人類の大半が女性になった世界でも、Hをするのは大変なんです。 (冴木凛)
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1年・1学期編
01 始まり


 いつからこんな世界になったのだろう。

 

 今の世の中、生まれてくる子供の大半が女である。原因も分からないまま時は流れ、人類は今その数を激減させてしまっていた。

 おかげで学校は、クラスに男子一人という状況がほとんどだ。下手したら男子がいないクラスもある。生徒も教師も、おまけに事務員まで、ほとんどが女性。

 なら俺のような「男」は、どこへ行ってもモテモテハーレム。この世に現れたまさにパラダイス!

 

 いやいや……そう、では全く無いのだ。

 

※ ※

 

「だ、だめよ、こんなところじゃ」

「いいだろ。我慢できないんだよ」

「待って……」

 女の制止も聞かずに男は女に後ろを向かせると、スカートをめくりあげショーツを無理やり脱がせ始めた。

「もう、こんなにびしょびしょに濡れてるじゃないか」

「恥ずかしいから……言わないでよ……」

 男は興奮した様子で自分のズボンを下ろし、取り出したイチモツを女の秘部へと当てる。

「あんっ」

 思わず漏れた女の声に、男は興奮を隠せない。

「い、入れるぞ!」

「や、優しくして……」

 硬くなったイチモツが、女の濡れそぼった秘部に食い込んでいく。ぬちょっという卑猥な音とともに、イチモツが女の秘部の奥まで入り込んだ。

「あ、ああっ、当たってる……ジュディの子宮の入り口に、タツヤのおちんちんが、当たってるっ」

 女の卑猥な言葉に、男は我慢できず腰を振り出した。

「あっ、あっ、あっ」

 女の嬌声が倉庫の中に響き渡る。荒っぽい動きがさらに激しくなり、男はふっふっふっという息を漏らしながら、イチモツの挿入と抜去を繰り返した。

「あっ、だめ、へ、変に、なっちゃう」

「お前のオマンコ、締まりが、最高だな!」

「あ、いやっ、来るっ、来ちゃうっ、ああっ」

「お、俺もイキそうだ」

「出して! ジュディの中に、いっぱい出して! タツヤの精液を、ジュディにいっぱいちょうだいっ」

「だ、出すぞっ」

 その声とともに、男の腰がそれまでとは違う動きになる。突き出した男の腰に、女がお尻を震わせた。

「あ、ああっ、いっぱい、いっぱい出てるっ。ああああ……」

 しばらく、二人の絶頂の声が続く。それが終わると男は、女の背中をきつく抱きしめた。

「こ、これでお前は、俺のパートナーだな」

 満足そうな声でそう言うと、男はゆっくりと、自分のイチモツを女の秘部から引き抜いた。壁に手をついたまま、女が振り向く。そして、うっすらと笑った。

「ええぇ、それはどう、かなぁ」

 それを見た男の表情が、この世の終わりを見たような絶望と驚愕を帯びたものに変わる。

「そ、そんな……ちゃ、ちゃんと調べたはずなのにっ。うそ、うそだろ……」

 そして、女を強引に床に抑え込んだ。

「出せ、出せよ! お前のオマンコから、俺の精液、出せよ!」

 指を女の秘部に突っ込もうとして、突然悲鳴を上げる。

「が、があ、い、いてえ」

 自分の股間を押さえて男が床を転げまわるのをよそに、女はゆっくりと立ち上がり、冷たい視線を男へと落とした。

「サンキュー、タツヤ。エンド、バァイ♪」 

 

※ ※

 

 今日も教室には、黄色く姦しい声が響き渡っている。見渡す限り、女だらけだった。いやこの学校だけじゃない。今の世の中、そうなっている。しかしこれはもう、仕方がないことなのだ。

――いつからそうなってしまったのだろう。

 俺はそんなことを思いながら、自分の席に座り、天井を見上げていた。

 と、ポニーテールを揺らしながら教室に入ってくる一人の少女が視界の端に映った。

「ねえ、レント、聞いた? 2組のタツヤ、Qに引っ掛かったんだって! 女になったあいつ、意外とかわいいの。あいつがよ? マジ、ちょ~うける~」

 瑞雲(みずも)サアヤは、どかどかと俺の机の前までやってくると、いきなりそうわめき出した。彼女は小さい時からの長い付き合いであるが、男女という意味での付き合いは、無い。

 タツヤは、脳筋タイプの男で、性格は荒っぽく終始偉そうにしている奴だったので、俺は奴とは距離を置いていた。そのタツヤがどうなろうが、俺の知ったことではない。

 それよりも……明日は我が身というだけに、正直笑う気にはなれなかった。

 一学期も終わりに近づいている。一年生と言えど、そろそろ本格的に『パートナー』を見つけていかなければならない時期だ。優秀な連中の中にはもうパートナーを獲得している者もいる。ひどいものだと、もう『二人目』がいるやつもいた。タツヤは、焦ったのだろう。可哀想とは思わないが。 

「誰が『Q』だったんだ?」

「2組のジュディっていう子。ハーフなのよ。いいなぁ」

 痛みの目立つポニーテールの黒髪をいじりながら、サアヤはうらやまし気にそう漏らした。

「お前、男になりたいのか? というか、お前、Qなのか?」

「ば、馬鹿言ってんじゃないわよ! 何でそうなるのよ!」

「だって、うらやましいんだろ?」

「男になったのが羨ましいんじゃなくて、ハーフがうらやましいの! 顔の作りが違うんだよぉ。美人じゃないし、かわいくもないし、女っぽくもないじゃん、アタシ。所詮モブだからさ~」

 なんだか悟りきったセリフのようではあったが、レントには言葉通りに聞こえなかった。まあ、女性には女性の悩みがあるのだろう。

 確かに瑞雲サアヤは彼女自身の言う通り、絶世の美少女という訳でも、超かわいいというわけでもない。胸が大きいわけでも、やはりない。細い垂れ目をした、どこにでもいそうな、中肉中背の、明るいが少し口の悪いだけの女の子だった。

「女っぽくして、露出高くして、イケメンの前で腰振ってきたらどうだ? パートナーにしてもらえるかもだぜ」

「はあ? そんなビッチ、Qと思われて避けられるに決まってんじゃん。アンタ馬鹿?」

 サアヤとの付き合いが長いだけに、本当にバカにしたような口調でそう言われても、毛ほども思わないのだが、客観的に聞いてみると、サアヤの『馬鹿にする口調』にはなかなかの破壊力がある。

「じゃあ、俺とするか」

 一緒に帰るか、くらいの口調で言った俺の言葉に、サアヤは一瞬動きを止めた。

「何を」

「Hを」

 二人の間にしばらくの沈黙が流れる。十秒近く経った後、ようやくその言葉の意味がサアヤの言語中枢でイメージへと変換され、顔がみるみると真っ赤に染まっていった。

「な、なんでアンタと『パートナー』にならなきゃいけないのよ」

「冗談だよ」

 つっかかってきたサアヤに、しかしあっさりとそう返す。それを聞いたサアヤが、今度は親の敵と言わんばかりに俺を睨みつけた。顔色が別の赤さへと変わっていく。

「バカ!」

 ドカーンと爆発した一言を残し、サアヤはそそくさと教室から出て行ってしまった。

「なんだ、冗談の分からない奴だな」

 何事も無かったように、座ったまま両手を頭の後ろで組んで、俺はまた天井を見上げた。

 

 そう、この世には二種類の女がいるのだ。

 本物の女と、偽物の女。

 

 偽物の女は『Q』と呼ばれていた。外見も生態も全く女と変わらない。しかし、Qの子宮が男の精液で満たされた時、Qはその男の『性別』を『奪う』のだ……

 『男性』を奪われた男は身体が女体化し、『Q』へと変わる。そしてそれまでQだった者は、身体が『男性』のものに変わり、『男』として生活を始める。

 世の中にどれくらいのQがいるのか分からない。このクラスに何人Qがいるのか、誰がQなのか、誰にも分からない。

 

 言えることといえば……自分がいつQになってもおかしくなく、そして、自分がQに変わってしまったとしても、世の中は変わらない、ということだけだった。 



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02 ソフィーア&ヤヨイ

 二時間ある昼休みは、後二十分ほど残っていた。やたらと長い昼休みは、「男女の交遊のための時間」として設定されているそうだ。

 不純だろうが清純だろうが、男子が極端に少ないがゆえの超少子化社会にあっては「異性交遊」が盛んに奨励されている。なんだったら、教室でHを始めてもいいのだ。いや、まあ、かなり恥ずかしいが。

 子作りが全てに優先される世界。しかし、その行為は極めてリスキーだ。自然、男にとって『本物の女』を探すことが、至上課題となっている。

 

※ ※

 

 この学校は1学年が6クラスに分けられている。1クラスには女30人ほどに対し男は1人いるかいないか。だから、俺の周りにももっと女の子が集まってきても良さそうに思うのだが、なぜだろう、入学以来、俺が教室にいても女の子たちは遠巻きに見ながらひそひそ話をするだけだった。

『女ってそういうものなのよ』

 サアヤはそう言っていたが、俺にはとんと意味が分からない。まあ、女の方からがつがつ行けば、サアヤが言ったように『こいつQじゃないのか』と避けられるのだから、それはそうかもしれない。

 それに、異性交遊はクラス内での限定というわけではない。人気の格差は当然にある。俺はどうも「人気のある」方では無いようだ。

 イケメンねぇ……

 この学校のすべての男子にとって、同学年はおろか、上級生の男子も、そして今後入ってくるであろう下級生の男子も、卒業までは『ライバル』でしかない。

 男の価値は、『パートナー』の質と量で決まる。『いいパートナー』を得るには、顔以外にも、学業なり体育や美術なり、はたまた部活なり……それらの成績が重要だ。

「俺には関係ないか」

 そう独り言ちながら、また天井を見上げた。

「何が『関係ない』のかな?」

 俺の視界に、突然現れた女の顔。

「うわあっ」

 驚いた拍子に椅子がひっくり返りそうになるのを、派手なアクションでこらえる。 

「だ、誰だよっ! って、三年生?」

 見たことのない二人組の女性が立っていた。制服の学年章は三本線……俺の二つ上の上級生だ。

「な、何か用ですか?」

 五学年で千人ほどいる全校生徒の中で、男子は三十人もいない。だから上級生の女子が下級生の男子に会いに来るのは決して珍しいことではないのだが、俺に限って言えば、入学して以来、学年問わず他のクラスの女子が自分に会いに教室まで来たのは、これが初めてだった。

「おもしろい新入生がいるようなので、顔を拝見しに来たのだよ」

 そう言ったのは、学校支給の正装用制服をぴしっと着こなした、ショートボブの女性だった。栗色の前髪が左目を隠してはいるが、切れ長の鋭い右目が射抜くように俺を見つめている。長身でスレンダーな体と制服とが相まって、下半身のスカートをズボンに履き替えれば、男装の麗人にしか見えない。

「それ、隣のクラスの天河(てんが)のことじゃないですか? 俺じゃないですよ」

 天河は一年生にしてもうすでに、二人のパートナーをゲットしている噂の天才。『神童』などと言われている。

 俺は目の前の女性にその名を告げた。

「いや、君だよ」

 男女ともにパートナー探しが重要な目的であるこの学校では、生徒のあらゆる成績情報がすべて開示されている。調べようと思えばすぐにできるわけで、『すごい新入生』についてはいろいろ噂が流れてるのが普通だ。噂には、尾ひれ背びれに、胸びれまでくっつくのがよくあることなのだが。

 しかし、俺の成績はそんなものではない。目立たないように、平凡に、したはずなのだが……

「俺が、ですか? 何かの間違いでしょう。成績見ました?」

「ああ、それはもちろん見たよ。天河くんの成績はたしかにすごいね。三年生の間でも『神童現る』とのうわさで持ち切りだよ。でもね」

 一学期の成績は全ての科目で学年トップ。いや、体育だけは女子を加えても下の方だったか。でも、彼のどこか儚げな印象と相まって、それも彼を引き立てる要素にしかなっていない。かたや俺と言えば、赤点を取らずに、かつ平凡に。全部の科目が平均前後。

「それじゃ、ないんだ……君、部活動、してないよね?」

 男装の麗人風の上級生は、俺の目を覗き込むように、そう囁いた。俺は表情を変えずにその視線を受け止めることに集中する。

 部活動も「男を上げる」要素の一つだ。普通、一学期の間に自分の得意分野の部活に入っているのが普通で……しかし俺はどの部活にも入っていない。

「ええ、まあ」

 と今度は、長い髪を明らかに赤く染めた風の髪をしたもう一人の女性が口を開いた。

「なあ、ソフィーア。こいつ、どこにでもいそうな普通の男にしか見えないけど」

 その女性は、ソフィーアと呼ばれた女性とは違い、普段着用として支給されている白いセーラー服を着ている。着ていたのだが……チェック柄のスカートの裾が極限まで短くたくし上げられている一方、シャツの裾は引き裂かれたようにぼろぼろになっていた。やたらと大きな胸が、今にもセーラーシャツのボタンを引きちぎろうとしている。

 竹刀を持ったら一昔前の巨乳ヤンキーだな……

 そんな感想を抱いた俺の向かいの机に、その女性は平然とした様子で腰かけた。

「ヤヨイ。本人の前で率直な感想を言うのは、もう少し慎んだ方がいいと思うのだが」

 ソフィーアがその女性をそう諭すのを聞いて、思わず苦笑する。

「いいですよ。本当のことですから。俺なんかより、天河や東海(とうかい)に会いに行くべきでしょう」

「ああ? 随分、いい子ぶったやつだな」

 俺の返事にヤヨイと呼ばれた女性は少し顔をしかめて、ソフィーアより大きくぱっちりとした目で俺を睨んだが、その表情がすぐに何かをたくらんだようなものに変わった。

「なあ、お前」

「はい、何ですか?」

「女の子のアソコ、見たことあるか?」

 突然のヤヨイの言葉。目が点になる。

「は?」

「ふふふ」

 にやにやと俺を見ながら、ヤヨイが足を少し動かした。

「ちょっ」

 ミニスカでそれは……

 しかし気にする様子もなく、ヤヨイはさらに右足をあげて、俺の前で脚を組んでみせた。

 俺の視線は否応なくその隙間からのぞくスカートの奥に注がれてしまったのだが……その中の物を見て、ぎょっとした。

 Tフロントのショーツが、これでもかというくらいに割れ目に食い込んでいる。ムダ毛の一切は無い。無いのだが……食い込むTフロントの紐の横から、黒く大きな小陰唇がまるでリボンのように左右に開いていた。

 いや、その……具が、はみ出してるんですけど……

 余りのパンチ力に、動きが固まってしまう。ヤヨイはそんな俺の反応を見て、ケラケラと笑い出した。

「どうだい、女の子の『アソコ』は?」

「えーっと、その、なんというか」

「想像以上にグロいだろ。幻滅したか?」

 もはや別の生き物のようなそれは、見る者によってはそう感じるかもしれない。余りに大きくはみ出た、そして醜くく今にも蠢き出しそうなヤヨイの小陰唇に、しかし俺は息を飲んで見とれながら、ヤヨイに聞こえるようにつぶやいた。

「いや、あの、かなり、エロいです」

 そして、ヤヨイの顔を見上げる。

 気が付けば、教室には誰もいなくなっていた。それが上級生二人の闖入によるものなのか、それとも別の要因があるのか。

「……は?」

 レントの言葉に驚いたのはヤヨイの方だった。ヤヨイの期待した答えとは違っていたらしい。

「お、おまえっ、これ見ての感想がそれか?」

 ヤヨイはもっとよく見えるようにと更に股を広げ、俺の顔へと自らの股間を突き出した。その拍子に、ヤヨイが起こした微かな風が顔に触れる。『女性』の匂いを感じ、俺は自分のモノが大きくなっていくのを感じた。

「ええ、とても。エロいというか、そうですね、美しい?」

 再びヤヨイのスカートの中をじっくりと見つめる。と、急にヤヨイが勢いよく足を閉じた。 

「み、見るんじゃねえよ!」

「いや、見せてきたのは先輩でしょう」

「なんだと、こら」

 まったくもって理不尽だ。そう思った俺の胸倉を、ヤヨイが荒々しくつかむ。しかし、その顔は不思議なくらいに赤くなっていた。

「ヤヨイ……みっともないぞ。彼をいじめるのはそれくらいにしてあげたまえ」

 ずっと黙って二人を見ていたソフィーアが、とうとう見かねて声を掛ける。

 その時、教室の入り口から俺の名を呼ぶ大きな声が聞こえた。

「レント!」

 サアヤだった。少し心配そうな顔をしてこちらへと向かってくる。

「ちょ、ちょっと、何してるんですか、先輩」

 そして俺をつかんでいたヤヨイに対し、怒った顔で抗議をはじめた。

「ああ、いや、すまない。彼に挨拶をしに来ただけなんだ。ちょっとヤヨイが興奮してしまってね。すまなかった」

 ソフィーアがサアヤに向けて、穏やかな微笑みを向ける。しかしヤヨイは乱暴に俺を離すと、ふてくされたようにプイと横を向いてしまった。

「ああ、サアヤ、どうした?」

 何事もなかったようにサアヤに尋ねる。

「どうしたもこうしたも、次、体育でしょ。もうそろそろ移動の時間よ」

「あ、ああ、そっか。先輩、俺、行きますね」

「私たちも行くとしよう。失礼したね、深山レント君」

「はい。ヤヨイ先輩も」

 俺はヤヨイにそう声を掛けたのだが、ヤヨイはこちらに顔を向けようともせず、とっとと教室を出て行ってしまう。

「やれやれ、すまないね。許してやってくれ」

 ソフィーアは少し肩をすくめると、ヤヨイの後を追いかけ教室を出ていった。



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03 キユレ

 魚心あれば水心あり……

 通常、『Q』は、男から『性別』を奪うために、そのことを秘密にしている。バレてしまっては、男が寄り付かなくなるからだ。Qになってしまった『元男』のほとんどが学校をやめてしまうのは、そういう理由だからであるが、世の中にはどうもそうではない者たちがいるらしい。

 

※ ※

 

 二人の三年生が教室を出ていくのを見届けた後、サアヤは心配そうに俺の顔を覗きこんだ。

「大丈夫? もしかして、あの人たちって」

「ん? 知ってるのか?」

「知ってるも何も、超有名人よ」

「有名人? へえ」

「ショートボブの人が橘花(たちばな)ソフィーア。髪の長い人が、陣風(たてかぜ)ヤヨイ。あの二人がQ2よ」

「なんだそりゃ」

「知らないの?」

 呆れた顔をして、サアヤが首を振った。

「あの二人はね、Qであることを公言してるのよ」

「へ? 何でまた」

 この学校に入学してくる女子のほとんどは、如何に優秀な男子のパートナーになるかを考えている。そして、その中に潜んでいるQはどうやって『男』を奪おうかと考えているのだ。

 ところがあの二人はそうではないらしい。

「そんなの、知らないわよ。でも、この学校で自らQを明らかにしてるのは、あの二人だけね。だから『Q2』って呼ばれてるわ」

 なんてダイレクトでイージーなネーミング……とは言わない。

 さっきのことを思い出してみる。あの二人が俺に会いに来た理由はなんだろう。男を奪うためのターゲットとして、下級生を物色しにきたとか? いや、そんな話が既に出回っているのなら、ありえない。

 いまいち分からないが……そう言えば部活の話をしていたな。

「サアヤは、色々知ってるんだな」

「女の子の間じゃ、そういう『情報』は直ぐ出回るのよ」

「なるほどね」

「とにかく、あの二人には近づかないことよ」

「なんで?」

「アンタ、馬鹿?」

 哀れみをこれでもかと詰め込んだようなサアヤ視線。

 俺、そんなに痛い子なのか?

 そんな俺の手を握ると、サアヤは俺を体育館へと引っ張っていった。

 

※ ※

 

 一年生の中では学科と芸術の天河(てんが)キユレ、運動の東海(とうかい)タケゾウの成績が目立っている。そう、この二人が現在パートナーをすでにゲットしている一年生だ。脳筋タツヤはタケゾウをライバル視してただけに、焦ったんだろう。

 まあ俺はそんなものには興味がない。体育が終わり更衣室で着替えが終わると、教室に帰るのももどかしく、端末を使って成績を調べながら廊下を歩いていた。

 俺の成績は平凡……そう、平凡でいい。目立てば『狙われる』のだ。

 ただ、少しやり過ぎただろうか……そんなことを思いつつ、次に三年生の成績を調べる。あの二人の成績……二人とも総合順位が二十位以内であるのを見て、俺は少し驚いた。特に、あのヤヨイと言う女。

「レント、おつかれ!」

 そこに、瑞雲(みずも)サアヤが俺を見つけ、声を掛けてきた。

「おう」

「何見てるの?」

「ん? 成績表だよ」

「へえ、レントも成績、気にして……って、なんで三年生の見てるのよ」

「ちょっとね」

 つれなくされたサアヤは、ちょっとむっとした表情で不機嫌になる。

 と、そこに、

「やあ、レント君」

 同じく、体育を終えた天河キユレが、声を掛けてきた。どうも一人のようだ。キユレは少しくせっけのある巻き毛を左手でいじっている。サアヤからみれば、こいつは『イケメン』になるのだろうか。優男系というか、女装させればサアヤよりかわいいかもしれない。サアヤにそれを言ったら、シバかれるだろうが。

「学年一の『神童』に声を掛けられるとは、光栄だな。何か用か?」

 俺は、取りようによっては相手を馬鹿にしたような言葉で応じた。しかしキユレは、気にする様子も無く、穏やかな微笑みを顔に浮かべている。

 こういうやつって、何だか怖い。

「うん。君、面白いね」

 その言葉の裏にあるものに、どこかぞくっとした。思わず表情が変わりそうになるのを必死でこらえる。

「ギャグを言った覚えはねーぞ」

「違う違う。君の成績が、だよ」

「俺の? どこが?」

「学科の素点。中間と期末足すと、六十点が並んでるね」

 五教科十科目、狙った点数を取れるかどうかやってみたのだが、想像以上にうまくいってしまっていた。合計点数は表示されないだけに、誰も気づかないだろうと思っていたが……

「あ、ああ、たまたまじゃないか?」

 俺はそう言って、キユレから視線を外した。すると驚いたことに、キユレは俺の肩に手を置き、耳に口を寄せる。そして、

「わざと、だよね?」

とつぶやいた。はっとして、キユレの目を見ずにはいられなかった。そして後悔する。

 何か言おうとして……言葉が見つからない。そんな俺を横目で見ながら、キユレは今度は傍にいたサアヤに声を掛けた。

瑞雲(みずも)さん、だったかな」

「は、はいっ」

 俺の時とは別人のような声で、サアヤが返事をした。それにキユレが天使のような微笑みで応じる。

「良かったら今度の日曜日、食事にでも行かないかな」

「えっ」

 サアヤは絶句し、そして俺を見た。

「なんでこっち見るんだよ。行きたいなら、行けばいいだろ」

 突き放すような俺の物言いに、しかしサアヤは困った顔を見せる。

「だって……」

 その視線は、明らかに助けを求めているようだ。まったく……サアヤらしくない。

「悪いな、キユレ。日曜は俺が先約だ」

 仕方なく俺はキユレとサアヤの間に割り込んだ。そんな約束はしていないのだが。

 キユレが俺を横目で見る。その微笑みは崩さない。それがどうにも計算ずくのように見えた。

「そう。それは残念」

 キユレの涼やかな声。

「お邪魔してごめんね。じゃあ、僕は失礼するよ」

 そう言うとキユレは、サアヤに小さく手を振り、この場を立ち去った。それを見つめるサアヤ。何を思うのか、それは俺には分からないが……

「せっかく神童に誘われたのに、なんでうんって言わなかったんだ?」

 そんなサアヤに訊いてみる。

「うーん、だって、キユレ君にはもうパートナーが二人もいるでしょ?」

「らしいな」

「誰か知ってる? レント」

「いや、興味ねえし」

「まったく、アンタは……」

 サアヤが呆れ声を出す。俺がどうみられているかは別にして、そういう方がサアヤらしいと思う。

「二年生の(おおとり)カイナと一年生の真鶴(まなづる)カホ。特に鳳さんは、去年の学園祭のミスコン優勝者よ。真鶴さんも、今年の学際でいい線いくんじゃないかって言われていた人」

 学園祭は秋だ。ミスコンには、もうすでにパートナーがいる女性は出場できない。

 『去年のミスコン優勝者』や『出場すれば優勝したかもしれない女性』というのは、こんな時代であっても、男を選べる立場と言える。そういう女性たちがキユレを選んだ、という事実には驚きはなかったが……

「サアヤが三人目か?」

 キユレの趣味がよくわからん。

「馬鹿言わないでよ。そんなわけないでしょ」

「まあ、そうだよな。どこから見ても平々凡々なサアヤを、あいつが狙うなんて、そんながっつかなきゃいけないような身分じゃないわな」

 俺はサアヤの言葉を即座に肯定した。ついでに余分な言葉も添えて。しかし、それを聞いたサアヤの顔は、見る見るうちに真っ赤になっていく。

 あ、これ、あかんやつだ……

「馬鹿っ!」

 サアヤの平手が俺の頬を薙ぐ。首があさっての方向に曲がりそうになるのをなんとかこらえた。

「いってぇ」

 サアヤに文句を言おうとしたが、サアヤの目に少し涙がたまっているのに気が付いて、言葉を飲んでしまう。

「なんで叩くんだよ」

とだけ抗議したが、サアヤは呪い殺さんばかりに俺を睨むと、

「ほっんと、アンタって、馬鹿なんだから!」

と言い残し、走り去ってしまった。

 

 全く、女はよくわからん。



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04 ソフィーア

 それから四日経った金曜日。一学期末のテストが終わった後の授業は緩い。一年生は男も女も、夏季休暇まで『パートナー探し』の方が重要課題であるようで、何やら忙しなく動いている。

 しかし俺の日々はというと、変わりなく普通に過ぎていっている。はずだったのだが……

「なんで今日もここにいるんですか?」

 傍で何やら話をしている二人の上級生に、俺はそう声を掛けた。

「なんでと言われると……」

 橘花ソフィーアが、少し困った表情を見せる。そして陣風ヤヨイに目線を向けた。

「余計なこと言うなよ」

 そのソフィーアを、ヤヨイが睨みつける。ソフィーアは首をすくめて、両手を軽く上げた。

 この二人、あの日以降毎日、昼休みになると決まって俺の机のところにやってくるようになっていた。しかし、俺に絡んでくるというわけではない。ただ、傍で様々な話、例えば授業の内容であったり、誰が誰のパートナーになったという話であったり、夏休みの予定の話であったりをするのだった。

「余計なことって、何です?」

「何でもねーよ!」

 思わず聞き返した俺の言葉に、ヤヨイがそう言い返す。まったくもって理不尽だ。

 ソフィーアの様子は、相変わらずひょうひょうとしている。しかしなぜかヤヨイは、次の日からスカートを少しずつ長くはくようになっていたようで、四日経った今、あれだけ短くはいていたヤヨイのスカートの長さは、他の女子とほとんど変わらない位になってしまっている。

「ヤヨイ先輩、なんかスカートが長くなってますよ」

「あたいの名前を気安く呼ぶんじゃねーよ」

「じゃあ、ヤヨイさん」

「ぶっ殺す!」

 なにかしら地雷を踏んだのかもしれない。ヤヨイは俺を羽交い絞めにし始めた。

「く、苦しい」

 腕が首に食い込んでいく。いやそれよりも、ヤヨイの大きすぎる胸が、俺を窒息死させそうで、ヤバイ。

 深山レント、パイ圧で死す! うん、でもそれはかなり恥ずかしそうだ。 

「で、でも、幸せ」

 薄れゆく意識の中、そうつぶやいた俺の言葉に、

「ば、馬鹿かお前!」

と反応したヤヨイが、俺を乱暴に突き放した。サアヤといい、ヤヨイといい、俺はそんなに馬鹿なのか?

