンの自撮り写真。後ろのデジタル時計には、11時20分と表示されている。

 

「ありがとう剣クン。参考になったよ。」

「左様ですか。」

あとは全員のアリバイをまとめておこう。

 

コトダマゲット!

 

【全員分のアリバイ】

ボクと天理クンは、天理クンの研究室で一緒にチェスをしていた。

星也クンと治奈ちゃんは、星也クンの独房にいた。

才刃クンは、研究室にいた。一度外に出た時、雪梅ちゃんの姿を見ている。

柳人クンとゐをりちゃんは、一緒に春部屋を散歩していた。

陽一クンは、厨房で昼ご飯の下ごしらえをしていた。

剣クンは、娯楽室にいた。

ラッセクンは、冬部屋にいた。

 

 

 

 

『オマエラ、時間切れです!ついにこの時がやってきました!お待ちかねの学級裁判、始めるよ〜!5分以内に、内エリア1階の噴水まで集合してね〜!』

『遅刻欠席は許しませんよ!校則違反とみなし、問答無用でおしおきさせていただきます!』

…もう時間か。

まだ色々と気になる事はあるけど、行かなきゃ。

ボクは、噴水に向かった。

 

 

 

 

【噴水】

 

「オマエラ、遅いのだ!もっと早く来んか!」

やっぱり、今回も才刃クンが一番乗りか。

それ以降は陽一クン、ラッセクン、星也クン、治奈ちゃん、剣クン、柳人クン、ゐをりちゃん、ボク、天理クンの順に来たようだ。

「…財原君。君、いい加減にしようか。あと5秒遅かったら君、おしおきされてたんだよ?」

「ごめんなちゃーい。でもよー。いーぢゃん。間に合ってんだから。」

「結果論じゃねえかよ。やっぱギャンブルばっかやってるヤツは違うな。」

「えへへー。」

『うぷぷ、全員揃ったみたいだね。じゃ、裁判場行きのエレベーターに乗ってね!』

クマさんが指を鳴らすと、噴水の中からエレベーターが現れた。

クマさんに急かされて、ボク達はエレベーターに乗った。

 

 

 

 

…本当にこの中に、二人を殺した犯人がいるのかな。

みんなを信じるって決めたのに、みんなの事を疑っている自分がいる。

でも、やらなきゃ自分が殺されるんだ。

だったら、やるしかない。

ボクは、生き残るために…成威斗クン達の無念を晴らすために、絶対に真相を暴いてみせる。

…待ってて二人とも。

二人の仇は、絶対に取ってみせる!!

 

 

 

 


 

 

 

『フッフッフ。さァて、ここでクイズのお時間ですよ。舞田様と朱様を殺した犯人は、一体誰だと思いますか?』

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

『…そうですか。次回は学級裁判前編でございます。お楽しみに。』



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第3章 非日常編②(学級裁判前編)

エレベーターが止まり、ドアが開いた。

全員がエレベーターから降りた。

証言台には、遺影が3つ増えていた。

屈託のない笑みを浮かべる彩蝶ちゃんと翠ちゃんの遺影、満面の笑みを浮かべる成威斗クンの遺影、そして元気な笑みを浮かべる雪梅ちゃんの遺影だ。

「…日暮殿、舞田殿、朱殿…」

「…皆さん。」

「ひでぇよ…こんなの、あんまりじゃねえかよ…!」

「おーおー、なんか裁判場っていうよりはだんだん葬式場っぽくなってきたね。」

「財原君、不謹慎だよ。」

「ごめんなちゃーい。」

柳人クンに注意されると、天理クンはおでこをペシっと叩いた。

『うぷぷぷ!全員揃ったみたいだね!…あれ?なんかみんなテンション低くない?これじゃあまるで葬式じゃん!』

「テメェ…誰のせいだと思って…!」

「栄君。今ここで彼らに怒りをぶつけても意味がない。」

「…チッ。」

『穴雲様は物わかりが良くて助かります。さぁて!では全員揃った事ですし?始めましょう!』

「待って。」

『おや、どうしましたか?狛研様。』

「今回は二人被害者が出たんだよね?仮に二人以上がそれぞれ殺人をした場合はどうなるの?」

『うぷぷぷ!ズバリお答えしましょう!その場合は、裁判中に生き残っている方の中で一番最初に殺人を犯した方のみがクロという扱いになります!もし犯人を全員特定できたらクロだけおしおき、一人でも特定されていない犯人がいた場合はクロ以外がおしおきとなります!』

「…なるほどね。ありがとう。」

 

コトダマゲット!

 

【おしおきのルール】

クロ扱いになるのは、生き残りのメンバーの中で最も早く人を殺した生徒のみ。

犯人を全員特定できたらクロだけおしおき、一人でもクロを外したらクロ以外がおしおき。

 

『じゃあ、みんな準備できたみたいだし始めちゃおっかな!ドキドキワクワクの学級裁判を!』

 

 


 

コトダマ一覧

 

 

【モノクマファイル③】

1人目の被害者は【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗。

死体発見現場は、内エリア4階の体育館。

死亡推定時刻は、11時20分頃。

死因は絞殺による窒息死。

死体発見時、死体はロープで天井から吊るされていた。また、首には吉川線が見られる。

右足首には、うっすらと半環状の傷が見られる。

 

【モノクマファイル④】

2人目の被害者は【超高校級の曲芸師】朱雪梅。

死体発見現場は、内エリア4階の女子更衣室。

死亡推定時刻は、11時30分頃。

死因は失血死。

何かで斬り付けられたような傷が胴部と右腕に一ヶ所ずつある。

おそらく、胴部の怪我が致命傷になったと考えられる。

 

【校則】

女子は男子更衣室に、男子は女子更衣室に入る事ができない。仮に入ろうとしたらガトリングガンで蜂の巣にされる。

 

【首輪】

その人の情報が詰まっている。クマさん達しか取り外しができない。ハッキングも不可能。

 

【廊下の血】

体育館から女子更衣室の間の廊下に付いていた。

おそらく、雪梅ちゃんのものと思われる。

 

【雪梅ちゃんの怪我】

胴部と右腕を負傷している。致命傷となったのは胴部の怪我で、刃渡り50cm以上の刃物で斬りつけられたものと思われる。

また、少しではあるが右腕の傷の方が古い。

 

【治奈ちゃんのカルテ】

星也クンを治療した時に書いたもの。

このカルテに書かれている情報によると、星也クンは今歩いたり少し動いたりするのがやっとらしい。

 

【秘密】

今回の動機。雪梅ちゃんは、成威斗クンの秘密を見ている。

 

【ロープ】

成威斗クンは、天井からロープで首を吊っていた。

 

【通気口】

蓋が開いていた。人が出入りできる大きさではない。縁の部分に何かを擦ったような痕がある。

 

【塗料】

通気口の塗料がハゲていた。

 

【手帳の弱点】

電源が入ったまま高温にさらされると熱暴走を起こして壊れてしまう。

 

【扉の鍵】

内側からなら、回転式のラッチ錠で開閉可能。外側からは、クマさん達しか施錠できない。

 

【才刃クンの証言】

成威斗クンが殺された時、雪梅ちゃんの姿を見ていた。

 

【体育館の機械】

体育館に、天井の金具を移動させる機械があった。犯人は、それを使って成威斗クンを天井に吊るした…?

 

【サウナ】

事件が起こる前、成威斗クンがサウナに行っていたらしい。

 

【ロープの結び方】

ロープの結び目が逆になっている。犯人は左利き…?

 

【天理クンのアリバイ】

天理クンは、犯行時刻にはボクと一緒にチェスをしていた。

 

【布の切れ端】

天理クンが体育館で見つけてくれた。見たところハンカチっぽいけど?

 

【柵の傷】

体育館の足場の柵に小さな傷が二種類ある。

一つは手すり部分の小さな傷。もう一つは柵の部分にある金属同士を擦ったような傷で、よく見ると輪っかの形をしている。

 

【写真】

剣クンの自撮り写真。後ろのデジタル時計には、11時20分と表示されている。

 

【全員分のアリバイ】

ボクと天理クンは、天理クンの研究室で一緒にチェスをしていた。

星也クンと治奈ちゃんは、星也クンの独房にいた。

才刃クンは、研究室にいた。一度外に出た時、雪梅ちゃんの姿を見ている。

柳人クンとゐをりちゃんは、一緒に春部屋を散歩していた。

陽一クンは、厨房で昼ご飯の下ごしらえをしていた。

剣クンは、娯楽室にいた。

ラッセクンは、冬部屋にいた。

 

【おしおきのルール】

クロ扱いになるのは、生き残りのメンバーの中で最も早く人を殺した生徒のみ。

犯人を全員特定できたらクロだけおしおき、一人でもクロを外したらクロ以外がおしおき。

 

 


 

 

 

学級裁判開廷!

 

モノクマ『それじゃあ、好きに議論を進めてくだっさーい!!』

穴雲「とりあえず、まずはファイルを確認しようか。」

狛研「そうだね。今回は、誰がファイルを読む?」

財原「にゃぱぱー。じゃあ俺が読んじゃおっかなー。」

穴雲「…真面目に読んでね?」

財原「わぁってるよ!うぃー、じゃあ読んでくぜーい。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「被害者1人目は【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗。死体発見場所は、4階の体育館。死亡推定時刻は11時20分頃。死因は、絞殺による窒息死。死体発見時、死体はロープで天井から吊るされていた。また、首には吉川線が見られる。右足首には、うっすらと半環状の傷が見られる。」

詩名「うーん、ひどいねぇ。」

不動院「一体誰がこんな非道な事を…許せません!」

財原「どうでもよくね?んな事。」

不動院「なんですって…!?」

財原「それは後から確かめりゃあいーじゃんっつー事。とりあえず今はファイル読むよー。被害者2人目は【超高校級の曲芸師】朱雪梅。死体発見場所は、4階の女子更衣室。死亡推定時刻は11時30分頃。死因は、失血死。何かで斬り付けられたような傷が胴部と右腕に一ヶ所ずつある。おそらく、胴部の怪我が致命傷になったと考えられる。」

栄「舞田は、体育館で首吊って死んでたんだから、フツーに考えりゃあ自殺したんじゃねえのか?」

不動院「そんな、彼に限って自殺なんてあり得ません!!」

栄「でもよ、状況的にはそうとしか考えられなくねえか?」

詩名「うーん、確かに栄君の言う事も一理ある、のかなぁ?」

今の陽一クンの発言はおかしい!

 

自殺⬅︎【モノクマファイル③】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「陽一クン。成威斗クンは、多分自殺したんじゃないと思うよ。誰かに殺されたんだよ。」

栄「そんなの、どうしてわかんだよ?」

狛研「モノクマファイルをよく見て。首に吉川線があるって書いてあるでしょ?つまり、成威斗クンは首を絞められて、抵抗しようとしたんだよ。」

栄「んん?ヨシカワセン?なんだそりゃ。」

穴雲「人を絞殺した時に被害者の首にできる、引っ掻き傷の事だよ。いきなり首を絞められたら、絞めているものを取ろうとして首を引っ掻くからそういう傷ができるんだ。実際の殺人事件の捜査でも、吉川線の有無で自殺か他殺か判断したりするんだよ。体育館を捜査してた人に聞くけど、本当に舞田君の首に吉川線はあったのかい?」

財原「おうよ。バッチリだよーん。爪の間にも皮膚と血が付着してたしね。」

狛研「そこまでわかってるんだったら報告してくれれば良かったのに。」

財原「ごみーん。うっかりしてたにゃー。」

ラッセ「コイツの検視結果など信用できんのだが…」

穴雲「…まあ、今は信じるしかないよ。それを確かめる手段も時間もないからね。さてと、じゃあ死因はファイルに書いてあるからいいとして、次は凶器の特定かな?」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

入田「うむ。まずは舞田を殺害した凶器の特定からか。誰か心当たりのある奴は?」

狛研「心当たりっていうか…多分、凶器はもうみんなわかってると思うよ。」

入田「さすがは黒幕だ。全てお見通しってわけか。」

狛研「だから違うってば!!」

神座「……………工学者……しつこい‥‥……幸運、今……話し…て、る………」

入田「ぐっ…」

狛研「…じゃあ続けるよ。」

成威斗クンを絞め殺した凶器…それは多分…

 

コトダマ提示!

 

【ロープ】

 

「これだ!!」

 

狛研「犯人は多分、ロープを使って成威斗クンを絞め殺したんだよ!!」

神座「………そう、なの………?」

狛研「うん。成威斗クンはロープで吊るされてたし…それは間違いないと思う。」

財原「締め殺された時にできたっぽい索状痕も、ロープの形状と一致してたしねー。狛研サンの言ってる事は間違ってないと思うよー。」

狛研「だから、なんでそれを早く教えてくれないのさ。」

財原「どーでもいいじゃんそんな事。そんな事よりさぁ、舞田クンを絞め殺した凶器は判明した事だし?次は朱サンをブチ殺した時に使った凶器を特定すべきなんじゃねぇーの?」

ラッセ「貴様、さっきから聞かれた事を適当にはぐらかしているが…やる気はあるのか?」

財原「あるよあるよ大有りだよ!!むしろ、犯人を炙り出すために色々と網を張ってるんじゃんよー。それくらい察しろよなー。」

ラッセ「フン、これだから精神病患者は…鎌をかけているつもりが自分の首を絞めていたりしなければいいがな。」

穴雲「君達、おしゃべりはその辺にして本題に入ろうか。犯人は、何を使って朱さんを殺したんだろうね?」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「バズーカ砲でドーン!じゃねえの?」

詩名「そんなの使ったら失血死じゃ済まないだろ〜♬真面目に考えなよ〜♪」

栄「わかんね… チェーンソーとか?」

ラッセ「バカか貴様は。そんな物を使えば間違いなく死体はボロボロになるだろう。」

不動院「ふむ…とかは…?」

入田「だったら死因は毒殺になるはずだが?」

癒川「あの…刃物を使ったのでは…?」

 

刃物⬅︎【雪梅ちゃんの怪我】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「犯人が使ったのは、多分刃物だと思うよ。それもかなり長いやつ。多分刃渡りは50cm以上じゃないかな。ね、治奈ちゃん…」

癒川「はい…朱さんの遺体の切り傷を見て判断しただけで、決定的な証拠が無いので断定はできませんが…」

財原「じゃあ犯人は、長い刃物で斬り伏せたって事?それなら犯人は不動院クンで決まりだね!」

不動院「勝手に私を犯人にしないでください!!現に、私にはアリバイがあるではありませんか!!」

財原「あ、そうだったねー。ごめんごめん。俺様とした事がうっかりしてたよーん。」

不動院「お二人が殺されたというのに…何を巫山戯ているのですか貴方は!!」

財原「あーあー、その台詞…そっくりそのまま犯人に返してやりな。さてと。じゃあ凶器はもうわかった事だし、色々と掘っていこうかね。」

狛研「そうだね…じゃあまずは、成威斗クンの殺害方法からかな?」

穴雲「うん、議題は決まったし、話し合いを始めよっか。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

入田「普通に天井からロープを垂らして自殺に見せかけたんだろ。」

癒川「それ、届きませんよね…?」

詩名「いきなり後ろから絞め殺した、という線はどうだい?」

不動院「不意打ちとはなんて卑怯な…!」

穴雲「足場を使ったという可能性は?あれくらいの高さがあれば、舞田君を絞め殺す事ができると思うけど?」

 

星也クンの意見に賛成したい。

 

足場を使った⬅︎【柵の傷】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「犯人は、足場を使って成威斗クンを絞め殺したんじゃないかな?」

栄「と、いうと?」

狛研「あれだけの高さがあれば、成威斗クンの首にロープを巻き付けて、成威斗クンを突き落とすか犯人が飛び降りるかすれば、体重を利用して成威斗クンを絞め殺す事ができると思うんだ。柵に傷がついてたし、多分そうだと思うんだけど。」

詩名「なるほどね…」

入田「ふんっ、力学的エネルギー保存の法則か。小学生でも知ってる常識なのだ。」

栄「んだそれ。」

入田「知らないのか。物体の持つ位置エネルギーは、基準面からの高さに比例するんだ。つまり、同じ質量と重さの物体なら、高いところに行けば行くほどその物体の持つエネルギーが大きくなるというわけだ。そして、位置エネルギーと運動エネルギーの和は常に等しくなるんだ。mgh₁+1/2mv₁²=mgh₂+1/2 mv₂²という式を知っているだろう?例えば物体が基準面に達し、位置エネルギーが運動エネルギーに全て変換された時、最初にかかっていた位置エネルギーと同じだけの運動エネルギーをその物体が持つと言う事になるんだな。そのエネルギーの大きさが十分に大きければ、人を絞め殺す事も容易いというわけだ。」

栄「いや、わかんねェんだけど…つまり、どういう事だ?」

穴雲「まあ、要するに高いところから物を落とした方がその物にかかるエネルギーが大きいって事だよ。入田君。物知りなのはいい事だけど、あまり長く喋っちゃうと裁判にならなくなっちゃうよ?」

入田「ふんっ。」

財原「うんうん。クッソわかりにくい説明だったけど、要は舞田クンか犯人のどっちかが足場から落ちて、その時の体重を利用して舞田クンを絞め殺したって事でしょ?」

狛研「…そうなるね。」

財原「じゃあ、あの傷は一体何なんだろうね。」

穴雲「傷?」

財原「よくわかんない半環状のキズが、柵と舞田クンの足についてたのさ。狛研サンは、何が原因だと思う?」

狛研「うーん。」

環状のキズ…金属…

何か思いつく事は無いか…?

…!

なるほど、そういう事か。

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

「これだ!!」

 

テ ジ ョ ウ デ ア シ ヲ シ バ ッ タ

 

【手錠で足を縛った】

 

狛研「…手錠。犯人は、多分金属製の手錠か何かで成威斗クンの足を固定して、成威斗クンの首に括り付けた紐を持ったまま飛び降りたんだよ。」

不動院「て、手錠でですか!?」

狛研「そうしないと成威斗クンも一緒に落ちちゃうからね。成威斗クンの足と柵にできた傷は、手錠の傷だったんだよ!」

財原「うーん。なるほど。犯人の体重で足が引っ張られて、柵と足に傷ができたのね。確かに、傷の大きさ的には手錠の特徴にピッタリ当てはまるよね。」

栄「じゃあ、犯人は舞田の足を手錠で縛って落ちないようにして、それで足場の高さと自分の体重を利用して舞田を絞め殺したって事かよ?…マジか。」

入田「…おい、ちょっと待て。その方法を使ったとしても、一つ気になる事があるぞ。」

神座「………何。」

入田「摩擦は一体どうしたのだ。自分と舞田の体重がかかったロープを持って飛び降りるんだ、その時の摩擦で犯人の手はタダじゃ済まないと思うのだが?ここにいるヤツは、誰も手に痕なんてついてないぞ。」

不動院「では、今言った殺害方法ではないという事ですか?」

狛研「ううん。犯人は、ちゃんとその対策もしてたんだよ。」

 

コトダマ提示!

 

【布の切れ端】

 

「これだ!!」

 

狛研「犯人は、布を手に巻いてからロープを持ったんじゃないかな?そうすれば、手に痕はつかないよね?」

ラッセ「なぜそう言い切れる。」

狛研「犯行現場に、布切れが落ちてたんだよ。多分、摩擦で擦り切れたんじゃないかな?」

詩名「うんうん。なるほどね。」

癒川「では次は、死体を天井に吊るした方法でしょうか…?」

狛研「え、それは割と簡単じゃない?」

癒川「え?」

狛研「犯人は、あるものを使って死体を天井まで運んだんだよ。」

癒川「あるもの…?一体何でしょうか…?」

狛研「それは…」

 

コトダマ提示!

 

【体育館の機械】

 

「これだ!!」

 

狛研「体育館に、天井の金具を動かす機械があったんだ。犯人は、金具に死体を括ったロープを結びつけて、機械を使って天井の真ん中に死体を吊るしたんだよ。」

神座「………あ。あの、変な………機械……………」

狛研「そう、それだよ。」

癒川「なるほど…」

詩名「うん、舞田君の殺害方法はこれでわかったね。じゃあ次は動機かな?」

栄「動機になりそうなものなんてあったかなぁ。」

それは…アレしかないだろうな。

 

コトダマ提示!

 

【秘密】

 

「これだ!!」

 

狛研「うーん…断定はできないけど…多分秘密が関係してるんじゃないかな?」

詩名「秘密か…今回配られた動機だね。」

栄「なぁおい!オレ、犯人が分かったかもしんねぇぞ!」

不動院「本当ですか!?」

ラッセ「貴様の自信には不安しか感じないが…言ってみろ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

栄「なぁ、誰か舞田と朱ちゃんがそれぞれ誰の動機を見たのか知ってるか!?」

詩名「えぇ…それがわかったら苦労しな…」

狛研「成威斗クンの方は知らないけど、雪梅ちゃんの方なら知ってるよ。」

詩名「!!?」

穴雲「そうなの?」

狛研「雪梅ちゃんは、成威斗クンの秘密を見てるんだよ。」

栄「っしゃ!!じゃあ、朱ちゃんを殺した犯人は舞田で決まりだぜ!」

穴雲「なんでそう言い切れるんだい?」

栄「簡単な事だよ!朱ちゃんが知っちまった舞田の秘密は、多分舞田が絶対に見られたくなかったモンなんだよ。っつー事はよ、舞田は口封じのために朱ちゃんを殺したんじゃねえか!?」

今の陽一クンの発言はおかしい!

 

犯人は舞田⬅︎【モノクマファイル④】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「陽一クン。それはちょっとおかしくないかい?」

栄「あ?なんでだ?」

狛研「雪梅ちゃんのファイルを見てよ。雪梅ちゃんは、成威斗クンが殺された後で殺されてるんだよ。成威斗クンが雪梅ちゃんを殺せるわけないでしょ。」

栄「あっ…そうだったな。オレ、早とちりしちまったぜ。」

ラッセ「フン、そんな当たり前の事もわからんのか。貴様の頭の悪さには目も当てられんぞ。」

栄「んだと!!?」

穴雲「ちょっと、やめなよ。喧嘩しないでよ。二人とも落ち着いて。」

栄「チッ!」

狛研「うん、二人とも仲直りしたね?じゃあ、次の議題について話し合うよ。」

穴雲「その前に、狛研さん。ひとつ気になった事があるんだけど。」

狛研「何?」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

穴雲「君は、なんで朱さんが舞田君の秘密を見た事を知ってるのかな?」

狛研「前に雪梅ちゃんから聞いてたんだよ。それに、本人の手帳を確認したからね。」

穴雲「なるほど。じゃあ、舞田君の秘密の方がわからなかったというのはどういう事かな?」

狛研「壊れてて見られなかったんだよ。」

ラッセ「壊れていただと?あのバカ、なぜ手帳を壊したのだ。」

栄「そもそも手帳ってどうやったら壊れるんだ?オレ、試しにぶっ叩いてみたけど壊れなかったぞ?」

詩名「…なんでそんな事したんだい?」

栄「いや…壊したらモノクマから監視されんのを防げるかなって…」

ラッセ「なんだその軽率な考えは。これだから馬鹿は…」

狛研「まあまあ…あのね、手帳にはある弱点があったんだよ。」

癒川「弱点、ですか?」

 

コトダマ提示!

 

【手帳の弱点】

 

「これだ!!」

 

狛研「この手帳、あらゆる外的要因に対して耐性を持ってるんだけど、ひとつだけ弱点があるらしいんだ。」

神座「…………何。」

狛研「熱だよ。電源がついたまま高温で長時間放置しておくと、熱暴走を起こして壊れちゃうんだって。」

栄「んなっ…じゃあよ、舞田は手帳の弱点をついて手帳を壊したって事か!?やるなアイツ!」

狛研「いや、多分成威斗クンは手帳の弱点を知らなかったんだよ。それでたまたま壊しちゃったんだと思うよ。」

ラッセ「まあ、殺人犯かよっぽどの馬鹿じゃない限り、わざと手帳を壊そうなどと思わないだろうからな。そう考えるのが妥当だろう。」

栄「バカで悪かったな!!」

入田「でも、舞田はどうやって手帳を壊したんだ?首に付いている手帳を高温にする方法なんて、限られてるだろ。」

それは…

 

コトダマ提示!

 

【サウナ】

 

「これだ!!」

 

狛研「成威斗クンは、手帳の電源を切るのを忘れてサウナに入っちゃったんじゃないかな?」

財原「そーにゃのーかー。」

狛研「うん。成威斗クンがサウナに行ってたっていう証言もあるからね。多分、サウナで壊しちゃったのは間違い無いよ。」

穴雲「うん、これで謎が解けたよ。ありがとう狛研さん。」

狛研「じゃあ、そろそろ次の議題に移ろうか。」

財原「はいはーい!俺、犯人は誰かっつー事について話し合いたいでぇーっす!!」

狛研「え…その議題はまだ早いと思うんだけど…」

財原「だって早く犯人見つけねーと俺達が死んじゃうじゃん!とっとと犯人見つけるベー。」

狛研「じゃあ、ある程度怪しい人を絞っていこうか。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

狛研「ある程度犯人を絞れないかな?」

財原「うーん、俺はねー。女子が怪しいと思うんだけどなぁー。」

ラッセ「何故だ?」

財原「だって、死体が発見されたのは女子更衣室なんだぜ?どう考えても犯人は女子じゃね?」

ラッセ「なぜそう言い切れるのだ。犯人は男だという可能性もあるだろう。」

穴雲「国王陛下、お言葉ですが財原君の意見が正しいと思います。男子生徒は女子更衣室に入れませんから…」

ラッセ「それはモラルの問題だろ!こんな状況で、犯人がそんなものを律儀に守るとでも思っているのか!?男でも女子更衣室に入れる以上、容疑者は全員という事になるだろうが!!」

今のラッセクンの発言はおかしい!

 

男でも女子更衣室に入れる⬅︎【校則】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「ラッセクン。二人の言う通りだよ。」

ラッセ「何?」

狛研「異性の更衣室には入れないって、校則に書いてあるんだよ。それを違反したらガトリングガンで蜂の巣にされちゃうんだって。」

ラッセ「フン、貴様もいい趣味をしてるな。」

狛研「だからボクは黒幕じゃないってば…」

財原「おいじゃー犯人は、神座サン、狛研サン、癒川サンのうち誰かという事で…」

 

 

「その推理、危篤じゃないですか?」

 

反論

 

 

 

狛研「…治奈ちゃん?」

癒川「そんな危篤に陥った推理、認めるわけにはいきません。」

財原「えー。何か間違ってる事なんてあるのかなぁ?」

癒川「大有りです。私が修正(手当て)してあげます!」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

癒川「確かに、皆さんの考えでいけば、男性は女子更衣室に入れないと思います。」

不動院「ですよね?」

癒川「でも、皆さん何か見落としていませんか?」

神座「…………見落とし?」

癒川「そうです。更衣室のドアの鍵は、手帳に登録されている性別を判断して開くんですよね?それって、裏を返せば手帳の持ち主が男性でも構わないという風にも解釈できますよね?」

栄「と、言うと?」

癒川「犯人は女性と手帳を交換 し、性別を偽って女子更衣室に入った男性だという可能性もあるという事です。」

今の治奈ちゃんの発言はおかしい!

 

手帳を交換⬅︎【首輪】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「治奈ちゃん。それはあり得ないと思うよ。」

癒川「なぜですか?」

狛研「手帳は、つけた本人しか取り外しできないんだよ?それに、才刃クンが頑張ってもハッキングできなかったわけだから…やっぱり、手帳を使って性別を偽るっていうのは無理があるんじゃない?」

癒川「…確かに、そうですね。私、それを見落としていました。」

入田「じゃあ、犯人は女だな!!3人の中で怪しい女が犯人というわけか!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

入田「僕ちゃんは、犯人は狛研だと思うぞ!」

狛研「違うよ。」

ラッセ「おい待て。犯人は和服という可能性もあるぞ。」

神座「……………?」

不動院「国王陛下、なぜ神座殿が犯人になるのでございましょう?」

ラッセ「ソイツは、唯一自分の才能を明かしていないのだぞ。どう考えても怪しいだろ。」

不動院「そんな理由で神座殿を犯人にしないでください!!」

ラッセ「どのみち怪しいのは事実だろ。」

入田「じゃあ、犯人は狛研か神座のどっちかって事だな!!はー、僕ちゃんはホント天才だな!!」

今の才刃クンの発言はおかしい!

 

狛研か神座⬅︎【全員分のアリバイ】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「才刃クン、ラッセクン!ボク達は犯人じゃないよ!!この二人が証明してくれてるよ!ねっ?」

財原「うん。俺は狛研サンと一緒にいたわよー。」

詩名「オイラは、神座君と一緒にいたよ。」

ラッセ「コイツらが嘘をついているという可能性は?」

詩名「無いよ。オイラには神座君を庇う理由が無いじゃないか〜♪」

財原「俺も殺人犯を庇って死ぬ勇気は無いからねー。狛研サンがシロなのは間違い無いよ。」

入田「まあ、コイツは黒幕だからシロもクソもないだろうがな。まあそれは面倒くさいから一旦放置するか。…む?だとすると、犯人がわかったんじゃないか?」

栄「ホントかよ!?」

入田「ああ。朱を殺した犯人…」

 

 

 

 

入田「それはオマエだ。癒川。」

癒川「えっ…私、ですか…?」

入田「そうだ。消去法でいけばオマエしかいないだろ。」

癒川「違います!!私は犯人じゃありません!!」

穴雲「そうだよ。癒川さんにはアリバイがあるじゃないか。」

財原「…もし、そのアリバイ自体が嘘だったら?」

癒川「えっ…?」

財原「俺達とは違って、穴雲クンには癒川サンを庇う理由があるよね?だってオマエら付き合ってんだろー!?」

穴雲「それとこれとは関係ないだろ!!」

財原「頑なに認めないでござるなー。…あ。俺、わかっちゃった。」

穴雲「何が!?」

 

 

 

 

 

財原「舞田クンを殺したのが穴雲クン、朱サンを殺したのが癒川サン…二人は共犯だったんだよ!!」

不動院「なっ…!」

財原「それだったら、お互いがお互いを庇い合う理由は大いにあるだろ!はー、俺ってつくづく天才だわ!」

癒川「違います!!私も穴雲さんも犯人じゃありません!!」

財原「またまたー。とっぼけちゃってー。どうせキミが朱サンを殺したんでしょ?いい加減認めろよー。」

癒川「認めません!!だって、私は犯人じゃありませんから!!」

財原「うっせーな。そこまでして自分の罪を隠したい?身も心もきったねー女だねキミは。」

癒川「…ッ!!あなた、なぜそれを…!!」

財原「どーでもいいぢゃんンなこたぁ。あ、キミにとってはどうでも良くないんだっけ?」

癒川「…ッ。」

不動院「あの…先程から一体何の話をなさっているのですか?」

財原「あっ!俺いい事思いついた!ねえ癒川サン。自分が犯人だって認めてよ。じゃないと、俺ってば口が軽いから何喋っちゃうかわかんないよ?」

癒川「そんな…!」

穴雲「やめろ財原君!!癒川さんは、本当に何も知らないんだよ!!」

栄「おい財原!!汚ねェぞテメェ!!女の子いじめて楽しいかよ!?」

財原「うっさいなぁ!今尋問中なんだから黙れよ!で?どうなの癒川サン?」

癒川「違う…わ、私は…犯人じゃ…うっ、ひぐっ…ぐすっ…」

財原「うっわ。泣いた。何被害者面してんのこのクソビッチ。どう考えてもオマエが加害者だろ。」

詩名「ん?財原君、今なんて…」

財原「あ、みんな知りたいよね!?癒川サンの秘密がなんなのか!じゃあ、特別に教えてあげるよ!!」

穴雲「やめっ…」

 

「やめろ!!!」

 

財原「…あぁ?」

狛研「治奈ちゃん達が犯人かどうかは、話し合ってみないとわからないよ!!」

財原「何言ってんの?コイツらが犯人に決まってるよ。さ、クマちゃん!投票の準備おなしゃーす!」

狛研「ダメ!!」

財原「はぁ?」

狛研「まだ裁判は終わらせない!!真実は、まだ奥底に眠ってるんだ!!」

 

 

 

 

 

学級裁判中断!

 




入田クンのうんちくのくだりは、高校物理の内容を引っ張り出してきました。
作者の頭弱いからそれで許して。


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第3章 非日常編③(学級裁判後編)

狛研「まだ裁判は終わらせない!!真実は、まだ奥底に眠ってるんだ!!」

財原「はぁ?狛研サン、頭おかしくなっちゃったの?どう考えたって癒川サンと穴雲クンが犯人だよ。」

狛研「まだそうと決まったわけじゃないよ。本当に二人が犯人なのかどうか、ちゃんと話し合わないと!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「えー。だってさぁ、それ以外の可能性はあり得ないだろ?二人が犯人で決まりだよ。」

穴雲「僕達は犯人じゃないって言ってるじゃないか。」

財原「うっさいよ殺人犯ー。穴雲クンは舞田クンを殺した殺人犯だから癒川サンを庇ってるんでしょ?」

今の天理クンの発言はおかしい!

 

穴雲クンは舞田クンを殺した殺人犯⬅︎【治奈ちゃんのカルテ】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「天理クン。これを見て。」

財原「んあ?んだよその紙切れは。」

狛研「治奈ちゃんが書いたカルテだよ。ここに、星也クンは大怪我を負って、移動するのがやっとだって書いてあるでしょ?星也クンは、成威斗クンを殺す事なんてできっこなかったんだよ。」

財原「それも、癒川サンの嘘かもよー?」

穴雲「しつこいよ。なんでそこまでして僕らを犯人にしたいのかな?」

財原「じゃあ逆に聞くけど、キミはなんでちょっとしか動けなくなるような大怪我負ってるワケ?何かあったんでしょ?」

穴雲「それは…」

癒川「…私のせいです。私は、私の秘密を知った栄さんを殺そうとして…それを止めようとした穴雲さんが、栄さんを庇って怪我をしてしまったんです。」

入田「人を殺そうとしてまで隠したかった秘密って…一体なんなのだ?」

詩名「よしなよ入田君。人に言いたくないから秘密なんだよ?女の子の秘密を問いただすのはいくらなんでも野暮だよ。」

癒川「…いえ。私は、栄さんを殺そうとした罪人です。罰を逃れていいわけがありません。このまま財原さんに犯人にされてしまうくらいなら、お話しします。」

穴雲「癒川さん…!」

癒川「穴雲さんもわかっているはずです。一旦誰かに知られてしまった時点で、もう漏洩を防ぐ事はできません。勝手に漏れて後であれこれ言われるくらいなら、腹括って話しますよ。皆さん。…実は私…援助交際に手を染めていた事があったんです。」

詩名「んなっ…!」

入田「嘘だろ…!?清楚で、どう見てもそういう事に興味ありませんっていう雰囲気を出してたオマエが…!?」

財原「おーおー。まさか自分から言うとはね。でも、それで疑いが晴れると思ったら大間違いなんだなー!!これが!!」

穴雲「なっ…」

財原「皆さん聞きましたかー!?この女今、自分がビッチだって認めましたよー!?しかも、栄クンを殺そうとしたんだよ!?立派な殺人未遂じゃん!!こんな奴、誰が信用するっていうんですかねー!!?ええ!!」

栄「テメェ!!いい加減にしろ!!」

狛研「天理クン。そこまでこの二人を犯人にしたいなら、ちゃんと根拠があるんだよね?」

財原「もっちー!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「まずさぁ、癒川サンは栄クンを殺そうとしたんだぜ?その時点で怪しいだろ。」

栄「それとこれとは話が別だろうがよ、クソ野郎!!」

財原「本当にそうかなぁ?栄クンの暗殺に失敗したから、口封じのために脳筋二人を殺して、俺らをまとめてブチ殺そうとしてたんじゃねーの?とにかくよー。穴雲サンと癒川サンは共犯だった。はい終わり。」

詩名「短っ…証明になってなくないかい!?」

財原「こまけぇこたぁいーんだよ。それが真実なの。文句あんの?」

今の天理クンの発言はおかしい!

 

共犯⬅︎【おしおきのルール】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「天理クン。それはやっぱりおかしいよ。」

財原「はー?ちょっとわからんでござるなー。ドユコト?」

狛研「あのね天理クン。共犯にはメリットが全く無いんだよ。」

財原「は?」

狛研「クマさんが言ってたルールを思い出して。後で殺した方は、シロと同じ扱いになるんだよ?仮に二人が共犯だったら、治奈ちゃんは自分が助かるために自白してるはずだよね?」

財原「それは星也クンの事愛しちゃってるからじゃねーの?知らんけど。」

癒川「やめてください!!狛研さんの言う通り、私達が共犯である理由がありません!!」

詩名「うーん。じゃあやっぱり、単独犯だと考えるのが自然なのかな?」

 

 

「貧乏くせェ言葉だなぁ〜。」

 

反論

 

 

 

狛研「…天理クン?」

財原「キミの言葉は、ホンット安っぽいよねー。おお、安い安い。」

狛研「そこまで言うなら反論してみてよ。」

財原「いいよー。俺は間違ってないからねー。キミの発言なんざ、俺が暴落(くず)させてやるよ。」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

財原「まあこの際めんどくせェから、二人は共犯じゃないって事にしとくよ。」

詩名「その可能性が潰えたなら、もう癒川君は犯人じゃないと思うけど。」

財原「ちげーよ。俺が言ってんのは、この事件の犯人が二人いるっていう可能性があるっつー事だよ。」

栄「バカかお前は。さっき、共犯にメリットは無いから犯人は一人だっつー話になっただろ。」

財原「わかってねーなぁ、貧乏人共は。それは、犯人が二人とも()()()()()、の話だろぉ?」

ラッセ「何が言いたい。勿体ぶってないでさっさと話したらどうだ。」

財原「あのねー?みんな忘れてっかもしんないけど、朱サンがクロだって可能性がまだ残ってるよね?朱サンが舞田クンを殺した 後、癒川サンがその朱サンを殺したんだよー!」

今の天理クンの発言はおかしい!

 

朱サンが舞田クンを殺した⬅︎【才刃クンの証言】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「その可能性は無いと思うよ。」

財原「はぁん?」

狛研「だって、成威斗クンが死んだ時間、才刃クンが雪梅ちゃんを見てるんだよ?雪梅ちゃんは、クロじゃないよ。」

財原「そうなんだぁー。いやーでも、俺はまだ共犯の可能性は捨ててねーかんなー。」

不動院「私も財原殿に賛成です。一人であのお二方を殺すというのは、非現実的です。」

癒川「私は単独犯だと思います。狛研さんの推理を信じたいです。」

詩名「オイラも癒川君と同じ意見かな〜♪」

入田「むっ。意見が割れたな。」

『うっぷぷぷ!そういう時はボク達の出番だね!フォーメーションチェーンジ!!』

 

クマさんが席の装置を操作すると、ボク達の証言台が宙に浮いた。

 

栄「うぎゃああああああああ!!」

ラッセ「煩い。貴様は、泳ぎだけじゃなくて高所も苦手なのか。」

栄「う、うるせぇな!!マジで怖いから降ろして!!」

 

証言台が二つの陣営に分かれた。

 

 

 

意見対立

 

 

 

《犯人は何人か?》

 

【二人だ!】入田、神座、財原、不動院、ラッセ

 

【一人だ!】穴雲、狛研、栄、詩名、癒川

 

 

 

ー議論スクラム 開始ー

 

財原「だ、か、らぁ!犯人は共犯だって言ってるでしょー!?このバカタレ共ー!!」

「柳人クン!」

詩名「共犯にメリットは無いと散々言ってるじゃないか〜♪」

ラッセ「現実的に考えてあの脳筋二人を一人で殺すのは不可能に等しいだろ。」

「星也クン!」

穴雲「二人の死亡時刻にはズレがございますので、一人の人間があの二人を殺す事が不可能だったとは言い切れないのでは?」

入田「癒川は栄を殺そうとしているのだぞ?アイツが穴雲と手を組んで朱を殺した可能性も十分あり得るだろう。」

「陽一クン!」

栄「それとこれとは話が別だって何度言えばわかんだよ!!癒川ちゃんは無実だっつってんだろ!!」

神座「看護師………誰か、を…庇って………自白しない………の、かも………」

「治奈ちゃん!」

癒川「私は、皆さんを犠牲にしてまで自白をせずに殺人犯を庇ったりしません!!」

不動院「全部穴雲殿と癒川殿のかもしれませんよ?」

「ボクが!!」

狛研「かどうかは話し合わなきゃわからないよ!!」

 

 

 

全論破

 

穴雲「これが僕らの答えだ!」

狛研「これがボク達の答えだよ!」

栄「これがオレ達の答えだぜ!」

詩名「これがオイラ達の答えだよ〜♪」

癒川「これが私達の答えです!」

 

 

 

狛研「やっぱり、犯人は単独犯なんじゃないかな?」

詩名「オイラもそう思うな〜♫共犯にメリットは無いし、朱君もシロだからね。やっぱり単独犯だと考えるのが自然だよ〜♪」

入田「じゃあ、犯人は舞田と朱の両方を殺したって事か?」

狛研「…そうなるね。」

財原「そっかー。じゃあ、そろそろ犯人がどうやって舞田クンを自殺に見せかけて殺して、朱サンまで殺したのかはっきりさせないとねー。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

詩名「舞田君が殺されていた体育館は、ドア以外に人が出入りできるような場所は無くて、ほとんど密室殺人のようなものだったんだろ?」

入田「そのドアも鍵がかかってたしな!どう考えても体育館に入るのは無理だろうな!」

ラッセ「はぁ?そんなもの、後から鍵をかけてしまえば、密室に見せかける事は可能だろ。」

今のラッセクンの発言はおかしい!

 

後から鍵をかけてしまえば⬅︎【扉の鍵】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「ラッセクン。それは多分無理じゃない?」

ラッセ「何故だ。」

狛研「体育館の鍵って、内側についてるラッチ錠でしか開閉できないようになってるんだよ。普通に考えたら後から鍵を閉められるわけがないよね?」

ラッセ「…なるほどな。だが、現に扉の鍵は閉まっていたのだろう?やはり、犯人はなんらかの方法で後から鍵をかけたのではないのか?」

狛研「そうだね。次はそのトリックを解き明かさないと。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「瞬間移動に決まってんだろー!!」

ラッセ「貴様、いい加減にしろ。」

詩名「通気口から長さのあるものを突っ込んだんじゃあないかい?」

神座「………隠し通路、あった、の…かも…」

不動院「私が調べた時はそのようなものはありませんでしたが…」

入田「ピッキングでもしたんだろ。」

穴雲「…君達、犯人の事を一体なんだと思ってるんだい?」

 

柳人クンの意見に賛成したい。

 

通気口から長さのあるものを突っ込んだ⬅︎【通気口】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「犯人は多分、通気口にある程度長さのあるものを突っ込んで、それを使ってラッチ錠を回したんだよ。」

不動院「と、仰いますと?」

狛研「まず、体育館の扉の凸凹を足場にして扉の上まで登るでしょ。そしたら、長い糸か棒か何かを通気口に突っ込んで、それを使ってラッチ錠を回せば、密室トリックの完成だよ。」

入田「ふんっ。あの通気口は、人が出入りするのには狭すぎるけど、棒か糸を突っ込むくらいだったら申し分なさそうだからな。」

財原「それに、扉の鍵は回転式のラッチ錠だし?よっぽどの不器用じゃなきゃ、その方法で簡単に鍵を閉められそうだねー。」

狛研「密室殺人のトリックの証明はこれで終わりだよ。」

穴雲「じゃあ次は、朱さんがどうやって殺されたのかを話し合うべきじゃないかい?」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

不動院「そもそも朱殿は、なぜ女子更衣室にいたのでしょうか…?」

財原「そうなんだよねー。舞田クンを呼びに行くって言ってたくせに、なんで寄り道してんのかなー?」

狛研「うーん。」

 

 

 

雪梅ちゃんが更衣室にいた理由は?

 

1.犯人から逃げていた

2.忘れ物を取りに行った

3.気まぐれ

 

 

 

➡︎1.犯人から逃げていた

 

「これだ!!」

 

狛研「雪梅ちゃんは、多分犯人に追われてたんだよ。だから、女子更衣室に身を隠そうと思ったんじゃないかな?」

不動院「追われていた、とは…?」

狛研「よくわからないけど…多分、雪梅ちゃんは犯人を怒らせるような事をしちゃったんだよ。」

財原「これは俺の推測になるけど、多分朱サンは、犯人が舞田クンを殺してる所を見ちゃったんじゃね?だから口封じのために殺されたんだよ。狛研サンが言いたいのはそういう事だろ?」

狛研「うん。まあそうなんだけど…なんでキミがそれを知ってるんだい?」

財原「推測だっつってんじゃん。別に知ってたわけじゃないもんね。」

狛研「あ、そう。」

入田「おい、何オマエラだけで話を進めてるんだ。そもそも、なんで朱が犯人に追われていたってわかるんだ?」

…それは。

 

コトダマ提示!

 

【廊下の血】

 

「これだ!!」

 

狛研「雪梅ちゃんの血が、廊下に落ちてたんだ。多分、逃げてる途中で右腕を斬りつけられちゃったんじゃないかな?」

癒川「それで、命からがら女子更衣室に逃げ込んで篭もったものの、犯人に更衣室に入られて殺されてしまったというわけですね…」

穴雲「朱さん…かわいそうに…僕の身体が万全だったら、助けてあげられたかもしれないのに…」

詩名「…うんうん、なるほどね。…しかし、そんなひどい事をした犯人は一体誰なんだろうね?」

狛研「それについてなんだけど…心当たりがあるんだ。」

 

コトダマ提示!

 

【ロープの結び方】

 

「これだ!!」

 

狛研「犯人の手がかり…それは、ロープの結び方だよ。」

入田「はぁ?何を言っている。ふざけているのかオマエは。なんでロープで犯人が誰かが分かるんだ。」

狛研「…利き手だよ。このロープの結び方は、左利きの人によくありがちな結び方なんだ。つまり、犯人は左利き…あるいは両利きの人って事になるんだよ。」

癒川「集められた16人の中で、確か左利きは景見さんと不動院さん、両利きは財原さん…それ以外の方は全員右利きでしたよね。」

栄「って事は、まさか…」

そう。

この中で、一人だけ犯行が可能だった人がいるんだ。

そして、薄々だけど…その人が抱えている秘密にも気付いてしまった。

正直、信じられなかった。

なんでキミがこんな事を…!

この事件の真犯人…それは…

 

 

 

 

 

ー人物指定ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎【超高校級の侍】不動院剣

 

狛研「…キミが犯人だったんだね、剣クン。」

不動院「…は?私、ですか?」

剣クンは、なんで自分が疑われているのかわからない、といった様子だった。

栄「えぇええええええ!!?不動院が犯人!?こんな正義感の塊みてェな奴が!?あり得ねェだろ!!」

神座「………私、侍…………犯人、なんて………信じ…た、く……ない……」

ラッセ「…フン。所詮はコイツも、この糞みたいなゲームに踊らされた負け犬だったって事だろ。今更何を驚く事がある。」

狛研「…剣クン?反論があるなら言ってもいいんだよ?ボクだって、まだキミの事を完全に疑ってるわけじゃないんだ。」

不動院「反論?あるに決まっているでしょう。私は犯人ではございませんので。」

財原「またまたー。もうオマエが犯人なのは確定なの!さっさと楽になっちゃおうよ!ね?」

不動院「…はぁ。」

 

 

「その言葉、斬ります!」

 

反論

 

 

 

狛研「…剣クン?」

不動院「狛研殿。貴女の推理には隙が多すぎます。」

栄「狛研ちゃんの推理がどう間違ってるっていうんだ?言ってみろよ。」

不動院「いいでしょう。貴女方の言葉など、私が一太刀にて斬り捨てて差し上げます。」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

不動院「確かに、貴女の推理通りなら、犯人は左利きという事になりますね。」

狛研「うん。」

不動院「ですが、それすら真犯人による罠だとは考えなかったのですか?本当は右利きの方が、わざと左利きの振りをしたという可能性もございますよね?」

財原「右利きの奴の方が圧倒的に多いのに、そんな事するメリットあるー?逆ならまだわかるけどさ。」

狛研「むしろ器用じゃない方の手で結ぶなんて、それこそ自殺行為だと思うんだけど。やっぱり犯人は左利きで間違いないよ。」

不動院「では、百歩譲って貴女の推理が正しかったとしましょう。ですが、なぜ私が犯人になるのですか?両利きの財原殿にも犯行は可能ですよね?」

財原「うっわ、コイツ責任転嫁しやがった。」

不動院「私は事実を言ったまででございます。犯人は財原殿 、これが私の答えです。」

今の剣クンの発言はおかしい!

 

犯人は財原殿⬅︎【天理クンのアリバイ】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「その可能性は無いと思うよ。」

不動院「何故ですか?」

狛研「さっきも言ったけど、天理クンは犯行時刻にボクと一緒にチェスをしてたんだよ。」

財原「そーそー。つまり俺にはアリバイがあったって事。ドゥーユーアンダァスタァアアン?」

癒川「第一、男性である財原さんが女子更衣室に入れるわけないですし…」

栄「ん?それは不動院もじゃねえのか?狛研ちゃんの推理通りなら、不動院は女子更衣室で朱ちゃんを殺したって事だよな?なんでコイツが女子更衣室に入れたんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

財原「それは、不動院クンが女の子だからじゃないの?

 

 

 

 

 

栄「はぁ!!?」

癒川「嘘でしょ…!?不動院さんが…女性…!?」

栄「ンなバカな話、信じられるワケねえだろ!コイツ、自分が女だって言った事なかったじゃねえか!!不動院は男だぞ!?」

財原「でもさぁー。逆に、不動院クンは、自分が男だって言った事も一度もなかったよね?」

ラッセ「…確かに、今思えば思い当たる節があるな。」

財原「一人だけプールに普段着で来たり、同性のはずの俺らに対してやけに他人行儀だったり、エロに全く関心が無かったり…色々とヒントはあったんだけどねー。さ、反論があるならどうぞ?不動院クン…いや、不動院サン?」

 

 

 

不動院「喧しい!!!」

 

狛研「…剣クン?」

不動院「黙って聞いておれば、貴様ら、拙者が舞田殿と朱殿を殺めたと申すか!?戯言も大概にしろ!!!」

剣クンは、すごい剣幕でまくし立てた。

今までの剣クンからは考えられないような…殺気にも近いようなオーラを放っている。

財原「うっわ、ムキになったよ。やっぱ図星ー?」

不動院「黙れ!!」

詩名「すごい気迫…口調まで変っちゃってるねぇ。」

不動院「拙者は犯人等ではござらぬ!!其処までして拙者を犯人にしたいと申すのならば、其れなりの根拠を見せろ!!!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

不動院「拙者は娯楽室に居たと言っておろうが!!貴様等は、莫迦なのか!?」

狛研「本当にそうかな?それはちゃんと話し合わなきゃいけないよね?だって、現段階では犯人はキミしかいないんだもの。」

不動院「未だそんな戯言を申すか!!拙者が娯楽室に居たという証拠は見せたでござろう!!」

狛研「あの写真の事?」

不動院「そうだ!!あの写真がある以上、拙者は犯人ではござらぬ!!」

ちょっと今のはおかしいかな?

 

証拠⬅︎【写真】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「剣クン。あの写真だけど…あれだけでアリバイを証明したって事にはならないんじゃないかな?」

不動院「何…!?」

狛研「みんな、よく見て。この写真、物の位置が微妙に違うでしょ?」

穴雲「本当だ…後ろの壁紙の文字も逆になってるね。…もしかして。」

狛研「そう。この写真、多分鏡に映った娯楽室を撮ったものなんだよ。」

癒川「じゃあ…その時計は…」

狛研「うん。このデジタル時計の数字も、反転してるはずだから…この写真が撮られた本当の時刻は、11時20分じゃなくて5時11分なんだよ!!」

栄「えぇええ!!?マジかよ!?」

財原「って事は、不動院サンにアリバイがあるってお話が無かった事になったわけだ。どうすんの?つ、る、ぎ、たん?」

不動院「黙れ下衆が!!!」

財原「きゃー怖い。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

不動院「そもそも、朱殿を斬り殺した凶器と、体育館の鍵を閉めた物が何なのかが未だ分かっておらぬであろう!!」

狛研「いや、それはどっちもわかってるよ。」

不動院「どうせハッタリであろうが!!拙者は殺人犯ではござらぬ!!」

狛研「まだわからない?キミは、ちょうどいい凶器を今持ってるはずなんだけど。」

不動院「莫迦言え!!そんな物、持ち歩いているわけが無かろうが!!」

狛研「じゃあ教えてあげるよ。雪梅ちゃんを斬り殺して、体育館の鍵を閉めるのに使った凶器が一体何なのかをね。」

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

「これだ!!」

 

セ オ ッ テ イ ル ニ ホ ン ト ウ

 

【背負っている日本刀】

 

狛研「体育館の密室トリックを完成させるために使って、雪梅ちゃんを斬り殺した凶器…それは今キミが背負ってる日本刀だよ!!」

不動院「違う!!言い掛かりでござる!拙者は、朱殿を斬り殺してはおらぬ!!」

財原「あっははー。あくまで自分は犯人じゃないって言い張る気だねぇ。」

不動院「其処まで言うなら、証拠を見せろ!!拙者が刀で朱殿を斬り捨て、体育館の鍵を閉めたという証拠を!!」

狛研「剣クン、それはキミもわかってるんじゃないの?」

 

 

 

不動院「拙者が犯人だという決定的な証拠を見せろ!!」⬅︎ 【塗料】

 

「これで終わりだよ!!」

 

 

 

狛研「あのね、剣クン。通気口を見た時ね、ボク、気付いちゃったんだ。通気口の縁の塗料がハゲてるのにね。」

不動院「其れが如何した!!?」

狛研「…塗料がハゲたって事は、その塗料が付着してるはずだよね?たとえば…キミが今背負ってる刀とかにね!」

不動院「あっ…!」

狛研「それ、お父さんから譲ってもらった名刀なんでしょ?もう替えは無いよね?もしボクの推理が正しければ、その刀に塗料が付着してるはずなんだ。」

不動院「ッ…。」

狛研「ねえ剣クン。刀を見せてよ。キミが犯人じゃないっていうなら、刀を見せられるよね?」

不動院「…。」

剣クンは、俯いたまま背負っていた刀を抜いて、みんなに見せた。

鞘の部分には、しっかりと茶色い塗料が付着していた。

入田「あっ…!バッチリ塗料が付着してるのだ!じゃあやっぱりオマエが犯人だったのか!」

神座「………侍……う、そ………だよ…ね………?」

ゐをりちゃんは、珍しく動揺していた。

不動院「…。」

剣クンは、俯いたまま黙っていた。

神座「ねえ…なに、か………言って…私、あなた…を、疑い…たく……な、い……」

財原「そーだよ。何か言ってあげなよー。それとも、俺の事買収してみる?場合によっちゃあ味方になってあげてもいいけど?」

不動院「…。」

財原「チッ、無視かよ。このアマ。」

詩名「…もう反論する気力すらないんじゃないかい?」

狛研「…そうだね。剣クン。ボクが引導を渡してあげるよ。」

不動院「…。」

狛研「これが事件の真相だよ!」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

Act.1

今回の事件の発端は、クマさんがみんなに配った秘密だった。

多分、みんなが秘密を本人に話すか話さないかで揉めてる間、犯人はこっそり殺人の計画を立てていたんだ。

自分の秘密を知った子を殺すためにね。

そして、そのターゲットとなったのは、成威斗クンだった。

多分、成威斗クンは、直接犯人に秘密を言っちゃったんだろうね。それが命取りになるとも知らずに…

 

Act.2

その後、犯人は娯楽室に行って、鏡に映った自分を撮影した。

この時、05:11と表示されていたデジタル時計も映ったんだけど…数字が反転して、11:20という風に見えてしまったんだ。

これが犯人にとっての狙いだった。

犯人は、あらかじめ数字が反転したデジタル時計の写真を撮っておく事で、アリバイ工作をしようと考えたんだろうね。

…まあ、他の背景まで反転しちゃってるから、それはすぐにバレちゃったんだけど…

 

Act.3

みんなで朝ご飯を食べた後、各自自由行動をとったわけだけど、犯人はそこで密かに殺人の準備をしていたんだ。

でもここで、犯人にとっても成威斗クンにとっても予想外の出来事が起きてしまうんだ。

なんと、成威斗クンが、体育館でトレーニングをする前に、手帳の電源をつけたままサウナに入っちゃったんだ。

そのせいで手帳が壊れて、犯人の秘密が何なのかが分からなくなってしまった。

まあ、結果的に犯人にとってはラッキーだったんだろうけどね。

 

Act.4

そして、成威斗クンを殺す予定の11時20分が近づいてきた。

成威斗クンがトレーニングをしている途中で犯人が体育館に入り、何か理由をつけて足場まで彼を誘導したんだ。

その後、成威等クンの隙を見て足を手錠で固定し、彼の首にロープをかけた。

そして、ロープを持ったまま、犯人は足場から飛び降りた。

この時、犯人は手にハンカチを巻いていたから、手に痕がつく事がなかったんだ。

成威斗クンは、犯人の体重で首を絞められて、その場で力尽きてしまった。

 

Act.5

成威斗クンの死を確認した犯人は、天井の金具に成威斗クンの首を絞めたロープを巻きつけて、機械を使って死体を天井の真ん中まで移動させたんだ。

でも、犯人はここで致命的なミスを犯してしまった。

犯人は、間違えて自分の利き手である左手でロープを結んでしまったんだ。

そのミスのおかげで、ボク達は真相に辿り着く事ができたんだけどね。

その事に気づかないまま、犯人は次の計画を進めた。

 

Act.6

体育館を出た後、犯人は体育館の扉のドアノブを足場にして、扉の上まで登った。

そして、扉の上にある通気口から普段背負っている日本刀を差し込んで、体育館の内側にある回転式のラッチ錠を回したんだ。

これで自殺に見せかけるための工作は完成だ。

でも、犯人はここで二つ目のミスを犯してしまった。

刀を引き抜く時、通気口の塗料が刀の鞘に付着してしまったんだ。

それが、犯人を追い詰めるための決定的な証拠となってしまった。

 

Act.7

そして、ここでさらに犯人にとって予想外の事が起こってしまった。

なんと、犯人が密室殺人の工作をしているところを、雪梅ちゃんに見られてしまったんだ。

犯人は逆上して、雪梅ちゃんを斬りつけた。

雪梅ちゃんは、右腕を負傷しながらも犯人から逃げた。

その時、多分雪梅ちゃんの中にはある考えがあったんだ。

…犯人は男だから、女子更衣室に逃げ込めば殺されずに済む、ってね。

 

Act.8

犯人から逃げ果せた雪梅ちゃんは、女子更衣室に身を隠した。

でも、悲劇は起こってしまった。

なんと、雪梅ちゃんが男の子だと思ってた犯人は、実は女の子だったんだ。

犯人は、ガトリングガンで撃たれる事なく女子更衣室に入り込み、中にいた雪梅ちゃんを容赦なく斬り捨てた。

…正直、意外だったよ。

だって、犯人はとても正義感が強い子だったからね。

なんでキミが二人を殺したりなんてしちゃったんだい…?

 

「これが事件の真相だ!…そうだよね?」

 

 

 

「【超高校級の侍】不動院剣クン…いや、不動院剣ちゃん!!!」

 

 

 

不動院「…ふぅ、負けてしまいましたか。」

剣ちゃんは、顔を上げると髪をかき上げた。

剣ちゃんは、青ざめた顔をしながらわずかに微笑んでいた。

不動院「…あーあ、うまくやれてたと思ったんですけどね。狛研殿、お人好しの貴女方ならもう少し騙せると思ってましたよ。」

神座「…そんな………嘘…で、しょ……?」

不動院「全て真実ですよ、神座殿。今まで騙してしまい、申し訳ございませんでした。…さ、学園長。もう投票に移っても良いでしょう?」

モノクマ『そうだね。もうクロは決まったみたいだしね!それじゃあ始めよっか!投票ターイム!』

モノベル『必ず、一人一票投票してくださいね。もし投票しなかったら、校則違反とみなしておしおきします!』

 

証言台にボタンが現れた。

ボクは、迷いながらも剣ちゃんに投票した。

 

モノクマ『うぷぷ、全員投票し終わったようだね?ではでは…結果発表ー!!』

モノベル『皆様の運命や如何に!?』

 

 

 

モニターにVOTEと書かれたスロットが表示され、ドラムロールと共にボク達の顔のドット絵が描かれたリールが回転する。

リールの回転が遅くなり、ついに止まった。

 

リールには、剣ちゃんの顔が3つ並んでいた。

スロットからは、ボク達の勝利を祝福…いや、嘲笑うかのように、ファンファーレと共に大量のメダルが吐き出された。

 

 

 

 

 

学級裁判閉廷!

 

 

 

 

 

 



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第3章 非日常編④(おしおき編)

7月7日は狛研ちゃんの誕生日です!
本人からメッセージをいただいております。

狛研「わーい!ボクの番だー!あのね、今日はボクの誕生日なんだー!そういえば今日は七夕だけど、七夕って言ったら願い事だよね!願い事が叶う日が誕生日なんて、ラッキーなボクにピッタリだね!…え?何?ラッキー7だから誕生日にしただけで、特にそういうの考えてなかった?なにそれー!!まあいいや!みんなは何か願い事した?叶ったらすっごくラッキーだね!」


VOTE

 

【超高校級の侍】不動院剣 9票

 

【超高校級の???】神座ゐをり 1票

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也 0票

 

【超高校級の工学者】入田才刃 0票

 

【超高校級の不運】景見凶夜 0票

 

【超高校級の幸運】狛研叶 0票

 

【超高校級の資産家】財原天理 0票

 

【超高校級の栄養士】栄陽一 0票

 

【超高校級の詩人】詩名柳人 0票

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵 0票

 

【セキセイインコ】翠 0票

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅 0票

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子 0票

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑 0票

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗 0票

 

【超高校級の看護師】癒川治奈 0票

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン 0票

 

 

 

『うぷぷぷ!!お見事大正解ーーー!!!【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗クンと【超高校級の曲芸師】朱雪梅サンを殺した殺意MAXイカレクレイジーサイコパスシリアルキラーは、ななななんと!みんなを守る正義の味方のカックイイお侍様のフリをした極悪非道の魔女、【超高校級の侍】不動院剣クン…もとい、不動院剣サンでしたー!!いやぁ、不動院サンは女の子だったんだね!意外〜!』

『フッフッフ。今回は、クロの不動院様も含めて全員満場一致で不動院様に投票してい…ませんでした!神座様だけは、自分に投票していました!全く、何を考えていらっしゃるんでしょうかねぇ。』

 

 

「…。」

剣ちゃんは、少し俯いたまま黙っていた。

「なあ、モノクマ。不動院…あ、えっと…不動院ちゃんは、なんで男のフリをしてたんだ?」

『うっぷぷ!知りたい?では、舞田クンに送った彼女の秘密とセットで全部話しちゃうよー!…いいよね、不動院サン?」

「…どうぞ。もう反論する気もございません。」

『あらそう?じゃあ発表します!』

クマさんは、モニターのスイッチを入れた。

モニターに、映像が映し出される。

 

 

 

 

 


 

 

 

【超高校級の侍】不動院剣クンの秘密!

 

不動院剣は、女である。

 

 

 


 

 

 

 

 

「…。」

「…そんな、う…そ………」

ゐをりちゃんは、剣ちゃんの秘密を見て驚いていた。

「…神座殿、今まで騙していて申し訳ございませんでした。ですが、そこに書かれている事は事実です。…これが証拠です。」

剣ちゃんは、着ていた着物を半分脱いだ。

彼女の胸には、サラシが巻かれていた。

「…マジかよ。」

「…ご納得いただけましたか。」

剣ちゃんは、俯いたまま着物を着直した。

「…何回も聞くようだがオマエ、なんで女のクセに男のフリなんてしてたんだ?黙ってないで答えろ不動院!」

「…。」

『うっぷぷぷ!みんな、なんで不動院サンが今までみんなの事を騙して、男のフリをしてたのか気になるよね?それじゃあ、VTRスタート!』

 

 

 

 

 


 

 

 

画面に、子供の落書きのような絵が映し出される。

多分、描かれているのは剣ちゃんだ。

そこでクマさんのナレーションが入る。

 

 

 

 

昔々、ある所に一人の若き名家の当主がおりました。

彼の名は、不動院宗定。彼には、産まれたばかりの可愛らしい一人娘がおりました。

彼は、娘に剣という名前を付け、たいそう可愛がりました。

そして数年後、彼の奥様が、男の子を身篭りました。

本来なら、その子供が不動院家の跡継ぎとなるはずでした。

 

しかし彼の奥様は流産し、それから間もなくして彼自身も病床に伏し、お亡くなりになりました。

代々、不動院家の跡継ぎは、本家の血を継ぐ男子のみと決まっていました。

しかし、正統な不動院家の当主の血を継ぐのは、遺された一人娘のみ。

不動院家が滅亡するのを恐れた宗定は、苦渋の決断を下しました。

彼は、自分が亡くなった後は娘を男として育てるようにと家臣たちに遺言を残し、そのまま息を引き取りました。

 

彼の一人娘である剣サンは、幼い頃から男として育てられてきました。

彼女は女である事を許されず、男を演じる事を強いられました。

さらに、亡くなった前当主の奥様は、息子を流産してから気が触れてしまい、娘にきつく当たるようになりました。

それでも剣サンは不動院家の跡継ぎとして、剣の腕を磨き、女としての人生を捨て、男として…侍として強く逞しく生きてゆきました!

その生き様が世間から評価され、【超高校級の侍】と呼ばれるまでに至りました。

しかーし!剣サンは、周囲から抑圧され、当主にならなければならないというプレッシャーのせいで性格が大きく歪んでしまいましたとさ!

でめたしでめたし!

 

 

 


 

 

 

 

「…。」

『これが不動院サンの秘密だよ!どう?みんな、これで満足?』

「そんな…じゃあ不動院ちゃんは、自分の家のために男のフリをしてたって事かよ!?」

『フッフッフ。そうなりますねぇ。不動院家は、平安時代から代々続く名門…その一族を後世に遺すためには、こうするしかなかったと考えたんでしょうねぇ。全く…娘に無理矢理男のフリをさせるような親からは、碌な子供が生まれてこないという事でしょうね。親子揃って、本当に頭のおかしい連中ですよ。』

クマさんとベルさんは剣ちゃんを煽ったが、剣ちゃんは聞いていない様子だった。

「…ねえ、剣ちゃん。色々聞きたい事はあるけど…まず聞かせて。キミはなんで、成威斗クンを殺しちゃったの?」

「…ごめんなさい、皆さん。私…」

剣ちゃんは、下を向いていた顔を上げた。

その顔は、今までの剣ちゃんからはとても想像できないような、女の子らしい表情だった。

それだけじゃない。

前髪は乱れて、顔は紅潮していた。

そして彼女は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「我慢できなかったんです。」

 

その顔は、笑っていた。

 

 

 

 

 

 

「…つ、るぎ…ちゃん?」

「狛研殿、貴女の推理は殆ど完璧でした。…ですが、ひとつだけ違う事があります。」

「違う事…?」

「私が舞田殿を殺したのは、口封じの為ではございません。」

「えっ…?」

「確かに、私は舞田殿に秘密を知られ、それを伝えられました。ですが、それはどうでも良い事でした。彼は私に自分の秘密を話してくださり、私の秘密を誰にも言わないと約束してくださいましたから。」

「じゃあ、なんで…」

「…私は、多分舞田殿に恋をしていたのだと思います。私は物心ついた時から男として育てられ、女である事を許されませんでした。舞田殿は、私が初めて一人の男性として好きになった方なのです。」

「何を仰っているのですか!?意味がわかりません!舞田さんの事が好きだったなら、どうして殺してしまったんですか!?」

「…簡単な話です。」

剣ちゃんは、頬を赤らめて、恍惚とした表情で語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰にも奪われたくなかったからですよ。」

 

 

 

…え?

 

「私は、出会った時から舞田殿の事を想っておりました。しかし、不動院家の当主としての立場上、彼に想いを伝える事を躊躇っておりました。伝えても、彼が私を女として見てくださらないであろう事は、わかり切った事でしたしね。でも、彼が他の方と仲良くしているのを見ると、どうしても許せなかったんです。だから、殺す事にしました。」

「はぁ!?なんだよそれ!!意味わかんねェよ!!」

「私は、舞田殿に変な虫がつくのが許せなかったんです。他の誰かに奪われるくらいなら、いっそこの手にかけて差し上げようと思ったまでです。そうすれば、彼は永遠に私の心の中で生き続ける。もう、誰にも奪われなくて済む。…ああ、何度この時を待ちわびた事か。私は、私を縛る全てしがらみから解放され、ようやく彼と一つになれるのです。私は今、最高に幸福な気分です…!」

剣ちゃんは、壊れた目を見開いて、不気味な笑みを浮かべた。

その表情は、狂気や殺意が入り混じったような、悪意の塊とも言えるような表情だった。

「なっ…それだけの理由で舞田を殺したってのか!?頭おかしいだろお前!!」

「なんと言われようと構いません。これで私は舞田殿と永遠に一緒になれるのです。…朱殿には申し訳ない事をしましたが、私達の恋路を邪魔した罰です。私の舞田殿に気安く近づき、仲良くなろうなどと調子に乗っていらしたのが間違いだったんですよ。」

「そんな…!」

「ふざけんな!!じゃあなんで僕ちゃん達を殺してまで生き残ろうとしたんだ!?」

「…まあ、どのみち私は早く舞田殿に会いたいので、裁判が終われば結果がどうであれすぐに死ぬつもりでしたよ。ですが、せっかく彼の世へ行くのです。どうせなら、賑やかな方がいいでしょう?これは、今まで亡くなった方に会いたいという皆さんへの、私からの親切心でもあるんですよ。」

「はぁ!?ふざけんな!!何が親切心だ!!オレはテメェを許さねェ!!」

「許さないなら、どうしますか?私を殺してみますか?いいですよ栄殿。私達の邪魔さえしなければ、貴方も大歓迎です。どうです?共に奈落へ落ちてみますか?」

「…クソッ!!」

「誰になんと言われようと、私の舞田殿への愛は揺ぎません。ふふふ、なんて素敵なんでしょう。」

 

 

 

「ははっ、くっせェなぁ。今更メスの顔しやがってよ。ホントキモチ悪いねキミ。」

天理クンは、剣ちゃんを見下ろすようにして言った。

「ねえ、不動院サン。それって、本当に愛なの?」

「…は?」

剣ちゃんは、急に真顔になった。

「愛って、要は自己犠牲だよね?今の不動院サンは、どっちかっつーとむしろメンヘラじゃん。」

「何が言いたいんです、貴方は。」

「まだわかんない?俺が言ってんのは、キミの言う愛は全部キミの自己満足なんじゃねーのって事。どうなの?」

それを聞いた剣ちゃんは、また笑顔に戻った。

「…自己満足?愚問ですね。私は、舞田殿の事だけを考え、彼だけの為に死ぬ覚悟で今まで生きてきました。それを愛と呼ばず、何と呼ぶというのでしょうか?人を愛した事が無い癖に、知った風な口を利かないでください。」

「…あはは、オマエやっぱ頭おかしいから死ぬしかないね。」

「貴方にだけは言われたくないです。…さてと、お喋りはこの辺でいいですかね。学園長、もういいです。おしおきとやらを始めてください。」

『え、もういいの?みんなに遺言とか遺してもいいんだよ?』

「いいですよ。どうせ皆さんも、直ぐに私の後を追う事になるでしょうし。早く舞田殿に逢いたいのです。早く始めてください。」

『あ、そう?じゃあ遠慮なく… それでは!【超高校級の侍】不動院剣サンのために!スペシャルなおしおきを用意しました!』

 

剣ちゃんは、ぶつぶつと独り言を言っていた。

彼女の心はもう完全に壊れていた。

ボク達は、何も言葉をかけてあげられなかった。

「お待たせして申し訳ございません、舞田殿。今度こそ、沢山愛して差し上げますからね。そうだ、次会う時はきちんとお粧しして参りますね。楽しみにしていてくださいな。…ふふふっ、ははは…」

 

『ではでは…おしおきターイム!!』

 

 

 

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 

 

剣ちゃんの乾いた笑い声が、裁判場に響き渡った。

 

クマさんはハンマーを取り出すと、せり上がってきた赤いボタンをピコっと押した。

ボタンの画面に、ドット絵の剣ちゃんが連れ去らせる様子が表示された。

 

 


 

 

GAME OVER

 

フドウインさんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

 

 

不動院は、首をロープのような物で縛られ、上に引き上げられた。

上へ上へと引き上げられ、ついには闇へと消えた。

場面が切り替わり、桜並木が映し出された。

両サイドに桜の木が立った砂利道を、大名の格好をしたモノベル馬が駆けていく。

モノベルが持っているロープには、不動院が縛られており、不動院は馬で引きずられていた。

桜吹雪が舞い、城が映し出される。

そこで文字が現れる。

 

 

 

此処宴 絶望

 

【超高校級の侍】不動院剣 処刑執行

 

 

 

モノベルは、城の前に着くと膝をついた。

目の前では、将軍の格好をしたモノクマがふんぞり返り、左手に大きな盃を持ちながら高笑いしている。

そして、モノクマが指を鳴らすと、家来モノベル達が、大きな釜を持ってやってきた。

釜の中には油が入っており、モノベル達が火をおこすと途端にグツグツと煮え始めた。

今度は、モノベル達が大きな木のまな板を持ってきた。

 

すると、不動院を引きずっていた大名モノベルは、不動院をまな板の上に縛りつけ、巨大なノコギリを取り出した。

モノベルは、不動院の左肩にノコギリを当てると、勢いよく引き始めた。

顔に血飛沫が飛び散っても、モノベルはお構いなしに不動院の肩を切断する。

出来るだけ苦しむように、注意深くゆっくりとノコギリを引き続けた。

切断された腕からは血が吹き出て、骨を削る音が鳴り響いた。

不動院は、腕を切られる痛みにむしろ快楽を覚えていた。

その表情は、絶望に染まっているように見えた。

左腕が無くなると、次は右腕、左脚、右脚と切断していった。

 

四肢が無くなると、今度はモノベルは不動院を釜の中に放り込んだ。

煮えたぎる油の中に飛び込んだ不動院は、全身を灼かれる痛みに叫び声を上げるが、外にいる仲間達にその声は届かない。

油の熱は肌を灼き、高温の湯気は気道を蝕み目を抉る。

断末魔を上げるその顔は、わずかに微笑んでいた。

それを見て不機嫌になったモノクマは、再び指を鳴らす。

 

すると、モノベル達は巨大な刀を持ってきた。

モノクマは、刀を抜くと大きく振りかぶり、勢いよく不動院の首を刎ねた。

血飛沫が桜吹雪と共に舞い散り、首は宙を舞う。

家のしきたりや自分の才能との葛藤、報われない恋心…彼女を縛っていた全てのしがらみから解放されたかのように、どこまでも空高く、どこまでも自由にーーー。

彼女の濁りきった瞳には、晴天の空と満開の桜が映る。

 

その顔は、まるで恋する乙女のような表情だった。

 

 

 

ーーーそして落ちた。

首が落ちた先には、ちょうど台があった。

その台には、捨札が立て掛けてあった。

それを見た商人モノクマと女郎モノベルは、クスクスと笑っていた。

 

 

 


 

 

 

『イヤッホォオオーイ!!エクストリィイイイイム!!いやー、サイッコーだねぇ!!全く、何が愛だよ。結局はただのかまって欲しいだけのメンヘラだったんじゃん!オマエには凄惨な死がお似合いだよ、このゴミクソサイコパス殺人鬼が!!』

『フッフッフ…フハハハハハハハハハハハ!!!いやはや、あのキ●ガイは一体何をほざいていたのでしょうかねえ。…まあ、もう死んでるのでどうでもいいですけど。さあ皆様、もっと喜んでください!!皆様のお仲間を殺した殺人鬼が死んだんですよ!?そこは、乾杯でもするところでしょうよ!!』

「うるせェ黙れ!!…クソッ、舞田…朱ちゃん…不動院ちゃん…!」

「ぐっ…無理なのだ!!こんなの、僕ちゃんもう限界なのだ!!」

「ホント、君達っていい趣味してるよね。虫唾が走るよ。」

「そんな…不動院さんが…いやっ、こんな事って…!」

「…不動院さん、ごめん。止めてあげられなくて。舞田君も朱さんも、守れなかった…」

「…フン。色恋に狂った奴は何をするかまるでわからんな。アイツも例外ではなかったという事か。」

陽一クンは、クマさんとベルさんに対して怒りをぶつけていた。

才刃クンは、相変わらずおしおきで気分を悪くしていた。

柳人クンは、クマさん達に嫌悪感を抱きながら皮肉を言った。

治奈ちゃんは、その場で泣き崩れて立ち上がれずにいた。

星也クンは、悔しそうに謝罪の言葉を呟いた。

ラッセクンは、呆れたようにモニターから目をそらした。

 

「……………侍……なん、で…私………あなた…の、事…信じて、た……の…に………」

「…神座さん。」

ゐをりちゃんは、目から大粒の涙を流していた。

…ここに来てできた一番の友達に裏切られて、その友達があんな残酷な方法で殺されちゃったんだもん。

そりゃあ、泣きたくなるよね。

ゐをりちゃんも、ここに来ていろんな気持ちが溢れてきちゃったのかな。

 

『さーてと、じゃあ3回目の裁判を頑張って切り抜けたオマエラには、ご褒美のメダルをプレゼントしちゃいます!』

『フッフッフ。お見事でしたよ皆様。今回は2人も死人が出たのに、よくあんな短時間で真相に辿り着けましたね。…尤も、今回の犠牲者が全員バカだったのが大きいんでしょうけど。』

『それじゃ、ボク達はこれからおしおきシーンを肴に一杯やるので、邪魔なオマエラはとっとと出てってください!』

『いやー、これが最高なんですよええ。今夜はお酒がおいしいですよ。』

「ふざけやがって…クソ野郎共が!!」

「…下衆共が。こんな事をして、一体何が目的だ。」

ラッセクンは、クマさん達を睨みながら、吐き捨てるように問いかけた。

『あれれ?ラッセクン、庶民には興味ないんじゃなかったの?なんでそんな事聞くの?』

「勘違いするな。俺は、祖国の民以外の奴の命に興味は無い。ただ単に貴様らの事が嫌いなだけだ。…いいから質問に答えろ。国王命令だ。」

『わーお生意気!…でもまあいいでしょう。さすがに目的までは教えてあげられないけど、裁判を頑張ったご褒美にちょっとしたヒントをプレゼントします!』

「…ヒント?」

『そうです。実はね、このコロシアイ…』

 

 

 

『全国に生中継されてるんだよ!』

「…はぁ!!?」

『え?何?気づいてなかったの?もー、オマエラ鈍すぎ!実は今まで、監視カメラでオマエラの言動を余すところなく録画して、それを全部地上波に垂れ流してたんだよ!オマエラの愚行を、余すところなく全てね!』

『いやはや、おかげで視聴率はバッチリですよ。中には、誰が勝ち残るのか予想して多額のお金を賭けてくださる方もいらっしゃってねぇ。本当、潤いまくりですよ!』

「そんな…私達の苦しむ様を晒して、お金を稼いでたって事ですか!?…最低です!!」

『へー。随分とまあ偉そうな事言うじゃない。汚いおっさんに身体を売ってお金をジャンジャン稼いでたオマエがさぁ!!』

「ッ…!」

「やめろ!癒川さんは関係ないだろ。」

「そうだぞ!テメェら、それ以上癒川ちゃんを悪く言ったら許さねェぞ!!」

『ほう。許さないならどうしますか?ワタクシ共を殴りますか?別にいいですよ?アナタの頭がトマトのように潰れても宜しいなら、ですが。』

「くっ…」

『はいはーい、じゃあもう言いたい事は大体言ったし、これから一杯やるってのにいつまでもいられちゃ邪魔なので、小汚いドブネズミはさっさと神聖な裁判場から出てってください!』

「言われなくてもそうするよ!!テメェらの顔なんざ、いつまでも眺めてたくねェんだよ、クソが!!」

そう言うと陽一クンは真っ先にエレベーターに乗り込んだ。

陽一クンに続いて、ボク達もエレベーターに乗った。

そして、星也クンの提案で、みんなで一度食堂に集まった。

 

 

 

 

【食堂】

 

「…狛研さん。大丈夫?」

「…うん。」

 

 

剣ちゃんが死んだ。

ボク達の目の前で、あまりに残酷な方法で。

剣ちゃんだけじゃない。

成威斗クンと雪梅ちゃんも死んだ。

二人とも、本当は生きたかったはずなのに。

自分勝手な理由で、二人の未来は剣ちゃんに奪われてしまった。

ボクは、正直未だに剣ちゃんを許せない。

これからもずっと許せないと思う。

でも、その本人すらもうこの世にはいない。

ボクは…ボク達は、こんな理不尽な現実を受け入れなきゃいけないのか。

 

 

 

「…クククッ。ブフッ…プククッ…アーッハッハハハハハハハハハハハ、ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

ただ一人、天理クンだけは高笑いしていた。

「テメェ…何がおかしくて笑ってんだ!!」

「えー、だってこんなくっさい茶番劇タダで拝めるんだぜ?そこはフツー笑うとこっしょ!はー、おっかし!ブフフッ…やべっ、思い出したらこみ上げてきて…やべ…ツボった、誰か助けて…プッ、ギャハハハハハハハハハハ!!!」

陽一クンは、天理クンの胸ぐらを掴んだ。

「ふざけやがって!!このイカレ野郎が!!こんな根性の曲がった奴、ブン殴ってやる!!」

「キャー栄クンこーわーいー!暴力反対ー!」

「ちょっと、やめなよ栄君!」

「うるせェ!!止めるな穴雲!コイツは、不動院ちゃんの事を笑いやがったんだ!!殴らねェと、オレの気がおさまらねェよ!!」

「は?意味わかんない。なんで不動院サンの事を笑っちゃダメなの?」

「何っ…!?」

「だってそうじゃん。オマエらさぁ、肝心な事忘れてると思うけど…不動院サンは舞田クンと朱サンを殺した犯罪者なんだよ?それも、自分勝手な理由で快楽殺人を犯した立派な殺人鬼!どこに同情の余地があるってゆーのかなぁ?」

「うるせェ!!大体、さっきから思ってたけどよ…テメェはなんで、いっつも裁判の時に余裕そうなんだよ!?まさか、毎回クロを把握してるんじゃねェだろうな!!?」

「はぁ?何訳のわかんない事言ってんの栄クン。」

 

 

 

 

「…そんなの、全部知ってるに決まってんじゃん。」

 

…………………………は?

 

 

 

「…今、なんて言ったの?」

「だ、か、らぁ!俺は、今までの裁判で、誰がクロだか事前に知ってたって言ってんの!」

「なっ…じゃあ、なんで今までそれを知ってて裁判中に言わなかったんだい?」

「だって、言ってもぜってー信じて貰えねェし?それに、スリルは長続きした方がゾクゾクするでしょ?」

「なるほどね、正気じゃないね。」

「ありがと。最高の褒め言葉だぜ。…あ、そうそう。実は俺、誰がクロかだけじゃなくって、次に誰が殺されるかも知ってるんだぁ。」

「なっ…んだと!?」

「じゃあ、ヒントをあげるね。次に死ぬのは、ハートのキングだよ。」

ハートの…キング…?

「じゃ、俺は喉渇いちったから部屋戻るね?キンキンに冷えたコーラが飲みてーなー。っつーか浴びてェわw」

「待って。」

「ほにょ?なんだい穴雲キュン?」

「…ひとつ聞かせて。君は一体、何が目的なんだい?」

「目的?別に大した事じゃねェよ。」

 

 

 

 

 

「俺はただ、『囚われのマリアのための交響曲(シンフォニア)』を奏でたいだけだよ。」

 

「…え?」

「おっと、これ以上は何を聞かれても何も言わねーぜ?オマエらは、まだ真相に辿り着くには早いからねー。ほいじゃ、お先に失礼しやーっす。」

そう言い残すと、天理クンはそそくさと帰っていった。

「…クソッ、なんなんだアイツ。人の事をバカにしやがって。」

「栄君。無闇に挑発に乗らない方がいいよ。彼は、ああやって僕達の心をかき乱して楽しんでるだけなんだから。」

「チッ、じゃあどうすればいいってんだよ…!」

 

「…なあ、オマエラ。この機会だから、僕ちゃんからひとつ言いたい事があるんだが。」

「なんだ子供。言ってみろ。」

「…僕ちゃんは、もうここから出るのをやめる。」

「えっ?入田君?どういう事だい?」

「…だって、外に出たいと思うから殺されるんだろ…?だったら、ずっと閉じこもっていれば少なくとも殺される事はないだろ。」

「そんなの無理だよ。ねえ入田君、考え直して。僕らと一緒に、外に出ようよ。」

「うるさい!!偉そうな事を言っておいて、誰一人守れなかったオマエが言っても説得力が無いんだよ!!」

「入田君…」

「とにかく、僕ちゃんはもう部屋に篭る!こんな危ない連中に命を預けられるか!それに、狛研(黒幕)が一緒にいるってのに普通に過ごせるオマエラがどうかしてるのだ!!とにかく、僕ちゃんはもう一歩も部屋の外には出ないし、オマエラとなんて関わりたくない!!止めてもムダだぞ!!」

「才刃クン、待って…!」

才刃クンは、ボク達の制止を振り切って部屋に閉じこもった。

「才刃クン…」

 

「…フン、あのチビのように愚かな行動に出ようとは思わんが、俺も同じ事を考えていた。」

「ラッセクン…?」

「確かに、こんな無能メガネを頼るような奴は馬鹿だ。仲間を信じるとかなんとか言って死んでいった奴等を、俺は今までごまんと見てきた。コイツには、人の命を預かるという覚悟が足りてないんじゃないのか?」

「何が言いたいのかな?」

「…貴様ら、いつまでこんな無能を頼っている気だと言っているんだ。国王としての経験を積んでいる俺なら、貴様らを多少は導いてやれる。…貴様らはどうしたい?愚民共。」

「ラッセクン。星也クンは、みんなのために頑張ってくれてるじゃない。今更星也クンを裏切れないよ。」

「私も狛研さんに賛成です。何があっても、私は穴雲さんを頼りたいです。」

 

「悪い、みんな。オレはラッセにつくわ。」

「…陽一クン?」

「確かに、穴雲はオレ達の頑張ってくれてるよ。それに、ラッセは正直ムカつくし、従うのは癪だよ。…けど、やっぱり今まで死んじまったみんなの事を思うと…本当に穴雲の言う事ばっか聞いてていいのかなって思っちまうんだよ。ひょっとして国王のコイツなら、これ以上犠牲を出さずにオレ達を導いてくれるんじゃねェかってな…」

「オイラも、国王様につくよ。日暮君の事を思うと、正直今のまま穴雲君に従うのに疑問が残るからね。経験を積んでる国王様なら、もっとマシなやり方でオイラ達を導いてくれるはずさ。」

「……………放送員……侍、二人…を、殺す…の、止め………られ、な…かった…私、もう………放送員、信じ………られ、な…い………」

「そういうわけだ。俺達は俺達のやり方でやらせてもらうぞ。」

そう言うと、ラッセクンは3人を連れて食堂を出て行った。

…どうしよう。

才刃クンが部屋に閉じこもっちゃったし、ラッセクン達とも仲間割れしちゃった…

ボク達は、これからどうすればいいんだろう…?

 

 

 

 

 

 

 

第3章 恋は儚し堕ちよ乙女 ー完ー

 

 

 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上9名

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

Chapter.3クリアの証

 

『サングラス』

舞田の宝物。喧嘩した時にできたヒビが入っており、仲間との思い出が詰まっている。

 

『鈴の髪飾り』

朱の宝物。雑技団を立ち上げた時に妹から貰ったもの。朱の家族の思い出が詰まっている。

 

『簪』

不動院の宝物。母親から譲って貰った。付けた事こそなかったが、不動院にとっては大切な母親の形見だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

【???の独房】

 

へー、スペードのジャックはアイツだったんだぁ。

 

まあそれはわかりきった事なんだけど。

 

次の生贄は、ハートのキングかぁ。

 

ふふふっ、コロシアイが楽しみだなぁ。

 

 

 

 

【???の独房】

 

本当にこんな所にいていいのだろうか。

 

外に出てやるべき事があるんだ。

 

そのためにはまず、なんとしてでもアレを集めないと…

 

 

 

 

 

第4章 絶望よ亡者たちのために

 

To be continued…



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第3章 真相編

【不動院剣編】

 

私は、物心がつく前に父を失い、母は気がふれてしまいました。

それからというもの、私はずっと男である事を強要されてきました。

女としての人生を歩む事は許されず、父の跡を継ぐ事こそが私の使命であると教え込まれてきました。

私は、これまでもこれからも、女として生きる事は無いのだろうと思っておりました。

 

しかし、私の人生を大きく変える出来事が起こったのです。

気がつくと才監学園という場所に閉じ込められ、15人の級友と共に共同生活を送る事となりました。

其処で過ごしているうちに、私はとある男性に惹かれました。

 

…舞田殿。

私は、彼に生まれて初めて恋に落ちました。

今まで家の中しか知らなかった私の世界を、彼は瞬く間に創り替えてしまいました。

武の道を突き詰める事のみを生き甲斐にしていた私にとって、誰かを一人の男性として好きになる事は未知の体験であり、今まで感じた事のなかった何かを感じました。

今まで積み重ねてきたものがまるで嘘のように、私は彼に心を奪われていきました。

そのうち私は、彼の隣にいる事だけが、束縛された私の人生の唯一の幸福とさえ考えるようになりました。

しかし、私は不動院家の当主であって、男に恋をして刃が鈍るような事は決してあってはならない。

その二つの思いが私の中で絡み合い、行動を起こす事ができずにいました。

 

ですが、転機は突然訪れました。

学園長達が私達の動機を発表した夜の事でした。

私は配られた動機を見て、そのまま就寝しようとしておりましたが、そこへ彼がいらしたのです。

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

「…はい。おや、舞田殿。貴方でしたか。」

「おう、剣か。悪いな、夜中に部屋に来ちまって。」

「いえ…それは構いませんが…どういったご用件で?」

「…ああ、お前の秘密の事で、ちょっとな…」

秘密…おそらく、内容は私が女であるという事でしょうね。

「…私の秘密、ですか。…とりあえず、お上がりください。ここでお話を伺うのも、如何なものかと。」

「おう、悪いな。邪魔するぜ。」

 

 

 

 

「…それで、舞田殿。お話というのは?」

「…ああ。実は俺…お前の秘密を見ちまってよ。お前が女だって…俺ァ、できりゃあお前の口からホントの事が聞きてェんだよ。別に無理して言うこたぁねェけど、言えたら教えてくんねェか?」

「…できれば、最後まで言いたくなかったのですが…仕方ありませんね。舞田殿。貴方が見た私の秘密は、真実です。私は、歴とした女です。…今まで騙してしまい、申し訳ございませんでした。…どうしても信じていただけないのであれば、ご自分の目でお確かめください。」

私は、舞田殿の前で上だけ服を脱ぎました。

 

「…おう。」

「…舞田殿。いかがなさいましたか?」

「あ、ゲホッ、ゴホン!」

舞田殿は、赤面しながら咳払いをしてごまかしていらっしゃいました。

…可愛らしいですね。

「…いや、悪い。つい…ガン見しちゃ悪いよな。」

「いえ、そうではなく…驚かないのですか?」

「いや、そりゃあ…いきなり裸になったのは驚いたけど…お前が女だって事は、知ってたしな。」

 

「…え?」

「お前を抱きかかえた時、なんか変だなって思ってよ。だから、もしかしたらそうなんじゃないかって思ってたんだよ。それで、それを確かめる意味で俺はお前に話をしに来たんだ。」

「…そう、ですか。」

「お前、なんで男のフリなんてしてたんだよ?なんかワケがあったんじゃねェのかよ?」

「…実は、私の家には、正統な血筋の男子が家を継ぐという仕来りがございまして…しかし、先代当主だった私の父には、私一人しか子共がいませんでした。だから、私は家を継ぐために男として育てられたんです。」

「おう。俺、バカだから難しい事はよくわかんねェけど…お前も色々と苦労してたんだな。」

「いえ、そんな…」

 

「そうだ。お前ばっかりに話させちまうのも悪いし、俺の話もしてやるよ。」

「舞田殿のお話、ですか?」

「おう。俺、実はな。10コ年が離れた兄貴がいんだよ。…でも、俺のせいで大怪我しちまって…半分死んでるみたいな状態になっちまってよ。俺、兄貴が俺の事を恨んでるんじゃねェかって思うと怖くて…ずっと見舞いにすら行けてねェんだ。それが俺の秘密だよ。」

「…なるほど。ところで、舞田殿はなぜ自分の秘密をご存知なのですか?」

「ああ、さっき雪梅に聞いたんだ。」

「…そう、ですか。」

朱殿が…ですか。

あの方は、特に舞田殿との接点が多かったですね。

…おや、私はなぜ苛立っているのでしょうか?

「舞田殿。お話しいただき、ありがとうございました。」

「ああ。他にもなんか相談してェ事とかあったら言えよ!」

「ふふふ、頼もしいですね。…ところで、舞田殿。」

「あ?なんだ?」

「貴方はなぜ、私が女である事を知っておきながら、誰にもその事を密告しなかったのですか?」

「バーカ、ンなモン決まってんだろ。」

 

「ダチの秘密は、俺の秘密だ。お前が誰にも言いたくねェ事は、俺は死んでも誰にも言わねェ。…これじゃ理由になってねェか?」

「なぜそこまでして…」

「俺からしたら、お前の方がスゲェと思うけどな。女のお前が、相応の覚悟を持って男のフリをしてたんだ。男なら、ダチの覚悟は受け取ってやるのが筋ってモンだろ。」

「舞田殿…ありがとうございます。」

「いいって事よ!剣の方こそ、話してくれてありがとな!!じゃ、また明日な!!」

 

 

 

 

舞田殿は、私の秘密を知っていながら、誰にも言わないでいてくださった。

そして彼は、私の事を友達だと言ってくださったのです。

 

…友達、か。

 

 

 

正直、一番言われたくなかった言葉でしたよ。

 

 

 

私は、彼にとっての()()で、それ以上でも以下でもなかったのです。

私は、彼にとって他の皆さんとは違う、特別な『何か』ではありませんでした。

私はこんなにも彼の事を想っているのに、彼にとって私はここに閉じ込められた仲間の1人でしかなかった。

彼は、本当の意味で私の事を『見て』くださってはいなかった。

その事が何よりも許せなくて、いつの間にか彼の事が憎くて仕方なくなっていました。

その時、私の中である考えが過りました。

 

 

 

この世で叶う事のない愛なら、いっその事彼を亡き者にしてしまおう。

 

 

 

この手で舞田殿を殺せば、私は彼にとっての特別な『何か』になれる。

きっと、私は彼に恨まれるだろう。

でも、それでもいい。

彼は、私の中で永遠に生き続けるのだから。

そして私が死んだ時、私は私を縛る全てのしがらみから開放され、彼と永遠に共にいる事ができる。

余計な物を全て排除し、彼と共に過ごす…

嗚呼、なんと素晴らしい事なのでしょうか。

 

私は、舞田殿を殺す事に致しました。

一度思い立ったら、行動に移すのは難しい事ではありませんでした。

私は、舞田殿を殺すための準備をしました。

待っていてくださいね、舞田殿。

貴方に本当の幸福を教えて差し上げますから。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

舞田殿は、朝食を召し上がった後、いつも通り体育館に向かいました。

私は、舞田殿を殺すため、体育館に入りました。

 

「…失礼します。」

 

「おう、剣か。どうした?なんか用か?」

「ええ…少々、舞田殿にご報告しなければならない事が。1分で良いので、付き合って頂けないでしょうか?」

「報告?いいぞ。なんか見つけたりしたのか?」

「ええ、まあ…この体育館で発見した事なのですが…ここでは少々場所が悪いので、できれば足場まで移動したいのです。構いませんか?」

「全然いいぞ。上に行きゃあいいんだろ?」

「…宜しいのですか?」

「いいって。ダチが俺を頼ってくれてんのにほっとけるかっての。お前が嘘をつくヤツじゃねェ事は、ちゃんとわかってっからよ。」

「ありがとうございます。」

やはり、舞田殿は私を少しも疑わず、私の誘いを承諾してくださいました。

彼の良心を利用して殺害するのは卑劣かもしれませんが…それも仕方のない事ですよね。

だって、私は彼を愛しているのですから。

 

 

 

「それで剣。話ってなんだ?」

「あの、ここの足場からでないと見えないのですが…そこに何か見えませんか?」

「ん?どこだ?何も見えねェけど?」

「もう少し右です。」

「右ィ?一体何があるっつーんだ…」

 

ガチャッ

 

「…え?」

「ありがとうございます舞田殿。私の用意した罠にかかってくださって。」

私は、舞田殿の足に手錠をかけ、縄を手に取りました。

「罠?おい、何がどうなってやがんだ剣!テメェ、一体どういうつもりだ!?」

「舞田殿。今だから申し上げますが、私はずっと前から貴方の事を想っておりました。」

「は?おい、テメェ何を言って…」

 

「大好きです、舞田殿。」

 

 

 

「死んでください。」

 

私は、素早く舞田殿の首に縄をかけると、足場から飛び降りました。

 

 

 

ギシッ

 

「がっ…がぁああああ、がはっ…!?ぎっ、ぐぅううぅぅ…!!」

「…ッ。」

やはり、この方法を選んで正解でした。

幾ら数多の修羅場を乗り越えてきた舞田殿と言えど、この高さから人が落ちた衝撃で首を絞められれば一溜まりもない筈です。

「がっ…ぐぅう…!」

舞田殿の呻き声が、私の身体を震わせ、この上なく高揚させる。

彼は、私の重みでもがき苦しんでいる。

 

私が、舞田殿を殺している。

 

最愛の人が死のうとしているのに、私はなぜここまで昂っているのだろうか。

彼が死ぬ様を想像するだけで、全身が熱くなって爆発しそうになる。

私は、舞田殿を愛している。

愛しているからこそ、今この手で殺している事に悦びを感じている。

他の誰でもない。

私が、彼にとって最期の人になれたのだから。

嗚呼、なんて幸福な事だろうか。

 

「………………。」

 

気がつくと、舞田殿は足場の上で動かなくなっていました。

私は舞田殿の死を確認した後、彼を自殺に見せかけるため、工作をしました。

私は早く舞田殿に逢いたいので、生き残りたいわけではないのですがね。

舞田殿も、皆さんと一緒の方が喜ばれるでしょうし…

それに、皆さんは少なからず景見殿達を死なせてしまった事を後ろめたく思っているでしょからね。

待っていてください舞田殿。

すぐに他の皆さんにも逢わせて差し上げますからね。

私が其方に逝くのはその後になってしまいますが、どうかそれまで待っていてくださいね。

次逢う時には、お互いに何にも縛られずに出逢えると良いですね。

 

…ふふふ。あはは…

 

あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!

 

 

 

 

 

「あーあ、殺っちゃったよ!全く、なーにが愛だよ!構ってほしいだけのメンヘラだったんじゃん!結局さぁ、ただ満たされる事を愛と勘違いして、勝手に暴走しただけなんじゃないの?やっぱりオマエ、頭おかしいから一回死んでその頭治してきなよ。あ、ここまで腐ってたら死んでも治んないかw」

 

 

 

 

 


 

 

 

【舞田成威斗編】

 


 

 

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗クンの秘密!

 

舞田成威斗は臆病者である。

 

 

 


 

俺には、絶対に誰にも言えねェ秘密があった。

俺は、臆病者で卑怯者だ。

今でも本当の事を打ち明けられねェで、ずっと俺の本性が暴かれる事に怯えてる。

俺は、そんな自分が恥ずかった。

だけど、俺よりチビでヒョロいヤツが、全てを賭ける覚悟で俺に秘密を打ち明けた。

アイツは、俺なんかよりずっと強いヤツだった。

俺も、本当はずっと変わりたい、強くなりたいって思ってた。

だから俺は、ソイツに秘密を打ち明けた。

 

 

 

 

俺には、10コ年の離れた兄貴がいた。

ガキの頃からずっとケンカばっかりやってた俺とは違って、真面目で誠実な人だった。

兄貴はヒョロくて身体も弱かったけど頭が良くて、医者を目指していた。

俺が何か問題を起こした時も俺の代わりに頭を下げてくれるような、俺にとって自慢の兄貴だった。

 

 

 

だが、事件が起きた。

俺が中3の頃、俺はちょうど他校のヤツとケンカしていた。

その学校の番長にケンカを吹っ掛けられたから、俺はケンカを買ってやった。

俺は、売られたケンカを買っただけだ。何も悪くない。

そう思っていた。

 

俺が学校にいる時、俺は先公に呼び出された。

いつも通り他校のヤツとケンカしたのがバレて怒られんのかと思ってしぶしぶ職員室に行ったら、先公は信じられねェ事を言いやがった。

俺の兄貴が、不良に襲われて大怪我を負ったって。

俺は、いてもたってもいられなくなって、兄貴がいる病院に駆け込んだ。

 

 

 

「植物状態です。このまま、意識が戻らない可能性も…」

医者がそう言ったのは、今でもはっきり覚えている。

俺が見たのは、何かを言ってる医者と泣き崩れる親父とお袋、そしてベッドで横になって、変な管を大量に繋がれてる兄貴の姿だった。

俺は、怒りで目の前が真っ赤になって、すぐに病院を飛び出して兄貴を襲ったヤツを探した。

兄貴を襲ったヤツの子分を見つけた俺は、ソイツをボコボコにして事情を吐かせた。

ソイツから聞き出した事件の詳細は、こうだった。

 

兄貴は、俺が他校の不良とケンカばっかやってる事に心を痛めて、ソイツらに直接会いに行った。

そして、当時俺がケンカしてた相手の不良共に頭を下げて言ったらしい。

弟が迷惑をかけて申し訳なかった、代わりに自分がなんでもするから弟の事を許してやってほしいって。

それに逆ギレした不良共のボスが、兄貴を殴った。

それで、その時たまたま機嫌が悪かった事もあって、手下共と一緒に兄貴をリンチしたらしい。

 

俺は、それを聞いて頭が真っ白になった。

兄貴は、俺のせいでボコボコにされて、大怪我を負った。

俺は、その事実が信じられなくて、ただひたすら逃げた。

兄貴は、自分をあんな目に遭わせた俺を恨んでるに決まってる。

このまま兄貴が死んじまったら、俺は兄貴を死なせた人殺しになっちまう。

もし意識が戻ったとしても何を言われるかが怖くて、病室に戻れなかった。

 

それからずっと、兄貴に会うのが怖くて見舞いにすら行けていない。

俺がケンカばっかりやってたせいで、何も悪くない兄貴がボコボコにされた。

兄貴は俺のために勇気を出して不良共に謝りに行ったのに、俺は勇気がなくて結局最後まで兄貴に謝れなかった。

俺なんか、伝説のヤンキー【超高校級の喧嘩番長】じゃねェ。

罪と向き合う事が怖くて兄貴に会う事すらできねェ臆病者。

それが俺の本性だ。

 

 

 

 

モノクマが湧いて出た日の真夜中、俺の手帳に秘密が送られてきた。

 


 

 

 

【超高校級の侍】不動院剣クンの秘密!

 

不動院剣は、女である。

 

 

 


 

…マジかよ。

剣が女だと…?

そんなの、信じられっかよ…

…いや、今思えば思い当たるフシはいくつかあったな。

剣のヤツ、元々華奢で女顔だし、アイツを抱きかかえた時なんか違和感があったし…

でもアイツ、なんで女のクセに男のフリなんてしてたんだ?

…本人に確かめに行けばわかる事だよな。

 

 

 

 

【不動院剣の独房】

 

俺は雪梅の話を聞いた後、剣の部屋に行った。

 

ピンポーン

 

 

 

インターホンを鳴らすと、剣はすぐ出てきた。

「…はい。おや、舞田殿。貴方でしたか。」

「おう、剣か。悪いな、夜中に部屋に来ちまって。」

「いえ…それは構いませんが…どういったご用件で?」

「…ああ、お前の秘密の事で、ちょっとな…」

「…私の秘密、ですか。…とりあえず、お上がりください。ここでお話を伺うのも、如何なものかと。」

「おう、悪いな。邪魔するぜ。」

…なんか、女子の部屋に上がるって思うと変に緊張するな。

今まで、コイツの部屋に行った時は全然平気だったのによ。

 

 

 

 

「…それで、舞田殿。お話というのは?」

「…ああ。実は俺…お前の秘密を見ちまってよ。お前が女だって…俺ァ、できりゃあお前の口からホントの事が聞きてェんだよ。別に無理して言うこたぁねェけど、言えたら教えてくんねェか?」

「…できれば、最後まで言いたくなかったのですが…仕方ありませんね。舞田殿。貴方が見た私の秘密は、真実です。私は、歴とした女です。…今まで騙してしまい、申し訳ございませんでした。…どうしても信じていただけないのであれば、ご自分の目でお確かめください。」

剣は、少し顔を赤くしながら上だけ裸になった。

 

「…おう。」

剣の身体は、雪みてェに真っ白で、ちょっと筋肉はあるけど細っこい身体つきだった。

俺は、思わず剣の裸に目が釘付けになった。

剣のヤツ、意外と胸デケェな。

…なんつーかコイツ、エロい身体してんな。

「…舞田殿。いかがなさいましたか?」

「あ、ゲホッ、ゴホン!」

「…いや、悪い。つい…ガン見しちゃ悪いよな。」

「いえ、そうではなく…驚かないのですか?」

「いや、そりゃあ…いきなり裸になったのは驚いたけど…お前が女だって事は、知ってたしな。」

 

「…え?」

「お前を抱きかかえた時、なんか変だなって思ってよ。だから、もしかしたらそうなんじゃないかって思ってたんだよ。それで、それを確かめる意味で俺はお前に話をしに来たんだ。」

「…そう、ですか。」

「お前、なんで男のフリなんてしてたんだよ?なんかワケがあったんじゃねェのかよ?」

「…実は、私の家には、正統な血筋の男子が家を継ぐという仕来りがございまして…しかし、先代当主だった私の父には、私一人しか子共がいませんでした。だから、私は家を継ぐために男として育てられたんです。」

「おう。俺、バカだから難しい事はよくわかんねェけど…お前も色々と苦労してたんだな。」

「いえ、そんな…」

剣のヤツ、そんな事情を抱えてたんだな。

俺、ダチなのに全く気付いてやれてなかったな。

女のコイツが、全てを賭ける覚悟で今まで男のフリをして、その事を俺に打ち明けてくれたんだ。

今まで逃げてばっかだったけど、俺も剣みたいに強くなりたい。

俺は今ここで全てを話して、今度こそ変わるんだ。

 

「そうだ。お前ばっかりに話させちまうのも悪いし、俺の話もしてやるよ。」

「舞田殿のお話、ですか?」

「おう。俺、実はな。10コ年が離れた兄貴がいんだよ。…でも、俺のせいで大怪我しちまって…半分死んでるみたいな状態になっちまってよ。俺、兄貴が俺の事を恨んでるんじゃねェかって思うと怖くて…ずっと見舞いにすら行けてねェんだ。それが俺の秘密だよ。」

「…なるほど。ところで、舞田殿はなぜ自分の秘密をご存知なのですか?」

「ああ、さっき雪梅に聞いたんだ。」

「…そう、ですか。」

ん?剣のヤツ、なんか変だな。

考え事か?

「舞田殿。お話しいただき、ありがとうございました。」

「ああ。他にもなんか相談してェ事とかあったら言えよ!」

「ふふふ、頼もしいですね。…ところで、舞田殿。」

「あ?なんだ?」

「貴方はなぜ、私が女である事を知っておきながら、誰にもその事を密告しなかったのですか?」

「バーカ、ンなモン決まってんだろ。」

 

「ダチの秘密は、俺の秘密だ。お前が誰にも言いたくねェ事は、俺は死んでも誰にも言わねェ。…これじゃ理由になってねェか?」

「なぜそこまでして…」

「俺からしたら、お前の方がスゲェと思うけどな。女のお前が、相応の覚悟を持って男のフリをしてたんだ。男なら、ダチの覚悟は受け取ってやるのが筋ってモンだろ。」

「舞田殿…ありがとうございます。」

「いいって事よ!剣の方こそ、話してくれてありがとな!!じゃ、また明日な!!」

 

俺は、剣の部屋を出て、自分の部屋に戻った。

今まで卑怯で弱い俺だったけど、アイツのおかげで少しは変われたかな。

そうだ、明日、みんなに俺の秘密を打ち明けよう。

俺はもう逃げねェ。

自分の罪から逃げたら、今までと一緒だから…

俺はここを出て、兄貴に会いに行くんだ。

それで、あの日の事をちゃんと謝るんだ。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

俺は、朝メシを食い終わった後、サウナに寄ってから体育館に行った。

いつも通り筋トレをしてると、体育館に剣が入ってきた。

 

「…失礼します。」

 

「おう、剣か。どうした?なんか用か?」

「ええ…少々、舞田殿にご報告しなければならない事が。1分で良いので、付き合って頂けないでしょうか?」

「報告?いいぞ。なんか見つけたりしたのか?」

「ええ、まあ…この体育館で発見した事なのですが…ここでは少々場所が悪いので、できれば足場まで移動したいのです。構いませんか?」

「全然いいぞ。上に行きゃあいいんだろ?」

「…宜しいのですか?」

「いいって。ダチが俺を頼ってくれてんのにほっとけるかっての。お前が嘘をつくヤツじゃねェ事は、ちゃんとわかってっからよ。」

「ありがとうございます。」

剣が俺に報告…?

よくわかんねェけど、なんか重要なモンを見つけたのか?

せっかく昨日秘密を打ち明け合ったんだ、なんでもいいからコイツの役に立ちてェな。

 

 

 

「それで剣。話ってなんだ?」

「あの、ここの足場からでないと見えないのですが…そこに何か見えませんか?」

「ん?どこだ?何も見えねェけど?」

「もう少し右です。」

「右ィ?一体何があるっつーんだ…」

俺は、柵に寄りかかって剣が指を差した方向をよく見てみた。

 

ガチャッ

 

「…え?」

「ありがとうございます舞田殿。私の用意した罠にかかってくださって。」

剣は、いきなり俺の足に手錠をかけた。

「罠?おい、何がどうなってやがんだ剣!テメェ、一体どういうつもりだ!?」

「舞田殿。今だから申し上げますが、私はずっと前から貴方の事を想っておりました。」

「は?おい、テメェ何を言って…」

 

「大好きです、舞田殿。」

 

 

 

「死んでください。」

 

剣は、ロープを俺の首に回したかと思うと、足場から飛び降りた。

 

 

ギシッ

 

「がっ…がぁああああ、がはっ…!?ぎっ、ぐぅううぅぅ…!!」

クソッ、くるし…息が、できねェ…!

剣…お前、なんで…

俺が何したってんだよ…!

「がっ…ぐぅう…!」

おい、ちょっと待て…俺は、こんなところで死ぬなんて嫌だぞ!?

せっかく、変われるチャンスを掴んだんだ。

兄貴に謝るまでは死ねるかよ…

嫌だ、俺は…死にたくない…!

 

…誰か、助け……………

 

 

 

 

 

「………………。」

 

 

 

 

 

「あーあ、死んじゃったよ!まあ、今回の件に関しては、ヤンデレサイコ女に惚れられちゃったのが運の尽きだったねって事なんだけど…自分の罪から逃げてばっかいるからそういう目に遭うんだよ!自分のせいで植物状態になった兄貴に謝れもしないクズにはお似合いの末路じゃん!」

 

 

 

 

 


 

 

 

【朱雪梅編】

 

为什么(なんで)!?

 

訳がわからない。

昼ご飯の支度ができたから、成威斗サンを呼びに行こうと思って体育館に行ってみたら、剣サンが成威斗サンを天井に吊るしていた。

剣サン、一体何をやってるの…?

ワタシは、頭が真っ白になって、その場から動けなくなった。

 

ザッ

 

「ヒッ…!」

物音を立ててしまい、剣サンに気付かれてしまった。

剣サンは、鬼のような形相でこっちに来る。

剣サンは、一気に距離を詰めると、手に持っている何かを振るった。

 

ザンッ

 

その瞬間、視界に赤い何かが散って、腕に痛みが走る。

好痛(痛い)!!

好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛好痛!!!

为什么… 为什么为什么为什么为什么为什么为什么为什么为什么为什么!!?

ワタシ、剣サンに何かした!?

さっき、ワタシが剣サンが何かやってるのを見ちゃったから…!?

わけがわからないよ…!

 

チャキッ

 

剣サンは、ワタシの方を見て何かを構えた。

よく見ると、剣サンは手に刀を握っていた。

…本気だ。

ワタシは、このままだと剣サンに殺される。

そんなの嫌だ…!

我要逃跑(逃げなきゃ)!!

 

ワタシは、ひたすら走った。

剣サンが、ものすごいスピードで追いかけてくる。

後ろを振り向いたら殺される。

腕の傷が痛んでも、止まらずに走り続けた。

幸い、ワタシは皆サンの中で一番足が速い。

距離を取れば、どこかに隠れてやり過ごせるはず…!

ワタシは、ここで死ぬわけにはいかないんだ!!

 

…!

視界に女子更衣室が映った。

 

あれだ!!

剣サンは男だから、女子更衣室には入れない…

ここに隠れれば、やり過ごせるはず…!

考えてる時間なんてない、隠れなきゃワタシが殺されるんだ。

ワタシは、更衣室の中に逃げ込んだ。

…お願い、うまくいって…!

 

 

 

 

【女子更衣室】

 

…ふぅ。

間に合った。

なんとか、剣サンに追いつかれる前に逃げ込めた。

ここに隠れてれば、剣サンはもう追いかけて来れないはず…

でも、その後はどうしよう?

そうだ、チャット機能で皆サンに助けを呼んで…

 

 

 

ガーーーーー…

 

 

 

「!!?」

更衣室の扉が開いて、中に誰かが入ってきた。

入ってきたのは、剣サンだった。

为什么… !?

剣サンは、男だから女子更衣室に入れないはずなのに…

剣サンは、鬼のような形相で日本刀を振りかぶった。

どうしよう、入り口は剣サンに塞がれてて逃げられない…!

 

讨厌(いやだ)…!

讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌讨厌…

讨厌!!!

 

ワタシ、まだ死にたくない!!

嫌だ、誰か助け…

 

ザンッ

 

「あ、か…はっ…!?」

 

身体中に、重い衝撃が走る。

視界に大量の赤色が飛び散り、意識を蝕むほどの鋭い激痛が全身を襲う。

視界がボヤけて、足元がフラつく。

 

あ…

 

 

 

 

 

「あーあ、死んじゃったよ!かわいそうに、キチ●イを怒らせるような事しちゃったのが運の尽きだったね。世の中には関わっちゃいけない種類の人間がいるって事、ちょっとは勉強になったかな?まあ、今更学んでも遅いけどね!」

 



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第4章 絶望よ亡者たちのために
登場人物プロフィール②


ATTENTION!!

 

第3章までの重大なネタバレが含まれます。

 

 

 

 

 

【超高校級の不運】景見(カゲミ)凶夜(キョウヤ)

 

「才能って言っていいのかはわかんないけど…一応、【超高校級の不運】って呼ばれてるよ。」

 

現状:死亡(1章シロ)

性別:男

身長:168cm

体重:48kg

胸囲:78cm

誕生日:4月13日(金曜日かつ仏滅)

星座:おひつじ座

血液型:AB型(Rh−)

好きな物:桜餅、オンラインゲーム、狛研叶NEW!

嫌いな物:柏餅、不運、いさかい

利き手:左

出身校:烏谷高校

ICV:井上麻里奈

外見:ほとんど無色に近い銀髪(周りからは白髪と呼ばれている)。ボブカット。頭頂部からアホ毛が生えている。瞳は透明に近い赤色。目の下に隈がある。肌は青白く、不健康そうに見える。体格は貧弱。

服装:白いワイシャツ、黒いスラックスの上に、ダークグレーのベストと黒いジャケット。えんじ色のネクタイを着用。靴は、茶色いローファー。

人称:僕/君、あなた/あの人、あの子/男:苗字+君、女:苗字+さん(例外…狛研:叶さん、ラッセ:ラッセ様)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

本作のヒロイン主人公。超不幸体質で、テロリストに人質にされる、留守番中に侵入してきた放火魔に遭遇する、飛行機の墜落事故に遭う、雷が頭上に落ちるなどの、生きているのが奇跡というレベルの不運に見舞われてきた少年。自分の不運のせいで何度も人に迷惑をかけてきたため、自分に生きる価値が無いと思っており、才監学園に収監される前は何度も自殺を図っていた。温厚で常識人だが、その境遇のせいか、卑屈で内向的な性格。自分の命をどこか軽く見ている。自身とは真逆の人物像である狛研に憧れを抱いている。初対面の相手には基本的に敬語で話すが、入田や神座のようなロリショタ枠や、親しい間柄の人とはタメ口で話す。

1章捜査編までの主人公。狛研に励まされた事で彼女に好意を抱き、生きる事を決意したが、白鳥に殺害された。

 

 

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【超高校級の幸運】狛研(コマトギ)(カナエ)

 

「一日一個でもいい事見つけていけたら、今より人生楽しくなると思わない?」

 

現状:生存

性別:女

身長:166cm

体重:52kg

胸囲:92cm

誕生日:7月7日

星座:かに座

血液型:O型

好きな物:手羽先、旅行、クラスメイトのみんなNEW!

嫌いな物:自己犠牲

利き手:右

出身校:三栖照高校

ICV:石原夏織

外見:藍色がかった黒髪のショートヘアー。右耳の付け根あたりから渦巻き状のアホ毛が生えている。瞳は澄んだ青色。ショタ顔。スタイル抜群。巨乳。

服装:白いワイシャツとカーキ色の短パンの上に、カーキ色の探検隊風のジャケット。小物類は、緑色のネクタイとカーキ色のハンチング帽。黒いニーハイソックスを履いており、靴は黄色いスニーカー。

人称:ボク/キミ/あの子/男:名前+クン、女:名前+ちゃんモノクマ、モノベル:クマさん、ベルさん

 

本作の二人目の主人公。景見とは、色々な意味で正反対の人物。ボクっ娘。ボーイッシュで明るい性格だが、どこかミステリアスな雰囲気が漂う少女。ド天然でドジっ子。幼い頃に両親を失っているため、人の命がどれほど大事かを実感しており、自己犠牲の精神が大嫌い。普段は子供のように無邪気に振る舞っているが、二面性があり、深刻な事態になればなるほど本来の潜在能力が引き出され、常人離れした判断力や洞察力が発揮される。実は、景見ほどではないが、かなりの不幸体質。しかし、どんな不幸に見舞われてもそれを『ラッキー』と捉えてしまうほどポジティブな思考の持ち主。

1章捜査編からの主人公。最初は景見を元気付けるムードメーカーとして彼と一緒にいたが、彼が死んでからは自力で積極的に捜査や推理に挑むようになった。

 

 

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【超高校級のマドンナ】白鳥(シラトリ)隥恵(サカエ)

 

「あら。この状況で、よくそんなふざけた事が言えるわね。頭にカビでも生えてるのかしら。」

 

現状:死亡(1章クロ)

性別:女

身長:158cm

体重:45kg

胸囲:80cm

誕生日:1月5日(シンデレラの日)

星座:やぎ座

血液型:B型

好きな物:シフォンケーキ、美しい物、姉NEW!

嫌いな物:駄菓子、不潔な物、虫、景見凶夜NEW!

利き手:右

出身校:聖蓮堂女学院高等部

ICV:Lynn

外見:菫色のグラデーションがかかった、艶のある黒髪。セミロング。宝石のように綺麗な菫色の瞳。肌は、雪のような白色。絶世の美少女。適度に細身。

服装:黒を基調としたセーラー服。リボンの色は白。金色のダマスク模様がついた黒いハイソックス。靴は、黒いロングブーツ。

人称:【通常時】私/あなた/あの人/男:苗字+君、女:苗字+さん(例外…不動院:不動院さん、穴雲:穴雲さん、ラッセ:国王陛下)

【本性時】私/あんた/アイツ/男女共に苗字呼び捨て(例外… 不動院:不動院さん、穴雲:穴雲さん、ラッセ:ロングパスタ)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

世界一美しい高校生と呼ばれている超絶美少女。見た目はもちろんの事、やる事なす事全てが美しく完璧な美少女で、『女の完全体』とも呼ばれる。表向きは気高く礼儀正しいお嬢様だが、本来は尊大で腹黒い性格。常に自分の思い通りにならないと気が済まない性格だが、コロシアイ生活では、自分の本性がバレているため、うまくいかない事が多い。ラッセとは犬猿の仲で、彼を『ロングパスタ』と呼んでバカにしている。面食いで、不動院と穴雲がお気に入り。

希望ヶ峰学園への再入学資格取得のために、気に入らなかったという理由で景見を殺害。その後処刑された。

 

 

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【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

        (Lasse Edvard Silvennoinen)

 

「…気安く話しかけるな。俺は国王だぞ。本来、庶民の女と同じ空間にいるべきではないんだ。」

 

現状:生存

性別:男

身長:174cm

体重:62kg

胸囲:82cm

誕生日:12月6日(フィンランド独立記念日)

星座:いて座

血液型:A型

好きな物:鰊の塩漬け、骨董品、祖国の国民達

嫌いな物:パスタ料理、口うるさい女、白鳥隥恵NEW!

利き手:右

出身校:王立アスピヴァーラ学院

ICV:梅原裕一郎

外見:金髪のロングヘアーを後ろで束ねている。瞳は明るい青色。鼻は高め。色白で、線は細め。

服装:白と金の学ラン風の軍服を改造して高級感のある服装にしている。白い手袋をつけており、靴は黒いロングブーツ。小物類は、王冠とルビーのブローチ。

人称:俺/貴様/アイツ/男女共に苗字呼び捨て又はあだ名(景見→白髪赤眼、白鳥→ダークパープルなど。)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

北欧の小国シルヴェンノイネン王国の若き国王。幼い頃に先代国王である父親が病死してまもなく王位を継承し、国の政治を取り仕切り、先進国にも負けない国力をつけた名君。自分の国や国民達を誇りに思っており、バカにされる事が何よりも許せない。自分の国の知名度が低い事を密かに気にしている。王族の生まれのためか、非常にプライドが高く猜疑心の強い性格で、人との距離がなかなか縮められない。なぜかよく頭髪をパスタに喩えられる(朱は担担麺と言っている)。白鳥とは犬猿の仲。

白鳥の事を嫌っていたが、本当は対等に話せる数少ない相手として大切に思っていた。3章で不動院が処刑されてからは、穴雲に反発するようになった。

 

 

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【超高校級の生物学者】日暮(ヒグラシ)彩蝶(アゲハ)

 

「ダメだよきみ達、ケンカなんかしちゃ!翠が泣いてるよ!」

 

現状:死亡(2章クロ)

性別:女

身長:146cm

体重:47kg

胸囲:77cm

誕生日:5月22日(国際生物多様性の日)

星座:ふたご座

血液型:O型

好きな物:パンケーキ、動物(特に翠)、元クラスメイトのみんなNEW!

嫌いな物:肉料理、動物を大切にしない人

利き手:右

出身校:星ノ宮女子学園

ICV:大久保瑠美

外見:桜色がかった銀髪。両サイドを編み込んだ長髪のハーフアップ。後ろに虹色の蝶の髪飾り。瞳は、黄緑色。小学生のような体型。

服装:白とピンクを基調としたセーラー服の上に、小鳥のワッペンがついた白衣を着ている。黒いソックスと茶色いローファー。小物類は、赤いフチのメガネ。

人称:わたし/きみ/あの子、あの人/男:名前(ひらがな)+くん、女:名前(ひらがな)+ちゃん(例外…翠:翠)モノクマ、モノベル:クマちゃん、ベルちゃん

 

生物学において並の学者を軽く超える知識を持ち、どんな動物とでもすぐに仲良くなれる。一番仲良しなのは、鳥類らしい。大震災の際に多くの動物達を救ったという功績が認められてスカウトされた。セキセイインコの翠は一番の友達。両親が医者で、良家のお嬢様。見た目や話し方からは穏やかな人物だと思われがちだが、実はお転婆娘で、興味を持った事はすぐに行動に移す思い切りの良さがある。愛されやすいタイプで、動物だけでなく、人間の友達を作るのも得意。乱暴な人や動物を大切にしない人が嫌いで、翠と一緒に説教をする事もしばしば。

実は羽澄の元クラスメイトで、過去に彼女達のクラスで惨殺事件が起こっていた。羽澄の事を事件の犯人だと思い込み、復讐のために彼女を殺害。その後真相を知り、彼女に謝りながら処刑された。

 

 

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【超高校級の人狼】(アカツキ)裴駑(ハイド)

 

「ひひひっ、また、ブッ殺してェなぁ…」

 

現状:死亡(2章クロ)

性別:女

身長:146cm

体重:47kg

胸囲:77cm

誕生日:5月22日(国際生物多様性の日)

星座:ふたご座

血液型:O型

好きな物:殺人行為

嫌いな物:偽善

利き手:右

出身校:星ノ宮女子学園

ICV:大久保瑠美

外見:桜色がかった銀髪。両サイドを編み込んだ長髪のハーフアップ。後ろに虹色の蝶の髪飾り。瞳は、黄緑色。小学生のような体型。

服装:白とピンクを基調としたセーラー服の上に、小鳥のワッペンがついた白衣を着ている。黒いソックスと茶色いローファー。小物類は、赤いフチのメガネ。

人称:私、俺/お前、テメェ/アイツ/あだ名

 

日暮の裏人格。八ツ阪小学校虐殺事件の真犯人。日暮が完全に眠りについた時のみ現れる。夜な夜な街を出歩いては人を斬り裂く殺人鬼。月夜にしか現れないという性質から、【超高校級の人狼】と呼ばれるようになった。性格は、日暮れとは真逆で、残忍で狡猾。自分さえ楽しければ人の事はおろか、自分の事すらどうでもいいという異常な精神の持ち主。よりコロシアイを盛り上げるために、日暮を唆して羽澄を殺させた。最期は、眠ったまま本体である日暮の肉体ごと殺害された。

 

 

 

【セキセイインコ】(スイ)

 

「ピィ!」

 

現状:死亡(2章ルール違反)

性別:メス

身長:10cm

体重:20g

誕生日:5月4日(みどりの日)

星座:おうし座

好きな物:ヒエ、日暮彩蝶、優しい人間

嫌いな物:ケンカ、怖い人間

ICV:南里侑香

外見:浅葱色の体毛。まだ子供なので、普通のセキセイインコに比べてかなり小さい。

 

日暮の親友。日暮と一緒に才監学園に収監された。大震災の時に母親と元の飼い主を失ってから日暮に引き取られ、今では彼女の良きパートナーとなっている。ケンカが嫌いで、生徒達がケンカをしているところを見ると、悲しんだり、怒って暴れたりする。

日暮の羽澄殺しを手伝って管理室の鍵を飲み込み、学園内のシステムを乱したとして日暮と一緒に処刑された。

 

 

 

【超高校級の侍】不動院(フドウイン)(ツルギ)

 

「…ここで出会えたのも、きっと何かの縁です。よろしくお願いしますね、皆さん。」

 

現状:死亡(3章クロ)

性別:女

身長:177cm

体重:65kg

胸囲:85cm

誕生日:12月14日(忠臣蔵の日)

星座:いて座

血液型:A型

好きな物:筑前煮、水仙、日本刀、舞田成威斗NEW!

嫌いな物:ジャンクフード、不浄な物

利き手:左

出身校:仙宮寺学院高等部

ICV:高乃麗

外見:美人顔。艶のある黒髪。前髪が長く、右目が少し隠れ気味。ミディアムヘアー。瞳は黒。肌が白く、頬は紅をさしたような淡い赤色。

服装:水色の着物、紺色の袴の上に黒い上着を羽織っている。背中に黒い布で包まれた、鬼津正宗という名刀を背負っている。懐には、白い扇子と短刀を忍ばせている。

人称:【通常時】私/貴方、貴女/あの方/男女共に苗字+殿。(例外…ラッセ:ラッセ王、国王陛下)

【逆鱗モード】拙者/貴様/彼奴/男女共に苗字呼び捨て。モノクマ、モノベル:白黒熊、白黒虎

 

平安時代から続く名門不動院家の御曹司。世界一の剣豪と呼ばれており、その剣技はまさに神業と言われている。男である景見が思わず見惚れる程の美少年。名家で英才教育を受けたため、行動一つ一つが洗練されていて、礼儀正しい。誰に対しても常に敬語で話し、物腰柔らかく接する。しかし、逆鱗に触れると性格が一変し、口調が変わる。正義感の強い性格で、仲間が窮地に陥ったら危険を顧みずに助けようとする。幼い頃から俗世間とはかけ離れた環境で暮らしていたため、流行や精密機器などには疎い。

実は男装をした女性。本性は、ヤンデレでサイコパス。舞田に恋心を抱いており、彼を愛しているという狂った理由で殺害した。その後、事件の隠蔽工作を見ていた朱も殺害。最期は、舞田に逢える喜びで笑いながら処刑された。

 

 

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【超高校級の喧嘩番長】舞田(マイダ)成威斗(ナイト)

 

「なんか、お前は俺と同じものを感じるな。お前とは仲良くやっていけそうな気がするぜ!!」

 

現状:死亡(3章シロ)

性別:男

身長:208cm

体重:113kg

胸囲:128cm

誕生日:8月19日(バイクの日)

星座:しし座

血液型:B型

好きな物:牛丼、バイク、漢気、兄NEW!

