こんなありふれもありえた (ラプラスの悪魔)
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こんなシチュエーションだったら?
case1 「地球はグッド・トータスはバットエンド」


原作通り、月曜日の朝遅刻ギリギリにハジメが登校して、

 

檜山達にバカにされクラスメイトには嫉妬やら侮蔑の視線を向けられたり、

 

白崎香織に話しかけられて、八重樫雫や天之川光輝と坂上龍太郎に苦笑いや曖昧な返答で濁しつつ

 

授業開始と共に夢の世界へ旅立ち、昼休憩時に起きるところまでは変わらない。

 

昼休憩のざわめきで、目覚めたハジメは、

突っ伏していた体を起こし、席から立ち上がり教室から出ていった。

 

(そんなハジメを追って白崎香織が八重樫雫と共に「南雲君捜索」をしに教室を出ていった)

 

教室から、購買へ昼食を買いに出ていった生徒、職員室へと戻っていった畑山先生。

 

普通に教室で弁当を食べていた殆どの生徒(檜山達や天之川含む)。

 

幼馴染の二人が居ない事に気がついた天之川光輝と坂上龍太郎が二人を探しに

教室を出てグラウンドへ出たその時、天之川光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れた。

白崎香織を探すつもりでついてきていた檜山達4人組もその幾何学模様の範囲にいた。

 

グラウンドには前日偶然にも大雨が降っており水が乾ききって居なかったため他に人は居なかった。

 

その光り輝いた紋様-魔法陣-が光を増して雷光のような光を発したと同時に

その場に居た6人は光に飲み込まれ、その光が収まった時にはそこには誰の姿もなかった。

 

 

(光輝だけに光り輝いた魔法陣に飲み込まry

 

 

 

・・・というトータスへ拉致されたのが6人だけだったという場合。

 

 

 

ちなみに私のこの後の想定では、

6人が消えた後、ハジメ君はやはり突撃女王白崎香織さんに捕まり仲良く3人でご飯を食べて戻ってきて・・・6人が居ない事にやっと気づくとか何とか?

 

原作設定活かすと、

 

この状況で荒れそうなの中村恵里さんぐらいだけなんですよ。

 

 

光輝・龍太郎・小悪党4人が居なければ、

 

ハジメ君と香織さんの仲は簡単に進展しそうだし、

雫さんも「オカン」と呼ばれるほどの気遣いしなくて済みそうだし。

清水君も「ひたすらオタク隠し」による自己否定モードに突入してなさそうだし。

 

ただそれは最初から居なかったのか(高校入学時から)途中で消えたのかで、

まぁ色々問題やなんやかんやはありそうですが、

クラスメート全員(数人除く)+社会科担当の先生の約30人が消失したというよりは、社会的な認知度も何もかも違いますしね?

(教室で消失してないので特定失踪者とでも扱われそうなぐらいです。)

 

 

後書きにも書いてあるとおり、この6人地球に帰ってきませんよ!(ぇ

 

だって、オルクス大迷宮・ライセン大迷宮・氷雪洞窟・ハルツィナ樹海・メルジーネ海底遺跡・グリューエン大火山・バーン迷宮(神山)

どの迷宮も絶対クリア出来ませんし、この6人。

 

ていうか大迷宮挑む前に ↓(後書きに)




おまけ。

勿論、他のクラスメート(檜山達以外)がいなくても天之川光輝君は「理想の勇者ムーヴ」をするのでトータスは救えません。
檜山達も、天之川光輝に従って美味しい汁だけ啜ってやろうムーヴなので当然すぐ亡くなります。

その後、本来ならエヒトが地球で神様遊戯始める筈なのですが、呼んだ筈の勇者とその同胞があまりにも幼稚で醜かったため、「こんな人間しか居ない星で遊んでもつまらないな、別の所を探すか・・・」と
興味を失ってくれたために地球は救われます。
(天之川君、地球は救ってるよ!地球"は"!)


※Case3.4とサブタイつけたので1.2も後付ですがサブタイつけます。


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case2 「愚者の行動、そしてその結末」

case1の6人のみ召喚されたってのを無視して、


原作通りのメンバーが召喚され、

イシュタルによるトータスの現状説明(事実無根もいいとこ)が行われ


「天之川光輝の迷惑カリスマSuper」によって


全員が戦争参加することになった後のif。


はっきり言って鬱ストーリーです。
(読みたくない方はブラウザバックを推奨します。)

似たようなバットエンドを書いてた方がいたかも知れませんが、

個人的にはもっと救いがないように書いたつもりです。


トータスという異世界に召喚され、説明を聞きながらも

 

 

ハジメ君は知恵を働かせつつ誰よりも現状認識をしてました。

 

 

ステータスプレートが配らられ、

 

 

ハジメ君が「錬成師の最弱ステータス(無能の烙印)」を与えられ、

 

 

畑山先生に上げて落とされる辺りまでは原作通り。

 

 

 

ただ、その後の展開が、あまりにも"致命的過ぎた"。

 

 

ハジメ君は誰よりも"努力は"していた、が如何せん目に見える"結果が伴わなかった"。

 

 

 

その上での訓練場での、自主練中に檜山達小悪党4人組からのイジメと言う名の暴行。

 

 

本来なら、ここで訓練場に居たクラスメートの誰かが止めれば史実通りに進んでいたのかもしれない。

 

 

その後の人目につかない方への連れ出されてのさらなるイジメや暴力、傷害。

 

 

抵抗するにも1:4という人数の比率、トータスに召喚されて得た力の差。

 

 

さらにはトータスに召喚される以前からのハジメ君の非暴力主義。

 

 

抵抗されると人数差で勝ちに行くバカは、

抵抗されなくとも、やりたい放題やるのがバカなので、

無論、何事もなければ終わることなく続ける。

 

 

原作通りなら、ここで"白崎香織・八重樫雫・天之川光輝・坂上龍太郎"が来ることによって回復魔法で治る程度の怪我で済んだ。

 

 

・・・筈だった。

 

 

しかし何の因果か、それとも誰かの作為か、神様のイタズラか。

 

 

それから半刻程は誰の邪魔も入らないままハジメ君への暴行は行われ続けた。

 

 

※半刻=1時間です。

 

 

最早、意識も混濁し現状を認識できなくなりかけていたハジメの聴覚に届いた音。

 

 

 

「・・・なぐ・・・・くん!!!」

(何処かで聴いたことが、ある声・・・・・音?)

 

 

「あな・・・・、な・・・をやって・・・・!!!!」

(誰かの・・・怒ってる・・・ような・・・?)

 

 

その声?音を聞きながら、

 

 

「しら・・・・さ・・ん?、やえ・・・が・・・・さん・・・ゴメ・・・・ン」

 

 

と口から息を吐き出すかのような音を最後にハジメは意識を失った。

 

 

その後、

 

 

香織の限界を超えた治療行為も応急処置程度にもならず、

 

 

龍太郎・光輝・雫によって運ばれた医療室(国家在住の治癒師がいる)での、

 

 

懸命の治療も受けた表面的なダメージは回復に至っても、内面までは回復に至らず。

 

 

中世程度の医療技術(魔法があるため)しかないこの世界では手の施しようがなかった。

 

 

近代の技術で診断すれば、

「全身複雑骨折・内臓の一部損傷・重度の擦過傷・重度の火傷(III度熱傷)」による意識不明の重体。

 

・・・すなわち植物状態とでも結果が出ただろう。

近代の技術があるならば、延命処置による回復も待てたかもしれない。

 

 

 

が、文化・医療レベルが中世程度の異世界であり。

 

 

さらに言えば、「無能の烙印」を押されたハジメが被害者であることが災いした。

 

 

国も、教会も、誰も本気で(一部の心ある人は助けようとした)助けようとしない。

 

 

 

結果。

 

 

 

 

・・・・1週間後(本来ならオルクス大迷宮に訓練に行って帰ってきてる頃)には、

 

 

 

異世界の地で、ハジメは再び目を覚ます事は無かった。

 

 

香織は雫とともにハジメの側で涙を流し続け、

 

 

龍太郎は二人を見守りつつも、助けようとしなかった自分に憤怒し続け、

 

 

光輝は・・・全てに絶望していた。

 

 

 

 

 

光輝が自分が救う!みんなを救う!この世界も!と宣言した、

 

自分なりの正しさが、「"世界に否定された"」のだから。

 

 

龍太郎は何のために自分自身を鍛えていたのかすら分からなくなっていた。

 

誰かを守り、誰かを助けるためではなかったのか?と。

 

 

雫は香織のハジメへの思いを知るが故に、世界の矛盾を、親友の想い人を、

 

自分にも気を遣ってくれた優しい人を失った世界を許せなかった。

 

 

香織は伝えたかった想いを告げることが出来ずに、永久の別れを迎えた自分を許せなかった。

何故、もっと早く気持ちを伝えなかった。

何故、もっと早く助けに行けなかった。

何故、もっと彼の気持ちを理解しようとしなかった。

何故、自分には彼を治すことが出来なかった。

何故、アイツラ(檜山達は)彼を、亡きものにした。

何故、クラスメートは誰も、彼を助けなかった。

何故、自分たちはこんな世界で、

何故、何故、何故・・・・・と。

 

 

そして、その瞬間。

 

 

 

「"世界から音が消えた"」。

 

 

 

限界を超えた「絶望・憤怒・怨嗟・怠惰」等の感情が彼ら4人の "ナニカ"を壊した。

 

 

手始めに、彼女らは

 

 

自分のした行いから逃げようとする小悪党4人組を雫が達磨状態に切り捨て、

ジワジワと斬り刻むという行為を一時間かけて行い、

それを香織が半日掛けて治してまた刻むという行為を繰り返し行い続けた。

 

 

それを非道な行いと止めようとした、クラスメート(主に男子)は

龍太郎と光輝によって即座に首を切り捨てられるか、腹部に穴を開けられ絶命した。

 

その行為を仕方ないと傍観していたクラスメート(ほぼ女子)も、

同様に切り捨てられるか、首を折られて絶命した。

 

 

畑山先生は、ただ泣きながら「南雲君と一緒に私も弔ってほしい」と頼んだので

4人で墓を作り安らかに眠りにつかせた。

 

 

そして自分たちを戦争の駒扱いし、ハジメを助けることすらしなかった王国や教会や神、

そして世界ですらも破壊しつくさんがために、

 

 

光輝が「世界が光に染まるほどの神威」を、

龍太郎が「空気すら存在しなくなるような一撃」を、

雫が「空間すら切断するような斬撃」を、

香織が「存在する生命の全てを一切を狩り尽くす魔法」を。

 

 

 

 

世界に向けて解き放った。

 

 

 

 

そして、トータスという名の世界は神モドキ(エヒトルジュエ)すら欠片も残さず

4人とともに消え去った。




原作通りだと、イジメイクナイ!
から助かって、

でも、光輝のご都合主義やらハジメ君の事なかれ主義(?)や雫さんのフォロー?のおかげで普通に皆でオルクス大迷宮行って・・・

檜山の裏切り(嫉妬)でハジメ君が落ちて魔王になるわけですが。

いや、流石にこのifは自分で書いてて気分重くなりましたけど。

「身の丈に合わない力」をいきなり持たされたイジメっ子が、
加減なんてわかるはずもなくて・・・て感じで思い浮かんでしまった話です。

あ、エヒトルジュエは概念魔法で別の空間
(空間転移で逃げれたんじゃないの?とかツッコミは受け付けません笑)


case1.2どちらもトータス出身メンバー(ユエとかシアとかetc.)出てませんけど。
どっちも出るまでもなく、救われてないお話です。
魔王ルートハジメさんor
他の方が書いておられるようなハジメさんの代わりがいないと救われないので。

※Case3.4とサブタイつけたので1.2も後付ですがサブタイつけます。


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case3 「断罪の日」

エヒトによってトータスに召喚された、
クラスメイトと畑山先生達。


彼らと共に、原作におけるハジメ+嫁'S+遠藤くんだけが

トータスにおいてエヒトを倒し日本に無事帰った後の
経験と能力を持っていた状態で別に召喚されてたらどうなる?と
思い書いてみました。


(平行世界でも別の確率世界線でも時間のねじれでもいいや・・・想像にお任せします・・・おぃ)


※最初は、ハジメも嫁'Sも全員がアーティファクトで姿を見せて無いという設定でございます。

(ユエ・シア・ティオ・レミア・リリアーナ・おまけにミュウ)のトータス勢は・・・どう登場させようかしら?(考えとけよw


本文内の【名前:セリフ】内の会話は念話かアーティファクトで上記の人にしか聴こえないものと思ってください・・・。

一応、ハジメ君と嫁'S(召喚組)は同時に存在することになるので、
姿を現して【】を外しても「名前:セリフ」が別に召喚された組、「」のみが
通常召喚組と思って読んでいただけると。

※6/9 救済要素や大幅な変更等をしました。
誤字、脱字などの修正も行いました。
文章自体も一部変更、修正してます。
流れと結末は変わってません。

6/30 後書きのクロスオーバー構想を取り消し線化+活動報告へのリンクを貼りました。


この広間にいるのはハジメ達だけではなく少なくとも三十人近い人々が、

ハジメ達の乗っている台座の前にいたのだ。

まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好で。

 

 

彼等は一様に白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏い、傍らに錫杖のような物を置いている。

その錫杖は先端が扇状に広がっており、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられていた。

 

その中の一人の老人と表現するには纏う覇気が強すぎる、ジジイ(笑)が

 

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 

と言って、説明のために大広間へと案内した。

 

 

【香織:ハジメ君、これって、まさか過去のトータスだよね?】

【雫:どう考えても、召喚された直後の時よね。】

【ハジメ:さて、どうするか。】

(といつつトータス中にクロスビットを飛ばしてます、この後の展開のため。)

【遠藤:さっさとエヒト倒して帰りたいかなぁ・・・どうする南雲?】

【愛子:相変わらず私、残念な扱いされてますね(涙】

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ここからメイドさんが出てくるまでは変わらないので割愛。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

とイシュタルが説明を始めた。

 

 

・この世界はトータスと呼ばれている。

・トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。

・人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。

・人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

・戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。それが、魔人族による魔物の使役だ。

・魔物とは、野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだと言われているが、正確な魔物の生体は分かっていない。そして、それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。

・で、数の暴力で人間族は滅びの危機を迎えているから助けてください(エヒトさまぁ!)

 

 

という訳だ。

 

 

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。

人間族が崇める守護神で、聖教教会の唯一神にしてこの世界を創られた至上の神。

このままでは人間族は滅ぶと、それを回避するためにあなた方を喚ばれた。

あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。

召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。

あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、

〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 

どこか恍惚とした表情を浮かべているイシュタル。

 

【香織:相変わらずイシュタルさんのトリップぶり気持ち悪い。】

【雫:香織、もうちょっとオブラートに。・・・いや確かに否定できないけど】

【遠藤:いや、あの時は混乱してたからだけど・・・これは流石に無理だよなぁ】

【愛子:あはは・・・・(笑うしか無いですね、他に何も言えない)】

【ユエ:・・・これが、愛子とティオが爆殺したヤツなの?愛子、ティオGJ!】

【シア:本当に気持ち悪いですぅ〜。見てくださいよ、鳥肌が・・・。】

【ティオ:教会爆破の件は愛子の心にダメージ与えてるから控えておくれ、ユエ】

【リリアーナ:何で、こんな教皇を支持してたんでしょうね、当時の私は・・・】

【ミュウ:気持ち悪い笑顔なの!〝どんなぁー・しゅらーくぅ〟でやっちゃっていいなの?】

【レミア:あらあら・・・ミュウったら・・・うふふ。】

【ハジメ:さて、天之川の暴走から香織達が同意して全員戦争参加になるタイミングに合わせて舞台を始めようか】

 

 

(先程飛ばしたクロスビットで、既にトータス中の空一面に現在の状況が生中継されている。が、ここにいる狂信者と召喚された面々は知らない。)

 

 

 

「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい!きっと、ご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」と怒る愛子先生。

 

 

 

それに対して、イシュタルは言い放った。

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です。」

 

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」と愛子先生が叫ぶ。

 

 

 

「あなた方を召喚したのはエヒト様です。

我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、

あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということになりますな。」

 

 

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

 

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

 

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

 

「なんで、なんで、なんで……」とパニックになる生徒達。

 

 

未だパニックが収まらない中、光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。

その音にビクッとなり注目する生徒達。

光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。

この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。

それを知って、放っておくなんて俺にはできない。

それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん?どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」と ギュッと握り拳を作りそう宣言する光輝。

無駄に歯がキラリと光る。

 

 

 

【ハジメ:やっぱ、気持ち悪いなこの天之川。】

【雫:・・・言わないであげて、ハジメ。気持ちはわかってしまうけど。】

【香織:私はこの時点でもハジメ君の事しか見てなかったんだなぁ(照】

 

 

 

同時に、彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。

絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。

光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。

女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。

 

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

 

「龍太郎……」

 

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

 

「雫……」

 

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

 

「香織……」

 

 

いつものメンバーが光輝に賛同する。

後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。

愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。

 

 

 

【ハジメ:みんな準備はいいか?さっさとここからエヒト討伐して元の世界に戻れるように作戦開始するぞ?】

 

【ハジメ:まず、ユエ・シア・ティオで "アルヴ"を技能封印して拘束して拉致って来てくれ。そのためのアーティファクトも渡す。

そして、俺・香織・雫・愛子・リリアーナと遠藤でこの場を制圧する。

レミアとミュウはそのまま姿を隠したまま〝触るな、この変態!〟で身を守っててくれ。 アルヴを無力化してここを制圧したらそのままエヒトを殺りに行く。】

 

 

【嫁'S+遠藤:了解!(よ、です、ですぅ、なの!、なのじゃ。)】

 

 

 

「ハジメ:はいはい、茶番はそこまでにしとけ。イシュタルと天之川。」

 

 

 

(このセリフと共にアルヴ拉致組はユエの天在で魔王城へ)

 

 

「雫:そこから一歩も全員動かないようにね・・・。斬るわよ?」

 

 

「香織:斬りきれなくても大丈夫だよ雫ちゃん!私が分解しちゃうから!」

 

 

「愛子:一応、手荒なことはちょっと・・・。抵抗されたら仕方ありませんが。」

 

 

「リリアーナ:これを何とかしないと、王国は良くなりませんね・・・。」

 

 

(遠藤:相変わらず俺は普通に認識されないのなぁ・・・、

多分暴れるだろう檜山達と天之川とイシュタルと狂信者を無力化しとくか。)

 

 

 

「南雲ぉ?!それに雫と香織と愛子先生まで・・・?あれ何で二人?」と天之川。

「え?私があそこにもあれ?あれ?」と愛子先生。

「南雲君と香織と私と愛子先生が、もう一人?何が起こってるの?」と雫。

「南雲君と私が二人?(あっちのハジメ君もカッコいいなぁ・・・)」と香織。

「え、白髪眼帯に義手って凄い厨二っぽいのが・・・僕?」とハジメ。

「え?何が起こってるの訳がわからない・・・」とクラスメイト達。

 

 

 

「ハジメ:まず、イシュタルとその狂信者共。お前らは戦争も人殺しも経験したこともない、異世界の人間を「エヒト様が召喚した神の使徒」として都合よく利用するつもりだっただろう?

戦争に参加しなければハイリヒ王国でも面倒をみないで放り出すつもりで。

否定や無駄な事は言う必要はない、全てわかっているからな。」

 

 

「ハジメ:そして、そこの勇者(笑)の天之川。お前がやった行動は異世界に来て不安になっているクラスメイトへの「殺人教唆」だ。

愛子も言っていたな?「戦争に参加させるなんて許さない!」と。戦争ってのは、人と人の殺し合いでしか使わない名称だ。

謀略・罠・騙し合い何でもありなのが戦争だ。

・・・お前に人が殺せるのか?

そして、それはお前にとって「正しいこと」なのか?

勿論、元の日本でも直接の殺人・幇助並びに教唆は殺人罪と同罪だ。

ああ、イシュタルと同様反論は必要ない。お前には出来ないし責任も取れないとわかっているからな。」

 

 

「な!・・・何を!」とイシュタルと天之川が言った瞬間には、

 

 

遠藤によって狂信者共々無力化されていた。

 

 

 

「ハジメ:そしてこの映像を見ている、

ハイリヒ王国の国民と王エリヒド・S・B・ハイリヒ!

ヘルシャー帝国の国民と皇帝ガハルド・D・ヘルシャー!

フェアベルゲンのアルフレリック・ハイピスト並びに長老集!

ガーランド魔王国のフリード・バグアー・並びにその部下共!

その他の各国領主や町長や責任者や他種族のものもよく聞け!」

 

 

 

「え?は?ん?なに?意味分かんない」と混乱しているクラスメイト達と愛子先生。

 

 

 

「ハジメ:このトータスという世界はもう間もなく滅びる。

理由は邪神エヒト並びにその眷属である魔人族の王を名乗ってるアルヴヘイトのせいだ。エヒトはこの世界で人間族・魔人族・亜人族を使った戦争というゲームをしているに過ぎない。どちらが勝とうとも負けようともどうでもよく、時間を掛けてまたやり直す。

その繰り返しをずっとしてきたに過ぎない。

 

 

と、言われても口でこう言っただけじゃ信用は出来ないよな?

だから今から、こちらを見てる映像とは別の映像を見せてやる。

もちろんトータス中だけじゃなく、ここにいる全員にもな。」

 

 

 

そうして流された映像はかつての魔王城での戦い。

ミュウやレミア・クラスメイト・愛子やリリアーナが人質に取られて

ハジメや雫や香織や鈴や龍太郎やティオやシアが必死にユエを取り戻すための決死の戦い。

そして、エヒトが語る、今度は異世界で遊んでみようとい地球を標的とした発言。

並びに、アルヴが語る三日後の「神山」からの使徒の軍勢の召喚してこの世界の生き物を皆殺しにする発言。

勇者(笑)な光輝がフリード・恵里・魔人族と共に「神域」へと消えていく。

そして、ユエを奪われたハジメによる映像アルヴの存在の抹消。

 

 

そこで映像は終わった。

 

 

「ハジメ:これが、この世界の真実だ。今の映像だけじゃ信じられないって奴もいるだろう?だからこれからさらなる証拠を見せてやる。」

 

 

 

(と、そこに無力化・並びに拘束されたアルヴがユエ・シア・ティオと現れる。)

 

 

「香織:動かないでね、アルヴヘイトさん。」

「雫:動いても構わないわよ?どちらにしても香織による分解か私による存在の切断か、 ハジメによる存在の抹消。そのどれかによって消されるだけだから。」

「愛子・リリアーナ:抵抗してもしなくても同じですけど・・・ね?」

 

 

 

そして何も言葉を発することも出来ずアルヴという神の一柱は原作通り、

存在の否定という概念でトータスいや世界から消え去った。

 

 

 

「ハジメ:もちろんこの映像をエヒトも見ている筈だ。今から俺たちが邪神エヒトをこの世界から抹消してくる。その映像もそのまま流すので見てくれて構わない。」

 

 

そう言ってハジメは〝導越の羅針盤〟とクリスタルキーを使って、「神域」へのゲートを開いた。

そのゲートに入っていく、ハジメ・ユエ・シア・ティオ・雫・香織そして遠藤。

(流石に神と戦う力は無い愛子・レミア・リリアーナ・ミュウはお留守番)

 

 

神域での戦いはまぁ長くなりそうなので割愛。

 

 

とりあえずハジメさんの一人軍隊と

雫の望むもの切断能力と

香織の使徒化による分解能力並びに〝襲奪の聖装〟と〝回天の威吹〟と

ユエの魔法に関するチートっぷり(概念魔法含む)と

ティオの黒神龍化無双と

シアのバグウサギによる物理的な排除と

遠藤のアビスゲート卿(対魔王戦:深度Ⅴ+元からのステルス無双)で

神の使徒やその他の魔物等などがあっさりと倒されたというだけ。

 

 

そしてエヒト自体も「神殺しの魔王とそのチート嫁+さりげなく人類最強」によって

あっさりと動きを封じられ、魂もその存在も「神域」すらも世界から抹消された。

ついでにトータスの方にいた神の使徒もあっさり消されてます。

 

で、無事元の場所(教会の総本山)に戻ってきた。

 

 

 

「ハジメ:これでこの世界も、地球も何の問題もなく続いて行く。

あとはこのトータスの住人であるお前ら自身の選択だ。

魔人族と争うも人間同士で殺し合うも、亜人を迫害し続け滅びの道を辿るも、共存の道を歩んで協力しあい生きていくも、好きにしろ。」

 

 

「リリアーナ:邪神は消えました。これから先は人が自ら選択して未来を進まなければならないのです。ハジメさんの言う通りどう生きていくかその真価が問われるのです。」

 

 

「雫・香織・愛子:あ、でも流石に信仰してたものが何も無くなったというのは良くないので。邪神エヒトへの反逆者と言われていた、本来はエヒトからの支配の解放者ミレディ・ライセンさんが貴方達の行く末を見守ってくれてるのでそこは安心してください。」

 

 

(そのセリフと同時にユエとシアがライセン大迷宮から、ミレディを拉致してきた)

 

 

「え?ぇ?あのクソ神消えたの?マジ?え?も~最高だよ君たち♪

このミレディ・ライセンちゃんが花丸あげちゃうぞ♪嬉しいでしょ?うりうりぃ♪」

と煽りつつも笑顔なニコちゃんゴーレムなミレディ。

 

 

 

「ハジメ:ああ、シア・ティオ・レミア・ミュウ・リリアーナそしてユエは

この世界にも別に存在しているはずだが、どんな選択の結果になろうと

俺の側に居ないことは許せないので、こちらの世界からも消えて(一緒に来て)もらう。」

 

 

 

「ハジメ:という訳でトータスは救われたので映像はここまで。」

 

 

 

という発言の後、この世界のシア・ティオ・レミア・ミュウ・リリアーナ・ユエは

召喚された本来のハジメの世界のハジメの家へと送られた。

(魔王ルートたどった状態の記憶と能力をもった状態に書き換えられた上で。)

 

 

と、同時に。

 

 

「ハジメ:ミレディ・ライセン。相変わらずウザイけど、あなたに敬意を。

幾星霜の時を経て、尚、傷一つないその意志の強さ、紛れもなく天下一品だ。

オスカー・オルクス。ナイズ・グリューエン。メイル・メルジーネ。ラウス・バーン。リューティリス・ハルツィナ。ヴァンドゥル・シュネー。

あなたの大切な人達共々、俺は決して忘れない。頑張ってくれ世界の守護者。」

 

 

「ユエ:……ん。なに一つ、あなた達が足掻いた軌跡は無駄じゃなかった。これからは守護者として頑張って。」

 

 

 

「ハジメ+嫁'S:貴方達の望んだ自由な意志の下に生きていける世界をよろしく!」

 

 

 

ミレディに世界を監視するためのアーティファクトや、天罰的な行動のためのバルスヒュベリオン改・その他干渉するためのアーティファクトや神水や魔力タンク等諸々の支援をしつつ、ライセン大迷宮へ送り返した。

 

 

 

 

「ハジメ:で、だ。この世界は無事救われた訳だが。

この場にいる狂信者どもは流石に生かしておくわけにはいかないよな?

お前らはエヒトの名の元にやりたい放題やってきたわけだろ?この豪華な装飾やその服装を見れば誰でもわかる。この意見に反対な人は?」

 

 

「嫁's全員+ミュウ:異議なし!(よ、なの、ですぅ)」

 

 

「ハジメ:はい、満場一致で狂信者共にはエヒト達同様に存在を抹消させてもらいます。(導越の羅針盤を使いながらエヒトの狂信者を一塊に集めて、ポイッとな。)」

 

 

 

給仕に来ていたメイドさん達は何が起こってるか分からないまま真っ青な顔をしてガクガクブルブルしているか、または気絶していた。

 

 

 

あとはこの場に残っているのは、召喚されたクラスメイトと達と愛子先生だけ。

 

 

流石にやることは終えて邪魔されない状況になったので拘束は解除されている。

 

 

 

そう、エヒトを排除しアルヴを排除し狂信者共を排除し、この世界の住人に自由な意思の下で生きていけるという部分は、

自分たちや本来のハジメ達が再度召喚されないためや過去(?)に関わった人達が不遇な想いをしないための余談でしかない。

 

 

 

 

『"本題はここからなのだ!"』

 

 

 

 

そう、ハジメ・香織・雫という地球勢の"断罪"はここから始まるのだ!

 

 

 

「ハジメ:俺たちも自分たちの本来居た場所にさっきの手段で(クリスタルキー)帰れるし、お前たち全員を元の地球に返すことも出来る。」

 

 

 

魔王様なハジメがそう言った瞬間、今まで何が起こってるかわからず居たクラスメート達は、

 

 

「ホントに帰れるのか?」

「マジでか!?よくわかんないけど嬉しいよ!」

「南雲君?でいいのかわからないけど、ありがとぅ・・・」

 

 

とある者は喜び叫び、ある者は泣きながら感謝の声をあげた。

 

 

 

「ハジメ:話は、最後まで聴くように。

返すことも出来ると言った。が、 このまま全員そのまま返すことは出来ないし、しない。」

 

 

「ハジメ:これからする話を終えた後に、俺が指定する者以外の全員のこの世界で得た能力や技能は一切使えなくする。 これは、エヒトによって召喚されたときに「言語理解」という異世界でも日本でも通用する技能も含めてだ。そして、トータスに召喚されたという記憶も消させてもらう。

 

 

さらに、今から名前を告げる者は元の世界へと送り返しはしない。

 

 

 

 

 

 

 

心の準備はいいか?今から言うぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之川光輝!中村恵里!檜山大輔!斎藤良樹!近藤礼一!中野信治!この6人だ!」

 

 

 

 

 

 

「何でだよ!元の世界に戻してくれよ!」と小悪党4人組が叫ぶ。

 

 

「何で、僕が・・・?」と恵里。

 

 

鈴がどうして?という顔で恵里とハジメを見ている。

 

 

「どういうことだ!出来るならやってくれよ!それはおかしいだろ!?」と天之川。

 

 

龍太郎と召喚された雫と香織も不思議そうな顔で魔王なハジメを見ている。

 

 

 

「ハジメ:それは今から映像を見せながら説明してやる。

これが俺たちが居なかった場合に起こっていたことだ。よく見ておけ。」

 

 

 

まず第一に、映されたのは檜山達4人が

 

 

「訓練」と称して「無能」と蔑まれたハジメを集団で暴行していたシーン。

 

 

(これには、召喚されたクラスメート達も愛子先生も嫁's達も渋い顔や怒りの顔になっていた。)

 

 

そして、ホルアドへと場面は移り、オルクス大迷宮での実践訓練が始まる。

 

 

その前日に、「月下の下で」ハジメと香織が誓いをしているシーンが映され、

(ハジメと香織は顔を真赤にして照れていた。)

 

 

その後、香織がハジメの部屋を出て自室に戻っていくその背中を無言で見ながらその表情がとても醜く歪んでいた檜山の映像が映された。

 

 

 

そして、大迷宮の二十階層でのトラップに引っかかり。

 

 

ベヒモスのいる階層へ強制転移させられ、天之川の自意識過剰と団長の指示に従わない結果、クラスメイト達は恐怖故にバラバラに戦い、園部優花は死にかけた所をハジメに救われ、最終的にはハジメがベヒモスを錬成で抑え込む間に全員撤退させるというシーンへと映像は進んでいった。

 

 

そしてハジメの決死の行動のおかげで全員が無事撤退でき、団長の指示の下ハジメの撤退を援護させるための一斉魔法攻撃でハジメも逃げ切れた。

 

 

・・・と思われた瞬間、

 

 

歪んだ顔をした檜山が放った火球がクイッと軌道を僅かに曲げたのだ。

 

 

……ハジメの方に向かって。

 

 

その結果、ハジメは橋の崩落と共に奈落の底へ落ちていった。

 

 

普段の穏やかさが見る影もないほど必死の形相。いや、悲痛というべきかもしれない表情で、

「離して!南雲くんの所に行かないと!約束したのに!私がぁ、私が守るって!離してぇ!」と泣き叫ぶ香織。

を押さえる雫と光輝。

 

 

そこでオルクス大迷宮での映像は終わった。

 

 

 

「ハジメ:わかったか?檜山を元の世界に返す訳に行かない理由が。この阿呆は、香織が俺を気にしている事が気に食わず、あまつさえ自分が招いた危機を助けてもらった相手を殺そうとした。実際は生きててその後が今の俺なんだが。

普通はあんな所に落ちたら死ぬよな?死んでなかったことが奇跡なんだ。」

 

 

「香織:檜山達が、気持ち悪い目で私を見てるのは気づいてなかったの。でも、私はこの後雫ちゃんとハジメ君は絶対生きてるって信じて頑張り続けたの。」

 

「雫:香織が自分の目で確認するまでは、諦めない!って言う言葉で私も信じれたのよね。」

 

(ユエ・シア・ティオ・レミア・ミュウ・リリアーナ・愛子は檜山達を射殺しそうな目で見ている)

 

 

「ハジメ:まぁそれから色々あって、各地を旅して、ユエ・シア・ティオに出会い、

ウルって街で愛子や園部達と街の人を守るってことで、戦いがあったんだが。」

 

 

そのセリフと同時に"現人神・豊穣の女神愛子"の誕生と"ウルの街の蹂躙劇"の映像が映し出されていた。

(どっちの愛子も顔を真っ赤にして両手で顔を隠すようにして俯いていた。)

 

そして、園部の「あの時、助けてくれてありがとう!(助けてもらった事を)無駄にしないから!」と、ハジメの「お前みたいなやつは死なないよ、根性があるからな。」という映像が流れた辺りで、

 

(優花は顔を真赤にしながら、ハジメをチラ見していた。)

 

 

もちろんここで清水の死亡が映されるのだが。

 

 

そこで、檜山達や天之川が声をあげた。

 

 

「何で、俺達は駄目で清水は良いんだよ!!」と睨むように狂い叫んだ。

 

 

 

「ハジメ:それは簡単な事だ。清水はオタクだ。俺と同じな。檜山達、お前らが俺を「キモヲタが~」だら何たらと誹謗中傷していただろ?

だから、清水はそれをオープンにすれば自分もイジメられる。 と考えたわけだ。

そして天之川、お前はいつも俺に「オタクで不真面目で~」と言っていたな?

学校での授業態度が悪かったのは否定しない。があの時点で俺は既に父のゲーム会社への就職か母の漫画家の手伝いをする事が決まってたんだよ。

大抵寝ていたのもその手伝いで寝不足になってただけだ。

 

だからお前らが余計なことをせず、クラスメイト達が天之川に同調して「オタク=悪」なんて雰囲気を作らなければ十分、清水はやっていけるからだよ。」

 

(と言ったら清水はなんか嬉しそうな複雑そうな顔をしていた。)

 

 

 

「ハジメ:ま、次だ。ここが重要なとこだ全員よく見ておけ。特に天之川。」

 

 

 

フューレンでミュウの救出、そしてパパになりハジメ達がホルアドへと戻った場面へ。

 

 

 

その頃光輝達が90階層で魔人族と出会い、メンバーの何人かが負傷して

何とか89階層へ逃げ、そこで遠藤だけを地上に救援を頼むよう逃したあとの醜い口論。

おかげで魔人族にバレ、メンバーはさらに窮地に。光輝も魔物に敗北。

それを見た檜山や恵里が魔人族の女の交渉にのり生き残るため裏切ろうとする。

 

が、その後ほぼ瀕死のメルド団長を見て「限界突破の終の技能」まで使って魔人族の女を倒す直前まで追い詰めた。ここで斬り捨てていれば、無事皆救われていた…

 

 

のだが。天之川はこの状況下でも「人を殺す」事ができず「話し合う」等というふざけた選択をする。

 

 

そして、その直後に回復しつつも現状把握していた魔人族の女カトレアに雫が一番覚悟と決断力があると見抜かれ、敵の集中攻撃により重症を負う。

鈴がなけなしの力での結界を香織が雫の側に行くために使い、雫の下へ辿り着いた香織と、そこで交わされる二人の言葉。

完全に諦め、死を覚悟した瞬間のハジメの登場。

 

 

そしてハジメ・ユエ・シアによる魔物と魔人族の女の蹂躙、いや処刑場。

 

 

その後ハジメ達が魔物と魔人族の女に止めを刺し、香織や雫と再会を果たし、何やかんやあった後での天之川の一声。

 

 

「なぜ、なぜ殺したんだ。殺す必要があったのか……」

 

 

その後も色々ありつつ、地上への帰還。

そして、香織の告白。

ホルアドをハジメ達一行が旅立つ。

 

 

ここで、映像は終わる。

 

 

 

「ハジメ:最初に言ったよな俺は。お前がやった行動は異世界に来て不安になっているクラスメイトへの「殺人教唆」だと。そして・・・お前に人が殺せるのか?と。

あの場面で、俺があの女を殺してなかったら、もしくは間に合って無かったら、

雫と香織や他のクラスメート達が死んでいた。

お前が「戦争に参加する!」「俺が世界も皆も救ってみせる!!」と堂々と皆の前で言ったよな?

なら、お前がクラスメイト達に殺人の罪を背負わせない為に一番最初に手を汚すべきだろう?にも関わらず、お前は殺せず、仲間を窮地に追いやった。」

 

 

「ハジメ:そんなお前に誰かを守れるわけ無いだろう?雫すら守れてないんだから。」

 

 

「な、何のことだ?」と天之川が言う。

 

 

「雫:そちらの私も私だから代わりに言うわね。私が小学生の頃、虐められて光輝に助けを求めたことがあったわよね?覚えてるでしょ?」

 

「あ。ああ」

 

「雫:貴方は私をイジメてた子達に「きっと悪気はなかった」「みんな、いい子達だよ?」「話せばわかる」と言って私をイジメないように言ったわよね?」

 

「あ。ああ」

 

「雫:あの後は思い出したくも無い程、陰湿なイジメを貴方にバレないように巧妙に受け続けたわ。

一番傷ついた言葉は、「〝あんた女だったの?〟」と言われたことかしらね?

その後も何度か貴方に助けを求めたけど、困った笑みを浮かべるだけで何もしてくれなかったわね。

多分、その後香織と出逢い何時も傍に居てくれて。

親友になれるまで仲良くなれていなければ、私は不登校か自殺でもしていたかも知れないわね?

そんなことにすら貴方は気づいていなかったでしょう?」

 

 

(どちらの雫も苦虫を噛み潰したような表情になり、どちらの香織も慈愛の笑みの様な顔で雫の手を優しく握った。)

 

 

「・・・」否定の言葉すら出ない天之川。

 

 

「雫:で、何でそんな状況でも傍にいてあげたか。

あなたが八重樫流の門下生だったからよ。ウチの流儀で門下生は家族として扱うし、家族は見捨てないというルールがあったから。あとはただ、幼馴染として。ただそれだけ。

 

さっきのエヒトがユエの体を乗っ取ったの時の映像見てたわよね?

あの後、貴方はトータスを見捨てて「自分の正しさ」を正当化するためだけに、恵里にそそのかされついて行った。

こちらでない世界では、龍太郎と私で見捨てず助けてあげたけど、流石にこちらの世界の私にそんな苦労はさせたくないわ。だから助けない。」

 

 

「香織:私もだよ。雫ちゃんが辛い目にあっても助けない。ハジメ君が助けてくれたのにハジメ君を責める。その上、私がハジメ君を好きだって言ったことすら、

 

「オタクの南雲なんか好きなわけない!学校で話しかけてたりしてたのも香織が優しいからだろ?」とか、

ふざけないでよ! たかが幼馴染でしかない貴方が私の行動を邪魔する。貴方が私の何を知ってるの!?

 

 

何をしても、「南雲が悪いんだ。皆騙されてるんだ!」だっけ。・・・貴方、何様のつもり?

ああ。極めつけは雫ちゃんが色々あって、ハジメ君を好きだって自覚して、甘えてたのを見た時には。

 

「南雲、頼むから死んでくれ!お前が居なければ何もかも上手くいっていて、香織も雫もユエ達すらも俺の傍に居て救われてた筈なんだ!」だっけ?

 

そんな訳ないでしょ?吐き気がするよ、その軽い言葉。

責任取る気も無い、唯の嫉妬から出る気持ち悪い言葉。

 

私の彼氏でも親でも家族でも無いくせに、私や雫ちゃんの感情や気持ちを勝手に決めつけないでよ。気持ち悪い!」

 

(もう一人の香織は、何故かニコニコと笑顔を浮かべ聴いていた。)

 

 

「・・・・」絶句する天之川と龍太郎。

 

 

(それを見て、傍らの雫と香織はちょっと複雑そうだが何かスッキリした様な顔をしている。)

 

 

 

「ハジメ:そして最後だ、中村。

これは『今の時点ではまだお前は悪くない』。が、

決して同情は出来ないので、お前も同様に返すわけにいかない。その一部は先程の雫の発言と最初に見せた映像にあった通り、お前が自分の欲望のためにトータスを、そしてクラスメイト達を裏切るからだ。」

 

 

 

「な、何を言ってるのかな?ボ、僕は裏切ったりなんか?」と恵里。

 

 

 

「ハジメ:言い訳は良い。この次の映像を見ろ。」

 

 

 

ハジメ達がグリューエン大火山の迷宮を攻略し、海の街エリセンでミュウとレミアの感動の再会を果たし、次いでメルジーネ海底遺跡を攻略し、

砂漠のアンガジ公国を救いホルアド方面へと向かっている所で、盗賊に襲われてる隊商があり、そこにはリリアーナがいたのだった。

 

 

そこでリリアーナから告げられた一言。

 

 

 

「愛子さんが、攫われました。」と。

 

 

 

リリアーナが王宮を飛び出しこんな所に居たのは、

王宮の空気が何処かおかしく、ずっと違和感を覚えていたらしい。

父親であるエリヒド国王は異常な程聖教教会に傾倒し、

時折、熱に浮かされたように〝エヒト様〟を崇め始めたし、

妙に覇気がない、もっと言えば生気のない騎士や兵士達が増えていったのだ。

 

そうこうしている内に、愛子が王都に帰還し、ウルの町での詳細が報告された。

その席にはリリアーナも同席したらしい。

そして、普段からは考えられない強行採決がなされた。それがハジメの異端者認定だ。

ウルの町や勇者一行を救った功績も、〝豊穣の女神〟として大変な知名度と人気を誇る愛子の異議・意見も、全てを無視して決定されてしまった。

 

当然、リリアーナは父であるエリヒドに猛抗議をしたが、何を言ってもハジメを神敵とする考えを変える気はないようだった。

まるで、強迫観念に囚われているかのように頑なだった。

むしろ、抗議するリリアーナに対して、信仰心が足りない等と言い次第に、娘ではなく敵を見るような目で見始めたのだ。

 

恐ろしくなったリリアーナは、咄嗟に理解した振りをして逃げ出した。

そして、王宮の異変について相談するべく、悄然と出て行った愛子を追いかけ自らの懸念を伝えた。

 

すると愛子から、ハジメが奈落の底で知った神の事や旅の目的を夕食時に生徒達に話すので、リリアーナも同席して欲しいと頼まれたのだそうだ。

 

愛子の部屋を辞したリリアーナは、夕刻になり愛子達が食事をとる部屋に向かい、その途中、廊下の曲がり角の向こうから愛子と何者かが言い争うのを耳にした。

何事かと壁から覗き見れば、愛子が銀髪の教会修道服を着た女に気絶させられ担がれているところだった。

 

リリアーナは、その銀髪の女に底知れぬ恐怖を感じ、咄嗟にすぐ近くの客室に入り込むと、王族のみが知る隠し通路に入り込み息を潜めた。そして、銀髪の女が異変の黒幕か、少なくとも黒幕と繋がっていると考え、そのことを誰かに伝えなければと立ち上がった。

 

 

悩んだ末リリアーナは、今、唯一王都にいない頼りになる友人を思い出した。そう、香織だ。そして、香織の傍には話に聞いていた、あの南雲ハジメがいる。と。

 

 

 

という原文ちょっとイジっただけの説明(カットしようか迷ったけど残しましたw)

 

 

~~~~~~~~~~~

 

ここから先は殆どカット出来ませんでした。

(単純コピペだけにはならないようにしてはいるのですが、これが限界でした。)

 

~~~~~~~~~~~

 

 

そして、王国についたハジメは愛子救出のため、神山に向かい「銀髪の女(神の使徒:ノイント)」と戦い、

ユエとシアはフリードと魔人族と戦い。

ティオと愛子が神敵を弱体化させる能力を妨害するため、発酵+火のブレスという大爆発で教会の総本山崩壊させ、

リリアーナと香織が、王宮に向かっている所が次々に画面が切り替わる。

 

 

ハジメは無事ノイントを倒し、ティオと愛子と合流し、

ユエとシアはフリードに大ダメージとカトレアの恋人だったミハイルを下し、

リリアーナと香織が王宮に到着した頃。

 

 

雫が"大結界が壊れた音で目を覚まし"、光輝達や他のクラスメート達を起こしまわって魔人族の侵攻だと現状確認をした頃に、

 

中村恵里が「勝手に戦うより、早くメルドさん達と合流するべきだと思う。大軍って……どれくらいかわかりますか?」とメイドのニア(雫付のメイドだった)に確認を取ると、

 

 

「……ざっとですが十万ほどかと」

 

 

その言葉を聞いて、光輝達は、緊急出動時における兵や騎士達の集合場所に向けて走り出した。すぐ傍の恵里の三日月のように裂けた笑みには気づかずに……

 

 

そして騎士たちと副団長ホセ達らと合流後、

 

 

「みな、状況は切迫している。しかし、恐れることは何もない。我々に敵はない。我々に敗北はない。死が我々を襲うことなど有りはしないのだ。さぁ、みな、我らが勇者を歓迎しよう。今日、この日のために我々は存在するのだ。さぁ、剣をとれ」

 

 

兵士が、騎士が、一斉に剣を抜刀し掲げる。

 

 

 

「始まりの狼煙だ。注視せよ」

 

 

そして…… カッ!!と 光が爆ぜた。

 

 

 

その場に居て注視していた光輝達は、それぞれ短い悲鳴を上げながら咄嗟に目を逸らしたり覆ったりするものの、直視してしまったことで一時的に視覚を光に塗りつぶされてしまった。

 

 

そして、次の瞬間……

 

 

 

ズブリッ!そんな生々しい音が無数に鳴り、

 

 

「あぐっ?」

 

「がぁ!」

 

「ぐふっ!?」と 次いで、あちこちからくぐもった悲鳴が上がった。

 

 

そんな中、雫だけはその原因を理解していた。なので、光が爆発し目を灼かれた直後も、比較的動揺せずに身構え、直後、自分を襲った凶刃を何とか黒刀で防いだのである。目が見えない状況で気配だけを頼りに防げたのは鍛錬の賜物だろう。

 

 

そして、閃光が収まり、回復しだした視力で周囲を見渡した雫が見たのは、クラスメイト達が全員、背後から兵士や騎士達の剣に貫かれた挙句、地面に組み伏せられている姿だった。

 

 

「な、こんな……」

 

 

呻き声を上げながら上から伸し倒されるように押さえつけられ、更に、背中から剣を突き刺されたクラスメイト達を見て、雫が声を詰まらせる。

まさか、全員殺されたのかと最悪の想像がよぎるが、みな、苦悶の声を上げながらも辛うじて生きているようだ。

そのことに僅かに安心しながらも、予断を許さない状況に険しい視線を周囲の兵士達に向ける雫だったが、その目に奇妙な光景が映り込み思わず硬直する。

 

 

 

「あらら、流石というべきかな? ……ねぇ、雫?」

 

 

「え? えっ……何をっ!?」

 

 

その瞬間、再び、雫の背後から一人の騎士が剣を突き出してきた。

 

 

 

「くっ!?」

 

 

 

動揺しつつも、やはり辛うじてかわす雫に、その生徒は呆れたような視線を向ける。

 

 

 

「これも避けるとか……ホント、雫って面倒だよね?」

 

 

 

「何を言ってッ!」

 

 

 

更に激しく、そして他の兵士や騎士も加わり突き出される剣の嵐。

雫は、それらも全て凌ぐが、突然、自分の名が叫ばれてそちらに視線を向ける。

 

 

 

「雫様! 助けて……」

 

 

「ニア!」

 

 

 

そこには、今まさに剣を突き立てられようとしているニアの姿があった。

雫は、咄嗟に〝無拍子〟からの高速移動で振り下ろされる剣撃をかいくぐり、

一瞬でニアのもとへ到達すると、彼女に馬乗りになっている騎士に鞘を叩きつけてニアの上から吹き飛ばした。

 

 

 

「ニア、無事?」

 

 

「雫様……」

 

 

 

倒れ込んでいるニアを支え起こしながら、周囲に警戒の眼差しを向ける雫。

 

 

 

そんな雫の名を、ニアはポツリと呟き両手を回して縋りつく。

そして、……雫の背中に懐剣を突き立てた。

 

 

「あぐっ!? ニ、ニア? ど、どうして……」

 

 

「……」

 

 

 

背中に奔る激痛に顔を歪めながら信じられないといった表情で、雫は自分に抱きつくニアを見下ろした。

 

 

ニアは、普段の親しみのこもった眼差しも快活な表情もなく、ただ無表情に雫を見返すだけだった。

 

 

雫は、そこでようやく気がついた。ニアの様子がおかしい原因は王都侵攻のせいだろうと思っていたのだが、そうではなく、彼女の様子が自分の周囲を無表情で取り囲む兵士や騎士と雰囲気が全く同じであり、別のところに原因があるのだと。

 

 

ニアは、そのまま雫の腕を取って捻りあげると地面に組み伏せて拘束し、他の生徒達にしているのと同じように魔力封じの枷を付けてしまった。

 

 

 

「アハハハ、流石の雫でも、まさかその子に刺されるとは思わなかった? うんうん、そうだろうね? だから、わざわざ用意したんだし?」

 

 

 

背中に感じる灼熱の痛みと、頬に感じる地面の冷たさに歯を食いしばりながら、雫は、ニアも他の正気でない兵士達と同じく何かをされたのだと悟る。

そして、認めたくはないが、この惨状を作り出したであろう、今も、ニヤニヤと普段では考えられない嫌らしい笑みを浮かべる親友の名を呼んだ。

 

 

 

「どういうこと…なの……恵里」

 

 

 

そう。その人物は、控えめで大人しく、気配り上手で心優しい、雫達と苦楽を共にしてきた親友の一人、中村恵里その人だった。

 

 

 

重傷を負いながらも、直ぐには死なないような場所を狙われたらしく苦悶の表情を浮かべて生きながらえている生徒達も、コツコツと足音を立てながら幽鬼のような兵士達の間を悠然と歩く恵里を呆然とした表情で見つめている。

 

 

 

恵里は、雫の途切れがちな質問には答えずに、何がおかしいのかニヤニヤと笑いながら光輝の方へ歩み寄った。そして、眼鏡を外し、光輝の首に嵌められた魔力封じの一つである首輪をグイっと引っ張ると艶然と微笑む。

 

 

 

「え、恵里…っ…一体…ぐっ…どうしたんだ……」

 

 

 

雫達幼馴染ほどではないが、極々親しい友人で仲間の一人である恵里の余りの雰囲気の違いに、体を貫く剣の痛みに堪えながら必死に疑問をぶつける光輝。

だが、恵里はどこか熱に浮かされたような表情で光輝の質問を無視する。

 

 

 

そして、「アハ、光輝くん、つ~かま~えた~」。

そんな事を言いながら、光輝の唇に自分のそれを重ねた。

妙な静寂が辺りを包む中、生々しい音がやけに明瞭に響く。

恵里はまるで長年溜め込んでいたものを全て吐き出すかのように夢中で光輝を貪った。

 

 

光輝は、わけがわからず必死に振りほどこうとするが、数人がかりで押さえつけられている上に、魔力封じの枷を首輪以外にも、他の生徒達同様に手足にも付けられており、また体を貫く剣のせいで力が入らずなすがままだった。

 

 

やがて満足したのか、恵里が銀色の糸を弾きながら唇を離す。

そして、目を細め恍惚とした表情で舌舐りすると、おもむろに立ち上がり、

倒れ伏して血を流す生徒達を睥睨した。苦悶の表情や呆然とした表情が並んでいる。そんな光景に満足気に頷くと、最後に雫に視線を定めて笑みを浮かべた。

 

 

 

「とまぁ、こういう事だよ。雫」

 

 

「っ…どういう事よ…こふっ…」

 

 

 

わけがわからないといった表情で、恵里を睨みながら吐血する雫に、恵里は物分りが悪いなぁと言いたげな表情で頭を振ると、まるで幼子にものの道理を教えるように語りだしだ。

 

 

 

「うーん、わからないかなぁ? 僕はね、ずっと光輝くんが欲しかったんだ。だから、そのために必要な事をした。それだけの事だよ?」

 

 

 

「……光輝が好きなら…告白でもすれば…こんな事…」

 

 

 

雫の反論に、恵里は一瞬、無表情になる。

しかし、直ぐにニヤついた笑みに戻ると再び語りだした。

 

 

 

「ダメだよ、ダメ、ダ~メ。告白なんてダメ。

光輝くんは優しいから特別を作れないんだ。周りに何の価値もないゴミしかいなくても、優しすぎて放っておけないんだ。だから、僕だけの光輝くんにするためには、僕が頑張ってゴミ掃除をしないといけないんだよ」

 

 

 

そんな事もわからないの? と小馬鹿にするようにやれやれと肩を竦める恵里。

ゴミ呼ばわりされても、余りの豹変ぶりに驚きすぎて怒りも湧いてこない。

一人称まで変わっており、正直、雫には目の前にいる少女が初対面にしか見えなかった。

 

 

 

「ふふ、異世界に来れてよかったよ。日本じゃ、ゴミ掃除するのは本当に大変だし、住みにくいったらなかったよ。もちろん、このまま戦争に勝って日本に帰るなんて認めない。光輝くんは、ここで僕と二人、ず~とずぅ~~と暮らすんだから」

 

 

 

クスクスと笑いながらそう語る恵里に、雫は、まさかと思いながら、ふと頭をよぎった推測を口からこぼす。

 

 

 

「…まさか…っ…大結界が簡単に…破られたのは……」

 

 

「アハハ、気がついた? そう、僕だよ。彼等を使って大結界のアーティファクトを壊してもらったんだ」

 

 

雫の最悪の推測は当たっていたらしい。

魔人族が、王都近郊まで侵攻できた理由までは思い至らなかったが、大結界が簡単に破られたのは、恵里の仕業だったようだ。恵里の視線が、彼女の傍らに幽鬼のように佇む騎士や兵士達を面白げに見ている事から、彼等にやらせたのだろう。

 

 

 

「君達を殺しちゃったら、もう王国にいられないし……だからね、魔人族とコンタクトをとって、王都への手引きと異世界人の殺害、お人形にした騎士団の献上を材料に魔人領に入れてもらって、僕と光輝くんだけ放っておいてもらうことにしたんだぁ」

 

 

 

「馬鹿な…魔人族と連絡なんて…」

 

 

 

光輝がキスの衝撃からどうにか持ち直し、信じられないと言った表情で呟く。

恵里は自分達とずっと一緒に王宮で鍛錬していたのだ。大結界の中に魔人族が入れない以上、コンタクトを取るなんて不可能だと、恵里を信じたい気持ちから拙い反論をする。

しかし、恵里はそんな希望をあっさり打ち砕く。

 

 

 

「【オルクス大迷宮】で襲ってきた魔人族の女の人。帰り際にちょちょいと、降霊術でね? 予想通り、魔人族が回収に来て、そこで使わせてもらったんだ。

あの事件は、流石に肝が冷えたね。何とか殺されないように迎合しようとしたら却下されちゃうし……思わず、降霊術も使っちゃったし……怪しまれたくないから降霊術は使えないっていう印象を持たせておきたかったんだけどねぇ……まぁ、結果オーライって感じだったけど……」

 

 

 

恵里は、魔人族の女に降霊術を施して、帰還しない事で彼女を探しに来るであろう魔人族にメッセージを残したのである。

ミハイルがカトレアの死の真相を知っていたのはそういうわけだ。なお、魔人族からの連絡は、適当な〝人間〟の死体を利用している。

恵里の話を聞き、彼女の降霊術を思い出して雫が唯でさえ血の気を失っていた、青白い顔を更に青ざめさせた。

 

 

降霊術は、死亡対象・・・・の残留思念に作用する魔法である。

それを十全に使えることを秘匿したかったということは、実際は完璧に使えるということ。であるならば、雫達を包囲する幽鬼のような兵士や騎士、そして、自分を抑えるニアの様子から考えれば最悪の答えが出る。

 

 

「彼等の…様子が…おかしいのは……」

 

 

「もっちろん降霊術だよ~。既に、みんな死んでま~す。アハハハハハハ!」

 

 

 

雫は、もたらされた非情な解答にギリッと歯を食いしばり、必死の反論をした。

 

 

 

「…嘘よ…降霊術じゃあ…受け答えなんて……できるはず…ない!」

 

 

「そこはホラ、僕の実力? 降霊術に、生前の記憶と思考パターンを付加してある程度だけど受け答えが出来るようにしたんだよ。僕流オリジナル降霊術〝縛魂〟ってところかな?