「いてて……というか、本当に、ここで何してるんですか?」

「ここは静かだからね。二人でいろいろ話すにはちょうどいいのだよ」

 俺の質問にソフィーアが答える。

「いや、先輩たちが来るから静かになるんでしょ」

「あたいらが来たら駄目だって言うのか、ああ?」

「そんなことは、言ってませんよ」

 体の前で手を振ってヤヨイの言葉を否定したが、ヤヨイはそのままそっぽを向いてしまった。

「ねえ、レント……」

 突然、別の方向から声を掛けられた。見ると、いつの間にやら来ていたサアヤが、遠慮がちにこちらを見ている。

「おう、どうした?」

「あ、いや、何でもないよ。わ、私、ちょっと用事してくるね」

「ん? 手伝おうか?」

「いや、いい、いいの。一人で大丈夫だから。行ってくるね」

「おう」

 来たばかりなのにそそくさと出ていったサアヤの後ろ姿を見て、首をかしげてしまった。

「なんか用があるなら言えばいいのに」

「レント君。彼女は君を心配して見に来たんじゃないかな」

「俺を? なんでです?」

「何でと言われても、そうだな、『Q2に絡まれている』からじゃないかな」

 ソフィーアが珍しく、茶化すようにウィンクをする。

「ふむ……ねえ、先輩」

「何かな」

 腕を組んで姿勢よく立つソフィーアは、なるほどカッコイイ。もしかしたら、女子にモテるんじゃないだろうか? 今度サアヤに聞いてみよう。

「そろそろ本当に、何の用だか言ってくださいよ。別に、俺から『男性』を奪おうと思って、ここに来てるわけじゃないんでしょう?」

「さあ、どうかな」

 ソフィーアが、俺に顔を近づけてくる。どこか清々しい香りがした。ソフィーアの指がのび、俺の顎を持ち上げ……

「こうやって油断させといて……かもしれないよ」

 ソフィーアが目を細める。こうやって見ると、かなり色っぽい。あー、でもこの人、Qだったっけ……

「も、もしかして、逆レイプですか!」

 貞操の危機だね、うん。

 そこで思わずソフィーアが吹き出した。

「……君、面白いね」

 いや、真面目に言ったつもりなんだけど……

「ソフィーア先輩も、そんな風に笑うんですね」

 そう指摘すると、ソフィーアは呆気にとられた表情に変わる。すると今度はヤヨイが吹き出した。

「あっはっは、こりゃ愉快だ」

「いや、ギャグを言ったつもりじゃないですよ」

「お前、頭湧いてるなぁ」

 机に座ったままのヤヨイは、自分の頭を指さしながらにやにやと笑っている。

「な、何でです?」

「別に我々は男になりたいわけじゃないよ」

 やれやれと言った表情で、ソフィーアはそうこぼした。

「じゃあ一体、どういうつもりです?」

「いいだろう。実は、君に提案があってね」

「はい、何でしょう」

「君、部活やってないよね」

「ええ、まあ」

「なぜだい?」

「んー、スポーツ系は全部個人競技だし、あまり興味はないです。文化部は、もっと」

「でも、成績に係わるだろう」

「まあそうですが……興味ないものは、やりたくないですから」

 そうきっぱりと。それを聞いた二人は、しかし満足そうな顔を見せた。

「じゃあ、我々の部活に入らないかい?」

「部活、ですか?」

 想定外の勧誘だった。そういえば、この二人の部活動は調べてなかったのを思い出す。

 ふと、ヤヨイの方に視線を向けた。

「嫌なのかよ」

 なんという脅し。

「嫌と言うか、せめて何部かくらい教えてくださいよ」

「ははは、それはそうだね。我々の部活は『探Q部』だ」

 再び腕を組む態勢に戻ったソフィーアは、薄笑みを浮かべながら目を閉じた。

「えっと……何を探求するんですか?」

「探Q部なんだから、探Qするに決まってるじゃねーか」

 呆れた口調でヤヨイがそう突っ込んできた。何がどう決まっているのだろうか……

「だから何の探求?」

「探Q」

 ヤヨイが、真面目な表情で俺に訴えかけている。いや、分かんないですから。この人たち、実は頭湧いてるんじゃないだろうか。

「あー、とりあえず活動内容を詳しく教えてください」

「ふむ……レント君は、Qとは何か、疑問に思ったことは無いかな」

 ソフィーアが片目だけを開けて俺を見つめている。

「んー、避けることだけを考えてましたから、何かなんて考えたことないです」

「ははは、随分正直だ。でも、実際、Qとは何か、あまりよく分かっていないんだよ」

 確かに、中学校でも高校に入ってからも、教わったことは無い。

「ええ……で?」

「あたいたちは、それを『探ってる』ってわけだ。分かるか?」

「でも、先輩、Qなんですよね?」

「あ、ああ、まあ、そうだな」

 公言している割には、ヤヨイの返事は余り歯切れのいいものではなかった。それを少し不思議に思う。

「Qが何かなんて、本人がよく知ってるんじゃ?」

「それが、そうでもなくてね」

 ソフィーアが肩をすくめる。

「なるほど、それでQを……自分を調べてるってわけですか」

「まあ、その通り、かな」

「それ、成績に関係あります?」

「ない」

「他に部員います?」

「いない」

「そうですよねー」

 そうは答えたものの、俺にしてみれば、決して成績の悪くない、いやかなりいいところにいるこの二人が、この学校にいるにもかかわらず男になることを望んでおらず、Qを公言し、そして『得体のしれない』部活動を行っているという事実のほうが、Qとは何かということよりも興味深かった。

 何を考えているのだろう。

「少し、時間をくれませんか」

 そう答えた俺に、ソフィーアの顔がぽっと明るくなる。

「へえ、断らないんだね」

「ええ、面白そうですから」

 更に答えた俺の言葉に、ソフィーアが満足げにほほ笑んだ。

「期待以上の答え、かな」

 そう言うとソフィーアは組んでいた腕をほどき、俺にまたウィンクをした。ヤヨイも座っていた机から降りる。

「いい返事を待ってるよ」

 そう言い残し、二人が教室から出ていく。去り際にヤヨイが俺の方を見て、そして俺と目が合うと、プイと顔をそむけた。



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05 サアヤ

「ちょ、ちょっと、レント。頭大丈夫?」

 

 先輩二人が教室を出て行った後、戻ってきたサアヤに、二人に部活に誘われたこと、そして部活に入ろうと思うことを告げた。すると返ってきた言葉がこれだった。

「ひどい言い方だな」

 思わず笑ってしまう。

「笑い事じゃないでしょ! 怪しすぎるじゃない。部活って言ってるけど、それ単なる同好会だし。成績に入んないし、それにあの人たち、Q2よ?」

 サアヤは、噛みつかんばかりにまくし立てた。

「だから?」

「だからって……レント、性別を奪われたらどうするのよ」

「いや、Qだと分かってるんだから、Hなんかしないって」

「分からないわよ。あの先輩たち、見た目すっごく美人だし、レントが誘惑されてる……」

 これでもかというくらい顔に心配を浮かべてサアヤが俺を見ている。

「こうやって見ると、サアヤも意外にかわいいな」

「ふざけないでよ!」

 バァン!という大きな音を鳴らし、サアヤが机に両手をついた。その拍子で、ゆったり目に着ていたセーラーシャツの胸元から中が丸見えになる。ブラが胸の小ささに合っていないせいで、ブラと体とにできた隙間から、ピンク色をしたサアヤの『小さなさくらんぼ』が見えていた。

 サアヤの体から漂う体臭が俺の鼻をつく。サアヤは普段から、シャボンの香りにつんとした塩気の混ざった、不思議なにおいのする体臭を気にしている様子だったが、俺からその話をしたことはない。

 俺の視線に気が付いたサアヤが、慌ててシャツの胸元を押さえる。

「な、何見てんのよ!」

「いや、見たんじゃなくて見えたんだよ」

「ば、馬鹿!」

 全くもって理不尽だ。怒った顔のサアヤを見ながら、俺は苦笑した。

「ど、どこまで見えた?」

「どこまでって、そんなには」

「そ、そう……べ、別にアタシの見ても、うれしくないよね」

「んなこたあ、ない」

 しれっとそう言った俺の顔を、サアヤは驚いた表情で見る。そしてすぐに横を向いた。

「ね、ねえ、レント」

「何?」

「やっぱり、男の子って、『したい』って思ってるの?」

「いきなりだな。そりゃ、まあ、そうだけど」

「そ、そう……ア、アタシがレントの『初めて』に、なってあげようか」

 消え入りそうな声で、そうつぶやく。

 その言葉を頭で消化して……それが終わらない内に、

「あ、いや、冗談、冗談よ。真に受けないで。こないだのお返しだから」

と、サアヤは慌てた様子で笑いながら顔の前で手を振った。

「なあ、サアヤ」

「ア、アタシもう行かないと。また後でね、レント」

 そして、俺が何かを言う前に、サアヤはそそくさと自分の教室へと戻っていった。

 

※ ※

 

 翌日、土曜日。授業は午前で終わり。しかし授業が終わっても、二人の上級生、ソフィーアとヤヨイは現れなかった。昨日の申し出――部活への勧誘ができたのでもうここに来る用が無くなったのか、それとも他に何か用事があるのか。

 返事を聞きに来るかと思ったんだが……

 考えても仕方がないと思い、一旦そのことを頭の片隅へと追いやることにする。

「レント」

 サアヤが教室に顔を見せる。教室の真ん中らへんで立っていた俺の傍へとやってきた。朝あった時は、昨日のことなど無かったように振る舞っていたが……

 前の授業は体育だった。男女は別メニューだが、学年一斉に行う授業だ。でも彼女は体操服のままだった。

「おう」

「これからどうするの?」

 体育の影響か、サアヤはまだ少し汗をかいている。昨日よりも強いサアヤの汗のにおいを感じ、ふとサアヤを見る。サアヤが少し慌てた様子で俺から体を離した。

「これから? 考えてないなぁ」

「そ、そうなんだ。アタシ、今から部活してくるね」

「おう……あ、そうだ」

 行きかけたサアヤを引き留める。

「ん? どうしたの?」

「明日、暇か?」

「明日? う、うん、暇、かな」

「じゃあ、一緒にどっか、いこうか」

「へ? 何で急に?」

 サアヤが驚いた様子で俺を見た。

「こないだ、日曜日に約束したって、キユレに言っただろ。そのまま全くの嘘になるのは嫌だからな」

 その言葉に、サアヤの顔がパッと明るくなる。

「へえ。ちゃんと『約束』守ってくれるんだ」

「約束、した覚えないけどな」

「いいじゃん、いいじゃん。どこに連れてってくれるの?」

「どこがいい?」

「んー、どこでもいいよ」

 女性の『どこでもいい』ほど怖いものはない。それは『私を満足させるところに連れていけ』という意味なのだから。

 サアヤの行きたいところ……とんと思いつかない。

「じゃあ、俺の部屋に来るか」

 という『かませ』からの~

「いいよ」

 サアヤがぽつりとつぶやいた。体操服の裾をいじっている。

「えっと……どっち?」

「ど、どっちって?」

「行く、なのか、遠慮する、なのか、分からないぞ」

 そう聞き直した途端、サアヤは不機嫌な表情になってしまった。

「って、なんでアタシがアンタの部屋に行かなきゃいけないのよ」

「なんだ、そっか。どきっとして損したな」

「えっ?」

「いいよって言うから、来るのかと思った」

「そんな訳ないでしょ!」

「そっか……じゃあ、どこ行くかなぁ」

 俺は両腕を組んで考え始める。女の子とデートをしたことはないが……とりあえず、うまい物でも食わせておけば、満足するかな。

「ねえ、レント」

 思案を続ける俺に、サアヤがおずおずと声を掛けてきた。

「何?」

「ど、どきって……した?」

「ああ、したした」

「な、なんで?」

「なんでって、そりゃ、なあ」

 女の子を自分の部屋に呼ぶということは、まあ、そういうことだから。

「え、いや、でも、ほらアタシだよ? アタシなんかさ」

「『なんか』って言うなよ。誘ったのは俺からだし、別に嫌ならいい、気にすんな。なんかうまいもんでも食いに行こう。調べとくよ。ほれ、部活行ってこい」

 俺はサアヤに、あっちいけというように手を振った。

「あの……その……」

 しかしサアヤはその場から動こうとはしない。

「どうした?」

「い……嫌じゃ、ないんだよ。嫌じゃないんだけど」

「無理しなくっていいってば。悪かったよ」

「ち、違うんだってば」

「何が?」

「レント、気付いてない?」

「何をだよ」

「ほら、体育終わった後だし」

「ごめん、意味が分からない」

「その、ア、アタシ、た、体臭がきつくてさ。汗っかきで、その、特にね、腋が、その、におう……みたいでさ。あまり、他の人と狭いところにはさ、いたくなくて」

 たどたどしい言葉を口にした後、サアヤは下を向いてしまった。

「お、おお、そっか」

「レントだって、本当はくさいって思ってるでしょ?」

「別に、くさくは……ていうか、俺は好きなんだけどな、サアヤのにおい」

 サアヤが顔を上げる。まるでエンガチョを見るような表情。

「えっとね……汗のにおい、だよ?」

「なんか、フェロモンの匂いというか……」

「……アンタ、変態?」

「ちげえよ!」

 少し声を荒げたが、サアヤは言い返すことなく、横を向いてしまった。

「ねえ、レント」

「何だよ」

「ほんとに、アタシの腋のにおい、気にならないの?」

「鼻をつけて腋をにおったことがないし。気にならないとしか言えない」

 こちらが思ってる以上に、サアヤはそのことを気にしていたようだ。その割には、香水のようなものを使っている様子はない。まあ、香水のにおいをぷんぷんさせてるなら、俺はサアヤとここまで一緒にいることはなかっただろう。

「におって……みる?」

 横目で俺を見るサアヤ。なんかいいなと、思ってしまう。

「変態扱いされたくはないからいい」

 少しだけわざと、突き放してみた。

「お、男の子が、というか、レントが、本当はどう思ってるのか、知りたい、んだ……アタシのにおいを」

 消え入るような声でそうつぶやいたサアヤ。俺はその手を取る。

「ひゃっ」

 変な声を出したサアヤを、俺は密着するように引き寄せた。

「ちょ、ちょっと」

 体を離そうとするサアヤを押さえ、耳元にそっと囁く。

「日曜来いよ。俺の部屋」

 しばらくじっとしていたサアヤが、こくんとうなずいた。



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06 サアヤ2

 日曜日。薄い青色の半袖ワンピースで現れたサアヤを連れて街に出た。せっかくだからと、ランチを食べ、ウィンドウショッピングをし、買い物をした後、部屋に行く。

 学校付属の男子寮。ほぼすべての男子がここに住んでいる。1LDKの間取りで、一人で住むには十分すぎる。このご時世、男子は随分と優遇されているのだ。

「こ、これが男の子の部屋なのね……」

 どこかしら緊張した面持ちでいるサアヤが、食卓とイス、テーブルとソファ、そしてモニターが置いてあるダイニングキッチンとリビングを見渡し、

「もっと散らかってるのかと思った」

と付け加えた。

「掃除が面倒だからな。物を置かないようにしてるんだよ」

「へえ」

 そういいながらサアヤは、居心地が悪そうにキョロキョロし続ける。

「ソファ、座れよ。飲み物出すから」

「あ、う、うん。ありがと」

 冷蔵庫から冷やしていたお茶を、それとコップを二つ。それらを手にし、リビングのテーブルに置いた。サアヤがすぐに、お茶をコップに注ぎだす。俺はサアヤの横に座った。

「はい」

 サアヤがコップを差し出した拍子に、体が触れる。サアヤが俺を見て、そして少し体を離した。

「ありがと」

 そう口にしたが、なんとなく二人の間にはぎこちない空気が漂っている。

「な、なんか、見る?」

 如何にも、その場を取り繕うだけの言葉を口にしたサアヤを、俺は黙って引き寄せた。

「ま、待って」

 しかしそれにサアヤが抵抗を見せる。

「シャワー、させて」

「それじゃにおいが分からなくなるだろ。どんなにおいがするかって話なんだから」

「でも、でも、随分歩いたし、結構汗かいたし、今日、ほら、暑かったし、それに」

 まだ言葉を続けようとするサアヤの手を握る。

「嫌なら、やめとくか」

「嫌じゃない、嫌じゃないよ。でも、でも」

「でも、何?」

「嫌われちゃう」

 そう言いながらサアヤは、俺の手を握り返した。そんなサアヤを出来るだけ驚かさないように、もう片方の手をゆっくりと、サアヤの肩に置く。

 サアヤの体がピクッと震えた。

「や、やっぱり、シャワー……」

 それを無視し、俺はサアヤの両腕をつかむ。そのまま上へと持ち上げ、頭の後ろで手を組ませた。サアヤの体が俺の前に無防備にさらされる。

「ま、まって……」

 そのまま顔をサアヤの体、そして腋に押し付けた。

「い、いや、やめて……」

 体をよじって逃げようとするサアヤを逃がさないように押さえ、強く息を吸い込む。塩気の強い、刺激的なにおいがした。

「エロいにおいがする」

「……エロい?」

「うん」「うそ」「ほんと」

 もう一度、今度はゆっくりと深く息を吸い込んだ。そのままサアヤの耳元に口を寄せる。

「やっぱり、エロい匂いだ」

 ソファにもたれるような態勢のサアヤ。自然と、俺のペニスがサアヤの体に押し付けられた。

「……ほんとだ……レントの、大きくなってる……」

 少し驚いた声。そして、

「レント、変態だね」

という言葉が続いた。

「嫌か?」

「……レントは、相手の女の子が変態だったら、どう思うの」

「そりゃ……興奮する、かな」

 その答えに、サアヤは黙ってしまう。しかし、嫌がってはいない。それどころか、サアヤの呼吸が少し荒くなったのに気が付いた。

「サアヤも、興奮してる?」

「ばっ、い、言わないでよ」

 左手をワンピースのスカートの中にそっと入れる。指に触れたショーツが湿っていた。

「濡れてる」

「だって、レントが……」

「俺が?」

「アタシの、においで、おっきくしてるから……」

 サアヤの吐息が熱い。

「サアヤは、におわれて興奮するのか?」

「……」

 サアヤは答えない。俺はサアヤの腕から半袖の中、腋へと舌を這わせた。

「ひゃっ」

「すごい、味がする」

「き、汚いよ……あんっ」

「エッチな、味だよ」

「……アタシのにおい、ほんとに好き?」

「ああ」

「味は?」

「とても、エロい。興奮する」

「ほんとにほんと?」

「ああ、ほんとだ。こんなに大きくなってる」

 そう言うと俺は、サアヤの右手を俺の硬くなったペニスの盛り上がりに導いた。

「あ、ああ、すごい……レント、レント、もっと、もっとにおって!」

 その瞬間、サアヤの何かが外れたようだった。

「アタシを、もっとにおって!」

 サアヤが俺の頭を抱え込む。俺はサアヤの背中に手を回し、ワンピースのボタンを外した。そのままワンピースの上半身を下にずらす。

「ぁっ」

 リボンのついたブラが現れた。それを隠そうとしたサアヤの腕をまた頭の後ろに組ませる。

「ああっ」

 邪魔物が無くなったサアヤの腋に、俺は顔をうずめ、さらに舌を這わせた。

「いい匂いだし、エロい味」

「はああ……うれしい……あっ」

 サアヤが細い目を一杯に見開いて俺を見る。

「どうした?」

「あ、あ、あふれてきちゃう……あ、あ、じゅんじゅんしてる……」

 その言葉に、スカートをめくり、中を見ようとしたが、

「だめっ!」

 と言って、サアヤは俺の首に手を回した。仕方なく、ショーツに指を這わせる。染み出した愛液が、指にまとわりついてくる。

「ほんとだ。びしょびしょ」

「いや……恥ずかしい……」

「におわれて興奮してるなんて、サアヤも変態だな」

 そう言いながら、ショーツの中に指を滑り込ませると、溢れんばかりの愛液が俺の指に纏わりついた。わざと音を立てて、サアヤの腋のにおいを嗅ぐ。するとさらに中から愛液が溢れ出す。

「嫌い? こんな変態女、レントは嫌い?」

 サアヤが小刻みに息を吐き出しながら、そう尋ねる。

「大好きだ」

 サアヤがうるんだ瞳で俺を見つめる。その端から、涙がこぼれた。

「うれしい……」

 そんなサアヤの唇に、軽く触れる。しかし、待ちきれなかったように、サアヤは舌を出し、俺の口の中へと入れてきた。しばらく絡み合う二人の舌と唾液。

 サアヤのワレメを指でなぞると、ヒダヒダの中の突起……クリトリスに触れた。

「んんっ…」

 塞がれた口からサアヤが声を漏らす。俺はショーツに手を掛けた。

「待って。シャワーしてないし、汚いよ……」

「いいんだよ」

 目で慈悲を懇願するサアヤを無視し、ソファにもたれるサアヤの両足を持ち上げた。ショーツが目に見えるほどぐっしょりと濡れている。俺はそれに鼻を近づけた。

「おしっこのにおいに、酸っぱいような不思議なにおいが混ざってる」

「そんな、恥ずかしいこと、言わなくても、あ、ああっ」

 また愛液が溢れ出しているようだ。サアヤのショーツを太ももの下までずらすと、おしっこをするような態勢に固定した。

「いや、はずかしいよぉ」

 うっすらと生えた毛が、愛液でぐっちょりと濡れている。少しだけ顔を出したクリトリスに俺は顔を近づけた。そして、舌で軽く刺激する。

「ひゃう!」

 ぴくっと震えるサアヤ。少しずつ、クリトリスへの刺激を強くしていく。

「あっ、あっ、だめ、だめ、だめ、出ちゃう、だめ、あふれちゃうよ、レント、あ、あああっ」

 クリトリスの下、尿道がひくつきながら、開いたり閉じたりしている。そのさらに下の穴……膣からは、その動きに連動するように、後から後から透明な液体が溢れ出し、肛門へと流れ落ちていた。

 そのままクリトリスを口に含んだ。舌全体で優しく転がす。

「んっ、んっ」

 サアヤの体が反り返り、軽い痙攣が起きる。刺激を強めたり弱めたりしながら、サアヤのクリトリスを刺激し続けた。

 と、

「あ、だめ、レント、出る、だめ出ちゃうっ!」

急にサアヤの声のトーンが変わる。すると尿道から液体が勢いよく飛び出し、しぶきを上げた。

「ああ、ああ、ごめん、レント、ごめん、アタシ、アタシ……」

 俺の顔だけでなく、ソファと、そしてサアヤのスカートにもかかる。

「なんか出ちゃった……恥ずかしい……」

 両手で顔を覆うサアヤ。俺はその手をどけて、サアヤの口に自分の舌を入れた。サアヤの口が俺の舌を味わうように動く。

「サアヤ、かわいいな」

 そう囁くと、サアヤは「馬鹿」とつぶやいた。

 ブラとワンピースを脱がそうと、手を掛ける。しかしサアヤがその手を押しとどめた。

「アタシだけ裸じゃ、恥ずかしいよ」

「あ、ああ」

「今度は、アタシがしてあげる」

 そう言うとサアヤは、俺のズボンを脱がし始めた。



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07 サアヤ3

「かたいね……」

 二人で服を全部脱いだあと、サアヤは目を見張って俺のペニスを触っている。

「あんまり、大きくないけど」

「そうなの?」

「たぶん、な」

「ふーん……ね、ねえ、レント」

「何?」

「な、なめてあげようか?」

 サアヤは、そう言って上目遣いで俺を見上げた。俺が黙ってうなずくと、舌を少し出して、ペニスの先端を舐める。最初は恐る恐る。その後、小さく口を開けてペニスを咥える。

「ふぅ」

 つい口から声が漏れた。

「気持ち、いい?」

「とっても」

 そう返事をすると、サアヤはちゅぱちゅぱと音を立ててペニスを吸い始めた。

「不思議な味がするね」

「まずい?」

「ううん……おいしい、かも」

 そういって、サアヤがコクンと喉を鳴らす。そして鼻をペニスに近づけると、こんどはくんくんとにおい始めた。

「それこそ、臭くないか?」

「レントのにおいがする……いいにおい」

 舌を這わせながらも、サアヤは俺のペニスを弄ぶようににおいを嗅いでいる。

「あっ」

 サアヤが小さな声を上げる。

「どうした?」

「また、じゅんってしちゃった……」

 そんなサアヤを、俺は床に寝かせた。ポニーテールが床に広がる。サアヤが潤んだ目で俺を見つめた。

「入れても、いいか?」

 ペニスをサアヤのオマンコにあてがう。そのまま挿入しようとして、サアヤが両足で俺の腰を挟んだ。

「レント」

 それまでとは違う、サアヤの真剣な眼。

「ど、どした?」

 思わず聞いた俺に向けて、サアヤが右手を伸ばした。サアヤに顔を近づけると、サアヤは俺の頬に触れる。

「アタシが……Qだったらって、考えないの?」

 サアヤの言葉。初めてのセックスならば、考えなければいけないこと。それはサアヤでも、同じなのだ。

「正直、考えなくはないかな。でも、性別を奪われる相手がサアヤだったら、諦めがつくよ」

 そう答えた俺の頭を、サアヤは胸に抱え込んだ。

「どうして?」

「サアヤのこと、好きだからだよ。言わせんな」

「うれしい……うれしいよ、レント。でもね」

 今度は俺の顔を、サアヤの顔の目の前に持って行く。真剣な眼は変わっていなかった。

「パートナー、私だけで終わりにするつもりはないんでしょ?」

「あ、ああ、まあ」

 男の役割は、たくさんの女性に子供を産ませることだ。社会通念上、パートナーが一人だけというのは、『非生産的』とみなされている。

「約束して。絶対、『男』を奪われたりしないって」

「お、おう……でも、Qかどうかなんて、やってみないと分かんないだろ」

「それじゃ、危ないじゃない。相手にQじゃないかどうか聞いて、相手の嘘を見破るの」

「どうやって?」

「それは……それはレントが考えて!」

「難しいことを……」

 サアヤの気持ちは分かるが、それができるなら、世の中の男は困ってはいない。

「やるの!」

「わかったわかった。約束するよ」

「うん。じゃあ……レントの、アタシの中に入れて」

「初めてだから、うまくはいらなくても、怒るなよ」

「いいよ……アタシも初めてだから、それも楽しも」

 サアヤが笑顔になる。

「じゃあ、いくぞ……ここ?」

「ん……ちょっと、違うかも……」

「ここか?」

「あん、それ、オシリ」

「んじゃあ、ここ」

「あ、そ、そこ……あ、あ、レントの、おちんちんが、入ってくる……いっ」

「痛い?」

「だ、大丈夫、そのまま……あ、はあああっ!」

 ペニスをゆっくりと、出したり入れたりしながらも、だんだんと奥へと差し込んでいく。まるで、ずぶずぶという音が聞こえるような感触。

「んんっ」

「奥まで、入れるよ」

「うん……来て……ああ、ん、んんんっ!」

 痛みをこらえているのだろうか。サアヤの体が反り返る。とそこで、パツっという小さな破裂が響いた。

「今の……」

「処女膜、破れたみたい」

「痛い?」

「ちょっと」

 そういうサアヤの様子に気をつけつつも、俺はなんとか奥までペニスを差し入れた。

「入った……ね」

「サアヤと、一つになれた」

「アタシで、良かったの? 初めて」

「ああ、サアヤが良かった。サアヤこそ、俺で」

「アタシも、レントがよかった。うれしいよ、レント……」

 正常位でのキス。サアヤの体に力が入る。

「動いて、大丈夫だよ」

「ああ、動くぞ」

「中に……出したい?」

「もちろんだ。サアヤの子宮の中を、俺のでいっぱいにしたい」

「いいよ……出しても」

 ゆっくりと、しかし大きく出し入れをする。そしてその速度をどんどんと速める。

「レントのおちんちんが、壁に擦れて、ひゃあっ」

「なんか、絡みつく感じで、気持ちいい」

「もっと、もっと、擦って」

「汗、かいてる」

「におう?」

「ああ、におい、きつくなってる」

「なんか、レントの、大きくなった」

「サアヤのにおいが、エロ過ぎんるんだよ」

「そんなこといったら、あ、あ、なんか、だめ、くる、くる」

「俺、もうイキそうだ」

「中に、中に、ちょうだい!」

「いくっ」

「あ、ああ、ああ、中に、中にっ、出されてる! アタシ、出されてる、はああああうっ」

 サアヤの中にいっぱい射精した俺は、暫くの間、サアヤに覆いかぶさっていた。

 

