ダンガンロンパ -Lost Believe- (海風)
しおりを挟む

Prologue
Prologue① 『出会い~Ⅰ~』


初投稿となります。
ダメな点は多々あると思いますが、頑張りますのでよろしくお願いします。




 都会の中心部……いわば一等地と呼ばれる場所に……その場所はあった。

 

 ――"私立希望ヶ峰学園" 世界の"希望"と呼ばれる高校生を集め育成する学園だ。

 

 この学園に入学するには、何かの分野で超一流である必要がある事が前提条件なんだが……まさか呑気な僕が呼ばれる事になろうとは。

 

 ――僕の名前は佐藤 尊(さとう たける)

 

【超高校級の空想家】という肩書を持ち、今僕は"希望ヶ峰学園"の校門の前に立っている。

 

 

【超高校級の空想家】佐藤 尊(さとう たける)

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 僕には昔から取り柄なんてなかった。

 でも好きな事にはとことん追求するタイプだった……僕が最初に好きになった事、それは小説だった。

 小説を読んでいると、いろんな妄想が膨らんだ、まるで自分の世界が広がったかのように。

 

 何時しか、小説を書きたいと思うようになった。でも、僕にそんな技量はないし、これから技量が伸びる事も思えなかった。

 だから、僕は小説を読むことで鍛え上げられた妄想……いや"空想"を、全世界に発信してみる事にした、SNS等で。

 

 そしたら、いろんな小説家がこぞって僕の"空想"を使って小説を書きたいと言ってきた。

 それが僕にとっては非常にうれしい事だった、取り柄のない僕が皆に注目されたんだから。

 

 でも、それが超一流だとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

『……まさか、超一流だったなんてね~』

 

 嬉しいようなパッとしないような……、そんな感情を抱きながら……

 

 僕は、その後者に足を踏み入れた。

 

 ここから僕の新生活が始まるんだ。

 

 

 僕の……新しい……出会いが……

 

 

 あれ? 新たな空想でも思いついたか?

 

 

 視界がだんだん歪んでいく、意識も遠のいていく。

 

 

 僕が空想する前は大体こんな感じだ、意識がだんだん現実から離れていく。

 

 

 でも、それ以上に不思議な感覚だ。

 

 

 いったい……どういう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 

 

 

 

『……あれ?』

 

 目が覚めると、視界には見知らぬ天井が広がっていた。ここは……通路だろうか? あと何故か身体が宙に浮いているような……それに、誰かに抱えられいるような感覚も……。

 歪んだ視界をよーく凝らしてみると……銀色の髪をした少女が息を切らしながら、僕を抱えながら走っていた頃だった。

 

『え……うわぁあ!?』

『あ、目覚め、うわっ!』

 

 僕が暴れたせいで、少女は通路の硬い床に尻もちをつき転んだ、運ばれていた僕も当然落下して、通路の硬い床に尻もちをついた。

 痛かったが、僕を運んでいた彼女のほうが相当痛いだろう……。

 

『ご、ごめん……大丈夫?』

『いった~……あ、うん、こんなもの……摩ってれば直るよ、ははは……』

『それはよかった……でも、なんで僕を運んでいたんだ?』

『それは……さっき校内放送で、8:30までに新入生は体育館に集合するようにって言われて、私達以外は集まってたけど、君だけがいなかったら呼びにいったんだけど……全然起きなかったから』

『そ、それは……ごめん』

『あぁいや、大丈夫だよ、はは』

 

 彼女は手を振りながら、そう言ってくれた、その言葉一つ一つには優しさが籠っていた。

 

『何故か私って……誰かを見過ごす、なんて事苦手で……誰にでも優しくしてしまうんだ……』

『それって……すごく素敵な事だと思うよ、助けてもらった僕が言うのもなんだけどね』

『あ、ありがとう……あ、自己紹介してなかったね、私は茅野 青空(かやの そら)。【超高校級の姉御肌】って呼ばれてる、宜しくね。』

 

 

 

【超高校級の姉御肌】茅野 青空(かやの そら)

 

 

 

『青空さんか、宜しくね。僕は佐藤 尊。【超高校級の空想家】って呼ばれてる』

『尊君ね、宜しくっ。さて……って、やばっ今7:55だ! 急がないと……』

 

 そういうと、青空さんは僕の手を掴んで走り出した。

 

『い、急ぐって、例の体育館集合!?』

『そうそう! こういう集合って、遅刻したらダメじゃない?』

『た、確かに……って、自分で走るよ!?』

 

 僕の言葉もお構いなしに、青空さんは僕の手を引っ張りながら走り、勢いよく目の前に現れた体育館の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 

 

 

 

 体育館の眩しい光が僕の視界を包み込んだ……それが晴れた先には、僕たちを除いた13人の超一流が待っていた。

 皆が皆、困惑と怒号をまき散らしながら、僕たちの到着を待っていた。

 

『おっと……青空ちゃん、遅刻さんを連れてきてくれたみたいだね…… (フッ)遅刻さんなんて放っておけばいい物を』

『ちょっと……そういう言い方はないでしょ、工藤 佐助(くどう さすけ)君っ』

『えっと、遅れてごめん、皆集まってたのに』

『(フッ) 次から気を付ければいいさ……それより青空ちゃん、僕の名前を憶えてくれていたようだね、嬉しいよ』

『人の名前覚えるのは当然じゃ……』

『(フッ) 言えてるな、おっと、遅刻さんにも自己紹介しておこうかねぇ、僕の名前は工藤 佐助(くどう さすけ)。【超高校級のナルシスト】なーんて呼ばれているが……罵倒にしか私には聞こえないよ』

 

 

 

【超高校級のナルシスト】工藤 佐助(くどう さすけ)

 

 

 

『あ……はは、僕の名前は佐藤 尊。宜しくね』

 

 確か、工藤佐助って……噂には聞いていた程度だが、中学生時代で熱狂的に自分の容姿を自慢し、女性を口説こうとした人物……だったよな? その口説こうとした数は、世界一とも噂されていたはず……。

 

『その性格、直したほうがいいと思うけど……ま、「超高校級」なら仕方ないか』

『(フッ) 僕の容姿がかっこいいから、仕方のない事さ』

『う、うん、かっこいいと思うよー……はは』

 

 変な超一流もいたもんだな、と思った瞬間だった。

 

 

 他の人にも挨拶しようと、足を歩もうとした瞬間、何かに足をつっかえ、盛大に体育館の硬い床に転んだ。廊下より痛かった。

 

『いって……』

『さ、佐藤君、大丈夫?』

『(フッ) 前方不注意……いや、足元不注意……かな?』

『足元……え?』

 

 そう言われ、つっかえた所を確認すると、一人の少女が「うぅ~……」と不機嫌そうに言いながら、こっちを睨んでいた。

 

『ごめんっ! ……でも、なんで床に?』

『……てたのに』

『え?』

『寝てたのに……』

 僕はあっけにとられた。

『寝てた?』

『寝てる以外にある……?』

『ゆ、夢喰(ゆめぐい)ちゃん、佐藤君も悪気はないみたいだし……ね?』

『うぅ~……』

『夢喰ちゃん?』

『(フッ) 子猫ちゃんみたいで可愛いだろう? 彼女は夢喰 夏帆(ゆめぐい かほ)。【超高校級の睡魔】なーんて呼ばれている子だ』

『……しくよろ』

 

 

 

【超高校級の睡魔】夢喰 夏帆(ゆめぐい かほ)

 

 

 

『ここ……寝心地悪い』

 

 夢喰 夏帆……たしかいつでもどこでも眠れる才能を持った少女で……あと、寝ているのにも関わらず成績が常に上位だったっていう……凄いような凄くないような才能を持った子だったよな?

 

『……馬鹿にしてる眼』

『え!? 僕が!?』

『……あっちで寝る』

 

 そういって、彼女は体育館のベンチの方へ行ってしまった。

 

『な、なんか冷たい子だね』

『根は優しい子なんだけどね……』

『(フッ) これがツンデレってやつかい?』

『絶対違うと思うよ……』

 

 工藤君は、相当マイペースだなぁ……。

 

 

『あっ、青空姉(そらねぇ)ー!!!』

『えっ? うわっ!』

 

 ドサッ!! っと大きな音を立て、一人の少女が青空さんにタックルという名の抱擁をかました。

 

『に、二回も尻もちつく事になるとは……』

『そ、青空姉大丈夫!?』

『青空さん、大丈夫?』

『二人に心配されちゃった……姉役失格かな?』

『(フッ) そういう青空ちゃんも、可愛いね』

『はいはい……』

 

 姉御肌っていうのも、大変だなぁって思った。

 

『ん!? 君はさっき来た子かな?』

『そ、そうだけど……』

『じゃぁ自己紹介だね! 私の名前は松丸 多恵(まつまる たえ)! 【超高校級の歌手】だよ!』

 

 

 

【超高校級の歌手】松丸 多恵(まつまる たえ)

 

 

 

 松丸 多恵……そうだ、現在人気が急上昇している期待の高校生歌手だ……僕も何回か歌声を聞いたことがある。

『それじゃぁ、出会いを祝って、一曲歌おうかな~!』

『な、長くなるから今度でいいよっ、はは』

『えー!? もう8:00過ぎてるし、先生的なの来ないからいいじゃんか~』

『はーい多恵ちゃん、佐藤君困ってるから……姉の言うことは聞けるよね?』

『ぶ~……青空姉の言うことなら仕方ないなぁ』

 

 すごい、あの破天荒な子を一瞬で落ち着かせた、さすがは【超高校級の姉御肌】だ。

 

 

『ふむ……君は……そうか、君が残りの【超高校級の空想家】の佐藤 尊君か! 宜しく頼むぞっ!』

 

 大きな声をあげながら、一人の青年が声をかけてきた、しかも僕の名前を的確に当てている……何者なんだ!?

 

『あ、貴方は?』

『ふむ! 名前を知ったからには、こちらも名乗らなければならないな! 我の名前は枢木 誠(くるるぎ まこと)! 【超高校級の情報屋】だ、つまり諸君らの情報を知る事なぞ、造作もない事なのだ!』

 

 

 

【超高校級の情報屋】枢木 誠(くるるぎ まこと)

 

 

 

『情報屋……明らかにヤバそうな雰囲気だ』

『ふむ! 肩書で人を判断することはいけないことだぞ!』

『そんなこと言ってー! この前私の秘密を堂々とぶちまけたじゃないの! 歌手の秘密って、結構恥ずかしいんだよ!?』

『はっはっは! 有名歌手の秘密ともなれば、結構高値で売れるからな!』

『プライバシーの侵害だよ? 枢木君……』

『はっはっは!』

 

 ダメだ、常識通じないな……。

 

 

『うるさいですわね……少しは静かにしてくれませんの?』

『あ、ごめん……ソフィアさん』

『青空さんが謝る必要はありません……そこにいる情報バカと歌唱バカにいってるのです』

『じょ、情報バカとはなんだね! 【超高校級のバイオリニスト】よ!』

『歌手バカー!? あんたもバイオリニストって、音楽関係者じゃないのー!』

『はぁ……バカは何度いってもバカですね……おっと、遅刻した人もいるようね、私はソフィア・クラウディア。名前は覚えてもらわなくてもいいわ』

 

 

 

【超高校級のバイオリニスト】ソフィア・クラウディア

 

 

 

『……それじゃぁ』

 そういって、彼女は去っていった。

『な、なんか冷たい雰囲気の子だね』

『心、開かないんだよね……仕方ないとはいえ』

『……そうなんですか』

 

 

 そんな会話をしていると、一匹の子猫がすり寄ってきた。

『猫?』

『(フッ) 子猫ちゃんじゃないか、可愛いね』

『子猫ー!』

『ね、猫は無理だ! 我は退散させてもらう!』

 工藤はそう言って走り去ってしまった。すると、一人の少女がやってきて、その猫を抱き上げた。

『猫……可愛いのに』

『あ、貴方は……』

『ん、君は……遅刻組? 私は睦月 穂香(むつき ほのか)。宜しくね』

 

 

 

【超高校級の飼育係】睦月 穂香(むつき ほのか)

 

 

 

『あー多恵知ってる! 同時に手懐けた猫のギネス世界記録保持者の子だ!』

『そ、そんな有名になってたの……私』

『凄いな……僕は、手懐ける事できないから』

『うんうん……猫って、警戒心強いからね』

『うん……可愛い生き物だよね、でも……何時か川獺飼ってみたいんだよね』

『川獺?』

『うん、あのチャーミングな子……はぁ、想像しただけでも溜まらないよ』

『そ、そうなんだ』

 

 さすが【超高校級の飼育係】……動物に対する愛情は相当だな。

 

 

『おやおや、素晴らしい()()()が揃いに揃っている……青空ちゃんに穂香ちゃんに……多恵ちゃんは、既にアイドルのようなものだね』

『ま、また工藤さんみたいなのが』

『ん? それはどういう意味だい?』

『こんな男と一緒にしないでほしいよ、僕は正当なプロデューサーなんだからね……。緑川 慎二(みどりかわ しんじ)だ。よろしく頼むよ、少年』

『あ、僕の事か、僕は佐藤 尊。宜しく』

 

 

 

【超高校級のプロデューサー】緑川 慎二(みどりかわ しんじ)

 

 

 

『僕は君たちの志願をいつでも歓迎しているよっ、そう……超高校級が揃いに揃ったアイドルグループにね!』

 そういって彼は去っていった。

『げ、元気だね……』

『青空姉……なんか無視された気分なんだけど……』

『その方がいいのかもしれないよ、多恵ちゃん……』

『まったく、僕はなんか貶されたような気分で悲しいよ……ちょっと彼に抗議しに行くとしよう。(フッ) では、失礼!』

 そういって、工藤さんも去っていった。

 

『そういえば……青空さん、思ったんですけど』

『ん? どうかした?』

『今までやってきた人たち、皆青空さんに心を許していますよね、ソフィアさんとか……多恵さんとか……凄いですね』

『あー……皆、ここに呼ばれて困惑してたんだよね。それで、皆に"落ち着いて"って言ってる内に……なんか、心を許されちゃって……』

『違うよー、それだけじゃないよー! 青空姉は、私達にクッキー渡したり、会話したりして、不安を取り除いてくれたんだよー! それだけじゃないんだよー!』

『す……凄いな、青空さんは……僕には、そんな行動力ないし……』

 

 すると、青空さんは笑い、僕にこういった。

 

『当たり前のことをしてるだけだよ……それが、皆の安心に繋がっただけ』

 

 その言葉には、どこか僕を安心させるような何かがあったのだろう。

 

 いつの間にか、僕の中にあった不安は消え去っていた。

 

『あ、あの、青空さん』

『ん?』

『僕も……青空姉って、呼んでいいですか?』

『え? ……んー、最初は恥ずかしかったけど、もう数人に呼ばれちゃってるしなぁ……』

『い、嫌ならいいんですよ?』

『いや、いいよっ。【超高校級の姉御肌】だからね。この場所くらい、姉役やってあげるよ』

『ありがとう……それじゃぁ、改めて宜しく、青空姉』

『うん、宜しくっ。それじゃぁ、他にも仲間はいるから、会いにいこう』

『は、はい』

 

 そういって、青空姉は僕の手をつないで、皆の方へ駆け出した。

 その後ろ姿と、彼女の笑顔を見ると、どこか嬉しそうな感じだった……。




読んでいただきありがとうございます!

次回も是非楽しんでいってくれると幸いです!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Prologue② 『出会い~Ⅱ~』

続きです、ニューダンガンロンパV3を今久しぶりにやってるんですが、楽しいですね……東条さん好きです。


青空姉に手を引かれて走っていると、やがて一人の少女が駆け寄ってきた。

 

『あ、青空姉~その子誰? もしかして……彼氏とかぁ?』

『ち、違うって!』

『ははは~冗談だよ~可愛いなぁもう。 とまぁそれは置いといて……多分さっき遅れてきた子だよね。どもども~、村戸 加奈(むらと かな)っていうんだ~【超高校級の釣人】って呼ばれてるんだっ、魚の事なら何でも聞いてね~』

 

 

 

【超高校級の釣人】村戸 加奈(むらと かな)

 

 

 

『加奈ちゃん凄いんだよ、未だ誰も釣った事のないサイズのマグロを一本釣りしたことある程の腕前なんだ』

『それは凄いな……』

『えへへ~それほどでもあるかなぁ?……それより、何とかしてよ青空姉! あっちで紬と門目が喧嘩してるんだよ~』

『また!?』

青空姉と加奈さんは二人そろって現場に急行した、これって僕もついていったほうがいいよね……喧嘩って危ないし……

 

 

『ぶつかったら謝る、当然の理由だろう?』

『んだよ、てめぇが前見てねぇからだろうがヨォ!』

今にも殺し合いが起こりそうな感じだった。

『二人とも! いい加減にして!』

真っ先に声を上げたのは青空姉だった。

『……っち、面倒なのが来た』

『全く、君からも言ってやってくれ……この紬が、的を射た発言をしないんだ』

『んだと!?』

『やめなよー……』

『門目、一言多いよ』

『……はぁ、君の説得は全て的を射ているから、反論しずらいな』

『え、えっと……』

『ん? おい、こいつは?』

『え、あー……さっき言ってた遅刻の』

『あー、成程。なら名乗らなければならないな、門目 佳次(かどのめ よしつぐ)だ、【超高校級の射手】』

『僕は佐藤 尊、宜しく』

 

 

 

【超高校級の射手】 門目 佳次(かどのめ よしつぐ)

 

 

 

『そうか、まぁ宜しくしなくてもいい。俺と話す時は、的を射た発言をしてくれれば、それでいい』

『そういや喧嘩が気になりすぎて、名前聞いてなかったねぇ、佐藤君ね、改めて宜しく~』

『うん、加奈さん、宜しく』

『んで、そこの大柄バカが紬 大河(つむぎ たいが)。【超高校級の脱獄犯】という、見た目も肩書も犯罪の奴だ』

『てめぇ……バカにしてんだろ』

『門目君!』

『……はぁ』

 

 

 

【超高校級の脱獄犯】紬 大河(つむぎ たいが)

 

 

 

『脱獄犯!?』

『そう、紬君ね、今まで何回も投獄されたけど、どんな牢に入れられようが、脱出不可能の要塞に閉じ込められようが、難なく脱獄した子なの』

『っち……人の情報ベラベラと……』

『でも、自己紹介は必要でしょ? これから一緒に過ごす仲間じゃん』

『そ、そうだよね。僕は佐藤 尊。よろしくね、紬君』

握手しようと、手を出したが直ぐに弾かれてしまった。

『気軽に話しかけんな! クソ……』

不機嫌そうに立ち去っていった。

『……やっぱり怖い人だね』

『佐藤君、絡まれそうになったら、何時でも言ってね?』

『う、うん、ありがとう、青空姉』

 

 

そんな会話をしていると、足元にペンがコロコロと転がってきた。

『ん? これは……ペン?』

転がってきた方を見ていると、背丈が小さい少女が何かを探しているかのように、カバンの中を漁っていた。

僕は近づいて、ペンを差し出した。

『これ……君の?』

『あ……うん、ありがとう』

そういって彼女はペンを受け取り、スケッチブックのページにペンを走らせ始めた。

『……えっと、何書いてるの?』

『お絵描き』

『お絵描き?』

少女はコクッと頷いた。

『えっと……僕は、佐藤 尊。【超高校級の空想家】って呼ばれてる。君は?』

『……浦川 瑠璃(うらかわ るり)……才能はないよ』

『え、でも絵上手いじゃん……』

『別に……私より上手い人なんて他にいっぱいいるし……【超高校級の絵師】なんて呼ばれてるけど……私には、そんな才能ないよ』

 

 

 

【超高校級の絵師】浦川 瑠璃(うらかわ るり)

 

 

 

『才能がないなんて、僕には思えないよ。だから自信をもって』

『……』

 

 

浦川さんの絵をマジマジと眺めていると、男女二人がその奥の席でお茶を飲みながら、何やら話し合いをしていた。

『ここは……だから……すよね』

『えぇ……』

僕は、その2人に近づき声をかけてみた。

『あ、あの……』

『うぉっと、だ、誰だい君は……』

『落ち着きなさい……初めまして、ですね。私は倉家 志津(くらいえ しず)。【超高校級の茶道家】です。』

 

 

 

【超高校級の茶道家】倉家 志津(くらいえ しず)

 

 

 

『僕は佐藤 尊、宜しくね』

『はい、宜しくお願いいたします。そして彼が私の弟……まぁ、双子です』

『双子!? 似てないような……』

『し、失礼だなお前ー!』

『いえ……男女の双子って、顔は似ない事は多いようですよ』

『そ、そうなんですね』

『ふぅ……俺は弟の倉家 神楽(くらいえ かぐら)。【超高校級の信者】だ、信じる者は救われるんだよ』

 

 

 

【超高校級の信者】倉家 神楽(くらいえ かぐら)

 

 

 

『成程……宜しく、ところで……さっき何の話をしていたの?』

『あら、気づいてなかったのですか? この学校、出入り口が全部ふさがれているのです』

 

……え?

