もしもベオとメシエが結ばれるルートがあったら (何処にでも居る佐藤)
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もしもベオとメシエが結ばれるルートがあったら

初めはちょっとした違和感だった。タロットを配ったり、ウチュウのご機嫌をとったりしていた最中、ふと、天上の世界に目を向けた。そこでは何時も通りにメシエが健気に消滅都市を守っていた。

 

「ベオ?どうしたの?」

 

側にいるウチュウがいつもと同じ感情の篭っていない声で尋ねてくる。思いっきり驚いちゃったのは内緒だよ?

 

「う、ううん、なんでもない。多分ただの気のせいだし」

 

…うん、気のせい、気のせいなんだ

 

 

 

 

 

「…そっかー。あの二人が天上の世界に…ね」

 

…最近ベオの様子がおかしい。今までもそうだったが、ここ最近はそれに輪を掛けておかしい。何処かを見たまま固まる事もあれば、いきなり顔を赤面させて悶えたり、更には「メシエ…」と死んだ目で呟くなんて事もあった。…まさか

 

「ねぇ、トラオム?もしかしてご主人様って…」

 

「言うな、止めろ。多分お前のご主人様に取り返しのつかない程のダメージを与える事になるぞ」

 

…ここで再起不能になられては困るからな

 

 

 

 

 

「…は?」

 

「…ああ、俺もそうなった」

 

所長が目を見開き口を開けた不様な顔をしている。…こんな顔を見るのは初めてだ。…だが、おそらく俺も同じ顔をしていたんだろう。

 

「…待て、状況を整理しようじゃないか。まず私がタクヤをユキを焚き付け、メシエと戦わせた」

 

「その後、所長の思惑通りに観測者達がメシエと戦った。ここまでは良かった」

 

そう、ここまでは良かった。ここまでは

 

「…まさか、ベオが動くとはね」

 

そう、ベオがメシエの味方をして観測者達を一掃した

 

「…だが、ここでベオがメシエの味方をしても、ベオになんの得もありゃしない筈だ、どうしてそんな事をしたんだ…?」

 

そう、問題をそこだ。何故いきなりベオはメシエの味方をしたのかだ。アイツの目的はこの物語の完全なる新生。その為に世界線をバラバラに分割しているんだ。ここでメシエを守ってしまう事はその目的の放棄を意味する。…何故メシエを守った…。…!

 

「…そういえば、いや、これは…」

 

そう、これは余りにも不確定な情報だ。言うのは駄目だろう。そう思ったのだが、所長はそう思わなかったらしい

 

「なんだい、お前は何か知っているのかい?」

 

「…これは余りにも不確定な情報だ、報告するにはもっと確証が欲しい。調査に向かわせてもらおう」

 

…まさかメシエに攻撃されたことに腹を立て一掃したとかそう言うものでは無い…よな?だがあれは完全に怒髪天を抜いた顔だったような…

 

 

 

 

 

「どうしてボクを庇ったりしたんだ?…まぁ、キミの事だ、どうせ良からぬ事を考えての事だろう?」

 

…正直驚いた、こいつがボクの助っ人に来てくれるなんて。でも大した期待はしていない。どうせボクの違う利用方法を考えたとかそういうのだろう

 

「……」

 

…どうしてボクを見ないんだ?さっきからボクに話しかけようとして止めるっていうのを繰り返してる。それにたまに顔真っ赤にするし…て、え?

 

「…ベオ?ねぇ、まさかとは思うけどさ…ボクを助けてくれたのって、そういう事…?」

 

ちょっと待ってちょ、ほんとに待って。こんな奴のお嫁さんになんてなりたくないんだけど。とゆうかベオに恋心なんてまだ残ってたの?いや、それでもほんとに嫌なんだけど。やめてよ?ほんとに

 

「…メシエ」

 

…いや、何言われてもボクは揺らがないからどんな事言われてもキミに靡いたりしないから

 

「確かにボクはまともな感性を持っていないかもしれないし、ボクは全ての世界に悲劇をもたらしてきた。こんな物語さっさと消えて仕舞えばいいとも思ってるし、それが一番面白い事が起きそうだって思ってる」

 

…聞けば聞くほどろくでもない男だってわかるよね、ほんと。自分が良ければいいって感じ

 

「でも!それじゃキミまで消えてしまう!」

 

…え?