※ ※

 

 結局、俺の体は何ともなかった。サアヤは『本物の女』だったというわけだ。今後、サアヤとのHは安心して……ということになるだろうが、他の女性となると……

 勘弁してほしいな。これじゃロシアンルーレットだ。

「ねえ、レント」

「何?」

「いっぱい、汗、かいちゃった」

「シャワー浴びるか?」

「その前に、におい、嗅いでほしいな……」

 そんなサアヤのお願いに、俺はサアヤの腋に顔をうずめる。

「においを嗅がれたいだなんて、ほんとサアヤも変態だな」

「変態だもん……だめ?」

「いいに決まってるだろ……たまらないくらい、いいにおい」

「すごい……またおっきくなってる」

「エロ過ぎなんだよ、サアヤのにおいが」

「うれしい……もっと、もっとにおって、レント」

「責任取ってもらうぞ」

「いいよ。もう、アタシの体、もうレント専用なんだから。いつでも、におって。いつでも、中に出して」

「言ったな。どうなっても知らないぞ」

「いいよーだ。んじゃ、洗いっこ、しよか」

 そういうとサアヤは、悪戯っぽく笑った。



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08 サアヤ4

ご指摘がありましたので、文章中の「乗っ取る」という表現を、「性別を奪う」または「男を奪う」に変更しました。

Qに中出ししてしまうと、Qは男体化します。クリトリスが大きくなって、おちんちんになるのかもしれません。
男の方は女体化します。おちんちんが小さくなってクリトリスになり、ドリルで穴をあけるように膣ができるのだと思います。この時に激痛が走るんですね。そうに違いありません。
というような生物学的な話は置いておいて、ゴリマッチョだったタツヤ君も、今や骨太のおにゃのこです。


 この学校に通う男子は、全員学生寮で生活している。寮と言っても、1LDKのマンションタイプだ。それが男子一人一人に与えられている。ちなみに、女子生徒は基本的には自宅からの通いだ。

 

※ ※

 

 学生食堂で朝食をとってから教室へ向かおうとしたところ、既に登校していたサアヤが校舎の前で、柱に隠れるように待っていた。

 軽く手を上げて挨拶したが、サアヤはどことなくそわそわした様子をしている。

「お、おはよう、レント」

「おはよう。どうしたんだ?」

「な、何が?」

「いや、なんか落ち着かない感じだから」

「あ、ああ。な、なんか、恥ずかしいなって思って」

 初夜。それを皆に知られているような気がして、サアヤはずっとうつむき加減でいる。それもそのはず、端末で公開されているサアヤの学生情報の欄には、今日から『パートナー:深山レント』という表示がされているのだから。

「誰も気にしてなんかいないさ」

「そ、そんなことないよ。『行き遅れ』にならないようにって、女子は結構ピリピリしてるんだから。誰が誰のパートナーになるのかとか、どうやったのかとか、結構みんな気にしてるんだよ」

「俺じゃ嫌だったか?」

「そうじゃなくて、ほら、女の子にもいろいろあるんだよ」

 サアヤは多分、周りの好奇の目であったり妬みの目であったりを気にしているのだろう。その辺については、さすがに俺も未知の世界だ。

「いろいろ、ねえ」

「ほんとにアタシをパートナーにして良かったの?」

「昨日あんなに燃えといて、それはないだろ」

「ば、馬鹿、そういうことじゃないでしょ!」

 サアヤはレントの肩を平手で張ると、真っ赤になって目を伏せた。

「よお、お二人さん。アツアツだねぇ」

 突然後ろから声がかかる。掛けられた言葉に、ふんだんに詰め込まれてたネガティブな要素を感じた。だるそうに目を向けてやると、一年五組の男子、黒須田(くろすだ)ソラタがいた。

「随分と、前近代的な冷やかしだな」

 カップルに干渉しない。それはこの時代において、場所を問わないマナーと言える。しかし、この学校はパートナー獲得という男同士の『バトル』の場でもあるだけに、マナー違反すれすれのグレーゾーンで牽制しあうことはよくあることだった。

「はっ。しかしレントも物好きだな」

「それはどういう意味だ、ソラタ」

「おっと、すまんすまん、つい」

 そうは言うものの、ソラタの声には謝罪の色も欠片もない。

「構わんから、どういう意味か言ってみ」

「すまんって言ってるだろ」

「ちょっと、レント、やめなさい」

 サアヤが止めに入るが、俺に引く気は毛頭なかった。ここで引いては、逆に後々面倒になるのだ。ニワトリではないが、相手になめられては評判が下がる。

「まだパートナーの一人もいないくせに、やっかみかよ、ソラタ。そんなんじゃ、二年になっても売れ残るぜ」

 実際のところ、Qに引っかかりさえしなければ、二年生の夏にはほぼ全員が最低でも一人のパートナーを連れているものであった。しかし一年生には、最初のパートナーができるまでは、疑心と不安がプレッシャーとなって押し寄せる。

 そこを突かれたソラタは、見てわかるほどに焦りの表情を見せた。

「俺はな、お前みたいに焦って、そんな『くさい』女に手を出すような真似はしねえんだよ」

「なんだと?」

「クラスの人間はみんな言ってるぜ。瑞雲は体臭がきついってな!」

 ソラタはサアヤと同じ五組だ。しかし他人のパートナーへの誹謗中傷は男女問わずご法度である。ソラタはマナー違反を犯してしまったのであり、『通報』すればソラタは厳罰を免れない。

 しかし俺は、言われたサアヤの様子を見て、そうすることを止めた。サアヤの表情が固まっている。

「はっはっは」

 わざと大きな声で笑ってやった。

「何がおかしいんだよ」

「分かってないな、お前」

 そう言ってサアヤを抱き寄せる。

「ちょ、レント」

 驚くサアヤを無視して、サアヤの体に顔を押し当てると、ゆっくり息を吸い込み、ソラタを横目ににやりと笑った。

「女の香り……エロいにおいだぞ。おかげで昨日は興奮して勃ちっぱなしだった。まあ、童貞には分らないだろうけど」

「やめなさいって」

 突然のレントの暴露に、サアヤの顔は限界まで赤くなる。

「これはな、フェロモンのにおいなんだよ。それが分からないなんて、ソラタ、お前ほんとに男か?」

「俺はお前みたいに、変な趣味は持ってねえんだよ!」

「ああ、そうかい。趣味が違うなら、いちいち声かけてくんな」

「はっ、もうお前なんかに係わるかよ」

 結局、持てる者と持たざる者の差と言えるだろうか、ソラタは苦虫を噛み潰したような顔をして、俺たちの傍から離れていった。

「ほんとにあいつ、売れ残るぞ」

 明るめの声でそう言ったが、サアヤはそれに反応せず、うつむいたままだ。

「サアヤ、気にするな。俺は」

「いや、そうじゃなくて」

「そうじゃなくて?」

 サアヤの顔は、まだ真っ赤だった。震える手で俺の胸元をつかむと、自分の方へと引き寄せる。

「レントがあんなことするから、濡れちゃったじゃないのよ」

 耳元に囁いた言葉に、俺は思わず噴き出した。

「人前でにおわれて、興奮したのかよ……ヘンタイ」

「もう、知らない!」

 およそ怒ってるようには聞こえない声でそう言うと、サアヤは俺を置いてすたすたと校舎へと入っていった。

 

※ ※

 

 消化試合のような午前の授業を終え、買っておいたサンドウィッチを食べ終えた後、席を立ち教室を出る。ちょうどそこにサアヤが現れた。

「あ、レント」

「おう。あれから変わったことはなかったか? 誰かにいじめられたとか」

「あ、うん。大丈夫。皆に色々聞かれたけどね」

「へえ。どんなこと?」

「女の子同士の話。言うわけないでしょ」

「なんだそりゃ」

 一年生の今の時期だと、誰かのパートナーになっている女子はかなり少ない。もちろん上級生も一年の女子を狙ってくるのだが……男子は、その女子がQかどうかの『判別』をしなければいけない以上、当然慎重になる。女子は「如何に自分がQではないか」のアピールをしつつ、男子の気を引かなければならない。

 どうやって「男をゲットした」のか、情報集めもかねて、色々聞かれたのだろう。まあ、俺とサアヤは『旧知の仲』なのだから、あまり参考にはならないかもしれないが。

 ともかくも、サアヤの様子に変わったところがなかったことに、俺は胸をなでおろした。

「ていうか、どこ行くの?」

「ん? ああ、三年生の教室へ」

「……ちょっと、レント。まさか、あの二人に会いに行くんじゃないでしょうね」

「あー、まあ、そのまさか、かな」

 そう答えるや否や、サアヤは俺の胸倉をつかんで壁に押し付けた。

「何考えてるのよ、アンタ」

「いてて。怖いって。何すんだよ」

「何って、馬鹿なこと考えてるアンタを止めようとしてるのよ」

「馬鹿なことって、どんなことだ?」

「アタシが聞きたい」

 茶化そうとしたが、サアヤの目は真剣だ。どう言おうか、廊下の天井を見上げて少し考える。

「んー、将来、かな」

「……頭大丈夫?」

「大丈夫。冴えまくってる」

 とはいうものの、そんな言葉では納得しない様子だったので、仕方なくサアヤも一緒に連れていくことにした。道すがら、サアヤに俺が考えてることを説明していく。

「Qについての話なんて、『噂』の域を出ない。それに頼ってたら、タツヤみたいにババを引いてしまうだろ?」

「まあ、そうだけど……だからアタシも、いろいろ情報集めるじゃん」

 パートナーになった女子は、パートナーの『出世』を助けるために行動するのが普通だ。だから様々な情報を集め、自分のパートナーがQに引っかからないように協力する。パートナーが多い男子ほど、パートナー集めがさらに有利になるのだ。女子にとっても、自分のパートナーが力を持てば持つほど、自分の将来のためにもなる。

 男の価値は、『ハーレムの大きさ』で決まる世の中なのだ。

「Qのことなら、Qに聞いた方が早いんじゃないかと思ってね」

「あの二人に?」

「ああ。『探Q部』とか言って、Qについて調べてるんだろ? うってつけじゃないか」

 しれっとそう言う俺を、サアヤは複雑な表情で見ていた。

「でもさ、不思議に思わないか?」

「何が?」

「そもそも、あの二人は何でQを公言してるんだろ」

「それは……アタシにも分かんないよ」

「そうすることで、何かメリットでもあるのか?」

「んー…男が寄ってこない、とか」

「それデメリットにしかならんだろ」

「だからアタシにも分かんないってば」

 もちろん、俺にも分からない。だからこそ、それを知りたいと思うのだ。

「そんなこと知ってどうするのよ」

「さあ、知ってから考える」

「はあ?」

 サアヤとは中学からの馴染みだが、そのサアヤでも俺の考えていることが時々分からなくなるときがあるらしい。しかし、そういう時ほど俺がテコでも動かないくらい頑固になっていることもよく知っている。

 サアヤは半ばあきらめた表情で首を振った。

「レントがQになったらやだよ、アタシ」

「分かってるって。でも、もし俺がQになったら、別の男んとこに行くか?」

 パートナーがQになってしまった場合、女子はフリーに戻るか、パートナーから『男性』を奪って新しく男になった『元Q』のパートナーとして残るか、選択ができる。どちらも、メリット・デメリットが存在するが……

 サアヤがそっと俺の手を握る。

「ちゃんと責任とってよ、この体。アンタのせいで、エロくなっちゃったんだから。アタシ、レント以外、やだよ」

 恥ずかしそうにうつむくサアヤ。

「もちろん、そうするに決まってるだろ」

 俺はサアヤの体に顔を押し付け、くんくんと匂いを嗅いだ。

 うん、エロい匂いだ。

「馬鹿っ!」



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09 ミキ

橘花(たちばな)さんと陣風(たてかぜ)さん? いや、教室にはいないわね」

 三年二組の教室まで来た後、そこにいた上級生に二人のことを尋ねたのだが、生憎二人は教室を出ているようだった。

「どこに行ったか、分かりますか?」

「さあ……昼休みに教室にいることはほとんどないわよ。ほら、あの二人ってQだって自分たちで言ってるから、他の人と話をすることも少ないのよ。彼女たち二人でどこかにいるんだと思うわ」

 どうも学校には来ているようだ。休んでいる可能性も考えていただけに、俺はその情報をもって良しとすることにした。

 上級生に礼を言って立ち去ろうとすると、その上級生が引き留めた。

「ねえ、あなた。名前は?」

「あ、はい、深山レントと言います」

「はぁあ、今日、一人目のパートナーを登録した一年生さんね」

 予想通りとはいえ、その手の話はみんなチェックしているのだろう、もう俺の名前も知られているようだ。

「今年の一年生は、手の早い子が多いみたいねぇ……あれ、もしかして、その子がパートナーさん?」

 俺の後ろに控えていたサアヤを指してそう尋ねる。

「あ、はい」

 サアヤは、いきなり自分に話題が向いたのに驚き、慌ててお辞儀をする。

「いやあ、いいなぁ。ね、ね、どうやって彼をゲットしたの?」

「あ、いや、元々、友達だったんです……」

「なるほど……はぁ、なんでだろ、私、なかなか男の子と知り合うチャンスが無いのよねぇ」

 そういうと、目の前の上級生は俺をチラ見した。ぱっちりとした二重の目が何かを訴えかけているようだ。少し茶色がかった内巻きセミロングがふわっと揺れる。目元に色気のある女性だった。

「そうだ、レント君!」

「は、はい?」

「お姉さんと、オトモダチにならない?」

 お、お姉さん……なかなかのハードパンチ。その彼女が俺の腕を取り、抱え込む。ぽよんとした感触が、セーラーの上からでもはっきりと分かった。

「お、おともだち、ですか?」

「そうよ。いきなり恋人じゃ、さすがにおかしいでしょう」

 彼女が、ふふふと笑う。

「そ、そりゃまあ、そうですが」

「私、八奈(はちな)ミキよ。はい、これ私のID。ね、レント君、連絡、頂戴ね♡」

 どこから取り出したのか、手にしたカードを俺のシャツの胸ポケットに差し入れる。

 何となく曖昧な返事をした後、俺は教室を離れたが、ミキはしばらく俺に向けて手を振っていた。

「なんか積極的な人だったな」

「三年生にもなると、女子の方が焦ってくるからね……様子見だとか、ビッチ認定回避とか、そんなこと言ってらんなくなるのよ。売れ残らないようにね」

 思わずサアヤに訊いたが、サアヤは素直に『女子の内情』を教えてくれた。

「まだ、後二年以上あるのにか?」

 この学校は五年制なのだが。

「四年生にもなると、ハーレムの人数も増えてくるからさ。『審査』が厳しくなるのよ」

「審査?」

「そう。男子とデートするのにも、Qじゃないかどうか、パートナーの女子たちが作る『大奥』にチェックされるのよ」

「大奥って……なんかすごそうだな。でも、Qかどうかなんてわかんないだろ」

「噂だとさぁ、もう『拷問まがい』の審査らしいよ。本物の女子ですら苦痛に耐えきれずに、Qだと自白しそうになるってさ」

「どんだけだよ」

 そうやって『冤罪』が作られていくのか……

「だから高学年の男子は狙いにくいのよ。でも、やっぱり知り合う機会は、同学年の男子が一番多いでしょ?」

「まあ、そうだよな」

「だから女子は『三年で焦り、四年で諦める』ってのがね、定番なのよ」

「んじゃもう五年生は賢者モードか」

「近いかも」

「うはぁ……こえーな」

 俺は肩をすくめた。

「で、どうするの?」

 相変わらずサアヤは俺を心配そうに見ている。

「ああ、多分あの二人、二人きりになれる静かな場所にいるんだと思う。どこだと思う?」

「そうねぇ」

 昼休みに誰もいない静かな場所。そんなところがあるだろうか?

「屋上、かな?」

「随分とべたな場所だな」

「べたすぎて誰も行かないのよ。男女で会うなら寮があるんだし、呼び出すにしてもそんなあからさまな場所は選ばないでしょ」

「そんなもんなのか?」

「そんなものよ」

 俺には「そんなもの」なのか全く分からなかったのだが、こういうことは俺よりサアヤの方が詳しそうだ。サアヤの言葉に従い、俺は屋上へ向かうことにした。

「ちょ、ちょっと、本当に行くの?」

「ああ。もちろん……あれ? ついてこないのか?」

「行きたいけど、今日、日直でさ。もう教室に戻らないと」

「そっか。じゃあ俺一人で行くよ」

 そう言って俺はサアヤに向けて、お気楽に手を振った。

「いい? 絶対に変なことしないでよ」

「分かってるって」

 

※ ※

 

 屋上と言っても、校舎は何棟にも分かれているだけに、幾つもの『屋上』が存在していた。しかし俺は、屋上と聞いた時から向かうべきところを思いついていた。主に職員室や保健室、あとは教養科目の講義室などがある棟へと足を運ぶ。

 普通、教師と顔を合わせたいと思っている生徒は少ない。ましてやこの棟は、運動場などからも一番遠いところにあるだけに、生徒の行き交いはかなり疎らである。時折、教師と出会うことを除けば、静かで落ち着いた場所と言えるし、その屋上となれば猶更だろう。

 五階まで上がると、教師や生徒の姿はもう見られなかった。更にその上、屋上への扉の前までくると、静かにゆっくりと扉を開けてみる。鍵はかかっていない。

 風に乗って、どこからか声が聞こえた。

「なぜそうなる!」

 凛とした鋭い言葉。聞き覚えがある声。ソフィーアだ。

「最初にあいつのとこに行こうって言ったのは、ソフィーアじゃねえか」

「男として見に行ったんじゃない」

 言い合いしている相手は、ヤヨイのようだ。予想が当たったということではあるが、どうも様子がおかしい。

 このままでいるのは、まるで覗き見か盗み聞ぎしているようで、それは望んでいることではない。一旦その場を立ち去ろうとしたところ、二人の言い合いが突然終わりを告げた。

「拒絶されて、悲しい思いをしても、私は知らないからな!」

「そりゃ、そうだけどよ……仕方ないだろ!」

 その言葉の後に足音が続き、そして屋上の建物の陰からヤヨイが現れる。戻ることも隠れることもできなかった俺は、ヤヨイと対面することになってしまった。

 俺の姿を見て、ヤヨイがぎょっとした表情を見せる。

「お前……こ、こんなところで何してるんだよ」

「すみません、二人を探してここにきたんですが」

 そこまで言って、ヤヨイの目が赤くなっているのに気が付いた。その俺の視線に、今度はヤヨイが気付く。

「話、聞いてたのか?」

「いや、今来たばかり……」

 しかし、すべてを言い終わらないうちに、ヤヨイは下唇をかんで横を向くと、そのまま階段を足早に駆け下りていった。

「ヤヨイさん!」

「君か」

 ヤヨイの後ろ姿をその場で見送った俺の後ろから、ハスキーな声が聞こえた。ゆっくりと振り向くと、少し困った表情のソフィーアがそこに立っている。

「すみません、立ち聞きする気はなかったのですが」

「ああ、構わないさ。でも、見苦しいところを見せたね」

「えっと……どんな話を?」

「ああ。はは、言う程話は聞いてなかったようだね」

「ほんとに、今来たばかりですから」

「そうか」

 ソフィーアは顎に手を当て少し考えていたが、それを止めると、目で屋上を示した。

「少し、話をしないかい。レント君」



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10 ソフィーア2

「部活のことで来てくれた……と思っていいのかな?」

 屋上の塔屋の壁にもたれて、ソフィーアは俺にそう尋ねた。

 梅雨の終わりとはいえ、今日はとてもよく晴れた気持ちのいい日である。確かにここは、遠くに生徒たちの声がしているだけで、それよりも吹き抜ける風の音の方が大きいくらいに静かだった。

「まあ、それもそうなんですが」

「他に、何かあるのかい?」

「はい」

 ヤヨイとのやり取りのせいなのか、浮かない顔をしていたソフィーアだったが、俺の言葉に少し興味を持った表情に変わる。

「言ってみたまえ」

「どうして先輩たちはQであることを公言しているのか、聞きたいなと思って」

「どうして? ふむ……それを訊かれたのは初めてだな」

「世の中にはQになりたい男子もいると思うんですよ。女子になりたいってね」

 男子の世界も、決して楽なものではない。女子として平凡に生きた方が平和だと考える男性もこの世界には確かにいるのだ。

「そういう人が声を掛けてくるのを待っている。実は最初そう思ったのですが、それならもう男子に成っていてもおかしくはないですよね。でも先輩はまだQ、つまり『女性』のままです」

「確かに、そういう話を持ち掛けられたこともあったかな。でも、断ったよ」

「『男性』を奪うチャンスだったのに、ですよね。すると、理由が分からないんですよ」

 そんな俺の言葉に、ソフィーアはふふふと笑った。

「お、おかしいですか?」

「いや、すまない。しかし、もう君がその答えを言っているじゃないか。女性になりたい男性がいる。なら、男性になりたくない女性がいてもおかしくないだろう?」

 そう言われて初めて、俺はなるほどと思った。確かにその通りだ。しかしまだ引っかかることがある。

「その通りだと思います。でもそれなら、自らQであることをわざわざ周りに言う必要はないと思うんですよ」

 食い下がってみる。するとソフィーアは少し戸惑った表情を見せた。

「本当に、そんなこと……我々がQを公言している理由が知りたいのかい?」

「ええ」

「なぜ?」

「先輩たちに興味があるから、です」

 そう答えると、ソフィーアは、声を上げて笑い出してしまった。

「真面目ですよ、俺」

「いや、すまない、すまない。別に君を馬鹿にして笑ったのではない。許してくれたまえ」

 ソフィーアは、笑いをこらえるために口に当てた手で、今度は耳にかかった栗色の髪を上げるために動かした。

「では、部活への誘いの返事を聞かせてもらえないかな」

「理由を教えてくれるんですか?」

「さあ、それは分からないな」

「部活なら、入りますよ」

 ソフィーアが不意を突かれたような顔を見せる。その視線が一気に、鋭い物へと変わった。射貫くような、相手を震え上がらせるような、鋭い目。

「この学校は、兼部が禁止なのは知っているよね」

「ええ、知ってます」

「我々がこの『探Q部』を単なるサークルではなく、部活動にしているのは、兼部をしてもらいたくないのと、もう一つ」

 ソフィーアが目を閉じる。

「退部を禁止にすることが目的だ」

 そしてもう一度目を開けた。まるで俺の反応を確かめるように。

「部活の規約に明記してある。学校もそれを認めている。一度入ってしまえば、卒業まで籍を抜くことはできない。例え、活動しなくなったとしても、別の部活には……」

「いいですよ」

 言葉の途中で、俺は返事をした。ソフィーアは言葉を止め、そして怪訝な表情を見せる。

「どういう……意味かな」

「別に構わない、ということです。部活、入りますよ」

 もう一度はっきりと返事をする。するとソフィーアの表情が目に見えて険しいものになった。

「レント君。我々の部活動は成績に入らない。大学や大学院への編入の際には、不利にしかならないのだが?」

「ええ、分かってます」

「だったら」

「入りますよ。探Q部」

 その言葉に、ソフィーアの口がしばらく開いたままになってしまった。そして次に発した言葉が、

「君……頭は大丈夫か?」

だった。

「なぜ、そうなるんです?」

「いや、普通、そう思うだろう」

「そもそも、誘ってきたのは先輩じゃないですか」

「い、いや、そうだが……」

「ねえ、先輩」

「何かな」

「わざわざ勧誘を断らせるために、もしくは、入部の申し出を断るために、俺を誘ったんですか?」

 その俺の質問に、とうとうソフィーアは黙り込んでしまった。それに対し、俺も沈黙で待ち続ける。

 そのまま、何分経っただろうか。

「もう一度だけ、確認させてもらえるかな」

「何ですか」

「Qについて知りたいのなら、それについて研究している学内サークルはいくつもある。それは知っているのかい?」

「具体的には知りませんが、そういうのがあるだろうっていうのは、想像つきます」

「Qについて知りたいのなら、そういうところもある」

「俺が知りたいのは、お二人のことですよ」

「なぜそこまで」

「Qを公言し、誰も入るはずのない部活に勧誘し、それでもなお『踏み込んでくる』男子を待っている。俺には二人がそう見えたから、ですよ」

 ソフィーアの動きが止まる。彼女の顔から険しさが消え、その代わり、まるで殺意を帯びたような笑みに変わった。

「はっはっは。面白い。面白い考察だよ。でも違う。それは、違う。違う、違う!」

 突然、ソフィーアが正装用制服の上着のボタンを外し始める。

「私は単に、男が憎いだけだ!」

「先輩?」

 突然の展開に戸惑う俺をよそに、ソフィーアはそのまま全てのボタンを外してしまった。白いブラウスが日に照らされてまぶしく光っている。

「そこまで言うのなら、君に教えてあげよう。私が絶望し、男を敵視するようになり、そしてQを公言するようになった、その理由を」

 ソフィーアがブラウスの裾に手を掛ける。そのままゆっくりと、上へと持ち上げ始めた。

 縊れた腰のラインと小さなへそ。ソフィーアの色白の肌が俺の目に焼き付いていく。贅肉の一切ないお腹、そして……妙に浮き出た肋骨。

 そこで一旦手が止まるが、更に上へとソフィーアはブラウスをたくし上げる。

 本来、その行為を邪魔するはずの胸のふくらみが、ソフィーアにはほとんど無い。難なく、ブラウスは胸の上まで上げられた。ブラウスの下には何も着ていない。

 肋骨の上に張り付くように、わずかに盛り上がったピンク色の蕾が付いている。

「これが私の身体だ。見て、どう思った? 男か、そう思っただろう」

 ソフィーアが、自分の『無い』胸をそっと手でなでる。その様子を見て俺は、どう言うべきか少し迷ってしまった。ソフィーアが言葉を続ける。

「入学当初から私の周りには、よく女子が集まっていた。それを目当てに男子も傍に来ることが多かったのだが、その中の一人、ある先輩と恋仲になってね。ちょうど今頃だったかな。その人の部屋に行ったのだよ」

 ソフィーアは相槌を必要としていないようだった。彼女の言葉を黙って聞き続ける。

「私の服を脱がせた時の彼の目、今でも覚えている。その目に私はね、ひどく嫌悪感を覚えてしまった。何か……何か、汚いものを見るような目だったよ。私はね……彼の『男』を奪おうと思ったんじゃない。彼を……彼を本当に愛していた。一体彼が何度私に『好きだ』と言ってくれたことか。でもあの彼の目は、それを全部嘘にしてしまうような目だった」

