人が生み出した神様の私と世界 (アイバユウ)
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第三新東京大学生の私

サードインパクトが成功したのかについては私にはわからない。

ただ1つだけ確かなのは世界は今日も動いている

停滞ではなく。少しずつではあるが歩みを始めた。

あの誰もが神の手が働いたと言われるサードインパクトから2年後。

僕は、いや、私は碇シンジの名前を捨てて新しい名前で日々を過ごしている

 

今の私の名前は水川カオリ。

第三新東京市が運営している第3新東京大学教育学部で高校生の教師となるために教育学部在籍している

ちなみに今は大学4年生だ。ただ年齢も20歳と私の同じ学年にいる友達より若い。理由は飛び級で進学したからだ。

そのため周りとは少し距離を置かれている。親しい友人は何人かいるが、それでも年齢は少し離れている

ただ私は普通の人とは少し違った経歴がある。それは私が本当は人ではないということだ

別に化け物とかではなく、聖書で言うところの神様なのかもしれない。

サードインパクトが終えた後私は全世界の人々にメッセージを渡した

平和な社会を私は望むと。宗教界は大騒動だ。多くの人がそのメッセージを受け取ったったのだ

架空の世界であったはずの神の存在が実在した。それだけでもおおきい

誰よりも私は罪を犯した人間なのだ。私はお昼のランチを食べようと食堂に来ていると携帯電話に着信が来た

 

「ありがとう。お母さん。ごめんなさい。こんな時に」

 

2年前、道をまるで宛先のない手紙のようにさまよっていた私を引き取って育ててくれたのだ。

私のお母さんは第三新東京市から少し離れたところにある通称:海岸の町で旅館を経営している

表向きは私はそこの近くをさまよっていたところ保護されてたということにしている

私は平和で静かな生活が送りたいからだ。サードインパクトが終了したときあるハプニングが起きた

セカンドインパクトやその後の間に死亡したはずの人が生きていた。

各国の政府は急遽、彼らの記憶している内容からいつ死亡したか割り出すことをした

私はセカンドインパクト以降については何も知らないと答えた

そして名前と戸籍が与えられたが住宅は難しくて、私はさまよっていた

そんなところ、私は今のあの旅館のお母さんに拾われた。私は高校卒業に必要なカリキュラムを飛び級で習得

私は神様なのだから記憶しているのは様々あるのだ。ある意味ではインチキかもしれないが

世界にはいくらでもインチキな世界が広がっている

 

「それじゃ、お母さん。また夜に電話をするね」

 

『待っているから』

 

私はお母さんとの連絡を終えるとおひる用に買ってきていたサンドイッチを食べ始めた

 

「カオリ!」

 

「ルミナさん。相変わらずパワフルですね」

 

同じ学部で同じゼミに所属している同級生だ。

出身地と言うとどうなのかは少し微妙だが、海岸の町に家がある

その家は今は管理会社が整備補修が行われている

 

「そういえば、聞いたわよ。今度、あなたの教育実習先にネルフのチルドレンがいるところじゃないの。どうやったの?」

 

「私は別に好きで行くわけじゃないから」

 

そうなのだ教育実習の一環で現場を体験しておくべきだということで第三新東京市にある高校に行く予定がある

今や遷都される間近の街のしかも彼らと同じ学校にいるというだけでも耐えられないのだが

学部長が我が校としても名誉だからだと何とか行ってくれと説得されてしぶしぶ了承したのだ

できれば関わりたくなかったのだが。こればかりは仕方がない。教育実習に派遣される学校はランダムに選ばれる

私が直接かかわっているものではない。ただ学部長の話を聞けば何か裏があると思えた

 

「でも気を付けるから」

 

私はそう言うと大学の4階の通路を歩いていると外である人の周囲の視線を集めている一団を見かけた。

それは今や世界の正義の味方であるネルフの大幹部である碇ユイの姿が見ることができた

彼女はあるマスコミでの記者会見で探しているピースが見つかるまでは死ねないと

そう語っていた。私にはそのピースが碇シンジ、つまり私であることは容易に想像ができた

 

「何をいまさら」

 

母親づらするならあんなことを計画しなければ良かったのだ。そうすれば普通の女性として暮らせた

なのにあの女は自らの罪が分かっているのかと問いたくなる

私にも責任があることはわかっているが、それでも彼らが行ったものは暗い闇の部分を歩いているのと変わらない

 



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私と碇ユイと教授

私は1階に降りて中庭で缶コーヒーを飲んでいた。

碇ユイは私の姿を見てからまるで私の動きを見張っているのか、一定の距離を保っていた

 

「何かご用件があるのですか?碇ユイさん」

 

「私の事を知っているんですね」

 

「何度かマスコミの報道で見かけただけです。私は騒がしいのが苦手なので失礼します」

 

本音を言えばこんな場所からさっさと逃げたかった

もう彼らと関わるつもりはないと思っていたからだ

 

「カオリ!」

 

そこにルミナが半分泣いた状態でこっちに向かってきて話しかけてきた

 

「ルミナさん!何かあったの?」

 

「ちょっと助けて~、教授がまたどこに行ったかわからないのよ」

 

私たちを指導してくれている高波教授。隙を見せると名前のように波に揉まれたかのようにどこかに行ってしまう

見つけるのはなぜだかは知らないけど私とルミナの仕事ということになっている

 

「わかったわ。教授の執務室は?」

 

「准教授に聞いたけど10分前に外出したって」

 

彼は私が言うのはちょっと失礼かもしれないが優秀なのだが1つ欠点がある

すぐに迷子になる。迷子というよりかはどこかに姿をくらましてしまう。

もちろん探せば見つかるのだが、まるで子供のようにかくれんぼを楽しんでしまう

 

「困ったわね」

 

「大学で一斉放送をかけてみる?」

 

ルミナの提案はわかるが後始末が面倒になることは間違いない

だから私は心当たりがある場所に向かった

そこは新薬の検証のためにラットを管理している大学の研究室だ

 

「高波教授。見つけましたよ!」

 

「水川さん。どうしてここだと?」

 

教授はかなりの動物好きだ。可愛いものなら何でも

ただし、教授が思っている可愛いという部類と私たちの価値観が一致することは少ないが

 

「私の勘です。それで今日のご趣味はラットですか?」

 

「そうだね。可愛いよね。白いネズミ」

 

まるで子供のような価値観を持っている彼。

私もさすがについていけなくなくなりそうだった

 

「動物たちと触れ合うのは良いですけど、お仕事の時間です。それとも誰かと交代しますか?」

 

「君の成績は今までこの大学始まって以来の記録でトップの君なら任せても良いと思うけど。だめかな?」

 

「だめです。教授のお仕事を奪うわけにはいかないので。それに私も単位を落としたら嫌ですし」

 

「飛び級で卒業を迎えれるって聞いているよ。君なら任せられる」

 

確かにそうだ。少し前に学長から言われた。私のような人材を欲しがっているところがあると

どこかと言えば機密だと言いながら1冊のファイルを渡された

ファイルの中身を見て私はショックを感じた。あの正義の味方を気取っているネルフからだった。

私が考案した新しいスーパーコンピュータに関する技術が欲しいと

私は研究さえできるなら場所は択ばないがあそこだけは嫌いだ。汚れた罪人がいるところに何故私をと

 

「教授、私は大学院に進学します。その為にお金を借りたんです」

 

私は海岸の町で私を拾ってくれた母に頭を下げて頼んだ。ただ、大学院への進学をさせてほしいと。

あの人は私になぜそこまで彼らを嫌うのかという理由は何も聞かずお金は何とかすると

母のためにも確実に大学院に進学してより多くの人達にいろいろな大切さを教える教師の道に行きたい

 

 



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私とネルフと逃亡

高波教授を連れて教室に戻ってくるといつものように授業が始まった

困ったものだと私は思いながらも授業を熱心に受けていた

今日の授業を終えると私は校内放送で学園事務棟にある最も高級品が設置されている応接室に呼び出された

 

「水川カオリです」

 

私は緊張しながらもドアをノックしたところ扉の向こうから入室するようにと声がかけられた

わたしはドアを開けるとそこにはあの、私にとって悪夢でしかない3人が立っていた

 

「水川カオリさんですね。私たちはネルフ本部技術部のものです」

 

室内には私の本当の母親である碇ユイ、赤木ナオコ。そしてアスカの母である惣流キョウコがいた

 

「ぜひあなたの技術を共有しませんか?」

 

私の本当の母である碇ユイの言葉に内心では今からでも殺してやりたいと思っていた。

あれだけのことをして、その罪から今も逃れていること。

自分たちが首謀者なのに正義の味方のつもりなのかと

 

「水川さん。あなたが研究発表した新しいスーパーコンピュータに関する研究を私たちと一緒にしませんか」

 

私は今は教員免許を取得するつもりで大学で授業を受けていた。ただし最初は違っていた

最初は私も世界最高峰の技術を生かしたいと思った。だが神様なのだとしたらそれはあまりにも不公平だ

全て平等で過ごさなければならないのだから。だからこそ私は人々が幸せになれるように教師の道を選んだのだ。

教育学部に編入した時は誰もが試験をパスできないと思っていたとルミナが言っていた

私は1問も間違えることなく答えた。だからこそ大学1位の成績を保っている

 

「大変良いお話ですが私は教師の道を選びたいので」

 

私はお話はそれだけなら失礼しますと言って応接室を出ようとした

 

「私たちはあなたのあの論文に興味を」

 

私はそこで思わず怒りを感じた

 

「この際ですのでストレートにお話をしましょう。私はネルフと関係を持つことはありません」

 

私は声にして話さなかったが唇を読めることだろうことは想定できる3人に向かってこう言った

ゼーレの構成員と同類だと

 

「あなた、どこでそれを」

 

碇ユイの言葉に意思は伝わったということを理解することはできた

 

「私、何も知りませんので。では学長。失礼しました」

 

私はそう言って応接室を出ていった。

その後追いかけるように聞こえてきたのは応接室から慌てて出てきた誰かの足音だ。

私はとっさにお手洗い逃げ込んだ。そこには人が1人ぎりぎり通れる窓がある。

2階なので高所であるが捕まるよりはましだ

 

「やるだけやってみるしかないわね」

 

飛び降りると幸運なことに校舎のそばに立っていた木の幹の上に着地した。

ここからなら見つからないと安堵するとともに携帯電話でルミナに連絡を取った

 

「ルミナ、悪いんだけ手伝ってもらえない?この前のあなたが教授に提出するように言われていたレポートで手を打ちましょう」

 

『良いわよ。それで何をリクエストしてくれるの?』

 

「悪いんだけどさ。あなたを通してという形で学長には1週間ほどお休みすると伝えておいてもらえる?」

 

『トラブルってこと?』

 

私はまぁそんなところよと言うとルミナは任せてと返事をすると通話が終わった。

あとは大学敷地内から出ればいいだけだ。



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私とネルフと代償

 

私は裏口から大学敷地を出ようとしたが、気づかれないようにすぐに隠れた

そこにも明らかに怪しげと言った感じの人物とあの人がいたからだ

加持さんだ。

 

「逃げ場はなさそうね」

 

その時私は殺気を感じて少し高めにジャンプして木の幹につかまった

後ろにまで黒服スーツのいかにもと言った感じの男性たちが現れた

 

「ネルフもやり方が汚いわね」

 

「お嬢さんこそ、逃げるのが上手いみたいだね。ここで素直に降参してもいいんだけど。美女の体に傷はつけたくないんだよ」

 

加持さんがそういうのだ。含みを持たすようなセリフに私はわかったわよと言って地面に着地した

 

「悪いけど、君を拘束するよ。どうやら彼らの事を知っているようだし」

 

「あなたに言われたくないわ。草鞋をいくつも履いていた人にね」

 

私の言葉にどうやってそこまで調べているのかより興味が出てきたと言った

加持さんの言葉に私は拷問はないと踏み両手を挙げて降参よと返事をした

 

「美人な女性は大歓迎だが。これも仕事でね」

 

私は彼らとともに第三新東京市のジオフロントネルフ本部に連行されていった

その道中も加持さんは何か手掛かりをつかもうとしているのかいろいろと話の話題を振ってきた

 

「どこかで会ったことがあったかな?」

 

「さぁ、私は他人には興味はないので」

 

「水川カオリ。現在20歳でかなりの美人。良かったら「それ以上言ったら殴りますよ」わかったよ。そんなに怒ると健康に良くない」

 

私は他人に影響されるのが嫌いなだけですと言い返した

しかしだ。加持さんは味方なのか敵なのかわからな。私は冷静な判断が必要だと考えた

 

「1つ聞いても良いかな。畑の事は知っているかな?」

 

加持さんのその質問に私は思わず何のことですかと知らないという返答したが

体が震えてしまった。少し。そこをじっと味見するかのように。

まるで観察するかのように見られた。私はそれ以降、何を聞かれても話をする事もなかった

 

そして私はあの忌まわしきネルフ本部に戻ってきた

 

「初めましてネルフ本部技術部の赤木リツコです」

 

「第三新東京市公立大学の水川カオリです。女の子1人にずいぶんと手間をかけるようですね」

 

「あなたの能力を私たちは高く評価しているのに、あなたは嫌っている。特務機関への勤務となれば栄転だと思えるはずなのに」

 

そう、普通ならネルフへの勤務しませんかという誘いがあれば誰だって飛びつく。

裏事情を知らなければの話だが

 

「とにかく身柄を拘束するから」

 

加持さんたちの見張り付きで嫌な伏魔殿に足を踏み入れることになった

私は白い壁が続く通路を通りながら保安諜報部と思われるオフィスにある取調室に入れられた

取調室には加持さんと私だけとなった。壁代わりのガラスの向こうでは多くのネルフの幹部が集まっていた

私を生み出した碇ゲンドウも

 

 



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私と碇ユイと関係

「自己紹介ぐらいしたらどうですか?」

 

私の言葉に加持さんはそうだねと言うと話を始めた

 

「俺はネルフ本部保安諜報部の加持リョウジだけど。きみはいろいろと知っているようだ。ゼーレの事もね」

 

加持さんは話を続けた。ネルフは新たなチルドレンを探すために様々なことを検査項目に入れて検査してきた

今まではエヴァのコアにチルドレンと愛情という意味での感情のつながりがある両親をコアにする必要があった

ところがだ。発見された新たな手法を導入すればそんな犠牲が必要なくなる。

私は犠牲者を少なくするためにネルフが公表した情報をもとに私はある論文をまとめた。

かつてのような無茶をしなくても良いという。そんな嫌な犠牲をすることをやめて新たな方法を私は提唱した

その結果そんな命の犠牲を払う必要がないことが分かった。

論文のきっかけになったのが私がかなり真剣になって考えた親と子供の関係論だ

プログラミングで疑似的なシンクロを試すという新しい方法を使う

 

「私は水川カオリ。住所は大学の学生寮。言っておくけど、あなた達に協力してやる気はないわ」

 

「僕たちネルフは正義の味方なのに嫌われているみたいだね」

 

「ゼーレの犬だったくせに!」

 

その時私はやばいことをしゃべったとすぐに理解した。うまく乗せられたのだ

 

「どうやらそのあたりについても聞く必要があるようだね」

 

どこで知ったのかなと加持さんは優しく聞いてきたが

 

「知りたいなら拷問すれば。ぼこぼこにして殴ってみれば。あなたには理解できない。ネルフもゼーレも同じ組織なことは変わらない」

 

もう少しで全部喋りそうだった。私はもう喋らないことを決めた。どうせ調べられないことはわかっている

私は表向きはセカンドインパクトで死亡した扱いになっている。それにサードインパクトで記録が一部はわからなくなっている

 

「あなたに質問があるのだけど、良いかしら?」

 

「勝手にすれば。私は何も答えるつもりはないわ」

 

碇ユイ、私を誕生させたのに自分勝手な理論を実証するためにバカな計画に加担した

諸悪の根源だと言っても過言ではない

 

「碇シンジを知っていますか?」

 

私はここであるカードを出すことにしてみた。その反応で答えを選ぼうというのだ

 

「ええ、知っていますよ。私が見届けたんですから。彼が死ぬところを」

 

私の言葉に碇ユイは明らかに動揺していた。

まぁ当然と言えば当然だろうが。あとはどんな反応をしてくるか見ものだ

 

「シンジは死んだの?」

 

「ええ、彼からある言葉を預かってきています。犠牲を払ったのは自分だけだと。彼はそう言い残して自殺しました」

 

遺灰は海に散骨しましたと言ってやった。あとはどういう反応が出るか楽しみだ

 

「うそよね。あなたがそれを証明できるはずが・・・・」

 

私は彼女にスカートのポケットに私が彼と会ったことがあることを示す証拠があると言った

それは葛城ミサトが最後に渡してくれたあのアクセサリーだ。

保険のために持っていたのだ。

 

「これは」

 

「血痕を調べるとわかりますよ。葛城ミサトさんという方のDNAと一致するはずですから」

 

私はこれを切り札にして碇シンジは死亡したものとすることを考えていた

 



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私とネルフと防御

 

私は再び留置施設に移された。暗い部屋で小さな照明だけの部屋だ。

まるで刑務所にいるかのように感じられた。私は軽く眠ろうとしたとき比較的軽い足音が聞こえてきた。

それと共に銃のスライドを引っ張り、金属同士がこすれ合う音も一緒にだ。私は枕を布団に隠した。

まるでそこに頭があるように見せるかのように。私は小細工をしてからベッドの下に隠れた

結果は大当たりだった突然発砲してきた

 

「シンジ君を!」

 

それは葛城ミサトだった。銃声を聞き多くの保安職員が駆けつけてきた

 

「残念だったわね。しくじるなんて」

 

私はベッドの下から出るとわざと銃撃されたベッドの上に座った

これで私が攻撃したとは言えない。相手からの一方的な攻撃だと認識させることができる

 

「あなた、どうして・・・・・・・」

 

「シンジ君から聞いていたんですよ。碇シンジに関わった者は誰もが殺されるとね。だから自ら幕を引いた」

 

嘘ではないが真実であるかもしれない。『僕』に関わってきて生きていた人間は少ない

誰もが何らかの方法で殺されているか死亡していた。

葛城ミサトがこういう行為に走ることは想定内の事だった

 

「シンジ君を返して!」

 

「傲慢な考えですね。自分たちの保身と名誉のために彼を切り捨てた。あの子が絶望の渦中にいたことがよく理解できました」

 

私は自分の言葉で本音をぶちまけた。

彼らが欲しがっているのは普通の碇シンジではなく、サードチルドレンとして利用価値のある碇シンジだ

組織の保身、自らの保身のために彼の身柄を欲しがった

彼らも自らがすべて正しいと思っていない。それだけは理解していたが

保身のために『私』を利用して『僕』の手がかりをつかもうとする。

汚い連中であることが再度よく理解できた

 

「ミサト!だめよ。あの子が何を知っているのか突き止めないといけないことはよくわかっているわよね」

 

「リツコ!でも。あのシンジ君を」

 

私はそこであえて火薬という名の言葉をセリフを声に出して放り投げてやった

 

「誰もがあの子を1人の人間としてではなく道具としてしか見ていない。自分の状況をよく理解していたようですね」

 

「シンジ君は最後まで私たちのために」

 

「赤木リツコさんでしたね。人類補完計画のために碇ゲンドウと寝たこともあったとか。いろいろと教えてくれましたよ。彼は」

 

私はさらに多くな爆弾を放り投げてやった。あの人もミサトさんのように攻撃してくるか。

私の中では少し今の状況を内心は楽しんでいた

 

「あなたの言葉に弁解する余地はないわ」

 

「素直ですね。シンジ君から聞きましたよ。綾波レイの予備の体に何をしたのか」

 

「あれは!」

 

「りっちゃん。ミサト。ここは俺に任せてくれ」

 

「加持君」「あんたね!」

 

2人を抑えたのはいつの間にか入ってきたのは加持さんだった。

私としては楽しめる時間が無くなったことに少し残念そうな声で答えた

 

「せっかくここまで火種を燃やしたのに」

 

「君を今死なせるわけにはいかないからね」

 

 



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私と加持さんとの話し合い

私は留置施設で加持さんと1対1となって話を始めた

 

「君はかなり今の状況を楽しんでいるみたいだね」

 

「そう見えるならそうなんでしょう。私にはどうでもいいことです」

 

「シンジ君とはいつ出会ったのかな?」

 

加持さんの当たり障りのない話で私から情報を引き出そうとしてくる感触を感じていた

 

「話せば長くなるからやめておくわ。彼からこう言われた。ネルフに関わって生きていた者はいないのと。どうせ殺すなら殺せばいい」

 

「ずいぶんと自分から喋ることはないと自信があるみたいだね」

 

「あなたこそ余裕があるみたいだけど、彼に責任を押し付けた。何もかもね。ゼーレの犬だったくせに」

 

加持さんはゼーレの鈴だった。ただしあまり機能していたとは言えないが。

今ゼーレの残党がどこにいるかは知らないが。私はネルフにもゼーレにも情報を渡してやる気はない

 

「そういわれると俺としてもつらいところだね。簡単な質問から始めよう。君はいつこの世界に戻ったのかな?」

 

「私は2年前に戻った時に彼と出会った。その時、世界は生まれ変われると信じていたのに裏切られたと言っていましたよ」

 

「ほかに何を言っていたのかな?」

 

「加持さんというのはあなたですね。伝言を聞いています。畑を守れなくてすみませんと」

 

彼は私に君はずいぶんとシンジ君と親しくしていたんだねと返してきた

確かに私としても畑の事を話すことで情報の精度を上げて。

ネルフ側にさらなる混乱を招いてやるという、いたずらのようなことを考えていた

 

「君は本当にシンジ君と知り合いのようだね。俺の畑の事を知っているとなるとそれもかなり親密な関係だったのかな」

 

「それはあなたと葛城ミサトの男と女の関係みたいと言うなら違いますからお間違いなく」

 

「君は俺が思っていたよりよほど詳しいみたいだね。興味がすごく出てきたよ。それでほかに何を教えてもらったのかな?」

 

私は当たり障りのない内容で話を続けた

 

「あなたがゼーレと日本の内務省とネルフの3股をしていたのは家族が死んだ本当の理由を知りたいから。当たってますよね?」

 

「確かにそうだよ。それでシンジ君は死んだと言っていたよね。君が死ぬ方に仕向けたのかな?」

 

「私は彼にこういっただけです。決断した結果は自分が考えた中で最もベストなものだと」

 

「それが自殺だとしてもかな?」

 

「あの時彼は周りに迷惑をかけたくなかった。だから私に最後の伝言を残して自らで幕を引いた。私は彼の語り部でしかない」

 

「ほかに君に仲間はいるのかな?」

 

「私だけと思っているならそう思えば良い。私達はグループで行動しない。スタンドプレーによって生じたチームワークだけが繋がり」

 

私はそれだけよと言うと小グループだけではないというように話を誘導した

こうすれば彼らはより警戒する。もしかしたら第2、第3の私のような存在が現れるのではないかと

見栄を張っているだけでも重要だった。私の狙いはうまく彼らの思考を困惑の方向に誘導すること

 



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私とネルフの関係と家族

第三新東京市 地下ジオフロント ネルフ本部

 

シンジの父としては彼女がシンジを本当に見殺しにしたかという点において不審に思っていた

シンジにした我々の行動はあまりにもひどいものだということはわかっている

到底許されるものではない。だからこそ水川カオリの事情聴取は慎重にする必要がある

ユイが大学で彼女を引き抜こうとした時に声にはせず、読唇術だけでしかわからないゼーレという単語

一般人の彼女が知るはずがない。つまりどこかでその情報に触れる機会があった

 

「あなた」

 

ユイの心配そうな声と表情に私は大丈夫だと返事をした

 

「彼女は本当に?」

 

「おそらくだが。シンジのことについてかなり詳細な情報を持っている」

 

「どうするつもりですか?」

 

ゼーレの幹部だった連中の所在については今のところ分からない。

まるでそこだけ切り捨てたかのようにゼーレの関係者の消息が分からないのだ

それは神の仕業なのかどうかはわからないが

 

「我々には彼女が持っている情報が必要だが。強引に進めるわけにはいかない。お互い協力的に話を進める」

 

昔の私なら手段を問わずにやっていたかもしれない。汚いこともしてきてこの立場にいるのだから

世の中、きれいごとだけで生きていけるほど世界は寛容ではない

だがシンジの関係者なら誠意を見せるべきだ。罪を認めるべきだ

世界の人々に対してネルフが正義の味方であるという工作をしたのは我々だが

あの『神の声』でもネルフによって正義がもたらされたという含みのある言葉

それによって我々は存続されているのだ。普通ならもう抹殺されているのに

シンジがもしその神なら我々はシンジによって救われたことになる

恩を仇で返すのは昔の私なら容易に行っただろうが今は違うのだ

真実を知ることが重要だ

 

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ネルフ本部留置施設

 

「君とは友好的に話をするようにと指示を受けているからね。拷問のような真似はするなと」

 

「非人道的な事ばかりしてきたネルフからそんな言葉が出るなんて。いったい誰の影響でしょうね」

 

私は加持さんからの言葉に驚いた。

非人道的行為をいくつも続けてきたネルフが今更私に攻撃を仕掛けてこないとは

 

「上が君に対しては交渉で対応するようにとのお達しでね」

 

「彼が言っていたこととは真逆ですね。必要ならどんな手段も利用する。冷酷な組織であり家族だと言っていたのに」

 

それは『僕』から見た父の印象だった。

あの時の親子関係は普通ではなかった。ただ碇ユイに会うためにしか利用できるかしか見えなかった

その事は今でも覚えている。鮮明に

 

「シンジ君の遺志を持っている君を攻撃すれば何が出るかわからない。君を恐れているんだよ」

 

「そうやって私から情報を引き出そうとする。本当は私なんてどうでも良いんですよね。ネルフが欲しいのは真実ではない」

 

その言葉に加持さんは困ったような表情をしていた。本気ではなくおそらく演技だろうが

 

「シンジ君は何かほかに言い残していないのかな?」

 

「あなた達は彼をどうしたいんですか?英雄だと言って他の子供たちのように英雄視させたいのか」

 

そう、私も見極めなければならない。彼らが『僕』に何を求めているのか

 



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私と加持さんと葛城ミサト

 

「シンジ君には俺としても謝りたい。彼にはいろいろと迷惑をかけた」

 

「そうですか。もしそうしたいなら天に向かって謝罪すればいい。それだけです」

 

私は加持さんからの質問に慎重に言葉を選びながら答えをしていた

 

「君が俺たちを挑発しているのは何か狙いがあるのかな?」

 

「それはどうでしょう。もう1度言いますが、拷問でもしますか?手をつないで仲良くなんてありえない世界なんですから」

 

確かに私は挑発をしている。もちろん相手が怒るように仕向けるためだ

ネルフ関係者がどう出てくるか。その緊迫した空気を楽しんでいた

 

「君の狙いは何かな?ネルフへ協力する気がないということは昔の俺みたいにゼーレの犬になるつもりかな」

 

「ゼーレもネルフも嫌いよ。私が求めるのは平和な世界。ネルフやゼーレはそれを妨害する組織というのが私の認識よ」

 

「シンジ君に相当教え込まれていたようだね。でも、もうあの時のネルフは存在しない」

 

かつてネルフは限られた者しか知らなかったが今では公開組織となっていた

そしてそこに就職や所属できたものは名誉なものだった。何も知らないからこそこう理解できるのだ

私には憎しみしかない。自分勝手ではあるが彼らに好印象は持てない

さんざん僕を利用してもう解決したのだから仲良くなりましょうなんて

そんなの都合が良すぎる

 

「口では何とでも言えますよね。本当はあなた達も思っているのではありませんか。私がゼーレのメンバーだと」

 

「碇指令は君の事をかなり気にしている。それにシンジ君のことまで知っていて昔の俺たちのように利用しなかった」

 

それだけでもゼーレとは少し距離が置いていると考えるべきだよと加持さんは言った

まぁ私には別にどうでもいいことだが

 

「私に遺志を残して彼は去った。彼がいないなら好きに料理したらどうかしら?」

 

「加持!私に取り調べをさせなさい!」

 

そこに別の職員たちにによって封鎖されている部屋のかぎが開けられて葛城ミサトがが入ってきた

私はまたしても嫌な思いをする者もいるだろうが殺されて本望だと思っているので挑発した

 

「彼にすべての責任を押し付けた葛城ミサトさんが何のつもりですか?」

 

「何ですって!」

 

「神様は最後に幸福になれる方法を授けたのにすべての人がそれに納得したわけではない」

 

「それはつまりシンジ君のことだね」

 

「加持リョウジさん。あなたならわかるでしょう。紙一重であるということは」

 

「まぁ一線を越えたらもう止まらないな」

 

「私は一線を越えてトランプで言うところにババを引いた。それだけの覚悟をしているからよ」

 

「シンジ君が持たせたのかな?」

 

「彼は私に強制はしなかった。ただ、遺志を紡ぐ物語を1人だけでも残すことを課題としていた」

 

 



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私と渚カオルと話し合い

 

「どうやら利口な会話をすることができるのはあなたのようですね」

 

私は加持さんと話を続けていた。葛城ミサトは留置施設の外に強引退室をさせられていた

 

「シンジ君の遺志。君はそんな爆弾を背負っていくだけの覚悟があると?」

 

「ええ、それが彼の最後の遺言ですから。与えられた仕事はします。彼のためにも」

 

私はもう碇シンジではない。そんな人間が存在するはずがないのだ

 

『トントン』

 

加持さんは今日はお客さんが多いようだと言うと扉の鍵を解錠した

扉の向こうには渚カオルがいた。忌まわしき過去を思い出す。最後にとどめを刺してくれたのだから

 

「少し良いですか?」

 

「勝手にすれば。私は何も語るつもりはないわ」

 

渚カオルの言葉に私は迷惑だと言わんばかりの口調で答えた

加持さんは少しの間、2人だけにしてあげるよと言うと留置施設を出ていった

 

「初めましてかな。渚カオルです」

 

「今はエヴァのパイロット。でも少し前は使徒だった。彼に最後の絶望をあたえた」

 

「シンジ君は自らの望みを果たしたのかな?」

 

「彼はきっと後悔しているわ。救う価値のない人間ばかりを救ってしまったと」

 

私の言葉に渚カオルはそれはそうだねと答えた

どうやら彼は自覚があるようだ。どれだけひどいことをしたか。

あの儀式の中で最も罪深いことをしたのはネルフとゼーレの関係者だ

 

「仮にそれがシンジ君の遺志だとしても、なぜ止めなかったのか教えてもらえるかな?」

 

「それが彼の遺言だから。託されたことは引き継ぐべきものなのだ。どんなに残酷な告知でもね」

 

「シンジ君は僕のことについて何か言っていたかな」

 

「すべてはあなたが最後の扉を開けたと聞いているわ」

 

私があんなことをしたのは人を信じすぎたからだ。

少しでも状況が変わっていたらまた別の選択肢もあっただろう

だがそんなものを今考えても仕方がない。私にとってはあまり相手にしたくない相手だ

あの儀式について知っている人間と会話をすることは望ましいことではない

 

「否定はしないよ」

 

「他のネルフ所属のチルドレンとは違うみたいね。それで話は何かしら?」

 

渚カオルは冷静に話しかけてきた。

彼は自らがどれほどの罪人なのかについて自覚はあるようだ

 

「君ならシンジ君の遺灰を散骨した場所が分かると思ったから。彼に対して謝罪をしたいんだよ」

 

「何もかも今更ね。何を言うかと思えば散骨場所を知りたいなんて」

 

「君は咎人であり続けるのかな?」

 

私はその言葉に怒りが湧き出しそうだったが。

ここで相手のペースに乗ったらすべてが無駄になる

冷静に対応することが望ましい

 

「私にはわからないわ。そればかりは天国に行った彼にしか」

 

私はそう言うとその後は一切話をすることはなかった

元々、会うような連中ではない。ネルフもゼーレも同じ闇が深すぎる組織なのだ

 



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私にとって救いの手

第三新東京市 地下ジオフロント ネルフ本部

 

「碇、ネルフが彼女を誘拐したと通報が入ってきている」

 

冬月の言葉に時間がないことがすぐにわかった。今の段階では何の罪もない女性を拘束している

マスコミは騒ぐであろうことは容易に想像できた

いくら特務機関とはいえマスコミによる世論1つでこちらに対する立場や評価が決まりかねない

私はシンジだと思いたいのかもしれない。あの女性を。だがそれを証明することは現時点ではできていない

DNA鑑定をさせたがシンジのものとは一致せず、私とユイの親子鑑定でも一致しなかった

つまり彼女は本当にただシンジの最後を見届けただけなのか。

そう考え始めた。そこにユイが入ってきた

 

「どうするつもりですか」

 

「結果は何もわからない。とりあえず今日のところはこのあたりでやめておこう。強引に行ったと知られるとまずい」

 

私の言葉にユイもそうですねと答えた

このまま国連まで介入してきたら危険な展開になることは確実だ

私たちを話をしている時に冬月が持っているタブレットにあるテレビ局の報道が映し出された

それを私に見せた

 

「新聞だけじゃない。大手テレビ局までもがこのネタに食いついてきた。まるで図ったようなタイミングで」

 

「冬月先生、彼女がここにいる事は知らないと思いますが」

 

いったいどこからリークされたのか。

このまま報道が過熱すればネルフの方針にまで影響は出てしまう

私は決断した

 

「当面の間は彼女には手を出さない方針で行く」

 

私の言葉に冬月は本当に大丈夫なのかと。ユイも冬月と同じ考えを持っているようだ

もし彼女がシンジの生まれ変わりならば謝罪をしたい

だがそんなことをしても過去は変えられない。

我々はひどいことをした。シンジが神になっていたのなら我々は救われたのだ

あと少しでゼーレと同じ道を行くはずがシンジが託した言葉のおかげで正義の味方をしていられる

もし彼女がシンジの生まれ変わりなら、こちらも誠意を見せるべきだ

犯した罪の代償は払う覚悟はできている

 

-------------------------------

 

私はネルフの留置施設に収監されていながら何か面白いことはないかと考えていた

そこにドアを開けて加持さんがやってきた

 

「君を釈放するよ。これ以上身柄拘束をするだけの材料もないからね」

 

「もしあったら私は自分で自分を殺しますよ」

 

そう、ばれたら死ぬ覚悟はできている。すべては今更なのだ

今更握手などをして仲良くなんて誰がするものかと

ワザと私を殺す方向に話をもっていっていた

 

「君とは長い付き合いになるかもしれないね」

 

加持さんの言葉に私は終末はくるものよと言う。

彼は私が入っている留置施設の檻の扉が開けられて出ることができた

彼のエスコートによって私はジオフロントから出ていき正面ゲートを出ると地上に戻った

 



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私とネルフとゼーレ

その日の夕方、私はネルフがあるジオフロントを出ると住居である大学近くの学生寮の戻った

気分としては最悪。誰が警察に連絡してくれたのかわからないが

ある意味では助かったともいえる。もう少しでぶちまけそうになったからだ

 

『ルミナだけど、今は大丈夫かしら?』

 

私は玄関のドアを開けると心配そうな表情をしたルミナさんがいた

 

「もしかして」

 

私はある可能性を感じた。警察などにいろいろと通報したのがルミナさんではないかということだ

 

「いろいろと迷惑をかけてごめんね。レポートは今夜中にも作成しておくわ」

 

「いつも悪いわね」

 

困った時はお互い様でしょと言った。私たちはライバルでありながら親しい友人

親友ともいえる関係だ。少し年が離れているが親しい友人であり、信頼できる

 

「1つ聞きたいんだけど、もしかして警察に」

 

「気になって上から見ていたの。そうしたら連行されていったからあわてて」

 

どうやら予感的中だ。でもおかげで私はいつも通りの大学生活に戻れる。

それはそれでうれしいものだ

 

「わざわざありがとう、レポートは今夜中に仕上げておくから、明日の朝には渡せるはずよ」

 

「忙しいのにごめんなさいね」

 

ルミナさんは私がネルフについてあまり近づきたくないことであるということを知っていた

 

「今度合コンするんだけど参加する?」

 

「私がそういうのは嫌ってるのはよく知っているでしょ」

 

ルミナは私のようなきれいな人ならだれからでもアタックされるはずと声をかけてくる

美人なんだからもったいないわと言うと自分の寮の部屋に戻っていった

私は咎人なのだ。愛される資格は持っていないと再度認識させられた

罪人であることは間違いない。何もかも元の元通りしようとしても結局うまくいかなかった

サードインパクトの被害者だけ救うはずが。多くの人を見て私はこう思ってしまった。

咎人の証を見せつけられたと。死者をよみがえらせる。

いくら世界が混沌としてもやってはいけないことだ

生きている者はやがて死を迎える。なのに私は絶対に侵してはならない誓約を侵した

あってはならないことであることは間違いない

私はとりあえずルミナさんの代わりにレポートを作成する

全てのレポートを完成させたころには翌朝の午前4時になっていた

少し休もうとするためにベッドの上に横になった

今まで止まっていた時計が動き始めた。そう思うしかないのか

私は静かに大学生活をしている事に平和を求めていた

だがまたしてもそれを乱そうとする者たちが現れた。面倒なことだが警戒しながら外を窓越しに確認した

 

「私って貧乏神なのかしら」

 

外には私を捕捉するためだろう。多くの戦闘服を身にまとった軍人がいた

 

「逃げるとしましょう」

 

寮のすぐ隣にある広葉樹林の木に飛び移った。するとボーガンの木の幹に刺さった

誰の仕業なのか。私は考えた。ネルフなら生んだ生まれたの関係になるならやりかねないが

だが彼には取り戻したかった妻がいる。いきなり攻撃というのは趣味じゃないだろう

 

「となるとゼーレか。どなたかしら?」

 

「我々と混沌としたこの世界を綺麗なものにしないかね。我々は君の手腕を必要としている」

 

「欺瞞ですね。人はそれぞれの考えを持っている」

 

「我々から逃げれると?」

 

「1秒でしてあげる」

 

私は神様の特権を行使したパターン青のATフィールドを展開した

するとそこら中から一斉に緊急避難命令のサイレンが鳴りだした

まだ遷都されようとしていても機能は生きているようだ

 



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私と大学生活とトラブル

 

私の行動に彼らは銃火器を向けてきたがすぐにATフィールドを展開した

こういった状態は避けたいが仕方がない

一斉に緊急避難を伝えるサイレンが鳴った

 

「貴様!」

 

「これであなたたちはどうするのかしら?」

 

私はそんなことをしながらある事を別の事にも神様の権限を使った。

世界中のメインコンピュータを使ってのMAGIへのハッキングをするため様々な能力を使って処理していた

こちらの情報が漏れないようにするための工作だが

使えるのは1回だけだろう。同じ手は通用しないことはわかっている

だから緊急避難的な使い方だ。それほど時間は稼げないが、この場を乗り切れば

 

「お前たち!何をしている!」

 

そこにこの大学の警備員の男性が駆けつけてきた。警備担当官が来ると彼らは去った

私と警備員の男性は近くのシェルターに入った。このシェルターには多くの人々が入っていた

数分後、安全が確認されたのか自動音声でトラブルが解消されたという情報が流された

あとはネルフ次第だ。さっきの行為についてはMAGIがデータを消去してくれているはずだ

ただ、人のコントロールまではできない

 

「せっかくの大学生活に影が差してきたわね」

 

私はそう愚痴る。

これ以上ネルフと関りを持つようなことは避けたい

せっかくの大学生活を過ごしているのだから

今までで最も楽しいと感じて楽しめていられる

 

「カオリ!」

 

「ルミナ。朝早くから大変ね」

 

「まったくよ。こういうのがあるってことは訓練で知っていたけど、突然なのが怖いわよね」

 

彼女の言うとおりだ。ネルフはまた使徒が来ることを懸念している

使徒だけではない。ゼーレからの攻撃。行方が分からなくなっている量産型のエヴァシリーズ

私は神様の特権で抹殺した。もう普通の人に苦しみをあたえたくない

 

「ルミナ、レポート完成させておいたから。あとで取りに来て」

 

「わかったわ。ありがとう」

 

「今日はおいしいご飯でも食べに行きましょう。もちろん、私が店とお金は私が持つし心配しないでいろいろと楽しみましょう」

 

「うれしいわね。期待しているわ」

 

こう見えても私は寮で自炊をしているがあるアルバイトをしていた。

女性雑誌で読者向けにおいしいレストランなどを紹介するコーナーの記事を書く仕事

私は食事代を出版社が出してくれるのでこの仕事をしている。少しでも必要なお金を稼ぐためだ

海岸の町のお母さんばかりに負担をさせないように努力している

私にとっては大切なお母さんだ。私のことをいつも心配してくれている。

だからこそ生きていこうと思うのだろう

見ず知らずの私を引き取ってくれて、さらに私を応援してくれているお母さんのためにも

私は何としても教師になりたいのだ

 

 

---------------------------

 

第三新東京市 地下ジオフロント 会議室

 

「使徒の反応が出たのに所在不明ってわけね」

 

「ミサト、彼女を警戒するのもわかるけど。あの時全世界ネットワークから一斉サイバー攻撃でマギの能力にもダメージがあるわ」

 

会議室では使徒を示すパターン青の問題について検証していた

ミサトはどこかに使徒がいると思っている。

ただしその予想が当たっているとも間違っても今のところ判断はできないということだ

 



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私と夢と目標

 

私は朝に食堂でいつものように朝食を食べていたが

友達たちとの共通の話題はネルフについてだ

私は関わるつもりはないのだが。そうはいかなくなっている

 

「でも特務機関に進路先から名前が上がれば名誉よね」

 

確かに何も知らない人たちにとってネルフ就職は栄転なのだろう

私にとっては地獄だが

 

「ねぇ、カオリ。どうしてネルフへのスカウトを断ったの?」

 

「ルミナさん。私の今の課題は世界中で子供が子供として過ごす事ができない事を撲滅すること」

 

そう、今も世界は大きな動きがある。私が神様の特権を使ったからだ

セカンドインパクト前の状況に戻した。生態系も自然もすべてだ

私は平和になると信じていたのに結果は泥沼の状況が国外にはある

そんなところに子供として過ごす事ができる場所を作り出して戦争をやめさせる

それが私の今の目標なのだ

 

「あなたらしいわね」

 

「そうでしょ」

 

「戦場のピアニストならぬ、戦場の教師ってわけね。ちょっとかっこいいわね」

 

子供たちが戦場に参加する必要がなくて、子供らしく過ごせる時間を作り出す

それが私の今の目標。大きすぎる夢かもしれないが私にはそれが世界のためになると信じている

私は人が平和に暮らせる世界になる事を望んでいる

争いなどせず、命のやり取りをするような戦闘で子供たちが犠牲にならないような社会

理想を語りすぎているかもしれないが、私にとってはそうなのだ

神様の特権にはいろいろと制約がある。

だからこそ、1人の人間として、教師になって子供たちを導いていきたいのだ

平和な社会で子供たちが子供らしく暮らせる社会

そんな理想ばかりを語っているかもしれないけど、私としては現実にしたい目標だ

人は愚かさを忘れてしまう生き物だ。

それを思い出させるのは教師の仕事でもある

 

「それにしても私にも来ないかな。ネルフからのスカウト」

 

ルミナさんの言葉に私は譲ってあげようかしらと答えるとやめておくわといった

 

「私もカオリと同じよ。世界中が平和になって互いに優しさを持って暮らせる世界が望みになってきたのよ」

 

「どうして急に?」

 

「教授に言われたのよ。高望みばかりをしていると足元を取られる。きちんとした目標を定めていかないと仕事はできないってね」

 

高波教授らしいコメントだ

教授は時に私たちによく考えて生きていくためにということをわからせるためなのか課題を出してくる

難しいものが多いが、それでもその課題は重要なものであることが多い

だからこそなのかもしれないが高波教授の授業は人気がある

私もそんな教授のところが好きだ。だからこそ必死になって授業を受けているのだ

 

 



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私とルミナさんと休日の過ごし方

 

今日は授業はない。私は昼からアルバイトの料理店の評価の仕事に行く予定だ

ただし今回は1人でというわけではなくルミナさんと一緒にだ

2人の方が勘づかれることはないだろうと思っているし約束だからだ

 

「それで今日はどんなメニューなの?」

 

「イタリア料理。いやだった?」

 

「おいしいなら何でもOKよ。おまけにおごってくれるならなおさらね」

 

私たちはそんなことをしゃべりながらバスで市街地中心部に向かっていた

ようやく勝ち取った幸せに満ちたこの生活を続けれるならどんなことでもやってのける

私はもう碇シンジじゃない。全くの別人として生まれて生活しているのだから

 

「それにしてもいい仕事よね。おいしい料理を食べてお給料が出るなんて」

 

「でも苦労が多いのよ。判定員と気づかれないように料理屋を回るのって」

 

「それもそうね。何度も来ていたら怪しむかも」

 

「だから今日はルミナが目くらましの代わり」

 

「私はおいしい料理がただで食べれるなら何でもOKよ」

 

私たちはそんなことをしゃべりながらバスで街の中心部に向かっていた

平和な日常だ。私が最も求めていたものかもしれない

心から信頼できる友人との出会いと交流。

私にとっては幸せな日常だ。

 

「ねぇカオリ。教師になって世界中を回るって言っていたけど。つらいこともあるわよ」

 

「それでも世界が少しでも良くなるなら、私は子供たちが子供らしく育つことを願っているの」

 

「それについては私も同意見だけど。世界は危険よ。紛争状態になっているところもある」

 

私が世界を元に戻したのに人間は争いをやめようとしない

世界が進むには争いが義務付けられているのだと思えるほどに

そんな世界で生きている子供たちを1人でも子供らしく過ごせる世界に戻してあげたい

少年兵などが存在しない世界を目指したいのだ

 

「幸せは待っていても来ない。だって子供たちは幸せを知らずに育ったから戦場で戦うことになるのだから」

 

私は1人でも多くの子供たちを助けたいのだ。

誰もが幸せに生きていくことができる世界

戦闘や紛争という悲しい世界の中で失われていく命

犠牲者が少しでも減るなら私はどんなことでも頑張っていく

 

「ねぇカオリ。今度の教育実習は結局どうするの?」

 

「仕方がないと思うしかないわ。それにこれ以上大学にもお母さんにも迷惑はかけられないし」

 

「よかったら教授に変えてもらえるように話を一緒にしてみる?。教授だったら無理な人事配置はしないと思うし」

 

ルミナの言うとおりだ。今のままでは必ず彼らと接触する

そういった事態は避けたいが、不審な行動を見せるとネルフの闇に引っかかる可能性がある

その為にも今はこのままの状況を保つべきだと私は考えた

 

「ルミナ、あなたの温かい言葉には感謝するけど教授に迷惑をかけられないわ」

 

私はそう言うと再び今日行く店の話に戻した



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私とルミナさんと食事

 

私とルミナはイタリア料理店の前に到着した

若い女子大学生ということもあり怪しまれることはまずないだろう

お店に入ると店員が2名様ですかと聞いてきた

 

「はい。席は空いていますか?」

 

「空いておりますのでご案内します」

 

私はさすがは雑誌が取り上げるほどの人気店だと思った

お店の店員の対応なども評価基準に入るから気を付けるところだ

私たちは空いているテーブルの席に座るとメニューを見た

私が頼む料理は事前に出版社から指定されているのでそれを頼むだけですむ

でもルミナさんはただで豪華な食事を食べられることのうれしさからじっくりとメニューを眺めていた

私はメニューを選びながら様々なところをチェックしていた

この判断によっては店のお客の人数に大きく影響するだけに手は抜けない

メニューから選んだようなそぶりでお店の従業員に料理を依頼

それを頼んで待つ間に周囲の観察を続けた

 

「ルミナさん。好きなメニューを食べて良いんですよ。払いは私が持ちますから」

 

「でもね。どれもおいしそうで迷っちゃって」

 

それから少しして食べるメニューを決めたようで注文をした

それと入れ違いに私のところに注文したメニューの料理が到着した

私は慎重に食べながらも、味を確かめていた。ここの今の星は3つ星だ

この店を利用したお客様からの投稿について不審な動きを見せたと

だから私が来たのだ。ルミナさんというデコイを使って

あまり良い方法とは言えないが、雑誌を出版している企業の信用度に関わる問題だ

それだけに細心の注意が必要なのだ

私の前にも2人の調査員が店を様々な角度からチェックしていたが

少し味が落ちているとの評価を下していた

私はその最後の担当だ。私の判断1つで料理店の命運が決まるだけに気は抜けない

味は以前は深みがあったのだが今回はそれが薄れていた。

少し何かをごまかしているかのように感じられたのだ

 

「おいしいわね。カオリ」

 

「ええ、その通りね。雑誌の評判通りで」

 

私はあえて雑誌の評判通りと話した

 

「当店は洗練された食材を使っていますのでご満足いただけると思います」

 

厨房からシェフが現れてそう言った

 

「いかがですか?」

 

「おいしくいただいています。さすが料理本の格付けに載っていると思います」

 

私はそれとなく話を合わせながら店内の空気を探った

小さなミスも許されない。立場が漏れるわけにもいかない。

難しいものだけどしかたがないと私は自分を納得させて話をつづけた

私はしっかりと味の評価をつけながら食べていた

完食するとルミナさんと一緒に退店した

 

「どうでした?」

 

「私は満足だったけど。カオリは違うって顔をしているわよ」

 

「仕事ですから」

 

私としては以前に訪れた時に比べて味が落ちたように感じられた

そのことを出版社にレポートとして報告したらお仕事完了だ

 



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私と碇レイと電話

 

その日の夜、私はルミナさんと寮に戻るとレポートを作成してインターネットで報告していた

 

『そうか。君もそう思うか』

 

「はい」

 

私は私たち調査官を統括している人とインターネット会議をしていた

どうやら、ほかの調査官も意見は一致しているようだ

 

『明日、夕方の会議の時に会社に来てもらえるかね』

 

「わかりました」

 

私はそういうと通信を終えた。

あとは実際の感覚を報告したらお仕事は終了だ

 

『ピーピーピー』

 

私の携帯電話に非通知設定をしている電話機から着信があった

私は嫌な予感を感じながらも電話に出た

 

「もしもし」

 

『はじめまして碇レイと言います』

 

予想はしていたが行動が早い。今更になっていったい何を狙っているのか

気になるところだ。ここは情報を引き出すことにした

 

「有名人のあなたが私に何か御用件ですか?」

 

エヴァのチルドレンは英雄視されている。

そんな人物が私に連絡してくるとは理由はおおよそ察しがついていた

『昔』の私について知りたいのだろう

だが話すことはない。何もかもが今更なのだ

すべては終結している。私の中ではだが

 

『あのもしよければお話をしたいのですがどこかでお会いできませんか?』

 

「申し訳ないけど、大学の授業が詰まっているから難しいの。ごめんなさいね」

 

本音を言えば会いたいなんて思っていない。むしろ毛嫌いしている

すべてを私から奪ったのは彼らだからなのだから

 

『ご迷惑なことは重々承知していますが、面会できないでしょうか?』

 

「悪いけど、私は孤独が好きなの。静かな生活をしているのを邪魔されるのは嫌いなので」

 

私はそういうとでは失礼しますと言って電話を切った。

いろいろとネルフも攻勢をかけてきた。さらにゼーレと思われる組織も現れてきた

もしもの場合に備える必要があるため私は壁のフックに引っ掛けていたリュックを手にした

その中には拳銃が入っていた。グロック17が1丁と予備のマガジンが3つ。そしてお金だ

100万円が入っている。ある研究をしていた時に特許を取得してその技術を欲しがる企業から特許使用料としてもらった

さらにクリーンな身元ID。いわゆる緊急事態に備えたクラッシュキットだ

いつでも逃走できるようにするための道具だ。万が一にと思って用意していたものだがそれが必要になるかもしれない

できることならこれは使いたくなかった。ようやく勝ち得た平穏な生活から逃亡者になるのだから

幸せな世界から逃げることになる。私としてはそういうことは避けたかった

だが現実を見なければならない。理想だけでは生きていくことはできないのだから



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私と教育実習先と交渉

 

