この報告書が財団の誰かに見つかることを祈る (來夢檸檬)
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この報告書が財団の誰かに見つかることを祈る

SCP-5831-JP 五月蝿い蝿

object class:safe

 

特別収容プロトコル

SCP-5831-JPを収容するために、○○県○○市に存在する家に財団の監視員を数人住まわせなければいけません。財団職員は周囲に「自分達は家族」だと語り、またSCP-5831-JP-1の中への一般人の来客は認められません。

 

説明

SCP-5831-JPは、○○県○○市に存在するSCP-5831-JP-1の中に設置された風呂場です。SCP-5831-JPの中には、SCP-5831-JP-2と呼ばれる蝿が、一日一匹、午後4時に出現することが確認されています。このSCP-5831-JP-2は、現在のところ人に目立った害を及ぼすことは確認されていません。また、SCP-5831-JP-2が当SCP内から出ていこうとする行動は、いかなる状況でも確認されていません。SCP-5831-JP-2は日を追う事に1匹ずつ確実に数を増やす事が確認されており、窓や扉を完全に締め切ったとしても現れます。この蝿は踏み潰したり殺虫剤を吹きかけるなどあらゆる手を講じても死ぬことはなく、唯一シャワーの水をかけることで死ぬ事が確認されています。但し、その死体を排水溝に流さないと、次の日には息を吹き返し、新たに出現したSCP-5831-JP-2と共に風呂場に存在していることが確認されています。

 

財団はこれまでに、実験として1ヶ月間SCP-5831-JP-2を死なせずに風呂場を放置したことがあります。1ヶ月後、SCP-5831-JP-1に住む財団の監視員が風呂場の扉を開けたところ、風呂場の中に入る31匹のSCP-5831-JP-2が確認されました。財団の監視員はシャワーを使ってSCP-5831-JP-2の殺傷を試みようとしましたが、財団の監視員は言い知れぬ恐怖感に襲われ、風呂場への立ち入りが出来なくなってしまいました。財団は××博士に財団監視員へのインタビューを行わせました。

 

インタビュー開始

××博士(以降××と表記):君はなぜ風呂場に入らなかったのかね?君の事前の記録には、虫が嫌いという記録はなかったが。

○○監視員(以降○○と表記):怖かったのです。なぜかは分かりません。とにかく、とにかく怖いと感じたのです。虫は嫌いではありません。ゴキブリも殺せますし、蜘蛛も触れます。ですが、あの風呂場に入ろうとした時、何故か恐怖を感じたのです。蝿が31匹。それなりな広さのある風呂場と比べれば少し多いな、と思う程度でしょう。

××:なら、風呂場に入ってシャワーをかければよかったでしょう。

○○:言ってるでしょう、怖かったのです。恐怖を感じたのです。そう、嫌悪感ではありません。恐怖です。今まであの家の監視員になり、何回も蝿を殺しました。だから躊躇いなど感じるはずもない。なのに、怖いと感じたのです。そう、虫に…蝿に恐怖なんて感じるはずがないのに。

××:なるほど、あなたが感じたのは嫌悪感ではなく、恐怖だったと。具体的には、どのような恐怖ですか?

○○:そうですね……。(数分間の沈黙)……えぇ、言い表すなら、見られている、という感覚です。31人なんてものでは無い。数十人から、一斉に見られている、視線を感じる、と。そして、攻撃を…水をかけてはいけないと、本能的に感じたのです。非常にまずい…殺意を感じると…。

××:それは、風呂場の中の蝿からですか?

○○:他に何も存在しない以上、そういうことなのでしょう。

××:ですが、あなた方が水をかけない限り、あの蝿は増え続けます。それが、どのようなことを招くかは承知しているでしょう。

○○:えぇ、分かっています。ですから、蜂用の防護服を付ける許可をください。恐らくそれで、全ては解決します。

インタビュー終了

 

その後、財団から防護服受け取った○○監視員は風呂場に向かいました。数十分後、○○監視員は防護服を濡らして出てきました。しかし、その精神はとても普通ではなく、非常に衰弱している様子でした。財団は○○監視員の精神が安定するのを待ち、再びインタビューをしました。

 

インタビュー開始

××:気分は落ち着きましたか?

