ガンダムビルドファイターズ∞ (ChaffP)
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第1話「ガンプラバトル!」
アニメ本編はなかなかマニアックな機体も出てきて楽しいですね。
一応このSSの時系列はアニメ本編よりも前という設定で書いています、その設定が生かされることがあるのかは解りませんが・・・
文才が無いのでお目汚しになってしまうかも知れませんが、楽しんでいただけたら幸いです。
大小さまざまなビルが立ち並ぶ市街地、そこにズシンズシンと大きな音を立てて地響きが起こる。
その震源を探ってるとビルの陰から巨人が現れた。
緑色をしたその巨人は道路の向こう側に立っていたもう一機の白い巨人を赤く光る大きな一つ目で確認すると右手に持った機銃の銃口を向け、引き金を引く。
ドドドドドドと音を立てて銃口から弾丸が白い巨人に向かって発射される。
白い巨人はそれを左腕に装備された盾で防ぎつつ右肩に担いでいたバズーカの砲口を緑色の巨人に向けると狙いを定めて引き金を引く、バズーカから発射された弾頭は真っ直ぐに緑色の巨人に直撃し、大爆発が起こる。
-BATTLE END-
電機音声と共にモニターに試合終了を意味する文字が表示されると、今まであった市街地の風景が消え、六角形の台座が蜂の巣のように並べられたフィールド上には先程まで戦闘を行っていたバズーカを担いだ白色の巨人-ジム改-と哀れにも腕と胴体が外れ横たわる緑色の巨人-ザクⅡ-があった。
「よっしゃあ!」
台の近くでジム改をコントロールしていた方の青年がガッツポーズをとる。
対してザクⅡをコントロールしていた青年がザクⅡであったものを回収すると悔しそうな顔をしながら台の前から外れる。
いままでステージの上でドンパチやっていたのは実際の兵器ではない。
ガンダムの世界に出てくる兵器を模したプラモデル、いわゆるガンプラである。
1979年に放送された「機動戦士ガンダム」はロボットアニメ史に残るブームを起こした。
ガンダムの放映終了後発売されたガンプラもブームを巻き起こし、さらに近年発見された「プラフスキー粒子」が新たなムーブメントを引き起こす。
この粒子はガンプラに使用されているプラスチックに作用し、自由に動かすことができるようになるというものであった。
自分の手で機体を自由に動かせるというのはガンダムファンの長年の夢でもあり、この粒子を使ってガンプラ同士を対戦させるガンプラバトルは瞬く間に世間に浸透していった。
「どうだ、面白そうだろ?」
「ああ、実際に稼動しているところを見るのは初めてだけどやっぱり人気なんだな。」
ジム改を持った青年に話しかけられ、ガンプラバトル専用の台座(バトルシステム)に群がる人々を見渡してみると本当にそう思う。
現在ガンダムを知る者にとってガンプラバトルを知らないものは居ないほどに世間を席巻していた。
元々ここも街の片隅によく見る様なゲームセンターであったが、ガンプラブームに乗ってバトルシステムを設置したところ途端にお客が入るようになった。
「空もやってみるか?」
「でも俺ガンプラ持ってないし。」
俺の名前は春日井 空、都内の大学に通う大学1年生だ。
大学から近いこのゲーセンにはよく戦場の絆やEXVSなどガンダムのゲームをよくやりに来ている。
今日は同じ大学の友人である仁に誘われガンプラバトルを見学しに来た次第だ。
しかしガンダムは好きだが、ガンプラにはあまり触れてこなかった俺はガンプラバトルも傍観を決め込んでいたため、勿論ガンプラなど持っていなかった。
「じゃあ俺のジム改貸してやるからやってみろって!」
「お、おい!」
仁にそう言われ強引にジム改とGPベースを渡されると、背中を押してバトルシステムの前まで連れていかれた。
「壊しちまうかも知れないぞ!」
「そんときゃ直すから心配するなって。」
-PLEASE SET YOUR GPBASE-
バトルシステムの前に立つと青いモニターに文字が表示される、GPベースとは作ったガンプラの情報、ビルダー(製作者)やファイター(操縦者)の情報が登録されてある端末で、先ずはこれをバトルシステムに接続しなければならない。
-PLEASE SET YOUR GUNPLA-
相手もGPベースをバトルシステムに接続すると、バトルシステム上にプラフスキー粒子が散布された。
そしてバトルシステム上にさっき預かったジム改を置き、これで準備完了、ガンプラの読み込みが完了するとジム改の周りにCGによるカタパルトが再現される。
一回興味本位で覚えたガンプラバトルの操縦のしかたを頭の端っこから引きずり出してきて操縦桿を握りながら反芻する。
-FIELD FOREST-
続いてバトルシステム上に森の風景を再現したフィールドが展開される。
-BATTLE START-
ジム改がカタパルトにより空に射出される。
地面に着地し、周りを見渡すが鬱葱と茂る木々が視界を遮り敵機は目視では確認できない。
「こう鬱葱としてちゃあ周りの視界を確保するだけで手一杯だな。」
周りを注意しつつ慎重に森の中を進む、
静かな森の中をMSの歩行音が鳴り響く、すると突然
ダダダダダダ!!