ああ、それでも違和感はありありだよね~。一日でやりきれる事じゃなかったし、そこは僕もどうしたものかと悩んでいたんだけどぉ……ある日、協力を申し出てくれた人がいてね。銀髪の綺麗な人。

計画がバレているのは驚いたし、一瞬、色々覚悟も決めたんだけど……その時点で告発してないのは確かだったし、信用はできないけど取り敢えず利用はできるかなぁ~って」

 

 

ホント、焦ったよぉ~と、かいてもいない汗を拭うふりをする恵里。おそらく、その過程にも色々あったのだろうが、そんなことはおくびにも出さない。

 

 

 

「実際、国王まで側近の異変をスルーしてくれたんだから凄いよね? 代わりに危ない薬でもキメてる人みたいになってたけど。

まぁ、そのおかげで一気に計画を早める事ができたんだ。くふふ、大丈夫! 皆の死は無駄にしないから。ちゃ~んと、再利用して魔人族の人達に使ってもらえるようにするからね!」

 

 

本来、降霊術とは残留思念に作用して、そこから死者の生前の意思を汲み取ったり、残留思念を魔力でコーティングして実体を持たせた上で術者の意のままに動かしたり、あるいは遺体に憑依させて動かしたり出来る術である。

 

 

 

その性能は当然、生前に比べれば劣化するし、思考能力など持たないので術者が指示しないと動かない。もちろん、〝攻撃し続けろ〟などと継続性のある命令をすれば、細かな指示がなくとも動き続ける事は可能だ。

 

 

 

つまり、ニアやホセが普通に雫達と会話していたような事は、思考能力がない以上、降霊術では不可能なはずなのだ。それを、違和感を覚える程度で実現できたのは、恵里のいう〝縛魂〟という術が、魂魄から対象の記憶や思考パターンを抜き取り遺体に付加できる術だからである。

 

 

 

これは、言ってみれば魂への干渉だ。すなわち、恵里は、末端も末端ではあるが自力で神代魔法の領域に手をかけたのである。

まさにチート、降霊術が苦手などとよく言ったもので、その研鑽と天才級の才能は驚愕に値するものだ。あるいは、凄まじいまでの妄執が原動力なのかもしれない。

 

 

 

ちなみに、恵里が即座にクラスメイト達を殺さないのは、この〝縛魂〟が、死亡直後に一人ずつにしか使用できないからである。

 

 

 

「ぐぅ…止めるんだ…恵里! そんな事をすれば……俺は……」

 

 

「僕を許さない? アハハ、そう言うと思ったよ。

光輝くんは優しいからね。それに、ゴミは掃除してもいくらでも出てくるし……だから、光輝くんもちゃんと〝縛魂〟して、僕だけの光輝くんにしてあげるからね? 他の誰も見ない、僕だけを見つめて、僕の望んだ通りの言葉をくれる! 僕だけの光輝くん! あぁ、あぁ! 想像するだけでイってしまいそうだよ!」

 

 

恍惚とした表情で光輝を抱きしめながら身悶える恵里。

そこに、穏やかで気配り上手な図書委員の女の子の面影は皆無だった。

クラスメイト達は思う。彼女は狂っていると。〝縛魂〟は、降霊術よりも死者の使い勝手を良くしただけで術者の傀儡、人形であることに変わりはない。

それが分かっていて、なお、そんな光輝を望むなど正気とは思えなかった。

 

 

「嘘だ……嘘だよ!ぅ…エリリンが、恵里が…っ…こんなことするわけない!……きっと…何か…そう…操られているだけなんだよ!っ…目を覚まして恵里!」

 

 

恵里の親友である鈴が痛みに表情を歪め苦痛に喘ぎながらも声を張り上げた。

その手は、恵里のもとへ行こうとでもしているかのように地面をガリガリと引っ掻いている。恵里は、鈴の自分を信じる言葉とその真っ直ぐな眼差しにニッコリと笑みを向けた。そして、おもむろに一番近くに倒れていた近藤礼一のもとへ歩み寄る。

 

 

近藤は、嫌な予感でも感じたのか「ひっ」と悲鳴をあげて少しでも近づいてくる恵里から離れようとした。当然、完璧に組み伏せられ、魔力も枷で封じられているので身じろぎする程度のことしか出来ない。

近藤の傍に歩み寄った恵里は、何をされるのか察して恐怖に震える近藤に向かって再び、ニッコリと笑みを向けた。光輝達が、「よせぇ!」「やめろぉ!」と制止の声を上げる。

 

 

「や、やめっ!? がぁ、あ、あぐぁ…」

 

 

近藤のくぐもった悲鳴が上がる。近藤の背中には心臓の位置に再び剣が突き立てられていた。ほんの少しの間、強靭なステータス故のしぶとさを見せてもがいていた近藤だが、やがてその動きを弱々しいものに変えていき、そして……動かなくなった。

 

 

恵里は、その近藤に手をかざすと今まで誰も聞いたことのない詠唱を呟くように唱える。詠唱が完了し〝縛魂〟の魔法名を唱え終わったとき、半透明の近藤が現れ自身の遺体に重なるように溶け込んでいった。

 

 

直後、今まで近藤を拘束していた騎士が立ち上がり一歩下がる。光輝達が固唾を呑む中、心臓を破壊され死亡したはずの近藤は、ゆっくりのその身を起こし、周囲の兵士や騎士達同様に幽鬼のような表情で立ち上がった。

 

 

 

「は~い。お人形一体出来上がり~」

 

 

 

無言無表情で立ち尽くす近藤を呆然と見つめるクラスメイト達の間に、恵里の明るい声が響く。たった今、人一人を殺した挙句、その死すら弄んだ者とは思えない声音だ。

 

 

 

「え、恵里……なんで……」

 

 

 

ショックを受けたように愕然とした表情で疑問をこぼす鈴に、恵里は追い打ちとも言える最悪の語りを聞かせる。

 

 

 

「ねぇ、鈴?ありがとね?日本でもこっちでも、光輝くんの傍にいるのに君はとっても便利だったよ?」

 

 

「……え?」

 

 

「参るよね? 光輝くんの傍にいるのは雫と香織って空気が蔓延しちゃってさ。不用意に近づくと、他の女共に目付けられちゃうし……向こうじゃ何の力もなかったから、嵌めたり自滅させたりするのは時間かかるんだよ。

その点、鈴の存在はありがたかったよ。馬鹿丸出しで何しても微笑ましく思ってもらえるもんね? 光輝くん達の輪に入っても誰も咎めないもの。

だから、〝谷口鈴の親友〟っていうポジションは、ホントに便利だったよ。

おかげで、向こうでも自然と光輝くんの傍に居られたし、異世界に来ても同じパーティーにも入れたし……うん、ほ~んと鈴って便利だった! だから、ありがと!」

 

 

「……あ、う、あ……」

 

 

衝撃的な恵里の告白に、鈴の中で何かがガラガラと崩れる音が響いた。親友と築いてきたあらゆるものが、ずっと信じて来たものが、幻想だったと思い知らされた鈴。その瞳から現実逃避でもするように光が消える。

 

 

 

「恵里っ! あなたはっ!」

 

 

 

余りの仕打ち、雫が怒声を上げる。傀儡と化したニアが必死にもがく雫の髪を掴んで地面に叩きつける。しかし、それがどうしたと言わんばかりに、雫の瞳は怒りで燃え上がっていた。

 

 

 

「ふふ。怒ってるね?雫のその表情、すごくいいよ。

僕ね、君のこと大っ嫌いだったんだ。光輝くんの傍にいるのが当然みたいな顔も、自分が苦労してやっているっていう上から目線も、全部気に食わなかった。だからね、君には特別に、とっても素敵な役目をあげる」

 

 

 

「っ…役目……ですって?」

 

 

 

「くふっ、ねぇ?久しぶりに再会した親友に、殺されるってどんな気持ちになるのかな?」

 

 

 

その一言で、恵里が何をしようとしているのか察した雫の瞳が大きく見開かれる。

 

 

 

「…まさか、香織をっ!?」

 

 

 

よく出来ました! とでも言うように、恵里はパチパチと手を鳴らし、口元にニヤついた笑みを貼り付けた。

恵里は傀儡にした雫を使って、香織を殺害しようとしているのだ。

 

 

 

「南雲が持っていくなら放置でも良かったんだけど……あの子をお人形にして好きにしたい!って人がいてね~。色々手伝ってもらったし、報酬にあげようかなって。僕、約束は守る性質だからね! いい女でしょ?」

 

 

「ふ、ふざけっ! ごふっ…あぐぅあ!?」

 

 

怒りのままに、自ら傷口を広げてでも動こうとする雫に、ニアが更に剣を突き刺した。

 

 

 

「アハ、苦しい? 痛い? 僕は優しいからね。今すぐ、楽にして上げる……」

 

 

 

今度は雫の番だというように、ニヤニヤと笑みを浮かべながら歩み寄る恵里。雫が近藤と同じように殺されて傀儡にされる光景を幻視したのか光輝達が必死の抵抗を試みる。

 

 

特に、光輝の抵抗は激しく、必死に制止の声を張り上げながら、合計五つも付けられた魔力封じの枷に亀裂を入れ始めた。〝限界突破〟の〝覇潰〟でも使おうというのか、凄まじい圧力がその体から溢れ出している。

 

 

しかし、脳のリミッターが外れ生前とは比べものにならないほどの膂力を発揮する騎士達と関節を利用した完璧な拘束により、どうあっても直ぐには振りほどけない。光輝の表情に絶望がよぎった。

 

 

 

雫は、出血のため朦朧としてきた意識を必死に繋ぎ留め、せめて最後まで眼だけは逸らしてやるものかと恵里を激烈な怒りを宿した眼で睨み続けた。

 

 

それを、やはりニヤついた笑みで見下ろす恵里は、最後は自分で引導を渡したかったのか、近くの騎士から剣を受け取りそれを振りかぶった。

 

 

 

「じゃあね?雫。君との友達ごっこは反吐が出そうだったよ?」

 

 

 

雫は、恵里を睨みながらも、その心の内は親友へと向けていた。

届くはずがないと知りながら、それでも、これから起こるかもしれない悲劇を思って、世界のどこかを旅しているはずの親友に祈りを捧げる。

 

 

 

(ごめんなさい、香織。次に会った時はどうか私を信用しないで……生き残って……幸せになって……)

 

 

 

逆手に持たれた騎士剣が月の光を反射しキラリと光った。そして、吸血鬼に白木の杭を打ち込むが如く、鋭い切っ先が雫の心臓を目指して一気に振り下ろされた。

 

 

 

迫る凶刃を見つめながら、雫は、なお祈る。

どうか親友が生き残れますように、どうか幸せになりますように。

私は先に逝くけれど、死んだ私は貴女を傷つけてしまうだろうけど、貴女の傍には彼がいるからきっと大丈夫。

強く生きて、愛しい人と幸せに……どうか……と。

 

 

 

色褪せ、全てが遅くなった世界で雫の脳裏に今までの全てが一瞬で過ぎっていく。

ああ、これが走馬灯なのね……最後に、そんなことを思う雫に突き下ろされた凶刃は、彼女の命を

 

 

…………奪わなかった。

 

 

「え?」

 

 

「え?」

 

 

 

雫と恵里の声が重なる。

 

 

 

恵里が突き下ろした騎士剣は、掌くらいの大きさの輝く障壁に止められていた。

何が起きたのかと呆然とする二人に、ここにいるはずのない者の声が響く。

ひどく切羽詰まった、焦燥に満ちた声だ。

雫が、その幸せを願った相手、親友の声だ。

 

 

「雫ちゃん!」

 

 

 

~~~~~~~~

 

ここまで「大分カットしたつもりだけど、殆どカット出来無いんですよ、

恵里と雫の心情をちゃんと描くなら。(光輝?そんなやついましたかね?w)

 

~~~~~~~~

 

 

その声と共に、

いつの間にか展開されていた十枚の輝く障壁が雫を守るように取り囲んだ。そして、その内の数枚がニアと恵里の眼前に移動しカッ! と光を爆ぜた。

バリアバーストモドキとでもいうべきか、障壁に内包された魔力を敢えて暴発させて光と障壁の残骸を撒き散らす技だ。

 

 

「っ!?」

 

 

咄嗟に両腕で顔を庇った恵里だが、

その閃光に怯んでバランスを崩した瞬間に砕け散った障壁の残骸に打ち付けられて後方へと吹き飛ばされた。

 

 

 

雫を抑えていたニアも同様に後方へとひっくり返る。

すぐさま起き上がって雫を拘束しようとするものの、直後、光の縄が地面から伸び一瞬で縛り付けられてしまった。

 

 

 

雫が、突然の事態に唖然としつつも、自分の名を呼ぶ声の方へ顔を向ける。

 

 

そして包囲する騎士達の隙間から、ここにいるはずのない親友の姿を捉えた。夢幻ではない。

確かに、香織が泣きそうな表情で雫を見つめていた。

きっと雫達の惨状と、ギリギリで間に合ったことへの安堵で涙腺が緩んでしまったのだろう。

 

 

「か、香織……」

 

 

「雫ちゃん! 待ってて! 直ぐに助けるから!」

 

 

香織は、広場の入口から兵士達に囲まれる雫達へ必死に声を張り上げた。

そして、急いで全体回復魔法を詠唱し始める。光系最上級回復魔法〝聖典〟だ。

クラスメイト達の状態と周囲を状況から一気に全員を癒す必要があると判断したのだ。

 

 

 

「っ!? なんで、君がここにいるのかなぁ! 君達はほんとに僕の邪魔ばかりするね!」

 

 

恵里が、怒りに顔を歪めながら周囲の騎士達に命令を下す。

香織の詠唱を止めるため、騎士達が一斉に香織へと襲いかかった。

しかし、彼等の振るった騎士剣は光の障壁に阻まれ、香織を傷つけること叶わない。

 

 

「みなさん! 一体、どうしたのですか! 正気に戻って! 恵里! これは一体どういうことです!?」

 

 

最上級回復魔法を唱える香織を守ったのは、香織のすぐ後ろにいたリリアーナだった。自分と香織を包むように球状の障壁が二人を守る。

 

 

リリアーナは、騎士や兵士達が光輝達を殺そうとしている状況やまるで彼等の主のように振舞う恵里にひどく混乱していた。障壁を張りながら、恵里に説明を求めて声を張り上げる。しかし、恵里はまるで取り合わない。

 

 

リリアーナは術師としても相当優秀な部類に入る。モットーの隊商を全て覆い尽くす障壁を張り、賊四十人以上の攻撃を凌ぎ切れる程度には。

なので、たとえ、騎士達がリミッターの外れた猛烈な攻撃を行ったところで、香織の詠唱が完了するまで持ち堪えることは十分に可能だった。

 

 

 

そして、それを理解しているせいか若干、恵里の表情に焦りの色が見える。

 

 

 

「チッ、仕方ない、かな?」

 

 

 

その焦り故か、恵里はクラスメイト達の傀儡化を諦めて、癒される前に殺してしまおうと決断した。

 

 

と、その時、突如、リリアーナの目の前で障壁に騎士剣を振るっていた騎士の一人が首を落とされて崩れ落ちた。

 

 

 

その倒れた騎士の後ろから姿を見せたのは……檜山大介だった。

 

 

 

「白崎!リリアーナ姫!無事か!」

 

 

「檜山さん? あなたこそ、そんな酷い怪我で!?」

 

 

リリアーナが檜山の様子を見て顔を青ざめさせる。

詠唱を途切れさせてはいないが、香織もまた驚愕に目を見開いていた。

それもそのはずだ、檜山の胸元はおびただしい血で染りきっていたのだから。

どうみても、無理をして拘束を抜け出して来たという様子だ。

 

 

ぐらりとよろめき、障壁に手をついた檜山に、リリアーナは慌てて障壁の一部を解いて檜山を中に入れた。ドサリッと倒れこむ檜山。

しかし、その瞬間、雫の焦燥に満ちた叫びが響き渡る。

 

 

「ダメよ! 彼から離れてぇ!」

 

 

 

血を吐きながらの必死の警告。雫は気がついたのだ。

なぜ、光輝すら抜け出せない拘束を檜山だけ抜け出せたのか、

恵里が言っていた香織を欲する人間が誰なのか……

リリアーナの障壁が香織の詠唱完了まで保つことは明らかだ。

にもかかわらず、敢えて助けに行ったふりをした理由は……

 

 

 

「きゃぁあ!?」

 

 

「あぐぅ!?」

 

 

 

雫の警告は間に合わなかった。

 

 

 

リリアーナの障壁が解け、そこに広がった光景は、殴り飛ばされて地面に横たわるリリアーナの姿と背後から抱き締められるようにして胸から刃を突き出す香織の姿だった。

 

 

 

「香織ぃいいいいーー!!」

 

 

 

雫の絶叫が響き渡る。

 

 

檜山は、瞳に狂気を宿しながら、香織を背後から抱き締めて首筋に顔を埋めている。片手は当然、背中から香織の心臓を貫く剣を握っていた。

 

 

檜山は、最初から怪我などしていなかったのだ。

勇者である光輝の土壇場での爆発力や不測の事態に備えてやられたふりをして待機していたのである。そして、香織達の登場に驚きつつも、このままでは光輝達を回復されてしまうと判断し、一芝居打ったのだ。

 

 

「ひひっ、やっと、やっと手に入った。……やっぱり、南雲より俺の方がいいよな? そうだよな? なぁ、しらさ…いや、香織? なぁ? ぎひっ、おい、中村ァ、さっさとしろよぉ。契約だろうがぁ」

 

 

恵里が、檜山の言葉に肩を竦める。そして、香織に〝縛魂〟するため歩き出した。

 

 

 

直後、絶叫が響き渡る。

 

 

 

「がぁああああ! お前らァーー!!」

 

 

光輝だ。怒髪天を衝くといった様子で、体をギシギシと軋ませて必死に拘束を解こうとする。香織が殺されたと思ったようで、半ば、我を失っているようだ。

五つも付けた魔力封じの枷がますます亀裂を大きくしていく。

途轍もない膂力だ。しかし、それでも枷と騎士達の拘束を解くにはまだ足りない。

 

 

 

と、その様子を冷めた目で見ていた檜山の耳にボソボソと呟く声が聞こえてきた。見れば、何と香織が致命傷を負いながら何かを呟いているのだ。

檜山は、それが気になって口元に耳を近づける。そして、聞こえてきたのは……

 

 

 

「――――ここ…に…せいぼ…は……ほほえ…む…〝せい…てん〟」

 

 

 

致命傷を負ってなお、完成させた最上級魔法の詠唱。香織の意地の魔法行使。

檜山の瞳が驚愕に見開かれる。

 

 

 

香織にも、自分が致命傷を負ったという自覚があるはずだ。

にもかかわらず、最後の数瞬に行ったのは、泣くことでも嘆くことでも、まして愛しい誰かの名前を呼ぶことでもなく……戦うことだった。

 

 

香織は思ったのだ。彼は、自分が惚れた彼は、どんな状況でもどんな存在が相手でも決して諦めはしなかった。

ならば、彼の隣に立ちたいと願う自分が無様を晒す訳にはいかないと。

そして、ほとんど意識もなく、ただ強靭な想いだけで唱えきった魔法は、香織の命と引き換えに確かに発動した。

 

 

香織を中心に光の波紋が広がる。それは瞬く間に広場を駆け抜け、傷ついた者達に強力な癒しをもたらした。

突き刺さされた剣が癒しの光に押されて抜け落ちていく。どういう作用が働いたのか、傀儡兵達の動きも鈍くなった。

 

 

当然、癒しの光は香織自身も効果に含め、その傷を治そうとするが、香織が受けたのは他の者達と異なり急所への一撃。

しかも、傷が塞がろうとすると檜山が半狂乱で傷を抉るので香織が癒されることはなかった。それは香織に、より確実な死をもたらす。

 

 

 

「あぁああああ!!」

 

 

 

光輝の絶叫が迸る。

 

 

 

癒された体が十全の力を発揮し、ただでさえ亀裂が入って脆くなっていた枷をまとめて破壊した。

同時に、その体から彼の激しい怒りをあらわすように純白の光が一気に噴き上がる。激しい光の奔流は、光輝を中心に纏まり彼の能力を五倍に引き上げた。〝限界突破〟の最終派生〝覇潰〟である。

 

 

 

「お前ら……絶対に許さない!」

 

 

 

光輝を取り押さえようとした騎士達だったが、光輝は、自分を突き刺していた騎士剣を奪い取るとそれを無造作に振るい、それだけで傀儡兵達を簡単に両断していった。そして、手を突き出し聖剣を呼ぶと、拘束された際に奪われていた聖剣がくるくると空中を回転しながら飛び光輝の手の中に収まった。

 

 

恵里が無表情で、傀儡兵達を殺到させるが光輝はその尽くを両断した。人殺しへの忌避感は克服できていない。

しかし、今は、激しい怒りで半ば我を失っていることと、相手は既に死んでいるという認識から躊躇いなく剣を振るうことが出来ているようだ。

 

 

一方、他のクラスメイト達も前線組が中心となって、居残り組を守るようにして戦い始めていた。

いくら倒してもそこかしこからわらわらと湧いて出る傀儡兵に、魔力封じの枷を解除する暇もなく純粋な身体能力のみで戦わなければならない。

龍太郎や永山が文字通り肉壁となって、震えてへたり込む居残り組の生徒達を必死に守っていた。

 

 

 

雫も、泣きそうな表情で必死に香織のもとへ行こうとする。

しかし、龍太郎達と同じく枷を外す暇がないほど傀儡兵達から怒涛の攻撃を受けて中々前に進めない。

 

 

その時、遂に、光輝を囲む傀儡兵達がやられ包囲網に穴ができた。

光輝は、怒りの形相で、恵里と檜山を睨みつけ光の奔流を纏いながら一気に襲いかかった。

 

 

だが、そこで、恵里は光輝の弱点につけ込んだ切り札を登場させる。それにより、恵里の予測通り、光輝の剣は止まってしまった。

 

 

 

光輝が震える声で、その切り札の名を呼ぶ。

 

 

 

「そ、そんな……メルドさん…まで……」

 

 

 

そう、光輝の剣を正面から受けて止めていたのは騎士団団長のメルド・ロギンスその人だったのだ。

 

 

「……光輝…なぜ、俺に剣を向ける…俺は、こんなこと、教えてはいないぞ…」

 

 

「なっ…メルドさん……俺は」

 

 

「光輝! 聞いてはダメよ! メルドさんももうっ!」

 

 

動揺する光輝に雫の叱咤が飛ぶ。

ハッと正気を取り戻した時には、メルドの鋭い剣撃が唐竹に迫っていた。咄嗟に、聖剣でその一撃を受ける。

凄まじい衝撃と共に、光輝の足元に亀裂が走った。どうやら王国最強の騎士も脳のリミッターが外れているらしい。

 

 

「……メルドさん……すみません!」

 

 

光輝は表情を悲痛に歪めながらも、聖剣を一気に振り抜きメルドに怒涛の斬撃を繰り出した。死して尚、メルドの剣技は冴え渡っており、〝覇潰〟状態の光輝の攻撃を辛うじて凌いでいる。

それは、メルドの登場で、光輝の沸騰した頭が少し冷えた為に、人殺しへの忌避感が僅かに顔を出し剣筋が鈍ったというのもある。しかし、それでも今の光輝に勝てるはずもなく、遂に、メルドの騎士剣は弾き飛ばされてしまった。

 

 

光輝は、一気に踏み込み、ただ我武者羅にメルドの首目掛けて聖剣を横薙ぎに振るった。だが、聖剣がメルドの首に吸い込まれる寸前、

 

 

 

「……助けてくれ……光輝」

 

 

「っ!?」

 

 

メルドの言葉に、思わず光輝の剣が止まってしまう。有り得ないと思っていても、もしや、メルド団長は操られているだけで死んでいないのではないか?

まだ助けられるのではないか?そんな思いが捨てきれない。これが光輝の弱点。ようは半端なのだ。

助けるなら助ける。殺すなら殺す。

どちらを選んでも、そこには明確な決意と覚悟が必要だ。光輝にはそれがない。

与えられた情報を元に、その場その場で都合のいい解釈をする。

だから、普段は自分の正しさを疑わないのに、一番大事なときに迷ってしまう。

 

 

メルドが、傍に落ちていた騎士剣を足で跳ね上げる。

一瞬で、その手に取り戻した凶器で、再び光輝と切り結んだ。

しかし、光輝に先程までの圧倒的な勢いはなく、むしろメルドに押されてしまっている。

 

 

「ッ!? ガハッ!」

 

 

メルドの技をどうにか凌いだ直後、突然、光輝の体から力が抜けて両膝が折れた。〝覇潰〟のタイムリミットではない。まだ、そこまで時間は経っていない。

異変はそれだけに留まらず、遂には盛大に吐血までしてしまった。ビチャビチャと地面に染み込む血が、光輝の混乱に拍車をかける。

 

 

 

「ふぅ~、やっと効いてきたんだねぇ。結構、強力な毒なんだけど……流石、光輝くん。団長さんを用意しておかなかったら僕の負けだったかも」

 

 

 

余裕そうな声音でのたまう恵里に、光輝が崩れ落ちる体を必死に支えながら疑問顔を向ける。

 

 

 

「くふふ、王子様がお姫様をキスで起こすなら、お姫様は王子様をキスで眠りに誘い殺して自分のものに……何て展開もありだよね? まぁ、万一に備えてっていうのもあるけどねぇ~」

 

 

 

その言葉で光輝も気がついた。最初に恵里がしたキス。

あの時、一緒に毒薬を飲まされたのだろうと。

恵里自身は、先に解毒薬でも飲んでいたのだろう。

まさか、口移しで毒を飲まされたとは思わなかった。

まして、好意を示しながらなど誰が想像できようか。

光輝は、改めて自分達が知っている恵里は最初からどこにもいなかったのだと理解した。

 

 

毒が回り、完全に動けなくなった光輝を見て、恵里は満足そうに笑うと、

くるりと踵を返して香織のもとへ向かった。

そろそろ〝縛魂〟可能なタイムリミットが過ぎてしまうからだ。

檜山が鬼のような形相で恵里を催促している。

 

 

 

香織が死してなお汚される。そのことに光輝も雫も焦燥と憤怒、そして悔しさを顔に浮かべて必死に止めようとする。

 

 

しかし、無常にも恵里の手は香織にかざされてしまった。恵里の詠唱が始まる。数十秒後には、檜山の言うことを何でも従順に聞く香織人形の出来上がりだ。

雫達が激怒を表情に浮かべ、檜山が哄笑し、恵里がニヤニヤと笑みを浮かべる。

 

 

 

そして……その声は絶望渦巻く裏切りの戦場にやけに明瞭に響いた。

 

 

 

「……一体、どうなってやがる?」

 

 

 

それは、白髪眼帯の少年、南雲ハジメの声だった。

 

 

 

ハジメの登場に、まるで時間が停止したように全員が動きを止めた。

それは、ハジメが凄絶なプレッシャーを放っていたからだ。

本来なら、傀儡兵達に感情はないためハジメのプレッシャーで動きを止めることなどないのだが、術者である恵里が、生物特有の強者の傍では身を潜めてやり過ごすという本能的な行動を思わずとったため、傀儡兵達もつられてしまったのである。

 

 

ハジメは、自分を注視する何百人という人間の視線をまるで意に介さず、周囲の状況を睥睨する。

クラスメイト達を襲う大量の兵士と騎士達。

塊になって円陣を組んでいるクラスメイト達、メルドの前で血を吐きながら倒れ伏す光輝、黒刀を片手に膝をついている雫、硬直する恵里と檜山。

そして檜山に抱き締められながら剣を突き刺され、命の鼓動を止めている香織……

 

 

 

その姿を見た瞬間、この世のものとは思えないおぞましい気配が広場を一瞬で侵食した。

体中を虫が這い回るような、体の中を直接かき混ぜられ心臓を鷲掴みにされているような、怖気を震う気配。

圧倒的な死の気配だ。血が凍りつくとはまさにこのこと。一瞬で体は温度を失い、濃密な殺意があらゆる死を幻視させる。

 

 

 

刹那、ハジメの姿が消えた。

 

 

 

そして、誰もが認識できない速度で移動したハジメは、轟音と共に香織の傍に姿を見せる。

轟音は、檜山が吹き飛び広場の奥の壁を崩壊させながら叩きつけられた音だった。

ハジメは、一瞬で檜山の懐に踏み込むと香織に影響が出ないように手加減しながら殴り飛ばしたのである。

 

 

本来なら、檜山如きは一撃で体が弾け飛ぶのだが、その手加減のおかげで今回は全身数十箇所の骨を砕けさせ内臓をいくつか損傷しただけで済んだ。

今頃、壁の中で気を失い、その直後痛みで覚醒するという地獄を繰り返しているだろう。

ハジメは、片腕で香織を抱き止めると、そっと顔にかかった髪を払った。

そして、大声で仲間を呼ぶ。

 

 

「ティオ! 頼む!」

 

 

「っ……うむ、任せよ!」

 

 

「し、白崎さんっ!」

 

 

ハジメの呼びかけに応えて、一緒にやって来たティオが我を取り戻したように急いで駆けつけた。傍らの愛子も血相を変えて香織の傍にやって来る。

ハジメから香織を受け取ったティオは急いで詠唱を始めた。

 

 

 

「アハハ、無駄だよ。もう既に死んじゃってるしぃ。

まさか、君達がここに来てるなんて……いや、香織が来た時点で気付くべきだったね。……うん、檜山はもうダメみたいだし、南雲にあげるよ?

僕と敵対しないなら、魔法で香織を生き返らせてあげる。擬似的だけど、ずっと綺麗なままだよ? 腐るよりいいよね? ね?」

 

 

にこやかに、しかし額に汗を浮かべながらそう提案する恵里。傍らで愛子が驚愕に目を見開いているのを尻目に、ハジメはスッと立ち上がった。ハジメの力を知っている恵里は、内心盛大に舌打ちしながらも自分に手を出せば、香織はこのまま朽ちるだけだと力説する。

 

 

だが、ハジメは、その溢れ出る殺意を微塵も揺るがせず、能面のような無表情で足音を立てながらゆっくり恵里に歩み寄っていく。

 

 

 

「待って、待つんだ、南雲。ほら、周りの人達を見て?生きているのと変わらないと思わない?死んでしまったものは仕方ないんだし、せめて彼等のようにしたいと思うよね?しかも、香織を好きなように出来るんだよ?それには僕が絶対に必要で……」

 

 

後退りしならが言い募る恵里。

 

 

と、その時、ハジメの背後に人影が走る。

それは、他の傀儡兵とは比べ物にならない程の身のこなしでハジメに鋭い槍の一撃を放った。影の正体は近藤礼一。

先程、恵里に殺害され傀儡と成り下がった哀れな槍術師だ。

 

 

もっとも、傀儡とは言え、異世界チートの力は十全に発揮される。近藤の天職たる〝槍術師〟の力により放たれた激烈な突きは、風の螺旋を纏いながらハジメの心臓に狙い違わず直撃した。

 

 

 

「アハハ、油断大敵ぃ~。それとも怒りで我をっ……」

 

 

さっきまでのどこか焦ったような表情を一転させてニヤついた表情に戻った恵里だったが、ハジメが何の痛痒も感じていないかのように歩みを止めない事で、その表情を引き攣らせた。

ハジメの後ろにいたなら気がついただろう。

 

紅い魔力の塊が十円サイズに圧縮され、突き出された槍の先を食い止めていることを。〝金剛〟の派生〝集中強化〟だ。

 

 

ハジメは、無言で左腕の肘を背後に向けると、何の躊躇いもなくショットガンを撃ち放った。

轟音が響き渡り、同時に、超至近距離から放たれた大威力の散弾を顔面で受けた近藤は、その頭部を細かな肉片に変えて吹き飛んだ。

ビチャビチャと血肉の飛び散る生々しい音が響く。

 

 

「っ……殺れ」

 

 

恵里が、徐々に表情を険しくしながら次の傀儡兵とメルドを前に出した。

ハジメも、光輝ほどではないがメルドとはそれなりに親しくしていたし、【オルクス大迷宮】では、秘薬を使って瀕死の彼を救ってまでいる。

なので、光輝と同じように動揺して隙を晒すと踏んだのだ。

周囲では、傀儡兵が虎視眈々とハジメが隙を晒すのを待ち構えている。

しかし、そんな常識的な判断がハジメに通じるわけがない。

 

 

ハジメは、メルドが踏み込んで来るのを尻目に〝宝物庫〟からメツェライを取り出した。いきなり虚空から現れた見るからに凶悪なフォルムの重兵器に、その場の全員が息を呑む。

 

 

咄嗟に、雫が叫んだ。

 

 

「みんな! 伏せなさい!」

 

 

龍太郎や永山が立ち尽くしているクラスメイト達を覆いかぶさる様に引きずり倒した。

 

 

直後、独特の回転音と射撃音を響かせながら、破壊の権化が咆哮をあげる。

かつて、解放者の操るゴーレム騎士を尽く粉砕し、数万からなる魔物の大群を血の海に沈め、〝神の使徒〟が放つ死の銀羽すら相殺した怪物の牙。

そんなものを解き放たれて、たかだか傀儡兵如きが一瞬でも耐えられるわけがなかった。

 

 

電磁加速された弾丸は、一人一発など生温いと言わんばかりに全ての障碍を撃ち砕き、広場の壁を紙屑のように吹き飛ばしながら、ハジメを中心に薙ぎ払われる。

傀儡兵達は、その貴賎に区別なく体を砕け散らせて原型を留めない唯の肉塊へと成り下がった。

 

 

やがて、メツェライの咆哮が止み、静寂が戻った広場に再び足音が響く。

誰もが伏せた体勢のまま身動きを取れない中で、その道を阻むものの全てを薙ぎ払い進撃するのは、

当然、ハジメだ。

 

 

他の皆と同じく、必死に頭を下げて嵐が過ぎ去るのをひたすら待っていた恵里の眼前に、靴の爪先が突きつけられた。

恵里が、のろのろ顔を上げる。靴から順に視線を上げていき、見上げた先には、何の価値も無い路傍の石を見るような無機質な瞳が一つ。

ハジメの手にメツェライは既にない。ただ恵里の眼前に立ち見下ろしている。

 

 

恵里が何も言えず、ただ呆然と見つめ返していると、おもむろにハジメが口を開いた。

 

 

「で?」

 

 

「っ……」

 

 

 

ハジメは、恵里が何をしたのか詳しい事は知らない。

ただ、敵だと理解しただけだ。これが唯の敵なら、無慈悲に直ちに殺して終わりだった。しかし、恵里は決して手を出してはいけない相手に手を出したのだ。

もはや、ただ殺すだけでは足りない。死ぬ前に〝絶望〟を……

 

 

 

だから、ハジメは問うたのだ。お前如きに何ができる? 何もできないだろう? と。

 

 

 

それを正確に読み取った恵里は、ギリッと歯を食いしばった。唇の端が切れて血が滴り落ちる。

今の今まで自分こそがこの場の指揮者で、圧倒的有利な立場にいたはずなのに、一瞬で覆された理不尽とその権化たるハジメに憎悪と僅かな畏怖が湧き上がる。

 

 

恵里が、激情のまま思わず呪う言葉を吐こうとした瞬間、ゴリッと額に銃口が押し当てられた。

 

 

認識すら出来なかった早抜きに、呪いの言葉を呑み込む恵里。

 

 

「……てめぇの気持ちだの動機だの、そんな下らないこと聞く気はないんだよ。もう何もないなら……死ね」

 

 

ハジメの指が引き金に掛かる。恵理は、ハジメの目に、クラスメイトである自分を殺害すること、香織を傀儡に出来ないことへの躊躇いが微塵もない事を悟った。

 

 

 

――死ぬ

 

 

 

恵里の頭を、その言葉だけが埋め尽くす。

しかし、恵里の悪運はまだ尽きていなかったらしい。

 

 

 

恵里の脳天がぶち抜かれようとした瞬間、ハジメ目掛けて火炎弾が飛来したからだ。かなりの威力が込められているらしく白熱化している。

しかし、ハジメにはやはり通用しない。

ドンナーの銃口を火炎弾に向けるとピンポイントで魔法の核を撃ち抜き、あっさり霧散させてしまった。

 

 

 

「なぁぐぅもぉおおおー!!」

 

 

 

その霧散した火炎弾の奥から、既に人語かどうか怪しい口調でハジメの名を叫びながら飛び出してきたのは満身創痍の檜山だった。

手に剣を持ち、口から大量の血を吐きながら、砕けて垂れ下がった右肩をブラブラとさせて飛びかかってくる。

もはや、鬼の形相というのもおこがましい、醜い異形の生き物にしか見えなかった。

 

 

 

「…うるせぇよ」

 

 

 

ハジメは、煩わしそうに飛びかかって来た檜山にヤクザキックをかます。

ドゴンッ! という爆音じみた衝撃音が響き、檜山の体が宙に浮いた。

吹き飛ばなかったのは衝撃を余すことなく体に伝えたからだ。

 

 

そして、ハジメは、宙に浮いた檜山に対して、真っ直ぐ天に向けて片足を上げると、そのまま猛烈な勢いで振り下ろした。

まるで薪を割る斧の一撃の如き踵落としは、檜山の頭部を捉えて容赦なく地面に叩きつけた。地面が衝撃でひび割れ、割れた檜山の額から鮮血が飛び散る。

勢いよくバウンドした檜山は既に白目を向いて意識を失っていた。

 

 

既に誰が見ても瀕死の檜山。しかし、なお手を緩めないのがハジメクオリティーだ。バウンドして持ち上がった頭を更に蹴り上げ、再び宙に浮かせる。絶妙な手加減がされていたのか、その衝撃で檜山は意識を取り戻した。

 

 

ハジメは、宙にある檜山の首を片手で掴み掲げるようにして持ち上げる。宙吊りになった檜山が、力のない足蹴りと拳で拘束を解こうと暴れるが、ハジメの人外の膂力は小揺ぎもしない。

 

 

「おま゛えぇ! おま゛えぇざえいなきゃ、がおりはぁ、おでのぉ!」

 

 

溢れ出る怨嗟と殺意。

人間とは、ここまで堕ちる事ができるのかと戦慄を感じずにはいられない余りの醜悪さ。常人なら見るに堪えないと視線を逸らすか、吐き気を催して逃げ去るだろう。

 

 

しかし、ハジメは、檜山のそんな呪言もまるで意に介さない。それどころか、むしろ、ハジメの瞳には哀れみの色すら浮かんでいた。

 

 

 

「俺がいようがいまいが、結果は同じだ。少なくとも、お前が何かを手に入れられる事なんて天地がひっくり返ってもねぇよ」

 

 

「きざまぁのせいでぇ」

 

 

「人のせいにするな。お前が堕ちたのはお前のせいだ。日本でもこっちでも、お前は常に敗者だった。〝誰かに〟じゃない。〝自分に〟だ。他者への不満と非難ばかりで、自分で何かを背負うことがない。……お前は、生粋の負け犬だ」

 

 

「ころじてやるぅ! ぜっだいに、おま゛えだけはぁ!」

 

 

ハジメの言葉に更に激高して狂気を撒き散らす檜山。

ハジメは、自分に負け続けた負け犬を最後に一瞥したあと、何かに気が付いたように明後日の方向へ視線を向けた。

その方向には、王都に侵入してきた魔物の先陣がたむろしていた。

 

 

ハジメは、冷めた眼差しを檜山に戻し、再度宙に投げると、重力に従って落ちてきたところで義手の一撃を叩きつけた。

その衝撃により回転力が加わって、くるくると独楽のように回転する檜山。

 

 

 

「生き残れるか試してみな。まぁ、お前には無理だろうがな」

 

 

ハジメは、更にダメ押しとばかりに空気すら破裂するような回し蹴りを叩き込んだ。檜山は、その衝撃でボギュ!と嫌な音を立てながら大きく広場の外へと吹き飛ばされていった。

 

 

ハジメが、さっさと檜山を撃ち殺さず、急所を外して滅多打ちにしたのは無意識的なものだ。

自分を奈落に落としたことへの復讐ではない、香織を傷つけられたことへの復讐だ。

 

 

本人にどこまで自覚があるかはわからないが、楽に殺してやるものかというハジメの思いが現れたのである。それは、檜山を辛うじて生かしたまま、魔物の群れの中に蹴り飛ばした事にもあらわれていた。

 

 

しかし、この檜山への対応が、恵里を殺すための時間を削いでしまった。恵里が逃げ出したのではない。ハジメ目掛けて極光が襲いかかったのだ。

 

 

 

「チッ……」

 

 

ハジメは、舌打ちしつつその場から飛び退き、極光の射線に沿ってドンナーを撃ち放った。三度轟く炸裂音と同時に、極光という滝を登る龍の如く、三条の閃光が空を切り裂く。

 

 

直後、極光の軌道が捻じ曲がり、危うく光輝を灼きそうになったが、寸前で恵里が飛び出し何とか回避したようだ。恵里としても、誤爆で光輝が跡形もなく消し飛ばされるなど冗談でも勘弁して欲しいところだろう。

 

 

 

やがて、極光が収まり空から白竜に騎乗したフリードが降りてきた。

 

 

 

「……そこまでだ。白髪の少年。大切な同胞達と王都の民達を、これ以上失いたくなければ大人しくすることだ」

 

 

 

どうやらフリードは、ハジメを光輝達や王国のために戦っているのだと誤解しているようである。周囲の気配を探れば、いつの間にか魔物が取り囲んでおり、龍太郎達や雫、そしてティオや愛子達を狙っていた。

 

 

ハジメ達が本気で戦えば、甚大な被害が出ることを理解しているため人質作戦に出たのだろう。ハジメは知らないことだが、ユエに手酷くやられ、ハジメ達には敵わないと悟ったフリードの苦肉の策だ。なお、ユエに負わされた傷は、完治にはほど遠いものの、白鴉の魔物の固有魔法により癒されつつある。

 

 

 

と、その時、香織に何かをしていたティオがハジメに向かって声を張り上げた。

 

 

 

「ご主人様よ!どうにか固定は出来たのじゃ!しかし、これ以上は……時間がかかる……出来ればユエの協力が欲しいところじゃ。固定も半端な状態ではいつまでも保たんぞ!」

 

 

ハジメは、肩越しにティオを振り返ると力強く頷いた。

何のことかわからないクラスメイト達は訝しそうな表情だ。しかし、同じ神代魔法の使い手であるフリードは察しがついたのか、目を見開いてティオの使う魔法を見ている。

 

 

 

「ほぉ、新たな神代魔法か……もしや【神山】の?ならば場所を教えるがいい。逆らえばきさっ!?」

 

 

フリードが、ハジメ達を脅して【神山】大迷宮の場所を聞き出そうとした瞬間、ハジメのドンナーが火を噴いた。

咄嗟に、亀型の魔物が障壁を張って半ば砕かれながらも何とか耐える。

フリードは、視線を険しくして、周囲の魔物達の包囲網を狭めた。

 

 

「どういうつもりだ? 同胞の命が惜しくないのか? お前達が抵抗すればするほど、王都の民も傷ついていくのだぞ?それとも、それが理解できないほど愚かなのか? 外壁の外には十万の魔物、そしてゲートの向こう側には更に百万の魔物が控えている。お前達がいくら強くとも、全てを守りながら戦い続けることが……」

 

 

その言葉を受けたハジメは、フリードに向けていた冷ややかな視線を王都の外――王都内に侵入しようとしている十万の大軍がいる方へ向けた。

そして、無言で〝宝物庫〟から拳大の感応石を取り出した。

訝しむフリードを尻目に感応石は発動し、クロスビットを操る指輪型のそれとは比べ物にならない光を放つ。

 

 

猛烈に嫌な予感がしたフリードは、咄嗟に、ハジメに向けて極光を放とうとする。しかし、ハジメのドンナーによる牽制で射線を取れず、結果、それの発動を許してしまった。

 

 

 

――天より降り注ぐ断罪の光。――

 

 

 

そう表現する他ない天と地を繋ぐ光の柱。

触れたものを、種族も性別も貴賎も区別せず、一切合切消し去る無慈悲なる破壊。

大気を灼き焦がし、闇を切り裂いて、まるで昼間のように太陽の光で目標を薙ぎ払う。

 

 

 

キュワァアアアアア!!

 

 

 

独特な調べを咆哮の如く世界に響き渡らせ大地に突き立った光の柱は、直径五十メートルくらいだろうか。光の真下にいた生物は魔物も魔人族も関係なく一瞬で蒸発し、凄絶な衝撃と熱波が周囲に破壊と焼滅を撒き散らす。

 

 

ハジメが手元の感応石に魔力を注ぎ込むと、光の柱は滑るように移動し地上で逃げ惑う魔物や魔人の尽くを焼き滅ぼしていった。

 

 

防御不能。回避不能。それこそ、フリードのように空間転移でもしない限り、生物の足ではとても逃げ切れない。外壁の崩れた部分から王都内に侵入しようとしていた魔物と魔人族が後方から近づいて来る光の柱を見て恐慌に駆られた様に死に物狂いで前に進み出す。

 

 

光の柱は、ジグザグに移動しながら大軍を蹂躙し尽くし、外壁の手前まで来るとフッと霧散するように虚空へ消えた。

 

 

後には、焼き爛れて白煙を上げる大地と、強大なクレーター。そして大地に刻まれた深い傷跡だけだった。

ギリギリ、王都へ逃げ込む・・・・ことが出来た魔人族は安堵するよりも、唯々、一瞬にして消えてしまった自軍と仲間に呆然として座り込むことしか出来なかった。

 

 

そして、思考が停止し、呆然と佇むことしか出来ないのは、ハジメの目の前にいるフリードや恵里、雫達も同じだった。

 

 

「愚かなのはお前だ、ド阿呆。俺がいつ、王国やらこいつらの味方だなんて言った? てめぇの物差しで勝手なカテゴライズしてんじゃねぇよ。

戦争したきゃ、勝手にやってろ。ただし、俺の邪魔をするなら、今みたいに全て消し飛ばす。まぁ、百万もいちいち相手してるほど暇じゃないんでな、今回は見逃してやるから、さっさと残り引き連れて失せろ。お前の地位なら軍に命令できるだろ?」

 

 

同胞を一瞬にして殲滅した挙句の余りに不遜な物言いに、フリードの瞳が憎悪と憤怒の色に染まる。しかし、例え、特殊な方法で大軍を転移させるゲートを発動させているとはいえ、ハジメの放った光の柱の詳細が分からない以上、二の舞、三の舞である。それだけは、何としても避けねばならない。

 

 

ハジメとしても、逃がすのは業腹ではあったが、今は一刻も早く香織に対して処置しなければならない。時間が経てば、手の施しようがなくなってしまうのだ。

まして、初めての試みであり、ぶっつけ本番の作業である。

しかも、実は先の光の一撃は、試作品段階の兵器であり、今の一発で壊れてしまった。殲滅兵器なしに、百万もの魔物と殺り合っている時間はない。

大軍への指揮権があるであろうフリードを殺すのは得策ではなかった。

 

 

そうとは知らないフリードは、唇を噛み切り、握った拳から血を垂れ流すほど内心荒れ狂っていたが、魔人族側の犠牲をこれ以上増やすわけにはいかないと、怨嗟の篭った捨て台詞を吐いてゲートを開いた。

 

 

 

「……この借りは必ず返すっ……貴様だけは、我が神の名にかけて、必ず滅ぼす!」

 

 

フリードは踵を返すと、恵里を視線で促し白竜に乗せた。恵里は、毒を受けながらも、その強靭なステータスで未だ生きながらえている光輝を見て、妄執と狂気の宿った笑みを向けた。それは言葉に出さなくても分かる、必ず、光輝を手に入れるという意志の篭った眼差しだった。

 

 

白竜に乗ったフリードと恵里がゲートの奥に消えると同時に、

上空に光の魔弾が三発上がって派手に爆ぜた。おそらく、撤退命令だろう。同時に、ユエとシアが上空から物凄い勢いで飛び降りてきた。

 

 

 

「……ん、ハジメ。あのブ男は?」

 

 

「ハジメさん! あの野郎は?」

 

 

どうやら二人共、フリードをボコりに追ってきたらしい。

光の柱について聞かないのは、ハジメの仕業とわかっているからだろう。

 

 

しかし、今は、そんな些事に構っている暇はないのだ。

ハジメは、ユエとシアに香織の死を伝える。

二人は、驚愕に目を見開いた。

しかし、ハジメの目を見てすぐさま精神を立て直す。

 

 

そして、ハジメは、その眼差しに思いを込めてユエに願った。ユエは、少ない言葉でも正確に自分の役割を理解すると力強く「……ん、任せて」と頷く。

 

 

踵を返してティオのもとへ駆けつけた。そして、ハジメが香織をお姫様だっこで抱え上げ、そのまま広場を出ていこうとする。そこへ、雫がよろめきながら追いかけ必死な表情でハジメに呼びかけた。

 

 

 

「南雲君!香織が、香織を……私……どうすれば……」

 

 

雫は、今まで見たことがないほど憔悴しきった様子で、放っておけばそのまま精神を病むのではないかと思えるほど悲愴な表情をしていた。

戦闘中は、まだ張り詰めた心が雫を支えていたが、驚異が去った途端、親友の死という耐え難い痛みに苛まれているのだろう。

 

 

ハジメは、シアに香織を預けるとティオに先に行くように伝える。

雫の様子を見て察したユエ達は、ティオの案内に従って広場を足早に出て行った。

 

 

クラスメイト達が怒涛の展開に未だ動けずにいる中、ハジメは、女の子座りで項垂れる雫の眼前に膝を付く。

そして、両手で雫の頬を挟み強制的に顔を上げさせ、真正面から視線を合わせた。

 

 

「八重樫、折れるな。俺達を信じて待っていてくれ。必ず、もう一度会わせてやる」

 

 

「南雲君……」

 

 

光を失い虚ろになっていた雫の瞳に、僅かだが力が戻る。

ハジメは、そこでフッと笑うと冗談めかした言葉をかけた。

 

 

「八重樫がこんなんじゃ、今後、誰が面倒事を背負ってくれるっていうんだ? 壊れた八重樫なんか見せたら香織までどうなるか……勘弁だぞ? 俺は八重樫みたいな苦労大好き人間じゃないんだ」

 

 

「……誰が苦労大好き人間よ、馬鹿。……信じて……いいのよね?」

 

 

ハジメは、笑みを収めて真剣な表情でしっかりと頷く。

 

 

間近で、ハジメの輝く瞳と見つめ合い、雫はハジメが本気だと理解する。

本気で、既に死んだはずの香織をどうにかしようとしているのだ。

その強靭な意志の宿った瞳に、雫は凍てついた心が僅かに溶かされたのを感じた。

 

 

雫の瞳に、更に光が戻る。

そして、ハジメに向かって同じ様に力強く頷き返した。

それは、ハジメ達を信じるという決意のあらわれだ。

 

 

ハジメは、雫が精神的に壊れてしまう危険性が格段に減った事を確認すると、〝宝物庫〟から試験管型容器を取り出し、雫の手に握らせた。

 

 

「これって……」

 

 

「もう一人の幼馴染に飲ませてやれ。あまり良くない状態だ」

 

 

ハジメの言葉にハッとした様子で倒れ伏す光輝に視線を移す雫。

光輝は既に気を失っており、見るからに弱っている様子だ。

ハジメが手渡した神水が、以前、死にかけのメルドを一瞬で治癒したのを思い出し、秘薬中の秘薬だと察する。

ハジメとしては、せっかく声をかけても光輝の死で雫が折れてしまっては困るくらいの認識だったのだが……

雫の表情を見れば予想以上に感謝されてしまっているようだった。

 

 

雫は、ギュッと神水の容器を握り締めると、少し潤んだ瞳でハジメを見つめ「…ありがとう、南雲君」とお礼の言葉を述べた。

 

ハジメは、お礼の言葉を受け取ると直ぐに立ち上がり踵を返す。そして、ユエ達を追って風の様に去っていった。

 

 

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またもほとんどカット出来ませんでした・・・><

(だってここ一番重要(涙

 

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その後、リリアーナやクラスメイト達に

 

 

神代魔法である「魂魄魔法」で死亡した香織を「固定」し、

 

ハジメが倒した「本来の神の使徒であるノイントの遺体(修復済)」に「定着」させたということが説明された。

 

 

 

という所で映像は終わる。

 

 

 

「ハジメ:分かったか、中村?決して同情は出来ないが、お前も同様に返すわけにいかないと言った理由が。今の映像を見ただろう?最初に言った通り、お前が自分の欲望のためにトータスを、そしてクラスメイト達を裏切るからだ。

天之川を手に入れるためだけにハイリヒ王国の騎士500人余りや近藤を殺してるからだ。騎士のうちメルドを殺したのはノイントだろう。一部か殆どかは知らないが、お前と檜山が騎士達を殺し、エリヒド国王や宰相や貴族達までも殺した。」

 

 

「・・・・・」何も言うことが出来ない恵里。

「・・・・」沈痛な表情で涙を流している鈴。

 

 

 

「ハジメ:今の映像と先程のウルの映像、そしてエヒトとの戦いにおいて、 檜山、近藤、清水、そして中村。

お前ら4人は死んでいる。俺達の世界にお前らは居ない。でだ、俺が清水を除き、檜山・近藤・斎藤・中野・中村・天之川を元の世界に返さない。といった理由は分かったか?

 

 

檜山達4人は、俺だけに限らず自分より弱いと思ったものに遠慮なく暴力をふるい、誹謗し中傷し傷つける。

要するに4人で居なきゃ何も出来ないクズだってことだ。そんなクズを元の世界にそのまま帰したら、また同じことを繰り返すだろう?更生の余地もない。

だから返さない。異論も認めない。

 

特に檜山、お前だけは返さないのではなくここで殺す。

あちらの世界でもこちらの世界でも香織に異常な執着をしているのは分かってるし、あちらの世界では、現に殺している、中村と協力してな。そんなお前を許すつもりも、これ以上存在を認めるつもりもないからな。

 

 

そして天之川。

今まで見た映像で、お前は誰かを救ったか?守れたか?

香織や雫がピンチだったのを救ったのも、お前じゃなくて俺達だ。

香織が殺されても、再び雫に会わせることが出来たのも、俺達のおかげ。

ミュウやレミアやシアやユエやティオやリリアーナ達を含めてこの世界で出会った人達を救ったのも俺。

さっきお前が大言壮語で言っていた、「世界を救った」のも俺達だ。むしろお前は敵側にいた。

さぁ、答えろよ天之川?お前は誰かを救ったのか?」

 

 

「・・・・・・・」天之川は何も言えない。

 

 

 

「ハジメ:ああ、そうだ。さっきの映像の中村のお前への凄まじいまでの妄執な。あれお前のせいだからな?」

 

 

 

「え?」(困惑した表情で、恵里を見つめる天之川)

「ぇ?」(ハジメの発言を聴いて呆然とするクラスメイト達。)

 

 

「・・・・・・。」(沈黙で答える恵里)

 

 

 

「ハジメ:事情を説明するが、いいか?中村。どうしても嫌だと言うならこれ以上は何も言わないが。」

 

 

 

「雫・香織:伝えてあげたほうが、恵里(ちゃん)のためだと思うわ(な)。」

 

 

「ぅん・・・いいよもう。言って構わないよ。」と諦観した恵里。

 

 

 

「ハジメ:じゃぁ、説明するな?

中村は幼少期に目の前で父親を交通事故で亡くしてるんだよ。そして母親はそれなりの富裕家庭で育った人らしくてな。しかも、駆け落ち同然に旦那さんと結婚したらしくて、ほぼ絶縁状態だったんだよ。

 

そして母親は、旦那が亡くなった事を受け入れられなかったんだよ。そんな心の弱かった母親が一人で子供をそだれられるわけがなくて、

旦那が死んだのは中村のせいだと暴力や暴言を吐くようになっていった。それで済んでれば、

まだ中村は別の生き方をしてたのかも知れないな?

 

でだ。そんな母親が自分が縋るために新しい父親と結婚した訳だ。

ここからは想像できるヤツもいるかも知れないが、その新しい父親ってのが余りなクズ野郎で、母親だけじゃなく当時の中村すらも性の対象として見始めた訳だ。

 

ある程度成長した頃、母親が留守の最中に中村はそのクズな父親に襲われた。実際は未遂だがな。

警察と近所の人が中村の悲鳴を聴いて助けてくれたというとこだ。

 

そこで済めば、まだ救いはあったんだろう。

もちろん、そのクズは逮捕されて離婚な。

すると、その母親がそのクズ男を「お前が誘惑したからだ!」と中村を殺さんばかりに責め立てたらしいんだよ。

 

本当の父親を目の前で亡くし、義理の父親には襲われかけ、母親には殺されんばかりに責め立てられた。

そんな中村は人生に絶望して、入水自殺しようとしてたんだ。

 

 

・・・そこに通りかかったのが、当時の天之川だ。

 

 

ここまで言えばもう誰でも分かるだろ?

人生に絶望して「自殺しようとしてた」女の子に、

 

 

当時から正義感が強く人気があったらしい、王子様みたいな男の子に、自殺を止められ。

 

 

「どうしたの?」と聞かれ、端折って説明したら、

 

 

「君は一人じゃないよ!僕が守ってあげる!」と言われて、

 

 

学校のクラスでイジメすら受けてた中村が、

いざ登校してみれば、周りの女の子達は皆優しく接してくれる訳だ。

 

 

その優しく接してくれた子たちも「天之川に頼まれたから」だったんだが、

 

 

誰でも惚れるわな、そんなタイミングで言われたら。

 

 

 

でだ。天之川がずっと守ってくれるって言葉を信じて、

 

 

 

転校や離れ離れになりたくないが為に、母親と仲良く演じてたわけだ。

むしろ、そこで中村の何かが壊れた訳だ。

 

 

これに関しては警察と児童相談所の確認が取れてるので間違いない。

 

 

どちらとも、「仲の良い母娘でしたよ?」だとさ。

 

 

で、いざ側に居れるようになってみてみたら。

 

 

天之川の周りにはほぼ常に香織や雫が居たわけだ。

 

 

中村はさっきの映像の通り、谷口を利用してでもいないと側にいられない程に。

 

 

王子様が守ってくれるって言葉を信じたら。

 

 

その王子様には特別な幼馴染が居て、

 

 

更には自分へ向けられる目は「守ってあげるよ!」と言ってくれた目ではなく、

他のクラスメイト達を見る目となんら変わらなかった。

 

 

これが、中村がああなった理由だ。俺が調べた範囲でのな。勝手に過去を穿り返す様な真似してすまない。」

 

 

 

「ハジメ:で、どうだ。間違ってないか?中村。」

 

 

 

「ぅん。良くそこ迄詳しく調べられたね・・・凄いね」

 

 

と苦笑いしながら恵里。

 

 

「恵里ぃぃ・・・ゴメンね・・・。」と鈴は号泣しながら謝っていた。

 

 

ハジメ嫁'S側は前もって知っていた事もあり、そこまで衝撃を受けていなかったが、

天之川を見る目は、ハイライトが消えジト目を超えたクズを見る目だった。

 

 

 

本来召喚された方のクラスメイト達もあまりの話の重さと、天之川の対応の酷さに

しかめっ面ならまだマシな方で侮蔑、軽蔑、敵視、殺意の目を持って見ていた。

 

 

 

「ハジメ:分かったか?天之川。お前は雫も香織もクラスメイトも中村も誰も救っちゃいない。本当に救うと言う覚悟があったのなら関わった責任を最後まで持たなきゃいけない。が、お前は雫の件も、

「イジメがなくなったように見えただけ」で

雫が救われたと勘違いし、その後は助けてすらいない。

 

香織の件もそうだ。さっきの映像で言えば、あそこでお前がメルドをそして、中村と檜山を切っていれば、香織は檜山に殺されることが無かったはずだ。

 

そして中村の件もだ。

「守ってやる」と簡単に言ったみたいだが、守るってのはそんな簡単なことじゃない。守ると決めた何かを守るためなら、他の何かを守らない事を決断し、むしろ傷つけようとする者全てに敵対する覚悟がなきゃいけない。

 

 

今まで上手く出来たように見えていたのは、

全てお前の自己中心的な正義感と、いつものお得意な「ご都合解釈」で、中途半端にカリスマ性があったからお前は支持されてきただけに過ぎないぞ?

 

 

その度に割を食ってた人間がいるはずだ。特に雫や香織とかな?

お前が俺にいっつも突っかかってくるたび、雫がこっそり俺に謝罪しに来てたのを知らないだろ?

それにすら気づかずみんなを守ってやるとか、笑いが止まらなかったよ。

むしろ、お前が雫や香織の優しさに守られてたのにな。

ほら、周りを見てみろ?お前の本質が見えた今、周りの皆はお前をどう見ている?」

 

 

「・・・」周りを見て沈黙しつつも、絶望した天之川。

 

 

 

「ハジメ:さぁ、お前ら。この6人を元の世界に返さない事に反対するやつはいるか?」

 

 

「・・・」沈黙で返答するクラスメイトと愛子先生。

 

 

「ハジメ:よし、じゃぁユエ。この6人とそっちの俺と香織と雫と遠藤と愛子と園部を除く全員の技能と能力封印と記憶改竄を頼む。

名前を挙げた俺達はトータス救った後の帰還後の技能と能力と記憶改竄でな。

魔力が足りないならカプチューしてもいいぞ。」

 

 

「ユエ:・・・ん。任せるよろし。」

 

 

 

魂魄・昇華混合魔法 魂魄改変+記憶改竄+能力改竄

 

 

 

 

「ユエ:・・・ん、終わった。」

 

 

 

それを聞いたハジメは、導越の羅針盤とクリスタルキーを使って、"解錠"した。

 

 

 

「ハジメ:さぁ、お前らさっさとそのゲートくぐって元の世界に帰れ。」

 

 

と言われ、本来召喚された側のハジメ達は元の世界へと帰って行った。

(トータス救った後の帰還後の記憶、技能、能力改竄されたハジメや香織達にはハジメのお土産と言う何かを渡されて。)

 

 

 

天之川達6人と、ハジメとハジメ嫁's達を残してゲートは閉じて消えた。

 

 

「ハジメ:さてどうするか。檜山達4人は後回しでいいな。天之川、お前に最後のチャンスをやる。

 

これから送る世界は元の日本とはかけ離れた世界だ。

そんな所でも、今度こそお前は中村を守り抜くと誓えるか?誓えないのなら、二人仲良くこの場で消えてもらうまでだが。」

 

 

「雫・香織・愛子:ハジメ!(君、くん♥)」

 

 

「あぁ、誓う。恵里が許してくれるなら。」と天之川。

 

 

「ホントお節介だね、南雲君達。そしてありがとう」と照れ笑いを浮かべる恵里。

 

 

 

導越の羅針盤とクリスタルキーを使って、再び"解錠"した。

 

 

そのゲートの先の世界はトータスと違い複数の国が戦争を行っているだろう、中世の世界だ。

 

 

二人は、手をつなぎながら最後にハジメ達の方を向き、頭を下げ礼をしながらゲートをくぐっていった。

(恵里にも、ハジメからこっそりお土産を渡してます。)

 

 

「ハジメ:さて、さて後はコイツラの処分だな。どうするか。」

 

 

「雫・香織:檜山の処分は私達にやらせてくれないかしら?(な?)」

 

 

「シア・ティオ・ユエ:じゃあ残り3人は私達で。」

 

 

「愛子・リリアーナ:私達は一応結末を見届けようと思います。」

 

 

「レミア:あらあら、あなた。私達は先に戻ってもいいでしょうか?ミュウにはまだ、そういうのはあまり………。」

 

 

「ミュウ:わかったなの。先に帰ってるから早く帰ってきてほしいの、パパ!」

 

 

三度、導越の羅針盤とクリスタルキーを使って、再び"解錠"した。

 

 

ミュウとレミアはゲートをくぐって本来の世界へと先に戻っていった。

 

 

この後、檜山は雫に斬られるだけ斬られて(斬りたいものだけ斬る能力多用。)

 

痛みや苦痛等で発狂しそうになる度に香織に、魂魄・再生魔法で癒やされ、

 

二人の気が済むまで続けられたことは言うまでもない。

(香織が再生魔法のアワークリスタルもどきで1秒を10分ばかりにして半日ほど。)

 

※12時間=720分=43200秒*600=25920000秒=300日(自分で設定しといて、鬼ですね?)

 

残りの三人は、

ユエが近藤を・・・五天龍で一体ずつ突っ込ませては治しの5体目で消失させ。

シアが斎藤を・・・身体強化レベルⅦを使った100tハンマーで跡形もなく叩き潰し。

ティオが中野を・・・漆黒のブレスで塵も残さず焼き尽くし。

 

 

というあまりに酷い形で世界から消えていったことは誰も知らない。(?)

 

 

全てが片付いたので、

 

先に戻っていったレミア・ミュウを除き、

 

 

再びクリスタルキーで開かれたゲートで、

ハジメと嫁's+いつの間にかステルス発動してた遠藤も無事元の世界に帰っていきました。

 

 

-完-




うっわ・・・めっさ長かった。


え?本文40000文字?


原作設定活かす為にカットできなかった部分が多いとは言え凄いな。


よく心折れなかったわ。


書くのにも8時間ぐらい掛かってるしね・・・。(涙


誤字脱字もう今から見直す気力ないよ・・・時間見つけてあれば直してきます。


※一応、ある程度は直したり修整しましたが、もう訳が分からなくなってます。


初めてcaseの後にサブタイつけてみました。


断罪の日って言っておきながら結局、
狂信者共・エヒト・アルヴ・神の使徒・その他・小悪党4人組以外・・・消してはいないんですよね。


天之川は精神的断罪。
殺っちゃっても良かったんだけど、それはそれで。


恵里はどっちかって言うと断罪の上の救済。
だってこの時点だとまだ何もしてないんだもの。
流石に可愛そうだよね?だよね?
(地球での排除行動考えたら、甘すぎたかな?)
一応、簡単に死なない様にお土産と言う何かを渡してるという設定を追加しました。


登場キャラ数増やすとセリフとか色々大変ですね?
口調とか設定とか、色々。


一応な後日談。


この後のトータスの世界がどうなったのかはミレディさんにぶん投げたので、皆さんで想像してください(ぉぃぉぃ


魔王ハジメさん達の元の世界:
設定上は一応原作の最新時系列のつもりです。アフターストーリーの、ミュウちゃんの「魔王の娘なので」辺り。
イナバさん達の「魔物共、未知を追う」辺りだと第2世代のフラグ話って原作者さん書いてるし、
リリアーナ編の「新世界の神に、私はなる?」の辺りだと、冒頭で二十歳近いリリアーナと書いてある以上、「結構な時間も経ってる+私も子供を~の辺りで他の嫁には子供がって考えると」微妙なラインなんですよね。


一応ご都合主義的解釈用に、6人が戻らなかった元の世界の方はユエさんの能力で関係者、知人レベルで改変されたと言う設定なので。

6人が存在したことすら誰も知らず(親や家族ですら)、記録も証拠も何も残ってないという完全犯罪改変という設定で書きました。
何らかのきっかけで、齟齬が生まれたとしても勘違いか、別の何かで補完されるようなレベルで考えてくれて問題ないです。


ただ、魔王さん覚醒していない?ハジメ(トータス帰還後の記憶、技能、能力改竄したと言う設定)のもとには、

「ユエ・シア・ティオ・レミア・リリアーナ・ミュウ」というトータス組は既に嫁と娘としている!!!!」
(Case.1.2で見捨ててきたので!救いたかった!)


更にその後、そこに香織と雫と愛子さらに言えば優花が、嫁として入る可能性をほぼ確定する様に修整しました。
ハジメと香織と雫と優花と愛子と遠藤君はトータス救った帰還後の記憶、能力、技能改竄という設定にしました。

だって優花ちゃんだけ愛人とか。女子力高いのに可愛そうじゃないですか!?

どうやってその後起きただろうハジメさん周囲のゴチャゴチャを解決したの?ってのはユエさんとかアーティファクトとかで何とか?
帰還者騒動なんかは当日に帰ってるので起きてませんから。
魔王ハジメさんも、自分に宝物庫と色々な技術ぐらいは渡してる様に書き直しましたので、
その辺りの整合性はどうにか取ってると仮定して想像してください。



・・・いつか機会と時間があれば、


ハジメ×雫本妻ルート
ハジメ×優花本妻ルート
ハジメ×愛子本妻ルート


トータスの嫁枠のユエ以外はハジメの本妻化は無理かな?出来てハジメ×リリアーナ本妻ルートぐらい?


ティオは流石に色々改変しすぎないと無理だし
シアは絶対的にユエ絡ませないと話変わりすぎるし
レミアは本妻にしちゃうと\(^o^)/
ミュウは色々とアウトなので\(^o^)/


ハジメ×香織本妻ルートは多くの方が書いてるので、
改めて書く実力も気力もございません。


いつか、ハジメ以外のオリ主的な話を書くことがあっても、嫁sや優花がオリ主とくっつくような話は書く気がありませんので、あしからず。


流石に長文過ぎて疲れたのでちょーっと長い期間更新が無いかも知れません。
最低文字数程度ならボソっと増えてるかも知れませんが。



ありふれ×SHUFFLE構想については、
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=240191&uid=312987
をご覧ください。

個人的にありふれクロスオーバーが多い中で、
他の作者さん達が書いてないようなので

「ありふれ×SHUFFLE(Navelさんのアレです)」なんてのを書いてみたいな?とか考えたりしてはいますが、今月末にはSHUFFLE2出るんですよね・・・。
しかもスピンオフも入れたら、リアリアとかチックタックとかエッセンス+とか。

ハジメ君ソロ主人公で書いたら、
嫁何人増えるんだ!?!?となるし、
ハジメ君+稟くんのダブル主人公ストーリなんてかける気がしない・・・。

どちらにしても書き始めるとしたら、
シリーズやり直してストーリーちゃんと思い出してからになると思われるので、
だいぶ先の事になるでしょうね。



これからもちまちまと頑張りますので、気が向いたら読んでみてください。

※※

投稿する直前に読み直してみたですが、

恵里断罪部分、ほぼ原作ママ近い・・・禁止されちゃうかも知れません。


誤字等を大幅に修整。
改竄対象から、ハジメ+嫁s+遠藤+優花を外してます。
その辺りで生まれる問題は、ご都合主義で解決したと思いください。


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case4 「最初から魔王様なハジメ君」

エヒトによって、トータスに召喚されたあの日。


光輝の足元に幾何学模様の魔法陣が光って、トータスに召喚された瞬間に、


「ハジメ・雫・香織・優花・愛子」の5人だけが、


"これから先起こるトータスでの事を帰還後まで含めて記憶を持っていたら?"


"更には、技能や能力まで持った状態でいたら?"というif。


5人だけって気づいた瞬間に残りの3人同意の元、優花ちゃんの嫁入りが確定します。

※本当に風音鈴鹿様、いつも誤字報告有難うございます。
些細な所でも気付いて指摘して頂けて、とても有り難いです。

※※再びここにて、風音鈴鹿様に御礼を。
言い回しの矛盾点や、誤字部分まで指摘して頂けてありがとうございます。
自分ではこうで問題ないだろう。と思ってた部分でも、
指摘され見直してみると…まぁ違和感が凄かったわけで。
やっぱり日本語の言い回し(文章の書き方)ってとっても難しいですね。
「句読点」一つの違いで解釈や伝わり方がだいぶ変わるのですから。


両手で顔を庇い目をギュッと閉じていたハジメは、

ざわざわと騒ぐ無数の気配を感じてゆっくりと目を開いた。

 

 

そして。あぁ、またトータスなのか。それがハジメの思った事。

 

 

周りを見てみると、香織・雫・優花・愛子の4人も苦い顔をしながら周囲を見ていた。

 

その他のクラスメート達は、何が起こったのか全くわからない様な顔をしていた。

 

 

5人の目があった瞬間に、困惑する皆を無視して集まって小声で話し合った。

 

 

「トータスだよな?やり直しではないな?過去に戻ったって事でも無さそうだ。」

 

「だよね?"ハジメ君"。私達以外何も知らないみたいだし・・・あ、羽も出せる。」

 

「そうよね、"ハジメ"。これは記憶とか能力とか私達だけもってるという事よね?」

 

「白崎さんが羽を出せたってことは能力も、私達が覚えてるって事は記憶もですね。"ハジメくん"」

 

「ねぇ、"南雲"。これって私達だけ未来を知ってこれから先やってくって事だよね?」

 

 

5人の意見と意志は一致した。

 

 

「さて、どうする。アーティファクトはまだ持って無い。能力が使える以上、

ここにいる狂信者全員を瞬殺することは容易そうだが、無力化のみに留めるか?」

 

「私はハジメ君を傷つける人なら、全部分解しちゃっても良いんだよ?」

 

「流石に分解は駄目・・・でもないか、愛子先生が爆殺しちゃうんだったわね。」

 

「八重樫さん・・・それは流石に酷いです。意図してやったんじゃないんですよ?」

 

「流石に人殺しは・・・なんて甘い事はもう言えないわ。この後を知ってると。」

 

 

「とりあえず、俺は「概念魔法」まで使えても魔法適性がないからな。無力化は、俺には無理だな。殴っただけで殺しちまいそうだし。宝物庫も無いからドンナーとかもまだ無いし。」

 

「私は、「再生・昇華・変成・魂魄」魔法を使えて、分解と使徒化出来るから、どっちも可能だね。あ、双大剣はハジメ君に作ってもらわないと駄目かぁ」

 

「私は、「昇華・変成」魔法と八重樫流剣術ね。剣術はハジメに剣を作ってもらってからじゃないと難しいわね。能力だけで無効化は出来そうだけど。」

 

「私は、「魂魄」魔法だけですね。イシュタルさん達は・・・もう無力化じゃなくても良いかも知れません。神山でハジメくんを邪魔するわけですし。」

 

「愛子先生!?私は神代魔法は持ってないけど、南雲にアーティファクトを作ってもらえればそれなりに戦えるはずだけど、イシュタル達は私達に戦い強制するわけだし、自分も戦えって南雲が煽って・・・それから香織が分解?」

 

「よし、園部の案で行こう。とりあえず天之川が暴走するまではそのままで。

暴走した直後に、俺が煽りを始める。その間に雫と園部が愛子を守りつつ天之川の無力化、決裂した段階で香織が聖絶で皆を守りつつ、分解の準備。邪魔する奴は皆殺しだ。どうせ直後なら脳が無くなってでもない限り、香織が蘇生出来るしな。」

 

 

 

「「「「了解。」」」」

 

 

 

そしてイシュタルの自己紹介。

 

 

メイドの給仕(ハジメは嫁たちの事を思い出してるので興味なし。)。

 

 

そして、トータスの現状説明。

 

 

そして、愛子の演技の怒りの抗議!(怒りは本気ですが。)

 

 

イシュタルの返答で、パニックになるクラスメイト達。

 

 

 

で、天之川の暴走。

 

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 

と言った直後、

 

 

 

「・・・おぃ、イシュタル。お前は今「俺」達に戦争に参加して、魔人族という、

「人を殺せ」と言ったよな?間違いないな?しかも、「愛子」が戦争参加を否定した後、帰れないと知ったクラスメイト達が困惑してたら、侮蔑しながら見てたよな?