 

『まじで気づいてなかったのか……その他の人から聞いてると思ったんだが……』

『いや、ごめん、初耳だったけど……え?』

『玄関はもちろん、窓も全部塞がれてました。いわば密室ですね』

『そんな……』

 

 

と、僕が今置かれている状況を知った時、体育館の檀上から甲高く陽気な声が響き渡った。

うぷぷぷぷ……皆揃ったみたいだね~!

!? 皆が檀上に目を向けた。

『誰……?』

『(フッ) おやおや?』

 

皆が皆、その声に反応を返していた。

 

うぷぷ……オマエラ、おはよーございます!

『えっと……』

『お、おはようございます?』『おっはおっはー!』

 

青空姉はとりあえずといった感じに、多恵ちゃんは元気にそう返事をした。

 

『(フッ) 子猫ちゃんの集まりの次は、子熊ちゃんの集まりかい?』

『熊……可愛い……着ぐるみ見たいだけど……』

『おい誰だテメェ! 窓も出入口もふさいで、どうするつもりだ!』

『少しは落ち着いたらどうです? 脱獄バカさん』

『あぁ!?』

『二人とも……』

 

工藤君と睦月ちゃんは相変わらずだけど、紬君はやっぱり口悪いなぁ。

 

 

全員の自己紹介が終わるのを待ってただけさ! てことで、ボクも自己紹介するね!

ボクはモノクマ! この希望ヶ峰学園の、学園長なのさ!

学園長……? この着ぐるみが?

『ふざけやがって……! どういうつもりだァ、テメェ!』

『落ち着けバカ』

『アァ?』

まったく、【超高校級の脱獄犯】って呼ばれてるだけの事はあるね、口調が荒っぽい……

『んだとコラ!』

『まぁまぁ……』

うぷぷぷ……やっぱり今期生は面白い子達がいっぱいだ! どんな学園になるのか、今からワックワクのドッキドキだねぇ!

『話題がさっきからそれまくっているぞ、的を射ていない。さっさと要件を話せ』

『多恵、難しい事はわからないから……わかりやすく話して―!』

『zzz……ん、うるさい……何?』

そうだねぇ、君たちも気になる事だし、さっさと要件を言っちゃおう! これより君たちは、共同生活をしてもらうよ

『共同生活……?』

そう! これは一種のレクリエーションみたいな物だよ! そして、この共同生活に拒否権なんてないし、この学園から出る事もできないよ!

『テメェ……やっぱり出られないのはテメェの仕業か! さっさと、ここから出しやがれ!』

『……』

もちろん……そんな事を言う人も当然いると思ったんだ、だから当然帰還する方法も用意したよ……そして、これがボクの目的の本題でもあるんだ! 勿論共同生活してもらうのが一番なんだろうけど……

『あぁ!? さっさと教えろよ!』

『そうだね、そんな的を射ていない生活、俺はゴメンだね』

『……私も、妹が待ってるし』

『猫ちゃん……30匹……』

『……zzz』

 

皆が自由きままに叫んだり、戸惑ったりしたが、次の言葉でそれは一瞬にして消え去ってしまった。

 

 

じゃぁ教えちゃうね! 帰還する方法……それは……

 

 

 

 

 

人を殺す……それだけだよ

 

 

 

 

 

……え?

 

今、何ていったんだ……?

 

『人を……殺す?』

方法……場所……問わず、なんでもいい! それを誰にも知られずに完遂できた人が、この共同生活から脱退する事ができるのです!

『そんな……そんな事、できるわけないじゃないか』

『……成程、熊って時点で常識が通用しないのね……情報バカと歌唱バカの次は、熊バカでしたか』

コラーッ! 熊バカじゃない! ボクには、モノクマって名前があるんだからね!

『バカはバカでしょう、それより……そんなバカな事言ってないで、私達を帰してくれません?』

生意気な奴だなぁ……

『テメェ……さっきから俺を無視してやがんな……クソみてぇな事言ってねェで、さっさとここから出せや! ま、お前に出してもらわなくても……俺はぜってぇ抜け出すぜ?』

 

紬君がモノクマを掴み上げ、殴りかかろうとした。

 

『だったらお前を殺して、俺が出る、それで解決だろうが!』

キャー!!! 学園長への暴力は、校則違反だよー!

 

ピッ……ピッ……ピッ……

 

どこからか音が聞こえる。

 

『あん? なんだこの音?』

 

ピッ……ピッ…ピッ…

 

だんだん音の周期が早くなっている。

 

『……これって……まさか……』

 

ピッ…ピピピ

 

音の周期が早くなったせいで、確信を得た。

この音……モノクマから出ている。

 

『紬君ッ! モノクマを離して!』

 

青空姉が叫んだ。

 

『アァ!? 何故だ!?』

 

ピピピピピ……

 

『いいからっ!』

 

青空姉が駆け出し、紬君からモノクマを奪い去り、宙に投げた。

 

ピピピピ――――。

 

その刹那、宙に投げ出されたモノクマは爆発四散した。

 

『うぉぁ!? 爆発ゥ!?』

『やっぱり……さっきの音、爆弾だったんだ……』

『あ、危ないな……青空姉、大丈夫!?』

『う、うん……ありがとう、多恵ちゃん』

『はっ……はは、でもだ諸君! これでモノクマはいなくなった! つまり、我々の勝利ってことだ!』

そんなわけないじゃんか!

檀上から再び、モノクマがひょいっと現れた。

『テメェ……さっき爆発しただろうが!』

そりゃ校則違反だからねー! でもこれでわかったでしょ? ボクが……本気だってことを……

 

体育館が静まり返ってしまった。

 

今回の爆発は警告だったけど……次からは容赦しないからね! おっと忘れていた、君たちに電子生徒手帳を渡しておくね! そこには校則とか色々書いてあるから、ちゃんと確認するように!

 

モノクマが檀上から取り出した、スマートフォンのような機械を僕達に投げ渡す。

 

僕はそれを起動してみた。

 

1.生徒達はこの学園内で共同生活を行うこと。共同生活の期限は無期限。

 

2.夜10時から朝7時までを『夜時間』として扱います。夜時間は立ち入り禁止の区域がある為注意すること。

 

3.就寝は学園内の寮部屋に設けられた個室のみ可能。他の場所での故意の就寝は居眠りとみなし禁止とします。

 

4.学園長であるモノクマへの暴力を禁止します。監視カメラの破壊を禁止します。

 

5.仲間の誰かを殺したクロは『帰還』することができます。ただし、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

 

『そ、青空姉……多恵、殺さなきゃいけないの? それとも殺されるの?』

『だ、大丈夫だよ……私を信じて?』

『青空姉……』

『……実に的を射ていない』

『こんなの……おかしいよね』

『(フッ) なんて恐ろしい事を僕にさせるんだ』

『はっはっは……なんとも面白、あぁいや、最低な事を……!』

『zzz』

『……クソが』

『神楽』

『し、志津……』

『……殺しなんて、絵にならないよ』

『女も殺さなきゃいけないのか……そんな辛くて悲しい事、プロデューサーではある僕にはできない!』

『猫ちゃん……怖いよ……ううっ』

『……』

 

皆が皆困惑し、怯えの声を上げた。勿論……僕も例外じゃなかった。

 

うぷぷぷぷ…… それじゃ、またねー! 楽しい学園生活にしましょう!

 

そういって、モノクマは去っていった。

 

『……どうする?』

『あんな熊、鮫の餌食になればいいのに……』

そうやって罵りあっていると、青空姉が真っ先に手を挙げた。

『とりあえず……さ、この学園に何があるか、調べてみない? ほら、何か手がかりとか掴めるかもしれないし』

『……ふっ、的を射ているな』

『はっはっは! ならば、さっさと調べようじゃないか、情報収集や解析は、この【超高校級の情報屋】に任せたまえ!』

 

そういって、皆体育館を離れていった、僕も決意を固め行こうとしたその時だった。

僕の背中を、誰かが掴んだ。

 

『え?』

 

振り返ると、そこには【超高校級の絵師】の浦川 瑠璃がいた

 

『浦川さん?』

『……一人怖いから、一緒に行こ、怖いの……嫌いだから』

『浦川さん……うん、一緒に行こう』

『ありがとう……』

 

そうして僕と浦川さんは、一緒に体育館を離れた。

 

――これが、僕達が送る絶望の共同生活の始まりだった。




これでPrologueが終了となります。

次から一章が開始します、どうなる事やら……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キャラ紹介
生徒名簿


この作品に登場するキャラクターをまとめた物です。

この作品のネタバレは、書いていませんので、安心してください。


・【超高校級の空想家】 佐藤 尊(さとう たける)

 

『想像が、現実で出来ないなんて理由はどこにもない。』

『本当に、そうなの?』

 

性別: 男

身長: 168cm 体重:60kg

誕生日: 4月5日

血液型: A型

好きな物・人: 空想・現実が嫌いな人

苦手な物・人: 生魚・現実が好きな人

 

【容姿】

紫色の眼・茶色の短髪・フード付きジャケット

【才能】

"超高校級の空想家"

小説家界隈では、かなりの知名度を誇る"空想"を"売る"人。

彼がする数々の空想には、現実味が強く余程の疑う心を持つ人でなければ、

すぐ信じてしまいそうな空想を作る事が出来る。

【性格】

正義感が強い青年。

だが落ち着いた性格でもあり、何か行動する勇気がないため、誰かに言われないと行動することができない。

 

・【超高校級の釣人】 村戸 加奈(ムラト カナ)

 

『私の釣った魚っとても新鮮なのぉ!』

『私の釣り竿壊した人……誰?』

 

性別: 女

身長: 163cm 体重:55kg

誕生日: 12月11日

血液型: O型

好きな物・人: 魚料理

苦手な物・人: 釣竿を壊す人・豚肉

 

【容姿】

黄色の眼・黒色の長髪・普段は制服だが、釣り中はフィッシングジャケット

【才能】

"超高校級の釣人"

先日行われた釣りの世界大会において、高校生かつ女性という身でありながら、優勝を果たし世界一となった少女。

魚をさばくのも得意であり、魚料理をする際は何時も彼女が厨房にいる。

魚についての知識も豊富で、魚の名前を言えば、すぐに生態についての解説を始める事が出来る。

【性格】

とても明るく、ぽけーっとした少女。

その肩書故に、自身の釣り竿を愛でており、常に手入れを欠かさない。傷をつけたり壊したりすると、豹変して激怒する。

魚以外の知識は乏しい為、推理に関しては、魚基準で話を進めようとする。

 

・【超高校級の射手】 門目 佳次(かどのめ よしつぐ)

 

『それは的を射ているが……』

『話がズレているぞ? 的を射た発言をしてくれ』

 

性別: 男

身長: 173cm 体重:78kg

誕生日: 8月9日

血液型: A型

好きな物・人: 弓道・的を射た発言する人

苦手な物・人: 子供・的を射た発言をしない人

 

【容姿】

黒色の眼・黒色の短髪・ツリ目・弓道服を常に着ている。

【才能】

"超高校級の射手"

毎年の夏に行われる弓道大会で不動の優勝者として有名になった高校生。

百発百中であり、卒業後はプロの射手になりたいと思っている。

【性格】

あまり感情を表に出さない青年。

ヘラヘラした人は嫌いであり、突き放すような言動が目立つ、だが真面目な子には笑顔を見せる事もある。

その性格と見た目から、周囲の人(青空以外)には怖がられている。

 

・【超高校級の姉御肌】 茅野 青空(かやの そら)

 

『皆ーっ! ご飯だよーっ!』

『見ちゃダメ……!』

 

性別: 女

身長: 165cm 体重: 54kg

誕生日: 7月7日

血液型: AB型

好きな物・人: 和食・大体の人なら好き(子供は特に)

苦手な物・人: 特になし

 

【容姿】

緑色の眼・銀色の短髪・制服

【才能】

"超高校級の姉御肌"

誰に対しても優しく接し、どんな恐怖に立たされようとも、他の人の安全等を優先する、まるで姉の鏡のような存在。

その性格から、数々のドラマで"姉役"にスカウトされる事もあり、有名作品にも出演したことがある。

【性格】

誰に対しても優しい少女。

皆(一部除く)からは『青空姉(そらねぇ)』と慕われており、皆の料理当番も務めている。

どんな怖い状況に立たされようとも、皆を心配させたくないという想いを優先して、動く。

 

・【超高校級の情報屋】枢木 誠(くるるぎ まこと)

 

『解析や調査は任せてくれっ!』

『あの子の秘密やあの子の隠したい事まで……もね!』

 

性別: 男

身長: 166cm 体重: 65kg

誕生日: 1月13日

血液型: B型

好きな物・人: パソコン・女性なら全般好き

苦手な物・人: 国語・猫・男性はあまり好きではない(不細工は特に)

 

【容姿】

桃色の眼・緑色の髪・白衣

【才能】

"超高校級の情報屋"

ありとあらゆる正しい情報をかき集めては売る商売人。

その情報は正確であり、多くのマスコミやネット民から重宝されている。

【性格】

変態、その一言に尽きる。

好みな女性を見つけたら、すぐその子の秘密と体形を探ろうとするため、女性陣はいろんな意味で警戒している。

 

・【超高校級の歌手】松丸 多恵(まつまる たえ)

 

『私の歌を聞けぇい!!』

『死んだ人に、歌は届かないよッ!』

 

性別: 女

身長: 150cm 体重: 49kg

誕生日: 4月9日

血液型: O型

好きな物・人: 洋食全般ッ!・青空ちゃん!

苦手な物・人: グリーンピース・死体や血・怖い物や人(佳次みたいな人)

 

【容姿】

茶色の瞳・桃色の髪・制服

【才能】

"超高校級の歌手"

プロも顔負けの歌唱力と肺活量を持つ少女。

将来は世界規模の大会に出場して、5回連続で優勝する事であるらしい。

また声量も高く、限界まで声を出せば、館の中ならば何処にいても聞こえる程。

【性格】

明るく活発な女の子、何かある度に叫ぶ。

仲間想いであり、誰とでも仲良くできる力も持つ。

怖い物を極度に嫌っており、死体も嫌い。その為、死体を見つけてしまった場合、気絶してしまう為、何時も青空に庇ってもらっている。

 

・【超高校級のナルシスト】 工藤 佐助(くどう さすけ)

 

『この私に……(フッ) 何か御用かな?』

『僕の顔に、何かついてるかい?』

 

性別: 男

身長: 172cm 体重:65kg

誕生日: 8月12日

血液型: B型

好きな物・人: 全部・綺麗な女性

苦手な物・人: 男性

 

【容姿】

金色の瞳・金色の髪・タキシード

【才能】

"超高校級のナルシスト"

他の誰よりも、自分の顔に自身がある高校生。才能といえるかは不明だが、その自信は世界をも凌駕すると思われる。

【性格】

変態2人目(一人目は枢木)。

自分の顔(自称だが、かっこいいという人もいる)を武器に、女性陣を口説こうとしている。

今は青空を自分の物にしようとしているが、中々上手くいかない模様。

 

・【超高校級の睡魔】 夢喰 夏帆(ゆめぐい かほ)

 

『……zzz』

『起こさないで……』

 

性別: 女

身長: 158cm 体重: 50kg

誕生日: 4月19日

血液型: A型

好きな物・人: 寝る事・静かな人

苦手な物・人: 身体を動かす事・うるさい人

 

【容姿】

青色の瞳・銀色の長髪・パジャマと枕

【才能】

"超高校級の睡魔"

いつでもどこでも眠れる、その現実逃避(?)の強さも才能なのだろう。

ジェットコースターに乗車中でも、ライブ会場の中でも、授業中でも眠れる。

でも人の話は聞いているようで、学業の成績も高い方である。

【性格】

非常に大人しい性格。

廊下を歩けば、大抵彼女が眠っている。部屋で寝ろって言えば、不機嫌になるため、放っておくのが吉である。

推理の時でも寝てる。

 

・【超高校級の脱獄犯】 紬 大河(つむぎ たいが)

 

『……きやすく俺に話かけんな』

『臭い飯はもう飽き飽きだ』

 

性別: 男

身長: 165cm 体重:59kg

誕生日: 9月17日

血液型: O型

好きな物・人: うまい飯・料理が上手な人

苦手な物・人: 臭い飯・やかましい人

 

【容姿】

赤色の眼(ツリ目)・金色のリーゼント頭・白色のTシャツ

【才能】

"超高校級の脱獄犯"

数々の犯罪を犯し、捕まったとしても必ず脱獄するという才能を持った男。

手口もいまだ警察機関は掴めていない、脱獄した回数も計り知れない。

【性格】

荒っぽい性格であり、常に喧嘩腰である。

佳次以上に怖がられており、彼の周囲には基本人がいない(一人を除く)。

 

・【超高校級の茶道家】 倉家 志津(くらいえ しず)

 

『……暖かいお茶、いりません?』

『すみません、遅れてしまって』

 

性別: 女

身長: 151cm 体重: 52kg

誕生日: 6月6日

血液型: O型

好きな物・人: お茶・全員好き

苦手な物・人: 無し

 

【容姿】

白色の瞳・緑色の長髪・和服

【才能】

"超高校級の茶道家"

茶道界の頂点に位置する名門"倉家茶道会"の跡継ぎ娘。

その腕前も相当な物で、飲んだ人を忽ち幸せにすることができる程の腕前。

【性格】

礼儀正しい性格、誰に対しても笑顔で接する。

普段は厨房に籠っており、自作のお茶を飲んでいる。

 

・【超高校級の信者】倉家 神楽(くらいえ かぐら)

 

『志津と皆は頼りになるなぁ……安心する!』

『信じる者は救われるんだよ……!』

 