翌朝、私が目を覚ますと学生寮から大学へと歩いているとルミナさんが後ろから抱きしめてくれた

 

「カオリ、何か悩みがあるなら相談に乗るわよ」

 

「大丈夫。ちょっと寝つきが悪かっただけだから」

 

私は今の自分の置かれている状況のすべて、つまりネルフの話をするつもりはなかった

ルミナさんにまで迷惑をかけるわけにはいかないからだ

これ以上迷惑をかけることになるなら私は大学を退学するつもりだった

教授には申し訳ないがネルフチルドレンがいる学校への教育実習については

辞退する方向で話をしようと思っていた

 

「それで本気なの?」

 

「私がネルフにかなり警戒されているのに行きたいと思う?」

 

「それはそうだけど。だったら教授に私を選好してもらえるように頼んでくれたら応援するわよ」

 

「ルミナ、もうメールで私はネルフにかなり警戒されているので辞退してルミナさんが適正ですと送っておいたわ」

 

「ありがとう!」

 

なら協力するわとルミナさんは言った

 

「それでどうするつもり?」

 

「しばらくの間、休学とかを取ってお母さんのところに戻ってみようとか考えてみたんだけど」

 

「海岸の町に?」

 

「そうね。きっとこれから何か起こるとするなら私は大学にいないほうが良いわ」

 

『ピーピーピー』

 

私の携帯電話が着信を告げていた。

相手は正体を明らかにしたくないのか非通知設定だった

この時、私は電話に出るべきか悩んだが。とりあえず出てみることにした

 

「もしもし」

 

『君は狙われているよ。気を付ける方がいい』

 

そういうと通話は途切れた。音声も変声機を使ったような声だった

ルミナさんは誰からだったのと聞いてきたので知らない人ですよと答えた

相手が誰なのかわからない以上早めに市外に出た方が良い。

いや、むしろ出る方が危険かもしれない。海岸の町に影響を

お母さんに迷惑をかけるかもしれないと思ったのだ

それを考えると今、市外に出るのは危険かもしれない。

どうしたらいいのか悩んでしまう

そんなことを考えながら大学に到着すると私はすぐに校内放送で呼び出された

学長執務室にだ。何か嫌な予感をしたのだ

 

「失礼します」

 

学長執務室に入ると高波教授がいた

 

「高波教授、何かあったのでしょうか?」

 

「ネルフから君の教育実習先を早く決めてほしいと言ってきてね。学長とも相談をしていたんですよ」

 

要するに圧力をかけてきたという事だ。

大学としても勝敗は見えている。私に行ってほしいと

 

「学長。私は」

 

「君は我が大学で最も有望な人材だ。私としても圧力に屈したくはないのだが、私の顔を立てると思っていってくれないか」

 

「学長。どうしてもですか」

 

学長は君が嫌がっていることは知っているが何とか頼むよと。

学長としても立場があるのだろう。これ以上迷惑はかけられない。

今までにもいろいろと迷惑をかけてきたのだ。

 

「わかりました。承諾したとお伝えください。学長には負けました」

 

「すまないね。これも優秀な成績を持っている君だからこそだから」



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私と大学と碇ユイの考え

 

学長との話し合いを終えると私は高波教授と一緒に授業を受けるために一緒に講義室に向かった

 

「それにしても君はネルフから相当関心を持たれているみたいだね」

 

「私としては迷惑な話なのですが」

 

そうだ。私にとってはもう碇シンジではない。

碇シンジは過去の存在なのだ。そして死亡したとされている方が都合がいい

いろいろな意味で。それにネルフに狙われているなら海岸の町に帰るのは得策とは思えない

もしかしたら私のお母さんの旅館に迷惑をかけるかもしれない

そんなことはしたくないのだ。私は学長執務室を出るとため息をついた

 

「どうしてトラブルがこうもたくさん降ってくるのでしょうか?」

 

「それは君が魅力的な美女だからじゃないかな?」

 

「高波教授。私がそう言われるのが嫌いだってことは知っていますよね」

 

「でも君は美人だ。だからこそなのかもしれないよ」

 

「教授。人の顔で成績を決めているんですか?」

 

「冗談だよ。それで本音を聞かせてもらえるかな?あの町のご両親に報告するのも僕の仕事だからね」

 

実は高波教授もあの町の出身で、私のお母さんとお父さんが経営している旅館で生まれ育った

だからこそよく状況を理解してくれている。

そして彼はこの街で私が生活しているときに保護監督責任者という役目を担ってくれている

 

「ネルフは嫌いです。ただ毎日穏やかに平和に暮らせると嬉しいだけです」

 

「それは難しくなりそうだね」

 

「そうですね」

 

「ご両親には僕の方から連絡をしておくよ。君の保護責任者としてね」

 

「お願いします」

 

私はそんなことを話しながら授業が行われる部屋に一緒に向かっていった

 

 

-------------------------------

 

第三新東京市ジオフロント ネルフ本部総司令官執務室

 

「あなた、彼女の経歴について追加調査した結果はどうだったの?」

 

「2年前より前の記録はまるで見つからず。もともとデータは不完全の物しかないから仕方がないが」

 

私は夫のゲンドウさんと話し合いをしていた。

私には彼女が、水川カオリさんが私の息子であるシンジの今の姿だと考えていた

いや、そう思いたいのかもしれない。

どうしても謝りたいのだ。実の子供に責任を押し付けてしまった母として

私の友人のアスカちゃんの母であるキョウコは謝罪ができた。

私はレイちゃんに謝罪することができて受け入れてくれた。

でもシンジには何もできないままだ。

 

「今のところ何もわからない。この街での保護者はあの大学で務めている高波教授という事だけだ」

 

「彼から揺さぶりをかけてみませんか?」

 

「ユイ、ネルフが直接介入するとマスコミの目が厳しくなる」

 

ゲンドウさんだった気持ちは一緒だ。

謝罪できるものならしたいのだが彼女がシンジの生まれ変わりだという保証はどこにもない

ただの自分勝手な思い込みなのかもしれない

 



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私とルミナさんと研修先

 

あの日からしばらく時間が経過してついに教育実習に行く日を迎えようとしていた

 

「カオリ!私も同じ高校になったわ!急遽変更という形でね」

 

「ルミナさん、どうやったんですか」

 

「学長に頼み込んだの。もしネルフ関係でトラブルがあったとしても私が表に出ますって説得したの」

 

その言葉に私は嬉しかった。同じクラスの仲間がいれば心強い

お互いが親しい関係ならなおさらだ。応援があれば教育実習も乗り切ることができるだろう

 

「ねぇカオリ。私は用意はできたけどそっちは?」

 

「どうせ帰ってくる場所はここだし。通勤すると思えばそれほど距離がないから。必要な教材だけを持っていくだけ」

 

「さすがは成績トップの実力を持つ者って感じね。何か勉強の秘訣でもあるの?」

 

それは私が神様に近い立場だからだとはいえるはずがない

全知全能の私だからあらゆることを記憶している

だから大学の試験やレポートなどは簡単な作業でしかない

 

「それじゃ、行きましょう」

 

私とルミナさんと一緒に大学寮前にある第三新東京市が運営している市バスの停留場に向かった

そこからバスに乗り込むと割り当てられた高校に向かった

高校に向かっているバスの中でかすかにだが、火薬のにおいがした

おそらく誰かが拳銃を持っているのだろう。狙いは私か。

ゼーレの構成員か、ネルフの構成員か。私は慎重に気配を探った

神様の特権で彼らの脳内の記憶を調べると嫌な結果が出た

火薬のにおいをさせていたのはネルフ本部保安諜報部の構成員だ

 

「どうかしたの?カオリ」

 

私は神妙な表情をしているのに気付いたのか。

ルミナさんが質問をしてきた。私は何でもないわと答えた

話すわけにはいかないのだ。私が私であるためにはうそをつき続けるしかないのだ

私はもう碇シンジではなく水川カオリなのだ。

今日からは教育実習だが、彼らと接触する機会も増えてくるだろう

これからの未来は私にも想像できないけど、自分の手でつかみ取るしかないのだ

未来を。それがどんなに過酷なことでもだ

 

「平和が続けばいいのに」

 

私は周囲に気づかれないように独り言をつぶやくとため息をついた

どうやら大学にいろいろと迷惑をかけてくれたのが誰なのかすぐにわかった。

あのエヴァのチルドレンがいる高校を教育実習先に選抜したのはネルフサイドの圧力であることは明確だ

 

「カオリ?どうかしたの?」

 

「ルミナさん。なんでもないですよ」

 

これから面倒なことになることが分かると楽しみよりも苦労を感じる

私に再び尋問をするつもりなのか。それとも監視を続けるつもりなのか

何かへまをしたことを見つけて、そのことで情報を引き出そうと思っているのかもしれない

いづれにしても何を考えているのか。私の監視を強化して何かをするつもりなのか

それともアスカやレイたちと接触させて何か狙いがあるのか

できることなら彼らとはあまり接触したくない

 

 



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教育実習先の学校と裏事情

 

私とルミナさんが乗ったバスは無事に高校の前にあるバス停に到着した

まだ登校している生徒が少ない朝早くだ。まずは職員室で自己紹介をしなければならない

どんな先輩になる先生が待っているのかはっきり言ってドキドキだった。

高校の校門の前に立つと緊張してしまった

 

「大丈夫?カオリ」

 

「ルミナさん。心配しないでください。世の中、きっと何とかなるものですし」

 

私は大きく深呼吸をするとルミナさんと一緒に校門から中に入り職員室に向かった

職員室のドアをノックするとそこにはすでに多くに教師が出勤してきていた

 

「失礼します。第三新東京市立大学教育学部から来た水川カオリという者です」

 

私が最初に自己紹介をすると次にルミナさんが自己紹介をした

 

「初めまして。私は第三新東京市立第1高校の校長をしている水崎レイカといいます」

 

私たちを出迎えてくれた校長はかなり若い女性であった

 

「お噂はよく聞いています。水川カオリさん。あなた方が教わっている高波教授から事情はいろいろと聞いています」

 

私のことをよく知っている人のようだ。

それがどこの勢力に属しているかによって私の行動は変わってしまう

私がどういう意味ですかと聞こうとしたときルミナさんが先に話を切り出した

 

「どういう意味ですか?」

 

「我が校にいるネルフに属している生徒たちとあまり関わりたくないという事ですよね?」

 

私はその通りですと返事をする。

校長は私たちが配置されるクラスは彼らとはできるだけ接触がないところにしてくれるとのことだった

 

「ご迷惑をおかけしてすみません」

 

「あなたのような優秀な教育者の卵のためなら私たちが何とかカバーしてみせます」

 

「ありがとうございます」

 

私は少しは安堵した。できることならアスカやレイと関わりたくない

それに渚カヲルとも。

 

「我々も全力でサポートしますが」

 

「わかっています。100%というわけにはいかないという事は。できうる限りで良いのでよろしくお願いします」

 

私も校長である彼女のサポートがあってもすべてを切り離すことはできないことはわかっている

それでもできる限り切り離されれば問題ない。

私はルミナさんと一緒に教育実習を受けるクラスに担任教師と向かった

担当するクラスは高校2年B組だった。

 

「皆さんに紹介します。今日から教育実習で来られた水川カオリさんとルミナ・アカネです」

 

幸いなことにこのクラスにはネルフ関係者はいなかった

幸運に恵まれていたと言っても過言ではない

 

「皆さん、未熟者ですがしばらくの間よろしくお願いします」

 

私はそうあいさつするとルミナさんも同じように挨拶をした



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私とルミナさんとの関係

 

私たちの自己紹介を終えると、さっそく教育実習に入った

まずは教員免許を持っている教師の教育指導の観察から始めた

私たちを受け持ってくれている教員はかなり手厳しいがすべては生徒を思ってのことだ

難しく解き方に困っている生徒には少し手助けをして答えの出し方を教えていた

私とルミナさんはそういう教育方法もあるのかと真剣にメモなどを取っていた

そして1時間目が終了して休み時間に入った

私とルミナさんは生徒たちとの交流の時間となった

 

「あの~少しお話をしても良いですか」

 

「良いですよ。何ですか?」

 

「お二人はよく似ていますよね」

 

私とルミナさんはよくそう言われる。

まるで姉妹なのではないかと。

そこで私はひそか大学のラボでDNA鑑定をしたが血縁ではなかった

ただの他人の空似なのだと私は思う事にした

 

「姉妹ではないですよ。私とルミナさんは」

 

「よく言われるけどね。ねぇカオリ」

 

「そうですね」

 

そこにある人物が教室に入ってきた

私にとっては最悪の人物だ。

 

「お昼休みにお時間をいただけませんか?」

 

声をかけてきたのは碇レイだった。

私はなんて答えるべきか悩んでいるとルミナさんが先に答えてくれた

 

「悪いんだけど、お昼休みには私たちはレポートをまとめなければならないから」

 

レポートなどは嘘だ。だが今はルミナさんの優しさに甘えることにした

 

「ごめんなさいね」

 

私とルミナさんは一緒に廊下を歩いていた

 

「ありがとう、ルミナさん」

 

「これくらい気にしないで。ネルフにいろいろと狙われているって話は本当みたいね」

 

「どういうことですか?」

 

ルミナさんのネルフにいろいろ狙われているという話という言葉にどういうことなのかわからなかったが

彼女は親切にも説明してくれた

 

「学長からあなたのことをいろいろな意味で狙っているらしいって聞いているの」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ。だから私がクッション役になってあげてほしいって頼まれたの。カオリとは親密な関係だからお願いって頼まれてね」

 

なるほど、ボディーガード役を引き受けてくれたという事だ

ルミナさんには迷惑をかけているばかりだ。

引き受ける代わりに大学の学費免除を条件としたらしいのだ

公立大学とはいえ大学の費用は高い。それが免除できるなら大きな事だ

特に大学の学費をアルバイトで必死になって稼いでいる私たちにとっては大きなメリットとなる

私はルミナさんにありがとうと伝えるとレポートをまとめるために職員室に向かった

職員室に入ると私たち用のデスクが設置されていた

 

「素早いですね」

 

私はそう思った。もしかしたらネルフが絡んでいるのかもしれない

彼らとは接触などしたくない。もう忘れたいのだ。

あんな過去なんて記憶から消してしまいたい

でもそれはできない。前に進むしかないのだから

 



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渚カオルといつかの通る道

私とルミナさんは割り当てられているデスクのイスに座るとレポートをまとめ始めた

 

「しょっぱなからネルフ関係者と接触なんて幸運には恵まれていないわね。カオリ」

 

「ルミナさんこそ。アピールしてみてはいかがでしょうか」

 

「私も決めたのよ。戦場の教師になる道をね。すべての子供たちに平和を」

 

ルミナさんの言葉を聞いて私は少し安堵した。

彼女は私の味方をしてくれている。今までも、そしてこれからも

 

「できる事なら彼らとは会いたくないけど同じ高校にいるなら接触することは増えますね」

 

「カオリ、わかっているなら極力私と離れないようにしましょう。お互いのためにも」

 

私はその言葉にとても嬉しかった。ある意味では同志ができたからだ

同じ志を持ってくれている大切な友達

かけがえのないものを私はずっと求めていたのかもしれない

だからこそ今はルミナさんと共に歩みたいと思ったのかもしれない

ある程度私たちはレポートをまとめ終わるとルミナさんと一緒に教育実習を受けるために職員室を出た

出た直後に会いたくない人物と会ってしまった

 

「少し良いですか?水川カオリさん」

 

「あなたは有名人の渚カオル君ですね。ごめんなさい。もう少ししたら授業に行かないといけないから」

 

私はそう言ってその場から逃れようとしたが、昼休みに少し時間を作ってくださいと問われた

どうしたものかと考えた結果私は仕方なく同意することにした

 

「少しだけなら良いですよ。でもお昼ごはんを屋上で食べるならであなただけならね」

 

「ありがとうございます」

 

彼はそう言うとクラスに戻っていった。ルミナさんは良いのと聞いてきた

 

「いつかは通らないといけない道だから」

 

私はルミナさんにそういうと一緒に教育実習のためのクラスに向かった

その後は何の問題もなく実習は続けられた

そしてついに昼休みの時間に来た私は職員室からお弁当代わりのサンドイッチをもって屋上に向かった

屋上のドアを開けるとすでに彼が待っていた

 

「待たせてごめんなさいね」

 

「いえ、僕も今ここに来たところですから」

 

どこまで本当なのか私には予想できていないし彼が何をしようとしているのか想像できなかった

私はサンドイッチの袋を開けると食べながら話を始めた

 

「それで何か用事でもあったのですか?ネルフのことならもう話したことはあの時にすべてなんだけど」

 

そう、ネルフ本部で尋問を受けた時に答えたのだから

これ以上喋るつもりは全くと言っていいほど何もなかった

結局のところ彼にも利用されただけなのだから

私はあの時に過ちを犯した。だがそれはすべて仕組まれていたことだ

ゼーレによって。だが神と等しい存在になった私は世界を元に戻した

あの赤い液体で人たちがいない世界よりも現実を見て生活する世界へと



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私が背負っている十字架

 

「ネルフのことをそんなに嫌うほどシンジ君にいろいろと教えられてきたのか聞きたかったので」

 

「ええ、いやというほど聞かされてきたわ。だからこそ彼は自殺した。自らの運命に終焉を迎えさせた」

 

そう、私はもう碇シンジではない。そして男ではなく女性なのだ

DNAも異なっているのでバレるはずがない。

だが彼にはどこか見透かされたかのように感じてしまった

ある意味では不安で仕方がなくて、できる事ならここから今すぐにでも脱出したかった

 

「それで聞きたいことっていうのはそれだけかしら?」

 

「もう1つ教えてください。シンジ君はどうしてあなたに頼ったんですか?」

 

「私と彼の出会いと別れを話すと時間がかかるわ。でもこれだけは言える。彼は人々のために立派なことにした」

 

それだけよと私は伝えた

 

「立派な事をしたのに、どうして自殺を止めなかったんですか?」

 

「それが彼の願いだったから。私は見届ける事を宿命として背負ったのよ」

 

いまさら彼らと関わるつもりは全くなかったのだが

ここにきて急にことが動き出してしまった

だからこそ私としてはアスカたちと接触することは避けたかった

今となってはもう遅いが。

 

「重い罪の十字架を背負ってもですか?」

 

「彼は私に選択することを約束してくれた。私はその重い罪の十字架を背負うことを覚悟して引き受けた」

 

あなた達ネルフが正義の味方じゃないことを立証する証拠としてねと渚カオルに伝えた

そう、ネルフがきれいな組織だったというのは嘘だ。

すべてはゼーレのシナリオを実行するための部隊に過ぎないのだ

今でこそ世界に正義の味方だと表明しているが実際は違う

汚い汚れた組織には変わりないのだ

 

「そうですか」

 

「話はこれで以上ですか?」

 

私は職員室に戻りますのでと伝えると屋上から職員室に戻っていった

すると屋上の階段の近くでルミナさんが待っていた

 

「カオリ、大丈夫?」

 

「ルミナさん。大丈夫ですよ」

 

私は苦笑いをしながら心配しすぎですとルミナさんに伝えた

 

「これでもあなたをできる限り守るようにと高波教授から言われているから」

 

困ったことがあればいつでも相談してねとルミナさんが言う。

私はルミナさんの温かい言葉に感謝しながらも会談を使って1階の職員室に降りていった

職員室の前で彼女と会うことになってしまった

 

「碇レイさんですね。何か用事でもあるのでしょうか?」

 

彼女はまるで私が職員室に戻ってくるのを待っていたかのように職員室前の廊下にいた

 

「少しお時間よろしいですか?」

 

「ごめんなさいね。次の授業の用意があるからまた別の機会に」

 

私はそう言うと職員室に入っていった。ルミナさんと一緒に



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私は世界一の嘘つき

よっぽど好かれているみたいねとルミナさんに言われてしまった

確かに好かれている。悪い意味ではだが

もう彼らとは関わりを持たないつもりだったのだが

状況は一向にいい方向には向いていないのは事実みたいだった

私にとっては最悪の展開も想定で来ていた

 

「私としては彼らと接触したくないだけですよ。ルミナさん」

 

「あなたがネルフを嫌う理由はわからないけど、夢に向かって進んでいく道を見るのは好きよ」

 

私はルミナさんのセリフの意味があまり理解していなかった。

彼女はどこか懐かしいことを思っているような表情をしていた

 

「ルミナさんはネルフのことをどう思っているんですか?」

 

「私は中立的な立場の方が良いでしょ。カオリのためにも。違う?」

 

「それはそうだけど」

 

ルミナさんはとにかく頑張りましょうというと次の授業の準備を始めた

彼女と一緒に。私は今も願っているのかもしれない。

母親の存在を。でもすべて彼らが私を壊した

正義の味方という自分本位の誤った考えで

自らを正義として、他のものはただの敵だとしか認識していない

まさに悪夢だ。

 

「ねぇ、カオリ。あなたは本当は何者なの?」

 

「私はただの大学生ですよ」

 

そう答えるとルミナさんはそれは表向きじゃないのと心の中に踏み込もうとしてきた

私は思わずどういう意味で聞いてきたのか裏を考えてしまった

 

「別に深い意味はないから気にしないで。でも編入試験をほぼ満点で合格して教育学部に移ったから」

 

ルミナさんは私はそういう意味では有名人なのだからと答えた

 

「偶然ですよ。たまたま勉強していた場所が多かっただけですから」

 

「運も実力の内っていうから、そういう事にしておきましょう」

 

私たちは次の授業の準備を終えると担当クラスに向かった

確かに私は世界一の嘘つきなのかもしれない。

神様だからどんな知識も持ち合わせている。

だからこそテストでは少し手を抜いた

怪しまれないように教育学部に移るために

でも移ってからは実力を発揮し始めてしまった

それがこの結果になった。なんとも始末の悪いことになった

次の授業クラスは最悪なクラスだった

綾波やアスカがいるクラスだったからだ

私たちはクラスの一番後ろから授業の内容を見ることになっている

でもその前に私たちは自己紹介をすることになった

 

「今日から教育実習を受ける水川カオリです」

 

「私の方はルミナ・アカネと言います。未熟者ですがよろしくお願いします」

 

私たちは挨拶をするとクラスの最も後ろから授業のやり方などを観察を始めた

綾波とアスカは私の方をちらちらと見ていたりしていた

私はその視線が嫌で仕方なかった。面倒に巻き込まれるのは嫌だし

何よりネルフと関わりたいとは思ってはいないからだ

 



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私と教育実習と視線

私は教育実習を受けているので必要で重要なところは細かにメモを取っていった

それは隣にいるルミナさんも同じだった

私は授業の研修に集中したかったが何人かの人物と目線が度々あってしまった

その時にはすぐに目をそらして授業実習に集中した

それにしてもだ。ある程度は覚悟はしていたがエヴァパイロットたちから注視されている

そういった視線に私はあまり気持ちの良いものではない感情が出ていた

私はただ普通に生きて普通の世界を見ていこうと思っているのに

世の中そんなに甘くないということが午前中だけでもたっぷりと感じ取れた

ただ親しい友人であるルミナさんが一緒であることがまだ唯一の幸運であると言える

ルミナさんがいなければ私は逃げ出してしまっていたかもしれないからだ

今の私があるのはルミナさんのおかげなのかも

だとしたら私は最も幸運に恵まれているのかもしれない

ルミナさんという大切な友人がいるから今の生活があるのだから

その後も教育実習は順調に進んで授業が終了して放課後を迎えるころになってしまった

 

「いきなり大変ね」

 

ルミナさんの言うとおりだ。だがある程度覚悟はしていた。

仕方がない事があるのも事実だ

この街で生活をしていたらどこかで接触することは容易に想像できていた

だって私は教師を目指しているのだから

だからこそ苦難にも耐える事が求められる

いくら苦しい道だとしてもそれを乗り越えて。

そういったものを糧として前に進むしかないのだ

今更後ろに下がるわけにはいかないのだ

もう振り返るのはやめて前に進むことを決めたのだ

私とルミナさんは放課後に自分たちに割り当てられたデスクのイスに座ってレポートをまとめていた

その時だった。彼女がやってきたのは

 

「水川カオリさんですよね。私は碇レイと言います」

 

「以前携帯電話に連絡をくれた方ですね」

 

私は努めて冷静に対応する事にした

ここで怪しまれるわけにはいかないのだ

私は職員室を出る事にした。彼女と一緒に

 

「どんな話をしたいんですか?」

 

私は高校の中庭に出ると話をすることにした

 

「どうして碇君を助けてくれなかったんですか?」

 

「彼は人々を助けようと思った。でも彼には帰る場所はもうなかった」

 

私は家族なんていらないと思っていた。海岸の町で私を助けてくれたお母さんとお父さん

2人だけで私は満足だった。それ以上望むなんて贅沢なのだから

 

「でもここには居場所が」

 

「碇レイさん。あなた達ネルフにとって大事なのは碇シンジではなくサードチルドレンとしての価値だけ」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

「あなたたちは彼と違ってあの儀式のことは覚えていないから」

 

「あなたは知っているんですか?」

 

「彼から少しは教えてもらう事ができました。彼はその儀式の事についてかなり苦しい思いをしていました」

 

真実をすべて教える必要はない。知らないほうが幸せの事もあるのだから

私はこの手の話はもう終わりにしましょうというと職員室に戻ることにした

 



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私とルミナさんと狙撃

私は職員室に戻るとルミナさんが出迎えてくれた

 

「カオリ、どうだった?」

 

「ルミナさん。大丈夫ですよ」

 

私は表面状は気丈に振舞ったが内心ではドキドキしていた

大学でいろいろと勉強を受けている間、私はある呼び名で呼ばれることが多かった

羊飼いという呼び名で。時間があれば図書館で図書委員としてずっと過ごしていたからだ

それがあるアニメの登場人物と似ている事からそう呼ばれていた

 

「さすがの羊飼いも容量オーバーってところかしら」

 

「やめてくださいよ。私が羊飼いという呼び名が好きじゃないことは知っているでしょ」

 

「でも羊飼いと同じような物でしょ。大学じゃ有名な話だったわよ」

 

「まぁ否定はしないけど。本は読めば知識が増えるから」

 

「あのアニメの主人公と同じセリフ。カオリ、本当は羊飼いなんじゃない?」

 

「やめてよ。そろそろ次の授業の時間でしょ。行きましょう」

 

確かに私は本が好きだ。何人にも侵されない聖なる領域なのだから

だから私は通っている大学でも数少ない図書委員をしている。

それに図書部にも在籍している。ただ図書部はマイナーで私とルミナさんしか在籍していないが

第三新東京市大学の図書館には膨大な所蔵があり管理するのも大変だが

本を読むことを苦に感じないので好きな仕事だ

大学の中では私の事を友人の多くはルミナさんの言う通り、私の事を羊飼いと呼んでいる

いつもやめてよねと言っているのだがカオリは似ているのよと言ってくる

私とルミナさんは次の教育実習を受ける準備をするとその教室に向かった

 

「ねぇ、カオリ。何か不安そうな表情をしているわよ」

 

「ルミナさん。これからの事を考えるといろいろと苦労があるからですよ」

 

どうやら私の不安な気持ちは表情に出ていたようだ

高校の廊下を歩いている時、嫌な気配を察知した

私はとっさにルミナさんを押し倒した

 

「カ、カオリ?」

 

ルミナさんは突然の私の行動に驚いた。

その直後、窓ガラスが割れて銃弾がルミナさんが立っていたところを通過した

 

「ルミナさん、大丈夫ですか?」

 

学校の壁には銃弾がめり込んでいた。私は自分の判断が正しかったことに安堵した

 

「え、ええ。大丈夫だけど。あれって」

 

「大口径の銃弾です。死ななくてよかったですね」

 

「カオリ、冷静ね」

 

ルミナさんの言う通り。私は冷静な対応をしていた

とっさに私は足首に手を伸ばそうとした

そこにはリボルバーであるS&W M686を装備していた

さすがにグロック17は学校内で持ち歩くわけにはいかないので

職員室に置いているカバンに隠している

銃に手を伸ばそうとしたがルミナさんまで巻き込むわけにはいかないと思って考えを変えた

 

「ルミナさんはここで隠れていてください」

 

「カオリはどうするの?」

 

私がおとりになりますからというとわざと射線上に顔を出して走り出した

すると再び銃弾をこちらに向けて撃ってきた

どうやっても私を消したい連中がいることは事実のようだ



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事情聴取と裏事情

ここはエヴァパイロットが通学している学校ということもあり、すぐに警察が駆けつけてきた

私は職員室に戻るとすでに警察が事情聴取を行っていた

 

「水川カオリさんですね。第三新東京市警察の刑事です」

 

女性刑事が警察手帳を見せて事情聴取をさせていただけますかと聞いてきた

 

「少し待っていただけますか?」

 

「かまいませんが」

 

私は足首のリボルバーをカバンに隠すと学校の会議室に女性刑事と向かった

 

「お怪我はないですか?」

 

「はい。運が良かったんだと思います」

 

会議室に入るとすぐに事情聴取が始まった

幸いな事に狙いはエヴァのパイロットと思っているようだ

私の事はほとんど疑っていない。

だが実際の狙いは私がターゲットであることは容易に想像がついた

おそらく襲ってきたのはゼーレの関係組織だろう。

 

「何か狙われるようなことに心当たりはありますか?」

 

「私はただの大学生ですので、そういうことはまったくわかりません」

 

「わかりました。今後事件に何か進展があれば再度事情聴取を行う事もありますので」

 

ご協力をお願いしますと女性刑事はそう言うと聞き取りは終了した

好運な事に事件を受けて今日の午後の授業は中止になった

私達も大学に帰る事にした

 

「ルミナさん、一緒に帰りましょう」

 

「そうね。カオリは図書部の部室によって行くのかしら?」

 

「ええ、せっかく時間ができたので図書部の部室で本を読んでおきたいですし」

 

落ち着いて考え事ができるところは図書部の部室ぐらいだ。あとは寮の自室だけだ

 

「カオリ、私は寮に帰るわ。命の洗濯をしたいし」

 

ルミナさんが言っている命の洗濯とは入浴の事を示している

確かにそうかもしれない。お風呂でゆっくりとするのは良いのかもしれないが

 

「シャワーを浴びてのんびりしたいんですね。私はネルフの騒動のおかげでちょっとのことぐらい大丈夫だから」

 

「さすがは長い付き合いをしているだけあって分かっているわね。ええ、その通りよ」

 

ルミナさんは何かあればすぐに連絡してくれて構わないからというと寮に帰る用意をした

私はすぐに帰宅できる用意をしていたので職員室の休憩スペースでコーヒーを飲んでいた

 

「お待たせ。カオリ」

 

「それじゃ、帰りましょう」

 

私とルミナさんは一緒に高校の近くのバス停に向かった。

他にも高校の学生もいたがみんな突然の臨時休校の理由は知らないようだ

誰もがどうして休校になったのかといった話題で盛り上げっていた

生徒にとっては休みになるのは良いことかもしれないが

私とルミナさん以外にも高校にバスで通っている生徒はいる

生徒たちと一緒にバスを待っていると1台のタクシーが近づいてきた

タクシーはバス停の前で止まると1人の女性が下車した

 

「カオリ!」

 

「リナさん!」

 

私に声をかけてきたのは相川リナさん。

いつも自分の身を守るために必要なあるものを調達してくれている

そのある物とは簡単に言えば銃などだ

彼女は以前は国連軍に所属していたが今はフリージャーナリストをしている

その関係で銃などのブラックマーケットをよく知っている。

彼女と初めて出会ったのはあるニュースのスクープニュースを提供してからだ

それからは教授と同じで私のこの街での保護者の1人でもある

 

「ルミナさん。私は少し別の用事ができたので」

 

「もてる女はつらいわね」

 

「嫌味は寮に帰ってから聞きますので。では失礼します」

 

私はリナさんが乗ってきたタクシーに乗り込むと大学に向かった

 

「表向き今回の狙撃はエヴァパイロットを狙ったものとして処理されるそうよ」

 

「そうですか?」

 

「カオリ、狙われるような理由に身に覚えはあるのかしら?」

 

ありすぎて困るがここはないというしかない

巻き込むわけにはいかないからだ。これ以上迷惑をかけるわけにはいかない

 

「私にはさっぱり」

 

「とにかく気を付ける事ね。あなたがネルフで事情聴取を受けてから裏の組織に動きがみられたわ」

 

裏の組織、おそらくゼーレの事を示しているのだろう

彼らも私の正体を知りたくて仕方がないはずだ。私は寂しいのかもしれない。

海岸の町で出会った捨てられた猫のようにさまよっていた私、

そんな私を放り出さないで保護してくれた両親、その事を思うと巻き込むことはしたくなかった

 



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私と図書部の顧問と友人

私はリナさんと一緒にタクシーで大学に戻ると大学付属図書館に向かった

リナさんは第三新東京市立大学で客員教授をしている

ちなみに図書部の顧問でもある。だからこそリナさんは私とルミナさんにとっては親しい仲だ

図書部は図書館の館内に部室が設置されている。

リナさんと一緒に大学に戻るとリナさんと別れて私は図書館の図書部室に向かった

大学付属図書館には多くの本が所蔵されている。本は大切なものだから、適切に所蔵されている

図書館に到着すると私は館内にある小さな部屋のドアのかぎを開けた。そこが図書部の部室になっている

部室内には多くの本が置かれている。ちなみに私は図書委員会からブラックリストに登録されている

大量の本を借りて読んでいるからだ。そのためであるが、返却が遅れる事もあるので、

図書委員長からはよく携帯電話に催促の連絡がかかってくる

私が部室に入ると読みかけの本の読書を始めた

ここならだれにも邪魔されることなく読書の時間につぎ込むことができる

私はいつものイスに座ると読書に時間を割くことにした

 

「平和ね」

 

私にとっては平和で静かな時間だ。

読書に費やせるこの時間は私にとっては貴重で好きだ

 

『ブーブーブー』

 

マナーモードにしていた私の携帯電話が着信を告げていた

 

「誰なの?」

 

発信者は自分の事を知られたくないのか非通知になっていた

 

「誰なの?」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・プープープー』

 

切れてしまった。まったく誰なのかわからないが気味が悪い

こういう電話の発信者を早めに正体を暴きたいところだが今は派手に動き回るわけにはいかない

私は仮にもネルフにマークされているはずだから

何か動きがあれば私をまた拘束してくるだろう

 

「とりあえず警察にストーカーの相談でもしようかしら」

 

私はそんなことをつぶやきながらも読書に専念する事にした

 

『トントン』

 

「はい」

 

『カオリさん。今、良いかしら?』

 

「リナさん、大丈夫です」

 

私は読書を邪魔されるのを嫌っている事をリナさんやルミナさんは知っているので、

ドアをノックしてからしか入ってこないのだ

 

「また増えているわね。カオリ、図書委員もやっているんだからちゃんと返却はしなさいよ」

 

部室に設置されている本棚に所蔵されている本を見てまるで呆れるかのように言ってきた

確かに自分でも活字中毒なのかもしれないが、本は貴重な書物

だからこそ書かれている物語を読むことが好きなのだ

 

「わかっているんですけど。それでわざわざ顧問が直々に来るなんて何か問題ですか?」

 

「顧問としてではなくあなたの保護者としてよ。本当のことを話してほしいの」

 

どうやらリナさんには何となくわかっているようだ。私が狙われているということが

 

「きっと私が狙いだと思います」

 

「狙われる心当たりは?」

 

「私はネルフにマークされていますから、裏の犯罪組織には警戒されているのかもしれません」

 

「今からでも実習先の変更を進言してみる?」

 

リナさんの言葉に私は大丈夫ですと答えた。

 

「リナさんから銃を借りていますから。自分の身は自分で守ります」

 

「言っておくけど私から銃を入手していることは秘密にしてよ。私にも立場があるからね」

 

リナさんの言うとおりだ。もしこの事実が漏洩したら大問題になる

リナさんは大学を追い出されることになるし私も犯罪に問われてしまう

 

「わかっていますよ。安心してください」

 

「それなら良いけど、ところで今度何か買ってほしい書籍があれば購入希望を図書委員会の会議に出してね」

 

リナさんはそう言うと部室を出ていった

 



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私と後輩と図書委員の特権

私はリナさんが置いていった購入希望の書籍についての申請書を眺めた

本を読むのは好きだ。誰にも邪魔されないでのんびりと読書ができると特に

教育実習が始まる前までの大学で毎日授業を受けていた頃、

休み時間を見つけては部室に来て図書館の書籍を借りて読んでいた

 

「また何か良い本を探して、図書委員会に購入申請が通るような本を選ぶとしましょう」

 

私はそう呟くと読書をやめて図書部の部室を出る事にした

部室を出るとドアの鍵を閉めて私は寮に戻ることにした

本を読んでいるといつの間にか、もう外は夕暮れの時間だった

コンビニでお弁当を買って帰ろうとする事にした。大学の敷地内には食堂もあるのだ

それに寮の部屋にはキッチンがあるので自炊をすることはできるが、

今日はそういう気分ではなかった。たまにはお弁当というのも悪くない

図書館から出ると私は大学内に設置されているコンビニに立ち寄りお弁当を購入

そして寮に戻ることにした。大学の敷地を出ると寮に向かって歩いていった

大学から寮まではそれほど離れていない。ちなみに家賃は1か月数万円

アルバイトをして寮費を支払っている

海岸の町の両親には迷惑をかけないように努力しているつもりだ

 

「カオリ先輩!」

 

「レイナさん!」

 

図書部には在籍していないが図書館の図書委員会の委員をしている後輩の水野レイナさんが声をかけてきた

 

「先輩。また本を買うんですか?」

 

「図書委員の特権を利用しているだけだけど」

 

「図書委員会でも先輩が購入希望を出している本が多すぎて選別するのが大変なんですよ」

 

「勉強に使うのよ。何も問題ないと思うけど」

 

確かにその通りだが

たまには趣味に走った本が混ざっていてうまく審査をすり抜けてくれることもある

 

「先輩の部屋も本がたくさんありますよね。ちゃんと返却してください。委員会のブラックリストに登録されるんですよ」

 

私は今後は気を付けるわというが実際は返却が遅れる事が多い。

彼女に一緒に寮に帰りましょうと言って仲良く話をしながら帰宅していった

私は寮の自分の部屋に戻ると大きなため息をついた

 

「疲れた」

 

本当に疲れたのだ。狙われたのは私。

今後どんな攻撃を仕掛けてくるかわからないが、警戒は怠らないほうが良いと感じた

今日、私に銃弾をプレゼントしてきたのは絶対にゼーレの関係者だろう

仲間にできなければ殺してしまえ。そう考えたと思った方が筋は通る

だがネルフ本部がある第三新東京市で攻撃を仕掛けてくるというのは想定外だ

それもエヴァパイロットが通っている高校にだ。わざわざリスクを高いのを承知でやるなんて

私は少し恐怖を感じながらも今後は警戒心を解かないようにしないとと思った

まぁ今は大丈夫だろう。とりあえずシャワーを浴びてお弁当を食べる事にした

とりあえずスーツを脱ぐと私は入浴のためにお風呂に向かった

簡単にシャワーを浴びてすっきりするとお弁当を食べた

すると外では雨が降り始めた。

 

「濡れなくてよかった」

 

お弁当を食べ終わると今日の1日の日記を書いてベットで眠ることにした

 

「明日は平和であれば良いけど」

 

私はそんなことを思いながら眠りについた

 



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朝にすることと高校への出発

翌朝、私は午前6時に目を覚ました。

こんなに朝早くに起きるのには理由があった。

銃のお手入れをするためだ。一度分解して、組み立てなおす

いわゆるフィールドストリップをするのだ。

自分の命にかかわるものなのだから手入れは念入りに行う必要があるのだから

一通りクリーニングを終えると私はクラッシュキッドにグロック17を収めた

リボルバーは足首にホルスターをつけてそこに装着した

 

「よし!」

 

私はいつもやっている事を確認すると冷蔵庫から卵とご飯が入ったお茶碗を取り出した

大学に行けば食堂があるのだが、それは昼休みがある時だ。

大学で講義がない時の朝はいつもこんな感じで軽食だ。卵かけご飯。

もちろん大学で授業を受けていた頃は途中で空腹になる事があるので、

おやつになるものを何か買ってから授業を受けていた。だが今は教育実習中の期間なのだ。

高校に行く前にコンビニなどの売店によってパンかおにぎりなどを買っていくことにした

 

「いただきます」

 

いつものように平和な朝を迎える事ができたが、教育実習先で何もなければ良いのだが

私は少しため息をつきながらも朝食を食べ終わるとキッチンでお茶碗を洗うと食器乾燥機にかけた

そして高校に向かう用意を始めた。すると玄関のドアがノックされた

 

「誰ですか?」

 

『ルミナよ。そろそろ時間だけど大丈夫?』

 

ルミナさんからのお誘いだった。

私は少し待ってくださいというと用意をしてリュックを持って玄関ドアを開けた

 

「お待たせしました」

 

時間は午前6時30分だった。遅刻をすることはなく市バスを使えば余裕で間に合う

寮の前にあるバス停で待っているとすぐにバスが到着した

バスに乗り込むと教育実習先の高校に向かう

その途中でいくつかのバス停に止まるが高校に通う高校生もこのバスを利用する

 

「満員バスね」

 

「仕方がありませんよ。ルミナさん」

 

バスは高校生で満員になり高校前のバス停でほとんどの高校生は下車する

乗客のほとんどが高校生であったこともあり一気にガラガラになってしまった

私とルミナさんも一緒に下車すると高校の建物に向かった

 

「今日は何もなければ良いわね」

 

ルミナさんの言う通りだ。昨日のような事件はない事の方が良いのだけど

 

「まったくその通りです」

 

私はそう答えると高校の校門を通過して下駄箱で上履きに履き替えると職員室に向かった

 

『トントン』

 

「「失礼します」」

 

私たちはドアをノックしてから職員室に入った

そして自分たちに割り当てられているデスクに向かった

荷物が入ったカバンを下ろすと、私とルミナさんはすぐにいつでも教育実習に行ける用意をした

この高校では朝の授業に行く前にいつも定例の職員会議がある

私達も今日から参加する事になる。ちなみにここにも図書部があり、4名が在籍している

読書が好きで図書部に入部したようだ。私と同じみたいだった

 

 

 



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攻撃の狙いは誰なのか

朝の定例職員会議を終えると教育実習のためにクラスに向かって歩くことにした

今日の初っ端からついていないことにエヴァパイロットのいるクラスで英語の授業だ

ちなみにだが、神様である私には様々な言語を喋ることも書くこともできる。

いわゆる神様の特権というものがあるのだ。ずるをしていると言えばそこまでの話なのだが

とりあえずは子供たちに戦場ではなく平和な暮らしができる事を願っている

私とルミナさんはクラスに入ると教室の一番後ろに立ち教員免許を持っている教師の指導を観察していた

必要なところはメモを取り、今後に生かしていく。

それが今できる私たちの勉強であることには間違いない

1時間目の授業が終わると私たちは職員室に戻ることにした

だがそうは簡単にいくことはなかった

碇レイが話しかけてきたのだ。

 

「水川カオリさん。今日のお昼休み、よかったら一緒にご飯を食べませんか?」

 

なんて嫌な申し出だ。お断りをすることにした。

 

「ごめんなさいね。私はルミナさんと一緒にご飯を食べたいから」

 

「よかったら、あのルミナさんという方も一緒に食べませんか?」

 

「本当に申し訳ないんだけど、私はレポートを作らないといけないからあんまりお昼ご飯に時間を割けないの」

 

私はそう言うとルミナさんと一緒に次の教育実習のクラスに向かうことにした

その時だ、山側から鏡に光が反射したかのような光を感じた。

私はレイさんを抱きかかえる形でとっさに守ろうとした

次の瞬間、私の肩に銃弾がかすめた。少しだが血が飛んだ

 

「カオリ!」

 

ルミナさんはすぐに窓を閉めるとクラスにいた生徒に伏せるように大声で叫んだ

 

「みんな!伏せて!」

 

銃弾はさらにもう2発飛んできた。

ルミナさんが伏せるように言っていたため、これ以上の負傷者は出なかった

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

レイさんは私が肩から出血している事に困惑していた

 

「弾がかすっただけよ。大丈夫よ」

 

「カオリ!すぐに救急車を呼ぶわ」

 

ルミナさんは携帯電話で119番通報した

状況を話して救急車を手配。さらに警察にも連絡して安全確保を求めた

私は思わず足首に装備しているリボルバーに手を伸ばそうとしたが今この状況下では危険すぎると思った

さらに厄介な事にこのまま救急車に乗せられたら銃を隠す暇がない

私はとりあえずルミナさんの肩を借りて保健室に向かうことにした

 

「カオリ、本当に大丈夫なの?これで2日連続よ」

 

「ネルフに勧誘されたせいなのかもしれないわね。ところで1つお願いがあるんだけど」

 

「なにかしら?」

 

私は周囲の視線から隠れたところで足首のホルスターを外して銃も預けた

 

「か、カオリ!これって」

 

「秘密です。狙われている事は知っていて身を守るために持っているとだけ。警察には見せられないから」

 

「何とか隠してみるわ」

 

ルミナさんはこの場で私が銃を持っている事を聞くことはなかった

それはそれで幸運だったのかもしれない。

 

 



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狙われたのは誰か?