【エヒト】に選ばれておいてなんで喜べないんだ、そんな顔でな?

戦争や人殺しを経験した事ない世界から来た俺達に人殺しという名のソレを強要するんだ。もちろんお前も、"最前線"で戦うんだよな?【エヒト】に神託を受けるぐらい偉いんだからな?勿論、他の教会の人間達もだ。どうだ、答えろ。」

 

 

とほんの微々たる程度の威圧を放ちつつ煽りに煽るハジメ。

(この時点で光輝は、気絶させられてます。)

 

 

「ぇ?魔人族は・・・「そんな事はどうでもいい。戦うのか戦わないのか答えろ」」

 

 

「私達教会の人間は騎士を除いて戦いません。エヒト様の神託に備えるためにも」

 

 

「そうか、なら交渉決裂だ。香織、やれ!」とハジメ。

 

 

「は~い、聖絶!そして分解!」その二言でイシュタルはトータスから消えた。

 

 

 

それを遠くで見ていたメイドもクラスメイト達も何が起こったのか理解できてなかった。

 

 

「で、だ。そこで見てるメイドさん達。"ラウス・バーン"と言う名を聴いたことがあるという人間をここに連れてきてくれ。」と笑顔で言う。

 

 

「は、はい・・・」とちょっぴり頬を赤らめながら数十人居たメイド達が教会内の人間にハジメの言った名を聴いたことある人が居るか探しに行った。

 

 

 

その場に残っているのは、クラスメイト達とハジメ達だけだ。

 

 

 

「さてと、話の邪魔しそうな天之川はまだ気絶してるし、お前ら何か「俺」に聞きたい事がある奴はいるか?」とハジメ。

 

 

「何で、光輝を気絶させたんだ!」と怒鳴る龍太郎。

 

 

「あのままだと、全員強制的に戦争に参加させられて人殺しさせられるか、若しくは

自分達が死ぬからよ。ね、ハジメ。」と雫。

 

 

「イシュタルさんが居なくなったのは、何で?」と鈴や恵里や永山達が。

 

 

「えっとね、雫ちゃんの言った通りだし、私が分解しただけだよ?存在を。そして自分達は戦わないで、私達だけ戦わされるのはおかしいでしょ?ね、ハジメ君。」と香織。

 

 

「えと、さっき愛ちゃん先生のこと愛子って言ってなかった?南雲くんが。」

と、玉井達と奈々と妙子が。

 

 

「えとね、南雲がそう呼ぶのには理由があるの。説明は出来ないけどね」と優花。

 

 

「き、気のせいじゃなかったら白崎さんが南雲のことを「ハジメ君」って呼んで、八重樫さんも「ハジメ」って呼んでたし、何か園部さんの「南雲」って呼び方もなんか何時もと違うような?」と檜山達小悪党4人と清水。

 

 

「あ、それはですね。私達、ハジメくんが大好きなだけなんです。」と愛子。

 

 

「「「「「「「「「「私達!?ハジメくん!?」」」」」」」」」」

 

 

 

場が混沌とした。

 

 

 

「とりあえず。愛子が言った通り、この世界で巻き込まれるのは「戦争」だ。

無事帰りたければ自分達の身は自分で守るしか無い。天之川の守るって言葉を信じて、力や知識、自分達の意志も持たずに戦えば死ぬ。力が無くても死ぬ。

魔人族は如何に関しては雫が言った通りだ。イシュタルに関しても香織が言った通りだ。そしてそれを詳しく語れない理由はその・・優花が言った通りだ。」とハジメ。

 

(優花と名前を呼ばれて、頬を赤く染めた優花。)

 

 

「さっきメイドさん達に呼ぶように頼んだ人達がくれば、まぁわかる。てなわけで、特に檜山達4人と、男子の多数。香織にも雫にも優花にも愛子にも手を出そうとしたら、「俺が」生きてるのを後悔させるぐらい苦しめて殺すからな?まぁ、その前にその本人達に消されるかも知れないがな。」

 

 

とイシュタルへ向けたのとは比べ物にならない威圧を男子達へ向ける。

そして、あまりの恐怖で震えながら気絶する男子達。

 

 

「わ、わ。リアルハーレムってやつだよね、恵里!」と鈴。

 

「だ、だと思う。(光輝君なんかと比べ物にならない程カッコイイ!?)」と恵里。

 

「優花、いつの間に!?全然そんな素振り無かったじゃん!?」と奈々と妙子。

 

「南雲君が「俺」って言ってる!?「僕」って一人称だったような」と真央と綾子。

 

 

と女子達も混沌としていた。

 

 

そんな最中、離れた所では、

 

 

「そう言えば、さっきハジメ君。優花ちゃんのこと、「優花」って呼び捨てにしてたよね?」とちょっぴり般若モードな香織。

 

「そうね、ハジメ。どうしてさっきまで園部って呼んでたのにいきなり名前で?」とちょっぴり眉間に皺を寄せた雫。

 

「多分ですけど、ハジメくんが私達3人を名前で呼んでて園部さんだけ名字って疎外感が許せなくなったんじゃないんですかね。」と大人モード愛子。

 

「なぐ・・・ハジメって呼ばせてもらうよ。同情でも香織達のとは違う気持ちでも、

そう呼んでもらえて嬉しかった。」と照れ照れモード優花。

 

 

「まぁ、この後の事考えると一緒に行動してもらうし。優花の事は普通に「大切」と思えるし、名字を言いそうになって名前に変えた。

本人も嫌じゃないみたいだし、ユエやシアやティオやレミアやミュウに会って早く帰りたかったし・・・な。」と魔王様ちょっと封印気味なハジメ。

 

 

 

~~~~30分後~~~~~~

(流石に天之川も起きたけど香織の魔法で拘束中。)

(男子達もちゃんと気絶からは回復してますし女子たちも落ち着いてます。)

 

 

 

一人の神官と数十人の信徒(騎士は居ない)を連れてメイドさん達が戻ってきた。

 

 

 

「お前達が"ラウス・バーン"を知ってるもの達か?」と問うハジメ。

 

 

そう言われて、メイドさん以外の全員が頷く。

 

 

「そうか、俺、南雲ハジメと香織と愛子が既に"魂魄魔法"を持ってて"解放者達の真実"を知ってる・・・と言えば、理解できるか?」

 

 

と言われ驚く全員。メイドさん達は「????」となっている。

 

 

「で、その上でだ。あんたらとそれ以外の者とで別れて、前者は俺達とハイリヒ王国まで同行してほしい。そこで改めて国王達に話す話を聞いていて欲しい。」

「そして、イシュタル処分しちまったんで、"天道"でハイリヒ王国まで下ろして?」と口調を変えてサラリと重大なことを言うハジメ。

 

 

「そこまでご存知なら、私もお口添え出来る部分は致しましょう。むしろこちらからご案内させて頂きます。」と先頭に居た神官が答えた。

 

 

「あ、もちろん教会付きとか関係なく"狂信してないメイドさん達"も全員別に王国ね?」と香織達が言う。

 

 

「分かりました。皆様をご案内した後、"ラウスを知るものと" "エヒト信仰者"で分けて前者を王国へと移動させます。それでは王国へとご案内します。」

 

 

 

~~~神山→ハイリヒ王国王宮へ移動中~~~

 

 

先頭を歩く神官が、

 

 

「イシュタル様は神託を得られたため、私が代わりに勇者様御一行を案内している。

開けてもらえるか?」

と王の間の扉の前で見張っていた兵士に言うと、素直に開けた。

 

 

ハジメ達5人以外は恐る恐る神官について中に入って行ったが、

ハジメ達は我が者顔で神官について行った。

 

 

中には王と王妃と王子と王女。

騎士団長っぽい人達と騎士。そして文官達がそれぞれ左右に別れて並んでいた。

 

 

神官が、「エリヒド国王よ。イシュタル様の代わりに私がご案内させて頂きました。

そして、こちらの南雲ハジメ様が是非王に話したい事があるそうなのです。」

というと国王は頷き、一緒に着いてきたクラスメイト達と信徒達の前に出る様な形で

神官の横に、ハジメ達5人が並んだ。

 

 

「お初にお目にかかります、エリヒド国王。並びにルルアリア王妃、ランデル王子、そしてリリアーナ姫。」とハジメは敬々しく言った。

(それを聴いていた香織達4人は笑いを堪えるよう頬がヒクついていた。)

 

(その場に居た王国の人間全員とクラスメイト達と信徒達が驚いていた。国王以外の王族の名前を知っている事に。)

 

「そして、失礼ながら申し上げさせて頂きます。この場で王族を例外とし、王が心から信頼を置いている者を除き私達以外退室させてください。話の内容上、そうでなければお話出来ません。」と堂々と言い放った。

 

神官も、

 

 

「ハジメ様の語る内容上、大変失礼とは理解しておりますが是非お願いします。」と

頭を下げた。

 

 

その様子を見てか騎士たちの一部と文官達の一部が騒いだが、王は、

 

 

「分かった。私達王族と騎士団長・副団長・宰相以外の全員退室せよ!」と言い放った。

 

 

流石に先程騒いだ一部の者達も王命に逆らうわけにいかず、素直に退室しそのまま王の間の扉は閉められた。

 

その直後、

 

「ありがとうございます。エリヒド国王。ご英断に感謝します。

そして、大変失礼ながらここからは元の口調で話をさせて頂きます。」とハジメ。

 

 

「まず、俺達は異世界から「勇者とその同胞」と言う名目の元、創世神エヒトにより召喚された。そんな俺達は神の使徒である。そちらが持たれているのはその認識で間違いないな?」とハジメは言い放つ。

 

 

(後ろでクラスメイト達や信徒達が驚きまくっているけど無視)

 

 

王達や騎士団長・副団長・宰相も頬をヒクつかせているが頷いたので無視無視。

 

 

「そう、まずそこだ。俺たちは「創世神エヒト」と名乗る「神モドキ」に召喚された、盤上の駒に過ぎない。だからこちらに来る前に狂信者であるイシュタルをまず始末した。

エヒトと名乗る神が創世神なら、何故世界で人間族と魔人族と亜人族が各々で争っている?世界を作ったと言われてる神が、異世界より戦争も人殺しすらも経験したことのない人間たちを異世界に呼ぶ?

単純に人族の味方ならこんな俺達を呼ぶ訳がないし、神獣でも作って人族に貸し与えればいいだけだ。そもそも、創世神というなら魔人族を作ったのは誰だ?エヒトになるだろう?そしてどちらにも蔑まれるだけの存在な亜人族が何故居る?それすらも作ったのがエヒトってことになるだろう?

要するに、エヒトっていうのは神を騙る神代の時代の生き残りに過ぎないわけだ。

ようは神託という名の下にこのトータスという世界でエヒトという糞神はゲームをやってるんだよ。人間族が勝とうが魔人族が勝とうがどうでもいいゲームをな。

そんなエヒトに反逆したと言われてる「反逆者」の伝説が残っているのは知っているだろう?

彼らは「反逆者」では無い、「解放者」と名乗る集団だった。

彼らは、エヒトの真意に気づき世界をエヒトから解放しようとした。

が、準備に時間をかけすぎたがために、「神託」という糞神からの命令で神の敵として討たれていった。

でだ、残った主要メンバーの7人が各地に大迷宮を作り、そこでの試練を乗り越えた者達に自分達の持っていた力を与え、糞神エヒトを討ち取って世界を解放してくれる者達がいずれ現れてくれるのを待っていた訳だ。

 

 

が、今回俺達がこの世界に異世界から召喚された。

イシュタルの説明にあったようにトータスが下位世界。俺達の世界が上位世界。

下から上に簡単に物の流れがいかないのは、わかるだろう?

俺達をこの世界に召喚するために、なんらかの犠牲か代償が必要になったはずだ。

ここに来るまでに見た限り、作物や風土に影響が無いことを見た所、「人」だな。

勿論、こちらトータス側の。でだ、上位世界から呼び出せたって事は糞神エヒトはもうこの世界でのゲームに飽きている。

次はトータスというこの世界を犠牲にしても俺達の世界に行き同じゲームをやるつもりだ。

ああ、この国の祖と言われてる人間の何処かに"バーン"とついてる名の者が居るはずだ、その大元の祖が解放者の一人、"ラウス・バーン"だ。理解できたか?」

 

 

(あまりの内容と言い分にハジメ達5人以外開いた口が塞がらない。)

 

 

トータス組は、世界が滅ぶとかエヒト神がやった事とか一気に言われて混乱中。

地球組は、この世界の次は地球かと言われて涙目になりつつ混乱中。

 

 

 

「でだ。俺達5人が世界を救う為に、元の世界に帰るために。糞神エヒトを消してやる。各地の大迷宮を回らなきゃいけないからな。

その間、後ろのクラスメイト達やエヒトを狂信してない人間を王国の"大結界"内に入れて匿ってやってくれ。

そして、そこのメルド騎士団長とホセ副団長の名の元に鍛えてやってくれ。自分の身は自分で守れる程度には。

 

その対価として、鉱石や素材をくれれば、"錬成師"である俺がこの世界に存在しないアーティファクトをいくらでも作ってやる。

国や民を糞神や魔人族や魔物の侵攻程度から余裕で守れるレベルのものをな。

こちらもそちらを完全に信用しきる訳にはいかないから、

リリアーナ姫にも俺達の旅に同行を要求するぞ?身の安全は俺達が身命を賭しても保証する。

 

あと亜人族に対する差別を今すぐにやめろ。

海人族という種族だけ亜人族だが、自分達に有益だから保護しているなんて、ふざけるなよ?彼らもまた人だ。さらに言えば解放者の一人もまた海人族である亜人族だ。

その上で、亜人を奴隷として使い捨てる事を許容してるヘルシャー帝国とは今すぐ手を切れ。出来ないという選択肢は無い。その選択をした時点で、

ハイリヒ王国・ヘルシャー帝国と言う名の国がトータス上から消える。そう理解しろ。

同意なら首を縦に振るか、口頭で返事をしろ。沈黙は否定とみなすからな?

 

さぁ、エリヒド王とリリアーナ姫。回答は?」

 

 

「内容が内容でしたけど、私は国や民や世界が守られるというなら同行は構いません。ただ、それに相応しい力は見せて頂きたいとは思いますが。」とリリアーナ。

 

「リリアーナが同意したなら同行する事も、この国を守るためにも国で有する鉱石や素材についても、差別に対しても、ヘルシャー帝国との件も、そなた達の同胞を守ることも鍛えることも全てにおいて問題はない。」とエリヒド国王。

 

 

「そちらの腰まで黒髪のある彼女も・・・行くのか?」とランデル王子。

 

 

「まぁ、もしかしてリリアーナったら気に入られたのかしら?」とルルアリア王妃。

 

 

「ランデル王子、この4人は「俺」の「大切」だ。手を出そうと考えてるなら、この場で・・・「私はハジメ君のものなのでゴメンナサイ!」あ、うんそう。」

 

 

後ろで天之川が叫ぶ。

 

 

「香織と雫をどうする気だ!俺が守るから置いていけ!」

 

 

「ふぅ・・・メルドさんとホセさんよ。その腰の剣、天之川と雫に貸してやってくれ。」とハジメが言うと頷き、二人は剣を二人に渡した。

 

 

「雫、実力を見せてやれ。天之川に守る力も無いし、寧ろお前のほうが強いと。」

 

 

「了解よ、ハジメ。」

 

 

「御前試合的な形になってしまうが構わないか?」とハジメが言うと、

 

 

王族4人と団長・副団長・宰相が頷いたので、

 

 

「香織、結界!愛子と優花でクラスメイトと神官達と信徒達を一応守ってやれ。」

 

 

「はーい、聖絶!(王族たち7人を)聖絶!(クラスメイト達を)聖絶!(神官たちと信徒達を)」と香織。

 

「私は皆さんの精神を保護しますか。魂魄魔法!(その場の全員に)」

 

「私は一応無いと思うけど、余波にでも備えますか。」

 

(香織の無詠唱最上級光結界魔法と愛子の魂魄魔法と優花の余裕っぷりに再び全員開いた口が塞がらない。)

 

 

「さぁ、天之川。殺す気で雫と戦えよ?雫はその気だからな?」と煽るハジメ。

 

 

「んな!殺せるわけないだろ!・・・そんなわけないよな。雫!」と焦る天之川。

 

 

「守る・・・か。随分軽く言ってくれるわ。勿論殺す気で行くわよ。」と雫。

 

 

 

「さぁ、開始!」とハジメが告げたその瞬間。

 

 

 

その場から雫が消えた。

 

 

そして、その場に猛烈な風が拭いた・・・ようにハジメ達以外には見えただけで天之川の後ろに既にいる。

剣に赤い血を滴らせて。

 

ハジメの開始の「し」が言い終わる刹那には、縮地で高速移動、右腕、左腕、両足への横薙ぎ。たった三撃。(ハジメ達以外には何も見えなかっただろうが。)

 

 

「あ、がぁぁああああああ!!」

 

 

天之川の絶叫にハジメ達以外の全員が天之川を注視したその瞬間、

その両腕と、両足が胴体から切り離された。

 

 

「な。殺す気で行かないとって言ったろ?天之川。とは言え、全員見てて気持ちのいいものじゃないし叫び声ウザったいし、愛子の精神保護もいつまでも使わせてるのもアレだから、香織、治してやってくれ!ホントはそのまま殺しちゃいたいけど(ボソ」

 

 

「うん分かったよ~! "絶象"」

 

 

 

香織がそういった瞬間、流れた血と両腕両足が戻った天之川がそこにいた。

 

 

 

「香織・愛子、魔法の行使はもう良いぞ。雫と優花もお疲れ様。」とハジメ。

 

 

 

一体何が起こったのか分かっていない全員。

 

 

 

国王達も含め天之川すら説明してほしそうに見ている。

 

 

 

「単純な話だ。開始の合図直後に、雫が"縮地"というスキルを発動させ、天之川の後ろに回り込むその瞬間に右腕・左腕・両足に対する横薙ぎの三撃で終わらせた。

ただ、それだけのことだ。あまりの移動速度に目で認識できなかっただろうだけでな?勿論、俺達5人は理解できている。

で、治療魔法だと欠損した部位は戻らないのが普通。なので香織に"再生魔法"という神代魔法の"絶象"を唱えてもらった。あんな瞬間を見たのに気絶しなかったのは、愛子が神代魔法の"魂魄魔法"で天之川含むこの場の全員の精神を保護したからだ。」

 

 

とさりげなく言う。

 

 

三度、開いた口が塞がらない全員。

 

 

 

「これで、俺達の実力はわかってもらえたか?」というと無言でコクコク頷く。

 

天之川以外。

 

「南雲!お前の実力も見てないのにそんなヤツにしず・・・」と言いかけたその最中

 

 

「ほぅ?俺と戦いたいと。そんなにこの世界から消え去りたいんだな?」と言ったその瞬間、

 

フルパワーの香織の結界「聖絶の数百枚重ねを周囲に」と愛子の全力の魂魄魔法。

雫と優花は香織と愛子をそれぞれ飛ばされないように保護。

 

 

全力の1割程度の威圧を持ってそれを天之川だけに向けた。

 

 

その瞬間、天之川は気を失い。その威圧の余波だけで王の間の空間が軋んだ。

 

 

「「「「ハジメ(君、くん)そこまで!」」」」と4人の止める声。

 

 

その間ほんの数秒にも関わらず周囲の人間は確実に死を幻視していた。

 

 

 

「ふー、1割程度で気を失うとかどんだけだよ・・・弱っちいにも程がある。」

とかなり不機嫌なハジメ。

 

 

(誰もが貴方が強すぎるのでは?と思ったが口には出せない。)

 

 

 

リリアーナは思わず笑ってしまっていた。確かにこの人なら、世界を救えるし国すらも救ってくれるだろうと。

 

 

「ふふっ、大変お強いのですね。これなら私も安心してついて行けます。」

 

 

 

「ああ、メルドさんでもホセさんでもいいや。全員分のステータスプレートくれないか?身分証明にもなるんだろ?」とハジメが言う。

 

 

「あ、ああ分かった今すぐに。」と宰相を連れて三人で急いで出ていった。

 

 

3分後、クラスメイト分とハジメ達5人分のステータスプレートを持ってきて、全員に渡した。(天之川は気絶中。)

 

 

 

「ん、これで血を採ってプレートにっと。」とハジメ達5人が。

 

 

 

====================================

 

南雲ハジメ 18歳 男 レベル:Error

 

天職:創造師・神殺しの魔王

 

筋力:Error

 

体力:Error

 

耐性:Error

 

敏捷:Error

 

魔力:Error

 

魔耐:Error

 

技能:錬成[+の極み]・万物創造[+の極み]・生成魔法・空間魔法・重力魔法・再生魔法・変成魔法・昇華魔法・魂魄魔法・概念魔法・言語理解

 

====================================

 

南雲雫 (旧姓:八重樫雫) 18歳 女 レベル:Error

 

天職:剣神

 

筋力:Error

 

体力:Error

 

耐性:Error

 

敏捷:Error

 

魔力:Error

 

魔耐:Error

 

技能:剣術[+の極み]・縮地[+の極み]・先読[+の極み]・気配感知[+の極み]・隠業[+の極み]・高速魔力回復[+の極み]・昇華魔法・変成魔法・言語理解

 

====================================

 

南雲香織 (旧姓:白崎香織) 18歳 女 レベル:Error

 

天職:医神・魔王の使徒

 

筋力:Error

 

体力:Error

 

耐性:Error

 

敏捷:Error

 

魔力:Error

 

魔耐:Error

 

技能:回復魔法[+の極み]・光属性適性[+の極み]・高速魔力回復[+の極み]・使徒化[+全能力解放]・再生魔法・昇華魔法・魂魄魔法・変成魔法・言語理解

 

====================================

 

南雲愛子 (旧姓:畑山愛子) 26歳 女 レベル:Error

 

天職:豊穣の女神

 

筋力:Error

 

体力:Error

 

耐性:Error

 

敏捷:Error

 

魔力:Error

 

魔耐:Error

 

技能:農業関係スキル[+の極み]・高速魔力回復[+の極み]・魂魄魔法・言語理解

 

====================================

 

南雲優花 (旧姓:園部優花) 18歳 女 レベル:Error

 

天職:調理神・投擲神

 

筋力:Error

 

体力:Error

 

耐性:Error

 

敏捷:Error

 

魔力:Error

 

魔耐:Error

 

技能:投擲術[+の極み]・短剣術[+の極み]・縮地[+の極み]・先読[+の極み]・気配感知[+の極み]・高速魔力回復[+の極み]・料理関係[+の極み]・言語理解

 

===============================

 

 

※スキルはホントはもっと皆もってるけど、アレコレ足すのが面倒くさくなっただけですよ?wカットしだだけですよ?w

 

 

 

「錬成師じゃないし、創造師って・・・しかも天職に・・・orz」とハジメ。

 

「剣神・・・?あれ、剣士じゃ・・・?orz」と雫。

 

「治癒師じゃなく医神?魔王の使徒って・・・ハジメ君の(ポッ」と香織。

 

「私の・・・天職・・・・豊穣の女神・・・なんでぇぇええ?orz」と愛子。

 

「投擲師じゃない?調理神?え、あれ?・・・南雲優花?旧姓?(ポッ」と優花。

 

「「「あ、ホントだ、私達も南雲姓で旧姓になってる(ポッ」」」と優花以外の3人。

 

 

「「「「愛子(先生)の天職は仕方ないわー(笑」」」」愛子以外の4人がハモる。

 

 

そこに王達とメルド達ハイリヒ王国の面々が傍に来て、言う。

 

 

「よろしければ、貴方方のステータスプレートを拝見して構わないか?」と。

 

 

「俺達(私達)も見せてもらっても?」と復活した天之川とクラスメイトも。

 

 

「「「「「どーぞ」」」」」と素直に渡す5人。

 

 

 

「数値:Error、レベル:Error、そして天職が、神殺しの魔王と・・・神?スキルがおかしい、そして4人についてる旧姓?」と全員の声が揃う。

 

 

「いつの間に名字変わったの?旧姓ってどゆこと?w」と地球組。

(天之川も檜山達もその他一部男子も流石にこれは無理だと香織や雫を諦めた模様)

(女子たちは素直に、籍入れたってこと?結婚済み?とか気になってるらしい)

 

 

「そうか、貴方方が神だったのか!」と国王以下ハイリヒ王国の面々が膝をついてハジメ達を見上げる。(神官とか信徒とかメルド団長とか副団長とか全員。)

 

 

 

「「「「「ちょ、ちょっと待って!」」」」」

 

 

 

急いで離れて、緊急会議。

 

 

「これ、色んな意味でヤバくない?世界救うとかそれ以前に、俺のスキルに万物創造ってあるんだけど・・・これ創造神ってことじゃない?エヒト超えた?(笑」

 

「私達、これエヒト倒して帰ってもトータスで崇め奉られる流れ?愛子先生のあの銅像みたいに?やだよ!?」

 

「流石にアレは遠慮したいわね!でも救わないわけにいかないヤツでしょコレは・・・。」

 

「私、調理神ってコレ地球に戻っても残るのよ!?お店の手伝い出来ないじゃない!?

愛子先生みたいに銅像にされるのも流石に嫌!」

 

「皆さん酷いです!そんな嫌々言わなくても良いじゃないですか、私の天職なんかかつてのトータスで呼ばれた名称な筈でまだ、そう呼ばれてないんですよ!?」

 

 

「とりあえず、さっさとここの防衛整えてオルクス迷宮クリアして、ユエ助けて、樹海行ってシア助けて、亜人族も救済して、ライセン迷宮クリアして、ミレディに会って、ティオに会って、ミュウ助けて・・・ってタイミング次第じゃまだミュウ捕まってない?で、バーン迷宮クリアして、グリューエン迷宮クリアして、レミアに会わせて、海底遺跡クリアして、ついでに帝国崩壊させて、樹海迷宮クリアして、さっさと氷雪迷宮クリアして、そのまま魔人国滅ぼして、エヒト倒して終わらせて帰ろうぜ?

ってか、ユエとシアとティオとレミアとミュウとリリアーナ連れて、もうさっさと帰りたい・・・流石にこの状態で長居はしたくない。」

 

 

 

「「「「激しく同意。」」」」

 

 

「多分もう万物創造で、クリスタルキー作れちゃう気がするんだよ・・・羅針盤も」

 

 

 

「「「「なんて、ヌルゲーな!」」」」

 

 

「流石にあんだけ語った後にサクッと倒してあとは知らないじゃ気まずいから、やることだけやってさっさと帰るでいいか?あ、嫁とかじゃなくアルテナ連れて帰っていい?うちの両親が「エロフエロフ」って叫んでるんだわ良く。」

 

 

「「「「もう、それでいい気がする」」」」

 

 

 

「よし、1週間~10日程度で世界救ってさっさと帰ろう。帰る前に俺達とユエ達以外の記憶は封印してな・・・。」

 

 

 

 

「「「「是非、そうしましょう!」」」」

 

 

 

 

・・・・と決めてから、5人で本当にたった10日間で世界を救い。

トータスで起きるだろうトラブル系の根の元を断ち。何もかも納得説得し。トータス嫁勢+アルテナを連れて、クラスメイト達全員(死者無し)連れて無事地球へと帰還したとか。

 

 

 

-完-




オルクス行く前、超説明会だったのに、


行く話になってから終わるまで、1000文字弱で世界救って帰るとか。


・・・・流石に無理ありすぎましたね。


いや最初から魔王設定とかやって4人も嫁+能力持ち状態から始めたら、


SAOでキリト君が開始初日に、茅場さんに勝っちゃうようなものですよ?(例が微妙。


ステータスプレートの変化の辺りは別の方のを参考にいじらせて貰った感じです。



相変わらず、私は天之川光輝という人間が原作に置いて一番キライなのでしょう。



彼に救いがあって欲しい話をほぼ書けない。



原作設定の
「いかにも勇者っぽいキラキラネームの彼は、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人だ。
サラサラの茶髪と優しげな瞳、百八十センチメートル近い高身長に細身ながら引き締まった体。誰にでも優しく、正義感も強い(思い込みが激しい)。
小学生の頃から八重樫道場に通う門下生で、雫と同じく全国クラスの猛者だ。雫とは幼馴染である。ダース単位で惚れている女子生徒がいるそうだが、いつも一緒にいる雫や香織に気後れして告白に至っていない子は多いらしい。それでも月二回以上は学校に関係なく告白を受けるというのだから筋金入りのモテ男だ。」

・・・引き締まった体辺りまでは賛同しますけど、「誰にでも優しい?」「思い込みが激しい正義感?」「ダース単位で惚れられてる?」「筋金入りのモテ男?」

容姿とかそこだけで見たらモテるのでしょう。
そこを除けば、個人的には檜山達4人組と同等。むしろそれ以下のクズとすら思ってます。(原作者さんがそう思わせるためのシナリオを書いたとも言えますが。)


とりあえず、リリアーナとかトータス嫁勢のくだりとか色々書きたかったのに冗長にしかならなさそうだったのでここ迄としました。

このルートなら地球組クラスメイト女子全員オチてたでしょう、ハジメ君に。
(香織達がそれを許容するかは別問題ですが。)


流石にこれは続きとか無理なので、次書くとしたらまた別話です。


そんな遠くない内にcase5のネタ考えて書くので、期待せずにお待ち下さい。


※ヴワル魔法図書館様、誤字報告ありがとうございました。
何度か見直したのですがまったく気づいておりませんでした。


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case6 「本当の笑顔を取り戻すために」

まず、内容のお話より先に。

こんなネタ二次創作にも関わらずお気に入り登録100件突破したようです。

大変嬉しいものですね!!かなりの励みになります。


内容の方ですが、今回は(も?)オリジナル展開となります。

「教室にいた皆がトータスに召喚される」から晩餐会までは原作と変わりません。

これはハジメだけが記憶と能力と宝物庫を引き継いでいたら?というifです。

そして、ハジメが原作に置いて救われない2人を救済するためのお話です。

2人って誰か分かりますよね?


Side ハジメ

 

晩餐会が終わり、皆が各自の部屋に案内されるという直前に

 

()。これを部屋に戻ったら読んでくれ

 

とすれ違いざまに小声で呟き、ハジメは何かを手渡して行った。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

Side 雫

 

「ぇ?」

 

今、南雲君に名前で呼ばれたような・・?

 

部屋に戻ったら読んでくれって言ってたわよね。という事は人に見られてはマズイものという事。

 

もしかしてラブレターだったり・・・って何考えてるの私ぃぃ!!!

 

部屋に案内され、一人になったのを確認して南雲君から受け取ったメモの様なものを開いてみた。

 

『大事な話がある。天之川達にバレないように、香織(・・)・園部優花・中村恵里・谷口鈴・清水幸利。

この5人を連れて、俺の部屋まで来て欲しい。』と書いてあった。

 

ツッコミ所は多々あった。香織と名前で書いてあることやバレないようにと書いてあること。

何故このメンバーなのかという事。エスコート役が何故私なのかという事。

そして、南雲君のトータスに来てからの変貌とオーラの違いなど。

 

「行って話を聞けばわかるわよね。大事な話って書いてるぐらいだし。」と自分を納得させた。

 

そして、南雲君に指定されたメンバーを集めるために各部屋を訪れていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side ハジメ

 

もはや見慣れてしまった豪奢な部屋(・・・・・・・・・・・・・・・・)で呼び出した6人を待つ間に、左手薬指(・・・・)にはまっていた指輪「宝物庫」からクロス・ヴェルトを取り出し空間遮断結界を張る準備をしていた。

更には、幾つもの鉱石や神結晶など多数の素材を使って何かを作っていた。

 

それがちょうど完成した頃、コンコンと部屋のドアをノックする音が聞こえたので

 

「入ってくれ、なるべく早く。な?」とドアの方を見ずに言った。

 

その声に答えるように6人分の足音が室内に入ってきたのとドアが閉まるのを確認し、結界を発動させた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 雫

 

南雲君の返事に応じて室内へと入って行った私達。

何だろうこの違和感。何か南雲君であって南雲君でないような感じ。

でも、呼び出しておいて背を向けたままってもの凄く失礼よね!?

「南雲君、メモに書いてあった5人連れてきたわよ?」とちょっぴり怒りを込めて声をかけた。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 香織

 

雫ちゃんに呼ばれて南雲君の部屋に行く事になった。

何で、雫ちゃん経由だったのかはわからないけど色々あって混乱してたから、南雲君の顔を見たかったし二つ返事で一緒に行く事を決めて南雲君のお部屋へとお邪魔した。

南雲君が凄くカッコよくなったように見えるのは私の気のせいだろうか。身長も雰囲気も何か違う。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 優花

 

部屋に案内されてゆっくり休もうとしたら、雫が部屋を訪ねてきた。何でも南雲が大事な話があるというらしいのだ。私と南雲の接点なんて無いはずなのに何故?とは思ったが、とりあえず聞いてみなければと思い、断るという事は選択肢から消えていた。

南雲の部屋に入ってみれば、当人は背を向けている上に、何か地球で檜山達にイジメられてた時とは別人のような?これは本当に南雲なの?と脳内が疑問符だらけだった。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 恵里

 

トータスという異世界に召喚された事で「光輝君」を手に入れるための絶好の機会が訪れた!と思わず一人部屋でニヤけながら高笑いをしてしまいそうな時に、部屋をノックする音が聞こえた。

雫が南雲君が大事な話があるから部屋に来てほしいと言っているらしい。何故、南雲君が僕を?と思ったりしたがここで断るのも後々の計画には支障をきたすと思い、誘いに応じて南雲君の部屋へと向かった。

部屋に入って見えた南雲君の背中が何か、地球にいたときとは別人な気はするけど?

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 鈴

 

部屋に案内されて天蓋付きのベットで喜んでたらシズシズが突然訪ねてきた。何やらナグモンが大事な話があるとの事で鈴も呼ばれているらしい。

カオリン達も一緒らしいのだけど、学校での鈴とナグモンの接点なんて無いはずなんだけどな?と疑問が浮かんだけど。恵里も一緒らしいしすぐさま応じて一緒に向かった。

部屋に入って見えたナグモンの身長が。あれ?大きくなってない!?と思ったけど口に出す事は無かった。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 清水

 

部屋に案内されて、異世界召喚で俺が勇者になって俺TUEEEE出来るかも!なんて期待をしながらニヤけていたら、八重樫さんが訪ねてきた。一瞬フラグか!?なんて期待をしてしまったが、

なんと南雲が俺を含めた数人に大事な話があるというので呼んでいるらしい。オタク談義でもするのか?と思ったがどうやら違うようだ。とりあえず、断ると面倒そうなので同意しついて行った。

何か南雲が教室で檜山達にからかわれてた時とは別人で、雰囲気が違う気がする。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side ハジメ

 

「突然呼び出して、すまないな。」と疑問顔の6人に向けて言った。

「今の現状認識は出来てないよな?当然だ。これから俺達(・・)はトータスという世界のために人殺し(・・・)をさせられる。戦争だからな。」ハジメがそう言い放った瞬間、6人の顔が強張った。

 

「それだけだと、なんでこの6人が呼び出されたのかは分からないよな?」と言うと皆頷いた。

 

香織(・・)()・園部・谷口には現状をさらに理解してもらうため。そして中村と清水を俺と共に救ってほしいからだ。」と言いつつ占いの水晶玉ぐらいサイズのアーティファクトを6人の眼前のテーブルの上へと置いた。

 

香織と雫は名前で呼ばれた事に違和感を。園部と谷口は???と疑問顔。中村と清水は救う?って何?と混乱顔になっていた。

 

「詳細は口で説明するより体験してもらった方が早いな。その水晶玉は俺が作ったアーティファクトだ。使い方はそれに触れて魔力を流すイメージをするだけだ。6人同時に使ってくれ。」

 

6人共が??と疑問顔を浮かべていたがとりあえず、やってみればわかるか。と言わんばかりにそれぞれが水晶玉へと手を置き魔力を流した。

 

その瞬間。6人の脳内を何かが精査し記憶が読み取られ、書き換え(書き足し)されていく違和感に6人は思わず膝をついた。

 

そう、これが水晶玉の効果。

 

魂魄魔法+昇華魔法+変成魔法+再生魔法 複合型アーティファクトなのである。

 

使用者の記憶と魂魄を読み取り、対象者の魂魄や肉体や記憶を製作者が意図した時点までのものと違和感なく組み替える。(中村・清水はトータスでの死亡直前までが限界。)

※残りの4人はトータス帰還後のアレコレがあった状態までと考えてください。

 

おおよそ数分後、6人が落ち着いた様子を見計らって声をかけた。

 

「思い出せたか?いや、言い方が悪いな。これから起こる事が理解できたか?(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

とハジメが皆に問いかけると、混乱した状態のようではあるが皆頷いた。

 

「清水は魔人族に唆されて、俺が殺す事になる。中村は最終的に『神域』にて自殺(自爆)する事になる。それが決められた結末だ、変わることはない。」と断言した。

 

「でも、ハジメ(・・・)。わざわざ私達6人だけ集めたのはそれだけじゃないのでしょう?」と雫が言う。

 

「雫ちゃんの言う通りだね。ハジメ君(・・・・)が何か考えてやってるのは間違いないよね。」と香織。

 

「南雲。・・・何で私もこのメンバーの中に一緒に呼ばれたのか気になるよ。」と優花。

 

「恵里!()()はっ・・・もっと恵里と一緒にいたかった!!!」と鈴。

 

「・・・成程。全てお見通しで、僕がやったことは無駄になるのか。」と諦観した恵里。

 

「あぁぁあ!俺は俺は・・・何て事を・・・。南雲、俺は・・・。」と自殺でもしそうな清水。

 

「安心しろ。中村。そして清水。だから最初に他の4人に俺と共に救ってほしいからだ(・・・・・・・・・・・・・・・)。と言っただろう?そのアーティファクトは使用者の記憶と魂魄を読み取っている。今の俺の概念魔法までの技術と香織の魂魄魔法を使えば、俺を含めた7人分のコピーを作ることなど、容易いことだ。トータスに召喚された時点の俺達のコピーには本来の流れ通りトータスを救うまでやってもらう。帰還までの1ヶ月の間に俺達がコピーと入れ替わり、そこで皆の記憶を中村と清水が死んでいなかったと書き換える。勿論コピーの方は破棄な。というプランだが、お前らはどうしたい?」

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 雫

 

全てを思い出した私はハジメの言うことが理解できた。ウルの街での清水君の件はハジメの中でもどこかで他の手段は無かったのかと日本に帰った後に考えていたのだろう。勿論、恵里の件も。

やっぱりハジメは私にとっての王子様だ。命も心も何もかも守ってくれる。同意する以外ない。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 香織

 

やっぱりハジメ君は優しいし強い人だ。だから私も雫ちゃんもユエ達も皆好きになったのだから。

そんなハジメ君が考えた最良の手段だ。同意する以外ないよね。ただ檜山君とかの件に思うことが無いわけではないけれど…。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 優花

 

南雲がウルの街で清水を殺す所を直に見た私は、あの時、南雲が凄く怖く見えた。でも愛ちゃん先生に後で理由を説明されたり、南雲に救われたことを無駄にしないという決意のもと頑張った結果がある。

地球に戻った時に愛人呼ばわりされることに何も思うところがないわけでは無いけど、やっぱり私はあの言葉をくれた南雲の事が好き・・・。本人には決して言えないけれど。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 鈴

 

どうしてまた皆揃ってトータスにいるのかは分からない。でも私は南雲君のおかげでまた恵里と話すチャンスを貰えた。今度こそ、恵里とちゃんと本音で向かい合って話して。

一緒に日本に帰って、親友として一緒にいたい。もう間違えたくはない、私は。

だから南雲君の方針には賛成だ。あ、龍くんとは会えないけど我慢するしかないよね。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 恵里

 

僕がやった事で結局光輝君は、僕のものにはならなかった。そして鈴と本音で対話した後自殺(自爆)した。その事に後悔は無い。

南雲君のおかげでまたやり直す事が出来た。でも同じ事や南雲君の大切なモノを傷つけようとしたら今度こそ南雲君に殺されてしまうだろう。だとすれば、僕には南雲君の方針に従う以外無い。

それに、雫や香織達を見てるとホント幸せそうだし。鈴と仲良くって未来もそう悪くないのかも知れない。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side 清水

 

魔人族に唆されて、魔物の大群を作り愛子先生やウルの街を襲った結果。

南雲達にボロ負けしその後に、魔人族にすら裏切られてささなくていいトドメを南雲にさされて俺は死んだ。

異世界召喚されて天之川が勇者で俺がモブ扱いだった事が気に食わなかった事もあるし、奈落の底に南雲が落ちて死んだ事で自分もそうなるならと思った事もあった。

それを思い出させた南雲に思う事がなにもない訳じゃない。このハーレム主人公が!くそ!とか。

その後のことは俺には分からない。でも、南雲はそんな俺を救ってほしいと皆に頼んでいる。

南雲の本音はわからないけど、俺だって死にたくはない。だから同意するしか無い。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

Side ハジメ

 

各々思うところがあるようだが、同意を表明してくれた。コレで問題なく計画を実行できる。

7人分の複製の肉体を作りトータスに召喚された時点での魂魄や記憶をその器に固定させる。勿論香織の協力を得ながらだが・・・無事成功した。

後はこの7人には本来の史実通りの行動をしてもらうだけだ。覚醒する前に各々の部屋へと転移させ、計画の準備を終えた。

 

「コレで問題なくトータスは救われるし、地球も問題ない。でだ。俺達7人は表立って行動するわけにはいかない。今はこの部屋に空間遮断結界を張ってあるからエヒトにもバレていないし、誰も気づいてはいない。」

 

「帰還までのおよそ1年、どう過ごしたい?一番はオスカーの隠れ家だな。俺とユエが辿りついた時とエヒトとの決戦時以外はあそこは快適に過ごせる。二番目以降は元の日本を含め別の世界へ行く事だが、コレをした場合エヒト達にバレてしまう可能性は否定できない。どうする?」

 

全員がオスカーの隠れ家での生活を希望したので、羅針盤とクリスタルキーを使い転移した。

 

初めて訪れた優花・鈴・恵里・清水はここがほんとに地下にある空間なのか驚いていた。

 

「間違ってもその扉から迷宮側に出ようとするなよ?ラスボスのヒュドラが出てくるから。」

そうハジメが言うと、皆が顔を青くしてコクコクと頷いた。

 

「それで園部にもこのメンバーに入ってもらったのは料理上手だって事が大きい。異世界だがここには野菜も肉もあるし、ウルの街に行けば米もあるし、認識疎外アーティファクトを使えば俺達も外で買い物とかが出来ないわけじゃないからな。」と言うと特に女子勢が多いに喜んでいた。

 

「そして清水。お前とは色々話がしたかった。学校では檜山達のせいで色々と話せなかったからな。」と言うと清水は何かを堪えるように喜んでいた。

 

「で、中村。同意してついてきた時点でわかってはいるが、お前に何かまだ思うところがあるなら俺にぶつけてくれて構わない。親友や友人としてなら他の5人がうまくやってくれる筈だ。」と言うと静かに首を横に振り「もう大丈夫。」と答えた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

この後はコピーハジメが奈落に落ちてからユエと合流しオスカーの隠れ家に来るまでと、その後の訓練などのおよそ2ヶ月間以外と、神話大戦(最終決戦)の数日間以外鉢合わせしない様にし。

当初のプラン通り、エヒト討伐後の帰還までの一ヶ月の間に生存したメンバー(檜山と近藤以外)の記憶と認識をイジり、清水と恵里は重症だったが懸命の処置のおかげで一命を取り留めたという事になった。

 

 

本来の姿を隠していたハジメ達だが、帰還後の鈴は龍太郎と言う恋人が居るので問題なかったが。優花はハジメと愛人ではなくちゃんと一人の嫁として。恵里は清水と恋人関係になっていたという事実が一年の間に発生していた。

 

その後に起こっただろう色々な展開や優花の嫁入りが確定している事や2人が生存した事で違う展開が発生した事も別の話である。




・・・近藤?
・・・檜山?

あんな奴らに救済なんてありませんよ?
(ヤっちゃう事が救済です。言ってる事酷いとは思いますけど、それぐらいされても仕方ないレベルの集団です。小悪党4人組は。)

前半の説明部分が重要で。
それ以降は、完全に原作通りの流れを継承します。
(帰還直前に関係者全員の記憶(認識)を弄って清水と恵里が死んでいないという整合性をもたせる部分以外は。)


※各人の心理描写をするためにSide(視点)切り替えという形を導入してみました。
如何でしょうか。多用しすぎな気がしないでもないですが・・・。


原作を崩壊させないために神代魔法の組み合わせで、
このメンバーのコピーを生成し原作通りに進む流れ(コピーは帰還前には消える)などと一応対策はいれています。

が、クロス・ヴェルトとかが入った宝物庫をハジメがもってるなら
「導越の羅針盤」と「クリスタルキー」で帰還できるんじゃね?って思われた方。
それだと、トータス救われませんし、トータスハーレムメンバーも救えてない。
ただ帰っただけ。しかも帰ったと言う事実は残るので、
エヒトによる地球遊戯もおそらく防げない救われないお話になる。

というのを回避しつつも、清水と恵里を救済するにはどうしたら?と考えた結果がコレです。

※魂魄魔法+昇華魔法+変成魔法+再生魔法 複合型アーティファクトっていうのを登場させましたが、これは完全に筆者オリジナルです。
こんな感じのものがないと、7人をコピーして・・・なんて展開を描けなかったので。

勿論、その他の展開は原作通り起きてるのでメルドさんも亡くなってますし騎士たちや魔人族の一部など原作死亡キャラは皆亡くなってます。


というかですね、原作の帰還後のハジメとユエってもう人間じゃないんですよ。
(ユエは吸血鬼だからだよ!ってツッコミは違います。)
概念さえ生み出せれば何でも出来る=神なんですよ。
ハジメハーレムメンバーもアフターネタになってるよう女神なり天使なり、召喚前の一般の人間性はもはやありません。

そんなハジメがやり直したら、当然無茶苦茶ですよね。

という事でリリアーナ本妻ルート構想や優花本妻ルートの続きやその他の構想がまだまだ出来上がらないので、ネタブッ込みます!
と今回のお話となりました。

※そうです!ネタなんです!考証甘いよ!何やってんの!(ブライトさん風
ってご指摘はきっちり受け止めますので。(殴られはしませんよ?アムロみたいにw


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caseX 「ありふれてるわけないコラボ風予告」

前回までの流れや、感想欄での返信含めて。
続きルートの更新か!?と思われた方、大変申し訳ありません。
今回は、ネタofネタと成りますのでご注意を。

お気に入り200件突破、並びに高評価、
更には凄い伸びたUAなど…大変有難うございます。

これからもちまちま更新と、
色々試行錯誤しながら頑張るので応援宜しくお願いします。

ネタなので大変短いです。お許しを。


・ありふれた職業で世界最強☓神無月の巫女的な?

「神無月のトータスの巫女」

 

 

 

トータスにはね。誰も知らない社があるの。

 

 

 

ここトータスに召喚された私、白崎香織と親友の八重樫雫ちゃんと南雲ハジメ君。

 

 

 

「どうして!?なんでこんな事するの!?私の事、嫌いになっちゃったの?答えて、雫ちゃん!」

「いいえ、私は香織が大好きよ?その黒く長い髪、柔らかい頬、程よいサイズの胸、甘く香る貴方の匂い、優しく傷付きやすいのに、それでも純粋な貴方の心。全部全部大好きよ?」

 

 

「香織さん、貴方がすきです。」

「ハジメ君、私も貴方が………。」

 

 

「さあ、香織?殺し合いましょう?」

「嫌だよ!私は皆で帰りたいの!雫ちゃんも一緒に!」

「それは、言えないわ。貴方の本当を私に見せて?もっともっともっと!私が満足出来る程に!」

 

 

「香織は貴方には渡せない。あの子は私の全て。」

「雫さん!?どうして!!」

「あの子が愛おしいの。少しでも貴方に心が向いているその事実が許せないの。だから、あの子の心の中にいる貴方を全て消すわ。さあ、私とあの子を裏切りましょう?」

「止めてよ!雫さん!そんな事しても香織さんは!」

 

 

 

「………どうして?雫ちゃん。」

「香織?ああ、南雲君の事?香織が好きだった彼はもう居ないわ。彼は貴女を裏切り私の物になったわ。」

「………私が、悪いんだね。雫ちゃんの気持ちを理解していなかったから。」

「いいえ、貴女は何も悪くないわ?私が、悪いのよ全て。貴女の心を占めていた彼が許せないの。だから彼を私の物にしたわ。私が、貴女を裏切った彼が憎いでしょう?さあ、私にその気持ちを全てぶつけて?」

 

 

 

「うわぁあぁああぁああぁ!!!」

「そうよ!もっとよ香織!もっともっと私に!!」

『それ以上は、駄目だよ二人共。』

「……ハジメ君?」

「………まだ邪魔するの、南雲君。」

『うぅん。日本いた頃の仲が良かった二人が僕は好きだったから。これ以上お互いを傷つけ合わないで。僕はもう行かなきゃならないから………。』

「…え?ハジメ君!?何処に行くの!私を置いて行かないで!!」

「あぁ、そういう事。貴方は香織を傷つけるのね、また。」

『香織さん。置いて行ってしまう事になってごめんなさい。雫さん。香織さんは貴女の事ちゃんと愛してる筈だから。また僕に仲が良かった二人を見せてね?天の上から見守っているから。』

 

 

 

「雫ちゃん、私貴女が大好きだよ。」

「香織、私も貴女が大好きだわ。」

「「きっと彼も私達を………。」」

 

 

 

 

 

・ありふれた職業で世界最強☓落第騎士の英雄譚的な?

「ありふれた職業の英雄譚」

 

 

 

 

「何が出来ると言うんだ。こんな無価値で空っぽな僕の能力で。」

 

 

 

 

 

「悔しいか小僧、お前が最弱だって事が。ならその悔しさを捨てるな。そいつはお前がまだ諦めてないって事だ、自分って奴をな。」

「その出会いは本当に正しかったのか?あの人はただ、無責任な言葉を並べただけだ。お前はそれを間に受けて分不相応な人生を選んでしまった。人にはそれぞれの才覚に見合った領分があるのに、あの人の言葉はお前に苦痛と孤独しかもたらさなかった。」

「その行き着いた先が、誰にも望まれないこの能力。お前のような望まれない者にあの八重樫の姫が倒せるわけないだろう?もういいじゃないか、楽になれ。」

 

 

 

「お帰りなさい、お兄様。行かせたくない。このままあの人と戦わせたくない。」

「……鈴」

「それでもやっぱり私には止められません。南雲の家では決して自分の為に笑った事が無かったお兄様が、この学校では本当に楽しそうに笑っていたから。」

 

 

 

「「南雲君、南雲先輩!信じてたよ!!」」

 

 

「ハジメ君!!私は約束通り代表になったよ!!」

 

 

 

「そうだ、一体何を迷っていたんだ!僕には香織との約束だってあったじゃないか!」

「二人で一緒に行きましょう、最強の高みへ!!」

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、南雲君。貴方が満身創痍なのは知っているわ。それでも私はこの戦いが楽しみで仕方ない。だって私は初めて貴方を見てから、ずっと思っていたから……この人と戦いたいと!!」

「それは僕も同じですよ。この場に立った以上、自分にも貴女にも背中を押してくれた皆にも、恥となるような剣を振るうつもりはありません。」

「だからここに誓います、僕の最強を持って貴女の最強を打ち破る!!!」

 

 

 

 

「一刀修羅!!!(真正面から切り捨てる!)」

「(彼は真っ直ぐ飛び込んでくる。一度躱せばそれで、私の勝ち。そんなの冗談じゃない!!!)」

「(まともに振るえるのは唯一刀。ならば今自分のありったけをこの一刀に乗せて放つ!)」

「(クロスレンジは私の領域!そこを逃げ出して何処で戦うと言うの!!)」

「(これが、この戦いの場に上がってくれた八重樫さんへの誠意!!そして僕自身の挑戦だ!!)」

「(受けて立つ!この最強の雷切で!)」

「(これが、仕組まれた戦いだろうと、もうどうでもいい!!!)」

「(私は学校No.1の座を守りたいんじゃない!!)」

「「僕(私)は、己の全てを賭けて、この誇り高い相手に勝ちたいだけっ!!!」」

「第七秘剣、雷光!!!」

「雷切っ!!」

「(最初からわかっている!!彼女が強いことも、自分が人より劣っている事も!!劣っているならかき集めろ!至らないなら振り絞れ!一分もいらない一秒あれば十分だ!!魂を研ぎ澄ませ!駆け抜けろ!極限の一瞬を!!)」

 

 

 

 

「ハジメ君っ!!!」

「香織……。」

「お疲れ様、ハジメ君。」

「うんっ。」

「もうっ、こんな身体で真っ向勝負を挑むなんて。どんだけ馬鹿なの。」

「そうだね。心配させてゴメン。」

「でも、私も馬鹿。だってそういうハジメ君が、こんなに大好きなんだからっ!!!」

「(ああ、この熱だ。この熱が僕を救ってくれた。)」

「伝えたい事が、あるんだ。」

「うんっ。何?」

「…ふうっ。香織、僕の家族になって欲しい。」

「うぇっ、あっ。ぐすっ。はいっ、私をハジメ君のお嫁さんにしてくださいっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

という2篇ばかりのコラボ風予告となりました。

ネタですから、コラボとして書く事はないですからね。




ネタですが、コラボ予告的な感じで思い浮かんだので。
絶対に、間違い無く一つの話として書き上げる事は有り得ませんので。

一発ネタってやつです。
最近構想は色々浮かんでも、形にする時間がない。

次は古戦場明け頃に更新出来れば御の字ですね。


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case9 「錬成師が実は勇者や作農師よりレアな職業だったら?」

大変遅れたことと、本来執筆予定だった
「リリアーナ本妻ルート・優花本妻ルート並びに、
ずっと構想中のままだった王道ルートの続き(ハジメが嫌われ者じゃないルート)」
の続きでは無いことを、前書きを持って謝罪させていただきます。


事情は、

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=249133&uid=312987

の活動報告にも記載したとおりです。


あくまでも、これは「ネタ」として書いています。
原作との錯誤、辻褄が合わない、何言ってんの?展開が含まれることを
大いに理解した上で、優しい心で読んであげて下さい。

※風音鈴鹿様、誤字報告有難うございました。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

原作における、プロローグ部分。異世界召喚後の部分は原作と変わりようがないためカットです。

言うまでもなく、ハジメ君はクラスでの爪弾き者ですし。

檜山達が愚かな嫉妬でと言った辺りや光輝の暴走で戦争参加になる所を変えようが無いので。

 

…香織と雫の関係って百合ってよりは雫の一方的な依存関係ですよね…。(ボソ

 

ステータスプレートの章というかくだりからとなりますが、

一部、原作セリフのままです。セリフを考えるのが面倒だったから…。

手抜きではない…筈ですよ?(汗

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

集まった生徒達や愛子先生に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。

不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

騎士団長が訓練に付きっきりでいいのかとも思ったハジメだったが、

対外的にも対内的にも〝勇者様一行〟を半端な者に預けるわけにはいかないということらしい。

 

「よし、全員に配り終わったな?このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。

文字通りステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。

これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落な性格で、

「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、

他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

ハジメ達もその方が気楽で良かった。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。

そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らすとそれで所持者が登録される。

〝ステータスオープン〟と言えば、自分のステータスが表示されるはずだ。

ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

「アーティファクト?」アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔道具のことだ。

まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。

そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、

昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。

アーティファクトと言えば国宝になるんだが一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

(複製できるものと一緒にあるならそれは既に、アーティファクトとは呼べない気が…)

ハジメは内心でそんな事を思っていた。

 

ハジメを含む生徒達は、顔を顰めながら指先に針をチョンと刺し、

プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。

 

すると……

 

===============================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

 

天職:錬成師

 

筋力:25

 

体力:30

 

耐性:80

 

敏捷:35

 

魔力:150

 

魔耐:30

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+複製錬成][+圧縮錬成]・言語理解

 

===============================

 

と表示された。

 

ゲームのキャラにでもなったようだと感じながら、ハジメは自分のステータスを眺める。

他の生徒達もマジマジと自分のステータスに注目している。

 

メルド団長からステータスの説明がなされた。

 

「全員見れたか?まず、最初に〝レベル〟があるだろう?

それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。

つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。

レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。」

 

どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。

魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、

魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。

それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。

なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

メルド団長の言葉から推測すると、

魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう?それは言うなれば〝才能〟だ。

末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。

天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、

戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。

非戦系も少ないと言えば少ないが…百人に一人はいるな。

十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

ハジメは自分のステータスを見る。

確かに天職欄に〝錬成師〟とある。どうやら〝錬成〟というものに才能があるようだ。

 

ハジメ達は上位世界の人間だから、トータスの人達よりハイスペックなのは既に聞いていたこと。

なら当然だろうと思いつつ、口の端がニヤついてしまうハジメ。

自分に何かしらの才能があると言われれば、やはり嬉しいものだ。

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。

まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!

あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

(あれ?非戦系でこの数値?…ほ、他の皆は?やっぱり最初はこれくらいなんじゃ……)

 

メルド団長の呼び掛けに、早速、光輝がステータスの報告をしに前へ出た。

 

============================

 

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

 

天職:勇者

 

筋力:100

 

体力:100

 

耐性:100

 

敏捷:100

 

魔力:100

 

魔耐:100

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復

・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

==============================

 

まさにチートの権化だった。

 

「ほお~流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな

……規格外な奴め!頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あはは……」 団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。

ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。

しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率ではあっさり追い抜きそうだ。

技能=才能である以上先天的なものなので増えたりはしない。唯一の例外が〝派生技能〟だ。

 

一つの技能を長年磨き続けた末に、

いわゆる〝壁を越える〟に至った者が取得する、後天的技能である。

簡単に言えば今まで出来なかったことが、

ある日突然コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということだ。

 

他の皆も戦闘系天職ばかりなのだが……

ハジメは自分のステータス欄にある〝錬成師〟を見つめる。

響きから言ってどう頭を捻っても戦闘職のイメージが湧かない。

技能も二つだけ。派生技能っぽいものはついているが。

一つは異世界人にデフォの技能〝言語理解〟つまり、実質一つしかない。

 

あれ?っとだんだん乾いた笑みが零れ始めるハジメ。

報告の順番が回ってきたのでメルド団長にプレートを見せた。

 

規格外のステータスばかり確認してきたメルド団長の表情はホクホクしている。

多くの強力無比な戦友の誕生に喜んでいるのだろう。

 

その団長の表情が「うん?」と笑顔のまま固まり、

ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。

そしてジッと凝視した後、もの凄く驚いた表情でプレートをハジメに返した。

 

「…すまん、南雲ハジメ。説明を終えたら私と一緒に王のところまで同行してもらう。

"錬成士"というのは、言ってみれば鍛治職のことだ。だが……これは。」

 

歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。

 

その様子にハジメを目の敵にしている檜山達が食いつかないはずがない。

鍛治職ということは明らかに非戦系天職だ。

檜山大介がニヤニヤとしながら声を張り上げる。

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前非戦系か?鍛治職でどうやって戦うんだよ?

メルドさん、その"錬成士"って珍しいんっすか?」

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

檜山が、実にウザイ感じでハジメと肩を組む。

見渡せば、周りの生徒達――特に男子はニヤニヤと嗤っている。

 

「さぁ、やってみないと分か…」とハジメが言い返そうとした、その時…。

 

ボコォ!!!そんな音と共に檜山が吹き飛んだ。

 

ハジメを含む全員が驚いた。どうやらメルド団長が全力でぶん殴ったらしい。

 

「はぁ…同胞を貶めようとしてる時点で救いがないが…。

人の話を最後まで聞かない、理解していないというのはなんとも度し難い。」

 

メルド団長はそんな事を言いながら表情を冷めたものへと改めた。

 

「まず、南雲ハジメ。私の説明が不足していたせいで、

お前にとても不愉快な思いをさせたことを、ここに謝罪させてくれ。すまない。」

 

「いえっ…大丈夫です。」とワタワタしながら謝罪を受け入れる。

 

そんな様子をクラスメイト達は疑問顔で見ていた。殴られ吹っ飛んだ檜山は睨んで。

 

「まず、檜山だったか。そいつを殴った理由は単純だ。

これから共に戦おうという仲間を貶める…そんな奴がいれば指揮に関わる。

…でその間ニヤニヤ笑っていた男共にもと必要かと思ったが…。

一部の人間は南雲ハジメのために動こうとしていたからな。」

 

(その指摘で、香織と雫と愛子と他の女子の一部は頬を少し赤らめた。)

 

「でだ。非戦系職業である"錬成士"の説明をしている最中だったのだが、

そこのこっちを睨んでいる檜山だったか?…お前や他の者共に質問しよう。

戦闘中に武器が壊れた。魔法も魔力が尽きかけて打てない。…さぁどうなる?」

 

とメルドはクラス全員+愛子先生を見回しながら静かに問うた。

 

「別にそんな奴いな…」と言いかけた檜山がまたメルドに吹っ飛ばされた。

「勇者である自分が…」と言いかけた光輝がメルドの睨みで黙らされた。

「「「普通に考えれば…戦闘に負けて…死ぬ?」」」

と香織と雫と愛子と一部女子生徒が言いながら顔を青くしていた。

それを聞いた他の男子達も、そう考えたのか同じく顔を青くしていた。

 

「そうだ。その状況なら間違いなく勝てない。だが、"錬成士"がいれば?

鉱物を加工することを得意とする"錬成士"なら、鉱石があれば武器を作れる。

…そんな事も理解できていない時点で本来なら駄目なんだがな…。」

 

メルドは大きな溜息を吐きながらそう言った。

さっきまでの冷やかしムードが一点、沈黙が場を支配した。

その空気を破壊したのは、もちろんメルド。

 

「というかだな?南雲ハジメのステータスを見た私が最初に言った言葉、

聞いていなかったのか?

 

 

説明を終えたら私と一緒に王のところまで同行してもらう。

 

 

私は確かにそう言った筈だが?」とメルドが大きな溜息を再び吐いた。

 

 

そのセリフを聞いた檜山や光輝含め全員が思い出したように「あっ」と言った。

 

 

「さっきまでの説明はあくまでも天職が"錬成士"の説明だ。

南雲ハジメの天職は"錬成師"。同じ様に思えても…全くの別物だ。

"錬成士"が鉱物加工を得意とする職業なら、"錬成師"は言わばその頂点。

鉱物に限らず…その他の物もといったところか。

しかも、他の誰もが持っていなかった錬成の派生技能まで既に4つある。

長年鍛えた私でさえ6つなのに…だ。さらに魔力が勇者を超え全員の中で一番高い。」

 

「勇者や作農師の天職が100年に一度一人いるかもしれない天職だとすれば、

"錬成師"の天職は…星が生まれて無くなる前までにいればいいかもしれない天職だ。

どれだけ貴重で、どれだけ重要な天職か。理解できたか?」

 

メルドがそう言った後、周囲に言葉無かった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

と、大変良い所ですが。ここまでです。

これ以降を描くことは不可能です。だってハジメさんハイリヒ王国に囲われちゃうもの。

オルクスの訓練?行くわけないじゃないですか。

エヒトを信仰してようが無かろうが、生活を、いろんな全てを一新する存在ですよ?