 

「ボクはキミの為ならなんだってする!バラバラに割れた世界戦が消えないように全部観測してみせるし、一度目と二度目の消滅の世界で運命を変えた人達だって元の運命に戻す!なんなら消滅都市の人間をみんな救ってみせる!だから、だから!…ボクと、一緒になってくれませんか?」

 

…ええ?

 

 

 

 

…わ、私は何を見せられているの?

 

あの二人に言った様に、私はメシエの研究所に潜入した。うん。成功してる。…でもこ、こんな現場に遭遇するなんて、思っても見なかった。…ちょっとこれは…みんなに相談した方が良いのかな…?

 

「ちょ、ばか言うな!今まで色んな事やって置いて、そんな言葉信じられる訳無いじゃないか!」

「本当だよ!だったらカタリナやトラオム、キズナに土下座だってする!それでも駄目ならこの消滅都市から出て行く!それに!新しくなった消滅都市にはメシエがいない!キミがボクの前から消えるなんて考えたくも無いんだ!」

「そう言う恥ずかしくなるような事言うなバカァ!」

 

…どんどん激化していってる。…一端戻った方がいいよね…

 

 

 

 

 

「…て言う事があったんだけど…」

 

…みんなが見て解るくらい渋い顔をしている。うん、私も多分そうなったから

 

「…少し遅れた春が来たってところかねぇ…」

 

…みんなが凄い顔して所長を見てる

 

「婆さん」

 

「所長だよ。で、どうしたんだい?」

 

「リョウコが言ってる事が本当なら、ベオは完全にメシエの味方になったって事だろ?良く分からないが、大分まずいんじゃないか?」

 

 

 

 

 

…やれやれ、随分と痛い所をついてくるじゃないか

 

「その通りだよ。おかげでメシエと戦う事も、メシエの夢を破る事も困難になった。というより、ほぼ不可能だね」

 

「え…?それってどう言うこと?」

 

この子は全く…まぁ説明した方がいいね

 

「この箱とあんた達のそのタロットはメシエのタロット、女帝に干渉して今まで戦って来れたんだ。だがそれも、観測者であるベオのせいで出来なくなってしまった。観測者が一人(メシエ)に向けてその膨大な力を使っているんだ。この箱の力ではどうにもならないくらい、今のメシエは強力になってる筈さ。それに…」

 

そう、それに加え、更に不味い事になった

 

「それに?ねぇ、教えて!一体何が起きてるの!?」

 

「近くで叫ばないでくれ。…この都市全てを包む程の夢、こんな事をすれば本人に多大な負荷がかかる。だからその内この夢は消える筈だった。しかし」

 

「…ベオがメシエに力を注げば、メシエは永遠に夢を展開出来る…そしてメシエとはもう戦えない……!つまりみんなを夢から救えないって事!?」

 

「なんだって!?婆さん!」

 

「所長だよ」

 

「なんとかならないのか!?」

 

「…無理だよ。流石に観測者と戦うのは、私達の力が足りな過ぎる」

 

「そんな…!俺たちは…誰も救えないのか…!?こんなに近くに、救える人がいるってのに…!」

 

…やれやれ、あんた達はすぐそれかい。もっと大きな問題があるだろうに

 

「今は他人より、自分の事を優先しなよ。このままじゃ、あんた達も夢に呑まれちまう」

 

…最も、多分手遅れだろう

 

 

 

〈ここから消滅都市の会話シーン風にやります〉

 

 

 

…メシエ…!

 

僕を受け入れてくれたの!?

 

 

…限りなく不本意だけどね

 

ま、この方がボクにとって

一番良いって思ったから

 

キミを受け入れるってだけだけど

 

 

それでもいいよ!