 ソフィーアは自分の胸……貧乳と表現することすらためらうような胸を俺の方に突き出す。

「固まったまま何も言わなくなった彼をおいて、私は部屋を飛び出した。翌日から、私はQであることを公言し始めたのだよ」

 ソフィーアはずっと俺の目を見続けている。

「男など嘘の塊だ。男は、敵だ。その男に自分がなる? 反吐が出る!」

 言葉とは裏腹の、助けを呼んでいるような、悲痛な目で……

「じゃあなぜ、俺に会いに来たんですか」

「君の一学期のテストの点数を見て、すぐにわかったよ。君は成績で遊んでいる。しかも部活にも入らず、まるでこの学校の男子が必死にやろうとしていることをあざ笑っているかのようだ。わざわざこの学校に入ってきた、男であるはずの君が、だ」

「それは」

「そんな、生意気な男をあざ笑ってやろうと思ったのだよ、レント君」

 切れ長の目がきつい性格を連想させるものの、これまでのソフィーアからは、高みから微笑んでいるような余裕が感じられた。今、俺の目の前で目を見開き、俺を睨みつけるソフィーアからは、しかしそんな余裕は一切感じられない。張り詰めた糸が切れる……そんな危うさを感じた。



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11 ソフィーア3

 俺は一度目を閉じ、そしてもう一度目を開ける。それを見たソフィーアの目に、少し驚きの色が加わった。ソフィーアに一歩近づく。更に一歩。

「君……」

 何かを言いかけて、ふとソフィーアが自分の胸を抱えるように隠す。

「なぜ、隠すんですか?」

 彼女に手が届くところまで近づいた。そして、胸を隠すソフィーアの手をつかむ。

「ちょっ、待ちたまえ」

 腕をゆっくりと引っ張ったが、ソフィーアはそれに抵抗した。

「な、何をする」

「誘ったのは、先輩じゃないですか」

 抵抗するソフィーアの手をつかんだまま、空いている右手で彼女の腰に手を当てる。

「君を誘ったわけでは……わ、私はQなのだぞ?」

「ええ、そう聞きました」

「なら、なぜ」

「なぜもなにも、先輩の体に触れたいと思ったからですよ」

「私の体? こんな、男のような体に触ってどうするつもりだ」

「いや、とても、魅力的です。というか、エロいです。先輩の裸」

 背中に指を這わせる。すると、ソフィーアの体がぴくっと震え、「あっ」という声が漏れた。

「エ、エロいだなんて……私は……私は……Qで……」

「先輩がQなのか女なのか、そのことと先輩の体がエロいかどうかは、関係ないですよ」

 ソフィーアの目には、今や驚きの色しか浮かんでいない。もう一度ゆっくりと、彼女の腕を引っ張る。

「あっ、あっ……だ、だめだ」

 もう抵抗する力は抜けていた。隠していた胸――乳房というものをほとんど感じさせない痩せた胸、そしてピンク色のぷっくらと膨らんだ乳首が再び姿を現した。

 それに顔を近づける。仄かなバラの香りがした。

「な、何をするつもり……」

「舐めても、いいですか?」

 ソフィーアが絶句する。しかし、拒絶という様子ではない。いや……彼女の目の奥には、『期待感』すらあるように感じた。

 ソフィーアの胸に、舌をゆっくりと這わせていく。

「あっ、だ、だめだ」

 ソフィーアの体がびくびくっと痙攣を起こす。

「い、いけない」

 そしてゆっくりと、花の蕾のような乳首を口に含んだ。

「そ、それ以上は」

 舌で転がし、そのまま軽く歯を立てる。

「ふ、は、はあぁっ」

 突然、ソフィーアの腕が俺の頭を抱いた。二度、三度、体が跳ねる。一旦、顔をソフィーアの胸から離そうとしたが、反対にソフィーアがそれをさせないように、俺の頭を抱く腕に力を入れた。

「あ、あ、だめだ、だめ、あ、ああ……」

 その言葉とは裏腹に、俺の口を、自分の乳首にグイグイと押し当てる。

「いけない。だめだ、いけない」

 まるで、その動きが自分の意志とは違うものだと言わんばかりに、ソフィーアの腕はその言葉とは正反対に、強く動いていた。

 そのまま俺をぎゅっと抱きしめる。頬に、ソフィーアの硬い肋骨が押し付けられた。それが荒い呼吸と共に動いている。ソフィーアの膝はガクガクと震えていた。

「先輩」

 そっと呼び掛けてみる。するとはっとしたソフィーアは、いきなり俺を強く突き放した。胸を腕で隠し、少し前かがみになりながら、荒い息で俺を見つめる。

「レント……君は……」

「先輩の話は、分かりました。俺の答えは、こうです」

 もう一度、ソフィーアに近づく。

「待て、待て、レント。き、君は、Qになりたいのか?」

「まさか。もちろん男のままがいいですよ」

「じゃあ、なぜ」

「だから、先輩が魅力的で、抱きたいと思うから」

 手を伸ばす。しかしソフィーアは俺の手から逃げるように、体を引いた。

「抱きたい? この私を? Qになりたいわけでもない君が? Qである私を?」

「ええ、だめですか?」

「一体君は、何を考えているんだ……」

「何も、何も考えてませんよ。ただ欲望のままに、かもしれません。触れたい、キスしたい、そして、抱きしめたい。先輩を好きになった。ただそれだけです」

 そう言ってほほ笑んだ俺に、ソフィーアはその細く形のいい眉を中央に寄せ、苦しそうな顔を見せた。

「君は……君は私の話を聞いてなお、そう言うのか。なんて……なんて、罪作りな男なんだ」

 俺はゆっくりと、ソフィーアに近づき、俺よりの少しだけ背の高いソフィーアの顔に手を添え、顔を近づける。そしてキスを……

 しかし俺の手は、ソフィーアによって払いのけられた。

「それ以上私に踏む込むなら、君は後悔する。それは私がQだから、ではない」

 苦しそうな、縋るような表情が消え、あのいつもの、冷静で少し笑みを浮かべたソフィーアに戻っていた。

「先輩」

「確かに私は、男になりたいとは思ってない。しかし、しかし……君が私を受け止めるというのなら、私は君を頼ってしまう。すべてを預けてしまう。溺れかけたこの心を、身体を、全て……君は必ず、後悔する」

「そんなことは」

「いい、言うな」

 そう言うとソフィーアは、自分の上着の内ポケットから二枚のカードを取り出し、差し出した。

「これは?」

「私と、ヤヨイのプロフカードだ。IDが書いてある」

「ヤヨイさんの?」

「ああ。Qを公言する理由が知りたいのだろう? ヤヨイにはヤヨイの理由がある」

「それは?」

「その話はヤヨイに直接聞きたまえ。私が言うべきことではない」

「……はい」

「君は……本当に私が欲しいのか?」

「ええ」

「私の中に『出す』ことはできない。君の子を産むこともできない。それでもか?」

「はい」

「軽く言う……もう一度考えると良い。忠告はした。私が欲しいなら、連絡をくれたまえ。その時に、入部を歓迎しよう。そして……君のものに、なってあげよう。私を好きにすると良い。でもきっと君は後悔する」

 随分と含みのある言い方。確かに、『単にQだから』というものではなさそうだが……

「分かりました。覚悟ができたら、連絡します」

 プロフカードをソフィーアから受け取る。

「私はもうしばらくここにいる。一人にしてくれないか」

「分かりました」

 これ以上、ここにはいない方が良いだろう。

 そのまま俺に背を向けて景色を眺め始めたソフィーアを見て、俺はそう判断し、屋上を後にした。

 

※ ※

 

 ヤヨイはどこに行ったのだろう。

 そんなことを考えながら階段を下りていたら、二階の踊り場で誰かにぶつかった。軽い悲鳴が上がり、倒れる音。驚いて見ると、床一面に黒いもの……大量の髪の毛が広がっていた。まるでその中に埋もれるように、正装用制服を着た女性が倒れている。

「す、すみません、大丈夫ですか?」

 腕を取って起こす。女性と目が合った。俺よりも頭一つ低い。半分閉じたような気怠そうな二重の目。その奥の瞳はどんよりと曇っている。薄い唇は、真一文字に閉じられていた。

 と、その目が怯えたようなものに変わり、俺の手が振りほどかれる。

「ご、ごめ、なさいっ」

 視線を逸らしながらそうつぶやくと、その女性は逃げるように、長い髪を揺らしながら階段を上がっていく。

「あ、ちょっと、すみません!」

 そう声を掛けたが、彼女は三階の廊下へと消えていった。

「大丈夫、かな……」

 結構派手に倒れていたような気がしたが……と、床に何か落ちているのが目に入る。拾ってみると、プロフカードと、紫色の高級そうな万年筆。

 プロフカードには、『雲雀シエル』という名前とID番号が書いてあった。

 そろそろ昼休みが終わる。それ以上どうすることもできず、俺は急いで教室へと戻った。

 

※ ※

 

 放課後、サアヤを誘ったが今日は家の用事があるらしく、「ごめん、今日は帰る」と謝られてしまった。俺はすることもなく、とりあえず自分の部屋に戻ってくる。

 一息つき、そして今日手に入れたプロフカードをテーブルに並べてみた。

「なんか、今日一日で随分プロフカードをゲットしたな」

 プロフカードは名刺みたいなもので、知り合ったり、紹介されたりするときに便利なものだ。

 橘花ソフィーア、陣風ヤヨイ。そして、彼女たちと同じクラスの八奈ミキ。随分積極的な、明るい感じのお姉さんだった。連絡ちょうだいと言っていたな。

 もう一枚、これは拾ったものだが……多分この万年筆もあの人、雲雀シエルのものなのだろう。少し、気の弱い人のように思えた。連絡して、落とし物を届けてあげた方が良いだろう。

 とりあえずどんな人なのか、端末で調べてみると、五年六組の生徒だということが分かった。どうも、誰のパートナーにもなっていないし、パートナーだった履歴もない。

 五年生と言うと、最終学年。もう賢者モードの人か……

 

 あの二人はQを公言しているからだが、他の二人も、こうしてみるとQに見えてくるから不思議だ。自分でもおかしいと思うのだが、会う女性会う女性、みなQに思えてくる。これが、男子が感じるプレッシャーなのか。

 自嘲気味の笑いが込み上げてきた。

 

 まあ、いいさ。

 さて、どうするか。誰かに連絡してみようかと思うが……誰にする?



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12 シエル

 まずは一番軽い連絡、つまり雲雀シエルへ落とし物の連絡をする。

『初めまして、一年の深山レントと申します。今日、ぶつかってしまってすみませんでした。お怪我はなかったですか。その時に、紫色の万年筆を拾いました。雲雀先輩のものではないでしょうか。心当たりがある場合はご連絡ください』

 ちょっと硬すぎるか? そう思いつつも、学内メールの送信ボタンを押す。

 さてその次は……ヤヨイさん、かな。

『お話したいことがあります。会えませんか。返事待ってます』

 文面が深刻過ぎて笑えるが、まあ、いいか。

 とりあえずその二つを送り終え、何か飲もうとキッチンに行くと、端末の電子音が鳴った。

 早いな……

 端末を見てみると、シエルからの返事だった。メールを開いてみる。

『初めまして、レントさん。あ、でも、もう会ってるのだから、初めてじゃないですね。連絡ありがとう。どこに落としたのか分からなくて探していたので、とてもうれしいです。万年筆は、明日、レントさんの教室まで取りに行くので、持ってきてもらえますか。お願いします。』

 随分と丁寧な人だと思いつつ、俺はそれへの返事を書く。

『分かりました。では明日、持って行きます。こちらこそお願いします』

 よし、これでとりあえず一件終わり……そう思っていたら、再び返事が返ってきた。送り主はシエルである。

『ご丁寧にありがとう。こうやってレントさんからメールをもらうと、ぶつかった時のことを思い出します。痛くはなかったですか? 気が動転してしまっていたので、謝罪もできずにごめんなさい』

 こちらの心配をしてくれている。あの時の印象とは違い、明るそうな人のようだ。

『全然大丈夫です。先輩に怪我が無かったか心配でした』

『心配してくれてありがとう。とてもうれしいです。あ、でも』

 そこでメールが切れている。続きがあるのかとしばらく待ったが、そうではないらしい。

『どうかしましたか?』

『いえ、大丈夫です。いえ、大丈夫じゃないかもしれません。思い出した途端、レントさんに触れた肩、握られた腕が、熱く火照ってきて、少し苦しいです』

 メールを見て目が点になった。この人は、何を書いているのだろう。何か……何かが違う。相手の名前を確認してみたが、確かに『雲雀シエル』と書いてある。

 サブウィンドウで生徒情報を確認してみたが、登録してある写真は、階段の踊り場でぶつかった、長い黒髪をした少し重たい雰囲気のあの女性のものだ。

『あの、どこか怪我したのですか?』

『いえ、怪我ではないです。体が火照ってるだけで、手が止まらないです』

 ……何、これ。

 唖然としてしまって、何をどう返せばいいのか分からない。その間にもどんどんとメッセージが送られてくる。

『シエルの、恥ずかしいアソコを、レントさんが握ってくれた手で触ると、電気が走る様に痺れます』

 ……ちょ

『シエルは今、イケないことをしています。まるでレントさんが触ってくれてるようです。レントさんを思い出して、シエルは今、オナニーしています』

 ……待って

『手が、止まりません。クリトリスをいじる手が止まらないんです。レントさんが触ってると思うと、止まらないんです』

 ……いや

『あ、ああ、いきそうです。シエルはいけない子です。シエルの恥ずかしい姿、見てくれますか?』

 そこで少し時間が空き、そして、写真が送られてきた。そこには、生徒情報に載っていた写真の女性が、制服姿のスカートをまくり上げたあられもない姿……ピンク色のオマンコを愛液でべとべとにし、中指でクリトリスをいじっている姿が写っていた。処理しているのだろうか、毛は生えていない。

 目が……今日会った時は眠そうな半目だったものが、今は大きく見開かれ、切なそうに歪んでいる。

『シエルの恥ずかしいオナニー姿です。レントさんも、私の姿を見て、オナニーしてくれますか? 私の恥ずかしい姿をオカズにしてくれますか?』

 これは想定外だ……どうしたらいいか、困ってしまう。

『動画の方がいいですか?』

『待ってください、先輩。どういうつもりですか?』

 素直にそう送った。そして、そう送ってから、もう少しソフトに言うんだったと後悔した。シエルからのメール送信が止まる。まずかったかと思っていると、一文が送られてきた。

『ごめんなさい、許して』

 なんだか、やばそうな予感しかしない。

『気にしてません。大丈夫です。大丈夫ですよ。ビックリしただけです』

 そう送り返したのだが、

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』

と返ってきた。句読点無し。やばさマックスか?

『謝らないでください。大丈夫です』

 この場を収めないと……とりあえず思いついた言葉だけを送った。しかし、次にシエルから送られてきたメールには、『ごめんなさい』という言葉が何行にも渡って書かれていた。

 それに返信しようとして、またメールが来る。そして次々と。それらすべてが『ごめんなさい』で埋め尽くされている……これ、どうしよう。

 サアヤに聞こうか、そう思ってから思い留まる。そして俺は覚悟を決めた。

『先輩、怒ってないですから! というか、先輩がエッチ過ぎて興奮しました!』

 そう書いて送信する。と、シエルからの『ごめんなさい』メールが止まった。しばらくの無音の時間。そしてメール着信の音。メールを見ると、

『ほんとうですか?』

と書いてあった。

 ……怖い、怖すぎる。

『ほんとうです、ほんとうです。こんなに興奮していいのかな、なんて思うくらいです』

 なんだか、どんどん深みにはまっていってるような……さすがに不安を感じたが、また着信音が鳴る。

『うれしいです。レントさんの優しい言葉を読んで、シエルのエッチなオマンコから、お汁があふれてきて止まりません。音も聞いてください』

 音声ファイルが……再生すると、くちゅくちゅという卑猥な音が響いた。

『興奮しましたか? シエルのイケないオマンコの音をオカズにしてくれてますか?』

 そして更なるメール。しかし、事ここにきて、雲雀シエルに対して興味がわいてきた。あの雰囲気から想像できない、卑猥なメール……一体どんな人なのだろう。

『はい、興奮が止まりません。先輩、よかったら一度二人でお会いしませんか?』

 Qかもしれない。五年生か……ソフィーアなら何か知っているだろうか。

 

 そんな風に考えていたのだが、しかしそれ以降、シエルのメールはもう来なくなってしまった。



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13 ソフィーア&ヤヨイ2

「やっぱりその人、Qじゃない?」

 サアヤが心配そうに俺を覗き込む。昨日は結局その後シエルからも、そしてヤヨイからもメールは来なかった。個人的なものなだけにどうしようかと迷ったが、俺はサアヤにシエルとのメールについて話したのだ。

「んー、それにしては露骨すぎやしないか?」

「五年生でQなら、必死な人もいるかも」

「それじゃばればれじゃね? それに、最初に会った時は、どっちかっていうと、人としゃべるのが苦手っぽく見えたんだけど」

 そうなる前のこと――ソフィーアとどんな話をしたかは、サアヤには言わなかった。とりあえずサアヤは、『何事も無かった』ことに安心しているようだ。

「人は見かけによらないから」

「それにしてもなぁ」

 始業前、朝の廊下は生徒が慌ただしく歩き回っている。と、その中をゆっくりと歩く天河キユレの姿が見えた。俺とサアヤの姿を見て、涼しげに微笑む。

「やあ、レント君。瑞雲さんをパートナーにしたんだね」

 そう声を掛けてきた。

「おかげさまでね」

「そっか。これで君も」

 そこまで言ってキユレは、俺の耳に自分の顔を近づけた。周りにいた女子生徒のざわめきが聞こえる。

――隠れていられなくなったね。

 ささやき、と形容することすら躊躇いそうなくらい小さな声で、キユレは俺に囁いた。

 横目でキユレを見る。ふふっと軽く笑うと、キユレは俺から離れていった。

「ねえ見て、キユレ君とレント君のツーショット撮っちゃった!」

「なにこれ、接近しすぎぃ。私にも頂戴!」

「私も!」

 女子たちがこの『ハプニング』についてキャッキャと騒いでいる。しかしそんなことよりも、キユレに『ばれていた』ことが面白くなかった。

 一年の間は目立たないように。しかしサアヤをパートナーにしたことでその目論見は崩れてしまった。もう十分目立ってしまっている。それがキユレにそう仕向けられたような……いや、サアヤをパートナーにするのは元々決めていたことだし、それが単に早まっただけだ。

「レント、どうしたの?」

 キユレの後姿を見ていた俺にサアヤが声を掛けた。

「ん? いや、何でもないよ。というか」

 改めて周りを見回す。騒いでいた女の子たちが、慌てて『日常』へと戻っていった。

「キユレと俺のツーショットなんか撮って、面白いのか?」

 サアヤにそう尋ねると、

「意外にね、レントも人気あるんだよ」

 と返ってくる。

「俺が?」

「うん」

 思わず聞き返した俺に、サアヤが一年の男子の評判を教えてくれた。一番人気はキユレだが、男らしさが好きな女子はタケゾウのほうがいいらしい。

「でも二人は敷居が高いでしょ? レントの平凡そうなところがいいんだって」

「なんだよ、それ。平凡そうなら、ソラタだってそうだろ」

「あいつは、感じ悪いから」

 バッサリ切られたソラタが少し可哀想になった。

「おはよ、レントくん」

 と、別の声に呼び止められる。見ると、六組の一式(いっしき)ケイマだった。一年男子の中では一番背が低く、まだ少年の「かわいらしさ」が残るあどけない笑みで俺を見ている。

「おお、おはよう、ケイマ」

 ケイマは学科も運動もイマイチだが、音楽が得意な男子だった。

「とうとう瑞雲さんをパートナーにしたんですね。もっと早くにそうなると思ってたんですけど」

 他の男子とつるみたくない俺と、引っ込み思案なケイマは、男子二人でペアを作る時に『余ったもの同士』として組むことが多かっただけに、男子の中では一番仲のいい間柄になっていた。

「まあ、色々な」

 俺の曖昧な返事にケイマは「ははは」と笑ったが、その笑いが顔から消えた時、表情の中に「うらやましさ」が残っているように見えた。

「ケイマは、誰か仲良くなった女の子、いないのか?」

「僕? えーっと、いないですねぇ」

「まあ、まだ焦る時期じゃないけどな」

 ケイマは音楽部に入っているので、周りに女の子がたくさんいそうではある。そう思ったのだが、当の本人は、

「あまり興味無いです」

と微笑むと、俺に手を振って、六組の教室へと入っていく。その言葉と、一瞬見せた『うらやましさ』が合っていないような気がして首をひねった。

「アタシも行くね」

 しかし、サアヤがそう言って五組の教室へと向かったので、思考を中断し、俺も四組の教室へと入る。

 雲雀シエルが万年筆を取りに来るかと思ったのだが、結局現れなかった。

 

※ ※

 

 一学期ももう残り一週間。こうやって昼休みに席に座ってぼーっとするのもあとわずか……そんな感じで天井を眺めていると、俺の視界にソフィーアの顔が逆さまに現れた。栗毛色のショートボブが俺に向かって垂れている。

「あれ、先輩」

「やあ、レント」

「どうしたんですか? って、先輩、いつの間にか俺の名前呼び捨てになってますね」

「嫌、かな?」

 そう言ってソフィーアが、俺の顔を覗き込む。

「いえいえ、光栄ですよ」

 そう返事をし、身を起こそうとしたが、ソフィーアの顔が邪魔になっていた。

「先輩、それじゃ俺、動けません」

「なぜ?」

「先輩に当たっちゃいますよ」

「私は構わないよ。君が……」

 ソフィーアが言い終わらないうちに、顔をソフィーアに近づけた。ソフィーアがそれに応じ……二人の唇が合わさる。ソフィーアとの初めてのキス。軽く口を開けると先にソフィーアの舌が俺の口の中へと侵入し、俺の舌に絡みついてくる。教室に残っていた女子の何人かが「わぁ……」と声を上げるのが聞こえた。

 その時、

 

 ガタンッ

 

 何かが倒れる音が響き渡る。音のした方に目を向けると、ヤヨイが目を見開いて、俺とソフィーアを見ていた。

「ヤヨイさん」

 ヤヨイは何かを言おうとして、しかしその言葉を飲みこむと、走って教室を出ていった。ソフィーアの方を見ると、彼女もヤヨイが消えた教室の扉を見つめている。

 休み時間なら教室でHしても許されるようなこの学校で、キスくらいで驚く生徒はいない。しかし、ヤヨイの様子は少しおかしかった。

「先輩、ヤヨイさんは? 昨日メールしたんですが、返事をもらえなくて……俺、嫌われましたか」

「それも直接ヤヨイに聞くといい。たぶんヤヨイは、屋上に行ったんだと思う」

 後を追えと言わんばかりに、ソフィーアはそう言ってほほ笑む。俺は「わかりました」と返事をして、屋上へと向かった。

 

※ ※

 

 昨日二人がいた校舎の屋上へと行った。外に出ると、塔屋の壁にヤヨイが腕を組んでもたれている。

「何しに来た」

「ヤヨイさんに、聞きたいことがあって」

「あたいの相手をしてる暇なんかあったら、ソフィーアの相手をしてやりな」

「ヤヨイさんと、話がしたいんです。メール、返事くれませんでしたね」

 ヤヨイは前を向いたまま、俺に視線を向けようとはしない。あまり手入れをしていない長い赤毛が風に揺れている。

「……何が聞きたいんだよ」

「ヤヨイさんが、Qを公言している理由です」

「なるほど。ソフィーアからはそれを聞き出したってわけか……で、あたいのIDをソフィーアから貰ったんだな」

「はい。教えてくれました」

 そこでヤヨイは壁にもたれるのをやめた。組んだ腕をほどき、俺の方を見る。

「そんなもん聞いてどーすんだ?」

「どうするってわけじゃないです。単純に、知りたいと思うだけです」

「何で知りたいんだよ」

「ヤヨイさんを気に入ったからですよ」

 笑ってそう返したが、俺を見るヤヨイの目が、敵意を含んだものに変わった。

「そんな調子でソフィーアを『落とし』たんだな」

「いや、『落とした』だなんて……」

「嘘つけ。ソフィーアが男に触れるなんざ、よっぽどだ。それにお前……Qに言い寄って、どうするつもりだよ」

「どうもしませんよ。それに、先にアプローチしてきたのは、先輩たちです」

 そう反論する。ヤヨイの表情が、少しバツの悪そうなものに変わった。

「あたいたちが、お前に会いに行った理由は、ソフィーアから聞いたんだろ」

「ええ」

「それを知ってなお、か? Q相手に恋愛ごっこたぁ、いい度胸じゃねえか」

「ごっこじゃないです、ソフィーア先輩、かわいいです。好きになりました」

「ソフィーアが、かわいい?」

「ええ、ヤヨイさんもそう思いませんか?」

 俺の言葉に、ヤヨイの目が険しくなり、俺を睨みつける。

「あいつはああ見えて、すごく繊細で傷つきやすい。な。なのに……攻撃的なんだよ」

「そう、ですね」

「ソフィーアを傷つけたら、あたいが許さない」

「もちろん、そんなことしません」

「なら、もう関わんな。こっちが先に近づいたのは、謝る。だからお前がソフィーアを傷つける前に、あたいたちの前から消えてくれ」

「嫌ですよ。もう、ソフィーア先輩を好きになってしまいました。それに、ヤヨイさんも」

「へぇっ?」

 ヤヨイの目が点になる。

「だから、ヤヨイさんが好きです」

「お前、からかってんじゃねーぞ!」

「からかってません。ヤヨイさんも、とてもかわいいです」

 俺の言葉に、ヤヨイの目つきがまた変わった。さっき以上の怒りの表情を見せる。いきなり俺に近づき、俺の胸ぐらをつかんだ。

「ふざけんな」

「ふざけてませんよ」

「Q相手に、好きになったとか、ふざけてる以外に何だってんだよ!」

「『Q相手』じゃないですよ。ヤヨイさんを好きになったんです」

 そうヤヨイに訴えかける。と、ヤヨイが怒った表情のまま、顔を赤らめた。

「あ、あのな、レント。Qじゃ、パートナーになれねえだろ? 馬鹿も休み休み……」

「別に、パートナーだけが『関係』じゃないでしょう。ヤヨイさんも、俺のこと好きになってくれませんか?」

 胸ぐらをつかんでいたヤヨイの手の力が緩まる。怒りの表情が無くなり、呆れたと言わんばかりのものに変わった。

「お……お前は、馬鹿じゃねえ。イカレてる」

「真剣ですよ」

 ヤヨイから視線は外さない。しばらく見つめ合って、ふとヤヨイが笑った。

「わかった。そこまで言うなら……あたいを抱いてみろ」

「え?」

「あたいのマンコに、お前のチンポ、入れてみろよ。Qのマンコにな。その度胸があるなら、お前のこと、好きになってやんよ」

 そう言うとヤヨイがセーラー服の前ボタンを外し始める。そして俺の前でセーラーを開いて見せた。



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14 ヤヨイ

 俺の目の前に突き出されたヤヨイの白いブラジャー。

「そういや、あたいがQを公言してる理由が知りたいって言ってたな」

「ええ」

「あたいマンコ、見ただろ。あれ、初めて見た奴がさ……すっげえ嫌な顔して、言ったんだよ。グロいってな。遊び過ぎだろ、とも言われた。あたい、男に体見せたことすらなかったのに。どうせ男なんてみんな、そう思うんだろ?」