手放すわけ無いじゃないですか。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




原作においても、生成魔法やその他、概念魔法までを取得したハジメさんは…
永久機関や人工生命体に近しいもの(オスカー作だった筈のメイドロボ)や異世界転移用の道具
(アフターにおけるクリスタルキーや、フェアリーリング等)や
ミュウちゃんが持ってた(ハジメ達も持っていると記載がある)異世界通話(言語理解機能付き)
等…。異世界ってなんだっけ?お隣さん?レベルの発明してますから。

と、ある意味異世界からの帰還に至らないバットエンドになる?とでも言えます。
多分クラスメイト達はメルド指導の元、オルクスに行く可能性は大ですが、
生きて帰ってこれるかは不明。

ハジメさんも多分、リリアーナと政略結婚させられるでしょう。
そうなった際に、エヒトやその使徒達がどう動くのか。
全くもって筋道がたたないので、中途半端な終わりになりました。

…檜山君。彼はどちらにしろ死にます。
オルクスで死ぬか、リリアーナと結婚したハジメに…嫉妬してで王族に対する暗殺(暴行?反逆?)未遂で処刑。となるでしょう。

それ以上はもうカオスなので…ここまでにさせてくださいm(_ _)m


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こんなありふれもありえた 優花本妻ルート
case5-1「藤色からハジまる物語」


前書きには詳細は書きません。

とりあえず現段階でプロットとして1話で完結しない内容程度の構想はあります。

うまく文章に出来るかどうかは分かりませんが。


・・・という事で、初めての分話スタイルで書いてみます。


話のつながりおかしいよ?とか色々あるかもしれませんが、優しい気持ちで読んであげてください(懇願





「ふふっ、どうハジメ(・・・)。美味しい?」と僕に笑顔を向けながらそう言ったのは、

 

「うん、優花さん(・・・・)。このコーヒーもオムライスもとっても美味しいよ!」

 

 

そう。ここ園部家が経営する洋食レストラン「ウィステリア」の看板娘でもある園部優花だ。

 

 

「僕はコレならどちらもお店で出せる味だと思うんだけど、資格が必要になるんだよね?」

 

 

「最低でも調理師免許とかは必要だろうけど、お店で出すってなると色々とね。」

 

 

「あ!でもやっぱり出してほしくはないかも・・・。」と頬をかくハジメ。

 

 

「まさか、『僕だけに出して欲しい味』とか恥ずかしい事言わないわよね?」とからかう優花。

 

 

「うん。『この味は』僕だけがって思っちゃった。優花さんの将来考えると難しいのにね。」

 

 

「・・・。もうっ、ホントにハジメは突然そういう事いうんだからっ。」頬を赤く染めモジモジする優花。(大変珍しい光景です。)

 

 

 

そう、これはトータスに召喚される前日の夜。

 

 

店の閉店後に両親の許可を取り、

 

 

優花がハジメに店内で作った料理とコーヒーをご馳走していた、そんな日常の光景。

 

 

そんな日常が、次の日の昼に終わるとも知らずにいた頃の2人の会話の一部分。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

そもそも、ハジメと優花はいつ接点を持ったのか。

 

 

それは中学2年生。そう、白崎香織が南雲ハジメに「好意と憧れ」を持ったあの日の後の事である。

 

 

あの後、偶然にもウィステリアとかかれた個人経営っぽい洋食店を見つけ

 

 

(両親とも今日は多分修羅場のはずだし、ここで食べていこうか。)とそのお店に入った事が始まりである。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

カランカラン。

 

 

 

「いらっしゃいませ!ウィステリアへようこそ。お一人様ですね、お席へご案内します。」

 

 

と切長の目をしており少し勝ち気な印象を与える栗毛の髪の可愛い女の子の店員が案内してくれた。

 

 

「ご注文がお決まりになりましたら、お声がけください。」と丁寧な仕事っぷりを見せてくれる。

 

 

「今日初めて来たんですけど、さっぱりした系のメニューで何かお勧めはありますか?」と聞くと、

 

 

「それでしたら。こちらと、こちらの組み合わせのセットがお薦めですよ?」と水を持って来てくれていて、メニューを指差しながら親切に教えてくれた。

 

 

「じゃあ、そのセットと食後にデザートのショートケーキ一つとアイスコーヒーをお願いします」

 

 

「かしこまりました。こちらのセットと食後にショートケーキ一つとアイスコーヒーですね。」と注文表に書き込み、

 

 

「注文入りました、こちらお願いします」

 

 

と父親っぽい人へとオーダーを通してくれた後、頼んだ物が出来上がるまで時間があって偶然にも他のお客さんがいなかったタイミングだったからなのか。

 

 

 

 

「あれ?その制服って、ウチの中学の制服よね。失礼だけど、名前と学年聞いてもいいかな?」と彼女が声をかけてきた。

 

 

「あれ?同じ中学の人だったんですか?僕は2年の南雲ハジメです。」

 

 

「2年?同い年?南雲ハジメ?んー? あ、もしかして隣のクラスで有名な"学校に寝に来て終わったらすぐ帰宅しちゃう"南雲君?」

 

 

「・・え?そんな言われ方してたの?同じクラスに他に南雲は居ないのでそうだと思う。」

 

 

「あ、色々と失礼な言い方しちゃってゴメンね?私はこの店の娘で、隣のクラスの園部優花って言うの。」と言いつつ隣の席に座った。

 

 

「え?ここって園部さんのお店だったんだ?・・・そうなんだ。なら、学校での事は園部さんになら話しても大丈夫かな。

 

 

僕の父親はゲーム会社の社長で、母親が漫画家で。どっちもよく修羅場になるから手伝いをやってて寝不足になっちゃうんだ。

 

 

で、学校で寝ちゃうんだ。ちゃんとしないととは思ってるんだけど。」と頬をかきながら説明するハジメ。

 

 

「そうだったんだ。それで両親は学校でちゃんとしないととか怒らないの?」

 

 

「一応、最低限の勉強が出来てればどっちの下でも働かせてやれるし技術も身に着けさせてやれるから、やりたいことをやりなさい。とは言われてるよ?」

 

 

「いい両親だね。勉強はそれでいいとしても、その生活スタイルだと学校で友達とか出来ないんじゃ?」

 

 

「うぐっ。確かに友達とかいない・・かな?両親の影響もあって、ゲームとか漫画がメインの生活になっちゃうし。」

 

 

「私もお店の手伝いとか親の仕事手伝うって気持ちはわかるし。将来のこと考えて、普通に料理とか好きだしわかるよ。

 

 

そうだ。なら、私と『友達』になりましょ?そこから、南雲君の生活の邪魔にならない範囲で『友達』を増やしていけばいいと思う。どうかな?」

 

 

「ありがとう、園部さん。宜しくお願いします」と手を差し出すハジメ。

 

 

「ふふっ、よろしくね南雲君。」と握手に応じる優花。

 

 

 

 

するとそこに、

 

 

 

 

「ウチの優花の事よろしくね?南雲君。」と料理を持ってきてくれた優花の父、園部博之が言う。

 

 

「青春ね。若いって良いわね、ふふっ」と言いながら博之と共に来た優花の母の園部優理。

 

 

「お父さん!?お母さん!?あ、結構な時間経ってたのね!?」と焦る優花。

 

 

「えっと、初めまして。南雲ハジメです。こちらこそ宜しくお願いします」と優花の両親に挨拶するハジメ。

 

 

「「礼儀正しくていい子だねぇ、将来ウチの優花のお婿さんに欲しいくらいだよ。(わ)」」と優花父母が優花を見ながら言う。

 

 

「な、なに言ってるの!?今日初めて会って友達になったばっかりの相手に!?」と頬を染めながらあわあわする優花。

 

 

「えっ・・と。園部さんは、僕なんかじゃ勿体ないぐらい素敵な人だと思うので・・。」と頬を赤くしながら優花を見て、優花の両親を落ち着けようと何とか話をそらそうとするハジメ。

 

 

「な、南雲君!?」さらにアワアワする優花。

 

 

「謙虚で、更にはこの優花の慌てっぷり。もう間違いないわね。南雲君、いえハジメ君。優花と婚約なんてどうかしら?」と将来の事まで決めちゃおうとされる優理。

 

 

「南雲君、いやハジメ君。今度、そちらのご両親と会わせてほしいね。ハジメ君と優花の将来の事について話をしたいし、どうかな?」と前向きに進める気満々な博之。

 

 

「え?ぇ?婚約!?お父さん、お母さん!?ホント何言ってるの!?からかうのはやめて!?」ともはや将来が決まったとばかりに、話を進めようとする両親に顔を真赤にしながらもはやアワアワマシンとなった優花。

 

 

「えっと、普通に両親に会ってもらうのは別に問題ないんですが。将来の事と言われても・・・まず娘さんのご意思が・・・。」と譲歩しつつ優花の意志を介在させようと何とか頑張るハジメ。

 

 

「「ウチの優花なら大丈夫。」」その一言で優花の意志を介在する余地を否定する優花の両親。

 

 

「・・・・・・・・・あ、これ何言っても駄目な流れだわ。」とテーブルに突っ伏した優花。

 

 

「あ、あははは・・・。」と最早笑うしかなくなったハジメ。

 

 

 

 

 

 

結局その後、1週間と経たずに南雲家と園部家の両親の会談的なものは行われ。意気投合した4人は既に挙式とか会場どうするかとかそんな話を進めはじめたとか。

 

 

 

 

南雲ハジメ中学2年のある日。友達と同時に婚約者が一人、出来ました。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

それから中学卒業して高校入学するまでに色々ありました。

 

 

まずハジメが、園部さんでは無く優花さんと呼ぶようになり。

 

優花もまた、南雲君ではなく。ハジメと呼ぶように。

 

そして優花の友達である宮崎奈々と菅原妙子と玉井淳史、相川昇、仁村明人という5人と友人になったこと。

 

 

3年になって間もなく、7人で帰宅しながら何処か寄ってこうかなんて話していたある日。

 

校門前でとても美少女な2人、そう。白崎香織と八重樫雫と遭遇し、友人(?、あ、般若さん)となったこと。

 

言うまでもなく、9人共同じ高校に進むことが決まった事。

 

その場で初めて、ハジメと優花が婚約者であることが明かされ。全員を驚かせた事。

 

何故か香織の背後から般若っぽい何か出て、その場の全員が震えあがった事。

 

全員無事合格し、ウィステリアで卒業と合格祝いを兼ねてパーティーをした事。

 

 

何故か、その場に南雲家両親も来ていて婚約披露パーティーも兼ねられていた事。

 

 

香織がやけに南雲家両親にアピールしていたようなのを止めようとする雫がいた事。

 

南雲母が「有名すぎる少女漫画家」であることを園部家、南雲家以外の全員が知り、

 

南雲父が「有名なゲーム会社社長」であることを園部家、南雲家以外の全員が知り、

 

7人を動揺の渦へと叩き込み、ハジメはそのハイブリッドであることが明かされた事。

 

やっぱりそこで何故か香織がアピールしようとするのを止める雫(ry

 

なんやかんやありつつも楽しい日常生活を過ごせていた事。

 

そのキッカケをくれた優花にハジメがとても感謝(好意の最上級クラス)している事。

 

優花もまた、あの日から時間をかけてハジメに対し愛情を持ち始めていた事。

 

 

・・・・・・ホントに色々ありました。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

そして、冒頭へと戻ります。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




※藤色(ふじいろ)とは淡く青味の紫色で、英色名ではそのままフジの花の色を意味するウィステリア(wisteria)。


はい。園部さんの家のお店の名前に使われてる「ウィステリア」からサブタイに使ってみました。
「言わなくてもわかるよ!」と思いますが、「ハジ」とカタカナ表記にしてるのもわざとです。

前置きに書いたように「頭の中では」プロットとして、何話かに分けて書く感じの流れは出来ています。
が、文章にして読めるものが出来るかどうかは分かりません。

なので、分話とか言っておいて続きはよ!って思われても、
先に次のcaseの構想が出来たらそっちを優先してしまう可能性は否定しません。


長い目で見守ってやってくださいね・・・?(再び。)


予定では次はトータス召喚→オルクス→そして、奈落へ。


そんな感じで書けたらなと考えてます。原作崩壊ハンパないのでどうしようと焦ってますが・・・。


や、優花さんと雫さんが漫画版でもアニメ版でも書籍版でも可愛くて可愛くて。

アニメ最終話のEDテロップのとこの優花さん、ヤバいぐらい美しいんですけど。


・・・ゴホンっ。


時間かかるも知れませんが、頑張ります・・・(汗


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case5-2「異世界の園にて咲き誇る花々」

前回の続き・・・のつもりで書いていこうと思います。


ただ、召喚後から帰還まで書く。という事は無いです。


あまりにも長くなりすぎるし原作崩壊している以上、別の物語として新規で書きあげなきゃいけない程に考察と設定等を練る必要があるからです。
もはや新規でありふれを書き上げるのと変わらないレベルで。

いいとこ、ダイジェストかご都合主義的大幅カットが妥当なラインでしょう。


※書き上げてみてなんですが思ったより長くなってしまいました。
やっぱ、心情描写的な要素入れると冗長になりますね(汗


月曜日。それは一週間の内で最も憂鬱な始まりの日。きっと大多数の人が、これからの一週間に溜息を吐き、前日までの天国を想ってしまう。

 

 

だが、南雲ハジメにはそれは当てはまらなかった。それは何故か?友人が多数いるからだ。

 

 

 

いつものように始業チャイムがなる10分前程に登校し、教室の扉を開けた。

 

 

 

その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら睨みやらを頂戴する。女子生徒の殆どは友好的な表情を向ける者が大多数だ。

 

 

 

 

あからさまにハジメに対して行動に出るものは居なく、舌打ちや睨んだりしているのは檜山大介・斎藤良樹・近藤礼一・中野信治のこの4人だけだ。

 

 

 

他の非友好的な生徒は既にハジメに対して興味を向けていない。

 

 

 

何故、ハジメがそんなに一部の人間に敵視されるのか。その答えが彼女だ。

 

 

 

ハジメ(・・・)君、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ!」

 

 

 

ニコニコと微笑みながら一人の女子生徒がハジメのもとに歩み寄った。そう、中学3年の時に出会って友人になった白崎香織、彼女である。

 

 

学校で二大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげだ。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。

 

 

いつも微笑の絶えない彼女は、非常に面倒見がよく責任感も強いため学年を問わずよく頼られる。そんな香織はなぜかよくハジメを構うのだ。

 

 

ハジメだけそんな構われるのが気に食わないから、舌打ちや睨みを頂戴しているのである。要するに「嫉妬」である。

 

 

「ああ、おはよう白崎さん」と挨拶を返すハジメ。

 

 

それに嬉しそうな表情をする香織。「なぜそんな表情をする!」と、ハジメは、困惑していた。

 

 

まさか自分に恋愛感情を持っているのでは?と思いつつも優花さんの事を知っているはずだし・・・と、彼女の態度が不思議でならなかった。

 

 

 

と、ハジメが会話を切り上げるタイミングを図っていると、三人の男女が近寄って来た。

 

 

 

ハジメ(・・・)君。おはよう。毎日大変ね」

 

「香織、また彼の世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」

 

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

 

 

三人の中で唯一朝の挨拶をした女子生徒の名前は八重樫雫。香織の親友だ。中学3年の時に香織と共に友人になった彼女である。そして二大女神と言われるもう一人の美少女でもある。

 

 

ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。切れ長の目は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じられるため、冷たいというよりカッコイイという印象を与える。

 

 

百七十二センチメートルという女子にしては高い身長と引き締まった体、凛とした雰囲気は侍を彷彿とさせる。事実、彼女の実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、雫自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。

 

 

現代に現れた美少女剣士として雑誌の取材を受けることもしばしばあり、熱狂的なファンがいるらしい。後輩の女子生徒から熱を孕んだ瞳で〝お姉さま〟と慕われて頬を引き攣らせている光景はよく目撃されている。

 

 

 

次に、臭いセリフで香織に声を掛けたのが天之河光輝。いかにも勇者っぽいキラキラネームの彼は、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人だ。

 

 

サラサラの茶髪と優しげな瞳、百八十センチメートル近い高身長に細身ながら引き締まった体。正義感も強い(思い込みが激しい)。

 

 

小学生の頃から八重樫道場に通う門下生で、雫と同じく全国クラスの猛者だ。ダース単位で惚れている女子生徒がいるそうだが、雫や香織に気後れして告白に至っていない子は多いらしい。それでも月二回以上は学校に関係なく告白を受けるというのだから筋金入りのモテ男だ。

 

 

最後に投げやり気味な言動の男子生徒は坂上龍太郎、光輝の親友だ。短く刈り上げた髪に鋭さと陽気さを合わせたような瞳、百九十センチメートルの身長に熊の如き大柄な体格、見た目に反さず細かいことは気にしない脳筋タイプである。

 

 

龍太郎は努力とか熱血とか根性とかそういうのが大好きな人間なので、現に今も、ハジメを一瞥した後フンッと鼻で笑い興味ないとばかりに無視している。

 

 

 

「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。」と雫達に挨拶を返し、苦笑いするハジメ。

 

 

 

「いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから。」と光輝がハジメに忠告する。

 

 

 

光輝の目にはやはり、ハジメは香織の厚意を無下にする不真面目な生徒として映っているようだ。・・・が、今日も変わらず我らが女神(悪魔)は無自覚に爆弾を落とす。

 

 

 

「?? 光輝くん、なに言ってるの?私が友達としてハジメ君と話したいから話してるだけだよ?」

 

 

 

ざわっと教室が騒がしくなる。一部の男子達はギリッと歯を鳴らし呪い殺さんばかりにハジメを睨み、女子達はまた始まったと言わんばかりな様子見体制。

 

 

 

「え?……ああ、ホント、香織は優しいよな」と光輝の中で香織の発言はハジメに気を遣ったと解釈されたようだ。

 

 

 

完璧超人なのだが、そのせいか少々自分の正しさを疑わなさ過ぎるという欠点があり、そこが厄介なんだよなぁ~とハジメは現実逃避気味に教室の窓から青空を眺めた。

 

 

 

「……ごめんなさいね?二人共悪気はないのだけど……」と、この場で最も人間関係や各人の心情を把握している雫が、こっそりハジメに謝罪する。

 

 

 

ハジメは雫に「白崎さんのは仕方ないけど、天之川君の方はもっと放って置いていいと思うよ?」と苦笑いしながらアドバイスするのだった。

 

 

雫も「・・・そうね。ちゃんと考えてみるわ。」と納得の様子を見せた所で、始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきた。

 

 

教室の空気のおかしさには慣れてしまったのか何事もないように朝の連絡事項を伝える。そして、当然のように授業が開始された。

 

 

 

(※ハジメは授業中に寝ていません。学校での優花の印象を悪くしたくないってのもあります。)

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

教室のざわめきとお腹の感覚からどうやら昼休憩に入ったようだとハジメは、十秒でチャージできる定番のお昼をゴソゴソと取り出す。

 

 

 

なんとなしに教室を見渡すと購買組は既に飛び出していったのか人数が減っている。三分の二くらいの生徒が残っており、それに加えて四時間目の社会科教師である畑山愛子先生が教壇で数人の生徒と談笑していた。

 

 

 

――じゅるるる、きゅぽん! 

 

 

 

午後のエネルギーを十秒でチャージしたハジメは辺りを見回すと、優花達6人が傍に来ようとしていたし、さらにタイミング的にはハジメにとっての女神(悪魔)がやって来ようとしていた。

 

 

 

「ハジメ君。珍しいね、教室にいるの。お弁当?よかったら一緒にどうかな?」と女神(悪魔)が仰られるので、

 

 

 

「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」と言って、ミイラのように中身を吸い取られたお昼のパッケージをヒラヒラと見せる。

 

 

しかし、その程度の抵抗など意味をなさないとばかり女神(悪魔)は追撃をかける。

 

 

 

「えっ!お昼それだけなの?ダメだよ、ちゃんと食べないと!私のお弁当、分けてあげるね!」と仰られた。

 

 

 

(もう勘弁して下さい! 気づいて! 周りの空気に気づいて!)とハジメが冷や汗を流していると救世主が現れた。優花達だ。

 

 

 

「白崎さん、大丈夫よ?私達と一緒に食べましょう?ハジメ(・・・)には私が分けてあげるから大丈夫。」

 

 

と物凄い笑顔で言う優花さん。目が笑ってない。それを見て笑いを堪える奈々と妙子と男子組。

 

 

その後、色々ゴタゴタありつつ、その中で深い溜息を吐きながらハジメは内心で愚痴った。

 

 

(もういっそ、こいつら異世界召喚とかされないかな? どう見てもこの四人組、そういう何かに巻き込まれそうな雰囲気ありありだろうに。)

 

 

 

現実逃避のため異世界に電波を飛ばすハジメ。いつも通り苦笑いでお茶を濁して退散するかと腰を上げかけたところで……凍りついた。

 

 

 

光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れたからだ。

 

 

その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様――俗に言う魔法陣らしきものを注視する。

 

 

その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。

 

 

 

自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

 

 

 

光に包み込まれる直前に「優花さん!!!!」「ハジメ!!!!」そうお互いに叫びながら手を伸ばし合った。

 

 

数秒か、数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

目をギュッと閉じていたハジメは、ざわざわと騒ぐ無数の気配を感じてゆっくりと目を開いた。そして、周囲を呆然と見渡す。

 

 

まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。

 

 

美しい壁画だ。素晴らしい壁画だ。だがしかし、ハジメはなぜか薄ら寒さを感じて無意識に目を逸らした。

 

 

よくよく周囲を見てみると、どうやら自分達は巨大な広間にいるらしいということが分かった。どうやら自分達は、その最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。周囲より位置が高い。

 

 

周りにはハジメと同じように呆然と周囲を見渡すクラスメイト達がいた。どうやら、あの時、教室にいた生徒は全員この状況に巻き込まれてしまったようである。

 

 

「・・・ハジメ、恥ずかしいよ。」とその声に振り向いてみたら、思わず抱きしめていたらしい優花が顔を赤くしていた。

 

「あ、ゴメン!優花さん!」慌てて離れながらも、周囲を見回してみたハジメ。

 

 

そこには、やはり呆然としてへたり込む友人達や香織や雫の姿があった。怪我はないようで、ハジメはホッと胸を撫で下ろす。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

イシュタルの自己紹介部分はカットです。(変わりようがないので。

 

 

 

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ハジメ達は場所を移り、十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。

 

 

上座に近い方に畑山愛子先生と光輝と龍太郎が座り、後はその取り巻き順に適当に座っている。ハジメ達は最後方だ。

 

(※ハジメ達=ハジメ+優花組+香織+雫の9人です)

 

ここに案内されるまで、誰も大して騒がなかったのは未だ現実に認識が追いついていないからだろう。イシュタルが事情を説明すると告げたことや、カリスマレベルMAXの光輝が落ち着かせたことも理由だろうが。

 

 

教師より教師らしく生徒達を纏めていると愛子先生が涙目だった。

 

 

 

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メイドさんの登場。そして給仕以降、イシュタルのトータスの現状説明、光輝の暴走。ここまでも同じ流れなのでカット。

 

 

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同時に、彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。

 

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

 

「龍太郎……」

 

と、その他のクラスメイト達も光輝に賛同しようとする中で、その際に周囲を注視していただろうイシュタルは、ハジメ達一団が何も言っていないのが気になったのか問うてきた。

 

「そちらの少年とその周囲の方々は、どうなされるおつもりかお聞きしても宜しいかな?」

 

「まず、自分には漲っている力なんてものは感じられません。そして私達には、戦争並びに生き物を自らの手で殺すという経験がありません。そんな自分達が力を手にしたからと言って、イシュタルさんの仰る通りの希望を叶えられるとも思えません。

 

ですので、当人の意思を尊重した上で、一定程度の力しか無いと判断された者。並びにいざ心折れた者。性格的に戦闘に向かない者などを後方支援という形で認め身分の保証もそれ相応にしていただけるなら、参加でも構いません。」と返すハジメ。

 

「南雲!おま「天之川君は黙ってて!!!!」

 

「ふむ。貴方の仰る通りでしょうな。ただし、訓練と座学は皆で受けて頂きますが、宜しいかな?」と思惑通り行かなかった筈のイシュタルが妥協点を出してきたのでハジメは頷いた。

 

 

(※この時点で、優花組の6人と香織・雫の8人はハジメの交渉能力ややる時はやる性質を知ってるので、敢えて沈黙してました。)

 

 

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教会から王国への案内、王族への紹介。晩餐会への招待。各自に一室ずつ与えられた部屋への案内。

 

 

この辺りも変わらないのでカット。

 

 

ステータスプレートのくだりの辺りもカット。

 

(※各人のステータスや天職や技能は原作と変わらないままと思ってください。)

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

ハジメのステータスプレートを見た、団長の表情が「うん?」と笑顔のまま固まり、ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。

 

 

そして、ジッと凝視した後、もの凄く微妙そうな表情でプレートをハジメに返した。

 

 

「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」と歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。

 

 

その様子にハジメを目の敵にしている男子達が食いつかないはずがない。檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。

 

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

 

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

 

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」檜山が、実にウザイ感じでハジメと肩を組む。見渡せば、檜山の取り巻き達はニヤニヤと嗤わらっている。

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」と言い返すハジメ。

 

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

メルド団長の表情から内容を察しているだろうに、本当に嫌な性格をしている檜山。取り巻きの三人もはやし立てる。強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ。

 

事実、香織や雫や優花・優花組の友人などは不快げに眉をひそめている。

 

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ!完全に一般人じゃねぇか!」

 

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

 

「ヒァハハハ~、無理無理!直ぐ死ぬってコイツ!肉壁にもならねぇよ!」

 

次々と笑い出す生徒に香織と雫と優花達が憤然と動き出す。

 

 

貴方達って本当に最低ね?ハジメ君がイシュタルさんに言った事、何も聞いてなかったのかしら?」と雫。

 

本当に最低!そうやって人を見下す人なんて大っ嫌いだよ!」と香織。

 

信じられない!こんな数値だけでそこまで人を馬鹿に出来るなんて!」と優花と奈々と妙子。

 

「そして、天之川や他のクラスメート達も最低だな。誰も南雲に対するフォローも何もせず黙って聞いてるか檜山達と一緒になって笑ってるだけなんて。」と男子組。

 

流石に女子組の非難は効いたのか大人しくなった檜山達は素直にハジメにプレートを返した。

 

男子組の指摘で天之川は何か言おうとしてたが、隣りにいた龍太郎に止められていた。

 

 

 

※愛子先生はやっぱり農業チートのままでした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

ハジメが自分の最弱ぶりと役立たず具合を突きつけられた日から二週間が経った。

 

ハジメは訓練の休憩時間を利用して王立図書館にて調べ物をしている。その手には〝北大陸魔物大図鑑〟というなんの捻りもないタイトル通りの巨大な図鑑があった。

 

なぜ、そんな本を読んでいるのか。それは訓練で、成長するどころか役立たずぶりがより明らかになっただけだったからだ。力がない分、知識と知恵でカバーできないかと訓練の合間に勉強しているのである。

 

メルド団長に錬成の技能を伸ばすために頼みこんで、国の筆頭練成師の下で修行もさせてもらっているが、"鉱物系鑑定と精密錬成"という派生技能がついただけだ。

 

(※この時点で本来は派生持ってませんが、持ってないとこの後の展開が、ね?)

 

 

(はぁ~、結局、帰りたいなら逃げる訳にはいかないんだよね。ってヤバイ、訓練の時間だ!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

訓練施設に到着すると既に何人もの生徒達がやって来て談笑したり自主練したりしていた。どうやら案外早く着いたようである。ハジメは、自主練でもして待つかと、支給された西洋風の細身の剣を取り出した。

 

優花達や香織や雫達はまだ来ていないようである。

 

と、その時、唐突に後ろから衝撃を受けてハジメはたたらを踏んだ。なんとか転倒は免れたものの抜き身の剣を目の前にして冷や汗が噴き出る。顔をしかめながら背後を振り返ったハジメは予想通りの面子に心底うんざりした表情をした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

この間はカット。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そろそろ痛みが耐え難くなってきた頃、突然、怒りに満ちた女の子の声が響いた。

 

 

「何やってるの!?」

 

 

その声に「やべっ」という顔をする檜山達。それはそうだろう。その女の子は檜山達が惚れている香織だったのだから。香織だけでなく雫や光輝、龍太郎もいる。

 

「いや、誤解しないで欲しいんだけど、俺達、南雲の特訓に付き合ってただけで……」

 

「ハジメくん!」檜山の弁明を無視して、香織は、ゲホッゲホッと咳き込み蹲るハジメに駆け寄る。ハジメの様子を見た瞬間、檜山達のことは頭から消えたようである。

 

「特訓ね。それにしては随分と一方的みたいだけど?」

 

「いや、それは……」

 

「言い訳はいい。いくら南雲が戦闘に向かないからって、同じクラスの仲間だ。二度とこういうことはするべきじゃない」

 

「くっだらねぇことする暇があるなら、自分を鍛えろっての」

 

三者三様に言い募られ、檜山達は誤魔化し笑いをしながらそそくさと立ち去った。香織の治癒魔法によりハジメが徐々に癒されていく。

 

「あ、ありがとう。白崎さん。助かったよ」

 

苦笑いするハジメに香織は泣きそうな顔でブンブンと首を振る。

 

「いつもあんなことされてたの?それなら、私が……」

 

何やら怒りの形相で檜山達が去った方を睨む香織を、ハジメは慌てて止める。

 

「いや、そんないつもってわけじゃないから! 大丈夫だから、ホント気にしないで!」

 

「でも……」それでも納得できなそうな香織に再度「大丈夫」と笑顔を見せるハジメ。渋々ながら、ようやく香織も引き下がる。

 

「ハジメ君、何かあれば遠慮なく言ってちょうだい。香織もその方が納得するわ」

 

渋い表情をしている香織を横目に、苦笑いしながら雫が言う。それにも礼を言うハジメ。しかし、そこで水を差すのが勇者クオリティー。

 

「だが、南雲自身ももっと努力すべきだ。弱さを言い訳にしていては強くなれないだろう? 聞けば、訓練のないときは図書館で読書に耽っているそうじゃないか。俺なら少しでも強くなるために空いている時間も鍛錬にあてるよ。南雲も、もう少し真面目になった方がいい。檜山達も、南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないだろ?」

 

 

何をどう解釈すればそうなるのか。ハジメは半ば呆然としながら、ああ確かに天之河は基本的に性善説で人の行動を解釈する奴だったと苦笑いする。

 

そこに遅れて来ていた優花達が合流する。

 

ハジメ!!大丈夫!?また檜山達に!?あの野郎、いっぺん殺してやろうかしら!?」と優花。

 

「南雲っち!ゴメンね?気付くの遅くなって。怪我は香織っちが治してくれたんだね。」と奈々。

 

「天之川君、南雲君が不真面目とか言ってなかった?彼は誰よりもこの世界の知識を身に付けるために図書館で努力をしているのよ?それを不真面目と貴方は言うの?」と静かに怒る妙子。

 

「しかも、1人対4人を鍛錬で鍛えようとしたとか見えるって天之川、お前の目は節穴か?ただの集団リンチだろう?」と男子組。

 

 

 

その場で幾らかの禍根を残しつつ、全員で訓練場へと戻って行った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となるのだが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。

 

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ!まぁ、要するに気合入れろってことだ!今日はゆっくり休めよ!では、解散!」

 

 

そう言って伝えることだけ伝えるとさっさと行ってしまった。ざわざわと喧騒に包まれる生徒達の最後尾でハジメは天を仰ぐ。

 

 

(……本当に前途多難だ)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホルアドへ旅立つ前にハジメは2通の手紙を書き上げた。

1通は遠征に同行しない愛子先生に手渡す為に。もう1通は遠征が開始される前にメルド団長に渡すために。である。

勿論、愛子先生には出発前に手渡してある。誰にも見られないように念を押して。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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【オルクス大迷宮】

 

 

それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。

 

の説明はカット。

 

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ハジメ達は、メルド団長率いる騎士団員複数名と共に、【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達のための宿場町【ホルアド】に到着した。新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。

 

久しぶりに普通の部屋を見た気がするハジメはベッドにダイブし「ふぅ~」と気を緩めた。全員が最低でも二人部屋なのにハジメだけ一人部屋だ。

 

明日から早速、迷宮に挑戦だ。今回は行っても二十階層までらしく、それくらいなら、ハジメのような最弱キャラがいても十分カバーできると団長から直々に教えられた。

 

ハジメとしては面倒掛けて申し訳ありませんと言う他ない。むしろ、王都に置いて行ってくれてもよかったのに……とは空気を読んで言えなかったヘタレなハジメである。

 

しばらく、借りてきた迷宮低層の魔物図鑑を読んでいたハジメだが、少しでも体を休めておこうと少し早いが眠りに入ることにした。

 

しかし、ハジメがウトウトとまどろみ始めたその時、ハジメの睡眠を邪魔するように扉をノックする音が響いた。

 

 

少し早いと言っても、それは日本で徹夜が日常のハジメにしてはということで、トータスにおいては十分深夜にあたる時間。怪しげな深夜の訪問者に、緊張を表情に浮かべる。

 

しかし、その心配は続く声で杞憂に終わった。

 

「ハジメ君、起きてる?白崎です。ちょっと、いいかな?」

 

「ハジメ君、八重樫です。香織と一緒だけど、いいかな?」

 

なんですと?と、一瞬硬直するも、ハジメは慌てて扉に向かう。そして、鍵を外して扉を開けると、そこには純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織と雫が立っていた。

 

 

「……なんでやねん」

 

「えっ?」「えっ?」

 

 

ある意味、衝撃的な光景に思わず関西弁でツッコミを入れてしまうハジメ。よく聞こえなかったのか香織と雫はキョトンとしている。

 

ハジメは、慌てて気を取り直すと、なるべく香織と雫を見ないように用件を聞く。ハジメも立派な思春期男子。今の香織と雫の格好は少々刺激が強すぎる。

 

「あ~いや、なんでもないよ。えっと、どうしたのかな? 何か連絡事項でも?」

 

「ううん。その、少しハジメ君と話したくて……やっぱり迷惑だったかな?」

 

「私もちょっと話したい事があって。……駄目かな?」

 

「…………どうぞ」

 

最も有り得そうな用件を予想して尋ねるが、香織と雫はあっさり否定して弾丸を撃ち込んでくる。しかも上目遣いという炸薬付き。効果は抜群だ!気がつけば扉を開け部屋の中に招き入れていた。

 

「うん!」「ありがとう!」

 

なんの警戒心もなく嬉しそうに部屋に入り、香織と雫は、窓際に設置されたテーブルセットに座った。

 

若干混乱しながらも、ハジメは無意識にお茶の準備をする。といっても、ただ水差しに入れたティーパックのようなものから抽出した水出しの紅茶モドキだが。香織と雫と自分の分を用意して二人に差し出す。そして、向かいの席に座った。

 

「「ありがとう」」

 

やっぱり嬉しそうに紅茶モドキを受け取り口を付ける香織と雫。窓から月明かりが差し込み純白の彼女達を照らす。黒髪にはエンジェルリングが浮かび、まるで本当の天使のようだ。

 

ハジメは、欲情することもなく純粋に神秘に彩られた二人に見蕩れた。二人がカップを置く「カチャ」という音に我を取り戻し、気を落ち着かせるために自分の紅茶モドキを一気に飲み干す。ちょっと気管に入ってむせた。恥ずかしい。

 

二人がその様子を見てくすくすと笑う。ハジメは恥ずかしさを誤魔化すために、少々、早口で話を促した。

 

 

「それで、話したい事って何かな。明日のこと?」

 

ハジメの質問に「うん」と頷き、香織はさっきまでの笑顔が嘘のように思いつめた様な表情になった。

 

「明日の迷宮だけど……ハジメ君には町で待っていて欲しいの。教官達やクラスの皆は私が必ず説得する。だから!お願い!」

 

話している内に興奮したのか身を乗り出して懇願する香織。ハジメは困惑する。ただハジメが足手まといだからというには少々必死過ぎないかな?と。

 

「えっと……確かに僕は足手まといとだは思うけど……流石にここまで来て待っているっていうのは認められないんじゃ……」

 

「違うの!足手まといだとかそういうことじゃないの!」

 

香織は、ハジメの誤解に慌てて弁明する。自分でも性急過ぎたと思ったのか、手を胸に当てて深呼吸する。少し、落ち着いたようで「いきなり、ゴメンね」と謝り静かに話し出した。

 

「あのね、なんだか凄く嫌な予感がするの。さっき少し眠ったんだけど……夢をみて……ハジメ君が居たんだけど……声を掛けても全然気がついてくれなくて……走っても全然追いつけなくて……それで最後は……」

 

その先を口に出すことを恐れるように押し黙る香織。ハジメは、落ち着いた気持ちで続きを聞く。

 

「最後は?」

 

香織はグッと唇を噛むと泣きそうな表情で顔を上げた。

 

「……消えてしまうの……」

 

「……そっか」

 

しばらく静寂が包む。

 

再び俯く香織を見つめるハジメ。

 

確かに不吉な夢だ。しかし、所詮夢である。そんな理由で待機が許可されるとは思えないし、許された場合はクラスメイトから批難の嵐だろう。いずれにしろ本格的に居場所を失う。故に、ハジメに行かないという選択肢はない。

 

ハジメは、香織を安心させるよう、なるべく優しい声音を心掛けながら話しかけた。

 

「夢は夢だよ、白崎さん。今回はメルド団長率いるベテランの騎士団員がついているし、天之河君みたいな強い奴も沢山いる。むしろ、うちのクラス全員チートだし。敵が可哀想なくらいだよ。僕は弱いし、実際に弱いところを沢山見せているから、そんな夢を見たんじゃないかな?」

 

語りかけるハジメの言葉に耳を傾けながら、なお、香織は、不安そうな表情でハジメを見つめる。

 

「それでも……それでも、不安だというのなら……」

 

「……なら?」

 

ハジメは若干恥ずかしそうに、しかし真っ直ぐに香織と目を合わせた。

 

「守ってくれないかな?」

 

「え?」

 

自分の言っていることが男としては相当恥ずかしいという自覚があるのだろう。既にハジメは羞恥で真っ赤になっている。月明かりで室内は明るく、香織からもその様子がよくわかった。

 

「白崎さんは〝治癒師〟だよね? 治癒系魔法に天性の才を示す天職。何があってもさ……たとえ、僕が大怪我することがあっても、白崎さんなら治せるよね。その力で守ってもらえるかな?それなら、絶対僕は大丈夫だよ」

 

しばらく、香織は、ジーとハジメを見つめる。ここは目を逸らしたらいけない場面だと羞恥に身悶えそうになりながらハジメは必死に耐える。

 

ハジメは、人が不安を感じる最大の原因は未知であると何かで聞いたことがあった。香織は今、ハジメを襲うかもしれない未知に不安を感じているのだろう。ならば、気休めかもしれないが、どんな未知が襲い来ても自分には対処する術があるのだと自信を持たせたかった。

 

しばらく見つめ合っていた香織とハジメだが、沈黙は香織の微笑と共に破られた。

 

「変わらないね。ハジメ君は」

 

「?」

 

香織の言葉に訝しそうな表情になるハジメ。その様子に香織はくすくすと笑う。

 

「ハジメ君は、私と会ったのは中3のあの時からだと思ってるよね? でもね、私は、中学二年の時から知ってたよ」

 

その意外な告白に、ハジメは目を丸くする。必死に記憶を探るが全く覚えていない。う~んと唸るハジメに、香織は再びくすりと笑みを浮かべた。

 

「私が一方的に知ってるだけだよ。……私が最初に見たハジメ君は土下座してたから私のことが見えていたわけないしね」

 

「ど、土下座!?」

 

ハジメは、なんて格好悪い所を見られていたんだ!と今度は違う意味で身悶えしそうになる。そして、人目につくところで土下座っていつ、どこでだ!?と必死に記憶を探る。一人、百面相するハジメに香織が話を続ける。

 

「うん。不良っぽい人達に囲まれて土下座してた。唾吐きかけられても、飲み物かけられても……踏まれても止めなかったね。その内、不良っぽい人達、呆れて帰っちゃった」

 

「そ、それはまたお見苦しいところを……」

 

ハジメは軽く死にたい気分だ。厨二病を患っていた時の黒歴史とタメを張るくらい最悪のシーンを見られていたらしい。もう、乾いた笑みしか出てこない。

 

しかし、香織は優しげな眼差しをしており、その表情には侮蔑も嘲笑もなかった。

 

「ううん。見苦しくなんてないよ。むしろ、私はあれを見てハジメ君のこと凄く強くて優しい人だって思ったもの」

 

「……は?」

 

ハジメは耳を疑った。そんなシーンを見て抱く感想ではない。もしや、白崎さんには特殊な性癖が!?と途轍もなく失礼なことを想像するハジメ。

 

「だって、ハジメ君。小さな男の子とおばあさんのために頭を下げてたんだもの」

 

その言葉に、ハジメは、ようやく思い当たった。確かに、中学生の頃、そんなことがあったと思い出す。

 

男の子が不良連中にぶつかった際、持っていたタコ焼きをべっとりと付けてしまったのだ。男の子はワンワン泣くし、それにキレた不良がおばあさんにイチャもんつけるし、おばあさんは怯えて縮こまるし、中々大変な状況だった。

 

偶然通りかかったハジメもスルーするつもりだったのだが、おばあさんが、おそらくクリーニング代だろう――お札を数枚取り出すも、それを受け取った後、不良達が、更に恫喝しながら最終的には財布まで取り上げた時点でつい体が動いてしまった。

 

といっても喧嘩など無縁の生活だ。仕方なく相手が引くくらいの土下座をしてやったのだ。公衆の面前での土下座は、する方は当然だが、される方も意外に恥ずかしい。というか居た堪れない。目論見通り不良は帰っていった。

 

「強い人が暴力で解決するのは簡単だよね。光輝くんとかよくトラブルに飛び込んでいって相手の人を倒してるし……でも、弱くても立ち向かえる人や他人のために頭を下げられる人はそんなにいないと思う。……実際、あの時、私は怖くて……自分は雫ちゃん達みたいに強くないからって言い訳して、誰か助けてあげてって思うばかりで何もしなかった」

 

「白崎さん……」

 

「だから、私の中で一番強い人はハジメ君なんだ。中3の時にハジメ君に会えたときは嬉しかった。……ハジメ君みたいになりたくて、もっと知りたくて色々話し掛けたりしてたんだよ。ハジメ君直ぐに寝ちゃうけど……」

 

「あはは、ごめんなさい」

 

香織が自分を構う理由が分かったハジメは、香織の予想外の高評価に恥ずかしいやら照れくさいやらで苦笑いする。

 

「だからかな、不安になったのかも。迷宮でもハジメ君が何か無茶するんじゃないかって。不良に立ち向かった時みたいに……でも、うん」

 

香織は決然とした眼差しでハジメを見つめた。

 

「私がハジメ君を守るよ、優花ちゃん達と一緒に」

 

ハジメはその決意を受け取る。真っ直ぐ見返し、そして頷いた。

 

「ありがとう」

 

 

「ゴホンッ!、香織のヒーロー振りとハジメ君のヒロイン振りが見れたのは良いのだけど、私の話も良いかしら?」

 

「し、雫ちゃん・・・何言ってるのもぅ・・・」と顔を真赤にする香織。

 

「ぇと、ゴメンね八重樫さん。で八重樫さんの話は何だったのかな?」と頬をかきながら尋ねるハジメ。

 

「ハジメ君。貴方は度々私に、周りに気を遣い過ぎと言ってくれたわよね?「幼馴染の事にすら気を遣っているなら、僕には気を遣わなくていいよ?」って。」と当時を思い出しながら語る雫。

 

「うん。言ったね。僕がアレコレ言われるのは自業自得だから、それを八重樫さんに気を遣わせるのは罪悪感が・・・って言うような事を。だよね?」とハジメ。

 

「えぇ。あの言葉を貴方に言われてからずっと考えて心の中に置いて行動して来たわ。確かに光輝や龍太郎の暴走に対してフォローし過ぎてたし、香織のハジメ君に対する暴走もね・・・」

 

「雫ちゃん、暴走って酷い・・・。」ぷくーっと頬を膨らませ抗議する香織。

 

「事実じゃない。だからこそ、香織と同じ様に、貴方が今回の遠征で誰かを守るために無理をして自分を傷付けるんじゃないか、心配なの。」と俯く雫。

 

「そ、そんな事は無いんじゃないかな?だって僕は最弱で無能だよ?」と場を和まそうとするハジメ。

 

そんなわけない!貴方は私達の中で一番強い人。与えられた力がとか技能がとかそんなものじゃなく『心が』強いの。だからこそ、優花の事を知ってても貴方に頼ってしまうの、私は。」と雫。

 

「そうだね。雫ちゃんの言う通りだよ。そんなハジメ君だからこそ、憧れたんだもの。」と香織。

 

「何を言えば、八重樫さんの気持ちを軽くしてあげられるのかは分からないんだ。だから白崎さんに言ったのと同じ事になってしまうけど。」

 

「八重樫さんも僕を守ってくれないかな?」ハジメは一日に二度もかと顔を真っ赤にしながら、しかし真っ直ぐに雫と目を合わせた。

 

「・・・ぅん。分かったわ。」と照れながらハジメと目を合わせた雫の笑顔は、ハジメを、そして香織すらも虜にする程眩しいものだった。

 

それからしばらく雑談した後、香織と雫は部屋に帰っていった。

 

ハジメはベッドに横になりながら、思いを馳せる。なんとしても自分に出来ることを見つけ出し、無能の汚名を返上しなければならない。いつまでもヒロインポジなど納得できるものではないし、優花を自分の力で守りたいし友人達も守りたい。

ハジメはそんな決意を新たにし眠りについた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

オルクスの入場口から二十階層までの道のりや過程は変わらず。

(勿論入る前にメルド団長にはハジメが書いた手紙を渡してある。帰還したら開けるように伝えた上で。)

そして、光輝の暴走。檜山の独断専行によるトラップの発動、強制転移。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

部屋の中に光が満ち、ハジメ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

ハジメ達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 

尻の痛みに呻き声を上げながら、ハジメは周囲を見渡す。クラスメイトのほとんどはハジメと同じように尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

どうやら、先の魔法陣は転移させるものだったらしい。現代の魔法使いには不可能な事を平然とやってのけるのだから神代の魔法は規格外だ。

 

ハジメ達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。

 

橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

 

それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

 

しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……

 

その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

 

「まさか……ベヒモス……なのか……」

 

 

橋の両サイドに現れた赤黒い光を放つ魔法陣。通路側の魔法陣は十メートル近くあり、階段側の魔法陣は一メートル位の大きさだが、その数がおびただしい。

 

小さな無数の魔法陣からは、骨格だけの体に剣を携えた魔物〝トラウムソルジャー〟が溢れるように出現した。空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き目玉の様にギョロギョロと辺りを見回している。その数は、既に百体近くに上っており、尚、増え続けているようだ。

 

しかし、数百体のガイコツ戦士より、反対の通路側の方がヤバイとハジメは感じていた。

 

十メートル級の魔法陣からは体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物が出現したからだ。もっとも近い既存の生物に例えるならトリケラトプスだろうか。ただし、瞳は赤黒い光を放ち、鋭い爪と牙を打ち鳴らしながら、頭部の兜から生えた角から炎を放っているという付加要素が付くが……

 

メルド団長が呟いた〝ベヒモス〟という魔物は、大きく息を吸うと凄まじい咆哮を上げた。

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

 

「ッ!?」その咆哮で正気に戻ったのか、メルド団長が矢継ぎ早に指示を飛ばす。

 

「アラン!生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ!カイル、イヴァン、ベイル!全力で障壁を張れ!ヤツを食い止めるぞ!光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」

 

「待って下さい、メルドさん!俺達もやります!あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう!俺達も……」

 

「馬鹿野郎!あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ!ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ!さっさと行け!私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」

 

メルド団長の鬼気迫る表情に一瞬怯むも、「見捨ててなど行けない!」と踏み止まる光輝。

 

どうにか撤退させようと、再度メルドが光輝に話そうとした瞬間、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。このままでは、撤退中の生徒達を全員轢殺してしまうだろう。

 

そうはさせるかと、ハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。

 

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――〝聖絶〟!!」」」

 

 

二メートル四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、さらに三人同時発動。一回こっきり一分だけの防御であるが、何物にも破らせない絶対の守りが顕現する。純白に輝く半球状の障壁がベヒモスの突進を防ぐ!

 

 

衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、ベヒモスの足元が粉砕される。橋全体が石造りにもかかわらず大きく揺れた。撤退中の生徒達から悲鳴が上がり、転倒する者が相次ぐ。

 

トラウムソルジャーは三十八階層に現れる魔物だ。今までの魔物とは一線を画す戦闘能力を持っている。前方に立ちはだかる不気味な骸骨の魔物と、後ろから迫る恐ろしい気配に生徒達は半ばパニック状態だ。

 

隊列など無視して我先にと階段を目指してがむしゃらに進んでいく。騎士団員の一人、アランが必死にパニックを抑えようとするが、目前に迫る恐怖により耳を傾ける者はいない。

 

その内、一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまった。「うっ」と呻きながら顔を上げると、眼前で一体のトラウムソルジャーが剣を振りかぶっていた。

 

 

「あ」 そんな一言と同時に彼女の頭部目掛けて剣が振り下ろされた。

 

 

死ぬ――女子生徒がそう感じた次の瞬間、トラウムソルジャーの足元が突然隆起した。

 

 

バランスを崩したトラウムソルジャーの剣は彼女から逸れてカンッという音と共に地面を叩くに終わる。更に、地面の隆起は数体のトラウムソルジャーを巻き込んで橋の端へと向かって波打つように移動していき、遂に奈落へと落とすことに成功した。

 

 

橋の縁から二メートルほど手前には、座り込みながら荒い息を吐くハジメの姿があった。ハジメは連続で地面を錬成し、滑り台の要領で魔物達を橋の外へ滑らせて落としたのである。いつの間にか、錬成の練度が上がっており、連続で錬成が出来るようになっていたおかげだ。錬成範囲も少し広がったようだ。

 

もっとも、錬成は触れた場所から一定範囲にしか効果が発揮されないので、トラウムソルジャーの剣の間合いで地面にしゃがまなければならず、緊張と恐怖でハジメの内心は一杯一杯だったが。

 

魔力回復薬を飲みながら倒れたままの女子生徒のもとへ駆け寄るハジメ。錬成用の魔法陣が組み込まれた手袋越しに女子生徒----園部優花の手を引っ張り立ち上がらせる。

 

 

呆然としながら為されるがままの優花に、ハジメが笑顔で声をかけた。

 

「早く前へ。大丈夫、優花(・・)冷静になればあんな骨どうってことないよ。クラスメイトは僕を除いて全員チートなんだから!出来れば、菅原さんや宮崎さん達を纏めて、敵を倒して!」

 

自信満々で背中をバシッと叩くハジメをマジマジと見る優花は、次の瞬間には「うん!ありがとう!」と元気に返事をして駆け出した。

 

ハジメは周囲のトラウムソルジャーの足元を崩して固定し、足止めをしながら周囲を見渡す。

 

誰も彼もがパニックになりながら滅茶苦茶に武器や魔法を振り回している。このままでは、いずれ死者が出る可能性が高い。騎士アランが必死に纏めようとしているが上手くいっていない。そうしている間にも魔法陣から続々と増援が送られてくる。

 

 

「なんとかしないと……必要なのは……強力なリーダー……道を切り開く火力……天之河くん!」

 

 

ハジメは走り出した。光輝達のいるベヒモスの方へ向かって。

 

 

 

ベヒモスは依然、障壁に向かって突進を繰り返していた。

 

 

障壁に衝突する度に壮絶な衝撃波が周囲に撒き散らされ、石造りの橋が悲鳴を上げる。障壁も既に全体に亀裂が入っており砕けるのは時間の問題だ。既にメルド団長も障壁の展開に加わっているが焼け石に水だった。

 

「ええい、くそ!もうもたんぞ!光輝、早く撤退しろ!お前達も早く行け!」

 

「嫌です!メルドさん達を置いていくわけには行きません!絶対、皆で生き残るんです!」

 

「くっ、こんな時にわがままを……」

 

メルド団長は苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

この限定された空間ではベヒモスの突進を回避するのは難しい。それ故、逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。

 

しかし、その微妙なさじ加減は戦闘のベテランだからこそ出来るのであって、今の光輝達には難しい注文だ。

 

その辺の事情を掻い摘んで説明し撤退を促しているのだが、光輝は〝置いていく〟ということがどうしても納得できないらしく、また、自分ならベヒモスをどうにかできると思っているのか目の輝きが明らかに攻撃色を放っている。

 

まだ、若いから仕方ないとは言え、少し自分の力を過信してしまっているようである。戦闘素人の光輝達に自信を持たせようと、まずは褒めて伸ばす方針が裏目に出たようだ。

 

 

「光輝!団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

 

雫は状況がわかっているようで光輝を諌めようと腕を掴む。

 

「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ?付き合うぜ、光輝!」

 

「龍太郎……ありがとな」

 

しかし、龍太郎の言葉に更にやる気を見せる光輝。それに雫は舌打ちする。

 

「状況に酔ってんじゃないわよ! この馬鹿共!」

 

「雫ちゃん……」苛立つ雫に心配そうな香織。

 

 

その時、一人の男子が光輝の前に飛び込んできた。

 

「天之河くん!」

 

「「なっ、南雲!?」」

 

「「ハジメくん!?」」

 

と驚く一同にハジメは必死の形相でまくし立てる。

 

「早く撤退を!皆のところに!君がいないと!早く!」

 

「いきなりなんだ?それより、なんでこんな所にいるんだ!ここは君がいていい場所じゃない!ここは俺達に任せて南雲は……」

 

「そんなこと言っている場合かっ!」

 

ハジメを言外に戦力外だと告げて撤退するように促そうとした光輝の言葉を遮って、ハジメは今までにない乱暴な口調で怒鳴り返した。

 

いつも苦笑いしながら物事を流す大人しいイメージとのギャップに思わず硬直する光輝。

 

「あれが見えないの!?みんなパニックになってる!リーダーがいないからだ!」

 

光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。

 

その方向にはトラウムソルジャーに囲まれ右往左往しているクラスメイト達がいた。

 

訓練のことなど頭から抜け落ちたように誰も彼もが好き勝手に戦っている。効率的に倒せていないから敵の増援により未だ突破できないでいた。スペックの高さが命を守っているが、それも時間の問題だろう。

 

 

「一撃で切り抜ける力が必要なんだ!皆の恐怖を吹き飛ばす力が!それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ!前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

 

呆然と、混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイトを見る光輝は、ぶんぶんと頭を振るとハジメに頷いた。

 

「ああ、わかった。直ぐに行く!メルド団長!すいませ――」

 

「下がれぇーー!」

 

〝すいません、先に撤退します〟――そう言おうとしてメルド団長を振り返った瞬間、その団長の悲鳴と同時に、遂に障壁が砕け散った。

 

暴風のように荒れ狂う衝撃波がハジメ達を襲う。咄嗟に、ハジメが前に出て錬成により石壁を作り出すがあっさり砕かれ吹き飛ばされる。多少は威力を殺せたようだが……

 

舞い上がる埃がベヒモスの咆哮で吹き払われた。

 

そこには、倒れ伏し呻き声を上げる団長と騎士が三人。衝撃波の影響で身動きが取れないようだ。光輝達も倒れていたがすぐに起き上がる。メルド団長達の背後にいたことと、ハジメの石壁が功を奏したようだ。

 

「ぐっ……龍太郎、雫、時間を稼げるか?」

 

光輝が問う。それに苦しそうではあるが確かな足取りで前へ出る二人。団長たちが倒れている以上自分達がなんとかする他ない。

 

「やるしかねぇだろ!」

 

「……なんとかしてみるわ!」

 

二人がベヒモスに突貫する。

 

「香織はメルドさん達の治癒を!」

 

「うん!」

 

光輝の指示で香織が走り出す。ハジメは既に団長達のもとだ。戦いの余波が届かないよう石壁を作り出している。気休めだが無いよりマシだろう。

 

光輝は、今の自分が出せる最大の技を放つための詠唱を開始した。

 

「神意よ!全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ!神の息吹よ!全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ!神の慈悲よ!この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――〝神威〟!」

 

詠唱と共にまっすぐ突き出した聖剣から極光が迸る。

 

先の天翔閃と同系統だが威力が段違いだ。橋を震動させ石畳を抉り飛ばしながらベヒモスへと直進する。

 

龍太郎と雫は、詠唱の終わりと同時に既に離脱している。ギリギリだったようで二人共ボロボロだ。この短い時間だけで相当ダメージを受けたようだ。

 

放たれた光属性の砲撃は、轟音と共にベヒモスに直撃した。光が辺りを満たし白く塗りつぶす。激震する橋に大きく亀裂が入っていく。

 

「これなら……はぁはぁ」

 

「はぁはぁ、流石にやったよな?」

 

「だといいけど……」

 

(それはやってないフラグだよとツッコミを入れそうになるハジメがいたが空気をよんで無言)

 

龍太郎と雫が光輝の傍に戻ってくる。光輝は莫大な魔力を使用したようで肩で息をしている。

 

先ほどの攻撃は文字通り、光輝の切り札だ。残存魔力のほとんどが持っていかれた。背後では、治療が終わったのか、メルド団長が起き上がろうとしている。

 

そんな中、徐々に光が収まり、舞う埃が吹き払われる。

 

その先には……

 

無傷のベヒモスがいた。

 

低い唸り声を上げ、光輝を射殺さんばかりに睨んでいる。と、思ったら、直後、スッと頭を掲げた。頭の角がキィーーーという甲高い音を立てながら赤熱化していく。そして、遂に頭部の兜全体がマグマのように燃えたぎった。

 

「ボケッとするな!逃げろ!」

 

メルド団長の叫びに、ようやく無傷というショックから正気に戻った光輝達が身構えた瞬間、ベヒモスが突進を始める。そして、光輝達のかなり手前で跳躍し、赤熱化した頭部を下に向けて隕石のように落下した。

 

光輝達は、咄嗟に横っ飛びで回避するも、着弾時の衝撃波をモロに浴びて吹き飛ぶ。ゴロゴロと地面を転がりようやく止まった頃には、満身創痍の状態だった。

 

どうにか動けるようになったメルド団長が駆け寄ってくる。他の騎士団員は、まだ香織による治療の最中だ。ベヒモスはめり込んだ頭を抜き出そうと踏ん張っている。

 

「お前等、動けるか!」

 

メルド団長が叫ぶように尋ねるも返事は呻き声だ。先ほどの団長達と同じく衝撃波で体が麻痺しているのだろう。内臓へのダメージも相当のようだ。

 

メルド団長が香織を呼ぼうと振り返る。その視界に、駆け込んでくるハジメの姿を捉えた。

 

「坊主!香織を連れて、光輝を担いで下がれ!」 ハジメにそう指示する団長。

 

 

"光輝を担いで下がれ!" その指示は、すなわち、もう一人くらいしか逃げることも敵わないということなのだろう。

 

メルド団長は唇を噛み切るほど食いしばり盾を構えた。ここを死地と定め、命を賭けて食い止めるつもりだ。

 

そんな団長に、ハジメは必死の形相で、とある提案をする。それは、この場の全員が助かるかもしれない唯一の方法。ただし、あまりに馬鹿げている上に成功の可能性も少なく、ハジメが一番危険を請け負う方法だ。

 

 

メルド団長は逡巡するが、ベヒモスが既に戦闘態勢を整えている。再び頭部の兜が赤熱化を開始する。時間がない。

 

「……やれるんだな?」

 

「やります」決然とした眼差しを真っ直ぐ向けてくるハジメに、

 

メルド団長は「くっ」と苦い笑みを浮かべる。

 

「まさか、お前さんに命を預けることになるとはな。……必ず助けてやる。だから……頼んだぞ!」

 

「はい!」

 

メルド団長はそう言うとベヒモスの前に出た。そして、簡易の魔法を放ち挑発する。ベヒモスは、先ほど光輝を狙ったように自分に歯向かう者を標的にする習性があるようだ。しっかりとその視線がメルド団長に向いている。

 

そして、赤熱化を果たした兜を掲げ、突撃、跳躍する。メルド団長は、ギリギリまで引き付けるつもりなのか目を見開いて構えている。そして、小さく詠唱をした。

 

「吹き散らせ――〝風壁〟」 詠唱と共にバックステップで離脱する。

 

その直後、ベヒモスの頭部が一瞬前までメルド団長がいた場所に着弾した。発生した衝撃波や石礫は〝風壁〟でどうにか逸らす。大雑把な攻撃なので避けるだけならなんとかなる。倒れたままの光輝達を守りながらでは全滅していただろうが。

 

再び、頭部をめり込ませるベヒモスに、ハジメが飛びついた。赤熱化の影響が残っておりハジメの肌を焼く。しかし、そんな痛みは無視してハジメも詠唱した。名称だけの詠唱。最も簡易で、唯一の魔法。

 

 

「――〝錬成〟!」

 

 

石中に埋まっていた頭部を抜こうとしたベヒモスの動きが止まる。周囲の石を砕いて頭部を抜こうとしても、ハジメが錬成して直してしまうからだ。

 

ベヒモスは足を踏ん張り力づくで頭部を抜こうとするが、今度はその足元が錬成される。ずぶりと一メートル以上沈み込む。更にダメ押しと、ハジメは、その埋まった足元を錬成して固める。

 

ベヒモスのパワーは凄まじく、油断すると直ぐ周囲の石畳に亀裂が入り抜け出そうとするが、その度に錬成をし直して抜け出すことを許さない。ベヒモスは頭部を地面に埋めたままもがいている。中々に間抜けな格好だ。

 

その間に、メルドは回復した騎士団員と香織を呼び集め、光輝達を担ぎ離脱しようとする。

 

トラウムソルジャーの方は、どうやら幾人かの生徒が冷静さを取り戻したようで、周囲に声を掛け連携を取って対応し始めているようだ。立ち直りの原因が、実は先ほどハジメが助けた優花達だったりする。地味に貢献しているハジメである。

 

「待って下さい!まだ、ハジメくんがっ」撤退を促すメルド団長に香織が猛抗議した。

 

「坊主の作戦だ!ソルジャーどもを突破して安全地帯を作ったら魔法で一斉攻撃を開始する!もちろん坊主がある程度離脱してからだ!魔法で足止めしている間に坊主が帰還したら、上階に撤退だ!」

 

「なら私も残ります!」

 

「ダメだ!撤退しながら、香織には光輝を治癒してもらわにゃならん!」

 

「でも!」

 

 なお、言い募る香織にメルド団長の怒鳴り声が叩きつけられる。

 

「坊主の思いを無駄にする気か!」

 

「ッ――」

 

メルド団長を含めて、メンバーの中で最大の攻撃力を持っているのは間違いなく光輝である。少しでも早く治癒魔法を掛け回復させなければ、ベヒモスを足止めするには火力不足に陥るかもしれない。そんな事態を避けるには、香織が移動しながら光輝を回復させる必要があるのだ。ベヒモスはハジメの魔力が尽きて錬成ができなくなった時点で動き出す。

 

「天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん――〝天恵〟」

 

 

香織は泣きそうな顔で、それでもしっかりと詠唱を紡ぐ。淡い光が光輝を包む。体の傷と同時に魔力をも回復させる治癒魔法だ。

 

メルド団長は、香織の肩をグッと掴み頷く。香織も頷き、もう一度、必死の形相で錬成を続けるハジメを振り返った。そして、光輝を担いだメルド団長と、雫と龍太郎を担いだ騎士団員達と共に撤退を開始した。

 

トラウムソルジャーは依然増加を続けていた。既にその数は二百体はいるだろう。階段側へと続く橋を埋め尽くしている。

 

だが、ある意味それでよかったのかもしれない。もし、もっと隙間だらけだったなら、突貫した生徒が包囲され惨殺されていただろう。実際、最初の百体くらいの時に、それで窮地に陥っていた生徒は結構な数いたのだ。

 

それでも、未だ死人が出ていないのは、ひとえに騎士団員達のおかげだろう。彼等の必死のカバーが生徒達を生かしていたといっても過言ではない。代償に、既に彼等は満身創痍だったが。

 

騎士団員達のサポートがなくなり、続々と増え続ける魔物にパニックを起こし、魔法を使いもせずに剣やら槍やら武器を振り回す生徒がほとんどである以上、もう数分もすれば完全に瓦解するだろう。

 

生徒達もそれをなんとなく悟っているのか表情には絶望が張り付いている。先ほどハジメが助けた優花達の呼びかけで少ないながらも連携をとり奮戦していた者達も限界が近いようで泣きそうな表情だ。

 

誰もが、もうダメかもしれない、そう思ったとき……

 

「――〝天翔閃〟!」

 

純白の斬撃がトラウムソルジャー達のド真ん中を切り裂き吹き飛ばしながら炸裂した。

 

橋の両側にいたソルジャー達も押し出されて奈落へと落ちていく。斬撃の後は、直ぐに雪崩れ込むように集まったトラウムソルジャー達で埋まってしまったが、生徒達は確かに、一瞬空いた隙間から上階へと続く階段を見た。今まで渇望し、どれだけ剣を振るっても見えなかった希望が見えたのだ。

 

「皆!諦めるな!道は俺が切り開く!」

 

そんなセリフと共に、再び〝天翔閃〟が敵を切り裂いていく。光輝が発するカリスマに生徒達が活気づく。

 

「お前達!今まで何をやってきた!訓練を思い出せ!さっさと連携をとらんか!馬鹿者共が!」

 

皆の頼れる団長が〝天翔閃〟に勝るとも劣らない一撃を放ち、敵を次々と打ち倒す。

 

いつも通りの頼もしい声に、沈んでいた気持ちが復活する。手足に力が漲り、頭がクリアになっていく。実は、香織の魔法の効果も加わっている。精神を鎮める魔法だ。リラックスできる程度の魔法だが、光輝達の活躍と相まって効果は抜群だ。

 

治癒魔法に適性のある者がこぞって負傷者を癒し、魔法適性の高い者が後衛に下がって強力な魔法の詠唱を開始する。前衛職はしっかり隊列を組み、倒すことより後衛の守りを重視し堅実な動きを心がける。

 

治癒が終わり復活した騎士団員達も加わり、反撃の狼煙が上がった。チートどもの強力な魔法と武技の波状攻撃が、怒涛の如く敵目掛けて襲いかかる。凄まじい速度で殲滅していき、その速度は、遂に魔法陣による魔物の召喚速度を超えた。

 

そして、階段への道が開ける。

 

「皆!続け!階段前を確保するぞ!」

 

光輝が掛け声と同時に走り出す。

 

ある程度回復した龍太郎と雫がそれに続き、バターを切り取るようにトラウムソルジャーの包囲網を切り裂いていく。

 

そうして、遂に全員が包囲網を突破した。背後で再び橋との通路が肉壁ならぬ骨壁により閉じようとするが、そうはさせじと光輝が魔法を放ち蹴散らす。

 

クラスメイトが訝しそうな表情をする。それもそうだろう。目の前に階段があるのだ。さっさと安全地帯に行きたいと思うのは当然である。

 

「皆、待って!ハジメ君を助けなきゃ!ハジメ君がたった一人であの怪物を抑えてるの!」

 

香織のその言葉に何を言っているんだという顔をするクラスメイト達。そう思うのも仕方ない。なにせ、ハジメは〝無能〟で通っているのだから。

 

だが、困惑するクラスメイト達が、数の減ったトラウムソルジャー越しに橋の方を見ると、そこには確かにハジメの姿があった。

 

「なんだよあれ、何してんだ?」

 

「あの魔物、上半身が埋まってる?」

 

「・・・ハジメ。」と優花。

 

「・・・ハジメ君。」と雫。

 

「・・・南雲っち。」と奈々。

 

「・・・南雲君。」と妙子。

 

「・・・南雲ぅ。」と男子組。

 

次々と疑問の声を漏らす生徒達にメルド団長が指示を飛ばす。

 

「そうだ!坊主がたった一人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ!前衛組!ソルジャーどもを寄せ付けるな!後衛組は遠距離魔法準備!もうすぐ坊主の魔力が尽きる。アイツが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」

 

ビリビリと腹の底まで響くような声に気を引き締め直す生徒達。中には階段の方向を未練に満ちた表情で見ている者もいる。

 

無理もない。ついさっき死にかけたのだ。一秒でも早く安全を確保したいと思うのは当然だろう。しかし、団長の「早くしろ!」という怒声に未練を断ち切るように戦場へと戻った。

 

その中には檜山大介もいた。自分の仕出かした事とはいえ、本気で恐怖を感じていた檜山は、直ぐにでもこの場から逃げ出したかった。

 

しかし、ふと脳裏にあの日の情景が浮かび上がる。

 

それは、迷宮に入る前日、ホルアドの町で宿泊していたときのこと。

 

緊張のせいか中々寝付けずにいた檜山は、トイレついでに外の風を浴びに行った。涼やかな風に気持ちが落ち着いたのを感じ部屋に戻ろうとしたのだが、その途中、ネグリジェ姿の香織と雫を見かけたのだ。

 

初めて見る香織の姿に思わず物陰に隠れて息を詰めていると、香織と雫は檜山に気がつかずに通り過ぎて行った。

 

気になって後を追うと、香織と雫は、とある部屋の前で立ち止まりノックをした。その扉から出てきたのは……ハジメだった。

 

檜山は頭が真っ白になった。檜山は香織に好意を持っている。しかし、自分とでは釣り合わないと思っており、光輝のような相手なら、所詮住む世界が違うと諦められた。

 

しかし、ハジメは違う。自分より劣った存在(檜山はそう思っている)が香織の傍にいるのはおかしい。それなら自分でもいいじゃないか、と端から聞けば頭大丈夫?と言われそうな考えを檜山は本気で持っていた。

 

ただでさえ溜まっていた不満は、すでに憎悪にまで膨れ上がっていた。香織が見蕩れていたグランツ鉱石を手に入れようとしたのも、その気持ちが焦りとなってあらわれたからだろう。

 

その時のことを思い出した檜山は、たった一人でベヒモスを抑えるハジメを見て、今も祈るようにハジメを案じる香織を視界に捉え……ほの暗い笑みを浮かべた。

 

 

その頃、ハジメはもう直ぐ自分の魔力が尽きるのを感じていた。既に回復薬はない。チラリと後ろを見るとどうやら全員撤退できたようである。隊列を組んで詠唱の準備に入っているのがわかる。

 

ベヒモスは相変わらずもがいているが、この分なら錬成を止めても数秒は時間を稼げるだろう。その間に少しでも距離を取らなければならない。

 

額の汗が目に入る。極度の緊張で心臓がバクバクと今まで聞いたことがないくらい大きな音を立てているのがわかる。

 

ハジメはタイミングを見計らった。

 

そして、数十度目の亀裂が走ると同時に最後の錬成でベヒモスを拘束する。同時に、一気に駆け出した。

 

ハジメが猛然と逃げ出した五秒後、地面が破裂するように粉砕されベヒモスが咆哮と共に起き上がる。その眼に、憤怒の色が宿っていると感じるのは勘違いではないだろう。

 

 

鋭い眼光が己に無様を晒させた怨敵を探し……ハジメを捉えた。

 

再度、怒りの咆哮を上げるベヒモス。ハジメを追いかけようと四肢に力を溜めた。

 

 

だが、次の瞬間、あらゆる属性の攻撃魔法が殺到した。

 

夜空を流れる流星の如く、色とりどりの魔法がベヒモスを打ち据える。ダメージはやはり無いようだが、しっかりと足止めになっている。

 

いける!と確信し、転ばないよう注意しながら頭を下げて全力で走るハジメ。すぐ頭上を致死性の魔法が次々と通っていく感覚は正直生きた心地がしないが、チート集団がそんなミスをするはずないと信じて駆ける。ベヒモスとの距離は既に三十メートルは広がった。

 

思わず、頬が緩む。

 

しかし、その直後、ハジメの表情は凍りついた。

 

無数に飛び交う魔法の中で、一つの火球がクイッと軌道を僅かに曲げたのだ。

 

……ハジメの方に向かって。

 

明らかにハジメを狙い誘導されたものだ。

 

(なんで!?)