私とルミナさんはとりあえず保健室に到着すると銃弾がかすった肩の応急処置を保健の先生が行ってくれた

 

「本当に幸運ですね。かすっただけで済んで」

 

本当に保健の先生の言うとおりだ。

私も不意打ちだったので一歩間違えたら危険だった

出血はそれほどなかったため、救急車が駆けつけてきたが救急隊員にも応急処置をしてもらった

彼らは病院に行きますかと聞いてきたが私は大丈夫ですと答えた

ただ、問題なのは市警察とネルフからの事情聴取を受けることは確実だ

警察については問題ないがネルフの聞き取りには簡単にはいかないことは想像できた

 

「世の中どうして平和じゃないんでしょうか」

 

私は応急処置を受けながら、思わず愚痴ってしまった

 

「苦労されてますね」

 

保健の先生からそう言われてしまった。

確かに苦労しているかもしれない。でもこの道を選んだのは私

なら歩き続けるしかないのだ。それがいばらの道であったとしても

そこに第三新東京市警察の女性刑事が入ってきた

何のめぐりあわせかどうか知らないが昨日と同じ女性刑事だった

早速事情聴取が始まった。保健の先生はしばらく退室しておきますねと言って保健室を出ていった

 

「大丈夫ですか?」

 

「はい。かすっただけですので」

 

「随分と幸運に恵まれていますね」

 

1度なら偶然。2度目は偶然ではないのではと疑っていたようだった

 

「私はネルフに勧誘されたこともあるのでいろいろと狙われているのかもしれません」

 

「ではなぜ警護をつけないのですか」

 

彼女の言うとおりだ。ネルフに勧誘されたなら警護が付けられるはずだ

それがないということは自ら断ったと考えたのだろう

 

「嫌いなので。束縛されるのは。自由が一番です」

 

「それでは本題ですが。なぜ撃たれると思ったのですか?」

 

「偶然ですよ?」

 

「1度目は偶然で片づけることはできますが。2日連続となると。疑惑が浮かびます」

 

どうやらこの女性刑事はかなりやりてのようだった。厄介な相手だ

私は白をきり通して何とか潜り抜けたが、もう1度あれば、彼女は私の身辺調査を始めるだろう

まぁされたとしても問題ないだろうが。

 

「とりあえず今はこの辺りで。もし何か思い出すようなことがあれば警察署に来ていただけますか?」

 

「わかりました。その時はお伺いします」

 

「ではこの名刺を渡しておきますので受付で警察官に渡してください。話は通しておきますので」

 

「はい」

 

女性刑事はそう言うと保健室を出ていった。私は思わず悩んでしまった

嫌な展開になる事が分かっていたからだ。今後監視の目がつくことは確実

行動制限がかかることになる。下手に動けばいろいろとまずいことになる

できればそういうことは避けたかったのだが、なってしまったものは仕方がないのだ

私はため息をついて保健室で憂鬱な気分でいるとネルフの保安諜報部の加持さんがきた

 

「随分と速い再会ね」

 

私は半分嫌味を言うかのように言う

 

「君が狙われているみたいだね。水川カオリさん」

 

「さぁ、私には心当たりはありませんので」

 

ここからはお互いの腹の探り合いだ

 



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私の事を本当に思ってくれる人

加持さんによる事情聴取が始まったが彼らに真実を話す必要はない

嘘をつくことにしたのだ。別に彼らに恩を売る必要もないことだし

 

「レイちゃんが狙われたというわけではないみたいだね」

 

「碇レイさんが狙われたと私は思うのですが。彼女はあなた方にとっては貴重な存在ですよね」

 

エヴァパイロットである彼女たちの存在は大きいはずだが加持さんは明らかに私を疑っていた

仕方がないと言えば仕方がないのだが

 

「君との話し合いはいろいろと大変だよ。何を考えているのか探らないといけないから」

 

「好きにすればいいでしょ。私は警察には協力してもネルフには協力するつもりはありませんので」

 

では失礼しますというと私は保健室を出ようと思ったが加持さんが私の手をつかんで止めた

 

「そろそろ腹の探り合いはやめないかな?」

 

どうやらこちらの考えを読んでいるようだ。だがこちらも負けるわけにはいかない

 

「私には興味のない事ですので」

 

今度こそ失礼しますというと私は保健室を出ていった

すると外では海岸の町で旅館を経営していて私の今の両親が待っていた

 

「お母さん、お父さん。どうしたの?」

 

「先生から聞いたの。あなたが狙われている可能性があるとね。だからいてもたってもいられなくて来ちゃったの」

 

「お母さん、お父さん、旅館は大丈夫なの?」

 

お父さんは1日ぐらいあけて心配ないと答えた

本当ならそんなわけないはずだと私は思ったのだが

きっと教授が連絡したのだろう。私の事について

 

「ねぇ、カオリ。少し休んでみたらどうかしら?心配なの」

 

「お母さん。私は大丈夫。それにネルフについていくつもりはないから」

 

「カオリのネルフ嫌いは徹底しているから何も口出ししないからそこは心配しないけど」

 

お母さんやお父さんにも真実というか私の本当の事を話したりしていない

もし知った場合、殺されるのではないかと私は懸念したからだ

だからこそ今はただの1人娘ということの方が安全だと考えた

迷惑をかけたくないという気持ちが全くないと言えばウソにもなるが

 

「大丈夫だよ。私は学校の先生になる事が目標だから」

 

「今日はこっちに泊まる予定をしているんだけど」

 

お母さんとお父さんは市内にあるホテルに1泊して安全を確認したいとのことだった

心配しすぎだって思うけどお母さんやお父さんなりの愛情表現であることはなんとなくわかる

 

「よかったら今日は一緒に夕食でも食べない?カオリ」

 

お母さんからの提案に私はいろいろと忙しいから難しいと答えた

本当は会って食事をしたいという思いがあったらネルフに気づかれたらお父さんとお母さんにも影響が出る

 

「わかったわ。しょうがないわね。カオリ。でも何かあったら私かお父さんの携帯電話に連絡してね」

 

「了解」

 

お母さんとお父さんはそう言うと高校からホテルに戻ることにしたようだ

 

「カオリ!」

 

「ルミナさん」

 

ルミナさんが私に抱きついてきた。

 

「大丈夫?」

 

「かすり傷だけだから。心配しないで」

 

「そういえばあれはカバンに戻しておいたから」

 

あれとは銃の事だ。さすがに警察やネルフに見つかるわけにはいかない

これ以上疑念を持たれることは避けたいからだ

 

 

 



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読書好きの私

保健室から職員室に戻ると先輩先生たちからは心配しているような視線を受ける事になった

あまり好きではないのだが、仕方がないと言えばそうなのだ

撃たれたのだから、平然としている方が問題だ

 

「水川カオリさん、大丈夫ですか?」

 

ある女性教師が私のことを心配して声をかけてきた

 

「ご心配をおかけしました。大丈夫ですので問題ありません」

 

「大変ね。噂で聞いたけどネルフから勧誘を受けているって」

 

「そんなのは噂ですよ。私は教師を目指しているので」

 

「でも大学では成績トップで通っていると聞きましたよ」

 

どうやら外堀から埋めようとしている連中がいるようだ

そんな奴はできれば潰したいところなのだが、あまり派手に動くといろいろとまずい

ここは冷静な対応が求められるところである

 

「そういえば大学では図書部に在籍していたそうですね」

 

この女性教師は第三新東京市立大学の出身だったようだ

図書部は大学でもかなりマイナーな部活だ。知っている者は少ないほどに

下手をすれば図書部という部活そのものがある事を知らない大学生もいるくらいだ

 

「はい。静かな図書部が好きなので」

 

「よければこの高校にも図書部がありますので顔を出してみてはどうですか?」

 

私はその誘いに興味をかなり示してしまった。

ここの高校にはどんな本が所蔵されているのか興味がかなりあるからだ

 

「良いんですか?」

 

「大学ほど蔵書はそんなに多くないけど、図書部に在籍していたならあなたの力を発揮できると思うんだけど」

 

私は断る理由はこの時点では何もなかったので問題ありませんと答えた

高校の図書室にある本を読めるなら、ある意味では『逃げる』ことができるからだ

 

「放課後に図書室に来てもらえると助かるわ。それに司書の資格を取ることも目指しているのよね?」

 

そう私は司書の資格についても取得を目指している。

本が好きだし読書が好きなのだから当たり前と言えば当たり前なのだが

図書部の部員であり図書委員会の委員も務めているので司書の仕事の内容はわかっている

あとは必要な資格を取るだけだがいろいろと難しいものなのだ。

覚える事も多い事もあるので

 

「喜んで行かせてもらいます。放課後で良いんですよね?」

 

「ええ、それとちょっとあれなんだけど蔵書の整理も手伝ってもらえるかしら?」

 

「良いですよ。本を探したり整理したりするのは好きなので」

 

そう、私は図書部の部室に多くの本を書籍棚に『借りている』のだ

だから図書委員会のブラックリストにも載せられている

返却が遅れるとすぐに催促の電話かメールが携帯電話に来るのだ

大学の寮の自室にある本棚には多くの書籍が並べられている。

ジャンルはいろいろだ。古文から現代のものまで幅広く読んでいる

収まりきらない本が本棚の前に積み立てられていたりしている

ルミナさんからはもっと整理したらとよく言われている

私はキャパオーバーなのだといつも言っているが言い訳としては下手よと指摘される

 

「それじゃ、放課後に3階の図書室に来てくださいね」

 

「はい」

 

女性教師はそう言うと私のそばから離れていった。

今度はルミナさんが近づいてきた

 

「本当にカオリって読書中毒ね」

 

「好きなものは好きなので」

 

「大学で読書中毒って呼ばれているのはカオリだけよね」

 

ルミナさんは茶化すかのように言うと次の授業に行きましょうと言って一緒に教室に向かった



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高校図書部の活動

その後の授業は平和に進んで放課後を迎える事になった

私は図書室に向かうことにした。約束なのだから。それに読書は好きだし

多くの本が所蔵されている図書室は好きな部屋である。

少し足取りが軽くなっている事を感じながら

図書室の前に到着するとドアをノックした

 

「水川カオリです。失礼します」

 

私がそう言って図書室に入室すると図書委員が本の整理をしていた

図書委員のメンバーを見て私は今日は本当に幸運に恵まれていない日だと思った

碇レイさんが図書委員の1人だったからだ

 

「碇レイさんも図書委員なんですね」

 

似合っていると言えばそうかもしれないけど

 

「私は読書が好きなので」

 

「そうですか」

 

私はとりあえず冷静に対応する事にした。

今混乱を起こしていては今後の教育実習に対応できるわけがない

嫌なものでも我慢する。子供でも理解している分かるなのだから

 

「カオリさん。来てくれて感謝するわ」

 

私をここに来ることを誘ってくれた先生がそう言った

彼女は図書部と図書委員会の顧問を兼任しているとのことだ

 

「気にしないでください。読書は好きなので。それで蔵書の整理を手伝ったらいいのですか?」

 

「ええ、生徒は本棚に戻す作業をしてくれるので。私達は蔵書のリストと照合作業をするの」

 

協力してくれるかしらと聞いてきた。私は問題ありませんというと作業を始める事にした

高校の図書室は大学の図書館と違って本は明らかに少ない。これくらいの数なら何とかなると私は思った

 

「いろいろとあるんですね」

 

私は蔵書のリストを見て声に出した。いろいろなジャンルの本が蔵書されていた

高校の勉強に使う本から現代作家の本までいろいろだ

いろいろとそろっている事に私は驚きながらも、蔵書の台帳と照らし合わせて照合していった

 

「高校の図書室にしてはいろいろなジャンルの本が多いですね。それに広いスペースが確保されていますし」

 

「この高校にはいろいろと予算がほかの高校に比べて豊富にあるから」

 

理由は言うまでもない。エヴァパイロットが通っている高校だから

おそらくだけど、それが理由だろう。レイさんが図書委員だから配慮がされているのだろう

 

「カオリさんは図書委員会とか図書部に興味があるんですか?」

 

碇レイさんが質問してきた

 

「私は大学で図書部に在籍しているから、それに司書の資格取得も頑張っているの」

 

だから本を読んだり整理をしたりするのは好きよと答えた

まぁ図書委員会に所属していても、本の返却が遅れてしまう事もかなりある

そのため図書委員会のブラックリストに登録されている。読書中毒として

大学の学費もあるのであまり本ばかりにお金をかけるわけにはいかない

 

「大学の図書館によく行くんですね」

 

「ええ、本は知識の泉だから。覚えておいて損はないのよ」

 

私は本の整理整頓作業に参加して私にできる事を片付けていった



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バスジャック達の狙い

図書室での作業が終了すると私はルミナさんと一緒に大学の寮に帰ることにした

 

「カオリ!図書室は楽しかったの?」

 

「ルミナさん、私が読書が好きなのは知っていると思うけど」

 

「それはそうだけど。わざわざ教育実習先の図書室の整理まで手伝うなんてよほどのもの好きね」

 

ルミナさんは少し口を閉じた後、重い話を始めた

もちろん周りには聞こえないように小さな声でだ

 

「どうして銃なんて持っていたの?」

 

「自分はいろいろと狙われているからですよ。ネルフにスカウトされたらほかの組織からも狙われる」

 

それはそうだけどとルミナさんは言うがあまり納得していない表情だった

 

「できれば黙っていてほしいの。これまでも。これからも。ルミナさんには迷惑はかけないから」

 

「わかったわ。私はクッション役だし、フォローできるところは頑張るわ」

 

ありがとうございますと私はルミナさんに言うと私達は高校の近くにあるバス停でバスを待っていた

バス停で少し待っているとすぐに市バスが到着した。それに乗り込むと大学の寮に戻っていった

バスには高校生も乗っている。しばらくは順調に走行していたが突然、バスが急停止した。

黒塗りのセダン車両が進路をふさいでいた。

私達はバスの一番前の方にいたので状況がかなり危険であることを私はすぐに察した

迷彩服を身にまとった人物がいた。手にはアサルトライフルを所持。

私はとっさにカバンに収めているグロック17に手を伸ばした

最悪の場合は仕方がない。私はグロック17を足首のホルスターに装備した

発砲すれば言い訳はできない。だが守るためには手段を選んでいられる状況ではない

 

『バスに乗っている乗客は全員降りろ!さもないと皆殺しにする!』

 

ある意味では度胸がある連中だ。ネルフのお膝元である第三新東京市で攻撃を仕掛けるとは

リスクを覚悟しているのかについては、正直考えていないだろうと私は思った。

私はバスの運転手さんにドアを開けるように言った

 

「君が死ぬことになるかもしれない」

 

「ここは穏やかにいった方が良いです。連中はやる気十分みたいなので」

 

バスの運転手は私の提案に戸惑いながらもドアを開けた。

私はゆっくりと降りる。

 

「他の奴も降ろせ!エヴァのパイロットをこちらに引き渡せばお前たちには危害は加えない!」

 

そう、このバスには碇レイさんが乗っている。連中の狙いは彼女のようだ

別に彼女がどうなっても私にはどうでもいい事なのだが、助けないわけにもいかない

一応、知り合いなのだから

 

「私が人質になるわ」

 

「お前には用はない!」

 

彼らがアサルトライフルに照準を私に向けた瞬間、私は一気に走り出して1人の男性に体当たりをした

彼から奪った銃を使って、鉛弾をプレゼントしてやった。

弾は見事に命中した。全員死ぬことはないだろうが病院送りになるような位置に

主に肩などに命中させたからだ

 

「言い訳を考えないといけないわね」

 

ルミナさんがバスから降りてくると私に後ろから抱きついた

 

「カオリ!大丈夫?」

 

「犯人さんたちは病院送りだけど。私も面倒な事になりそう」

 

警察になんて言い訳をしようか。私は考え始めた

 



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襲撃の後始末

警察が駆けつけてくると私は言い訳を考えながらも対応し始めた

犯人たちは肩などに被弾していた。抵抗されないように制圧するにはこれが楽な方法だからだ

後始末は大変だが。この私の行動についてどうやって説明するべきか

 

「面倒な事になりそうね」

 

そんなことを私が呟いていると女性警察官が駆け付けてきた

私は思わず来るのが遅いっていうのにと思ったが

とりあえず状況を説明すると警察署で事情聴取を受けてほしいとのことだ

仕方がないので付き合う事にした。

私はパトカーに乗り込むと第三新東京市警察署に向かった

後で聞いた話なのだけど、ルミナさん達もある程度事情聴取を受けた

その後、自宅である大学の寮に戻ったの事だ。

私は警察署に到着すると詳しく事情聴取をしたいとのことで話を始めた

刑事さんからは無茶な事はしないようにと注意を受けたが

あの状況下で犠牲者が出ない方法を選んでいられる空気ではなかった

私はそう説明すると刑事さんは正当防衛が認められると教えてくれた

あとはネルフからの事情聴取が待っているだろう

警察で事情聴取を終えると今度はネルフからの事情を聞きたいと伝えられた

 

「私は問題ないですので」

 

女性警察官は事情聴取をバトンタッチするためにネルフの担当者と交代した

入ってきたのは加持リョウジさんだった。私はこの時、最悪だと感じた

 

「できる事ならあなた方と話をするのは嫌なのですが。仕方がないですね」

 

「レイちゃんを守ってくれたのかな?」

 

「私はただ犠牲者が出ない方法を取っただけです」

 

「それにしては銃の扱い方に慣れているみたいだね。どういうことか説明してもらえるかな」

 

やっぱり来た。一番答えずらい質問だが私は防衛線を張っていた

 

「私はこう見えてもいろいろと狙われている人間なので。自分の事は自分で守ります」

 

その言葉に加持さんはなるほどねと言う

どこまで誤魔化せるかはあまり自信はなかったが。

今はこの状況下を乗り切れればそれで問題ない

 

「君の部屋を家宅捜索しても良いかな?」

 

「令状はあるんですか?」

 

「もちろん君が協力してくれることをこちらとしても望むところだけど、必要なら家宅捜索令状を取ることも」

 

「お断りします。プライベートの侵害で訴えますよ。ネルフという巨大な組織が小娘をいじめている」

 

マスコミが飛びつきそうなネタになるでしょうねと伝えた

確かにマスコミが飛びつくことは間違いないが、こちらもある程度リスクを覚悟しないといけない

私はこの手の話ならマスコミが好き勝手に報道するでしょうねと警告するかのように言った

私に関わったらロクな目に会わないと思わせる事が重要なのだ

 

「とりあえず、明日の夕方に時間を作ってもらえるかな?」

 

「何のためですか?」

 

「事情を聞くためだよ。良いかな?」

 

「お断りします。どうしても聞き取りがしたいなら逮捕状でも持ってくることですね」

 

私はネルフに協力するつもりはないと伝えると警察署を出ていくことにした

そして大学の寮に戻っていった



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ルミナさんとの夕食

私は大学の寮に戻るとルミナさんが出迎えてくれた

 

「お疲れ様。カオリ」

 

「お待たせしちゃったかな」

 

「これから学食で夕食を食べに行こうと思ったところだから。よかったら一緒に行かない?」

 

ルミナさんの誘いに私は乗った。大学敷地内にある食堂に向かった

 

「ねぇ、カオリ。どこかで武術でもやっていたの?」

 

やっぱり来た。この手の質問は当然でできれば避けたいと思っていた質問だったけど。

あんなことがあった後なのだから、質問が来ることは想像できていた

 

「いろいろとね。格闘術は習っていたから」

 

「ふ~ん」

 

ルミナさんはかなり怪しいわねといった感じの様子だった

今はこうやって誤魔化すしかない。本当のことを話すわけにはいかないのだから

できる事なら知られたくない事なのだ。私が『碇シンジ』であったことは

そしてこの世界の『神様』と同等の力を持っている事は特にだ

食堂に着くと私はカレーライスを注文した。ルミナさんも同じでカレーライスを注文していた

料理が出てくると私はルミナさんと同じテーブルで一緒に食べた

食堂には多くの大学生がいた。もう夕食時だから当たり前といえばそうだが

それにしてもここにきて、一気に状況が変わってきた

ネルフにゼーレ。2つの組織から私は狙われている

まだ本格的には攻めてきていないが、それも時間の問題だろう。

それにネルフ側に私がゼーレに狙われているという事実が知られれば、

確実にその理由などについて嗅ぎまわることは簡単に想像できる

そうなれば情報戦という上では私だけでは力不足だ

何とかしなければ、私はネルフという大きなものに踏みつぶされる可能性が出てくる

そこまで事態が進行する前に阻止する必要があるのだ

まぁ今はとりあえず私は考えながらカレーライスを食べる事にした。

そうしたらルミナさんに悩みがあるなら相談に乗るわよと

ルミナさんには何もかもお見通しなのかもしれないが。

彼女まで巻き込むわけにはいかない。この件を知ればルミナさんの命にもかかわるのだから

私はルミナさんにまで怪我をしてほしくない。大切な親友だから

私の事を守ってくれるたった1人の大切な友達

だからこそルミナさんに影響が出るようなことになるなら、私は手段を選ばず徹底抗戦の構えで対応する

たとえそれがネルフに私の真実の姿について漏れる事であったとしても

私を守ってくれているのだから、私もルミナさんを守る義務がある

ルミナさんはこんな私なのに命を張ってくれているようなものなのだ

まるでボディーガードのように。前面に立ってくれている

大切な親友だから守り抜きたいのだ

私とルミナさんは夕食を食べ終わると寮に戻ることにした

 

「そういえばカオリ。図書委員会から呼び出されていたわよ。本の返却が遅れているって」

 

ルミナさんの言葉に私はすっかりと忘れていた

大学図書館で借りた本の返却を。私は急いで返却するために寮に本を取りに戻った

自分の部屋に戻るとすぐに本棚から返却する本を取り出す

全部で5冊にもなる。ジャンルはいろいろだ。古典から現代小説までいろいろと借りていた

私はそれを持って急いで図書館に向かった

もうかなり時間は遅いが図書館は閉館していない事は確認済み

何とか図書館に到着すると図書委員会の委員にもっと早く返すようにと忠告された

もっとも、いつもそれを守ることができたことがないのだが

 



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渚カオルとの接触

大学図書館に本を返却を終えると私は寮にまた戻った

自分の部屋に到着するとため息をついた。

 

「疲れたわね」

 

私は思わずそんな愚痴をこぼしてしまった

いろいろと苦労が多い事だが。私はこの道を歩み続けるしかないのだ

何としても真実を隠蔽して気づかれないようにこのまま戦場で子供が子供らしく、

勉強を受ける事ができない世界をどうにかしたいと思っている

子供は数多くの希望や夢を持っている。将来を選ぶのは自分なのだが手助けができればいいと考えていた

その夢や希望を絶望というなの障害物から避けさせて幸せな未来に導けたらと良いと私は思っている

話は変わるが私の部屋にはたくさんの本棚があり、多くの本が所蔵されている

もちろん自費で購入したものだ。お金のかかる趣味だとよく同期生に言われてしまう

確かにその通りだ。本はお金がかかるしかさばってしまう

本棚に収まりきらない本もあり、それらは本棚の前に積み上げられている

ジャンルは古典から現代文まで様々だが。本を読めば知識が増える

知識は裏切ることをしない。

私はいつも持ち歩いているグロック17と足首に装備しているリボルバーの清掃と整備を行った

それを終えるとベッドに腰かけて寝る前の読書を始めた

 

「平和ね」

 

この時間になると大学寮では多くの学生が寮に戻っているため多少騒ぎが起きる事もあるが

大半はもう眠りにつくか勉学に励んでいる

私は教育実習で学んだことについてレポートの作成を始めた

それにしても状況がここのところ悪い方に転がり落ちている事は間違いない

幸運に恵まれていないと言えばそこまでの話なのだが

でもここまで好運から見放されているとは最悪といっても良い

 

「まったく困ったものね」

 

『ピーピーピー』

 

わたしの携帯電話が着信を告げていた。相手は知られたくないようで非通知だった

 

「水川カオリです」

 

『急なお電話とこんな時間にすみません。渚カオルです』

 

「有名人のあなたが何の用件なのでしょうか?」

 

よりにもよって最悪の相手だ。

まさか彼から接触してくるとは。どうやって電話番号を知ったかは察しがついていた

ネルフの力を利用したという事はすぐに予想できた

 

『これから会う事は出来ますか?』

 

「もう遅い時間なのに、保護者が許可してくれているのかしら?」

 

『僕は自由な身なので。第三新東京市が一望できる展望台で会えませんか?』

 

これ以上余計に引き延ばすといろいろとまずいと私は考えた

分かったわというと待ち合わせ時間を決める。

私は通話を終えると着替えて寮の近くでタクシーに乗り込み展望台に向かった

ちなみに念のためだがクラッシュキッドを持っていくことにした

グロック17が入っているリュックを持って。タクシーなので展望台まではそれほど時間はかからなかった

到着すると私は周囲の気配を感じた。

やっぱりというべきか渚カオルの警護をしている者と思われる人物の気配を感じた



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トラブル発生の予兆

展望台に到着するとすでに渚カオルが待っていた

 

「どういう用件があるのかしら?渚カオル君」

 

「じっくりと話をしたいと思いまして」

 

彼からそんなことを言われても、私は嫌な事だと感じていた

断ればどうせ学校で質問されるだけだ。それならここで話をした方が良い

護衛以外に話を聞いている人間はいないのだから

 

「シンジ君はどうしてあなたに頼ったのですか?」

 

「またその質問なの?彼は自らを咎人だと思っていた。でも世界を救う義務があるという考えも持っていた」

 

これは『私』の言葉だ。悲しみに暮れていてもどうしようもない

戻せるなら人々が自らの考えで生活している社会を『私』は望んだ

だからあの赤い世界から元に戻したのだ。

もう1度、人にやり直すチャンスを与えた。

過去を忘れず、いやそれを糧にして生活してほしかった

でも現実は平和な世界とはかけ離れていた

人々は争いばかりを起こしてしまった

 

「どうして止める事をしなかったんですか?シンジ君が自殺することを」

 

「何度も言うけど、それが彼の意思だから。彼の行動は悩んだ末の決断だった」

 

そう言い続けるしかないのだ。昔の『碇シンジ』は死んだのだから

今は第三新東京市立大学に通う女性学生に過ぎない

さまざまな検査をしても私を使徒であるという事は発覚しないように小細工はしている

ばれるはずがないのだが、彼は例外だ。影の部分を知っているのだから

ゼーレの事についてはよく知っている。だからこそ警戒するのは当り前のことだ

 

「シンジ君は満足のいく決断をしたと?」

 

「そうよ。彼は自分の存在理由に悩んでいた。私はあくまでも提案をしただけ」

 

そう言うしかないのだ

これが答えなのだ。たとえどんなに残酷な答えだとしても

もう私はあの時にすべてを捨てる事を決めた

新しい『私』の生活することを選んだのだから

 

「話がこれだけならもういいかしら?私も忙しいし」

 

その時私は冷たい視線を感じた

 

「伏せて!」

 

私はとっさに渚カオルを押し倒した。人を殺すための視線を感じたからだ

簡単に言えば銃口を向けられているような視線を。

私が彼を押し倒すと私のいた位置に銃弾が飛んできた

 

「あなたも行動を自重することを覚えるべきね」

 

渚カオルを引っ張る形で展望台に止まっている車の影に隠れた

 

「あなたを守るのは私の仕事じゃないんだけど」

 

私は愚痴るかのように言う。確かにその通りだ。

教育実習で通っている生徒とは言え、体を張って守るのは私の守備範囲ではない

警察に連絡しようとしたがジャミングがかかっていた。どうやっても消したい奴がいるようだ

私は少し悩んでしまった。足首に装備しているリボルバーを使いたいが、長距離狙撃をされている

どう考えても射程の範囲外だ。反撃する手段はない。それに彼の前で銃を使うわけにはいかない

私はただの一般人なのだから。表向きは

 



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騒動の決着

私と渚カオルは車の影に隠れていたが、

狙撃犯はよほどこちらを殺したいのか次々と弾を撃ってきている

 

「まったく、どうして人間は彼が叶えた安定の世界を喜んで受け入れないのかしら」

 

私がそういうが、これは『僕』としても同意見だ

『僕』は世界が安定してくれることを願って元に戻したはずなのに

世界のごく一部の人たちは受け入れる事を嫌がっている

まったくもって迷惑な話だ

 

「ところでネルフの保安諜報部は仕事をしないのかしら?」

 

「僕が少し2人だけにしてほしいとお願いしているので」

 

つまり護衛に戻るには少し時間がかかるという事だ

それはそれで助かると言うべきか面倒と言うべきか

微妙なところである

 

「あなたはもう少し自分の希少性を理解する事ね」

 

エヴァのパイロットなのだから狙われることはわかっているはずだ

ましてや渚カオルはゼーレの関係者だ。いつ狙われても不思議ではない

おまけにこの辺りは何者かによってジャミングがかけられているのでは携帯電話での通報もできない

困ったものである

 

「仕方がないわね。自衛権を行使するしかないみたいだし」

 

私はポケットからあるものを取り出した

渚カオルはそれを見て驚いていた

 

「内緒にしてね。こんなものを持っている事が分かったら面倒だしね」

 

「それは手榴弾ですよね」

 

「そうよ。あなた達ネルフに狙われはじめたから武装したのよ。このことも内緒ね。私とあなたとの秘密」

 

本当なら手のうちを見せるのは好ましい事ではないが、

今、この状況を打破するには仕方がない

私は安全ピンを抜くと車の下に放り込んだ

そして彼と一緒に大急ぎで別の隠れる事ができる場所に離れた

車が爆発したらさすがにあちらも手を引くだろう

さらにネルフ本部の保安諜報部の護衛担当も動きやすい事を計算に入れての行動だ

 

「まったく警護体制はもっとしっかりしてもらいたいわね。私に全責任を押し付けるみたいなことは嫌なんだけど」

 

私は愚痴るかのように言うとようやく渚カオルの警護担当者が次々と完全武装で出てきた

 

「それじゃ、私はこれで失礼するわね。警察にはあなたの方でうまく言っておいて」

 

「それは僕が呼びだしたから責任を取れという事ですか」

 

理解が早くて助かるわというと急いでその場から撤収していった

私はそう言うとすぐにその場から離れていった。

警察騒動に巻き込まれるのはごめんだからだ

私は展望台から走って逃げだすと大通りに出る

そこでタクシーをひろって大学の寮に戻ることにした

ただ、これで渚カオルに貸しを作るようなことになったことは少し後悔していた

できる事なら彼らとは距離を取っておきたいからだ

内心では私は嫌な展開になりそうだと感じていた



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加持さんとの話し合い

大学の学生寮に帰ってくると私は自分の部屋に戻った

部屋に戻ると私はすぐにお風呂に入り、お風呂から上がると着替えてベッドに横たわった

ため息がまたしても出てしまった

 

「まったく苦労する人生ね」

 

急激な変化に私はついていけないところがあった

まるで神様に試されているかのように感じられたがそんなことがあるはずがない事はわかっていた

だって、神様は『僕』なのだから

他に神様がいるのなら是非とも会いたいものだ

 

『トントン』

 

「誰ですか?」

 

『ルミナよ。あなたに面会希望をお願いしている人がいるんだけどどうする?』

 

ルミナさんはどうやら寮長から伝言を任されたようだ

私はとりあえず部屋のドアを開けると誰が面会希望なのか質問した

 

「カオリ、ごめんなさいね。私もこんな時間に非常識だって断ろうと思ったんだけどそうはいかない相手で」

 

ルミナさんがそれほど困る相手となると、面会希望者はかなり限られてくる

 

「誰なんですか?」

 

「それが加持リョウジさんって人なの。断ったんだけどどうしても急ぎで会いたいって」

 

あの展望台の事を追求したいのか。それとも何か別の動きがあるのか

気になるところではある。私はとりあえず会う事にした

ここで断って面倒な事になるのは避けたいし、何かあるならあちらの状況を把握しておきたいからだ

 

「悪いね。こんな時間に」

 

加持さんは部屋に入ってくるとそう声をかけてきた

 

「面会したいという理由は何ですか?もう時間もかなり遅いですし」

 

「渚カオル君を守ってくれたみたいだね」

 

「その件についてお話がしたいなら警察を通してください。ネルフにお話をする理由はありませんので」

 

「少しは協力してくれないかな。シンジ君のためにも」

 

「彼の名前を出したら私が何でも協力すると思っているんですか?はっきり言ってバカな考えです」

 

「シンジ君は君に何を託したのか教えてくれないか」

 

「彼は正義を求めていたのにネルフは自分たちの罪を隠ぺいした。それどころか自分達を英雄だと主張した」

 

「否定はできないところがつらいね」

 

「だからこそ彼は自らの命を懸けて幕を下ろした。利用される事を恐れて。私としては正しい判断だっと思うわ」

 

これは『僕』の考えである。

もし碇シンジとして現れたらネルフに英雄として、

利用されていたことは容易に想像がついていたからだ

そんな人生なんてどんなにお金を積まれても愛情があってもお断り

私は今のこの人生に満足している。

 

「本当の事を聞きたいところだけど、シンジ君を止めてくれなかったのかな?」

 

「碇シンジ君は自分が利用されることを恐れた。ゼーレの傘下にいたネルフに利用されることはね」

 

そのことはあなたでも理解できていたはずですよねと私は加持さんに伝えた

私は利用されることなど望んでいない。もうエヴァパイロットとして利用される事なんて嫌だからだ

 

「君を逮捕するだけの材料がそろえる事ができるなら、こちらとしても逮捕したいと思っている関係者は多いよ」

 

「でも逮捕はできない。碇シンジ君の遺体がない以上殺人罪には問えない」

 

それに仮に状況証拠だけで立件しても私が『碇シンジ』を殺したという明確な物証はないのだ

ただの状況証拠に過ぎない。検事は裁判を諦めるだろう。勝ち目のない裁判などしたくないからだ

 



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私と組織との関係

 

「話は以上ですか?」

 

私はそろそろ眠りたいと思っていた

これ以上ネルフと茶番劇を演じるつもりはないからだ

 

「今夜はこの辺りにしておこうかな。でも後日時間を作ってもらえるかな?」

 

「ネルフのために時間を作れと言うのでしたらお断りします」

 

「ネルフ嫌いは徹底しているね」

 

「彼に教わったので。どれほど汚い組織であるかについては特に」

 

ネルフがどれほど裏で汚い事をしてきたかについてはよく理解しているのだ

だからこそ彼らに協力するなど絶対にありえない

たとえそれがどんなに世界のためになったとしてもネルフとは協力するつもりはない

確かに組織には2つの面がある。綺麗な面と汚い面。

綺麗な面ばかりの組織などありえないのだから

それでもだ。ネルフやゼーレは汚い事をやりすぎた

これはどんなにきれいごとを並べたところで正当化などできるはずがない

私は、いや『僕』はそのことを知りすぎているのだから

彼らが犯した罪はあまりにも大きすぎる

だからこそ、ネルフやゼーレ関係の組織と協力することはないのだ

 

「また次回改めて話を聞かせてもらうよ」

 

「その時は裁判所の逮捕状でも持ってくることですね。任意の取り調べには応じるつもりはないので」

 

「そうさせてもらうよ」

 

加持さんはそう言うと私の部屋を出ていった

私がネルフに協力する義務はない。むしろ彼らを追い詰めてやりたいと思っている

自らの罪を自覚せず、自身の正義のために様々な裏工作をしてきたのだ

そんな汚い組織に私が協力する必要があるはずがない

私には大切な友人がいる。私の事を碇シンジではないと言ってくれる大切な友人が

私の事を見捨てないでくれるこの世界で大切な友人が

だからこそこの先の世界を見ていこうと思っているのだ

この先もずっと戦場で子供に勉学を教える事になる教師になる事を願っている

どんな形でも子供には明るい未来を見せてあげたいのだ

子供には無限の可能性がある。でも戦場ではその可能性は限られたことにしか向ける事しかできない

私はそんな世界にならない事を望んでいる

平和になれば子供たちは明るい未来を見せる事ができるかもしれないからだ

周りから見てどんなに苦労するような平和だとしても私は子供たちに未来を見せてあげたいのだ

そして子供たちが平和に暮らせることを望み続けている

これは私が教師になったらどんな戦場であっても忘れてはならない事だ

戦場でも学校は必要だ。ただし教える事は子供が明るい未来という希望を見る事ができることにしたい

 

「苦労しそうね」

 

『トントン。カオリ、ルミナだけど良いかしら?』

 

私はルミナさんの入室を認めた。

 

「彼はネルフの関係者よね?どうするの?」

 

「私はネルフとは決別した関係を維持したいので。ネルフに協力するつもりはないから」

 

「カオリ。何か困ったことがあったらいつでも相談してね」

 

ルミナさんはそう言うと私の部屋を退室していった

遺された私はベッドで眠る事にした。今日は疲れた



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大学図書部の実情

翌朝、今日は土曜日。今の日本の学校は週休2日制だ。

今日は高校も大学も休み。ただ高校の図書室に行ってより知りたいことがあった

どんな本が所蔵されているのかに興味があるから

第三新東京市立大学付属図書館に保管されている本はほとんど読んでいるので

新しい発見をしたいのだ。本は貴重なものなのだから

だから大切にして読んでいきたいのだ。1冊1冊、大切にして

私は自分の部屋でサンドイッチを作るとそれを食べた

そして部屋の掃除すると寮の前に設置されているバス停に向かった

 

「カオリ!どこに行くの?」

 

「高校の図書室。どんな本があるのか気になるし」

 

じっくりと所蔵されている本を読んでいきたいのだ

読書が好きな私にとっては楽しみで仕方がなかった

 

「なら私も行くわ。少し待っていて」

 

私はわかったわというとルミナさんの部屋の前で待っていた。

10分ほどすると着替え終えたのかフォーマルスーツ姿のルミナさんが部屋から出てきた

私はカジュアルというわけではないが、

がちがちのフォーマルスーツ姿というわけではない中間の服装だ

 

「それじゃ行きましょう」

 

ルミナさんはそう言うと私達は一緒に寮を出ると寮の前に設置されているバス停で市バスを待った

しばらくしてバスがやってきた。乗客は今日が休日という事もありそれほどではない

私とルミナさんは座席に座ると高校に向かった。静かな時間である。

ちなみに私は休日であるからといっても足首にリボルバーを装備している

さらにカバンにはグロック17を1丁隠し持っている

バスに乗ってしばらくすると教育実習先の高校前のバス停の到着した

私達は運賃を払うとバスを下車。高校に向かって歩いていった

高校生も部活のためだろう。登校している生徒がそれなりにいる事は事実であった

 

「今日は静かな時間になれば良いんだけど」

 

「図書室の仕事は静かな事が多いでしょう。羊飼いって呼ばれているあなたなら静かな図書室は好きだろうし」

 

私が羊飼いと呼ばれている由縁はあるアニメの登場人物と同じで読書を常にしているからだ

本は貴重なものなのだから大好きだ

だからこそと大学付属図書館の1室に図書部を設置してもらった

以前は別の大学本館に部室があったのだが、私が図書委員会と大学上層部を説得して移動させてもらった

おかげで大学付属図書館からすぐに本を借りて読書をすることができた

でも図書部員は私とルミナさんだけで。

入部希望者は私が図書部に入部しませんかと宣伝広告を出してもいなかった

もっとも、静かな図書部を希望する私としては入部者がいない事の方が良かった

静かな部室は読書をするにはもってこいの場所だから、

周囲の雑音がない空間は読書に集中するのに最適である。

高校の敷地内に入るととりあえず職員室に向かった

職員室では私とルミナさんが来るのを待っていたのか図書部の顧問が待っていた

 

「ごめんなさいね。土曜日なのに図書室の本の整理に付き合ってもらって」

 

顧問の教師がそういった。私は別に苦労など感じていない

本が好きなのだ。読書をしていれば知識が増えるのだから



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休日の高校の図書室

私とルミナさん、そしてこの高校の図書部の顧問の先生と一緒に図書室に向かった

校内は今日は休日だから静かだ。図書室に到着すると高校の図書委員会の生徒だろう

彼らは本の整理整頓を行っていた。その中には碇レイさんがいた

 

「水川カオリさん」

 

「碇レイさん。また会いましたね」

 

私としては再会などしたくなかったが、こうなる運命に

定めなのかもしれない。いつかは登っていくしかない峠道のように

越えていくしかないのだ。彼女は今日はどうして高校に来ているんですかと聞いてきた

 

「今日は図書委員会の仕事を手伝いに来たんですよ。私は大学で図書委員をしていますし、図書部に在籍しているので」

 

「そうなんですか」

 

「碇レイさんは本が好きなんですか?」

 

「文庫を読むのが好きなので」

 

「そうですか」

 

私はそっけないと言えばそうかもしれないがあっさりとした返事をして本の整理整頓を手伝う事にした

高校の図書室にしてはかなりの本が所蔵されていた。

ジャンルは様々で充実していた

 

「いろいろな分類の本がありますね」

 

「この高校にはいろいろとお金が支給されているので」

 

それはつまりエヴァパイロットである彼女のために多額の予算が下りているという事だ

公平性に欠けていると言えばそこまでの話だが。

彼らにとってはパイロットを損失する事の方がダメージは大きいのだろう

 

「カオリさんはどうして教師になる事を目指しているんですか?」

 

「戦場で戦いしか知らない子供に明るい未来を見せてあげたい。それだけですよ」

 

私の本心である。戦場などで戦いのみを信じるのではなく明るい未来を見せてあげたい

だからこそ私は教師になる道を選んだのだ。そのためなら多少の妥協も仕方がない。

それが今のこの状況だ。たとえ碇レイたちの学校だとしても、そこで学べるものを学んで将来につなげる

戦場に比べれば今のこの状況はまだまだ優しいものだ

未来を見せてあげたいのだ。多くの子供たちに。

私は戦場ではなく、明るい未来を見せてあげたいのだ

そんな事を思いながらも図書室の本の整理を手伝った

ルミナさんも一緒になってであるが

 

「この高校はかなり充実しているわね」

 

ルミナさんは所蔵されている本のリストを見てそう言った

私もその所蔵リストを見てかなり多種多様な本がある事に驚いた

よくもまぁ、これだけの本を集めたものだと

私とルミナさんは一緒に本が正しい位置に保管されているかを帳簿を見ながら確認していった

本の整理整頓は寮の自分の部屋にある本棚でいつもやっている事なので慣れた事である

もっとも、この高校の図書室にある本の寮に比べると私の部屋にある本の量は少ないが

それに図書委員会で本の整理整頓も何度か担当している

大学付属図書館に所蔵されている本に比べるとこの図書室にある本は少ないので問題ない

私達は帳簿に記録されている本を1冊ずつ確認していった



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私と碇レイ

昼頃になると本の整理は終了した

私とルミナさんは校舎の屋上で昼食を食べる事にした

すると碇レイさんが一緒に食べませんかと提案してきた

私としては断りたいところだが、お誘いを断る理由が思いつかなかったので

仕方なく良いですよと返事をしてしまった。

ちなみに私の昼食のメニューはサンドイッチだ

自家製である。

 

「どうして碇君はあなたにすべてを託したんですか?」

 

「彼は自分の未来をわかっていた。利用されるくらいなら自分でけりをつけた」

 

私を仮に拘束して拷問しても私には仲間がいる。ネルフの真実を知っている者がねと伝えた

もちろんはったりである。だが時にはこういうはったりが有効な時もあるのだ

特に今のこの状況では私が単独プレーをしているのではない事を知れば簡単には手を出さないだろう

だがそれもどこまで持ってくれるかわからない。私は神様だから死ぬことはないが

それでも怪我をすることはある。傷跡はすぐに治ってしまうが、

人であることを示すために人と同じ回復にするしかない

急激に負傷が治ったら怪しまれる。だからこの前の狙撃時のけがは一応包帯でカバーしている

もっとも、負傷しているかのような素振りはパフォーマンスに過ぎないのだが

 

「平和な世界を望んだ彼は裏切られたと感じた。そしてネルフは自分達の都合の良いように正義の味方をしている」

 

ネルフはゼーレの下部組織だった。サードインパクトを起こすために編成された

なのに今はまるで自分たちが世界を救ったと大々的に宣伝している。

誰のおかげで平和になったのかわかっているはずなのに

『僕』は全てが平等に裁かれるべきだと考えたのにネルフは自分に都合が悪い情報を抹消した

そして正義の味方であると世界中に宣伝した。

正義の味方など存在するはずがない。光ある所に闇があるのだから

ネルフが正義の味方であることを立証されたら私は驚く

偽りの真実で正義の味方が成立している。私はここから先は内緒の話をするためベンチから立ち上がった

碇レイさんに内緒話をしましょうと言ってルミナさんとは少し距離を取って2人だけでの話をした

 

「碇レイさん。サードインパクトで彼は真実を知った。この世界のすべてを。だからけりをつけたのよ」

 

「どんな真実なのか教えてくれませんか?」

 

「ヒントなら教えてあげるわ。ゼーレと人類補完計画。そしてあなたの存在。リリスに最も近かったあなた」

 

「碇君からどこまで話を?」

 

「彼は私の質問に対してはすべて答えてくれた。だからネルフとゼーレの影を知っている」

 

「どうしてそれを私に話してくれたんですか」

 

「ネルフに付きまとわれることは避けたいからよ。碇ユイさんは自己満足のために彼を犠牲にした」

 

そう、自分の知りたいという欲求を我慢する事をしないで実験を行った

その結果がどうなったかを知らない事は嘘だろう。『僕』はあの実験以降捨てられた

碇ユイを取り戻したいという碇ゲンドウの欲求に振り回された

罪があるというなら彼らだ。それを自覚しながら隠し続ける

罪を罪で上塗りをしているようなものだ。だからこそ許せない

私は、いや『僕』を都合の良いようにしか利用する事しか考えている連中に協力してやる義務はない



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私と組織の関係

「サードインパクトで神になった碇シンジ君は世界を守ろうとしたのにネルフは自分の都合の良いように書き換えた」

 

「それは」

 

「碇レイさん。いえ綾波レイさん。咎人であることを自覚するべき。自分では正義の味方だと思っているようだけど」

 

そう、私にとってネルフもゼーレも咎人の集まりでしかない

子供のころから『僕』を利用する事しか考えていないのだから

碇ゲンドウは何もかもが自分の思い通りになると思っている傲慢な人間だ

自分の計画遂行のために様々なものを踏み台にしてきた

特に赤木ナオコにむけてワザと自殺するように仕向けた

これでは殺人をしたのと変わらない。おまけに1人目の綾波レイも事実上殺害した

零号機にコアにするという形をとってだが

だからこそ許せないのだ。絶対に

 

「なら碇君はどうして私たちを助けたんですか?」

 

「彼は神様として公平にしただけ。まさかネルフが正義の味方だと主張するとは思わなかったでしょうね」

 

「それは、でも」

 

「正義の味方だと思っているなら、そんなバカな考えは捨てる事ね。私は彼の遺志を継ぐ義務があるから」

 

「どうするつもりですか?」

 

「私は彼が残した遺言を果たすことも考えるわ。ネルフの真実を明らかにするだけ。どれだけ汚い組織だってことをね」

 

私は公平な立場で裁くだけだ。

ネルフがゼーレの下部組織であったことを明らかにして正義を果たす

彼らがいない世界を望むこともできる。私には大切な友人がいる。だからこそ戦うのだ。

ネルフやゼーレによって閉ざされてしまうかもしれない世界のために

人々に未来を見せてあげたい。明るい未来を

 

「碇君は本当に神様になったんですか?」

 

「真実がどうなのかは深く追求はしなかったわ。シンジ君は苦悩な表情を浮かべていたから」

 

だけど、後悔の気持ちはたくさんあったと碇レイさんに伝えた

確かにその通りだ。『僕』の中には後悔の気持ちはたくさんあった

 

「リリスから生まれた碇レイさん。もうこれ以上、あの儀式について深入りしないほうが良いわ」

 

私は真相を知れば多くの人たちの運命が変わってしまう事になると警告した

これは事実だ。サードインパクトでの儀式の事を知れば不幸になる人間は多い

ネルフだけで済めばまだ良いが、ゼーレの構成員にも影響が出る

私に彼らが接触してきたのだから、今後どうなるかはわからない

 

「私はいろいろと知りすぎているから狙われている。ネルフにもゼーレにも。でもねこれだけは断言するわ」

 

私はどちらの組織にも加担するつもりはないと彼女に断言した

ネルフに協力すればゼーレは敵。ゼーレに協力すればネルフは敵

なら私は中立的な立場でいる事だけよと伝える

 

「もう暗い話はやめましょう。血生臭い話なんてあなた達、高校生が関わるものじゃないわ」

 

「大学生のあなたも関わるべきではないと思うのですが」

 

「お互い様ね」

 

話はもう終わりと私は打ち切るとルミナさんがいるベンチのところに戻った

 



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関係の難しさ

「ずいぶんと彼女と話し込んでいたわね?カオリ」

 

ルミナさんはかなり待たされたことにうんざりしていた様子だった

 

「いろいろとあるからね。ネルフとは」

 

「因縁があるって事かしら?」

 

「そういう事よ。ところでルミナさん。そろそろ図書室に戻らない?」

 

ランチも終わったことだしと私は言うと屋上から図書室に戻っていった

 

「カオリ、どうして彼らとの接触を続けるのか教えてくれない?」

 

「私は自分の信念を貫いているだけなの。未来を見るため、明るい未来を見せてあげたいから」

 

たとえ組織に属しているからといって将来の道を限定する事は誰にもできない事であると

それを私は実証したいのかもしれない。私にもわからない考えがあるのかもしれない

 

「とりあえず片づける事は多い事は事実だけど。私としてはけりをつけたい」

 

「どんな状況になってもかしら?」

 

「ええ、けりをつけるの。ネルフとね。他にもいろいろと接触してくるかもしれないけど」

 

「それって、最近テレビでよく言われているネルフの敵対勢力ってやつ」

 

「ルミナさんもそういう情報に興味があるのかしら」

 

ネルフサイドがゼーレが敵であることを示すためにフェイクニュースを流している

まったくもって愚かなものだ。真実から目を背けるバカな連中である

そんな事をしてまでも『綺麗な組織』だという事をアピールしたいのだと

いずれは草むらから大蛇が飛び出してくるかもしれないのに

ゼーレの大本は排除したはずだった。だが分派は存在する

だからこそ私を襲うような真似をした。それも比較的警備が厳しい敷地内で

第三新東京市というネルフのおひざ元で堂々と。

バカな連中だと侮っていられるような状況ではない

彼らはいずれかはエヴァパイロットを暗殺するか、誘拐する

そして自分たちに都合の良いように利用する可能性がある

神様の私としては私情を挟むのはご法度だが、一応『僕』だったころの友達だ

見捨てるような真似はできない。ギリギリのところまで粘って救助する

もちろん私の存在が表に出ない形であるが。ばれたらもう逃げ場は存在しない

情報が漏洩したらこの街から出ていくしかない。仕方がないのだ

海岸の町の家族やルミナさん達を巻き込むわけにはいかない

私とルミナさんは一緒に図書室に戻ると、今度は碇レイさんではなく渚カオル君がいた

 

「渚カオル君。あなたも図書委員会か図書部の部員なのかしら?」

 

彼は万人受けする笑みを浮かべるとこう言った

 

「読書が好きなので」

 

「ちなみにどんな本が好きなんですか?」

 

「僕はいろいろと読みますよ。本は貴重なものですから」

 

彼の言葉を聞くとルミナさんがまるで第2のカオリねと話した

余計な情報を与えるようなことをしてほしくなかったが止めるわけにもいかない

ここで止めたら怪しまれる可能性があるから。

 

「カオリさんは読書が好きなんですか?」

 

「私と一緒で大学付属図書館の図書委員で図書部の部員だもの」

 

「そうなんですか」

 

「ルミナさん。お喋りはここまでで。私達は勉強をするために高校に来たことを忘れないでね」

 

「わかっているわよ。カオリ」

 

 



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好運とは縁のない時間

「ルミナさん、カオリさん。本の整理に手伝ってくださってありがとうございます」

 

先生から感謝の言葉を言われると私は気にしないでくださいと言った

こういう事はいつもの事なのだから。大学付属図書館でよくやっている事なのだから

図書委員会の委員なのだから大学付属図書館の管理運営も手伝っている

だからこそ図書館が購入する予定の本の中に自分が欲しい書物を紛れ込ますことができる

完全に職権乱用だが、今まで誰にも文句を言われたことはない

当然だ。大学付属図書館に所蔵されている本の管理をするのだから

図書委員会の委員になるのはかなり限られた人間だ

例えば図書館の司書を目指している人間など、本が好きな人間が多い

その時、渚カオルの額にレーザーポインターのマークが照射された。私はあの時のように彼を押し倒した。

そして大声で図書室にいる全員に伏せるように叫ぶと同時に窓ガラスが割れて銃弾が撃ち込まれた

 

「まったく。ネルフの警備ももっと厳しくするべきね」

 

私は後悔した。職員室に銃を置いていったことに

まぁ、このまま狙撃犯が逃げて、その後警察の取り調べが行われれば

銃を持っていた私は言い訳も苦しいが

 

「とにかく伏せていなさい。誰がターゲットなのかわからないところがたちが悪いわね」

 

「助けてくれたんですか?」

 

「渚カオル君。あなた達は自分の価値をもっと理解する事ね」

 

エヴァパイロットとしての価値をねと私は彼に伝える

その間も図書室に弾丸が撃ち込まれてきていた

どうやら今回はあきらめるつもりはないようだ

こっちには攻撃手段はない。ネルフの保安諜報部に任せるしかないのが現状だ

こちらの手の内を見せるわけにはいかないのだから仕方がない

 

「まったく、迷惑な連中ね。ネルフもゼーレも」

 

私はポケットからあるものを取り出した。携帯電話だ。

ある人物に連絡を取った

 

「加持リョウジさんですよね。いい加減に対応してもらえませんか。あなた方に迷惑をかけられるのはごめんなので」

 

そう、ネルフから出る前に加持さんから名刺を渡されたのだ

何か協力する気があれば連絡をしてほしいと言われて

私としてはそんなことをしてやるつもりはなかったのだが

今回は早急に対応してもらわないといろいろと困る

 

『分かっているよ。名刺を渡しておいてよかったようだね』

 

「不幸な手紙だと思っていたのですが、まさにその通りになりました。今後は私は協力しませんから」

 

『だけど君のおかげで大事な彼らを守れたことについては感謝しているよ』

 

「高くつきますから。貸しですよ」

 

『分かっているよ』

 

加持さんとの通話はそこで終わった。それから少しして銃弾は入ってこなくなった

気配もなくなった。もちろんこれは神様の特権で悪意があればすぐにわかるようになっている

ネルフを助ける事になるとは嫌な話だ



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コーヒーを飲みながら

またしても警察に事情聴取を受ける事になるとは、

私にはこの高校は不幸が詰まっているパンドラの箱に感じられた

一応、事情聴取をした警察はターゲットを碇レイさんや渚カオル君だと思っている

ネルフの重要人物でありエヴァのパイロットなのだから当然だ

それにしてもだ。ガラスが何枚も割れている。

こんなことならいっそのこと防弾ガラスにでもしておけば良いと本気で思ってしまった

守りたいなら徹底的にやるべきだ

 

「ルミナさん。これからカラオケでも行きませんか?」

 

「カオリからのお遊びのお誘いなんて、珍しい事もあるわね。気分転換に行きましょう」

 

後始末はネルフの関係者に任せるとして私達は今日は遊んでから帰る事にした

高校の敷地を出たところで加持さんが待っていた

 

「水川カオリさん。少し良いかな?」

 

彼は気軽に話しかけてきた。まったく迷惑なものだ

 

「デートのお誘いですか?あいにく、私、年上は好みではないので」

 

「それじゃ、コーヒーを一緒に飲まないかな?払いは持つよ」

 

どうやら簡単に諦めてくれる様子はないようだ

私はルミナさんに遊びはまたの機会にというと彼に付き合う事にした

 

「それで何の用なんですか?もしかして私とエッチな事をしたいとか考えていたりしませんよね?」

 

「俺は妻持ちなんでな。あいつを怒らされると殺されるかもしれないし。美人な君なら恋人を作ったりしないのかな」

 

「残念ですが。恋愛に興味がないんです。そんなことをしている暇があったら読書に時間を使いたいので」

 

これは事実だ。本を読んでいる時間の方が大切だと思っているので恋愛には興味はない

何人かアプローチしてきた男子大学生がいたが興味はないので断っている

恋愛に関しては私は大学では『氷の女王』と呼ばれている

別にそんな呼ばれ方をしても実害がないので放置している

 

「話し戻しますけど、何の用件ですか?くだらない話なら蹴り飛ばしますよ」

 

「とりあえずお礼を言っておこうと思ってね。レイちゃんやカオル君を助けてくれたことについて」

 

「その件でしたか。偶然ですよ」

 

「そうかな?本当は狙われたのは君じゃないかな?」

 

どうやら確信があるのかそれとも試しているだけなのか。

ここはあいまいにしておいた方が得策だと考えた

 

「私なんかを殺して何のメリットがあるんですか?」

 

「ネルフにも勧誘されている秀才の頭脳が欲しいと思っている組織。例えばゼーレとか」

 

「もしそうだとしたらネルフはかなり雑な警備をしている事になりますね」

 

私がそう言うと痛い所を疲れたねと答えた

確かに雑な警備をしている事は事実だねと彼は言った

私はわざとではないかと疑っていたのだ。

私がどう行動するかを見極めるために現状を放置しているという考えがあった

 

「あなた方ネルフは私を疑っていると思っているのですか?私がゼーレに加担していくのではないかと」

 

「どうしてそういう結論になったのか教えてくれないかな?」

 

「ネルフは碇シンジ君の遺志を継ぐ私の行動に警戒している。裏事情を知っている私をどうするべきか考えている」

 

「なかなか強烈な意見だね」

 

私はもちろんゼーレ側に協力するつもりはないし、ネルフ側にも協力するつもりもない

あくまでも中立の立場を貫くのだ

 



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嫌な話し合い

高校の近くにある喫茶店に入ると私と加持さんは相変わらず腹の探り合いをしていた

休憩したいのにこれでは休みたくても休めない。

まったくもって困ったものだ

 

「それで何を知りたいんですか?」

 

「君の過去を少し調べさせてもらったよ。かなり空白があるみたいだね」

 

