オルコットの雌主人 (スケオジ)
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オルコットの雌主人


私の初投稿作品とおなじくセシリアさんをまた書かせていただきました。
ただ「堕ちる英国バニー」とはまったく違う世界での話です。
意図的に書き方も若干違いますが、ありきたりとはいえ彼女にはこういう展開もあったかもしれないと思うと、



滾りますよね、みなさん?






セシリア・オルコットは亡くなった母を尊敬している。オルコットという名門貴族の名と受け継いできたものがあったとはいえ、IS台頭前の男社会でも名を馳せて成功を手にしていた母を彼女は娘としてとても愛し、強く憧れていた。彼女が両親の死後幼いながら必死でオルコット家を守ろうとした理由の一つに母のことがあったのはいうまでもない話であろう。彼女は母の功績を守ろうとしたのだ。あるいはそれだけ立派だった母との繋がりも。しかし。

 

 

 

───セシリア・オルコットは薄汚い大人達から家を守ることに失敗した

 

 

 

 

オルコット家が所有するいくつかの邸宅。そのうちイギリスにある本邸、その主寝室では豪奢な天蓋付きのキングサイズベッドで男と女が交わっていた。本来は整っていたであろうシーツを自慢の長いブロンド髪と共にぐしゃぐしゃに乱れさせる女は、されど美しい。整った相貌はそれだけで美人だと分かる造形をしている。熱に浮かされたような赤みがさしている頬。目元が蕩け落ちた青い瞳は男を誘う淫魔のそれか。ぷっくらとした若々しい唇は淡いピンクのルージュでより魅惑的に彩られている。尤も魅惑的過ぎてこの時点でだいぶ男に貪られている痕跡があった。

 

「あっあっあっ…やっいっ、んあっ、あふぅん…やああぁっ、あああぁっ!!」

 

その唇から漏れ出る嬌声は彼女の年齢を疑うほどに艶やかで、それを出させている男の支配欲を満足させる。しかしそのために男の下半身により血が集まり彼女を追いつめる要因になっていることの是非は難しい。男の乱暴な腰使いを受け止める裸体は行為の最中ということを差し引いても淫靡だ。ほんのりと桜色に染まるも元来の透き通るような白さが健在の瑞々しい肌。手足がすらりと伸び、バランスのいい均整のとれた肢体。全体的に細身だがつくべき所に柔肉はしっかりついて蠱惑的な凹凸を彼女に与えていた。抱え込まれた両足は男の腰が叩きつけられる度に波打ち、太腿と尻肉の感触で男を夢中にさせている。胸元で重力に逆らって存在を主張する豊満な白い双山は彼の腰使いに応じて揺れ動き、男の目を楽しませている。

 

「はぁんっ…ああぁ、ん、んんぅ! ま、待って、あなたぁ(・・・・)、激しいですわぁ…やっ、ああっ! ああぁ!」

 

「おおっ! そうだ! ワシがお前の夫だ! はははっ、セシリア(・・・・)お前の夫だ!(・・・・・・)

 

「はひぃぃっん!? やあっ、ダメですわぁっ! あなた、あなたぁ! お慈悲をっ、休ま、せ…あああああぁぁっ!!」

 

漏れ出た懇願するような甘い声に、だが返って男の動きは激しくなる。それが彼の無駄な脂肪を揺らすことになるが本人は気にしてもいない。誰が知ろう。妻とされたセシリアというベッドの上で妖艶に乱れる誰もが認める白人美女と比べて、その夫だというこの男のなんと醜悪で太ましい肉体か。そんな美女と野獣(ブタ)が現在のオルコット家当主夫妻(・・)だといわれて事情を知らぬ者はどれだけ信じるだろうか。

 

 