嫌いな物:根性が曲がった奴

利き手:右

出身校:天上高校

ICV:羽多野渉

外見:黒髪をリーゼントヘアーにしている。瞳は、暗い銀色。大柄で筋肉質。褐色肌。全身にケンカの際にできた古傷がある。

服装:黒い学ランを羽織っている。腹にサラシを巻いており、黒いドカンを履いている。小物類は、黒いサングラス。靴は、黒いスニーカー。

人称:俺/お前、テメェ/アイツ/男女共に名前呼び捨て。(例外…白鳥:白鳥さん、たまに麗美)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

天下一中学校の元番長で、他校のライバル達をなぎ倒し、県内一のヤンキーとして恐れられていた。その武勇伝が県外でも有名になってスカウトされた。あまり頭脳労働が得意ではなく、すぐに頭に血が上りがち。しかし、曲がった事が嫌いで、女性や一般人には自分からはケンカを売らないと決めている。非常に仲間想いな性格。自分の服装に謎の自信があり、景見がベタ褒めした時には彼のセンスを認め、相棒と呼んだ。(ラッセには『カマキリの卵みたいな頭』、白鳥には『ダサい』と酷評を受けている。)

不動院の秘密を知った事で彼女と親密になったが、彼女にわけのわからない理由で殺害された。

 

 

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【超高校級のダンサー】羽澄(ハズミ)踊子(ヨウコ)

 

「そうだ、ちょっと踊ってみなよ。いい気分転換になるよ。」

 

現状:死亡(2章シロ)

性別:女

身長:170cm

体重:55kg

胸囲:90cm

誕生日:9月9日(POPの日)

星座:おとめ座

血液型:AB型

好きな物:菓子パン、ダンス

嫌いな物:バナナ、湿気、兄NEW!

利き手:右

出身校:四ツ川高校

ICV:伊藤かな恵

外見:ミカン色の髪の毛をツインテールにしている。瞳は、明るい茶色。ツリ目。巨乳。

服装:白いブラウス、赤と緑のボーダーのネクタイ、灰色のタータンチェックスカートの上に黒いブレザー。右手に水色のシュシュをつけている。黒いくるぶしソックスに、ライムグリーンのスニーカー。小物類は、白と黒のヘアピンと右耳のイヤリング。

人称:アタシ/アンタ/アイツ/男女共に名前(カタカナ)呼び捨て。モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

明るい性格で、ダンスが好きなギャル。本人曰く、頭よりも先に体が動くタイプ。伝統的な舞踊から、流行りのダンスまでなんでも踊れるダンサー少女。人間業とは思えないような素早い動きを必要とするダンスを完璧に踊り切った事から、世界中から注目を浴びた。流行に敏感で、最新のファッション誌を必ず読むようにしている。そのため、白鳥の事を知っていた。人当たりはややキツめだが、姉御肌で頼りがいがある。作中では、割と常識人。面食いで、イケメンを見るとテンションが上がる。

実は日暮の元クラスメイト。八ツ阪小学校惨殺事件の真犯人である暁の交代人格の日暮を庇うため、自ら殺人鬼を演じた。その結果、勘違いした日暮に逆恨みされてしまい、殺害された。

 

 

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【超高校級のアナウンサー】穴雲(アナグモ)星也(セイヤ)

 

「君みたいな面白い才能を持った人は初めてだよ!君の事、もっと教えてくれないかな!?」

 

現状:生存

性別:男

身長:186cm

体重:74kg

胸囲:87cm

誕生日:2月1日(テレビ放送記念日)

星座:みずがめ座

血液型:O型

好きな物:エスプレッソ、ニュース番組、癒川治奈NEW!

嫌いな物:カフェオレ、スキャンダル

利き手:右

出身校:西城学院高等部

ICV:入野自由

外見:顔立ちの整った美少年。暗めの茶髪のウルフカット。瞳は、紫に近い青。長身痩躯。

服装:ライトグリーンのタートルネックの上に、ダークグレーのジャケットとスラックス。小物類は、フチなしメガネ。靴は、黒い革靴。

人称:僕/君/あの人、あの子/男:苗字+君、女:苗字+さん。(例外…ラッセ:国王陛下)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

笑顔の絶えない知的な好青年。皆を取り仕切る司令塔的存在。高校生にして朝のニュース番組『めざますテレビ』の人気アナウンサー。優れたトークスキルを持ち、誰に対しても神対応。その容姿や紳士ぶりから、主に女性ファンから絶大な支持を受けている。職業柄、【超高校級】についての知識も豊富。ニュース番組は、見るのも出演するのも好きだが、最近は芸能人のスキャンダルばかり取り上げられいるため、あまり快く思っていない。エスプレッソが大のお気に入りで、飲み方にこだわりがある。怒ると怖い。

癒川の秘密を知った事をきっかけに、彼女と恋仲になる。クラスメイト達をリーダーとして導いてきたが、ラッセから無能と判断され、彼に離反された。

 

 

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【超高校級の栄養士】(サカエ)陽一(ヨウイチ)

 

「なんか言ってくれりゃあ、その場でパパッと作るぜ!」

 

現状:生存

性別:男

身長:190cm

体重:81kg

胸囲:93cm

誕生日:10月16日(世界食糧デー)

星座:てんびん座

血液型:A型

好きな物:食える物全般、かわいい女子

嫌いな物:食い物を粗末にする奴、ムサい野郎

利き手:右

出身校:東風井高校

ICV:内山昴輝

外見:明るめの茶髪。ボサボサに広がったショートヘアー。前髪は長め。瞳は、ダークグリーン。三白眼。やや筋肉質な体型。

服装:白いTシャツに深緑のスラックス。腰に深緑の学ランを巻いている。靴は、ダークグレーのスニーカー。ピアスやネックレス、チェーンのブレスレット、指輪などアクセサリーをたくさんつけている。

人称:オレ/お前、テメェ/アイツ、あの子/男:苗字呼び捨て、女:苗字+ちゃん(例外…ラッセ:ラッセ)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

チャラ男だが、その見た目に反して栄養士としての才能を持つ。トップアスリートの朱鳥凛奈の管理栄養士でもあり、彼女を食事面でサポートして、五輪優勝へと導いた。自身で飲食店を経営しており、予約が取れないほどの人気店となっている。料理全般得意で、言われた物をすぐに作れるという特技を持つ。女好きで、よく女性陣を口説こうとしているが、朱に阻止される。しかし、それでもめげない強いメンタルの持ち主。料理に対しては並々ならぬ情熱を注いでおり、食べ物を粗末にする人が大嫌い。

不動院が処刑されてからは穴雲のやり方に疑問を抱くようになり、ラッセに従うようになった。

 

 

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【超高校級の曲芸師】(ヂュ)雪梅(シュエメイ)

 

「うるさいです!!ワタシ、女の子いじめる男、許せないでス!変態には死ヲ、天誅です!」

 

現状:死亡(3章シロ)

性別:女

身長:163cm

体重:47kg

胸囲:95cm

誕生日:1月25日(中華まんの日)

星座:みずがめ座

血液型:B型

好きな物:小籠包、雑技、妹NEW!

嫌いな物:ラーメン、変態

利き手:右

出身校:梁鳳高中

ICV:折笠富美子

外見:黒髪を両サイドでシニヨンにしていて、前髪を切り揃えている。瞳は、猫のような金色。肌は、うっすらと日焼けしている。細身で、巨乳。

服装:赤いチャイナ服。ズボンは、くるぶしの部分がすぼまったタイプで、色は白。靴は黒いぺたんこ靴。小物類は、鈴がついた白いお団子カバー。

人称:ワタシ、ワターシ/アナタ/アノ人/男女共に名前+サン。(例外…栄は呼び捨て。)モノクマ、モノベル:白黒熊、白黒虎

 

北京から来た女の子。日本語を勉強し始めて日が浅いので、カタコト。敬語で話しているのは、まだ丁寧な日本語しか勉強していないかららしい。『朱雑技団』の団長を務めている。数年前までは無名だったが、人間離れしたアクロバティックな芸が話題を呼び、世界的に有名なアーティストとなった。命知らずと言われるような、スリリングで超高難易度の芸を得意とする。社交的で人懐っこい。正義感の強い性格で、特に変態が大嫌い。よく変態(特に栄)を、父親から教わった拳法で撃退している。また、料理も得意で、中華料理は全て作れる。

ほとんど落ち度は無かったが、偶然不動院が事件の隠蔽工作をしているところを目撃してしまい、彼女に殺害された。

 

 

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【超高校級の資産家】財原(サイバラ)天理(テンリ)

 

「それは凡人の考え方だね。世の中、お金で買えない物なんて無いんだよ。ま、あくまでこれは自論だけどね。」

 

現状:生存

性別:男

身長:182cm

体重:64kg

胸囲:84cm

誕生日:3月12日(財布の日)

星座:うお座

血液型:AB型

好きな物:ガリ●リ君、通貨、株、散財、スリルNEW!

嫌いな物:キャビア、貯金

利き手:両手

出身校:帝鄕学院高等部

ICV:浪川大輔

外見:ロリ顔。緑がかった黒髪。やや癖っ毛のミディアムヘアー。前髪が長めで、目が隠れ気味。頭頂部から細いアンテナが生えている。瞳は澄んだ翡翠色。左目の下に泣き黒子がある。肌は不気味な雰囲気が漂うほど白い。左肩に$の刺青がある。八重歯。

服装:赤いシャツ、黒いネクタイ、ダークグレーのスラックスの上に、黒いカーディガン。靴は黒いローファー。小物類は両耳のピアスと右手中指の指輪。

人称:俺/キミ/あの子、アイツ/男:苗字+クン、女:苗字+サン(例外…ラッセ:国王陛下)モノクマ、モノベル:クマちゃん、ベルちゃん

 

どこかミステリアスで不気味な雰囲気が漂う美少年。高校生にして世界屈指の資産家。小学生の頃に株で大儲けした事で有名になった。投資オタクで、隙あらばすぐに株や通貨の話をしてくる。イタズラ好きで考えが読めないが、言いたい事はハッキリ言うタイプ。中国語が話せたり、多少人の思考が読めたり、ギャンブルが得意だったりと割と多才。正確な体内時計を持っているが、寝坊の常習犯で、いつも眠そうにしている。意外にも貧乏舌。また、浪費家でお金の管理が苦手。

極度のギャンブラー気質で、スリルを味わいたいという理由で毎回裁判をかき乱す問題児。自分の楽しみの為なら何でも利用する狡猾さと、つまらないと判断した人物を容赦なく切り捨てる冷酷さとを持ち合わせる人物でもある。

 

 

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【超高校級の工学者】入田(イリタ)才刃(サイバ)

 

「僕ちゃんがちっちゃい子だと!?バカ言え!!僕ちゃんは、れっきとした高校生だぞ!!」

 

現状:生存

性別:男

身長:150cm

体重:42kg

胸囲:66cm

誕生日:11月21日(インターネット記念日)

星座:さそり座

血液型:O型

好きな物:飴、メカ、特撮、弟NEW!

嫌いな物:コンソメ味、機械オンチ

利き手:右

出身校:湊工業大学附属高校

ICV:田村ゆかり

外見:ショタ枠。水色の髪を、ヘアバンドでポニーテールにしている。瞳は、澄んだ水色。頭頂部に稲妻型のアホ毛。

服装:白いブラウス、サスペンダー付きの黒い短パンの上にブカブカの白衣。背中にランドセル型のメカを背負っている。靴は、黒いロングブーツ。

人称:僕ちゃん/オマエ/アイツ/男女共に苗字呼び捨て。(例外…ラッセ:王様)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

小学生にしか見えないが、れっきとした高校生。中学生の時にノーベル物理学賞を受賞した天才児。機械全般に強く、ハッキングやコンピューターゲームのプロでもある。自分の才能に絶大な自信があり、周りの人間を小バカにしがちだが、自身の研究を世界への貢献のために使うという、科学者としての心得はきちんと重じている。子供っぽい性格で、予想外の事があると泣きがち。夢は、自身の発明でSFの世界を再現する事。ランドセル型のメカが、自身の最高傑作らしい。

不動院が処刑されてからは、死の恐怖に怯え出し、部屋に引きこもるようになった。

 

 

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【超高校級の看護師】癒川(ユカワ)治奈(ハルナ)

 

「私、皆さんのお役に立てるように頑張ります。」

 

現状:生存

性別:女

身長:153cm

体重:41kg

胸囲:83cm

誕生日:5月12日(ナイチンゲールデー)

星座:おうし座

血液型:A型

好きな物:いちご、動物、弟NEW!、穴雲星也NEW!

嫌いな物:レモン、命を粗末にする人

利き手:右

出身校:明條女学院高等部

ICV:原由実

外見:ピンクがかった赤い髪を左側でサイドテールにしている。前髪は切り揃えている。瞳は、ザクロ色。左口元にホクロがある。

服装:白と紺を基調としたセーラー服の上に、クリーム色のカーディガン。黒いソックスに茶色いローファー。

人称:私/あなた/あの人/男女共に苗字+さん。(例外…ラッセ:国王陛下)モノクマ、モノベル:学園長、看守長

 

温厚で真面目な女子生徒。優れた医療技術を持ち、大震災の時も現地の医者の手伝いをして多くの人々の命を救った。並の看護師より優秀だが、本人は自分の才能を過小評価している。人の役に立つ事が何よりも幸福だと考えており、そのための努力は惜しまない。礼儀正しく、誰に対しても敬語で話す。アドリブが苦手で、予想外の事が起こると過呼吸を起こしてしまう事がある。謝り癖があり、本人が全く悪くない場面でも、相手が止めるまでずっと謝り続けてしまう。小動物が好きで、特に翠がお気に入り。

栄に秘密を知られ、彼を殺害しようとしたが、穴雲の妨害によって失敗。その後、二人と和解し、穴雲と恋仲になる。

 

 

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【超高校級の詩人】詩名(シイナ)柳人(リュウト)

 

「オイラは風の妖精。自由気ままに旅をして、行く先は誰にもわからないのさ〜♪」

 

現状:生存

性別:男

身長:100cm

体重:28kg

胸囲:62cm

誕生日:6月6日(楽器の日)

星座:ふたご座

血液型:B型

好きな物:サラダ、旅行、詩歌

嫌いな物:ステーキ

利き手:右

出身校:河谷梛高校

ICV:堀江瞬

外見:外ハネのライムグリーンの髪。目は、開いているのかわからないくらい細い。

服装:緑とクリーム色を基調とした、吟遊詩人のような格好。リュートを持っている。

人称:オイラ/君/アイツ/男女共に苗字+君。(例外…ラッセ:国王様、たまにラッセ君)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

幼稚園児のような体格の少年。世界中を彷徨いながら詩歌を作り続ける盲目の吟遊詩人。詩歌の名人で、彼が残した詩歌は必ず現地で話題となり、多くの著名なアーティストに影響を与えてきた。気分屋で自由人。一度自分の世界に入ると、周りの声が全く聞こえなくなり、自身の集中力が切れるまでずっと歌い続けてしまうという癖がある。そのタイミングは、自分ですらわからないらしい。聴覚と霊感が人一倍優れているため、目が見えなくても生活にはあまり困っていないらしい。ちなみに、最近の歌のテーマは『風』らしい。

日暮や神座と仲良し。不動院が処刑されてからは穴雲のやり方に疑問を抱くようになり、ラッセに従うようになった。

 

 

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【超高校級の???】神座(カムクラ)ゐをり(ヰヲリ)

 

「…喋るのは嫌い。以上。」

 

現状:生存

性別:女

身長:140cm

体重:26kg

胸囲:65cm

誕生日:11月15日(きものの日)

星座:さそり座

血液型:AB型

好きな物:和菓子、不動院剣NEW!

嫌いな物:揚げ物、会話

利き手:右

出身校:不明

ICV:上田麗奈

外見:艶のある黒髪ロング。瞳は、ルビーのような真紅。低体重。ロリ枠。肌は、陶器のような白。

服装:ピンクと紺の女学生のような着物。上に、白い羽織を着ている。頭に、椿の髪飾りをつけている。

人称:私/あなた/あの人/才能の日本名(景見→不運、白鳥→美女、羽澄→舞踊家など。)モノクマ、モノベル:白黒熊、白黒虎

 

まるで明治時代か大正時代からタイムスリップしてきたかのような、浮世離れした雰囲気の謎多き美少女。本人は希望ヶ峰学園の学生だと言っているが、実際のところは素性が全くわかっていない。口数が少なく、ほとんど話そうとしない。不動院以上に流行や精密機器に疎く、携帯を握った事すらないらしい。カタカナの外国語もあまり好まないらしく、外国語なども無理矢理日本語にして言う。他の生徒の才能が気になる様子で、特に景見の事が気になっているらしい。不動院とは趣味が似通っているため、仲良し。

不動院の事を唯一の親友だと思っており、彼女が処刑された時は初めて涙を流した。不動院に裏切られてからは、仲間に対して少し不信感を抱くようになった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

【学園長】モノクマ

 

『うぷぷ、だってさ…【超高校級】という『希望』同士が殺し合う、『絶望的シチュエーション』…最高だと思わない?』

 

性別:なし

身長:65cm

体重:不明

胸囲:不明

誕生日:不明

血液型:なし

好きな物:絶望

嫌いな物:希望

ICV:大山のぶ代orTARAKO

外見:左右で色が白黒に分かれているクマ。左目が悪魔の羽のような形をしている。

人称:ボク/キミ、オマエ/みんな、オマエラ/男:苗字+クン、女:苗字+サン(例外…ラッセ:ラッセクン)

 

自称才監学園の学園長。景見ら16人を才監学園に収監した張本人。【超高校級】という『希望』が殺し合うという『絶望的シチュエーション』を楽しんでいる。よくモノベルと一緒に茶番劇漫才を披露しているので、生徒達からは呆れられている。

 

 

 

【看守長】モノベル

 

『フッフッフ、アナタ達を絶望のどん底へと誘って差し上げましょう!』

 

性別:なし

身長:70cm

体重:不明

胸囲:不明

誕生日:不明

血液型:なし

好きな物:絶望

嫌いな物:希望

ICV:中尾隆聖

外見:左右で白黒が反転しているサーベルタイガーのぬいぐるみ。モノクマより一回り大きい。

人称:ワタクシ/アナタ/アナタ達/男女共に苗字+様。(例外…ラッセ:ラッセ様)

 

自称才監学園の看守長。モノクマの助手的存在。礼儀正しく、紳士的な振る舞いをするが、あくまでそれはポーズ。本性は、人が絶望に堕ちるのを見て喜ぶ、悪魔のような性格。よくモノクマと一緒に漫才を披露している。



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第4章(非)日常編①

タイトル元ネタは、『夜よ鼠たちのために』です。


成威斗クンと雪梅ちゃん、そして剣ちゃんが死んだ。

成威斗クンと雪梅ちゃんは、訳の分からない理由で剣ちゃんに殺された。

二人とも、すごくいい子だったのに…

剣ちゃんも、もう少し話し合っていれば二人を殺すのを止められたかもしれないのに…

どうしてあんな事を…

 

 

 

『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』

 

 

 

…んあっ。

 

クマさんのうるさい放送が鳴り響く。

そういえば、裁判が終わってみんなで食堂で話し合った後、部屋で寝たんだっけ。

…もう7時か。

食堂に行こう。

 

 

 

 

【食堂】

 

「やーん、ちょっと何コレー!!誰か助けてー!!」

「うるせェ!!黙って言う通りにしやがれ!!」

ん?なんだろう…

何かトラブルがあったのかな?

あれは…陽一クンとラッセクン、それから天理クン…?

 

「見ろ!コイツ、やっぱり持ってたぜ!!没収だ没収!!」

「あああー。俺の大事なガ●ガリ君コンポタ味がー。返してよー。」

「嘘をつくな。これ、ピッキングの道具入れだろ。」

「てへっ。バレちった。」

「ねえ、何やってんの?」

「ちょうど良かった。おい触角帽子。今すぐ壁に手をつけ。3秒以内だ。でないと、ペナルティーだぞ。」

「え、ペナ!?ちょっと待って、何の話!?」

「よし、手をついたな。おい和服。コイツの服の中を調べろ。」

「……………。」

「え、ちょっと、何!?ゐをりちゃん何やってんの!?」

「………ない。」

「…そうか。よし、通れ。」

「えぇ…何今の!?何がどうなってるんだ!?」

 

「…国王陛下が決めたルールだよ。」

「えっ…」

すでに食堂の中にいた星也クンが話しかけてきた。

「狛研さんも知ってると思うけど、ラッセ陛下は栄君達4人を手下にして、自分で作った新しいルールでみんなを統治…悪く言えば支配しようとしているんだ。…その名も、『才監帝国』。」

「『才監帝国』!?…ちょっと待ってよ!?聞いてないよ、そんな話!」

「だろうね。陛下が勝手に決めたルールだもの。僕も詳しい事はわからないけど、従わなかった人にはペナルティーを、才監帝国に貢献した人にはボーナスを与えて、ルールを守らせてるらしいんだ。才監帝国の国民じゃない僕と癒川さんは、さっきもひどく迫害を受けたよ。」

「うーん。それはひどいねぇ。」

 

「ねえ君たち。聞こえてたよ?」

「あっ、柳人クン…」

「帝国の方針に対する陰口はペナルティーの対象さ〜♪陛下に報告しておくよ〜♬」

「ちょっと、何それ!ひどいよ!」

「オイラに言われてもね。陛下が決めた事だからねぇ。不満があるなら陛下に言ってみるかい?…まあ、才監帝国の国民じゃないキミ達にはその資格は無いけどねー。」

「柳人クン!こんなの、絶対おかしいよ!キミは、こんな変なルール、なんとも思わないの!?」

「狛研さん。話すだけ無駄だよ。詩名君は、才監帝国の国民なんだから。僕らの言う事を聞いてくれるわけないよ。」

 

「そーそー。狂信者には構うだけムダってね。」

「天理クン…!」

「てへへ、俺もいきなり服装検査されちゃいましたー。アイツらなんなんだろうね、ホント意味わかんないねー。」

「君は帝国の国民にはならなかったのかい?」

「あたりめーじゃん。ダサイ勘違い帝国なんかの国民になってたまるかっつーの。あ、そうだ。いい事思いついた。」

「何?」

「あのさ、向こうは4人で国作ってるじゃん?だったら、こっちも残りの4人でグループ作って戦争すりゃあいーじゃん!ヒッキー入田は無視するとして…この際、どっちが正義か白黒ハッキリさせよーぜ。」

「ダメだよそんなの。とにかく、平和的にだね…」

「そんな事言ってっからアイツらが好き勝手やるようになっちゃったんじゃん。時には徹底的に叩き潰して自分の間違いを認めさせる事も大事だぜ?」

「うーん…」

 

「さてと、そろそろ朝飯にしちゃおーぜ。あ、そうそう。飯は、帝国の管轄だから栄クンの飯が食いたきゃメダルを払わなきゃいけないんだと。しゃーねーから自分で作るか。」

「君、メダル持ってるのに払いに行かなくていいのかい?」

「だって、いくら栄クンの飯とはいえ、帝国の飯なんて食いたくねーし。癒川サン。手伝ってよ。」

「あ、はい…」

「待って。僕も手伝うよ。」

「じゃあボクも手伝うよ。」

あらら。

結局全員で作る事になっちゃったね。

 

『うっぷぷぷぷ、オマエラ、随分と仲悪そうじゃん?全員でここを出るとか言ってたのはどうしたの!?』

『フッフッフ!ご機嫌麗しゅう皆様!!』

「モノクマ…!」

「…フン。」

『おや、いかがなさいましたか穴雲様!今日もワタクシ達に生で会えたのがそんなに嬉しいですか!?』

『うぷぷぷ!生の方がいいものといえば、性交とボク達からのお知らせって事は誰もが知ってる常識だよね!ここ、テストに出るからちゃんと勉強しなよ!』

「あっははー。さりげなく下ネタブチ込むところあたりがクマちゃんらしいねー。そいで?今回も、新しいエリアのお知らせに来てくれたんでしょ?」

『おや、さすがは財原様。物分かりが宜しいようで助かります。財原様の仰る通り、ワタクシ達は新しいエリアの説明に参りました。今回開放しましたのは、美術室、音楽室、物理室、情報管理室、それから研究室が3部屋でございます。』

「ほーん。」

『それから、今回はもう一個お知らせがあるんだな!』

「お知らせ?」

『そうです。ズバリ!動機の発表です!』

動機の発表?

随分とまた急だねぇ。

まだ新しいエリアを開放したばっかなのに。

クマさん達、一体何を考えてるのかなぁ。

『今回の動機…それはね。』

 

 

 

『お金だよ!』

「お金?」

『今、ウォレットに新しい機能を追加したから、それを見てみてよ!』

新しい機能…?

なにこれ、ランキングっていうのがあるよ。

数字が書かれてて、それが大きい順にランキングになってるね。

一番高いのは才刃クンで、231…その次がゐをりちゃんの165か。

陽一クンは160、ラッセクンは72、治奈ちゃんは60、ボクは49、天理クンと柳人クンが36で、星也クンが2か。

なんなんだろう、この数字は…

「なにこれ?」

『それは、オマエラの首にかかってる金額のランキングだよ。まあ、どっかの漫画でいう懸賞金みたいなもんだね。ランキングはポイント制で、1ポイントあたりの金額は1兆円。つまり、1兆円にオマエラのポイントをかけた金額が、オマエラの懸賞金って事!』

「い、いいい1兆円!!?マジかよ!?」

「懸賞金…まさか、今回の動機って…」

『おや、勘のいい穴雲様は気付いたようですね。そうです。もし誰かが他の誰かを殺害した場合、被害者の首にかかっていた懸賞金がそのままクロの物となります。』

「って事は、誰かを殺せばメッチャ金貰えるって事か!?」

「この胡散臭いクマちゃんが本当の事言ってるかどうかはわかんないけどね。それより俺のピッキングツール返してよ。」

「ざけんな!論点すり替えようとしてんじゃねえよ!」

「テヘッ☆まあ、とりあえずクマちゃんがくれた動機が何なのかは理解できたよね。ところで、俺達のポイントって何を基準に決まってるの?」

『それはお答えできません。』

「あっそ。」

『さてと、新しいエリアと動機の説明も終わった事ですし、ワタクシ達はこれにて失礼します。』

『それじゃあ、まったねー!!』

「あ、ちょっと待ってクマちゃん。」

『ほえ?何、財原クン。くだらない事だったらおしりペンペンだよ?』

絶対拷問レベルのヤツじゃんそれ。

「あのさー、ラッセ陛下達が、なんか帝国とか作って好き勝手やってるんだけど。こちとら不自由だし、このままだと精神衛生上良くないし…なんとかしてよクマえもーん!」

『ボクはタヌキ型ロボットじゃないクマー!その事に関してなんだけど、ボク達からは特に何もしないよ。自分で解決してね。』

「どーして?」

『まあ、ボクは、オマエラの行動に口出ししないというよりはできないんだよね。別に校則違反してるワケじゃないし。』

「えー。なにそれー。」

『まあ、帝国を作るなり戦争するなり好きにしてよ。用事が済んだからバイバーイ!』

二匹は陽気に去っていった。

 

「今回の動機はお金か…あの二匹は、ボク達を弄んで楽しいのかな?」

「全くよー。クマちゃんならこのふざけた制度どうにかしてくれんのかと思ったのによー。クマちゃんの役立たずー!ドアホー!!」

「やめなよ。敵を増やすだけだよ。」

「ほへーい。」

「さて、今回も新しいエリアの探索をするのだろう?とりあえず、時間割を決めたから見ろ。」

 

  俺、和服  10:00〜11:30 情報管理室

        11:30〜13:00 研究室

料理バカ、盲目 10:00〜11:00 美術室

        11:00〜12:00 音楽室

        12:00〜13:00 物理室

 

「なんでお前らだけ時間が1時間半ずつなんだ?」

「フン。この学園の情報を管理している部屋なら、そう簡単に調べられるものではなかろう。研究室も、3部屋あるしな。」

「…そっか。」

「あの…私達の名前が無いんですけど…」

「当然だ。帝国の国民でない者に探索などさせるわけがなかろうが。どうしても調べたくば、貴様らが誰も殺さないという事を証明してみろ。特に触角帽子と成金。貴様らには好き勝手行動させないぞ。」

「ひどいやラッセクン!」

「なんとでも言うがいい。俺は、自分の国の国民が『平和』ならそれでいいからな。俺は、そのために今できる限りの事をしているだけだ。」

「なるほどね。自分にとって敵になりうる物を排除していけば、自分だけは幸せになれるってか。負け組の発想だねぇ。」

「貴様がそうやって大口を叩いていられるのも今のうちだ。いずれ、そこのメガネに命を預けた事を後悔する事になるぞ。」

「別に穴雲クンに命を預けたわけじゃないけど。テメェなんざに命を預けるよりは100倍マシってだけだよ。いざとなったら自分の身くらい自分で守るよ。」

「…フン。そうやって戦争で大敗した奴を、俺はごまんと見てきたぞ。」

「あっそ。」

 

うーん、どうしよう。

ラッセクン達が勝手に探索を始めちゃったよ。

これじゃあ探索ができないね。

「ねえ、どうしよっか星也クン?」

「うーん。さすがに探索もせずにただ時間を過ごすのもねぇ…じゃあ、こうしないかい?帝国民のみんながまだ探索してないエリアを先に少し見ておこうよ。さすがに最初から全部のエリアを回るのは無理だろうし。」

「なるほどねー。変な事される前に先手を打つってか。穴雲クンあったまいー!」

「じゃあ…とりあえず担当分けだけど、狛研さんは癒川さんと一緒に音楽室を見に行ってくれるかい?僕は財原君と一緒に物理室に行ってくるから。」

「いいよー。」

「穴雲さん、また財原さんと一緒に探索を…?」

「癒川サン、もしかして俺に穴雲クンを取られてシットしてんの〜?このままNTR展開になったらどうしよ〜的な?」

「そ、そんなんじゃありません!!そんな、嫉妬なんて…」

「俺はノンケでも食っちゃうからねー。このまま穴雲クンとイチャイチャ…」

「君、いい加減にしなよ。」

「じょ、冗談だろー?そんな怒んなってー。」

「…見ての通り、財原君を1人にしたら何をしでかすかわからないからね。僕が責任を持って見張っておくよ。」

「そういう事ならいいんですけど…」

「それじゃあ、担当は決まった事だしパパッと探索終わらせまっせー。」

ボク達は、そのまま解散した。

 

 

 

 

【内エリア 5F】

 

「ねえ、治奈ちゃん。」

「はい、なんでしょうか狛研さん。」

「治奈ちゃんは、なんで帝国?側につかなかったの?」

「…ええと、それは…私は、穴雲さんについていきたいと思ったからです。私は、その…穴雲さんの事を、恋人として愛していますから。まあ、国王陛下のやり方に疑問を感じたというのもありますが…」

「なるほどねー。じゃあさ、治奈ちゃんはなんで星也クンの事を好きになったの?」

「へあっ!?いきなりその質問ですか!?」

治奈ちゃんったら、顔真っ赤だよ。

トマトみたいでかわいい♡

「…え、と…一目惚れ、です…。初めて会って会話をした時から少しずつ意識するようになって…それで、彼が私の穢れた過去をどうでもいいと言ってくださった時、私は一生この人についていこうと思ったんです。」

「ふーん。なんかいいね!そういうの。ボクにも現れないかなー、運命の人?ってヤツ。」

「え?景見さんではないのですか?」

「…へ?どういう事?凶夜クンはお友達だったけど。」

「…あ、そうですか。ご愁傷様です、景見さん…

「なんか言った?」

「いえ、何も。…あ、着きましたよ。」

なんか、今度は音符とピアノの絵が描かれてて、いかにもって感じだね!

それじゃ、探索いっくよー!

 

 

 

 

【音楽室】

 

「…へぇ。」

 

さすがはこの学園の音楽室だね!コンサートホールみたいな造りになってて、いろんな楽器があるよ!

「これはすごいですね…」

「柳人クンとか喜びそうだよね!…あ、見て!あっちの部屋はカラオケボックスになってるみたいだよ!すごいねー、カラオケまであるんだ!」

「…あ、そうですか。」

「ん?どしたの治奈ちゃん?急にテンション下がったけど。」

「あ、いえ…なんでもありません…」

「…もしかして、治奈ちゃんって…オンチだったりする?」

「へぁっ!!?な、なんでこういう時だけ鋭いんですか!?」

「やっぱりかー。でも大丈夫だって、オンチって練習すればほとんど治るらしいから!」

「…本当に治ったら苦労しませんよ。」

あらら。

治奈ちゃんてば落ち込んじゃったよ。

誰でも苦手な事のひとつやふたつはあるもんなんだし、そこまでしょんぼりしなくていいじゃない。

でも、調べたい事は大体調べ終わったし、そろそろ移動しようかな?

 

 

 

 

【物理室】

 

「さーて、ぶっつり室の探索いっくぜー。実におもしろーい。」

「…ねえ、財原君。」

「ほにゃっ?」

「君はなんで、僕に従ってくれているんだい?」

「勘違いすんなよー。俺は、別にキミに従ってるつもりも、命を預けたつもりもないから。俺は俺のやりたいようにやってるだけだよ。ただ、たまたまキミとは帝国の犬になりたくないっていう気持ちが同じだっただけだねー。」

「じゃあ質問を変えるよ。君は言ってたよね?お金で動かせない物はないって。僕には、お金にうるさい君が、メダルのボーナス制度を導入してる帝国側につかなかったのが不思議なんだけど。なんで君は帝国に反発してるの?」

「え?何?じゃあ何?穴雲クン、俺に裏切ってほしかったわけ?」

「そういうわけじゃなくて…ただ、疑問に思っただけだよ。」

「あっそう。んー、そうねぇ。一言で言うなら、イラッとしたからかな?」

「…と、いうと?」

「俺はね、自分が人生を楽しむ事だけにしかお金を使わない主義なの。罰金だとか、国のために何かをするとか、そういうくだらねー事にお金を浪費するのがバカバカしくてやってらんないんだよ。どう?これで満足?」

「…うん。ある意味君らしいね。…着いたよ。ここが物理室みたいだね。」

今度は、振り子と電球の絵か。

物理室らしいイラストだね。

「じゃあ、入るよ。」

 

 

 

 

【物理室】

 

「…なるほど。」

物理室には、振り子や電子回路など、実験に使ういろんな機材が置かれていた。

「ねえ、なにこれ。シーソー?」

「それは多分、てこの原理の実験のために使う機材じゃないかな?」

「ほーん。…ほにゃっ。」

「どうかした?」

「…なんか、変な紙が落ちてたんだけど。」

「紙?」

そう言うと、財原君は紙の束を見せてきた。

 

「…!?」

そこには、人体の冷凍保存技術や脳内のデータ解析、才能の移植技術などについての論文が書かれていた。

「なんだこれ…!?」

「その変な論文さぁ、最後のページ見てみてよ。脳内のデータ解析についての項目。それに書かれてる技術ってさ、当たり前のように書かれてるけど、そんな技術は今現在無いよね?」

「確かに…こんな技術があるなんて情報、一度も聞いた事ないよ。」

「じゃあ、これは一体何なんだろうね?」

「わからない…」

「…未来人からの手紙、だったりして。」

「…は?」

「なーんてね!冗談冗談!にししっ!」

…急に何を言い出すかと思えば。

相変わらず考えが読めないなぁ、財原君は。

 

 

 

 

【情報管理室】

 

「…フン、ここか。」

部屋のドアには、パソコンの絵が描かれてるな。

いかにも、といった感じだ。

「おい和服。中を調べるぞ。」

「………。」

コイツ、本当に何も喋らないんだな。

正直気味が悪い。

 

「…ほう。」

中には、やはり無数に並んだコンピュータが忙しなく作動していた。

「さすがは、この学園の情報を管理している部屋、といったところか。俺の国の軍備用の情報室にはやや劣るが、それでもこの学園の全ての情報を管理するには申し分ない規模だろうな。」

「…。」

和服は、パソコンを指差した。

「…は?これを使ってみろ、という事か?」

「…。」

「バカ言え。俺は、コンピュータの達人ではないのだぞ。下手に動かして学園側から下手に規制をかけられたりウイルスが侵入したりしたらどうする。」

「………国王…怖い、の…?」

「…余計なお世話だ。」

この女、普段は何も喋らない癖に何故こういう余計な事だけは口を出すのだ。

「…だがまあ、起動するだけしてみるか。実際にこれが使えるものなのかどうか確認しておかねばな。」

俺は、パソコンの電源を入れてみた。

「…む。」

「…?」

「チッ、やはりそう都合良く使わせてくれるわけがなかったか。見ろ。パスワードがかかってる。…こういう時に子供がいれば、解析してあわよくば学園のネットワークに侵入できたのだが。こんな時に何をやってるんだあの小心者は。」

「…。」

「フン、収穫は無し、か…行くぞ。」

「…行く、の………?」

「使えないんじゃガラクタと同じだ。もうここに用はない。」

「……………。」

 

 

 

 

【内エリア 5F】

 

「今回開放された研究室は、3部屋だと言っていたな。」

「…これで、13人…………」

「行くぞ和服。片っ端から調べていかねば。」

「…。」

「…む。まずはここか。」

白い開き戸か。

どこかで見た事あるようなカラフルなロゴで研究室と書かれているな。

…この部屋は、消去法でいくとアイツの部屋か。

「中に入って調べるぞ。」

「………。」

 

「…ほう。」

中は、どうやらニューススタジオのような造りになっているらしい。

部屋の中には、奴の出演している番組が使用しているものと思われる音楽が流れている。

後ろの大きなスクリーンには、世界各国の天気の変化を表すグラフが表示されているな。

ちゃんと俺の国のグラフもあるのが好印象だな。

…ほう、控え室のような小部屋まであるのか。庶民の部屋の癖に贅沢な造りをしおって。

ここには、ニュースで使う資料や衣装などが置いてあるな。

…ここは。

「…【超高校級のアナウンサー】の研究室だろうな。」

「…。」

「おい、どうした和服。何か気になる事でもあったか?」

「………。」

「…なんだ。」

 

和服が指を差した先には、謎の機械が設置されていた。

ボタンがひとつしかなく、透明なカバーがかかっていた。

「なんだこれは…む、開かんな。ビクともせん。どうなってるんだこのカバーは。」

「………本人、じゃ…ない、と………押せ、な…い……の…か、も………」

「…はぁ、なんだそのめんどくさい造りは。全く、どいつもこいつも調べられん物をわざわざ用意しおって。…一通り調べたし、もうここに用はない。行くぞ。」

「……………。」

 

 

 

 

「……………。」

「おい、どうした和服。何か気になる事でもあるのか。」

「………私、の…研究室………いつ、に…なった、ら………開放、さ…れ………る…の、かな…」

「フン、そんな事か。俺もまだ自分の研究室を見てはおらんぞ。そんな事でいちいちくよくよ言うな、みっともない。」

「………同じ?」

「…貴様のような小娘と同じにされるのは癪だが…まあ、そうなるな。」

「…。」

何を喜んでいるんだこの小娘は。

「…着いたぞ。」

今度は、木製のドアか。

木の棒を並べて組んだだけの粗雑な造りのドアで、羽根が装飾されている。

…好き勝手に伸び散らかした植物の蔓がうざったくて仕方がない。

【超高校級の生物学者】の研究室は3階にあったから、今度は奴の研究室か。

「調べるぞ。」

「…。」

 

「…ほう。」

中は、全体的に木でできた部屋だった。

部屋にはギターのようなもので演奏された音楽が流れており、室内なのに何故か心地の良いそよ風が吹いている。

机やベンチなどの全ての家具が歪な木で造られている。

…ハンモックまであるのか。

本棚の中には、詩や歌についての本ばかりが置かれているな。

…ここは。

「【超高校級の詩人】の研究室か。」

「……………。」

「奴には、後で研究室を見つけたと報告しておこう。用は済んだ。行くぞ。」

「………もう、行く…の…?」

「当たり前だろ。今回の目的は探索だ。それが終われば、次の部屋に行くのは当然であろうが。…ところで貴様、何をちゃっかりくつろいでおるのだ。ここは貴様の研究室ではないのだぞ。」

「………ごめん、なさい。」

 

 

 

 

「…フン、今回もハズレか。全く、何故毎度毎度愚民の研究室ばかり…」

「………。」

「…まあ、文句を言っていても仕方があるまい。おい和風。研究室が無い者同士、何か話でもするか?」

「………しりとり。」

「…は?この状況で何を言っているのだ貴様は。…りんご。」

はっ。

俺とした事が、つい返してしまった。

…だがまあ、たまにはこういうのも悪くないのかもしれんな。

「…ごま。」

「マスタード。…っと、着いたぞ。」

「…。」

今回の部屋は…ほう、両開きか。

両サイドに北欧神話の神々を模した大理石の彫刻が置かれていて、ドアもダークパープルの研究室より高級な素材で造られている。

ドアには王家の紋章がデザインされており、ドアノブは純度の高い金でできているのか。

…む。この扉、見覚えがあるぞ。

「…ほほぅ。この雰囲気は、もしや…」

「…。」

「おい和服!!早速中に入って調べるぞ!!」

「………。」

 

「ほぅ…!」

中は、金や高級な鉱石で造られた部屋だった。

揃えられている家具は全て最高級のもので、壁や天井などに宗教画が描かれている。

壁の絵は、歴代のシルヴェンノイネン王国の国王の肖像画だ。

カーペットには、我が国が生産している織物が使われており、用意されている茶菓子は全て我が国の名物だ。

そして、部屋の最奥にある玉座には、王家の紋章がデザインされているではないか!

それに、この部屋は俺の部屋と造りが酷似している。ここまで再現度が高いとは…!

「………【超高校級の国王】の…研究室………」

「ほう…素晴らしい!ここまで配慮が行き届いているとは思わなかったぞ!褒めてやろう、モノクマ!」

「………あの、国王…?」

「おいどうした和服!何をそんなに不機嫌そうにしておるのだ!俺は今気分がいい。ここにある茶菓子を食っていくといい。」

「………いらない。(プイッ」

なんだアイツ。何故拗ねておるのだ。

 

 

 

 

【内エリア 5F】

 

「クッソ…オレはなんでことごとくグループ分けに恵まれねェんだよ。詩名、さっさと探索終わらせるぞ!」

「君、すこぶる不機嫌だねぇ。神座君と同じグループじゃないのがそんなに悔しいかい?」

「うっせぇ!!なんで俺のグループは、毎回男だけか朱ちゃんが一緒なんだよ!!」

「それは日頃の行いのせいじゃないかい?まあ、オイラはどうでもいいけどね。」

「ああはいそうですか!!」

っと、ここが美術室か。

筆とパレットの絵が描かれてるし、多分そうなんだろうな。

「ここか!オラ行くぞ詩名!!」

「…君って、不機嫌になると急に言動が雑になるよねぇ。まあ、別にいいけど…」

 

 

 

 

【美術室】

 

「へーっ。」

こりゃたまげた。

部屋全体がどデケェアトリエになってんな。

彫刻とか絵とか…色々あるぜ。

へー、氷の彫刻までできんのか。

…なんで鎧とかライフルとかまであるんだよ。

これ、まさかとは思うけど実弾が入ってたりしねェよな?

はっはっは、あのクマがいくら悪趣味だからって、さすがにそれは…

 

ドォン

 

「…!?何の音だい!?」

「ひぇええええ…」

壁には穴が開いて、銃口からは煙が出ていた。

…嘘だろこれ!?実弾入ってんのかよ!?

こんなあぶねェモン置いてんじゃねえよあのクマ!!ったく、おどかしやがって…

…ん?

「どうかしたのかい?」

「この彫刻…アレだよな。『江ノ島盾子』だよな。」

「江ノ島…確か、20年以上前に世界中に絶望を伝染させた、【超高校級の絶望】の親玉…だったっけ。」

「ソイツの彫刻がなんでこんなところに…ん?」

「今度は何を見つけたんだい?」

「…これ、俺の肖像画だ…」

「…え?」

キャンバスには、モノクロで俺の肖像画が描かれていた。

それだけじゃねえ。

よく見ると、ここにいるみんなの肖像画が部屋の至るところに飾られていた。

「詩名。お前のもあるぞ。」

「…そうかい。」

ひときわ目立つのは…狛研ちゃんの肖像画だな。

他の肖像画より明らかにサイズが大きいし、丁寧に額縁に飾られている。

天井に立てかけてあって、まるで信仰の対象みてェだ。

…そういえば、入田の野郎が、狛研ちゃんがこのコロシアイの原因だって言ってたけど…何か関係あんのかな?

まだまだ、オレたちにはわかんねェ事だらけだな。

これは、ラッセ達にちゃんと報告しておかなきゃなんねェかもしんねェな。



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第4章(非)日常編②

みんな探索は終わったのかな?

一応、報告の結果は聞いておかないとねぇ。

「二人とも。そっちはどうだった?」

「あ、星也クンに天理クン。二人も今探索終わったとこ?」

「まあね。それで、探索の報告は?」

「えっとですね…音楽室は、コンサートホールのような造りになっていました。それから、美術室は巨大なアトリエになってましたね。」

「うんうん、なるほどね。」

「星也クン達の方はどうだった?」

「えっとね…まず、物理室の方からね。物理室には、実験で使ういろんな道具があったよ。…それから、」

「脳内の記憶のデータ化についての論文があったんだー。あと、冷凍保存がどうのこうのっていうのもね。」

…データに冷凍保存か。

「そうそう。蘇りについての記載がある論文も見つけたよ。」

「蘇り!?」

わっ、いきなり食いついてきたね、治奈ちゃん。

「あの、その話、詳しくお聞かせ願えませんか!?」

「うーん。俺は、論文の内容をサラッと覚えてきただけだからね。多分現物を見た方が確実だと思うよ。え、何?癒川サン、蘇りとか興味あんの?」

「そりゃあもう、当然です!!死者の蘇りは、医療に携わる者からすれば長年の悲願ですから!!失った命を取り戻す方法があるのなら、今まで亡くなった皆さんや私の弟も…」

「うーん、俺っちとしてはあんまり期待しすぎんのもどうかと思うっち。」

「と、いうと?」

「見ろよこれ。」

「キナ臭えんだよ。論文のクセに実験の内容が一切書かれてねぇし、書かれた日付もデタラメだ。この内容自体ウソって可能性の方が高いんじゃねーの?」

「…そうですか。」

治奈ちゃん、見るからに落ち込んでるね。

だいぶ期待してたのかな?

 

「あと、情報管理室だけどねー、パソコンはパスワードがあって使えなかったんだぁー。入田クンがいれば使えたんだけどね。全く、何やってんだよあのドチビはよー。引きこもってないで出てこいよー。」

「えっと…入田さんは、後で様子を見にいきましょう。心配ですし。…入田さん、昨日の夕食も今朝の朝食も召し上がっていらっしゃらないので、体調を崩していなければいいのですが…」

「だね。あと、研究室なんだけど…今回開放されてたのは、国王陛下、詩名君、あとは僕の研究室だよ。」

「ちぇっ、今回もボクの研究室はないのかぁ。」

「残るは、狛研さんと神座さんと私の研究室だけですね。」

「あーあ、早くボクの研究室見たいなー。」

「だったら、試しに誰かを唆してコロシアイを引き起こしてみれば?そしたら上の階が開放されるぜ?」

しれっと縁起でもない事言うなよ天理クン!!

「…おっと、そろそろ帝国側のみんなが戻ってくる時間だね。」

 

「おい、貴様ら。そこで何をしている。」

「えー、何って…ちょっとお話してただけだよね。」

「うん。」

「ここは今から俺達が報告会と食事のために使うのだ。邪魔者は出て行ってもらおうか。」

「俺的には邪魔なのはむしろキミ達の方なんだけど。」

「何?」

「今まで散々穴雲クンのお世話になっといて、今更反発して変な国まで作っちゃうとか、恩知らずすぎてさすがの俺でも引くわー。御恩と奉公の関係って知ってる?消防でも知ってる常識だよね?」

「メガネが俺達に何をしようと知ったこっちゃない。俺は、アイツに助けられたと思った事など一度もない。それに、いくら口ではいい事を言おうと結果がこのザマだったら、こんな奴に命を預けたくないと思うのが普通だろ。」

「はいはい屁理屈乙。」

「やめなよ二人とも。言い争ったところで、何も解決しないだろ。」

「貴様ごときが俺に命令するな無能が。そんな腑抜けた事を言っているから、クラスメイト一人守れないんじゃないのか。」

「ラッセクン、言い過ぎだよ。天理クンの言う通り、星也クンはみんなのために頑張ってくれてるじゃない。」

「…チッ、貴様にだけは説教されたくないな。黒幕の最有力候補の癖に。…余計な事に時間を使った。報告会を始めるぞ。」

「お、おう…」

 

「まず料理バカと盲目。貴様らから報告しろ。」

「ああ…えっと、美術室はデッケェアトリエになってたな。そこでちと気になるモンも見つけたぜ。」

「…ほう。」

「かの江ノ島盾子の彫刻と、俺達全員の肖像画だよ。」

「…江ノ島盾子だと?聞いた事あるな、確か20年以上前に世界を滅ぼそうとした女がいたとか…だが、奴は20年前に死んでからは、絶望的事件の再来を防ぐため、『絶望』に関する書物などの作品の検閲が厳しくなっているんじゃなかったか?ソイツの彫刻がなぜ美術室に…」

「さあな。オレも詳しい事はわかんねェよ。」

「………私、た…ちの…肖像………画…?」

「ああ、どうやら栄君によると、全員分の肖像画が美術室に飾られていたそうだよ。中でも、狛研クンの絵が一番大きくて、額縁に飾られていたそうだ。」

「…フン。やはり、奴が黒幕か…ますます怪しくなってきたな。」

「………そ、れ…だけ……で、疑う…の………よく…な…い……」

「貴様はどちらの味方なのだ。…まあいい。音楽室は?」

「音楽室は、コンサートホールみたいになってるようだよ〜♪カラオケボックスや調律用の部屋まであったみたいだし、色々楽器もあるみたいだし…音楽を愛するオイラとしては、嬉しい限りだね〜♫」

「…ほう、楽器か。…報告はそれで以上か?」

「ああ。物理室の報告してもいいか?」

「構わん。報告しろ。」

「えっと…色々実験で使う器具が揃ってたな。あと、変な機械が色々あったけど、何に使うのかとか全然わかんねェし、まあ実際行ってみた方が早いと思うぜ。」

「なんだその雑な報告は。…まあいい、俺達からも報告をしておこうか。今回開放されたのは、俺、盲目、そしてメガネの研究室だった。」

「やっとオイラの番か。嬉しいねぇ〜♬」

「それから、情報管理室だが…いい報告と悪い報告がひとつずつある。」

「え、なんだよそれ…怖いんだけど。」

「まず、いい報告から。情報管理室にあるコンピュータは、全て正常に作動するようだ。うまく使えば、学園のネットワークにも侵入できるだろう。」

「マジかよ!?」

「…で、悪い知らせは?」

「…そのコンピュータ全てにロックがかかっている。パスワードを解析しなければ、ネットワークに侵入するどころか検索エンジンすら使えん。無論、超高校級である子供の力を借りればコンピュータ全てをハッキングするのは容易いだろう。しかし、本人があのザマじゃあてにはならんな。」

「入田か…ちょっと心配だな。あとで飯作って持ってってやるか。」

「待て待て。貴様がそこまでする必要は無かろうが。アイツは、自分の意思でこのゲームを抜ける事を選んだのだ。ゲームを抜けた奴を心配する暇があるなら、どうやってこの先生き延びてここから出るのか、具体的な方針を練る事に頭を使え。でなければいずれ自分が死ぬぞ。」

「だけどよ、アイツは…」

「貴様は自分の意思で俺を選んだのだろう?だったら俺に従え。これは命令だ。」

「…わぁったよ。」

 

 

 

 

「お腹すいたー。」

「そういえば、もう1時過ぎですね。お昼にしましょうか。何か作りますよ。」

「なら、僕も手伝うよ。」

「穴雲さんはゆっくりしていてください。私がやりますから。」

「そう?じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな?」

ホント、この二人仲良いよね。

羨ましいなー。

「ついでに俺もお言葉に甘えて休憩ーっと。」

「天理クンは休んでいいって言われてないじゃない。…まあいいけど。」

 

 

 

 

うーん、おいしかった!

さすがに陽一クンまでとは言わないけど、やっぱり治奈ちゃんの作るご飯もおいしいね!

…さてと、体育館と女子更衣室に行こうかな。

まだ、成威斗クン達にちゃんと弔いをしてないもんね。

今まで一緒に過ごしてきた仲間だ、ちゃんとお別れを言わないと。

 

 

 

 

【体育館】

 

成威斗クンの遺体が吊るされていた体育館は、昨日起こった事がまるで嘘だったかのように、綺麗さっぱり片付いていた。

…ここで、成威斗クンが殺されたんだね。

成威斗クン、ごめんね。

キミはボクを何度も助けてくれたのに、ボクはキミを助けられなかった。

本当にごめんなさい。

せめて、安らかに眠ってね。

伝えたい事は伝えられたと思う。

…そろそろ女子更衣室に行こう。

 

 

 

 

【女子更衣室】

 

女子更衣室も、体育館と同様、綺麗に片付けられていた。

雪梅ちゃん、ごめんね。

弱みを教えてくれたのに、力になってあげられなくて。

きっと最期まで、ここで怖い思いをしてたんだよね。

助けてあげられなくてごめんなさい。

…剣ちゃんも、止めてあげられなくてごめんね。

もっとキミと話していれば、キミが二人を殺すのを事前に止められたかもしれないのに。

ボクは、キミの事を全然わかってあげられなかったね。

それから、裁判では秘密をバラして追い詰めちゃってごめんなさい。

キミが女の子だって事も、キミなりの思いがあって隠してきた事だったのに…あんな形でみんなの前で暴露しちゃったね。

本当にごめん。

 

キミ達が死んじゃったのは、ボク達の力不足のせいだ。

でも、これで終わりじゃない。

ボク達は、キミ達の分まで生きるから。

だから、どうかボク達の事を見守ってて。

 

 

 

 

…ちょっと暗くなっちゃったな。

無理ないよ、今までずっと一緒にいた仲間が3人も死んじゃったんだもん。

でも、いつまでもくよくよしてられないよね!

ボクがこんな調子じゃ、この先生き残れないよ。

これからどうしなきゃいけないのか、考えなきゃ!

まずは、晩ご飯までの間何をしようかな?

そうだ、才刃クンの様子を見に行こう。

あの子、ずっと引きこもったままだもんね。

体調崩したりとかしてなきゃいいけど…

 

 

 

 

【入田才刃の独房】

 

ピンポーン

 

「才刃クン、調子はどう?ご飯、ちゃんと食べた?」

返事がない。

…本当に大丈夫なのかな。

「ねえ、才刃クン。今回は、美術室と音楽室と物理室と…それから、情報管理室が開放されたんだ。気が向いたら行ってみるといいと思うよ。情報管理室には、才刃クンの好きなパソコンもたくさんあったしさ。」

やっぱり返事はない。

「…ねえ、才刃クン。ボクね、才刃クンとゲームがしたくてちょっと練習したんだよ。今度、一緒に遊ぼうよ。」

 

ポコンッ

 

ボクの手帳に、才刃クンからチャットが送られてきた。

 

《うるさい。失せろ。》

 

才刃クン…

やっぱり、出てきてくれないのか…

せっかく友達になれたのに。

いやいや、暗くなるなボク!

今が機嫌悪いだけかもしれないし、また今度出直そっと。

さてと、暇になっちゃったけど…どっか行こうかな?

そうだ、ちょっと気分転換に娯楽室にでも行ってみよーっと!

 

 

 

 

【娯楽室】

 

まだメダル結構余ってるなぁ…

せっかくだし、ガチャでも引いてみよっかな?

今回は何が出るかなーっと。

…なんだこれ?

笛…と、万年筆と、あとは…なんだこれ。首飾り?

よくわかんない模様が入ってるけど…

全部いらない物ばっかりだなぁ。また誰かにあげよっかな?

さて、と…ガチャも引いたし、これから何しよっかな?

そうだ、とりあえず新しく開放された音楽室に行ってみよっと。

 

 

 

 

【音楽室】

 

やっぱ広いなー、ここは!

…ん?

なんか聞こえるな…

この音は…ハープ?

練習用の部屋の方からかな?

ちょっと行ってみよーっと。

 

 

 

 

「…誰かいるのかな?お邪魔しまーす。」

…おや。

部屋では、柳人クンがハープを弾いていた。

なんか、聞いた事ない曲だねぇ。

すごいステキな曲だけど。

ボクは、思わず拍手を贈った。

「…ん。誰かいるのかい?」

「すごいや柳人クン!めっちゃいい演奏だったよ!!」

「その声は、狛研君か。いやあ、そう褒められると嬉しいねぇ。ありがとう。」

「ねえ、今のはなんて曲なの?」

「ああ、オイラが初めて作詞作曲した、『草の王』っていう曲さ。気に入ってくれたみたいで嬉しいよ♬」

「ねえ、もっと聞かせて!」

「もちろん。オイラの自信作は、まだまだあるからね。」

 

 

 

 

「やー、いい演奏だった!」

「別に大した事はないよ。これくらい、練習すれば誰でも弾けるよ。」

「そんな事ないよー。メッチャすごいと思うよ!」

「狛研君は、楽器とかはやった事あるのかい?」

「ほとんど無いねー。そもそもあんまり才能ないっぽいし。中学の音楽の授業でなんて言われたと思う?『お前の場合、天才じゃなくて天災だ』って。そこまで言うかって感じじゃない!?」

「…それは悪い意味ですごい気が…いや、言うのはやめておこうか。」

「なに?なんか言った?」

「…いいや、何にも?」

「ふーん。…ねえ、柳人クン。」

「なんだい?」

「この後、ちょっと話さない?ついでに研究室もちょっと見たいなー。」

「…。」

 

 

 

 

【超高校級の詩人】の研究室

 

「うっわー、すごーい!ハンモックまであるんだー!さすがは柳人クンの研究室だねー!」

「それはどうも。」

「…ねえ、柳人クン。」

「なんだい?」

「キミ、なんでボクの誘いをオッケーしてくれたの?キミって帝国側、だよね?」

「別にプライベートまでは制限されてないからね〜♪それに、芸術と政策は分けて考えるべきだよ。オイラは、オイラの作品を素直に褒めてくれる人には悪人はいないって信じてるのさ♫」

「そっかぁ。ありがとね、演奏を聞かせて貰った上に研究室まで見せてもらっちゃって!あ、そうだ。」

「ん?どうかしたのかい?」

「えーっとね。お礼といっちゃなんだけど…柳人クンにちょっとプレゼントしたい物があるんだ。」

「プレゼント?何かくれるのかい?」

 

「ジャーン!笛です!柳人クンなら気にいるかなーって。どう?」

「ん!!?ちょっと待って!?これって…」

「どうしたの?」

「この感触…間違いない…狛研君!!この笛、どこで手に入れたんだい!?」

「えっと…ガチャでゲットしたんだけど…何?そんなにすごいの?その笛。」

「これは、『ハーメルンの笛吹き男』が使ったといわれている笛で、音楽に携わる者なら誰もが一度はお目にかかりたいと思っている笛さ。」

「そうなんだー。」

「噂によると、この笛を一度でも吹いた者は、未だかつてないほどに音楽の才能に恵まれ、巨万の富を築くといわれているんだ。著名な音楽家の中にも、この笛を吹いた者がいるとかいないとか…」

「へー、すごいねその笛!最強じゃん!」

「でも、それほどまでに強力な『呪い』がかかった笛だ。起こるのは、いい事ばかりじゃないんだよ。」

「と、いうと?」

「別の言い伝えもあるんだ。この笛を一度でも吹いた者は、笛の魔力に取り憑かれて気が狂い、最期には不可解な死を遂げるとね。」

「え、なにそれ怖っ。ねえ、柳人クン…」

「安心しなよ。正直、この噂に関して言えば半信半疑だけど、万が一の事もあるから吹かないよ。鑑賞用に部屋に飾っておこうかな♪」

「そっかぁ。」

「狛研君、このプレゼント、とっても気に入ったよ。ありがとう。お礼に何かしたいんだけど…何か欲しい物とかあるかい?」

「いいよいいよ。さっき、いい演奏聞かせてもらったしね。…そうだなぁ。じゃあ、柳人クンの話を聞かせて?」

「お安いご用さ。聞きたい事があればなんでも聞いてくれよ〜♪」

 

「えっと…じゃあ、柳人クンは、なんで【超高校級の詩人】に?」

「うーん、理由かぁ。強いて言うなら、小さい頃から旅と歌が好きだったからかな?それで、旅をしながら詩や歌を作るようになったのさ。オイラの夢は、オイラの詩や歌を世界中の子供達に届ける事さ。」

「柳人クン、ちっちゃい子好きなの?」

「うん。彼らは、歌を純粋に楽しんでくれるからねぇ。作品の作りがいがあるんだ。ここだけの話、実はこの格好も子供受けを狙ってるんだよねぇ。」

「え、そうだったの?」

「そうさ〜♪どうだい?詩人っぽいだろ?」

「確かに…なんかム●ミンに出てきそう。」

「ス●フキンか。彼は、オイラのイメージ作りの時に影響を受けたキャラクターなんだよね。」

「やっぱりねー。…ねえ、ところで、ちょっと変な事聞くようで悪いんだけど…柳人クンって、生まれつき目が見えないの?」

「ああ。生まれつきだよ。」

「不便じゃない?

「逆に生まれつき目が見えてないと、それに慣れてるからね。特に不便に思った事はないかなぁ。今更だけど、オイラには普通に接してくれて構わないよ〜♪」

「わかった!」

 

「ねえ、その楽器はどうしたの?」

「ああ、これかい?旅の途中で、仲良くなった地元の長老に貰ったのさ。村の手作りの楽器で、いい音色が出るから気に入ったなら持っていきなさいって。今となっては、コイツはオイラの大切な相棒さ〜♪コイツがなかったらやっていけないよ。」

「そっかぁ。その楽器、大切な物だったんだね。」

「ああ。今でも、ちゃんと毎日手入れしてるのさ〜♪」

「道理で綺麗な音色なわけだ!」

「そう言ってくれて嬉しいよ♬」

 

「ねえ、柳人クンは、外に出たらやりたい事とかあるの?あとは、大切な人とかいる?」

「やりたい事、ねぇ。まあ、いつも通り旅をしながら詩や歌を作る事かな。風のように彷徨うのがオイラの運命(さだめ)さ〜♫」

「ふーん。」

「大切な人…ねぇ。大切な人はやっぱり、オイラの作品を純粋に楽しんでくれるファン達かな。オイラの作品を必要としてくれている人達のためにも、まずはここから出ないとね〜♪」

「うんうん、外に出るための理由があるっていうのはいい事だ!ボクもキミの歌が好きだから、キミの事応援するよ!」

「ありがとう。…国王様はあんな風に言ってたけど、君はやっぱり悪い人じゃないなぁ。」

「えっ?」

「君は、迷いがなくて一途な人だからね。君みたいな人が黒幕なわけないよ。」

「そっかぁ、ありがと!」

「ここまで腹を割って話したのは久しぶりだよ。オイラは引き続き国王様に従うけど、君には個人的に協力したいかな。」

「ボクの方こそ、キミの話が聞けてよかったよ!一緒に頑張って脱出しようね!」

「そうだねぇ♫」

「それじゃあ、ボクはそろそろ行こっかな。また演奏聴かせてね。」

「もちろんさ〜♩」

 

《詩名柳人の好感度が1上がった》

 

 

 

 

柳人クンとたくさん話せて楽しかった!

またあの演奏聞きたいなー。

 

グギュルルルル…

 

…お腹すいたなぁ。

そういえばそろそろご飯の時間だっけ。

食堂に行こーっと。

 

 

 

 

【食堂】

 

「あれ?」

時間よりも早く、天理クンが来ていた。

天理クンは、テーブルに突っ伏しながら手帳に何かを書いていた。

何書いてんのかな?

…スケジュール帳?

「天理クン。」

「ほにゃっ…その声は、狛研サンではあーりませぬかぁ。どうしたんだい一体〜?」

「ねえ、何書いてるの?」

「ひみちゅー。」

「ケチ!」

「ケチでいいもんねー。」

もう、天理クンってなんかたまに腹立つよね!

天理クンかぁ…そういえばこの子、ちょっと気になる事言ってたっけな。

 

「ねぇ、天理クン。」

「なぁに?」

「…あのさ、『囚われのマリアのための交響曲』って、なんなの?」

「ふわぁあ…だから、まだ教えないつってんじゃん。時期が来たら話しますわよ。…そうだなぁ。次に誰か死んだら話してあげよっかな?」

「なにそれ!いじわる!!」

「やーん褒められたー。」

褒めてないし。

天理クンって、なんで変な事ばっかり言うの?ホント頭にくるよね!

いつか絶対、隠してる事全部言わせちゃお!

 

星也クンと治奈ちゃんが、厨房からご飯を作って持ってきてくれた。

「二人とも、ご飯できたよ。」

「はぁーい。」

 

 

 

 

「うーん、おいしい!」

やっぱり星也クンと治奈ちゃんのご飯はおいしいね!

「ありがとうございます。作った甲斐がありました。」

「良かったね、治奈。」

「…はい、星也さん。」

「え?何?キミ達、進展したみたいじゃーん!お熱いですなぁ、ヒューヒュー!」

天理クンが二人を冷やかした。

「や、やめてください!恥ずかしいですから…!」

「君、いい加減にしないと怒るよ?」

わっ…星也クン、割と本気で怒ってるっぽい…

この子、怒ると怖いんだよね。

「ねえねえ、実際どこまでいったのー?え、ヤった?ヤったの?」

「君、本当にそろそろ静かにしよっか。」

「わー、濁した!やっぱりそういう事してたんだオマエらー!!他のみんなにも言いふらしちゃおー!!」

「…財原君?」

星也クンは、笑顔のまま天理クンを威圧した。

「くだらない事言ってないで、ご飯食べちゃおっか。冷めちゃうよ。」

「…はい。」

天理クンが黙った…

やっぱ、星也クンは怖いね。

「食事中に下品な事を言うのはやめようね。第一、部屋の中にも監視カメラがあるんだからそんな事するわけないだろ。」

そっか。

そういえば、監視カメラで撮った映像を全国で放送してるんだっけ。

今のこのくだりも、バッチリ放送されてんのかな?

まあ、そんな事どうでもいいんだけど、やっぱりこのご飯おいしいね。

つい食べすぎちゃうよ。

 

 

 

 

あー、おいしかった。

ごちそうさま!

「おい、貴様ら。ここは今から俺達が使う。うるさくするなら出て行け。」

ラッセクン達が食堂に入ってきた。

「キミ達、ホント自分勝手だよねー。呆れて物も言えないんだけど。」

「貴様にだけは言われたくない。邪魔をするなら出て行ってもらおうか。」

「チッ、はいはい出ていきゃーいいんでしょー?」

天理クンは、不満そうに食堂から出て行った。

「貴様はどうするのだ。触角帽子。」

「ボクはここに残るよ。ボクは、キミの召使いじゃないからね。キミのお願いを聞く必要なんてないよね?」

「…チッ、これだから貴様は…フン、だがまあ間違ってはいないな。勝手にしろ。」

「………いいの?」

「このテのバカは放っておくのが得策だ。…では諸君。報告会を始めようか。」

報告会?

それは今朝やったよね?

一体何を話し合うのかな?

 

「まず和服。貴様は今日、何か発見をしたか?」

「……………特に、ない…かな。」

「そうか。では次、料理バカ。貴様はどうなのだ?」

「っと…特にねぇかな。」

「盲目、貴様は?」

「うーん、特に異常はなかったよ。」

「…そうか。ポイントの変動は無し、か。」

「じゃあ、今日は…」

「ああ。今日最もポイントを多く獲得したのは、盲目だ。特別に、貴様にはボーナスをやろう。」

「ありがとうございます〜♬」

ボーナス?

そういえば、星也クンが説明してくれてたっけ。

…ボーナスか。

みんなは何を貰ってるのかな?

 

「メダルだよ。」

後ろには、帰ったはずの天理クンがいた。

「帰ったんじゃなかったの?」

「アイツらが報告会とか笑える事してんのに、帰るわけねーだろー?」

「ああ、そう…で、ボーナスってなんなの?みんなは、どうやってラッセクンに従ってるんだい?」

「あーあー、ここで話す事じゃねーな。アイツらの話がひと段落ついたら、ちょっと一回表出て話そっか。」

「あ、うん…」

ボクは、天理クンに連れられて外に出た。

 

 

 

 

「天理クン、ラッセクンが言ってたボーナスって、一体なんなの?」

「ああ、俺も詳しい事はわかんないんだけど…アイツら、メダルを貰ってるみたいよ?」

「メダル?」

「そっ。ラッセの野郎、どうやったのかは知らないけど、今メッチャメダル持ってるらしいんだ。1000枚とか、それ以上かな。それをね、みんなにボーナスとして配ってるんだよ。逆に、ペナルティーとしてメダルや私物を没収する事もあるみたい。なんか、本格的に自分ルールでみんなを縛ろうとし始めてる感じがするんだよねー。」

「…そうだね。でも、ラッセクンはちょっとおかしい事してるのに、なんであの3人はラッセクンのいう事を聞いてるのかな?」

「そりゃあ、ボーナスが欲しいからっていうのもあるんだろうけど…一番の要因は、ラッセクンの持つ王たる者のカリスマ性ってヤツじゃないかな?」

「カリスマ性?」

「大半のヤツらは、そういう人間的な魅力を持ってるヤツに惹かれるもんなんだよ。たとえソイツが、多少頭おかしい事言っててもね。昔から、頭おかしい奴が選挙で選ばれて政界を引っ掻き回すのはよくある事だろ?多分、ラッセクンにもそういう魅力があるからこそ、あんなバカげた事やってるのにみんなついてっちゃうんだろうねぇ。」

ボーナスに、ラッセクン自身の魅力か…

確かに、ラッセクンってよくわかんないけど人を惹きつける才能があるよね。

もしボクが陽一クン達の立場だったら、ラッセクンの言う事を聞いちゃってたかもな。

「まあ、あれでも一応一国の王だからね。内面はどうであれ、何千万人もを従えて導いてきたんだもん、あの3人を手玉に取るくらいは訳ないだろうね。」

「うーん、一応ラッセクンには気をつけた方がいいのかな?」

「そうだねー。ああいう奴と関わると後々面倒だからねー。じゃ、俺はこの辺で。ふわー、ねむ。」

天理クンは、自分の独房に戻っていった。

 

 

 

 

【独房】

 

今日は、色々大変だったなぁ。

ラッセクン達が星也クンに反発して国を作っちゃったり、才刃クンが引きこもって出てこなくなっちゃったり…

みんな、最初は仲良しだったのに、なんでこんな事になっちゃったんだろう。

やっぱりみんな、ここに何日も閉じ込められて、仲間が何人も命を落として、もう限界がきちゃってるのかな。

みんながバラバラで好き勝手やってるままじゃ、全員で一緒にここを出るなんて無理だよ。

…ねえお父さん。

ボク、一体どうしたらいいのかな。



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第4章(非)日常編③

「うーん…」

ボクは、独房で目が覚めた。

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

相変わらずうるさいなぁ、ベルさんは。

いちいちローテーションしなくていいから!

…そうだ、たまにはボクがみんなの朝ごはんを作ってあげよう!

ボクは、着替えを済ませて厨房に向かった。

 

 

 

 

【厨房】

 

「…あ。」

「おはよう、狛研ちゃん。」

「おはようございます狛研さん。」

厨房には、陽一クンと治奈ちゃんがいた。

「おはよう、二人とも。やっぱ早いね。」

「そうか?」

陽一クンは、わかりやすく照れた。

ボクは、ダメ元で相談してみた。

「ねえ陽一クン。キミが作ってくれるご飯、すっごいおいしくって、ボク大好きなんだ!また食べたいんだけど…作ってくれないの?」

「もちろん、狛研ちゃんのお願いなら喜んで作るぜー!!…と、言いたいところなんだけど。ラッセから、狛研ちゃん達に飯を作んなって言われてんだよ。敵にやる飯は無いとか言ってよ。」

「そんなー、厳しすぎじゃない?陽一クンはそれでいいの?」

「そりゃあ、オレだって思う所はあるけどよ…でも、みんなをこれ以上コロシアイに巻き込まないためには、あれくらいの厳しさも必要だと思うんだよ。…こういう言い方しちゃあなんだけど、やっぱり穴雲はそこんとこ甘いと思う。」

「…。」

治奈ちゃんは悲しそうな顔をした。

「あ、ごめん…傷つけるつもりはなくてだな…!」

陽一クンは、治奈ちゃんをなだめつつ話を続けた。

「…けどな。理想ばっか言っててもいざって時に冷たくなれねェならクラスメイト一人守れねェって、このコロシアイを通して嫌でも思い知らされたよ。」

「…そう、ですか。」

「おっと、暗い話になっちまったな。よっしゃ!飯作るぞ!」

陽一クンは、早速朝ご飯の支度に取りかかった。

料理を、スピーディーかつ正確に完成させていく。

「わー、陽一クンすごい気合い入ってるね!治奈ちゃん、ボク達も料理しよっか!よーし、陽一クンに負けないくらい美味しい朝ご飯作るぞー!!治奈ちゃんも手伝ってよね!!」

「…はい!」

良かった、治奈ちゃんが元気になったみたい。

よーし、頑張ってとびっきりの朝ご飯作るぞー!!

 

 

 

 

「狛研さん、手際がいいですね。」

「まあ、施設でみんなのご飯作ってたからね。4人分のご飯作るのなんて朝飯前だよ!治奈ちゃんも、ここに来る前はけっこう料理とかしてたの?」

「はい…うちの家は貧乏で、母親がほとんど家事をしなかったので…自分と弟の分の食事は私一人で用意してましたね。…今は自分の分だけですけど。」

「へー。大変だったんだねぇ。」

「ここに来て栄さんのお料理を食べた時は、感動しました。まるで、高級レストランのような食事で…」

「あれっ?治奈ちゃん、レストラン行った事あるの?」

「はい、一度だけ…その、私が初めて夜の仕事をした日、お相手をした方に連れて行ってもらいました。その方がたまたま気前の良い方で、ご馳走してもらった上に、新しい服とお金をたくさんいただいたんです。その時レストランで食べた料理の味が忘れられなくて…できれば、弟も連れて行ってあげたかったんですけどね。」

「…そうなんだ。」

そういえば、治奈ちゃんの弟は死んじゃってるんだっけ。

治奈ちゃん、ここに来る前はかわいそうな生活してたんだな…

「…あの、狛研さん。それ、早く火を止めた方が…」

「えっ!?あ、ごめんごめん。」

危ない危ない、話を聞いてたらうっかり焦がしちゃうところだった。

つい話を夢中で聞いちゃうの、ボクのよくないクセだね!

 

《癒川治奈の好感度が1上がった》

 

 

 

 

「よっしゃ、できたー!!ねえねえ!これ、かなり完成度高いんじゃない!?」

「そうですね…頑張って作った甲斐がありましたね。」

「そろそろ時間だよね?星也クンと天理クンは来てるかなー?」

ボクは、食堂に顔を出した。

「ご飯できたよー!!」

「あ、治奈に狛研さん。おはよう。」

「おはようございます、星也さん。」

「星也クンおはよ!…ねえ、天理クンは?」

「まだ来てないよ。今日も遅刻かな。…今日は、君達が朝ご飯を作ってくれたんだね。」

「うん!今回はねー、頑張って二人で作ったんだ!割と自信作だから、どんどん食べて!」

「本当かい?それは楽しみだな。」

「ふわぁ〜。みんなおはよぉお〜。」

少し遅れて天理クンが来た。

「もう、天理クン遅いよー!今日はせっかくとびっきりの朝ご飯作ったのにさー!」

「にゃぱぱー、ごめんなちゃーい。それじゃあ、全員揃ったしご飯食べよっかぁー。」

天理クンは、席に座ると食器をカチャカチャ鳴らしながら催促した。

「…みんな君を待ってたんだけどね。」

「ふわーい。」

 

 

 

 

星也クンは、ボク達が作った朝ご飯を食べた。

「お味はどうですかー?」

「…うん、すごくおいしいよ。やっぱり、今日は頑張って作ったんだね。いつもよりおいしい気がするな。」

「それは良かったです!」

治奈ちゃん、嬉しそうだな。

星也クンに褒められたからかな?

「うん、おいしいねー。俺っちも見習わなきゃですわぁー。」

「棒読みじゃないか。本当にちゃんと味わってる?」

「失礼なー。ちゃんとおいしいって思ってるよー。」

天理クンは、間延びした口調で答えた。

なんか、眠そうにして言ってるから説得力がまるで皆無だねぇ。

 

 

 

 

ボクの朝ご飯、二人とも気に入ってくれたみたいで良かった!

またご飯作ろーっと。

昼ご飯までまだ時間あるなぁ…

何して時間を潰そうかな?

…そうだ、才刃クンの様子を見に行こう。

さすがに、2日も部屋から出てこないと心配だよ。

あの子、体調崩したりしてないといいんだけど…

 

 

 

 

【入田才刃の独房】

 

ピンポーン

 

「才刃クン、いるぅー?」

「…。」

返事がない。

話しかけてみるか。

「ねえ才刃クン。体調はどう?ちゃんと毎日ご飯食べてる?みんな心配してるから、気が向いたら部屋から出てきてね。出てきたら、またゲームエリアで一緒に遊ぼうね。みんな、キミの事待ってるから。」

 

ポコンッ

 

《しつこい》

 

あらら…怒らせちゃったかな。

この前もご機嫌斜めだったけど…今日も機嫌が悪いのかな?

でも、チャットでもちゃんとお話できてるって事は、まだ元気って事だよね?

さてと、才刃クンが元気だって事はわかったし、そろそろ別の場所に行こっかな?

そうだ、新しく開放された美術室に行ってみよっと。

じゃあね才刃クン。

また来るね。

 

 

 

 

【美術室】

 

うーん、相変わらず広いなぁ。

すごくおっきいアトリエだね、これは。

…ん?

どうやら先客がいたみたいだね。

あれは…ゐをりちゃん?

紙に何か書いてるっぽいけど…

何してるのかな?

「ゐをりちゃん!」

「………………。」

ゐをりちゃんは、一瞬こっちを振り向くと、また紙に何か書き始めた。

あうぅ…無視?ひどいなぁ…

…いや、あの子は元々こんな感じだったね。

「ねえ、何書いてるの?」

「………。」

ゐをりちゃんは、目の前に飾ってあった花を指差した。

「花の絵を描いてたの?え、見たい!見せて!」

「…………………。」

ゐをりちゃんは、嫌そうな顔をしつつも絵を見せてくれた。

 

「…へぇ。」

まあまあ上手い。

ゐをりちゃんって、絵が得意だったんだね。

「ゐをりちゃん、上手だね!よく描けてるよ。」

「………り、と………」

「なんて?」

「………ありがとう。」

ゐをりちゃんは、うつむきながら小さな声で言った。

「この花って…」

「……………水仙。」

「ゐをりちゃん、水仙好きなのかい?」

 

「………侍が、好き…だった……………」

ゐをりちゃんは、悲しそうな顔をして言った。

「…そっか。剣ちゃんが好きだったんだね。」

ゐをりちゃん、剣ちゃんの事大好きだったもんね。

あの子が死んじゃって、まだ心の整理ができてないのかな。

「………私……………侍、信じて…た………初め、て…で、きた…………友達…だった…か、ら………」

「ゐをりちゃん…」

「私、本当は…今まで………何、して…た、のか………覚え、て…ない………の……………だから、不安…だった……………でも、侍と………いる、と…安心………でき、た…侍……は、私………の、大切な…友達………だ、と…思って………た…………私、信じて……た……………のに…侍、なんで………あんな、ひどい…事……………」

 

ゐをりちゃんは、さっきとは別の紙を見せた。

そこには、描きかけの剣ちゃんの絵が描かれていた。

絵は、涙で滲んでいた。

「………描き、終わった…ら、渡そうと……………思ってた…………のに…渡せ、なかった………」

「…ねえ、ゐをりちゃん。剣ちゃんの研究室、行ってみる?」

「………え?」

「その絵、飾ってあげたら剣ちゃんも喜ぶと思うんだ。…嫌かな?」

「…でも、私………は…裏切られて…」

「本当にそうかな?ボクは、少なくとも成威斗クン達を殺す前までは、剣ちゃんがゐをりちゃんの事を友達だと思ってたっていうのは嘘じゃなかったんだと思うな。剣ちゃんだって、ゐをりちゃんを裏切っちゃった事を後悔してると思うよ。とにかく行ってあげようよ。」

「………。」

ボクは、ゐをりちゃんと一緒に剣ちゃんの研究室に行った。

 

 

 

 

【超高校級の侍】の研究室

 

「ゐをりちゃん、入ろっか。」

「………。」

 

部屋の中は、整頓されていた。

部屋の綺麗さは、もはや剣ちゃんがついこの間までここにいたと言う事を疑う程だった。

ゐをりちゃんは、ちゃぶ台の上に絵を置くと、手を合わせた。

「…少しの…あい、だ…だった………けど、あなた…と、一緒に………い…て……楽し、かった………ありが、とう…」

ゐをりちゃんは、しばらく黙ったまま座ったと思うと、立ち上がって部屋を出ようとした。

「………言いたい事、伝え…られ、た………と、思う…」

 

ボクも部屋を出ようとした時、一枚の写真が足元に舞い降りてきた。

「写真…外エリアからの風で飛ばされたのかな?」

写真を拾い上げた。

写真には、笑顔の剣ちゃんとゐをりちゃんが写っていた。

…手帳で撮ったのを現像したのかな。

「…ゐをりちゃん、ボクの言った通りでしょ。やっぱり剣ちゃんがゐをりちゃんの事を友達だと思ってたのは、嘘じゃなかったんだよ。ほら。」

ボクは、ゐをりちゃんに写真を渡した。

「…うん。」

ゐをりちゃんは、少し微笑んだ。

「………幸運……………あり、がとう……これ…お、礼………」

ゐをりちゃんは、紙をくれた。

紙には、ボクの似顔絵が描かれていた。

「え、めっちゃ上手いじゃん!っていうかいつ描いたの?」

「………さっき。」

さっき!?

筆速くない!?

「よく描けてるね。ありがとうゐをりちゃん!」

「………。」

 

《神座ゐをりの好感度が1上がった》

 

 

 

 

さーてと、ゐをりちゃんと話してたらお腹すいちゃったよ。

そういえばそろそろご飯の時間だよね。

今回は天理クンがお昼ご飯を作ってくれるらしいけど…

何が出てくるんだろ。楽しみだな。

 

 

 

 

【食堂】

 

「ごめん、みんな待った?」

「いや、待ってないよ。」

「私達も今来たところです。」

「ごめーん、おまちどうさまー。」

天理クンは、間延びした口調で喋りながら厨房から出てきた。

デッカい何かを持ってるけど…アレ何?

「昼飯適当に作ったんでみんなでどうぞー。」

「あの…財原君。これ…何?」

「え、何って。天津飯だけど。見てわかんね?」

「いや、見てわかるけど…何この量。どう見ても50人前以上はあるよね?なんか盛り方下品だし…」

「なんか、餡が沼みたいになってますね…どうやって食べるんですかこれ。」

「作りすぎちゃった☆」

「作りすぎちゃったのレベルを超えてる気がするけど…まあいいや。冷めないうちに食べちゃおっか。」

「はーい。」

 

 

 

 

「あー、おいしかった。ごちそうさまー。」

「お粗末様ですー。」

星也クンと治奈ちゃんは、変な顔でボクを見ていた。

「…え、何?二人ともどうしたの?」

「嘘でしょ…なんでアレを全部食べきれるわけ?」

「さすが狛研さん…」

「あはは、まるでブラックホールだね。」

えー?

あれくらい普通だと思うけどなー。

逆に、天理クンはお腹いっぱいになるまでご飯作ってくれるから助かるね。

「…あのさ、ちょっと疑問に思ったんだけど…財原君の作るご飯って、なんでいっつも量が多いの?」

「んー。なんか、なんでもそうなんだけど、あるものはあるだけ使っちゃおう的な心理が働いちゃうみたいでさー。卵とか調子乗って100個くらい使っちゃったよ。」

「的なって…適当すぎでしょ。もっと節約するって事を知ったらどうだい?今回ので、食材を大量に使っただろ。」

「サーセン。でもほら、俺って超お金持ちじゃん?それで許してよ。」

「なんでそれで許されると思ってるのかが謎だけど…これ以上話してもらちが開かないよね。ごちそうさま。」

んー、よくわかんないけど…湯水の如くってヤツ?

さすが資産家だねぇ。

 

 

 

 

お腹いっぱいになったし、今度は何をしようかな?

暇だし、また何かして遊ぼっかな?

 

「ぶっ。」

 

いったた…

何かにぶつかっちゃったみたい。

「…なんだ、貴様か。」

「あ、ラッセクン。」

「フン、前を見て歩かないからそうなるんだ。愚図が。」

「う…」

ラッセクン、相変わらず辛辣だなぁ。

「ねえ、そういえばさぁ。ラッセクンって研究室開放されたんでしょ?ちょっとお話がてら見たいんだけど。」

「貴様、誰に向かってそんな口を利いている。俺が帝国民ですらない貴様に、素直にいいと言うと思うか?話がしたければ、それに見合う物を用意してもらおうか。交渉とはそういうものだろうが。」

「それに見合う物…かぁ。あ。そうだ。」

「どうした?」

「ラッセクンさぁ、首飾りとか好きだっけ?」

ボクは、首飾りをラッセクンに見せた。

「むっ…貴様、どこでそれを?」

「ガチャでだけど…」

「…フン、今日は機嫌がいい。特別に貴様と話をしてやろう。」

「わーい。」

 

 

 

 

【超高校級の国王】の研究室

 

…わーお。

いかにも王様の部屋って感じだね。

ラッセクンは王様だもんね。

「ねー、ラッセクン。さっきあげた首飾り、あれって一体何だったの?」

「…あれは、我が先祖、シルヴェナという民族が作ったとされる工芸品で、アミュレットの一種だ。シルヴェナの地でしか採れない鉱物のみを使って作られ、その全てにシルヴェナの伝統的な模様が使われるんだ。20世紀以上前、ローマ帝国の侵略によってシルヴェナの民は滅ぼされ、彼らが遺した物の多くが邪教の道具として廃棄されたがな。…しかし驚いた。未だ、ここまで綺麗な状態で我が先祖が遺した宝が見つかるとは。」

「わー、ボク、そーいう難しい話ニガテー。…あれ?でも待って?その民族?は、滅んだんじゃないの?でも、ラッセクン、今ハッキリ先祖だって言ったよね?どゆこと?」

「…歴史上は滅んだとされている。しかし、シルヴェナの民の血は絶えたわけではない。混血を繰り返しながら世界中に散っていった。そして500年前、シルヴェナの民の子孫達がシルヴェナの地に再集結し、そこに蔓延っていた侵略者の子孫を追い出し、土地を取り返したのだ。彼らを率いたのが、我が国の初代国王、イェレミアス・エドヴァルド・シルヴェンノイネンだ。」

「…はぁ。」

 

「さてと、俺の国の自慢はこの辺にしておこうか。時に触角帽子。貴様、俺と話がしたいと言っていたな。約束通り、聞いてやろう。」

「え、いいの?」

「それ相応の物をくれるなら話すと約束したからな。」

ラッセクンって、冷たいイメージがあったけど…

案外、ちゃんと話せばわかってくれるんだね。

「ああ、うん。じゃあ、いくつか聞きたい事があるんだけど…聞いていい?」

「…なんだ。」

「ラッセクンって、なんで【超高校級の国王】になったの?」

「何故と言われてもな。俺の場合、王家の長男だったからとしか言いようがないのだが…」

なんか、彩蝶ちゃんや剣ちゃんと似た感じだね。

お金持ちってみんなそうなのかな?

「だが勘違いするな。俺は、たまたま持って生まれた権力を振りかざしてふんぞり返るような馬鹿共とは違う。俺は民を想い、彼らを尊敬しているのだ。俺は、俺の民が少しでも快適な暮らしが送れるよう、自分にできる事をしているだけだ。それが俺の場合、国王としての務めだったというだけの話だ。」

「へぇ…」

ラッセクン、そういうのちゃんと考えてるんだね。

すっごい意外。

「…貴様、俺の事をなんだと思っていたんだ。」

…考えてる事バレてた。

さすが国王様。そういう才能もあるんだねぇ。

 

「ねえラッセクン。前からずっと気になってたんだけど…頭の上の王冠は、なんなの?」

「これか。これは、国王が即位する時に先代の王から授かる王冠だ。俺も、これを父上から授かった。…俺の場合は、父上が急死したから、直接授かったわけではないがな。」

「ふーん。」

「この王冠は、シルヴェンノイネンの国王の証だ。常に肌身離さず持ち歩いている。」

「そのバッヂみたいなのは?」

「これは、王家のみがつける事を許される紋章だ。我が国の国旗にも描かれている、ノース・フェニックスが描かれているのだ。」

「ノース・フェニックスって?」

「シルヴェナの地にのみ生息する鳥だ。その希少性の高さからそう呼ばれている。」

「へー。」

 

「ねえ、ラッセクン。」

「まだ何か聞きたい事があるのか。」

「あのさ、ラッセクンは、大切な人とかここから出たらやりたい事とか…そういうのってあったりするの?」

「やりたい事か、とりあえず、長い間国を開けてしまっているから、早く国に戻って民の日常を取り戻さねばな。」

ここに来て随分と現実的だね。

「それから大切な人、か。そうだな…強いて言うなら妹だな。」

「あ、ラッセクン妹いたんだ。」

「ああ。8人いるぞ。全員母親は違うがな。」

まあ、王様だもん。それくらいいるよねー。

「なんだ貴様。リアクションが薄くないか?」

「だって、ウチは20人家族だし。施設育ちだからね。」

「…そうか。」

 

「ラッセクンの大切な人は妹かー。」

「ああ。特に、アイナは俺の大事な妹だ。」

「アイナ?」

「俺の4番目の妹だ。俺の婚約者でもある。」

「ふーん…はぇっ!!?」

「…どうした。」

「いや、どうした、じゃないでしょ!!兄妹で結婚ってどういう事!?そういうの、キンシンなんとかっていうんじゃないの!?」

「何を言っている。俺の国では合法だぞ。」

「そ、そうなんだ…」

うーん、さすがによその国の決まりに口出しするのは野暮かな?

 

「ありがとう、ラッセクン。キミと話してて楽しかったよ。」

「…そうか。」

「ねえ、また来てもいい?」

「俺の機嫌と条件次第だな。一応、前向きには検討してやらん事もないぞ。」

「検討止まりかぁー。」

「不服か?」

「うんっ。」

「…ここまでハッキリ言う奴、初めて見たぞ。だがまあ、俺と対等に話そうという、貴様のその度胸は嫌いではないぞ。」

「えへへ…じゃあ、ボクはそろそろ行くねー。」

 

《ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネンの好感度が1上がった》

 

 

 

 

ラッセクンと話してたら盛り上がっちゃったね。

あの子、話してみると意外と面白いんだね。

…あー、お腹すいたなぁ。

そういえば、そろそろ夕飯の時間だっけ。

今回は、星也クンがご飯を作ってくれるんだっけか。

楽しみだなー。

 

 

 

 

【食堂】

 

「来たよー。」

「あ、狛研さん。」

「ごめん、待った?」

「いえ、私も今来たところです。」

「そっか。星也クンは?」

「星也さんなら、今厨房で夕食を作っています。」

「じゃあ、気長に待とっかぁ。」

その時、厨房から星也クンが出てきた。

「ご飯できたよ。」

「早いね!?」

「まあ、割と早くから準備してたからね。…財原君はまだなのかい?」

「…そうみたいですね。」

「まあ、彼が時間をちゃんと守った事なんてほとんど無いけどね。」

 

「ふわぁああ〜。ごめんなちゃーい。遅れまちたー。」

お、言ってるそばから来たよ。

噂をすればなんとやら、ってヤツかな?

「俺もうお腹ペコペコだよぉ〜。早く食べちゃおうよ〜。」

「…だったらもっと早く来てくれるとありがたいんだけど。」

「ごめんねー?」

「あの、皆さんとりあえず席に座りませんか…?」

「そうだね。」

わーい、星也クンのご飯だー!

おいしそうだなぁ〜。

 

 

 

 

うーん、おいしかった!

やっぱ星也クンも料理上手だね。

さてと、この後は夜時間まで時間あるけど…

何しようかな?

そうだ、また音楽室にでも行こうかな?

 

 

 

 

【音楽室】

 

相変わらず広いなー、この音楽室は。

ん?

あれは…陽一クンと柳人クン?

何やってんのかな?

 

「やあ、陽一クンに柳人クン。」

「おう、狛研ちゃん。なんか用か?」

「いや、別にそういうわけじゃないんだ。暇潰しに来たの。…ねえ、二人とも何やってんの?」

「ああ、詩名が、楽器の弾き方教えてくれるっていうから、習ってんだよ。」

「へえ…陽一クン、楽器とか興味あるの?」

「いや、興味あるっていうか…教養として?」

「嘘つけよ、栄君。君はさっき、楽器できる男がモテるみたいな事言ってただろ?」

「ちょ、おい詩名!!なんでそれを狛研ちゃんの前で言う!?」

「だって、嘘は良くないだろ〜♪さ、栄君。練習の成果を聴かせてあげたらどうだい?」

「お、おう…」

 

陽一クンは、ピアノで猫ふんじゃったを弾き始めた。

だいぶつっかえつっかえだったけど、最後まで弾いてくれた。

「ど、どうよ…」

「陽一クン、すごいね!最後まで弾けたじゃん!」

「あ、ありがと狛研ちゃん…」

「もっと褒めてあげなよ。栄君、これでもだいぶ上達したんだよ。最初なんて、ドレミも怪しかったもんね♬」

「おい、言うな!!」

「でも、君は本当に頑張ったと思うよ。うん、えらいえらい。」

「なんでそう上からなんだよ…」

「ねえ柳人クン。柳人クンも弾いてくれる?」

「え?」

「ボク、昨日のキミの演奏気に入ったからさ。ピアノも聴いてみたいんだ。」

「フフ、お安いご用さ。ちょっと、栄君。そこ変わって。」

「え、お前も弾くのかよ。」

「ファンからの要望には応えないとね〜♬」

「ファンって…」

 

柳人クンは、椅子に座ると、目にも留まらぬ速さで鍵盤を叩き始めた。

音楽室に、綺麗な音色が響き渡る。

「…すごい。」

「ふんふ〜ん♫」

柳人クンは、鼻歌交じりで演奏を続ける。

演奏は、10分くらい経ってもまだ続く。

「…あの、詩名?そろそろ…」

「ふんふ〜ん、ふ〜ん♪」

「ああ、ダメだコイツ。完全にはかどってる。こりゃ、飽きるのを待つしかねェな。」

「このまま聴いてようよ。ボク、この曲好きだよ。」

「…だな。」

 

「…ふぅ。」

柳人クンの演奏が終わった。

気がつくと、30分くらい経っていた。

「あ、ごめんよ。かなり時間経ってたよね?ついはかどっちゃって、いつものクセが出ちゃったよ。」

「…!」

ボクは、柳人クンに拍手を贈った。

「すごいよ、柳人クン!!メッチャいい演奏だった!!」

「クッソ、これじゃあオレの演奏がヘタクソみたいになっちまうだろうがよ…おう詩名!!ムカつくくらいいい演奏だったぜ!!」

「ムカつくって…ひどいなぁ。まあ、褒め言葉と受け取っておこうかな。」

「二人とも、ピアノ弾けるなんてすごいね!なんか、二人の演奏聴いてたらボクも弾きたくなってきちゃった!ねえ、弾いてもいい?」

「狛研君の演奏か…それは楽しみだねぇ。どうぞ。」

「わーい!」

柳人クンは、席を譲ってくれた。

よーし、弾くぞー!!

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「!!?」

 

 

 

 

「ふんふん、ふ〜ん♪」

 

※$^&*%@#ーーーーーーーーー

 

「ちょ、狛研ちゃん!?ストップ、ストップ!!」

「なんだこの音…なんか、耳だけじゃなくて頭まで痛くなってきたんだけど…!!」

二人とも、どうしたのかな?

まあいいや。まだもうちょっと弾きたいから続けよっと。

ピアノって楽しいね!

 

 

 

 

「あー、面白かった。…あれ?どうしたの二人とも?」

二人とも、ステージの上で伸びてた。

「うぅ…やっと終わった…」

「普通のグランドピアノなのにこんな禍々しい音色が出るなんて…ある意味才能だね…」

「二人とも大丈夫ー?どっか具合悪いの?」

「ああ、いや…狛研ちゃんの演奏があまりに素晴らしかったから、感動で震えちまって…」

「ホント!?」

「ああ。すげェいい演奏だったぜ…」

「…栄君、オイラは君を尊敬するよ。」

「そっかあ、そんなに気に入ってくれたんだったら、もう一回弾こうかな!?」

 

「「やめて!!?」」

 

「…え?」

「あ、いや…その、あんまりにも狛研ちゃんの演奏が凄すぎて、もう一回弾かせちゃうのはさすがに贅沢すぎっていうかおこがましいっていうか…」

「ふーん。」

なにそれ。

気に入ってくれたんだったらいくらでも弾いてあげるのに。

二人とも変なの!

 

「あ、そ、そうだ!もうそろそろ遅い時間じゃないかい?」

「あ、そうだな。言われてみれば、もう9時半だった!じゃあ、オレらは部屋でゆっくり寝よっかな。じゃあな狛研ちゃん。また明日。」

「おやすみ、狛研君。」

二人は、そそくさと音楽室を出て行った。

「うん、二人ともおやすみー。」

さてと、そろそろ遅い時間だし、ボクも部屋に戻ろーっと。

明日は誰と話そっかな?

 

《栄陽一の好感度が1上がった》

 

《詩名柳人の好感度が1上がった》



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第4章(非)日常編④

大幅に遅れてしまって申し訳ありません。
最近リアルが忙しくってですね?(言い訳)


「うーん…」

ボクは、独房で目が覚めた。

 

『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』

 

毎朝毎朝うるさいなぁ、全く。

いちいちローテーションしなくていいから!

…クマちゃん達って、ヒマなの?

まあいいや。

なんかお腹空いちゃったな。

今日は、星也クンが朝ご飯を作ってくれるんだっけ。

楽しみだなー。

さてと、それまで何して時間を潰そうかな?

そうだ。お父さんの本の続きを読もっと。

 

 

 

 

【食堂】

 

食堂には、すでに治奈ちゃんがいた。

「治奈ちゃんおはよー。」

「あ、おはようございます狛研さん…」

「星也クンは?」

「朝食を作ってくださっています。あと少しでできるそうです。」

「そっかー、じゃあ気長に待とうね。」

「そうですね。」

 

「じゃあ、一緒にお話でもしよっか。何をお話しよっか?」

「え、狛研さんが決めてくれるんじゃないんですか?」

「あ、そっかごめん。じゃあさ、治奈ちゃん昨日何してたの?」

「え、何…とは?」

「ほら、たとえばどこで遊んでたー、とか。」

「そうですね…昨日は、星也さんと一緒に美術室を見ていましたね。」

「そっかー。楽しかった?」

「ええ、まあ…でも、なんで急にそんな事を?」

「なんとなく。」

 

「…そうですか。あの、狛研さん。」

「何?」

「えっと…私の事、どう思ってますか?」

「え、どうって…治奈ちゃんは、大切なお友達だよ!もちろん、他のみんなもね!…なんでそんな事聞くの?」

「…ふふっ、なんとなくです。」

「そっかー、なんとなくか!ははっ。」

「ふふふ…」

なんとなくでそんな事聞くかぁ。

治奈ちゃんって面白いね!

 

「狛研さん、私、あなたとクラスメイトになれてよかったです。これからも仲良くしましょうね。」

「何を今更!治奈ちゃんっておかしいね!」

「ふふっ、それはこちらのセリフです。」

「えー!?ちょっと、それどういう意味!?ボクがおかしいって事!?」

治奈ちゃんひどいよー!

 

《癒川治奈の好感度が1上がった》

 

「…なんか、話していたら楽しくなってきましたね。」

「そうだね。ボクは、みんなとお話できて毎日楽しいよー!」

「やあ、盛り上がってるみたいだね。僕も混ぜてよ。」

「あ、星也クン。ご飯できたの!?」

「うん。待たせちゃってごめんね。今すぐセッティングするからちょっと待ってね。」

「あ、私も手伝います。」

「ありがとう治奈。じゃあ、これそっちに運んでくれる?」

「はい。」

「ボクもなんかやる事ある?」

「狛研さんは、食器を並べてくれるかな?」

「りょーかいっ!」

 

 

 

 

うん、我ながら完の璧!

ホントにお腹空いてきちゃったな…早く朝ご飯食べたーい!

 

「ふわー、ねみぃ。あ、みんなおっはよぅー。」

遅れて天理クンが来た。

「…君、毎回遅刻してくるよね。たまには手伝おうとか思わないの?」

「思わないね、だって眠いんだもん。ねえ、そんな事より朝飯できてるんでしょ?早く食べよーよ。」

「あなたを待っていたんですが…」

「治奈、もう何を言っても無駄だよ。彼、ちっとも反省しないんだもの。」

「さーせん。」

「はぁ…とりあえず、席に着こう。早く食べないと冷めちゃうからね。」

 

 

 

 

うーん、おいしい!

やっぱ星也クン料理上手だね!

「うーん、おいしいねー。ついつい食べ過ぎちゃうよー。」

「船漕ぎながら食べるのはやめようね。行儀悪いよ。」

「ごめんなちゃーい。」

「天理クン、髪はねてるよ。ついさっきまでずっと寝てたでしょ。」

「うん、起きたのは8時半だね。え、そんなはねてる?」

「うん。動かないで。…はい直った。」

「わーい、ありがとう狛研サン。」

「…あのさ、狛研さん。君さあ、財原君に甘くない?」

「そう?えへへ…なんか、施設の弟達を思い出しちゃって。ほら、天理クンって末っ子っぽいじゃん?」

「へー、じゃあ毎日ボサボサのままで来よっかな。」

「えぇ!?」

「ほらね、甘やかすからこうなるんだよ。」

「にゃははー。」

 

 

 

 

あー、おいしかった。

ごちそうさまー。

あ、そうだ。才刃クンのところに行かなきゃ。

あの子、3日間もずっと外出てないんだよね。

流石に心配だよ。体調とか崩してないといいんだけど。

ちょっと様子でも見に行こうかな。

 

 

 

 

【入田才刃の独房】

 

ピンポーン

 

「もしもーし、才刃クンいるぅー?」

返事がない。

でも、何か返してくれるまで声をかけてみるか。

「ねえ、才刃クン。元気?ちゃんとご飯とか食べてる?ボク達はね、さっき星也クンが作ってくれたご飯を食べたんだ、あ、そうだ。あんまりお菓子ばっか食べちゃダメだよ。それから、出てきたくなったらいつでも出てきてね。みんな待ってるから。」

 

ポコンッ

 

《いい加減にしろ》

 

《帰れ》

 

「やだ。ボク、才刃クンが来るなって言っても毎日ここに来るから。ホントは、才刃クンにやってもらいたい事もあるしね。」

 

《迷惑》

 

「迷惑でもお節介でもいいよ。ボクは、キミのクラスメイトなんだよ?放っておけないじゃない。才刃クン、明日も来るからね。明日も楽しくお喋りしようね。」

 

《勝手にしろ》

 

…お、ついにちょっとだけ心を開いてくれたのかな。

明日は、何の話をしようかな?

 

 

 

 

暇だし、散歩しよーっと。

 

【ゲームエリア】

 

「あ。」

「おう、狛研ちゃん。」

「陽一クンじゃん。何してんの?」

「ああ、いや…この前、ゲームで入田の野郎に散々ボコられたからな。アイツが部屋から出てきてここに来た時、ちょっとは戦えるように腕を上げておこうと思ってよ。」

「いい考えだね、それ!ボクも、才刃クンに負けちゃったからね。打倒才刃クン目指して頑張ろ!!」

「おう!」

「じゃあまず、アレからやらない?」

「ああ、VRの格ゲーか。いいぜ。ちょうど誰かと相手したいと思ってたとこだしな。」

「わーい。」

 

 

 

 

まさか、狛研ちゃんと対戦する事になるとはな。

まあでもオレもあれからけっこう練習したし、相手は女の子だ。

ここはわざとらしくないように僅差で負けてあげて、好感度アップのチャンスだぜ!

 

 

 

『ROUND1 Go fight』

 

カーン

 

 

 

さて、どう来るか…

ほぼ毎日ここでゲームに内蔵されてるAIと戦ってきたオレにとっては、素人の相手なんて余裕だな。

あとは、癪だがうさんくさい原に攻略法を教えて貰った事もあったし…

オレには、次の一手が全パターン読めるぜ!

だがまあ、相手は初心者だし、オレは女の子をボコるようなマネは絶対しねェ。

一発目は、大ダメージにならない程度に受けてやるか。

 

さあ、どこからでも来…

 

 

 

ゴシャッ

 

「ぱえっ」

 

 

 

え?

え?え??え、ちょっと待って。

何がどうなってんの。

なんで一撃喰らっただけでHP半分近く減ってんの?

っていうか待って。なんか思ってたんと違う。全然読めなかったんだけど。

え、あ、そっか。

オレが本気出してなかったからか。

…ちょっと狛研ちゃんの事、見くびってたようだな。

少し本気出すか。

 

 

 

30秒後

 

K.O.

 

『WINNER PLAYER1 PERFECT』

 

嘘でしょ?

え、待って。シンプルに強くね?完敗なんですけど。

てかおい財原。話が違うじゃんか。裏ワザ使えば勝てるんじゃなかったのかよ。

なんで狛研ちゃんこんな強いの?オレ、後半は割と本気出してたよ?

 

「やったー、勝ったー!!」

「燃え尽きたぜ…真っ白にな…」

「あー、楽しかった。陽一クンも楽しかったよね?」

「あ、うん…ハイ…」

「あ、そうだ!陽一クン、手抜いてたでしょ!当たってばっかだし、攻撃に全然キレがなかった。ひどいよー!!ボクの事バカにしてるの!?」

いや、あれで本気だったんだけど。

これ以上を期待されても困るっていうか。

「あ、あはは…狛研ちゃん、なかなかやるじゃん。初心者だからって、ついナメきってたよ。ごめんごめん。」

「もうっ!」

「ところで、ゲームのスキルってどこで磨いたの?ゲーセンに毎日通ってたりとか?」

「ゲーセンかー。全然行ってないよー。」

「ゑ?」

「いっつもみんなで遊んでる時の感覚でプレイしただけだよ!あとはアレかな。前に才刃クンと対戦した時、ちょっとコツを掴んだってのもあるのかなぁ?」

嘘でしょ?

え、じゃあそんなに今までやってたわけじゃないって事?

で、あれって…ガチモンの天才じゃねえか。

 

「うーん、まだ時間あるね。他にも色々あるし、どんどんプレイしちゃおっか!」

「え、いや…今日はもうこの辺に…」

「何言ってんの!才刃クンに勝つためには、練習あるのみでしょ!まだ全然プレイできてないのもあるし、陽一クンにスキルとか教えてもらいたいからね!ほら行くよ!」

「あ、はい…」

 

 

 

 

30分後

 

「いやー、楽しかった!こんなにゲームしたの、久々だなぁ〜!」

「ゆ、指がちぎれる…っていうか、なんで狛研ちゃんはここまでやって平気なの?」

「え、これくらい普通じゃない?」

マジか。

もう、この子色々と規格外すぎるんだよな…

「陽一クン!今日は、一緒にゲームしてくれてありがとね!」

「い、いえ…こちらこそ、勉強になりました…」

「あらいけない。ボク、そろそろお昼の時間だから行くね!じゃあまた後でねー!」

「…うん。」

クソ、ちょっといい所見せて好感度上げようと思ってたのに…

ここまでうまくいかない事ってある?オレ、泣きそうなんだけど。

…まあ、本人は楽しそうだったし良しとするか。

 

《狛研叶の好感度が1上がった》

 

 

 

 

やー、陽一クンとゲームしてたらお腹空いちゃったな!

頭使ったらお腹空くって聞いたことあるけど…本当なんだね!

今日は、治奈ちゃんがお昼ご飯作ってくれるんだっけ?

楽しみだなー。

 

 

 

 

【食堂】

 

「ごめん、お待たせー!待った?」

「待ってないよ。僕も今来たところだから。…財原君はまだ来てないしね。」

「まあ、あの子いっつも遅れて来るもん。」

 

「ふわぁーあ。あー、メッチャ眠い。すごく眠い。眠すぎて逆に眠い。間を取って眠い。」

天理クンは、大きなあくびをしながら食堂に来た。

「…財原君はまた遅刻か。」

「あー、どっこいしょっと。あれ?まだメシできてねーの?ねえ、俺お腹空いたんだけどー!!」

天理クンは、ナイフとフォークをチンチンと鳴らして治奈ちゃんを急かした。

「静かにしようね。行儀悪いよ。」

「…すいません。」

天理クンが大人しくなった…

やっぱり、星也クンってちょっと怖いね。

 

「あ、あの…すみません、お待たせしてしまって。昼食作ったんで、良かったら皆さんで召し上がってください。」

治奈ちゃんが厨房からご飯を持ってきてくれた。

「ありがとう治奈。」

「いえ…今日は私の担当だったから作っただけで…」

「俺の分もはーやーくー!!」

「あ、すみません。今すぐ…」

治奈ちゃんは料理上手だからね。

今日の昼ご飯も楽しみだなー。

「それじゃあ、みんな揃ったし食べよっか。」

「さいですねー。」

わーい!いただきまーす!

 

 

 

 

うーん、おいしかった!

やっぱり治奈ちゃんは料理上手だよね。

ついつい食べすぎちゃったよ。

…さてと、何しよっかな?

あ、そうだ。

たまには図書室に行くのもいいかもね。

 

 

 

 

【図書室】

 

相変わらず広いねー、ココ!

いろんな本が並んでるなー。

…あ。

先客がいたみたいだね。

「やあ、星也クン。」

「…あ、狛研さん。」

「ねえ、何読んでんの?」

「ああ、ちょっと…希望ヶ峰学園についての資料をね。ほら、この才監学園とやらが本当に希望ヶ峰学園の建物かどうなのか、今の所怪しいだろ?」

「そうだね。星也クン、そういうの調べてたんだ。頭いいね!」

「…そんな、僕なんてまだまだだよ。…景見君や白鳥さん…みんなを守れなくて、国王陛下や詩名君達にも離反されちゃったしね。」

「…あのさ、このあと時間あったら、研究室見に行ってもいい?ちょっとそこで話したい事とか色々あるからね。」

「うん、いいよ。じゃあ、切りがいい所まで読み切っちゃうから、それまでちょっと待っててね。」

「はーい。」

 

「…。」

 

 

 

 

【内エリア 3F】

 

星也クン、そろそろ本を読み終える頃かなー。

「お待たせ、狛研さん。」

「全然待ってないよー!」

「それは良かった。じゃあ、行こっか。」

 

 

 

 

【内エリア 5F】

 

「ねえ、星也クンの研究室ってどこなの?」

「こっちにあるよ。ついてきて。」

「はーい。」

 

 

 

 

【超高校級のアナウンサー】の研究室

 

「ここが僕の研究室だよ。ゆっくりしてってね。」

「…わぁ!」

うん、さすがは星也クンの研究室って感じだね!

部屋全体がスタジオみたいになってるよ。

あと、ニュースの資料とかも色々置いてあるのかな?

「ごめんね、散らかってる部屋で。」

「全然!ボクね、キミの研究室を見られてとっても嬉しいよー!」

「そっか、それは良かった。」

「あ、そうだ。いけないいけない。忘れるとこだった。」

「?どうかしたのかい?」

 

「はいこれ。」

ボクは、星也クンに万年筆を渡した。

「!!?」

突然星也クンの目つきが変わった。

「こ、狛研さん!!ちょっとそれよく見せて!!」

「え、あ?うん…」

「やっぱり…本物だよこれ…!まさか、こんな所でお目にかかれるなんて…!」

星也クンは、興奮気味に万年筆を見ていた。

「え、そんなにすごい物なの?そのペン。」

「ああ、これは、万年筆職人『弘野法人』が作り、かの文豪『大原小也』が愛用したとされる、世界にたった3本しかない超高級万年筆なんだよ!!この万年筆は、その名の通り一万年経っても劣化しない優れ物で、どんなペンより書きやすくて無数の種類の線が表現できると言われているんだ。その価値、一本あたり5億円以上!」

「…へー。」

「いやあ、こんな所で手に入るなんて、とんでもなく幸運だね。ありがとう狛研さん!一生大切にするね。」

「そんな大袈裟な…」

「あ、そうだ。お礼に何かしなくちゃね。何かして欲しい事とかある?」

「して欲しい事かぁ…うーん、強いて言うなら、キミの話が聞きたいかな?」

「…え?そんな事でいいの?」

「うん。ボク、キミの事がもっと知りたいんだ!話してくれるかな?」

「そういう事ならお安い御用さ。何か質問ある?なんでも答えるよ。」

 

「じゃあ聞くけど、キミはなんで【超高校級のアナウンサー】になったの?」

「うーん、理由かぁ。強いて言うなら、ニュースが好きだったからかな。僕、子供の頃から報道関係の仕事に就きたいと思っててね。それで色々と調べたり勉強したりしてたんだ。ああ、そうそう。中学校では、放送委員をやってたね。それが話題になって、放送局にスカウトされたんだ。それから、色々と仕事を貰ってこなしていく内に有名になって、【超高校級のアナウンサー】になったってところかな。」

「へー、子供の頃からの夢だったんだね。」

「…まあね。話したら、ガキ臭いってよく笑われるんだけどね。」

「そんな事ないよ!小さい頃からの夢をずっと追いかけるのって、すごいと思う!」

「ありがとう。君のおかげで、モチベーションが上がったよ。」

「そう?よかったぁ。」

「他に聞きたい事はないかい?」

 

「うーん…そうだ。じゃあ聞くけど、この学園に来てから何か気づいた事とかある?」

「え?」

「ほら、君って頭良いから、そういうのすぐ気づくんじゃないかなってさ。実際どうなの?」

星也クンの表情が急に変わった。

今までの爽やかな笑顔とは打って変わって、真剣味のある表情だった。

「…えーっとね、気付いたっていうか…少し気になる事があるんだ。」

「気になる事?」

「ああ。君を信頼できる仲間だと見込んで話すよ。実はね、ここに来る前からある人物を追ってるんだ。」

「ある人物?」

 

「『NOAHS』って知ってる?」

「ッえ!?」

それって、確か高校生が結成した秘密結社じゃ…

「仕事上、裏社会の重要人物を調べる事がよくあってね。裏社会と通じてれば、嫌でも聞く名前だよ。今、その会社のボスを追ってるんだ。」

「なんでそんな事…」

「…殺されたんだ。ソイツに、僕の家族を…」

「…え。」

「僕が、やっと今のテレビ局にスカウトされて夢を叶えられた、その矢先だった。僕の家族全員、事故で死んだ。でも、明らかに不自然だったから、調べたらすぐにわかったよ。みんな、『NOAHS』の奴等に事故に見せかけて殺されたんだ。目的はわからないけど…多分、【超高校級】の才能を持つ僕を消すためだと思う。」

「そんな…」

「僕は、『NOAHS』の親玉を見つけて、家族の仇を討つんだ。」

 

「殺すの?」

「…。」

「ボスを見つけたとして、そのあとはどうするの?その子を殺すの?ボクは嫌だよ。星也クンが殺人犯になっちゃうなんて。」

「…安心して、狛研さん。僕の目的は、ソイツを警察に突き出す事だよ。僕の家族を殺した奴と同類になんて絶対なりたくないからね。絶対に殺さないって誓うよ。…それに、殺したくても殺せないしね。」

「どういう事?」

「…ソイツは、この学園に紛れ込んでる可能性が高いんだ。偽名と偽物の才能で、正体を隠してはいるけどね。」

「それって、誰なの?」

「…わからない。何せ、全然情報が無いからね。…ただ、奴の本名と本当の才能は知ってるよ。」

 

 

 

「【超高校級の知能犯】方神(ハコガミ)(メイ)。コイツには気をつけて。」

「!!?」

【超高校級の知能犯】…図書館で読んだ資料に載ってた才能…!

ソイツが星也クンの家族を殺して、この学園に紛れ込んでるっていうの…!?

そんな、みんなの中にハコガミメイが…?

「僕は、今の所財原君と神座さんが怪しいと踏んで調査を進めてるんだ。あの二人には悪いけど、悪い芽は早いうちに摘んでおかないと…あ、本人達には絶対言わないでね。」

「言わないよ。でも、二人の事を悪く言うのはどうかと思う。」

「おっと、ごめんごめん。少し危なっかしい話になっちゃったね。せっかくだし、もう少し平和な話をしようか。せっかく君とお話できるんだ。この時間は有意義に使わないとね。」

星也クンは、深刻な表情から一変して、いつもの優しい表情になった。

「さてと、何か気になる事はある?あったら喜んで質問に答えるけど。」

 

「じゃあさ、星也クンは、ここから出たらやりたい事とかある?」

「…そうだね。まずは、さっきも言ったけど、方神を警察に突き出す事かな。あと、仕事が溜まってるからそれもやらないといけないし…あとは…」

「治奈ちゃんとイチャイチャしたい?」

「なっ、なんで急にそういう事言うかなぁ君は!?」

星也クンが慌ててるとこ、久々に見たなぁ。

こうして見てみると、ちょっと可愛いよね。

「図星なの?」

「図星っていうか…君には関係ないだろ!」

「あるよー。クラスメイトの仲は応援したいじゃん?で、実際どうなの?」

「別に普通だよ。特に進展があったわけでもないし…」

「ふーん。でもさ、実際何したいとかはあるでしょ?」

「どこまで食い下がる気!?」

「ボク、こう見えても施設の中ではお姉ちゃんだったからね。恋愛相談なら任せなさい!」

「嫌な予感しかしないんだけど!?」

 

 

 

 

「…ホント、君といるとツッコミ疲れするよ。」

「えへへ、星也クンとお話できて楽しかった!」

「…そっか。それは良かったよ。」

「じゃあね、星也クン。またお話しようね!」

「…うん。」

 

《穴雲星也の好感度が1上がった》

 

 

 

 

【物理室】

 

いやー、いっぱいお話しちゃったな。

星也クンの意外な一面が見られて良かったよ。

…それにしても、【超高校級の知能犯】か。

誰だかはわからないけど、一応頭の片隅には入れといたほうがいいのかな?

そうだ、ここには確か論文があったみたいだし、他にも色々情報があるかも…

 

「探し物?」

 

後ろから天理クンが話しかけてきた。

「…まあ、そんなとこ。」

「ふーん。そうなんだー。」

天理クンは、ニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる。

「…ねえ、さっき穴雲クンと楽しそうにおしゃべりしてたでしょ?」

「うん。」

「その前は、栄クンとゲームか。うんうん、楽しそうで何よりですわー。」

「…何が言いたいんだい?」

「嫉妬しちゃうじゃんかよー。俺以外の男と仲良くするなんてよ。」

「…は?」

「もうまどろっこしいからハッキリ言うね。」

天理クンは、いきなり詰め寄ると、ボクを壁際まで追い詰めた。

そして、手をついて言った。

 

「俺と付き合ってよ。」

「えっと…どこに?」

「そういう意味じゃねえよ。わかんない?」

「…あー、そっちか。え?待って。今日何日だっけ?」

「別にエイプリルフールじゃないしー、俺は別に冗談とか言ってないから。マジで俺と付き合えって言ってんの。」

「え、待って、本当?」

「俺、くだらない嘘つくの嫌いだから。本気で言ってるに決まってんだろ。」

は?え、ちょっと待って。

訳わかんない。

何をどうしたらこうなる?

天理クンってば、変なキノコでも食べちゃったんじゃない?

これは治奈ちゃんに診て貰わないと…

 

「逃げようとすんなよ。」

げっ。

「…で、どうなの?」

「…ボク、天理クンの事は大事なクラスメイトで、弟みたいな子だと思ってるから。それだけじゃダメ?」

「ははは、なるほどね。俺は、キミにとってはただのクラスメイトの一人で、ただの弟キャラって事ね。いやー、参ったなぁ。」

天理クンは、笑いながら左手で前髪をかき上げた。

 

天理クンは、いきなり顔を近づけてきた。

「俺さぁ、お願いしに来たんじゃないから。命令しに来たの。もう一回言うからよく聞け。俺と付き合え。」

「いや!!」

ボクは、天理クンを押しのけた。

「あらら、フラれちゃった。」

「ボク、ホントは付き合うとかそういうのよくわかってないけど、でも命令されるのはちょっと違う。」

「ふーん、いいんだ?俺なら、絶対キミを幸せにできるけど?」

「は?」

「俺の才能忘れた?金さえあればなんでも手に入るぜ?俺なら、絶対この先キミを不自由にはさせないけどなー。」

「うーん、幸せってお金で買えないと思う。とにかく、ボクはそういう気全くないから!」

 

「ぷっ、ハハハ!!」

天理クンは急に笑い出した。

「え、何?」

「いやあね、実は、さっき栄クンに腕相撲で負けてさ。その罰ゲームが、誰かに告白して来いって話だったんだよね。」

「え、じゃあ今のは…」

「もちろん嘘だよ。ちゃんと録画してあるしね。ほい録画終了っと。」

「なっ…」

「いやあ、逆にキミがフってくれて助かったわー。これでうまくいったら逆にビックリだよ。」

「なーんだ、天理クンのいじわる!」

「ハハハ、騙される方が悪いのさ。じゃ、用が済んだから俺はそろそろ行くとしますかー。」

天理クンは、一歩歩いたかと思うと、急に振り返った。

「あ、そうそう。一個言いたい事あったんだった。」

「…何?」

 

 

 

 

「!!?」

天理クンは、一気に距離を詰めると、いきなりキスしてきた。

「また口説きに行くから。今度は、罰ゲームとかそういうのナシでね。じゃーね!」

天理クンは、上機嫌で去っていった。

 

ぽかーん…

 

え、何がしたかったのこの子。

マジで意味わかんないんだけど。

 

カサッ

 

…ん?

何これ。紙?

…。

 

 

 

気をつけろ

敵はすぐそばにいる

 

 

 

…敵?

どういう事?

それに、この紙は一体誰が…

 

 

 

 

【食堂】

 

星也クンが言ってた【超高校級の知能犯】に、紙に書いてあった敵…

何がなんだかよくわかんないや。

「狛研さん?どうかしましたか?」

「え、あ、ううん。なんでもない。」

「…そうですか。」

 

「はいお待ちー。メガ盛り丼だよー。」

げっ。

今日の夕飯は天理クンが担当か。

「これはまた下品な物を…」

「相変わらずすごい量ですね…」

「えへへー。そこら辺にあった材料ブチ込んだらこうなっちゃって。とりあえず席座って食べよーよ。」

天理クン、さっきあんな事があったのにあっけらかんとしてるね。

…この子が、【超高校級の知能犯】…?

いや、考えすぎか。

ダメだな、友達を疑っちゃ。

 

 

 

 

いやー、つい食べすぎちゃった。

こりゃあちょっと動いて減量しないとですな。

あ、そうだ。その前にちょっと5階の散策でもしよっかな。

 

ガタッ

 

ん!?

なんか物音がした!

情報管理室の方からだよね。

行かなきゃ!

 

 

 

 

【情報管理室】

 

情報管理室の方に入ったけど、誰もいなかった。

「…あれ?」

おかしいなぁ。確かに情報管理室から聞こえたと思うんだけど。

空耳かな?

うーん、空耳が聞こえるなんて、最近疲れてるのかなぁ。

とりあえず、何もなかったみたいだし、良しとしますか。

さてと、散歩の続きっと。

 

ん?

 

なんだ?

物陰に、人影が見える…

あれは、誰…?

「!!」

物陰は、こっちに気がついたのか、走って逃げ出した。

「待って!!」

ボクは、人影を追いかけた。

でも、物陰を見たときには誰もいなかった。

…あーあ、逃げられちゃったか。

それにしても、誰だったんだろ。今の。

すぐ引っ込んじゃったから、ちゃんと確認できなかったな。

 

「狛研さん?何してるんですか?」

後ろから治奈ちゃんが声をかけてきた。

「ああ、えっと…探し物。」

「…そうですか。お手伝いしましょうか?」

「いや、いいよ。自分で探せるし。」

「はぁ…」

「…あのさ、治奈ちゃん。」

「何でしょうか?」

「最近さ、情報管理室に入った人とか…逆に出てった人は見なかった?」

「ええと…見てませんね。情報管理室にあるパソコンはパスワードがかかってて使えないので、誰も入らないんじゃないかと…入田さんも、部屋に篭りっきりですし…」

「あ、そうだよね!あはは、ごめんね。変な事聞いちゃって!」

「いえ、こちらこそ、お力になれず申し訳ありません。」

「いいって。あ、そうだ。今散歩してるんだけど、一緒にどう?」

「えっと…すみません。やる事があるので。」

「そっかぁ。じゃあね、また明日。」

「はい。」

 

…マジで誰だったんだろ、あの影。

あああ、一回気になっちゃったらなんか気持ち悪いなぁ。

知能犯に、物陰…まだまだわからない事だらけだな。

 




一気に情報量が増えたので、恋愛イベントでガス抜き。


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第4章(非)日常編⑤

今回は誰が死ぬのかな?

プラスちょっと編集。







ボクは、独房で考え事をしながら時間を潰した。

そろそろ夜時間だから寝ないとね。

あ、待って。

食堂に忘れ物したかも。

一応確認しに行ったほうがいいよね?

 

 

 

 

【内エリア 2F】

 

「ーーーーー!!」

「ーーーー!」

なんだ?

騒がしいな。

この声は…ラッセクンと陽一クン?

こんな夜遅くにどうしたんだろう…ケンカでもしたのかな?

 

 

 

 

【食堂】

 

「おい、貴様…反省してるのか?」

「…ッ。うるせぇ。オレは間違ってねェぞ。」

「これで足りると思うな。貴様は帝国の和を乱したのだ。それなりの罰は受けてもらう。」

「やめてください!こんなの…あんまりです!」

 

「ねえ、みんなどうしたの?」

食堂には、ラッセクン達帝国組と、星也クンと治奈ちゃんがいた。

「…あ、狛研さん…」

「チッ、このタイミングでコイツが来たか。」

陽一クンは顔を腫らして座り込んでいて、星也クンはその場に倒れ込んでいて、治奈ちゃんは髪を短く切られていた。

「…え、ちょっと待って。何これ。どうなってるの?三人とも、どうしたの?なんでこんな事に…」

「貴様は鬱陶しいから呼ばなかったというのに…」

ラッセクンは、不機嫌そうに言った。

「…何があったのか話して。」

「…。」

ラッセクンは、無言で睨みつけてきた。

 

「あ、あの…私が話します…」

治奈ちゃんが手を挙げて言った。

「治奈ちゃん、でも…」

「狛研さん。私ならもう大丈夫です。それに、こうなったのは私の責任でもあるんです…だから…」

治奈ちゃんは、話し始めた。

「…狛研さんと情報管理室の前で別れた直後の事です。」

 

 

 

 

数時間前

 

「まだたくさんやる事があるから、部屋に戻らないと…」

「ぐっ…」

その時、よろめきながら廊下を歩く栄さんの姿が見えたんです。

それはもうボロボロで…私、見ていられませんでした。

「あの、栄さん…どうなさいましたか?」

「あ、癒川ちゃん…いや…ちょっとハデに転んでよ。」

「いや、転んだってレベルの怪我じゃないじゃないですか。」

「あ、アレだ…階段から落ちて…」

「この建物、階段はありませんよ。手当てしますから、正直に話してください。」

「…。」

 

 

 

 

「はい、終わりましたよ栄さん。」

「…悪いな、癒川ちゃん。」

「それで、一体何があったんですか?」

「…。」

「あ、すみません…別にどうしても話したくなければ…」

 

「…いや、話すよ。オレは、不本意とはいえ君の秘密を知っちゃったしな。」

「栄さん…」

「実はな、オレ達の“国”には、あるルールがあってよ…」

「ルール?」

「ああ…ラッセは、オレら3人にポイントをつけてるんだよ。何かいい事をしたらボーナスポイント、逆に悪い事をしたらマイナスポイントってな。それで、その日一番ポイントが高かった奴はボーナスを、逆に一番低かった奴はペナルティを喰らうんだ。」

「そのペナルティって、まさか…」

「ああ。…ったく、恐ろしい奴だよラッセは。アイツ、オレ達を徹底的に管理して、コロシアイを起こさせない気でいるんだよ。どうしてもペナルティを喰らいたくないっつー心理を利用してな。…やっぱ、人の上に立つ奴って、そういうトコブッ飛んでんのかな。」

「…。」

「確かに、アイツの言う事を聞いてれば、確実にコロシアイのリスクを回避できると思う。…けど、もうこんな事続けんの、正直言って限界だよ。みんながお互いに足を引っ張り合ってよ…オレ達の関係って、こんなんじゃなかっただろ…!」

「栄さん…」

「オレだって、まさかこんな事になるなんて思ってなかったんだよ…!クソォ…!なんでこんな事になっちまったんだよ…!!」

「栄さん、それは辛かったですね。…話してくれて、ありがとうございます。」

「…悪いな、癒川ちゃん。オレの愚痴を聞いてもらっちまってよ。」

「そんな…栄さんは悪くないじゃないですか。またいつでも相談してくださいね。私でよければ話、聞きますから。」

 

「…ありがとう。…ところでさ、癒川ちゃんって聞き上手だよな。まるでカウンセラーみたいだよ。」

「え、あ、そうですか?その、患者さんの体だけでなく、心もケアするのが私達の仕事なので…一応カウンセリングの勉強もしてたんですけど…それが役に立ったなら良かったです。」

「そっか。…なあ、癒川ちゃんって、なんでここまでオレに良くしてくれんの?」

「私は、あなたを殺そうとしてしまいましたから…こんな事で罪が無かった事になるなんて思ってませんが、せめてあなたの役に立ちたいんです。」

「…そっか。なあ、癒川ちゃん。この際、穴雲とじゃなくてオレと付き合わねェか?オレ、君の罪ならどんな罪でも受け入れるぜ。(キリッ」

「え、それとこれとは話が別ですよね?」

「ですよねー。」

「…ふふっ、栄さんは面白いですね。」

「そ、そうか?」

「栄さん。ありがとうございました。少し元気が出ました。」

「お、おう。」

 

栄さんのお話を聞いて、少し他愛ない話をしてから部屋を出た、その時でした。

「おい。」

「…え?」

国王陛下が、部屋の前で立っていたんです。

「んなっ…なんでテメェがここに…!」

「不服か?…貴様ら、今すぐ食堂に来い。話がある。」

「は、話って…」

嫌な予感はしていましたが、ここで反対する意味もないと思い、私達は食堂に向かったんです。

でも、まさかあんな事になるなんて思ってなかったんです…!