性別: 男

身長: 153cm 体重:58kg

誕生日: 6月6日

血液型: B型

好きな物・人: 聖書・神・信頼できる人

苦手な物・人: ピーマン・突き放すような事を言う人

 

【容姿】

白色の瞳・緑色の短髪・制服

【才能】

"超高校級の信者"

誰かを信じ、何かを信じる事で、あらゆる逆境を生き抜いた高校生。

その信じる心は相当な物で、疑うということを知らない程。

【性格】

根性はないが、根はやさしい子。

倉家 志津の弟にあたる人物だが、身長は彼のほうが高い。

参加者の皆を信頼しており、殺しが起きると大抵モノクマのせいにする。

 

・【超高校級の絵師】浦川 瑠璃(うらかわ るり)

 

『才能なんかじゃない……私より凄い人は他にいるから』

『私にできる事は、これくらいだよ』

 

性別: 女

身長: 149cm 体重: 46kg

誕生日: 12月29日

血液型: A型

好きな物・人: 絵を描く事・護ってくれる人

苦手な物・人: ホラー系・怖い顔の人

 

【容姿】

茶色の瞳・茶色の長髪・制服

【才能】

"超高校級の絵師"

プロの絵師顔負けの画力を誇るイラストレーター。SNSでは『ルリルリ』という名前で活動している。

本人は、自分の才能に自覚はないが、その腕前は本物である。

【性格】

引っ込み思案な性格。

主に茅野 青空の背後に隠れて震えている。

ホラー系が苦手で、怪談話を始めた時には、泣いてしまう程ビビりである。

 

・【超高校級のプロデューサー】 緑川 慎二(みどりかわ しんじ)

 

『君ッ! アイドルやってみないかい!?』

『アイドルは、この3次元に存在する宝なんだ!』

 

性別: 男

身長: 165cm 体重: 63kg

誕生日: 10月11日

血液型: O型

好きな物・人: ラーメン・可愛い女子

苦手な物・人: 苦い物・アイドルが嫌いな人

 

【容姿】

黒色の瞳・黒色の短髪・ス―ツ

【才能】

"超高校級のプロデューサー"

数多くのアイドルをまとめてきた凄腕のプロデューサー。

高校生の身でありながらも、アイドルをまとめてきたように、人をまとめる事に関してはすごい技量を持つ。

【性格】

能天気で元気いっぱいの少年。

ただ根は真面目であるため、推理の際には別人のように皆をまとめようとする。

何故か枢木と工藤には『同士』と言われるが、本人は否定している。

 

・【超高校級の飼育係】睦月 穂香(むつき ほのか)

 

『動物って、可愛いよね』

『いつか……川獺飼ってみたい』

 

性別: 女

身長: 156cm 体重: 53kg

誕生日: 5月1日

血液型: AB型

好きな物・人: 動物全般・ペットみたいな顔の人

苦手な物・人: 辛い物・ペットをいじめる人

 

【容姿】

黒色の瞳・薄桃色の短髪・制服

【才能】

"超高校級の飼育係"

どんな動物でも簡単に手名付ける事ができる技量を持つ少女。それはライオンでもワニでも同等である。

同時に手名付ける事ができた猫の数で、ギネス世界記録保持者でもある。

【性格】

口調は大人しいが、性格は活発な少女。

可愛いものには目がなく、可愛い物を見るとすぐに飛びついてしまう。

好きな人である『ペットみたいな顔の人』の基準は、彼女曰く『猫耳つけると可愛くなる子』とのこと。

 

・【超高校級のバイオリニスト】ソフィア・クラウディア

 

『Harrow――それで充分かしら』

『貴方は、本当にお人よしね』

 

性別: 女

身長: 163cm 体重: 54kg

誕生日: 2月29日(うるう年)

血液型: B型

好きな物・人: 高級な物(+青空の料理)・冷静な人

苦手な物・人: 平民の食べ物・落ち着きがない人

 

【容姿】

藍色の瞳・金色のセミロング・黒色のマフラー・制服

【才能】

"超高校級のバイオリニスト"

世界規模なコンクールでも演奏した程の技量を持つ外国生まれの高校生。

彼女が鳴らす音色は人を落ち着かせる力があるともいわれているが、真相は不明。

【性格】

冷酷で無表情であるため、何を考えているのかわからない人。

一人でいる事が目立ち、死体を見ても特に反応せず、すぐ別の行動に移す冷静さも持つ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ダンガンロンパ -Lost Believe- chapter1『幸福と不幸のパラダイス』
第1章-第1話- 1日目・2日目前半


■注意

この作品はスパイク・チュンソフト社の作品『ダンガンロンパ』及び『スーパーダンガンロンパ2』、『ニューダンガンロンパV3』のオリジナルキャラクターを使用した二次創作作品です(創作論破とも)。

それらの作品のネタバレ要素が含まれる可能性があります、それらの事が許容できるという方は、どうぞ先へお進みください。

また、文章やトリック等は素人の腕前そのものなので、大目に見てくれると嬉しいです。

では、どうぞ!


 

 

 

ダンガンロンパ-Lost Believe- chapter1

 

 

 

"幸福と不幸のパラダイス"

 

 

 

 〇

 

 

 

《食堂》

 

『はっはっは! 諸君、よくぞ集まってくれたね!』

 

 枢木が突如僕らに『食堂へ集まって』と一斉メールを送信した、どうやらこの電子手帳割とハイテクなようで、生徒間であるならば、メールでやり取りする事も可能なようだった、電話はできなかったが。

 

『それで……情報バカ。この私を呼び出すとは、いったいどういう要件ですか?』

『(フッ) そのソフィアちゃんの冷たい口調は、相変わらずのようだね』

『む……さっきから情報バカだの失礼だな君は! まぁいい、よくぞ聞け! この私、【超高校級の情報屋】の解析力を存分に振るった結果……今私達が置かれている状況を即座に解析することに成功したのだよ!』

『そ、それは凄い事だけど……』

 

 確かにそれは凄い快挙だ、だが僕達が置かれている状況といえば、『閉じ込められている事』『誰かを殺さなければ、出る事は出来ない』という事以外に何があるというのか……。

 

『むっ……貴様ら信用してないな!』

『的を射た発言をしていないからな。信用できる筈もないだろう』

『"殺しあえ"って言われた後に、誰かを信用するというのが可笑しいんじゃないの?』

『村戸さん……門目さん……』

『えっと……お、俺は皆の事信頼しているからな! なんたって、【超高校級の信者】だから!』

 

 僕だって、誰を信用すればいいのかわからない、そもそも誰かを信用しなければというのが間違いなのだろうか? 

 それに……神楽君と枢木君は凄いな、こんな状況でも、あんなにポジティブにふるまえるんだから。

 

『多恵、さっきも言ったけど難しい事は何もわかんないからー? とりあえず枢木っちが言いたい事をさっさと言えばいいよー?』

『多恵さんの言う通りですわね、まぁ青空さんと紬さんがまだ来ていないようですが……もしかしたら、既にどちらかが殺されているのかも』

『そ、そんな事……!』

『ないと言い切れます?』

 

 ソフィアが鋭いまなざしを、僕にぶつける。あの眼は、僕ら全員を敵視又は軽蔑している眼に他ならなかった。

 

『……す、すいません』

『ふぅ、許しを請うのなら、行動で示してくださる?』

 

 そういって、ソフィアさんはそっぽ向いてしまった。

 

『むう……まぁとりあえず、自分が調べて分かった事を言おうじゃないか!』

 

 枢木君が言ったのは次の通りだった。

 

 ・今現在僕らが行ける場所は1階の一部の範囲。

 ・窓や扉は全部硬い鋼で作られた板が取り付けられており、出る事は出来ない。

 ・浴室は現在使用不可能。

 ・監視カメラがついていない部屋はない。

 ・資料室においてあった資料は、どれも重要な手がかりにはなり得なかったが、所々本が抜き取られている箇所もあった。

 

 つまり、結局新しい事は何もわからなかった。

 

『えーお風呂使えないのー!?』

『仕方ないよ……それより、抜き取られている箇所っていうのは……』

『それがさっぱりでね……きっとこの学園に関わる重要な何かに違いはないだろうね、おそらくは……真実とか』

『真実……』

 

 この学園の真実を知れば、モノクマを倒し、皆揃って学園を出る事ができるのだろうか? 先ほどからそういう考えが脳裏をよぎる。

 

『枢木君』

『なんだね?』

『今は……君が一番の希望かもしれない、もしこの学園の真実が分かれば、きっと皆揃って出られるかもしれないんだ』

『……成程、それは確かにいい案かもしれないね』

『帰れるの? 家の猫30匹と再会できるの?』

『帰れる手がかりがあるというのなら、私も協力しない意味はないですけど?』

『うんうん、私も手伝うよ!』

 

 僕のその言葉だけで、皆の絶望した表情が次第に明るく変化していった。皆での協力……そして、彼の情報収集能力があれば、きっと出られる。

 

 なんだか……そんな気がした。

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 

『……こんな所で何してるの?』

『ちっ……テメェか』

 

 皆と別れ、一人廊下を散策していると、紬君に出くわした。あまり遭遇したくはなかったけど。

 

『見ての通りだ、脱出口を探している』

『出られないって言うのに?』

『はっ、そう見えるだけだろ。こういう密室には、必ず一つ脱出口が残ってるんだぜ? 鼠の穴や古びた壁……それらすべては、俺にとっちゃ脱出口だ』

『さすが……【超高校級の脱獄犯】って呼ばれる事はあるね』

『テメェも……皆からたいそう信頼されているようじゃねぇか、【超高校級の姉御肌】さんよ』

『当たり前のことをしているだけだよ』

 

 口は悪いが、根っこから悪い子ってわけじゃなさそうだ。本当に悪い子なら、私の言葉なんてお構いなしに全力で殴ってくる筈だから。

 

 私は……そういう人間を何度も見てきたからわかるんだ。

 

『それで……手がかりとかは見つけれたの?』

『いんや……バカかってレベルで、壁には傷も穴もねぇ。こりゃぁ、今まで脱獄してきた場所よりも、一番難関かもしれないなっ、面白れぇ』

 

 紬君が自身の親指をペロっとなめながらそう呟く。彼の様子を見てみると、何やら今の状況を楽しんでるんじゃないかって思えてくる。

 

 モノクマも、今私達がこうやって足掻いてる様子を見て、楽しんでいるんだろう。それを想像すると、激しい怒りがこみあげてくる、一発殴らないと気が済まない……みたいな。

 

 その時だった、私と紬君の電子手帳に一通のメールが届いた。

 

 "至急、食堂に集まってくれ。全員だ! -枢木"

 

 枢木君からの招集メールだった。

 

『あぁ? これメールもできんのかよ、くそっ』

『……どうする?』

『行くかよ。俺は脱出口探しで忙しいんだっ。テメェが言って来いよ。それで、知った事を全部俺に教えろ』

『やけに命令口調じゃん』

『俺が命令する奴はこの世にテメェしかいねぇよ。さっさと言ってこいや』

『ぷっあははっ、ツンデレって奴? 似合わないよ、あはは』

『チッ、うるせぇ! とっとと行けや!』

『ふふっ、はーいっ』

 

 何だか、嬉しい気持ちになった。

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 

 キーン、コーン、カーン、コーン

 その時、学園内にチャイムが響き渡り、あの忌々しい声が語りだした。

 

えー、校内放送です。午後10時になったため、只今から夜時間となります。食堂は封鎖されますので、ご注意ください! それと、校則も少し追加されているから、確認しておいてね! それでは、おやすみなさーい

 

 電子手帳に書いてあった校則の通り、夜時間が始まった。僕は、自分の部屋のベッドに腰掛ける。その時、何度今の状況が夢であってほしいと思ったんだろう。

 外に出たい……でも、皆を殺したくない……様々な感情が入り混じって、どうにかなってしまいそうだった。

 

『あ、そうだ、校則……増えたんだっけ』

 

 僕は、電子手帳を起動し、校則の欄を確認してみた。

 1.生徒達はこの学園内で共同生活を行うこと。共同生活の期限は無期限。

 

 2.夜10時から朝7時までを『夜時間』として扱います。夜時間は立ち入り禁止の区域がある為注意すること。

 

 3.就寝は学園内の寮部屋に設けられた個室のみ可能。他の場所での故意の就寝は居眠りとみなし禁止とします。

 

 4.学園長であるモノクマへの暴力を禁止します。監視カメラの破壊を禁止します。

 

 5.仲間の誰かを殺したクロは『帰還』することができます。ただし、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

 

 6.電子手帳に貸し借りを禁止します。

 

 7.学園内で殺人が起こった場合、生存者による全員参加の学校裁判が行われます。

 

 8.学級裁判で正しいクロを指摘できた場合、クロのみが処刑されます。

 

 9.指摘できなかった場合、クロ以外の全員が処刑されます。その場合、クロだけが卒業し、学園から脱出、卒業することができる。

 

 10.一人が一度に殺せるのは2人まで。

 

 だいぶ更新されたな……と思った。

 

『クロは……おそらく犯人の事なんだろうな……でも、学級裁判……それに処刑って』

 

 無茶苦茶じゃないか……僕はそう思った、だけど殺しを行わなければ、そんな悲しい事は起きないだろうと自分に言い聞かせた。

 

『……寝よう』

 

 ベッドへ横になり、静かに目をつむる。明日全員無事でいられますように……そういう願いを込めながら。

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 

 ──2日目

 

 キーンコーンカーンコーン

『オマエラ、7時になりました、朝です、今日も元気に頑張りましょう』

 

 忌々しい声の朝合図で僕は目が覚める、こんな状況なのに僕はぐっすり眠ってしまったようだ。

 

『……そうだっ、皆は……』

 

 僕は部屋を飛び出し、皆がいるであろう食堂へと駆け出した。

 

 

《食堂》

 

『皆、無事1?』

 

 僕は食堂へ駆け出すと、青空姉が一人厨房にこもっていた。

 

『あ、佐藤君、おはよー』

『そ、青空姉? 何やってるの?』

『何って……皆の朝食作ってるの』

『青空姉が?』

 

 よくよく臭いをかいでいると、確かに厨房から卵焼きのいい匂いがする。その美味しそうな匂いを嗅いでいると、肩にかかっていた力が一気に抜けた。

 

『とりあえず……皆無事だといいけど』

『ですね……』

 

 そうだ、もしかしたら僕達15人のうち誰かが殺されているかもしれない……。そんな不安を募らせながら、椅子に座り祈っていると、次第に皆が食堂に集まりだした。

 

『ナニコレ、いい匂い! あ、青空姉が作ってるの?』

『ほーっ……この我のために作ってくれるなんて……嬉しい日もあるもんだ!』

 

 最初にやってきたのは村戸と枢木だった。この二人は、意外にも起床時間はしっかり守る真面目な性格組だった。

 

『お腹すいたぁ~。あ、佐藤君、今日眠れた?』

『う、うん、意外にもぐっすり……』

『そう、私は全然寝れなかったよ、もしかしたら……自分が殺されるんじゃないかと思って……ベッドに模擬刀仕込んじゃった……』

『はっはっは! 用心深いなぁ君は!』

『そういう枢木君は元気だね……』

『あぁ! 朝は気持ちいいからな!』

 

 枢木君もこんな元気に挨拶してくれているけど……この元気は果たして彼の本当の気持ちなのだろうか……彼も、不安で仕方ないはずだ。それでも……僕と村戸さんは、その元気に救われていた。

 

『あ、卵焼きもうすぐだから、待ってね』

『はーい!』

 

 村戸が勢いよく返事すると、ドタドタと神楽君が駆け込み、その後に落ち着いた様子で志津さんがやってきた。

 

『み、皆ッ! よ、よかった……無事だったんだね、モノクマに殺されてると思ったよ』

『どうしてモノクマ?』

『だ、だって皆が殺しをするはずないもんね……だから、もし誰かが死ぬのならモノクマに殺された以外ありえないもん』

『神楽、少しは落ち着きなさいよ』

『し、志津姉さん……』

『ははは……でも、心配になるのもわかるよ。僕らだって、心配したんだから』

『うん……あ、倉家姉弟、卵焼き食べる?』

『あ、勿論食べるよ!』

『じゃぁ、私はお茶を入れましょう』

 

 神楽君と志津さんは無事だった……昨日であったばっかだけど、この二人は本当に仲が凄く良い。この二人のどちらか……いや、または両方が欠けるなんて、想像したくない。

 

『ごめんごめん……猫にご飯あげてたから、心配かけちゃったね……』

『(フッ) 僕の子猫ちゃんは、この場に集まってくるからね』

『いやー! 僕のプロデュースするアイドルの事を考えてたら、寝れなくってね……寝過ごしてしまったよ!』

『……ゥス』

 

 急にぞろぞろやってきたが、睦月さんに工藤君、そして緑川君に紬君がやってきた。……あ、そういえば。

 

『紬君、青空姉』

『ん?』『アァ?』

『昨日、2人とも、どこ行ってたの?』

『んー』『……』

『内緒っ』『教えるかよバーカ』

 

 なんか軽くあしらわれたような気がする……一体何があったというんだ? 

 気になって仕方がない……が、内緒なら無理に聞く必要もないだろう。

 

『そう……でも心配してたんだからね』

『あー、ごめんごめん』

『ちっ』

 

 知らぬ間に、紬君と青空姉の距離が縮まってるように見える、それを見た僕は何だか嬉しい気持ちになった。

 こんな楽しい雰囲気なんだ……きっと、殺しなんて起きる筈がない……例え、どんなことがあったとしても……。

 

 

 

 

 そう……思っていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章-第2話- 2日目後半・3日目

感想が来ると非常にうれしいですね。

これからも頑張ろうと思います!