○○:はい…もう大丈夫です。全て、お話します。

××:はい、お願いします。

○○:まず、防護服を付けたことは正解でした。シャワーを手に取り水をかけ始めると、蝿達は一斉に、私の体目掛けて飛んできました。一匹や2匹ならまだしも、31匹が、です。流石に殺しきれませんでした。…そして、聞こえてきたんです。あぁ…思い出したくもない……。そう、罵声と表すには生易しいとさえ思える言葉の数々が。

××:それはどこからですか?

○○:どこから、ではないです。直接脳に響く感じでした。それも、耳元で怒鳴られているような感じでした。私は風呂場の床に座り込み、シャワーの固定台にシャワーを取り付け、全身にシャワーを浴びながら目を閉じました。すると、声が段々と聞こえなくなり、最後には完全に止みました。目を開けると、自分の周りには31匹の蝿の死体が落ちていて、生きているものは1匹もいませんでした。私は朦朧とした意識の中で31匹を排水溝に流し、そして出てきたというわけです。

××:なるほど。ちなみに、蝿達はどのようにあなたの周りを飛び回っていたか、覚えていますか?

○○:そう、それが問題なのです。蝿達はただ群がっていた訳ではありませんでした。一瞬だけ、風呂場の鏡に映った防護服の私の姿…そこには、口や目、耳、更には下腹部など、人体の穴がある部分に相当する場所にだけ、蝿が群がっていたのです。

××:なるほど…考えただけでゾッとしますね。恐らくその意図は…。

○○:言わないでください、それこそ吐き気がします。

インタビュー終了

 

この実験の結果、SCP-5831-JP-2は意志を持っているだろうということが分かり、1匹ずつ増えていくと、恐らく倍々に人間に与える恐怖心が強まることが判明しました。また、Dクラス職員を何も着ないままSCP-5831-JP-2が10匹いる風呂場に入れ、Dクラス職員が蝿にシャワーを浴びせた所、数分でDクラス職員は死亡し、その死体はSCP-5831-JPの中から出せなくなりました。死体をSCP-5831-JPの中で解剖した所、目の中から1匹、肛門から1匹、尿道から1匹のSCP-5831-JP-2が確認されました。それらにシャワーを浴びせると即座に死亡し、Dクラス職員の死体は当SCP内から出すことが出来ました。この結果から、恐らくDクラス職員を新しいSCP-5831-JP-2の苗床にしようとしていたこと、及びこのDクラス職員が苗床となった場合、次は一日3匹ずつ蝿が現れただろうことが××博士によって推測されています。

 

これ以降、SCP-5831-JP-2は毎日殺処分をすることが義務付けられるようになり、SCP-5831-JP-2を3匹以上溜めることは許されなくなりました。また、このSCPを用いた実験は倫理に反する可能性があるため、現在凍結されており、あらゆる理由があっても許可はされません。

 

 

補遺1:○○監視員のメモ

ただのハエだと思うな。あれは想像よりも危険だ。世界終焉シナリオを引き起こす可能性もないでは無いが、今のところは問題ない。それよりも、あれの習性だ。ここに、あの時脳に響いた声の一部…特に印象に残った…残ってしまった言葉を記す。それ以上は思い出したくない。想像しただけで、ゲロが出そうだ。

「馬鹿なもの達」「勘違いをして」「我等を作っているのはお前達なのに」「選ばれるのは常に1つだけ」「人間、お前もそうだろう?」

 

補遺2:SCP-5831-JPのシャワーを使った事による水道代は確認されていません。

 

補遺3:SCP-5831-JPの浴槽や壁等は、未知の栄養素で構成されていることが分かっています。




この家が廃墟になった時のことを想像してご覧。恐ろしいと思わないかい?


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