「それで、男が嫌いになったんですか?」

「ああ、そうだよ」

 俺はヤヨイに近づいた。

「だから、下級生にアソコを見せて歩いてたんですか?」

「あ、歩いてなんかねえよ。幻想ばっか見てる男どもに、現実を見せてやろうと思っただけだ」

 反論したヤヨイが俺の方を向く。もうヤヨイの傍まで来ていた。ヤヨイが少し驚いた様子を見せる。

「ヤヨイさんのアソコ、とてもエロティックでしたよ」

 そう言ってヤヨイの胸に手を伸ばす。と、ヤヨイが胸を腕で隠した。

「そ、そんなこと言うのは、お前みたいに、馬鹿の上に変態が付くような奴だけだ」

 ソフィーアにしても、ヤヨイにしても、誘っておいて近づくと胸を隠すのはなぜなのだろう。

「俺、変態ですから」

「認めてどーすんだよ。ってか、見たって、面白くもなんともねーだろーに」

「でも、今まで見た中で、一番エロい形のアソコですよ」

「ばっ、わざわざ言わなくていーんだよ! それにお前、何人の見たんだよ」

「えっと、ヤヨイさん含めて、三人?」

「……ソフィーアのも見たのかよ」

「いや、先輩のは、まだ、ですね」

「そ、そうか。って、三人の中で一番って言われても、反応しようがねーだろ」

「まあ、そうかも、ですね」

 俺はそう言って笑いながら、胸を隠しているヤヨイの腕をつかむ。腕を引っ張ったが、しかしヤヨイは抵抗した。

「ちょ、ちょっとまて、お前。本気か?」

「ええ、もちろん。抱けって言ったのは、ヤヨイさんですよ」

「おま、普通そこで『無理です』って言うだろが!」

「俺、本気ですから。でも、そんなに男が嫌いなら、もう男になってしまったほうが、男を相手にしなくて済むんじゃないですか?」

「へ?」

「だって男の相手が嫌なんでしょ?」

「自分が男って思うだけで、反吐が出そうなんだよ。このままでいいんだよ」

「そうですか」

「お前……まさか、Qになりたいのか?」

「いえいえ、違います。でも考えてみれば、Qになっても、もう一回すれば、元に戻るんじゃないですか?」

「へっ?」

「いや、ヤヨイさんを抱いたとして、その後、今度は俺がQでヤヨイさんが男になるんでしょう? ヤヨイさんは男になりたくないんだから、そこでもう一回Hすれば元に戻るんじゃないですか?」

「……お前、馬鹿か?」

「ええ? いい案だと思ったんですが」

「意味がないだろ、そんなこと」

「そう、ですか?」

「お前、あたいと、そんなにエッチしたいのかよ」

「ええ、とっても」

 腕をさらに引っ張ってみるが、ヤヨイはどうしても腕をどけようとはしない。俺はヤヨイの背中に手を回し、体を密着させた。そして左手をスカートの上から秘部に当てる。

「だ、だから駄目だっての! Qになるぞ」

「男に戻れるなら、別にいいんじゃないですか」

「もし、あたいが男のままでいたいって言いだしたら、どうすんだよ」

「んー、まあ、それはその時に考えます」

 背中と秘部を同時に軽くなぞる。ヤヨイの体がぷるるっと震えた。

「あっ、お、お、お前な!」

「今は、男になりたくないって思ってるんでしょう?」

「そ、そうだけど、やめっ」

「じゃあ、それを信じます」

 俺より背の高いヤヨイの頭に手を添え、こちらへと引き寄せる。強気な表情はすっかり消え失せ、ヤヨイはただただ戸惑いを見せていた。

「おまえ、ほんとに……」

「ええ、ヤヨイさんが、好きです」

 唇が合わさる。と、すぐにヤヨイが顔を引いた。俺は思わずおあずけを食らったような顔をしてしまった。

「だめ、ですか?」

「い、いや、じ、実は、もうひとつ、あるんだ」

「何がです?」

「コンプレックス」

 あのヤヨイが、今はすっかり恥じらいを見せ、視線を斜め下に向けている。彼女のブラは今だしっかりと両手でガードされていた。

「コンプレックスは誰にもありますよ」

「そ、そうだが……」

 もう一度、ヤヨイの腕を引くが、ヤヨイはさらに力を入れる。

「にゅ、乳輪がな」

「乳輪?」

「そ、その、お、大きいんだよ」

「は、はい?」

「真面目に言ってるんだ」

「分かってますけど、見ないと分からないですよ」

「見たら、嫌になるぞ」

「んー、見ないと分からないです」

 俺はそう言うと、ヤヨイに向けてにっこりと笑った。

「……ずるいな、お前」

「一応、ジェントルに言い寄ってるつもりなんですが」

 ヤヨイがジト目で俺を見る。俺は表情を変えない。

「わ、分かった。じ、自分で見せるの、恥ずかしいから、お、お前が、勝手に見ろ」

 そう言ってヤヨイはとうとうブラから腕を離すと、横を向いた。

「いいんですか?」

「あたいがいいって言ってるうちに、見ろよ」

 ホックが外れたブラは、ヤヨイの大きなおっぱいに引っ掛かっているだけで張り付いている。ブラに手を掛けると、ヤヨイが一つ吐息をついた。

 ブラをずらす。するとすぐに、乳輪の縁が俺の目の前に現れた。これは……

「ここまであるんだ」

 思わずこぼした言葉に、ヤヨイは急いで手で胸を隠してしまった。

「グ、グロいだろ」

「エロいの間違いですよ。んー、手で隠してたら見えません」

「ま、待て。もういいだろ……」

「よくないです」

 その言葉に、ヤヨイはとうとう観念した様子を見せた。ヤヨイがきつく目をつむるのを見て、俺はゆっくりとヤヨイの手をどける。

 手のひら以上の大きさがあるだろうか。巨大な乳輪がおっぱいのかなりの部分を覆っている。その中心には、黒く硬くなった大きめの突起が山の頂上のように突き出していた。

「すごい……」

 ゆっくりとその乳輪に触れる。

「やっ……」

 目をつむり顔を背けていたヤヨイの口から、悲鳴とも憑かない声が漏れた。

「ヤヨイさん」

「そ、そんなにじっくり、見るなよ……」

「とてもエロいです。とてもいいです」

 俺は左手で胸を軽くなで続ける。ヤヨイが軽い吐息を二三度はいた。乳首を軽くつまんでみる。先端が一層固く勃起してくる。

「あっ」

 軽く触り、またつまむ。おっぱい全体を撫でまわすように。ヤヨイの息遣いがどんどん荒くなっていくのが分かった。

「俺のこと、好きになってくれますか?」

 そう聞いた俺を、ヤヨイは目を開け、潤んだ瞳で見つめる。

「もう、とっくの昔に、お前のこと、好きになってんだよ……」

「え?」

「最初、お前んとこに行こうと言い出したのはソフィーアだ。でも、二度目からはあたいが行くって言ったんだよ」

 またヤヨイは恥ずかしそうに、視線を外した。

「それで、先輩とここで言い合いになってたんですね」

「ああ、そうだ。ソフィーアは……」

 まだ何かを言おうとしたヤヨイの口を、唇でふさいだ。んんっという声が漏れたが、もうヤヨイは抵抗せず、俺の顔を手でつかみ、俺の舌にむさぼる様に吸い付いた。

 乳首をつまむたびに、ヤヨイの口から快感の吐息が漏れる。そっと手をスカートの中に忍び込ませる。今日もヤヨイは、Tフロントのパンティーを履いていた。見えはしないが、左右にはみ出した、大きなアソコのビラビラが指に絡みついてくる。それらはオマンコから分泌された愛液でパンティもろともすっかりぐしょぐしょに濡れていた。

「ヤヨイさん……濡れてます、いっぱい」

「そ、そんなこと言うなって、恥ずかしいだろ……ああっ」

 パンティの中に指を滑り込ませ、ビラビラの奥に隠されていたクリトリスを探り当てる。

「ああっ、そ、そんなに刺激したら……」

 快感に比例するように、ヤヨイの乳首がさらに大きく高くつきだしてきた。それを口に含み、強く吸ってみる。

「よ、よせっ」

 ヤヨイの足がガクガクと震える。ヤヨイが俺の顔を、自分の方へと向かせた。

「ヤヨイさん……」

「これ以上したら、ほんとに、お前と、したくなっちまうだろうが……」

「俺は、したいです」

「ほんとに、あたいの、こんな体が欲しいのか?」

「こんなって言わないでください。それに、体だけじゃないです。気持ちも」

 アソコの奥からまたドロッとした愛液があふれ、刺激していた俺の指を濡らす。

「Qになってもか?」

「Qになっても、です」

 ヤヨイの手が俺の顔から離れ、俺のペニスにそえられる。

「おまえのオチンポ、こんなに硬くしやがって……」

 そう言うとヤヨイは、俺のズボンのファスナーを下げ、ペニスを取り出す。そして壁にもたれると、足を広げパンティを横にずらすと、自分のビラビラとしたオマンコを俺の方へと突き出した。

「レントのオチンポ、あたいのマンコに、おくれよ」



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15 ヤヨイ2

 ヤヨイの秘部にあてがった俺のペニスは、ヤヨイの愛液ですぐにべとべとになってしまう。押し当てられた感触に、ヤヨイが目を見開いた。

「あたいのオマンコに、レントのオチンポが当たってるよ……」

 そのままゆっくりと突き上げるように差し入れる。ペニスがビラビラに包まれ、にゅるっとした感覚で少し中に入ったが、直ぐに壁のようなものにつっかえた。少し腰を引き、また奥へと進む。

「ああっ、入って、入ってくる」

 壁を背にしているヤヨイは、大きなおっぱいを無防備に揺らし、少し口を開けて、喘いでいた。

「ひ、ひぃいい」

 つっかえていた場所を突き破り、ペニスをさらに奥へと入れていく。

「いたいっ」

「大丈夫ですか?」

「ゆ、ゆっくり、ゆっくり……」

 ヤヨイが俺の首に両手を絡める。ゆっくりと前後に揺らしながら、ヤヨイの中へと入れていく。

「レントが、レントが、あたいの中に、入ってる」

 手入れがされ、ムダ毛が綺麗にそられたヤヨイのオマンコに、俺のペニスが深々と突き刺さっていた。

「あ、ああ、レントのオチンポ……ああ……」

 痛みに耐えているのか、それとも気持ちよく思っているのか。どちらとも分からないような切ない顔で、ヤヨイは俺を見つめた。

「ヤヨイさん……動きますよ」

 そう耳元で囁く。

「だ、大丈夫、動いて……」

 その言葉に、最初はゆっくりと、そしてだんだん抽挿を速めていく。きつい膣内の粘膜が、ペニスに絡みつくような感触を増大させ、頭の芯を痺れさせていくような快感が走った。

「とても、気持ちいいです、ヤヨイさん」

「あ、あたいも、きも……う、うそ……な……なんだ、これっ」

 俺の動きに合わせるように、ヤヨイの腰も動き出す。

「レントのオチンポ、気持ちいい、気持ちいいよっ」

「ほんとですか? 感じてくれてます?」

「硬いのが、壁に、こ、こすれて、はうっ」

 気がつくと、二人ともが激しい動きになっていた。

「ヤヨイさん、お、俺、いきそうです」

「ほ、ほんとに、あ、あたいの、オマンコの中に、出すの、か?」

「出したい、です、出したいです」

「いいのか? ほんとに、いいのかよ、レント!」

「中に、出しますよっ」

「い、いっぱい、いっぱい出してくれっ。あたいの中に、レントの精子、いっぱい出してっ」

 ペニスの奥から何かが沸き上がってくるような感覚。そして俺の精液が、ヤヨイのオマンコの中へと、大量に放出される。

「な、中に出されてる……子宮が精子でぐちょぐちょにされてる……」

 ヤヨイは俺の目を見つめながら、そうつぶやいた。

 

※ ※

 

「出しちゃいましたね」

 ペニスがヤヨイの中で小さくなっていっても、俺は抜かずにそのままヤヨイに寄り添っていた。

「ったく、お前、馬鹿だな」

 そう言って、ヤヨイが俺にキスをする。

「良く知らないんですけど、これ、直ぐに身体が変化するんですか?」

 何が起こるのか……怖くないと言えばウソだが……

「しねえよ」

「え? じゃあ、何時間か後に?」

「ちげえよ。お前の身体、そのまんまだよ」

「な、なぜですか?」

 ヤヨイの言葉の意味が分からず、俺は思わず聞き返した。ヤヨイは申し訳なさそうな、それでいてどこか嬉しそうな様子で、

「あたいが、Qじゃないからだよ」

とつぶやく。そして俺を彼女の大きな胸の中に抱きしめた。

「へ? それって……もしかして嘘だったんですか?」

「だ、騙すつもりは無かったんだけどよ……怒ったか?」

「いや、怒りはしませんが……Qになりたいわけじゃないですから、それはいいんですよ。でも」

「でも?」

「あ、いや、なんでも」

 そう言ってごまかすと、俺はゆっくりとヤヨイから体を離した。ヤヨイがスカートをたくし上げ、自分のアソコを確かめる。閉じていても、外にはみ出して垂れ下がっている大きな小陰唇から、俺が出した白い液体が、雫となって滴り落ちた。

「うわぁ、ぐっちょぐちょじゃねぇか。さすがにこのまま教室行くのはまずいかな」

「そ、そうですね……」

 まるで俺に見せるようにスカートをめくっているヤヨイの仕草がとてもエロティックに見えた。ヤヨイがふと顔を上げ、俺の視線に気が付く。

「そ、そんなに見るなよ。は、恥ずかしいじゃねえか」

 慌ててスカートを下ろしたが、残念そうな表情をした俺を見て、

「ま、まだ見たいのか?」

と恥じらいながら尋ねてきた。

「え、ええ」

「じゃ、じゃあ、もう少しだけだぞ」

 そう言ってヤヨイがまたスカートを持ち上げる。顔を赤らめながら横を向きつつ、Tフロントのパンティを横にずらしたままのアソコを、俺に見せてくれた。

「ど、どう思うよ。アタイの」

「とても、エロティックです」

「……馬鹿」

 そんなヤヨイがかわいくなって、ぎゅっと抱きしめる。

「ヤヨイさん」

「あ、あたいは、トイレに寄ってから教室行くから、お前は、先に行ってろ。もう、昼休みも終わっちまうよ」

「分かりました。また、連絡しますね」

 ヤヨイから体を離す。少しだけヤヨイと視線を合わせ、その後校舎へと戻ろうとした俺を、ヤヨイが引き留めた。

「そ、そうだ。どうすんだよ」

「ん? 何をですか?」

「パートナー。あたいをパートナー登録するのか?」

「もちろんですよ」

「い、いいのか? ほぼ、全校生徒の注目の的になっちまうぞ。『自称Qに中出しした猛者』ってな」

「目立ちたくはないんですが、それは男子の義務ですから」

「そっか。でもそのかわり、何があってもレントはあたいが守ってやるよ。なんたってあたいは、泣く子も黙るヤヨイ様だからな」

 そう言ってヤヨイは、今日初めて、満面の笑みを見せた。

「はい、期待してます」

 微笑みを返すと、ヤヨイは顔を赤らめ、少し視線を外す。

「な、なあ、レント」

「なんですか」

 少しの間黙った後、ヤヨイがぽつりとつぶやいた。

「うれしかったぜ」



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16 ソフィーア4

 ヤヨイと別れ、校舎に入る。階段を一つ下ったところで、ソフィーアが立っていた。

「先輩」

 俺を見て、軽く微笑む。

「君はほんとに面白いね」

「……知ってたんですか? ヤヨイ先輩が本当はQじゃないこと」

「ああ、知ってたよ」

 そう言いながらソフィーアは、俺に近づいて、俺の頬に手を添えた。

「もしかして先輩も?」

 その言葉に、ソフィーアが微笑みとは違う笑いを口元に浮かべる。そのまま俺の顔を引き寄せ、耳に唇を寄せた。

「さあ、どうかな。それは、君が確かめるといい」

「それって」

 抱けということか?

 しかし、そう聞こうとした俺の口を、ソフィーアの人差し指がふさぐ。

「私を手に入れる覚悟は、できたかい?」

「ええ、もちろん」

「そうか……忠告はしたからね」

 俺の即答に、ソフィーアは含みのある笑顔で答えた。そして「放課後、地学研究室にきたまえ。そこが我々の部室だ」と言うと、ヤヨイがまだいるであろう屋上へと上がっていった。

 

※ ※

 

「馬鹿!」

 サアヤの声と同時に、俺の頬に痛みが走る。

 教室で待っていたサアヤが、何をしていたのか聞きたがたので、正直に話したところ、平手が飛んできたのだ。

「何も、叩かなくても」

「約束したじゃない! 馬鹿なことしないって」

「だから、何も無かっただろ?」

 俺の反論も、サアヤを落ち着かせる効果はあまりなかったようだ。目に涙を浮かべて、俺の胸を叩き始める。

「ばかばかばかばか!」

 そんなサアヤを俺は強く抱きしめた。すると今度は、俺の胸の中で泣き始める。

「心配、させるなって、言ったでしょ……」

「悪かったよ。でも、黙ってるよりはいいだろ?」

「あたりまえよ!」

 そろそろ授業が始まる教室には、生徒はほとんど戻ってきている。皆、何事かとこちらを気にしていた。

「ほら、とりあえず教室に戻れ」

 なかなか泣き止まないサアヤを何とかなだめ、サアヤを自分の教室へと送り出した時には、予鈴が鳴って暫くが経っていた。

 

※ ※

 

 地学研究室……あの、職員室がある校舎の四階の端の部屋がそうだった。部活が終わったら会う約束をサアヤとすることで、ようやく納得したサアヤはそのまま自分の部活へ行った。それを見送った後、俺は地学研究室へと足を運んだ。

「やあ、来たね」

 そう言ってソフィーアが俺を迎えたが、ヤヨイの姿が見えない。

「あれ、ヤヨイさんは?」

「彼女は保健室だよ」

 パートナー登録には、男子の申請、女子の承諾以外に『膣内検査』をしなければならない。

「なるほど、もう行ったんだ」

 子宮に残る精子のチェックは、翌日までに行えばいいことになっていたが、ヤヨイは今日それを行うのだろう。

「ああ、一日でも早く君のパートナーになりたいのさ」

「俺、そんなに好かれてたんですか?」

「そのようだね。さて……始めようか」

「何をですか?」

「もちろん、新入部員の歓迎会だ。ようこそ、探Q部へ」

「ありがとうございます……って、まだヤヨイさん来てないですよ」

「もうヤヨイは君を『歓迎』したじゃないか。今度は私の番だ」

 そう言うとソフィーアは、俺を椅子に座らせた。

「何を?」と戸惑う俺に「ふふふ」と笑って答えると、ソフィーアはこちらを向いて、俺の膝の上に座った。スカートの中、ショーツごしにオマンコを俺のズボンのふくらみに押し付ける。

「ちょ、ちょっと、いきなりですか?」

「ああ、そうだよ……」

 そのままソフィーアが俺に抱き着くように唇を寄せてくる。二人の唇が合わさると、俺の口をこじ開けるようにソフィーアの舌が俺の口の中へと入り込んできた。

 舌と舌が絡まり、俺の口の中の液体が、俺の唾液なのかそれともソフィーアの唾液なのか。分からなくなっていく。

 ソフィーアが唇を離す。そして、ゴクンと音を立てて、口の中に溜まった俺の唾液を飲み込んだ。

「先輩……」

「私のことも、名前で呼んでくれないか? レント」

「ソフィーア、さん」

「二人きりの時は、呼び捨てでいい……」

 そう言ってソフィーアは、俺の頭を軽く抱いて、自分の胸に押し当てた。

「ソフィーア」

 そう呼び直す。ソフィーアが熱い吐息を一つはいた。

「お昼に、君とキスしてから、ずっとこの時を待っていたんだよ」

 ソフィーアが腰を上げ、俺のズボンを、そしてパンツを脱がしていく。俺のペニスがパンツの外へと顔を出した。

「これを、ヤヨイの中にいれたんだね」

「ええ……ヤヨイさんと、その、エッチしたまま、まだ洗ってないですよ」

 俺のその言葉にもただ微笑んだだけで応え、ソフィーアは自分のパンティを脱ぎ捨てた。

「それじゃ、ヤヨイの愛液がまだいっぱいついているのだね」

 ソフィーアが再び俺のペニスへ自分のオマンコを押し当てる。ただし、今度は直接に……二人の性器が重なった瞬間、くちゅっという音がした。

「ヤヨイの愛液のついた君のペニスが、私のオマンコに触れている……そう考えただけただけで、自分を見失いそうになるくらい興奮してくるよ」

「もしかして、先輩とヤヨイさんって」

「ああ、『そういう関係』でもあったかな。君のところへ行ってからは、少しぎくしゃくしてしまったがね」

 ソフィーアの腰が軽く動く。ペニスに押し当てられた濡れ濡れのオマンコの感触に、俺のペニスは瞬く間に大きくなってしまった。

「げ、元気じゃないか。あっ、き、君の、ペニスは」

 ペニスの裏にソフィーアの粘膜がこすりつけられる。むずむずとした快感が、下半身に電気のように走った。

「そりゃ、まあ、そんなことされると」

 たまらず俺は、ソフィーアのブラウスのボタンを外し始めた。

「ほんとに君は、私のこんな体が欲しいのか?」

 ブラウスを脱がせる。浮き出たあばらに張り付くように、ピンク色の乳首がツンと立っている。

「もちろんですよ、ソフィーア」

 口に含み、舌で転がす。

「あっ……うれしいよ……約束通り、私を君にあげよう。好きにするといい」

「ほんとですか?」

「ああ。何なら皆の前でフェラをしてあげてもいい」

「それはまた、強烈ですね」

「ふふふ。その代わり、私のわがままも、ちゃんと受け止めてくれたまえ。私の性癖は、少し変わっているよ」

 オマンコをこすりつけるソフィーアの腰の動きがだんだんと早くなっていく。それとともに、ペニスを濡らす愛液の量もどんどんと増えていた。

「どんなんです?」

「そのうち分るよ……は、ああ、感じる……私は、君のような男を待っていたんだ」

 つと、ソフィーアの腰の動きが止まる。俺は、ペニスの先端を膣口に押し当てた。

「私のオマンコに、入れたいのか?」

「ええ」

 入口で軽く前後させる。ソフィーアのアソコからはかなりの量の愛液が出ていて、まるでお漏らしをしたようなくらい濡れている。ペニスの先端が膣口に入ったり出たりするたびに、ぴちゃぴちゃといういやらしい音が響いた。

「怖くはないのかい?」

 そう尋ねるソフィーアに、「正直、少し怖いです」と答える。

「そう……じゃあ、どうする?」

 ソフィーアは俺のペニスを握ると、自分のオマンコに押し当て、そして俺を見てほほ笑んだ。



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17 ソフィーア5

「後で、サアヤと会う約束を、してます」

「へえ」

 俺の言葉に軽く返事をすると、ソフィーアはペニスをもう少しだけ膣の奥へと挿入した。そこで亀頭が何かに引っかかる。

「じゃあ、君が女の子になった姿を見せるわけにはいかないね」

 そう言いながらも、ソフィーアは俺の硬くなったペニスをさらに奥へと入れようとしている。しかし、そうしようとするたびに、ソフィーアは顔を少しゆがめてみせた。

「処女、ですか?」

「も、もちろんだとも。ただし、私が『女』ならばね」

 どうしても痛かったのか、ソフィーアはペニスを中に入れようとする動きを止めてしまう。

「痛いです?」

「少し、ね」

「入れて欲しい、ですか?」

 思わず聞いた俺の言葉に、顔をゆがめながらもソフィーアは軽く微笑んだ。

「ああ、入れて、欲しいとも。君に、その覚悟があるのなら」

 ソフィーアの膣内は十分に濡れている。痛いというよりも、ソフィーアはペニスを自分の中にいれること自体をためらっているようだった。

 ソフィーアの腰を持つ。そしてソフィーアの腰を自分の下半身へと押し付けた。ペニスが中の引っかかりを割っていくように、にゅるにゅると入っていく。

「いっ」

 ソフィーアの顔から余裕が消え、一瞬顔を上げる。

「ああっ!」

 目を見開き、口から言葉にならない声を漏らした。

「あ、あ、ああ……こ、これが……ペニスの感触……」

 ソフィーアは、顔を俺の方へと向け直すと、口元に笑みを浮かべながら、腰をゆっくりと上下に動かし始める。

「君という男は、本当に面白いね……こ、こんなことをしていたら、い、いつか君は、Qに、なってしまうぞ」

 口ではそう言いつつも、腰の動きは少しずつ速くなっていく。

「誰とでもするわけじゃないですよ。ソフィーアを好きになったから」

「ヤ、ヤヨイにも、そう、言っていたくせに」

 ソフィーアは腰を動かしながら、俺の首に舌を這わせ始める。

「ヤヨイさんも、ソフィーアも、二人とも好きなんだから、仕方ないです」

「罪だ……それは君の罪だよ。こ、これが、女の、快感……」

 はあっ、はあっ、という荒い息を吐くソフィーアの身体を手で持ち、親指で乳首の先端を円を描くように刺激する。

「そ、そんなことをすれば、止められなくなってしまう。き、君は、本当に、私の中に君の精液を出そうというのか」

「ソフィーアが、そうして欲しいなら」

 俺の耳に舌を這わせていたソフィーアに、俺はそう答えた、と、ソフィーアの身体がぶるぶると震え、反り返る。

「ああっ、だ、だめだ」

 そんなソフィーアの乳首を、指でつまむ。そして少し強くつねった。

「う、あああああ」

 言葉にならない声を上げる。と、突然、ペニスの根元からへそにかけて、温かい液体が広がっていくのを感じた。

「あ、あ、だめだ、み、見ないでくれ」

 ソフィーアが俺を強く抱きしめる。その間にも温かい液体が、俺の下半身を濡らしていった。しばらくしてようやくそれが止まる。

 しかしソフィーアは、俺を抱きしめたまま動こうとはしない。

「おもらし、ですか?」

「すまない、すまない、私は……」

 ソフィーアの背中を抱きながら、床を見た。黄色い液体が水たまりを作っている。

「おしっこが、床にいっぱいたまってます」

「い、言うな」

「拭かないといけないですね」

「すまない、すまない……」

 消え入りそうな声で謝り続けるソフィーア。俺は彼女をゆっくりと立たせた。ペニスが名残惜しそうに粘膜から解放される。

 そのままソフィーアを机の上に座らせると、足を広げさせた。おしっこで濡れた薄い陰毛と、そしてオマンコが俺の前に現れる。ピンク色の小さな小陰唇と、少し血のにじんだ膣口が見えた。

「見ないでくれ……」

 しかしソフィーアは抵抗することなく、足を広げたまま、顔だけを横に向けた。俺はそっと、オマンコに口を寄せる。

「ま、待て、そこは、汚い」

「ソフィーアのなら、汚くないですよ」

 おしっこのにおいが充満するソフィーアのオマンコに舌を這わせる。言葉とは裏腹に、ソフィーアの手が俺の頭をもって、オマンコへと押し付ける。

 舌に、どこかバラの香りを感じた。

「ソフィーアのおしっこ、バラの味がする……」

「いつも、ローズティを、飲んでいるからね」

「おしゃれですね」

「ふふふ、そんないいものではない」

 舌を動かし、ソフィーアのオマンコを濡らしていた液体を嘗めとる。そのたびに、ソフィーアが体を震わすのが分かった。

「レント……」

 ソフィーアの足が俺の顔を軽く挟む。

「なんですか?」

「私を、受け入れてくれるのか?」

「ええ、もちろんです」

「君に全てを……私の性癖ですら、君にぶつけてしまう。それでもか」

「ええ、全て、受け止めます」

 オマンコから口を離し、ソフィーアを見上げた。目を一杯に見開き、歓喜の笑みが口元に浮かんでいる。

「私の、私のおしっこを、飲んでくれ」

 俺の反応を見定めるように、じっと俺の目を見つめている。そのソフィーアに向けて、俺はにっこりと微笑んだ。

「いいですよ」

 もう一度、ソフィーアのオマンコに口を近づける。それに応ずるように、ソフィーアは足を広げた。小さなクリトリスの下に開いた穴――尿道口に口を押し当てる。

「あ、ああ……ああっ」

 尿道口が二三度、上下運動をした。

「で、出る……出る……」

 ソフィーアの喘ぎとともに、生暖かい液体がちょろちょろと出始める。バラの香りのする、塩気のきつい液体。俺はそれをこぼさないように、喉の奥へと、音を立てながら飲み込んでいった。