木々の向こうから銃声と共に銃弾が跳んできた。
「くそ!もうロックされてるのか!?」
気づいた瞬間ブーストを使い横に避けると、銃弾が跳んで来た方向へ向けバズーカを放つが当たった様子は無い。
反応が遅れた為胴体と左肩に数発被弾したが幸い大したダメージじゃない、しかし問題は視界が悪く敵がどこにいるかわからないことだ、一発の威力が低いマシンガンといえども何発も食らえば墜とされてしまう。
「どうする?」
とっさにステージマップを開き打開する為の戦術を考える、幸い相手方も安易に位置を教えるのを避ける為か攻撃してこない。
狙い撃ちにされないよう止まらずに動きながら思考しているとステージの端に開けた場所があるのを発見する。
「ここは・・・、使える!」
そう呟くとジム改の突然方向を変え、ブーストを使い移動し始めた。
「あいつ、何をするつもりだ?」
試合の様子を見ていた仁、劣勢の空が何かを思いついたようだが彼にはわからなかった。
傍から見れば突然の空の行動は敵前逃亡にも思えるものだったが、空にはちゃんとした策があった。
敵機はじわじわと見えない位置からマシンガンを打ち続ける戦法を取ったということは自ら近づいてくることはなく、常に一定の距離を保ちこちらを見ている。
周りは木々が生い茂っているから隠れる場所は自機の360°あると思っていい。
しかしこちらが開けた場所に出れば隠れられる方向は決まってくる。
「あとは!」
開けた場所に着くとジム改は空中に向かいジャンプした。
MS同士の戦闘において無闇にジャンプすることは愚作である、滞空中は完全に無防備であり着地直後は隙だらけになってしまうからである。
勿論ガンプラバトルの経験者ならそのことはわかっており、敵方もジャンプしたジム改目掛けてマシンガンを放つ。
pppppp!!
「そこだ!」
被攻撃時のアラートを確認すると機体を反転させ銃撃をシールドで防ぐと銃撃が発せられてる地点にバズーカを撃つ。
バズーカ弾の爆発は着弾点の周りの木々を薙ぎ倒しながら地面を抉り、土煙を巻き起こした。
「やったか!?」
地面に着地すると煙舞い上がる着弾点を見やる、だが敵機の撃墜には至らず煙の中からMSが姿を見せる。
特徴的なモノアイと一本角、両肩に備えたスパイク・・・
「B2グフだと、随分マニアックな!?」
機体を見た仁が驚く、
-B2グフ-
一年戦争時開発されたグフのカスタム機であり、「MS-07B グフ」と「MS-07B3 グフカスタム」の中間的機体である。
外見的には左手がフィンガーバルカンから通常のマニピュレーターに変更されている以外目立った違いは無いが、細部の装甲が強化されていたりする。
ジオン公国軍のヴィッシュ・ドナヒュー中尉の搭乗した機体が有名。
「ロックしてしまえばもうあの戦術は使えまい!」
「くそ、こうなったら!」
先程までの戦術は一方的に敵機を捉えられているからこそ有効であり、こうやって姿を顕わにして敵機に捉えられては優位性を失う、敵を燻り出すことが空の策だったのだ。
グフのファイターもそれは承知しているのだろう、装備していたザクマシンガンを放り投げると腰部に装着していたヒート剣を抜く。
森での戦術が敗れたとはいえグフの本領は近接戦だ、油断は出来ない。
しかし、バズーカの爆風に耐え得るあの装甲はビーム兵器でなければ貫くのは簡単じゃない、どちらにしろ懐に入り込まれれば取り回しの悪いバズーカは邪魔だ。
そう判断した空はバズーカを捨てるとバックパックからビームサーベルを抜く。
「グフに接近戦だと!?」
「面白い、一刀両断してくれる!!」
無謀だと驚く仁をよそに二人はブーストで一気に距離を詰める。
「うおおおお!!」
グフが赤く発熱したヒート剣を横に薙ぐ、ヒート剣の一閃はジム改のシールドをバターの様に切り裂く。
しかし・・・
「なに!?」
グフが切り裂いたのはシールドだけでジム改は無傷だった、というのも空はグフの間合いに入った瞬間シールドから手を離し機体を一歩下げていた。
「終わりだ!」
両手でヒート剣を振って隙が出来た腹部にジム改のビームサーベルが刺さる。
モノアイの光が消え、脱力したように倒れるとグフは爆発した。