イギリスの名門貴族オルコット家は婿である夫の立場が低く、それによって一人娘(セシリア)にすら侮蔑を受けていた、という点を除けば家長であるオルコット夫人の卓越した手腕によって名門貴族としての名声を欲しいままに手がけた事業で莫大な富を手にして順風満帆だった。彼ら夫妻が列車事故で亡くなるその日までは。両親の突然の事故死で幼い彼女に転がり込んできた遺産は莫大だ。そこへ親切顔で集まってきたのはそれを貪ろうとする薄汚い大人達。セシリアは必死にそれらと戦い、両親の遺産を、名門貴族オルコット家その名も守ってきた。IS適性が高いと分かるとイギリスの代表候補生になって国の後ろ盾でそれを盤石のものにもした。

 

(お母様、喜んでください。必ずやわたくしは代表の座を勝ち取り、オルコットの名を祖国に示してみせますわ!)

 

自らの誇りと能力になんの疑いもなく信じていた彼女はしかし、日本にあるIS学園への入学から躓き始める。故国を誇りに思い過ぎていたうえに日本への偏見を持っていた彼女は多くが日本人女子で形成される学園で徐々に孤立。そして両親の死後、周囲がほぼ敵だらけだった彼女は“敵でも知己でも貴族でもない同年代女子”との対人関係の構築方法を知らなかった。プライドの高さも裏目に出て居丈高に振る舞ったことで日本人以外からも敬遠。これが後々学園で彼女が誰にも助けてもらえなくなる状況を作ることになる。

 

(なぜ誰もわたくしを見ようとしないのですか!? ふん、いいですわ。このセシリア・オルコットの価値が分からない人などどの道必要ありません! わたくしは代表候補生、イギリスの名門貴族オルコット家の女! 東洋の女猿どもに認められなくともいずれ世界がわたくしを認めますわ!)

 

結果だけ、成績だけで自分は優秀だと、特別だと、示してみせる。その意気は当初こそうまくいっていた。彼女は代表候補生で専用機持ち。そのアドバンテージは大きかった。しかし他国の代表候補生たちとの競い合いでは終始下位に甘んじてしまう。彼女が特別劣っていたというわけではない。専用機の性能差でもない。ただ単に専用機(ブルー・ティアーズ)の特性が他国の専用機と相性が悪かったのだ。

 

(こ、こんなはずでは!? どうしてわたくしがこんなに負け越してばかり!?)

 

彼女にはさらに残念なことにそれを指摘してくれる友も、仲間もいなかった。じつをいえばデータ取りをしていた祖国は気付いてはいたが試作機とはいえ自国の技術の粋を集めて作成した専用機が同時代の他国機と相性が悪いなどメンツもあって公に認められなかったのだ。悪いのは専用機を扱いきれない候補生の技量不足だとセシリアは暗に責任を押し付けられていたのだ。彼女はそれでも出来る限りの努力を重ねたが原因をよく理解していなかったこともあって結果は散々。実技においては一般生徒よりは上だが候補生の中では最下位。そんな実技を取り返そうと勉学の時間を削った弊害で座学の成績も下がってしまう悪循環。月日が過ぎるごとに国からの援助は遠のき、卒業時にはついに候補生から除籍処分。だが幸か不幸かその頃の彼女を気にする生徒も教師もおらず騒ぎ立てる者もいなかった。

 

(………なんて、こと……お母様、わたくしは何を間違えたのでしょうか? この三年、手を抜いたことも努力を怠ったこともなかったはずなのにっ! 結果はこのような不名誉……申し訳ありませんお母様。わたくしは、オルコットの名を汚して……天国からみてもらえる自慢の娘でいたかったですのに……ごめんなさい、セシリアは不出来な娘でした……ああ、ですがこれからいったいどうすればっ!?)