 

疑問や困惑、驚愕が一瞬で脳内を駆け巡り、ハジメは愕然とする。

 

咄嗟に踏ん張り、止まろうと地を滑るハジメの眼前に、その火球は突き刺さった。着弾の衝撃波をモロに浴び、来た道を引き返すように吹き飛ぶ。直撃は避けたし、内臓などへのダメージもないが、三半規管をやられ平衡感覚が狂ってしまった。

 

フラフラしながら少しでも前に進もうと立ち上がるが……

 

(その有様を見て、優花や香織や雫は既にハジメに向かって走り出していた。他のクラスメート達はその様子に気付く気配もなく。)

 

ベヒモスも、いつまでも一方的にやられっぱなしではなかった。ハジメが立ち上がった直後、背後で咆哮が鳴り響く。思わず振り返ると三度目の赤熱化をしたベヒモスの眼光がしっかりハジメを捉えていた。

 

そして、赤熱化した頭部を盾のようにかざしながらハジメに向かって突進する!

 

フラつく頭、霞む視界、迫り来るベヒモス、遠くで焦りの表情を浮かべ悲鳴と怒号を上げるクラスメイト達。

 

ハジメは、なけなしの力を振り絞り、必死にその場を飛び退いた。直後、怒りの全てを集束したような激烈な衝撃が橋全体を襲った。ベヒモスの攻撃で橋全体が震動する。着弾点を中心に物凄い勢いで亀裂が走る。メキメキと橋が悲鳴を上げる。

 

そして遂に……橋が崩壊を始めた。

 

度重なる強大な攻撃にさらされ続けた石造りの橋は、遂に耐久限度を超えたのだ。

 

「グウァアアア!?」

 

悲鳴を上げながら崩壊し傾く石畳を爪で必死に引っ掻くベヒモス。しかし、引っ掛けた場所すら崩壊し、抵抗も虚しく奈落へと消えていった。ベヒモスの断末魔が木霊する。

 

ハジメもなんとか脱出しようと這いずるが、しがみつく場所も次々と崩壊していく。

 

(ああ、ダメだ……)

 

そう思いながら対岸のクラスメイト達の方へ視線を向けると、飛び出している優花や香織や雫を止めようと光輝や龍太郎や男子達が騎士団員に羽交い締めにされているのが見えた。

 

他のクラスメイトは青褪めたり、目や口元を手で覆ったりしている。メルド団長や他の騎士団員の面々も悔しそうな表情でハジメを見ていた。

 

「ハジメ君!」と香織がハジメの手を掴み

「ハジメ君!」と雫が香織の体とハジメのもう片方の手を

「ハジメ!」と優花が二人を支えるように引き上げようとする。

 

が、ハジメ達の居た足場も完全に崩壊し、ハジメ達は奈落へと落ちていった。4人一塊になるように互いに手を繋いで。

 

響き渡り消えゆくベヒモスの断末魔。ガラガラと騒音を立てながら崩れ落ちてゆく石橋。

 

そして……その光景を、まるでスローモーションのように緩やかになった時間の中で、ただ見ていることしかできないクラスメイト達。

 

目の前でクラスメイトが4人死んだのだ。クラスメイト達の精神にも多大なダメージが刻まれている。誰もが茫然自失といった表情で石橋のあった方をボーと眺めていた。中には「もう嫌!」と言って座り込んでしまう子もいる。

 

ハジメが光輝に叫んだように今の彼等にはリーダーが必要なのだ。

 

光輝がクラスメイト達に向けて声を張り上げる。

 

「皆!今は、生き残ることだけ考えるんだ!撤退するぞ!」

 

その言葉に、クラスメイト達はノロノロと動き出す。トラウムソルジャーの魔法陣は未だ健在だ。続々とその数を増やしている。今の精神状態で戦うことは無謀であるし、戦う必要もない。

 

光輝は必死に声を張り上げ、クラスメイト達に脱出を促した。メルド団長や騎士団員達も生徒達を鼓舞する。

 

そして全員が階段への脱出を果たした。

 

上階への階段は長かった。

 

先が暗闇で見えない程ずっと上方へ続いており、感覚では既に三十階以上、上っているはずだ。魔法による身体強化をしていても、そろそろ疲労を感じる頃である。先の戦いでのダメージもある。薄暗く長い階段はそれだけで気が滅入るものだ。

 

そろそろ小休止を挟むべきかとメルド団長が考え始めたとき、ついに上方に魔法陣が描かれた大きな壁が現れた。

 

クラスメイト達の顔に生気が戻り始める。メルド団長は扉に駆け寄り詳しく調べ始めた。フェアスコープを使うのも忘れない。

 

その結果、どうやらトラップの可能性はなさそうであることがわかった。魔法陣に刻まれた式は、目の前の壁を動かすためのもののようだ。

 

メルド団長は魔法陣に刻まれた式通りに一言の詠唱をして魔力を流し込む。すると、まるで忍者屋敷の隠し扉のように扉がクルリと回転し奥の部屋へと道を開いた。

 

扉を潜ると、そこは元の二十階層の部屋だった。

 

「帰ってきたの?」「戻ったのか!」「帰れた……帰れたよぉ……」

 

クラスメイト達が次々と安堵の吐息を漏らす。中には泣き出す子やへたり込む生徒もいた。光輝達ですら壁にもたれかかり今にも座り込んでしまいそうだ。

 

しかし、ここはまだ迷宮の中。低レベルとは言え、いつどこから魔物が現れるかわからない。完全に緊張の糸が切れてしまう前に、迷宮からの脱出を果たさなければならない。

 

メルド団長は休ませてやりたいという気持ちを抑え、心を鬼にして生徒達を立ち上がらせた。

 

「お前達!座り込むな!ここで気が抜けたら帰れなくなるぞ!魔物との戦闘はなるべく避けて最短距離で脱出する!ほら、もう少しだ、踏ん張れ!」

 

少しくらい休ませてくれよ、という生徒達の無言の訴えをギンッと目を吊り上げて封殺する。

 

渋々、フラフラしながら立ち上がる生徒達。光輝が疲れを隠して率先して先をゆく。道中の敵を、騎士団員達が中心となって最小限だけ倒しながら一気に地上へ向けて突き進んだ。

 

そして遂に、一階の正面門となんだか懐かしい気さえする受付が見えた。迷宮に入って一日も立っていないはずなのに、ここを通ったのがもう随分昔のような気がしているのは、きっと少数ではないだろう。

 

今度こそ本当に安堵の表情で外に出て行く生徒達。正面門の広場で大の字になって倒れ込む生徒もいる。一様に生き残ったことを喜び合っているようだ。

 

だが、一部の生徒――光輝や龍太郎、恵里、鈴、奈々や妙子ハジメと友人だった男子組などは暗い表情だ。

 

そんな生徒達を横目に気にしつつ、受付に報告に行くメルド団長。

 

二十階層で発見した新たなトラップは危険すぎる。石橋が崩れてしまったので罠として未だ機能するかはわからないが報告は必要だ。

 

そして、ハジメ達の死亡報告もしなければならない。

 

憂鬱な気持ちを顔に出さないように苦労しながら、それでも溜息を吐かずにはいられないメルド団長だった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホルアドの町に戻った一行は何かする元気もなく宿屋の部屋に入った。幾人かの生徒は生徒同士で話し合ったりしているようだが、ほとんどの生徒は真っ直ぐベッドにダイブし、そのまま深い眠りに落ちた。

 

 

檜山と恵里の下りはカット。(香織と雫と優花も共に落ちてるので流れが変わってるため。)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

一通りの手続きやフォローを終え、一人部屋に戻ったメルド団長は、

出発前にハジメに手紙を渡されていたのを思い出し探し出して読んでみた。

 

そこには端的にこう書かれていた。

 

・今回の遠征が無事に済めばいいが、力を手にした自分達が浮かれて多分上手くは行かない事。

・犠牲者がでなければいいが、でた場合立ち直れなくなる者が出るだろう事。

・その際には、イシュタルとの約束を守るように後方支援の形で以外戦争参加を強制しない事。

・事故・トラブル等が発生した際、国や教会が調査をさせないだろう事。

・今回の件で何かしら団長が責任を取らされる形でも、責任を感じないで欲しいという事。

・何らかの機会で自分が狙われた場合は(檜山達4人が)行動的に怪しいという事。

・畑山先生の天職が有用なので立ち直れない人達を護衛という名目で王宮から遠ざける事。

・同じ内容の手紙を畑山先生に渡してあるので話し合って皆を助けて欲しいという事。

・自分が無事に戻ってきててもなくても、読んだらこの手紙を破棄して欲しいという事。

 

※畑山先生に当てられた手紙には最後に一文。

 

「皆で元のまま、元の世界(地球)に帰るのは難しいかも知れません。」と付け加えられていた。

 

その手紙を読んだメルド団長はその手紙を焼却処分しながら思わず涙を流していた。

 

早馬で団長からの伝言を受け取った畑山先生もまた、

 

手紙を焼却処分しながらボロボロと涙を零していた。そして数日寝込んでしまったのは原作通り。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~




という訳で、前話の予告通り
「召喚→オルクス→奈落」へのお話を書いてみました。

や、色々と迷ったとこ多数なんですが、
「月下の語らい」には敢えて雫さんを入れてみました。
細かい部分とかは流石に省いたりしてますけど(雫さんの訪問時の衣装とか)、
語らい時の雫さんのハジメに対する心情は原作小説をモデルにしてます。

とりあえず、奈落行きは
「ハジメ・優花・香織・雫」の4人になりました。
こうなると地上組が大変な事になりそうですね?
まぁ、その辺りは何とかなる、いやしなければならないんでしょうね。(私が)

手紙って手段を用いたり、原作通り進めつつも所々でハジメの知識というか智謀能力発揮する場面を入れてみたんですが如何でしょうか。

この後の奈落からの這い上がりとか地上組の様子とか。
前置きに書いた通り、書いたら最後までってなってしまうので。
要望が多ければ書くことはあるかも知れません。

現状ではCase5-3のエピソードを書く予定は無いです。

気が向いたら(優花さん愛が溢れたら)書くかも知れませんけどね。

※余談として書き足しますが、サブタイトルに込めた意味は。
「異世界の(トータスの)
園にて(園部優花メインヒロインにして)
咲き誇る花々(花(優花)が咲く場所には水(雫)が必要で、咲いた花からは香り(香織)が辺りに漂っている。花々と複数系なのも複数ヒロインの意味を兼ねてます。」
という解読出来ないだろう意味を込めています。

…わかりませんよね、普通に。


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case5-2.EX 「奈落の底にて生まれた希望と結実する想い」

ええと、サブタイトルからお分かりの通り。

「奈落に落ちたハジメ・優花・香織・雫」のエピソードを書きたくなったので。

ええ。副題通りですよ?(笑

希望が何かで、
結実した想いが何かは言う必要もないですね?


希望が生まれる為には、絶望が必要です。

何かを手にする為には、何らかの対価が必要になります。

奈落へと落ちた4人は何に絶望し、希望を生み出すことになるのか。

そのために支払うための対価とは一体何になるのか。



※case5-3では無く2.EXとしてるのは、前話の後書き通り、原作に置いてのクラスメイトサイドを書く予定がないからです。
(だってこの4人抜けた地上サイドは勇者(笑)の暴走とか、愛ちゃん護衛隊としての離脱メンバー増やしたりとか、教会(王国)からの離反ぐらいしか浮かばないんです。)


ザーッと水の流れる音が耳へと届く。

 

冷たい微風が頬を撫で、冷え切った体が身震いした。頬に当たる硬い感触と下半身の刺すような冷たい感触に「うっ」と呻き声を上げてハジメは目を覚ました。

 

ボーとする頭、ズキズキと痛む全身に眉根を寄せながら両腕に力を入れて上体を起こす。

 

「痛っ~、ここは……僕は確か……」

 

ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回す。

 

周りは薄暗いが緑光石の発光のおかげで何も見えないほどではない。視線の先には幅五メートル程の川があり、ハジメの下半身が浸かっていた。上半身が、突き出た川辺の岩に引っかかって乗り上げたようだ。

 

「そうだ……確か、橋が壊れて落ちたんだ。……それで……」

 

霧がかかったようだった頭が回転を始める。

 

「!!!優花さんと白崎さんと八重樫さんは!!!」

 

そう、あの時の崩落で一緒に落ちた筈の3人を思い出し、焦りながら辺りを見回すハジメ。

 

だが見回すまでも無く、ハジメの右手の側には香織が。左手の側には雫が。二人と自分に覆い被さるように優花がいた。

 

3人共普通に呼吸はしているし、大きな怪我をしているようには見えなかったのでホッと一安心したが、川に浸かったままだと低体温症になる恐れもあると危惧したハジメは、3人を何とか起こすことにした。

 

「優花さん!白崎さん!八重樫さん!起きて!」

 

「・・・うぅん、ハジメ・・・?無事だったのね!?」と優花が、

 

「・・・ぁ、は、ハジメ君!?良かったよぅ!」と涙目の香織が、

 

「・・・あ、ハジメ君。皆無事だったのね。」と辺りを見回しながら雫が目を覚ました。

 

「うん、何とかね。無事を喜び合いたいのは僕もなんだけど、優花さんか白崎さんに"火種"の魔法をお願いしたくて。水の中で浸かってせいか皆冷え切ってるし。」

 

そう言われて3人は川の中に浸かっているという現状を認識できたのか、4人で急いで川から上がる。

 

川の近くの岩辺にて、「「"火種"」」と優花と香織が火を起こす。

 

4人でその火種を囲う様にして体と服を乾かすために暖をとっていた。

 

その際に、ハジメが突然背中を向けたので3人はキョトンとしながら「何事?」と思いつつ互いを見回す事で現状を認識した。

 

そう、水の中に浸かっていたので4人共服が濡れている(・・・・・・・・)のである。香織は法衣の様な薄手の白地ベースの服、雫と優花は前衛として動きやすい様な比較的軽装と言えるような格好で。

 

「ハジメ、気にしなくていいわ。緊急事態なんだし。」と頬を赤くしながら優花が一番先に服を乾かすために脱ぐ。

 

「ゆ、優花ちゃん!?そ、そうだよハジメ君!気にしないで大丈夫!」と優花より頬を赤くした香織も続く。

 

「ハ、ハジメ君。気を遣ってくれるのは嬉しいけど、それで貴方に何かあったほうが困るわ。」と耳まで赤くした雫も続く。

 

そんな事を言われても、振り向けないハジメ。背中を向けた状態のまま無言で服を脱いで、そのまま暖をとっている。

 

「「「・・・ハジメ(君)。」」」 3人の声が重なる。優花は元より香織と雫の声音も、もはや愛しい者を呼ぶ様な響きである。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

結局の所、服が乾き身体が温まるまでハジメが一度も振り向くことも無く。

3人が乾いた服を着終えて身支度が終わるまでずっと背を向けたままで、その後にハジメも乾いた服を着た。

その際にハジメに向けられていた3人の眼差しはとても暖かく、愛情や色々な好感情だけが含まれたものだった。

勿論背を向けていたハジメは気付ける訳がないのだが。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

現在いる場所がオルクス大迷宮であることには間違いないが、何階層かもわからずいつ何処から魔物が襲ってきてもおかしくはないので4人は周囲を警戒しながら探索することにした。

 

クラスメイトや団長達と共に進んできた階層と違い、天然の洞窟とも思える通路を慎重に障害物に隠れながら何とか進んでいった。

 

ハジメを先頭に、左翼を雫が右翼を優花が後衛として香織が。

(※この陣形を決める際に、非戦闘職であるハジメを先頭に立たせる事に猛反発した雫と優花だがハジメは頑なとして譲らなかった一幕があったのは別の話。)

 

そうして4人が疲労を感じ始めた頃、巨大な四辻へと辿り着いた。

 

岩陰に隠れるようにしながらどの道に進むべきか相談しようとしたその時、ハジメ達4人の眼前方向にある道の方で白い毛玉みたいな何かが動いてるのが視界に入った。

 

・・・そう。「蹴りウサギ」と後に呼ばれることになる、中型犬ぐらいのサイズがあるウサギ。

 

あからさまに不気味でヤバそうな魔物がいる前方は諦めて、距離の遠そうな右側の方に4人が進もうとしたその時。

 

蹴りウサギが何かを警戒する仕草を見せていたので、慌てて隠れ直す様な体制で4人が様子を見ていたら

 

「グルルゥアア!」と獣の雄叫びを上げた尾が二本ある狼が合計三体タイミングを計らう様に蹴りウサギに襲いかかった。

 

それを見ていた4人は間違いなく、二尾狼によるウサギの捕食が行われると思っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

蹴りウサギが二尾狼を圧倒し勝利の雄叫び?をあげた所と、

その時の全員の心情が

(う、嘘でしょ?嘘だと言ってくださいお願いします。)と神に祈るような気持ちで一致していたことは言うまでもない。

※もちろん、心情的な神であって決してエヒトではない。というのは付け加えておきましょう。

 

恐怖心から無意識に後ずさった4人が蹴飛ばしてしまった小石か何かで蹴りウサギに気づかれ襲われハジメの左腕が粉砕される所、

(その際、他の3人を無意識化で庇いながらだったためハジメ以外はコレと言った負傷はしていない。)

その後爪熊が現れ、蹴りウサギを圧倒し捕食し、4人を視界に収め次はお前たちだと言わんばかりの目を向けられて恐慌状態に陥った香織と雫が思わず逃げ出そうとする。

その辺りまでは原作通りの流れとほぼ(・・)と変わりません。

ただ、優花だけは崩落前にトラウムソルジャーに殺されかけた恐怖から腰を抜かしてしまっていたという状態が追加されます。

もちろんその状況下で爪熊のターゲットにされるのはハジメでは無く優花へと変わります。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「優花!!!!」

 

と叫びながらハジメが優花を庇い共に吹き飛ばされ、ハジメの左腕が咀嚼されるそんな展開へ。

 

その際に、背後の壁を「錬成」で開き、香織・雫・優花を先に押し込むようにし、ハジメ自身も恐怖と痛みと生存本能と3人を死なせるわけにいかないと言う防衛本能から

 

出血多量で意識を失うその直前まで錬成を繰り返し続け、何とか3人と自分が最低限動けるだけの空間を作り出し意識を手放す前に走馬灯の様に思い浮かんだ映像は。

 

トータスに召喚される前日の夜、ウィステリアにて交わした優花との何気ない会話。

 

そして、月明かりの元での香織と雫との会話。そして約束をした時のその笑顔。

 

その輝かしい映像の消失と共にハジメは完全に意識を手放した。その直前にぴたっぴたっと頬に水滴を感じた。

 

それはまるで、誰かの流した涙のようだった。

 

 

その後に、

 

 

「ハジメぇぇ!!!」と優花の泣き叫ぶ声。

 

「ハジメ君!!!香織ぃ!治癒魔法を!急いでぇ!」と涙を流しながら叫ぶ雫。

 

「ハジメ君!!!出血は止まったけど!身体がどんどん冷たくなっていくの!と号泣し叫ぶ香織。

 

その香織の言葉を聞いた瞬間に、優花はハジメの胸元へと抱きつきこの場で共に死ぬ覚悟を決めた。

 

それを見た香織と雫も優花の決意を理解し、ハジメと優花を抱きしめるようにし優花と同じ覚悟を決めていた。

 

そして、ハジメに続いて3人もまた意識を手放した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

この後のハジメの神水による復活から、優花・香織・雫に対する想いの理解。

優花・香織・雫からの想いの告白。それに対するハジメの返答。

共に生き延び、元の世界へと帰るために神水服用での魔物を食す事による苦痛と変貌。

(もちろん、爪熊で心折られてるので精神的な変貌も含んでます。)

※前話で言及してませんが、ハジメが奈落に落ちた(落とされた)理由は4人共、糞野郎(檜山)であると理解しています。勿論、明確なる殺意も。原作ではハジメ一人なのでどうでもいいと放棄してますが。ハジメ嫁である3人がそれを認めるわけありませんね?(ガクガクブルブル

 

で、奈落を共に攻略していく所は原作と変えようがありませんので・・・。(汗

ただし、完全戦闘職な雫と完全後衛職な香織とどっちにも回れそうな優花。

・・・そう、優花がいるのです。ウィステリア継ぐ意志を持つ料理上手な優花が。

血抜きや解体等した事は無くても知識があれば出来なくも無さそうなので食生活はマシになるかもです。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




読んでいただけたらお分かり頂けたと思いますが、

絶望は原作通り、「ハジメの左腕の消失」と「生存への意志の放棄」です。

希望は、「ハジメの復活」と「新たなる力の獲得」と「最後まで共にという確固たる意志」です。

支払った対価とは、「ハジメの左腕」「容姿の変貌」「日本における常識感の放棄=自分達に敵対する者への明確なる殺意」など、挙げればきりがありません。

やっぱりハジメはカッコよく書かなきゃ、という筆者の独断偏見の元。
無意識下で3人の女の子かばうとか。
ちょっと濡れs(ryてる女の子達に何も言わず背を向けて目をそらす紳士っぷりとか。
爪熊に対して恐慌状態に陥らず、優花を庇うとか。
もう勇者(笑)とか比較対象にならないぐらい「カッコいい」ですよね?
唯でさえ好意持ってる男の子にそんなふうに守られたら、

「ほれてまうやろー」ですよね!?(笑

結実した想いの部分は要所要所で匂わせたラブ臭(ぇ?
と書く予定が100%ない(書ける才能もないです)ユエ合流後のヒュドラ撃破以降オスカーの隠れ家でのR-18指定受けんだろゴラァ!となる5人の甘々生活など、
想像で何とかしてくださいね?(ぉぃ と丸投げです。

今回のcaseはセリフや描写を極力省いた事もありとても短いですが、
結構頭を捻らせながら書いたつもりです。

ちなみに本文の最後に書き足した通り、3人が加わった事による要素以外の変化は原作通りのままなので続きはないです。

書くとしたら、隠れ家脱出後のシア合流以降からとかになるでしょうかね?
・・・多分書けませんので、期待はしないでお待ち下さい。

次は・・・思い切ってリリィルートとか構想してみましょうか(自爆
・・・ぇ?原作それ何?美味しいの?って状態になりそうですけど。
それもまた、期待しないでお待ち下さい。


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case5-3 「陽の当たる場所への帰還と残念兎」

結構な時間が空いてしまいました、申し訳ありません。

構想が浮かんでなかったとか・・・ではなく普通に時間がありませんでした。

あと、サブタイのcase5-3について。

クラスメイトサイド書かないので使わないよ!って否定してきましたが。

使わないで、exとかver的なのを考えるのが面倒になったのであえて5-3です。


サブタイと今までの予告から理解してもらえると思いますが、
オスカーの隠れ家からライセン大峡谷への話です。

・ユエとは合流してますが、優花が本妻なので。
しかも、香織と雫がユエよりハジメに大事にされる状態なので。ユエは・・・仲間?シアと同類扱い?かもしれませんね。


奈落の底に()()()()()からおよそ3ヶ月。

(オスカー・オルクスの隠れ家で原作通りアーティファクト作成したり、鍛錬したり。)

 

やっと5人が地上へ出ると決めた日が来た。

余談ではあるが、5人のステータスはこんな感じになっていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

 

天職:錬成師

 

筋力:13550

 

体力:15426

 

耐性:14671

 

敏捷:14480

 

魔力:15780

 

魔耐:15780

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

園部優花 17歳 女 レベル:???

 

天職:投術師

 

筋力:14178

 

体力:11259

 

耐性:12890

 

敏捷:17080

 

魔力:11560

 

魔耐:11560

 

技能:投擲術[+投擲速度上昇][+飛距離上昇][+遠隔回収][+遠隔操作][+目標補足][+自動追尾]・火属性適性[+消費魔力減少][+発動速度上昇][+効果上昇][+属性付加][+連続発動][+複数同時発動]・雷属性適性[+消費魔力減少][+発動速度上昇][+効果上昇][+属性付加][+連続発動][+複数同時発動]・気配感知[+特定感知]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・金剛・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ユエ 323歳 女 レベル:75

 

天職:神子

 

筋力:220

 

体力:350

 

耐性:150

 

敏捷:220

 

魔力:7980

 

魔耐:8120

 

技能:自動再生[+痛覚操作]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・高速魔力回復・生成魔法

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

八重樫雫 17歳 女 レベル:???

 

天職:剣士

 

筋力:14950

 

体力:15190

 

耐性:11470

 

敏捷:20150

 

魔力:12780

 

魔耐:12780

 

技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇]・縮地・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

白崎香織 17歳 女 レベル:???

 

天職:治癒師

 

筋力:10150

 

体力:11975

 

耐性:16204

 

敏捷:11025

 

魔力:21860

 

魔耐:21860

 

技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+複数同時発動][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・金剛・威圧・念話・追跡・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ユエのチートっぷりも凄いのだが、他の4人のステータスが。

 

・・・もはや人類かすら危うい数値と技能である。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

出発までのおよそ2ヶ月の間のこと。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

最下層のラスボスであるヒュドラを倒し、オスカーから世界の真実を聞かされた5人は。

 

「俺はこの世界の事はどうなろうとどうでもいい。だが、優花や香織や雫が傷つけられるなら神だって殺して日本に帰る。」とハジメ。

 

「ハジメがいるから、私はここにいる。()()()()()()であるハジメが為すことをずっと傍で支え続けるわ。」と優花。

 

「ハジメ君が望むことが私の望み。それを邪魔するものは例え人でも神でも排除して斬り捨てる。」と雫。

 

「ハジメ君は私の世界一大好きな人。ハジメ君も雫ちゃんも優花ちゃんもユエももう傷つかせない。私が癒やすよ。」と香織。

 

「・・・私にはもう帰る場所が無かった。でも4人が私に名前と居場所をくれた。だから私も・・・頑張る。」とユエ。

 

 

 

流石にオスカーは畑の肥料にはされず、菜園の片隅にハジメが錬成で骨壷を作り、キリスト教系式で立派な墓を作った。

 

その際に、オスカーが嵌めていたオルクスの指輪が必要だと気づいた5人は手を合わせ指輪を頂戴していた。

 

まず、奈落に落ちた直後の失ったハジメの左腕の制作。(神水では治らなかったため。)

 

次に、ユエを除いた3人の当番制で料理を作ることになった。 (ユエはアレンジと言う料理を駄目にする事が多々あったので。)

 

更には、ハジメの生成魔法を使った錬成で各々の武器や装備を新調。移動手段も確保という事でアーティファクトが量産された。

 

ハジメは、「ドンナー&シュラーク」のガンガタスタイル+近接攻撃手段として雫に八重樫流を習い剣術(刀剣術)を身につけた。

ハジメの刀は雫と対になる「白刀・桜吹雪」と名付けられた、雫によって。

(原作通り、殲滅力や貫通力の問題でシュラーケンやオルカン等も開発しています。)

 

優花は、投擲術に磨きをかけハジメ作の「縮地を組み込んだ投げナイフ(刺さった結果しか残らない)」や「投擲するだけで込めた魔力の量に応じて分裂するナイフ」と、

いざという時のために、小型のドンナー&シュラークを持ちガンガタスタイルも身につけた。

(ちなみに優花の小型のドンナー&シュラークの名称は「アイビー」と「サルビア」と優花が名付けた。ナイフの方は「シュバルツシルト」と「クロックスオーバー」となった。)

 

雫は、八重樫流剣術を更に極めて、優花と同じ様にガンカタスタイルも身につけた。ハジメが雫のために作った刀は「黒刀・千本桜」と名付けられた。

(優花と同じ、小型のドンナー&シュラークには雫が「フジ」と「ブーゲンビリア」と名付けた。)

 

香織は、ユエと魔法の特訓をしながらやはりハジメのガンガタスタイルで攻撃手段を持とうと死にものぐるいで努力した。

(香織に与えられた小型のドンナー&シュラークは「キキョウ」と「ナズナ」と名付けた。もちろん香織が。)

 

ユエは香織と優花に魔法の特訓を、ハジメと雫には対魔法使い用の戦いの持ち回りなど・・・。

全員で原作ハジメの行なった核撃ち特訓等もしました。

と、各々の技能を伸ばすための特訓がかなり続いた。

(余談としてユエにも小型ドンナーを与えたら、迷わず「サクラソウ」と名付けたらしい。)

 

移動手段としてはサイドカー付きの二輪が1台。通常の二輪が二台。

四輪としてキャンプカーサイズ(最大20人は乗れる・ベット・トイレ・風呂・上下水(魔法と濾過で)・冷蔵冷凍庫・キッチンetc)を作り上げた。

(※四輪を作ったときはユエを除く三人の意見が大いに反映された結果だと言っておきます。)

 

で、奈落を攻略する間お世話になった神水が20本分ぐらいを残して、神結晶が枯渇したため魔力を注いでみたが反応が無かったので。

 

優花には、ハジメの紅に似たルビー色の指輪とネックレスとイヤリングを。

 

雫には、瑠璃色に似たラピスラズリ色の指輪とネックレスとイヤリングを。

 

香織には、白菫色に似たラブラドライト色の指輪とネックレスとイヤリングを。

 

ユエには、金色に似たゴールドシーンサファイア色の指輪とネックレスとイヤリングを。

 

(※この時点で渡した指輪には簡易レベルの宝物庫機能がついています。)

 

各々の神結晶に魔力を貯める効果があるのであくまでも装飾品として非常時のためにハジメは渡したのだが・・・。

 

「「「「プロポーズ!!!!」」」」

 

と顔や耳までを真赤にした4人に話が通じるわけがなく、

 

「あ、いや、魔力枯渇を防ぐための装飾h・・・・アーーーーーーッ!!!

 

と、数日の間ハジメは寝室のある部屋から出てくることは無かったという・・・。

 

そんな感じの厳しくも甘い(?)2ヶ月が経過し、次の大迷宮へと向かうことに。

 

 

 

「皆、俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

 

「ん……」「近代兵器すぎるからね。」「ハジメ君やりすぎよね。」「敵対するなら切り倒しましょう。」

 

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」

 

「ん……」「絶対に渡さないけどね。」「渡したら世界大戦だよ。」「神の駒として利用されるつもりはないわ。」

 

「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」

 

「ん……」「ま、誘拐犯と扇動犯だしね。」「リリィとかいい娘もいたけど教会と神は駄目だね。」「十中八九私達の邪魔をしてくるでしょうね。」

 

「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」

 

「今更……」「「「私達は最後まで生き残るし、死ぬときもハジメ(君)と一緒にって覚悟はとうに出来てる(わ)」」」

 

 

ハジメは一呼吸を置くと、キラキラと輝く4人の紅眼を見つめ返し、望みと覚悟を言葉にして魂に刻み込む。

 

 

「俺が皆を、皆が俺を守る。各々に守り合う。それで俺達は最強だ。全部なぎ倒して、世界を越えよう!」

 

「んっ!うん!ええ!そうね!」

 

 

そして、魔法陣が発動し光が収まった。空気感でさっきまでいた所とは違うのはわかるのだが。

 

 

 

・・・・洞窟だった。

 

 

 

「・・・なんでやねん」

 

 

「ハジメ、それはボケたの?反逆者の隠れ家に通じる秘密の通路なら隠すでしょ?」と優花。

 

「・・・ん。優花の言う通り。」とちょっと呆れたようなユエ。

 

「「まぁ、でもそれもまたハジメ君らしいわ。」」と楽しげに見つめてくる香織と雫。

 

という一幕がありながら、進んでいくとオルクスの指輪が反応し扉が開いて、罠も自動的に止まった。

 

そうして進むこと数分。遂に光が見えてきた。

 

人工的な光や緑光石などの光ではない。太陽が照らす自然の光だ。

 

思わず5人はそれを見て走り出し、光の照らす方へと駆け出して行った。

 

 

そのまま光の中に飛び込むように駆けた5人が出た場所。

 

 

そこは【ライセン大峡谷】と呼ばれる場所だった。

 

 

どんな場所かは関係なく5人には地上に出た喜びを。太陽の光を浴びれることを。風に乗って鼻腔をくすぐる大地の匂いを。

 

 

「よっしゃぁああーー!!戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

「んっーー!!」

「やっと地上に帰ってきたんだぁぁ!」

「長かったわ・・・でもやっと・・・んぅぅ」

「太陽ってこんなに眩しかったっけ?風ってこんな気持ちよかったかな?」

 

白髪の男と白髪の女3人と金髪の女の子は輪を組む様にはしゃぎ回った。それはもう【ライセン大峡谷】に響き渡るようなぐらい。

 

 

・・・そんだけ騒げば魔物も寄ってくるよね?と言わんばかりに囲まれていた。

 

 

【ライセン大峡谷】では魔力が分解される。これはトータスでの常識なので・・・。

 

 

「皆、せっかくの喜びを邪魔するこの無粋な奴らを魔法以外で倒すぞ!」とハジメ。

 

「「「「ん!(うん、ええ、はい!)」」」」

 

ハジメはドンナー&シュラークで。優花は投げナイフで。ユエ・香織は銃で。雫は刀で。

 

 

・・・・ほんの3分も経たずに周囲の魔物は全滅した。

 

 

「弱くね?ここの魔物。ライセン大峡谷の魔物って凶悪だった筈。」

 

「・・・ハジメ達が化け物。」

 

「「「その言い方はちょっと・・・だけど奈落の魔物が強すぎたってことよね。」」」

 

 

「とりあえず、ライセン大峡谷にも大迷宮があるはずだから探しながら樹海側に向かうか。」

 

「・・・なぜ樹海側?」

 

「ユエ、なんの準備もなしに砂漠超えてグリューエンに向かいたい?」

 

「とりあえず街があったはずよね・・・ブルックだったかしら?」

 

「宿に泊まりたいし、色々買い物もしたいよね。」

 

とりあえず、樹海側に向かって進むことに決めた5人はハジメが出した2台の二輪に乗って移動し始めた。

 

片方はハジメが運転し、後ろに優花。もう一台は雫が運転し、前にユエ、後ろに香織。

(この分担になる時に優花以外の三人が揉めた事は言うまでもない。)

 

ライセン大峡谷を道なりに走っている最中も、所々で魔物が現れたがそれぞれ後部に乗っている優花と香織が各々あっさり倒していた。

 

しばらく走らせていると今までと違う魔物の咆哮が聞こえたので、ある程度の距離を置いて二輪を止めると。

 

双頭のティラノサウルスモドキっぽい魔物に追われている半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女がいた。

 

「・・・なんだあれ?(ウサミミ美少女だと!ピクピク)

 

「・・・兎人族?」

 

「亜人族って樹海の中にしかいないはずじゃ?(あ、ハジメあの娘気になってるわね)

 

「確か王国で読んだ本だと犯罪者に対する処刑の方法としてあったわね。」

 

「あんな娘が・・・犯罪?なんか信じられないけど、見た目で判断は出来ないかな?」

 

5人とも呑気に会話しながら今すぐ助けようという気配はないらしい。

 

ユエの時とは違い助けることによって更にトラブルに巻き込まれる可能性が高そうだからか。

 

なんて事を考えている間に、そのウサミミ少女は双頭ティラノサウルスもどきから隠れながらハジメ達を見つけたようだ。

 

「だずげでぐだざ~い!ひっーー死んじゃう!死んじゃうよぉ!だずけてぇ~おねがいじますぅ~!」

 

涙ながらに今にも捕食されそうなウサミミ美少女に助けを求められたハジメ達は・・・・。

 

「うわ・・・モンスタートレインかよ、勘弁してくれ」

「確かハジメの好きなゲームだとMPK(モンスターによるプレイヤーキル)とか言うんだっけ?」

「・・・迷惑。」

あのウサミミはモフモフしたいけど・・・流石に全て助ける訳にはね。」

「うーん?ねぇ皆、トラブル抱えてもあの娘助けた方が・・・。」

 

ハジメ達の言葉が聞こえていた訳ではないだろうが、助けてくれなさそうな気配は感じたのだろう。

 

「まっでぇ~、みすでないでぐだざ~い! おねがいですぅ~!!」

 

「香織、どうしてだ?トラブルを抱え込んでまで助けるメリットがあると?」

「樹海に向かうんだよね?樹海って亜人族以外だと霧で迷うんじゃなかったかな・・・」

「・・・そうだった。助けよう?ハジメ」

「そう言われると否定出来ないわね。ウサミミモフモフさせてもらえるかもだし

「ハジメ。迷ってるなら行動しましょ?助けなかった事、後悔したくはないでしょ?」

 

「わかったよ・・・とりあえずは助けてアイツに詳細を聞いてからだ。」

 

双頭ティラノが、ウサミミ少女に追いつき、片方の頭がガパッと顎門を開く。ウサミミ少女はその気配にチラリと後ろを見て目前に鋭い無数の牙が迫っているのを認識し、「ああ、ここで終わりなのかな……」とその瞳に絶望を写した。

 

が、次の瞬間、

 

ドパンッ!!

 

と頭部が弾けた双頭ティラノが倒れた衝撃でウサミミ美少女が吹き飛び、狙いすましたようにハジメの方へ。

 

「きゃぁああああー! た、助けてくださ~い!」

 

そこで受け止めるのが普通。だが奈落で変心したハジメクオリティは一歩先を行く。

 

無言で二輪を後退させ華麗にウサミミ美少女を避けた。

 

「えぇええーーーー!!?!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

※このシーンだけはカットしない方が面白いと思い追加。

 

「で、でも!胸なら私が勝ってます!白髪の女性達には敵わないかもですが、そっちの女の子はペッタンコじゃないですか!」

 

~〝ペッタンコじゃないですかぁ〟〝ペッタンコじゃないですかぁあ〟〝ペッタンコじゃないですかぁあぁ〟~

 

峡谷に命知らずなウサミミ少女の叫びが木霊する。

 

ハジメは「あ~あ」と天を仰ぎ、無言で合掌する。ウサミミよ、安らかに眠れ……。

 

優花・雫・香織達も、流石にそれは言っちゃいけないと瞑目した。

 

震えるシアのウサミミに、囁くようなユエの声がやけに明瞭に響いた。

 

―――― ……お祈りは済ませた?

 

―――― ……謝ったら許してくれたり?

 

―――― ………… 

 

―――― 死にたくなぁい!死にたくなぁい! 

 

「〝嵐帝〟」

 

 

―――― アッーーーー!!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そんなこんなな原作通りの流れがありつつ。

 

ウサミミ美少女=シアを樹海の案内の為に助け、ハウリア族を助け。

 

峡谷の入り口でハウリアという獲物を狩るため待っていた帝国兵達が、ハジメ達の逆鱗に触れ。

 

ハジメ・優花・香織・雫に一人残らず抹殺され、ユエの魔法で谷底に片付けられた。

(ハジメは優花達の手を汚させる気は無かったが当人達の強い希望により折れました。)

 

そしてハルツィナ樹海へと。




前書きにも書きましたが大変遅くなりました。

前話予告通り、奈落攻略は完全にカットしてます。
ほぼ変わる要素ないので。
更にヒュドラ討伐→オスカーに真実を聞いた→各々の決意までは書きました。

原作通り2ヶ月の準備期間を設けましたがその間の詳細はほぼ触れてません。
だってレーティングに引っかかるから。

キャラ各々の心情描写が多少なりとも原作と違うのは、やっぱり一人じゃなく多人数いるから。という設定にしてます。

ユエ独占本妻ハーレムではなく優花本妻ハーレムなので、ユエが優遇されるという描写はほぼ無いです。

シア登場からの残念っぷりをもっと書こうと思ったのですが、
カム合流→樹海での出来事まで書くだけでも多分+10000文字は書き起こす事になりそうだったので、断念してカットしました。

※ステータスについてはほぼ適当です。

※※ハジメ以外の全員に銃を持たせたのは中距離攻撃手段が必須だからと思ったからです。ちなみに名称の理由は「花言葉」を調べて下さい。

※※※決意の台詞きちんと読んで頂けましたか?
原作と違い、ユエに言及しているのは香織だけです。
仲間が傷つけられたら怒りますが、まだハジメのユエに対する扱いもそんなに高くないという点を理解してもらう為の台詞です。脱字ではありません。

最近不調気味(夏バテ?)なので、次はまた時間が空くかも知れません。


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case5-4 「樹海の悪夢と新たな同行者」

遂にやって来ました、ハルツィナ樹海。

現在の同行者は、「優花・香織・雫・ユエ・シア・ハウリアの助かった面々」です。

この樹海での出来事は、前3人の原作から見たイレギュラー組がいる事でどう変わるでしょうか?
まぁサブタイトル通り…って事で期待しておいてください(ぇ?



※シア以外のハウリアは原作通り同行することはないので、
そこを期待してしまった方は大変申し訳ありませんm(__)m


あとは本編で語りましょうか。


※世間では、未だ新形コロナで騒がしく大変な状況ですが……。それよりも何よりも暑い!!!
皆様、体調崩されたりしていないでしょうか。
私は、暑さでPCと一緒に熱暴走しそうです\(^o^)/
(熱中症とか脱水状態にならないよう水分と塩分はとってるので、健康的には問題ありません。ただ、暑くてダレているだけですよ(´・ω・`))

この話は、熱帯夜状態な中書き上げた物なので……。
しつこいようですが、優しい目で読んであげてください。(懇願)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ハルツィナ樹海へ到着後、ハウリア族の案内で大樹「ウーア・アルト」へ向かうのは変わらず。

道中、ハジメ達の実力にシアやハウリア族が何処か複雑そうな感じになるのも変わらず。

あっさりと魔物を撃退するところから、虎人族(フェアベルゲン第二警備隊隊長)に出会うとこも変わらず。

ハジメ達が恐喝的な威嚇をして、ハウリアを守るところも変わらず。

長老達に伝令を出すために一人を見逃し、その待っている間に…優花と香織と雫とイチャつき。

それを見たユエとシアが私達も…っと苦笑いしながら亜人族達に呆れられ。

調子に乗ったシアが優花と香織と雫に制裁を食らっていた辺りまでは変わりません。

長老集の代表としてアルフレリックが来る所に、孫娘のアルテナが付いて来ていた所から始まります。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。

彼等の中央にいる初老の男と隣にいる少女が特に目を引く。

流れる美しい金髪に深い知性を備える碧眼、その身は細く吹けば飛んで行きそうな軽さを感じさせる。

威厳に満ちた容貌は幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。

何より特徴的なのがその尖った長耳だ。彼は、森人族なのだろう。

 

同じく隣に立つのは、足元まである長く美しい金髪を波打たせたスレンダーな碧眼の美少女だった。

耳がスッと長く尖っているので森人族ということが分かる。

どこか初老の男と同じ雰囲気を感じさせるので、家族なのだろうなとハジメ達はそう感じた。

 

「ふむ、お前さんが問題の人間族達かね?名は何という?」

 

「ハジメだ。南雲ハジメ。あんたは?」

「優花。園部優花よ。」

「雫よ。八重樫雫。」

「えっと、香織です。白崎香織。」

「……ユエ。」

 

香織以外のハジメ達の言葉遣いに、周囲の亜人が長老に何て態度を!と憤りを見せる。

 

「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている、隣にいるのは孫娘のアルテナだ。

さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。〝解放者〟とは何処で知った?」

「初めまして、アルテナ・ハイピストです。祖父に無理を言って付いて来てしまいした。」

 

「うん?オルクス大迷宮の奈落の底、解放者の一人、オスカー・オルクスの隠れ家だ」

「「「そうだ(ね、わ)、黒眼鏡をかけた人間族のお兄さんっぽい人だったね。」」」

「……ん。」

 

アルフレリックの方も表情には出さないものの内心は驚愕していた。

なぜなら、解放者という単語と、その一人が〝オスカー・オルクス〟という名であることは、長老達と極僅かな側近しか知らない事だからだ。

アルテナは???と疑問顔を浮かべていた。美少女エルフがやると何か絵になる……コホン

 

「ふむ、奈落の底か。聞いたことがないがな…証明できるか?」

 

ハジメは難しい表情をする。証明しろと言われても、すぐ示せるものは自身の強さくらいだ。

首を捻るハジメに優花達が提案する。

 

「ハジメ、オスカー・オルクスの遺品はどう?」

「ハジメ君、オルクスで取れた魔石とかなら?」

「ハジメ君、オスカーさんが付けていた指輪なら?」

「…ん、どうせだから全部見せればいい。」

「ああ!そうだな、それなら…」

 

ポンと手を叩き、〝宝物庫〟から地上の魔物では有り得ないほどの質を誇る魔石をいくつか取り出し、アルフレリックに渡す。

 

「こ、これは……こんな純度の魔石、見たことがないぞ。」

そう声を上げたのはアルフレリックの隣にいた虎人族の一人だった。

 

「後はこれ。一応、オスカーが付けていた指輪なんだが…。」とアルテナに渡した。

何を勘違いしたのか、アルテナは微妙に頬を赤く染めていた。

 

アルフレリックは、その指輪に刻まれた紋章を見て目を見開いた。そして、気持ちを落ち付かせるようにゆっくり息を吐く。

 

「なるほど…確かに、お前さんはオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが…よかろう。

取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリア族も一緒にな。」

 

アルフレリックの言葉に、周囲の亜人族達だけでなくカム達ハウリアも驚愕の表情を浮かべた。

虎の亜人を筆頭に、猛烈に抗議の声があがる。それも当然だろう。

かつて、フェアベルゲンに人間族が招かれたことなど無かったのだから。

アルテナだけは、年の近い(ように見える)少女達やシアと話す機会が持てそうだと…喜びの顔を浮かべていたのは誰も知らない。

 

「彼等は客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

 

アルフレリックが厳しい表情で周囲の亜人達を宥める。しかし、今度はハジメの方が抗議の声を上げた。

 

「待て。何勝手に俺の予定を決めてるんだ?俺は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに興味はない。問題ないなら、このまま大樹に向かわせてもらう」

 

「いや、お前さん。それは無理だ」とアルフレリックが言う。

 

「なんだと?」あくまで邪魔する気か?と身構えるハジメに、むしろアルフレリックの方が困惑したように返した。

 

「大樹の周囲は特に霧が濃くてな、亜人族でも方角を見失う。一定周期で霧が弱まるから、大樹の下へ行くにはその時でなければならん。

次に行けるようになるのは十日後だ。…亜人族なら誰でも知っているはずだが…。」

 

アルフレリックは、「今すぐ行ってどうする気だ?」とハジメを見たあと、案内役のカムを見た。

ハジメは、聞かされた事実にポカンとした後、アルフレリックと同じようにカムを見た。そのカムはと言えば…。

 

「あっ」

まさに、今思い出したという表情をしていた。ハジメ達の額に青筋が浮かぶ。

 

「「「「「カム?(さん?)」」」」」一応さん付けで呼んだのは香織だ。

 

その後、言い訳するカムとソレをジト目で見るハジメ達。

カムが逆ギレしてシアや同胞に言い訳するのを見てシアも逆ギレし、

他の兎人族がさりげなく責任を擦り付ける所や、

「ハジメ達の容赦のなさを理由に」連帯責任で互いに責任を擦り付け合うハウリア達。

……流石、シアの家族である。総じて、残念なウサギばかりだったという事実。

 

 

青筋を浮かべたハジメが、一言ポツリと呟く。

 

「……優花、香織、雫、ユエ」

 

「…ん」

「「………覚悟はいい?(かしら?)」」

「……フェアベルゲンや周囲が大変そうだから結界張っとくね?」

 

ハジメ達の言葉に一歩前に出た優花とユエがスっと右手を掲げた。

雫は、右手を腰の刀に既に置いて、抜刀術の構えをしている。

香織は、既に結界を張る準備を終えたようだ。

 

それに気がついたハウリア達の表情が引き攣る。

喧々囂々と騒ぐハウリア達に薄く笑い、優花とユエは静かに呟いた。

香織は苦笑いを浮かべ、呟いた。

雫はとてもいい笑顔だった。目が笑っていなかったが。

 

 

「〝聖絶〟」と香織。

「〝嵐帝〟」とユエ。

「〝緋槍〟」と優花。

「--八重樫流抜刀術…霞穿」と雫。

 

――――アッーーーー!!!

 

 

天高く舞い上がるウサミミ達。舞い上がった所に優花の緋槍が。更に落下してきて射程距離に入ったその瞬間に雫の神速の三段構えの突き。

樹海に彼等の悲鳴が木霊する。同胞が攻撃を受けたはずなのに、アルフレリックを含む周囲の亜人達の表情に敵意はなかった。

むしろ呆れた表情で天を仰いでいる。彼等の表情が、何より雄弁にハウリア族の残念さを示していた。

アルテナだけは何故か楽しそうな顔で見ていたが…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ここからフェアベルゲンに案内されるまでは変わりません。

アルフレリックによるフェアドレン水晶の効果の説明等や

フェアベルゲンの門に到着した時の事やフェアベルゲンの亜人族がハジメ達に敵を向けていること。

フェアベルゲンの内部を見て、ハジメ達がその街の光景に見蕩れてしまう事。

ハジメ達が素直に称賛する事によって、周囲の亜人族達がケモミミや尻尾を振って喜びを表す事。

ハジメ達はフェアベルゲンの住人に好奇と忌避、あるいは困惑と憎悪といった様々な視線を向けられながら、

アルフレリックが用意した場所に向かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「……なるほど。試練に神代魔法、それに神の盤上か……」

 

ハジメ達は、アルフレリックと向かい合って話をしていた。隣にはアルテナもいる。

内容は、ハジメ達がオスカー・オルクスに聞いた〝解放者〟のことや神代魔法のこと、

自分が異世界の人間であり、七大迷宮を攻略すれば故郷へ帰るための神代魔法が手に入るかもしれないこと等だ。

 

アルフレリックは、この世界の神の話を聞いても顔色を変えたりはしなかった。

不思議に思ってハジメが尋ねると、「この世界は亜人族に優しくはない、今更だ」という答えが返ってきた。

神が狂っていようがいまいが、亜人族の現状は変わらないということらしい。

聖教教会の権威もないこの場所では信仰心もないようだ。あるとすれば自然への感謝の念だという。

アルテナは、何故かハジメの方をジーッと見つめるようにしながら話を聞いていたようだが。

 

ハジメ達の話を聞いたアルフレリックは、フェアベルゲンの長老の座に就いた者に伝えられる掟を話した。

それは、この樹海の地に七大迷宮を示す紋章を持つ者が現れたらそれがどのような者であれ敵対しないこと。

そして、その者を気に入ったのなら望む場所に連れて行くことという何とも抽象的な口伝だった。

 

【ハルツィナ樹海】の大迷宮の創始者リューティリス・ハルツィナが、自分が〝解放者〟という存在である事と、仲間の名前と共に伝えたものなのだという。

フェアベルゲンという国ができる前からこの地に住んでいた一族が延々と伝えてきたのだとか。

最初の敵対せずというのは、大迷宮の試練を越えた者の実力が途轍もないことを知っているからこその忠告だ。

そして、オルクスの指輪の紋章にアルフレリックが反応したのは、大樹の根元に七つの紋章が刻まれた石碑があり、その内の一つと同じだったからだそうだ。

 

「それで、俺達は資格を持っているというわけか……」

 

アルフレリックの説明により、人間を亜人族の本拠地に招き入れた理由がわかった。

しかし、全ての亜人族がそんな事情を知っているわけではないはずなので、今後の話をする必要がある。

そうハジメ達とアルフレリックが、話を詰めようとしたその時、何やら階下が騒がしくなった。

ハジメ達のいる場所は最上階にあたり、階下にはシア達ハウリア族が待機している。

どうやら、彼女達が誰かと争っているようだ。ハジメ達とアルフレリックとアルテナは顔を見合わせ、同時に立ち上がった。

 

階下では、熊人族や虎人族、狐人族、翼人族、土人族が剣呑な眼差しでハウリア族を睨みつけていた。

部屋の隅で縮こまり、カムが必死にシアを庇っている。シアもカムも頬が腫れている事から既に殴られた後のようだ。

ハジメ達が階段から降りてくると、彼等は一斉に鋭い視線を送った。熊の亜人が剣呑さを声に乗せて発言する。

 

「アルフレリック……貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた?こいつら兎人族もだ。

忌み子にこの地を踏ませるなど……返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ?」

 

「!?」アルテナはその言葉を聞いて驚愕の表情を浮かべていた。

 

必死に激情を抑えているのだろう。拳を握りわなわなと震えている。

やはり、亜人族にとって人間族は不倶戴天の敵なのだ。

しかも、忌み子と彼女を匿った罪があるハウリア族まで招き入れた。熊の亜人だけでなく他の亜人達もアルフレリックを睨んでいる。

 

しかし、アルフレリックはどこ吹く風といった様子だ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ここから長老衆の口論。

熊の亜人、長老ジンの暴走。

ハジメの力の発露、ジンの粛清。

敵対行動を取る長老衆への殺意を宿らせた視線での展開までは原作通り。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「で?お前らは俺達の敵か?」

 

その言葉に、頷けるものはいなかった。

ハジメが熊の亜人を吹き飛ばした後、アルフレリックが何とか執り成しハジメによる蹂躙劇は回避された。

熊の亜人は内臓破裂、ほぼ全身の骨が粉砕骨折という危険な状態であったが、何とか一命は取り留めたらしい。高価な回復薬を湯水の如く使ったようだ。

もっとも、もう二度と戦士として戦うことはできないようだが……。

 

 

現在、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族のグゼ、そして森人族のアルフレリックと補佐としてアルテナが、ハジメと向かい合って座っていた。

ハジメの傍らには優花、香織、雫、ユエとカム、シアが座りその後ろにハウリア族が固まって座っている。

長老衆の表情は、アルフレリックを除いて緊張感で強ばっていた。戦闘力では一,二を争う程の手練だったジン(熊の亜人)が文字通り手も足も出ず瞬殺されたのであるから無理もない。

 

「で?あんた達は俺達をどうしたいんだ?俺達は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……。亜人族としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう?あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺達はお人好しじゃないぞ。」

ハジメの言葉に身を強ばらせる長老衆。言外に、亜人族全体との戦争も辞さないという意志が込められていることに気がついたのだろう。

アルテナは何故かドキドキワクワクしているようだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

土人族の長老クゼが、ハジメと口論する。

長老のあんた達が、罪過の判断を下すなら立場をはき違えるな!と。

狐人族の長老ルアは、ハジメを口伝の資格者と認める。

翼人族の長老マオ、虎人族の長老ゼルも相当思うところはあるようだが、同意を示した。

代表してアルフレリックがハジメに伝える。

亜人族は人間族をよく思っていないから、敵対しないという事は厳命するが、従わないもので手を出した者を殺さないで欲しいと。

だがハジメはそれを断る。見逃した者たちが優花達やユエに牙を向かないとも限らないからだ。

それに対して、虎人族のゼルが口を挟んだ。

口伝の一部分の「気に入らないものを案内しなくてもよい」という部分だけ都合解釈して言う。

ハジメは案内はハウリア族に任せるつもりであったので何言ってんだ?コイツ的な表情になる。

その直後、ゼルの言葉で彼の真意が明らかになった。…という所までは原作通り。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている。」

ゼルの言葉にシアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。この期に及んで、誰もシアを責めないのだから情の深さは折紙付きだ。

「長老様方!どうか、どうか一族だけはご寛恕を!どうか!」

「シア!止めなさい!皆覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

「でも、父様!」

土下座しながら必死に寛恕を請うシアだったが、ゼルの言葉に容赦はなかった。…アルテナは泣きそうな顔でシアを見ている。

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな。」

ワッと泣き出すシア。それをカム達は優しく慰めた。長老会議で決定したというのは本当なのだろう。他の長老達も何も言わなかった。

 

おそらく忌み子であるということよりも、そのような危険因子をフェアベルゲンの傍に隠し続けたという事実が罪を重くしたのだろう。

ハウリア族の家族を想う気持ちが事態の悪化を招いたとも言える…何とも皮肉な話だ。

「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが?どうする?運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」

それが嫌なら、こちらの要求を飲めと言外に伝えてくるゼル。他の長老衆も異論はないようだ。…アルテナだけは文句を言いたそうな顔をしているが。

しかし、ハジメ達は特に焦りを浮かべることも苦い表情を見せることもなく、何でもない様に軽く返した。

 

「お前、アホだろ?」とハジメ。

「救いようが無いアホだわ。」と優花。

「…回復魔法いります?脳に。」と香織。

「呆れて物も言えないわ。」と雫。

「んっ、愚か者。」とユエ。

 

「な、なんだと!」ハジメ達の物言いに、目を釣り上げるゼル。

シア達も思わずと言った風にハジメを見る。

「俺達はお前らの事情なんて関係ないって言ったんだ。"俺からこいつらを奪う"ってことは、結局俺の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうが!」

ハジメは長老衆を睥睨しながら、スっと伸ばした手を泣き崩れているシアの頭に乗せた。ピクッと体を震わせ、ハジメを見上げるシア。

 

「"俺からこいつらを奪おう"ってんなら……覚悟を決めろ。」

「ハジメさん……」

 

ハジメにとって今の言葉は単純に自分の邪魔をすることは許さないという意味でそれ以上ではないだろう。

それでもハウリア族を死なせないために亜人族の本拠地フェアベルゲンとの戦争も辞さないという言葉は、その意志は絶望に沈むシアの心を真っ直ぐに貫いた。

……………それを物凄く羨ましそうな顔で、アルテナが、見ている!!