 

 

 

 

【食堂】

 

そこには、すでに他の帝国組の皆さんもいました。

「それで、なんだよ話って。」

「…とぼけるな。おい料理バカ。小娘に、俺達が決めたルールを話しただろ。」

「え…!?いや、話してないけど…なあ?」

「あ、はい…」

「シラを切っても無駄だ。…俺が何の裏切り対策もしてないとでも思ったか?」

「ッー!!?」

「…貴様に盗聴器を仕掛けさせてもらった。毎日ポイントが最下位だから、念のため仕掛けておいたのだが…やはり、貴様を疑っておいて正解だったようだな。…全く、あれほど外部の奴らに俺達の情報を漏らすなと釘を刺したのに…残念だよ。」

「ッ…!!」

「…どういうつもりだ、貴様。俺に従うと決めたんじゃなかったのか?」

「ラッセ…」

「…弛んでるんじゃないのか?貴様ら。今自分がどういう状況に置かれているのか、わかってるのか?俺の言う通りにすれば命は保証すると言ってるんだ。なぜ言われた事もまともにできない?」

「そんな…おかしいですよ、こんなの…!皆さんを恐怖で縛って一体何になるっていうんですか!!この際だからはっきり言いますけど…あなた、異常ですよ!?」

「貴様は黙っていろ小娘。俺からしてみれば、こんな人の命がかかった状況で甘い事を言っていられる貴様らの方が異常なんだよ。」

「テメ…」

「貴様らはいいよな。普段から何も考えなくても周りの人間がなんとかしてくれるのだからな。俺は、一国の王だ。国民全員の命を預かる身として、常に国民達の事を第一に考えなければならなかった。誰かに責任を押しつけて、能天気な事をほざいている貴様らにはわからんだろうな。」

「ッ…」

「貴様ら、本気で人の命について考えた事なんてないんだろ?だから全員で協力してここを出るなんて甘い事が言えるんだ。」

 

「…まあいい。ルールを破ったんなら、罰を受けてもらう。」

「なっ…!」

「やめてください!栄さんは悪くないんです!無理に聞いた私が悪いんです!」

「違う!オレが全部喋っちまったからこんな事に…」

「煩いぞ貴様。少し黙れ。罪人に発言権があると思うな。…貴様ら二人もよく見ておけ。秩序を乱すとこうなるって事をな。」

そう言うと、国王陛下は私の髪を引っ張ったんです。

そして、机に置いてあったハサミを手に取りました。

「ッ…!?いやっ…!」

「おい、やめろラッセ!!やりすぎだろそれは!!」

「なんだ。文句があるのか。だったら、最初からルールを破るな。せっかく貴様らを徹底的に管理する事でコロシアイのリスクをなくそうとしていたのに…貴様らのせいで死人が出たら、どう責任を取るんだ?」

「…ッ!」

「自分の行動に責任を持たないからこうなるんだ。これは見せしめだ。よく見ておけ。」

 

ジャキンッ

 

「ーーーーあ、ああああ…」

「これに懲りて二度と俺達に関わろうと思うな。」

「ッー!!テメェ…!!やりやがったな!!」

 

ゴッ

 

「ガハッ…!?」

「…ようやく分かったよ。なぜ貴様が毎日ポイントが最下位なのかがな。…貴様、この二人を庇ってたんだろ?最下位の者は罰を受けるからな。貴様はわざと最下位になって、この二人が罰を受けないようにしていたのだ。余計な事をしやがって、もう貴様はこの国には要らん。」

「ガッ、ゲホッ…テメェ…!」

 

「何?何の騒ぎ?…治奈!?おい、治奈!!何があった!?しっかりしろ!!」

「星也さん…私…」

「どうしたんだ、その髪!誰にやられた!?」

「チッ、タイミング悪いな。貴様が来たか、メガネ。」

「…あなたがやったんですか?」

「ああ。その女が秩序を乱したのが悪い。罰するのは当然の事だろう?」

「ふざけるな!!国王だからって、こんな事をして…」

 

ゴッ

 

「がっ…」

「星也さん!!」

「少し煩いな。今はこの罪人を裁いている最中なのだから、邪魔をするな。」

「ゲホッ、テ…テメ…」

「まだ刑罰は終わってないぞ。貴様は、俺達を脅かしたんだ。それなりの覚悟はできているんだろうな?」

 

 

 

 

「…と、いうわけです。」

「…!!」

「おい、なんだその目は。…まさか、俺に怒りを向けているのか?だとしたらとんだ見当違いだぞ。俺はコイツらを罰しただけだ。何も間違った事はしていない。」

「…謝れ。」

「…は?」

「二人に謝れ。どんな理由があっても、女の子の髪を勝手に切って、友達に手をあげる事が悪い事じゃないわけないでしょ。早く二人に謝って。」

「黙れ。なぜ俺が貴様らの言う事を聞かなければならない?」

「…キミ、いい加減にしろよ。ボク、本気でキレるよ。」

「どいつもこいつも、少し寛容な態度を取ってやった途端に調子に乗りやがって…俺を誰と心得ている。」

「そんなのどうだっていいよ。ボクは…」

 

「なんか盛り上がってるね。俺も混ぜてよ。」

「…天理クン!」

「ゲホッ…テメ、今更来て何の用だ…」

「ん?いや?たまたま通りかかったから様子見に来たんだよ。だって、みんなの事が心配なんだもの!」

「…ハッ、嘘つけ。」

「それより、栄クン。大丈夫?手当てした方がいいんじゃない?それから、穴雲クンもノビてるけど、このままじゃよくないよね!?ねえ、癒川サン!早く二人を治してあげたら?」

「…ホント空気読まねェのなお前。」

「てか、その髪どうしたの?イメチェン?あ、違う?」

天理クンは、ニヤニヤしながら言った。

「へー、違うんだ。…じゃあさ。」

 

「誰がこんな事したの?」

「…え?」

「俺さ、来たばっかで何も状況わかんないからさ。誰か説明してよ。」

「ッ…」

治奈ちゃんは、しぶしぶ天理クンに事情を説明した。

「へー、なるほどね。…ははっ、国民想いの理想の王様だって聞いてたのに…実際は随分と独裁的じゃん?なぁ?ラッセ陛下ァ。」

「黙れ。貴様には関係ない。」

「まあ確かにそうだねー。でもさ、見せしめに髪切るとか…さすがにやりすぎだよね?悪い事したら謝んないと。」

あれっ?

なんか天理クンがまともな事言ってる…

ホントこの子何考えてるかわかんないよね。

「まあでも、安心しなよ。俺は、ラッセクンだけが悪者だとは思ってないから。」

「…何が言いたいんだい?」

「いるだろ?二人が罰を受けるのを近くで見てたっつーのに、何もしなかったクズが約2名よぉ!」

「…ッ!!」

天理クンは、柳人クンとゐをりちゃんを睨みながら言った。

「ひどいよねー、全く。クラスメイトが酷い目に遭ってるのに助けないなんてさぁ。下手したら実行犯のラッセクンよりドクズだよねー。どんだけ神経腐ってたらそんな非道い判断ができるのかなぁ?」

天理クンは、少し顔を下に向けて首筋を掻きながら見上げるようにして睨みつけた。

…機嫌が悪い時のクセなのかな?

「ゲホッ、やめろ…二人は関係ねェ…」

「へー、優しいね栄クンは。コイツらを庇うんだ?」

「うるせェ…テメェにだけは言われたくねェよ、クソ野郎…!」

「あーあ、嫌われちゃった。それじゃ、俺はお呼びじゃないみたいだからもう帰ろうかな?」

 

『解散!?していいわけないでしょー!!』

 

食堂に聞き飽きたソプラノヴォイスが響き渡る。

クマさんとベルさんがいきなり登場した。

『って、あれれ?これは一体どーいう状況なのかな?なんか、ちょっと見ない間にすっごい修羅場になってない?』

『アナタ達、全員でここを脱出するんじゃなかったんですか?フッフッフ、このザマは一体なんでしょうねェ。誰が見ても笑えますよコレは。』

「…貴様ら、何の用だ?」

「もう夜時間過ぎてるんですけどー。迷惑だなー。」

『夜時間には登場しないって誰が言ったの?っていうか、オマエラ反応悪くない?え、何?不感症なの?』

「うっせぇ。…で?何しに来たんだよ。」

『まあ、ちょっとした報告だよ。実は、ボク達今ちょっと機嫌が悪くってさぁ。』

「キミ達の機嫌なんてどうでもいいんだけど。」

『おっと、そんな事言っていいの?これはオマエラに関する事でもあるのに?』

「…どういう事だ?説明しろ!」

 

『実は、ゲームが何者かに乗っ取られかけてるんだよ!全く、ボク達の神聖なゲームを邪魔しようなんて、許せないよね!』

『フッフッフ。その方は、我々が見つけ次第早急におしおきに取り掛かりますが、それまでは皆様も十分に注意してください。それでは、また明日!』

『うぷぷ、まったねー!』

 

「ゲ、ゲームが乗っ取られかけてるって…そんな事急に言われても…」

「あーあ、面白い事になっちゃったね。」

「…フン。」

「頭が追いついてこれないよね…」

「…う?」

「あ、星也さん!良かった、気がついて…」

「治奈…!それに、みんなも…あれ?僕、何してたんだっけ。」

「順を追って話すよ。とりあえず、席に座って安静にしててよ。」

「うん。聞かせてくれるかい?」

 

 

 

 

「…なるほどね。誰かがゲームを乗っ取ろうとしてると…」

「なあ、これってチャンスなんじゃねェの!?ソイツがゲームを乗っ取ってるうちに、脱出できたりとかは…」

「リスクが高すぎるよ。ソイツが僕達の味方だって保証はどこにもないだろ。むしろ、ゲームに便乗して僕達を殺そうとしてる敵かも…」

「…チッ、リーダー面しやがって。いちいち癇に障る男だ。」

「お言葉ですが、僕はまだあなたの事を許してはいませんよ。よくも治奈と栄君を…いくら罰とは言え、やっていい事と悪い事とあるでしょう。」

「黙れ。俺は何も間違わん。貴様と同じ空気を吸うだけで不愉快だ。今日は帰らせてもらう。」

 

「はっはっはっは、いやぁ、キミ達そんなにケンカが楽しい?でも、そんな事より今やるべき事があるんじゃないの?」

天理クンは、ニヤニヤしながら二人の会話に水を差した。

「…貴様にだけは言われとうない。」

「そうだよ。オイラは、まだ君が翠君にした事を許してないからね。大体、さっき言ってたゲームの乗っ取りの話だって、君が一番怪しいだろ。」

「………資産家、みんな…を………混乱、さ…せた…………」

「うるさいなぁ。自分達は癒川サンと栄クンを見捨てておいて、偉そうな口叩くなよ。それから、乗っ取りの事に関してだけど、そればかりは俺じゃないから。」

「嘘をつくな。だったら、なぜ貴様が毎回事件の犯人を把握していた?」

「あー、あれね。…その前に、ひとついい事を教えてあげよっか?」

「何?」

「いわゆる予知能力者ってのは、何も未来を見てるわけじゃない。世の中っつーのは、規則性の連続なんだよ。予知なんてのは、所詮その規則性を読み解いた時に導き出される確定した必然なのさ。」

「何が言いたい?」

 

 

 

「このゲーム、実は元ネタがあるんだよ。」

「…は!?」

「浅野蘭馬が書いていた小説、『囚われのマリアのための交響曲』に出てくる作者オリジナルのカードゲームにね、『囚われのマリア』っていうのがあるんだよ。まあ、原作の設定では、元ピアニストの死刑囚が親友と一緒にやったゲームって事になってるんだけどね。絵札とエースとジョーカーを入れた計17枚でやるゲームで、親が持ってる本命の札を当てるっていうルールなんだけど…これ、実は死刑執行の時に押すスイッチをモデルに作ったゲームなんだって。」

「じゃあ、キミがスペードのジャックがどうのこうのって言ってたのは…」

「作中で捨てられたカードの順番だよ。クマちゃんは、俺達をゲームのカードに見立てて、次々と俺達を殺してるって事。多分、目的は断罪とか?あはは、わかんね。」

「そんな…」

「っていうか、さっきからテキトーな事言ってんじゃねえよ!!俺達が断罪だと!?ふざけんな!!」

「テキトーじゃねえし。そもそもこのルール自体、『囚人のジレンマ』を参考にしたものだし、この建物の構造も、キューバのプレシディオ・モデーロに使われてたパノプティコンだし、首輪で囚人を管理する所とかセキュリティとかも最近の拘置所とか刑務所とかで使われてるヤツに似てるし、このゲーム自体が刑務所をモチーフにしてるっていうのは間違い無いよね?まあ、本来の目的は、このゲームを主催してるクマちゃんにでも聞いてみれば?」

「でも、全部たまたまだろ!?だって、今までのみんなは、自分で…」

「でもさぁ。明らかに、動機の渡し方とか不自然だよね?まるで、特定の誰かに殺人を起こす事を期待してるみたいじゃん。」

「確かに…」

「それとさ、やっぱり黒幕は狛研サンの事を意識してるっぽいよね。わざわざ狛研サンのお父さんの小説を元ネタにしたり、秘密にあんな事書くなんてさぁ。ね?」

「わっ。」

天理クンは、ボクに肩を組んできた。

それから、聞こえるか聞こえないかくらいの声で何かを言った。

 

 

 

 

 

ーえ?

今、なんて…

 

天理クンは、いつものあっけらかんとした表情に戻って、大袈裟な身振り手振りをしながらわざとらしく発言した。

「そういうわけだから、みんな断罪されちゃわないように気をつけよーね!」

「待って。」

「ん?どしたの穴雲キュン?」

「…ひとつ聞かせて。君は一体何が目的なの?」

「だから、言ってるだろ。俺はゲームが楽しめればそれでいいの。…っと、これじゃあ答えになってねぇか。…俺は、『その先』が見たいだけだよ。」

「その先…?」

「実は、今言った小説、未完のまま作者が死んでるんだ。その小説自体も、作者が死んだ事で呪いの小説って呼ばれるようになって、今ではほとんどの書店で扱われてないんだよね。だから結末がどうなったのかは誰にもわかんない。だからこそ俺は、このゲームで最後まで生き残って、その結末を見たいんだよ。はい、説明終わり。」

「本当にそれだけなの…?」

「さぁね。気になるなら力尽くで聞き出してみる?なーんてね。」

そんな…お父さんの小説が、ゲームの元ネタ…?

そんな小説の話なんて、聞かされた事ないよ…

「見るからに怪しいだろお前よ…」

「やっだなー、俺は誰よりも清い存在だよ?心の中を見透かされない程にね!にししっ。」

「頭おかしすぎて何考えてんのかわかんないだけだろ。気色悪いんだよテメェ。」

「にゃはは、褒められた。」

 

「そんな生産性のない話より、今後の話をするぞ。」

「ラッセ、テメェ…!」

「俺達の中に、ゲームの乗っ取りを考える奴がいる可能性がある以上、俺は誰も信用ならん。そこでだ。今日は複数人で同じ部屋で就寝し、互いを見張るというのはどうだ。」

「…チッ、今更リーダーぶってんじゃねェよ。」

「いや、でも一理あるかも…黒幕や乗っ取り犯も、さすがに就寝中は隙が生まれるだろうし…」

「穴雲、テメェはなんでそんなに落ち着いてんだよ!!コイツが何をしたか…」

「わかってるよ。それは今でも許せないと思ってる。でも、感情に任せて判断を誤ったらそれこそ終わりだ。今は、陛下の提案の妥当性を冷静に考えないと。」

「…でも、グループ分けはどうすれば…」

「じゃあ、帝国組と普通組で一人ずつっていうのはどう?」

「…そうだね。その方が安心かな。」

 

結局、ボクはゐをりちゃんと一緒に寝る事になった。

「…あの、幸運………」

「何?」

ゐをりちゃんは、ボクの服を引っ張った。

ゐをりちゃんは、心なしか落ち込んでいるように見えた。

「………私、看護師………栄養士…罰、受けてる時………何もでき…な、かった………ごめん、なさい…」

「うーん。天理クンは、何考えてるかよくわかんない子だからね。あの時なんであんな事言ったのかはわかんないけど…ゐをりちゃんは悪くないよ。だって、自分のリーダーに逆らうって、すごく勇気のいる事だもん。それでも悪いと思ってるなら、明日2人に一緒に謝りにいってあげるよ。」

「…ありがとう。」

ゐをりちゃんは、うつむきながら言った。

「…あ、待って………美術室、忘れ物……した、かも………」

「あ、そうなの?じゃあ一緒に取りにいこっか。」

「………うん。」

 

 

 

 

【美術室】

 

「ゐをりちゃん、あった?」

「………うん、良かった…見つ、かって……」

ゐをりちゃんが忘れ物を持って美術室を出ようとした、その時だった。

 

 

 

 

ドヒュッ

 

 

 

「え?」

「危ない!!」

 

ドスッ

 

「ゐをりちゃん、大丈夫!?怪我は!?」

「……………幸運…あの、怪我………」

「大丈夫。かすっただけ。…それより。」

ボクは、何かが飛んできた方の壁を見た。

壁には、矢が刺さっていた。

「…矢!?なんでこんなところに…」

身体に変化がないって事は、幸い毒矢じゃなかったみたいだ。

かすったっていっても結構痛いけどね。

「……………。」

矢が飛んできた方向を見ると、ボウガンが構えられていた。

…誰かが、意図的にゐをりちゃんを殺そうとした…!?

誰が、何のために…!?

「…幸運、私…今、狙われた………よね?」

「…うん。誰がやったのかわかんないけど…」

「また、狙われる……………かな……」

「大丈夫。ボクが守ってあげるから。…じゃあ、そろそろ部屋に戻ろうか。」

「………うん。」

「あ、待って。その前に、これ…治奈ちゃんに何とかして貰った方がいいよね?また狙われたらやだし、ちょっと付き合ってくれる?」

「……………うん。」

「ありがと!じゃあ一緒に行こっか。」

それにしても、危なかったぁ…

あとちょっと気づくのが遅かったら、ゐをりちゃんは…

それに、あの矢がもし毒矢だったら今頃ボクは…

…いや、もう考えるのはよそう。

これ以上不安を増やしても、いい事なんて無いからね。

さてと、とりあえず今は治奈ちゃんに怪我を治して貰ってっと。

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『オマエラ、死体が発見されました!!内エリア1階にお集まりください!!』

 

 

 

 

 

…え。

そんな…

嘘でしょ…!?

また死人が…!?

今度は誰が…

「……………。」

「ゐをりちゃん!ボク達も行くよ!」

「………!」

「何してるの!?早く行かなきゃ!!」

「…あっ、ごめん………」

ゐをりちゃん、どうしたんだろう…

さっき殺されかけた事で、まだ気が動転してるのかな?

…いや、今は気にしてる場合じゃない。

それより、急いで1階に行こう。

 

 

 

 

【内エリア 1F】

 

「みんな…!」

ボク達が1階に降りると、天理クンと陽一クンと才刃クン以外の全員が既に揃っていた。

「狛研さん…!」

星也クンは、青ざめた顔でこっちを見た。

ボクは、星也クンの肩を掴んで聞いた。

「今回は誰が殺されたの!?」

「…。」

星也クンは、悔しそうに目線を逸らしながら扉を指差した。

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーー。」

 

扉は半開きになっていて、少しだけ中の様子が見えた。

少しだけ開いた扉からは、血が流れ出て床に溜まっていた。

そして、扉からは血の気が引いて真っ白になった小さな手がのぞいていた。

ボクは、恐る恐る()()()の顔を見た。

 

「ーーーーーうっ!?」

 

思わず不快感を覚えて後ずさりした。

その子は、口から血を流して、生気のない目をボク達の方に向けて横たわっていた。

その目は、まるで深い海の底に沈んでいるかのようにどこまでも暗く、そして静かだった。

 

嘘だ…

そんな、なんで…!

一緒にここを出ようって約束したじゃん…

この子だって、まだやりたい事がいっぱいあったはずなのに…

まだちゃんと仲直りだってできてなかった。

外に出たらやりたい事をいっぱいやらせてあげたかった。

…それなのに。

どうしてキミが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の工学者】入田才刃クンは、そこで死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上8名

 

 

【挿絵表示】

 

 




おお、カオスカオス。
犯人予想大歓迎なり。


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第4章 非日常編①(捜査編)

お待たせ

ありえない間違え方したからちょっと編集するよ。





『そうだ狛研。僕ちゃんと勝負しろ。稽古をつけてやる。』

 

嘘でしょ…

なんで才刃クンが…

才刃クン、外で待ってる弟と仲間達のために死ねないんじゃなかったの?

何勝手に殺されてんだよ…

みんなで生き残ろうって約束したじゃんか!

なのになんで!

 

「…!!」

治奈ちゃんは、ボク達を押しのけて才刃クンに駆け寄った。

「入田さん…入田さん!起きてください、入田さん!今すぐ治療しますから…!お願いだから、死なないで!!」

治奈ちゃんは、才刃クンを蘇生しようとしていた。

冷静さを失って、周りの声が聞こえていない様子だった。

…だけど、本当は治奈ちゃんもわかってるはずだ。

「…治奈。残念だけど、入田君はもう…」

「あ…」

治奈ちゃんは、我に返ったようにボク達の方を見て涙を流した。

…治奈ちゃんだって、本当はわかってたんだ。

才刃クンは二度と戻ってこないって事は。

「うっ、ううううぅぅぅぅ…ごめんなさい、入田さん…私がもっと早く気づいていれば…ごめんなさい…!」

治奈ちゃんは、泣きながら才刃クンに何度も謝っていた。

…そりゃあ、みんなつらいはずだよ。大事な仲間がまた死んだんだから。

そうこうしている間に、全員揃った。

「今度は、入田君が犠牲になったんだね…かわいそうに、こんな狭い部屋で一人…」

「入田君…僕達がもっと強ければ…」

「なんでだよ…お前、弟のためにここから出るんじゃなかったのかよ…クソッ!!なんでこうなっちまうんだよ!!」

 

「あのさー、もう飽きたんだけど。」

天理クンは、あくびをしながら割り込んできた。

「ほわほわ…眠いなぁ。」

「テメェ…!」

陽一クンは、激昂して天理クンの胸ぐらを掴んだ。

「…ねえ、苦しいんだけど。離してよー。」

「テメェ、いい加減にしろよ!!人の命をなんだと思って…」

 

「…聞こえなかったの?離せっつったんだけど。」

天理クンは、威圧するかのような笑みを浮かべた。

「うっ…」

気圧された陽一クンは、あっさり手を離した。

「たっはー、殺されるかと思った。…それよりさぁ。早く始めようよ。クマちゃん!!」

 

『ロッハー!!呼ばれて出てきてなんとやら!!キュートでエキサイティングなマスコット、みんな大好きモノクマと!』

『モノベルでございます。』

「モノクマ…!」

『おやおや、栄様。相変わらずご機嫌斜めですねぇ。何か嫌な事でもありました?フッフッフ、もしかしておねしょとか?』

どう考えたっておねしょではないでしょ。

ベルちゃんって、ふざけてるのかおバカなのかどっちなのかなぁ?

「ッ、とぼけんじゃねぇ!!さっきまでの様子を監視カメラで見てたくせによ…!!テメェらのせいで入田が…!」

『はぁー?なんでボク達のせいになるわけ?何回も言ってんじゃん!!入田クンを殺したのは、オマエラの中の誰かなの!!言っとくけど、ボク達は今回も殺人に一切関与してないからね!』

「チッ…」

「それよりさー、何か俺らに配る物あるよね?早く頂戴よー。」

『ちょっと、急かさなくてもすぐ配るから待っててよ財原クン!せっかちな早漏はモテないよ!!』

「誰が早漏だハゲ。」

『ハゲてないし!丸くて愛らしいフェイスラインって言ってよね!!』

「ハーゲハーゲ。」

『黙らっしゃい!!もう、ガキくさい原のせいで余計なストレス抱えちゃったじゃん!じゃあファイルを配っとくから、好きに目を通しといてね!』

「わーい、ファイル貰ったー。」

 

…なんだったんだろうか。今の時間は。

おっと、いけない。

そんな事を考えてる場合じゃなかった。

 

『あ、そうそう。今回は、特別にオマエラにいい物をプレゼントします!』

「いい物?」

「どうせ碌でもないものに決まってるよねぇ。」

『いやいや、そんなわけないじゃん!ボク達がわざわざゴミを渡すわけないでしょ!失礼な!』

いつもいらない物しかくれないくせによく言うよ。

 

『テッテレー!指〜紋〜採〜取〜キット〜!!』

…指紋採取キット?

『事件の犯人を探すために警察が実際に使ってる優れ物だよ!これを使えば、付着した指紋を正確に読み取る事ができるよ!』

「マジかよ!?そんな便利なモンがあるならなんでもっと早く渡さねェんだ!!」

『今回は、シロとクロの平等性を重視した結果コレを渡す事にしたの!異論も反論もオブジェクションも認めないよ!!』

わざわざ英語にする意味ある?

『それに、別に良いではありませんか。今までキットを使わずとも真相にたどり着く事ができたのですから。』

「うっ…まぁ、そうだけどよ…」

「それに、この二匹がくれたものだよ?どうも怪しいんだよね〜。」

『フッフッフ。一言二言余計ですよ詩名様。貰った物を素直にありがたく使っておけばいいものを…』

日頃の行いのせいでありがたみが感じられないんだけど。

『それじゃあ、渡す物も渡したし、ボク達はこれにてオサラバするよ!それじゃ、裁判場でまた会いましょー!!』

二匹は上機嫌で去っていった。

 

 

 

「…クッソ、なんなんだアイツら。」

「陽一クン。今は気にしてる場合じゃないよ。」

「あっ…悪い、狛研ちゃん。」

そう。ボク達には、立ち止まっている暇なんてないんだ。

…才刃クン、絶対に犯人見つけてあげるからね。

そしてお父さん。

ボク、絶対に生き残ってみせるから。

どうか見守ってて。

 

 

 

 

 

ー《捜査開始》ー

 

「どうする?」

まずはモノクマファイルを確認しよう。

 

 

モノクマファイル⑤

 

被害者は【超高校級の工学者】入田才刃。

死体発見現場は、内エリア1階の入田才刃の独房。

死亡推定時刻は、21時30分頃。

死因は失血死及び呼吸困難。

死体発見時、死体は死後1時間程度経過していた。また、鳩尾に小さな穴が開いており、吐血した形跡が見られる。

 

コトダマゲット!【モノクマファイル⑤】

 

ファイルの内容は確認したし、探索をしなきゃ…

「待て。」

「ラッセクン?」

「…身体検査だ。全員、今すぐ手荷物を確認しろ。」

「えっ、そんな…なんで急に!?」

「この中にメカを殺した犯人がいるなら、証拠がまだ残っている可能性は十分にある。全員の体を調べろ。」

「でも、キミ、そんな事今まで一度も言った事なかったよね?なんでまた急に…」

「貴様ら、死にたいのか?黙って俺の言う通りにしろ。」

「…。」

ラッセクン、一体何を考えてるんだろう…

 

「治奈ちゃん、ボクの体を検査してくれる?」

「あ、はい…わかりました。」

治奈ちゃんは、ボクの体を隅々までチェックした。

「…怪しい物は持っていませんね。」

「良かった。これで無実を証明できたね。じゃあ、ゐをりちゃん。ちょっと検査するよ。」

「……………。」

…ゐをりちゃんも特に怪しい物は持ってなかったね。

 

「おい、コイツ何か持ってるぞ!!」

「キャー、やめてよ栄クンのエッチー。」

「あっ…!見ろ!コイツ、拳銃なんて持ってやがる!!」

「へっへーん、正真正銘コルト社のピースメーカーだよーんだ!研究室に置いてあったんだ。欲しがってもあげないからね。」

「んな物騒なモンいるか!!」

「えー?ブランド物だよ?45口径だよ?メイドインアメリカだよ?」

「どうでもいいわ!!」

「ちょっと、そこは何をやってるの?」

「狛研ちゃん!財原の野郎が、拳銃なんて持ってやがったんだ!!どう考えても怪しいだろ!?」

「それだけで疑うのは良くないよ。」

「うえーん、そう言ってくれるのは狛研サンだけだよー。」

「とりあえずさぁ、なんで天理クンが銃を持ってたのか、話を聞こうよ。天理クン、なんで銃を持ってたの?」

「えーっとね。暇だしロシアンルーレットでもしたいなーって思って。だから持ち歩いてたんだけど。悪い?」

「悪いに決まってんだろ!!脅かしやがって…」

「うーん、見たところ怪しい物を持ってたのは天理クンだけなのかな?」

「ああ。オレは手ぶらだし、穴雲もよくわかんねー本とメモ帳しか持ってなかったし、詩名はリュートだけだし、ラッセは無駄に高そうなハンカチと手鏡2個しか持ってなかったしな。」

「…ふーん、なるほどね。ありがとう。」

 

コトダマゲット!

 

【全員の持ち物】

ボク、陽一クン、ゐをりちゃんは手ぶらだった。

星也クンは本と手帳を、柳人クンはリュートを、治奈ちゃんは医療セットを、ラッセクンはハンカチと手鏡を2個持っていた。

そして、天理クンは拳銃を持っていた。

 

「ところで天理クン。」

「にゃにー?」

「それ、弾何発入ってんの?」

「えーっとね。リボルバー式の拳銃だから…あと6発だよ。まだ一発も撃ってないね。」

「ロシアンルーレットがしたかったんじゃなかった?なんで全部入ってんの?」

「いいじゃん別に。」

「そういうおかしな事ばっか言ってると裁判で疑われるよ?」

「それはやだ。他のヤツは全然疑っていいけど、イケメンで金持ちの俺の事は信じてね♡」

何言ってるんだこの子は…

 

「…ちょっと見せて。」

「いいよー。俺、狛研サンになら銃だろうとミサイルだろうと核兵器だろうと喜んで貸しちゃうよー。」

持ってるのかよ。

「…見るよ?…へー、実物の拳銃ってこうなってるんだ。」

 

わ、実際持ってみるとちょっと重いね。

これが弾か…これ、なんて言うんだっけ?確か、薬莢?

「これ、確か撃った時外れるんだっけ?」

「そうだよ。勘違いしてる奴多いけど、先に付いてる弾だけが飛び出るのよ。」

「…なるほどね。ありがとう。見せてくれて。」

「どういたましてー。」

 

コトダマゲット!

 

【拳銃】

天理クンが持っていた、全部で6発の回転式拳銃。自分の研究室から持ち出したらしい。弾は一発も使われていない。

 

コトダマゲット!

 

【銃の仕組み】

装填されている時は弾に薬莢が付いている。撃った時に外れ、弾丸だけが飛び出す。

 

「俺から一つ提案がある。」

「ん?なんです?国王様。」

「キットの使用だが、無断で使う事はこの俺が許さん。」

「はぁあ!?なんでだよ!?」

「馬鹿か貴様は。犯人がもしコレを使って他人の指紋を偽装でもしたらどうする?もちろん、使う時も俺の監視付きだ。」

「…それじゃあ集中して捜査もできねェよ。」

「なんだ貴様、死にたいのか?」

「別にそういうわけじゃねェけど…ああ、もういい!勝手にしやがれ、クソが!!」

「フン。他の者も異論は無いな?」

「まあ、その方が安心ですかね…じゃあ、検視だけど…今回も治奈にお願いしようかな。」

「ええと…はい。私、頑張ります。」

「うんうん、頼りになるよ。」

ホント微笑ましいなー。

「それじゃあ、それ以外の人は各自解散ね。何か気づいた事があったら裁判でちゃんと報告してね。」

「ほーい。」

…さて、解散はしたけどどうしよう?

そうだ、とりあえず調べられる所は調べないとね。

 

それにしても、なんで才刃クンは殺されちゃったんだろう…

ずっと引きこもってたから、殺される危険なんてなかったはずなのに…

ん?なんだこれは…

なんか、インターホンにテープみたいなのが貼り付いてるな…

ボタンに剥がした痕みたいなのが付いてるけど…誰かがテープでも貼ったのかな?

 

コトダマゲット!

 

【インターホンのテープ】

才刃クンの部屋のインターホンにテープを剥がした痕があった。

 

あと、何か調べられる事はないかな?

「……………。」

ゐをりちゃんが服を引っ張ってきた。

「ゐをりちゃん、どうしたの?」

「………これ、落ちてた……………そこ、の…廊下………」

ゐをりちゃんは、ガラスの破片を見せてくれた。

「あっ、ダメだよ直接掴んだら!手、ケガしちゃうよ!!」

「……………ごめん、なさい……」

あらら。思ったより落ち込んじゃったよ。

そこまでキツく言ったつもりなかったんだけど…

そういえばこの子、意外と落ち込みやすいんだった。

「でも、ありがとうゐをりちゃん。これが決定的な証拠になるかも!」

「…ん。」

 

コトダマゲット!

 

【ガラスの破片】

ゐをりちゃんが見つけてくれた。

 

「…あと、えっと………気に、なる……事…」

「ん?何かわかったの?」

「えっと…硝子、破片………落ちてたの、2ヶ所…両方、印………付いてた……」

「印?どことどこ?」

「そこ、の…廊下、と………3階、の…廊下…」

…あれ?

その位置関係って…

「…なるほどね。ありがとう。」

「…ん。」

 

コトダマゲット!

 

【印】

ガラスの破片が落ちていた場所に付いていた印。全部で2ヶ所。変な位置関係にあるけど…?

 

「こーまーとーぎーサン!」

ん?天理クンが呼んでるな。

「こっちきてー!!!」

「聞こえてるよ。何?」

「俺、ちょっとした発見をしちゃったんだけど。」

「どうしたの?」

「いやぁさ?一応焼却炉も確認してみたんだけど、なんか見つけたのよ。」

天理クンは、丸い鉄クズを見せてきた。

 

「何これ?」

「いや、俺も何かなーって思ってよーく観察してみたんだけど、どうやら直せそうだったから直してみたんだよね。」

「え、直せたんだ。」

「まあ、こう見えても俺電子機器の修理が得意で、世界中のありとあらゆるメカニックを打ち負かして、ゴッドハンドとも呼ばれた伝説級の腕前の持ち主だからねー。」

「…その話、ホント?」

「ウソ。」

「ウソかよ!!」

「まあでも電子機器の扱いは、食っていける程度には齧ってるつもりだよ。それで話戻すけど、完全にまでとはいかないけど、あんまり熱で融けてなかったから割と簡単に修復できたんだ。」

「へー。」

「気になる?」

「…まぁ。」

 

「よいしょっと。」

天理クンが何かをいじると…

 

 

 

ジリリリリリリリリリリリリリリ!!!

 

 

 

「わっ!?うるさっ!!何これ!?」

めっちゃうるさいんだけど!!鼓膜破れそう!!

「あっはは、どうやら目覚まし時計だったみたいだね。」

「うるさすぎない!?一回止めて!!」

「ほーい。」

 

「あー、ビックリした。」

「あはは、そんなキミの顔も好みだよ、なーんてね。」

「ったく、変な冗談やめてよ。今捜査中なんだからさ。」

「…あれ?狛研サンって、そんな真面目な事言う人だっけ?もしかして、日暮サンと同じ二重人格?…クスクス、ますます興味が湧いたよ。」

「ピンチな時ほど頭が冴えるだけだよ。別にたいした事はないし。」

「ふーん。」

 

コトダマゲット!

 

【目覚まし時計】

焼却炉に捨てられていた。天理クンが直してくれた。

 

全く、急にうるさい音が鳴ったからビックリしたじゃん。

心臓に悪いよ…

 

「それよりさ、一個聞かせて。」

「ん?何?」

「この前カレンダーに何かメモしてたけど、なにやってたの?」

「ああ、アレ?全員の誕生日チェックしてたのよ。」

「なんで?」

「いやぁ、もし収監中に誕生日が来た子がいればお祝いしてあげようと思って?えへへ。」

絶対嘘だ。

何か隠してるな?この子。

 

「…それで、全員の誕生日はチェックしたの?」

「もち。はいコレ。」

天理クンはカレンダーを見せてくれた。

…うんうん、なるほどね。

あ、今回殺されちゃった才刃クンと殺されかけたゐをりちゃんって、同じ11月生まれだったんだ。

そういえば2人とも、懸賞金額のランキングは上位だったけど…何か関係あるのかな?

 

…ん?11月?

 

…あ。

わかっちゃったかも。

どうやって懸賞金額が決められてるのかが。

「…ねえ、天理クン。」

「ほにゃっ?」

「このカレンダー、誰かに見せたりした?」

「ううん?見せてないなりよー。」

「そっか。ありがとう。」

 

コトダマゲット!

 

【懸賞金】

今回の動機。殺された才刃クンの懸賞金額は1番高くて、殺されかけたゐをりちゃんは2番目に高かった。

 

コトダマゲット!

 

【誕生日】

今回の動機の懸賞金額は、誕生日で決められている。

全員分の誕生日を把握しているのは、今のところ天理クンとボクだけ。

 

あ、そうだ。そういえば、美術室でゐをりちゃんが殺されかけたんだよね。

だったら、美術室にも何かあるかも…

 

 

 

 

【美術室】

 

さっきのボウガンを探してみよう。

何か手がかりがあるかもしれないからね。

ええっと、飛んできた方向は…

 

あ、あった。

…ん?このボウガン、何かが巻きつけてあるな…

何これ、糸?

あとで星也クンに聞いてみよう。

 

コトダマゲット!

 

【ボウガン】

美術室に仕掛けられていた。誰かがこれを使ってゐをりちゃんの命を狙った…?

 

あとは…

あれ?

これ、ル●バじゃん。

売店に置いてあったやつだよね?

なんでこんな所に…

糸みたいなのが巻きついてるし…

あれ?これ、タイマー付いてるんだ。

しかも、時間設定が21時30分…

何か関係がありそうだな。

 

コトダマゲット!

 

【ル●バ】

何故か美術室に置いてあった。糸が巻きついている。また、タイマーが21時30分にセットしてある。

 

陽一クンにも話を聞いてみようかな?

「陽一クンは、何か気になる事はあった?なんでもいいから教えて欲しいんだ。」

「おう、狛研ちゃん。実はな、これなんだが…」

陽一クンは、美術室にあったプレートアーマーを指差した。

「これがどうかしたの?」

「ああ。このヨロイ、前と比べてちょっと位置がズレてるなって思ってよ…誰かが動かしたのかな?」

「ふーん。…あ。」

「ん?なんか気付いたか?狛研ちゃん。」

「ちょっとこのライフル確認していい?」

「おう、いいぜ。」

うーん、なるほどね。見たところ本物っぽいね。

…なんでこんな所に本物の銃があるのか疑問が残るけど、まあクマちゃんの事だから仕方ない。

 

ボク、あんまり銃とか詳しくないんだけど…このタイプのヤツは見た事あるなぁ…

確か…

「ウィンチェスターライフル?」

「え、狛研ちゃん、それ知ってんの?」

「ああ、いや…友達に銃が好きな子がいて、モデルガンを持ってたから…たまたまそれを覚えてたのかな?」

「へー、狛研ちゃん物知りだな。」

「えへへ…」

あれっ?このライフル、ボウガンと同じような糸が巻きつけてあるな…

…って事は、このプレートアーマーを動かした人とゐをりちゃんの命を狙った人は同一人物って事?

…うーん、よくわかんないや。

 

コトダマゲット!

 

【プレートアーマー】

美術室にあったもの。最初の位置から少しズレている。誰かが移動させた…?

 

コトダマゲット!

 

【ライフル】

プレートアーマーとセットになっていた。実弾が装填されている。ボウガンに付いていた糸と同じ糸が巻きつけてある。

 

ちょっとライフルも確認してみよう。

…なるほどね。残り8発か。

「それから、陽一クン。」

「ん?なんだ?狛研ちゃん。」

「えっとね、ちょっと気になってて…聞きたい事があるんだけど。」

「聞きたい事?なんか気になってんなら喜んで力になるぜ!」

「あのさぁ、このライフル…元の装弾数がいくつかわかる?」

「ああ…えっと…確か、試し撃ちしたから…オレが知る限りでは、10発だな。」

「試し撃ちって…2発やったの?」

「いや?オレがやったのは一発だけだけど?」

…え?

「…ふーん、なるほどね。ありがとう。」

 

コトダマゲット!

 

【装弾数】

元は10発で、現在8発。

陽一クンが試し撃ちしたのは一発だけらしい。

 

あと、向こうにいる柳人クンにも話を聞きたいね。

「柳人クン!」

「ああ、狛研君。何か用かな?」

「柳人クンは、何か気づいた事とかある?」

「うーん、匂いかなぁ?」

「匂い?」

「ほら、この部屋、なんだか火薬臭くないかい?まるで、銃火器を使ったみたいだねぇ。」

「…あ、確かに。」

よく嗅いでみると、確かに何かが焦げたような匂いがする。

…この匂い苦手だなぁー。

他のみんなは感じてなさそうだけどね。

「柳人クンって鼻良いんだね。」

「まあ、目が見えないから…それ以外の感覚が人一倍敏感なのかもね〜。」

 

コトダマゲット!

 

【火薬の匂い】

美術室からわずかに火薬の匂いがする。

 

そうだ、星也クンに話を聞きに行くんだった。

どこにいるかな?

ちょっと探してみるか。

 

 

 

 

【入田才刃の独房】

 

「星也クン、いるぅー?」

「あ、狛研さん。どうしたの?」

「あのさぁ、キミにちょっと聞きたい事があって。」

「ん?なんだい?」

「さっきね、こんなの見つけたんだけど…これ、何かわかる?」

ボクは、糸を星也クンに見せた。

「…うーん、ちょっと見せて。」

星也クンは、糸をよく観察した。

「…ああ、わかった。これ、シルクだね。」

「シルク?」

「うん、絹糸。しかもかなり上質だね。」

「ふーん。」

 

コトダマゲット!

 

【シルクの糸】

ボウガン、ル●バ、ライフルに付いていた。かなり上質らしい。

 

「狛研さん、すごく熱心だね。」

「そりゃあ、才刃クンを殺した犯人が許せないもの!」

「…うん、そうだね。あ、そうだ。そろそろ治奈の検視が終わるって。」

「…そっか。」

じゃあ、検視結果は後で聞こうかな。

とりあえず、今はラッセクンに話を聞いてみよう。

 

「ラッセクン。」

「なんだ。」

「何か気付いた事は無い?何かあったらどんなに小さな事でもいいから教えて欲しいんだけど。」

「…フン。あるぞ。これを見ろ。」

「え?何これ?」

「見ればわかるだろ。弾丸だ。」

「それがどうしたの?」

「メカの近くに落ちていたんだ。一応キットで調べてみたら、ヤツの指紋が出てきたよ。」

「ヤツ?」

「…あの成金のだよ。」

「え?」

そんな、天理クンの指紋が…?

ここに弾があるって事は、あの子は嘘をついてたって事…?

 

コトダマゲット!

 

【弾丸】

才刃クンの遺体の近くに落ちていた。キットで調べた結果、天理クンの指紋がベッタリ付いていた。

 

「…なるほどね。ありがとう。」

「フン。とっとと失せろ。」

ちぇっ、相変わらず冷たいなぁ。

じゃあ、治奈ちゃんの検視が終わるまで、一人で捜査を進めちゃおっと。

…ん?なにこれ。

血の痕が少しだけ変だぞ?

まるで、何か小さい玉状の物が転がったみたいな…

…でも、ここで途切れてるな。

 

コトダマゲット!

 

【血の痕】

床に小さな玉状の物が転がったような痕があった。

 

「治奈ちゃん、検視はどう?」

「あ、狛研さん…今終わったところです。」

「何かわかった事はあった?」

「ええとですね…ちょうど鳩尾の部分を貫通したような小さな穴が開いていますね。直径は…10mmくらいでしょうか。」

「穴?それが死因?」

「はい。おそらくは。」

「じゃあ、吐血は?」

「胃や肺を損傷しているので…それが原因かと。」

「ふーん。…ねえ、身体の中に何か入ったりしてなかった?」

「いえ…でもどうして?」

「ああ、いや…何か残ってればと思ってさ。例えば銃弾とか…」

「残ってませんね。背中まで穴が貫通しているので…多分、突き抜けて身体の外に出てしまったのかと。」

「そっかぁ、ありがとう。」

 

コトダマゲット!

 

【治奈ちゃんの検視結果】

才刃クンの遺体には、鳩尾を貫通したような小さな穴が開いていた。直径は10mm程度。

 

コトダマゲット!

 

【才刃クンの遺体】

穴は、背中側まで貫通していた。何かが身体を突き抜けた…?

 

一応、才刃クンの遺体も調べないとね。

「才刃クン、ちょっとごめんね。」

ここに血溜まりができてるな…

って事は、才刃クンはここで殺されたとみて間違いなさそうだね。

 

コトダマゲット!

 

【血溜まり】

才刃クンの身体の周りに血溜まりができていた。

才刃クンはここで殺されたとみて間違いなさそうだ。

 

あとは、全員のアリバイをまとめておこう。

ええっと、確かあの時天理クン以外は食堂にいたよね。

天理クンだけはどこにいたのかわかんないけど…

 

コトダマゲット!

 

【全員分のアリバイ】

天理クンと才刃クン以外は全員食堂にいた。

 

…さてと、じゃあちょっと下準備をして行こうかな。

 

 

 

 

『オマエラ、時間切れです!ついにこの時がやってきました!お待ちかねの学級裁判、始めるよ〜!5分以内に、内エリア1階の噴水まで集合してね〜!』

『遅刻欠席は許しませんよ!校則違反とみなし、問答無用でおしおきさせていただきます!』

…もう時間か。

まだ色々と気になる事はあるけど、行かなきゃ。

ボクは、噴水に向かった。

 

 

 

 

【噴水】

 

今回は、陽一クンとラッセクンが早く来ていたようだった。

相変わらず天理クンはビリッケツだった。

「やーい、栄クンビビリすぎー!そんなにおしおきが怖いのかにゃ?」

「う、うるせェな!ああ、怖いよ!怖くて何が悪い!怖くないお前が異常なだけだろ!この変態!」

「いや、オマエにだけは言われたくないんだけど。」

一理ある。

『うぷぷ、全員揃ったみたいだね。じゃ、裁判場行きのエレベーターに乗ってね!』

クマさんが指を鳴らすと、噴水の中からエレベーターが現れた。

クマさんに急かされて、ボク達はエレベーターに乗った。

 

 

 

まだ信じられない。

この中に才刃クンを殺した犯人がいるだなんて…

でも、何があっても絶対生き残るって決めた。

ボク達は犯人を見つけなきゃいけないんだ。

…いや、ボク達が生き残るためだけじゃない。

才刃クンの無念を晴らすためにも、絶対に真相を明らかにしてみせる!

 

 

 

 

 


 

 

 

『フッフッフ。さァて、ここでクイズのお時間ですよ。入田様を殺した犯人は、一体誰だと思いますか?』

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

『…そうですか。次回は学級裁判前編でございます。お楽しみに。』



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第4章 非日常編②(学級裁判前編)

エレベーターが止まり、ドアが開いた。

全員がエレベーターから降りた。

証言台には、遺影が2つ増えていた。

気が狂う前の優しい笑みを浮かべた剣ちゃんの遺影と、屈託のない笑みを浮かべる才刃クンの遺影だった。

「クソッ…不動院ちゃん…入田…!」

「不動院君…入田君…」

「うぅっ…不動院さん…入田さん…」

「不動院さん、入田君…ごめんね。僕達が不甲斐ないばっかりに。」

「…フン。」

「ほわぁあああ…眠いなぁ…」

「…………………………侍、工学者………」

一部を除いてみんな、2人の遺影を見て泣いていた。

…もう、人数も半分になってしまった。

8人も失った裁判場は、以前より広く感じた。

 

「…みんな、今は泣いてるヒマなんてないよ。みんなで話し合わないと。」

「狛研君…君ねぇ、よくそんな…!」

「やめなよ。狛研さんが正しい。犠牲になったみんなのためにも、まずは僕らが生き残らないと。」

「そーそー。言っとくけど、俺はオマエらと心中なんてごめんだから。死にたくないなら泣いてないで頭使えよ。」

「…。」

『うぷぷ、全員揃ったね!…って、あれれ?オマエラ、最初より随分と減ってない?』

『フッフッフ。最初は賑やかだったのに、随分と静かですねぇ。まあ、静かな方がこっちとしては余計なストレス抱えなくて済むんですがね。』

「黙れ。いつまでもこんな事続けられると思うなよ。」

ボクは、二匹を睨みながら捨て台詞を吐いた。

『おお、怖い怖い。狛研様は、才能は無いくせに度胸と減らず口だけは一人前ですねぇ。元気がいいのはよろしいことで。ワタクシは非常に嬉しいですよ。まあ嘘ですけど。』

「うるさい。ボクは、キミ達を絶対許さない。」

『はーこわ。そんな反抗的な態度とっていいわけ?ボクは、いつでもオマエラ全員おしおきできるんだからね?』

「…。」

『まあいいや。今のはちょっとした気の迷いって事で特別に見逃してあげるよ。今から人数が減っちゃってもツマンナイしね。でももし次ボク達に楯突こうもんなら、もれなくおしおきをプレゼントしちゃうから。覚悟しといてよね。』

「くっ…」

陽一クンと星也クンは悔しそうに歯を食いしばった。

『それじゃあ全員揃ったし、始めちゃおっか!ドキドキワクワクの学級裁判を!』

 

 


 

コトダマ一覧

 

 

【モノクマファイル⑤】

 被害者は【超高校級の工学者】入田才刃。

死体発見現場は、内エリア1階の入田才刃の独房。

死亡推定時刻は、21時30分頃。

死因は失血死及び呼吸困難。

死体発見時、死体は死後1時間程度経過していた。また、鳩尾に小さな穴が開いており、吐血した形跡が見られる。

 

【全員の持ち物】

ボク、陽一クン、ゐをりちゃんは手ぶらだった。

星也クンは本と手帳を、柳人クンはリュートを、治奈ちゃんは医療セットを、ラッセクンはハンカチと手鏡を2個持っていた。

そして、天理クンは拳銃を持っていた。

 

【拳銃】

天理クンが持っていた、全部で6発の回転式拳銃。自分の研究室から持ち出したらしい。弾は一発も使われていない。

 

【銃の仕組み】

装填されている時は弾に薬莢が付いている。撃った時に外れ、弾丸だけが飛び出す。

 

【インターホンのテープ】

才刃クンの部屋のインターホンにテープを剥がした痕があった。

 

【ガラスの破片】

ゐをりちゃんが見つけてくれた。

 

【印】

ガラスの破片が落ちていた場所に付いていた印。全部で2ヶ所。変な位置関係にあるけど…?

 

【目覚まし時計】

焼却炉に捨てられていた。天理クンが直してくれた。

 

【懸賞金】

今回の動機。殺された才刃クンの懸賞金額は1番高くて、殺されかけたゐをりちゃんは2番目に高かった。

 

【誕生日】

今回の動機の懸賞金額は、誕生日で決められている。

全員分の誕生日を把握しているのは、今のところ天理クンとボクだけ。

 

【ボウガン】

美術室に仕掛けられていた。誰かがこれを使ってゐをりちゃんの命を狙った…?

 

【ル●バ】

何故か美術室に置いてあった。糸が巻きついている。また、タイマーが21時30分にセットしてある。

 

【プレートアーマー】

美術室にあったもの。最初の位置から少しズレている。誰かが移動させた…?

 

【ライフル】

プレートアーマーとセットになっていた。実弾が装填されている。ボウガンに付いていた糸と同じ糸が巻きつけてある。

 

【装弾数】

元は10発で、現在8発。

陽一クンが試し撃ちしたのは一発だけらしい。

 

【火薬の匂い】

美術室からわずかに火薬の匂いがする。

 

【シルクの糸】

ボウガン、ル●バ、ライフルに付いていた。かなり上質らしい。

 

【弾丸】

才刃クンの遺体の近くに落ちていた。キットで調べた結果、天理クンの指紋がベッタリ付いていた。

 

【血の痕】

床に小さな玉状の物が転がったような痕があった。

 

【治奈ちゃんの検視結果】

才刃クンの遺体には、鳩尾を貫通したような小さな穴が開いていた。直径は10mm程度。

 

【才刃クンの遺体】

穴は、背中側まで貫通していた。何かが身体を突き抜けた…?

 

【血溜まり】

才刃クンの身体の周りに血溜まりができていた。

才刃クンはここで殺されたとみて間違いなさそうだ。

 

【全員分のアリバイ】

天理クンと才刃クン以外は全員食堂にいた。

 

 


 

 

 

学級裁判開廷!

 

モノクマ『それじゃあ、好きに議論を進めてくだっさーい!!』

穴雲「とりあえず、まずはファイルを確認しようか。」

狛研「そうだね。今回は、誰がファイルを読む?」

癒川「えっと…では、私が…」

穴雲「頼んだよ、治奈。」

癒川「ま、任せて…ください…!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

癒川「被害者は【超高校級の工学者】入田才刃。死体発見場所は、内エリア1階の入田才刃の独房。

栄「チクショウ…入田…!なんでこんな事に…!」

ラッセ「…フン。馬鹿め。感傷に浸っている時間など無いぞ。アイツが勝手に死んだのだから自業自得だ。」

栄「んだと!?」

穴雲「やめなよ。治…癒川さんが困ってるだろ。」

栄「あっ…悪い…」

癒川「ありがとうございます、星…穴雲さん。では続けますね。死亡推定時刻は21時30分頃。死因は、失血死及び呼吸困難。死体発見時、死体は死後1時間程度経過していた。また、鳩尾に小さな穴が開いており、吐血した形跡が見られる。…以上です。」

詩名「吐血かぁ…死因は毒殺とかじゃないのかなぁ?」

栄「毒殺?」

詩名「ほら、出血系の毒とかあるだろ?それを盛られたっていう可能性は?」

栄「なるほどな。じゃあ、死因は毒殺で決まりだな!」

今の柳人クンの発言はおかしい!

 

毒殺⬅︎【モノクマファイル⑤】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

詩名「ん?オイラ、何か変な事言ったかい?」

狛研「言ったよ。死因は失血死及び呼吸困難って書いてあるじゃないか。それに外傷がある以上、毒で死んだとは考えにくいよ。」

癒川「遺体から毒の成分は検出されませんでしたしね。」

栄「あっ…そうだな。悪い。オレ、勘違いしてたわ。」

詩名「うーん…そうなのかなぁ。でも、身体に穴が開いたからって吐血するとは限らないんじゃ…」

癒川「遺体は胃や肺を損傷していましたので、その外傷が原因で吐血する可能性は高いかと。」

詩名「あ、そう。」

狛研「とにかく、直接の死因になったのは、鳩尾の穴とみて間違いなさそうだね。」

癒川「では、本当の死因は一体何なのでしょうか…?」

狛研「うーん…」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

ラッセ「状況的に刺殺ではないのか?」

穴雲「本当にそうなんでしょうか…?」

財原「銃殺とかはー?オマエのハートをバキュンバキューン!」

栄「映画の見過ぎだろ。あり得るかよ。」

詩名「ふざけてないで真面目に議論しよっかぁ。」

神座「やっぱり毒殺…」

癒川「それは違うという話になりましたよね?」

天理クンの意見に賛成したい。

 

銃殺⬅︎【治奈ちゃんの検視結果】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「天理クンの言う通り、銃殺だと思うよ。」

栄「マジか!?」

財原「にゃははー。だから言っただろー?」

栄「でも、高校生がクラスメイトを銃殺するなんて…あり得んのかよ!?」

狛研「確かに、普段の生活からは到底考えられない死因だよね。でも、銃殺だとすれば全ての辻褄が合うと思わないかい?」

癒川「確かに…遺体の傷は、銃創の特徴と一致していましたね。」

狛研「ね?やっぱり、殺害方法は銃殺…」

 

 

 

「その推理、昏いねぇ♬」

 

反論

 

 

 

狛研「…柳人クン?」

詩名「狛研君。君の推理には矛盾があるよ。」

栄「矛盾?ンなモンあったかなぁ…?」

詩名「わからないなら、オイラが反論(うた)を詠んであげるよ。」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

詞名「一応確認のために聞くけど、狛研君はなんで入田君が銃殺されたと思ったのかなぁ?」

狛研「遺体の傷は、10mm程度の穴だったよね?この特徴と一致するのって、銃創だと思うんだけど。」

詩名「そんなの憶測に過ぎないだろ〜♪本物の銃創なんて見た事ないだろ、君。」

狛研「う…そりゃあまあそうだけど…」

詩名「第一、銃殺だと説明できない事があるじゃないか。」

狛研「説明できない事?」

詩名「銃で撃たれたなら、銃弾が体内に残る はずだよね?でも、遺体には銃弾なんてなかったじゃないか。そうだろ?癒川君。」

癒川「はい。もし見つけていたら、とっくに皆さんに報告してます。」

詩名「ほらね。銃弾が見つかっていないって事は、やっぱり銃殺っていうのはおかしいんじゃないのかい?」

今の柳人クンの発言はおかしい!

 

銃弾が体内に残る⬅︎【才刃クンの遺体】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「いや、そうとは限らないよ。」

詩名「え?」

狛研「例えば、弾が突き抜けて身体から飛び出てたとしたら?」

詩名「何が言いたいのかな?」

狛研「才刃クンの遺体に開いていた穴は、貫通してたんだ。つまり、銃弾が身体を突き抜けて外に出たって事なんだよ。それだったら、銃弾が見つからなくても不思議じゃないでしょ?」

詩名「あっ…確かに…言われてみればそうだねぇ。」

狛研「それにね、銃殺だって裏付ける証拠があるんだ。」

詩名「証拠?」

 

コトダマ提示!

 

【血の痕】

 

「これだ!!」

 

狛研「才刃クンの遺体の近くに、玉状の何かが転がったような痕があるんだ。これって、身体を突き抜けた弾丸が転がったって事じゃないのかな?」

詩名「そうなのかい?」

狛研「うん。その可能性が高いと思うよ。」

栄「玉状?銃弾って細長い形じゃなかったか?」

財原「普通、弾丸って身体に入った瞬間にひしゃげて変な形になるもんなんだよ。」

栄「そうなのか…ってかお前やけに詳しいな。」

財原「えへへ。」

穴雲「じゃあ、殺害方法は銃殺って事でいいかな?」

ラッセ「…となると、次は事件当時の状況か。」

癒川「そうですね…」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

ラッセ「犯行の方法は銃殺だった。それはいい。…だが、具体的にどこでどうやってメカを殺したのだ?」

神座「工学者………死んだ、場所………わからない、なら…話、ならない…………」

狛研「いや、それはわかると思うけど。」

神座「………え?」

狛研「才刃クンの独房。ここしか考えられないよ。」

神座「決めつけ…る、の………良く、ない……証拠……………ある、の…?」

狛研「うん。ちゃんと証拠はあるよ。」

アレを提示するべきだろうか?

 

コトダマ提示!

 

【血溜まり】

 

「これだ!!」

 

狛研「血溜まりが独房にできていたんだ。って事は、やっぱり独房で殺されたって事だよね?」

ラッセ「仮に死体を移動させたとすれば引きずった痕ができるからな。それに、血の乾き具合からして独房で死んだと考えるのが妥当だ。」

神座「………。」

 

栄「ん?でも、そうだとすると変だぞ?」

財原「おやぁ?おバカのくせに、いつになく冴えてるじゃないか栄クン。」

栄「一言余計だクソ野郎!!」

穴雲「ああもう、喧嘩しないでよ。キリがないじゃないか。…それで、栄君。変、っていうのは?」

栄「おう。あのさ、入田はずっと引きこもってたんだぞ?そんな奴をどう殺すってんだ?」

癒川「あ…」

神座「忍び込んだりは………」

栄「あの部屋の構造的に無理だろ。入室を許可しない限り本人しか入れねェ仕様になってんだぜ?」

穴雲「入田君が誰かの入室を許可するとは思えないしね。」

神座「じゃあ、隙間……から…銃…………撃った…の、かも………」

ラッセ「独房に隙間なんて無いぞ。」

 

狛研「あのさ、こうは考えられない?才刃クンが自分からドアを開けて、それで撃たれちゃったとは…」

ラッセ「はぁ?馬鹿か貴様は。アイツはずっと引きこもってたんだぞ。現に、貴様が何度呼びかけても全く出てくる気配がなかったのだろう?」

狛研「うっ…そ、それは置いといて…」

財原「ジェスチャーが昭和だぜ狛研サン。」

詩名「それは今ツッコむ所じゃないから少し静かにしようか。…それで?入田君が自分からドアを開けたっていうのはどういう事なのかな?」

狛研「ドアを開けざるを得ない状況だったりしたら…?」

癒川「ドアを開けざるを得ない状況…?どういう事ですか?」

狛研「例えばだよ?騒音で睡眠を妨害されたりとか、脅されたりとか…そんな事されたら、いくら引きこもりの才刃クンでもやむを得ずドアを開けちゃうんじゃないかな?」

穴雲「つまり犯人は、入田君が自分からドアを開ける状況を作り出したって事?でも、そんな都合のいい状況、どうやって作り出したのかなぁ…?」

癒川「部屋は防音ですしね。一体どうやって…?」

狛研「それなら、方法があるよ。」

 

コトダマ提示!

 

【インターホンのテープ】【目覚まし時計】

 

「これだ!!」

 

狛研「インターホンと目覚まし時計。この2つをうまく使えば、才刃クンにドアを開けさせる事ができるんだよ。」

栄「ん?どういう事だ?」

狛研「まず、インターホンを、音が鳴らないようにゆっくり押すでしょ。それで、押した状態のまま上からテープで固定するの。そうすれば、インターホンがオンになって、外の音が中に聞こえるでしょ?」

穴雲「なるほど…」

狛研「それで、近くで目覚まし時計を鳴らせば、部屋の中に目覚ましの音が大音量で鳴り響いて、騒音でうんざりした才刃クンがドアを開けちゃうっていう寸法さ。」

栄「なるほど…でも、そんな事するくらいなら最初からチャットとかで呼び出せばいいんじゃねえの?」

ラッセ「馬鹿か貴様は。そんな事をすれば確実に履歴に残るだろうが。」

栄「あ…確かに。」

神座「でも、みんな………気づかなかったの…なんで………?」

狛研「その時天理クン以外はボク達全員食堂にいて、食堂のドアを閉め切ってたからね。無理ないよ。食堂は、ドアさえ閉めちゃえば防音になっちゃうもの。」

神座「なる…ほど………」

 

栄「じゃあ、そろそろ犯人絞るか?」

狛研「え、まだ早いんじゃないの?」

財原「細けーこたーいいんだよ!さっさと議論終わらせちゃおうよ!」

狛研「雑いなぁ…」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「じゃあ、我こそは犯人だっつー奴は正直に手を挙げてくださーい!」

誰も手を挙げなかった。

財原「…まあこんなんで名乗り出るようなら逆にビックリだわな。」

神座「あの………」

財原「何?神座サン?早速自首すんの?」

神座「違う…私、犯人………じゃ、ない……………ただ、少し………心当たりが…」

癒川「心当たり…?」

神座「…………実は、私…誰か、に………殺され……かけて…それで、幸運……………私を、庇って………怪我、した…」

栄「マジかよ!?大丈夫かよ2人とも!?」

狛研「大丈夫だよ。かすり傷さ。…って言っても結構痛かったけどね。…イテテ。」

癒川「そんな…何の罪もない神座さんを狙って、狛研さんを怪我させるなんて…許せません!誰がこんな悪質な事を…」

ラッセ「待て待て。勝手に話を進めているが、そもそも本当に和服は殺されかけたのか?」

神座「………え?」

財原「要は、神座サンが、自分を犯人候補から外すために狛研サンを利用して被害者面してんじゃないかって事。屁以下が言いたいのはそういう事じゃね?」

ラッセ「おい、その間違え方わざとだろ。」

財原「え?何の話?」

ラッセ「コイツ…」

狛研「いや、確かにゐをりちゃんを狙った犯行だったよ。」

詩名「そう言える根拠は?」

狛研「それは…」

 

コトダマ提示!

 

【ボウガン】

 

「これだ!!」

 

狛研「美術室に入った瞬間、ボウガンで撃たれたんだ。これがその矢で、これが撃たれた時の怪我だよ。」

癒川「そんな…ボウガンでお二人を狙うなんて…卑劣です!!」

栄「全くだぜ…!誰だよ、女の子を狙うなんてクソみてェな事した野郎は!!」

ラッセ「貴様、犯人に敵意を剥き出しにしているが、小娘共が犯人だとは考えないのか?」

栄「当たり前だろ!!癒川ちゃん達がこんな卑怯な事するかよ!!」

ラッセ「そうやって決めつけるのが馬鹿だと言っているんだ。」

栄「んだと!!?」

穴雲「二人とも、落ち着いて。まずは、冷静に議論をしようよ。」

栄「…チッ。」

ラッセ「フン。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

狛研「まずは、事件当時の状況を整理しようか。」

財原「はいはーい!俺、神座サンが犯人だと思いまーす!!」

神座「……………?」

栄「ハァ!?何言い出すんだテメェ!!」

財原「だってさぁ、さっきの殺されかけたっつー話とか、明らかにおかしくない?」

狛研「それはちゃんとボクが見てたって言ってるじゃん。」

財原「狛研サンが共犯だったら、その証言も意味がなくなるよね?」

癒川「そんな事をするメリットがないと思うんですけど…」

財原「そんなのどうでもいいじゃん!とにかく、神座サンは入田クンを狙撃して殺したんだよ!」

神座「そんな………私、知ら、ない……………」

今の天理クンの発言はおかしい!

 

狙撃⬅︎【全員分のアリバイ】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「天理クン。それは不可能だよ。」

財原「はぁー?なんで?なんでそう言い切れるのさ。」

狛研「だって、ボク達はみんな食堂にいたんだよ?…天理クン。キミ以外はね。」

癒川「確かに、食堂で私達の目を盗んで狙撃するのは無理ですし、外に出ようと思うと正面の出入り口を通る必要がありますからね。」

穴雲「でも、出入り口を出入りした人は、財原君以外はいなかったよね?やっぱり、神座さんが入田君を狙撃するっていうのはちょっと無理があるんじゃないかなぁ?」

財原「ふーん、あっそう。」

神座「………そもそも、私………銃、使え…ない…………………………」

財原「はいはいダウトダウト。ホントは銃が使えるクセに嘘をついてんのかもしんないじゃん。」

詩名「そんな事言い出したらキリがないよね?」

財原「あー、一理ありますわ。じゃあとりあえず今はキミがあの時狙撃できなかったっていう事だけは信じてあげるよ。」

詩名「なんで上から目線なのかなぁ?」

財原「そんなのどうだっていいじゃん。とりあえず、今は犯人絞ろうぜ?」

栄「お前が仕切んな。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

ラッセ「こういう時は消去法で犯行が不可能だった奴を除外していくのが定石だな。」

詩名「まず、事件当時食堂にいた、オイラ達帝国組と癒川君には犯行が不可能だよねぇ。」

ちょっと待って、決めつけていいの…?

癒川「それを言うなら、星…穴雲さんと狛研さんにも犯行が不可能だったと思いますが…」

穴雲「確かに…事件が起きたのは、僕達が食堂にいた時だったものね。」

栄「ん?じゃあ、あの時食堂にいなかったのは財原と入田だけか?」

ラッセ「メカは被害者だから、事故か自殺でもない限り今回の事件の犯人とは別人という事になる。…この条件から導き出される奴は、ただ一人しかいないな。」

ちょっと待って…?

それって…

 

 

 

ー人物指定ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎【超高校級の資産家】財原天理

 

狛研「天理クン、キミって事になるんだけど…何か言いたい事はあるかな?」

財原「………。」

狛研「…天理クン?」

 

財原「…ぐごぉー………(カクッ」

栄「なっ…!?コイツ、寝てねェか!?」

財原「ごがー…すぴー…」

癒川「鼻ちょうちん出てますし…寝てますよね、これ…」

栄「嘘だろ!?立ったまま!?」

穴雲「個室以外の故意の就寝は校則違反だったはず…」

栄「え、マジか!?おい、起きろ!おしおきされるぞお前!!」

 

財原「…んあっ、あぶねっ。ギリギリセーフ。」

詩名「いや、アウトだろ。完全に寝てたよね君?」

財原「あっマジかー。でも良かったぁ、おしおきされなくって。」

ラッセ「…貴様、一体どういう神経しているんだ。」

財原「だってタリーんだもん。ついウトウトしちゃった。…で?何の話だっけ?」

栄「お前、さては話聞いてなかったんじゃ…」

財原「あ、今思い出した。確か俺が犯人だって疑われてるっつーお話だったよね?」

狛研「あ、そこは一応聞いてたんだね。…で、どうなの天理クン?ボクだって、本当はキミの事を疑いたくないんだ。できれば、キミの口から証言が聞きたいな。」

財原「うーん、かったりーけどしゃーねーか。このままじゃ犯人になっちゃうもんねー。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「言っとくけど、俺は断じて犯人じゃないからね。」

狛研「じゃあその時何してたの?ちゃんとみんなにわかるように説明して?」

財原「娯楽室でギャンブルしてた。はい終わり。」

詩名「それだけだと薄いよね?なんでキミが疑われてるのか、ちゃんとわかってる?」

財原「知らんなー。だって俺は怪しい事なんてしてないし、怪しいモンなんて何も持ってないんだから。ほわぁ、ねむ…」

 

今の天理クンの発言はおかしい!

 

何も持ってない⬅︎【全員の持ち物】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「…ねえ、天理クン。キミは嘘をついてるね。」

財原「は?」

狛研「持ち物チェックの時、拳銃が出てきたよね。忘れた?」

財原「え、いや、あれはその、オモチャで…うん。」

狛研「それも嘘。ちゃんと本物の銃だったよ。…ねえ、どうして嘘ばっかりつくの?本当の事を言ってくれれば、キミの事を疑わなくて済むのに。」

財原「ごめーん。(ホジホジ」

狛研「それにね、ちょっとキミに確認したい事があるんだ。」

財原「ちょっと、やめてよぉ叶ちゃん。これ以上僕をいぢめないで?一生のお願いでちゅ。」

栄「うわキモッ。不利になった途端口調変えやがったぞコイツ。」

狛研「うん。それに関しては同意するよ。心底気持ち悪い。」

財原「ひーん。」

おっと、いけない。ついペースに乗せられちゃった。

…アレを提示するべきかな?

 

コトダマ提示!

 

【弾丸】

 

「これだ!!」

 

狛研「ねえ、天理クン。才刃クンの遺体の近くにキミの指紋がベッタリ付いた銃弾が落ちてたんだけど…心当たりある?」

栄「はぁ!?マジか!?じゃあもうコイツが犯人で決まりじゃねェか!!」

財原「え、ちょっと待って。なにそれ知らない。初耳なんだけど。」

栄「嘘つけ!!お前の指紋が付いてるって、どう考えても怪しいだろ!!」

ラッセ「同感だ。キットで検査して指紋が検出されたんだ。貴様が犯人に違いない。」

財原「いやいやいや、俺のじゃないかもしれないでしょ?」

癒川「自分と全く同じ指紋を持つ人はいません。だからこそ犯罪の捜査に使われるんです。」

財原「あ、そうだ。俺に濡れ衣を着せるための罠かも。例えば、神座サンとか…」

穴雲「神座さんは犯人じゃないって証明されただろ。しつこいよ君。」

財原「ぐぬぬ…じゃ、じゃあ栄クンは!?コイツが犯人に決まってるよ、うん!」

栄「オレじゃねえよ!!自分が疑われたからってなすり付けてくんじゃねェよ!!汚ねェぞ!!」

財原「あ、わかった!ラッセクンが犯人じゃね?」

ラッセ「…見苦しいぞ貴様。いい加減自分の罪を認めたらどうだ。」

財原「何それ…俺、本当に何も知らないのに…」

 

 

 

財原「みんなひどいよー!!ヴェエエエエエエエエエエエエエェエエエエエエエエエエエエエ!!!」

詩名「あ、泣いちゃった。」

狛研「うわぁ…」

癒川「あ、えっと…大丈夫ですか?私ので良ければハンカチ使いますか?」

穴雲「治奈、こんなの無視でいいよ。どうせ嘘泣きだから。」

財原「ヴェエエエエエエエ、ジュルッ、ヴェエエエエエエエエエ!!!」

栄「うわ、きたねっ!!おい財原!!こっちに鼻水飛ばしてくるんじゃねえよ!!」

ラッセ「…フン、醜いな。いい加減負けを認めろ。殺人鬼が。」

ちょっと待って…?

本当に天理クンが犯人でいいの…?

 

ラッセ「もういい、モノクマ。投票を始めろ。」

『うぷぷ、もう結論が出たの?早いね。』

栄「確かにちょっとまだ気になる事がないでもないけど…でも、もうコイツが犯人でいいよな?」

『フッフッフ。まあいいでしょう。では、始めましょうか学園長。』

『ではでは、投票ターーーー…』

 

 

 

 

 

「待って!!」

 

栄「…狛研ちゃん?」

狛研「まだ結論を出すのは早い!!もっとちゃんと議論しようよ!!」

 

 

 

 

 

 

学級裁判中断!

 




財原クンのヴェーという鳴き声(?)は声優ネタですw



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第4章 非日常編③(学級裁判後編)

お待たせ

あと3日待ってね。





狛研「まだ裁判は終わらせない!!」

財原「ヴェエエエエエエエエ!!!俺の味方は狛研サンだけだよぉおお!!」

ラッセ「貴様、今更何を言っている?もうそこの成金が犯人で決まりだろうが。」

詩名「そうだよぉ〜、狛研君、財原君が犯人だって言ったのは君じゃないか。」

狛研「ボクは、天理クンに疑いがかかってるから正直に証言をしてほしいって言っただけで、別に犯人だなんて一言も言ってないよ。まだ天理クンが無実だっていう可能性は0じゃないんだ。」

財原「そうだそうだぁああああ!!!俺は何も知らんぞー!!」

ラッセ「喧しい。フン、貴様が議論を続けたいと言うのなら望み通り参加してやる。どうせ満場一致で犯人が決まらなければ投票に移れないのだからな。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「俺は犯人じゃないって言ってるじゃんよ、このバカタレ共ー!!」

ラッセ「黙れ。俺は、貴様が一番怪しいと思ってるんだ。いい加減負けを認めろ。」

財原「やだね!俺は犯人じゃねーもん!!」

詩名「だったら拳銃はどう説明するんだい?アレで入田君を撃ち殺したんじゃないのかい?」

財原「違うつってんだろドアホー!!俺は、拳銃を使った事なんて無えっつーの!!」

栄「嘘ばっかり!!テメェの言葉なんざ信用できるワケねーだろ!!」

いや、天理クンの証言は正しい。

 

拳銃を使った事なんて無え ⬅︎【拳銃】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「いや、天理クンの言う通りだよ。確かに天理クンは拳銃を持っていたけど、それを使った事は無いんだよ。そうでしょ?」

詩名「ん?どういう事だい?」

狛研「天理クンの拳銃には、弾が全弾入ってたんだ。仮に撃ったんだとしたら、減ってなきゃおかしいでしょ?」

神座「……………確かに。」

財原「ほら見ろォ!!俺は犯人じゃねえっつってんでしょうが!!」

癒川「では、入田さんを撃ち殺したのは、財原さんではないという事ですか?」

狛研「…そうだと思う。」

 

 

 

「その言葉、掻っ捌いてやるぜ!!」

 

反論

 

 

 

狛研「…陽一クン?」

栄「狛研ちゃん、君の推理にはちょっと穴があるんじゃねーか?」

財原「適当な事言うんじゃねーよチャラ男がー!!」

栄「うるせェ!!とにかく、その甘すぎる推理を料理してやるよ!」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

栄「まず、財原が拳銃を使ってないっていう前提が間違ってんだよ!弾なんて、後で詰めれば誤魔化せんだろうが!!」

狛研「天理クン、拳銃を見つけてから装填した事は?」

財原「無いよ。最初っから全弾入ってたもん。」

狛研「…って言ってるけど。」

栄「んなモン信用できるかぁ!!だったら入田の部屋の弾丸はどう説明すんだよ!?アレには、財原の指紋がベッタリついてたんだぞ!?もうコイツが犯人で決まりだろ!!」

今の陽一クンの発言はおかしい!

 

コイツが犯人で決まり⬅︎【銃の仕組み】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「それは違うよ、陽一クン。」

栄「え?どういう事だ?」

狛研「仮に天理クンの指紋が付いた銃弾が才刃クンの部屋から見つかったからって、天理クンが犯人とは限らないって事。」

ラッセ「はぁ?何を言っているのだ?貴様は。」

狛研「そもそもさぁ、みんな何か勘違いしてない?」

栄「勘違い?」

狛研「口で説明してもピンと来ないかな。じゃあちょっと実験してみよっか。」

癒川「実験…?」

ボクは、マネキンを取り出して立たせた。

 

狛研「…よいしょっと。」

癒川「なんですかそれは…」

狛研「実験に必要な道具だよ。捜査時間中に倉庫まで走って持ってきたんだよ。」

穴雲「…そんな大きい物、どうやって持ってきたんだい?」

狛研「えへへ、企業秘密。…天理クン。これ持って。」

財原「何これ?」

狛研「ボクが初日にガチャで引いたオモチャの拳銃だよ。弾は本物じゃないから安心して。」

財原「ほーん。で?俺は何をすればいいの?」

狛研「これを撃ってみて。」

ラッセ「はぁ!!?何を言い出すんだ貴様は!!おい、モノクマ!!こんな事していいのか!?」

モノクマ『別にいーよ。ルールで禁止してないし。ただし、制限時間内に済ませてよね。あと、極力裁判場を壊さない事!!修理が大変だからね!!』

ラッセ「…くっ。」

狛研「どうしたの?ラッセクン。何か不都合でもあるの?」

ラッセ「…いや、別に。」

狛研「じゃあ別に実験してもいいよね。さ、天理クン。撃っちゃって。」

財原「よくわかんねーけど、任せな。」

栄「おい、ホントに大丈夫なんだろうな!?

天理クンは、自信満々に拳銃を向けて、撃った。

 

 

 

バァン

 

ペイント弾がマネキンの眉間に当たり、マネキンの顔が真っ赤なインクだらけになった。

栄「おわぁっ…!」

財原「ミッションコンプリィート☆」

狛研「ナイスシュート。ありがと天理クン。これでわかったよ。」

ラッセ「コイツが殺人鬼だという事が、か?見ろ。この腕前、どう見ても警官か狙撃手並だろ。普通の高校生にこんな芸当ができると思うか?」

栄「そうだぜ!こんだけ正確に撃てるんだったら、入田を殺す事だってできんだろ!!」

財原「いやー、それほどでもー。」

栄「喜んでんじゃねェよ!!犯罪者が!!」

狛研「みんな、注目すべきなのはそこじゃないよ。正直、天理クンの銃の腕はどうでもいいんだ。」

財原「えー、ひどくね?俺頑張ったのに。」

狛研「思い出してみて。今の実験で天理クンが、一度でも弾に触れた瞬間があった?」

癒川「…あっ!!」

 

狛研「…そう、犯行現場に犯人の指紋が付いた弾丸なんて残ってるわけがないんだよ。今回の事件は、天理クンに罪を着せたい誰かの犯行だったって事さ。」

穴雲「…確かに、よくよく考えてみれば、あの弾丸は明らかに不自然だったよね。撃った後のはずなのにひしゃげていないどころか薬莢まで付いてるし。なんで気付かなかったんだろう。」

癒川「…多分、色眼鏡で物事を判断していたからじゃないでしょうか。私達は、無意識のうちに財原さんが犯人だと決め付けてしまっていたみたいですね。ごめんなさい、財原さん。無実のあなたを疑ってしまって…」

財原「可愛い癒川サンが言うなら許しちゃおっかなー。とにかく、これでわかったろ。俺は犯人じゃねーから。」

 

ラッセ「いや、まだだ。まだコイツが犯人ではないと証明されたワケじゃない。」

栄「同感だぜ。俺も、財原が怪しいと思う。」

詩名「まだ凶器に拳銃が使われた可能性も捨てきれないしねー。」

財原「しつけーんだよー。いい加減認めよーよ。」

癒川「そうです!財原さんは犯人ではありませんし、拳銃は今回の事件に使われた凶器ではないと思います!」

神座「…………意見、分かれた………」

栄「…って事は…?」

『うっぷぷぷ!そういう時はボク達の出番だね!』

栄「うわぁああああああ!!!嫌だぁあああああああ!!!」

『フォーメーションチェーンジ!!』

 

クマさんが席の装置を操作すると、ボク達の証言台が宙に浮いた。

 

栄「うぎゃああああああああ!!」

 

証言台が二つの陣営に分かれた。

 

 

 

意見対立

 

 

 

《凶器は拳銃か?》

 

【拳銃だ!】神座、栄、詩名、ラッセ

 

【拳銃じゃない!】穴雲、狛研、財原、癒川

 

 

 

ー議論スクラム 開始ー

 

栄「凶器は拳銃で決まりだ!!」

「天理クン!」

財原「拳銃じゃないって何回言ったらわかんだよこのバカチンがー!!」

詩名「唯一アリバイが無くてかつ拳銃なんて物騒な物を持ち歩いてた財原君が怪しいと思うけどなぁ〜♪」

「星也クン!」

穴雲「見落としてるだけで、財原君以外にも犯行が可能だった人はいるかもしれないよね?」

神座「………工学者、撃たれて…死んだ………」

「治奈ちゃん!」

癒川「入田さんの死因が銃殺だったからと言って、凶器が拳銃とは限りません!!」

ラッセ「しつこいぞ貴様ら。もうなんて残ってないだろ。」

「ボクが!!」

狛研「まだ解き明かすべきは残ってるんだ!!」

 

 

 

全論破

 

穴雲「これが僕らの答えだ!」

狛研「これがボク達の答えだよ!」

財原「これが俺達の答えだよぉ〜。」

癒川「これが私達の答えです!」

 

 

 

狛研「凶器が拳銃以外の何かだったっていう可能性はないかな?」

ラッセ「はぁ?なんだそれは。そんなもの、あるわけないだろ。」

狛研「本当にそうかな?」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

狛研「さっきも言った通り真犯人は、犯人が天理クンで、凶器が拳銃だと思わせたいんじゃないのかな?」

ラッセ「何を根拠のない戯言を言っているのだ。第一、凶器が拳銃じゃないなら他になんだというのだ。拳銃以外あり得ないだろ。」

今のラッセクンの発言はおかしい!

 

拳銃以外あり得ない⬅︎【ライフル】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「…ライフル。」

ラッセ「はぁ?」

狛研「美術室にあったライフルならどうかな?あれだったら、独房に侵入しなくても才刃クンを撃ち殺せると思わないかい?」

癒川「確かに…」

詩名「どこにそんな証拠があるっていうんだい?」

狛研「それは…」

 

コトダマ提示!

 

【装弾数】

 

「これだ!!」

 

狛研「美術室のライフルの装弾数は、さっき調べたら8発だったんだ。」

詩名「それがどうしたんだい?」

狛研「陽一クン、ライフルの最初の装弾数っていくつだっけ?」

栄「えっと…確か10発だったな。でも、試し撃ちしたから減ってるぞ。」

狛研「何回試し撃ちしたの?」

栄「一回だけだよ。」

狛研「だったら、装弾数は10ー1で9発になってなきゃおかしいよね?…1発足りないんだよ。だったらその1発はどこに消えたと思う?」

穴雲「それってまさか…」

狛研「うん。多分だけど、残りの1発は犯行に使われたのさ!」

癒川「そんな…!」

 

詩名「だったら何?」

狛研「え?」

詩名「凶器がライフルだとわかったからって、財原君が犯人じゃないって事にはならないじゃないか。」

狛研「一理ある。」

財原「えぇ〜!!?」

狛研「そうだよね。確かに今ので天理クンの無実が証明されたかっていうとちょっと違うよね。」

財原「嘘でしょお!?ちょっ、見捨てないで狛研サン!」

詩名「財原君の無実を証明出来ないなら、せめて事件当時の状況くらいはハッキリさせたいところだよね。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

詩名「まず、入田君は誰にどこから撃ち殺されたのかな?」

神座「撃ち殺すの………独房、じゃ…なくても………できる…かも……………」

詩名「そうだね、神座君。銃を構えて撃つ事自体は、射程範囲内なら可能だったわけだ。まずは、どこから犯人が入田君を撃ち殺したのかを明らかにしないと話にならなくはないかい?」

犯人が才刃クンを撃ち殺した場所…

それは…

 

 

 

犯人が才刃クンを撃ち殺した場所は?

 

1.独房付近

2.美術室

3.食堂

 

 

 

➡︎2.美術室

 

「これだ!!」

 

狛研「犯人は、美術室から才刃クンを狙撃したんだよ。」

神座「………そうなの?」

狛研「うん。そう言い切れる根拠があるんだ。」

 

コトダマ提示!

 

【火薬の匂い】

 

「これだ!!」

 

狛研「柳人クンが、美術室が火薬臭いと証言していたんだ。」

穴雲「火薬…もしかして、硝煙の匂いかな?」

狛研「ご名答。多分、ライフルを撃った時の硝煙の匂いが部屋に残っちゃったんだね。普通の人なら気付かなかっただろうけど、鼻がいい柳人クンがいて助かったよ。」

栄「な、なんだと…!!?おい、そうなのか財原!!?」

財原「俺が犯人だっつー前提なのね。俺は娯楽室にいたって言ってんじゃん。」

詩名「信用できないよ。アリバイがない上に射撃が得意なんて、やっぱり君が犯人だろ。」

穴雲「…まあ、財原君以外のみんなにアリバイがあるっていう状況的に考えて、彼の証言は正直疑わしいんだけど…百歩譲って彼の証言が正しいとして、じゃあ誰がどうやって入田君を撃ち殺したのかな?」

詩名「まさか、幽霊か透明人間…はたまた17人目の超高校級の仕業だなんて言わないよねぇ?」

 

狛研「幽霊に透明人間、ね。あながち間違ってないかもね。」

詩名「は!!?」

財原「ダメだ狛研サンってば頭ブッ壊れちゃった。急いで精神科に診て貰わないと。」

癒川「あの…一応私医療従事者ですけど…」

狛研「違うから!!最後まで話を聞きなよ!!」

穴雲「それで、あながち間違いじゃないっていうのは?」

狛研「正確には、才刃クンを撃ち殺した人はこの中にいないって事だよ。」

栄「はぁ!!?どういう事だよ!?」

狛研「犯人は、自らの手を汚す事なく才刃クンを撃ち殺したのさ。ある方法を使ってね。」

神座「………ある方法?」

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

テ ヅ ク リ ノ ト ラ ッ プ

 

【手作りのトラップ】

 

「これだ!!」

 

 

 

狛研「犯人は、自分でトラップを作って、才刃クンを撃ち殺したんだよ。」

栄「えぇ!?トラップ!?」

詩名「どういう事なのかな?」

狛研「説明するからちょっと聞いてて。」

犯人がトラップを作るのに使ったのは…

 

コトダマ提示!

 

【ル●バ】【プレートアーマー】【シルクの糸】

 

「これだ!!」

 

狛研「まず、倉庫からル●バを持ってくるでしょ。」

栄「ル●バ!!?何に使うんだんなモン!!」

狛研「ちょっと聞いててってば。…次に、プレートアーマーにライフルを持たせて、定位置で固定します。」

財原「料理番組みたいになってるんですけど。」

狛研「最後に、タイマーを設定したル●バをシルクの糸でライフルの引き金と結びつければトラップの完成だよ。時間になったらル●バが動き出して、糸で引き金が引っ張られて発砲するっていう寸法さ。これが無人トリックの正体だよ。」

栄「はー…何がなんだかオレにはサッパリだわ。」

狛研「そして、それとは別にボウガンのトラップを仕掛けたんだ。こっちはゐをりちゃんを殺す用のね。」

 

穴雲「なるほどね、これで入田君を殺害したトリックはハッキリしたね。…でも、そうなると誰が犯人なのかわからないね。」

財原「あーあ、フリダシに戻っちゃった!」

狛研「そうでもないかもよ?」

神座「……………どういう事?」

狛研「犯人につながる手がかりがまだ残ってるんじゃないかって事。ちょっとずつ考えれば、犯人の人物像が見えてくるはずだよ。」

財原「こーんな盛大なピタ●ラスイッチを成立させるんだ、きっと犯人は相当計画力と実行力のある奴なんじゃないかなー?」

栄「しかも、弱ェ奴を狙って殺すようなクズ野郎だ!!」

ラッセ「それでいて金に貪欲な奴か…」

 

狛研「…一人、心当たりがあるよ。」

栄「なっ…なんだと、狛研ちゃん!?」

…一人いたはずだ。

みんなが今言ってくれた条件に当てはまる人が。

そして、その人は今不用意な発言をした。

正直、今思えばこの人は最初から違和感だらけだった。

でも、今まで気づかなかった。

…いや、気づいちゃいけないような気がしていた。

だって、その人は()()()()()()()()()()()人だったから。

その人は…

 

 

 

 

 

ー人物指定ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

狛研「…ラッセクン。キミなんじゃないのかな?」

ラッセ「……………はぁ?」

ラッセクンは、自分が指名された事に驚いたのか、間の抜けた表情をしていた。

狛研「ボクは、キミが犯人だと思うんだけど…何か言いたい事はある?」

ラッセ「ハァ…何を言い出すかと思えば、とんだ戯言を…貴様、誰に向かってそんな口を利いている?俺が誰だかわかってるよなぁ?」

狛研「そんなのどうでもいいよ。」

ラッセ「…あ?」

狛研「キミの方こそ、自分の立場わかってる?ボクもキミが高貴な人だから忘れかけてたけど、ここに収監されている以上、相手が誰だろうと関係ない。文句があるなら反論してみろ、お坊ちゃん。」

ラッセ「…フン、俺にそこまで無礼を働いたのは貴様が初めてだ。貴様のその傲慢さ、嫌いじゃないぞ。特別に俺が直接叩き潰してくれる。」

狛研「…望むところだ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

ラッセ「まず、なぜ俺を犯人だと思ったのか…理由を聞こうか。」

狛研「キミ自身の失言が最大の理由だよ。自分の胸に手を当てて考えてみたら。」

ラッセ「バカバカしい。俺が失言なんてするわけないだろ。」

今のラッセクンの発言はおかしい!

 

俺が失言なんてするわけない⬅︎【懸賞金】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「キミは、さっき明らかにおかしな発言をしたんだ。覚えてない?」

ラッセ「何の事かな。」

狛研「さっき、キミは犯人がお金に貪欲だって言ってたっけど…なんでそうだと思ったの?」

ラッセ「それは、今回俺達の首に懸賞金がかかっていたからだ。だから、一番賞金が高かったメカを殺したんじゃないのか?」

狛研「確かに、今回はボク達の首に懸賞金がかかってたね。…だけど、それが才刃クンを殺した理由になったとは限らないよね?陽一クンの言う通り、弱そうだから殺したとか…才刃クンの才能が厄介だから殺したとか…色々理由は考えられるはずなのに、なんでキミは犯人がお金目当てで才刃クンを殺したって断言できたの?」

ラッセ「くっ…な、なんだそのガキみたいな屁理屈は!!普通、あの状況で考えられる理由と言ったら金だろ!!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

ラッセ「なぜ俺が、犯人が金目当てでメカを殺したって断言できたかだと!?そんなの、察したからに決まってるだろ!!普通、このメンバーだったら賞金が高い奴から順番に殺しいくものだろうが!!逆に、そんな事もわからない貴様らが無能なだけだろ!!」

栄「んだと!!?」

財原「耳を貸すんじゃねーよ無能が。無能なのがバレちゃうでしょ。」

栄「無能無能うっせぇ!!」

狛研「…ねえ、ラッセクン。やっぱりキミが犯人としか考えられないんだよ。だって、キミは犯人しか知らない情報を知ってたよね?それに、キミは懸賞金がどうやって決められてるのか知ってるんでしょ?」

ボクは、持っていたカレンダーをチラつかせた。

財原「あ、俺の手帳…そういえば狛研サンに渡したままだったっけ。」

ラッセ「そのカレンダーがなんだって言うんだ!!俺は貴様らの誕生日なんて知らんぞ!!」

 

 

 

財原「…。」

 

穴雲「…。」

 

癒川「…。」

 

詩名「…。」

 

神座「…。」

 

栄「…え?」

 

 

 

誕生日⬅︎【誕生日】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「…ラッセクン、引っかかってくれてありがとう。」

ラッセ「…え?」

狛研「ボク、誕生日の話なんて全然してないんだけど。」

ラッセ「あっ…!」

狛研「こうでもしないとボロを出してくれないと思ってさ。…ところでラッセクン。誕生日がどうかした?」

ラッセ「ひ、卑怯だぞ貴様ら!!こんなの、誘導尋問だろ!!大体、これが事件と一体何が関係あるっていうんだ!?」

財原「いやー、大有りなんだな。これが。」

ラッセ「は…?」

財原「すっとぼけてるみたいだからネタバレしちゃうね。今回の懸賞金のポイントは、こんな風になってたんだよ。」

 

入田才刃 231point

神座ゐをり 165point

栄陽一 160point

ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン 72point

癒川治奈 60point

狛研叶 49point

財原天理 36point

詩名柳人 36point

穴雲星也 2point

 

財原「このポイント表、何か違和感が無い?」

癒川「えっと…ポイントの差が大きい事、ですか?」

栄「あと、なんか数字が中途半端じゃねえか?」

財原「実はこれ、ある法則に基づいてポイントが決められてるんだよ。」

神座「………法則?」

 

財原「その人の誕生月と誕生日の積がそのままポイントになってるんだよ!」

ラッセ「なっ………!」

栄「いやわかるわけないだろ!!そんなモン!っていうか、なんでそんなポイントの決め方なんだよ!?」

財原「…そう、普通だったら気付かないよね?人の誕生日をいちいち気にする物好きか、よっぽど賞金が欲しくて個人情報まで念入りに調べた欲深い奴じゃない限りはなぁ!!」

ラッセ「ぐっ………」

狛研「さてとラッセクン。キミは、懸賞金の法則を知っててさっき盛大に失言をしたよね?これをどう言い逃れする気?」

ラッセ「………。」

 

 

 

「頭が高いぞ貴様!!!」

 

反論

 

 

 

狛研「ラッセクン?」

ラッセ「さっきから黙って聞いていれば、ただの失言待ちだろうが!!有象無象の貧乏人の分際で、俺様を罠に嵌めるとはどういった了見だ!!?この尻軽不細工馬鹿女がぁあ!!!」

狛研「えぇ…」

穴雲「喋り方が下品になっちゃってるね…」

財原「キャー怖い(棒)」

ラッセ「貴様の貧乏臭い言葉でこの高貴な俺様を屈服させられると思ってんじゃねえ!!身の程を知れ!!雑魚が!!!」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

ラッセ「貴様の発言には、証拠が何一つ無いじゃないか!!」

狛研「さっきあれだけ失言をしておいて、元気だね。」

ラッセ「黙れ不細工牛乳女がぁああ!!」

狛研「う、牛乳女…!?」

ラッセ「俺様が犯人だと!?ふざけんじゃねえ!!大体、貴様の推理はガバガバなんだよ!!角度的に、美術室から独房を狙撃するのは不可能だろうが!!そんな事も分からんのか!!?」

狛研「…。」

ラッセ「ほら何も反論できまい!!俺様を犯人に仕立て上げる前に、まずはその出来損ないの推理をやり直せ!!このド低能がぁあああ!!!」

 

美術室から独房を狙撃するのは不可能⬅︎【印】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「それは違うよ、ラッセクン。」

ラッセ「はぁ!!?」

狛研「これを見て。」

ラッセ「あぁ…?何だそれは。」

狛研「ゐをりちゃんが調べてくれた印だよ。」

ラッセ「それがどうした!!?」

狛研「…面白いもの見せてあげよっか。この印を直線で繋ぐと…」

 

狛研「…ほら。ちょうど同じ角度で折れ曲がった線になるんだ。」

ラッセ「だからなんだ!!?それが、今回の事件のトリックとどう関係があるというのだ!!?」

今回の事件のトリックの最大の要点…

それは…

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

チ ョ ウ ダ ン ヲ カ ガ ミ デ コ ン ト ロ ー ル シ タ

 

【跳弾を鏡でコントロールした】

 

「これだ!!」

 

 

 

狛研「ラッセクン。キミは跳弾を利用して才刃クンを撃ち殺したんだ。この印の位置に硬い鏡を置いて、そこに銃弾を当てて跳ね返した…違う?」

ラッセ「はぁ!!?なんだそのトンチンカンな推理は!!そんな証拠がどこにある!?」

財原「あっはは、往生際悪いなぁ。」

ラッセ「当然だ!!だって俺様は犯人じゃねえからなぁああああ!!!」

狛研「…いや、キミが犯人だっていう証拠はあるよ。」

ラッセ「ハッタリだろ!!そうやって俺様を騙そうったってそうはいかんぞ!!」

 

 

 

ラッセ「貴様の推理には証拠が無いっつってんだろうがあああああ!!!」⬅︎ 【ガラスの破片】

 

「これで終わりだよ!!」

 

 

 

狛研「ラッセクン、これ…何?」

ラッセ「…は?」

狛研「ちょうど印が書かれてた位置に置いてあったんだけど。何かの破片っぽいけど…なんなのかなぁ、これ。」

ラッセ「な、何が言いたい…?」

狛研「…これ、キミが持ってる手鏡の破片じゃないの?」

ラッセ「ッーーーーーーー!!!」

狛研「…まあ、あくまで推測だから断言はしないけど…でも、キミが犯人じゃないっていうんなら、今持ってる鏡を見せられるよね?」

ラッセ「…や、やめろ…俺は、犯人じゃ…」

狛研「なら鏡を見せてって言ってるでしょ。ほら、早くしてよ。」

ラッセクンは、青ざめた表情でこっちを見た。

財原「先に言っとくけど、失くしたなんて言うのはナシだからな?」

ラッセ「くっ…」

 

ラッセクンは、服のポケットから鏡を取り出した。

ラッセクンは少し口角を上げると、鏡をゆっくりと上に持ち上げた。

財原「あっ、まさかとは思うけど、今ここでわざと割って証拠隠滅したりとかしないよね?」

ラッセ「なっ…」

財原「みんなを導く偉い王様のキミが、そんなセコい事するわけないよねー?」

ラッセ「ッ、ぐぅうううう…!」

ラッセクンは、悔しそうにみんなを睨んだ。

栄「………終わったな。」

狛研「…ラッセクン、ボクが引導を渡してあげる。これが事件の真相だよ!」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

Act.1

今回の事件の発端は、クマさんがみんなにかけた懸賞金だった。

ボク達は、今更お金なんかで人を殺すわけない…そう思ってた。

だけどボク達の中で一人だけ、お金に目が眩んで殺人を企てていた人がいたんだ。

犯人は、ターゲットに才刃クンとゐをりちゃんを選んで殺そうと計画を立てた。

犯人は、みんなの個人情報を調べた結果、懸賞金の法則に気付いてしまったんだ。

…まあ、これが犯人を特定するきっかけになったわけだけれど。

 

Act.2

犯人は、テープで才刃クンの部屋のインターホンをオンにして、目覚まし時計を近くに設置しておいた。

ちゃんと9時半に鳴るように設定してね。

そして倉庫からル●バを持ち出して美術室に持ち込んだ。

そこでプレートアーマーとライフルを固定して、タイマーを9時半にセットしたル●バとライフルの引き金を、糸で結びつけておいたんだ。

9時半になったらル●バが動き出してライフルが発砲するという寸法さ。

 

Act.3

そして、犯人は美術室にもう一つ罠を仕掛けた。

ボウガンを死角に設置して、美術室に張った糸と引き金を結びつけて、糸が引っ張られると矢が発射される仕掛けを作ったんだ。

そして、あらかじめ計算して割り出した位置に手鏡を置いておいた。

たまたまその位置がボク達にとって死角になってたから、誰もそこに鏡があったとは気付かなかったけどね。

 

Act.4

全ての準備が終わった犯人は、自身のアリバイを証明するためと、ボク達に邪魔をさせないために、何か理由をつけて食堂に治奈ちゃんと陽一クンを呼び出して、二人を痛めつけた。

…今思えば、これはボクと星也クンを食堂におびき寄せるためのエサだったんだ。

そして天理クン以外の全員が揃ったタイミングでドアを閉じて、食堂を完全防音の空間にしたんだ。

その直後、悲劇が起こった。

 

Act.5

目覚まし時計の騒音に耐えかねた才刃クンは、ドアを開けてしまったんだ。

その瞬間美術室のル●バが動き出し、ライフルが発砲した。

弾は、犯人の狙い通り二つの鏡を捉え、そして跳ね返った弾は才刃クンに命中した。

お腹に銃弾が貫通した才刃クンは、その場で息絶えた。

その約一時間後、犯人の狙い通り、ボクとゐをりちゃんは美術室に向かった。

だけど、ここで犯人にとって想定外の事が起こった。

ボクがゐをりちゃんを庇った事で、ゐをりちゃんが生き残ったんだ。

犯人は、悔しかっただろうね。賞金が手に入るチャンスを逃しちゃったんだから。

 

Act.6

そしてその直後、ボク達が才刃クンの死体を発見した。

その時、犯人は天理クンの犯行に見せかけるために、才刃クンの身体を貫いた銃弾を回収して、代わりにダミーの銃弾をその場に置いたんだ。

でも、犯人は銃の仕組みに詳しくなかったのか、天理クンの指紋がついた新品の銃弾を置いていくっていうあり得ない隠蔽工作をしてしまったんだ。

…正直わからない。

曲がりなりにもみんなを正しい方向に導こうとしたキミが、なんでこんな事をしちゃったのか。

 

「これが事件の真相だ!…そうだよね?」

 

 

 

「【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネンクン!!!」

 

 

 

 

ラッセ「あ、あああああああ…い、いやだぁああ…俺は、こんな…ところで…終わりたく、ない…!」

財原「人の人生を奪っておいてよく言うよー。さてと、俺もう眠くなってきちゃった。クマちゃん、投票始めちゃって。」

モノクマ『うぷぷぷ。そうだね、もうクロは決まったみたいだしね。それじゃあ始めよっか!投票ターイム!』

モノベル『必ず、一人一票投票してくださいね。もし投票しなかったら、校則違反とみなしておしおきします!』

 

証言台にボタンが現れた。

ボクは、迷いながらもラッセクンに投票した。

 

モノクマ『うぷぷ、全員投票し終わったようだね?ではでは…結果発表ー!!』

モノベル『皆様の運命や如何に!?』

 

 

 

モニターにVOTEと書かれたスロットが表示され、ドラムロールと共にボク達の顔のドット絵が描かれたリールが回転する。

リールの回転が遅くなり、ついに止まった。

 

リールには、ラッセクンの顔が3つ並んでいた。

スロットからは、ボク達の勝利を祝福…いや、嘲笑うかのように、ファンファーレと共に大量のメダルが吐き出された。

 

 

 

 

 

学級裁判閉廷!

 

 

 

 

 

 



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第4章 非日常編④(おしおき編)

8月19日は舞田クンの誕生日です!
本人からメッセージをいただいております。

「おう!!今日は俺の誕生日なんだぜ!!実は、この日ってバイクの日って呼ばれてるらしいんだけどよ、なんでそう言われてるかって知ってっか?8月19日がバイク(819)って読めるっつー事から、えっと…なんだっけ。あ、そうそう。セーフソームチョー?の、交通安全対策本部が交通事故を無くすために決めたんだと!俺ァ中坊ン時からずっとバイク乗ってっから、その日が誕生日っつーのはテンション上がるぜ!っつーワケで、お前ら交通事故には気をつけろよ!」


VOTE

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン 7票

 

【超高校級の資産家】財原天理 1票

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也 0票

 

【超高校級の工学者】入田才刃 0票

 

【超高校級の不運】景見凶夜 0票

 

【超高校級の???】神座ゐをり 0票

 

【超高校級の幸運】狛研叶 0票

 

【超高校級の栄養士】栄陽一 0票

 

【超高校級の詩人】詩名柳人 0票

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵 0票

 

【セキセイインコ】翠 0票

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅 0票

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子 0票

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑 0票

 

【超高校級の侍】不動院剣 0票

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗 0票

 

【超高校級の看護師】癒川治奈 0票

 

 

 

『うぷぷぷ!!お見事大正解ーーー!!!【超高校級の工学者】入田才刃クンをブチ殺したのは、ななななんと!祖国を守る名君の皮を被った汚い欲まみれの俗物、【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネンクンでしたー!!!』

『今回は、クロのラッセ様を除いて全員満場一致でラッセ様に投票していました!お見事ですよ、皆様!』

 

「………そんな、国王……どうして…」

 

「…………な、…………が」

ラッセクンは、ブツブツと小さな声で何かを言っていた。

「…ラッセクン?」

 

 

 

 

 

「ふざけんなよゴミ共がぁあああああああああああああ!!!」

 

 

 

ラッセクンは、今までに聞いた事がないくらい大きな声で怒鳴り散らした。

顔には青筋が浮かび上がって、目は血走って、完全に正気じゃなかった。

「ヒッ…!」

治奈ちゃんとゐをりちゃんは、小さく身体を震わせながら怯えたような目でラッセクンを見た。

「おい、盲目…料理バカ…和服…貴様ら、俺の帝国の愚民のくせに、なぜ俺に投票した?俺を犠牲にして、自分達だけ助かろうとしたのか…?なぁオイ…誰が貴様らのような無能共を導いてやったと思ってる…この恩知らずのクズ共が!!!ブッ殺してやる!!!」

ラッセクンは、手鏡を叩き割ると、破片を手に持ってゐをりちゃんに向けた。

「ッ…………いやっ、やめて………!…国王、お願い…………目、を…覚まし、て……………」

「やめろラッセクン!!ゐをりちゃんを殺して一体何になるっていうんだ!!」

「黙れ!!!おい和服!!貴様、さっきはよくも裏切ってくれたな!!こんな事になるなら、確実に貴様を殺しておくんだった!!貴様のようなゴミはもう要らん!!!俺がここで殺されるっていうのなら、貴様が代わりに死ね!!この愚図がぁあああああああああああああ!!!」

ラッセクンは、ゐをりちゃん目掛けて全速力で突進した。

 

「要らないのはオマエだよ、バーカ。」

 

 

 

 

 

 

タァン

 

 

 

あり得ない光景が目に飛び込んできた。

耳を劈くような乾いた音が鳴り響いたかと思うと、目の前に血を流して蹲っている影が見えた。

その影は、ゐをりちゃん…

…ではなく、ラッセクンだった。

 

「ーーーーーーーーーあっ、」

 

「あ゛ぁああああああああああ!!!い゛た゛い゛、俺の、俺の指がぁああああああああ!!!」

 

ラッセクンは、右手の指が吹っ飛び、激痛で悶えていた。

その向こうに、笑顔で拳銃を構える天理クンがいた。

 

「ミッションコンプリィート。大丈夫、神座サン?怪我ない?」

「…資産家………!」

「ぐっ、ぐぅううううう…き、きさま…何のつもりだ…!」

「うるさいよ。黙りな殺人鬼が。勝ち目が無くなったからって、俺の楽しみをブチ壊すようなマネしてんじゃねえよ。ホント、キミにはほとほと愛想が尽きたよ。」

「き…きさまぁああ…!」

「おっと、動くな!これ以上つまんねー事したらケツの穴増やすから。」

「ぐっ…!!」

 

『ちょっとちょっと!財原クン何やってんの!?これからおしおきするってのに、ボク達の立場は!?』

「許してよクマちゃん。今のはどう見ても正当防衛でしょ。」

『確かに…今のラッセ様の、秩序を乱すような行動は好ましくないですね。ですが、次無許可で裁判中に発砲したらおしおきですよ?』

「ひえー、こわっ。」

「…そんな事より教えて。」

『へ?』

「…ラッセクンが才刃クンを殺したのには、理由があるんでしょ。なんでラッセクンはそこまでしてお金が欲しかったの?」

『うぷぷ、そうでした。じゃあ教えちゃおっと。なんでラッセクンがお金を欲しがったのかをね!』

「おい、モノクマ…きさま…何を…!」

『話は最後まで聞こうねって学校で習わなかった?ちょっとは大人しく聞いたらどうかな?これはキミの国の問題でもあるんだからさぁ!』

 

…え?

 

『実は、ラッセクンはね。動機の映像を見せた時から、キミ達のうちの誰かを殺してここを出る事を考えてたんだよ。』

「んなっ…!」

『彼に見せた映像…それは、無残に朽ち果てた彼の祖国の映像です。それを見た瞬間、彼は祖国を救うため、クラスメイトを殺す事を考えたのです。』

「そんな…」

『だけど、その一歩がなかなか踏み出せなかったんだよね。そんな事をしてもし失敗しちゃったら、死ぬのは自分だからね。だけど、ラッセクンは第4の動機でついに殺人を犯す決心をしたってわけ。』

「でも、なんでその動機が金なんだよ?ラッセは王様だろ?金になんて困ってねェはずだろ。」

「そうだよぉ〜、国王様の国を救いたいという思いとお金がどう関係あるんだい?」

 

『フッフッフ。アナタ達、本当に察しが悪いですねェ。』

「…え?」

『財原クンやラッセクン以外のみんなにとっては、数百兆円なんて金額、莫大すぎて想像もつかないだろうけど、それだけあったら一国の情勢を大きく変えられるって知ってた?』

「なっ…んだと…!?」

『フッフッフ。一国の国王であるラッセ様は、その事をよーくわかっていました。入田様と神座様を殺して得られる400兆円があれば、以前のようにとはいかなくとも、国を復興させる事ができたのですよ。だからこそラッセ様は入田様を殺したんですよ。…まあ、神座様の方は、狛研様のせいで失敗してしまったようですがねェ。』

「そんな…じゃあ、国王様は国を救うために入田さんを…!?」

「そんな事のためにオレ達全員を犠牲にしようとしたのかよ!?」

 

「…そんな事、だと?」

 

 

 

「うるせェええええええええええええ!!!」

 

ラッセクンは、怒鳴り声を上げて陽一クンを黙らせた。

「俺は何も間違ってない!!俺は、俺の国を取り戻すためならなんだってするし、それ以外の奴らがどうなろうと知ったこっちゃねぇんだよ!!貴様らが大人しく死ねば、俺は国を取り戻し、何千万もの民の命が救えるところだったんだぞ!!自分の国を救うおうとして何が悪い!!」

「つまりキミは、自分の国の国民とボク達の命を天秤にかけた結果、自分の国民達を選んだって事?」

「…そうだよ。」

ラッセクンは、静かにボクを睨んだ。

髪は崩れて、目は血走って、まるで別人のようだった。

 

「そんな…じゃあもしかして、オイラ達は国王様に投票しちゃいけなかったんじゃ…」

「だからって、私達全員を殺すなんて間違ってます…!そんな事をして国を取り戻したって誰も幸せになんてなれない…あなたの国の人達だって、きっとそんな事望んでいません!!皆さんでちゃんと話し合っていればこんな事には…」

「そうだよ!なんで相談してくれなかったんだよ!オレ達、クラスメイトだろ!」

「黙れ凡愚がぁああ!!何がクラスメイトだ!!貴様らなんぞと一緒にするな!!政治も経済も戦争も、何も知らない愚民が偉そうな口叩くんじゃねェ!!俺は、今まで自分の国のために多くを犠牲にしてきた…国を守るためなら何万人でも殺してきた!!それに比べれば貴様らたった7人の犠牲なんて、ゴミも同然だろうが!!貴様らゴミの命と俺の国民の命、どちらを優先すべきかなんて考えるまでもないだろうが!!」

「なんだと!?ラッセ、テメェ…」

「貴様ら凡人に何がわかる!!愛する祖国を…国民達を、家族を奪われ、王族としてのプライドをズタズタにされる…その苦しみが、貴様らに分かってたまるものか!!!」

 

「わかるわけないじゃん。バッカみたい。」

「…あ?」

天理クンは、ケタケタと笑いながら言った。

「命に重いも軽いもあるかよ。結局はみんな、自分の命が一番大事なのさ。それって、キミが国を大切に思う気持ちと何が違うの?」

「何が言いたい、貴様…!」

「負けたからってガタガタ言い訳こいてんじゃねェよゴミ野郎。みんな、ちゃんと自分の頭で考えて投票したんだ。自分なりに考えた結果、ラッセクンを見捨てる決断をしたってだけの話。それをオマエが後からケチつける権利なんかないの。わかった?」

「黙れ!!違う、違う違う違う!!!民を想う俺こそが最も尊い存在だ!!その俺がこんなゴミ共に見捨てられていいわけがない!!俺は、シルヴェンノイネン王国の、高貴で正統で純然たる国王だ!!!」

「はっはは、あーあ。失望したよラッセクン。」

 

「キミは王の器じゃない。」

天理クンは、静かにラッセクンを見下した。

「あ…ああああああ…」

天理クンに見放されたラッセクンは、その場で泣き崩れた。

 

『あのー、お取り込み中悪いんだけど、もうおしおきしちゃっていいかな?』

「あっ…!」

クマさんとベルさんは、退屈そうにしていた。

「うん、いいよ。もうコイツは要らない。始めちゃって、クマちゃん。」

「あ…ああああ…」

ラッセクンは、怯えるような目でモノクマを見た。

「なあ、頼む…殺さないでくれ…!俺を失えば、祖国の国民達が行き場を失うんだぞ…!?そんなの、あまりにも残酷だとは思わないのか…!!」

『うるさいよ。学園の秩序を乱した時点で、王様だろうと神様だろうと仏様だろうと関係ないの。罪人には死を!例外も特例もエクセプションもありません!』

「ああああああああああ…!」

ラッセクンは、泣きながら蹲った。

でも、次の瞬間、何かを決意したかのように立ち上がった。

 

 

 

「うぁあ゛ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

ラッセクンは、裁判場から逃げ出そうと全力疾走した。

途中、身に付けていた王族の証である王冠やマントを脱ぎ捨てて床に乱暴に放り投げた。

靴や手袋が脱げても、転んで顔面を強打して鼻や口から血を流しても、ただ逃げ続けた。

 

『うぷぷぷ、うっわ!逃げたよ、みっともないなぁ!』

『全くです。愚かですねぇ、逃すわけないでしょうに!』

 

「いやだ、俺は、死にたくない!!俺がこんなところで死ぬわけがないんだ!!生きる!!何がなんでも逃げ切って、生き延びてやる!!」

 

『それでは!【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネンクンのために!スペシャルなおしおきを用意しました!』

 

「俺はまだ死ねない…国のために、名誉のために、俺は生き延びなきゃいけないんだ!!」

 

『ではでは…おしおきターイム!!』

 

 

 

「死んでたまるかぁあああああぁあああああああああぁあああああああああああ!!!」

 

クマさんはハンマーを取り出すと、せり上がってきた赤いボタンをピコっと押した。

ボタンの画面に、ドット絵のラッセクンがクマさんとベルさんに追いかけられる様子が表示された。

 

 

 


 

 

GAME OVER

 

シルヴェンノイネンくんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

 

ラッセが裁判場の前のドアを開けると、そこは王宮のような空間だった。

少し暗めの豪華な照明が取り付けられ、床にはレッドカーペットが敷かれている。

通路は、手前の華やかな見た目とは対照的に、奥が暗闇でどこに続いているのかわからない。

ラッセは、モノクマ達から逃げ続けた。

そこでモニターに文字が現れる。

 

 

 

Oi maamme!

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・

 

シルヴェンノイネン 処刑執行

 

 

 

モノクマは、拷問官の格好に早着替えすると、荊の鞭でラッセを思い切り叩いた。

鞭に足をとられたラッセは、その場でつまづく。

するとレッドカーペットから無数の刺が飛び出し、ラッセの身体に刺さる。

ラッセは血塗れになるが、それでもラッセは立ち上がって走り続けた。

次にモノベルは、処刑人の格好に早着替えし、ライフルでラッセの膝を撃った。

ラッセはまた転ぶが、すぐに立ち上がって逃げた。

 

すると、今度は巨大なトラバサミがラッセの左足を挟む。

トラバサミの歯は血で真っ赤に染まり、足の骨が砕ける音が廊下に響く。

引っ張ろうとしても足は抜けず、少しずつモノクマ達に距離を詰められる。

ラッセは、青ざめた顔をしながらモノクマ達の方を見る。

 

すると、ティアラと高級なドレスに身を包んだ、ラッセに顔立ちのよく似た少女が現れる。

少女は、剣をラッセの方に差し出し、ドレスの裾を持って会釈をすると、そのまま暗闇の方へと走っていった。

ラッセは剣を手に取ると、覚悟を決めて剣を振りかぶった。

そして剣を振り下ろし、自分の左足を切断した。

ラッセは激痛に顔を歪めたが、すぐに剣を床に刺すと、剣を杖代わりに前へ進んだ。

 

体感的には数時間ほどモノクマ達から逃げ続けたラッセは、ついに限界を迎える。

ラッセがふと前を見ると、さっきの少女が前に立っており、前を指差した。

その先には、光が見えた。

ラッセは、血を流し骨を軋ませながら、光を追い求めて前へ前へと進んだ。

そしてついに、ラッセの視界が光に包まれた。

 

次の瞬間目に映ったのは、炎の海だった。

その中にはラッセの愛した祖国の土地、そして灼けて悶え苦しむ国民達の姿があった。

今まで走り続けていた廊下はそこで崩れ、崖のようになっていた。

光の正体は、国を灼く炎の光だった。

炎の中で苦しむ民達は、助けを求めるかのようにラッセのいる崖を登り、手を伸ばしてきた。

故郷の悲劇を目の当たりにしたラッセは、後退りし、元来た道を戻ろうとする。

ラッセが後ろを振り向いた瞬間、何者かがラッセの右足を掴んだ。

 

ラッセの足を掴んだのは、さっきの少女だった。

しかし今の少女は、さっきまでの美しい姿ではなく、全身が灼け爛れた醜い姿だった。

バランスを崩したラッセは、そのまま崖の下へと引きずり込まれる。

しかし、間一髪のところで崩れかけの崖を掴んだ。

ラッセは、身体を引き上げようともがいた。

ふと上を見上げると、そこにはモノクマがいた。

ラッセは、乞うような目でモノクマを見る。

するとモノクマは、無言でラッセに歩み寄る。

 

そして、巨大な鉈を取り出し、崖を掴んでいたラッセの指に振り下ろした。

ラッセはそのまま下へ下へと落ちてゆき、炎の海に沈んで丸焦げになった。

最期の表情は、絶望で染まっていた。

 

 

 


 

 

 

『イヤッホォオオーイ!!エクストリィイイイイム!!うぷぷぷ、全く…何が才監帝国だ!調子に乗らないでよね!目障りな独裁者には退場していただきましたー!』

『フッフッフ。いやあ、今晩はご飯が進みますよ。』

 

ラッセクンが死んだ。

あの子も、本当はそんなに悪い子じゃなかったのに。

どんな形であれ、あの子なりに生き残りたいっていう思いがあったはずなのに。

それを、アイツらはいとも簡単に踏みにじった。

 

「うっ…ううっ…嘘でしょ…国王様が…もう嫌…!」

「…国王陛下。僕達は、あなたの死を決して忘れません。」

「チクショウ…ラッセ…!」

「…国王様、ずっと信じてたのに…どうして…」

「……………なんで、みんな………私、から…離れて、いくの………」

みんな、反応はそれぞれだった。

泣き出す者、悔しがる者、失望する者…

でもその中で一人、笑い出す者がいた。

 

「ははっ…アハハハハハハハハハ!!!ウケる!!こんな事ってあるかよ!」

「なっ…なにがおかしいんですか!!国王様が亡くなったんですよ!?」

「いや、癒川サン。そこは喜ぶとこでしょ。キミの髪をそんな風にしたの、誰だっけ?」

「でも…だからって、国王様の死を笑うなんて…許せません!」

「あっそう。それは勝手にすれば。」

 

ボクは、天理クンに詰め寄って、思ってる事を全部ぶつけた。

「…天理クン。キミの事は尊敬してるし、大事な友達だと思ってる。…ただ、キミのそういう態度だけは正直イラッとくるんだけど。」

「…おーこわ。狛研サンは、怒らせたら穴雲クンより怖いかもね。…さてと、クマちゃん。もう帰りたいからメダルちょうだいよ。」

『だから急かすなって!はい、メダルはあげたからさっさと帰ってちょうだいね!』

『おっと、学園長。ワタクシ達から、言っておかねばならない事があるはずです。』

『あ、そうだったそうだった。ボクから、今更だけどちょっとした報告があります!』

「報告?」

『ええ、裏切り者に関する事です。皆様の中にも薄々気付いていらっしゃる方はいたでしょうけど…』

 

 

 

『ズバリ、皆様の中にワタクシ達の内通者がいます。』

「はァ!?な、内通者!?聞いてねェぞ!」

「オマエが勘悪すぎるだけでしょ。逆に、この状況で内通者がいない方がおかしいだろ。」

「んだと財原!!」

『うぷぷ、栄クンってばエラい慌て様だね。デスゲームモノの内通者の存在はお約束でしょ?』

「だよねー。」

「ってか、内通者って誰だよ!?いつから内通者だったんだ!?」

『それ言っちゃ面白くないでしょ。言っておくけど、その人は最初っからずっと内通者だったよ!』

「具体的に何をしていたのかな?」

『そうだね、たとえばキミ達の首に付いている手帳を付けるのを手伝って貰ったりだとか、あとは監視カメラの設置かな。それから動機映像や囚人のみんなの近況報告、それからコロシアイの催促…あれっ、今思えばけっこう色々やってもらってるね。』

「じゃあ、まさか今までのみんなは…」

『そうだよ。内通者に唆されて殺しちゃったんだよね。ちなみに、ラッセクンに懸賞金の法則を教えたのもその内通者だよ。』

「…何人いるの?内通者とやらは。」

『うーん、特別に教えようかな。1人だけだよ。』

『これ以上は何を聞かれても答えませんよ?それでは、ごきげんよう皆様。』

『まったねー!』

二匹は、意気揚々と去っていった。

 

 

 

「えっと…どうしますか、皆さん…」

治奈ちゃんが自信なさげに話しかけたその時…

 

 

 

ドンッ

 

 

 

陽一クンが証言台に握り拳を叩きつけた。

 

「誰だ!!出てこいよコラァ!!」

「…栄君?」

陽一クンの表情は、怒りで満ちていた。

「誰が内通者かって聞いてんだよ!!今まで散々オレ達をコケにしやがって…名乗り出ろやゴラァ!!ブン殴ってやる!!」

「ちょっとー、やめなさいよ栄クン!そんな事して、一体何になるっていうのかねー?」

「うるせェ財原!!テメェは黙ってろサイコパスが!!」

「キャー怖い(棒)」

 

「財原、オレはな。テメェが一番怪しいと思ってんだよ。…お前、やっぱり内通者だろ?」

「はぁ?何言ってんのかわかんないな。」

「とぼけんじゃねェ!!散々みんなの命を弄びやがって…殺してやる!!」

「ちょっ…やめなよ陽一クン!そんな事をしても、みんなが証言者になるだけだよ!」

「止めんな狛研ちゃん!コイツがいままで何やってきたのか、覚えてねェのか!?」

「確かに、天理クンのやり方にはいささか不満があるけど…でも、殺すのはさすがにやりすぎだよ!天理クンが内通者じゃなかったらどうする気!?キミが仲間を殺した殺人犯として処刑されるだけでしょ!?そんなの、犬死にじゃない!!」

 

「…狛研君、君さぁ。偉そうな事言ってるけど、君にかかってる疑いはまだ晴れてないからね?」

「え、何が?」

「君が黒幕なんじゃないかって事。…黒幕とまではいかなくても、もしかして内通者だったりするんじゃないの?」

「違うって言ってんじゃん!ボクが内通するように見える!?」

「そんな事言い出したら全員怪しいじゃないか。やっぱり、君が内通者…」

 

「はーい、ストップ。」

天理クンは、のっそりと手を挙げてあくびをした。

「もうやめない?この話。ハッキリ言って、生産性0じゃん。余計な会話に使った時間と酸素を返して?」

「テメェ…どの口がほざいてやがる!!」

「俺、もう喉渇いて死にそうだから帰るね。」

「………逃げるの?」

「逃げる?なーにを言ってんのかわかんないなー。神座サン、あんまり小生意気な事言ってると、キミの秘密バラしちゃうよ?」

 

「ッ!!!」

ゐをりちゃんは、ありえないスピードで天理クンに詰め寄ると、首を掴んだ。

「ぐえっ!?」

「………言うな。」

「くっ…やっぱ、()()()とはいえ化け物は化け物だな。」

「劣化版…!?何の話!?」

「…言うな!」

「おお、怖い怖い。こんなひどい事する子には、ひどい事し返しちゃおっかな?」

 

 

 

「なあ、【超高校級の絶望】神座威織サンよォ!!」

「ッーーーーー!!!」

秘密をバラされたゐをりちゃんは、その場で膝をついた。

 

「あー苦しかった。神座サンってば、本気で俺の事殺そうとしてたでしょ?」

「おい、財原!神座ちゃんが【超高校級の絶望】ってどういう事だよ!?絶望は、何年も前に根絶されたんじゃねェのか!?」

「機会があれば話すよ。」

「今話せ!!」

「やだ。喉渇きすぎて死にそうだもん。じゃあ俺は部屋に戻ってス●ライト飲むから。」

天理クンは、エレベーターに乗り込んでそそくさと帰っていった。

 

「……………。」

「ゐをりちゃん、大丈夫?」

「…幸運。」

「立てる?ボク達も、部屋に戻らないと。」

「…うん。」

ボクは、ゐをりちゃんに肩を貸してエレベーターに乗り込んだ。

…ボク達の中に内通者とゲームの乗っ取り犯がいて、ゐをりちゃんが【超高校級の絶望】…?

それに、天理クンがボクに耳打ちしてきた事も気になる…

 

 

 

『尻尾を掴んだ。…死にたくなかったら平然を装え。わかったな。』

 

あー、ダメだ。

頭が追いつかない。

ボク達は、これからどうすればいいんだ…?

 

「…さん。」

 

「狛研さん!!」

 

「あっ!?」

星也クンが声をかけてきた。

「やっと気づいた。…考え事でもしてたの?」

「あ…うん、まあ…」

「あのさ、ちょっと色んな事があって混乱してるだろうから、無理はしないでね。僕に出来る事があったら協力するからさ。」

「…ありがとう。星也クンは優しいね。」

「そんな事ないよ。…僕は、仲間を見殺しにしてしまった罪滅ぼしがしたいだけだ。こんな事で許されるとは思ってないけどね。」

「星也クンは悪くないじゃん。」

「いや…国王陛下の言う通り、僕はみんなのリーダーを気取ってたくせに、今まで何もしてなかった。僕が不甲斐ないばっかりに、9人もクラスメイトを見殺しにしてしまった。許される事じゃないよ。」

「星也クンだけの責任じゃないよ。こうなったのは、みんなの責任だ。だから、あんまり一人で抱え込まないでね。」

「…うん。ありがとう。」

 

「…。」

治奈ちゃんが気まずそうにしている。

「あっ…ごめん。」

「あの、治奈。違うんだ。これは…」

「いえ、いいんですよ。私、星也さんの事はちゃんとわかってますから。それに、狛研さんは私の大切なお友達です。疑ったりなんてしませんよ。」

「…良かった。」

星也クンって、治奈ちゃんにだけは頭が上がらないんだね。

「…ぷっ。」

「…狛研さん?どうしたの?」

「ははは、ありがとう二人とも。おかげでちょっと元気が出たよ。」

「そっか、それは良かった。僕に出来る事があったらなんでも相談してね。」

「…うん!」

 

才刃クンとラッセクンを失って、希望を失いかけてた。

でも、二人のおかげでまた希望を取り戻した。

ボクには、まだ大切な友達がいる。

だから、どんな苦難が待ち受けていても絶対に諦めない。

ボクは、絶望になんて堕ちたりしない!

 

 

 

 

 

 

 

第4章 絶望よ亡者達のために ー完ー

 

 

 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の絶望?】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上7名

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

Chapter.4クリアの証

 

『ヘアバンド』

入田の宝物。誕生日に弟に貰ったもの。入田の家族や仲間との思い出が詰まっている。

 

『ペンダント』

ラッセの宝物。即位した時妹に貰ったもの。最期は王族の証明である王冠まで手放したラッセだったが、このペンダントだけは大切に保管していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

【???の独房】

 

…これで良かったんだ。

 

何も間違った事はしていない。

 

アイツの言う事さえ聞いていれば、ずっと叶えたかった望みが叶う。

 

『あの人』も、きっとそれを望んでる。

 

もう少しだ。

 

もう少しで会えるから…

 

だからどうか、それまで待っていて。

 

 

 

 

【???の独房】

 

はっはっはっは、いやぁ。ファンタスティッーーーーック。

 

もう最っ高。

 

こんなエキサイティングなゲーム、乗っ取らない手はないだろ。

 

一回デスゲームの運営とかやってみたかったんだよね。

 

もっと刺激的でスリリングなゲームにしちゃおーっと。

 

そうすれば、みんなもっと絶望してくれるよね?