 

失意のまま帰国した彼女を待っていたのは悲しいかな更なる窮地。国の庇護を失ったオルコット家は、候補生から下ろされた若き女当主は、国内の様々な企業や他の貴族からそっぽを向かれてしまう。自らが家名を落とした実害を突きつけられたセシリアはそれでも挽回を画策するが所詮は世間を知らぬお嬢さまか。裏目、裏目に出てしまい、家を維持するために代々引き継いできた資産を手放すことも二度、三度。その弱り目を狙ったかのようにとある欲深い中年醜男によってオルコット家は抵抗することもできずに全てを乗っ取られる寸前まで追い詰められてしまう。そして共に戦ってきた姉のように慕うメイドが取り澄ますこともできないほどに青い顔をしていたのを見た時、彼女は自分達がもう完膚なきまでに負けたことを認識した。だからその男からの悪辣な取引を跳ね除ける力も意欲もセシリアにはもう無かった。

 

「ワシの妻となるのならオルコット家の名と資産はもとのまま残してもいい。君と残った使用人たちの生活も保障する。だが拒否するならオルコット家に関わる人も資産も名も誇りも世界中から毛ほども残さず食らい尽くす………どうするかね?」

 

元より、全ての庇護を失い大部分の資産や権利を抑えられた落第者の小娘が醜男とはいえ莫大な資産と様々なコネを持つ海千山千の男に勝てる道理も可能性も無い。だがセシリアには今日まで先祖が残してきた、そして母が遺したオルコット家という名と誇りを守る使命があった。それまで捨て去ってしまえばもうそこにいるのはセシリア・オルコットではない。何よりここに至ってなお忠義を尽くしてくれる数少ない使用人たちを路頭に迷わすこともできない。だから、この最低の男からの最悪の求婚を受け入れるしかなかった。この醜男のいう“妻”が文字通りだけの意味ではないことを自分を無遠慮に舐め回すゲスな視線から理解していても。彼女が己が武器の一つとして磨いてきた美貌とスタイルは成人年齢となったことでIS学園入学時からより洗練され、より魅惑的に、より豊満な、男好きのする肉付きに育っていたのだ。

 

(今日まで守ってきた貞操をこんな男に明け渡すことになるなんて……そうする他に手もないなんて……所詮わたくしのような小娘に守れるモノなど無かったということですの? お母様がいらっしゃればこんなことにはならなかったのでしょうね……でも、どうやらこんな落ちこぼれの娘でも家名とこんなわたくしについてきてくれた者達は守れるようですわ……ならばせめてセシリア・オルコットとしての最後の矜持、どれだけ汚されようとも折れぬ誇りを示しましょう! 見ていてください、お母様!)

 

そう決意と覚悟を決めたセシリア。

で、あったがそこからの半年は予想以上に恥辱と屈辱に満ちた半年であった。まず結婚式はすぐに行われた。イギリス中の名門貴族に財政界の重鎮や若手実業家、有名メディアを招いての派手な式。名目上は醜男が婿入りする形ではあったがあのオルコット家の美しき令嬢が金で中年男に買われる(飼われる)ことは誰の目にも明らか。眉をひそめる軽蔑の眼差しと下卑た妄想を湛えた視線は式の最中ずっと花嫁衣裳で美しく着飾ったセシリアに注がれ続けて彼女を苛んだ。それは彼女が心のどこかで小さく抱えていた結婚式やウエディングドレスへの憧れと夢を打ち崩す現実であり、彼女に味方がいないことを示す儀式だった。それでもセシリアは当初体を差し出しても心だけは誇りだけはと息巻いていた、が。

 

『ああっ、ああぁっ!? い、イクっ、イ……あっ、いや、またぁっ…』

 

『おほぉぉっ、ひぃあっ!?

 ぁ、っ……どうしてぇ、ぁぁ、こんなのおかしくなってぇ…』

 

『お、お願いします! はい、はいぃっ、セシリア・オルコットの処女は今からわたくしの最愛の夫であるあなたさまに捧げますぅ! だからイかせてくださいましっ、もう寸止めイヤですのぉっ! ひっ、ぁ、ああああああぁぁぁぁっ!?!?!』

 