「私の、私のおしっこが、飲まれている」

 されている行為を確認するように、ソフィーアがつぶやく。と、次の瞬間、おしっこがシャワーのように勢いよく、俺の中へと放出された。

 ソフィーアが体を震わせ、最後の一滴を出し切る。それらを飲み干すと、俺は顔を上げソフィーアの顔を見た。

 口元に笑みを浮かべたまま、ソフィーアが俺の方へと顔を寄せる。俺の口の周りに雫となって付いていた自分のおしっこを舐めると、そのまま俺にキスをした。

 長い長いキス。ソフィーアが俺を胸に抱き、耳元に囁いた。

「私は君のものだ。次はもっと、私を楽しましてくれることを期待しておくよ」



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18 ソフィーア&ヤヨイ3

 床一面に広がったおしっこをタオルで拭いている俺を、ソフィーアは顔を真っ赤にしながら見ていた。それも『プレイ』の内に入っているらしい。時折、そのタオルを匂う仕草をソフィーアに見せると、ソフィーアは顔を背けながらも、物欲しそうな目線を俺に向けるのだった。

 と、そろそろ床を拭きおわるかというところで、地学研究室の扉がガラッと開く。入ってきたヤヨイが、呆気に取られた表情でしばらく俺とソフィーアを見ていたが、つかつかとソフィーアに近づき、彼女の肩に腕を置いた。

「結局、ソフィーアも『歓迎』したんじゃねえか」

「ま、まあ、そう言うことになるかな」

「あんだけ、言ってたのによぉ」

 そう言うと、ヤヨイは後ろから俺を羽交い絞めにする。見る限り、ソフィーアとヤヨイのわだかまりは無くなったようだった。

「イテテ、お手柔らかにお願いしますよ」

「レントぉ、それにしてもお前、ほんと、物好きだな」

「そうですか? お二人とも、とても魅力的ですよ」

「へっ、生意気言ってんじゃねえよ」

 そして大きな胸を俺に押し付けてくる。しかし、ヤヨイの方に顔を向けると、ヤヨイは顔を赤くして明後日の方向を向いた。

「ま、まあ、お前がして欲しいって言うなら、これからは、いっぱいかわいがってやってもいいぜ」

「かわいがるって……なんか怖いけど、はい、お願いします」

 そう言って俺はにっこりと微笑んだ。

「やれやれ、ヤヨイも形無しだな」

「なんだよそれ」

 ヤヨイがソフィーアを軽く睨みつけたが、ふと何かを思い出したように、目を見開いた。

「あ、そうだ。なあ、なあ、これ見たか?」

 ヤヨイは端末を取り出し、自分の生徒情報を俺に見せた。ヤヨイの欄には早速「パートナー:深山レント」となっている。

「もう登録されたんですね……大騒ぎになりますかね」

「どうだろ。こいつに話題をかっさらわれそうだからな」

 ヤヨイが次に見せたのは、一年生の男子の情報だった。

「若草ジュドー? ああ、あのジュディって人ですね。って、いきなり二人?」

 タツヤの『男性』を奪った若草ジュディは、男名を「ジュドー」にしたようだが、それ以上に目を引いたのが、パートナー欄だった。

 『森カノ』、そして『伊藤エミ』という二人の名前が書いてある。

「そのようだね」

「この二人、成績上位者です」

 二人とも一年生だが、一学期の成績はかなりの上位にいた。特に、森は文型科目、伊藤は理系科目が得意だったはずだ。

「ふむ……」

 そうつぶやきながら、ソフィーアが興味深そうに、二人の女性のデータを見ていた。

「『実利的』なパートナーだが、しかし……」

「随分と短期間に二人もパートナー登録したもんだ」

 ヤヨイが感心した風にそうこぼす。

 相手のことを深く知らずにHをすれば、「Qを引く」可能性が高くなる。随分と大胆なパートナー集めに見えた。

「見境なしの、怖いもの知らずだな。レントじゃあるまいし」

 そう言ってヤヨイは意地悪そうに笑いながら俺を見た。

「いや、見境がないわけじゃ」

「ああ、こいつの方が考えてる、考えてる。レントの方が見境がねえや」

 ヤヨイの言葉を聞いて、ソフィーアが肩をすくめた。

「まあ、もともと知り合いだった可能性はあるかな。ただね」

「ただ?」

「四年生と五年生のパートナー獲得状況を見ると、面白いことがあってね。パートナー獲得数が学年で一番多い男子は、どちらの学年も、元Qの人だ」

 さっきまでソフィーアが見せていた「恥じらい」は、もうその表情から消えていた。今は、どこか名探偵めいた顔をしている。

「何か関係があるんですか?」

「さあ……それは分からないな。レント、知りたくはないかな?」

「ええ、それはもちろん。でも、どうやって?」

「それを調べるのも『探Q部』の活動かな」

 そう言うとソフィーアは、薄い笑みを浮かべた。

「何たくらんでいるんですか」

「たくらむ、とは随分だね。そうだ、今日、君の部屋に我々を招待してくれないか?」

「我々って……お二人を、ですか?」

「ああ、そうだね」

「そりゃいいな」

 ヤヨイが俺の耳に口を寄せてくる。

「レントが部屋に来て欲しいって言うなら、行ってやってもいいぜ?」

「なんかそれ、ツンデレじゃなくて、脅迫に聞こえます」

「脅迫してるんだから、そう聞こえるに決まってるだろ」

 そう言うとヤヨイは、再び俺の首を腕で絞め始めた。

「ああ……でも、今日はサアヤと会う約束をしています。明日でもいいですか?」

「そういえば、そんなことを言っていたね。先約は優先したまえ。我々は、明日としようか」

「ふむ、仕方ねえな」

 ヤヨイがようやく俺を『熱い抱擁』から解放する。サアヤと会うために地学研究室を出ることにした俺を、ヤヨイはにやにやしながら、ソフィーアは相変わらずの薄笑みで、見送っていた。



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19 サアヤ5

 二人の先輩と別れた後、部活動の終わったサアヤと落ち合った。その日、サアヤは俺の部屋に「お泊りをする」と言い出したが、断る理由も無く、夜を一緒に食べた後、俺の部屋でくつろいでいた。

「ねえ、レント」

「何?」

 ソファで二人並んでテレビを見ていたが、部活動――バレー部の練習の後、シャワーを浴びることなくそのまま俺の部屋に来たサアヤの体からは、ツンとした独特なにおいが漂っている。

 声を掛けられた拍子に、俺の中のスイッチが入ってしまった。そのまま顔をサアヤの体に寄せる。

「ちょ、ちょっと、そうじゃなくて」

 すぅっと息を吸い込むと、塩気と酸味とを含んだスパイシーな香りが俺の鼻を刺激した。

「そうじゃなくて?」

 Tシャツに着替えていたサアヤの腋に鼻をつける。

「だ、だめ、ま、まだ……」

 そう言いながらも、サアヤの体がぷるるっと震える。

「まだ、なに?」

「ああ、もう!」

 突然サアヤが俺の肩を持って突き放した。

「ねえレント。嫉妬厳禁だってことは分かってるけど、アタシに隠し事はしないで欲しいの」

「ん? おう、分かってるって」

「じゃあ、教えて。橘花先輩とも、Hするつもりなの?」

「えっと、もう、してたりして」

「はあ? だからなんでアンタはそう考えもなしに!」

 俺の肩をゆっさゆっさと大きく揺らしながら、噛みつかんばかりに怒るサアヤを、俺は両手で押しとどめた。

「待て待てって。中には出してないから」

「そういう問題じゃないでしょ! 間違って出ちゃったらどうすんのよ! 橘花先輩はQじゃないって保証があるの?」

「いや、わからない。正直、Qである可能性が高いとは思う」

「じゃ、じゃあ」

 もうHはするな。サアヤはそう言いたいのだろう。逆に言えば、まだ「する」に違いないと踏んでいるのだ。そしてそのサアヤの危惧は、その通りなだけに反論はできない。

「なあ、サアヤ。もしサアヤがQだったら、俺とHしたか?」

 突然の問いかけに、サアヤは訳が分からないといった表情を見せた。

「そりゃHはしたいと思ったかもだけど」

「でも、しない?」

「んー、わかんないよ。でも、したとしても、中には出させなかった、かなぁ」

 そこまで言った後、サアヤの表情がはっとしたものに変わる。

「ちょと……レントが考えてること、なんかわかった気がするけど、そんなことできると思ってるの?」

「逆だよ。そういう気持ちにさせるんじゃなくて、そういう気持ちになってくれた相手としか、しない」

「でも、相手の気持ちなんか分かるの?」

「分かる様にならなきゃ、トップにはなれないだろ」

 そろそろこの話も終わり……そう促すように俺は、再びサアヤの体、今度は胸辺りに顔を寄せた。

「レント、トップになるつもり?」

「もちろん。男に生まれて、この学校に入ったんだ。それを狙うのが、普通だろ?」

 サアヤの独特な体臭――エロい匂いが鼻腔をくすぐる。

「ふーん。そんなこと興味ないんだと思ってた」

「サアヤの為だよ」

 Tシャツの下から手を差し入れる。クーラーが効いているはずの部屋で、サアヤの体には少しじっとりと汗がにじんでいる。

「うそ」

「ほんと」

 Tシャツをずらし、へそのあたりに舌を這わせる。

「あっ……ほんとにほんと?」

「ああ」

「約束?」

「ああ」

 俺の返事に、サアヤは俺をはねのけ、今度は俺の体をソファに押し付けた。

「サアヤ?」

「今日は、アタシの番」

 そういうとサアヤは、俺の胸に顔をうずめた。すぅっと息を吸う音が聞こえる。

「レントの匂いがする」

「どんなにおい?」

「えっとね……えっちなにおい」

 首、脇、お腹と、サアヤの顔が移動していく。そして股のところでふと顔を上げた。

「な、なに?」

 サアヤが少しむくれた顔をしている。

「レントの匂いとは違うにおいがする」

「あ、ああ……えっと、まだシャワーしてないから」

 ヤヨイかソフィーアか、それとも二人共のにおいをサアヤは感じたのだろうか。女って、こわい……

「ぷぅ! 洗いながそ!」

 俺はサアヤに、シャワー室へと引きずられていった。

 

 サアヤは匂いフェチなのだろう。シャワーの後、少し火照った俺の体のすみずみの匂いを嗅ぎながら、一生懸命自分のクリトリスをいじり、オマンコをびちょびちょに濡らしていた。

「ヘンタイ」

 耳元でささやいた言葉に、サアヤは恥ずかしがりながら、「レントの匂いで、アタシのオマンコがこんなに濡れてるの。レントも、アタシをにおって……」と、自分のオマンコを開いて見せる。

 酸味を感じるにおいを嗅ぎ、再びサアヤの腋をなめまわした後、喘ぐサアヤのオマンコにペニスを挿入した。

「中に、出して、ひぃよ……」

 熱い吐息を吐きながら、サアヤがそう漏らす。

「赤ちゃん、出来ちゃうぞ」

「早く……早くアタシを孕ませて。一番がいいの。一番じゃなきゃ嫌なの。いっぱい、いっぱい、中に出して。レントの精液を、アタシの中に!」

 そう言って腰を振るサアヤの中に、俺は尽き果てるまで精液を流し込んだ。

 

※ ※

 

 二人で散々燃えた後、二人一緒にベッドに横になった。せっかくシャワーをしたのに、また汗だくになってしまった。しかし俺は、サアヤにそのまま寝るよう言ったのだ。サアヤはそれだけでもう顔を赤らめながら、吐息が荒くなっていた。

「ねえ、レント」

 俺の胸に抱かれていたサアヤが、ふと真面目な声で呼びかけてくる。

「ん?」

「レント、パートナー二人目だし、あの陣風先輩をパートナーにしちゃったから、目立っちゃうね」

「そうだな。まあ、サアヤをパートナーにした時点で多少目立ったから、もう一緒だよ」

「その比じゃないよ?」

「でも、ジュドーっていうの? あの元Qが一日で二人をパートナーにしただろ。あれも目立つんじゃないか?」

「まあ、確かにねぇ。しかも相手は学年でも勉強優秀な二人だから、あっちも目立つかな」

「度胸がいいのか、それとも」

「それとも?」

「何か、相手がQかどうか見分ける方法を知っているのか」

 サアヤが俺の胸にそっとキスをする。

「そんなの、あるの?」

「あったら知りたい」

「だよねぇ……元Qなら、相手がQかどうかわかるとか?」

 そう言ったサアヤの顔を、俺は改めて見つめた。

「そういう話、聞いたことないか?」

「んー、ないかなぁ」

「そっか。ソフィーアが、高学年では元Qのパートナー獲得数が多いって言ってたから」

 思わず口にした俺の言葉を聞いたサアヤが、一気に不機嫌になる。

「ソフィーア……ソフィーア……何、その、馴れ馴れしい関係」

「げっ。い、いや、それはだな」

 誤魔化そうとしてみたが、無理だった。結局、それからさらに二回の「中出し」をするまで、サアヤは俺を許してくれなかった。



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20 ケイマ

― 7月15日水曜日 ―

 

 翌朝、サアヤと学生食堂で朝食を取り、そのまま一緒に登校した。相変わらずサアヤは、人前で一緒に歩くのは恥ずかしいようだが、今日はこれまでとは周りの様子が違っているだけに、一層恥ずかしいようだ。

 周りの、俺への視線……驚き、好奇、そして物欲しげな眼差し。やはり、Qを公言していたはずの、しかもヤンキー気取りのヤヨイをパートナーにしたのは、随分と話題になっているようだった。

「レントくん」

 と、一式ケイマが声を掛けてきた。

「よお、ケイマ」

「もう二人もパートナーにしたのですね」

「ああ、たまたまだよ、たまたま」

 そう答えた俺の目を、ケイマは覗くようなしぐさを見せた。その表情が、「うらやましさ」を表しているのかと思っていたが、どうもそうではなさそうだということに、気が付いた。

「どした?」

「い、いや、何でもないよ」

 そういってごまかす。

 なんだろう、どちらかというと、女子がするような「物欲しげな」表情に見えたのだが……

「大丈夫だって、心配しなくても、ほら、ケイマはかわいいから、女の子もすぐ寄ってくるって」

 そう言って俺は、ケイマの肩を抱いた。近くにいた女子生徒がまた黄色い声を上げ写真を撮り始める。ケイマは体つきも華奢で、「女装コンテスト」があれば、キユレといい勝負をするだろう。

 しかしケイマは、なぜか顔を背けてしまった。

「ぼ、僕……かわいい、ですか?」

「ああ、めっちゃかわいいぞ。サアヤよりずっと」

「どさくさ紛れに、なんでアタシと比べてるのよ!」

「サアヤの良さはそこじゃないからさ。サアヤだって、ケイマ、かわいいと思うだろ?」

「ま、まあ、そうだけど」

「な? そこを武器にすればだな」

 パートナーなんかいっぱいできる……そう言おうと耳に口を近づけると、ケイマは慌てて俺を振り払った。驚いた表情で俺を見ているが、その顔は真っ赤になっている。

「ぼ、ぼ、僕は、そ、そういうの、いいですから」

「いいって、それが男子の務めだぞ?」

「きょ、教室いきます。またね、レントくん」

 そう言うとケイマは、小走りで自分の教室へと入っていった。

「なんか、怒らせたかな」

 思わずサアヤにきいてみる。

「怒ってる風には見えなかったけど……恥ずかしがってた感じ?」

 どうみても、サアヤの方が不機嫌である。

「んー、分からん」

「そんなんで、『相手の気持ち』なんて分かるの?」

 サアヤの突っ込みに、俺は苦笑いをするしかなかった。

 

※ ※

 

 放課後。今日は二人の先輩と約束している。相変わらず心配そうにしていたサアヤだったが、特定の女子による「男子の占有」は禁止になっているだけに、サアヤはしぶしぶ、そして俺に釘を刺しまくった後、部活へ行ってしまった。

 地学研究室に行こう、そう思って教室を出たところで、俺は強い力で、大きな胸に抱きしめられる。

「レント、どこ行くつもりだ?」

「地学研究室ですよ、ヤヨイさん」

「こっちから来てやったんだ、有難く思えよ」

「いつも昼に来てるでしょ」

「なま言ってんじゃねぇよぉ」

 ヤヨイはご機嫌で、俺を大きな胸に押し付けていた。そのうち本当に圧死しそうだ。

 ぷはっと、胸の谷間から顔を上げる。

「さて、レント。今日は我々に付き合ってもらうよ」

 ヤヨイの隣にたソフィーアが、すまし顔で俺を見ていた。

「部室じゃないんですか?」

「せっかくだし、デートでもしないか」

「三人でですか?」

「ああ、そうだ。嫌、かな?」

「いえいえ、楽しそうです。でも、どこに?」

 そう答えた俺の耳に、ヤヨイが唇を寄せる。

「レントがしたいって言うなら、ここでエッチしてもいいんだぜ」

「さ、さすがにここじゃ」

「なんだ、つまんねえなぁ」

 ヤヨイは本当に不満そうにそうつぶやいた。

「あれ? ヤヨイさん、またスカートが短くなってますよ」

「お前が見たい時に、見せてやるためだよ。うれしいだろ?」

「じゃあ、今」

「はぁ? い、いま?」

「ええ」

「こ、ここで?」

「ええ。ヤヨイさん、見たい時に見せてやるって言ったばかりですよ」

「わ、わ、わかったよ」

 そう言うとヤヨイは、顔を赤らめながらもスカートの裾を両手でつまみ、上へと上げた。

「こ、これでいいか」

 Tフロントのショーツが割れ目へと食い込み、収まりきらない大きな花びらが、はみ出して見えている。

「ヤヨイさんのオマンコ、相変わらずエロいです。もうかなり濡れてますよ?」

「う、うるさい! わざわざ言わなくていいんだよ!」

 そういってヤヨイはスカートを下ろしてしまったが、恥ずかしがったままのヤヨイは、かなり可愛い。多分「じゃあここでエッチしましょう」と言ってたとしても、同じ反応だっただろう。言葉は強気だが、実際はかなり恥ずかしがり屋なのだ。

「お熱いのは結構だが、そろそろ動くとしないか?」

 俺とヤヨイのやり取りをにやにやしながら見ていたソフィーアの言葉を合図に、とりあえず俺たちは動くことにした。

 

※ ※

 

 折角と言うことで、町に繰り出し、いくつかの買い物の後、夕食を食べることにした。ファミリーレストランで洋食を食べただけだったが、俺たちは意外に真面目な――Qについての話をした。

 例えば、Qにはその自覚があるのか。実際、Qにしか分からないことであるのだが、ソフィーアは「ある、と言われているね」とだけ答えた。

 そして、その人がQであることをどうすれば知ることができるか。

「正直なところ、その方法は分かっていない。いや、もしかしたら公表されていないだけかもしれないが」

「そんな方法があるなら、もうとっくに広まってるんじゃないですか? Qかどうかが分からないってことが、男子が女子とセックスする『妨害』になってるんですから」

「それなんだが、どうも……政府はわざとそういう状況を固定しているんじゃないかと思っているんだよ」

 ソフィーアは、サラダだけを注文して食べていた。それで足りるのかと思ったりしたが、「私は朝だけしっかり食べる主義でね」という答えに、なるほど、ソフィーアの痩せた身体の理由を理解した。

 ヤヨイはソフィーアを気にすることなく、定食を食べている。

「政府、ですか? 話が大きいですね」

「私の推測でしかないがね。いわゆる『自然淘汰』もしくは『適者生存』。競争に勝ち残った「男子」が子孫をたくさん残すように、かな」

「その為に、Qを『不明』のまま放置してるってことですか?」

「あくまで、私の推測だ」

「へえ……Qについて、色々考えているんですね」

「一応ね、伊達に『探Q部』は名乗っていないよ」

 そう言うとソフィーアは、最後に残っていたトマトを口に入れた。

「じゃあ、元Qは、相手がQかどうか分かるっていう推測はどうでしょう」

 俺はサアヤに言った仮説をソフィーアにもぶつけてみた。ソフィーアはしばらく口を動かし、トマトを咀嚼していたが、それをゆっくりと飲み込むと、口元に軽い笑みを浮かべた。

「実は私も、その可能性は考えている。しかし、確かめる術が無かったのでね」

「そりゃ、まあ」

 そう相槌をした後、俺はソフィーアの顔を二度見する。

「『無かった』?」

「ああ、そうだ。でも、今は、あるよね」

 そこで言葉が途切れる。テーブルには、一生懸命定食を食べ進めるヤヨイの食事の音だけがしていた。

 ヤヨイがエビフライを口に入れ、そしてかじる。

「今日、ですか?」

「怖いかい?」

「やっぱりソフィーアは」

 そう言いかけた俺の口を、ソフィーアが人差し指で押さえた。

「それは、君の部屋で、確かめてくれたまえ」

 その人差し指を、ソフィーアは自分の唇に当てる。

「間接も、いいよね」

 ふふっとわらったソフィーアの横で、定食を食べ終わったヤヨイが、ナイフとフォークを皿に置いた。

「さあ、行こうぜ。レントの部屋に、な」



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21 ソフィーア&ヤヨイ4

 寝室の中、俺の目の前で、二人の女性がゆっくりと服を脱いでいる――その身体はきわめて対照的だ。これでもかと言わんばかりの大きな胸だけでなく、引き締まっているものの全体的に肉感を持ったヤヨイと、あばらが浮き出るほどに痩せていて、力を入れて抱きしめれば壊れてしまいそうなソフィーア。

 ヤヨイはブラジャー、ソフィーアはスポブラ姿だ。

「あたい達だけじゃ恥ずかしいだろ。おめえも脱げよ」

 下着姿になったヤヨイが、そう言って俺の服を脱がせ始めた。ブラからはみ出るように、ヤヨイの大きすぎる乳輪の一部が見えている。思わず触れようとした俺の手をヤヨイは「まだだよ」と言って、はにかみながら押さえた。

 すぐに俺も下着姿――オレの場合はパンツ一枚だったが――にされてしまう。

「さて、レント。実は聞きたいことがあるのだが」

 そこでソフィーアが改まった様子になった。

「なんですか?」

「私とヤヨイが、『こういう仲』だったのは、話したよね」

 そう言うとソフィーアは、ヤヨイを抱き寄せる。ヤヨイが「ちょ、レントの前だぜ」と戸惑いを見せた。

「ええ」

「ヤヨイも私も、言うなればもう『君のもの』だ。ただ」

 さらにソフィーアがヤヨイの顔に自分の唇を寄せる。

「『君のもの』同士がこんなことをするのは、不快かな?」

 そして二人が唇を重ねた。しばらくそれが続いた後、何かを確かめるようにソフィーアが俺を横目で見る。

「いえ、俺の『恋人』同士ですから、見ていてなんだかドキドキします」

 その答えに、ソフィーアは口元に笑みを浮かべた。ヤヨイは少し戸惑っているようだ。

「そうか……私のことも、『恋人』と言ってくれるんだね」

「もちろん。……いやですか?」

「まさか。とてもうれしいよ。でも、もし私が『男』になった時にも、そう言えるのかな?」

「それは、どういう?」

「私が男になって、そしてヤヨイを抱くのを見ても、君はまだそう言えるのかな」

 まるで『寝取り』宣言のような言葉を口にしながら、ソフィーアはヤヨイをベッドに押し倒す。

「お、おい、まだシャワー浴びてねえじゃねぇか」

 ヤヨイは、ソフィーアのとの関係となると、『受け』になるようだ。

「俺の『男性』を奪ってのことなら構いません。でも、他の男から『男性』を奪ってのことなら、それは『パートナー規約』違反です。許さないですよ」

 パートナー制度は、男子同士の直接的な争いを回避するための「占有契約」であるが、女子にとっても、生まれた赤ん坊への補助、子育て支援などを政府から受けることが出来る「資格」でもある。ただ、違反した場合は、「パートナーの解消」となり、女子にも不利益が生じるのだ。

 ソフィーアは俺の答えを聞いて、声をたてて笑った

「おかしかったですか?」

「いや、いい、君は本当にいいね。満点以上の答えだよ」

 そう言うとソフィーアは、ヤヨイの胸に手を這わせた。「ああ、ソフィーア……」というヤヨイの熱い声が漏れる。

「じゃあやっぱり、ソフィーアは本当にQなんですね」

「さあ……どうする? 本当に、確かめてみるかい?」

 ソフィーアによるヤヨイへの愛撫がどんどんエスカレートしていく。俺を気にしながらも、快感に身をよじるヤヨイが、普段とのギャップでとてもエロく見えた。

「いいですよ」

 俺は、ベッドの上でヤヨイにかぶさっているソフィーアの更に背後から、スポブラに手を掛ける。ソフィーアは抵抗することなく両手を上にあげ、俺にされるがままスポブラを脱いだ。

 後ろから手を回しスフィーアの背中に舌を這わせながら、乳首をさわさわと刺激する。そのまま下へと降り、ブリーフも脱がせた。ソフィーアの愛液が糸を引く。

「ふふっ。あまりの期待に、もう私のアソコも濡れてしまっているようだね……私とヤヨイとの『セックス』を見てくれないか、レント」

 ソフィーアがヤヨイのTフロントを脱がせる。あっと声を漏らし、顔を赤らめて横を向くヤヨイ。アソコから大きくはみ出しているビラビラに、ソフィーアが自分のオマンコを足を交差させて合わせた。

「ヤヨイは小陰唇もクリトリスも大きくて、私のアソコをえぐるように刺激してくるんだよ」

 くちょっという水音が響き、ヤヨイが喘ぎ声を漏らす。ソフィーアの腰の動きにヤヨイが合わせ、更に大きないやらしい音を立てていった。

「み、見るんじゃねえよ、レント……」

 そう言いながらも、快感に抗えずにヤヨイが身をよじる。

「ヤヨイ。レントのペニスも欲しいかい?」

「そ、そんなこと、き、聞くんじゃねえよ、ソフィーア。ほ、ほしいにきまってんじゃ、ねぇかよ」

「ヤヨイは贅沢な子だね……レント、ヤヨイに君のペニスを咥えさせてあげてくれないか」

 言われて、ヤヨイの顔のところに自分のペニスを持って行く。するとヤヨイは待ちきれないといった風に俺のペニスを握り、口にほおばった。

「レントの、オチンポ、おひちいよ」

 ヤヨイの舌が俺のペニスの鈴口の裏表にはい回る。その粘膜の感触と下半身に広がる快感に、俺のペニスはすぐに硬くなった。

「ああ、レント……こんな風に、三人で、肌を合わせてみたかった……ありがとう」

 そう言うとソフィーアは俺の顔を引き寄せ、唇に吸い付き、舌を俺の口の中に差し入れた。三カ所で響く卑猥な水音。

 しばらくそれを堪能した後、ソフィーアが妖しく微笑んだ。

「さあ、レント。『実験』をしようじゃないか」

 その言葉を合図に、ヤヨイが身を起こし、今度はソフィーアが俺の首に手を回しながら、ベッドへとその身を横たえた。

「私の中に……出す勇気は、あるかな」

 俺を見つめるソフィーアの目が、妖しく、そして切なそうに光る。

「もちろんですよ」

「ははは、そうだな。君はそうやってヤヨイの中にも出したんだったな」

 ペニスの先端がソフィーアのピンク色のオマンコにめり込んだ。

「入れますよ」

 粘膜が擦れる快感に身を震わしながら、ソフィーアの奥へとペニスを挿入していく。初めての時とは違い引っ掛かりはない。それに中は愛液で十二分に濡れており、まるでオレのペニスを引き込むように飲み込んでいく。