 

キミと一緒になれる!

 

それ以上に重要な事なんて無いよ!

 

 

…そ。

 

…勝手にすれば?

 

 

…じゃ、遠慮なく♪



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めしにゃ当たらなかった事への八つ当たり

ベオがキャラ崩壊なんてもんじゃ無いぐらいに粉砕しています。それでもいいっていう観測者だけご覧下さい


「にゃ…にゃー//」

 

「いいよメシエ!!いやめしにゃ!!!そう!そうやってもっと頭を低く、さりとて目だけはこちらを向けて!…!ああああああ尊い!!!!!頬が赤くなって涙目になってる所なんて特に眩しい!!!待ってね!?いまこのなによりも輝かしい宝石のようなキミをこの高級カメラで一ミクロンも残さず記録してあげるから!!!!」

 

 

 

 

 

「…トラオム?その手を離して?大丈夫、ご主人様を殴るなんて事はしないわ。私は完璧なメイドだから。うん。ただあの身の毛もよだつ気持ち悪い顔を焼いたあと溺死させるだけだから」

 

「落ち着け!?待つんだ!深呼吸だ深呼吸!それかコーヒーでも飲むか!?アレだ!今なら紅茶を10種類くらいつけてもいい!だからその火の玉と渦巻を今すぐ消すんだ!というかいつの間にそんな高等技術身につけたんだ!?」

 

 

 

 

 

「フフ…フハハハハ!!!…観測者よ、どうだ?自分の望むタマシイを手に入れる事は出来たかな?まぁこちらの観測者は自分の世界を作る程悔しい思いをしているようだかな!…さて、ここでキミたちに朗報だ。私に勝利し、最高の選択券を手に入れろ!このチケットがあれば、好きなにゃんこらぼタマシイを選び放題だぞ?フハハ、グッドゲーム」

 

 

 

 

「タクヤ、ちょっとベオを殴ってくる」

 

「私もご一緒致します」

 

「待て、落ち着け。確かに今のあいつは女の敵としか言い様が無いが、そう簡単に殴れる訳でも無いだろ?」

 

「僕はアイリたん一筋僕はアイリたん一筋僕はアイリたん一筋僕はアイリたん一筋僕は…」

 

「ギーク、その時点で既にアウトだ」

 

「そういえばユキさん、ソウマからこんな手紙が」

 

「?いつの間に…それで、内容は?」

 

「はい……!?…?!………えっと、ウェディングドレスをきた幼い女の子を抱き上げるソウマ…でしょうか??端の方に『僕たち、結婚します』と…」

 

「「ベオより先にソウマの所に行ってくる」」

 

「あ…はい。…ソウマ、生きれますかね…」

 

 

 

 

 

「うう…//いつまで続けるのさぁ…!そろそろホントに怒るよ…!?」

 

「どうぞご自由に!その間ずっとキミの怒り顔を撮り続けるけどいいよね!?」

 

「良いわけないだろ馬鹿ぁ!ううっ…!なんでボクにネコミミなんてもの…!」

 

「最高に可愛いですありがとうございます」

 

「やめてっ!ほんとにっ、そろそろ本気で泣きそうっ!」

 

「…そろそろかな?」

 

「…え?」

 

「今のキミも、これまでのキミも、どこまでも美しい。何処までも折れず、先に進み続けるその心。どんな人間にも与える慈悲の念。そして今でも消えないボクへの対抗心…。そのどれもが、ボクには輝いて見えた。ボクは、キミに惚れていた。ずっと前から。

 

 

…ボクと、結婚して下さい」

 

 

 

 

「〜っ!タイミングってのがあるでしょ!?もう!…////」

 

 

 

 

 

「……期待していた展開とは違うが…まぁ、良いゲームにしよう。…消滅都市を題材にした恋愛ゲームというのはどうだ?隠しキャラに幼い方のウチュウと言うのは…」




恋愛ゲームだして。メシエちゃんに青春を送らせてあげて


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