「な、なんだと・・・」
-BATTLE END-
試合終了の電機音声が鳴り響くと試合を観ていた人々の静寂は空を称える歓声に変わる。
「すっげえ!!」
「最後のところの動きなんて見たことねぇよ!」
「ふぅー、ん?」
戦いに集中していたのか空が歓声に気づいたのは溜息を一つついて落ち着いた後だった。
「すげーじゃねーか空!」
「おう仁。」
そんな空に近づき試合を見ていた興奮をあれやこれやと伝える仁、
「くそ、あいつ・・・」
「邪魔だ。」
遠くでその様子を恨めしそうに見つめ、因縁をつけようとするB2グフのファイター、しかしそれは一人の青年によって中断された。
「あんだてめぇ。」
「敗者は潔く去るべきだ、哀れなだけだぜ?」
グフ使いの男が振り返るとそこにいたのは一人の青年、
その青年が放った一言は彼を怒らせるには十分であった。
青年は激昂し殴りかかってきたグフ使いの腕を避けてその腕をつかむと捻った。
「うがぁ!」
「もう一度言う、負けた奴はさっさと失せろ!」
青年が腕を放すとグフ使いの男は腕を抑えながらその場を去った、それを見送ると青年は空に話しかけた。
「・・・でさー」
「すまん、ちょっといいか?」
「?」
試合後に興奮冷めやらぬ仁と話をしていると知らない男に話しかけられた、背丈や格好からいって多分俺と同い年くらいだろう。
「なんだい?」
「俺とも戦ってくれないか?」
読んでいただき、ありがとうございました。
もしご感想いただけるのであれば製作の励みになります、批評も糧になりますので随時受け付けております。
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第2話 「雷電霹靂」
ライバルキャラなポジションの仲間やヒロインキャラがいて、色んな人に助けられながら主人公が成長していくのは見ていて面白いですよね。
そんでもって燃える展開があれば言うこと無しです。
この小説もそんな感じにしていければいいなと思っています。
「俺とも戦ってくれないか?」
それは唐突な申し出だった、急に俺と仁の前に現れたこいつはそんなことを言ってのけた。
不敵な笑みを浮かべ、自信たっぷりに戦いを挑んでくるそいつは素人目、それでも他のガンダムゲームとはいえ戦いに身を置くものとして瞬時に理解した。
こいつは強いと。
「随分といきなり・・・」
「悪いが俺が話してるのはお前じゃない。」
間に入ろうとした仁を遮ると、俺を見据えて言い放つ。
「勝負を受ける受けないを決めるのは、コイツだ。」
「・・・・・・」
正直に言うと戦いたくてしょうがない、何度経験しようが勝負に勝つというのは相当の喜びを与える、その余韻が腕の中に残っている。
多分それをわかって挑戦してきたのだろう、応えが解っているかのような表情を見せている。
「わかった、受けよう。」
「そうこなくっちゃあな!」
そいつは俺の応えを聞いて心底嬉しそうな顔をするとバトルシステムを挟んだ向こう側に移動した、俺もバトルシステムの前に立つ。
「おいおい・・・」
「悪いな仁、今度こそ壊しちまうかもしれない。」
その台詞を聞くと仁は諦めたように溜息をつき、観戦場所に下がった。
-PLEASE SET YOUR GPBASE-
「いきなり不躾ですまないな、挑戦を受けてくれて感謝するぜ。」
「白々しいな、応えがわかってる上で声を掛けたくせに。」
俺の返しにハハハと笑うとお互いにGPベースを接続する。
-PLEASE SET YOUR GUNPLA-
「あんな戦い方を見せられればファイターとしてたぎるってもんだ。」
「そう言ってくれるのは嬉しいね。」
軽口を叩きあいながらお互いにガンプラをバトルシステム上に置く、こいつとはどこか妙に気が合う。
こちらは相変わらずのジム改、ただしシールドは先ほどの戦いで破損したので装備してない。
一方相手のガンプラは真紅色に塗装されたドムだった。
「ん、紅いドム?」
そのドムを見て後ろの仁が反応する。
-FIELD RUINS CITY-
「俺の名前は雷電 條だ、お前は?」
「春日井 空。」
「やっぱり!?」