「ああ……この快感……本当に癖になりそうだ」

「ソフィーアが先とは、ずるいな」

 そう言いながらも、快感によがるソフィーアをヤヨイは興味深そうに見つめていた。

「こうして、あ、ヤヨイに見られながら、レントに、入れられているのも、恥ずかしいが、興奮するね」

 小さいが、今は先が硬くなってとがった風になっているソフィーアの乳首を、ヤヨイがいじる。俺の抽挿の速度が上がるにつれ、ソフィーアの喘ぎが大きくなり、やがてヤヨイの相手をする余裕も無くなったようだ。

「気持ちいいです、ソフィーア」

「わ、わ、たしもだ、レント。これが、『女の喜び』、なのか」

 洗い息遣いでソフィーアがそう応じる。嬉しいのか苦しいのか、ないまぜになったような表情のソフィーアの胸に、俺は舌を這わせた。

「す、すまないね、こんな、貧相な体で」

「それもまた、エロいですよ」

「巨乳は、あたいにまかせとけって。レントは、巨乳、貧乳、どっちも好きらしいからな」

 横からヤヨイがよく分からないフォローを入れる。

「胸は、感度ですよ」

 乳首を軽く噛んでみる。ソフィーアが体を反らし、嬌声をあげた。

「もっと、もっと激しく、私の中を擦ってくれ」

 その要望に、俺は腰の動きを加速させる。ソフィーアがたまらず俺の上半身をぎゅっと抱きしめた。

「中に、私の中に……レントの精子が、欲しい」

「出しますよ」

「ほ、ほんとに、ほんとにいいのか? 私は……私は……Qなのだぞ。ほんとに、本当に……」

「俺が女になっちゃったら、ちゃんと責任取ってくださいね」

「あ、ああっ、レント、君が、たまらなく、愛しい!」

 もう横でヤヨイが見ているのを気にすることも無く、ソフィーアはそう叫んだ。下半身、ペニスの奥からこみあげてくる快感を、俺は迷いなくソフィーアの中に、吐き出した。

「出るっ」

「ああ、はああっ! 中に、私の中に、出されている! 精子を、出されてるっっ! こ、こんな、こんなことがっっ!」

 子宮に放出される精液の感触を感じったのだろうか、ソフィーアは限界まで身を反らし、襲い来る快感に耐えているようだった。

 出せる精液は全部ソフィーアの膣内に吐き出す。暫くの絶頂の後、俺はソフィーアと抱き合ってベッドに倒れこんだ。

 額に汗を浮かべ、ソフィーアが俺を見つめている。

「本当に……本当に、君ってやつは」

「出しちゃいましたね」

「……痛いらしい」

「何がですか?」

「男から女への『メタモルフォーゼ』が、かな。すまないが、頑張って、耐えてくれ」

 そう言ってソフィーアが俺の髪を撫でる。

 

 と、突然俺の下半身を、ペニスを引きちぎるような痛みが襲った。



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22 レント

 気を失っていたらしい。気が付くと、俺を心配そうにのぞき込むヤヨイの赤い髪が見えた。

「気が付いたか?」

「ヤヨイ、さん……」

「いやあ、ちょっと焦っちまったよ。こんなんなるんだなぁ。まだ痛むか?」

 言われて少し体の感覚を確かめる。

「もう痛くはないです」

「それは、良かった」

 ヤヨイの横からソフィーアが現れた。

「気分は、どんな感じかな?」

「気分ですか? えーっと……なんか、下半身が」

 そう、下半身が軽かった。

「それは仕方ない」

 ソフィーアが肩をすくめる。

「もしかして?」

「その、もしかして、かな」

 恐る恐る、股間に手を伸ばす……無かった。慌てて身を起こす。竿があったはずの場所にあったのは、毛におおわれた一本の筋、ただそれだけ。

「お、女になってる……ソフィーアは」

「こんな、感じかな」

 少しだけ恥ずかしそうに、ソフィーアがベッドの上に上がってくる。薄い色の陰毛からペニスが、はち切れんばかりにそそり立っていた。

「ほんとだ……でも、ソフィーア、顔とか変わってないですね」

「それは君も、かな。顔や骨格は、三日ほどかけて変わっていくそうだ」

「んー、でも、なんかもう、レントの顔、少しかわいくなったような気がするぜ」

「ほんとですか?」

 自分の顔を触ってみる。確かに少しごつごつした感じが無くなったような……

「これ、ほっといたらどんどん変わるんですかね?」

「詳しくは分からないが、寝ているときほど変化が速いと聞いたことがある」

「ソフィーアは、痛くなかったです?」

「変な感じはしたが、生えてくる分には、痛みは無いようだ」

「なるほど」

 もう一度、変化してしまった自分のアソコを見てみる。もうペニスの痕跡はない。しかし不思議と、焦りや不安、恐怖というものは感じなかった。

「そうだ。男になってみて、なんかQと女性の違い、分かります?」

「まだ君はほとんど『レント』のままだし、今のところは分からないかな」

 ソフィーアは両手を上げて肩をすくめた。

「色々してみたらわかるんじゃねえか」

 そう言うとヤヨイは、俺の後ろから足を抱え、左右に広げた。

「ちょ、ヤヨイさん」

 まるで子供におしっこをさせるような態勢になる。

「なんだ?」

「恥ずかしいですよ」

 オマンコが広がり、皮を被ったクリトリスがソフィーアの目の前にさらされる。

「恥ずかしいのかよ。へぇ」

 ニヤッと笑ったヤヨイが、がっしりと俺の脚を固定する。そこにソフィーアが顔を近づけてきた。

「ま、待ってください」

「それは待てないな」

 そう言うとソフィーアは、俺のオマンコを広げ、舌でクリトリスを転がし始める。

「くわっ」

 電撃、といっていいだろうか。ペニスを舐められるのとは比べ物にならないほどの刺激が、からだの中を貫いた。

「気持ちいいか?」

 耳元でヤヨイが囁き、そのまま俺の耳に舌を這わせた。足を持つのをソフィーアに任せると、ヤヨイは俺の乳首をいじり始める。

「おっぱいも、まだ大きくならねえな」

「お、大きくなったら、こ、困りますよ」

「んー、でも、男んときよりは何だか、膨らんでるぜ?」

「ちょ、まじで……ああっ」

 ヤヨイは俺の胸を軽くもみながら、時々指で乳首をつまむ。そのたびに脳に電気が走るような快感を覚えた。

「はあっ」

 ソフィーアがオマンコ全体を舐めはじめる。まるで二人に犯されているような背徳感と、男性の体とは全く違う感覚で、頭がぼぅっとしてくるのを感じた。

「レントの気持ちよさそうな顔、なんか、かわいいな」

 ヤヨイが俺の上半身をベッドに寝かせ、両手を上げた状態に固定する。そのまま俺の乳首を舐め始めたが、その無防備さが快感をさらに加速させているようで、自分のオマンコから愛液があふれ出るのが分かった。

「レント、もうアソコがびしょびしょに濡れてるよ」

 ソフィーアが俺のクリトリスを少しきつめに吸った。脳が痺れ真っ白になる。我慢できずに、快感の声を上げてしまった。

「気持ちいいかい? じゃあ、私も気持ちよくしてくれないかな」

 ソフィーアとヤヨイが場所を交代する。ヤヨイが俺のクリトリスを軽く舐めながら、オマンコに指をゆっくりと入れていった。粘膜が擦れる感覚……入れるのとは違う、入れられる感覚に、また俺の口から快感の声が漏れる。

 と、ソフィーアがペニスを俺の口に近づけた。ペニスの先端は、透明な粘液ですっかり濡れてしまっている。ソフィーアが持つ、あの薔薇のにおいが鼻を刺激した。

「レント、私のペニスを舐めておくれ」

 その言葉に、俺は夢中になってソフィーアのペニスを口の中に含んだ。舌を亀頭に絡ませる。

「ああっ、こ、これがペニスの感覚か……」

「どんな感じだ?」

「クリトリスとは違って、ピリピリとした……むずがゆさを伴う気持ちよさだね」

「へえ」

 ヤヨイは、ソフィーアのその感想を聞いて、感心の声を上げる。

「あたいにも、舐めさせてくれよ」

 そういうと、ヤヨイはソフィーアを俺の横に寝かせた。痺れるような感覚からようやく解放され、俺も一息をつく。

「レント、いいか?」

 ソフィーアのペニスを握り、ヤヨイは俺に恐る恐るそう尋ねた。

「じゃあオレは、ソフィーアの胸を」

 肯定の代わりにそう答え、今度は、俺とヤヨイでソフィーアを責め始める。

「ヤ、ヤヨイが、私のペニスを……」

 ソフィーアの小さな乳首が、俺の口の中で一層固くなった。

 それから、入れ代わり立ち代わり、責めたり責められたりを繰り返す中、とうとう我慢できなくなったように、ソフィーアがヤヨイのオマンコに自分のペニスをあてがった。

「入れるよ」

「ま、待て、ソフィーア。レ、レントが……」

 ヤヨイが少し慌てた表情で俺を見る。しかしソフィーアは構わず、俺の目の前で、ヤヨイのぐちょぐちょに濡れそぼったオマンコに、自分の股間にそびえ立つペニスを挿入していく。

「あっ、あっ、だ、だめ、レ、レントが、見てる」

 ヤヨイが体を起こそうとしたが、俺が後ろからヤヨイを抱きしめた。

「ソフィーアと、繋がってますよ、ヤヨイさん」

「は、はぁ、レ、レント、ごめん、ごめん、あたい、あたい……きもぢいいいっ」

 『ソフィーアとそういう仲』であるとはいえ、やはり『俺のパートナーである』ということが、一定の歯止めになっていたのだろうが、ソフィーアのペニスがずぶずぶとめり込んでいく様子を俺に見られ、かつ俺もそれに手を貸しているという事実が、ヤヨイの頭からそのタガを外してしまったようだ。

 ソフィーアの腰の動きに合わせるように、ヤヨイは嬌声と俺への謝罪の言葉を交互にあげながら、直ぐにイってしまった。

 ソフィーアが今度は俺に手を伸ばす。

「レント、次は君の番だ」

 ヤヨイのオマンコから引き抜いたペニスを、今度は俺の方へと向けた。

「ソフィーア……あの」

「何かな」

「そのまま……男のままでいたいとは、思わないんですか?」

 俺のその問いかけに、ソフィーアは一瞬きょとんとした表情を見せ、その後、はははと声をあげて笑う。

「確かに、女性の体とは違う感覚だし、なんといっても、ヤヨイと繋がることが出来た。私が夢にまで見たことが、現実になったのは嬉しい」

「え、ええ……」

「でもね、それ以上に」

 そこで今度はいじわるげに笑った。

「君が女として『イク』声が聴いてみたくなった、かな」

 そういうとソフィーアは、俺の両足を広げる。するとヤヨイが俺の上半身を後ろから抱え込んだ。

「それにやっぱり、私は女の体の方が好きなようだ」

 ソフィーアは、自分のペニス……俺から奪った『男性』をはしたなく愛液を垂らしていた俺のオマンコへとあてがい、入れていく。すぐに、何か……膜に引っ掛かった。

「処女膜も、あるのだね」

「ちょ、ちょっと、痛いです」

「我慢したまえ。私も経験した痛みだよ」

「……そういや、もう一度女性の体に戻ったら、処女膜ってどうなってるんでしょう」

「どうだろうね。それは君がまた、私の体で調べてみてくれ」

 ソフィーアは俺にキスをすると、一気にペニスを中へと挿入する。引き裂かれるような痛みに、思わず声を出してしまったが、ソフィーアはそれに構わず、ペニスを奥まで差し込んだ。

「どうかな、入れられた感想は」

「い、異物感、まっくす、ですが……気持ち、いいです」

「そうか……じゃあ、私でイってくれ、レント」

 ゆっくりとしたものから始まったソフィーアの抽挿が、どんどんスピードを増していく。膣内の上壁にペニスの首のところが擦れ、時折、違った感覚――貫くような快感を覚えるポイントをぐりぐりとされるのを感じる。

「レント、いい声だ……もっと、私に、鳴き声を聞かせてくれ」

 ソフィーアは、完全に何かの『モード』に入ってしまったようだ。俺の喘ぎ声に、興奮した様子を見せながら、様々な方向へとペニスを突き立ててくる。

 自然と体が反り返る。恥ずかしい声が漏れるが、もう恥ずかしいと感じる意識さえなくなり、俺は声を上げ続けた。

「さあ、イクよ、レント。君の子宮に、私のザーメンを、いっぱい、いっぱい、飲ませてあげよう」

「さあ、レント、おめぇもイっちまえよ!」

 ヤヨイの責めも加わって、頭の奥から快感の爆発が表面へと湧いてくる。

「く、くる、なんか、くるっ!」

 そして頭の中で、それが真っ白に爆発したのだった。



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23 1学期・終わり

 男性がイッた時のような「急速な収縮」ではなく、快感がだらだらと溶けだしていくような感覚。ソフィーアの「ああっ、こ、これが、射精っ!」という声と共に、膣の中でソフィーアのペニスがビクンビクンとはねると、温かいものが出され、それがとろーっという擬音が聞こえてくるかのように、奥の方へと流れていくのが分かった。

 ソフィーアが俺に覆いかぶさる。それを抱きしめると、俺たちはまた舌を絡めあった。

「出しちゃいましたね」

 荒い息をするソフィーアにそう囁く。

「ふふふ、君に『男性』を返さないと、私の楽しみが減るからね」

「というか、『男性』のやり取りなんて、できるんでしょうか」

 『男性』を返せない、そんな可能性に思い当たり、ふときいてみる。

「それは、考えていなかったな」

 不意を突くような質問に、思わずソフィーアが驚いた表情をする。しかしすぐに、顔をしかめ、俺からペニスを引き抜いた。

「その心配は、無用の、ようだね……」

 ソフィーアが股間を押さえ、苦悶の声を上げる。そのまま、ベッドに突っ伏してしまった。

「がはっ、こ、これほどの……」

「大丈夫か、ソフィーア」

 ヤヨイが心配そうに声を掛けるが、ひと声叫び声をあげると、ソフィーアはそのまま気を失ってしまった。

 

※ ※

 

「しかし……Qに戻るたびにあの痛みを感じなければならないと思うと、気軽に『ちょっと貸してくれないかな』とはいかないようだね」

 ソフィーアの意識が戻ったのはそれから約十分後だった。俺の時と同じくらいの時間らしい。その間俺のアソコは、尿道口が盛り上がり、クリトリスと一体化すると、むくむくと大きくなり、再びペニス状の『イチモツ』へと戻っていた。大陰唇が袋状にふくれ、いつのまにかその中に『たまたま』が復活している。

「そ、そうですね……ちょっと、痛すぎますね」

「そうなのかぁ」

 ヤヨイが少し残念そうな声を上げる。そんなヤヨイにちょっと冷たい視線を向けた。

「い、いや、べつに、ソフィーアのおちんぽが気持ちよかったとか、そんなことは言ってないぞ」

「はいはい」

「レントのオチンポもすげえ気持ちいいからさ、な?」

 ヤヨイは良く分からない慰め方をしながら、俺の顔をその大きな胸の谷間に挟んでぐりぐりとし始める。しかし、一度経験した『誘惑』には勝てないらしい。

「た、たまには、いいだろ? ソフィーアのオチンポを入れてもらっても」

「俺はいいですけど、それはソフィーアに聞いてください」

「レントは本当に我々の理想の『パートナー』だな。まあ、しかし私とレントが二人ともあの痛みに耐えられる気分の時だろうね……でも、レントも、入れられて随分感じてたじゃないか」

「え? い、いや、そういうわけじゃ」

「嘘言うなよぉ。レントもああいうの、くせになっただろ」

「いや、だからそういうわけじゃ」

「隠すなって、な? またしようぜ」

 ヤヨイはすっかり気に入ったようであった。俺は苦笑いで応じる。

「ええ、まあ、それはいいんですけどね。ただ、それこそ、何かヤヨイさんに『ご褒美』をあげる時くらいですかね……ちょっと痛すぎて」

 そう言ってソフィーアと目を合わせる。ソフィーアも苦笑いで応じた。

「ちぇ」

 ヤヨイはそう言うと、両手を頭の後ろで組んで、ベッドにゴロンと横になった。

 

「あ、ちょっとトイレにいってきます」

 尿意を感じ、ベッドを降りようとしたのだが、それを見たソフィーアの目が妖しく光る。

「レント君」

 わざわざの『君』付け……ソフィーアがまた何かしたがっているようだ。

「な、なんですか?」

「そんなに怖がらなくてもいいじゃないか」

 そういうとソフィーアは、俺をフローリングに寝かせる。

「えっと、おしっこが」

「おしっこがしたいのだろう?」

「ええ、ですから、トイレに」

 その俺の言葉を、ソフィーアが人差し指で押さえる。そして俺のペニスを刺激し始めた。

「私もね、中に出される快感を知ってしまったのだよ、レント」

「え、ええ」

 随分と体力を使ったように思えたが、ソフィーアの手の動きに、また俺のペニスが大きくなっていく。生えてきたばっかりだというのに、元気なことだ……

「君には本当に感謝している。私に『女』を教えてくれたのだからね。でも、中に出されるのが、たまにというのは、私も我慢はできないな」

「でも、さすがに毎回あの痛みを我慢するのはちょっと」

「それは私も同じだ。だから……」

 大きくなったペニスを、ソフィーアは自分の『復活』したばかりのオマンコにこすりつける。

「ソフィーア、どうすんだ?」

 そう言いながらも、ソフィーアがまた快感を得たがっていることに気が付いたヤヨイが、ソフィーアの体に舌を這わせ始めた。

「中に出すものは、別に『精液』でなくてもいいのではないかと、思ってね」

 ソフィーアは、まだ濡れ始めたばかりの自分のオマンコに、俺のペニスを挿入し始めた。入り口ですぐ引っかかる。

「処女膜、ありますね」

「ふふふ、これは、いつでも処女の気分になれるね」

 ソフィーアが少し唇をかみ、痛みをこらえて、腰を下ろした。

「大丈夫ですか?」

「や、やっぱり、少し痛いね」

「きつい、です」

「気持ちいいかい?」

「え、ええ……また出したくなりますよ、これじゃ」

「ふふふ……じゃあ、いっぱい出してくれ。レントの、おしっこを、私のオマンコに」

「え、ええっ!?」

「私の子宮に、いっぱい、君の、体液を!」

「そ、それは」

「嫌かい?」

「汚いですよ」

「おしっこは、汚くなんかない。君がそれを証明してくれたじゃないか」

 そう言えば、俺は散々ソフィーアのおしっこを飲んでいた。

「私のおしっこも、飲んでくれるんだろう?」

「ソフィーアがそうして欲しいなら」

「もちろん、してほしい。だから私も、君のが欲しい。いっぱい、出してくれ。私の、中に! でないなら、またザーメンが出るまで腰を振り続けるよ?」

 クールを気取るソフィーアの、悪戯っ子の様な微笑みに、俺はきゅんとなって、そのまま我慢していたもの……おしっこを、ソフィーアの膣の中に放出した。

「あ、ああっ、当たってる、レントの体液が、私の子宮にっ!」

 結構たまっていたものが、勢いよく……精液の勢いとは比べ物にならないだろう速度で、ソフィーアの中に迸る。すぐに膣内が俺のおしっこでいっぱいになったのか、俺のペニスを押し出そうとする水圧を感じた。しかし、ソフィーアが上から押さえつけているせいで、ペニスが抜けることなく、おしっこは膣とペニスの僅かな隙間から溢れるように零れ出した。

「ああ……ああ……」

 ソフィーアの口から、だらしない喘ぎ声が漏れる。おしっこの勢いが止まった時、ソフィーアはまた『ふふふ』と微笑んだ。

「ほんとに……君は……最高だよ、レント」

 ソフィーアが俺の胸に頬を当てる。そして、まるで俺に甘えるように、頬を擦り付けた。

「床が、汚れてしまったね」

「一緒に拭いてくださいよ。今度は俺のおしっこなんで」

「ははは、いいよ。ただし」

 そう言うとソフィーアは、人差し指で俺の鼻を触った。

「今後も、おしっこをする時は、私の中で、するように」

「え、まじですか?」

「言っただろう? 君が私を受け止めるというのなら、私は君を頼ってしまう。すべてを預けてしまう。溺れかけたこの心を、身体を、全て……私の心の中に渦巻く欲望を全て、君に。もう私は、君なしでは生きていけそうにない」

 ソフィーアがキスをしてくる。伸びた舌が、俺の口の中をうねうねと動き回った。

「後悔、したんじゃないか?」

「しませんよ。ソフィーアを愛してます」

 そう答え、俺はソフィーアの、まるで少年のような胸に舌を這わせた。

「なあ……あたいのこと、忘れてないか?」

 ふと、横から声がかかる。放っておかれたヤヨイが、不機嫌そうにむくれていた。

「ははは、すまない、すまない」

「ヤヨイさんも、愛してますよ」

「なんか、あたいがつけたしのようじゃねえか。あたいがレントのパートナーなんだぞ、ソフィーア」

「そんなことないですって」

 そういって笑いあった後、機嫌の直らないヤヨイを置いておいて、床の拭き掃除をすることにした。

 

 ちなみにその夜は、ヤヨイの機嫌が直るまで、中出しを三回させられた。

 

※ ※

 

 ソフィーアと『男性』をやりとりしたことが、どう影響するかはまだ分からない。とりあえず、翌日登校しても、誰が女性で誰がQなのか分かるようになっている、ということはなかった。

 Qになったこと、そして男性に戻ったことを学校に報告すべきなのか……ソフィーアやヤヨイと相談したが、学校の規定をもう一度確認した結果、報告しなくても大丈夫そうだと言う結論で落ち着いた。

 何か問題が発生したときは、その時に考えよう。

 ただ、サアヤには全てを正直に話した。今回は、ビンタ三発で許してくれたが、Qについての理解が深まったことは良かったと思う。

 ソフィーアがQであることが確定し、そのソフィーアが俺の恋人として俺に協力してくれる。

 

 はっきり言ってしまえば、入学したときから元々考えていたこと――Qの協力者を得る、ということが期せずして叶えられたのだが、サアヤはソフィーアの変心を心配していた。

 ソフィーアはああ言っていたが、実際いつまで俺に協力し続けるつもりなのか、俺にも分からない。

 それはその時考えよう。

 

 こうして、慌ただしい俺の一学期が終わった。




ここまで読んでいただいてありがとうございました。
更新を少し休憩します。


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1年・夏休み編
夏01 夏の始まり


せっかくアンケート機能があるので、今後の参考のため、アンケートを作ってみました。小説が面白いと思ってくれた方、いらっしゃいましたらアンケートをぽちっとしていただけると、作者が泣きます。回答がなかったら、笑っておきます。


7月22日水曜日。

 

 今日が一学期最終日。明日から夏休みに入るが、普通ならばそのまま部活動である。

「えっと、探Q部って、夏休みも活動するんですか?」

 俺の目の前――というか、膝の上に座っているソフィーアに、そう尋ねた。

「もちろんだとも。毎日ではないがね」

 栗色のショートボブの前髪からのぞく切れ長の目が、妖しく俺を見つめている。

「えっと、ヤヨイさんは?」

「ヤヨイは今日はバイトだ。私では不満だったかな」

「そんなことないですよ」

 ヤヨイがいるときは遠慮しているようなのだが、ソフィーアは一人になると、誰が見ていようが関係なく俺にくっついてくるようになっていた。今も教室にはまだ数人の女子が残っているが、こちらをチラチラみている。

 パートナーでもないのにこのくっつき度合い。もう随分、学校の噂になっている。しかしソフィーアは全く気にする様子がなかった。

「ふふふ……トイレにはいかないのかい?」

「まだ、ですね」

「それは残念」

「それよりも、なんですが」

「ん? どうかしたかい」

 俺はずっと気になっていたこと――万年筆を返せないままでいた雲雀シエルのことを、ソフィーアに話した。ただし、シエルから送られてきた「オナニーメール」のことは黙っておいたのだが……

「何か知ってます?」

「ああ……」

 ソフィーアはすぐに何かに思い当たったようだ。

「雲雀シエルなら、私やヤヨイとは別の意味で『有名人』だね」

「へえ、有名人なんですか。サアヤは知らなかったんですよ」

「そうなのか。彼女は、メールをくれた男子に自分の恥ずかしい写真を絨毯爆撃の様に送りつけたって伝説が残っているよ」

 その言葉に、俺は思わず『ああ』というような表情を見せてしまった。

「……レント、もしかして」

「え、ええ。その、もしかして、です」

 ソフィーアに、先日あった話をした。それ以来音沙汰のないことも含めて。

「ふむ……彼女は極度の対人恐怖症らしくてね」

「対人、恐怖症、ですか?」

「ああ。教室では誰とも話さないらしい。ところが、メールになると人が変わるとか……その噂は本当だったみたいだね」

「だから『会いませんか』って送ったら、メールが返ってこなくなったんですね」

「たぶん……というか、君は本当に怖いもの知らずだね」

「なんでです?」

 素でそう返すと、ソフィーアは苦笑を漏らした。

「いや、そういうところが君のいいところなのだが、Qには引っかからないでおくれよ」

「もう、誰かさんに引っかかってますが」

「別に、私がQだから、ではないんだろう?」

「そりゃ、まあ、そうです」

 ソフィーアは、俺の言葉に、ディープキスで応えた。

「あまり君を独り占めするのも、後輩たちに悪いな。今日は私も退散するとしよう」

 そう言うとソフィーアは、まだ教室に残ってこちらを見ている女子たちに軽く合図をし、立ち上がった。

「あ、もう一人」

「ん?」

「ソフィーアと同じクラスの八奈(はちな)ミキさんにも、プロフカード貰ったんでした」

「ああ、彼女か。面倒見のいい人だが、男子と仲良くなるチャンスは無かったみたいだ。どうだろう、Qかどうかは分からないな。そもそも、Qの割合は大体5%前後だからね。誰もかれも、という訳じゃない」

「5%……すると、クラスに一人か二人? 多いのか少ないのか、よく分かりませんね」

「そうだね。ただ、もう四年生ともなると、男子の内の半分……平均して三人くらいは、元Qだ」

 生存率は50%……か。

「男子一人が5年間で獲得するパートナー数は、8から10といったところだね。まあ、学年トップなら20を超えてくるが」

「一クラスに近いですね」

「まあ、そういう男子のほとんどは」

「元Q、ですか」

「そう」

 ソフィーアが俺の耳に口を寄せてくる。

「君ももう『元Q』だからね」

「何か変わった風じゃないんですけど」

「これからかもしれない。それも『実験』だよ」

 そういうとソフィーアは、ウィンクをした後、「また連絡するよ」と言って教室を出ていった。

 

※ ※

 

 ずっと教室に残っていた二人の女子と少し話した後も、俺はしばらく教室に残り、端末とにらめっこをしていた。

 シエルに連絡を入れるかどうか……拾得物である万年筆を返した方が良いのだろうが、ソフィーアの話では、直接会うのは難しそうだった。五年生の教室へ行くのはさすがに勇気が必要で、あまりしたくはない。

 女子は、学年、クラス問わず、教室への出入りが自由である。反対に男子は、他クラスの教室に絶対に入ってはいけない。そこはクラスに一人いる男子の「テリトリー」であり、中でまさにHの真っ最中かもしれないのだから。もちろん覗くことも禁止である。用があるなら、入り口の前でクラスの女子の誰かに声を掛けるしかない。