『さっ! 食べよーッ!』

『あ、多恵手伝うよーっ』

 

 青空姉と多恵ちゃんが、厨房から朝ごはんを配膳する。白米、味噌汁に野菜炒め……地味ではあるが非常に美味しそうな臭いが漂ってきた。

 

『あんた……料理できたんだな』

『あー私両親を幼い頃に亡くしちゃってさ……それで、妹と一緒にお祖母ちゃんに引き取られたんだけど……私が高校生の時に、お祖母ちゃんもなくして……それからは私がご飯を作ってたりしたんだ。まぁ慣れってやつだよ』

『多恵、洋食が好きなんだけど……でも、美味しいッ!』

『多恵ちゃん、もう食べ始めてるよ……』

『え? ダメだった?』

 

 皆が皆多恵ちゃんに呆れつつも微笑していた、その様子はまるで一つの家族風景のようだった。

 

『あれ? そういえば夢喰さんは?』

『あー……夢喰ちゃんは……』

 

 と、村戸さんが困惑しながら口を開く。

 

『部屋、隣なんだけど廊下で寝ようとしたところを、私がギリギリのところで止めて……部屋まで運んだら"脱出する時まで起こさないで"……って』

『あぁ……校則、寮部屋以外で寝るの禁止だもんね……』

『全く……こんな時だというのに、呑気な奴だ』

『ここにいる以上、少しは役に立ってもらいたいのですが……』

『門目君ッ! ソフィアさんもっ……全く、じゃぁご飯は私が部屋まで運ぶよ』

 

 さすが【超高校級の睡魔】だ……もはや永眠レベルだろう。

 

『じゃぁ夢喰ちゃんは抜きだけど……それ以外はそろってるし、食べようかっ!』

『おー! 多恵ちゃんお腹すいたー!』

『先に食ってたろうが……ちっ』

『まぁまぁ……じゃぁっ、いただきますっ!』

 

 ──いただきます

 

 言ったのは数人だが、皆と交流が深まったような気がした。

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 朝食を食べ終わった後、僕は食堂を後にし、学園の散策を行う事にした。

 

『……あ、佐藤君』

『ん? 青空姉? どうしたの?』

『夢喰ちゃんの部屋ってわかる? 村戸さんに聞こうと思ったんだけど、もうどっかいっちゃって……』

『え、電子手帳に場所記載されてなかったっけ?』

『部屋に置いてきちゃったんだよね……はは』

『成程……じゃぁ僕が案内するよ』

『ごめんねっ』

 

 僕は青空姉と一緒に、夢喰さんの部屋まで移動した。個室の扉には、ドット絵でできたプレートが貼られているが、割とわかりづらいので、皆はあまり見ていなかった。

 

『ここかな?』

『そうだね……起こすと機嫌損ねちゃうからなぁ』

『ここは腹をくくるしかないよ』

 

 僕はそう言って、インターホンを鳴らした。

 

『……』

『反応……ないね』

 

 さらに5回鳴らす。

 

 ……しばらくすると、扉がゆっくりと開かれた、そこには寝ぼけ眼を擦りながら、こちらを睨みつける夢喰さんがいた。

 

『……うぅ~』

『ごめんごめん……朝ごはん、持ってきたよ?』

『……ありがと……あのさ』

『ん? どうしたの?』

『ご飯の時は、5回ノックして……その方がわかりやすいから……』

『わ、わかった』

 

 夢喰さんは、朝ごはんを受け取り、それだけ告げて扉を閉めた。

 

『……悪い子じゃない……んですよね?』

『うん……そうなんだけどね……』

 

 

 ●

 

 

 青空姉と別れて、また一人になった。

 

『……さて、どうするか……食堂に誰か残ってるかな……』

 

 食堂に戻ってみると、そこには倉家姉弟とソフィアさんが、枢木君が使っているパソコン画面をのぞき込んでいた。

 

『皆? 何しているの?』

『あら、佐藤さん? 青空さんと一緒に夢喰さんの部屋に行かれたはずでは……』

『あ、ああ、用は済んだから、また戻ってきただけだよ』

『おや……夢喰さんの死体報告かと思ったのですが……その口調だと違うようですね』

『し、死体? 僕らが殺すなんてするはずないじゃないか! 僕は信じてるからね!?』

『本当にやかましいですね……そんなに信じてばっかいると、何時か足元をすくわれますわよ』

『ま、まぁまぁ……それで、何をしているの?』

『おお!! 佐藤君来ていたのか! 見ての通り我々は、学園の状況を整理していただけだよ!』

『そ、そうなんだ』

 

 ソフィアさんは相変わらず口が悪いな……言っている事は正しい事なんだろうけど、何もそこまで言わなくても……。

 

『それで、何かわかったの?』

『何も……だな、先ほどから我の情報解析能力をフル稼働しているが、どの情報も非常に厳重でね……調べるのに時間がかかりそうなんだ』

『貴方が言うならそうなのでしょう……情報バカでも、役に立とうとしている姿勢は評価します』

『ソフィアさん……何かと上から目線ですね』

『悪いですか?』

『まぁまぁ、ソフィアさんも……志津姉は只気になった事を……』

『はぁ、もういいです』

 

 ソフィアさんはしびれを切らしたかのように、食堂を後にした。

 

『ま、不味いよ……僕以外皆人の事を信用しようとしないよ……』

『ぼ、僕も皆を信じてるよ』

『そうだといいんですけど……』

『はっはっは、信用できない……って結論を出してしまうね』

『そんな……』

『誰かを殺せば外に出られる……なんて事を言われてしまっては、しょうがない事でしょうね』

 

 そうだ、今も誰かが殺害を計画しているのかもしれないんだ……あのモノクマという存在……一体何が目的でこんなことを……。

 

『……誰かが殺して、その犯人を疑いあう事に喜びを感じている……なんて道理かもしれませんね』

『はっはっは、快楽殺人鬼みたいな思考じゃないか』

『そ、そんな……僕、殺されるのか?』

『殺されないよっ、皆の事信じてるんでしょ?』

『そ、そうだよ! そうだよなっ!』

 

 会話をしていくにつれ、倉家姉弟と、枢木さん……この3人は一先ず人を殺すような人たちじゃない、そう思えてきた。

 そう……誰が信用に足りる人物なのか……それを知る為にも、こうやって交流を深めていくのも悪くない。

 そう思える一日だった……。

 

 

 

 

 ●

 

 

 

 

 キーン、コーン。カーン、コーン

えー、校内放送です。午後10時になったため、只今から夜時間となります。食堂は封鎖されますので、ご注意ください! それでは、おやすみなさーい

 

 夜時間となった、皆は既に自室へと戻っていたようだ。

 

『……そういや、自室の調査、まともにやってなかったな』

 

 改めて確認するが、学生の個室にしては、やけに高級感があふれる空間だった。

 浴室とトイレも完備しており、ベッドも質のいい物を使っているのか、超ふかふかだった。

 これだけなら、ただの快適な空間なのだが、それを邪魔するかのように……。

 

 模造刀、工具ツール……そして板が打ち付けられた窓……。

 

 不穏な空気を漂わせる物が少なからず配置してあった、そして浴室の入り口には以下の張り紙が貼られていた。

 

 モノクマ学園長からのお知らせです。

 それぞれの個室の扉には、ピッキング防止加工が取り付けられているので、安心してください。

 鍵は絶対になくなさないようにしてください。

 浴室のシャワーですが、夜時間になると水が出なくなるので、ご注意ください。

 

 ……お気楽に書きやがって。

 

 僕は、その紙を勢いよく破り、ゴミ箱に捨てた。

 

『クソ……』

 

 苛立ちを募らせ、ベッドの中へと潜り込んだ。

 

『……どうして……こんな事になったんだ……?』

 

 苛立ちと不安が入り混じって、今にもどうにかなってしまいそうだ……。

 そしてそのまま……誰かを殺してしまうかもしれない。

 

 ……

 

『いや、それだけは絶対にダメだ』

 

 僕は心に何度も言い聞かせた、自分の中に潜む悪魔を追い出すように……。

 次第に僕は……目に涙を流しながら、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 ●

 

 

 

 

 

 

 ──3日目。

 

 キーン、コーン。カーン、コーン

えー、オマエラ。午前7時です、朝です、朝です、今日も一日頑張りましょう、それと今日は僕からささやかなプレゼントを用意したよ、自分の机の下を確認してみてね! 

 

 この学園に来てから3日がたった、この殺し合い学園生活と形容できるような地獄の生活が始まってから……そう、3日だ。

 

『……ささやかなプレゼント?』

 

 僕は机の下の引き出しを開けた……。

 

 

 

 俺は一瞬目を疑った。

 

 

 

 そこにあったのは……。

 

 

 

腹部を刺され倒れている家族の写真だった

 

『皆!?』

 

 何が……いったい……どういう……。

 

 僕はその写真を眺めたまま、数分固まった。どう言葉にしたらいいかわからなかった。

 信じられない光景が……突然目の前に現れたのだから……。

 

『……み、皆は!?』

 

 僕は部屋を飛び出し、食堂へと向かった。

 

 

 〇

 

 

 息を切らせ、食堂の扉を開けると、既に全員集まっていた。昨日来なかった夢喰さんも、不機嫌そうな顔をしながら椅子に座っていた。

 

『皆……』

『さ、佐藤君……』

 

 青空姉が真っ先に反応してくれた、だがその声に何時もの元気はなかった。

 

『お前も見たのか? あの的を射ていない写真を』

『お前も……ってことは、皆も?』

『(フッ) せっかくの朝が台無しだよ、子猫ちゃんも不機嫌そうな顔をしているだろう?』

『離せ……よ……』

『どうして……どうしてなの……』

『志津姉……これ……』

『えぇ、わかっていますよ』

『私……猫の死体を見るのが一番キツいの……』

 

 あ、睦月さん猫の写真だったんだ。いやそこじゃなくて……。

 

『全く……とんでもなく不謹慎な写真ですわね』

『はっはっは……さすがに大声を出す気力がなくなってくるねぇ』

『あぁ……俺が一番力を注いでいるアイドルグループが……』

『……』

 

 ソフィアさん、枢木くん、緑川くん……そして、浦川さん。

 

 皆皆が写真の事を口にし……うつ向いてしまった。

 

 モノクマ……いったい何が理由でこんなものを……。

 

 真相を、確かめないといけないな。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章-第3話- 3日目・4日目前半

『……おいっ、いるんだろモノクマッ!』

 

 僕は困惑する皆を出しおいて、天井を見上げ叫んだ。怒りと困惑……あらゆる感情が入り混じった声で。

 すると、食堂のテーブルの下からひょっこりと、奴が現れた。

 

やあやあ諸君ッ! 今日も元気に集まってるね~、関心関心! 

『ッチ、出たな爆弾熊ッ!』

だから僕はモノクマだっての!! 

『どうして……どうして多恵のお母さんを……ッ!』

『これは……どういうことだい、子熊くん?』

『しっかりと説明してくださる?』

『勿論、的を射た発言でな』

おやおや、僕からのプレゼントを、ちゃんと受け取ってくれたみたいだねぇ~! 

 

 モノクマはまるで"それが当たり前であるかのように"喋っている。その喋り方は、どこか僕らの中に自然と殺意がわいてくる。モノクマが僕らの中で殺し合いを起こさせたいというのなら、この会話術はさすがとしか言わざるを得ない。

 

お~感じる、感じるよっ。今君たちの中に感じている殺意……がね? きっとその写真の真偽が気になるのでしょう? だったら、殺せばいいよ! 誰かを殺して、卒業すれば……外に出る事ができるのだから! 

『殺す? ふざけるな! どうしてそんなことをさせるんだ!』

『全く的を射ていないな……俺らがそんなことするはずがないだろう』

『(フッ)当然さ、僕の手は子猫ちゃんを汚す為にあるんじゃないからね……』

『多恵……怖いよ、青空姉』

『……大丈夫だよ』

『はっはっは……これまた、ふざけた心理戦みたいだねぇ』

『……』

 

 皆が次々と思っている事を口に出している中、浦川さんだけは只ひたすらに目の前のキャンパスに絵を描いている。ただの現実逃避なのか、それとも本当に興味がない事なのか……それは僕にはわからない。

 

『……浦川さん』

 

 僕は話しかける。

 

『……どうしたの?』

『浦川さんは……凄いね、こんな状況なのに、落ち着いているから……』

『別に……落ち着いてなんかないよ、この状況で落ち着ける人なんて……あそこの人だけだと思う……』

 

 と、浦川さんはソフィアさんと門目君を筆で指す。

 

『今、私にできるのは、これだけだから……』

 

 無表情のまま、まるで何かをあきらめているかのように、筆の動きを止めない。

 

『そう……なんだ』

『……』

 

 きっと、浦川さんは自分が楽しいと思う事をして、自分の落ち着かせる事しか、今できる事はないと判断しているのだろう、実際それは正しい判断だと思う。

 

『だけど……』

 

 何が【超高校級の空想家】だよ、ロクな暇つぶしにもなりゃしないよ……それに、こんな状況で浮かぶ妄想なんて、恐ろしい結末になるに決まっている。

 

うぷぷぷぷぷ……それじゃぁ僕はこれで! ワックワクでドッキドキの学園生活を、どうぞごゆっくり~! 

 

 そういって、モノクマはまたどこかへ去ってしまった。

 

『テメェ待ちやがれ!』

『紬君、また攻撃すると……』

『ッチ、わかってるよ、んな事』

『神楽、あぁいう殺伐とした人間が人を殺めていくのですよ、近づかない方がいいです』

『志津姉、いくらなんでもそれは……』

『アァ!?』

『ひっ、僕は悪い子じゃないよ、信じて……』

 

 神楽くんが志津さんの後に隠れる、さすがの姉弟関係だ。

 

『……私、部屋に戻るねっ。猫がお腹すかせてるから……』

『う、うん……というか今更だけど、猫なんてよく連れてこられたね……』

『村戸さん! 貴方も飼えばわかりますよっ、猫と飼い主は一心同体なんです!』

『僕もアイドルとは、一心同体のはずだったのに……はぁ』

『落ち込む所ちがくない?』

『うぅ~……眠いぃ~』

『夢喰ちゃん、一緒に部屋戻ろう?』

『……うん』

 

 睦月さん、そして村戸さんと夢喰さんはそれぞれ自分の部屋へど戻っていった。昨日と会話内容にさほど変化はないが、顔にいつもの笑顔はなかった。

 

『どうしよう……皆がバラバラだよ』

『仕方ないよ、佐藤君……今私達にできる事は、誰も死なな用に祈り、脱出口を探す事だけなんだから……』

『う、うん』

『……ッチ、おい青空、ついてこい』

『ん? 私?』

『っていってんだろゴラ』

『わかったわかった……』

 

 紬君と青空姉は宿舎とは反対方面の通路へ行ってしまった。一体何があるんだ……? 僕はこっそりついていく事にした。

 

 

 

 ●

 

 

 

 紬君と青空姉が向かった先は、2階へ続く階段……の入り口だった。現在は封鎖されており、2階へ行けない状態となっている。

 

『それで……いったい何の要件で?』

『このフェンス……怪しいだろ?』

『怪しいけど……今は昇れないんじゃ』

 

 青空姉がそこまで言うと、紬君はフェンスの錆びた部分を親指でクイクイッと指した。

 

『これぐらいの小さな錆びだ……気づかなくても不思議じゃねぇだろ』

『よく気付いたね……さすがは【超高校級の脱獄犯】』

『テメェ……拳で小さくても穴開けれるか?』

『は、はぁ!? 急にもほどがあるでしょ!?』

『ッチ……テメェの素性は割れてんだよ』

 

 素性? 何の話だ……? 

 

『……』

『確かにお前は【超高校級の姉御肌】だろう……それに代わりはねぇ。だがなぁ、その肩書をもらう前……"別の"才能を持ってたんじゃねぇか?』

『……どうして、それを?』

『……情報屋ってのは上手く使えば便利だなぁ?』

 

 紬君はニヤっと笑いながら、自動販売機を指さした。……成程、あれで枢木君を釣ったのか。

 

『……あいつ、そんな情報まで?』

『……そうなんだろ? 【元・超高校級の空手家】さんよォ』

『……もう、そんな肩書で呼ばれる事はないと思ってたけど』

 

 

 

【元・超高校級の空手家】茅野 青空

 

 

 

『でも、もう私にそんな力はないよ……身体は鈍っちゃってるし』

『ほんとか? おらよっ!』

『!?』

 

 紬君は青空姉に真正面から殴りかかろうとした、咄嗟に僕は止めに入ろうとしたが、その前に驚くべき光景が飛び込んできた。

 青空姉は驚きつつも体が反応し、紬君の拳を止め、そのまま綺麗な背負い投げをかましたのである。

 驚いたのは、青空姉が紬君の腕をつかんだ時、あの紬君が若干痛がるような顔を見せた事だ……多分相当な腕力だったのだろう。

 

『ごほっ……ははっ、やっぱ鈍ってねぇじゃねぇか……』

『……身体って、こんな勝手に反応するんだ』

『……俺の真正面の殴りを避けれる奴は早々いねぇ……脱獄するために、数人の武術家を殴り飛ばしてきたからな。それを軽々といなしたお前は、やっぱ相当な腕だぜぇ?』

『……そう、でも壊すお願いは聞けないよ。この空手だって、妹を護る為に得た物だから』

『へっ、俺を投げ飛ばしたのにか?』

『ご、護身だって』

 

 慌てつつも否定した青空姉は、紬君の腕をつかんで立たせた。

 

『それに、これを壊して……もしモノクマに知られたら、話にならないよ』

『ちげぇねぇ』

『やっぱ囮に使おうとしてたのか』

『察しがいい女は嫌いじゃねぇぞ?』

『ははっ、冗談は顔だけにして』

『どういう意味だゴラ』

 

 そのやり取りを見て、少し安心した僕は、そのまま食堂へと引き返していった。

 

『……傍観者も消えたな』

『やっぱり気づいてたんだ』

『看守一人の見逃しが命取りだからな? それで……なんでその肩書を捨てた?』

『いう必要あるのかな?』

『テメェ、人に信じろっていう前に、まずは自分の素性を教えろってんだ』

『……護れなかったから……妹を』

『妹? あぁ、あの時言ってたな。どういう意味だ?』

『……それは』

 

 

 

 ●

 

 

 

『……さて、食堂には……あれ?』

 

 食堂へと戻ると、もう既に全員いなくなっていた。

 

『部屋に戻ったのかな? ……それに浦川さんも』

 

 僕は食堂の椅子に座り、悩みこんだ。

 こうやって悩んでいる内に、誰かが殺されているかもしれない……いや、そんなことは絶対にない……。

 だって……人を殺して、外に出るなんて……皆の様子を見るに、そんな事考えるはずがない……。

 ソフィアさんだって……緑川くんだって……工藤くんも村戸さんも……みんなみんな……。

 

『……はぁ』

うぷぷ、溜息をつくなんて、君らしくないじゃないか~

『!?』

 

 あの忌々しい声が聞こえる……きっと僕の後だ……あの狂気さえ感じられる地獄のような声……。

 

『……何の用だ?』

別に用なんてないよ~。僕は学校の見回りをしていただけだからね

『監視カメラあるくせに……』

 

 モノクマはわざとらしい戯言を淡々と繰り返す。一発ぶん殴ってやりたいが、それは校則違反だ。……クソ、都合のいいような教訓を作りやがって。

 

『……じゃぁ、僕から聞かせてもらうよ』

なんだい? 

『どうして、お前は僕らにこんな事をさせるんだ……共同生活して仲良く……って感じじゃないだろ、これは』

うぷぷ……誠君は知りたがりだねぇ。さっき写真の質問をしてきたのも誠君だろう? 嫌になるね~。しょうがないなぁ~少しだけ教えてあげるよ、僕は何故オマエラにこんな事をさせるのか……そ~れ~は~

 

 

 

君たちに絶望してほしいからだよ

 

 

 

 ……は? 

 

『……なんだよそれ、答えになってないよ!』

いいや? これが答えだよ、ここにいる子達はね~自分の人生に深く絶望したことがない奴らだけなんだ。真の絶望を知らない……だからこれは、絶望を知るための特別授業みたいなものなんだよ

『……ぜつ……ぼう?』

そう、絶望さ

 

 確かに……自分が生まれた時から今を振り返ってみると、僕は家庭環境に恵まれていたのか、強く絶望したことはない。

 空想という才能を見つける前の自分……それについて悩み、多少の絶望なら味わったことはあるが、真の絶望は味わったことがないと思う。

 

 ……まぁ、こいつのいう絶望が何なのかはわからないが。

 

『……成程……でも、僕らはそんな絶望に屈しない。誰も殺しはしないし、誰も殺されない。絶対にだ!』

本当かなぁ~? まぁ、僕からはオマエラの思う通りになればいいねって思うくらいしかできないからねぇ~。それじゃ、サヨナラ~

 

 と、モノクマはまたどこかへ去ってしまった。

 

『……クソ……』

 

 真に絶望したことがない……僕は例外だとしても、そんなことがありえるのだろうか? 

 人間だれしも、深く絶望する生き物なんじゃないのか? 

