新サクラ大戦・光 (宇宙刑事ブルーノア)
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第1話『新たなる風と光』
チャプター1『舞い降りた光』


宇宙に煌くエメラルド………

 

太陽系第3惑星・地球………

 

その直ぐ近くの宇宙に、不意に穴の様なモノが開いたかと思うと………

 

「ハッ!」

 

其処から、鎧の様な物を纏った巨人が飛び出して来た。

 

「………アレがこの宇宙の地球か」

 

巨人がそう呟いていると穴は塞がり、纏っていた鎧が光と共にブレスレットに代わり、巨人の左手首に装着される。

 

 

 

 

 

彼の名は………『ウルトラマンゼロ』

 

あの誰よりも地球を愛したウルトラ戦士・『ウルトラセブン』の息子である。

 

光の国の若き戦士である彼は、悪のウルトラマン・『ウルトラマンベリアル』との戦いを皮切りに、別の宇宙へと旅立ち………

 

其処で様々な戦いを潜り抜け、仲間と出会い………

 

神秘のウルトラマン・『ウルトラマンノア』から託された『ウルティメイトイージス』により、時空を超える力を手に入れた。

 

以降、様々な宇宙を飛び回り、後輩に当たるウルトラマン達を助けたりして戦っている。

 

 

 

 

 

そして今………

 

ゼロは、とある宇宙の地球を訪れていた。

 

「………イージスが反応している。間違い無いな。あの地球で何かが起ころうとしている」

 

左手のブレスレット………『ウルティメイトブレスレット』の青いランプが点滅しているのを見て、ゼロは確信する。

 

この地球に何かが起ころうとしているのを………

 

「! この気配は!?………怪獣?………いや、違う」

 

其処でゼロは、怪獣によく似た奇妙な気配を感じ取る。

 

「………行ってみるしかねえか!」

 

ゼロはそう言って、地球へと降下して行くのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太正19年、帝都・東京。

 

後に『降魔大戦』と呼ばれる史上最大の戦いが勃発。

 

帝都・巴里・紐育の華撃団はその脅威に果敢に立ち向かい、そして世界は救われた。

 

彼等勇敢なる華撃団………

 

その全員の消滅と引き換えに………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其れから10年の時が過ぎ………

 

太正29年………

 

1人の男が、帝都・東京を訪れようとしていた………

 

「兵学校を出て、念願の海上勤務に就いたってのに………あの事件の所為で陸上(おか)に左遷か………」

 

窓の外を眺めながら愚痴る様に呟く、腰に打刀と脇差の大小拵えを携えた青年………『神山 誠十郎』

 

若い海軍少尉であるが、とある理由で転属となり、その任地へと向かっている最中である。

 

「特務艦の艦長に任命された時は心躍ったが、短い夢だったな………ホント、醒めないで欲しかった」

 

ガックリと肩を落とす誠十郎。

 

如何やら左遷されたと思っている様だ。

 

「………まあ、済んだ事は仕方無い。気持ちを切り替えていこう」

 

しかし、何時までも気落ちしてはいられないと、半ば無理矢理に気持ちを切り替える。

 

「さて………今度の着任先では、どんな任務が待っているのかな?」

 

そう言って、彼は再び蒸気飛行船の窓から、眼下に広がる帝都の街並みを見下ろすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新サクラ大戦・光

 

第1話『新たなる風と光』

 

チャプター1『舞い降りた光』

 

降魔登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都中央駅・ロビー………

 

程無くして、誠十郎を乗せた蒸気飛行船は、帝都中央駅へと到着。

 

「へえ………此処も随分と綺麗になったもんだ」

 

中央改札を抜けた誠十郎は、綺麗な中央ロビーの様子に軽く声を漏らす。

 

「前に来た時は、10年前の戦いの傷痕が所々に残っていたが………今はすっかり元通り………いや、其れ以上の発展ぶりだ」

 

降魔大戦時、帝都は全域が戦場となり、壊滅的な被害を受けたとされるが………

 

其れが、10年で以前よりも発展した状態となっている事に驚きを隠せていない様子だ。

 

「さて………約束の時間まで、未だ余裕があるな。ちょっと、辺りを………」

 

と、誠十郎が言い掛けた瞬間、周りの人々が騒めき出した。

 

「ん?………騒がしいな、一体何だ?」

 

其れに誠十郎が気付いた瞬間!

 

突然!!

 

駅のステンドグラスを突き破って、何かがロビー内へ飛び込んで来た!!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

其れは、羽根と一体化した腕を持ち、顔に目の無い異形の生物………

 

『降魔』の姿だった!!

 

「こ、降魔っ!?」

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

誠十郎が叫んだ瞬間、1人の女性が悲鳴を挙げ、其れを皮切りにした様に人々が我先にと逃げ出す。

 

グルルルルルッ………

 

降魔は、低い唸り声を挙げるとそんな人々を見回し、今にも襲い掛からんとする。

 

「イカンッ!」

 

誠十郎は、咄嗟に腰の二刀に手を伸ばす。

 

しかし、柄を握ろうとした瞬間、その手が止まってしまう………

 

「くっ………(俺に………何か出来るのか?)」

 

そんな思いから、刀を抜く事が出来ない誠十郎。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

と其処で、降魔が再び咆哮を挙げると、或る方向を向いた。

 

「あ、あああ………」

 

其処には、恐怖の余り尻餅を着いて動けなくなっている、幼い少女の姿が在った。

 

そんな少女を、格好の獲物と見た降魔はその少女に近付く。

 

「ヒイッ!?」

 

少女の顔が恐怖に歪む。

 

「! 止めろおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

その瞬間、誠十郎は刀を抜き放ち、少女に襲い掛かろうとする降魔の背中に飛び掛かった!!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

「! グハッ!?」

 

だが、降魔の尻尾が鞭の様に振るわれ、弾き飛ばされてしまう。

 

「ガハッ!」

 

そのままロビーの壁に叩き付けられる誠十郎。

 

次の瞬間!!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

「!? ガッ!?」

 

降魔の尻尾が再び伸び、誠十郎の胸を串刺しにした!!

 

「亜子ちゃん!」

 

とその間に、少女の母親が尻餅を着いていた少女を抱き上げ、降魔の傍から逃げ去って行く。

 

降魔の尻尾が誠十郎から抜き放たれると、誠十郎の身体は力無く床に落ち、ピクリとも動かなくなった。

 

その下には、血溜りが広がって行く………

 

降魔によって貫かれた場所は心臓………

 

誠十郎は完全に即死状態だった………

 

だが、その時………

 

突如、空から光が舞い降りて、誠十郎の身体に吸い込まれていった。

 

降魔から逃げ惑う人々は、誰1人その光景に気付かない………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺は………死んだのか?………はは………呆気無い最期だったな………)

 

遠くなって行く意識の中で、誠十郎はまるで他人事の様にそう考える。

 

ふとその瞬間………

 

1人の少女の顔が過る。

 

(さくらちゃん………今頃どうしているかな………大きくなっただろうなぁ………死ぬ前に………一目会いたかったなぁ)

 

其れは幼少時に別れた、幼馴染の顔だった。

 

『煮え切らない奴かと思ったが、結構熱いところ有るじゃねえかよ』

 

(えっ!?………だ、誰だっ!?)

 

しかし、突然聞こえてきた声に、誠十郎の意識は急激に覚醒し始める。

 

『お前のその勇気、感動したぜ………心配するな。俺が助けてやる。その代わり、暫く身体を貸してもらうぜ』

 

(身体を借りる!? 如何言う事だ!? お前は誰だっ!?)

 

その瞬間………

 

誠十郎の目の前に、光が溢れる。

 

そしてその光の中に佇む、1つの巨大なシルエットの姿が在った。

 

(光の……巨人?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都中央駅・ロビー………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

「こっちに来るぞぉっ!!」

 

「早く逃げろぉっ!!」

 

「バカ! 押すなぁっ!!」

 

「上海華撃団は如何したんだよぉっ!?」

 

パニックになり、出口へと殺到してしまった為、出入り口で鮨詰め状態となってしまっている人々に迫って行く降魔。

 

「お母さん!」

 

「亜子ちゃん!」

 

その最後尾には、あの母娘の姿が在った。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

とうとう降魔は、その親子に襲い掛かろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回転しながら飛んで来た『何か』が、降魔の左腕を根元から切断した!!

 

!? キシャアアアアアアッ!!

 

切断面から紫色の血液を噴き出し、悲鳴の様な咆哮を挙げる降魔。

 

「「!?」」

 

其処で母娘が見たのは………

 

「………ヘヘッ」

 

放り投げた脇差をまるでブーメランの様に左手でキャッチして逆手に構え、右手にも太刀を逆手に構えて、不敵に笑っている目付きの鋭くなった誠十郎(?)の姿だった。

 

「妙な奴だな………怪獣とは違うみたいだが………」

 

左腕の無くなった降魔を見ながらそう呟く誠十郎(?)。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

とその瞬間、降魔が誠十郎に標的を変え、襲い掛かって来る。

 

「ま、良いか………どの道、倒す事には変わり無えからな!」

 

誠十郎(?)はそう言うと、二刀の刃を擦り合わせて、火花を散らしたかと思うと………

 

「デェリャッ!」

 

身体を回転させながら、二刀を勢い良く放り投げた!!

 

回転しながら降魔へと向かう二刀。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

しかし、そんなモノに当たるかと言う様に身を捻って躱す降魔。

 

そのまま丸腰の誠十郎(?)に噛み付こうとしたが………

 

「フッ! ハアッ!」

 

誠十郎(?)が飛んで行った二刀に手を伸ばして、まるで引き寄せようとするかの様に動かしたかと思うと………

 

何と二刀が反転し、今度は降魔の右腕を切断した!!

 

!? キシャアアアアアアッ!!

 

両腕を失った降魔は、バランスを崩して倒れる。

 

「フッ!」

 

またもブーメランの様に戻って来た二刀をキャッチすると、腰の鞘へと戻す誠十郎(?)。

 

グルルルルルッ………

 

両腕を失いながらも、何とか起き上がる降魔。

 

「デヤアァッ!!」

 

だがその瞬間に、誠十郎(?)は降魔に向かって跳躍!

 

「オオリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

そのまま、右足に炎を纏わせた飛び蹴りを繰り出す!

 

その蹴りが、降魔の頭に命中したかと思った途端!!

 

降魔の頭が、まるでポップコーンの様に弾け飛んだ!!

 

「フッ!!」

 

両腕と頭の無くなった降魔の背後に着地する誠十郎(?)。

 

そして降魔の身体がバタリと倒れたかと思うと、紫の煙と共に爆発した!

 

「へっ、ザっとこんなもんよ」

 

誠十郎(?)がそう言った瞬間、突然の出来事に呆然となっていた人々が一斉に歓声を挙げ始める。

 

「おう、サンキューッ!………!? ハッ!?」

 

とそこで、誠十郎の目付きが元に戻る。

 

「コ、コレは!?………お、俺がやったのか!?」

 

まるで先程までの事を覚えていないかの様に、降魔が居なくなっている事と、歓声を浴びている事に戸惑い始める誠十郎。

 

「あ、あの!」

 

「! ハ、ハイッ!?」

 

其処で声を掛けられ、誠十郎は吃りながら返事を返す。

 

声を掛けてきたのはあの母娘だった。

 

「あ、ありがとうございます! お陰で私もこの娘も助かりました!!」

 

「ありがとう! お兄ちゃん!!」

 

誠十郎に向かってそう感謝を告げる母娘。

 

「あ、ああ、いえ………」

 

覚えていないながらも、助ける事が出来た事に誠十郎は安堵の表情を浮かべた。

 

と其処で、ロビー内に有った時計が鐘を鳴らす。

 

「! イ、イカン! 約束の時間に遅れるっ!!」

 

誠十郎は約束の時間が迫っている事に気付き、慌てて帝都中央駅を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其れから少しして………

 

「はあっ!? 生身で降魔を倒したあっ!?」

 

到着した時には既に事が終わっていた為、駅員から事情を聴取していた上海華撃団の隊長『ヤン・シャオロン』が驚きの声を挙げる。

 

「信じられない………」

 

同じく上海華撃団の隊員である『ホワン・ユイ』も、驚きに目を見開く。

 

「ですが本当なんです。二刀を携えた男性が、まるでブーメランの様に刀を飛ばして、飛び蹴りで降魔の頭を砕いたんです」

 

だが、駅員は真実だと言葉を続ける。

 

「………一体何者だ? ソイツ?」

 

降魔を生身で倒したという誠十郎の存在を訝しむシャオロン。

 

「…………」

 

そんな上海華撃団の姿を、駅の天窓の上から見下ろしている謎の人物が居た。

 

身体はローブ、頭部はフードにすっぽりと覆われ、その正体はまるで分らない。

 

唯一見えている左手には………

 

『黒い羽根状のパーツが装飾されているグリップの付いた赤いリング』が握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

噂にされている誠十郎はと言うと………

 

「…………」

 

難しい顔をして、着任地へと向かっていた。

 

(俺はあの時………確かに死んだ筈だ………)

 

思い起こされるのはつい先程の光景………

 

自分は降魔に胸を貫かれ、死んだ筈であると。

 

確かにあの時、死の感覚を感じた………

 

だが気が付いてみると、何時の間にか自分が降魔を倒しており、しかも貫かれた筈の胸には傷痕1つ無かった………

 

「どうなってるんだ?………ん?」

 

左手で髪を掻き上げ、苦悩する誠十郎だったが、其処でその左腕に………

 

見慣れないブレスレットが着けられている事に気付く。

 

「何だコレ? こんな物着けて無かったぞ?」

 

『其れはそうだ。そいつは、元は俺が着けていた物だからな』

 

「!? 誰だっ!?」

 

突然聞こえて来た声に、誠十郎は足を止めて周りを見回す。

 

しかし、その声の主らしき人物は見当たらず、何人かの通行人が怪訝な目で誠十郎を見遣る。

 

「………気の所為か? いや、でも確かに………」

 

『俺が居るのは、お前の中だぜ』

 

「!? また聞こえたっ!?」

 

再び聞こえて来た声に、誠十郎は戸惑うばかりである。

 

「ん………?」

 

其処で、左腕のブレスレット………ウルティメイトブレスレットの青いランプが光っている事に気付く誠十郎。

 

「!? まさかっ!?」

 

『漸く気付いたか』

 

誠十郎が或る可能性に思い至った瞬間、ブレスレットを介して声の主………ウルトラマンゼロの姿が見て取れた。

 

「お、お前はっ!?」

 

『俺はゼロ。ウルトラマンゼロだ!』

 

「ウ、ウルトラマンゼロ!? 何者だ、一体!?」

 

『分かり易く言うと宇宙人だな』

 

「う、宇宙人っ!?」

 

『自分の命も顧みず、子供を助けようとしたお前の勇気、感動したぜ。今日から俺とお前は一心同体だ!!』

 

「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!?」

 

ゼロのその言葉に、誠十郎は通行人に奇異な目で見られている事も忘れて、大声を挙げてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コレが後に………

 

この星の運命を大きく左右する………

 

奇跡の出会いとなる事を………

 

この時、誠十郎もゼロも知る由は無かったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新連載、投稿開始させていただきました。

新サクラ大戦とウルトラシリーズのクロスオーバーです。

サクラ大戦は私がオタクになる切っ掛けの作品でして、思い入れのある物です。
新サクラ大戦も、色々と言いたい事はありましたが、新キャラクター達は好きになれたました。
なので、コイツで1つ書いてみるかなと思いまして。

で、考えた結果がウルトラシリーズとのクロスオーバーです。
ウルトラシリーズは色々と便利なところがあるので、新サクラ大戦側に改変が遣り易くなるのと、あと単純に1番好きなヒーローなので。
相性も良いと個人的に思いまして。

さて、原作では上海華撃団が間に合って危機一髪となるが、この作品では間に合わず、命を落としてしまった誠十郎。
そんな彼に、ウルトラマンゼロが一体化します。
誠十郎のキャラは好きなんですが、大神さんとの差別化か、ちょっと奇行が目立つ場面はありまして………
その辺を一体化しているゼロがフォローするって事をさせようかと。
逆にゼロが要らぬ世話焼いて、更なる奇行となってしまう事もあるかも知れませんが(笑)
メインカップリングは、誠十郎×さくらとなります。
幼馴染カップルは最強(完全に趣味)

勿論、ゼロ以外にも色々なウルトラマンが客演予定であり、更にウルトラシリーズ側の登場人物が平行宇宙の別人として登場したります。

誠十郎が生身でゼロの技を使えた事は、次回で軽く説明します。
そして、謎のフードの人物………
一体何者なのか?
所持している物はやはり………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『帝劇支配人・神崎 すみれ』

チャプター2『帝劇支配人・神崎 すみれ』

 

月ノ輪怪獣 クレッセント登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として帝都中央駅に現れた降魔との戦いで命を落とした神山 誠十郎。

 

だが、自分の身を顧みずに少女を守ろうとした勇気に感動したウルトラマンゼロが彼と一体化。

 

誠十郎は一命を取り留めた。

 

自分が1度死に、ウルトラマンゼロと一体化した事で助かったと知った誠十郎は仰天したが………

 

どうにか落ち着きを取り戻すと、転属先の任地へと向かいながら、お互いの事を話し合ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・東京の通り………

 

『太正時代に降魔………それに降魔大戦か………この地球も中々大変な事になってんだな』

 

「俺からしてみればお前の方が大変だよ………ウルトラマン………光の国………宇宙警備隊………アナザースペース………怪獣に宇宙人だなんて………」

 

ゼロと交換した情報を言い合いながら通りを歩く誠十郎。

 

しかし、ゼロの声は誠十郎以外には聞こえていないので、傍から見ると誠十郎が独り言を言っている様にしか見えない。

 

「何より………俺が1度死んだなんて………」

 

自分の右手を見ながら、信じられないと言った様子で呟く誠十郎。

 

『本当だ。けど心配するな! 俺が融合してお前の身体を治療している。治ったらまた普通に生きてられるぜ』

 

「因みに、その治療ってのはどれぐらい掛かるんだ?」

 

『暫くは掛かるぜ。何せ心臓を貫かれて、ほぼ即死状態だったからなぁ』

 

「そうか………まあ、お前のお陰でこうして生きてられるんだ。感謝してるよ」

 

『良いって事よ(タイガの時みたいな事にならなくて良かったぜ………)』

 

かつてフューチャーアースで融合した『タイガ・ノゾム』の様な事にならず、内心で安堵するゼロ。

 

『ああ、そうだ。俺がお前と一体になっている事はなるべく秘密にして於いてくれ。この地球だと色々と面倒な事になりそうだからな』

 

「分かった。まあ、言ったところで信じて貰え無さそうだがな………」

 

ゼロの言葉にそう返しながら、ふと街頭の時計に目を遣る誠十郎。

 

「!? しまったっ!? もうこんな時間なのかっ!?」

 

其処で、約束の時間が直ぐ訪れようとしている事に気付いて思わず大声を挙げる。

 

「マズイ………色々あってすっかり遅くなってしまった………此処からじゃ間に合わない………転属初日から遅刻だなんて、最悪だぞ!」

 

アタフタとし出す誠十郎。

 

『ったく、しょうが無えなぁ………一寸代われ』

 

「えっ? 何を………!」

 

と其処で、ゼロがそう言ったかと思うと、誠十郎の身体が一瞬脱力したかの様にダランとなる。

 

しかし直ぐに顔を上げたかと思うと、その目付きが鋭くなっていた。

 

「行くぜぇっ!!」

 

そして次の瞬間!!

 

凄まじい速さで走り出した!!

 

その速さは、道を走っている自動車を追い越す程だった。

 

しかも其れでいて、通りを歩いている人には全くぶつからない様に動いている。

 

(ど、如何なってるんだぁっ!?)

 

「お前は今、俺と融合してるんだ。今のお前は普通の人間より身体能力が大幅に上がってる」

 

心の中で仰天の声を挙げる誠十郎に、誠十郎(ゼロ)が答える。

 

(! じゃあ、駅で降魔を倒せたのも!?)

 

「ああ、そうだ。しかし、アレは其れ“だけ”じゃない。お前の持ってる『霊力』って力も作用したんだ。お陰で、元の姿にならなくても俺の技の一部が使えた」

 

帝都中央駅で降魔を倒した時の事を思い出す2人。

 

そのまま誠十郎(ゼロ)は、驚く人々を尻目に、光の様に走り抜けて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座・大帝国劇場前………

 

「着いたぜ! 此処で良いんだな?」

 

程無くして、目的地である大帝国劇場前に辿り着く誠十郎(ゼロ)。

 

(あ、ああ、そうだ………ま、間に合ったか)

 

「其れじゃあ、代わるぜ」

 

誠十郎(ゼロ)がそう言ったかと思うと、再び身体が一瞬脱力したかの様にダランとなり、顔を上げると目付きが戻っていた。

 

「やれやれ………此処が新しい任地か………大帝国劇場………劇場?」

 

意識の戻った誠十郎が、新たな任地・大帝国劇場を見上げ、驚きの声を挙げた。

 

「特務艦隊から劇場に配置換えって、いったい、何が如何なってるんだ?」

 

『オイ、誠十郎。劇場って何だ?』

 

と怪訝な顔をしている誠十郎に、ゼロがそう尋ねる。

 

「あ、ああ………劇場ってのは、役者が芝居とか演劇とかを見せる場所さ」

 

『へえ~、生で映画をやる場所って事か?』

 

「ま、まあ、そうとも言えなくも無いか………?」

 

カルチャーギャップに頭を掻く誠十郎。

 

「あのー、すみません。お掃除の邪魔なんですけど」

 

と其処で、箒を手にした着物に袴姿で黒いロングストレートの髪型の少女が、誠十郎に声を掛けてきた。

 

「! うわっ! すみません! 失礼しました」

 

誠十郎は、驚きながら飛び退く様に少女から離れる。

 

「劇場に何か御用………ですか?」

 

「私は、帝国海軍少尉・神山 誠十郎です。えっと、此処に来る様に言われて………」

 

首を傾げる少女に、誠十郎は自己紹介をして説明しようとしたが………

 

「! 若しかして………! 誠兄さん!? う、嘘っ!?」

 

その少女が何かに気付いた様に、誠十郎を見ながらそう声を挙げた。

 

「………? えっと、何処かでお会いしましたか?」

 

しかし、誠十郎は少女に見覚えが無く、そう問い返す。

 

「えええええっ!? 若しかして………忘れちゃったんですかっ!? ほら!」

 

すると少女は、オーバーなリアクションで後ろに下がったかと思うと、手にしていた箒を脇に構え、まるで抜刀の様に振るった!

 

「うわっ!?」

 

突然箒を眼前に振られて、誠十郎は1歩下がる。

 

「! 若しかして………さくらちゃん!? 天宮さんのところの」

 

「はいっ!」

 

「子供の時以来だから………10年振りくらいかな?」

 

少女の名は、『天宮 さくら』

 

子供の頃に別れた、誠十郎の年下の幼馴染だった。

 

「えへへ。覚えていてくれて、良かった!」

 

花が咲いた様に笑うさくら。

 

「久しぶりに会えて、俺も嬉しいよ。えっと………」

 

『誠十郎。こういう時はキレイになったなって言ってやるもんだぜ』

 

と其処で、ゼロが口を挟んでくる。

 

「(あ、ああ………確かに、子供の頃の記憶しか無いから。見違えたな)キレイになったね」

 

ゼロに促される様にそう口にする誠十郎。

 

「な、何を言い出すんですか!? いきなり!」

 

「ははっ………素直な感想だったんだけどな」

 

「もう………恥ずかしいよ………」

 

さくらは頬を染めて、モジモジとする。

 

「ッ!」

 

その仕草に、誠十郎はドキッとする。

 

『へえ~、可愛い娘じゃねえか。お前が死に際に会いたがってたのも分かるぜ』

 

(う、煩い!………って!? 何でゼロがその事を知ってるんだっ!?)

 

『いや、融合する時に()()()()()()()()()()が垣間見えてな。まあ、一心同体だからな』

 

「ふざけるな、お前っ!!」

 

と其処で、誠十郎は左腕のウルティメイトブレスレットを摑んでガチャガチャとする。

 

「ど、如何したんですか!? 誠兄さんっ!?」

 

突然奇行に走った誠十郎に、さくらは驚きの声を挙げる。

 

「!? あ、あ~! いや! な、何でも無いよ! 一寸腕が痒かっただけさっ! ハハハッ!」

 

其処で、さくらが居た事を思い出した誠十郎は、笑って誤魔化す。

 

「?」

 

そんな誠十郎の姿に、さくらは首を傾げるのだった。

 

「其処の御2人さん。公衆の面前で、イチャつかないで貰えるかしら?」

 

すると其処へ、女性の声が聞こえて来たかと思うと………

 

大帝国劇場から、紫の着物を纏って扇子を携えた、ショートヘアーの茶髪に左目に泣き黒子のある女性が姿を現した。

 

「神崎支配人!」

 

「神崎………支配人………?」

 

さくらが声を挙げると、誠十郎も女性を見遣る。

 

(この女………)

 

一方ゼロは、その女性から“何か”を感じ取っていた。

 

「!」

 

と女性は、誠十郎を見ると一瞬表情を変えたが、直ぐに元へ戻す。

 

「貴方が、神山 誠十郎くんね。待っていましたわ。私は………『神崎 すみれ』。この大帝国劇場の支配人をしています」

 

そして、誠十郎に向かってそう名乗った。

 

(神崎………すみれ………どこかで聞いた事がある様な………)

 

「ようこそ、大帝国劇場へ。歓迎致しますわ」

 

誠十郎が女性………『神崎 すみれ』の名に聞き覚えを感じていると、すみれは誠十郎にそう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その後………

 

誠十郎はすみれに連れられ………

 

大帝国劇場の支配人室を訪れていた………

 

 

 

 

 

大帝国劇場・支配人室………

 

「神山 誠十郎………飛び級で海軍兵学校に入校。卒業後、海軍に配属され各地で作戦に参加」

 

誠十郎の経歴が書かれた報告書を読み上げているすみれ。

 

「多数の武勲を上げた後に、海軍特務海防艦『摩利支天』の艦長として、対降魔特別任務に就く」

 

『へえ~、お前案外凄かったんだな、誠十郎』

 

(案外とは何だ?案外とは)

 

ゼロはそんな誠十郎の経歴に感心しているが、誠十郎は余り感心している様に見えないゼロの態度に不満そうにする。

 

「………中々の経歴ね」

 

「優秀な仲間のお陰です」

 

「謙虚ね。そんな貴方にお願いしたいお仕事が有るのよ」

 

「はっ!」

 

そう言われて姿勢を正す誠十郎。

 

「神山くん。貴方は………『帝国華撃団・花組』を知っているかしら?」

 

『? 帝国華撃団?』

 

(………詳しく聞いてみるか)

 

誠十郎(とゼロ)は、すみれから帝国華撃団・花組は劇場が本拠地である事の説明を受ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………と、いうワケですわ」

 

「成程………理解しました」

 

『親父達が居た地球に在った防衛チームみたいなモンか………』

 

すみれから説明を受け、納得している誠十郎と、自分なりの解釈をするゼロ。

 

(そう言えば………神崎 すみれって………嘗てのトップスタァの名前だった様な………)

 

と其処で、兵学校時代で受けた授業の一部が記憶に蘇ってくる誠十郎。

 

(まさか、目の前のこの人は………嘗ての帝国華撃団・花組の隊員!?)

 

『へえ、只者じゃねえとは思ってたが、そういう事か』

 

目の前に居るすみれが、伝説的な人物である事に気付くと、ゼロも納得が行った様な様子を見せる。

 

「さて、此処からが本題」

 

と、其処ですみれは表情を引き締め、再度誠十郎に話し掛ける。

 

「神山 誠十郎くん。貴方に………帝国華撃団・花組の隊長になって貰いたいの」

 

「!? お、俺が………隊長ですかっ!?」

 

突然の大抜擢に、誠十郎は戸惑いの声を挙げる。

 

『オイオイ、スゲェーじゃねえか、誠十郎! 隊長だぜ、隊長! ゾフィー隊長と同じになるのか!』

 

無邪気に喜ぶゼロは、ウルトラ兄弟の長男であり、宇宙警備隊の隊長である『ゾフィー』の事を思い遣る。

 

………その際一瞬、誠十郎の頭が『火山怪鳥 バードン』に燃やされる光景を想像してしまったりしていたが。

 

(い、いやしかし………いきなり隊長だなんて………)

 

『ビビッてんじゃねえ! 男は度胸だ!!』

 

「(他人事だと思って………しかし、俺が選ばれたと言うのは事実だ)了解しました!! 若輩の身ではありますが、精一杯務めます!」

 

「良いお返事ね。期待しているわよ」

 

誠十郎の返事に、すみれは満足そうに頷く。

 

「ありがとう、神山くん。これから頼りにさせて貰うわね?」

 

「はっ! 此方こそ、よろしくお願い致します」

 

そう言ってすみれに向かって敬礼する誠十郎。

 

「新しい花組の初任務は………『世界華撃団大戦』に勝つ事よ」

 

『世界華撃団大戦?』

 

「其れは、何でしょうか?」

 

新しく出た単語に、ゼロと誠十郎は首を傾げる。

 

「詳しい事は追々説明しますわ。今は『華撃団大戦』の事を心に留めておいて」

 

「了解しました」

 

「其れじゃあ………カオルさん。一寸席を外して頂けるかしら?」

 

其処ですみれは、傍らに控えていた秘書であり帝劇の事務・経理・財務を担当している、黒いスーツ姿に眼鏡の女性・『竜胆 カオル』に言う。

 

「えっ? あ、ハイ。分かりました」

 

当初の予定とは異なるすみれの行動に、カオルは一瞬困惑したものの、直ぐに気を取り直し、支配人室から退室しようとする。

 

「! きゃあっ!?」

 

と、カオルが支配人室のドアを開けると、外から悲鳴が聞こえて来た。

 

「………天宮さん?」

 

その悲鳴の主………さくらの姿を見て、カオルが首を傾げる。

 

「アイテテテテ………あ、えっと~」

 

「………盗み聞きしようとしていたのですか?」

 

痛がりながら目を泳がせるさくらに、カオルは鋭い目付きでそう指摘する。

 

「し、してません! だって、扉が厚くて聞こえなかったんですから!」

 

「つまり、盗み聞きしようとしていたのは事実だと?」

 

「あうっ!?」

 

「………一寸此方へ」

 

カオルは眼鏡を光らせて、さくらを連れて行く。

 

「あ、誠兄さ………」

 

誠十郎に助けを求めようとしたさくらの目の前で、扉は無情に閉められた。

 

「さくらちゃん………」

 

「ふふふ、仕方の無い()ですこと………其れで神山くん。改めて訪ねたい事がありますので」

 

呆れる誠十郎にすみれは笑いを零したが、直ぐに険しい表情を浮かべて誠十郎にそう言う。

 

「何でしょうか?」

 

「貴方………一体()()ですの?」

 

眼光鋭く誠十郎を見据えるすみれ。

 

「な、何って………自分は帝国海軍少尉の………」

 

「そうではありませんわ………『貴方の中に居るもう1人』の事ですわ」

 

「!? も、もう1人って!?」

 

そう指摘された誠十郎は動揺を露わにする。

 

「な、何の事だか、自分にはサッパリ………」

 

「見縊らないで下さるかしら。この神崎 すみれ………戦いに出る為の霊力は失ったとは言え、“霊的な存在を見る目”は未だ衰えて等おりませんわ」

 

誤魔化そうとする誠十郎を、言葉でバッサリと切り捨てる。

 

「邪悪な気配は感じませんわ………いえ、寧ろコレは………『あの人』と同じ様な気高い魂を感じますわ」

 

「お、俺は………!?」

 

と其処で、誠十郎の身体が一瞬脱力したかと思うと………

 

「驚いたな………地球人に最初(はな)っから見破られたのは初めてだぜ」

 

ゼロの人格が表に出て、目付きが鋭くなった。

 

「貴方が神山くんの中に居る者ね。地球人とは………まるで、“自分が宇宙人だ”とでも言いた気な口ぶりね」

 

「その通り。俺の名はゼロ。M78星雲に在る光の国からやって来た宇宙人………ウルトラマンさ」

 

親指でビシッと自分を指差しながら、誠十郎(ゼロ)はそう言い放つ。

 

「光の国?………ウルトラマン?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・東京、銀座の一角………

 

と或るビルの屋上に佇む影が在った。

 

「…………」

 

帝都中央駅で、上海華撃団の様子を盗み見ていたあのローブの人物だ。

 

「…………」

 

ローブの人物は、一瞬眼下の道行く人々を見下ろしたかと思うと、左手に握ったあの赤いリング………

 

『ダークリング』を構える。

 

そして、ローブの中にしまっていた右手を出したかと思うと………

 

その右手には、カードの様な物が握られていた。

 

カードには怪獣の絵が描かれており、何やら文字の様なモノが書かれている部分もある。

 

そのカード………『怪獣カード』を、ダークリングの中に挿し込む様に入れるローブの人物。

 

『クレッセント』

 

すると、ダークリングからくぐもった闇の声が響く。

 

そして、カードを挿し込んでいたのとは反対側の方向から、赤い竜巻の様なエネルギーが放たれる。

 

そのエネルギーは蛇の様に曲がりくねりながら、上空へと昇って行くと1つの塊になる。

 

そして、周囲から赤黒い霧の様な物………

 

『マイナスエネルギー』を吸収し始めた!!

 

やがてそれは、1つの形を作り………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

独特の効果音と共に、『月ノ輪怪獣 クレッセント』の姿となった!!

 

「な、何だアレはっ!?」

 

「ば、化け物だぁっ!?」

 

「新手の降魔かっ!?」

 

突如として町中に現れた50メートルを超える巨大な怪獣の姿に、人々は仰天の声を挙げる。

 

その直後!!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

クレッセントは、その赤い目から同色の放射熱線『クレスト・エンド』を放つ。

 

クレスト・エンドはビルに命中したかと思うと、一瞬にしてビルを粉々に爆発四散させた!!

 

「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

途端に人々は恐怖の悲鳴を挙げ、我先にと逃げ惑い始めた。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

クレッセントはそんな人々を追い回すかの様に、その巨体で建物を踏み潰しながらゆっくりと歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、帝劇・支配人室では………

 

「………とまあ、こんな具合だ」

 

「成程………神山くんは、1度死んだのだけれど貴方のお陰で生きている、って事ですわね」

 

誠十郎(ゼロ)から説明を受けたすみれが、納得の行った様子を見せる。

 

「ならば、お礼を申し上げなければなりませんわね………ありがとうございます、ウルトラマンゼロさん。神山くんを助けて頂いて」

 

「良いって事よ。しかし、俺が言うのも何だが、随分と簡単に信じるし、受け入れるんだな?」

 

「ふふふ、私を誰だと思ってらっしゃるの? 今更“その程度の事”で狼狽えたりしませんわ」

 

(さ、流石は伝説の花組の一員………)

 

動じないすみれの態度に、内側に引っ込んでいる誠十郎も感服する。

 

と、その時!!

 

「!? 何ですのっ!? この邪悪な気配はっ!?」

 

「コレは!? マイナスエネルギーッ!?」

 

すみれと誠十郎(ゼロ)は、マイナスエネルギーの流れを感じ取る。

 

2人は直ぐに窓の傍に駆け寄り、外を見遣る。

 

其処には、帝劇1階の支配人室からでもハッキリと見える巨体を揺らしながら、街を破壊して歩くクレッセントの姿が在った。

 

「な、何ですの、アレはっ!?」

 

流石に、クレッセントの姿にはすみれも驚きを隠せなかった。

 

「月ノ輪怪獣 クレッセント! さっきのマイナスエネルギーの流れは奴か!!」

 

一方ゼロは、光の国のデータベースで見たデータを思い出し、そう声を挙げる。

 

「怪獣!? アレが怪獣ですの!?」

 

先程ゼロから説明を受けた怪獣の姿に、すみれは再度驚きを示す。

 

「すみれ様! 大変ですっ!!」

 

と其処へ慌てた様子のカオルが、ノックもそこそこに支配人室へ飛び込んで来た!

 

「! 分かってますわ。直ぐに司令室に………」

 

すみれは地下の司令室へと移動しようとしたが………

 

「天宮さんが出撃しましたっ!!」

 

「!? 何ですってっ!?」

 

「!?」

 

(さくらちゃんがっ!?)

 

続くカオルの言葉で、またもゼロ、誠十郎共々驚きの声を挙げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

前回、ゼロと一体化した誠十郎が降魔を生身で倒せたのは、ゼロと一体化しているお陰の他に、霊力も作用したからです。
都合、生身で戦わざる場面も多々出てくるので、その為の措置の一環だと思って下さい。

そしてメインヒロインの天宮 さくらと伝説の人である神崎 すみれの登場です。
いきなりゼロの事を看破したすみれさんですが、これはやはり彼女なら見破りそうだなと思ったのと、ゼロとして戦う場合、司令官である彼女の協力が不可欠になると思い、事情を知っていてもらわないとと思いまして。

そして謎の人物が持っていたあの『ダークリング』によって、太正の世界に遂に怪獣が出現!
暴れる月ノ輪怪獣 クレッセントを止める為、さくらが単身出撃しますが………
次回、遂に太正の世界にウルトラマンゼロが姿を見せます!

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『その名はゼロ!』

チャプター3『その名はゼロ!』

 

月ノ輪怪獣 クレッセント登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

咆哮を挙げながら、建物を次々に踏み潰して行くクレッセント。

 

時折クレスト・エンドを放ち、爆発を起こしては炎を広げて行く。

 

その中を、悲鳴と共に只管逃げ惑う人々。

 

降魔大戦から漸く復興した街並みが、瞬く間に灰塵に帰して行く………

 

「其処までだ! デカブツッ!!」

 

と其処へ!!

 

そう言う声と共に、クレッセントの前方の足元に5メートルぐらいの影が2つ、立ちはだかった。

 

「「上海華撃団! 参上っ!!」」

 

そう言ってポーズを決める2機の霊子戦闘機『王龍(ワンロン)』

 

上海華撃団の機体だ。

 

「上海華撃団だ!!」

 

「助かったぁっ!!」

 

逃げ惑っていた人々が、上海華撃団の姿を見て歓声を挙げる。

 

グルルルルルッ………

 

クレッセントは立ち止まり、唸り声を挙げながら上海華撃団の姿を見下ろす。

 

「お、大きい………」

 

黄色の王龍に乗った少女、上海華撃団隊員の『ホワン・ユイ』が、クレッセントを見上げて戦慄した様子を見せる。

 

何せ身長56メートルのクレッセントに対し、王龍は精々全長4~5メートル………

 

実に10倍以上のサイズ差が在った。

 

「ビビってんじゃねえ、ユイ! どんなにデカかろうが、俺達の敵じゃねえっ!!」

 

しかし、緑色の王龍に乗った青年、上海華撃団隊長の『ヤン・シャオロン』がそう吠える。

 

「行くぜぇっ!!」

 

そして次の瞬間には大きく跳躍し、クレッセントの眼前に迫った!

 

「オラアァッ!!」

 

クレッセントの鼻先に、炎を纏った拳を叩き込む!!

 

反動を利用して離れた瞬間、クレッセントの鼻先が爆発する。

 

「如何だっ!?」

 

着地を決めたシャオロン機が、クレッセントを見上げながらそう言うが………

 

爆煙が晴れると、見えたのは無傷のクレッセントの姿だった。

 

其処で、クレッセントの右足が上がる!

 

「! うおおっ!?」

 

シャオロン機が慌てて脇へ飛ぶと、先程までシャオロン機が居た場所にクレッセントの足が振り下ろされる。

 

石畳の地面が砕け、大きな足跡が形成される。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

クレッセントは咆哮を挙げ、上海華撃団を無視して進撃を再開した。

 

「シャオロン! 大丈夫っ!?」

 

「あの野郎! 俺達を無視しやがったっ!!」

 

ユイ機がシャオロン機の傍に寄ると、シャオロンが憤慨した様子を見せる。

 

「巫山戯やがってっ!!」

 

其処で、再度シャオロン機は跳躍!

 

今度は、クレッセントの頭の上に着地する。

 

「オラァッ! オラオラオラァッ!!」

 

そしてそのまま、クレッセントの頭部を何度も何度も殴り付ける。

 

「ハイ! ハイハイハイハイィッ!!」

 

ユイ機もクレッセントの右足の上に飛び乗ると、足に向かって拳や蹴りを連続で繰り出す。

 

しかし、クレッセントはまるで気にした様子も無く、其れまでと同じ様に巨体で建物を押し潰し、クレスト・エンドを放って辺りを火の海に変えて行く。

 

「クソッ! まるで堪えねぇっ!!」

 

「何なのコイツッ! 本当に生き物なのっ!?」

 

シャオロンとユイが、焦った様子で声を挙げる。

 

コレまで帝国華撃団に代わって帝都を守っていた上海華撃団だったが、常識を超える生物である怪獣に対しては無力だった。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

「!? うおわっ!?」

 

と鬱陶しく思ったのか、クレッセントは勢い良く頭を振り、シャオロン機を振り払う!

 

振り払われたシャオロン機はビルへと落下し、屋上を突き破って内部へと落ち込む。

 

「シャオロン!?………!? キャアッ!?」

 

更に、ユイ機もクレッセントに右足を思いっ切り振られて弾き飛ばされ、建物に激突してめり込む。

 

「ああっ!? 上海華撃団がっ!?」

 

「もう駄目だっ! 帝都はお終いだぁっ!!」

 

上海華撃団が相手にされていないのを見た人々の間に絶望が過る。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

そんな人々を追い詰めるかの様に、クレッセントの破壊活動は続く。

 

と、その時!!

 

「其処までですっ!!」

 

クレッセントの行く手に、新たな影が立ちはだかった。

 

「帝国華撃団! 参上っ!!」

 

其れは鮮やかな桜色の()()()()………さくらの『三式光武』だった。

 

「! 帝国華撃団!? さくらっ!?」

 

「バカかっ!? そんな旧式のポンコツで何が出来るっ!? 引っ込んでろっ!!」

 

ユイが驚き、シャオロンが罵声を挙げる。

 

しかし彼の言う通り、三式光武は現在の華撃団の主力兵器となっている、“霊子戦闘機”より1世代前の機体………

 

オマケに、帝劇の予算が無い為に真面な整備もされていない、正に「ポンコツ」だった。

 

「嫌ですっ!!」

 

だが、其れを駆るさくらの気持ちは強かった。

 

「! 何っ!?」

 

「私は帝都を………“人々を守る為”に、帝国華撃団に入ったんです………なのに、その帝都と人々の危機を()()()()()()()()()なんて………出来ませんっ!!」

 

ハッキリとそう言い放ち、刀を抜くさくらの三式光武。

 

「きっと“あの人”だって………『真宮寺 さくら』さんだってそうする筈です!!」

 

その脳裏には、幼き頃に命を救って貰った恩人………初代帝国華撃団・花組の隊員、『真宮寺 さくら』の姿が浮かんでいた。

 

「行きますっ! たああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

そして、掛け声と共に、クレッセントの顔目掛けて跳躍する!!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

「!? きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

しかし、まるでハエでも追い払うかの様に無造作に振られたクレッセントの腕に弾き飛ばされ、背中から地面に叩き付けられた!!

 

「う、ううう………」

 

さくらは、呻き声を挙げながらも三式光武を起き上がらせようとするが………

 

三式光武は機体の彼方此方から火花を散らし、蒸気を漏らしてぎこち無く動く。

 

「だから言ったろっ!! もう瀕死じゃねえかっ!!」

 

「………未だ………未だ………」

 

シャオロンの罵声も意に介さず、さくらは歯を食い縛る。

 

そして三式光武が漸く立ち上がると、その機体から霊力が溢れる。

 

「私は………帝国華撃団・花組………天宮 さくらです!!」

 

さくらが叫ぶと、霊力が刀に集まる。

 

「蒼天に咲く花よ………敵を討て! 天剣・桜吹雪っ!!」

 

必殺技である『天剣・桜吹雪』が繰り出される!!

 

刀に集めた霊力が、衝撃波としてクレッセントの顔面に向かって飛ぶ!!

 

その1撃は、クレッセントの口からはみ出していた3本の前歯の1本に命中!!

 

前歯が折れて、宙に舞った!!

 

キシャアアアアアアッ!?

 

遂にクレッセントが、悲鳴の様な咆哮を挙げて、悶える様な様子を見せた!

 

「やったっ!!」

 

其れを見たさくらが、歓喜の声を挙げたが………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

「!? あああっ!?」

 

直後に、怒りに燃えるクレッセントは足元に居たさくらの三式光武を、まるでサッカーボールの様に蹴り飛ばした!!

 

蹴り飛ばされた三式光武は、2回、3回と石畳の上をバウンドし、ゴロゴロと転がったかと思うと、仰向けになって漸く止まる。

 

「…………」

 

余りの衝撃で、さくらは気を失ってしまっていた。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

クレッセントはそんな三式光武にトドメを刺そうと近付いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・地下指令室………

 

「天宮さん! 応答しなさい、天宮さん!」

 

「さくらっ!!」

 

地下の司令室で、さくらの様子を見ていたすみれと誠十郎が、通信機で必死に気を失っているさくらに呼び掛ける。

 

カオルは、現在格納庫で残りの花組隊員を出撃させる為に四苦八苦している。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

モニターに映るクレッセントが咆哮を挙げて、更にさくらの三式光武に近付く。

 

如何やら、踏み潰す積りの様だ。

 

「このままでは天宮さんが………」

 

「! 止めろっ! 止めてくれっ!!」

 

すみれが思わずそう呟くと、誠十郎は悲鳴の様な叫びを挙げる。

 

『誠十郎! 俺に力を貸せっ!!』

 

「!? ゼロッ!?」

 

と其処で、ゼロが誠十郎に呼び掛けた!

 

『お前と俺が力を合わせれば、あの子を助けられる!』

 

「本当かっ!?」

 

『当たり前だ! 俺は………“ウルトラマン”だぜ!!』

 

毅然としてそう言い放つゼロ。

 

その言葉には、絶対的とも言える安心感が有った。

 

「………分かった! 如何すれば良いっ!?」

 

と、誠十郎が訪ねた瞬間………

 

()()()()()()()()、ウルティメイトブレスレットをした左腕を水平に伸ばしたかと思うと、ウルティメイトブレスレットから光が放たれる。

 

その光の中から、奇妙なメガネが出現した。

 

「!? コレはっ!?」

 

『ウルトラゼロアイだ。コレを装着すれば、()()()()()()()。俺と一緒に戦うんだ!』

 

「………!!」

 

誠十郎は意を決した様に、『ウルトラゼロアイ』を右手で摑んだかと思うと、自分の顔に押し当てた!

 

「デュワッ!!」

 

そんな掛け声が自然と口から漏れると………

 

誠十郎の身体は光に包まれた!!

 

「!? 何ですのっ!?」

 

其処で事態に気付いたすみれが振り返る。

 

その光の中で、誠十郎の姿が………

 

ウルトラマンゼロへと変わって行った!

 

「セエアッ!!」

 

そして気合の掛け声と共に腕を振って光を払うと、その姿は完全にウルトラマンゼロとなっていた。

 

「! 貴方が………ウルトラマンゼロ………」

 

「行ってくるぜ」

 

ゼロの姿を見たすみれが言葉を失っていると、ゼロは光となって司令室の天井を擦り抜け、そのまま帝劇から飛び出して行った!

 

「………頼みましたわよ」

 

残されたすみれは、虚空に向かってそう言葉を投げ掛けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

さくらの三式光武を踏み潰さんと近付いて行くクレッセント。

 

遂にその振動が、機体内のさくらにも伝わり始める。

 

「………う………ううん………!? ハッ!? 私!?」

 

とその瞬間に、さくらが意識を取り戻す。

 

だが、その目に最初に映ったのは………

 

今、正に自分を踏み潰そうとしているクレッセントの足の裏だった。

 

「!? キャアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

恐怖の悲鳴と共に再び目を閉じるさくら。

 

だが………

 

何時まで経っても衝撃は襲って来なかった。

 

「………アレ?」

 

「大丈夫か?」

 

と、そんなさくらに呼び掛ける声がした。

 

「えっ?」

 

さくらが再度正面を見据えると、其処には………

 

「オイ、返事しろ。生きてるのか?」

 

ウルトラマンゼロの顔が一杯に広がっていた。

 

今、さくらの三式光武は、クレッセントから離れた位置で、膝立ちになっている巨大化したゼロの両手に抱えられている状態だ。

 

「!? ええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!?」

 

「うわっ!? ビックリしたっ!!」

 

さくらが仰天の声を挙げると、ゼロが一瞬ビクッとなる。

 

「如何やら大丈夫みたいだな」

 

「あ、えっと………貴方が助けてくれたんですか?」

 

「ああ、そうだ。間一髪だったぜ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

しかし、ゼロが自分を助けてくれたのだと分かると戸惑いながらもお礼を言う。

 

「な、何だアレはっ!?」

 

「光の………巨人?」

 

「オイオイ! 今度は何だってんだっ!?」

 

「え、えええっ!?」

 

突如として現れたゼロの姿に、困惑の声を挙げる人々とシャオロン、ユイ。

 

「あ、あの………貴方は、一体?」

 

「ヘッ」

 

其処でゼロは、さくらの三色光武を優しく地面へと下ろすと、立ち上がりながらクレッセントの方に向き直る。

 

「俺はゼロ! ウルトラマンゼロだっ!!」

 

そして、左腕を横へ水平に伸ばした後、師匠である『ウルトラマンレオ』から叩き込まれた宇宙拳法の構えを執った!

 

「ウルトラマン………ゼロ」

 

その名を、反芻する様に呟くさくら。

 

すると其処で………

 

一瞬、ゼロの姿に………

 

()()()()姿()が重なった。

 

(! 誠兄さん!?………如何してだろう………あの人から………誠兄さんと同じ気配がする)

 

そんな事を感じるさくら。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

するとその瞬間、クレッセントが咆哮を挙げる。

 

「誰が送り込んで来たか知らねえが、これ以上好き勝手にはさせねえぜ!」

 

キシャアアアアアアッ!!

 

とゼロがそう言い放った瞬間、クレッセントは再度の咆哮と共に、クレスト・エンドをゼロ目掛けて放つ。

 

「フッ!!」

 

だが何と!

 

ゼロはそのクレスト・エンドを、広げた右の掌で防いでしまう!!

 

「セエエヤッ!!」

 

そして、勢い良く跳躍したかと思うと、クレッセントの胸に飛び蹴りを食らわせる!

 

「セリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

そのまま両足で連続蹴りを繰り出すゼロ。

 

キシャアアアアアアッ!?

 

4万トンのクレッセントの身体が、蹴りの勢いでどんどん後ろに押されて行く。

 

「オリャアッ!!」

 

最後に勢い良く蹴りを浴びせると、クレッセントは吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる様に倒れる。

 

「フッ! ハアッ!!」

 

其処でゼロは、頭部に装着されていた2つの宇宙ブーメラン・ゼロスラッガーをウルトラ念力で外すと、両手で逆手に持って構える。

 

グルルルルルッ………

 

「オリャアアッ!!」

 

そして、苦しそうな呻き声を挙げてクレッセントが起き上がった瞬間、懐に飛び込んで連続で斬り付ける!!

 

光の線が走る度に、クレッセントの身体から火花が飛び散る!!

 

キシャアアアアアアッ!?

 

「トリャアッ!!」

 

クレッセントが悲鳴の様な咆哮を挙げた瞬間、ゼロは再度胸に前蹴りを入れ、その反動でバック宙して距離を取る。

 

「セエエアッ!!」

 

直後に、両手のゼロスラッガーを投擲する!!

 

高速回転しながら飛んだゼロスラッガーは、クレッセントの両腕を斬り飛ばす!!

 

キシャアアアアアアッ!?

 

「トドメだ! エメリウムスラッシュッ!!」

 

ゼロスラッガーを頭部に戻したかと思うと、額のビームランプから緑色の光線・エメリウムスラッシュを放つゼロ。

 

エメリウムスラッシュを浴びたクレッセントは、バタリと倒れたかと思うと、爆発四散した!!

 

「ヘッ、ザっとこんなモンだぜ」

 

「す、凄い………」

 

「わ、私達が手も足も出なかった怪物を、あんなにアッサリと………」

 

「チッ!!」

 

ゼロが親指で鼻を擦る様な仕草を見せてそう言う中、さくらとユイはゼロの強さに圧倒され、シャオロンは面白く無さそうな様子を見せる。

 

「さてと………」

 

と其処で、ゼロは左腕を構える様なポーズを執ったかと思うと、ウルティメイトブレスレットから青い光が溢れる。

 

「………ルナミラクルゼロ」

 

落ち着いたトーンの低い声と共にハープの様な効果音が鳴ったかと思うと、ゼロの姿が青一色に変わる。

 

嘗てフューチャーアースで『ウルトラマンダイナ』と『ウルトラマンコスモス』と共に戦った時に、彼等の力を授かって誕生したフォーム………

 

『ルナミラクルゼロ』だ。

 

「! 変わった?」

 

「ミラクル・リアライズ」

 

さくらが驚いていると、ルナミラクルゼロは両手を腕ごと広げる様に構える。

 

すると、掌から虹色に輝く光の粒が混じった霧状の光線が放たれる。

 

その光線は帝都一帯に広がって行くと………

 

クレッセントに破壊された街並みが、瞬く間に元通りになった!

 

「凄い! 帝都が元通りに!!」

 

と其処へ、ミラクル・リアライズがさくらの三式光武にも届いたかと思うと………

 

あれ程激しい損傷を受けた三式光武が、まるで()()同様になる!