 

 シエルに連絡をして、会えないようなら先生か事務の人に頼んで返してもらった方が良さそうだ。そう思い、顔を上げたところで、教室の入り口からこちらを覗き込んでいる女の子に気が付いた。

 入ってくるわけではない。ただ俺を物憂げな表情で見つめている。俺と目が合っても、その表情は変わらない。

 

 なんなんだ……

 

 と思ったが、その顔が高校生にしては随分幼いものであることに気が付いて、その人物に思い当たった。

 一年生に一人、まだ中学生にもかかわらず、飛び級でこの学校に入ってきた子がいたはずだ。たしか、ケイマと同じ六組だったような……

 

「どうしたの?」

 

 俺は椅子から立ち上がると、できるだけ優しく声を掛けながら、その子に近寄った。

 

「別に」

 

 彼女は、逃げるわけでも無く、かといって用を告げるわけでも無く、ぶっきらぼうにそう答えただけで、変わらず俺を物憂げな……というより、ダルそうに見ている。

 うん、それじゃ怪しさマックスだ。

 

「えっと、名前、何さんだっけ」

「……タテハ」

「それ下の名前……あ、思い出した。秋水さんだ」

 

 以前見た覚えのある名前を思い出し、俺はそれを口にした。しかし彼女は、表情を変えない。

 

「もし良かったら、プロフカードくれない?」

 

 プロフカードを手に入れれば、それがどういう方法であれ、男子は相手にメールを送っていいことになっている。因みに女子から男子にいきなりメールを送るのは禁止だ。

 

 俺のお願いにも、しばらく無反応にしていたタテハは、思い出したようにカバンを探り、一枚のカードを差し出した。

 

「はい。でも、メール、しないで」

 

 いや、それなら渡すなよ、と心の中で突っ込みを入れる間もなく、秋水タテハは俺にプロフカードを押し付けると、走り去っていった。



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夏02 シエル2

アンケート、ご協力ありがとうございました。とても参考になりました。うれしかったです。またぼちぼちと、更新をしていきます。


 ソフィーアは俺のことを「怖いもの知らず」だと言っていた。しかし多分それは違うと思う。知らないのではない。知ったからこそ、欲しくなるのだ……

 

 一人残った教室で、俺はタブレット端末にシエルへのメッセージを書き込んでいく。二度ほど読み返して、送信ボタンを押した。

『こんにちは、深山レントです。お預かりしている万年筆をお返ししたかったのですが、お会いできなかったのでできていません。会えればと思うのですが、もしお忙しい様なら、事務室に届けておきますので、そこで受け取ってください。』

 余りの平凡さに自分でも笑ってしまったが、ちょっとしたことでも『壊れ』そうなシエル相手では、余り冒険的な文面はまずそうだ。まずは無難に探りを入れよう。

 そう思って書いたものだったが、送ったあと一息つく暇も無く、メールの着信音がタブレットから響いた。

 端末の前でじっと座り続けているシエルの姿を想像し、余り笑えないと思いながらもメッセージを表示させる。

『こんにちは、レントさん。お返事もせず、受け取りにも行かずすみませんでした。もしよかったら』

 メールはそこで途切れていた。

 もしよかったら……なんだろう。

 返すべきかどうか悩んでいると、また着信音が鳴る。

『もしよかったらもしよかったらもしよかったらもしよかったら』

 だめだ、いきなり壊れだした。

『はい、いいですよ。そうしましょう』

 もしよかったらなんなのか想像もつかないが、多分このままほっておいても、『もしよかったら』メールがえんえんと送られてくるだけだろう。

 とりあえず、その内容だけでも知りたい……と、またメール着信音が鳴った。メールを開くが文章は無く、学校からすぐ近くのマンションの住所と、明日の日付だけが書いてある。

 来いってことかな……生きて帰れるのか? というか、時間は……

『分かりました。明日、朝10時に行きますね』

 とりあえず適当に送ってみる。多分、聞くより早いだろう。などと考える暇もなく、返事が返ってきた。

『はい、待ってます。レントさんが来てくれると考えただけで、シエルのオマンコから出てくる恥ずかしいお汁が止まらなくなりました。見てくれますか』

 あー……どうしよう、これ。などと考える暇もなく、からの~、オマンコどあっぷ。

 せっかくなのでじっくり見てみる。尿道口まではっきりと見える鮮明な写真。くぱぁっと両手で広げた膣口は、見るだけでねっとりしていると分かる液体でぬらぬらと光っていた。

 ……ライトアップ中かよ。

 中央にドーム状の粘膜。先端に小さな穴が開いている。

『シエルの処女膜、見えますか? オナニーするときも、破れないように気を付けてます』

 ……どうして欲しいんだろう。

『エッチ過ぎて、興奮してきました』

『ほんとですか? シエルのクリトリスもみてください』

 今度は、指で剥かれ、ピンク色の豆が露わになった写真が添えられていた。

 ……本当に、明日、大丈夫かな。

『とてもきれいですよ、先輩のクリトリス。明日、会うのが楽しみです』

 そう返したのだが、その後返事は来なくなった。

 

※ ※

 

 7月23日木曜日。

 

 時間通り、雲雀シエルの家までやって来たのだが、彼女が住んでいたのは、何らかの理由で自宅から通えない女生徒用のマンションだった。マンションの入り口でインターホンを押すと、返事のないままオートロックの扉が開く。中に入り、エレベーターを使って、シエルの部屋の前まで来た。

 部屋のインターホンを押す。音が鳴ったのでしばらく待ったが、返事がない。もう一度押してみる。やはり返事がなかった。

 どうしたものかと思案していると、持っていたスマホ端末――外出時はタブレットからスマホに切り替えている――からメールの着信音が聞こえた。シエルからだ。

 少し不思議に思いつつも、メールを表示してみる。

『鍵は開いています。入ってください』

 もはや『罠』か、そうでなければホラーにしか見えないが、俺はドアを恐る恐る開け、中へと入った。

 ワンルーム。入り口の左にキッチン、右にはたぶんバスルームへのドア。正面にはテレビ台とローテーブルが見えるが、物や着替えが散乱していて、お世辞にも片付いているとは言えない。

「こんにちは、雲雀先輩?」

 多分ここから見えない所にベッドがあるのだろう。声を掛けてみるが、返事がない。

「先輩?」

 もう一度声を掛けたところで、また着信音が鳴った。

『どうぞ、中に入ってください』

 これ、帰りますって言ってそのまま帰ったらどうなるのだろう。好奇心がむくりと湧き上がってきたが、それをやってしまうと何かとんでもないカタストロフィーが起こって、人生のエンディングテロップが流れ出しそうだったのでやめることにした。

「えっと、じゃあ、お邪魔します」

 靴を脱ぎ、流しの前を通って、部屋に入る。

 ベッドの上、部屋の隅に、ブランケットをかぶった『誰か』がいた。時折そのブランケットがもぞもぞと動いている。

「あ、あの、万年筆……テーブルの上に置いておきますね」

 俺は持ってきた万年筆を、ローテーブルの上に置いた。

「先輩、具合でも悪いんですか?」

 そう聞いてみる。するとブランケットのもぞもぞした動きが少し小刻みになった。と、着信音が鳴る。

『いえ、そんなことないです。ありがとう。レントさん、優しいですね』

 いや、これ……ここまで来ても、まだメールなんだ……対人恐怖症とは聞いていたが、もしかして、シエルは隠れているつもりなのだろうか。

「いえいえ、当然のことをしただけです。えっと、じゃあ、帰りますね」

 会いたいのか会いたくないのか。さすがに予想外の展開で、俺はこのまま帰ろうと……したところで、ブランケットの下のモゾモゾが、モゾゾゾゾくらいに速くなった。そして着信音。

『待って。少しお話しませんか?』

 スマホを持ったまま、俺はしばらく考える羽目になってしまった。この状態で、どうやって話を……スマホ?

「えっと、はい、いいですけど、座っていいですか?」

 床には色々なものが落ちている。中には、ちょっと汚れの付いたパンティも……これ、しまおうとは思わなかったのだろうか。

 そしてまたモゾモゾ。

『もちろんです。すみません、ちょっと散らかってるので、ベッドに座ってください』

「じゃ、じゃあ、すみません、座らせてもらいますね」

 ちょっと? とか思いつつ、シエルとは少し離れて腰かける。少し落ち着いてみると、部屋の中に漂うにおい……サアヤのような汗の匂いとは全く違う、なんというか、『メス』の匂いを感じた。

 モゾモゾ。

『本当に来てくれるとは、思ってなかったので、とても嬉しいです』

「あ、いや、連絡が無かったので嫌われたのかと思ってました」

 モゾゾゾゾゾ。

『そんなことないです! すみません、シエル、恥ずかしくて』

 いや、なら、エロ写真送らなくても。

「嫌われたんじゃないなら、良かったです」

 モゾ。

『あの』

「はい、なんですか」

 モゾゾゾ。

『レントさんは、シエルのこと、気持ち悪いって思わないんですか?』

 ……一応、自覚はあるみたいだ。

「気持ち悪いとは思いませんよ。いろんな女性がいるでしょうから、人それぞれの個性でいいんじゃないでしょうか。ちょっと、驚きましたが」

 苦笑いしながらそう答える。するとしばらく、ブランケットの中にいるシエルの動きが止まった。部屋の中は無音になり……と、ブランケットの中から少し荒くなった息遣いが聞こえてきた。

 エアコンは効いているが、さすがにその中にずっといるのは……

「あのー、先輩、暑くないですか?」

 モゾモゾ。

『大丈夫です。あの、シエルって、呼んでもらえませんか?』

「えっと、じゃあ、シエルさん」

 俺がそう名前を呼んだ瞬間、シエルの体がびくんと跳ねた。そしてしばらくモゾモゾタイム。からの、着信音。

『うれしい、とてもうれしいです。とても。ああ、レントさん。どうしよう。シエルの、シエルの、シエルのオマンコから、恥ずかしいお汁が出てきてしまいました。どうしよう、レントさん、とまらないとまらないとまらないとまらない』

 ……そ、そこで壊れるの?

 この次にすべきアクションが分からなかった。この世がコマンド選択式アドベンチャーゲームだったら、どんなにか楽だろう。しかしそうではない。

「え、あ、そ、そんなに喜んでもらって、俺もうれしいです」

 またブランケットの中のものが跳ねた。ビチビチっと。もう、この中にショゴスがいても、俺、驚かないんじゃないだろうか。

 そしてまたモゾモゾ。

『シエル、レントさんにお願いがあるんです。シエルのお願い、聞いてもらえませんか?』

「はい、なんでしょう。俺にできることなら何でもいいですよ」

 ビチビチビチッ! ブランケットの中の物が、苦しみのあまり、のたうち回っているようだ。

 と、ブランケットの塊が、塊ごとモソモソとこちらに近づいてくる。そしてその下から、白い手がゆっくりと出てきて、俺の手を取った。

 うん、これ、sanチェックが必要だな。

「何でも言ってください」

 そう声を掛ける。と、かすかな、ほんとにかすかな音が、ブランケットの中で響いた。

 

        (お願い シエルを レイプして)



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夏03 シエル3

 俺の手を握るシエルの白い手は、カタカタと震えていた。

「できません」

 しかし俺がそう答えると、白い手の震えがピタッと止まる。次の瞬間、シエルの爪が俺の手に食い込んだ。皮膚が裂け、血がにじむ。それが飾り気のないシエルの爪に紅い模様を作っていった。

 しばらく、シエルの爪は俺の手に食い込んだままだった。しかし俺はその爪を振りほどくことも、かと言って声を掛けることもせず、じっと待ち続ける。

 と、ブランケットが持ち上がった。十九歳にしては少し幼さが残った顔。あふれた涙で頬が濡れている。悲痛な様子で見開かれた二重の目の奥で、澱んだ色の瞳がじっと俺を覗き見ていた。

「誤解しないでください。シエルさんが嫌いなわけじゃないですよ。だって、俺たちまだ知り合ったばかりで、俺、シエルさんのこと何も知らないです。俺、俺のことを好きになってくれて、俺も好きになった人としか、そういうこと、したくないんです」

 ブランケットの中、シエルに向けて笑顔を見せながら、俺はできるだけ優しくそう伝える。するとシエルは、俺の手に食い込んだ爪をおそるおそる離した。

 そこにできた傷跡を見て、そして再び俺の顔を見るシエル。俺はもう一度微笑んだ。

 突然シエルがベッドにうずくまる。暫くそうしたあと、ブランケットをはねのけ、部屋の隅に顔を向けた。だぶだぶの長いTシャツの裾から白い脚が出ているが……下は何か履いているのだろうか。まるで平安貴族かと言わんばかりに長く伸びた黒い髪の毛が、背中を覆っていた。

 壁に向かってまたメールを打ち込んでいるようだ。着信音が鳴った。

『なぜ、怒らないんですか』

「えーっと、女性に対しては怒りませんよ」

 シエルの背中に向けてそう返事をした。話すのも、何か奇妙な感じがする。しかも相変わらず返事はメールだった。

『ごめんなさい。痛かったでしょう』

「平気ですよ。言うほど血は出てませんし」

『どうしてそんなに優しいんですか』

「んー、どうでしょ。自分のこと、そんなに優しいとは思わないですけど」

 そこまで答えると、シエルはしばらく固まっていた。そしてメールを打ちだしたが、今回は随分と長い間……書いては消しの繰り返しだったようだ。

 そして着信音が鳴る。

『好きです 好きです シエルはレントさんのこと 大好きです どうしようもないくらい好きです』

「いや、でも、まだ一回しか会ったことないし、俺の顔も今初めて見たってくらいじゃないですか?」

 苦笑い交じりで、そう訊いてみる。

『シエルは、あれからずっと、レントさんのこと見てました』

「あれから? ずっとって」

『毎日、離れたところから、レントさんを追いかけてました。三年生の子と抱き合っているのを見て、羨ましいと思ってました』

「いいっ?」

 ど、どこからどこまで見られてたんだろう……

「すみません、あんまりかっこよくなくて」

『そんなことないです。レントさん、年下なのに優しいしかっこいい。シエルの話をちゃんと聞いてくれて、シエルの部屋まで来てくれたのは、レントさんが初めてです』

 い、いろんな男に、あのメールを送ったんだろうか……そりゃ、引かれるよな。

「褒められると、なんか嬉しいような、こそばいような」

『レントさんは、Qを怖いとは思わないんですか?』

 突然の話題のように思えるが、ソフィーアと抱き合っているのを見てたのであれば、そんなことも思うかもしれない。

「怖いとは思わないです。だって、Qも一人の人間ですし」 

『でも男性を奪おうとしてるんでしょう? シエルのこと、Qだとは思はないんですか? こんなはしたないシエルは、男の子からQじゃないかって、言われてます』

 まあ、そうだろうな。

「正直、分からないです。でも、なんか、違う気がします」

『なんか、だけで? なぜシエルの部屋に来てくれたんですか?』

「万年筆届けないと、シエルさん困るでしょう」

『それだけですか?』

「えっと、正直に言うと、シエルさんに興味はありました」

『興味、ですか?』

「どんな女性かなって。とても丁寧な人で、なんだか一生懸命で、誰かから愛されたいのにその方法が分からない、みたいな。あ、すみません、生意気なこと言ってしまいました。すみません」

 ちょっと、正直に言い過ぎただろうか。でも、俺の言葉にシエルは反応することなくじっとしている。

「シエルさんのこと、好きになってます。だから、無理矢理じゃなく、優しく愛し合いたいんです。だから、こっちを向いてくれませんか?」

 俺がそう言った途端、シエルの背中がビクッとはねた。そして頭を壁にうずめるように、さらに身を屈めた。そしてまた一生懸命メールを打ち込んでいる。

『うれしい。うれしいです。シエル、嬉しすぎて涙が出ます。そんな優しいレントさんに、シエルはシエルの全部をあげたい。今、レントさんの言葉を聞いて、シエルの恥ずかしいお汁があふれて、もう太ももの内側まで濡れているのが分かります』

 これがシエルのコミュニケーションのやり方なのだろう。駆け引きも無く、最初から自分をさらけ出して、相手の反応を見る。そうすることでしか、コミュニケーションができない女性。

 そこに俺はきゅんとしてしまった。

「俺、シエルさんを抱きたいです」

 俺のその言葉に、シエルのメールを打つ手が、これまで以上に震え出した。

『怖い、怖いんです。こんなふしだらなシエルを見たレントさんの表情を見るのも、声を聞くのも、仕草を感じるのも、全部怖いんです。だから、シエルを犯して。怖がるシエルを無理やりレントさんの物にして。お願い、あなたの物になりたい』

 そのメールを送ると、シエルはスマホを横へと置いた。もう返事はしない、ということなのだろう。

 シエルは、自分の体を抱きながら細かく震えていた。

 どうする? その答えはもう決まっている。シエルに言ったこと――シエルがQだとは思わないというのは、実際、嘘ではない。ただ、その感覚がただの『気のせい』なのか、本物なのか、俺には分からなかった。自分を信じるしかない。

 目の前の、怯えた風に俺に抱かれるのを待っている、四歳も年上の女性……俺は、ゆっくりとシエルに近づき、肩に手を触れた。

 これまで以上に、シエルがビクッと大きく動いた。手からシエルの震えが伝わる。そのまま後ろからゆっくりと抱きしめる。肩に顔を乗せ、頬に口を寄せる……

 ドンッ!

 後ろに強く突き飛ばされた。一瞬唖然としてしまう。しかしシエルは逃げることも無く、背中を向けたまま俺を待っているようだった。

 これでは、本当にレイププレイになりそうだ……そういう趣味はないのだが。

 シエルの肩に手を乗せ、もう一度確認した。

「本当に、いいんですね?」

 シエルが壁に向けて、こくんと頷く。

 もう一度背中から抱きしめる。シエルが激しく抵抗するが、俺は力を緩めそうになるのを我慢してシエルをベッドに押さえつけた。

 はっと見開いたシエルの目が俺を見据える。しかし、すぐに目をつむり、また抵抗を始めた。シエルのTシャツの裾をめくりあげたが、その下には何も履いていない。見てすぐわかるほどに、あそこの周りにはぬるぬるとした液体が付いていた。

 シエルを押さえつけながら、ズボンを脱いだ。抵抗をつづけるシエルの足を広げ、ペニスを割れ目に押し当てる。

 そこでシエルが微かに口を開け、「あああぁああぁぁ」と声を漏らし始めた。

 ペニスの先端が膣口の中へとめり込む。そのとたん、シエルは顔を激しく左右に振る。そして上を見上げたシエルの目から、涙があふれだした。

 俺は思わず、シエルを『犯す』動きを止めてしまう。シエルは俺の腕をつかみ、泣きながら声を出した。

「いや、やめないで、レントさん。お願い、お願い、シエルを、犯して」

 初めてちゃんと聞いたシエルの声だった。大粒の涙を流しながら、一生懸命俺に抵抗しているにもかかわらず、シエルはか弱い声で「いや」という言葉と「お願い、やめないで」という懇願を交互に繰り返していた。

 ペニスが当たっているシエルのアソコは、愛液が洪水のように湧き出ていて、ペニスをぐちょぐちょに濡らしている。それがシエルの動きによって、俺の股にもこすりつけられた。

 俺は覚悟を決め、シエルの手を頭の上に組ませて押さえつける。またシエルのオマンコから、愛液があふれたのが分かった。

 硬くなったペニスをもう一度膣口に当てる。そして、抵抗しながらも「やめないで」と喘ぐシエルの中へ、俺のペニスを押し込んだ。



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夏04 シエル4

 シエルのオマンコの中は、濡れているにもかかわらず、俺のペニスを押し出そうとするほどキツイ。シエルが写真で俺に見せた処女膜が、俺のペニスを入れまいと必死に抵抗しているようにも思える。

 しかし、優しくゆっくりと入れるということを、シエルの抵抗が許してくれない。

「いやっ、いやっ、いやぁああぁあ」

 涙を流しながら顔を左右に振り、髪を振り乱すシエルの腕を押さえつけ……俺はシエルの中へ、自分のペニスを突き立てた。膣の中の引っかかりが、強引に突き破られる。

「ひいっ」

 シエルが体をのけぞらせた。

「ああぁああぁぁぁぁ」

 意味をなさない声。それは痛みによるものなのか、それとも、処女を失ったことの歓喜なのか。

 俺は腰を押し付けたまま、シエルが着ていたTシャツをたくし上げ、腕の所へと持っていく。それがまるで拘束具のように、シエルの手に絡みついた。

 下に何も着ていなかったシエルの胸が、俺の目の前にさらされる。たわわに、という形容がぴったりな、ボリュームのある胸。その頭頂部に、ピンク色の乳輪が花びらのように咲いている。

 一旦ペニスを引いた後、もう一度、さらに奥までペニスを挿入する。ペニスの先が、子宮の入り口に突き刺さった。

「ひゃああああああっ!」

 視線を上にあげたまま固まってしまったシエル。大きく開けた口から、だらしなくよだれが流れ落ちる。と同時に、俺の股間に温かい液体がかけられた。

 それはシエルの吹いた潮なのか、それとも失禁なのか。

 シエルが、ビクンビクンと体を震わせる。それが収まるのをまたずに、俺は膣の上壁に強くこすりつけるようにペニスを抽挿した。

 擦れるたびに、シエルの身体が飛び跳ねる。

「気持ち、いいです、シエルさん」

 実際、シエルのオマンコの中は、うねうねとした粘膜が絡みつくような感触で、十分すぎるほど濡れているためか、腰を振るたびにクチュクチュといういやらしい音が聞こえてくる。

「お、犯されてる。シエル、犯されてる。レントさんのオチンチンに、シエルが犯されてるぅ」

 さっきまでベッドの隅で震えていたシエルが、自分が犯されてるという状況を確認するように、だらしなく開けた口でそう叫んだ。

「気持ち良すぎて、直ぐにいっちゃいそうです」

 俺がそう言ったとたん、シエルは大きく見開いた目を俺に向ける。、

「だ、だめ、だめ、な、中は、だめ。赤ちゃん、できちゃう。だめ、中に、出さないで」

 眉を八の字に寄せて、俺にそう懇願する。そして腕に絡みついていたシャツから腕を抜き、俺の腕をつかんだ。シエルの爪が、皮膚に食い込む。

「中は、中は、だめ」

 そう言いながらもシエルの脚は、絶対に離すまいとするように、俺の腰を挟み込む。

「だめっ、だめっ、シエルの子宮が、レントさんのザーメンで、いっぱいになっちゃう」

 儚げな様子からは想像できないほどの力で、シエルは俺の腕をつかんでいた。またビクンと体がはね、シエルが強くのけぞる。

「だめっ、いけないのが、いけないのが、来ちゃうっ。シエルが、いけない子になっちゃうっ」

 シエルは、限界まで目を見開き、何かに耐えているようだった。

 しかし俺も限界が来た。ペニスの奥からグジュグジュした感覚が、せき止めていたものを突き破り、吹き出した。

「い、いくっ」

「なかっ、なかっ、なかにっ、シ、シエル、は、は、はじけちゃうぅぅぅっ」

 精液がシエルの中に大量に出ていくのを感じる。それに合わせるかのように、シエルの体の反りが、まるでブリッジするかのようなところまで曲がった。

「うううううう」という、うなりにも似た声をあげながら、シエルが横へと倒れる。そのまましばらく、シエルは動かなくなってしまった。

 

 ゆっくりと、シエルのオマンコから自分のペニスを引き抜く。つれて、中に出した精液が、膣口から肛門へと流れ落ちたが、そこに少し血が混じっていた。

 

 出してしまった……相変わらずのロシアンルーレットだなと心の中で苦笑しつつ、俺は軽く目を閉じ、歯を食いしばった。

 もし、俺の感覚が間違っていたら……シエルがQだったら、この後激しい痛みがやってくるはずだ。ソフィーアの時は、すぐだった。

 しばらくそうしていたら、ペニスに刺激が走った。一瞬ヒヤリとしたが、目を開けて目にしたのは、俺のペニスの『お掃除』をしているシエルの長く黒い髪の毛だった。

「シエル、さん」

 俺の精液と自分の愛液、そして破瓜の出血のついている俺のペニスを、シエルは一生懸命舐めていた。

 声を掛けても、返事は無い。髪に隠れて顔も見えない。しかし、そうしているシエルを見て、なんだかとても愛おしく思えた。軽くシエルの頭をなでる。触れた瞬間、シエルはフェラを止め、びくっと体を震わせたが、二三度撫でるとそれもおさまり、また俺のペニスを舐め始める。

 そうしているうちに、またペニスが大きくなってしまった。

「あ、えっと、すみません、まだ元気みたいです」

 苦笑いしながらそう言うと、シエルはペニスから口を離し、俺を見上げた。

 垂れ下がる長い髪が、シエルの顔を隠している。その隙間からちらちらと覗くシエルの目が、何度か瞬いた後、シエルは俺から体を離し、俺の方に向けて足を左右に開いた。

 自分で足を持ったまま、オマンコを俺の方にさらけ出し、顔は下に向けて、何も言わずにじっとしている。何かを待っているようだった。

 俺はシエルに近づき、オマンコに顔を近づける。自分の精液のにおいより、シエルのおしっこと愛液の混ざった匂いの方が鼻につく。

「に、におわないで」

 微かな声でシエルがそうつぶやいた。

 シエルは、して欲しいことを「~しないで」というようだ。俺は鼻を近づけ、聞こえるように息を吸った。

「だめ……恥ずかしい……シエル、またいけない子になっちゃう」

 ピンク色の粘膜の間を縫って、愛液と一緒に、赤いものが混じった白い液体が出てくる。指で広げると、処女膜に亀裂が一筋付いていた。

「処女膜、破っちゃいましたね」

「うん……ありがとう。シエルの処女、貰ってくれて」

 そこで胸の奥がきゅんとなった。

「今度は、優しく、エッチさせてもらえませんか?」

 髪の毛に隠れたシエルの顔に、その上から手で触れる。

「こんな、いけないシエルに、優しくしてくれるの?」

「ええ、もちろんです。シエルさんが、俺を怖くないのなら」

 汗と、そして涙で髪の毛は濡れていた。そこにまた新たな涙が加わる。

「まだ、怖いです。でも、レントさんに嫌われるのはもっと怖い」

 シエルが、手を俺の腕に延ばす。シエルが爪を食い込ませたところから、まだ血が出ていた。

「ごめんなさい」

 シエルが傷口に唇を寄せる。そしてかわいらしい舌で、傷口をチロチロと舐めると、口を当て、軽く血を吸った。

「大丈夫ですよ」

 そうはいったものの、シエルに引っかかれた背中も痛い。これは……また誰かに何か言われそうだ。

「何か、お詫びを」

 また俺の前でシエルが俯いた。まあ、ベッドの隅にうずくまったままになられるよりは進歩したようだ。

「じゃあ、顔を、ゆっくり見せてください」

「えっ」

 俺の要求に、シエルはおどおどし始める。そしてベッドのシーツをつまんだり離したりを繰り返した。

 そのシエルの顔に、手を添える。シエルはまたびくっと震え、しかし覚悟を決めたように、髪の毛の向こう側で硬く目をつむって、俺の方に顔を向けた。

 まるでレースのカーテンのような髪の毛を手で左右に開く。シエルのかわいらしい色白の、でも一生懸命目をつむり恐怖を我慢している、そんな顔が現れた。

 俺はゆっくりと顔を近づけ、そして唇に触れる。あっというシエルの声が漏れた。

「今日、ここに泊ってもいいですか?」

 その言葉に、シエルが驚いて目を開ける。二重の目が、エッチをしている時とはまだ別の様子で、かわいらしく開かれていた。

 俺と目が合ったことに気付き、またシエルが目をつむる。そして小さく、「はい」と返事をした。



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