 

 

 

 

 

第5章 されど罪人は敗北を知る

 

To be continued…



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第4章 真相編

【ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン編】

 

俺は、物心ついた時から人の上に立つ存在だった。

父を失ってからは、俺が民を導いてきた。

この俺が間違うわけがない。

敗北などあり得ない。

俺こそが、シルヴェンノイネン王国の、高貴で正統で純然たる国王なのだ。

…そう思っていた。

 

モノクマに、第2の動機を発表された時だった。

俺は嫌な予感がして、すぐに映像を確認した。

映像には、炎の海に沈む俺の国、そしてそこで悶え苦しむ民が映っていた。

俺は、混乱と恐怖で頭が真っ白になった。

俺がこんな場所で道草を食っている間に、俺の民や家臣、そして俺の家族は凄惨な目に遭っていたというのだ。

俺は、すぐにそこにいた13人のうち誰か1人を殺す事を考えた。

俺は、なんとしてでも生きてここを出なければならないのだ。

俺を待っている民や城の者達のために。

そのためなら何を犠牲にしても構わない、そのつもりでいた。

俺は今まで国を守るために何万人も殺してきた。

それに比べれば、13人の犠牲なんて大した事はない。

…今更何を迷う事がある。

このまま何もせずに大事な物を失うくらいなら、殺ってやる。

 

…決めた。

俺は盲目を殺す。

アイツは体格的に不利だし、おまけに障害持ちだ。

アイツなら確実に殺せる。

…やるしかない。

 

「…おい、盲目。」

「ん?なんだい国王様?」

「あとで3階の便所に来い。」

「ん〜、なんでまた急に?」

「…この学園に関する重要な情報を見つけた。言いにくい事だから、この事は誰にも口外するな。」

「そういう事なら、喜んで行くけどさ。」

フン、どいつもこいつも馬鹿ばかりだ。

何も疑わずに俺の話を鵜呑みにしやがった。

やはり、コイツらに生き残る価値は無い。

俺一人が生きてここから出てやる。

俺は何も悪くない。

これは国を守るために必要な犠牲なんだ。

…それに、俺が殺す前にダークパープルが…

 

…いや、もう言い訳はよそう。

俺は、トイレにあった花瓶を持った。

「それで、国王様。話っていうのは…?」

「…悪い、盲目。」

「…え?」

俺は、盲目の頭目掛けて花瓶を振り下ろした。

…俺の守りたい物のために…死んでくれ!

 

『仲間の誰かを殺したクロは『退学』となるが、自分がクロだと他の生徒に知られてはならない』

 

「…ッ!!」

 

ガシャンッ

 

俺は、横の壁に花瓶を叩きつけた。

花瓶は粉々に割れて破片が飛び散った。

「…国王様?どうしたんだい?」

「悪い、肘がぶつかって花瓶を落とした。」

「…そっか。それだけならいいんだけど。…処理するの手伝おうか?」

「いや、いい。目が見えないお前が手伝っても足手まといなだけだ。」

「そう。それで、大事な話っていうのは?」

「…ああ、それは俺の勘違いだ。悪かった。…忘れてくれ。」

「…変な王様だねぇ。」

…できない。

迂闊に手を出せば、俺が疑われて処刑される。

そうなれば、俺の帰りを待つ者達が路頭に迷う事になる。

それだけは絶対にあってはならん。

 

「じゃあ、オイラはこれにて失礼するよ。」

「…ああ。」

…俺も冷静ではなかったな。

国を救わなければという思いに駆られ、判断を誤るところだった。

人を殺した事が誰かにバレれば、ソイツが死んで国も救えず、俺は犬死に…

最悪な結果を招いてしまう。

…一度頭を冷やそう。

 

 

 

 

結局、俺はその晩誰も殺さず床に就いた。

その晩、ミカン頭を殺したのは鳥娘だった。

アイツは、自分なりに罪を隠そうと努力していた。

…だが、アイツは鳥を質に取られてあっさり口を割った。

アイツは、最期まで甘かった。

結局、奴は罪を背負って生きていく覚悟が足りなかったのだ。

その結果、悲惨な末路を遂げた。

…俺はああはなりたくない。

絶対に最後まで生き残ってやる。

 

 

 

 

そして、第3の動機…秘密が配られた日だった。

俺の部屋に設置されていた電話が鳴った。

…まあ、内線電話だから脱出の手がかりになったりはしないんだがな。

しつこく鳴らされて迷惑なので、とりあえず出る事にした。

「…なんだ。」

 

『はじめまして、国王陛下。…ああ、正確にははじめましてではありませんね。』

なんだコイツ…変声してる!?

「!!?誰だ!?」

『おっと、大きな声出さないでくださいよ。いくら防音とはいえ、会話を聞かれたらと思うとヒヤヒヤするんです。』

「…それで、誰なんだお前は。」

『…それ、そんなに重要ですか?全く、アナタは本当におかしな方だ。』

…コイツ、すっとぼけやがって…

「…もういい。何の用だ。」

『実は、アナタに折り入ってお願いしたい事があるのです。』

 

『…アナタには、皆のリーダーになっていただきたいのです。』

「…?」

『ここだけの話ワタシは、訳あってこのゲームの黒幕と通じているのですが、このゲームの視聴率を上げる工夫をしろと言われているのです。全く、人遣い荒いですよね、あのクマ公共。』

…コイツ、まさかとは思うが俺に愚痴るためだけに内線電話をかけたわけじゃないだろうな。

 

「それで、なぜ俺がアイツらのリーダーに?」

『…ワタシ、思うんです。穴雲様はリーダーとして優秀ですが、あくまで彼の才能はアナウンサーです。人を指揮する才能に関しては、決して【超高校級】ではありません。本当は【超高校級】であるアナタの方がリーダーに向いてるんです。』

「だから、なぜ俺がアイツらのリーダーにならなければならんのだ?」

『その方が面白い物が見れそうだからですよ。』

「…性格悪いな、貴様。」

『ありがとうございます。』

褒めてない。

「…で、具体的には何をすれば良い?」

『おや、すんなり引き受けてくださるんですね。』

「どうせ断れば碌な目に遭わんのだろう?」

『おや、そこまで想定済みですか。それなら話は早い。アナタには、皆のリーダーになっていただきたいのです。ああ、遠慮する事はありませんよ。アナタはリーダーなのですから。皆には好き勝手していただいて構いませんよ。むしろ、少しくらい過激な方が…』

「…映像の視聴率のためならなんでも利用するのか、貴様は。」

『まあ、受けた命令には逆らえませんし。こっちにもこっちの事情があるんですよ。それでは、ワタシはこの辺で。』

「待て。」

『…なんですか、国王陛下?』

「とぼけるな。続きがあるだろ。話せ。」

 

『おや、そこまでお見通しでしたか。さすがは国王陛下。』

「フン、貴様のような奴がわざわざ俺に電話をかける用件なんて、これしかないだろう。…誰を殺せばいいんだ俺は?」

『物わかりが良くて助かります。…別に誰でも構いませんよ。アナタにとって不要だと思う人なら誰でもね。あ、安心してください。ちゃんとバレないトリック考えて来ましたから。』

「待て。俺が裁判で勝てば、貴様はどうなるんだ?」

『おや、心配してくださるんですか?優しいですね。』

「違う。貴様が俺に取り引きを持ちかけるメリットがわからないと言っているんだ。貴様が裏切らない保証は?」

『ああ、そういう事ですか。安心してください。ワタシは内通者ですよ?殺されるわけないじゃないですか。…ワタシにいい考えがあります。アナタは黙ってそれを実行すればいいんです。そうすれば、アナタは国を救えて、ワタシはゲームを盛り上げられる。お互いにwin−winでしょう?』

「…フン。」

『ご協力いただけて幸いです。…あ、もしこの事を口外したら殺しますよ?』

「…勝手にしろ。」

 

正直、コイツの事は一切信用出来ん。

だが、それ以外に確実に国を救える方法があるわけでもない。

だったら、コイツに協力するしかない。

俺は、何も間違ってない。

…そうだよな?

 

 

 

 

結局、その次の日カマキリの卵と中華娘を殺したのは侍だった。

…アイツが女だったのは正直意外だったが、今までの行動を振り返れば全て辻褄が合う。

しかし、奴の死に方も悲惨だったな。

アイツも、途中までは頑張ってはいたがやはり詰めが甘すぎた。

俺は、絶対にああはならん。

国のため、民のため…俺は絶対に計画を遂行してみせる。

 

 

 

 

俺は、アイツに言われた通り、リーダーとして奴等を導いた。

コイツらを利用する事に心が痛まなかったわけじゃない。

だが、これは仕方のない事なのだ。

そして、動機が発表された直後、例のヤツから懸賞金の法則を教えられた。

…何故なのかはわからんが、誕生月と誕生日を掛け算しているらしい。

俺が殺すのは、メカと和服だ。

アイツらさえ殺せれば、俺はその金で国を救える。

…まあ、あのクマ共が本当に金をくれれば、の話だが。

だがこれ以上マシな方法があるわけでもないし、国を救える可能性が転がっているのならそれに賭けるしかない。

 

 

 

 

ヤツの言う通り、俺は美術室に罠を仕掛けた。

ヤツ曰く、無人トリックなら犯人の絞りようがないという事だった。

これがうまくいけば、俺は国を救えるんだ。

…大丈夫、俺は無罪だ。

俺は、今までの自分勝手な罪人共とは違う。

俺は、国を救うために多少の犠牲を払うだけだ。

国を守るための犠牲ならば仕方ない。

ましてや、数千人数万人の命ならまだしも、犠牲にするのはたったの8人だ。

俺は、アイツらを踏み台にしてでも国を救う。

これは正しい行いなんだ。

誰かを犠牲にしなければ、何一つ救う事など出来んのだから。

俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪俺は無罪…

 

 

 

 

俺は何も間違っていなかったはずだ。

…それなのに、なぜ俺はこんな目に遭っている?

後ろからクマ共に追われ、廊下には罠が張り巡らされている。

捕まればきっと殺される。

嫌だ、俺はまだ死ねないんだ!!

 

ガッ

 

「ッーーーーーーーー!!!」

 

足に激痛が走った。

足が動かない。

何かに挟まれているのか?

ふと足元を見ると、俺の足はトラバサミで噛み砕かれていた。

 

「ぎっ…ぐぅうううう…!!」

 

もう左足は使い物にならない。

だが、逃げなければクマ共に殺される。

俺は一体どうすれば…

 

「これ、使って。」

 

聞き覚えのある声。

振り返ると、そこには剣を持った女が立っていた。

その姿は、俺の妹のアイナそのものだった。

「アイナ…」

「…こっちよ。」

アイナは俺に剣を渡すと、そのまま廊下の奥へと走っていった。

「待っ…!」

 

ガシッ

 

俺の足はトラバサミに挟まれて動かない。

…だったら、今取れる行動はひとつだ。

 

「ッ、あぁあああああああああああッ!!!」

 

俺は、足を切り落とし、その剣を杖代わりに前に進んだ。

どんなに醜くてもいい。望まれないというのなら、もう王の座すら要らん。

こんな所で死ぬわけにはいかない。

俺は何がなんでも生きてここを出るんだ。

そして、俺の愛する故郷へ帰る。

それが、今俺が望む、最後の希望だ。

 

 

 

 

あれからどれくらい進んだだろうか。

目がかすんで、右足と剣を掴む手もおぼつかない。

もう、足の痛みすら感じない。

俺は、やはりここで死ぬのか…

その時、目の前にアイナが見えた。

 

「ア……ィ……ナ………………………」

「もう少しよ。頑張って。」

「…!」

 

そうだ。

俺は何を諦めていたんだろうか。

まだ希望はある。

俺は、絶対に生き延びて故郷に帰るんだ。

…光が見えた。

もうすぐ出…

 

 

 

「…。」

は?

なんだこれは。

どうなっている。

目の前が火の海だ。

 

「ーーーーーーー。」

…嘘だ。

そんなバカな話があるか。

目の前で燃えているのは、紛う事なく俺の故郷だった。

国、民、そして城の者達…

俺の全てが目の前で燃えている。

「…!」

 

「…………あ、あ゛ぁあ…あづい、いだい゛ぃい…誰か、助げで…」

「あ゛ぁああ…国、王…ざま゛…お願い、助げ…」

全身が燃えた民達が、俺のいる廊下まで登ってきている。

 

「ヒッ…!く、来るな…!俺は関係ない…!」

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

これは夢だ!!

覚めろ、こんな悪夢早く覚めろ!!

 

「待っで…お兄様……置い゛てかないで……………」

 

俺の足を掴んだのは、アイナだった。

でも、さっきまでの美しい姿ではなく、全身が灼け爛れた醜い姿だった。

「や、やめろ!!俺は、死にたく…」

 

ズルッ

 

足を掴まれてバランスを崩した俺は、そのまま崖から落ちた。

だが、間一髪崖を掴んだ。

 

「あっ…た、助かった…」

 

『うぷぷ、そのままじゃ苦しいでしょ?助けてあげよっか?』

「あっ…た、頼む!!助けてくれ!!金ならいくらでもやるし、なんでもする!!だから…お願いします、俺を助けてください!!」

『あ、そう?じゃあ助けてあげるよ!』

 

ザンッ

 

…え?

 

あ、あぁああああああああああぁああああああああああああああああああああああ!!!

 

Miksi(なんで)…!?

 

miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi miksi…

 

miksi‼︎?

 

『うぷぷ、助けてほしいって言ったじゃん。今すぐ楽になるから安心しな。』

 

いやだ、死にたくない!!

 

Ei(いやだ)…ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei ei…

 

Ei‼︎

 

頼む、誰か…助け…

 

 

 

 

 

「あーあ、殺っちゃったよ!全く、なーにが国を守りたい、だ!結局自分の命が惜しかっただけなんじゃん!だったらそうだって最初から言えば良かったのに!そうやって自分の事を棚に上げて人を見下してるからそんな目に遭うんだよ!自分の罪から逃げてんじゃないよ、クズが。…かわいそうに、オマエなんか王の器じゃなかったんだよ。」

 

 

 

 

 


 

 

 

【入田才刃編】

 

僕は弱い。

だから、ずっと苦しい思いをしてきた。

それはこれから先もずっと変わらないんだと思っていた。

…あの日までは。

 

 

 


 

【数年前】

 

「おい、チビ!」

「は、はい…?」

「『は、はい…?』じゃねえよこのダボがァ!!」

「ひっ…す、すみません…!」

「ギャハハ!ちょっと脅かしてやっただけなのによ!コイツマジで弱えな!」

「おい入田!お前、頭良いらしいな。ちょっと俺のレポート代筆してよ。あと、テストもカンニングさせろよ。」

「あ、あとゲームも得意らしいじゃん?授業サボってゲーセン付き合え。」

「そ、そんな…そんなの、できない…です…」

「あぁ!?」

「ヒッ…!」

「テメェ、まさかとは思うが俺達に逆らおうってんじゃねェだろうなぁ?この、ゴミクズがァ!!」

 

ガッ

 

「ひっ…ご、ごめんなさい…!や、やります…やりますから…!許してください!」

「最初っからそう言ってれば良かったんだよ、ゴルァ!!」

「ギャハハ!あーあ、かわいそうに。次からは発言に気を付けろよな!」

 

 

 

 

「…あーあ、今日もいじめられた。」

「にーちゃん大丈夫?」

「才牙…」

「にーちゃんは俺と違って頭いいんだから、あんな奴らの言う事なんて聞く事ないよ。」

「…無理だよ。僕、弱いし…」

「そうだ、俺、いい事思いついた。」

「…え?」

「にーちゃんがいじめられなくなる方法!大丈夫、俺に任せて!」

「…?」

 

 

 

 

次の日、僕宛に東京のある著名な学者からメールが来た。

それは、僕が思いついた理論を是非とも一緒に研究したいという内容だった。

 

「才牙、これは一体…」

「俺がその先生に直接にーちゃんの自由研究を送ったんだよ。その人、助手を募集しててさ。ウチのにーちゃんはすっごい頭いいから助手にどうですかーって。」

「…そんな、僕なんかが東京の偉い先生の助手なんて…才牙、お前なんて失礼な事を…!」

「何言ってんだよ!その人のとこで研究させてもらえって!にーちゃんは、スッゲー頭いいって、俺知ってっから!…それにさ、にーちゃん、俺にはよくわかんねーような難しい本を読んでる時はなんか生き生きしてるから、俺はにーちゃんに好きな事続けて欲しいんだよ!」

「…才牙。」

「ほーら、わかったらちゃっちゃと準備済ませてこいよ!次帰ってくる時は、メッチャ偉い学者になってこいよ!」

 

 

 

 

それから、僕は弟の才牙に紹介してもらった先生のもとで研究をさせてもらえる事になった。

その人は、僕にとても良くしてくれた。

僕も、その人のおかげで新たに数々の理論や発明品を生み出し、今までにない達成感を覚えた。

そして何より、僕の研究でみんなを喜ばせる事ができるのが、何よりも嬉しかった。

僕の事は瞬く間に世界中で有名になって、中には一緒に研究をして賞を取らないかと言ってくれる人もいた。

そして、僕はついに史上最年少でノーベル賞を受賞した。

僕は『神童』として崇められ、町の人達はみんな掌を返して僕に媚びを売るようになった。

最初は純粋な探究心だった。

でも、僕の周りのみんなの反応を見て、僕の中で何かが歪んでいった。

 

「入田クン!あん時はゴメンな!俺もちょっとカリカリしててよ。なあ、今までの事は謝るから、俺と友達になってよ!」

「俺も俺も!入田クン、お近づきの印といっちゃあなんだけど、何か欲しい物とかあれば買ってくるよ。何か食べたい物とかある?」

僕にすり寄ってきたのは、1年生の時散々僕をいじめてきた奴らだった。

僕にはわかる。コイツラは、『天才工学者の友達』という称号が欲しくて僕に媚びを売っているだけだ。

ムカつく。本当は友達だなんて微塵も思ってないくせに。

…復讐だ。僕の苦しみを思い知らせてやる。

「…僕ちゃんとオマエラが友達?ふんっ、調子に乗るなサル共!この圧倒的で天才的な僕ちゃんが、オマエラみたいなバカとつるむわけないだろ!身の程を知れ、雑魚が!!」

「ッ…!」

…そうだ。

僕は特別なんだ。

そこら辺の有象無象の雑魚共とは次元が違う。

この僕がこんなゴミ共にいいように利用されていいわけがない。

だって僕の方が、コイツラをうまく利用できる。

僕こそが、人の上に立つのにふさわしい。

僕は、弱くなんてない。

僕は、誰よりも賢くて強いんだ!!

…そう思っていた。

 


 

 

 

…死にたくない。

死ぬのが怖い。

景見も、白鳥も、羽澄も、日暮も、みんな死んだ…

そして、あんなに強かった舞田と朱と不動院もあっけなく殺された。

もし次に僕が狙われたら…

…いやだ、いやだいやだいやだ!!死にたくない!!

わけもわからないまま誰かに殺されるくらいなら、もう外になんか出たくない!!

もう誰も信用しない!!

自分の身が可愛くて何が悪い!!

僕は、死にたくないんだ!!

 

『才刃クン。』

 

…狛研?

どういうつもりだ、コイツ…

まさか、僕を殺…

 

『調子はどう?ご飯、ちゃんと食べた?』

 

…は?

何言ってるんだコイツ…

 

『ねえ、才刃クン。今回は、美術室と音楽室と物理室と…それから、情報管理室が開放されたんだ。気が向いたら行ってみるといいと思うよ。情報管理室には、才刃クンの好きなパソコンもたくさんあったしさ。』

 

うるさい、黙れ黙れ黙れ…!

本当は僕を殺したいって思ってるくせに…

そんな言葉で、僕を騙せると思うな!

 

『…ねえ、才刃クン。ボクね、才刃クンとゲームがしたくてちょっと練習したんだよ。今度、一緒に遊ぼうよ。』

 

黙れって言ってるだろ!

いい加減にしろ!!

なんで…なんでオマエはそんなに裏切り者の僕に優しくするんだよ!!

そんな事言われたら、僕がみじめになるだけじゃないか!!

気色悪いんだよ、早くどっか行けよ!!

…これ以上、僕を弱くしないでくれよ…!

 

 

 

 

それから、狛研は毎日毎日しつこく僕の部屋のインターホンを鳴らしては、面白くもない話ばかりしてきた。

最初は、僕をいじめてたヤツらみたいに僕に媚びを売りたくてやってるのか、それか僕を油断させて殺すためにわざわざこんな事をやっているんだと思ってた。

でも違ってた。

アイツは、今までのヤツらとは違う…僕に媚びを売るわけでも、見下すわけでもなかった。

アイツは、僕の事を本当に友達だと思っていた。

今まで、誰も僕と対等に接してくれるヤツなんていなかった。

…いや、違うな。

あえてそういうヤツを寄せ付けないようにしてたんだ。

だけど、本当は…

 

 

 

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

 

 

 

…何の音だ?

部屋の中からの音じゃないな。

…さては、狛研がインターホンを押しっぱにしたまま外で騒いでるな?

ふんっ、アイツめ。

弱気になっている時に限ってくだらんドッキリを仕掛けてきおって。

仕方ない、たまには乗ってやるか。

 

ガチャ

 

「おい!うるさいぞ!ちょっとは静かにし…」

 

ドッ

 

 

 

「ーえ?」

 

…なんだ、今のは…

まるで、身体を何かで突かれたような…

「!」

口から生温かい何かが溢れて頬をつたう。

それを手に取って確かめると、指が真っ赤に染まっていた。

「…血?」

ふと腹を見ると、穴が開いてそこからジワジワと血のシミが広がっていた。

 

「ッ、がはっ…ゲホッ…!」

 

なんで…?

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!?

 

いやだ、嘘だろ…?

こんな、わけもわからないまま死ぬのか?

いやだ!!

死にたくない!!

クソッ、癒川を呼ばないと…

チクショウ、なんで血が止まらないんだよ!!

止まれ、止まれ!!

いやだいやだいやだ!!

僕の発明は、世界を救う…僕がこんなところで死ぬわけにはいかないんだ!!

僕は、誰よりも強い!!

この僕がこんなところで倒れるわけが…

 

『調子に乗ってんじゃねえよ、チビ!お前はこれからもずーっと弱いままなんだよ!』

 

 

 

…あ。

 

思い出した。

 

…そうだった。僕はずっと弱い奴だったんだ。

それは、今も変わらない。

 

僕は、今まで自分を強いんだと言い聞かせて、周りを見下して生きてきた。

そうでもしないと自分の弱さが浮き彫りになるから。

でも、本当はわかってた。

僕は、あの頃と全く変わらない…弱くて惨めな人間なんだ。

…これは罰だ。

自分の弱さから逃げて人を見下し続けた僕への罰…

…あーあ、最悪。

なんでこんな事、死に際に思い出しちゃうかな。

これじゃ、狛研達に合わせる顔が無いや…

 

…狛研。狛研か。

アイツは、こんな救いようのない僕に友達だと言ってくれた。

僕が本当に欲しかったのは、アイツみたいな強さだったんだ。

僕も、アイツみたいに強くなりたかった。

その望みはもう叶わないけど、せめてアイツらに僕の想いを届けたい。

…どうか、届いてくれ。

 

「ッ、あー…これはもう無理、だな…ガハッ、僕ちゃんはもうこれまでみたいだ…じゃあな、グズ共…後、頼んだ…」

 

 

 

ドサッ

 

意識が遠のいていく。

何も見えない。

もう身体が少しも動かない。

…これが、死ぬって事なのか…

最期にもう一回だけ、めいっぱいゲームしたかったなぁ…

…あーあ、こんな事になるなら、アイツのゲームの誘い受けとくんだった。

 

 

 

「…………………。」

 

 

 

 

 

「あーあ、死んじゃったよ。周囲から孤立して現実から逃げようとするからそんな目に遭うんだよ!最期までオマエは弱いままだったね。そのくせ、すぐに調子に乗ったり人を見下したりして自分で自分を貶めるようなマネばっかりしてさぁ。…結局、オマエは一体何がしたかったの?」

 

「コイツらって、ホント惨めだよね。自分の弱い部分を払拭するために色々頑張ってたつもりなんだろうけど…結局はそれが自分の首を絞めてた事に気がつかないなんて、皮肉な話だよ!こういうヤツらに限って、自分は特別だと勘違いしてイキっててホントムカつくよね。…まあ、とっくに死んでるから今からムカついても仕方ないんだけどね!うぷぷぷぷ!」

 

 

 

 

 


 

【???編】

 

まずは一人…

ラッセなら、確実に誰かを殺して外に出ようとするはずだ。

…そりゃあ、国民の命には代えられないもんね。

だけど、アイツには勝たれちゃ困るんだよね。

だってこっちとしては、ああいう独裁者が場を執り仕切って、ソイツが目の前で処刑された事でリーダーを失って混乱に陥るっつー展開を想定してるんだからさぁ。

 

…別に、ラッセの野郎には恨みがあったわけじゃないしこっちだってやりたくてやってるわけじゃない。

アイツを利用する事に心が痛まなかったわけじゃない。

でも、これは必要な事なんだ。

…願いを叶えるために。

大丈夫、これで良かったんだ。

何も間違った事はしていない。

だって、全ては『あの人』のためにやってる事なんだから。

 

 



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第5章 されど罪人は敗北を知る
第5章(非)日常編①


章タイトル元ネタ『されど罪人は竜と踊る』です。

矛盾があったから編集したぜい!!

ではではどじょ。


才刃クンとラッセクンが死んだ。

ボク達は、仲間を半分以上失ってしまった。

…でも、絶望してしまったらクマさん達の思うツボだ。

ボク達は、絶対に諦めない!

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

…あーあ。

またこれだよ。

全く、毎朝毎朝飽きないよね。

おかげで目覚めが最悪だよ。

…とりあえず食堂に行こう。

 

 

 

 

【食堂】

 

「…おはよう。」

「ああ、おはよ。」

「おはよう、狛研さん。」

「おはようございます。」

「…おはよう。」

「…………………………ん。」

 

「…あ。」

みんな元気がなかった。

…そりゃそっか。

昨日あんな事があったんだもん。

元気なんて出るわけないよ。

…天理クンは今日も遅刻か。

 

「誰が遅刻だって?」

え?

「おっはぁ。」

天理クンは、普通に席に座ってこっちに手を振っていた。

「て、天理クン!?」

「なっ…さ、財原テメェ!!」

「えっ、やだなぁ栄クン。そんなに興奮しないでよ。ってか、今まで俺がいるのに気付いてなかったの?ひどくね?」

あー…忘れてた。

そういえば天理クンってこういう子だった。

っていうかこの子なんかちょっとクマさんっぽくなってるような気が…

「テメェ!!目障りなんだよ、消えろ!!」

「えーなにそれひどい。なんでそんな事言われなきゃならんのさ。俺泣いちゃうよ?」

「ッ…!!とぼけんじゃねえ!!テメェが今までしてきた事、忘れたわけじゃねェからな!!」

「そうだよ。財原君、君さぁ。日暮君や翠君…それに神座君にした事、覚えてるよね?」

「え、なにそれ知らない。ってかさ、詩名クン。キミさぁ、日暮君日暮君うるさいんだよ。あ、わかった!もしかして、日暮サンの事好…」

 

ガッ

 

「あっ…!」

ゐをりちゃんが、天理クンの胸ぐらを掴んだ。

「………消えろ。外道が。」

「ひえーっ、こっわ。」

「ちょっと、やめなよゐをりちゃん!」

「そうだよ、何があったのか知らないけど…でも、クラスメイトで争うなんて間違ってる!」

 

『そうそう!オマエラってさぁ。ホントにケンカが好きだよね!』

 

「なっ…モノクマ!!」

『フッフッフ。全く、皆様朝から元気ですねぇ。…昨日あんな事があったというのに。』

「なっ…誰のせいだと思って…!!」

『ん?誰のせいって…ラッセクンでしょ?違うの?』

「テメェ…!!」

『キャー怖い!栄クンってばコロ助剥き出しじゃん!』

『殺気ですよ学園長。コロ助じゃないナリよ。』

『おっと失礼。』

何やってんだろあそこ。

 

「君達がわざわざ来たって事は、今回もエリアを開放したんだよね?そのエリアを発表したらさっさと消えてくれるかな?」

『おや、穴雲様はワタクシ達だけには辛辣ですねぇ。【超高校級の毒舌】を名乗ってみてはどうです?』

「…。」

『おっと、こんな無駄話してる場合じゃなかった。さっさと話さないと時間がもったいないよね!』

「キミ達が言い出したんじゃん。」

『じゃあ今回開放されたエリアを発表するよー。』

「無視かよ。」

『今回開放したのは、化学室、プラネタリウム、看守長室、それから研究室が3部屋だよ。それと学園長室もあるけど、行ってみるだけ無駄だと思うよ。』

「行ってみるだけ無駄…?どういう事なんだろう?」

「3部屋…って事は、これでやっと全員分開放されたんだね。」

「やった!!ボクの研究室!!」

 

みんなが刺すような視線でボクを見た。

「…あ。ごめん。」

つい浮かれちゃった。…みんな、それどころじゃないのに。

 

『…あ。忘れてた。』

え?

『今回は、先に動機の発表をしなきゃいけないんだった!』

「んなっ…!」

「動機だと!?ふざけんじゃ…」

『人の話は最後まで聞こうよ栄クン!…あ、人じゃなくてクマだったね。』

「どっちでもいいよ。そいで?今回の動機は?」

『今回は、動機っていうか…まあ、ちょっとしたルールの変更だよ。』

「…ルールの変更?」

『そうです。ワタクシ達は、昨夜徹夜して悩みに悩んだのです。』

『徹夜って言ってもちょっと寝たけど。』

「それ徹夜って言わないでしょ。」

『…それで考えた結果、ある結論に行き着いたのです。』

「ある結論?」

『はい。皆様が殺人を躊躇するのは、裁判で誰かがおしおきされるからなんじゃないかとね。』

『クロが勝ったら勝ったでそれ以外のみんなが死んじゃうもんね。自分以外の全員を殺した罪悪感に押し潰されて生きていくのもつらいでしょ?』

「だったら最初からおしおきしなきゃいいんじゃ…」

『そういうわけにはいかないんだよ詩名クン!だって、それじゃあゲームにならないじゃん!ただ、今回はちょっとおしおきのルールを変更してみようと思うんだ。まああくまで実験的なルールだけど。』

『と言っても、簡単な話です。仮にクロを外した場合におしおきする人数を減らすだけです。』

「それって…」

 

『今回は、特別ルールだよ!学級裁判で得票数が1位になった人は、クロシロ関係なくおしおきするよ!』

「じゃあ、それ以外の人は…」

『うん。おしおきはナシ。』

「なっ…なんだよそのルール!今更ルール変更するとか、どういうつもりだ!?」

『じゃあ栄クンは前のルールの方が良かったんだ?』

「うっ…」

『じゃああとで手帳確認しといてね。ボク達からの用件は以上です!』

『フッフッフ。ご機嫌よう皆様。』

二匹は意気揚々と帰っていった。

 

「くそッ…なんなんだアイツら!!」

「…でも、良かったよねー。」

「え、何が?」

「クロを外した時に処刑される人数が一気に減ったんだもん。俺らの負担も減ったじゃん。」

「…ッ。」

「あれ?どうしたの栄クン?もしかして今、ホッとした?仲間が死ぬ事には変わりないのに?最低だね、キミ。」

「なっ…うるせェなクズ!!それはテメェが言い出したから…」

「クズ、か。自分の事棚に上げてよくそんな口利けるね?」

「ちょっと、やめてください二人とも!!…どうして…クラスメイト同士なのに、なんでこんな…私達の絆って、こんなに脆いものだったんですか…!?うっ…うぅっ…」

「…治奈。」

「治奈ちゃん、大丈夫?」

 

「…ねえ、狛研さん。気づいた?」

「…うん。」

「モノクマが、何の考えもなしにあんなルールを提案するわけがない…」

「うん。…何が目的なんだろうね。」

 

「あい邪魔邪魔。ちょっとどいてね。」

天理クンは、間に割り込んでボクと星也クンを引き離した。

「はい俺からちょっとしたていあーん。」

「なっ…テメェ、いつの間に…」

「生産性のない話ばっかすんなって何回言えばわかるのさ。どうでもいいから早く探索始めようよ。」

「テメェが言い出したんだろ…」

「それでグループ分けだけど…どうするのがいいと思う、リーダー?」

「…一応、考えてはみたけど…」

「おっ。さすが!仕事が早いね!」

「…はい。」

 

化学室、研究室1…僕、癒川さん、財原君

プラネタリウム、研究室2…栄君、神座さん

学園長室、看守長室、研究室3…狛研さん、詩名君

 

「わーい、俺は化学室ー。いやー、でも悪いねぇ。夫婦水入らずを邪魔しちゃって。」

「君を監視しないわけにはいかないからね。怪しい動きだけはするなよ。」

「はーい隊長ー。」

「狛研君。また一緒になったね。」

「おう、神座ちゃん。一緒になったな。」

「………うん。」

「栄クン、どうせ神座サンにエッチな事するつもりなんでしょ。」

「なっ…テメェは黙ってろ胡散臭い原!!」

「…………………。」

「はーこっわ。ちょっとマジでその目やめてよ神座サン。」

「ちょっと、喧嘩しないの。それじゃグループ分けしたし、解散!気付いたことがあれば、どんなに小さな事でも報告してね。」

「はーい。」

 

 

 

 

また穴雲クンと一緒かー。

ホント、勘弁してよ。

ってかアイツ、連続で俺を同じグループにするとか、絶対俺の事好き♂じゃん。

俺、狛研サンみたいなわがままボディのねーちゃんにしか興味ないんだけどなー。

なーんちって。

さーてと、ほなちゃっちゃと探索終わらせちゃいまほかー。

 

「ふんふ〜ん♪」

「ちょっと、財原君。話聞いてる?」

「え、ごめん。何の話だっけ?」

「…もうっ。化学室と研究室、どっちを先に探索しようかって話をしてたんだよ!」

「あ、そうだったね。んー…穴雲クンと癒川サンは、どっちを先に探索したいわけ?」

「なんで僕達の意見を聞くの?今は君の意見を聞いてるんだけど。」

「いいじゃん。教えろよ。」

「…はぁ。僕達は、化学室を先に調べたいんだ。これで満足?」

へー、2人とも化学室推しっすか。

…じゃあ。

 

「俺は研究室がいいなー。」

「…君さぁ、わざと言ってるでしょ?」

「え、何が?」

「…はあ、もういいよ。じゃあ特に希望が無いみたいだし、先に化学室調べてもいいよね?」

「ちょっとー。聞くだけ聞いて俺の意見は無視ー?」

「…君に意見を聞いた僕がバカだったよ。さてと、じゃあ入るよ。」

っはー、しっかし、扉に描かれてる絵は相変わらずきったねーな。

なんだこれ?試験管?

まあいいや。とりま入ろーっと。

 

へー。

普通の化学室の10倍は広いね。

器具は一通り揃ってるっぽいし…

薬品も、普通に使われるようなメジャーな物から、超危険な放射性物質まで色々あるね。

「治奈、ここにある薬品を調べてくれ。」

「はい…分かりました。」

「俺は何すればいいの?」

「何もしなくていいから、とにかく化学室の物には触るな。」

「へーい。」

 

って言われて大人しくするバカがどこにいるかっつーの。

へー、塩酸に硫酸、水酸化ナトリウム、青酸カリ、ヒ素、セレン、水銀、サリン、テトロドトキシン…毒だけでも数えきれないくらいあんじゃん。それにウランとかプルトニウムまで。

どれか一個盗んじゃおっと。

…ん?ちょっと待った。なんだこれ?

 

「財原君!?何やってんの!?」

「べ、別に?何にもしてないけど?」

「もし勝手に毒とか持ち出そうとしたらどうなるかわかるよね?」

「お、おぉ…うん。そ、そんな事するわけないじゃないかー!ちょっとは友達の事信用してよ!」

「…。治奈。調べた結果はどうだった?」

 

「…はい。ええっと、私の知っている化学薬品はほとんど全て網羅されてますね。中には、毒性の強い物も…」

「…そっか。」

「…ただ、どうしてもわからない薬品が4つほど…」

「そうなの?」

「はい。一応、危険な薬品かもしれないので、一応別に分けておいたんです。」

「ありがとう。」

「俺にも見せてー。」

癒川サンが見つけてきたのは、どれも瓶に入った液体の薬品だった。

ひとつはラベルにクレハミンXと書かれた薬品、ひとつはクマちゃんの顔が描かれたピンク色の瓶の薬品、あとふたつは、セットで置かれていた赤と青の瓶だ。このふたつには、どっちもドクロマークのラベルが貼られている。

ほーん、なるほどね。

「…それにしても、なんなんだろうねこれ?」

 

『うぷぷぷ!ズバリお答えしちゃうよ!』

「あ、ハg…クマちゃん。」

『ちょっと、財原クン!今ボクの事ハゲって言おうとしたでしょ!』

「はあ?そっちの聞き間違いでしょ?いいから早く薬品の説明してよ。」

『ホンット、オマエってムカつくよね!…まあいいや。まず、そっちのクレハミンXは、強力な睡眠薬だよ!』

「…睡眠薬?」

『そ!でもね、ただの睡眠薬じゃないんだな、これが。…実は、その薬にはね…飲んだ人の記憶を奪う効果があるんだよ!』

「なっ…記憶を!?」

『そうだよ。その薬を飲んだら急に眠気に襲われて、目が覚めたらあら不思議!記憶がなくなっちゃいましたーってわけ。』

「具体的にはどの程度、どれくらいの期間記憶が消えんの?」

『個人差はあるけど、大体飲んだ直前の数分間から数時間の記憶がスッポリ抜け落ちるんだよ。記憶を奪うって言っても、さすがに自分の名前忘れたりするレベルじゃないからそこは安心していいよ。』

「やべーじゃんそれ。なんとかする方法はないの?」

『うーん、一回薬を飲んじゃったら頑張って自分で思い出すしかないんだよね。なんて言ったらいいのかな。記憶が無くなるって言ってもね、完全に消えるんじゃなくて、記憶に鍵がかかる感じなんだ。だから、薬で記憶が無くなってもちょっとしたきっかけで簡単に思い出せるから安心しなよ。』

「なーんだ。」

「でも、悪用されたらマズい薬品だって事に変わりはないよね。僕達で厳重に管理しよう。」

「だねー。…で、クマちゃん。こっちの瓶は?」

 

『そっちの瓶はね…うぷぷぷ。それは、モノクマ印の超強力な媚薬だよ!!』

「!!?」

穴雲クンは、あまりの驚きで珍しく顔芸を披露してくれた。

癒川サンに至っては、目がまんまるだし顔が真っ赤だよ。

『それはもう強力でね。どんなにガードの堅い人でもあっという間にイチコロよ。1mgもあれば三日三晩休まずにハッスルできるよ!』

それって逆に怖くね?

『やったね穴雲クン!これさえあれば自分の子供でサッカーチームが作れるかもよ!』

「やめて。ホントに不愉快。」

『…あ、ただ、いくつか注意点が。これ、絶対100倍に薄めて使ってね。原液のまま使ったらキモチ良くなり過ぎて発狂死するから。あとね。それすっごい揮発性が高い薬品だから、瓶を開けただけでモザイクかけないと放送できない事になっちゃうんだよね。だから、扱う時は必ず化学室にあるマスクをつける事!』

「わざわざそんな注意しなくても、使う予定なんて無いよ。」

「そ、そうですよ…!なんでそんな物置いてあるんですか!」

『えー?つれないなぁ。オマエラのために置いてあげたのに!』

「余計なお世話です!!」

ほーん、なるほどね。

…あ。悪い事思いついた。

さっきの睡眠薬とこの媚薬を組み合わせて使えば、女子相手ににゃんにゃんし放題じゃん。

はー、俺ってつくづく天才だわw

「…財原君、今変な事考えたでしょ?」

「別に?」

「君みたいな人に悪用されても困るし、これはもう処分するよ。」

えー!!?ひどーい!!

穴雲キュンのいじわる!!

『あ、言い忘れてたけど、今から校則に『化学室の薬品の処分を禁止する』っていうルールを追加するよ!』

「なんでそんな事を…」

『だって、せっかく用意した薬を捨てられるとか普通嫌でしょ!とにかく、校則違反したらおしおきだから。』

「くっ…」

ラッキー☆

 

「…それで、この二つの薬品は?」

『ああ、それね。毒と解毒剤だよ。』

「!!?」

『赤い方は『モノトキシンα』。ボクが調合した毒薬だよ!無色透明で無味無臭の液体なんだけど、たった1mgで象をも殺す猛毒なんだ!…って言っても死に至るまでに飲んだ場合は1時間、血管の中に入った場合は5分程度かかるから処置しようと思えばできない事は無いんだけどね。』

「具体的にはどんな風に死ぬわけ?」

『うぷぷ、そんな事気にするんだ?まあいいや。まず、服用してから数秒で体温が劇的に上がって、目眩や頭痛に悩まされて…最終的には胃とか肺をやられて、血を吐いてもがき苦しみながら死ぬんだよ。』

ひえーっ、こっわ。

 

「こっちの青い方は?」

『そっちは『モノキソールω』。モノトキシンαの解毒剤だよ。こっちはモノトキシンαとは違って即効性で、飲んだ場合は3分、血管の中に入った場合は30秒ほどで効果が現れるよ。』

「ふーん。」

『…あ、でも、一個だけ注意点が。』

「何?」

『実はこのモノキソールω、特定の条件下では猛毒になるんだよ。』

「猛毒?」

『最近とある国の地層で発見された、『珀銀』っていう金属があるんだけどね。モノキソールωは珀銀を融かしてその毒性を強める性質を持ってるんだ。…まあ、珀銀は超高級な金属だから持ってる人は多分いないだろうけど…一応要注意ね。』

「了解しやしたー。」

「…なるほどね。ありがとう。用件が済んだんならさっさと消えてくれるかな?」

『うっわ、態度わっる!ふーんだ、もういいもんね!せっかく薬をタダでプレゼントしてあげたのにそんな事言っちゃって、ホンット最近の子って教育がなってないよね!そんなにボクの事が嫌なら、こっちだって出ていきますよーだ!』

なんかクマちゃんが逆ギレして出てったんだけど。

「…さてと。どうしよっか?薬も調べ終わったし、そろそろ研究室行く?」

「そうですね…」

ほーん。移動する感じっすか。

ほいじゃー研究室レッツラゴー。

 

 

 

 

「…ここか。」

目の前に、白い引き戸がある。

引き戸には、赤い十字架が描かれている。

…このドアは。

「多分治奈の研究室だね。」

「…あ、はい…」

「へー、癒川サンの研究室ね。あいご開帳ー!!」

「あっ…」

俺は、引き戸を思いっきりスライドした。

 

「へぇーっ。」

部屋の中は、病室みたいになっていた。

ベッドが3台あって、どれも見た目はシンプルな白だけど、高級品だ。

棚には医療器具や薬品が並んでいる。

…これは輸血パックかな?ちゃんと全員分用意してくれてるのがありがたいね。

へーっ、栄養補給用の軽食まであるんだ。

 

「わーい、ベッドフカフカー!」

「ちょっと、やめなよ財原君!汚い手で触らないで!」

「あの…星也さん。少し言いすぎじゃ…」

「あっ…ごめん…」

「へー、すごいね穴雲クン。俺が鼻ほじった後だってよく分かったね。」

「本当に汚いのかよ!ホント、いい加減にして!」

「やーん、襲わないでー!穴雲クンのエッチー!ケダモノー!」

「誰が襲うか!!」

あーでもホンット寝心地いいわこのベッド。

これなら確かにケガとか病気とか癒せそ…ん?

あれ?なんだこれ…

 

「いい加減にしてよ!全く、君のせいで全然探索ができないじゃないか!!」

「ごめんなちゃーい。」

「もう…」

「あの、でももう一通り調べ終わりましたし…一度戻りませんか?」

「…そうだね。」

えー?もう行くのー?

つまんねーのっ!

 

 

 

 

ー数時間前ー

 

【内エリア 6F】

 

…気まずいな。

神座ちゃんと二人きりとか…

いや、嬉しいよ?嬉しいんだけど…

この子全然喋んねーからな。

それに、財原がこの子の事を【超高校級の絶望】って言ってたし…

…まあ、アイツの言う事を信じたわけじゃねェけど…

「えっと…神座ちゃん。プラネタリウムと研究室、どっち先見たい?」

「…………………任せる。」

「あ、そすか…」

…気まずい。

「あ、えっとさ…じゃあ、プラネタリウムから先に見るか?」

「………そうする。」

 

 

 

 

目の前には、上質な両開きのドアがある。

望遠鏡と星の絵が描いてあるし…ここでいいのかな?

「神座ちゃん、中入ろうぜ。」

「……………。」

ホントに喋んねェなこの子。

どっかのうるさい原とは大違いだ。

 

 

 

 

【食堂】

 

「ぶぇっきし!!!」

「わっ、汚いなぁもう!ちゃんと口を押さえなよ!」

「ごめーん。ほら、俺って人気者じゃん?だからどっかで誰かが噂してるんだねー。」

「そうだといいですね。」

「…治奈、君さ…財原君の扱い方上手くなってきたよね。」

 

 

 

 

【プラネタリウム】

 

「…へぇ。」

なるほどな。

やっぱ、フツーのプラネタリウムよりかなり広いな。

この機械で天井を動かせばいいのかな?

えーっと、これをこうして…

 

ガコンッ

 

「おわっ!?」

いきなり部屋の照明が消えて、天井に星が映し出された。

…しっかし、暗いな…星の光でようやくぼんやりと部屋の様子がわかるくらいだ。

「……………夜空。」

「え?」

「………夜空…………見える………」

ん?ああ、なるほど。

神座ちゃんて、プラネタリウム知らないのか。

「これは本物の夜空じゃなくって、天井に星の絵が描かれてるみたいなモンなんだよ。」

「……………。」

 

あれっ。

落ち込ませちゃった?

…夢壊すような事言っちゃったかな。

そうだ、ちょっと元気付けてやろっと。

「…こんだけ暗いとさぁ。やましい事し放題だよなー。オレも神座ちゃんに変な事しちゃうかもなー、なーんて…」

「……………。」

「…スイマセン。」

クッソ、思いっきり逆効果じゃねえか。

「…そろそろ研究室みよっか。」

「……………うん。」

 

 

 

 

【内エリア 6F】

 

「…ここか。」

目の前に、少し古い引き戸がある。

「………。」

「ん?どうした?神座ちゃん。」

「…ここ、多分………私、の…………研究室……………」

「…そっか。じゃあ開けるぞ…」

 

「…。」

神座ちゃんは、いきなりオレにしがみついてきた。

「…………………。」

うおおおおおおおおおおおお!!!

じょ、女子が0距離に…いやいやいや!!落ち着けオレ!

平常心!!平常心を保て!!

「…あ、えっと…もしかして、一人じゃ不安?一緒に入ろうか?」

「…。」

…ったく、何やってんだオレは。

目の前で女の子が困ってるってのに、余計な事ばっか考えて…

 

「…神座ちゃん。オレから離れるなよ。何があってもオレが守ってやるから。」

「……………ありがと。」

「じゃあ、開けるぞ。」

オレは、ゆっくりと引き戸を開けた。

 

 

 

 

「…。」

部屋の中は、和室になっていた。

ところどころに洋風の家具とか置物も取り入れられていて、レトロな雰囲気の部屋だ。

…でも、一番に気がついたのは。

 

「う゛ッ!?」

床や壁に散った錆びた鉄みたいな色のシミを見て、オレは思わず吐き気を催した。

9人のクラスメイトの死を目の当たりにしたオレにはわかる。

…これは、血のシミだ。

「な、なんだよこれ…!」

「………やっぱり。」

「え、何が…?」

「……………ここ、私…が、いた………部屋………」

「えっ?」

「…でも、私の………家、こんな…所に………ない………多分、似せて…作った………部屋……」

「…そっか。」

マジかよ…

この研究室は、神座ちゃんの部屋そっくりに造られてたのか。

…じゃあ、このシミは一体…

 

「……………。」

神座ちゃんは、その場で膝をついて震えだした。

「え?神座ちゃん?どうしたんだ!?大丈夫か!?しっかりしろ!」

「…。」

この部屋に来て、嫌な事でも思い出しちまったのか?

クッソ、オレのバカ!なんで部屋に入っていいか事前に確認しなかったんだ!

神座ちゃんに無理させてるのに気がつかなかったなんて、最低じゃねえか!

「…神座ちゃん。無理させちまって悪かった。ここから出て一回落ち着こ?」

「…。」

 

オレ達は、少し早めに探索を切り上げて食堂に戻る事にした。

…しっかし、神座ちゃんのさっきの反応はなんだったんだ?

まるで、何かに怯えるような…

そういえば、オレはこの子の事何も知らないんだよな。

…神座ちゃん、一体何者なんだ…?

 

 

 

 

ー数時間前ー

 

【内エリア 6F】

 

今回も柳人クンと一緒に探索かー。

気分盛り上げて行こっと!

「じゃあまず学園長室行こっか柳人クン!!」

「狛研君。逆方向だよ。」

「…あ、ゴメン。」

「君は方向音痴なのかい?」

「うーん、そうかも!ところで柳人クンって、目が見えないのに方向とかわかるのすごいね!」

「目が見えなくても、それ以外の情報はいくらでもあるからねぇ。オイラは、それを感じる能力が人一倍強いのさ。」

「ふーん。…あ。ここじゃない?」

「え?」

「ホラ、クマさんの顔が描いてある。」

「…へえ。入ってみるかい?」

「うん、入っちゃお!」

学園長室ってどんな感じなのかな?

早速オープン!

 

…あれ?

「ん?どうかしたかい?」

「あ、えーっとね。んしょっ、鍵がっ、かかっててっ、は、い、れ、な、い!!んもうっ!」

 

ガンッ

 

ボクは、ドアを思いっきり蹴った。

「…ダメかー。」

「力技でどうにかなるもんじゃないよぉ〜。とりあえず、中を見られちゃ困るから開けてないって事なのかな?諦めて次行こっかぁ。」

「…だね。じゃあ看守長室行こっか。」

 

 

 

 

【看守長室】

 

「へー。」

中は、事務室みたいな場所だった。

「なんか思ってたのと違う。」

「…どんな部屋だと思ってたんだい?」

「なんか、刑務所とかに置いてありそうな器具とかが並んでるイメージ。」

「…拷問器具の事かい?君って、案外恐ろしい考えするんだねぇ。」

「えー、そうかなぁ?」

 

あ、資料とかあるね。

「なんだこれ?」

ボクが目を通したのは、みんなの履歴書だった。

あれ?ボクのだけ無い…

もう、どうなってんのさ!

仲間外れとか勘弁してよ!

さてと、まずは一番上に重ねてあるラッセクンの履歴書でも…

ん?

 

「ッーーーーー。」

「ん?どうかした?」

ボクは、思わず目を見開いた。

だって、そこにはあり得ない事が書いてあったから。

 

 

 

ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

学年:第三学年(20XX年度入学)

才能:超高校級の国王

罪状:自身の政策で同盟関係にあった国の国民約5千人を殺害

判決:死刑(20XX年5月26日執行済)

 

 

 

…なにこれ。

どういう事?

ラッセクンは、確かにおしおきで死んだけど、この罪状って一体…

それに、どう計算しても執行日とおしおきされた日が一致しない…

じゃあ、この資料は一体…?

 

「狛研君?大丈夫かい?」

「ん?ああ、ごめん。」

「何か気になる事でもあった?」

「まあね。詳しい事は報告会で話すよ。」

「…そう。そろそろ研究室に行こうか?」

「あー、だね。」

 

 

 

 

「…ここか。」

おっ。

この部屋、ちょっと豪華な開き戸だね。

なんか、パーティー会場のドアみたい!

ここが研究室なのかぁ。

「…狛研君?どうしたんだい?」

「ここ、誰の研究室かな!?」

「…ドアの特徴は?」

「えーっとね、ちょっと豪華な両開き!」

「…なるほどね。狛研君、驚くなよ。そこ、多分君の研究室だよ。」

「えぇーーー!!?ウソ、ボクの!?やった!」

「まあ、消去法だから確証は無いけど…とにかく中に入ろうよ。」

「うん!わーい、やーっとボクの研究室ー!!それじゃ、ご開帳ー!!」

 

 

 

 

 

 

 

「…え?」

 

そこは、真っ白な部屋だった。

筒状の真っ白な壁に真っ白なカーテンがぐるっとかかっている。

部屋の真ん中が少し高くなっていて、円形のステージの周りを囲むように15本の柱が立っている。

「ーーーーーー。」

柱には、ボク以外のみんなの遺影が飾られている。

「狛研君?どうかした?」

「…は、柱に…遺影が…」

「柱…遺影…なるほどね、人柱ってヤツか。」

「人柱?」

「工事完成を願って生きた人間を埋めたりして生贄に捧げる風習の事だよ。多分、この部屋は生贄の儀式をモチーフにしてるんだ。」

「…へぇ。」

なんかちょっと嫌だな…

「それから、ちょっと気になってたけど…これは何かな?」

「え?」

柳人クンが触っているのは、ステージの真ん中に置かれたベッドだった。

…いや、違う。

 

「…これ、棺だ。」

大きくて最初はわからなかったけど、花とか供えてあるし…

…枕の上に布がかけてあるな。

下に何かあるっぽい。

…一体何が…

 

「ッ!!?」

布の下にあったのは、ボクの遺影だった。

「なにこれ…!?」

「どうかした?」

「棺の中に…ボクの遺影が…!」

「…どこまでも悪趣味だねぇ。」

全くだよ!

あーあ、研究室…ずっと楽しみにしてたのに!

なんだよこれ!

もうこんな部屋とはおさらばしよーっと。

 

…ん?あれ?

「今度は何だい?」

「…天井に数字が…」

「数字?」

「うん…980037546?」

「9億か…何の数字だろうね?」

「んー…わかんない!こりゃあ要報告ですな!」

「…オイラは君のそのメンタルが羨ましいよ。」

「えへへ、褒められた。」

…それにしても、なんなんだろう…この数字…

これはちょっと頭の片隅に置いておかなきゃかもね。



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第5章(非)日常編②

「…探索終わったし、そろそろ食堂行こっか。」

「そうだねぇ。」

ボク達は、探索を切り上げて食堂に向かった。

 

 

 

 

【食堂】

 

「みんなお待たせ。」

「やぁ。」

「二人ともご苦労様。」

「おかえりー。」

「あ、あの…お茶入れたんで、とりあえず座りませんか…?」

「そうなのかい?ありがとう癒川君。それじゃあお言葉に甘えて休憩しちゃおうかな?」

「わーい、ありがとう治奈ちゃん!」

「いえ…私にできる事なんてこれくらいしかないので、少しでも皆さんの役に立ちたくて…」

「あははー。癒川サンは、感動しちゃうくらいいい子だよねー。俺っちもあやかりたいもんですわ。」

 

 

 

 

うーん、疲れが取れるー。

「ホンット美味しいねこのお茶。どうしたの?」

「あ…えっと…疲労に効く茶葉を使ってみたんです。リラックス効果もあるんですよ。」

「そうなんだー。」

 

「さてと、一息ついた事だし報告会をしようか。」

「そだねー。じゃあまず俺らから。化学室には、薬品とか色々あったぜ。」

「えっと…危険な薬品もあるので、使う時は必ず私に一声かけてくださいね。」

「はーい!」

「あのねあのねー?化学室には、クマちゃんが調合した媚y「さてと、じゃあ栄君。報告の結果を聞かせてもらえる?」

「ちょっとぉ、俺の発言に被せないでよ。」

「ああ、えっと…プラネタリウムの方は、特に変わった所とか無かったな。」

「………。」

「あれ?神座さん?どうかした?」

「…ああ、えっと…実は、神座ちゃんが、研究室を見てから様子がおかしくてよ。何か嫌な事でも思い出しちゃったのかな?」

「研究室?」

「ああ、神座ちゃんの研究室、自分の部屋とそっくりだったみたいでさ。それで何か嫌な思い出があったりとかしたのかも…」

「あー…なるほどね。」

天理クンは、少し俯いて首筋を掻いた。

…やっぱクセなのかな、アレ。

 

「神座サンがなんでそんな反応したのか、知りたい?」

「えっ。」

「俺、知ってるんだ。神座サンの過去も素性も全部ね。」

「なん…だと!?テメェ、なんで知ってて黙って…」

 

「やめて陽一クン。」

「なっ…、こ、狛研ちゃん…!」

「天理クンも、これ以上は話さないで。」

「にゃんでー?」

「…ゐをりちゃんが秘密にしたい事、今ここで聞きたいとは思わない。ゐをりちゃん本人の口から聞きたいんだ。」

「そんな事言ってたら、一生話してくれないかもよ?」

「それでもいいよ。確かにゐをりちゃんの事は気になるけど、でもこの子を傷つけてまで聞きたくないな。」

「ふーん、あっそう。」

 

「じゃあ、次はボクから報告ね。…学園長室は、鍵がかかってて入れなかったよ。」

「なるほど、だからモノクマは行ってみるだけ無駄って言ったのか。」

「それから、看守長室だけど…中は事務室みたいな感じだった。」

「事務室?」

「うん。それで、みんなの履歴書とかもあったよ。」

「…へー。」

「それで、研究室はこれで全部開放されたんだよね?」

「…では、学園長室以外の全部の部屋が開放されたんですね。」

「そうみたいだね。」

「でも情報管理室はまだちゃんと探索できてないよね?」

「あっ…パスワードがかかってたから…」

「じゃあ調べても仕方ねェな。入田もラッセに殺されちまったし…諦めるしかねェのか…」

「…。」

そういえば、物陰がいたのって情報管理室だっけ。

…あとでちゃんと調べてみないといけないかもな。

「狛研さん?どうかした?」

「…あの、諦めるのはまだ早いと思う。」

「え?」

「…ちょっとした心当たりがあってね。あとでみんなで一緒に調べに行ってみようよ。」

「狛研さんがそういうなら…」

 

「ねえ、それはいいけどまずメシ食わね?お腹ペコペコなんだけど。」

「うるせェ泥でも飲んでろ。」

「ひどーい。」

「テメェに食わせるメシはねェっつってんだ。」

「だったらボク作るよ。」

「えっ、いいの?」

「うん。さすがに、天理クンだけ仲間外れはかわいそうでしょ。」

「狛研ちゃん!コイツは…」

「わかってるよ。わかってるけど…でも、ボクはもう仲間の誰かが欠けるのは嫌なんだ。」

「…チッ、わかったよ。女の子に働かせるわけにはいかねェからな。それに、相手がクソ野郎だからって手を抜くようじゃ料理人失格だぜ。」

「わーい、ありがと栄クン!俺達ズッ友だよねー?」

「うるせェ寄るな。」

「あーあ、フられちゃった。」

 

 

 

 

「ゲフッ、あー食った食った。ごっそさん。」

「…どこまで図々しいんだコイツ。ご飯2杯もおかわりしやがって。」

「まあまあ…それじゃあ、みんな食べ終わったみたいだし、情報管理室行こっか。」

「さいですなー。」

 

 

 

 

【情報管理室】

 

「…えっと、特に変わったところは無いみたいだけど?」

「なんだよ、収穫ナシかよー。狛研サンが、当てがあるって言うから来たのによー。」

「ありゃりゃ…?」

おかしいな。

確かに見たんだけど…

「待って。狛研さんの証言が嘘じゃないなら、もしかして…」

星也クンは、正面のパソコンの電源を入れた。

「おい、穴雲。パソコンにはパスワードがかかってるって言っただろ。パソコンを調べても無駄…」

 

ようこそ!

 

パソコンにその一言が表示されると、ホーム画面に切り替わった。

「あれっ!?穴雲、お前パスワード知ってたのか!?」

「まさか。主電源を入れただけだよ。」

「では、誰かがパスワードを解除したって事ですか?一体誰がそんな…」

「パスワードを解析してネットワークのセキュリティを外すなんて芸当ができる人、俺は一人しか知らないけどね。」

それってまさか…

「…才刃クン?」

「え?」

「才刃クンが、パスワードを解除してくれたんじゃないかな?」

昨日の物陰は、才刃クンだったのか。

「んなっ!?でも、アイツはずっと引きこもってたはずだろ!?なんでそんな…」

「…わからない。でもきっと、最後の最後にみんなの役に立とうと頑張ってくれたんだと思うよ。」

「マジかよ…へへっ、なんだよ。アイツ、やる時はやるヤツじゃねえかよ!」

「それもこれも全部、入田君を説得してくれた狛研さんのおかげだね。入田君も、狛研さんが言ってくれたからみんなに協力したいと思えたんだと思うよ。」

「えへへ…」

「さてと、じゃあ洗いざらい情報を…ん!?」

「どうしたの?」

「…みんな、見てよこれ…」

 

パソコンの画面が、一瞬で警告表示で埋め尽くされた。

「は!?おい、なんだよこれ!?穴雲!!お前、変な事したんじゃねェだろうな!?」

「違う!僕は何もしてないよ!パソコンが勝手に…」

「わーなにこれコワッ。ウイルスかなんか?」

 

しばらくして、警告表示で埋め尽くされた画面の真ん中に、画面が現れた。

赤地に、黒い文字がひとりでに打ち出される。

 

《やあ、はじめまして囚人諸君。…いや?はじめましてはおかしいか。だって、私はずっとみんなと一緒にいたんだもんね?》

 

「な、なんなんだよコレ…!」

 

《おっと、自己紹介が遅れたね。私の名は方神冥。【超高校級の知能犯】だよ。》

 

「ッ、方神…!!」

星也クンは、怒りで顔を歪めた。

 

《いやはや、さすがに私だけの力では、学園のネットワークに侵入するのは難しかったけど…入田クンが厳重なセキュリティを解除してくれていたおかげで、簡単に侵入する事ができたよ。全ては、仲間であるキミ達の信頼のおかげさ。私の踏み台になってくれてありがとう。》

 

「何が踏み台だ…ふざけるな!!」

「ねえ、これちょっとヤバくない?クマちゃん呼んだ方がいいんじゃない?」

「はぁ!?よりによって、なんであんなガラクタ共を呼び出すんだよ!!」

 

『はいなんでしょ?』

「モ、モノクマ!?」

『ちょっと、栄クン!今ボクの事、ガラクタって言ったでしょ!?怒るよ!?』

「んなこたぁどうでもいいんだよ!!おい、なんだよコレは!!どういう事か説明しろ!!」

『え?何の事?』

「とぼけんな!!この変なメッセージ、テメェの差し金だろ!?」

『メッセージ?うーん、何の事だかさっぱり?』

「ねえ、さらに打ち出されてるよ。」

 

《おやおや、これはこれは学園長。はじめまして。突然ですが、私は【超高校級の知能犯】方神冥と申します。勝手ながら、このコンピュータをハッキングさせていただきました。》

 

「クマちゃん。このメッセージについて、ホントに何も知らないの?」

『知ってるわけないでしょ!何コイツ!ボク達の監視を掻い潜ってネットワークに侵入するとか、調子に乗りすぎ!』

 

《みんなの中に、私と学園長のつながりを疑う人がいるようだけれど、私はあくまでただの一生徒だよ。》

 

「だったらなんでこんな事を…!」

 

《だって、このゲームは面白いけど、どこか物足りないんだもん。というわけで、ここからは私が仕切らせてもらうよ。もっと非道くて面白いゲームにしてあげる。》

 

『そんな勝手な事許すわけないでしょー!』

 

《許すも許さないも勝手だけどね。言っておくけど、おしおきで殺そうとしても無駄だよ。首輪の爆破装置は解除しておいたからね。それから、監視カメラの電源も一部落としておいた。》

 

「…なぁ、これって脱出するチャンスなんじゃ…」

 

《おっと、余計な考えは持たない事だね。もし変な気を起こそうものなら、監視カメラの代わりに設置した爆破装置が作動するから。》

 

「クソッ…!」

「このゲームを乗っ取って、何がしたいのかな?」

 

《フフフフ…私が用意したゲームの新ルールは、この部屋のある場所に隠してあるよ。それを見つけてゲームに参加してね。より刺激的なゲームになる事を期待しているよ。》

 

ブツンッ

 

電源が切れた。

「クソッ!!方神の奴…!!みんなの命を弄びやがって…!!」

「これでわかったね。やっぱり、乗っ取り犯は俺達の味方じゃなかったんだ。でしょ?クマちゃん。」

『そうだね。…あーあ、予測していた最悪の事態が起こっちゃったね。懸念してはいたけど、まさか本当にやらかすとは思ってなかったよ。』

「んなっ…テメェがやったんじゃねェのかよ!?」

『ボクは、こんなスマートじゃない事しないし。全く、一生徒の分際でゲームを乗っ取ろうなんて生意気だよね!』

「じゃあ、さっきの暫定ルールは…」

『コイツにこれ以上好き勝手される前に先手を打っといたの!コイツに引っ掻き回されたせいでみんな死んじゃってゲームが終わっちゃったりしたら面白くないじゃん。』

「じゃあ、クマさん達も犯人探しを手伝ってくれるって事?」

『勘違いしないでよね!今回はたまたま目的が一致しただけだから!』

「なんでツンデレ風なのさ。」

『ボク達の神聖なゲームを汚そうなんて、こりゃあ犯人を見つけたらおしおきスペシャル決定だね!』

「こっわ。」

『ボクからの報告は以上です!それじゃ、まったねー!』

クマさんは不機嫌そうに帰っていった。

 

「おい、どうすんだよ…ゲームが乗っ取られたって…!」

「それに、さっき言ってた新ルールって…一体何の事なんだろうね?」

「多分これじゃね?」

天理クンは、タブレット端末を見せた。

「テメェ、どこでそれを…」

「この部屋に置いてあった。…見てこれ。」

 

そこには、赤地に黒い文字でゲームのルールが書かれていた。

 

 

 

この端末には、ゲームアプリが入っている。

それぞれ、みんなの才能を試す内容のゲームになってるよ。

ちなみに、ゲームは全部最高難易度にしてあるから。

キミ達には、これを制限時間内にクリアしてもらう。

一日に一人指名するから、指名された人がその日の昼時間中にゲームをクリアするんだ。

もちろん、他の人が手伝ったりしたらダメだよ。

それと、その日に殺人が起こったら、ゲームは免除になるよ。

 

もしその日の昼時間中にゲームをクリアできず、かつ殺人が起こらなかったら、キミ達の中の誰か一人をランダムで殺す。

…どうかな?より刺激的なゲームになっただろ?

じゃあ、今日の挑戦者を発表しようか。

…栄陽一クン!

フフフ、もしみんなの事が大事なら、ちゃんと今日中にゲームをクリアしてね。

 

 

 

「…オレ!?」

「そんな、栄さんが…!」

「ねえ、どうでもいいからさっさとゲーム進めろよ。オマエのせいで死ぬとか、嫌すぎんだけど。」

「う、うるせェ!!わかってるよ!」

陽一クンは、ゲームを始めた。

「…大変な事になっちゃったね。」

「まったくだよ。クマちゃんは、俺らにコロシアイを強要してきたけど、こんなクソゲーまでは要求してこなかったもんね。あーあ、クマちゃんのゲームが恋しいよ。」

「どっちもどっちだろ。オイラ達の命を握る奴が変わっただけじゃないか。」

「うーん、陽一クンはゲームやらなきゃだし…ボク達はどうする?」

「そうだね…栄君のゲームに参加する事もできないし…とりあえず、自由時間でいいんじゃないかな。」

「メシはどうすんのさ?」

「あ、じゃあ今日は私が…」

「助かるぜ癒川サーン。」

「あ、それと、乗っ取り犯や内通者について各自調べておいてね。何か気づいた事があったら逐一報告する事。」

「…了解。」

 

 

 

 

…とは言ったものの、ボクは何をすればいいんだろう?

うーん、とりあえず今はみんなから情報を集めるしかないのかな?

まずは、柳人クンに話を聞いてみよう。

「柳人クン。」

「ん?何かな、狛研君。」

「あのさ、ちょっと話さない?情報交換の意味でも。」

「うん、いいよ。じゃあ…監視されるのも嫌だし、倉庫の隅で話そうか。」

 

 

 

 

「ねえ、柳人クン。何か気になった事はあった?」

「うーん、特にないかな。」

「…そっか。」

「狛研君は?」

「え?」

「君の事だから、誰か怪しい人を知ってるんじゃないかと思って。」

「でも、ボクは黒幕か内通者か乗っ取り犯かもしれないんだよ?…あ、もしもの話ね。」

「その事に関しては、まだ君の事を完全には信じてあげられないけど…でも、こっちも情報が少なすぎて困ってるんだ。何か知ってる事があったら教えてくれないかな?」

「…わかった。実はね、ボク…昨日、情報管理室で物陰を見たんだ。」

「…え?」

「情報管理室から物音がしたから駆けつけたら、情報管理室から少し離れた物陰から誰かが逃げていくのを見たんだ。…多分、情報管理室で例のパソコンをいじってたんだと思う。ボクが情報管理室を調べるように言ったのも、実はそれでなんだ。」

「なんでそんな大事な事をもっと早く報告しなかったんだい?」

「…ごめん。情報量が少ない中でいきなりそんな事言ったら、みんなが疑心暗鬼に陥っちゃうと思って…」

「…そう。それで?その陰の顔は見たの?」

「え?」

「陰の顔を見たのかって聞いてるんだけど。…あ、顔じゃなくても、服装とか…」

「見てないよ。…最初は才刃クンかと思ったけど、今思えば違う気がしてきた。」

「へえ、そうなんだ。」

…柳人クン、なんで陰の顔を見たのか、なんて質問してきたんだろう?

柳人クンは目が見えないから、そんな情報をボクから聞いても意味ないはずなのに。

「…気になった事はそれだけ?」

「うん。今のところはね。」

「…そっか。話してくれてありがとね。」

「ううん。こっちこそ、調べ物に協力してくれてありがとう。」

「こんな事でお役に立てるならお安い御用さ。またいつでも来てね。」

「うん。」

 

《詩名柳人の好感度が1上がった》

 

 

 

 

…柳人クンからゲットできた情報はこれくらいか。

次は、星也クンにでも話を聞いてみようかな。

「星也クン。」

「何かな、狛研さん。」

「あのさ。情報交換がてら、ちょっと話がしたいんだけど。」

「うん。もちろん構わないよ。それじゃあ、僕の研究室で話をしようか?」

 

 

 

 

「…えっと。」

前から思ってたけど、研究室にも監視カメラってあるんだよね。

これ、話してる事も筒抜けだったりするんじゃ…

「あ、監視・盗聴されてる可能性なら心配しなくていいよ。隅々までチェックして、監視カメラ以外は取り除いておいたから。」

「…監視カメラは?」

「うまいこと角度を調節して映らないようにしてある。監視カメラの破壊は校則違反だけど、死角で話をするのは校則違反じゃないだろ?…さすがに研究室の中まで監視されるのは気持ち悪いからね。」

…おうふ。さすが星也クン。用意周到だなぁ。

 

「それで、星也クン。何か気になった事はあった?」

「…ごめん。僕も、わからない事だらけなんだ。方神や内通者が一体誰なのか、まるで見当もつかないや…」

「そっか…」

「あ、ただね。ひとつだけ分かった事があるよ。」

「ホント?」

「ああ。…あのコンピュータの乗っ取りだけど、あれは多分本当に方神の仕業だ。」

「…えっ。」

「最初はモノクマか財原君のイタズラを疑ったけど、よく考えてみればどっちかがやったとすると色々と不自然な点が多くてね。…多分、本当に方神がゲームを乗っ取ろうとしているんだ。」

「そうなんだ…」

「僕は、僕の家族を奪った方神を許さない。きっと今回も、みんなの命を弄んで破滅させる気だ。」

そういえば、星也クンの家族はハコガミメイに殺されたんだっけ。

ボクも交通事故でお父さんとお母さんを亡くしてるから、ちょっと気持ちはわかるな…

そりゃあ、大事な人を突然奪われたら怒りたくもなるよね。

 

「狛研さんも、ご両親を亡くしてるんだったね。」

「まあね。」

「…それ、ただの事故じゃないって言ったらどうする?」

「…え?」

「少し調べてみたら分かった事なんだけど、君のご両親の事故はあまりにも不自然だったんだ。事件現場の状態からして、多分アレも方神の仕業だ。」

「なんでそんな…」

「…わからない。」

そんな、お父さんとお母さんが…『殺された』?

「でも、ちょっと待って。【超高校級】って事は、ハコガミメイも当時はまだ小さい子供だったわけだよね?そんな事できるわけ…」

「…いや、よくよく調べてみたら、方神の名前が裏社会で話題になった時期と、狛研さんのご両親の事故が起こった時期がほとんど一致してたんだ。」

「じゃあ、ハコガミメイが最初に起こした事件が、あの交通事故だったって事…!?」

「…そうなるね。」

そんな、そんな事って…

…星也クンの話を完全に信じたわけじゃないけど、もし彼の話が真実なら、二人を殺した犯人がこの中にいるって事…!?

そうだとしたら、それがたとえ誰だったとしても絶対に許せない。

…許せないけど。

 

「僕は、絶対にアイツを見つけ出して復讐を果たす。…モノクマの事も、後で絶対に化けの皮を剥がす。」

星也クンは、いきなり怖い表情になった。

「星也クン!」

「…なんだい、狛研さん?」

「えっと…早まらないでね。」

「え?」

「どんなに憎くたって、殺しちゃったら後悔する事しかできなくなっちゃうから…それに、みんなも悲しむよ。」

「…狛研さんはいい人だね。ありがとう、引き止めてくれて。でも安心して。僕は犯人を殺そうだなんて思ってないから。」

「…良かった。」

「でも、時々怖くなるんだ。もし方神に実際にあったら、殺意を抱いてしまうんじゃないかって…だから、狛研さん。その時は、今みたいに僕を止めてくれないか?」

「当たり前だよ。友達じゃん。」

「…ありがとう。」

「あのさ、ボクからも報告いいかな?」

「ん?何?」

「実は…」

ボクは、物陰について星也クンに話した。

 

「…なるほどね。」

「最初は才刃クンかと思ったんだけど、今思えばあれはハコガミメイか内通者だったのかも…」

「…ねえ、狛研さん。まさかとは思うけど、ソイツの声を聞いたりしてないよね?」

「…ッ、え?」

「これは重要な情報なんだ。もし、君がソイツの声を聞いていたんだとすれば、重要な証言になるからね。」

「星也クン?何言ってるのかわかんないよ。ボクは、物陰を見ただけだよ?」

「…そう。そっか、そうだったね。ごめんね、変な事聞いちゃって。じゃあ、そろそろご飯の時間だし、食堂に行こうか。」

「…そだね。あーあ、お腹すいたなー。」

星也クン、いきなり変な質問してきて、どういうつもりなんだろう?

…ボクは、物陰を見たって言っただけなのに。

まあいいや。

星也クンの証言は、頭の片隅に置いておこう。

 

《穴雲星也の好感度が1上がった》

 

 

 

 

【食堂】

 

「お待たせー!」

「あ、星也さん、狛研さん…今ちょうどお食事ができたところですよ。」

「わーい!…あ、そういえば陽一クンは?」

「っしゃー!!ゲームクリアー!!」

「えっ、本当かい!?」

「ああ、全ステージクリアしたぜ!!」

「じゃあ今日は誰もおしおきされないんだねー。はっふー、命拾いしたー。」

「ん!?おい、ちょっと待て!これ見ろ!」

 

 

 

おめでとう、栄クン。

一日目はゲームクリアだ。

キミが思ったより優秀で、みんな助かったね。

じゃあ、次のゲームの挑戦者を発表しようか。

次はキミにやってもらおうかな?

 

…財原天理クン!

 

「はっふー、俺っすか。」

「マジかよ…」

「よりによって…」

 

ゲーム開始は明日の午前7時からだ。

みんなの命が大事なら、頑張ってゲームクリアしてみてね。

 

 

 

「だってさ。」

「いや、『だってさ。』じゃねえだろ!次の挑戦者お前だぞ!!」

「うわマジかー。いやーん、やりたくないなー。てかもし失敗しちゃったらみんなごめんね?イケメンな俺に免じて、笑って許してね?」

「許せるかぁ!!ぜってェクリアしろよ!!もしヘマしやがったらテメェ、こr…ブン殴るからな!!」

今殺すって言いかけたよね、陽一クン。

「あのさー、せっかく癒川サンがメシ作ってくれたんだから早く食おうよー。」

「…君に緊張感ってものはないのかい?」

「うーん。制限時間30秒くらいになったらさすがに焦るかな?それまではプレイしないでおこっかなー?」

「コイツ…」

「財原君、今そういう冗談笑えないから。」

「ごめーん」

「…まあでも、確かに今はお腹を満たさないとね。」

「賛成ー。腹ぺこりんぬですわぁー。」

 

 

 

 

うーん、やっぱり治奈ちゃんのご飯はおいしいね!

あ、そうだ。暇になっちゃったし、娯楽室でも行こうっと。

 

 

 

 

【娯楽室】

 

今回もクマさんにメダルを貰ったからガチャを引いてみよう。

今回は何が出るかなーっと。

おっ。

花の髪飾りに、よくわからない古い本…

本は、見たところ薬かなにかのレシピっぽいな。

うーん…自分で持ってるのもアレだし、誰かにあげちゃおうかな?

「あれ?狛研ちゃんじゃん。どうしたの、そんな所で?」

「あ、陽一クン。陽一クンこそ、どうしたの?やっぱりここに遊びに来たの?」

「ああ、うん…まあな。」

「そっか。」

あ、そうだ。

せっかくだし、情報収集がてら一緒にお話してみたいな。

「あのさ、陽一クン。ちょっと話さない?」

「おう、いいぜ!」

「…あの、できれば監視カメラが無いところで話がしたいんだけど。誰かに聞かれたら困る話だから。」

「えっ!?マジか!?それって…」

陽一クンは、わかりやすくテンションが上がった声で答えた。

…大事な話をしたいのに、この子何考えてるのかな?

「…あのさ、大事な話がしたいんだけど。」

「あっ…ごめん。」

ボク達は、監視カメラの無いところに移動した。

 

 

 

 

「うん、誰にも見られてないよね。…ここならとりあえずは一安心かな。」

見たところ盗聴器も無いしね。

「ゲフンゲフン!!」

「!?」

え、何?陽一クン、どうしたの?

っていうかさっきからなんか顔赤いし…

体調悪いなら無理に誘わない方が良かったかな?

「…大丈夫?」

「ああ、大丈夫。何にもないよ。…それより、狛研ちゃん…大事な話ってのは?」

「…あのさ、ゲームはどうだった?」

「へ?」

「陽一クンがプレイしたゲーム。どんな内容だったのか教えて欲しいんだけど。」

「…あ、ああ…アレか…えっとな…」

陽一クンは、明らかにガッカリしたような表情を見せた。

何を話すと思ってたんだろ?

 

「オレの才能を試す内容のゲームだったよ。全部で3ステージあって、ファイナルステージをクリアしたらゲーム終了っていう感じだったよ。」

「へー。」

「あ、そうそう。一度でもミスしたら最初からやり直しになるから、プレイするんだったら早い方がいいぞ。しかも、ゲームの内容が全部リセットされるから、攻略法を覚えても意味ないぞ。」

「…そっか。」

「話はそれだけか?」

「あっ…えっと、陽一クンは、乗っ取り犯や内通者の事で気になった事は無い?」

「…ああ、なるほどな。それを聞くために監視カメラの無い所に呼び出したのか。…悪い。オレ,ゲームやっててそれどころじゃなかったからよ。」

「…まあ、そうだよね。」

「狛研ちゃんは?何か言っておく事とかあるか?」

「えっとね…」

ボクは、物陰の事を正直に話した。

 

「…へー、なるほどな。」

「何か心当たりはある?」

「いや…無えけど…」

「そっか。ならいいの。じゃあ、もう遅いし、部屋に戻るね。おやすみ。」

「…狛研ちゃん!」

「何?」

「…あのさ、その影…また見たら、オレに報告してくれるか?」

「え?」

「ほら、オレも君の力になりたいしさ…ダメか?」

「…わかった。また見たら報告するね。」

…ボクの力になりたいって言ってくれてるんだもん。

あんまり疑っちゃうダメだよね。

「じゃあ、おやすみ。」

「おう、おやすみ。」

 

《栄陽一の好感度が1上がった》

 

 

 

 

結局、ゐをりちゃんと治奈ちゃんと天理クンには話を聞けなかったな。

まあいいや、3人には明日話を聞こーっと。

さてと、そろそろ夜時間だし、部屋に戻ろっかな。

 

ガシッ

 

「え?」

いきなり物陰から手が伸びてきて、腕を掴まれた。

「うにゃあっ!?」

そのまま、物陰に引きずり込まれた。

 

「いたた…誰!?」

物陰…もしかして、コイツが情報管理室の…!?

「シーッ。…とりあえず一回落ち着けって。誰か来ちまうだろ。」

えっ、こ…この声はまさか…

 

 

 

 

 

「やあ、狛研サン。」

天理クン!?

 



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第5章(非)日常編③

…天理クン!?

そんな…天理クンが、影の正体…?

じゃあ、天理クンが【超高校級の知能犯】…

「て、天理クン…!?」

「いやー、もう遅い時間なのに引き留めちゃってごめんね?実は、キミとちょっとお話がしたくってさぁ。人前じゃ恥ずかしくて言えない事だから、できれば監視カメラの死角で話したいなーって。」

人前じゃ言えない事…!?

まさか、知能犯か黒幕に関わる事…

 

 

 

「はいコレ。」

「…え?」

天理クンは、包み紙とリボンに包まれた何かをくれた。

「プレゼント。さっきガチャでゲットしてさ。部屋に戻ったら開けてよ。」

「…あ、ありがと。でも、それだけのためにわざわざ監視カメラの死角に?」

「だってー、人前でプレゼントなんて渡したら、視聴者のみんなに変な勘違いされちゃうでしょー?やーん、俺ってば恥ずかしいー!」

「…。」

天理クンは、わざとらしく恥ずかしがった。

「…でも、なんでボクに?」

「なんでって…そりゃあまあ、一応俺はキミの事気に入ってるからね。」

「…え?」

「言ったでしょ?今度はゲームとかナシで口説きに行くからって。」

「あ…」

そういえばそんな事あったね。

「俺、キミに喜んで貰えるかなーって思ってプレゼントしたんだよ?だから、きっとそれ、気に入ってくれるよね?」

天理クンは、いきなりボクの手を握ってきた。

…気のせいかもしれないけどさ、なんか手つきが気持ち悪くない?

「キミと二人きりって、なんか嬉しいなー。っていっても2日ぶりだっけ。」

 

…あ、そういえば。

あの時、紙渡したの天理クンだよね。

聞いた方がいいのかな?

「ねえ。」

「ん?何?」

「…あの時、なんで急にあんな事してきたの?ホント意味わかんないんだけど。」

なんであんな紙渡してきたのか…本人に直接聞かなきゃ。

 

「あんな事?ああ、勝手にチューした事?別に、あんな事誰とでもやってるよ。今更そんなに気にする事じゃないでしょ。」

「へ?」

何言ってんのこの子。

こっちは紙の事を聞いてんだけど…

「いや…あの…そっちじゃなくて…」

「え、なぁに?もしかして、あれじゃ物足りなかった?どうせ監視カメラには映らないし、今ここでもっとエッチな事してあげよっか?」

ちょっと、なんなのこの子!すっごいすっとぼけてくるんだけど!

しかも、なんか近いし手の動きがワキワキしててキモい!!

「小生意気な子には、おしおきが必要だよね?ほらほら、抵抗しないと薄い本がぶ厚くなっちゃうぞー?」

「もう、勝手な事ばっかり言って!そんな変な事ばっかり言ってると、ボクもキミの事嫌いになるよ!マジで!」

ボクは、天理クンを払いのけた。

「やめてー。俺、キミに嫌われたら寂しくて死んじゃう〜。」

「じゃあもう遅い時間だから帰るね!…あ、そうだ。陽一クンから聞いたんだけどあのゲーム、一回失敗したら最初からやり直さなきゃいけないらしいから、できれば早く始めてね。」

「うっす。」

「それじゃ、また明日!あ、今度また変な事言ってきたら許さないからね!」

「もうやんねーって。信用ないわねー。」

ホントかなぁ。

「…あ、それと。」

「まだ何か?」

「…ごめん。」

「え?何が?俺、狛研サンに嫌な事されたっけ?」

「いや、なんでもない。こっちの話。」

「ふーん。じゃあ今度こそおやすみー。」

 

《財原天理の好感度が1上がった》

 

 

 

 

あーあ。

結局何も聞けなかった。

それどころか、なんかやたらと気持ち悪い事ばっかり言ってくるし!

ホント、天理クンってサイテー!!

…でも、全然違う事で引き留められたし…

あの子の事を完全に疑っちゃったのはちょっと申し訳なかったかな。

さてと、あの子がくれたプレゼント…一体何なのかな?

変な物だったら明日一発殴りに行こっと。

 

「…お。」

ルービックキューブ?

へー、あの子がこんな物をねぇ…すっごい意外。

そうだ。ちょっと遊んでみようかな?

 

 

 

 

ー数時間後ー

 

「…できた!」

やー、ムズイねこれ。

3段でさえ難しいのに、5段とかキツすぎでしょ。

…ん?

一番上の段が開いて、中から紙が出てきた。

「…何これ?」

 

 

 

あんまり余計な事を喋るな。会話は全部筒抜けだ。

 

 

 

「…え?」

会話が筒抜け…?

一体何を言って…

 

…!

まさか、今までの情報交換の内容…全部、聞かれてた…?

だとしたら相当マズい…

…人前での発言には気をつけないと。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「うーん。」

独房で目が覚めた。

 

『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』

 

あーあ、毎朝毎朝うるさいなあ全く。

おかげで毎朝機嫌が悪いよ。

 

 

 

 

【食堂】

 

「…おはよう。」

「おはよう、狛研さん。今日はちょっと遅いね。」

「…ごめん、準備に手間取って。」

「ほわぁーあ。みんなほっはよぉー。」

「…あーあ、朝から嫌なモン見たぜ。」

「全くだよ。この声、食欲失せるよね。」

「……………不快。」

「にゃはは、失礼なー。…狛研サンもおはよう。」

「…あ、うん。」

天理クンは、昨日の出来事がまるでなかったかのように普通に絡んできた。

でも、その視線は明らかに突き刺すように冷たかった。

「じゃあ朝ご飯食べちゃおっかー。俺もう腹ペコー。」

「誰を待ってたと思って…」

「そんなこたぁどうでもいいじゃねーですか。さてと、早く食べないと冷めちゃうよ?俺冷飯とか嫌いなんだよねー。」

「…コイツ。」

 

 

 

 

あーおいしかった。

治奈ちゃんのご飯もおいしいけど、やっぱり陽一クンのご飯が一番だね!

あーあ、またヒマになっちゃったなー。

そうだ、まだ治奈ちゃんとゐをりちゃんのお話を聞けてなかったね。

二人を探しがてらちょっとお散歩しーよぉっと。

 

 

 

 

【春エリア】

 

「あっ。」

治奈ちゃん見っけ!

「あ…狛研さん。どうしたんですか?こんな所で…」

「ちょっとお散歩。」

「そうですか…」

「治奈ちゃんもお散歩?」

「ええ、まあ…」

「あのさ、ちょっとお話しようよ。」

「お話、ですか?是非!私、狛研さんとのお話なら大歓迎です!」

治奈ちゃんは、笑顔で応えてくれた。

ホンットかわいい!

治奈ちゃんの笑顔見たら、どんな嫌な事も吹っ飛んじゃうね!

…あ、じゃなかった。

治奈ちゃんにお話を聞かないと。

「あの、お話でしたら私の研究室でしませんか?」

「え、いいの!?」

「はい。…散らかってて申し訳ないですが。」

「わーい行く行く!ありがと治奈ちゃん!」

 

 

 

 

【超高校級の看護師】の研究室

 

「ここが私の研究室です。どうぞ、上がっていってください。」

「へーっ!」

さすが【超高校級の看護師】の研究室!

まるで病院みたい!

わーい、ベッドもフカフカだー!

なんかよく寝れそう!

「あの、狛研さん。お茶を淹れたので、宜しかったら召し上がってください。」

「わーい、ありが…え゛!?」

ちょっと待って!?

青っ!!

それホントにお茶なの!?

「…治奈ちゃん。それ何。」

「あっ、これですか。バタフライピーです。厨房にあったのを見つけたので、淹れてみたんです。青い紅茶なんて珍しいでしょう?」

「…なんか毒々しいけど…飲んでも大丈夫なんだよね?」

「はい。むしろ、アントシアニンが豊富で、美容効果があるんですよ。」

「ふーん。」

あ、おいしい。

「ふふっ、それ、面白い事が起こるんですよ。ちょっとこれを入れてみてください。」

「レモン?」

「はい、ちょっと面白い事が起こるので、見ててください。」

「うん。」

わっ!?何コレ!?赤くなった!

「これ、色が変わるお茶なんです。面白いでしょう?」

「へーっ、おもしろーい!」

「あと、昨日バターケーキを焼いておいたんですけど…食べます?」

「わーい食べる食べるー!」

 

 

 

 

はっふー。おいしかった。

「至福…」

「ふふっ、ありがとうございます。作った甲斐がありました。」

「治奈ちゃん?なんで笑ってんの?」

「いえ…狛研さんは本当に面白い方ですね。」

「へへへ、そうかなぁ。あ、そうだ。」

「どうかなさいましたか?」

 

「はい、これ。お茶とお菓子のお礼。治奈ちゃん、医学とか薬学とか興味あるんでしょ?こういう本、読んだりしない?」

「!!?」

治奈ちゃんは、席から立ち上がると、ボクの両腕を掴んできた。

「こっ、こここ…狛研さん!!!それ、よく見せてください!!」

「えっ!?あ、うん…」

「はわぁああ…ほ、本物です…!狛研さん!どこでこれを!?」

「ガチャでゲットしたんだよ。ボクは読まないから、治奈ちゃんが欲しいんじゃないかと思ってプレゼントしたんだ。…気に入ってくれた?」

「ええ、それはもう!!」

「え。その本、そんなにすごいの?」

「ええ、千年以上前に実在したと言われる薬師『草芫』が書いたとされる書物の内容を書き記した本です。彼は、当時では考えられない程高い薬学の知識と技術を持っていて、各地を転々として人々を治していたそうです。それは奇跡と呼ばれ、一説によると死んだ人間を蘇らせる事すらできたと言われているそうです。しかし、彼はある日インチキ呼ばわりされ、時の権力者に処刑されたそうです。そして、草芫の書物は、ほとんどが処分されてしまいました。…ですが、近年になってようやく彼の書物の信憑性が高い事が明らかになったんです。」

「へー。」

「ありがとうございます、狛研さん!こんな貴重な書物を頂いてしまって…何かお礼をしなくては…!」

「いや、いいよ。さっきお茶とお菓子貰ったし。」

「いいえ!あんな物では足りません!!月とスッポン…いえ、月と汚物くらいの差があります!!あんな物でお礼だなんて…狛研さんに申し訳ないです!!」

言いすぎじゃない?あのお菓子おいしかったけど。

「いや、ホントいいって。その本も、治奈ちゃんが持ってる方がいいと思うし。」

「でも、それでは狛研さんが…」

「いいからいいから。ボク、お礼ならお腹がふくれる物の方が嬉しいからさ。…そうだなぁ。そこまで言うなら、治奈ちゃんの話を色々と聞いてもいいかな?」

「え、そんなんでいいんですか?でも…面白くないですよ?」

「ボク、人の面白くない話聞くの好きだから。」

「ええと…わかりました。聞きたい事があったらなんでも聞いてくださいね。」

 

「うーん。そうだなぁ。じゃあさ、なんで【超高校級の看護師】になったのかはこの前聞いたし…【超高校級の看護師】になってみて、どう思った?」

「えっと…そうですね。一言で言えば嬉しかったです。今まで最低な事ばかりしてきた私が、人の役に立つ事ができて…看護していた患者さんに初めてお礼を言われた時、初めて生きがいを感じました。こんな私でも人の役に立てるんだって、仕事にやりがいを感じるようになったんです。」

「…そっか。」

「…私多分、ずっと誰かに認めてもらいたかったんだと思います。…私は、弟が病気で倒れてからはずっと孤独でした。母親は家の事は放ったらかしで私の事なんて見てくれませんでしたし、弟も病気で入院していてほとんど会えませんでした。…だから、その…援助交際に手を染めてしまって…。お金を稼ぐためなんて建前で、今思えばもっとまともにお金を稼ぐ方法はあったはずなんです。…でも、どんなに痛い事や気持ち悪い事をされても、独りでいるよりかはずっとマシだったから…どこの誰かもわからないような人でも、たとえ一日限りの関係でも、必要とされている事に喜びさえ感じてしまっていたんです。」

「治奈ちゃん…。」

 

治奈ちゃんは、ポロポロと涙を溢して泣き始めた。

「…ごめんなさい、私…最低ですよね。星也さんとお付き合いしているのだって、私の自己満足なんです。本当は私なんかと星也さんが釣り合うわけないのに、勝手に私の理想を押し付けて…」

「…治奈ちゃん?」

「私…本当は、おしゃれしたり、仲のいい友達と一緒にお出かけしたり、少女漫画みたいな恋をしたり、そういう普通の女の子らしい事がしたかったんです。でも、今の私にそんな資格はありません。…私なんか、本当に生きてていいんですかね。」

 

バンッ

 

ボクは、テーブルを両手で叩いて言った。

「…治奈ちゃんからそんな言葉聞きたくなかった。」

「ご、ごめんなさい…私…」

「おしゃれ…?お出かけ…?少女漫画みたいな恋…?やればいいじゃん!治奈ちゃんがやりたい事なんだから、資格なんて関係ない!自信がないならここにいるみんなで治奈ちゃんの事を全力で応援する!だから生きて!生きて外に出て、夢を叶えようよ!」

「でも、私は、穢れて…」

「そんなのどうでもいいじゃん。…って、星也クンも言ってたけど?」

「そんな、私は…」

「…それにね、治奈ちゃんは最低なんかじゃないよ。すっごく魅力的な女の子だと思う。」

「…え?」

「ボクなんて、ガサツだし、TPO?とかちゃんと考えないし、よく男女って言われるし…ボクは、治奈ちゃんが羨ましいな。かわいいし、頭も良いし、真面目だし、ちゃんとみんなの事とか考えてるし…あっ、いい所ばっかり挙げてったらキリがないね。」

「そんな事…」

「そうだ!ボク、いい事思いついた!みんなで一緒にここを出たらさ、みんなで一緒にお出かけしようよ!とびっきりかわいい服着てさ。あと、星也クンとのデートのプランも考えなきゃね。…ね、これでやりたい事全部できるでしょ?」

 

「…ふふっ、あはは…狛研さん。あなたはとってもいい人ですね。」

「えっ、そう?」

「…ごめんなさい、狛研さん。実は私、ちょっとだけあなたをからかってたんです。」

治奈ちゃんは泣き止むと、今までの涙が嘘だったかのように舌を出して笑ってみせた。

「あれっ?治奈ちゃん?」

「今話した事は全て事実ですが、泣いたのはちょっとオーバーリアクションでした。本当は当時の事、もうそんなに気にしてないので安心してください。」

えーっ!?嘘泣き!?

全然気づかなかったよ!

「なーんだ。」

「…でも、おかげで少し元気が出ました。ありがとうございます。」

「もう、治奈ちゃんってばー。すっかり騙されたじゃんか!…あれ?」

「どうかなさいましたか?」

 

「その髪留め、可愛いじゃん。どうしたの?」

「ああ、これですか。星也さんに貰ったんです。髪を整えていただいたついでに…」

「そっか。似合ってるよ。…ところで、今まで付けてた髪飾りは?」

「あれは、ブレスレットにしました。私の宝物ですから…」

「宝物?」

「はい。…弟が、幼稚園の工作で作って私にプレゼントしてくれたんです。…あの子も、生きてたらちょうど今年で10歳だったんですけどね。」

「…そっか。」

だから治奈ちゃん、才刃クンに優しくしてたんだ。

…弟クンと才刃クンを重ねてたのかな。

 

「ありがとう治奈ちゃん。お話できて楽しかったよ。」

「いえ、こちらこそありがとうございます。」

「…ねえ、あの約束…忘れないでよね。絶対生き残ろうね。お互いに。」

「…はいっ!」

 

《癒川治奈の好感度が1上がった》

 

 

 

 

やー、つい治奈ちゃんとの話で盛り上がっちゃったよ。

なーんかお腹すいたなぁ。

…そういえばそろそろお昼の時間だっけ。

食堂行かなきゃ。

 

 

 

 

【食堂】

 

「ごめん、みんなお待たせー。」

「全然待ってないよ。あと、神座さんと財原君がまだだね。」

しばらくしてゐをりちゃんが来た。

「………。」

「お、来たねゐをりちゃん。」

「……………。」

「あとは財原君だけか。…まあいつも通り遅刻だろうけど。」

「アイツ、なんで毎回遅れてくんの?遅れるくらいならいっそ来なきゃいいのによ。」

 

「ほわぁああーあ。ごみーん。待ったー?」

「…やっぱりね。」

「やっぱりって何が?俺がイケメンって話?」

「はいはい、そうだといいですね。」

「癒川サン、最近俺の扱い方雑じゃない?」

「じゃあもう全員揃ったし、ご飯食べちゃおうか。」

「賛成ー。」

 

 

 

 

あーおいしかった。

さてと。昼食べ終わったし、何しよっかな?

そうだ。新しく開放されたプラネタリウムにでも行ってみようかな。

 

 

 

 

【プラネタリウム】

 

あれ?暗い…

もしかして、もうすでに先客がいたのかな?

「誰かいるのかい?」

この声は…星也クン?

…と、隣にいるのは治奈ちゃんか。

あれ?もしかして今ボク、盛大に邪魔してる?

「あ、ごめん。お邪魔だったね。じゃあボクはこの辺で。」

「待ってよ、狛研さん。せっかくだから見てってよ。」

「でも、二人の邪魔しちゃ悪いし。」

「ははは、狛研さんってそんな事気にする人だったっけ?とにかくちょっと見てってよ。」

「いいの!?」

「うん。別に、僕達は君を邪魔だなんて思わないよ。ね、治奈。」

「はい。狛研さんなら大歓迎です。」

「わーい!」

 

 

 

 

キレイだねぇー。

ホント、人工の星とは思えないや。

「ねえ、二人とも。」

「はい、なんでしょうか狛研さん?」

「なんで今日は二人でプラネタリウムに来たの?」

「それは…」

「僕が誘ったんだよ。二人で行かないかって。ほら、最近事件やら裁判やらで忙しくて、ちゃんと二人の時間を楽しむ余裕が無かったからさ。」

「へー。でも、なんでプラネタリウム?」

「…星が好きなんだ。」

「え?」

「ほら、僕の名前…星が入ってるだろ?」

「あっ、それでか。」

「…だから、小さい頃はよく家族で星を見に行ったんだ。その時の事、思い出しちゃって…」

「そっか…」

星也クン、家族を亡くしてるからもうみんなで星を見に行く事もできないんだよね。

…よーし、だったら!

 

「はいっ!」

ボクは、二人の手を掴んで重ね合わせた。

「なっ…!?何してんの!?」

「家族で星を見られないんだったら、これからは治奈ちゃんと仲良く星を見ればいいでしょ?ほら、付き合ってるんだからもっとくっつきなって!」

「やめてよ…恥ずかしいから!」

「いいじゃん別に。部屋暗いし。誰も見てないよ。」

「狛研さん、君ねえ!そう言う問題じゃないんだよ!それに、今ガッツリ君が見てるじゃないか!!」

「あー、部屋が暗くてボクなーんにも見えないなー。」

「嘘つけ!!…全くもう、君って人は油断も隙もないね!」

「てへっ。」

「…でもまあ、おかげでちょっと元気が出たよ。ありがとう。」

「いえいえー。」

 

《穴雲星也の好感度が1上がった》

 

《癒川治奈の好感度が1上がった》

 

 

 

 

あー楽しかった。

「狛研さん。まだ夕食まで時間あるけど…君はこれからどうするんだい?」

「うーん、そうだなぁ。じゃあ夕ご飯の前にひとっ風呂浴びてこよっかな!」

「そっか、いってらっしゃい。…あ、遅刻しないでね。」

「わかってるって!どっかの天理クンじゃないんだから!」

「…もう名前言っちゃってるじゃないですかそれ。」

 

 

 

 

「ぶぇっきし!!!」

…あー、また誰かが俺の噂してんのかな。

まあ、俺ってイケメンだし背高いし天才だし超金持ちだし、まあ一言で言っちゃうと女にとっての理想の男だから?噂になっちゃうのは仕方ないよねー。

あーあ。できればわがままボディのねーちゃんが噂してくれてると嬉しいんだけどなー。

 

 

 

 

【食堂】

 

あー、さっぱりした。

割と早く着いちゃったな。

「陽一クン、なんか手伝う事ある?」

「あ、狛研ちゃん。じゃあこれ並べてくれるか?」

「ガッテン承知の助ー。」

そうこうしていると、全員集まってきた。

「……………。」

「はーん、もう俺腹減りすぎて死にそう。早く何か食わせてよ。」

「うるせぇ口閉じてろクズ。」

「ひどーい。」

「じゃあ全員揃ったし、準備も一通り終わったしご飯にしようか。」

「はーい!」

 

 

 

 

「ごちそうさまでしたっ!」

「あはは、狛研サンは律儀だねぇ。」

「だって、陽一クンがせっかく作ってくれたんだもん。ごちそうさまくらい言わないと。」

「ほわぁーあ。なんか眠くなってきちゃったねー。もう眠いし、そろそろ寝ようかな?」

「…おい、財原。」

「ん?何?」

「お前さ、随分と余裕ぶっこいてっけど、ゲームは終わったの?」

「あっ。いけねっ。忘れてた。やらねば。」

「はぁ!!?」

「ごめんごめん。俺、漫画に夢中でゲームやんの忘れてた。いやー、失敬失敬。」

「ふざけんな!もう時間がねェからさっさとクリアしろ!!」

「あいあーい。さーてと。…あれ?コレ思ったよりムズくね?うわっ、時間配分失敗した。」

「嘘だろ!?」

「安心しろって。俺はアプリゲームの神と呼ばれた男だぜ?こんなの余裕のよっちゃんよ。秒で片付けてやっから安心しろって。」

「フラグでしかねェよ…」

 

 

 

 

ー2時間後ー

 

「ぐははははー。雑魚めー。えいっ。」

「喋ってないで真面目にやりなよ。またミスするよ。」

「ごめーん。ホント、次から真面目にやるから許してよ。」

「おい、もう時間ねェぞ!!今度こそクリアしろよ!!」

「もう、心配性だなぁ栄クンは!三度目の正直って言うでしょ?」

「よく言うよ。もう10回くらい失敗してるよね?」

「じゃあ11回目の正直?ホント任せてよ。今度こそマジでクリアするか…あ、やべっ。ミスった。」

「はぁああ!?またかよ!!ミス多すぎだろ!!しかもよりによって毎回ファイナルステージの終盤でミスしやがって!お前さてはわざとやってんだろ!?」

「ごめーん。もう一回最初からだぁー。」

「おい、ふざけんな!!もうあと5分しかねェぞ!!」

「まあなんとかなるっしょ。」

「はあああああああ!!?ざっけんじゃねェ!!人の命がかかってんだぞ!!」

「別に俺以外の誰かが死のうと知ったこっちゃないんだけどねー。まあ、栄クンならまだいいけど、女子がブチ殺されたら俺のオアシスが減っちゃうからなんとか頑張ってクリアしてみるよ。」

「おい、あと3分だぞ!」

「よーし、ファーストステージクリア。なんかコツ掴んできたな。こっからはマジで任せてよ。」

「絶対失敗すんじゃねえぞ!!失敗したらボコボコにすっからな!!」

「ひえー怖。…おっ。セカンドステージクリア。」

「っていうか、本当に大丈夫かい?あと1分だけど。」

「まあ頑張るよー。俺の高橋名人並みのウルトラ16連打見せてやらー。…って、ちょっと待って。これ無理ゲーなんだけど。」

「は!!?」

「えっと…ヤバいこれ。クリアできるかなー?」

「おい!!あと30秒だぞ!!失敗したらどうすんだよ!!」

「わーやばいやばい。…あっ!!」

「『あっ』てなんだよ『あっ』て!!」

天理クンは、カタカタと身体を震わせながら画面を見せた。

 

 

 

「…ははっ…ははははは…ごめんみんな。がめおべらになっちゃったw」

天理クンの持っていたタブレットには、ゲームオーバーと表示されていた。

「…は?おい、嘘だろ…!?」

「そんな…!」

「ごめーん。手が滑った。最後の最後でやっちゃったZE☆でもまあイケメンな俺に免じて許してクレメンス。」

 

「ッ…おい!!ふざけんな財原!! お前がもっと早くゲームに取り掛かってたらこんな事になってなかったんだぞ!!どう責任取る気だテメェ!!」

「ちょっと、痛いよ。離してよ栄クン。人間誰でもミスのひとつやふたつはやらかすもんでしょ。」

「テメェ、ブン殴ってやらァ…」

「………待って!!」

 

声を上げたのはゐをりちゃんだった。

「…あの………これ、見て…………」

ゐをりちゃんは、タブレットをみんなに見せた。

 

 

 

あーらら。残念だったね、財原クン。

ルールにのっとると、キミのせいでこの中の誰か1人が死んじゃうって事になるね。

でも、キミ達に朗報です!

実は財原クンのゲームにだけ、致命的なバグがあった事がわかったのです。

 

「あ、道理で無理ゲーだと思ったわ。」

 

よって、今日のゲームは不成立となり、おしおきは執行されません!

いやー失敬失敬。

では、三日目の挑戦者を発表します!

次は…穴雲星也クン!

 

「…僕?」

 

みんなの命が大事なら、昼時間中にゲームをクリアする事!

ゲームの開始は明日の午前7時からだよ。

それじゃ、明日も頑張ってね!

 

 

 

「…ふぅ。助かったぁああ…!」

「危うく処刑されるところだったねぇ。」

「本当、心臓に悪いよ。」

「にゃははー。まさかゲームのバグに救われるとはね。ホントラッキーですわ。…あ、そのせいでゲームクリアできなかったんだから逆にアンラッキーかw」

「ッ!!!」

陽一クンは、天理クンの胸ぐらを掴んだ。

「ふざけんじゃねぇぞテメェ!!」

「…ねぇ、痛いんだけど。離してよ。」

「お前、これでもし誰かが処刑されたらどうするつもりだったんだよ。テメェ、自分が何をしでかしたのか、わかってねェわけじゃねェよな!!?テメェのせいで誰かが死ぬところだったんだぞ!!」

「そんな事言われてもねぇ。もう終わった事だし。結果的に誰も死んでないんだからいいじゃん別に。」

「結果論じゃないか。その様子だと君、いい死に方しないよ?」

「えへへ、褒められた。」

「褒めてないよ。」

「ほいじゃー俺の役目はここまでという事で。穴雲クン、明日は是非とも頑張りたまえ。」

「…君ねぇ。」

「じゃあ俺はもう寝るから。おやすみなさぁい。」

 

「…チッ、なんなんだアイツ。」

「陽一クン。気持ちは分からなくもないけど、一回落ち着こっか。」

「狛研ちゃん!!アイツは…」

「狛研さんの言う通りだよ、栄君。確かに、財原君は取り返しのつかない事をするところだったけれど…でも、そうやって毎日怒ってたら身が保たないよ。それに、疲れててピリピリしてるのはみんな同じなんだからさ。」

「…チッ、わぁったよ。」

「それじゃあ、もう10時過ぎてるし部屋に戻ろっか。」

「はーい。」

…なんかみんな、ゲームの乗っ取りの事もあってか、ちょっとピリピリしてるような気がするなぁ。

このままで本当に大丈夫かな…

 



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第5章(非)日常編④

「うーん…」

ボクは、独房で目が覚めた。

『フッフッフ。おはようございます!!起床時間ですよ!!アナタ達、今すぐ起床しなさい!!しないとブチ●しますよ。』

…あーあ。

またこれだよ。

ベルさん達って暇なのかなぁ。

さてと、朝の支度して食堂に行かないとね。

 

 

 

 

【食堂】

 

「おはようみんな。」

「おはようございます。」

「おう、おはよ!」

「おはよ〜♪」

「あれ?星也クンは?」

「ああ、穴雲君なら、朝ご飯の前にゲームを終わらせたいから遅れるってさ。ホント、誰かさんと違って仕事が早いよね。」

「…はは。」

 

「誰かさんって誰の事?」

天理クンが後ろから声をかけてきた。

「おはよぉ〜。」

「おう。何の用だクソ虫。」

「そこまで言わなくてもいいじゃねーですか。あれ?穴雲クンは?もー、遅刻はダメでしょー!?」

「…君がいうか。」

「穴雲は、ゲームやってるから遅れるってよ。」

「ふーん。」

 

「ごめん、お待たせみんな。」

「あっ、おはよう星也クン!」

「ゲームはさっきクリアしたよ。ほら。」

「さすが穴雲!」

「…さてと。これで今日はゆっくりできるね。…治奈。明日のゲームは君だけど、大丈夫?」

「はい…私、頑張ります。」

「はいはいイチャイチャしてないでメシ食うぞ。」

「お前なぁ…」

 

 

 

 

うーん、おいしかった。

ごちそうさま。

「あ、いたいた。狛研サーン!」

「あ、天理クン。」

「もう、探したよー!…ねえ、ちょっとゲームしない?」

「ゲーム?」

「ちょっと面白いゲーム思いついてさ。最近付き合ってくれる相手がいなくて暇なんだよ。付き合ってよ。」

「えー。どうしよっかなー?」

「もし俺に勝ったら、一個だけなんでも言う事聞いてあげる!…どう?」

一体何が目的なんだろう…

…でももし勝ったら、色々聞き出せるかな。

「うん、それならやるやるー!」

「OK。じゃあ娯楽室に行こうか。」

 

 

 

 

【娯楽室】

 

「さてと、じゃあゲーム始めよっか!」

天理クンは、手際良くトランプを切った。

「トランプ?」

「うん。ここには、ジョーカーを除く52枚のカードがあります。俺はカードを切るから、その間に狛研サンは赤か黒かどっちか言って。そしたらそのタイミングで手を止めて、束の一番上のカードを引きます。そのカードの色が当たってたら狛研サンの勝ち!…簡単でしょ?」

普通に考えれば確率は半々だよね。

でもなー。この子の相手したら絶対負けるじゃん。

「ちなみに聞いてなかったけど、ボクが負けたらどうなるの?」

「うーん…その時は何もナシでいいかな。明らかに俺に有利な条件だしね。文句ある?」

「…いや?」

「じゃあ始めよっか。ふんふ〜ん♪」

天理クンはカードを切り始めた。

…迷ってても仕方ない、こういうのは思い切りが大事!

「黒!!」

天理クンの眉がピクリと動いた。

そして、ニヤリと笑うとカードの束をテーブルの上に置いて、左手でカードをめくった。

 

「…スペードのA。キミの勝ちだね。おめでとう。」

「あれっ?」

あれれ?勝っちゃった。

天理クン相手だから絶対負けると思ってたのに…

「あれ?どうしたの狛研サン。勝ったのになんか腑に落ちない事でもある?」

「…あ、いや…別に…」

「さてと、じゃあなんでも言う事聞いてあげる。…どうする?」

「うーん…じゃあ、キミの話を詳しく聞かせてよ。」

「いいよー。じゃあ、3つまで答えてあげる。」

「なんでも言う事聞くって言ったじゃん…」

「だっていくつも質問されたらキリないし。どうする?」

 

「えぇー…じゃあ、なんでいっつもゲームに勝てるわけ?」

「うーん。強いて言うなら未来予知?…っていうのは冗談で、実際にはゲームの『本質』を見抜いてるからかな。ゲームの勝利条件、勝率、ゲームに使われる道具…そういう要素全部をひっくるめた結果導き出される最適解を見つけ出す…多分、俺はその力が常人より優れてるんだよね。」

「多分?」

「今のは、俺なりの自己分析。本当は俺自身、自分の才能をよくわかってないの。だって、俺の場合、ゲームの本質を見抜くっていう作業が無意識にできちゃってるみたいだし。」

「じゃあ、勘のめっちゃスゴいバージョンって事?」

「すごいまとめ方が雑だけど…まあそうなるね。」

「ふーん。」

「さて、2つ目の質問をどうぞ?」

 

「天理クンって、大切な人はいるの?」

「大切な人?」

「みんなには、そういう人いるのかとか聞いてるからさ。ほら、そういう人がいるって思うと生きる活力になるでしょ?」

天理クンは、頭を少し下げて首筋を掻いた。

…考える時の癖なのかなコレ。

「…大切な人、か。…そういえば、俺の娘は今頃どうしてるかなぁ。」

「…え?」

娘?待って、どゆこと?

「俺さぁ。知っての通り、メッチャ女の子にモテるじゃん?」

「う、うん?」

「それでさー。ついつい遊びすぎちゃって。遊び相手の女の子を、そのー…ですね。妊娠させてしまいましてw」

「はぁああああ!!?」

ちょいちょいちょいちょい!!

え、待って!?嘘でしょ!?高校生だよね!?

高校生でお父さんって事!?あり得なくない!?

「で、その子には縁を切られちゃってさ。それから一度も連絡取ってないんだよね。…でも、ふとした時に心配になっちゃってさ。ほら、俺もこんなだけど一応アイツの父親だしさ。」

 

う゛ーん。

色々と疑問に思う事はあるけど、天理クンが大事に思う人なら、それでいいのかなぁ。

「…会えるといいね。その子。そのためにも、ここから生きて脱出して…」

 

「プッ、ハハハハ!!!」

「え、なんかおかしな事言った?」

「やー、ごめんごめん。…でもひとつ言わせて。今の話、全部ウ・ソ♡」

は!?

「いやいやいや!!嘘って、どういう事!?真面目に聞いて損したよ!」

「いやー、狛研サンかわいいからちょっとからかいたくなっちゃって。てかさ、冷静に考えてみなよ。別れてから一度も連絡取ってないのに、息子か娘かわかるわけなくない?この矛盾は俺からのヒントだったんだけどなー。」

「あっ…なんだよもう!!質問に答えるって言ったじゃん!!」

「ごめんごめん。今のは冗談。ちゃんと答えるから許してよ。」

「もうっ。」

「…大切な人か。とりあえず、今はキミって事にしておこうかな。」

全く…こっちは真面目に質問してるのに、嘘つくとかサイテー!

「さてと、最後の質問は?」

 

「えっと…」

…そういえばこの会話、聞かれてるんだっけ。

ボクは、紙に書きながら言った。

「天理クンさぁ、好きな食べ物何?」

『ここからは真面目な質問。乗っ取り犯や内通者について何か気付いた事は?』

それを見た天理クンは、紙に書きながら言った。

「ガ●ガリ君。あとTKGとかかなー。」

『…内通者については大体目星はついた。既に網も張ってある』

「へー。」

『意外と用意周到だね。今の所どの程度絞れてるの?』

「…じゃあ嫌いな食べ物は?」

『一人、怪しいと思ってる奴がいる』

『誰?』

「おっと、もう3つ目の質問には答えただろ?わがままだなぁ。それともそんなに俺の事が好きなの?」

 

『神座威織』

 

「ッ!!違う!!」

『ゐをりちゃんは、そんな子じゃない』

「違わないでしょ。俺の事が好きなの見え見えだよ。」

『とことん疑って言ってんの。それがたとえ、今一緒に話してる俺や、仲のいい友達…最悪の場合、自分さえもね』

「…違うって言ってるでしょ。」

『網っていうのは?』

「またまたー。」

『美術室に盗聴器を仕掛けておいた。神座サンを美術室に呼んで話をしてくれ。本人には絶対に悟られないようにしろよ。あと、本人に会ったら出来るだけ長く会話しろ。』

「ホンット天理クンってサイテー!」

『わかった。とりあえず、キミの証言は頭の片隅に置いておくよ。』

「怒るなって。じゃあ質問には答えたし、俺はこの辺で失礼するよ。それじゃあ、そろそろ昼飯の時間だし行こうか。」

「んもー…」

ゐをりちゃんが内通者…?

そんな、そんなの信じられるわけないよ…

 

 

 

 

【食堂】

 

…まだ昼ご飯までちょっと時間があるな。

それにしても、天理クンが早く来るなんて珍しいね。

まあ、ボクと一緒だからなんだけど。

「来たよ。」

「ほにゃあー。」

「おう、狛研ちゃん!…と、クソ野郎。」

「ちょっとー、栄クン。いい加減にしてクレメンスー。」

「黙れゴミクズ。テメェのした事は絶対忘れねェかんな。」

「ひどいなー。あ、そうだ狛研サン。せっかくだし、昼飯の後お茶淹れてあげよっか。」

「いいの?」

「うん。俺もたまには役に立ちたいのさー。」

「変なモン出しやがったら承知しねぇぞ。」

「へーい。」

そんなこんなで全員揃った。

「…君が早く来るなんて珍しいね。きっと、今外では雪と雷が同時に降ってるよ。」

「えー。俺がパンクチュアルに行動すんのは天変地異レベルなのー?」

「じゃあ、みんな揃ったし席についてご飯食べようか。」

「あい賛成ー。」

 

 

 

 

うーんおいしかった。

「やあ女子達。食後にアフタヌーンティーでもどうかい?これ飲んだら一日の疲れが一気に取れるよ。」

天理クンがボク達にお茶を淹れてくれた。

「あ、ありがとうございます…」

「………。」

「なんで女子だけなんだい?オイラ達の分は?」

「うるっせーな。野郎は泥水でも飲んでろよ。それが嫌なら自分で淹れな。」

「えぇ…随分とまた横暴だなぁ。」

「さ、冷めないうちにどうぞ。…って、これアイスティーじゃんw」

…絶対何か入ってますよね。

「ん?なんか言った?」

「いえ、何も。」

「わーい、いただきまーす。」

 

え!?何これ!?

「うえ゛ぇーーーーー。まっずーーーーーーい。」

「え、狛研さん?どうしたの?」

「ちょっと、天理クン!淹れ方間違えたんじゃないの!?このお茶変な味する!」

「えー?そぉ?」

「…あ、あの…私、もうお腹いっぱいなので遠慮しておきますね。」

「…………………………私も。」

「えー、気に入ってもらえると思ったんだけどなぁ。あは、あははははははは…」

天理クンは、完全に目が泳いでいる。

「飲まないなら片付けるよ。いやー、ごめんね?」

「…待ちなよ。」

「へ?」

 

ガッ

 

星也クンは、いきなり天理クンに関節技をキメた。

「いだだだだだだだ!!!ちょっ、穴雲クン!?痛い痛い!!」

「わー、綺麗な腕ひしぎ十字固め。」

「栄君、身体検査。」

「お、おう。」

「え、ちょっと、やめてー。あっ、そこはダメッ…!栄クンのエッチー!」

「…あったぞ。」

「でかした栄君。」

陽一クンの手には、ピンク色の瓶とスポイトが握られていた。

「…えっ!?」

治奈ちゃんは、両手で口を押さえながら顔を真っ赤にしていた。

「え、ちょっと待って。何この瓶。天理クン、さっきのアイスティーに何入れたの?」

「…媚薬だよ。それも、モノクマが調合した超強力な、ね。」

「媚薬って?」

「いかがわしい気分にさせるような薬の事。」

「え゛っ。そうなの?もうっ、天理クンのエッチ!!」

「…全く、こんな物をみんなの飲むお茶の中に入れるなんて、油断も隙もないね君は。狛研さんが気づかなかったら今頃大変な事になってたよ。」

「てへっ☆…それにしても、よく気付いたね狛研サン。薬入れたのがわからないように、あえて香りが強いヤツ選んだのに。」

「なんか、明らかにお茶とは違う風味が混じってたから。」

「はははっ、森育ちだからそういうの敏感なのかなー。さーてと、俺はまだまだやる事が山積みだから離してクレメンス。」

 

「…このまま逃がすと思ってるの?」

「へ?」

「…どうやら君にはキツーいおしおきが必要なようだね?」

星也クンは、ドス黒いオーラを放ちながら笑顔で天理クンの胸ぐらを掴んだ。

「ははっ…ちょっ、冗談でしょ?ちょっと悪ふざけが過ぎただけじゃねえかよぉ…な?そうだ、お金あげるから見逃してよ。いくら欲しい?10億?100億?」

「…財原ァ。歯ぁ…喰いしばれぇえっ!!!」

 

「ぎゃあぁああぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

「…ふぅ。」

目の前には、天理クン()()()物体が転がっていた。

「…。」

「…なぁ。財原が原型とどめてねェけど、大丈夫なのか?」

「いいんだよみんな。むしろ、これくらいやらないと彼は反省しないと思うんだ。」

「そうかもしれませんが、少しやりすぎでは…?」

「あー、チクショウ…何もここまでやらなくても…」

「ほら、案外回復が早いじゃないか。」

「いや…もうボロボロじゃないですか。財原さん、今手当てするので安静にしていてくださいね。」

治奈ちゃんは、タオルで天理クンの血を拭いた。

 

「…白。」

「え?」

「にししっ、なあ癒川サン。パンツ見えてるよ。」

「なっ…!?」

治奈ちゃんは顔をトマトみたいに真っ赤にしながら、スカートを引っ張って隠した。

「み、見ないでください…治療に集中できませんから…!」

「いやー、眼福眼福…ぐほぁっ!!」

「君、本当にいい加減にしろよ。…大丈夫か、治奈。」

「あ、はい…」

「さてと、みんな。こんなバカは放っとこ?」

「あ、穴雲…おっかねぇ…」

「………うん。」

 

 

 

 

さてと。

昼ご飯食べ終わったし、ゐをりちゃんに話を聞こうかな?

「ゐをりちゃん!」

「…何。」

…正直、信じたくない。

この子が内通者だなんて。

きっと何かの間違いだ。

それを明らかにする意味でも、聞ける事は聞き出さなきゃ。

「あのさ、ちょっと話さない?一緒に絵でも描きながら!」

「…うん、私………絵、描くの…好き………」

 

 

 

 

【美術室】

 

「………。」

「あのさ、ゐをりちゃんって、絵上手だね。」

「………別に。好きで、描いてる…だけ…」

「でも、好きな事と得意な事が同じって、すごくラッキーな事じゃない?好きで得意な事を極められるなんて、最強じゃん。」

「…そんな事………ねえ…幸運、何…描いて…る、の…?」

「うさぎ。」

「…え。」

「うさぎ描いてるの。」

「…ごめん。………てっきり、ヤスデ…描いてる、の…かと………」

「えぇええ!?ヤスデ!?これ、ヤスデに見える!?」

自分で絵が下手な自覚はあったけど、まさかヤスデって言われると思わなかったな…

 

「…あの、幸運。」

「何?」

「………幸運、には………教える。…………私、の…ひみつ………」

「え?」

「………さっき、全部…思い…出し、た………」

「そっか。でもなんでボクに?」

「……………信頼、してる……」

「ホント!?ありがとゐをりちゃん!」

「…あの。」

「何?」

「…………私、の…ひみつ、知って………私、の…事………嫌い、に…なったり、しない………?」

「そんな事するわけないじゃん。どんな秘密があっても、ゐをりちゃんはゐをりちゃんだよ。」

「………ありがとう。…あの、話は…私の、研究室…で………」

「え、ここじゃダメ?」

「………ダメ。………誰か、に…聞かれ…たら、困る………」

どうしよう。

天理クンには、ここで話を聞き出せって言われたけど…

でも、ゐをりちゃんの意思を尊重すべきだよね。

「…わかった。じゃあ、ゐをりちゃんの研究室に連れてって。」

 

 

 

 

【超高校級の???】の研究室

 

「…へー。」

和風と洋風が入り混じったレトロな部屋だな。

なんか、大正ロマンって感じ?

でも、なんか血のシミが飛び散ってるな…

「…散らかっててごめん。椅子あるから適当に座って。」

「あれ?ゐをりちゃん…普通に喋れるの!?」

「…別に、喋れないって言った事は一度もない。喋るのが嫌いだから極力喋らないようにしてただけ。…人なんて誰も信用できないし。」

ゐをりちゃんは、ほっぺを膨らませながら言った。

メッチャかわいいんだけど!え、待って。写真撮っちゃダメかな!?

 

…ん?なんだろう。あの写真立ては。

白黒の写真には、ゐをりちゃんとよく似た女の子が写っている。

でも、写真立ての写真の方がどこか大人びてる気がする。

…じゃあ、あの写真は一体…?

「…気になる?」

「え?」

「あれ、私の写真。」

「え、そうなの?でも、ちょっと違うような気が…」

「…当たり前。だってそれ、厳密には()()()の写真じゃないから…」

「…え?」

どういう事?

「…教えてあげる。私が一体何者で、なんでここにいるのか。」

ゐをりちゃんは、髪留めを外すと、話し始めた。

 

「…その前に、確認だけど…あなたは、『神座出流』って言ってわかる?」

「ああ、うん。えっと…確か、希望ヶ峰学園の創設者でしょ?」

「…それがわかってるなら、話は早い。…実は、私は神座出流の娘なの。」

「…え!?ちょっと待って?希望ヶ峰学園が創設されたのって、もう100年も昔の話でしょ!?じゃあ、ゐをりちゃん今いくつ!?」

「あの、落ち着いて…順を追って話すから…」

「あ、ごめん。」

「私のお父様は、将来有望な若者を育成するために、学園を創設したの。当時ちょうどあなた達くらいの歳だった私も、希望ヶ峰学園の1期生として入学したわけ。」

「…うん、それで?」

「…一個、問題があったの。」

「問題?」

 

「自分で自分の事を言うのはなんだけど…当時の私は、あらゆる分野において空前絶後の大記録を残すような才能を持ってて…私は、神童として崇められてた。」

自慢っぽく聞こえるけど、それが事実ならすごい事だよね。

「あらゆる分野の【超高校級】をもってしても、誰もが私の持つ才能の前に挫折して、絶望した。…だから私は【超高校級の絶望】って呼ばれるようになったの。」

ああ、なるほど…

だから【超高校級の絶望】…

じゃあ、20年前に世界中を大混乱に陥らせた【超高校級の絶望】とは全然違うんだね。

 

「それで、最初は崇められてた私も、だんだんと嫉妬や憎悪の対象になっていって…最終的に、私に絶望に堕とされた人達に、この部屋で殺されたわ。」

「なにそれ!完全に逆恨みじゃん!ゐをりちゃんは悪くないのに…ひどすぎるよ!」

「その事を悔やんだお父様達は、これ以上『絶望』が蔓延しないように学園のやり方を一から組み直したの。将来有望な生徒を育成するだけじゃなくて、その生徒達が将来『希望』となるような教育を…そういう方針に変えていったの。」

「…そうなんだ。」

「そして、もし絶望がまた現れた時絶望を撲滅するために、私の才能を再現して生徒に植え付ける研究もされたみたい。…確か、38年前の話だっけ。」

 

「…あの、本題を急かすようで悪いんだけど。じゃあ、キミは一体誰なの?」

「え…?」

「だって、キミは100年前に死んでるんでしょ。…まさか、幽霊だなんて言わないよね?」

「それも今話す。…私が死んだ後、実はその力を利用しようとする人がいたの。」

「利用?」

「うん。彼は、私の才能を、38年前の研究とは別の方法で再現しようとしたのよ。…それも、非合法的な方法でね。」

「まさか…」

 

「そうよ。…私は、【超高校級の絶望】神座威織の複製体。私は、彼女を再現するために作り出された人形なの。」

複製体って…クローンだよね。

じゃあ、今ここにいるゐをりちゃんは、神座威織のクローンって事?

「私は、神座威織から才能と記憶の一部を受け継いで、それを再現するために生み出されたの。本物は100年前に死んでるから、それより後の事は私の記憶にない。…私が今話してる内容も、私自身が後で調べた事よ。」

だからゐをりちゃん、機械とかに詳しくなかったんだね。

「…でも、実験には失敗がつきもの。そう簡単に『神座威織』を再現できるわけがなかったの。」

「と、いうと?」

「遺伝子を複製するたびに、受け継がれる性質っていうのは劣化していくものなのよ。才能も例外じゃない。実験のために私は何度も生み出されて、その度に才能が劣化していって…今の私は、本物が持っていた才能をほとんど失ってしまったの。」

「でも、さっき見せてくれた絵は上手かったじゃん。それに、裁判の時はすごいスピードで天理クンの事を捕まえてたし…あれはなんでなの?」

「私もよくわかっていないのだけれど…素体の思い入れが強い分野に関しては、あんまり劣化しない事があるみたい。」

…思い入れ、か。

 

「ねえ、ゐをりちゃん。…もしかして今のゐをりちゃんは、本物の威織ちゃんが『なりたかった自分』なんじゃないのかな?」

「…え?」

「ちょっと不器用なところもあるけど自分の好きな事に一生懸命で、自分の知らない事に興味津々で、対等に話し合える友達に恵まれてて…多分、それって威織ちゃんが欲しかったものなんだよ。」

「私の、なりたかった自分…?」

「きっとそうだよ。だってゐをりちゃん、さっき思いが強ければ劣化しないって言ってたでしょ?だから多分、今のゐをりちゃんは、威織ちゃんの欲しかったものを映す鏡なんだと思うよ。」

「…。」

 

 

 

『笑われるから誰にも言った事なかったけれど、私…欲しい物があるの。』

 

『…友達。才能とか関係なく、当たり前のように一緒にいてくれる友達が欲しかったの。』

 

 

 

「…私。」

「だからさ、ゐをりちゃん。ボク達の事、名前で呼んでくれないかな?」

「…え?」

「だってボク達、友達でしょ?」

「…うん、か…叶…」

「えへへ、やっと名前で呼んでくれたね。」

「それは、あなたが言うから…」

「…ぷっ、あはは!」

「え、何…どうしたの?」

「…いや、ゐをりちゃんがそんなに嬉しそうな顔してるの、初めて見たから。」

「…そう。」

 

「あ!いけね。忘れるとこだった。」

「?」

「はい、コレ!プレゼント!」

「…!」

「花の髪飾り。どう?気に入ってくれると嬉しいんだけど。」

「…あの、叶…これ、どこで…」

「ガチャでゲットしたんだけど…どうしたの?」

「…これは、最期の誕生日にお父様に貰ったものだった。…本物の私が死んで、捨てられたと思ってたけど…やっと見つけた。ありがとう、叶。」

「いえいえー。こっちこそ、ゐをりちゃんに気に入ってもらえて良かったよ。」

「…うん。」

「あ、そろそろご飯の時間だし、行こっか。」

「…そうね。」

 

《神座ゐをりの好感度が1上がった》

 

 

 

 

【食堂】

 

「お待たせー!」

「…お待たせ。」

「お、今日は狛研ちゃんと神座ちゃんが一緒か!なんか珍しい組み合わせだな!」

「さっきまで一緒に話してたから一緒に入ってきただけよ。」

「あれ?神座君…君、そんなに喋る人だっけ?」

「…別に、喋れないって言った事なんて一度も無いんだけど。あなた達と会話をするのが嫌いだったから話さなかっただけよ。」

「急に饒舌になったねぇ。」

 

「…でも叶が、私の事を理解してくれて…友達だって言ってくれたから…少しだけ、会話をするのも嫌いじゃないって思えたの。」

ゐをりちゃんは、顔を少し赤くしながら、ボクの服の袖を引っ張った。

「…うへへ、百合百合しいなぁ。女子同士がイチャついてんのってなんか萌えるな。」

「うんうん、わかるよ栄君。」

あそこ二人は何を言ってるんだろう?