 

「! 光武までっ!?」

 

「凄い! 凄いよっ!!」

 

さくらが再度驚きの声を挙げると、同じ様に王龍が受けた損傷が無くなった事にユイが声を挙げる。

 

「…………」

 

だが、シャオロンだけはやはり面白く無さそうな表情をしている。

 

「………シュワッ!!」

 

其れを確認すると、ゼロは自分の役目は終わった、と言う様に空の彼方へ飛び去って行く。

 

「あ!………ありがとう~っ!! ウルトラマンゼロさ~~~んっ!!」

 

さくらは一瞬迷った後、飛び去って行くゼロの背に向かって手を振りながらお礼を言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、飛び去ったゼロは一旦大気圏を離脱したかと思うと、身体を人間サイズへと縮小し、テレポート。

 

帝劇の屋上へと出現すると、誰もいないのを確認して変身を解除。

 

誠十郎の姿となった。

 

「お、終わったのか……?」

 

『如何だ、誠十郎。ウルトラマンになった感想は?』

 

「凄い、凄過ぎる………あの巨大な化け物を一瞬で倒した上に、帝都の街まで………トンでもない力だな」

 

『何言ってんだ。半分はお前がやったんだぜ?』

 

「いや、俺はただ変身して付いて行っただけで………」

 

『そんな事無えって。俺達ウルトラマンにとって、人間は“特別な存在”だ。お前達との絆が、俺達を何万倍も強くしてくれるんだ』

 

「ゼロ………」

 

そんなゼロの言葉に、誠十郎は照れ臭さを覚える。

 

「お疲れ様、神山くん。それにゼロさんも………」

 

と其処で、屋上にすみれが姿を見せた。

 

「! すみれさん」

 

『おう』

 

慌てて、すみれに向き直って敬礼する誠十郎と気安そうに挨拶するゼロ。

 

「お陰で帝都は守られましたわ。ありがとう………けれど、コレで終わりというワケでは無いのでしょう?」

 

2人に向かってお礼を言うすみれだったが、直ぐに表情を険しくする。

 

『ああ………“この世界”に今まで怪獣は出現した事が無かった。其れが現れたって事は………「連れて来た奴」が居るって事だ』

 

「! そうなのか!?」

 

ゼロの言葉に誠十郎が驚く。

 

「やはり………」

 

『心配すんな。一体誰なのかは知らねえが、俺と誠十郎が居る限り、好きにはさせねえぜ!』

 

険しい表情のまま呟くすみれに、ゼロは勇ましくそう返す。

 

『だろ?誠十郎』

 

「あ、ああ………帝国華撃団隊長として、この帝都の平和を守って見せます」

 

『?』

 

続いて誠十郎にも呼び掛けるが、彼が一瞬気後れした様な様子を見せた事に首を傾げる。

 

「神山くん。ゼロさん………改めて、この帝都と地球の平和を頼みましたわよ」

 

すみれはそんな2人に向かって、改めて帝都と地球の平和を託すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『月ノ輪怪獣 クレッセント』

 

身長:56メートル

 

体重:4万トン

 

能力:目から放つ赤色の放射熱線『クレスト・エンド』

 

初登場作品:ウルトラマン80 第1話『ウルトラマン先生』

 

80が地球で初めて戦った怪獣であり、マイナスエネルギー関係怪獣の第1号。

 

月の輪怪獣の別名通り、首元に三日月のような模様が有るというのが特徴のオーソドックスな怪獣。

 

レオ以降、怪獣の出現が止まってしまっていた為、実戦経験の不足していたUGMを蹴散らし、80も苦戦させたが、最後はサクシウム光線で倒された。

 

80の1話に登場した怪獣なので知名度は有るが、後年のシリーズへの再登場は未だ無い。




新話、投稿させて頂きました。

上海華撃団を相手にせず、我が物顔で暴れ回るクレッセント。
さくらの決死の攻撃が一矢報いたかに思えたが、一瞬で大ピンチに。

しかし………
遂にウルトラマンゼロが帝都に降臨!!
瞬く間にクレッセントを葬り去ります。
最初の戦いだし、ゼロも相当の実力者なので、今回の戦闘はアッサリ気味で行かせてもらいました。
次回以降では、ゼロを苦戦させる様な敵も出てきます。

で、ゼロが去り際にルナミラクルゼロになって使った技ですが、アレは本来ウルトラマンコスモスの技で、ゼロは使った事がありません。
しかし、怪獣との戦いでは、降魔との戦闘よりも激しい被害が出る事になります。
帝劇が落ちぶれた理由の1つに、降魔大戦の後、帝都の復興に予算を取られたからという理由も考えられているので、毎度毎度怪獣が甚大な被害を出すと、更に予算を削られる可能性があるので、その辺の心配を無くす為に使いました。
一応、コスモスの力を宿しているので、使えなくはないかと。
他の人の作品でも使っている描写があったりしたので。

それと怪獣大百科をオマケでつけてみました。
基本的にその怪獣が退場する回に記載し、原作との相違がある場合には補足説明も入れる積りです。

さて次回はいよいよ帝劇の人達との会合です。
都合により、次回では初穂とこまちまでで、クラリスは次々回になりますので予めご了承ください。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『大帝国劇場』

チャプター4『大帝国劇場』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

再度支配人室へと戻った誠十郎とすみれの許に、無断出撃の件でカオルがさくらを連れて来ていた。

 

「天宮さん。ジッとしていられないという気持ちは良く分かりますけど、勝手に出撃した事は許せませんわよ」

 

「ハイ………御免なさい」

 

支配人席に腰掛けるすみれから叱られ、しゅんとなってしまうさくら。

 

(………さくらちゃん)

 

そんなさくらの隣に立つ誠十郎は心配そうな眼差しを送るが、無断出撃した事は事実なので庇う様な真似は出来ない。

 

「………まあ、今回は無事で済んだ様ですし、大目に見ますわ」

 

しかし其処で、すみれはフッと微笑んでそう行った。

 

「! ホントですか!? ありがとうございますっ!!」

 

途端に、さくらは花が咲いた様に笑い、すみれにお礼を言う。

 

「但し! 当然ですが、()は有りませんわよ」

 

「! ハ、ハイ~」

 

しかし、直ぐに釘を刺されて冷や汗を流す。

 

「またあの巨人………ウルトラマンゼロが助けてくれるとは限らないんですからね」

 

「ウルトラマンゼロ………」

 

とすみれの言葉に、さくらは自分を助けてくれたゼロの事を思い出す。

 

「現在のところ、ウルトラマンゼロと名乗ったあの巨人が敵か味方かはハッキリしません。今回の事も、偶々利害が一致しただけ、かと………」

 

「其れについては大丈夫ですわ。彼は私達の味方よ」

 

カオルが懸念する様に口を挟んだが、すみれによって遮られた。

 

「すみれ様? しかし………」

 

「私の判断が信じられないかしら?」

 

「! い、いえ! そんな事は!! 失礼しました………」

 

すみれを慕っているカオルにとって、こう言われれば言い返す事は出来ない。

 

「すみれさんの言う通りですよ! きっとウルトラマンゼロさんは私達の味方ですよ!!」

 

ゼロによって助けられたさくらは、既にゼロの事を全面的に信頼している様だ。

 

『へっ、嬉しいこと言ってくれるじゃねえか』

 

(さくらちゃんらしいな………)

 

ゼロがそう言うと、誠十郎も優しい眼差しをさくらに向ける。

 

「さて………では、神山くん。改めて、帝国華撃団・花組の隊長としての職務を知って貰うわね。カオルさん、後はよろしくね」

 

「はっ、畏まりました」

 

其処ですみれは、誠十郎に改めて花組隊長の職務を申し渡す。

 

「ハッ! 了解しました!」

 

「えっ!? 隊長っ!? 誠兄さんが………花組の隊長に!?」

 

誠十郎が敬礼を返す横で、さくらは驚いた様子を露わにして誠十郎を見遣る。

 

「天宮さん。その件については後にして貰いますわ」

 

「あ、ハイ………」

 

しかし、今は誠十郎に職務を伝える事が先の為、すみれが押し留める。

 

その間に、誠十郎はカオルの前に立った。

 

「改めて初めまして、神山さん。私はすみれ様の秘書、竜胆 カオルです。よろしくお願いします」

 

色々有って自己紹介が流れてしまっていたカオルが、改めて自己紹介をする。

 

「神山 誠十郎です。此方こそ、よろしくお願いします」

 

「ハイ。では、先ずはコチラを………」

 

そう言うと、カオルは掌サイズの機械の様な物を誠十郎に差し出す。

 

「コレは?………見た事の無い装置ですが………」

 

「それは『スマァトロン』です」

 

『つまり、スマホって事か』

 

小型の機械『スマァトロン』を見たゼロが、嘗て一体化していた地球人『伊賀栗 レイト』が良く使っていたスマホの事を思い出す。

 

「小型軽量で、何処にでも持ち運べる情報伝達装置。受信専用ですが………その価値は、お分かりですね?」

 

「情報伝達………こんな小型で!?」

 

「すみれ様からのご命令も、スマァトロンを通じてお知らせする事が多いでしょう」

 

そのまま、カオルから試験着信を含めてスマァトロンの使い方を習う誠十郎。

 

「それでは神山さん。先ずは神山さんが指揮を執る事になる『花組の隊員達』に会うのが良いと思います。劇場の中に居る筈ですから………探してみて下さい」

 

「分かりました」

 

「あ! 私、案内します!」

 

と其処で、さくらが案内役を買って出る。

 

「そうだな。既に事情を知ってるさくらちゃんに案内して貰った方が、説明が早くて済むか………」

 

誠十郎は少し考えて、そう言いながらさくらに向き直る。

 

「よろしく頼むよ、さくらちゃん」

 

「ハイ!」

 

元気良く返事を返すさくら。

 

「『花組』のこれからは、貴方に掛かっているわ。よろしくね、神山くん。期待していますわよ」

 

「ハッ!」

 

すみれのその言葉に、誠十郎は姿勢を正して敬礼をした後、さくらと共に支配人室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、誠十郎はさくらに連れられて、帝劇の1番の見せ場である舞台へと移動。

 

「あっ、そうだ! 誠兄さんはもう花組の隊長さんだから、これからは神山隊長って呼ばないと駄目ですね!?」

 

その移動の最中に、さくらが誠十郎にそう言ってくる。

 

「い、いいよ。堅苦しいのは嫌いだから」

 

「駄目です! そういうのは、ちゃんとしないと」

 

断ろうとする誠十郎だが、その辺りは意外と厳しいのか、そう言うさくら。

 

「そういうものかな………」

 

「はいっ、神山隊長」

 

「ははっ………分かったよ、さくらちゃん」

 

「私の事は、さくらって呼んで下さい。その方が、嬉しいです」

 

「………嬉しいって、何で?」

 

「な、何でもありません!」

 

慌てて誤魔化す様に笑うさくら。

 

『良く表情の変わる奴だなぁ』

 

そんなさくらの姿に、ゼロはそんな感想を抱く。

 

「そ、其れよりも早く行きましょう! 歌劇団なんですから、やっぱり最初は舞台を見ないと! 他の隊員も………誰かは其処に居ると思いますし」

 

「ああ、そうだな」

 

そんな事を言いながら、舞台へと向かう2人(+ゼロ)

 

「………でも、本当にびっくりしました」

 

「ん?」

 

「子供の頃に遠くへ行っちゃった誠兄さ………神山隊長と、また会えるなんて」

 

「俺も同じさ。驚いた。さくらが、帝国華撃団に入ってたなんてな」

 

「それは………だって、私の………夢だったから」

 

と玄関ロビーまでやって来た瞬間、さくらはそう言って、誠十郎の前に回り込んだ。

 

「“憧れ”なんです………私にとって。帝国華撃団は」

 

「憧れ………夢か………」

 

『健気じゃねえか。けど、誠十郎。ココは気を引き締めさせてやらねえと駄目だぞ』

 

其処でゼロがそうアドバイスして来る。

 

「(ああ、分かった)でも、これで満足しちゃいけないぞ? 帝国華撃団に入ったら“お終い”じゃないんだ。これからも、頑張らないとな!」

 

「はいっ! 勿論です!!」

 

誠十郎がそう言うと、さくらは両手をグッと握って力を入れる様な様子を見せる。

 

「その為にも、よろしくご指導お願いしますね、神山隊長!」

 

そう言うと、さくらは舞台へと繋がる扉の方へ移動した。

 

「舞台はこの扉の向こうです………ようこそ、大帝国劇場へ!」

 

さくらはそう言い、誠十郎を扉の奥へと進める様なポーズを執った。

 

『オイ、誠十郎。早く行こうぜ。俺も早く舞台ってヤツを見てみたいぜ』

 

(分かった分かった。急かすなよ)

 

急かしてくるゼロに呆れながらも、誠十郎は舞台へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・舞台………

 

『おおおっ………コレが舞台か………』

 

扉を潜り、2階まで在るズラリと並んだ客席と、緑色の幕が掛けられている広い舞台を見て、ゼロが感嘆の声を漏らす。

 

「これが大帝国劇場の舞台か………思ったより広いんだな」

 

と誠十郎がそう呟くと、さくらがそんな誠十郎を招く様に手を振り、舞台の上へ上がって行った。

 

「こっちです、こっち! 舞台の横にある階段から、上がって来て下さいね」

 

さくらに促されるままに、誠十郎は舞台の上へと上がる。

 

「流石に古いな。だけど、立派な舞台だ」

 

舞台上に立った誠十郎は、改めて圧倒された様子を見せる。

 

「しかし………さくらが此処で演技しているなんてね。何だか、まだ信じられないよ」

 

「じゃあ………信じさせてあげますよ。私の演技力、見て下さい」

 

「演技力………?」

 

と、誠十郎のその言葉に、さくらは自分の演技を披露しようとする。

 

「………如何いう積りなの? 10年間も連絡無しに、ほっつき歩いて………散々寂しい思いをさせて、今更戻って来るなんて!………黙ってないで、何か言ってよ!!」

 

「!? え、えっと………」

 

未だ粗削りが目立ちながらも、気合の入った演技を見せるさくらに、誠十郎は狼狽する。

 

『成程。コレが舞台の演技か………面白そうだ。ちょっと代われ、誠十郎』

 

「えっ!? ちょっ………すまない、さくら。許してくれ………もう、離さないから」

 

と其処でゼロが誠十郎と交代したかと思うと、さくらの傍に寄り左手を肩に置くと、右手で顎を摑んで少し上を向かせて、キリっとした表情を近付けた。

 

「!??!」

 

途端に、さくらはボンッという音が聞こえそうなくらいに顔を真っ赤にする。

 

「せ、誠兄さん………」

 

(何やってんだ、ゼロ! 早くさくらから離れろっ!!)

 

『んだよ、コレからが良いとこなのに………』

 

さくらの目がトローンとし出すと、慌てて誠十郎が主導権を取り返す。

 

「す、すまない! さくら! 悪巫山戯が過ぎたっ!!」

 

誠十郎は、直ぐ様さくらから手を離すと、飛び退く様に距離を取った。

 

「! あ、ああ、ビックリした………神山隊長、演技上手ですね」

 

「は、ははは、偶々だよ………」

 

笑って誤魔化す誠十郎。

 

(でも………今、誠兄さんが本当に()()()みたいに思えた様な………)

 

しかし、さくらは内心で違和感を覚えていた。

 

(ゼロ! 余計な事をするなよ!)

 

『別に良いだろ。お前等、どうせ付き合うんだろ?』

 

(つ、付き合うっ!? さ、さくらは幼馴染で花組の隊員だ!!)

 

『えっ? 男と女の幼馴染って、最終的には付き合うんじゃねえのか?』

 

レイトが見ていた恋愛ドラマの事を思い出しながらそう言うゼロ。

 

(か、必ずしもそうとは限らないんだ!!)

 

『じゃあお前、さくらの事、何とも思ってないのかよ?』

 

(!? そ、其れは………)

 

ゼロのストレートな問いに、誠十郎が答えを窮していると………

 

「おう! 何してんだ、お前等?」

 

何者かがそう声を掛けて来た。

 

「お、さくらじゃねえか。男連れとは、隅に置けねえな」

 

現れたのは、巫女服を注連縄の様な物で襷掛けしている、赤毛のサイドテールの女性だった。

 

「初穂! もう………変なこと言わないで!」

 

赤毛の女性の事を『初穂』と呼ぶさくら。

 

「あ………すみません、隊長。この子が、花組隊員の1人、『東雲 初穂』です」

 

そして、改めて赤毛の女性………『東雲 初穂』を誠十郎に紹介する。

 

「初穂。此方は、神山 誠十郎さん。私達の新しい隊長さんだよ」

 

「あー、そう言えば、そろそろ来るって話だったっけ。東雲 初穂だ。よろしくな、隊長さん」

 

初穂もさくらに紹介され、改めて誠十郎に自己紹介する。

 

「此方こそ、よろしく」

 

「礼儀正しいんだな、気に入ったよ。困った事が有ったら、アタシに言いな。帝劇の事なら、何でもこの初穂ちゃんが解決してやっからよ!!」

 

(アンナみてぇな奴だな。そもそも女が多いってところじゃ、この華撃団って組織もチームUと同じか)

 

そんな初穂の姿に、ゼロはフューチャーアースで共に戦った『チームU』を思い出す。

 

「ははっ………ありがとう。頼りにさせてもらうよ」

 

「おう!………そう言や、さくら。さっき無断出撃した件は大丈夫だったのか?」

 

と其処で初穂はさくらに、無断出撃の件を問い質す。

 

「ア、アハハ………許して貰えたけど、凄く怒られちゃったよ」

 

「当たり前だぜ。お前が1人で出撃したってカオルさんから聞かされた時は肝が冷えたぜ」

 

さくらが苦笑いしながら答えると、初穂は怒った様な様子を見せる。

 

「ゴメンね、初穂」

 

「ま、無事だったんなら良いけどよぉ………けどよ、光武が新品みたいになってたのは何でだ? 出撃する前の時点で、ボロボロのポンコツだった筈だぜ?」

 

と其処で、帰還したさくらの三式光武が新品同様の状態になっていた事を思い出す初穂。

 

「其れはゼロさんが………」

 

「ゼロ? 誰だソイツ?」

 

「えっとね、実は………」

 

さくらは、先程出撃した時の事を初穂に説明する………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………と言うワケなんだ」

 

「待て待て待て! 何だよ、ソレ!? 山みたいにデケェ怪物と、それを倒した光の巨人って!?」

 

話を聞いた初穂は、信じられないと言った様子を露わにしている。

 

「ホントなんだって! その巨人がウルトラマンゼロさんって言って、私の事を助けてくれたんだよ! ねえ、神山隊長!」

 

「あ、ああ………」

 

さくらは嘘じゃないと力説して誠十郎に同意を求める。

 

『って言うか、その“本人”が()()()()()()()んだけどな』

 

(信じて貰えないだろうけどな………)

 

当の本人であるゼロの言葉を聞きながらそう思う誠十郎。

 

「ウルトラマンゼロねぇ………其奴ホントに信用できんのか?」

 

「初穂!」

 

「だってよぉ。さくらどころか、上海華撃団が手も足も出なかった化け物をアッサリと倒す様な奴だろ? 若し其奴が『敵』だったら………」

 

「そんな事無い! ゼロさんはきっと良い人だよ!!」

 

疑う初穂の言葉を遮る様に叫ぶさくら。

 

如何やら、既にゼロに全面的な信頼を置いている様だった。

 

「い、いや、だってよぉ………」

 

その勢いに押されながらも、初穂は未だ疑念を晴らし切れない。

 

(如何する、ゼロ? 俺からも何か言った方が良いか?)

 

誠十郎はゼロに尋ねる。

 

『別に何も言わなくて良いさ。其奴の言ってる事も当然だ。“この地球にやって来たウルトラマン”は、俺が初めてだからな』

 

(良いのか?)

 

『さくらは信じてくれてるみてぇだが、信じられるか如何か決めんのは、其奴自身だ』

 

「(分かった………)さくら、落ち着け」

 

其処で誠十郎は、さくらの肩に手を置く。

 

「あ、ゴ、ゴメン、初穂………」

 

「あ、いや、気にすんなって」

 

「さくら。初穂は未だウルトラマンゼロに会った事が無いんだ。其れで信じろって言うのも、無理が有るだろ?」

 

「………そうですね」

 

誠十郎の言葉に、さくらは頷く。

 

「初穂。ウルトラマンゼロが信じられるのか如何かは、君が“自分の目”で確かめて決めれば良い」

 

「アタシが?」

 

「そうだ。大切な事は、()()()()()()で確かめるんだ」

 

「………確かにそうだな。おっし! 今度そのウルトラマンゼロってのが現れたら、存分に確かめさせて貰うぜ!」

 

そう言うと初穂は、開いていた左の掌に拳を握った右手を打ち付けて音を鳴らすのだった。

 

「其れじゃ、そろそろ次に行きましょうか。また後でね、初穂!」

 

「おう!」

 

そして、さくらは誠十郎の案内を続ける為、一旦初穂に別れを告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・玄関ロビー………

 

「成程………花組の事が、少しずつ分かってきたよ」

 

玄関ロビーへと戻った誠十郎がそう言う。

 

「花組は、降魔と戦うだけじゃなくて………舞台で歌劇を演じ、人々の幸せを作る事も大切な任務なんだね」

 

『夢の有る仕事じゃねーか』

 

誠十郎の言葉に、ゼロもそう同意する。

 

「はい。未だ未だ私は未熟で、演技だって下手ですけど、観た人達の心が温かくなる様な、そんな舞台を………何時か演じたいです」

 

朗らかに笑顔を浮かべながらそう語るさくら。

 

「さくら………」

 

『きっと出来るぜ。舞台の事は分からねえが、大切なのはその気持ちだぜ」

 

「(そうだな………)君なら出来るよ。その想いが有れば………絶対に」

 

ゼロの言葉を受け、さくらの想いを肯定する誠十郎。

 

「えへへ………ありがとうございます」

 

「其れで………次の公演は、決まっているのかい?」

 

「次の舞台は………活劇『ももたろう』! 来週の公演に向けて、絶賛練習中です」

 

さくらは何処からか木刀を取り出し、正眼に構えながらそう言い、後ろに貼られていた公演のポスターを振り返る。

 

「へえ………面白そうだな。練習は上手く行ってるのか?」

 

「! 其れは………えっと………その………」

 

「………?」

 

しかし誠十郎がそう尋ねると、苦笑いを浮かべて言葉に詰まる。

 

『桃太郎か。其れなら俺も知ってるぜ』

 

(へえ、ゼロも知ってるのか?)

 

『ああ。俺の師匠は、地球でその桃太郎と協力して鬼怪獣を退治して、林檎の木にした事が有るからな』

 

(如何言う事っ!?)

 

師匠のレオから聞かされた事の有る『鬼怪獣 オニオン』との戦いの事を話すゼロだが、事情を知らない誠十郎は戸惑うしかない。

 

「おーい! さくらさーん!!」

 

と其処で、何者かがさくらを呼んだ。

 

其れは帝劇の売店前に佇む、大きく『金』と書かれた前掛けをしたツインテールに似た特徴的な髪形の小柄な女性だった。

 

「毎度どうもや! ジャリンジャリン儲けたるでーっ!!」

 

女性が関西弁でそう言う中、誠十郎とさくらはその女性に近付く。

 

「ところで、さくらさん。さっきから一緒におるその人は、誰なんや?」

 

「はい! 花組の、新しい隊長さんです!」

 

「神山 誠十郎です。よろしく」

 

さくらに紹介され、女性に向かって挨拶する誠十郎。

 

「ほう、あんたが噂の隊長さんか! あては風組の『大葉 こまち』! 売店の方もよろしくな、や!」

 

其処で女性………『大葉 こまち』はそう自己紹介する。

 

「………売店?………風組?」

 

「風組っちゅうんは、帝国華撃団の組織の1つや。事務やら経理やら補給やら広報やら、そういうんを一手に引き受けとる」

 

聞き慣れない単語に誠十郎が首を傾げると、こまちはそう説明する。

 

「あんた等花組が降魔と戦って、あて等風組は其れをサポートする。そういうこっちゃな! 因みに、支配人の秘書をしとる竜胆 カオルも風組の1人や」

 

「成程………」

 

『縁の下の力持ちって奴か。そういうのは大事だからな』

 

ゼロも、自分の故郷である光の国の『宇宙警備隊』にも様々な裏方役職と言える人々が居て機能している事を理解している為、頷く。

 

「(その通りだな)風組在っての花組ですね。サポートの方、よろしくお願いします」

 

「おう、任せとき! 素直な隊長さんは、大好きや!」

 

誠十郎が頭を下げると、こまちはグッと拳を握って答える。

 

「ははっ、ありがとうございます」

 

「そんな訳で、“風組の活動の一環”としてあてが此処で売店をやっとるわけや。大抵は、この店におるから、何か有ったら声掛けてや」

 

『へえ~、売店かぁ。其れは宇宙警備隊には無えなぁ』

 

当然である。

 

「頼まれたら、チリ紙から海軍の新鋭空中戦艦まで何でも引っ張って来るで」

 

「く、空中戦艦………」

 

「へっへっへ。何でも勉強しまっせ」

 

“金さえ出せばクレムリン宮殿だって引っ張って来てやる”と言う武器商人の様な台詞に、誠十郎も流石に苦笑いするのだった。

 

「因みに………今話題の新商品は、コレやっ!」

 

と其処で、こまちが見せて来たのは………

 

『ゼロのブロマイド』だった。

 

『お、俺のブロマイドっ!?』

 

「こ、コレ、如何したんですか!?」

 

ゼロが驚く中、誠十郎はこまちに問い質す。

 

「いや~、あのウルトラマンゼロはんってのイカスやないかと思ってなぁ。試しに記録映像から作ってみたら、コレが大当たりや! この見本以外の用意した1000枚が5分で売り切れや!」

 

「そ、其れは………凄いですね」

 

良い笑顔でそう言うこまちに、誠十郎は微妙な笑みで返す。

 

『ヘヘヘ、何か照れるなぁ~』

 

そして満更でもないゼロだった。

 

「せや! 神山さんの着任祝いや! この見本のブロマイドは神山さんに()()()タダであげたる!」

 

「ど、どうも………(俺が本人なんだけど………)」

 

そう言ってブロマイドを渡してくるこまちに、誠十郎は言いたくても言えない思いを抱えて受け取る。

 

(…………良いなぁ)

 

一方さくらは、その光景を羨ましそうに見ていた。

 

「! う、ううん! さて、神山隊長! 次は、何処を案内しましょうか?」

 

しかし気を取り直すと、誠十郎にそう問い掛けた。

 

「いや、後は自分で色々と歩いてみるよ。案内してくれてありがとう」

 

「ええ心掛けやな、神山さん! 自分で歩き回ってこそ覚える、ってもんや!」

 

誠十郎がそう返すと、こまちもそう言って来る。

 

「じゃあ、私は部屋に戻ってますね。私達の部屋は2階に在りますから、何か有ったら声を掛けて下さい」

 

「2階だな。分かった」

 

「其れと、資料室に行ってみると良いですよ。きっと………ううん、()()彼女が居ますから」

 

「(残りの花組の隊員かな?)ああ、分かった。行ってみるよ。ありがとう」

 

其処でさくらは部屋へと戻り、こまちも自分の持ち場である売店のカウンターに立つのだった。

 

『面白れぇところだな、此処は』

 

「はは………じゃあ、色々と見て回るか」

 

そしてゼロと誠十郎は、帝劇内を見て回り始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

改めて帝劇をさくらに案内される誠十郎+ゼロ。
宇宙人のゼロには、大帝国劇場は興味深い場所の様です。
今回は初穂とこまちとの会合。
残るクラリスは次回で会合となります。

更に次回は、すみれが意外な人物達と出会い、ある計画がスタートします。
それが何かは次回のお楽しみです。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『真の世界華撃団構想』

チャプター5『真の世界華撃団構想』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一旦さくらと別れた誠十郎(+ゼロ)は、1人で帝劇内を見て回った。

 

舞台裏、音楽室、衣裳部屋、楽屋、食堂、2階客席、サロン………

 

途中、経理室でカオルのすみれへの賛辞を聞いたり、中庭で初穂が管理している巨大な霊子水晶を発見したり………

 

こまちの売店でコッソリとさくらのブロマイドを購入したり、さくらの部屋を訪れて昔話に花を咲かせたりした。

 

そして、最後に………

 

さくらに言われていた資料室を訪れようとしていた。

 

 

 

 

 

帝劇・資料室前………

 

「此処が資料室か」

 

「神山隊長!」

 

資料室に入ろうとしていた誠十郎の前に、再びさくらが姿を見せる。

 

「一緒に行きましょう。きっと、中に居ますから」

 

「ああ、ありがとう」

 

『さて、どんな奴が出て来るか………?』

 

さくらと共に資料室に入る誠十郎と内心ワクワクしているゼロ。

 

そして資料室に入った3人の目に入って来たのは………

 

大量の本を収納した本棚が並ぶ部屋の中に、一脚だけ用意されていた椅子と机に着き、熱心に読書をしている金髪の女性が居た。

 

「…………」

 

金髪の女性は、誠十郎達が入って来た事にも気付いていない様子で、読書を続けている。

 

「やっぱりいましたね。隊長、あの()がクラリスです」

 

小声で誠十郎にそう言うさくら。

 

「…………」

 

金髪の女性………『クラリッサ・スノーフレイク』、通称『クラリス』は相変わらず読書を続けている。

 

「熱心に本を読んでて………何だか、声を掛け辛いな」

 

「声を掛けてもムダです。ああなったクラリスは、何をしても返事をしてくれないんですよ」

 

「へえ、()()()()()………一寸試してみるか?」

 

其れを聞いた誠十郎は、やや悪い顔をしてそう言う。

 

「こういう時は、目隠しだな。流石に気が付くだろう」

 

コッソリとクラリスの背後へと回る誠十郎。

 

「クーラリースくんっ! えいっ!!」

 

そしてクラリスの目を自分の手で覆う。

 

「…………」

 

しかし、クラリスは直ぐ様その手を払い除けた。

 

しかも、誠十郎に気付いた様子は無く、読書を続けている。

 

完全に“無意識での行動”だった様だ。

 

「なん………?」

 

「ほら………何時もこうなんですよ。読み終わるまで、()()()()()()ムダですよ」

 

驚愕する誠十郎の横で、さくらが苦笑い気味にそう言う。

 

「これは、凄い集中力だな………」

 

『へえ~、面白れぇ。じゃあ、コレでも集中していられるかな?』

 

と誠十郎が感心していると、今度はゼロが悪戯心を発揮する。

 

(ゼロ? 何をする気だ?)

 

『まあ、見てろって………』

 

「…………」

 

そんな遣り取りが繰り広げられている事等全く気付かず、只管読書を続けるクラリス。

 

『何読んでんだ? 面白れぇのか?』

 

「!?」

 

すると突然、()()()に声が響いて来て、クラリスはビクンッとなる。

 

『オッス! オラ、ウルトラマンゼロ! よろしくな!』

 

「!? キャアアッ!?」

 

続けて某サイヤ人の様な挨拶が響いて来て、クラリスは思わず椅子から転げ落ちてしまう。

 

「!? クラリスッ!?」

 

その光景に驚きながらも、直ぐにクラリスに駆け寄るさくら。

 

(オイ、ゼロ! 何やったんだ!?)

 

『いや。一寸テレパシーで、直接頭の中に声を送ってみたんだが………驚かせちまったみてぇだな』

 

「(当たり前だ!)大丈夫か!?」

 

誠十郎も慌てて駆け寄り、クラリスを助け起こす。

 

「さ、さくらさん! い、今! 頭の中に変な声がっ!!」

 

「クラリス! 落ち着いて!」

 

『変な声って………』

 

狼狽えているクラリスを落ち着かせるさくらと、変な声と言われた事に若干落ち込むゼロ。

 

「きっと空耳だよ。しっかりと気を保つんだ」

 

「そ、そうですよね………!? キャアアアァァァァーーーーーッ!!」

 

誠十郎もクラリスを落ち着かせようとしたが、クラリスは誠十郎の姿を見ると、再度驚きの声を挙げて飛び退く。

 

「Wein ass et!? 何で男の人が居るんですか!?」

 

「お、落ち着いてくれ。怪しい者じゃない。今日から、花組の隊長になった神山 誠十郎だ」

 

思わず母国語を発するクラリスを落ち着かせながら、誠十郎はそう自己紹介する。

 

「………隊長?」

 

「そうなんです。この人が、今日から私達花組の隊長さんです」

 

その言葉にクラリスが首を傾げると、さくらがそう誠十郎を紹介する。

 

「そうなんですか………其れは、“とんだ災難”ですね。予算も無い、やる気も無い、()()()()()()()()()()()()()()の隊長なんて」

 

「クラリス!」

 

いきなりネガティブな言葉を連ねるクラリスに、さくらが若干怒った様な様子を見せる。

 

「………そうなのか?」

 

「ええ、そうです。今の花組は、昔此処に居た『伝説の花組』とは違う。どうしようも無い………“落ち零れ部隊”ですよ」

 

『オイオイ、幾ら何でもあんまりだろ。自分だけじゃなくて、仲間の事まで悪く言ってる様なもんだぜ』

 

もう既に諦めてしまっているかの様なクラリスの言葉に、ゼロもやや憤りを露わにする。

 

「(確かにな………)そんな風に言うもんじゃない。自分だけじゃない。さくらや初穂くんにも失礼だ」

 

誠十郎も其れに同意し、やんわりながらもクラリスに注意する。

 

「其れは………そうですね。すみません」

 

その言葉に思うところが有ったのか、クラリスは素直に謝罪する。

 

「でも、皆が何を如何頑張っても、如何にもならない事も有るんです。都合良くハッピーエンドになるのは、物語の中だけです。現実は、そんなに上手くは行かないですよ」

 

だが、やはり既に心が折れているのか、態度そのものは変わらない。

 

「其れじゃ、失礼します。精々、頑張って下さいね」

 

そしてそのまま、逃げる様に資料室を後にするクラリス。

 

「………さて、コレは思った以上に難物だな」

 

『俺の親父(セブン)師匠(レオ)だったら、怒鳴り付けてるぜ。その顔は何だ!? その目は何だ!? その涙は何だ!? 皆必死に生きているのに……挫ける自分を恥ずかしいと思わんか!? ってな』

 

(どんな父親と師匠なんだ………?)

 

クラリスの態度に思わずそう零すと、ゼロは父親のウルトラセブンと師匠のウルトラマンレオの事を話し、思わず冷や汗が流れる誠十郎。

 

「そんなこと言っちゃダメですよ。クラリスは良い子ですよ。可愛いし」

 

とゼロの声が聞こえていないさくらは、クラリスの事をそうフォローする。

 

「(確かに可愛い子だった。しかし俺には………)さくらの方が可愛いよ」

 

すると、誠十郎はそんな言葉を返した。

 

「な、何を言うんですか!?誠兄さん!」

 

不意打ちの1撃に、さくらは狼狽する。

 

「え? 素直にそう思うんだけどな………」

 

『誠十郎、お前………』

 

あっけらかんとそう言う誠十郎に、ゼロは呆れる。

 

「冗談ばっかり言って………もう、恥ずかしいよ………」

 

頬を染めて、身を捩りながらそう漏らすさくら。

 

「其れじゃ………私も、そろそろ行きますね」

 

「えっと………花組の隊員は3人だけなのかい? さくらに初穂にクラリス………」

 

と、去ろうとするさくらを呼び止め、花組の隊員について尋ねる誠十郎。

 

「もう1人、『望月 あざみ』と言う子が居るんですけど………今は用事で留守にしているんです」

 

「そうなのか………分かった、ありがとう」

 

『望月 あざみか………どんな奴なんだろうな』

 

未だ見ぬ隊員に想像を膨らませるゼロ。

 

「ハイ! それじゃ、失礼しますね」

 

さくらは、一礼すると資料室を後にした。

 

『癖の強い連中ばかりだったな。上手く纏められるのか、誠十郎?』

 

「………正直、ちょっと自信が無くなって来たかな」

 

ゼロが尋ねると、誠十郎はそんな弱音を吐く。

 

『オイオイ、しっかりしろよ。お前は隊長なんだぜ?』

 

「ああ、分かってるよ………」

 

気を取り直す様子を見せる誠十郎だったが、その表情には何処か陰りが有る。

 

『…………』

 

そんな誠十郎の態度が引っ掛かるゼロ。

 

と其処で、スマァトロンの着信音が鳴った。

 

(うん? スマァトロンに着信が………すみれさんからか)

 

誠十郎がスマァトロンを取り出すと、すみれからの連絡である事を確認する。

 

『神崎です。そろそろ、帝劇の中も見終わった頃かしら? 一段落着いたら、支配人室へ来て頂戴。宜しくね』

 

『支配人室に来て』と銘打たれた命題の内容は、支配人室への呼び出しだった。

 

(よし、支配人室に行こう)

 

既に帝劇内部図を覚え、隊員達への挨拶も一通り済ませた誠十郎は、支配人室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

「如何かしら? 花組の皆とは会えました?」

 

「はい。望月 あざみくんだけは、未だですが」

 

「そうですわね。彼女は別の任務で、帝劇を離れているの。だから、今度の公演も………今居る3人でやって貰う事になりますわ」

 

其処で一瞬、不安気な表情を浮かべるすみれ。

 

「『ももたろう』ですね。来週、公演予定だと聞いています」

 

「ええ。()()()()………上手く行って欲しいものですわね」

 

「え? 其れは………如何言う………?」

 

すみれの言葉に引っ掛かりを感じる誠十郎。

 

「あと、神山くん。公演が有る日、貴方には“モギリ”をやって貰います」

 

しかし其処ですみれは、誠十郎が質問してくるのを遮る様にそう言った。

 

「も、もぎり?………」

 

『何だそりゃ?』

 

今度はゼロが、初めて聞く言葉に首を傾げる。

 

「そう。お客様の入場の際に、入場券から半券を切り取るお仕事よ」

 

「俺が………もぎり、ですか?」

 

『へえ~、楽しそうじゃねえか』

 

落胆する様な誠十郎に対し、楽しそうな様子を見せるゼロ。

 

地球人とM78星雲人の感覚の違いであろうか?

 

「あら………お嫌かしら?」

 

「と、とんでもありません! 喜んでやらせて頂きますっ!」

 

すみれが睨む様に言うと、誠十郎は直ぐ様畏まってそう返す。

 

(はあ~、最初の仕事がモギリだなんて………)

 

『良いじゃねえか、誠十郎。面白そうだしよぉ』

 

(ゼロ………お前、モギリってのがどんな仕事だと思ってんだ?)

 

『いや、知らねえけど』

 

(………ハア~)

 

陽気なゼロに、誠十郎は内心で頭を抱える。

 

とその時………

 

支配人席の机上に置かれていた電話が鳴った。

 

「ハイ、大帝国劇場ですわ」

 

直ぐに、すみれが受話器を取る。

 

「!? その声は!?」

 

と、電話の先から聞こえて来た声を聞くと、思わず驚きの声を挙げた。

 

「? 如何かされましたか?」

 

「! あ、いえ………分かりましたわ。直ぐに御伺い致します」

 

誠十郎が尋ねると、すみれは取り繕って電話を切った。

 

「申し訳有りませんが、急用で出掛けなければならなくなりましたわ。悪いけど、また後でね」

 

「ハッ、分かりました」

 

敬礼する誠十郎の横を擦り抜け、すみれはやや速足気味に支配人室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・某所………

 

大型モニターが置かれたその部屋には、数名の人影が在った。

 

モニターには、ゼロとクレッセントの戦いの様子が映し出されている。

 

「遂にこの時がやって来ましたね………」

 

白い服を着た若い青年が、映像を見ながらそう呟く。

 

「『怪獣』に『ウルトラマン』………君の予言通りとなったワケだな、『イラストレーター』」

 

車椅子に座った老人が、白い服の青年………『イラストレーター』にそう言う。

 

かなりの高齢に見えるが、その目は鋭い眼光を放っている。

 

「降魔皇との戦いでアイツ等が居なくなっちまって、賢人機関が解散させられて『WLOF』が設立され………其れからずっと“この時の為”に密かに事を進めて来たのが漸く報われる、ってワケか」

 

もう1人の杖を突いた老人もそう言う。

 

コチラもかなりの高齢に見えるが、やはり眼光は鋭い。

 

「ええ………正直、帝劇が落ちぶれて行くのを()()()()()()()()()だったのは辛かったわ」

 

年配の女性が、憂いを帯びた表情でそう言う。

 

「帝劇への援助が打ち切られた背景に、WLOFの圧力が在ったと知った時には、私も信じられませんでした」

 

「まさか全華撃団消滅と各都市再興のドサクサに紛れて、まさかWLOFが“あの様な事”になるとは………」

 

陸軍の将官制服に身を包んだ年配男性2人が、信じられないと言う顔をする。

 

「だが事実だ。其れを知ったから、我々はコレまで極秘裏に行動し、準備を整えて来た」

 

其処で、海軍の将官制服に身を包んだ年配男性がそう告げる。

 

「君達には本当に感謝している。我々の言葉を信じ、陸軍・海軍に於いて同志を募ってくれた事には」

 

その将官達を見ながら、車椅子の老人がそう言って頭を下げる。

 

「閣下。頭を上げて下さい」

 

「我々は“嘗ての華撃団”に命を救われました」

 

「その華撃団の為に働ける、と言うのは我々にとって、願っても無い事です」

 

将官達が口々にそう言う。

 

「『ムラマツ中将』、『サコミズ少将』、『キリヤマ中将』………」

 

年配の女性が陸軍将官の2人………『ムラマツ・トシオ中将』、『サコミズ・シンゴ少将』と、海軍将官の『キリヤマ・カオル中将』を見て呟く。

 

「いよいよ始まりますね。WLOFに代わる………『()()世界華撃団構想』が」

 

とイラストレーターがそう言うと、部屋のドアがノックされた。

 

「神崎様がお見えになられました」

 

「分かった。通してくれ給え」

 

「畏まりました」

 

扉の向こうから、使用人と思しき人物の声が聞こえると、車椅子の老人がそう言う。

 

程無くして、すみれが入室して来た。

 

「久しいな、神崎くん………」

 

「よう、すみれ。元気そうだな」

 

「今までありがとうね」

 

車椅子の老人と杖を着いた老人、年配の女性がすみれに声を掛ける。

 

「お久しぶりです………『花小路伯爵』、『米田さん』、『かえでさん』」

 

すみれは懐かしそうに、その3人………元賢人機関のメンバーだった『花小路 頼恒』、帝劇の初代司令にして支配人『米田 一基』、2代目副司令にして副支配人『藤枝 かえで』の姿を見遣ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

残る花組メンバー、クラリスとの会合です。
基本的にフリー移動の場面は、ダイジェストでお送りする事になります。
メインヒロインのさくらのイベントや、個人的に面白いと思ったイベントなんかは拾っていく予定ですが。

さて、花組メンバーとの会合が終わり、すみれからもぎりを言い渡されますが………
そこで謎の呼び出しを受けるすみれ。
彼女を待っていたのはこの地球の『イラストレーター』、『ムラマツ・トシオ』、『サコミズ・シンゴ』、『キリヤマ・カオル』
そして、かつての華撃団の支援者に司令部の人物、『花小路 頼恒』『米田 一基』、『藤枝 かえで』

過去作を知るプレイヤーが抱くだろう疑問………
『旧華撃団のメンバーは幻都に封印されたとして、司令部とかのメンバーは如何してたんだ?』
について解消してみました。
花小路伯爵や米田さんは新サクラ大戦の頃にはかなり高齢になっているので、肉体的な衰えが出てる事になってます。

それで、もし旧司令部のメンバーが健在であるとすれば、WOLFがあんな事になっているのや、帝国華撃団が解散寸前になっている状況を見逃す筈が無いと思い、密かに暗躍していたという事にしました。
勿論、海外でも『グラン・マ』や『サニーサイド』が秘密裏に活動しています。
そして『イラストレーター』、『ムラマツ・トシオ』、『サコミズ・シンゴ』、『キリヤマ・カオル』と協力し考えている、『真の世界華撃団構想』とは一体何か?
それは後々に明らかになります。
この人達の存在のお陰で、今後の展開が大きく変わって行きます。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『ゼロの舞台稽古』

チャプター6『ゼロの舞台稽古』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇の次の公演予定は、活劇『ももたろう』………

 

もう間も無く開演の時が迫る中………

 

着任の手続きやら、部屋の荷物の整理等を一通り終えた誠十郎は………

 

この日、初めてさくら達の稽古を見学しに行った。

 

だが、其処で見たモノは………

 

 

 

 

 

帝劇・舞台………

 

「お前如きの力で、何が出来る!」

 

鬼に扮した初穂が、桃太郎役のさくらの攻撃を、金棒で往なしながらそう言い放つ。

 

「俺は、貴様を退治して………都に平和を取り戻すんだ!」

 

さくらがそう言いながら、鍔迫り合いを展開する。

 

やがて両者はお互いの位置を入れ替える様にバッと距離を取ると………

 

「とどめだあああああ!」

 

「負けるもんかああ!! くらええぇぇっ」

 

互いに最後の1撃を繰り出す。

 

だが、両者は激突すると思われた瞬間!

 

同時に足を滑らせた!!

 

「おろっ!?」

 

「あれっ!?」

 

2人は互いにスルーし合って、共にセットの方へと倒れ込んだ!!

 

セットが倒れ、隠れていた御供の猿に扮していたクラリスの姿が露わになってしまう。

 

「う、うっきー!?」

 

驚きながら思わず立ち上がってしまうクラリス。

 

すると、衣裳の尻尾の部分に引っ掛かっていたコードが引っ張られ、外れてしまう。

 

其れは天井のスピーカーに繋がっていたコードであり、一緒に引っ張られたスピーカーが、舞台へと落下した!!

 

忽ち舞台は粉塵に包まれた。

 

「こ、これは………一寸問題かも知れないな………」

 

『一寸どころじゃ無えよ………()()()だ』

 

唖然とする誠十郎に、ゼロも呆れた声を漏らすのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、半壊した舞台から如何にか3人を引っ張り出した誠十郎は、その場で反省会を開く。

 

「あ~~、テンダメだぁ」

 

目に見えて落ち込んでいる3人の中で、最初に初穂がそう漏らす。

 

「散々ですね………ところで、テンダメって何ですか?」

 

「んなモン、てんでダメって事に決まってんじゃん」

 

「成程………日本語って奥が深いですね」

 

クラリスと半ば現実逃避の様な遣り取りを交わす初穂。

 

「はぁ………わたし、何かもう、ぐったりです………」

 

さくらも、肩を落としてそう呟く。

 

「隊長、()()訊いておきたいんですけど………私達の舞台、如何でした?」

 

其処で、誠十郎に舞台の感想を求めるさくら。

 

「其れは………」

 

『ハッキリ言ってやれ、誠十郎。下手な誤魔化しは却って傷付けるだけだ』

 

「(そうだな………)酷かもしれないけど………正直、見られたモノじゃ無いな」

 

ゼロに同意し、ハッキリと駄目出しをする誠十郎。

 

「ですよね~………分かってました、私も………」

 

さくらはガックリと項垂れる。

 

「忌憚の無いご意見………ありがとうございます。でも………この舞台を何とかするのは、隊長さん………“貴方の役目”でもあるんじゃないですか?」

 

すると其処で、クラリスが誠十郎にそう言って来た。

 

「やっぱ、如何にもならねえよぉ。演技といっても、素人同士で勉強してるだけだし………」

 

「其れに、衣裳も舞台もボロボロ………直すお金だって有りません」

 

(此奴等………もう既に諦めてやがるな)

 

愚痴る初穂とクラリスの様子に、ゼロは心が折れているのを感じ取る。

 

「で、でも、ほら! 神山隊長も来てくれたし………これからですよ!」

 

しかし、さくらだけは僅かながらに気概を見せる。

 

「隊長ったって、ただ半券もぎってるだけじゃねえか。これから如何すれば良いか、考えはあるのかよ?」

 

「そうだな………」

 

誠十郎は少し考える様子を見せたかと思うと………

 

「慌てたって仕方が無い。気長に、コツコツとやっていこう。衣裳は兎も角、舞台なら俺でも直せるかもしれない。演技も、皆で指摘し合って稽古を続ければ、きっと上達するよ」

 

そう無難な回答を返した。

 

「………そうだと良いけどな。けど、やっぱそれしか無ぇか」

 

「「…………」」

 

初穂はそう返したが、さくらとクラリスは無言のままだった。

 

(うーん、打つ手無し………なのか?)

 

その光景に、誠十郎もそう思い始めたが………

 

『一寸代われ、誠十郎』

 

「(えっ? ゼ………)なあ、さっきの稽古の様子を見てて思ったんだが、ももたろうってのは格闘シーンが多いのか?」

 

「えっ?」

 

「そりゃあ、お前………桃太郎が悪い鬼を成敗する話なんだから、格闘シーンは1番の見せ場だろ」

 

急な誠十郎の質問に戸惑いの声を挙げるクラリスと、何を今更と言う様に返す初穂。

 

(アレ? 誠兄さんの雰囲気が?)

 

そして、誠十郎がゼロに変わった事を何と無く感じ取るさくら。

 

「良し! じゃあ俺が、お前達を特訓で鍛えてやる!」

 

すると其処で、誠十郎(ゼロ)はニヤリと笑ってそう言い放つ。

 

「!? ええっ!?」

 

「はあっ!?」

 

驚くさくらに、何を言ってるんだと言う様子の初穂。

 

「き、鍛えるって………如何言う事ですか!?」

 

クラリスが戸惑いながらも問い返す。

 

「言葉通りの意味だ。さくらは剣を使うみてぇだが、さっきの稽古の様子だと、初穂とクラリスは格闘技の心得なんか無えだろ?」

 

「そりゃあ、まあ………」

 

「確かに有りませんけど………」

 

「戦い方ってのを覚えれば、格闘シーンでの動きの見栄えがもっと良くなる筈だ」

 

「其れは、そうかも知れませんけど………」

 

誠十郎(ゼロ)の言う事にも一理有ると思うさくら。

 

「けど、特訓だなんてよぉ………」

 

「いきなり言われても………」

 

いきなり特訓をすると言われても乗り気になれない初穂とクラリスが否定的な様子を見せるが………

 

「ゴチャゴチャ言うな! 舞台を片付けてとっとと始めるぞっ!!」

 

「「「!? ハイーッ!!」」」

 

有無を言わせぬ誠十郎(ゼロ)の怒声に、さくら達は大慌てで舞台の片付けを始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、誠十郎(ゼロ)による師匠・ウルトラマンレオ、もっと言えば父親・ウルトラセブンから受け継がれた………

 

『地獄の特訓』が開始された。

 

「初穂ぉっ! 金棒を腕だけで振り回そうとするんじゃねえっ! もっと重心を低く! 下半身を意識しろっ!!」

 

「お、おうっ!!」

 

「さくらぁっ! もっと素早くだぁっ! 鬼が力で来るのに対し、桃太郎はスピードを生かした戦いで差別化するんだっ!!」

 

「は、ハイィッ!!」

 

「クラリス! 自分を脇役の猿だなんて思うなぁっ! お前は桃太郎の御供! ()()()()()だぁっ!!」

 

「うああああっ! 仏様を大切にしろ! 大切にしない奴は死ぬべきなんだ!!」

 

スパルタを通り越したスパルタの前に、初穂は疎か、稽古熱心なさくらでさえも悲鳴の様な声を挙げる。

 

インドア派なクラリスなぞは疲れの余り、黒歴史な白猿になり掛けている。

 

「よおし! 一旦休憩だっ!!」

 

「「「ゼエッ!………ゼエッ!………ゼエッ!………」」」

 

漸く休憩に入った頃には、3人共に床に大の字に寝っ転がり、息を切らしていた。

 

「あの隊長………優男かと思ったら、トンでもねえ()じゃねえかよ………」

 

「か、海軍の訓練とかを参考にしてるのかな………?」

 

大の字に寝転んだまま、初穂とさくらがそう言い合う。

 

「クラリス、大丈夫か?」

 

「…………」

 

クラリスは、青い顔をしたまま黙り込んでいる。

 

へんじがない、ただのしかばねのようだ………状態である。

 

「言っとくが、今日のは軽い“流し”みたいなもんだ。明日(あした)っからは更に厳しい特訓が待ってるからな!? 覚悟しておけよっ!!」

 

「「ええええぇぇぇぇぇ~~~~~~っ!?」」

 

「…………」

 

悲鳴の様な声を挙げるさくらと初穂に、()()()ままのクラリスだったが、誠十郎(ゼロ)の迫力の前に大人しく従うしか無かったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた公演初日………

 

嘗ての帝国歌劇団ならば初日から満員御礼となっていたところだが、残念ながら新生帝国歌劇団の評判・評価は悪く………

 

来ている客は彼女達の失敗を見るのが目当てか、嘗ての帝劇を贔屓にしていた惰性で、と言った人々ばかりだった。

 

しかし………

 

そんな人達は、新生・花組の公演を見て驚きを露わにする。

 

演技のシーンこそ未だ(つたな)いものの………

 

見せ場であるアクションシーンが、()()()レベルアップしていたのだ。

 

鬼の初穂が風切り音が聞こえる程の豪快な金棒捌きを見せたかと思うと、桃太郎のさくらがまるで何本もの刀を振るっているかの様な神速の剣劇で応戦。

 

そして御供の猿のクラリスは、主役を食わんばかりの野性味溢れるアクションを披露。

 

公演が終わった後………

 

客席からは僅かながら………

 

拍手の音が鳴り響いたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・ロビー………

 

「ありがとうございました」

 

「いや~、今回の公演は凄かったなぁ」

 

「ああ。演技の方は未だ変わんねえが、あんなスゲー殺陣シーンは初めて見たぜ」

 

「花組の連中がまた何か為出かすのを見に来た積りだったんだが………驚いたぜ、ホント」

 

「こりゃ、ひょっとすると新しい花組連中が化け始めたのかもなぁ………」

 

舞台が終わり、出て行く客を見送る誠十郎の耳に、そんな言葉がチラホラと聞こえる。

 

『大成功………とは言え無えが、良い感じじゃねえか』

 

「ああ、そうだな………」

 

手応えを感じているゼロに、誠十郎も同意する。

 

と………

 

「あ! 貴方は!!」

 

「えっ?」

 

突然声を掛けられた誠十郎がその方向に視線を向けると、其処には“学生服に身を包んだ少女”の姿が在った。

 

「何時も、さくらさんと楽しそうに話している、()()()()()お兄さん!!」

 

「け、けしからん!?」

 

『オイオイ、いきなり何だ?』

 

少女の思わぬ言葉に誠十郎は驚き、ゼロも面食らう。

 

「くぅ~っ、さくらさんに微笑んで貰えるなんて、何て羨ましいっ! って言うか、お兄さん誰なんですか!? 若しかして関係者さんなんですかっ!?」

 

「お、俺は………!? 俺の正体を知ろうだなんて、2万年早いぜっ!!」

 

少女の勢いに誠十郎が戸惑っていると、ゼロが代わりに出て来てそう返した!