経験豊富な男の手管に初夜から乱れさせられ、不慣れな女の快楽の前に自ら懇願して処女を散らして“もらった”。その事実は小娘の心をいとも簡単に折った。それから毎日のように女の体の弱さ(メスの快楽)を教え込まれ、果てることを知らない男の性豪さ(オスの強さ)を刻み込まれ、どうあがいても勝てないと理解させられる。そうなれば乗っ取り返しや自らの美貌での籠絡など浅はかな考えと諦観しても誰が責められるか。傾倒していた女尊男卑な思想は打ち砕かれ、自分がただ一匹のメスでしかないと自覚する日々。醜男が約束通りオルコット家を尊重して名を残すよう動いたこと、最後まで付き従ってくれた使用人たちを手厚く扱ったことで憂いがなくなり反骨心が育たなかったのも大きい。しかし、もしかしたらあるいは彼女は。

 

 

 

「まったく淫蕩な体だ! どこもかしこも吸い付いてきおって!」

 

脚を開かすように体ごと腰を打ち込んで正常位になると覆い被さった醜男。その非健康的な横に広い体で押し潰すようにセシリアの全身を己が肉体で堪能する。だがそれでいて、そんな外見にそぐわぬ繊細な腰使いで夫の剛直を咥えこむ肉穴に誰が主人かを何度も刻む。

 

「あひぃっ! あっ、ああっ、それダメですわッ、あんんっ、奥当たってぇ、あはああぁっ!?!」

 

「ぶははっ、チンポに響く声を出しおって。ほれ、これがいいのか、ほれほれっ!」

 

「やぁああんっ! おひっ、あひっ、そこついちゃっ、ああ、ああぁ、あああっ!!」

 

円を描くような腰使いにただその美脚を投げ出すように逆立たせながら受け止めるしかないセシリアはただただ自分を押し潰すように抱く男の肩で彼をさらに興奮させる蠱惑的な喘ぎを紡がされる。

 

(わたくし、またなんて声を出してっ!? これでは淑女ではなくただの娼婦ですわ! ああっ、でも止まらない、気持ち良過ぎてまた頭がっ、ああっ、訳が分からなくなってっ!?)

 

「おおっ、何度抱いてもワシのに絡み付いてきおる! よい、よいぞセシリア、それでこそ我が妻! 絶対誰にも渡さぬぞ! お前は、セシリア・オルコットはワシの女だ!」

 

止めどなく襲う快楽の暴力に脳内がピンクの靄にかかったようにぼんやりしていく中。覆い被さる男の声が無遠慮に響く。彼女を自分のモノだと主張する身勝手な声が。しかし。

 

「この美しき金砂をまぶしたような髪も!」

「あはぁ…」

 

激しい腰使いと違って、優しく撫でられる自慢のブロンドヘアー。

 

「白磁のように透き通る肌も!」

「んんぅっ!」

 

生来の白と火照りのピンクに染まる柔肌に次々落とされる口付けの痕。

 

「ワシしか知らぬ瑞々しいこの唇も!」

「んちゅっ!? ちゅ、んぢゅぅ、んっ、れろ、んく…」

 

結婚式で奪われた屈辱の誓いの(ファースト)キスを、遠い思い出とする深い接吻と淫らな唾液交換。

 

「この張りのある大きなバストも!」

「あはぁんっ!」

 

手垢をつけんとするかのように揉みしだかれるはより豊満且つ美しく育った二つの山。

 

「この男を誘う淫らな腰つきも!」

「あああああぁぁっ!!??」

 

ガツンと脳天まで響くような衝撃を悦びだと応えて蠢く、魅惑的なラインの下半身。

 

「そして何をしても淫靡な調べを奏でるこの声も!」

「はぁ、あぁん、だめですわぁ、こんなぁ、ひゃあっ、んん、あなたぁ……」

 

喘ぐだけで男の脳髄を、下半身を直接刺激してくるような魔性の美声。

 

「すべてワシのものだ! 未来永劫お前はっ、セシリア・オルコットはワシの妻だ! このいやらしい肉体を抱けるのもワシだけだ!!」

 