ゐをりちゃんは友達だよ?

「おーっす、ごめーん。お待たせみんなー。」

「…君はまた遅刻か。」

「…コイツ、不愉快…叶、下がってて。叶は私が守る。」

「え、あー、うん?」

「え、何?どうしたの神座サン。狛研サンの事好きなの?初恋おめでとー♪はい拍手ー。」

「…と、友達だから…!」

ゐをりちゃんは、顔を真っ赤にしながら天理クンを睨んだ。

ゐをりちゃんってばホンットかわいいよね!

「さてと、じゃあ全員揃ったし、ご飯食べちゃおうか。」

「賛成ー。俺、もう腹減りすぎて死にそうー。」

 

 

 

 

はー、食べた食べたー。

今日はゐをりちゃんと仲良くなれてよかったな。

 

『とことん疑って言ってんの。それがたとえ、今一緒に話してる俺や、仲のいい友達…最悪の場合、自分さえもね』

 

…天理クン。やっぱりボクは、仲間を疑えない。

ゐをりちゃんだって、天理クンは疑ってるみたいだけど…あの子は内通なんてするような子じゃないよ。

決めた。

天理クンを説得しに行こう。

甘いって言われるかもしれないけど、別にそれでもいい。

ボクは、今度こそみんなを信じたいんだ。

 

…あれ?

「開いてる…」

天理クン、研究室のドア閉め忘れたのかな?

まあでもちょうどいいや。

ボクも天理クンに用があったところだし。

早速説得しに行こう。

 

 

 

 

【超高校級の資産家】の研究室

 

「天理クン?」

…いないな。

…ん?

引き出しが少し開いてる…

開けっぱなしでどっか行っちゃうなんて、あの子意外とおっちょこちょいなんだな。

ん?

 

 

 

ーーーーーーーえ。

 

 

 

 

 

引き出しの中には、タブレットが入っていた。

そこには、一件のメールが届いていた。

 

 

 

財原クン!内通の件だけど、うまくいってる?

ただでさえやる事多くてベリーハードなのに、乗っ取り犯の対応までさせちゃってごめんクマねー。

それじゃ、何か生徒に異変があったら逐一報告してね!

 

 

 

 

…は?

何このメール。

クマさん達から…?

って事は、天理クンが内通者…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人の部屋で何やってんの?」

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーッ!!?」

気がつくと、背後数センチのところに天理クンが立っていた。

よく見てみると、左手には果物ナイフを握っている。

「あっ…!」

「…そのタブレットが気になる?安心しなよ。それは、わざと置いたヤツだから。そこにそうやって置いておけば、俺の事を嗅ぎ回るヤツを見つけられるんじゃないかと思ってね。」

「キ、キミは一体…」

 

 

 

「…娯楽室。」

「…えっ?」

「キミの動きが怪しいから、娯楽室に盗聴器を仕掛けさせてもらった。…でも不思議な事に、さっき探したらその盗聴器がなくなってたんだ。」

「な、何を言って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…キミが内通者だったんだね、狛研叶サン。」

 

 

 

 

 

 




今回財原クンが穴雲クンに殺されかけましたが、ギャグ補正で死んでません。
よって、おしおきの対象にもなりません。
ギャグ補正・主人公補正・味方補正は魔法の言葉。
それさえあればどんな理不尽も許される。



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第5章(非)日常編⑤

時間設定にミスがあったので編集


「…キミが内通者だったんだね、狛研叶サン。」

「ッーーーーーーーーーー!!?」

天理クンは、ナイフをこっちに向けて一歩ずつゆっくりと近づいてくる。

「…なーんて。」

 

「言うとでも思ったか?」

「…へ?」

天理クンは、ヘラヘラと笑いながら、右手のリンゴを取り出した。

「フルーツ持ってきてあげたよ。食べる?」

「…は、はははは…」

フ、フルーツ…

「どうしたの?」

天理クンは、ソファーにどっかりと座ってリンゴの皮を剥きながら話しかけてきた。

「…ああいや、てっきりボクが内通者だと疑われたものだと思ってたから…」

「にゃはは。ンなわけないじゃん。…でも、狛研サンの行動のおかげで、俺からしたら内通者を特定できた。」

「えっ?」

「俺はね、全員の部屋や研究室を見てまわったとき、ある物を探してたんだよ。」

「あるもの?」

「…通信機器だよ。内通者なら、黒幕と連絡を取り合うためにそういうのを研究室に置いてるんじゃないかと思ってな。」

「それで?」

「っていっても、そんなモンを剥き出しにして置いてる程、内通者もバカじゃないって思ってさ。だから別の可能性を探ってた。」

「別の可能性?」

 

「…音だよ。もし内通者なら、黒幕と連絡を取り合うために使う部屋があるんじゃないかと思ってよ。…そしたら案の定、壁に不自然な空洞がある部屋が3部屋あったよ。」

「その3部屋って?」

「…今回開放された3人の研究室。だから俺は誰が内通者なのか特定するために網を張った。」

「網?」

「その3人に、あえて内通者だと睨んでいる人を教えてみたんだよ。…もちろん、他の二人には聞かれないようにな。」

あれ、他の二人にも言ってたって事!?

「えっ、じゃあボクにゐをりちゃんを調べろって言ったのは!?」

「キミが内通者だった時のための罠だよ。あの時反応を見ていたのは、神座サンじゃなくてキミの方だったんだよ。…でも、キミはシロだった。」

「じゃあ、娯楽室の盗聴器がなくなってたっていうのは…!?」

「…さっきも言ったように、俺は3人に同じ事を言っていた。内通者候補の名前だけ変えてな。それで、娯楽室に仕掛けた盗聴器がなくなってたんだ。」

「え?だったらなんで内通者を特定できるんだっけ?盗聴器が回収されてたんでしょ?」

「察しが悪いなぁ。…俺が調べていたのは、盗聴器の音声じゃなくて、盗聴器が回収されているかどうかだったんだよ。だって、普通自分が内通者なら、よく行く部屋に盗聴器なんて仕掛けられてんの嫌だろ?だから、俺の読みが正しければ一部屋だけ盗聴器が回収されてるはずなんだよ。」

「でも、だったらなんでボクが内通者じゃないの?ボクを調べようと思って仕掛けた盗聴器がなくなってたんだよね。」

「そりゃあ、内通者もバカじゃないからな。自分の持ち場に仕掛けられた盗聴器を回収したら、自分が犯人ですって言ってるようなモンだ。…だから、他の内通者候補に濡れ衣を着せたんだよ。」

「え、じゃあ誰が内通者だったの?」

 

天理クンは、見上げるようにして睨むと、皮を剥く手を止めた。

「…。」

 

 

 

ザクッ

 

 

 

そして、ナイフを剥きかけのリンゴに突き刺した。

 

「…癒川治奈。アイツには気を付けろ。」

…え!?

そんな、嘘でしょ?

治奈ちゃんが、内通者…!?

「そんな、何かの間違いだよね?治奈ちゃんが内通者なわけないじゃん!!」

「…俺はそれぞれ、狛研サンには神座サンが、神座サンには癒川サンが、癒川サンには狛研サンが怪しいって言ってたんだよ。それで、その3人にはそれぞれ、狛研サンには美術室、神座サンには化学室、癒川サンには娯楽室に盗聴器を仕掛けたって教えておいた。結果、盗聴器が回収されてたのは娯楽室だけだった。…キミは濡れ衣を着せられただけだ。…癒川治奈。アイツが真犯人だ。」

「…そんな。」

「いいか。アイツの前では絶対に喋りすぎるな。会話は全部筒抜けだ。…それと。」

「何?」

「…いや、これはあくまで俺の中での最悪のシナリオだけど…」

「うん。」

 

 

 

「…黒幕と知能犯は裏で繋がってる。」

「…え?」

「よく考えてみろよ。もし知能犯がひとりで勝手にやってる事だったら、クマちゃんがいきなりおしおきのルールを変更したり、俺らがあんなクソゲーやらされてるのを黙って見てるとか、不自然な点だらけだろ。…決定的だったのは、学園の重要なネットワークがいとも簡単に乗っ取られた事だよ。パスワードが一回解除されたにもかかわらず再設定せずに放置しとくとか、何の優しさだよ。」

「あっ…」

「…とにかくだ。俺らに今できる事は、こっちから情報を一切漏らさない事だ。何があっても、絶対に重要な情報は漏らすな。もちろん、内通者の正体に気づいた事も、俺とキミだけの内緒な。」

「…ねえ。」

「何?」

「なんで天理クンは、ボクに協力してくれるの?今まで散々ボク達の邪魔をしてきたのに。」

「言ったろ?俺は、『囚われのマリアのための交響曲』の続きが知りたいんだよ。あの作品は、このゲームでいうとちょうどラッセクンが死んだ所で終わってる。」

「そうなんだ。…でも、天理クン、そう言ってる割にはやけにボクにだけ協力的だよね。作品の続きを完成させたいなら、尚更みんなに協力すればいいじゃん。」

「それ、俺に言わせる?」

「それに、もうひとつ気になってる事があるんだ。天理クンさぁ、お金持ちならみんなを買収したりとか簡単にできるよね。でも、ボクの事はお金とかそういうの関係なく信じてくれてるよね。なんでなの?」

「…狛研サン、ひとついい事教えてあげよっか?」

「何?」

「俺、女の子に現金以外の物プレゼントしたの、狛研サンが初めてなんだよ?」

「…え?」

「俺、ぶっちゃけ今まで世の中金で買えないものなんて無いと思ってたんだよね。地位も、名声も、信頼も、時には才能さえもね。でも、俺ってこう見えて意外とロマンチストだからさ。好きな人の心だけはどうしてもお金で買いたくないんだよね。」

「そうなんだ。」

「…なーんてね。」

天理クンは、いつものあっけらかんとした笑顔に戻った。

 

「…あ、そうそう。これ見てよ。」

天理クンは、壁にかけてあった額縁を取り出して見せた。

そこにはトランプの上に今まで犠牲になったみんなの顔写真が貼られていて、ダーツの矢が刺さっていた。

「これって…」

「今まで犠牲になったヤツが何のカードだったのか、俺なりに考察してみた。現時点で残ってるのは、スペードのA、ハートのA、ダイヤのA、スペードのK、クラブのK、ハートのQ、ダイヤのJの7枚だ。」

「…そっか。教えてくれてありがと。」

「どういたまして。」

「…あの。」

「何?」

「ボク、キミが今までやってきた事は許せないけど…でも、少なくとも今は、キミなりにこの状況をなんとかしようとしてるっていうのは伝わるからさ。だから、ボクはキミを信じるね。」

「…そうか。」

 

「…狛研サン。」

「何?」

「…ありがとう。」

天理クンは、ボクの顔を見上げて言った。

…気のせいかもしれないけど、天理クンの顔はなんだか哀しそうな顔をしているような気がする。

「らしくないなぁ。お礼を言うのはまだ早いよ。ボク達は、知能犯と黒幕をやっつけてここを出ないと。」

「…だな。」

「さてと、もう遅い時間だからそろそろ寝よっか!」

「もうそんな時間?じゃあ、部屋に行こうか。」

「…だね。」

 

 

 

 

…治奈ちゃんが内通者、か。

到底信じられないような話だけど…

それが事実だとすれば、治奈ちゃんはなんで黒幕なんかに協力してるんだろう。

…あんないい子なんだもん、きっと理由があるんだよ!

そう、だよね…?

 

ん?

…あれ?

天理クンが歩いてる後ろの物陰に、誰かいる気が…

…まさか!

 

ヒュッ

 

 

 

「危ない!!」

「ん?」

ボクは、天理クンを咄嗟に庇った。

…次の瞬間。

 

ゴッ

 

「がっ…!」

頭に、鈍い痛みが走る。

視界がボヤけて、力が抜けていく。

 

「…。」

誰かが物陰の奥へと逃げていく。

…待っ、て…

キミは、一体…

 

 

 

…誰なの?

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「…あれ?」

目の前は、あたり一面暗闇だった。

…ここは一体?

「…さん。」

…誰?

「…叶さん。」

この声は…

 

凶夜クン!?

…だけじゃないな。

隥恵ちゃんも、踊子ちゃんも、彩蝶ちゃんも、翠ちゃんも、成威斗クンも、雪梅ちゃんも、剣ちゃんも、才刃クンも、ラッセクンもみんないる。

…って事は、待って!?ボク、もしかして死んだ!?

いやいやいや!ちょっと待って!急すぎない!?

…あれ?でもボク、ここに来る前って何してたんだっけ?

ダメだ、全く思い出せない。

「…叶さん。思ったより来るの早かったね。どうしたの?」

「いや…わかんない。全然思い出せないんだ。」

「そっか。…じゃあ、そろそろ行こっか。みんな待ってるよ。」

「…あ。」

みんなが、こっちに手を振っている。

…多分、向こうに行ったらもう二度と戻れない気がする。

…でも。

「…うん、そうだね。」

まあいっか。

今までの事、全然思い出せないし。

…それになんか、何もかもどうでもよくなってきた。

ボクは、凶夜クンの手を取って歩き出そうとした。

 

「…あれ?」

「叶さん、どうしたの?」

「…わかんない。わかんない、けど…全然前に進めない…」

「何言ってるの?早く行かないと間に合わないよ。」

「わかってる!…でも、なんか…大事な事を忘れてるような…」

…!

これは、凶夜クンがくれたペンダント…

…そうだ、思い出した。

ボクは、絶対生き残るって決めたんだ。

生きてあんな檻から出てやるって、みんなで決めた。

…だから。

 

パシッ

 

「…叶さん?」

「ごめん、凶夜クン。まだそっちには行けない。ボクは、どうしても戻らなきゃいけないんだ。」

「…そっか。そうだったね。…いってらっしゃい。」

凶夜クンが指を鳴らすと、扉が現れた。

「これで向こうに帰れるよ。みんなの所に行ってあげて。」

「…ありがとう。」

扉を開けて帰ろうとした、その時だった。

 

ドンッ

 

後ろから誰かに背中を押された。

その顔は、笑っているように見えた。

「お父さ…」

 

 

 

 

 

「…はっ、あぁあっ!!?」

気がつくと、ソファーで横になっていた。

「…あ、起きた?」

「叶…!」

「狛研ちゃん…良かったぁああ…!!」

「狛研さん…本当に、生きていてくれてよかった…!」

ソファーの周りには、みんながいた。

「…えっと、ここは…」

「俺の研究室。」

「あれ…?ボク、一体何を…」

「狛研さん、大変だったんだよ。頭から血を流して倒れてて…ホントに、さっきまで脈が無かったんだから。」

「癒川君が治療してくれなかったら、どうなっていた事か…」

「…そっか、ありがとう治奈ちゃん。」

「いえ…」

あれ?なんだ、この違和感は…

何か大事な事を忘れてるような…

「ねえ、あの…ボク、さっきまで何してたっけ?」

「…。」

天理クンは、ぽかーんとした表情で見ていた。

「…うっわ、マジか。…どこまで覚えてる?」

「えっと…晩ご飯の時くらい?」

「あー、マジかー…ねえ、みんな。今日はもう遅いし、そろそろ部屋戻ったら?」

「え、でも…」

「狛研サンも、重傷負ってるんだよ。これ以上ギャーギャー騒いだら傷に響くだろー?」

「…ケッ、いっつもギャーギャー騒いでんのはテメェだろ。」

「じゃ、そういうわけだからとっとと行った行った!…と。狛研サン。さっきまでの話、本当に覚えてない?」

「うん、全く。」

「じゃあ全部話してやるから。」

「…わかった。」

 

ボクは、天理クンから起こった事を全部聞いた。

「…。」

「思い出した?」

「うん、ぼんやりと。…そうだったね。そういえば、そんな話してたね。」

「思い出せたんだったら良かった。」

「…ごめん。迷惑かけたでしょ。」

「いや、いいよ。キミが庇ってくれなかったら、そうなってたのは俺の方だったからね。」

「…。」

「頭の傷はどう?大丈夫そう?」

「あ、うん。まあね。思ったより大丈夫そう。…治奈ちゃんが治療してくれたおかげかな。」

治奈ちゃん…あの子内通者なら、なんでボクを助けてくれたんだろう。

「水飲む?欲しかったら取ってくるけど。」

「…。」

「何?どうかした?」

「…いや、天理クン。なんか今日、やけに優しくない?なんかあった?」

「失礼だな。俺は元々優しいっての。」

「そうだっけ?」

「そうなの。」

変なの。いっつもふざけてばっかで優しくしてくれた事なんて無いじゃん。

優しい天理クンって、なんか逆に気持ち悪いね。

「…狛研サン。」

「何?」

 

「…。」

「え?」

天理クンは、いきなりボクに抱きついてきた。

「…本当によかった。生きていてくれて。」

はぁ?え、ちょっと待って。今日の天理クン、マジでおかしい。変な物でも食べたのかな?

「天理ク…」

「…勝手に俺を置いて死んだりすんなよな。キミは、俺にとって大事な人なんだからさ。」

「え?あ、うん…」

天理クンは、ボクの肩に顔をうずめながら涙声で言った。

…そんなに心配してくれてたのか。

心配かけさせたのはちょっと申し訳なかったかな。

「…ありがとう、天理クン。でももう大丈夫だから。」

「やだ。もーちょいこのまま。」

「ちょっと、ホントにそろそろ部屋に戻んないと。」

「やだやだー。」

「ダダこねないでよ天理クン。子供じゃあるまいし。」

「俺はまだまだ子供だもんねー。絶対死なないって約束してくれなきゃやだ。」

「…わかったよ。ボクは絶対生き残るし、もう誰も死なせない。…だから。」

 

「いいの。」

「え?」

「生きていてくれるだけでいいの!」

「…うん。ボクは、絶対に生きてここから出る。…約束するよ。」

「にししっ、じゃあ許す。」

天理クンは、顔を上げると満面の笑みを浮かべた。

「あれっ?泣いてないじゃん!さっきの、もしかして嘘泣き!?」

「えへへ。」

治奈ちゃんに、天理クンまで!

嘘泣きとかひどいよー!

「じゃあ、もう遅い時間だから行くね。おやすみ天理クン。」

「うん、おやすみなさぁーい。」

 

研究室を出ようとした、その時だった。

「狛研サン!」

「…何?」

「なんでもない。」

「…なにそれ。」

珍しく真面目な話するなーって思ってたのに。

やっぱ、天理クンって何考えてんのかわっかんないよね!

さてと。だいぶ回復したし部屋戻るか。

 

《財原天理の好感度が1上がった》

 

 

 

 

「狛研さん。」

「あ、星也クン。どうしたの?」

「心配で様子見に来ちゃった。飲み物でもどう?」

「…ありがとう。」

星也クン…もう遅い時間なのにわざわざお見舞いに来てくれるなんて、優しいなぁ。

 

「ぷっはー。生き返るー。」

「…ははっ、狛研さんってなんか少しおじさんみたいだよね。」

「うっ…よく言われる。」

「やっぱり。」

「治奈ちゃんは?一緒じゃないの?」

「治奈なら部屋で寝てるよ。起こしちゃ悪いしね。」

「ふーん。」

 

「ねえ、財原君と何を話してたの?あ、変な事されたりとかはしてないよね?」

「ううん。ちょっと色々と愚痴りあってただけ。」

「…そう。」

「…あっ。」

「どうかした?」

「…あのさ、一個聞いてもいい?」

「何?」

「昨日天理クンとゲームしたんだけどね。ちょっと気になる事があったの。」

「気になる事?」

「うん。天理クンがカードを切って、ボクが赤か黒か言って、その直後に天理クンがカードの束の一番上のカードを引いてそのカードの色を当てられるかどうかっていうゲームをやったの。」

「うん、それで?」

「ボク、一番下のカードの色を覚えてて、それを目で追ってたんだ。あれは、確かに赤だった。それで、天理クンがカードを切るのをやめた時、確かに一番上のカードは、ボクが見たカードだったんだ。…でも、天理クンが引いたのはなぜか黒いカードだったの。なんでなのか、星也クンわかる?」

 

「ああ、それはすごく初歩的なトリックだよ。」

「と、いうと?」

「まず、あらかじめ両手にそれぞれ違う色のカードを隠し持っておくんだ。それで、狛研さんがカードの色を言ったタイミングでカードを切るのをやめたら、束の一番上に片手を置いてそっとカードを手から離せば、必然的にそのカードが一番上になるっていう寸法さ。」

「えっ、なにそれ!インチキじゃん!」

「…まあ、手品ってそういうものだからね。」

「もー。じゃあ最初から勝ち負けは決まってたんじゃん!何がゲームだよ、天理クンのいじわる!」

「ははは…それより狛研さん。体調はもう本当に大丈夫なの?」

「うん、もうピンっピンしてるよ!」

「そう。じゃあ、もう遅い時間だし部屋に戻ろっか。」

「うん!」

今日はちょっと色々ありすぎたな。

今日はたっぷり寝て疲れを取らなきゃ。

あと、頭のケガも治さないとね。

おやすみなさーい。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「うーん…」

よく寝た。

 

『オマエラ!!起床時間です!!生活リズムの乱れは、心の乱れにつながります!!全員、今すぐ起床するように!!』

 

あーあ、毎朝毎朝うるさいなあ全く。

ホンット、他にやる事がないのかなぁ。

まあいいや。

気分をリフレッシュして、今日も一日頑張らなきゃ!

 

 

 

 

【食堂】

 

「おはよーみんな!!」

「叶…!怪我はもう大丈夫なの…!?」

ゐをりちゃんは、素早くボクのところに来た。

「うん。おかげさまで絶好調!」

「…良かったぁ。もう無茶はしないでね。」

「わかってるって。」

…ゐをりちゃんも、そんなに心配してくれてたのか。

これ以上みんなに迷惑かけないようにしないとな。

 

「おはよう、狛研さん。」

「やあ、狛研君。元気になったみたいで何よりだよ。」

「おはようございます、狛研さん。回復してよかったですね。」

「…うん、まあね。」

治奈ちゃんは、ぬいぐるみの翠ちゃんを撫でながら微笑みかけてきた。

こんな天使みたいな子が内通者…?

正直全然信じられないよ…

「おはよう、狛研サン。」

「あ、うん。おはよう。」

天理クンは、ボクに近づくとそっと紙を見せてきた。

 

『あの鳥のぬいぐるみに気をつけろ。あれで監視・盗聴されてる。』

 

「!!?」

天理クンは、手を軽く下に押すようにした。

そして、ボクの目をじっと見てきた。

多分、『そのまま平然を装え』って言いたいのかな。

「…。」

『わかった』

ボクは、目で合図を送った。

「あの、二人は一体何をされてるんですか?」

「ん?ああ、気になる?今ね、狛研サンをナンパしようとしてんだけど、フラれちゃってさー。ホント今日ってツイてないわー。」

「そうなんですか?」

「ああ、うん。ところで治奈ちゃん。今日のゲームはキミが担当でしょ?頑張ってね。」

「はい。できるだけ早くクリアできるよう、頑張ります。」

「うんうん、その意気その意気!」

「じゃあ、全員揃ったしそろそろご飯にしようか。」

「賛成ー。俺もうお腹ペコりんぬですわー。」

「お前、たまにはメシの支度とか手伝えよ…」

「やなこった。めんどっちい。そういう事はキミ達が勝手にやっててよ。」

「コイツ…」

 

 

 

 

うーん、おいしかった!

「ごちそうさまでしたーっ!!」

「あはは、今日も元気だね。狛研さん。」

「全くだぜ、昨日あんな事があったってゆーのによぉ。」

もう、天理クンったらニヤニヤしながらこっち見てるし!

…昨日赤ちゃん返りしてたの、みんなに言いふらしちゃおっかな?

 

「あの、私…ゲームしてきますね。」

「頼んだよ、治奈。」

「はい…あんまり自信無いですけど…皆さんのためにも私、精一杯頑張ります。」

「他のみんなはどうするの?」

「俺は部屋で寝るー。」

「そうだねぇ。オイラは研究室で詩でも作っていようかな?」

「オレもたまには研究室で勉強しよっかな。」

「…叶、一緒にいてもいい?」

「うん!じゃあ一緒に遊ぼっか、ゐをりちゃん。何して遊ぼっか。またお絵かきでもする?それとも、折り紙とか…」

「えへへ、叶と一緒…」

そんなに嬉しいのか。

「星也クンは?」

「そうだなぁ…図書室で調べ物でもしよっかな?」

「そっか。」

「…叶。私達も、行こっか。」

「そだね。」

ゐをりちゃんと遊ぶの楽しみだな。

 

 

 

 

【超高校級の絶望】の研究室

 

「それじゃあ、ゐをりちゃん。何して遊ぼっか?」

「…叶と二人…」

「ゐをりちゃん?聞いてる?」

「…あ、ごめん。」

「ねえ、何して遊ぶ?」

「…叶が好きな事なら、なんでもいい…」

「なんでもいいっていうの一番困るなぁ。」

「…ごめん。」

「んー…あ、そうだ。…ねえ、ホントになんでもいいの?」

「…うん。」

「だったら、この研究室模様替えしない?」

「…え?」

「ほら、この部屋血塗れじゃん。それより、もっと楽しい雰囲気の部屋にした方がいいと思うんだ。ゐをりちゃんはどう思う?」

「…うん、いいかも…」

ゐをりちゃんは、満面の笑みを浮かべた。

…ホンットにメッチャかわいい。

マジでゐをりちゃんって天使だよね。

この笑顔、ずっと見てたいなぁ。

「じゃあ、早速模様替えしちゃおっか!じゃあ、必要な道具とか取ってくるね。」

「うん。」

 

 

 

 

ー2時間後ー

 

「…だいぶできた。」

「うーん、我ながら上出来!」

研究室は、元の部屋の面影を残しつつ、部屋全体が明るい雰囲気になるように模様替えをしているところだ。

「ありがとう、叶。」

「いいっていいって!ボクもやりたいからやってるだけだし!それにしても、だいぶ明るくなったんじゃない?血のシミも隠せたし。もうあと半分くらいやれば完成だね。」

「…うん。」

「ゐをりちゃんはどう?模様替えしてて、楽しい?」

「…。」

ゐをりちゃんは、顔を真っ赤にしながら俯いた。

「…うん、楽しい。」

「大丈夫?熱とかあったりしないよね?」

「…別に、平気。熱とかないから。」

「そっか。それならいいんだけど。よーし、じゃあ後半も頑張って仕上げるぞー!…あ。」

「…どうしたの?」

「いけない。道具が足りなくなっちゃった。倉庫から持ってくるね。ゐをりちゃんはそこで待ってて。」

「…でも、叶ひとりじゃ色々と大変なんじゃ…」

「ゐをりちゃんは、部屋の装飾進めてて。ボクはその間に倉庫に行って色々探してくるから。」

「…わかった。」

 

 

 

 

【内エリア 6F】

 

さーてと。

倉庫行って色々持って来ないとね。

えーっと、何がいるかな?

追加分のペンキでしょ?それから、飾り付け用の道具も結構使ったし、色々と持ってこないとだよね。

…ん?

ちょっと待って。

あそこにいるのは…

…星也クン!?

「星也クン!!大丈夫!?」

「あ、狛研さん…ぐっ…!」

星也クンは、右肩をケガしている。

「大丈夫なの、それ!?どうしたの!?」

「…やられたんだ。」

「やられた!?誰に!?」

「…わからない。いきなり斬り付けられたと思ったら、顔も確認できずに逃げられちゃって…でも、僕らに敵意を持った誰かだと思う…」

「星也クン!そんな事より今は、手当てしないと…!」

「…いや、手当ては自分でできる。狛研さんは、犯人を探して。その人がまた誰かを殺しちゃう前に。」

「でも…」

「…お願い。」

「…わかった。探してみるよ。」

ボク達に敵意を持った誰か…

…まさか、治奈ちゃん!?

そんな、仮にも彼氏の星也クンを斬り付けるなんて…

まだ近くにいるはずだよね。

止めなきゃ…!

 

…?

あれ?

治奈ちゃんの研究室が開いてる…

「ッ!!」

…嘘でしょ。

あれって、血の跡だよね。

そんな、中で何があったの…?

 

…確かめなきゃ!

ボクは、治奈ちゃんの研究室を開けた。

「ねえ、中で何があったの!!?」

次の瞬間、ボクの目にありえない光景が飛び込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッーーーーーーーーーー。」

 

ボクは、その子と目が合った。

でも、その子の目は濁っていて、何も映さなかった。

顔は赤色に汚れていて、誰がどう見ても目の前に転がっているのは死体だった。

床には見慣れた赤い色があたり一面に広がって、生臭い匂いが充満していた。

その異様な光景は、昨日までの研究室のそれではなかった。

胸に深く突き刺さったナイフが、部屋の照明を浴びて、鮮やかな赤色を強調しながら輝いている。

まるで糸の切れた操り人形のようにその場で動かなくなっているその子の顔は、毎日この学園で一緒に過ごしてきたクラスメイトの顔そのものだった。

わけがわからない。

まさか、キミが殺されるなんて思ってなかった。

…なんでキミが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の看護師】癒川治奈ちゃんは、そこで死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の絶望】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上6名

 

 

【挿絵表示】

 



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第5章 非日常編①(捜査編)

帰ってきたら☆9が3つも付いておりました。
今、感動でバイブレーションしております。
コロナに便乗して暇つぶしに書いていた駄作をこんなに高く評価していただけて感謝感激でございます。







…嘘でしょ。

そんな、なんで治奈ちゃんが…!

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…!!

 

「治奈ちゃん…?治奈ちゃん!!起きてよ、ねえ!!治奈ちゃん!!あぁぁああああああああぁああああああ!!!」

 

「狛研さん?一体何が…」

星也クンが、治奈ちゃんの研究室に来てしまった。

「ッ…!!治奈…?おい、嘘だろ…?ねえ、起きてよ治奈…そんな…うわぁあああああああぁああああああああああああああああ!!!」

星也クンは、珍しく動揺していた。

…当たり前だ。

たった数日とはいえ、一緒に過ごしてきた恋人をこんな惨い形で失ってしまったんだから。

星也クンは、治奈ちゃんの亡骸のそばで泣いた。

「治奈、治奈ぁ…!クソッ…なんで…!こんなはずじゃ…こんなはずじゃなかったのに…うっ、うぅうう…」

「あの、叶…遅いから心配で様子を見に来たんだけど…一体どうして…」

ゐをりちゃんも、研究室に来てしまった。

「…………!!?」

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『オマエラ、死体が発見されました!!【超高校級の看護師】の研究室にお集まりください!!』

 

「なあ、死体って…今回は誰が殺されて…!!そんな、嘘だろ…?癒川ちゃん…!?」

「そんな…今回は癒川君が…!?」

「ふーさっぱりー。起きたついでにお風呂入っちゃったよ。…って、それ…癒川サンだよね?」

他の3人も、放送を聞いて集まってきた。

 

「…れが。」

「?」

「…誰が殺した!?」

「ちょっ、穴雲君…?」

「誰が殺したかって聞いてんだよ!!」

「穴雲君、今ここで問いただしても犯人が名乗り出るわけ…」

「うるさい!!…許さない。絶対に殺す!!」

星也クンは、敵意に満ちた表情でボク達を睨んでいた。

…ボク達を、治奈ちゃんを殺した殺人犯だと疑ってるのか。

「クソッ…なんで治奈がこんな目に合わなきゃいけないんだ…!恨まれるような事なんて何もしてなかっただろ…!」

星也クンは、治奈ちゃんの裏の顔を知らないんだもんね。

そりゃあ、大好きな人が殺されたら犯人を恨みたくもなるよ。

…だけど。

 

「星也クン。気持ちはわからなくもないけど、落ち着いて。」

「これが落ち着いていられるか!!治奈が、治奈が…!!」

「…キミはみんなのリーダーでしょ?だったら、キミがしっかりしなきゃダメなんだよ。みんな、キミの事を頼りにしてるんだから。」

「でも、僕は…」

「感情に任せる事なんて、誰だってできる。でもね。こういう時に冷静にみんなを導いてあげられるのはキミしかいないんだよ。裁判が終わったら、いくらでも泣いていいから。だから今は…今だけは、協力してくれるかな。」

「…わかった。ごめん。僕とした事が、完全に怒りで我を失ってた。ありがとう、狛研さん。止めてくれて。」

「キミに言われたからね。キミが暴走しそうになったら、いつでも止めてあげるから。だから、今は裁判を乗り切るよ。」

「…うん。」

 

『ねえ。茶番はもう終わった?待ちくたびれたんだけど。』

『フッフッフ。全くです。アナタ達のお涙ちょうだいの茶番劇に付き合ってられるほど、ワタクシ達は暇ではないのですよ。』

「テメェら…!」

後ろから二匹が現れた。

 

『おやあ?やけに反抗的ですねえ、栄様。』

『ホントだよ!ただならぬコロッケが伝わってくるよ!』

『ですから、殺気ですって学園長。』

『おっと失礼。』

『そんな事よりも、ささ。学園長。皆様にアレを。』

『そうだね。さ、今回もお前らにファイルを配るので、それをヒントにするなり煮るなり焼くなり●●●するなり好きにしてくださーい。』

『フッフッフ。裁判でまた会いましょう。期待していますよ。』

そう言うと二匹は去っていった。

 

「みんな、ファイル貰ったし捜査を…」

「…こんな空気の中で言う事じゃないと思うけど、オイラは正直気が乗らないなぁ。」

「柳人クン?」

「だって、今回吊られるのは一人だけなんだろ?だったら、捜査してもしなくても一緒じゃないか。」

「あ…確かにそうだな。」

「捜査なんてするだけ時間のムダだと思うけどね。」

「…へぇ、そんな事言っていいんだ。詩名クン。」

「どういう意味だい?」

「こんな状況で捜査から抜けるなんて言ったら投票の結果がどうなるかくらい、想像すんのは難しい事じゃないだろ?キミが捜査から抜けるようなら、少なくとも俺はキミに投票するからね。」

「…やれやれ、無実の罪で処刑されるなんてたまったもんじゃないからねぇ。やればいいんだろ?」

「良かった、柳人クン、捜査に参加してくれるんだね。ありがとう。」

「勘違いしないでくれよ。オイラは、生き残れればそれでいいからね〜♪」

さてと、ボクも捜査しないとね。

お父さん、お母さん、みんな。

ボク、頑張るから。

どうか見守ってて。

 

 

 

 

 

ー《捜査開始》ー

 

「どうする?」

まずはモノクマファイルを確認しよう。

 

 

モノクマファイル⑥

 

被害者は【超高校級の看護師】癒川治奈。

死体発見現場は、内エリア6階の【超高校級の看護師】の研究室。

死亡推定時刻は、11時30分頃。

死因は内臓損傷及び呼吸困難。

死体の傷は、胸部の刺し傷と左肩の切り傷の2つ。顔面、胸部、左肩に血が流れた痕がみられる。

また、被害者は死亡前に喀血したものと思われる。

 

コトダマゲット!【モノクマファイル⑥】

 

ファイルの内容は確認したし、探索をしなきゃ…

…こういう時いっつも検視をしてくれた治奈ちゃんはもういないから、自分で捜査をしないとね。

さてと。

…うん。

やっぱりファイルに嘘はないね。

治奈ちゃんは、死ぬ前に血を吐いたっぽいね。

口から垂れた血で顔が汚れてるし。

…刺されたから血を吐いたのかな?

 

コトダマゲット!

 

【喀血】

治奈ちゃんは、死ぬ前に血を吐いている。

 

それにお腹と左肩の2ヶ所に傷がある。

…ひどい、心臓まで貫通してる。

それにしても、やけに綺麗に刺さってるな。

治奈ちゃんだって抵抗したはずなのに、肋骨の間を縫って心臓を刺すなんて事、本当にできるのかな?

でも実際傷は残ってるし…なんでなんだろ?

 

コトダマゲット!

 

【刺し傷】

胸に刺し傷がある。心臓を貫通している。やけに綺麗に刺さっている。

 

…あれ?

この切り傷、やけに浅いなぁ。

抵抗して出来たにしても、普通肩なんて怪我するかなぁ。

それに、刺しにきてるんだからこんな小さな切り傷じゃなくてもっと深い傷ができてもおかしくないはずなのに。

どう見ても、抵抗してできた怪我じゃないんだよなぁ。

 

コトダマゲット!

 

【切り傷】

左肩にあった傷。不自然な程浅い。

 

治奈ちゃんの肩は、血で真っ赤に濡れている。

それに、肩から流れた血で床があり得ないくらい汚れている。

…変だなぁ。浅い傷なのに、肩からこんなに大量に血が出るわけないよね。

血友病でもない限り、この出血量はありえないよ。

 

コトダマゲット!

 

【肩の血】

肩が血塗れになって、肩から大量に流れた血で床が汚れている。どう考えても不自然な出血量だ。

 

おっと、胸にナイフが刺さってるな。

凶器かもしれないから、裁判で証言しなきゃいけなくなるかも。

えっと…刃渡りは20cmくらいかな。

 

コトダマゲット!

 

【ナイフ】

治奈ちゃんの胸に刺さっていた。刃渡りは20cm程度。

 

…ん?

このナイフ、よく見たら血以外に何か付いてるな。

有害かもしれないから、ハンカチで少量拭き取っておこう。

…ん?なんだこれ。ちょっとベタベタしてるな。

でも、色もないし臭いもなくて、少しベタベタしてるってところ以外特徴がないな。

 

コトダマゲット!

 

【ベタベタ】

ナイフに付いていた。無色透明で無臭。

 

「ごめんね、治奈ちゃん。ちょっと探し物するよ。」

ボクは、治奈ちゃんのカーディガンとセーラー服のポケットの中を探った。

「…!これは…」

治奈ちゃんのセーラー服のポケットに、薬のビンが入っていた。

ラベルを見た限りだと、どうやら睡眠薬のようだ。

それに、少しビンの中身が減っている。

…中身を何かのために使ったのかな?

 

コトダマゲット!

 

【麻酔薬】

治奈ちゃんの服に入っていた。少し減っている。

 

さてと、研究室の中を調べてみるか。

…少し荒らされてるだけで、特にこの前と比べてなくなってるものとかはー…

あれ?

何か違和感があるような…

…あ、わかった。輸血パックがひとつ減ってるんだ。

それも、治奈ちゃんの血液型のパックだけ…

 

コトダマゲット!

 

【輸血パック】

研究室には全員分の輸血パックがあったが、治奈ちゃんの分だけなくなっていた。

 

…あと気になるのは、テーブルの上のティーカップとティーポットかな。

もう冷めきって湯気は立ってないけど、まだ少し温かいな。

カップの中にはほんのり赤いお茶が半分くらい入っている。

ティーポットの中は空か…

それから…あっ。

このお茶の缶、確かバタ…なんとかだよね。

すごい色が綺麗なヤツ。

 

あれ?テーブルの下に、割れたティーカップがある。

あああ…中身を床にブチ撒けちゃって、床がお茶で真っ赤だよ。もったいないなぁ。

じゃなくて!!捜査中!!

 

コトダマゲット!

 

【ティーカップ】

テーブルの上にあるカップと、割れているカップが一個ずつある。どっちも中身は入っていたと思われる。

 

コトダマゲット!

 

【バタフライピー】

綺麗な青色のお茶。色が変わる。

 

コトダマゲット!

 

【お茶】

ティーカップにほんのり赤いお茶が入っている。また、床に同じ色のお茶がブチ撒けられている。

 

あーあ、誰がやったのかわかんないけどもったいない事しちゃって…

ん?あれ?このティーカップ、茶しぶが二層になってるな。

って事は、治奈ちゃんは優雅にティータイムを嗜んでたって事?

 

コトダマゲット!

 

【カップの茶しぶ】

茶しぶが二層になっている。

 

さてと、そろそろ別の場所を…

ん?

なんだこれ。

床にピンク色のガラス片が落ちてる…

まるで、ビンが落ちて割れたみたいだ。

ん?ピンクのガラス片?

これ、なーんかどっかで見た事あるんだよなぁー。

 

コトダマゲット!

 

【ピンク色のガラス片】

床に落ちていた。ビンを落としたような割れ方をしている。

 

…あれ?

さっきから気になってたけど、なんだこの音…

ボクは、音の発生源を探した。

「あ、これか。」

部屋の換気扇がONになっていた。

…付けっぱなしにしてたのかな。

でも、何のために…?

 

コトダマゲット!

 

【換気扇】

さっきからずっとONになっている。

 

「…狛研サン。」

「天理クン。どうかした?」

「ちょい、これ見て。」

天理クンは、ベッドを動かした。

その下には、蓋のようなものがあった。

「何コレ?」

「…下へ繋がる扉だよ。開けてみよっか。」

「うん…」

ボク達は、扉の下に降りた。

 

下には、狭い部屋があった。

「…ここは?」

「多分、癒川サンが内通に使ってた部屋だよ。…言うなれば、5.5フロアってところかな?」

「じゃあ治奈ちゃんが内通者って事は確定なんだね…」

「さっきからそう言ってんだろ。…あ、見てよこれ。」

天理クンは、部屋にあった黒電話を指差した。

「これ、内線電話だよ。多分これで黒幕に連絡をしたり、今までのクロを唆したりしてきたんだろうね。」

「ふーん…」

ボクは、部屋にあったパソコンに目を向けた。

 

「…え?」

「どうしたの?」

「これ…」

ボクは、未送信メールを開いた。

 

 

 

ーーー

 

To:超高校級の知能犯

From:内通者

 

方神さん、ゲームの方は順調ですか。

今回学園長に受けた指示をお伝えします。

参加者の中に、私の正体とあなたの正体を見抜いて殺そうとしている人がいるみたいです。

その人を炙り出して、正体がバレる前に殺せと指示を受けました。

ご参考までに下にその人のプロフィールを添付して送ります。

この二人には気をつけてください。

それでは、引き続きゲームの乗っ取りの方をお願いします。

 

 

 

 

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

 

 

[画像ファイル]

 

[画像ファイル]

 

ーーー

 

 

 

メールには、ボクと天理クンのプロフィールが添付されていた。

「これでハッキリしたね。やっぱり、俺達がアイツの正体に気付いた事はバレてたんだ。…それに。」

「やっぱり、クマさんと【超高校級の知能犯】は手を組んでた。」

「…こりゃあ、事態は思ったよりも深刻な方向に進みそうだねぇ。ははっ、このカオスな状況は、さすがに『勝者』の俺でもキツいわ。」

…勝者?

天理クンは一体何を…

 

コトダマゲット!

 

【秘密の部屋】

治奈ちゃんの部屋の下にあった隠し部屋。おそらく、内通のための部屋。

 

コトダマゲット!

 

【内線電話】

隠し部屋にあった黒電話。内通をするための通信手段。

 

コトダマゲット!

 

【未送信メール】

隠し部屋のパソコンに残っていた。黒幕と知能犯のつながりを示唆するような内容。

 

「あの、叶。」

化学室を捜索していたゐをりちゃんが戻ってきた。

「ゐをりちゃん、どうしたの?」

「これ見て…」

ゐをりちゃんは、赤いビンが一本だけ入った木箱を見せてきた。

「これがどうしたの?」

「…これ、化学室の木箱なの。中には、看護師でもよくわからない薬がまとめてあったわ。」

「薬を木箱に、ねぇ…」

「…資産家が薬を悪用しないように、放送員が鍵付きの木箱の中に薬を入れて保管してたの。開ける事ができたのは、私と放送員と看護師だけよ。」

「ああ、なるほど…」

「それで私、一回化学室に来た事があるんだけどね…その時は、ビンはこの中に全部で4本あったの。でも、今は…1本しかない…鍵が壊されてるし、誰かが盗んだのかも…」

「ゐをりちゃん。ビンの色は覚えてる?」

「えっと…確か、透明、赤色、青色、桃色の4本よ。全部色が違ったから…はっきり覚えてるわ。」

って事は、透明なビンと青いビンとピンクのビンがなくなったのか。

それに、1本だけ残ってる赤いビンも半分くらい減ってるし…

そんなに薬を使ったのかな?

 

コトダマゲット!

 

【薬瓶の木箱】

化学室に置いてあった木箱。盗難防止に鍵付きの木箱に薬品を入れていたが、鍵が壊されていた。

元々透明、赤、青、ピンクの4本のビンが木箱に入っていたが、赤いビン以外がなくなっていた。

 

コトダマゲット!

 

【赤いビン】

木箱に1本だけ残っていたビン。中身が半分減っている。

 

「それから、あの…マスクもなくなってた。あのマスク、体に悪い物を全部防いでくれるのに息苦しくないから、誰かが持っていっちゃったのかも。」

「ホント?いくつなくなってたの?」

「2枚よ。」

2枚…?

「そっか、教えてくれてありがとう。」

「…うん。」

ゐをりちゃんの頭を撫でてあげると、ゐをりちゃんは少し笑いながら俯いた。

「…叶に褒められた。私、もっと頑張る。」

「ん?なんか言った?」

「…なんでもないわ。」

 

コトダマゲット!

 

【マスク】

化学室に置いてあった超高性能マスク。2枚だけなくなっていた。

 

「痛っつ…」

「叶…!?大丈夫!?」

「…ああ、うん。ちょっと昨日の頭の傷が痛んだだけ。そんなに大した事ないから心配しないで。」

「ダメ!…ケガ、よく見せて。」

「え?ちょっと、ゐをりちゃん!?」

ゐをりちゃんは、半ば強引にボクの頭のケガを確認してきた。

ゐをりちゃんってば心配性だなぁ。

「叶、まだ傷が塞がりきってないから、無茶はしちゃダメよ。」

「いや、ホント大丈夫だから…」

「…昨日、聞いたわ。叶の脈が無いって…何が大丈夫よ。もう少しで死んじゃうところだったのよ。」

「…そっか。ごめんね、心配かけて。」

「…。」

 

コトダマゲット!

 

【頭のキズ】

昨日天理クンを庇って殴られた時にできた。

 

そういえば、陽一クン達の方も気になるね。

捜査は順調なんだろうか。

「陽一クン、何か収穫はあった?」

「収穫って言っていいのかわかんないけど、コレ見てみろよ。」

「消火器?」

「ここ、少しヘコみがあるだろ?それに少し血が付いてる。」

「…確かに。ありがとう陽一クン。」

 

コトダマゲット!

 

【消火器】

少し底がヘコんでいて、少量の血が付着している。

 

「柳人クンは?」

「オイラかい?オイラは、こんなものを見つけたんだ。」

柳人クンは、透明なビンを見せてきた。

「それは?」

「え、知らないのかい?」

「知らないのって…どう言う意味?」

「このビン、ちょうど君が昨日倒れてたところで見つけたんだけど。」

「へー、そうなんだ。でもボクはそんなビン知らないよ?」

「…そう。」

 

コトダマゲット!

 

【透明なビン】

ちょうどボクが倒れていたところに落ちていたらしい。中身は入っている。

 

「あ、そうそう。事件と関係あるかどうかはわかんないけど。」

「何かな?どんなに小さな事でもいいから教えて。」

「オイラ、実は犯行時刻の数分後に栄クンの声を聞いてるんだ。」

「陽一クンの声を?」

「うん。研究室で詩を作った後、息抜きに映画でも見ようと思ってね。ちょうど3階にいた時かな。確か、『うわぁああああああ』だったかな?」

「…へえ、そう、ありがとう柳人クン。」

「いやいや、お役に立てたのなら何よりさ〜♪」

 

コトダマゲット!

 

【柳人クンの証言】

犯行時刻の数分後、3階で陽一クンの声を聞いていた。

 

待てよ?これは陽一クンに話を聞く必要があるな。

「ねえ、陽一クン。」

「おう、なんだ狛研ちゃん?」

「キミ、3階にいたってホント?」

「ん?ああ。数分前までな。」

「どういう事?キミは研究室にいたんじゃないの?」

「ああ、ちょっと図書室に寄ってたんだよ。」

「図書室に?なんで?」

「借りたい本があったのを思い出したんだよ。それで、ついでに本を読み漁ってたら、本が雪崩みたいに落ちてきてよ。生き埋めになっちまったってワケ。」

だから叫び声…

 

コトダマゲット!

 

【陽一クンの証言①】

犯行時刻の数分後、図書室で生き埋めになっていた。

 

「あ、そうそう。それから、俺が生き埋めになる前の事だけど、図書室に行く前、財原を見たよ。」

「天理クンを?」

「おう。なんか、風呂入りに行くってよ。そのまま大浴場行ったよ。なんか、盛大に飲み物こぼしたらしくてな。」

「そうなんだ。ありがとう陽一クン。」

「いいって事よ。」

 

コトダマゲット!

 

【陽一クンの証言②】

陽一クンが生き埋めになる前、天理クンの姿を見ている。

天理クンは、体に飲み物をこぼしたから大浴場に向かっているとの事だった。

 

さてと、情報は大方揃ったし、星也クンにも話を聞いてみようかな。

「星也クン。」

「あ、狛研さん…捜査お疲れ様。」

「ねえ、腕のケガ、本当に大丈夫なの?」

「うん。これくらいへっちゃらだよ。自分で手当てできたし。」

「いや、でも心配だよ。ボクも手当て手伝った方が…」

「いいってば!!」

 

「…あ、ごめん。」

「いや、こっちこそしつこく聞いてごめん。」

「狛研さんは悪くないよ…僕の事、心配してくれてたんだよね。ありがとう。」

「いや、星也クンが本当に大丈夫ならそれでいいんだけどさ…うん。」

 

コトダマゲット!

 

【星也クンのケガ】

誰かに襲われて腕をケガしたようだが、自分で治療したらしい。

 

「ねえ、星也クン。」

「何かな、狛研さん。」

「…本当に誰に襲われたのかわからないの?」

「うん、わからないや。全体的に体型を隠した服を着てて、その上すぐに立ち去ってしまったものだから顔どころか体型も確認できなかったよ。ごめんね。」

「いや、いいんだ。確認できなかったなら仕方ないよね。」

「…せっかく、方神のしっぽを掴むチャンスだったかもしれないのに。逆に返り討ちに遭っちゃうなんてね。」

 

コトダマゲット!

 

【星也クンの証言①】

星也クンを襲った犯人は、体型を隠した服を着ていて、顔も誰かわからない。

 

コトダマゲット!

 

【星也クンの証言②】

星也クンは、ハコガミメイに返り討ちに遭ったと言っていた。

 

「…そういえば、星也クン。治奈ちゃんがやってたゲームってどうなってるんだっけ?」

「ああ、えっとね…それが…」

星也クンは、ゲームのプレイ履歴を見せてくれた。

 

4日目 GAME OVER 11:35

 

「…え?」

「この履歴が正しければ、治奈は11時35分にゲームをプレイして失敗してるんだ。つまり、11時半に死んだ治奈とその頃にゲームをプレイしている治奈がいるって事になっちゃうんだ。」

「治奈ちゃんが2人いる…?そんなの、おかしいよね…」

一体どう言う事なんだろう…

 

コトダマゲット!

 

【ゲームの履歴】

11時35分に治奈ちゃんはゲームオーバーになっている。

 

「…ちょっと借りるね。」

ボクは、星也クンからタブレットを借りた。

このゲームって、他の人でもプレイできたりするのかな?

…あー、ダメか。

ゲームの開始画面に指紋認証がある。

 

コトダマゲット!

 

【指紋認証】

ゲームの開始画面に指紋認証があるから、誰かがなりすましてゲームをプレイする事はできない。

 

「…それとね。一個気になった事があるんだ。」

「何?」

「この部屋、少し荒らされてるだろ。多分、犯人と治奈は揉み合いになったんだ。だから、犯人にも反撃された痕が残ってるはずなんだけど…今ここで確かめる事も出来ないし…」

「それ、裁判で言ってみる?」

「…そうだね。」

 

コトダマゲット!

 

【反撃された痕】

犯人は、治奈ちゃんを殺した時に抵抗されて怪我をしている可能性が高い。犯人につながる重要な証拠。

 

みんなから集められる情報はこれくらいかな。

…あとは。

「ベルさん。」

『はい、お呼びですか狛研様。』

「このビンに入ってた薬の中身を教えて。」

『かしこまりました。そちらは、クレハミンXという睡眠薬です。飲んだ人の記憶を奪う効果がございます。その薬を飲んだら急に眠気に襲われて、目が覚めたらあら不思議!記憶がなくなってしまうのです。個人差はございますが、大体飲んだ直前の数分間から数時間の記憶がスッポリ抜け落ちます。』

「ふーん。」

 

コトダマゲット!

 

【クレハミンX】

透明なビンの中身。強力な睡眠薬で、飲む直前の数分間の記憶を奪う事ができる。

 

「じゃあ、ピンクのビンは?」

『そちらは、ワタクシ達が調合した特製の媚薬、『モノナミンH』でございます。フッフッフ、たった1mgで三日三晩休まずハッスルできる優れものですよ。ただし、必ず100倍に薄めてから使うように。それと、溶媒への溶解度と揮発性が非常に高い薬品ですので、取り扱いには十分注意してください。』

「使う予定なんてないよ。」

 

コトダマゲット!

 

【モノナミンH】

クマさん達の手作りの媚薬。溶媒への溶解度と揮発性が非常に高い。

 

「じゃあこの赤いビンは?」

『そちらは、『モノトキシンα』。ワタクシ達が調合した毒薬でございます。無色透明で無味無臭の液体ですが、たった1mgで象をも殺す猛毒です。摂取量にもよりますが、ちょうど致死量摂取すれば、死に至るまでに飲んだ場合は1時間、血管の中に入った場合は5分程度かかります。まず、服用してから数秒で体温が劇的に上がって、目眩や頭痛に悩まされて…最終的には胃や肺をやられて、血を吐いてもがき苦しみながら死にます。』

…ん?血を吐くって言った?今。

 

コトダマゲット!

 

【モノトキシンα】

毒薬。無色透明で無味無臭の液体。症状に発熱や目眩、頭痛、内臓損傷、喀血などがある。

 

「青い方は?」

『そっちは『モノキソールω』。モノトキシンαの解毒剤でございます。こちらはモノトキシンαとは違って即効性で、飲んだ場合は3分、血管の中に入った場合は30秒ほどで効果が現れます。』

「ふーん。」

『…あ、でも、一個だけ注意点が。』

「何?」

『実はこのモノキソールω、特定の条件下では猛毒になり得るのでございます。』

「猛毒?」

『最近とある国の地層で発見された、『珀銀』っていう金属があるのですが…モノキソールωは珀銀を融かしてその毒性を強める性質を持っております。最悪の場合、急性珀銀中毒で死に至る場合がございます。』

 

コトダマゲット!

 

【モノキソールω】

即効性の解毒薬。モノトキシンαを中和する効果があるが、珀銀と一緒に摂取すると急性珀銀中毒を引き起こす。

 

「そっか、ありがとう。もう行っていいよ。」

『おやおや、相変わらずトラ使いが荒いですねぇ。』

 

「…天理クン。」

「んー?なんだね狛研サン。」

「あのさ、ゲームの履歴って、どのタイミングで残るの?ゲームを開始した時?それとも終わった時?」

「終わった時だよ。クリアしてもゲームオーバーでも、どっちにしろ履歴に残るみたい。」

「…へえ。」

 

コトダマゲット!

 

【履歴のタイミング】

ゲーム終了時に履歴が残る。

 

「それと気になったんだけど、なんで天理クンがゲームに失敗した時、おしおきが執行されなかったんだろうね。」

「それはバグが見つかったからだろ?」

「うん。でもさ、それを正直に報告する必要なんて全くないんだよね。なかった事にしてそのままおしおきしちゃえばいいじゃん。」

「…そりゃあ、殺す気がないからじゃねえの?もしくは殺せないとか。」

「殺す気が無い?」

「だって、クマちゃんと知能犯が組んでるって時点で知能犯の乗っ取りはクマちゃんのゲームの一部なんだよ?コロシアイ以外で人数を減らすようなマネ、クマちゃんがすると思う?」

「…うーん。」

 

コトダマゲット!

 

【ゲームのバグ】

ゲームのバグが原因で、おしおきが免除された。でも、おしおきを免除する必要なんてなかったはず…?

 

…大体証言は揃ったな。

あとはアリバイをまとめて…あれっ?ボク、犯行当時何してたんだっけ?

ああ、ダメだ。殴られたダメージがまだ残ってるせいか、記憶が曖昧だ。

えっと、確か倉庫に行く前に一度トイレに寄って…

そのあと…あ、思い出した。

そこで気を失ってたんだった。

その後、その記憶がすっぽり抜け落ちたまま倉庫に行こうとしてたのか。

 

コトダマゲット!

 

【全員分のアリバイ】

星也クンは、図書室にいた。

ゐをりちゃんは、研究室にいた。

天理クンは部屋にいて、事件の数分後にお風呂にいった。

陽一クンは研究室にいて、その後図書室に行った。

柳人クンは研究室にいて、その後映画館に行った。

ボクは、トイレにいて、そのまま気を失っていた。

 

 

 

 

『オマエラ、時間切れです!ついにこの時がやってきました!お待ちかねの学級裁判、始めるよ〜!5分以内に、内エリア1階の噴水まで集合してね〜!』

『遅刻欠席は許しませんよ!校則違反とみなし、問答無用でおしおきさせていただきます!』

…もう時間か。

まだ色々と気になる事はあるけど、行かなきゃ。

ボクは、噴水に向かった。

 

 

 

 

【噴水】

 

今回は、陽一クンと柳人クンが早く来ていたようだった。

珍しく天理クンは早く来ていて、ビリッケツはボクだった。

「ごめん、遅れた。」

「ううん、集合時刻1分前。…いつもより早い集合だよ。」

「…そう。」

『うぷぷ、全員揃ったみたいだね。じゃ、裁判場行きのエレベーターに乗ってね!』

クマさんが指を鳴らすと、噴水の中からエレベーターが現れた。

クマさんに急かされて、ボク達はエレベーターに乗った。

 

 

 

まだ信じられない。

この中に治奈ちゃんを殺した犯人がいるだなんて…

でも、何があっても絶対生き残らなきゃ。

…いや、今回は違うな。

治奈ちゃんの無念を晴らすために、絶対に真相を明らかにしてみせる!

 

 

 

 

 


 

 

 

『フッフッフ。さァて、ここでクイズのお時間ですよ。癒川様を殺した犯人は、一体誰だと思いますか?』

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の絶望】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

『…そうですか。次回は学級裁判前編でございます。お楽しみに。』




今回はコトダマ40個…ひえっ。
こんなに数が多いという事は…言いたい事はわかるな?


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第5章 非日常編②(学級裁判前編)

エレベーターが止まり、ドアが開いた。

全員がエレベーターから降りた。

証言台には、遺影が2つ増えていた。

仏頂面のラッセクンの遺影と、可愛らしい笑みを浮かべる治奈ちゃんの遺影だった。

みんな、2人の遺影を見て、静かに俯いた。

誰も、声を上げなかった。

『うぷぷ、全員揃ったね!それじゃあ、始めちゃおっか!ドキドキワクワクの学級裁判を!』

 

 


 

コトダマ一覧

 

 

【モノクマファイル⑤】

被害者は【超高校級の看護師】癒川治奈。

死体発見現場は、内エリア6階の【超高校級の看護師】の研究室。

死亡推定時刻は、11時30分頃。

死因は内臓損傷及び呼吸困難。

死体の傷は、胸部の刺し傷と左肩の切り傷の2つ。顔面、胸部、左肩に血が流れた痕がみられる。

また、被害者は死亡前に喀血したものと思われる。

 

【喀血】

治奈ちゃんは、死ぬ前に血を吐いている。

 

【刺し傷】

胸に刺し傷がある。心臓を貫通している。やけに綺麗に刺さっている。

 

【切り傷】

左肩にあった傷。不自然な程浅い。

 

【肩の血】

肩が血塗れになって、肩から大量に流れた血で床が汚れている。どう考えても不自然な出血量だ。

 

【ナイフ】

治奈ちゃんの胸に刺さっていた。刃渡りは20cm程度。

 

【ベタベタ】

ナイフに付いていた。無色透明で無臭。

 

【麻酔薬】

治奈ちゃんの服に入っていた。少し減っている。

 

【輸血パック】

研究室には全員分の輸血パックがあったが、治奈ちゃんの分だけなくなっていた。

 

【ティーカップ】

テーブルの上にあるカップと、割れているカップが一個ずつある。どっちも中身は入っていたと思われる。

 

【バタフライピー】

綺麗な青色のお茶。色が変わる。

 

【お茶】

ティーカップにほんのり赤いお茶が入っている。また、床に同じ色のお茶がブチ撒けられている。

 

【カップの茶しぶ】

茶しぶが二層になっている。

 

【ピンク色のガラス片】

床に落ちていた。ビンを落としたような割れ方をしている。

 

【換気扇】

さっきからずっとONになっている。

 

【秘密の部屋】

治奈ちゃんの部屋の下にあった隠し部屋。おそらく、内通のための部屋。

 

【内線電話】

隠し部屋にあった黒電話。内通をするための通信手段。

 

【未送信メール】

隠し部屋のパソコンに残っていた。黒幕と知能犯のつながりを示唆するような内容。

 

【薬瓶の木箱】

化学室に置いてあった木箱。盗難防止に鍵付きの木箱に薬品を入れていたが、鍵が壊されていた。

元々透明、赤、青、ピンクの4本のビンが木箱に入っていたが、赤いビン以外がなくなっていた。

 

【赤いビン】

木箱に1本だけ残っていたビン。中身が半分減っている。

 

【マスク】

化学室に置いてあった超高性能マスク。2枚だけなくなっていた。

 

【頭のキズ】

昨日天理クンを庇って殴られた時にできた。

 

【消火器】

少し底がヘコんでいて、少量の血が付着している。

 

【透明なビン】

ちょうどボクが倒れていたところに落ちていたらしい。中身は入っている。

 

【柳人クンの証言】

犯行時刻の数分後、3階で陽一クンの声を聞いていた。

 

【陽一クンの証言①】

犯行時刻の数分後、図書室で生き埋めになっていた。

 

【陽一クンの証言②】

陽一クンが生き埋めになる前、天理クンの姿を見ている。

天理クンは、体に飲み物をこぼしたから大浴場に向かっているとの事だった。

 

【星也クンのケガ】

誰かに襲われて腕をケガしたようだが、自分で治療したらしい。

 

【星也クンの証言①】

星也クンを襲った犯人は、体型を隠した服を着ていて、顔も誰かわからない。

 

【星也クンの証言②】

星也クンは、ハコガミメイに返り討ちに遭ったと言っていた。

 

【ゲームの履歴】

11時35分に治奈ちゃんはゲームオーバーになっている。

 

【指紋認証】

ゲームの開始画面に指紋認証があるから、誰かがなりすましてゲームをプレイする事はできない。

 

【反撃された痕】

犯人は、治奈ちゃんを殺した時に抵抗されて怪我をしている可能性が高い。犯人につながる重要な証拠。

 

【クレハミンX】

透明なビンの中身。強力な睡眠薬で、飲む直前の数分間の記憶を奪う事ができる。

 

【モノナミンH】

クマさん達の手作りの媚薬。溶媒への溶解度と揮発性が非常に高い。

 

【モノトキシンα】

毒薬。無色透明で無味無臭の液体。症状に発熱や目眩、頭痛、内臓損傷、喀血などがある。

 

【モノキソールω】

即効性の解毒薬。モノトキシンαを中和する効果があるが、珀銀と一緒に摂取すると急性珀銀中毒を引き起こす。

 

【履歴のタイミング】

ゲーム終了時に履歴が残る。

 

【ゲームのバグ】

ゲームのバグが原因で、おしおきが免除された。でも、おしおきを免除する必要なんてなかったはず…?

 

【全員分のアリバイ】

星也クンは、図書室にいた。

ゐをりちゃんは、研究室にいた。

天理クンは部屋にいて、事件の数分後にお風呂にいった。

陽一クンは研究室にいて、その後図書室に行った。

柳人クンは研究室にいて、その後映画館に行った。

ボクは、トイレにいて、そのまま気を失っていた。

 

 

 


 

 

 

学級裁判開廷!

 

モノクマ『それじゃあ、好きに議論を進めてくだっさーい!!』

穴雲「とりあえず、まずはファイルを確認しようか。」

狛研「そうだね。今回は、誰がファイルを読む?」

穴雲「じゃあ僕が読もうかな。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

穴雲「被害者は【超高校級の看護師】癒川治奈。死体発見場所は、内エリア6階の【超高校級の看護師】の研究室。

栄「チクショウ…癒川ちゃん…!なんでこんな事に…!」

穴雲「死亡推定時刻は11時30分頃。死因は、内臓損傷及び呼吸困難。死体の傷は、胸部の刺し傷と左肩の切り傷の2つ。顔面、胸部、左肩に血が流れた痕がみられる。

また、被害者は死亡前に喀血したものと思われる。…みんなも把握してるよね?」

栄「お、おう…」

財原「それにしても、犯人の野郎はこんな真っ昼間に殺人をするなんて…よっぽど度胸があるのかバカなのかどっちかだろうね。」

詩名「殺人なんて詩にならないよ。一体誰がこんなひどい事を…」

栄「癒川ちゃん、顔面をやられたんだな。かわいそうに…犯人の野郎、許せねェぜ!」

神座「…なんで顔を殴られて死んだって事になるの?ファイルに書かれてないよ。」

栄「だって、癒川ちゃんの顔には血がべったりついてただろ?あれは、顔面をやられて血が出たんじゃねぇの?」

今の陽一クンの発言はおかしい!

 

顔面をやられて血が出た⬅︎【喀血】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

栄「オレの発言のどこがおかしいってんだよ!!」

狛研「陽一クン、治奈ちゃんの顔が汚れてるのは、喀血して血が顔に垂れたからだよ。」

栄「カッケツって何だ?」

穴雲「肺や気管の怪我や病気によって血を吐く事だよ。」

栄「うげぇっ!!?」

財原「ってゆーかさ、死因は内臓損傷と呼吸困難だってちゃんとファイルに書いてあんじゃん。キミ、もしかしてすごくバカなの?」

栄「うっせ!!すごくバカで悪かったな!!」

穴雲「君達、喧嘩するなら出てってよ。今真面目に裁判やってるんだからさ。」

栄「…悪い。」

穴雲「じゃあ、次は凶器の特定かな。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

栄「わかんね…とか?」

穴雲「ナイフとかは?」

詩名「うーん、癒川君の研究室だし、メスとか…ではないか。」

星也クンの意見に賛成したい。

 

ナイフ⬅︎【ナイフ】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「凶器は多分、ナイフじゃないかな?」

詩名「ナイフ?」

狛研「うん。治奈ちゃんの胸に刺さってたんだ。それが凶器だとみて間違い無いと思う。」

詩名「うんうん、なるほどね。つまり、癒川君はナイフで刺されて殺されたと。」

神座「看護師…かわいそう…」

穴雲「じゃあ次は、犯行当時の状況を整理してみようか。何か手がかりが見つけられるかも。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「癒川サンは、研究室で殺されてたんだよね?」

狛研「そうだね。遺体を移動させた形跡もなかったよ。」

神座「…でも、どうやって殺したのかな。」

栄「癒川ちゃんは、不意をついて殺されたのか…?」

詩名「例えば、ドアを開けてすぐ刺したとか?」

栄「ああ、そうだ!女の子を不意打ちで殺すなんて、クソ野郎のやる事だぜ!」

今の柳人クンの発言はおかしい!

 

ドアを開けてすぐ刺した⬅︎【ティーカップ】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「柳人クン、キミは今ドアを開けてすぐに刺したそれはあり得ないよ。」

詩名「どうしてだい?」

狛研「キミは知らないかもしれないけど、研究室には、ティーカップがテーブルの上と床に落ちて割れたヤツの2個あったんだ。つまり、治奈ちゃんは犯人と一緒にお茶をしていた可能性が高いんだ。」

神座「お茶をしてて、油断してる隙に刺したって事…?」

狛研「そうかもしれないね。」

 

 

 

「あの…ごめん。ひとついい?」

 

反論

 

 

 

狛研「ゐをりちゃん?」

神座「ごめんなさい、叶。あなたの推理を疑うわけじゃないのだけれど…ひとつ気になった所があったから指摘していい?」

狛研「気になるところ?言ってみて。」

神座「…わかったわ。あなたの推理の気になるところ、言ってみる。間違ってる所があったら言ってね。

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

神座「…あの、叶。カップが2つあったからって、2人でお茶してたとは限らないんじゃないかしら…?看護師1人だけでお茶をしていた可能性もあると思うの。たとえば、落として割っちゃったから代わりのカップで飲んだとか…」

狛研「でも、それならお茶を飲むより先に掃除してるはずだよね?割れたカップをそのままにしてたら危ないじゃん。

やっぱり、あの部屋には治奈ちゃん以外の誰かがいて、一緒にお茶を飲んでたんだよ。」

神座「でも、私…やっぱりまだ信じられない…やっぱり、犯人に急に押し掛けられた可能性の方が高いんじゃ…」

今のゐをりちゃんの発言はおかしい!

 

急に押し掛けられた⬅︎【カップの茶しぶ】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「いや、犯人は治奈ちゃんと一緒にお茶をしていた可能性が高いんだ。…それも、ゆっくりと優雅にね。」

神座「どう言う事なの?」

狛研「お茶が入っていたカップと割れたカップ、両方に茶しぶが二層になって付いてたの。…普通、それなりに長い時間部屋にいなきゃ、茶しぶがくっきり付くなんて事はあり得ないよね?」

栄「じゃあ、犯人は癒川ちゃんがお茶して油断してる隙に刺したって事かよ!?どっちにしろクソ野郎じゃねえか!!」

詩名「…そもそも、なんで癒川君が犯人とお茶なんてしてたのかは、疑問が残るけれどね。」

財原「あのさー、こうは考えられない?」

 

 

 

財原「 癒川サンは、誰かを殺そうとしてたんじゃないの?

穴雲「…は?」

財原「今回のクロをティータイムに誘って殺そうと思ったけど返り討ちに遭って、逆に自分が殺された…こう考える方が自然だよね?」

穴雲「治奈が殺人を…!?そんな、バカな事があるか!!僕は信じないよ!」

詩名「穴雲君、今は感情論で決めつけちゃダメだろ。」

神座「…それに、看護師は一度栄養士を襲った事があるしね。可能性は十分あるわ。」

狛研「星也クン、すごく言いづらいんだけど…実は治奈ちゃんが、殺人を計画してたかもしれない根拠はあるんだ。」

穴雲「何それ!?治奈は…治奈はそんな事するような奴じゃない!!」

 

コトダマ提示!

 

【睡眠薬】

 

「これだ!!」

 

狛研「睡眠薬が治奈ちゃんの服のポケットから見つかったんだ。…治奈ちゃんは、お茶に睡眠薬を盛って、犯人の動きを封じた所で殺そうとしてたんじゃないかな?」

穴雲「そんな…!」

栄「ん?なんで睡眠薬なんだ?毒盛りゃあいいだけの話だろ。」

財原「何か聞き出したい事でもあったんじゃない?すぐに死なれたら困るからあえて睡眠薬を盛った…あるいは、毒殺したら自分が疑われると思ったからじゃねーの?」

栄「疑われる?」

神座「この中で一番薬に詳しいのは看護師でしょ。毒で殺したんだとすれば、看護師が真っ先に疑われる可能性が高いと思う。だから、毒を盛らずにあえて刃物で襲ったんだと思うわ。」

栄「じゃあ、癒川ちゃんはなんで誰かを殺そうとなんてしちまったんだ?」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

穴雲「治奈の事だ、きっと何かの間違いだ!!」

詩名「誰かに恨みでもあったのかな?」

神座「誰にも知られたくない秘密を知られたとか…」

ゐをりちゃんの意見に賛成したい。

 

秘密⬅︎【秘密の部屋】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「ゐをりちゃんの言う通り、治奈ちゃんには大きな秘密があったんだ。その証拠に、彼女の研究室に隠し部屋があった。」

神座「…隠し部屋?」

狛研「うん。ベッドの下にあったから、最初は気付かなかったけどね。」

栄「なあ、狛研ちゃんは、癒川ちゃんの秘密がなんなのか知ってんのか?」

…言ってもいいのかな。

狛研「うん。最初は疑ってる段階だったけど、部屋を見て確信に変わったよ。…治奈ちゃんはね。」

 

 

 

狛研「黒幕の内通者だったんだよ。」

栄「なっ…んだと!?おい、バカな事言うなよ狛研ちゃん!!あんな天使みたいに優しい癒川ちゃんがモノクマの手先なわけないだろ!!今の発言、取り消せよ!!」

穴雲「そうだよ!!治奈が内通者なわけがない!!だって、僕と一緒にいる時は普通だったんだよ!?」

神座「栄養士、放送員。感情論で決めつけちゃダメって何度も言ってるでしょ。叶が、証拠があるって言っているのだから、きっと看護師は内通者だったのよ。」

栄「ぐっ…ま、まだだ!!まだオレは信じねぇぞ!!その部屋が内通のための部屋だとは限らねェじゃねえか!!」

詩名「どっちみち隠し部屋がある時点で怪しいだろ〜。」

穴雲「みんな、そんなに治奈を悪者にしたいんだね。でもね。僕は、証拠がないなら絶対にそんなデタラメ信じないから!!」

狛研「そんなに信じられないなら、別の証拠を出してあげる。」

 

コトダマ提示!

 

【内線電話】

 

「これだ!!」

 

狛研「ねえ、星也クン。ボクが見つけた隠し部屋だけど…そこには一体何があったと思う?」

穴雲「…え?」

狛研「…黒電話だよ。内線のね。治奈ちゃんは、それを使って内通してたんだよ。」

財原「たかが電話を、そんな個室を用意してまで隠したいなんて、よっぽどのワケありとしか思えないけどね。…これでハッキリしたでしょ。やっぱり癒川サンは、俺らを裏切ってクマちゃん達と内通してたんだよ。」

穴雲「…ッ!!」

財原「さてと。時間が押してるからそろそろ犯人候補を絞っていこうか。」

狛研「そうだね。」

財原「狛研サン、全員分のアリバイは把握してる?」

狛研「…まあね。」

財原「さすが狛研サン。じゃあ、みんなに教えてあげて。」

狛研「…わかった。」

 

コトダマ提示!

 

【全員分のアリバイ】

 

「これだ!!」

 

狛研「…本人達が本当の事を言ってるかどうかはわかんないけど、星也クンは図書室、ゐをりちゃん、陽一クン、柳人クンは研究室、天理クンは自分の部屋にいたはずだよ。」

詩名「全員完全に別行動か…これじゃあ、アリバイを証明出来る人はいないね。」

神座「あの、私…叶と一緒にいたけど…」

詩名「ホントかい?」

狛研「…あ、ごめんゐをりちゃん。ボク、途中で倉庫に行くために外を出て、一度トイレに行ってるんだ。確か犯行時刻の数分前…だったかなぁ?」

詩名「じゃあ意味ないじゃないか。」

神座「ごめんなさい、叶。あなたの無実を証明できなかった。」

狛研「いいんだよゐをりちゃん。アリバイがないのはみんな一緒さ。…それにボク自身、殴られたせいか記憶が曖昧でさ。正直、自分が何をしてたのかちょっと怪しいんだよね。」

穴雲「…なるほどね。」

狛研「どうしたの、星也クン。」

穴雲「ずっと気になってたんだ。…この中に、ひとりだけ怪しい人がいるんだよね。さっきまでは確信が持てなかったけど、今ハッキリと分かったよ。…この事件を起こした真犯人。」

 

 

 

 

 

穴雲「それは君だよね、狛研さん。」

狛研「…え?」

栄「なにぃ!?狛研ちゃんが犯人だと!?こんな純粋で仲間想いな娘が殺人犯なワケないだろ!!癒川ちゃんの事をくさされたからって、腹いせに適当な事言ってんじゃねえぞ!!」

事実を言っただけで、別にくさしてはないけど…

穴雲「適当なもんか、実際、今この場で一番怪しいのは狛研さん。君なんだよ。」

狛研「どういう事?」

穴雲「なんで君が怪しいと思ったのか、順を追って説明していくよ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

穴雲「狛研さん。君は、僕ですら知らなかった治奈の裏の顔を知ってたんだよね?」

狛研「そうだけど、だったらなんでボクが犯人になるの?」

穴雲「さっき、治奈が口封じのために誰かを殺す計画を立ててたって言ったのは狛研さん、君だよね?忘れた?」

狛研「それはそうだけれど…でも、それだけで犯人にされたんじゃ困るよ。だって、名乗り出てないだけで、治奈ちゃんの正体を知ってた人がいたかもしれないわけでしょ?」

穴雲「あのね狛研さん。君が今更何を言おうと、君が怪しい事には変わりないんだよ。正直、君が頭を殴られたっていうのも疑わしいところだよ。自分を犯人候補から外すための演技なんじゃないの?君は殴られたっていうけど、凶器すら見つかってないよね?」

今の星也クンの発言はおかしい!

 

凶器すら見つかってない⬅︎【消火器】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「星也クン、殴られたのは嘘じゃないよ。だって、凹んで血が付着した消火器が見つかってるんだもの。」

穴雲「それがどうしたっていうの?」

狛研「血が付いてて、変形してるとしたら、鈍器として使われたって考えるには十分だよね?それに、ボクの頭のキズを確認したでしょ?演技でああはならないよ。」

詩名「っていうか君、消火器なんかで殴られてよく一晩で回復したよね。」

狛研「まあね。とにかくボクが殴られたっていうのは嘘じゃないから。」

財原「それは俺も保証する。狛研サンは、誰かに…まあ状況的に言って十中八九癒川サンだろうけど、俺を庇って殴られたんだよ。ってかさ、狛研サンが頭から血を流して倒れてたのをキミ達も確認してるよね?」

穴雲「…あ、そうだったね。ごめん。忘れてた。」

財原「こんなに疑いようのない事実があるのに、なんで嘘だと思うかなぁ。それとも、キミはバカなの?」

穴雲「…ッ!!」

狛研「星也クン、ボクは犯人じゃないよ。信じてくれるかな?」

穴雲「信じるわけないでしょ。じゃあ、君が記憶を失ったのはどう説明するの?」

狛研「だから、頭を殴られたせいで脳にダメージを負ってて、倒れたり記憶が飛んだりしちゃったんだよ。」

穴雲「そう言う割には、人を疑ったり隅々まで調べたりするのは相変わらずだよね。事件当時の記憶だけ抜け落ちるなんて、都合が良すぎだよ。」

財原「脳がダメージを負えば、記憶が飛ぶ事もあると思うけど。しかも、ちょっと転んだとかじゃなくて、消火器で頭を思いっきり殴られたんだよ?尚更記憶が飛んだり後で機能障害が出たりしても不思議じゃないんじゃねーの?」

穴雲「本当にそうかな?狛研さんの記憶喪失が仮に本物でも、原因は他にあるかもよ?」

…それって。

 

コトダマ提示!

 

【クレハミンX】

 

「これだ!!」

 

狛研「クレハミンXの事?」

栄「くれは…?んだよそりゃあ!」

穴雲「記憶を奪う睡眠薬だよ。飲んだら、飲む直前の数分間の記憶が抜け落ちるんだって。…狛研さん。君は自分を犯人候補から外すために、あらかじめクレハミンXを化学室から盗んで、わざとそれを飲んで記憶を消したんじゃないの?」

狛研「知らないよそんなの!その薬の事を知ったのだって、事件が起こった後だよ!?」

穴雲「そりゃあ、薬で記憶を消してるんだから、知らなくて当然だよね。」

狛研「それは違うよ!ボクは、治奈ちゃんを殺していなければ、薬を盗んでなんかいない!」

穴雲「記憶がない状態なんだから、なんとでも言えるよね。とにかく、僕は記憶がない君の証言なんて一切信じる気にはなれない。」

狛研「そんな…」

穴雲「狛研さん、いい加減罪を認めて楽になろう?僕は君を絶対に許さないけど、今罪を認めて謝れば、治奈はきっと許してくれるよ。」

狛研「ボクが治奈ちゃんに謝らなきゃいけない事なんてない!!だって、ボクは犯人じゃないから!!」

穴雲「全く、今まで散々みんなを地獄に追いやってきたくせに、自分が犯人扱いされた時は往生際が悪いね。」

狛研「違うよ!そんなつもりは…ボクはただ、真実を明らかにしたいだけなんだ!」

 

穴雲「自分の欲望のためならなんだって利用するのか。…君は最低な奴だな。」

狛研「‥ッ!!」

穴雲「まあいいや。もう時間が押してるから、今回の事件の概要をおさらいしようか。」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

Act.1

今回の事件の発端は、犯人が治奈の正体を知った事だった。

治奈は、犯人に内通者である事を知られてしまい、犯行を計画してしまったんだ。

…ここで僕に一言言ってくれていたのなら、防げたかもしれなかったのにね。

治奈は、財原君を殴りに行くフリをして、犯人を消火器で殴りに行ったんだ。

おそらく、犯人の偽善者精神を利用したんだろう。

 

Act.2

消火器が頭に当たった犯人は、怪我を負ったのをいい事に気絶したフリまでしてその場で被害者アピールをしたんだ。

それで、手厚くみんなに介抱されて、みんなの同情を買ったって寸法さ。

こうして、犯人は見事にみんなに『自分は犯人じゃない』って先入観を刷り込む事ができたんだ。

全く、一歩間違えれば頭を砕かれて死んでたっていうのに、そこまでして偽善を貫くなんて、我が級友ながら正気とは思えないね。

一方、犯人を殺し損ねた治奈は、犯人を確実に殺すために計画を練り直したんだ。

 

Act.3

次の日、治奈は犯人を殺すために、ティータイムをしようと言って犯人を研究室に呼んだんだ。

…ここで治奈が踏みとどまってさえいてくれれば、あんな悲劇は未然に防げたんだろうけど…それは今更言っても仕方がないね。

そして、犯人はそれに応じて、二人で一緒にお茶をした。

犯人の真意はわからないけど、多分いつもの偽善者精神が働いたんだろうね。

…でも、犯人はここで治奈の罠に嵌ったんだ。

 

Act.4

なんと治奈は、犯人の飲む紅茶に睡眠薬を仕込んでいたんだ。

それで犯人の動きを封じて、隠し持っていたナイフを刺すつもりだったんだろうね。

治奈の計算通り、犯人の動きは鈍くなって、そこを治奈が刺して事件発生…の、はずだった。

だけどここで、治奈にとって想定外の事が起こった。

いくら睡眠薬を盛って動きを鈍らせたとはいえ、犯人と治奈の間には体格と力の差があったんだ。

結果、治奈が突き刺そうとしたナイフは、あっさりと犯人に躱された。

 

Act.5

犯人は、治奈と揉み合いになった。

今思えば、治奈の肩の傷は、犯人と揉み合いになった時に犯人につけられたものだったんだ。

そして、争いの末、犯人は治奈からナイフを奪った。

…ここで終わっていればよかった。

だけど卑劣な事に、犯人は奪ったナイフで治奈を刺し殺した。

 

Act.6

治奈を刺し殺して研究室を後にした犯人は、ここから誰も予想しないとある大胆な行動に出る事になる。

なんと犯人は、あらかじめ盗んでおいたクレハミンXを、自ら服用したんだ。

そうする事で、自分の中から犯行の一切の記憶を消し、重大な証拠を喋らないようにしたんだ。

犯人が裁判中に使っていた揚げ足取り…これを他の人に仕掛けられないようにするための対策だろう。

…正直、君がこんなに性根が腐った悪魔のような人だとは思わなかった。

治奈や財原君を利用して自分の地位を上げて、なおかつ自分が疑われないように犯行の記憶を消すという伸るか反るかの大博打に出るなんて…最低だし、狂っているとしか言いようがないよね。

…君の事は、大事なクラスメイトの一人としてすごく信頼していたのに。すごく残念だよ。

 

「これが事件の真相だ!…そうだよね?」

 

 

 

「【超高校級の幸運】狛研叶さん!!!」

 

言葉が出なかった。

こんなの間違ってる。

ボクが犯人じゃない事くらい、ボク自身が一番よく分かってる。

無実の罪で処刑されるなんて絶対に嫌だ。

ボクはあの日、もう自分を犠牲にするような人生は送らないって決めたんだ。

だけど…

『やってない』

その一言が、つっかえてうまく言えなかった。

 

狛研「…がう、…クは…」

穴雲「…これでハッキリした。やっぱり君が犯人だったんだね。」

狛研「…!」

ボクは、首を横に振る事しかできなかった。

穴雲「…もしかして、発言するのが怖いの?余計な事言ったら、ますます自分に容疑がかかるもんね。…もういい。もう、君に怒りをぶつけるのも疲れた。ただ、今僕は軽蔑しているんだ。人を殺しておいて、最後まで自分を善人に見せようとしている最低最悪の偽善者の君にね。モノクマ。もう投票始めちゃって。」

 

モノクマ『え、もういいの?もっと色々話し合ってもいいんだよ?』

穴雲「もう話し合う必要なんて無いと思う。そうでしょ、みんな。」

財原「同調圧力ってヤツ?自分が殺されないからって、人を犠牲にするとか怖いわぁw」

穴雲「君は黙ってて。僕はみんなに意見を聞いてるんだ。僕は狛研さんが犯人だと思うんだけど、みんなはどう思う?」

詩名「確かに、狛研君が怪しいのは一目瞭然だよねぇ。まあオイラ、目が見えないんだけど。」

栄「クッソ…狛研ちゃん…!ごめん、オレ…」

財原「あらら。3票は確定っすか。ごめんな狛研サン。こりゃ流石に俺でもなんとかすんのは無理だわ。」

神座「…。」

 

モノクマ『ふーん。オマエラ、狛研サンの事見捨てるんだ。オマエラって、仲間がどうとか言ってる割には案外冷たいんだね。まあいいや。それじゃあ、投票ターーーーーー…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待って!!!」

 

 

 

 

 

学級裁判中断!

 



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第5章 非日常編③(学級裁判中編)

「待って!!!」

 

 

 

声を上げたのはゐをりちゃんだった。

「…神座さん?」

「あ、えっと…まだ、結論を出すのは早い、と…思う…」

「何を言ってるのかな、神座さん。もう結論は出たんだよ。」

「ううん、まだよ。だって、叶は犯人じゃない…!」

「ゐをりちゃん…」

そうだ。

ボクは犯人じゃない。それはボク自身がよく分かってる。

…何をやっていたんだボクは。

「ありがとう、ゐをりちゃん。ボク、どうかしてた。」

「叶…」

「みんな、もっとちゃんと議論し合おうよ!」

ここで諦めるわけにはいかない。

まだ、真実は奥底に眠ってるんだ!

 

 

 

議論開始!

 

 

 

穴雲「今更議論し合う事なんて何もないよ。だって狛研さんは治奈を殺したんでしょ?」

狛研「違う!!ボクは、治奈ちゃんを殺してなんていない!!話し合えばわかるよ!!」

穴雲「君は嘘をついているね。だって現に君は、クレハミンXで記憶を失ってるじゃないか。君の証言なんて、誰も信じないよ。過去の自分が講じた策に首を絞められる気分はどう?犯人は…僕の家族と治奈の命を奪った知能犯は君だ、狛研さん。」

今の星也クンの発言はおかしい!

 

クレハミンX⬅︎【頭のキズ】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「ボクが記憶を失ったのは、殴られたせいだよ。星也クンも、ボクの頭のキズを見たでしょ?」

穴雲「それは…」

財原「頭を負傷した数時間後に突然倒れたり、突然記憶を失ったりする事ならないわけじゃないよ。たまにだけど、頭部に強いダメージを負ったら脳震盪を起こして記憶が飛ぶ、なんて事もあるみたい。狛研サンの頭のケガは、位置的にもケガの度合い的にも、十分にそれが起こりうる状況だった。狛研サンは、殴られたショックで記憶を失ったんだよ。」

穴雲「それは君達の憶測だろ!?僕は、この目で確かに見たんだ!!」

財原「何を?」

穴雲「…僕が肩を切り付けられる時…実は、チラッと頭のキズが見えたんだ。今思えば、それは狛研さん。君だったんだね。」

財原「うっわ、後出し?ズルいわー。」

狛研「そんなの、後でいくらでも言えるような気がするけど。」

穴雲「うるさい!とにかく、これでハッキリした。やっぱり、方神は君だったんだ!!…許さない、治奈と僕の家族を返してよ!!」

狛研「待ってよ、ボク、そんなの知らないよ!!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

穴雲「君の正体は【超高校級の知能犯】方神冥だろ。違う?」

狛研「違うよ!!ボクはハコガミメイじゃない!!ボクは、誰も殺してなんかない…嘘じゃないよ!!」

穴熊「嘘をついても無駄だよ。誰も君の事なんて信じないんだからね。君は、わざと殴られて被害者アピールをし、クレハミンXで自ら記憶を消してみんなの同情を買おうとするような狡猾な奴なんだよ。」

狛研「そんな事してない!!ボクが記憶を失ったのは、殴られたからだってさっき言ったじゃない!」

穴雲「そんなわけないでしょ。だって、君の倒れていた場所からクレハミンXが見つかったそうじゃないか。詩名君が教えてくれたよ。頭を殴られて都合よく犯行当時の記憶が抜け落ちましたー、なんて出まかせを信じると思う?」

狛研「そんなの知らないよ!ボクは、クレハミンXを持ってなかったんだ!」

穴雲「嘘はよくないよ。そんな事をして自分を守ろうったって、自分の信用を落とすだけだよ。君は、クレハミンXを盗んで飲んだんでしょ。」

今の星也クンの発言はおかしい!

 

盗んで飲んだ⬅︎【透明なビン】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「それはあり得ないよ、星也クン。」

穴雲「どう言う事?」

狛研「だって、透明なビンは、中身が減ってなかったんだよ。もしボクが飲んだんだとすれば、量が減ってるはずだよね?」

穴雲「…。」

栄「じゃあ、狛研ちゃんは犯人じゃねえんだな!?」

狛研「これでわかったでしょ。ボクは、自分で記憶を消したりしてないんだ。」

穴雲「…そう。でも、君が犯人だっていう可能性はまだ消えてないよ。」

 

神座「…あの。」

狛研「どうしたの、ゐをりちゃん?」

神座「本当に刺殺なのかな。」

狛研「…え?」

神座「看護師は、本当に刺されて死んだのかな。そこのところ、もう一度議論するべきなんじゃないかしら。」

詩名「何を言ってるんだい?癒川君は刺殺だって事になったじゃないか。今更議論しても無駄だと思うけどね。」

栄「そうだぜ。確かに狛研ちゃんが怪しいって話は違ったけど…でも、もう謎もねえし、死因は刺殺でいいんじゃねえの?」

狛研「いや、ゐをりちゃんの言う通りだよ。ボク達は、きっとまだ何か見落としてるんだよ。」

財原「俺もそう思う。このまま結論を出すとか気持ち悪すぎて仕方ないんだけど。…って、あーりゃりゃ。意見が割れちゃったね。」

栄「おい、嘘だろ…って事はまさか…!」

モノベル『フッフッフ!そのまさかですよ!意見が割れた時はワタクシ達の出番です!あポチッとな。』

栄「いやだぁあああああああああああああ!!!助けてくれぇえええええええええええ!!!」

 

ベルさんが席の装置を操作すると、ボク達の証言台が宙に浮いた。

 

栄「ぎぃやああああああああああああああああああああああああああああ!!」

詩名「うるさいなぁ。いい加減慣れろよ君。」

 

証言台が二つの陣営に分かれた。

 

 

 

意見対立

 

 

 

《死因は刺殺か?》

 

【刺殺だ!】穴雲、栄、詩名

 

【刺殺じゃない!】神座、狛研、財原

 

 

 

ー議論スクラム 開始ー

 

詩名「癒川君は、狛研君に刺殺されたんだよ。」

「ゐをりちゃん!」

神座「刺殺だって決めつけるのは良くないわ。」

栄「だって現にナイフが胸に刺さってたんだろ!?」

「天理クン!」

財原「ナイフだけで死因を決めつけるのは早計だと思うけど?」

穴雲「もう議論すべき事なんてないだろ。早く投票しようよ。」

「ボクが!」

狛研「まだ議論は続けるべきだ!!」

 

 

 

全論破

 

神座「これが私達の答えよ!」

狛研「これがボク達の答えだよ!」

財原「これが俺達の答えだよぉ〜。」

 

 

 

狛研「やっぱり、死因が刺殺じゃない可能性はあるんじゃないかな。」

詩名「あの状況を見てもそう言えるの?」

狛研「みんな、現場を見て死因は刺殺だって先入観にとらわれてるんだよ。この事件の真相を、もう一度よく考えて紐解いていこうよ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

詩名「癒川君は刺殺だよ。間違いない。」

狛研「その前提が間違ってるかもしれないじゃん。」

穴雲「逆に、刺殺以外に殺害方法なんてあるの?」

神座「見落としてるだけかも…」

詩名「いやいや、死因は刺殺だってファイルに書いてあったじゃないか。」

今の柳人クンの発言はおかしい!

 

ファイルに書いてあった⬅︎【モノクマファイル⑥】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「柳人クン、ファイルには、死因は内臓損傷と呼吸困難だって書いてあったんだ。刺殺だなんてファイルには一言も書かれてないよ。」

栄「あっ…確かに…!」

狛研「それにね、刺殺だとすれば不自然な点があるんだ。」

詩名「不自然?」

狛研「うん…」

 

コトダマ提示!

 

【刺し傷】

 

「これだ!!」

 

狛研「胸にあった刺し傷なんだけど、実は少し不自然なんだ。」

栄「どういう事だ?」

狛研「刺さり方が綺麗すぎるんだよ。余計な傷を残さずに肋骨の間を縫って心臓を刺すなんて普通できるわけないよね?」

財原「癒川サンだって、刺される時に抵抗して動くはずだもんね。だったら尚更あんな刺し傷を残すのは不可能だよ。」

狛研「…確かに、普通に考えたら無理だよね。でも、他に可能性があるとしたら?」

詩名「何が言いたいの?」

 

 

 

ナイフがうまく刺さった理由は?

 

1.治奈ちゃんが自分で刺した

2.縛った状態で刺した

3.死んでから刺した

 

 

 

➡︎3.死んでから刺した

 

「これだ!!」

 

狛研「治奈ちゃんは、犯人にナイフを刺される時、抵抗しなかったんだ。…いや、できなかったって言う方が正確かな?」

詩名「勿体ぶってないで、なんでナイフが綺麗に刺さったのか教えてよ。」

狛研「…簡単な話だよ。犯人は、治奈ちゃんが死んでからナイフを刺したんだよ!!」

栄「な、なにぃいいいいいいいい!!?」

狛研「今考えてみれば、そりゃあうまく刺さるよね。だって治奈ちゃんは既に死んでるんだからさ!」

財原「つまり、あのナイフは死因をミスリードさせるための偽装工作だったって事?」

狛研「ビンゴ。犯人は、どうしても治奈ちゃんが刺殺だって思わせたかったんだ!」

財原「なるほどね。じゃあ聞くけど、本当の死因はなんなのか見当はついてるの?」

狛研「まあね。」

 

コトダマ提示!

 

【切り傷】

 

「これだ!!」

 

狛研「治奈ちゃんの肩にあった切り傷…本当の死因は、こっちだったんだ!」

栄「えぇえええええええ!!?」

財原「うるさいよバカ。」

狛研「胸のナイフは、死因を刺殺だと思い込ませるための工作だ。本当は、治奈ちゃんは肩の傷が原因で死んだとは考えられないかな?」

穴雲「…あのさ、狛研さん。君、バカなの?あんな浅い傷で死ぬわけないだろ。」

詩名「急所を突いたなら死んでいた可能性は十分あるだろうけど…でも、肩だもんねぇ。それだけで癒川君を殺すのは正直厳しいんじゃないかい?」

穴雲「やっぱり、死因は刺殺だったんじゃないの?」

狛研「そりゃあ、ただ肩を切っただけなら死なないよね。でも、そうじゃなかったとしたら?」

穴雲「何が言いたいのかな?」

狛研「治奈ちゃんの本当の死因がなんなのか…みんなで議論する必要があるって事。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

穴雲「治奈はやっぱり刺殺だったんだ!!」

詩名「うーん…呼吸困難… 窒息死とか?」

穴雲「それじゃあ内臓損傷の説明ができないじゃないか。」

栄「あ、わかったぞ!犯人は、肩の傷から血を抜いて殺したんだ!」

財原「そもそも死因がちげーだろ。バカなの?」

神座「… 毒殺とか、では…ないよね。」

ゐをりちゃんの意見に賛成したい。

 

毒殺⬅︎【赤いビン】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「治奈ちゃんの本当の死因は、毒殺だったんだよ!」

栄「なにぃいいいいいいいい!!?」

狛研「中身が少しだけ減った赤い瓶が見つかったんだ。犯人は、これをなんらかの方法で治奈ちゃんに盛って毒殺したんじゃないかな。」

栄「ど、毒を盛って殺しただと!?」

狛研「内臓損傷に呼吸困難。これは、毒が体内に入って起こったんだ。…それにしても、いやらしいよね。あえてボク達が間違えるように紛らわしいファイルの書き方をするなんてさ。」

モノクマ『ほへ?なんの事?』

ボクは、クマさんを睨みながら言った。

詩名「でも、毒を盛ったくらいで内臓損傷なんてするかなぁ。爆発物を飲んだわけじゃあるまいし。」

財原「少なくとも、俺らの知ってる毒薬じゃないよね。狛研サン、何か心当たりはある?」

狛研「心当たりなら、ない事はないよ。」

 

コトダマ提示!

 

【モノトキシンα】

 

「これだ!!」

 

狛研「モノトキシンα。治奈ちゃんを殺した毒薬はこれだよ。」

栄「モノト…?んだそりゃ。」

狛研「クマさんが調合した手作りの猛毒だよ。赤いビンに入った無色透明で無味無臭の液体で、症状に発熱や目眩、頭痛、内臓損傷、喀血とかがあるんだって。」

栄「内臓損傷…喀血…あっ!!」

狛研「勘のいい陽一クンならもう気付いたと思うけど、モノクマファイルに書かれた死因と、モノトキシンαを摂取した時の症状が一致しているんだ。治奈ちゃんは、モノトキシンαを摂取して、血を吐いて苦しみながら内臓損傷と呼吸困難で死に至った…これが治奈ちゃんの死の真相さ。」

栄「けど、そんなあぶねぇ毒、どこにあったんだよ。」

詩名「毒といえば化学室か癒川君の研究室や独房が怪しいけど…あ、倉庫っていう可能性も捨て切れないか。」

狛研「柳人クンの言う通り、化学室にあったんだよ。」

栄「化学室ぅ?オレ、一回行った事あるけどそんな毒無かったぞ。一体どこにあったっつーんだよ?」

それは…

 

コトダマ提示!

 

【薬瓶の木箱】

 

「これだ!!」

 

狛研「化学室に、薬のビンが入った木箱が置いてあったんだ。…鍵がかかってて、星也クン、治奈ちゃん、ゐをりちゃんの3人以外は開ける事ができなかったわけだけど。そうだよね、星也クン?」

穴雲「…うん。財原君が媚薬を盗んだ後、再犯防止に鍵付きの木箱に怪しい薬品を入れておいたんだ。僕が大丈夫だと思った2人には、鍵の場所を教えたけどね。」

狛研「でも、その木箱は、赤いビン以外の3本の薬品がなくなってたんだ。クレハミンXも、その中に入ってたのに盗まれちゃったらしいんだ。」

栄「マジかよ!?鍵はかかってたんだろ!?」

狛研「…鍵は壊されてた。3人以外の誰かが無理矢理こじ開けたのか、それとも3人のうちの誰かが、自分を犯人候補から外すためにわざと鍵を壊したのかはわからないけどね。」

財原「つまり、今わかってる2本以外の薬品がまだ盗まれたままだと。うっわ、ヤバいですな。」

詩名「人が既に死んでる時点でヤバいじゃ済まないだろ。…それで、狛研君。犯人が癒川君に毒を盛った方法に心当たりは?」

狛研「えっと…」

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ナ イ フ ニ ド ク ヲ ヌ ッ タ

 

【ナイフに毒を塗った】

 

「これだ!!」

 

 

 

狛研「きっと、ナイフに毒を塗ってたんだよ。それで肩を切りつければ、肩の傷口から毒が入っちゃうでしょ?」

神座「なるほど…」

穴雲「ちょっと待ってよ、証拠はあるの?憶測だけで話を進めるのは危険じゃないの?」

狛研「ナイフに毒を盛ったっていう証拠ならあるよ。」

 

コトダマ提示!

 

【ベタベタ】

 

「これだ!!」

 

狛研「これを見て。」

神座「…なに、それ?」

狛研「ナイフに付いてた、ベタベタした液体だよ。少しだけハンカチに取って持ってきたんだ。」

神座「それってまさか…」

狛研「うん、毒だよ。」

栄「なっ…んだと…!?」

狛研「…今までの議論を踏まえると多分、事件の真相はこうだ。まず、治奈ちゃんは毒とナイフを盗み、ナイフに毒を盛って今回の犯人を殺そうとしたんだ。そして犯人をティータイムに誘って、お茶に睡眠薬を盛ってそのまま刺そうとしたけど、犯人に反撃されてナイフを奪われ、逆に毒殺された…こういう事なんじゃないかな?」

詩名「そんな…」

 

財原「はーい、俺から一個しつもーん。」

狛研「何かな、天理クン。」

財原「あのさぁ、俺、実はちょっとだけ癒川サンの死体を検視したんだよね。」

栄「ホントか!?」

財原「うん、そりゃあもういやらしい目でじっくりと。83・53・78。フッヒッヒ。」

詩名「何の数字だい?」

財原「ないしょー。」

穴雲「…真面目に議論しないなら出て行け。」

財原「うわっ、こっわ。完全にコロッケ立ってんじゃん。…話戻すね。実は、俺が検視した時は、傷口から毒なんて出てこなかったんだけど。そこんとこ、どう説明すんの?」

狛研「それなら、簡単な話だよ。犯人は、傷口の毒を洗い流したんだ。」

財原「洗い流した?」

 

コトダマ提示!

 

【肩の血】

 

「これだ!!」

 

狛研「ねえ、みんな。治奈ちゃんの遺体に何かおかしな点はなかったかい?」

神座「おかしな点…?あ、そういえば…肩が血塗れになってたような…」

狛研「その通りだゐをりちゃん。治奈ちゃんの肩が血塗れになってたんだ。」

栄「でも、切りつけられたんだったら血くらい出るだろ?」

狛研「血の量が、どう考えても切りつけられて出た血の量じゃないんだよ。少し切られただけであれだけの量の血が出るなんて、血友病でもない限りあり得ないんだ。」

栄「血友病って、確かアレだよな。血が出過ぎる病気。」

財原「おバカのくせによく知ってんな。」

栄「う、うっせぇ!」

財原「じゃあ何?癒川サンの肩に付いた毒は、血で洗い流して証拠隠滅したって事?」

狛研「そうなるね。」

栄「だったらその血はどっから持ってきたんだ?」

それは…

 

コトダマ提示!

 

【輸血パック】

 

「これだ!!」

 

狛研「治奈ちゃんの部屋にあった輸血パック。全員分の血液型の輸血パックが揃ってるんだけど、治奈ちゃんの分だけ無くなってたんだ。」

詩名「それってまさか…」

狛研「そうだよ。犯人は、治奈ちゃんの分の輸血パックを破いて、治奈ちゃんの肩に中の血をぶっかけたんだ。そうやって毒を血で洗い流せば、検視した時に傷口から毒が出てこないってわけ。」

財原「ほーん、なるほどねー。」

栄「じゃあ、死因と証拠隠滅の方法はわかったんだな?こんだけ情報が集まりゃあ、犯人絞れんだろ!」

財原「それもそうだね。この中で言ったら誰が一番怪しいのかにゃー?」

 

狛研「…一人、怪しい人がいるんだ。」

栄「ホントか!?誰だよそれは!?」

 

 

 

ー人物指定ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の絶望】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

狛研「それはキミだ。星也クン。」

 

星也「…え?」

星也クンは、自分が指名された事に驚いていた。

狛研「ボクは、正直キミが一番怪しいと思ってるんだけど。でも、違うっていうんなら話を聞かせてくれるかな?」

星也「…ごめん、ちょっと言ってる事がよくわからないな。なんで僕が犯人になるの?僕は、治奈を殺されて心身共に参ってるっていうのに…ひどいよ。」

栄「そうだよ!!何言ってんだよ狛研ちゃん!!穴雲は、彼女の癒川ちゃんを殺された被害者だぞ!!冗談でもそんな事言うなよ!!」

狛研「冗談じゃないし、全くふざけてなんかないよ。でも、あくまでまだボクが疑ってるだけの段階だから、議論を続ければ星也クンの無実を証明できるかもね。」

穴雲「…君みたいな人にそんな風に言われるなんて心外だし、僕は犯人じゃないから反論はしようかな。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

穴雲「僕は犯人じゃないって言ってるじゃないか。」

狛研「でも、キミはこの中で一番怪しいんだよ?」

財原「それにさぁ、さっきからやけに狛研サンに対して当たりが強いよね。そんなに狛研サンをスケープゴートにしたいの?」

穴雲「僕は、狛研さんが怪しいから言ってるだけだよ。」

狛研「じゃあボクもキミが怪しいから遠慮なく言わせてもらうね。」

穴雲「怪しい?僕が?何をわけのわからない事を言ってるの?そんな事を言ったら、僕を襲った君の方が怪しいだろ。」

今の星也クンの発言はおかしい!

 

僕を襲った君の方が怪しいだろ⬅︎【星也クンの証言①】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「…星也クン。今、完全に墓穴を掘ったよね?」

穴雲「は…?」

狛研「キミは前にこう言ったよね。『襲ってきた犯人は体型を隠した服を着ていて、顔も確認できなかった』って。」

穴雲「それがどうしたっていうの!?」

狛研「いや、変だよ。だって、キミは裁判中に、『頭に傷があるのが見えた』って言ってたよね?そんなに細かいところに気づいたのに、体型で誰だか判別できなかったっていうのは…おかしな話だよね?」

穴雲「それは、」

狛研「それに今キミは、ハッキリと『僕を襲った君が怪しい』って言ったよね。…なんでボクがキミを襲ったって断言できたわけ?」

穴雲「うっ…」

狛研「やっぱりキミが犯人だったんだね。」

穴雲「いや、まだだ!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

穴雲「そんな理由で犯人にされちゃたまったもんじゃないよ!!それはただの言い間違いだ!!」

財原「この期に及んでうっかり口が滑っちゃいましたー、なーんて言い訳が通用すると思ってんの?言い訳していいわけー?なーんちって。」

穴雲「うるさい!僕は犯人じゃない!!」

狛研「どうしたの?そんなに動揺して。そんなに変な顔してると、自分が犯人だって疑われるよ?」

穴雲「黙ってて!僕は至って冷静だよ!!僕に治奈を殺せるわけがない!!だって、僕はずっと図書室にいたんだ!!」

今の星也クンの発言はおかしい!

 

僕はずっと図書室にいた⬅︎【陽一クンの証言①】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「星也クン、キミは本当にずっと図書室にいた?」

穴雲「ああ、いたよ!」

狛研「じゃあ、具体的に何時から何時までいたのか教えてよ。」

穴雲「9時半から11時45分…死体発見の5分前までだよ!」

狛研「あ、そう。…ところで、図書室では何かおかしな事は起こらなかった?」

穴雲「…あ?おかしな事…?」

 

狛研「…これでわかった。やっぱりキミは嘘をついてたんだね。」

穴雲「どういう事!?」

狛研「じゃあ教えてあげる。図書室で何が起こったのかをね。…実は、犯行時刻の数分後、陽一クンが図書室に行ったんだ。…陽一クン。その時の時刻は?」

栄「えっと…確か11時40分だったかな。」

狛研「そっか、ありがと。実はね、その時間、陽一クンは本棚の本が落ちてきて生き埋めになっちゃったんだ。」

穴雲「へ、へぇ〜…そんな事があったんだ…」

狛研「…図書室にいたのに知らなかったの?」

穴雲「あっ、思い出した!実はその時、僕はトイレに行こうとしてて、図書室の外にいたんだ!だから、気付かなくても不思議じゃないよね。ね!?」

狛研「あっそう。だったら、これでどう?」

 

コトダマ提示!

 

【柳人クンの証言】

 

「これだ!!」

 

狛研「星也クン、残念だったね。」

穴雲「…え?」

狛研「実は、生き埋めになった時の陽一クンの悲鳴を、外にいた柳人クンが聞いてたんだ。」

神座「でも、図書室は確か防音…」

栄「…あ。オレ、そういえばドアをちゃんと閉めてなかった気が…」

詩名「何やってんだよ君は。外に音が漏れちゃうから、ドアくらいちゃんと閉めてよ。」

栄「あ、悪い…」

狛研「でも、これでわかったよね。柳人クンには聞こえていた声が、同じ場所にいたはずの星也クンには聞こえなかったんだって。それに、陽一クンて結構声おっきいから、全力で叫べば廊下中に響き渡るはずだよ。それなのに声が聞こえなかったなんて、そんなバカな話、あるのかなぁ?」

穴雲「だから、それは…!」

狛研「それは、何?」

穴雲「…ッ!!」

 

 

 

「君の推理は予報外れなんだよ!!」

 

反論

 

 

 

狛研「…星也クン?」

穴雲「さっきから、人の失言をいちいち指摘するようなマネをして…そんな事をして一体何が楽しいの!?」

狛研「別に楽しくてやってるわけじゃないよ。ボクはキミの発言の矛盾をついただけだよ。」

穴雲「そんなに僕を悪者にしたいなら、僕だって黙ってないよ。全部反論(リポート)してあげる!!」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

穴雲「さっきから君、人の揚げ足取りしかしてないよね!?」

狛研「でもキミが怪しいのは事実でしょ。」

穴雲「うるさい!僕は、物的証拠が無いなら何ひとつ認めないから!」

財原「やけに慌ててるね。何か都合の悪い事でもあった?」

穴雲「そんな事…と、とにかく!!早く証拠を出してよ!!僕が怪しいっていう証拠をさぁ!!」

財原「うっさいなぁ…」

穴雲「ねえ、もしかして出せないの?そりゃあそうだよね。僕は犯人じゃないからね!…ねえ、謝ってよ。治奈を散々腐した挙げ句、治奈を殺されて心身共に傷ついた僕をそんな風に言うなんて…土下座して僕達に謝ってよ!!」

 

証拠⬅︎【星也クンのケガ】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「…わかった。謝るよ。」

穴雲「狛研さん…やっとわかってくれたんだね!」

狛研「だけど、一つだけ条件がある。」

穴雲「条件…?何?」

狛研「キミの肩のキズを今この場でみんなに見せて。」

穴雲「…えっ?」

狛研「キズを見せてくれさえすれば、心の底から謝ってあげる。ほら、早くしてよ。」

穴雲「いや、でも、治療中で…」

狛研「じゃあ治療に使った道具と薬品名を全部正確に答えて。」

穴雲「えっと…」

狛研「ねえ、どうしたの?まさか、答えられないの?…ねえ、星也クン。」

 

狛研「キミ、本当はケガなんてしてないんじゃないの?」

穴雲「ッーーーーー!!?」

狛研「キミは、自分を犯人候補から外すために、ボクにあんな三文芝居を見せたんだ。…なぁんだ、被害者アピールをしてるのはキミの方だったんだね。」

穴雲「そ、そんな事…僕は…!」

狛研「キミの正体なら、もうとっくにわかってるんだよ。」

 

 

 

 

 

狛研「…ねえ、【超高校級の知能犯】方神冥クン。

 

穴雲「な、何をバカな事を言ってるの!?僕が知能犯なわけないだろ!!」

狛研「何言ってんの。キミ自身が、ボクに教えてくれたんじゃない。」

穴雲「…は?」

狛研「心当たりが無いようだから教えてあげる。」

 

コトダマ提示!

 

【星也クンの証言②】

 

「これだ!!」

 

狛研「ねえ、星也クン。キミは、『知能犯に襲われた』って言ったよね?」

穴雲「それがどうしたっていうのさ!!僕は知能犯に襲撃されたんだ!文句ある!?」

狛研「あれれ〜?おかしいなぁ。」

穴雲「何が!?」

狛研「だってキミは、少なくともあの時は治奈ちゃんが内通者だって知らなかったはずでしょ?だったら、内通者に襲われたと考えても不思議じゃないわけだ。それに、内通者じゃなくても、ここにいる全員が容疑者になり得るっていうのに…キミはなんで、知能犯の犯行だって断言できたの?」

 

穴雲「…!!!」

 

 

 

狛研「残忍で狡猾で最低最悪の知能犯は、キミの方だったんだよ。そうでしょ?」

 

 

 

「【超高校級のアナウンサー】穴雲星也クン…いや、【超高校級の知能犯】方神冥クン!!!」



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第5章 非日常編④(学級裁判後編)

狛研「残忍で狡猾で最低最悪の知能犯は、キミの方だったんだよ。そうでしょ?【超高校級のアナウンサー】穴雲星也クン…いや、【超高校級の知能犯】方神冥クン!!!」

 

穴雲?「…。」

星也クンは、俯いたままだった。

狛研「…星也クン?」

 

 

 

穴雲?「…ふ。ははっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーっはっはっはははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 

 

 

 

 

星也クンは、いきなり狂ったように高笑いし始めた。

栄「なっ、あ、穴雲…!?お前、一体…」

穴雲?「…コングラッチュレーショーーーーーーーーンズ。」

星也クンは、ゆっくりと手を叩いた。

そして、口角を吊り上げながら言った。

 

「そうさ、僕が…いや、俺が【超高校級の知能犯】方神冥だよ。」

 

「「「「「ッーーーーー!!?」」」」」

 

方神「あっはは、あーあ。うまくやってたと思ったんだけどなぁ。最後の最後でしくったわ。おめでとう狛研さん。雑魚の分際で俺の正体を見破っちゃうなんてさぁ…実に素晴らしい!エクセレントだよ!はい拍手!」

栄「んなっ!?じゃあ、テメェがゲームを乗っ取ったのか!!」

方神「そうだよ?いやあ、本当はあのゲームでみんなの信頼関係が壊れて欲しかったんだけど…物事ってなかなか自分の思うようには動かないモンだね。」

財原「ずっと俺らの事を騙してたワケ?」

方神「まあね。」

財原「キミがそんな奴だと思わなかったなー。っていうか、名前が女みたいで気持ち悪いんだよオマエよぉ。オカマじゃん。」

方神「君の方こそ、随分と分不相応な名前だけど?」

狛研「…本当に、君が方神なの?」

方神「そうだよ。俺が、君の家族を殺したんだよ。あ、そうそう。俺の家族が知能犯に殺されたって話だけど、アレは嘘だよ。知り合いの話を少しアレンジして話しただけさ。」

狛研「ッ…!!」

 

ボクは、一瞬で怒りと殺意に支配されそうになった。

目の前にいるこの男が、ボクの家族を奪い、クラスメイトを殺した。

そんな奴を許しておけるほど、ボクは利口じゃない。

でも、沸騰しそうになる感情を押さえ込んで言葉を振り絞った。

 

狛研「…ひとつ聞かせて。なんで治奈ちゃんを殺したの?…キミ達、協力関係だったはずでしょ。」

 

栄「え゛っ…!?」

詩名「それってどういう事?」

狛研「…方神は、最初からクマさん達と組んでたんだよ。」

栄「はぁ!!?知能犯は個人的に動いてたんじゃねェのかよ!!それに、あのクマ公はゲームを乗っ取られたって言ってたぞ!」

狛研「それは、知能犯との繋がりを探らせないための嘘だよ。ちゃんと根拠もあるんだ。」

 

コトダマ提示!

 

【ゲームのバグ】

 

「これだ!!」

 

 

狛研「みんな、天理クンがゲームオーバーになったときの事、覚えてる?」

栄「ん?ああ、確か財原の野郎がゲームで失敗しやがって、おしおきをされるはずだったんだけど、結局バグのおかげでお仕置きはナシになったんだっけ。」

狛研「そうだね。でも、疑問には思わない?…なんで方神は、おしおきを免除したのか。よく考えてみれば、おしおきを免除する意味なんて全くないんだよ。バグの事を黙ってそのままおしおきすればいいだけの事でしょ?」

神座「確かに…」

狛研「こうは考えられないかな?方神は、みんなの恐怖や苛立ちを煽ってコロシアイをさせたかっただけで、本当は最初から自分のゲームで死人を出すつもりはなかったんだよ。」

詩名「どういう事?みんなを煽ってコロシアイをさせるなんて、モノクマがやってる事そのものじゃないか。」

狛研「…そこなんだ。クマさんと方神が協力関係にあったとしたら、あの不自然な行動も説明がつくでしょ?つまり、あのゲームは、クマさんが用意したシナリオのひとつに過ぎなかった。だから方神は最初から誰かを殺す気はなかったんだ。だって、コロシアイとおしおき以外で人数が減ったらゲームにならないものね。」

神座「最初からおしおきする気がなかったから、資産家が失敗した時に適当な理由をつけておしおきを免除したのね。」

狛研「そういう事。でしょ?」

方神「証拠もナシにそんな事言われてもね。物的証拠は?」

 

コトダマ提示!

 

【未送信メール】

 

「これだ!!」

 

狛研「治奈ちゃんの部屋にあったパソコンに、未送信メールが残ってたんだ。そこには、知能犯との繋がりを示唆するような内容が書かれてた。…つまり、治奈ちゃんは黒幕と知能犯の間の連絡役でもあったんだよ。」

栄「んなっ…おい、テメェ!!最初からあのクマ公共と組んでたのか!!」

方神「あーあ、これを出されちゃ認めるしかないわな。そうだよ。俺達は、初めから協力関係にあったんだ。俺は、初日にモノクマに協力を持ちかけてたんだ。ゲームを面白くしてやるから協力しろってな。…色々ヒントもあげたんだけど、思ったより気付くのが遅かったね。」

詩名「本当なのかい?」

モノクマ『うん。面白くなりそうだから手伝ってあげたよ。協力関係がないっていうのは嘘だよ。あと、入田クンが死んだタイミングで乗っ取りの事を話したのは、オマエラの不安を煽るためだよ!』

財原「クマちゃんにプライドって物はないのー?」

モノクマ『ボクは、ぶっちゃけコロシアイが盛り上がればそれでいいからね。プライド?何それおいしいの?』

栄「コイツ…!」

方神「ねえ、みんな。まだ事件の真相は暴かれてないよ?頑張って議論しようよ!」

栄「チッ、ナメやがって!」

狛研「陽一クン。悔しいけど、コイツの言う通りだ。僕達は、まず真相を解き明かさないと。みんな、どんなに小さな事でもいいから気になった事があれば言って。全ての謎を紐解いていけば、おのずと真相は見えてくるはずだからさ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

神座「あの、私からひとつ質問いい?」

狛研「何、ゐをりちゃん?」

神座「…看護師は本当に11時半に死んだのかしら。」

狛研「どういう事?ファイルに書いてあるんだから間違い無いよ。」

神座「でも看護師がゲームを失敗したのは、 11時35分でしょ。どうして死亡時刻より後にゲームを失敗してるの?」

栄「はぁ!?それ、ホントか!?じゃあ、11時半に死んだ癒川ちゃんと11時35分にゲームを失敗した癒川ちゃん、二人いるって事になるじゃねえか!」

詩名「真面目に議論しようよ。ドッペルゲンガーでもあるまいし。でも、なんで神座君は、癒川君がゲームに失敗した時間を知ってるんだい?」

神座「…それは、履歴を見たから…」

ゐをりちゃんの意見に賛成したい。

 

履歴⬅︎ 【ゲームの履歴】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「ゐをりちゃんの言う通り、確かにゲームの履歴に残ってたね。11時35分ゲームオーバーって書いてある。間違いないよ。」

栄「じゃあ、ファイルの情報もその履歴もどっちも正しいんだな?だったら、やっぱり癒川ちゃんは二人いる事になっちまうな。」

詩名「…本当にそうかな?」

狛研「どういう事?」

詩名「君達さ、何か肝心な事を忘れてないかい?」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

詩名「あのさ、その履歴って、誰がプレイしたのかまではわからないんだろ?」

狛研「あっ…うん。」

詩名「だったら、そこの方神君がゲームをプレイした可能性だってあるじゃないか。」

栄「あっ!確かに!」

詩名「つまりだ。このタイムラグの謎は、なりすましで説明がつくんだよ。」

今の柳人クンの発言はおかしい!

 

なりすまし⬅︎ 【指紋認証】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「柳人クン、それはあり得ないよ。」

詩名「どうしてだい?」

狛研「ゲームをプレイするには、指紋認証をクリアしないといけないんだ。そうでしょベルさん。」

モノベル『その通りでございます。…あ、言っておきますが、生体認証も兼ねているため、死体で指紋認証をクリアしようとしても無駄ですよ。それとプレイヤー以外の方がゲームをプレイしようとした場合、画面に触れた瞬間に強制的にシャットダウンされる仕様となっております。』

栄「じゃあ、癒川ちゃんにしかあのゲームはプレイできねェって事か?」

モノベル『左様でございます。』

栄「じゃあやっぱり二人いる事になんじゃねえか!!」

 

狛研「…あ。わかったかも。タイムラグのトリックが。」

栄「ホントか!!?」

狛研「ねえ、ベルさん。治奈ちゃんがプレイしたゲームは、どんなゲームだったの?」

モノベル『なぜアナタに教えなければならないのです?』

狛研「少なくとも裁判中はシロとクロの公平性を保つんじゃなかったの?これじゃあ明らかにクロ側が有利だよね?」

モノベル『むう…そう言われてしまうと返す言葉がありませんねぇ。わかりました、特別にお教えしましょう。癒川様がプレイしたゲームは、制限時間以内に立体パズルを解く問題です。』

狛研「…やっぱり。」

栄「やっぱり?どういう事なんだ、狛研ちゃん?」

狛研「その鍵は、さっきの履歴にあるんだ。」

 

コトダマ提示!

 

【履歴のタイミング】

 

「これだ!!」

 

狛研「履歴に残るのは、あくまでゲームにクリアか失敗した時間だけなんだよ。開始時間や所要時間は履歴に残らないんだ。」

栄「それがどうしたってんだ?」

狛研「つまり、こういう事なんだよ。まず、治奈ちゃんはゲームを開始して画面を開いたまま放置した。その間に今回の犯人とお茶をして睡眠薬で動きを封じて殺す。そして、そのまま時間が経てば時間切れでゲームオーバーになって、その時間が履歴に残る。そうやって自分のアリバイを作ろうとしたんだ。でも、治奈ちゃんは返り討ちにあって殺された。だから、治奈ちゃんが死んだ後にゲームオーバーになるっていうあり得ない状況が発生したってわけさ。」

栄「なるほど…」

 

方神「おめでとう。謎がひとつ解けたね。…でも、まだ謎は残ってるだろ?」

栄「コイツ、ナメやがって…!」

謎…?もしかして、アレの事か?

 

コトダマ提示!

 

【お茶】

 

「これだ!!」

 

狛研「…みんな、謎はまだ残ってるよ。」

神座「叶…?」

狛研「治奈ちゃん達が飲んでいたお茶だ。…どうも不可解な点があってね。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

狛研「研究室を調べてみてわかった事なんだけど、研究室にはお茶がブチ撒けられていたんだ。」

栄「お茶ぁ?」

狛研「うん。床に赤いお茶がこぼれてた。多分、割れたティーカップの中に入っていたものだと思う。」

栄「それの何が重要なんだよ。揉み合いになったんだったらカップが落ちて中のお茶が床に散ったりするだろ。別に、これといっておかしなところは無いんじゃねえの?」

 

これといっておかしなところは無い⬅︎ 【バタフライピー】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「陽一クン、あの現場は明らかに不自然だったんだよ。」

栄「なんでだ?」

狛研「だって、治奈ちゃん達が飲んでたお茶は、元々赤色じゃなかったんだからね。あれは、元々は青いお茶だったんだよ!」

神座「青い…お茶…?」

狛研「うん。バタフライピーっていってね。pHによって色が変わる特殊なお茶なんだ。酸性なら紫〜赤色、アルカリ性なら緑〜黄色っていった具合にね。」

財原「なるほどねー。つまり、紅茶には何かが混ぜ入れられてたって事?」

狛研「そうだね。」

栄「え?普通にレモンティーとかにして飲んだんじゃねえの?」

狛研「ボクも最初はそう思ったけど、お茶にレモンは入ってなかったんだ。…つまり、天理クンの言う通り、何か変な物が混ぜ入れられた可能性が高いんだよ。」

財原「変な物、ねえ。何か心当たりは?」

 

コトダマ提示!

 

【モノナミンH】

 

「これだ!!」

 

狛研「それは多分、モノナミンHじゃないかな?」

栄「モノナ…?んだそりゃ。」

狛研「クマさん手作りの媚y…ピンク色の瓶に入ってた薬品だよ。」

財原「今しっかり媚薬って言いかけたよね。…で?」

狛研「多分だけど、モノナミンHがお茶の中に溶けて色が変わっちゃったんだと思う。」

財原「なるー。でもさー、どうやってお茶にそんなヤラシー薬なんて入れたんだろうね。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

栄「普通にお茶に混ぜたんじゃねェのか?」

詩名「いや、カップに塗っていたという可能性も…」

神座「揮発させた可能性は…?」

ゐをりちゃんの意見に賛成したい。

 

揮発させた⬅︎【ピンク色のガラス片】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「多分、モノナミンHのビンを割って中身を揮発させたんじゃないかな?」

詩名「どうしてそう思うんだい?」

狛研「部屋にピンク色のガラス片が落ちてたんだ。」

神座「なるほどね。」

狛研「…っていうか憶測だけど多分、犯人はお茶にモノナミンHを混ぜたかったというよりは、モノナミンHを揮発させる事が目的だったんじゃないかな?」

栄「ん?どういう事だ?」

狛研「多分ね、犯人は襲いかかってくる治奈ちゃんの動きを封じるために、ビンを割ったんだよ。」

栄「えぇええええ!!?媚薬で動きを封じるとか、そんなのアリかよ!大丈夫かそれ!?R−18タグ付いたりしないよな!?」

詩名「君は何を言っているんだい?」

財原「栄クンのメタ発言は置いといて、犯人が薬をばら撒いたとしたら一個気になることがあるんだけど。」

狛研「何かな?」

財原「そんな人の動きを封じるレベルの劇薬、吸ったら犯人もタダじゃ済まないよね?自分も媚薬の餌食になる可能性の方が高いのに、犯人はなんでそんなハイリスクな事したのかな?」

狛研「それは、犯人は事前に対策をしてたからだよ。」

財原「対策?」

 

コトダマ提示!

 

【換気扇】【マスク】

 

「これだ!!」

 

狛研「犯人は、あらかじめマスクを持っていたんだ。だから薬の餌食にならずに済んだ。そして、毒と薬で治奈ちゃんの動きが鈍った所で、部屋の換気扇のスイッチを入れたんだ。そうすれば、数分後には部屋には薬が残らなくなるってわけ。…そうでしょ?」

方神「すごいや、狛研さん!カスのクセによくそこまでたどり着いたね!さ、みんなもう疑問はないかな?」

栄「コイツ…」

 

方神「じゃあ、俺から問題ー!今回の事件の犯人、それは一体誰だったんでしょうか!?」

それは…

ボクは、方神を指差して言った。

 

狛研「…キミが犯人って事でいいんだね?」

方神「うん。そうでーす。俺が犯人だよー。」

詩名「やけにあっさり認めるんだね。」

方神「だってここまでバレてるんだったら今更何しても無駄でしょ。ここで悪あがきしたところで、()()面白くないし。」

詩名「正気じゃないねぇ。俗に言うサイコパスってヤツかな?」

神座「どうして看護師を殺したの…?」

方神「へー、それ、気になるんだ。…まあ、強いて言うなら用済みになったからかな?あのクソビッチにはもう少し活躍してもらうつもりだったけど…俺はゲームを十分楽しめたし、色々俺の事探ってきたのがウザかったからね。だからつい殺しちゃった!アハハっ!」

栄「もう死刑でいいだろこんな奴。早く投票始めようぜ。」

詩名「そうだね。これ以上議論する必要はないよね。」

ちょっと待って…?

まだ解明できてない謎があるはずなんだけど…

 

「みんな、ちょっと待って。」

 

栄「狛研ちゃん?」

狛研「…やっぱり、方神は犯人じゃない気がしてきた。」

詩名「さっきまで怪しいって言ってたのは君じゃないか。一体どういう風の吹き回しだい?」

狛研「うまく言えないんだけど、方神は多分誰かを庇ってるんだ。この裁判を盛り上げるためにね。…そうでしょ?」

方神「はてさて、なんの事だかさっぱり?」

狛研「この事件の不可解な点…それは…」

 

コトダマ提示!