 

『……そうだ』

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

【超高校級の絵師】の部屋前

 

『……浦川さん、いる?』

 

 僕はインターホンを鳴らした。

 

『……いないのかな?』

『(フッ) 子猫ちゃんをお探しかい?』

『うわっ!?』

 

 背後から突如工藤君が声をかけてきた。そういえば、工藤君の部屋はここの向いだったな。

 

『そ、そうだけど?』

『(フッ) 子猫ちゃんなら、眠る子猫ちゃんの部屋に行ったよ、何の用かは知らないけどね』

『眠る子猫……夢喰さんの事?』

『(フッ) 当たり前じゃないか』

 

 当たり前なのか……? 工藤君はもう少し、その口調を直してほしい所ではあるけれど……。

 ……成程、確かにこんな性格なら、絶望することもなさそうだ。

 

『そうだ、工藤君』

『(フッ) どうした?』

『工藤君って、絶望したりすることある?』

『……』

『工藤くん?』

『(フッ) 深い質問だ、それはまるで深淵のように』

『はぁ』

『勿論あるに決まっている……そう、自分の顔のかっこよさ……にだ、罪な男だよな、私という存在は』

『あーはいはい……教えてくれてありがとう』

 

 僕はそれを軽く受け流し、夢喰さんの部屋へと向かった。

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

【超高校級の睡魔】の部屋前

 

 僕は教えてもらった通りに、夢喰さんの部屋へと訪れ、インターホンを鳴らした。

 

『……誰?』

 

 浦川さんの声だ

 

『僕だよ、誠』

『……まぁいいか、多分入っていいよ』

『多分って……』

 

 なんかダメな気がするが、僕は扉を開けて中へと入る。そこでは、ベッドで横になっている夢喰さんを絵に起こしている浦川さんがいた。

 

『何してるの……?』

『……寝るの邪魔しなければ何してもいいって言ったから……』

『そ、そうなんだ……でも、どうして絵を?』

『ただの暇つぶし……』

 

 浦川さんは表情を変えず、ただ目の前のキャンパスだけを見つめ、筆を動かしていた。

 

『……でも、絵っていいよね』

『え?』

『怖い事も……全部忘れていられる……絵をかいてない時の私なんて、ただの引っ込み思案のビビりな女の子だもん』

『浦川さん……』

 

 彼女も僕と同じなんだろうか……何もない時の自分が嫌い……何も才能がない自分が嫌い……何かで自分を肯定できていないと辛くなる……。

 いや、ただ自分の逃げる場所が欲しいだけなのかもしれない。

 でも……僕はどこか羨ましいとさえ思えた。

 

『……それは、良い事だと思うよ』

『……いい事って?』

『そうやって、何か役に立つ才能が持てるっていうのは……僕には、浦川さんや皆見たいに目立った才能は持ってないから』

『【超高校級の空想家】って名前はあるのに……?』

『……あまりいい名前とは思えないよ、僕には』

『……』

 

 浦川さんはそれだけ聞いて黙り込んでしまった。……する話を間違えただろうか、と僕は後悔した。

 

『……私は、その才能が羨ましいと思う』

『え?』

『……友達が、出来そうじゃん……なんか、面白い空想を暴露したり、とか』

『ははは……友達、出来たらいいんだけど……』

『私がなってあげようか?』

『え?』

『友達』

 

 こんな感じに作る物なのか? 友達って。

 

『……いいの?』

『佐藤君は悪い人じゃなさそうだから』

『……それは、信頼してくれているのかな……』

『……』

 

 浦川さんはそっぽを向いた。

 

『……でも、ありがとう』

『いいよ、これで友達だね、ほら友達出来たじゃん』

 

 これは僕の才能というより、浦川さんの才能な気がするよ……。

 でも、少しは仲良くなれた……のかな? 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

【超高校級の空想家】の部屋

 

 浦川さんの部屋を後にし、僕は自室へと戻った。

 こんな絶望的状況の中で、まさか友達が作れるなんて夢にも思わなかった。

 でも、友達を作る事自体に悪い気はしなかった。

 

『……こうやって、他の人とも仲良くなれたらいいんだけど』

 

 と、一人で呟いてると、突然電子手帳にお知らせが入った。

 

『……なんだ?』

 

 その内容は"浴室が解放された"という物だった。

 

『浴室……風呂にはいれるのか? シャワーで十分だけどな……』

 

 でも風呂に入らなくても、身体の疲れが取れると言えばウソになる。癒しだと思っていたシャワーと食事の時間でも、ここ最近何故か疲れてしまうのである。いや、ただ億劫な気持ちになっているだけなのかもしれない。

 ……と、その時だった。

 

 ピーンポーン。

 

 個室の扉を叩く音と同時に、インターホンが鳴った。呼ぶならどっちかにしなよ……と呆れつつ、僕は扉を開けた。

 

『……松丸さん? それに皆も……どうしたの?』

『あ、来た来た、あのね? さっき浴室が解放されたっていったじゃん? だから、せっかくだし皆で風呂にいきたいなぁ~って』

『皆で?』

『まともに皆と喋ってないからな、的を射た行動だとは思う』

『まったく……皆と違って私は忙しいのですけれど……』

『……チっ』

 

 門目君と紬君、そしてソフィアさんがいるのは驚いた……まぁ紬君とソフィアさんは根負けしたんだろうな。

 

『うん、勿論いいよ。準備してくるから待ってて。』

 

 僕は、クローゼットに支給されていたタオル等を持ち、皆と浴室へ向かった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

【男子浴場】

 

『はっはっは! 久しぶりの入浴だなっ! 頭を使うと、風呂に入りたくなってくるという物よ!』

『(フッ) 自分は嬉しいよ。汚れた顔を洗う時間が出来たのだから……』

 

 シャワーはいれよ、というツッコミはしないでおこう。

 

『……ッチ、風呂なんてシャワーでいいのによぉ、あの歌バカは』

『こういう機会だ、入っておけ。今のお前は的を射ていない程臭いぞ』

『アァ!?』

『ま、まぁまぁ』

 

 門目君は一言余計なんだよなぁ……。

 

『でも、こうやって裸の付き合いをすることで、互いに信頼し合えるんじゃないかな……』

『そうそう! それに、こういう時だからこそ出来る話もあるというもんですよっ! そう、アイドルの話とかね!』

『あーうるせぇ……』

『アイドルには興味ない、あれは的を射ていない文化だ』

『貴様ッ! 今全世界のアイドルファンを馬鹿にしたぞ!』

『ははは……僕は好きだけどな、時々テレビとかで見た事あるし』

『佐藤君、君とは友達になれそうだよ!』

『え!? アイドルについて詳しくなれば、信頼してくれるのか……?』

『倉家、あの道には触れない方がいいぞ』

『ッチ、うるせぇし、さっさと風呂入って終わらせようぜ』

『(フッ) 確かに、長く入って子猫ちゃんたちを困らせでもしたら、大変だからね』

『女子程、風呂は長くなると思うけどね』

 

 全員がそれぞれのタイミングで服を脱ぎ、浴室へと入った。

 

『広ッ!? これで7人分かよ!?』

『僕のプロデュースしているアイドルが全員収まる程の広さだぞこれは……』

『はッはッは、緑川君、それは言い過ぎではないかい? 君のプロデュースしているアイドルの数は……』

『せめて湯舟に入ってから、その話はしてほしいな……』

 

 風呂の内装は予想をはるかに上回る程だった。

 大きなサウナに、種類豊富の浴槽。まるで、大きな銭湯のようだった。

 効能も……よくわからないが、色々書いていた。

 

『ッチ、女子が好きそうな事ばっか書いてら』

『効能というのは、的を射ていない事しか書いていないから、俺はあまり好きではないな』

『はっはっは、効能という物は科学で証明された事であるぞ! 的はいている!』

『枢木、少しうざいからだまりな』

『んー辛辣ゥ~』

『(フッ) 美貌効果、この私の美しい顔に、さらなる輝きが生まれるのか』

『ケッ、今よかだいぶマシになるんじゃねぇか?』

 

 紬君も少しづつだが、皆を前にして笑うようになっていた。これも青空姉と行動を共にしているからなのだろうか。

 そういや……女子の方は、今どうなっているのだろう……すると、壁の向こう側から、微かだが声がした。

 

 〇

 

『すご──いっ、凄いよ青空姉、広いッ、広いよッ! こんな広い浴室見た事ない!!』

『はいはい……少し待ってって……』

 

 〇

 

 青空姉と松丸さんの声が聞こえる。

 

『おん? 向こうも来たか?』

『(フッ) 楽しそうな声じゃないか……癒し効果倍増ってところかい?』

『おい佐藤、覗きなんて的を射ていない事するなよ』

『誰が!?』

 

 何で急に僕はあらぬ疑いをかけられたんだろう。

 

『さっきから耳が壁によりつつあるからだろ』

『はっはっは! 佐藤君、君も男だなッ!』

『……え?』

『お前も気になるのかい? 未来のアイドル候補の体型という物を!』

 

 なんか急に緑川君と枢木君が妖しい笑みを浮かべながら僕のいる方へ寄ってきた。

 

『……オイ門目、あれは無視したほうがいいのか?』

『あぁ無視が安定だ』

『(フッ) 男としてみっともないねぇ』

『さ、三人とも、そんなことすると信頼が薄れるよ!』

『僕を仲間に入れるなーっ!』

 

 4人の可哀そうな人を見るような冷たい視線が、僕の心に深く突き刺さった。

 すると又声が耳に入ってきた。

 

 〇

 

『……湯舟に魚とかいないかなー』

『魚……熱帯魚ですか? 村戸さん……』

『そうそう、いやぁ話がわかるねぇ~、さすがは【超高校級の飼育係】!』

『……いるわけないでしょう? 釣りバカと飼育バカ』

『むー!』『ぶぅ~……』

 

 〇

 

『この我の情報収集能力をもってしても、女子の体型という物を調べるのは至難の業でね……我はつくづく思ったよ……自分が女子だったら、なーんて』

『アイドルプロデューサーとして、体型チェックは基本なんだ!』

『門目君……助けて……』

知らん

 

 門目君の無慈悲な返答に、僕は涙した。

 

 〇

 

『……うぅ~、なんで自室以外で眠ったらいけないの……』

『私も絵描きたかったんだけどな……ごめんね、起こしちゃって』

『……うぅ~~~……風呂は嫌い』

『なんで?』

『……皆の体型を見て、つらい思いをするから』

『え?』

『何喰ったら、あんな大きくなるの……?』

『へ?』

『……確かに、青空さんは少し成長しすぎかと』

『なんかそういう効果のお茶でも飲んでいるのでしょうか』

『えっ……え?』

 

 〇

 

 次第に話がそっち方面へと流れていった。

 そういや、青空姉って結構大きかったよな……と脳内で回想する。

 

『ゴメン、無理ッ!』

 

 僕はたまらず赤面し、湯舟にダイブした。

 

『ヴォイ!! ビックリするだろうが!』

『ゴメン……でも、ね?』

『……まぁ仕方ない』

『むっ、佐藤君、逃げるとは男じゃないな!』

『でも2人じゃ、この仕切りを越えるのは無理だなっ、仕方ない、諦めよう』

『諦めようって……』

 

 こうして、僕は自分に打ち勝つ事ができた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

【浴室前】

 

『いや~、良い湯舟だったね! 男子もどうだった?』

『う……うん、最高だったよ』

『あれ? 佐藤君大丈夫? 元気ないけど』

『あーコイツは気にすんな、変態バカが移りそうになっただけだ。……で? そっちもどうしたよ、姉御肌さんが相当疲れたような顔してるじゃねぇかよ』

『……う、うん……大丈夫……はは』

 

 きっとあの後、全員に襲われたんだな……。

 

『ですが……まぁ、いい暇つぶしにはなりましたわね』

『はっはっは、そうだな! 最高の浴場だったしな!』

『……こうやって、皆と楽しく生活できたらいいですね……』

『あぁ、殺し合いなんて的を射ていない事、起こしてはならないな』

 

 と、その時、校内放送がなった。

 

ピーンポーンパーンポーン、午後10時となりました。ただいまより、夜時間となります。一部の部屋は使えなくなりますのでご注意ください、それではおやすみなさ~い

 

 夜時間と知らせるアナウンスだった。

 

『……それじゃぁ、明日もよろしくね』

 

 ──うん。

 

 全員がそう頷き、それぞれの自室へと戻った。

 

 

 ◆

 

 

 

【超高校級の空想家】の部屋

 

 皆が笑い、そして楽しいひと時を過ごしたんだ……今日は、大丈夫。

 あんな写真だって、きっとモノクマの嘘に決まっている……きっと……きっと……。

 

『……大丈夫、だよな』

 

 僕らはそう、信じ切っていた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 4日目

 

オマエラ! 7時です! 起床時間です! 今日も張り切っていきましょう! 

 

 あの忌々しい声で目が覚める。まぁでも、今となってはこの声が僕にとっての目覚まし時計となっていた。やけにうるさい声なので、起きれてはいるのだが……。

 じゃぁ準備していつも通り食堂にいくかな……そう思った時だった。

 

 ピンポーン……とインターホンが鳴った。

 

『? 誰だろ……』

 

 と、恐る恐る開けると、そこには青空姉と松丸さん、そして枢木君がいた。

 

『ん? 2人とも、どうしたの?』

『あのね! 昨日の入浴が楽しかったからさ! 朝風呂に行こうと思ってさ!』

『せっかくだし、佐藤君も誘おうかなって』

『はっはっは! 我もちょうど朝風呂に行こうと思っていたところでねっ!』

 

 お前は覗きの細工でもしたいだけなんじゃないか……? 

 

『僕でよかったら……勿論!』

『よし、決まりだね!』

『じゃぁ、準備してくるから待ってて』

 

 僕は急いで準備し、4人で朝風呂に入りにいった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

【男子脱衣所】

 

『それにしても、枢木君って風呂好きなの?』

『風呂自体は嫌いじゃないぞ? 疲れた身体を癒してくれるからな!』

 

 意外な事実だな。

 

『僕も……なんだか風呂が好きになりそうだよ、皆で入るのは楽しかったからさ』

『うむ! 我もだ!』

 

 と、2人で服を脱ごうとした。

 

 

 ──その時だった。

 

 

『キャァァアァァアァアァァアァ!!!!!!!』

 

『!?』

『なんだ!? 二人の声か!?』

『こっちだ! 枢木君もきて!』

『おい、女子脱衣所だぞ!?』

『もしもの時は謝る!!』

 

 僕と枢木君は、女子更衣室へと駆け出した。

 

『青空姉!? 松丸さん!? どうかした!?』

 

 幸い二人はまだ脱いでいなかった。

 

『青空姉……どうして……』

『多恵ちゃん、大丈夫、大丈夫だから……あ、佐藤君、枢木君も』

『青空、どうしたというのだ!?』

『青空姉?』

『あ……あれ……』

 

 あれ? 

 

 僕と枢木君は、ゆっくりと浴場の方に視線を動かした。

 

 僕らは固まった。

 

 そこには、あってはならない物があった。

 

『……ぁ』

『……嘘、だろう?』

 

 僕と枢木君は一歩、歩み寄り……その光景が真実であるかを確かめた。

 

『……』

 

 僕は首を振った。

 

『……まじ……なんだな?』

『……え?』

『何で……何でぇ……』

 

 どうして……何で? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして……【超高校級の飼育係】睦月 穂香が死んでいるんだ? 




・生徒名簿

【超高校級の空想家】佐藤 尊

【超高校級の釣人】 村戸 加奈

【超高校級の射手】門目 佳次

【超高校級の姉御肌】 茅野 青空

【超高校級の情報屋】枢木 誠

【超高校級の歌手】松丸 多恵

【超高校級のナルシスト】工藤 佐助

【超高校級の睡魔】夢喰 夏帆

【超高校級の脱獄犯】紬 大河

【超高校級の茶道家】倉家 志津

【超高校級の信者】倉家 神楽

【超高校級の絵師】浦川 瑠璃

【超高校級のプロデューサー】緑川 慎二

【超高校級の飼育係】睦月 穂香

【超高校級のバイオリニスト】ソフィア・クラウディア

残る生存者 14


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章-第4話- 非日常(捜査編)

 ……どうして……彼女が死んでいるんだ。

 

 昨日、あれだけ楽しそうに動物の話をしていたじゃないか……動物と自分は一心同体じゃなかったのか……?

 

 毎日のように、猫に餌を与えないといけないんじゃないのか?

 また僕達に、可愛い動物についての会話をしてくれないのか?

 家に置いてきた動物たちと再会するんじゃなかったの?

 

 ……なんで?

 

『睦月さん……睦月さん!』

『おいっ、佐藤君! お前が死んでるって認めたのだろう!? そのお前が取り乱してどうする!?』

『枢木君……』

 

『何で……何で殺されてるの……?』

『大丈夫だよ多恵ちゃん……まだ自殺って可能性も……』

 

 

 

そんなわけないじゃ~ん!!!!

 

 

 

『!?』

 

 僕らが悲しみに暮れていると、モノクマが入口から大声を出しながら歩いてきた。その顔はいつも以上に笑っていた。

 

『モノクマ……!!』

『おいっどうなっている! なぜ睦月さんが死んでいるのだ!?』

うぷぷぷ……【超高校級の情報屋】なのに、そんなこともわからないの~? いいよ~教えてあげるよ! でもその前に仕事があるから、ちょっとまってね~!

『仕事?』

 

 と、モノクマは放送マイクのような物を懐から取り出し……大きな声で叫び散らした。

 

 

 

お知らせです! オマエラ、死体が発見されました! 今すぐに女子更衣室にお集まりください!!

 

 

 

『……何? なんの放送!?』

『死体が……発見……?』

そう! 死体発見者が3人以上になると、このように死体発見アナウンスをこの僕が行うよ!

『どうしてそんなことを?』

うぷぷぷ……だって知らせなきゃ、殺されたかどうかわからないじゃん? おっと……少しづつ集まってきたようだね

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

『ちょっと!? 死体が発見ってどういう……え? うわっ!?』

『こ……子猫ちゃんが……死んでいる? いや、殴られているのかい?』

『これは……道徳的に的を射ていないな……』

『……成程、第一犠牲者……といったところですか』

『モノクマ……私を起こすなぁ~……!』

『志津姉さん!? どうして? なんで死んでるの!? あ、そっか、きっとモノクマだ! モノクマがやったに違いない!! 皆が殺す筈ないもんね!?』

だから違うっていっているでしょうが──ー!!!!

『神楽、少し落ち着きなさい』

『オイオイ……殺しはしないと決めたんじゃなかったんかよォ!!』

『……』

『え? うわぁぁああぁぁあああ!? アイドル候補の睦月ちゃんが!?』

 

 反応はそれぞれ違えど、皆死体を見て驚愕するような反応したのは共通事項だった。

 一部の人の反応は、ちょっとズレてるような気がするが、それもまぁ個性なのだろうか。

 

 ……というか、この状況で何個性って言ってるんだ?