半ば狂ったように繰り返される言葉。それを示すように彼の全てが全身に刻み込まれる。蕩けた頭に快感と共に注がれる男の妄執は、だが確実にセシリアの頭と心に半ば洗脳のように染み込んでいく。両親を失い、無意識に求めていた愛とまるで違うのは分かっていても拒絶するには“惜しい”ものでもあったせいかセシリアは結局夫からの性欲混じりの歪んだ愛情を受け入れだしていたのだ。

 

「オルコットの財だけではないぞ! 血筋もすべてワシが塗り変えてやる! 名門貴族のっ、美しき令嬢を、血統をっ、ワシのっ、ワシの種で完全に作り変えてやるっ!!」

 

毎晩のごとく、飽きもせずに男はセシリアを抱いている。そして彼女が性も根も尽き果てるまで、彼女がいくら嫌がっても、別の場所にねだっても、何度も何度も膣内射精(なかだし)をし続ける。彼女の一族が紡いできたモノを跡形もなく汚しつくすために。セシリア・オルコットという最後に残った美しき女に自分の醜き妄執の種を植え付けるために。

 

「あはぁぁっ! おおっ、奥ぐりぐりいけませんわぁ!? あひぃっ、ああっ、開いてます! 子宮もう開いてますわぁ! ひゃぁ、ああぁ、あなたぁ、あなたぁっ、もうお好きになさってぇっ!! そこはもうあなたさまのものですからぁ! おほぉっ!? ひゃぁっ、んんぅっ、わ、わたくしも、もうイキま、すっ……あ、ああああああぁぁっ!!」

 

その暗き欲望が放たれる前兆。自身に奥深く刺さる男根の震えに、当然のように受け入れる準備をして昂る女の肉体をセシリアは恨めしく感じた。しかしそれ以上に次の瞬間自分を襲うであろう快感への期待を彼女は否定も拒絶もできなかった。

 

「おおおおおっ!! 孕め、セシリア!!」

「んあっ─────────っっっっ!?!?!」

 

最後の一押しとばかりにこれ以上ないほどに隙間なく押し込まれた男の太い腰。それを震わせながら注ぎ込まれるのは男の執着が塊になったようなドロドロとした粘着的な大量の精液。誰の物か示すようにセシリアの子宮を隅々まで白く、白く染めて占拠してへばりつく。

 

「んっ、あ……はぁ、ぁぁ……」

 

それを感じ取らせる火傷しそうな“熱”と全身に響く甘い快感の痺れに頭まで真っ白にされながら、浮かされた顔で甘美な絶頂に旅立っていたセシリア。しばしその余韻に全身を震わせていたがわずかに意識が戻ってくるにつれお腹から広がる濃厚な種付けによる本能的な悦びにその美貌は一際淫らに蕩けていく。普段の令嬢、否、もう夫人か。その顔しか知らぬ者が見れば同一人物とは思えぬメスの顔で知らず彼女はその着床を願うかのように男の体をかき抱いていた。太い首に腕を回し、絶頂に呼応してピンと跳ね伸びていた美脚を彼の腰に巻き付ける。まるで彼女の方が男を逃がすまいとしているかのよう。

 

「おおっ、まだ、出る、ぞ!」

「っっ…あはぁっ……んんぅ……はぁ、はぁ……今晩一発目の種付けありがとうございます、あなたぁ…」

 

残りを絞り出すような最後の射精を受けて軽い絶頂を味わいながら自然と彼女は感謝の言葉を、媚びた女の声を耳元で囁く。本能的な想いの声かこれまでの積み重ねによる教育から出た言葉か。どちらにしろそれが咄嗟に出てしまうほどに彼女はもうとっくにこの男の(メス)であった。

 

「んおおっ、いやらしく吸い付く子宮だ。そんなにワシの子がほしいかセシリア? 心配するな、今夜もお前の卵が溺れるほど注ぎ込んでくれる!」

 

「あはあぁっ! ふかっ、い…んあぁぁっ……」

 