 

「あ、アレ!? お兄さん、何か雰囲気変わった………?」

 

突然誠十郎の態度が変わった事で、少女は勢いを削がれ、僅かに退く。

 

「(ゼロ! 駄目だって!! お客様だぞ!!)し、失礼致しました。私は新人もぎりの神山です。よろしくお願いします」

 

と其処で誠十郎が慌てて主導権を取り戻し、少女に向かって丁寧に挨拶する。

 

「もぎり? なーんだ、下っ端の新人さんかー。でも、さっきのはちょっとカッコ良かったかも」

 

『へへ、照れるぜ』

 

「(今時の女学生のセンスは分からないなぁ………」

 

2万年早いぜの台詞がお気に召した様子の少女に、ゼロが照れて誠十郎が半ば呆れる。

 

「あたしは、『西城 いつき』! いつきって呼んで良いよ! あたしは………帝国歌劇団の大ファン、って言うか“超ファン”なの」

 

その少女………『西城 いつき』はそう自己紹介した。

 

「今日もこの大帝国劇場に来る事が出来て、いつき、カンゲキ!! って言うワケで、よろしくね! えーと………」

 

「神山 誠十郎です。此方こそ、これからも帝国歌劇団をよろしくお願いします」

 

「うん! まっかせてよ! 何処までだって、追い掛けて行くから!」

 

誠十郎が改めてそう自己紹介すると、いつきは胸を叩きながらそう返すのだった。

 

「ところでいつきちゃん。帝劇の大ファンに、訊きたい事が有るんだけど………」

 

「うん、何々? いつき、何でも答えてあげる!」

 

「『ももたろう』の公演………如何だったかな?」

 

「ああ、其れ其れ! 今までの花組の演劇って、一言で言うと“未完成”って感じだったんだけど、今回の公演は違ったよ! 強いて言うなら………“5割方完成”ってところかな!」

 

「そうですか………」

 

『未完成が5割方完成になったんなら、()()()だな』

 

いつきの答えに、誠十郎は安堵し、ゼロも頷く。

 

「さくらさんも、初穂さんも、クラリスさんも、みんなみんな、デッカイ可能性を持ってるっていつき思ってたんだけど………今回の公演で其れが花開き始めた、って思えたよ!」

 

「可能性………本当にそう思ってくれるかい?」

 

「勿論! 皆、絶対スタァになれるよ! 保証する!」

 

「………そうか」

 

『この子の為に、頑張って行かなきゃいけねえな』

 

「(そうだな)ありがとう、いつきちゃん。これからも花組の応援、よろしくお願いします!」

 

「うん! まっかせてーっ! それじゃ、私はこれで!」

 

そう言うと、いつきは誠十郎の前から去って行った。

 

「あんな熱心なファンが居てくれたのか………! おっと」

 

誠十郎が感慨に浸っていると、スマァトロンが鳴った。

 

確認するとすみれからの連絡であり、話があるので支配人室に来てくれ、との事だった。

 

売店のこまちと、経理室のカオルと話した後、誠十郎は支配人室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

「聞きましたわよ、神山くん。天宮さん達に指導したそうですわね」

 

「いや、アレは俺じゃなくてゼロがやった事でして………」

 

『何言ってんだ、誠十郎。俺とお前は一心同体。()()()()()()()()()()だ』

 

「そう………なのか?」

 

すみれの言葉に、誠十郎とゼロはそう言い合う。

 

「けど、肝心の演技の方は未だ未だよ。これからは、私も暇を見て稽古を付けるけど、時間は余り残されていないわ」

 

「時間が………無い?」

 

『如何言う事だ、そりゃ?』

 

「『世界華撃団大戦』ですわ」

 

「『世界華撃団大戦』………」

 

『前に言ってたヤツか。一体何なんだ、そりゃあ?』

 

ゼロは、そうすみれに尋ねる。

 

「近日開催される、華撃団競技大会の事ですわ。世界中の華撃団が、この帝都に集まって来て………舞踏と武闘で競い合う、平和の祭典よ」

 

『成程。正に世界規模の大会か』

 

「其処で勝利を重ね、“帝国華撃団此処に在り”と広く世間に知らしめる………其れこそが、今の花組の目的であり、帝国華撃団復活への第1歩、ですわ」

 

『確かに、世界規模での宣伝としちゃ打って付けだな』

 

すみれの言葉に、頷きながらそう言うゼロ。

 

「それは………(今の花組には厳しいのでは………)」

 

弱気な考えが頭を過る誠十郎だったが………

 

『オイ! 隊長が1番に弱気になってんじゃねえ! ココはやってやりますって言うところだ!!』

 

「(! あ、ああ………)分かりました。全力を、尽くします」

 

ゼロにそう叱咤され、誠十郎はすみれにそう返した。

 

「世界中の強力な華撃団を相手に、今の花組では厳しいですが………」

 

「彼女達に勝てる力を付けさせるのよ。神山くんとゼロさんなら、出来ますわ」

 

『おう! 任せとけっ!!』

 

「買い被り過ぎですよ。俺は魔法使いじゃありません」

 

威勢良く返事するゼロに対し、何処か未だ弱気が抜けない誠十郎。

 

「難しい事は百も承知ですわ。其れでも、やらなければ帝国華撃団の復活は果たせない。結果を出しなさい、神山くん。貴方とゼロさんなら、きっと大丈夫」

 

『任せておけ。“不可能を可能にする”のがウルトラマンだ、ってメビウスは言ってたからな』

 

嘗てそう言ったウルトラマン………『ウルトラマンメビウス』の事を出してそう言うゼロ。

 

「………分かりました」

 

「ありがとう………さて。悪いけど、わたくし()は出掛けますわ。華撃団大戦を如何戦い抜くか、しっかり考えておいてちょうだい」

 

「はっ!」

 

誠十郎は気を付けをして、出掛けるすみれを見送る。

 

「公演の次は、華撃団大戦か。色々と大変だな………」

 

『誠十郎。こう言う時こそ、隊長のお前が皆を引っ張るもんだぜ』

 

「………兎に角、世界華撃団大戦の事を調べる序に、さくら達に伝えるか」

 

ゼロがそう言うと、誠十郎はさくら達に世界華撃団大戦へ参加する事を伝えに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

原作では公演を開始してからポカをやらかしてしまっていましたが、この作品では稽古の段階でやらかしてしまいます。
しかし、ももたろうが殺陣シーン中心なのを見て、ゼロがさくら達を特訓!
僅かながらの新生・花組の評判を上げる事になります。

流石に原作のあの舞台は酷過ぎたので、何とかしようと思いまして。
しかし、流石にゼロも舞台演技の稽古なんて出来ないだろうし、如何するかと考えたところ、ゼロと言えば親父譲りの無茶な特訓!
なので、特訓を付ける事で殺陣シーンの見栄え向上に繋げるのは如何だと思い至りました。
かなり厳しい特訓でしたが、岩を投げつけられたりしないだけ温情です(笑)

そして世界華撃団大戦についても話される事に………
次回は、誠十郎の心内を知ったゼロが、誠十郎と真の意味で相棒となります。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター7『立て、誠十郎!』

チャプター7『立て、誠十郎!』

 

上海華撃団 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

支配人室を後にした誠十郎は………

 

舞台を終えてサロンで寛いでいた花組の許を訪れ………

 

すみれから言われた世界華撃団大戦への参加を伝えた。

 

 

 

 

 

帝劇・サロン………

 

「はあっ!? 何だってっ!?」

 

「華撃団大戦に………出場するっ!?」

 

誠十郎から華撃団大戦への参加を告げられた初穂とクラリスは仰天の声を挙げる。

 

「ホ、ホントですかっ!?」

 

さくらも驚きの声を挙げるが、初穂やクラリスとは違い、笑みを浮かべている。

 

「ああ………すみれさんから直々のお達しがあった。しかも“勝ち進め”との事だ」

 

「んなもん………無理に決まってんだろ!」

 

「そうですよ! 只醜態を晒すだけに決まってます! 絶対に無理です!!」

 

「ちょ! 一寸、2人共! そんなのやってみないと分からないじゃない!?」

 

出場する前から既に諦めモードな初穂とクラリスに、さくらが怒った様子を見せる。

 

「折角隊長のお陰で、お客さんも増えるかもしれないのに!」

 

「ソレとコレとは話が別だぜ………」

 

「増えたと言っても、本当に僅かじゃないですか………そんな成果で華撃団大戦でも通じるなんて、甘過ぎます」

 

必死に檄を飛ばすさくらだが、既に負け犬根性が染み着いてしまっている2人には中々届かない。

 

(まあ、優勝するのは無理でも、やるだけの事を………『何言ってやがる、誠十郎!』!? ゼロッ!?)

 

「お()ぇ等………」

 

「「「!?」」」

 

と誠十郎から主導権を奪ったゼロが、誠十郎の身体で低い声を発すると、さくら達は固まり、錆び付いたブリキ人形の様にギギギギギと言う音を立てながら誠十郎を見遣る。

 

「………特訓が足りて無かったみてぇだな?」

 

その瞬間、誠十郎(ゼロ)が何時も以上の鋭い目付きで3人を睨み付けながらそう言った。

 

「「「ヒイイイイイイイィィィィィィィィーーーーーーーーーッ!?」」」

 

此処数日の地獄の特訓を思い出し、青褪めた表情で悲鳴を挙げるさくら達。

 

「良いか! “挑戦しない栄光”なんて在りはしねえんだ! だったら、躊躇わずに突き進むしか無えだろっ!?」

 

「………でも」

 

「っつてもなぁ………」

 

そう叱咤する誠十郎(ゼロ)だったが、クラリスと初穂は未だ俯き気味である。

 

「心配するな! ()()必ずお前達を優勝させてやる! 俺を信じろっ!!」

 

すると誠十郎(ゼロ)は、親指で自分を指差し不敵に笑ってそう言い放った。

 

「隊長………」

 

「隊長さん………」

 

その笑みを見て、不思議と信じる気持ちが湧き上がって来るのを感じるクラリスと初穂。

 

「そうだよ、2人共! 確かにほんの僅かかも知れないけど、隊長のお陰で花組は良くなったじゃない! 華撃団大戦までにもっともっと特訓すれば、きっと………」

 

唯一前向きだったさくらも、誠十郎(ゼロ)に賛同して2人にそう言うが………

 

「ハッ! お前達が優勝っ!? んなモン、夢のまた夢だぜ!!」

 

其れを打ち消すかの様に、嘲笑う声が響いた。

 

「「「「!?」」」」

 

一同が振り返ると、サロンの入り口に、頬に絆創膏を張った青年と、両把頭と言う髪型をした小柄な少女の姿が在った。

 

「? 誰だ?」

 

「上海華撃団の隊長『ヤン・シャオロン』さんと、隊員の『ホワン・ユイ』さんです」

 

首を傾げる誠十郎(ゼロ)に、クラリスがそう耳打ちする様に告げる。

 

「えっと、何の御用ですか?」

 

「フン、帝国華撃団に新隊長が着任したって言うから、どんな奴か見に来てみれば………とんだ大法螺吹きだぜ」

 

さくらの問いに、シャオロンは見下した様子を隠そうともせずにそう言い放つ。

 

「あん?」

 

「大きな口を叩いたところで、お前達にそんな力は無いんだよ。大会には世界各国の強力な華撃団が出場する。お前達の出る幕なんて、何処にも無いぜ!」

 

「隊長の言う通り。恥を掻かない内に、早く逃げた方が良いね」

 

誠十郎(ゼロ)が不機嫌そうにするのも構わず、シャオロンは続けてそう言い放ち、ユイも同調してくる。

 

「! るせぇっ! そう言うお(めえ)達だって、この前現れたデカい怪物に()()()()()()()()()()そうじゃねえかっ!!」

 

と、言われっ放しで流石にカチンッ!と来たのか、初穂がクレッセントが現れた時の事を引き合いに出す。

 

「!!」

 

「あ、あの時は只………」

 

途端にシャオロンが表情を変え、ユイも詰まりながら反論しようとしたが………

 

「てんめぇっ!!」

 

其れよりも早くシャオロンが初穂に近付き、右手でその首を摑んで持ち上げた!!

 

「!? ガッ!?」

 

「! 初穂っ!?」

 

「!? シャオロンッ!?」

 

突然のシャオロンの行動に反応出来なかった初穂と、悲鳴の様な声を挙げるさくらに、驚愕するユイ。

 

「テメェ等に! テメェ等がそんな事を言えるのか!? 自分の立場が分かって無えみたいだなぁっ!?」

 

シャオロンは怒りの形相のまま初穂の首を絞め上げて行く!

 

「あ………が………」

 

どんどん顔が青くなって行く初穂。

 

このままでは危険だ!

 

「や、止めてくださいっ!!」

 

「初穂が死んじゃうっ!!」

 

「シャオロン! 駄目ぇっ!!」

 

慌ててクラリス、さくら、ユイがシャオロンを止めようとする。

 

「其処までだ」

 

「!? グアッ!?」

 

其れよりも早く、誠十郎(ゼロ)がシャオロンの右腕を左手で摑み、握力で締め上げた!

 

「! ゲホッ! ゴホッ!」

 

「初穂!」

 

「初穂さん!」

 

解放された初穂が尻餅を衝いて咳き込むと、さくらとクラリスが駆け寄る。

 

「これ以上、ウチ(帝国華撃団)の隊員に手は出させねえぜ」

 

「てんめぇ………放しやがれっ!!」

 

そう言う誠十郎(ゼロ)に、シャオロンは右腕を摑まれたままながら誠十郎(ゼロ)の顔面を目掛けて、左足でのハイキックを繰り出す。

 

「フッ」

 

だがそのハイキックも、誠十郎(ゼロ)の右手で爪先を摑まれ、アッサリと受け止められる。

 

「なっ!?」

 

「へっ………オリャアッ!」

 

驚くシャオロンに向かって、誠十郎(ゼロ)は不敵に笑ったかと思うと、そのままドラゴン・スクリューの様に投げ飛ばした!

 

「!? ガハッ!?」

 

勢い余ったのか、サロンの壁に背中から叩き付けられるシャオロン。

 

「! シャオロンッ!!」

 

「ゲホッ! ゴホッ!」

 

ユイが慌てて駆け寄ると、シャオロンは咳き込みながらも身を起こす。

 

「俺と戦おうなんざ、2万年早いぜ!」

 

そんなシャオロンに向かって、誠十郎(ゼロ)はお馴染みの決め台詞を言い放つ。

 

「冷やかしならとっとと帰りな。お(めえ)等の相手をしてる程、俺達は()()()()()んだ」

 

「! テメェ! 覚えてやがれっ!!」

 

誠十郎(ゼロ)の言葉に、シャオロンは憤慨してまるで悪党の様な捨て台詞を残して去って行った。

 

「あ! シャオロンッ!!」

 

ユイもその後を追って、帝劇を去って行く。

 

「やれやれ。華撃団の隊長って割には、随分と()()だな………」

 

「確かに………一寸様子がおかしかった気がします。前から色々と言って来たりしてましたけど、“手を挙げる”なんて事は1度もした事無かったのに………」

 

誠十郎(ゼロ)が愚痴る様に呟くと、さくらがシャオロンの姿に違和感を覚える。

 

「大丈夫ですか? 初穂さん?」

 

「ったく、とんだ目に遭ったぜ………」

 

クラリスが気遣う中、漸く息の整った初穂がそう言う。

 

「まっ兎に角、華撃団大戦には参加する。そして優勝するからな! 皆! 俺に従いて来いっ!!」

 

と、誠十郎(ゼロ)はさくら達に向き直り、改めてそう言い放った。

 

「ハイ、隊長!」

 

「ハア~、しゃあねえなぁ」

 

「やるだけやりましょう」

 

其れに対し、さくらは元気良く返事を返し、初穂とクラリスも僅かながら前向きな気持ちを見せ始めた。

 

(…………)

 

しかし、只1人………

 

当の誠十郎()()が、何も言わなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、場は解散となり………

 

「…………」

 

誠十郎は自室へと戻ると、部屋に在ったソファーに腰掛け、1枚の写真を見詰めていた。

 

其れは、1隻の“軍艦らしき艦船”を写した写真だった。

 

『誠十郎。何だ、その艦は?』

 

「特務艦『摩利支天』………俺が此処へ来る前に、()()として乗っていた艦さ」

 

『艦長! へえ~、お前艦長だったのか! スゲェなっ!』

 

「でも、もう沈んだ………」

 

『何?』

 

誠十郎の思わぬ言葉に黙り込むゼロ。

 

「停泊していた港の近くで、客船が降魔に襲われたんだ。だから、助けに行った。でも、こっちの兵器は降魔には殆ど通じない………時間を稼いで、客船を逃がすので精一杯さ」

 

『誠十郎………』

 

艦長が乗艦を沈めてしまう………

 

其れがどれ程の事なのか………

 

一心同体となっているゼロには、その時の誠十郎の気持ちが流れ込んで来る。

 

「その内に機関が止まって、総員退艦命令を出した。そう言えば、あの時に助けてくれたのは上海華撃団だったな………ま、客船と乗員を守れたから十分さ」

 

『………()()()そう思ってるのか?』

 

「………えっ?」

 

と其処で、ゼロは誠十郎にそう問い掛けた。

 

『お前は其れで良かったと………()()()思ってるのか?』

 

「! 仕方無いだろっ!! あの時は本当に………()()()()()()んだっ!!」

 

『じゃあどうして、そんなに()()()()()んだっ!?』

 

「! こ、後悔なんて………」

 

『隠しても無駄だ。俺とお前は一心同体だからな』

 

「…………」

 

ゼロの言葉に、今度は誠十郎が黙り込んだ。

 

『………誠十郎。正直に言え』

 

「………あの時、摩利支天は未だ()()()いた。機関だって何とかなったかもしれない」

 

ポツリポツリと吐露し始める誠十郎。

 

「動きさえすれば、体当たりで仕留められたかもしれない。いや、もっと時間を稼ぐ事だって出来たかも知れない………俺はあの時、“本当に全力を尽くした”のか?」

 

『誠十郎………』

 

改めて、誠十郎の思いを知るゼロ。

 

『誠十郎………お前が、その摩利支天って艦を沈めちまって仕方無かったんだ、って()()()()のは分かった。けどな………だからって、“これからも”簡単に諦めちまって良いって事にはならねえぜ!』

 

「!!」

 

『過去は変えられねえ。今、お前が変えなきゃならないのは………“コレからの未来”だ!!』

 

「そうだ………ずっと胸に引っ掛かっていた………“あの時”も、此処へ来てからも同じだ。俺は、“逃げて”いた。『仕方無い』って言葉で………全力で頑張る事から()()()()()んだ!!」

 

目の色が変わる誠十郎。

 

「こんな“中途半端”な気持ちで、さくら達と共に戦っていけるワケが無かったんだ! 俺は………俺はもう逃げないっ!!」

 

確かな決意を胸に、誠十郎はそう叫んだ。

 

『其れでこそ、“今の”俺の相棒だぜ』

 

「ゼロ………」

 

『俺達ウルトラマンは、ずっと昔から色々なモノを守って来た。だが、俺達は神様ってワケじゃない。時には“守れなかったモノ”も有る』

 

嘗て、初代ウルトラマンがメビウスに言った言葉を口にするゼロ。

 

『けど、其れでも守る事を止める積りは無い。何故なら………止めてしまったら、()()()()()()()からだ』

 

「ああ、そうだな………その通りだ」

 

『守ろうぜ、誠十郎。帝国華撃団と………この星(地球)をな』

 

「勿論だ。改めて、よろしく頼む。ゼロ」

 

『ああ!』

 

ゼロとそう誓い合う誠十郎。

 

その顔には、最早一点の曇りも無い。

 

この時、誠十郎とゼロは“真の意味”で『相棒』となったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日………

 

帝劇内に警報が鳴り響いた。

 

降魔が現れたのだ。

 

誠十郎は直ぐ様駆け出し、教えられていたダストシュートへ飛び込んだ!

 

途中、自動で戦闘服へと着替えさせられ、作戦司令室へと到着。

 

其処には既に、さくら達とすみれ、風組の面々が揃っていた。

 

「遅れてすみません」

 

「いいえ、大丈夫よ………」

 

すみれに詫びながら、自分の席へと座る誠十郎。

 

「………隊長。何だか、顔付きが変わりました?」

 

すると、隣の席のさくらが誠十郎にそう言って来た。

 

「ん? そうかな?」

 

「何て言うか………勇ましくなったと言うか………カッコ良くなったと言うか………」

 

「天宮さん。イチャつくのは後にして下さるかしら?」

 

上手い表現が出ないさくらに、すみれがそう釘を刺した。

 

「! い、イチャつくだなんて、そんな!?」

 

途端に顔を真っ赤にして慌てるさくらだった。

 

「其れで、状況は?」

 

と其処で、誠十郎は話を戻す。

 

「降魔が現れたのは銀座です。帝劇の目と鼻の先です」

 

カオルがそう報告する。

 

「上海華撃団は?」

 

「横須賀方面に現れた降魔に対処中や。戻って来るまでには、一寸時間掛かるで」

 

初穂の質問に、こまちが答える。

 

「降魔が、複数の場所に出現?………今日は多いですね」

 

コレまで、1箇所にしか出現する事が無かった降魔が2箇所の場所に現れた事に、クラリスが若干の違和感を覚える。

 

「上海華撃団が戻って来るまで、我々が降魔を抑える必要が有ります。しかし………」

 

「? 何か問題でも?」

 

言葉を詰まらせたカオルに、誠十郎が尋ねる。

 

「………神山隊長の機体が無いんです」

 

「えっ!? 無いって………」

 

「実は………」

 

「調整が遅れてしまいまして………今大急ぎでコチラに輸送して貰っているところです」

 

と其処で、カオルの言葉を遮ってすみれがそう言った。

 

「!? すみれ様!?」

 

驚くカオル。

 

誠十郎の機体が無いのは、予算不足の所為である。

 

しかしすみれは、“今此方に()()()”だと言った。

 

一体如何言う事なのか………?

 

「神山くんは此処から指揮を執って。機体が着き次第、現地に向かって貰うわ」

 

「分かりました………」

 

そんなカオルの様子も気にせず、すみれが続けてそう言うと、誠十郎はさくら達に向き直る。

 

「すまない。皆には負担を掛ける事になるが頼む。機体が到着次第、俺も現地へ向かう」

 

「任せて下さい!!」

 

「頼むぜ、隊長さん」

 

「頑張ります」

 

申し訳無さそうに告げる誠十郎だが、さくら達は気丈に返事を返す。

 

「準備は出来たようね。神山くん、出撃命令を!」

 

「ハイ!」

 

すみれに促され誠十郎が立ち上がると、さくら達も立ち上がる。

 

「帝国華撃団・花組、出撃せよ!! 銀座に現れた降魔を殲滅する!!」

 

「「「了解っ!!」」」

 

さくら達は誠十郎に敬礼すると、出撃する為に作戦司令室を後にした。

 

(………ゼロ。イザと言う時は頼む)

 

『ああ、分かってる』

 

其れを見送りながら、誠十郎は心の中でゼロに語り掛ける。

 

(………如何にも嫌な予感がしやがるぜ)

 

そんなゼロは、何か嫌な予感を感じ取っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座………

 

炎を上げる建物群の一角で蠢く影達………

 

降魔が使役する兵器『傀儡機兵』だ。

 

「何処に在るの?」

 

そして、燃え盛る銀座を見下ろしながらそう呟く人影らしき者………

 

「其処までです!」

 

其処へ、勇ましい声が響き渡る。

 

「帝国華撃団、参上!!」

 

桜色、赤、緑の三式光武が名乗りと共に見栄を切る。

 

新生帝国華撃団・花組の戦いが始まる………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

シャオロンの態度が原作より悪くなっていますが、勿論コレには理由が有り、後々への伏線でもあります。
上海華撃団の人達は嫌いではないのですが、さくらをボコボコにした事とそれまでの態度のせいで、華撃団大戦で勝利した後、何かなあなあな感じで仲良くなっていたのにちょっと納得が行かなくて………
やっぱりこう、本当に意味で仲良くなる………仲間になるのにはもっとドラマティックな展開がないとと思ってまして。
今回のシャオロンの態度はその為の布石だと思って下さい。

そして誠十郎の煮え切らない態度の理由………
本来ならば、彼の覚醒はこの後の降魔との戦闘でさくらが奮戦する様子を見てからなのですが、この作品ではゼロの存在でいち早く再起します。
でないと、次の戦闘に対処できなくなるので。

いよいよ出撃となった花組ですが、勿論敵は降魔だけではありません。
次回登場するのは………
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター8『宇宙人、現る!』

チャプター8『宇宙人、現る!』

 

上海華撃団

 

極悪宇宙人 テンペラー星人・ヘラク登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座………

 

帝劇の近くにて………

 

「ハアアッ!!」

 

気合の一閃で、傀儡機兵・侍を斬り捨てるさくらの三式光武。

 

斬り捨てられた傀儡機兵・侍は火花を上げた後、爆発四散する。

 

「フウ~………コレで最後………」

 

その傀儡機兵・侍が最後の敵であり、レーダーにも周辺に敵影が無い事を確認したさくらが大きく息を吐く。

 

「やるじゃねえか、さくら!」

 

「撃破数1番はさくらさんですね」

 

と其処へ、同じく敵を掃討し終えた初穂機とクラリス機が合流する。

 

2人の言う通り、現れた降魔と傀儡機兵を最も倒したのはさくらだった。

 

「えへへ、何だか光武の調子が良くって………」

 

笑みを浮かべて2人にそう返すさくら。

 

如何やらクレッセントとの戦いの時に、ルナミラクルゼロのミラクル・リアライズで街と共に修復された事が、思わぬ作用を齎していた様である。

 

『皆、良くやってくれた』

 

と其処で、作戦司令室の誠十郎から通信が入る。

 

「隊長! ハイ! わたし………やりました!」

 

「帝都の皆にも被害は無しだ!」

 

「私達も、やれば出来るんですね! 一寸自信が付いちゃいました!!」

 

其れに対し、さくら達は元気な返事を返す。

 

初めての勝利で、コレまで下がりっ放しだった士気が上がった様である。

 

『皆、本当にお疲れ様。神山くんも、初めてとは思えない良い指揮でしたわ』

 

今度はすみれが誠十郎を含めた全員を労う。

 

『さあ、戦いは終わりよ。天宮さん達も、帝劇に戻って来てちょうだい』

 

すみれがそう言っていた時………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

帝劇の前に佇む人影があった。

 

その人物は黒い衣装に身を包み、一振りの日本刀の様な刀を携え………

 

奇妙な仮面を着け、長い黒髪をポニーテールに束ねている女性だった。

 

「………魔幻空間、展開」

 

と、女性がそう言い放ったかと思うと………

 

帝劇の頭上を中心に、不気味な紫色の光が辺り一帯に広がり、周辺を包み込んだのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・作戦司令室………

 

突如として振動が走り、緊急事態を知らせる警報が鳴り響いた!

 

「!? 何だっ!?」

 

『神山隊長! こ、コレは………!?』

 

誠十郎が声を挙げると、さくらからも戸惑い声で通信が送られてきた。

 

『うわああああっ!?』

 

『初穂さん!?………!? キャアアアアアアァッ!!』

 

続けて、初穂とクラリスの悲鳴が響き渡る。

 

「初穂!? クラリス!? 如何した!? 何が有った!?」

 

『光武の霊子水晶が反応しねえ! 駄目だ………動かねえよ!!』

 

『此処は、何処なんですか? 私達、如何なっちゃうんですか!?』

 

誠十郎が問い質すと、初穂が光武が動かなくなったと報告し、クラリスからは戸惑いの声が挙がって来る。

 

未だ生きているクラリス機のカメラ映像には、先程まで居た筈の銀座ではなく、巨大な歯車等の機械が蠢く空間が広がっていた。

 

「落ち着いてくれ! 今、此方でも分析している!」

 

「銀座大通りのカメラと接続回復しました。映像、出ます」

 

誠十郎が2人を落ち着かせていると、カオルがそう言い、モニターの映像を切り替えた。

 

「!? こ、コレは!?」

 

其処には、一部が黒紫の光に包まれた銀座の光景が広がっている。

 

「銀座・大帝国劇場周辺に、強い妖力で出来た空間が発生している様です。そして私達は………その中に取り込まれました」

 

『要するに、異空間に隔離されたって事か……』

 

カオルの報告に、ゼロがそう言う。

 

「妖力で出来た空間だって? 降魔に、こんな事が出来るなんて………」

 

「!? アカン! 新手が出現やっ!!」

 

誠十郎が戸惑っていると、小町が新手の敵が出現した事を告げる。

 

『神山隊長! 私の光武が何とか動きます! 敵は、私に任せて下さい!!』

 

と、未だ三式光武が稼働していたさくらから、そう通信が入る。

 

「! さくら! 無理はするな! 時間を稼げば上海華撃団が来てくれる! 悔しいが、今は其れに頼るしかない!」

 

『待ってるだけじゃ出来ません! 私が皆を………帝都を守らなきゃ!!』

 

無理をするなと言う誠十郎だったが、さくらはそう返し、新たに出現した傀儡機兵達に向かって行った!

 

「! さくらぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔幻空間内………

 

「ハアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

次々に現れる傀儡機兵を相手に、孤軍奮闘するさくらの三式光武。

 

「…………」

 

その三式光武を、高所から見下ろしている仮面の女………

 

『上級降魔・夜叉』

 

人間に似た姿を持つ、高度な知能と人語を解する降魔である。

 

「…………」

 

仮面で窺え無いが、何処か冷めている様な様子で、三式光武の様子を窺っている。

 

「………ほう。“この世界”の人間はあの()()で戦っているのか?」

 

「!?」

 

と、突然横から聞こえて来た声に、夜叉は驚きを露わに視線を向けたかと思うと………

 

「しかし、未熟………余りに未熟。儂の相手では無いな」

 

其処には、全身青色で両手が鋏状となっており、金色のマントの様な物を羽織った異形の姿が在った。

 

「貴様、何時の間に!? 何者だっ!?」

 

問い質しながらも、夜叉は腰に下げていた刀を抜き放とうとしたが………

 

「フンッ!!」

 

其れよりも早く、異形が向けて来た右手から怪光線が放たれた!!

 

「!? グアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

避ける間も無く夜叉は直撃を喰らい、怪光線に押される様に背中から壁に叩き付けられた!!

 

「が………あ………」

 

全身が焼け焦げ、立っている事も出来ずにそのままその場にへたり込む夜叉。

 

「名を訊ねて於いて斬り捨てようとするとは、武人の風上にも置けぬ奴だな………儂は『テンペラー星人・ヘラク』よ」

 

そう言って異形………

 

嘗てウルトラ6兄弟やメビウス、その他にも様々なウルトラ戦士と相見(あいま)えた事が有る強豪宇宙人………

 

『極悪宇宙人 テンペラー星人』の『ヘラク』はそう名乗る。

 

「…………」

 

「何だ? もう動けなくなってしまったのか? 情け無い………ん?」

 

と、既に瀕死となっている夜叉を見て興味を無くした瞬間、テンペラー星人・ヘラクはさくらの方に再度注目した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初穂とクラリスが動けなくなってしまった中、孤軍奮闘を続けているさくら。

 

しかし、やはり多勢に無勢………

 

徐々に三式光武の損傷が酷くなって行く………

 

「未だです………未だやれます!」

 

だが、さくらの心は微塵も諦める積りは無い。

 

「この帝都に住む、皆の為、栄光有る花組の名を汚さない為………そして、何より………()()()()………()の為に」

 

損傷個所から蒸気を漏らし、動く度に関節部から火花を散らしている三式光武。

 

けれど、その姿はとても勇ましかった。

 

「指1本でも動いている限り………私は絶対に諦めない!」

 

そう決意を獅子吼するさくら。

 

しかし、無情にも背後から2体の傀儡機兵・侍が飛び掛かって来る!

 

「!!」

 

振り向こうとするさくらだったが、損傷の嵩んだ三式光武の動きは鈍い。

 

「オラアアッ!!」

 

「ハアアアアアッ!!」

 

だが、突如炎の塊の様な物が割り込んで来たかと思うと、さくらの三式光武に飛び掛かろうとしていた傀儡機兵・侍が砕け散る!

 

「!?」

 

「「上海華撃団、参上!」」

 

驚くさくらの前に現れたのは上海華撃団の王龍、シャオロン機とユイ機だった。

 

「あ、ありがとうございます………」

 

戸惑いながらも、上海華撃団の2人に礼を言うさくら。

 

しかし………

 

「ハッ! やっぱこんな程度か。帝国華撃団………とっとと解散しちまえよ!」

 

シャオロンから返って来たのは嘲りの言葉だった。

 

「何だと、この野郎!」

 

その言葉に、初穂が怒りを露わにする。

 

「解散なんてしません!! 絶対しません!!」

 

「口だけは達者だが………そんな無様ななりで、何が出来るんだよ?」

 

さくらも反論するが、シャオロンは止まらない。

 

「………さくら、私はアンタが嫌いじゃない。アンタの平和を愛する気持ち、分かるよ」

 

「えっ?」

 

すると其処で、ユイがそう口を挟んできて、さくらは軽く驚きを見せる。

 

「アンタは………頑張り屋さんの本当に良い奴。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()。上海華撃団においでよ」

 

「!!」

 

何と!

 

ユイは、さくらを上海華撃団へとスカウトし始めた。

 

「上海………華撃団に?」

 

「そう。()()()()()()、一緒に………帝都の平和、守ろう?」

 

「…………」

 

思わぬ提案にさくらは………

 

「私の夢は………“真宮寺 さくらさんの居た帝国華撃団”で、悪に立ち向かい、正義を貫く事………あの時………さくらさんに助けられたあの日から、夢を忘れた事は1日たりとも無かった………」

 

「さくら………」

 

「その夢が有ったから、私は歩いて来られた………その夢が有ったから、何時だって前を向けた………その夢に支えられて、私は今まで生きて来た!」

 

「…………」

 

「だから、行けません!!」

 

毅然とした態度で、キッパリと断った。

 

「………そうか。残念だよ」

 

本当に残念そうな表情でそう言うユイ。

 

さくらを仲間に迎え入れたかったのは事実の様だ。

 

だが………

 

「もう良い! 退け、ユイッ!!」

 

其処でシャオロン機が、ユイ機を押し退ける様にしてさくらの三式光武の前に立った。

 

「!? シャオロンッ!?」

 

「諦められないって言うんなら………()()()()()()()()!!」

 

ユイが戸惑いの声を挙げた瞬間、シャオロン機が三式光武を殴り付けた!

 

「ぐうっ!!」

 

「オラ! オラ!」

 

更に2度、3度と三式光武を殴り付けるシャオロン機。

 

「ぐううっ! ああぁっ!!」

 

殴られる度に機体内で揺さぶられ、さくらは悲鳴を挙げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・作戦司令室………

 

「天宮さん!」

 

「アカン! あのままやと、光武が保たらへんっ!!」

 

「シャオロン隊長! 今直ぐ止めなさいっ!!」

 

嬲られる三式光武の姿を見て、カオル、こまち、すみれが声を挙げる。

 

「アイツ!!」

 

誠十郎も怒りを露わにする。

 

『誠十郎! 行くぞっ!!』

 

「! ああっ!!」

 

と其処でゼロから声を掛けられ、誠十郎は直ぐ様作戦司令室を後にする。

 

「!? 神山隊長!?」

 

「ちょっ!? 何処行くねんっ!?」

 

突然作戦司令室から飛び出して行った誠十郎の姿に、カオルとこまちは仰天する。

 

「………此方すみれ。“隊長機の届け先”を変更して下さるかしら?」

 

しかし、すみれだけは慌てず、隊長の機体を輸送している部隊に連絡し、移送先の変更を命令する。

 

「!? すみれ様!?」

 

「大丈夫ですわ………『彼等』に任せておけば」

 

(? 『彼等』………?)

 

戸惑うカオルにすみれがそう言い、その言葉に引っ掛かりを覚えるこまちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・通路………

 

一方、飛び出した誠十郎は………

 

「行くぜっ!!」

 

主導権がゼロへと移ると、左手のウルティメイトブレスレットを構える。

 

すると、ウルティメイトブレスレットが光を放ち、誠十郎(ゼロ)の身体に鎧の様な物………

 

『ウルティメイトイージス』が装着される!

 

「セイヤッ!!」

 

そして右腕に装備されたウルティメイトゼロソードで、時空の壁を斬り裂いて穴を開ける。

 

「ハアッ!!」

 

気合の声と共に、ウルティメイト誠十郎(ゼロ)はその穴へと飛び込むのだった。

 

ウルティメイト誠十郎(ゼロ)が飛び込むと、穴は元通りに塞がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔幻空間内………

 

「何が夢だよ!? お前等の夢は、とっくに潰れてるだろうが!?」

 

罵声を浴びせながら、三式光武を殴り続けるシャオロン機。

 

遂に耐え切れなくなった三式光武が、仰向けに倒れる。

 

「私は、絶対に………絶対に、その夢を諦めない!」

 

だが、さくらの心は今だに折れていない。

 

「辛くたって、痛くたって、悲しくたって、悔しくたって、泣きたくなったって! 絶対、絶対、絶対諦めない!」

 

そして、限界を迎えている()の三式光武が、ゆっくりとだが起き上がる。

 

「何度でも………何度でも、立ち上がってやるっ!!」

 

彼女のその思いが、三式光武を支えていた。

 

「フンッ!」

 

「! キャアッ!!」

 

と、そんな三式光武をシャオロン機が蹴り飛ばしたかと思うと、跳躍してその上に馬乗りなった!

 

「フザけんなぁっ! 夢を叶える力なんざ無えくせっ! 死ねぇっ! テメェなんか死んじまぇっ!!」

 

既に殺気に満ち溢れた声を挙げると、碌に抵抗も出来無い三式光武をボコボコにして行くシャオロン機。

 

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇっ!!」

 

只管“死ね”と口にするシャオロン。

 

その姿は、既に狂気の沙汰である。

 

「や、止めてシャオロン! さくらが本当に死んじゃうっ!!」

 

見ていられなくなったユイ機が、シャオロン機の腕を摑んで止める。

 

若しココで、シャオロンが()()()さくらを殺してしまえば、上海華撃団が解散させられかねない。

 

其れが分からないシャオロンでは無い筈だ。

 

「邪魔するなあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

だがシャオロン機は、弾き飛ばす様にユイ機を振り払った。

 

「コレでトドメだああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

そして右手に炎を纏わせると、その拳を三式光武に叩き込もうとする。

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

シャオロン機の背中に、怪光線が命中した!!

 

「!? グアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

装甲の破片を撒き散らしながらブッ飛ばされるシャオロン機。

 

「!?」

 

「シャオロンッ!?」

 

突然の事態に驚くさくらとユイ。

 

「な、何が………!?」

 

機体から蒸気と火花を上げながら、シャオロンが起き上がると………

 

「“敵地のド真ん中で仲間割れ”とは………随分と余裕が有るな」

 

そう言う台詞と共に、テンペラー星人・ヘラクが降り立つ。

 

「!?」

 

「何、アイツッ!?」

 

「テメェッ! 上級降魔かっ!?」

 

突然現れた異形の怪人、テンペラー星人・ヘラクに驚きを露わにするさくら達。

 

「降魔?………儂はテンペラー星人・ヘラク。テンペラー星からやって来た“戦士”だ」

 

其処でテンペラー星人・ヘラクは、そう名乗りを挙げる。

 

「テンペラー星………?」

 

「ま、まさか………宇宙人っ!?」

 

首を傾げるさくらと、相手が宇宙人と知って驚愕するユイ。

 

“この地球”で初めての、ウルトラマン()()の異星人とのファーストコンタクトだった。

 

「そのテンペラー星人が、何でいきなり攻撃して来やがった!? 地球侵略でも企んでるのかっ!?」

 

「フン、儂はこんな星の侵略になぞ興味は無い。この星に来れば“強い奴と戦える”と思って来た。しかし、()()()()だった様だな………」

 

シャオロンの台詞に、テンペラー星人・ヘラクは、何処か失望したかの様な返事を返す。

 

「! んだとぉっ!?」

 

「貴様の様に、力に溺れ“戦士の誇り”も持たぬ様な奴が守り手に就いている星なぞ、高が知れる」

 

シャオロンを名指しし、そう言い放つテンペラー星人・ヘラク。

 

「フザけんなぁっ!!」

 

途端にシャオロンは激昂し、テンペラー星人・ヘラクに殴り掛かって行った!

 

しかし………

 

「フッ………」

 

「!? なっ!?」

 

繰り出した炎を纏った右拳は、テンペラー星人・ヘラクの左手で、アッサリと受け止められる。

 

「お、俺の拳を片手で………!?」

 

「言った筈だ………()()()()()()()となっ!!」

 

シャオロンが驚愕していた瞬間!

 

テンペラー星人・ヘラクは、受け止めていたシャオロン機の右腕をまるで小枝の様に圧し折った!!

 

「!?」

 

「この馬鹿者がぁっ!!」

 

そしてすかさず、電磁ムチをシャオロン機に巻き付ける!

 

「!? グアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

高圧電流が流れ、機体ごと感電するシャオロン。

 

「だからお前は阿呆なのだああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

 

だが、テンペラー星人・ヘラクは攻め手を緩めず、電磁ムチで拘束したままのシャオロン機を振り回したかと思うと、頭から地面に叩き付けた!!

 

「ガバッ!?」

 

「ヌウウンッ!!」

 

コックピット内でシャオロンが吐血すると、テンペラー星人・ヘラクは再度電磁ムチを振り、またもシャオロン機を頭から地面に叩き付ける!!

 

「ゴボッ!?」

 

「ムウンッ!! トウウアッ!!」

 

そのまま、何度も何度もシャオロン機を振り回しては頭から地面に叩き付けるテンペラー星人・ヘラク。

 

シャオロン機の頭部がドンドン潰れて行き、左足が千切れ飛び、装甲もバラバラと破片になって飛び散る。

 

やがて散々振り回したかと思うと、テンペラー星人・ヘラクは電磁ムチの拘束を解きながら、シャオロン機を壁に向かって投げ付けた!

 

壁に叩き付けられたシャオロン機は、既にスクラップ同然の姿となっていた。

 

コックピット内は、シャオロンが流し吐血した血で、真っ赤に染まっている。

 

「…………」

 

大量出血したシャオロンはグッタリとして、もう声を出す事さえ出来ない。

 

「シャ、シャオロンッ!! くうっ!!」

 

ユイが仇を取ろうと、テンペラー星人・ヘラクに向き直るが………

 

「…………」

 

そんなユイを、不気味な赤い目で睨み付けるテンペラー星人・ヘラク。

 

「!? ヒイッ!?」

 

途端にユイは恐怖で動けなくなり、機体ごと尻餅を付いてしまう。

 

「情け無い………引っ込んでいろ」

 

そんなユイの姿に、テンペラー星人・ヘラクは侮蔑の感情を向け、瀕死のシャオロン機に向かう。

 

「………貴様の様な奴は見ているだけで不愉快だ。この場で消してくれる」

 

シャオロン機に右手を向け、怪光線を放とうとするテンペラー星人・ヘラク。

 

………その瞬間!!

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

さくらの三式光武が、刀でテンペラー星人・ヘラクの右腕を斬り付けた!

 

「………何の積りだ?小娘」

 

しかし、その刃はテンペラー星人・ヘラクの皮膚の表面に僅かに食い込んだだけだった。

 

「クッ!」

 

「貴様、此奴(こやつ)に殺され掛けた身では無いか。なのに、その此奴(こやつ)を守ると言うのか?」

 

「関係有りません! 私は帝国華撃団・花組の隊員です! その使命は………()()()()()()()()です!!」

 

一片の迷いも無く、テンペラー星人・ヘラクに向かってそう言い放つさくら。

 

「むんっ!!」

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーっ!!」

 

だが次の瞬間には、弾き飛ばされてしまう。

 

「気に入ったぞ小娘! 未熟だが、貴様には戦士の気概が有る!」

 

何処か嬉しそうにそう言うテンペラー星人・ヘラク。

 

「その気概に敬意を表し………貴様から葬ってくれるわぁっ!!」

 

弾き飛ばされた三式光武に向かって、マントを広げて飛翔し、一気に距離を詰める!

 

「!!」

 

「「さくら(さん)っ!!」」

 

動けないさくらの耳に、初穂とクラリスの悲鳴の様な声が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その瞬間!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭上から“何か”が降って来て、三式光武とテンペラー星人・ヘラクの間に突き刺さった!!

 

「!?」

 

「ぬうっ!?」

 

驚くさくらと、直ぐ様距離を取るテンペラー星人・ヘラク。

 

突き刺さっていたのは、一振りの刀だった。

 

「! あの刀は!?」

 

さくらがそう声を挙げた瞬間!!

 

「セエエヤァッ!!」

 

気合の叫びと共に、誠十郎(ゼロ)が上空から現れ、地面を爆ぜさせながら着地を決めた!!

 

「………待たせたな!」

 

「神山隊長!?」

 

「隊長さんっ!?」

 

「隊長っ!?」

 

予想外の登場を見せた誠十郎(ゼロ)に、さくら達の目が点になる。

 

「貴様、何者だっ!?」

 

誠十郎(ゼロ)に向かってそう問い質すテンペラー星人・ヘラク。

 

「へっ」

 

地面に突き刺さっていた刀を右手で逆手に持つ様に抜いたかと思うと、左腰に残っていたもう一刀を左手の逆手に抜き、誠十郎(ゼロ)は不敵に笑うと………

 

「俺は誠十郎! 帝国華撃団・花組の隊長! 神山 誠十郎だっ!!」

 

構えを執りながら、そう高らかに名乗りを挙げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

降魔を難なく撃破した帝国華撃団ですが、魔幻空間で宇宙人と遭遇。
怪獣が登場しましたので、今回は星人が登場です。
しかも、あの強豪のテンペラー星人。
STORY 0を参考に、武人肌な性格をしています。
台詞から分かった方も居るでしょうが、イメージCVはGガンの師匠です。

そして原作より殺意の高い上海華撃団………と言うよりシャオロン。
アンチと言うワケではありませんが、コレも後々へと繋がる伏線でして………
そして、テンペラー星人・ヘラクの言う通り、敵地の真っ只中で事実上の仲間割れなんかしてて、その隙を敵が突かない筈が無いと思い、あんな事になってしまいました。
どうかご了承ください。

さて、現場へと駆けつけた誠十郎(ゼロ)ですが、次回は怒涛の3連戦となり、いよいよ1話が完結します。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター9『強き太陽の光』

チャプター9『強き太陽の光』

 

極悪宇宙人 テンペラー星人・ヘラク

 

降魔機兵『狂骨』登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座・魔幻空間内………

 

「せ、誠兄さん………」

 

突然現れた誠十郎に、さくらは思わず以前の呼び方で呼んでしまう。

 

「ほう? 貴様がコイツ等の隊長か?」

 

一方、テンペラー星人・ヘラクの方は、誠十郎の姿を観察するかの様に繁々と眺める。

 

「バカ! 何やってんだっ!?」

 

「生身で来るなんてっ!!」

 

と其処で、初穂とクラリスから悲鳴の様な声が挙がる。

 

霊子戦闘機も無く生身で現れ、しかも上海華撃団隊長・シャオロンを一方的にボコボコにしたテンペラー星人・ヘラクの前に立ちはだかっている誠十郎を狂気の沙汰だと思っている様だ。

 

「! か、神山隊長! 危険です! 逃げて下さいっ!!」

 

と其処で、ハッと我に返ったさくらも、慌てて誠十郎に呼び掛ける。

 

「心配すんな、コイツは俺に任せろ!」

 

だが、誠十郎(ゼロ)は心配は要らないと、二刀の刃を擦り合わせて火花を散らす。

 

「フン、()()()地球人に何が出来る?」

 

「試してみるか?」

 

挑発するかの様なテンペラー星人・ヘラクの言葉にも、不敵な笑みで返す。

 

「望み通りにっ!!」

 

と、次の瞬間!!

 

テンペラー星人・ヘラクは、誠十郎(ゼロ)に向かって怪光線を放った!!

 

「!? 誠兄さんっ!!」

 

「ああっ!?」

 

「うっ!!」

 

悲鳴の様な声を挙げるさくらと初穂に、思わず目を逸らすクラリス。

 

「ハアッ!!」

 

だが誠十郎(ゼロ)は、右の掌の中で刀を扇風機の羽の様に回転させたかと思うと、怪光線を受け止めて掻き消した!!

 

「!? 何っ!?」

 

「「「!?」」」

 

コレにはテンペラー星人・ヘラクとさくら達は驚きを露わにする。

 

「セエリャアッ!!」

 

誠十郎(ゼロ)は回転を止めると、再度逆手に構えて跳躍。

 

テンペラー星人・ヘラクに斬り掛かる!

 

「ぬうっ!?」

 

「セヤッ! オリャアッ!」

 

初撃は躱したテンペラー星人・ヘラクだが、誠十郎(ゼロ)は流れる様に2撃、3撃と追撃して来る。

 

「チイッ!!」

 

躱し切れなくなったテンペラー星人・ヘラクが、誠十郎(ゼロ)の二刀を腕で受け止める。

 

「オオリャアッ!!」

 

「! グオッ!?」

 

その瞬間、誠十郎(ゼロ)は腹にケンカキックを叩き込む。

 

「セリャアッ!!」

 

そして、ノックバックしたテンペラー星人・ヘラクに向かって二刀を投擲した。

 

「小癪なっ!!」

 

飛んで来た二刀を電磁ムチで弾き飛ばすテンペラー星人・ヘラク。

 

「フッ! ハアッ!!」

 

だが、誠十郎(ゼロ)が弾かれた二刀に手を翳して気合を入れる様な様子を見せたかと思うと………

 

二刀が空中で止まって高速回転を始めた!

 

「!? ぬうっ!?」

 

「セヤアッ!!」

 

驚くテンペラー星人・ヘラクに向かって、誠十郎(ゼロ)が腕を振ると、回転していた二刀がブーメランの様に襲い掛かる!

 

「グアッ! ヌウッ!?」

 

高速回転して飛び回る二刀に何度も斬り付けられ、身体の表面から火花を散らすテンペラー星人・ヘラク。

 

「ハアッ!!」

 

其処で、誠十郎(ゼロ)が大きく跳躍したかと思うと………

 

「オオオリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

炎を纏った右足の飛び蹴りを繰り出す!!

 

「! うおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーっ!?」

 

咄嗟にガードしたものの、大きく吹き飛ばされるテンペラー星人・ヘラク。

 

「フッ!!」

 

誠十郎(ゼロ)は着地を決めると、手元に戻って来た二刀をキャッチする。

 

「如何した? そんなモンかよ?」

 

そして、テンペラー星人・ヘラクに向かって挑発するかの様にそう言い放つ。

 

「う、嘘………」

 

「スゲェ………」

 

「信じられません………」

 

ユイ、初穂、クラリスはその光景に唖然となる。

 

(アレ? “今の”誠兄さんの戦い方って………?)

 

一方さくらは、誠十郎(ゼロ)の戦い方に既視感(見覚え)を感じる。

 

「この力………成程、()()()()()か」

 

其処でテンペラー星人・ヘラクは、何やら納得が行った様な様子を見せる。

 

「考えてみれば、“この星に手を出して()()()が黙っている筈が無い”か………」

 

「何ゴチャゴチャ言ってやがる。今度はコッチから………」

 

と、誠十郎(ゼロ)がテンペラー星人・ヘラクに仕掛けようと、僅かに腰を落とした瞬間………

 

『神山隊長! 巨大な妖力反応をキャッチしました!!』

 

作戦司令室のカオルから、そう通信が送られて来た!

 

「! 何っ!?」

 

誠十郎(ゼロ)が声を挙げた瞬間………

 

近くに、巨大な魔法陣の様な物が展開!

 

其処から這い出して来る様に、所々に機械の部品を鎧の様に装着した、光武の数倍の大きさを誇る降魔………

 

降魔機兵『狂骨』が出現した!!

 

グガアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

その巨大な口を目一杯開いて、咆哮を挙げる狂骨。

 

「で、デケェ………」

 

「あの時の怪獣程じゃ無いけど………」

 

「ああ、そんな………」

 

狂骨の姿を見て戦慄する初穂、さくら、クラリス。

 

「チッ! 邪魔が入ったか………一旦勝負は預けるぞ!」

 

一方、テンペラー星人・ヘラクは狂骨の姿を見て舌打ちをすると、マントを皮膜の様に広げ、飛び去って行った。

 

「あ! 待ちやがれ!!………! うおっとっ!?」

 

追おうとした誠十郎(ゼロ)だったが、其処で狂骨が捻り潰そうと腕を振り下ろして来たので慌てて回避する。

 

(ゼロ! 変身を!!)

 

『駄目だ! ()()()()()()()()で変身する事は出来ねえ!』

 

誠十郎がウルトラマンに変身しろと促してくるが、さくら達の目が在る為、変身出来ない。

 

(けど、このままじゃ………!!)

 

『神山くん。聞こえますか?』

 

と其処で、すみれから通信が送られて来た。

 

「! 司令かっ!?」

 

『お待たせしましたわ。今到着よ』

 

誠十郎(ゼロ)が返事をし、すみれがそう言葉を続けたかと思うと………

 

魔幻空間の空が罅割れ、突き破る様にして“何か”が突入して来た!

 

「! アレはッ!?」

 

其れは嘗て、帝国華撃団が使っていた武装飛行船を近代化改装した強襲揚陸輸送空船『翔鯨丸・甲壬』だった。

 

そしてその翔鯨丸から、誠十郎(ゼロ)の元に向かって『何か』が射出された!

 

射出された『何か』は、派手に粉塵を上げて、誠十郎(ゼロ)の眼前に着地する。

 

「! コレは!?」

 

誠十郎(ゼロ)の目の前に降りて来たのは、真っ白な塗装を施され、両腰に二刀を携えた霊子戦闘機だった。

 

『『霊子戦闘機・無限』………貴方専用の機体よ』

 

「霊子戦闘機・無限………良し!」

 

誠十郎(ゼロ)は、直ぐ様無限へと乗り込む。

 

(ゼロ………ココからは俺にやらせてくれ!)

 

と乗り込んで直ぐ、誠十郎はゼロにそう言った。

 

「! 誠十郎………」

 

(お前に任せっ切りにしちゃ、隊長()()だからな)

 

「………良し! お前がやれ、誠十郎!」

 

ゼロは、主導権を誠十郎へと返した。

 

「………さあ、ココからが本当の戦いだ!!」

 

誠十郎はそう言い放つと、無限が二刀を抜き放ち、狂骨に向かって構えを執る!

 

グガアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

途端に、狂骨は誠十郎機を叩き潰さんと両手を広げ、拍手をする様に左右から振って来た!!

 

「ハッ!!」

 

しかし、誠十郎機(無限)は跳躍して躱したかと思うと、そのまま合わさった狂骨の手の上に着地。

 

そのまま、ローラーダッシュで狂骨の腕の上を駆け上がる!

 

「セエヤァッ!!」

 

そして、顔面を右の刀で斬り付けたかと思うと跳躍し、アクロバットの様に空中で月面宙返り(ムーンサルト)を決めながら、左の刀で背中を斬り付ける!

 

グガアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

どちらも機械の装甲が施された場所であったが、それを紙の様に易々と切り裂いて、紫色の血液を噴出させる。

 

グガアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

狂骨は、怒りに任せて着地した誠十郎機に長い尻尾を振るったが………

 

尻尾が誠十郎機に命中するかと思われた瞬間、閃光が走り、狂骨の尻尾は宙に舞った!

 

グガアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

切断面から紫色の血液を振り撒いて悲鳴の様な咆哮を挙げる狂骨。

 

「無限………良い機体だ………俺の思った通りに動いてくれる」

 

残心状態の誠十郎が、無限の性能を改めて知り、そう声に出す。

 

グガアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

と、尻尾の無くなった狂骨が、自棄の様に誠十郎機に突っ込んで行く。

 

「!!」

 

それに対し、誠十郎機もまた、狂骨へと向かって行った!!

 

「! 危ない! 神山隊長っ!!」

 

さくらが叫んだ瞬間、狂骨の勢いに乗せた右腕が、誠十郎機に向かって振られる。

 

だが、その右腕が命中するかに思われた瞬間!

 

「! ココだっ!!」

 

誠十郎機は独楽の様に回転し、振られて来た狂骨の腕に沿う様にして躱し、懐へと飛び込む!

 

「セエエヤァッ!!」

 

そして、狂骨の右足を二刀で横薙ぎに斬り付けた!!

 

!? グガアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

足をやられた狂骨は、立っている事が出来なくなり、膝を突く。

 

『誠十郎! 決めろっ!!』

 

「ああ! コレで………トドメだっ!!」

 

ゼロにそう返すと、誠十郎機から霊力のオーラが立ち昇る。

 

「闇を斬り裂く、神速の刃! 縦横無刃・嵐っ!!」

 

刀身が青白く発光した二刀を振るい、連続で体勢の崩れた狂骨に斬り付ける!

 

「おおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

最後に気合の一閃を喰らわせたかと思うと、狂骨を通り過ぎ、残心を執る誠十郎機。

 

その背後で、狂骨の身体に幾重にも光の線が走ったかと思うと………

 

其処からバラバラになり、爆発四散した!!

 

其れと同時に魔幻空間が崩壊し、見慣れた帝都の街並みが広がり始めた。

 

「やったぁっ!」

 

「スゲェな、あの隊長。アタシもあんな風に戦えるかな?」

 

「ひょっとしたら………」

 

帝国華撃団として、初めて勝利を飾った事に、さくら達が大なり小なり喜びを露わにする。

 

「シャオロン! 大丈夫!?」

 

「う、うう………如何なったんだ?」

 

一方、ユイに助け出され、半壊していた王龍の中から抜け出したシャオロンが漸く意識を取り戻す。

 

「………もう終わったよ。()()()()()()で」

 

其れを聞いたユイが、言い辛そうな様子で無限から降りる誠十郎を視線で指しながら答える。

 

「! アイツが!?」

 

途端に、シャオロンは憎悪の籠った視線で誠十郎を睨み付ける。

 

「神山隊長!」

 

「隊長さん!」

 

「隊長!」

 

其れに気付かず、無限から降りた誠十郎の前に、同じく光武から降りたさくら達が集まる。

 

「皆、ありがとう。君達が頑張ってくれたお陰で勝つ事が出来た」

 

「何言ってんだよ?殆どアンタの独壇場だったじゃないかよ」

 

誠十郎の言葉に、初穂がそう返す。

 

「そんな事は無いさ。皆が頑張ってくれたから俺も戦う事が出来たんだ」

 

「そ、そんな事を言われると、何だか照れちゃいます………」

 

クラリスが頬を染めながら言う。

 

「あ、そうだ! 神山隊長! 戦闘が無事終わった事を祝して………」

 

と、さくらが何かを誠十郎に訴えようとしたその瞬間!!

 

「ぬあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

叫び声が響いたかと思うと、怪しい光と共に、身長52メートルに巨大化したテンペラー星人・ヘラクが帝都の街中に出現した!

 

「!?」

 

「んなっ!? アイツはッ!?」

 

「テンペラー星人!?」

 

「嘘っ!? あんな大きくっ!?」

 

巨大化したテンペラー星人・ヘラクの姿に、誠十郎達は驚愕する。

 

「ムウウンッ!!」

 

テンペラー星人・ヘラクの気合の声と共に、右手から怪光線が放たれる。

 

そのまま右手を横に振り、怪光線は薙ぎ払う様に帝都の街を直撃。

 

忽ち帝都は炎に包まれた!!

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

「うわああああっ!?」

 

「助けてくれぇっ!!」

 

その被害は、降魔警報で避難が呼び掛けられていた地域外にも及び、避難していなかった人々が慌てて逃げ惑う!