 

『オイッ! 本当に睦月は死んでんだろうなぁ?』

『え……そ、そうだけど……』

『……ッチ、やっぱり人は信用ならねぇ……』

『そ、そんな……』

『でも、この状況を見て、他の人を信用できる人の方がおかしくて? あ、信者バカは仕方ありませんか』

『そんな言い方……』

『あら、青空さん。貴方も今誰かを信用することができます? できないなら、すぐその口を閉じなさい』

『っ……』

 

 青空姉……ソフィアさんは何でそんなにきつい言葉を投げるのだろう。

 言っていることは正論だから、当然反論できないけれど……。

 

『(フッ) それで……僕達はこれからどうすればいいんだい? まさか誰かもわからない殺人犯と一緒に暮らせ……なーんて事ではないだろう?』

『それはないでしょう、貴方達、しっかり校則を記憶したんですか? これから記憶力皆無は困ります』

『アァ!?』

『……まったく、これの事ですよ』

 

 そういうと、ソフィアさんは以下の項目を見せた。

 

 5.仲間の誰かを殺したクロは『帰還』することができます。ただし、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

 

 7.学園内で殺人が起こった場合、生存者による全員参加の学校裁判が行われます。

 

 8.学級裁判で正しいクロを指摘できた場合、クロのみが処刑されます。 

 

 9.指摘できなかった場合、クロ以外の全員が処刑されます。その場合、クロだけが卒業し、学園から脱出、卒業することができる。

 

『帰還と……学級裁判?』

そう! その通りで──っす!!

『うわびっくりした……』

『急に大声出さないで……眠れない……』

『いや寝ちゃダメだよ!? 校則違反だよ!?』

『うぅ~~~~~』

そんなに好きな所で寝たいなら、さっさと誰か殺しちゃえばいいのにねぇ~

『モノクマお前!』

ハイハイ、冗談でもない話は置いといて……説明しちゃうね?

『さっさと説明しろ、さっきから話が的を射ていないぞ』

『えぇ……私もこんなくだらない場所に長くいたくありませんから』

わかりましたよ~! オマエラにはこれから、一定時間の間この事件の捜査をしてもらいます!

 

 捜査……? よくドラマである証拠集めとか、そういう奴なのだろうか?

 

そしてっ、捜査が終了したら、その後全員参加型の『学級裁判』を執行するよ! そこでっ、クロが誰なのかを議論しあって、最終的に投票でクロが誰なのかを決めてもらうよっ! 多数決で判断した結果、そのクロが正解だった場合、校則に違反したと判断し、クロの生徒をおしおき……つまりは処刑させていただきます!

『処刑……つまり、死ってこと!?』

当たり前じゃん! それ相応の事をしたんだからね!

『……そして、校則によると、指摘できなかった場合は、犯人……すなわちクロ以外が処刑されてしまう……ということですわね』

そうそう! ソフィアさんは話がわかる生徒で助かるよぉ~?

『そんな……多恵、死んじゃうの?』

『まさに……命がけの犯人捜しってことだね……』

『ッチ、よぉするにだ。死にたくなったら犯人を捜せってことだ、簡単な話じゃねぇかよぉ』

『(フッ) 私が殺されてしまったら、私のファンが悲しんでしまう……一刻も早く犯人を見つけなければ……』

『……あれ、なんでみんなの中に犯人がいるって話になってるの!? 犯人はモノクマじゃないの?』

『違うって言っているでしょう? 神楽、少し落ち着きなさい』

『し、志津姉』

うぷぷぷぷ……死体の情報に関しては、オマエラの電子手帳へ一斉送信したから、是非活用してね!! それじゃっ

 

 伝える事だけ伝え、モノクマは笑いながら去っていった。

 

『多恵……死にたくないよ……』

『……頑張るしかないよ』

『……青空さんは頭ではわかっているようですね……そういうタイプは嫌いじゃありません』

『う、上から目線だね、ソフィアさん』

『何か問題でも』

『と、とりあえず……死体の情報って奴を確認してみる……?』

『ソレが正しい情報かどうかはわからないだろう? 【超高校級の情報屋】である我が死体を見ながら審議してやろう!!』

『たくよぉ……だったらさっさとやるか』

『そ、そうだね』

 

 一人の仲間が死んだ……それでも一部の人は冷静だった。

 恐らく、何時かは誰か死ぬんだと想定していたんだろう?

 そして、それが現実に起きてしまった。

 僕は、背後に置かれていた睦月さんの死体に目を向けた。

 今すぐにでも背けたいような状態だが……僕は前に進まなければならない。

 そして……こんな事を二度と起こさせないために……。

 僕は、この事件を絶対解決してやると……心に決めた。

 

 

 

 

 

 

《捜査開始》

 

『ふむ……それでは送られた情報と死体の状況を比較しながら確認していこうかッ! 死体の情報は何度も探った事があるとは言え……本物を見るのは初めてだがね!』

『初めてじゃなかったら怖いよ……』

『……あ、枢木君、私も手伝うよ?』

『僕も手伝う』

『ありがとう! ではさっそく……』

 

 僕と青空姉、そして枢木君は睦月さんの死体に手を合わせた後、送られた情報……通称『モノクマファイル』と比較しながら死体の状況を確認した。

 

【モノクマファイル(1)】

 

 被害者は【超高校級の飼育係】の睦月 穂香。

 死体発見場所は、女性大浴場。

 死亡推定時刻は、午前7:02分頃

 死因は、頭部を何回も殴られた事による出血死。

 頭部以外にも、身体には何個か殴られたような後がある。

 

 コトダマゲット → 【モノクマファイル(1)】

 

『……ふむ、死亡推定時刻等の真偽は不明だが、死因や外傷についてに間違いはないな!』

『それにしても酷いね……頭部を何回も殴られた上に、それ以外も殴られるなんて……』

『というか7:02って……私達が朝風呂にくる直前だよね……?』

『朝時間開始直後!? 犯人は消えたの!?』

『それはわからないけど……』

『狂気的……それか快楽的……みたいな殺人事件ですわね』

『えっと……ソフィアさんバッサリ言うね……』

『ごめん……多恵、死体とか苦手だから……脱衣所の中探すね』

『ッチ、おい青空ァ、このガキと一緒にいてやれ、俺らは大浴場見るぞ』

『とりあえず……脱衣所組と男子浴場組、女子浴場組に分けてみようじゃないか!』

『確かに男子の方も見ておく必要がありそうですわね……とりあえず、男子は男子浴場、女子は女子浴場って感じにしますか』

『やっぱり志津姉は頼りになるなぁ……』

『ッチ、じゃぁ男子組は行くぞ』

『あ、はい』

 

 紬君は割と真面目でした。

 

 

 

 ◆

 

 

 

【男子浴場】

 

『……昨日あれだけ暴れたのに綺麗だね』

『ど、どうやら……モノクマ(あいつ)が、午前6:00に掃除しているって書いてあったような……』

『書いてあったって?』

『え、脱衣場に行く通路の入り口だけど……嘘だっていうのなら、出るついでに見るといいよ』

 

 しっかり者だな……。

 

 コトダマゲット → 【浴場の掃除】

 午前6:00にしっかり掃除している。

 その代わり様から見るに、念入りに掃除はしているようだ。

 

『成程ねぇ……通りで水たまり一つねぇってことだ……』

『(フッ) だが、水たまりはなくとも、水滴ぐらいは多少残ってるね……』

『水滴ぐらいは残るだろう? 見落としってことも考えられる……まったく、的を射ていない事を言うな。お前が殺したのか?』

『(フッ)そんな事を僕はしないさ』

 

 見落とし……もし仮にモノクマが掃除をしているのなら、本当にそんな見落としをするだろうか……少し気になるね……。

 

 コトダマゲット → 【男子浴場の様子】

 掃除されいたため非常にきれいだった。

 だが所々水滴や、濡れている部分も存在した。

 

『……男子浴場はこれくらいかな……?』

『たく……事件が起きたのは女子浴場だろ? なんでここも調べる必要があるってんだ……』

『(フッ) それは当然だろう? なぜなら、この男子浴場は、隣の女子浴場と隣接しているからねぇ』

『隣接?』

『あぁそうだッ! 緑川君も佐藤君もしっているだろう!? この壁を昇れば仕切りがある、少し大きめ……のね!』

 仕切り……確かにあの大きさなら人一人通れる筈だな……。登るのは難しいだろうけど……。

 

 コトダマゲット → 【浴場の仕切り】

 男子浴場と女子浴場は隣接している。

 壁には当然仕切りがあるが、登ればそこには人一人通れるだけの穴が開いている。

 だが登るのは至難の業だろうが。

 

『そうだ……更衣室の方にはなんかあった?』

『アァ? おい緑川と倉家、なんかあったかァ?』

『うん? 枢木君と佐藤君の風呂道具……くらい?』

『え!? えっとえっと……緑川君の言った事と……ゴミ箱にあった濡れたタオルぐらい?』

『濡れたタオルかい?』

『そ、そうだよ、ほら、あのゴミ箱に……』

 

 倉家君は浴場入口付近にあるごみ箱を指さした。そこには念入りに絞られたタオルが入れてあった。

 

『アァ? 誰かが風呂から出た時に捨てたんだろ!?』

『捨てるの!?』

『俺は捨てた』

『はっはっは! ってじゃぁこれは紬君のかい!?』

 

 コトダマゲット → 【濡れたタオル】

 男子浴場のゴミ箱に入れてあったタオル。

 念入りに絞られて水分もほとんど残っていない。

 

『あぁ……そうかもな?』

 

 紬君は頭をいじりながらそう言った。

 

『そうかもなって……』

『ほかにもいるかもしんねぇだろ? 犯人とかよぉ』

『あたかも自分が犯人じゃないっていうような口ぶりだな、紬。お前が犯人なら、俺も納得がいくが? 的を射ているしな』

『ッチ、その話は学級裁判っていう奴でしろや』

『そ、そんなことよりも……ここでわかる内容って、これで全部かな?』

『オイ、まだアリバイって奴を聞いてねぇよ。事件においては鉄板だろ?』

『さすが【超高校級の脱獄犯】……捕まえられ慣れているというか……』

『アァ!? 悪口か?』

『ご、ごめん……』

『(フッ) 確かにそうだね……まずは、あの場にいた枢木君と佐藤君に聞こうじゃないか……』

『ぼ、僕はただ……枢木君と青空姉、そして松丸さんの3人で朝風呂に……』

『はっはっは、同じくだな! つまり、我々に反応は不可能なのだッ! そうなると、他の者はどうなのだ?』

 

 枢木君がそういうと、皆は一斉に……

 

『寝てた』

 

 そう答えた。

 

『はっはっは……だろうなぁ』

 

 コトダマゲット【男性陣のアリバイ】

 僕と枢木君は男子脱衣所にいたから、おそらく犯行は不可能。

 そのほかは寝ていた。

 

『つまり、俺らにはアリバイがないということなんだよッ』

『何で偉そうに言うの!?』

『まぁまぁ……ひとまず、調べられる事はこれで全部かな……』

『そうだね……女性陣の知らせを待とうか』

 

 

 ◆

 

 

 

【女子浴場】

 

『……全員も行ったことですし、そろそろ始めますか……』

『うん……死体と一緒ってのは気が引けるけど……』

 

 多恵ちゃんは夢喰ちゃんと浦川さんに任せる事にした。本当は佐藤君に任せたいが、男子浴場にいるし、そればっかりは仕方ない。

 

『そういえば……ソフィアさん、なんで女子と男子をああやって分けたの?』

『女子浴場に男子がいるのは可笑しいでしょう、先ほどはモノクマが呼んだからとはいえ、ずっといられるのは危なくなくて?』

『校則にはそう書いてないよッ?』

『あれ、そうだっけ村戸さん』

『うん、後監視カメラだって浴場にはないし』

 

 成程、つまり浴場には誰でも入れたわけだ。

 

 コトダマゲット → 【浴場について】

 脱衣所及び浴場には、監視カメラはついていない。

 校則に何も記載はない事から、女子更衣室には誰でも立ち入る事ができた。

 

『そう……なら誰にでも犯行が可能であったと……』

『そうですね……確定なアリバイとかはないと、そういうことになりますね……』

『はいはいはい!! 多恵は違うよー!! ついでに青空姉も!!』

『多恵ちゃん大声だね~?』

『……』

 

 多恵ちゃんの必死な主張が脱衣所から飛んできた、浦川さんと夢喰ちゃんの声は小さすぎて聞こえなかったけど。

 

『でも確かに私と多恵には不可能だよ……朝風呂に入りにいって、死体を見ちゃったんだし……』

『それは分かりませんが……まぁ、アリバイにはなるでしょう』

『他は……まぁ、多分寝てたよね』

 

 全員は頷いた。

 

 コトダマゲット → 【女性陣のアリバイ】

 私と多恵ちゃんは女子脱衣所にいたから、おそらく犯行は不可能。

 そのほかは寝ていた。

 

『他に手がかりになるような事はないかしら?』

『手がかりと言えば……昨日あれだけ騒いでたのに……浴場が凄い綺麗にされているような……』

『確かにそうね……』

『あ、ほんと……魚釣った時でさえ、多少の水滴は作って言うのに……水滴一個もないよ! あんだけ青空ちゃんの忌々しい身体を触って暴れてたってのに~』

『そ、その話は……うん』

『ま、まぁ事実ですし……とりあえず、その点についてもメモしておきましょう。

 

 コトダマゲット → 【女性浴場の様子】

 掃除されている為なのか非常にきれいな様子であった。

 

『……そろそろ、死体についても触れましょうか……』

『触れたくないけどね……というかソフィアさん冷静すぎじゃないかな……』

『こういう時こそ……冷静にならないといけませんのよ。貴方こそ……【超高校級の姉御肌】として、皆を安心させたいのなら、自分が冷静にならなければいけないのではないですか?』

『……うん、ごめんね』

 

 自分は無力だ……姉御肌の肩書も、代用の肩書の用に過ぎない。

 だって、私の本当の肩書は、アレだったのだから……。

 

『刺し傷は無し……と、頭部以外の打撃痕についても、間違いないようね。ファイルから直接的な死因は撲殺ですわね』

『でも……凶器はないね』

『犯人がそのまま持ち去った可能性が高そうね』

『つまり……ハンマー等の鈍器、もしくは棒状の硬い物ね』

 

 コトダマゲット → 【凶器について】

 ファイルと死体から見て、凶器はハンマー等の鈍器、もしくは棒状の硬い物。

 ただし、凶器は現場には存在しなかった。

 

『凶器は何故持ち去ったのでしょうか』

『凶器を持ち去る理由なんて二つしか考えられないわ。一つは捜査をかく乱させるため、もう一つは犯人が簡単に割り出せてしまうため』

『犯人が割り出せるって?』

『ここは超高校級の才能の集まりよ? その才能に関する道具……といえばどうでしょう、私で言えばバイオリンの弓とかね』

『村戸さんなら釣竿……って感じだね』

『私は違うからね!?』

『誰が信じると思って? そういう主張は証拠を出してからいいなさい。……ほかに不自然な点といえば……』

『そうだね……あれ? 皆見て、睦月ちゃんの服と血のあたり……』

『ふむ……? あら、何でしょうこの橙色の液体は……』

『見た感じインクとはちょっと違うようね……でも、犯人に繋がる手がかりになるかもしれないわね』

 

 コトダマゲット → 【橙色の塗料】

 睦月さんの服と血に付着していた橙色の塗料。

 インクとは少し違う感じだ。

 

『……死体の状況はこんな感じ……?』

『ですわね……あとは現場についての情報が欲しいわ……』

『それでしたら、モノクマさんに聞くのが一番じゃないでしょうか……』

『……それかっ、【超高校級の情報屋】である枢木君に聞くか……だね』

『仕方ないですね……モノクマにも少し情報を聞き出しましょう、あと脱衣場にいる人は、男性陣を呼んできなさい』

『はーい!』

 

 多恵ちゃんが真っ先に反応した。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

『はっはっは! 女性陣も捜査は終わったのかい!?』

『また皆集まったね……』

『大体の捜査はしましたわ……では、互いにわかったことを共有しましょう』

 

 

 ……

 

 

『成程……濡れたタオル……少しの水滴……と』

『まぁ、やっぱり男子浴場には重要そうな手がかりなんてなさそうだね……』

『ふむ……橙色の塗料……確かに的を射ていない物だな』

『で、でもでも? これが何かわからないんじゃ……?』

『そうね、それは情報バカに任せましょう』

『はっはっは! 否定できない罵倒だねぇ! 任せたまえ!』

『じゃ、じゃぁ……ほかの場所も調べよっか』

『ッチ、被害者の場所しかねぇだろォがよ』

『他にもあるでしょ? 行けるフロアはとことん探すよッ!』

『あと、モノクマにも少し話が聴きたいわ』

『じゃぁ、僕が聴くよ』

『……頼みましたわよ』

 

 そういって、皆々現場を後にし、僕と枢木君がその場に残った。

 そして……。

 

 

 〇

 

 

『それじゃぁ、我はこの橙色の塗料を見ている事にしよう!』

『うん、ありがとう。やる事をやろう……モノクマ、質問がある』

はいは~い! 質問あるところに、モノクマありってねー!

『(死亡推定時刻は午前7:02……朝時間の直前だ……となると) ねぇ、夜時間って一部の施設が封鎖されるんでしょ? 基本的にどこのこと?』

ん~? あ、行ってなかった? 今いける場所だと……食堂とここ! 大浴場だね! 夜の時間に入るなんて……いけないからね! つまみ食いも同様!

『ふむ、つまり行ける場所は廊下と誰かの個室ぐらいってわけか!』

 

 成程……やっぱりそうなんだね。

 

 コトダマゲット → 【夜時間の封鎖場所】

 現時点では、夜時間になると食堂と大浴場が封鎖される。

 

 つまり、確定で殺害した場所はここってことだ……。

 

『ありがとう、参考になったよ』

ふふん! どういたしましてぇ~。君も頑張って、クロを探す事だね!

 

 そういって、モノクマはどこかへと去ってしまった。

 

『……それじゃあ、次は睦月さんの部屋だ……はいれるのかな?』

『む、行くのかね? あぁそうだ。橙色の塗料の正体を教えておこう、これは……蛍光塗料だね!』

 

 蛍光塗料……?