「私も覚えていない事が多すぎて、今は新しい人生を送るつもりで生活をしているので」

 

すると加持さんはそれなのにシンジ君と出会ったのは偶然なのかなと

なかなか厳しい所を追求してきた

私は真実とウソをうまくミックスさせて話を合わせた

でも加持さんにはどこか心の中を見られているような感じをした

だからこの喫茶店を出たいと思ったのかもしれない。一刻も早く

私はもうネルフやゼーレに運命を握られる窮屈な生活などしたくない

自由になりたいのだ。広い世界をまるで鳥が羽ばたくかのように

この広い大空を。ネルフやゼーレがいない世界を望むのは難しいのかもしれない

でも私には大切な友人がいる。私が『碇シンジ』ではなく水川カオリであることを証明してくれる

だからこそ戦うのだ。私自身のためにも

 

「あなただけは迷惑な存在ですね。私は碇シンジ君の遺志を継ぐ者に過ぎない」

 

「その遺志の内容をすべて話してくれると助かるんだけど?」

 

「あなた方ネルフに知る価値があるかどうかを判断するのは私です」

 

「ネルフはすべて知る権利はないと?」

 

「ええ、ネルフだけでなくゼーレも同じです。あの地獄のような状況を知る権利は誰もいない」

 

「君にどう説明したのかな。シンジ君はどうしてそこまで君を信じたの教えてくれない?」

 

「彼は人が死ぬような結末を迎える事を望まなかった。でも私はそれを支持しただけ」

 

別に彼らに真実を話してやる義理はないのだから

私はそう言うとコーヒーを飲んでもう失礼しますねと言って席を立とうとした

 

「もう1つだけ質問しても良いかな?」

 

「なんですか?」

 

「シンジ君は納得して自らの人生に幕を下ろしたのかな」

 

「彼はすべて納得済みで自らの人生にけりをつけた。それだけは事実」

 

私はそう言うとごちそうさまでしたという事を示すかのようにコーヒー代を置いて喫茶店を出ていった

喫茶店の近くにあるバス停に向かうとバス停に私が到着するのとほぼ同じタイミングで市バスが到着した

バスに乗り込んで大学に戻る事にした。休日なのだから大学付属図書館の図書部室でじっくり読書をしたい

 

「まったく苦労が多いわね」

 

バスでゆっくりと座席に座って第三新東京市立大学に向かっていた

もう私には戦う理由など存在しないはずなのに、あちらからやってくる

 

「本当に嫌な人生ね」

 

バスの座席から見える外の風景を眺めながらそんなことをつぶやいていた

もう後悔を感じる人生など送りたくない。自分にとって満足できる人生を送りたいのだ

たとえそれがどんなに悲惨なものであっても。納得している

 



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静かな大学図書館の図書部

バスが第三新東京市立大学の前のバス停に到着すると私は運賃を払ってバスから下車した

あとは大学付属図書館内にある図書部の部室でゆっくりと過ごす

ネルフに邪魔されるのはうんざりしている。彼らだけではなくゼーレにも妨害されるのは嫌だ

私は私の人生を歩んでいく。何人にも妨げられることのない生き方

それを望んでいくのだ。あの時とは違うのだ。そんな事を考えながら大学付属図書館に到着した

図書館の中はいつも通り静かである。そんな静かな図書館の中に図書部の部室がある

部室の鍵は私とルミナさんも持っている

私は部室に入る前に何冊か。今日、部室で読んでいく本を選んだ

それを持って図書館の1階にある総合カウンターで借りるために手続きをした

手続きが終わった後、本を持って図書部の部室に入った

一応ドアをノックしたが何も反応はない。ルミナさんは来ていないようだ

ドアのかぎを開けると部室に入り、テーブルに借りてきた本を置いた

パイプ椅子に座ると1冊を手に取ると読み始めた

そこからは静かな時間である。誰にも邪魔されない本当に静かな読書タイム

 

「平和な時間ね」

 

私は読書を続けていると突然、ドアがノックされた

 

『カオリ。戻っている?』

 

ルミナさんの声だった。私は大丈夫ですよと言うと静かにドアを開けて部室に入ってきた

 

「やっぱりここにいたわね」

 

「ここが静かで落ち着くから。ところでルミナさんはどうかしたんですか?」

 

「私も欲しい本があるから図書委員であるカオリに手伝ってもらおうと思ってね」

 

つまりだ。図書委員である私の立場を利用しようという事だ

これが初めてではないという事はよく知っている

他の友達にも頼まれたことが何度かある。高いためなかなか手が出ない学術誌などだ

 

「高いんですか?」

 

「当たりよ」

 

そうでなければ自分で買っているはずだ。私はできるだけ頑張ってみますと答えた

その言葉を聞いてルミナさんはそのリストを私に渡してきた

全部で4冊。確かに高い本だった

 

「わかりました。図書委員会の会議で提案はしてみますけど期待しないでくださいね」

 

「でもカオリはいつも頑張ってくれるから期待しているわ」

 

あんまり期待されても困るのだけど。まぁ大切な友達のためなのだからできるだけ頑張ってみる

私は彼女からリストを受け取るとそれを購入希望の本のリストに記入していった

この本が購入予定リストに通るかどうかについては私にもわからない

大学図書委員会で審議がされてからさらに絞り込まれて購入する本が決定されるからだ

いくら私が神様だからといっても公平性を重要にしているのだから『インチキ』をするわけにはいかない

あとは委員会の審議に任せるしかないのだ。私は必要項目を記入するととりあえず寮に戻る事にした

寮の自室で勉強もしておきたいし、レポートをまとめなければならないからだ

 



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突然の出来事

寮の自室に戻った私はとりあえずレポートの作成に取り掛かった

いつもの事なので慣れた事である。もう私は大丈夫である

 

「平和ね」

 

私はそんなことをつぶやきながらも両親の事を考えていた

ここのところずっと心配をかけているばっかりだ

できる事ならそんな情報が洩れる事は嫌だったのだけど

この街での保護者代わりをしてくれている高波教授としては連絡しないわけにはいかないのだろう

だって保護者なのだから、何かトラブルがあれば連絡を伝えなければ意味がない

 

「ちょっとバイクにでも乗ってこようかしら」

 

私はスポーツバイクを持っている。もちろん免許もあるんで問題ない

気晴らしに走ってくるのも良いだろうと思った

 

「たまには乗りましょう」

 

私は寮の自室から出ると駐輪場に止めているバイクに向かった

もちろんグロック17を隠し持っていった。いつ狙われるかわからないからだ

ヘルメットを装着すると第三新東京市が一望できるあの展望台に向かう事にした

どうしてなのかはわからないが、私は心のどこかで束縛されているのかもしれない

あの場所にはいろいろな思い出がある。良い思い出もあるし悲しいものある

交通ルールを守りながら展望台に向かっていく。

寮からあの展望台までそれほど離れていないのですぐについた

すでに時間は夜である。第三新東京市の高層ビルのライトがきれいに見える

もうあの時とは違うのだ。使徒が襲ってきたころとは

平和になったはずなのに、私はネルフやゼーレから狙われている

嫌なものだ

 

「ここから見る景色は変わらないわね」

 

私は展望台から見える景色を見ながらそうつぶやいた

もうあの頃とは違うのだ。あの、自分の意思ではない、他人に強制されるような人生とは違う

あの頃は何のために生きているのかわかっていなかった

だが今は違う。今の私には家族がいる。私であることを認めてくれる大切な家族が

だから少しは迷う事があるかもしれないけど、自分の意思で道を選択する事ができるのだろう

他者から強制されるのではないこと。それが最も重要な事なのだ

未来を見ながら生きていくことが大切である

 

「まったく、良い思い出なんてないわね」

 

ここから見る景色についてはそう言える

良い思い出があったといえば最初だけである

他の思い出は良いものではない。つらい思い出ばかりしかない

 

「少し良いですか?」

 

突然後ろから声をかけられて私は驚いて振り返るとアスカがいた

できるだけ教育実習先の高校では接触しないようにしていた

ネルフ関係者とは。もうあの中学時代とは違うし私はもう大学生なのだ

私が碇シンジであるという事はわからないだろう。気づくはずがないと思っていた

いや、思い込んでいたのかもしれない。だから振り返ってアスカの顔を見て私は驚いてしまった

 

「確かアスカさんですよね。こんな時間に何をしているんですか?高校生はもう外出している時間ではないですよ」

 

「それはわかっていますが、あなたが私達と接触してくれないので時間を作りました」

 

 



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アスカさんとの話し合い

私はうんざりしてしまった。

ようやくネルフとは距離を取れると思っていたのにこれなのだから

アスカさんとは最も会いたくなかったからだ。

あの赤い海の世界で私の事を『気持ち悪い』と言われてしまったことがそれなりに傷ついていたりしている

絶望しかない世界で彼女に最後に追い詰められてしまったのだから

 

「こんな時間に何の用件ですか?」

 

「碇シンジ君の事をどう思っていますか?」

 

予想通りの質問が返ってきた。だが正直に答える必要性はどこにもない

ネルフ関係者に情報を分けてやるつもりなどなかったからだ

 

「あなた方ネルフにとって彼の存在はどういう意味を持っているの?エヴァパイロットとしてほしいだけ?」

 

「私は謝りたいんです。あの時に言った言葉について」

 

何を今更だと私は思ってしまった

今になって謝罪されても私は嬉しいなんて思わない

むしろ彼女に対してどんな感情を持てばいいのかわからなかった

量産型エヴァによって彼女は苦しめられた。だから、そのつらさはわかっているつもりだ

それでも最後に『僕』に言われた気持ち悪いと言われた言葉はショックでしかなかった

 

「彼が受けた苦しみを考えれば、ネルフ関係者が謝罪する機会はもう大昔に失われています」

 

「どうしてそう言い切れるんですか?」

 

「彼はすべてを背負う覚悟があるから世界を元に戻した。なのにネルフは自分の都合の良いように情報操作をした」

 

自分たちに都合が良いようにネルフは正義の味方を語っているに過ぎないのだから

本当に罪を背負うべきはネルフそのものなのに。

なのに彼らは偽りの仮面をかぶり続けているのだから。

『真実』を知ることなどもう失われている

 

「シンジはどうしてあなたを信じたのですか?」

 

「私は約束をしたから。ネルフにもゼーレにも協力をしないと。偽りの正義の味方をすることは行わないとね」

 

「あなたはどこまで知っているのですか?」

 

「ネルフがどれほど汚い組織であったことはよく知っているわ。彼から教わったから。だから私は協力しない」

 

拷問を受けようとしてもだと彼女に断言してやった

これは本心だ。ネルフにもゼーレにも協力はしない。

たとえどんな手段を使われようとしてもだ

何もかも今更なのだ。彼らが真実を知ることなどありえない

それだけの罪を背負っている事を自覚させるまで私は協力しない

自覚したところで、責任転嫁をしてくるだろう。自分たちは正義の味方であるという主張を曲げないはずだ

身勝手な組織に協力してやる必要等あるはずがない。そしてその身勝手の組織に所属する人物にもだ

 

「あなたは何を知っているのですか?教えてくれませんか」

 

「知る必要のない事は世の中に腐るほどあるってことだけは言っておくわ。あなたみたいな子供は特にね」

 

 



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判断能力が必要な世界

私はとりあえず気晴らしにドライブに行くことにした

もう彼女と話すことはない。何もかも終わった事なのだから

だから、もう何もいらないのだ。ただ、アスカさんをこの展望台に置いていくのもあれだと思った

 

「自宅まで送るわ。私の後ろに乗りなさい」

 

「良いんですか?」

 

「未成年者が保護者もいない状況で放置したらいろいろと面倒だし。今回だけよ」

 

私はもう1つのヘルメットを取り出した。普段はルミナさんが使っているものだ。

たまにルミナさんと一緒にバイクでドライブをすることがあるのでヘルメットの予備を常に持っている

アスカはヘルメットを装着すると私のバイクの後ろに乗り込んだ

 

「それじゃ、行くわよ」

 

私はバイクのエンジンをかけると展望台から離れて彼女の家に向かった

住所は事前に聞いているのでわかっている。

私は法定速度を守りながらも尾行されている事に気づいていた

ネルフの保安諜報部の車であることは容易に想像できた

アスカはエヴァパイロットなのだから身辺護衛がつくのは当り前だ

実はあの展望台で彼女と会った時から監視の視線は感じていた

でもあえて知らないふりをしたのだ

私はただの大学生なので、戦闘のプロと思われるわけにはいかないからだ

戦闘のプロと言っても知識としてだけ知っているだけで、

実際に戦闘をしたことはないので体がそれに対応できるかどうかはわからないが

時にはいろいろと強引な方法を使わないと対応できない場面も出てくる

 

「まったく困ったものね」

 

私はアクセルグリップを回して速度を上げた

後部座席に座っているアスカさんは私にギュッとつかまってきた

初めて乗るバイクに驚いているのかもしれない

展望台から降りてある交差点の信号待ちで赤信号だったので待っていると嫌な予感がした

私は人の悪意を感じ取るのが得意なのだ。

とっさに私は左右の安全を確認すると信号無視を覚悟でアクセル全開で突っ切った

 

「何を考えているんですか!?」

 

「あなたが自分の価値をわかっていないからこういうことになるんですよ」

 

私のバイクが停車しているところに黒のセダン車が突っ込んできていた

狙いはどちらなのかはわからないが危険な連中であることには間違いない

どうしてこうもトラブルが連発するのかと内心では思いながらも全速で道路を走行していた

私はアスカが必死に捕まっている事が分かっていた

 

「アスカさん。少し緩めてくれない。腰が痛いんだけど」

 

「でも怖いのよ!」

 

「ネルフで使徒と命のやり取りをしていたあなたがこんな事に怯えるくらいなら、今後は行動を自重してください」

 

私は冷静に冷たく突き放すように言う

だがこれは事実である。こんなことになる事は想像できたはずだ

それに何度も言うようだがネルフの護衛体制も甘い

大切なら外出時は徹底的に護衛をつけるようにしてもらわないと、

貴重なエヴァパイロットを失う事になる事を理解しないといけない



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狙われたのはルミナさん

その後は無事に何とか切り抜けてアスカの自宅があるマンションに到着した

バイクから降りるとヘルメットを返してもらう

 

「アスカさん。今後は気を付けないと死にますよ」

 

マンションの前に到着するとアスカの母親である惣流キョウコさんがいた

 

「アスカ!」

 

彼女はアスカの頬を叩いた。まぁ当たり前と言ったところだ

自分から命を犠牲にするところだったのだから母親としては娘を叱るのは当然のことだ

 

「カオリさんですね?アスカを守ってくれて本当にありがとうございます」

 

「こんなことを言うのは失礼ですけど、皆さんはご自分の価値についてもっと理解する事です」

 

私はそう言うと大学の寮に戻ろうとした。

すると碇ユイさんが出てきた。彼女は良かったら少しコーヒーでもどうですかと

 

「こんな時間ですのでもう帰ります。寮でゆっくりしたいので」

 

それに部屋に行ったらいろいろと追及されるのではないかと私は恐れていたのかもしれない

今更なのだがもう関わりたくないと思っていたからでもという考えもあった

 

「そうですか」

 

「では失礼します」

 

私はヘルメットを装着するとバイクにまたがり、寮に戻っていった

寮に戻るともう深夜という時間でもあった

駐輪場にバイクを置くと私は寮の自分の部屋に戻った

 

「疲れたわ」

 

私はベッドに横になると声に出してしまった

だが本音であることは間違いない。ただのドライブのはずが余計なものまでセットで来たのだから

もう2度と碇ユイさんとは、線が交わるはずがなかったのに今回は想定外だ

できる事なら会いたくなかったのだが。

 

『ピーピーピー』

 

発信者はルミナさんからだった。珍しい事もあるものだ

いつもなら同じ寮に住んでいるのだから訪問してくることがほとんどなのに

電話でコールとは

 

「はい。水川カオリです」

 

『カオリ?悪いんだけど私の部屋に来てくれる?預けていたカバンを持ってきてくれると助かるんだけど』

 

私がルミナさんからカバンを預かっているはずがない。

それに電話の声はどこか少し緊張したように感じられた

すぐに何かトラブルがあると思い私はわかりましたと返事をした

足首にリボルバーを装備。さらにグロック17をカバンに隠して持っていった

ちなみにいつでも取り出せるようにグロック17を握っていた

私は完全武装の状況でルミナさんの部屋に向かった

ルミナさんの部屋は同じフロアにあるためすぐに到着した

 

「ルミナさん。カオリです」

 

『入ってきて。鍵は開いているから』

 

確実にどこか声が緊張している。おそらくだが脅迫されて私を呼び出すように命令されているのだろう

狙いは私であることはすぐにわかった。それにしても大切な友人を巻き込むなんて

どんな目にあわしてやろうかと、いろいろと攻撃方法を考えた

私はカバンからグロック17を抜くといつでも発砲できる態勢でドアを開けた

開けたというには少し問題があるだろう。正確には蹴り破ってやった

人間というのは突然の事には少し対応が遅れるものだからだ

ドアを蹴り破りルミナさんの部屋に入ると予想通りルミナさんに2人の男性が銃口を向けていた。

私は瞬時にグロック17を抜くと銃弾をプレゼントしてやった

相手は突然の事に驚き反応できず、私はルミナさんを無事に助け出すことができた

 



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対決の時は近い

「ルミナさん!大丈夫ですか?」

 

私は男たちの両肩にそれぞれ1発ずつ。計4発の銃弾をプレゼントしてやった

だが問題はこれからだ。今発砲した銃はもう2度と使えない。

証拠隠滅する必要があった。そこで私は男達が持っていた銃。

幸いな事に私が持っているグロック17と同じだったので、

それを奪いルミナさんの部屋で銃撃戦があったように偽装した

そして1丁を交換するかのようにすり替えたのだ。

これでクリーンな銃を1丁手に入れる事ができる

後始末がいろいろと面倒だが、今はこの場をしのげれば何とかなるだろう

 

「か、カオリ。大丈夫なの?」

 

ルミナさんは明らかにおびえていた。

当たり前だ。もう少しで殺される寸前だったのだから

 

「大丈夫ですよ。ルミナさんこそ大丈夫ですか?」

 

「私は大丈夫だけど。どうするの?」

 

「共犯になってくれませんか」

 

私はこの状況を乗り切るため共同戦線を張る事を提案した

今この場を乗り切るにはそれしかない。ある程度の情報流出は仕方がない

だがそれも限られた内容しか許されないことは間違いない

ルミナさんまで巻き込むわけにはいかないのだから

大切な友人を本当の戦場に巻き込むことはできない

 

「それって大丈夫なの?」

 

「ルミナさんが犯罪に巻き込まれないようにするためにはこの方法しか思いつかないので」

 

「守ってくれるのよね?」

 

私はルミナさんを見捨てたりしませんよと言った

私にとってかけがえのない大切な親友。もう失う事はしたくない

ルミナさんがいない現実になったりしたらすぐに受け入れる事は難しい

私を水川カオリと言ってくれる数少ない親友なのだから。忘れる事なんてありえない

必ず守り切ってみせる。ネルフやゼーレに閉ざされそうになるなんて絶対に認めない

世界は自由であるべきなのだから。平和で戦争なんてない世界を私は望んでいる

忘れたりするものか。必ず共に歩んでくれるなら、私は絶対に親友を守り切ってみせる

どんな手段を使っても。他者から見てどれほど危険でリスクがある方法だとしても

 

「強盗にあって警察には偶然気づいた私がドアを蹴り破って侵入して驚いたので覚えていないと証言してください」

 

「それで何とかなるの?」

 

「とにかく気絶して覚えていないと証言してください。その後の事は私がうまく話を合わせておきますので」

 

「わかったわ。でも事情は説明してよね」

 

「明日、ある所に案内して説明するから」

 

それからすぐに寮の警備員来るし、警察のパトカーのサイレンが近づいてきた

あとはこっちでうまく処理するだけだ。ルミナさんを傷つけるわけにはいかない

それにこの件をネルフに察知されることはできる事なら避けたい

表向きはただの強盗事件として処理したい

 

「大丈夫!?」

 

女性警備員が慌てて駆けつけてきた。もう事は片付いている。

 

「警察はまだですか?」

 

「もう来るところよ。何があったの?」

 

「ルミナさんの部屋に強盗に入ったようです。私がルミナさんの部屋の前を歩いていたら大きな物音がしたので」

 

私はこっそりとドアを開けて覗いて状況を察知して、一気に押さえようとしたんですと彼女に伝えた

多少無茶かもしれないが今はこれを通すしかない。彼らがゼーレ関係者ならネルフも関わってくる

ルミナさんにまでネルフの監視対象になる事は望んでいない



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不穏の夜

警察が到着して両肩を撃たれた犯人たちは連行されていった

連行と言ってもとりあえず病院で治療だ。犯罪者にも人権があるのだから

 

「ルミナさん。今日は私の部屋で寝ましょう」

 

「でも」

 

どうせこの後、警察の現場鑑識が行われる。

当分の間は現場保全が行われることはわかっている

だからこそ、『最も安全』である私の部屋にいてもらった方が良い

そこに女性刑事がやってきた。

 

「またあなたなのね」

 

高校で狙撃されたときに事情聴取をしてきた女性刑事だった

 

「偶然ですよ」

 

私は不幸に好かれているんですよと自虐的に言った

確かにその通りだ。私は教育実習があの高校に決まってから不幸が雨のように降っている

もう迷惑なくらいにだ。誰かに操られているかと思いたいがそんなことはない

なぜなら神様は私だからだ。私が操られていたら、私よりも上の神様がいるという事になる

もしそんな相手がいるなら私は喜んで鉛弾を撃ち込んでやる

迷うことなく必ずだ。事情聴取は一通り行われた後、

私のような女性が狙われる理由など彼女は想像もしていないようだ

多少は疑われたが何とかして潜り抜けることができて解放された。

とりあえずルミナさんの部屋は今夜はダメだと言われた

だって部屋にはルミナさんを襲った人物の血液が飛び散っているのだから

寝るには衛生的ではない。ルミナさんに提案したように私の部屋で一緒に寝る事にした

私の影響で襲われたことはわかっているので私はベッドをルミナさんに譲った

彼女は遠慮していたが何とか押し切って、私の部屋のベッドで眠ってもらった

 

「照明を消灯しますけど良いですか?」

 

「ええ、良いわよ」

 

照明を消して私は疲れていたのかすぐに眠りについた

トラブルの種のせいで私は本当に疲れていたみたいだ

珍しくぐっすりと眠ってしまった

翌朝、日曜日の朝だが。午前6時に目を覚ました

私はルミナさんよりも早く起床したので私とルミナさんのための朝食としてサンドイッチを作った

日曜日はいつもの事だ。寮の食堂に行っても良いのだが昨夜の事でいろいろと聞かれることはわかっている

そんなところに行くのは嫌だったので部屋で食べる事にしたのだ

ルミナさんは私が朝食を作っている途中で目を覚ました

 

「おはよう、カオリ」

 

「おはようございます。ルミナさん」

 

朝食ですと言って私はサンドイッチをテーブルの上に置いた

 

「ありがとう」

 

「今日は少し早いですけど、ちょっと付き合ってもらえますか?いろいろと説明したいことがあるので」

 

「良いわよ。私も説明は聞いておきたいしね」

 

私とルミナさんは一緒に朝食のサンドイッチを食べる

食べ終わると私は食器を洗うとパジャマから普段着に着替えた。

ルミナさんも着替えると私はバイクの鍵を持つとルミナさんと一緒に私の部屋を出た

駐輪場に向かうとバイクに乗り込むとある場所に向かってルミナさんと一緒に向かう事にした



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ルミナさんと図書部の整理

まだ早朝という事もあって市内の交通量は少ない

私は後ろにルミナさんを乗せて市外の方向に向かってバイクを走らせていた

行先はとある場所である。向かっているのは郊外に整備されている墓地。

そこにはある人物の墓がある。そう、『碇シンジ』の墓だ

『僕』は死んだことにするには形だけでも墓地を作る必要があった

だって私が『碇シンジ』と気づかれないようにするためにはそうする必要性があった

 

「碇シンジ君ってネルフが探している英雄よね?彼が何か関わりがあるの?」

 

「ネルフが流している事のほとんどは偽りの事実に過ぎないんです。だから自ら幕を引いた。私に遺言を残して」

 

「カオリに遺言を残して?」

 

「私は責めを負う覚悟はできていたから引き受けた。だからネルフや反ネルフの組織に狙われるんです」

 

私は嘘を上手く混ぜながら説明した。まぁほとんどが嘘なのだが

だが今後の事を考えるとルミナさんにある程度話をしておく必要があった

もしかしたらまたしても迷惑をかけるかもしれないからだ

それを考えるといろいろと交錯する事が求められたのだ。

ただしそれをするには盗聴の心配がない場所

となるとこの場所が最も最適であった。墓地で盗聴をする人間はいないからだ

 

「彼は何を言い残したの?」

 

「それは知らないほうが良いと思います。ルミナさんは私と同じように命のやり取りをすることになるから」

 

「カオリはそれで満足しているの?」

 

「納得しているから話をしているんです。こんな私でも本当についてきてくれますか?」

 

私はルミナさんを試していた。本当の意味で『親友』になれるのかどうかを

心のどこかで不安を感じていたのかもしれない

 

「カオリ、私はあなたを信頼しているわ。だからどこまでもついていく。例え結末がハッピーエンドじゃなくてもね」

 

「ルミナさん」

 

私はほっとした。本当の意味で信頼できる親友がルミナさんでよかったことを感じたからだ

もしルミナさんがいなかったら私は孤独の中で生きなければならなかっただろう

でも今は違う。私達は墓地を出るとバイクに乗り込み市内に戻る事にした

今日は日曜日。予定はないので大学付属図書館で図書委員会の仕事をすることにした

図書館に所蔵されている本の整理である。膨大な量の所蔵本の整理は私は好きだ

いろいろな本を見る事ができるからである

図書委員会に入るからにはどこにどの本が保管されているかをすべて記憶している

これも神様の特権ではあるが、おかげで本の整理整頓は楽な作業である

バイクでルミナさんを後ろに乗せて大学の寮に戻った

とりあえずバイクを駐輪場に戻すためだ

 

「ルミナさんはこれからどうします?」

 

「私は図書部の部室で読書をしているわ。カオリは本の整理がしたいんでしょ?」

 

「わかります?」

 

「同じ部活にいるから当然よ。私も次に買ってほしい本を選びたいし」

 

「頑張ってください」

 

私とルミナさんは一緒に大学付属図書館に向かった

 



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後輩の無茶なお願い

私達が大学付属図書館に到着するとルミナさんは図書部の部室に向かった

私は図書委員会の会議室に向かった

図書委員である以上、所蔵本の整理以外に図書館を利用する学生

彼らからこんな本が欲しいといったリクエストを募集する意見箱に入っている要望書のチェックをまずする事にした

意見箱を回収して中身を見ると、いつものようにたくさんの要望書が入っていた

それらを1枚1枚見ていくことにした。これも図書委員の仕事の1つである

要望には今後購入希望の本や運営方法について手厳しい意見も書かれていた

 

「相変わらず手厳しい意見ですね」

 

私は1通ずつきちんと精査していった。

大切なものなど今度の図書委員会で議題になりそうなものを振り分けていった

面倒な作業だが大切な事である

 

『トントン』

 

会議室のドアがノックされた。私は作業の手を止めた

 

「開いてますよ」

 

「カオリ先輩!」

 

入ってきたのは図書委員会の委員の1人で後輩であり、

アメリカ合衆国から来た留学生であるアイラ・フローレスさんだ

 

「アイラさん。どうしたんですか?」

 

「先輩~。委員長が私が提出した入希望の書籍が多すぎるって怒るんです」

 

彼女も私と同じタイプだ。読書が好きだが図書部には加入はしていない

でも本を読むのが好きで留学してきた時からすぐに図書委員会に参加している

彼女の唯一の欠点というと購入希望の書籍リストが多すぎる事だ

去年も50冊以上も購入希望を出していた。ちなみに私は20冊程度の押さえている。

あんまり露骨にすると委員長に怒られるので。

 

「アイラさんはもっと本を絞り込まないと。いくらなんでも多すぎですよ」

 

ちなみに今年は何冊なんですかと聞くと40冊近い量だった

いくらなんでも多すぎだ。それでは図書委員長が起こるのも当然である

 

「でも日本の本は面白いものが多いんです。カオリ先輩からも圧力かけてくれませんか?」

 

「いくら私でも40冊は難しいわよ。私も毎年20冊程度にしているから」

 

「先輩なら何とかなりませんか?」

 

「アイラ、私にだって後輩であるあなたのお願いを何とかしてあげたいけど、無理な事もあるのよ」

 

私の言葉に涙目で懇願してきた。お願いしますと

私はため息をつくと、交渉はしてみるわと伝えるとお願いしますと礼を言われて会議室を出ていった

 

「アイラさんにも困ったものね」

 

いつもの事だけどこういう時には人頼みなのだから

ちなみに彼女は留学生であるが日本語はぺらぺらだ

ただし、話す方は完璧に近いのだが書く方が苦手だ

世の中完璧な人間などいないのだから、当然と言えば当然だ

私は例外だ。だって『神様』なのだから。世の中インチキはいっぱいある

だからそんなものだと私は思っている。そんな事を考えながら意見書を分けていった。

 



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図書委員としての仕事

1時間ほどかけて意見書の区分を終えると、私はその書類を持って図書委員会室に持っていった

図書委員長執務机に置いておくと返却されている本を元の棚に戻す作業を始めた

第三新東京市立大学の学生が頻繁に利用する図書館なのだから、

1日で返却される本の数はかなりの量になっている

それらを元の棚に戻すのは大変な作業だけど私はこういう作業が好きだ

時には思わぬ発見ができて面白そうな本を見つける事ができるから

ちなみにこの図書館は4階建てとなっている。

利用者は大学生だけでなく、この大学の教授などの先生たちも利用する事はいつもの事だ

 

「本当に多いわね」

 

台車に返却されていた本を積み込む。図書館にはエレベーターもあるので、

1階から順番に各階のフロアの本棚に書籍を戻していった

まだ早朝なので静かな図書館だ。利用者がいる事の方が珍しい

そのため静かな時間だ。今この図書館にいるのは私と総合カウンターの事務員の人だけだ

とりあえず私は順番に返却されてきた本を本棚に戻すと1時間ほどかかっていた

これでも今日は返却されている本の数は少ない方だ

だって機能は土曜日だった。大学の授業はお休みだ。サークル活動や研究活動は別だが

そのため返却に来る学生は少ない。ちなみにこの大学付属図書館の貸し出し日数は最長でも1週間

延長したい場合は申請をすれば、さらに1週間延長する事ができる仕組みになっている

返却された本を本棚に戻す作業を終えると私は総合カウンターにいる女性事務員さんのお仕事を手伝う事にした

事務員さんは司書の資格を持っているので勉強にもなる。

私はどうしても司書の資格が欲しいのだ。本に囲まれた仕事が大好きだから

 

「手伝います」

 

「良いの?勉強とかあると思うけど」

 

「レポートなどはもう作成できているので。それに図書館の仕事は好きなので」

 

「だったら、本の貸し出し総数の計算をお願いできるかしら」

 

どの分野の本がどれくらい貸し出されているかまとめてくれたらいいのでという仕事だ

私はわかりましたと言うとパソコンを使って貸し出されている本の分野ごとに整理。

それを統計データにまとめる事にした。

いろいろなデータをまとめなければいけないので複雑ではあるがこれも勉強と思えば苦労とは感じない

良い勉強であると考える事ができた

 

「カオリさん。追加でこのデータも集計をしてもらえる?」

 

事務員さんは数枚の書類を渡してきた。私は別に問題ないですよと言って書類を受け取った

それらのデータを追加でまとめていく。作業を終えるとプリントアウト。

さらにメモリーカードに保存して管理日誌に添付した

 

「作業が終わりました」

 

私は事務員さんに伝えるとさすがはカオリさんねと褒めてくれた

彼女とは大学入学した後毎日のように図書館に通っていたので親しい仲だ

それに図書委員会の委員でもあるのでいろいろと作業を手伝ったりしている

 

 



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本の選び方と友人との話

私は作業を終えると図書部の部室に向かった

部室ではルミナさんが読書をしていた。

 

「カオリ。事務作業は終わったの?」

 

「とりあえず、一通りの作業は終了したから、部室に来たんですよ」

 

「そう言えばアイラさんが来ていたわね。また無理な注文を頼まれたの?」

 

「いつもの事ですよ。アイラさんは購入希望の本が多すぎるんです。だからもっと絞り込むようにと言っておきました」

 

「あの子には困ったものね。いつも学術本の中でも高価な本ばかりを選んでくるから」

 

そう、アイラさんはいつもそうだ。購入希望の本は高価な学術本ばかりであること

だから委員長からもっと本を選ぶようにと言われるのだ

私もよく言われるが何とか誤魔化して購入してもらっている

いろいろと嫌味を言われることは頻繁ではあるが。もう慣れてしまった

図書委員の特権だと思えば嫌味も何とか耐えられる

それにネルフの関係者とやりあうよりかは楽勝である

 

「それで、カオリは何を選んだの?」

 

「ルミナさん。私はまだ選んでいませんよ。それに提出期限は1週間後。それまでにいろいろと探さないと」

 

「相変わらずね。お固い事」

 

「ルミナさんだって時と状況に合わせていると思いますけど」

 

「順応性が高いって評価して」

 

それはそうだが。ルミナさんの順応性の高さは折り紙つきだ

上手い事交渉事を進める事については評判がいい

 

「そう言えば、ルミナさんは何を読んでいるの?」

 

「これのこと?これはライ麦畑でつかまえて。子供の頃に何度も読んだんだけど、また読みたくなって」

 

この図書館には漫画はさすがに所蔵されていないが、有名人の長編小説は所蔵されている

そう言った小説の購入希望が意見箱にかなりの量があるので購入時期になると大量になる

第三新東京市立大学には多くの大学生が通っているのだから、図書館の利用者はかなり存在する

だからこそ購入リストを作る時はかなり図書委員会の会議で紛糾する事は毎回の事だ

上手く仲裁する人間がいればいいのだが、実際はそれぞれの欲があるので難しい

私だってほしい本がたくさんあるのでいろいろと苦労しているのだ

ちなみにルミナさんやアイラさんも毎回かなりの購入希望リストを意見箱に出している

 

「そうですか」

 

「カオリは子供の頃に何か思い出の1冊とかあるの?」

 

「残念ですけど私はそういうのはないので」

 

子供のころから人類補完計画の一部としてしか扱われてこなかったのだから

酷い目にあってきた人生だ。ルミナさんが今読んでいる文学にはあまり興味がなかった

今は別だけど。とりあえず私はルミナさんに先に寮に戻りますねと伝えた

寮の自分の部屋で次に購入してほしい本のリストをまとめなければならないからだ

 

 



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後輩と買い物

私は図書館を出ると大学内のコンビニに立ち寄った

昼食のお弁当を買うためである

寮の自分の部屋に設置されている冷蔵庫には食材になりそうなものは、

朝ごはんのサンドイッチで使い切ってしまった

お弁当を買う以外には昼食を食べる事はできない

スーパーに行っても良いのだがまだ早朝だ。

激安スーパーに行って少しでも生活費を下げるためには、

今の時間に買いに行くわけにはいかない

大学の学費に生活費。結構ギリギリの収入で何とかしている

ちなみに奨学金は利用していない。

大学の授業料は公立のため、私立に比べると安い方だが

海岸の町の両親に迷惑をかけるわけにはいかない

だから料理本の格付けに関する調査員のアルバイトをしているのだ

 

「本当に苦労ばかりするわね」

 

コンビニで幕の内弁当を購入すると大学の寮に戻った

今日は大学の近くにあるコインランドリーで溜まっている洗濯物を片付けないといけない

午後からはいろいろとやる事があるのだ。

 

「カオリ先輩!今日は早いですね」

 

後輩の1人が話しかけてきた。彼女もコンビニで買い物をしてきたようだった

 

「今日は図書館でいろいろと事務仕事を手伝っていたから」

 

「先輩は図書館にいるのが好きですね。私はあの大量の本の整理がスムーズができるなんてすごいです」

 

後輩によく言われる言葉だ。

どこにどの本があるのかはもう覚えているので、慣れた作業である

私達は大学敷地を出ると寮に帰宅した。途中で彼女と別れると私は自室に戻った

 

「さてと。お昼ご飯を食べようかしら」

 

コンビニで買ってきたお弁当を食べる。食後のデザートにアイスを冷凍庫に入れている

甘いものは大好きだからだ。一応太りすぎないようにカロリー消費ができるように運動もしている

週に1度はテニス部の手伝いをしている。打ち合いの相方役をしている。

ただし第三新東京市立大学のテニス部はかなり強い強豪部なので有名である

打ち合いに対応するのも苦労するが良い運動には変わらない

テニス部からは引き抜きの話が何度も出ている。もちろん私は断っているが

できる限り読書に時間を使いたいから。私はお弁当を食べ終わるとごみ箱にお弁当箱を捨てる

次に今度購入希望書籍をノートパソコンを使って探した

私は何度も言うようだがいろいろな本を読んでいる。

古典から現代もの。もちろんライトノーベルも読んでいる

図書館の購入希望でライトノーベルを去年に3冊希望出したのだがすべて却下された

まぁ物は試しで提案してみただけなので、結果はわかりきっていたことだが

今年も一応混ぜてみようと考えていた。図書委員会の権利を乱用していると言われるとそこまでなのだが

何事もチャレンジ精神が重要なのだ

 



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休日での図書室の過ごし方

ある程度購入希望書籍のリストをまとめると私は教育実習先の高校に行くことにした

今日は高校の図書部はお休みなのだが、私は高校全体を見たいと思っていた

教育実習で通っている時は、そんなに時間が取れないので日曜日しかチャンスがない

私は一応足首にリボルバーを装備して、寮の自室を出発するとすぐ近くのバス停に向かった

さすがに休みだからと言ってバイクで行くわけにはいかない

市バスを使っていくべきであることは当然だ。バス停で5分ほど待っているとバスが到着した

到着したバスに乗り込むと今日は休みという事もあったため、車内は閑散としていた

 

「日曜日は暇ね」

 

のんびりとした風景をバスの車窓から眺めていた

そして高校の近くのバス停に到着すると私は運賃を支払って降車した

まだ暑い日差しが降り注ぐ中、私は高校に向かって歩いていった

部活動は今日もしている。図書部ももちろん活動している

活動の内容の中には図書委員会の手伝いも含まれている

とりあえず職員室に向かった。私は職員室のドアをノックして入った

 

「失礼します」

 

「水川カオリさん。どうかされたんですか?」

 

「碇レイさん。あなたこそどうかしたんですか?」

 

職員室には碇レイさんやアスカさん、そして渚カオル君がいた

私はレイさんだけが図書部の部員だと思っていたのですが、

アスカさんやカオル君もそうだったようです

 

「図書室の本を読ませてもらおうと思って。良いかしら?」

 

すると3人も今から図書室に行くところだったと話を合わせるかのように発言した

思わず後悔したが、今は仕方がない。私達4人は図書室に向かった

 

「カオリさんは大学で図書委員なんですよね?」

 

渚カオル君が質問してきた。

まぁ暇を見つけては常に入り浸っているって感じねと答えた

 

「カオリさんは本が好きなんですね」

 

今度はアスカさんが話しかけてきた。

これでは衆人環視の状況である。できる事ならこういう状況は避けたい

高校の中では簡単に切り抜ける事は難しい。諦めるしかないのだ

いろいろと話をしていると図書室に到着した

私は図書室の本棚から何冊か書籍を選ぶと椅子に座って静かに読書を始めた

レイさんやアスカ、渚カオル君も同じように読書を始めた

嫌な時間であるが話しかけてこないなら無視をすればいいだけの話である

とりあえずは読書に専念した。なんとなくであるが碇レイさんを見て、私はある感情を感じた

まるでお母さんのように見えた。でもそれは『碇ユイ』さんのことではない

海岸の町で私の事を拾ってくれたお母さんが私が眠れない時に子守唄を歌ってくれた時の、

暖かい空気を感じたのだ。私は海岸の町の家で迎えられた初めの頃はなかなか眠れなかった

お母さんは心配してくれて夜になったら必ず私の部屋に来て確認してくれた

眠れないとお母さんにこぼすと子守唄を歌ってくれた。私が眠るまでそばにずっといてくれた

だから大好きなのだ。孤独で一人ぼっちの私を保護してくれた両親を



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過去と未来、そして墓標

本をゆっくりと読んでいると時間はもう夕方を迎えていた

私は本を本棚に戻すと帰宅する事にした

碇レイさんやアスカさん、渚カオル君も帰る事に

 

「バス停まで一緒に行っても良いですか?」

 

少し嫌な感情が出そうだったけど我慢した

今は耐える時であると

 

「良いですよ」

 

私達は図書室の鍵を閉めると職員室に鍵を返してからバス停に行くことに

校舎を出るともう夕日が見える時間になっていた

私は教師になるために勉強をしている。そしてもう大丈夫なのだ

だって私は『碇シンジ』ではない。でも、私は碇レイさんにある事を伝える事にした

 

「碇レイさん。碇シンジ君のお墓の場所をあなたのお母さんに伝えておいてもらえますか」

 

「碇君のお墓はないって」

 

「あの時はネルフに真実を話す価値がないと思っていたから。でも考え直したんです」

 

もちろんこれは嘘だ。碇シンジのお墓の場所を教えれば私の事を諦めてくれると考えたからだ

もう過去に囚われたくない。未来を見て歩みを続けたいから

そのためなら、多少の譲歩をしても良いと考えたのだ

せめてそれが碇ユイさんたちの『囚われている過去』、それを忘れてほしいと思ったからだ

人は前に進んで生きていくしかない。過去ばかり見ていては後悔しか考えられない

私は1枚のメモを渡した。それは今朝ルミナさんと一緒に行った墓標がある場所を書いた地図だ

 

「ここに碇君のお墓が」

 

彼女はそれを受け取るとどうして渡してくれたんですかと聞いてきた

私はただの気まぐれですと答えるとさらにこう続けた

 

「遺骨などはないただの墓標にしか過ぎないですけど。彼が生きていた証には違いはないことですから」

 

そう言うと私達はバス停に到着した。彼らと私が乗るバスは方向が違うので

碇レイさんたちが乗るバスの方が先に来た。彼らはバスに乗り込むと帰宅していった

私の家がある寮の方向に向かうバスはそれからすぐ後に来た

それに乗り込んだ。あとは寮に帰るだけである。

 

「そう言えば晩御飯。どうしよう」

 

冷蔵庫は空っぽ。食材はないしお弁当も買ってきていない

どこかで調達する必要がある。いくら神様だからと言っても空腹を訴える感情には逆らえない

たまには寮の食堂を利用する事にした。今からならちょうど夕食の時間に間に合う

高校に来た時とは逆方向に進む車窓を眺めながら寮に戻った。

寮に到着するとちょうど夕食の時間だ。私はとりあえず食堂で夕食を取る事にした

今夜の晩御飯を何にするか悩んだ結果、カレーを選んだ。

カウンターでカレーライスをもらうとテーブルに着いた

するとルミナさんもカレーライスを持って私と同じテーブルに来た

 

「カオリ!また高校に行ってきたの?」

 

「あそこにはどんな本があるのか興味があったので」

 

ルミナさんからは本当に本が好きねと言われた。まぁその通りだが

 

 



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朝の準備

夕食のカレーライスを食べ終わると私は自室に戻り、明日の月曜日の教育実習の用意をはじめた

碇レイさんに渡したあのメモが、ネルフサイドに対してどのような効果が出るのか

そしてネルフや碇ユイがどのような行動を起こすかはあまり想像したくない

どうせ墓を調べたところで、ただの墓標に過ぎないのだから。

名前と死亡した年が刻まれているだけのただの墓標だ

DNA鑑定をしたくても遺体はない。私が碇シンジであることが発覚する事はないはずだ

そのはずなのだが。どこで内容が変わってしまうかわからないのが

それもこの世界の流れというものだ。運命を受け入れていくしかないのだ

でもたった1つ守らなければならないことがある。それは私が『碇シンジ』ではないという事だ

これだけは譲れない一線である

 

「本当に苦労するわね」

 

明日の用意を終えると私はベッドの上で横になった。

ベッドサイドには1枚の写真が飾られていた

海岸の町の両親とルミナさんと一緒に記念写真を撮ったものだ

私にとっては大切なものだ。

 

「それじゃ眠ることにしましょう」

 

私は照明をすべて消灯して睡眠をとった

明日からはまたしても忙しい毎日が待っているのでしっかりと休息を取らないと

翌朝、午前6時に目を覚ました私はとりあえず朝食を作る事にした

朝食と言っても卵料理でスクランブルエッグを作るだけなのだが

部屋の中にあるキッチンで料理をして今日はきれいにできたと安心した

たまに焼きすぎて焦げ目がついたりしてしまう事もあるのだ

私はさらに盛り付けるとそれを食べた

いつものようにグロック17をカバンに入れてリボルバーを足首に装備

昨夜用意した教育実習を受けるための教材が入ったカバンを持ってルミナさんの部屋に向かった

 

「ルミナさん!起きてますか?」

 

『少し待って!もう準備が完了するから』

 

多分着替えているのだろう。ちなみに私の今日の服装はリクルートスーツだ

きちんとした服装でないと問題があると考えての選択である

数分待っていると、ルミナさんも私と似たような服装で部屋から出てきた

 

「おはようございます。それじゃ、行きましょう」

 

「おはよう。遅れないようにいかないと。この時間だったらまだバスも混雑していないだろうしね」

 

私が早く出発する理由はバスの混雑を避けるためである

混雑したバスは苦手なので、少し早めに向かう事にしているのだ

そしていつものように寮の前にあるバス停で待っていると、空席が目立つ市バスが到着した

乗り込むと高校に向かった。通勤ラッシュの前のバスなのでのんびりとした時間を過ごすことができた

私はルミナさんといろいろと話をしていると目的地の高校の最寄りのバス停に到着した

まだ登校している生徒はそれほどいない。運動部で朝練がある部活動の部員はいたけど

 



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レイさん達との話し合い

高校の職員室に入ると、まだ出勤している先生たちはあまりいなかった

私達はそれぞれに割り当てられているデスクに行きデスクチェアに座るといろいろと用意をした

今日は1時間目は英語の教育指導の様子を見学する事になっている

ただ、幸運には恵まれていないようで碇レイさんがいるネルフ関係者がいるクラスだった

その前に職員会議があるのだが、その前に私は碇レイさんに呼ばれてしまった

 

「すみません。今日のお昼に時間を作ってもらえますか?」

 

「どうせ来るとは思っていたから。でもあのことで話すのは1度だけよ」

 

人の生死に関する話を何度もするのは好きじゃないのと私は彼女に伝えた

碇レイさんはわかりましたと言ってクラスに戻っていった

何とか職員会議の前に話を終わらせることができた

それにしても面倒な事である。ネルフ関係の話となると

特に『僕』がらみの話となると積極的すぎるのが問題である

職員会議が始まるが、内容は現在の生徒の学力がどのていっどまで進んでいる、

また問題を起こしているような生徒がいるかなどの話が中心だ

幸いな事にこの高校には問題を起こすような生徒はいないので粛々と進み会議は無事に終了した

私とルミナさんは1時間目の英語の教育指導の様子を見学に行った

 

「カオリ。昨日彼らと何かあったの?」

 

ルミナさんは何かを察しているのか。それともかまをかけているのかわからない

私は何もないですよと答えた。別に何か特別なトラブルがあるわけではない

今のところはだが。碇レイさんに渡した『僕の墓標』がどれほどの効果になるのか

それは今の段階ではわからない。私は心のどこかで彼らにもう碇シンジという過去に囚われてほしくないと

そんな事を思っているのかもしれない。過去ばかりに囚われるのではなく未来を見てほしい

とりあえず目の前の事に集中する事にした。今は教育実習の真っ最中の期間なのだから

私とルミナさんはいつものようにクラスの一番最後尾から、

指導内容の見学をして必要なところはメモを取っていった

時間は流れるというのは早いというもので、お昼休みを迎える事になった

 

「ルミナさん。私は今日のランチは別で」

 

「わかっているわ。気をつけてね」

 

はいと返事をすると碇レイさんがいるクラスに向かった

この際だからまとめて話をしておきたかったという感情があったのかもしれない

彼女たちのクラスに行くと私が来るのを待っていたようだった

 

「時間を作っていただいて感謝します」

 

「今日限りにしてもらうわよ。彼の話の中には良い思い出はないからね」

 

私の言葉に碇レイさんはわかっていますと答えた

 

「それで何を聞きたいの?」

 

「どうして墓標がある事を最初に教えてくれなかったんですか?」

 

「彼は静かに眠る事を望んだのよ。エヴァパイロットとして埋葬されることを望んでいなかった」

 

あなた達みたいに英雄みたいな扱いされるなんて嫌だったのよと冷たく話した

まるで神格化されたような存在になるなんて嫌だったことは事実だ

平和に暮らせればそれでよかった



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彼らとの関係距離

「シンジは本当にそれを望んだんですか?」

 

アスカさんはどうも納得できていない様子だった。

彼女にとって碇シンジは本当の意味で友人ではなかった

彼女は自分を見捨てたという考えを少しだけだが持っていたことを知っていた

 

「彼はサードインパクトの事実を知っている。その中で見た地獄を経験したからこそ、ネルフなんて嫌になったのよ」

 

「1つ聞いても良いですか?」

 

今度は渚カオルが質問をしてきた

 

「しつこい質問は嫌いだからそのつもりで言葉を選ぶように」

 

「シンジ君はどうして僕を蘇らせたのかな?」

 

「すべては公平であるべきだから。彼ならそう言ったでしょうね」

 

そうだ。『僕』が彼を蘇らせたのは公平であることを望んだからだ

誰かの生死を決めるのは私の判断ではない。人類補完計画で犠牲になった人たちを救った

それだけの事である。法の下に裁かれるべきだと考えたのだが

実態はきれいごとのようには物事は進まなかった

ネルフが好き放題にできる状態にしてしまっただけに過ぎない

今更何を言ったところで言い訳に過ぎないのだが

 

「とにかくお墓の場所を教えたあげただけでも感謝してよ。本当なら静かに眠らせておいてあげたいから」

 

本当は教えるつもりなどなかったのだが、仮の墓標ではあるけど

あまりにしつこいので妥協案というか交渉術というべきか

仕方なく教えてあげたのだ

これでもし私にトラブルの種が飛んでくることになるなら

こちらにもいろいろと抵抗するだけの材料を持っている

 

「碇シンジ君は正義が実行されることを望んでいたのにネルフが邪魔をした。あなたたちが自分勝手に正義の味方」

 

そんな事を主張したために、彼は絶望したと私は冷たく突き放すかのように言った

事実なのだから文句は言えないはずだ。

特に碇レイさんと渚カオル君は人類補完計画の中心人物だったのだから

 

「厳しい意見ですね」

 

「私は事実を言ったまでよ。あなた達の身勝手が彼を追い詰めた」

 

だから自殺の運命を選んだのよと伝えるとちょうど昼食を食べ終えるところだった

 

「話はこれでおしまい。もう私はネルフと関わるつもりはないわ。汚れきった組織に協力する義務はないから」

 

それでは失礼しますというと私は教室を出ていき職員室に戻っていった

まったくもってネルフは迷惑な組織だ。自分勝手に正義の味方を主張している

特に許せないのが碇ユイと碇ゲンドウ。2人は結末をある程度予期していたはずだ

なのに自らの理想。いや、自分勝手の理論を実証するために大勢の犠牲を生み出した

そんな彼らに協力なんてしてやるつもりなんて私にはなかった。ため息をつきながら歩いていた。

職員室に戻りルミナさんの隣のデスクに座ると、彼女に問題山積って顔をしているわよと言われた

 