 

「! 大変! 行かないとっ!!」

 

「けど、如何すんだ!? 光武はもう動かねえぞっ!?」

 

さくらがそう言うが、初穂がそう返す。

 

先程の魔幻空間での戦闘で、既に帝国華撃団の光武は限界となっていた。

 

『聞こえる、皆! 先ずは逃げ遅れている人達を助けて!!』

 

と其処で、作戦司令室のすみれからそう通信が入る。

 

「! すみれさん! 分かりました! 皆! 先ずは街の人達を避難させるんだ!!」

 

「「「! 了解っ!!」」」

 

誠十郎がそう呼び掛けると、さくら達は分散して、逃げ遅れている人達の避難誘導へと向かった。

 

「!!」

 

誠十郎も、同じ様に避難誘導に向かう………

 

と見せて、人気の無い路地裏へと飛び込む。

 

「ゼロ! 行くぞっ!!」

 

『ああ! ココからはまた俺の出番だっ!!』

 

「デュワッ!!」

 

そしてウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを取り出して装着!

 

「セエエヤァッ!!」

 

ウルトラマンゼロへと変身すると、巨大化する!!

 

「ハアッ!!」

 

そして、テンペラー星人・ヘラクの前に着地を決めた!!

 

「! ゼロさんっ!!」

 

「! あ、アレがっ!?」

 

「ウルトラマンゼロ………」

 

その姿を見たさくらが嬉しそうな声を挙げ、初めてゼロを直に見た初穂とクラリスは圧倒される。

 

「俺はゼロ! ウルトラマンゼロだっ!!」

 

お馴染みの名乗りと共に、テンペラー星人・ヘラクに向かって構えを執るゼロ。

 

「ほほう? 貴様が噂に名高いあのウルトラマンゼロか………」

 

ゼロの姿を見たテンペラー星人・ヘラクは、何処か嬉しそうにそう呟く。

 

「つまらぬ星だと思っていたが、如何して如何して。中々良い強者と出会えるとはな………」

 

「そんな余裕が続くと思うなよ!! 行くぜっ!!」

 

先手必勝とばかりに、ゼロが仕掛ける。

 

「ムンッ!!」

 

だが其れに対し、テンペラー星人・ヘラクは右手を向けて、火炎放射を放った!

 

「! アチチチチッ!!」

 

真面に火炎に飛び込んでしまい、慌てて側転で距離を取って抜け出すゼロ。

 

「隙有りっ!!」

 

その隙を見逃さず、マントを広げて飛翔したテンペラー星人・ヘラクは、ゼロに体当たりを喰らわせる!

 

「! おうわっ!?」

 

「そうら! ほうらっ!!」

 

倒れたゼロに向かって、着地したテンペラー星人・ヘラクは、電磁ムチを連続で振り下ろす。

 

「ぐおっ! があっ!?」

 

何発か喰らいながらも、地面の上を転がって逃げるゼロ。

 

「野郎! エメリウムスラッシュッ!!」

 

そして素早く起き上がると、テンペラー星人・ヘラクに向かってエメリウムスラッシュを放つ!

 

「そんなものっ!!」

 

だが、テンペラー星人・ヘラクは腕を交差させてガードする。

 

「ウルトラマン必殺光線!!」

 

そしてお返しとばかりに、『ウルトラ兄弟必殺光線』を改良・発展させた『ウルトラマン必殺光線』を放つ!

 

「!? ウオワァッ!!」

 

直撃を喰らったゼロは大きくブッ飛ばされ、背中でビルを押し潰しながら地面に倒れる。

 

「! ゼロさんっ!!」

 

「アイツ、さっきとは違うぞっ!!」

 

「そ、そんな………如何したら………」

 

ゼロが押されているのを見て、さくら達にも動揺が走る。

 

「チイッ! この野郎っ!!」

 

身体の上に乗っていた瓦礫を払いながら起き上がるゼロ。

 

ウルティメイトブレスレットからのエネルギー供給のお陰で、カラータイマーは未だ青のままだが、其れなりのダメージは受けていた。

 

「戯けめが! 先程までと同じと侮りおって! 其れでもウルトラ戦士か!?」

 

テンペラー星人・ヘラクは、何処か怒っているかの様な様子でゼロにそう言い放つ。

 

親父(セブン)師匠(レオ)みてぇな事を吐かしやがって………けど、その通りだな。確かに侮ってた。けどな………」

 

と其処で、ゼロはウルティメイトブレスレットを構え、右手で叩いた!

 

すると、ウルティメイトブレスレットから赤い光が溢れる!

 

「ストロングコロナ! ゼロッ!!」

 

そして、何時もよりも荒々しい声とエレキギターのような効果音が鳴り響いたかと思うと、上半身が赤で下半身が銀色を基調とした姿へと変わる。

 

ダイナとコスモスより授かった力で変身するもう1つの姿………

 

『ストロングコロナゼロ』だ!!

 

「!? 何っ!?」

 

「! 今度は赤に変わったっ!?」

 

「「!?」」

 

ゼロの姿が変わった事に、テンペラー星人・ヘラクとさくら達は驚きを露わにする。

 

「行くぜぇっ!!」

 

と、ストロングコロナゼロが、テンペラー星人・ヘラクに向かって突撃する!

 

「馬鹿め! 同じ事をぉっ!!」

 

テンペラー星人・ヘラクは、再び突っ込んで来るストロングコロナゼロに向かって火炎放射を浴びせる!

 

「うおおおおぉぉぉぉぉっ!!」

 

だがストロングコロナゼロは、高温火炎を物共せずに突き進んで来る!!

 

「!? 何とぉっ!?」

 

「おおりゃああぁっ!!」

 

そして完全に火炎を突っ切ると、炎を纏ったパンチ………『ストロングコロナアタック』で、テンペラー星人・ヘラクの顔を殴り付ける!

 

「ぐうおっ!?」

 

「セエエヤァッ!!」

 

更に続け様にミドルキックを脇腹へと見舞う!

 

「ガッ!!」

 

「おおりゃあっ!!」

 

そして、テンペラー星人・ヘラクの上体が下がった瞬間、頭を脇の下へと抱え込む様に捕える!

 

「ウルトラハリケーンッ!!」

 

叫びと共に、テンペラー星人・ヘラクに竜巻が発生する程の高速回転を加えて上空へと投げ飛ばした!!

 

「うおおおおおっ!?」

 

高速回転の影響で、空中で身動きが取れなくなるテンペラー星人・ヘラク。

 

「ガルネイトォ………」

 

そこでストロングコロナゼロは、握った右手にエネルギーを集める!

 

「チイイッ! ウルトラマン必殺光線ッ!!」

 

だが、テンペラー星人・ヘラクは一瞬の隙を見出し、ストロングコロナゼロに向かってウルトラマン必殺光線を放つ!

 

「! グウッ!!………バスタアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

ウルトラマン必殺光線を食らい、一瞬怯んだかに見えたストロングコロナゼロだったが、構わず炎状の強力光線………『ガルネイトバスター』を放った!!

 

「! ぬおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!?」

 

ガルネイトバスターが直撃したテンペラー星人・ヘラクの身体が燃え上がったかと思うと、そのまま巨大な爆発に包まれた。

 

「! キャアッ!?」

 

「うわっ!?」

 

「わわわっ!?」

 

その爆風は地上に居たさくら達にも届く程だった。

 

と、上空に漂っていた爆煙の中から何かが落ちて来て、地面に叩き付けられる。

 

「ぐ………あ………」

 

ボロボロになったテンペラー星人・ヘラクだ。

 

「ぐおおお………」

 

如何見ても虫の息だが、ヨロヨロと起き上がり始める。

 

「セヤッ!」

 

そのテンペラー星人・ヘラクに対し、構えを取るストロングコロナゼロだったが………

 

「………見事だ、ウルトラマンゼロ。儂の負けだ」

 

「!!」

 

テンペラー星人・ヘラクは、潔く敗北を認めた。

 

「フフフ………『奴』に連れて来られた時には如何なるかと思ったが………こんな良い勝負が出来るとはなぁ………」

 

「『奴』? 何者だ?」

 

テンペラー星人・ヘラクを“この宇宙”へと連れてきた存在が居る事を知るストロングコロナゼロ。

 

「其れは自分で確かめるのだな………『奴』は………強いぞ」

 

「オイ!」

 

「ウルトラマンゼロォッ! 貴様が『奴』に勝てるか如何か! 地獄でゆっくりと見物させて貰うぞぉっ!!」

 

更に問い質そうとしたストロングコロナゼロだったが、テンペラー星人・ヘラクはそう言い放ち、万歳の様な姿勢を取ったかと思うと、爆発・四散した。

 

「………テンペラー星人・ヘラク。敵ながら見事な奴だったぜ」

 

ストロングコロナゼロは、最後まで武人としての矜持を見せたテンペラー星人・ヘラクを称える。

 

「………ルナミラクルゼロ」

 

と其処で、ストロングコロナゼロはルナミラクルゼロへとフォームチェンジ。

 

「ミラクル・リアライズ」

 

そしてクレッセントの時と同じ様に、ミラクル・リアライズで破壊された街並みを修復する。

 

「………シュワッ!!」

 

街が修復されたのを見届けると、ゼロは空の彼方へ飛び去って行った。

 

「ありがとう~! ゼロさ~んっ!!」

 

「全く………噂以上だったな、ウルトラマンゼロ」

 

「正に神秘の巨人です………」

 

飛び去るゼロを手を振って見送るさくらと、その力に感動にも似た思いを感じている初穂とクラリス。

 

「お~い! 皆~!!」

 

と其処で、誠十郎が戻って来る。

 

「あ! 神山隊長!」

 

「今まで何処に居たんですか?」

 

「え? え~と………ああ、そうそう! ゼロの活躍に見惚れちゃっててね!」

 

クラリスの問いに、誠十郎はそう誤魔化して答える。

 

「何やってんだよ………って言いたいとこだけど、見惚れてたのはアタイ達も一緒だからなぁ」

 

呆れる様な様子を見せる初穂だったが、自分達もゼロに見惚れていただけに、強くは言えないのだった。

 

「そう言えば、さくら。さっき、何か言い掛けてたみたいだったけど、何なんだ?」

 

其処で誠十郎は、さっきさくらが言おうとしていた事を問い質す。

 

「あ、ハイ。“戦いに勝利した時の花組の伝統”が有るんです」

 

「伝統? 何だい、其れは?」

 

「其れはですね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、行くぞ! せーの………」

 

「「「「勝利のポーズ、決めっ!」」」」

 

『コレ良いな。今度グレン達とやってみるか』

 

花組の伝統・勝利のポーズを見て、ウルティメイトフォースゼロでもやってみようかと思案するゼロだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

人気の無い路地裏にて………

 

「う、ううう………」

 

テンペラー星人・ヘラクによって瀕死の状態にされた夜叉が、地面を這っている。

 

這った後には、降魔と同じ紫色の血液が痕を曳いている。

 

「は、早く戻らなくては………『幻庵』様の所へ………」

 

今にも死にそうな状態にも関わらず、気力だけで動いている夜叉。

 

と、その目の前に立つ者が居た。

 

「!?」

 

その人物を見上げる夜叉だったが、既に目が霞んでいる為、確認出来ない。

 

「コレは………面白い“素材”だな」

 

人影は、夜叉を見下ろしながらそう呟く。

 

「何………を………」

 

夜叉がそう言った瞬間!

 

人影は右手に銃の様な物を出現させ、夜叉を撃った!

 

「!? ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?………」

 

全身にスパークの様な物が走ったかと思うと、動かなくなる夜叉。

 

すると、その両脇にも人影が出現。

 

夜叉の腕を摑んで立ち上がらせる。

 

「貴重な()()()()だ。有効に活用させて貰うよ………我々『サロメ』がね」

 

そして3人の人影と夜叉は、路地裏から忽然と姿を消したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

クラリス「漸く動き出した帝国華撃団。

 

山積みかと思われた問題も如何いうワケか解決して行きます。

 

コレで一安心………って、ええっ!? 私がやるんですかっ!?

 

次回『新サクラ大戦』

 

第2話『手のひらほどの倖せに優しさを込めて』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

隊長さん………私、あの子を助けたい!!」

 

ゼロ「お前には力以上に、優しい心があるんだっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『極悪宇宙人 テンペラー星人・ヘラク』

 

身長:2~52メートル

 

体重:120キロ~3万5千トン

 

能力:電磁ムチ、ウルトラマン必殺光線、火炎放射

 

イメージCV:Gガンの師匠

 

初登場作品:ウルトラマンタロウ 第33話『ウルトラの国大爆発5秒前!』・第34話『ウルトラ6兄弟最後の日!』

 

初めてウルトラ6兄弟全員と戦った強豪宇宙人。

 

エンペラ星人の血筋との設定も有り。

 

多彩な技や策略を駆使して6兄弟を追い詰めるが、最後は腕を切り落とされ、空中に投げ飛ばされたところを、タロウのネオ・ストリウム光線で倒される。

 

その後、メビウスの劇場版でビックリするぐらいスリムなデザインにリファインされ、度々強豪としてウルトラ戦士達の前に立ちはだかった。

 

この作品に登場した個体は、STORY0の様な武人派だな性格で、ウルトラ兄弟必殺光線をパワーアップした『ウルトラマン必殺光線』を使用する。

 

名前の由来はヘラクレスから。




新話、投稿させて頂きました。

第1話、完結。
誠十郎(ゼロ)VSテンペラー星人、無限・誠十郎機VS狂骨、ゼロVSテンペラー星人の豪華3戦でお送りいたしました。
やはり誠十郎も頑張らないと立つ瀬が無いと思い、狂骨との戦いは誠十郎自身に行わせました。
見事新生花組は、最初の勝利を飾る事となりました。

一方、テンペラー星人によって瀕死となっていた夜叉は何と『サロメ星人』に回収されてしまいます。
サロメ星人をご存じの方なら、この後夜叉がどんな運命を辿るかご想像がつくかと………

そして次回、第2話はクラリス回。
タイトルがちょっと変わっている様に、話の内容も少し変化しています。
花組メンバーも出揃い、更なる強敵怪獣・星人も登場。
楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第2話『手のひらほどの倖せに優しさを込めて』
チャプター1『新生帝国華撃団・始動』


第2話『手のひらほどの倖せに優しさを込めて』

 

チャプター1『新生帝国華撃団・始動』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・食堂………

 

「それでは、皆さん! 御一緒にーっ!!」

 

「「「「「かんぱーいっ!」」」」」

 

花組の初勝利を祝い、(ささ)やかながら祝勝会を開いている誠十郎・さくら・初穂・クラリス・すみれ。

 

「今回は本当にお疲れ様。殊勲賞は勿論、天宮さんね」

 

「そ、そんな事有りません! 勝てたのは神山さんとゼロさんのお陰です!」

 

すみれにMVP認定されると、そう謙遜するさくら。

 

「いーや、お前は頑張った………頑張れなかったのは、アタシだ」

 

「私もです………申し訳有りません」

 

一方で、初穂とクラリスは余り活躍が出来なかった事を詫びる。

 

「何故謝るんだ? “()()()戻って来れた”………其れだけで十分じゃないか」

 

『その通りだぜ』

 

しかし誠十郎はそう言い、ゼロも同意する。

 

「初穂もクラリスも、良く頑張ったよ。ありがとう」

 

「………へへっ」

 

「………はい」

 

誠十郎の言葉に、照れ臭そうにする初穂とクラリス。

 

「失礼します。皆さんに御報告が有ります」

 

すると其処へ、そう言う台詞と共に、カオルが食堂に姿を見せた。

 

その表情は何処か落ち着きが無い。

 

「カオルさん? 如何したんですか?」

 

そんなカオルに問い掛ける誠十郎。

 

「「「…………」」」

 

さくら達も、何か深刻な事態が起きたのではないか?と不安気な様子を見せる。

 

「…………」

 

しかし只1人、すみれだけが不敵な微笑を浮かべていた。

 

「実は………信じられない事ですが、陸軍と海軍の()()から………帝国華撃団に対しての援助が開始される事になりました」

 

「! ホントですかっ!?」

 

カオルがそう告げると、さくらが1番に驚きの声を挙げる。

 

「マジかよっ!?」

 

「今までずっと放ったらかしにされていたのに………しかも“陸軍と海軍の両方から”………」

 

初穂とクラリスも、信じられないと言った様子を見せている。

 

「神山隊長の無限も、陸海軍の後押しで配備が決まったそうです。更に、前回の戦闘で大破した三式光武の代替機としての意味も含め、後5機『無限』が配備されるそうです」

 

「無限が5機も………凄いじゃないですか!」

 

『漸く俺達を認めた、って事か?』

 

興奮を隠し切れない誠十郎と、認められた事を実感するゼロ。

 

(しかし、何故こんな急に………今の今まで帝国華撃団を蔑ろにしてきた両軍が“()()()援助を開始”だなんて………)

 

だが、カオルは陸海軍の急な援助開始を不審がっていた。

 

「浮かれていては駄目よ、皆。援助が開始されたと言っても、今の帝国華撃団には未だ“足りないモノ”が有るわ」

 

と其処ですみれが、皆に釘を刺す様にそう言う。

 

「足りないモノ? 其れは………?」

 

「人は城。国は人なり。沢山の故事が言っているでしょう? つまり、()よ」

 

誠十郎が尋ねると、すみれはそう答える。

 

「………確かに。物が有っても、使う人が居ない事には話になりませんね」

 

「その通り………でも、心配しなくて良いわ。既に手配はしてあるから」

 

「ホントですか? 流石ですね、すみれさん」

 

用意周到なすみれに、誠十郎は手放しで称賛を送る。

 

「当然ですわ。私を誰だと思って? 嘗ての帝劇のトップスタァですわよ………さて、先ずはコチラの方からね。どうぞ」

 

と、すみれがそう呼び掛けたかと思うと、食堂に陸軍の将官服に身を包んだ男性が現れた。

 

「!!」

 

将官の制服を見て、誠十郎が反射的に敬礼をする。

 

「楽にしてくれて構わないよ………初めまして、花組の皆さん。陸軍少将の『サコミズ・シンゴ』です」

 

そんな誠十郎にそう言いながら、陸軍将官………『サコミズ・シンゴ』はそう自己紹介をする。

 

「サコミズさんは副司令官として私のサポートに就いてくれます。私が指揮を執れない時は彼が指揮を執る事になりますから、その積りでいて頂戴ね」

 

「「「「! ハイ!!」」」」

 

サコミズが副司令官になる人物と聞かされ、誠十郎達は姿勢を正して返事をする。

 

「其れから………」

 

「いやぁ、良かった。忘れられてるんじゃないかと思ったよ」

 

すみれが更に何かを言おうとしたところ、その言葉を遮ってそう言う声が響いた。

 

一同が声のした方向へ視線を向けると、其処には赤い作業着姿の若い男が居た。

 

「よっ」

 

作業着の男は皆の前まで近付くと、軽く手を上げて挨拶をする。

 

「れ、令士っ!? お前、何で此処に!?」

 

その人物を見た誠十郎が驚きの声を挙げる。

 

『? 何だ、顔見知りか?』

 

「オイオイ、何で?とはご挨拶だな。俺こそが“帝国華撃団の秘密兵器”よ!」

 

ゼロがそう尋ねる中、令士と呼ばれた男は自信満々にそう言い放つ。

 

「お友達ですか?」

 

「ああ………兵学校時代の同期、『司馬 令士』だ。俺が戦術本科、アイツが機工整備科で首席同士だった」

 

其処でさくらにもそう問われ、誠十郎は作業着の男………『司馬 令士』を紹介する。

 

「誠十郎とは、色々と張り合ったもんさ。云わば………“永遠のライバル”ってヤツかな?」

 

「ああ、また一緒に頑張ろう! 期待しているぞ、令士」

 

「は? お前………()()()誠十郎か? 熱でも有るのか?」

 

と誠十郎が畏まった返事を返すと、令士は怪訝な顔になる。

 

「………そうだよな。お前はそう言う奴だ。お前に、真面目に答えた俺がバカだったよ」

 

「ははは! そうそう、そういう感じがお前っぽいぜ」

 

「うるさい」

 

「………何なんです? 仲が良いんですか? 悪いんですか?」

 

「男の人って、よく分かりませんね………」

 

そんな男同士の遣り取りに、さくらとクラリスは理解が及ばない。

 

『成程な………“そういう感じ”か』

 

只1人、ゼロだけは納得が行った様子になっていた。

 

そして、何となく令士の姿にウルティメイトフォースゼロの仲間………『グレンファイヤー』の事を重ね合わせるのだった。

 

「オイオイ、僕の事も忘れて貰っちゃ困るよ」

 

と其処で、今度は青いブレザーを着た男性が姿を現す。

 

「あ、『イデ先生』。すみません」

 

男性を見た令士が、恐縮した様に頭を下げる。

 

「貴方は?」

 

「『イデ・ミツヒロ』。元軍の開発局に勤めていた者さ」

 

誠十郎が尋ねると、男性………『イデ・ミツヒロ』はそう自己紹介する。

 

「イデ先生は俺の教官でな。この人が居なきゃ、俺は首席に成れて無かったよ」

 

「ハハハ。首席に成れたのは、君自身の努力の結果さ。まあ、僕としても君の様に教え甲斐が有った生徒は誇らしいけどね」

 

手放しで称賛する令士に、イデは人の好さそうな笑みを浮かべてそう返す。

 

「司馬くんとイデさんには其々技師長と開発長として、主に霊子戦闘機の整備を担当して貰います。他にも、舞台や設備の修理もお願いするわね」

 

「了解しました、すみれさん」

 

「大丈夫! 任せておいてちょうだい!」

 

すみれの言葉に、令士は敬礼を返し、イデは相変わらず人の好さそうな笑顔を返す。

 

「………ま、お前が来たなら安心だ。其れも先生まで引き連れてな。しっかり頼む」

 

「おう! 任せとけ!」

 

誠十郎も、令士に向かって気安そうにそう言うのだった。

 

「さて、次は舞台の方ね」

 

「舞台の………」

 

「って事は………?」

 

「新人さんが入るって事ですか?」

 

舞台の方と言うすみれの言葉に、さくら・初穂・クラリスが反応する。

 

「その通り………紹介するわ。世界が誇るスタァ、『アナスタシア・パルマ』!」

 

「「!? ええっ!?」」

 

すみれが言った人物の名を聞いた途端、初穂とクラリスが驚きを露わにする。

 

「此処に来れば退屈しないって、星達が言ってたけど………フフッ、確かにそうみたいね」

 

そしてそう言う台詞と共に、銀髪で褐色肌の背が高い色気の有る女性が姿を見せた。

 

『何だぁ? 色っぽい姉ちゃんだな』

 

見たまんまの感想を述べるゼロ。

 

「Mäin Gott! 本当にアナスタシアさん………?」

 

思わず母国語が出る程に驚きを露わにしているクラリス。

 

「有名な人なの?」

 

しかし、さくらは知らない様子でそう尋ねる。

 

「知らないのかよ!? さくら! 世界的に有名な大スタァじゃねえか!」

 

初穂がやや興奮した様子でそう言う。

 

(世界的大スタァ! 凄いなぁ………コレもすみれさんの人望だろうか………)

 

まさかの世界的大スタァの登場に、誠十郎も内心で驚きを露わにしていた。

 

「皆さん、ごきげんよう。私は『アナスタシア・パルマ』」

 

其処で女性………『アナスタシア・パルマ』は、改めて自己紹介をする。

 

「帝劇の舞台に招かれるなんて、光栄ね。花組の名に恥じぬ働きを約束するわ」

 

「は~、すげぇ」

 

「優雅ですねぇ~」

 

立ち居振る舞いからして、既に大スタァのオーラが溢れているアナスタシアの姿に、初穂とクラリスが思わず溜息を漏らす。

 

「貴方が、キャプテン・カミヤマかしら?」

 

と其処でアナスタシアは、誠十郎の前に立ってそう尋ねる。

 

『きっちり挨拶しとけ、誠十郎。ココでしくじったら隊長の威厳も何も無いぜ』

 

「(分かってるって)ええ。花組隊長の神山 誠十郎です。よろしく」

 

ゼロにそう返しながら、誠十郎はキッチリと挨拶を交わす。

 

「そう、貴方が………先日の降魔と宇宙人との戦いでは、目覚ましい活躍をされたそうね。何でも、“()()で星人を撃退した”とか」

 

「あ~、いや、その………」

 

生身で戦ったのは事実だが、其れは()()()()ゼロがやった事なので、何処と無く気不味い誠十郎。

 

「私も、この目で見てみたかったわ」

 

「アナスタシアさんには、花組のスタァとして舞台の華を務めて貰いますわ」

 

と、その辺りの追及を躱すことも有り、すみれが口を挟む。

 

「そして勿論、“華撃団の一員”として戦いにも加わって貰います」

 

「戦いにも? 大丈夫なのか?」

 

「勿論。其方の()も期待していただいて結構よ」

 

世界的スタァに万が一の事が有ったらと心配する誠十郎だったが、アナスタシアは其方も自信満々の様子で返す。

 

「流石だな………頼りにさせて貰うよ」

 

「何つーか、舞台も、戦いも………一気に戦力倍増って感じだな!」

 

一気に充実し始めた帝国華撃団の様子に、初穂は嬉しそうな声を漏らす。

 

「世界一の演技を間近で見られるなんて………ああ………幸せです!」

 

クラリスも、世界的スタァの演技を間近で見られる事に感激している。

 

「其れじゃ、(わたくし)は部屋に戻ります。神山くん、後で(わたくし)のところに来てくれる?」

 

「はっ!」

 

誠十郎が敬礼を返すと、すみれはカオルを伴って支配人室へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、戦勝祝いが新メンバー加入祝いも兼ねた席になった後………

 

メンバーが解散すると、誠十郎はさくらと共に片付けを手伝った後、支配人室へと向かった。

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

「神山、入ります」

 

ノックをし、入室を許可された後に支配人室へと足を踏み入れる誠十郎。

 

「来ましたわね」

 

「御用は何でしょうか、支配人?」

 

「貴方の“昇進”の話ですわ」

 

「しょ、昇進………ですか!?」

 

『やったじゃねえか、誠十郎!』

 

まさかの昇進の話と言われ、誠十郎は驚き、ゼロも喜ぶ。

 

「ええ。神山 誠十郎、貴方を………“帝国歌劇団・特命宣伝部長”に任命します」

 

「はっ! 有り難く拝命致します!………って、特命? 宣伝? 部長?」

 

しかし、続けて言われた特命宣伝部長への任命に戸惑いの声を挙げる。

 

「“()()()でのお仕事”のお話よ。宣伝部の部長をお願いしたいの」

 

「は、はあ………」

 

「陸海軍の援助も決まり、新たなスタァや人員を迎えて、帝国華撃団の体制は大きく躍進したわ。けど、其れを“皆が知らない”事には知名度は上がらないわ」

 

要領を得ない様子の誠十郎に、すみれはそう説明する。

 

「帝劇を民衆にしっかりとアピールする為には、“強力な宣伝活動”が必要不可欠です」

 

「成程………理解しました。重要な役目ですね」

 

「ふふ。話が早くて助かるわ。其れじゃ早速だけど………コレを使ってみて」

 

其処ですみれは、支配人机の引き出しを開けたかと思うと『何か』を取り出して、誠十郎に見える様に机の上に置いた。

 

其れは、『帝』の文字が刻まれた赤い大きなボタンの付いた小さな箱だった。

 

(この、ボタンが付いた箱は?………若しかして)

 

『話の流れから見て、“宣伝に関わるモン”だろうな』

 

誠十郎がそのボタンを見ると、ゼロがそう推測する。

 

「若しかして………宣伝の秘密兵器ですか?」

 

「ふふっ………御名答。きっと気に入って貰える、と思いますわ」

 

誠十郎とゼロの推理に、すみれは意味有り気に笑う。

 

(どんな道具なんだろう? 一寸ワクワクして来たな………)

 

“秘密兵器”と言う言葉に男心を擽られながら、誠十郎はボタンを手にする。

 

「じゃあ、早速使ってみて貰えるかしら?」

 

「ハイ。この赤いボタンを押せば良いんですか?」

 

「そうですわ。やってみて頂けますこと?」

 

「では………ポチッとな」

 

お約束の台詞と共に、箱のボタンを押す誠十郎。

 

すると、彼の姿が一瞬で蒸気に包まれ………

 

「パオォォォォン!」

 

“象の様な着ぐるみ”の姿へと変わった!!

 

(な、何だ、この格好は!? 一体、何が如何なったんだ!?)

 

『何じゃこりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?』

 

突然の出来事に、誠十郎は戸惑いを隠せず、ゼロも某刑事ドラマの名台詞の様に叫んでしまう。

 

絡繰(からくり)宣伝人形『大帝国ゲキゾウ』………略して『ゲキゾウくん』よ」

 

その誠十郎の前に移動して来たすみれがそう言う。

 

「げ、ゲキゾウくん………!? あっ!? 意外と楽に動けるっ!? 視界も良好だし!?」

 

誠十郎が驚きの声を挙げて思わず身じろぎしてしまうと、まるで普通の状態でいるかの様にスムーズに動く事が出来て、視界も良好な事に更に驚く。

 

「ふふふ、()()()動けない『着ぐるみ像』だったのだけど、イデさんが改良を施してくれて、まるで光武の様に自在に動ける様になったの。更には台座無しでも変身できる様にまでしてね。あの人は本当に天才ですわ」

 

その様子に、すみれは愉快そうに笑ってそう言う。

 

「この『ゲキゾウくん』に()()し、帝劇を宣伝する。其れが貴方の“新しいお仕事”。帝劇をしっかりと宣伝してくださいましね」

 

『如何やら腹を括るしか無いようだぜ、誠十郎………』

 

すみれがそう言葉を続けると、ゼロが何処か諦めた様にそう言ってくる。

 

「(一寸恥ずかしいけど………こうなったら、やるしかない!)ぱおおおーーーん!!」

 

腹を括ったのか、誠十郎改めゲキゾウくんは大きく吠えた。

 

「素晴らしいですわ、神山くん! これなら心配有りませんわね」

 

其れを聞いたすみれは、満足気な笑みを浮かべる。

 

「本当にコレで良いんでしょうか!? 大丈夫でしょうか!?」

 

しかし、誠十郎は未だ戸惑いの色を隠せない。

 

「見事なゾウっぷりでしたわよ」

 

『“ゾウっぷり”って何だよ………』

 

すみれの言葉に、そうツッコミを入れるゼロ。

 

「くれぐれも、ゲキゾウくんのイメージを壊さない様にね」

 

「ぱ、ぱおーーーん………」

 

何処か物悲しそうに鳴くゲキゾウくんだった………

 

「其れじゃあ、手元に有るボタンを押しなさい。元の姿に戻れますわ」

 

「ぱおーん」

 

最後の一鳴きと共に、ゲキゾウくんは誠十郎の姿に戻る。

 

「ご苦労様。気分は如何?」

 

「何と言うか、その………」

 

『誠十郎、やる気出せ。これも帝劇の為だ。もっと練習しておけ』

 

誠十郎が戸惑っていると、ゼロからそうフォローが飛ぶ。

 

「さっきは上手く行きましたが………今後も上手く鳴けるか、正直不安です」

 

「実は、ゲキゾウくんは子供達からの人気も高いのよ。皆の夢を壊さないであげてね」

 

「子供達の………頑張ります! ぱおおーーーん!………違うか………ぱおおおーーーん!!………うーむ」

 

“子供達から人気だ”と聞いて、無様な姿は見せられないと思ったのか、早速鳴き声の練習に入る誠十郎。

 

「ふふふ………『何事も一生懸命』なのは、神山くんの良い所ですわね」

 

その様子に、すみれはまた満足そうに笑う。

 

「最後に1つ。ゲキゾウくんの中に、神山くんが居る事は“絶対に秘密”よ。お客様の夢を壊すワケにはいかないもの。其れに………正体を知られていない方が、“()()()便利な事”も有りますからね」

 

『だな』

 

既に“ウルトラマンとしての正体”を隠している事もあり、ゼロは頷く。

 

(確かに、ゲキゾウくんに化ければ………普段聞けない情報も集められるかもしれないな)

 

誠十郎もそう考える。

 

「其れでは、早速………宣伝の任務を命じます。大帝国劇場前にて、劇場の宣伝を行いなさい」

 

「はっ! 宣伝部長として………全力を尽くします!!」

 

すみれに敬礼を返すと、誠十郎は宣伝活動を行うべく、大帝国劇場前へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

第2話、クラリス回の始まりです。

前回の戦勝記念で細やかなパーティーを開く花組。
そこへ、陸海軍からの援助の知らせが。
原作では誠十郎の無限の購入費で資金が底をついてしまうという展開でしたが、この作品ではムラマツ中将とキリヤマ中将が尽力してくれて、逆に両軍からの援助が再開されます。
出ないと、戦闘で花組の無限が揃ってた事への説明がつかないというのもありましたので。
勿論、さくらの機体も無限に更新されます。

そしてサコミズ少将が副指令として着任。
新生帝国華撃団を見直すと、そう言えば副指令が居ないなと思い、ウルトラシリーズから誰か着任させようと思いまして。
後々に考えているすみれさんへのイベントの為の措置でもあります。

そして令士に加え、イデ隊員も着任します。
ウルトラシリーズのメカニックの登場も考えていまして、となるとウルトラシリーズ側のメカニックも登場させた方が良いと思い、イデ隊員に登場して貰いました。
恐らく、ウルトラシリーズ最強のメカニックは彼でしょうからね。
メビウスの時代に、彼の発明したマルス133とかがメテオール扱いされてるくらいですから。

凄い2人の着任でアナスタシアの影が若干薄くなってしまった感はありますが(笑)

そして新サクラ大戦名物『ゲキゾウくん』も登場。
原作では動けないカラクリ人形でしたが、この作品ではイデ隊員が改造したお陰で思いっ切り動けます。
これは即ち………『フルメタのボン太くん化』です。
次回で早速その威力を見せつけますのでお楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『戦え! ゲキゾウくん!!』

チャプター2『戦え! ゲキゾウくん!!』

 

降魔『業火』登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すみれから、特命宣伝部長への就任と絡繰(からくり)宣伝人形『大帝国ゲキゾウ』こと『ゲキゾウくん』を託された誠十郎は………

 

早速宣伝を行うべく、帝劇の玄関前を訪れていた。

 

 

 

 

 

帝劇・玄関前………

 

「よし。じゃあ………宣伝の仕事、始めるか」

 

『しっかりやれよ、“宣伝部長”』

 

ゼロの言葉を聞きながら、誠十郎はゲキゾウくんの変身ボタンを押した。

 

「パオォォォーン!」

 

すると、誠十郎の姿は一瞬にしてゲキゾウくんに変わる。

 

余りの早変わりに、道行く人々は誰1人として誠十郎が変身した事に気付かなかった。

 

「ゲキゾウくんの参上だぁ!(よし、変身完了だ)」

 

『しかし、ホントにコレ如何なってんだ?』

 

神崎重工驚異のメカニズムであるゲキゾウくんに、ゼロは驚きっ放しである。

 

「皆~、大帝国劇場をよろしくだゾウ~!」

 

「おっ? 何だこりゃ?」

 

「わあ~! ゲキゾウくんだぁ!」

 

「はあ~、良く出来てるね~」

 

突然現れた着ぐるみに、人々は興味深げに足を止めて視線を向けている。

 

(よし、良いぞ。注目度は抜群だな)

 

注目を集めている事に満足そうにするゲキゾウくん(誠十郎)。

 

「………不審な声。若しかして、狼藉者?」

 

と其処へ、そんな台詞が聞こえたかと思うとゲキゾウくん(誠十郎)の前に、何の前触れも無く1人の少女が現れた!

 

「パオォォォーン!?(な、何だっ!?)」

 

困惑しながらも、ゲキゾウくんのキャラは壊さない誠十郎。

 

「ぱおんとか、変な声が聞こえた。もしかして、コレの声?」

 

其れは、黄色のフリルが施された派手なエプロンドレスに身を包んだ少女だった。

 

袖口が異様に大きく、手を覆い隠してしまっており、所謂“萌え袖”となっている。

 

「と言うか、コレは何? ゲキゾウくんの着ぐるみ人形?」

 

興味深そうにゲキゾウくんを観察して来る謎の少女。

 

(お客さんじゃ無い様だな。ひょっとすると………)

 

客では無い様子の少女の様子を見て、ゲキゾウくん(誠十郎)は“或る可能性”に思い至る。

 

「この『望月 あざみ』の目を盗んで着ぐるみを着るなんて、中々やる………」

 

ゲキゾウくん(誠十郎)を人差し指で指しながら、謎の少女………『望月 あざみ』はそう言う。

 

(『望月 あざみ』………そうか、この()が4人目の花組隊員か)

 

『オイオイ、こんな小さい子供まで戦場に駆り出すのか?』

 

推測が当たり、納得が行った様子になる誠十郎に対し、ゼロは明らかに“子供”なあざみが戦場に出る事に困惑を隠せない。

 

「………怪しい。お前、一体何者だ?」

 

とあざみは、ゲキゾウくんの正体を怪しみ出す。

 

「パ、パオォォォーン! ゲキゾウくんだゾウ!」

 

ゲキゾウくんになり切り、回避しようとする誠十郎だったが………

 

「………誤魔化す積り?」

 

そんなゲキゾウくんを、あざみはジト目で睨み付けると、その大きな袖口からクナイを出現させて突き付けた!

 

(いいっ!?)

 

『成程………相当“出来る”みてぇだな』

 

たじろぐ誠十郎に対し、余裕な様子のゼロ。

 

(ゼロ! 呑気に観察してないで、助けてくれっ!!)

 

『しょうが無えな。一寸変わ………』

 

と、そんなゼロに誠十郎が助けを求めた瞬間………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

「「『!?』」」

 

空から奇怪な咆哮が聞こえて来て、見上げると………

 

グルルルルルッ………

 

1匹の降魔『業火』が、唸りを上げて浮遊していた。

 

「こ、降魔だぁっ!!」

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

その姿を見た人々が慌てて逃げ出す。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

と、背を向けて逃げ出す人々を格好の獲物だと思ったのか、狙いを定めて一気に急降下してくる降魔『業火』

 

「! いけないっ!!」

 

其れを見たあざみは、近くの街灯に向かって跳躍!

 

街灯に足を掛けたかと思うと、思いっ切り蹴って三角飛びをし、降魔『業火』の側面を取る!

 

「ハッ!!」

 

そして腕を振ったかと思うと、多数のクナイを投擲した!!

 

キシャアアアアアアッ!?

 

身体の左半分にクナイが突き刺さり、降魔『業火』はバランスを崩して墜落。

 

地面に叩き付けられる。

 

「…………」

 

その次の瞬間、あざみは焙烙火矢の様な爆弾を投げ付けていた。

 

爆弾の爆発に包まれる降魔『業火』

 

「ニン」

 

その爆発を背に、着地を決めるあざみ。

 

(! 凄い! 何て動きだ!!)

 

あざみの人間離れした動きに感嘆する誠十郎。

 

と………

 

『代われ、誠十郎!』

 

(えっ!? ゼロ!?)

 

突如、ゼロが強引に誠十郎の身体の主導権を取った!

 

次の瞬間!!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

爆発の中から、未だ生きていた降魔『業火』が飛び出す!!

 

「えっ!?」

 

仕留め切ったと思っていたあずみは、反応が遅れる!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

そんなあずみに、大きな口を開けて襲い掛かろうとする降魔『業火』。

 

しかし!!

 

「オリャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!」

 

(すんで)のところで、ゲキゾウくん(ゼロ)が降魔『業火』に飛び蹴りを入れた!

 

「!? ええっ!?」

 

まさかの光景に、思わず目が点になるあざみ。

 

「フンッ!!」

 

其れを気にも留めず、ゲキゾウくん(ゼロ)は降魔『業火』の首を脇で抱える様に捕まえる。

 

「ゲキゾウハリケーンッ!!」

 

そして、“ウルトラハリケーン”ならぬゲキゾウハリケーンで投げ飛ばす!

 

「セエエヤァッ!!」

 

空中で身動きが取れなくなった降魔『業火』に向かって、“大帝国劇場の時計台”をモチーフにした槍を、『ウルトラゼロランス』の様に投げ付ける!!

 

キシャアアアアアアッ!?

 

“ゲキゾウくんランス”に貫かれた降魔『業火』は、空中で爆発四散した。

 

「よっしゃあっ!」

 

「凄い………ゲキゾウくん………やっぱり只者じゃない………一体誰?」

 

降魔『業火』を蹴散らしたゲキゾウくん(ゼロ)に、あずみはやや戸惑いつつも再度尋ねる。

 

「………フフフ。大帝国劇場の宣伝役とは、“世を忍ぶ仮の姿”」

 

(ゼ、ゼロ………?)

 

何やらノリノリで始めたゼロに、誠十郎は戸惑うしかない。

 

「しかして、その実体は!………地球の平和を守る為! 遠い銀河の彼方からやって来た、ゲキゾウマンだゾウ!!」

 

ポーズを決めながらあざみにそう言い放つゲキゾウくん(ゼロ)。

 

「ゲキゾウマン………?」

 

(何だソレは!? そんなので納得………)

 

ゼロの、恐らく“自分の事”をモチーフにしただろう設定を聞いて、誠十郎が呆れた様子を見せたが………

 

「凄い! ゲキゾウくんは宇宙人だったんだ!!」

 

あざみは、目を輝かせてゲキゾウくんを見遣る。

 

(って、信じてるし!?)

 

「へへへ、皆には内緒だぜ。ゲキゾウマンとの約束だゾウ!」

 

「うん!」

 

唖然となる誠十郎を尻目に、ゲキゾウくん(ゼロ)はちゃっかりとあざみに“釘を刺す”事に成功する。

 

「では、さらばだゾウ!!」

 

「ありがとう、ゲキゾウくん!」

 

「ありがとう~!」

 

「カッコ良かったよ~!」

 

ゲキゾウくん(ゼロ)が走り去ると、あざみを始め、子供達が手を振って見送る。

 

その後、大帝国劇場を訪れる客は増加したが………

 

その中に、花組では無く“ゲキゾウくん目当て”で訪れる人が多数居て、帝劇の一同が困惑する事になるのはまた別の話である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇内・玄関ホールの物陰………

 

「ふう………バレずに済んだか」

 

念の為、物陰でゲキゾウくんの変身を解いた誠十郎が、やれやれと言った具合に呟く。

 

『中々面白かったなぁ』

 

「“面白かった”じゃない。あざみくんに宇宙人だなんて言い出した時は、如何なるかと思ったぞ」

 

『ワリィ、ワリィ。ついな』

 

「ったく………だけど、あざみくんか………何だか色々と()()子だったな」

 

まるで、忍者の様な振る舞いをしていたあざみの事を思い出し、誠十郎はそんな感想を抱くのだった。

 

「あ、神山さん。此方でしたか」

 

と其処へ、カオルが姿を見せた。

 

「あ、カオルさん。何ですか?」

 

「イデさんからの伝言で、“格納庫に来て欲しい”との事です」

 

誠十郎が尋ねると、カオルはイデから預かった言伝を伝える。

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

「確かにお伝えしました。では、私は仕事が有りますので」

 

伝言を伝え終えると、カオルは仕事へと戻って行く。

 

「イデさんが………何だろうな?」

 

『さあな。ま、行ってみりゃ分かるだろう』

 

「そうだな………」

 

ゼロとそう言い合うと、誠十郎は格納庫へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・格納庫………

 

エレベーターを使って格納庫へ着くと、前回受領した誠十郎の無限の他に、さくら達にも受領され、ズラリと並んだ無限を見ている令士の姿が飛び込んで来る。

 

「よう。ちゃんと仕事してるか?」

 

「ブラブラしてるヤツが言う台詞か。何の用だ?」

 

その令士に声を掛けると、逆にそう問われる誠十郎。

 

「いや、イデさんから呼ばれたんだけどな。(ついで)に機体の整備状況も聞いておきたいんだが………」

 

「そっちは心配無用だ。無限と一緒に、予備パーツと資材もたんまり送られて来たからな。もう、“整備不足で碌に動けない”なんて事は先ず無いぜ」

 

誠十郎がそう言うと、令士は心配は要らないと返す。

 

「そうか。じゃあ、お前は今暇なのか?」

 

「まあ、そうだな。既に今日の作業は終わってるしな」

 

「良し。じゃあ、舞台装置を先に見てくれ。古い設備のままじゃ、公演も思う様に出来ないからな」

 

「はいはい、分かったよ。片付けだけ終わらせたら、舞台に取り掛かる」

 

「頼むぞ。其れで、イデさんは………」

 

「やあ、神山くん。待ってたよ」

 

と其処で、奥の無限が並んでいた場所から、イデが姿を現す。

 

「イデさん」

 

「一寸コッチまで来てくれるかな? 司馬くんは、早く舞台の方を見てあげなさい」

 

「分かりました、先生」

 

イデに促され、令士は片付けを始める。

 

そして、誠十郎はイデに連れられて、無限が並んでいる場所へと移動する。

 

(あのガラガラだった格納庫が狭く感じる様になるとはな………)

 

並ぶ無限を見て、誠十郎は感慨深そうにする。

 

と、やがてイデは“誠十郎の無限”の前で立ち止まった。

 

「実は、君の無限に()()()()()を取り付けておいたんだ」

 

「えっ? 俺の無限にですか?」

 

「うん。きっと()()()()()だろうからね」

 

自分の無限に()()“特別な装置”が取り付けられたと言う事に、誠十郎は怪訝な顔をするが、イデは人の好さそうな笑みを浮かべて誠十郎の無限のハッチを開ける。

 

「コンソールの下に新しいスイッチが有るのが分かるかい?」

 

「コレですか?」

 

イデがそう言ったのを聞いて、誠十郎がコックピットを覗き込むと、確かに前回乗った時には無かったスイッチが有るのを認める。

 

「入れてごらん」

 

「ハイ」

 

促されるままに、そのスイッチを入れる誠十郎。

 

すると、“乗り込んでもいない”のに無限が起動した。

 

「! コ、コレはっ!?」

 

「『自動操縦装置』さ」

 

「『自動操縦装置』!? つまり、“無人で無限を動かせる”って事ですか!?」

 

「そう言う事」

 

驚く誠十郎に、イデはあっけらかんとそう言って見せる。

 

降魔側は、嘗ては『脇侍』と呼ばれた物を初めとして現在の傀儡機兵の様に無人機を多用しているが、人類側は人が乗り込む霊子甲冑や霊子戦闘機を主力としている。

 

嘗て亜米利加のダグラス・スチュワート社が、対降魔用・無人自動操縦型霊子甲冑『ヤフキエル』なるモノを開発したが、その正体は“降魔そのもの”であった。

 

そう言った経緯や技術的困難さも有り、無人の霊子兵器は今だに開発されていない。

 

だがイデは、事も無げに其れをやってのけたのだ。

 

「其れから『遠隔操縦装置』も付けてある。自動操縦装置がダメな時には、“帝劇からコントロールする”事も出来る。まあ流石に、どっちの場合も戦闘は無理だけどね」

 

「何でこんな装置を?」

 

「“()には必要だろう”………『ウルトラマンくん』」

 

「!?」

 

『ほう………』

 

突如イデからそう言われ、誠十郎は驚愕するが、ゼロは感心した様に呟く。

 

「な、何を………!?」

 

「隠さなくて良いよ。すみれさんから“事情”は聞いているんだよ。この装置は()()()()()取り付けたのさ」

 

誤魔化そうとした誠十郎だったが、其れを遮ってイデはそう言葉を続けた。

 

「コレで、君が“ウルトラマンとして”戦わなければならなくなった時、“神山くんが()()になる”という状況を誤魔化せるだろう」

 

「………イデさんは、ウルトラマンを………ゼロの事を信じてくれているんですか?」

 

イデを見据え、そう問い掛ける誠十郎。

 

「ああ、信じているよ。何と言うか………“初めて逢った”気がしないんだ。まるで“ずっと昔から知っていた”様な感じがしてね」

 

まるで、“懐かしい友人に久しぶりに逢った”かの様に語るイデ。

 

誠十郎には、イデの姿が一瞬………

 

『オレンジ色で流星のマークをあしらった制服』の姿になった様に見えた。

 

「さて。当然だけど、この装置の存在は皆には内緒だ。司馬くんを初めとした整備班の皆には、“僕の新発明のテスト”だと説明してあるから」

 

「イデさん………ありがとうございます」

 

其処で誠十郎は、イデに向かって深々と頭を下げる。

 

「ハハハ、気にしなくて良いよ。その代わり、“帝都と地球の平和”は任せたよ」

 

「ハイ!」

 

相変わらず人の好さそうな笑みを浮かべるイデに、誠十郎は勇ましく返事を返すのだった。

 

その後も2、3話をすると、誠十郎は格納庫を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、誠十郎は帝劇内の見回りを行い………

 

演技の練習をするのに音楽室を使わせて欲しい、と言うアナスタシアの陳情を聞き………

 

中庭に居た初穂と、コレからの対降魔部隊としての花組の躍進を誓い合った後、1階ロビーで迷子の世話をし………

 

アナスタシア加入記念に新商品を考えるこまちに、紅白饅頭を推したり………

 

楽屋に在った“花組13ヵ条”を見ていたら、稽古の汗を拭きに来たさくらと鉢合わせしそうになったり(ゼロが慌ててウルティメイトイージスを装着させてテレポートさせ、事無きを得た)した。

 

その後部屋へと戻ると、溜まっていた仕事を片付け始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

早速ゲキゾウくんでの宣伝活動を始める誠十郎とゼロ。
そんな中で、最後の花組隊員『望月あざみ』と出会います。
ゲキゾウくんを怪しむあざみでしたが、そこへ降魔が出現。
あざみが撃退したかに思えましたが、トドメを刺し損なってしまった為、ピンチに………
しかしそこで、ボン太くんもといゲキゾウくん(ゼロ)が活躍!
見事に降魔を撃破します。

早速ボン太くんみたいな事をやってくれました。
最後のメンバーであるあざみとも会合。
今回は顔見世ですので、ちゃんとした挨拶は次回になります。


では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『帝劇忍者・望月 あざみ』

チャプター3『帝劇忍者・望月 あざみ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・誠十郎の部屋………

 

自室にて、溜まっていた仕事の片付けに没頭していた誠十郎。

 

区切りが着いた頃には、日がすっかり落ち、帝劇は夜の闇に包まれていた。

 

「う~ん………気が付けば、もうこんな時間か。しかし、今日は結構頑張ったんじゃないか?」

 

『ハア~、漸くかぁ………』

 

片付いた仕事を見てそう呟く誠十郎と、漸く退屈な時間が終わってホッとするゼロ。

 

と其処で、誠十郎のスマァトロンが鳴った。

 

(ん? 電文? 令士からか………)

 

誠十郎が確認すると、令士からの電文が送られて来ていた。

 

『話が有る。直ぐに舞台へ来てくれ』

 

との事である。

 

悪友同士らしい、飾り気の無いメッセージである。

 

「令士の奴………何の用事だ? 仕方無い。一先ず舞台へ行って見るか」

 

誠十郎は、令士の待つ舞台へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・舞台上………

 

誠十郎が到着すると、夜の静かな闇に包まれた舞台の上に、令士と更にはイデの姿が在った。

 

「来たか、誠十郎」

 

「相談って何だ? イデさんも一緒に………舞台修理の目処でも立ったのか?」

 

「そんなところだ。舞台を()()()()のに半日という感じだが、其れで良いか?」

 

「は、半日!? そんな短時間で可能なのか!?」

 

驚異のスピード修理時間に、誠十郎は思わず驚きの声を挙げる。

 

「ああ。()()()だったら1日掛かってたが、イデ先生のお陰で半日に短縮出来た」

 

「“帝劇の華”である舞台を何時までも閉めてたら、お客さんに申し訳無いからね」

 

そう言う令士とイデ。

 

1日でも凄いのだが、其れを半日に縮めたイデも大概である。

 

「凄いな………分かった。其れで進めてくれ」

 

「ああ。其れと舞台の粗筋(あらすじ)でも見せてくれれば、新しい大道具や仕掛けも提案出来るぜ」

 

「“人目を驚かせるセット”でお客さんの目を惹く方法は手っ取り早いからね」

 

「其れは助かりますが………」

 

『大丈夫なのか? そんなに働いて?』

 

至れり尽くせりと言えるが、オーバーワークではないかとゼロも心配する。

 

「大丈夫なのか? 只でさえ、無限が一気に配備されて大変だろうに………」

 

「何だ、心配してくれるのか? お前らしくないぞ」

 

「な~に、やってみせるさ。コレが()()()()()だからね」

 

誠十郎の心配の声に、令士は誰に物を言っていると返し、イデも笑顔でそう返す。

 

「分かった。よろしく頼む。で、具体的には如何する積りなんだ?」

 

「オレが開発した高精度霊子投影機、コイツを仕込む。元々は、仮想(バーチャル)戦闘訓練装置として作ったんだが、不採用になってな」

 

「戦闘訓練装置って………物騒なモノじゃないだろうな?」

 

元の用途を聞いて、誠十郎は心配気な声を挙げる。

 

「安心しろ。飽く迄、“映像を舞台に投影する()()の装置”だ。ただ、その“映像効果”は興奮待った無しを保証するぜ」

 

「データさえ有れば、シャンゼリゼ通りだろうが、紐育(ニューヨーク)の摩天楼だろうが、思いのままに舞台に再現出来るよ」

 

令士の説明に、イデがそう補足する。

 

「凄いな。其れが本当なら、凄い舞台が出来そうだ」

 

「作業には明日から取り掛かる。まあ、期待していてくれ」

 

その後、細かい打ち合わせをすると、誠十郎は自室へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・誠十郎の自室前………

 

(舞台装置の方は、令士とイデさんに任せておけば何とかなる。後は公演の中身の方だな)

 

『だな。何時までもチャンバラ劇じゃ飽きられちまう』

 

(アナスタシアも来て人員も増えた。新しい演目を決めないといけない。明日もまた忙しくなるぞ。良し、今日はもう休んで………)

 

そう思いながら、誠十郎が自室のドアを開けようとする。

 

『! 待て! 誠十郎!』

 

「ゼロ?………!」

 

突然ゼロが呼び止め、誠十郎は怪訝な顔をしたが、次の瞬間には自室の中から気配がする事に気付いて顔を強張らせる。

 

「鍵は閉めた筈………! まさか、降魔のスパイが!?」

 

『或いは星人かも知れねえ。奴等からすれば、鍵なんて無いも同然だ』

 

降魔かと思う誠十郎と、星人の可能性も考えるゼロ。

 

『代われ、誠十郎。星人だったら俺がやる』

 

「分かった………」

 

誠十郎の身体の主導権が、ゼロへと切り替わる。

 

「さて………鬼が出るか蛇が出るか」

 

誠十郎(ゼロ)はそう呟きながら、ドアを開けて自室内へ入った。

 

「………誰だ! 出て来いっ!!」

 

そして直ぐ様そう言い放ったかと思うと………

 

誠十郎(ゼロ)の眼前に小さな影が音も無く降り立ち、そのまま誠十郎(ゼロ)の首に刃を………

 

「………!?」

 

「俺の隙を衝こうなんざ、2万年早いぜ!」

 

突き付けようとしたが、腕を摑まれて阻止された!