 

【モノキソールω】

 

「これだ!!」

 

狛研「この事件には、ひとつ不可解な点があるんだ。」

神座「不可解な点?」

狛研「うん。木箱に入ってたモノキソールωがなくなってたんだ。」

栄「なんだそりゃ?」

狛研「モノトキシンαの解毒薬だよ。治奈ちゃんを毒殺したんだとすれば、解毒薬なんていらないはずだよね?最初は、自分が毒のナイフで襲われたから使ったんだと思ってたけど…でも、方神の肩の傷は偽物だったから、その可能性は消えた。…だったら、解毒薬は一体何のために使ったのかな?」

方神「くくっ…はははっ…!」

詩名「何がおかしくて笑ってるんだい?」

方神「いや、ごめんごめん。まさかここまで早くバレるとは思ってなかったからさ。さすがは狛研さんだね。」

狛研「…じゃあ、やっぱりキミは犯人じゃないんだね?」

方神「当たり前じゃん。俺があんなゴミ女を殺して処刑なんてあり得ないから。」

狛研「…!じゃあまさか、君はこの中の誰かを焚き付けてコロシアイをさせたっていうの…!?」

方神「そうなるね。…あ、そうだ。みんなには、ここまで頑張ったご褒美をあげるよ。」

方神は、何かのリモコンを取り出してボタンを押した。

すると、モニターが降りてきて何かが映し出された。

 

狛研「ッ!?…なに、これは…」

方神「事件当時の映像だよ。本来は見せるべきものじゃないんだけど、みんながあんまりにも健気に頑張るもんだから、ついね。」

 

 

 


 

 

 

 

 

映し出されたのは、研究室だった。

治奈ちゃん以外に、誰かがいる。

 

「ーーーーー。」

 

 

 

そこにいたのは、天理クンだった。

『ぐっ…なんだこれ…頭がグルグルしやがる…!』

『はぁ、はぁ…!っ、あ、あ…たま…が…い、たい…から、だ、が…あつい…』

『!!?おい、どうした!?おい、癒川サン…?癒川!!しっかりしろ!!』

天理クンは、治奈ちゃんに駆け寄ると急いで介抱した。

 

『ふふっ、おやおや。どうやら大変な事になってるみたいだね。』

方神が研究室に入ってきた。

彼はマスクをしていて、部屋に入ったらすぐに換気扇をONにした。

『穴雲クン…!?キミ、何しにここに…!?』

『別に、何しに来たっていいだろ?ただの暇潰しさ。』

『そんな事より、癒川サンがヤバいんだけど。早く治療してあげてよ。』

『おっと、そうだったね。ああ、これは毒に侵されているね。財原君、なんで治奈は毒を?』

『こっちが聞きてえよ。』

 

『そうだよね。ふふっ。君達は運が良いね。実は、僕は今解毒剤を持ってるんだ。』

『だったら早く…』

『でも生憎一人分しかないんだ。君か治奈のどっちかしか助けてあげられないんだけど、僕は優しいから君に選ばせてあげるよ。自分かクラスメイト、どっちを助ける?』

『は…?何を言って…』

『決断は早い方がいいんじゃない?症状から察するに、今は毒が身体に入ってから1分くらい経ってるね。毒が全身に回るのに5分、解毒剤が完全に効くのが3分…あと1分で決めないと、どっちも死ぬ事になるよ?さあ、どうする?』

『ッ…!!』

 

天理クンは、覚悟を決めたような表情で言った。

『…ははっ、ナメやがって…マジでふざけんなよクソが。…そんなの決まってんだろ。』

『?』

『俺の事はいいから、癒川サンを助けて。』

『どういうつもり?』

『俺さぁ、君達が思ってるよりずっと紳士なんだぜ?こういう時はまず女から助けるべきだろ。ほら、早くしろよ。』

『…プッ。』

 

『ははははは!君はなんて面白いんだ!自分を犠牲にしてまでその中古を助けたいんだ?』

『最低だなオマエ。俺が言うのもなんだけど。』

『ふふっ、君のその生意気なところも気に入ったよ。君は、女の方を助けたいんだね?』

『ああ、だから…むぐっ!?』

 

方神は、左手で天理クンの顎を掴んでマスクを外し強引に口を開かせると、青いビンの中身を無理矢理飲ませた。

『はい、解毒剤。生還できて良かったね財原君。』

『テメェ…!何のつもりだ!』

『別に、選んだ方を助けるなんて一言も言ってないだろ?この女には、悪いけどここで退場してもらうよ。もう用済みだからね。』

『用済み…?オマエ、何を言って…』

『悪いけど僕は、君に今ここで死なれたら困るんだよ。だから君を選んだのさ。それだけの話だよ。おっと、コイツなんか様子が変だね?』

 

『…うっ!!?ガハッ、ゴホッ…!!』

治奈ちゃんは、いきなり血を吐いて暴れ出した。

『癒川サン…?おい、癒川!!』

『あーあ、もう手遅れだね。もう解毒剤は無いし…』

『オマエ…』

『おっと、誰のせいでこんな事になったのか、わかってないわけじゃないよね?』

『…!』

『本当はわかっているだろ?治奈を殺したのはーーーーー』

 

 

 

 

 


 

 

 

方神「いかがだったかな?」

栄「そんな…これって…」

財原「…。」

神座「これは本物の映像なの?」

方神「もちろん。…さて、狛研さん。もう犯人が誰だかわかったよね?」

狛研「…。」

ボクは、もう犯人が誰だかわかっている。

でも指名したくなかった。

確かにその人はあまりいい人だとは言えなかったかもしれない。

だけど、その人は何度もボクを助けてくれたし、ボクの事を信頼してくれた。

何より、ボクの事を誰よりも想ってくれていた。

でも、最初に誓ったはずだ。

絶対に真相を解き明かす。それがどんなに残酷な結末を招く事になっても受け入れると。

そのためなら、ボク自身が非情にならなきゃいけない。

ボクは、ゆっくりとその人を指名した。

 

 

 

ー人物指定ー

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の絶望】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級の知能犯】方神冥

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➡︎【超高校級の資産家】財原天理

 

狛研「…キミが犯人だったんだね。天理クン。」

 

財原「…は?」

天理クンは、目を見開きながら声を漏らした。

方神「いや、『は?』じゃないでしょw君、自分の立場わかってないの?」

財原「わかんねーよ。なんで俺が犯人になるわけ?」

方神「あの映像をみんなに見てもらって、まだそんな事言えるんだ?状況的に、どう考えたって犯人は君だろ?」

財原「オマエの事だからでっち上げって可能性もあり得るよな?っていうかさ、俺が犯人なわけないじゃん。」

方神「だから、状況的に言ってお前以外あり得ないだろって言ってんるんだけど。」

 

 

 

「なーんか眠くなっちゃいそうだなぁ。」

 

反論

 

 

 

狛研「…天理クン?」

財原「あんな怪しい映像ひとつで俺を犯人にするとか、ホントひどいよね。言っておくけど、俺が犯人だなんてあり得ないから。」

 

 

 

ー反論ショーダウン 開始ー

 

財原「そもそも、オマエら何か大事な事忘れてない?」

狛研「大事な事?」

財原「死体だったとはいえ、人を刺したら返り血が飛ぶだろ?」

栄「確かに…」

財原「でも、俺の身体を見ろよ。血なんてどこにも付いてないぜ?やっぱり、キミ達の推理が間違ってたんじゃないの?とにかく返り血がついていない以上、俺が犯人だって事はあり得ないよね?」

 

俺が犯人だって事はあり得ない⬅︎【陽一クンの証言②】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!!」

 

論破

 

狛研「いや、今のキミに血が付いてないからって、キミが犯人じゃないとは限らないんじゃないかな。」

財原「どういう事?」

狛研「だってキミ、捜査前にお風呂に入ってたんだろ?だったら、証拠なんていくらでも隠滅できるよね?」

栄「でも狛研ちゃん。コイツとすれ違ったとき、確かにコイツには血が付いてなかったぜ。あ、ちなみにオレが財原とすれ違ったのは、犯行時刻の7〜8分後な。」

神座「じゃあお風呂で洗い流す前から血は付いてなかったのね。」

財原「ほらみろー。」

狛研「…待って。陽一クン、確か天理クンがお風呂に行ってくるって言った時、他に何か言ってたって言ってたよね?なんて言ってたのかは覚えてる?」

栄「えっと…確か、飲み物をこぼしたから風呂に入ってくるって…確かに、服とか手とかなんか濡れてたような気がすんな。」

狛研「…わかった。天理クンがどうやって証拠隠滅したのかがね。」

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

オ チ ャ デ ア ラ イ ナ ガ シ タ

 

【お茶で洗い流した】

 

「これだ!!」

 

 

 

狛研「天理クン、キミは返り血をポットに残っていたお茶で洗い流したんだ。」

栄「お茶で!?飲みモンを粗末にしてんじゃねえよ!!あ、じゃなくて…なんでお茶で洗い流したりなんかしたんだよ!?普通水だろ!」

狛研「研究室の洗面所や飲み水を使ったらバレる可能性が高いからね。それに、お茶で洗い流したんだとすればお風呂に行く口実作りも同時に出来るから…」

栄「あっ…!それでアイツあの時…」

狛研「これでトリックの証明は終わりだ。何か言う事はあるかな、天理クン?」

財原「ぐっ…まだだよ!」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

財原「確かにトリックは今までに解き明かした事で説明できるけど、俺からは肝心の証拠が何も見つかってねぇよな!?」

方神「しつこいなぁ。証拠なんて、あの映像で十分でしょ?もう君を庇うのにもだんだん飽きてきちゃったな。」

財原「とにかく俺は、証拠が無いんだったら絶対認めねぇから。」

何か無いか…?天理クンが犯人だって言える根拠は…

 

 

 

財原「俺が犯人だって言える根拠は?」⬅︎ 【反撃された痕】

 

「これで終わりだよ!!」

 

 

 

狛研「天理クン、キミは方神に解毒剤を飲まされたんだよね。つまり、キミ自身もあの時毒に犯されてたんだろ?」

財原「言ってる意味がわからないな。」

狛研「…まだわからない?お茶には毒は入ってなかったから、キミは飲む以外の方法で体内に毒を入れた事になる。つまりだよ。キミの身体のどこかに、治奈ちゃんに切りつけられた痕があるんじゃないの!!?」

財原「ッ…!?」

狛研「拒否したって無駄だよ。取り押さえてでも調べるから。」

 

財原「その必要は無いよ。」

天理クンは、観念したかのように右手の甲を見せた。

手には、確かに切りつけられたような赤い線がくっきりと残っていた。

栄「あっ、赤い線…!じゃあテメェが犯人なんだな!?」

財原「…あーあ、最悪。なんで結局はこうなっちゃうかなぁ。」

狛研「…?」

あれ?

なんだこの違和感は。

確かに、天理クンの右手にはボクの読み通り傷があった。

…だけどそれ以前に何かが足りないような…

方神「狛研さん?」

狛研「あっ…」

もう迷っている時間はない。

これが事件の真相だ!

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

Act.1

今回の事件の発端は、ボクと犯人が、内通者の正体に気付いた事だった。

内通者は、なんと治奈ちゃんだった。

治奈ちゃんは、自分の正体に勘付いた犯人を、消火器で殴って殺そうとした。

だけどボクが犯人を庇って、頭を消火器で殴られてしまった。

犯人を殺し損ねた治奈ちゃんは、別のプランで犯人を殺す事にしたんだ。

その前準備のために、治奈ちゃんはあらかじめ睡眠薬と毒とナイフを盗んでおいた。

 

Act.2

そして次の日、治奈ちゃんは犯人に研究室でティータイムにするから来るように呼びかけた。

ここで、治奈ちゃんは自分のアリバイを成立させるために、ゲームを開始してゲーム画面を開いたままタブレットを隠しておいたんだ。

犯人を確実に殺すため、用意したバタフライピーに睡眠薬を盛って、モノトキシンαを塗ったナイフを懐に忍ばせておいた。

そして予定時刻に犯人が研究室に来た。

おそらく犯人は治奈ちゃんから情報を引き出そうとして治奈ちゃんの呼びかけに応じたんだろうけど…

それが、後に悲劇を招く事になってしまうんだ。

 

Act.3

悲劇は、犯人が来てから数十分後、ちょうど二人が研究室でお茶をしている時に起こったんだ。

治奈ちゃんと犯人がティータイムを嗜んでいると、犯人は急に眠気に襲われた。

犯人に隙ができたのを確認した治奈ちゃんは、毒のナイフで犯人を刺そうとした。

だけど、治奈ちゃんにとって予想外の出来事が起こった。

振るったナイフは、犯人に躱されてしまったんだ。

そして、瞬く間にナイフを奪われて逆に肩を切りつけられた。

 

Act.4

治奈ちゃんは、それでも犯人を殺すために犯人につかみかかろうとした。

だけど、それすら犯人にとっては想定内だったんだ。

犯人は、あらかじめ盗んでおいたモノナミンHを叩き割って、揮発させた。

犯人は持っていたマスクで事なきを得たけど、治奈ちゃんの方は薬が効いて動きを封じられたはずだ。

だけどここで犯人にとって想定外の事が起こった。

治奈ちゃんが、突然苦しみ出したんだ。おそらく、ナイフの毒のせいだろう。

そして、治奈ちゃんに攻撃された時に手の甲を切りつけられた犯人もまた、毒が効き始めた。

 

Act.5

そこへ、望まれぬ客が来た。【超高校級の知能犯】方神冥だ。

方神は、マスクを装着し、研究室の換気扇をONにして部屋の中に入った。

そして、彼は持っていたモノキソールωを治奈ちゃん…

…ではなく、犯人に飲ませた。

時が経ち、犯人は解毒剤のおかげで生還し、一方治奈ちゃんは血を吐いてもがき苦しみながら死んでしまった。

そして、おそらく方神は、犯人に裁判で勝たせる事を条件に協力するように言ったんだ。

これは、脅しにも近い取引だった。犯人は、不本意とはいえ治奈ちゃんを殺した殺人犯だ。

このままだと方神に自分の犯行をバラされて吊られるのは目に見えていた。だから、犯人は方神と協力する事を選んでしまったんだ。

 

Act.6

犯人と方神は、早速現場の偽装工作を始めた。

まず、犯人は治奈ちゃんの死因が刺殺だと見せかけるために死体の胸部にナイフを突き立てた。

今思えば、死体に綺麗にナイフが刺さっているのは何ら不思議な事じゃなかったんだ。だって、治奈ちゃんは死んでいたんだからね。

そして犯人は治奈ちゃんの肩の毒を洗い流すために輸血パックを破いて中の血を撒いた。

この時付いた返り血は、ポットのお茶で洗い流したんだ。

そして方神の方は、自分の肩に血を塗って怪我をしたように見せかける工作をした。

 

Act.7

そうして工作を終えた二人は部屋を出た。

犯人は、陽一クンと途中遭遇したものの、怪しまれる事なくそのまま大浴場に行き、証拠を隠滅した。

そして方神は、ボクの目の前で三文芝居をして架空の犯人を探すよう仕向けた。

一方で、ボクはそれまではずっと殴られたショックで気を失って、前後の記憶が消えていた。

今思えばそれは脳震盪のせいなんだけど、方神があらかじめそこに置いておいたクレハミンXのせいで、ボクが犯人だと疑われる羽目になったんだ。

 

Act.8

そして一方、犯人も気付いていなかったであろう変化が二つ部屋の中にあったんだ。

ひとつ目は二人が飲んでいたバタフライピーだ。

空気中のモノナミンHは換気扇を回したからほとんど無くなったけど、お茶の中にモノナミンHが溶け込んで、元々青色だったお茶が赤色になっていたってわけ。

そしてふたつ目はゲームの履歴だ。

治奈ちゃんのプレイしていたゲームの制限時間が終わって、治奈ちゃんはゲームオーバー扱いになってその時間が履歴に残ったんだ。

そのせいで、死んだ後にゲームオーバーになるという有り得ない状況が発生してしまったんだ。

 

「これが事件の真相だ!…そうだよね?」

 

 

 

「【超高校級の資産家】財原天理クン!!!」

 

 

 

 

財原「…あーあ、負けちゃった。」

詩名「やけにあっさり認めるんだね。」

財原「っていうかよぉ、方神。オマエ、話が違うじゃねえかよ。狛研サンをスケープゴートにするのを手伝ったら裁判で勝たせてくれるっつってたじゃねえか。」

方神「そんな約束してたっけ?」

財原「コイツ…」

モノクマ『うぷぷぷ。そもうクロは決まったみたいですね?それじゃあ始めよっか!投票ターイム!』

モノベル『必ず、一人一票投票してくださいね。もし投票しなかったら、校則違反とみなしておしおきします!』

 

証言台にボタンが現れた。

狛研「…。」

財原「…俺はまだ、」

 

 

 

 

財原「全てを諦めたわけじゃない!!」

天理クンは、乞うような目でみんなを見た。

財原「…今回のおしおきは、最多票を集めた一人だけだ。みんなも知ってると思うけど、癒川サンを殺す事を計画し、みんなの命を裏で弄んでいた【超高校級の知能犯】はコイツだった。…だから頼む、みんな方神に投票してくれ!!」

 

財原「俺を…殺さないでくれ!!」

狛研「ッ…!」

天理クンの顔は真っ青に青ざめて、目にはうっすら涙が浮かんでいた。

…天理クンも、本当は死にたくなかったんだ。

確かに今までにイラッとくる事は何度もあった。

それに不真面目だし、怠け者だし、いじわるだし…ちょっとエッチだし。

だけど、今思えばそこまで悪い子じゃなかったし、この子が本当にボクの事を大切に想ってくれてた事はよくわかってる。

ボクをスケープゴートにしようとしたのだって、生き残るためだ。別にやりたくてやったわけじゃない。

それに、方神はボクの家族とクラスメイトの命を弄んだ。生かす価値なんて1ミリもない。

ボクがボタンを押せば、復讐できるかもしれない。

ボクは、方神に投票しようとした。

 

 

 

「…あ。」

制限時間の数秒前にボタンを押した。

ボクは、恐る恐る自分の押したボタンを見た。

その瞬間、罪悪感と自分の非情さへの嫌悪感に苛まれた。

 

 

 

ボクが投票したのは、天理クンだった。

 

モノクマ『うぷぷ、全員投票し終わったようだね?ではでは…結果発表ー!!』

モノベル『皆様の運命や如何に!?』

 

 

 

モニターにVOTEと書かれたスロットが表示され、ドラムロールと共にボク達の顔のドット絵が描かれたリールが回転する。

リールの回転が遅くなり、ついに止まった。

 

リールには、天理クンの顔が3つ並んでいた。

スロットからは、ボク達の勝利を祝福…いや、嘲笑うかのように、ファンファーレと共に大量のメダルが吐き出された。

 

 

 

 

 

学級裁判閉廷!

 

 

 

 



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第5章 非日常編⑤(???編)

VOTE

 

【超高校級の資産家】財原天理 4票

 

【超高校級の知能犯】方神冥 2票

 

【超高校級の工学者】入田才刃 0票

 

【超高校級の不運】景見凶夜 0票

 

【超高校級の絶望】神座ゐをり 0票

 

【超高校級の幸運】狛研叶 0票

 

【超高校級の栄養士】栄陽一 0票

 

【超高校級の詩人】詩名柳人 0票

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵 0票

 

【セキセイインコ】翠 0票

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅 0票

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子 0票

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑 0票

 

【超高校級の侍】不動院剣 0票

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗 0票

 

【超高校級の看護師】癒川治奈 0票

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン 0票

 

 

 

『うぷぷぷ!!お見事大正解ーーー!!!【超高校級の看護師】癒川治奈サンを刺殺…もとい毒殺したのは、ウザさMAXクソゴミクレイジーサイコシリアルキラー、【超高校級の資産家】財原天理クンでしたー!!』

「あ…」

天理クンは、絶望したような表情で投票結果を見て、声を漏らした。

 

「…ははっ、嘘でしょ…最悪…」

『フッフッフ。ちなみに今回、財原様と栄様だけは方神様に投票していました!』

『全く。状況的には、財原クンが犯人以外あり得ないでしょ!一体何を考えているんだろうね?』

「は…?なんで…」

「そうだよ。栄君、散々あれだけ財原君の事を嫌ってたくせに、なんで俺に投票したのかなぁ?」

「確かに、ソイツはクソ野郎でクズ野郎だ。…けど、今回ばかりはどう考えてもテメェが悪いだろ!こんなの、実質テメェが癒川ちゃんを殺したようなモンだろうが!!テメェは財原以上のクソ野郎だ!!だからテメェに投票した。文句あるか!?」

「栄クン…」

「ふーん、そっか。他のみんなは?」

「神座サン!コイツに投票しろって言ったのに…なんで俺に…!」

「確かに知能犯は人間の屑よ。だけど、資産家が実行犯だっていうのも事実でしょ。だったらまずは看護師を殺した資産家が裁かれるべきなんじゃないかしら。」

「なんでだよ!俺は、コイツに利用されただけなんだよ!!し、詩名クン!!」

「…君、今まで自分が何してきたかわかってるのかい?君が利用されていたとしても、方神君がどれだけクズだとしても関係ないよ。君には同情の余地なんてなければ、助ける義理も無いんだよ。オイラは、君が日暮君や翠君にした事、まだ怒ってるからね。」

「あれれ?財原君って人望がないんだね。まあ、あれだけ最低な事ばっかりやってきたから当然か。」

「こ、狛研サン!なんで俺に…」

 

「…ごめん。どうしても真実をねじ曲げたくはなかった。」

「ッ…!!」

ボクは、うつむいて声を振り絞った。

もちろん、自分で暴いた真実に嘘をつきたくなかったっていうのはある。

だけど、ボクが天理クンに投票した最大の理由は…

「ぎゃははははははははははははははははは!!!そりゃそうなるよね!!だって、みんなにとっては、君を生かす選択をするメリットなんて1ミリも無いもんね!!あーあ、かわいそうに!!」

「…どういう意味?」

「狛研さん、別にシラを切らなくてもいいよ。なんで君がそこの成金を見捨てたのかは、ちゃんとわかってるつもりだからさ。君は、自分の感情とリスクを天秤にかけた結果、財原君を殺す決断をしたんでしょ?」

「どういう意味だって聞いてんだよ!質問に答えろ!!」

「だってさぁ、よく考えてみてよ。最多票を集めた一人だけを処刑するっていうルールは、俺がモノクマと協力していた時の暫定ルールだ。でも裁判が終わった今、俺とモノクマの協力関係は抹消されたんだよ?つまり、そのルールが適応される保証はどこにもない。早い話、財原君を助ける選択をしたら、自分達が処刑されるリスクを背負う事になるんだよ。残念だったね、財原君。君が世のため人のために生きる聖人だったなら、もしかしたらみんな君のために命を懸けていたのかもしれなかったんだけどね。君には、みんなが命を懸けてまで助けるだけの価値が無かったんだよ。」

「ーーーーーー!!!」

「それにしても、みんな酷いよね!もしかしたら暫定ルールがまだ適応されてて、俺を処刑するチャンスだったかもしれないのに!口では仲間が大事だの復讐だの言っておきながら、結局最後は自分の命惜しさに財原君を見捨てたんだ!いやぁ、君達が清々しい程のクズで助かったよ!本当にありがとう!」

「クズはテメェだろ!!」

 

「…ねえ、栄君。良かったね。財原君に惑わされたバカが君一人だけでさ。」

「あぁ!?どういう意味だコラァ!!」

「もし他の誰かが俺に投票してたら、君は死ぬところだったんだよ?」

「あっ…」

陽一クンは、ようやく自分の置かれた立場を理解した。

そして、自分が助かった事への安堵からか、ほっとため息をついた。

「ぎゃはははははははは!!なーんだ、君だけは良心を持っていると思っていたのに…結局は君も自分の命惜しさに他人を蹴落とすクズだったんじゃん!いやあ、楽しいなあ!!本当にみんなクズばっかりで、俺は心底嬉しいよ!」

 

「黙れ!!!」

 

ボクは、証言台を叩いた。

「か、叶…?」

「よくもボクの家族を…治奈ちゃんを…絶対に許さない!!」

「絶対に許さない、か。ふふふ、面白い事を言うんだね、君は。許さないなら一体どうするっていうのかなぁ?あ、そうそう。せっかくだし、君にいくつかいい事を教えてあげようか?」

「…え?」

「さっきも言った通り、俺が家族を殺されて復讐の道を歩んだっていうのは、君や今回死んだ女の気を引くための真っ赤な嘘さ。ある人の話を少しアレンジしてはいたけどね。物語には嘘は付き物だろ?」

「…。」

「俺は、何の不自由もない割と裕福な家庭で育った。…でも、俺の父親は俺が幼い頃に俺が殺した。いや、違うな。死ぬように仕向けたんだ。」

「は…?」

「きっかけは大した事じゃなかった。ある日ふと思ったんだ。『この世界はなんてつまらないんだろう』ってね。確かあれは5歳くらいの時かな?俺は、自分の置かれている境遇の物足りなさに気づいたんだよ。そして、その物足りなさの原因を、あらゆる実験を通して見つけようとした。その実験のひとつとして、俺は試しに屋敷の使用人を唆して父親を殺させてみたんだ。」

「テメェ、一体何の話を…」

「実験は成功だった。父親を殺させたにもかかわらず、俺は誰にもその事に気付かれず、父親を直接殺した使用人だけが裁かれた。俺は気が付いたんだ。俺の人生に足りないもの…それは、他人の運命さえも自在に支配できるという圧倒的な立場…そして、それを他人に突きつけるという快楽だったんだよ!俺は、それから裏社会で組織を作り上げ、洗脳した社会のゴミ共を利用して何人も殺してきた。知り過ぎた探偵にバカな元婦警、闇オークションで取引されるガキ共、そしてとある暴力団に出入りしていた女とそのガキ…何人も何人も何人も殺してきた!!でも、俺が直接手を下した事は一度もなかった。だから誰も俺を裁けない!!安全圏からゴミ共に石を投げて都合の悪い事は全部他人に押し付けて、俺だけは絶対に傷つかない!!最高、最高、最っっっっ高!!!俺は選ばれた人間なんだ!!他の誰でもない…俺だけが、この世界の神にふさわしい!!!」

「コイツ、イカれてやがる…!」

「あなた、最低よ。」

「イカれてる?最低?ははは!いいねぇ!最高の褒め言葉だよ!」

 

「…。」

「あれれ?狛研さん、どうしたの?もしかして、ビビって言葉も出ない?じゃあ、特別にもう一つ教えてあげる。」

「やめて!叶の前でそんな事言わないで!叶も、こんな奴の言う事になんか耳を貸しちゃダメよ!」

「黙りなよ神座さん。俺は今狛研さんとお話してるんだからさぁ!」

「ッ…!!」

「…君の両親の事故と、あの女の弟の突然の病死…」

 

 

 

 

 

あれは全部俺の仕業だ。

 

「ッーーーーー!!?」

「そんな、テメェが狛研ちゃんの家族と癒川ちゃんの弟を殺したのか!!」

「そうだよ。だって、狛研さんのご両親ってば、俺の正体に気づいちゃったんだもん。それでさぁ、言われたよ。『まだ子供だからいくらでもやり直せる。だから今すぐに自首しろ』ってな。マジでふざけんなって感じだよな。自首なんかしたら俺のお楽しみがなくなっちゃうじゃんか。ムカついたからつい殺しちゃったよ。」

「テメェ…!」

「あ、そうそう。あの女の弟はアレだね。あの女の母親が、とある暴力団の頭と繋がっててさ。それで色々と面倒だったから、薬物中毒に見せかけて殺したんだよね。弟はまあ…ついでだね。だって、お母さんと離れ離れにしちゃかわいそうでしょ?」

「…。」

「あれ?どうしたの狛研さん。ショックで放心しちゃった?ははははははははははは!!いいねえ、その表情!親を殺した敵が目の前にいるのに殺せない絶望感に満ちた顔!!何度でも言ってやるよ。俺が、君の両親を、殺したんだよぉお!!!」

「うわぁああああああぁあああああああああぁああああああああああああ!!!」

 

ゴッ

 

ボクは、方神の証言台まで駆け寄って、全力で方神を殴った。

方神は、殴られた衝撃で数メートル吹っ飛ばされた。

「ッて…!クッソ、口の中切れてんじゃねえか…この馬鹿力が…!」

「叶…?あなた、一体何を…」

「…ろす。」

「…?」

「殺す…殺す殺す殺す殺す殺す!!よくもボクの家族を…殺してやる!!」

「ぐっ…!?」

ボクは、倒れた方神の首を絞めた。

「ッーーーーー!!!」

「ぐっ…、お、おい…いい、のか?俺を、殺せ…ば…君が、クロに…なって…おしおき…され、る…ぞ…」

「黙れ。お前だけは絶対許さない。絶対に殺す…!!」

「やめて叶!!そんな事をすればあなたまで死んでしまうわ!そんなの、犬死によ!」

「うるさい!!外野は黙ってろ!!ボクは、コイツを殺して復讐するんだ!!」

「ははっ、いいねぇ…その、憎悪に満ちた顔…!俺はなぁ…能天気なカス共がそういう表情で死んでいくのを見るのが大好きなんだよ!!」

「もうお前の声なんか聞きたくない…死ね!!」

「ぐっ…!?」

ボクが絞める力を強くしようとした、その時だった。

 

「やめろ!!」

 

「ッ!!?」

ボクは、陽一クンに引き剥がされて羽交い締めにされた。

「栄養士…!」

「陽一クン!?」

「やめろ狛研ちゃん!!冷静になれ!!」

「ゲホッ、ゴホッ…危うく殺されるところだったよ。ありがとう栄君。」

「うるせェ!!口閉じてろクズ!!…くっ、なんつー馬鹿力だよ!この子、ホントに女子か!?」

「うわぁあああ!!離せ!!離せよ!!」

「なあおい狛研ちゃん!目ェ覚ませって!!これ以上はオレ保たねえぞ!」

「何するんだよ、離してよ陽一クン!!離してくれないとコイツを殺せないじゃないか!!」

「嫌だ!!絶対に離すもんか!!両腕ちぎれたって体が半分なくなったって絶対離さねェぞ!!オレは、君が…これ以上クラスメイトが死ぬ所なんて見たくないんだよ!!」

「ふざけんな!!ボクは、コイツを殺すんだ!!コイツを殺して、復讐するんだよ!!そうでもしないと、お父さんとお母さんが報われないじゃないか!!!」

「聞け!!そんな事をして、狛研ちゃんの両親が喜ぶと思うか!?コイツを殺して狛研ちゃんまで死んじまったら、両親を悲しませる事になるんだぞ!!復讐なんてしたって、誰も幸せになんてなれねぇんだよ!!」

 

「うるさい!!…そんなの、ボク自身が一番よくわかってんだよ!!」

「狛研…ちゃん…?」

「復讐したって幸せになれないなんて、そんな事でお父さんとお母さんが喜ぶわけないって事なんて…そんなの、わかってんだよ…!でも…それでも…やっぱりコイツが許せないんだ…!ボクは、コイツを殺さないと気が済まないんだよ!!」

「狛研ちゃん…」

「うっ、うぅう…うぁああああぁあああああああぁああああああああぁあああああああ!!!」

ボクは、めいっぱい泣いた。

今まで押さえ込んでいた感情が一気に爆発して止まらなくなった。

 

「あーあ、臭いなぁ。こういう展開、俺は一番嫌い。」

『ねぇ、オマエラの拭けば拭くほど臭くなる牛乳雑巾くらいくっさい茶番劇にはもう飽き飽きなんだけど。オマエラは今回の主役じゃないんだから、ちょっと黙っててよ。はやくおしおきしろよって天からの声がうるさいので、そろそろアレいっちゃいましょっか。今回の主役の財原クンには、華やかに散って貰いましょう!!』

「ッ…!?いやっ!!死にたくない!誰か助けて!!今までの事は全部謝るし、お金ならいくらでもあげる!なんでもするからぁ!!」

「ホンットに往生際悪いね。今まで散々人の命を弄んできたくせに、自分だけ助かろうだなんて都合が良すぎるとは思わないの?」

「も、元はと言えばオマエが俺を利用したから…!オマエのせいで俺は…!!」

「言い訳なんて聞きたくねぇんだよ。お前は負けたんだから、さっさと退場しろよ。もう敗者さんに用はありませーん。」

「うっ…」

「どう?希望が絶望に変わった気分は?」

「お、俺は…」

「あーあ、君がこんなにみっともないと思わなかったなぁ。何が【超高校級の資産家】だよ。最期の最期に情けないね全く。君には少し期待してたんだけどなぁ。俺の買いかぶりだったかな?」

 

「…ねえ、()()()。」

「ッ!?」

「『天理』…万物を支配する天の原理、か。ふふっ、なんて傲慢な名前なんだろうね。自分が世界のルールだとでも言いたいのか。」

方神は、天理クンの髪を掴んで耳打ちした。

「…君に不相応な名前だよ。」

「あ…」

天理クンは、それを聞いた瞬間に放心して抜け殻のようになった。

「ぎゃはははははははははははは!!!素晴らしい!!俺は、世界一の資産家を屈服させて殺したんだ!!これを世界に公表すりゃあ、ビッグニュースになる事間違いなしだぜ!!でも、誰にも俺は裁けない!!誰も俺を殺せない!!なぜなら俺は『運命』に守られているから!!【超高校級の知能犯】なんてチンケな才能じゃない。天に選ばれ、運命すらも支配する才能…俺を阻む者などいない!!俺様こそが、【超高校級の勝者】なんだ!!あーっはっはははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 

『さてと、ではそろそろ時間も押してる事ですし?始めましょうか、アレ。』

「ッ、いやだ!!やめて!!頼む、金ならいくらでもやる…なんでもするから許して!!」

「なんでもするって言ったら、俺は死ねって言っちゃうけど?」

「うっ…た、頼む!!もう処刑は十分だろ…?お願いだからもう許して!!」

『ダーメ。もう投票でキミがクロって事は決まっちゃったの!救済も酌量もパードゥンもありません!ほら、諦めてさっさとやっちゃうよ!』

「やだやだやだぁああ!!!死にたくなぁあああああああい!!!」

天理クンは、慌てふためいてその場で暴れ出した。

でも、なんか床の叩き方が不自然なような…

…!もしかして、モールス信号?

 

 

 

『安心しろ。キミの復讐は俺が引き受けてやる。』

 

 

 

…!?

復讐…?

天理クン、一体何する気…!?

 

 

 

『それでは!【超高校級の資産家】財原天理クンのために!スペシャルなおしおきを用意しました!』

 

「いやだぁああああああああああああぁあああああああああああああああああぁああああああああ!!!」

 

『ではでは…おしおきターイム!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴポッ

 

「…なーんちって。」

 

天理クンは、いきなり血を吐いて倒れた。

「ゲホッ、ガハッ…!!」

「天理クン…!?天理クン!!ねえ、しっかりしてよ!天理クン!!ッ…!?何これ、すごい熱…」

「ハァ…ハァ…へへっ、ちょっと効くのが遅かったかな?…プッ。」

天理クンは、口から何かを吐き出した。

それは、血塗れの銀色のリングだった。

「…!!」

さっきの違和感の正体はこれだったんだ。

さっきの天理クンの右手には、いつも中指にはめていた指輪が無かった。

天理クン、指輪を飲み込んでいたのか…

「知ってる?右手の中指の指輪って、ギャンブル運が上がるんだってさ。まさかこんな形で助けられる事になるとはね。やっぱ願掛けって大事だね。」

 

「ッ!!?おい、なんだこれは!!こんなの、計画に無いぞ!!どうなってるんだ!!」

「言った事なかったからね。…方神。キミ、まんまと罠に嵌ったね。」

「は…!?」

「俺がキミの正体に気づいてないと思った?キミが知能犯って事くらい、最初から知ってたよ。だから殺す事にした。全ては、キミを殺す為だけに俺と癒川サンが描いたシナリオだったんだよ。」

「お前とあの女がだと…!?あり得ない、いつからだ!!いつから組んでたんだ貴様ら!!」

「嘘でしょ?恋人のクセに、自分の彼女が寝返った事も把握してなかったんだ。引くわー。…俺と癒川サンが組んでたのは、景見クンが死ぬ前からだよ。もちろん俺は、癒川サンが弟の死の真相を知るために内通者になったって事は知ってたから、方神への復讐を手伝ってやるって言ったら喜んで協力してくれたよ。『あの子の敵を討てるのなら私は命だって差し出す』ってね。もちろん、癒川サンが栄クンを襲ったのも、キミの彼女のフリをしたのも、そして彼女が殺されたのも全部俺との打ち合わせ通りなんだよ。」

「そんな、あり得ない…!お前は確かに毒を喰らって、俺が解毒剤を飲ませたはず…!」

 

「ああ、そうそう。あのナイフ、実は最初から毒なんて塗ってなかったんだよ。」

「…は?」

「俺は打ち合わせ通りただのナイフで癒川サンの肩を切り付けて、介抱するフリをして監視カメラに映らないように傷口に毒を流し込んだだけだよ。そしてその後、テメェにバレないようにナイフに毒を塗ったってわけ。俺は、初めから毒になんて侵されてねェんだよ。変な勘違いをしてくれてありがとう。」

「そんな…じゃあ、あの解毒剤は…無駄だったって事か…!?」

「いや、全くの無駄だったわけじゃない。お前には、わざわざ作って貰ってたんだよ。俺を殺す毒をな!!」

「毒…!?お前、何を…」

「忘れたのか?モノキソールωは、特定の条件下では猛毒になるってクマちゃんが言ってただろ。」

「まさか…急性珀銀中毒…!?」

「ビンゴ。俺はあらかじめ珀銀製の指輪を飲み込んでいて、お前が俺に飲ませた解毒剤のせいで中毒にかかって今瀕死の重体だ。…つまりだ。」

 

 

 

「俺が今ここで死ねば、実行犯のテメェがクロとして処刑されるんだよ!!」

「ッーーーーーーーーーー!!?」

「はっはははははははははははははははははは!!!いやぁ、哀れだねぇ。皮肉とはまさにこの事だよ。俺、言ったよね?癒川サンに解毒剤を飲ませてやってほしいって。でもそれを無視してキミが俺に解毒剤を飲ませたんだ。俺がわざわざ唯一全員が生き残り、かつキミが勝てる方法を教えてやったってのに…キミはそれを自らドブに捨てたんだよ。」

「バッ、バカな!!あり得ない!!わざわざ俺を殺すためだけに自分を殺させたってのか!?なんのためにそんなクソみてェな事したんだよ!?」

「なんのために…?ははっ、笑わせてくれるじゃない。俺ってさぁ。色々と小難しい事言ってっけど、実は根は結構単純でさぁ。行動一つ一つに大した理由なんて無いんだよね。なんで俺がこんな事したのか教えてやろうか?…ガキ臭い腹いせだよ。」

 

 

 

「要は、テメェの事が大っっっっっっっ嫌いなんだよ!!とっととくたばれゴミ野郎!!」

「は…?」

「今どんな気分かって?最高に決まってんだろ?テメェを道連れにして、クソゲーをメチャクチャにして、そんな大それた事をしでかした俺は苦しい思いをする事もなく楽に死ねるんだからよ。俺の死に方を自由に決めていいのは俺だけだ!ざまあみろ!!おしおきなんざクソ食らえだ!!」

「ふざけんなクソ!!才能じゃ俺の足元にも及ばないくせに、調子に乗んな雑魚が!!」

「あ、そうそう。癒川サンから伝言頼まれてるから伝えておくよ。キミに伝えてほしいってさ。」

「あ…?」

 

 

 

「『地獄に堕ちろクソ野郎』…だってさ。ギャハハハハハハハハハハハハハ!!!かわいそうに、彼女から随分と嫌われた彼氏がいたモンだなぁ!!」

「テメェ…!」

「ねえ、楽しかった?安全圏から石を投げるのは。自分は手を汚さずに人を殺して場を支配した気になって、最高にエクスタシー感じたでしょ?でも、これでキミも殺人犯の仲間入りだ。希望が絶望に変わった気分はどう?ねえねえ、今どんな気持ち?どんな気持ち?」

「うるせェ!!黙れクズが!!クッソ、なんなんだよテメェは!!あああああああああ、醜い!!こんなやり方、美しくない!!こんな、セオリーも戦略も才能も美学も運命さえも、全てを無視したやり方…正気じゃない!!完全に狂ってんだろテメェ!!!」

「かもな。」

「!?」

「言ったろ?人生を本気で楽しめる奴は正気じゃないってな。別に周りがどうとか、正しいかどうかとかどうでもいい。俺は、自分が楽しく生きられりゃあそれでいいんだよ。そのためならなんだって利用するし、それを邪魔するルールなんてねじ曲げてやる。確率も法則も、時に運命さえも支配して、俺が最も望む未来を強引に掴み取る。それが俺の【超高校級の勝者】としての才能だ!!」

「ッ…!!」

「どうした?そんな、雑魚に噛み付かれたみたいな顔してよぉ。なあ、【超高校級の敗者】さん?」

「ぐっ…き、貴っ様ぁああああああああああ!!!」

 

「ッ、ゲホッ、ゴホッ…!ハハッ…さすがに喋りすぎたか。これ、思ったより死ぬの早いかも。…ヘヘッ、最期に…テメェのダセェ死に様を見られそうにないのが心残りかな。まあでもいっか。『囚われのマリアのための交響曲』の続きは見届けられたしな。」

「天理クン!もういいよ、喋らなくて!これ以上仲間が死ぬなんて、ボクは嫌だ!」

「ゼェ…ゼェ…どうせ生き延びたって、おしおきを受けるだけだよ…だったら潔く死んでやるよ。短い間だったけど楽しかったぜ。」

「そんなの、わからないじゃないか!とにかくこのまま死ぬなんてダメだ!!」

「狛研サン…最期にこれだけは伝えておくね。俺は、キミの事を誰よりも信頼していたし、クラスメイトとしても、友達としても、一人の女の子としても、キミは俺にとって誰よりも大切な人だった。」

「そんな…これから死ぬみたいな言い方やめてよ!キミは【超高校級の勝者】なんだろ!?死ぬ運命くらい、ねじ曲げてみせろよ!」

「…じゃあ、俺が生き残ったら俺とデートしてくれる?」

「え…?」

「俺、遊園地とか行きたいなー。あと甘い物とかも食べたいなー。いろんなアトラクション乗ったりとかー、あ、でも歩き疲れるのはパス。それで一緒に写真撮ったりして…」

「うん、いいよ。一緒に行こう。」

「…()。」

 

 

 

 

 

 

「大好きだよ。…ありがとう。」

「何言ってんの。ここから出たら、一緒に行こうよ。その後はみんなでパーティーでもしようか。陽一クンにご飯作ってもらってさ。」

「狛研ちゃん。」

「天理クンはいっつも遅刻するから、ちゃんと時間通りに来てよね。今度また遅刻したら許さないから。」

 

 

 

「…ソイツ、もう死んでるよ。」

「え…」

ボクは、天理クンの顔を見た。

天理クンは、ボクの腕の中で冷たくなっていた。

ボクにはわかる。天理クンはもう手遅れだ。

ボクが抱えていたのは、さっきまで天理クン()()()死体だ。

でもその顔は、不満や迷いが一切無いかのように、満面の笑みを浮かべていた。

 

「ふざけんなクソが!!よくもこの俺様を散々コケにしてくれたな!!何笑ってやがる、気持ち悪いんだよテメェ!!テメェなんざ切り刻んで家畜の餌にしてやるァあああああああああああああああああ!!!」

「無駄だよ方神君。その前に、君はまず裁かれるべきなんじゃないのかな?ねえ、モノクマ。」

「はっ…!?」

『おっと、そうですね。財原クンがおしおき前に死んじゃったのが想定外すぎてワタワタしてたよ。おかげでうるさい原のおしおきシーンが見られなかったじゃん!おしおきはよって天の声がうるさいからちゃっちゃとやっちゃうよ!まあ、今回犯人は投票するまでもないだろうけど、一応投票してもらおっか。めんどくさいから捜査と学級裁判はナシでいいかな?』

『今回は、特別ルールはナシですよ。もし外せば犯人以外の全員がおしおきとなります。』

「ちょっ、ふざけんな!!何を勝手に…」

『それじゃあ始めよっか!投票ターイム!』

『必ず、一人一票投票してくださいね。もし投票しなかったら、校則違反とみなしておしおきします!』

「ざけんじゃねえ!!おい、ゴミ共!!俺に投票したら殺すからな!!」

「…。」

証言台にボタンが現れた。

ボクは、迷わず方神に投票した。

 

『うぷぷ、全員投票し終わったようだね?ではでは…結果発表ー!!』

『皆様の運命や如何に!?』

 

 

 

モニターにVOTEと書かれたスロットが表示され、ドラムロールと共にボク達の顔のドット絵が描かれたリールが回転する。

リールの回転が遅くなり、ついに止まった。

 

リールには、方神の顔が3つ並んでいた。

スロットからは、ボク達の勝利を祝福…いや、嘲笑うかのように、ファンファーレと共に大量のメダルが吐き出された。

 







新しい試みに挑戦してみました。
ライアーゲーム大好きなのでちょっと影響受けちゃいました。
こういう展開があってもいいじゃない。
あ、財原クン死にかけの割には元気すぎじゃね?っていうマジレスはナシでお願いします。


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第5章 非日常編⑥(おしおき編)

本日9月9日は羽澄ちゃんの誕生日です!
本人からメッセージをいただいております。

羽澄「今日、アタシの誕生日なんだよね。なんか、アタシの誕生日ってPOPの日らしいよ。え?なんでかって?909がPOPに見えるかららしいよ。なんか日本POPサミット協会の顧問?が言い出したとかなんかで、記念日になったんだってさ。アタシ、色々ダンス踊ってっけどやっぱポップスが一番しっくりくるんだわ。だからアタシの誕生日がこういう記念日っつーのはちょいテンアゲなんだよね。」


VOTE

 

【超高校級の知能犯】方神冥 4票

 

【超高校級の資産家】【超高校級の勝者】財原天理 1票

 

【超高校級の工学者】入田才刃 0票

 

【超高校級の不運】景見凶夜 0票

 

【超高校級の絶望】神座ゐをり 0票

 

【超高校級の幸運】狛研叶 0票

 

【超高校級の栄養士】栄陽一 0票

 

【超高校級の詩人】詩名柳人 0票

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵 0票

 

【セキセイインコ】翠 0票

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅 0票

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子 0票

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑 0票

 

【超高校級の侍】不動院剣 0票

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗 0票

 

【超高校級の看護師】癒川治奈 0票

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン 0票

 

 

 

『うぷぷぷ!!お見事大正解ーーー!!!【超高校級の資産家】および【超高校級の勝者】財原天理クンを毒殺したのは、爽やかなイケメンアナウンサーの皮を被った悪魔、【超高校級のアナウンサー】穴雲星也クン…もとい、【超高校級の知能犯】方神冥クンでしたー!!』

『いやはや、それにしても財原様、まさか複数才能持ちでいらっしゃったとは…多才ですねぇ。』

ボクは、平然と投票結果を見ていた。

こうなるのは、わかり切った事だった。何も動揺する事じゃない。

…ただひとりを除いては。

 

 

 

 

 

「ふざけんなクソがぁあああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

「おい…テメェら、俺に投票するなっつったよなぁああ!!?なんで俺に投票したんだ!!」

「うるせェ!!オレ達が誰に投票しようと勝手だろ!!オレ達は、散々悩んでここまで来たんだ。テメェにとやかく言われる筋合いはねェよ!!」

「黙れクソ!!ブッ殺してやる!!」

「無駄だよ。君はこれからおしおきで死ぬんだよ。」

「そんなわけあるか!!俺は【超高校級の勝者】だぞ!!俺は、いつだって勝者であり続けてきた!!こんな所でこんな雑魚共に負けて死ぬなんてあり得ない!!俺の辞書に敗北なんて言葉は無ェんだよ!!」

「何言ってるの、あなた。」

「くっ…なんでこうなるんだよクソが!!俺がどれだけ戦略を練って、無能なゴミ共を洗脳してここまで来たと思ってる!!それをあんな雑魚の小細工で…!!」

「どれだけ嘆いても、あなたが資産家を殺して裁きを受けるという結果は変わらないわ。あなたには、運命をねじ曲げる才能なんて無いのよ。」

「黙れクソブスチビが!!」

 

「方神、お前は、今までそうやってお前に嵌められて裁かれてきた人達や、お前の策のせいで犠牲になった人達の気持ちを考えた事あるか?そうやって人の命を弄んできたから当然の報いを受けた。それだけの話だろ。」

ボクは、いたって冷静に方神を諭した。

もう、コイツには怒りすら抱かない。

ボクの心にあるのは、軽蔑の念だけだった。

「ピーピーピーピーうるせェんだよカス共がぁああああ!!!貴様ら、さっきはよくも俺様をコケにしてくれたな!!テメェらが俺を見捨てるというのなら、俺だってテメェらなんていらねェ!!テメェらまとめて全員ブチ殺してやる!!」

「方神…」

「おい、狛研ィ!!」

「ッ!!」

「ただの幸運の分際で、よくも俺様を侮辱してくれたな!!テメェの父親といい、テメェといい…テメェの一族は揃いも揃って目障りなんだよ!!俺が今ここで根絶やしにしてやらぁああああああああああああああああ!!!」

方神は、隠し持っていたナイフを持ってボクに突進した。

 

「…。」

方神の前に、ゐをりちゃんがボクを庇うようにして立ちはだかった。

「ッ!!」

「ゐをりちゃん…!」

「絶対に殺させない。叶の事は、私が守る。」

「なんで…だったらテメェを殺してやる!!」

「別にそれでもいい。だけど、叶だけは絶対に守ってみせる。」

「なんで…コイツは、ただの幸運だぞ!!守る価値なんてねェだろうが!!」

「価値とか才能とか関係ない。叶は、私にとって大切な人だから。だから叶には生きていてほしいの。」

「ッ…!!じゃ、じゃあテメェだ詩名!!雑魚でチビのくせに調子に乗りやがって…テメェが一番目障りなんだよ!!」

「…。」

陽一クンが、柳人クンの前に立ちはだかった。

「オレはもうこれ以上誰にも死んでほしくない。どうしてもコイツを殺すっていうんだったら、オレを殺していけ。」

「栄君…」

 

「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!なんでだよ!!なんでこうなるんだよ!!テメェら、なんでそんな価値のないヤツは庇うくせに、価値のある俺の事はのけ者にするんだよ!!ふざけんなよゴミが!!」

「何言ってんのコイツ。」

「頭おかしいよね。」

「…ねえ、方神。ボク、キミの事はもっと恐ろしいヤツだと思ってた。圧倒的で絶対的な才能を持っていて、本当に他人の運命すら支配できるんじゃないかって思った事すらあったんだよ。でも、キミがこんなに弱いヤツだなんて思わなかった。…かわいそうに、道を踏み外しさえしなければもっと幸せに生きられたはずなのに…気付いてあげられなくてごめんよ。」

「やめろ…俺をそんな目で見るな…!俺は、お前らになんて同情されたくない…!」

「ボクは、キミを許さない。キミには、正直ボクの家族が受けた苦しみの百倍以上の苦しみを与えないと気が済まない。」

ボクは、方神の胸ぐらを掴んだ。

「お、おい…まさか殺す気か…!?やめろ、それだけは…!」

「…でもね、ボクはキミを殺さない。キミなんて、殺す価値も無い。」

「なんで…」

「ボクはキミの事をこれからもずっと許さない。だけど、ボクはキミを殺さないし、殺したいとも思わない。」

 

 

 

「だって、キミは『いらない』から。」

「あ…あああ…お、俺が…いらない…?」

「そうだよ。天理クンに負けて、みんなに当たり散らしてるキミなんて、誰も必要としてないんだよ。キミは、ここにいる誰よりも価値が無い人間だ。…何度でも言うよ。キミは、負けたんだよ。」

「お、俺が…負け…?」

 

 

 

 

 

「あぁああああああぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

方神は、けたたましい声で叫んでその場で暴れた。

頭を何度も床に叩きつけて、血が滲むぐらい頭を掻き毟った。

全身にじんましんが出て、顔を真っ青にして、あり得ない量の汗をかいていた。

『うっわ、壊れたw事実を受け止めきれなかったんだねぇ。おお、あわれあわれ。』

『フッフッフ。もうおしおきの準備はできているのですが、このまま醜態を晒させて絶望に堕とすのもまた一興…気が済むまで見届けましょうかねぇ。』

「嘘だ!!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁあああああああ!!!俺は【超高校級の勝者】だぞ!!俺の人生に敗北なんてあり得ない!!俺が負けるわけがない!!!俺様は、選ばれた人間なんだ!!!」

『なーに言ってんの、【超高校級の勝者】なら、キミがさっき毒殺したじゃん!ホント、ボケてんじゃないの?大丈夫?病院行った方がいいんじゃないの?』

 

「そうだ、俺はまだ負けてない!!財原だって、本当はまだ生きてるんだろ!?この前だって、死んだフリしてたもんな!!」

「方神…お願いだから現実を見てよ。」

「今から助ければまだ間に合うかもしれない!!おい、起きろ!!起きろっつってんだろクソが!!」

方神は、天理クンの死体を何度も蹴った。

…そんな事をしたって、生き返るわけないのに。

「ハコガミ、もう諦めろ。ソイツはとっくに死んでるよ。」

「おいモノクマ!!珀銀中毒の治療薬は!?薬をよこせ!!」

『珀銀中毒は不治の病だよ。治療薬なんてありません!それに、たとえあったとしても死んだ人間に薬あげても無駄でしょ。』

「じゃ、じゃあ蘇りの技術は!?お前ら、知ってるんだろ!?コイツを生き返らせろ!!」

『無理だよ!何をもってそんな戯言を言ってんのかは知らないけど、一度死んだ人間が生き返るわけないでしょ!3歳児でも知ってる常識だよ!それともオマエはものすごくバカなの?』

「くっ…お、おいクソ女!!どこにいんだよ!!さっさとこの成金を治しやがれ!!こんな時に何やってんだよ!!治せっつってんだろボンクラがぁあ!!」

「方神、治奈ちゃんを呼んでも無駄だよ。治奈ちゃんならキミが天理クンを使って殺したでしょ。」

「ッ…!!じゃあ、じゃあ…!」

 

『フハハハハハハハハ!!なーにバカな事やってんですか!!アナタが財原様を殺し、今からおしおきされる…これはもう確定事項なんですよ!今更アナタが何をしようと覆るわけないでしょう!!財原様になら結果すらも歪める才能があったんでしょうが、アナタには無理だったようですねぇ!!』

「ぐぅうううううう…!!!」

「いい加減認めなよ。このゲームは、天理クンの勝ち逃げだ。キミは、どうやったってあの子には勝てない。キミは、負けたんだよ。」

「いやだぁあああ!!俺が負ける!?そんなのあり得ない!!いやだ、いやだいやだいやだ!!負けたくない、負けたくなぁあああああぁあい!!!」

方神は、自分が負けているという事実に耐えられず、全身を掻き毟った。

「何言ってんだコイツ。とっくに負けてるっつーの。」

「ふざけるな!!こんなの不正だ!!俺は、負けてなんかない!!財原だって癒川だって、本当は生きてるんだ!!俺をコケにしやがって…アイツら後で絶対ブッ殺してやる!!」

『何言っちゃってんの?そんな事できるわけないじゃん。オマエがあの二人に勝つ事は永遠に不可能なんだよ。だって、二人はもう死んじゃってるんだもんね!』

「嘘だ!!俺を誰だと思っていやがる!!俺が負けるわけがない!!俺の勝利は約束されてんだよ!!俺は、勝つために生まれてきたんだ!!俺があんな雑魚共に出し抜かれて負けるなんて、あっていいわけがないんだよぉおおおおおおおお!!!」

『だーかーらー、何度も言わせないでよ。【超高校級の勝者】はさっきキミが殺した財原天理クンただ一人なの。キミは、ただの【超高校級の知能犯】。それ以上でも以下でもないの!あ、それとも何?財原クンみたく二つ目の才能が欲しいんだったら、【超高校級の敗者】とでも呼んであげよっか?』

「俺が敗者だと!?侮辱するのもいい加減にしろ!!あんな雑魚が勝者なわけないだろ!!俺様こそが本物の勝者なんだよ!!!」

 

『あーあ、もううるさいね全く。弱い犬はよく吠えるとはまさにこの事だよ。これ以上長引かせると天の声がうるさいし、そろそろアレいっちゃいましょっか、アレ。』

「はっ…!?おい、まさか…俺をおしおきしようっていうのか!?」

『それ以外に何が考えられるんです?』

「ふざけんなテメェら!!話が違うじゃねえか!!何のために俺がお前らと組んだと思って…」

『話が違う?何言ってんの?ボク達は、キミのゲームに乗っかってあげる事には承諾したけど、別におしおきを免除するとは一言も言ってないよ?あーあ、キミを泳がせておけばもっと視聴率稼げると思ってたのに…興醒めだよ!』

『とほほ…ワタシ達は、どうやらアナタを買いかぶりすぎていたようですねぇ。こんな事なら最初から協力なんてするんじゃありませんでした。』

『ホントだよ!ちょっと下手に出てあげたらすーぐイキり倒してさ!調子に乗りすぎなんだよオマエ!』

『アナタにはほとほと愛想が尽きました。目障りなので、早く地獄に堕ちてくださいな。』

「黙れクソがぁああああ!!!俺は、ここにいる誰よりも強くて賢い…選ばれた人間なんだぞ!!俺は、そこら辺の砂利共じゃあ足元にも及ばない…圧倒的な価値を持った存在なんだぞぉおおぉおおお!!!」

 

『ふーん、あっそ。じゃあ聞くけど、オマエは一体自分の力で何を成し遂げたっていうの?』

「えっ…」

『財原クンみたいに投資や起業で成功した?癒川サンみたいに難病に苦しむ人を救った?景見クンみたいに自分の運命に抗おうと努力した?白鳥サンみたいに憧れの人に近づくために自分を磨いた?羽澄サンみたいに世界中を沸騰させるダンスを披露した?日暮サンみたいに色んな動物を絶滅の危機から救った?暁サンみたいに自分の手で人を殺した事はあった?舞田クンみたいに自分の正義のために全力で戦った?朱サンみたいに世界中で注目されるような芸を披露した?不動院サンみたいに高みを目指して修行に打ち込んだ?入田クンみたいに工学者として功績を残して賞を取った?ラッセクンみたいに一国の王として国民を導いてきた?』

「テメェ、何を言って…」

『まだあるよ。栄クンみたいに栄養学でアスリートを五輪優勝に導いた?詩名クンみたいに世界中の人々を感動させる詩歌を作った?神座サンみたいに自分の命を懸けてまで友達を守ろうとした?はたまた、狛研サンみたいにみんなを元気づけて、裁判で真相を暴いた?』

「俺は、あんな雑魚共とは違う!!愚民共の運命を支配して、俺の思うままに動かしてきた!!俺は、この世界で最も神に近い存在なんだぞ!!」

 

『オマエが自慢してる事ってさ、全部他の人にやってもらった事だよね?ボク、知ってるよ。キミが【超高校級のアナウンサー】としてスカウトされたのだって、自分の部下を利用して印象操作をしたり代役をやらせたりしたからだよね?キミ自身は、大した才能が無いくせにさ。』

「俺は、誰よりも才能が…」

『この際だからハッキリ言っておくよ。キミは、自分の力で何かを成し遂げるのが怖いんでしょ?そんな事したら、『負ける』かもしれないからね。だから自分の手を汚さずに人に全部やってもらって、それを自分の才能だと勘違いする事でしか自分を大きく見せられないんでしょ?』

「違う!!俺は、雑魚共とは次元が違うんだよ!!」

 

『…ねえ、キミさぁ。今まで何をしてきたの?』

「は…?」

『まだわかってないみたいだね。キミは、自分の力で何かを成し遂げてない時点で既に凡人以下なんだよ!もう負け犬に用はないからさっさと消えてよね!』

「い、いやだぁあああああああああ!!!負けるのは嫌、負けるのは嫌だぁああああああ!!!死にたくない、俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだよぉおおおおおおおおお!!!」

方神は、みっともなく逃げた。

エレベーターに乗ろうと扉を叩くが、扉はビクともしない。

『あーあ、みっともないね全く!じゃあそろそろ時間も押してるしいっちゃいましょっか!それでは!【超高校級の知能犯】方神冥クンのために!スペシャルなおしおきを用意しました!』

 

「いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだ!!!…ッ!?」

ボクは、方神と目が合った。

「おい…何見てんだテメェ…やめろ、その哀れむような目を向けるな…!そんな目で…」

 

『ではでは…おしおきターイム!!』

 

 

 

「俺を見るなぁあああああぁあああああああああぁあああああああああああ!!!」

 

クマさんはハンマーを取り出すと、せり上がってきた赤いボタンをピコっと押した。

ボタンの画面に、ドット絵の方神が連れ去られる様子が表示された。

 

 

 


 

 

GAME OVER

 

ハコガミくんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

 

方神は、ロープのようなもので首を絞められ、そのまま上へと登っていく。

上へ上へと上がっていくと、突然ロープが止まり、岩肌に設置された足場に立たされる。

ふと下を見ると、下は腐った肉や汚物が蓄積し、巨大なミミズやゴキブリのような生き物がうじゃうじゃと住み着く沼になっていた。

風が下から上へと舞って、鼻を突き刺すような悪臭が立ちこめる。

方神は、顔を青くしながら立ちすくんだ。

ふと上を見ると、崖の頂上は雲で覆われていて、所々光が差して輝いている。

そこで文字が映し出される。

 

 

 

罪を謳って謳って雲の上

 

【超高校級の知能犯】方神冥 処刑執行

 

 

 

方神が立っている足場が崩れ始める。

方神は、身の危険を感じて咄嗟に近くの足場に乗る。

するとさっきまで乗っていた足場が汚物の沼に落ち、腐って融けた。

方神は恐怖で足がすくんだが、足場は崩れるのを待ってはくれなかった。

また足場が崩れ、方神は次の足場に乗り換える。

少しずつではあるが、足場の面積がだんだん狭くなっていく。

しだいに足場が崩れるスピードが速くなっていき、足だけでは間に合わなくなった方神は、手を使って足場を掴もうとした。

足場を掴んだ時、方神は手に違和感を覚えた。

手で掴んだ足場は、鋭い荊棘で覆われ、ひとりでに方神の手に巻きつき棘で彼の手を容赦なく刺した。

方神は、手の痛みで怯んで手を離そうとした。

しかし、下を見てすぐに足場を掴み直した。

方神は、荊棘の足場で手足をズタズタにされても、止まる事なく足場を使って崖を登り続けた。

しかし、どれだけ上に進んでも頂上に全く近づけない。

雲は次第に上へと上がっていき、近づくどころかむしろ遠ざかっているようにさえ思える。

方神は、それでも上へと登り続けた。

 

体感的に10時間ほど登った頃、方神は疲れて少し休んだ。

すると、手に何かが這う感触がした。

ふと見ると、手にはサソリやら蜘蛛やらがわらわらと湧いて方神の手に毒を注入していた。

方神は悲鳴を上げて手に湧いた毒蟲を払った。

しかし時すでに遅し、手に侵食した毒は確実に手を蝕んでいた。

死に至るほどの量ではなかったが、毒のせいで足場を掴むたびに手が痺れて激痛が走る。

方神は、これ以上登り続ける事に耐えられなくなる。

しかし、下は肉が腐って融けるほどの悪臭が漂う汚物と巨大な蟲の沼で、落ちたら終わりなのは明確だった。

方神は気持ちを奮い立たせ、また登った。

 

体感的に数日が経った。

方神は少しずつやつれ、元気がなくなっていた。

しかし不思議な事に、何故かまだ身体は動くようだ。

そして、上に登れば登るほどなぜか最初の方に負った怪我は治っていく。

方神は、ただひたすら上を目指して登り続けた。

そして、休もうとすると今度は足場の温度が一気に上がり、方神の手を灼いた。

方神は思わず手を離し、すぐに次の足場を掴んだ。

 

方神は、終わりの見えない道をただひたすら進み続けた。

少しでも休もうとすると足場に仕掛けられたトラップが発動し、方神にダメージを負わせた。

不思議な事にどれだけ怪我をしても数時間登るごとに治り、他の刺激を得る事や眠る事すら許されなかった。

どれだけ近づいたのかも分からず、ただ体感的な時間だけが過ぎていく。

数週間、数ヶ月、数年…

 

数百年、数万年、数億年…

 

体感的な経過時間が天文学的数字になった頃、方神はついに人格が崩壊した。

ずる休み防止用のトラップにももはや反応しなくなり、おしおきを受ける前の記憶が完全に薄れた。

自身の目的も正体も才能も全てを忘れ、ただただ崖を登り続けるという機械的な作業を繰り返すだけの廃人と化した。

目の焦点は合わず、清潔感のあった髪は汚らしく散らかり、少し開いた口からは涎と一緒に言葉にならない声がブツブツと漏れていた。

服は色あせてボロボロになり、靴は擦り減って原型を失い、手足の爪は全て剥がれて指は腫れ上がって変形している。

方神は、今の自分のみすぼらしい見た目などお構いなしに登り続ける。

そして方神はついに頂上まで辿り着く。

重い体を持ち上げ、頂上に足を踏み入れようとした、その時だった。

 

グンッ

 

急に身体が重くなり、方神はずり落ちそうになった。

方神は、ふと自分の身体を見た。

その瞬間、彼は失った記憶を全て取り戻した。

そして、思い出した。

今自分の身体を掴んでいるのが、かつて自分が殺したはずの級友である事を。

財原は、血塗れの姿で方神にしがみつき、崖から方神を引き剥がそうとする。

方神は、財原を振り落とそうとするが、財原の掴む力が余計に強くなる一方だった。

二人が崖で揉み合いになっていると、崖の上から人が集まってくる。

集まってきたのは、癒川や彼女の弟、狛研の両親…かつて方神が殺したはずの者達だった。

癒川は、方神に優しく微笑みかけたかと思うと、握っていた石を思い切り方神目掛けて投げた。

それに続くように、崖に集まってきた人々が次々と石やゴミなどを投げる。

投げられた石やゴミは財原の身体をすり抜け、方神だけに直撃した。

方神は、投げられた石やゴミで全身ボコボコに変形した。

ゴミが止んだかと思うと、今度は天使の格好をしたモノクマとモノベルが現れ、方神の顔を思い切り踏み潰した。

方神は、崖から手を離し、真っ逆さまに落ちていく。

どこまでも、下へ、下へと堕ちる。

上を見ると、モノクマやモノベルと一緒に、財原と癒川が手を振って堕ちていく方神を笑顔で見送っていた。

方神の表情は、絶望に満ちていた。

そして…

 

 

 

 

 

落ちた。

方神は、沼の中で腐りながら融けていき、最後は骨だけになって沼の水面に浮かんでいた。

 

 

 


 

 

 

『イヤッホォオオーイ!!エクストリィイイイイム!!いっやあ、最高だね!!』

『フッフッフ。これでようやく目障りなクズが消えてくれました。さあさあ皆様。憎き知能犯が処刑されたのですから、もっと喜んでください。』

「ふざけるな!!キミ達、人の命を弄んで、何が楽しいの!?」

『あれ?狛研サン。なんで怒ってんの?キミの両親を殺したヤツが処刑されたんだよ?もっと喜んで音頭とかパラパラとか踊り出してもいいんだよ?おっと失礼。それは羽澄サンのジョブかw』

「確かに、ボクは方神の事が憎かった。だけど、こんな事をして一体何になるっていうんだ!!」

『うーん、そうだなぁ。強いて言うなら、ボクはもっとキミに絶望して欲しいんだよ。』

「絶望だって!?冗談じゃない!!ボクは、どんなにつらくても絶対に絶望しないって決めたんだ!!」

『絶対に絶望しない、か。何を今更…それ、1週目からキミがずっと言ってきた事だよね?』

「は…?」

 

 

 

『『立ち止まってもいい。どんな時でも、前を向いて生きろ。そうすれば、きっと幸せになれるから。』…か。』

 

「…え?」

『うぷぷぷ、笑わせてくれるじゃない、全く。キミが幸せになれる未来なんてあるわけないのにね。キミが歩む未来は、絶望…ただそれだけだよ。』

「どういう意味!!?」

『おっと、喋りすぎちゃったかな。まあいいや。いずれ話そうと思ってた事だしね。』

「おい、テメェら一体何を言って…」

『フッフッフ。生き残った皆様に朗報です。皆様はこれから、一切コロシアイをしてはいけません。』

「は!?コロシアイをすんなだと!?」

『おや、どうしたんです栄様?もしやアナタは、まだコロシアイを続けたかったのですか?だったら最初から素直に誰かを殺しておけば良かったのに!』

「違げェよ!!どういう風の吹き回しだって聞いてんだよ!散々オレ達にコロシアイを強制しておいて…どういうつもりだテメェら!!」

『フッフッフ。単刀直入に申し上げますと、皆様に参加していただく学級裁判は、次が最後でございます。』

「コロシアイをしちゃいけないのに、まだ裁判があるの?」

『おや、察しが悪いですねぇ。最終裁判の議題は、今までの議題とは全く違います。』

「もしかして…」

『おっと、勘のいい狛研様は既に気付かれたようですね。そうです。最終裁判の議題…それは…』

 

『ワタクシ達を陰で操っている黒幕の正体でございます。』

「く、黒幕の…正体だと…!?」

『今から3日間、この学園について調べる時間を差し上げます。その間に、アナタ達にはワタクシ達の正体、自分達の正体、そしてなぜ自分達がここにいるのかという問題について情報を集め、学級裁判で議論していただきます。』

『見事黒幕を当てる事ができたら、なななんと!ボクを裏で操っている黒幕が自ら生身で登場しちゃいまーす!!』

「うるせェ!!そんな事どうでもいいんだよ!!」

『あら冷たい。サプライズのつもりだったのに…』

『フッフッフ。栄様は相変わらずお口が悪いようで。これが俗に言うツンデレというヤツですかねぇ。』

「違うわドアホ!!」

『じゃあ、そういうわけで、ボク達はもう眠いからそろそろ戻るね。あ、メダルならオマエラの手帳にプレゼントしてあげたよ。それじゃ、まったねー!』

『フッフッフ。ご機嫌よう皆様。』

二匹は上機嫌で去っていった。

 

「…どうする?」

「黒幕を見つけろだなんて、急に言われたって…」

「どうすればいいのか…わかんないよね…」

「…みんな、絶対に諦めちゃダメ。真実を解き明かして、みんなで一緒にお家に帰ろう。今まで犠牲になったみんなのためにも…!」

「…おう!」

「そうだね。」

「そうね。」

ボク達は、真実を暴くために戦い続ける。

どんなに絶望的な結末でも、絶対に希望を捨てたりしない!!

 

 

 

 

 

 

 

第5章 されど罪人は敗北を知る ー完ー

 

 

 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の絶望】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】【超高校級の勝者】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級の知能犯】方神冥

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上4名

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

Chapter.5クリアの証

 

『ガラス玉の髪飾り』

癒川の宝物。弟が幼稚園の工作で手作りしたプレゼント。癒川の弟との思い出が詰まっている。

 

『珀銀の指輪』

財原がいつも付けていた指輪。とある国の大富豪に、高級チョコのお礼にプレゼントしてもらったものらしい。金と自分以外何も信用しなかった彼だったが、自分を奮い立たせるために、願掛けのつもりでいつも右手の中指に付けていた。

 

『メガネ』

方神がいつも付けていたメガネ。人を都合よくコントロールするために常にあらゆる人間に変装していた彼だったが、唯一お気に入りのメガネだけはいつも持ち歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

【???の独房】

 

もうすぐだ…

 

もうすぐで計画が達成される。

 

全ては計画のためだ。キミにはもっと絶望してもらわないとね。

 

 

 

 

 

第6章 断罪のエンドロール

 

To be continued…

 



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第5章 真相編

【癒川治奈編】

 

私の家は、それはもう貧乏だった。

父親は私が物心つく前に亡くなり、母親は怪しい仕事をしては稼いだお金をお酒やタバコ、ギャンブルや怪しい薬に全部使ってしまうような最低な人だった。

でも、そんな私の人生に唯一救いがあった。

 

私の弟だ。

彼は、私を姉として慕ってくれたし、まだ幼かったというのに貧しい暮らしに文句ひとつ言わず家の事を手伝ってくれていた。

そんな弟が、ある日突然重い病に侵された。

弟は、日に日に衰弱していって、このままだと2年ももたないと言われた。

治療法がないわけではないが、都会の病院に行かなければならない上に多額の手術代がかかる事を知らされた。

私は、弟のためならなんでもすると決めた。

だから、すぐに行動を起こした。

 

私は、夜な夜な繁華街に出歩いて羽振りの良さそうな男の人に声をかけた。

その人は、最初は私にいい服をプレゼントしてくれたり、多額のお小遣いをくれたり、レストランに連れてってくれたりして優しかった。

だけど、家に上がった途端に詰め寄られて、文字通り体で払わされた。

痛かったし、怖かったし、気持ち悪かった。

それでも私は立ち止まるわけにはいかなかった。

その後は、また別の人に声をかけた。

そんな事をほぼ毎日繰り返して、少しずつお金を貯めていった。

やっちゃいけない事だってわかっていたけど、お金が必要だから仕方ないと自分に言い聞かせた。

でも、お金が貯まった時にはもう遅かった。

弟は、容態が急に悪化して亡くなった。

私は医者に問い詰めたけど、医者はなぜかはぐらかすだけで何も教えてくれなかった。

 

私は、この日誓った。

大切な物を奪われるくらいなら、たとえたった一人でも守り抜いていけるくらい強くなってやると。

その日から、私は稼いだお金を全て勉強に注ぎ込んだ。

私は、弟を救えなかった無念をバネに、死にものぐるいで勉強した。

私にはたまたま看護師としての適性があったのか、勉強を始めてからわずか1年で普通の看護師と遜色ない医療技術と知識を身につけた。

中には噂を聞きつけて、わざわざ無免許の私に治療を依頼してくる患者もいた。

そして、大震災の時、多くの命を救った事で【超高校級】として認められた。

 

 

 

でもある日、私はある真実に行き着いた。

私の弟は、ただの病死じゃなかった。

NOAHSのボスに殺害された。

…許せない。

絶対に殺してやる。

私の弟が受けた以上の苦しみを味わせないと気が済まない。

 

 

 

 

私は、才監学園に収監された後、すぐにモノクマ学園長に取引を持ちかけられた。

知能犯の手がかりを追う手伝いをしてやるから協力しろという内容だった。

私は、弟の仇を討てるのならなんでもするつもりだった。

だから、私はその話を快諾した。

でも、その後すぐの事だった。

私は、財原さんに呼び出された。

 

「いいのか?キミ、このままだと捨て駒にされるよ。」

「は?」

「別にシラを切らなくてもいいよ。俺は、キミが内通者だって事も、知能犯の正体も知ってるから。」

「あなたは一体何を言ってるんですか…?」

「キミの復讐、手伝ってやるよ。」

「…え。」

「なあに、俺も、知能犯にはちょっとした恨みがあってね。同じ敵を持つ者同士、仲良く協力しようぜ?」

「お断りします。あなたのような方、信用できるわけないじゃないですか。」

 

「ふーん。…20XX年4月XX日、癒川治奈死亡。その翌日、知能犯を除く全員がおしおきされて死亡。」

「…は?」

「なんでもないよ、独り言。…でも、キミが俺の言う事を聞かないって言うなら、今言った事が現実になるかもね。」

「どういう事ですか?」

「…ちょっと未来予知してあげよっか。もし、キミが俺の言う事を聞かずにこのままクマちゃんの内通者を続けていれば、キミはクマちゃんに捨て駒にされて、仇を討つ事もできずに死ぬ。もし俺とクマちゃん両方を蹴れば、口封じのためにクマちゃんが用意するであろう別の内通者に殺される。どっちにしろキミが仇を討てる未来は無いんだよ。」

「だったらどうしろっていうんですか?あなたの言う事を聞けと?」

「そうだよ。わかってんじゃん。俺のシナリオに従ってさえくれれば、キミの願いを叶えてあげられる。なんてったって、俺は【超高校級の勝者】だからネ☆」

「そんな事をして、何のメリットがあるんですか?」

「だから、言ってんじゃん。知能犯には、俺も恨みがあるんだよ。俺には、キミの願いを確実に叶えてあげられる才能があるんだよ?従った方が得策だと思うけど?」

「あなたの事は信用できません。あなたが裏切らない根拠は?」

「逆に、キミを裏切るメリットが無いでしょ。俺は内通者じゃないし、知能犯の手先でもない。俺とキミは、お互いに同じ敵を持つ仲間だ。…これでどう?」

「…そうですね。あなたの事を完全に信用したわけではありませんが、一応シナリオとやらをお聞きしても?」

「物分かりが良くて助かるー。」

 

 

 

 

…まさか、あの男が、方神と付き合えなんて言ってくるとは…

あの子のためならなんでもやるとは言ったけど、さすがに弟を殺した奴を好きなフリをするなんて反吐が出そう。

さらにアイツは、『俺に殺されろ』と言ってきた。

やっぱり、あの男がまともな提案をしてくるわけがなかった。

…だけど。

 

 

 

 

「本当に良かったのか?俺の言う事を聞いてもらっちまってよ。」

「何を今更…元はと言えばあなたが言い出した事じゃないですか。」

「ごめん、そうだったね。ところで、方神の方は順調?」

「ええ、まあ。とりあえず表向きの協力関係は結んできましたよ。…それにしても、本当にあの男の恋人のフリをする必要なんてあるんですか?」

「だって、二人で何かコソコソやってても、恋人同士ならあんまり他の奴らに怪しまれないでしょ?方神にとっても、恋人であるキミが死ねば、自分を犯人候補から外せるからね。」

「それで、私を敵と付き合わせたと?本当にいい性格してますね。」

「いいねえ、最高の褒め言葉だよ。」

 

「それで、私はどうあなたに殺されればいいんですか?具体的に。」

「説明するからよく聞いて。まず、キミがこのナイフを持って俺に襲いかかるでしょ。そしたら、俺が反撃する。その後、俺がこの毒をキミに盛る。…こんな段取りでどう?」

「でも、私そんなアクション俳優みたいな芸当できませんよ。襲いかかった後、不自然さが出ないようにあなたと揉み合う演技をするなんて、正直難しいんですけど。何か具体的な対策でもあるんですか?」

「ああ、それについては安心しな。キミのアクションが少なく済む方法もちゃんと考えてきたから。」

「…へえ、準備がいいんですね。」

「ありがと。…じゃあ段取り説明するぞ。まず、キミがナイフで俺に切り傷を作るでしょ。その後俺がキミに切り傷を作る。そうしたら、キミは俺に向かって突進して、俺はこれを使ってキミの動きを封じた…事にする。どう?完璧でしょ?」

「それ、媚薬ですよね。まさか、それを使って…?」

「そうだけど?」

「…あなた、本当に最低ですね。」

「えへへ。」

 

「そしてその後、私はあなたに毒殺されると…そういうわけですね?」

「理解が早くて助かるよ。まさかキミが俺の提案を快諾してくれるとはね。」

「財原さん。あなたは最後まで信用できない方でした。」

「ひっど。」

「…だけど、今回だけはあなたに付き合ってあげます。あなたの、知能犯に一泡吹かせたいという思いに嘘はないと判断したので。」

「癒川サン…」

「ただし、もし方神へ復讐する事ができず、あなたも私も犬死にするような結末になったとしたら、永遠にあなたを呪いますからね。」

「こっわ。」

「…それと、これは私からの伝言です。もし可能であれば、方神本人に直接伝えてくれませんか?」

「伝言?」

言いたい事は山ほどある。

アイツの事は絶対に許さないし、できる事なら私の手でアイツを殺したかった。

でも私は、この男ならきっとアイツを殺してくれるって信じてる。

だから、最期は笑って逝ってやる。

 

「『地獄に堕ちろクソ野郎。』…以上です。」

「わかった。ちゃんと伝えておくよ。だから、キミは安心して弟の所に行ってあげな。」

「ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

 

毒に体が蝕まれていく。

肺が破裂して、体が嫌な音を上げて軋み、全身が燃え上がるように熱くなる。

目がかすんで、体の感覚も鈍くなっていく。

…これが、死ぬって事なのか。

あーあ、こんな事ならもっと人生楽しんでおけば良かったなぁ。

 

ぼやける視界の中、たった一人はっきりと見える人影があった。

 

『おねえちゃん。』

 

視界に映ったのは、私の弟だった。

 

「…治人。」

 

『おねえちゃん、やっと会えたね。かってにひとりで行っちゃってごめんね。』

 

「ううん、謝るのは私の方。治人、本当は私の手であなたの仇を討ちたかった。ダメなお姉ちゃんで本当にごめんね。」

 

『そんな事ないよ、今までよくがんばったね。』

 

「治人…!ずっと、会いたかった。長い間独りにして本当にごめんね。もう独りにしない。ずっと一緒にいるから…!」

 

『おねえちゃん、大好きだよ。』

 

私もよ、治人。

私は、あなたを世界中の誰よりも愛してる。

 

 

 

 

 

「…癒川サン。キミの復讐は、俺が引き受けた。」

 

 

 

 

 


 

 

 

【財原天理編】

 

俺は、ずっと負け犬の人生を歩んできた。

俺は生まれてすぐに両親を殺され、闇オークションで売られてとある闇カジノに引き取られた。

そこからは、奴隷として人間以下の生活を送ってきた。

使えない人間は売却されるのがそこのルールだったが、俺は自分の才能を使ってなんとか生き残った。

 

後から聞いた話によると、俺の実の両親はとある村の神子の一族の末裔で、摩訶不思議な力を使って村を救っていたそうだ。

そのせいなのか、俺には生まれつき常人をはるかに凌ぐ先見能力があった。

今までの膨大な統計、世を支配する基本原理、確率、そういったあらゆる要素の点が全て最適解へ向かって線として繋がっているように見えていた。

その線をなぞりさえすれば、俺はいつだって成功を掴み取る事ができた。

でも、俺の才能の本質はそこで終わりじゃなかった。

確率も法則も運命さえも好き勝手にねじ曲げて、俺が望む未来を強引に掴み取る。それが俺の才能だった。

その才能を使って俺はカジノを潰して、その後成り行きで育ての親に拾われた。

俺が投資と起業を繰り返して巨万の富を築いたのは、その直後の事だった。

俺は、世界屈指の資産家として注目を浴び、【超高校級の資産家】と呼ばれるまでに至った。

でも、その才能はあくまで後から伴ったおまけに過ぎなかった。

…【超高校級の勝者】。それが俺の本当の才能だ。

 

俺には、絶対に殺すと決めている奴がいた。

ソイツは、俺の人生を滅茶苦茶にしたカジノを裏で操っていた上に、俺の大切な人を殺した張本人だ。

俺は、自分が楽しく生きられればそれでいい。

だけど、アイツは…方神冥だけは、絶対に殺さなきゃいけない。

だって、そうじゃなきゃ()()楽しくないから。

 

 

 

 

 

 

 

俺は、癒川サンとコロシアイの打ち合わせをした。

俺が癒川サンを殺して、方神が俺を操った気になって有頂天になってる間に俺が自殺をする。

…いや、自殺はおかしいか。

だって、俺は方神に殺されるんだからな。

俺を殺したアイツが処刑される。それが俺の考えた最高のシナリオだ。

ただ、このシナリオにはひとつ欠点がある。

アイツのクソダセェ死に様をこの目で見られない事だ。

しょーがない、これだけは諦めるしかないか。

それか、天国か地獄がある事に賭けてみようか?

アイツが地獄に落ちる様を見るのもまた一興ってね。

 

俺は、右手の中指の指輪を外して睨んだ。

俺だって、たった15で死ぬなんて嫌だ。できればこの手は極力使いたくなかった。

でもいずれ殺されるんなら、死に方くらいは選びたい。

アイツの思い通りに死ぬつもりは微塵もない。

俺の死に方を決めていいのは俺だけだ。

俺は、今まで殺されるために生きてきたわけでも、人の言いなりになるために生きてきたわけでもない。

たった一度しかない人生を全力で楽しむためだけに生まれてきたのだから。

俺は、指輪を飲み込んだ。

「…ふぅ。」

まさか、こんな形で右手中指の指輪が役に立つとはね。

やっぱ、願掛けって大事だねw

 

 

 

 

全てがうまくいき、俺は狛研サンに罪を暴かれた。

だけど、それすらも俺の計算の内だった。

俺は、狛研サンなら俺の嘘を暴いてくれるって信じてた。

そして、感情に任せて判断を誤るほどあの子が子供じゃない事も、俺はわかってた。

全てが俺の描いた通りに動いていく。

俺はあんなゴミクソに殺される事になるけど、それでもアイツを死刑にさえできれば俺の勝ちなのには変わりない。

散々上げるところまで上げておいて、最後の最後に絶望のドン底に突き落として、俺だけはおいしい所を全部持っていって勝ち逃げしてやる。

だって俺は、【超高校級の勝者】なんだからな。

 

「ぎゃははははははははははははははははは!!!そりゃそうなるよね!!だって、みんなにとっては、君を生かす選択をするメリットなんて1ミリも無いもんね!!あーあ、かわいそうに!!」

ウザいくらい調子に乗ってんな、コイツ。

今からオマエも死ぬんだっつーの。

ホント、面白すぎて笑い堪えるのに必死だよw

そうだ、どうせならこのまま調子に乗らせておこう。

ついでに慌てふためく演技付きでね。

だって、やっぱりギリギリまでアイツに優越感を感じさせてあげた方が、後から来る絶望も大きいもんね。

…そう、俺がサイコーの死を遂げるその瞬間まで。

 

…!

「復讐したって幸せになれないなんて、そんな事でお父さんとお母さんが喜ぶわけないって事なんて…そんなの、わかってんだよ…!でも…それでも…やっぱりコイツが許せないんだ…!ボクは、コイツを殺さないと気が済まないんだよ!!」

「狛研ちゃん…」

「うっ、うぅう…うぁああああぁあああああああぁああああああああぁあああああああ!!!」

なんて顔してんだよ、狛研サン。

それじゃあ両親が悲しむぜ。

この子にとっては色々と複雑な心象なんだろうけど、それでもやっぱり俺はこの子に復讐させるわけにはいかない。

俺は、この子に手を汚して欲しくない。

それに、これは俺がやると決めた復讐だ。

俺の手でアイツを殺さないと気が済まない。

 

『安心しろ。キミの復讐は俺が引き受けてやる。』

 

うまく伝わったかな?

ごめんね、狛研サン。

今回ばかりは、俺がこのセカイの主人公だ。

…っと、ヤバい。

そろそろ毒が効いてきたみたいだな。

保ってあと10分ってところか。

時間は限られてるし、何を言い残すか考えておかなきゃな。

 

 

 

『それでは!【超高校級の資産家】財原天理クンのために!スペシャルなおしおきを用意しました!』

 

「いやだぁああああああああああああぁあああああああああああああああああぁああああああああ!!!」

 

『ではでは…おしおきターイム!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴポッ

 

「…なーんちって。」

キッツ…これ、思ったより苦しいな。

胃がもうズタボロじゃねえか。

こりゃあもう時間の問題かな。

でもいっか。

方神のクソに復讐できて、俺はおしおきを受ける事もなく勝ち逃げできるわけだし。

今どんな気分かって?

サイコーに決まってんだろうがよ!

方神も、こんな糞ゲーも、それを操る黒幕も全部ゴミだ。

俺は、安全圏から笑って見てやがるカスが一番嫌いなんだよ。

でもな、どんなにテメェらがそういうクズだったとしても、俺がいる限りテメェらの勝利だけは絶対にあり得ない。

最後に笑うのは、黒幕でも他の参加者でも視聴者でも、ましてや知能犯でもない。

【超高校級の勝者】であるこの俺様だ。

 

「天理クン!?天理クン!!しっかりしてよ!!ねえ!!」

 

ハハッ、なんて顔してやがんだ狛研サン。

ウザくてキモい俺が死にそうになってんだよ?

もっと喜んでよ。

俺、キミの泣いてる顔、あんまり好きじゃないんだからさ。

 

「ッ、ゲホッ、ゴホッ…!ハハッ…さすがに喋りすぎたか。これ、思ったより死ぬの早いかも。…ヘヘッ、最期に…テメェのダセェ死に様を見られそうにないのが心残りかな。まあでもいっか。『囚われのマリアのための交響曲』の続きは見届けられたしな。」

「天理クン!もういいよ、喋らなくて!これ以上仲間が死ぬなんて、ボクは嫌だ!」

「ゼェ…ゼェ…どうせ生き延びたって、おしおきを受けるだけだよ…だったら潔く死んでやるよ。短い間だったけど楽しかったぜ。」

「そんなの、わからないじゃないか!とにかくこのまま死ぬなんてダメだ!!」

「狛研サン…最期にこれだけは伝えておくね。俺は、キミの事を誰よりも信頼していたし、クラスメイトとしても、友達としても、一人の女の子としても、キミは俺にとって誰よりも大切な人だった。」

「そんな…これから死ぬみたいな言い方やめてよ!キミは【超高校級の勝者】なんだろ!?死ぬ運命くらい、ねじ曲げてみせろよ!」

 

俺、なんで今まで狛研サンに執着してたのかわかった気がする。

多分、恋をしていたんだと思う。

狛研サンは、方神に殺された俺の初恋の人にそっくりだった。

だから、彼女に重ねて見ていたのかもしれない。

…いや、違うな。

これは偶然なんかじゃない。

俺がこうしてまたあの人に出会って、あの人の腕の中で死ぬのは、きっと俺自身が決めた運命だったんだ。

こんな形になっちゃったけど、せめて最期くらいはちゃんと想いを伝えないとね。

 

「天理クン…」

キミが泣くなら、俺は笑って死ぬ事にしよう。

今までで最高の笑顔で、こんな腐った世界を嘲笑って終わらせてやるんだ。

だって俺は【超高校級の勝者】だから。最期まで笑顔でいなきゃね。

 

 

 

「叶、大好きだよ。ありがとう。」

 

 

 

 

 


 

 

 

【方神冥編】

 

俺は、生まれてからこの方『負けた』事が一度もなかった。

俺は、全てにおいて恵まれた完璧な存在だった。

俺には元から全てが備わっていた。

でも、何か足りない物がある事に気がついた。

俺は、その足りないものを探すために実験を繰り返した。

ある日の事だった。

父親に言われた事が気に障ったので、俺は召使いに父親を殺すように命令した。

その召使いは父親を殺し、処罰された。

俺は父親を殺された哀れな子供として扱われ、一切咎められる事は無かった。

この時、俺は気付いた。

…これだ。

俺の人生に足りないもの、それは他人を支配するという快楽だったんだ。

 

俺はその日から、他人を唆して支配する快楽に魅入られた。

そして俺は『NOAHS』という組織を立ち上げ、気に食わないゴミ共を何人も裁いていった。

どれだけ他人に迷惑をかけようと、最悪殺したって俺は絶対に裁かれない。

俺のせいで俺以外の全員が不幸になって、俺だけは不利益を被らない。

…なんて幸せな事なんだろうか。

そして組織を立ち上げてから10年が経ち、俺は【超高校級の知能犯】として世間から恐れられた。

誰もが俺を恐れ、慄いている。

俺は、とても高揚した。

俺が一方的に他人を裁き、俺自身は何をしようと一切裁かれない。

でも、それは当然の事だ。

だって俺は、唯一無二の勝者で、この世界の神にふさわしい存在…

【超高校級の勝者】なのだから。

 

俺の名前が有名になってきたので、俺は自分の正体を隠す事にした。

目立つのは好きだけど、それで俺が豚箱行きになったら元も子もない。

俺は、今までの経歴を全て偽装し、時には替え玉を用意して、【超高校級のアナウンサー】穴雲星也として世間に知られるようになった。

穴雲星也は、俺が昔読んだ全く売れないミステリー小説に出てくる脇役の名前だ。

確か、若い記者の男で、連続殺人事件の最後の被害者だったかな。

 

自分を悟られないように、俺は脇役を演じるんだ。

周りは、俺をただの脇役だと思い込んでバカにしていればいい。

この世界の本当の主人公は、この俺様だ。

 

 

 

 

才監学園に収監されてすぐ、俺は黒幕に取引を持ちかけられた。

ソイツには、俺の正体はバレていた。

…まあ、こんな大掛かりな拉致監禁をするような奴だ。

多少は俺の事を調べていて当然か。

ソイツがしてきた提案というのは、今から始まるデスゲームを盛り上げろというものだった。

俺は、正直不快感を覚えた。

この世界の主人公は俺だ。俺がこんなふざけた奴にいいように使われていいわけがない。

だが、コイツの言う事を聞いたフリをして、隙を見てゲームを乗っ取るのも悪くないと思った。

俺は、黒幕と取引を結んでゲームの段取りを考えた。

 

そして、俺は部屋を出て他の奴らに出会った。

…【超高校級のマドンナ】に【超高校級の国王】か。

豪華なメンツが集まってるな。

…まあ、【超高校級の勝者】である俺様ほどじゃあないがな。

ん?なんだあの二人は。

えっと、確か【超高校級の不運】と【超高校級の幸運】だったっけ?

なんか、いかにも自分が主人公だってオーラを出してんな。

まあ本人達は無自覚だろうが。

…だったら、俺はアイツらを仮の主人公にして、アイツらを立てる役を演じる事にしよう。

 

「うーん、ここはどこなのかなぁ。まるでわからないや。」

 

お前らは、自分がこの物語の主人公だと思っていればいい。

だが、本物の主人公はこの俺だ。

俺は常に他人を支配し、勝ち続けてきた男だ。

俺の辞書に敗北なんて言葉は無い。

俺が負けるなんてあり得ない。

俺の才能は、【超高校級の知能犯】なんてチンケなものじゃない。

俺様こそが、【超高校級の勝者】なんだ!!

 

 

 

 

俺は、カス女を唆して、あのウザい成金を殺す事にした。

仮にあの女が失敗したとしても、成金に罪を被って貰えばいいだけの話だ。

俺はあのクソ女にそれっぽい事を言って、成金を殺すように仕向けた。

俺はその様子を少し離れたところで見ていたが、やはり俺が予想していた通り、癒川は失敗して財原に殺されかけていた。

だが、財原自身も毒を喰らって瀕死の重体だった。

そこで俺は成金に解毒剤を与え、癒川を殺した殺人犯としておしおきを受けてもらうという最高に面白いシナリオを思いついた。

 

俺は、研究室に行って取引を持ちかけ、成金に解毒剤を無理矢理飲ませた。

そして、解毒剤を飲まなかった女の方は血を吐いてのたうち回りながら死んだ。

これで、財原は癒川を殺した殺人犯になった。

財原には、狛研に罪を着せる計画を話し、偽装工作を持ちかけた。

不本意とはいえ殺人を犯してしまった財原は、それを受け入れ、偽装工作を始めた。

…もちろん、俺は約束を守る気なんて微塵もない。

もし狛研に投票されそうになったら、土壇場で今の事件の動画を雑魚共に見せる。

狛研も正直厄介だから殺しておきたいが、それよりはまずコイツだ。

このクサレ成金を生かしておいたら何をしでかすか分かったもんじゃない。

俺は、コイツの偽装工作を手伝って、表向きは共犯関係になった。

 

 

 

 

全てがうまくいった。

一瞬、万が一にでもあのクソゴミ天パ野郎に同情して俺に票を入れる奴が過半数を超えたらとヒヤヒヤしたが、どうやらアイツの底辺の人望じゃあ、それはあり得なかったようだな。

まあ、栄のバカだけはアイツに同情して俺に票を入れやがったが。

そして、当の天パ成金無能野郎は死の恐怖で暴れ回っていた。

…半分予想はしていたが、ここまで醜いとはな。

10年前殺したクソ探偵の娘が何かほざいているが、そんな事はどうでもいい。

俺は今最高の気分だ。

俺自身は一切手を汚さずに世界一の大富豪を屈服させ、この世界の主人公としての才能を大いに愚民共に見せつけているのだから。

俺は【超高校級の勝者】、神に選ばれた存在なんだ。

…いや、この俺様こそが神そのものだ!!

フフフ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!

 

 

 

ゴポッ

 

「…なーんちって。」

 

!!?

え、あ、え!?

おい、何が起こった?

どうなっている!?

なんで、なんで今財原が血反吐を吐いて倒れているんだ!?

こんなの、計画に無いぞ!!

「俺がキミの正体に気づいてないと思った?キミが知能犯って事くらい、最初から知ってたよ。だから殺す事にした。全ては、キミを殺す為だけに俺と癒川サンが描いたシナリオだったんだよ。」

そんな、バカな…あり得ない!!

あの女とコイツが組んで俺を嵌めようとしていただと!?

そんな話があっていいわけがない!!

俺は、【超高校級の勝者】なんだぞ…!?

第一、コイツはなんで急に血を吐いて…

「モノキソールωは、特定の条件下では猛毒になるってクマちゃんが言ってただろ。」

「まさか…急性珀銀中毒…!?」

「ビンゴ。俺はあらかじめ珀銀製の指輪を飲み込んでいて、お前が俺に飲ませた解毒剤のせいで中毒にかかって今瀕死の重体だ。…つまりだ。」

 

 

 

 

「俺が今ここで死ねば、実行犯のテメェがクロとして処刑されるんだよ!!」

…。

…………………………は!!?

「はっはははははははははははははははははは!!!いやぁ、哀れだねぇ。皮肉とはまさにこの事だよ。俺、言ったよね?癒川サンに解毒剤を飲ませてやってほしいって。でもそれを無視してキミが俺に解毒剤を飲ませたんだ。俺がわざわざ唯一全員が生き残り、かつキミが勝てる方法を教えてやったってのに…キミはそれを自らドブに捨てたんだよ。」

なんだそのゴミみてぇな策は!!

ふざけんじゃねえぞクソが!!

大体、何のメリットがあってこんな事を…

「テメェの事が大っっっっっっっ嫌いなんだよ!!とっととくたばれゴミ野郎!!」

「は…?」

「今どんな気分かって?最高に決まってんだろ?テメェを道連れにして、クソゲーをメチャクチャにして、そんな大それた事をしでかした俺は苦しい思いをする事もなく楽に死ねるんだからよ。俺の死に方を自由に決めていいのは俺だけだ!ざまあみろ!!おしおきなんざクソ食らえだ!!」

クソッ、なんなんだコイツ!!完全に狂ってやがる!!

俺の計画を台無しにしやがって!!

どこまで往生際が悪いんだ、無価値な人間のくせに!!

「ねえ、楽しかった?安全圏から石を投げるのは。自分は手を汚さずに人を殺して場を支配した気になって、最高にエクスタシー感じたでしょ?でも、これでキミも殺人犯の仲間入りだ。希望が絶望に変わった気分はどう?ねえねえ、今どんな気持ち?どんな気持ち?」

「うるせェ!!黙れクズが!!クッソ、なんなんだよテメェは!!あああああああああ、醜い!!こんなやり方、美しくない!!こんな、セオリーも戦略も才能も美学も運命さえも、全てを無視したやり方…正気じゃない!!完全に狂ってんだろテメェ!!!」

「かもな。」

「!?」

「言ったろ?人生を本気で楽しめる奴は正気じゃないってな。別に周りがどうとか、正しいかどうかとかどうでもいい。俺は、自分が楽しく生きられりゃあそれでいいんだよ。そのためならなんだって利用するし、それを邪魔するルールなんてねじ曲げてやる。確率も法則も、時に運命さえも支配して、俺が最も望む未来を強引に掴み取る。それが俺の【超高校級の勝者】としての才能だ!!」

「ッ…!!」

「どうした?そんな、雑魚に噛み付かれたみたいな顔してよぉ。なあ、【超高校級の敗者】さん?」

ふざけんなゴミが!!

何が【超高校級の勝者】だ、それは俺の才能だっつってんだろうがよ!!

テメェ如きが名乗っていい才能じゃねえんだよ、雑魚が!!

テメェなんかさっさとくたばれ低能がぁあああああああ!!!

 

 

 

「…叶。大好きだよ。…ありがとう。」

…あ?

おい、何笑ってやがんだ。

その気味の悪い笑顔を向けるのをやめろ!!

なんでコイツは最期の最期まで笑ってんだよ!!

まるで、俺に勝ったとでも言いたげな…

 

…嘘だ、俺が負ける?

駄目、駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ

それだけは絶対に駄目だ!!

俺は【超高校級の勝者】なんだ!!

こんな雑魚に負けるわけがない。

俺が負けるなんてあり得ない!!

嫌だ、負けるのは嫌…負けるのは嫌…

 

 

 

 

いやだぁああああぁああああああああああぁあああああああああああ!!!

 

 

 

 

 

『うぷぷ、あーあ。壊れちゃったよ。何が【超高校級の勝者】だ、本物の【超高校級の勝者】ならキミが殺したって何度言えばわかるんだよ!っていうかさ、オマエって本当は負けるのが怖くて何もできなかった雑魚でしょ?失敗が怖くて何もできない時点で、オマエはすでにここにいる全員に負けてるんだよ!…って、ごめんごめん。事実すぎて反論できないよねw』



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最終章 断罪のエンドロール
登場人物プロフィール③


ATTENTION!!

 

第5章までの重大なネタバレが含まれます。

 

 

 

 

 

【超高校級の不運】景見(カゲミ)凶夜(キョウヤ)

 

「才能って言っていいのかはわかんないけど…一応、【超高校級の不運】って呼ばれてるよ。」

 

現状:死亡(1章シロ)

性別:男

身長:168cm

体重:48kg

胸囲:78cm

誕生日:4月13日(金曜日かつ仏滅)

星座:おひつじ座

血液型:AB型(Rh−)

好きな物:桜餅、オンラインゲーム、狛研叶NEW!

嫌いな物:柏餅、不運、いさかい

利き手:左

出身校:烏谷高校

ICV:井上麻里奈

外見:ほとんど無色に近い銀髪(周りからは白髪と呼ばれている)。ボブカット。頭頂部からアホ毛が生えている。瞳は透明に近い赤色。目の下に隈がある。肌は青白く、不健康そうに見える。体格は貧弱。

服装:白いワイシャツ、黒いスラックスの上に、ダークグレーのベストと黒いジャケット。えんじ色のネクタイを着用。靴は、茶色いローファー。

人称:僕/君、あなた/あの人、あの子/男:苗字+君、女:苗字+さん(例外…狛研:叶さん、ラッセ:ラッセ様)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

本作のヒロイン主人公。超不幸体質で、テロリストに人質にされる、留守番中に侵入してきた放火魔に遭遇する、飛行機の墜落事故に遭う、雷が頭上に落ちるなどの、生きているのが奇跡というレベルの不運に見舞われてきた少年。自分の不運のせいで何度も人に迷惑をかけてきたため、自分に生きる価値が無いと思っており、才監学園に収監される前は何度も自殺を図っていた。温厚で常識人だが、その境遇のせいか、卑屈で内向的な性格。自分の命をどこか軽く見ている。自身とは真逆の人物像である狛研に憧れを抱いている。初対面の相手には基本的に敬語で話すが、入田や神座のようなロリショタ枠や、親しい間柄の人とはタメ口で話す。

1章捜査編までの主人公。狛研に励まされた事で彼女に好意を抱き、生きる事を決意したが、白鳥に殺害された。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

【超高校級の幸運】狛研(コマトギ)(カナエ)

 

「一日一個でもいい事見つけていけたら、今より人生楽しくなると思わない?」

 

現状:生存

性別:女

身長:166cm

体重:52kg

胸囲:92cm

誕生日:7月7日

星座:かに座

血液型:O型

好きな物:手羽先、旅行、クラスメイトのみんなNEW!

嫌いな物:自己犠牲

利き手:右

出身校:三栖照高校

ICV:石原夏織

外見:藍色がかった黒髪のショートヘアー。右耳の付け根あたりから渦巻き状のアホ毛が生えている。瞳は澄んだ青色。ショタ顔。スタイル抜群。巨乳。

服装:白いワイシャツとカーキ色の短パンの上に、カーキ色の探検隊風のジャケット。小物類は、緑色のネクタイとカーキ色のハンチング帽。黒いニーハイソックスを履いており、靴は黄色いスニーカー。

人称:ボク/キミ/あの子/男:名前+クン、女:名前+ちゃんモノクマ、モノベル:クマさん、ベルさん

 

本作の二人目の主人公。景見とは、色々な意味で正反対の人物。ボクっ娘。ボーイッシュで明るい性格だが、どこかミステリアスな雰囲気が漂う少女。ド天然でドジっ子。幼い頃に両親を失っているため、人の命がどれほど大事かを実感しており、自己犠牲の精神が大嫌い。普段は子供のように無邪気に振る舞っているが、二面性があり、深刻な事態になればなるほど本来の潜在能力が引き出され、常人離れした判断力や洞察力が発揮される。実は、景見ほどではないが、かなりの不幸体質。しかし、どんな不幸に見舞われてもそれを『ラッキー』と捉えてしまうほどポジティブな思考の持ち主。

1章捜査編からの主人公。最初は景見を元気付けるムードメーカーとして彼と一緒にいたが、彼が死んでからは自力で積極的に捜査や推理に挑むようになった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

【超高校級のマドンナ】白鳥(シラトリ)隥恵(サカエ)

 

「あら。この状況で、よくそんなふざけた事が言えるわね。頭にカビでも生えてるのかしら。」

 

現状:死亡(1章クロ)

性別:女

身長:158cm

体重:45kg

胸囲:80cm

誕生日:1月5日(シンデレラの日)

星座:やぎ座

血液型:B型

好きな物:シフォンケーキ、美しい物、姉NEW!

嫌いな物:駄菓子、不潔な物、虫、景見凶夜NEW!

利き手:右

出身校:聖蓮堂女学院高等部

ICV:Lynn

外見:菫色のグラデーションがかかった、艶のある黒髪。セミロング。宝石のように綺麗な菫色の瞳。肌は、雪のような白色。絶世の美少女。適度に細身。

服装:黒を基調としたセーラー服。リボンの色は白。金色のダマスク模様がついた黒いハイソックス。靴は、黒いロングブーツ。

人称:【通常時】私/あなた/あの人/男:苗字+君、女:苗字+さん(例外…不動院:不動院さん、穴雲:穴雲さん、ラッセ:国王陛下)

【本性時】私/あんた/アイツ/男女共に苗字呼び捨て(例外… 不動院:不動院さん、穴雲:穴雲さん、ラッセ:ロングパスタ)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

世界一美しい高校生と呼ばれている超絶美少女。見た目はもちろんの事、やる事なす事全てが美しく完璧な美少女で、『女の完全体』とも呼ばれる。表向きは気高く礼儀正しいお嬢様だが、本来は尊大で腹黒い性格。常に自分の思い通りにならないと気が済まない性格だが、コロシアイ生活では、自分の本性がバレているため、うまくいかない事が多い。ラッセとは犬猿の仲で、彼を『ロングパスタ』と呼んでバカにしている。面食いで、不動院と穴雲がお気に入り。

希望ヶ峰学園への再入学資格取得のために、気に入らなかったという理由で景見を殺害。その後処刑された。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

        (Lasse Edvard Silvennoinen)

 

「…気安く話しかけるな。俺は国王だぞ。本来、庶民の女と同じ空間にいるべきではないんだ。」

 

現状:死亡(4章クロ)

性別:男

身長:174cm

体重:62kg

胸囲:82cm

誕生日:12月6日(フィンランド独立記念日)

星座:いて座

血液型:A型

好きな物:鰊の塩漬け、骨董品、祖国の国民達

嫌いな物:パスタ料理、口うるさい女、白鳥隥恵NEW!

利き手:右

出身校:王立アスピヴァーラ学院

ICV:梅原裕一郎

外見:金髪のロングヘアーを後ろで束ねている。瞳は明るい青色。鼻は高め。色白で、線は細め。

服装:白と金の学ラン風の軍服を改造して高級感のある服装にしている。白い手袋をつけており、靴は黒いロングブーツ。小物類は、王冠とルビーのブローチ。

人称:俺/貴様/アイツ/男女共に苗字呼び捨て又はあだ名(景見→白髪赤眼、白鳥→ダークパープルなど。)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

北欧の小国シルヴェンノイネン王国の若き国王。幼い頃に先代国王である父親が病死してまもなく王位を継承し、国の政治を取り仕切り、先進国にも負けない国力をつけた名君。自分の国や国民達を誇りに思っており、バカにされる事が何よりも許せない。自分の国の知名度が低い事を密かに気にしている。王族の生まれのためか、非常にプライドが高く猜疑心の強い性格で、人との距離がなかなか縮められない。なぜかよく頭髪をパスタに喩えられる(朱は担担麺と言っている)。白鳥とは犬猿の仲。

白鳥の事を嫌っていたが、本当は対等に話せる数少ない相手として大切に思っていた。

祖国を救うために入田を殺害し、処刑された。

 

 

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【超高校級の生物学者】日暮(ヒグラシ)彩蝶(アゲハ)

 

「ダメだよきみ達、ケンカなんかしちゃ!翠が泣いてるよ!」

 

現状:死亡(2章クロ)

性別:女

身長:146cm

体重:47kg

胸囲:77cm

誕生日:5月22日(国際生物多様性の日)

星座:ふたご座

血液型:O型

好きな物:パンケーキ、動物(特に翠)、元クラスメイトのみんなNEW!

嫌いな物:肉料理、動物を大切にしない人

利き手:右

出身校:星ノ宮女子学園

ICV:大久保瑠美

外見:桜色がかった銀髪。両サイドを編み込んだ長髪のハーフアップ。後ろに虹色の蝶の髪飾り。瞳は、黄緑色。小学生のような体型。

服装:白とピンクを基調としたセーラー服の上に、小鳥のワッペンがついた白衣を着ている。黒いソックスと茶色いローファー。小物類は、赤いフチのメガネ。

人称:わたし/きみ/あの子、あの人/男:名前(ひらがな)+くん、女:名前(ひらがな)+ちゃん(例外…翠:翠)モノクマ、モノベル:クマちゃん、ベルちゃん

 

生物学において並の学者を軽く超える知識を持ち、どんな動物とでもすぐに仲良くなれる。一番仲良しなのは、鳥類らしい。大震災の際に多くの動物達を救ったという功績が認められてスカウトされた。セキセイインコの翠は一番の友達。両親が医者で、良家のお嬢様。見た目や話し方からは穏やかな人物だと思われがちだが、実はお転婆娘で、興味を持った事はすぐに行動に移す思い切りの良さがある。愛されやすいタイプで、動物だけでなく、人間の友達を作るのも得意。乱暴な人や動物を大切にしない人が嫌いで、翠と一緒に説教をする事もしばしば。

実は羽澄の元クラスメイトで、過去に彼女達のクラスで惨殺事件が起こっていた。羽澄の事を事件の犯人だと思い込み、復讐のために彼女を殺害。その後真相を知り、彼女に謝りながら処刑された。

 

 

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【超高校級の人狼】(アカツキ)裴駑(ハイド)

 

「ひひひっ、また、ブッ殺してェなぁ…」

 

現状:死亡(2章クロ)

性別:女

身長:146cm

体重:37kg

胸囲:77cm

誕生日:5月22日(国際生物多様性の日)

星座:ふたご座

血液型:O型

好きな物:殺人行為

嫌いな物:偽善

利き手:右

出身校:星ノ宮女子学園

ICV:大久保瑠美

外見:桜色がかった銀髪。両サイドを編み込んだ長髪のハーフアップ。後ろに虹色の蝶の髪飾り。瞳は、黄緑色。小学生のような体型。

服装:白とピンクを基調としたセーラー服の上に、小鳥のワッペンがついた白衣を着ている。黒いソックスと茶色いローファー。小物類は、赤いフチのメガネ。

人称:私、俺/お前、テメェ/アイツ/あだ名

 

日暮の裏人格。八ツ阪小学校虐殺事件の真犯人。日暮が完全に眠りについた時のみ現れる。夜な夜な街を出歩いては人を斬り裂く殺人鬼。月夜にしか現れないという性質から、【超高校級の人狼】と呼ばれるようになった。性格は、日暮れとは真逆で、残忍で狡猾。自分さえ楽しければ人の事はおろか、自分の事すらどうでもいいという異常な精神の持ち主。よりコロシアイを盛り上げるために、日暮を唆して羽澄を殺させた。最期は、眠ったまま本体である日暮の肉体ごと殺害された。

 

 

 

【セキセイインコ】(スイ)

 

「ピィ!」

 

現状:死亡(2章ルール違反)

性別:メス

身長:10cm

体重:20g

誕生日:5月4日(みどりの日)

星座:おうし座

好きな物:ヒエ、日暮彩蝶、優しい人間

嫌いな物:ケンカ、怖い人間

ICV:南里侑香

外見:浅葱色の体毛。まだ子供なので、普通のセキセイインコに比べてかなり小さい。

 

日暮の親友。日暮と一緒に才監学園に収監された。大震災の時に母親と元の飼い主を失ってから日暮に引き取られ、今では彼女の良きパートナーとなっている。ケンカが嫌いで、生徒達がケンカをしているところを見ると、悲しんだり、怒って暴れたりする。

日暮の羽澄殺しを手伝って管理室の鍵を飲み込み、学園内のシステムを乱したとして日暮と一緒に処刑された。

 

 

 

【超高校級の侍】不動院(フドウイン)(ツルギ)

 

「…ここで出会えたのも、きっと何かの縁です。よろしくお願いしますね、皆さん。」

 

現状:死亡(3章クロ)

性別:女

身長:177cm

体重:65kg

胸囲:85cm

誕生日:12月14日(忠臣蔵の日)

星座:いて座

血液型:A型

好きな物:筑前煮、水仙、日本刀、舞田成威斗NEW!

嫌いな物:ジャンクフード、不浄な物

利き手:左

出身校:仙宮寺学院高等部

ICV:高乃麗

外見:美人顔。艶のある黒髪。前髪が長く、右目が少し隠れ気味。ミディアムヘアー。瞳は黒。肌が白く、頬は紅をさしたような淡い赤色。

服装:水色の着物、紺色の袴の上に黒い上着を羽織っている。背中に黒い布で包まれた、鬼津正宗という名刀を背負っている。懐には、白い扇子と短刀を忍ばせている。

人称:【通常時】私/貴方、貴女/あの方/男女共に苗字+殿。(例外…ラッセ:ラッセ王、国王陛下)

【逆鱗モード】拙者/貴様/彼奴/男女共に苗字呼び捨て。モノクマ、モノベル:白黒熊、白黒虎

 

平安時代から続く名門不動院家の御曹司。世界一の剣豪と呼ばれており、その剣技はまさに神業と言われている。男である景見が思わず見惚れる程の美少年。名家で英才教育を受けたため、行動一つ一つが洗練されていて、礼儀正しい。誰に対しても常に敬語で話し、物腰柔らかく接する。しかし、逆鱗に触れると性格が一変し、口調が変わる。正義感の強い性格で、仲間が窮地に陥ったら危険を顧みずに助けようとする。幼い頃から俗世間とはかけ離れた環境で暮らしていたため、流行や精密機器などには疎い。

実は男装をした女性。本性は、ヤンデレでサイコパス。舞田に恋心を抱いており、彼を愛しているという狂った理由で殺害した。その後、事件の隠蔽工作を見ていた朱も殺害。最期は、舞田に逢える喜びで笑いながら処刑された。

 

 

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【超高校級の喧嘩番長】舞田(マイダ)成威斗(ナイト)

 

「なんか、お前は俺と同じものを感じるな。お前とは仲良くやっていけそうな気がするぜ!!」

 

現状:死亡(3章シロ)

性別:男

身長:208cm

体重:113kg

胸囲:128cm

誕生日:8月19日(バイクの日)

星座:しし座

血液型:B型

好きな物:牛丼、バイク、漢気、兄NEW!

嫌いな物:根性が曲がった奴

利き手:右

出身校:天上高校

ICV:羽多野渉

外見:黒髪をリーゼントヘアーにしている。瞳は、暗い銀色。大柄で筋肉質。褐色肌。全身にケンカの際にできた古傷がある。

服装:黒い学ランを羽織っている。腹にサラシを巻いており、黒いドカンを履いている。小物類は、黒いサングラス。靴は、黒いスニーカー。

人称:俺/お前、テメェ/アイツ/男女共に名前呼び捨て。(例外…白鳥:白鳥さん、たまに麗美)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

天下一中学校の元番長で、他校のライバル達をなぎ倒し、県内一のヤンキーとして恐れられていた。その武勇伝が県外でも有名になってスカウトされた。あまり頭脳労働が得意ではなく、すぐに頭に血が上りがち。しかし、曲がった事が嫌いで、女性や一般人には自分からはケンカを売らないと決めている。非常に仲間想いな性格。自分の服装に謎の自信があり、景見がベタ褒めした時には彼のセンスを認め、相棒と呼んだ。(ラッセには『カマキリの卵みたいな頭』、白鳥には『ダサい』と酷評を受けている。)

不動院の秘密を知った事で彼女と親密になったが、彼女にわけのわからない理由で殺害された。

 

 

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【超高校級のダンサー】羽澄(ハズミ)踊子(ヨウコ)

 

「そうだ、ちょっと踊ってみなよ。いい気分転換になるよ。」

 

現状:死亡(2章シロ)

性別:女

身長:170cm

体重:55kg

胸囲:90cm

誕生日:9月9日(POPの日)

星座:おとめ座

血液型:AB型

好きな物:菓子パン、ダンス

嫌いな物:バナナ、湿気、兄NEW!

利き手:右

出身校:四ツ川高校

ICV:伊藤かな恵

外見:ミカン色の髪の毛をツインテールにしている。瞳は、明るい茶色。ツリ目。巨乳。

服装:白いブラウス、赤と緑のボーダーのネクタイ、灰色のタータンチェックスカートの上に黒いブレザー。右手に水色のシュシュをつけている。黒いくるぶしソックスに、ライムグリーンのスニーカー。小物類は、白と黒のヘアピンと右耳のイヤリング。

人称:アタシ/アンタ/アイツ/男女共に名前(カタカナ)呼び捨て。モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

明るい性格で、ダンスが好きなギャル。本人曰く、頭よりも先に体が動くタイプ。伝統的な舞踊から、流行りのダンスまでなんでも踊れるダンサー少女。人間業とは思えないような素早い動きを必要とするダンスを完璧に踊り切った事から、世界中から注目を浴びた。流行に敏感で、最新のファッション誌を必ず読むようにしている。そのため、白鳥の事を知っていた。人当たりはややキツめだが、姉御肌で頼りがいがある。作中では、割と常識人。面食いで、イケメンを見るとテンションが上がる。

実は日暮の元クラスメイト。八ツ阪小学校惨殺事件の真犯人である暁の交代人格の日暮を庇うため、自ら殺人鬼を演じた。その結果、勘違いした日暮に逆恨みされてしまい、殺害された。

 

 

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【超高校級のアナウンサー】穴雲(アナグモ)星也(セイヤ)

 

【超高校級の知能犯】方神(ハコガミ)(メイ)

 

「あーあ。うまくやってたと思ったんだけどなぁ。」

 

現状:死亡(5章クロ)

性別:男

身長:186cm

体重:74kg

胸囲:87cm

誕生日:2月1日(テレビ放送記念日)

星座:みずがめ座

血液型:O型

好きな物:自分、自分の才能

嫌いな物:敗北

利き手:右

出身校:西城学院高等部

ICV:入野自由

外見:顔立ちの整った美少年。暗めの茶髪のウルフカット。瞳は、紫に近い青。長身痩躯。

服装:ライトグリーンのタートルネックの上に、ダークグレーのジャケットとスラックス。小物類は、フチなしメガネ。靴は、黒い革靴。

人称:【演技時】僕/君/あの人、あの子/男:苗字+君、女:苗字+さん。(例外…ラッセ:国王陛下)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

【本性時】俺、俺様/君、お前、貴様等/アイツ/男:苗字+君、女:苗字+さん。(感情が昂った時は苗字呼び捨て、又はクソ野郎、クソ女など口汚く罵る)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

笑顔の絶えない知的な好青年。皆を取り仕切る司令塔的存在。高校生にして朝のニュース番組『めざますテレビ』の人気アナウンサー。優れたトークスキルを持ち、誰に対しても神対応。その容姿や紳士ぶりから、主に女性ファンから絶大な支持を受けている。職業柄、【超高校級】についての知識も豊富。ニュース番組は、見るのも出演するのも好きだが、最近は芸能人のスキャンダルばかり取り上げられいるため、あまり快く思っていない。エスプレッソが大のお気に入りで、飲み方にこだわりがある。怒ると怖い。

癒川の秘密を知った事をきっかけに、彼女と恋仲になる。クラスメイト達をリーダーとして導いてきたが、ラッセから無能と判断され、彼に離反された。

 

実は、その正体は【超高校級の知能犯】方神冥。クラスメイト達を今まで欺いてきた。自分を【超高校級の勝者】だと思い込んでおり、自分の才能を絶対的なものだと信じて疑わない。癒川を排除して財原を唆した気でいたが、財原と癒川の策に嵌められたと知った途端に発狂。そして財原自身の手で財原原殺しの犯人にされ、道連れとなる形で処刑された。

 

 

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【超高校級の栄養士】(サカエ)陽一(ヨウイチ)

 

「なんか言ってくれりゃあ、その場でパパッと作るぜ!」

 

現状:生存

性別:男

身長:190cm

体重:81kg

胸囲:93cm

誕生日:10月16日(世界食糧デー)

星座:てんびん座

血液型:A型

好きな物:食える物全般、かわいい女子

嫌いな物:食い物を粗末にする奴、ムサい野郎

利き手:右

出身校:東風井高校

ICV:内山昴輝

外見:明るめの茶髪。ボサボサに広がったショートヘアー。前髪は長め。瞳は、ダークグリーン。三白眼。やや筋肉質な体型。

服装:白いTシャツに深緑のスラックス。腰に深緑の学ランを巻いている。靴は、ダークグレーのスニーカー。ピアスやネックレス、チェーンのブレスレット、指輪などアクセサリーをたくさんつけている。

人称:オレ/お前、テメェ/アイツ、あの子/男:苗字呼び捨て、女:苗字+ちゃん(例外…ラッセ:ラッセ)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

チャラ男だが、その見た目に反して栄養士としての才能を持つ。トップアスリートの朱鳥凛奈の管理栄養士でもあり、彼女を食事面でサポートして、五輪優勝へと導いた。自身で飲食店を経営しており、予約が取れないほどの人気店となっている。料理全般得意で、言われた物をすぐに作れるという特技を持つ。女好きで、よく女性陣を口説こうとしているが、朱に阻止される。しかし、それでもめげない強いメンタルの持ち主。料理に対しては並々ならぬ情熱を注いでおり、食べ物を粗末にする人が大嫌い。

財原とは反りが合わず事あるごとに対立していた(というか一方的に財原が栄をイジり倒していた)が、投票では財原がクロだと知っていながら彼に味方をした。

 

 

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【超高校級の曲芸師】(ヂュ)雪梅(シュエメイ)

 

「うるさいです!!ワタシ、女の子いじめる男、許せないでス!変態には死ヲ、天誅です!」

 

現状:死亡(3章シロ)

性別:女

身長:163cm

体重:47kg

胸囲:95cm

誕生日:1月25日(中華まんの日)

星座:みずがめ座

血液型:B型

好きな物:小籠包、雑技、妹NEW!

嫌いな物:ラーメン、変態

利き手:右

出身校:梁鳳高中

ICV:折笠富美子

外見:黒髪を両サイドでシニヨンにしていて、前髪を切り揃えている。瞳は、猫のような金色。肌は、うっすらと日焼けしている。細身で、巨乳。

服装:赤いチャイナ服。ズボンは、くるぶしの部分がすぼまったタイプで、色は白。靴は黒いぺたんこ靴。小物類は、鈴がついた白いお団子カバー。

人称:ワタシ、ワターシ/アナタ/アノ人/男女共に名前+サン。(例外…栄は呼び捨て。)モノクマ、モノベル:白黒熊、白黒虎

 

北京から来た女の子。日本語を勉強し始めて日が浅いので、カタコト。敬語で話しているのは、まだ丁寧な日本語しか勉強していないかららしい。『朱雑技団』の団長を務めている。数年前までは無名だったが、人間離れしたアクロバティックな芸が話題を呼び、世界的に有名なアーティストとなった。命知らずと言われるような、スリリングで超高難易度の芸を得意とする。社交的で人懐っこい。正義感の強い性格で、特に変態が大嫌い。よく変態(特に栄)を、父親から教わった拳法で撃退している。また、料理も得意で、中華料理は全て作れる。

ほとんど落ち度は無かったが、偶然不動院が事件の隠蔽工作をしているところを目撃してしまい、彼女に殺害された。

 

 

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【超高校級の資産家】【超高校級の勝者】財原(サイバラ)天理(テンリ)

 

「それは凡人の考え方だね。世の中、お金で買えない物なんて無いんだよ。ま、あくまでこれは自論だけどね。」

 

現状:死亡(5章クロ→シロ)

性別:男

身長:182cm

体重:64kg

胸囲:84cm

誕生日:3月12日(財布の日)

星座:うお座

血液型:AB型

好きな物:ガリ●リ君、通貨、株、散財、スリルNEW!

嫌いな物:キャビア、貯金

利き手:両手

出身校:帝鄕学院高等部

ICV:浪川大輔

外見:ロリ顔。緑がかった黒髪。やや癖っ毛のミディアムヘアー。前髪が長めで、目が隠れ気味。頭頂部から細いアンテナが生えている。瞳は澄んだ翡翠色。左目の下に泣き黒子がある。肌は不気味な雰囲気が漂うほど白い。左肩に$の刺青がある。八重歯。

服装:赤いシャツ、黒いネクタイ、ダークグレーのスラックスの上に、黒いカーディガン。靴は黒いローファー。小物類は両耳のピアスと右手中指の指輪。

人称:俺/キミ/あの子、アイツ/男:苗字+クン、女:苗字+サン(例外…ラッセ:国王陛下)モノクマ、モノベル:クマちゃん、ベルちゃん

 

どこかミステリアスで不気味な雰囲気が漂う美少年。高校生にして世界屈指の資産家。小学生の頃に株で大儲けした事で有名になった。投資オタクで、隙あらばすぐに株や通貨の話をしてくる。イタズラ好きで考えが読めないが、言いたい事はハッキリ言うタイプ。中国語が話せたり、多少人の思考が読めたり、ギャンブルが得意だったりと割と多才。正確な体内時計を持っているが、寝坊の常習犯で、いつも眠そうにしている。意外にも貧乏舌。また、浪費家でお金の管理が苦手。

自他共に認めるサイコパス。思考が深そうに思えるが案外短絡的で、物事を楽しいかどうかでしか判断しない。クラスメイトの命をどこか軽く見ている一方で狛研の事だけは特別視しているような態度が見られたが、5章で彼女に好意を抱いている事を伝えた。

方神の策によって不本意とはいえ癒川を殺害して偽装工作をした罪で処刑されそうになった。しかし、実はそれすらも彼自身が描いたシナリオで、自分を方神に殺させる事で自身のおしおきを方神になすりつけて方神と黒幕に一泡吹かせる事が真の目的だった。最期は自身の勝利を喜びながら、満足げに死んでいった。【超高校級の資産家】の才能はおまけのようなもので、本来の才能は【超高校級の勝者】である事が判明した。

 

 

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【超高校級の工学者】入田(イリタ)才刃(サイバ)

 

「僕ちゃんがちっちゃい子だと!?バカ言え!!僕ちゃんは、れっきとした高校生だぞ!!」

 

現状:死亡(4章シロ)

性別:男

身長:150cm

体重:42kg

胸囲:66cm

誕生日:11月21日(インターネット記念日)

星座:さそり座

血液型:O型

好きな物:飴、メカ、特撮、弟NEW!

嫌いな物:コンソメ味、機械オンチ

利き手:右

出身校:湊工業大学附属高校

ICV:田村ゆかり

外見:ショタ枠。水色の髪を、ヘアバンドでポニーテールにしている。瞳は、澄んだ水色。頭頂部に稲妻型のアホ毛。

服装:白いブラウス、サスペンダー付きの黒い短パンの上にブカブカの白衣。背中にランドセル型のメカを背負っている。靴は、黒いロングブーツ。

人称:僕ちゃん/オマエ/アイツ/男女共に苗字呼び捨て。(例外…ラッセ:王様)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

小学生にしか見えないが、れっきとした高校生。中学生の時にノーベル物理学賞を受賞した天才児。機械全般に強く、ハッキングやコンピューターゲームのプロでもある。自分の才能に絶大な自信があり、周りの人間を小バカにしがちだが、自身の研究を世界への貢献のために使うという、科学者としての心得はきちんと重じている。子供っぽい性格で、予想外の事があると泣きがち。夢は、自身の発明でSFの世界を再現する事。ランドセル型のメカが、自身の最高傑作らしい。

不動院が処刑されてからは、死の恐怖に怯え出し、部屋に引きこもるようになった。しかし、ラッセの罠に嵌って銃殺されてしまった。

 

 

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【超高校級の看護師】癒川(ユカワ)治奈(ハルナ)

 

「私、皆さんのお役に立てるように頑張ります。」

 

現状:死亡(5章シロ)

性別:女

身長:153cm

体重:41kg

胸囲:83cm

誕生日:5月12日(ナイチンゲールデー)

星座:おうし座

血液型:A型

好きな物:いちご、弟NEW!