 

「本気かね?」アルフレリックが誤魔化しは許さないとばかりに鋭い眼光でハジメを射貫く。

「当然だ」しかし全く揺るがないハジメ。そこに不退転の決意が見て取れる。この世界に対して自重しない、邪魔するものには妥協も容赦もしない。奈落の底で言葉にした決意だ。

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

ハウリア族の処刑は、長老会議で決定したことだ。それを、言ってみれば脅しに屈して覆すことは国の威信に関わる。

今後、ハジメ達を襲うかもしれない者達の助命を引き出すための交渉材料である案内人というカードを切ってでも、長老会議の決定を覆すわけにはいかない。

故に、アルフレリックは提案した。しかし、ハジメは交渉の余地などないと言わんばかりにはっきりと告げる。

 

「何度も言わせるな。俺達の案内人はハウリアだ」

 

「なぜ彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう?」

アルフレリックの言葉にハジメは面倒そうな表情を浮かべつつ、シアをチラリと見た。

先程からずっとハジメを見ていたシアはその視線に気がつき、一瞬目が合う。

すると僅かに心臓が跳ねたのを感じた。視線は直ぐに逸れたが、シアの鼓動だけは高まり続ける。

 

「約束したからな。案内と引き換えに助けてやるって」

「……約束か。それならもう果たしたと考えてもいいのではないか?峡谷の魔物からも帝国兵からも守ったのだろう?なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう。」

「問題大ありだ。案内するまで身の安全を確保するってのが約束なんだよ。途中でいい条件が出てきたからって、ポイ捨てして鞍替えなんざ…」

ハジメは一度言葉を切って今度は優花達を見た。優花達もハジメを見ており目が合うと僅かに微笑む。

それに苦笑いしながら肩を竦めたハジメはアルフレリックに向き合い告げた。

 

「格好悪いだろ?」

 

闇討ち、不意打ち、騙し討ち、卑怯、卑劣に嘘、ハッタリ。

殺し合いにおいて、ハジメはこれらを悪いとは思わない。生き残るために必要なら何の躊躇いもなく実行して見せるだろう。

しかし、だからこそ、殺し合い以外では守るべき仁義くらいは守りたい。それすら出来なければ本当に唯の外道である。

ハジメも男だ。奈落の底で確かめあった優花達の想いや、その彼女たちがつなぎ止めてくれた一線を自ら越えるような醜態は晒したくない。

ハジメに引く気がないと悟ったのか、アルフレリックが深々と溜息を吐く。

他の長老衆がどうするんだと顔を見合わせた。しばらく静寂が辺りを包み、やがてアルフレリックがどこか疲れた表情で提案した。

 

「ならば、お前さんの奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。…既に死亡と見なしたものを処刑はできまい。」

 

「アルフレリック!それでは!」完全に屁理屈である。当然、他の長老衆がギョッとした表情を向ける。ゼルに到っては思わず身を乗り出して抗議の声を上げた。

「ゼル。わかっているだろう。この少年が引かないこともその力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば確実に敵対することになる。その場合、どれだけの犠牲が出るか……長老の一人として、そのような危険は断じて犯せん」

「しかし、それでは示しがつかん!力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」

「だが……」

 

ゼルとアルフレリックが議論を交わし、他の長老衆も加わって場は喧々囂々の有様となった。

やはり、危険因子とそれに与するものを見逃すということが、既になされた処断と相まって簡単にはできないようだ。

悪しき前例の成立や長老会議の威信失墜など様々な思惑があるのだろう。

だが、そんな中、ハジメが敢えて空気を読まずに発言する。

 

「ああ~、盛り上がっているところ悪いが、シアを見逃すことについては今更だと思うぞ?」

 

ハジメの言葉に、ピタリと議論が止まり、どういうことだと長老衆がハジメに視線を転じる。

ハジメはおもむろに右腕の袖を捲ると魔力の直接操作を行った。すると右腕の皮膚の内側に薄らと赤い線が浮かび上がる。さらに〝纏雷〟を使用して右手にスパークが走る。

それを見た優花も香織も雫も同じように〝纏雷〟でスパークを走らせた。ユエは無詠唱で「天絶」と呟いた。

長老衆はハジメ達のその異様に目を見開いた。そして詠唱も魔法陣もなく魔法を発動したことに驚愕を表にする。

ジンを倒したのは左腕の義手型アーティファクトだけのせいだと思っていたのだ。

 

「俺達もシアと同じように、魔力の直接操作ができるし固有魔法も使える。次いでに言えばこっちのユエもな。あんた達のいう化物ってことだ。だが、口伝では〝それがどのような者であれ敵対するな〟ってあるんだろ?掟に従うなら、いずれにしろあんた達は化物を見逃さなくちゃならないんだ。シア一人見逃すくらい今更だと思うけどな。」

しばらく硬直していた長老衆だが、やがて顔を見合わせヒソヒソと話し始めた。そして、結論が出たのか、代表してアルフレリックが、それはもう深々と溜息を吐きながら長老会議の決定を告げる。

 

「はぁ~、ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である南雲ハジメ達の身内と見なす。そして資格者南雲ハジメ達に対しては敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲ハジメ達に手を出した場合は全て自己責任とする……以上だ。何かあるか?」

「いや、何度も言うが俺は大樹に行ければいいんだ。こいつらの案内でな。文句はねぇよ」

「……そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが……。」

「気にしないでくれ。全部譲れないこととは言え、相当無茶言ってる自覚はあるんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ。」

 

ハジメの言葉に苦笑いするアルフレリック。他の長老達は渋い表情か疲れたような表情だ。

恨み辛みというより、さっさとどっか行ってくれ!という雰囲気である。その様子に肩を竦めるハジメは優花達やユエやシア達を促して立ち上がった。

しかし、シア達ハウリア族は、未だ現実を認識しきれていないのか呆然としたまま立ち上がる気配がない。

ついさっきまで死を覚悟していたのに、気がつけば追放で済んでいるという不思議。

「えっ、このまま本当に行っちゃっていいの?」という感じで内心動揺しまくっていた。

 

「おい、何時まで呆けているんだ?さっさと行くぞ。」

ハジメの言葉に、ようやく我を取り戻したのかあたふたと立ち上がり、さっさと出て行くハジメの後を追うシア達。

アルフレリック達長老衆とアルテナも、ハジメ達を門まで送るようだ。

シアが、オロオロしながらハジメに尋ねた。

 

「あ、あの、私達……死ななくていいんですか?」

「? さっきの話聞いてなかったのか?」

「い、いえ、聞いてはいましたが…その、何だかトントン拍子で窮地を脱してしまったので実感が湧かないといいますか…信じられない状況といいますか…。」

周りのハウリア族も同様なのか困惑したような表情だ。それだけ、長老会議の決定というのは亜人族にとって絶対的なものなのだろう。

どう処理していいのか分からず困惑するシアに優花達が呟くように話しかけた。

 

「……ハジメらしいわね、まったく。」

「……ハジメ君、変わらないままなのね。」

「……奈落に落ちる前のハジメ君みたいだね。」

「……素直に喜べばいい。」

「優花さん?香織さん?雫さん?ユエさん?」

「「「「ハジメ(君)に救われた。それが事実。受け入れて喜べばいい(のよ、わ、んだよ)」」」」

「……」

優花達の言葉とユエの言葉にシアはそっと隣を歩くハジメに視線をやった。ハジメは前を向いたまま肩を竦める。

「まぁ、約束だからな」

「ッ……」

シアは肩を震わせる。樹海の案内と引き換えにシアと彼女の家族の命を守る。シアが必死に取り付けたハジメ達との約束だ。

 

元々〝未来視〟でハジメが守ってくれる未来は見えていた。しかし、それで見える未来は絶対ではない。

シアの選択次第でいくらでも変わるものなのだ。だからこそ、シアはハジメの協力を取り付けるのに〝必死〟だった。

相手は亜人族に差別的な人間で、シア自身は何も持たない身の上だ。

交渉の材料など、自分の〝女〟か〝固有能力〟しかない。それすらあっさり無視された時は、本当にどうしようかと泣きそうになった。

それでもどうにか約束を取り付けて、道中話している内に何となくハジメ達なら約束を違えることはないだろうと感じていた。

それは自分が亜人族であるにもかかわらず、差別的な視線が一度もなかったことも要因の一つだろう。だがそれはあくまで〝何となく〟であり、確信があったわけではない。

だから内心の不安に負けて、〝約束は守る人だ〟と口に出してみたり〝人間相手でも戦う〟などという言葉を引き出してみたりした。

実際に、何の躊躇いもなく帝国兵と戦ってくれた時、どれほど安堵したことか。

だが、今回はいくらハジメでも見捨てるのではという思いがシアにはあった。帝国兵の時とはわけが違う。

言ってみれば、帝国の皇帝陛下の前で宣戦布告するに等しいのだ。にもかかわらず一歩も引かずに約束を守り通してくれた。

例えそれが、ハジメ自身の為であっても、優花達の言う通り、シアと大切な家族は確かに守られたのだ。

 

先程、一度高鳴った心臓が再び跳ねた気がした。

顔が熱を持ち居ても立ってもいられない正体不明の衝動が込み上げてくる。それは家族が生き残った事への喜びか、それとも……

シアは優花達の言う通り素直に喜び、今の気持ちを衝動に任せて全力で表してみることにした。すなわち、ハジメに全力で抱きつく!

 

「ハジメさ~ん!ありがどうございまずぅ~!」

「どわっ!?いきなり何だ!?」

「「「「むっ……」」」」

 

泣きべそを掻きながら絶対に離しません!とでも言う様にヒシッとしがみつき顔をグリグリとハジメの肩に押し付けるシア。

その表情は緩みに緩んでいて、頬はバラ色に染め上げられている。

それを見たユエが不機嫌そうに唸るものの、何か思うところがあるのか特に何もしなかった。

優花や香織や雫も不機嫌そうに唸るものの、長老衆の前でのあの対応を見れば仕方ないか…と、納得していた。

内心、「この女ったらしめ!」と思われているとはハジメは想像もしていまい。

喜びを爆発させハジメにじゃれつくシアの姿に、ハウリア族の皆もようやく命拾いしたことを実感したのか隣同士で喜びを分かち合っている。

 

 

とそんな中、

 

 

「私もハジメ様達に付いていきますわ!!!」

 

 

そんな声が辺りに響いた。発信元は、アルテナである。

 

「ア、アルテナ?何を言っておるんだ?」とアルフレリックが動揺しまくりだ。

「「「「アルテナ様、何をおっしゃってるんですか!?」」」」と他の長老衆も大慌てだ。

 

「私は、今回の長老会議の場の話合いを見てフェアベルゲンや長老衆やお祖父様、貴方達に愛想が尽きましたわ。だってそうでしょう?このハルツィナ樹海を作ったとされる解放者リューティリス・ハルツィナ様の口伝を無視して、長老自らハジメ様達に敵対する意思を示す始末。更には、同じ亜人族であり同胞であるはずのシアさん達ハウリア族を処刑するだなんて言って…更にハジメ様達の怒りを買おうとする。今まで皆様にも伝えてませんでしたが、私も魔力を持っていますわ?固有魔法は持っておりませんけど…だからハジメ様達に付いていきますわ。それとも私もシアさん達のように長老会議にかけて処刑します?」

 

 

「「「「「……」」」」」何も言えない長老衆。

 

 

「ま、そこの女が魔力を有してるのは案内される前に気づいていたけどな。」とサラリと言うハジメ。

「ん…多分、シアと同じ先祖返りかも…。」とユエ。

「仕方ないんじゃない?フェアベルゲンの慣習に従うならあの娘も忌み子になっちゃうんだし?」と優花。

「固有魔法が無いって事はないと思うんだけど、わかってないだけかな?」と香織。

「どちらにしても、同行は断ったら面倒なことになりそうね。」と雫。

「私も、皆様とご一緒に付いていってよろしいですの?」と懇願顔で言うアルテナ。

「…うぅん。まあリューティリスの前例が無い訳じゃないし、自分の身は自分で守る。その実力を身に着けるなら構わないか。」とハジメ。

「ありがとうございますですわ!絶対に付いていってみせますわ!」とハジメの背中からシアの邪魔にならない様に抱きつくアルテナ。

 

「「「「ハジメ(君)の、女ったらし!!」」」」遂に言葉に出した優花達。

前方はシア、後方からはアルテナに抱きつかれてるハジメは無言で肩を竦めた。

 

 

「き、気になる発言があったのだが…聞いても良いかね?」とアルフレリックが言う。

「ん、なんだ?」と顔だけアルフレリックの方に向けてハジメが答える。

「リューティリス様の前例とは……?」とアルフレリックが尋ねる。他の長老衆も同じようだ。

 

「長老衆達なら知っているはずだな?リューティリス・ハルツィナが"解放者"という集団に属しており、仲間の名前と共に「七大迷宮を示す紋章を持つものが現れたらどのような者であれ敵対しない事。気に入ったらなら望む場所に連れて行く事。」という口伝を残し伝えた事。アルフレリックから聞いた話だしな、口伝の部分はな。敵対しないことという部分は、大迷宮の試練を越えた者の実力が途轍もないことを知っているからこその忠告だ。リューティリス・ハルツィナのな。ここまではいいな?」とハジメが問う。

「…うむ。」とアルフレリックが頷く。他の長老衆達も同様に頷く。

「"解放者"の七大迷宮は、

オスカー・オルクスが作ったオルクス大迷宮。

ミレディ・ライセンが作ったライセン大迷宮。

ラウス・バーンが作ったバーン大迷宮(この時点で神山とハジメ達は知らないので。)。

ナイズ・グリューエンが作ったグリューエン大火山。

ヴァンドゥル・シュネーが作った氷雪洞窟。

メイル・メルジーネが作ったメルジーネ海底遺跡。

リューティリス・ハルツィナが作ったハルツィナ樹海の大迷宮。…そして、オスカー、ミレディ、ラウス、ナイズは人間族だが。メイルは海人族と吸血鬼族のハーフであり、ヴァンドゥルは魔人族と氷竜の竜人族のハーフであり。そして…リューティリスは森人族だ。」

 

「「「「「「!!!!!」」」」」」アルフレリック達は驚愕の余り言葉が出ない。アルテナもだが。

 

「で。前例って言ったのは神代の時代の亜人族である、"解放者"ヴァンドゥル・シュネー、メイル・メルジーネ、リューティリス・ハルツィナ。彼らは亜人族にも関わらず、神代魔法や魔法・魔力の行使が出来たって事だ。リューティリスと同じ森人族で魔力を有してるアルテナが、先祖返りで魔法を行使出来る可能性は否定出来ない。そして、あんたらがシアを迫害する理由にした「魔力や固有魔法」を持った亜人族…あんたらは忌み子と嫌い処刑するという愚行をしていたようだが…。」とそこで言葉を切るハジメ。

 

「「愚行だと!?」ゼルとクゼが怒髪天を突くかのように怒鳴り散らす。アルフレリックとルアとマオは何かに気づいたように黙っている。

 

「『最も差別意識があるのは、差別を受けている者である。』という言葉が、俺達の世界にはある。亜人族は神に見放された種族として人間族、魔人族共に差別されているよな?魔人族は生まれつき魔法の力を有しているという事を除いても、生まれつき魔法の力を有していない人間族にすら体力や各種技能等で勝っている筈の亜人族が何故敵わないかわかるか?」

「一つは、数の問題。人間族に関しては言うまでも無いが、魔人族も魔物を使役することで数の力を底上げしている。二つめは魔力。魔法の行使の問題だ。魔人族は言わずもがなだが、人間族も俺たちのような例外を除いても全員では無くとも一定程度の魔法の行使が出来る。それに対してあんたら亜人族は、忌み子として魔力を有した者を排除している。数でも負けてるのにそれで勝てるわけが無い。」

 

「「「「「………………。」」」」」長老衆は無言だ。何かを考えてはいるようだが。

 

「シアのような場合は特例だろうが、アルテナもその可能性があるとすれば。本来ならば、忌み子ではなく亜人族の勇者としてでも称えてフェアベルゲンを守る事に協力を仰ぐべきだったな。

そうすれば、人間族や魔人族に対する数の不利や魔法の行使による不利を越えて対等になれる可能性があった筈だ。

…シアとアルテナに関しては俺達に同行させるから特段の事情でも無い限り、もう頼まれても協力させる事はないだろうな。」と冷たく言い放つハジメ。シアとアルテナも頷いている。

 

「「「「「………………。」」」」」長老衆は何も言えない。

 

「あんたらの嫌いな人間族の言うことだ。"資格者"が言う事だが、戯言と切って捨てるも良し…どう判断するかは好きにしろよ。」とハジメ。

「私が言うのもアレかもだけど、自分の家族に『魔力を有する子が生まれたら』忌み子と切り捨て処刑される運命を受け入れられる?」と優花。

「ハッキリと言うわ。同族である亜人族の兎人族を差別している貴方達が、人間族や魔人族に差別されても文句言えないのよ。」と雫。

「えっと、家族は大事に…だし。仲間や同族を大切にしない人達は自分達も大切にされないよ?」と香織。

「……ん、これから先、考え方を変えていくことは出来ないわけじゃない。そうするかどうかは貴方達次第。」とユエ。

 

「「「「「!?!?!!!」」」」」長老衆はハジメ達、特に優花達の言うことを聞いて心底驚愕しているようだ。

特にアルフレリックの場合はアルテナの件があるので、動揺も激しいようだ。

 

「じゃあ、俺達は"追放された資格者"としてフェアベルゲンを去るよ。決定通りシア達とハウリア族、そしてアルテナを連れてな。」

と言いながら、フェアベルゲンの門をくぐり樹海へと戻っていくハジメ。その後を付いて行く優花達とシアとアルテナとハウリア族。

 

それを何とも複雑そうな表情で見つめているのは長老衆だ。そして、遠巻きに不快感や憎悪の視線を向けている者達も多くいる。

ハジメはその全てを把握しながら、ここを出てもしばらくは面倒事に巻き込まれそうだと苦笑いするのだった。

アルフレリックだけはもっと複雑そうな、なんとも言えない顔をしていた。

…長老衆は皆、一様に後悔したような顔をしていた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ハウリア族とアルテナに対する訓練。

フェアベルゲンを追い出されたハジメが、拠点を作りながら言った言葉だ。

(ハジメがさり気なく盗ん……貰ってきたフェアドレン水晶を使って結界を張っただけのものだ。)

ハウリア族達はポカンとしていたし、シアは疑問に感じているようだが。

…アルテナはハジメの話をきちんと聞いていたので、納得顔だった。

ハジメが十日は大樹へ行けないのなら、兎人族の性質を変えてでも…自分達で戦う力を身に着けろ!と言う。

それに疑問を挟んだシアはやっぱり残念ウサギだった。

ハウリア族との約束は「樹海の案内が終わるまで。」なら、その後はどうするんだ?とハジメは問う。

フェアベルゲンを追放され、ハジメ達の庇護すら失えばまた窮地に陥る。その事実にやっと気づいたハウリア族。

アルテナに関しては、同行を許さざるを得ない状況であるからして……。

なのでハジメは更に問う。淘汰され、全滅させられる程弱く、家族や恋人や友人を守れない事を許容するのか?と。許容できない!が自分達が本当に強くなれるのかと疑問を投げかけるハウリア族。

それに対してハジメは答える。かつての自分は「無能」と呼ばれ、ステータスも技能も一般人並だったと。

優花や香織や雫が、当時のハジメの心境を思ってか抱きつき、無言で励ます。

ハジメの告白にハウリア族は例外なく驚愕を顕にした。アルテナも含めて。熊人族のジンを一蹴した実力があって、「無能」だなんて信じられなかったからだ。

ハジメの独白は続く。奈落の底に落ちて強くなるために行動したと。出来るか出来ないかなんて頭になかったと。出来なければ死ぬと。優花達を守るためにも自分の全てをかけて戦ったと。

優花達も同様の気持ちだったのか、ハジメが話すたびに頷いていた。

語られる内容にハウリア族達やアルテナの全身を悪寒が走る。一般人並のステータスということは兎人族よりも低スペックだったということだ。

その状態で自分達が手も足も出なかったライセン大峡谷の魔物より遥かに強力な化物達を相手にして来たというのだ。最弱でありながら、そんな化け物共に挑もうとしたその精神の異様さにハウリア族は戦慄した。

自分達なら絶望に押しつぶされ諦観と共に死を受け入れるだろうと。

だからハジメは言う。お前達の状況はかつての俺と似ていると。約束の内にある今なら絶望を打ち砕く手助けはすると。無理だと言うのならそれでも構わないと。

その時は今度こそ全滅するだけだと。約束が果たされた後は助けるつもりは毛頭ないから、残り僅かな生を負け犬同士で傷を舐め合ってすごせばいいと。

それでどうする?と目で問うハジメ。ハウリア族達は直ぐには答えられなかったというべきか。自分達が強くなる以外に生存の道がないことは分かる。

ハジメは正義感からハウリア族を守ってきたわけではない。故に約束が果たされれば容赦なく見捨てられるだろう。

だが分かっていても、温厚で平和で的心根が優しく争いが何より苦手な兎人族にとってハジメの提案は、まさに未知の領域に踏み込むに等しい決断だった。

ハジメの様な特殊な状況にでも陥らない限り心のあり方を変えるのは至難なのだ。黙り込み顔を見合わせるハウリア族。

そんな彼等を尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアが立ち上がった。

「やります。私に戦い方を教えてください!もう、弱いままは嫌です!」と。

樹海の全てに響けと言わんばかりの叫び。これ以上ない程思いを込めた宣言。シアとて争いは嫌いだ。怖いし痛いし何より傷つくのも傷つけるのも悲しい。

しかし。一族を窮地に追い込んだのは紛れもなく自分が原因でありこのまま何も出来ずに滅ぶなど絶対に許容できない。

とあるもう一つの目的のためにも、シアは兎人族としての本質に逆らってでも強くなりたかった。

それと同時にアルテナも宣誓した。シアと同じ2つの目的を持って。一つは強くなってハジメ達と共に行く事。もう一つはシアと同じだろう。

不退転の決意を瞳に宿し真っ直ぐハジメを見つめるシアとアルテナ。

その様子を唖然として見ていたカム達ハウリア族は、次第にその表情を決然としたものに変えて一人、また一人と立ち上がっていく。

そして男だけでなく、女子供も含めて全てのハウリア族が立ち上がったのを確認するとカムが代表して一歩前へ進み出た。

言葉は少ない。だが、その短い言葉には確かに意志が宿っていた。襲い来る理不尽と戦う意志が。

 

ハジメはハウリア族を訓練するにあたってまず、〝宝物庫〟から取り出した錬成の練習用に作った装備を彼等に渡した。

先に渡していたナイフの他に反りの入った片刃の小剣、日本で言うところの小太刀だ。

これらの刃物はハジメが精密錬成を鍛えるために、その刃を極薄にする練習の過程で作り出されたもので切れ味は抜群だ。

タウル鉱石製なので衝撃にも強い。その細身に反してかなりの強度を誇っている。

そして、その武器を持たせた上で基本的な動きを教える。もちろん、ハジメに武術の心得などない。

あってもそれは漫画やゲームなどのにわか知識に過ぎず他者に教えられるようなものではない。

教えられるのは、奈落の底で数多の魔物と戦い磨き上げた〝合理的な動き〟だけだ。それを叩き込みながら適当に魔物をけしかけて実戦経験を積ませる。

ハウリア族の強みはその索敵能力と隠密能力だ。いずれは奇襲と連携に特化した集団戦法を身につければいいと思っていた。

シアに関してはユエと雫が魔法と体術の訓練をしている。亜人でありながら魔力がありその直接操作も可能なシアは知識さえあれば魔法陣を構築して無詠唱の魔法が使えるはずだからだ。時折、霧の向こうからシアの悲鳴が聞こえるので特訓は順調のようだ。

アルテナに関しては、優花と香織が訓練している。香織がまず魔法の行使の基礎を。優花がハジメと共に身につけた体術や銃撃の訓練を。

固有魔法がハッキリとしていないアルテナに関しては適正がわからないため、合間を見て全属性適正があるユエがたまに様子を見に行っている。

 

ハウリア族の訓練を受け持っていたハジメ。

しかし……

 

ここまでが原作と異なる部分+αです。

 

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ここから先のハジメのハウリア族に対する訓練は原作通りです。

ハー○マン軍曹方式です。

シアとユエの訓練に雫が立ち会ってますが、体術を教えた後は審判です。

原作通り、対応がワンパターン化したユエの頬に小さな傷をつけたシアの勝ちと雫が宣言します。

なかなか認めなかったユエを雫がなだめ、シアがハジメ達の旅に付いて行くために協力して下さいと。

優花と香織と雫は既に認めているので、あとはユエとハジメだけなのです。(原作と違うトコがここ。)

ユエも「仲間」なので同意を取りなさいと、優花達に諭された結果の交渉なのです。

最終決定権はどの道ユエには無いので、渋々認めるのは変わりませんけど。

…アルテナに関しては、既にハジメを含め全員が認めているので同行は決定しています。(本人はまだ、知りません。)

原作では絡まないキャラなので、魔法適正(現在は何にするか未定)+体術+ガンカタを見につけて既に同意を得るべき実力を見せ始めているからです。

※アルテナの天職もどうしましょうかね?

 

ユエと雫とシアがハジメのもとへ到着したとき、ハジメは腕を組んで近くの樹にもたれたまま瞑目しているところだった。

優花と香織とアルテナは更に実力を伸ばすべく、樹海の魔物を狩りに行っていてこの場にはいないようだった。

ハジメも何かを賭けて勝負していることは聞き及んでいる。シアのために超重量の大槌を用意したのは他ならぬハジメだ。

シアが真剣な表情で、ユエに勝ちたい、武器が欲しいと頼み込んできたのは記憶に新しい。

ユエ自身も特に反対しなかったことから何を賭けているのかまでは知らなかったし、聞いても教えてもらえなかっただろうが、ユエの不利になることもないだろうと作ってやったのだ。

ハジメは、ユエとシアが戦っても十中八九、ユエが勝つと考えていた。奈落の底でユエの実力は十二分に把握している。

いくら魔力の直接操作が出来るといっても今まで平和に浸かってきたシアとは地力が違うのだ。

しかし、帰ってきた雫以外の二人の表情を見るにどうも自分の予想は外れたようだと、内心驚愕するハジメ。

そんなハジメにシアが上機嫌で話しかけた。

調子に乗りすぎてユエのジャンピングビンタを食らい錐揉みしながら吹き飛び、ドシャと音を立てて地面に倒れ込んだ。

よほど強烈だったのかピクピクとして起き上がる気配がない。雫はそれを見て苦笑いしていた。

正直、どんな方法であれユエに勝ったという事実は信じ難い。ユエから見たシアはどれほどのものなのか、気にならないといえば嘘になる。

ユエは不機嫌な雰囲気を隠しもせず、渋々といった感じでハジメの質問に答えた。

魔法の適性はハジメと変わらないが、身体強化に特化している。正直、化物レベルだと。

強化してないハジメ達の四割〜五割くらいだと。

雫にも目線で問うたが、黙って頷いていた。

 

その話をしている間に、優花と香織とアルテナも戻ってきていた。

 

ここから先もほぼ同じですが、シアの一世一代の告白シーンなのでカット風にしません。

 

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シアはいそいそと立ち上がり、急く気持ちを必死に抑えながら真剣な表情でハジメのもとへ歩み寄った。

背筋を伸ばし青みがかった白髪をなびかせ、ウサミミをピンッと立てる。これから一世一代の頼み事をするのだ。いや……むしろ告白と言っていいだろう。

緊張に体が震え表情が強ばるが不退転の意志を瞳に宿し一歩一歩、前に進む。

そして、訝しむハジメの眼前にやって来るとしっかり視線を合わせて想いを告げた。

 

「ハジメさん。私をあなたの旅に連れて行って下さい。お願いします!」

「断る」

「即答!?」

まさか今の雰囲気で、悩む素振りも見せず即行で断られるとは思っていなかったシアは驚愕の面持ちで目を見開いた。

その瞳には「いきなり何言ってんだ、こいつ?」という残念な人を見る目でシアを見つめるハジメの姿が映っている。

シアは憤慨した。もうちょっと真剣に取り合ってくれてもいいでしょ!と。

「ひ、酷いですよ、ハジメさん。こんなに真剣に頼み込んでいるのに、それをあっさり…」

「いや、こんなにって言われても知らんがな。大体、カム達どうすんだよ?まさか、全員連れて行くって意味じゃないだろうな?」

「ち、違いますよ!今のは私だけの話です!父様達には修行が始まる前に話をしました。一族の迷惑になるからってだけじゃ認めないけど…その…」

「その?なんだ?」

何やら急にモジモジし始めるシア。指先をツンツンしながら頬を染めて上目遣いでハジメをチラチラと見る。あざとい。実にあざとい仕草だ。

ハジメが不審者を見る目でシアを見る。傍らのユエがイラッとした表情で横目にシアを睨んでいる。雫は苦笑している。優花と香織は、少し機嫌が悪くなってそうだ。

アルテナは、シアさん頑張って!という感じだろうか。

「その…私自身が、付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって…」

「はぁ?何で付いて来たいんだ?今なら一族の迷惑にもならないだろ?それだけの実力があれば大抵の敵はどうとでもなるだろうし」

「で、ですからぁ、それは、そのぉ…」

「……」モジモジしたまま中々答えないシアにいい加減我慢の限界だと、ハジメはドンナーを抜きかける。

それを察したのかどうかは分からないが、シアが女は度胸!と言わんばかりに声を張り上げた。思いの丈を乗せて。

「ハジメさんの傍に居たいからですぅ!しゅきなのでぇ!」

(((((このタイミングで噛む!?)))))と黙って聞いていた優花達の内心は、それは見事に一致していた。

「……は?」

言っちゃった、そして噛んじゃった!と、あわあわしているシアを前に、ハジメは鳩が豆鉄砲でも食ったようにポカンとしている。

まさに、何を言われたのか分からないという様子だ。しかし、しばらくしてようやく意味が脳に伝わったのか思わずといった様子でツッコミを入れる。

「いやいやいや、おかしいだろ?一体、どこでフラグなんて立ったんだよ?自分で言うのも何だが、お前に対してはかなり雑な扱いだったと思うんだが?」

 

「「「「「え?ハジメ(君、様)気づいてなかったの!?!?」」」」」

優花達とユエとアルテナが一斉にツッコむ。

「え?」

シア以外にツッコまれて思わずキョトンとなるハジメ。

代表して優花が答えた。本妻なので…。

「長老衆の前で、シアとハウリア族をかばった時。"俺からこいつらを奪おう"ってんなら……覚悟を決めろ"ってシアの頭撫でながら言ったでしょ?…それまでは"俺達"って言ってたのに。多分、それよ。」

「そうですわ!ハジメ様!私もシアさんと同じであの時のハジメ様にもう…心奪われましたわ!」と同意しつつどさくさに紛れて告白するアルテナ。

「っていうか、雑だと自覚があったのならもう少し優しくしてくれてもいいじゃないですか…」

「いや、何でお前に優しくする必要があるんだよ…そもそも本当に好きなのか?状況に釣られてやしないか?」

ハジメは未だシアの好意が信じられないのか、いわゆる吊り橋効果を疑った。今までのハジメのシアに対する態度は誰がどう見ても雑だったので、無理もないかもしれない。

だが自分の気持ちを疑われてシアはすこぶる不機嫌だ。

「状況が全く関係ないとは言いません。窮地を何度も救われて、同じ体質で…長老方に啖呵切って私との約束を守ってくれたときは本当に嬉しかったですし…。ただ、状況が関係あろうとなかろうと、もうそういう気持ちを持ってしまったんだから仕方ないじゃないですか。

私だって時々思いますよ。どうしてこの人なんだろうって。ハジメさん、何かあると直ぐ撃ってくるし、鬼だし、返事はおざなりだし、魔物の群れに放り投げるし、容赦ないし、鬼だし、優しくしてくれないし、優花さん達ばかり贔屓するし、鬼だし……あれ?ホントに何で好きなんだろ?あれぇ~?」

話している間に、自分で自分の気持ちを疑いだしたシア。首を傾げるシアに、青筋を浮かべつつも言っていることは間違いがないので思わずドンナーを抜きかけるも辛うじて堪えるハジメ。

「と、とにかくだ。お前がどう思っていようと連れて行くつもりはない」

「そんな!さっきのは冗談ですよ?ちゃんと好きですから連れて行って下さい!」

「あのなぁ。お前の気持ちは…本当だとしても、俺には優花や雫や香織がいるって分かっているだろう?というか、よく本人達目の前にして堂々と告白なんざ出来るよな…。前から思っていたが、お前の一番の恐ろしさは身体強化云々より、その図太さなんじゃないか?お前の心臓って絶対アザンチウム製だと思うんだ。」

「誰が、世界最高硬度の心臓の持ち主ですか!うぅ~、やっぱりこうなりましたか…ええ、わかってましたよ。ハジメさんのことです。一筋縄ではいかないと思ってましたし…」突然、フフフと怪しげに笑い出すシアに胡乱な眼差しを向けるハジメ。

 

「こんなこともあろうかと!命懸けで外堀を埋めておいたのです!優花さん、香織さん、雫さん。ささっ、ユエ先生!お願いします!」

「は?ユエ?」

完全に予想外の名前が呼ばれたことに目を瞬かせるハジメ。してやったり!というシアの表情にイラッとしつつ、傍らのユエに視線を転じる。

ユエはやはり苦虫を百匹くらい噛み潰したような表情で、心底不本意そうにハジメに告げた。

「…………………ハジメ、連れて行こう」

「いやいやいや、なにその間。明らかに嫌そう…もしかして勝負の賭けって……」

「……無念」

ガックリと肩を落とすユエに大体の事情を察したハジメは、もはや呆れやら怒りを通り越して感心した。

「「「ちなみに私達は認めてるわよ。」」」と優花と香織と雫がサラッと言う。

きっとシアは、直接ハジメに頼んだところで望みを聞いてもらえるとは思えず、自分の力だけでは本気は伝わらないと考えたのだろう。

また、ハジメが納得しても優花達が同意しなければ、絶対に連れて行ってくれない筈だ。それ故に、優花達やユエを味方につけるという方法をとった。

〝命懸け〟というのもあながち誇張した表現ではないはずだ。生半可な気持ちで優花達やユエを納得させることなど不可能なのだから。

この十日間、ほとんど見かけなかったが文字通り死に物狂いでユエを攻略しにかかったに違いない。つまり、それだけシアの想いは本物ということだ。

ハジメはガリガリと頭を掻いた。別に、優花達が認めたからといって、シアを連れて行かなければならない理由はない。結局のところハジメの気持ち次第なのだから。

ユエは、不本意そうではあるが仕方ないという様に肩を竦めている。この十日間のシアの頑張りを誰よりも近くで見ていたからこそ。

その上で自分が課した障碍を打ち破ったからこそ、旅の同行は認めるつもりのようだ。元々、シアに対してはハジメの事を抜きにすれば、其処まで嫌いというわけではないという事もあるのだろう。

一方シアの方は、ユエに頼んだときの得意顔が一転し不安そうでありながら覚悟を決めたという表情だ。シアとしては、まさに人事を尽くして天命を待つ状態なのだろう。

ハジメは、一度深々と息を吐くとシアとしっかり目を合わせて、一言一言確かめるように言葉を紡ぐ。シアも静かに、言葉に力を込めて返した。

「付いて来たって応えてはやれないぞ?俺の"特別は”優花と香織と雫だ。」

「知らないんですか?未来は絶対じゃあないんですよ?」

それは、未来を垣間見れるシアだからこその言葉。

未来は覚悟と行動で変えられると信じている。

「危険だらけの旅だ」

「化物でよかったです。御蔭で貴方達について行けます」

長老方にも言われた蔑称。しかし、今はむしろ誇りだ。化物でなければ為すことのできない事があると知ったから。

「俺達の望みは故郷に帰ることだ。もう家族とは会えないかもしれないぞ?」

「話し合いました。〝それでも〟です。父様達もわかってくれました。」

今までずっと守ってくれた家族。感謝の念しかない。何処までも一緒に生きてくれた家族に、気持ちを打ち明けて微笑まれたときの感情はきっと一生言葉にできないだろう。

「俺達の故郷は、お前には住み難いところだ。」

「何度でも言いましょう。〝それでも〟です。」

シアの想いは既に示した。そんな〝言葉〟では止まらない。止められない。これはそういう類の気持ちなのだ。

「……」

「ふふ、終わりですか?なら、私の勝ちですね?」

「勝ちってなんだ……」

「私の気持ちが勝ったという事です。……ハジメさん」

「……何だ」

もう一度はっきりと伝える。シア・ハウリアの望みを。

「……私も連れて行って下さい」

見つめ合うハジメとシア。ハジメは真意を確認するように蒼穹の瞳を覗き込む。そして……

「……………はぁ~、勝手にしろ。物好きめ」

その瞳に何かを見たのか、やがてハジメは溜息をつきながら事実上の敗北宣言をした。

樹海の中に一つの歓声と不機嫌そうな鼻を鳴らす音が響く。その様子にハジメは、いろんな意味でこの先も大変そうだと苦笑いするのだった。

優花達は、多分これからもまた同行者…もとい、ハジメ(君)を好きになる娘は増えるんだろうなぁ…なんて想いつつ苦笑いしながら、嘆息した。

ちなみにアルテナの方だが…。

優花と香織に「森人族の姫を追放させて、責任取らずに放置はしないわよね?(よね?よね?)」と半ば脅迫の様に言われ、受け入れることに。

同行の承認と共に、シアと同様に自分の気持ちに答えてもらえるかわからなくても、一先ずは、受け入れてもらえたという事実で、アルテナの顔は耳まで真っ赤に染まり、ハジメをして見惚れる程綺麗だった…という裏話があったり無かったり。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

シアが「ウザウサギ」化したり、旅の仲間となっても扱いの雑さは変わらないようだった事に半泣きになったり。

ハウリア族が……………原作通り、殺戮者(ジェノサイダー)と化して、シアが更に涙目になったり。

それを見た優花達が、呆れた者を見る目でハジメを見ていたり。

アルテナがハウリア族の変化に思わず顔を青くしながら、シアに同情していたり。

シアが、カムが「この世の問題の九割は暴力で解決できる」なんていう発言をした事で、号泣しながら、優しかったハウリア族の家族達はもう帰ってこないんだと絶望した事。

心優しかった少年のパル君すら軍人的に化した事等で、ハジメも内心やりすぎたかもしれないと思ってた事。

 

完全武装した熊人族の集団が大樹への道を妨害しようとしている事。

ハウリア族がそれを対処する事に決まったことで、シアの表情は絶望に染まっていく。

ハジメは一度、瞑目し深呼吸すると、カッと目を見開いた。

 

「聞け!ハウリア族諸君!勇猛果敢な戦士諸君!今日を以て、お前達は糞蛆虫を卒業する!お前達はもう淘汰されるだけの無価値な存在ではない!力を以て理不尽を粉砕し、知恵を以て敵意を捩じ伏せる!最高の戦士だ!私怨に駆られ状況判断も出来ない〝ピッー〟な熊共にそれを教えてやれ!奴らはもはや唯の踏み台に過ぎん!唯の〝ピッー〟野郎どもだ!奴らの屍山血河を築き、その上に証を立ててやれ!生誕の証だ!ハウリア族が生まれ変わった事をこの樹海の全てに証明してやれ!」

 

「「「「「「「「「「Sir、yes、sir!!」」」」」」」」」」

 

「答えろ!諸君!最強最高の戦士諸君!お前達の望みはなんだ!」

 

「「「「「「「「「「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」」」」」」」」」」

 

「お前達の特技は何だ!」

 

「「「「「「「「「「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」」」」」」」」」」

 

「敵はどうする!」

 

「「「「「「「「「「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」」」」」」」」」」

 

「そうだ!殺せ!お前達にはそれが出来る!自らの手で生存の権利を獲得しろ!」

 

「「「「「「「「「「Aye、aye、Sir!!」」」」」」」」」

 

「いい気迫だ!ハウリア族諸君!俺からの命令は唯一つ!サーチ&デストロイ!行け!!」

 

「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」」」」」」」」」」

 

という会話が繰り広げられ、「うわぁ~ん、やっぱり私の家族はみんな死んでしまったですぅ~」と号泣するシア。

ハジメの号令に凄まじい気迫を以て返し、霧の中へ消えていくハウリア族達。

温厚で平和的、争いが何より苦手…そんな種族いたっけ?と言わんばかりだ。

変わり果てた家族を再度目の当たりにし、絶望し始めたシアを、流石に見かねたのか優花達がシアを慰めるように手を握り、頭を撫で、抱きしめている。

アルテナはまるでお姉さんみたくバックハグしている。

 

更にシアに追撃するように、

パル君が「今は〝必滅のバルトフェルド〟これからはそう呼んでくだせぇ」と去っていく。

答えるものは誰もおらず、彼女の家族は皆猛々しく戦場に向かってしまった。ガックリと項垂れ、再びシクシクと泣き始めたシア。

既に彼女の知る家族はいない。実に哀れを誘う姿だった。

そんなシアの姿を何とも言えない微妙な表情で見ているユエ。ハジメは、どことなく気まずそうに視線を彷徨わせている。

ユエは、ハジメに視線を転じるとボソリと呟いた。

「…流石ハジメ、人には出来ないことを平然とやってのける」なんてネタを。

「…正直、ちょっとやり過ぎたとは思ってる。反省も後悔もないけど」と呟くハジメ。

しばらくの間、ハウリア族が去ったその場には、シアのすすり泣く声と、微妙な空気が漂っていた。

 

 

というハウリア族の変化と、熊人族の敗北。

油断と慢心と……ありえべかざる兎人族の変化に、「これはないだろう!?」とレギンは堪らず絶叫を上げた…とか。

そんなわけでパニック状態に陥っている熊人族では今のハウリア族に抗することなど出来る訳もなく、瞬く間にその数を減らし、既に当初の半分近くまで討ち取られていた。

部下の命を守るために頭を下げ続けるレギンに対するカム達ハウリア族の返答は……「だが断る」という言葉と投擲されたナイフだった。

殺戮者(ジェノサイダー)と化し殺人衝動に暴走するハウリア族達を止めたのは、「いい加減にしなさぁ~い!!!」と巨大な鉄槌と共に天より降ってきたウサミミ少女・シアだった。

怒り心頭!といった感じで、まるで重さなど感じさせずブオンッと突風を発生させながら振り回し、巨大な鉄槌をビシッとカムに向かって突きつけた。

正気に戻れ!と。それに対してカムは「ダメ?まさかシア、我らの敵に与するつもりか?返答によっては……」なんてこと聞く。

「いえ、この人達は別に死んでも構わないです」とあっさり言うシア。

「当たり前です。殺意を向けて来る相手に手心を加えるなんて心構えでは、ユエさんや雫さんの特訓には耐えられません。私だってもう甘い考えは持っていませんよ」と。

では何故止めた?と尋ねるカムやハウリア族にシアが言った一言。

「……まるで、私達を襲ってきた帝国兵みたいです」と。

宿った狂気が吹き飛ぶほどの衝撃だった。家族を奪った彼等と同じ……耐え難い事実だ。

 

「まぁ初めての対人戦ですし、今気がつけたのなら、もう大丈夫ですよ!大体、ハジメさんも悪いんです!戦える精神にするというのはわかりますが、あんなのやり過ぎですよ!戦士どころかバーサーカーの育成じゃないですかっ!」

今度は、ハジメに対してぷりぷりと怒り出すシア。小声で「何であんな人好きになっちゃったんだろ?」とかブツブツと呟いている。

とその時、突如として銃声が響いた。

シアの背後で「ぐわっ!?」という呻き声と崩れ落ちる音がする。こっそり逃げ出そうとした熊人族のレギンだ。

霧の奥からハジメが優花達とユエとアルテナを伴って現れる。そして放たれたハジメの一言。

「あ~、まぁ何だ、悪かったな。自分が平気だったもんで、すっかり殺人の衝撃ってのを失念してた。俺のミスだ。うん、ホントすまん」

ポカンと口を開けて目を点にするシアとカム達。まさか素直に謝罪の言葉を口にするとは予想外にも程があった。

正気を疑われたハジメ。香織に回復魔法の要請がハウリア族から入る。青筋を浮かべ、口元をヒクヒクさせるハジメ。

 

取り敢えずこの件は脇に置いておいてレギンのもとへ歩み寄ると、その額にドンナーの銃口をゴリッと押し当てた。

「さて潔く死ぬのと、生き恥晒しても生き残るのとどっちがいい?」ハウリア族が驚きの目を向ける。

今のセリフでは、場合によっては熊人族を見逃してもいいと聞こえるからだ。敵対者に遠慮も容赦もしないハジメにあるまじき提案だ。

「……どういう意味だ。我らを生かして帰すというのか?」

「ああ、望むなら帰っていいぞ?但し、条件があるがな」という会話が繰り広げられる。

あっさり帰っていいと言われ、レギンのみならず周囲の者達が一斉にざわめく。

後ろで「頭を殴れば未だ間に合うのでは……」とシアが割かしマジな表情で自分の大槌とハジメの頭部を交互に見やり、カム達が賛同している声が聞こえる。

「ああ、条件だ。フェアベルゲンに帰ったら長老衆にこう言え。〝貸一つ〟とな。」と。

レギン達が生き残るということは、自国に不利な要素を持ち帰るということでもあるのだ。長老会議の決定を無視した挙句負債を背負わせる、しかも最強種と豪語しておきながら半数以上を討ち取られての帰還…まさに生き恥だ。更に追撃をかけるハジメ。

「それと、あんたの部下の死の責任はあんた自身にあることもしっかり周知しておけ。ハウリアに惨敗した事実と一緒にな」

ハジメがこのような条件を出して敵を見逃すのには理由がある。もちろん、慈悲などではない。

フェアベルゲンとは絶縁したわけだが、七大迷宮の詳細が未だわからない以上、もしかしたら彼の国に用事ができるかもしれない。

何せ、口伝で創設者の言葉が残っているぐらいなのだから。アルテナが居るとは言え、成り行きで出てきてしまったのでちょっと失敗したかなぁと思っていたハジメ。

渡りに船であるし、万一に備えて保険を掛けておこうと思ったのだ。

「五秒で決めろ。オーバーする毎に一人ずつ殺していく〝判断は迅速に〟基本だぞ?」と脅され同意するレギン。

「そうかい。じゃあさっさと帰れ。伝言はしっかりな。もし、取立てに行ったとき惚けでもしたら……」

ハジメの全身から強烈な殺意が溢れ出す。もはや物理的な圧力すら伴っていそうだ。ゴクッと生唾を飲む音がやけに鮮明に響く。

「その日がフェアベルゲンの最後だと思え」

どこからどう見ても、タチの悪い借金取り、いやテロリストの類にしか見えなかった。

後ろから「あぁ~よかった。何時ものハジメさんですぅ」とか「ボスが正気に戻られたぞ!」とか妙に安堵の混じった声が聞こえるがスルーだ。

 

ハウリア族により心を折られ、レギンの決死の命乞いも聞いていた部下の熊人族も反抗する気力もないようで悄然と項垂れて帰路についた。

若者が中心だったことも素直に敗北を受け入れた原因だろう。レギンももうフェアベルゲンで一生日陰者扱いの可能性が高い。だが理不尽に命を狙ったのだから、むしろ軽い罰である。

霧の向こうへ熊人族達が消えていったのを見届け、ハジメはくるりとシアやカム達の方を向く。

もっとも俯いていて表情は見えない。なんだか異様な雰囲気だ。カム達は、狂気に堕ちてしまった未熟を恥じてハジメに色々話しかけるのに夢中でその雰囲気に気がついていない。

シアだけが「あれ?ヤバクないですか?」と冷や汗を流している。

ハジメがユラリと揺れながら顔を上げた。

その表情は満面の笑みだ。

だが細められた眼の奥は全く笑っていなかった。

ようやく、何だかハジメの様子がおかしいと感じたカムが恐る恐る声をかけると、ハジメがボソっと言う。

 

「うん、ホントにな?今回は俺の失敗だと思っているんだ。短期間である程度仕上げるためとは言え、歯止めは考えておくべきだった。」

「いやいや、いいんだよ?俺自身が認めているんだから。だから、だからさ、素直に謝ったというのに…。随分な反応だな?いやわかってる。日頃の態度がそうさせたのだと…しかし、しかしだ…。このやり場のない気持ち、発散せずにはいれないんだ…わかるだろ?」と。

だんだん青筋が増えていく!

とその時「今ですぅ!」と、シアが一瞬の隙をついて踵を返し逃亡を図った。傍にいた男のハウリアを盾にすることも忘れない。しかし……。

 

---ドパンッ!!!

 

一発の銃弾が男の股下を通り、地面にせり出していた樹の根に跳弾してシアのお尻に突き刺さった。

「はきゅん!」

と銃撃の衝撃に悲鳴を上げながらピョンと跳ねて地面に倒れるシア。お尻を突き出した格好だ。シュウーとお尻から煙が上がっている。シアは痛みにビクンビクンしている。

痙攣するシアの様子とハジメの銃技に戦慄の表情を浮かべるカム達。股通しをされた男が股間を両手で抑えて涙目になっている。銃弾の発する衝撃波が、股間をこうふわっと撫でたのだ

何事もなかったようにドンナーをホルスターにしまったハジメは、笑顔を般若に変えた。

そして、怒声と共に飛び出した。

「取り敢えず、全員一発殴らせろ!」

 

----わぁああああーー!!

 

ハウリア達が蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出す。一人も逃がさんと後を追うハジメ。しばらくの間樹海の中に悲鳴と怒号が響き渡ったとか。

 

後に残ったのは、ケツから煙を出しているシアと、

 

「「「「「……何時になったら大樹に行くの?(かな?かしら?)」」」」」とすっかり蚊帳の外だった優花達とユエとアルテナの呟きだけだった。

 

 

ここまでが、ハウリア族の変化とかのアレです。

部分的な追加要素はありますが、ほぼ原作通りの展開です。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

この後、大樹に行き。

大樹の迷宮を攻略するには、

「〝四つの証〟・〝再生の力〟・〝紡がれた絆の道標〟・〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟

というメッセージを見ることになり、4つ以上の迷宮攻略と、再生に関する神代魔法と、亜人族の案内が必要だという事を知り。後回しにする事になるのを決め、他の迷宮攻略に行こうとすると、ハウリア族が付いてこようとするが。ハジメがバッサリ切り捨てる。

そして樹海の迷宮の入り口たる大樹を守れと言う。

 

…家族との別れなのに、誰もかまってくれないシアが一人イジケていたのを優花達は苦笑いしながら見ていた。

アルテナに関しては、「むしろお祖父様にはいい薬ですわ!」なんて事を言って挨拶にすら行かなかった。

 

樹海の境界で魔力駆動二輪を2台出したハジメ。

一台はサイドカー付きだ。

そちらには運転、ハジメ。前には優花。後ろにはシア。サイドカーにはユエ。

もう一台には、運転、雫。前には香織。後ろにはアルテナ。

やはり、この乗り方を決める時にまたひと悶着あったとかなんとか…。サイドカーのユエは確定していたので不貞腐れていたが。

 

そしてシアが、次の目的地は何処かと質問する。

サラリと「ライセン大峡谷」だと答えるハジメ。

…シアとアルテナは聞いていなかったので、コミュニケーションが大事ですよと!不貞腐れる。

ついででライセン大峡谷にあるらしいライセン大迷宮を探す事に思わず頬が引き攣るシアとアルテナ。

ハジメが、はっきりと二人に向かって言う。

「シアは身体強化に特化してるんだから、独壇場だろうと。アルテナは優花と香織の訓練で魔法以外の討伐手段を身に着けたのだからそこらの魔物と変わらないぞ?」

と。恥ずかしくなったのか話を逸らすようにシアが、

近くの街に行くのか?野宿なのか?と聞くと。

 

「出来れば食料とか調味料関係を揃えたいし、今後のためにも素材を換金しておきたいから町がいいな。前に見た地図通りなら、この方角に町があったと思うんだよ」

それにもう一つ、ライセン大峡谷に入る前に落ち着いた場所で、やっておきたいこともあったのだ。

ハジメの言葉に、何故か安堵の表情を見せるシア。ハジメが訝しそうに「どうした?」と聞き返す。

「いやぁ~、ハジメさん達のことだから、ライセン大峡谷でも魔物の肉をバリボリ食べて満足しちゃうんじゃないかと思ってまして。…ユエさんはハジメさんの血があれば問題ありませんし、どうやって私達用の食料を調達してもらえるように説得するか考えていたんですよぉ~杞憂でよかったです。ハジメさん達もまともな料理食べるんですね!」

「当たり前だろ!誰が好き好んで、魔物なんか喰うか!……お前、俺達を何だと思ってるんだ……?」

「プレデターという名の新種の魔物?」

「OK。お前、町に着くまで車体に括りつけて引きずってやる。」

「ちょ、やめぇ、どっから出したんですかっ、その首輪!ホントやめてぇ~そんなの付けないでぇ~、ユエさんも優花さんも見てないで助けてぇ!」

「……自業自得」

「うんうん。早く料理のための材料色々買いたいなぁ…。」

 

「向こうは騒がしいわね。でも街に寄って買い物とか色々したいわね。」

「うんうん。あ、アルテナさん…。ハジメ君がシアさんに付けたような首輪。あれアルテナさんも付けてね?」

「え?あ…はい。ハジメ様達の奴隷って扱いにしないと樹海の外だと、大変だからですね…?」

「「そうそう。シアは…わかってないから弄られてるみたいだけど。」」

 

ある意味、非常に仲の良い様子で騒ぎながら草原を進む二台の二輪と七人。

数時間ほど走りそろそろ日が暮れるという頃、前方に町が見えてきた。ハジメ達の頬が綻ぶ。奈落から出て空を見上げた時のような、〝戻ってきた〟という気持ちが湧き出したからだ。

他のメンバーもどこかワクワクした様子。きっと、ハジメと同じ気持ちなのだろう。

 

「あのぉ~?いい雰囲気のところ申し訳ないですが、この首輪取ってくれませんか?何故か自分では外せないのですが…あの、聞いてます?ハジメさん?優花さん?ユエさん?ちょっと、無視しないで下さいよぉ~!泣きますよ!それは、もう鬱陶しいくらい泣きますよぉ!」とシアの叫びが響いた。

 

それを聞いたハジメと優花と香織と雫とユエとアルテナは微笑みあった。




新たな同行者は、

「シア=ハウリアとアルテナ=ハイピスト」です。

原作だと、ティオさんと同等以上(?)のドMの変態と化すアルテナさんですが。
本作のストーリーでは、変態化回避+ハジメさんの嫁枠に入るかも?の余地を足しました。

※ありふれ零をきちんと読んでいるわけじゃありませんが、ありふれに出てくる森人族(エルフ)の女性は何らかの変態性を有してるのは必須なのでしょうか…。
リューティリスさん然り…。

原作でも、アルテナさんは愛の力(?)で身体強化(Xまで行ってないくても、7~8までは最大で行ってるだろう)したシアを追いかけ回して疲れさせるぐらいですから。魔力操作、持ってませんか?と。
最低でも身体強化(魔力変換での)は?と思いましての追加同行者となりました。

後は、他の方も二次で変えている方がいますが。

フェアベルゲンの「忌み子」の件などや、ゼル・クゼと言った長老集の認識の甘さ等色々突っ込みたいぞソレ!って感じで思ったことをぶち込みました。
結果としては、原作通りハウリアはフェアベルゲンを追い出されてますし、
ハジメ達もフェアベルゲンに滞在する事にはなりません。
これは、原作通り帝国からの亜人族解放時の為です。

(そこまで話を書けるかは未定ですが……。多分書けません。理由は、原作展開で進めた場合。ホルアドで勇者一行を助けに行く理由が無い事。助けに行ったとしても、確実に檜山は優花達に処される展開になるからです。その場合、恵里を救済するのか、王国転覆を実行する前に処するのか。そこが展開としては、原作通りに進める場合の限界となる…からですね。)

まさか、フェアベルゲン編だけで一話分になるとは思いませんでしたので、
…しかもおよそ30000文字。長い、長すぎるっ!!!!
最後のブルックの街に寄ってからのキャサリン・ソーナ・クリスタベルとの出逢いは既に済んだものとして…って形でとなると思います。続きを書くとするならば…。次は、「ウザイあの人」の出番になるかと。


男1人に女6人(全員美少女で内2人は兎人族と森人族)のパーティですね?
………………………こりゃハジメさん刺されますわ。

※原作ありふれ世界において、どちらの亜人族も美しさ(可愛さ)で人気がある種族です。

アルテナさんの性格と喋り方等、登場シーンが少ない(あとドM化した後しかない)ので、かなり独自設定で書いてます。
喋り方等は、樹海の試練突破後のリューティリスさんの女王風味を意識して書いています。

※※七大迷宮と解放者達の件の部分については、多々意見があるとは想いますが。
オスカー・オルクスの手記(日記)に書いてあったのを、ハジメ達が見て伝えただけとお考え下さい。
伝えたことによる変化が発生するかもしれないのは、帰還後のアフターのアフター世代のお話ぐらいになるはずですから。
亜人族への扱いは神話大戦で変わりますので。

原作通り、迷宮や解放者達の名前や人種がわかってても
在り処を知っている大迷宮は変わりません。
メルジーネ海底遺跡、神山、ライセン大迷宮の在り処は不明のままです。
ミレディに聞いて、初めて知る事になるのは原作通りです。

………ミレディも、思い切ってハジメ嫁枠に入れちゃいますか!?(無いな!)
ひんぬー枠として、ユエの同士が欲しいなと。
まあ、ウルで奈々が……?の方向で考えているので、
……まあ、要らないかな?
アンケートって形でどうするか、皆様に決めてもらうのも…有りかな?


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case5-5 「ミレディってウザく無かったら普通に可愛い子」

と、言うわけで。

優花本妻ルートの続きである…。
サブタイトル通り(?)、ライセン大迷宮のお話です。

え?ミレディ、ウザく無くなるの?

……って思われた方、ご安心を(笑

彼女のウザさは、簡単に消えて無くなる業(カルマ)ではありません。

というよりウザくないミレディ=サブタイトル通り。
というありふれたヒロインキャラの一人にしかなりえない。
…没個性ですよ。…というかもはやそれはミレディなのか(ォィ

アンケート集計結果次第だと、
ミレディ同行がおよそ6割、奈々と愛子が入るんだからいらない子扱いが4割。
…2番目の選択肢と3番目の選択肢って「ハジメハーレム変化なし」とタグで宣言している以上、愛ちゃんは確実にとなると…。
同じ意味だよね?って事に今更気付いた訳です。

大変悩みました。

…ミレディを同行させる場合、
神子であるユエと解放者のミレディが同道しているのにエヒトがちょっかいかけない事があり得るのか等。

…同行しない場合は、
原作通りの展開になるため描写は楽ですが…ありふれたストーリーで終わっちゃう気がします。優花と香織と雫とアルテナという4人が居ることでちょっとは変わりますけれども。

と、悩んだ結果がこのストーリーです。


また、また風音鈴鹿様、誤字報告有難うございました。

※※
お気に入り300件突破、UA50,000超え。
大変ありがたく思います。これからも頑張ろうと思える数字へとなりました。
ここに感謝の言葉を記載させていただくことを、応援のお礼とさせて頂きます。
並びに、多くの感想や評価を頂けてることを光栄に思います。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

原作通り、ブルックの街で様々なトラブルに巻き込まれたハジメ達一行。

その辺りの詳細(キャサリン~クリスタベル等の出逢い等)はそのままなのでカット。

シアの暴走に乗じてアルテナも便乗したりしたんでしょう、きっと。

 

そして数日、ライセン大峡谷を探し回る旅へと。

原作通りシアが「お花摘み」に行った事でライセン大迷宮を発見します。

※ここで、原作との相違はアルテナも一緒について行ったという事です。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ハ、ハジメさ~ん!皆さん!大変ですぅ!こっちに来てくださぁ~い!」

「ハ、ハジメ様!皆様!こちらですよ、こちらに急いで来てください!」

 

お花摘みに行ったはずの二人が、魔物を呼ぶ可能性を忘れた様に大声で叫ぶ。

 

「何だよ、いったい…。」

「一体何なのよ…目覚めちゃったじゃない。」

「シアだけじゃなくアルテナまで、どうしたのよ?」

「二人共、何かあったの?」

「…うるさい」

 

一部を除き、非難轟々な意見しか出ていないが…それにも構わず二人は叫んでいる。

 

「こっちです!こっちですよぅ!見つけたんですぅ!」

「はい!見つかったんですよ!本当にあったんですよ!」

 

そんな声のする方へハジメ達が向かって目にしたものを見て口にした言葉。

 

 

「「「「「……は!?」」」」」

 

 

そこには、こう書いてあった。

 

 

〝おいでませ!ミレディ・ライセンドキワク大迷宮へ♪〟

 

 

「…なんだこれ。」

「何なの、これは?」

「わざわざ、壁ほって色まで分けるとか…芸が細かいわね。」

「本物…なのかなぁ?でもちょっと楽しそうかも。」

「…うざったい。」

 

 

「大迷宮の入り口ですよね!ハジメさん達が、樹海で「ミレディ・ライセン」って言ってましたし。まさかお花を摘みに来て見つけてしまうとは。ホントにあったんですね?大迷宮の入り口。」

「そうですわ!ミレディ様というファーストネームが一致してますし、本物ですわ!」

 

興奮が覚めないままの二人をよそに、残りの五人は会議を始めた。

 

「これ、本物だと思うか?」

「「間違いない。オスカーの手記にあった通りウザい感じが。」」

「アルテナさんも言ってたけどファーストネームは知れ渡って無いはずだよ。」

「…ミレディ、ウザい。」

 

会議するまでもなく、結論は一つだったようだ。

 

 

「「「「「…チャラすぎる…。」」」」」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ここから先は、シアがドジって大迷宮の入り口だって確定したのは良いものの乙女として大切なナニカを失ったり。

ミレディの煽り文で煽るだけ煽られまくりで、全員のストレスが限界突破したり。

(アルテナと香織も含みます。)

 

ここで、ミレディの煽り文の一部を抜粋していこう。

 

〝ビビった?ねぇ、ビビっちゃった?チビってたりして、ニヤニヤ〟

〝それとも怪我した?もしかして誰か死んじゃった?……ぶふっ〟

〝残念♪この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~プークスクス!!〟

 

原作通り、コレでシアの怒りとストレスが限界突破します。

 

〝残念♪魔法使いはこの迷宮ではほぼ無力化するのでしたぁ~♪クスクス〟

〝あらら♪一人だけ小さくて大変そうだねぇ?何処がとは言わないケド!〟

〝このトラップは一定身長以下しか発動しないよ♪大きくなろうよ人として〟

 

こんな感じの煽りでユエの「ミレディ殺す」オーラは天元突破します。

 

〝そのナイフで何を切るのかな♪自分を切らない様気をつけなよ!クスクス〟

〝目つき悪いって言われない?彼にもそう思われてるかもね。ニヤニヤ〟

〝残念♪それはハズレ♪貴女はハズレかな?当たりかな?どっちでもいいけど〟

 

優花のストレスと殺意はこれでミレディへと全て向けられます。

 

〝ぷぷぷ♪その剣は何のために持ってるのかな?おもちゃですか?プークス〟

〝残念♪それは斬れない素材で出来てます♪幾らやっても無駄だよ、ニヤニヤ〟

〝その無駄にデカイのは邪魔にしかならないでしょ?もいであげるよ♪〟

 

こんな感じで雫すら、ミレディ許すまじモードへと突入します。

 

〝ぷぷ♪優しい治癒師だね♪きっと好きな人も優しいだけとか思ってるよ♪〟

〝好きな人の事何でも知りたいってストーカーですかぁ?お巡りさんここです〟

〝貴女は何番目なんだろうね♪きっと最後かもね、何がとは言わないケド♪〟

 

ハジメへの思いへ対する煽りで香織も背中のアレが顕現します。

 

〝あれ♪貴女、この中で一番役に立って無いんじゃ?有り難いけど。ニヤニヤ〟

〝ですわ!ってリューちゃんみたいだね♪何処かのサイズは大きく違うけど!〟

〝物理も魔法も中途半端。貴女は一体何が得意なのかな?プークスクス〟

 

承知の上の実力不足やリューティリスとのある部分を比較されたりでキレるアルテナ。

 

〝白髪に眼帯って♪それはもう病気だよ!こんなトコじゃなく病院いきなよ♪〟

〝女の子ばっか連れて迷宮来るとか、おかしいんじゃないの?あ、おかしいからこんなトコに来てるんだね♪ニヤニヤ〟

〝その鉄球はおかわり自由です♪壊して満足したならオッツー!プークスクス〟

 

異世界人であるミレディにすら厨二病患者扱いされた事に、マジギレするハジメ。

 

こんな感じで煽りに煽られた挙げ句に、スタート地点に戻される。

 

 

そして、トドメのアレ。

 

 

〝ねぇ、今、どんな気持ち?〟

〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?〟

〝ねぇ、ねぇ、どんな気持ち?どんな気持ちなの?ねぇ、ねぇ〟

 

 

これを見た全員は能面のようになり。

 

「「「「「「「…………………」」」」」」」

 

 

更に煽りに煽るミレディクオリティ。

 

〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟

〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです

〝嬉しい?嬉しいよね?お礼なんていいよぉ!好きでやってるだけだからぁ!〟

〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟

〝ひょっとして作っちゃった?苦労しちゃった?残念!プギャァー〟

 

 

「は、はははははは…」

「ふっ、ふふふふふふふふふ」

「ふふふふふふふふふふふふふふ」

「うふふ、うふふふふふふふ」

「フフフフフフフ」

「フヒ、フヒヒヒヒ」

「あは、あははははははは」

 

 

7人それぞれの乾いた壊れた笑いが出た後は、

 

 

「「「「「「「ミレディーー!!!」」」」」」」

 

 

そんな声が、迷宮内部に響いたとか何とか。

 

 

この後の迷宮攻略。ミレディの間到達まではほぼほぼ原作通りなのでカットです。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ハジメ達が入ったこの場所は直径二キロメートル以上ありそうな超巨大な球状の空間だった。

そんな空間には、様々な形、大きさの鉱石で出来たブロックが浮遊してスィーと不規則に移動をしているのだ。完全に重力を無視した空間である。

だが、不思議なことにハジメ達はしっかりと重力を感じている。おそらく、この部屋の特定の物質だけが重力の制限を受けないのだろう。

 

そんな空間をゴーレム騎士達が縦横無尽に飛び回っていた。

やはり落下方向を調節しているのか、方向転換が急激である。

この空間に近づくにつれて細やかな動きが可能になっていった事を考えると、おそらく……

 

 

「ここに、ゴーレムを操っているヤツがいるな。」

 

ハジメの確定意見に優花達全員が賛同するように表情を引き締めた。

ゴーレム騎士達は何故かハジメ達の周囲を旋回するだけで襲っては来ない。

ここが終着点なのか、まだ続きがあるのか分からない。

だが、間違いなく深奥に近い場所ではあるはずだ。

ハジメは〝遠見〟で、この巨大な球状空間を調べようと目を凝らした。

と、次の瞬間、シアの焦燥に満ちた声が響く。

 

 

「逃げてぇ!」

 

「「「「「「!?」」」」」」」

 

 

ハジメ達は何が?と問い返すこともなく、シアの警告に瞬時に反応し弾かれた様に飛び退いた。

数メートル先に他のブロックが通りかかったので、それを目指して今いるブロックを離脱する。

優花がユエを、雫がアルテナを、香織がシアを庇うように抱きかかえながら。

その直後、

 

 

ズゥガガガン!!