名前を聞いた仁が合点がいったように大声を上げる。
-BATTLE START-
「後ろの奴は知ってるみたいだな。」
「そんなに有名なのか?」
「紅いドムの雷電といやぁここの地区大会上位の常連・・・!」
両機共にカタパルトから射出される、ドムは着地すると猛スピードで正面から接近してくる。
「戦場を駆ける紅い雷迅!」
そのドムをロックしてバズーカを撃つが難なく避けられ、減速もせずに突っ込んで来る。
「そう、俺が!」
「は、速い!?」
あっという間に接近されると至近距離からジャイアントバズの砲口がジム改に向けられる。
「雷電 條だ!」
なんとか上体を逸らし、避けようとするがバズは左腕に直撃し、吹っ飛ぶ。
雷電は追撃に後ずさりするジム改にタックルを食らわす。
ジム改はバランスを崩し、ビルに背中から倒れこむ瞬間にドムにバズーカを放つがそれも避けられ、ドムはビルの陰へと姿を隠した。
「あれに反応できるなんて、なかなかやるじゃないか!」
「ちぃ!」
すぐにジム改を立たせるとビルを背にしてドムを待ち構える、こうすれば少なくとも後ろを取られることはない・・・
「悪くない判断だが甘い!」
ドムが建物の陰から出てくるとジャイアントバズを二発放つ、その弾はジム改には当たらなかったがビルに直撃し、その衝撃でビルが崩れ落ちる。
「しまった!」
何とか落ちてくる破片は避けられたが周りは砂埃が舞い上がり、視界が著しく悪い。
相手がその隙を見逃す筈は無く、砂煙の中からヒートサーベルを持ったドムが出現する。
咄嗟にバズーカを相手に向かって投げ、開いた右腕でビームサーベルを抜く、ドムは投げられたバズーカをヒートサーベルで切り落とし、突っ込んで来る。
ドムが懐に入り込んできた瞬間目の前が真っ白になる、ドムの腹部に搭載されている拡散ビームである。
一瞬の思考、視界は見えないがドムが目の前に居るのは確実、止まってても後ろに下がっても切られて終わり。
「ならば!」
「なにぃ!?」
ジム改のブーストを使い前方に突っ込む、予想どおり目の前にいたドムへのタックルが成功する。
雷電も予想外だったようで一瞬怯むがそこは流石にベテラン、すぐに体勢を立て直す。
反撃の暇を与えてはならんとすぐさまビームサーベルで切りかかるが、ヒートサーベルに防がれた。
「大した奴だ、だが!」
そこでドムは鍔擦り合いの状態から素早く身を引くとリアアーマーにマウントされていたMMP-80マシンガンを抜き銃口を向けて引き金を引いた。
この近距離でマシンガンの斉射を受ければ大抵のMSは耐えることはできないだろう、事実ジム改は弾痕だらけになって倒れこみ、爆散した。
-BATTLE END-
試合終了の電子音声と共にバトルシステムが見せていた偽の廃墟が消える。
バトルシステム上には無惨にもボロボロになったジム改とほぼ無傷の紅いドムの姿。
「手も足も出なかった・・・」
結果としては試合と呼べるものではなかった。
油断や慢心が無かったわけではない、しかしここまでの圧倒的な差を見せ付けられ、愕然とする。
バトルシステムの前で眼を丸くしている空に雷電が近づき、声を掛ける。
「悪いな、久しぶりに腕が立つ相手なんで手加減を忘れた。」
「・・・」
黙って雷電の言葉を聞き入る空。
「まあガンプラを借りていたってことは初心者みたいだし、洗礼だとでも思ってくれ、リベンジならいつでも受けるぜ?」
そう言って自分のドムを片付けると雷電は去っていった。
バトル前と変わり果てた姿になったジム改を回収して仁に渡すと二人はベンチに腰掛け、何事もなかったかのように稼動を再開し、賑わうガンプラバトルを遠目に見やる。
「・・・悪いな、仁。」
「気にすんなよ、ガンプラならまた直せばいいしな。」
予想以上のへこみ具合に軽口を叩きながら励ます仁。
その言葉に申し訳なさを感じつつ空は遠くで行われるガンプラバトルを見る。
バトルに負け、感じたのは悲しみや諦めでなく悔しさだった。
それに負けたとはいえ戦っている最中は確かに高揚感を感じた、楽しいと思っていた。
そこで空の頭に雷電の台詞が反芻し、決意をさせる。
突然立ち上がった空に驚く仁に対し空は力強く言い放つ。