「どうしてこうも面倒な事に巻き込まれるのか私も聞きたいですよ」

 

 



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墓標の意味

お昼からは問題なく教育実習を受ける事ができて、放課後を迎える事になった

 

「カオリ、今日はどうするの?」

 

「今日は大学の図書委員会で会議があるの。今度の書籍購入についての協議があるから」

 

ルミナさんは寮に戻ってレポートをまとめないといけないとのことだ

とりあえず一緒に帰る事にした。

 

「それでは失礼します」

 

私達はデスクとその周辺を清掃にすると帰宅する事にした

それにしても、次は何が出てくるかわからないと思っていた。

あの墓標を知ってネルフ上層部が何か行動することは想像できていた

何も行動しないほうがありえないのだから

 

「本当にカオリは苦労しているわね」

 

「ルミナさん。私は覚悟を決めたし、私1人だけでも歩みを止めることなく突き進むんですよ」

 

「心配しないで。カオリの進むところならどこまでもついていくわよ」

 

「優しいんですね」

 

「私達は一蓮托生のコンビでしょ。どんな結果になろうと共に歩みを続ける。そうでしょ?」

 

私達はそんなことを話しながら高校の前に設置されているバス停でバスを待った

それにしてもこの急激な変化には本当に疲れたものだ

私は碇シンジではないのだ。『僕』を証明することなど不可能だ

バス停に到着した市バスに乗り込むと大学の寮に向かっていった

平和だなと私は感じながらバスから見える車窓をのんびりと眺めていた

下車するバス停に到着すると私とルミナさんは降りるとルミナさんは寮へ

私は大学付属図書館にある会議室に向かった

今日は平和な日々になると思っていると私の携帯電話が着信を告げていた

発信者は高波教授からだった

 

「高波教授。珍しいですね。お電話をしてくるなんて」

 

『実はどうしても君に面会したいという人が来ていてね。一応君のこの街での保護者だから連絡をしたんだけど』

 

「誰ですか?」

 

『ネルフ本部技術部の碇ユイさんという方なんだけど、面会に応じてもらえないかな』

 

私は大きなため息をついた。外堀から埋めてくるとは思っていたけど、いきなりとは

だが教授の立場もあると考えてどこに向かえばいいのか質問した

教授は自分の執務室に来てほしいと答えた

 

「わかりました。今から向かいます」

 

どうしてこうもトラブルが来るのかと思いながらも、

私は図書委員会の委員長に今日の会議の出席は難しいと電話で伝える

そして大学校舎内の教授の部屋に向かった

教授の執務室の前に着くと私は1度深呼吸してからドアをノックした

 

「水川カオリです。高波教授。よろしいですか?」

 

すると教授がドアを開けてくれた。

 

「君の事だから断ると思ったんだけど、来てくれて助かるよ」

 

「教授には迷惑はかけれませんので」

 

教授にそう伝えると私を執務室内に招き入れた

応接セットのソファには碇ユイさんが座っていた

 

「どうしてネルフは彼の事を安らかに眠らせておかないのか私には理解できません」

 

「シンジの墓標を訪ねたわ。あなた、どうして最初に」

 

「何度も言う事ですが。彼は自分が利用されることを最も恐れた。自分勝手に正義の味方を名乗るあなた達にね」



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彼らが求めるもの

私は碇ユイに対してストレートに言った。もう『家族』とは思っていないからだ。

ただの自己満足のために家族すら巻き込んだのだから

利用できる者はすべて利用した。止める事ができたはずなのにそれもしなかった

罪深いといえば最も罪深い者の1人である

 

「自分勝手に正義の味方を気取っているあなた達が私に何の用件ですか?」

 

「シンジは本当に自殺したんですか?」

 

その質問に私は大きなため息をしてしまった

しつこい連中だと思ったからだ

 

「あなた達は彼に何を求めているんですか?悲劇の英雄?」

 

私は子供をぼろぼろになるまで利用したバカな人の言葉とは思えないですねと冷たく突き放した

それが現実なのだから。仮に私が碇シンジの生まれ変わりだと知ったら彼らは好き勝手にするだろう

そんな事は私が許さない。絶対にさせるつもりはない。

私は英雄なんてものじゃない。ただの迷惑な『神様』なのだ

人々に幸福をもたらすためにいろいろと頑張ったのだが平和には程遠い所もある

人は戦いを捨てる事はできないのだろう。

どんなに神様が平和を望んでいるといってもそれを利用する者がいる事は事実だ

 

「シンジは本当に死んだんですか?」

 

「何度も同じことを聞いて何の意味があるのですか?彼は死んだ。あなた達が殺したも同然ね」

 

私は碇ユイに対して厳しく当たった。今更ながらバカな女だと思っていたからだ

自分の夢のために何もかもを犠牲にしたのだから。

僕がどんな目にあうかわかっていたはずなのに

 

「もしシンジ君が生きていたらこう言ったでしょうね」

 

私く冷たく突き放すかのように言い放った

人殺しと。彼女はその言葉を聞いて返事ができなかった

 

「すべてあなた達が悪いんですよ。ネルフも。ゼーレも。ただ自分の欲求のためにすべてを壊した」

 

でも最後にチャンスを与えるために元に戻したのにあなた達は自分勝手に事実を捻じ曲げた

私がそれが許せなかった。結局のところ、今も自分勝手に社会を操作して英雄でいる事が

 

「シンジを殺したのは私達が原因と言ったのは」

 

「彼があなた達が好き勝手にしたこの世界を元に戻したのに、その彼すらも利用しようとしている」

 

それだけの話ですよと。突き放す冷たい言葉しか出なかった

 

「水川カオリさん。シンジのことをもう少しお話しできませんか」

 

碇ユイの言葉に私は思わず拳銃で撃ち殺してやりたいと本気で思った

彼女がどういう感情を持っているのかは知らないが、今更何を知ろうというのだ

 

「もう1度聞きますが。あなた達は彼をどうしたいんですか?悲劇の英雄として利用したいのか」

 

それともネルフの権限拡大という身勝手の事に利用したいのかと厳しく質問をぶつけた

 

「私はただシンジに謝罪したいの。今の立場を捨てても良い。本当にごめんなさいと」

 

 



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話し合いと戦闘

「碇ユイさん。今更謝罪して彼が生き返るとでも思っているんですか?」

 

バカな事を考えていると思っていた。謝罪するには時が経ちすぎている

私は『碇シンジ』ではなく水川カオリなのだから

 

「それは・・・・・・」

 

「あなた達があんなことを計画したから彼は死ぬことになった。つまりあなた達が殺したんですよ」

 

私の言葉に碇ユイは少し泣きそうな表情を浮かべたが私は容赦をするつもりはなかった

 

「本来なら殺人罪に問われるのにネルフはすべてを正当化した。思い上がりもほどほどにする事ですね」

 

私は言いたい事をすべて言ってやった。もう後悔などを感じる事が無いように

でもすべてあたっている事だ。私にとって碇ユイは家族ではない

私を壊そうとした悪魔と同等の人物なのだ

話は以上ですねと切り上げようとした時、執務室の外の廊下から金属音がわずかに聞こえた

それは銃のスライドを引っ張る音だ

私は高波教授と碇ユイを強引にしゃがませると足首のホルスターからリボルバーを抜いた

次の瞬間、銃弾が扉を貫通してきた。まったくもってネルフの警備は甘すぎると思いながらも

狙いは碇ユイか私か。おそらく後者である私が狙いだろう

リボルバーである程度、狙いをつけると発砲した

すると、被弾したのか苦しみを感じる声が聞こえた。

相手もまさかこちらが交戦してくるとは思っていなかったのだろう

 

「あなた、その銃は」

 

「シンジ君に言われたんですよ。自衛のために武器は携帯せよってね。もちろん非合法ですけど」

 

上手く言い逃れの手段として利用させてもらう事にした

相手は徹底抗戦の構えのようだ。私はカバンからあるものを取り出した

グロック17だ。リボルバーだけでは対応できない。

今この状況を乗り切るためには手段を選んでいる暇はない

私は次々と弾をドアに撃ち込んだ。

 

「まったく、ネルフのせいで私にまでとばっちりが来るのは迷惑よ!」

 

これは事実だ。ただの大学生で淹れたのにネルフに注目されてからこれだけの騒ぎが起きるのだ

はっきり言って迷惑以外の何物でもない。だが相手もなかなかしつこい連中だ。

私はグロック17のマガジンを1つ交換すると再度発砲した

それでもあきらめないとはなかなか度胸があるといえる

その時だ、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた

 

「もう無駄な抵抗よ!死にたくなかったら武器を捨てなさい!」

 

しかし相手はやめる気が無いようだ。よほど私の身柄を欲しがっている

それだけははっきりと分かった。だが既に警察が来ている

これ以上抵抗するだけ無駄というものだ

 

「諦めが悪いわね」

 

私はポケットから手榴弾を取り出すと銃弾によってドアに開いた穴めがけて放り投げた

いい感じに手榴弾はドアの向こうに通過して炸裂した

これでついに相手からの銃による攻撃は終わった

 

「命がいくつあっても足りないわね」

 

 

 



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守るべきものは何か

「死ななくてよかったですね。碇ユイさん」

 

私は冷たい声でそう言った。

本当なら助けるつもりなどはなかった。

『僕』をさんざん利用して最後には切り捨てたのだから

ただし、私としては立場上、助けないわけにはいかない

だって、『碇シンジの代弁者』なのだから

私はとりあえず銃を持っていたことを隠ぺいするために仕方なく交渉する事にした

 

「碇ユイさん。私が銃を持っていたことは黙っておいてくださいね。命を助けてあげたんですから」

 

私はあなたの命を助けてあげたのだから当然の権利だといわんばかりに主張した

 

「・・・・・・・・・・わかったわ」

 

彼女は納得していない感じだったように思ったが、私が助けたことは事実だ

 

「高波教授もお願いします」

 

「わかっているよ。それにしても君は本当に苦労しているようだね」

 

「綺麗事だけでは生活できないことはわかっていましたので」

 

事実そうだ。世の中綺麗事だけでご飯を食べる事はできないのだ

問題なのはどこの連中かだ。狙いはおそらく私であることはわかっている

ゼーレは私の事について必死になっている事は想像できていた

 

「それにしてもどうしてこんなにトラブルばかり発生するんでしょう」

 

「それは君が美人だからじゃないかな?」

 

「どうしてそういうことを言うんですか。怒りますよ。高波教授」

 

私は自分が美人だといわれることについては禁句なのだ

もし言われたら、言ってきた相手にこれでもかというぐらいの仕返しをしている

その事実を知っている者は大学でも有名な話なので、わざとその話を振るものは茶化す時にしか言わない

 

「高波教授。次そんなことを言ったら本気で怒りますから」

 

ようやく第三新東京市警察の刑事とネルフの保安諜報部の職員が駆けつけてきた

 

「碇ユイさん。私はあなた達を許すことはないので協力はしません。彼が語った真実を聞いて怒りを覚えているので」

 

これで接触がなくなれば良いのだが

とりあえず今後の事について口裏を合わせておく必要がある。

碇ユイに貸しを作っておいた方が何かと都合が良い。

その後、銃については襲撃犯から奪ったという事にした

仕方がない。新しい銃を手に入れるしかない

身を守るためには必要なのだから。とりあえず警察の事情聴取を受ける事になる

彼らは狙いがネルフの幹部である碇ユイだと思っているだろうが実際は違う

間違いなく私がターゲットだ。手段を選んでいないことはこれではっきりと分かった

今後の事を考えると面倒な事になる。どうして銃を持っていたのかなど厳しく追及されるだろう

言い訳を考えておかないといけない。私関係でもうトラブルは何件も発生している

警察も私が狙われているのではないかと勘づく者もいるだろう

ここ数日でこれだけ私関係で狙われているのだから

おまけにネルフの保安諜報部の動き出す

厄介なのはそこだ。警察は何とかなってもネルフまで動かれると身動きが取れなくなる

一応民間人という事なのだから。何度も言うが面倒はごめんだ

その後警察の事情聴取を受けてとりあえず寮に帰宅する事が出来た

今後の事についていろいろと考えながら自室のシャワーを浴びていた

忌まわしき過去がどこまでも私のそばから離れようとしない

迷惑な話だ



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それぞれの思惑と考え

 

「ユイ、彼女には接触しないように伝えたのだが」

 

夫の言葉に私はわかっていますと答えるしかなかった

ゲンドウさんだってそんなことはわかりきっている。全て今更なのだ。

娘であるレイちゃんから教えてもらった墓地の墓標には確かに碇シンジの名前が刻まれていた

私はそれを見て後悔しか出てこなかった。何もかもを壊したのが私であることを実感させられた

遺骨もない、ただ名前だけが刻まれた墓標。

まるでそれが私が人殺しであるという事をはっきりとさせているかのようにわからせるために

ただ、それだけをはっきり意思表示をすることを目的に存在している

私がすべていけないのだから

 

「彼女は民間人だが念のため警護をつけた」

 

「良いんですか?」

 

私はゲンドウさんがカオリさんに警護をつけたことに驚いた

まだ確かな証拠がないのに。憶測にすぎない領域しかない

それでも夫であるゲンドウさんが動いたとなると少しは情報が集まるだろう

私にも今回の大学で狙われたのが私ではないことは予想できていた

狙いはおそらく水川カオリさん。彼女であることはわかっていた

問題はなぜ狙ったかだ。動機が分かれば新たな脅威が分かるかもしれない

 

「ユイ。今は彼女に接触しないでくれ」

 

 

-----------------------------------

 

警察での事情聴取を終えると私は大学の寮に戻った

どうやら警察側でも私関係で狙われている事を捜査しているようだ

ますます状況が良くないことは間違いない

ネルフだけでなく警察からもにらまれるというのは私の行動が制限されるのと同等だ

もし銃を隠し持っているという事が分かれば彼らは立件する事を目指すだろう

だがこちらにも最後の手段というのもある。あまり使いたくない方法だが

ネルフに逃げ込むという事だ。特務機関であるネルフに入ってしまえば警察も手が出せない

ただしこれはあくまでも最後の手段だ。私としてはこれは絶対に使いたくない

ネルフに情報を提供するのと同等なのだから

寮の自室に戻ると私はベッドに横になった

 

「最悪の状況ね」

 

本当にその通りだ。どうしたらいいのか私でも判断できない

とりあえず新しい銃を入手するしかない。リナさんにお願いをして早急に用意してもらおうと

今の私は神様ではなく人間なのだ。間違ってもATフィールドを無造作に使うわけにはいかない

銃で応戦するしかないのだから。とりあえず私はシャワーを浴びるとパジャマに着替えてベッドで眠った

 

 

-----------------------------------

 

第三新東京市中心部 コンフォート17マンション 碇家の家

 

ここには碇ゲンドウと碇ユイ。そして碇レイと渚カオルが一緒に住んでいる

私は渚カオルと話をしていた

 

「水川カオリさんが教えてくれた墓標に行ったんだってね」

 

カオルにそう言われて私は一応行ってみたのと答えた

私にとって碇君とのきずなは大切なのだ

 

「唯一のものだから。碇君との唯一の絆」

 

私は墓標がある事に内心ではショックだった。碇君が死んでいる事をまざまざと見せつけられたからだ

でもわからないことがある。水川カオリさんが本当は碇君の生まれ変わりなのではないかという事だ

私は疑っていた。何かの意図があって我々と距離を取っているのではないかと

だからこそ高校でも私達とはあまり接触する事をしないのではないか



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私と彼とアスカ

翌朝、大学の寮の自室で目を覚ますと今日も教育実習に向かうための用意をする

なんとなくだが今日は朝食を食べる気分ではなかった

高校に行くための用意をすると部屋を出てルミナさんの部屋のドアをノックした

 

「ルミナさん。起きてますか?」

 

ドアをノックすると鍵はかけていないから入ってきてという声が聞こえてきた

私はルミナさんの声に力が入っていない。体調不良を起こしているような感じの声に感じた

ルミナさんの部屋に入るとベッドで横になっていた

 

「大丈夫ですか?」

 

「風邪を引いたみたいなの。悪いんだけど、今日は体調不良で休むと伝えてくれない?」

 

私はわかりましたと答えた。

ルミナさんに風邪薬は飲んだのか確認するともう服用していると答えが返ってきた

 

「高校には私から話を通しておきます」

 

今日はじっくりと休んでくださいというとドアを閉めた

 

「今日は1人で行くしないみたいですね」

 

内心では寂しいと思いながら寮の前にあるバス停でバスを待った

そして高校生で満員のバスが到着するのでそれに乗り込む。

1人でいる事にこれだけ寂しさを感じるのは久しぶりである

ルミナさんがいないことに少し悲しさを感じながら、

高校の前にあるバス停に到着すると大勢の高校生と私も降車した

職員室に入ると教頭先生にルミナさんが風邪で休むことを伝えた

 

「そうですか。体調不良は仕方がない事ですね」

 

「明日には元気になっていると思います。今日は私1人になりますが」

 

私は深々と謝罪をすると教頭先生はそこまで謝罪する事はないですよと優しく語りかけてきた

本当に良い先生である。今日も教育指導の様子を観察する

いつもと違ってルミナさんがいないことに私は寂しさを感じていた

お昼まで順調に進んでお昼休憩の時間になった

私は屋上に行って高校の食堂で購入したクリームパンを食べ始めた

 

「平和だ」

 

思わず愚痴るかのようにこぼしてしまった

平和と言ってもここ最近になって、そうでもないようなのは事実だが

 

「今日は1人なんですね」

 

アスカさんが話しかけてきた。私の事を探していたのかどうかについてはわからないが

 

「何か用件かしら?くだらない話ならお断りよ」

 

「シンジはどうしてすべてを戻そうとしたのか教えてくれませんか?」

 

「くだらない話ね。でも彼の名誉のために答えてあげる。碇シンジ君は平和を望んだ。争いのない世界をね」

 

でもそれを改変して自分たちに都合が良い世界にしたのがネルフ。

彼の思いを踏みにじった最低最悪の事をしたのよとアスカさんに伝えると彼女は涙を浮かべていた

 

「私の事で何か言っていましたか?」

 

「彼が唯一謝りたかったのはあなたの事でしょうね。でもあなたは彼の誰よりも平和を愛する思いを見捨てた」

 

本当はアスカさんに謝りたい。でも今の私は碇シンジではない。

水川カオリというただの大学生なのだ。だからもういいのだ

 

「そろそろ私は職員室に戻るわ」

 

アスカさんは涙を流していた。でも私は振り返る事はしなかった

もう終わった事なのだから

 



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トラブルばかり

午後の授業も何事もなく平和に終わった

私は放課後の部活の時間を図書室に行くことにした。少しは時間を有効利用しようと思ってだ

図書室では碇レイさんが本を読んでいた

 

「水川カオリさん」

 

「碇レイさん。また会いましたね」

 

私はそっけなく話をすると本棚から数冊の書籍を抜くと読書に入った

碇レイさんはさすがに邪魔に入ろうとしなかったようだ

いよいよ図書部の部活時間も終わりを迎える時になった

私は本を戻すと大学の寮に帰宅する事にした

寮の近くにある薬局で栄養ドリンクなどをルミナさんに差し入れをしようと思った

図書室を出ようとすると碇レイさんがバス停まで一緒に行きませんかと質問してきた

私としてはもう嫌なのでごめんなさいねと言うと断った

彼らと関わるつもりなどない。もうネルフにもゼーレにも振り回されたくない

彼らが知りたいの碇シンジが生きているか。そして碇ユイは息子を取り戻したいのかもしれないが

他の連中はただサードチルドレンが欲しいのだ。碇シンジではなく悲劇な英雄という存在を求めている

そんな連中のところに行きたいなんてごめんだ

誰が好き好んで、また碇シンジという存在を利用されなければならないのか

そんな狭い世界などに居たくない。私は広い世界に身をささげると決めたのだから

私はそんなことを考えながら高校の前にあるバス停でバスを待っていた

余計な連れがいたので内心ではうっとうしいと感じていたが

 

「少しだけでも良いので」

 

「碇レイさん。あなたが欲しいのは碇シンジではなくサードチルドレンとしての存在。彼が絶望したのもわかります」

 

「私にはそんなつもりは」

 

「あなたはそうかもしれない。でもネルフはそう思っている。きっとね」

 

だから何度も言うけどシンジ君を殺したのはあなた達が自分勝手にした結果なのよと冷たく突き放した

私の冷たい言葉に碇レイさんは反論する事はできなかった

私はもう終わった事なのだと決めている

バス停に大学寮行きのバスが到着するとそれに乗り込んだ

碇レイさんとはそこで分かれる事になった。今日のところはだが

バスの車内は空席が目立っていたので座席に座る事ができた

静かな時間を過ごすことができている。

大学寮前のバス停で下車すると私は近くの薬局で栄養ドリンクなどを買ってルミナさんに差し入れに行った

 

「ルミナさん。大丈夫ですか?」

 

『カオリ~。何とかして~』

 

私は少しため息をつくと入りますよと言ってルミナさんの部屋に入った

ベッドではかなり疲れた顔をしているルミナさんがいた

 

「大丈夫ですか?」

 

「ちょっとだめかも」

 

顔色は明らかに悪かった。もう救急車を呼ぶべきかと思ったほどに

 

「ルミナさん。救急車を」

 

「それはやめて、風邪で救急車なんてみんなの笑い者よ」

 

「でも状況は良くないですよ。顔色は悪いですし」

 

私の目から見ても明らかに体調不良が悪化したといえる

このままではまずいかもしれないと感じた

 

「ちょっと待っていてくださいね」

 

私は1度ルミナさんの部屋を出るとある友人に連絡を取った

 

「カオリなんだけどすぐにルミナさんの部屋に来てもらえない?」

 

私は携帯電話でそう伝えると1人の女友達が駆けつけてくれた

彼は医学生だ。医師の卵である。病院に行くのが嫌なら簡単に見てもらう事にした

 

「どうしたの?カオリ。あなたからコールなんて珍しいじゃない」

 

「ちょっとね。ルミナさんの体調を見てほしいの。病院には行きたくないって意地を張って」

 

仕方がないわねと彼女は言うと私と一緒にルミナさんの部屋に入った

 

 



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ルミナさんの意地っ張り

私は再び医学部医学生の友人と一緒にルミナさんの部屋に入った

 

「往診は受けてもらいますよ」

 

「カオリ。風邪薬を飲んでいたら大丈夫なのに」

 

ルミナさんは強がっているように見える

私の数少ない友人で医学生の女友達に往診をしてもらったところ

 

「ルミナ、検査を受けた方が良いわ。それも精密検査をね」

 

「どういうこと?」

 

「もしかしたらインフルエンザの可能性があるわ。正確な答えは検査をしないとわからないけど」

 

これは大変だ。すぐにでも病院に連れていくべきだと私は考えた

 

「ルミナさん」

 

「嫌よ」

 

私は抵抗するルミナさんに少し頭を痛めながらも、もう強引に連れていくしかないと判断した。

携帯電話を取り出すとタクシーを手配した。それを見たルミナさんは慌てた様子を見せた

 

「だめです。症状が軽いうちに治療を受けるべきです」

 

私は絶対に行かせますからねと強引に伝えるとルミナさんはしぶしぶ了承した

 

「わかったわ。カオリには負けたわ」

 

「それじゃ行きますよ」

 

第三新東京市立医療センターに行くことにした

私はルミナさんの着替えを手伝って、部屋を出るとすでに寮の前にはタクシーが待っていた

タクシーに乗り込むとすぐに医療センターに向かった

一般診察はもう終わっているのだが、

救急外来という事で受診をさせてもらう事を事前に連絡をしていた

市内中心部にある市内で最も医療設備が整っている第三新東京市立医療センターにはそれほど時間はかからなかった

救急外来の出入口から入るとすでに看護師の肩が車いすを用意して待機していた

タクシーで医療センターに到着するころにはまともに歩けない状況にまで症状が急激に進行していた

タクシー代を私は払うとすぐにルミナさんを車いすに乗せて、看護師さんと一緒に救急外来に入った

私は友人であり身元保証人という形でルミナさんに付き添っていた

ルミナさんを担当してくれた医師はルミナさんの症状を見てすぐに血液検査などを早急に実行してくれた

私は待合室で結果が出るまで待っていた。

 

「水川カオリさんですね?」

 

看護師さんが私を呼んでくれた。どうやら検査結果が出たようだ

私は状況はどうですかと聞くと、看護師さんはこちらに来てくださいと診察室に案内してくれた

 

「ルミナさんは大丈夫ですか?」

 

「彼女はインフルエンザに感染していますが、まだ症状が軽いので治療を早急に行えば大丈夫です」

 

私は医師からの言葉にとりあえずホッとした。

大切な友人を失うのではないかという恐怖心があったのかもしれない

一応今晩は入院をして治療を受けてほしいとのことだったので、

私が身元保証人になるという事で承諾書などの手続きを行った

大切な友人のためならこういう事をするのは当然の事である

その医師の言葉にひとまずほっとした。重病にはならないと告げられたからだ

ただ、今夜一晩は入院をしてもらうとのことだった

私はわかりましたと医師に伝えると入院手続きを行う事にした

 



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ルミナさんの入院手続き

私はルミナさんの入院に必要な手続きをすべて行う。

また入院に関して必要な費用はとりあえず私が立て替えておくことにした

別に特別にお金に困っているわけではないので、あとでルミナさんからもらえば良いと考えていた

 

「あなたは患者さんとはどういう関係ですか?」

 

私は事務員の言葉に何と答えればいいか困ってしまった

家族というわけではないし親戚というわけではない。

だが最も親しい親友という事で今回は少し強引であるが無理くり話を通してもらった

 

「わかりました。ご家族とは連絡が取れますか?」

 

「私の方で連絡をしておきます」

 

明日、こちらに来れるようにお願いをしてみますのでと伝えると事務員さんはわかりましたと答えた

事務員さんはでは手配の方はお願いしますと承諾してくれた

とりあえず急いで海岸の町に住んでいるルミナさんの両親に連絡を取らないと

ルミナさんは海岸の町で1人暮らしをしている。もちろん本当の両親も同じ町に住んでいるが

あえて自分にプレッシャーを与えて勉強に弾みをつけようと1人暮らしを始めたと何度か話を聞いたことがある

だから一応連絡先は聞いている。もしもに備えてだ

 

「とりあえず連絡しないと」

 

私は病院内にある公衆電話を使ってルミナさんのご両親に連絡をすることにした

病院内なので携帯電話は使えない。マナーは守らないと

 

「すみません。私は水川カオリと言います。ルミナさんの友人の」

 

『カオリさん。お久しぶりですね。何かありましたか?』

 

電話に出たのはルミナさんのお母さんだった

私はありのままの事を伝えるとルミナさんのお母さんからご迷惑をおかけしてすみませんと言われてしまった

別にそんなに気にしていないし、親友なのだからこれくらいの事は当然のことだ

 

『今日の夜に荷物を用意したらそちらに行きますので』

 

「わかりました。病院の方にも私から話を通しておきます」

 

『ルミナがいつも本当にお世話になっていますね』

 

「お気になさらないでください。私もルミナさんにはいろいろと迷惑をおかけしているので恩返しができればと」

 

私は入院手続きは問題なく行っていますのでと伝える

 

『入院費用も負担していただいたんですか?』

 

「医師の診察によるとインフルエンザだという事なので、今夜一晩入院すれば治るそうです」

 

『いろいろと娘がお世話になっています。明日の退院の時にはそちらに行けるようにしますので』

 

「わかりました。大学には私の方から話をしておきます。病気では仕方がありませんし」

 

ルミナさんのお母さんは何から何まですみませんと丁寧に謝罪をしてくれた

私はむしろお節介すぎたかなと思ってしまったほどに

とりあえず状況を伝えると通話を終えた

そこに私のこの街での保護監督者である高波教授が駆けつけてきた

 

「高波教授。どうかしましたか?」

 

「ルミナさんが病院に行ったと聞いてね」

 

私は状況を洗いざらいすべて話すと、それは大変だったねと頭をなでてくれた

 

「臨機応変な対応だね」

 

「教授。私は子供じゃないんですよ。頭をなでられて喜ぶような子供じゃありません」

 

私の言葉に教授は私はまだまだ子供だよと言った

確かにそうかもしれない。教授からしたら私はまだまだ幼い子供だ

 

「インフルエンザだと寮内の全生徒の集団検査が必要だね。学長には僕から伝えておくよ」

 

確かに教授の言うとおりだ。

感染症であるインフルエンザが寮内で集団発生したら大問題だ

できるだけ早期にワクチン接種などの封じ込め措置が必要になる

 

 



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高波教授との帰宅

私は高波教授といくつかの確認をすると寮に戻る前に、

この医療センターに保管されているインフルエンザ予防接種を受けるようにと指示を受けた

最も密接にいたのだから当たり前である。私は反対するつもりはないのですぐに予防接種を受ける事にした

痛い事は避けたいのだが、これも予防のためだ。

我慢するしかない。予防接種を受けると私はお金を払うと高波教授とタクシーで寮に帰る事にした

 

「あの~、高波教授。どうしてあなたまでこっちに来るんですか?」

 

「いけないかな?一応この街での保護監督者なんだから、海岸の町の両親に連絡をしないといけないしね」

 

正論と言えばそうかもしれないが。

 

「ところで高校での教育実習はどうなのかな?」

 

「今のところ何も問題はないです。教授にご迷惑をかける事はできるだけ避けたいと思っているので」

 

「でも少しは頼ってくれても良いと思うけど。この街での保護監督者は僕だからね」

 

高波教授は何か困ったことがあればすぐに連絡するようにと言われてしまった

確かに高波教授に黙っている事はいろいろとある

真実を話すわけにはいかないので難しいところだということはわかっているのだが

高波教授にまでネルフやゼーレの標的になる事は避けたいと思っている

私のせいで誰かがけがをするなんて見たくない

大切な『家族』には犠牲者となるようなことはしたくない

碇シンジの影響が出るようなことは絶対にしたくないのだ

 

「いろいろとあるとだけしか言えません。今は」

 

「いずれ話してくれるってことかな?」

 

私は高波教授まで巻き込むわけにはいかないので、断言はできませんとしか返答できなかった

もう嫌なのだ。『僕』のために犠牲者が出る事は

過去を忘れて前に進んでほしいのに、ネルフはそれをしない

それどころか、逆に過去を調べようとする。無駄な事なのに

私にとっては迷惑な事でしかないのにやめようとしない

『正義の味方』だと宣伝しているけど、実際はすべての元凶だ

彼らが様々なものを生み出したがために多くの事を起こしたのだから

 

「とりあえず、何か困った事が出来たらすぐに連絡すること。これは保護者としてのお願いだから」

 

「わかっています。無理はするつもりはないんですけど。不幸の方が私にぶち当たってくるんですよ」

 

私は苦笑いをしながらそう答えた。

嘘は言っていない。不幸の方から私にアタックを仕掛けてくるのだから

いくら私が神様だからと言っても不幸から逃げる事はできない

何とかして対応するしかないのだから

タクシーは無事に大学寮の前に到着したので私は料金を払おうと思ったのだけど

高波教授がクレジットカードで先に払ってくれた

 

「あとで金額を教えてくださいね。割り勘にしたいので」

 

「気にしないで。これも保護監督者としての責任があるからね」

 

高波教授は私と少し似ている。変なところで頑固なのだ

私はありがとうございますというと好意を受け取る事にした

寮の自分の部屋に戻ると私はシャワーも浴びないでベッドに横になった

 

「疲れた」

 

 



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ルミナさんの退院

ベッドで横になって眠くなったが、さすがにすっきりとして眠りたいと思ったので、

私はお湯で濡らしたタオルで体を拭いた。これで少しは清潔になれる

お風呂に入らなかったのは予防接種を受けたのでシャワーは避けておこうと思ったからだ

ちなみに私は神様なので風邪などの体調不良を引き起こすという事はない

それでも一応だ。怪しまれないようにするには完璧の方が良い

体を拭き終わると私はベッドに腰かけた

 

「本当に疲れた」

 

私はベッドに横になった

 

「そういえば明日の教育実習は午前中は休むことを伝えておかないと」

 

ルミナさんを迎えに行くのも私の使命だ。

いつもお世話になっているのだから、これくらいの事は当然のこと

とりあえず部屋の照明を消して眠る事にした

明日は朝から忙しくなりそうだと思いながら、すぐに眠りにつくことができた

翌朝、午前5時に目を覚ました。私はすぐにパジャマからスーツ姿に着替える

大学寮までタクシーを拾うと第三新東京市立医療センターに向かった

早朝という事もあり渋滞に引っかかることなく無事に病院についた

私は医療センターの事務員さんに話をするとすでにルミナさんのご両親が来ている事を知った

面会手続きを済ませると急いでルミナさんの病室に向かった

病室の前に到着すると深呼吸をしてからドアをノックした

 

「失礼します」

 

私はそう言ってから病室のドアを開けた

 

「お久しぶりです。水川カオリさん。お元気そうですね。娘がお世話になっています」

 

ルミナさんのお母さんと思われる女性からそう言われて、

私はお気になさらないでくださいと返すしかなかった

 

「ルミナがご迷惑をかけて」

 

「私の方こそ、普段からルミナさんにいろいろとご迷惑をかけてしまっているので恩返しです」

 

私はルミナさんにいろいろと迷惑をかけているから、これくらいの事は当然のことだ

ルミナさんのご両親から封筒を渡された

 

「これって」

 

「昨日、娘のために負担していただいた医療費です。お返ししておかないと」

 

「気にしないでください。お金なんて」

 

私は受け取りを拒否しようと思ったのだが、

どうやっても断れない様子だったので受け取る事にした

でもあとでルミナさんに返しておこうと考えていた。

別にあれくらいの医療費を払ったところで私は困らないのだから

私はとりあえず退院の手続きをしてきますねと伝えると医療センターの総合センターに向かった

身元保証人を渡しで手続きを行ったので、最後まで責任を持ってしようと思っていたからだ

 

「大変ですね」

 

事務員さんと退院手続きについて話しをしていると突然そう言われた

 

「親友のためなら、これくらいの事は当然ですよ」

 

私は手続きをすべてこなすと退院許可証を受け取った。

あとはこの書類を各フロアにある看護師センターに提出したら退院手続きは完了する

もう1度病室に戻るとルミナさんが待っていた

 

「カオリ、迷惑ばかりかけてごめんなさいね」

 

「ルミナさん。気にしないでください。これくらいの事ならいつでも引き受けますから」

 

 

 



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病院から大学へ

私とルミナさん、そしてルミナさんのご両親と一緒に看護師センターに向かった

事務手続きで受け取った退院許可証を提出するとすぐに回復してよかったですねと看護師さんに言われた

確かにその通りだ。もしあのままルミナさんが頑固で病院に来ていなかったらどうなっていた事か

 

「カオリ、そういえば今日の教育実習は?」

 

「私はお昼からです。ルミナさんについては今日は体調不良でお休みという事で手続きをしています」

 

心配しないでくださいと私はルミナさんに伝えると本当にごめんなさいねと謝罪した

でも私にとってはルミナさんが無事でいる事の方が重要なのだ

もし彼女に何かあるなら私はどんな手段を使ってでも守り抜いてみせる

たとえそれが人を殺める事であってもだ

 

「本当にいろいろとありがとうね」

 

「これくらいの事で気にしないでください」

 

私にとってルミナさんは大切な人だ。それにいろいろとお世話になっているのだから

恩返しと思えばこれくらいの事は当然である

とりあえず私は後の事はルミナさんのご両親に任せる事にした

家族なのだから、たまには一緒にいる機会がある方が良いと考えたからだ

私はというととりあえず大学に戻る事にした。

高波教授に状況を伝えるためだ。それから教育実習先の高校に向かえばいい

お昼から参加することはすでに伝えているので、午前中にできる事は済ませておかないと

医療センターから出るとタクシーに乗り込んで大学に向かった

 

「眠いわね」

 

今日は早起きだったから当然といえばそうかもしれない

でも嫌な感じはしなかった。むしろ逆の気持ちを持っていた

ルミナさんが無事でよかった。私にとってルミナさんは大切な親友なのだ

彼女を失う事は最も恐れている事でもあった

やっと私と本当の意味で付き合いができる親友であるルミナさんを失ったら

私はものすごく後悔することになる事はわかっている

 

「お客さん。大学の前に着きましたけど」

 

考え事をしている間に大学の前に到着した

私は料金を払うと大学校舎内にある高波教授の執務室に向かった

執務室のドアをノックした後声をかけた

 

「高波教授。いますか?」

 

『入っていいよ』

 

失礼しますというと高波教授の執務室に入った

 

「何かな?」

 

「ルミナさんは高校での教育実習はお休みです。私は昼から参加しますので」

 

「それで何か僕に用事でもあるのかな?」

 

「高波教授。ルミナさんは今日の教育実習はお休みという事で対応をお願いします」

 

私は昼から参加することで調整をお願いしますと依頼をした

まだ午前中なので今から行っても良いのだが、たまには休んでも良いと思って大学に来たのだ

 

「実はこれをある人物に渡してほしいんです。私から直接となると面倒なので」

 

「つまりネルフ関係という事かな?」

 

「碇ユイさんにこの手紙を」

 

私はあるメッセージが記入されている封筒を高波教授に渡した



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未来の懸け橋

「どうして今になって彼女に連絡を取ろうとしたのかな?」

 

「これ以上迷惑な事をされると私としても嫌なので」

 

ネルフに頻繁に介入されたら迷惑だからである

ただでさえ、教育実習について介入されているのだから

さらに介入してくることは容易に想像できる。

迷惑以外の何物でもない。だからこそ碇ユイさんと話をする

『碇シンジ』の事について。もうこれ以上、こちらに圧力をかけてこないように

 

「わかったよ。僕の名前で出しておくから」

 

「迷惑をおかけしてすみません。教授に迷惑はかけたくないのですが、直接会うのはもうこれを最後にしたいので」

 

「気にしないで。保護者としてはきちんと対応しないとね」

 

では失礼しますと私は教授に言うと執務室を出ていった

これで運命の1つが切り替わる可能性をネルフに渡した

あとは彼らがどういう風に判断するかだ。これですべてを決着につかせたい

『碇シンジ』に振り回されるのはもうお断りなのだ

別に過去を捨てろと言うつもりはない。ただ私は未来を見てほしいのだ

過去ばかり見て、未来を見ることができなければ前に進むことができない

もう忘れてほしいのだ。『碇シンジ』という存在を

この世に存在したという記録すら消してしまいたいぐらいに

『僕』には失うものはない。だから邪魔をしてくるくらいならはっきりと意思表示をした方が良い

そう考えたのだ。愚かな考えかもしれないけど

私は大学付属図書館に向かった。部室で今度購入してほしい書籍のリストを作るためだ

図書委員会でうまく網を潜り抜けるためにも、慎重に本を選ばなければならない

これが最も難しいのだ。あまり高価な本を選ぶとはじかれるし、

勉強に関係ないと判断されるような本もダメだ

難しい選択をしなければならない。

私はとりあえず図書館にある図書部の部室に入ると本を携帯情報端末を候補を絞り始めた

 

「難しいわね」

 

そんな事を愚痴りながらも本を選んでいるといつの間にか午前11時になっていた

さすがにそろそろ教育実習先の高校に向かわないと。

図書部の部室から出ると鍵を閉めて大学前にあるバス停でバスを待った

いつもならルミナさんと一緒なのだが今日は1人だ

何か新鮮な感じがする。いつもと違うからかもしれない

バスはお昼という事もあり、交通渋滞もなく車内にはあまり乗客はいない

いつものように高校前のバス停でバスから下車すると高校の敷地に向かった

 

「本当に平和ね」

 

校門を通過して職員室に着くと私は深呼吸をしてから失礼しますと言ってドアを開けた

 

「遅くなってすみません」

 

私は教頭先生に謝罪をすると高波教授から話を聞いていますからと

 

「お昼からは実習に参加します。ルミナさんは明日以降、病院が許可したら復帰する予定です」

 

「わかりました」

 

 



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私に与えられた権力

お昼以降の教育実習は無事に終わり、放課後の部活の時間は私は図書室に向かった

図書室では碇レイさんや渚カオル君。惣流アスカさんがいた

 

「水川さん」

 

「今日は3人だけですか?」

 

碇レイさんの言葉に私はそう質問してしまった

 

「他の部員は今日は帰ったので」

 

渚カオル君はまるで私を観察するかのような視線を向けてきた

 

「渚カオル君、私としてはあなた達ネルフ関係者とは関わりたくないんだけどね」

 

「シンジ君は君にどこまで話したのか教えてくれないかな」

 

渚カオルのその言葉に私は本気でこいつを殴ってやりたいと思ってしまった

まぁ、彼も覚えていないのだから。わざわざ私から話す事は必要はないが

 

「あなたたちには知る権利はないわ。あの時の事を知っていいのは限られた人間だけ」

 

あの儀式のときの事を知って良いのは私が決めた人間だけだ

逆恨みかもしれないけど。彼らがした結果でどうなったかをわからせるために、

話す人物は絞り込む必要がある

 

「1つだけ言っておくわ。私にはこの世界で唯一、すべての人類を裁く権利があるのよ」

 

「それはどういう意味ですか?」

 

アスカさんが私の言葉にどういう意味なのか分かっていない様子だった

でも私の言葉はその通りだ。私は『神様』なのだから、この世界で唯一裁く権利がある

すべての人類に対して。ただし今の私はその『権限』を行使していないだけだ

もし実行すればネルフ関係者やゼーレ関係者は抹殺リストの上位に入る

 

「あなた達は何も知らない。ネルフの真実を。碇シンジ君は真実を知ったからこそ、最後のチャンスを与えた」

 

私はそう言うと図書室に所蔵されている本を選びに行った

静かな時間が始まった。図書室の中だけに騒ぐ人間はいない

おまけにこの部屋の窓ガラスは防弾仕様になっていた

エヴァパイロットを守るためだろう。できるならこの高校の全窓ガラスを防弾仕様にすればいいのに

まぁ私が愚痴ったところで関係のない話だが

今更彼らに未練などない。あるのは復讐をする事だけ

さんざん利用されてきたのだから、今度はこっちが利用しなければ

復讐の1つや2つぐらいしても怒る人間は限られている

静かな時間だ。私は図書室に所蔵されている本を読んでいる時、外の廊下を走ってくる音が聞こえてきた

それも1人や2人ではない。さらに金属同士がこすりあう音もしてきた

 

「どうしてトラブルが来るのかしら」

 

私は碇レイさんたちに射線上に入らない比較的安全な場所で黙っているように隠れているように伝えた。

一方の私は図書室のドアのそばで隠れた。次の瞬間、銃弾が扉を貫通してきた

まったくどうして私には平和という言葉と縁がないのかと思ってしまうほどうんざりした

3人の男が完全武装の状態でドアをぶち破る形で入ってきた

私は先頭の人物の股間部分にけりをお見舞いしてやった。かなり痛い事はすぐに察しがついた

男を一撃で行動不能にさせるにはこれが最も効果的であることは事実だが

さらにその男が装備していた銃を奪い取るとほかの連中に攻撃して身動きが取れないように拘束した

3人の男たちは全員倒すことができた。

 

「まったくトラブルばかりね」

 

 



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加持さんとの交渉

今回は第三新東京市警察ではなくネルフ本部保安諜報部が単独捜査をするようだ

なぜそれが私にわかったかというと市警察は今回は私に一通り事情聴取をしてすぐに撤収したからだ

問題なのはこれからだ。またしても加持さんと腹の探り合いをしなければならないからだ

面倒で一番いやな事だが

 

「ネルフ関係でどうして私がトラブルに巻き込まれるのか教えてほしいわね」

 

「俺としても美人な君と話ができるのは好きなんだけど」

 

加持さんはそれにしても股間を蹴るとかなり痛い事をしたようだねと言ってきた

 

「よかったら体験します?私のは特別に痛いですよ」

 

「男として遠慮しておくよ。見るだけでも痛いからね」

 

加持さんは痛いのはわかっているからねと苦笑いをしていた

 

「私としては最も攻撃するうえで重要なポイントだと思っていますので」

 

加持さんはそれはそうだねと答えた

彼の狙いは確実に、そして明らかに私に絞っていた。

エヴァパイロットである碇レイさんたちではなく彼らの攻撃目標は私だと

問題はどこの組織が私を狙ってきたかだ。

ゼーレだとしてもネルフのおひざ元で攻撃するにはリスクがある

そのリスクを犯してでも価値があると考えているのだろう

私が『神様』だからといってもすべてを把握しているわけではない

人の意識をすべて把握しているわけではないのだから

 

「よかったら近くのカフェにでも行かないかな?」

 

「お断りします。あなたが、それもネルフの罠に引っかかるつもりはありませんから」

 

カフェに連れ込まれた後に襲撃されるということを私は危惧していた

ネルフの事を信用することなどできるはずがない。当たり前といえばそうだが

彼らとは敵対的関係にあるのだから。

 

「君をどうこうするつもりはないんだけどね」

 

「あなた方ネルフに利用された人間の末路はシンジ君からいろいろと聞いていますので」

 

私は加持さんの提案に乗るつもりはない。

利用されてたまるものかと思っていたからだ

ネルフに利用されるくらいなら、どこかに逃げる道を選ぶ

たとえ教師の道が断たれても新しい人生を選択する

 

「ところでどこで格闘術を学んだのかな?」

 

「私が答えると思います?碇シンジ君にいろいろと教えられていますので」

 

あなた方ネルフに何か情報を漏らせば利用されることはわかっているのでと答える

事実そうなのだから。もう彼らに利用される人生はお断りだ

幸せな人生を送りたい。誰にも阻まれない自由な世界で幸せな人生を

幸せは勝手にやってくるものではない。自らが努力して勝ち取るもの

 

「せっかくの平和な空気が台無しなので私は失礼します」

 

私はそう言うと図書室から退室していった

とりあえず職員室に戻る事にした。今はネルフの関係者と会いたくない気分だから

今日は私を助けてくれるルミナさんがいない以上、自分でいろいろと対応しなければならない

まぁこれも宿命といえばそこまでの話なのだが

私が自分で選んだ決断だ。

 

「頑張るしかないわね」

 

私は職員室に戻ると割り当てられているデスクでレポートの作成を始めた

夕方になり、そろそろ部活も終わり下校時間だ。私も大学の寮に戻る事にした

 



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直接攻撃の開始

いつもの市バスで大学寮に戻ると、私は自室に戻った。

部屋の鍵を開けようとした時、ロックが解除されていた

私はとっさの判断でドアにいつも貼っている紐を確認するとはがされていた

つまり何者かが侵入した可能性がある

 

「本当に嫌な人生ね」

 

私は外に1度、寮の外に戻ると少し大きめの石ころを拾ってきた

それを持ってきて部屋の扉に向かって勢いよく投げつけた

すると見事に部屋の扉が吹っ飛んだ

 

「平和を邪魔してくれるわけね。今度は誰かしら」

 

爆発音を聞いて慌てて多くの寮に住んでいる学生が集まってきた

 

「カオリ!大丈夫?」

 

親しい友人の言葉に私は大丈夫だけど部屋はめちゃくちゃよと答えた

それにしてもいったい誰がこの部屋に爆弾を仕掛けたのか

大学の寮ですら安全な場所はなくなってきた

まるで追い詰められたネズミのようだ。心の休めるところはどこにもない

 

「とりあえず警察に連絡するしかないわね」

 

今度ばかりは言い訳のしようがない。敵は私を直接狙ってきた

もう、協力しないなら消してしまえという論理で行動している

そう考えれば筋は通る。それにしても強引な策に出たものだ

もし罠を仕掛けていなければ大怪我をしていたところ

今回は運が良かったが、私を殺そうとしている連中が手段を選んでいないことは間違いない

 

「今夜は私と一緒の部屋で寝る?」

 

「良いんですか?」

 

「親友が困っているのに見捨てるほど薄情な人間ではないわよ」

 

私は好意は素直に受け取る事にした。

でもとりあえず私の部屋を爆破してくれた連中について捜査を行う市警察に協力をしないと

いったい誰が私の部屋を爆破してくれたのか

そのあたりについて、警察機構に調べてもらうしかない。

この件でネルフが関与してくることはすぐに察しがついた

どうして彼らと距離を取りたいのに近づく道を選ばざるえないのか

私の思いとは逆の方向にしか物事には進まない

内心、いや嫌な気分だが仕方がない。これも私が選んだ道なのだから

たとえどんなに過酷な道であろうと自ら判断で選択した

だから後悔はしないつもりだ。

その後、警察の捜査が入ったが、私はガス爆発だということで対応した

これ以上彼らに介入されることを阻止するにはこれが最も効果的であるからだ

市警察もそれでとりあえずは納得してくれた。

私は市警察の許可をもらって必要なものを取るために部屋に入った

もちろん拳銃が入っているカバンなどを回収した

これは私の命を守るために必要なものなのだから

今夜は大学での親友の部屋で寝る事にした

親友はベッドで一緒に寝る?と聞いてきたが私は一緒にエッチな事でもしたいのと返事をしてみた

そうしたら冗談よと親友は答えてきた

 

「私は床で寝るわ。布団は借りてきたから」

 

「用意が良いわね」

 

寮長に予備の布団を借りてきたのだ

今後の事についても寮長と協議する事を決めてきた

部屋の修理代についても話し合わないといけない

とりあえず、けが人が出なかったことは幸運だったと言えるけど

その後、さらに別の部署の市警察の刑事さんがやってきた。

ここ最近、私が練れている事を重大事案と判断したようで

警察はもっと安全な場所に移るべきではと提案してくれた

でも警察に監視された生活ははっきり言って迷惑でしかない

私は丁寧に断りをする

 



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私が守るべきもの

大学寮の自室が爆破されて親友の部屋で眠った。

その一晩はある意味では緊張してしまった

またしても襲われてしまうのではないかと警戒していた

枕の下には拳銃を隠して眠っていた。もちろんこの部屋を提供してくれた親友を守るためにも

この銃は最後の砦なのだ。私は守るしかないのだ。もう誰も犠牲者を出したくない

私の影響で傷つく人間を見たくないのだ

私は私のせいで何の罪もない人たち、親友たちが殺されることは望んでいない

むしろ逆なのだ。守りたい。私の代わりに犠牲になる事は絶対に認めない

もし誰かが私の犠牲になるという状況が出てしまうなら

どんな手段を使っても守り抜くつもりだ

平和だけを望んでいるのに、今のこの状況はその逆方向に進んでいる

親友たちが私のせいでけがを負うようなことになるなら、

私は自らの命を差し出してでも守り抜きたい

甘ったれな正義感かもしれないが。私は信じている

この世界が平和で過ごせることを願っているのだ

今は何としても世界が平穏であり続ける事が求められる

私は神様なのかもしれないが、別の意味で私は平等に裁かなければならない

私個人の勝手な決めつけで処罰する事はできない

人には法律という厳粛なさばきがある。私が裁く必要はないと言っても過言ではない

翌朝慣れない部屋だったためなのか、いつもよりも早く目を覚ました

ベッドで眠っている親友を起こさないように静かに行動して、室内の冷蔵庫の中を確認した

一晩泊めてくれたお礼として朝食を御馳走しようと考えたのだ

冷蔵庫にはシーチキンサンドイッチを作ることができる材料があった

キッチンで調理を行っていると親友が起きてきた

 

「カオリ?わざわざ朝食を作ってくれたの?」

 

「一晩泊めてくれたんですからお礼です」

 

私は調理を終えると2人分のシーチキンサンドイッチを室内のテーブルに置いた

 

「一緒に食べましょう。冷蔵庫から少しサンドイッチ作るために材料を使っちゃったから」

 

「気にしないで。あんまり自炊をしていないから」

 

あとで大学の近くにあるスーパーで買い物をしてくるからと彼女は大丈夫といった感じで言った

私達は一緒に朝食を食べ始めた。

 