 

「クッ!!」

 

「テメェ、一体何も………って、お前は!?」

 

悔し気な声を漏らした侵入者を誠十郎(ゼロ)が問い質そうとした瞬間、その姿を見て手を放してしまう。

 

「!!」

 

その瞬間、バッと距離を取る侵入者………望月 あざみ。

 

「(あざみくん!? ゼロ! 代わってくれ!)君は………望月 あざみくんだね?」

 

「! 私の名前を知っている。其れにさっきの反応………何者?」

 

直ぐ様、誠十郎が主導権を取り返して呼び掛けると、あざみは睨み付ける様に誠十郎を見据える。

 

先程の攻撃を止められた事で、警戒心が増している様だ。

 

「………ううん、何者でも良い。名前を知られたからには、只では置かない………里の掟62条。秘密を知る者、生かして置けぬ」

 

『オイオイ、随分物騒なこと言うじゃねえか』

 

生かして置けぬと言うあざみの言葉に、ゼロは呆れる様に呟く。

 

「覚悟召されよ!」

 

しかし、あざみは本気の様で、再度右手にクナイを握る。

 

「待て待て待て!(ど、どうする!?)」

 

そんなあざみを見据えながら、如何するかと慌てて考える誠十郎。

 

そして………

 

「そ、そうだ! おやつをあげよう! 其れで手打ちにしてくれないか?」

 

そう思い付いて、あざみに呼び掛けた。

 

「…………」

 

(やっぱ、無理か………)

 

自分で思い付いて置いて、流石に“コレは無い”と思った誠十郎だったが………

 

「………『みかづき』の御饅頭、10個」

 

「………え? 本当に? 其れで、良いの?」

 

『やっぱ子供だな………』

 

あざみがそう言って来たので、思わずゼロと共に呆けてしまう。

 

「! よ、良くない! 里の掟79条。おやつで買収されるな」

 

と其処で、あざみは恥ずかし気に頬を染めながら、慌ててそう言う。

 

「ふう………危うく、掟を破るところだった………思わぬ強敵………」

 

「い、いや。強敵じゃなくて、“キミの隊長”なんだけどな、俺は」

 

漸く、自分が“花組の隊長に就任した者”だと伝える事に成功する誠十郎。

 

「隊長………?」

 

「キミは帝国華撃団、花組の1人。望月 あざみくんだろう? 俺は、神山 誠十郎。先日から花組の隊長を任されている」

 

「………神崎司令から聞いている。()()()()()為、この部屋で待っていた」

 

「その割に、いきなり物騒だったな」

 

未だにクナイを出したままのあざみの姿を見て、誠十郎はそう呟く。

 

「そうか。貴方が神山 誠十郎。新しい隊長か………」

 

漸くクナイを納めるあざみ。

 

「改めてご挨拶(つかまつ)る。望月流忍者、望月 あざみ。これより、貴方の配下となる」

 

先程までとは打って変わり、あざみは畏まった様子を見せる。

 

「あ、ああ。よろしく」

 

『やっぱ、変わった奴だな』

 

やや戸惑いを隠せない誠十郎と、率直な感想を抱くゼロだった。

 

「承知した。では、ご免!」

 

と、そう言い残してあざみが跳び上がったかと思うと、その姿が一瞬にして消え失せる。

 

「!? 何処へ消えたんだ、一体? しかし………忍者だって?」

 

『『フーマ』を思い出すな』

 

忍者を自称したあざみに誠十郎は若干の困惑を見せ、ゼロは同郷で、『ウルトラマンタロウ』の息子・『ウルトラマンタイガ』の戦友『ウルトラマンフーマ』の事を思い出していた。

 

「あざみ、お帰り!」

 

「ん? さくらの声か?………何だか、外が賑やかだな。一寸様子を見に行ってみるか」

 

すると其処へ、廊下の方からさくらの声が聞こえて来て、賑やかな様子が窺えたので、再度部屋から出た。

 

「皆、ただいま。今さっき、戻って来た」

 

「ん? さくら達の部屋の方からだな。何があったんだろう?」

 

部屋の外に出た誠十郎が、賑やかな声が聞こえるのがさくら達花組メンバーの部屋の方だと気付き、其方へ足を進める。

 

「………変わった格好の子ね。若しかして、メイドさんかしら?」

 

其処には、部屋の前で話し合っているあざみ・さくら・アナスタシアの姿が在った。

 

「メイドじゃない、忍者。其れに“望月 あざみ”という名前が有る」

 

「そう、ごめんなさい。私はアナスタシア・パルマよ。よろしく」

 

あざみと初めて会うアナスタシアがそう挨拶を交わす。

 

「そうだ、あざみ! 他にも新しい人が居るの。紹介するね!」

 

「俺の事かな? さっき挨拶させて貰ったよ」

 

と、さくらが誠十郎の事を紹介しようとしたので、誠十郎はそう言って話の輪に入る。

 

「隊長、引き続き見回りをしている。“さっきの隊長以外”に、不審者はいなかった」

 

「ひ、人聞きの悪い事を言わないでくれ………とはいえ、ご苦労様。もう切り上げて休んだら如何だ?」

 

不審者呼ばわりされた事に若干狼狽しながらも、誠十郎はあざみを労う。

 

「問題無い、大丈夫。忍者あざみ、悪の魔の手から帝劇を守る!」

 

しかし、あざみはそう返してポーズを決める。

 

「忍者………フフッ、興味深いわね。詳しい話を聞いてみたいところだけど………」

 

「そうですね。今日はもう夜も遅いですし、明日にしましょう」

 

詳しい話を聞きたがるアナスタシアだったが、さくらが夜も遅いので明日にしようと言う。

 

「あざみは見回りを続ける。何かあったら連絡を………にんっ!」

 

そう言うとあざみは、再度一瞬にして誠十郎達の前から姿を消した。

 

「消えた………本当に忍者みたいだ。凄い()が花組には居るんだな………」

 

『にんっ! なんて言うところまでフーマと一緒だな』

 

(誰だよ、フーマって?)

 

誠十郎とゼロがそんな事を言っている間に、さくらとアナスタシアはその場から離れる。

 

「………望月 あざみか。個性的な()だったなぁ。いや………さくら、初穂、クラリスにアナスタシア………あざみだけじゃなく、花組の皆は個性的か」

 

『全くだぜ。上手く纏めろよ、誠十郎』

 

「ははっ、何と言うか………楽しみだな!」

 

ゼロの言葉に、誠十郎は楽しみだと言う返事を返す。

 

と其処で、スマァトロンが鳴った。

 

(ん? さくらからの電文だ)

 

電文を送って来たのはさくらだった。

 

文題は『出汁入り志願して来ます』

 

『アナスタシアさんのところへ行ってきます! 頑張りまーす!』

 

と言う内容だった。

 

出汁(だし)? スープになるって事か?』

 

文題を見て、思わず首を傾げるゼロ。

 

「いや、コレは誤字だろう………出汁(だし)………あ! 弟子(でし)入りって事か!?」

 

誤字の内容をそう推測する誠十郎。

 

「頑張るのは良いけど………こんな調子で大丈夫かな?」

 

『こりゃあ、様子を見に行くしか無いな』

 

「だな………」

 

ゼロと誠十郎はそう言い合うと、さくらの様子を見に行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・舞台………

 

『お! 居たぞ!』

 

「此処だったか………」

 

あざみと別れた後、さくらとアナスタシアが訪れていたのは舞台だった。

 

「お願いします、アナスタシアさん! わたしを………弟子にして下さい!」

 

「お断りよ」

 

『いきなり撃沈かよ………』

 

にべも無く断られたさくらの姿を見て、思わずツッコミを入れるゼロ。

 

「いきなりやって来て、何を言い出すかと思えば………少々、無礼じゃ無くて?」

 

「すみません………でも、如何しても演技を教えて欲しかったんです」

 

少々不機嫌そうな様子を見せるアナスタシアだが、さくらは引き下がらない。

 

「あの! 如何しても、ダメなんですか!?」

 

「ええ。駄目なものは駄目。私は“先生”になる積りは無いの」

 

「2人共、話は聞いたよ………」

 

と其処で、誠十郎が会話に混ざる。

 

「アナスタシア。俺からも頼むよ。さくらを弟子にしてやってくれないかな?」

 

「神山さん………!」

 

誠十郎が味方してくれた事に、さくらは嬉しそうにする。

 

「貴方まで、そんな事を言うのね、キャプテン。私を“便利な道具”だとでも思ってるのかしら?」

 

「いや、それは………!………お前、其れでも“世界的な女優”か?」

 

と其処で、ゼロが出て来る。

 

(ゼロ!?)

 

「………何ですって?」

 

その言葉に、アナスタシアの目が鋭くなる。

 

「いや、なに………世界的な女優だってんなら、“自分の舞台には妥協しない”モンじゃ無えのか? 例えば、脇を固める連中が“未熟なままなのを放って置く”とかな」

 

アナスタシアを挑発するかの様な台詞を投げ掛ける誠十郎(ゼロ)。

 

(また誠兄さんの雰囲気が………)

 

「そんな事は言ってないわ。兎に角、弟子入りはお断りよ。幾ら頼まれても、答えは変わらないわ」

 

益々不機嫌になったアナスタシアは、そう言うと踵を返して舞台を去って行く。

 

「うう………“取り付く島も無い”とはこの事ですね」

 

さくらもガッカリとした様子で去って行く。

 

(ゼロ! 何であんな事を言ったんだ!?)

 

「心配すんな。アイツはきっと、さくら達の面倒を見てくれるさ」

 

アナスタシアを挑発する様な事を言ったゼロを責める誠十郎だが、ゼロは心配は要らないと返す。

 

(本当か?………兎も角、さくらが心配だ。代わってくれ)

 

「あいよ」

 

再度誠十郎に主導権が戻ると、見回りがてらにさくらの様子を見に行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

舞台の修理はイデ隊員のお陰で半日縮めました。
更に、令士だけでなくイデ隊員が作った舞台装置も登場しますのでお楽しみに。

そしてあざみとの正式会合。
前回はゲキゾウくんとして出会いましたからね。
今回はちゃんと誠十郎として出会いました。

次回はさくらの信頼度イベントをお送ります。
ゼロの行動に注目かも?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『憧れのさくら』

チャプター4『憧れのさくら』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・さくらの部屋の前………

 

(さくらの奴………落ち込んでるかな?)

 

アナスタシアへの弟子入りを断られた、さくらの様子を見に来た誠十郎。

 

部屋の前に辿り着くと、ドアをノックする。

 

「………はい」

 

やや元気の無い返事が返って来る。

 

「俺だよ、さくら。入っても良いかい?」

 

「………どうぞ、入って下さい」

 

『声に覇気が無えぞ………』

 

ゼロも、さくらが落ち込んでいる事を感じ取る。

 

「………失礼するよ」

 

其れを聞きながら、誠十郎はさくらの部屋へと入って行った。

 

「…………」

 

部屋に入ると、さくらは壁に貼られているポスターをジッと見つめていた。

 

それは先代の帝国華撃団・花組の公演『愛ゆえに』のポスターだった。

 

主演の『マリア・タチバナ』と『真宮寺 さくら』が映っている。

 

(さくら………かなり落ち込んでるみたいだな………何とか………励ましてあげたいが………でも、何と言えば………)

 

『兎に角声を掛けろ、誠十郎。先ずは会話の糸口を作るんだ』

 

「(分かった)さくら」

 

ゼロにそう言われ、誠十郎は意を決してさくらに話し掛ける。

 

「えへへ、みっともないところ、見られちゃいましたね」

 

誠十郎に声を掛けられて、さくらは漸く彼の方を見遣る。

 

「アナスタシアさんに教えて貰えば………もっと上手になれるって思ったんです。だけど………駄目でした」

 

(やっぱり、其れが原因か………でも………どうして其処まで………アナスタシアの弟子になりたかったんだろう?)

 

『自分より凄い奴に師事したいってのは分かるが………確かに、一寸“熱が入り過ぎてる感じ”がするな』

 

誠十郎が考えていると、ゼロもそう言って来る。

 

「そんなに、アナスタシアの弟子になりたかったのかい?」

 

「…………」

 

誠十郎の問いに沈黙で返すさくら。

 

『如何やら、其れ()()じゃ無いみたいだな』

 

(ああ………)

 

と、ゼロがそう言うのを聞きながら、誠十郎は先程までさくらが見ていたポスターを見遣る。

 

「伝説の花組達、か………さっき、そのポスターを見てたよな?」

 

「昔の花組は、凄い人達がいっぱい居たんです。伝説の公演、伝説のスタァ………」

 

『すみれもその1人だな』

 

すみれが映っているポスターも有るのを見ながら、ゼロがそう言う。

 

「私なんかじゃ………全然敵わない。どれだけ夢を見ても、()()()()()()()

 

(伝説の公演、伝説のスタァ達………そう言えば、どれも『真宮寺 さくら』さんが映っているな)

 

と、誠十郎は張られているポスターに、()()『真宮寺 さくら』の姿が有る事に気付く。

 

「そう言えば、さくらは………以前に、『真宮寺 さくら』さんに助けられたって言ってたよな?」

 

「………はい。私の、憧れです。強くて、綺麗で、優しくて………私も、『真宮寺 さくら』さんみたいになりたかった」

 

『成程………察するに、其れが原因か。一体どんな奴なんだ? その『真宮寺 さくら』ってのは?』

 

「(そう言えば、俺も良く知らないな………)なあ、俺は知らないから聞きたいんだけど………真宮寺さんって、強かったのか?」

 

ゼロの言葉で、自分も『真宮寺 さくら』について詳しく知らない事を思い出し、さくらに尋ねる誠十郎。

 

「勿論です! 私を助けてくれた時だって、降魔を一刀両断です! 其れに、“強いだけじゃ無い”んです。花組のトップスタァで………素晴らしい人なんです!!」

 

先程まで落ち込んでいた様が嘘では無いか?と思う程に、熱く語るさくら。

 

『相当入れ込んでるみてぇだな………』

 

「『真宮寺 さくら』さんみたいになりたい………花組に(はい)れてその夢が叶う、って思ってたのに………」

 

(成程………真宮寺さんを目指して自分を高める為に………アナスタシアに弟子入りしたかったのか)

 

合点が行く誠十郎。

 

「その夢を諦めるのかい? さくらには、強い想いが有るんだろう?」

 

「私は………」

 

「俺は、そんな思いに気付かされたんだ。()()()“諦めてはいけない”って」

 

“さくらの前向きな姿”が有ったからこそ、誠十郎はゼロの叱咤を受け止め、再び前向きになる事が出来た。

 

其れは事実である。

 

「そのさくらが………“大切な夢を諦めてしまう”のかい?」

 

「私は………諦めたくないです。でも………神山さん!」

 

『誠十郎。さくらは今、“自分を見失ってる状態”だ』

 

(ああ、確かに………今のさくらは、()()()()()()()()んだ)

 

ゼロと共に、誠十郎はそう推察する。

 

(さくらには、“彼女だけの良い所”が沢山有る。其れを伝える事が出来れば、きっと………)

 

其処で誠十郎は、さくらを観察する。

 

そして、先ず目に付いたのはその髪だった。

 

「さくらの髪、さらさらとしていて、とても綺麗だな」

 

「えっ? あ、ありがとうございます………」

 

突然の誠十郎の誉め言葉に、さくらは気恥ずかしそうにする。

 

「髪を上げれば、真宮寺さんみたいな髪型も出来るんじゃないか?」

 

先ず“形から入ってみる”のは如何かと言う誠十郎だったが………

 

「いえ………私には、未だ、そんな自信がありません。何時か、追い付いたって思えたら試してみようと思います」

 

さくらはそう言って断る。

 

「そうか………そのリボンは?」

 

と其処で、今度は彼女がしているリボンに目が行く。

 

「あ、このリボンですか? 真宮寺さんみたいに………大きなリボンを付けてみたかったんです」

 

『良いじゃねえか。似合ってるぜ』

 

「(そうだな)とても似合ってるよ。黒髪にピッタリの色だね」

 

ゼロに同意して、さくらにそう言う誠十郎。

 

「えへへっ、ありがとうございます!」

 

子供の様に無邪気に笑って喜ぶさくら。

 

『良い笑顔じゃねえか。前向きなさくららしいぜ』

 

(ああ………! そうだ! ()()()()()! 其れがさくらの1番良い所じゃないか!)

 

と其処で、誠十郎がさくらの1番良い所………

 

“諦めない心”の事に思い至る。

 

「聞けば聞く程、真宮寺さんへの強い思いが伝わってくるよ。其れだけ強い思いを持っていれば、必ず夢を叶えられる。“真宮寺さんみたいになりたい”、その夢を真っ直ぐに追い掛けて行けば良い」

 

「神山さん………優しいですね」

 

さくらの表情が明るくなり始める。

 

「不思議です。さっきまで不安で一杯だったのに………神山さんに勇気付けられて………心が(あった)かくなって………私、やっぱり………」

 

と其処で、さくらが誠十郎に密着しそうなくらいに近付いて来た。

 

(さ、さくら………? こ、こんな近くに………!?)

 

『オイ、落ち着け、誠十郎』

 

動揺する誠十郎を、ゼロが落ち着かせようとする。

 

「神山さん………」

 

(げ、元気になってくれたみたいなだな………良かったけど………えっと、如何しよう………)

 

『何やってんだ、誠十郎。迷う事は無え。“お前の素直な気持ち”を伝えんだ!』

 

(よ、良し………)

 

ゼロにアドバイスされ、誠十郎は肚を括る。

 

先ず誠十郎は、さくらの瞳を見据える。

 

(青みが掛かった瞳………そう言えば、珍しい瞳の色だよな。でも、とても綺麗だ。透き通っていて、吸い込まれそうな………)

 

「余り………見詰めないで下さい。その………ドキドキして………」

 

瞳をジッと見詰められたさくらは、恥ずかしそうに一瞬視線を逸らす。

 

「さくら………君の瞳は、輝いている。何が有ったって、その輝きが失われる事は無い………其れが“さくらの強さ”だよ」

 

「神山さん………」

 

うっとりとした表情で誠十郎を見遣るさくら。

 

「(さらさらな髪………)さくら………その、髪を撫でても良いかい?」

 

と、続いてさくらの綺麗な黒髪が目に留まった誠十郎はそんな衝動に襲われて尋ねる。

 

「! だ、駄目です………子供じゃ、ないんですから………」

 

断るさくらだったが、嫌がっている様子は見えない。

 

(駄目だ………抑え切れない)

 

そんな様子を見た誠十郎は、さくらの髪を撫で始めた。

 

「せ、誠兄さん………もう………強引なんだから………」

 

言葉こそ怒っている様に聞こえるが、終始笑顔なさくらだった。

 

『誠十郎! ココが男の見せ所だぞ!』

 

(よ、よし!)

 

ゼロに言われ、誠十郎はさくらの顔の前まで上げていた手を握る。

 

「さくら………俺は君を信じている。“どんな事が有っても、負けたりしない”って」

 

「ふふっ、ありがとうございます。神山さんは………本当に優しいです………」

 

「さくら………」

 

誠十郎のさくらの手を握っている力が強くなる。

 

「ふふっ、手を握ってもらうと、ドキドキしますね。まるで………恋人同士みたいです」

 

『良し、行け! ビシッと決めろ!』

 

「(ゼロ、盛り上がり過ぎだ)恋人同士さ………いや、恋人になっちゃおうか、さくら?」

 

自分よりも盛り上がり始めたゼロの所為で、逆に冷静になりながらも、誠十郎は心のままにさくらにそう言う。

 

「あ………か、神山さん………も、もう、冗談ばっかり! そんなの、ま、()()()()です!!」

 

(『未だ』、か………こりゃ、完全に“脈有り”だな)

 

思わず零したさくらの言葉に、ゼロはそう確信する。

 

「はあ………びっくりした………顔が熱くなっちゃたよ」

 

(良い()をしているな………これならもう大丈夫だろう)

 

と其処で、さくらの瞳に輝きが戻って来ている事に気付いた誠十郎は、もう大丈夫だ、と確信する。

 

(俺は隊長として………これからもずっと、さくらのこの瞳を守り続けて見せる!)

 

そう決意を固める誠十郎。

 

(あれ………何か聞き覚えの有る言葉だな………何だっけ………?まあ、良いか)

 

と其処で、何か“引っ掛かりの様なモノ”を感じたが、思い出せないので後回しにする。

 

「さくら………君は、もう大丈夫な筈だ」

 

「ハイ………何だか元気が湧いてきました! 神山さんに勇気付けられて………私、未だ未だ頑張れます!」

 

「ああ………応援している。君は、もっともっと素敵になれる。そう………真宮寺さんの様に!」

 

断言する様な力強い声音で誠十郎は言う。

 

「ハイ! ありがとうございます! えへへ、神山さんが来てくれて良かった。昔みたいに………“優しい誠兄さんのまま”でいてくれて、本当に良かった………」

 

屈託無く笑って、本当に嬉しそうにそう言うさくら。

 

「私、嬉しいです。神山さんとなら、何処までだって頑張れます! だから………見ていてくださいね。アナスタシアさんには断られちゃったけど………でも、絶対にへこたれません!」

 

何時もの前向きな気持ちが漲っている。

 

「神山さん。元気をくれて、ありがとうございました!」

 

「どう致しまして………」

 

さくらのキラキラとした瞳が眩しく、思わず目を逸らす誠十郎。

 

するとその視線の先に、“さくらが使っていると思われる刀”が飛び込んで来た。

 

『ん? 誠十郎、その刀はさくらのか?』

 

「(え? 多分そうだと思うが………)ところで、さくら。其れはさくらの刀かい?」

 

と、ゼロが急にその刀の事を気にし出した様な様子を見せたので、誠十郎はさくらに尋ねる。

 

「あ、ハイ。お母さんの形見………『天宮國定』です」

 

「形見?………そうか………そう言えばお母さん、亡くなったんだったな」

 

形見と言われて、誠十郎はさくらの母親が他界していた事を思い出す。

 

「ええ………もう10年になります」

 

少し遠い目をしてそう言うさくら。

 

『…………』

 

(ゼロ。さくらの刀が如何かしたのか?)

 

『………いや、何でも無え。多分、気の所為だ』

 

「(? そうか?)じゃあ、俺はそろそろ行くよ」

 

「あ、ハイ。ホントにありがとうございました。神山さん」

 

珍しく歯切れが悪いゼロの様子に、内心で首を傾げながらも、そろそろ夜も更けて来たので、何時までも女性の部屋に居るのはマズイと思い、誠十郎はさくらの部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・廊下………

 

さくらの部屋から出て、少しするとスマァトロンが鳴る。

 

(ん? さくらからだ………)

 

さくらからの電文である事を見ると、確認する誠十郎。

 

『ありがとうございました! 今日は本当にありがとうございました! 神山さんは、やっぱりわたしの………1番の隊長さんです! 股明日からいっしょに頑張りましょう!』

 

相変わらず、所々誤字しているがお礼の電文だった。

 

『相変わらず個性的だなぁ』

 

(ははっ、さくらにしては字の間違いが少ないな。1番の隊長さん、か………)

 

『その期待、裏切るんじゃないぜ、誠十郎』

 

(ああ。何時までもそうでいられるよう、俺も頑張るさ!)

 

先程のさくらの笑顔を思い出し、やる気に溢れる誠十郎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、夜の見回りに入り………

 

中庭で初穂とあざみが談笑していた中に入り、初穂が去るとあざみに忍者の仕事について尋ねたり………

 

頑張っている花組の為に、自分も一肌脱いで知り合いの記者に記事を書いてくれる様に頼むと言ったいつきにお願いをしたり………

 

資料室で本の整理をしていたクラリスに、お勧めの本を紹介して貰ったり………

 

売店を常に清潔に保っているこまちを褒め千切り………

 

音楽室でピアノの調律をするアナスタシアの姿を見て、“世界的な女優を迎え入れた”のだ、という事に改めて気を引き締めたり………

 

風呂に入って行った初穂を見て、身体が勝手に動きそうになったり(ゼロが全力で阻止した)して………

 

やがて疲労を感じると、部屋に戻って就寝したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

さくらの信頼度イベントとなります。
粗原作通りとなっていますが、さくらはこの作品のメインヒロインなので外すワケにはいかないと思いまして。
ゼロのアドバイスや野次を入れましたので、その辺を楽しんでもらえれば。

あと、他のヒロインの信頼度イベントに関しましては1文で済ませる感じになるかと思いますので、予めご了承ください。

それと、キーアイテムである『天宮國定』にもチラッと触れておきまして。
後々深く関わってきますので、何処かで登場させないといけなかったので。

次回からいよいよ本格的にクラリス回となりますので、お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『脚本家・クラリス』

チャプター5『脚本家・クラリス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくらの弟子入り騒動から一夜明けた帝劇………

 

誠十郎の部屋………

 

「ふあ~あ。朝か………今日は新しい演目を決めないといけないな」

 

『なら、さくら達の話を聞かないと駄目だな。演じるのはアイツ等なんだからよ』

 

「そうだな。よし、気合入れて行くぞ!」

 

起床し、身支度を整えた誠十郎は、ゼロとそう言い合うと、花組の面々を探しに出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、帝劇1階の音楽室前を通り掛かった時………

 

「にんっ! にんっ!」

 

「うおおおおお………目、目が回る~~~~」

 

「ん? 何の声だ?」

 

不意に聞こえて来た声に足を止める。

 

「さくら、早過ぎよ。其処はもっと抑え目に」

 

「はいっ! ()()!」

 

『音楽室からみてぇだな』

 

「これは、若しかして………」

 

更に声が聞こえて来て、其れが音楽室の中から出ている事にゼロが気付くと、誠十郎は音楽室へと入ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その音楽室の中では………

 

アナスタシアが手拍子をする中、ポーズを執ったさくら・初穂・クラリス・あざみが、手拍子のリズムに合わせて歩を進めている。

 

其処で、誠十郎がドアを開ける。

 

「あ、神山さん」

 

「おっ」

 

誠十郎の姿に気付いて反応するさくらと初穂。

 

とその瞬間………

 

誠十郎に気を取られた2人は、お互いにぶつかってしまい、勢いで誠十郎の方に向かって来る。

 

「え………ちょっと!?」

 

『危ねぇっ!』

 

誠十郎は反応出来なかったが、ゼロは直ぐに反応して誠十郎の身体の主導権を奪取。

 

「おっと」

 

倒れ込む様に向かって来たさくらと初穂を難無く抱き留める。

 

「大丈夫か?」

 

「!? うおおっ!?」

 

「! す、すみません、神山さん!」

 

抱き留められた事で、初穂とさくらは赤面しつつ慌てて離れる。

 

「ああ、いや。大した事は無いよ、大丈夫」

 

と其処で誠十郎が戻り、そう取り繕う。

 

「朝から皆揃って舞台の練習かい?」

 

「あ、ああ、アナスタシアにお願いして、アタシ達の演技を見て貰ってたんだ」

 

未だ若干顔の赤い初穂がそう言い、アナスタシアに視線を送る。

 

()()()よ。私はコーチじゃ無いから………舞台は完璧にしたいからね」

 

若干不満気ながらも、そう言うアナスタシア。

 

「(成程。ゼロが言った通りになったか)其れでも助かるよ。ありがとう」

 

誠十郎は、昨夜ゼロが言った通りになった事に彼の慧眼に感心しながら、アナスタシアにお礼を言う。

 

「でも、本当の事を言うと、早く本番の練習を始めたいですよね」

 

「アナスタシアが来たのに、未だ演目も決まってない………」

 

と其処で、クラリスとあざみがそう言って来た。

 

「余り時間も無いから………ちょっと焦るわね」

 

「分かってる。だから、次回公演の演目を()()決めよう」

 

アナスタシアもそう言うのを聞いて、誠十郎は早速演目決めを行う事を通達した。

 

「決めましょう! 主役は、アナスタシアさんで良いですよね?」

 

『だな。折角のトップスタァだ。起用しない理由は無いだろう』

 

さくらの言葉に、ゼロも同意する。

 

「(確かにな)勿論そうだな。アナスタシアの“お披露目公演”でもあるからね」

 

「分かってる。しっかり務めさせて貰うわ」

 

誠十郎がそう言うと、アナスタシアは凛として返す。

 

「アナスタシアさんと一緒の舞台に立てるなんて………うう………楽しみ過ぎます!!」

 

さくらが興奮を隠しきれない様子で跳び上がって言う。

 

「アナスタシアさんの魅力を、最大限に伝えられる演目が必要ですね」

 

「其れに、“客の心をぐっと摑むヤツ”だ。そういう演目じゃないと、やる意味が無えっ!」

 

(ふむ………色々と考えは有る様だな。先ずは、皆の意見を聞いてみようか)

 

クラリスと初穂がそう言うのを聞いて、誠十郎は皆がどんな演目を望んでいるか、尋ねてみるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし………

 

イザ意見を聞いてみると、全員見事にバラバラであった。

 

さくらはかぐや姫、初穂は娘道成寺、あざみは忍者活劇………

 

クラリスは案が多くて決められず、アナスタシアはどんな役でも(こな)してみせる、と………

 

『思いっ切りバラバラだな………』

 

「うーん、やっぱり、色々な意見が有るもんだな」

 

如何したものか?と頭を捻るゼロと誠十郎。

 

「何から決めるか、考えてみては如何ですか?」

 

と其処で、クラリスがそうアドバイスして来る。

 

「最初に考えるものを決める、か………そうだな、どんな作戦も初手が大切だもんな」

 

『となると………やっぱり話の筋だろ?』

 

「(だな)脚本から決めてみるか」

 

ゼロに同意し、先ずは脚本から考えるべきだと述べる誠十郎。

 

「其れが良いと思います。どんな舞台も、“脚本が有ってこそ”ですから」

 

「主演女優はアナスタシアさんで決まってても、やっぱりどんな話にするかで、色々と変わってきますよね」

 

クラリスとさくらがそう同意して来る。

 

「脚本か………」

 

『そう言えば、誠十郎。あのクラリスって奴が、話を書きたいとか言ってなかったか?』

 

誠十郎が考え込むと、ゼロが思い出した様にクラリスの事を言う。

 

「(確かに………)そう言えば、クラリス。君は、何時か面白い話を書きたいって言ってたね?」

 

「ふえっと!? い、言ってました? 私………」

 

急に話を振られたクラリスは、何か嫌な予感を感じる。

 

「言ってました。(わたし)も、ちゃんと聞きましたよ」

 

「ふええぇっ!?」

 

更に其処へ、さくらまでもがそう言って来る。

 

「良いんじゃねえか? クラリスなら、いろんな本を読んでるし」

 

「里の掟、34条………機会を逃すな。やるだけやれ」

 

「そうね。書けると言うなら、見てみたいわ」

 

初穂、あざみ、アナスタシアまでもがそう言う。

 

「ふえぇぇぇ!? む、無理です! 無理無理ですっ!!」

 

大慌てで手を振って否定するクラリス。

 

「無理なんかじゃないさ。大丈夫。やれば出来るよ。言っただろう。“挑戦しない栄光なんて有りはしない”って」

 

『其れ言ったの、俺』

 

そんなクラリスを励ます誠十郎だが、ゼロがツッコミを入れて来る。

 

「(悪い、ゼロ。でもココは任せておいてくれ)如何かな、クラリス。脚本を………お願い出来ないかな?」

 

心の中でゼロにそう返しながら、誠十郎は改めてクラリスにそう言う。

 

「………其れは、()()ですか?」

 

「命令じゃない。だが、帝劇の命運が懸かったお願いだ」

 

「もっと酷いです!」

 

『お前、意外と厳しいな………』

 

誠十郎の言葉にそうツッコミを入れるクラリスとゼロ。

 

「よっし! 取り敢えず1歩前進! クラリス、よろしくな!」

 

「は、はいぃ………」

 

と、すっかり()()()()()脚本を書く事になっている初穂がそう言うと、クラリスは力無く返事を返すのだった。

 

「フフ。どんな物語になるのか、楽しみね」

 

「うう、凄いプレッシャーですよぅ………」

 

アナスタシアからも期待され、クラリスは重圧に押し潰されそうになる。

 

「大丈夫! クラリスなら、絶対に面白いお話が書けるよ」

 

「期待してる。わくわく」

 

さくらとあざみは、心底楽しそうにしている。

 

「本当に………如何なっても知りませんよ?」

 

確認するかの様にそう呟くクラリス。

 

「少し不安になってきたな………」

 

そんなクラリスの様子を見て、誠十郎が呟く。

 

「! そうですよね! 今からでも、他の人に………」

 

それを聞いたクラリスは、天の助けとばかりにそう言おうとしたが………

 

「だーっ! 隊長! 手前(てめぇ)まで不安になってんじゃねぇーっ!」

 

其れを遮って、初穂がそう声を挙げた。

 

「はは、ゴメンゴメン。冗談の積りだったんだけどな」

 

『間が悪いぜ、誠十郎』

 

笑ってそう返す誠十郎に、またゼロがツッコミを入れる。

 

「大丈夫。俺達だって居るんだ。協力出来る事なら、何だってやるよ。そうだな………先ずは舞台装置に関して、令士に訊きに行ってみようか」

 

「は、はい!」

 

其処で、誠十郎はクラリスに協力すべく、令士とイデが設置した新たな舞台装置の確認に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・舞台………

 

「よう、誠十郎………ん? クラリスちゃんも一緒か」

 

舞台を訪れた誠十郎(+ゼロ)とクラリスを、令士が出迎える。

 

「お、お邪魔します。あの………新しい舞台装置の事で………」

 

「霊子舞台演出機『うつりちゃん』。場面や衣装を()()()切り替えられる」

 

クラリスが尋ねると、令士は新しく取り付けた舞台装置………『うつりちゃん』について説明する。

 

「相変わらず変な名前を付けるな、令士」

 

『確かにな』

 

悪友のネーミングセンスにツッコミを入れる誠十郎に、ゼロも同意する。

 

「バカ野郎。名前を付けるってのは、愛情表現だ。俺の()をバカにするんじゃ無え」

 

令士は心外だと言う様に誠十郎に返す。

 

「場面や衣装を瞬時にって………そんな事、本当に出来るんですか?」

 

「ま、本当に変化させるんじゃなくて、“そういう映像を映す”ってのが、正解だがな」

 

革新的な技術にクラリスが唸ると、令士はそう補足する。

 

「あ、成程………じゃあ、例えば湖を凍らせたり、野原がいきなり嵐になったりと言うのは?」

 

「お茶の子さいさいだ。瞬きしてる間にやってやるぜ」

 

「ほんとですか! 凄いです! 其れじゃあ、若しかして………若しかしたら………」

 

期待を膨らませている様な様子を見せるクラリス。

 

「何か、切っ掛けが摑めたかい?」

 

「はい! ちょっと、アイデアが湧いてきました!」

 

誠十郎が尋ねると、クラリスは嬉しそうにそう言う。

 

「そう言えば、イデさんは?」

 

と、イデの姿が無い事に気付いた誠十郎がそう尋ねると………

 

突如、舞台袖から巨大な蜘蛛の様な化け物が現れた!!

 

「!? キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

「蜘蛛の化け物!? 降魔か!?」

 

クラリスが悲鳴を挙げ、誠十郎が刀の柄に手を掛ける。

 

『待て、誠十郎! ありゃ生き物じゃ無え』

 

「えっ?」

 

しかし其処で、ゼロがそう言って来て、誠十郎が動きを止めると………

 

「いや~、ゴメンゴメン。驚かせてしまったみたいだね」

 

そういう台詞と共に、巨大蜘蛛の後ろから、ラジコンの操縦機の様な物を手にしているイデが姿を見せた。

 

「イデさん!」

 

「こ、この蜘蛛は一体?」

 

誠十郎が声を挙げ、クラリスが未だ若干怖がりながら尋ねる。

 

「良く見て御覧」

 

「んん?」

 

イデにそう言われて、誠十郎が巨大蜘蛛に注目すると………

 

「あ! 糸が………」

 

巨大蜘蛛の彼方此方に、良く見なければ分からない程に細い透明な糸が繋がれており、其れが上の方へと伸びていた。

 

「『操演システム』さ。この糸を動かす事で、この人形を(あたか)()()()()()かの様に見せたのさ」

 

そう言うと、イデは操縦機を弄り、先程の様に巨大蜘蛛を生きているかの様に動かして見せる。

 

「す、凄い! 本当に生きているみたい!」

 

「こんな事も出来るよ」

 

クラリスが感心していると、イデは操縦機のボタンを押す。

 

すると、舞台の上方をやはり細い透明な糸で釣られた飛行機の模型が飛ぶ。

 

其れも()飛ぶだけでは無く、宙返りや切り身回転等のアクロバット飛行をやってのける。

 

「うわあ~~っ!」

 

「コレは………凄いですね」

 

目を輝かせるクラリスと、感心した様に呟く誠十郎。

 

「これなら、出来る………すみません! 部屋に戻って書き留めてきますね! 失礼します!」

 

と、創作意欲が大いに刺激されたのか、クラリスは直ぐ様自分の部屋へと向かうのだった。

 

「良い子だな、クラリスちゃんは。可愛くて仕方無いぜ」

 

そんなクラリスの後ろ姿を見送った令士がそんな事を呟く。

 

「お前、格納庫以外、出入り禁止な」

 

そんな令士に危険を感じたのか、誠十郎がそう言い放つ。

 

「おいおい。酷い奴だな、相変わらず。今だって、ちゃんと役に立っただろう?」

 

「五月蠅い。けど、まあ、助かったとは言っておく」

 

「うんうん」

 

悪友同士の気安い遣り取りを見て、イデは満足気な笑みで頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、令士とイデは舞台改修の続きに入り、誠十郎は令士から『月刊 新蒸気』なる雑誌の購入を頼まれる。

 

特に用事も無く、舞台改修の恩も有るので、誠十郎は其れを了承。

 

息抜きがてらに街へと繰り出そうとしたところ、カオルから電文が入る。

 

『神山さん、お疲れ様です。突然で申し訳無いのですが、今からお客様対応をお願いします。すみれ様と私は、急用で外出する事になってしまって………お客様は直ぐにお見えになる筈です。直ぐに戻りますので、よろしくお願いします』

 

其れは、自分達の代わりに来客への対応を依頼するものだった。

 

誠十郎は、直ぐにロビーへと向かった。

 

 

 

 

 

帝劇・食堂………

 

ロビーへと向かっていた誠十郎が、食堂へと差し掛かったところ、ロビーから通じる入り口に人影が見えた。

 

其れは、白いマントの様なコートを羽織り、腰に剣を携えた中性的な女性だった。

 

(見慣れない人だな………アレがカオルさんが言っていたお客様かな?)

 

『何だか目立つ奴だな』

 

その中性的な女性を見てそう思う誠十郎とゼロ。

 

「失礼、支配人のお客様でしょうか? 私は此処の従業員の、神山 誠十郎と申します」

 

中世的な女性へと話し掛ける誠十郎。

 

「丁寧な挨拶痛み入る。私は『村雨 白秋』。神崎支配人と約束が有って来たのだが」

 

「申し訳有りません。支配人は急用で出掛けておりまして。ですが、直ぐにお戻りになるそうですので、其れまでお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」

 

「分かった………では、此処で待たせて貰おう」

 

「では、此方へ」

 

誠十郎は、白秋を空いていた窓際の席まで案内する。

 

 

 

 

 

「大帝国劇場も久しぶりだ。また訪ねる事が出来て、嬉しいよ」

 

白秋はコートへ脱ぎ、剣をテーブルに立て掛ける様にすると、椅子に腰を下ろしてそう言う。

 

「は、はい、何時もありがとうございます」

 

「! あああああっ!?」

 

誠十郎がお礼を言っていると、驚きの声が響き渡った。

 

視線を遣ると、其処には白秋を指差しているさくらの姿が在った。

 

「………ん?」

 

「し、師匠じゃないですか! 如何して此処に居るんですか!?」

 

白秋もその姿を認めると、さくらは驚きを露わにしたまま近付いて来る。

 

「ちょっと、さくらの事が気になってね。様子を見に来た、というところだ。()()()()()無茶ばかりやって………周りを困らせてはいないだろうね?」

 

「む、無茶? 別に、(わたし)はそんな………」

 

「ほら、心身を鍛える為だ、とか言って………良く“冬の川”に飛び込んだりしていただろう?」

 

「い、何時の話をしてるんですか!? ()()そんな事してません!!」

 

白秋と親し気な会話を交わすさくら。

 

「さくら………この方を知っているのか?」

 

「あ、ハイ。お父さんの知り合いで………剣を教えてくれた師匠なんです」

 

誠十郎が尋ねると、さくらはそう答える。

 

『成程。さくらの師匠か』

 

其れを聞いたゼロは、白秋にレオ(師匠)の姿を重ねる。

 

「へえ………さくらの剣は、てっきり我流かと思ってたよ」

 

「“正統な剣術”で無いのは確かだね。私の剣が我流なのだから」

 

「成程、興味深いお話をありがとうございます。どうぞ、支配人が来るまでお待ち下さい」

 

「ああ、そうししょう。師匠だけにな」

 

「………え?」

 

『今の、ダジャレ(駄洒落)ってヤツか………?』

 

白秋の言葉に、一瞬フリーズを起こす誠十郎とツッコミを入れるゼロ。

 

「神山さん、すみません。駄洒落(ダジャレ)は師匠の()()()なんです………」

 

「悪い癖とは心外だな。“奥深い言葉遊び”と言って貰いたいものだよ」

 

さくらが誠十郎に謝罪するが、白秋は心外だと言う。

 

「は、はは………中々良い趣味をお持ちで………」

 

そんな白秋に、誠十郎は苦笑いで返すしかない。

 

(多分、立派な人なんだろうけど………また一癖も二癖も有る人がやって来たな)

 

『ホントだぜ………』

 

そして、心の中でゼロとそう言い合うのだった。

 

「それでは、私は用事が有りますので、コレで………失礼します」

 

誠十郎はそう言うと、令士の使いを済ませるべく、ロビーへと向かった。

 

「…………」

 

そんな誠十郎の背を無言で見送る白秋。

 

すると其処で、彼女の眼には、誠十郎を通して()()()姿()()()()()

 

(彼がゼロか………成程………貴方の言う通り、荒っぽいが良い戦士の様だ………『ウルトラマンキング』殿)

 

其れを見て、そう思う白秋だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

いよいよクラリス回が本格的に始動。
舞台の脚本を担当する事になったクラリス。
令士のうつりちゃんや、イデ隊員の操演システムのお陰で閃きは生まれた様ですが、果たして………

そして白秋師匠も登場。
アニメ版で一気に存在感をアップさせた彼女。
詳しい設定は謎のままですが、この作品ではそちらも踏まえて私なりの解釈で描写する積りです。
その辺の関係で凄い人とお知り合いになってます(笑)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『プレジデントG』

チャプター6『プレジデントG』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白秋の出迎えを済ませた誠十郎(+ゼロ)は………

 

ロビーにて、いつきと出会って話している最中にアナスタシアが通り掛かってお願いを聞いて貰って舞い上がったり………

 

こまちが間違えて風鈴を1000個も発注してしまったのを、帝劇メンバーのサインを入れる事で捌こうと機転を利かせた後………

 

令士の使いを済ませるべく、帝都の街へと繰り出した。

 

 

 

 

 

帝都・停留所………

 

『お! 誠十郎、アレが本屋じゃねえか?』

 

「ああ、そうだな」

 

書店・押問堂を発見したゼロと誠十郎は入店し、令士に頼まれた『月刊・新蒸気』を探す。

 

「令士に頼まれた本は、『月刊・新蒸気』の新刊だったな。見た事も聞いた事も無い雑誌だが、表紙を見れば分かるだろう。よし、探してみるか」

 

そう言って本の並ぶ棚を見回す誠十郎。

 

しかし、探し始めてから15分が経過すると………

 

『見付から無えな………』

 

「………何処にも無いぞ? 本当にこの本屋に有るのかな?」

 

探せども一向に目当ての本が見つからず、途方に暮れ始めるゼロと誠十郎。

 

「はろはろ~、其処の御兄さん、何かお困りですかー?」

 

すると其処へ、()()()()()()居た栗色の髪に割烹着姿の女性が声を掛けて来た。

 

「俺の事ですか? 『月刊・新蒸気』と言う本を探しているんですが、見当たらなくて………」

 

急に声を掛けられ、誠十郎は少し戸惑いながらもそう返す。

 

「ふむふむ、『月刊・新蒸気』の最新刊ですかぁ。何処かで見た様な………お手伝いしますー」

 

すると女性は、間延びした声でそう言って来た。

 

「お店の方………ではないですよね? 良いんですか? 流石に御迷惑じゃ………」

 

「いえいえ、(わたし)も探し物があるのでー。それでは、此方を調べてみますね」

 

『何だかほんわかした姉ちゃんだなぁ』

 

物腰柔らかい女性の様に、ゼロは率直にそんな感想を抱く。

 

すると………

 

「お兄さんお兄さん、『月刊・新蒸気』はコレじゃありませんか?」

 

棚を見に行った女性が、そう声を掛けて来た。

 

誠十郎が確認すると、其処には確かに『月刊・新蒸気』と表紙に書かれた本が在った。

 

「其れだ! ありがとうございます!」

 

誠十郎は直ぐにその本を手に取ると、会計を済ませる。

 

「………助かりました。お礼に、俺も其方の探し物を手伝いますよ」

 

「あらあら、ありがとうございます。でも、もう見付けちゃいました」

 

お礼にと女性に探し物を手伝おうとした誠十郎だったが、女性は既に見付けたと返す。

 

「『月刊・和菓子道』。和菓子で心身を磨く、和菓子道の専門誌なんです」

 

そう言う女性の隣の棚には、『月刊・和菓子道』と表紙に書かれた本が置かれていた。

 

『へえ~、地球人は菓子で心身を磨くのか』

 

「(いや、初めて聞いたぞ)凄い本ですね………和菓子に興味があるんですか?」

 

勘違いをするゼロにそうツッコミを入れつつ、誠十郎は女性にそう尋ねる。

 

「もちのろんろんですー。(わたし)は、『本郷 ひろみ』。隣の和菓子屋『みかづき』の店員さんなんですよー」

 

女性………『本郷 ひろみ』は、誠十郎にそう返す。

 

「成程、本職の和菓子屋さんでしたか。俺は神山 誠十郎、大帝国劇場の者です」

 

ひろみが会計を済ませると、誠十郎は改めて自己紹介をしながら共に店外に出る。

 

「あらあら、初穂ちゃんとあざみちゃんとこの方? うちの()()()()じゃないですかー」

 

『そういや、あざみの奴が“みかづきの御饅頭”とか言ってたな』

 

ひろみの言葉に、ゼロは誠十郎の部屋であざみと出会した際の事を思い出す。

 

「御2人共可愛らしいし、食べっぷりも良いから、ついついおまけしちゃうんですよねー」

 

「ははっ、何時も2人が世話になってます。俺も今度、寄らせてもらいますよ」

 

「はいはいー、是非いらして下さい。“和菓子は日本人の心”です、じゃぱーん!」

 

其処でひろみは、両手を挙げるポーズを執り、本屋の隣の和菓子屋『みかづき』へと戻って行った。

 

「ひろみさん………親切な人だったな。お陰で助かった」

 

『この隣が店なんだろう? 折角だから顔出して行こうぜ』

 

「そうだな。令士の本も急ぎじゃないし、良いだろう」

 

ゼロとそう言い合うと、誠十郎は押問堂の隣に在るみかづきへと向かった。

 

(あっ! ひろみさんと………あざみ? 成程………お得意様って、さっき言っていたな)

 

みかづきの前へと来ると、其処にはひろみと見知った顔であるあざみの姿が在った。

 

「やあ、あざみ!」

 

「た、隊長!?」

 

誠十郎が声を掛けると、あざみは動揺した様な様子を見せる。

 

「あらあら~、神山さんじゃないですか~。早速いらして頂けるなんて………嬉しくて、じゃぱーん!」

 

一方のひろみは、喜びを露わにする。

 

「ははっ。お邪魔します、ひろみさん。あざみは………買い物かい? あんまり食べ過ぎたりしてないだろうな?」

 

「あ、あざみは………」

 

誠十郎がジト目で見遣ると、狼狽するあざみ。

 

「あらあら、あざみちゃんなら、もうたっくさん………」

 

「ひ、ひろみさん、駄目! その………大丈夫、だから………」

 

ひろみの言葉を慌てて遮るあざみ。

 

「その慌てよう………成程、買い過ぎて食い過ぎた、と」

 

「あ、あう………」

 

しかし、即座に誠十郎に看破され、あざみは恥ずかしそうに黙り込んでしまう。

 

「あっ、でも何時もよりは、少ないですよ~。今日は、食べるよりお喋りに夢中でしたから」

 

其処でひろみから、そうフォローらしき言葉が入る。

 

「ははっ、和菓子より夢中になるなんて、一体、どんな話をしていたんだい?」

 

「そ、其れは………秘密」

 

「おいおい、隊長にまで秘密は無いんじゃないか?」

 

「………さ、里の掟・81条! 乙女の秘密、探るべからず!!」

 

秘密を探りに掛かって来る誠十郎に、あざみは例の里の掟を持ち出す。

 

「成程、そうきたか。なら………」

 

『オイ、誠十郎。“女の子が()()だ”って言ってんだ。あんま探ってやんな』

 

と其処で、ゼロがそう釘を刺す。

 

「(分かってる。冗談だよ)仕方無い。残念だけど、諦めるか」

 

そう言われて誠十郎は引き下がる。

 

「意外に、潔い隊長………ちょっとびっくり」

 

その様子に驚くあざみ。

 

「おいおい、俺を何だと思ってたんだよ?」

 

「………秘密」

 

心外だと言う誠十郎に、あざみはまたそう言う。

 

「其れはそうと、里の掟って何だい? 何度か聞いてる気がするけど………」

 

其処で誠十郎は、あざみが良く口にする『里の掟』について尋ねる。

 

「そ、其れは………秘密!」

 

しかし、あざみは其れも秘密だ、と言う。

 

「ははっ、其れも秘密なのか。あざみは秘密が多いな」

 

「に、忍者だから仕方が無い。其れじゃあ………」

 

「おっと、待ちな」

 

(!? ゼロ!?)

 

と、其処で突然ゼロが表に出た。

 

「ひろみさん、饅頭1つ」

 

「あ、は~い」

 

そして、ひろみに饅頭を1つ注文し、誠十郎の金で支払う。

 

「ほらよ」

 

受け取った饅頭を、あざみに差し出す。

 

「えっ?」

 

「迷惑掛けたからな。詫びだ。遠慮すんな、奢りだ」

 

戸惑うあざみに、誠十郎(ゼロ)はそう言う。

 

「い、良いの………?」

 

()()が遠慮なんかすんじゃ無えよ」

 

そう言って、空いている手であざみの頭をガシガシと撫でる誠十郎(ゼロ)。

 

「うう………ありがとう……御免!」

 

あざみは饅頭を受け取ると、逃げる様にその場から消え去った。

 

(オイ、ゼロ! お前、人の金で………)

 

『ケチケチすんなよ、饅頭1個ぐらいでよぉ』

 

勝手に饅頭を買われた事に抗議する誠十郎だったが、ゼロはサラリと流す。

 

(ったく………)

 

「ふふっ、神山さん。あんまり、あざみちゃんを苛めたら、メッですよ~」

 

と其処で、ひろみがやんわりとそう注意して来る。

 

「ははっ、すみません。そんな積りじゃ無いんですけどね」

 

ゼロから代わった誠十郎はそう返す。

 

「ふふっ、其れなら良いですけど~。うちのお店(みかづき)にも、また来てくださいね~」

 

「はい、ではまた………」

 

誠十郎はそう言って、みかづきを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、帝都中央駅にも立ち寄り、売店の新聞で以前にいつきが言っていた帝劇の記事を確認した後、帝劇へと戻った。

 

帝劇・ロビー………

 

「ん?」

 

誠十郎が玄関ロビーへと入ると、其処には高級そうな白いスーツを着た、眼鏡を掛けて嫌な眼付きの白髪のオールバックの男と………

 

黒いスーツに黒い帽子を被り、サングラスを掛けた全身黒尽くめの男の姿が在った。

 

他にも、黒スーツにサングラスという出で立ちの人間が、まるで護衛の様に彼方此方に立っている。

 

「暫く来ない内に、また此処は見窄らしくなった、と思っていたが………まさか陸海軍の支援が入っているとはな」

 

「新たな人員も確認されています。一体何処から引っ張って来たのか………」

 

「次は、あのアナスタシア・パルマを使って公演を行う積りか………だが、所詮は二流………いや、三流劇団」

 

『何だと………』

 

あからさまに帝国華撃団を馬鹿にしている白スーツの男に、ゼロが怒りを覚える。

 

「ビッグスタァを呼んだところで、何ともなるものか。まあ、()()()()()()よりはマシだろうがな。ははははははははっ!」

 

白スーツの男が笑うと、黒尽くめの男も含み笑いを零す。

 

(コイツ………!)

 

その様に、誠十郎も怒りを堪え切れなくなりそうになる。

 

「神山さん、神山さん………」

 

「!」

 

と其処で、売店の前に居たこまちに小声で呼ばれ、誠十郎は何とか怒りを抑えて向かう。

 

「こまちさん………誰ですか、アレは?」

 

「『プレジデントG』。『WLOF』のお偉いさんや」

 

「『ウルフ』?」

 

「『世界華撃団連盟』の事や。わーるど何ちゃらかんちゃら。略してWLOFやな。そのトップに立つんがあの男や。何やいけ好かん奴やで」

 

『確かにな』

 

こまちの言葉に同意し、『世界華撃団連盟』、通称『WLOF』のトップ・白スーツの男………『プレジデントG』に視線を向けるゼロ。

 

「ええ? そんな人が何の用なんだ?」

 

誠十郎がそう思っていると、プレジデントGは右腕である『ミスターI』と共に支配人室へと向かおうとする。

 

『………ウルトラ念力!』

 

其処でゼロが、極小威力のウルトラ念力をプレジデントGに向かって放つ。

 

「!? のうわっ!?」

 

すると突然!

 

プレジデントGの()()が後ろからワイヤーで引っ張られたかの様に上がり、顔面から思いっ切り床とキスした!

 

「!? プ、プレジデントG!?」

 

突然スッ転んだプレジデントGの姿に慌てるミスターI。

 

「ぐううう………」

 

プレジデントGが顔を上げると、眼鏡は罅割れ、鼻血が滴り、真っ赤になった顔が露わになる。

 

「やだぁ、何アレ」

 

「プププ」

 

「カッコ悪~い」

 

その、まるで()()()()()()姿()を目撃した客達から失笑が漏れる。

 

子供等、ストレートにプレジデントGを馬鹿(バカ)にしている。

 

「~~~~ッ!! 行くぞっ!!」

 

「ハ、ハッ!!」

 

羞恥で更に顔を真っ赤にしながら、プレジデントGは逃げる様に支配人室へと向かった。

 

「アハハハハハハッ! 傑作やったなぁ、今のっ!!」

 

プレジデントGの姿が見え無くなると、こまちは遠慮無しに爆笑する。

 

(オイ、ゼロ。お前だろ?)