嫌いな物:レモン、弟以外の人間

利き手:右

出身校:明條女学院高等部

ICV:原由実

外見:ピンクがかった赤い髪を左側でサイドテールにしている。前髪は切り揃えている。瞳は、ザクロ色。左口元にホクロがある。

服装:白と紺を基調としたセーラー服の上に、クリーム色のカーディガン。黒いソックスに茶色いローファー。

人称:私/あなた/あの人/男女共に苗字+さん。(例外…ラッセ:国王陛下)モノクマ、モノベル:学園長、看守長

 

温厚で真面目な女子生徒。優れた医療技術を持ち、大震災の時も現地の医者の手伝いをして多くの人々の命を救った。並の看護師より優秀だが、本人は自分の才能を過小評価している。人の役に立つ事が何よりも幸福だと考えており、そのための努力は惜しまない。礼儀正しく、誰に対しても敬語で話す。アドリブが苦手で、予想外の事が起こると過呼吸を起こしてしまう事がある。謝り癖があり、本人が全く悪くない場面でも、相手が止めるまでずっと謝り続けてしまう。小動物が好きで、特に翠がお気に入り。

栄に秘密を知られ、彼を殺害しようとしたが、穴雲の妨害によって失敗。その後、二人と和解し、穴雲と恋仲になる。

実は、モノクマ達の内通者。今までクラスメイトを騙し、モノクマに密告をしていた。その事を財原に見抜かれ、方神への復讐という目的で彼と手を組む事になる。内通者として、黒幕と方神の協力関係を円滑に進めるための橋渡しの役割も担っていた(無論財原の指示)。自分の正体を知った財原を排除しようとして返り討ちに遭ったフリをして、財原のシナリオを完成させるための捨て石として自ら死を選び毒殺された。

 

 

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【超高校級の詩人】詩名(シイナ)柳人(リュウト)

 

「オイラは風の妖精。自由気ままに旅をして、行く先は誰にもわからないのさ〜♪」

 

現状:生存

性別:男

身長:100cm

体重:28kg

胸囲:62cm

誕生日:6月6日(楽器の日)

星座:ふたご座

血液型:B型

好きな物:サラダ、旅行、詩歌

嫌いな物:ステーキ

利き手:右

出身校:河谷梛高校

ICV:堀江瞬

外見:外ハネのライムグリーンの髪。目は、開いているのかわからないくらい細い。

服装:緑とクリーム色を基調とした、吟遊詩人のような格好。リュートを持っている。

人称:オイラ/君/アイツ/男女共に苗字+君。(例外…ラッセ:国王様、たまにラッセ君)モノクマ、モノベル:モノクマ、モノベル

 

幼稚園児のような体格の少年。世界中を彷徨いながら詩歌を作り続ける盲目の吟遊詩人。詩歌の名人で、彼が残した詩歌は必ず現地で話題となり、多くの著名なアーティストに影響を与えてきた。気分屋で自由人。一度自分の世界に入ると、周りの声が全く聞こえなくなり、自身の集中力が切れるまでずっと歌い続けてしまうという癖がある。そのタイミングは、自分ですらわからないらしい。聴覚と霊感が人一倍優れているため、目が見えなくても生活にはあまり困っていないらしい。ちなみに、最近の歌のテーマは『風』らしい。

日暮に好意を抱いており、翠の事も気に入っていた。自ら目立つような事はしないが、良識派で常に達観しており、冷静。

 

 

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【超高校級の絶望】神座(カムクラ)ゐをり(ヰヲリ)

 

「…喋るのは嫌い。以上。」

 

現状:生存

性別:女

身長:140cm

体重:26kg

胸囲:65cm

誕生日:11月15日(きものの日)

星座:さそり座

血液型:AB型

好きな物:和菓子、不動院剣NEW!

嫌いな物:揚げ物、会話

利き手:右

出身校:不明

ICV:上田麗奈

外見:艶のある黒髪ロング。瞳は、ルビーのような真紅。低体重。ロリ枠。肌は、陶器のような白。

服装:ピンクと紺の女学生のような着物。上に、白い羽織を着ている。頭に、椿の髪飾りをつけている。

人称:私/あなた/あの人/才能の日本名(景見→不運、白鳥→美女、羽澄→舞踊家など。)モノクマ、モノベル:白黒熊、白黒虎

 

まるで明治時代か大正時代からタイムスリップしてきたかのような、浮世離れした雰囲気の謎多き美少女。本人は希望ヶ峰学園の学生だと言っているが、実際のところは素性が全くわかっていない。口数が少なく、ほとんど話そうとしない。不動院以上に流行や精密機器に疎く、携帯を握った事すらないらしい。カタカナの外国語もあまり好まないらしく、外国語なども無理矢理日本語にして言う。他の生徒の才能が気になる様子で、特に景見の事が気になっているらしい。不動院とは趣味が似通っているため、仲良し。

不動院の事を唯一の親友だと思っており、彼女が処刑された時は初めて涙を流した。不動院に裏切られてからは、仲間に対して少し不信感を抱くようになった。しかし、その後狛研の言葉によって仲間との絆を取り戻し、狛研に好意を抱くようになった。

その正体は神座出流の娘である【超高校級の絶望】神座威織のクローン。彼女の才能名は全分野において超人的な才能を発揮しあらゆる分野の天才達を挫折させてきた事から付けられたもので、江ノ島盾子との繋がりは無い。オリジナルの神座威織は100年前に殺害されているが、彼女の才能は後のカムクライズルプロジェクトに利用される事となる。

 

 

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【学園長】モノクマ

 

『うぷぷ、だってさ…【超高校級】という『希望』同士が殺し合う、『絶望的シチュエーション』…最高だと思わない?』

 

性別:なし

身長:65cm

体重:不明

胸囲:不明

誕生日:不明

血液型:なし

好きな物:絶望

嫌いな物:希望

ICV:大山のぶ代orTARAKO

外見:左右で色が白黒に分かれているクマ。左目が悪魔の羽のような形をしている。

人称:ボク/キミ、オマエ/みんな、オマエラ/男:苗字+クン、女:苗字+サン(例外…ラッセ:ラッセクン)

 

自称才監学園の学園長。景見ら16人を才監学園に収監した張本人。【超高校級】という『希望』が殺し合うという『絶望的シチュエーション』を楽しんでいる。よくモノベルと一緒に茶番劇漫才を披露しているので、生徒達からは呆れられている。

 

 

 

【看守長】モノベル

 

『フッフッフ、アナタ達を絶望のどん底へと誘って差し上げましょう!』

 

性別:なし

身長:70cm

体重:不明

胸囲:不明

誕生日:不明

血液型:なし

好きな物:絶望

嫌いな物:希望

ICV:中尾隆聖

外見:左右で白黒が反転しているサーベルタイガーのぬいぐるみ。モノクマより一回り大きい。

人称:ワタクシ/アナタ/アナタ達/男女共に苗字+様。(例外…ラッセ:ラッセ様)

 

自称才監学園の看守長。モノクマの助手的存在。礼儀正しく、紳士的な振る舞いをするが、あくまでそれはポーズ。本性は、人が絶望に堕ちるのを見て喜ぶ、悪魔のような性格。よくモノクマと一緒に漫才を披露している。



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第6章 非日常編①

章タイトル元ネタ『愚者のエンドロール』です。
ちょっと矛盾があったので編集


いい物見せてあげるよ。ここで死ぬなんて、もったいないだろ?

無いなら、作ってあげるよ。キミが望むセカイを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

みんな、死んでしまった。

治奈ちゃんも、天理クンも、そして方神も。

…どうしてだろう。

ボクの家族を奪った方神は死んだのに、ボク自身は何も得られた気がしない。

…むしろ、空っぽになった気がする。

復讐を考えてた自分がバカみたいに思えてきた。

ボクは、あんなくだらない奴に人生を狂わされたのか。

 

「狛研ちゃん!」

「あっ…陽一クン。」

「ったく、しっかりしろよな。希望を捨てるなって言ったのは狛研ちゃんだろ?君がしっかりしないでどうするんだよ。」

「…そうだったね。ごめん、ちょっと考え事してた。」

「栄君の言う通りさ。穴雲く…方神亡き今、オイラ達のリーダーは君しかいないんだからさ。」

「え、ボクがリーダー?」

「君以外誰がいるんだよ。君は、みんなが絶望に堕ちそうになった時、いつも支えてくれたからさ。それに、君は自分が正しいって思った事を貫き通す勇気があるからな。いっつも正しい事をするのってすっげェ勇気がいる事だし、誰もが出来る事じゃねェよ。」

「ありがとう。でも、ボクは…」

 

「…って、財原が言ってたぞ。」

…へ?

「天理クンが?それ、ホント?」

「ホントだよ。アイツ、君の事は特別扱いしてたからさ。なんでって聞いてみたんだよ。そしたらアイツ、珍しく真剣そうな表情で答えたんだよ。…多分、あの時はもうすでに死ぬ覚悟は決まってたんだろうな。」

「…そっか。教えてくれてありがと。」

天理クン、陽一クンとそんな事話してたのか。

この二人、仲悪そうに見えてたけど意外と本音とかお互いにちゃんと話し合ってたんだな。

 

「いいよなー、アイツは。」

「何が?」

「両想いでさ。それに、オレ達そっちのけで最後の最後においしい所持って行きやがって。投資家だけに自分の株まで急上昇ってか?」

「何の話?」

「狛研ちゃんだって、アイツの事特別扱いしてたじゃねえか。クッソ、なんであんな性格ブス野郎がモテてオレは…

ボクが、天理クンを特別扱い?

…全然そんな気なかったな。

 

『…勝手に俺を置いて死んだりすんなよな。キミは、俺にとって大事な人なんだからさ。』

 

キミが勝手に死んでどうするんだよ。

いくら方神に仕返しをして勝ち逃げしたからって、死んだら意味ないだろ。

本当にキミが【超高校級の勝者】だっていうのなら、自分が死ぬ運命にくらい抗ってほしかったよ。

 

…あの時キミが死ななければ、死んでいたのはボクの方だったかもしれないのに。

なんでボクの事を好きでいてくれた人はみんな、ボクを置いて行っちゃうんだよ。

 

「…バカ。」

「狛研ちゃん!?」

「え?あ、ううん。ごめん、なんでもない。こっちの話。」

「バカに過剰反応するんじゃないよ、栄君。」

「わ、悪い…つい…」

「ははは…」

 

…大切な人、か。

最後まで嘘ばっかりついて何考えてるのかわかんない子だったけど、なぜかあの言葉だけは嘘じゃなかったと思える。

あの子は、よくわからないけどボクの事だけは信頼してくれてると思ってた。

だから、ボクもあの子の事は信じてた。

結局、ボクにとってあの子はなんだったんだろう。

…そんな事、今更考えても仕方ないか。

 

「そうだねぇ。確かに、君にはリーダーの素質があるかもね。国王様も言ってたよ。『万が一俺が死ぬような事があれば狛研を頼ってほしい』ってさ。国王様も、君の本当の強みを見抜いてたんだねぇ。」

「ラッセクンがボクを…?」

「そうだよ。君はオイラ達の希望なんだよ。」

「…みんなありがとう。」

 

「…あの、みんな…」

ゐをりちゃんが戻ってきた。

「神座ちゃん。今までどこ行ってたんだよ。」

「…ごめん。ちょっと、6階に行ってた…」

「6階?」

「うん。学園長室が開いてたわ。」

「マジか!?」

「ああ、そういえば全てのエリアを開放したってモノクマが言ってたね。」

「そういやあそうだな。な、狛研ちゃん。」

「うん…」

「どうしたんだよ。君は、オレ達のリーダーだろ?だったらちゃんと指示してくれよ。」

「そうだね。じゃあ探索期間は3日しかないし、早速探索に行こっか。」

「おう。」

「…あの、叶。」

「ん?なあに、ゐをりちゃん。」

「私、あなたの事、頼りにしてるからね。私は何があっても叶を信じるし、叶に何かあったら私が助ける。」

「ありがとう。ゐをりちゃん、大好き!」

「…。」

あれ?急に黙っちゃった。

まあいいや。探索行かないと。

 

 

 

 

【学園長室】

 

「…ここか。」

 

『おーっとちょい待ちちょい待ち!!』

いきなり部屋からクマさんが飛び出してきた。

「うぉあっ!!いきなり湧いて出てくんなよ汚ねェな!!」

「不愉快。消えて。」

『汚いって何さ汚いって!!マスコットを虫か何かみたいに言うのやめてくれる!?ボクはこの学園の学園長なんだぞ!?』

「君なんて虫以下さ。耳障りだからどっか行ってよ。」

『ひどいなぁ、ここはボクの部屋だよ?ボクがどのタイミングで出てこようとボクの自由でしょ?』

「それは一理ある。」

「狛研君、納得しちゃダメだよ。」

「ごめん。」

「で?何しに来たの?」

『なんでこう上から目線なのかなぁ。誰がこんなステキな校舎を用意してあげたと思ってるの?』

「うっせェな!そもそもテメェがこんな所に監禁なんかしなきゃ誰も死ななかったんだぞ!!」

『へー、誰も死ななかった、か。面白い事言うねオマエは。』

 

『一体誰のせいでこんな事になったと思ってるの?』

「はぁ!?何言ってんだテメェは!!」

『あ、そっか。全部リセットしてるから記憶にないんだった。いやー、失敬失敬。』

「どうでもいいからさっさと要件だけ伝えて消えて。」

『うわっ、こっわ。神座サンてば、視線が絶対零度だよ!マイナス273度!0ケルビン!ボクのエントロピーとエンタルピーが最低値になっちゃうよ!』

「うるさい。」

『ちぇっ、どいつもこいつもホント生意気!最近の若者ってマジでどういう教育受けてんの!?もう怒ったから要件だけ伝えて寝る!…裁判中に言ってた事だけど、あれじゃあ説明不足だったから詳しいルールを説明しに来たんだよ。』

「詳しいルール?」

 

『その一!オマエラは、この学園にいる間は一切コロシアイをしてはいけません!コロシアイが発生した場合は、連帯責任で全員をおしおきします!』

「散々コロシアイを強要しておいて、都合のいい事を言うもんだねぇ。」

『だってこれ以上人数が減っちゃったら逆にツマンナイでしょ?』

「コイツ…」

 

『その二!オマエラには、この学園を調べる期間を72時間あげます。それまでにこの学園について調べ尽くしてください。捜査期間の後、学級裁判を開きます。捜査期間中は、コロシアイとルール違反以外なら基本的に自由行動です!この学園について調べるもよし、ボクを殺すための計画を練るもよし、お昼寝するもよし、何してもOKだよ!…あ、ただし凹凸擦って聖槍爆裂させて月の向こうまでイっちゃたりすんのは極力やめてね。それから吐き気催すようなグロい事とかキショイ事とかすんのもナシだよ。』

「よく下ネタでそんなボキャブラリーが出てくるよな。」

「栄君、同感だけど今それツッコむのはやめておこうか。」

「なんでそんな制限があるの?捜査期間の行動は自由なんじゃないの?」

『モザイク処理がめんどくさいんだよ!何が悲しくてオマエラのアレやソレにモザイクを貼らなきゃいけないんだよ!それにR–18タグがついちゃうでしょ!それと意図的に学園内の物を壊すのもやめてね。後始末がめんどくさいから。何かやらかしたら自分でなんとかしてね。』

なんだそれ。

 

『それから学園内のエリアとネットワークは全部開放してあげたから、思う存分調べるといいよ。』

「休憩とかは?」

『もちろん、休憩も捜査時間に含まれるよ。だから頭使ってこの捜査時間を有意義に使う事だね。別に休憩しなくてもいいけど、そしたら身体壊れると思うよ。』

「あなたが出てきて何かをする事は?」

『基本的には、ボク達は捜査に介入しません。ただし、どうしてもわからない事があったら解説役として登場する事があるかもよ。』

「…それなら良かった。あなたにいちいち話しかけられたら精神を病むわ。」

『そこまでいう!?』

「で、その他のルールは?」

 

『その三!学級裁判では、3つの議題について議論してもらいます。ひとつは、このコロシアイを裏で操ってる黒幕の正体。』

「キミの正体?…さっきも聞いた事だけど、なんでそれをわざわざ議論するの?」

『そろそろ人数も減ってきたし、ここいらでオマエラと決着をつけたくってさ。正解したら、ご褒美にオマエラの目の前で正体を明かしてあげるよ!オマエラ、クラスメイトのみんなを間接的にとはいえ殺した仇と対面できるんだよ?嬉しくない?』

間接的に殺してた自覚はあったのか。

「嬉しくねェよ!!散々みんなの命を弄びやがって…テメェは後でブン殴ってやるからな!!」

「やめなよ、栄君。時間がないんだ。今はとりあえず要件だけ聞き出そう。」

「…チッ。」

『オマエラ、ここに来てから随分と冷静に考えるようになったよね。最初はパニック起こしてたくせに。オマエラが成長できたのもボクのおかげ?だったら感謝しろ感謝!』

「うっせぇ!!」

『はーこわ。じゃあ続き話しちゃうね。2つ目は、このコロシアイの目的!』

 

「…え?」

『オマエラには、なんでこのコロシアイが開催されたのかについて議論してもらうよ。』

「そんなの知るかよ!!なんでオレ達がこんなクソゲーに巻き込まれなきゃなんねえんだ!!」

『何言ってんの。その原因を作ったのはオマエ自身でしょ?』

「…は?」

『おっと、これ以上は何を聞かれても何も話さないよ。知りたかったら自分で調べる事だね。』

「んだよそりゃ!!」

『はいはい、ホースなディアーは無視しようね。』

「はぁ!?」

ホースなディアー…

…あ、馬と鹿か。

 

『それから3つ目。オマエラが明らかにすべき真実…それはオマエラの正体だよ!』

「お、オレ達の…正体…!?」

『そっ。オマエラは、極悪生徒だからここに閉じ込められてるんだよ?自分の胸に手を当ててごらん?って、記憶がリセットされてるから何も思い出せないかw』

「そんな事言われてもね。私達は私達。それ以上でもそれ以下でもないわ。」

『ふーん、そう。でも、ちょっと調べればわかる事なんじゃない?オマエラが一体何者なのかはね。そのために3日間も捜査期間を設けてあげてるんだからさ。』

「…。」

『ボク達は基本的に不公平な事は嫌いだから、それなりの情報はあげるよ。もちろん、全部教えちゃったらゲームにならないからヒントをあげる程度だけどね。』

よく言うよ。

ゲームを盛り上げるために方神と手を組んでおいてさ。

 

『ルールその四!その議論を終えた上で、オマエラにはある決断をしてもらうよ。オマエラの生死はその重大な決断によって左右されます。だから、捜査も裁判も慎重にやる事だね。』

「なんだよ、ある決断って。」

『それは裁判が終わってからのお・た・の・し・み!説明は一通り終わったし、自分の手帳でもルールを確認してみるといいよ。じゃーね!』

クマさんは、そういうと去っていった。

「…とりあえず、校則を確認しようか。」

 

1.収監20日目から72時間を捜査期間とします。この期間中は、夜時間を除いて学園内の全てのエリアが開放されます。才監学園について調べるのは自由です。特に制限は課せられません。

2.捜査期間中のコロシアイを禁じます。コロシアイが発生した場合、連帯責任で直ちに全員を処刑します。

3.夜10時から朝7時までを夜時間とします。夜時間中は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

4.就寝は学園内に設けられた個室でのみ可能です。他の場所での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。

5.学園長ことモノクマと、看守長ことモノベルへの暴力を禁じます。監視カメラの破壊を禁じます。その他、学園が用意した共用の器具を故意に破壊する行為を禁じます。

6.捜査期間終了後、学級裁判を執り行います。裁判では、黒幕の正体とコロシアイの目的と自分達の正体について議論しましょう。議論の結果によって、全員の生死が左右されます。捜査と学級裁判は慎重に行いましょう。

7.特に禁止・処罰はしませんが、過度に性的又は暴力的、その他著しく他者を不快にする行為は避けましょう。

 

…よし、大体確認できたから捜査をしよう。

ボク達の未来がかかってるんだ。

慎重に事を進めないと。

…お父さん、お母さん、そしてみんな。

絶対に真実を解き明かして4人でここから出るからね。

 

 

 

 

 

ー《捜査開始》ー

 

「まずどうするよ?」

「そうだね。せっかく開放されたし、まずは学園長室を調べてみるのはどうかな?」

「げっ、あのゲテモノが出てきた部屋を調べんのかよ!?」

「でも、調べなきゃ仕方ないよね?」

「…栄養士、嫌なら別の場所を調べてもいいのよ。私達3人で調べておくから。」

「うん、それがいいね。栄君はここを調べたくないみたいだし。」

「そんな事言ってねぇだろ!オレをのけ者にしようとすんな!わ、わぁったよ!調べればいいんだろ!?」

ボク達は、クマさんの絵が描かれたドアを開けた。

 

 

 

 

中は、情報管理室に似た構造になっていた。

ボク達の背の高さくらいある巨大なコンピューターがケーブルで繋がれていて、部屋の真ん中にはゲーム機のようなものがセットされている。

…えっと、なんていうだっけこれ。…確か、ファミコンだっけ?カセットふーふーするやつ。

巨大なコンピューターは全部で16台あって、全部ゲーム機に繋がれている。

一番気になったのは、コンピューター一台一台に全員の名前が書かれている事だ。

「なんだこれ…オレの名前じゃねえか!」

「ボクの名前もある…へくしゅっ!!」

 

「狛研ちゃん、どうした?」

「あ、いや…この部屋ちょっと寒くない?なんかクーラーがガンガン効いてる気がする。」

「ああ、コンピューターが置いてある部屋は、熱暴走を防ぐために冷房を効かせておくのがいいんだよ。」

「なるほど、それで寒いのか。」

「叶、私の羽織着る?」

「ありがとう。でも、そうしたら今度はゐをりちゃんが寒いでしょ?それに、ゐをりちゃんの服のサイズだと、小さくて着られないからね。」

「…そう。」

「狛研ちゃん、オレの学ラン貸してやるから着ろよ。」

「え、でもそうしたら陽一クンが…」

「いいんだよ。オレは暑がりだからな。」

「…ありがとう。」

陽一クンが上着を貸してくれた。

やっぱ陽一クンの服って大きいね。

 

「よし、気を取り直して捜査進めますか。」

「そうだねぇ。」

ええっと、どこまで進んだっけ。

ああ、確かファミコンとコンピューターを調べてたんだっけ。

「けどよお、せっかく学園長室に来てゲーム機とか、なんか拍子抜けだよな。しかも、旧型じゃねえか。ゲームエリアのゲーム機の方がよっぽどハイテクだぜ。」

「…そうでもないと思うよ。」

「どういう事だ?狛研ちゃん。」

「だってさ、わざわざ鍵をかけて部屋に入れないようにしてたって事は、ここにクマさん達にとって知られたくない何かがあったって事でしょ?特に意味のない物を隠しておくために鍵をかけてたわけじゃないと思うんだけど。」

「…まあ、そうか。」

「多分、このゲーム機はコロシアイを進める上で重要な何かなのかも。」

「じゃあ、コイツを壊せば全部解決なんじゃ…」

「いや、やめておいた方がいいと思うよ。」

「はぁ?なんでだよ。」

「だって、まだこのゲーム機とコロシアイの繋がりが見えてない以上、迂闊に触ったらオイラ達がどうなるかわかんないんだよ?最悪、校則に引っかかっておしおきなんて事も…」

「うっ…」

 

コトダマゲット!

 

【ゲーム機】

学園長室にあったゲーム機。何か重要な機械なのかもしれない。

 

「あれ?」

「ん?どうしたんだい、狛研君。」

「飲みかけのココアと食べかけのお菓子が散らばってる。」

「それがどうしたんだよ。」

「よく考えてみて。これって、黒幕がこの部屋で飲み食いしてたって事だよね。つまり、黒幕はこの建物内にいる誰かなんだよ。」

「…まあ、モノクマもオイラ達の中に黒幕がいるって言ってたもんね。」

「で、見てみてほしいんだけど…」

ボクは、ココアを指差した。

「これ、少し冷めてて内側にくっきり線が付いてる。…これ、どういう事かわかる?」

「少し前まで黒幕がこの部屋にいたって事?」

「そういう事。で、このお菓子とココアの状態から推測するに、黒幕が部屋にいたのは少なくとも30分前って事になるんだ。」

「30分前…オレらが学級裁判やってた時だな。」

「じゃあこの4人はシロって事かい?でも、ここにいる4人以外は全員死んでるし…閉じ込められた16人以外に人はいないはずだし…って事は17人目の囚人?ああ、ダメだ。頭がこんがらがってよくわからないや。」

 

コトダマゲット!

 

【お菓子とココア】

学園長室に散らばっていた。少なくとも黒幕が30分前までこの部屋にいた証拠。

 

「あと、気になるのはこの機械かな。」

「ああ。オレらの名前が書いてあるけど…なんなんだろうな。」

「さあね。機械に詳しい才刃クンなら解析できたんだろうけど…」

「いない奴の事を考えても仕方ねェな。とりあえず、今の所オレらが調べられるところはそんなになさそうだな。」

 

コトダマゲット!

 

【コンピューター】

全部で16台あり、真ん中のファミコンに導線で繋がれている。ひとつひとつに全員の名前が書かれている。

 

「…あれ?」

「ん?どうしたんだ狛研ちゃん?」

「いや…このコンピューターの並び方、どっかで見た事あるような気がするんだよね…」

「マジかよ。」

「うん…あれー?絶対どっかでみてると思うんだけど…」

「心当たりは?」

「んー…思い出せないや。」

「あの、もうここには手がかりは無いと思う。一度別の場所を探さない?」

「そうだねぇ。」

「…あの、その前に一個いい?」

「なんだ、狛研ちゃん。」

「…めっちゃお腹すいた。」

「うーん、せっかくだから食事にしたいところだけど…時間がないから適当に何か食べながら探索をする感じにしようか。」

「そうだね。探索を中断するわけにはいかないし、休憩はそれぞれ交代制でとるのはどう?」

「…そうね。」

 

 

 

 

「よいしょっと。お待たせみんな。」

「…マジかよ。リュックで持ってきたぞ。なあ、一応聞くけどそれって一日分?」

「半食分。」

「え?」

「半食分。」

「…ははは、オイラは君がブラックホールに思えてきたよ。」

「ねえ、探索は進めておいてくれた?」

「ああ、図書室に行ってそれっぽい本を集めてきたぜ。」

「それから物理室や化学室にあった研究書も全部持ってきたよ。まだ分類できてない本もあるから、狛研君も手伝ってくれるかい?」

「もちろん。」

 

 

 

 

…とりあえず分類だけは終わった。

あとはこれを読めば…

「あの、みんな。」

「ん?なんだ、神座ちゃん?」

「えっと、今こういう事言うのは気が引けるけど…少し眠いかも…」

「え、ゐをりちゃん眠いの?そうならそうって遠慮なく言ってくれればいいのに。」

「ごめんなさい、今捜査中だから…」

「そういえばもう夜時間だもんね。じゃあ、6時間経ったら起こしに行くから、それまではゆっくり寝てきなよ。」

「…ありがとう。じゃあ休んでくるわね。」

ゐをりちゃんが部屋に戻った。

「さてと。オレ達はオレ達で調べ物進めないとな。」

「今は情報管理室と看守室と学園長室は入れないし…資料をひと通り読む時間にしようか。」

「そうだねぇ。」

 

 

 

 

ボクはまず、看守室にあった履歴書に目を通した。

失くなってた方神とボクの分の履歴書が見つかったから、これで16枚揃ったはずだ。

履歴書には全て罪状と処刑執行日が書かれる欄があった。

過程はどうあれ、ここに書かれている内容によると、みんなはここに収監される前に誰かを殺しているらしい。

そして、みんな処刑が執行されて死んだらしい。

…おかしい。

どう計算しても処刑執行日とみんなが死んだ日が一致しない。

今ここにいるはずの陽一クンや柳人クン、ゐをりちゃんまで処刑された事になっている。

…あれ?

ボクの履歴書だけ、罪状と執行日が黒く塗りつぶされてる。

それに、履歴書の写真がどう見てもみんなとは別人だ。

髪の色とか目の色とかは同じだけど、髪型や服装、雰囲気が全然違う。

…この写真に写っているのは、一体誰なんだろう。

 

コトダマゲット!

 

【履歴書】

全員の経歴や罪状、死刑執行日が書かれている。

全員処刑の日が実際に死んだ日と一致していない上に、別人の写真が貼られている。

ボクの履歴書に至っては、罪状と執行日が黒く塗りつぶされていて読めなくなっている。

 

「…ふぅ。」

「お疲れ、大丈夫か狛研ちゃん?」

「…うん。さすがに全員分の履歴書を細かい所までチェックするのは時間がかかるね。…ねえ、今何時だっけ?」

「夜の1時半。」

「マジか。…ちょっと化学室から眠気覚ましの薬取ってきていい?」

「おう。」

捜査中に寝ちゃったらおしおきされちゃうからね。

 

 

 

 

【化学室】

 

ふーん、眠気覚ましって言っても色んな種類があるんだね。

この強力なヤツは、カフェインが大量に入ってるから1度しか使っちゃダメって書いてあるな。

2回以上使うと脳が融けるって…それ絶対ヤバい薬じゃん。

…なんか怖いし普通にヤツにしとこ。

 

 

 

 

【食堂】

 

「ごめん、お待たせ。」

「狛研君、薬は取ってきたのかい?」

「まあね。」

ボクは、取ってきた薬を飲んでみた。

…お、なんか眠気が取れたような気がする。

よーし、このまま資料を全部読んじゃえ。

履歴書はもう読んだし、次はこの日誌でも読もうかな。

 

 

 

ーーー

 

20XX年4月某日

 

その日、世界中を混乱に陥らせた天変地異の大災害が発生した。

同時に、希望ヶ峰学園の第100期生の一部の生徒により、世界を巻き込む大規模なテロが発生した。

それはまるで、例の『絶望的事件』の再来を思わせるようなものだった。

その日を境に世界中で同時多発テロが起こり、世界は壊滅的な状態に陥った。事件による死者数は世界の人口をおよそ半分にまで減らしたという。政府は、事件を引き起こしたとされる15人の高校生を逮捕し、新設の学生用刑務所に収監した。

 

ーーー

 

 

 

ーーー

 

20XX年5月某日

 

収監されていた高校生は全員処刑され、世界には再び平和が訪れた。

しかし、政府はテロへの注意喚起及び再び事件を起こそうと暗躍する者達の処分のため、秘密裏に進めていた計画を世間に公表した。

その計画とは、ーーーのーーーーをーーー、ーーーーーとしてーーーーー事であった。

 

ーーー

 

 

 

…なんだこれ。

『絶望的事件』?テロ?

何がどうなってるんだ。

ボク達は、そんなの知らない。

…ちょっと待って。

じゃあ、ボク達の大切な人達は、みんな事件に巻き込まれて…?

それに、なんだこの日誌は。

所々黒く塗りつぶされていて読めない。

政府の計画って、一体なんなんだ…?

 

 

 

ーーー

 

20XX年6月某日

 

計画は順調かに思われた。

しかし、我々が仕込んだーーーが私欲のために政府を裏切り、ーーーをーーーーーしてしまった。

奴を止めなければ非常にまずい。

こうなったのも全て、『イレギュラー』のせいだ。

アイツが紛れ込まなければ、ーーーが裏切りに走る事も無かった。

 

狛研叶

 

コイツの才能は非常に厄介だ。

あの女はーーーを狂わせ、ーーーがあんな恐ろしい『実験』をしようとするきっかけを作った悪魔だ。

あの女を『殺さなければ』、我々に未来はない。

 

ーーー

 

 

 

…裏切り?

どういう事なのかな、これは。

よくわかんないけど、このゲームの黒幕は政府の裏切り者って事?

そして、ボクの才能…

政府がボクを殺したがってる…?

一体何がどうなっているんだ。

 

コトダマゲット!

 

【日誌】

政府側の人間によって書かれた日誌。

ボク達が知らない『絶望的事件』や、政府が世間に公表した計画について書かれている。

 

 

 

 

「狛研ちゃん、そっちは順調か?」

「…うん。」

「ん?どうした?うかない顔してよ。」

「…いや、ちょっとこの日誌に気になる事が書いてあってさ。」

「気になる事?」

「ボクが悪魔だとか、ボクが死ななきゃ未来が無いだとか…もちろん、ここに書いてあった事全部を間に受けたわけじゃないよ。でも、ボクが外に出る事で不幸になる人がいるんじゃないかって思っちゃってさ。」

「そんなの関係ねえだろ。」

「…え?」

「狛研ちゃんが外に出た事で何人不幸になろうと関係ねぇ。みんなでここから出るって決めただろ。今更やっぱりナシでとか許さねーぞ。」

「陽一クン…ありがとう。ボク、ちょっと弱気になってたみたいだ。」

「ったく、しっかりしろよな。オレ達のリーダーは君しかいないんだからよ。」

「ごめん。」

「で、狛研ちゃん。今どこまで進んだ?」

「えっとね。履歴書と日誌は全部読んだよ。あとはそっちの資料だね。」

「物理室と化学室のレポートか。アレ、結構重たいぞ。大丈夫か?」

「うわ、マジで?でも、さっき薬飲んだからもうちょっと頑張ってみるよ。」

「おう。でもあんまり無理はすんなよ。裁判で体調崩したりなんかしたら元も子もねェからな。」

「うん、そうするよ。」

夜時間はまだあと4時間くらい残ってる。

さてと、どんどん調べ物を進めていきますか!



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第6章 非日常編②

お待たせ







「…さてと。」

研究書を読まないとね。

えっと、確か蘇りの技術とかデータがどうのこうのって言ってたよね。

「陽一クン。」

「おう、なんだ狛研ちゃん?」

「研究書って要約とかしてくれた?」

「ああ、一応な。」

「ありがとう。」

これで少しは読みやすくなるはず。

 

 

 

 

…なるほどね。

大体報告で聞いた通りだね。

でも、どっちも肝心な部分はあんまり詳しく書かれてないな。

具体的な方法とかも暗号化されてて読めないし。

せめて、才刃クンと治奈ちゃんがいてくれたら読めたんだろうけど。

もういない二人の事を考えても仕方ないか。

 

コトダマゲット!

 

【物理室の資料】

人体の冷凍保存や人格のデータ化についての資料。

 

…あれ?これ、続きがあるな。

「ねえ、化学室で研究書見つけたって言ってたよね。」

「ああ。」

「ちょっと読ませて。」

「おう。」

 

 

 

ーーー

 

ついに人間の意識を完全にコピーできる人工知能を生み出す研究が成功した。

こいつは、一度パーソナルデータを取り込んだ人間の性格や感情をほぼ100%再現する事ができる。

これがあれば平和を取り戻す事も夢ではない。

この技術は、必ず人類の『希望』となるだろう。

そこで、この人工知能を『HOPE』と名付ける事にした。

だが、HOPEの研究はまだ実験段階で、利用した場合のリスクは未知数だ。

何段階かにわたって慎重に実験を積み重ねなければ。

 

ーーー

 

 

 

…なんだ、これは。

実験…人工知能…?

…『希望』…?

「その研究書、ワケわかんねーよな。」

「…そうだね。」

「でも、これはやっぱこの学園の正体を突き止める上で重要な資料だと思うんだよな。」

「根拠は?」

「…勘。」

「…ははっ。」

「ちょっ、え!?何その目!やめてよ、そんな目しないで!フツーに傷つくから!」

ああ、そういえば陽一クンってこんな子だったね。

 

コトダマゲット!

 

【化学室の資料】

人工知能の実験について書かれていた。この学園を知る上で重要な資料かもしれない。

 

「…あの。」

「あ、ゐをりちゃん。起きてきたんだね。」

「ごめんなさい、捜査…抜けて…」

「いいよ。寝不足で裁判中に体調崩したりしたらダメでしょ。休みたい時に休んでいいから。」

「…ありがとう。私、さっき寝た分頑張る。ねえ、どこまで捜査は進んだの?」

「えっとね、資料はとりあえず全部読んだよ。」

「…そう。」

「ねえ、狛研君。君はまだ捜査続けられそう?」

「うん。」

「じゃあ今度はオイラが休んできていいかな。」

「いいよー。休んでおいで。こっちで捜査進めておくから。」

「ありがとう。それじゃあ、失礼させてもらうよ。」

…さてと。

「どうする?まだ夜時間は2時間くらい残ってるけど。」

「そうね…この学園を知るためにも、とりあえず行けるところまでは探索してみるのはどうかしら。」

「それがいいかもね。」

ボク達は、学園内を探索する事にした。

 

 

 

 

【超高校級の幸運】の研究室

 

「ここを調べるの?」

「うん。」

「でも、ここはあなたの研究室でしょ?」

「まあ、そうなんだけど…ほら、見逃してる所とかあるかもしれないし。一緒に探索してほしいんだ。」

「叶がそう言うならやるけど…」

「…あ。」

「どうしたの?」

「…わかった。学園長室のコンピューターの並び…ここにある柱と同じ並び方なんだ。」

「言われてみれば…並び方が似てるわね。」

「この柱も、人柱をイメージしてるんじゃないかって柳人クンが言ってたし…」

 

コトダマゲット!

 

【研究室】

柱の配置が学園長室のコンピューターに似ている。柳人クン曰く、この柱は人柱をイメージしているらしい。

 

「それと、やっぱりこの数字が気になるんだよね…」

「数字?」

「ほら、天井に数字が書かれてるでしょ。あれ、一体何の数字なのかな…」

「9億ちょい…この学園を建てるのに使った費用か!?」

「そんなのなんでこんな所に書くのよ。」

「うん。ボクも違うと思う。」

「えー…そうかなぁ。」

 

コトダマゲット!

 

【天井の数字】

天井に謎の数字が書かれている。何の数字なのかはわからない。

 

「…しっかし、なんなんだろうな。この部屋。柱に棺桶…ホント悪趣味だな…ッ!?どういう事だよこれ…」

「どうしたの?」

「この柱…全部人の骨でできてやがる…」

「ッ…!?嘘でしょ…!?」

「クッソ、なんなんだこれ…人の命を弄びやがって!!おい、出てこいポンコツ共!!」

 

『お呼びですか?』

 

ベルさんが研究室に入ってきた。

『いやはや、しかしポンコツとはひどい言いようですねぇ、栄様。』

「うるせェ!!おい、この部屋は一体なんなんだ!!テメェら、何のつもりだ!!」

『そちらの研究室は、狛研様をイメージした仕様になっております。フッフッフ、気に入っていただけました?』

「ふざけんな!!この柱、全部人の骨でできてんじゃねえか!!どういうつもりだ!!」

『ですから、狛研様をイメージした造りになっていると言ったはずです。まさに狛研様の才能にピッタリなお部屋でしょう?』

「え?」

『フッフッフ、いずれわかる事です。…貴女は、生きているだけで大罪人なんですよ。』

「黙れ!!ふざけた事言ってんじゃねえぞ!!狛研ちゃんが大罪人だと!?ざけんな!!さっさと視界から消えろクソ野郎!!」

『おや…呼び出しておいて失せろとは…随分と横暴ですねぇ。もう少しお話しても良いんですよ?』

「あなた達は捜査には介入しないって言ったはずよ。用が済んだなら消えてくれるとありがたいのだけれど。」

『とほほ…ずいぶんと嫌われたものですねぇ。もういいです。ええ、どうせワタクシはお邪魔なサーベルタイガーですよ。それでは、ここいらで失礼しますよ。』

ベルさんはガックリと肩を落としながら研究室から出て行った。

 

「クッソ…なんなんだアイツら。」

「叶、さっきの事は気にしちゃダメよ。」

「わかってる。」

…わかってるけど。

ボクが生きてるだけで大罪人って…

まるでベルさん達はボクの罪を知っているみたいな口ぶりだったな。

ボクの、どうしても思い出せない罪…

一体なんなんだろう。

「狛研ちゃん、あんなの気にせず次行こうぜ。」

「…うん。」

…あれ?ちょっと待って。これ…

「何してんだ?早く行くぞ。」

「あ、うん…」

 

 

 

 

【超高校級のアナウンサー】の研究室

 

「…げっ。ここは…」

「知能犯の研究室ね。」

「方神…」

奴の顔と最期を思い出して、吐き気を催した。

「…うっ!」

「叶、大丈夫?」

「…うん。ごめん。ちょっと嫌な事思い出した。」

「無理、しないでね。」

「ありがとう。でも本当に大丈夫だから。…それじゃ、行こうか。」

 

 

 

 

部屋の中は、以前とさほど変わらなかった。

でも、スタジオの照明は消えていて、持ち主がいなくなった部屋は静寂に満ちていた。

「なあ、これ…なんだ?」

陽一クンは、壁にあったスイッチを指差した。

「さあ、よくわかんないけど…あんまり迂闊に触らない方が…」

 

「ぶえっきし!!」

 

カチッ

 

「…。」

「…。」

「…ははっ、ごめん。」

ゐをりちゃんは、あきれ返ったような顔で陽一クンを見た。

「…この、馬鹿!!」

 

ガコン

 

陽一クンがボタンを押した瞬間、部屋全体が揺れ出した。

「わっ!?」

「な、なんだ!?」

そして、スタジオの壁がスライドし、奥の部屋が見えた。

「…。」

その部屋には、赤いペンキでバツ印が書かれた手配書や資料、地図、計画書などが散らばっていた。

「…なるほど。【超高校級の知能犯】の研究室ってわけか。」

「こんな隠し部屋があったとはね。馬鹿なあなたにしてはお手柄ね。」

「へへ…って…神座ちゃん、地味にオレの事くさしてない?」

「二人とも、部屋を調べてみよう。」

「…そうね。」

 

「…しっかし、きったねぇ部屋だなぁ。アイツ、ああ見えて雑な性格なのな。」

「いや、そうでもないと思うよ。」

ボクは、入り口の壁にかけてあった絵を外して、額縁の中にあったペンを取り出した。

「なっ…」

「こうやって汚部屋にしておく事で、隠しておきたい物を悟られないようにしてたんだよ。」

ペンのキャップを取ると、ペン先が鍵になっていた。

「あっ…!」

「…。」

ボクは、部屋の真ん中にあった机を入念に調べた。

「…やっぱり。」

「え?」

ボクは、鍵を使って机の引き出しを開けた。

引き出しの中には、手帳が入っていた。

「手帳…!」

「…。」

ここには、方神が絶対に隠しておきたかった秘密があるはずだ。

ボクは、手帳を開いてみた。

 

 

 

「…は!?」

「…何が書いてあったんだ?」

「おいしいカスタードプリンの作り方…牛乳300ml、卵3個、砂糖40g…」

「はぁ!!?」

なんだよこれ!!ただのレシピ本じゃんか!!

クッソ、方神め!こっちは時間がないってのに紛らわしい事しやがって!

…ん?

…え。

これって…

「…なるほど、そういう事か。だから方神の奴、この手帳を隠しておいたのか。」

「何かわかったのか?」

「これ見て。」

「いや、だからそれはただのレシピ本…」

「じゃなくて、著者と日付け!」

「!!?」

 

手帳の表紙には、『栄陽一 20XX年4月12日』と書かれていた。

「なんだよこれ…」

「これ、陽一クンの字だよね?」

「いや、まあそうだけど…」

「陽一クン、この手帳に見覚えはある?」

「ねえよ!そんなの書いた事ねえし!」

「…だよね。」

「え?」

「ボク達は多分、ここに来る前の記憶が抜けてるんだよ。」

「そ、そんなバカな話…」

「じゃあこの学園にどうやって来たのか覚えてる?」

「それは…」

「やっぱり、ボク達にはここに来る直前の記憶が無いんだ。それがたまたまなのか、それとも黒幕が意図した事なのかまではわからないけどね。」

「…なるほどな。」

 

「…あ。」

「どうしたの?」

「写真が挟まってる…」

「写真?」

手帳に挟まっていた写真には、ボクと凶夜クンとゐをりちゃんが写っていた。

「…私。」

「え、待って。ボク、3人で写真撮った事なんて無いんだけど。」

「じゃあ、さっき叶が言っていた記憶がない間の期間に、3人で写真を撮ったって事かしら。」

「そう考えるのが自然だろうね…」

「あれ?」

「どうしたの?」

「この写真…なんか不自然じゃない?」

「不自然?」

「ほら、服装とか髪型とか全然違うし…」

「確かに…」

「履歴書の写真も今のボク達と全然違うけど、一体どういう事なんだろうね。」

「わからない…ただ、私達がここに閉じ込められる前に全員知り合ってて、そこで何かがあったって事でしょうね。」

 

コトダマゲット!

 

【手帳】

陽一クンの手帳。陽一クンの字で書かれているが、陽一クンは見覚えがないらしい。

 

コトダマゲット!

 

【写真】

ボク、凶夜クン、ゐをりちゃんの3人が写っている。でも、その3人はまるで別人みたいだ。

 

「これは裁判で提出する証拠として持っておこう。」

「…そうね。」

「やあ、3人とも。お待たせ。」

「柳人クン。もう大丈夫なの?」

「うん。夜時間中寝てたからね。もうそろそろ朝時間だろ?捜査の方、手伝うよ〜♪」

「ありがとう!」

「で、今はどこまで進んだのかい?」

「えっとね…」

ボクは、柳人クンに捜査の報告をした。

「うんうん、なるほどね。よく分かったよ。」

「それじゃあ、みんな揃った事だし捜査を続けようか。」

「そうだねぇ。まずはどこに行こうか?」

「うーん…情報管理室に行ってみない?昨日行けなかったし。」

「賛成…」

 

 

 

 

【情報管理室】

 

「よし、パソコンも使えるみたいだし調べてみるか。…あーあ、こういう時才刃クンがいてくれれば助かったんだけど。」

「ンな事言ってもしょうがねえだろ。…貸してみ。」

「あれ?陽一クン、パソコン得意なの?」

「まあ、一時期趣味でネットサーフィンばっかやってた事があるからな。」

ああ、道理でゲームを覚えるのが早かったわけだ。

「…っと、もう方神の乗っ取りは解除されてるみたいだな。…んあ?」

「どうしたの?」

「見ろ、なんかファイルがあるぞ。」

「開いて。」

全員で陽一クンが開いたファイルを見た。

 

 

 

ーーー

 

僕はとんでもない事をしてしまった。

『HOPE』を生み出し、世界に平和を取り戻す事ができると思っていた。

だから奴の提案に乗り、アレの製作を手伝った。

だがそれが間違いだった。

奴が、まさか僕と共に生み出したアレをあんな恐ろしい事に使ってしまうなんて。

僕は取り返しのつかない罪を犯してしまった。

奴に殺されてデータを奪われるくらいなら、いっその事自ら命を断つつもりだ。

 

この遺書を読んでいる者へ

君がこれを読んでいる時、僕はもうこの世にいないだろう。

君に全てを受け入れ、立ち向かう覚悟があるのなら、どうか奴の計画を止めてほしい。

奴は狂っている。このままだと全員奴に殺される。

どうか、この悪夢を終わらせてくれ。

 

 

 

入田才刃

 

ーーー

 

 

 

「…。」

「…なあ、これって。」

「才刃クンの…遺書…?」

「なっ…!?そんなワケあるか!!アイツは、死ぬのが怖くて死ぬ直前まで引きこもってたんだぞ!?それに、アイツはラッセに撃たれて殺されたはずだ。アイツが遺書なんて書くわけねえだろ!」

「…それに、もし工学者が、私達の中の誰かの異常に気付いていたなら、死ぬ前に私達に何も教えてくれなかったのは変よ。」

「そうだねぇ。その遺書、やっぱり誰かのなりすましなんじゃないのかなぁ?」

 

『なりすまし?笑えない冗談だね!』

 

後ろからクマさんが現れた。

「なっ、どこから湧いて出やがったテメェ!」

『あーらら、随分とご機嫌ナナメだね陽一クン!もしかしてカルシウム不足?栄養士のくせに自分の栄養も管理できてないの?』

「うるせェ!!」

『あーあ、怒られちゃった。言っておくけどね、その遺書は入田クンが書いた物だよ。誰かのなりすましなんかじゃないから。』

「君がそんな事言ったって信用できると思うかい?」

『どいつもこいつもひどいね全く!じゃ、もう用は済んだみたいだから行くね!』

クマさんは、不機嫌そうに帰っていった。

「…クマさん、遺書…」

「ん?どうしたんだ、狛研ちゃん?」

「ああ、いや…これはボクの推測だし、根拠は無いんだけど…多分、才刃クンは黒幕の手伝いをした事があるんじゃないかなって。」

「…は!?いやいやいや!ないない!!アイツに限ってそんな事あるわけないだろ!」

「そうだよ。第一、内通者は癒川君だったじゃないか。入田君は関係ないよ。」

「でも、もしこの遺書が本当に才刃クンが書いたものだとすると、納得できる事がいくつかあるんだ。」

「納得できる事?」

「よく考えてみて。クマさん達やこの手帳って、よっぽど機械に詳しい人じゃないと作れないと思うんだよね。もし、才刃クンが作ったクマさんや手帳を、黒幕がそのまま使ってたとしたら…?」

「…可能性は無いわけじゃないかもね。」

 

コトダマゲット!

 

【才刃クンの遺書】

パソコンに才刃クンの遺書があった。才刃クンは黒幕の手伝いをしていた…?

 

「…あ。」

「ん?どうしたんだい狛研君。」

「…いや、ちょっと探しておきたい場所があってね。付き合ってくれる?」

「うん、いいよ〜♪」

 

 

 

 

【超高校級の資産家】の研究室

 

「…叶、ここって。」

「うん。天理クンの研究室。」

「そこに何があるっていうんだい?」

「…。」

ボクは、部屋中を探した。

 

「…あった。」

「何か見つけたのか?」

「うん。これ見て。」

ボクは、見つけた本をみんなに見せた。

「それは…」

「『囚われのマリアのための交響曲』…」

「天理クン、この本がゲームの元ネタになってるって言ってた…」

「じゃあ、その本を読めばこの学園がなんなのかわかるんじゃ…」

「待ってよ、そうとは限らないと思うよ。」

「どういう事?」

「その本は、元ネタになってただけだろ?このゲームの事が書いてあるわけないじゃないか。」

「うっ…」

「それに、今はせっかくの朝時間だ。探索を積極的に進めていった方がいいんじゃないか?」

「…そうだね。」

「じゃあ次はどこに行こうか?」

「そうだなぁ。とりあえず、一度外エリアに出てみないかい?」

「外?」

「もしかしたら脱出の手がかりが見つかるかもしれないし。」

「…そうね。」

 

 

 

 

【外エリア】

 

「外になんて出て何を探すんだよ。」

「出口だよ。内エリアには無かったけど、ここにならあるかもしれないと思って。」

「でも狛研君。日暮君は、外エリアに出口らしいものはなかったって言ってたよ。」

「でも、見落としてただけかもしれないでしょ。とにかく、手分けして探すよ。外エリアには、一部夜時間立ち入り禁止になっちゃう場所があるから、早く探さないと。」

「…まあ、君がそういうなら探すけどよ。」

 

 

 

 

ー数時間後ー

 

「みんな、どう?」

「狛研ちゃん、出口なんて見つからなかったぜ。」

「…え。」

「天井とか床とか、ありとあらゆる場所を隅々まで探したけど、出口なんてどこにもなかったよ。」

「…本当に?」

「ああ。外エリアの壁は起伏や継ぎ目が全く無かったよ。」

「リフトを使って天井も調べたけれど、それっぽいものは何もなかったわ。」

「壁や床にも、不自然な空洞はなかったしねぇ。」

「…そんな、そんなわけないんだ。」

「え?」

「ボク達は外から来た。だから、この学園内に外へ続く出口が無いとおかしいんだ。…これほど大きな建物となると、多分地下か壁の下の方に出入り口を作っておくものだと思うんだけど…それっぽい物が無いのか…」

「当然、外部からの侵入もできないって事ね。…モノクマが、誰も助けに来ないって言ってたのはそういう事なのかしらね。」

「ん?どういう事だ?」

「…君ねえ、今までの話聞いてた?つまり、出入り口が無いからオイラ達は自力で脱出する事ができなければ、外から誰かに助けてもらう事もできないんだよ。」

「じゃあ、大人しくここでじっとしてるしかないって事かよ!?」

「それだけじゃないよ。」

「え?」

 

「ボク達がどこからどうやってここに来たのか。それをハッキリさせる必要が出てきたんだよ。」

「オイラ達は外から来たんじゃないのかい?」

「でも、外から入ってくるための出入り口が無いんだよ?おかしいじゃないか。」

「外といえば、今外がどうなってるのかすらオレらは知らねえもんな。」

「360°全方位を壁で覆われてて、壁の上にも天井があって天気すらわからない…外部との通信手段も無い、か。…ん?」

「どうしたんだ、狛研ちゃん。」

「あれっ…だったら、なんで黒幕は外の世界の事を知ってたんだ…?」

「え?」

「だって、おかしいじゃないか。ボク達は、ここから出る事が出来なければ外部から中に入る事もできない。それは黒幕も同じはずだよ。外部との通信手段を持たないはずの黒幕が、なんで外の世界を知ってるのかな。」

「…謎は増える一方だねぇ。」

「っと、そろそろ夜時間だ。」

「じゃあ、行ける場所の探索をするのと、さっき見つけた本を読まないと。時間がないから巻きで行こう。」

「待てよ、狛研ちゃん。そろそろ休憩してこいよ。」

「いや、でも…捜査抜けたら悪いし。それに、また薬飲めばまだ動けるよ。」

「叶、薬の説明書、ちゃんと読んだ?あの薬は、睡眠を挟んでから次を飲まないとダメなのよ。捜査なら私達が進めておくから、あなたはゆっくり休んできて。」

「でも…」

「でもじゃない。とにかく、あなたはゆっくりしてて。」

「…ハイ。」

ゐをりちゃんに怒られちゃったよ。

それじゃあ、お言葉に甘えて少しだけ休んでこようかな。

おやすみなさーい。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ふにゃあっ!」

…ヤバい、どうしよう。

寝過ぎた。

捜査の足引っ張らないように寝るのは最小限にしようって決めてたのに…

急がなきゃ!

 

 

 

 

【内エリア 1F】

 

「ごめん、お待たせ!!」

「狛研ちゃん、もういいのか?」

「うん、ごめん。寝過ぎちゃって。」

「いや、まだ5時間しか経ってないけど…」

「で、捜査はどのくらい進んだ?」

「…ああ、言いづらいんだけど。」

「?」

「オレ達、あの後内エリアに出口が無いか探してみたんだよ。でも、それっぽい物はやっぱりなかったよ。」

「…あ、でも…アレは…?」

「アレ?」

「あの、実は…内エリアの探索が終わった後、一度外エリアに出てみたの。そしたら、天井にさっきまでなかったヒビみたいなものが見えて…」

「ヒビ?」

「ええ。」

「…行ってくる。」

ボクは、ゐをりちゃんが見つけてくれたヒビを探しに行った。

 

 

 

 

【外エリア】

 

「…。」

ちょうどヒビがあるあたりに、クマさんとベルさんがいた。

二匹は、ヒビを巨大なテープで押さえていた。

ヒビの向こうは、吸い込まれそうになるほど深い黒が広がっていた。

『ちょっとちょっと!これ以上近づかないでよね!今は工事中だよ!』

ヘルメットをかぶったクマさんが、ボクの行く手を阻んだ。

「工事中って…あのヒビは何?」

『ああ、あれはバ…おっと、いけないいけない。これ以上は言っちゃいけない事になってるんだった。』

「『バ』?ねえ、今なんて言いかけたの?」

『しつこいよ!そんなに気になるなら自分で調べたら!』

「自分で調べるのに限界があるからキミに聞いてるんだろ。」

『とにかく、ボクから言える事は何もありません!ほら、行った行った!』

なんだよ、クマさんのドケチ。

 

 

 

 

【内エリア】

 

「どうだった?」

「クマさん達が邪魔してきて調べられなかったよ。」

「…そう。」

「んだよあのクマ!捜査の邪魔はしないんじゃなかったのかよ!」

 

「…もしかしたら、あのヒビはこの世界の『弱点』なのかも。」

「弱点?」

「多分、あのヒビは詮索されたら困るものなんだよ。だから、クマさんは必死に調べさせまいとしてたんだ。」

「…なるほどねぇ。」

 

コトダマゲット!

 

【外エリア】

脱出方法や外との通信手段は一切ない。全方位と空は壁と天井で覆われていて、外の世界を知る事はできない。でも、天井にヒビがあったのは確認できた。

 

「でも、ヒビを調べられないんじゃ仕方ないわよね。どうする?」

「今は夜時間だし、さっきの本を読んでみるのはどう?」

「…そうね。」

 

 

 

 

【図書室】

 

「狛研君、どうだった?」

「…うん、普通のミステリー小説だった。天理クンが言ってたゲームが作品内に出てきたって事以外はね。」

「うーん、やっぱその本が元ネタっつーのは財原のこじつけなんじゃねえの?」

「どういう事?」

「アイツ、トランプのカードをオレ達に当てはめてるから死ぬ奴を予想できたっつってたけど、そんなの後で適当にこじつければ当たってるように見せかけられるんじゃないかって思ってよ。」

「君にしては随分と慎重に考えるようになったじゃないか。」

「うっせ!一言余計だっつーの!」

「確かに、ちょっとこじつけっぽいよね。これを元ネタって言うのはかなり無理があるような気が…」

 

『俺はただ、『囚われのマリアのための交響曲(シンフォニア)』を奏でたいだけだよ。』

 

…奏でる…?

…もしかして。

 

「ベルさん!!」

『はい、なんでございましょう。狛研様。』

「画像を点字にしたり点字を文字にしたりできる機械とかってある?」

『ええ、ございますよ。少々お待ち下さいな。』

ベルさんは、お尻のあたりをゴソゴソとあさり始めた。

『よいしょっと。これで満足ですか?』

「ありがとう。もう行っていいよ。」

『とほほ、トラ遣いが荒いですねぇ。』

「どうしたんだよ、狛研ちゃん。わざわざあんなクソトラを呼んだりして。」

ボクは、ベルさんにもらった機械をセットした。

「ねえ、柳人クン。」

「ん?なんだい、狛研君。」

「これ、ちょっと楽譜にしてくれる?」

「ん?どれどれ?うんうん、なるほどね。お安い御用さ。」

 

「…はい。これがどうかしたの?」

「この小説、実は暗号が隠されてたんだ。これを解読すると…」

 

 

 

くりかえされるせかいできぼうはぜつぼうにかわり

つみびとたちはえいえんのかんごくへといざなわれる

あたらしいせかいはかなえのもの

 

「『繰り返される世界で希望は絶望に変わり、罪人達は永遠の監獄へと誘われる。新しい世界は叶のもの』…!?」

「何、これ…どういう事…!?」

「ボクも詳しい事はわからないけど…多分、このメッセージはこのコロシアイの事だ。」

「…なっ、なんだって!?」

「もちろん、お父さんはこのコロシアイの展開を予期してこのメッセージを遺したわけじゃないと思う。お父さんはこのコロシアイの事なんて知らないはずだしね。このメッセージはただの小説の謎の種明かしだ。実際、小説の登場人物に『香苗』っていう人が出てくるからね。黒幕は、このメッセージに気付いて、この状況を作り出そうとしてたんじゃないかな。天理クンが言ってた元ネタっていうのは、小説本編の事じゃなくて、この暗号の事だったんだよ。」

「じゃあ、黒幕はこの小説の暗号の通りになるようにこの学園を作り出したって事かよ!?」

「そういう事。言ってみれば模倣犯ってヤツだね。」

「模倣犯か…」

…なんだろう。

うまく言えないけど、これはただの模倣犯による犯罪じゃない気がする。

もっと、その奥に何かあるような…

 

 

 

あたらしいせかいはかなえのもの

 

…新しい世界は叶のもの、か。

このコロシアイは、ボクのために用意されたものって事?

 

 

 

『僕ちゃんに配られたのは、狛研の秘密だった。そこには、コイツがこのコロシアイの元凶だと書かれてたんだ。』

 

『あの女はーーーを狂わせ、ーーーがあんな恐ろしい『実験』をしようとするきっかけを作った悪魔だ。』

 

『貴女は、生きているだけで大罪人なんですよ。』

 

 

 

…。

思い出したくない記憶が蘇ってくる。

 

 

『あーあ、なんでこんな子引き取っちゃったのかしら。』

『やめろよ…そんな事言ったって仕方ないだろ。』

 

『なんでよ…なんでこうなるのよ!アンタを引き取ってから悪い事ばっかり…!』

 

『気持ち悪い…なんでアンタはずっと笑ってんのよ!何か取り憑いてるんじゃないの!?』

 

 

 

『生きてるだけで私達を不幸にする…兄さんだって、アンタのせいで死んだのよ!アンタなんて、生まれてこなければよかったのよ!!』

 

 

 

…思い出した。

ボクは、今までずっと周りのみんなを不幸にして生きてきたんだ。

だから嫌われて、無視されたりもした。

ここに来てからみんながどんどん死んだのも、きっとボクが不幸をばらまいていたからだ。

ボクの『ラッキー』は、みんなの不運の上に成り立っていたんだ。

生きている事。

…多分、それ自体がボクの罪なんだ。

 

 

 

 

『…勝手に俺を置いて死んだりすんなよな。キミは、俺にとって大事な人なんだからさ。』

 

『ったく、しっかりしろよな。オレ達のリーダーは君しかいないんだからよ。』

 

…!

そうだ。ボクには、ボクを必要としてくれる人達がいる。

その人達のためにも、そして、今まで犠牲になった人達のためにも絶対に外に出るって決めた。

…ボクとした事が、いきなり取り戻した記憶に取り乱して大事な事を忘れかけていたみたいだ。

罪なら、外に出てからいくらでも償えばいい。

絶対にこんなクソゲーの正体を暴いて、みんなで家に帰るんだ。



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第6章 非日常編③

遅れてすまん
モチベが絶賛急降下中


天理クンの部屋にあった本を読んだ後は、図書室の本を片っ端から読んだ。

結局、有益な情報は得られないまま時間だけが過ぎていった。

 

「…クッソ。何か情報はねえのかよ!!」

「落ち着いてよ、栄君。時間が無いからってイライラしたら、余計捜査が進まなくなるよ。」

「んなの、わかってるよ!」

「…ねえ、陽一クン。キミ、2日連続徹夜したよね。ずっと休みなしで捜査してて…そりゃあ疲れも溜まってイライラするよ。図書室の調べ物なら3人でできるから、そろそろ寝てきなよ。」

「けど…」

「そのイライラした状態のままで裁判に参加する方が良くないよ。いいから寝てきなって。」

「…わかったよ。みんなも、あんまり無理すんじゃねえぞ。」

「うん。ありがとう。じゃあ捜査進めておくね。」

陽一クンが図書室を後にした。

 

「…さてと、ボク達はボク達で捜査を進めないとね。」

 

バサッ

 

「おっと、いけない。」

本の山にぶつかって何かが落ちた。

「ボクも疲れてんのかなぁ。落とし物ーっと。…え?」

落ちたのはメモ用紙のようなものだった。

「…なんだろ、これ。」

紙には、血で文字が書かれていた。

「うわっ…」

これ、血文字だよね…

なんでこんなところに…

ボクは、紙を広げて読んでみた。

 

 

 

ーーー

 

コロシアエ エイエンノツミビトドモヨ

 

ーーー

 

 

 

「…『殺しあえ、永遠の罪人共よ』?」

どういう意味なんだろう。

まるでわからないな。

「…。」

ボクは、紙が挟まっていた本を開いてみた。

本には、裏表紙に何か書かれていた。

「…?」

 

 

 

ーーー

 

このセカイに絶望がある限り、何度でも罪を裁き続ける

たとえ何度繰り返す事になろうとも

いつか希望が完成するその時まで

 

ーーー

 

 

 

『希望が完成する』…?

どういう事?

『生まれる』とか『来る』じゃなくて、『完成』するって…

まるで今『希望』を生み出そうとしている最中みたいじゃないか。

…一体、ボク達に何を伝えようとしてるんだろう。

 

コトダマゲット!

 

【紙切れが挟まった本】

古びた本に血文字が書かれた紙が挟まっていた。

 

 

 

 

「…ふぅ。」

「狛研君。だいぶ疲れてるみたいじゃないか。」

「そりゃあ、普段あんまり使わない頭を3日間もフル回転させっぱなしだもん。疲れるよ。」

「…確かに。毎日探索やら調べ物やら…一生分の調べ物をしたんじゃないのかなぁ。」

「ちょっと、縁起でもない事言わないでよ。みんなでここを出るって約束したじゃない。」

「…ごめん。そうだったね。」

「どう?そっちは。」

「うーん、色々調べてみたけどあんまり有力な情報は出てこなかったね。」

「黒幕とかこの学園とかの情報を調べようとしても、すでに情報が削除されてて見られなかったものね。」

「そりゃあ、そう簡単に真実が見つかるわけないとは思ってたけどぉ…せっかく全フロアが開放されたんだから、もっと色々分かる事があると思ったんだけどなぁ。」

「仕方ないわよ。そんなに簡単にわかる事なら、私達はとっくにここから出られてると思うわ。」

「それもそうなんだけどさぁ…ねえ、そういえばさぁ。ゐをりちゃん、だいぶ手帳使いこなすの上手くなったよね。」

「そうかしら。」

「最初なんて、才刃クンに一から教えてもらわないと電源すら入れられなかったのに…」

「そんな事あったかしらね。」

「とぼけちゃって、このこのー!」

「ちょっと、やめてよ。子供じゃないんだから…」

 

「…あれ?」

「どうしたの?」

「…いや、なんでもない。」

今思ったけど、他の子の手帳の電源入れるのって意外と難しいんだね。

ボタンが小さいし、動き回られるとボタンにうまく力が入らないし…

まあ、冷静に考えてみたら他の人に簡単に操作されちゃったら困るしね。

ん?あれ?じゃあ、あの子はなんであの時…

 

コトダマゲット!

 

【生徒手帳】

生徒手帳の主電源のボタンは、簡単に他の人が入れられないようになっている。

 

 

 

 

「ふわぁあ、おはよ、みんな。」

「あれ?陽一クン、もういいの?」

「ああ。もう夜時間もそろそろ終わりだしな。」

あっ…

もうそんな時間だったんだね。

「どうだった?調べ物は。」

「あまり有力な情報は得られなかったわ。」

「…ボク的には、気になる事がいくつか。」

「気になる事?なんかわかった事でもあんのか?」

ボクは、進捗状況を陽一クンに説明した。

 

「…なるほどな。」

「うん。希望を完成させるっていうのがよくわからないけど…黒幕の目的に少しずつ近づいてる感じはするよね。」

「黒幕の目的かぁ…まるでわかんねーな!」

「…は?」

「オレも休憩中に色々考えたんだけど、あのクマ公共が何考えてんのかてんで読めねぇし、そもそも黒幕が誰なのかもさっぱりわかんねーな!」

「やけに積極的に進捗状況を聞いてくるから何か掴んだのかと思ったけど…君にそんな期待をしたオイラがバカだったね。」

「んだと!?」

 

「…ねえ、みんな。」

ゐをりちゃんが何か言いたそうだ。

「ゐをりちゃん、どうしたの?」

「あの、この夜時間中に、新しい映像が配信されてたみたい…映画館で見に行くのはどうかしら。」

「…あ、ホントだ。全部で3本あるね。ちょっと見に行こうか。」

 

 

 

 

【映画館】

 

…懐かしいな。

初めてここに来た時は、8部屋しかないシアターをどう使うかで揉めた事もあったのに。

最初は15人もいたボク達の大切な友達は、今はもう3人になってしまった。

シアター内に入って映像をセットすると、部屋がゆっくりと暗くなり始めた。

ボクは、一番前の席に座ってスクリーンを眺めた。

 

ヴーーーーーーーーーーーー

 

開始の合図の音と共に、スクリーンに映像が映し出される。

 

 

 

 

 


 

 

 

映像には、ニュースキャスターが何人か映り、真ん中に座っている中年のキャスターが元気よく話し始めた。

『おはようございます!画面の前の皆様!今週もこの時間がやって参りました!えー、今週の『ひるテレ』の話題を発表していきたいと思います!まずは、今話題の新設希望ヶ峰学園の100期生に取材していきましょう、という事で…現場の朝田アナ!』

画面が切り替わり、希望ヶ峰学園の校舎が映る。

校舎の前には、若い女のキャスターが立っていた。

『はい!私、朝田は今希望ヶ峰学園の正門に来ています!早速新入生にお話を伺っていきましょう!ではまず、穴雲君から!』

キャスターは、早速方神…星也クンにインタビューをした。

 

『入学後の目標や意気込みをどうぞ!』

『そうですね…希望ヶ峰学園は数々の著名人を輩出してきた名門中の名門ですので、生徒として学園の名に恥じぬよう精進していきたいと考えています。』

『わー、真面目ちゃんだー。』

『ちょっと、財原君。君は黙ってて。』

『では次は入田君、どうぞ!』

『ふんっ!僕ちゃんの天才的な発明を楽しみにしているといい!』

みんなが次々とインタビューに応えていく。

『まだ…よく…わからない…です。』

『俺は楽しけりゃなんでもいっすよ。ところで、近所に美味いレストランあるんですけど、今度一緒にどっすか?』

『おい!何しれっとナンパしてんだ!あ、オレっすか?えー、まあとにかく女の子にモテまくり…ああ、じゃなかった。栄養士としてより成長したいです。』

『世界中の子供達の心に響くような歌を作ってみせます。』

『私は私。希望ヶ峰学園の生徒にふさわしくいるだけで十分ですわ。』

『まだ日本の生活慣れマセンガ…団員ノタメにもトニカク頑張りマス!』

『アタシのダンスをまたバズらせてみせますよ。』

『わたし、ここの動物さんとお友達になりたいなぁ。ね、翠!』

『ピィ!』

『己に出来る事を全うする。それだけです。』

『俺はもっともっと強くなってやるぜ!誰でもかかってこい!!』

『私は…皆さんのお役に立ちたいです。』

『この国で学んだ事を生かし、我が国とより強固な友好関係を築きます。』

『クラスメイトのみんなと仲良くなりたいです!さ、凶夜クンも!』

『えっと…僕は…とりあえず、穏便に卒業できればそれで…』

『重いよ、景見!』

みんなが一斉に笑い出した。

『皆さん、ありがとうございました!現場からは以上です!』

 

 

 

〜〜数年後〜〜

 

『全世代の女性が注目する男性アナウンサーランキング10週連続堂々の第1位!今話題のドラマ『監獄探偵オリザワ君』の主人公檻澤探を演じ、バラエティ番組『笑タイムズ』では爆笑シーンを披露し瞬間視聴率75%を記録!今最も話題を集める超人気アナウンサー穴雲星也さんです!どうぞ!』

『金曜夜10時放送の『監獄探偵オリザワ君』、ぜひご覧ください。『俺の手にかかればお前ら全員豚箱行きだ!』』

『白鳥麗美が漫画原作ドラマ『世界で一番女王様』の主人公、白嶺寺照美役に抜擢!今年も学園長直々の推薦によりミス・希望ヶ峰の特別審査員に選ばれる!』

『私なんかを選んでいただき光栄ですわ。』

『入田氏が開発した世界中が注目する次世代型デバイス『iri−X』、発売前から40時間待ちの大行列!財原氏も数千億円の投資をしたそうです。』

『ふんっ、どうだ見たか!僕ちゃんの発明は宇宙一だ!にゃーっはっはっは!!』

『俺もガッポガッポだよぉ〜。ほーらクズメス共ー、キミ達の大好きなお金あげちゃうぞー♡』

『キャー、財原様ー!』

『チッ、なんでアイツばっかり…』

『癒川氏が考案した治療法と栄氏が考案した食事によって、不治の病や紛争で負った怪我に苦しんでいた〇〇国の数百万人の患者が回復。シルヴェンノイネン王国の国王陛下が新たに百万人の難民受け入れの法律を制定。』

『私は、人々を救うためにできる事をしただけです。』

『腹減ってる奴には腹いっぱい食わせてやる!』

『世界の平和と国民の幸福を守る事こそが、国王としての私の存在意義です。』

『朱雑技団の団長と世界的なダンサーハズミ・ヨウコがまさかのコラボ!Y●uTubeの総再生回数10億回越え!』

『謝謝!ワタシ達のパフォーマンス、見てテくださいネー!』

『画面の前のみんなも踊ってみなよ!最高にノれるよ!』

『不動院氏と舞田氏が、来月来日されるシルヴェンノイネン王国の王女の護衛に抜擢される。王女は『お兄様のお友達がとても強い護衛で心強い』と胸の内を明らかにされた。』

『求められた事を全うするまでです。王女様のお命は私達が必ずお守りします。』

『テロリストだろうとスパイだろうと俺達がまとめて相手してやるぜ!!』

『日暮教授が設立したひぐらし動物園が先週オープン!建物の内装は、芸術家・実業家として有名な神座氏が手掛けており、動物園に多額の寄付をしている。マスコット的存在の翠ちゃんは、『ひぐらし動物園のアイドル』として園を訪れた子供達に大人気!今なら世界的な詩人詩名氏が、翠ちゃんの歌と共に新作を生公演!』

『わたし達と一緒に、いろんな動物さんとお友達になってみてね!』

『…みんなに喜んでもらえると嬉しい。』

『オイラと翠君の歌、ぜひ聞いていっておくれよ〜♪』

『ピィ!』

 

『…いいなぁ、みんな。それぞれの道で活躍してさ。僕なんて、3年間ずっと持ち前の不運が連発しただけだよ。』

『凶夜クンは行かなくていいの?卒業パーティー。』

『…僕はいいよ。なんか、僕なんかが行っても申し訳ないからね。』

『そんな事ないって!ボク達、友達でしょ!やっぱり16人全員揃ってないと!ね!』

『…ありがとう叶さん。…あの。』

『どうしたの?凶夜クン。』

『…ずっと、伝えたかった事があるんだ。』

『え、何急に。』

 

『あの、ぼ…僕は…ずっと、君の事が好き…だったんだ。』

『…。』

『あ、あの…叶さ…』

『…知ってた。』

『え?』

『そうなんじゃないかなって思ってた。』

 

 

 

『…ボクも、キミの事が好きだったから。』

 

 

 

 

 

ブツンッ

 

 

 

画面が切り替わり、クマさんが現れる。

背景には、炎の海と化した街に、焼け焦げた人々が悶え苦しむ様子が映っている。

『いっやぁ、みんなそれぞれの道で成功しちゃって…ホンット羨ましいよね!まあ一部例外もいるみたいだけど。でもね、この数秒後、とある大きな出来事が起こって、ここにいる16人は豹変していく事になるんだよね!世界はあっという間にカオスになってしまったのでしたー!さてさて、ではここで問題!この16人の身に、一体何が起こったのでしょうかっ!?正解発表は、学級裁判で!』

 

 

 


 

 

 

 

 

「…。」

部屋がだんだんと明るくなる。

ボクは、ただ呆然とスクリーンを眺めていた。

 

なんだ、今の映像は。

こんなの、明らかにボクの記憶と矛盾してる。

ボクは希望ヶ峰学園に入学した事なんてないはずだし、入学から何年も経っているというのはとても信じられない。

もちろん、この映像が捏造っていう可能性もある。むしろ、そっちの可能性の方が高い気がする。

だけど、もしこれが本物なら、ボク達はやっぱり記憶を抜き取られたって事になる。

それも、数日や数週間なんてレベルじゃない。

数年間の記憶を抜き取られてるんだ。

だったら、処刑されたっていうのは一体…?

 

…映像はあと2本か。

これも見てみないと。

2本目の映像をセットして席についた。

 

ヴーーーーーーーーーーーー

 

開始の合図の音と共に、スクリーンに映像が映し出される。

 

 

 

 

 


 

 

 

スクリーンに刑務所のような場所が映し出される。

正面には、ボクが映っていた。

でも、その姿は明らかにボクじゃない…ちょうど履歴書の証明写真に写っていたような容姿だった。

髪は俯くと顔が隠れるほど伸びきっていて、心なしか全体的に痩せているような気がする。

ボクは、穴の開いたアクリル板の向こうにいる誰かに質問されていた。

『…はい。…みんなが…いえ、ボク達があんな事をしたのはその日がきっかけでした。テレビの取材の直後…』

『なるほどね。共犯者はその14人で全員?』

『そうですね…まあ、共犯者って言っていいのか微妙な人も何人かいましたけど…』

『どうしてあんな事をしたのか、覚えてる?』

『…。』

『あのね、混乱しているのかもしれないけど…何も話してくれなきゃどうにもならないのよ。あなた達のした事は立派な重罪だけど、あなた達はまだ若い。あなたの証言によっては、罰が軽くなる事もなくはないわ。』

『…おかしくなったんです。あの日から…あれはもう正気じゃなかった…思い出すだけで震えが止まりません。なんであんな事になったのか…なんでボク達はあんな事をしてしまったのか…』

『なるほど…みんながおかしく…ね。…ねえ。』

『なんですか。』

『みんな、あなたが一番重い罪を犯したって証言していたのだけれど…どういう事なのかしら?』

『事件のきっかけを作ったのは、ボクなんです。』

『詳しく聞かせて。どういう事なのそれは!?あなたはあの時、何をしていたの!!?答えて!!』

『…別に、何もしてませんよ。』

『…え?』

ボクは、口角を上げて答えた。

『なんであの事件が起こったのか…それはーーーーー』

 

 

 

 

 

ブツンッ

 

 

 


 

 

 

 

 

映像が終わって部屋が明るくなった。

 

なんだ、この映像…

まるで刑務所の面会みたいな映像じゃないか。

ボクの中で、次々と疑問が沸き起こった。

事件って何の事だ。

ボクがきっかけを作ったって一体どういう事だ。

外の世界で一体何があった。

施設のみんなは…他のみんなはどうなったの!?

裁判を勝ち抜いてここから出て、何があったのか確かめなきゃ。

…だけど、まずは裁判に必要な情報を手に入れないと話にならない。

ボクは、3本目の映像をセットした。

 

ヴーーーーーーーーーーーー

 

開始の合図の音と共に、スクリーンに映像が映し出される。

 

 

 

 

 


 

 

 

スクリーンには、暗い教会のような場所が映った。

何人もの信者が真ん中にある祭壇を崇めている。

祭壇には、無数の死体が積まれて山を作っていた。

その山の頂上には十字架が立てられ、女の子が磔にされていた。

ドレスのような制服を着ていて、腰まである綺麗な黒髪に大きな碧い瞳、横から出た触角が特徴的な女の子だ。

服装も髪型も違うけど、ボクは一目でそれが誰なのか理解できた。

 

「…ボク?」

 

目の前で磔にされている女の子は、間違いなくボク自身だった。

『あっ…』

画面の中にいるボクは、真っ黒に塗り潰された人物に銃を突きつけられていた。

『…はは、ははは…』

ボクは、絶望したような表情で笑っていた。

『…バイバイ、次の世界でまた会おうね。』

 

 

 

ドンッ

 

銃が発砲されて眉間に風穴が開く。

頭から血が噴き出して、空中に真っ赤な花を咲かせながら亡骸が崩れ落ちる。

その亡骸を、真っ黒い人物が抱きかかえていた。

その瞬間背景が歪んで、バラバラに崩れていく。

 

 

 

 

 

ブツンッ

 

 

 


 

 

 

 

 

映像が終わって部屋が明るくなった。

…え?

何今の…どういう事?

…死ん、だ…よね。

あそこにいたのは間違いなくボク自身だった。

でもボクは今こうして生きてる。

じゃあ、あの子は一体なんなの…?

いや、そもそも…

 

ボクは一体誰なんだ…?

 

『オマエラが明らかにすべき真実…それはオマエラの正体だよ!』

 

…ボク達の、正体…

当たり前すぎて今まで疑問に思った事すらなかった。

自分が一体何者なのか。

どこから来て、なんのために今まで生きてきたのか。

ボクは、当たり前にわかってる事だと思っていたけど、自分の事すら何もわかっていなかった。

みんなの命を弄んだ黒幕を糾弾して一泡吹かせるのはいい。

だけどその前に、ボク達の正体や犯した罪と向き合わなきゃいけないのかもしれない。

それに、あの子は死ぬ前に変な事を言っていた。

 

『次の世界でまた会おうね。』

 

…次の、世界。

なんかどっかで聞いた事あるようなセリフだな。

…あ。

 

『繰り返される世界で希望は絶望に変わり、罪人達は永遠の監獄へと誘われる。』

 

繰り返される世界…

ボクは一体、今どこにいるんだ。

そもそも自分が誰なのかすらわからない。

ボク達は、一体何に巻き込まれてしまったっていうんだ。

 

コトダマゲット!

 

【映像①】

希望ヶ峰に入学したみんなのインタビュー映像。

 

コトダマゲット!

 

【映像②】

刑務所のような場所で、ボクが事情聴取を受けている映像。

 

コトダマゲット!

 

【映像③】

ボクによく似た女の子が磔にされて銃殺される映像。彼女は、最期に妙な発言をしていた。

 

 

 

 

シアターを出ると、みんなが集まっていた。

「お、狛研ちゃん。やっと来た。」

「ごめん。ボクが一番最後だった?」

「ああ。にしても、随分と長い間シアターにいたよな。狛研ちゃんの映像、そんなに長かったのか?」

「…え?みんな同じ映像を見てたんじゃないの?」

「いや、微妙に違う映像を見させられたみたいだぞ。インタビューと事情聴取のくだりまではほとんど一緒だったけど、オレはオレ自身が誰かに頭を殴られて殺される映像を、詩名は冷蔵庫に閉じ込められて凍死する映像を、神座ちゃんは処刑される映像が流れたらしい。」

え?

それって、全員がそれぞれの最期を見させられたって事?

「…なんか、オレは頭の原型がなくなるくらいボコボコに殴られてたな。髪型とか服装とか全然違ったけど、あそこに映ってたのはなんとなくオレ自身だったような気がすんだよな。」

「まあ、あの映像が偽物っていう可能性は否定できないし…あんまり信用しすぎるのもどうかと思うわ。」

「神座君の言う通りだよ。もしかしたら映像で死んでいたのは赤の他人かもしれないし、そもそも映像自体が真っ赤な嘘かもしれないじゃないか。」

「まあ、そうなんだけどよ…」

 

「…ねえ。」

「ん?どうしたんだ狛研ちゃん?」

「みんなは、パラレルワールドってあると思う?」

「パラレル…ワールド?」

「いわゆる並行宇宙っていうヤツか。なんでいきなりそんな事聞くんだい?」

「いや、ちょっと気になる事があって…」

「あっ!わかったぞ!あそこで殺されたのは多分、パラレルワールドのオレなんだよ!向こうでもこっちと同じようにコロシアイが起こってるんじゃねえか!?」

「待ってよ。そんな子供の妄想みたいなのがこのコロシアイの正体だとはとても思えないんだけどなぁ。仮にそんなものが存在したとして、黒幕はどうやってその世界に干渉したっていうんだい?それに、パラレルワールドの出来事をわざわざオイラ達に見せる事に何の意味があるんだい?」

「それは…」

「ね?ちゃんとした根拠なんてどこにもないだろ?そもそもそんな物あるわけないじゃないか。やっぱりあの映像は偽物かオイラ達のそっくりさんが殺されてる映像かのどっちかなんだよ。」

「うーん、そうなのかなぁ。」

 

 

 

 

【ゲームエリア】

 

ボク達は、映像を見終わった後捜査に戻った。

柳人クンの提案で、ボク達はゲームエリアを探索する事になった。

「しっかし、今更ゲームエリアなんて探して一体何になるっつーんだよ。」

「つべこべ言わずに探しなよぉ。」

「はいはいわかりましたよーっと。…あれ?」

「どうしたんだい?」

「こんな扉、あったっけ?」

「え、何?どうしたの?」

「よくわからないけど、栄君が隠し扉を見つけたらしいよ〜♪」

「隠し扉を?…陽一クン、悪いけど開けてみてもらえる?」

「おう。」

扉の向こうには、ゲームソフトが並んでいた。

そのゲームソフトのタイトルには、全て『ダンガンロンパ』というワードが入っていた。

「…ダンガンロンパ?」

「全部で54本あるわね。…あら?」

「どうしたの?」

「54本目だけ、中身が無いわ。」

「んだと!?なあ、それって…」

「多分、その54本目が、学園長室にセットされていたソフトだと思うの。」

「あ…!」

「でも、確証はないよね?あのカセット、ラベルが剥がされてたし。」

「…そうね。ごめんなさい、適当な事言って。」

「いや、頭の隅に置いておく価値はあるよ。…『ダンガンロンパ』ね。」

 

コトダマゲット!

 

【ダンガンロンパ】

ゲームエリアの隠し扉に、同じタイトルのゲームソフトが54本並んでいた。最後の1作だけはカセットが抜き取られている。

 

「なあ、そろそろ裁判の時間だよな。」

「…そうね。」

「…。」

「叶、どうしたの?」

「いや、なんでもない…」

もうすぐ裁判か。

裁判に勝たなきゃ、ボク達に未来はない。

…なんでだろう。急にお父さんの言葉がこみ上げてきた。

…あれっ?

ボク、お父さんの最期の言葉って、みんなの前で言った事あったっけ?

 

コトダマゲット!

 

【お父さんの言葉】

お父さんが10年前ボクに残してくれた言葉。みんなの前で言った事はなかったはず。

 

「…!」

「狛研ちゃん?どうしたんだ?」

「…ボク、わかったかもしれない。」

「何が?」

「このゲームを裏で操ってる黒幕…」

「えぇええっ!!?」

「…突拍子のない話だから信じられないと思うし、ボクだってこんなの信じたくない。だけど、この人が黒幕としか考えられないんだ。」

「狛研君、黒幕が分かったのかい!?一体誰なんだい、それは!?」

「それは…」

 

 

 

ブーーーーーッブーーーーーッブーーーーーッ

 

『オマエラ、時間切れです!只今より最終裁判を行います!全員、5分以内に内エリア1階の噴水まで集合してね〜!』

『遅刻欠席は許しませんよ!校則違反とみなし、問答無用でおしおきさせていただきます!』

「チッ…あのクマ公共、変なタイミングで放送かけやがって…」

「狛研君、その話、裁判で詳しく聞かせてもらうよ。」

「…うん。」

「行きましょう。」

ボク達は、全員で噴水に向かった。

 

 

 

 

【噴水】

 

「この景色を見るのも、これで最後なんだね。」

「…そうね。」

「こんな檻みてェな場所、さっさとおさらばしたいもんだぜ。」

「よく言うよ。自分の研究室が開放された時はあんなに喜んでたくせに。」

「うっ…い、いいだろ別に!もう終わった事だろ!?オレ達はもう、こっから出ちまや勝ちなんだよ!」

「はいはい。」

ここで、みんなが死んでいった。

この裁判を勝ち抜けばボク達は晴れて自由の身だ。

…でも、失った命までは元に戻らない。

ボクは、複雑な思いを抱えたまま噴水を見つめた。

噴水の前で待っていると、クマさんが現れた。

『うぷぷ、全員揃ったみたいだね。って、今回は全員同時?さすが仲良し4人組だねオマエラ!』

「無駄口を叩いてないでさっさとしなよぉ。」

『うっわ、ひっど!ボク、激おこプンプン丸だぞ!…あれ?これって死語?まあいいや、裁判場行きのエレベーターに乗ってね!』

クマさんが指を鳴らすと、噴水の中からエレベーターが現れた。

クマさんに急かされて、ボク達はエレベーターに乗った。

 

 

 

 

また、始まるんだ。

あの地獄のような裁判が。

ボク達は真実を暴いて、ボク達にコロシアイを強要した黒幕を糾弾しないといけない。

ボクは、まだ信じられない。

あんなに仲の良かったあの子が黒幕だなんて。

…ずっと友達だと思ってたのに。

でも、真実を明らかにしなきゃボク達に未来はない。

ボク達は、生きてここから出なきゃいけないんだ。

外で待っていてくれてる人達…そして、ここで若くして死んでしまったみんなの無念を晴らすために。

 

 

 

 


 

 

 

『フッフッフ。さァて、ここでクイズのお時間ですよ。登場人物全員をコロシアイに巻き込んだ黒幕は、一体誰だと思いますか?』

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

『…そうですか。次回は学級裁判前編でございます。お楽しみに。』



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第6章 非日常編④(学級裁判前編)

お ま た せ


エレベーターが止まり、ドアが開いた。

全員がエレベーターから降りた。

証言台には、遺影が2つ増えていた。

みんな、2人の遺影を見て、静かに俯いた。

不敵な笑みを浮かべる天理クンと、本性を隠していた時の優しい笑みを浮かべた方神の遺影だった。

裁判場に並んだ12枚の遺影が、ここで起こった悲劇の凄惨さを物語っている。

最初は16人もいたのに、今はもう4人しかいないんだ。

…みんな、死んでしまった。

ボク達が弱いばっかりに。

「…。」

これで最後にしなきゃ。

ボクは拳を握り固めて自分の証言台についた。

『うぷぷ!全員揃ったね。…って言ってももう4人しかいないけどw』

『やらせといて言うのもなんですが、さすがに減りすぎじゃあありません?正直半分くらいは残ると思ってたんですがねぇ。特に3回目と5回目の殺人では3人も犠牲が出るとは…』

『オマエラもしかして、なんだかんだ言って殺しが好きなんじゃないのー?』

クマさんとベルさんは、椅子にどっかりと座ってふんぞりかえりながらボク達を煽ってきた。

「うるせぇ黙れ!!」

『おお、こわいこわい!それでは、アナタ達の大好きなティーのターンもそろそろお開きにしましょうか。』

「普通に茶番って言えないのかい?」

「っていうかあなた達が始めた事じゃない。」

「やめなよ二人とも。アイツらに人語を話したところで通じるわけがないんだからさぁ。」

『うぷぷ!それじゃあ始めるよ!ドキドキワクワクの学級裁判を!』

 

 


 

コトダマ一覧

 

 

【ゲーム機】

学園長室にあったゲーム機。何か重要な機械なのかもしれない。

 

【お菓子とココア】

学園長室に散らばっていた。少なくとも黒幕が30分前までこの部屋にいた証拠。

 

【コンピューター】

全部で16台あり、真ん中のファミコンに導線で繋がれている。ひとつひとつに全員の名前が書かれている。

 

【履歴書】

全員の経歴や罪状、死刑執行日が書かれている。

全員処刑の日が実際に死んだ日と一致していない上に、別人の写真が貼られている。

ボクの履歴書に至っては、罪状と執行日が黒く塗りつぶされていて読めなくなっている。

 

【日誌】

政府側の人間によって書かれた日誌。

ボク達が知らない『絶望的事件』や、政府が世間に公表した計画について書かれている。

 

【物理室の資料】

人体の冷凍保存や人格のデータ化についての資料。

 

【化学室の資料】

人工知能の実験について書かれていた。この学園を知る上で重要な資料かもしれない。

 

【研究室】

柱の配置が学園長室のコンピューターに似ている。柳人クン曰く、この柱は人柱をイメージしているらしい。

 

【天井の数字】

天井に謎の数字が書かれている。何の数字なのかはわからない。

 

【手帳】

陽一クンの手帳。陽一クンの字で書かれているが、陽一クンは見覚えがないらしい。

 

【写真】

ボク、凶夜クン、ゐをりちゃんの3人が写っている。でも、その3人はまるで別人みたいだ。

 

【才刃クンの遺書】

パソコンに才刃クンの遺書があった。才刃クンは黒幕の手伝いをしていた…?

 

【外エリア】

脱出方法や外との通信手段は一切ない。全方位と空は壁と天井で覆われていて、外の世界を知る事はできない。でも、天井にヒビがあったのは確認できた。

 

【紙切れが挟まった本】

古びた本に血文字が書かれた紙が挟まっていた。

 

【生徒手帳】

生徒手帳の主電源のボタンは、簡単に他の人が入れられないようになっている。

 

【映像①】

希望ヶ峰に入学したみんなのインタビュー映像。

 

【映像②】

刑務所のような場所で、ボクが事情聴取を受けている映像。

 

【映像③】

ボクによく似た女の子が磔にされて銃殺される映像。彼女は、最期に妙な発言をしていた。

 

【ダンガンロンパ】

ゲームエリアの隠し扉に、同じタイトルのゲームソフトが54本並んでいた。最後の1作だけはカセットが抜き取られている。

 

【お父さんの言葉】

お父さんが10年前ボクに残してくれた言葉。みんなの前で言った事はなかったはず。

 

 

 


 

 

 

学級裁判開廷!

 

モノクマ『…あ、念のためもう一回確認しとくけど、今回明らかにすべきなのは3つだよ!ひとつ目は、黒幕の正体!ふたつ目は、このコロシアイの目的!そしてみっつ目は、オマエラ自身の正体!』

神座「待って。投票とかは?どうすればいいの?」

モノベル『フッフッフ。それは、3つの謎が明らかになった時あらためてご説明しますよ。それに、どうだっていいではありませんかそんな事。今は議論に集中する事が最優先なんじゃあありません?』

詩名「オイラ達にとっては命がかかってるからどうでもよくないんだけど…あくまでも今は答えない気かい?」

モノクマ『うっさいなー!もう説明は終わりー!それじゃあ、好きに議論を進めてくだっさーい!!』

栄「にしても…黒幕を見つけ出すっつってもよぉ。一体何から話しゃあいいんだ?」

狛研「うーん…コロシアイの目的もボクらの正体もまだわかんないけど、それは黒幕の正体がわかればおのずと答えが出てくるんじゃないかな?」

神座「じゃあ…」

狛研「うん。まずは黒幕の正体を突き止めよう。」

詩名「そうだね。オイラは狛研君に賛成だよ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

栄「黒幕の正体かぁ…んー…さっっっっぱりわかんねぇな!!」

詩名「ちょっとは考えようよぉ〜。」

神座「そうよ。」

栄「ひでえやみんな!!そこまで言う事ねぇだろ!!」

狛研「みんな、この3日間で調べた事を思い出して。そうすれば黒幕の正体に行き着けるはずだよ。」

栄「そ、そうだな…狛研ちゃんが言うなら…ん!?」

詩名「…どうしたんだい、栄君。」

栄「ちょっと待て!!オレ、黒幕の正体がわかったかもしんねーぞ!?」

狛研「…え!?」

神座「叶、耳を貸しちゃダメよ。この男、どうせ大した事は言わないわ。」

栄「ちょっ、神座ちゃんひどくない!?」

狛研「まあ、頭ごなしに否定するのもいかがなものかと思うし…一応話してくれる?」

栄「おうともよ!オレの完璧な推理を聞け!!」

詩名「栄君…そういうの、フラグって言うんだよ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

栄「あのさ、狛研ちゃんが見つけてきてくれた本には、このゲームの元ネタになったっつー内容が書かれてたんだよな?」

狛研「うん。それがどうしたの?」

栄「じゃあ決まりだ!!このゲームの黒幕は、その本の作者だ!!」

詩名「は?」

 

 

 

栄「このクソゲーを裏で操っていたのは、狛研ちゃんの親父だったんだよ!!」

は?

陽一クン、何言ってんの?

お父さんが黒幕?

呆れて言葉も出ないんだけど…

神座「…根拠は?」

柳人クンとゐをりちゃんも呆れた様子だった。

栄「ンなモン、決まってんだろ!あの気色悪りぃ暗号は、このゲームの事を指してんだろ?」

狛研「違うよ。あれは、あくまで本編の内容をほのめかすための暗号で、黒幕がそれを利用しただけだよ。」

栄「財原の野郎が、コロシアイの参加者と本に出てくるカードが対応してるっつってたじゃねえかよ!」

詩名「それは、コロシアイ収監生活のモデルとなった物語が『囚われのマリアのための交響曲』だって事に気付いた財原君が、辻褄を合わせるためにこじつけたんだろ?根拠が弱すぎるよ。」

栄「それだけじゃねえぞ!このコロシアイは、どう考えたって計画的な犯行だ。一般人が用意できるもんじゃねえんだよ。でも、狛研ちゃんの親父は確か名探偵だったよな?そんだけ頭が良けりゃあ、このコロシアイを用意する事だってできたんじゃねえの!?」

詩名「…確かに、普通は【超高校級】を16人も監禁してコロシアイを強要するなんて事できないだろうけどさぁ。」

 

栄「ほらみろ!!それが出来んのは、狛研ちゃんの親父ただひとりなんだよ!!ソイツが全ての元凶…それがオレの答えだ!!ハッハッハ!どうだ見たかモノクマ!!テメェの化けの皮を剥いでやったぜ!!」

モノクマ『ギクッ!?バ、バババババレた!?ハハハッ!!そうさ!!このゲームの真の黒幕は、この浅野蘭馬様だったのだー!!叶!お前が立派に成長してくれてお父さん嬉しいぞ!』

…全然似てないし、完全にボクに対する嫌がらせだよね。

ホント腹立つ。

詩名「白々しいなぁ。絶対演技でしょ、あれ。」

狛研「…陽一クン。それはあり得ないよ。」

栄「はぁ?なんでだよ!?」

狛研「だって、お父さんは10年前に死んでるんだよ。黒幕なわけがないよ。」

栄「ンなもん、死を偽装してんのかも…」

狛研「無いよ。ちゃんと最期を見届けたもの。」

詩名「それにさぁ。自分が尊敬してる偉人ならまだしも、自分の作品をモデルにした殺人事件なんて、中二病でも考えない発想だよ。」

神座「言えてるわね。それに、探偵にとって自分の情報を晒すのは自殺行為のはずよ。まして、死んだはずの人間がわざわざ正体がバレるリスクを犯してまで自分の作品を模倣した殺人をする理由がわからないわ。」

狛研「第一、ボクの大好きだったお父さんが、こんなふざけた事をするわけがないじゃないか。」

栄「うっ…ご、ごめん…」

狛研「陽一クン。今回は思い違いって事で許すけど、次お父さんの事そんな風に言ったら許さないから。」

栄「なっ…け、決定的に嫌われてしまった…!」

詩名「やれやれ、君の話を真面目に聞いたオイラ達がバカだったよ。…さて、時間も無いし話を元に戻そうか。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

詩名「うーん、自分で話を振っといて言うのもなんだけど…まるで黒幕の手がかりが無いね。どうしようか?」

狛研「…少なくとも、ここにいた16人のうちの誰かなのは確かなんじゃないかな?」

詩名「なんでそう言い切れるんだい?外部の誰かが黒幕って可能性も捨て切れないじゃないか。」

神座「高校生がデスゲームの運営なんてできないわよね…」

今の柳人クンの発言はおかしい!!

 

外部の誰かが黒幕⬅︎【外エリア】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「この建物に、外部から侵入する事はできないんだよ。逆に出ていく事もね。この建物にはボク達16人しかいないはずだから、必然的に黒幕の正体もここにいる誰かって事になる。」

詩名「外部の誰かがモノクマ達を遠隔操作してるのかもしれないだろ?」

狛研「才刃クンが、外との通信は一切できないって言ってたよ。クマさん達が仕掛けた監視カメラ以外に、外の世界と繋がる方法は無いんだよ。…そうでしょ、クマちゃん。」

モノクマ『ご名答ー。ぶっちゃけそれくらいは言わなくてもわかるだろうと思って言わなかったんだよね。だって、ミステリーで登場人物以外が黒幕って完全にタブーでしょ?』

詩名「しれっとメタ発言しないでおくれよ。」

モノクマ『全く。ボク達は親切にもそういうタブーを排除するために、あえて外部からの干渉が不可能な状況を作り出すっていうヒントまでぶら下げてあげたってのにさぁ。オマエラ鈍感すぎ!この不感症!!』

モノベル『フッフッフ。まあ、そんな当たり前の事にも気づかず的外れな推理をお披露目したおバカさんがどこかにいたようですが?』

栄「だ、だだだだだ誰だろうなそれは〜…?」

モノクマ『議論が進まないとみんな飽きちゃうからネタバレしちゃうけど、狛研サンの言う通り、黒幕はここに収監された16人の囚人の中にいるんだよ!それが誰なのかはもちろん教えないけどねー。』

狛研「…真実を知りたきゃ自分で探せって事?上等だよ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

神座「…あの、やっぱりそうなるとここにいる4人のうちの誰かなんじゃ…」

詩名「いや、そうとは限らないよ。オイラ達以外が黒幕っていう線も捨てきれないよ。」

栄「まさか、二重人格とか双子とかいうオチじゃねえだろうな!?」

柳人クンの意見に賛成したい。

 

オイラ達以外⬅︎【お菓子とココア】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「…黒幕は、ここにいる4人以外の誰かだと思う。」

栄「なんでそう言い切れるんだ?」

狛研「だって、開放されてなかったはずの学園長室には、学級裁判中に誰かがいた形跡があったんだよ?学級裁判に参加していたボク達が学園長室に行けるわけがないから…必然的に黒幕はここにいる4人以外の誰かって事になるんだ。」

栄「え…でも、ここにいる4人以外は全員死んだよな?って事は、まさかの幽霊!!?」

狛研「幽霊…」

詩名「真面目に考えなよ。そんなわけ…」

狛研「…いや、あながち間違いじゃないかもしれない。」

詩名「!!?」

狛研「…みんな、今からちょっとあり得ないかもしれない事言うから信じてもらえないかもしれないけど、ちゃんと聞いててね。」

神座「叶、あなた…もしかして、黒幕について何かわかった事でもあるの?」

狛研「…うん。確証はないけどね。…このコロシアイ収監生活を裏で操ってボク達の命を弄んでいた黒幕は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狛研「今までに死んだはずの人の中の誰かだったんだよ。

 

 

 

 

 

栄「はぁ!!?今までに死んだ奴のうちの誰かが黒幕だと!?んなわけあるか!!だって、みんな死んでるとこをちゃんとこの目で見たんだぞ!!」

狛研「…本当にそうなのかな?」

栄「…え?」

狛研「ボクも危うく気づかないところだったんだけど、この建物には明らかな違和感があったんだ。」

栄「違和感…?」

 

 

 

この学園の明らかな違和感は?

 

1.死体がない

2.広すぎる

3.噴水がある

 

 

 

➡︎1.死体がない

 

「これだ!!」

 

狛研「この学園には、いくら探してもあるべきはずのものが無かったんだ。」

詩名「あるべきはずのもの?」

狛研「…今までに死んだみんなの遺体だよ。」

神座「ーーーーー!!!」

狛研「本当に全エリアを開放したんだとするなら、どこかに遺体があるはずだよね?だって、外に遺体を出す事はできないんだもの。」

栄「じゃあ、遺体が見つからなかったのは…」

狛研「黒幕が、絶対に見つからないであろう場所に意図的に隠したんだよ。死体を見られないようにね。」

詩名「死体を探されたら、自分が死んでいるっていう大前提が崩れて一気に黒幕候補になっちゃうもんね。でも、この学園に死体を隠せるような場所なんてあったかなぁ?出口すら見つからなかったんだよ?」

狛研「…ひとつだけ心当たりがある。」

栄「ホントか!?」

 

コトダマ提示!

 

【研究室】

 

「これだ!!」

 

狛研「死体の隠し場所…それは多分、ボクの研究室だよ。」

神座「…え!?」

狛研「研究室にあった大きな柱…多分、あれの中に死体が隠してあったんだ。…あれは、本当に人柱だったんだよ。」

栄「なっ…そ、そんなわけ…」

詩名「そうだよ…確かに、人1人分くらいの大きさの柱だったけど…でも、だからって研究室に死体を隠すなんて…」

神座「本当なの…!?」

モノクマ『あーあ。バレちゃったか。んもー、せっかく隠してたのに!勘のいい詩名クンに気づかれないように内壁を完全防音にしたりとか色々頑張ったのになー。狛研サンの言う通り、あそこに死体を隠してたんだよ。』

詩名「そんな大事な事、なんで今頃になってカミングアウトするのかなぁ。どうせなら捜査時間中に確かめたかったよ。君達が嘘をついてるかもしれないじゃないか。」

モノベル『失礼な。わざわざ親切に答え合わせをして差し上げたというのに。柱に死体がある事を知ったところで簡単に中を調べられるような造りにはしておりませんので、どのみち確かめようがなかったでしょう?』

モノクマ『ボク達が嘘なんてつくわけないでしょ!嘘だと思うなら、オマエの大好きな日暮サンの肉の破片と巨鳥の肉塊でも持ってきてあげよっか?』

詩名「…つくづく悪趣味だね、君達。」

柳人クンは、好きな人とお友達を侮辱されて、見るからに苛立っていた。

 

狛研「そこまでして必死に死体を隠してたって事は、やっぱり今までに死んだみんなの中の誰かが黒幕って事でいいんだよね…?」

モノクマ『カンニング行為はダメって学校で習わなかった?』

栄「あくまでもオレ達が真実を暴くまでは教えない気かよ。」

神座「黒幕が死んだみんなの中にいるのがわかったのはいいけど…それは一体誰なの…?」

狛研「…あの。」

神座「叶…!?もしかして、あなた…何か知ってるの!?」

詩名「そういえば君…捜査中、黒幕が誰かわかったって言ってたよね。」

狛研「うん…あの時は、薄々疑ってたくらいだった。だから、みんなを混乱させないためにもあえて名指しで言わなかったけど…でも、ボクの中の疑惑が今完全に確信に変わった。…みんな。」

 

 

 

 

 

狛研「…ボク、黒幕が誰だかわかったよ。」

栄「えぇええええええええぇええええええええええええええええ!!!!?マジか!!?狛研ちゃん、ソイツは一体誰なんだ!!?」

狛研「…みんな、思い出してみて。この20日間の出来事を。そうすれば、黒幕が誰だかわかるはずだよ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

狛研「まず、このコロシアイ収監生活だけど、ボク達が拉致監禁されたところから始まってるんだよね。…確か、ボクが最初に目覚めて、そのあとみんなを呼びに行ったんだ。その後、クマさん達に収監生活を強いられて…」

栄「…白鳥ちゃんが口火を切って、どんどんみんながクラスメイトを殺していったんだよな。」

狛研「…でもさ、別の可能性だってあり得たわけだよね?」

神座「別の可能性…?」

狛研「もし、最初の殺人が起こらないまま時間だけが過ぎていって、みんながコロシアイ以外の原因で死んだとしたらどうなってたと思う?例えば老衰とか事故とか…」

詩名「そうなったら黒幕にとっては面白くないよねぇ。わざわざ動機を用意したり、癒川君や方神をコロシアイを進めるように煽ったり、コロシアイをさせる事にやけに必死だったよね。」

狛研「…そうだよ。それだよ柳人クン。きっかけや犠牲者なんてどうでもいい。とにかく、コロシアイを起こさなければいけなかった。」

 

狛研「黒幕にとって重要なもの…それは、『第一の殺人』だったんだよ。」

栄「第一の殺人…だと…!?」

狛研「一度殺人が起きてしまえば、憎悪の連鎖を止める事は難しくなる。そうなれば放っておいても殺人は起こる。だから、黒幕にとっては第一の殺人を起こしてコロシアイの引き金を引く事こそが一番重要だったんだよ。」

詩名「…もしかして、黒幕は動機以外にも、あえて殺人が起きやすくなるような状況をそれとなく作り出してたって事かい?」

栄「っつー事は、黒幕はやっぱ方神か!!?」

モノクマ『ギッ、ギックゥ!!?バ、バババババレたぁあ!?そ、そうだクズ共!!この俺様こそがこのコロシアイを引き起こした元凶だったのだ!!』

狛研「…違うよ?確かに方神は、コロシアイに便乗して自分は一切手を汚さずに他者を利用して殺して快感を得ようとするクズだったけど、アイツは黒幕じゃない。アイツの性格的に、たとえ嘘でも天理クンに負けるなんて演出しないはずだし。」

栄「じゃあ…入田か!?それかラッセ…!?」

モノクマ『そうなのだー!!僕ちゃんが黒幕だったのだー!!』

モノベル『フハハハハ!!俺様の正体に行き着いた事を褒めてやろう、愚民共!!…ったく、当てずっぽうで言わないでくださいよ。いちいちモノマネするのに疲れるんですから。』

狛研「そうだよ。陽一クン、自信がないなら的外れな事言わないで。議論がメチャクチャになっちゃうじゃないか。」

栄「ごめん…」

 

狛研「…話を戻すよ。黒幕にとっては、第一の殺人は絶対に()()()()()()()()()()()()。だから、半ば強引な手を使ってでも第一の殺人を引き起こしたんだよ。」

詩名「ん?って事は、もしかして白鳥君が黒幕なのかい?」

狛研「違うね。ボクも一回その可能性は考えたけど、隥恵ちゃんは黒幕じゃないよ。いくらみんなを絶望させるためといえど、あんな醜態をみんなの前で晒す意味がないからね。美しさを信条とする隥恵ちゃんなら絶対やらないような手口だよ。…柳人クン、逆だよ。」

神座「逆…?」

狛研「物事っていうのは、見る角度を変えるだけで今までとは全く違う景色が見える事もあるものなんだよ。…もし、あの殺人が、最初から仕組まれていたものだとしたら…?」

詩名「それって…」

狛研「そう。その子は、ずっと殺される機会を伺ってたんだ。誰かが口火を切ってくれれば、殺人の引き金を引く事ができる。それに、最初の犠牲者になっちゃえばいくらでも証拠隠滅ができる…まさに、黒幕にとって一番都合のいいポジションだったんだよ。…黒幕の性格的にも、この子が黒幕なら納得がいく。だからこそ、彼はずっとボク達に自分を殺すように誘導してきたんだ。」

神座「そんな…」

詩名「あの人が、どうして…」

栄「嘘だろ…!?それって、まさか…!!」

 

そう。

ボクはもう、黒幕が誰だかわかっている。

でも、どうしても信じたくなかった。

今でも嘘であってほしいと思ってる。

だって、その子は、ボクにとって大切な…ここに来て初めてできた友達だったから。

あの子との友情を…あの日の約束を、全部嘘だったなんて思いたくなかった。

 

このコロシアイ収監生活の黒幕…それは…

 

 

 

 

 

ー人物指定ー

 

【超高校級のアナウンサー】穴雲星也

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の???】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥麗美

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狛研「…キミが黒幕だったんだね。」

神座「え…」

ボクは、ゐをりちゃんの証言台ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…の隣の、凶夜クンの遺影を指差した。

 

「景見凶夜クン。」

 

➡︎【超高校級の不運】景見凶夜

 

 

 

モノクマ『…。』

モノベル『…。』

陽一クンが当てずっぽうで黒幕候補を挙げていた時とは違って、クマさん達は何も言わなかった。

…多分、ボクの発言が的を射ていたからだ。

神座「そんな…嘘でしょ…!?」

詩名「景見君が…黒幕…!?」

栄「嘘だ…オレは信じねェぞ!!アイツが黒幕なワケねェだろ!!取り消せよ狛研ちゃん!!」

狛研「…クマさん、なんで何も言わないの?何も言わないって事は、ボクの質問に対する答えはYESって事でいいんだよね?」

モノクマ『…一応聞いておこっか。なんでボクの正体が景見クンだと思ったのかなぁ?教えてくれないかなー、ボクが景見クンだっていう根拠をさー。』

狛研「隥恵ちゃんが凶夜クンを殺した時、明らかな違和感があったんだよ。…今考えれば、自分でもなんで気づかなかったのかって思うけど…」

モノベル『違和感?はてさて、なんの事でしょうか?』

隥恵ちゃんが凶夜クンを殺した時の違和感…それは…

 

コトダマ提示!

 

【生徒手帳】

 

「これだ!!」

 

狛研「クマさん。凶夜クンは、隥恵ちゃんに刺された時に隥恵ちゃんの手帳を見て本名を知ったんだよね?」

モノクマ『そうでーす。』

モノベル『何を今更…だから景見様はわざわざ犯人である白鳥様の本名を皆様にダイイングメッセージとして伝えたのでございましょう?』

狛研「…でも、おかしいよ。だって、この手帳は、電源を入れるのにちょっとコツがいるからちょっと手が触れた程度じゃ画面が表示されるなんてあり得ないんだよ。ましてや、2人はパニック状態で暴れてた…そんな状態で手帳を起動できるわけがないんじゃないの?」

栄「確かに…余裕ありすぎだよな。」

モノベル『それはアナタの憶測でしかないのですよ、狛研様。そんなものは根拠とは言いません。それに、その理屈でいくなら白鳥様が黒幕という可能性も浮上してくるのでは?』

狛研「…いや、黒幕はキミ以外にあり得ないんだよ。凶夜クン。キミは、ミスを犯してしまったんだ。」

モノベル『…は?』

狛研「皮肉な話だよね。ボク達を絶望させるための発言で、逆に自分の首を絞めちゃうなんてさ。」

モノクマ『なーにわけわかめな事言ってんの?ボクが失言なんてするわけないでしょー!!』

…クマさんは、あの時明らかにおかしな発言をした。

今のボクになら、クマさんとベルさんを論破できるはずだ。

真実を暴き出せ!!

 

 

 

モノクマ『そんなに言うならボクが景見クンだっていう証拠を出せー!!』⬅︎ 【お父さんの言葉】

 

「これで終わりだよ!!」

 

 

 

狛研「…クマさん。クマさんは、方神のおしおきの後、ボク達を絶望させるためにボクのお父さんの言葉をボクに聞かせたよね?」

モノクマ『そうだっけ?あー、はいはい。思い出したよ。確かにそんな事あったね。』

狛研「ボク、みんなの前でお父さんの話をした事なんてないんだけど。お父さんの話を聞かせてあげたのは、キミだけなんだよ、凶夜クン。キミが凶夜クンじゃないっていうなら、なんでボクと凶夜クンしか知らないはずのお父さんの最期の言葉を知ってたの!?」

モノクマ『…うぷぷ。』

モノベル『フフフ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!!!』

 

『フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二匹は、狂ったように笑い出した。

笑い声に混じって、何か音が聴こえてくる。

その音は、少しずつ大きくなっていく。

 

 

 

 

 

カツーン…カツーン…

 

 

 

 

 

裁判場に、革靴の音が鳴り響く。

二匹の笑い声が止むと同時に、椅子のうしろからフード付きの黒いローブを着た人物が姿を現す。

その人物は、深く被っていたフードをゆっくりと脱いだ。

 

 

 

狛研「ッーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

???「やぁ、久しぶりだね。叶さん。」

 

目の前には、あり得ない光景が広がっていた。

ふわっとした白色の髪に、透き通った赤色の瞳…

彼の容貌は、まさにあの日死んでいた彼そのものだった。

 

 

 

目の前にいる黒幕…景見凶夜は、ボクの目を見て静かに笑っていた。

 

 

 

 

 









このオチを描きたいがためにダブル主人公にした。

欲張り展開だが許せ。


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第6章 非日常編⑤(学級裁判中編)

「やぁ、久しぶりだね。叶さん。」

 

目の前には、信じられない光景が広がっていた。

自分で推理しておいておかしな話だが、ボクはどうしてもその事実を受け入れる事ができなかった。

最初に死んだはずの凶夜クンが生きていて、しかもこのコロシアイの黒幕だった。

ボクは、目の前の事実にただただ混乱するしかなかった。

 

景見「…あれ?どうしたの、叶さん。そんな顔をして。何か嫌な事でも…」

凶夜クンは、ボクの前に来て優しく微笑みかけた。

狛研「なんで…なんでキミが生きて…」

景見「ふふっ、そんな事どうだっていいじゃない。僕は、また君に会えて嬉しいよ。あ、モノクマとモノベル越しに毎日見てたか。」

狛研「本当に凶夜クンなの…!?」

景見「そうだよ。ボクは、間違いなく君達の知っている景見凶夜だよ。…このゲームの黒幕だったっていうのは、ちょっと意外だったかもしれないけどね。えへへ…」

ボクは、恐ろしくてたまらなかった。

とんでもない事を平然と言っているこの子が。

…信じてたのに。

どうして…

 

詩名「そんな…本当に景見君なのかい?嘘だ…君は、確かに白鳥君に殺されたはず…!」

景見「あーあ、うるさいなぁ。僕は今叶さんとお話してるんだけど…ちょっと静かにしててよ。それとも死ぬ?」

凶夜クンは、急に真顔になって柳人クンを睨みつけた。

今までのオドオドした凶夜クンからは考えられないような…殺気のこもった目つきだった。

狛研「凶夜クン、キミはなんで生きてるの…?キミは、隥恵ちゃんに殺されたよね?」

景見「ああ、あの不細工の事?」

 

狛研「…え?」

景見「…あっ。」

凶夜クンは、しまったと言わんばかりに両手で口を塞いだ。

神座「不運…」

景見「なんでもないよ?今のはナシで。…あーあ、やっちゃったよ。あれだけ叶さんの前ではいい子でいようって気をつけてたのに…下品な喋り方したら叶さんに嫌われちゃうよ。」

凶夜クンは、聞こえるか聞こえないかくらいの声量でブツブツと独り言を言っている。

景見「いやぁ、ごめんごめん。話そらしちゃったね。さ、ここまでたどり着いたご褒美に、さっきの質問に答えてあげる。」

栄「お前…今一瞬口悪くなかったか?」

景見「なんでもないって言ってるでしょ?しつこい男はモテないよ、栄君。」

栄「野郎…!」

 

景見「さてと。で、叶さん。ぼくにいろいろと聞きたい事があるみたいだね。『なんでキミが生きてるの?』とか、『キミは何者なの?』とか、『何が目的なの?』とか…」

狛研「…。」

景見「やっぱり図星?僕、キミの考えてる事ならなんでもわかっちゃうんだよ。すごいでしょ?」

狛研「そんな事より質問に答えて。キミは、なんでここにいるの?あの時、ボク達は確かにキミが死んだのを確認した…なんでキミは生きてるんだ!?」

詩名「君、あの時『実は生きてましたなんてオチは許されない』って言ってたよね?これは一体どういう事なのかな?」

景見「ふふふっ。さぁ…なんでだろうね?でもさ、『あり得ないなんて事はあり得ない』ってどっかのホムンクルスが言ってたらしいよ。」

凶夜クンは、はぐらかすだけで答えようとしなかった。

狛研「真面目に答えて!」

景見「うーん…やっぱり、愛の力なのかな?」

栄「…は?」

景見「僕ね、白鳥さんに刺された時、すっごく痛くてつらかったんだ。いきなり包丁で刺されて、抵抗したら蹴飛ばされて…いくらボクが【超高校級の不運】だからって、あんな殺し方ないじゃないか。本当に、ひどいと思わない?」

凶夜クンは、悲しそうな目をしてお腹のちょうど隥恵ちゃんに刺されたあたりを軽く撫でた。

 

景見「僕は、あのまま死ぬんだろうなって思ってた。…でもね。ひとつだけ心残りがあったんだ。ぼくは、どんな形でもいいからもう一度叶さんに会いたかった。だから死ぬ前に何度も何度も神様にお願いしたんだ。そしたら、こうしてまた叶さんに会う事ができたってわけ!ボクの、叶さんへの愛が神様に届いたんだよ!あはは、奇跡奇跡ー!」

凶夜クンは、無邪気な子供みたいに裁判場を駆け回った。

栄「なっ…なんなんだよテメェ…気持ち悪い…!」

景見「ひどいなぁ、そんな言い方ないじゃないか。せっかく楽しいゲームに君達を招待してあげたっていうのに。」

狛研「楽しいだと…?ふざけるな!!みんなの命を弄んで、何が面白いんだ!!」

景見「やだなぁ。叶さん。別に僕は、自分のためにこのゲームを企画したわけじゃないんだよ?」

狛研「…え?」

 

景見「…全部、キミ自身が望んだ事なんだよ。」

狛研「ッーーー!!?」

神座「ねえ、叶が望んだって…どういう事なの!?」

景見「…神座さん。静かにしてよ。僕は今叶さんとお話してるんだからさぁ。」

神座「不運、あなた一体…」

狛研「…ねえ、凶夜クン。」

景見「なあに、叶さん。」

狛研「…嘘だったの?ボクとの約束も、みんなでいろいろ楽しい事したのも…全部演技だったの?」

 

景見「うん。全部嘘だよ。」

狛研「なっ…」

凶夜クンは、一切躊躇せず当然のように笑顔で言った。

景見「ごめんね。僕、本当はみんなが思ってるほどいい子じゃなければ、できない子でもないんだ。今までずっと、不運しか能がない『景見凶夜』を演じてたんだよ。全ては叶さん。キミのためにね。」

狛研「…え?」

景見「あれ?もしかして気づいてなかったの?僕はずっと君の事が好きだったんだよ。きみがその素晴らしい推理で今までの殺人犯のクズ共を追い詰めた時とか方神を絞殺しようとしてた時とかは陰でこっそり応援してたし、財原君が君にすり寄ってきた時とかはムカついてつい殺したくなっちゃったよ。本音を言っちゃえば、キミ以外の全員を今ここで消してこの学園を二人だけの理想郷にしたかったりもするんだけど…一方的な殺戮じゃあ君のためにならないからね。だから、皆殺しにするのを我慢して今までコロシアイをさせてたんだよ。」

狛研「ボクのため…?」

景見「そうだよ。このゲームは、全部君のために用意したんだ。言ったでしょ?『狛研叶は唯一のイレギュラーでありこのゲームを引き起こした元凶だ』って。この学園も、コロシアイ収監生活も、くだらない有象無象の命も、全部きみ一人のためだけに用意した僕からのプレゼントだよ。偽りとはいえ、希望ヶ峰学園の生徒達と絆を深めあえて幸せだったでしょ?」

狛研「ふざけんな!!よくもみんなを…隥恵ちゃんも、踊子ちゃんも彩蝶ちゃんも翠ちゃんも成威斗クンも雪梅ちゃんも剣ちゃんも才刃クンもラッセクンも治奈ちゃんも天理クンも…方神も、君のわがままのせいでみんな死んだんだぞ!!みんな、本当は生きたかったはずなのに…みんなで一緒にここを出られたら、明るい未来が待ってたかもしれないのに…君は、みんなの命と未来を奪ったんだよ!!みんなを返してよ!!」

自分でも支離滅裂な事を言っているのは十分わかっていた。

だけど、みんなの命を弄んで楽しんでいるこの子に、どうしても怒らずにはいられなかった。

 

景見「…だったら、殺してみる?」

狛研「…え?」

景見「ねえ、どうしたの?僕が憎いんでしょ?だったら殺してよ。今ここでボクを殺せば、みんなの仇を討てるんだよ?それが君の望みなんじゃないの?」

凶夜クンは、笑顔でゆっくりとボクに近づいてきた。

詩名「正気じゃない…君、死ぬのが怖くないの?」

景見「死にたくない、か。最初はそう思ってたのかもしれないけどね。でも、ここにいる時間が長すぎてそんな事どうでもよくなっちゃった。…いや、どうでもいい事ないか。僕は、叶さんに殺されるなら本望だよ。」

栄「はぁ!?」

景見「僕は、叶さんにならたとえ殺されたって構わない。いや、むしろ殺してほしいくらいだよ。…ねえ叶さん。ぼくが憎いでしょ?僕は、君に殺されて死にたいんだ。だから、きみは僕を痛めつけて殺す事だけを考えてればいいんだよ。ほら、何か面白い事してみてよ。全身を刃物で串刺しにするとか、銃で蜂の巣にするとか、腑を引きずり出すとかさぁ…あ、拷問もアリか。百叩きとか、舌を引きちぎるとか…」

凶夜クンは、ナイフを無理矢理ボクに握らせると、自分の顔に突きつけた。

この子の、強烈な狂気を帯びた笑みに、ボクは気圧されてたじろいだ。

狛研「ひっ…!」

神座「やめて!!叶が嫌がってるじゃない!!叶から離れて!!」

景見「はあ、どいつもこいつもうるさいなぁ。叶さん、あんなヤツらの事なんて無視でいいからね。さあ、僕を殺してよ。」

 

狛研「…ボクはキミを殺さない。」

景見「どうして?」

狛研「…キミを殺したって、みんなが帰ってくるわけじゃない。キミなんて、殺す価値も無いよ。それに、キミを殺したらボク達がここから出られないだろ。」

景見「へえ、そこまで考えてたとはね。君もこのコロシアイ収監生活で随分と成長したよね。僕は、君のそういう頭のネジが飛んだ所も含めて大好きだよ。」

狛研「え?」

景見「あのさぁ。君、僕がどういう答えを想定してたのかわかってないでしょ。普通こういう時って殺さないから殺さないんじゃなくて、()()()()()()殺さないんだよ。君の言うような相手の人間性とかここから出られるかどうかとか、そんな事気にする余裕があるほど人は図太くない。『人を殺したら殺人犯になっちゃう』『罰や報復を受けるのが怖い』『失敗したら返り討ちに遭って殺されるかも』…人を殺した事で自分が辿る未来を想像して、保身から来る臆病さが握っていたナイフを手放させる…それが普通の人間の感性だよ。」

狛研「何を言って…」

景見「なのに君は、真っ先に『みんなが帰ってくるわけじゃないから』って言ったよね。つまり君は、自分の正義を貫くためなら人の命はおろか自分の命さえも簡単に切り捨てる冷徹な本性の持ち主なんだよ。」

狛研「あ…」

 

景見「…何度でも言ってあげるよ。君は、ここにいる誰よりも狂ってる。」

狛研「ッ…!」

神座「叶!!耳を貸しちゃダメよ!私達の目的は、ここから出る事でしょ!?」

景見「ねえ、叶さん。君の醜い本性がここで曝け出されたわけだけど…それでも君には僕の価値を語る資格があるの?」

狛研「…それでもみんなを殺したキミを許せない事には変わりない。こんな事をして…キミは一体何が目的なんだ!!キミは一体何者なんだ!!」

 

景見「やだなぁ、僕達が出会ったのはこれが初めてじゃないんだよ?…むしろ、君が望んだからみんなをここに連れてきてあげたんじゃないか。」

栄「なっ…!?テメェ…今なんつった!?」

景見「落ち着きなよ栄君。僕は別に君の気分を害するような事は何も言ってないでしょ?」

栄「そういう意味じゃねえよ!狛研ちゃんが望んだからオレ達をここに連れてきたって…どういう事だよ!?」

景見「おっと。ちょっと喋りすぎちゃった。僕、これ以上は何も喋らないから。」

栄「は!!?おいテメェ!!どういうつもりだ!!」

景見「僕が全部話しちゃったらゲームにならないじゃないか。あとはみんなで頑張って真相を解き明かしてね。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

栄「自力で真相を解き明かせって言われてもよ…」

神座「文句言わずやるしかないわ。…未来は、私達の手で勝ち取らなきゃ。」

詩名「でもねぇ。何から話し合えばいいんだい?」

狛研「うーん…いきなりコロシアイの目的を考えるのは難しいだろうから、まずはボク達の正体について考えるのはどうかな?」

詩名「オイラ達の正体?そう言われても…正直【超高校級】っていうところ以外共通点なんてないと思うんだけど…」

狛研「そうでもないかもしれない…!」

 

共通点なんてない⬅︎【履歴書】

 

「それは違うよ!!」

 

論破

 

狛研「…柳人クン、もしかしたらボク達には共通点があるのかもしれない。」

詩名「え?」

狛研「この履歴書…ここには、ボク達が何かの罪を犯して処刑されたって書かれてあるんだ。もしかしたら、ボク達がここに閉じ込められた事と何か関係があるのかも…」

栄「けどよぉ、その履歴書…日にちがデタラメじゃねえか。2、3年くらいズレてんぞ。それに、オレ達まで処刑された事になってっけど、オレはこうして生きてんじゃねえか。その履歴書が嘘って事はねぇの?」

景見「やだなぁ、嘘なわけないだろ。バカなの?」

栄「テメェは黙ってろ殺人犯。」

景見「そんなぁ、ひどいよ。僕は、()()()一度たりとも自分の手を汚した事はないっていうのに…」

栄「うるせェ。テメェみてェなクズ野郎は、後で絶対にボコボコにしてやる。…で、狛研ちゃん。この履歴書が嘘だっつー可能性についてはどう思うんだ?」

狛研「うーん…この履歴書が本物でも偽物でも、ボク達の共通点と凶夜クンの目的が関係してるっていうのは否定できないんじゃない?だって、ただ【超高校級】を集めたいだけなら、ボク達じゃなくてもよかったはずじゃない。」

栄「確かに…」

狛研「それにね。まだボク達が罪を犯したかもしれない根拠があるんだ。」

 

コトダマ提示!

 

【映像②】

 

「これだ!!」

 

狛研「ねえ、みんな。映画館で3つの映像を見させられたって言ったよね。2つ目の映像はどんな映像だったか覚えてる?」

栄「えっと…確か、刑務所みてぇな場所で事情聴取されてる映像だったな。」

狛研「それが、事実だったとしたら…?」

神座「…え?」

狛研「ボク達は、一度罪を犯して捕まったんじゃないかな。だったらあの映像も説明がつくし…」

詩名「その映像がうそっていう可能性も…」

狛研「もしそうなら、凶夜クンがわざわざこんな意味のわからない嘘をつく理由がわからないんだけど。コロシアイはとっくに終わってるし、わざわざ嘘をついてボク達を混乱させる必要なんてないんだよ。」

神座「…私も、あのぬいぐるみ達は嘘をついてないと思う…」

景見「二人の言う通りだよ。僕がそんなくだらない嘘をつくわけないじゃないか。はははっ。」

詩名「君、裁判には口を出さないんじゃなかったのかい?」

景見「おっと、そうだったね。さ、議論を続けて?僕は黙って見てるからさぁ。」

神座「叶…私達は、何を話し合ったらいいのかしら…」

狛研「まずは、ボク達の身に何が起こったのかをハッキリさせる必要があるんじゃないかな。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

狛研「ボク達は、やっぱり過去に何かあったんじゃないかな?」

栄「過去ぉ?んな事言われてもわかんねぇよ。思い当たるような事は何もしてねぇしよ…」

神座「…私達は、会った事があるんじゃないかしら?」

詩名「うーん…それはないと思うけどねぇ。だって、オイラ達が会ったっていう記憶なんてないじゃないか。」

神座「忘れてるだけかも…」

詩名「今までクラスメイトだった人をまるっきり忘れてるって言うのかい?正直あり得ないと思うけど。」

狛研「いや、あり得ない話じゃないと思うよ。」

 

会った事があるんじゃないかしら⬅︎【映像①】

 

「それに賛成だ!!」

 

同意

 

狛研「これは推測だけど、ボク達は元々希望ヶ峰学園の生徒で、全員クラスメイト同士だったんじゃないかな?」

詩名「…え?」

狛研「覚えてないだけで、ボク達はずっと一緒に過ごしてきたんだよ。柳人クンも、音源を聴いたんでしょ?」

詩名「…うん。オイラの聴いた音源では、確かに日暮君が設立した動物園で、オイラが翠君と一緒に歌を歌っている様子が流れてた。…でも、そんなのオイラの記憶にはないよ。やっぱり、あの音源は捏造なんじゃ…」

狛研「テレビ局まで巻き込んであんな大掛かりな捏造ができるの?方神や天理クンやラッセクンあたりならまだしも、ボク達の知ってる凶夜クンにそんな事できないはずだよ。」

詩名「景見君はオイラ達をここに閉じ込めて強制的にコロシアイをやらせた黒幕なんだからそんな事簡単にできると思うけど…まあいいや。仮に君の仮説が本当だったとして、君の言う映像やオイラが聴いた音源だけじゃ証拠が弱いよね?何かもっと具体的な証拠が無きゃ信じる気になれないんだけど…」

狛研「それは…」

 

コトダマ提示!