「それにしても、カオリはいろいろと狙われているわね」

 

「ネルフに目をつけられた時から覚悟はしていたけどね」

 

それにしても爆弾を仕掛けてくるとは思ってもみなかった

今後、どういう組織がどのような攻撃を仕掛けてくるかと考えると苦労する

私達は楽しくおしゃべりをしながら朝食を食べると親友は大学で授業

一方の私は教育実習先の高校に向かうことにした

今日からは足首にグロック17を常に装備しておくことにした

これ以上誰かが私のせいで傷つくことは嫌だから

自分の事は自分で守ることにした。もう迷っている事は許されない

守るためには手段を選んでいられる状況ではないことは明らかだ

 



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失いたくないもの

今日も無事にバスで高校に向かうといつものように高校の前にあるバス停で降車した

 

「本当についていないわね」

 

生徒たちの登校時間よりも少し早くこの高校に来た

これもいつもの事である。理由は1つある。私が狙われるのは良いけど

他の高校生に被害を出さないようにするためである

罪もない高校生を巻き込むわけにはいかない

教師になる事を目指しているのだから、犠牲者を出したくない

そう思うのは当然の事である。私のせいで罪もない子供たちが巻き込まれることは嫌だから

私が狙われるのは良いけど、他の何の罪もない生徒が狙われるのは許されない

いつものように職員室に入ると、高校の教師にも私の大学寮で爆発事案があったことが伝わっていた

ただ誰が狙われたかまでは知られていないことは良い事だ。

私も驚きましたと答えるだけで逃げることができることができるからだ

 

「あなたは大丈夫だったんですか?」

 

「はい。運が強いんですよ。私は」

 

「運ですか?」

 

運が良かったというにはあまりにも好運すぎるのかもしれない

 

「運も実力の内って言いますし」

 

確かに運も実力の内である。ただしここ最近運が良すぎる事は事実だ

高校の教師の人たちから心配の声をかけられたが

私自身に何も被害はなかったですよと答えてとりあえずその場は切り抜けた

問題があるとすれば、もしこの事実が明らかになった時は最悪の事態が想定されている

この街から逃げるしかないのだ。もう何もかもを捨てて1人旅をするしかない

でもそれは私はそれを望んでいない。1人旅はあまりに悲しいものだ

孤独で生きるのは寂しい。ただの1人旅ほどつらいものはない

だから誰かと一緒に楽しい旅をしたいと感じているのかもしれない

 

「そういえばルミナさんはまだ来られないんですか?」

 

そういえばあれからどうなっているのかわかっていなかった。

私は携帯電話を取り出してルミナさんに連絡を取った

するとルミナさんが良いタイミングで職員室に入ってきた

 

「遅れてすみません」

 

「ルミナさん!」

 

私はルミナさんに抱き着いた。元気に回復した様子を見て安心したからだ

それにしても病院もすぐにルミナさんを開放してくれたことに私は驚いた

 

「そういえばカオリの部屋がぶっ飛んだって友達から聞いたけど大丈夫なの?」

 

「昨夜は親友の部屋に泊めてもらいましたので」

 

私がそう言うとルミナさんは私以外に親友っているんだと

私の部屋で眠っても良いのよとルミナさんが少し不満そうな表情だった

でも巻き込みたくないのだ。親友がトラブルに巻き込まれるようなことは避けたいし

それにルミナさんの許可もとらないで勝手に部屋を理由するわけにはいかない

 

「本当にカオリは几帳面ね」

 

プライバシーを勝手に明かすのは良くないというのが私の意見だ

私だって勝手に部屋を利用されることは認めるつもりはない

同じ部屋で一緒に寝るなら許容できるが

私のせいで傷つく人間を見たくないのだから

ルミナさんは私にとって大切な親友だし、守りたいのだ。

大学で出会うことができた本当の意味で信じあえる親友を



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私にとって大切なもの

今日もいつも通りで高校での先輩教師である彼らの教育指導方法を学びながら、

いつもの日常が戻ってきたというものだ。

平和な時であることが私にとっては何よりも大切なものだから

失ってはいけないのだ。私が憧れていた平和で楽しい人生

かつての『僕』が望んでいた人生。それが今の私にはあるのだ

諦めたら終わり。戦ってでも勝ち取るしかないのかもしれないけど

それでも私が歩む道を今更変えるわけにはいかない。いやできないのだ

もう道は決まった。だから頑張っていく。努力して勝ち取る

私が憧れていた人生を。『碇シンジ』だったころには感じることができない自由な世界

他人に決められた人生ではなく、自らが決断して歩み始めること

これが私にとっては最も重要な事だ。放課後に入ると私は図書室に行くことにした

もう迷いはしない。私と敵対するつもりなら、たとえそれがどんなに汚い方法だと言われても反撃する

私の人生を、いや自らが歩む道を自らによって決定するためにはそれが必要なのだ

ちなみに私は足首にグロック17を装備している。いつ狙われるかわからない以上仕方がない。

 

「本当に苦労するわね」

 

図書室で本を読みながらため息をついてしまった。

ちなみに室内には碇レイさんたちがいた。彼女たちはちらちらとこちらに視線を向けている

どうも嫌な空気である。私は読んでいた本を書棚に付けると彼女たちにこう言った

何か言いたいことがあるなら口で言いなさいと。

視線で物事を語られるのは好きでは何のだ。私は

それにこれ以上彼らとのトラブルで、事態が悪化する事は避けたい

ネルフが絡んでくることも、ゼーレが絡んでくることも望んでいないのだ

 

「どうして私達を守ったんですか?」

 

碇レイさんの言葉に私は呆れてしまった

誰が彼らを助けたのかと。本当の狙いがまるでわかっていない幼いひな鳥と同じだ

 

「あなた達は何か勘違いをしているようだからはっきりと言っておくわ」

 

私はあなた達を守るつもりなんて少しも思ってもいない。

ただ自分の生活を守るためにやっているだけであると

自分の人生を守るために武装をしているし戦闘だってするのだ

私は神様だから知識だけはたくさんある。

 

「ならどうして私達と関わろうとするんですか?」

 

その質問をしてきたのはアスカさんだった。

別に好きで彼らと関わっているつもりはない

距離を取りたいところだが。実際はうまくいっていないという事だけである

私はもうネルフと関わるつもりはないのだから。もちろんゼーレともかかわるつもりはない。

攻撃を仕掛けてきたら反撃をする。それももう2度立てないようにボコボコにしてやるつもりでいる

ボクシングで言うところの[ K.O ]にしてしまいたいだけだ

 

「私はネルフともゼーレともかかわるつもりはないわ。本当なら殺してやりたいの」

 

「それが碇君の願いなんですか?」

 

「碇レイさん。私は彼の意思を繋いでいるに過ぎない代弁者です。彼が望んでいたなら私はあなた達も殺していた」

 

私に今必要なのは本当に信頼できる家族だ

それがあの海岸の町で私の事を拾ってくれた両親

私の事を受け入れてくれたから何としても家族は守り切ってみせる。

必要なら汚い事でもしてみせる。それが私のやり方だ

 

 



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何度目の襲撃か

この日も放課後を図書室で過ごした後、大学の寮に帰ることにした

もうすっかりこの日常が当たり前のように過ごすことが多くなってしまった

おかげで碇レイさんたちと接触する機会が増えてしまった

私としてはこういう事態は避けたかったけど、なってしまったものは仕方がない

世の中にはなるようになるしかないこともあるのだ

図書室を碇レイさんとアスカさんと渚カヲル君と一緒に退室した

 

「まったく、どうしてあなたたち一緒に帰らないといけないのかしら」

 

私としてははっきりといって迷惑な話だ。彼らと仲良くなるつもりはない。

もしかしたらネルフサイドからの別の意図があるのではないかと感じて疑ってしまう

 

「どうしてそこまでネルフを嫌うんですか?」

 

「何度も言うけど。私はシンジ君からいろいろと聞いているの。ネルフが汚い事をしてきたこともね」

 

だから協力どころか関係性を持つことすら許すつもりはないんだけどとストレートに返答した

だがこれは事実だ。私はネルフに協力するつもりはない

もちろんゼーレにもだが。どちらにしても汚い事をしてきたのだから

私にとってはネルフもゼーレも敵であることに違いない

必要なら組織を潰してやりたいぐらいの感情を持っている

 

「あなた達と付き合うのは好意があるからじゃない。敵だから」

 

私の言葉にアスカさんは敵ですかと疑問の声を上げた

彼らは何もわかっていないのだ。私にとってネルやゼーレの関係者は敵でしかない

だって私がいくら静かに暮らしたいと思っても彼らが邪魔をするのだから

高校前のバス停に到着するとバスを待つことにした

妙な気配を感じたのだけど、とりあえず私は放置することにした

今、この状況で攻撃を仕掛けてくる者はいないだろう

リスク評価がきちんとできているものならなおの事である

狙いが誰なのかが分かれば私としてはありがたいのだが、私は完璧超人ではない

神様といってもすべての人の頭の中を覗き込むことはできない

私は万能ではないのだ。確かに私は神様のような存在なのかもしれない

でも神様でも人々の心の中や頭の中を覗き込むことはできない

仕方がないのだ。人々の心の中の思いと感情は様々だ

時には人々は未来を見て頑張っている人もいる

だが絶望に向かって突き進む人が存在することも事実だ

私はすべての人を救うことはできない。だから私は教師になる道を選んだのだ

子供たちに明るい未来を見せるために。バス停で第三新東京市営バスを待っている時、ある感情を感じた

それは冷たい視線だ。私は決断を迫られた。守る事も教師を目指すものとして考えた

 

「伏せなさい!」

 

私は足首のホルスターに装備しているグロック17を抜いて上に向かって発砲した

これはもう迷っている時間はなかった。狙いがどちらかなのかはわからないが

リスクは回避しておくべきだ。この際、彼らを守るしかない

私が死ぬことはないだろうけど、ATフィールドを展開するような状況は避けたい

私は神様ではなく人なのだから。それもただの学生にすぎないつもりである

 



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私が選ぶ道

銃声を聞きつけたからだと思うけど

すぐに市警察がやってきた。今回ばかりは言い訳としてはかなり苦しい

私はどんどん追い詰められていっている事を今になって理解してしまった

ここに実習先として来てからというもの。トラブル尽くしだ

 

「どうして私はあなた達を守る事をしているのか理解に苦しむわ。あなた達は碇シンジ君を傷つけたのに」

 

私はその復讐をしようとしている。だが現実はその逆の道を歩んでいる

 

「これだけは言っておくわ。私は碇シンジ君からある事も頼まれたの。『自分』を壊した者の抹殺を」

 

私は殺人罪に問われようと実行するつもりはある。

それを今もしないのはチャンスを与えてあげているだけだ

たった1つの数少ないチャンスを。

これをクリアすることができれば『彼ら』の抹殺を免除しても良い

ただし条件付きでだ。『僕』としてはさっさとネルフとゼーレの件にけりをつけたい

両方の組織をぶっ潰したいと思っているし、今後の事を考えれば迷惑を押し付けられたくない

私はこの世界の『神様』だから公平に裁くつもりでいる

でもたった1つのチャンスを与えようとしている

これは『僕』なりの配慮のつもりだ。本当ならそんな配慮などをしないで裁くべきなのかもしれない

それが私の弱さであると言われてしまうとそこまでの話だが

 

「碇君は私達を殺す事を望んだの?」

 

「それはあなた達が選んだ道次第よ。私は彼から抹殺を頼まれた。彼が定めた条件を満たさなければ」

 

私はあなた達を抹殺することを望まれたと答えた

嘘は言っていない。罪の代償は払ってもらわなければならない

 

「シンジはそんなことはしないわ!」

 

「アスカさん。あなたは何も知らないからそんなことを言えるの。サードインパクトの時の地獄を見た彼と違って」

 

『僕』はあの時に最悪の悪夢を見てしまったのだ

もう忘れることができないほどのものである

だから妥協などをするつもりはない。必要ならどんなことでもやってみせる

例えアスカさんだとしても私は必要なら殺して見せる

 

「ならシンジ君が見た地獄のような世界の話をよく知っているんですか?」

 

「渚カオル君。あなた達は知る必要がない事よ。知って良いのはあの現象を起こすために動いたネルフの中枢の人間」

 

別に私はアスカさんにはその責任があるとは言えない

でも碇レイさんや渚カオル君にはその責任があったことはが少しはあるというのは事実であるが

ネルフの中枢に近かったレイさん。ゼーレに近かったカオル君

私は今は彼らに対して毛嫌いするかのような感情を持っていた

心のどこかでは彼らは殺してやりたいと思っていた

私の抹殺リストの上位に入っているのだから当然である

実行に移さないのは面倒を避けたいからだ。

彼らに危害を今の段階で加えればいろいろと面倒なことになるから

 

「気を付ける事ね。私はあなた達の味方じゃない。私は自分のために動いている事を」

 

 



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トラブルばかりの生活

とりあえず私は銃を捨てた。

表むきは格闘術で敵から銃を確保したという事にする

そうすれば私の指紋が銃に付着していても不審に思われないだろう

つまりだ。また新しい銃を入手しなければならない。

自分を守るためなのだから仕方がない。経費だと思うしかない

かなり高くつく経費ではあるが。私は市警察の事情聴取を受ける事にした

これで何度目になる事だか。そろそろ言い訳が難しくなってきた

警察もそろそろ私の事を監視対象にするだろう

監視の目が警察機構だけならまだ良いのだが、

ネルフサイドからの監視も行われるとなると苦労することになる

結局、私は今だにネルフという呪縛から切り離されていない状況にあるようだ

 

「本当にあなた達のせいで平和な日常が奪われてしまうわ」

 

もし『僕』が彼らを殺してやりたいと思っていたなら、

私はすでに問答無用で彼らの抹殺に入っていたはずだ

それを今も実行していないという事は、彼らにチャンスを与えているつもりなのだが

我慢にも限度がある。そろそろ抹殺してやりたいと思っている

これは『僕』の本心である

それもそろそろ我慢の限界を迎えそうである

何としても抹殺したい人物のリストに乗る可能性は極めて高い

すでに数名はその候補として挙げられている

 

「あなた達は彼に感謝をするべきね。抹殺リストに登録されていないことを」

 

私はそう彼らに伝えると駆けつけてきた刑事さん達と共に警察署に行くことになった

苦しい言い訳をしなければならない。面倒なことには間違いない

それでもやらないわけにはいかないのだ

私にはこの先の未来を見る『義務』があるのだから

警察署に連行される時は私は覆面車両に乗せられた

女性刑事のペアの2人が運転席と助手席に乗っていた

 

「今度もまたあなたは彼らが狙われたという言い訳をするつもりですか?」

 

助手席の女性がそう声をかけてきた

私はネルフと関係が強くあると思われているので狙われているのかもしれないと答えた

嘘は言っていないつもりだ。問題は彼らがどこまで私の言葉を信じてくれるか

ネルフに興味を持たれているというところは間違っていない

ただゼーレにも狙われているという事があるという点を言っていないことだ

結局、その後の事情聴取で今後の事で何かあれば必ず来るようにとのことだ

それとしばらくの間は警護をつけると

迷惑極まりはない話である。

私の将来の夢に向かって頑張っているのに邪魔な存在が増えるだけだ

警護がつくという事は不用意な行動はできない

もし怪しい行動を行えば彼らにいろいろと察知されるだけである

だからこそ被害を最小限にするためにも大人しくしているしかない

警察署に到着して事情聴取を受けるが、

私は狙われた理由はネルフから関心を持たれたことが原因なのかもしれないと

そう答えるしかなかった。



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面倒は避けたいのに

結局のところ私は非常に迷惑な状況になったと言っても過言ではない

ネルフやゼーレの残党。もしかしたら他にも勢力があるのかもしれない

そういった連中から私は狙われる。私だけならまだ良い方だ

友達が狙われたら、私はどんなことをしてでも潰すためにあらゆる手を実行するかもしれない

第三新東京市警察の市警本部で事情聴取を終えて大学寮に戻ってきた

大学寮に戻ったがまだ部屋は掃除できていない

今は寮長が帰ってくるのを寮長の部屋で待っている

 

「本当に住みにくくなったわね」

 

迷惑な話だ。

ネルフやゼーレの構成員たちと関わるつもりは全くない

関わるどころか、私は殺してやりたいと思っている

関係者に接触したらこっそりと、なんて考えていたりしていた

 

「本当に罰ゲームを受けているみたい」

 

できる事なら穏便に『始末』をしてやりたい

とにかく銃を入手するしかない。それも新品の銃が

自分の身を守るためにもあれがなければ命を守る事はできない

寮長の部屋のドアがノックされた

 

『トントン』

 

「はい」

 

『あなたに緊急で面会したいという人が来ているの。今、大丈夫かしら?』

 

声はルミナさんからだった。

私は万が一に備えてカバンに隠していたリボルバー拳銃を取り出した

ドアを開けるとそこには加持さんが立っていた

 

「あなたと会うのは私としてはお断りしたいのですが」

 

「悪いね。いろいろと話を聞きたいんだけど良いかな」

 

これ以上、こじれる事を避けるためにも仕方がないと言って部屋に招き入れた

ルミナさんにはしばらく2人でいろいろと話がしたいので寮長に説明をお願いした

彼女は私の無茶なお願いに分かったわとすぐ了承の返事をしてくれた

 

「今回だけですよ」

 

加持さんはいろいろと迷惑をかけてすまないねと言ってきた

本当に迷惑な話だ。私はネルフともゼーレとも関わるつもりはないのに

 

「君はシンジ君の事で何を知っているのか話してくれないかな?」

 

「あなた達ネルフに知る権利など存在しない。シンジ君を見捨てたのはあなた達ネルフ」

 

利用するだけ利用した。

挙句の果てに英雄として祭り上げようとしていることに私は怒りを感じていた

 

「何度も言いますがネルフは犯罪組織と変わらない。ゼーレと関りがあったあなたならわかっていると理解していますが」

 

「痛いところをつくのが上手だね。何度も聞くようだけど、シンジ君はすべてを教えてくれたのかな?」

 

「私はネルフがどれほど汚い組織であることを知っている。ゼーレも同じですけど」

 

そう、私にとってゼーレもネルフも変わらない。

どちらもほとんど同じ道を歩んできた。汚い世界にするために

『僕』は綺麗な世界にしていくつもりだったけど、うまくいくことはなかった

だから裁こうとしているのだ。彼らが犯した罪を

 

「私はあなた方ネルフに協力するつもりはないので。あなた方は穢れた存在だから」

 

「何度も聞くようだけど、シンジ君はどうして君に頼ったのかな?」

 

「偶然といったかしら。彼はすべてを綺麗にしようとしたのにあなた達が妨害し続けている」

 

手厳しい意見だねと加持さんは言ってきた

 



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私とネルフの境界線

「君はどうしてそこまでしてでもシンジ君の情報をこちらに提供しないのか教えてもらえるかな?」

 

「ネルフが知る理由はもう失われているから。それだけよ。彼もネルフのした事を分かりながら公平さを優先させた」

 

その結果は自分達が英雄であることを好き勝手に利用した

『僕』は彼らの事を許す事は絶対にできない

 

「シンジ君の墓標の場所は教えてもらったのは感謝したら良いのかな」

 

「好き勝手にしたら。私はどんな手段を使ってでもあなた達が犯した罪をマスコミを通じて流しても良いのよ」

 

「今はそれをしないのかな?」

 

「彼が決めた一線を越えていないから。でも超えたら私は迷うことをしないから」

 

それは本気だ。真実を公表して彼らを英雄という立場から引きずり下ろすつもり

しないだけでも感謝してもらいたいところである

 

「シンジ君が決めた一線とはどういうところなのかな?」

 

「話すと思ったら大間違いよ。あなたは私がどこまでの事を知っているのか探ろうとしている」

 

違うかしらと疑問形で返答した

加持さんは困ったような表情をしていたが、彼は有能なスパイであることは知っている

だから慎重に言葉を選びながら回答をしているのだ。私は冷静に対応している

本当ならここで彼を殺してやりたい。真実を知りたいがために加持さんも犯した罪は消えない

彼がゼーレからアダムをネルフ本部に運んだ。

そしてそのネタを利用してゼーレを探ろうとしていたのだから

補完計画からあの赤い世界から元に戻した僕が作り出した世界をネルフがゼーレから救い出した

そのように利用した。『僕』はそれが許せなかった

ゼーレだけではなく、ネルフの暗い過去も利用してそれらをゼーレに押し付けた

『自らに都合の良い真実』を作り上げたのだから

 

「私はあなた達のことを許さない。絶対に。加持リョウジさん。あなたも私は殺すことを許可されているの」

 

「君に恨みを買うようなことをしたかな?」

 

「シンジ君はそう願ったわ。あなたが起こした自らの行動で彼を追い詰めた」

 

ただ自ら真実を知りたいというがためだけに彼は僕を苦しめる材料を心に植え付けた

だから許すことなどあるはずがなかった

本当なら私はいつでも彼らを殺したいとずっと思っている

それをしないのは何度も言うがすべての人々に平等をを貫いているから

私利私欲のために神様の特権を使う事をしようとしない。

でも彼らは自らの権力に酔いしれるために僕を利用した。

それが最も許せない事なのだ

 

「あなた達ネルフは殺されても文句は言えない」

 

許されると思っているならそれは思い上がりも良いところだ

絶対に許されるはずがないことをしたのだ。私利私欲のために

ネルフとゼーレの2つの組織はそういうものだ。

どちらも自分達の強欲を満たすために生物をすべて巻き込むことを起こした

計画した方も問題だが、実行する方も問題だ

今も偽りの世界を作り出している。



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私には裁く権利がある

私は加持さんとの話をさっさと終わらせて帰ってもらいたいが簡単にはいかない

でも私にはもう何も話すことはない。それに彼らには知る権利は失われている

おかしな話だが、自覚がないというのは罪を自覚していないということなのだ。

自らが犯した罪の代償を払っていないのに、ほしいからどんな手段を使っても得ようとする

そのやり方が私は嫌いである。もし必要というなら私は許される範囲でネルフを破壊してやりたい

彼らがどんな立場に落ちようとしたとしても、私には興味はない

自らの欲のためにすべてを壊したのだ。だから代償を払うのは当然なのに、それを理解していない

罪の重さもすべて分からせるためなら、私は犯罪行為だとしても実行する。

知らないほうが幸せな事もあるかもしれないがネルフにはその免罪符は該当しない

自らが犯した罪を

 

「加持リョウジさん。ネルフが犯した罪は重すぎる。だから彼は自ら幕を引いた」

 

でも『私』にはあなた方を裁く権利があると。

この世界でただ1人、ネルフとゼーレの関係者を裁く権利がある

彼にそう伝えると帰ってもらうことにした。ただ部屋を出る直前でいくつか忠告をした

 

「君の覚悟はよく理解したよ」

 

「だから邪魔をしないほうがお互いのためです。そして罪の重さを理解する」

 

それができていないのはあなた方が犯したことの重大性を認識していない

私はそう言うと加持さんに今度こそ帰ってもらった

 

「まったくもって迷惑な話です」

 

もうこれ以上、ネルフの幹部とは接触したくないというものだ

私の大切な大学生活に邪魔が入るのは好ましくないし迷惑なこと

 

「とりあえず部屋の片づけはまだ終わっていないし。ここは寮長にお願いしないと」

 

さすがに誰かの部屋を借りるわけにはいかない。

私は確かに狙われていることは確かだ。犠牲者を出したくない

巻き込みたくないのだ。必要ならネットカフェで休むつもりもある

 

「晴風リョウコ寮長。少しお話があるのですが。今は大丈夫ですか?」

 

寮長をしている晴風リョウコさんと話をすることにした

リョウコさんはすぐに鍵が開いているからは言って良いわよと言ってくれたので入室した

 

「いろいろとご迷惑をかけてすみません」

 

「あなたも大変ね。ネルフから注目されているとはうわさでは聞いていたけど」

 

「私としては迷惑な話なんですが。私は教師になるつもりで頑張っているので」

 

寮長は高波教授からいろいろと配慮するようにと連絡を受けていると教えてくれた

 

「教授がですか?」

 

「ええ。あなたの事を心配しているみたいね。一応この街での保護責任者ということは聞いているわ」

 

「いろいろとご迷惑をおかけしてすみません。ところで部屋ですがどうします?」

 

「高波教授がホテルを手配してくれるそうよ。これを渡すようにと言われているわ」

 

そこには確かにホテルの宿泊予約の手続き書類が用意されていた

さすがは教授と言ったところなのかもしれない。

私の危険性を十分にわかっているみたい

このままこの寮に暮らすにはリスクがあるということをよく理解されている

だから私はあえてこのご好意を突き放すことはしなかった

ホテルと言ってもここから数キロしか離れていない場所にあるビジネスホテルだ

安全性を考えるならそこの方が良いのかもしれない

この寮に一緒に住んでいる友人を巻き込む事はできない

彼らには何の罪もない。私の無謀な賭けに彼らを巻き込みたくないのだ

 



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守ってくれる人

私はビジネスホテルに移動した

ホテルの料金についてフロントの従業員に聞くともう支払いは済んでいると言われた

誰が支払ったのか確認すると高波教授が1週間分を支払ってくれていると

つまりいろいろと準備が必要だから1週間はここで宿泊することを意味している

仕方がない。ここは教授の恩恵を受け入れる事にした

部屋のカードキーをもらうとすぐに12階にある部屋に向かった

部屋に入る前に私は少し妙な気配を感じた。私の知らない人物がいる気配を感じた

私はとっさにカバンから銃を抜こうとした

すると意外な事にドアが開いて意外な人物の声が聞こえてきた

 

『カオリ。私よ』

 

その声は相川リナさんだ。いったいどうしてと私は思いながらも銃から手を離さなかった

ドアが開いてルミナさんが出てきた

 

「リナさん。どうしてここに?」

 

「教授から聞いたのよ。あなたが狙われているから護衛のために一緒にいてあげてって」

 

私は元国連軍で兵士だったから引き受けたのよと

 

「それに大事な教え子が殺されるなんて、いやなことだし」

 

「すみません。リナさんにまでご迷惑をおかけして」

 

私は申し訳なくそういうがリナさんは気にしないでといった感じだった

 

「それにしても、注目されている人間は辛いわね。国連にいる戦友に聞いたらネルフがかなり派手に動いているそうよ」

 

「そんなにネルフが派手に動いているのですか?」

 

「ええ。彼らはどうしてもあなたの身柄を欲しがっているらしいわ。一般人であり大学生だから無茶をしてこないけど」

 

それもどこまで我慢してくれるかどうかはわからないわねと

ネルフ内でも意見が割れているそうだ。

組織というものはいろいろと思惑が入り乱れているものなのだから、

そんなことは別に特別珍しいものではないとリナさんは言っていた

 

「ただしあなたを狙うために家族が襲われる可能性があるから念のためにあの町の旅館には警護がついているわ」

 

リナさんはもちろんこっそりと悟られないように警護がついているとのことだ

だがそれもいつまで持つ事かわからないと。

私としても家族には迷惑はかけたくない。いまさら『昔の家族』に特別な感情などない

今の両親の方が私にとっては大切な存在である

両親は私が迷惑をかける事を分かっているのに引き取ってくれた。

それに大学の学費まで支援してくれている。

絶対に傷つけられるものなら私はそんな奴らを自らの手で殺してやりたい

法の手で委ねるべきことなのかもしれないが、

それが私を育ててくれた両親のためならどんなことをしてでも復讐をしてやるつもりだ

とりあえずリナさんは私を部屋に案内するとベッドが2つあるツインルームだった

 

「そう言えばシングルルームなのかどうか聞くのを忘れていました」

 

聞いていれば驚かなかったのにと言うと、

リナさんは仮に聞いたとしてもシングルルームというようにお願いしておいたのよと答えた

 

「あなたはツインルームだと知ったら疑問に思ってせっかく驚かしてあげようと思ったのに」

 

「リナさん。意外とドッキリが好きなんですね」

 

「あなたを驚く顔が見たかったのよ。でも銃に手を伸ばすなんて怖いわね」

 

リナさんには見破られていたようだ。

さすがは以前は国連軍の兵士をしていたのだから力量は確かである

 

「私にも守らなければならないものがあるんです」

 

「高波教授からはあなたのボディーガードを依頼されたわ」

 

その言葉に私は驚いた。確かに狙われていることは事実だ

ネルフだけならまだ良いが、ゼーレの分派からもターゲットにされているとなると

私がターゲットになっていることは分かっている。

もう彼らは私の身柄確保のためには手段を選んでこないだろう

その時が最も怖いのだ。私の影響を受けて大切な友人たちが傷つく事なんて見たくない

 



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私は何を信じるべきか

とりあえず今日はリナさんと一緒に宿泊する道を選んだ

高波教授がいろいろと配慮してくれたのにそれを無視するわけにはいかない

 

「ちなみに聞きますけど、私はあれは持っていますけどリナさんはどうなんですか?」

 

私があえて『あれ』と表現したのは拳銃のことだ

どこかに盗聴器があるかもしれないから口に出すわけにはいかない

リナさんは大きなアタッシュケースを見せてくれた。

ケースの中には分解されたアサルトライフルのM4カービンが入っていた

 

「大丈夫ですか?」

 

「私の立場は知っているでしょ。過去もね。だからあなたを守るために私はここに来た」

 

リナさんはこうも言った。あなたの力になりたいのと

 

「あなたの狙いは何ですか?私の過去を知って何か利用するつもりなのですか?」

 

私は拳銃をいつでも抜けるようにした。また裏切られるのではないかと警戒した

 

「あなたを守るために私はいるのよ」

 

「でもそれはただのはったりということもあります。リナさん。真実を教えてください」

 

あなたは一体私から見たらどのような立場にあるのかと遠回しではなくストレートで話を進めた

リナさんはこれを見たら安心してくれるわと言うとカバンから財布の様なものを取り出した

 

「これが私の真実よ」

 

彼女が見せたのはあるバッチだ。それは国連のマークが入った身分証明カードだ

私はあまりのことに驚いた

 

「どういうことですか?」

 

リナさんは私の耳元で小さく呟いた

 

「私はある人物からあなたを守るように指示を受けているの。あなたのボディーガードをしている」

 

「誰の依頼です?」

 

「あなたの事を最も心配している人物としか言えないわ」

 

私は我慢できなくて銃を抜いた。そしてリナさんに突き付けた

彼女だけは裏切らないと信じていたのに、また裏切られるのではないかと恐れていた

せっかく大切な友人として信じることができたのに。

 

「あなたまで裏切るのですか?私はずっと信じてきたのに」

 

私は涙を流していた。高波教授とルミナさん。そしてリナさんは大丈夫だと思っていた

信じていた者に裏切られるのはもう嫌だった。

私の事を利用するだけ利用して捨てるような人間と仲良くするつもりはない

裏切られると分かったなら、もう殺すしかない。利用されるのは嫌だから

 

「わかったわ。あなたの両親に頼まれたのよ。海岸の町で旅館をしている」

 

その言葉を私は信じることができなかった。

誰もかれもが敵にしか見えないのではないかと思いたくなかったから

今の両親にまで裏切られたら私はもう

 

「これを見せたら納得してくれるはずよ」

 

リナさんは1枚の手紙を手渡してくれた。

私は震える手でそれを受け取ると内容を読んだ

その文字はあの旅館にいるお母さんの文字だった

手紙にはこう書かれていた。実はお父さんは以前は国連軍で仕事をしていたと

サードインパクトが終わった後は軍から抜けた。

お母さんが1人で頑張って経営していた旅館で仕事をするようになった

私が第三新東京市立大学に入学した時にリナさんに護衛を頼んだ

表向きは大学の職員として仕事をしながら、こっそりと見守ってあげてほしいと

 



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私とリナさんの関係

 

「私はあなたを守るためにいるの。あなたの両親に死亡報告をさせないで」

 

リナさんは私を抱きしめながらそう言った

 

「一連のことで誰が動いているのですか?」

 

リナさんはまだ詳しくはわかっていないけど、少しずつ情報は集まりつつあると

彼女の話によると、どうやらゼーレの分派が存在していて私を狙っている

私が持っている技術を欲しがるという名目である企業で体裁を整えているとのことだ

 

「嫌な話ですね」

 

「あなたはネルフから注目の的であることが重要みたいね」

 

さらに彼らもネルフがどうして私にこだわるのか知りたいのでしょうねという話だった

本当に迷惑な事だ。面倒な押し付けられるのは嫌だから

 

「私はあなたの護衛を任されているの。それだけは信じてね」

 

私はとりあえず気にしないことにした。もう問題を増やすわけにはいかない。

それに私のせいで家族に影響が出たら困る。今はリナさんのことを信じるしかない

 

「私は窓側のベッドを使うからカオリは扉に近い方を選んでおいてね」

 

すべて私は守るためであることらしい。

 

「ところでカオリ。もし怖いなら一緒に寝てみる?お風呂も一緒に入ってあげても良いわよ?」

 

私はその言葉に思わず恥ずかしくて大きな声を出してしまった

 

「私はそういうのに興味はないです!」

 

「本気にしないで。冗談に決まっているでしょ。本当にすると思ったの?」

 

リナさんは少しいたずらが成功した子供のような表情をしていた

私はからかわないでくださいと言うと、とりあえずシャワーを浴びる事にした

服を脱いでシャワーを浴びながらいろいろと考えていた。

今後のことで面倒なことになることは分かっている。

いつ大学の寮に戻れるかが私としては重要な課題だ。

できれば早く戻りたいが、私が引き金になって他の友達を巻き込みたくない

そんなことをもしもするような連中なら私は自らの手で制裁を加える

時には自分の手を汚さなけなければならない時もあるのだ。

綺麗事だけでは片付かない事があることは分かっているし、同級生を傷つけられるなら私は手段を選んでいない

必要ならどんなことをしてでも、そういった連中を見つけ出して攻撃を阻止するために必要な手段を取るまでだ

私はシャワーを浴び終えて寝間着に着替えるとリナさんは銃の手入れをしていた

 

「良いものを持っていますね」

 

リナさんが持っているのはSIG SAUER P220だ

 

「昔馴染みから卸してもらっているけど、あなたも欲しいなら用意するわよ」

 

私はリナさんにお願いできますかと注文を依頼した

今は少しでも多くの身を守るための『道具』が必要なのだから

 

「それにしてもこんなに可愛いあなたをいじめる奴は何としても見つけ出してあげないと」

 

リナさんは可愛い私の友達を守るためにもねと

 

「いじめてきた相手を見つけてどうするんですか?」

 

「大事な親友のためならどんな方法を使っても壊滅させてあげるわ」

 

私にそんな価値はないですよと言うとリナさんは私を後ろから抱きしめてきた

 

「あなたは大切な親友よ。親友のためならどんなことでもする。法的に厳しくても知人は多いから誤魔化せるわ」

 

だから悩み事があるなら隠さないでねと言うと今度はリナさんがシャワーを浴びに入った

 



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ルームサービスと銃撃戦

私は部屋のベッドで横になっていた。リナさんはシャワーを浴びている。

リナさんはときどき私をからかうようなことをしてくる

私と一緒に暮らしてみないとか。冗談であることは分かりながらも恥ずかしく感じたりする

一緒に暮らせばいろいろなところから狙われることは容易に想像できる

だからそんなリスクを背負うわけにはいかない。その時、この部屋をノックする音が聞こえてきた

明らかに危険な人が来たかもしれないと感じた。ここに私がいる事を知る者はかなり限定されてくる

またしても私を狙いに来たのかもしれないと思い、リナさんがさっきまで整備していた銃を無断拝借して警戒した

強行突破してくるかもしれないから。もう『昔の僕』のように流されることはしない

目の前の真実から目をそらさず真正面から突破することを覚悟している

私がどれほど危険な状況下に置かれてたとしてもいろいろと逃げ道は用意できる

でも親しい友人や私を大切に思ってくれる両親を人質にされたら選択できる行動は限定されてくる

選択できる行動の数が多いうちに私はすべてを破壊しなければならないと考えていた

 

「誰ですか?」

 

『ルームサービスをお持ちしました』

 

もちろん私はそんなものを頼んでいない。

だから私はそのように伝えると次の瞬間、金属がすれる音がした

とっさに私はリナさんが持ち込んでいた銃のスライドを引いて弾をいつでも撃てる状態にした。

射線上から少しずれて隠れるとすぐにアサルトライフルでも使っているのか銃弾が次々と飛んできた

派手な事だ。誰を殺したいのかは知らないけど、ここまで派手に動くことは死を覚悟しているのだろう

こんな一般人がいる所で堂々と行動するぐらいだ。後先考えていないと思うのは当然である

 

「犯人はプロみたい」

 

携帯電話で通報しようとしたが圏外になっていた

無線妨害をされているのだろう。本気で私を消すことは確実である

リナさんが持っていた銃に私の命がかかっている。それにほかの人を巻き込むわけにはいかない。

私は窓から飛び降りる覚悟もできていた。私は『神様』に近い存在なのだ。

インチキみたいなことは簡単にできる。

この部屋の窓はすでに部屋のドアから撃たれている銃弾によって破壊されている

あとは私の『覚悟』だ。もし『神様』と同じ権限を行使すればリナさんに私の『存在理由』が知られることになる

私の存在がどれほど穢れた者なのかを見せるのは正直なところ、嫌ではあるが

リナさんを死なせるわけにはいかない。私のためにいろいろと手伝ってくれた

見捨てることなどできるはずがない。その時、シャワーを浴びていたリナさんがリボルバーを持っていた

私に目で合図を求めていた。私はとりあえず、手に持っている銃を発砲。1発だけ相手側に撃ち込んだ

こちらも武装しているということを示せばあちらも無茶なことはしてこないと

いくら銃弾を連射してくる連中でも、時間をかけている暇などはないはずだ

ネルフのおひざ元である第三新東京市でこれだけのことをするにはリスクが高すぎる

そんな無茶はいづれ破綻する。引き際を見極めてくることを想定していた

 

「カオリ。粘るしかないわね」

 

リナさんは分かっていた。このまま進めば犯人たちはすぐに逃げるだろうと。

それからしばらくして銃弾によって破壊された窓からパトカーのサイレンが聞こえてきた

それと同じように銃声が鳴りやんだ。そして駆け足の音が聞こえてきた

逃げたようだ。次の問題はこの問題をどうやって解消するかだ

もうこれで何度目の警察との事情聴取になるのか

簡単に言い訳は通用しない。何か良い言い訳で切り抜けるしかない

 



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後始末の苦労

銃撃戦が終了した私達のホテルの部屋では多くの第三新東京市警察の刑事が集まってきていた

厳しい取り調べになる事を覚悟していたが、リナさんがいろいろと工作してくれたようだった

 

「リナさん。いったい連中は誰なんですか?」

 

「市警察の友人に情報を回してもらえるように手配したわ。指紋とDNAで何かヒットするかもしれないから」

 

リナさんは警察組織にも知り合いが多いようだ

国連軍に所属していたのだから当然といえばそうかもしれないが

今の私にとって重要なのは今後の対応方法だ。

どうやら私の身柄を欲しがっている連中はなりふり構わずの方法に出たようだ

どこに逃げても無駄だと言いたいのかもしれないが、こちらも黙っているわけにはいかない

今日の夜の宿は再び変更ということになり、第三新東京市警察の官舎で眠る事になった

ちなみに要人警護並みの警備態勢を敷くことになったと

つくづく私は迷惑なくじを引いたと感じた。

どこまでやるつもりかはわからないけど、敵は徹底抗戦の構えだ

市警察の官舎と言っても、設備としてはホテルと同じだ

ツインルームであることから私とリナさんはそれぞれのベットで眠った

ちなみに私とリナさんのどちらもが枕の下に銃を隠していた

いつ何が起きるかわからないのだから、当然な対応である

ちなみに私達が泊まっている部屋の前には市警察の刑事が交代で警護してくれている

 

「なんだか落ち着かないですね」

 

「カオリ。少ししたら慣れてくるわ。今はゆっくりとしましょう」

 

「それにしても、ネルフの管轄内である第三新東京市で攻撃を仕掛けてくるなんて根性がありますね」

 

私の言葉にリナさんもそれには同意見よと答えた

できる事ならこれ以上争いをすることは嫌である

でも、私と大切な友人を守るためには手段を選んでいる余裕がない時は、

そこまで追い込まれたら私はきっと『とんでもない方法』を使って問題解決に動くつもりでもある

大切な人をもう失うことは嫌なのだ。私の存在がそうさせるなら手段を選んでいる余裕などない

 

「ねぇ。カオリ。あなたはどういう立ち位置にいるの?」

 

「私は守ろうとしているだけなんです。戦争などによる犠牲者が少しでも減る事を願いながら」

 

私は何の罪もない幼い子供たちが戦闘員として『利用』されることをやめたかった

だが実際はそういうわけにはいかない。今も南極大陸が『あの事件』の前のように凍り付いている

その影響で海面の高さは大幅に下がり領土問題が発生している

領土問題が発生したことにより各国では領土の主張が続いている

国連では平和的に解決しようと動いているが、利権が絡んでくると誰もが主張してくる

言葉で解決することなどは少ない。軍事衝突が起きる事が頻発している

 

「もし神様がいたら、随分といい加減な対応をしているわ。自分の責任を放置しているのだから」

 

「でもそれは仕方がないこと。人が生きるのに争いはつきもの。あなたが昔教えてくれた言葉よ」

 

そう、私はずっと思っている事だ。人が生きていく過程で争いのない世界など存在しない

必ずどこかで小規模かもしれないが争いが起きるものだ

 

「世界が気付くころにはすべて事は片付いている。私の昔馴染みがよく言っていたわ」

 

真実を知った時にはすでに手遅れになっているとリナさんは言った

彼女の言う通りだ。真実と言うのは素早く漏れたものは真実かもしれないが

少しでも流れが遅い情報はどこかで改変されたものの可能性が高い

 

「カオリ。あなたはどうしてネルフにあれだけ狙われているの?」

 

「世の中に走らない事がたくさんあるって言いますよね?」

 

私のセリフにリナさんはつまり知っているということかしらと聞き返してきた

 

「何も語る事はないです。今、大事な事は私が自由に勉学に励めるところを確保し続けること」

 

私はそう言うとベッドサイドの照明を消した

 



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斬新なプレゼント

朝になって目を覚ますとここは大学の寮じゃない事を思い出した

 

「おはよう。カオリ」

 

リナさんの言葉におはようございますと返事をした

 

「何もトラブルはなかったみたいね」

 

リナさんはもしもに備えて、枕の下に銃を置いて寝たんだけどと。

さすがに私はそこまでリスクがあるとは思っていない。

第三新東京市警察の官舎を狙う者など限られる。と言うかそんな無茶をするのははっきり言ってバカだ

退路はないのだから、突き進むしか道はない。戻れば殺されるのだから

そこまでのリスクを背負ってまで攻撃を仕掛けてくるなら私はある意味で拍手をしてやりたい

 

「カオリ。SIG SAUER P220はあなたにプレゼントするわ」

 

「誕生日ではないことは知っていますよね?」

 

例え誕生日だとしても、プレゼントが銃とはなかなか斬新なプレゼントだ

だが大事なものであることは間違いない

 

「良いじゃない。もらえるものはもらっておいた方が良いわよ。自分の命を守るために必要ならね」

 

リナさんは記念日っていうのは別にどんな理由や口実でもつければ良いだけだし

確かに別に記念日っていうのは自分がそうだと感じればそれだけの話だ

ただでプレゼントしてくれるならと私は喜んでもらうことにした

念のため銃のスライドを引いたりして、しっかりと動くかどうかを確認した

 

「私があなたに劣化ものを渡すわけないでしょ。プロから仕入れているんだから」

 

それに私も点検したから万全のはずよと。

確かに元々リナさんが持っていたのだから動かないということは考えられない

それでも一応確認しておいた方が良い。先入観で動けば必要な時に機能しないのでは意味がない

 

『トントン。第三新東京市警察本部刑事課の立石というものです。今、良いでしょうか?』

 

ドアをノックしてきた声から相手が女性であることは間違いない

リナさんは心配しないでと言うとドアを開けに行った

リナさんとは親しい仲の人みたいだった。私はとりあえずリナさんにお任せすることにした

 

「鑑識結果を持ってきたわよ。リナ、あなたはもう国連軍の兵士じゃないのにいろいろと面倒をかけないで」

 

立石さんという方はリナさんと親しい関係であることは間違いない

それに国連軍時代の戦友の様子だ。ここは私が介入しないほうが良いようだ

 

「良いじゃない。貸しがあるでしょ。それで結果は?」

 

「どうやら反ネルフ組織の行動のようね。私でも独自に情報を集めているわ」

 

「どうして狙われているの?」

 

「それはあなたが一番わかっているはずよね?水川カオリさん。ネルフと縁があるから反ネルフ組織から狙われる」

 

彼女の言う通りだ。簡単な理屈である。

ネルフが利用価値ありの人材だというなら反ネルフにとっては抹殺するべき人材と見るだろう

 

「狙いは私がネルフと接触があるからですか?」

 

「ええ。反ネルフ組織にとってあなたを消せば、ネルフに打撃を与える事になる。気を付ける事ね」

 

立石さんはそう言うと部屋を退室した

 

 



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今後の方針

とりあえず私は第三新東京市警察の官舎から大学に向かうことにした

いろいろと手続きをしなければならない。

今後の対応についても私のこの街での保護者をしてくれている高波教授と少し話をすることにしたのだ

大学まではリナさんと一緒にタクシーで向かった

 

「本当に苦労しているわね」

 

リナさんの言う通りだ。どうしてここにきて急に私の周囲が騒がしくなったのか

はっきり言ってしまえば私にとっては迷惑でしかない

 

「まったくです。私としては関わりたくないのにあっちから踏み込んでくるのですから」

 

私はネルフとは関わりを持つつもりはないのだが、

彼らにとって『僕』という存在は利用価値あるとみているのだろう

いまさら、『僕』を担ぎ上げてどんな利用をするかは予想はできる

きっと神様を見つけてきたとでも言いたいのだろう。

そんな甘い手に乗るつもりは全くない

というよりネルフとも反ネルフ組織とも関わるつもりはない

必要なら邪魔者は排除していく。陰でこっそりとして

私が犯行に関わっていないということを証明することは難しいことではない

だって私は『神様』に近い立場だ。どんなことでもできる。

同じ手は使えないのでいろいろと工作は必要だけど

 

「本当に面倒になりましたね」

 

「それでカオリ。あなたはどうするつもりなの?」

 

リナさんの質問にとりあえずは平穏に過ごせる道を探してみますと答えた

まだ道が決まったわけではない。選択肢はいくつかあるのだから

どんな道になるかは私が決める事であり、他者からどうこう言われるつもりはない

 

「私は私が進む道を見つけてみせます」

 

「なかなかのやる気が入っているわね。今後のあなたの成長が楽しみだわ」

 

リナさんが明日は雪でも降るかもしれないわねとも言った

私がやる気を出したらそんなに珍しいのかと言いたかったけど、

確かに急激な変化であることは事実である事なので反論はしなかった

 

「そういえば大学にどう報告しておくのでしょうか?」

 

大学側は私がらみでこれだけのトラブルが発生しているなら、

いろいろと行動制限をかけてくることは予想されてくる

私の質問にリナさんはこちらでうまく処理できるように手配をかけておくからと言った

 

「一応表向きはネルフに勧誘を受けているという名目で報告しておくわ。嘘は言っていないし」

 

確かに私はネルフに引っ張られている。迷惑なほどに。

私としてはそんなひもなど切断したいのだが、彼らは簡単に引き下がってくれない

それどころか。余計に私に接触してくるかもしれない。

そんな事態は避けておきたいところである

 

「高波教授には私も一緒に会うわ。いろいろと調整も必要だし」

 

リナさんの調整とはどういうことなのかわからなかったのでどういうことですかと質問した

 

「あなたの両親から保護監督を任されている身としてはきちんとした判断能力ができるか見極めないといけないからよ」

 

「相変わらず厳しい意見です」

 

「わかればよろしい」

 

でもネルフによって私の楽しい人生は妨害される

『あの時』の事を知る者は抹殺されるべきだ。知らないほうが幸せの事がある

特にネルフやゼーレの関係者となると、彼らに知られるわけにはいかないのだ

どんなに拷問されようと私は決して真実を漏らすことはしない

 



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不幸な前兆

タクシーで大学に戻ると私はリナさんと高波教授の執務室に向かった

今後の事を考えると教授とも話を共有しておくべきだから。

 

「それにしてもここに来て本当にネルフに振り回されているわね」

 

リナさんの言う通りだ。こちらとしては接触するつもりはなかったのだけど

どうしてこうなってしまったのか。誰か説明をしてほしいところです

高波教授の執務室の前に到着した私達はリナさんがドアをノックした

 

「高波教授。入室しても良いでしょうか?」

 

リナさんがそう言うと室内からいつでもいいよと高波教授の声が聞こえてきた

私達はドアを開けて執務室に入ると、教授は1冊のファイルを見ていた

 

「2人とも。いろいろと大変だったみたいだね」

 

高波教授は苦笑いをしながら私達にそう言ってきた

 

「教授。私としては迷惑に過ぎない出来事です。ところで何かありましたか?」

 

教授は私にファイルを渡してきた。

ファイルの題名を見て私は大きなため息をついた

 

「私がどういう反応するのか楽しんでいるのでしょうか?」

 

ファイルの題名は[ネルフへの入局について]と記載されていた

つまりネルフから内定をもらっているも同然であるが、

こんなことで私が諦めると思ったら大間違い

 

「君が拒否することを分かっているのに僕に押し付けてきたからね。大学長は」

 

「つまり断るのは難しいと?」

 

大学のトップである大学長から教授に渡されたということは

教授を動かしてでも私がネルフに入局させるつもりなのだろう

仮に拒否したらどんな行動に出てくるか

 

「教授はどういう考えなのかお聞きしても?」

 

「僕は強制するつもりはないよ。大学長には君は説得に応じる人間ではないと伝えておいたしね」

 

感謝しますと私は言うとファイルを教授に返却した

 

「絶対にお断りしますとお伝えください」

 

私の言葉にリナさんはあなたはやっぱり変わり者ねと少し笑った

確かにネルフの『真実』を知らない者なら変わっていると言われても仕方がない

ネルフが『大罪人』であることを知らないのだから

教授は分かっているよと言うとあとはこちらで何とかしておくよと

 

「では私は図書部の部室に行きますので」

 

「それなら私も一緒に行くわ。話もあるし。あそこなら安全でしょ」

 

大学の図書館まで襲ってくることはないとは思うが警戒は必要になる

リナさんと一緒に私は図書館に向かった

大学敷地内は平和である。これがどこでも当たり前になれば良いのだけど

現実はそうはいかないのだ

どうしても私の針路を妨げる城壁が存在する

 

「そういえば図書委員会の新しい本の買い付けに関する審査が明日の夕方に行われるから」

 

リナさんからの連絡に私は分かりましたと答えた

 

「それで、今度は何冊の本を買ってほしいと要求するのかしら?」

 

私はまだ選定中ですと答えた。

 

「お願いだから無茶な要求はやめてね。上から怒られるのは私なんだから」

 

図書部の顧問をしているから、リナさん経由で私に注意が来るのだ

リナさんにしては迷惑な話なのであることは分かっている

私はできるだけ努力しますと伝えた

 



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本の購入依頼

大学図書館にある図書部の部室に到着すると私はとりあえず図書館から借りている本を読み始めた

いつもの日常である。リナさんは図書館の事務室で少し作業をするとのことだ

だから今は私1人だけの静かな時間である

 

「静かな時間ね」

 

図書部は元々部員はそれほどいない。

私とルミナさん以外はほとんどが幽霊部員のようなもの

ただ籍はあるけど、所属している理由は大学図書館に高額な本を買ってほしいから在籍しているだけ

そういう部員が多い。だから図書部での会議などを行なったりすることはほとんどない

私が部長でルミナさんが副部長。

 