 

『何の事だ? 全然分からねえな』

 

ゼロの仕業だと見抜く誠十郎だが、ゼロは露骨に惚ける。

 

(ったく、相手は()()()世界華撃団連盟のトップなんだぞ………まあ、俺も今のはスカッとしたけどな)

 

『だろ?』

 

そんな事を言い合いながら、誠十郎とゼロは売店を後にする。

 

そして令士に頼まれていた『月刊・新蒸気』を渡すと、脚本の進み具合を確かめにクラリスの元へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・クラリスの部屋………

 

「ああー、どうしても皆全滅しちゃう。普通、助けになんて来てくれないよね?」

 

書きかけの原稿を前に、頭を捻っているクラリス。

 

如何やら、行き詰っている様だ。

 

(でも、例えば………ウルトラマンゼロさんなら………)

 

と、ふとゼロの事が頭を過った瞬間、部屋のドアがノックされた。

 

「神山だけど………」

 

誠十郎が来訪して来たのである。

 

「あ、はい! どうぞ」

 

「失礼するよ」

 

クラリスに許可され、彼女の部屋に入る誠十郎。

 

「如何だい、脚本は進んでるかな?」

 

「えっと、はい………()()、ですけど」

 

誠十郎が尋ねると、クラリスはやや口籠りながら答える。

 

「良かったら、読んでも良いかい?」

 

「は、はい」

 

そう言われて、クラリスは書きかけの原稿を手渡した。

 

「おお………」

 

食い入る様に、その原稿の内容を熟読する誠十郎。

 

「…………」

 

一方、目の前で自分の脚本の原稿を読まれているクラリスは、気恥ずかし気にモジモジしながら沈黙している。

 

「ど、如何ですか?」

 

やがて、意を決した様にそう尋ねるクラリス。

 

『スッゲェ、面白ぇじゃねえか! こんな面白い話初めて読んだぜ!』

 

「(ああ、その通りだ!)とても面白い。凄いじゃないか、クラリス」

 

燥ぐゼロに同意し、誠十郎はクラリスにそう伝える。

 

「ホント………ですか? 良かった………」

 

其れを聞いたクラリスは、嬉しそうな顔で誠十郎に近付き、安堵の息を吐く。

 

「でも、良い所で終わっていて、早く続きが読みたいな」

 

『全くだぜ! これじゃ生殺しだっての!』

 

ゼロも早く続きが読みたいのか、逸る気持ちを抑えられない。

 

「えっと。はい、頑張ります」

 

其れに対し、クラリスは一瞬表情を曇らせながらもそう返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

本郷 ひろみとプレジデントGが登場。
彼女の月組だったって明かされた時は結構驚きましたね。
全然イメージ出来ないキャラだったので。

そしてプレジデントG。
キャラ発表の時点でいけ好かない感じがしてましたが、まさかラスボスだったとは………
しかし、この作品では今回の様に登場する度に碌な目に合わず、ドンドンと転落していく事になります。
理由は華撃団大戦が始まったら語ろうかと。
個人的な好き嫌いも入ってますが、どうかご了承ください。

それはさておき(笑)………
次回はいよいよ原作での目玉、クラリスとのデートが開始となります。
名前は出ませんが、超スペシャルビッグゲストも登場しますので、楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター7『デートだよ』

チャプター7『デートだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明くる日………

 

改修の終わった舞台の上に、さくら・初穂・アナスタシアの姿が在った。

 

「ああ、遂に貴方に口付けた。唇は苦いわ………コレが恋の味なのね」

 

「「…………」」

 

アナスタシアの演技に圧倒され、言葉の出ないさくらと初穂。

 

「凄ぇ………コレが超一流の演技か。何だよもう………鳥肌立ってくるぜ!」

 

初穂が、やっとの事で絞り出す様にそう言った。

 

「動きが、指先まで(すっご)くキレイ………(わたし)も、もっともっと頑張らなくちゃ」

 

さくらも感銘を受け、初穂と顔を見合わせながら決意を新たにする。

 

「おはよう。朝早くから、舞台の稽古かい?」

 

『熱心だな』

 

と其処へ、誠十郎(+ゼロ)が姿を見せる。

 

「よお!」

 

「お早うございます、隊長」

 

初穂とさくらが挨拶を返していると、アナスタシアは舞台袖に移動し、其処で演技の稽古を続ける。

 

「如何だい? アナスタシアの演技は?」

 

「如何もこうも無ぇよ! ホントに凄いぜ」

 

(わたし)も、あんな演技が出来る様になりたいです」

 

誠十郎の問いに、初穂とさくらは興奮を隠し切れない様子でそう答える。

 

「アナスタシアさんに教えて貰えれば嬉しいんですけど………」

 

「昨日、ちょっとだけ見て貰ったけどさ。本格的に指導して貰いたいんだ。何とかならねぇか?隊長!」

 

「なら、アナスタシアに頼んでみるか。おーい、アナスタシア」

 

初穂にそう訴え掛けられ、誠十郎は舞台袖で演技稽古を続けていたアナスタシアを呼ぶ。

 

「何かしら?キャプテン」

 

「お願いが有るんだ。彼女達にも、君の演技を教えて貰えないか? 教師役をお願いするのは、ちょっと心苦しいところも有るんだけど………」

 

アナスタシアがやって来ると、誠十郎はそう頼み込む。

 

「其れは………」

 

「やっぱり、駄目かい?」

 

「お願いします! (わたし)達も、アナスタシアさんみたいになりたいんです!」

 

渋る様子を見せたアナスタシアに、誠十郎は表情を曇らせるが、其処でさくらが腰を折って一礼しながらそう言う。

 

「………其れは無理ね。貴女達は、()()()()()()()()()わ」

 

しかし、アナスタシアから返って来たのは否定の言葉だった。

 

「そんな………」

 

「キャプテン・カミヤマ。彼女達の実力を伸ばす必要が有るのは確かだわ。早く、“適切なコーチ”を見つけてあげて。()()()のね」

 

暗に、“自分はコーチには向かない”と言う様なニュアンスで言うアナスタシア。

 

『んなこと言ったって、今この帝劇ですみれを除いて1番演技力が高いのはアナスタシアだぜ』

 

「(そうだな)アナスタシア以上の教師なんていない! 君が1番良いんだ。頼むよ」

 

ゼロの言葉に同意しつつ、誠十郎は更にアナスタシアに頼み込む。

 

「そう思って貰えるのは光栄だわ。でも、私は………」

 

「頼むよ! この通り! 花組の公演を成功させる為には、必要な事なんだ」

 

アナスタシアの言葉を遮る様に、腰を折って頭を下げて頼み込む誠十郎。

 

「お、お願いします!!」

 

「アタシ達が“未熟”だってのは、アタシ達が良く分かってる! 足を引っ張りたく無ぇんだ。頼む! この通りっ!!」

 

其処で、さくらと初穂も頭を下げる。

 

「………仕方無いわね。“最低限の”指導はしてあげる」

 

やがて、その熱意に負けたかの様に、アナスタシアはそう言った。

 

「ホントですか!? ありがとうございます!!」

 

「その代わり、厳しいわよ?」

 

「大丈夫です! こう見えても、根性は有るんです! “隊長に鍛えられてます”から!」

 

「おう! やってやるぜ! “隊長さんの特訓”に比べりゃ、どんな辛さだって耐えられるぜ!!」

 

“指導するからには厳しく行く”と言うアナスタシアだったが、さくらと初穂は誠十郎(ゼロ)の特訓に比べれば()()()()()()()と豪語する。

 

「へえ………其処まで言うなんて………一体、キャプテン・カミヤマの“特訓”とやらはどんなものなのかしらね?」

 

「ア、アハハ………(俺じゃなくてゼロのなんだけど………)」

 

そんな2人の言葉を聞いて、アナスタシアは誠十郎に意味深な視線を送るが、実際に特訓をやったのはゼロな為、誠十郎は誤魔化す様に笑うしかない。

 

「そうね………話の(タネ)に、私も1度受けてみようかしら………?」

 

「「其れは止めた方が良いです(ぜ)!!」」

 

と、ゼロの特訓に興味を抱いたアナスタシアがそう言い掛けた瞬間、慌ててさくらと初穂が制止して来る。

 

「アナスタシアさんみたいな“世界的スタァ”に、『若しもの事』が有ったら大変です!」

 

「そうだぜ! ありゃ“人間がやるモン”じゃねえっ!!」

 

「そ、そうなの………(一体どんな特訓だと言うの?)」

 

余りの剣幕でそう言って来るさくらと初穂を見て、アナスタシアは思わず後退りながら返す。

 

(ん? 電文か………)

 

と其処で、誠十郎のスマァトロンが鳴った。

 

『神山くん、頼みたい任務が有るから、支配人室に来て頂戴。お願いね』

 

『【緊急】支配人室に来て』と銘打たれた電文の内容には、そう書かれてあった。

 

(任務か………クラリスの様子も気になるが………仕方無いな)

 

「支配人からですか? 若しかして、新しい任務とか」

 

スマァトロンを覗き込んでいた誠十郎に、さくらがそう尋ねる。

 

「ああ、そんなところだ。支配人の所へ行って来るよ」

 

さくらにそう返すと、誠十郎は支配人室へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

到着した誠十郎が、支配人室のドアをノックする。

 

「入ってちょうだい」

 

「神山 誠十郎、入ります!」

 

すみれの許可を受けて入室する誠十郎。

 

そして、すみれの居る支配人机の前に立つ。

 

「今回の任務は、銀座周辺の、賑わっている場所の情報を集める事ですわ………“意味”は分かるわね?」

 

「宣伝するなら………人が多く集まる場所が望ましい。そう言う事ですか?」

 

すみれの問いに、誠十郎はそう答える。

 

()()正解ですわ。もう半分は、神山くん、そしてゼロさん………貴方達に、帝都の事をもっと良く知って貰いたい。宣伝をするには、“帝都の事を良く知る”べきよ」

 

『確かに、この街を良く知る機会なんて無かったからな』

 

すみれにそう言われて、ゼロはやって来てから色々と“バタバタしていた”事で、“帝都を良く知らない”のを思い出す。

 

「帝都を知る、ですか………成程、分かりました。情報を集めて来ます」

 

「お願いね、神山くん。集まり次第、報告に来てくれる?」

 

「はっ!」

 

誠十郎は姿勢を正して返事を返すと、帝劇のメンバーから帝都………特に帝劇の在る銀座の情報を聞きに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇内を回り、さくらから『ミカサ記念公園』、あざみから『銀座大通り』、こまちから『銀座横丁』、いつきから銀六百貨店の『屋上遊園地』の情報を得る。

 

途中、カオルから大浴場に居る初穂に掃除用具を届けてくれと言う依頼を受けて届けに行ったところ、入浴していた初穂と危うくラッキースケベイベントになり掛けたが、ゼロが阻止。

 

更に『みかづき』へと足を延ばすと、ひろみから『カフェ ジル・ド・レ』の情報も得た。

 

そして再度支配人室を訪れ、得られた情報をすみれへと報告するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………以上で報告を終わります」

 

「短い時間で、良く調べたわね。素晴らしいわ、神山くん」

 

短時間で、多くの銀座のスポットの情報を入手した誠十郎の手腕を手放しに誉めるすみれ。

 

「ありがとうございます」

 

『にしても、話を聞いただけでも、ホント良い街じゃねえか。俺も出歩いてみたいぜ』

 

ゼロも帝都の街に惹かれたらしく、そんな言葉を漏らす。

 

「それで、如何だった? 少しは帝都の事、分かったかしら?」

 

「もう、すみれさんより詳しいと思いますよ。何でも聞いて下さい」

 

すみれの問いに、自信満々で答える誠十郎。

 

「そう………(わたくし)より詳しいの? 其れはまた、大きく出たわね、神山くん?」

 

「あ、いえ、その………すみません………でも、帝都について少しは分かった積もりです」

 

『調子に乗り過ぎだぞ、誠十郎』

 

ちょっと調子に乗った誠十郎を、ゼロが窘める。

 

「“任務の前”より、帝都を()()()()()()()()様になったと言うか………俺は、今まで帝都を“守るべき存在”としてしか見ていなかった気がします」

 

『“軍人”としては妥当かも知れねえが、其れじゃ駄目だぜ、誠十郎』

 

「(ああ、分かってる)でも、帝都には色々な場所が在り、色々な人が暮らしている。其れを知る事で、俺自身が“帝都に生きる”1人なんだ、と感じました」

 

「そうね………そう思ってくれるならこの任務は大成功だわ」

 

誠十郎の言葉に、すみれは満足気に言う。

 

「良い事? 神山くん。花組の隊長は、“帝都を愛して”いないと務まらないわ。同時に、“帝都の人々に愛される存在”でなければならない。そうでなければ、『帝国華撃団花組隊長』は只の()()よ」

 

そう言うすみれの脳裏には、初代帝国華撃団隊長………『大神 一郎』の姿が浮かんでいた。

 

()()()()()()()()()()()か………』

 

一方ゼロの脳裏には、ウルトラ戦士の中でも特に地球を愛し、その身を削ってまでも守り抜き、地球人と“確かな絆”を結んだ父親………ウルトラセブンの事が浮かんでいた。

 

「はい、肝に銘じて“真の意味”で隊長になれる様に精進します」

 

そして誠十郎は、一層努力をする決意を固める。

 

「期待してるわよ、神山くん。勿論、宣伝活動も積極的にお願いね」

 

「はっ!」

 

誠十郎はすみれに向かって敬礼すると、支配人室を後にするのだった。

 

そして改めて、脚本に精を出している筈のクラリスの様子を窺いに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・クラリスの部屋………

 

「…………」

 

机に向かい、只管原稿用紙にペンを走らせているクラリス。

 

「クラリス、入るよ?」

 

「………!」

 

と其処で、ノックの後、誠十郎の声が聞こえ、ペンが止まる。

 

「…………」

 

顔を上げるクラリスだが、その表情は暗い………

 

「………どうぞ」

 

ペンを置くと、誠十郎に入室を促す。

 

「失礼するよ。クラリス、調子は如何だい?」

 

部屋に入ると、クラリスの傍に寄って尋ねる誠十郎。

 

「隊長………お願いが有るんです」

 

するとクラリスは椅子から立ち上がり、真剣な表情で誠十郎の前に立ってそう言う。

 

「そんな深刻な顔で………えっと………何かな………?」

 

その様子に、誠十郎はやや戸惑いながらも問い返す。

 

「私と、デートして下さいっ!」

 

そして、クラリスから放たれたのは意外な言葉だった!

 

「デ、デート!?」

 

「はい!」

 

『オイオイ、随分と大胆なお誘いだな』

 

普段の物静かなクラリスからは想像し難い積極的な誘いに、ゼロもそんな言葉を漏らす。

 

「脚本を書くのに、如何しても必要なんです」

 

『あ、そっちか』

 

しかし、続くクラリスの言葉を聞いて、納得が行った様子を見せる。

 

「私………私は、恋愛もデートもした事が無いから………そう言うシーンでの気持ちとか、見え方とか、全然分からなくて………だから、せめて“デートの真似事”でもすれば、少しは分かる様になるかもって………」

 

「………成程。そう言う事なら、協力するよ。で、何時にしようか?」

 

「勿論、今からお願いします!」

 

「い、今から!?」

 

動揺を隠せない誠十郎。

 

「あ………駄目、ですか?」

 

途端にクラリスは落ち込んだ様子を見せる。

 

『オイ、誠十郎。男だろ。ビシッとデートしてやれ! 協力は惜しまないんだろ!?』

 

「(!そ、そうだ。約束だもんな)良いよ。今からデートしよう。精一杯、相手を努めさせて貰うよ」

 

ゼロに言われ、誠十郎は気を取り直してそう言う。

 

「ありがとうございます!」

 

こうして、誠十郎(+ゼロ)とクラリスの、突然のデートは決定されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇前………

 

「其れでは行きましょうか」

 

「どうぞ、お嬢様」

 

クラリスがそう言うと、誠十郎は自然な形で腕を差し出す。

 

「Ah………Villmols mercl,monsieur」

 

母国語で『うふふ………よろしくってよ』と言い、その腕に摑まるクラリス。

 

「なんて………何だか楽しくなってきました。今日は何処へ連れて行って頂けるんですか?」

 

「………何処行こっか?」

 

「何処でも良いですよ。隊長が決めて下さい」

 

「うーん、そうだな………」

 

何せ突然のデートとあって、行く先も決まっておらず、誠十郎は頭を捻る。

 

『誠十郎。折角帝劇の連中から帝都の事を聞いたんだ。其処へ行ってみたら如何だ?』

 

すると其処で、ゼロが帝劇メンバーから聞いた帝都の名所の事を思い出し、誠十郎に告げる。

 

「(成程。其れは良いな)良し、兎に角行ってみようか」

 

そう言って誠十郎(+ゼロ)は、クラリスと腕を組んだまま歩き出す。

 

「「…………」」

 

その姿を、物陰から覗いているさくらと初穂の姿が在った。

 

「………行ったか?」

 

「うん、行った」

 

「後を尾けるぞ! 見付からないようにしろよ!」

 

「合点承知!」

 

そう言って、誠十郎とクラリスの後を追って行く2人。

 

如何やら、先程誠十郎が帝都の事を聞いてきたのを、クラリスとのデートの為だと勘違いした様だ。

 

「ふう………全く、如何したものかしらね」

 

そんな2人の姿を見た、丁度出掛けるところだったアナスタシアは、呆れる様に呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・停留所………

 

誠十郎とクラリスが最初にやって来たのは、以前令士の本を買いに来た押問堂だった。

 

「クラリスは本を読むのが好きみたいだから、本屋なんて如何かな?と思ったんだけど………」

 

「ふふ。この本屋さん、何時も来ているんです」

 

しかし、如何やらクラリスは此処の常連らしい。

 

「そうなのか。じゃあ………他の所に行った方が良いかな?」

 

「いえ………大丈夫です。何時もと同じ場所でも違う気持ちになれそうで………“デート実験”には最適ですよ」

 

「そうかい? クラリスがそう言うなら………」

 

「行きましょう、神山隊長。ふふ………今日はどんな本に出会えるのかな?」

 

『やっぱり本が好きなんだなぁ』

 

ゼロがそう呟く中、2人は押問堂の中へ入って行った。

 

 

 

 

 

「えっと………あ、有った有った! ん~~もう少し………」

 

棚のやや高い所に目当ての本を見付けたクラリスが、背伸びをしながら手を伸ばす。

 

「はい、どうぞ」

 

すると其処で、横からスッと誠十郎の手が伸びて来て、クラリスの目当ての本を引き抜く。

 

「………あ、ありがとうございます」

 

その際、クラリスと誠十郎はかなり至近距離に立つ事となり、クラリスは動悸を覚える。

 

「…………」

 

「………ん? 如何した?」

 

「えっ、いえ………その………ちょっとデートっぽいかな………と思いまして」

 

誠十郎に尋ねられ、クラリスはややどぎまぎしながら返す。

 

「デートっぽい………? あ………ゴメンゴメン! ちょっと近過ぎたかな?」

 

そう言われて、クラリスとの距離が近い事に気付いた誠十郎が慌てて離れる。

 

「ふふっ………いえ、大丈夫です。神山隊長って、優しいんですね」

 

「や、優しい………?」

 

『素直にお礼言っとけ、誠十郎。褒められてんだからよ』

 

戸惑う誠十郎に、ゼロがそうアドバイスする。

 

「(そ、そうだな)えっと………ありがとう。素直に嬉しいよ」

 

「私が男の人を優しいと感じるなんて………自分でも、少し驚いています」

 

「ははっ、デート実験を通して少しは俺の事も分かって貰えたのかな?」

 

「ふふ、そうかもしれません。こうして、相手の良い所に気付いて行く………其れが、“デートの良さ”なのかも知れませんね」

 

『成程なぁ』

 

クラリスの言葉に、ゼロも納得が行った様子を見せるのだった。

 

 

 

 

 

程無く、誠十郎(+ゼロ)とクラリスは、押問堂から退店する。

 

「ふふっ、楽しかったですね」

 

「そうだな………沢山の本に触れるのは新鮮だったよ」

 

「隊長は………普段どんな本を読むんですか?」

 

「本、か………やっぱり戦術書が多いかな。作戦を立てる時の参考になるしね」

 

『ああ、あの小難しいヤツか………』

 

誠十郎の言葉に思い出す様に呟くゼロ。

 

「流石は隊長ですね。日頃からの努力、素晴らしいです!」

 

「ははっ………未だ未だ未熟者だから、努力するしか無いんだよな」

 

「努力しようと思って出来るのは才能です。誰でも出来るワケじゃありませんよ」

 

『確かにな………師匠(レオ)親父(セブン)に相当(シゴ)かれてアレだけ強くなった、って話だし』

 

元は宇宙警備隊の出身だったワケではなく、戦いに関しては未熟であったレオがセブンに鍛えられてアレだけ強くなった事を思い出すゼロ。

 

「成程………そう言われると嬉しいな、ありがとう」

 

誠十郎はクラリスにそう言うと、2人揃って押問堂を後にする。

 

「………フフッ」

 

と、偶々出くわしたアナスタシアは、その様子を目撃して笑みを零すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座大通り・銀六百貨店の屋上遊園地………

 

続いて2人がやって来たのは、観覧車がランドマークの銀六百貨店・屋上遊園地だった。

 

「賑やかですね! 私、此処は初めて来ました」

 

「ははっ………良かったよ。其れで、脚本には活かせそうかい?」

 

「えっ、其れは未だ………デートって、こういう時如何するんでしょう?」

 

「そうだな………」

 

『恋人つったら、アレだろ。手を握るとか』

 

レイトが、良く妻・ルミナと手を握っていた事を思い出しそうアドバイスするゼロ。

 

「(まあ、定番だな)恋人っぽく、手を繋いでみようか?」

 

「え? あ、はいっ! そ、そうですね………」

 

赤面しつつも、誠十郎の手を取ろうとするクラリス。

 

「…………」

 

しかし、あと少しの所で手を引っ込めてしまう。

 

「ど、如何した?」

 

「え、えっと………御免なさい。恥ずかしくて」

 

戸惑う誠十郎に、クラリスはモジモジしながらそう告げる。

 

「お、おかしいですよね。ただ手を繋ぐだけなのに………でも、このドキドキ………これが、“デートの気持ち”なんでしょうか?」

 

「ははっ、きっとそうだよ。ちょっと残念だったけど、少しは役に立てたかな?」

 

誠十郎もやや照れながら返す。

 

と………

 

「うわ~~~ん!」

 

「ん?」

 

子供の泣き声が聞こえて来て、誠十郎が視線を向けると、其処には泣きじゃくる幼い少年の姿が在った。

 

「お母さ~ん! お父さ~ん! 何処~!?」

 

泣きながらそう声を挙げる少年。

 

如何やら迷子の様だ。

 

「迷子か………」

 

『みてぇだな』

 

「う~ん………」

 

ゼロと言い合うと、一瞬迷った様にクラリスを見遣る誠十郎。

 

「隊長、私は大丈夫です。待ってますから、行ってあげて下さい」

 

するとクラリスは、誠十郎の心中を察したのかそう言って来る。

 

「………済まない。ちょっと待っててくれ」

 

クラリスに詫びながら、誠十郎は迷子の方へと駆けて行った。

 

「やっぱり優しいですね、隊長」

 

そんな誠十郎の姿を見送りながら、クラリスは近くに在ったベンチに腰を下ろした。

 

「ふう~、ココまでで大分アイデアが出て来たけど………上手く纏められるかな?」

 

コレまでのデートで、色々とインスピレーションが来たクラリスだったが、やはり初めての舞台脚本作りとあり、不安を隠せないところが有った。

 

「何かお悩みかい、お嬢さん?」

 

すると、そんなクラリスに声を掛けた者が居た。

 

「えっ?」

 

クラリスが視線を向けると、其処には眼鏡を掛けた紳士然とした老人の姿が在った。

 

「ああ、済まないね、突然。しかし、君が余りに思い詰めた顔をしていたから、つい気になってしまってね」

 

突然声を掛けた事を詫びながらそう言う老人。

 

「ああ、いえ………あの、私、そんなに思い詰めた顔をしてました?」

 

「少なくとも、僕には“そう見えた”けどね」

 

「そうですか………」

 

他人に気取られてしまう程に不安が表情に出てしまっていた事に、クラリスは落ち込む。

 

「若い内からそう落ち込むものじゃないよ。隣、良いかね?」

 

「あ、どうぞ………」

 

「ありがとう………」

 

クラリスに断ると、老人はその隣に腰を下ろす。

 

「如何だね? 良かったら何を悩んでいるか、聞かせて貰えないかな?」

 

「えっ………?」

 

「君みたいな“悩める若者”を見ていると、放っておけないのが僕の性分でね」

 

子供の様な無邪気な笑みを浮かべてクラリスにそう言う老人。

 

「………実は」

 

その笑顔に安心感を覚え、気付けばクラリスは話し始めていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、舞台の脚本を………」

 

「でも、書けなくって………才能無いですから、私」

 

自虐気味にそう言って笑うクラリス。

 

「泣かない泣かない………」

 

すると老人は、持っていたカバンを開け、中から小箱の様な物を取り出す。

 

「お嬢さん………ちょっとお手を拝借出来るかな?」

 

「えっ? は、ハイ………」

 

戸惑いながらも、クラリスは老人に向かって右手を差し出す。

 

老人は小箱を開けると、その中に在った物をクラリスの右の掌の上に乗せた。

 

其れは、『透き通る様な輝きを持つ赤い宝石な様な石』だった。

 

「コレは………?」

 

「『ウルトラの星』だ」

 

「『ウルトラの星』?」

 

そう言われて、掌の上の赤い石………『ウルトラの星』を凝視するクラリス。

 

「“宇宙人”から貰ったんだ」

 

「! 宇宙人!?」

 

「友達なんだ、『彼』とは」

 

「そんな、まさか………」

 

「僕だって金星人だよ」

 

「ええっ!?」

 

まさかと言うクラリスだったが、続く老人の言葉で更に驚く。

 

「そうだよ。あの日の夜………考え事をしていて寝付けなくてね。自宅の近くに在った湖の近くを散歩していたんだ。そしたら………」

 

そして老人の口から語られたのは、クラリスが今まで読んだどんな本にも書かれていなかった、夢の様な出来事だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

老人の回想………

 

寝付けず、自宅近くの湖の畔を散歩していた老人。

 

すると、突然………

 

何の前触れも無く、空から青く光る巨大な球が降って来た!

 

青い球はそのまま湖へと落下!

 

巨大な水柱が上がったかと思うと、その水柱を吹き飛ばして、中からまるで棘の生えた恐竜を思わせる巨大な怪物が咆哮と共に出現した!

 

しかし、驚くのは未だ早かった!

 

まるで青い球を追って来たかの様に、今度は赤く光る球が出現!

 

怪物の前へと降りて来たかと思うと、一際輝きを放った!

 

そして、その輝きが収まったかと思うと………

 

其処には、銀色の身体に赤いラインの入った巨人の姿が在った!

 

「シュワッ!!」

 

巨人は腰を落とした戦闘態勢を取ると、怪物と取っ組み合いを開始!

 

打撃と投げ技を駆使し、怪物にダメージを与えて行く巨人。

 

そして、動きの鈍くなった怪物を掲げ上げる様に持ち上げると、湖に落とす様に投げ飛ばした!

 

怪物は湖に沈んで行ったかと思うと、再び青い球となって空に浮かび上がる。

 

その青い球に向かって、巨人は腕を十字に組んで向けたかと思うと、その組んだ手から光線が発射される!

 

光線は青い球を直撃し、粉々に吹き飛ばした!!

 

其れを見届けると、巨人の姿が再び赤い球へと変わったかと思うと、小さくなりながら湖の畔へと移動する。

 

老人は、直ぐ様その赤い球が降りた場所へと向かった。

 

辿り着いたその場所には、湖を見詰めている、人間と同じくらいの大きさになった巨人の姿が在った。

 

「貴方は?」

 

「私ハ『ウルトラマン』………M78星雲カラ来マシタ」

 

問い掛ける老人に彼………『ウルトラマン』は、エコーが掛かっている声でそう返す。

 

「M78星雲。ほお~」

 

「今、恐ロシイ悪魔ノ様ナ怪獣ヲ倒シマシタ………コレハ“友情ノ印”デス」

 

ウルトラマンはそう言って、老人にあの赤い石………『ウルトラの星』を差し出した。

 

「コレは………?」

 

「『ウルトラノ星』デス。コレガ大キナ力ニ成ルデショウ」

 

老人がウルトラの星を受け取ったのを確認すると、ウルトラマンは大きく頷き、空を見上げる。

 

「シュワッチッ!」

 

そして、そのまま空の彼方へ飛び去って行った。

 

「…………」

 

そのウルトラマンを笑顔で見送る老人。

 

まるで夢の様な出来事だった。

 

しかし、老人の手には確かに『ウルトラの星』が握られていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座大通り・銀六百貨店の屋上遊園地………

 

「あの日の出来事は、今でも昨日の事の様に思い出せるよ………」

 

「…………」

 

まるで古くからの友人の事を語る様に話す老人に、クラリスは呆気に取られていた。

 

(『ウルトラマン』って………ひょっとしてゼロさんと同じ………)

 

老人が話した『ウルトラマン』が、“ゼロの仲間”の事ではないか?と思うクラリス。

 

其処で再度、自分の手の中に在った『ウルトラの星』を確認する。

 

「………温かい」

 

『ウルトラの星』からは、安心する様な優しい暖かさが感じられた。

 

「クラリス」

 

と其処で、漸く迷子の世話を終えた誠十郎が戻って来た。

 

「あ、隊長」

 

「ゴメン、遅くなって………此方の方は?」

 

「あ、待ってる間に、話し相手になって貰って………」

 

「そうか………どうもありがとうございます」

 

老人に向かって頭を下げる誠十郎。

 

「いやいや、どう致しまして………」

 

「其れじゃあ、私達はもう行きます。コレ………如何もありがとうございました。何だか、元気が出て来ました」

 

クラリスは立ち上がると、老人に『ウルトラの星』を返す。

 

「そうか。其れは良かった………」

 

『ウルトラの星』を受け取ると、再び小箱に大切にしまう老人。

 

「其れじゃあ、失礼します………」

 

「ああ、君」

 

「? ハイ?」

 

不意に呼び止められる誠十郎。

 

「………()()()()()()()()

 

「えっ!?」

 

『この爺さん………』

 

老人の言葉に驚く誠十郎と何かを感じ取るゼロ。

 

「あ、ハイ。“帝国華撃団”として頑張ります」

 

しかし誠十郎は、自分達を帝国華撃団だと知っての言葉だと解釈する。

 

「うんうん………」

 

その言葉に、老人は満足そうに頷く。

 

そしてそのまま、誠十郎とクラリスを見送る。

 

「………ヒーローが必要なんだよ。“ヒーロー”が」

 

2人に聞こえない様に、そう老人は呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

いよいよクラリスとのデートが開始。
ゼロも居るので、時々茶々が入ったりして色んな意味で盛り上がってます。

そして前回予告した超スペシャルビッグゲスト。
もう皆さん、この老人が誰なのかお分かりですね?
そう、『オヤジさん』です。
元になったのはウルトラマンティガの神回『ウルトラの星』からです。
あの話で、オヤジさんが悩んでいた脚本家の金城哲夫さんにウルトラの星を見せて励ましていたシーンを見て、コレをクラリスにもやって貰いたいと思いまして。

そして超スペシャルビッグゲストも出演して順調に行っているかに見えるデートですが、次回風雲急を告げます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター8『重魔導の力』

チャプター8『重魔導の力』

 

宇宙ロボット キングジョー

 

策略宇宙人 ペダン星人登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上遊園地を後にした誠十郎(+ゼロ)とクラリスは、小洒落た店でランチを済ませると、帝都の散策を続けていた。

 

銀座横丁………

 

「この後は、如何しますか?」

 

「そうだなぁ………」

 

通りを歩きながらそう言い合っていると………

 

「そこの御2人さん………ちょっと寄ってお行きよ」

 

「「??」」

 

何者かに呼ばれて、辺りをキョロキョロと見回す誠十郎とクラリス。

 

『誠十郎、左だ』

 

「………!」

 

とゼロに言われて、誠十郎が左を向くと………

 

袋小路の奥にひっそりと存在している小さなテントが目に入った。

 

「………何だ?」

 

誠十郎は怪訝な顔をするが、クラリスと視線を交わすと、意を決した様にそのテントへ向かって行った。

 

「………占い師?」

 

テントに近付いた誠十郎は、其れが占い師のテントである事に気付く。

 

「そうさ………良かったら、占って行かないかい?」

 

「占い………面白そうですね! 寄って行っても良いですか、隊長さん?」

 

姿の見えない占い師がそ問い掛けると、やはり女の子か、興味津々な様子のクラリスがそう言う。

 

『物は試しだ。やってみろよ、誠十郎』

 

「確かに面白そうだな。良いよ、占って貰おうか」

 

ゼロにも促され、誠十郎は占いを受ける事にする。

 

「はい。何だか、ドキドキしますね!」

 

「………じゃあ、始めるよ。ロケス・ピラトス・ゾトアス・トリタス・クリサタニトス」

 

クラリスがそう言っていると、占い師は呪文の様な物を唱え始める。

 

「………何だ?」

 

「欧州に古くから伝わる呪文です! 本格的で、ワクワクしますね!」

 

首を傾げる誠十郎に対し、クラリスはやや興奮した様子でそう言う。

 

「………フフ、分かったよ。真実は見えた。可愛らしいお嬢さん、あんた、この男の事を愛しているね?」

 

「えっ………えええええっ!? あ、愛してるって………」

 

占い師から告げられた、或る意味トンでもない内容に、クラリスは仰天する。

 

「そ、そんな事………()()()有りませんっ!!」

 

恥ずかしさからか、そう断言してしまうクラリス。

 

「ク、クラリス………」

 

『恥ずかしがってるだけだ。本気にすんな』

 

「(そ、そうだよな。けど………)そんなに()()()否定されると、ちょっと傷付くなあ」

 

ゼロからフォローされるも、ショックを隠し切れず、そう零してしまう誠十郎。

 

「あ、すみません! ちょっとビックリしちゃって………えっと………愛して、とかは無いですが………“嫌い”ってワケじゃ無いですよ」

 

「ははっ………ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」

 

クラリスも言い過ぎたと思ったのかそう言い、誠十郎は何とか立ち直る。

 

「じゃ、クラリス。デートの続き、しようか?」

 

「そうですね。行きましょう!」

 

2人は占い屋を後にしようとする。

 

「フフ………仲が良いねぇ。だけど、行く前にもう1つ聞いてお行き」

 

しかし其処で、占い師がそう言って2人を呼び止めた。

 

「どんなモノでも、何時かは壊れるものさ。何故なら、影は何時だって隣に居るものさ。だから、上手く行っていると思っても、必ず後悔する時が訪れる」

 

『何だ? 急にネガティブな事言い出しやがって?』

 

先程までとは打って変わって不安を煽る様な事を言って来た占い師に、ゼロは不信感を抱く。

 

「其れを避けたいと思うなら、助言を1つ………『逃げる』のはね、何も“悪い事じゃない”のさ」

 

「…………」

 

「………そうですね。貴重な助言をありがとうございます、占い師さん」

 

黙り込む誠十郎に対し、クラリスは占い師に向かって頭を下げて礼を言う。

 

そして、2人は今度こそ占い屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カフェ ジル・ド・レ………

 

占い屋を後にした2人は、カフェにて休憩がてらの一服をしていた。

 

「ふふ、美味しいですね! 流石今1番人気のお店です」

 

ジル・ド・レの洋菓子に舌鼓を打つクラリス。

 

「このお店の事を知ってるなんて………ちょっと意外でした」

 

「いや、雰囲気が良かったから入ってみただけさ。有名な店だったんだな」

 

『気取りやがって。本当は、ひろみの奴に教えて貰ったんだろ?』

 

(五月蠅いな。ちょっとは格好付けさせてくれよ)

 

ゼロのツッコミに、誠十郎は心の中でそう返す。

 

「はい。雑誌の特集でも、『銀座デートの定番』として必ず載ってますよ」

 

「そうなのか。じゃあ、デートは成功かな?」

 

「ふふ、そうですね。本当に楽しいです」

 

そう言って笑顔を見せるクラリス。

 

「でも、其れは………“人気のお店”だからじゃ無くて………きっと………」

 

「え? 何か言ったかい?」

 

「な、何でも無いですっ!」

 

後半が小声になってしまっていたので問い返す誠十郎だったが、クラリスは即座にそう返すのだった。

 

「うう~………ちょっと近付き過ぎでしょ!」

 

その様子を、店の外から眺めていたさくらが、唸り声を挙げながらそう言う。

 

「おいおいさくら………ちょっと熱くなり過ぎだろ?」

 

そんなさくらを落ち着かせる様に、そう声を掛ける初穂だったが………

 

「そんな事無い! ああもう………何かモヤモヤする!」

 

さくらは、そう怒鳴る様に返した。

 

如何やらクラリスに嫉妬している様だが、その理由が“自分でも分かっていない”様である。

 

「やれやれ………」

 

(アイツ等、何やってんだ?)

 

その様子に呆れる初穂と、とっくに2人の存在に気付いていたゼロだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

銀座の一角にて………

 

「ハァン、此処が銀座か~。美味そうな人間共がご~ろごろ居やがるぜ」

 

街行く人々を見ながら、そんな物騒な台詞を吐く不審な仮面の男………

 

「………っと、いけねえいけねえ。先ずは、如何()()するか考えねえとな」

 

そう言うと、不審な男は服の内側から『何か』を取り出した。

 

其れは“黒と白のカラーリングの人型”だが、異様な姿の人形だった。

 

()()()から頂いた『コイツ』を試さないといけないしなぁ。さあて、楽しみだねえ~。ハッ! ハハハハッ!!」

 

男はそう言って人形をしまうと、雑踏の中へと消えて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、誠十郎(+ゼロ)とクラリスの方は………

 

カフェを後にし、ミカサ記念公園へと足を進めていた。

 

帝都・ミカサ記念公園………

 

「ちょっと疲れましたね」

 

「じゃあ、少し休もうか?」

 

クラリスがそう言うと、誠十郎は揃って備え付けられていたベンチに腰掛けた。

 

「「…………」」

 

さくらと初穂は、相変わらず花壇の陰からその様子を盗み見ている。

 

「デートって楽しいんですね………こんなに楽しんで良いんでしょうか?」

 

「如何言う意味だい?」

 

「………あの、えっと、其れは………」

 

『相変わらず鈍い奴だぜ』

 

クラリスの言葉の意味が分からず問い返す誠十郎に、呆れた様子を見せるゼロ。

 

「如何、見える?」

 

「う~ん、よく見えねえなぁ」

 

様子が上手く窺えず、もどかしい思いをしているさくらと初穂。

 

「もうちょっと前に出た方が………!」

 

「あ、おい! 押すなって!」

 

何時しか2人は、誠十郎とクラリスの至近距離にまで接近していた。

 

「あ、あの、隊長!」

 

と其処で、クラリスがベンチから立ち上がる。

 

「私、若しかしたら………あっ!」

 

そして誠十郎に何かを言おうとしたが、勢い余ったのか躓いてしまう。

 

「危ないっ!」

 

転びそうになったクラリスを、誠十郎が抱き留める。

 

「「あっ!!」」

 

その光景を見たさくらと初穂は、思わず声を挙げながら立ち上がってしまう。

 

「何だ!?」

 

当然、その声を聴いた誠十郎が振り返り、2人の姿を認める。

 

「初穂さん、さくらさん………?」

 

(あ~あ、とうとうバレたか………)

 

クラリスも2人の姿を確認し、ゼロも呆れた様子を見せる。

 

「2人共、何をしてるんだ?」

 

「え!? い、いや、何でも()えから!」

 

「そ、その通りです! し、失礼しました!」

 

誠十郎がジト目で睨み付けると、初穂とさくらは逃げる様にミカサ記念公園を後にして行った。

 

「何だ、ありゃ?」

 

「2人共、心配だったんですよ」

 

「何が?」

 

「さぁ? 何でしょうね?」

 

誠十郎の問いに、微笑みながらそう誤魔化すクラリス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何だアレはっ!?」

 

公園に居た市民の1人が、海の方の空を指差しながらそう叫んだ。

 

「「!?」」

 

其れに反応して、誠十郎とクラリスがその方向を見遣ると、其処には………

 

ミカサ記念公園に向かって飛んで来る、4つの巨大な飛行物体が在った。

 

「飛んでるぞっ!?」

 

「ひょっとして、アレがUFOってヤツかっ!?」

 

騒ぎながら集まり出す野次馬達。

 

『!? アレはっ!?』

 

しかしゼロは、その飛行物体を見て驚愕の声を漏らした!

 

「ゼロ! 知ってるのか!?」

 

と、誠十郎がそう尋ねた瞬間!

 

ミカサ記念公園の真ん前まで迫った4つの飛行物体の内、1つが海面に着水。

 

その上に、他の3つの飛行物体が、変形しながら積み重なる様に合体!

 

グワァシ………グワァシ………

 

奇妙な作動音と電子音を響かせる、身長50メートル以上は在る巨大なロボットとなった!!

 

「!? ロボットッ!?」

 

『『宇宙ロボット キングジョー』! 『ペダン星人』の作った侵略兵器だ!!』

 

「!? 侵略兵器っ!?」

 

ゼロの説明に、誠十郎が驚きの声を挙げた瞬間………

 

キングジョーは、目の様な部分から破壊光線『デスト・レイ』を放った!!

 

デスト・レイはミカサ記念公園の一角に着弾!

 

爆発と共に、ミカサ記念公園の一角が吹き飛んだ!!

 

「うわあああっ!!」

 

「きゃあああっ!!」

 

途端に、人々は悲鳴を挙げて逃げ出し始める!

 

グワァシ………グワァシ………

 

キングジョーは作動音と電子音を響かせながら、ゆっくりと前進を始め、ミカサ記念公園へ上陸しようとする。

 

「あ、あああ………」

 

「クラリス! 逃げるんだっ!!」

 

恐怖を露わにするクラリスの肩を揺さぶり、変身する為にも一旦退こうと促す誠十郎。

 

だが………

 

「うわああーん!! 助けてぇーっ!!」

 

転んでしまい、逃げ遅れた女の子が泣き声を挙げた。

 

「! お、女の子がっ!! くうっ!!」

 

直ぐ様、誠十郎はその女の子の元へと駆け出す!

 

「隊長っ!!」

 

「しっかり! もう大丈夫だっ!!」

 

駆け寄った誠十郎は、女の子を抱き起こす。

 

「! 危ないっ! 隊長っ!!」

 

「!!」

 

其処へクラリスの悲鳴の様な声が響き、誠十郎が視線を上げると………

 

グワァシ………グワァシ………

 

今まさに、自分達に向かってデスト・レイを放とうとしているキングジョーの姿が飛び込んで来た!

 

「くうっ!!」

 

『間に合わ無えっ!!』

 

今からでは意識を代えても間に合わないと悟ったゼロは、已むを得ず変身しようとする。

 

………が、その瞬間!!

 

「!!」

 

クラリスが鞄から何かの本を取り出し、広げながら誠十郎達の前に立った!

 

「!? クラリスッ!!」

 

『何をする気だっ!?』

 

クラリスの思わぬ行動に、誠十郎とゼロが固まってしまった瞬間!

 

無情にもキングジョーからデスト・レイが放たれる!!

 

「Mane veni!(重魔導、起動!)」

 

だが、クラリスがそう叫んだ瞬間!!

 

霊力が解放され、その眼前に巨大な魔法陣が展開!!

 

キングジョーのデスト・レイを受け止めた!!

 

「!!」

 

『何っ!?』

 

その光景に、誠十郎もゼロも驚きを露わにする。

 

「ハアアアアアアッ!!」

 

クラリスが気合の声を挙げると霊力も上がり、次の瞬間!!

 

魔法陣の中心から、太いレーザーの様な物が放たれた!!

 

レーザーはデスト・レイを押し返し、遂には掻き消したかと思うと………

 

そのままキングジョーへと直撃した!!

 

「うっ!?」

 

発生した閃光に、思わず目を覆う誠十郎。

 

やがて閃光が収まり、目を開けると其処には………

 

ボディを貫通する巨大な穴が開き、スパークを発しているキングジョーの姿が在った。

 

「なっ!?」

 

誠十郎が驚きの声を挙げた瞬間………

 

キングジョーは気を付けの姿勢を執ったかと思うと、そのまま仰向けにバタリと倒れ、爆発四散した!!

 

爆発の際に舞い上がった海水が、雨の様に降り注ぐ。

 

『あの頑丈なキングジョーを………』

 

「クラリス………」

 

ゼロが驚愕を露わにし、誠十郎は呆然としながらクラリスに声を掛ける。

 

「あ………」

 

だが、振り返ったクラリスは悲し気な表情をしていた。

 

「………御免なさいっ!」

 

そしてそのまま、逃げる様に駆け出した!!

 

「! クラ………」

 

「うわ~んっ!!」

 

慌てて追おうとした誠十郎だったが、緊張の糸が切れたのか、助けた女の子が再び泣き出し始める。

 

「あ………大丈夫。もう大丈夫だから」

 

誠十郎は女の子の頭を優しく撫でて慰める。

 

その間に、クラリスの姿は見えなくなってしまった………

 

「クラリス………」

 

『あの力は一体………?』

 

虚空に向かって虚しく呼び掛ける誠十郎と、クラリスの見せた力を気に掛けるゼロだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

大気圏外に待機していたペダン星人の円盤では………

 

「何と言う事だ! 我々のキングジョーがっ!!」

 

「ウルトラマンになら未だしも、あの様な地球人の女に負けるとは!!」

 

キングジョーがクラリスに倒された事に、ペダン星人の兵士達………『ペダン兵士』達がいきり立つ。

 

「騒ぐな」

 

「「「「「! 司令!!」」」」」

 

しかし、司令と呼ばれたペダン星人………『ペダン星人・クザ』が一喝する。

 

「諸君………コレは寧ろ“良い結果”だと思わないか?」

 

「良い結果………?」

 

「如何言う事ですか?」

 

ペダン星人・クザの言っている事の意味が分からず、首を傾げるペダン兵士達。

 

「コレを見給え………」

 

そう言うと、ペダン星人・クザは空中に大型モニターを展開させる。

 

其処には、帝国華撃団の無限、上海華撃団の王龍………

 

更に『倫敦(ロンドン)華撃団』の『ブリドヴェン』、『莫斯科(モスクワ)華撃団』の『エカテリーナ』、『伯林(ベルリン)華撃団』の『アイゼンイェーガー』………

 

世界各国の華撃団の、主力霊子戦闘機の“詳細データ”だった。

 

「コレは?」

 

「この地球での防衛組織である、華撃団とやらが使っている“霊子戦闘機”と呼ばれる()()()()だ」

 

「一体何処でこの様な物を?」

 

「WLOFとやらの本部からだよ。()()()()のセキュリティを突破する等、我々ペダン星人の科学力を以てすれば容易い事だよ」

 

何と、“最重要機密”である筈の情報を、WLOF本部から盗んできたと言うのだ。

 

「技術()()は、我々と比べると大した事はない。だが、1つ“興味深い物”が在った。このマシンは搭乗者の『霊力』と呼ばれる力を使って動いているらしい」

 

「『霊力』?」

 

「先程のキングジョーを破壊した女の力もその霊力と言う力らしい………若しコレを、キングジョーに組み込めば如何なると思う?」

 

「「「「「!!」」」」」

 

ペダン星人・クザの言葉に、ペダン兵士達はハッとした様子を見せる。

 

「コレまでに無い、“全く新しいキングジョー”を開発出来る………そうは思わんかね?」

 

「成程! 流石は司令!」

 

「直ぐにキングジョー2号機の準備に掛かれ。『チブル星人』から買った『例のシステム』も搭載して構わん。『霊力』を持つ人間を捕らえるのだ!!」

 

「「「「「ハッ!!」」」」」

 

ペダン星人・クザの命令に、ペダン兵士達が慌しく駆け回り始めるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・玄関ロビー………

 

「クラリスッ!」

 

慌しく帝劇内へと入って来る誠十郎。

 

「おかえり………って、血相変えてどないしたんや? さっきミカサ記念公園の方が騒がしかったけど、何か有ったんか?」

 

と、その誠十郎の姿を認めたこまちがそう尋ねて来る。

 

「いえ、別に………こまちさん、クラリスを見ませんでしたか?」

 

「さっき帰って来たみたいやで。自分の部屋に()るんやないか?」

 

「ありがとうございます」

 

其れを聞くと、誠十郎は直ぐにクラリスの元へと向かった。

 

「やっぱり何か有ったみたいやな………頼むで、隊長はん」

 

“何かが有った”事を悟りながらも、誠十郎を信じて見送るこまちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・クラリスの部屋の前………

 

「クラリス、居るんだろう? ココを開けてくれないか?」

 

クラリスの部屋の扉をノックしながら、そう言う誠十郎。

 

「ごめんなさい………ごめんなさい………」

 

しかし、クラリスは酷く怯えた様子でベッドに腰掛け、頭を抱えている。

 

誠十郎の声にも気付いていない様だ。

 

「…………」

 

『“あの力”を見られた事が、相当ショックだったみてぇだな………』

 

如何すれば良いのか分からない誠十郎と、先程見た光景を思い出してそう言うゼロ。

 

「神山くん」

 

と其処へ、すみれが姿を見せた。

 

「支配人………」

 

「浮かない顔をしているわね。何か有ったの?」

 

「実は………クラリスが………」

 

誠十郎は、先程有った事をすみれに説明し始めるが、“込み入った話”になると察したすみれは、場所を支配人室へと移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

「………成程。そんな事が有りましたのね………」

 

「クラリスのお陰で、俺も女の子も助かったんです。其れなのに、何故逃げ出したんでしょうか………?」

 

『…………』

 

クラリスが逃げ出した理由が分からない誠十郎だが、ゼロは何と無く察しが付いていた。

 

「クラリスは、“何か”を隠しているんですか? あの力は………」

 

「そう、彼女が持つ『闇』………“隠しておきたかったもの”が、()()()よ」

 

誠十郎の問いに、すみれはクラリスの事を話し始める。

 

「クラリスさんはね、自分の持つあの力………『重魔導』を恐れているのよ」

 

「『重魔導』………其れが、あの力の名前なんですか?」

 

「クラリスさんの家は、欧州の古い家系。代々“魔導書を作ってきた一族”なのですわ。彼女は………その()()()()使()()()、強力な『力』を使う事が出来るのよ」

 

(キングジョーを破壊する程の()か………“1人の人間”が持つには大き過ぎる気もするな)

 

ミカサ記念公園でキングジョーを破壊した時の事を思い出し、ゼロは思う。

 

「何故、その力を………恐れる必要が有るんですか?」

 

「………其れは、クラリスさんに直接聞いて頂戴。(わたくし)が言うより、その方が良いと思いますわ」

 

『そうだぜ、誠十郎。コイツはアイツ(クラリス)にとって“重要な事”になる筈だ』

 

すみれの言葉に、ゼロもそう同意する。

 

「2人共、クラリスさんの事………よろしく頼んだわね」

 

「は、はい………分かりました」

 

誠十郎は敬礼すると、支配人室を後にする。

 

「! 皆!」

 

誠十郎が支配人室から出ると、花組の面々が集まっていた。

 

「神山さん、クラリスに何が………一体、クラリスに何が有ったんですか!?」

 

皆を代表する様に、さくらがそう尋ねる。

 

「実は………」

 

誠十郎は、すみれにした話をさくら達にも説明するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・サロン………

 

「さくら………クラリスの様子は如何だった?」

 

クラリスの元へ向かったさくらが帰って来たのを見て、そう問う誠十郎。

 

「駄目です。何度呼び掛けても、返事をしてくれません」

 

「でも、部屋に居る。間違い無い」

 

と、天井裏から様子を窺いに行っていたあざみも戻って来てそう言う。

 

「そうか。さくら達が行っても駄目か………」

 

「仕方無えよ………大変な事が有った後だもんな」

 

「こんな時に悪いけど、公演は如何するのかしら?」

 

誠十郎の言葉に初穂が返すと、アナスタシアがそう口を挟む。

 

「脚本を書く人間がこの調子では、開演までに間に合わない可能性も有るわよ」

 

「で、でも! クラリスなら、大丈夫………絶対、大丈夫です………」

 

現実的な問題を指摘するアナスタシアに、クラリスを信じるさくらがそう返す。

 

「…………」

 

『誠十郎。ココはお前が何とかするところだぜ。“隊長”なんだろ?』

 

沈黙した誠十郎に、ゼロが発破を掛ける様に言った。

 

「(………そうだな。俺が何とかしなきゃ)クラリスの事は俺に任せてくれ! これ以上、クラリスを1人で悩ませたりはしない」

 

其れを受けて、誠十郎は奮起する。

 

「隊長として、もう1度………いや、()()()()話しに行って来る」

 

「フフッ、言うわね、キャプテン」

 

誠十郎の態度に、アナスタシアが満足気に微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラリスの部屋………

 

「…………」

 

漸く落ち着いた様子のクラリスだが、やはり表情は暗い………

 

と其処で、部屋の扉がノックされた。

 

「………!」

 

「………クラリス、今日はありがとう。君のお陰で、俺もあの子も助かったよ」

 

驚くクラリスの耳に、誠十郎の声が響いて来る。

 

「君の都合の良い時で良いから、今日の事で話がしたいんだ。其れと、脚本の続き。早く読ませてくれると、嬉しい」

 

「………!」

 

脚本と言われて、クラリスは机の上に置かれている書きかけの原稿用紙を見遣る。

 

「とても面白かったしね。楽しみにしているんだ………其れじゃあ、おやすみ」

 

そう言うと、誠十郎の気配が離れて行く。

 

「…………楽しみ………楽しみに、してくれてるんだ………」

 

ぽつりぽつりと、そう呟くクラリス。

 

「デートの時も………私を楽しませようとして………何時も、私を気に掛けてくれて………」

 

其処でクラリスの掌に、あの老人から見せて貰った『ウルトラの星』の温かさが蘇る。

 

「神山さん………」

 

クラリスはベッドから立ち上がった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・誠十郎の部屋の前………

 

「隊長、待って下さい!」

 

「! クラリス!」

 

部屋に入ろうとした誠十郎は、漸く姿を見せたクラリスに呼び止められた。

 

「聞いて欲しい事が有るんです」

 

「………分かった」

 

誠十郎は頷くと、2人で人気の無い中庭へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・中庭………

 

空は既に暗くなって来ており、瞬き始めた星々が誠十郎(+ゼロ)とクラリスを照らしている。

 

「あの………神山隊長は、()()()()ご存じなんですか?」

 

「君の“力”の事かい?………さっき、支配人から教えて貰ったよ」

 

「あんな力が有るなんて………私、気持ち悪いですよね?」

 

自虐の様に自分の両手を見ながらそう言うクラリス。

 

「気持ち悪くなんて無いよ。寧ろ、“()()()()()力”じゃないか。その力のお陰で、俺と子供は助かったんだしね」

 

「あれは“偶然”です………この力は、そんな()()()()じゃ有りません!」

 

否定する誠十郎だったが、クラリスはそう言い返す。

 

「私の、いいえ、私の一族の力は、“破壊()()出来ないモノ”なんです」

 

そう言って、クラリスは“自分の一族の歴史”について語り出す。

 

 

 

 

 

曰く、クラリスの一族は、(いにしえ)より時の権力者の下で数多(あまた)の戦争で『力』を振るって来た………

 

城を打ち滅ぼす時には業火を起こし、街を護る時には嵐を呼んだ。

 

彼女の持つ『力』、一族の歴史は、“破壊の記録”だと。

 

長い歴史の中で、どれだけの破壊と混乱、そして死を齎したか………

 

 

 

 

 

「呪われているんですよ! この『力』は、“忌わしい()()”なんです!」

 

感情が昂って来たのか、そう叫ぶクラリス。

 

「私は、こんな力なんて要りません。欲しいのは、“安らぎを与える力”です。()()()()()()()()魔導の呪文ではなく、()()()()()()()()()()物語を書きたいんです」

 

「………もう書いているじゃないか」

 

『だな』

 

だが其処で、誠十郎はクラリスにそう言い、ゼロも同意した。

 

「………え?」

 

「読ませて貰った脚本は、とても面白かった。さっきも言ったけど、楽しみにしているんだ」

 

「神山さん………私に………出来るでしょうか? 沢山の人に喜んで貰える物語」

 

「出来るさ。俺は信じてる」

 

一片の疑いも無い表情で、誠十郎はそう断言する。

 

『俺もな』

 

聞こえはしないが、ゼロもクラリスに向かってそう言う。

 

「だから、君の物語を書き続けて欲しい。()()()()()()()()

 

「………ふう。分かりました………神山隊長を信じてみます」

 

笑顔でそう言うクラリスだが、表情には未だ何処か影が有る。

 

(クラリス………)

 

だが、誠十郎にはこれ以上に言う言葉が無い。

 

『…………』

 

其れを見たゼロは、“何か”を思い付いた様子を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・誠十郎の部屋………

 

「クラリス………未だ立ち直り切れて無いみたいだな………だが、これ以上、如何すれば………?」

 

クラリスを部屋に送り届けた後、自分の部屋へと戻って来た誠十郎はそう苦悩する。

 

『誠十郎。こっからは“俺の出番”だ』

 

すると、ゼロがそんな事を言って来た。

 

「ゼロ? 如何する気だ?」

 

『こうするのさ』

 

誠十郎が問うと、左腕が“独りでに”動き、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイが出現する。

 

「ゼ、ゼロ………?」

 

『ホイッ!』

 

戸惑う誠十郎に、ウルトラゼロアイが独りでに装着される。

 

「!? うおおおっ!?」

 

そして誠十郎は光に包まれ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラリスの部屋………

 

「…………」

 

机に向き合い、原稿用紙を見詰めているクラリス。

 

しかし、筆が全く進まない………

 

「………ハア~、駄目だぁ………」

 

アイデアは有るのに、其れを書き記す気が起きない………

 

作家はメンタル面が影響し易い仕事………

 

誠十郎の言葉で立ち直ったクラリスだったが、其れでも“僅かな引っ掛かり”が有り、其れが執筆を妨げていた。

 

「………やっぱり、私は………」

 

そうしている内に、またネガティブな気持ちが蘇りそうになってしまう。

 

と、その時………

 

()()()()()が室内に響いた。

 

「!? えっ!?」

 

その音にクラリスは驚く。

 

何故なら、ノックされたのは部屋の『扉』では無く………

 

『窓』だったからだ。

 

この部屋は2階………

 

“誰か”が窓をノックする等、不可能な筈である。

 

「…………」

 

しかし、恐怖より好奇心が(まさ)ったのか、恐る恐る窓の方へと近付くクラリス。

 

「!………!!」

 

そして、一瞬躊躇しながらもカーテンを開き、窓を開け放った。

 

其処に居たのは………

 

「よっ!」

 

浮遊しているウルトラマンゼロ(人間サイズ)だった。

 

「!? ええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!? ウルトラマンゼロさんっ!?」

 

クラリスは仰天の声を挙げる。

 

しかし無理も無い………

 

“窓を開けたらウルトラマンが居た”等、驚かない方が無理だ、と言う話だ。

 

「しーっ、静かに。“近所迷惑”だぜ」

 

人差し指を口の前に立てて、ゼロはそう言う。

 

「あ、ご、ゴメンなさい………じゃなくて!!」

 

「細かい事は気にすんなって。クラリス………で良かったよな?」

 

一瞬落ち着いたかに見えたクラリスだったが、直ぐにまた慌て出すと、ゼロがそう言う。

 

「あ、は、ハイ………あの、如何して私の事を?」

 

(一応は)初対面となる為、何故自分の事を知っているのか?と問い質すクラリス。

 

「いや~、実を言うと………俺“花組のファン”なんだよ」

 

「!? ええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!?」

 

ゼロの(おど)けた様な物言いに、またも仰天の声を挙げるクラリス。

 

「まあ、其奴は措いといて………」

 

(措いといて良いんでしょうか………?)