 

 コトダマゲット → 【枢木君の調査】

 橙色の塗料の正体は蛍光塗料だった。

 彼の情報なら確かだろう。

 

『わかった、ありがとう』

『うむ! 気を付けたまえ! 我はまだここにいる!』

『うん』

 

 そうして僕は、睦月さんの死体にそっと手を合わせて、睦月さんの部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

【超高校級の飼育係】の部屋

 

 睦月さんの部屋には、青空姉と紬君、そして松丸さんがいた。

 

『あ、3人とも……』

『おぅ……おめぇか』

『あ、佐藤君だー!』

『来たね、どうだった?』

『うん、大体わかったよ、そっちは?』

『うん……部屋に争った形跡はなかったよ、つまり彼女はここでは殺されていないか……自らあの現場に行ったという事になるね』

『けっ……自殺行為かよ』

『そんなわけないじゃん!』

 

 成程……彼女に抵抗心はなかったと。

 

 コトダマゲット → 【睦月さんの部屋の状況】

 部屋に争った形跡はない、侵入した痕跡も同様。

 

『……後、やっぱり猫がいるね』

『アァ……さっきからにゃんにゃんうるせぇんだ……』

『この猫ちゃんも、ご主人がいなくなっちゃったんだよね……』

『そう……だね……』

『……せっかくだし、皆で世話しないかな。名前もつけてさ』

『ははっ、そうだね……その方が、睦月さんも喜ぶと思うし……』

 

 猫は持ってこれていた……つまり、自分の才能に関係する何かを持ってきていた人はいたといことだ。

 

 コトダマゲット → 【猫】

 睦月さんの部屋にいた猫。

 彼女の才能にぴったりともいえる

 

『じゃぁ……次の場所見てくるよ……』

『了解っ、じゃぁ私達はもう少し調べてよっか』

『ッチ、めんどくせぇなぁ』

『いえーい! さんせー!』

 

 そうして僕は、次の場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

【焼却炉】

 

 焼却炉によってみると、そこにはソフィアさんと工藤君、そして緑川君と倉家姉弟がいた。

 

『あら……そちらはもう終わりまして?』

『うん、大体は』

『(フッ) 悲しい事だよ……子猫ちゃんが死んでしまうんだから……』

『あぁ、俺のアイドル候補!』

『えっ、候補だったの!?』

『神楽は信用しすぎです』

『ははは……それで、そっちの状況はどうかな』

『そうね……まずいえる事は……この焼却炉は使われていないという事、つまり犯人は今も証拠を持っているという事よ』

『あぁそうだ……でも、凶器って燃えないし、焼却炉に入れる人なんていないでしょう!』

『(フッ) 鉄は燃えるよ?』

『燃えるというか溶けるというか……』

 

 成程……使われていないのか。

 

 コトダマゲット → 【焼却炉】

 現在に至るまで、一度も使用された痕跡はなかった。

 

『(フッ) それに、この私が掃除当番だからね……この焼却炉は元々閉じられていたのさ』

『閉じられていた?』

『ええ……鉄製のシャッターでしっかりと……ね』

『つまり、焼却炉を使う事はできなかったんだよね!』

 

 焼却炉自体は使う事ができなかったのか……。

 

 コトダマゲット → 【掃除当番】

 焼却炉にはシャッターが閉じられていて、掃除当番以外使用できなかった。

 ちなみに掃除当番は、工藤君だ。

 

『ありがとう……これで大体の情報はそろったかな……』

『えぇ、もう事件に関係しそうな場所もないでしょう』

『しょ、食堂も何もなかったしね!』

『個室一つ一つ……はさすがに面倒ですわね、犯人もわからない以上は』

 

 そう、これ以上の捜査は……進展が無さそうだと判断した。

 

 と、そう思ったそのときだった。

 

うぷぷぷぷぷ……! オマエラ! 一定時間が経過しました!! 捜査をやめ、体育館入口横にある廊下の先……そう! 赤い扉の中にお越しください! 学級裁判が始まるよ!

『……行くしかないようね』

『うん!』

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

【赤い扉の中】

 

オマエラ、集まるのが遅すぎるのだ!

『しょうがないよ……夢喰さんは寝てるし、浦川さんは絵描きをやめようとしないし……』

『……だって、つまんないもん』

『眠い……うぅ~』

まったく……この裁判を勝ち取ったら、居眠り校則は考えてあげるよ……しょうがないんだからね!

『睡眠バカの睨みには、モノクマに強制力を働かせる力でもあるのかしら』

『なんて力だ……』

『はっはっは! ある意味最強の武器なのかもしれないな!』

御託はいい! オマエラの目の前にあるエレベーターにさっさと乗りなさい!

 

 

 

 〇

 

 

 

 僕らがエレベーターに乗ると、それはゆっくりと降下を開始した。

 怖い……この先で何が起こるのか……。

 命がけの犯人当てゲームが始まるんだから……。

 正直、信じたくない。

 この中の誰かが犯人だなんて……。

 でも……やらなきゃいけなんだ。

 

 皆が皆、そう思っていたことだろう。




・生徒名簿

【超高校級の空想家】佐藤 尊

【超高校級の釣人】 村戸 加奈

【超高校級の射手】門目 佳次

【超高校級の姉御肌】 茅野 青空

【超高校級の情報屋】枢木 誠

【超高校級の歌手】松丸 多恵

【超高校級のナルシスト】工藤 佐助

【超高校級の睡魔】夢喰 夏帆

【超高校級の脱獄犯】紬 大河

【超高校級の茶道家】倉家 志津

【超高校級の信者】倉家 神楽

【超高校級の絵師】浦川 瑠璃

【超高校級のプロデューサー】緑川 慎二

【超高校級の飼育係】睦月 穂香

【超高校級のバイオリニスト】ソフィア・クラウディア

残る生存者 14


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章-第5話- 非日常編(学級裁判編)

降下していたエレベーターはやがて、チーンッという音を鳴らし静止した。
……そして、ゆっくりと目の前の扉が開いた、そう……地獄への入り口とも思える扉が。

その先は一つの裁判場のような空間だった、円形に並べられた証言台、そして奥には、モノクマが座るであろう玉座? 的な椅子が置かれていた。

オマエラ! 準備が出来たなら、自分の名前が書かれた席につきなさーい!
『ッチ……趣味悪ィ場所だぜ』
『(フッ) 低民の顔より醜い場所だね』
『罵倒なのかわからない……』
席は時計回りに僕、村戸さん、門目くん、青空姉、枢木君、松丸さん、工藤くん、夢喰さん、紬くん、志津さん、神楽くん、浦川さん、緑川くん、睦月さん、ソフィアさんの順に並んでいた。だが……睦月さんはもういない……その代わりに。

睦月さんの顔が映った白黒の写真に、赤いペンキでバツ印が書かれた……遺影? のような物が置かれていた。
『おい、何だあれは、この場に的を射ていない物があるぞ?』
『あ、悪趣味ってレベルじゃないぞ!? アイドルのステージにだって、あんなものない!』
『あったらダメでしょ!?』
うぷぷぷ……だって、死んじゃったからって、仲間ハズレはダメでしょう?
『……くっ』
はーい! うんうん、全員席についたね? じゃぁさっそくやっていこうかな! ドッキドキで、ワックワクな学級裁判を!!


 コトダマ一覧

 

 

 

【モノクマファイル(1)】

 

 被害者は【超高校級の飼育係】の睦月 穂香。

 死体発見場所は、女性大浴場。

 死亡推定時刻は、午前7:02分頃

 死因は、頭部を何回も殴られた事による出血死。

 頭部以外にも、身体には何個か殴られたような後がある。

 

【浴場の掃除】

 午前6:00にしっかり掃除している。

 その代わり様から見るに、念入りに掃除はしているようだ。

 

【男子浴場の様子】

 掃除されいたため非常にきれいだった。

 だが所々水滴や、濡れている部分も存在した。

 

【浴場の仕切り】

 男子浴場と女子浴場は隣接している。

 壁には当然仕切りがあるが、登ればそこには人一人通れるだけの穴が開いている。

 だが登るのは至難の業だろうが。

 

【濡れたタオル】

 男子浴場のゴミ箱に入れてあったタオル。

 念入りに絞られて水分もほとんど残っていない。

 

【男性陣のアリバイ】

 僕と枢木君は男子脱衣所にいたから、おそらく犯行は不可能。

 そのほかは寝ていた。

 

【浴場について】

 脱衣所及び浴場には、監視カメラはついていない。

 校則に何も記載はない事から、女子更衣室には誰でも立ち入る事ができた。

 

【女性陣のアリバイ】

 私と多恵ちゃんは女子脱衣所にいたから、おそらく犯行は不可能。

 そのほかは寝ていた。

 

【女性浴場の様子】

 掃除されている為なのか非常にきれいな様子であった。

 

【凶器について】

 ファイルと死体から見て、凶器はハンマー等の鈍器、もしくは棒状の硬い物。

 ただし、凶器は現場には存在しなかった。

 

【橙色の塗料】

 睦月さんの服と血に付着していた橙色の塗料。

 インクとは少し違う感じだ。

 

【夜時間の封鎖場所】

 現時点では、夜時間になると食堂と大浴場が封鎖される。

 

【枢木君の調査】

 橙色の塗料の正体は蛍光塗料だった。

 彼の情報なら確かだろう。

 

【睦月さんの部屋の状況】

 部屋に争った形跡はない、侵入した痕跡も同様。

 

【猫】

 睦月さんの部屋にいた猫。

 彼女の才能にぴったりともいえる

 

【焼却炉】

 現在に至るまで、一度も使用された痕跡はなかった。

 

【掃除当番】

 焼却炉にはシャッターが閉じられていて、掃除当番以外使用できなかった。

 ちなみに掃除当番は、工藤君だ。

 

 

 

 

学級裁判開廷! 

 

 

 

 

 村戸『裁判っていっても……何を言い出せばいいのかな?』

 緑川『こういう時は、せーので指を刺すのが先決じゃないか!?』

 神楽『そ、それに賛成だ、僕はみんなを信じるよ!?』

 茅野『いや……さすがに運はダメでしょ?』

 枢木『あぁそうだ! ここは一つ……今回の事件の主題についてから話そうではないか!』

 

 そういって、枢木君は手に持っていた電子手帳からモノクマファイルを取り出した。

 

 枢木『これだ!!』

 ソフィア『そうですね、こんなくだらない茶番をしている間があったら、そういうのを読んで場を静かにさせるのが先決ですね』

 志津『ふふ、賑やかなのは好きですけどね』

 夢喰『……うるさいから……さっさと読んで』

 枢木『あぁわかった! では請謁ながらこの我が読んでやろう!』

 

 枢木『被害者は【超高校級の飼育係】である睦月 穂香。死体発見現場は女性大浴場。死亡推定時刻は、午前7:02頃。死因は頭部を何回も殴られたことによる出血死だな。そして頭部以外にも数個殴られたような痕がある……だったな!!』

 松丸『ダメ……思い出すだけで吐きそう……』

 茅野『お、落ち着いて……』

 工藤『(フッ) 死因も書かれているのなら、分かりやすいね……なら、凶器について話会おうじゃないか』

 佐藤『うん、そうだね……それじゃぁ、始めようか!』

 

 

 

 

議論開始! 

 

 

 

 

 松丸『凶器っていっても……何で殺されたのでしょう』

 門目『そんな物がわかるのか?』

 緑川『頭部には何回も殴られたような後があったんだよね……』

 夢喰『身体にも……傷はあるよ……だったら……拳で何回も殴られたーとかはどうなのさ……』

 枢木『ふむ……力が強い人ならありえるな!! 何回も殴って出血させる……アニメでもドラマでもよくある展開だ!!』

 

 

 コトダマ【凶器について】→拳で何回も殴られたー

『それは違うと思うよ……ッ!』

 

 

論破

 

 

 佐藤『夢喰さん……それはたぶん違うと思う……』

 夢喰『なんで……?』

 佐藤『ファイルと死体を見て、傷の形状からハンマーとか棒状の硬い物で殴られたと推測できるんだ……枢木君、あの後ずっと死体見てたからわかるよね?』

 枢木『ふむ……確かにそうだった……というより、拳で殴られた……っていうのはアニメやドラマの話で現実味はないな! さすがは【超高校級の空想家】だ!!』

 佐藤『ほめてるのかなそれ』

 ソフィア『つまり……何か道具を使ったという事は確実なのですね……』

 門目『身体を殴ったのは……もしかしたら、拳で殴ったと思わせる為か? そういうのなら、的を射ているが』

 佐藤『そもそも、拳で殴ったのなら、血がついちゃうでしょ……?』

 

 

『……それって、どうなのかな?』

 

 佐藤『え?』

 

 

反論

 

 

 佐藤『青空姉……どういうこと?』

 茅野『うん……さっき、拳で殴ったのなら、血が出るって話だよ……ちょっと考えが浅いんじゃないかなって』

 松丸『浅い? どういうことー? 青空姉ー!』

 ソフィア『そうですね……教えてほしいところです』

 茅野『じゃぁ、ちょっと反論させてもらうよ』

 

 

 

 

 

 ―反論ショーダウン―

 

 茅野『つまり……拳で殴っても血がついても問題ない場合を考えるんだよ』

 佐藤『つかなかった場合?』

 門目『どういうことだ?』

 茅野『うん……人間だれだって、手や拳に血がついたら洗い流すでしょ? つまり、そういうことなんじゃないかな』

 ソフィア『成程……念入りに洗っておけば問題ないと?』

 緑川『つまりはッ、洗面台とかを使えば楽勝という事だねっ!』

 門目『確かに、的は射ているな』

 いや……それはおかしいよ! 

 

 コトダマ【モノクマファイル(1)】→手や拳に血がついたら洗い流すでしょ? 

 

『その反論、僕が斬るよ!』

 

 

論破

 

 

 佐藤『青空姉、さすがにそれはおかしいよ』

 茅野『え? どうして……?』

 佐藤『だって、僕達が死体を発見したのは午前7:02……そしてその後に皆が来たから、落とすまでの時間はなかったと思うよ?』

 茅野『成程……でも、案外早く落ちた可能性は?』

 佐藤『それもあるけど……洗っていたのなら、誰かその音は聞こえるはずだよ、ほら……あそこって結構音響いていたよね』

 

 

 ―回想―

 

 〇

 

 

『すご──いっ、凄いよ青空姉、広いッ、広いよッ! こんな広い浴室見た事ない!!』

 

『はいはい……少し待ってって……』

 

 

 〇

 

 

 青空姉と松丸さんの声が聞こえる。

 

『おん? 向こうも来たか?』

『(フッ) 楽しそうな声じゃないか……癒し効果倍増ってところかい?』

『おい佐藤、覗きなんて的を射ていない事するなよ』

『誰が!?』

 

 ―回想終わり―

 

 枢木『あぁ昨日風呂に入った時ですな! 女子の声が確かに響いてましたな!』

 茅野『え!? 響いてたの!?』

 ソフィア『そういえば……男子の声も少し聞こえていたような気がしますね』

 緑川『ま、まぁその話は置いておこうよ!』

 紬『アァ、あのクソみたいな一件か』

 佐藤『まぁまぁ……つまり、音が聞こえなかったってことは、洗っていたってことは考えられないんだ』

 茅野『成程……うん、納得したよ』

 村戸『じゃぁ、次の議論にいこっか!』

 

 

議論開始! 

 

 

 緑川『でも……次の疑問ってなんなんだ?』

 ソフィア『……そうね、どのようにして事件が起きたか……が一番いいのかもしれませんね、そこから凶器が分かるかもしれませんし』

 茅野『死亡推定時刻から、事件は朝時間に行われたってことになるよね』

 志津『成程……では、夜時間は誰も行動できなかった、という事になりますね』

 紬『アァ? だったら答えは簡単じゃねぇかよォ』

 枢木『ム!? 簡単とはどういうことだね?』

 紬『ッチ、わからねぇのかよ。つまりだ、朝時間になった時に起きていた奴……そして、女子浴場にいた奴……それが、今一番明確になってる奴……茅野と松丸の中に犯人がいるってことだよ!』

 茅野『私!?』

 松丸『私も違うに決まってるでしょー!』

 

 コトダマ【女性陣のアリバイ】→茅野と松丸の中に犯人がいる

 

『それは違うよっ!』

 

 

論破

 

 

 紬『何が違うってんだ、あたりめぇの事じゃねぇかよぉ』

 佐藤『確かに青空姉と松丸さんはその時朝風呂のために浴場へ来ていた……だけど、訪れたのは恐らく午前7:03ぐらいだったんだ……』

 緑川『な、何か証拠でもあるんですか!?』

 神楽『ぼ、僕は信じてるからね??』

 枢木『ムッ! それは可笑しいぞ、何故なら……そのアリバイは我らが保証しているからな!』

 佐藤『うん……それが保証できる物……それは……』

 

 コトダマ【男性陣のアリバイ】

 

『これだ!』

 

 佐藤『僕達も、その時一緒に朝風呂に来ていたんだ……』

 枢木『そうだな! そして、朝風呂に行くとき、佐藤君の準備で1分くらいは時間を使っていたはず……つまり! どうあがいても犯行時刻の午前7:02当たりには2人はいけないという事だ! もちろん、我らも殺してなんかいないぞ!』

 紬『……ッチ、確実な証拠じゃねぇじゃねぇかよ……』

 村戸『でもでも、死体発見アナウンスがしたとき、佐藤君と枢木君は、青空ちゃんと松丸ちゃんの声に釣られて大浴場に駆け付けたんだよね……なら、信ぴょう性も出るんじゃないかな』

 佐藤『そうだよ……それに……寝ていたというアリバイが嘘になる可能性がある……だって、夜時間に廊下を出歩けないなんて校則はないし……』

 ソフィア『確かにありませんね……ですが、出歩けないなんて事が本当にあるのですか? 例えば、モノクマが監視していて、出歩いていた者を射殺とか……』

 佐藤『それはあり得ないよ……何故なら……』

 

 コトダマ【夜時間の封鎖場所】

 

『これだ!』

 

 佐藤『モノクマ本人が言っていたんだ……夜時間に封鎖されるのは食堂と大浴場だけ……廊下を出歩けないなら、扉をそもそも開けなくすればいいしね……出来るかはわからないけど、こんな物を企画するぐらいなんだ……やってもおかしくないよ』

 門目『そうなのか、クマ野郎』

 モノクマ『クマ野郎じゃなーい! でも、確かにボクはそう言ったよ?』

 松丸『つまり公認ってことだー!』

 志津『では……茅野さんと松丸さん、そして佐藤さんと枢木さんは犯人ではないという過程で話を進めましょうか?』

 夢喰『それでもいいけど……疑問がある……夜時間に出歩いたとするよ……? どうやって犯人と睦月は大浴場にいったの……、眠いんだから喋らせないでよ、イライラする……』

 

 確かに……それについては考察するしかない……。

 あのモノクマの事だ……朝時間開始の7:00きっかりに開放するんだろう……。

 それと同時に入るには……。

 

 

閃きアナグラム! 

 

 考えるんだ……僕のくだらないと思っていた空想で……。

 

 

 チ カ ク デ マ ッ テ イ タ

 

 

 成程! 

 

【近くで待っていた】

 

『これだ!』

 

 

 佐藤『きっと犯人と睦月さんは、大浴場が解放されるまで、近くで待っていたんだよ……』

 茅野『待っていた……?』

 ソフィア『成程、いわゆる待ち伏せって奴ですか?』

 佐藤『例えば……午前6:55当たりに、大浴場の入り口近くまで行き、モノクマが解放しているのかはわからないけど、7:00の解放と同時に、大浴場に入り、犯行に及んだ……これなら、問題ないと思うよ……』

 志津『確かに……それなら午前7:02に殺せるかもしれませんね』

 工藤『(フッ) さすがは【超高校級の空想家】……現実味がいい推理をするね』

 夢喰『キーパーソン……(グットサイン)……もう安心だから寝るね……』

 緑川『この場で!? それに校則違反だよ!?』

 紬『ッチ、だったら次の問題に行くぞ!』

 

 

議論開始! 