「本を買ってほしいからと言って図書部の権限を利用されるのは迷惑なんだけど」

 

まぁ文句は言えない。幽霊部員だから利用価値があるのだ

書類上、それなりに部員がいるという形であるから

本の購入に関して図書委員会にお願いができるのだから

そのため、所属上は図書部に在籍していたとしても実態は何も活動していない

 

「本当に静かね」

 

そこに駆け足で近づいてくる足音が聞こえた。

私はとっさにカバンにある銃のグリップを握った

 

「お待たせ!」

 

ルミナさんだった。何か慌てているのか、部室に来るとドアを閉めて大きく深呼吸をした

 

「何かあったんですか?」

 

「図書委員会の委員長から苦情が出てきたのよ!委員長は私が提出した本の購入リストは絶対認めないと!」

 

ルミナさんのこのセリフはいつものことである。

 

「また購入希望の本の数が多かったの?」

 

「仕方がないじゃない。高いから買えないのよ!」

 

またしてもいつもの日常だ。大学図書館に購入希望してくる書籍の多くが一般市場では高額な本が多い

もしくは量が多いかであることがほとんどだ。

大学生だって豊富にお金を持っているわけではないのだ。

安く済ませることができるなら、どんな手段でも使ってくるのは分かっている

法律に違反さえしなければ。

 

「ルミナさん。いつも言っていますよね。高額な本は避けるべきですと」

 

「それはそうだけど。お金がないのは知っているでしょ?」

 

ルミナさんはアルバイトをいくつも掛け持ちして何とかしているからと

私も同じ立ち位置にいる事は事実である

ただ購入希望をストレートに提出したら認められないことは分かっている

だからこそ、何事もほどほどが良いのだ

 

「とにかく購入希望を出している本は絞り込むべきです」

 

「それは分かっているけど。でも、ね?」

 

ルミナさんは子供のように目を輝かせるような表情を私に向けた

お願いと、まるで彼氏にプレゼントを強請るかのような声で話しかけてきた

 

「ルミナさん。色仕掛けなんてしたって私は怯むことはしないです」

 

「やっぱりこの手は使えないわね。カオリはいないの?恋人とか」

 

大学で親しい友人は多いが、一線は守っている。

ちなみに恋愛をする時間があるなら私は勉学に時間を使いたい

もしくは読書に時間を使いたい

 

「ルミナさん。とにかく絞り込んでいくことが重要です」

 

私から図書委員長にそれなりに話をしておきますけどと伝えた

今の図書委員長はかなり厳選して本の購入リストをまとめている

ということはかなり厳しい戦いになる事は確実である

でもルミナさんにはいつもお世話になっているから断るのも申し訳ない

少し妥協点を出してもらえるように配慮してもらうしかない

 



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迷惑なお願い

ルミナさんはありがとうと言うと図書部の部室を退室した

まぁいつものことだから。それにルミナさんにはいろいろと協力してもらわないと困る事もある

この図書部が成立しているのはルミナさんがいるからだ。

だって他の部員はほとんどは幽霊部員だ。

つまり実際に部活動に関する会議に出るのは私かルミナさんのどちらか。

あるいは両方になる。もしルミナさんがいなかったら部としてはあまり表立って活動できない

 

「努力はしてみるっていったけど、少し無茶をしないといけないかもしれないわね」

 

私はルミナさんの役割を引き受けた事を少し後悔しながらも大切な友人のためである

努力はしてみる事にした。上手くいかなかったらルミナさんに謝るしかない

とりあえず静かな時間を利用して、いつものように本を読みながら静かな時間を過ごした

本当に静かな時間だ。今は大学の授業中だからというのが大きな理由でもある

読書をしていると時間が早く過ぎるように感じるようで、

私がもう1冊の本を読もうかと考えようとした時にチャイムが鳴った

 

『トントン』

 

図書部の部室のドアがノックされた。

今の時間にここを訪れる人はかなり限定されてくる

いったい誰なのかと思いながらも私はドアを開けた

 

「図書部に何か御用件ですか?」

 

ドアをノックしてきたのは女性だった。彼女の事はよく知っている。

大学でも美人であること。それに両親は第二東京市に住んでいるかなりの資産家の1人娘であると

名前は八坂サオリさんだ。今はこの大学で生物学を学んでいる

かなりの美人である事と豊富な知識を持っている事で有名だ

今までに何人もの男性からアプローチを受けていたらしい。

ところが本人はすべて断っていたと噂で聞いていた

 

「実は図書部にお願いが」

 

珍しい事もある。図書部に相談したいことがある人物が現れるなんて

私はどのような内容ですかと聞くと今度購入希望される本にこれを混ぜていただけませんかとのことだ

 

「わざわざ図書部に頼むなんて、誰から裏ルートがある事を教えてもらったの?」

 

図書部を経由して図書館への本の購入することを裏ルートという

表のルートは図書委員会の購入希望箱に本の購入リクエストを出す

 

「図書委員会に何度もお願いしたのですが通らなくて。委員の人にどうしたら良いか聞いたら」

 

そうしたら私に頼んだら何とかなるかもしれないと教えていたようだ

迷惑な話だ。私に責任を押し付けないでほしいところである

私はため息をつきながら彼女から購入リクエストの紙をもらった

 

「申請はしておいてあげるけど、絶対に通るという保証はないことは忘れないように」

 

「でもルミナさんはカオリさんに頼んだら大抵のことを通ると」

 

彼女の言葉に私は頭痛を感じた。ルミナさんも言いふらさないでもらいたいところである

これ以上の厄介事は持ち込まれたくない

 



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押し付けられる仕事

私はとりあえず申請用紙を受け取る

あとでルミナさんにお説教をしないといけない。私に責任を半ば強引に押し付けてきたのだから

いくら私が図書部の部員であり図書委員会の委員だからといっても無茶が過ぎる

八坂サオリさんはお願いしますというと図書部の部室を退室していった

 

「私を本を購入するために利用される窓口にされるのは嫌なんだけど」

 

知り合いのためなら仕方がない

とりあえず私は購入申請用紙に書かれていた本の値段や価値などをノートパソコンで調べた

それらから問題なく通りそうなものを選別していった

こういう仕事は図書委員会で何度もしてきたので手慣れたものである

 

「これはダメね」

 

ある1冊の本に関しては価格が高すぎることからリストから除外することにした

全てのリクエストに答えるわけにはいかないのだから

その後も私はサオリさんが提出した購入希望リストから図書委員会で通りそうなものを選別していった。

私もすべてを通す事はできない。一定の範囲で抑えないと図書委員長に恨まれることになる

こちらの立ち位置が悪くなるような事態は避けておきたい

私の本の購入希望に関しても厳しくチェックが入る事になるから

こちらにまで影響が出るようなことはいろいろと困るというものだ

図書委員会で委員をしているのは本が好きだから。

その大切な特権をはく奪されるようなことは問題である

 

「本当に苦労するわ」

 

私はそんな事を呟きながら選定作業を進めていった

それにしてもここ最近の動きの速さに私は困惑している

ネルフにゼーレの残党。おそらく他にもあるのだろう

どれにしろ、ろくなことになることはあり得ない

損しかない状況に追い込まれつつあるのは確かである

私は望んでいないのに向こうから不幸という名の雨が降っている

雨でも大雨の中に寂しく傘を使って何とかしているのと同じような状況である

 

「面倒なことになってきたみたい」

 

選定作業はそれからすぐに終了した。

あとはこのまとめた購入希望本リストを委員会の部屋に持っていくだけだ

それで図書委員会の会議室に向かった。

とりあえず購入希望リストに関する申請書を未決済書類棚に提出する

購入審査に関する審議は10人の図書委員と図書館運営事務の人の皆さんと共同で話をする

そこで購入するかについて詳細に審議を行うのだ

 

「今度の図書委員としての仕事は終わりね」

 

私は疲れたと思いながら再び図書部の部室に戻ることにした

今日は教育実習を受けているあの高校はお休みなのだ。臨時休校という形で

おそらくネルフが絡んでいるのだろう。ここ最近だけで頻発する襲撃だ

ネルフの保安諜報部は忙しく活動していることは容易に想像できる

たまには私もゆっくりと図書部の部室で本を読むのも良いことだ

ここ最近はあまり時間が取れていなかったから

 



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穏やかなお昼なのか

図書部の部室でじっくり本を読んでいるとお昼を知らせる大学のチャイムが鳴り出した

私はお腹がすいたので大学食堂に向かうことにした。

図書部の部室で飲み食いをしたら大切な本が汚されてしまう

私にとって本は何よりも大切なものである

だから図書部の部室は当り前だが、図書館も飲食禁止となっている

当然のことではあるが。

 

「本当に苦労するわね」

 

問題が山積している。ネルフにゼーレ。

おまけに私の周りで親しい人物は元国連軍の兵士

彼女は信頼できる。いつだって私が欲しがっているものを持ってきてくれる

もちろん無料ではないが。物が物だけに金を払うのは当り前である

大学の食堂に到着するとすでに食堂には多くの大学生が来ていた

私はいつも食堂で出される日替わりランチを食べている

日替わりランチはおいしいからすごく好きである。

 

「本当に誰もかれもが狙われているかも」

 

私だけなら良いかもしれないが、

私の存在の影響を受けて大切な人に危害という影響が出ることは許されない

迷惑をかけられるくらいなら自分で決着の舞台を用意する

どれほど酷い状況になっても戦場にするなら私だけしか影響が出ないようにするなら、

それは納得できるという結果にもなる

いろいろと考えながら日替わりランチを食べ終わると食器を返却。

これから教育実習先の高校に向かう事にした。

行き方はもう何度も行っているので、いつものように第三新東京市営バスを使ってだ

 

「今日は静かね」

 

今日は臨時でお休みになっている。

まぁネルフ側がどういう形で動いているかはわからないけど、

ある程度の予想はしておかないとこちらに都合のように動いているとは考えられない

彼らは自分勝手なのだから。自分達で世界を壊しておきながら、

私が『再生』させたら、それを自分達が行ったと。身勝手にもほどがある。

何よりも許せないのは自らの行いでどれだけ犠牲を出したのか理解していないことだ。

ネルフやゼーレがどういう意思を持って行動していたかはわからないけど

 

「次に狙ってきたらたっぷりとお返しをしてやらないとね」

 

利息付きでのお返しとなるとかなり過激な行動になるかもしれないが

これからの道を選ぶ過程で迷いなどはしている余裕はない

私にとって大切なのは今のこの大学生活だ。

今さら偉ぶって『神様の権限』を行使するつもりはないが

必要なら迷っている暇はない。そのために私はカバンに銃が入っているのだから

射撃訓練は受けている。リナさんの協力を得ることで国連軍の射撃訓練施設を利用できている

そのことがネルフに漏れているかどうかについては分からない。

表向きは私がそこを利用したという記録は残されていない

記録が残されたりすると国連軍としても立場が危険になってしまう

それはリナさんとの関係が険しい物になってしまう事も想定されているので

できるだけ穏便に事を進めることが必要である

 



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『私』と『僕』の難しさ

私は第三新東京市営バスで高校のバス停に到着するとそこで降車した。

そして高校の敷地内に入ると高校の図書室に向かった。

せっかく暇な時間を有意義に使いたいし、暇つぶしだ

今日は一応平日なので授業があるはずだが臨時休校日になっている

ただ図書室では『彼ら』がいることはすぐにわかった。

まぁこれも神様の特権だからと言ってしまうとそうなのだが

私は一度職員室に立ち寄った。すると教頭先生から校長先生が話をしたいと言っていましたと

私に伝えに来てくれた。少し嫌な予感はしたけど、これも勉学の1つだと思って校長室に向かうことにした

 

『トントン』

 

校長室のドアをノックするとどうぞと言って水崎レイカさんが優しく声をかけてくれた

 

「何か問題が起きてしまったのでしょうか?」

 

私は遠回しに聞くようなことをしないでストレートに話を切り出した

すると水崎レイカ校長は大丈夫ですかと心配そうな表情で話し始めた

私のことを心配してくれているだけであった。

確かに私がここに来るようになってからトラブルが多発している

それだけに警戒をしてくれているようだ

 

「私は大丈夫です。校長先生にご迷惑をかけることは避けるようにしていますので」

 

「でも何かあればいつでも相談してください。教師の卵であるあなた方は大切ですから」

 

校長先生はそう言う。私は分かりましたというと校長室を退室した

そしてゆっくりと廊下を歩いて図書室に向かった

 

「迷惑な客ばかり来るわね。本当に。そう思わない?渚カオル君」

 

彼は気づいていたのですかと質問してきたので。

何んとなく気配がしたのよ。面倒という名の存在の塊であるあなたたちのと

私はそう言い返してやった

 

「シンジ君は本当にすべてを納得しているのですか?」

 

「ええ。あなた達ネルフやゼーレの息の根を止めることは許可されているわ」

 

私は遠回しの言い方をすることはしなかった

もうここまで来たら余裕があるわけではないし問題ない。

物事が穏やかに進むことはないことは確認されている

なら一気に抵抗できない状況にする方が安全だ。『僕』としても、私としても

彼らから圧力を受けて迷惑なことになることは絶対に嫌な事である

そのためには圧力を跳ね飛ばすくらいの攻撃手段を確保することが重要である

迷惑という名の雨が降るくらいなら

 

「良い事を教えてあげるわ。彼はネルフもゼーレをこう思っていたのよ。最後の扉を開かせたくだらない連中だと」

 

彼らの自己満足のために『僕』は利用されて、今は『私』に生まれ変わった

ただ、今の『私』があるのは過去があるからだ。過去があるから未来を見ることを望むことができる

 

「あなたも気を付けることね。守りが完璧だと思っているつもりならとんでもない大バカ者だということをね」

 

エヴァパイロットであるの警備レベルは最高クラスだろう

だがその影響が私にまで来るなら報復措置を行う覚悟はできている

私はそう言うと高校の図書室に向かうことにした

 



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休校日だけど

図書室に私が到着すると司書の先生が本の整理をしていた

彼ら以外にも碇レイさんやアスカさんも書籍の整理を手伝っていた

 

「今日は休校日のはずですが?」

 

私はあえて知らないふりをしていた。

何かあちらからアクションがあるのではないかと想定しての判断からだ

 

「あなたと話をするならここが一番だと思ったので」

 

アスカさんの言葉に私はため息をついた

迷惑をかけまくってくれている。できることなら穏やかに事を進めたい

なのにどうしてこれだけトラブルが舞い落ちてくるのか

 

「あなたたちは何を知りたいの?それとも神様気取りのバカげた連中の仲間であることを自覚していないの?」

 

何としても行動の私の私生活にまで介入されるのははっきり言ってしまえば邪魔な存在である

いつまでも『僕』を追いかけることはしないでほしい

『今の世界』で自らの意思で針路を決定して動いてほしいと思っていることは事実だ

過去に囚われている理由は大筋で分かっている。

彼らは今も『僕』の存在が影響していることを十分な程に理解していたのだ

私ももう自らの人生という名の道を妨害されるようなことは避けたい

 

「私はただ謝りたいだけで」

 

アスカさんの言葉に私は思わず殴りたくなった

何を今更だ。すべては対策が遅すぎた

もう戻る事はできない。過去は変えられないけど、囚われ続けることは良いことではない

だからこそ守らなければならない。私の水川カオリという名前で生きていくこれからの人生を

誰にも強要されることのない自らの決断による人生という名の道。少しずつゆっくりと歩いていく

 

「私の言っている事をあなた達は理解しているの?神様気取りをしている汚い連中と同じなのよ」

 

アスカさんやレイさんは私の言葉を聞いて表情を曇らせた。

あの時の事を知っている者はかなり限定されている

渚カオルでさえ完全に覚えているかどうかはわからない

実は言うと私ですら当時の出来事をすべて、そして完全に覚えているいうわけではない

そのため憶測の域しか出ない部分は存在するけど、『僕』正義の実行を行った

それだけは疑いようのない。ただし『僕』が望んだ正義と今の実際の世界の『私』が感じている正義、

それが大幅に異なることは事実である

 

「あなたたちは感謝しないといけないのに。彼はチャンスを与えた。それを踏みにいじった最低の行為をした」

 

私はそう言うと今日は気分が悪いので失礼しますと言って図書室を退室した

退室するとすぐにレイさんは追いかけてきた。待ってくださいと

 

「シンジ君はどうして助けてくれたのですか?」

 

レイさんの質問に私は彼は平等を求めていただけだと回答した

『僕』は平和になることをずっと望んでいた

なのに世界は私の望むべき方向に進むことは全くない

むしろ逆の方向に私は巻き込まれ続けている。大きなトラブルとして

 

「あなた達は大きな勘違いをしている。彼は自らが正義だと思ったのにそれを踏みにじった」

 

『僕』が守ろうとしたあなた達だと知ってショックを受けたとうまく使い分けて話を続けた。

 

「それは・・・・」

 

「あなた達ネルフは感謝されないといけないのよ。彼が本気で恨んでいたら、生きているはずがない」

 

『僕』はそう言うと図書室から1階職員室に向かった

 



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私の願いと世界

職員室に戻ると私は大きなため息をついた

まるで私には亡霊が付きまとっているように感じたからだ

もう私とは関係が離れても良いはずなのに過去を追いかけ続ける

未来を見なければ人は成長しないのに。

私は人々ん未来を見てほしい。だからあれだけ強引に話を進めてきた

私のことを心配してくれる今の私にとって大切な人を救いたい

 

「どこかお疲れの表情をされていますね」

 

あまりに私は疲れていたのか後ろに水崎レイカ校長先生がいることに気づかなかった

驚いて私はすみませんと謝罪をした

 

「誰もが経験することです。波にもまれて生徒も教師も成長していくものですから」

 

「校長先生も経験があるということですか?」

 

私の言葉に水崎レイカ校長先生も同じ経験をしたからと話をしてくれた

教師を目指すものは誰だって、時には難しい課題になることも経験しなければならない

それを乗り越えていく事が求められている

 

「1つ質問をしても良いかしら?あなたとネルフ関係の生徒たち。どちらが狙われているの?」

 

私はその質問にどう答えるべきか考えた

返答次第で今後の状況に変化が生まれる可能性があるからだ

それに水崎レイカ校長先生にも立場というものがある

この高校のトップとして状況把握に務めることは当然のこと。

だがこちらの返答次第で校長先生に何処からか圧力がかかって私にまで影響出るかもしれない

それだけは事が複雑になるだけであることは分かっている

そんな道を選ぶわけにはいかないのだ。今の段階ではなおさらだ

 

「私はいろいろとあるみたいなので」

 

さらに校長先生もご存じですよねとも伝えた。

 

「あなたが初めは技術開発系の学位を取得しようとしていたことは高波教授からお聞きしています」

 

予想通りの返答が返ってきた。

裏で手を回しているのはあまり良い趣味とは言えないが。

今の私にとっては最良の判断材料になるかもしれない

 

「私は子供たちに平和をもたらすために戦場であっても教育を受ける権利があると考えたので」

 

だからこそ教育を受けることができることで少年兵などの悲劇な運命をたどる子供たちを減らそうとしている

私は彼女にありのままを伝えた

 

「夢は大きいですね」

 

「だから教師に進める道に歩く道を変えたのです」

 

私の言葉を聞いて水崎レイカ校長先生は応援しますと答えると校長室に戻った

とりあえず私は職員室で資料とレポートをまとめる作業を始めた

 

「本当に教師になるのは大変ですね」

 

私は思わずつぶやいてしまった。この街は平和である。

でも他の国では幼い子供たちが兵士として、もしくはもっと劣悪な環境で生活をしている

幼い子供を性的な意味でしか見えない者から見たら、

そんな幼い子供たちはお金を稼ぐための道具としてしか見えないのだろう

 



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英雄とは何か

私はレポート作成を終えると明日の研修で使うための資料作りに入った

 

「教師というのは大変なお仕事です」

 

私は少し呟くと隣の座席に座っていた女性教師から経験が必要なある意味では特殊な仕事だと、

そう言われてしまった。確かに経験が必要な仕事である

生徒たちと同じで私達教師の卵も少しずつ成長していくものだから

苦労は多いかもしれないが、仕方がないことである

いくら知識を持っていたからと言っても私は現場での教育環境を見た事がない

少なくても現場でのではあるが。

『あの頃』の第三新東京市での中学校で過ごしていた時は誰かが敷いたレールを走行していただけ

そこに自分の意思があったと質問をされるとないと言える

だからこそ私は見てみたいと思った。

生徒たちが社会に飛び立てるような手助けになる道を見たいと

だから教員免許を得るために勉学に励んでいる

今はどんなところから邪魔、つまり妨害が入るかわからない

ネルフかもしれないし、ゼーレになるかもしれない

必要であれば彼らに対して大きなお返しをしてやるつもりでいた

でもそれをいまするつもりはない。手を出してこないなら黙っているだけだ

もし私の大切な人を傷つけることをした連中がいたら、

私は全力でそう言った犯罪者を追いかけまわして死ぬよりつらい目にあわせてあげる

楽に死ねる道などないことを理解させるためにも必要になるかもしれない

私は明日の研修で使うための資料をまとめ終えると帰宅することにした

問題は大学の寮では安全性は守られないということから

しばらくは第三新東京市警察の官舎で過ごすことに

これで今日は終わりだと思ってため息をつくが簡単にトラブルから引き離される運命にはなかった

図書室で本の整理をしていた碇レイさんとアスカさんが私とお話をしたいと申し出てきた

さすがに断るにはそれなりの理由が必要になる。

仕方がないということで生徒指導室をお借り出来ないか校長先生にお願いした

 

「今日は休校日だからゆっくりと使ってもらって良いから」

 

話をするための口実が成立してしまったので私は職員室のすぐ近くにある生徒指導室に向かった

レイさんとアスカさんと一緒に。私たち3人は部屋に入ると私は扉をロックした

 

「今度は何をしたいのか説明してもらえる?」

 

「碇君はどうして私達にチャンスをくれたのですか」

 

レイさんの言葉に私はバカな質問だと感じた

生きているのは再生のチャンスを与えたつもりだった

でも彼らは好き勝手にすべての利益を独り占めにして、英雄扱いになるようにした

何度も言うが彼らは卑怯者だ。自分達の利益のためにすべてを独り占めにした

それについて私が怒らない方がどうかしている

抹殺リストの上位に入っているのだから殺されて文句は言えない

今は執行猶予期間中というものである

 



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審判の猶予期間

「あなた達は何も知らない。知ったところで無駄な事だけど」

 

私はもうすべてをさらけ出すことにした。

今も許されると思っている彼らを落とすことになろうとしてもだ

救いを求めているのだとしたらそろそろ良い時期なのかもしれないとも考えていた

殺されたとしても文句を言えない。運命から逃れることができない事を

 

「シンジ君は最後の審判を受けさせる前に執行猶予を与えた」

 

なのにあなた達はそれすらも無視して真実から目を背け続けている

 

「どういう意味ですか?」

 

「レイさん。あなたと渚カオル君はあの儀式のことを分かっているはず。知らないふりをするのは許されない」

 

「それは・・・・・・・」

 

「問われるべきはずの行為を行って彼を追い詰めた。シンジ君は必死になって守ろうとしたのに」

 

『僕』は守ろうとしたのかもしれない。

正義が実行されることを信じていたのだが、彼らは自らの権力拡大のために利用し続けた

何度も言うが彼らが行った行為が原因でサードインパクトが発生したのだ

なのにその罪の重さを理解していないことが私には何よりも腹立たしく感じていた

少しは自らを見つめ直してくれると期待していたのだが大違いである

それゆえに私は何としても許すつもりはない。

その時、私はある視線を感じた。私だけではない。レイさんもアスカさんも巻き込む根性があるようだ

このネルフのおひざ元である第三新東京市のエヴァパイロットのチルドレンである重要人物を巻き込んでの大騒動

ロクな結果にならないことを覚悟してでも実行したいのか

それともそれすらも覚悟ができている連中がいるのか

以前の私ならこの状況ならどうなっても良いのだけど子供たちを見捨てるわけにもいかない

私はとっさにカバンからグロック7を取り出す。

さらにカバンから小型の閃光弾と煙幕弾を開いている窓から外に放り投げた

外に2つのものが投げ捨てられると一気に爆発した

それとほぼ同時に銃弾が窓を貫通して外から室内に入ってきた

銃弾はアサルトライフルを使っているようでかなりの数になる

これではもう誰が止めるのかわからない。そもそもネルフの保安部員が何をしていたのか

子供たちを無防備にすることがどれほどリスクがあるのか理解していないバカな連中だ

 

「まったく誰のおかげでこんな目にあうのか知りたいわ!」

 

私はとにかく床に伏せる態勢をさせた。

レイさん達にも私が良いというまで伏せているようにと通達した

このままでは私だけでは難しい状況にある。さっさと護衛の保安部員を手配してほしい。

もっともあちらにまで妨害工作がされている可能性はある

 

「あっちがどれくらいの物量を持っているかが最大の課題ね」

 

こちらはグロック17が2丁に予備のマガジンが4つ。

弾を無駄遣いするわけにはいかない



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止まらない銃撃戦

次々と弾はこちらに撃ち込まれている

第三新東京市警察のパトカーのサイレンも聞こえてきたが、

敵さんはかなり激しい攻撃がお好みのようだ。

あちらとも徹底抗戦の構えで対応してきている

 

「本当に迷惑な存在だわ。碇シンジ君が自らの『命』に決着をつけるのは納得ね!」

 

この部屋の窓ガラスは防弾仕様でかなり分厚いようだが、

対物ライフルを使っている影響なのか、楽々と貫通していた。

相手はアサルトライフル。こちらはオートマチックのグロック17

どう計算したところで分が悪いのは明らかだ

どうやって立ち位置を変更するべきか私は必死になって考えていた

最大の邪魔者はレイさんとアスカさんだ。この2人にはできれば傷はつけたくない

まだ選択の余地はあるかもしれない。僅かではあるが。

 

「グロック17の予備マガジンはあと2つ。つまり弾は20発。そろそろ限界って感じかもしれないわね」

 

ここからどう打って出るか。

ミスをすれば私も彼女たちも犠牲になる

私は『神様の特権』を行使すれば良いが、それをすると面倒になる

ネルフに利用されるようなことは絶対に避けたい

彼らとの接触はもともと嫌な状態なのだから当然である

 

「碇レイさん。あなたたちは自分たちの存在の重要さをよく理解することね」

 

ようやく銃撃戦が終焉を迎えた。ネルフの保安諜報部が介入したのだ

できることならもっと早くに介入してほしかった

 

「まったく迷惑な話ね」

 

『僕』としては綾波やアスカを傷つけることを本心では望んでいない

ただしできる限り、『僕』を追いかけることなく人として歩んでほしい

『私』は『神様に近い存在』なのだから。いつまでも過去を追いかけるのではなく未来を見てほしい

 

「これだけは言っておくわ。碇レイさん達を含むネルフ側に碇シンジ君の真実を知る資格を失っている」

 

だからもう汚れた手で彼に触れないことねというと、

私はとにかくこの場をどういう言い訳で乗り切るべきか考え始めた

もう何度も警察にお世話になっている。これ以上深入りするといろいろ不都合が大きくなるだけだ

私はただ穏やかに過ごしたいだけなのだけど。

どうしてこうもトラブルという名の雨が私の周囲に降りまくるのか

説明してほしいくらいだが、こればかりは誰に聞いてもわかることではない

少しずつ時間が解決していくと思っているが。そうはいかないようだ

 

「とにかく彼のことを思うならもう忘れることをお勧めするわ。シンジ君もそう願っているでしょうし」

 

『僕』としてももう振り返ることはやめてほしい。

過去ばかり見るのではなく未来を見てほしいからだ

 



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安心できる場所は・・・・

銃撃戦が終了して第三新東京市警察とネルフによる合同捜査が行われることになった

私は一応当事者であることから警察から事情聴取を受けることに

本当にお金がかかることばかりだ。銃を買うにしてもいろいろとお金が必要になる

それだけの面倒を押し付けられてくるこの現状に私はかなり不満だ

銃1丁を手に入れるだけでもかなりお金が必要なのだから

このお金に関してはいろいろと脅迫をしてでもネルフから回収する必要があるかもしれない

ネルフにとって重要人物を保護したのだから見返りを求めるのは当然の行為だ

誰が好き好んで彼らを守るものか。『咎人』に近い彼らを

金を要求して抵抗するなら私は脅迫するつもりでもいた

ネルフの過去をばらされたくなかったらさっさと金を払えと

ネルフの過去。そこを追及されると彼らは簡単に断れるはずがない

なぜならゼーレの下部組織だったのだから。それをネタに脅迫してもいいのだ。

彼らにとってはその事実が漏れることは自滅行為であることは間違いない

 

「碇レイさん。あなたのお母さんである碇ユイさんにこう伝えるのね」

 

すべてのトリガーを引いたのはあなた方だと。

碇ユイさん、『母さん』が引き金に手を当てたとしても、こんな状況になるはずがない

すべては自らの欲望のために多くの全人類だけでなく

私はそういうと第三新東京市警察の事情聴取を受けるために市警察本部に向かった

もちろん乗り込んだ車はパトカーであり、前と後ろにはネルフの保安諜報部の護衛車両付きだ

どう考えても、私に対する圧力をかけるつもりなのだろう

様々なことを知っている私について利用価値があると思っているはず

私としてはネルフと直接的なかかわりを持つつもりはない

確かに間接的なかかわりはあるかもしれないけど、

私はそれを拒絶するつもりでいた。何のために『神様の僕』を利用してくるかはわからない

 

「ずいぶんとトラブルに巻き込まれることが多いですね」

 

第三新東京市警察の立石さんと一緒に市警察本部に向かった

 

「ここ数日だけでトラブルの回数はすごいわね」

 

「それだけ狙われているということかもしれませんが」

 

そう。今の私はゼーレやネルフから狙われている

どこから銃弾が飛んでくるかはわからない

安心できる場所を確保するのは簡単なことではない

せっかく大学の寮生活を満喫しているのに、私の知らない裏側で何かが動いている

おかげで迷惑を受けるのは私である

少しはこちらのことも考えてほしいと言いたいところだが、

トラブルを起こす連中にそんな話が通じるわけはあり得ない

少しでも水知らない人たちを巻き込まないようにするためにも安全が確保された場所で寝泊まりをしないと

大学の寮はさすがに危険地帯のど真ん中である

大切な友人を傷つけるわけにはいかない

だからいろいろと考えることが求められるのだ

 



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トラブル続きの毎日

第三新東京市警察本部では一通りの事情聴取をまた受けるだけだ

真実を話すわけにはいかない。それに知らない方が幸せということもある

 

「本当にあなたには心当たりはないのね?」

 

立石さんは私のことを明らかに疑っている

当然と言えばそうである。私関係のトラブルがここ最近だけで連日のように起きている

裏で誰かが絡んでいると考えるのは当たり前である

 

「私はネルフ側と接触が多いからでしょう。彼らと直接接触し始めてからトラブルが起きていますから」

 

私は何とかごまかそうとしていた。このまま追及されるのは良いことではない

もう私は『碇シンジ』ではないのだから。ネルフと関係すれば私の将来にも影響が出てくる

ますます状況は良くない。

おまけに立石さんは私が銃を持っていたことについては深くは探ることはしなかった

リナさんからもたらされた情報ではゼーレが少しは動いていることはわかっている

いろいろと面倒ごとばかりを起こしてくれる連中である

もし殺人が許可されているなら抹殺してやりたいところだが

ここでそんなことをすればいろいろな面で問題が出てしまう

市警察にマークされるだけならまだいいが。

ネルフにまで24時間常に監視されるのは都合が悪すぎる

そんなことになると私はこの街にいることはできない

この街どころかこの国にいることも危険すぎる。

いろいろな広い世界を見るためにジャーナリストになるということも良いかもしれない

無茶ではあるが自由に生活するためにはその道しかたどることしかないなら余計にだ

 

「とにかく今日はもう良いですか?しばらくはどこかのビジネスホテルに泊まりますので」

 

「わかりました。我々市警察としても念のため警備をつけます。これ以上市内に問題を持ち込まれるのは嫌なので」

 

当然の判断である。私は問題ありませんと答えると市警察の取り調べを終えた

私は携帯電話を取り出すと高波教授の携帯電話に連絡した

 

「高波教授。お忙しいと思うのですが安全に過ごせる良いホテルとかありましたか?」

 

『そういえばまたトラブルにあったらしいね。手配をかけているところだから今は市警察本部に待っていてくれるかな』

 

市警察本部に迎えに来てくれるらしい。それはそれでとても助かると私は感じた

私がホテルを選ぶとなるといろいろと苦労しそうなのである

セキュリティの関係上少しは警備が厳しいホテルの部屋の方が安全である

今のこの状況では何が起きるかはあまり想像したくない

もしゼーレの残党が攻撃を仕掛けてくるなら何をしてくるか想像できない

常に最悪のシナリオに沿って行動することが求められる

それが生き残るための道筋であることは真実なのだから仕方がない

仮にホテルが見つかってもできるだけ迷惑をかけるわけにはいかない

よほどの警備体制がなければ難しい

 

「ネルフサイドからのアプローチが今後も来ることは間違いなさそうね」

 

このまま黙って手を引くような連中ではないことはわかっている。

彼らは私の存在している理由を調べようとするだろう。

もしかしたら新たなる『使徒』なのではないかと考えてくるかもしれない

もしそう考えてくるならそれはそれで攻撃するだけだ。いろいろな方法を使って

『僕』に手を出すというならそれなりの覚悟を持ってもらわないと

 



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怪しさ満点の状況

市警察本部からタクシーでビジネスホテルに向かった

タクシーに乗った時から気が付いていたが尾行されていた。

追いかけてきているのはネルフ保安諜報部の部員だ

私のことを怪しんでいることはわかっていたがあからさまに尾行を仕掛けてくるとは想像していなかった

かなり状況的には厳しいことはわかっている

私は『神様』のつもりである。死ぬことはないだろう

『不老不死の人間』の姿をしている生き物なのだから当然である

 

「こちらでよろしいですか」

 

タクシーは特にトラブルが起きることもなく目的地のビジネスホテルに到着した

料金を払おうとしたとき運転手は意外な答えをした

 

「すでに料金をいただいています。それとトランクにある人物からあなたに渡すようにと依頼されたものがありますので」

 

「あなた。どういう立ち位置の人間かしら?ネルフ側かゼーレー側か」

 

答え次第では私は殺すことも辞さない覚悟を持ったが運転手の男性は1枚のメモを渡してきた

運転手はこの手紙も一緒に渡すようにと答えたうえで

手紙の内容を読んで私はある意味では呆れた。

 

「あなた。ネルフ側なの?」

 

手紙を書いたのは加持さんだった。なぜ今になってだ

こちらに恩を売るつもりなのかどうかはわからない

もしかしたら何か別の意図があるのかもしれない。常に最悪の事態を想定して行動しなければ命は守れない

とりあえず私は運転手に彼にとりあえず感謝するわと伝えてもらうことにした

タクシーのトランクにはキャリーケースが入っていた。それを持ってホテルに。

すでに部屋は予約済みなのでカウンターでカギを預かると私は部屋に向かった

部屋の周囲に不審な気配は感じられない。ひとまず問題はないだろう

だが状況というのは突然変わるものだ。私は部屋に入るとカバンの中身を確認した

そこにはアサルトライフルであるH&KG36が1丁入っていた

それに弾は100発とマガジンが3つもセットでだ

 

「まるで戦闘に行く兵士並みの装備ね」

 

カバンを後部トランクから降ろすと私はビジネスホテルに入った

カウンターで私の名前を伝えるとすぐに部屋の鍵を渡してくれた

ネルフが手回しをしていることは明らかだ

感謝するべきなのか。それとも何か別の意図があるのかについて入念に確認しなければならない

今は何が起きるのかわからない状況であることは誰の目から見てもはっきりしている

そして狙いがネルフ関係者の他に私もターゲットにされている

恨みを買う理由は多いので誰なのかを調べるのは簡単なことではない

それに第三新東京市警察だけでは対応できないことも事実である

第三新東京市はネルフのおひざ元である。警察よりも保安諜報部の方がかなり活発に活動している

それにスーパーコンピュータである『MAGI』を利用して私を監視するかもしれない

簡単に言ってしまえば、今の私は缶詰にされた立ち位置にいることははっきりしている。

私の協力者は限られてくるが、大切な友人を巻き込むわけにはいかない

必要なら自ら手を下すことが求められる

 



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完全武装での対応

ホテルの部屋に到着すると私はベッドに倒れた

トラブルが満載だったからだ。これ以上何もなければいいのだけど

世の中きれいごとだけで生活できるなんてありえない

ネルフとゼーレの2つの組織からかなりのアクションをしてきたことは事実だ

 

「本当に何を考えているのかしら?」

 

私は不幸に苛まれていることは確実である

よくもまぁここまで大きなトラブルになるとは想像していなかった

大学に入学したときには静かな生活ができると思っていたが

現実はそういうわけにはいかなかった。過去を捨てることはできない

だから前を向いて歩みだしてほしいのだけど、現実は簡単にはいかない

 

「誰がどこまで把握しているのか調べたいけど、下手にネルフの情報を調べたらスパイ扱いになるしね」

 

ネルフ側に知られるような手法は好ましくない

私の存在が危険視されたら何を仕掛けてくるか想像したくない

私だけなら何とかなるかもしれないけど、大切な親友にまで影響が出ることは十分にあり得る

親友であるルミナさんにまで迷惑をかけるわけにはいかない

『MAGI』にハッキングするにしても慎重に行う必要がある

いきなり攻撃を仕掛けたら自らは敵対組織の人間ですと宣伝しているようなものだ

私は別にネルフと敵対したいわけではない。ただ普通に大学生活を満喫したいのだ

その妨害としてネルフとゼーレが絡んできている

 

「何かいい方法でも思いつかないと」

 

私はカバンからH&KG36を取り出すと不具合がないか徹底的に確認を行った

いつでも発砲できるようにマガジンを装填して銃弾を薬室に1発送り込んだ

これでいついかなる時も対応できるはず。何事もなければの話ではあるが

 

「これじゃ戦闘兵と変わらないわね」

 

私がこんな重装備をすることは想像できていなかった

これではまるで戦闘に参加する兵士と変わらない

 

「とりあえず防弾チョッキは着用しておきましょう」

 

もしもの場合に備えては必要なことだ

もちろん頭を狙われたら足趾になるかもしれないけど

『神様の権限』でそんなことはどうでも対応できる

周りの人たちをごまかすのはかなり苦労することは確実ではあるが

すべてをカバーすることは難しい。どこかに落とし穴があることはわかっている

だから警戒し続けることは疲れがたまってしまうものだ

 

「ネルフに接触してから連日のトラブル続き。嫌な話ね」

 

私はそういうととりあえずベッドで眠ることにした

もちろんアサルトライフルであるH&KG36をすぐに手にできる位置においてからではあるが

生ぬるい対応をしていては何度も攻撃を受けるだろう。

やるからには徹底抗戦の構えで対応しなければならない

 



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朝を迎えて

翌朝、私はホテルのベッドで目を覚ました

 

「今日は平和ならいいけど」

 

私はとりあえず教育実習を受けるために高校に向かうことにした

ただしH&KG36をこのままホテルに置いておくわけにはいかないので

分解してアタッシュケースに収めた。それを持って私は実習先の高校に向かった

ちなみにホテルの料金は1週間分前払いで支払いがされていた

誰が支払ったのかは気になるところだが。予想はついている。

アサルトライフルをもらった時に加持さんからメモをもらっている

つまりネルフがこのホテルの宿泊代を支払っているということだ。

できるだけ慎重に行動をすることが重要だ。

ネルフに情報が渡るようなことは極めて危険である。

彼らに私の情報を渡すわけにはいかない。

汚れた組織なのに英雄という看板を宣伝文句にしている

彼らに協力することなどあってはならない。

ネルフがゼーレの下部組織であることをどこかでばらしても良いのだけど、

信用する者はほとんどいないだろう。なぜならゼーレの存在は今は空白になっている

まるでそこだけ『存在していないような形』状態なのだ

真実を知らない者がいない方が良いというのはまさに彼らのことを指している

もしゼーレの主要メンバーが今も存在していたら大きな問題だ

ただでさえ分派という言う限られた構成員がいるだけでも問題なのだから

いつもと乗車する市バスの路線とは異なるが、私は高校に向かった

その道中でどこか監視されている視線を感じた

 

「またトラブルなんて最悪ね」

 

私を監視しているということはネルフかゼーレのどちらかの可能性が高い

狙いは何なのかはわからないけど、私の存在を利用しようとしているのかもしれない

その時にはとびっきりのお返しをしてやるつもりであるが手を出してくない限りは静観の構えだ

こちらからアクションを起こせば今後の行動に影響が出てくる

楽しい教育実習の時間を妨害されるのは好ましいとは言えない

ようやく幸せに過ごしているのに邪魔されるのは嫌な話だ

市バスは順調に走行して高校の前のバス停に到着した

私は多くの高校生と一緒にバスから下車すると監視している人物は降りることはしなかったが

こちらの動向を探っているような視線は明らかだ

何を仕掛けてくるかわからないけどやられたらやり返すだけの話だ

多くの高校生と一緒に私は高校の敷地に入り職員室に向かうと突然後ろから抱きしめられた

 

「カオリ!調子はどんな感じ?」

 

声をかけてきたのはルミナさんだった

ルミナさんはいつものように明るい声で話しかけてくれた。

私にとっては大切な親友である。ルミナさんは私が何かに絡んでいると疑っているはず。

それでも詮索をするようなことはしてこない。本当にとても信頼できる友人である。

 

「寮にはしばらく帰るわけにはいかないから大変ですよ」

 

寮に戻れば更なる攻撃が想定される

私の影響を他の友達に巻き込むわけにはいかない

今はホテルで過ごす方が安全である



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しつこい人

私はルミナさんと一緒に職員室に向かった

1人よりも2人でいる方が安心できる

 

「「失礼します」」

 

私とルミナさんは一緒に職員室に入ると多くの先生が大丈夫なのか聞いてきた

どうやらもう情報が洩れているようだ。これはこれで危険なことではあるが仕方がない

私とルミナさんは自分たちに与えられているデスクのところに向かう

ちなみに万が一に備えて小型リボルバーを1丁持っている

使いたくはないが、危機感を持って対応することが重要だ

私の影響によってほかの人を巻き込むわけにはいかない

必要なら陰でこっそりと『敵対勢力の攻勢の始末』をしなければならない

それだけの覚悟は私にはできている

 

「カオリ。大丈夫なの?」

 

ルミナさんは本当に心配してくれている

私は今のところは大丈夫ですと答えた

確かに今のところだ。いつ状況が変わるかは全く想像もつかない

だからいつでも対応できるように備えをしておくことは必要なのだ

たとえ法律違反であってもだ

 

「水川カオリさん。少し良いかしら?」

 

水崎レイカ校長先生に呼ばれたので私は大丈夫ですと答えて校長室に向かった

念のため何が起きるかわからないので小型リボルバーを考えて銃が入ったカバンを持って行った

校長室に入るとそこには碇ユイさんがいた。

 

「ネルフに協力するつもりはないと何度もお伝えしているので理解されていると思っていたのですが」

 

今度はいったい何をするつもりですかと私は彼女にストレートに伝えた

もう彼らと関わるつもりは全くないのに直接アクションを起こしてきた

裏でどんな陰謀論でもあるのか疑いたいところだ

 

「あなたが何を狙っているのですか?」

 

「私はただシンジがどう思っていたのか知りたいだけなんです」

 

「私は言ったはずです。すべての引き金を引いたのはあなた達だと」

 

碇レイさんを介する形で私は伝えたはずなのに納得するつもりはないようだ

自分たちが英雄でないことをマスコミにばらされたのかおびえているのか

それとも私を抹殺するつもりなのか。あるいは私を利用してさらなる名誉を勝ち取ろうとしているのか

私はネルフは自分たちの名誉のためなら手段を問わずに仕掛けてくるか

 

「あなた達は感謝をしないといけないのに、自らの利益にすべてを利用した」

 

私はあなた達は人殺しと同じ行為を実行したことを自覚しないといけないと突っぱねるように話した

自業自得である。私はそれを何度も彼らに伝えているのに受け入れていないことは明確だ

何度も『碇シンジ』の身柄を欲しがっている。英雄として利用したいのかもしれない

『僕』はそんなことを許すことはあり得ない。何としても



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トラブル続き

「さすがに私にも我慢できる範囲を超えるときの覚悟はできていますか?」

 

私はポケットに隠しているリボルバーに手を伸ばしていた

いつでも発砲するつもりでいた。もう私の人生を狂わせることは嫌なのだ

自らが決断して、道を切り開いて歩み続けていきたい

それがどれほど苦しい道であったとしてもだ

妨害されるなら、その障害物を私は破壊する

もう私は迷いなどを持つことをやめることを覚悟した

ところが物事は予想外の展開になっていった

校長室の外から多くの足音が聞こえてきた。

おまけに金属がこすれあう音も。この音は間違いなく銃がこすれた音だ

 

「本当に迷惑なお客が来るのは私としても迷惑なんですが」

 

私はカバンに隠していたリボルバーの拳銃を取り出した。

校長先生は驚きの表情を浮かべていた。私が迷いもなく銃を取り出したことに

さらに窓ガラスが割れる音までがこちらに接近してきた

おまけにかなりの人数の走り音が聞こえてきた。状況はかなり危険である

私はすぐに校長先生と碇ユイさんの安全を守ることにした

見捨てるわけにはいかないので、慎重に対応しなければならない

 

「校長先生と碇ユイさんは姿勢を低くしてください」

 

「カオリさん。その銃はどうしたんですか?」

 

校長先生の質問に私はいろいろと迷惑をかけてくる組織に個人が多いのでと回答した

嘘は言っていない。ネルフが活発になってからこちらは迷惑なことばかりだ

 

「S&W M19ですよ。弾は6発しかないので、もしもの場合は何とか隠れてくださいね」

 

ちなみに予備の弾として12発の銃弾がある。

それでもこの足音や銃声を考えると動きをしている人物たちはかなりの数になる

今こちらが持っている弾だけでは足りるとは思えない

何とかしたいが2人を守りながら攻撃を仕掛けるとなると慎重にいかなければ、

 

「仕方がないわね」

 

私はため息をつきながらいつでも発砲できる体制に入った

そして校長室のドアをけ破って侵入してきたのは完全武装をした人物だ

すぐに拳銃ではどうにもならないと判断。私はリボルバーの照準を最初に侵入してきた数名の頭に発砲

倒れた侵入者が持っていたアサルトライフルのM4カービンを回収するとそれを使って交戦した

これではまるで戦場にいるのと変わらない。いったいどこの連中なのか。

私に不幸という名の雨を降らしてくる敵対勢力を見つけないと何度も繰り返すことに

それだけははっきりと分かった

 

「碇ユイさんはもっとしっかり自分に警護をつけることですね」

 

M4カービンを3丁も確保した。あとはできるだけで対応する

『彼女』がいるからネルフの保安諜報部がすぐに動くと思っていたけど

どうやらそう簡単に話が進む様子はない

警護を最小限にしてここに来たようである。はっきり言ってしまうとバカもいいところ

何度も自分の存在価値を理解するようにと話したこともあるのにそれを自覚していない

自覚していたらこんな大騒動になるはずがない。



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迷惑なトラブルの後始末

しばらくしてからようやくネルフの保安諜報部が来たようだ。

私は大きなため息をついた。何でここにきて接触が増加傾向にあるのか

陰謀説でもあるのかと探りをしたいぐらいである

 

「碇ユイさん。何度も言いますけど、あなた達が犯した罪はあまりにも重すぎる」

 

子供を実験材料にして散々利用しただけだと私は何度も抗議している内容で責め立てた

彼女は自分たちが犯した罪の重さを理解していない

世界を壊すことを。それどころか自らが神になって最高権力者になろうとした

自分たちが神様になるためなら、どんなことをしても問題ないと考えていたのか

それについて審議はわからないけど、バカな組織だ

 

「バカなことを計画してバカなことをした。あなたは彼を殺した。自分の子供を」

 

その罪の重さがわからないなら私があなたを殺すまでと伝えた瞬間に冷たい視線を感じた

おまけに狙撃銃のスコープから光が反射しているのも同時に確認。

私は事前にそれなりに警告したうえで行動を開始した

 

「碇ユイさん。保安諜報部には私はただの巻き込まれと証言しておいてください。それがだめなら私も最後の手段を」

 

私が言った最後の手段というのはあらゆる関係者を抹殺して姿を消すということだ

誰も私のことを知らないところでゆっくりと過ごす

その方が追われる心配はないからである。もう私の影響で誰も傷ついてほしくないのだ

これはあくまでも最後の手段ではある。できることなら私は教師になりたい

戦場で戦っている少年兵たちに教育ということを受けてもらいたい

戦場だけの世界から明るい未来を見れる世界を見せてあげたい

私はそう願っているから教師になる道を選んだ

 

「もしその言葉を守らなかったらどうするつもりですか?」

 

私は碇ユイさんにその時は誰かが死ぬことを意味するでしょうと伝えた

それだけの覚悟は私は持っているのだ。私は自分の道を決めている

『昔の関係』で私の自由が制限されるなら手段を問わずに逃げ出す

もしくは別の選択をとることもできる。必要なら冷徹のように関係者をすべて黙らす

方法は選ぶことはしない。私の将来を潰されるのは迷惑なのだから

 

「まったく。また銃を手に入れないといけないわね。この銃は使えないし」

 

市警察には証拠として提出しなければならないのだから当然である

ならば新しい拳銃を手に入れなければならない。銃関係だけでもここ最近は出費が多い

手に入れるルートは確保しているけど迷惑をかけてしまう

こちらの立場も考えてほしいものである

 

「碇ユイさん。今後はもうお会いすることはないと考えてください。私に殺されたくなかったら」

 

「あなたの言葉をしっかり受け取るわ」

 

ここに来てからお金がかかる出費が増える一方である。

それも違法な物なのでそれなりの値段はする。落ちている物を拾うのとはわけが違うのだから

おまけにこちらに大きな災いが降りかかり続けている。

今更ネルフに興味はないが妨害工作をしてくるなら排除する

それがたとえ『本当の母親』と『本当の父親』でもだ

 



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真実の行方

その後はまたしても第三新東京市警察の事情聴取を受けると思っていた

しかし今回は彼らは関与するつもりはないようだ

ネルフの保安諜報部が動き出した。つまり加持さんが出てくるわけだ

私を狙ったものなのかどうかを調べるためだろう

碇ユイさんを狙った攻撃なのか。それとも私が狙いなのか

それは私にもわからない。何が原因なのかを私が知る機会はないことは間違いない

だって私は『普通の大学生』なのだから。

 

「私が狙いでなければ良いのですけど」

 

ネルフ側から事情聴取をしたいというアプローチがあることはわかっているが、

ジオフロントに降りるつもりはない。

もし事情聴取をしたいなら市警察本部でしか応じない

誰が地下の穴倉に入りたいと思うものか

もう『僕』は彼らとは違うのだ。『私』はネルフに協力するつもりはない

自分のことぐらいなら自分で守ることができる

ルミナさんたちは大切な親友だから彼らのことは私が守る

私がいる影響で大切な人たちが傷つくことは嫌なのだ

 

「最近よく会うことになっているね」

 

加持さんが来て私の姿を見つけるとそう言った

 

「私としては迷惑な話なのですが」

 

「今回のことは君に感謝をしないといけないようだね」

 

「あなた達は私を利用して何をするつもりですか?」

 

私はネルフがさらなる権力を手に入れるために利用されるのではないか危惧していた

何度も言うがこれ以上彼らに協力するつもりなど全くない

必要ならどんな手段を使ってでも妨害工作を行う。

もちろんその中には関係者の口をふさぐために危険な行為を行うことも考えていた

 

「シンジ君のことと深く関わっているから君の行動を監視しないといけないからね」

 