一度目の射精程度では全く意気も下半身も萎えない夫は飽くなき孕ませ欲に任せるまま体を起こす。しがみついたままのセシリアは必然的に対面座位に。これまでと違った所に夫の男根が刺さり、抉るのに悶えながら彼の腰ごと肢体を揺らされる。

 

「くふふ、イったばかりというのに吸い付いてきおるぞ! 名門の子女はここも最高品よな! ハハッ、お前の母もこうしてあの軟弱な男の精を啜ったか? どうせすぐに果ててしまっただろうよ!」

 

「やぁん、おぉっ!? 硬くて長いのが子種でいっぱいの子宮揺らしてますわぁっ! あんなに射精しましたのにぃ、なんてたくましいお方ぁっ! ステキですぅ、ああぁっ、あなた、あなたぁっ!」

 

「愚かな女だ、本物の男を知らぬまま娘だけ残して死ぬとは!

 ほれ見ろ、おかげでセシリアは今や女として最高の快楽(シアワセ)を得ているぞ!」

 

「はいぃっ、セシリアはあなたに抱かれて幸せですわぁっ!!」

 

男の、見た目と違った繊細な腰使いと雄々しい剛直によって乱されながらもさすがに半年も受け続けて慣れも出たのか、突然母の話題が出たせいか。まだ平常には程遠い蕩けた頭ながら、とある話を思い出す。両親の死後、集まってきた薄汚い大人達の精査を信頼するメイド(チェルシー)に頼んだ時、その中にこの男はいた。それによればこの醜男()はかつて自らの母への求婚者であったと。その際は血筋と外見を理由にこっぴどく振られたと。

 

「……っ……」

 

そういうことなのだろう、と頭のどこかにある冷静な自分が囁く声が聞こえた。だがそれ以上に“いま”求められるのが誰かということを訴えるお腹に宿る欲望(子種)の熱と未だ存在感を失わない剛直のたくましさにセシリアは知らず頬を─歪に─緩めた。幻か願望か。彼女は夫の肩越しに、いるわけもない人物の姿を見る。

 

(…ああ、見てください。すごいでしょう? この人ったらこんなにもわたくしに夢中なんですのよ────お母様では(・・・・・)なく、(・・・)わたくしにっ(・・・・・・)……うふふ)

 

夢想の中に見える幻の母。敬意を抱く憧れの、けれどもう落ちこぼれた自分には越えようがない母親が、悔しそうに歯噛みする。

 

「はぁん、あはぁ…」

 

ほの暗い愉悦に全身を震わせるのは現在のオルコット夫人。過去の、ではない。

 

(与し易い無様な男を選んだばかりに、産まれたのは不出来な娘がそれもたった一人……ええ、今はそれを感謝しますわお母様。おかげでわたくしは本物の殿方に抱かれ、このたくましく優秀な種をつけてもらえるのですから。それも一人や二人では終わりそうにありませんのよ? これこそが貴族の女が果たすべき役割ではなくて?)

 

妄想の母に向かう勝ち誇った冷笑。

“男のように”働くだけで、女を、母を、半ば以上捨てていたお前は負け犬だったのだと蔑んで。

 

「あはぁ、んんっ、あなた、はぁ…んっ、んっ!」

 

「おおっ?」

 

自分はお前とは違う。夫を支配するだけで娘の前で愛することもできなかった女とは。

そんな決意と侮蔑を胸に、彼女は自ら腰を振った。無意識あるいは夫の腰使いに応えて、というのはあったが自発的なものはこの半年でこれが初めてのこと。

 

「ど、どうでしょうかぁ…わたくしの動きは……ああぁ、はあぁ、んあぁ、わ、わたくしもあなたを感じさせたいのです……愛させて、くださいませぇ」

 

ゆえに拙さはあった。されど伊達に半年教え込まれたわけではない。夫の感じる所、悦ぶ動きは肉体がわかっている。なによりそれは─

 

「っっ、セシリアっ!!」

「はあああぁんっ、あなたぁ!!」

 