「仁、俺はあいつに・・・」
「雷電 條に勝つ!」
いきなりの決意表明に唖然とする仁だが、決意の意味を知ると嬉しそうな顔に変わる。
「よーし、なら付いて来い空!」
空が仁に連れられてきたのは二人が通う大学の棟の一つ、サークルの部室等を集めた所謂部室棟であった。
二人はその部室棟内の一角にある部屋の前に立つ。
その部屋の表札には「ガンプラ模型部」と書かれていた。
この話に出てきた雷電 條、わかる人には名前を見ただけでわかる思いますがジョニー・ライデンがモチーフになってます。
ちなみにこの話のサブタイトルは「らいでんへきれき」と読みます、意味は「急に雷が鳴り響き、稲妻が走ること。」
颯爽と現れて圧倒的強さを見せ付ける稲妻の様なさまと雷電自身の名前を掛けてたりします。
それではここまで読んでいただきありがとうございました、また次の話でお会いしましょう。
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第3話「」
またこれから書いていこうと思います。
空が雷電にガンプラバトルに負けた後、空が仁に引かれて来たのは二人の通う大学の部室棟にある一室。
その部屋の表札には「ガンプラ模型部」と書かれていた。
ここまで連れてこられて改めて思い出す、さっきは勢いで雷電に勝つなんて言ったが、ガンプラバトルをやるというなら当然ガンプラを作るということだ。
しかしながら俺はガンプラを作れない、
もっと的確に言葉を選ぶなら作ろうとしないというのが正しいのかもしれないが・・・、
そんなことは些細な問題で、重要なのは俺はガンプラを作らないということだ。
「いや、今日はいいかなぁなんて・・・」
「いいからいいから、ここまで来たんだ、ちょっとだけだって!」
歯切れの悪い言葉で入るのを拒否しようとする俺の思いを知ってか知らずか仁は模型部の扉を開けた。
「お疲れ様で~す」
「お、お邪魔します・・・」
いつもそうしているであろうとわかる程手馴れた動きと挨拶と共に入っていく仁とは対照におずおずと申し訳なさそうに入る。
部室自体は思ったよりも広いものであったが中は模型部と聞いて想像するような部屋そのものであり、机の上にはニッパーやヤスリ等のプラモデルを作るための工具や塗料、エアブラシ等が置いてある。
「ん、お疲れ~」
「あ、杉本さんお疲れ様です。」
部室内では何人かが机に向かってガンプラ作りに勤しんでいたが、一人が振り返り俺たちが入ってきたことを確認して挨拶を返す、眼鏡を掛けた杉本と呼ばれた男の人は本人には失礼だろうがとてもそれっぽい人だった。
「ん~、入部希望者かな?」
「い、いやぁそういうわけでは・・・」
「実はですね・・・」
相変わらず歯切れの悪い俺の代わりに仁が事の顛末を説明する。
説明の最中に雷電 條の名前が出た瞬間何人かの腕が止まったようだったが、杉本さんは変わらぬ様子で聞いていた。
まずい、このままでは勝手に話が進んでいっていしまう。
「別に入部するって決めたわけじゃ・・・」
「春日井君だったかな?」
「は、はい?」
「詳しい話は部長が来ないとできないから、適当に寛いでいてくれ~」
何とかして話を中断させてこっちの話を聞いてもらおうとしたが、逆にこっちの言葉を中断させられてしまった、どうも杉本さんはマイペースな人のようだ。
しょうがないから部長が来るまで待って部長に自分の意を伝えることにした。
寛いでいてくれと言われたが、何をしていればよいのやらと部屋を見渡していると仁が部屋の一角で手招きしていた、ちょうど仁にも言いたいことがある。
仁が手招きしていた場所にはショーケースがあり、中に様々なガンプラが飾られている。
「ここにはこの部で作られたガンプラの中でも完成度が高いって認められたものが飾られているんだぜ」
「ふーん、お前が作ったものがあったりするのか?」
「ない!」
自慢げに言うから一体でもあるのかと思ったよ、調子のいいやつめ・・・
しかしながら仁の言うとおり、ショーケースの中のガンプラはとても出来がよく、素人の自分にも解るぐらい丁寧に作られている。
「大体な、この模型部にしたって俺は入部するなんて一言も言ってないぞ。」