 

そう言いたくなるクラリスだったが、ゼロの独特な雰囲気に呑まれて言い出せない。

 

「クラリス」

 

「は、ハイ………」

 

「俺とデートしようぜ」

 

「………えっ?」

 

一瞬、何を言われたのか分からず、固まってしまうクラリス。

 

「!? え、ええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!?」

 

やがて事を認識すると、またも仰天の声を挙げる。

 

「へへ」

 

そんなクラリスに向かって、ゼロは右手を差し出す。

 

「あ………」

 

クラリスは一瞬躊躇しながらも、やがてゼロのその手を取った。

 

その光景はまるで………

 

ピーター・パンに誘われるウェンディの様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

デートを続ける誠十郎とクラリス。
尚、上海華撃団の店での食事シーンはカットとなっています。
流石にアレだけの事があった後でさも平然と飯を食いに行ける筈無いですから。
上海華撃団の出番は、華撃団大戦での対決が終わるまで、カットが続く事になると思います。
ご了承ください。

そして順調に見えたデートですが、何とキングジョーが出現!
丁度今日のウルトラマンZでストレイジカスタムのキングジョーが出ている筈なので、まさかの登場となりました。
そのキングジョーを重魔導の力で撃破したクラリス。
しかし、彼女はその力を忌み嫌っていた………
誠十郎の励ましだけでは元気を取り戻し切れなかったクラリスを、何とゼロがデートに誘います。

何かを携えている朧に、チブル星人から購入した『何か』を搭載したキングジョー2号機を用意し、霊能力者を狙うペダン星人。
様々な思惑が絡まりあいます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター9『ウルトラのデート』

チャプター9『ウルトラのデート』

 

上級降魔『朧』

 

宇宙恐竜 ゼットン

 

宇宙ロボット キングジョー

 

策略宇宙人 ペダン星人

 

合体合成獣 ペダニウムゼットン登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・上空………

 

「凄い………帝都の灯りがあんなに小さく………」

 

眼下に広がる帝都の灯りが、余りに小さく見える事に感嘆の声を漏らすクラリス。

 

「どうだ? 気持ち良いだろ?」

 

其れを聞いたゼロがそう返す。

 

今、クラリスは人間サイズのゼロの背に乗り、帝都の夜空を飛んでいた。

 

「は、ハイ………あの………ウルトラマンゼロさん」

 

「ゼロで良いぜ。何だよ?」

 

「その………如何して、私なんかを………えっと………デートに?」

 

「“カワイ子ちゃん”をデートに誘うのに理由が要るのか?」

 

「!? ふええっ!?」

 

ゼロにそう返され、クラリスは赤面する。

 

「さてと、あんまりのんびりしてるワケにも行かねえし………ちょっと飛ばすぜ!」

 

「! キャアッ!」

 

と、不意にゼロがスピードを上げると、クラリスは思わずゼロの背にしがみ付いてしまう。

 

(………温かい)

 

その背からは、まるで“太陽の光を浴びている”様な優しい温かさが伝わって来るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し飛んで………

 

2人がやって来たのは、帝都郊外の自然が広がる場所だった。

 

「確か………あの辺りだったか?」

 

ゼロはキョロキョロと森を見回していたかと思うと、その一角目掛けて降下した。

 

「あ~、もうちょっと先だったか………」

 

降りてから、場所が違った事に気付くゼロ。

 

「あの、ゼロさん。一体何処へ行く積りなんですか?」

 

クラリスは、ゼロの背から降りるとそう問い掛ける。

 

「まあまあ、良いから良いから。ほら行くぜ」

 

しかしゼロは、その質問には答えず、クラリスの手を取ると森の中へと歩き出す。

 

「あ、ちょっと………」

 

戸惑いながらも連れて行かれるままのクラリス。

 

(ゼロさんって、結構強引………)

 

そんなゼロの態度に呆れる。

 

(けど………こんなのも良いかも?)

 

しかし、不思議とそう思えてしまう。

 

ゼロの持つ雰囲気の為せる技だろうか?………

 

 

 

 

 

そしてまた少し歩いたかと思うと………

 

「お! 有った有った!」

 

「わあ! コレは………」

 

2人が辿り着いたのは、森の中の少し開けた場所で、一面に白い花が咲き誇っていた。

 

其処には、木々に遮られていた月の光も届いており、まるで真っ白な“舞台”の様だった。

 

「凄い………! あ!」

 

思わず近付こうとしたクラリスだったが、その手前には川が在り、足を止める。

 

川は、膝辺りまでの深さが在る。

 

「よっと」

 

「!? キャッ!?」

 

其処で何と!

 

ゼロはクラリスを“お姫様抱っこ”で抱き上げる。

 

「ゼゼゼゼ、ゼロさんっ!?」

 

「ハハハハハッ」

 

真っ赤になるクラリスの事を気にもせず、ゼロはお姫様抱っこをしたまま笑って川を渡る。

 

渡り終えると、クラリスを花畑の中へと降ろす。

 

「………綺麗」

 

花畑の中に佇み、そう呟くクラリス。

 

その光景はまるで絵画を思わせる。

 

「クラリス」

 

「えっ?」

 

と、背後から呼ばれて振り返ると、ゼロが『何か』をクラリスの髪に挿した。

 

其れは、咲いていた白い花の一輪だった。

 

「お~、似合う似合う」

 

「! はうう~………」

 

さっきから恥ずかしくなる事を連発してくるゼロに、とうとうクラリスは頭が茹で上がってしまい、その場に正座で座り込む。

 

すると………

 

「ちょいとゴメンよ」

 

「!?!?」

 

何とゼロが寝転がり、両手を後ろで組んだ頭を、クラリスの膝の上に乗せた。

 

所謂、『膝枕』である。

 

「へえ~、こりゃ良いもんだな」

 

「…………」

 

呑気にそう言うゼロに、クラリスは只々真っ赤になって縮こまるだけだった。

 

(タイガの親父さんがしたって言うデートの仕方をやってみたが、結構良い感じだな)

 

「ゼ、ゼロさんって………こういう事、慣れてるんですか?」

 

と、漸く落ち着きを取り戻して来たらしきクラリスが、ゼロにそう尋ねる。

 

「そういうワケじゃねえけどよ………元気出たか?」

 

「えっ? あ………ゼロさん、知ってたんですか?」

 

「“ウルトラマンには何でもお見通し”よ」

 

膝枕されたまま、クラリスの顔をビッと指差して言うゼロ。

 

「…………」

 

再び表情に影の差すクラリス。

 

まだ自分の持つ力に思う処が有る様だ。

 

「なあ、クラリス。俺の事を如何思う?」

 

「えっ?………!? ええっ!?」

 

しかし、ゼロの不意な問い掛けにまたも赤面する。

 

「“怪獣や宇宙人を倒せる()()()()()()()()”を如何思う?」

 

「あ、“そう言う意味”ですか………」

 

ゼロの質問の意図が分かり、クラリスはガッカリした様な安心したような様な複雑な気持ちになる。

 

「………凄いと思います。私達じゃ手に負えない様な怪獣や宇宙人を倒す事が出来たり、街を直したりする力は正に神秘です」

 

「お前の力だって相当だと思うぜ。今日、キングジョーを………あの“デカいロボット”を倒したんだろ?」

 

「………私の力は所詮“破壊の力”です。ゼロさんみたいな“()()が使う力”とは違うんです」

 

暗い表情のまま、自分の掌を見遣るクラリス。

 

「よっと」

 

と其処で、ゼロが身体を起こす。

 

「俺達ウルトラマンは、()()()この力を手に入れたワケじゃない」

 

「えっ?」

 

「力を得たのは………“偶然”だった」

 

ゼロは、ウルトラマン達が『如何やって力を手に入れた』のか語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼロの故郷………M78星雲ウルトラの星・光の国の人々は、遥かな昔は“人間と同じ姿”をしていた。

 

或る日、太陽が爆発し、ウルトラの星は死の星となったが、人工太陽『プラズマスパーク』を開発し、再び光を取り戻す。

 

しかし、プラズマスパークの光に含まれる放射線『ディファレーター光線』を浴びた結果、ウルトラの星の人々は超人………

 

『ウルトラマン』へとなる力を得た。

 

そして、ウルトラ一族が誕生した後………

 

全宇宙の征服を目論む『暗黒宇宙大皇帝 エンペラ星人』が率いる怪獣軍団が光の国を襲撃。

 

激戦の末にコレを退けたウルトラ一族は、宇宙には様々な悪が存在しており、力を得た自分達には“平和を守る使命”が有る、と考え『宇宙警備隊』を設立。

 

其れ以来、日夜地球を始めとした全宇宙の平和を守っているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………って言うのが、俺達がウルトラマンになった経緯(いきさつ)だ」

 

「そうだったんですか………でも、私利私欲の為でなく、平和を守る為に使おうって思ったのなら立派じゃないですか。やっぱり、私のは只の破壊の力………」

 

「ウルトラマンの中にも、()()()()()()が居る」

 

「えっ?」

 

「其奴の名は『ベリアル』………『ウルトラマンベリアル』。俺にとっても因縁の相手だった奴だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウルトラマンベリアル』………

 

ウルトラマンに生まれながら、悪の道に走った者である。

 

元は宇宙警備隊の大隊長『ウルトラの父』こと『ウルトラマンケン』の親友であったが………

 

エンペラ星人の圧倒的な力に魅せられ、ウルトラの父が順調に出世していった事への嫉妬から………

 

ウルトラの星の命であるプラズマスパークの心臓………『プラズマコア』を奪おうとしたが、強力なパワーを制御し切れず失敗。

 

その後、ウルトラの星を追放された彼は、『究極生命体 レイブラッド星人』の亡霊と出会い、怪獣を操る『レイオニクス』の力と『ギガバトルナイザー』を得る。

 

そして、光の国へ復讐に来たが、ウルトラマンキングによって宇宙牢獄へ投獄される。

 

だが、後に脱走し、倒されては蘇り、幾度と無くゼロやウルトラ戦士達と激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1度は別の宇宙を完全に破壊した事もある。ま、キング爺さんのお陰でギリギリ何とかなったがな」

 

「………今、そのウルトラマンは?」

 

「………死んだよ。最後は自分の息子に倒されてな」

 

ゼロの脳裏にベリアルの息子………『ウルトラマンジード』の事が過る。

 

「息子さんに………」

 

「実を言うとな………俺も、ベリアルと同じ事をしようとしたんだ。プラズマコアの力を手に入れようとな」

 

「!? ええっ!?」

 

信じられないと言う表情になるクラリス。

 

(すんで)の所で親父(セブン)に止められたけどな。今思い返すと、何て馬鹿な事をしようとしたんだ?って思うぜ………“黒歴史”だな」

 

頭を掻きながら、忌々し気に呟くゼロ。

 

「クラリス。力に()()は無い。只“其処に在る”だけだ………要は、“使う奴の()()()”次第だ。“破壊によって助けられる”事も有る」

 

「でも………」

 

「仮に、お前が何かを間違ったとしても、親父が俺を止めてくれたみたいに、お前にも“止めてくれる仲間達”が居るだろう?」

 

「…………!」

 

ゼロの言葉に、クラリスの脳裏に誠十郎とさくら達(花組)の姿が過る。

 

「ま、そんな心配は要らねえと思うけどな」

 

「如何してですか?」

 

「お前が“優しい心”を持ってるからだ。俺が保証する」

 

「ゼロさん………」

 

「お前の一族が破壊の為に力を使って来たってんなら………その歴史を()()()()()()()()!!」

 

拳を握って力説するゼロ。

 

「…………」

 

クラリスは、己の両手を見遣る。

 

その手にまた、『ウルトラの星』の温もりが蘇る。

 

「………ありがとう、ゼロさん」

 

そして、クラリスは屈託無い笑顔を見せた。

 

「へへっ、漸くホントの笑顔が見れたな」

 

そんなクラリスの顔を見て、満足そうに頷くゼロ。

 

「ゼロさん………良かったら、もっとゼロさんの話、聞かせてくれませんか?」

 

「おう、良いぜ。そうだな………やっぱり最初は、さっき言ったベリアルとの戦いからか?」

 

そしてクラリスは、ゼロが語る武勇伝を聞き始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・クラリスの部屋………

 

暫くゼロの話を聞いた後、漸く帝劇へと戻って来た2人。

 

「気を付けろよ」

 

「あ、ハイ」

 

出て行った時と同じ様に、窓から部屋へと入るクラリス。

 

「其れじゃ、頑張れよ。良い脚本が書けるといいな」

 

「ふふふ、期待してて下さい」

 

窓の外で浮遊するゼロに、クラリスは微笑みながらそう返す。

 

「ハハ、じゃあな………デヤッ!」

 

ゼロは上昇すると、帝都の夜空の中へと消えて行った。

 

「………素敵なデートをありがとう、ゼロさん」

 

その姿を見えなくなるまで見送り、そう呟くクラリス。

 

そして窓を閉めると、机の上に広げっ放しだった原稿用紙を見遣る。

 

「…………」

 

クラリスは椅子に座ると、直ぐ様原稿用紙にペンを走らせ始める。

 

「私の力は、破壊の力……でも、そうなるか如何かは()()()………この力を物語を生み出す『創造の力』にだって出来る」

 

既に時刻は深夜を回っているが、クラリスは全く衰えずにペンを走らせて行く。

 

「例え間違っても………隊長が、皆が止めてくれる………だから信じよう。隊長が、皆が………そしてゼロさんが信じてくれた私を………今だけでも!」

 

時間も気にならない程に、今のクラリスは情熱に溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日………

 

『クラリスの奴、書けたのか?』

 

「其れを今から確かめに行くんだろう?」

 

クラリスの様子を見に、部屋へと向かっている誠十郎(+ゼロ)。

 

「って言うか、ゼロ。昨日の()()は無いだろう。人を無理矢理変身させた挙句、デートだなんて………」

 

『良いじゃねえか。お前だってクラリスとデートしたんだろ? だったら、()()クラリスとデートしたって何の問題もねえだろ?』

 

「お前なぁ………ハア~、もう良い」

 

あっけらかんとした態度を取るゼロに、誠十郎は諦めた様に溜息を吐く。

 

やがてクラリスの部屋の前に着くと、ドアをノックした。

 

「は、はい!」

 

「神山だけど………今、大丈夫かな?」

 

「はい、どうぞ」

 

クラリスに許可され、部屋の中へと入る誠十郎。

 

「神山さん………」

 

誠十郎を迎える、目の下にやや隈を作ったクラリスが出迎える。

 

「クラリス………まさか寝てないのか?」

 

「あははは………何だかやる気が漲っちゃって………つい」

 

苦笑いしながらそう言うクラリス。

 

『オイオイ、女の子が徹夜だなんて、感心しないぜ』

 

「頼んだ俺が言うのも何だが、君は女優なんだから、無理はしないようにしてくれ」

 

ゼロの言葉に、誠十郎はやんわりながらクラリスを注意する。

 

「すみません………」

 

「其れで、その脚本の方は?」

 

「ハイ。後は最後の台詞だけです」

 

「何だ、其れじゃもう終わった様なものじゃないか」

 

クラリスの脚本が、もう出来上がったも同然だと思い、笑みを浮かべる誠十郎。

 

「いいえ。これが1番()()で、そして1番()()()んですよ。どんな言葉が………心の奥に、残るんでしょうか………」

 

しかし、クラリスは其処が1番難しいと語る。

 

とその時!!

 

帝劇内にサイレンが鳴り響いた!

 

「!!」

 

「! 敵襲かっ!!」

 

『チイッ! こんな時に!』

 

「クラリス、行くぞ!」

 

「ハイ!」

 

ゼロが愚痴る様に言う中、誠十郎とクラリスは直ぐ様作戦司令室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・地下………

 

作戦司令室………

 

戦闘服に着替えた花組が到着すると、モニターには帝都を闊歩する傀儡機兵の姿が映し出されていた。

 

「降魔の出現を確認! 傀儡機兵が次々に現れているとの事です!」

 

カオルが現在の様子を報告する。

 

「民衆の避難は?」

 

「警察と協力して実行中や!」

 

「陸軍も協力してくれている。万が一、怪獣や星人が現れた場合に備え、遠方のエリアに居る人々にも避難して貰っている」

 

すみれの問いに、こまちとサコミズがそう返す。

 

「分かりました。急いで頂戴ね………司馬くん、イデさん。機体の整備状況は?」

 

「勿論、全て完了してますよ、すみれさん!」

 

「万事抜かり無しです!」

 

続いて無限の事を令士とイデに尋ねると、2人からは頼もしい返事が返って来る。

 

「流石ですわね………神山くん、花組の出番よ。無限で出撃して頂戴」

 

「はっ! 皆、無限での実戦は初めてとなるが、演習通りにやれば問題無い。気負わず、何時も通りにやってくれ」

 

すみれに気を付けをしながら返事をすると、初の無限での出撃となる花組の面々にそう言う誠十郎。

 

「…………」

 

しかし、クラリスだけがやや俯いている。

 

「? クラリス? どうかしたのか?」

 

「! い、いえ。すみません。大丈夫です」

 

「…………」

 

直ぐに取り繕うクラリスだったが、誠十郎はその姿に一抹の不安を感じる。

 

『クラリス………』

 

ゼロも不安そうな様子を見せる。

 

「さて、其れじゃあ誠十郎。お前の戦い振り、久し振りに見せて貰うぜ」

 

と其処で、令士が誠十郎にそう言って来る。

 

「ああ、任せろ。よし、行くぞ、皆! 帝国華撃団・花組、出撃せよ!」

 

「「「「了解っ!!」」」」

 

そして誠十郎の号令に、さくら達が勇ましく返事を返す。

 

「…………」

 

しかし、クラリスだけが無言のままだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・浅草………

 

帝劇・花やしき支部………

 

場所が離れている為、花組は帝劇から『弾丸列車 轟雷号』で浅草支部まで移動した後、翔鯨丸に乗り込んでの出撃となった。

 

『4th gate open! 4th gate open!』

 

花組が搭乗した翔鯨丸が、発進ゲートの位置へと移動する。

 

『Be quick! Be quick!』

 

浅草仲見世商店街に偽装された地上甲板が跳ね橋の様に展開。

 

ハッチが解放される。

 

『Pull the throttle! Pull the throttle! 10 seconds before! 10 seconds before!』

 

翔鯨丸のエンジンが始動する。

 

『All out! All out! Pull the throttle! All right Let’s go!』

 

そして作業員の退避が完了すると、固定器具(ガントリーロック)が外れ、翔鯨丸は空へと舞い上がった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・降魔の出現地点………

 

翔鯨丸は程無く、降魔の出現地点へと到着した!

 

「其処までです!」

 

さくらの声で破壊活動を行っていた傀儡機兵達が動きを止め、上空を見上げる。

 

其処へ、翔鯨丸から6機の無限が投下され、着地を決める。

 

「「「「「「帝国華撃団! 参上っ!!」」」」」」

 

そして傀儡機兵達を前に、雄々しく名乗りを挙げたのだった。

 

「来たか………帝国華撃団」

 

その様子を、高い建物の上から見下ろしている人影が在った。

 

あの仮面の男だ。

 

その名は『朧』。

 

『夜叉』と同じく、人の姿をした上級降魔だ。

 

朧の眼下で、花組の無限が次々に傀儡機兵達を蹴散らして行く。

 

誠十郎機とさくら機の剣戟で細切れにされる傀儡機兵・侍達。

 

巨大なハンマーを持った初穂機は、自ら独楽の様に回転して野槌を纏めてブッ飛ばす。

 

あざみ機はトリッキーな動きで撹乱しつつ、隙を突いて手裏剣やクナイ、爆弾を投擲し、針鼠や黒焦げにした金鋸を格闘戦で仕留めて行っている。

 

アナスタシア機は左手の拳銃を乱射して、飛行している業火を撃ち落として行き、纏まって襲って来た際には右手の番傘型のライフルからレーザーを発射して薙ぎ払う。

 

初めての機体にも関わらず、皆順調に戦果を挙げている。

 

そんな中………

 

クラリス機の戦果だけが芳しくない………

 

出現させた魔法陣から魔導弾を次々に放っているが、威力が足りないのか撃ち漏らしが出ており、他のメンバーがフォローに入っている。

 

「其れじゃあ1つ、パーッと行こうかねえ。ヒヒッ、ハハハハハハッ! 魔幻空間、展開!」

 

そんなクラリス機の様子を見て、朧は楽しそうな笑いを零したかと思うと、夜叉と同じ様に魔幻空間を展開させた!

 

「!? コレはっ!?」

 

「あの時と同じ!?」

 

誠十郎とさくらが驚きの声を挙げる中、周辺の光景が激変する。

 

しかし、夜叉の時の様な絡繰りが犇めく空間では無く、所々に不気味に発光する結晶の様な物が生えた岩山の様な空間だった。

 

「前と景色が違うぞ?」

 

「恐らく、今回魔幻空間を作っているのは別の上級降魔なんだろう」

 

初穂の言葉に、誠十郎がそう推測する。

 

「ようこそぉ、帝国華撃団の諸君。オレ様の魔幻空間へご招待、ってね」

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

と其処へ、上空から声が聞こえて来て一同が見上げると、其処には空中に浮遊する朧の姿が在った。

 

「お前がこの空間を作り出した降魔か!?」

 

「お前なんて呼び方するなよ………オレ様は『朧』。朧様と呼べよ」

 

誠十郎の声に、朧は少し怒った様にそう返す。

 

「朧………何故この空間を作る! 貴様の目的は何だ!?」

 

「目的? “人を苦しめて殺す”のに………何か理由って要るのか?」

 

「な、何だと!!」

 

『下衆野郎め………』

 

朧の言葉に、ゼロも嫌悪感を露わにする。

 

「貴様! 人の命を何だと思っている!?」

 

「そんなの………オレの“エサ”だろ? 違うのか? オレの『オモチャ』かなあ?」

 

「き、貴様ぁっ!!」

 

「吠えるなよ。今()()()()()からよぉ………魔の力持ちて来たれ! 『傀儡機兵・荒吐』!!」

 

朧がそう唱えると、人型の上半身に蜘蛛の様な下半身をした傀儡機兵………『荒吐』が現れた!!

 

その荒吐に乗り込もうとする朧。

 

「おっと、忘れるところだったぜ………『コイツ』も試すんだったな」

 

と其処で、思い出したかの様に服の内側から『あの人形』を取り出す。

 

『! アレは!………まさか『スパークドールズ』!?』

 

その人形………『スパークドールズ』を見たゼロが驚きの声を挙げる。

 

「『スパークドールズ』? ゼロ、何だソレは?」

 

ゼロの驚きの声を聴いた誠十郎は、一旦通信を切ってからゼロに問い質す。

 

『嘗て『ダークスパークウォーズ』と言う戦いで『ダークルギエル』と言う闇の支配者が『ダークスパーク』と言う道具で、ウルトラマンや怪獣達を人形に変えた事があった。若しアレが、()()()スパークドールズだとすると………しかも『アレ』は!!』

 

「ほらよ!」

 

とゼロが説明していると、朧はスパークドールズを無造作に放り、妖力を注ぎ込んだ!!

 

スパークドールズが怪し気な光に包まれたかと思うと………

 

忽ち元の怪獣の姿となった!!

 

「こ………コイツは!? 何て威圧感だ………」

 

その怪獣から、途轍も無い“威圧感”を感じる誠十郎。

 

『当然だ。奴は、1度()()()()()()()()()()()()()()怪獣だ』

 

「なっ!? ウルトラマンを倒した!?」

 

ゼロの言葉に、誠十郎は驚愕の声を挙げる。

 

 

 

 

 

そう………

 

その怪獣は黒と白の体色で、黄色い発光器官を持ち………

 

カミキリムシの様な甲羅と、目や口の無い顔に角の様な触角が生えている………

 

嘗て『初代ウルトラマン』を1度は倒した事の有る最強の怪獣………

 

『宇宙恐竜 ゼットン』だった!!

 

 

 

 

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

唸りの様な声と電子音を響かせて佇んでいるゼットン。

 

「う………」

 

「な、何だ、コイツ………?」

 

「この怪獣………凄く不気味………」

 

「まるで悪魔ね………」

 

さくら・初穂・あざみ・アナスタシアも、ゼットンから発せられる威圧感に、尻込みする様な様子を見せる。

 

「…………」

 

しかしクラリスだけは、“何か”を感じ取った様な表情でゼットンを見ていた。

 

「ヒャハハハハッ! 伝わって来るぜぇ! お前達の恐怖がよおっ!! さあ、ゼットン! 其奴等を………」

 

荒吐に乗り込み、その様子を見た朧が楽しそうに笑いながら、ゼットンを帝国華撃団に嗾けようとした正にその瞬間!!

 

突如魔幻空間の結界を突き破り、上空から飛来した物が複数有った!!

 

「!? 何っ!?」

 

「今度は何だっ!?」

 

朧と誠十郎が驚きの声を挙げると、飛来した物体は次々と合体!

 

グワァシ………グワァシ………

 

キングジョーが姿を現した!!

 

「! アレは昨日のっ!?」

 

「ほう? 霊力とやらの反応が有ったので来てみれば………コレは丁度良い事になっているな」

 

誠十郎がそう言った瞬間、外部スピーカーでペダン星人・クザの声が響く。

 

「何だテメェはっ!!」

 

「私はペダン星人・クザ。早速だがそちらの怪獣を貰い受けようか」

 

朧が怒鳴ると、ペダン星人・クザはそう返し、キングジョーがゼットンの方を向く。

 

「ああ? バカかテメェは! やるワケ無えだろうがっ!!」

 

「その怪獣は、君の様な()()()()には勿体無い。我々が“有効に活用”してあげよう」

 

「テメェッ!!」

 

下等生物扱いされた朧が憤慨するが、次の瞬間!

 

「『B因子システム』、作動」

 

『!? 何っ!?』

 

其れを無視して発せられたペダン星人・クザの台詞に、今度はゼロが驚愕した。

 

 

 

 

 

『B因子』………

 

其れは即ち『ベリアル因子』………

 

ウルトラマンベリアルの遺伝子だった!

 

 

 

 

 

キングジョーから怪し気な紫色の光が発せられ、やがて同色の光の粒が泡の様に湧き出す。

 

そしてその大量の光の粒が、まるで生き物の様に動いてゼットンを包み込むと、キングジョーの元へと引き寄せる!!

 

「!? なあっ!?」

 

朧が驚きの声を挙げた瞬間、引き寄せられたゼットンが、キングジョーの中へと入り込む様に吸収されて行く。

 

やがて、怪し気な光の輝きが一際増したかと思うと弾け………

 

其処には、ゼットンとキングジョーが合体した怪獣………

 

『合体合成獣 ペダニウムゼットン』が佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ゼロとデートするクラリス。
タイガの父親………即ち『タロウ』がしたデートを参考にしたと言っていますが、声優ネタです。
詳しくは『マジンガーZ』の第38話『謎のロボットミネルバX』をご覧下さい。

漸く立ち直ったクラリスですが、そこへお約束の様に敵襲。
上級降魔『朧』が出現。
前回で持っていたのはやはりスパークドールズ。
しかもよりによってあの強豪中の強豪『宇宙恐竜 ゼットン』

只でさえ大変な敵だったと言うのに、そこへペダン星人がキングジョー2号機で乱入。
前回言っていたチブル星人から買ったと言うのは、タイガで登場したB因子………
ベリアル因子です。
それを使って何と!!
『ペダニウムゼットン』を誕生させてしまいます!!
もう滅茶苦茶です!!

果たして花組とゼロは如何戦うのか?
そして不調な様子のクラリスは?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター10『月の奇跡』

チャプター10『月の奇跡』

 

上級降魔『朧』

 

宇宙恐竜 ゼットン

 

宇宙ロボット キングジョー

 

策略宇宙人 ペダン星人

 

合体合成獣 ペダニウムゼットン登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔幻空間内………

 

「か、怪獣とロボットが………」

 

「合体したっ!?」

 

ペダニウムゼットンの姿を見たさくらと初穂が驚愕の声を挙げる。

 

「フハハハハ、チブル星人から買った『B因子システム』は上手く作動した様だな」

 

ペダニウムゼットンから、ペダン星人・クザの満足気な笑い声が響く。

 

「テメェッ! ()()ゼットンを良くも!!」

 

と、朧がペダン星人・クザに対し怒りを露わにした瞬間………

 

「おや? ()()居たのかね、“下等生物”くん。目障りだ………消え給え」

 

ペダン星人・クザの声と共に、ペダニウムゼットンの顔の発光器官から赤いビームが放たれた!!

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!」

 

不意打ちの1撃を真面に食らってしまい、朧の荒吐は黒煙を挙げながら谷底へと落下して行った。

 

「なっ! 上級降魔を1撃で………!?」

 

「さて………」

 

誠十郎が驚きの声を挙げる中、ペダニウムゼットンは花組の方へと向き直る。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

一斉に身構える花組の無限達。

 

「帝国華撃団………だったかな? 君達に勝ち目は無い。大人しく降伏し給え。我々は、“君達を()()()()()()()”のだよ」

 

「! 何っ!?」

 

「私達を………必要?」

 

「如何言う事?」

 

ペダン星人・クザの思わぬ言葉に、クラリスが首を傾げ、あざみが訝し気に問い質す。

 

「我々は君達が持つ『霊力』と言う力に注目している。その力を取り込めば、“より強力な侵略ロボット”を開発出来るのでは無いか?とね」

 

「つまり………私達に“侵略の為の尖兵”になれ、って事?」

 

「巫山戯んなっ! 誰がなるか! そんなもん!!」

 

アナスタシアがそう解釈すると、初穂が怒鳴り声を挙げる。

 

「そうかね………では『兵士』としてでは無く、『生体ユニット』として活用してやろう」

 

其れまでの会話と同じトーンで、サラッと恐ろしい事を口にするペダン星人・クザ。

 

「ケッ! 本性を現しやがったなっ!!」

 

「あざみ達は生体ユニットにも………兵士にもならない」

 

「ペダン星人! 帝国華撃団として、貴方を倒します!!」

 

初穂とあざみがそう言うと、さくらが刀の鋒をペダニウムゼットンに突き付けて、そう宣言した。

 

「愚かな………やれ! ペダニウムゼットンッ!!」

 

ゼットーン………グワァシ………グワァシ………

 

ペダン星人・クザがそう命じると、ペダニウムゼットンは唸り声と作動音を挙げ、頭部の角から赤い稲妻状の光線を、全方向に放った!

 

「!? うおわっ!?」

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

光線が走った後から爆発が起き、花組の無限は次々に吹き飛ばされる。

 

「!? しまったっ!?」

 

と、最も吹き飛ばされていた誠十郎機が崖まで到達し、そのまま落下した!

 

「! 神山隊長!」

 

「隊長っ!!」

 

さくら機とクラリス機が慌てて崖を覗き込む。

 

すると、誠十郎機が崖の壁面に二刀を突き立てて、しがみ付いている姿を確認する。

 

「神山隊長! 御無事ですかっ!?」

 

落下していなかった事に安堵しながらも、直ぐに誠十郎機へと通信を送るさくら。

 

しかし、通信機からはノイズしか返って来ない。

 

『皆、聞こえる? 神山くんは無事よ! けど、さっきの攻撃で無限の通信機が故障したみたいなの。ココからは私が指揮を執るわ!』

 

と其処へ、作戦司令室のすみれからそう通信が送られて来た。

 

ゼットーン………グワァシ………グワァシ………

 

其れと同時に、ペダニウムゼットンがゆっくりと動き出す。

 

「来たわよ!」

 

『皆! 兎に角足を止めないで! あの大きさよ! 直撃を受けたら無限と言えど一溜りも無いわ! 動き回って狙いを付けさせないで!』

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

すみれの指示を受け、さくら達はペダニウムゼットンの周りをローラーダッシュで動き回るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、誠十郎機の中では………

 

「クソッ! 通信機は完全に駄目か! しかし、この崖を登る事は………」

 

通信機をチェックした後、目の前の断崖絶壁を見た誠十郎がそう声を漏らす。

 

『誠十郎! 俺が行くっ!!』

 

と其処で、ゼロがそう呼び掛けた。

 

「頼む、ゼロ!」

 

誠十郎はそう言うと、左腕を構えて、ウルトラゼロアイを出現させる。

 

「デュワッ!」

 

そしてそのウルトラゼロアイを目に装着!

 

「フッ! セエエヤァッ!!」

 

誠十郎の姿がゼロへと変わり、無限から飛び出すと巨大化する!

 

「ハアアッ!!」

 

そして、ペダニウムゼットンの前に着地した!

 

「! ゼロさん!!」

 

「アレが………ウルトラマンゼロ」

 

「フフ、確かに………女には見えないわね」

 

さくらが歓声を挙げ、初めてゼロを見たあざみとアナスタシアがそう呟く。

 

「現れたな、ウルトラマンゼロ」

 

「ペダン星人! テメェ等のくだらねぇ野望もココまでだぜ!」

 

ペダニウムゼットンをビシッと指差し、ゼロはそう言い放つ。

 

君の父親(ウルトラセブン)には随分と世話になった。その礼をさせて頂こうか」

 

と、ペダン星人・クザがそう言い放つと、ペダニウムゼットンは顔の発光器官から赤いレーザーを放つ!

 

「おっとっ!!」

 

しかしゼロは、錐揉み回転をして躱す。

 

「エメリウムスラッシュッ!!」

 

そして反撃にと、エメリウムスラッシュを放つ。

 

ゼットーン………グワァシ………グワァシ………

 

ペダニウムゼットンは、両手を上げる様に構えるとバリアを展開。

 

エメリウムスラッシュはバリアを貫けず、霧散してしまう。

 

そして次の瞬間、ペダニウムゼットンはテレポートで忽然と姿を消す。

 

「!?」

 

辺りを見回すゼロ。

 

その背後に、ペダニウムゼットンが出現する。

 

「フッ!!」

 

だが、素早く振られた鋭い爪の生えた腕を、ゼロは振り返りながら受け止める。

 

「オオリャアッ!!」

 

そしてペダニウムゼットンに前蹴りを叩き込む!

 

ゼットーン………グワァシ………グワァシ………

 

蹌踉て後退るペダニウムゼットン。

 

態勢を立て直すと、ゼロに向かって両手で形成した火球を放つ。

 

「フッ! ウウリャアッ!!」

 

ゼロはその火球を受け止めると、明後日の方向へ投げ捨てる。

 

「ハアッ!! ウルトラゼロキイイイイイィィィィィィーーーーーーーックッ!!」

 

飛び上がると、ペダニウムゼットン目掛けてウルトラゼロキックを繰り出す。

 

ゼットーン………グワァシ………グワァシ………

 

再度バリアを展開し、ウルトラゼロキックを受け止めるペダニウムゼットン。

 

「オオオリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

だが、ゼロが気合の叫びと共にウルトラゼロキックに更にエネルギーを籠めると………

 

何処ぞの研究所のバリアの様に、バリアがパリーンッと割れ、ウルトラゼロキックはペダニウムゼットンを直撃した!

 

「!? ぬおおおおおっ!?」

 

大きくブッ飛ばされたペダニウムゼットンから、ペダン星人・クザの悲鳴が挙がり、地面に叩き付けられる様に倒れる。

 

「オノレェ………()()()()()我々の邪魔をしおって………」

 

余裕が無くなって来た様なペダン星人・クザの声が漏れる中、ペダニウムゼットンが起き上がる。

 

 

 

 

 

と、その瞬間!!

 

ペダニウムゼットンの“黄色い”発光器官が、()()に変色した!!

 

 

 

 

 

「!? 如何したっ!?」

 

「ベリアル因子の濃度が急激に上がっていますっ!! 原因不明っ!!」

 

ペダン星人・クザの慌てた声に、ペダン兵士がそう答える。

 

「? 何だ?」

 

ゼロも異変を感じ取り、首を傾げる。

 

と、次の瞬間!!

 

ペダニウムゼットンは何の予備動作も無く巨大な火球………『ペダニウム・メテオ』を形成し、ゼロ目掛けて放った!!

 

「!? うおわっ!?」

 

咄嗟に身を捻り、直撃を躱すゼロ。

 

ペダニウム・メテオはそのまま魔幻空間の端の方まで飛んで行き、着弾したかと思うと………

 

まるで核爆弾が爆発したかの様な巨大な爆発とキノコ雲を発生させた!

 

「な、何だありゃあっ!?」

 

「さっきまでとは明らかに威力が違う………」

 

爆風が自分達の場所まで届く中、初穂とあざみが戦慄の声を挙げる。

 

ゼットーン………グワァシ………グワァシ………

 

その直後、ペダニウムゼットンは上半身ごと頭を振り回し、周辺に角からの稲妻状の光線を出鱈目に放つ。

 

「キャアッ!?」

 

「まさか………暴走してる?」

 

直ぐ傍を稲妻状の光線が掠めて悲鳴を挙げるさくらと、ペダニウムゼットンの様子を見てそう推察するアナスタシア。

 

「B因子システム、完全に制御不能!」

 

「まさか!? “ベリアル遺伝子の中に刻まれた()()”が、ウルトラマンゼロに反応したと言うのか!?」

 

ペダン兵士の悲鳴の様な報告に、ペダン星人・クザはそんな推察をする。

 

ゼットーン………グワァシ………グワァシ………

 

その間にも、ペダニウムゼットンは暴走を続け、稲妻状の光線を辺りにばら撒き続ける。

 

「………あの子(ゼットン)………苦しんでる?」

 

そんな中でクラリスは、()()()()融合させられているゼットンが苦しんでいる事を感じ取る。

 

「チイッ! ベリアルの奴! 死んでからも厄介事を残してくれやがってっ!!」

 

煙が上がるペダニウム・メテオが掠めた箇所を手で押さえながら、ゼロが立ち上がる。

 

『ゼロ! あの火球をまた使われたらマズイッ!!』

 

「ああ、速攻でケリを着けるぞっ!!」

 

誠十郎がそう言うのを聞きながら、ゼロはペダニウムゼットンへと突撃する。

 

「待って、ゼロさんっ!!」

 

「!? うおっと!?」

 

しかし其処で、クラリスからの制止の声が飛び、ゼロは転びそうになりながらも急ブレーキを掛けて止まる。

 

「ゼロさん! あの子を助けてあげてっ!!」

 

「!? クラリスッ!?」

 

「お前、何言ってんだっ!?」

 

そう叫びを挙げるクラリスに、さくらと初穂が驚愕を露わにする。

 

「クラリス、アレは怪獣………“私達の()”」

 

「違います! あの子は今、無理矢理操られていて苦しんでいるんです!!」

 

あざみがそう言うが、クラリスは反論する。

 

「如何してそんな事が分かるの?」

 

「………私にも分かりません。でも! “感じる”んです!! あの子は本当は戦いたく無いって思ってる! 苦しんでいるって!!」

 

「其れを信じろって言うの? 其れに貴女、不調な様子を見せていたじゃない。まさか本気で戦って無かったんじゃないの?」

 

理由が自分でも分からないと言うクラリスに、アナスタシアは現実的且つ厳しい意見を返す。

 

「…………」

 

そう返されて、クラリスは俯く。

 

………だが!!

 

「俺は信じるぜ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

他ならぬゼロがそう言い、クラリス達が驚きを露わにする。

 

「ゼロさん………」

 

「言ったろ。お前には“破壊の力”以上に、“優しい心”が有るってな………だから俺は信じる。お前等の隊長だってそう言うだろうぜ」

 

『ああ、勿論だ』

 

聞こえはしないが、ゼロの中の誠十郎も力強く頷く。

 

「そうです! ゼロさんと神山隊長が信じるなら、私だって信じます!!」

 

「ああ、そうだな………仲間を疑うなんて、アタシ等らしく無えっ!」

 

「あざみも信じる………」

 

するとさくら・初穂・あざみから、続々とそう声が挙がる。

 

「仲間、ね………」

 

と、アナスタシアは一瞬“何か”を思い遣る様な様子を見せる。

 

「………良いわ。私も信じるわ」

 

しかし、次の瞬間には微笑を浮かべてそう言った。

 

「皆さん………」

 

「うっし! 其れじゃあ、行くか! アイツ(ゼットン)を助けになっ!!」

 

クラリスが感激に若干震えていると、ゼロは肩を回しながら、暴走しているペダニウムゼットンを見据えてそう言った。

 

「しかしよぉ………助けるのは良いが、具体的には如何すりゃ良いんだ?」

 

と其処で、初穂がそう疑問を呈する。

 

「其れは………」

 

『皆、聞こえるかい?』

 

ゼロが何か言おうとしたところ、其れを遮る様に、通信回線にサコミズの声が入って来た。

 

「! サコミズ副司令!!」

 

『イデ隊員の分析によると、あのペダン星人と言う奴等が使っていたB因子と言うエネルギーは、あの怪獣の()()()()………つまり、“合体する前のロボットの方の部分”から放射されている事が分かった』

 

『つまり、あの怪獣の金属部分()()を攻撃してB因子を止め、残っているB因子を除去する事が出来れば、あの怪獣を元に戻せるかも知れない』

 

「ホントですかっ!?」

 

サコミズとイデの説明に、さくらが声を挙げる。

 

『但し、“金属部分の全箇所”を()()()破壊しなければならない。1箇所1箇所壊して行ってはB因子の供給バランスが崩れて、あの怪獣の方が保たない可能性が有る』

 

『そして其れが出来るのは………』

 

「私だけですね………」

 

更にサコミズとイデがそう説明を続けると、クラリスがそう声を挙げた。

 

その表情は、既に決意と覚悟を決めた顔だ。

 

ゼットーン………グワァシ………グワァシ………

 

と、何かしようとしている気配を感じたのか、ペダニウムゼットンが稲妻状の光線をばら撒きながら近付いて来た!!

 

「!!」

 

「させるかぁっ!!」

 

だが、すかさずゼロが突撃!!

 

ペダニウムゼットンの角を、両方共鷲摑みにする!!

 

「! うおわあっ!? ぐおおおおおっ!?」

 

途端に、まるで避雷針の様に稲妻状の光線がゼロの身体に集中する!

 

「ゼロさん!」

 

「クラリス! 今の内だぁっ!!」

 

「! ハイッ!!」

 

ゼロにそう言われ、クラリスの無限が、背中に装備されていた巨大な魔導書を手に取る。

 

そして魔導書を開くと、クラリスは目を閉じて霊力を集中させ始める。

 

クラリス機から緑色の光が立ち昇り始める。

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!?」

 

その間にも、ゼロの身体には稲妻状の光線が容赦無く襲い掛かる。

 

ピコン、ピコン、ピコン………

 

とうとうウルティメイトブレスレットからのエネルギー供給が追い付かなくなり、カラータイマーが点滅を始める。

 

『クラリスを除く各員はウルトラマンゼロを援護せよっ!!』

 

「「「「了解っ!!」」」」

 

と其処で、サコミズの号令と共にさくら達が動く。

 

ゼットーン………グワァシ………グワァシ………

 

角を摑まれていたペダニウムゼットンが、ゼロを引き剥がそうと、その鋭い爪の生えた右手を突き立てようとする。

 

「!!」

 

「させませんっ!!」

 

しかし、さくら機が跳躍と共に刀を振るうと、ペダニウムゼットンの右手の爪が全て斬り落とされた!

 

其処で左手の爪を使おうとしたペダニウムゼットンだったが………

 

「其処っ!」

 

今度はアナスタシア機が放った弾丸が命中し、左腕が凍り付く。

 

「オリャアアアッ!!」

 

「ハアアアァァッ!!」

 

そして次の瞬間には、背後に回っていた初穂機とあざみ機が、ペダニウムゼットンの膝の裏側にハンマー・神槌と跳び蹴りを叩き込む!

 

忽ちペダニウムゼットンは膝から崩れ落ちる。

 

所謂、膝カックンである。

 

「よっしゃあっ! ふんっ!!」

 

その隙に、ゼロは一旦角を離すと後ろに回り、羽交い締めに切り替えて立ち上がらせる。

 

ゼットーン………グワァシ………グワァシ………

 

「暴れんじゃねえっ!!」

 

ゼロを振り解こうと暴れるペダニウムゼットンだが、ゼロは必死に押さえ付ける。

 

「クラリス! 今だぁっ!!」

 

そして、クラリスに向かってそう呼び掛けた。

 

「………!!」

 

クラリスの目が開かれ、霊力が最高潮まで達した!!

 

「例え………私の『力』が“悪魔の力”でも! もう恐れはしません! 皆さんが………神山さんが………ゼロさんが信じてくれた………この()()()()『力』を、人々を守る『正しい力』に変えて!!」

 

クラリス機の眼前に、3つの魔法陣が展開する!

 

「アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

そしてクラリスの叫びと共に、3つの魔法陣から無数の魔導弾が発射された!!

 

「ハアッ!!」

 

ゼロは、直ぐ様羽交い締めを解いて離脱。

 

放たれた魔導弾は、狙いを過たず………

 

全てペダニウムゼットンの金属部分………“キングジョーのパーツ”の所へと命中した!!

 

キングジョーの部分が一気に破壊され、B因子の供給が停止する。

 

「今だっ!!」

 

其処でゼロは、ウルティメイトブレスレットを叩く!!

 

「………ルナミラクルゼロ」

 

ウルティメイトブレスレットから青い光が溢れ、落ち着いたトーンの低い声と共にハープの様な効果音が響き、ルナミラクルゼロへと変わる。

 

「フルムーンウェーブッ!」

 

そして、ペダニウムゼットンの周りを高速で浮遊して回りながら、浄化光線『フルムーンウェーブ』を放つ。

 

無数の光の粒が、ペダニウムゼットンを泡の様に包み込んで行き、B因子を除去する。

 

やがて、その光の泡が弾けたかと思うと………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

元の姿に戻ったゼットンと、その傍でボロボロになっているキングジョーの姿が露わになった。

 

「やったっ!!」

 

「成功だっ!!」

 

「凄い………」

 

「こんなに上手く行くなんてね………」

 

さくら・初穂・あざみ・アナスタシアが歓声を挙げる。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ゼットンはクラリス機を見ながら嬉しそうに体を揺らす。

 

「………良かったね」

 

そんなゼットンの姿を見て、クラリスは微笑む。

 

と、その時!

 

「ええいっ! 計画が台無しだぁっ!!」

 

ボロボロになっていたキングジョーが突然動き出し、ペダン星人・クザの声が響いた!

 

「! あの野郎! まだ生きてやがったのか!?」

 

「しぶとい………」

 

未だ死んでいなかった事に、初穂が驚き、あざみが呆れた様に呟く。

 

「ウルトラマンゼロ! こうなれば貴様だけでもぉっ!!」

 

と、最後のエネルギーで、ルナミラクルゼロに向かってデスト・レイを放とうとするキングジョー。

 

「ミラクルゼロスラッガー」

 

だが、ルナミラクルゼロがそう言うと、光のゼロスラッガーが多数形成され、回転しながらキングジョーへと向かった!!

 

ボロボロになったキングジョーの装甲では耐え切れず、瞬時に幾重もの切断痕が形成されるキングジョー。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

其処へ、ゼットンがお返しとばかりに、自慢の1兆度の火球を放つ。

 

「ぬおおおおおっ!?」

 

ペダン星人・クザの悲鳴と共に爆発四散するキングジョー。

 

しかし、その爆煙の中からペダン円盤が飛び出し、逃げ去ろうとする。

 

「逃がすかよぉ! ワイドゼロショットッ!!」

 

逃がさんとばかりに、ゼロは通常状態に戻ると、必殺のワイドゼロショットを放った!

 

その時………

 

「ぬがああああっ! テメェッ! この朧様をコケにしやがってぇっ!!」

 

何と、最初にペダニウムゼットンの光線を食らって谷底に落ちていた朧の荒吐が再度現れ、ペダン星人に復讐しようと、ペダン円盤へと向かった。

 

「「「「「「『あ………』」」」」」」

 

「へっ?」

 

ゼロと花組が思わず間の抜けた声をを漏らすと、其処で朧は、漸く自分に迫っているワイドゼロショットの光に気付いた。

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

「ペダン星、バンザーイッ!!」

 

朧とペダン星人・クザの断末魔が響き渡り、荒吐とペダン円盤はワイドゼロショットの光の中へと消える。

 

そして直ぐに、魔幻空間が消滅。

 

帝都の街へと復帰した。

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

何とも言えない空気の中で立ち尽くしているゼロと花組の面々。

 

「………ま、いっか。どうせ敵だったし」

 

『………そうだな』

 

やがてゼロと誠十郎がそう言い合い、やや無理矢理に納得するのだった。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

と其処で、ゼットンがクラリスの傍に近付く。

 

「? 如何したの?」

 

クラリスが尋ねた瞬間、彼女の魔導書が光を放ち始めた。

 

「! えっ!?」

 

クラリス機のハッチが独りでに開くと、魔導書が浮かび上がり“あるページ”が開かれる。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

そして、ゼットンが一鳴きしたかと思うと、その身体が再びスパークドールズへと変わり、魔導書の開いたページに飛び込んだ!

 

「!」

 

直ぐに、手元に戻って来た魔導書のページを確認するクラリス。

 

其処には、まるで図鑑の様なデータと共に、絵となったゼットンの姿が在った。

 

「コレは………」

 

「如何やら其奴(ゼットン)は、“お前と一緒に居たい”らしいな」

 

その様子を見ていたゼロが、クラリスの傍に膝を着いて魔導書を覗き込みながらそう言う。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

其れに呼応するかの様に、絵の状態になっているゼットンが鳴き声を挙げたのだった。

 

「ふふ………よろしくね、ゼットン」

 

ゼットンの絵を見ながら、クラリスは優しく微笑む。

 

「やったな、クラリス!」

 

「凄いよ、クラリス!」

 

初穂とさくらが、自分の事の様に喜びを露わにする。

 

「クラリス………不調だったのは大丈夫?」

 

と其処であざみが、そう心配の声を掛ける。

 

「ああ、その事なんですけど、実は………」

 

クラリスは、不調だった事への“意外な理由”を説明するのだった………

 

 

 

 

 

「はあっ!? ()()()で完全に集中出来てなかった!?」

 

「お恥ずかしい………」

 

初穂の驚きの声に、恥ずかしそうに頬を染めるクラリス。

 

「そういう事だったのね………」

 

「心配して損した………」

 

アナスタシアとあざみは少し呆れた様子を見せる。

 

「ま、まあ! 深刻な事じゃ無くて良かったじゃないですか!」

 

そして、やや無理矢理なフォローをするさくらだった。

 

「………ありがとう、ゼロさん。この子を助けられたのはゼロさんのお陰です」

 

と其処で、クラリスは魔導書のゼットンのページを見た後、ゼロに向かってそうお礼を言う。

 

「何言ってんだ。俺は“ちょっと手助けした”だけだ。ソイツを助けたのはクラリス………紛れも無く、()()()()だぜ」

 

「………正直に言うと、私は未だ自分を、自分の『力』を信じられて無い処が有ります」

 

そう言って少し俯くクラリス。

 

「でも、皆が、神山隊長が、そしてゼロさんが私を信じてくれた………()()()()()()、私を信じてくれた………きっと、これからは………私も、自分に向き合っていけると思います」

 

しかし、直ぐに顔を上げると、一片の曇りも無い笑顔でそう言った。

 

「その気持ち、大切にしろよ。其れがお前の新しい『力』になる。その新しい『力』で………“お前だけの未来”を摑むんだ!」

 

ゼロはグッと拳を握って返す。

 

「!!」

 

その瞬間、クラリスの脳裏に、最後のインスピレーションが浮かんだ。

 

「………決まった」

 

「ん?」

 

「決まりました! 脚本の最後の台詞!!」

 

「ホント!? クラリスッ!!」

 

「よっしゃあっ! コレで次の舞台は大丈夫だな!!」

 

「クラリスの脚本………凄く楽しみ」

 

「フフ、期待させて貰うわね」

 

そう声を挙げたクラリスの周りに、無限から降りて来たさくら達が集まる。

 

「フッ」

 

其処でゼロは立ち上がり、空を見上げる。

 

「ハアッ!!」

 

そして、何時もの様に飛び去って行った。

 

「あ! ゼロさ~ん! ありがと~~~うっ!!」

 

その姿を、クラリスは見えなくなるまで手を振って見送った。

 

「ふ~~、やっと出れた」

 

と其処で誠十郎機のハッチが開き、誠十郎が姿を見せる。

 

「あ! 神山隊長!」

 

「アレ? お前出て来て無かったのか?」

 

「ハッチの開閉システムにも異常が出ていたんだ。色々弄って、漸く出れたんだ」

 

さくらが反応し、初穂が指摘すると、誠十郎はそう返す。

 

「キャプテン。残念だけど、今回はウルトラマンゼロに全部持ってかれたみたいね」

 

「その通り………」

 

「はは、面目無い。今度はゼロに負けない様、頑張るよ」

 

アナスタシアとあざみの言葉に、誠十郎は苦笑いを零すのだった。

 

「ま、何はともあれ、勝利のポーズ、行こうぜ!」

 

と、初穂がそう仕切り直す。

 

「クラリス………決め台詞、しっかり咬ましてくれよ!」

 

「えっ、わ、私ですか!?」

 

決め台詞を任され、驚くクラリス。

 

「最後の台詞は大切よ。しっかりね」

 

「わ、分かりました!」

 

続いてアナスタシアにそう言われると、クラリスは気合を入れる様な様子を見せる。

 

「物語こそ力の源。どんな時も、自分の物語を信じます! せーの………」

 

「「「「「「勝利のポーズ、決めっ!」」」」」」

 

『信じる力が人を強くする………勿論、俺達ウルトラマンもな』

 

勝利のポーズが決まる中、ゼロはそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

クラリスが書き上げた脚本の舞台………『ダナンの愛』は大盛況。

 

世界的スタァのアナスタシアの演技や、令士やイデの舞台装置演出も相俟って、予想の2倍の収益を叩き出して、2週間の延長公演が決定された。

 

特に最後の台詞………

 

『ダナン。俺を信じて欲しい、皆を信じて欲しい。そして………君自身を信じて欲しい。そうすれば、君の未来を切り開ける筈だから』

 

コレは特に好評であり、帝都の市民の間で流行語となる程であったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・サロン………

 

「おめでとう、貴女達。本当によくやってくれましたわ!」

 

集まった皆を手放しで誉めるすみれ。

 

「コレで華撃団大戦への懸念は無くなりましたわ。後は優勝するだけよ!」

 

「やったーっ!!」

 

「へへっ、どんなもんだい。やれば出来るじゃねぇか、アタシ等も!」

 

「任務達成、めでたい」

 

さくら・初穂・あざみが喜びの声を挙げる。

 

「アナスタシアさんの演技、本当に素晴らしかったです」

 

「ふふ、ありがとう。だけど、今回の功労者は貴女だわ、クラリス。本当に素晴らしい脚本よ」

 

クラリスの言葉に、アナスタシアはそう返す。

 

「そんな………私なんて、未だ未だです」

 

「そんな事は無いさ、クラリス。君は“帝劇の人気作家”だ! これからの舞台も、楽しみだよ」

 

『ああ、俺も楽しみにしてるぜ!』

 

誠十郎の言葉に、ゼロもそう同意する。

 

「い、言い過ぎですよ! 人気作家だなんて、そんな事………」

 

「いやいや、お客さんの声が全てを物語っているさ。クラリスの脚本は、お客さんの心を動かしたんだ」

 

謙遜するクラリスに、誠十郎はそう言葉を続ける。

 

「正に、物語にクラリスが籠めた想いの力………君は、素晴らしい感動を生み出したんだよ。おめでとう、クラリス」

 

「ありがとうございます。でも………私1人では………出来ませんでした。新しい私になれたのは………貴方のお陰です、神山さん」

 

誠十郎を見ながらそう言うクラリス。

 

「其れに………ウルトラマンゼロさんも」

 

『クラリス………』

 

感慨深そうな様子を見せるゼロ。

 

「そう言ってくれれば、ゼロもきっと喜ぶと思うよ」

 

「ハイ! 実は、ゼロさんに感謝を表したくて………もう次の脚本を用意してるんです!」

 

「えっ?」

 

『脚本?』

 

しかし、クラリスの思わぬ言葉に、誠十郎とゼロは首を傾げる。

 

「コレです!」

 

其処でクラリスは、1冊の脚本を取り出す。

 

そのタイトルは………

 

『ウルトラ銀河伝説 ウルトラマンゼロ誕生!』

 

「!? コレはっ!? ウルトラマンの舞台!?」

 

「ゼロさんから聞いたウルトラマンの話を元に、“私なりの物語”にしてみたんです! 勿論、主役はゼロさんです!」

 

驚く誠十郎に、クラリスは笑顔でそう言う。

 

『オイオイ、マジかよ………何か照れるな』

 

気恥ずかしそうな様子を見せるゼロ。

 

「アラ、面白そうね………是非見てみたいわ」

 

すみれも乗り気であった。

 

「ちょっと待って、クラリス! “ゼロさんから聞いた”って………如何言う事!?」

 

と其処で、さくらがそう問い質す。

 

「其れは………“秘密”です」

 

しかし、クラリスはそう言ってはぐらかすのだった。

 

「ええ~~っ!?」

 

「…………」

 

納得が行かないさくらを尻目に、クラリスは脚本を開く。

 

其処には、栞の様に『誠十郎のブロマイド』と『ゼロのブロマイド』が挟まれていた。

 

(ゼロさん………また何時か………デートして下さいね)

 

ゼロのブロマイドの方に視線を向けながら、クラリスはそう心の中で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

令士「俺の開発したバトルシミュレーター『いくさちゃん』!