─彼女がこの醜男()を受け入れた証。彼が普段より猛るのも当然であろう。そのたびに耳元で彼女自身すら蕩かすような鼻にかかった嬌声が奏でられるのだ。夫に対する“愛”の言葉と共に。

 

「あああっ、愛してますわあなた! 離さないでっ、このまま、このままわたくしを!」

 

「セシリアっ、ワシのセシリア! 永遠にワシのものだ! 離すものか!」

 

「嬉しいですわっ、離れぬよう愛の証たくさん作りましょう! 二人の愛の結晶をっ、落ちぶれたオルコットを塗り替える新しいオルコットの血筋を愛し合うわたくしたちで一緒に!!」

 

「おおおっ! 孕め、我が愛する妻セシリアよ! ワシの子を孕めぇっ!!」

 

「はい、は、いっ……あ、ああああああああああぁぁぁっ!?!!」

 

求め合う夫婦の営みのごとく、夫はそれこそが己が愛だとばかりに妻に大量の熱き種を注ぎ、妻は脳を染め上げるような幸福感の中で夫の(タネ)を受け止める。

だが愛の下で“燃え上がった”夫婦がそれで終わるわけもなく、彼らはそれこそ比喩でもなく事実として朝まで愛し合うことになる。

 

 

目覚めて、正気に戻ればこのやり取りをセシリアは恥じるかもしれない。屈辱を感じるかもしれない。自らに失望するかもしれない。だが程度の差はあれど、それは今までもいくらかあったことであり、根っこの部分で彼女がこの夫を拒絶しきれない理由であった。やはり“夫の愛”はあまりに“惜しい”のだ。

 

果たして、

 

セシリアの心が夫の偏愛に堕ちるのが先か。

セシリアの体が夫の醜種を芽吹かせるのが先か。

 

どちらにせよ。

この夜、母を嘲笑う快感を知ってしまった彼女の末路は変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

「────お、お許しを旦那さま! 奥様がまだおられ、んんっ、ああぁ……旦那さまの硬いのが入って、はぁぁ…」

 

「お前が大きな声を出さねば問題ない。そもそもお前の仕事だろう?

 自分の仕事が何か、今一度口に出して再確認するがいい!」

 

「おぉんっ! いや、あっ、そんなっ…むり、声が……ああぁっ! お。起きないでください奥様っ…私は、チェルシーは旦那さま専属の、んおおっ!? ああっ、性欲処理用メイドです! 奥様以外に手を出させぬためのっ、旦那さまのオナニーホールメイドでございますぅっ!!」

 

「その通り……しっかり励んでワシの排泄物を処理するが、よい!」

 

「ああっ、いやあぁっ! なんで、どうしてっ!? あんなに奥様としたのに旦那さまの朝からすごすぎますぅっ!!」

 

「くくっ、ほんにこっちも優秀なメイドよな。ほれ、主人の情けをくれてやろう」

 

「あはぁっっ! やっ、ダメぇっ…あっ…おおっ、ん、んんふううっっ!!?!」

 

「う、おおおっ……はぁ、相変わらずイク時の吸い付きはセシリア以上に貪欲よな。健気に声も抑えおって……褒美だ、寝起きでねばつくワシの口の掃除を任せるぞ、顔を向けろ」

 

「あ、はぁはぁはぁ………は、はい、かしこまりました旦那さまぁ……んちゅぅ、れろれろ、ぶちゅぅ…しゅみじゅみまでぇ、んぢゅるっ、おひょうじしゃせてもらいまひゅぅ、んぢゅるっ、れろん、ぢゅっ、んぢゅぅっ!」 

 

 

 

 

 

「………っ」

 

 

 

わかっていました

 

かのじょもまたてごめにされていたのは

 

おるこっとけのことをかんがえ、きょひできなかったのも

 

ああ、

 

でも、

 

どうしてかしらちぇるしー

 

ほかのことばかり、わたくしかんがえてしまいます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かれはだれにもわたしませんわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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