「でもガンプラバトルをやるならガンプラが必要不可欠だぜ?」
「それはそうだけど・・・」
ショーケースのガンプラを一通り見終わり、仁に文句を言っていると近くの机上においてあるGP01、ガンダム試作1号機のガンプラが目に留まる。
俺はそれに惹かれるように近づき、思わず手に取った。
そのGP01はショーケースに飾ってあるのとは遜色無いくらいに手が込んでる物であり、手の入れ所が徹底して違ってる、スカートアーマー裏のモールドの追加などは最低限に抑えている反面、関節をいじって稼動域を広げるような改造が随所に施されており、言うなれば飾るガンプラというより動かすガンプラといった風だ。
「これは誰が・・・?」
「僕が作ったガンプラだよ。」
声のした方を振り向くとこの部屋には少し不釣合いな、清涼感のある人がいた、さっきまでは部室内にいなかった人だ。
「あ、部長お疲れ様です。」
「この人が・・・」
「ああ、ガンプラ模型部部長の浦川 浩輔だ、よろしく。」
仁いわくこの人、浦川さんが部長らしい。
浦川さんは雰囲気に違わず礼儀正しく自己紹介をして右手を出してきた、握手を求めているのだろう。
「ど、どうも、春日井 空です。」
「さて春日井君、詳しい話は杉本から聞いたよ。」
出された手を握り返すと浦河さんは満足そうに頷き、本題を切り出した。
「まずは君の意見を聞きたい。」
浦川さんは一呼吸置いて続けた、
「君はこのサークルに入るつもりはあるかい?」
とてもシンプルに、本質だけの質問だった。
正直いって入りたいか入りたくないかと言えば半々といったところだ、ガンプラを作らないがそれは興味がないというわけではない、むしろ人並以上にはあるつもりだ、それでもガンプラを作りたいという気持ちは全く起きなかった。
そんな感情がない交ぜになった結果出た言葉はなんとも情けないものであった。
「いや、俺なんかガンプラ作ったことないですし・・・」
まず質問の答えにすらなっていなかった。
空の言葉を聞き、浩輔は続けるように言った
「しかし、ガンプラに興味がないわけではないようだが?」
「えっ!?」
空は心底びっくりした、まるで心を覗かれたように思っていることを口にされたからである、
「ふふ、ガンプラに興味のないものが人のガンプラのスカートアーマー裏なんか見ないだろう?」
机の上に置かれたGP01を見ながら浦川さんは言った、あの動作からでもそれだけのことがわかるのか・・・
「だけど、何かの理由で作っていないといったところか。」
会ってから10分も経っていないのに自分の心情のほとんどを言い当てられた、とても洞察力やカンの鋭い人だ、単に自分がわかりやすいのかもしれないが・・・
空が驚愕して絶句しているので、浩輔は言葉を続けた、
「個人的には部員が増えることは歓迎したいのだが強制するわけにもいかない、だけど君自身答えに迷っているようなら・・・」
そう言うと浦川さんはGP01を手に取った、
「ガンプラバトルで答えを決めようじゃないか!」
まさかの発言にさらに絶句する、さらに浦川さんは言葉をつづけた、
「雷電條に勝ちたいんだろう?なら俺に躓いてもいられないぞ。」
先ほどまでとはうってかわって真面目な表情で語りかけてきた。
そう、ゲーセンで確かに感じたあの悔しさを払拭するために雷電に勝ちたいと言ったんだ、その気持ちに嘘はない。
浩輔の言葉にリベンジの覚悟を思い出した空は顔を上げた、
「・・わかりました、やりましょう。」
決意を新たにした空を見て浩輔は満足そうに頷き、部室内の端に置いてあるバトルシステムを起動させる。
「バトルシステムまでおいてあるんですか・・・」
バトルシステムは普通、ゲーセンだったりおもちゃ屋、量販店などに置いてあるものであり、大学のそれも1サークルが所有しているのは稀だ。
「いやぁうちの顧問が研究用にって言って持ってきたを貸してもらってるのさ。」
どうやらその顧問はバトルシステムを貸してもらえるほどPPSE社とコネを持っているらしい
「」
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