ネルフは『僕』のことをよほどほしい。

おそらくサードインパクトで起きた忌まわしき『儀式』について知りたいのかもしれない

だからと言って簡単にしゃべる必要はない

元々ネルフはゼーレと密接した関係があったのだから、私にとってはどちらも『同罪』と考えている

 

「本当に君はシンジ君からいろいろと聞いているみたいだね。でも君が狙われていることは覚悟があるのかな?」

 

「私が狙われたのかどうかをどうやって判断するのですか?」

 

碇ユイさんがターゲットにされているのではないですかと私は返答する

ネルフも私と碇ユイさんのどちらがターゲットにされたかわかっているとは思えない

碇ユイさんもネルフにとっては重要人物だからである。

一方私は『僕』と関係があった人物と思われているはず

だからどちらがターゲットにされているかと考えた時に私だと断定できていないはず

そもそも強襲してきたやつらがどこの組織に属しているかまではまだわかっていないと思う

だから私はまだ言い逃れをすることはできる。真相がわからない間という時間制限付きではあるが



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やられたらやり返す

結局、この日も私はネルフ関係のトラブルに巻き込まれた

本当に嫌な話であることは間違いない。接触を断つつもりでいるのに彼らはあきらめることを知らない

どういうつもりがあるのか真偽はわからないが

私はもう『碇シンジ』ではなくて水川カオリなのだから

 

「こちらとしては君がどんな秘密を抱えているのかを知りたいから協力してくれないかな?」

 

加持さんはかなりしつこい人間だ。

まぁネルフを守ることが仕事なのだから、私という危険人物を放置するわけにはいかないのだろう

 

「お断りします。あなた達ネルフに協力するなんてただでさえ迷惑な話なのに、これ以上追い詰められたくないので」

 

ネルフに協力したらどんなことになるか

だから私はもう彼らにどんな些細な情報も渡すつもりはない

 

「私を拷問にでもかけてみるなら覚悟してください。私も黙っていませんから」

 

「それはつまり報復を仕掛けるという事かな。俺としても女性を拷問にかけるようなことはしたくないからね」

 

そのセリフに私はネルフの『真実』を知っているから信用できるものでないことは察しが付く

彼らは必要ならどんなことでも仕掛けてくるはずだ。攻撃してくるならたっぷりと利子をつけて報復する

 

「ネルフがどれほど汚い組織であるかは私はよく理解しています。もしかしたらゼーレ以上に」

 

『僕』はそんな大人の汚い陰謀に巻き込まれて悪夢を見ることになったのだから

そんな組織を私が容認するなんてありえない。

本来なら真実を暴露しても良いのだが、それをしないのはあくまでも私なりの温情をかけている

『父さん』と『母さん』がいるから謝罪のチャンスを与えた

チャンスというべきかどうかはそれはどの角度から見るかによって変わる

 

「本当に君はシンジ君からいろいろと聞いているみたいだね。情報を教えてくれると助かるんだけど」

 

加持さんの言葉に私は『汚れた組織』に協力するつもりはないと返答した

ネルフもゼーレも同じ組織と考えても問題ないはず

元々は密接な関係を持っていた組織なのだから、間違っていることではない

だから『僕』はどちらの組織も許すつもりはないし協力もしない

強引な方法をとるならこちらはあらゆる方法で報復してやる

ネルフに妨害されるくらいなら関係者を抹殺することも考える

もうネルフとの関係のない水川カオリなのだからやられたらやり返すだけだ

ケンカを売ってきたのはネルフやゼーレの連中だから迷うつもりはない

私は弱い存在ではない。

 

「これは警告です。もし私の妨害するつもりなら覚悟をすることです。あなた達がどういう人物だったのか暴露しますので」

 

私の強気の言葉に加持さんは十分君の考えはわかっているよと答えた

こちらの態度を明確にしないとどんな妨害があるかわからない

報復のための手段はいろいろとプランを用意している

いつでも実行できるように用意もしているのだ



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私の道は私が決める

その後の加持さんとの話し合いはある意味では平行線をたどるだけだった

私はもう話すことはありませんというと加持さんとの話を拒絶した

もう私には何も関係のないことなのだ。協力する必要などあるはずがない

私は自らの命を守ることくらいできる。ネルフに影でガードという名の監視を受けるつもりはない

 

「では失礼します」

 

私はそう言うと部屋から出ていった。裏で誰が絡んでいるかはわからない。

おそらくではあるがゼーレ本体、あるいは分派が絡んでいることは間違いない

 

「いったいどこの連中が絡んでいるのか調べるのにネルフの力を借りたくないし、警察でも意味はないわね」

 

いくら警察に知り合いがいるからと言って簡単に話せない

なぜ知りたいのかと言われたら意味がないからだ。それに警察の友人に頼むとネルフにも情報が筒抜けになる

そうなればかなり面倒になることは間違いない。ここは特別な方法で調べるしかない

仮にネルフにばれてでも警察の友人に調べてもらうと大切な友人にまで危害が出る可能性が高いことは間違いない

ゼーレが仮に今も中心人物が生きていることが確認されたら私には責任がある

 

「何とかしないと大変なことになるわね」

 

もしかしたら全くの別の組織が動いているのかもしれない

こちらがわからない組織が絡んでいるならさらに面倒になってくる

穏やかに私は生活をしたいのに大変な苦労を私に押し付けようとしてくるかも

情報を流してくれる人物を見つけないと迷惑なトラブルを押し付けられることも想像できていた

 

「仕方がないわね」

 

『僕』は『神様の権限』の行使を考え始めた

この方法はできれば使いたくないけど、私の安全にかかわってくるなら

必要な手段を使うしか道がないなら選択することにした

 

「誰にも気づかれないようにしないと」

 

この『神様の権限』を使う時は誰にも妨害されない場所でないと困る

誰かにそんなところを見られたらすべてうまくいかない

私が孤立した場所にいるところを探さないといけない

 

「変な誤解されるわけにはいかないし」

 

私は高校の廊下を歩きながらどこか隠れることができる場所を探した

いろいろと考えていたけど、隠れる場所を見つけるのは無理と判断。

大学寮に戻ってから調べることにした。ここでネルフに探られると気持ちの良いものではないので

だから私は今のうちは妙な行動を起こさないようにすることにした

今日の高校が終わって寮に戻ったら全力で調べるだけ。

もう私が歩む道を他人に妨害されることは迷惑だし、私自身が自ら決める

他人に振り回されるのはもう嫌だから。

 



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悩み事

トラブルになることを避けるために、私は今日は高校が臨時休校を決定したので大学寮に戻ることにした

大きなトラブルにあったのだから高校が臨時休校にするのは当然である

私は職員室で荷物を回収すると高校の目の前にある道路でタクシーを拾って乗り込んだ

 

「第三新東京大学にお願いします」

 

私はそう言うとタクシーで第三新東京大学に向かった

これ以上私の影響が出ることは嫌だった

私がネルフに絡まれてから急激なトラブルが大幅に増加した

おまけに『望まぬ必要経費』もかなり増えることになった。

こんなことにならないことを願っていたが状況はそれを許してくれないことははっきりしている。

また闇市場で銃を入手しておかないといけない。

大学の寮には以前手に入れた時の銃がある。

だけどさらに必要になることは今の状況ではほぼ確実である

 

「本当にお金がないから別のアルバイトでも探さないと」

 

銃を入手するにはいろいろと面倒なことがある。未使用の銃であることが絶対条件。

もし使用済みの銃がこちらに流れてくると警察などの捜査対象になることは間違いない

捜査対象にされるとネルフからもさらに監視対象にされる

そこまでの展開になってしまうと私の楽しい大学生活が難しくなる

おまけに大学での友人にまで迷惑をかけることになることも想定できる

だからこそ前歴がない新品の銃を手に入れなければならない。

そんな銃を手に入れるとなると値段もそれなりに高くなる

入手ルートも限られてくるので苦労がさらに増加することになるのだ

迷惑をかけるわけにはいかない。

大学の友人に余計な迷惑をかければ友人の将来にまで影響してくるかもしれないのだ

警戒するのは当然の流れである。

 

「お金が本当に必要になるわね」

 

いつでも逃亡生活ができるようにそれなりにお金を用意しなければいけない

それも銀行などにお金を預け続けることも危険なことになる

お金の流れを追跡されると簡単に見つかることになる。つまり逃亡生活を続けることは難しくなる

逃亡生活で逃げ続けるようなことをしたくない。

私は自らで生活をしなければならないのだ。

せっかく今の『僕』は私の判断能力でしっかりとした歩みをしている

『昔』のように他人に影響されないで自ら未来を見ながら歩みだしている

妨害されるのは本当に迷惑で邪魔なのだから

だから私はしっかりと自らの考えで将来を考えながら頑張っている

 

「本当に物入りよね。時給が良いアルバイトを本当に見つけないと」

 

また同じようなことが発生する可能性はかなり高い

 



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私の考えと友人

それにしてもここ最近の襲撃はあまりにもタイミングが良すぎる

私は大学寮に向かうタクシーの車内で考えていた

こちらが知らない『裏側』で何か暗い闇があるのかもしれない

そうでなければあまりにもタイミングが良いと言える

ただの幸運だけで組織が動くということはとてもではないが、運が良すぎると言える

何かがあることは間違いないのだ。真相を確かめたいが下手にこちらが動くとどんな行動をしてくるか想像できない

リスクを考慮すると安全確保のために動くことが求められてくる

それに大学での友人に危害が及ぶようなことは避けなければならない

 

「本当に問題ばかりね」

 

タクシーで私は大学寮に戻ると自分の部屋がまた荒らされているのではないかと警戒をした

私の部屋だけでなく、寮内で何か異変がなかったかどうかについても寮に入る前に出会った友人に話を聞いた

幸いなことに何も異変はなかったとのことだが、何が仕掛けられているか予想するのは難しい

もしかしたらとんでもないことを企てている連中がいるかもしれないからだ

常に最悪の事態を想定して行動することが求められていることは今の私はよく理解している

 

「とりあえず安心できそうね」

 

私は一通りの確認を寮の責任者をしている寮長と話を終えて部屋の荷物なども確認した

こちらにも何も影響はなかったので少しはほっとした

せっかくの楽しい大学生としての生活を脅かされることをされたくない

それに親しい友人に被害を受けるようなことは許すつもりはないし、

そんなことを仕掛けてきたら『大量のお返し』をプレゼントをしてやるつもりである

大量のお返しとはネルフに対して大学生である私へ権力乱用行為をしているとマスコミにタレこむ

ネルフもそんなことをされたら立ち位置が極めて危険になるため、簡単に手を出してこないだろうことはわかっている

 

「カオリ!調子はどんな感じなの?」

 

大学で私と親しい親友であるレクシス・ボーレットが心配そうな表情をしながら私を心配していた

彼女はイギリスの出身で私とはいろいろと親しい間柄である

よく一緒に大学の学生食堂で一緒に昼食を食べたり、

他にもいろいろと相談に乗ってくれたりしてくれる大切な親友なのだ

 

「何とかやってるって感じね。レクシスは大丈夫なの?将来の夢も私と同じでしょ?」

 

彼女は将来高校の教師になることを夢としている私と同じ道を歩んでいる

ただし、今は私とは別の高校で研修を受けている

 

「私はいつもエンジン全開で頑張っているから!」

 

問題なんて起きるはずがないでしょと答えてきた。確かにレクシスが落ち込んでいるところを見たことがない

いつも元気いっぱいで頑張っている。私とは全く違う。でもそれが彼女の良いところであるのだ。

いつも元気で大学の同期といつもいい付き合いをしている

良い付き合いといっても恋愛話は効いたことはない。ただし何度も恋人にしたいランキングでトップ3に入っている

わたしとは大きな違いはそこである。私は彼女にしたいランキングに選ばれることはない

どちらかというと陰気なのかもしれないけど

 



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幕が開いたとき

大学寮にあった私の部屋に戻り、ベッドで横になった

本当に疲れてしまった。私はこれからも長い年月を生きていくことになる

どんな人生になるかは自分でもわからない。人生というのは私と『人』では異なる長さである

私が『僕』であった時とは大きく異なる。

 

「何が正しいかを決めるのは歴史ね」

 

このセリフはある本を読んだ時に知った

その時代に生きていた人々が決断した内容が本当に正しいかどうかは今はわからない

ずっと先の未来で歩んでいる人たちがそれを見極めるものなのだ

今すぐにそれが分かることではない

 

「どうやら珍客が訪れてきたみたいね」

 

大学寮で大きな叫び声が聞こえてきた

誰がどう見てもまともではない状況になっていることは間違いない

私は念のため予備の銃であるグロック7を取り出した

銃のスライドを引いて薬室に弾を送り込んだ。あとはどうしてくるかは決めていない。

だが妨害工作をするつもりなら徹底抗戦の構えは必要である

 

「できれば穏やかな大学生の生活をしたかったけど、やられる前に抵抗するしかないわね」

 

私はいつでも発砲できる状態で隠れて防弾代わりの金属製の棚の後ろで隠れた

次の瞬間、かなりの数になる銃弾が撃ち込まれてきた。

誰かは知らないけどここまで派手にするということはかなり本気で私を殺すつもりであることは間違いない

迷惑がとんでもないくらい降り落ちてくる。私は『傘』で『雨』から濡れるのを避けようとしているが

その雨に当たらないようにするための傘は穴だらけのようなものであることは確かだ

本当に殺すつもりで私もお相手をしてやらないといけない。

こんな方法で撃退したことを知られたら最悪ではあるが今はこうするしかないのだ

大切な友人を守るためにも、こちらに何かを仕掛けてきたらこうなるということを示す

そのことを分からせるためには数人は『殺す』ことをしなければいけないだろう

したくはないのだがここまで本気で相手の行動を止めるには手段を選んでいる余裕などは全くない

どんな方法を使ったとしてもだ。私は自分を守ると同時に大切な友人も守らなければならない

そのためには私自身が汚れるようなことをしてでも抵抗するしかないのだ

 

「いよいよって感じね」

 

私がいる部屋のドアの外に金属製の何かがこすれる音が聞こえると同時に銃弾の発砲音というコンサートが始まった

 

「女の子にもてないタイプの人間ね。私が言うのもおかしな話だけど」

 

確かに私は今も男性を恋人にしたいと思ったことはない

理由は簡単だ。サードインパクトの前は『僕』だったのだ。

今は女に変わった。それだけに異性を感じることはない

ちなみに私は同性愛者というわけではないし、その意見に異議申し立てをするつもりはない

人間関係というのはいろいろな形があるのは事実である。

同性愛を否定するつもりはない。恋愛というのはいろいろと大変なのだから

いろいろな考えがあるし、宗教によっても考え方は大きく違いがあるのは事実なのだから

 

「鬱陶しいわね!」

 

私は金属製の棚を楯代わりにして反撃のために銃を発砲した。

その間もこの寮で一緒に生活している学生の悲鳴などが聞こえてくる

迷惑を考えてほしいところだが、今はそんなことを言っているような暇はない

私の影響で大切が傷つけられるのは許すはずがないのだから



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狙いは私!

私は今も対応に苦労している。

ドアはすでに穴だらけ。かなり風通しは多いが銃声はなり続けている

いったいどこまでやるつもりでいるのか。私としては迷惑すぎる話しかない

 

「迷惑な客は嫌いよ!」

 

私は必死に応戦しているけど、状況はかなり悪いことは間違いない

何とかしてこの状況を納めることができないか考えていた

問題がありすぎれば、今後の大学生としての学生生活がどうなってくるかは想像したくない

私の未来は自分で決めるの。今度ばかりは逃げるわけにはいかない

絶対に何がなんでも問題解決するためには選択できる方法があるならあらゆる方法を使って対抗するつもりでいる

その時、パトカーのサイレン音が少しずつ近づいてきた。

警察が来たとしても簡単に物事を解決するなんてありえない

きっと彼らは私がなぜ狙われているかについて探りを入れてくるだろう

さらにネルフまで関与してくるような事態になれば迷惑が大雨のように降りまくる

警察は現場に速やかに来ると大学寮内に強行突入に踏み切ってきた

 

「珍しく短気ね」

 

普通ならこんなに簡単に強行突入などするはずがない。

状況をしっかり把握してからが普通だと私は考えていた

しかし警察サイドはそういう構えを見せていない。

もしかしたらどこかの誰かが入れ知恵をしてきたのかもしれない

『神様』のような私ならあらゆることを知っている。

警察はすべての準備が整わないと強行突入をするとは思えないし、

あまりにもリスクが高すぎることはわかっている

私はまだ警戒していた。あまりにもタイミングが良すぎる

陽動作戦ではないかと考えたのだ。そうでもなければなぜ強行突入に踏み切ったのか

通常では考えられないと私は感じて銃を話すことなく、

いつでも発砲できる状況にして『神様の特権』を行使した

 

「どうやら陽動作戦であることは間違いないわね」

 

大学寮内にいる武装している人物たち全員の頭の中を覗き見たところ、

狙いは私に間違いなかった。警察というよりもフリをした武装勢力はゼーレの分派であることもわかった

手に入れるためなら手段などどうでもいいようだ。ならこちらも一気にプレゼントを差し上げることにした

鉛弾というとても危険で悪いものを

 

「そろそろパーティーを始めましょう」

 

私はドアの前に完全武装している人がいると。

すぐにドアを開けた瞬間に爆発する手りゅう弾をセットした

ドアを開けた瞬間に安全ピンが外れて即座に爆発する

グロック17を2丁を用意。交換用のマガジンが入ったリュックサックを手にする。

これでどんな状況になってもいつでも攻撃、あるいは反撃することができる準備をした

いよいよパーティータイムも終盤だ。



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後始末はどうなるか?

相手は明らかにアサルトライフで攻撃してくる。

状況としては最悪だ。私としてもあまり『神様の権限』を使うことは嫌である

ずるがしこいことだから。私自身の実力で対応したいが友人に被害が出るようなことは避けたい

仕方がないと私はため息をつくと『神様の権限』を行使した

簡単に言えば彼らが突然意識が失うように『命令』しただけだ

こんなことを何度も使っていると後々思わぬことに巻き込まれていくかもしれないが

状況を適切に判断することも大切である

 

「とりあえずは第1関門は通過できたわね」

 

次は私は市警察から事情聴取が待っていることを考えてため息をついてしまった

本当にトラブルが山積みになっている。

ここまで急激に動いているということは誰かが私のことを手に入れたと思っている人物がいるのだろうと

そこがゼーレの関係者であることは推測はできる

ネルフ側がこちらに干渉してくるとは思えない。仮に接触してくるなら裏から手を回す

こんな大胆な方法は選ばないだろう。

 

「困った奴らね。とにかく策を練るしかないわね」

 

私はこのようなことが増加すれば大切な友人も巻き込んでしまうことを理解した

『僕の過去』と関係がない友人を巻き込むのは避けたい

過去が私や大切な友人を巻き込むことは許されないのだから

何が何でも守る。それが私流のやり方だ

口には出さなかったがあることを考えていた

今回の案件に誰が関与しているか。

それがわからないと再び強襲されてくることは私にもわかっている

もしもに備えて準備をすることは極めて重要になる

友人を巻き込むわけにはいかない。もし大切な友人を巻き込んでくるような行動を始めたら手段を選ばない覚悟はできている

必要なら『殺す』覚悟もできている。

もちろん私が関与したという証拠を残さないようにまるで暗殺するかのように攻撃を実行する

今回は幸運なことに友人にけが人が出なかった

だが何度も攻撃を仕掛けられたら、私を狙っていることがネルフサイドに情報が流れていく

そうなると対応するのは楽ではない。もう私は過去にとらわれるようなことは避けたい

その後、ようやく本物の警察官がやってきてくれた。

もちろんお菓子のおまけのような存在もセットできているようで、

私はそのことについて本当に迷惑な存在であることを考えてしまう

できる事なら接触することは避けたいのであるが、そうはいかないのが常識であることをよく理解している

不幸というのは来てほしいと思っているわけではないのに襲い掛かってくる

どれほど大きな問題であってもトラブルは嫌なくらいに襲来する

 

「嫌な話にならないと良いのだけど」

 

警察官が私の部屋に来る前に気づかれないように銃撃戦に使った銃に付着した指紋などをふき取った

さらに強襲してきた連中が持っていた催涙弾を少し離れたところにセットして起爆させた

これで偽装工作はとりあえずできたかもしれない。言い訳としてはあまり良いとはいけないが



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苦しい立ち位置

本物の警察官が来てくれたので私は少しは安心できた。

だが問題なのはネルフがどのように動いてくるか

私としては身辺調査で詳細に調べたとしても真実はわからないだろう

『僕』はすでに「私」になっているのだから

大きく異なったことがどのように作用するかはわからないけど、少し時間稼ぎができたかもしれない

 

「失礼ですが、市警察本部で事情をお聞きしたいのですが?」

 

女性の刑事さんの質問に私は全く襲われる理由はわからないですと

私の回答を聞くとネルフ関係者と接触されていたとお話をお聞きしていると伝えられた

どうやら彼らはネルフが私に接触したことを知っているようだ

もしかしたらこの女性刑事はネルフと繋がりがあるのかと考えてしまった

そうでなければ刑事さんがそう質問するわけがない

 

「わかりました。市警察本部にですか?」

 

私はわざわざそこまで行く必要があるのかを考えた

普通なら状況把握のために関係者から話を聞くのは当たり前だ

だがこの女性刑事は私がネルフ関係者と接触していることを知っている

正解なのかどうかはわからないけど、情報把握については私もしておきたい

ここは素直に了承した方が良いと考えた

下手に拒否をしたら、裏に何かあることを深く探られる可能性は高まるだけだ

大きなリスクになる前に抑え込んでおいた方が、私にとっては安全なのかもしれない

問題が多発することは避けたいのだから当然の判断であると今は考えた

寮の前に止められていたパトカーに乗せられた私は女性刑事と一緒に市警察本部に向かった

パトカーの車内ではどこか緊迫した空気が流れている。運転は制服姿の警察官がしていた。

助手席には女性刑事が乗っていて、私は後部座席に座っていた

一応、『神様の権限』でこのパトカーに乗っている人物の『記録』を確認したが怪しいことは何もなかった

この女性刑事の方もネルフやゼーレ関係の人物と接触したと思われるような『記憶』はなかった

私としてはとりあえず安心できる。問題はネルフが私に何か仕掛けてくるかだ

私の立ち位置ははっきり言ってしまうと微妙である。

過去ばかりは捨てることはできない。

生きてきたその過程の記録を『無くす』ことはできないが、忘れることはできる

今は知らないふりをするしかないのだ。

市警察本部に向かう間に私は女性刑事と話をしていた

 

「あなたの周囲では何度もトラブルがあると聞いていますが。何か心当たりはありますか?」

 

「私はただの大学生で教師を目指しているだけです。少しだけスーパーコンピュータの研究をしていたことがありましたが」

 

もしかしたらその関係で狙われているのかもしれませんと私は回答した

当たり障りない回答をすることでこの場を何とか乗り切ろうとしている

簡単にそんな『苦しい言い訳』で突破できるとは思っていない

時間稼ぎができれば良いのだ。私は何も知らないと思わせることが重要なのだ



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『天気』は最悪かもしれない

とりあえず私は無事に第三新東京市警察本部に到着した

これから問題だらけの取り調べを受けることになる

私としてはあまり好ましい状況とは言えないが、

拒絶すると余計に怪しまれて深く追及など、詮索されるかもしれない

そういうことは避けておきたい。現段階ではなおさらだ

大学でできた友人にまで影響が出ることが容易に想像できる

今度は大切な彼らを利用して私をいたぶろうとするかもしれないのだ

そんなことになる前に止めるためにも素直に従うことが必要になってくる

 

「どうして狙われたかについては本当に心当たりはないのですね?」

 

女性刑事は私にそう質問してきた。

私は何もわかりませんと回答するだけにした。

怪しまれるような発言はしない方が良い。知らない方が良いこともあることも確かだから

今回のトラブルでネルフからは確実に監視役が送り込まれてくる可能性はかなり高まる

彼らに怪しまれるような材料を与えないようにしないと私の楽しい大学生活が台無しになる

ようやく勝ち取った私の幸せな道。今までは何とかしていたが今後のことを考えると頭痛が来そうだ

 

「私は以前にスーパーコンピュータの技術に関係するものを研究をしていたので」

 

もし襲われる理由があるならそれに関係する技術と知識を奪おうとしていたのかもしれませんと回答した

まったくのでたらめの話ではないので、誤魔化すことはできるだろう

問題があるとするなら警察はそれでなんとか言い訳できる

でも『ネルフ』から見れば私の発言を信用してくれることはないだろう

かなり裏を探られてくることはわかっている。できる限り妨害工作などはしない

妨害になるような行動を行えば彼らはさらに不審に思って何を仕掛けてくるか全く想像できない

それだけにこちらにできるだけ視線を向けられることは好ましくないなら、それなりの行動をしておかないといけない

トラブルは私は会いたくないと思っていても私の行動が1つでもおかしいと感じられると

何か行動開始の展開になることは簡単にわかる

 

「ここ最近に様々なトラブルを抱えていることについてはどのように?」

 

女性刑事である彼女は明らかに私に疑念を抱いていた

私は回答の内容を考えて、さらなるトラブル発生にならないように回答した

 

「何度も言いますが。私としてはいろいろと面倒ごとが降ってきているのです」

 

私は迷惑行為をしてくる彼らを調べてみてはいかがではないですかと

ある意味では挑戦的な回答をした

 

「私もそうしようとしたけど、彼らはまるで記憶喪失でもしたように何も覚えていないのよ」

 

これはどういうことかわかるかしらと女性刑事の質問に私はうまく事は進んでいることに少し安心した

実はあの時に私やいろいろな記憶を『無』くした。

彼らが何か市警察に証言されたら迷惑がより複雑になる

どうにかするには記憶を消すしかないのだ。殺すわけにもいかないなら

今回の取った選択は正しかったのかもしれない

 



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真実は何もない

とりあえず女性刑事の事情聴取という名の関門は潜り抜けた

問題はこれからである。彼女が出ていくとすぐに加持さんが入ってきた

 

「あなたと会うのは嫌いなんですけど」

 

「それは辛いね。君との関係は良好にしておきたいのだけど」

 

加持さんの言葉に私は何をふざけたこと言っているのか。

そのことをぶつけてやりたかったが無理をすればネルフまで巻き込んで大騒動に、

それだけの問題ならまだしも大切な大学での友人にまで迷惑をかけることになる。

負けっぱなしでいるわけにはいかない。

仮に負けるとしても私の大切な友人にまで影響が出ないようにしたい

 

「あなたの顔を見るだけで怒りたいですよ。偽善者なのだから。ネルフは」

 

私は彼らの痛いところを責め立てると加持さんはそこは痛い指摘だねと

表情は少し苦笑いのような感じだった。でも私は迷惑であることをはっきり伝える

何度もトラブルが起きたら彼らとの『話し合い』という名の戦いをするかもしれない

そんなことになってほしくはないのだ

 

「ネルフは私のことをどう思っているのでしょうね?碇ゲンドウと碇ユイは私のことを殺人や自殺ほう助をしたと」

 

でもそれを立証するには証拠はない。むしろ逆だ

証拠などあるはずがない。仮にもし見つかった時はそれは偽物の証拠だ

その『偽りの証拠』で逮捕されたとしても私の記録を調べることはできない

元から『私』は『僕』であることを証明することは不可能。

逮捕するだけの証拠がない以上ネルフは何もしかけてくることはないだろう

問題があるなら『ゼーレの分派』や『ゼーレの残党』だけだ

彼らから私に少しでも疑念を持たれている。いつかは大きな攻撃を仕掛けてくることも想定できる

しばらくは大学寮ではないところで生活した方が良いかもしれない

今回のことであることがはっきりしているを理解しているからだ

ネルフもゼーレの残党にも気を付けながら大学寮で生活は難しい

同じようなことが起きる可能性は十分ある話で、大切な友人に危害を加えられることは避けたい

対応するには一時的にどこかで生活した方が良い。

私にとって大切な友人を守ることは当たり前なのだから

 

「ネルフが知りたいのは真実ではない。ネルフを正義とする今の世界秩序を乱す存在を消すために情報が知りたい」

 

「なかなか手厳しい意見だよ。こちらもあまり時間があるわけではないからね」

 

加持さんは本当の命令は私の監視と私から得られるあらゆる情報を引き出すことが任務であることはわかる

これだけトラブルが増加傾向にあると私がゼーレのことをどこまで知っているのか探りたい

そしてネルフの『真実』とゼーレの『真実』を知るなら情報をすべて吐かせようとしているのだろう

だが私も簡単に真実どころか協力してやるつもりなどは一切ない。

私は私なりに『報復』をするつもりで考え始めた

 



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賭けのテーブル

 

「君は本当に運が良いようだね。俺が口説き落としたくなるほどの美人となると」

 

加持さんの言葉に私は強烈な皮肉で言い返してやった

 

「それはあなたが真実を知るためにすべてを利用してきた。ゼーレでも、ネルフでも」

 

まるで盛りのついた動物と変わらないわと加持さんに伝えた

 

「特に葛城ミサトとは情報を得るために寝たこともあるのでしょう」

 

加持さんは裏社会に属するゼーレと人類補完計画について知るために、あらゆる人物と組織を利用した

はっきりと言うなら腐り切った人間ということは間違いない

 

「本当に手厳しいね。否定はしないがね」

 

「あなた達は何を知りたいのか。話してもらえる?私はネルフが1人の大学生を権力乱用で妨害行動をしていると」

 

マスコミに知られたらあなた達は困ると思うけどと突き付けた。

いくらネルフと言えどもマスコミの影響は大きいものである。

特務機関と言ってもマスコミはスキャンダルという美味しいお肉をちらつかせると食いついてける

 

「いくら報道管制を敷いてもどこかで火がつけば、時間はかかりますがネルフの看板に傷がつきますよ」

 

「うまく戦略を練っているようだ」

 

「彼に教えられているので」

 

『僕』は自ら危機対応をする方法を常に模索。

行動が必要になりそうな状況になる前に手を打つことでネルフサイドの行動を抑止できる

チェスで言えば先手を考えることと同じであり当たり前のことだ

 

「シンジ君はどうして君を信じたのかな?」

 

「私は彼に伝えたのよ。真実に苦しむなら私がすべてをカバーする。だから好きな道を選んでと」

 

嘘は言っていない。『僕』はネルフとゼーレの『真実』を知っている。

だから『私』という存在がある。

神様の権限を持っている存在である『私』を作ることで真実をすべて隠ぺいした

もちろんそんなことを話すことはするつもりはない

知られたらもっとトラブルが大量に私のところに向かって突進してくる。

これはある意味では賭けのようなものだ

負けることはないと思うが、絶対に勝つという保証もない

いわゆる中立的な立場にいることをネルフの幹部やゼーレの残党に分からせることが極めて重要になってくる

今度ばかりは負けるわけにはいかないのだから

 

「ネルフの皆さんが私が提示したギャンブルに参加されるかを楽しみにしています」

 

私は相変わらず挑戦的な態度を示した。本当にどうなるかは全く予測できるものではない

今後の自らの歩みを邪魔されないようにするには必要なことであることはわかっている

何もしないでただ見ているだけでは、対応を素早くしなければ身動きができなくなってしまう

そうなれば本当の意味で危険どころの話で済まない状況になる

これは疑いようのない事実である

 

「ネルフが君の提示した賭けに乗ると?」

 

「乗らないと真実を知る機会は失われる。それに私という存在があなた達には目が離せない美味しいお肉」

 

高級ステーキ肉なのでしょうと。つまり目の前で餌があるのに待てをさせられている犬と同じ

犬も少しは待てるだろうが、おいしい匂いには負けてしまう

必ず指示を待てるはずがない

 



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世界中がインチキ

 

「君の望みは何かな?」

 

加持さんの質問に私は簡単に答えた。

これ以上私には関わることをすればどんな方法を使ってでもネルフの真実をマスコミに流すと

そんなことをすればネルフの立場は大きく変わる。

もし危険な方向に流れ続けるとネルフそのものが存在できない状況になる可能性も出てくる

切り札としてはかなり効果的ではある。だけどリスクもある

『私』の情報が漏れることが確実になる。こちらにもトラブルが発生してしまう

それはあまりにも良好な状態とは言えない

まさに生死の分かれ目と言った感じの状況に私も追い詰められる

 

「あなた方はどう思っているかは知りませんが。碇シンジ君を殺したのはあなた方だ」

 

その責任を理解できていない段階で、大きな間違いをしている

私は加持さんに言うと彼は痛いところを指摘されたねと返答した

彼だけは自らの『罪』を理解しているようだ

だが、ネルフの幹部はそんなことを思っていないだろう

特に『碇ユイ』と『碇ゲンドウ』は。彼らは自らの知識を得るために多くのことをしてきた

穢れた世界を作る『ゼーレ』の計画を利用して。

『碇ゲンドウ』は『碇ユイ』を取り戻すために。そのために様々なことをしてきた

汚いことをしてきたことを償いたいから、今になって私に接触をしてきたのかもしれない

 

「あなた達は碇シンジ君のやさしさに感謝しなければならない。本当なら死刑判決を受ける立場なのに」

 

ネルフは法律的には特務機関であり、法律を無視することはできるかもしれない

でもある存在だけは問題になることは確実である

それは『綾波レイ』に関することだ。彼女が生まれた経過をたどれば倫理的な話どころではない

彼女自身の存在する理由も大きな問題になる。

 

「神様が隠していたパンドラの箱を開けた段階で、世界から抹殺されるはずだった」

 

そうならないのはうまくネルフが事実を隠していたからだ

だけど、私は『作られた神様』であり、マスコミなどに流せばネルフは最悪の状態になる

ネルフもそうならないように必死に証拠を隠滅するかもしれない。

『僕』はそんなことにならないようにするつもりで行動する

 

「でも彼によってネルフは救われた。自らの罪を自覚して生きていくことを願って」

 

でも実際はネルフはマスコミなどを使って情報操作。

ネルフが正義でゼーレが悪にした。ネルフも悪の組織なのにすべてを独り占めした

 

「ネルフは彼が願ったこととまったく異なる方向で動いた」

 

『僕』としても本当に最悪である。

今度ばかりは『僕』は利用されないように『私』は動く。

 

「私はある本が好きなんです。それはライ麦畑で捕まえて」

 

意味は分かりますよねと加持さんに話した

あなたは世界中で起こる何もかもがインチキに見えるのでしょうねとも

実際にネルフがしたことは世界中にインチキをばらまいた

自らの存在を誇示するためにネルフにとって都合が良くなる方向で

 



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タクシーの車内で

私と加持さんとの話はそこで終わった。

問題なのは今後の私の立場をネルフが警戒してくる

元々警戒されているから、今さらなのかもしれないけど

 

「では今日はこの辺りで事情聴取で終わるよ」

 

「言っておきますが、私はネルフは信用するつもりはない。彼を追い詰めたのはあなた達」

 

『僕』のことを利用するために今後もネルフは監視を行ってくる

抹殺することができるのであれば行いたいところだけど、下手な行動を起こすと『私』の立場が危険になる

様々なことを考慮に入れて行動することが必要になるのだ

問題にならないようにすることが極めて重要である

 

「とりあえず、またホテル暮らしをしないといけないわね」

 

お金がかかることを『両親』伝えるわけにはいかない

もしこの事実を伝えたら心配してこの街で同居しましょうと心配してくれる

私には今まで味わうことができない幸せであるが

警察署から出ると私は近くのバス停の停留所で待っていると、バスではなくタクシーが近づいてきた

そのタクシーの運転席に乗っている人を見て少し安心を感じた

タクシー業務というのは表向きのかたちで、実際には私とあるものを取引することで親しい関係にある

 

「乗っても大丈夫ですか?」

 

運転席の男性はどうぞというと私を車内に入れてくれた

後部座席に座ると彼がすぐに車を発進させた

 

「大丈夫だったのか?最近は君はいろいろと狙われているから気にしているんだが」

 

男性は心配そうな表情をしながら声をかけれてくれた

 

「少し状況は良くない傾向にあります。今後は何を仕掛けてくるか全く予測できないです」

 

私の言葉に運転している男性は怖いことだなと返答した

今後の展開がどうなるかは全く予測できない。

もしかしたらとんでもない大騒動になることも覚悟に入れなければならない

最悪の事態に備えて何か手段を用意する必要がある

問題はその時の利害関係がどうなるか。ネルフに『僕』は良い感情を持っていない

確かに今の『私』を作り出したのはネルフだ。そしてその上の上部組織であるゼーレである

彼らから見れば私は何を隠しているかわからないから、組織から狙われる暗殺対象になる

それでも真実離すつもりはない。私は『人によって作られた神様』だから

どちらにも傾向しない中立的立場で物事を判断する

それが今の『僕』に求められることであり『私』という存在価値でもある

 

「君に以前依頼されたことだけど、ネルフのガードはかなり高い」

 

「面倒なら抹殺する手もありますが、実行すると彼らから圧力があるのはわかっているので」

 

だから私は今も強硬な手段を取るつもりはない

今のネルフとはある程度の距離を保ちながらやり過ごす方向で進めようとしている

ただ、現実では状況がいつ変わるかは全く予測できない

もし危険な方向に向かうなら強引な対抗手段を選ばざる得ない時もあるだろう

そんなことは百も承知だ



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タクシーでの話

 

「例の件は考えてくれているか?」

 

運転席の男性からの質問に私は『決めていない』と回答した

『彼』から何度かしてみないかと提案されている内容である

ある『人物』と『組織』の調査のために潜入してくれないかというものだ

『彼』は私の利用価値を十分にわかってくれている。そして、『僕』の利用価値に関してもだ

それだけに私にとって『彼』はかなり重要な人物であることは間違いない

『私』は『彼』に連絡して必要に応じて銃の横流しをしてもらっている

そのおかげで少し値段はするが銃を手に入れることができているのが現状だ

もし『彼』から銃や情報が得られなければもっと問題になっている

私にとってもたらされる情報はまさに重要になっていることは間違いない

 

「我々にとって君は優秀な女性だ。いろいろと背後関係を知っているのだからな」

 

「あら?珍しいセリフね。あなた達も私のことを利用している。ネルフやゼーレと同じ」

 

「お互いにメリットがなければ我々との関係が続くことなどありえない。君はあのお方の何を持っているのか?」

 

「私はあなた達の上の人間。つまり彼にとってシルバーブレッドと同じ。互いに微妙な関係が継続している」

 

シルバーブレッド。つまり私と徹底的に交戦態勢に入れば『彼らの上の人間』にとって危険人物になる

つまりはお互い様の関係であることを分かっていることだ

運転席の男性はある組織の人間だ。ちなみにネルフでもなければゼーレでもない

基本的にはお互いで情報共有することで互いの領域に縛られることが無い関係を維持している

いつその関係が変化するかはわからないことであることは間違いない

だが現実を見ると選択肢はあまり残されていない

もしかしたらとんでもないトラブルに巻き込まれる

今は何が起きるかわからないのだから当然であることから、最悪の事態を想定して行動するなら

 

「わたしがあなたたちを手伝う理由をわかっているのかしら?」

 

本気を出せばあなた達の組織トップを殺せることはわかっているはずだと運転をしている男性に伝えた

こちらが本気を出せば、世界中のすべてを知っている『私の能力』を行使して『彼ら』を抹殺する

今はその時期ではないとしている。だがいつかは決断することが求められる

その時の決断に『僕』は後悔が生まれないように行動する

 

「もちろんだ。あの方からも君に強引なことをすれば我々の組織が潰されると警告を受けている」

 

「あなた達に私が協力しているのは管理人としてよ。そのことをあなたの上司にでも報告しておきなさい」

 

管理人。これは『神様の権限』を行使することができるという意味である

管理人として力を使えばどんなことでもすることが可能だ

もちろん『適切なタイミング』で『適切な相手』にしか使うつもりはない

 

「もちろんだとも。君の協力がなければ我々も困ることになるからな」

 

「組織を守るのも大変ね。でもこれだけははっきり理解しなさい。私はしつけができている利口な犬じゃない」

 

必要なら狂犬病にかかった犬のように好き勝手に暴れるわよと私は運転席の男性に伝えた

そんなことをしながら私はタクシーで第三新東京市立大学の正門前に到着した

 

「あなた達の上に伝えておきなさい。もし私を本気で敵に回すつもりがあるならどんな処罰でも食らうわ」

 

「我々にとって君が持っている様々な情報は貴重なものだ。そして本当の『真実』を知っている」

 

運転手の男性はだからあなたには絶対に手を出すことを認めていない

仮にそのようなことがあるなら我々も君の支援に回るようにと聞いているからなと彼は回答した

私はとりあえずクレジットカードでタクシーの運賃を支払うと降車した

 



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仲良しなどできない

とりあえず、私は大学で教師をしていてこの街での生活の保護者である高波教授の執務室に向かった

今の私の状況を報告しておいた方がまだ良いかもしれないと考えたからだ

高波教授の執務室のドアをノックする

 

「高波教授。今は大丈夫でしょうか?」

 

『良いよ。ただし来客中だけど』

 

その言葉を受けて私はではまた改めてお伺いしますと言ってその場から立ち去ろうとした

だがドアが中にいる人が面倒であると『神様の権限』で気が付いた。

私はすぐに逃げるようにしようとしたが、逃亡ができないようにされてしまった。

簡単に言えば5人のスーツを着用してサングラスをかけた人物たちに逃走ルートを封鎖された

 

「ネルフは大学生をいじめるのがお好みなんですか?それとも簡単にみ消せると思っているのでしょうか?」

 

「すまないね。君の行動を監視しろとうえがうるさくてね」

 

教授執務室にいたのは高波教授と加持さんだった

本気で私と正面衝突するつもりがあるのかもしれない

最悪の事態を想定して行動することで臨機応変に対応できる

 

「それじゃ僕は少し席を外すよ。君との話をしたくてここまで押しかけてきたみたいだから」

 

私は高波教授に迷惑をかけて申し訳ありませんと謝罪すると教授は私の保護者だから、

またトラブルになりそうなら黙っていないで相談してと言い終えると教授の執務室を一時的に退室した

残されたのは加持さん達のネルフサイドとの気まずい空気である

私はため息をつきながら、さきほどまで教授が座っていた応接セットのソファに座った

 

「何か気になることでもあるのでしょうか?何度も言いますが私を同行できるはずがないことはわかっていますよね?」

 

「もちろんだよ。だから強引に事を進めるつもりはないから、そこは安心してくれると助かるよ」

 

いくら加持さんであっても信用などできるはずがない。

『あの時』に『僕』は散々利用されてどん底に落とされた

今の『私』になって世界中のすべての真実を知っても、時々『悪い夢』を見てしまう

あの時のことを消すことなどできるはずがない

 

「それで、あなたは私を利用するために動いているのでしょうか?」

 

私の言葉に彼は君を利用するととんでもない罰を受けることになるから心配はいらないと返答した

どこまで真実なのかはわからない。組織の方針はそうであっても個人の考えは異なるものだ

必要なら組織の方針を無視して個人プレーに走る人物がいる

 

「シンジ君の関係者となるとネルフにとっても重要でね。特にシンジ君の両親である2人が」

 

加持さんの言葉に私は呆れてしまった。

自らの欲を満たすためにすべてを利用してきた人間はネルフには多すぎる

そんな人物がいる組織と仲良く手をつないでなどできるはずがない

私はバカな考えを持った人間が集まっているのがネルフなのかしらと言い返してやった

 



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多くの思惑

 

「君の言う通りなのかもしれないが、シンジ君は両親に会いたかったと思わないかい?」

 

あまりのバカげた加持さんの発言にあなた達はバカな考えしかできないのかとため息をつきながらこぼしてしまった

ネルフが犯してきた罪の重さを理解していないことは明らかだ

 

「あなた達、ネルフが彼に無理やり実行させた、あの恐ろしい計画の駒にされた彼の気持ちはどう思っているの?」

 

特にあなたは自らが真実を知るためにあらゆるものを利用してきたことも自覚しなさいと

私の言葉に彼はその辺りをつかれると本当に痛いところだけどと

本気で分かっているかどうかはわからない。ネルフ関係者とは敵対関係であるべきだと私は考えていた

『僕』は彼らによって『私』に代わってしまった。おまけに『神様の権限』まで無理やり押し付けられた

 

「知らない方が良いこともあると思います。ネルフが知りたいのは彼のことではない」

 

私はネルフが欲望で塗りつぶされた腐った組織であることを知っている

酷い組織であることは間違いない。ネルフの上層部は欲が大きく出していた

こんな社会を生み出すことは良くない

 

「良いことを教えてあげるわ。私はすべてを知っている。それをマスコミを使って公表しないのはまだ温情があるから」

 

でも追い込まれたらどんな方法を使ってでも、

マスコミに好き勝手に情報を流しても良いのよと強気の態度を示した

かつては強大な特務権限があったからこそ、情報封鎖はできていた

今はそんなことができるはずがない。私は『作り出された神様』なのだから

私は逃げることはもうしない。前を歩き続けることに集中するだけだ

たまにかつての『僕』のような考え方をするかもしれないけど、今はそんなことは少なくなった。

障害物があるならそんなものは破壊するだけで良い

自らの道は誰かによって作られたものを歩くのではない

自らが選択した道を、どんなに険しいものでも歩くことが求められる

それができなければ私は自分で『針路』を決めることはできるはずがない

 

「やっぱり、嫌いな人間ね。彼が残した最後の救いの道を破壊して自らが世界を操ることができるようにした」

 

『僕』は最後のチャンスとして彼らを生きる選択肢を用意したのに彼らは自らの利益のために動いた

もしこうなることが分かっていたなら、もっときつい仕返しをしていた

今の『私』はそれをするわけにはいかない。

 

「私は飼い犬とは違うの。あなたならその意味は分かるわよね?必要なら私は真実をマスコミに流してあげるわ」

 

そんなことをされても大手のマスコミは特務機関で隠ぺいはできるかもしれないが、

スクープや不祥事が好きなメディアとなると話は大きく変わってくる

私は加持さんがゼーレと関係があったことは知っている。

その情報ですら利用することも問わないつもりで行動している

彼はサードインパクトを起こすきっかけになるアダムを持ち出した

命令されたからそういう行動をしたのではない。

彼自らが知りたいことがあるから、互いに腹の探り合いをしながらお互いの利害関係が一致した

彼もメディアに集中攻撃にぶち当たることは間違いない

 

 

 



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腹の探り合いとその先・・・

私は加持さんにそう伝えると高波教授の執務室を退室するために応接セットのソファーから立ち上がった

 

「私は彼が私に命令してくれたことを実行しているだけよ」

 

『僕』はネルフに散々利用されてきたのだから、

復讐の1つくらいしても良いかもしれないけど。

今のネルフやゼーレの黒い闇を抱えている人物たちが生み出した神様は私なのだから、

そんなことをするわけにはいかない

神様である私が裁くことはしてはいけないことであり、

罪人を裁くのは人々が守っている法によって正当な裁きでなければいけないのだ

『僕』が好き勝手に『神様の権限』で裁いてはいけないことははっきりしている

 

「私の目の前でトラブルが起こされたら、そのトラブルがネルフ関係ならあらゆる方法使うわ」

 

加持さんに私は気をつけることねと言うと高波教授執務室から退室した

『私』の進路が妨害されるならあらゆる手段で反撃に出ることは考えている

あらゆるメディアにネルフの暗い過去に関する情報を出元が分からない形で流すくらいのことは当然だ

 

「まったく厄介な問題が持ち上がったみたいだね」

 

執務室のドアの横では高波教授が立っていた

私はさすがはこの街で保護者をしてくれていると思った

今はもう『碇シンジ』ではない証がこの大学に存在する

だから『僕』は『私』になっても平穏に過ごせていた

今まではの話だが。現状は大きく変わったことは間違いない

 

「迷惑な話です。私としては抹殺したいところです」

 

私の言葉に教授は苦笑いをした

高波教授はこの街では私の保護者をしてくれている

もう大学生だから保護者は子供ではないのでなくても良いことなのだが

私に何かあった時にすぐに連絡できるように緊急連絡先が高波教授となっている

『今』までは教授に迷惑はかけてこなかった

しかし最近になってネルフが介入してくることを考えると、

私はかなり危険な状況下に置かれることは間違いない

 

「とにかく、君は気を付けた方が良いよ。特務機関であるネルフは必要なら法律なんて無視するからね」

 

私は教授に少しだけネルフの内情を話をしている

もしものことを考えて、警戒してもらうためには必要なことだから

すでに『私』が『僕』であるかもしれないと思っているはず

私を追い詰めるために大切な人を巻き込んでしまうことは十分考えられる

そんなことにならないことを祈っているが、現実というのは厳しいものである

ネルフは私の利用価値を考えて暴走する人間は必ずいる

私利私欲の塊こそが『ネルフ』という組織なのだから

だから私はネルフに警告した。

こちらはネルフの真の活動目的がゼーレが企てたあの計画であることを知っている

それをマスコミに流されたくなければかかわるなと

必用なら私はマスコミやインターネットを使ってばらすことをする

 

 



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いつになったら

私はため息をついてしまう。

平和な場所だったこの学び舎でも私の行動を妨害してくる組織が増えている

迷惑な話なのは分かっている。いつかはこんなことになるのかもしれないと想定していた

だけでここまで急激な川の流れと同じように流れが変わるとは驚いていた

 

「本当に迷惑なことばかり。何者かはわからないけど、背後で動いていることは間違いないわね」

 

ここまで急な動きは明らかにおかしい

『僕』のことを探り出して『真実』を調べようとしていることは間違いない

問題はその人物か組織がどんな立場の関係者かだ

ネルフということは考えられない。公式にこちらにアプローチをしている

つまりゼーレの関係者かもしれない。まだ憶測でしかないが

 

「どこの誰かは知らないけど、お礼はしっかりとしてあげないと」

 

お礼とは簡単に言ってしまえば仕返しのようなものだ

攻撃されたからと言って、何もしないで黙っていることなどできるはずがない

私を攻撃してきた組織を調べ上げて、関係者を抹殺する

それ以外に対応する方法がないことはわかっている

今の平和な暮らしを守るためなら手段を選ぶ余裕や時間が無いことははっきりとしている

 

「どんなことをして報復攻撃を始めようかプランが必要ね」

 

『僕』は少しぐらいなら『あの時』のことを知っている人物に攻撃を仕掛けることを考え始めた

『僕』だった頃は飼い犬のようにおとなしかった

でも今は大きく異なっている。必要なら飼い主ですら制御できない狂犬のような行動をする

それくらいの覚悟がなければ『僕』が『私』として生きることは難しい

 

「誰が私に仕掛けようとしているのか早急に調べないと」

 

もしこの一連の流れに『あそこ』が絡んでいるなら面倒になることは確実だ

『僕』が知る限り、『あそこ』の連中は戻っていないはず

つまり一部の過激派が存在していることを示している

事実なら早く『処置』しなければこちらの生活に影響も出てくる。

それに私だけでなく、大学の大切な友人に危害が加えられるかもしれない

そうなる前に問題解決が必ず必要な条件になってくる

 

『ピーピーピー』

 

私の携帯電話が着信を告げていた

相手は公衆電話からかけていることが分かった

つまり私に電話をしてきたのは発信者が誰なのか知られたくないようだ

私はあえて電話に出ることはなかった。

理由はシンプルで、どこのだれかが知らない人物にこちらをマークされるわけにはいかない

何者かがわからないならなおさらである

 

「なんでこんなに問題が山積してくるのか知りたいわ」

 

同じことばかりを考えてしまう

『私』は平和な生活をしたいだけなのに、『僕の過去』がまるで鎖で結ばれているようで離れてくれない

何とかしてこの状況を乗り切りたいのだが。

本当に苦労する状況に追い込まれつつある

迷惑であることはわかっているけど、こちらが下手に動けば監視が強化される

そういう意味では今はいつもの『日常』で過ごすことが求められる

 

 

 



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