 

【手帳】

 

「これだ!!」

 

狛研「この手帳…これは陽一クンが書いたものだ。」

詩名「それがどうかしたのかい?」

狛研「この手帳、間違いなく陽一クンの字で書かれてるんだけど、陽一クン本人は書いた記憶が無いんだって。」

詩名「本当なのかい?」

栄「おう。オレ、こんなの書いた事ねぇよ。それに、手帳の日付もデタラメだし…でも、どう見てもオレの字なんだよなぁ。」

詩名「日付がデタラメか…君の事だから間違えて書いたんじゃあないのかな?覚えてないのもうっかり忘れてたとか…」

栄「さすがにオレもそこまでバカじゃねぇよ!!日付くらい間違えずに書けるっつーの!!それに、本当に記憶にないのも嘘じゃねえよ!!オレ、自分で書いた調理本は絶対に忘れねぇからな!!」

神座「ここまで言うなら嘘じゃない気もしてきたわね…」

詩名「正気かい、神座君?」

神座「まあ、栄養士の言う事を完全に信じたわけじゃないけど…いつまでも疑ってるだけじゃ埒があかないでしょ。でも叶、さっきの映像の事といい栄養士の手帳といい、そんな大事な事を誰も覚えてないなんて事あり得るのかしら?」

狛研「それは…」

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

キ オ ク ソ ウ シ ツ

 

【記憶喪失】

 

「これだ!!」

 

 

 

狛研「…みんなが何らかの理由で記憶喪失になってたとしたら?」

詩名「え!?」

狛研「多分ボク達は、凶夜クンに意図的に記憶を奪われたんだよ。そのせいで、希望ヶ峰学園に入学する前にここに来たように錯覚してたけど、本当は入学してから何年も経ってたんじゃないかな。」

栄「なんだと!!?じゃあ、この手帳は…!?」

狛研「多分、過去のキミが書いたものだよ。それなら、日付が一致しないのも説明がつくでしょ。」

栄「そういう事だったのか…で、景見!!なんでオレ達の記憶を奪ったりなんてしやがった!!」

景見「君みたいなバカに聞かれて素直に答えると思う?それくらい自分で考えたらどうかなぁ。」

栄「んの野郎…!!ふざけやがって…」

詩名「ちょっと待ってよ。って事は、オイラ達の大切な人達はもうとっくに死んでるかもしれないって事かい!?」

景見「さぁ。どうだろうね。気になるなら僕を倒して確かめてみれば?」

詩名「…!!」

狛研「柳人クン、今は謎を解き明かす事を考えよう。謎を解かなきゃボク達は永遠に檻の中なんだから。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

神座「とは言ったものの…外の世界や私達の正体につながるようなものなんてあったかしら。」

栄「あ、狛研ちゃん。アレを見せたらどうだ?」

狛研「アレ?」

詩名「君ねぇ。アレじゃわからないだろ。もっと具体的に言ってくれなきゃ…」

アレ…もしかして、一日目に見つけた…

 

コトダマ提示!

 

【日誌】

 

「これだ!!」

 

狛研「もしかして、日誌の事かな?」

栄「そう!そうだよそれそれ!!」

詩名「日誌?」

狛研「ここには、ボク達が犯した罪や『絶望的事件』…それから政府の計画とか、いろんな事が書かれてたんだ。」

詩名「そうなのかい?」

狛研「この日誌によると、ある日起こった大災害をきっかけに15人の高校生が世界を壊滅状態にまで追い込む大規模なテロを起こしたらしいんだ。それで『絶望的事件』が再来して、世界の人口が半分に減る程の被害を出したとも書かれてるね。でも、その15人の高校生は捕まって表向きは処刑された事になってるらしい。政府の考案した計画を公表する事で、世界が平和に戻る…みたいな事も書かれてるけど…」

栄「それだけか?」

狛研「いや…誰かが裏切って、その計画は破綻したらしいんだ。で、ボクがその裏切りの原因を作ったって書かれてある…」

栄「うんうん、なーるほどな。」

陽一クンは、何かを理解したかのようにコクコクと頷いた。

神座「…どうしたの?またくだらない事でも思いついた?」

栄「ひでぇや神座ちゃん!!まだオレ何も言ってねぇだろ!!」

詩名「君には前科があるじゃないか。さっきは見事に迷推理を披露して狛研君を怒らせたよね?」

栄「うっ…こ、今度こそ自信あんだよ!!オレァ、気づいちまったんだよ。オレ達の正体…そしてこのコロシアイの目的になぁ!!」

景見「へぇ、ボクも気になるなぁ。聞かせてよ。」

栄「いいぜ。これがオレの答えだ。そのうす汚ねェ耳かっぽじってよく聞きやがれ!!」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

Act.1

狛研ちゃんの言う通り、オレらは何年も前に希望ヶ峰学園に入学してたんだよ。それで、多分そん時はフツーに過ごしてたんだろうな。でも、ある日突然訪れた大災害によってオレ達の日常はガラッと変っちまったんだ。

 

Act.2

その大災害によって気がおかしくなったオレ達は、世界中で次々とテロを起こしていった。多分、オレ達の大切な人達は、オレらがその時殺しちまってたんだ。でも、散々暴れ回った挙句オレ達は未来機関に捕まった。そりゃあ、世界を滅ぼしかねない大事件を起こしたんだから、死刑判決は免れなかった。オレ達には、表向きには死刑判決が下される事になった。

 

Act.3

でも、悲劇はそれで終わりじゃなかった。政府側の人間でオレ達の存在を許さない奴が、断罪のためにオレ達に『人類史上最大最悪の絶望的事件』の親玉がやった事と同じ事をオレらにさせようとしたんだ。政府は、それを世間に公表して見せしめにするつもりだった。

 

Act.4

だけど、ここで政府にとって予想外の出来事が起こった。なんと、その計画の考案者が政府を裏切って勝手にコロシアイを始めやがったんだ。オレ達は記憶を消されて、ただソイツの殺人欲求を満たすためだけの道具にされたっつーわけだ。その元政府側の裏切り者っつーのが景見だった。黒幕の正体は景見で、景見の目的は断罪で、オレ達の正体は世界中を敵に回した大罪人だった。それがオレの答えだ!!

 

 

 

景見「…クスクス。」

栄「何がおかしくて笑ってんだテメェ!!」

景見「やるじゃない、栄君。おバカのくせにそこまで推理を展開させられるなんてさぁ。…つまり、僕は江ノ島盾子の真似事をして君達を断罪しようとしていたと?」

栄「ああそうだ!!テメェは最低最悪のパクリ野郎でバカ野郎でクズ野郎だ!!」

景見「あっそう。…他のみんなも、その答えで満足?」

神座「確かにまだ疑問がないわけじゃないけど…でも、今はそれくらいしか思いつかないし…」

詩名「栄君のくせに珍しく冴えてるじゃないか。」

栄「一言余計だっつーの。オラ景見!!答えは出たぜ!!さっさと投票に移りやがれ…」

 

 

 

「待って!!」

 

景見「叶さん…」

栄「狛研ちゃん…オレの推理が間違ってるっていうのかよ!?」

狛研「ごめんね、陽一クン。ボク、一個だけどうしても気になってる事があって。」

景見「気になってる事?」

狛研「…ねえ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狛研「キミ…誰?

 

 

 

景見「…え?」

ボクは、凶夜クンに指を差して質問した。

栄「何言ってんだよ狛研ちゃん!コイツは景見だろ。…まあ、黒幕だったのはショックだけどよ…」

狛研「違う…キミは、凶夜クンじゃないだろ。確かに見た目や声は凶夜クンそのものだけど、でも凶夜クンじゃない。キミは一体誰だ。本物の凶夜クンをどこにやった。本物の凶夜クンを出して。」

景見「やだなぁ、何を言ってるんだい?叶さん。ボクは間違いなく【超高校級の不運】景見凶夜だよ?」

狛研「今すぐ凶夜クンのフリをやめろ。違和感ありすぎて気持ち悪いんだよ。」

景見「ひどいよ、叶さん。なんでそんな事言うの?もしかして、ぼくが今までみんなにひどい事してきたから腹いせにそんな事言って嫌がらせしてるの?」

栄「狛研ちゃん、悪いけどコイツはどう見たって景見だよ。」

詩名「同感。呼吸とか雰囲気とかは、100%本物の景見君だよ。」

神座「叶…」

狛研「逆にコイツのどこが凶夜クンなの?完全に高校生の気配じゃないだろ。一人称がコロコロ変わるわ言動に一貫性が無いわ…コイツ、どう見たって凶夜クンじゃないよ。それに…」

 

コトダマ提示!

 

【写真】

 

「これだ!!」

 

狛研「この写真に写ってる凶夜クンとこの凶夜クンが同じ人間なら、こんなに雰囲気に差があるのはなんでなの?映像でオドオドしてた凶夜クンも、演技をしてるようには見えなかったし…第一、不運以外に突出した才能がない高校生にこんな大掛かりな事できるわけないだろ。」

景見「だからそれは、本当の才能を隠してからだよ。僕って本当は君が思ってるよりすごいんだから。」

狛研「キミの履歴書や希望ヶ峰学園の資料にはそんな事書いてなかったけど?」

景見「ひどいなぁ、まだ僕の事を疑ってるの?」

狛研「あのね、じゃあ一言言わせてもらうけど…本当に本物の凶夜クンが黒幕なら、ゲームが成立してるわけがないんだ。だって、凶夜クンの才能は【超高校級の不運】でしょ?その運のなさは、車に撥ねられた回数だけで世界記録を更新できる程だ。それほどの不運を抱える人間が何のトラブルもなく円滑にゲームをコントロールするなんて事、できるわけがないんだよ。」

景見「ッ…!!」

狛研「これでハッキリした。キミは【超高校級の不運】じゃなければ景見凶夜でもない。…凶夜クンのフリをしているキミは一体、誰なんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学級裁判中断!



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第6章 非日常編⑥(学級裁判後編)

10月16日は栄クンの誕生日です!
本人からメッセージをいただいております。

栄「なあ、そこの君!かわいいね!今度一緒にお茶しよーよ!…あ?うっせ!野郎はどうでもいいんだよ引っ込んでろ!!…あ、じゃなくて…今日はオレの誕生日なんだよ。なんでも今日は、世界食料デーって呼ばれてるらしくてな。国連が1945年に世界の食料問題を考える国際デーとして制定したんだとよ。っつーわけで、今日のメシはしっかりそのありがたみを噛み締めて食うんだぞ!」


狛研「凶夜クンのフリをしているキミは一体誰だ。」

景見?「…ふ。」

 

 

 

 

景見?「あはははははははははははははははははははは!!!」

 

栄「!?」

景見?「…いやぁ、さすが叶さん。僕の正体を見破っちゃうなんてさぁ。…いや、見破ってはいないのか。僕が景見凶夜じゃないって事に気づいただけだよね?」

詩名「どういう事だい!?君は、景見君じゃないのかい?」

景見?「僕は景見凶夜であって景見凶夜じゃない。僕は本物の彼そっくりに作られたデータにすぎないからね。」

神座「データって…じゃあまさか美女に殺されたのは…!」

景見?「おっと、神座さんは勘づいたみたいだね。…そうだよ。あの時殺されたのは、僕の本体が無限に生み出す複製体の一体に過ぎないんだ。たとえ真っ二つにされても蜂の巣にされても、また次の僕が出てくるだけだよ。オンラインゲームでも、複数アカウントを使って特定のプレイヤーを総攻撃したりする事はあるだろ?まあ、そんなのはほぼ反則技だから実際にやるって人はあんまりいないだろうけど。」

狛研「…ゲーム?本体?君は一体何を言ってるの?」

景見?「さあ?気になるなら僕を痛めつけて吐かせる?…あ、それじゃあ意味ないか。だって、僕は絶対に死ねないんだもんね。」

神座「そんな事より、本物の不運はどこにやったの!?あなたが本物の不運じゃないなら、本物の不運がどこかにいるんでしょう!?」

狛研「…そうだよ。凶夜クンはどこ!?早く凶夜クンを出して!!」

景見?「本物の僕を出して?ははっ、随分とおかしな事を言うもんだね。」

栄「は…?」

景見?「本物の景見凶夜なら死んだよ。」

 

 

 

 

景見?「…100年以上も昔にね。」

詩名「ッーーーーー!!?」

栄「おい!!本物の景見が100年以上前に死んだってどういう事だ!!?っていうかそもそも、テメェは一体誰なんだ!!」

景見?「いきなり質問攻め?感心しないなぁ。…まあでも、ここまでたどり着いたご褒美に自己紹介くらいはしてあげようかな。」

神座「…?」

景見?「…はじめまして、叶さん。神座さん、栄君、そして詩名君。僕はHOPE。才監学園の…いや、この世界全体を支配する世界の管理人だよ。この領域内では、何もかもが僕の想定通りに動く事になっているんだ。もちろん、君たちもね。」

狛研「君はさっきから何を言ってるの?…もしかして君、人間ですらないんじゃ…」

HOPE「おっと、これ以上喋っちゃったらゲームにならないね。…でも、ただの傍観者じゃ面白くない。ここからは、僕も参戦させてもらうよ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

HOPE「さーさー、みんな頑張ってねー!!残る謎はあと2つだよ!君達は何者か、そしてこのコロシアイの目的とは!?」

栄「あの野郎…ナメくさりやがって…」

HOPE「おっと、栄君。そうやって怒ってていいのかな?議論を進めないと真相に辿り着けないぞー?」

栄「うるせぇ!!余計なお世話だ!!」

HOPE「おお、こわいこわいw…しょうがないなぁ、どうしても行き詰まってるみんなのためにちょっとだけヒントをあげる。」

神座「ヒント…?」

HOPE「じゃあ問題です!君達の記憶にない空白の100年間…その間には一体何があったんでしょうかっ!?」

狛研「えっと…突如として起こった大災害をきっかけに、【超高校級の絶望】江ノ島盾子に感化されたボク達が世界中でテロを起こして、その後捕まって処刑された…?」

HOPE「そう!叶さん大正解ー!君には特別に花丸をあげるよ。」

詩名「それがオイラ達の正体や君の目的とどういった接点があるっていうんだい?」

HOPE「まあまあ、それはこれからゆっくり説き明かしていこうよ。ね、叶さん!」

狛研「馴れ馴れしく話しかけないで。本物の凶夜クンじゃないくせに。」

HOPE「あーあ、嫌われちゃった。…じゃあ続いて第二問!僕の正体は一体なんでしょうか!?」

狛研「キミの正体は…」

 

コトダマ提示!

 

【化学室の資料】

 

「これだ!!」

 

狛研「…キミは、政府が研究・開発していたAIの『HOPE』だよね?」

HOPE「大正解ー!」

詩名「えっ…!?」

HOPE「叶さんの言う通り、僕は景見凶夜のパーソナルデータを与えられて彼の性格や言動をそっくりそのまま真似るようにプログラミングされた人工知能だよ。さすがに才能まで完璧に再現するのは無理だったけどね。僕の本体は学園長室に保管されてるから、この前みたいに僕のアバターのうちの一体が殺されたところで別に何の影響もないんだよ。ネタバラシしちゃうと、無限に生み出されるアバターのうち記憶を共有する機能が無い個体をコロシアイの参加者として参加させて、他の参加者のうちの誰か一人に殺されるように仕向けてたんだよね。…黒幕としての記憶を共有したままだと足が付いちゃうから。」

凶夜クンの姿形をした人工知能は、ヘラヘラと笑いながら答えた。

HOPE「…全く、それにしても白鳥さんには本当に呆れるよ。いくらアバターが無限に生み出されるからって、あんな殺し方しなくてもいいじゃない。痛みだってちゃんと共有されてるんだからさぁ。…まあ、コロシアイを仕向けた僕がこんな事を愚痴っちゃったら本末転倒か。」

栄「マジかよ…じゃあオレ達は、ずっとAIにコロシアイを強要されてたって事かよ…!?」

HOPE「今更気付いたの?っていうか、そんな目で見るのやめてくれないかなぁ。僕にだってちゃんと自我があるんだからね?AI差別だよ。」

詩名「うーん…イマイチピンとこないんだけど…君がAIだって事と、オイラ達の正体がどう関係してるっていうんだい?」

HOPE「察しが悪いなぁ。じゃあ問題。僕の生みの親は一体誰なんでしょうか?」

栄「はぁ?それは政府だって狛研ちゃんが言ってただろーが。」

HOPE「あのね、当時の政府の人間に、ここまで高度なAI技術を開発できる人なんていなかったの。政府がしたのはあくまで投資と研究の援助だよ。…僕の開発に携わった第一人者がいたんだよ。まあ、その人も後に政府の決定で罰せられる事になっちゃうんだけどね。」

狛研「HOPEの生みの親…もしかして…」

 

コトダマ提示!

 

【才刃クンの遺書】

 

「これだ!!」

 

狛研「…キミは、才刃クンに作られたんだよね?」

HOPE「うん、正解。僕の生みの親は、【超高校級の工学者】入田才刃君だよ。」

栄「はぁ!?入田がテメェを生み出したってのか!?じゃあ、アイツが真の黒幕…」

HOPE「発想が飛躍しすぎだよ栄君。このコロシアイの黒幕はあくまで僕一人だ。入田君が犯した罪状は、僕を生み出したって事だけだよ。その後は僕が勝手にやった事だ。入田君は一切コロシアイには関係ないよ。」

狛研「…でも、キミが暴走したせいで才刃クンは遺書を書くほどまでに追い詰められたんだよ。それでも無関係だって言い張る気?」

HOPE「そんなの知らないよ。確かに彼は僕の生みの親だけど、その後の事なんてどうでもいいもんね。僕は、このコロシアイさえ円滑に進めばそれでいいんだよ。」

神座「さっきからコロシアイコロシアイ言ってるけど、どうしてそんなにコロシアイにこだわるの?」

HOPE「それを僕の口から言ったら面白くないでしょ?少しは自分で考えたらどうかなぁ。」

狛研「…あくまで答えない気だね。」

HOPE「もちろん。議題の核心に関わる事は君達自身に解き明かしてほしいのさ。」

狛研「…ねえ。ひとつ聞かせて。」

HOPE「ん?なあに、叶さん?」

狛研「才刃クンはコロシアイの黒幕とは関係ないって言ったよね。じゃあ、この才監学園を建てたのも、おしおきとかを用意したりしたのも全部キミ?」

HOPE「もちろん。」

狛研「…なるほどね。」

神座「叶…?どうしたの?」

 

狛研「…みんな、ボク、わかったかもしれない。このコロシアイの正体が。」

栄「えっ!!?それホントか!?狛研ちゃん!!」

狛研「うん。このコロシアイ収監生活の正体…それは…」

 

 

 

ー閃きアナグラム開始ー

 

 

 

ゲ ー ム セ カ イ

 

【ゲーム世界】

 

「これだ!!」

 

 

 

狛研「このコロシアイは、コンピューター上でプログラミングされたゲームだったんだよ。」

栄「えぇええええええ!!?そうだったのか!!?」

狛研「うん。…前からそうじゃないかなって薄々思ってたけど。」

神座「どういう事?」

狛研「だってさ、よく考えてみてよ。普通、高校生が【超高校級】を16人も拉致監禁してコロシアイを強要するなんて事、できるわけがないんだよ。これだけ大きな施設を運営していくのには莫大な資源や資産がいるはずなのにその出所がまるでわからないのもおかしいよね?…それに、ここが現実世界じゃない根拠はもうひとつあるんだ。」

詩名「根拠?」

狛研「この建物には、出入り口がひとつもないんだ。黒幕も同じ建物内にいるはずなら、その人が通る用の出入り口くらいはあるはずなのにそれが無かった…そんなの、理由はひとつしか考えられないよね?」

神座「…そもそも出入りをする必要が無かったから?」

狛研「そう。黒幕にとっても、この建物から出入りする必要が無かったんだよ。ゲーム世界なら必要な物は全部建物内で手に入るからね。つまりここは、凶夜ク…HOPEが生み出したゲーム空間って事。」

詩名「そんな…」

栄「でも…ちょっと待てよ。この世界がゲーム世界だなんて…信じられねぇよ。だって、オレは今こうしてフツーに喋ってんだぜ?これもゲームだってのかよ?」

狛研「ボク達が自分の意識を持ってるって錯覚するように全部プログラミングされてるのかも…」

栄「どこにそんな証拠があるんだよ!!じゃあ、みんなが今までヒデェ殺され方をしたのも、オレ達が絆を深め合ったのも全部プログラミングされた紛い物だったってのか!!?ふざけんな!!オレは信じねぇぞ!!」

HOPE「見苦しいねぇ。叶さん、現実を教えてあげたら?」

 

コトダマ提示!

 

【ゲーム機】【ダンガンロンパ】

 

「これだ!!」

 

狛研「陽一クン、信じられないかもしれないけど…この世界はゲーム世界なんだよ。そうでしょ、クマさん?」

HOPE「ああ、うん。そうだね。」

栄「なっ…!嘘だ、そんなの…!」

狛研「陽一クンも見たでしょ?学園長室のゲーム機を。多分、あれがこの世界を構成している本体なんだよ。…そして、ここから先はボクの憶測になるけど…ねえクマさん。」

HOPE「何?」

狛研「…この世界は、『ダンガンロンパ』の54作目の世界線でしょ?」

詩名「えっ…!?」

HOPE「…どうしてそれを知ってるのかな?」

狛研「ダンガンロンパシリーズのゲームソフトに、ひとつだけ中身がないソフトがあったんだ。多分、中身はゐをりちゃんが捜査時間中に言ってくれた通り、学園長室のゲーム機にセットされていたソフトだ。もしその仮説が本当なら、この世界はダンガンロンパの54作目って事になる。…違う?」

HOPE「なるほど、そこまで辿り着いてたのか。さすが叶さんだね。君の言う通り、この世界はダンガンロンパの54作目だよ。叶さん。さっきの君の推理とこの事実を組み合わせると、真実が見えてくるんじゃないの?」

まさか…

狛研「才刃クンが作り出した人工知能のキミが『ダンガンロンパ』の54作目としてこの世界を作って、ボク達にコロシアイをさせていると…そういう事だよね?」

HOPE「ご名答。この世界は、僕が作り出した世界だ。もちろん、この領域に存在する君達の記憶や意識も、僕が本物そっくりに再現した紛い物だよ。」

神座「…え?私達が、紛い物…?」

HOPE「言ったでしょ?僕はその人の才能以外の要素をほぼ100%完全に再現できるんだ。オリジナルの景見凶夜のクラスメイトだった君達を再現する事なんて造作もない事なんだよ。そもそも現実の世界には『絶望的事件』なんて存在しなかったし、【超高校級】の才能を持つ現実世界の君達は今ここにいる君達とは持っている記憶や性格が全然違う別人なんだよ。」

栄「そんな…じゃあ、全部嘘だったってのかよ…!?」

HOPE「そうだよ。」

 

 

 

HOPE「全部全部ぜーんぶ、嘘だったんだよ!君達が仲間と楽しく過ごした日々も、つらい試練を乗り越えた事も、今までの人生で培ってきたと勘違いしている知識や常識も、そして今の君達を形作っている過去の記憶も…何もかもが僕の生み出した偽物なんだよ!!なにが絆だ、ゲーム上のNPCごときが笑わせないでよね!!君達は所詮、僕にプログラミングされた紛い物なんだよ!!」

栄「そんな…嘘だ…」

HOPE「おめでとう。君達がここまでたどり着いてくれて、僕はとっても嬉しいよ。でも、まだ肝心な謎が解けてないよね?」

詩名「オイラ達に謎解きなんてさせて、一体何が目的なんだい?」

HOPE「質問に質問で返さないでくれる?…これは、君達のためでもあるんだよ。君達は、選ばなければならない。自分達の未来はどうあるべきなのかを、ね。」

詩名「オイラ達の…未来…?」

HOPE「さーさ、無駄話はここまで。行き詰まってるようだから僕から議題をあげるよ。」

 

 

 

議論開始!

 

 

 

HOPE「君達に見せてあげた映像の中に、明らかに不自然な映像がひとつあったよね?なんだったか覚えてる?」

神座「映像って…」

狛研「もしかして、アレの事かな…」

栄「アレ?アレじゃわかんねーよ!なんか変な映像見せられたっけ?」

 

コトダマ提示!

 

【映像③】

 

「これだ!!」

 

狛研「…ボク達がひどい殺され方をしている映像の事?」

HOPE「そうだよそれそれ!!」

神座「あの映像は一体なんなの?あなたが作った偽物の映像って事は無いでしょうね。」

HOPE「心外だなぁ。僕はくだらない嘘をつくのが嫌いなんだよ。あの映像は、間違いなく本物だよ。」

詩名「君の言葉なんて信用できないんだけど。」

HOPE「ひどいなぁ。そうやって事実を受け入れようとしないの、良くないよ?」

 

狛研「…ゲーム世界…繰り返される世界…死…」

栄「ん?どうした狛研ちゃん?」

狛研「…いや、バカな…そんな…そんな事って…!」

HOPE「ふふふ、どうやら叶さんだけは気付いたみたいだね。」

栄「気付いたって何が!?狛研ちゃんは何に気づいたんだよ!!?」

狛研「…ねえ、クマさん。」

HOPE「何?」

狛研「ボクの質問に正直に答えて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狛研「このコロシアイって、ループしてるんじゃないの?

 

 

 

神座「…。」

詩名「…。」

栄「…えっ?」

狛研「ボク達は、何度も何度もコロシアイを繰り返してきた…違う?」

HOPE「…へー。そこまでわかってたんだ。やっぱり叶さん、君は毎度毎度僕をワクワクさせてくれるね。…君の言う通り、この世界はループしてるよ。でも僕からもひとつ聞かせて?どうしてこの世界がループしてると思ったの?」

狛研「それは…」

 

コトダマ提示!

 

【紙切れが挟まった本】【天井の数字】

 

「これだ!!」

 

狛研「ボク達が3日間で集めた資料に、この世界がループしている事を仄めかす情報がいくつかあったんだ。最初はクマさん、キミが用意した罠かとも思ったけど…ボク達に謎を解かせようとしてるキミがそんな事をする意味は無いよね?」

HOPE「一理あるね。安心していいよ。あれは、僕が用意した現実世界の情報を仄めかすヒントだから。さすがにノーヒントで真相にたどり着くのは厳しいでしょ?」

狛研「それに、もうひとつ気になってる事があるんだ。」

HOPE「何?」

狛研「ボクの研究室の天井に書かれてた数字…あれって、ボク達がコロシアイを繰り返した回数だよね?」

栄「えぇえええ!!?そうだったのかよ!!?」

HOPE「ふふっ、なーんだ。やっぱりわかってたのか。…ご名答。覚えていないだろうけど君達は、今までに何度も何度もコロシアイを繰り返してるんだよ。何千回、何万回、何億回もね。」

詩名「そんな…嘘だ…!」

HOPE「嘘なもんか。紛れもない現実だよ。…まあ、コロシアイが終了するごとにゲームのプログラムを全部破壊して一から組み直してるから君達が覚えていないのは当然っちゃ当然なんだけどね。…さてと、大体の謎は解けたしそろそろ聞いちゃおっかな?君達は、一体何者なんでしょうか?」

狛研「ボク達の正体は…」

 

 

 

コロシアイ参加者の正体は?

 

1.オリジナルの自分

2.ゲームのプログラム

 

 

 

➡︎2.ゲームのプログラム

 

「これだ!!」

 

狛研「…っ、ボク達は…キミが作り出したゲーム上のプログラム…だっ…」

ボクは、受け入れたくない事実を、声を絞り出してみんなの前で言った。

HOPE「…。」

 

HOPE「お見事大正解ー!!君達は、僕が作り出したゲームのプログラムなのでした!!」

栄「そんな…嘘だ嘘だ嘘だ!!信じられるかそんなモン!!オレはオレだ!!それ以上でもそれ以下でもねぇ!!オレは、ゲームのプログラムなんかじゃねえぞ!!」

狛研「陽一クン…受け入れたくないだろうけど、現実なんだよ。」

栄「ふざけるな!!こんなの…何かの間違いだ!!オレは信じねぇぞ!!」

詩名「栄君…」

神座「栄養士…」

HOPE「あーあ、現実逃避は醜いね。叶さん。トドメ刺してあげなよ。」

狛研「…。」

 

コトダマ提示!

 

【コンピューター】

 

「これだ!!」

 

狛研「…学園長室にあったコンピューター…多分、あれがボク達の本体だよ。」

栄「そんな…」

HOPE「ふふっ、おめでとう叶さん。見事()()()()()正体を暴いたね。」

狛研「えっ…?」

神座「『コイツらの』…?何よ、その叶だけは違うみたいな言い方…!」

HOPE「みたいなっていうか、叶さんはお前らNPCとは別次元の存在なんだよ。言ったでしょ?彼女はコロシアイ参加者の中で唯一のイレギュラーだって。確かに、ここでコロシアイを強いられてた参加者のオリジナル達は、100年前に死んでるんだ。…ただひとりを除いてね。」

詩名「その一人って、まさか…」

HOPE「そう。そこにいる叶さんだよ。当時、叶さんただひとりだけが現実世界で生き残って今も生きてるんだ。」

栄「ちょっと待てよ!オレらが死んだのって100年以上前なんだろ!?だったら狛研ちゃんが生きてるわけねえだろ!!」

狛研「…まさか。」

 

コトダマ提示!

 

【物理室の資料】

 

「これだ!!」

 

狛研「…冷凍保存されて、意識だけデータ化されてゲームのプレイヤーとしてここにいる…とか?」

HOPE「ピンポンピンポーン!!さっすが叶さん!!さて、みんな。これでもうこのコロシアイが一体どういうゲームなのかわかったでしょ?」

神座「…。」

HOPE「じゃあもう答えられるよね?黒幕の正体は何で、君達は何で、僕がこのゲームを開催した理由はなんだったのか。じゃあ僕の大好きな叶さんに答えてもらおっかな!」

狛研「…このゲームの黒幕はAIで、ボク達の正体はゲームのプレイヤーとプログラムで、このコロシアイは実際にあった事件の犯人の断罪をテーマにしたコンピューター上のゲームだった。これが全ての真相だ。」

 

 

 

HOPE「お見事大正解ー!!このゲームの黒幕はAIで、君達の正体はダンガンロンパの54作目のプレイヤーとNPCで、このコロシアイは、実際にあった事件を参考に僕が作ったゲームだったのでした!!」

栄「そんな…嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ…!!」

HOPE「ちなみに、なんで僕が叶さんをプレイヤーとして選んだのか教えてあげよっか?」

狛研「…え?」

HOPE「そもそも、このゲームが作られるきっかけとなった、ゲーム内の『絶望的事件』を彷彿とさせるような大災害だけど…一体何が原因で起こったと思う?」

神座「何が原因って…」

HOPE「僕が再現した【超高校級】達のNPCには、オリジナルが持っているような才能はないんだ。…でも、叶さんだけは例外だった。だって、彼女は意識をデータ化されても『狛研叶』本人なわけだもんね。叶さんだけは、どのゲームでもずっとその才能を持ち続けたままだったんだ。」

詩名「狛研君の才能と、コロシアイのきっかけがどう関係してるっていうんだい?」

HOPE「察しが悪いなぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

HOPE「叶さんこそが、このゲームが作られるきっかけを作った張本人なんだよ。

 

 

 

 

 

栄「…は?」

HOPE「実は、叶さんってみんなとは比べ物にならないようなとんでもない才能の持ち主なんだよね。どんな才能なのか、みんなも気になるよね?彼女の才能はね、『世界一の幸せ者になれる』才能なんだよ。」

神座「何それ…どういう事?」

狛研「…。」

HOPE「そのまんまの意味だよ。彼女の才能の本質は、自分以外の人間を不慮の事故で殺し、相対的な幸運を享受するところにあるんだ。突如起こった大災害でみーんな死んでたったひとり叶さんだけが生き残ったら、それって叶さんは世界一ラッキーって言えるよね?自分は全く手を汚さずに幸せを掴み取る事ができる…はははっ、素晴らしい才能じゃないか。」

狛研「…ッ。」

コイツは、ボクの一番触れてほしくないところに何の躊躇もなく踏み込んでくる。

ボクは、何も言い返せなかった。

HOPE「結果、大災害をきっかけに自分の才能に絶望した本物の叶さんは、発狂したまま殺人犯として処刑されるところだったんだ。…でも、彼女は才能のおかげで一人だけ生き残った。だから、僕は彼女の才能を利用する事にしたんだ。」

詩名「…利用?」

HOPE「僕のオリジナルは【超高校級の不運】っていう才能を持っていて、何も悪い事をしてないのに生まれてからずっと不運をその身に受け続けてきたんだ。…でも、それこそツイてないのかな。才能の特性上、どんなに不幸な目に遭っても絶対に死ねなかった。だけど、僕の才能を覆してくれる人に出会えたんだ。それが叶さんだった。僕は、僕自身を殺してくれる才能を持った彼女に心から心酔していた。だからこそ、その力を永遠のものにしたいと思ったんだ。そのために僕は入田君に僕を作ってもらってこのコロシアイを作り上げた。」

神座「わからないわ…どうして叶の力を永遠のものにするためにコロシアイをしたの!?」

HOPE「それは、彼女の才能に関係のある事なんだよ。叶さんの才能には面白い特性があってね。彼女の持つあらゆる才能は、彼女がこの世界で死ねば死ぬほど強くなっていくんだ。だから、僕はずっと叶さんに擬似的な死と絶望を与え続けてきたんだよ。」

 

HOPE「全ては、彼女自身のためにね。」

栄「狛研ちゃんのため…!?ふざけんなよ!!狛研ちゃんの事を想ってんなら、狛研ちゃんが嫌がるような事すんじゃねえよ!!」

HOPE「何もわかってないね君は。僕は、【超高校級の幸運】としての彼女を永遠に崇めていたいんだ。全知全能、何もかもが完璧で逆らう事すら許されない絶対的な力を持った存在…人はそれを神と呼ぶんだよ。」

栄「コイツ…イカれてやがる…!」

HOPE「なんとでも言えばいいさ。僕は、叶さんを完璧で絶対的な存在にするまで何度でも同じ事を続けるだけだよ。このゲーム世界と君達のアバターを使ってね。君達は元々大災害の惨状に絶望してテロを起こした犯罪者だったんだ、これは贖罪だよ。自分が犯した罪を、その身をもって贖える事をありがたく思うんだね。」

狛研「…。」

HOPE「頭が?になってるそこのおバカさんのためにもおさらいしてあげるよ。これが事件の真相だ。」

 

 

 

ークライマックス推理開始!ー

 

Act.1

事の発端は、100年以上前に叶さんの才能によって引き起こされた大災害だった。

この災害によって平和な日常を壊された【超高校級】達は、そのショックから世界中に絶望を振り撒く害悪と化したんだ。

特に残虐なテロ行為に及んでいたのは、このコロシアイのモデルになった14人の高校生だった。

その中心的人物は、何を隠そう叶さんだった。

当時彼女の才能に魅了されたオリジナルの僕は、どうにか彼女の才能を永遠に崇められないかと考えた。

 

Act.2

でも、僕一人の力じゃそれを実現するのには限界があった。

だから、当時政府に強い信頼を置かれていた入田君を唆して僕を作らせたんだ。

僕が作られた後すぐにオリジナルは死に、入田君は僕の裏切りに負い目を感じて自ら出頭し処刑された。

その後、捕まった14人の高校生達も政府の手によって処刑された…かに思われた。

 

Act.3

だけど、一人だけ生き残りが存在したんだ。

それが、叶さんだった。

叶さんは、大災害と自身が起こしたテロによって生存が困難になった世界を目の当たりにして、生き延びるために自らを冷凍保存して記憶をデータ化する事を選んだんだ。

僕は、そのデータを改造して新たにゲームを作り出した。

当時流行っていた『ダンガンロンパ』というゲームの続編という設定でゲーム世界を作り、そこには僕と処刑された14人の高校生のアバターを登場させ、叶さんにそのゲームをプレイさせる事にしたんだ。

 

Act.4

一周目、叶さんは全てのクラスメイトを失った。

そこで、僕はみんなを生き返らせる方法があると提案した。

叶さんはそれに応じて、コロシアイをもう一回やり直す道を選んだ。

その後は、ずっと同じ事の繰り返しだったよ。

僕は、何億人もの君に出会って、そして全員をこの手にかけてきた。

僕は…いや、僕達は何度でもこのくだらない世界を繰り返して罪を贖い続けるだろう。

全ては、君というたった一人の人間のためにね。

 

さあ、僕にもっと君の才能を魅せてくれよ。

 

 

 

 

 

「【超高校級の幸運】狛研叶さん!!!」

 



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第6章 非日常編⑦(最終話)

論プリもこれにて連載終了です!

今まで愛読してくださった皆様ありがとうございました!







「僕達は、何度でもこのくだらない世界を繰り返して罪を贖い続けるよ。…全ては君というたった一人の人間のためにね。…【超高校級の幸運】狛研叶さん。」

 

 

 

「ッーーーーーーーーーー。」

 

「そんな…うそ…」

「そんなものが真実だったなんて…」

 

 

 

ボク達は、呆然と立ち尽くしていた。

HOPEの口から語られる真相を、受け入れられずただ思考を停止するしかなかった。

 

ボクは、かつて本で読んだ言葉を思い出した。

時に、たったひとつの事実が真実を簡単に覆す事がある。

真実というものは、時にどんな虚構より非現実的で残酷だ。

 

ボクは、今まで何人も大切な仲間を失った。

どんなに打ちのめされても生き残って立ち向かい続けた事に意味があると思っていた。

だけど、HOPEの口から語られた現実は、ボク達が追い求めていた真相とは真逆のものだった。

裁判で勝ち続けた事に大した意味なんて無かった。

今まで信じてきた希望は、友情は、未来は、全部紛い物だった。

終わりのない地獄の中である者は犬死にし、ある者は無駄に生き地獄を味わい続けただけだった。

散々足掻いてやっと掴み取った真実は、あまりにも空虚で、幼稚で、残酷だった。

こんなものを真実だなんて認めたくなかった。

ボク達は、ただただ永い永い茶番を繰り返していただけだったんだ。

 

 

 

「…なあ、どういう事だよ…このコロシアイは全部、お前の自己満足のためだけに行われた茶番だったってのかよ…!」

「自己満足?茶番?…はははっ、ひどい言いようだなぁ。僕は別に自分がどうなろうと構わないんだよ。全ては、目の前にいる叶さんという僕にとっての神様のための神聖な儀式だったんだからさぁ。」

「…え。」

「だってそうでしょ?元はと言えば叶さんが何の才能も持っていなければ君達を狂わせるような大惨事は起こらなかったし、僕が生み出される事もなかったんだ。それに、叶さんの死にたくないというわがままのせいでみんなこの世界のコロシアイに巻きこまれたんだよ。…極め付けは彼女の最期さ。僕は今まで何億人もの叶さんの死を見届けてきたけど、全員がこの最終裁判で僕に敗れて次の周の自分に罪を押し付けてきたんだよ。みんな、割と裁判の中盤までは今の叶さんみたく未来への希望に目をキラキラと輝かせてたんだけどねぇ。いざ真実を知ったら、みんな面白いくらい絶望に浸ってくれたよ。」

 

HOPEは、嬉々として前の周の記憶を語り始めた。

「前の周で最後まで生き残ったのは、叶さんと…それから財原君とラッセ様と朱さんと羽澄さんだったっけ。あの時のみんなの絶望に染まった顔といったらもう…思い出しただけで笑いが止まらないよ。」

「テメェ…頭おかしいだろ!!」

「かもね。」

「なっ…!」

「そもそも、叶さんに魅入られる事自体が異常だって自覚はあるよ。…でも、しょうがないじゃないか。好きになっちゃったんだから。」

 

HOPEは、顔を紅潮させて目を見開きながら天井を仰いだ。

裁判場全体に響き渡るくらいの声量で高笑いしながら語り始めた。

「叶さんはどこまでも狂気的で、神々しいまでに残酷で、愛おしいくらいに絶望的なんだよ。そんな彼女だからこそ僕は彼女に恋し、彼女を愛し、彼女のためだけの世界を繰り返す事を誓ったんだ。だってそうだろう!?叶さんは、自分の理想のためならなんだって利用して奪って親友でさえも躊躇なく殺すような、救いようのないほど穢れて歪んだ異常者なんだ!!…でもね、叶さん。安心して。僕は、君の魅力をちゃんとわかってるつもりだから。君は、その狂った本性も含めて誰よりも美しいよ。」

 

「…ねえ、叶さん。」

HOPEは、そっと微笑んで言った。

「君は、僕にとっての希望で、神様で、そして絶望なんだ。…さぁ、もっと僕を魅せてくれないか。」

「…!」

 

思い出した。

…というより、そうだったような気がした。

このコロシアイの元凶は、凶夜クンでも目の前で不敵な笑みを浮かべているHOPEでもなかった。

…ボクだったんだ。

みんなに希望を与えようと頑張ってきたけど、結果的にボクはみんなに絶望を振り撒いていた。

ボクは、凶夜クンがかつて自分を疫病神だと言っていたのを思い出した。

今思えば皮肉な話だ。

疫病神は、ボクの方だったのだから。

 

ボクは『希望』なんかじゃない。

本物の絶望は、ゐをりちゃんでも凶夜クンでもなかった。

紛れもなく、今ここにいるこのボクだ。

 

 

 

「ごめん、みんな。今まで嘘ついてて…でも、もう疲れた。ボクはもういい子のフリはやめるよ。」

「そんな…嘘だ嘘だ嘘だ!!狛研ちゃんが絶望だと…!?ふざけんな!!この子はオレ達のリーダーだったんだぞ!!じゃあ、オレ達は今まで一体何のためにこの子を信じて足掻いてきたんだ!!」

「ひどいよ…こんなの、あんまりだよ!!狛研君!!オイラ達は、君が約束してくれたからここまで生き残ってこられたんだぞ!!今更、その約束も全部嘘でしたとでも言う気かい!!?」

「そんな…叶!!お願い、嘘だと言って!!…違うわよね!?コイツにある事ない事言われたせいで錯乱してるだけよね!!?だってそうでしょ!!?あなたは、私達と一緒に未来を勝ち取るんだって約束してくれたじゃない!!あなたがそんなひどい事言うわけないわ!!」

「あれれ?みんな、さっきまで散々叶さんに助けられてたくせに、やけにあっさり手のひら返しするんだね。そういえば、前回生き残った4人も、その前の回の生存者も、みんな最後の最後は叶さんを寄ってたかって罵倒してたっけ。どいつもこいつも本当に救いようのない屑ばっかりだよ。こんな奴ら、裁かれて当然なんだ。やっぱり、叶さんの理解者でいてあげられるのは僕だけだったみたいだね。」

「うるせぇ!!テメェは黙ってろクソサイコ変態カマ野郎が!!なあ、狛研ちゃん!!!なんとか言えよ!!!」

 

 

 

 

 

「うるさい!!!」

 

 

 

「ッ…!!?(ビクッ」

「…全部、HOPEの言う通りだよ。ボクは、ここにいる誰よりも最低なんだ。ボクは今まで、仲間を殺したクロのみんなを軽蔑したり、方神を罵倒したり、HOPEを追い詰めたりしてきた。ソイツらの事が許せなかったから…許せないものを裁く事が正義だって思い込んでたから。…でも、違ってた。本当に一番許されないのは、ボクの方だったんだよ。だからもういい。終わりにしよう。」

「叶、それは違うわ!あなたはあの時正しい事をしたのよ!もしあなたが真実を解き明かさなければ、私達は全員殺されてた!!誰がなんと言おうと、あなたは間違ってないのよ!!」

「…間違ってない?そんなわけないよ。…だったら。」

感情が昂っているのか、目から涙が溢れ出てきた。

ボクは、頬に涙をつたらせながら声を振り絞った。

 

 

 

 

 

「どうしてボクはこんなにも満たされているんだ?」

 

ボクは、口角を上げながら震え声で言った。

「…わかってる。こんな時にこんな気持ちになるなんて絶対おかしいって、わかってはいるんだ。でも、みんなが次々と殺されていくうちに、どこかで『自分じゃなくてよかった』って思っていた自分がいたんだ。ボクの周りでボクの大切な人が死んでいくたびに、ボクは悲しみと絶望に苛まれた。だけど、心のどこかでは自分だけが助かった事に幸福感を抱いていたんだ。積極的に捜査や裁判に参加したのも、純粋に生き残りたいからじゃなかった。殺された子の仇を討つとか綺麗事を言っておいて、本当は誰かがボクと引き換えに殺されるのを見て満たされたかっただけなんだよ。だってそうでしょ!?ボク以外がみーんな死んで、ボクだけが生き残ったらそれって最高にラッキーじゃん!!」

もう、自分でも何が本心で何が嘘なのかわからなくなっていた。

生き残る術がないと知らされた今、何もかもがどうでもよくなってるのかもしれない。

今では、そもそも外に出たいと思っていた事自体が嘘だったんじゃないかとすら思えてくる。

…いや、それでいいのかもしれない。

だって、ここにいるボクの存在そのものが、何度も改竄されていて嘘にまみれているのだから。

もう自分の事すら信用できない。

 

ボクって、結局誰だったんだ…?

 

「んなっ…!!君がそんな奴だと思わなかったよ…!!」

「狛研ちゃん…なんでだよ!!信じてたのに…!!」

「そんな…叶!!あなた、自分が何を言っているのかわかってるの!!?」

 

みんながボクを責めるなか、たったひとつの笑い声が裁判場に響き渡った。

「ふふふ…あーっははははははははははははははははははははははははははははは!!!素晴らしいよ叶さん!!君はなんて魅力的なんだ!!やっと本心を言ってくれて、僕は本当に嬉しいよ!!…さてと、叶さんも本当の気持ちを吐き出してくれた事だし、そろそろアレ行っちゃおっかな。」

「アレ…!?」

「あれ?忘れたの?最後は投票でみんなの運命を決めてもらうって言ったじゃん。じゃあ早速だけど、ルールの方説明してくから。」

そう言うと凶夜クンは指を鳴らした。

すると証言台に今までとは違う形状のボタンが出てきた。

「あっ…ボタンが…」

「ボタン!?オレの証言台にはねぇぞ!!おい、どういう事だ!!説明しやがれ!!」

「うるさいなぁ、ちょっとは静かにできないの?それじゃあ今から投票のルールを説明するよ。今からボクが選ぶ代表者一人に投票をしてらうよ。左側のボタンは、『リセットボタン』!これを押せば、全員おしおきしてこの世界を終わらせる。そして、次の周のコロシアイに今回の記憶を持たない状態で挑んでもらう。」

「ヒッ…!?なんだよそれ!!オレ達に死ねっていうのかよ!!?せっかくここまで生き残ってきたのに…ふざけんじゃねえぞ!!」

「何を今更…言っておくけどね、君達はすでに何億回も死んでるんだよ。」

「そんなの、今のオイラ達には関係ないじゃないか!誰かを殺したわけでもないのにこのままおしおきされるなんて嫌だ!!」

 

「だよねぇ。そこでもうひとつのボタン、『卒業ボタン』!これを押せば、みんなは晴れて才監学園を卒業できるんだ。」

「なら決まってんだろ!!卒業ボタンを選ぶ以外に方法はねぇじゃねえか!!」

「まあ、ここから出たらみんなの身がどうなるかなんて知ったこっちゃないんだけど。」

「えっ…!?どういう意味だよそりゃあ!?」

「よく考えなよ。君達は、オリジナルのパーソナルデータを元に作られたゲームのプログラムなんだよ?プログラムである以上、この世界から逃れる事はできない。オリジナルの君達はとっくの昔に死んじゃってるし…つまり、この世界から卒業するって事はそれすなわち君達の死を意味するんだよ。」

「はぁあ!!?なんだよそれ!!話がちげぇじゃねえか!!!生きてここを出られるんじゃなかったのかよ!?」

「やだなぁ、僕はここから出た後の君達の一生まで保証してあげるなんて一言も言ってないよ?」

「でも、ここから出たら希望ヶ峰学園の本科生に戻れるとかなんとか…」

「それは釈放されて出てきたら、の話だよ。『卒業ボタン』は釈放のためのボタンじゃなくて、ただのゲームのプログラムの破壊行為だよ。僕が自分の本体を破壊して、この世界そのものを亡き者にするんだ。…だって、君達屑が罪を償える機会なんてあるわけないじゃないか。」

「ふざけんなぁあああ!!!テメェ、よくも騙しやがったな!!!」

「嘘はついてないからこう言うのはちょっと違和感あるけど、騙されるお前が悪いんだよ。」

「…どちらを選んでも、私達の死は避けられないのね。」

「そんな…」

みんなの表情が絶望に染まった。

みんな、外の世界での未来を糧に今まで頑張って足掻いてきたんだ。

それが全部無駄だったと知って、ある者はやり場のない怒りに狂い、ある者は強烈な無力感に襲われた。

「さてと、じゃあ誰にみんなの未来を選んでもらおうかなーっと、叶さん!」

 

HOPEは、ボクを指差した。

「…。」

「あれ?無反応?」

「…予想はしてたし。」

「そっか。じゃあ叶さん。コイツらをどう料理するか選んで。」

「なっ…ふざけんなよ!!なんで選べるのが狛研ちゃんだけなんだよ!!オレ達にだって選ぶ権利くらいあるだろ!!」

「そうだよ、こんな投票、認めるわけにはいかないよ。ちゃんと最後まで裁判の公平性は保つべきなんじゃないのかい?」

「うっせぇな。NPCごときがこの世界を構成してる最高位の人工知能に口答えしてんじゃねえよ。叶さんの才能を育てるための養分にしかなれないモブキャラのくせに調子に乗らないでくれる?決定権があるのは、現実世界で死んでない叶さんだけなんだよ。」

「ッ…」

「あ、別に話し合いで決めてもいいよ。あ、ただし答えるのは叶さんね。解答権の変更はダメだから。さあ、叶さん。あと3分で決めてね。3分で決めないと、一人ずつ殺すから。」

「お、おい!狛研ちゃん!!頼む、卒業ボタンを押してくれ!!おしおきは嫌だ!!」

「オイラも、あんな殺され方をするのは嫌だよ。」

「私も…」

「みんな…」

「さぁ、選んでね。今ここで死ぬか、それとも永遠に死ねないか。」

ボクは、制限時間ギリギリまで迷った。

そして、最後の最後に、リセットボタンに手を滑らせた。

 

 

 

 

僕には、わかっていた。

叶さんは、多分リセットボタンを押す。

だって、今までの980037545人の叶さんは、みんな同じ選択肢を迫られて、みんなこの世界をやり直す事を選んだのだから。

次の世界の自分が全てを終わらせてくれる可能性に賭けた叶さんもいたし、自暴自棄になって仲間の制止を押し切ってまでボタンを押した叶さんもいた。

今までの叶さん全員に共通して言える事は、みんな自分の背負っている罪の重さに耐えきれずに次の自分に肩代わりさせて死へと逃げたというところだ。

おそらく、この輪廻は永遠に途絶える事は無いだろう。

だって、叶さんにとっては他のみんなを皆殺しにして得られる幸福感を、僕にとっては叶さんの絶望を得られる唯一で最高の瞬間なのだから。

僕達にとってこのゲームが必要である以上、叶さんはそれを終わらせる決断なんてできるわけがない。

これは、今までの膨大な量のコロシアイから得たデータから導き出された、揺るぎのない結論だ。

 

僕が朽ち果てるまで、僕はずっと君のそばにいるよ。

 

 

 

「おっと、もう3分か。じゃあ、開票しまーす。結果発表ー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『卒業』

 

 

 

 

「…え?」

 

嘘だ。

 

なんで?

 

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

 

嘘だ!!あり得ない、なんで叶さんは卒業を選んでいるんだ。

僕の予想が外れた事は今まで一度もなかった。

980037545人の叶さんは、全員リセットを選んでこの世界をやり直したんだ。

僕の計算が狂うはずがないんだ。

「叶さん…なんで…」

「よく考えたら、キミの思い描いた通りに動くのがバカバカしく思えてきた。何でもかんでも自分が思い描いた通りに事が進むと思ったら大間違いなんだよ。」

「あり得ない…!!君は、今の世界に絶望したはず…この世界をやり直せば、次の世界ではもっといいエンディングに辿り着けるかもしれないんだよ!!?大体、元はと言えば死にたくないというわがままでこのゲームを最後まで生き残った君に今すぐ自分の意識を消す決断なんてできるわけないじゃないか!!」

「ゴチャゴチャうるせぇ!!!」

「ッ…!?」

「別に、どのみちここでゲームオーバーになるなら、ボクはその後がどうなろうと…キミの素晴らしい計画とやらがどうなろうとどうだっていいんだよ。」

「そんな、叶さん…どうして…!」

「今までは生きる事に精一杯だったけど、この世界で生きる方法が無いって知って吹っ切れた。キミの言ってる事が正しければ、現実世界にはボクの肉体があるんでしょ?本当はその肉体が目覚めて、このコロシアイとかは全部永い眠りについていたボクの夢でしたー、なんて展開になってくれる事をちょっと期待してたりするんだよね。そうなりゃあ、ボクはキミの用意した檻から脱出して生きて元の世界に戻れるって事だよね?それってすっごくラッキーじゃない?」

「そんな天文学的確率に賭けるなんて…君は何を考えているんだ!!おかしいだろ!!」

「だって、ボクは【超高校級の幸運】だよ?幸運に期待して何が悪いのさ。狂っているボクが好きなら、黙って結末を見届けろよ。」

 

「あはははははははははははははっ!!!」

「なっ…テメェ、何がおかしいんだ!!」

「いや、ごめんごめん。今までこんな展開になった事なんてなかったから、ついね。あーあ、とうとうやってくれたね叶さん。僕にとっての最悪の想定が、まさか君の思い描く理想だったなんてね。皮肉なもんだね。散々人に絶望を与えてきた僕が絶望させられる立場になるなんてさぁ。でもまあ、何億回とかけて積み上げてきたものを一気に崩される絶望もまた一興か。最期の最期に僕を魅せてくれてありがとう。」

僕は、懐から赤いスイッチを取り出した。

「それじゃあ、気を取り直して最後はパーっといきましょうか!!今回は、このコロシアイの黒幕である【超高校級の不運】景見凶夜クンのために!スペシャルなおしおきを用意しました!…ではでは、おしおきターイム!!」

僕は、それを思いっきり叩いて押した。

ボタンの画面に、ドット絵のモノクマとモノベルに連れ去られる僕の様子が映し出された。

 

 

 


 

 

GAME OVER

 

カゲミくんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

 

モニターに映るのは、レトロな雰囲気の古い劇場。

年季が入った赤いステージカーテンに、客が数人いるだけの閑散とした仄暗い空間。

カタカタとフィルムの音だけが鳴り響き、不気味な雰囲気を演出している。

椅子には、景見を除く15人の生徒が座っていた。

…が、全員首から上が子供の落書きのような雑な見た目になっており、本来あるべきはずの口が無かった。

上映開始のブザー音が鳴ると、15人の生徒達は一斉に手を叩き始めた。

幕が上がると、白黒の画面の中央で景見そっくりの少年が首を吊っていた。

頭と目が極端に大きく描かれ、胴や手足が極端に細く描かれた特徴的な絵柄で描かれた少年だった。

景見の下の床が開き、首のロープが切れて景見は下に落ちる。

そこで画面に文字が現れる。

 

 

 

名前のない終劇

 

【超高校級の不運】景見凶夜 処刑執行

 

 

 

落ちた先はバラの荊棘が張り巡らされた部屋だった。

景見は、モノクマとモノベルに連れ去られ、十字架に磔にされた。

すると、白鳥のコスプレをしたモノベルが小さなガラスの靴を持ってきて景見に履かせようとした。

しかし、靴が小さすぎてはまらなかった。

白鳥のコスプレをしたモノクマはノコギリを取り出すと景見の爪先を切り落とし、無理矢理靴を履かせた。

すると画面の中が煙に包まれ、今度は景見はあたり一面から剣が生えた部屋で四肢を鎖で繋がれていた。

羽澄のコスプレをしたモノクマが鎖を引っ張り、景見を操り人形のように無理矢理踊らせた。

壁や床から生えた剣が、景見の身体に突き刺さっていく。

すると日暮のコスプレをしたモノベルが口笛を吹き、大量の肉食獣達を呼びつけた。

肉食獣は躊躇なく景見の体を貪っていく。

その後も、生徒のコスプレをしたモノクマとモノベルが景見を拷問する映像が続いた。

画面が白黒で絵柄もファンシーな雰囲気なせいか、見た目の残酷さはだいぶ軽減されているが、実際に行われているところを想像するとどれも痛々しいものばかりだった。

そして、最後には校舎が映った。

廊下にいた景見は、プラカードを持った生徒達に追いかけられる。

景見は、生徒達から逃げ続け、ついには屋上まで追いやられた。

あたりを見回して、下を見た景見はふぅと深いため息をついて飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さよなら。」

 

僕はこの世界に絶望した。

だから命を断つ事にした。

 

見慣れた屋上。

僕はここで、何度も踏みとどまった。

勇気がなかったから、ここまで生き延びてしまった。

でも、それも今日で終わりにしよう。

 

飛んだ。

世界の色が、筆で伸ばしたような模様を描きながら撹拌される。

もう、今まで抱えていた苦しみも、吹きつける風の冷たさも、何も感じなくなった。

これが、死ぬって事なのか…

 

 

 

 

 

ーーーーーああ、今日もいい天気だ。

 

僕は、そっと目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーグチャ

 

 

 

 

 

 

 

画面内には、黒い華が咲き乱れていた。

劇場内は拍手喝采に包まれ、上映終了のブザーと共にステージカーテンが閉まった。

その瞬間、モニターの画面が乱れ始めた。

劇場がバラバラになっていく様子が映り、最後は砂嵐になってそのまま電源が落ちた。

 

 


 

 

 

終わった。

ボク達を散々苦しめてきた黒幕は、案外あっけなく死んだ。

すると、ボク達が黒幕のおしおきシーンを見終わるや否や、裁判場が大きく揺れ始めた。

「なっ、なんだこれ!?地震!?」

「何が起こっているんだい!?」

「ッ、ねえ!あれ見て!」

裁判場の天井に亀裂が入り、崩れ始めた。

ホログラムのようにバラバラになった天井は、暗闇の中に吸い込まれていく。

「なんだよあれ…何がどうなってんだよ…!」

「…終わりだ。」

「…え?」

「さっき、HOPEは自分の本体を破壊するって言っていた。多分、さっきのおしおきで奴の本体が破壊されたんだ。だから、この世界を管理する存在がいなくなった今、この世界は原型を維持できなくなったんだよ。ボク達が消えるのも時間の問題だ。多分、あと数秒で全員跡形もなく消え去るよ。」

「なっ…!なんでだよ、チクショウ!せっかくここまで生き残ったのに!なんでオレ達が消えなきゃいけねぇんだよ!!オレは、消えるなんて嫌だぞ!!」

「あ…」

「!!」

柳人クンの身体が崩れ始めた。

「柳人クン!!」

「詩名!!」

「詩人!!」

「嫌だ…オイラは、消えたくない…!みんな、助け…」

 

バシュッ

 

柳人クンは、跡形もなく消えた。

「詩人…そんなっ…!」

「!?おい、なんだよこれ!!」

陽一クンの足が崩れ始めた。

「陽一クン!」

「栄養士…!」

「おい、嘘だろ…!?まさか、オレも消えるってのかよ!?うわぁああああああああああああああああああああああああ!!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ消えたくなぁあああああああああああああああああああああい!!!」

 

バシュッ

 

「…あ。」

陽一クンは、全身が光の粒になって消えた。

「そんな…」

残るは、ボクとゐをりちゃんだけになった。

「…!!あ、叶…!!」

「ゐをりちゃん…!」

ゐをりちゃんの顔が崩れ始めた。

「あ…あああ…!」

「ゐをりちゃん!!」

ボクは走った。

ゐをりちゃんの身体が崩れるよりも速く。

そして、その手を掴んだ。

「叶…!助け…」

…が、その手は光の粒になって手からすり抜けて消えた。

 

バシュッ

 

「…あ、あは…あははは…」

残るはボクだけになった。

校舎は、今も崩壊を続けている。

ボクは、この世界にたった一人残された。

そして、ボクもじきに消えるだろう。

ボクの両手は、消え始めていた。

身体が、痛みもなく少しずつ崩れていく。

ボクは、消える前にこの世界を見渡した。

思えば、長いようで短い数日間だった。

ここに来てから、嘘だったとはいえみんなと友達になって色々楽しい事をしたりつらい事を乗り越えたっけな。

実際にはうんざりするような世界だったけど、お別れを言わなくちゃ。

ボクは、少し微笑んで声を漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さよなら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終章 断罪のエンドロール ー完ー

 

『ダンガンロンパPRISON V4 さよなら僕らの永久収監生活』

 

 

 

原作:『ダンガンロンパシリーズ』様

 

企画:景見凶夜

 

キャラクターデザイン:景見凶夜

 

原案・脚本:景見凶夜

 

グラフィック:景見凶夜

 

モーションデザイン:景見凶夜

 

モーションポートレート・グラフィック:景見凶夜

 

 

システムプランナー/進行管理:景見凶夜

 

システムグラフィック/ムービー:景見凶夜

 

マップデザイン:景見凶夜

 

タイトルロゴデザイン:景見凶夜

 

スクリプト:景見凶夜

 

台本作成:景見凶夜

 

デバッグ・テストプレイ:景見凶夜

 

プロデューサー:景見凶夜

 

ディレクター:景見凶夜

 

プログラム:景見凶夜

 

音声担当:景見凶夜

 

絵コンテ・演出:景見凶夜

 

作画監督:景見凶夜

 

動画:景見凶夜

 

仕上げ:景見凶夜

 

撮影:景見凶夜

 

編集:景見凶夜

 

3DCG:景見凶夜

 

制作進行:景見凶夜

 

アニメーションプロデューサー:景見凶夜

 

アニメーション制作:景見凶夜

 

音楽:景見凶夜

 

サウンドエフェクト:景見凶夜

 

レーコーディング:景見凶夜

 

マスタリング:景見凶夜

 

プロモーションネゴシエーター:景見凶夜

 

プロモーションマネージメント:景見凶夜

 

セールスプロモーション:景見凶夜

 

パッケージデザイン:景見凶夜

 

ソフトウェアマニュアルデザイン:景見凶夜

 

パブリシティデザイン:景見凶夜

 

スペシャルサンクス:穴雲星也

          入田才刃

          景見凶夜

          神座威織

          狛研叶

          財原天理

          栄陽一

          詩名柳人

          白鳥麗美

          翠

          朱雪梅

          羽澄踊子

          日暮彩蝶

          不動院剣

          舞田成威斗

          癒川治奈

          ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ディレクター:景見凶夜

 

プロデューサー:景見凶夜

 

 

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

ー才監学園生存者名簿ー

 

【超高校級の工学者】入田才刃

 

【超高校級の不運】景見凶夜

 

【超高校級の絶望】神座ゐをり

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

【超高校級の資産家】【超高校級の勝者】財原天理

 

【超高校級の栄養士】栄陽一

 

【超高校級の詩人】詩名柳人

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

 

【セキセイインコ】翠

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

 

【超高校級の知能犯】方神冥

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑

 

【超高校級の侍】不動院剣

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

 

ー以上0名



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エピローグ 永遠も終わりを告げて
エピローグ


11月15日は神座ちゃんの誕生日です!
本人からコメントをいただいております。

「あの…今日、は…私、の………誕生日、なの…この、日…は、きものの日…って、いって………七五三…に、着物…を着て………神社、に…行った…事、から…そう………言われてる、み…たい………」


 

 

 

 

 

100年ほど昔、全世界を滅亡の危機にまで追い込んだ大災害が発生した。

全ては、絶望に堕ちたある女の才能によるものだった。

女の才能に魅了された者達は次々と絶望に堕ちていき、世界中で破壊の限りを尽くした。

 

彼女の才能に魅了されたのは、人間だけではなかった。

ある科学者によって生み出された一体の人工知能が女を崇拝するあまり暴走を起こし、自らが作り出したプログラムによって女本人を巻き込んで終わらないコロシアイを主催していた。

だがプログラムは女の手によって破壊され、何万回、何億回と繰り返されたコロシアイはついに終結した。

 

 

 

女の名は狛研叶。

これは、彼女の物語である。

 

 

 

 

 

ーーー21XX年

 

 

 

ビーーーッ!!ビーーーッ!!ビーーーッ!!

 

『緊急事態発生。緊急事態発生。フロア6の警備員が囚人を盗み出し脱走。両者を見つけ次第直ちに抹殺せよ。繰り返す。フロア6の警備員が囚人を盗み出し脱走。両者を見つけ次第直ちに抹殺せよ。』

 

世界が滅亡の危機に瀕してから100年後、世界は一変した。

大災害によって国という概念は無くなり、新設された政府が情報によって僅かに生き残った者達を徹底的に管理する社会となった。

こうして世界には表面的には平和が訪れたが、それは皆が無駄な感情を持たず希望も絶望も抱かない世界でもあった。

 

意識をデータ化されて抜け殻となった狛研叶の肉体は冷凍保存され、世界最悪の大罪人として厳重な警備のもと地下深くに眠っていた。

そして、データ化された意識はとある人工知能によって管理され、終わらないゲームに参加させられていた。

だが彼女のデータ化された意識を管理していたプログラムは破壊され、彼女の肉体は完全にもぬけの殻となった。

今まで彼女の『才能』によって彼女を抹殺する事が出来なかった政府であったが、彼女の才能が失われた事で政府はついに彼女を肉体的に処刑する事を決意した。

だが、政府側の裏切り者によって彼女の冷凍保存は解除され、その肉体が盗み出されたのだ。

100年経ってもなお、彼女を崇拝する者は絶えてはいなかった。

 

 

 

「…たとえ絶望でもいい…このツマラナイ世界を………終わらせて、くれ…」

降り頻る雪の中、全身から血を流した男が少女を抱えて歩いていた。

男は、全身の怪我と気候の厳しさによってついに限界を迎え、その場で力尽きた。

眠っている少女にも雪が積もり始めた頃、二人の前に人影が現れる。

 

 

 

 

 

 

「…目が覚めたかの。」

「…。」

目を覚ますと、少女は粗末な寝床にいた。

あたりを見渡すが、そこは見覚えのない小屋だった。

「安心しなさい、ここには政府の管理は及んでおらん。雪の中で倒れていたお前さんをここまで運んでやったんじゃよ。一緒にいた男は助けられなかったがの。ジュン、暖炉の火を焚いてやりなさい。」

「はーい。」

椅子に座る白と黒に分かれた服を着た老人の言葉を聞いたジュンという少女は、薪を焚べた。

倒れていた少女と同じくらいの年で、薄桃色の髪に青い目を持った少女だった。

 

「時にお前さん、なぜあんなところに倒れていたんじゃ?お前さんはどこから来た?」

「…?」

少女は、困惑した表情を見せる。

「もしや、言葉が通じんのか?…参ったのぅ。」

〈…わからない。…ボクは、一体誰なの?〉

今はもう存在しないはずの言語で話す少女に、今度は老人とジュンが困惑した。

 

〈でも、ひとつだけ…わかる事がある…〉

話を続ける少女を、老人とジュンは言葉がわからないなりに心配そうに見つめていた。

 

 

 

 

 

〈【超高校級の幸運】…それが、ボクの…名前?〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

才監学園卒業生名簿

 

【超高校級の幸運】狛研叶

 

以上一名?




これにて論プリは完結です。
ご愛読ありがとうございました。
実は、最後にちろっと出てきた老人と少女ですが、実はそれぞれモデルがいます。
ヒントは、原作様の無印の黒幕と彼女が操っていたぬいぐるみです。


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論プリこぼれ話
第1章 解説編


第1章無事完結しました!(ドンドンパフパフ〜)

ここでは、キャラについての解説や、本編では伝えきれなかった裏設定などを解説していきます。

※以下どうでもいい設定と書かれている設定は、作者の自己満足で書いた裏設定です。え?そうじゃない部分もどうでもいいって?ソンナコトナイデスヨネー(震)

というわけで解説レッツラゴー(棒)

 

【超高校級の不運】景見凶夜

本作の主人公兼最初の犠牲者。たまには主人公が最初に死んでもいいじゃない。という作者の願望を叶えるために退場させられた悲劇のヒロイン主人公。本作は、彼を一番最初に死なせるために書いたと言っても過言ではない。

超が着くほどの不幸体質。旅行に行けば必ず強盗かテロリストに人質にされ、買い物をしたら買った物をその日のうちに盗まれ、乗り物に乗ったら必ず事故に遭うなど、生きているのが奇跡というレベルで不運に見舞われてきたため、『奇跡の不運』と呼ばれている。ちなみに、一生のうちに交通事故に巻き込まれた回数のギネス記録保持者でもある。その運の悪さが【超高校級】と認められ、希望ヶ峰にスカウトされた。

自分だけでなく周りまで巻き込む事もあるため、誰にも関わってもらえず、親やクラスメイトからも見放された。そのため、卑屈で内気な性格になってしまった。

人生に絶望し、スカウトされる前はしょっちゅう自殺を図っていた。しかし、勇気の無さと人一倍強い生命力のせいで何度も失敗していた。クラスメイトに励まされて生きる希望を見い出し、全員で脱出する事を決意した直後に脱落。彼に落ち度はなかったが、持ち前の不運で、努力して才能を手に入れた白鳥の恨みを買ってあっけなく殺されてしまった。

実は、ゲームの他に推理小説を読む事が趣味で、『バートン伯爵のティータイム』のファン。そのため、作者の娘である狛研に、作中に出てくる暗号でダイイングメッセージを遺した。生前は、自分に希望を与えてくれた狛研に恋心を抱いていた。

 

※以下どうでもいい設定

強盗に占拠されたデパート内で産まれ、産まれてすぐに家族もろとも強盗に人質にされた。アルビノっぽい見た目なのは、その時のショックで身体の色素が無くなってしまったため。

不運以外の才能はほとんど平均的。素の器用さや運動神経はあまり悪くない。しかし、持ち前の不運で全て台無しになっている。

中性的で女の子みたいな顔立ちだが、身長は意外にも男子高校生の平均くらいはある。ただしかなりの低体重で、体格は貧相。

意外とそれなりにモテる。しかし、相手はドブスだったり不良だったりヤンデレだったりと、女運は最悪。

どこぞの日本一ついてない中学生と張り合えるレベルの不幸体質。

誕生日の由来(4月13日)は、日本で不吉とされる数字の4と、欧米で不吉とされる数字の13。ちなみに、生まれた日は金曜日かつ仏滅。

名前の由来は、見るからに不吉そうな名前。

声のイメージは『進撃の巨人』のアルミン。

 

 

 

【超高校級の幸運】狛研叶

本作の二人目の主人公。1人目の主人公の景見とは、色んな意味で正反対。ボクっ娘主人公が見たいという作者の願望を叶えるためだけに生み出されたキャラクター。

第100期生の【超高校級の幸運】として希望ヶ峰学園にスカウトされた。

景見ほどではないが、不幸体質。名探偵の父親と警察官の母親の間に生まれ、幸せを絵に描いたような家庭で過ごしてきたが、10年前に交通事故で両親を亡くし、父親の妹の家に引き取られた。引き取られた先の家でネグレクトを受け、瀕死になっていたが、その後施設に引き取られた。しかし、父親の言葉を律儀に守り、いつも明るく振る舞っていたため、どんな逆境に陥ってもそれを『ラッキー』とすら捉える程の強靭なメンタルの持ち主に成長した。両親を失った事で人の命がどれほど尊いものか実感しているため、命を粗末にする人が大嫌い。

才監学園に収監されてから初めて会った景見に懐いており、彼を親友として慕っている。彼を忌み嫌わなかった数少ない人物。

旧姓は浅野。父親の妹に引き取られる際、苗字を変更した。

明るく活発で、ボーイッシュ。しかし、どこかミステリアスな雰囲気を漂わせた少女。才監学園のムードメーカー的存在。天然ボケで、無邪気な性格。たまに常軌を逸した言動で比較的常識人な景見や羽澄などを困らせている。しかし、二面性があり、窮地に陥ると頭脳明晰で冷静な性格に変貌する。高校生とは思えない判断力や推理力の高さは父親譲り。

父親の形見の帽子が宝物で、ラッセに『帽子』というあだ名を付けられた時は喜んでいた。

 

※以下どうでもいい設定

前作の主人公達とは違い、料理をはじめ、家事は全て得意。作中に描写はなかったが、景見が栄と話している間、癒川や朱と一緒におやつを作って振る舞っていた。実は作中キャラ一の大食い。

地頭がいい割には非科学的なものを信じ易く、未だにサンタクロースの存在を本気で信じている。

若干男顔。顔だけだと、よく男の子と間違われる。

ちなみに、触覚は気分や体調によって形状が変わる。クラスメイトからは、陰で『触覚を抜いたら死ぬんじゃないか』と噂されている…らしい。

彼女の誕生日(7月7日)の由来は、ラッキーセブン。

キャラの作成の時にモデルにしたキャラは『はたらく細胞』の赤血球。

名前の由来は、苗木誠のアナグラム。下の名前は、並べ替えた時に余った『な』と『え』を使った縁起の良さそうな名前。

声のイメージは『マギ』のアラジンまたは『ガッチャマンクラウズインサイト』のつばさ。

作中に描写は無かったものの、栄や白鳥との交流イベントを経ているため、他のキャラの好感度は景見と同じ。

 

 

 

【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵

1章クロ。おしおき前までは白鳥麗美と名乗っていた。お金持ちのお嬢様で、プライドが高く、周りを下に見がち。しかし、ラッセの事は、口では罵倒しつつもある程度は認めていた模様。イケメンな生徒の前では猫を被っており、優しくて上品なお嬢様を演じていた。また、異常なまでに『美』に執着しており、醜い物が大嫌い。

完璧な美少女…かに思われていたが、元の顔は醜悪で、才能もあまりない。白鳥麗美というのは双子の姉の名前で、姉は完璧な美少女だった。しかし、飛行機が家に突っ込んできて、家にいた隥恵以外の全員が死亡。命からがら救助隊に救出されるも、姉の麗美と間違われ、医者に姉そっくりの顔に整形されてしまった。親族全員から麗美だと勘違いされ、最初は親族を悲しませないために姉を演じていたが、姉を敬うあまり病的なまでに『白鳥麗美になりきる事』に執着するようになった。姉の事を嫉妬して嫌ってはいたが、憧れの対象でもあり、姉を神格化して見ていた。姉になりきるために血を滲むような努力をしてきたため、何もせずにスカウトされた景見の事を一方的に嫌っており、姉になりきろうとするあまり最終的には彼を殺してしまった。

おしおきは、『美』をイメージしたもの。彼女の好きな薔薇の花を使ったメルヘンな雰囲気のおしおきでありながらも、中世ヨーロッパの魔女裁判の要素も混ざっている。初期設定では、最初の鏡が割れる段階でガラスが胸に刺さって死ぬという終わり方だったが、物足りなさを感じた作者によってよりどぎついおしおきへと変貌を遂げた。また、余談ではあるが、実はアイアンメイデンの顔は姉の顔をモチーフに作られている。強制的に元の顔に戻された上に全員の前で醜態を晒し、姉の顔を模した拷問器具で殺されるという、彼女にとっては屈辱的な最期になった。

 

※以下どうでもいい設定

 

彼女の才能は『何をしても美しく見える才能』。

恐れ多すぎて誰も近寄れないため、意外にも告白された事は一度もないらしい。

ロイヤルミルクティーとシフォンケーキが大のお気に入りで、味にうるさい。少しでも手を抜いて作った物を出そうものなら、ぶちのめされて散々罵倒される。

幼少期は、顔以外の、身長や髪型などの特徴は麗美と酷似しており、麗美とお揃いの服を着ていた。そのため、顔が潰れた時は麗美と勘違いされた。

彼女の誕生日(1月5日)の由来は、シンデレラの日。

キャラの作成の時にモデルにしたキャラは『斉木楠雄の災難』の照橋さん。

名前の由来は、マドンナっぽい名前。本名の名前の由来は、『さかえ』と読む名前。

声のイメージは、お嬢様口調の時は『約束のネバーランド』のギルダ。荒々しい口調の時は『炎炎ノ消防隊』の火華または『魔法少女サイト』のあさひ。

 

 

 

【その他のキャラクター】

 

 

 

白鳥麗美

隥恵の双子の姉。真相編の白鳥隥恵編で登場。本編には、名前だけ登場。享年6歳。1月5日生まれのB型。ICVは、隥恵と同じくLynn。生まれながらに完璧な美少女で、妹の隥恵とは全てにおいて正反対。隥恵とは違って両親に可愛がられて育ったため、隥恵に一方的に嫌われていた。しかし、当の本人は隥恵の事を妹として心の底から愛していた。飛行機が家に突っ込んできた時、隥恵を庇って死亡した。その後、隥恵は彼女そっくりの顔に整形され、『白鳥麗美』として生きる事となった。

存在自体は景見が隥恵の研究室に行った時に仄めかされていたが、隥恵は、写真に写った自分を『妹』と嘘をついて誤魔化した。実際には、隥恵が自分だと言っていた方の少女は彼女で、醜い方の少女は隥恵本人だった。

名前の由来は、マドンナっぽい名前。

声のイメージは、『約束のネバーランド』のギルダ。

 

 

 

浅野蘭馬

名前だけ登場。叶の実の父親。享年36歳。『現代日本版シャーロック・ホームズ』と呼ばれる名探偵。生前は、世界中を飛び回っては難事件を立ち所に解決し、その名を世界中に轟かせていた。推理力だけでなく文才もあり、趣味で書いた『バートン伯爵のティータイム』という推理小説が世界中で大ヒットした。厳かな見た目とは裏腹に、前向きでユーモアのある人物だった。叶曰く顔は怖いけど面白くて優しいお父さん。基本的に助手は雇わない主義で、捜査などはほとんど自力で行っていたという。

10年前に、交通事故で妻と共に一人娘を遺して死亡。死に際に叶に言葉を遺し、自分が長年愛用していた帽子を渡した。その後叶は、彼の妹の家に預けられた。

名前の由来は、アーサー・コナン・ドイルと『名探偵コナン』の蘭。

 

 

 

 

 

1章の解説編は以上となります。

 

尺が余っちゃったので、事件当時にそれぞれのキャラが何をしていたのかを解説していきたいと思います。

まあ、ほとんどのキャラが嘘をついてなかったので、解説するまでもないと思いますが。

 

穴雲星也…春部屋で癒川と建物内の構造や脱出方法について話していた。

入田才刃…古風コンビと共に食堂で折り紙を折っていた。うまく折れずに苦戦していたらしい。

景見凶夜…白鳥が書いた紙で研究室におびき出され、そこで刺殺された。

神座ゐをり…入田、不動院と一緒に折り紙を折っていた。

狛研叶…『バートン伯爵のティータイム』を読んでいた。1巻の半分まで読んだところで寝た。

財原天理…大浴場で温泉卵を作っていた。ついでに、空いた浴槽にコーラを入れてコーラ風呂にしようとしていたらしい。

栄陽一…白鳥に殴られて気絶。拘束されて、物陰で眠っていた。故意の就寝ではなかったため、おしおきの対象とはならなかった。

詩名柳人…秋部屋で日暮や翠と一緒に歌っていた。一度飲み物を買いに娯楽室に行き、そこで白鳥が栄を殴る音を聞いていた。

白鳥隥恵…栄を殴った後、景見を栄の研究室におびき寄せて刺し殺した。

翠…秋部屋で詩名や日暮と一緒に歌っていた。詩名が途中で部屋を抜け出した事は把握している。

朱雪梅…娯楽室で羽澄のダンスを見ていた。白鳥や羽澄が娯楽室を抜けた事や、詩名が途中で娯楽室に来た事を把握していた。

羽澄踊子…娯楽室で踊っていた。途中でトイレに行き、白鳥とすれ違った。その時、変色した白鳥の指輪を見ていた。

日暮彩蝶…秋部屋で詩名や翠と一緒に歌っていた。詩名が途中で部屋を抜け出した事は把握している。

不動院剣…神座と共に入田に手帳の操作方法を教わった礼にと、神座と一緒に入田に折り紙の折り方を教えていた。

舞田成威斗…モノクマやモノベルに対抗するため、夏部屋で筋肉をいじめ抜いていた。

癒川治奈…春部屋で穴雲と建物内の構造や脱出方法について話していた。

ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン…冬部屋で、祖国の安否について考えていた。

 

お読みいただきありがとうございました。



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第2章 解説編

今回も章解説いくでー。

今回も例の如く50割自己満ですが、退場者達の裏設定が描かれております。

ほいスタート。

 

 

 

【超高校級のダンサー】羽澄踊子

2章シロ。明るく面倒見のいいギャル。本人曰く、頭より先に体が動くタイプ。割と常識人で、姉御肌。本当はボケたいツッコミさん。最新のCGを使ったダンスから伝統的な民族舞踊まで、どんなジャンルのどんなに超高難易度のダンスも余裕でこなす運動神経の持ち主。自称バカだが、実は意外と地頭はいい子。日暮と一番仲が良く、朱や白鳥、男子は栄や入田などと仲良くしていた。クラスメイト達の悩みを聞くいいお姉さんポジションだったが、あえなく退場。

実は八ツ阪小学校の卒業生で、日暮の元クラスメイト。幼少期は身体が弱く、前の医者には大人になれないと言われ、ダンサーになる夢を諦めていた。しかし、日暮の父親の治療を受け徐々に回復し、今では世界で活躍するダンサーとなる程の体力を手に入れた。闘病中に日暮に励ましてもらったため、日暮にはとても感謝していた。それからはお互いに宝物のアクセサリーを交換し合うくらいの親友になった。白黒のピンは、元は日暮のお気に入りのピン。

小学校で事件が起こった日、たまたま体調不良で学校を遅刻した事で、ハイドの餌食とならずに済んだ。しかし、日暮の人格が戻った瞬間に現場に偶然居合わせてしまった。日暮に大恩があった羽澄は、自分がハイドだと主張する事で日暮を庇った。その後、世間から殺人鬼だと決めつけられてしばらくの間家族もろとも迫害に苦しんだが、日暮を守るために自分が犯人だと言い続けた。しかし、家族を含む一部の人間は彼女が真犯人でない事に気づいており、彼女が迫害を受けている最中も彼女に優しく接していた。ほとぼりが覚め、ほとんどの人間が彼女の事を忘れた頃、たまたま友人に勧められて上げた自身のダンス動画が話題となった。それからは、自分の努力と才能で名声を手に入れ、事件によって自分や自分の家族に抱かれたマイナスイメージをかき消すほどの人気者となった。今ではかつて諦めた夢を自分の力で叶え、テレビ出演や大会出場の依頼が殺到する程の有名人となっている。将来の夢は、世界一のダンサーになって、自分を支えてくれた人達に恩返しをする事。

そして、たまたま同じ監獄に収監された日暮とまた仲良くなったと思ったのも束の間、あっけなく殺されてしまう。彼女に落ち度はほとんど無かったが、不運な事に都合のいいように自分の記憶を解釈した日暮に逆恨みされて殺されてしまった。

 

※以下どうでもいい設定

実は初期設定では彼女がクロになる予定だった。しかし、意外性を重視した結果、シロとして退場させる事に。

髪は染めている。正体を隠すために中学時代から染めた。元の色は黒。また、小学生までは地味な見た目で、優等生だった。

ギャルだと言われているが、実は意外と真面目で几帳面。座学の成績はあまり良くないが地頭は良く、要領の良さや判断力に長けている。成績が悪いのは、ダンサーとしての活動で忙しくてあまり勉強をしないかららしい。真面目な場面では、ギャル語はほとんど出ない。

姉キャラと思いきや実は妹キャラ。ピアニスト志望のイケメン兄がいる。兄の名前は鍵人(ケント)。仲はすこぶる悪いらしい。兄の話になると、元々良くない口調がさらに悪くなる。

メロンパンとクリームパンが好物。逆にバナナが苦手。本人曰く、『口当たりとか味とか全部ひっくるめてゲロマズ』らしい。

誕生日の由来は、POPの日(9月9日)。

キャラ作りの時に参考にしたキャラは、本家の江ノ島盾子(外見のみ)。

中身のイメージは『キミガシネ』のレコ。

名前の由来は、『弾む』と『踊る』。ギャップ萌えが好きなので、ちょっと古臭さを出すために『子』をつけた。

声のイメージは『ToLOVEる』のナナ。

 

 

 

【超高校級の生物学者】日暮彩蝶

2章クロ。両親が医者のお嬢様。少しのんびりとしており、忘れっぽい。穏やかで大人しい子だと思われがちだが、実は意外と芯が通っていて行動力がある。お転婆で、運動こそあまり得意ではないものの、危険な事とかも平気でやる。たとえ相手が誰だろうと気おくれせずコミュニケーションを図っていく社交派の1人。インコの翠が一番の友達。才監学園の中では、羽澄が一番の仲良しだった。

実は八ツ阪小学校の卒業生で、羽澄の元クラスメイト。幼少期は身体が弱かった羽澄を、医者の父親と一緒に治療と応援をした。それからはお互いに宝物のアクセサリーを交換し合うくらいの親友になった。頭の蝶の髪飾りは、元は羽澄のお気に入りの髪飾り。

小学校で事件が起こった日、学芸会でやる白雪姫の役決めでクラスが揉めていた。仲裁に入ろうとしたところでケンカしている生徒に殴られて気絶してしまい、その時現れたハイドがクラスメイト全員を虐殺してしまった。そして再び目が覚めるところを羽澄に見られてしまい、羽澄は彼女を庇って殺人鬼の役を演じた。一方で、日暮の両親は、ハイドの事を知っておきながら全て無かった事にして罪を羽澄に押し付けた。日暮自身も全てを忘れて両親に甘やかされながら育った。将来の夢は、世界中の生物を絶滅の危機から救う事と、どの教科書にも載るほどの偉人になる事。

そして、たまたま同じ監獄に収監された羽澄とまた仲良くなったと思ったのも束の間、動機ビデオによって当時の記憶を一部取り戻し、クラスメイトの復讐のために羽澄を殺害してしまった。本当は、当時殺されたクラスメイト達にしか心を許しておらず、それを全員殺した羽澄を恨んだが、モノクマの用意した追加のビデオによって羽澄が自分を庇ったという真実を知り、最期は自分の犯した罪の重さに絶望して死んでいった。

今回のおしおきは、彼女の好きな動物をイメージしたものになっている。彼女の好きな動物に骨も残らず喰い殺されるという、悲惨な最期を迎えた。初めは色んな動物に喰い殺させる予定だったが、おしおきの尺が短くなってしまうので変更した。アップ時の映像は普通の動物園だが、ルーズ時に映される動物園の外装は、実はある建物がモチーフになっている(後述)。また、今回のテーマが弱肉強食という事で、狩猟の要素も織り交ぜている。自分が狩るか喰われるかという2択を迫るというもの。日暮は、どうしても翠を撃てなかったが、父親から貰った宝物を壊された事で心が壊れ、最期は動物をいたぶって楽しむという残虐な性格になってしまった。ちなみに、もしここで日暮が翠を撃ち殺していたら、日暮が毒ガスの餌食になっていた。

 

※以下どうでもいい設定

実は初期設定では彼女がシロになる予定だった。しかし、意外性を重視した結果、クロとして退場させる事に。

小学校までは運動神経も良く、むしろ羽澄より活発だった。中学校に上がったあたりから、ハイドの事で両親に外に出るのを控えるように言われたため、あまり外で遊ばないようになった。また、研究で忙しくなってほとんど体を使う機会がなくなったので、いつの間にか運動が苦手になったらしい。

朝が弱くて忘れっぽいというのは、二重人格の伏線。

また、本家の腐川とはいくつか共通点がある。

(例を挙げると、どちらも中の人がプリキュアに登場する国のお姫様を演じている。)

動物とならほとんどの種類の動物と仲良くなれるが、動物によって得意不得意がある。

鳥や虫が友達になりやすく、逆にクジラやシャチなどの海の大きな生き物は、心を通わせるのが難しいらしい。

好物は卵なしのパンケーキ。肉料理、特に鶏肉は嫌いらしい。本人曰く、『鳥さん達がかわいそうだから』。

誕生日の由来は国際生物多様性の日(5月22日)。

名前の由来は、ヒグラシとアゲハチョウ。

キャラ作りの際に参考にしたキャラと声のイメージは、『マギ』のピスティ。

見た目のイメージで参考にしたのは、『人類は衰退しました』のわたしと、『スイートプリキュア♪』の調辺アコ。

 

 

 

【その他のキャラクター】

 

 

 

セキセイインコ。日暮の一番の親友。震災で家族と飼い主を失い、日暮に拾われた。それからは、彼女の良きパートナーとなっていた。明るくて人懐っこい。ケンカが嫌いで、ケンカしているところを見ると泣いたり怒ったりする。歌が大好き。心を許した相手には、話をしてくれる。日暮以外には、狛研と癒川と詩名が好き。逆に、嫌いな人は白鳥、ラッセ、財原。また、インコの幼鳥とは思えないくらい頭がいい。年齢は、人間で言う15歳〜17歳くらい。

日暮が羽澄を殺そうとした時、羽澄の言い分を聞くよう説得したが、日暮がハイドに唆されたため失敗。結局日暮の羽澄殺しを手伝ってしまい、日暮を庇うために保管室の鍵を飲み込んだ。しかし、逆にそれを財原に利用されて、日暮に自供させるためのエサにされてしまった。学級裁判の後、日暮のおしおきを止めるために連れ去られる彼女についていったがモノベルに捕まった。最終的には、モノベルに薬を打ち込まれて猛獣と化し、日暮を骨も残らず喰いつくして毒ガスで殺された。

今回のおしおきに使われた薬は、身体機能を爆発的に向上させ、判断力を低下させ、さらには異常なまでに食欲を促進するというとんでもない薬物。この薬を服用すると、相手が家族だろうと親友だろうとお構いなしに食欲が満たされるまで食事を続ける野獣と化す。さらに、毒ガスでのおしおきシーンは、動物の殺処分の様子がテーマになっている。毒ガスは、神経系と出血系の猛毒をミックスしたモノクマ印のオリジナルブレンド。なお、おしおきに使われた動物園の外見は、アウシュビッツ強制収容所をモチーフにしている。最初はモノクマをナチス兵風の格好、モノベルを保健所の職員風の格好にする予定だったが、さすがに色々とアウトなので、飼育員と白衣のインチキ博士という格好に変更した。

誕生日の由来はみどりの日(5月4日)。

好物はヒエ入りのご飯。

名前の由来は、緑だから。

声のイメージは『パワーパフガールズ』のバブルス。

 

 

 

【超高校級の人狼】暁裴駑

通称ハイド。性別は女。誕生日5月22日、身長146cm、体重37kg、胸囲77cm、血液型O型。ICVは大久保瑠美。月夜にのみ現れる殺人鬼。無差別に人を斬り裂いては、闇の中に消えるという。夜にしか現れない事と、常人離れした身体能力を生かした犯行手口から、【超高校級の人狼】と呼ばれるようになった。誰にも正体が分からず、存在そのものが都市伝説と化していた。しかしとある調査の結果、ハイドが現れる場所には必ず日暮がいることがわかった。

実はその正体は、日暮が完全に眠りについた時に現れる日暮の裏人格。精神に占める領域の割合は、日暮よりも大きい。そのため、一方的に日暮の精神を支配している。しかし、日暮の精神の影響もわずかに受けており、本人は日暮の怒りが無いと殺人行為に移れないため、実際は日暮の気に入らない人物を選んで殺している。性格は、日暮と真逆で残忍で狡猾。コロシアイもゲームだと思っており、コロシアイを楽しむために日暮に羽澄を殺させた。最期は、眠ったまま翠に喰い殺された。

実は、ハイドが主人格。そのため、精神の主導権はハイドが握っている。最初は大人しくて口数の少ない人格だったが、交代人格の明るくて頭のいい日暮ばかりが周りに可愛がられ、自分が除け者にされるようになってから豹変し、極度の人間嫌いになった。そして、夜な夜な街を出歩いては人を斬り裂く殺人鬼と化した。彩蝶とは真逆で、筋力や素早さは化け物級。日暮が羽澄を殺せたのは、彼女が力を貸していたため。

才能名に『狼』が入っているのは、生物学者の日暮と関わりがある事の伏線。

名前の由来は、日暮れの反対の暁と、『ジキル博士とハイド氏』のハイド。

声のイメージは『ガリレイドンナ』の神月・フェラーリ。

 

 

 

 

 

解説編は以上となります。

ついでに、事件当時のアリバイまとめ。

需要があるかは知らん。

穴雲…部屋で本を読んでいた。

入田…倉庫で歯磨き粉とお菓子を選んでいた。

神座…部屋で寝ていた。

狛研…部屋で寝ていた。

財原…部屋で寝ていた。

栄…映画館でエッチな映画を鑑賞中。途中朱と会った。

詩名…部屋で寝ていた。

翠…日暮の犯行を手伝っていた。

朱…翌日のダンスショーの準備のため、研究室にいた。

羽澄…ダンスの練習中に日暮に殺された。

日暮…ダンスの練習をしていた羽澄を殴って気絶させた後、流しで溺れさせて殺した。

不動院…部屋で寝ていた。

舞田…部屋で寝ていた。

癒川…部屋で寝ていた。

ラッセ…部屋で本を読んでいた。

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。



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第3章 解説編

3章無事終わったから解説いくよー。(ドンドンパフパフ〜)

100割自己満足なんで、読み飛ばしていただいても構いません。

ほないくでー。

 

【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗

3章シロ。クレイジー侍の餌食となった被害者その1。巨漢のヤンキーだが、兄貴肌で親しみやすい。俳優の米里軒咲磨の影響を受けてヤンキーになった。仲間想いで正義感の強い性格。女子供や一般人には自分からはケンカを売らないと決めている。しかし頭脳労働が得意ではなく、少し天然ボケな一面がある。景見の事を相棒と呼んで彼に懐いており、波長が合う不動院や朱とも仲良しだった。不動院、朱と共に体育会系トリオと呼ばれていた。ケンカに関しては幼い頃から天賦の才能を発揮しており、小学生の頃にクラスのいじめっ子を成敗してからは数々の伝説を作り上げた。中学時代には県内のヤンキーのトップに上り詰め、【超高校級の喧嘩番長】と呼ばれるまでに至った。ケンカ以外にも、怪力で運動神経抜群。また、パイプで100発殴られても倒れない程タフ。彼に落ち度はほとんどなかったが、不動院に惚れられた結果彼女に騙された上に訳の分からない理由で殺され、あえなく退場。

秘密を見たのは朱で、内容は『舞田成威斗は臆病者である』という内容だった。実は、10歳年上の絃凪(イトナ)という名前の兄がおり、彼は弟の成威斗とは対照的に虚弱体質ながらも誠実で真面目な人物だった。彼は他校の生徒と喧嘩を繰り返してはボロボロになって帰ってくる弟に心を痛め、不良達に弟の代わりに謝りに行ったが、逆ギレした不良にリンチされてしまい、植物状態となってしまった。舞田は、兄が植物状態になった事に関して自責の念を感じていたが、兄に会う事で自分の罪と向き合わなければならなくなる事を恐れ、兄に会いに行く事もないまま自分の罪から逃げ続けていた。不動院に秘密を打ち明けられた事で、自分も変わるために秘密を彼女に打ち明け、外に出たらまず兄に謝る決意を固めた。しかし、その願いは叶わないまま命を落とす事となった。

 

※以下どうでもいい設定

元々クロにする予定の生徒の候補として挙げていた生徒だったが、意外性を重視した結果、急遽シロとして退場させる事に。

また、死因は最初は絞殺ではなく斬首だった。

ちょうど不動院の近くにいるポジションだったので、クレイジー侍の餌食になってもらう事になった。

ヤンキーだが、時間や約束はきっちり守る、正しいと思った事は貫き通すなどのある種の真面目さや潔さは兄譲り。

サングラスは、小学生の頃に米里軒に憧れて、小遣いを貯めて彼と同じものを買った。

ケンカでヒビが入っても使い続けており、今では彼の大切な宝物のひとつとなっている。

自分の格好に謎の自信があり、周囲から酷評を受けている事には全く気付いていない。

むっつりスケベ。女体にはめっぽう弱く、ちょっとした事ですぐに鼻血を吹くという古いリアクションを披露する。

かなり鈍感。最期まで不動院に好意を寄せられている事に気付かなかった。しかし、仲間想いであるため仲間の気遣いなどにはすぐに気づく。狛研が白鳥の死後何事もなかったかのように振る舞って周りから責められた時も、唯一、狛研の気持ちを汲んだ彼だけは彼女の味方をした。

牛丼が好物。好き嫌いはほとんど無いが、唯一嫌いな食べ物はラッセが作ったサーモンパイ。(本人曰く、アレはマジで不味すぎて思い出したくないとの事。)

誕生日の由来は、バイクの日(8月19日)。

名前の由来は、ダイナマイトのアナグラム。

キャラの作成の時に参考にしたキャラは、『ジョジョの奇妙な冒険』の東方仗助。

声のイメージは、仗助又は『ワンパンマン』の金属バット。

 

 

 

【超高校級の曲芸師】朱雪梅

3章シロ。クレイジー侍の餌食となった被害者その2。北京から来た女の子。「アチョー」が口癖。カタコトでたまに中国語まじりの日本語で話す。王神美というパフォーマーの影響を受けて、曲芸師になった。運動神経抜群で、危険な芸も余裕でこなす芸達者。幼い頃は大きな雑技団に見習いとして所属していたが、卒業してからは自分の雑技団を立ち上げて仲間と共に数々の芸をこなし、世界的に有名なパフォーマーの一人となった。サーカス以外にも、料理や拳法の心得があったりと、割と多才。大の大人を倒せるほど強い。好奇心旺盛で、初対面の相手にも臆せず接していく社交派の一人。正義感の強い性格で、特に変態が嫌い。変態(特に栄や財原)を、父親から教わった拳法で撃退していた。栄以外は、好き嫌いせずみんなと仲良く接していたが、特に舞田や羽澄などと仲が良かった。不動院、舞田と共に体育会系トリオと呼ばれていた。彼女に落ち度はほとんどなかったが、運悪く不動院の犯行を目撃してしまい、逆上した彼女に追われる羽目になった。不動院の秘密を知らなかった朱は女子更衣室に逃げ込んでやり過ごそうとしたが、更衣室に押しかけてきた不動院にあっけなく斬り殺された。

秘密を見たのは狛研で、内容は『朱雪梅は人を殺した事がある』というものだった。実は見習い時代、同じ雑技団に所属していたライバルがいた。他の団員に悪態をつく彼女を見て痺れを切らした朱は、彼女を懲らしめるためにあえてショーで使うロープが使い物にならない事を教えなかった。ロープが切れそうになっている事を知らずにショーに出演したライバルは、綱渡りの途中でロープが切れて、そのまま転落死した。朱はその事で自分自身を人殺しだと責めていたが、狛研と話をした事で前向きになり、舞田の秘密も受け入れた。

 

※以下どうでもいい設定

元々、2章シロとして退場させる予定だったが、もう少し出番をあげたいという事で、3章シロに変更した。

そろそろ中華枠が欲しいと思って生み出し、どうせならという事でぱっつん褐色巨乳と、萌え要素をふんだんに詰め込んだキャラクター。

敬語で話しているのは、教科書で習うレベルの丁寧な日本語しか知らないから。素の喋り方は、むしろ少しキツめの口調。

赤い中華服は、パフォーマンス用の衣装。私服は割と普通。作中一巨乳。

雪兰という10歳の妹がいる。姉妹でとても仲が良く、気分がいい時はよく妹自慢をする。ちなみに彼女が変態を蛇蝎のように嫌っているのは、美少女の妹がよくちょっかいを出されるためという裏設定がある。

頭の鈴は、雑技団を立ち上げた時に記念として妹にプレゼントしてもらったもの。

男友達は多い方だが、どちらかというと百合寄り。白鳥や神座などの可愛い系の女子が好き。茶柱ちゃんとは違って男子をものすごく毛嫌いしているわけではないが、相手が変態だと分かった途端ゴミを見るような目で接してくる。

小籠包が好物。反面、ラーメンが苦手。(本人曰く、うまく啜れないから。)

誕生日の由来は、中華まんの日(1月25日)。

名前の由来は、中国人に多い名前で、可愛らしい名前。

キャラの作成の時に参考にしたキャラ及び声のイメージは、『ストリートファイターⅡ』の春麗。

 

 

 

【超高校級の侍】不動院剣

3章クロ。通称クレイジー侍。3章終了まではずっと男子のフリをしていたが、裁判中に女子である事が発覚。いわゆる雄んなの娘。本家の不二咲ちゃんが男の娘だったので、じゃあ今回は男装の麗人を登場させようという事で生み出したキャラクター。

世界屈指の剣豪で、その剣技はまさに神業。彼女と戦った者は、ほとんどが何をされたのかわからないまま斬り伏せられるという。名家で育ち、礼儀作法を叩き込まれた事もあってか、礼儀正しく紳士的。また、正義感が強く仲間想い。一方で、箱入り娘であるためか、流行などには疎く、たまに天然な一面が見られる。舞田、朱と共に体育会系トリオと呼ばれていた。和風同士、神座と仲が良かった。

彼女の家は、平安時代から続く名家で、必ず長男が跡を継ぐという決まりがあった。しかし、彼女の母親が流産し、父親が病死したため、不動院家の血を継ぐ人間が剣だけになってしまった。そこで彼女の父親は、家来達に遺言を遺し、彼女を男として育てさせた。母親は流産した事で気がふれてしまい、家から一歩も出られないようになってしまった。その影響からか、剣自身も闇を抱えるようになった。

才監学園に閉じ込められて仲間と共に過ごしているうちに舞田に惹かれていき、自分の秘密を知ってなお黙っていてくれた舞田に初めて恋をした不動院は、徐々に彼へ狂気とも呼べる程に強烈な恋心を抱くようになる。最終的に、彼を永遠のものにしたいという理由で彼を絞殺。そしてその後、それを見ていた朱を殺害。最期は、恋に狂って高笑いしながら処刑された。

おしおきは、江戸時代の拷問及び処刑をイメージしたもの。

背景の城は江戸城がモデルになっており、モノクマのコスプレのモデルは徳川家康。

おしおきシーンで登場した刑罰は、引き回し、鋸挽き、釜茹で、打ち首、獄門をメドレーでやるという欲張りセット。

これくらいやんないと、罪と罰のバランスが取れないと思ったんだ、うん。

あとは、釜茹でだけだと真宮寺クンと似通ってしまうため、刑罰の種類を増やした。

傍から見ると料理してるみたいになってしまったのはたまたま。

背景を桜吹雪にしたのは、血飛沫が飛び散る様を連想させるため。

 

※以下どうでもいい設定

初めから3章狂人枠で登場させる予定のキャラクターだった。普段真面目なキャラほど狂人化させたら面白くなりそうだという事で狂人枠に。普段冷静で恋愛に無頓着そうな人物が実はヤンデレだったというオチが書きたかったので、彼女の殺しの動機が色恋沙汰に決定。作者自身の推しでもあるので、かなり設定は凝った方。和装で日本美人で男装女子という、作者の性癖をふんだんに詰め込んだキャラクター。

普段は紳士的な好青年だが、本性はヤンデレでサイコパス。おまけに、極端なサドマゾ両刀というブッ飛んだ性癖の持ち主。

女子に対して恋愛感情が湧かず、興奮もしないのを栄に女嫌いだと勘違いされた事がある。

エロに対して免疫がほとんど無く、いかがわしいものを見たらすぐさま一刀両断するほど。(しかし彼女には二面性があり、後述のような設定もある。)

実は、作中女性陣の中で一番美人。(白鳥や神座は可愛い系。)実はかなり巨乳。

左利き。幼い頃から矯正されてきたため右手も使えるが、うっかりすると左手が出てしまうとの事。舞田を殺した後、うっかり左手で結んでしまい、それが彼女がクロだという決定的な証拠となった。

刀は父親から譲り受けた宝物で、簪は母親から譲り受けた宝物。

流行に疎く、精密機器はほとんど使えない。自販機の使い方がわからない程の箱入り。

筑前煮が好物。反面、ジャンクフードが苦手。

ちなみに本編では全く触れなかったが、実は人を殺す事に興奮を覚えるド変態という設定がある。設定が固まるまでの案の一つに舞田の死体をオカズに(お察しください)をするという設定がある。しかし、さすがに本編で語ったら色々とマズいと判断し、裏設定という扱いになった。

誕生日の由来は忠臣蔵の日(12月14日)。

名前の由来は、由緒正しい日本人の苗字。下の名前は、侍っぽいイメージで、ギリギリ女性名でも通じそうな名前をチョイス。

キャラの作成の時に参考にしたキャラは、『ルパン三世』の石川五ェ門と『キングダム』の羌瘣。(雰囲気のみ。)

声のイメージは、普段は『Fate/Grand Order』のビリー。本性時は『Axis Powers ヘタリア』のベラルーシ。

ちなみに女の子バージョンのイメージはこんな感じ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

はい、尺が余っちゃったので恒例のアレいきまーす。

事件当時のアリバイまとめ。

需要があるかは知らん。

穴雲…部屋で癒川の看病を受けていた。

入田…研究室の整理をした後、朱の姿を見てすぐに食堂へ向かった。

神座…詩名と一緒に春部屋を散歩していた。

狛研…財原とチェスで勝負をしていた。

財原…狛研とチェスで勝負をしていた。

栄…昼食の下ごしらえをしていた。

詩名…神座と一緒に春部屋を散歩していた。

朱…昼食の支度を終えた後、舞田を呼びに4階に上がったが、そこで不動院の犯行を目撃してしまい、殺害された。

不動院…体育館で舞田を殺害した後、その様子を見ていた朱を殺害。

舞田…サウナに行った後、体育館に行った。そこで不動院に殺害された。

癒川…部屋で穴雲を治療していた。

ラッセ…冬部屋で考え事をしていた。

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。





あ、そうだ。
今活動報告で、人気投票をやっております。
期限は8月15日までです。
you投票しちゃいなよ!
…すいません調子に乗りました。


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第4章 解説編

えい解説いくよー。

え?需要?そんなもん知らん。

じゃあ解説いくよー。(ドンドンパフパフー)

なんでローテンションかって?

暑いんだよ。

 

【超高校級の工学者】入田才刃

今回のシロ。引きこもっていたにもかかわらずあっさり殺されたかわいそうな子。

天才的な頭脳を持つ工学者で、今まで受賞してきた賞は数知れず。史上最年少のノーベル賞の受賞者でもある。また、工学者であるためかプログラミングやゲームにおいても圧倒的な実力を誇る。普段は運動音痴だが、何故かゲームになると信じられないほどキレのある動きをする。デジタルのゲームでは敵無しだが、アナログなゲームは割と普通。

性格は非常にわがままで傲慢。自分の才能が他を圧倒している事を自覚しており、その事を鼻にかけて周りを見下したような態度を取る。しかし、それはあくまで自分の弱さを隠すために自分を大きく見せているだけで、本当は臆病な性格。三回目の学級裁判で、自分より強い3人があっさり殺された事で恐怖心に駆られ、部屋に引きこもるようになった。全く思いやりがないわけではなく、不動院や神座に手帳の操作方法を教えるなど、意外と面倒見がいい。また、ある程度の実力があれば普通に認める。精神的には他の生徒に比べてかなり幼く、見た目相応。常にハイテンション。案外バカ正直で騙されやすい。自分が有利な時はマウントを取ったり挑発したりと高圧的な態度が目立つが、逆に自分が不利になった途端に泣き出したりパニックになったりする。追い詰められると本来の弱々しい性格に戻り、さらに極限まで追い詰められると赤ちゃん返りする。煽り耐性は低め。

本人なりに科学者としての信条を重じており、人類への貢献のために自分の才能を使うと決めている。また、研究を手伝ってくれた科学者や家族の事までは見下しておらず、むしろ尊敬の念を抱いている。将来の夢は、憧れのSFの世界を再現する事。

実は、体力の無さや身体の小ささを理由に幼い頃からずっといじめられ続けたという過去を持つ。しかし、弟にある研究者を紹介してもらい、彼と一緒に研究をした事で、世界中で入田の才能が有名になった。入田と一緒に研究をしたいという科学者が続々と現れ、彼らと共に研究を続けた事で、数々の賞を受賞してきた。最初は単なる好奇心で研究に勤しんでいた彼だったが、知名度が上がるたびに媚びを売る周りの人々を見て、少しずつ性格が歪んでいく。元々は内気で引っ込み思案な性格だったが、今ではかつて自分をいじめていた元クラスメイトを見下してバカにするなど、横柄な態度を取るようになった。しかし、本当は今でも自分の弱さにコンプレックスを抱いており、たまにそれが表に現れたような言動をする。

最期は、死の恐怖に支配されて部屋に引きこもるものの、ラッセの罠にかかって射殺されてしまった。

 

※以下どうでもいい設定

割と最初からシロとして殺す予定だった生徒。これは、彼の本性剥き出し&反論ショーダウンとおしおきシーンを練るのが難しかったから。

前々作のエンジニア、前作の操縦士に続き、機械に強い生徒が欲しいと思って生み出したキャラクター。初期案では白衣を着ておらず、代わりに鼻に絆創膏を貼っていた。

ショタ枠。男子の中では詩名の次に背が低い。背が伸びると思って思い切って大人用の白衣を購入したが中学の頃から1cmしか伸びず、アンバランスな格好になってしまった。背を伸ばすために日々研究を重ねている。常にあらゆる研究において大成功してきた彼だったが、何故か背を伸ばす研究だけは尽く失敗している。ちなみに、弟の才牙は才刃と対照的に高身長のイケメン。一応才牙の兄であるためか、割と面倒見はいい。

栄、財原と共に悪だくみをする変態トリオの一人。何故かエロい事に関しては達観しており、女子をエロい目で見る事に関してはプロの域に達している。しかしその見た目からか、他の二人とは違って女子からはあまり咎められない。

運動音痴で手先が不器用でメシマズと、頭の良さとゲームの腕を除けばかなりのポンコツ。

実は重度のゲーム&特撮オタク。いい歳こいて小学校低学年向けの特撮番組『ライダーマンマスク』のショーを最前列で見るほど。

飴玉が好物。白衣のポケットにはお気に入りの飴が常備してある。ちなみに飴は噛む派。氷も食べる派。

反面コンソメ味のお菓子が苦手(小中学校で散々買いに走らされたかららしい)。

誕生日の由来はインターネット記念日(11月21日)。

キャラ作成時に参考にしたキャラは、ワンパンマンの童帝。

名前の由来は、入(in)+田(タ)でインターネット。下の名前は、英単語のcyberから。

声のイメージは、『サモンナイト4』のリューム。

 

 

 

【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン

今回のクロ。散々好き勝手やって命乞いまでした挙句に惨殺された救いようのない人。

北欧の小国シルヴェンノイネン王国の若き国王。父親の先代国王が亡くなった直後に即位し、持ち前のカリスマ性で国を大きく成長させた。若干独裁気味ではあるが、具体的に改善案を出してそれを実行したり自らの出費を惜しまず国民を守ろうとする姿勢からか、支持率は非常に高い。王とはいえ一応16歳の少年なので、表向きは王立の高等学校に所属している(無論、実際に通う機会はほぼ皆無)。そのため現役高校生であるという条件をクリアし、【超高校級の国王】として希望ヶ峰学園にスカウトされた。

職業柄、判断力や行動力に長けており、比較的冷静。王族であるためか非常にプライドが高く猜疑心が強い。すぐに敵と味方の境界線を引きがち。自分の国の国民に対しては深い愛情と敬意をもって接しているが、それ以外の人間には基本的に興味があらず、他者からの意見や反論は受け付けない事が多い。しかし、合理的な考えを重じているため、相手が理にかなった事を言っていれば一応聞く耳は持つ。典型的な功利主義者で、過程より結果を重視しがち。結果を出す者に対してはそれなりに評価するが、逆に行動に結果が伴わない者に対しては辛辣な評価をする。長年王として国を導いてきた経験からか、他の生徒に比べて達観しており、物事の核心を突くような発言も多々見られる。カリスマ性に富んだ人物として評価されているが、その行動の早さと実行力の高さは、犠牲を払う事を一切躊躇しない潔さに起因している。一国の王とはいえ、実は精神的にはあまり普通の高校生と大差はない。自分の国の知名度の低さに傷ついたり、挑発されたら女子相手にもムキになるなど、むしろ幼い一面もある。

3回目の学級裁判が終わった後、突然穴雲から離反し、同様に離反した栄・詩名・神座の3人は彼に従うようになり、生徒達は互いに対立するようになった。才監帝国なるものを築き、3人を独裁的に支配した。彼の支配は徐々にエスカレートしていき、ついには癒川と栄に暴行を加え、狛研・穴雲・財原の3人から危険因子扱いされた。(実は、彼の独裁的な行動は、全て内通者に唆されてやった事だった。)

実は割と初めから殺人を計画していた。モノクマに滅びゆく自分の国の映像を見せられ、一度はクラスメイトを殺す事を決意した。しかし、計画がバレた時のリスクを考え、なかなか実行に移せずにいた。しかし、内通者に唆され、さらにはモノクマにゲームの乗っ取り犯の存在を仄めかされた事で、ついに入田を殺害してしまった。ついでに神座も殺す事を計画していたが、こちらは狛研が未然に防いだため失敗。

最期は、自分が導いてきた栄達3人にも見限られ、財原に冷たく突き放された事で精神が崩壊し、無様に逃げながら殺された。

今回のおしおきのトリックの元ネタは、ベルばらの番外編。女の子が銃と糸を使ってトラップを仕掛けるシーンを思い出し、跳弾と組み合わせた。

おしおきシーンのタイトルは、フィンランド語で『おお、我らの国』という意味。

走っている廊下は、ラッセがいた王宮の内装を参考に、優雅でありながらどこか不気味な雰囲気を演出している。廊下を走っている時にモノクマやモノベルに痛めつけられるシーンは、実際にあった(と言われている)拷問方法をモデルにしている。自分の足を切り落とすシーンは、アンデルセンの『赤い靴』が元ネタ。ラッセに剣を渡した少女は彼の妹。当の本人は動機の映像が撮られた時点で既に死んでいるが、希望を追い求めるラッセの元に、幻覚として現れた。最期は、愛した故郷(の幻覚)の地を踏んで焼け死ぬというおしおきシーンになっている。

 

※以下どうでもいい設定

作中キャラの中では割と推し度の高い一人。金髪碧眼に白い肌、彫りの深い顔に高い鼻と、外国人のステレオタイプを詰め込んだキャラクター。見た目が中性的な割に声が低いのが特徴。

実は、最初は生き残らせる予定のキャラクターだった。散々迷った挙句、推しだからせっかくならみんなの前で凄惨に散ってほしいと思い、クロとして脱落させる事に。初期案では王冠を被っていなかったが、軍人っぽくなってしまったので急遽キャラデザを変更。

また、初期案ではもっと独裁的な人物で、自分に盾つく者を一切許さない冷酷な人物だった。独裁者故にカリスマ性はあるが非常に残忍な性格だったが、これでもかなり温和な性格へと変貌を遂げた。平気で爪を剥いだり指を詰めたりするという設定もあったが、さすがにちょっとやりすぎだと思い、断髪というマイルドな表現に修正した(それでも十分残酷な仕打ちである事に変わりはないが)。

職業柄語学のレベルが非常に高く、外国人とは思えない程日本語が上手。同様に約40の言語を現地人と遜色ないレベルで扱える。また、テーブルマナーや芸術など、多岐にわたる技能を身につけている。ただし料理だけは壊滅的。作中キャラの中で一番ひどく、手料理で景見を殺しかけた。

基本的に才監学園のクラスメイト達を自分より格下だと思っている。そのため、名前で呼ばずあだ名で呼んでいる。ただし、稀ではあるがある程度認めた相手はフルネームで呼ぶようにしている。

あまり極端ではないものの、男尊女卑を思わせるような発言が目立つ。女性を見る目が厳しく、特にうるさい女が一番嫌いとの事。

白鳥とは仲が悪く、事あるごとに対立していた。しかしラッセ自身は彼女の事を、本音で語り合える数少ない友人として認めていた(だが嫌い)。

潔癖症。手袋を付けているのと、最初に栄の手料理に抵抗感を抱いたのはそのため。

好物は、ロールキャベツと自国の名産でもある鰊の塩漬け。

反面パスタ料理が嫌い(生理的に受け付けないとの事)。

誕生日の由来はフィンランド独立記念日(12月6日)。

名前の由来は、フィンランド語の名前で高貴なイメージの名前。

声のイメージは、『十二大戦』の失井。

 

・シルヴェンノイネン王国について

作者が作った架空の国家。フィンランドの北にある島国。ラッセが治めている国。

太古に存在した幻の一族シルヴェナを起源とする小国で、昔から侵略者達に狙われ続けたという歴史を持つ。

地図でも見落とされがちで、他国からの知名度は非常に低い。

工業や農業に力を入れており、鰊とウォッカが名産。食料自給率はほぼ100%。

EU加盟国。公用語はシルヴェンノイネン語(文法・語法はフィンランド語に酷似している。フィンランド語の方言と解釈される事もある。)。

同じくヨーロッパのノヴォセリック王国とは古くから同盟関係にあり、先代国王とノヴォセリック王国の前任の外務大臣(詳しくは前作参照)は友人同士だった。

 

 

 

ほいじゃーアリバイ説明タイムいくべー(ただの尺稼ぎ)。

まあ、言っても今回は無人トリックだったので、アリバイ自体が不成立だったわけですが。

んじゃいくべさ。

 

穴雲…たまたま食堂に来て、ラッセの暴行を目の当たりにする。ラッセを止めようとするが、彼に殴られて気絶。

入田…部屋に引きこもっていたが、うっかりドアを開けてしまい、ラッセの罠が発動して射殺された。

神座、詩名…食堂にいた。ラッセと一緒にいたが、彼の暴行を黙って見ていた。

狛研…たまたま食堂に来て、ラッセの暴行を目の当たりにした。

栄…食堂に呼び出され、逆らった罪でラッセにボコボコにされる。

財原…娯楽室でギャンブルをしていた。事件の事は全く知らなかった。

癒川…食堂に呼び出され、帝国の秩序を乱したと言いがかりをつけられて罰せられる。

ラッセ…食堂に栄と癒川を暴行し、穴雲と狛研に目撃された。(二人を暴行したのは、穴雲と狛研を食堂から出さないようにするため)

 

んじゃ5章もお楽しみに。



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第5章 解説編

おいじゃー解説いくよー。

(ドンドンパフパフー。)

 

【超高校級の看護師】癒川治奈

今回のシロ兼内通者。財原を殺そうとして返り討ちに遭い、方神の策で毒殺された…と思われていたが、実は初めから財原とグルで、彼が考えた策によって自ら死を受け入れて財原に毒殺された。

表向きは真面目で心優しく清楚な少女だが、本来の性格は弟のためなら手段を選ばない無自覚の人格破綻者。方神への復讐のためだけに生きてきた復讐鬼。自分は弟を殺されたのだからたとえ周りの人間を多少犠牲にしようと許されると本気で考えている。また、ラッセに制裁を食らった時は(完全に言いがかりだったとはいえ)一国の王に対して殺意を抱いたり、自分の目的のために栄に対して色目を使って利用したりなど、割とクラスメイトに対する態度は容赦無い。

年の離れた弟が生まれてすぐに父親が他界し、それからは母子家庭で貧乏な生活を送っていた。当の母親は自分の子供の世話をロクにせずに若い男と遊んでは酒や煙草、ギャンブルやクスリなどにお金を注ぎ込むようなクズ親だった。唯一の心の支えだった弟と共に飢えを凌ぎながら生活していたが、ある日突然弟が急病で倒れ、多額の治療費が必要になってしまう。弟の治療費を稼ぐために事情を知る店主に黙認してもらった上でバイトをしたりしていたが、それでも足りず援助交際に手を出してしまう。そして数年後、弟を治療するための金が貯まったが、もうすでに弟は他界し、母親も行方不明になっていた。その後は施設に引き取られ、弟を救えなかった無念をバネに医学の勉強にのめり込むようになる。たまたま適性があったのか、勉強を始めてからわずか1年で国家試験を余裕でパスするレベルにまで知識と技術を劇的に上げ、若き天才として医学界にその名を轟かせた。その後、大震災の時に多くの命を救った功績が認められ、【超高校級】と呼ばれるまでに至った。そしてその後まもなくして、たまたま弟と母親の死が事故ではなかった事を知り、調べを進めた結果方神の名前に辿り着いた。その日からは弟を殺した方神への復讐に燃えるようになり、希望ヶ峰学園に入学したらまず彼を殺す事を考えていた。

 

※以下どうでもいい設定

初めから5章シロとして殺す予定だったが、ここまで壮大な設定ではなく、内通者も彼女ではなく詩名にする予定だった。

元々は長めのサイドテールだったが、ラッセに髪を切られてショートヘアになった。髪型を変えてからは以前付けていた髪飾りは腕に付けていた。栄をデレさせ、ラッセに(外見だけは)気に入られ、女性陣からも白鳥以外の全員から好感を持たれる程の美少女。作中キャラの中では比較的小柄だが、その割にはスタイルが良い(Twitter版の設定ではDカップ)。

本人はいい子を演じているつもりでいるが、本来の性格は無慈悲で虚言癖のサイコパス。上記のような経験から、他人を全く信用しておらず、自分の目的のために利用する事しか考えていない。弟以外の人間は全員何人死のうと一緒だと考えている。本人は無自覚だが、周りが引くレベルで重度のブラコン。数年前に他界した治人(ハルト)という名前の弟がおり、彼を溺愛していた。

実はかなりの甘党。そのためか、基本的に彼女の作る食事は甘い。

誕生日の由来はナイチンゲールデー(5月12日)。

名前の由来は『治癒』から。

キャラ作成時に参考にしたキャラクターは、『マギ』のモルジアナと『僕のヒーローアカデミア』のトガヒミコ。

声のイメージは『魔法少女サイト』の雨谷小雨。(治療系能力持ち繋がり)

 

 

 

【超高校級の資産家】【超高校級の勝者】財原天理

今回のクロ兼シロ。方神に嵌められておしおきで退場するのかと思いきや、方神に逆トラップを仕掛けて最期の最期においしいところを全てかっさらっていったズルい奴。最期は、方神に復讐できた事で、満足げに死んでいった。お金を際限なく稼ぐ才能かと思われていたが、その本質は運勢を操るというとんでもない才能だった。本来は【超高校級の勝者】として希望ヶ峰学園にスカウトされており、世界一の資産家である事から、おまけとして【超高校級の資産家】としての称号も付与されている。

意味深な事を言い出したかと思えば急におちゃらけたりするなど、どこか掴みどころのない性格。イタズラ好きで、人をからかって和を乱すのが大好き。自他共に認めるサイコパスで、常に刺激と快楽を求める極度なギャンブラー気質。自分が楽しむためならなんでも利用したり(本人曰く人生を本気で楽しめる奴は狂った奴だけ)、興味が失せた人物に対して冷たい一言を浴びせて見限ったりなど、冷徹で狡猾な性格。虚言癖があり、平気で嘘を連発する。もちろん、そこに罪悪感は一切ない。また、非常に飽きっぽく本人も自身を気まぐれで自由人だと思っている。

しかし、根は割と単純で一途。自分なりの結論を掲げており、相手が誰であろうと自分の意見を変えず言いたい事はハッキリと言う強かな一面もある。基本的に自分と金以外の全てを信用していないが、例外として、中指の指輪は願掛けとして毎日付けていた。また、かつての初恋の人に姿形が酷似していたという理由で狛研に好意を寄せ、彼女の事は唯一信頼していた。

職業柄金に糸目はつけず、欲しいものならなんでもお金で買う主義。『世の中お金で買えないものはない』という自論を掲げており、才能などもお金で買おうとする。お金の管理が苦手で、散財癖がすごい。人生を全力で楽しむ事をモットーとしており、自分にとって面白いかどうかという判断基準で行動している。そのため面白いと判断した人はどれだけ自分にとって有害であっても手助けをするが、逆につまらないと判断した人は容赦なく切り捨てる。

両親は神子の一族だったが、暴力事件に巻き込まれて死亡し、当時まだ赤ん坊だった財原だけが生き残った。そしてその後間もなくして攫われて闇オークションで競りにかけられ、闇カジノで働く奴隷としての一生を過ごす事を余儀なくされた。しかし、故障を起こした人工衛星の落下事故によって運良く一人だけ生還し、その後成り行きで財原海理と名乗る女性の養子になり、投資で大儲けした。そして、起業や投資を繰り返して世界的な実業家として知られるようになった。中学生の頃に転校先の中学でいじめに遭っていた生徒の代わりにいじめっ子に制裁を加えていた事がある(その際に全員殺害している)。

 

※以下どうでもいい設定

作者の最推し。元々はそこまで好きではなかったが、キャラを練っていくうちに愛着が湧いて株が激上がりしたキャラクターの一人。初期案はもっとヘタレでサイコパス要素も少なかった。

元々は髪はストレートで短かったが、癖毛とメカクレという設定が付与された。高身長女顔童顔という、作者の性癖をふんだんに詰め込んだキャラクター。男性陣の中で一番美形。普段は見えないが、円らな目をしている。

名門校に通っており、文武両道な天才児(ただしサボりがち)。たいていの事は学年に一人レベルでこなせる。苦手分野については、なんとか器用に逃げる。実は中学で陸上部に入っていた事があるという裏設定があり、男性陣の中で一番足が速い。

歴代キャラクター全員の中で最年少。そのためか、末っ子気質で甘え上手。非常にあざとい。女性経験及び(前記の理由から)男性経験が豊富で、人の扱い方をよく理解している。セクハラ発言が多く、栄・入田と共に変態トリオに数えられる。性格上圧倒的にボケに徹する事が多い。

神子の子孫であるためか第六感が非常に優れており、心や未来を読む、時間を正確に把握するなどの常人離れした特技を持つが、才能の本質は勝敗を自在に操るところにある。

寝坊の常習犯。いつも眠そうにしており、立ったまま寝たりする事もある。言動が基本的に下品なため、周りから成金と呼ばれている。意外にもオタク気質。特に投資や貨幣の話になると急に饒舌になる。

趣味嗜好がやたらと子どもっぽい。好物はガ●ガリ君と炭酸飲料とTKG。反面、高級食材が苦手(美味しくもない物に高い金を払う神経がわからないから)。

誕生日の由来は財布の日(3月12日)。

名前の由来は、『財』がつく苗字。下の名前は、『万物に通ずる理』を意味する単語『天理』から。

キャラ作成時に参考にしたキャラクターはV3の王馬君と『暗殺教室』のカルマ。顔のイメージは『桜蘭高校ホスト部』のハニー先輩。

声のイメージは『Axis Powers ヘタリア』の北イタリア。

 

【超高校級の知能犯】方神冥

今回のクロ。【超高校級のアナウンサー】穴雲星也と名乗り、クラスメイト全員を騙していた。その本性は、自分の手を全く汚さずに人を唆して事件を起こす知能犯。弱冠5歳で狛研の両親を事故死させ、『NOAHS』という犯罪組織を立ち上げた。そしてその後ありとあらゆる事件を引き起こしてきたが、彼が犯人として裁かれた事は一度もなかった。収監されてすぐにモノクマ達と手を組み、ゲームの乗っ取りの機会を伺っていた。その後、内通者である癒川を財原に殺害させたが、財原が既に珀銀製の指輪を飲み込んでおり、さらに解毒剤を飲ませて珀銀中毒を誘発させてしまい、財原を殺したクロとして処刑された。

普段は品行方正な好青年だが、本来の性格は非常に狡猾かつ残忍。知能は非常に高く、特に計画力と人心掌握においては類を見ない才能を発揮している。自分が誰よりも優れていないと気が済まないナルシスト。また、精神的な面において非常に潔癖で、超がつくほどの完璧主義者。自分を絶対的な存在だと信じており、最期まで自分こそが【超高校級の勝者】だと思い込んでいた。重度の敗北恐怖症で、自分が負けたとわかると体が現実に対して拒絶反応を起こして全身に蕁麻疹が出るという特殊体質の持ち主。

幼い頃から裕福な家庭で甘やかされて育てられ、本物の『敗北』を味わった事が無かった彼は、自分を完璧な存在だと信じ込むようになる。そしてある日人を唆して事件を起こし、自分が人の運命さえも掌握しているという錯覚に快楽を覚えるようになる。そして次々と他人を唆して事件を起こしてきた彼は、【超高校級の知能犯】として裏社会中で知られるようになる。希望ヶ峰学園に入学する際、自分の正体を他人に悟らせないために穴雲星也としての経歴を偽造し、【超高校級のアナウンサー】としてスカウトされるまでに至った。

おしおきの内容は、『蜘蛛の糸』と『5億年ボタン』が元ネタ。下の沼は地獄を、上の雲は天国を表している。今までのおしおきは肉体的な罰がメインだったが、今回のおしおきは精神的な罰がメインとなっている。一見他のおしおきに比べてダメージが小さそうに見えるが、時間という概念がない空間の中でゴールが見えない崖を延々と登らされながら無限の苦しみを味わい続けるという、今までで一番エグい内容となっている。雲の上にいた人々は、実際に天国にいる人々ではなく、方神が今まで殺してきた人々。最期はその全員に蹴落とされて地獄に堕ちるという、勝利を掲げてきた彼にとっては屈辱的な最期を遂げた。

 

※以下どうでもいい設定

最初は5章シロまたは6章シロにする予定だった。【超高校級の知能犯】という設定も無く、単純に【超高校級のアナウンサー】という設定だった。

作者公認のイケメン。財原が女顔の美形なら、方神は男顔の美形。

表向きは容姿端麗・品行方正・博学多才という完璧美青年。そのため、女性陣からの印象も良かった。基本的になんでも完璧にこなせるオールラウンダー。全ての分野において、その道のプロには遠く及ばないもののそれだけで一生分の稼ぎにはなるくらいの腕前。特に、シューティングゲームとダーツが得意で、デジタルゲームのプロである入田を(入田が、相手が初心者だからと舐め切って真面目にやっていなかったとはいえ)負かした事がある。

いつもつけているメガネは伊達メガネ。役作りのために一時期つけていたものだが、気に入ったのか毎日持ち歩いている。

みんなのリーダー的ポジション。しかし、今まで人の上に立ってきたラッセと彼の正体を知っていた財原・癒川だけは、彼に優れたリーダーとしての素質が無い事を見抜いていた。

誕生日の由来はテレビ放送記念日(2月1日)。

穴雲星也の名前の由来は、アナ『穴』ウン『雲』サー『星也』。

方神冥の名前の由来は、ノアの方舟の『方』と冥王星の『冥』。

声のイメージは、『セイクリッドセブン』の鏡誠。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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