 

 

隕石が落下してきたかのような衝撃が今までハジメ達がいたブロックを直撃し木っ端微塵に爆砕した。隕石というのはあながち間違った表現ではないだろう。赤熱化する巨大な何かが落下してきて、ブロックを破壊すると勢いそのままに通り過ぎていったのだ。

ハジメ達の頬に冷や汗が流れる。シアが警告を発してくれなければ確実に直撃を受けていた。

〝金剛〟の能力が低下している今、もしかしたら即死していたかもしれない。

感知出来なかった訳ではなかった。シアが警告をした直後、確かに気配を感じた。

だが、落下速度が早すぎて感知してからの回避が間に合ったとは思えなかった。

 

「シア、助かったぜ。ありがとよ」

「助かったわ、シア」

「シア、ありがとう。危なかったかもしれないわ。」

「シアさん、助かったよ!」

「シアさん、ありがとうございますですわ!」

「……ん、お手柄」

「えへへ、〝未来視〟が発動して良かったです。魔力をごっそり持って行かれましたけど…。」

 

ハジメ達の感知より早く気がついたのはシアの固有魔法〝未来視〟が発したからのようだ。

〝未来視〟は、シア自身が任意に発動する場合、シアが仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだが、もう一つ、自動発動する場合がある。

今回のように死を伴うような大きな危険に対しては直接・間接を問わず見えるのだ。

つまり、直撃を受けていれば少なくともシアは死んでいた可能性があるということだ。

そうしてる間に、下の方で何かが動いたかと思うと猛烈な勢いで上昇してきた。

一瞬の間にハジメ達の頭上に出ると、その場に留まりギンッと光る眼光でハジメ達を睥睨した。

 

「おいおい、マジかよ」

「何なの、このサイズ…大きすぎじゃない?」

「ラスボス登場…ってトコ?今までのゴーレムのサイズの比じゃないわね。」

「わぁ…。なんかもうビルぐらいの大きさだよね…。」

「あんな大きな物体がどうやって浮いているんでしょう?」

「……すごく……大きい」

「お、親玉って感じですね」

 

ハジメ達の目の前に現れたのは、宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。

巨体ゴーレムに身構えていると、周囲のゴーレム騎士達がヒュンヒュンと音を立てながら飛来し、ハジメ達の周囲を囲むように並びだした。

整列したゴーレム達は胸の前で大剣を立てて構える。まるで王を前にして敬礼しているようだ。

包囲されハジメ達の間にも緊張感が高まる。辺りに静寂が満ち、まさに一触即発の状況。

動いた瞬間、殺し合いが始まる。そんな予感をさせるほど張り詰めた空気を破ったのは……

 

 

 

……巨体ゴーレムのふざけた挨拶だった。

 

 

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~♪」

「「「「「「「「……は?」」」」」」」

 

凶悪な装備と全身甲冑に身を固めた眼光鋭い巨体ゴーレムから、やたらと軽い挨拶をされた。

頭がどうにかなる前に現実逃避しそうだった。

全員が、包囲されているということも忘れてポカンと口を開けている。

そんな硬直するハジメ達に、巨体ゴーレムは不機嫌そうな声を出した。声質は女性のものだ。

 

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ?全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

 

 

実にイラっとする話し方である。

しかも、巨体ゴーレムは、燃え盛る右手と刺付き鉄球を付けた左手を肩まで待ち上げると、やたらと人間臭い動きで「やれやれだぜ」と言う様に肩を竦める仕草までした。

普通にイラっとするハジメ達。道中散々見てきたウザイ文を彷彿とさせる。

〝ミレディ・ライセン〟と名乗っていることから本人である可能性もあるが、

彼女は既に死んでいるはずであるし、人間族だったはずだ。寿命をとっくに迎えているはずだ。

 

 

ハジメは取り敢えず、その辺りのことを探ってみる事にした。

 

「そいつは悪かったな。だが、ミレディ・ライセンは人間で故人のはずだろ?まして、自我を持つゴーレム何て聞いたことないんでな……目論見通り驚いてやったんだから許せ。そして、お前が何者か説明しろ。簡潔にな」

「あれぇ~、こんな状況なのに物凄く偉そうなんですけど、こいつぅ」

 

流石に、この反応は予想外だったのかミレディを名乗る巨体ゴーレムは若干戸惑ったような様子を見せるが、直ぐに持ち直して、人間なら絶対にニヤニヤしているであろうと容易に想像付くような声音でハジメ達に話しかけた。

 

「ん~?ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ~何を持って人間だなんて…」

「オスカーの手記にお前のことも少し書いてあった。きちんと人間の女として出てきてたぞ?というか阿呆な問答をする気はない。簡潔にと言っただろう。どうせ立ち塞がる気なんだろうからやることは変わらん。お前をスクラップにして先に進む。だから、その前にガタガタ騒いでないで、吐くもん吐け」

「お、おおう。久しぶりの会話に内心、狂喜乱舞している私に何たる言い様。っていうかオスカーって言った?もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」

「ああ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略した。というか質問しているのはこちらだ。答える気がないなら、戦闘に入るぞ?別にどうしても知りたい事ってわけじゃない。俺達の目的は神代魔法だけだからな」

 

 

ハジメがドンナーを巨体ゴーレムに向ける。ユエはすまし顔だが、シアの方は「うわ~、ブレないなぁ~」と感心半分呆れ半分でハジメを見ていた。

優花達はいつもの事だ…そんな表情になっている。アルテナは何故か興奮しているようだ。

 

 

「…神代魔法ねぇ、それってやっぱり、神殺しのためかな?あのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな?オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」

「質問しているのはこちらだと言ったはずだ。答えて欲しけりゃ、先にこちらの質問に答えろ。」

「こいつぅ~ホントに偉そうだなぁ~、まぁ、いいけどぉ~、えっと何だっけ……ああ、私の正体だったね。うぅ~ん」

「簡潔にな。オスカーみたいにダラダラした説明はいらないぞ」

「あはは、確かに、オーちゃんは話が長かったねぇ~、理屈屋だったしねぇ~」

 

巨体ゴーレムは懐かしんでいるのか遠い目をするかのように天を仰いだ。

本当に人間臭い動きをするゴーレムである。優花達は何かに気づいたような表情に。

ユエは相変わらず無表情で巨体ゴーレムを眺め、シアは周囲のゴーレム騎士達を気にしてそわそわしている。アルテナはもう何かを悟ったようだ(汗

 

「うん、要望通りに簡潔に言うとね。私は、確かにミレディ・ライセンだよ。

 ゴーレムの不思議は全て神代魔法で解決!もっと詳しく知りたければ見事、私を倒してみよ!って感じかな」

「結局、説明になってねぇ……」

「ははは、そりゃ、攻略する前に情報なんて貰えるわけないじゃん?迷宮の意味ないでしょ?」

 

今度は巨大なゴーレムの指でメッ!をするミレディ・ゴーレム。

中身がミレディ・ライセンというのは頂けないが、それを除けば愛嬌があるように思えてきた。

ユエが「…中身だけが問題」とボソリと呟いていることからハジメと同じ感想のようだ。

そしてその中身について、殆ど何もわからなかったに等しいが、ミレディ本人だというなら…

残留思念などを定着させたものなのかもしれないと推測するハジメ。ハジメは、確かクラスメイトの中村恵里が降霊術という残留思念を扱う天職を持っていたっけと朧げな記憶を掘り起こす。

しかし、彼女の降霊術は、こんなにはっきりと意思を持った残留思念を残せるようなものではなかったはずだ。

つまりその辺とその故人の意思?なんかをゴーレムに定着させたのが神代魔法ということだろう。

 

 

いずれにしろ、自分が探す世界を超える魔法ではなさそうだと、ハジメは少し落胆した様子で巨体ゴーレム改めミレディ・ゴーレムに問い掛けた。

 

「お前の神代魔法は、残留思念に関わるものなのか?だとしたら、ここには用がないんだがなぁ」

「ん~?その様子じゃ、何か目当ての神代魔法があるのかな?ちなみに、私の神代魔法は別物だよぉ~、魂の定着の方はラーくんに手伝ってもらっただけだしぃ~」

 

ハジメ達の目的は世界を超えて故郷に帰ること。

そう思って質問したのだが、返ってきたミレディの答えはハジメの推測とは異なるものだった。

ラーくんというのはラウス=バーンの事だろう。

彼が、ミレディ・ゴーレムに死んだはずの本人の意思を持たせ、ゴーレムに定着させたようだ。

 

「じゃあ、お前の神代魔法は何なんだ?返答次第では、このまま帰ることになるが……」

「ん~ん~、知りたい?そんなに知りたいのかなぁ?」

再びニヤついた声音で話しかけるミレディに、イラっとしつつ返答を待つハジメ。

 

「知りたいならぁ~、その前に今度はこっちの質問に答えなよ」

最後の言葉だけ、いきなり声音が変わった。今までの軽薄な雰囲気がなりを潜め真剣さを帯びる。その雰囲気の変化に少し驚くハジメ達。表情には出さずにハジメが問い返す。

「なんだ?」

「目的は何?何のために神代魔法を求める?」

嘘偽りは許さないという意思が込められた声音で、ふざけた雰囲気など微塵もなく問いかけるミレディ。もしかすると、本来の彼女はこちらの方なのかもしれない。

思えば、彼女も大衆のために神に挑んだ者。自らが託した魔法で何を為す気なのか知らないわけにはいかないのだろう。

オスカーが記録映像を遺言として残したのと違い、何百年もの間、意思を持った状態で迷宮の奥深くで挑戦者を待ち続けるというのは、ある意味拷問ではないだろうか。軽薄な態度はブラフで、本当の彼女は凄まじい程の忍耐と意志、そして責任感を持っている人なのかもしれない。

 

優花達も同じことを思ったのか、先程までとは違う眼差しでミレディ・ゴーレムを見ている。

深い闇の底でたった一人という苦しみはユエもよく知っている。だからこそ、ユエはミレディが意思を残したまま闇の底に留まったという決断に、共感以上の何かを感じたようだ。

 

ハジメ達は、ミレディ・ゴーレムの眼光を真っ直ぐに見返しながら嘘偽りない言葉を返した。

 

「俺達の目的は故郷に帰ることだ。お前等のいう狂った神とやらに無理やりこの世界に連れてこられたんでな。世界を超えて転移できる神代魔法を探している…お前等の代わりに神の討伐を目的としているわけじゃない。この世界のために命を賭けるつもりはない。無論邪魔するなら殺すが」

「この世界にそこまでの思い入れはないわ。でも、ハジメの邪魔をするならなんでもする。」

「私達の目的の邪魔をするなら、神だってなんだって切り倒してみせるわ。」

「地球にみんなで帰る。そのためならなんだってやってみせるよ!」

「……ん。」

「わ、わたしはこの世界の存在ですけど、ハジメさん達の側に居るためなら…。」

「私もシアさんと同じですわ。ハジメ様達の側にいるためなら、何だって苦になりませんわ!」

 

ミレディ・ゴーレムは、ジッとハジメ達を見つめた後、何かに納得したのか小さく頷いた。

そしてただ一言「そっか」とだけ呟いた。

と、次の瞬間には、真剣な雰囲気が幻のように霧散し、軽薄な雰囲気が戻る。

 

「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~よし、ならば戦争だ!見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」

 

 

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ミレディとの戦闘描写、カットです。

台詞回しとキャラが増えた事とか含めて、案外簡単にいけるんじゃ?と思ってしまったのもあります。難易度はミレディ本人が試練をしている以上、原作よりは上げてそうですが。

単純に、一話分ぐらいになりそうなんですよね。戦闘の書き起こしで。

原作でもそんな感じですし…。なので、カットです。許してくださいm(_ _)m

 

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「やったじゃねぇかシア。最後のは凄い気迫だった。見直したぞ?」

「シア、ナイスファイトよ。アルテナもよく頑張ったわ。」

「頑張ったじゃないシア、アルテナ。特訓の成果はあったわね。」

「シアさん、アルテナさん。二人共初めての大迷宮攻略なのに凄かったよ!」

「私、お役に立てたのでしょうか?シアさんのようにトドメをさせた訳では無いですし…。」

「……ん、二人共頑張った」

「えへへ、有難うございます。でもハジメさん、そこは〝惚れ直した〟でもいいんですよ?」

「直すも何も元から惚れてねぇよ…。アルテナは十分役に立ってるぞ。」

 

疲れた表情を見せながらも、ハジメ達の称賛にはにかむシアとアルテナ。

実際、つい最近まで争いとは無縁だったとは思えない活躍だった。

それはひとえに、ハジメ達と同じステージに立ちたい。

ずっと一緒にいたいというシアの願いあってのことだろう。

深く強いその願いが、シアとアルテナの潜在能力と相まって七大迷宮最大の試練と正面から渡り合わせ、これ以上ない成果を生み出した。

 

凄まじい気迫と共に繰り出された最後の一撃は正直、見惚れるほど見事なものだった。

シアの想いの強さが衝撃波となって届いたのかと思うほどに。

だからと言って、シアが求める感情をハジメが持つに至ったわけではないが。

その頑張りに、根性につい絆されてしまうのは仕方ないことだろう。

ハジメのシアを見つめる眼差しが柔らかいものになる。

 

「ふぇ?な、なんだか…ハジメさんが凄く優しい目をしている気が…ゆ、夢?」

「お前な…いや、まぁ、日頃の扱いを考えると仕方ないと言えば仕方ない反応なんだが…。」

 

そんなハジメの眼差しに、信じられないものを見たと言う様に、シアは自分の頬を抓る。

その反応に思わず文句を言いたくなったハジメだが、今までの雑な扱いから考えると、ある意味当然の反応なので言葉を濁した。

未だ頬を抓っているシアのもとへ優花達が歩み寄っていく。そして、おもむろにシアの頭を撫でた。乱れた髪を直すように、ゆっくり丁寧に。

 

「え、えっと、優花さん?雫さん?香織さん?ユエさん?」

「「「「…ハジメ(君)は撫でないだろうから、代わりに。よく頑張りました」」」」

「皆さぁ~ん。うぅ、あれ、何だろ?何だか泣けてぎまじだぁ、ふぇええ」

「……よしよし」

「私は…撫でてもらえないのでしょうか?…ふぁっ!ハジメ様っ!?」

優花達がシアを撫でている間に拗ねかけていたアルテナをハジメが撫でる。

シアを見ていたような優しい眼差しで。思わずアルテナの頬が赤くなる。

 

「あっ!アルテナさんだけずるいですぅ~私もお願いしますぅ!」

 

こう調子に乗るのがわかっていたからか、ハジメはシアを撫でることはなかった。

だが、優花達に頭を撫でられているをシアを見る目を見れば…。

何となく未来は予測できるというものだろう。

優花達に甘えるシア、それを何とも言えない表情で見つめながらアルテナを撫でるハジメ。

そんな七人に、突如、声が掛けられた。

 

「あのぉ~、いい雰囲気で悪いんだけどぉ~、そろそろヤバイんで、ちょっといいかなぁ~?」

 

物凄く聞き覚えのある声。ハジメ達がハッとしてミレディ・ゴーレムを見ると、消えたはずの眼の光がいつの間にか戻っていることに気がついた。咄嗟に、飛び退り距離を置くハジメ達。確かに核は砕いたはずなのにと警戒心もあらわに身構える。

 

「ちょっと、ちょっと、大丈夫だってぇ~。試練はクリア!あんたたちの勝ち!核の欠片に残った力で少しだけ話す時間をとっただけだよぉ~、もう数分も持たないから」

 

その言葉を証明するように、ミレディ・ゴーレムはピクリとも動かず、眼に宿った光は儚げに明滅を繰り返している。今にも消えてしまいそうだ。数分しかもたないというのは本当らしい。

 

「で?何の話だ?死にぞこない。死してなお空気も読めんとは……残念さでは随一の解放者ってことで後世に伝えてやろうか」

「ちょっ、やめてよぉ~、何その地味な嫌がらせ。ジワジワきそうなところが凄く嫌らしい」

「で? 〝クソ野郎共〟を殺してくれっていう話なら聞く気ないぞ?」

ハジメの機先を制するような言葉に、何となく苦笑いめいた雰囲気を出すミレディ・ゴーレム。

 

「言わないよ。言う必要もないからね。話したい…というより忠告だね。訪れた迷宮で目当ての神代魔法がなくても、必ず私達全員の神代魔法を手に入れること。君達の望みのために必要だから…」

ミレディの力が尽きかけているのか、次第に言葉が不鮮明に途切れ途切れになってゆく。だが、そんなことは気にした様子もなくハジメが疑問を口にする。

「全部ね…なら他の迷宮の場所を教えろ。失伝していて、ほとんどわかってねぇんだよ」

「あぁ、そうなんだ…そっか、迷宮の場所がわからなくなるほど…長い時が経ったんだね…うん、場所…場所はね…」

いよいよ、ミレディ・ゴーレムの声が力を失い始める。どこか感傷的な響きすら含まれた声に、ユエやシアが神妙な表情をする。長い時を、使命、あるいは願いのために意志が宿る器を入れ替えてまで生きた者への敬意を瞳に宿した。

ミレディは、残りの七大迷宮の所在を語っていく。中には驚くような場所にあるようだ。

「以上だよ……頑張ってね」

「…随分としおらしいじゃねぇの。あのウザったい口調やらセリフはどうした?」

ハジメの言う通り、今のミレディは、迷宮内のウザイ文を用意したり、あの人の神経を逆なでする口調とは無縁の誠実さや真面目さを感じさせた。

戦闘前にハジメの目的を聞いたときに垣間見せた、おそらく彼女の素顔が出ているのだろう。

消滅を前にして取り繕う必要がなくなったということなのかもしれない。

「あはは、ごめんね~。でもさ…あのクソ野郎共って…ホントに嫌なヤツらでさ…嫌らしいことばっかりしてくるんだよね…だから、少しでも慣れておいて欲しくてね…」

「おい、こら。狂った神のことなんざ興味ないって言っただろうが。なに、勝手に戦うこと前提で話してんだよ」

ハジメの不機嫌そうな声に、ミレディは意外なほど真剣さと確信を宿した言葉で返した。

「…戦うよ。君が君である限り……必ず……君は、神殺しを為す」

「…意味がわかんねぇよ。そりゃあ、俺の道を阻むなら殺るかもしれないが……」

若干、困惑するハジメ。ミレディは、その様子に楽しげな笑い声を漏らす。

「ふふ…それでいい…君は君の思った通りに生きればいい…………君達の選択が……きっとこの世界にとっての……最良だから……」

 

いつしか、ミレディ・ゴーレムの体は燐光のような青白い光に包まれていた。

その光が蛍火の如く、淡い小さな光となって天へと登っていく。

死した魂が天へと召されていくようだ。とても、とても神秘的な光景である。

その時、おもむろにユエがミレディ・ゴーレムの傍へと寄って行った。

既に、ほとんど光を失っている眼をジッと見つめる。

「何かな?」囁くようなミレディの声。

それに同じく囁くようにユエが一言、消えゆく偉大な〝解放者〟に言葉を贈った。

「…お疲れ様。よく頑張りました」

「……」

それは労いの言葉。たった一人、深い闇の底で希望を待ち続けた偉大な存在への、今を生きる者からのささやかな贈り物。本来なら、遥かに年下の者からの言葉としては不適切かもしれない。

だが、やはり、これ以外の言葉を、ユエは思いつかなかった。

ミレディにとっても意外な言葉だったのだろう。言葉もなく呆然とした雰囲気を漂わせている。

やがて、穏やかな声でミレディがポツリと呟く。

「……ありがとね」

「……ん」

ちなみに、ユエとミレディが最後の言葉をかわすその後ろで、知った風な口を聞かれてイラっとしたハジメが「もういいから、さっさと逝けよ」と口にしそうになり、

それを敏感に察したシアやアルテナに「空気読めてないのはどっちですか!ちょっと黙ってて下さい!」と後ろから羽交い絞めにされて口を塞がれモゴモゴさせていたのだが、

幸いなことに二人は気がついておらず、厳かな雰囲気は保たれていた。

優花達はそれを苦笑いしながら見ていた…。

 

「…さて、時間のようだね……君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを……」

オスカーと同じ言葉をハジメ達に贈り、ゴーレムは淡い光となって天へと消えていった。

辺りを静寂が包み、余韻に浸るようにユエとシアとアルテナが光の軌跡を追って天を見上げる。

 

「……最初は、性根が捻じ曲がった最悪の人だと思っていたんですけどね。ただ、一生懸命なだけだったんですね」

「……ん」

「…長い間お一人で待っているなんて、どれだけの思いがあったのでしょうか?」

どこかしんみりとした雰囲気で言葉を交わすユエとシアとアルテナ。

だが、ミレディに対して思うところが皆無の男、ハジメはうんざりした様子で三人に話しかけた。

「はぁ、もういいだろ?さっさと先に行くぞ。それと、断言するがアイツの根性の悪さも素だと思うぞ?あの意地の悪さは、演技ってレベルじゃねぇよ」

「ちょっと、ハジメさん。そんな死人にムチ打つようなことを。ヒドイですよ。まったく空気読めないのはハジメさんの方ですよ」

「……ハジメ、KY?」

「ハジメ様…流石にそれはひどいと思いますわ。こう労ってあげても…。」

「お前らなぁ…はぁ、まぁいいけどよ。念の為言っておくが、俺は空気が読めないんじゃないぞ。読まないだけだ。」

「…………」もうネタは分かってるのよと優花達は苦笑いしたまま沈黙している。

 

そんな雑談をしていると、いつの間にか壁の一角が光を放っていることに気がついたハジメ達。

気を取り直してその場所に向かう。上方の壁にあるので浮遊ブロックを足場に跳んでいこうと、ブロックの一つに七人で跳び乗った。

と、その途端、足場の浮遊ブロックがスィーと動き出し、光る壁までハジメ達を運んでいく。

 

「「「「……」」」」

「わわっ、勝手に動いてますよ、これ。便利ですねぇ」

「……サービス?」

「凄いですわ!これも神代の技術なのでしょうか!?」

 

勝手にハジメ達を運んでくれる浮遊ブロックにシアは驚き、ユエは首をかしげ、アルテナは喜ぶ。

ハジメは何故か嫌そうな表情だ。優花達は相変わらず苦笑いを浮かべている。

十秒もかからず光る壁の前まで進むと、その手前五メートル程の場所でピタリと動きを止めた。

すると、光る壁はまるで見計らったようなタイミングで発光を薄れさせていき、スっと音も立てずに発光部分の壁だけが手前に抜き取られた。奥には光沢のある白い壁で出来た通路が続いている。

 

ハジメ達の乗る浮遊ブロックは、そのまま通路を滑るように移動していく。

どうやら、ミレディ・ライセンの住処まで乗せて行ってくれるようだ。そうして進んだ先には、オルクス大迷宮にあったオスカーの住処へと続く扉に刻まれていた七つの文様と同じものが描かれた壁があった。

ハジメ達が近づくと、やはりタイミングよく壁が横にスライドし奥へと誘う。浮遊ブロックは止まることなく壁の向こう側へと進んでいった。

 

 

くぐり抜けた壁の向こうには……

 

 

「やっほー、さっきぶり!ミレディちゃんだよ!」

ちっこいミレディ・ゴーレムがいた。

「「「……」」」

「ほれみろ。こんなこったろうと思ったよ」

「「「だろうとは、思ってた」」」

言葉もないユエとシアとアルテナ。ハジメ達の方は予想がついていたようでウンザリした表情をしている。ハジメが、この状況を予想できたのは、単にふざけたミレディも真面目なミレディもどっちも彼女であることに変わりはないということを看破していたからだ。

ウザイ文のウザさやトラップの嫌らしさは、本当に真面目な人間には発想できないレベルだった。

ミレディは、意思を残して自ら挑戦者を選定する方法をとっている。だとしたら、一度の挑戦者が現れ撃破されたらそれっきり等という事は有り得ない。

それでは、一度のクリアで最終試練がなくなってしまうからだ。

なので、ハジメは、ミレディ・ゴーレムを破壊してもミレディ自身は消滅しないと予想していた。

それは浮遊ブロックがハジメ達を乗せて案内するように動き出した時点で確信に変わっていた。

浮遊ブロックを意図的に動かせるのはミレディだけだからだ。

黙り込んで顔を俯かせるユエとシアとアルテナに、ミレディが非常に軽い感じで話しかける。

 

「あれぇ?あれぇ?テンション低いよぉ~?もっと驚いてもいいんだよぉ~?あっ、それとも驚きすぎても言葉が出ないとか?だったら、ドッキリ大成功ぉ~だね☆」

ちっこいミレディ・ゴーレムは、巨体版と異なり人間らしいデザインだ。

華奢なボディに乳白色の長いローブを身に纏い白い仮面を付けている。

ニコちゃんマークなところが微妙に腹立たしい。

そんなミニ・ミレディは、語尾にキラッ!と星が瞬かせながら、ハジメ達の眼前までやってくる。

ユエとシアとアルテナの表情は俯き、垂れ下がった髪に隠れてわからない。

もっとも先の展開は読めるので、ハジメ達は一歩距離をとった。

 

 

ユエがシアがアルテナがぼそりと呟くように質問する。

「……さっきのは?」

「ん~?さっき?あぁ、もしかして消えちゃったと思った?ないな~い!そんなことあるわけないよぉ~!」

「でも、光が昇って消えていきましたよね?」

「ふふふ、中々よかったでしょう?あの〝演出〟!やだ、ミレディちゃん役者の才能まであるなんて!恐ろしい子!」

「あんな神妙な感じだったのは…?」

「え?だから〝演出〟だよ!見事だったでしょ?騙されちゃったでしょ?ミレディちゃん凄い♪」

テンション上がりまくりのミニ・ミレディ。比例してウザさまでうなぎ上りだ。

そんなミニ・ミレディを前にして、ユエは手を前に突き出し、シアはドリュッケンを構えた。

アルテナはハジメ謹製の銃を取り出したのを見て、流石に、あれ?やりすぎた?と動きを止めるミニ・ミレディ。

「え、え~と……」

ゆらゆら揺れながら迫ってくるユエとシアとアルテナに、

ミニ・ミレディは頭をカクカクと動かし言葉に迷う素振りを見せると意を決したように言った。

「テヘ、ペロ☆」

「……死ね」

「死んで下さい」

「…安らかな眠りにつかせてあげますわ!」

「ま、待って!ちょっと待って!このボディは貧弱なのぉ!これ壊れたら本気でマズイからぁ!落ち着いてぇ!謝るからぁ!」

 

しばらくの間、ドタバタ、ドカンバキッ、バキュン。いやぁーなど悲鳴やら破壊音が聞こえていたが、ハジメは一切を無視して、部屋の観察に努めた。

部屋自体は全てが白く、中央の床に刻まれた魔法陣以外には何もなかった。

唯一、壁の一部に扉らしきものがあり、おそらくそこがミニ・ミレディの住処になっているのだろうとハジメは推測する。

 

ハジメは、おもむろに魔法陣に歩み寄ると勝手に調べ始めた。

それを見たミニ・ミレディが慌ててハジメのもとへやって来る。

後ろからは、無表情の吸血姫とウサミミとエルフがドドドドッと音を立てながら迫って来ている。

 

「君ぃ~勝手にいじっちゃダメよぉ。ていうか、お仲間でしょ!無視してないで止めようよぉ!」

そんな文句を言いながらミニ・ミレディはハジメの背後に回り、三人の悪鬼に対する盾にしようとする。

「…ハジメどいて、そいつ殺せない」

「退いて下さい。ハジメさん。そいつは殺ります。今、ここで」

「ハジメ様。その汚物はここで処理しないといけませんわ!」

「お前ら、落ち着け。まさか、そのネタをこのタイミングで聞くとは思わなかった。っていうかいい加減遊んでないでやる事やるぞ」

ハジメは、若干呆れた表情でユエとシアとアルテナに軽い注意をする。

背後のミニ・ミレディが「そうだ、そうだ、真面目にやれぇ!」とか言ってはやし立てたので顔面を義手でアイアンクローしてやる。

ニコちゃんマークが微妙に歪み悲痛な表情になっているが気にしない。

そのまま力を入れていきミニ・ミレディの頭部からメキメキという音が響きだした。

「このまま愉快なデザインになりたくなきゃ、さっさとお前の神代魔法をよこせ」

「あのぉ~、言動が完全に悪役だと気づいてッ『メキメキメキ』了解であります!直ぐに渡すであります!だからストップー!これ以上は、ホントに壊れちゃう!」

ジタバタともがくミニ・ミレディに取り敢えず溜飲を下げたのか三人共落ち着きを取り戻し、

これ以上ふざけると本気で壊されかねないと理解したのかミニ・ミレディもようやく魔法陣を起動させ始めた。

魔法陣の中に入るハジメ達。

今回は、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。

ハジメと優花達は経験済みなので無反応だったが、シアとアルテナは初めての経験にビクンッと体を跳ねさせた。

ものの数秒で刻み込みは終了し、ハジメ達はミレディ・ライセンの神代魔法を手に入れる。

 

「これは……やっぱり重力操作の魔法か」

「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね…って言いたいところだけど、君とウサギちゃんと剣士ちゃんは適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」

「やかましいわ。それくらい想定済みだ」

ミニ・ミレディの言う通り、ハジメとシアは重力魔法の知識等を刻まれてもまともに使える気がしなかった。

ユエが生成魔法をきちんと使えないのと同じく、適性がないのだろう。

「金髪ちゃんは適正ばっちり。修練すれば使いこなせるようになるね。ナイフ使いの子と治癒師の子は…金髪ちゃん程じゃないけど適正はあるよ。リューちゃんそっくりの子は…私ぐらいに適正があるね…どゆこと?」

「ウサギちゃんは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君は…生成魔法使えるんだから、それで何とかしなよ。剣士ちゃんも、剣の重力を調整したり、ウサギちゃんと同じぐらいは出来ると思うよ」

 

ミニ・ミレディの幾分真面目な解説にハジメは肩を竦め、ユエは頷き、シアは打ちひしがれた。

優花と香織は、一応の適性がある事にびっくりしていた。生成魔法のときは無かったので。

雫はちょっとガッカリしていた。刀に重力魔法付与はハジメにしてもらえれば…と考えていたのでどうすれば使いこなせるか、既に脳内で試行錯誤しているようだ。

アルテナはミレディ程の適正があると言われ、一番驚いているようだ。

未だ得意魔法や固有魔法が判明していないのに…と。

落ち込むシアを尻目に、ハジメは更に要求を突きつける。遠慮、容赦は一切ない。

 

「おい、ミレディ。さっさと攻略の証を渡せ。感応石みたいな珍しい鉱物類も全部よこせ」

「……君、セリフが完全に強盗と同じだからね?自覚ある?」

ミニ・ミレディは、ごそごそと懐を探ると一つの指輪を取り出し、それをハジメに向かって放り投げた。パシッと音をさせて受け取るハジメ。

ライセンの指輪は、上下の楕円を一本の杭が貫いているデザインだ。

更に虚空に大量の鉱石類を出現させる。おそらく〝宝物庫〟を持っているのだろう。

そこから保管していた鉱石類を取り出したようだ。

やけに素直に取り出したところを見ると、元々渡す気だったのかもしれない。

何故か、ミレディはハジメが狂った神連中と戦うことを確信しているようであるし、このくらいの協力は惜しまないつもりだったのだろう。

 

「おい、それh「「「ハジメ(君)、待って!」」」

「何だよ?攻略報酬として他にも貰おうと思っただけなのに。」

「それ以上は、強盗の所業よ?流石に見逃せないわよ。婚約者として。」

「…ハジメ君、樹海でシア達を守った時は優しさが残ってると思ってたけど…。」

「ハジメ君。ミレディさんに聞きたい話があるのに、そんな態度とっちゃ駄目だよ!」

「うわぁ~ん。この娘達なんていい子なんだろう!この白髪眼帯君とは違うねっ♪」

 

※原作通り本当に根こそぎ奪っていこうと続けていたら、あの放出され方で迷宮から出る羽目になってました。優花達のナイスプレーという所でしょうか。

 

 

「さっきの戦闘前に、魂の定着の方はラーくんに手伝ってもらったって言ってたわよね。」

「ラーくんって、多分。ラウス=バーンさんの事でしょ。ということは神山の神代魔法は魂とかに関するものじゃないかしら?」

「その詳細は分からないけど、その〝宝物庫〟の中にミレディさんの本当の身体入ってるんじゃないかな?」

「…ん。ウザくて忘れてたけど、一人で何百年も一人でここで待ってたのなら凄い…。」

「本当ウザくてまだムカついてますけど、優花さん達に免じてここは許してやるですぅ」

「私も我慢いたしますわ!リューティリス様の事とか、もっとお話聞きたいですわ!」

「はぁ。仕方ねぇな…全員にそこまで言われちゃあな。」

 

「ありがとう~♪危うく本当に天に召されるトコだったよ…。」

「で、なんでラーくん名前の事とか。私の本当の身体の事とかそう思ったりしたの?」

 

「ハジメが戦闘前に言った、オスカーさんの手記に色々書いてあったのよ。」

「"解放者"達の名前。性格とか試練の大まかな場所とか、貴方のウザさとか…ね。」

「で、"解放者"のリーダーだったミレディさん本人が試練をしているなら、いつか平和になった時のために本当の身体に戻れる様…準備はしてあるんじゃないかな?とか思ったの。」

「オーちゃん…。うん。本当の身体はあるよ?皆が協力してくれたお陰でいつでも戻ろうと思えば戻れる様にしてくれたんだ…。」

感慨深く呟くミレディ。ゴーレムなので表情はわからないが、人間の体なら察せただろう。

 

「で、ミレディの本当の身体があったとして…優花、雫、香織。どうしたいんだ?」

察しているものの、あえて三人に尋ねるハジメ。ミレディも同様の様で頷いている。

 

「ユエがオルクスの深層で一人で数百年閉じ込められてたのを、私達は助けたわけでしょ?」

「なら、ミレディも助けてあげてもいいんじゃない?試練の攻略って面では無理だとしても。」

「ミレディさんが望んでるなら、私達と一緒に来てほしいなって思ってるよ。この迷宮の試練もミレディさんがいなければ成り立たないとかじゃなければ、是非にって。」

「…ん。私もそうだったけど魔法の使い手としてもミレディは見事。教授して貰いたい。」

「ハジメさんが樹海の中で語ってくれた話通りなら、多種族が協力しあって神に挑もうとしたって事ですよね?強い人は歓迎ですよぅ!」

「ハジメ様が私やシアさんを救ってくれた様に。ミレディさんも一人でずっと辛い思いをしてたなら、私達の様に助けてあげてほしいですわ。」

ユエやシア、アルテナまでもがミレディに対して、優しい目を向けている。

 

「はぁ…。俺の仲間達はこういってるが、どうするんだ?ミレディ。」

「ううっ。グスッ。なんていい子たちなんだろう。…でも…。」

「あぁ、エヒトとかっていう糞神の事か?戦闘前はああ言ったが、お前の言う通り必ず殺すさ。じゃないと、また俺達の世界や他の世界に干渉するかもしれないだろ?」

ハジメは決意のこもった目でミレディを見ながら話しかけた。優花達もそれに頷いている。

 

「わかったよ。このミレディちゃんも、貴方達と一緒に行ってあげる!なんてったって美少女天才魔法使いだからねっ!奥の部屋で元の身体に戻ってくるけど覗かないでよ?チラチラ☆」

そう言いながら、奥の隠し部屋へと入っていった。

 

「相変わらず、ウザいなぁ…アイツ。」ハジメは溜息をつきながらそう言った。

「元の性格もあるのかもしれないけど、案外素では寂しかったのかもよ?」と優花は言う。

「ユエより前からずっと一人でここに居たんだとしたら…」雫は感慨深そうに言った。

「ミレディさん、どんな感じなんだろうね?」香織は本当の身体がどうなのか興味津々のようだ。

「…ん。私もハジメ達に助けられるまで辛かった。」ユエは孤独の辛さを共感しているよう。

「ハジメさん達が、あの時、私の見た未来通り助けてもらえてなかったら、私は今ここにはいないんですよね…。」シアは自分に置き換えて頑張って変えた未来を思い出しているようだ。

「私も、ハジメ様達が来ていなければ…ずっと一人で樹海の中で居たのかもしれませんわね…。」

アルテナも自分で決意してついてくるまでの決意を思い出しているようだ。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

その頃。壁の中のミレディの個室の中では。ミレディが元の身体へと戻ろうとしていた。

その前に、壁に飾られた数枚の写真に向かって囁くように話しかけていた。

 

「みんな、私。彼らについていくね。皆と誓った『あのクソ神を殺して、自由な意志の元に生きていける世界を…。』ってそう、その約束を守るためにずっと一人で頑張ってきたけど。」

「私がついていく事で、あのクソ神も何らかのアクションを起こしてくるかもしれない。でも、もう決めたんだ。あの時、私が皆を誘って…世界を救おうって着いてきてくれたように。

今度は私が誘われる側だったけど、必要とされてるみたいだから。だから行くね。

オーくん。ラーくん。ナーくん。バンくん。メル姉。リューちゃん。そしてベル…。」

「行ってくるよ。そしてきっと皆との約束を叶えてみせるから!」

そう言いながら、元の身体が封印されていたアーティファクトを起動した。

 

※ミレディの他の解放者への呼び方は適当です。ありふれ零をちゃんと読んでないのもありますが、全員分の呼称がまだ出きってない?とは思いますので。出ててももう変える気もありません。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ハジメ達がミレディを見送ってから数分後。再び、壁が開いた。

 

「遅かったじゃねぇ………か…」ハジメは驚愕している!

「「「本当に美少女だった!」」」優花達も驚愕している!

「…ん。私とどっこいどっこい。」ユエは何処かを比較しながら頷いている!

「あのゴーレムがこの子だったんですぅ!?」シアは驚きのあまり開いた口が塞がらないようだ!

「まぁ!流石は偉大な解放者様ですわね!美しく可愛らしいですわ!」アルテナは褒め称えた!

 

「じゃっじゃ~ん♪偉大なる解放者がリーダー、天才美少女魔法使い、ミレディ・ライセンちゃん、麗しく元の身体で見参!キラッ☆」

ユエのような金髪。シアの髪の色の様な蒼穹の目。顔つきも美少女と自分で言うのも否定できないレベル。体つきもスラッとしていて…一部のボリュームは無いようだが。

とても美少女じゃないとは言えない15~18歳ぐらいに見えるミレディ…らしき女の子がポーズをとっている!微妙にキマってるのがウザったらしい。

 

「「「「「「「………。」」」」」」」ハジメ達は驚愕で沈黙している!

「なんだよぅ!ノーリアクションですかぁ?せっかくミレディちゃんが数百年ぶりに元の身体に戻ったっていうのに…。シクシクチラチラってしちゃうぞ♪」

「「「「「「「あ、ミレディ(さん)だ!(だわ、ですぅ、ですわ。)」」」」」」」

 

こうして、旅の仲間にミレディが加わった。




うーん、自分の中では上手く纏めれた…?って感じになりました…が。
アンケート集計結果通り、「ミレディ同行」で書き上げました。

この展開だと、ハジメに対する好感度より優花達の方が高い。
ハジメハーレムに入ることは…あるのだろうか。
取り敢えず、要所要所以外はカット及び原文を参考にしています。

最後の方に書きましたが、ありふれ零を私はきちんと読んでません。
ミレディの性格設定や喋り方。容姿や風貌についても原作からの推察がメインです。

やっぱり、ライセン大迷宮話書いたら…ハジメ達の会話より
設定解説や地の文含めて10,000字をゆうに超えたですよ…。
本当なら、最後のミレディ合流後の各キャラとの会話ぐらいまでは書きたかった。
ですが、流石に20,000字超えとか…もう気力的に無理です。

この後は、普通にブルックに戻ってからフューレンへ。
まぁ、原作通りトラブルに巻き込まれて…ウルへ。
そこで愛子達と合流して…VSティオ戦と蹂躙劇まででこのお話は…終わりかな?
無理すれば書けないことはないですが、原作では居ないキャラ多数。
ミレディが居ることで原作は既に完全崩壊。
予告通り、ウルでは更に「奈々・妙子」もハジメ達と合流します。
…最早、ハジメハーレム増加の旅。そんなストーリーになります。

で、何度も言うようにオリジナル展開になりすぎるという点で。
絶対的な最終終着点(これ以上は無理)は、ホルアドに戻った場合の…
勇者達のパーティー救出のとこまでで、檜山・天之川・小悪党組の断罪。
(檜山はまぁ…何度も書いてる通り処されます。)
ってトコ以降は書き上げるのは不可能です。

その際は、新規小説として一から書き組み立て直した方が早いでしょう。

あ、最後になりますが。
アンケートに回答有り難うございました。250件近い回答を参考にさせて頂きました。

次の構想はまだ定まってないので、大分時間がかかるかもしれません。
期待せずにお待ちくださいませ。


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王道ルート (ハジメが嫌われてないリア充ルート兼雫本妻ルート)
case7 「ハジメ、リア充になる!」


前書きとして設定を書いておきます。

・ハジメの容姿に関しては、原作通りです。

・ハジメ・雫・香織が幼馴染です。(天之川や龍太郎は幼馴染ではありません。)
※天之川はご都合主義思考なままなので雫や香織を幼馴染と思い続けてます。

・天之川が幼少期に八重樫流道場で、雫に対する独占欲の暴走でハジメに傷を負わせた(ハジメとの勝負に負けたのに納得できないで)事により破門になっています。(決定したのは虎一と鷲三で、勿論天之川家の了解も取ってます。)

※その時に、香織と雫と龍太郎もいたので香織と雫は天之川を心底嫌っています。
龍太郎は天之川の親友として傍にはいますが、脳筋として何も考えずに追随はしません。(どちらかというとアフターの性格に近いです。)

・龍太郎はハジメに対して、八重樫流道場で鍛えていることも知っているので普通に友人に対する態度をとっています。寧ろお勧めの筋肉漫画を聞いてくるぐらい。

・小悪党4人組はいません。
理由は、香織に対する暴行未遂で既に退学処分を受けています。
※防いだのはハジメと雫と虎一や鷲三がつけた八重樫流道場の門下生の護衛です。

・天之川以外、ハジメに対する悪印象を持っているクラスメイトはいません。

・小悪党4人組がいないので、オタク=悪的な雰囲気はクラスにはありません。

・男子は、香織や雫が傍にいるのは羨ましいとは思っていても当人達の幸せそうな状況を見ているので、リア充爆発しろぐらいな印象です。

・女子(香織と雫除く)は、ハジメの両親の事も知っているので好印象抱いている娘が多いぐらいです。寧ろ良物件として狙われているぐらいでもあります。

・ハジメの"趣味の合間に人生"を座右の銘としている部分は変わりありませんが、趣味はゲーム・アニメというサブカルチャーだけでなく自己鍛錬や友人付き合いも含まれています。

・担任は勿論、原作設定から変えて愛子先生です。(社会科担当であるのは変わりませんが。)

と、前書きとしての大体の設定はこんなところです。

では、本編をどうぞ。

※メイン弓様、誤字報告ありがとうございます。


月曜日。

 

それは一週間の始まりとされ。大多数の人は日曜日明けの苦痛を感じ、

溜息を吐きながら仕事や学校など憂鬱なイメージ持って過ごしているのだろう。

 

だが、ここにそれに当てはまらない少年がいた。

 

彼の名は「南雲ハジメ」現在高校2年生の少年だ。

 

「ん~いい天気だなぁ!良し、ちょっと早いけど剣術道場に行こうっと!」

 

因みに、まだ日が明けて間もない早朝である。

 

 

彼の住む家から通っている道場まではおよそ数駅分は離れている。

 

 

その中間地点ぐらいに彼が通う高校があるのは余談だろうか。

 

 

と、早朝に家を出ることを決めたハジメは、動きやすい格好に着替えた上でリビングへと下りていった。(制服や授業道具を入れたカバンは別に持った状態で。)

 

リビングに着くと、部屋から下りてきたハジメを見て、

父親の南雲愁が物凄く眠そうな表情を浮かべながらハジメへと声をかけた。

 

「ハジメ、また朝から虎一のとこか? こんな朝早くから精が出るなぁ?」と。

 

「そうだよ。父さんまた、徹夜明けだったの?今日は休みなんでしょ。早く寝なよ?母さんだって、締め切り明けで疲れ切って寝てるんだから。」

 

「そうするよぉぉぉ・・・。ハジメ、気をつけて行って来いよぉ?ふぁぁ、おやすみ」

 

「じゃあ、行ってきます」と声をあげつつ、家を出て道場へと向かっていった。

 

そう、数駅分離れている道場へと。

 

移動手段は勿論、ランニングだ。

 

「今日は何分でつけるかな?」

と走りだし、時計の長針が90度分進む頃には目的地の道場へと着いていた。

 

その道場には墨汁で一筆書きしたような字で「八重樫」と書かれているのだ。

 

「おはようございます!南雲ハジメです。学校前にいつもの稽古をお願いしたくて来ました、今日もよろしくおねがいします!」

と声をかけながら、道場の中へと入って行った。

そう父との会話で名前が挙がった通り、親同士が知人でとても仲がいいのだ。

 

「おはよう、ハジメ君。」そう声を掛けてきたのは八重樫流師範代の八重樫虎一。

 

「朝から元気が良くて、相変わらず素直で実直じゃのぅ。なぁハジメ、雫を嫁にもらってやってはくれんか?」とハジメを褒めつつ、孫の嫁入りを勧めたのは八重樫流師範の八重樫鷲三。

 

「あはは、雫さんがその気になったらお願いするって事で駄目ですかね?」

と苦笑いしながらハジメは返答する。

 

そのような毎度恒例な(笑)挨拶を交わした後、まずは虎一と。そして鷲三と。

剣を重ね合わせる事1時間半程度。

 

「まだまだお二方には遠く及びませんね。」と荒い息を整えるようにしながらも悔しそうなハジメ。

 

「流石にその年で追いつかれてしまっても困るよ」と苦笑い気味な虎一。

 

「筋は良いし、教えた事を素直に吸収してくれるから鍛えがいがあるわい」とにこやかな鷲三。

 

道場の床に正座するように座り、頭を下げ。

 

「今日もありがとうございました!また後日お願いします。」と二人に言った所で、

 

「あら?おはようハジメ。今日もお父さんやお祖父ちゃん達に鍛えてもらっていたの?」と別の人物から声がかけられた。

その人物こそ八重樫虎一の娘であり、八重樫鷲三の孫の八重樫雫。

先程、鷲三がハジメに嫁入りを勧めた子である。

 

八重樫雫という女の子は、ハジメよりちょっぴり背が高く、顔立ちもとても整っており本人も道場で鍛えていることからスタイルも良く。

髪は艷やかな黒髪をポニーテールで結んでおり、外見はカッコイイ系と思われても仕方ない感じに見えるが、中身は「可愛いものが好き」と、とても普通の女の子らしさが満開の子なのである。

 

ハジメとも長い付き合いがあるので、その事を当然知っているハジメに対しては素直に接してきたり、甘えてきたりする様な関係でもある。

ハジメもまた両親の仕事柄から貰った可愛い物をプレゼントして、雫の心からの笑顔を引き出したりもしている。

 

そんな事をハジメが考えていると、雫が

 

「それより、そろそろ汗流して御飯食べないと学校遅れちゃうんじゃない?」と。

 

道場に掛けられた時計を見ると、7時をちょっと回った所。

 

「あ!雫さんありがとう。虎一さん、鷲三さんシャワーお借りしてもいいですか?」

とハジメが言うと、二人共ニヤニヤした笑みを浮かべながらからかうように言った。

「むしろ、雫と一緒に入ってきても良いんだよ?」と。

 

その言葉を聞いた二人は顔を真っ赤にしながら。

 

「朝から何言ってるの?お父さんもお祖父ちゃんも!まったく!もぅ!」

 

「っ!そんな事出来るわけないじゃないですか!雫さん・・・綺麗だろうな

(誰にも聴こえない声量で心の声を出してしまったハジメ。)

 

「とりあえず、お借りしますね?」とその空気を誤魔化すように告げて母屋の方のお風呂へと向かったハジメ。

 

「さて、お母さんにハジメの分のご飯もお願いしてこなきゃ。」と同じく母屋へと向かっていった雫。

 

二人がその場を離れた後、父と祖父は「まだまだ先になりそうだなぁ」と話してた・・らしい。

 

シャワーで汗を流し、持ってきていた制服に着替え八重樫家一同と朝食を終え一息ついた頃

 

その場に別の人物の声が響いた。

 

「雫ちゃん、おはよう!今日も一緒に学校に行こうよ!」

そう声を掛けてきたのは、雫の親友である白崎香織である。

 

腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげでスッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。

いつも微笑の絶えない彼女は、非常に面倒見がよく責任感も強いためよく頼られる。それを嫌な顔一つせず真摯に受け止めるのだから高校生とは思えない懐の深さだ。

 

過去に雫が嫌な思いをしていた時に、誰よりも先に雫の痛みに気付き、

むしろ「雫ちゃんは可愛いんだからもっとオシャレさせたり髪を伸ばすべき」と、

八重樫流に道場破りの様に入ってきた子である。剣術を習ってるわけでも無いのに満場一致で門下生(家族)扱いされている子でもある。

 

香織と雫二人が並ぶと周囲の目をとても惹く程、二人共美少女である。

ハジメと香織は直接知り合ったという形ではなく、ハジメが雫の道場に良く来ていて雫とも仲が良い事から、自然と接点が出来て仲良くなっていったという関係の幼馴染で、

雫がハジメに好意を持っていることも、香織がハジメに好意を持つキッカケもお互いに話し合ったりしているのが雫と香織とハジメの関係である。

このハジメ君は鈍感では無いので、二人の好意には普通に気づいています。

 

その声に反応して一同が時計を見ると、そろそろ出ないと遅刻する時間になろうとしている。

 

「ほら、ハジメ。香織が呼んでるし行くわよ!」

 

「ごちそうさまでした!本日もお世話になりました。うん、雫さん行こう。」

 

と言いながら二人で八重樫家一同に「行ってきます」と言い、香織の元へと走っていった。

 

家の門をくぐった所で香織が

 

「あれ?ハジメ君、今日は雫ちゃんと一緒なの?・・・稽古の日?」と、

ほっぺをプクーっと膨らませるような表情でハジメに質問してきた。

 

「そうだよ。本来なら今日は違ったんだけど、朝早く起きちゃって。それならって無理言って虎一さん達に稽古つけてもらってたんだ。」

 

「そうよ。朝ご飯にお祖父ちゃん達を呼びに行ったら、ハジメがいたんだもの。ビックリしたわよ。」と雫。

 

それを聞いて何かを納得できたのか、満面の笑みを浮かべ香織は言った。

 

「なら三人で一緒に登校しよう!三人でってのも随分久し振りだしね♪」

 

そうして三人で仲良く会話しながら、ゆっくり登校したが遅刻にはまだ余裕がある時間には学校に着いていた。

三人とも同じクラスであり、ハジメを挟んで席が隣同士という席順でもあるのでそのまま教室へと入って行った。

 

そして、席について間もなく

 

「南雲君、八重樫さん、白崎さん。おはよう」

 

そう声を掛けてきたのは園部優花と菅原妙子である。

 

もう一人の宮崎奈々は独特の呼び方で挨拶をしてきた。

 

「南雲っち、雫っち、香織っち。おはよう」

 

それには三人ともそれぞれ、

 

「園部さん、菅原さん、宮崎さん。おはよう」と返した。

 

そこでハジメが思い出したように、

 

「あ、園部さん。昨日はご馳走様でした。玉井くん達と食べたご飯とっても美味しかったよ。お店でも言ったんだけど、『また食べに行くので』とご両親に伝えてもらってもいいかな?」

 

「あ、うん。分かったよ、帰ったら伝えとくね。」と優花が返すと。

 

奈々と妙子がニヤニヤしつつ、優花をからかうように言った。

 

「それって、今度はご両親に挨拶しに行くから、お前の料理食べさせて的な?」

 

それを聞いた優花が焦ったように、でもちょっと頬を赤らめて

 

「いやいや、その前に玉井達と食べに来たって・・・なんでそうなるのよ?そして、南雲君の隣の二人を見て!目が笑ってないから!」

 

慌ててその場の全員で目を向けると二人共笑顔なのに、目が笑ってないという怖さ。

思わず空気が凍りつきました。

 

その場を和ますように、香織と雫の肩を軽く叩き、笑顔を浮かべハジメが席を離れて行った。

 

行き先は清水幸利のところだった。

 

「清水君、おはよう。この前借りた本面白かったよ。また今度お勧めなのがあったら教えてね?」と言いながら借りた本を幸利へと返した。

 

「ああ、南雲、おはよう。気に入ってもらえたなら良かった。俺こういう性格だから本だけは色々読んでるし、お勧めならいくらでもあるから何時でも良いよ。」とちょっと卑屈そうに言った。

 

「清水君には、ちゃんと分かってくれる彼女がいるじゃないか。ほら、隣で中村さんが「私は?」って顔で見てるし、それを冷やかそうと谷口さんが『笑顔』で見てるよ?」と言うと。

 

「南雲君の言う通りだよ。本ばっかり読んでるわけじゃないでしょ?」と恵里。

 

「だよねぇ?恵里ったら最近、私との付き合い悪いの!清水君と同じ本読んでて、鈴のこと二人で無視するんだよ!・・・どう思う南雲君?」と鈴が言う。

 

「そこで谷口さんもその本読んで三人で内容について話すのは・・・?駄目なの?」と返すと

 

「その手があったか!」と手を叩きと、何かを考えているみたいだった。

 

三人とも納得したみたいだったので、自分の席の方へ戻っていくと。

 

先程名前を上げた玉井淳史、相川昇、仁村明人が居た。

 

「南雲、またどっか一緒に行こうぜ?園部の店の飯でも良いしな」と笑顔で声をかけてきた。

 

「うん。むしろ時間が合うときならいつでも誘ってよ。」とハジメが返答しながら、

 

席について、ふと後ろを見ると。

 

「わ!遠藤君、いきなり後ろに立たれるとびっくりするよ!」と、大声を上げてしまった。

 

両隣にいた香織と雫も、突然大声を上げたハジメにビックリして後ろを振り返って、小声で

「あっ・・・」と呟いた。

 

それを聞いた遠藤君はとても悲しそうな顔で。

 

「南雲が席に戻ってくる前にはこの辺りに居たんだ。誰も気づいてくれなかったけど。隣りにいた筈の重吾や健太郎達ですら見失ってるって・・・ふぅ(悲」

 

その会話を聞いて、やっと遠藤くんの存在感が表に出できたのか。

 

「浩介スマン!南雲が驚いて声をあげるまで、素で見失ってた!」と永山くんと野村くんが平謝りしてた。

 

「私達もだよ……。遠藤くん、ごめんね?」と辻さんと吉野さんも苦笑いを浮かべつつ謝っていた。

 

あとこのクラスで挨拶していない生徒はあと2人。

 

天之川君と坂上君だ。

 

坂上君は、空手をやってて鍛える事が一番!みたいなタイプの性格で、

ハジメも八重樫流道場で鍛えてると知ってからはとてもフレンドリーに接してくれるし、

格闘系漫画等を貸したりする仲でもある。

 

問題は天之川君だ。

 

彼は僕のやる事なす事が全て気に食わないと言わんばかりに、何かにかけて突っかかってくる。

 

特に香織さんや雫さんと仲良く話をしていると、不機嫌そうに会話に割って入るような事を平気で行い、屁理屈やご都合解釈で僕を責めるので。

 

香織さんも雫さんもそれを聞いてる周りの皆も、親友の坂上君ですら不快そうな表情になる。

 

香織さんと雫さんは天之川君の事を完全に嫌っている。理由は前書きに書いた通り。(メタ発言)

 

僕自身も香織さんや雫さんやクラスの皆の空気を悪くしてまで仲良くしたいと思わないし、多分向こうもそう思ってないという状況である。

 

と思考の渦にのまれていると、坂上君が近くまで来ていて挨拶をしに来てくれた。

 

「おはようっす南雲!白崎と八重樫と一緒に登校したって事は今日も鍛錬ってトコか?」

 

「おはよう、坂上君。そうだよ、毎日ってわけにはいかないけど鍛錬休むと色々身体が鈍っちゃうからね。これは坂上君に言うまでもないか。」

 

「んだな。そのストイックに鍛える姿勢、カッコいいぜ?」とサムズアップしながら言うと。

 

「「そう(だ)よね!?ハジメ(君)はカッコイイのよ!!」」と両隣から声が上がった。

 

その声がクラス中に響いたせいか、男子達はニヤニヤしながらでも少し羨ましそうにハジメを見て、

女子達は、雫と香織の意見に同意する様にウンウンと首を縦に振りながら一部の子はハジメに親愛を込めた目でハジメを見ていた。

目の前にいた坂上君は、自分の発言からこんな空気になるとは…と思いつつもハジメの在り方はカッコイイと言うのには同意するので、苦笑いする様にハジメを見ていた。

 

 

…そこで、その空気を壊すのが天之川だ。

 

「龍太郎も雫も香織も、優しいな。そんな暴力的なヤツからは離れた方がいい。」

 

そんな発言を彼がした瞬間、教室の空気と温度が変わった。

 

ニヤニヤする様にハジメを見ていた男子達は、何言ってるんだコイツと言う様な冷めた目を天之川に向け、

女子達は親愛・友愛の視線で見ていたハジメから、軽蔑・嫌悪・侮蔑の視線に切り替えて天之川を見ていた。

 

「「はぁ!?」」光輝の発言で雫と香織が完全にキレた。

「おぃ、光輝。流石にその発言はありえないぞ?」と龍太郎が言う。

「誰だっけ?あの人。ああ、私と雫ちゃんのストーカーだったかな?勝手に名前で呼ばないで!って何度も言ってるのに直そうともしない勘違い君か。」とハイライトを消した目で光輝を睨む香織。

「そうよ、香織。正々堂々と勝負してハジメに負けたにも関わらず、『ハジメが勝ったのは卑怯な手段を使ったからだ!』って難癖つけた癖に、ハジメの背後から殴りかかって傷つけた卑怯者。」と憎悪を込めた目で睨む雫。

 

「雫さん、香織さん落ち着いて!僕なら大丈夫だから!坂上君も皆もありがとう。あんな戯言気にしてないから!天之川君もいい加減、二人の嫌がる事やめてくれない?」と冷静に皆を諭す様に言った。

 

「「ハジメ(君)。でも・・」」と納得できず怒りを収める事が出来ない雰囲気だったので、ハジメは二人の手を取り立ち上がらせそっと包み込むように抱きしめた。

 

「ありがとう、僕のために怒ってくれて。こんなにも想われてる僕は幸せ者だね。」ととびっきりの笑顔で優しい声音で言った。

 

「「・・・・・ぅん。わかったょぅ」」と呟きながら二人共ハジメの胸元へと赤くなった顔を隠すためにしがみついた。

 

(この際に天之川が余計な発言をさらにしようとしてましたが、龍太郎が止めています)

 

ハジメの発言でクラスの空気が元に(?)戻り、落ち着いたところでチャイムが鳴り担任の愛子先生が入ってきた。

 

「おはようございます、皆さん。なにかありましたか?」と愛子先生が疑問を口にしたので、

 

「「「「いつものアレで~す!!」」」」とクラスメイト達が答えた。

 

「そうですか。それなら深くは追求しません。ですが天之川君。相手が嫌がる事や事実無根な事で他人を責めるのは人として最低なことです。社会に出ればそんな事は通用しません。これはクラス全体にも言えることですから、皆さんもちゃんと念頭に置いて行動してくださいね?」と諭す。

 

「「「「わかりました、愛ちゃん先生!!」」」」と一部の生徒が言うと、

 

「愛ちゃん先生って言わないで下さい!ちゃんと愛子先生って呼んで下さい!」と可愛らしく怒る。

 

そんなこんなで朝のHRが終わり、授業が始まり、あっという間に昼休み。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そして、トータスという異世界にクラスごと召喚されます。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




読んで頂けたらお分かりの通り。

・小悪党4人組はいませんし、清水君には恵里という理解者がいるので、トータスで二人が暴走することはありません。暴走するのは勇者(笑)だけです。
・恵里の幼少期の事故の時、偶然通りがかった清水君が父親と恵里を助けたという状態で、恵里の母親も暴走していませんので恵里は善性の状態のままです。

・ハジメは趣味だけに思考を持っていかれているわけではなく、友人との付き合いも大事だと思っているのでクラスメイトとは普通に仲が良いです。

・父親の仕事のサポートのおかげで、理系・数系の成績は学年トップクラスです。
・母親の仕事のサポートのおかげで、美術・美的センス・芸術的な能力はかなり高いです。
・八重樫家と南雲家では既にハジメと雫の結婚話が現実的な段階で進むほど仲が良いです。
・ハジメは八重樫流の裏も知っていますし教えられていますが、雫は原作通り表の八重樫流しか知りません。
・勿論交流には白崎家も関わってますが、智一さんは原作アフター通り「香織がハジメに好意を持っている事を気に食わない」状態です。薫子さんも原作通り。


※※
余談ですが、最近小説書き起こしてる時の香織さんのイメージテーマソングが
メロキュアさんの「1st Priority」なのです。ホルアドでの再会後のシーンに合う(^o^)
メロキュアさんの曲で他のキャラにもイメージテーマとするなら、
ユエが「Agape」、シアが「So far,so near」、ティオが「めぐり逢い」
雫が「愛しいかけら」、優花が「ALL IN ALL」でしょうかね?
残念ながら16年前の岡崎律子さんの急逝であまり多くの曲が無いことでしょうか。


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case7-2 「異世界召喚とリーダーハジメ」

大変お待たせ致しましたっ!!