 

 

 紬『次に解決するべき問題……』

 緑川『そうだね……どうやって睦月さんと犯人が大浴場に入ったかはわかったから……次は犯人がどう睦月さんを呼び出したか……だな!』

 工藤『(フッ) ここは無難に……無理やり拉致して連れ去った……それが無難じゃないかい?』

 松丸『拉致したって……絶対ヤバい奴じゃん!?』

 ソフィア『その方法も考えられますが……もう一つ、手紙、または口頭で呼び出した……それも考えられますが?』

 神楽『あっ、ドラマとかでよくある奴だ!!』

 

 コトダマ【睦月さんの部屋の状況】 → 手紙、または口頭で呼び出した

 

『うん、僕もそうだと思う』

 

 

同意

 

 

 佐藤『部屋には争った形跡はなかった……だから、拉致とかは考えられない。そうなると、手紙や口頭で呼び出したのが正しいと思えるんだ』

 ソフィア『成程……ですが、手紙とかはどこにも見つかりませんでしたわね……』

 紬『犯人が持ち去ったんじゃねーの?』

 茅野『え? でもそれじゃぁ、処分しちゃってるでしょ……』

 緑川『成程、じゃぁもう見つけようがないってことじゃん!?』

 門目『そういうことだな……たく、振出に戻っちまったってわけだ……』

 村戸『でもでも、紙を処分するような場所ってあった?』

 茅野『焼却炉ぐらいじゃないかな……』

 紬『だったら、そこで燃やしたんだろ、いちいち言わせんな』

 

 コトダマ【焼却炉】

 

『それは違うよ!』

 

 佐藤『焼却炉って……一度も使用された痕跡がなかったんでしょ?』

 ソフィア『えぇ……シャッターも閉じられていましたから』

 工藤『(フッ) ちゃんと僕達が確認したからね』

 枢木『はっはっは! 我が死体を調べている間に、よく調べた物だ!』

 神楽『何で上から目線なんだ?』

 茅野『ま、まぁまぁ……これで呼び出し方法もわかった……曖昧なのは凶器……そして完全に分からないのは、あの現場と状況から、どうやって犯行を犯したとかじゃない?』

 松丸『青空姉にさんせー! それについて話会おう!』

 門目『そうだな……ファイルだけじゃ、わからないからな』

 

 

議論開始! 

 

 

 茅野『犯行時刻が午前7:02……そして、私達が来た時間を午前7:04と仮定すると……私達が来た頃には多分、犯人はまだ現場にいたってことだよね

 紬『はぁ!? 現場っつーたら、女子浴場だろ?』

 ソフィア『きっと……女子浴場から何らかの方法で脱したのでしょう……』

 松丸『えぇ、そんな方法があるんですか!?』

 門目『そんな的を射た事があるはずもなかろう……そうなると、茅野か松丸の自作自演も考えられる……共犯って可能性もあり得るだろう? まさか……女子浴場からバレずに抜け出せる穴があるなんて、言うんじゃないだろうな? 

 茅野『そ、そんな……』

 松丸『だから違うってばー! さっきの議論聞いてなかったの!?』

 神楽『排水溝って言わないでよね? まったく……』

 

 いや違う……確か一つあったんだ……。

 

 コトダマ【浴場の仕切り】 → 女子浴場からバレずに抜け出せる穴があるなんて、言うんじゃないだろうな? 

 

『それは違うよ!』

 

 

論破

 

 

 佐藤『いや……門目君、一つだけあったんじゃないかな……その方法が……』

 門目『なんだと?』

 枢木『はっはっは! ……え?』

 緑川『ま……まさか……』

 佐藤『そう……あの浴場にあった仕切りだよ……あそこから抜ければ、男子更衣室に行くことはできる筈だよ……』

 茅野『つまり……犯人は殺した後、男子更衣室に移動したって事!?』

 村戸『た、確かに身長が高い人なら、ジャンプしていけそうだけど……』

 

『zz……はっ、おっとっと……ごめん……寝たいし……早く終わらせたいから……間違いは指摘していっちゃうよ』

 

 

反論

 

 

 佐藤『夢喰さん?』

 夢喰『だって……おかしいじゃん……その意見……』

 志津『おかしい……とは?』

 夢喰『眠いし……簡単にしか説明しないよ……』

 

 

 

 ―反論ショーダウン―

 

 夢喰『あの高さの仕切りを掴んだと言えど……多少の助走はいる筈でしょ……』

 佐藤『う、うん……175cm越えなら助走なしでもジャンプしていけなくはなさそうだけど……いたっけ?』

 夢喰『近いのはいるんじゃない……でも……そんな高身長……わからないよ……』

 門目『俺は173cmだ……見た感じだとこの中なら一番大きい……』

 佐藤『じゃぁ……届かない……でも、助走してジャンプすればいいんじゃないか!』

 夢喰『それがおかしいんだよ……うぅ~……最後まで私に言わせないでよ……つまりだよ、助走なんかしたら足元滑らせちゃうじゃんってことだよ……助走に加えジャンプならなおさらだよ……』

 嫌……滑る可能性なんてない! 

 

 コトダマ【女性浴場の様子】→ 助走なんかしたら足元滑らせちゃうじゃん

 

『その反論、僕が斬るよ!』

 

 

論破

 

 

 佐藤『いや……その可能性は絶対にないんだ』

 夢喰『なんで……』

 茅野『あ、そういえば……あの時、夢喰ちゃん脱衣所にいたから知らなかったんだ……』

 ソフィア『そういえば……私達が浴場を捜査していた時、浴場には水滴一つないほど綺麗でしたね……』

 佐藤『そう、だから滑る可能性なんてないんだ……』

 夢喰『……納得』

 松丸『夢喰ちゃんが頑張って発言したー!』

 門目『うたた寝しているとはいえ……話は聞いているんだこいつは……まったく、的を射ていない理論だ』

 夢喰『寝てる時に授業の話聞いていないと……成績……落ちる……zz』

 緑川『いや寝るなよ!?』

 工藤『(フッ) まさに……ゴーマイウェイ……だね』

 枢木『ふむ……では皆に一つ質問してもいいかね?』

 佐藤『何?』

 茅野『うん?』

 枢木『仮にそうやって男子風呂に移動したとしよう! しかしその超えた先は……そう浴槽だ! 着水の音はゆっくり入れば問題ない……身長が165cm以上あれば最小限にとどめられるだろう……ではその先はどうするのだ? 浴槽から出てそのまま歩いてしまえば、足跡とかついてバレるではないか!』

 佐藤『……それについても、目星がついているよ』

 枢木『ほう、教えてくれたまえ!』

 

 犯人が足跡をつけずに、最小限の水滴や痕跡で扉に向かった方法……それは……。

 

 

 コトダマ【濡れたタオル】

 

『これだよ!』

 

 

 佐藤『僕の想像になるけど……犯人はタオルを使ったんじゃないかな』

 枢木『タオルだと!?』

 村戸『タオルでどうやって扉に向かったの?』

 ソフィア『成程……つまり、浴槽から出るまえに床にタオルを敷いてその上に足を乗せる……。そしてタオルの両端を掴んで、ぴょんぴょんっと飛びながら扉へと向かった……。茅野さんの松丸さんの叫び声が聞こえた数秒後に出てしまえば、佐藤君と枢木君に見つかる事もない……そういうことが言いたいのでしょう?』

 神楽『あ、荒業すぎるな……でも、僕は信じるよ! その案に賛成! ……ってね』

 門目『そうすれば最小限の水滴や濡れで済むうえに……しぼって捨てれば問題ないと……』

 佐藤『うん……それに、それをやったっていう証拠は他にもあるんだ』

 枢木『ほうほう!? それはなんだね!』

 

 コトダマ【男子浴場の様子】

 

『これだよ!』

 

 佐藤『男子浴場を捜査したときにあった水滴……床の水滴や濡れている場所は一部だったんだ……それも、入ってすぐに気づく……壁の所にある浴槽付近』

 茅野『成程……そういうことなら納得がいくよ』

 工藤『まったく……凄い事を考える物だ……』

 松丸『考えた人天才だねー!』

 ソフィア『頭が切れるのは確かでしょうね……知識のある者、事務作業が得意な人……おっと、たくさんいましたわね。まぁ、それで犯人扱いするのもどうかと思いますが……』

 佐藤『だね……これで、犯行手順は完全に把握できたね……』

 紬『へっ……じゃぁ後は……犯人と凶器だなァ!!』

 村戸『クライマックス……犯人がルアーにつっかかってる状態ってことかな?』

 

 

議論開始! 

 

 

 紬『あとは凶器と犯人だなァ!』

 茅野『犯人は後……凶器について考えようよ……』

 ソフィア『凶器はハンマー等の鈍器……または棒状の硬い物……でしたわね』

 工藤『(フッ) ではそれに該当する物が凶器という事だね』

 門目『最初にやった議論から、拳等による素手での殺しではない事は確かなんだよな?』

 志津『ええ……それは確かですわ』

 緑川『え? ……じゃぁつまりさ……もう凶器の手がかりってなにも残ってないんじゃないかな』

 松丸『お、お手上げってことー!?』

 

 いや……まだあれがある……! 

 

 コトダマ【橙色の塗料】→ もう凶器の手がかりってなにも残ってない

 

『それは違うと思うよ!』

 

 

論破

 

 

 緑川『違うって、何がだい?』

 佐藤『思い出してみてよ……特に死体を調査した人は……睦月さんに服についていた橙色の塗料の事をね』

 ソフィア『そういえば……死体と睦月さんに似つかわしくない塗料がありましたね』

 工藤『(フッ) ならば……その正体を突き止めればいいじゃないか』

 枢木『ふむ……それなら確か……』

 茅野『知っているの!?』

 佐藤『うん……あの時、枢木君が調べていたんだ……』

 松丸『さっすが情報君ー! 頼りになるなー!』

 緑川『じゃぁなんだい……その蛍光塗料の正体を調べれば、犯人がわかるってことだね! 一体何の物だったんだい?』

 

 ……うん? 待って……? 

 ……ふむ。

 

 コトダマ → 【枢木君の調査】

 

『それは違うよ!!』『おかしいじゃないか!!』

 

 

論破

 

 

 緑川『え? 何? 何が違うっていうんだい?』

 佐藤『……枢木君、気づいたよね』

 枢木『はっはっは……勿論だよ』

 茅野『2人とも……?』

 ソフィア『……成程、察しはしましたが、一応説明してくださる?』

 佐藤『うん……緑川君……どうして、橙色の塗料が、蛍光塗料だってわかったの?』

 緑川『……え?』

 枢木『我らは確か……橙色の塗料……しかいってないね。インクだったかもしれないじゃないか』

 夢喰『……おー……確かに』

 緑川『え、えーっと……捜査をしていた時に、光ってるのを見てさ、蛍光塗料かな~って思ったんだけど』

 ソフィア『操作の時、電気はついていたわよ? ただの橙色の塗料にしか思えなかった筈』

 枢木『我は成分解析をした結果分かったが……何故専用器具も持っていない君が理解することができたのだ!』

 緑川『え、えーっと……それはぁ~……』

 村戸『でもさでもさ、蛍光塗料だったとしてもさ……何で服についちゃったのかな』

 緑川『そうだよ……勘で当てちゃってもいいじゃないか!』

 枢木『ふむ……それもそうだ……』

 

 ……睦月さんの服についた橙色の蛍光塗料……これが凶器になりうるとしたならば……。

 きっと……それを使った鈍器があるはずだ……。

 思いつけ……空想で……例え現実味を帯びていなくても……。

 

 

 

閃きアナグラム

 

 

 

 空想を回転させろ……そしてつなげるんだ! 

 

 サ イ リ ウ ム ラ イ ト

 

 成程! 

 

【サイリウムライト】

 

『これだ!!』

 

 

 佐藤『きっと犯人は、サイリウムライトを使ったんだ!』

 ソフィア『サイリウムライト……ですか?』

 緑川『なっ……』

 茅野『サイリウムライト……確かライブとかに使うアレだよね……あんなもの、どうやって……』

 枢木『ふっふっふ……ならば我が説明しよう……サイリウムライトは素手で強い力を与えないと折れない物だってある……無暗に折れないように……ね、それを何個も何個も頭に殴れば……それは痛いじゃすまないだろうねぇ……。さしずめ、1個で2、3回殴れたはずだね』

 ソフィア『確かに……【超高校級のプロデューサー】である彼ならば……無数のサイリウムライトを持っていてもおかしくなさそうね』

 夢喰『無限の……サイリウムライト……』

 神楽『どっかで聞いたような……』

 志津『……反論は、ございますか?』

 

 緑川『……あるかだって……? はは……』

 

 

 

 

 緑川『あるに決まっているだろう!!! 

 

 

 

 

 緑川君は突如席を強くたたいて叫んだ。

 

 

反論

 

 

 緑川『あんたら……確かに僕は【超高校級のプロデューサー】だ!! 無数のサイリウムライトならたくさん常備しているさ! けどなぁ、それをこの学園生活に持ってくる奴なんているわけがないだろう!!!』

 佐藤『いや……持ってくる事は出来た筈だ……』

 緑川『無理だね! 実際に僕はもってきていないんだ!! それに……アンタらも、自分の才能に関係ある物を持ってきていないだろうが!!』

 佐藤『……!』

 

 コトダマ【猫】→アンタらも、自分の才能に関係ある物を持ってきていない

 

 佐藤『その反論、僕が斬るよ!!』

 

 

論破

 

 

 佐藤『ねぇ緑川君……僕と茅野さん……紬君と松丸さんは、捜査の時、睦月さんの部屋にいったんだ……そこには何があったと思う?』

 緑川『……知らないよ! 何があったの!』

 紬『……猫だよ』

 緑川『は?』

 茅野『睦月さんが……飼っていた猫だよ……』

 松丸『にゃんにゃん泣いてた……』

 緑川『猫……?』

 佐藤『睦月さんが毎日のように言っていた猫だよ……餌をあげないととか……言っていたよね』

 茅野『可哀そうに……』

 紬『そりゃ、主人がいなくなっちまったんだからよぉ……』

 緑川『……ぁ、違う、僕は、僕は!』

 佐藤『緑川君、今から事件の全貌を離すよ、反論があったら言って……でも、現実味は強いよ!』

 

 

 

クライマックス推理

 

 

 

 頭の中に描いた事件の全貌を、ここで全て吐き出すんだ。

 

 

 Act1

 事件が起きたのは、午前7:00の朝時間から午前7:02の間……。

 モノクマの手動か、自動解放かは不明だけど、午前7:00の朝時間

 つまり、浴場の解放と同時に、睦月さんと犯人は一緒に入ったんだ。

 その理由はずばり、犯人に口頭か手紙で呼ばれたんだろう。

 そして睦月さんが浴場の中に入った瞬間に、犯人はそこを襲った。

 

 Act2

 犯人が使った道具は『サイリウムライト』だった。

 1回殴っただけでは撲殺なんてできないだろうが、犯人はそれを無数に持っていたんだと思う。

 それも、とびっきり硬い奴を。

 それで何回も殴り、やがて睦月さんは息絶えた。

 こうして、撲殺することができたんだ。

 だが、この時『サイリウムライト』が割れた拍子に出てきた蛍光塗料が睦月さんの服にかかってしまった。

 犯人は『サイリウムライト』の断片は拾う事ができても、蛍光塗料は取る事ができなかったんだ。

 

 Act3

 しかし、ここで誤算が生じた。

 後は普通に帰ればよかったのだが、青空姉と松丸さんが女子更衣室にやってきた。

 ここで普通に帰ってしまえば、自分が殺した事なんて簡単にバレてしまう。

 そこで犯人は考えた、それは……浴室の仕切りの上にあいた大きな穴から、隣の男子更衣室に移動すればいいのだと。

 幸い、床に水滴はついていなかったから、滑りやすくはなかった。だから、助走をつけてジャンプし、仕切りの上を掴むことができたんだ。

 そうして、男子更衣室に移動することができた。

 

 Act4

 そして、男子更衣室に移動するというアドリブをしたことによって、犯人はどうやって男子更衣室に戻ろうか考えた。

 普通に戻れば当然床がびしょ濡れになり、怪しまれてしまう。

 そこで犯人が取り出したのは、手持ちのタオルだった。

 犯人はそのタオルに足を乗せ、ぴょんぴょんと飛び跳ねるようにして移動し、多少の濡れで更衣室の所まで行くことができた。

 後は僕と枢木君が出た所を見計らい、更衣室に入って、足を拭きゴミ箱にタオルを捨てる。

 さすがに『サイリウムライト』は捨てる事ができなかったんだろうけど……。

 そして何食わぬ顔で僕達と合流すれば、今回の事件の完成ってわけだ。

 

 

 

 

 

 佐藤『これが事件の真相だよ、そうだよね……。緑川 慎二君!』

 緑川『……くっ、まだ認めないッ! 何故女子更衣室に男子が入れたんだ! 確かに? 手紙で呼べばいいんだろうけど……普通に女子更衣室なんかに男子が入ったら、校則違反なり監視カメラが反応したりするでしょうが!』

 茅野『……いや』

 

 

 コトダマ【浴場について】 → 普通に女子更衣室なんかに男子が入ったら、校則違反なり監視カメラが反応したりする

 

『それは違うよ!』『それは違うッ!』

 

 

論破

 

 

 佐藤『……浴場や更衣室には、監視カメラなんてついてないんだよ』

 茅野『それに……校則にも入っちゃダメなんて書いてない。そうだよね、モノクマ』

 モノクマ『はいっ! そうで~す』

 緑川『いや……違う……違う!』

 ソフィア『でしたら……モノクマ、緑川君のゴミ箱を持ってきてくれませんか?』

 モノクマ『何で僕がそんなことをしなくちゃいけないのさ!!』

 枢木『はっはっは! 君しか学園内を自由に移動できなかったからね!』

 工藤『(フッ) そういえばあの時、まともに他生徒の個室を調べる事ができなかったね……』

 茅野『被害者の部屋は重要そうだからわかるけど、犯人の部屋なんて分かりっこないもんね……』

 緑川『くっ……くそ……僕はッ!! 僕はッ!』

 紬『処分したなんて理屈は無しだぜぇ? 議論で行ったよなぁ、焼却炉は使われた痕跡がなかったってな!』

 松丸『もし仮にライトや手紙が入っていて……他にライトを壊した……または、別の人に手紙を送った……だったら、誰に送ったものなのか教えてもらおう!!』

 神楽『認めたくない……裏切りたくないけど……もう……ッ!!』

 志津『神楽、この投票は多数決です、無理に投票しなくてもいいのですよ……』

 

 モノクマ『うぷぷぷぷ……クロが決まったようだね! それじゃぁ、投票タイムといこっかー! 必ず一人一票! 誰かに投票するんだね!』

 

 自分の席に取り付けられたボタンを見る……押したくなんかない……でも……。

 

 

 佐藤『ごめん』

 

 

 モノクマ『ではでは、結果発表ー! 今回クロになったのはー……!!』

 

 

 皆の目の前に巨大なスロットマシーンが下りてくる、そして僕達の顔が描かれたスロットが回転を開始する。

 早く回転しだしたスロットは次第にどんどん動きを停止していき……一つの顔を映し出した。

 

 当然……緑川君の顔だった。

 

 クロの正解をまるで祝うかのように、五月蠅いファンファーレが鳴り響き、スロットマシーンから、大量のメダルが降ってきた。

 

 

 ……正解だった。

 僕達はその光景を見て、拳の握りしめる事しかできなかった。

 

 

 

学級裁判閉廷! 




・生徒名簿

【超高校級の空想家】佐藤 尊

【超高校級の釣人】 村戸 加奈

【超高校級の射手】門目 佳次

【超高校級の姉御肌】 茅野 青空

【超高校級の情報屋】枢木 誠

【超高校級の歌手】松丸 多恵

【超高校級のナルシスト】工藤 佐助

【超高校級の睡魔】夢喰 夏帆

【超高校級の脱獄犯】紬 大河

【超高校級の茶道家】倉家 志津

【超高校級の信者】倉家 神楽

【超高校級の絵師】浦川 瑠璃

【超高校級のプロデューサー】緑川 慎二

【超高校級の飼育係】睦月 穂香

【超高校級のバイオリニスト】ソフィア・クラウディア

残る生存者 14


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。