アンケート首位の「ハジメが嫌われ者でないルート」の続きを書いてみました。

ええと、小悪党組排除してしまったことで人数が減ったこと。
原作小説で召喚された人数が明らかになっていますが。
(11巻の魔王城でのシーンで。)
光輝の超弱体化+原作ハジメ以下の嫌われ者化という…。
ハジメを主人公として見た場合の王道ルートとはなりますが、
前話でハジメ君が会話したクラスメイトが全員だとしてしまうと…
明らかに人数不足により戦力不足となりますので。
ハジメや香織と雫のみならず、クラスメイト達(光輝以外)の強化・改変。
並びに、この話の中では名前が出ないキャラが6人。
(オリジナルキャラではありません。)を追加させていただく事を…。
前もって、ご理解・ご了承の程よろしくお願いします。

あ、予想ついてても追加キャラについては私が書く予定まで、
ネタバレ感想などは控えて下さい。
このルートのみの追加キャラなので他のルートには一切絡みません。

※メイン弓様、誤字報告ありがとうございます。


両手で顔を庇い目をギュッと閉じていたハジメは、ざわざわと騒ぐ無数の気配を感じてゆっくりと目を開いた。

そして、周囲を呆然と見渡す。

 

まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。

縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。

背景には草原や湖や山々が描かれ、それらを包み込むかのようにその人物は両手を広げている。

美しい壁画だ。素晴らしい壁画だ。

 

だがしかし、ハジメは"なぜか薄ら寒さを感じて無意識に目を逸らした"

 

よくよく周囲を見てみると、どうやら自分達は巨大な広間にいるらしいということが分かった。

ハジメ達はその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。

周囲より位置が高い。

周りにはハジメと同じように呆然と周囲を見渡すクラスメイト達がいた。

 

どうやらあの時、教室にいた生徒は全員この状況に巻き込まれてしまったようである。

…クラスメイト以外にも6人の男女がいて、この状況をどこか達観しているように見えた。

 

それよりもとハジメは急いで背後を見た。

そこには呆然としてへたり込む雫と香織の姿があった。

怪我などはないようで、それを見てハジメはホッと胸を撫で下ろした。

 

そして、おそらくこの状況を説明できるであろう台座の周囲を取り囲む者達への観察に移った。

そう、この広間にいるのはハジメ達だけではない。

少なくとも三十人近い人々が、ハジメ達の乗っている台座の前にいたのだ。

まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好で。

 

 

その内の一人、法衣集団の中でも特に豪奢で煌きらびやかな衣装を纏い

高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子のような物を被っている七十代くらいの老人が進み出てきた。

もっとも、老人と表現するには纏う覇気が強すぎる。

顔に刻まれた皺しわや老熟した目がなければ五十代と言っても通るかもしれない。

そんな彼は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でハジメ達に話しかけた。

 

「ようこそトータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

ハジメ達は場所を移し、十メートル以上ありそうなテーブルが並んだ大広間に通されていた。

この部屋も例に漏れず煌びやかな作りだ。

素人目にも調度品や飾られた絵、壁紙が職人芸の粋を集めたものなのだろうとわかる。

 

上座に近い方に畑山愛子先生と光輝と龍太郎が座り、後は適当に座っている。

ハジメと雫と香織は最後方だ。見たことがない6人も。

 

ここに案内されるまで誰も大して騒がなかったのは現実に認識が追いついていないからだろう。

イシュタルが事情を説明すると告げたことや、ハジメや清水が落ち着かせたことも理由だろうが。

教師より教師らしく生徒達を纏めていると愛子先生が涙目だった。

(※原作でも創作でもどちらにしろ涙目にされる愛ちゃん、可愛そう(笑)

 

全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさん達が入ってきた。

正真正銘、男子の夢を具現化したような美女・美少女メイドである!

こんな状況でも思春期男子の飽くなき探究心と欲望は健在でクラス男子の大半がメイドさん達を凝視している。

もっとも、それを見た女子達の視線は、氷河期もかくやという冷たさを宿していたのだが…。

 

ハジメと清水はコレは間違いなくハニトラだよね?と無言でアイコンタクトしていた。

ハジメの両隣の香織と雫、清水の両隣の恵里と鈴には、ハジメと清水が。

『説明が終わるまでは出された飲み物を飲まないように』と囁いていた。

見たことがない6人の男女はそれを見てほぅと感心した様子を見せていたが…。

 

全員に飲み物が行き渡るのを確認するとイシュタルが話し始めた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

イシュタルの話は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもないくらい勝手なものだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

イシュタルの説明は長いしカット。

だってテンプレ通りだし。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。

おそらくエヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。

あなた方の世界はこの世界より上位にあり例外なく強力な力を持っています。

召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。

あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

イシュタルはどこか恍惚とした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。

人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 

ハジメと清水が、〝神の意思〟を疑いなく、それどころか嬉々として従うのであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感を覚えていると、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。

 

愛子先生だ。

 

「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい!きっと、ご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

とぷりぷりと怒る愛子先生。彼女は今年二十五歳になる社会科の教師でクラスの担任で非常に人気がある。

百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら、

生徒のためにとあくせく走り回る姿はなんとも微笑ましく、

そのいつでも一生懸命な姿と大抵空回ってしまう残念さのギャップに庇護欲を掻き立てられる生徒は少なくない。

〝愛ちゃん〟と愛称で呼ばれ親しまれているのだが、本人はそう呼ばれると直ぐに怒る。

なんでも威厳ある教師を目指しているのだとか。

 

今回も理不尽な召喚理由に怒り、ウガーと立ち上がったのだ。

「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」とほんわかした気持ちでイシュタルに食ってかかる愛子先生を眺めていた生徒達だったが、次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし…あなた方の帰還は現状では不可能です」

場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に押しかかっているようだ。

誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。

 

(ま、だろうね。じゃないと何のために召喚したんだかって事になるし…。)

とハジメは冷静に考えていた。清水も同じ様に考えていたのだろう。

 

「ふ、不可能って…ど、どういうことですか!?喚べたのなら帰せるでしょう!?」

と愛子先生が叫ぶ。

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

 

「そ、そんな…」と愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。

 

周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ?帰れないってなんだよ!」

「いやよ!なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ!ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

とパニックになる生徒達。

 

ハジメとしても内心は平穏ではなかった。だが、オタクであるが故にこういう展開の創作物は何度も読んでいる。

それ故、予想していた幾つかのパターンの内、最悪のパターンではなかったので他の生徒達よりは平静を保てていた。

ちなみに、最悪なのは召喚者を奴隷扱いするパターンだったりする。

誰もが狼狽える中、イシュタルは特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた。

だがハジメは、なんとなくその目の奥に侮蔑が込められているような気がした。

今までの言動から考えると「エヒト様に選ばれておいてなぜ喜べないのか」とでも思っているのかもしれない。

…その状況を見たことがない6人が表情も変えることなく黙って観察してたのは誰も気付いていない。

 

未だパニックが収まらない中、光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。

その音にビクッとなり注目する生徒達。

光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。…俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。…イシュタルさん?どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい

「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

(※むしろ弱体化してるはずなので、気の所為です…。(著者談)。

「ええそうです。ざっとこの世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「なら大丈夫。俺は戦「坂上君!手段は問わない!天之川君を黙らせて!」

 

そう叫んだハジメ。あまりにも必死な表情に龍太郎も何か危機感を感じたのか、

光輝を後ろから絞め落として、気絶させた。

 

「どういう事ですかな?」とイシュタルがハジメに理由を問うた。

 

「いきなり異世界に連れてこられて、世界の状況を貴方一人から説明されてそれを信用し。

そこの天之川君みたいに短慮でなければ、畑山先生の言った通り「戦争」に参加する。

なんて発想ができる方が可笑しいのでは?

"エヒト神の神託"にはこの世界の人間族の"救い"として僕達を遣わすとあったのですよね?

なのに"魔人族との戦争"に参加する事が"救い"だなんて…越権行為では?

まぁ、長々と言いましたけど、話し合う機会も無くそうさせる事が貴方の意志ではないか。

そう疑ってます。

その疑念を晴らす機会は防諜の聞いた部屋で私達のみで相談する事を"エヒト神"の名の下に

貴方が僕達に許可してください。以上ですが、何か問題が?」

 

ハジメは雫と香織を庇うように立ち上がりながらイシュタルを睨みつけ言い放った。

 

「…むぅ、致し方ありませんな。その様に手配しましょう。」

「えぇ、助かります。約束が履行されなかった場合はわかってますよね…?」

「相談が終わり次第、貴方が私の元に結論を伝えに来る。でよろしいか?」

「はい。責任を持って伝えにいきますよ。」

「わかりました。では、貴方方の結論が出るまで我々は外すことに致しましょう。」

 

そう言って、イシュタルと信者達やメイド達は広間から出ていった。

その様子を見知らぬ6人が『笑顔』で見ていたが…。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「南雲、何で光輝を黙らせたんだ?」と龍太郎がハジメに聞く。

他のクラスメイト達も一部そう思ってた人がいたのか頷いている。

 

「天之川君の事だから"魔人族との戦争"って言われても、悪いやつを倒す!

ぐらいにしか考えて無い発言だったんだろうけど、あのまま流れに飲まれてたら…

全員、強制的に"戦争"に参加させられてたよ?

…で、魔物が進化したのが"魔人族"程度の考えだったんだろうね。

人間族・"魔人族"・"亜人族"。…魔族ではなく"魔人族"だよ?

要するに戦争に参加してエヒト神の言う通り、"人殺しをしてください。"

イシュタルさんはそう、説明してた訳なんだけど。」

 

とハジメが説明すると、愛子先生を含めたクラスメイト達全員が顔を青くしていた。

 

「で、でもさ…南雲君。魔人族との戦争を何とかしたら帰してくれるって天之川君に答えてたよね?イシュタルさんが。」

そうハジメに質問したのは、園部優花と菅原妙子と宮崎奈々だった。

 

そこでハジメの代わりに答えたのが清水幸利。

「イシュタルってあの爺さんが答えたのは、『エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい。』とだけ。

人間には使えないって言ってた異世界召喚の魔法を使えるらしい"エヒト神"の言葉ですら無く、

あの爺さんが世界救ったらエヒト神が帰してくれるかもね?って言っただけ。確約も手段すらも明確じゃない。」

 

「じゃあ、イシュタルさんが嘘をついたって事?」そう問い返したのは中村恵里と谷口鈴。

 

「嘘はついてないよ。世界を救済したら帰してくれるんだよね?って問いに、救世主様の言う事なら無下にはしないでしょう。って答えただけだからね。

それよりも問題なのが、積極的にとは言わなくとも何らかの形で"戦争"には協力しなければならない事。」

 

「え?何で?南雲や清水はそう思ってないから天之川を止めたんじゃ?」

そう疑問を挟んできたのは、永山重吾・野村健太郎・玉井淳史、相川昇、仁村明人。

 

「忘れてる訳じゃないとは思うけど、ここは異世界。地球での常識は通用しない可能性が高い。

そして今、僕達は"エヒト神"が異世界から召喚した"救い"って事にはなってるから、衣食住が保証される可能性が高い。

…けど、この世界は一神教。と言うことは、これから案内されるだろう場所もエヒト神信仰が間違いなくされてる。

そこで仮にも、エヒト神の意志または神託という形で…「戦争に参加しない者は異端者」なんて事が言われたら?

地球の中世の歴史での魔女裁判と同じ様になってしまうよ。畑山先生のほうが詳しいだろうけど。

だから、交渉は必要だろうけど最低限の協力体制は必要という事。」

 

「そうだね…。そういう事もあり得るんだね。」と力なく答えたのは、辻綾子と吉野真央。

「あうぅ…南雲君や清水君が先生以上に先生してます…。」と涙目な愛子先生。

 

「という事は、そこの落ちてる馬鹿は置いといて…。私達は積極的にでは無いけど"戦争"に協力しなければならないって事かしら?」そう質問したのは雫。

「いいや、そこはイシュタルさんと交渉して…無理にでも"志願制"にしてもらうつもり。

よっぽどの馬鹿じゃなければ後方支援や哨戒任務を疎かに出来るはずがないから。

最終手段は「"エヒト神の神託に逆らうのか?"」って脅しに近い事になっちゃうけど…仕方ないよね。」

 

「ハジメ君、大丈夫?危険じゃないの?」心配顔でハジメを案じているのは香織。

 

「本来なら、僕達には一切関係のない世界に勝手に連れて来られて…世界の危機で困ってるから私達のために戦争に参加して人殺しして下さい。

そんな事になってしまえば、相手も自分も傷ついちゃうし。戦争と言うならば協力する時点で相手側からの自己防衛手段も身に着けなければならないし。

多分、エヒト神が帰してくれる手段以外の帰還手段があっても…召喚される前のままの気持ちや心持ちではいられない。それだけは、何があっても今持っておかなきゃならない『覚悟』かな。」

 

「「「「「うん、わかった!」」」」」

クラスメイト達の総意がここに一つに纏まった。

(ちなみに光輝は未だに気絶中。起きても何もできません(笑)

 

そのハジメ達の決意を見た6人は光輝以外のクラスメイト達に協力する事を決めたのだった…。




王道ハジメルートの続きって形で書いてみたら、
「こんな感じになった」ってのが今回の話です。

※今話中に遠藤君の名前や台詞が一切出てきておりませんが、居ます。
イシュタルにすらステルスっぷりを発揮して哨戒任務にあたってます。

一応、名前が明らかになっているクラスメイト達の台詞って形と、
戦力補強のための「見知らぬ6人」って登場させましたが…。
見知らぬ6人って何度も言ってるせいでクドイですね(笑

まぁ、正体は次話で…(予定は未定)判明します。
予想がついてても、感想欄とかに書いちゃいけませんよ?
(前書きにも書きましたけどねw)

何かもう少し上手くかけないものだろうか。と何度も試行錯誤した結果がコレです。
ええ、リリアーナ・優花本妻ルートの続きを待ってた人達。
期待を裏切ってゴメンナサイm(_ _)m

この続きを書くとしたら、次はステータス回だぞっ!!!
ハジメの超強化だっ!!!そしてクラスメイト達の強化だっ!!
ヒロイン組も強化だっ!!!!
そして光輝の超弱体化だあぁぁっぁああっ!!!(爆笑

…だって原作において、この話で否定した全員戦争参加強制したアホですよ?
誰も死なせない!とか言って、ハジメ奈落落ちしたらさっさと死んだって諦めてる痴呆野郎ですよ?
香織がハジメに告白しても、気のせいだ、勘違いだ、洗脳だ!って騒ぐキチガイですよ?挙句の果てには雫がハジメに気持ち伝えたら、
「お前が死ねば、皆俺の元に戻ってくる」って…痛い通り越してヤバイ。

最終的に、そんな彼を許した(?)雫と香織はマジ女神だと思った私。


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こんなありふれもありえた リリアーナ本妻ルート
case8 「無能と才媛の姫の恋」


さてさて、サブタイトル通り。

アンケート結果で唯一まだエピソードとして書いていなかった・・・(時間がなくて

リリアーナ本妻ルートとなります。

基本は原作設定のままですが、召喚後からが完全に原作破壊となります。


・・・無理やり感あっても仕方ないですよね?


えぇい!とりあえず書いて見るんじゃあ!とヤケになったストーリーとなります。


※書き上げた後に、思わぬ高評価の嵐と日間ランキング入りしていたという事実に震えが止まりません。
(2020/08/14の11時の段階で、です。)

そんなに皆さん、檜山君の断罪がお好き…って違いますね(゚∀゚)
リリアーナ本妻ルートの人気?の勢いに著者も呆然とした状態と化してます。


ハイリヒ王国での晩餐会。

 

クラスメイト達はなんだかんだ言って食事や貴族に褒められたりで悪い気はしていないみたいだ。

 

「そんな場合じゃないと思うんだけどな。」と呟きながらハジメは一人になるためテラスの方へと向かった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

テラスから見えるハイリヒ王国の街並みはとても綺麗だった。

 

人工的な明かりが少なく、月とほんの少しの明かりのみで照らされる景色。

 

地球の田舎での風景と何ら変わらないんだなぁ・・・そんな事をハジメは考えていた。

 

「お一人でどうされました?食事がお口に合いませんでしたか?」

 

そんな風に一人佇んでいたハジメに声をかけてきたのは、リリアーナ・S・B・ハイリヒ。

 

この国の第一王女だった。晩餐会前に謁見の間で一度皆に自己紹介をされていたのでハジメも覚えていた。

 

頭の上にちょこんと乗ったティアラ、月の光に照らされ輝くような金髪、決して派手ではないが地味でもないドレス姿。

 

この世界の10人が見れば10人共、彼女を王女と間違わないであろう容姿。

 

「リリアーナ王女様。いいえ、食事は美味しかったですよ。ただ一人になりたかっただけです。」

 

香織や雫という美少女達を見ていたハジメですら少し照れてしまいながらの返答。

 

「私、お邪魔してしまいましたか?」とちょっと悲しそうな顔で言うリリアーナ姫。

 

「邪魔だなんてとんでもない!考え事とあの空気に馴染めなかったのです。」と焦るハジメ。

 

「考え事・・・ですか?」とリリアーナ姫が疑問顔で聞いてくる。カワイイ

 

「ええ。ここは僕達がいた世界とはやっぱり違うんだと実感したり・・・そんな所です。」

 

「・・・大変申し訳無いとは思っています。少しお話を聞いただけですが皆様と私の年齢は殆ど変わらないとか。」と何処か苦しそうに、悔しそうに言うリリアーナ姫。

 

「リリアーナ王女様が謝られる事では・・・いえ、ありがとうございます。王女様は優しい方なのですね。」

 

「ぇ?」(ちょっぴり頬を赤く染めたリリアーナ姫。)

 

「僕達は異世界から戦う為に呼び出された。そう説明を受けてます。そんな僕達の為にそんな表情をされ、心を痛めた言葉をかけて頂ける。優しい方だから心苦しく思われている。違いますか?」

 

「・・・私、王女として人を見る目はあるつもりです。でも初めてです。そこまで心を読まれる様な言葉を返して頂いたのは。」

 

「あ、大変失礼な事をして申し訳ありません!王女様。」と不敬な態度だったかと焦り始めるハジメ。

 

「怒っているわけじゃありませんよ?そうですね、王女様と呼ばれ続けるのもあれですし”リリィ”と呼んで頂く事にしましょうか?」と微笑むリリアーナ姫。

 

「え!それはちょっと不味いのでは!?せめてリリアーナ姫様とかであればまだしも・・・。」

 

「私の要望に答えては頂けないのですか?・・・悲しいです。あと貴方のお名前もこの機会に教えて下さいね?」と更に微笑むリリアーナ姫。

 

「僕は南雲ハジメです。・・・わかりました。公の場でない時は"リリィ"で公の場や他の人がいる時は"リリアーナ姫"で。これでいいですか?」

とやっぱり泣きそうな子と権力(?)には敵わないなとハジメは思った。

 

「はい!それで構いませんよ、南雲ハジメ様。これからよろしくお願いしますね?」と満面の笑みで言うリリアーナ姫。

 

「僕に様はいりませんし!ハジメでも南雲でも構いませんから!そこの所はお願いします、リリィ。」と半分土下座しそうなハジメ。

 

「皆様方は神の使徒ですし・・・わかりました。ハジメ様。これでいいですよね?」

 

「ありがとうございます、リリィ。そろそろ晩餐会も終わるみたいなので僕は中に戻りますね?」

 

「ハジメ様。今度は時間をとってゆっくり色々なお話を出来る機会を作りますので、その時はよろしくお願いしますね?」

 

そんなこんなで晩餐会から各自の部屋へと案内されて行く。

 

その裏でそんな一場面があったとは、二人以外誰も知らなかった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そして翌日。

 

訓練と座学が始まる前に全員にステータスプレートが配られた。

 

メルド団長や騎士団の中に・・・変装したリリアーナ姫と専従侍女のヘリーナがいた事は誰も気づいていなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ここからステータスプレートの説明。

天之川光輝が勇者でチートだったり、ハジメと愛子以外が戦闘職だったり。

メルドが色々焦ったりしつつハジメの天職について説明し始めて、

檜山達がバカにし始めて、それに流されるようにクラスメイト達の一部が便乗。

香織や雫や一部の生徒等が不快な顔をして今にも飛び出しそうな所までは原作通り変わりません。

そして、愛子先生がハジメにトドメをさすあたりまでも。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「そこまでです!!!!」その場に響き渡る様な声に全員が驚いた。

 

その声をあげたのはちょっと離れた所にいた騎士甲冑を着た騎士の2人の1人だったのだから。

 

「見たこと無い騎士だな。所属は?」とメルドが顔を顰めながら言う。

 

するともう一人の騎士甲冑を着た騎士がサラリと言う。

 

「見たことが無い?ハイリヒ王国、王国騎士団メルド団長殿。不敬罪ですよ?」と甲冑を脱ぐ。

 

「ヘ、ヘリーナ?ということはまさか・・・?」と焦った声で言う。

 

この間、愛子先生やクラスメイト達は何が起こっているのかわかっていなかった。それはヘリーナと呼ばれた女性のメイド姿を見ても。

 

騎士団員達はもしや・・・と全身から冷や汗を流し始めていたのだが、それに気づいたものはいなかった。

 

「メルド。貴方を責める訳ではありませんが、教育係としては及第点以下ですね。」

 

そんな声を上げながら、もう一人の騎士も甲冑を脱ぐ。

そこにはドレスを着た金髪の女性・・・リリアーナ姫がいた。

 

「「「リリアーナ姫!!(王女様!?)」」」

 

「まだ、本格的な訓練が始まっている訳では無いですが。あまりにも醜く、常識知らずな発言が多いため口を挟ませてもらいました。」と怒りの表情を浮かべたリリアーナ姫がそこにいた。

 

「天之川光輝様。貴方は勇者となる立場のお方。では何故、錬成師である南雲ハジメ様への誹謗中傷を止めなかったのですか?」

 

「それは、南雲が非戦闘職で・・・。」何故自分が責められているか分からない光輝はそれ以上何も言えなかった。

 

「そして軽戦士、炎術師、風術師、槍術師である、檜山様・中野様・斎藤様・近藤様。貴方方は南雲ハジメ様を戦闘で何の役にも立たない肉壁だ、子供にも敵わない等と仰っておられましたが。本来、非戦闘職である南雲ハジメ様が戦闘に参加しなければならない理由はありません。その上「肉壁?」でしたか。非戦闘職を守るべきはずの貴方方が何故壁を必要とするのでしょうか?教えて頂けませんか?」

 

「「「「・・・・・。」」」」あまりにも的確な言葉と王女に対し批判的な態度を取るわけにもいかず何も言えない4人組。

 

「そしてそれを一部を除いて誰も止めようともしない始末。メルド、騎士団員貴方方もです。彼・彼女らは「エヒト神が召喚した使徒」であろうと訓練中は部下に変わりありません。」

 

「畑山愛子様から少しですが伺った限りでは、貴方方の世界にも戦争はあったのですよね?当事者ではなくても。」と冷静に怒るリリアーナ姫。

 

「であれば、非戦闘職・後方支援(職)が戦争をする上で「ある意味」戦闘職より大事な存在であることを学んでいるはずでは?にも関わらずあの暴言。」

 

「先程、南雲ハジメ様を笑っていた方々。畑山愛子様を同様に非戦闘職だと笑い飛ばして下さい。それが出来もしないなら、私の権限で命じます。笑いなさい!」

 

「「「「「・・・・・・・・」」」」」何も言えず、笑えもしないクラスメイト達。

 

「メルド!非戦闘職であるお二人をこの時点で「神の使徒」からの離脱。南雲ハジメ様は王国錬成師の下での訓練。畑山愛子様は騎士護衛の元、各地の農地周りの巡回に切り替えなさい!許可は私が取ります。並びに、檜山様達や男子生徒付き予定のメイドを男性騎士に変えなさい!これ以上問題を起こされても困ります!」と怒り心頭なリリアーナ姫が言う。

 

「リリアーナ様、教会の方の交渉は私がしてまいります。メルド殿、そちらもきちんと納得させて下さいね。」そう言いながらヘリーナは離れていった。

 

「早急に動きなさい!聞こえませんでしたか!?」とリリアーナ姫が言い放つと。

 

「り、了解しました!」と騎士団員達は焦った様に準備を整えていくためその場を離れていった。

 

「南雲ハジメ様と畑山愛子様は私と共に。メルド、きちんと教育するのですよ?」と言いながら、ハジメと愛子を連れて去っていった。

 

 

その後、香織が特に反対していたらしいが・・・あとは何故か納得の上で話は進んだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

それから2週間の間に、ハジメは王国錬成師の元で訓練をしつつ

ヘリーナ経由で何度か(2日に1回は)リリアーナ姫と会話の場を持ち、

召喚前からオタクだったハジメは、異世界の王女様に完全に惹かれていた。

 

リリアーナ自身も自分が王女という立場である以上「自由恋愛」が許されない事は理解している。

それでも14歳の女の子。ハジメと色々話しているうちに、ハジメの在り方がとても好ましく。

ハジメの母親が「少女漫画」なるものを書いていると聞いた時には、

ヘリーナが止めに入るまで、ハジメから聞き出そうと迫る始末。

 

傍から見ても、完全に両思いな二人だった。

 

・・・そんな折の事である。「エヒト神の神託」の名の元に、

ハジメ達、「神の使徒」をオルクス大迷宮への実戦訓練へと行かせるようになったのは。

しかも、錬成師で非戦闘職であるハジメも同行をさせるように。との厳命付きで。

 

 

それを聞いたリリアーナは一計を案じた。

ヘリーナは勿論止めたが、恋する乙女は止まらない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そして、王国騎士団護衛の元。

ハジメ達は全員オルクス大迷宮のあるホルアドにいた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

迷宮突入前日の宿での部屋割りは原作通り。

月下の下でハジメと香織の誓いが交わされるのも原作通り。

それを檜山が目撃していたのも原作通り。

 

そして翌日の迷宮訓練。

ハジメの近くに一人の騎士が居続けた事以外は、20階層で檜山がトラップに引っかかり、

65階層へと飛ばされベヒモスとトラウムソルジャーに襲われる所までは原作通り。

 

ここから、彼・彼女らの運命は大きく変わる。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

Side 優花

 

「あ」そんな一言と同時に私の頭部目掛けて剣が振り下ろされた。

 

死ぬ――そう感じた次の瞬間、トラウムソルジャーの足元が突然隆起した。

 

バランスを崩したトラウムソルジャーの剣は私から逸れてカンッという音と共に地面を叩くに終わる。

地面の隆起は数体のトラウムソルジャーを巻き込んで橋の端へと向かって波打つように移動していき、遂に奈落へと落とすことに成功した。

橋の縁から二メートルほど手前には、座り込みながら荒い息を吐く南雲の姿があった。

南雲は連続で地面を錬成し、滑り台の要領で魔物達を橋の外へ滑らせて落としたのである。

魔力回復薬を飲みながら倒れたままの私の元へ駆け寄ってくる南雲。錬成用の魔法陣が組み込まれた手袋越しに私の手を引っ張り立ち上がらせる。

呆然としながら為されるがままの私に、南雲が笑顔で声をかけてきた。

 

「早く前へ。大丈夫、冷静になればあんな骨どうってことないよ。うちのクラスは僕を除いて全員チートなんだから!」

 

そう言いながら自信満々で私の背中をバシッと叩く南雲をマジマジと見つめてしまう私。

そして、「うん!ありがとう!」と元気に返事をして駆け出した。

 

Side ハジメ

 

誰も彼もがパニックになりながら滅茶苦茶に武器や魔法を振り回している。

騎士アランが必死に纏めようとしているが上手くいっていない。そうしている間にも魔法陣から続々と増援が送られてくる。

 

「なんとかしないと……必要なのは……強力なリーダー……道を切り開く火力……天之河くん!」

 

ハジメは走り出した。光輝達のいるベヒモスの方へ向かって。後ろに一人の騎士が付いて居たが。

 

Side メルド

 

「ええい、くそ!もうもたんぞ!光輝、早く撤退しろ!お前達も早く行け!」

 

「嫌です!メルドさん達を置いていくわけには行きません!絶対、皆で生き残るんです!」

 

「くっ、こんな時にわがままを……」メルドは苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

この限定された空間ではベヒモスの突進を回避するのは難しい。

それ故、逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。

しかし、その微妙なさじ加減は戦闘のベテランだからこそ出来るのであって、今の光輝達には難しい注文だ。

 

「光輝!団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」八重樫は状況がわかっているようで光輝を諌めようと腕を掴む。

「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ?付き合うぜ、光輝!」坂上・・・コイツは駄目だ。

「状況に酔ってんじゃないわよ!この馬鹿ども!」

「雫ちゃん……」苛立つ雫に心配そうな香織。

 

さっさと撤退してもらうためなら殴り飛ばすのもやむを得ないか、そんな事をメルドが考えた時。

 

一人の男子が光輝の前に飛び込んできた。後ろに一人の騎士を連れて。

 

「天之河くん!」「なっ、南雲!?」「南雲くん!?」

 

驚く一同にハジメは必死の形相でまくし立てる。

 

「早く撤退を!皆のところに!君がいないと!早く!」

 

「いきなりなんだ?それより、なんでこんな所にいるんだ!ここは君がいていい場所じゃない!ここは俺達に任せて南雲は……」

 

「そんなこと言っている場合かっ!」

 

「あれが見えないの!?みんなパニックになってる!リーダーがいないからだ!」光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。

 

その方向にはトラウムソルジャーに囲まれ右往左往しているクラスメイト達がいた。

 

「一撃で切り抜ける力が必要なんだ!皆の恐怖を吹き飛ばす力が!それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ!前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

 

「聖絶!!」ハジメの後ろに居た騎士がそう唱えた。

 

Side ハジメ

 

「メルドを除いて全員撤退しなさい!」そう言ったのは僕の後ろに付いてきていた騎士。

 

「何を言ってるんだ!?」とまだ撤退しない光輝。

 

「彼女の言うことに従って!むしろ邪魔なんだよ!さっさとクラスメイト達を助けに行けよ!」と口調荒く叫ぶハジメ。

 

「カイル・イヴァン・ベイル!その4人を連れて下がりなさい!命令ですよ!」と叫ぶ女騎士。

 

その声で誰なのか理解出来たメルドと騎士達。

 

「了解です、ご武運を!」と4人を引きずるように撤退していく騎士達。

 

「待って下さい!南雲君は・・・!」と香織が言うが誰も聞く耳を持たない。

 

そして、撤退していく光輝達と騎士達。

 

Side リリアーナ

 

「団長、一度だけでいいです。アイツの攻撃をいなしてください。」

 

「一度だけでいいのか?」

 

「動きが止まったところを僕が錬成で抑え込みます。その間に攻撃なりされたら彼女が・・・リリィが結界を張ってくれる筈です。」

 

「やっぱり、あの命令でバレちゃってたのね。」と照れ隠しのようにハニカミ笑いしながらリリアーナ姫が。

 

そして、メルドのみに聞こえる声で。

 

「メルド。これは最後の命令です、よく聞きなさい。この作戦が無事に成功して全員帰還できれば良し。仮に失敗する場合、十中八九ハジメ様をよく思っていない檜山様達の仕業でしょう。その場合、迷宮内で始末しなさい。王国へ連れ帰ってしまえば処分出来ずに、貴方のみが処分されます。で、貴方はウルかフューレンの街へと姿をくらましなさい。わかりましたか?」

 

「了解です、姫様。あとは頼むぞ、坊主。」

 

「結界をときます!」その声と同時に突っ込んでこようとするベヒモスに、

 

「吹き散らせ、風壁!」そう言いながら回避するメルド団長。

 

「グルッルウウァ」地面に頭部をめり込ませながら唸るベヒモス。

 

「---錬成っ!」

 

錬成で拘束されたのを確認して、撤退していくメルド団長。

 

「リリィも撤退して・・・くれはしないんだよね?」と諦めつつも尋ねるハジメ。

 

「勿論です。魔法の一斉攻撃時が一番、ハジメ様が危険なのですから。」とリリアーナ姫。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そして光輝達はトラウムソルジャーを排除し、階段前を確保する。

合流したメルドと共に。

ここで香織が雫がハジメと騎士の一人がベヒモスを抑えているから撤退出来たと言う所は変わらず。

そして、ハジメの作戦という名の魔法での一斉攻撃が始まる。

檜山の気持ち悪い妄想からの裏切りも含めて・・・。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

Side ハジメ

 

数十度目の亀裂が走ると同時に最後の錬成でベヒモスを拘束する。同時に、一気に駆け出した。

ハジメが猛然と逃げ出した五秒後、地面が破裂するように粉砕されベヒモスが咆哮と共に起き上がる。

その眼に、憤怒の色が宿っていると感じるのは勘違いではないだろう。鋭い眼光が己に無様を晒させた怨敵を探し……ハジメを捉えた。

 

だが、次の瞬間、あらゆる属性の攻撃魔法が殺到した。

夜空を流れる流星の如く、色とりどりの魔法がベヒモスを打ち据える。ダメージはやはり無いようだが、しっかりと足止めになっている。

いける!と確信し、転ばないよう注意しながら頭を下げて全力で走るハジメ。

すぐ頭上を致死性の魔法が次々と通っていく感覚は正直生きた心地がしないが、チート集団がそんなミスをするはずないと信じて駆ける。

ベヒモスとの距離は既に三十メートルは広がった。

 

思わず、頬が緩む。

しかしその直後、ハジメの表情は凍りついた。

無数に飛び交う魔法の中で、一つの火球がクイッと軌道を僅かに曲げたのだ。

……ハジメの方に向かって。

明らかにハジメを狙い誘導されたものだ。

 

(なんで!?いやリリィの言っていた通りか。)

 

咄嗟に踏ん張り、止まろうと地を滑るハジメの眼前にその火球は突き刺さるはずだった。

が、もうひとりその場には居たのだ。そうリリアーナである。

彼女自身も魔力がほぼ枯渇しており、結界を張るだけの魔力は無かった・・・ので。

身を挺してハジメの壁となり鎧の上から火球を喰らい、ハジメの後方数メートルへと吹き飛ばされた。

それを見て、ハジメは後方へと戻り兜の取れたリリアーナを背負い再び皆の元へ駆け出した・・・が。

 

直後、怒りの全てを集束したような激烈な衝撃が橋全体を襲った。

ベヒモスの攻撃で橋全体が震動する。着弾点を中心に物凄い勢いで亀裂が走る。メキメキと橋が悲鳴を上げる。

そして遂に……橋が崩壊を始めた。

度重なる強大な攻撃にさらされ続けた石造りの橋は、遂に耐久限度を超えたのだ。

 

「グウァアアア!?」

 

悲鳴を上げながら崩壊し傾く石畳を爪で必死に引っ掻くベヒモス。

しかし、引っ掛けた場所すら崩壊し、抵抗も虚しく奈落へと消えていった。ベヒモスの断末魔が木霊する。

ハジメもなんとか脱出しようと這いずるが、しがみつく場所も次々と崩壊していく。

 

(ああ、ダメだ……リリィだけでも・・・。)

 

そう思いながら対岸のクラスメイト達の方へ視線を向けると、

香織が飛び出そうとして雫や光輝に羽交い締めにされているのが見えた。

他のクラスメイトは青褪めたり、目や口元を手で覆ったりしている。メルド達騎士団の面々は悔しそうな表情でハジメを見ていた。

そしてハジメの足場も完全に崩壊し、ハジメは仰向けになりながらリリィと共に奈落へと落ちていった。

徐々に小さくなる光に手を伸ばしながら……

 

Side メルド

 

「離して!南雲くんの所に行かないと!約束したのに!私がぁ、私が守るって!離してぇ!」と泣き叫ぶ香織。

 

「・・・アラン・カイル・イヴァン・ベイル・・・。後の事は頼んだぞ?」と何かを決心したメルド。

 

「「「「団長?」」」」と4人の騎士が疑問の声を投げかけた・・・その時には・・・。

 

「姫の命令に従うのが私の団長としての最後の誇りだ。」そう言いながら、檜山の首と胴を切り離し奈落の底へと突き落とした。

 

「「「「キャァアアアアア!」」」」と悲鳴を上げるクラスメイトの女子達。

 

「メルド団長!何故檜山を!」と憤慨する光輝。それを抑えるアラン以外の騎士。

 

「当然だろう?南雲ハジメだけでなくリリアーナ姫すら奈落の底へと突き落としたのだから。」と静かに怒るメルド。

 

「「「「「「え?」」」」」カイル・イヴァン・ベイル以外の騎士とクラスメイト達が驚く。香織でさえも。

 

「気づいていなかったのか?この場で結界を張れるのは谷口だけで、訓練して辻・白崎・天之川ぐらいしか居ないのにその誰も張ってない結界が張られていたのを。」

 

「姫様は予見していたぞ?坊主を良く思っていない連中があのタイミングで妨害するのを。そして勇者がそれを許して王国へ連れ帰ってしまえば処罰できなくなる事を。」

 

「だから、私が姫様の命令に従い処罰を下した。私はこれから姫様と坊主を探すために別の進路で進む。アラン達お前らが、彼・彼女らを無事に地上へと帰還させろ。これが私の最後の命令だ。」

 

「・・・了解しました、団長。皆様撤退しますよ!」騎士達がそう言うと渋々付いていく生徒達。

 

光輝や一部の生徒達は何か言いたげだったのだが、何も言えず長い階段を上りながら撤退していった。

 

「これで・・・良かったのですよね?姫様。助けてやれなくて済まなかった・・・坊主。」と呟きながら先行した騎士達と合流しない様にメルドは姿をくらました。




甘いお話になってた・・・?でしょうか。

初日~オルクス行くまでにリリアーナフラグが建っていないと、

原作通り帝国崩壊(ハウリアの乱)までフラグが建つ暇がありません。

この流れでストーリーが進んだ場合、リリアーナは残念王女化しませんが・・・。

地上に残された勇者一行の扱いどうなるでしょうね?

檜山君。彼にはその場でメルド団長にKillしてもらいました。
まぁ無能扱いされてても同胞で神の使徒であるハジメ+王女殺害ですからね?(実際は生き延びます)

その後は原作通りにはもう行きませんよね。

王国転覆フラグ折れますし、帝国でのフラグも折れます。

ハジメ以外の勇者一行が奴隷の如き扱いには神の使徒扱いであればならない筈。

メルド団長が姿をくらました先がフューレンでも、ウルでも。
どちらにしても、ウル以降からの展開が完全に変わるのでそれ以降は無理ですね。

・・・こんな無理矢理感満載でしたけどリリアーナ本妻ルート書くなら、
こんな感じしか浮かばなかったんです。申し訳ありませんm(__)m


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case8-2 「メルドの忠誠、へリーナの怒り/踊る愚者と心離れし剣士と聖女/奈落の底にて誓う愛」

大変、長らくおまたせしましたっ!!m(_ _)m

さあさあ、もう何も言うまでもないですな!?

今回のお話は…言うまでもなく、caseと副題からわかってしまう通りの
リリアーナ本妻ルートの続きのお話となります。
データ消失前構想と違い書き直しきったものです。

ええ、徹底的に「天之川君」がピエロなので。
…光輝好きな人はブラウザバックを推奨します。

やたらと長いサブタイトル通り、
メルドの視点、神の使徒(ノイント達じゃないですよ?)、ハジメとリリィの視点。
の三本立てでお送りしま~す♪(サザエさん次回予告風)



…では、優しい目で読んであげて下さいね。(しつこい


※風音鈴鹿様、いつも誤字報告ありがとうございます。
何度見直しても、結構抜けてる所があるようです…。(反省中
※※メイン弓様、誤字報告ありがとうございます。


Side メルド

 

 

「姫様、坊主…どこにいるんだ。」そう呟きながらメルドは数日、オルクス大迷宮を探し続けた。

 

しかし、何の手かがりも見つかりはしない。

(※101階層以降に落ちてるからね♪)

肩を落としながらも、リリアーナ姫の最後の命令に従うべく、

入り口のチェックに引っかからない様にオルクス大迷宮を後にした。

 

ホルアドのギルドマスター経由で、ヘリーナと畑山愛子に「至急、ホルアドまで来てほしい。」

と連絡を頼み、自分は人の寄り付かない地域にある空き家へと身を隠した。

 

それから数日後。ヘリーナと畑山愛子と護衛の騎士(教会騎士ではない)がホルアドに到着。

冒険者ギルドのギルドマスターから話を聞き、メルドが居る空き家へと向かった。

 

コンコン

 

「畑山愛子が生徒達に呼ばれている愛称は?」

 

「愛ちゃん先生」

 

「…誰が、愛ちゃん先生ですか。」とブツブツ言ってる人物を気にしてはいけないのだろう。

 

「入ってくれ。騎士達には出来れば周囲を警戒してもらいたい。」

 

「そうしてください。メルドは私達にだけ話したい内容があるようですから。」とヘリーナ。

 

「「「了解しました!」」」と護衛に付いてきていた騎士達は出て行った。

 

「取り敢えず、長くなる。二人共座って、落ち着いて話を聞いてくれ。」

二人が席に座ったのを見て、メルドはオルクス大迷宮であったことを話し始めた。

 

・訓練も最初のうちは順調だった事。(魔石回収時等のやりすぎはあったが。)

・唯一の非戦闘職である南雲ハジメが、独特の発想を持って活躍し騎士達を驚嘆させた事。

・最終階層の予定だった20階層、天之川が大技を発動…なんとか生き埋めにならずに済んだ事。

・その際に大型のグランツ鉱石が出てきて…罠探知前に檜山が暴走し触れてトラップを発動した事。

・強制転移魔法で、人類最高到達階層と言われている65層に飛ばされた事。

・ベヒモスとトラウムソルジャーの群れとの戦いの中、混乱し指揮が及ばなかった事。

・天之川達4人が撤退しないおかげで、自分達も撤退出来ずにいた事。

・園部優花がトラウムソルジャーに殺されかけ、南雲ハジメが"錬成"で助けた事。

・南雲ハジメが天之川に「前ばかり見てないで、後ろも見ろ!」と怒鳴った事。

・それでも退かなかったので、(隠れて)同道していたリリアーナ姫が命令した事。

・南雲ハジメが錬成でベヒモスを抑え、姫が結界で南雲ハジメへの攻撃を守っていた事。

・その間に私達と天之川達4人で、トラウムソルジャーを一掃し退路を確保する事。

 

「ここまでは上手くいっていた。南雲ハジメと姫様の作戦通りに。」俯きながら語るメルド。

 

「ここまではという事と姫様が傍に居ない。それが答えですか。」歯を食いしばるヘリーナ。

 

「…ぇ?へ?…どういう事ですか?」全く理解していない様子の愛子先生。

 

メルドの説明は続く。

 

・我々と生徒達で退路を確保し、南雲ハジメと姫様が逃げるための時間を稼ぐ。

・南雲ハジメの魔力も、クラスメイト達の中で高くはない…だからタイミングを合わせて離脱。

 

「そういう計画だった。姫様が自ら、『撤退時が一番危ない』と南雲ハジメの側に。

ベヒモスを錬成で抑え、我々の方へ走り出したと同時に…ベヒモスに魔法攻撃を集中させた。

上手く行く計画だった。一部を除いたクラスメイト達も我々も無事帰還を喜ぶはずだった…。

 

だが、結果は失敗。原因は檜山の魔法による意図的な妨害だ。

 

「そ、そんな…檜山君だってそ「事実だ。実際に姫様は最後に私にだけ命令を下した。」

 

・この作戦が無事に成功して、全員帰還できれば良し。

・仮に失敗する場合、十中八九ハジメ様をよく思っていない檜山様達の仕業でしょう。

・その場合迷宮内で始末しなさい。連れ帰ってしまえば処分出来ずに貴方のみが処分されます。

・そして、貴方はウルかフューレンの街へと姿をくらましなさい。

 

「そう言い残し…檜山の魔法を鎧越しに受けた姫様と、担ぎながら撤退しようとしていた南雲ハジメは、二人とも橋の崩壊と共に奈落の底へ落ちていった。」

 

「………」ヘリーナは血が滲む程に歯を食いしばりながら話を黙って聞いている。

 

「そ、そんな!南雲君とリリアーナ姫様まで?…そういえば檜山君はどうなったんですか!」

 

「今の話を聞いていたら解っているだろう。私が「この手で」殺した。

そもそも、同胞を貶める人間性も気に食わなかったが、今回の動機だってどうせ嫉妬だろう。所々での休憩の合間に白崎が南雲のことを気にしていたようだしな…。

それと、畑山愛子。王族への暗殺未遂などは死罪だ。どちらにしろ変わらん。

というか、この目で南雲ハジメへ向けて魔法を撃ったのを見た時点で、この手で殺す気だった。」と極めて冷徹にメルドは伝えた。

 

「……うぅうう」愛子先生は改めて、この世界の価値観を理解した様に静かに涙していた。

 

「で、メルド。畑山愛子は分かりました。何故、私までここに呼んだのです?」とヘリーナ。

 

「姫様の最後の言葉通り、フューレンに身を隠そうと思う。その際お前が居たほうが隠れやすい。

あの後、迷宮を探索したが全く痕跡がなかった。という事はもっと深度の層へ行ったのかもしれない。フューレン程の都市なら、身分を隠して冒険者稼業でもしながら情報を集められるだろう。」

 

バシーーィィン!!!

 

「姫様を守りきれなかった事。南雲ハジメ様を守れなかった事。これで済ませてあげますよ。

ただし、姫様や南雲ハジメ様の生存が絶望的になった場合、私が貴方を殺してあげます。

勿論、私も姫様の居ない王城に戻るつもりは無いので付いて行ってあげますよ。」

 

バシン!!!

 

「いつまで被害者面で泣いているつもりですか!畑山愛子!今回の件、南雲ハジメ様と姫様が奈落の底へ落ちる事となった原因の檜山っていうクズでしたか!?

そいつが短絡的な行動を取っていたことも、南雲ハジメ様を軽視していた事も!

『貴方が責任ある大人として、悪いことをしたら罰せられる』そんな常識を教えてこなかったのも原因の一つでしょう!あのバカ勇者に流されるまま、自分の意見を押し殺した、貴方自身の罪です!」

 

「ぅぅう、はぃ!」涙目になりながらも、目を擦り。真剣な目つきへとなっていく愛子先生。

 

「ヘリーナがキツイ事を言った様だが、これがこちらの世界での現実だ。

生徒達や貴女が悪いわけでは無い。が、貴方達が豪勢な食事を食べてる最中…前線等では乾燥食品や命を落とす兵士が居る。で、ヘリーナと私は…フューレンへと姿をくらます。勿論、これは誰にも言わないでくれ。で、畑山愛子。

貴女は今回の南雲ハジメと姫様、檜山の処罰の件で…戦争や戦いが怖くなった者、そして白崎達…自分の意志で希望した者を連れてウルの街へと赴いてくれ。

あそこの周囲は穀倉地帯だ。北の山には魔物が居るって話もあるが…。」とメルドが提案をする。

 

「はい!分かりました!私の生徒にだけこれ以上、重荷を背負わせるだけにはいきません!」愛子先生が不退転の決意で燃えている。これなら大丈夫だろうとメルドとヘリーナは安堵した。

 

 

そしてヘリーナとメルドは下準備をした後、フューレンへと向かって行った。

愛子先生は軽い事情を護衛騎士に話しつつ、王城へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 神の使徒(ノイント達じゃないです、生徒達です。)

 

 

 

なんとか、アラン達や騎士達の護衛のもとオルクス大迷宮を抜けられた使徒達。

 

アラン達騎士は、メルドの最後の覚悟を知ってか…表情は暗い。

 

迷宮でハジメに助けられた園部優花、白崎香織、八重樫雫、坂上龍太郎達も暗い顔だ。

 

「ホルアドの宿で一晩、疲れを取ったら王城へと戻ります!」とアランが言うと。

 

言葉少なに各々、宿へとぞろぞろと戻っていった。

 

そして翌日、ホルアドを出発し…そして数日。

 

護衛騎士達と使徒達は、王城へと到着し、間もなく全員が王の間へと呼び出された。

 

 

 

そして、騎士アラン達による事情説明。

 

 

南雲ハジメが奈落の底へ落ちた事。リリアーナ姫が同道していて、一緒に落ちた事。

 

その原因を作った下手人である檜山をメルド元団長がその場で処罰した事。

 

ハジメが奈落の底へ落ちたと聞いていた、周囲の貴族達は好き勝手に騒ぎ始めた。

落ちたのが〝無能〟のハジメと知ると安堵の吐息を漏らしたのだ。イシュタルですら同じだった。

強力な力を持った勇者一行が迷宮で死ぬこと等あってはならない事。

迷宮から生還できない者が魔人族に勝てるのかと、不安が広がっては困るのだ。

神の使徒たる勇者一行は、無敵でなければならないのだから。

だがイシュタルはまだ分別のある方だっただろう。中には悪し様にハジメを罵る者までいたのだ。

 

「やれ、死んだのが無能でよかった」

「神の使徒でありながら役立たずなど、死んで当然だ」

 

その言葉を聞いた、香織と雫と龍太郎と園部優花は完全にブチ切れた。

 

「勝手に異世界から呼んどいて死んでよかった?ふざけるなっ!」

「じゃあ、アンタ達が私達の代わりに戦って死になさいよっ!」

「あの、南雲の勇気ある行動を馬鹿にするのは許せない!」

「南雲が居なければ、私達は皆死んでたわ!私は特に!」

 

各々が武器を取り出し、口ざまに罵っていた貴族達へと斬り・殴りかかっていった。

 

…はずだった。

 

 

 

「皆、やめるんだ!南雲は死んだ。リリアーナ姫をどう助けるかの話をしないと!」

 

 

イシュタルだけはその天之川の発言に同調するように…したが周りは思ったように動かなかった。

 

 

少しの沈黙の後。

 

 

「騎士アラン。メルドの後を継ぎ、団長の任をどうか頼む。」とエリヒド王。

 

「はっ!若輩者の身ではありますが、謹んで拝命いたします!」と臣下の礼を取るアラン。

 

「護衛騎士達よ、この度はご苦労だった。思わぬ事態が紛れたとは言え、人類最高到達層である階層から帰還せしめたのも良くやってくれた。」

 

「「「はっ!ありがたきお言葉を頂きまして光栄にございます!」」」

 

「ところで、そこの貴族達…。"神の使徒"の一員である南雲ハジメを悪し様に罵り、しまいには「死んでよかった」だと?…では、王命にて命じよう。

「南雲ハジメを侮辱した者らとその一族」の極刑を!

 

「な、なぜ…」

 

「当然だろう!我々の為に戦ってくれる子供達が命を懸けて挑んで、今回は南雲ハジメが他の使徒達を救ってくれたのだ!

晩餐会の時には「家の子供はどうだ」等と、縁故を結ぼうとして。

結果がこうなったら手の平を返す始末。その様な愚者は臣下にはいらんわ!」

 

「騎士達、「こやつらを捕縛せよっ!」、そしてその後親族もな!」

 

「「「はっ!」」」騎士達は迅速に捕縛、連行して行った。

 

「イシュタル殿、何故…「勇者の発言を擁護した?」」エリヒド王は猜疑の目で見ている。

 

「勇者殿の発言が正「嘘をおっしゃらないで!リリアーナが南雲様と同じ所に落ちた。なのに彼は、南雲様は死んでリリアーナは生きている。そう言ったのよ?」ルルアリア王妃は憤怒している。

 

「使徒達の言葉、アラン達の状況説明、メルド元団長の言葉…普通に考えたら両名生存、もしくは死亡。そう考えるのが普通ですよね?」とランデル王子。

(※なんだ、このランデル王子は。カッコよくなりすぎたかっ!!まだ10歳だぞっ!)

 

 

「イシュタル殿と勇者…いや愚者、天之川光輝。虚偽の申告罪で禁固刑に処する。」

 

 

「何でだっ!俺は勇者だ!正しい事を言っているだけなのにっ!」と叫ぶ天之川。

 

 

「その正しさって、貴方の中だけの正しさでしょ?天之川君(・・・・)」と香織が感情を殺した顔で。

 

「勇者ねぇ?無謀に突っ込んでいった貴方と、全員の退路を確保するため動いた南雲君。どこからどう見ても、貴方の行動が勇者として正しいは思えないけど?天之川君(・・・・)。」と雫が冷たい目で見下している。

 

「アンタは、前ばっかりを見てて…私がトラウムソルジャーに殺されかけた事にすら気づいていなかった。そんな私を"無能"と呼ばれていても南雲は救ってくれた。私にとっての"勇者"は南雲だわっ!!!」優花が涙を流しながら訴えている。

 

「俺もよ。あの時メルドさんや雫に止められたにも関わらず、無謀に突っ込んで負けた。が、南雲はアイツを倒せはしなかった…けど、足止めをして皆を救ったじゃねぇか。カッコよすぎるぜ。」龍太郎はホロリと感動しているようだ。

 

「かお「名前で呼ばないで!!」、しず「私を名前で呼ぶなっ!!」。」

 

般若、いや憤怒の表情をした二人が天之川を睨みつける。

 

「「私達は、南雲君もリリアーナ姫様も生きている…そう信じてる。例え絶望的な確率であろうとも。貴方と違って、自分にだけ都合の良い考え方はしないの。

貴方にとっての南雲君は、香織(私)に近づき、雫ちゃん(私)に何故か構われている人。そんなとこでしょ?…相変わらず、気持ち悪いぐらいの自分の女発言と自己正当化ね。」」

 

「私は、南雲君の『強くて優しい所』が好きなの。」と香織。

「私は、香織を通して見た彼の『心の強さ』が好きなの。」と雫。

 

「「貴方の事は唯の幼馴染以上には思えない。赤の他人。」」

 

 

そう二人が言った後、王の間にはある種の異様な空気が漂っていた。

 

「ゴホンっ!その両名も厳重に拘束した上、牢へと連れてゆけ!」とエリヒド王が空気を立て直した。

 

そうこうしているうちに、畑山愛子が地方の巡察から(ホントはホルアド)帰ってきた。

 

その足で、空気が変になっていた王の間において愛子先生からの報告がなされた。

 

・生徒達とアラン達の発言の状況説明の補足。

・メルドが団長を辞すると言っていた事。(既にアランに任命されてるため無効。)

・そして、今回の件で戦闘に恐怖または自分の意志で退きたいという事を許可する事。

(これは、教会・王国に対して原作通り言うこと聞かないと作農師の力貸さないぞ?という事。)

・一番の重大事である。南雲ハジメ・リリアーナ姫の両名に関して、作農師としての力を発揮しつつ、「ウルの街」を最終目的地として捜索活動する事。

 

愛子先生が話した内容で、メルドと話したという事実は王国側にも伝わっている。

が、問い詰めることなど誰も出来はしなかった。

…使徒達もそうだが、愛子先生の覚悟の決まった目を見たから。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

所変わって、王の間ではなく…食堂を兼ねた大広間での出来事。

 

「私は、先程言った通りにウルって街へ向かいながら作農師としての力を使い協力します。皆さんの中で、先程王の間で言った条件に該当する方は遠慮なく言ってください。」

 

そう言った声に反応したのは、

「園部優花・宮崎奈々・菅原妙子・玉井淳史・相川昇・仁村明人・清水幸利・白崎香織・八重樫雫」の9人だった。

 

残りの生徒達は、

「今回の件で天之川や教会には失望したけど、王国を守るためにも、衣食住を保証してくれてる彼らのためにも、帰るためにも訓練や自己防衛の力を持つことは必要。」

という結論の元、愛子先生に同行隊と王国に滞在隊の2つのチームに別れた。

 

(※檜山と天之川離脱。小悪党三人組・永山パーティー・元勇者パーティー・元々戦争したくなかった組が後者です。)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そうして、畑山愛子と同行隊9人+王国騎士数人(何度も言いますが教会騎士ではない)は、ウルの方面へと旅立っていった。

 

 

天之川光輝。エリヒド王に愚者と断じられた彼は未だ…魔力封印具で力を封じられたまま牢獄に居る。出される日は来るのか。

イシュタル=ランゴバルド。彼は教皇という立場を悪用した者として…王国法に乗っ取り処刑された。新しい教皇は未だ決まっては居ない。

銀髪のシスターが、その日を境にハイリヒ王国から姿を消したらしいと風の噂で広まっていた。

(※ノイントです。魅了も発揮しませんし…分散しちゃいましたし戦力。さらに言えば、勇者=愚者と牢獄行き。助けることは出来ます。ただ介在は疑われるので手を出さなかっただけです。)

 

 

 

Side ハジメ+リリアーナ

 

 

 

「痛っ~、ここは…僕は確か…」とハジメが目を覚ました場所は、緑光石でほんのり明るくなっている以外は周囲が良く見えない所だった。

周囲を見渡すことなく、自分の身体が川の縁に乗り上げているが下半身は川の水に浸かっている事は十分に把握できた。

 

「……リリィ!そう言えば、リリィは!」

ベヒモスからの撤退中、橋が崩れここに落ちたが。

自分に問題がないことは確認できたし、リリアーナも一緒に落ちた事を思い出した。

が、一緒に落ちたはずのリリアーナの姿が側にはない。

焦ったハジメは川から急いで上がりつつ、慎重に周囲を探した。

 

そしてリリアーナは、ハジメが漂着していた地点より15m程離れていたところに同じ様に漂着していた。抱き上げるのは恥ずかしいかも…そんな事を一瞬考えてしまったハジメだったがそれどころじゃないと急いで川から上がらせ、

周囲に魔物や敵が居ないのを確認してから、リリアーナを降ろし呼吸を確認した。

 

「…すぅ…すぅ」と穏やかな寝息と呼吸が確認できたので、一安心したハジメは…。

このままでは風邪や低体温症にかかるかもしれないと、適正が無いので苦労しながら"火種"の魔法陣を描き、火を起こした。

 

焚き火代わりに起こした火の直ぐ側で、未だ眠ったままのリリアーナと凍えかけている自分。この状況になって、ようやく事態を落ち着いて考えられるようになった。

 

・ベヒモスを"錬成"で抑え込むまでは、上手く行っていた。

・リリィの忠告通り、撤退時に魔法が「意図的」に自分の方へ向かってきた。

・リリィが魔力切れ寸前だったので、結界を張れず。身を挺して自分を庇ってくれた。

・気絶したリリィを背負って橋を渡って退避している途中に、橋が崩れ二人共巻き込まれた。

 

「…なんなんだよ。僕が活躍する事がそんなに気に食わなかったのか!

リリィとは短い期間だけど、たっぷりと話をして…「白崎さんばりの強情さ」は見に染みてわかっていたはずだ、僕は。魔力切れ寸前までリリィを追い込んだのも。「意図的」な魔法攻撃に巻き込まれたのも。

果てはリリィに庇われて気絶までさせてしまったのも、僕のせいじゃないか!

そして落ちる前にリリィだけでもと思ったのに、力尽きて二人共こうなったのは僕n

 

「違います!私がハジメ様と共に居たかったからですっ!!!」

そう声を荒げ、ハジメの言葉を遮ったのはリリアーナ。

(…まぁ、それ以外「人」は居ないので当然なのですが。)

 

「リ、リリィ?目を覚ましたの?!ケガは?調子悪いとか?!大丈夫!?」パニくってるハジメ。

 

「大丈夫ですから。落ち着いてください、ハジメ様。で、ですね?目を覚ましたらハジメ様が自分を責めていらっしゃる声が聞こえたので、思わず大声を出してしまいました。あの作戦に問題は一切ありませんでした。というか、問題があったのはクラスの方達側なのです。」

 

「え?どういう事?」と疑問顔で問うハジメ。男がやっても可愛くないって(笑

 

「ハジメ様も、檜山…様はつけるのは止めましょう。彼らが意図的にハジメ様を貶していたのはご存知だと思います。私は今回同道する中、ハジメ様の側にいました。

20階層ですね。天之川様が暴走した後、グランツ鉱石が見つかり。香織がそれを見て「ハジメ様」に視線を送っていたのは、私も気付きました。その直後です。

檜山がトラップ確認していないグランツ鉱石に触れ、転移させられたのは。

その後の崩落直前まではハジメ様も把握していると思います。なので、私はメルドに「最後の命令」を出しました。」

 

「…最後!?うぅん、どういう事?」否定したい。でも、まだだと堪えたハジメ。

 

「作戦が成功すれば良し。失敗する場合、ハジメ様をよく思っていない檜山達の仕業でしょう。その場合、迷宮内で始末しなさい。王国へ連れ帰ってしまえば処分出来ずに貴方のみが処分されます。で、貴方はウルかフューレンの街へと姿をくらましなさい。」という命令です。

 

「やっぱり…檜山だったんだ。白崎さんとオルクス大迷宮に入った直後からの不快な雰囲気で何となくはわかってたんだけど。

むしろ、メルドさんに最後の処断を任せちゃった事が申し訳ないかな…。

あとリリィ。絶対に「最後の命令」になんてさせないし、一緒に生きて地上へ帰るんだからね!」

 

「…ハジメ様っ!やっぱり(わたくし)、貴方が大好きですっ!!!」と抱きつきながら言うリリアーナ。

 

「へっ?うん、いや…僕…」

 

パシン!(頬を両手で叩いた音)ハジメの頬は赤くなっている。

 

「リリアーナ・S・B・ハイリヒさん。王族とか異世界人とかそんなもの関係なく、僕も貴女が好きです。僕の願いは元の星に帰ること。でもその時リリィをお嫁さんとして両親に紹介したい。

そう言っているハジメの顔はこれでもかと言う程…真っ赤っかだった。

 

「嬉しいです!本当に。初恋は叶わないと伝承もありましたし。やはり、異世界という壁もありましたから…受け入れてもらえるとは思ってませんでした。」と答えるリリアーナも真っ赤っか。

 

そうして、どちらからともなく…焚き火の明かりと緑光石の明かりに照らされる中。

二人の影は重なった。

 

(※超、重大事項発生のため。愛ちゃん同行隊の香織の背中のアレ(般若さん)が非実体ですが顕現しました。周囲のクラスメイト達や騎士達に大変恐怖を与えているようです。リリアーナとのでコレだったら…あと50階層降りた後の「アレーティア」が参入したらどうなる。その後、合流までには最低でもシア。

リリアーナが王女って事も踏まえて、こちらのルートでもアルテナは候補に入るかも?そして、フューレン。でやっとウル。

その頃には、既に香織の背中のアレは…邪神か魔神か…寧ろ破壊神ぐらいになってそう(笑

 

「と、取り敢えずさ。僕の事、様ってつけないで呼んでよ?僕だってリリィって呼んでるし。」

 

「はい!ハジメ!…さん。ちょっといきなりは難しいかもしれませんけれど…。」

 

何このバカップル。迷宮の中よ?奈落の底よ?イチャついてるだけとか…。(筆者の怒り

 

 

「グルゥウウアァア!」「キュウ!」

 

そんな声?と言うか咆哮が遠くから聞こえてきた。

 

「リリィ、魔力は回復してる?僕は一応最低限。でも、このままじゃいられないよね。」

 

「聖絶クラスなら1回、天絶クラスなら2・3回というところでしょうか、ハジメ…さん。」

 

「食料も水も、何も無い無いだらけだけど…リリィだけは何があっても死なせない!」

 

「私だって、一人だけ生き残るつもりはありません!ハジメ…さんの両親に紹介してもらい私の両親にもちゃんと紹介するまでは!」

 

「「何があっても、最後まで二人で生き残ろう!!!」」




如何でしたでしょうか。

・メルドsideでは、へリーナと(畑山)愛子先生に早急に連絡を取り。
ヘリーナには、自分と共ににリリアーナ姫の命令通り王国からの離反。
愛子先生には、心折れた者達(原作組)と希望するもの(名目上護衛として)を連れて、王国から生徒達を離すようにというのが根幹です。
最初はウルで愛子達とメルド達と合流させるべきか、迷いましたが…。
普通に農村だとは言え、元王国騎士団長と王女専従侍女は目立ちますよね?
特に前者は…ウルもハイリヒ王国領ですし。
なので、人口が多いフューレンでということになりました。


・神の使徒side、これはもう全てサブタイトル通りです。
本文に書いた内容以上に書き記す要素は…ほぼ無いです。

※原作通りには行かせないため、天之川投獄。更にはイシュタル処刑。
…エヒトが関わっているとは言え、教皇のほうが国王より立場が上だとしたら。
それは既に王国じゃなく、法国または神国ですよね?
だって神の声聞こえるってだけで重要職に付けるわけで。
本人が聞こえたって言えば、それっぽい事なら他の誰にも聞こえてないわけで。
ま、一種の宗教国家と考えても…王国なら国王に権限ありとみなし処刑しました。


・ハジメとリリィside。これが今回の本筋です。
前話において…ハジメの在り方(優しさや芯の強さ)が好ましいとしていたリリィ。
でもやはり、このルートにおいてもハジメの魔王化は回避できません。
リリィも政治に携わっていてる分、黒さを知ってはいても14歳の少女です。
そんな二人が、奈落の底でどう変わるか。そんなお話です。

という所まで書こうとしたのですが、10,000字近くなってしまったため。
最後の決意のセリフまでがこの本筋ルートの最後となりました。
(※魔王化と言う絶望ルートがほぼコピペ化しそうだったのもあります。)
ちょっと、物足りないぞ?と言うクレームについては受け付けます。
本筋ルートが一番短い。という謎の形の三本立てになってしまいましたので。

で、この続きを書いていくとするならば…のお話。

ユエに出会うとしてもだいぶ先の事となりますが…。
この話の続きとして書くなら、名前は捨てません「アレーティア」のままです。
(但し、ディーンリードの真意は完全には理解しません。)
という感じになるでしょうか。

あえてもう一度、言います。前話の後書き通り、
どうあがいてもウル以降は完全オリジナル化するので書きません。

…え?だって、オルクス大迷宮に行きませんよハジメ達。
というか、ギルド幹部用の長距離連絡用アーティファクトがあるって…。
イルワ言ってますし。(原作で)わざわざ、ホルアドに寄る理由が無いです。
(王女いるし、香織と雫というハジメが助けようとするだろう人は既にウル。)
となると、神の使徒全滅(死亡か寝返りかもしくは離脱)は確定しますので…。
…というか、光輝が居ないなら安全圏で撤退して魔人族と遭遇しない可能性も大。
カトレアじゃ…どうあがいてもオルクス大迷宮の深奥まで行けないので。

どちらにしても、続きとして書いていけるかは私の脳力(誤字にあらず)次第です。
この構想を形にするのも、1ヶ月以上はかかりましたし…ね?


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