 

疑似的に戦闘を再現出来、無限に乗り込んで実戦の様な戦闘体験が出来る優れ物だ!

 

コレで花組の戦力アップは間違い無し!

 

早速コイツを使って………

 

って、何ぃっ!

 

『いくさちゃん』の中に怪獣がっ!?

 

次回『新サクラ大戦』

 

第2.5話『夢のヒーロー』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

このままじゃ、さくらちゃん達の命が!!」

 

???「戦闘コードを打ち込んでくれ! アクセスコードは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『宇宙恐竜 ゼットン』

 

身長:60メートル

 

体重:3万トン

 

能力:1兆度の火球、テレポート、バリア、光波『ゼットンブレイカー』

 

初登場作品:初代ウルトラマン第39話(最終回)『さらばウルトラマン』

 

言わずと知れた初代ウルトラマンを1度は完封した強豪中の強豪怪獣。

 

恐竜と言うよりカミキリムシを思わせるが、多彩な能力を誇り、戦闘力は折り紙付き。

 

しかもEXやハイパーと言った強化態まで存在する。

 

人気も高く、後に多くの強豪怪獣が生み出された今でも『最強の怪獣』として名高い。

 

但し2代目! テメーは駄目だ!!

 

因みに、作者が1番好きなのは『ウルトラゾーン』の『不良怪獣ゼットン君』

 

 

 

 

 

『宇宙ロボット キングジョー』

 

身長:55メートル

 

体重4万8千トン

 

能力:光線『デスト・レイ』、4つの円盤に分離出来る

 

初登場作品:ウルトラセブン第14話『ウルトラ警備隊西へ 前編』、第15話『ウルトラ警備隊西へ 後編』

 

此方も言わずと知れた初のロボット怪獣。

 

ウルトラセブンのエメリウム光線やアイスラッガーを弾き返す強固な装甲と、タンカーも軽々と振り回す怪力を誇る。

 

また、近年では分離で攻撃を回避した後、再合体して反撃と言った合体ロボならではの戦法も使って来る。

 

2020年の『ウルトラマンZ』では、人類が使用する防衛兵器のキングジョーも出現した。

 

尚、名前の由来はギリス海軍に存在したキング・ジョージ5世級戦艦からという説と、脚本家の金城哲夫さんから取った有名説がある。

 

 

 

 

 

『策略宇宙人 ペダン星人・クザ』

 

身長:2メートル

 

体重:50キロ

 

イメージCV:ジオンの総帥、或いはキリコ・キュービィーのストーカー

 

初登場作品:ウルトラセブン第14話『ウルトラ警備隊西へ 前編』、第15話『ウルトラ警備隊西へ 後編』

 

キングジョーを建造したペダン星の住人。

 

当初は姿がハッキリとしていなかったが、後の作品でヘルメットを被ったヒューマノイドタイプの宇宙人とされる。

 

この作品で登場した個体は、ペダン星の科学力に絶対の自信を持っており、他の種族を見下している。

 

名前の由来は、イメージCVの人が総帥を務めている宇宙移民の軍の量産機から。

 

 

 

 

 

『合体合成獣 ペダニウムゼットン』

 

身長:65メートル

 

体重3万4千トン

 

能力:テレポート、バリア、光線、火球『ペダニウム・メテオ』

 

初登場作品:ウルトラマンジード第11話『ジードアイデンティティー』

 

ゼットンとキングジョーと言う、強豪怪獣同士を組み合わせた凶悪な合体怪獣。

 

ゼットンの能力に加え、キングジョーの防御力や火力が融合している為、ベリアル融合獣の中でも特に高い戦闘力を誇る。

 

その強さ故、ジードと4回も戦った。

 

この作品で登場した物は、B因子を使って誕生したものの為、タイガでのスカルゴモラの様に、肩書が異なっている。




新話、投稿させて頂きました。

ペダニウムゼットンと激突するゼロと花組。
しかし、クラリスはゼットンが無理矢理戦わされている事を察し、救出を願い出る。
ルナミラクルゼロと皆の協力を受け、自分の殻を破ったクラリスの重魔導が、見事B因子システムを破壊。
ゼットンを救出します。
ボロボロのキングジョーにトドメを刺し、逃げようとしたペダン星人・クザも朧諸共に撃破。

そして………
何とクラリスがレイオニクスに(違う)
ゼットンを味方にすると言うのは二次創作ならではとも言えるかも知れませんが、逆に言えば、ゼットンを味方につけないといけないくらい、この後に強豪が続々と出て来るという事なのかも?

ともあれ、脚本も無事に仕上がり、人気脚本家となったクラリス。
そして彼女は、ゼロへのお礼の意味も込めて、ウルトラマンの舞台脚本を書くのでした。

さて、次回は幕間のオリジナルストーリーとなります。
しかも客演回です。
しかし、意外や意外。
最初に客演するのは、他のウルトラマンではなく、一昨年続編のアニメ版が放送され好評を博したあの『夢のヒーロー』です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第2.5話『夢のヒーロー』
チャプター1『いくさちゃん』


第2.5話『夢のヒーロー』

 

チャプター1『いくさちゃん』

 

地底怪獣 マグラー

 

コンピューター生命体 パワードダダ登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・郊外………

 

「おおりゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

キュイイイイイィィィィィィーーーーーーーッ!!

 

初穂機のハンマーを横っ面に喰らった『地底怪獣 マグラー』が怯んだ様子を見せる。

 

「其処っ!!」

 

「行きますっ!!」

 

其処へ、アナスタシア機とクラリス機から、弾丸と魔導弾が見舞われる。

 

マグラーの身体から次々と爆発が上がる。

 

キュイイイイイィィィィィィーーーーーーーッ!!

 

堪らずマグラーが咆哮を上げると………

 

「ニンッ!」

 

あざみ機が、その口の中に焙烙火矢の様な爆弾を放り込む!

 

口の中で爆弾が爆発し、悶絶するマグラー。

 

「「ハアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」

 

その隙を衝いて、誠十郎機とさくら機が顔面を斬り付ける!

 

キュイイイイイィィィィィィーーーーーーーッ!!

 

と其処で、マグラーは形勢不利と思ったのか、花組に背を向けて逃走を始める。

 

「! マズイッ! 市街地に向かうぞっ!!」

 

その逃走先が市街地となっているのを見た初穂が叫ぶ。

 

「隊長! ココは私が!」

 

「クラリス、頼む!」

 

誠十郎に促され、クラリスはコックピット内で魔導書を開いた。

 

「ゼットン! お願いっ!!」

 

クラリスがそう言うと、魔導書から光の玉が飛び出し、市街地へ向かうマグラーの頭上を飛び越える様にして先回りすると、ゼットンが現れる。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

キュイイイイイィィィィィィーーーーーーーッ!?

 

突如進行方向に現れたゼットンを、即座に圧倒的に格が上と認識したマグラーは、再度踵を返して逃走を続けようとする。

 

しかし、ゼットンに片手で尻尾を摑まれ、アッサリと失敗する。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ゼットンはそのまま腕を上に振ったかと思うと、マグラーの身体が軽々と宙に舞う。

 

そのまま今度は腕を振り下ろし、地面へと叩き付ける。

 

キュイイイイイィィィィィィーーーーーーーッ!?

 

大ダメージを受けて悶えるマグラーを、ゼットンは容赦無く蹴り飛ばす。

 

地面を転がり、仰向けになって手足をバタバタとするマグラー。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

そんなマグラーに向かって、ゼットンはトドメの火球を放った!

 

1兆度の火球を食らったマグラーは、そのまま大爆発・四散した。

 

「やったっ!!」

 

「凄いわね、ゼットンは………」

 

あざみが歓声を挙げ、アナスタシアがゼットンの圧倒的な力に感嘆する。

 

「お疲れ様、ゼットン」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

クラリスから労いの言葉を受けると、ゼットンは再び光の玉となり、魔導書の中へと戻って行った。

 

「頼もしい仲間が出来ましたね、神山隊長」

 

『全くだぜ。“()()ゼットンを手懐ける”なんてな。まるでレイオニクスみたいだな』

 

「はは、そうだな(また知らない単語が………)」

 

さくらの無邪気な声を聴きながら、心の中でゼロにツッコミを入れる誠十郎。

 

「其れでは皆さん。何時もの、やりましょうか?」

 

「おう、そうだな」

 

「「「「「「勝利のポーズ、決めっ!」」」」」」

 

お約束の勝利のポーズを決め、花組メンバーは帝劇へと帰投するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜………

 

帝劇地下・格納庫内………

 

無限の整備を終えた令士が、何やらパソコンの様な機械を弄っている。

 

「良し! コレで完成だっ!!」

 

最後の部品を組み込んだ令士がそう声を挙げる。

 

「遂に出来たぜ。ふふふ………我ながら良い出来だ」

 

パソコンの様な機械を見ながら、満足気に頷く令士。

 

「ふああ~~………もうこんな時間か。いい加減寝るか………明日が楽しみだぜ」

 

欠伸を漏らし、時計で時間を確認した令士は、格納庫を後にする。

 

無人となった格納庫内………

 

と、その時………

 

令士が弄っていたパソコンの様な機械に、スパークの様な物が走る。

 

そして、画面に奇妙な模様の様な物が映し出されたかと思うと………

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

不気味な叫び声が木霊し、其れが収まった瞬間、画面も消えてしまったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

再び、帝劇地下・格納庫内にて………

 

「令士、一体何の用だ? 俺でなく、花組の皆も呼び出して?」

 

集まった花組一同の中で、誠十郎が代表する様に令士に問い質す。

 

「ふふふ、実は“良い物”を作ったんだ」

 

「良い物?」

 

「一体何ですか?」

 

あざみが首を傾げ、さくらがそう問い掛ける。

 

「ズバリ、コレだっ!!」

 

令士はそう言うと、あのパソコンの様な機械を示した。

 

「何だコリャ?」

 

「蒸気演算機みたいにも見えますけど………」

 

「コイツは、“疑似的に戦闘を再現する装置”だ。無限に乗り込んで、()()の様な戦闘体験が出来る」

 

初穂とクラリスが問うと、令士は説明し出す。

 

「そうだな………『いくさちゃん』とでも呼んでくれ!」

 

其処で令士は、その機械を『いくさちゃん』と命名する。

 

「あら、意外と可愛い名前ね」

 

『要は“シミュレーター”って事か』

 

アナスタシアとゼロがそう呟く。

 

「『いくさちゃん』ねえ………戦闘を体験とか、また()()()()装置だな」

 

しかし、誠十郎は胡乱な目でいくさちゃんを見遣る。

 

「お前、全然信じてないだろ!? 良ーし分かった! 試して貰おうじゃねえか!!」

 

そんな誠十郎に、令士は怒った様にそう言い放つ。

 

「仕方無いな………ん?」

 

と、誠十郎が試してやろうと思った瞬間、スマァトロンが鳴った。

 

「誰からですか? 神山隊長」

 

「支配人だ。先日の戦闘の件で気になる所が有るそうだ」

 

さくらの問いにそう返すと、誠十郎はスマァトロンを仕舞う。

 

「と言う訳だ、令士。俺は支配人の所へ行って来る」

 

「仕方無ぇなぁ。じゃあ、先にさくらちゃん達に試して貰うとするか」

 

やや不満そうにしながらも、令士は花組の皆を見ながら言う。

 

「皆、十分に気を付けるんだぞ」

 

「抜かせ」

 

軽口を叩き合いながら、誠十郎は格納庫を後にしたのだった。

 

「其れじゃあ、早速お願いしようか。皆無限に乗り込んでくれ」

 

「分かりました」

 

「おう」

 

「了解」

 

「ハイ」

 

「楽しみね………」

 

令士に促され、花組のメンバーは自分の無限へと搭乗し、起動させて行く。

 

「良ーし、皆起動出来てるな? 其れじゃあ、早速開始するぜ」

 

いくさちゃんのキーボードを操作し始める令士。

 

すると、さくら達の意識は電脳世界へとダイブして行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いくさちゃんの仮想空間内………

 

「! コレは!?」

 

自分達が、()()()()()()帝都の街中に居る事に驚くさくら。

 

『驚いたかい? コレが“疑似戦闘が出来る空間”さ』

 

通信機から令士の声が響く。

 

「スゲェー………如何見ても、本物にしか見えないぜ」

 

「感覚も全く違和感無くて………本当に“無限に乗って帝都に立っている”みたいです」

 

初穂とクラリスも、感嘆の声を漏らす。

 

「まるで幻術………」

 

「ホント、凄いわね………WLOFでもこんな装置は持って無いわ」

 

あざみとアナスタシアも、驚きを隠せずに居る。

 

『其れじゃあ、早速仮想敵を出して行くぜ』

 

「あの、司馬さん。ひょっとして怪獣とかも出るんですか?」

 

令士が、倒すべき仮想敵を出現させようとしたところ、さくらがそう尋ねて来る。

 

『いや。残念だが、未だ怪獣や星人のデータは不足しててな。出せるのは、降魔や傀儡機兵だけだ。だから、クラリスちゃんのゼットンも“()()使え無い”って事になる』

 

「そうですか………残念です」

 

其れを聞いたクラリスが、少し残念そうな様子を見せる。

 

『心配すんな。何れは、ゼットンや怪獣との戦闘も出来る様にしてみせるさ』

 

「! ハイ、ありがとうございます」

 

しかし令士からそう言われると、笑みを浮かべてお礼を言った。

 

「オイ、司馬。早く始めさせてくれよ。さっきからもうウズウズしてんだ」

 

と其処で、待ちくたびれたかの様に初穂が言う。

 

『分かった分かった。其れじゃあ、仮想敵を出現させるぜ』

 

令士がそう言うと、花組の無限達の前に傀儡機兵と降魔が出現する。

 

「来た来た!」

 

『気を付けてくれよ。仮想空間とは言え、本物と(ほぼ)変わりは無い。油断してたら、アッと言う間にやられちまうぜ』

 

「ハイ! 行きますっ!!」

 

令士に威勢良く返事を返すと、さくら機が刀を抜いて突撃。

 

他のメンバーも、次々に傀儡機兵や降魔に攻撃を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・格納庫内………

 

「よ~し、良い感じだ。流石、俺。自分の天才ぶりが怖いぜ」

 

いくさちゃんの仮想空間内を映しているモニターで、さくら達が戦っている様子を見ながら、令士が自画自賛する。

 

と、その時………

 

いくさちゃんのモニターの映像が乱れ始める。

 

「アレ? 如何した?」

 

直ぐにキーボードを弄り出す令士。

 

しかし、画面の乱れは収まるどころか益々酷くなる。

 

「オイオイオイオイ、待ってくれよ! いきなり故障だ、なんて洒落(シャレ)にならねえぞっ!!」

 

焦った令士は、モニターをバンバンと叩き始める。

 

その瞬間!!

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

不気味な咆哮と共に、モニターに奇妙な怪人の顔が映し出された!!

 

「!? うわあっ!? な、何だコイツはっ!?」

 

驚きながらも、再度キーボードへと手を伸ばす令士。

 

「!? びりびりー! しびればびれぶー!!」

 

途端に令士の身体を電流が襲い、そのまま弾き飛ばされた!

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

怪人が再び咆哮を挙げると、いくさちゃんからスパークが放たれ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮想空間内………

 

「やあああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

傀儡機兵・侍を気合の声と共に斬り捨てようとしているさくら機。

 

しかし、その刃が当たると思われた瞬間に、突如傀儡機兵・侍の姿が消えてしまう。

 

「!? ととっ!? あ、アレ………?」

 

「オイ! 如何なっちまってんだ!?」

 

「敵が突然消えました………」

 

さくら機が蹌踉ながらも踏み止まっていると、初穂とクラリスからそう声が挙がる。

 

2人の言葉通り、アレ程居た傀儡機兵や降魔が、()()()()()消えてしまっていた。

 

「司馬さん、如何したんですか?」

 

さくらが令士に問い掛けるが、通信機からはノイズしか返って来ない。

 

「故障かしら?」

 

「造っていきなり故障なんて、司馬も大した事無い」

 

アナスタシアがそう言うと、あざみから辛辣な意見が出される。

 

「司馬さん? 司馬さん?」

 

再度令士へと呼び掛けるさくら。

 

すると………

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

「!? キャアッ!?」

 

通信機からあの不気味な咆哮が聞こえて来て、さくらは思わず悲鳴を挙げる。

 

「な、何だ今のは!?」

 

他の機体にも流れていたらしく、初穂が声を挙げる。

 

「! ああっ!? 見て下さいっ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

其処へ今度はクラリスが声を挙げ、さくら達が見たのは………

 

帝都の建物や地面が、まるで基盤や回路の様なデザインへと変わって行く光景だった。

 

更に、空の上にも“同じデザインの()()()()()”が現れる。

 

「な、何が起こってるの?」

 

「やっぱり故障でしょうか?」

 

と、さくらとクラリスがそう言い合っていた時………

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

あの咆哮と共に、スノーノイズの様な巨大な塊が現れたかと思うと、其処から白い体に幾重もの黒い線が入った怪人………

 

『コンピューター生命体 パワードダダ』が出現した!!

 

「!?」

 

「か、怪獣!? いや、星人か!?」

 

「そんな!? 確か、怪獣は出せない筈じゃっ!?」

 

突如出現したパワードダダに、さくら・初穂・クラリスが驚愕する。

 

その瞬間、パワードダダが両手を花組に向け、ニュートロン光線を放った!

 

「! 危ないっ!!」

 

「「「「!!」」」」

 

あざみの声で、さくら達は一斉に散開する。

 

直後に、ニュートロン光線が先程までさくら達が居た場所に命中。

 

派手に爆発を起こす。

 

「まさか………アレは()()なの?」

 

「!? 本物っ!?」

 

「そんな!? 此処は“仮想空間の中”の筈じゃ!?」

 

アナスタシアの推察に、初穂とクラリスがまさか?と言う。

 

「けど、あの怪人からの“殺気”は本物………」

 

しかしあざみが、パワードダダが向けて来ている殺気が紛れも無く()()である事を感じ取り、そう言う。

 

「も、若しこの空間でやられちゃったら………私達、如何なるの!?」

 

「「「!!」」」

 

其処でさくらが挙げた疑問に、初穂・クラリス・あざみがハッとする。

 

「さあ、分からないわね………けど………間違い無く“()()では居られ無い”でしょうね」

 

アナスタシアが、一見冷静ながら、冷や汗を一筋流してそう言うのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

「報告は以上です」

 

「そう、分かったわ。どうもありがとう」

 

すみれに報告を終えた誠十郎。

 

「そう言えば、司馬くんが何やら“面白い物”を造ったそうですわね?」

 

「ええ、まあ………アイツの発明は()()()()()信頼出来るんですが、流石に今回は眉唾物な気がしますが………」

 

いくさちゃんの事を訊いて来たすみれに、誠十郎がそう返していると………

 

「すみれ様! 大変ですっ!!」

 

カオルが慌てた様子で、ノックもせずに支配人室へ入って来た。

 

「うわっ!? カオルさん!?」

 

「如何したのです? そんなに慌てて?」

 

軽く驚く誠十郎と、冷静に問い質すすみれ。

 

「さくらさん達が危険ですっ!!」

 

「!?」

 

「何ですって!?」

 

しかし、続いて齎された報告に2人揃って驚くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・格納庫内………

 

「クソッ! まさかこんな事になるなんて!!」

 

「司馬はん! はよ何とかしてぇなっ!!」

 

いくさちゃんのキーボードを必死に操作している令士の横で、こまちがそう急かす。

 

「令士! 皆っ!」

 

「何が有りましたの!?」

 

其処へ、カオルに連れられた誠十郎とすみれがやって来る。

 

「あ、隊長はん! すみれはん! 其れが………」

 

「信じられ無いだろうが、司馬くんが作った“いくさちゃんの()()()()()に”、怪人が出現した」

 

令士が入力を続ける中、こまちが答えようとしたところ、無限が並んでいる方から姿を見せたサコミズがそう言う。

 

「何ですって!?」

 

「仮想空間内に怪人が!? さくら達は!?」

 

すみれが驚きの声を挙げ、誠十郎がサコミズの脇を擦り抜けて、無限に乗っているさくら達の様子を見に行く。

 

「さくら!!」

 

「…………」

 

そして、ハッチの開いていたさくらの無限の中を覗き込むと、“ハイライトの消えた瞳で固まっている”さくらの姿を見付ける。

 

他の無限にも、同じ様な状態になっている初穂・クラリス・あざみ・アナスタシアの姿が在った。

 

「さくら! 如何したんだ、さくら! 返事をしてくれっ!!」

 

誠十郎はさくらに呼び掛けながら、無限から引っ張り出そうとする。

 

「いけない、神山くん! 動かすんじゃない!!」

 

しかし、イデが慌てた様子で止めて来る。

 

「イデさん!? 如何してですか!?」

 

「今、彼女達の意識はいくさちゃんの中の仮想空間内に在る。いくさちゃんと接続している無限から離したら、意識だけが仮想空間内に分離され、2度と元に戻れなくなる!」

 

「! そ、そんなっ!?」

 

イデの言葉に、誠十郎は再度さくらを見遣るが、やはり彼女はハイライトの消えた瞳のまま、ピクリともしない。

 

「何とかならないんですか!?」

 

「恐らく、原因は“仮想空間内に居る怪人”だ。ソイツを倒す事が出来れば、天宮ちゃん達の意識は戻る筈だ」

 

「じゃあ、俺も無限で………」

 

「駄目だ」

 

「何故ですか!?」

 

「仮想空間に送られるのは、飽く迄()()()のデータだ………“ウルトラマンゼロであるデータ”は反映されない」

 

「!!」

 

「つまり、仮想空間内では君は()()()()()()()()()()()()()んだ」

 

「…………」

 

そう言われ、誠十郎は沈黙する。

 

「兎も角、ココは任せてくれ! 必ず何とかして見せる!」

 

イデはそう言うと、いくさちゃんを弄っている令士の方へと向かった。

 

「………ゼロ………今回は“お前でも”駄目なのか………?」

 

悔し気に拳を握り締めながら、ゼロにそう問う誠十郎。

 

『いや………手は有るぜ』

 

「!? 本当かっ!?」

 

だが、ゼロからそう返事を聞いて直ぐに気を取り直す。

 

『データが無いんなら、“()()()()データになってそのいくさちゃんの中に入り込めば良い”だけの話だ』

 

「そんな事が出来るのか?」

 

『前に、メビウスの奴がやった事が有るってのは聞いた。だが………」

 

「だが?」

 

『“仮想空間での戦い”ってのは、俺としても“未知の領域”だ。下手をすればデータ化されたまま元に戻れなくなるかも知れん。其れでもやるか?』

 

「やる! そうしなきゃさくら達を助けられないんだろう!?」

 

ゼロの問いに、迷い無くそう返す誠十郎。

 

『へっ、其れでこそ“俺の相棒”だぜ………じゃあ、行くぜっ!!』

 

「ああ!」

 

誠十郎は自身の無限の陰に隠れ、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを取り出す。

 

「デュワッ!」

 

ウルトラゼロアイを装着すると、そのまま人間サイズのゼロの姿となる。

 

「ハアッ!!」

 

ゼロが気合を入れると、その身体が“光の粒子状のデータ”に変化する。

 

そして誠十郎の無限を介して、いくさちゃんの中へと突入するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮想空間内………

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

不気味な咆哮と共に、花組目掛けて次々にニュートロン光線を放つパワードダダ。

 

「キャアッ!」

 

直撃は躱したが、至近距離への着弾で思わず声を挙げるさくら。

 

「チキショウッ! このままじゃジリ貧だぜ!!」

 

「如何すれば……?」

 

初穂とクラリスがそう言うが、状況打開の手立てが無い。

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

と其処で、パワードダダがまたもニュートロン光線を放とうとする。

 

「! マズイッ!!」

 

「クッ!」

 

あざみとアナスタシアの表情が強張る。

 

 

 

 

 

その時!!

 

 

 

 

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

叫びと共に現れたゼロが、ウルトラゼロキックをパワードダダに見舞った!

 

「「「!?」」」

 

「「ゼロさんっ!?」」

 

驚く初穂・あざみ・アナスタシアと、思わず声を挙げるさくらとクラリス。

 

「待たせたな! ウルトラマンゼロ! 参上だっ!!」

 

着地を決めると、そう言い放つゼロ。

 

ゼロの初となる“仮想空間での戦い”が開始された………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

幕間話第1弾。
いくさちゃんを主軸とした話です。
本来ならば原作第3話の中での登場となった『いくさちゃん』ですが、コレの存在を知った時から、「コレであの『夢のヒーロー』が出せるんじゃねえ?」と思いまして、今回の幕間話を作りました。

登場怪獣は『パワードダダ』をチョイスしました。
最初はグリッドマン怪獣を最初から出そうかと思ったのですが、この作品はウルトラマンとのクロスなので、そちらをメインにしようと思い、丁度グリッドマンに出ても違和感無い設定のパワードダダの事を思い出し、抜擢してみました。
勿論、グリッドマン怪獣も出ますのでご安心を。

幕間話ですので次回で完結となります。
仮想空間での戦いで苦戦するゼロと花組を助ける為、いよいよ『夢のヒーロー』が登場します。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『アクセスコードはGRIDMAN』

チャプター2『アクセスコードはGRIDMAN』

 

コンピューター生命体 パワードダダ

 

結晶怪獣 ギラルス

 

気炎万丈怪獣 グールギラス登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・格納庫内………

 

「ウ、ウルトラマンゼロッ!?」

 

いくさちゃんのモニターで、仮想空間内の様子を確認していた令士が驚きの声を挙げる。

 

「仮想空間内にまで現れるやなんて………」

 

「正に神出鬼没ですね………」

 

こまちとカオルも、驚きを露わにしている。

 

(頼みますわよ、神山くん、ゼロさん………)

 

すみれは心の中で、さくら達の事をゼロ達に託す。

 

(しかし、“仮想空間内での戦闘”は何時もと勝手が違う筈だ………)

 

(ウルトラマンと言えど、大丈夫なのか………?)

 

そしてイデとサコミズは、“一抹の不安”を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮想空間内………

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

「コイツ、『ダダ』か!」

 

『ダダ?』

 

「ダダ星の宇宙人だ。けど、“俺の知ってる”ダダと違うな………! そうか! “パワードが戦った奴”か!!」

 

対峙しているダダが、彼の良く知る『三面怪人』では無く、『ウルトラマンパワード』と戦った『()()()()()()()()()() パワードダダ』である事に気付くゼロ。

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

と其処で、パワードダダはニュートロン光線をゼロに向かって放つ!

 

「おっとっ!」

 

しかし、難無く躱すゼロ。

 

「速攻でケリを着けてやるぜっ!!」

 

そして、パワードダダに向かって突撃する。

 

「うおおおぉぉぉぉーーーーーっ!!」

 

雄叫びと共に殴り掛かるゼロ。

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

だが、パワードダダの身体がスノーノイズの様な状態になったかと思うと、ゼロのパンチが擦り抜けてしまう。

 

「!? おうわっ!?」

 

そのままスノーノイズ状のパワードダダを通り抜け、地面を転がるゼロ。

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

直後に、スノーノイズ状だったパワードダダが再度実体化。

 

ゼロに両手を向ける。

 

「!? うおっ!?」

 

途端に、ゼロの身体が金縛りに遭う。

 

『う、動けない!?』

 

「サイコキネシスか! 野郎! 念力で俺に勝てると思ってんのか!? ウルトラ念力!!」

 

だが、父親のセブンも得意とする自慢のウルトラ念力で、サイコキネシスを跳ね返す!

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!?

 

跳ね返されたサイコキネシスを真面に浴びたパワードダダは、大きくブッ飛ばされて仰向けに倒れる。

 

「フッ!」

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

その間に立ち上がるゼロだったが、パワードダダもまるで映像を巻き戻したかの様な動きで起き上がる。

 

「未だやるかっ!!」

 

と、ゼロが構えを取り直すと………

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

パワードダダの身体が再びスノーノイズ状となり、其れが3つに分かれたかと思うと、3体のパワードダダが出現した!!

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!×3

 

揃って咆哮を挙げる『パワードダダA』、『パワードダダB』、『パワードダダC』

 

『! 分身したっ!?』

 

「へっ、3体になったところで………」

 

慌てる誠十郎とは対照的に、余裕を見せるゼロだったが………

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!×2

 

パワードダダBとパワードダダCが咆哮すると、また身体がスノーノイズ状に変わり………

 

何と、パワードダダBが『結晶怪獣 ギラルス』、パワードダダCが『気炎万丈怪獣 グールギラス』に変わった!

 

「!? 何っ!?」

 

『怪獣に変わったっ!?』

 

その様にはゼロと誠十郎は揃って驚きを示す。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

其処で、ギラルスがゼロ目掛けて口からガスを吐き掛ける!

 

「!? うおっ!?」

 

シイイイイイネエエエエエエェェェェェェェーーーーーーーーッ!!

 

其処へ続け様に、グールギラスが口から火球を山なりの軌道で発射する。

 

「!? おわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

ガスが引火して大爆発が起こり、ゼロはブッ飛ばされて基盤の建物に突っ込む。

 

「クソッ! アイツ、“()()()自分のデータを書き換えて怪獣化しやがった”のか!?」

 

『そんな事が出来るのか!?』

 

シイイイイイネエエエエエエェェェェェェェーーーーーーーーッ!!

 

倒れたゼロに、グールギラスが連続で火球を放つ。

 

「! のわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

山なりの軌道で放たれた火球が、次々に炸裂する。

 

「ゼロさん! 皆! ゼロさんの援護をっ!!」

 

「おうっ!」

 

「了解」

 

「はいっ!」

 

「分かったわ………」

 

さくらの掛け声で、花組がゼロの援護に入ろうとする。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

だが其処で、ギラルスがガスを吐き掛けて来る!

 

「キャアッ!?」

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

更に其処へ、パワードダダAがニュートロン光線を発射。

 

先程と同様にガスが引火し、大爆発が起こる!

 

「「「「「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」」」

 

吹き飛ばされて地面に叩き付けられる花組。

 

3体の敵を相手に、慣れない仮想空間内での戦いに、ゼロも花組も苦戦する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、帝劇地下・格納庫内………

 

いくさちゃんの方にも異変が起こっていた。

 

警告音と共に回転灯が回り、火花が次々に飛び散る。

 

「マズイ! いくさちゃんがパワーダウンしてやがる!」

 

「パワーダウン!?」

 

「一体どないなるんや!?」

 

令士がマズイと声を挙げると、カオルが驚き、小町が慌てて尋ねる。

 

「このままじゃ、いくさちゃん自体が保たない。そしたらさくらちゃん達どころか、ウルトラマンゼロまで消滅しちまう!」

 

「何ですってっ!?」

 

「「!!」」

 

思わぬ報告にすみれも驚きの声を挙げ、イデとサコミズも焦った様子を見せる。

 

「クソッ! 如何すりゃ良いんだっ!?」

 

髪を掻き毟る令士だが、最早彼にも如何する事も出来ない。

 

………と、その時!!

 

いくさちゃんのモニターから光が溢れた!

 

「「「「「!?」」」」」

 

「!? 何ですの!?」

 

一同が驚く中、その光の中にシルエットが浮かび上がる。

 

やがてそのシルエットは、鎧の様な物を纏った人物の姿となる。

 

「私はハイパーエージェント『グリッドマン』。君達の協力を要請する」

 

 

 

 

 

其れは嘗て………

 

『魔王カーンデジファー』、『アレクシス・ケリヴ』と戦った、コンピューターワールドを守る『夢のヒーロー』………

 

『電光超人グリッドマン』だった。

 

 

 

 

 

「グ、『グリッドマン』!?」

 

「な、何やねん、一体!?」

 

突然現れたグリッドマンに、令士とこまちが驚きを示す。

 

「説明をしている時間は無い。仮想空間に囚われている彼女達を救う為、力を貸して欲しい」

 

「説明も何も、全く分かって無いんですが………」

 

説明をしている暇は無いと言うグリッドマンに、カオルがそうツッコミを入れる。

 

「如何すれば宜しいのですか?」

 

しかしすみれは、グリッドマンにそう問い返した。

 

「! すみれ様!?」

 

「大丈夫ですわ。彼は“ウルトラマンゼロと同じく”………()()()()()です」

 

驚くカオルだが、すみれは“確証は無いが確信した”表情でそう返す。

 

「「…………」」

 

イデとサコミズも、同意する様に無言で頷いていた。

 

「ありがとう。私は、未だこのコンピューターにアクセスする“権限”を持っていない。アクセスコードを使って、このコンピューターへのアクセスを許可してくれ」

 

其れを聞いていたグリッドマンがそう言うと、いくさちゃんのモニターに、入力画面の様な表示が現れる。

 

「戦闘コードを打ち込んでくれ。アクセスコードは………『GRIDMAN』!」

 

「! 分かったっ!!」

 

グリッドマンの声が響くと、令士がキーボードで『GRIDMAN』の文字を入力した。

 

入力が終わると、光が桜色のトンネルを進む光景が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮想空間内………

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

シイイイイイネエエエエエエェェェェェェェーーーーーーーーッ!!

 

咆哮と共に、ゼロと花組に向かって来るパワードダダA・ギラルス・グールギラス。

 

「グウッ………!」

 

花組の面々を背後に庇う様にしながら、片膝を着いているゼロ。

 

カラータイマーも点滅している。

 

「ゼロさん!」

 

さくらの声が挙がった瞬間、3体が攻撃態勢に入る。

 

 

 

 

 

その時!!

 

 

 

 

 

桜色の“トンネルの様な物”が現れると、其処から光の球が飛び出して来て、ゼロ達の前に飛び降りる。

 

「!? 何だっ!?」

 

ゼロが驚きの声を挙げた瞬間、光球は一際光を放ち………

 

『電光超人グリッドマン』の姿となった!!

 

「ハッ!!」

 

パワードダダA達に向かって構えを執るグリッドマン。

 

「お前はっ!?」

 

「私はコンピューターワールドを守るハイパーエージェント………『グリッドマン』」

 

「『グリッドマン』………」

 

「新しいヒーロー………」

 

「カッコイイ………」

 

花組の中でも、さくら・クラリス・あずみがグリッドマンを見上げてそう呟く。

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

シイイイイイネエエエエエエェェェェェェェーーーーーーーーッ!!

 

と其処でパワードダダAが咆哮すると、ギラルスとグールギラスがグリッドマンに向かって行く。

 

「ハアッ!!」

 

グリッドマンは掛け声と共に駆け出すと、先ずグールギラスの首を脇に抱え込む様にして捕まえる!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

「ハッ!!」

 

其処へ襲い掛かって来たギラルスの鼻先に、グールギラスを捕まえたまま回し蹴りを見舞う。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

鼻先の結晶を砕かれ、倒れるギラルス。

 

「ハアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

グリッドマンは、捕まえていたグールギラスをブレーンバスターの様に垂直に持ち上げ、後方に投げ飛ばす。

 

その際に掛かった負荷で、グールギラスの首がもぎ取れる!!

 

切断面から基盤の様な文様が覗く、首の無くなったグールギラスの身体が地面に叩き付けられる!

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

その光景を見たパワードダダAは、グリッドマンに向かってニュートロン光線を放とうとする。

 

「スパーク! ビイイイイィィィィィーーーーーームッ!!」

 

だが其れよりも早く、グリッドマンが左拳を突き出し、火球のような光弾を数発放つ『スパークビーム』を見舞う!

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!?

 

直撃を受けたパワードダダAは、ブッ飛ばされて仰向けに倒れる。

 

と其処で、グリッドマンの背後から首の無くなったグールギラスが襲い掛かって来る。

 

「!!」

 

振り向こうとしたグリッドマンだったが………

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

ゼロがウルトラゼロキックで弾き飛ばす!

 

「!」

 

「お前にばっかし良い格好はさせないぜ! ワイドゼロショットッ!!」

 

驚くグリッドマンを横目に、ゼロはボールの様に転がったグールギラスにワイドゼロショットを見舞い、爆散させる。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!

 

一方ギラルスの方は、弱点である鼻先の結晶を砕かれてしまい、弱体化して逃げの一手になる。

 

「逃がしません! 天剣・桜吹雪っ!!」

 

「東雲神社の! 御神楽ハンマーッ!!」

 

「望月流忍法………無双手裏剣!!」

 

「アポリト・ミデンッ!」

 

「アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

其処へ、花組が一斉に必殺技を叩き込む!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

弱体化していたギラルスは、花組の一斉攻撃に耐えられず、木っ端微塵に爆散した。

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

其処で、残っていたパワードダダAが起き上がるが………

 

「決めるぜ! グリッドマン!」

 

「ああ!」

 

ゼロとグリッドマンはそう言い合い、ゼロはゼロスラッガーをカラータイマーの左右に装着し、グリッドマンは左腕に装着されているグラン・アクセプターにエネルギーを集める。

 

「グリッドオオオオォォォォォーーーーーー………ビイイイイイィィィィィィーーーーーーームッ!!」

 

「ゼロツインシュートオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!!」

 

グリッドマンの『グリッドビーム』と、ゼロの『ゼロツインシュート』が同時にパワードダダAへと決まる!

 

ダァダアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!?

 

2人のヒーローの必殺技に耐え切れず、パワードダダAは身体が膨れ上がったかと思うと、爆発・四散。

 

飛び散った身体の破片がスノーノイズの様になり、そのまま溶ける様に消滅した。

 

「よっしゃあっ!」

 

「…………」

 

ゼロがガッツポーズを執る横で、グリッドマンは胸部のトライジャスターから光の粒子『フィクサービーム』を放つ。

 

仮想空間内へ広がって行ったフィクサービームは、戦闘の影響で壊れていた基盤の街を修復。

 

全ての基盤の建物が元通りになると、周りの光景が再び帝都の街並みとなった。

 

「! 元に戻った!」

 

「破壊されていたプログラムは修復した。コレで、君達も現実世界へと帰れる」

 

さくらが声を挙げると、グリッドマンがそう言って来る。

 

「ホントか!?」

 

「良かった~」

 

「一安心ね」

 

「もう仮想空間は懲り懲り………」

 

初穂・クラリス・アナスタシア・あざみから安堵の声が漏れる。

 

「ありがとよ、グリッドマン。お前が居なかったらヤバかったぜ」

 

「気にする事は無い。私は“ハイパーエージェントとしての任務”を遂行しただけだ」

 

「………お前の声、俺の仲間に似てんな」

 

グリッドマンの声を聞いたゼロが、ウルティメイトフォースゼロの仲間『ミラーナイト』の事を思い出す。

 

「? そうなのか?」

 

「ま、いっか。改めてサンキューな」

 

「うむ………」

 

そう言ってゼロが右手を差し出すと、グリッドマンはその手を握る。

 

2人のヒーローが固い握手を交わす。

 

「「「「「…………」」」」」

 

その光景に壮大なものを感じ、ジッと見上げているさくら達。

 

と、その身体がゆっくりと消え始める。

 

「!? 身体が!?」

 

「「「「!?」」」」

 

「心配は要らない。システムが正常に戻ったので、意識が肉体へと戻り始めているだけだ。次に目覚めた時には、現実世界に帰還している筈だ」

 

慌てるさくら達だったが、グリッドマンが心配は要らない、と説明する。

 

「あ、グリッドマンさん! 本当にありがとうございました!!」

 

さくらがそう言うと、花組のメンバーは完全に姿を消し、仮想空間から去って行った。

 

「じゃ、俺も行くぜ。また何処かで会おうぜ、グリッドマン」

 

「ああ、必ず………」

 

ゼロもグリッドマンに別れを告げ、仮想空間から脱出する。

 

「………ハアッ!!」

 

其れを見届けると、グリッドマンは飛び上がり、桜色のトンネルを出現させ、その中へと去って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・格納庫内………

 

「………ら………く………ちゃん………らちゃん………さくらちゃん!」

 

「! ハッ!?」

 

誰かが呼ぶ声がして、さくらが目を覚ますと、見慣れた格納庫の光景が飛び込んで来る。

 

「おお! 目を覚ましたか、さくらちゃん!」

 

さくらの無限の中を覗き込んで居た令士が安堵の声を挙げる。

 

「他の皆も目を覚ましたよ」

 

他の無限の中を覗き込んで居た面々の中で、イデがそう声を挙げる。

 

「わたし………」

 

「さくら!」

 

さくらがボーッとしていたところ、今度は誠十郎がコックピット内を覗き込んで来た。

 

「誠兄………神山隊長」

 

「良かった。無事に帰って来れたんだな」

 

安堵の息を吐く誠十郎。

 

「いや~、すまなかった、さくらちゃん。俺のいくさちゃんの所為でこんな事になって」

 

“自分の所為”でさくら達が危うい目に遭った、と平謝りする令士。

 

「そんな! 司馬さんの所為じゃありませんよ。悪いのは、あの怪人です」

 

令士の所為では無い、と言うさくらだったが………

 

「そうだぞ、令士。“お前の()()()()の所為”でこうなったんだからな」

 

其処で誠十郎がそう言い、令士に厳しい視線を向ける。

 

「か、神山隊長………!」

 

「良いんだ、さくらちゃん。コイツの言う通りだ………」

 

珍しく落ち込んだ様子を見せる令士。

 

「………だから、今度はちゃんと仕上げて、“完全に安全な”様にしてくれよ」

 

「! 誠十郎! お前っ………!!」

 

だが、続く誠十郎の言葉に驚きを示す。

 

「お前が良く言ってただろ………“失敗は成功の母”だってな」

 

そう言ってフッと笑う誠十郎。

 

「………ああ! 今度こそ完璧ないくさちゃんを仕上げてやるぜ!」

 

やる気を取り戻した令士が、サムズアップして見せる。

 

「…………」

 

その令士の姿に安心しつつ、悪友2人の遣り取りを微笑ましく思うさくらだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

こまち「カオル! 遂に華撃団大戦が始まるで!

 

神山さん達、ホンマに勝てるんかいな………?」

 

カオル「勝って貰わなければ困ります。

 

大会での宣伝効果は、かなり高いですから」

 

こまち「いや、そうや無くて………って、何やアレは!?」

 

次回『新サクラ大戦』

 

第3話『崩れる平和の祭典と新たな守り手』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

???「世界各国の華撃団の諸君に告ぐ。即座に武装解除して我々に全面降伏せよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2.5話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『コンピューター生命体 パワードダダ』

 

身長:0~55メートル

 

体重:0~1万トン

 

能力:ニュートロン光線、サイコキネシス

 

初登場作品:ウルトラマンパワード第8話『侵略回路』

 

ウルトラマンパワードに登場したアメリカ版ダダ。

 

原点の三面怪人とは異なり、ネットワーク内に住む電子生命体。

 

姿以外は原点のダダと全く異なる。

 

肉体を得る為に人間を襲って炭素ユニットを奪っていたが、パワードに発電所を破壊され、宿っていたPCの電源が落ちて消滅。

 

しかし、ネットワーク上の本体は健在である様で、最後は隔離されて破壊が決定したPCからパワードダダの声が響くと言うホラー演出で終わっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『結晶怪獣 ギラルス』

 

身長:69メートル

 

体重:6万5千トン

 

能力:口から吐くガス

 

初登場作品:電光超人グリッドマン第1話『新世紀ヒーロー誕生!』

 

特撮版でグリッドマンが初めて戦った怪獣。

 

名前の通り、全身に結晶が生えた姿をしている。

 

病院のコンピューターワールドで暴れると言う割とシャレにならない事をやった。

 

鼻先の角を折られて弱体化した後、最後はスパークビームとグリッドビームを受け消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『気炎万丈怪獣 グールギラス』

 

身長:70メートル

 

体重:5万トン

 

能力:口から放つ火球

 

初登場作品:SSSS.GRIDMAN第1話『覚・醒』

 

こちらはアニメ版で最初に戦った怪獣。

 

ツツジ台の神・新条 アカネが気に入らない少女・問川 さきるを殺す為に作り出した怪獣。

 

目標は達成し、まだ最適化出来ていなかったグリッドマン(SSSS.GRIDMAN)を追い詰める。

 

しかし、急造した為作りが甘く、構造上も脆かった首をチョップで叩き斬られ、残った身体は超電導キックとグリッドビームで破壊された。




新話、投稿させて頂きました。

電脳空間ならではの特性を見せるパワードダダに苦戦するゼロと花組。
そこへ、遂に………
満を持して登場!
夢のヒーロー、『電光超人グリッドマン』!!
彼の救援のお陰で、ゼロと花組も最後の踏ん張りを見せました。

最初は令士がアクセスフラッシュするとか、アシストウェポンとの合体も居れようかと考えていたのですが………
前者はグリッドマンは今回限りのゲスト出演なので、オリジナルの変身者を尊重して取り止め………
後者は一応アニメ版の後と位置付けているので、特撮版は喪失しており、アニメ版の新世紀中学生はオリジナルの状態のグリッドマンと合体出来るか不明だったので、悩んだ結果見送りました。

次回はいよいよ華撃団大戦開幕。
しかし、予告に時点で既に不穏な雰囲気が………
展開が大きく変わって行く事になりますので、ご注目下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第3話『崩れる平和の祭典と新たな守り手』
チャプター1『開幕、世界華撃団大戦!』


第3話『崩れる平和の祭典と新たな守り手』

 

チャプター1『開幕、世界華撃団大戦!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・司令室………

 

『全世界の【華撃団大戦】のファンの皆様、お待たせ致しました! 第3回世界華撃団大戦の舞台、此処帝都東京に、続々と各国の華撃団が集結しております!!』

 

「始まったな………」

 

司令室に集まり、モニターで集結する世界華撃団の姿を見ていた花組一同の中で、誠十郎がそう呟く。

 

次々と『WLOF級 空中戦艦』が、華撃団大戦の会場である『帝国競技場』へ乗り付けて来る。

 

『最初に登場致しまするは、最近は見掛けませんでしたが、帝都防衛にも日夜奮闘していた事で、御存知の方も多い上海華撃団です』

 

アナウンサーがそう言うと、上海華撃団のシャオロンとユイの姿が映し出された。

 

『先頭に立つのは【炎の飯使い】ことヤン・シャオロン隊長であります。そして続くはホワン・ユイ隊員であります』

 

カメラに向かって手を振るユイとは対照的に、シャオロンは終始顰めっ面で、不機嫌そうな様子だった。

 

「シャオロンの奴、無愛想過ぎじゃねえか?」

 

()()()から、ずっとあの調子だそうです」

 

そんなシャオロンの姿を見た初穂とクラリスがそう漏らす。

 

(確かに、幾ら何でも変だな………“華撃団の隊長”が、この()()()()で“あんな表情”でいるなんて………)

 

『アイツ………益々酷くなって無えか?』

 

誠十郎もそんなシャオロンの姿に疑問を抱き、ゼロも態度が悪化していると感じる。

 

「そう言えば、如何して私達は帝劇で待機するよう指示されたんですか?」

 

各国の華撃団が集結する中、自分達“帝国華撃団が()()を命じられた事”に疑問を呈するクラリス。

 

「決まってます! ()()()なんですから、後で“特別に一杯紹介して貰える”んですよ!」

 

『だと良いがな………』

 

前向きに考えるさくらだったが、ゼロは一抹の不安を感じる。

 

「次は『倫敦華撃団』。出て来た」

 

と其処であざみがそう言い、次の華撃団………

 

イギリスの『倫敦(ロンドン)華撃団』の姿が映し出される。

 

『続いて登場するのは、遥か霧の都から訪れた円卓の騎士団………【倫敦華撃団】であります! 大英帝国の伝統と格式を身に纏い、現れ出でたるは華麗なる貴公子【アーサー】団長!』

 

金髪で金色の戦闘服に身を包み、剣を携えた青年………『アーサー』が映し出される。

 

『円卓の騎士を率い、サーの称号を持つ現代の騎士。“騎士道の体現者”です』

 

(騎士か………)

 

騎士と称されるアーサーの姿に、ミラーナイトを重ねるゼロ。

 

『其れに続くは、全華撃団中【最強の剣士】とも噂されるブラックナイト・【ランスロット】!』

 

アナウンサーは続いて、亜麻色の髪をポニーテールに纏め、黒い戦闘服を纏っている女性剣士………『ランスロット』を紹介し始める。

 

『涼やかな瞳と流れる亜麻色の髪、優雅な姿でありながら不敵な笑みが絶対の自信を感じさせます』

 

其処でモニターからは、割れんばかりの歓声が響いて来る。

 

『そして、お聞き下さい! この大歓声です。まるで帝国競技場が無数のカナリアに占拠されてしまったかの様です。女性の声援が一際多い様ですね』

 

「凄い人気ですね」

 

「貴族様だし、凄え強ぇらしいから、まあ当然かもな」

 

その様子に、クラリスと初穂がそう漏らす。

 

「其れだけじゃないわ。高貴さと優雅さを兼ね備えた演技も、見事なものよ」

 

「完璧ですね、本当に。まるで、“物語の主人公”みたいです。まあ、ゼロさんには劣りますけど」

 

アナスタシアがそう補足すると、クラリスはそんな感想と惚気を漏らす。

 

『へへへ、照れるぜ』

 

「…………」

 

照れているゼロと、何と無く納得が行かない誠十郎だった。

 

「その次に入場した『ランスロット』さんはどんな方なんですか?」

 

「『黒騎士』の異名を持つ倫敦華撃団の切り込み隊長。二刀流から繰り出される剣技は、イナズマに喩えられる程の速さらしい」

 

さくらがランスロットについて尋ねると、あざみがそう答える。

 

「隊長の二刀流と、どっちが強いんだろうな?」

 

「ははっ………さて、如何だろうな。手合わせするのが、今から楽しみだよ」

 

初穂の問いに、誠十郎ははぐらかす様にそう返す。

 

『オイ、誠十郎。其処は“勿論俺の方が上だ”って言うトコだぜ』

 

(いやいや、自惚れも良い所だろう)

 

ゼロの言葉に、心の中でそう突っ込む。

 

『さあ、いよいよ登場です。皆様お待ちかねの、()()華撃団!』

 

と其処で、アナウンサーが新たな華撃団を紹介し始める。

 

『第一回、第二回の華撃団大戦で共に優勝し、前人未到の三連覇を目指す………最強兵団………【伯林(ベルリン)華撃団】! 堂々の優勝候補筆頭であります!!………!』

 

銀髪の女性とオレンジ色のツインテールの少女が映る中、アナウンサーの声が途切れる。

 

『………は、迫力です。何と言う、迫力でしょう。これこそ………正しく、王者の風格。圧倒的です。圧倒的………』

 

「………凄ぇ迫力だな。アナウンサーまで黙り込んじまったぜ」

 

「………はい。画面越しでも、気圧されてしまいます」

 

圧倒的な迫力を持つ伯林華撃団に、また初穂とクラリスがそう漏らす。

 

「ケタ違いの実力よ。欧州でも敵無し。辛うじて、倫敦華撃団が対抗出来るか?と言われているぐらいね」

 

「評論家による予想では、当然の様に『優勝当確』でした。流石です」

 

アナスタシアとさくらが続いてそう言う。

 

「アタシ等の予想は?」

 

「勿論『当確』です。()()()()()()………失礼ですよね、ホント」

 

初穂の問いに、クラリスがやや憤慨した様子を見せながらそう言う。

 

「やっぱり、そうですか………」

 

気落ちした様子を見せるさくら。

 

公演の客足も伸び始め、降魔だけでなく怪獣や星人相手にも奮戦して来たので、帝都市民の間でこそ帝国華撃団の人気は上がり始めているが、評論家の批評は厳しかった。

 

『誠十郎。ココは隊長のお前が鼓舞するところだぞ』

 

「(分かってる)負ける気で戦う積りは無い。精一杯、頑張ろう」

 

席から立ち上がりながら、皆に向かってそう呼び掛ける誠十郎。

 

「その通り! 力の限り、戦い抜きましょう!」

 

「気持ちだけで実力は覆らないけど………“()()と言う想い”は大事ね」

 

誠十郎の言葉に、さくらが元気を取り戻し、アナスタシアが厳しい事を言いつつも同意して来る。

 

「常に“トップ”を目指す積りで居ないと、優勝なんて夢のまた夢だから」

 

「お、見ろよ。次の華撃団が登場するみたいだぜ」

 

アナスタシアが言葉を続けると、次の華撃団の紹介が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、最後に………開催国である我が国から、帝国華撃団です!』

 

「よっしゃ! 来たああああっ!!」

 

漸く帝国華撃団の紹介が来て、初穂が歓声を挙げる。

 

()()()()()()も多いでしょうが、日本の帝都には帝国華撃団が存在しています。第3回世界華撃団大戦が帝都で開催される事となり、最近再結成されましたが、実力は発展途上。各国に胸を貸して貰う、いえ………()()()()()()()()()()()と言えるのではないでしょうか』

 

『言ってくれるぜ』

 

やや()き下ろした様なアナウンサーの物言いに、ゼロが憤慨する。

 

『最近では、帝都に現れる様になった新たな脅威である怪獣や宇宙人相手に奮戦しておりますが………其処で忘れていけないのが【彼】の存在!』

 

しかし其処で、アナウンサーの語気が変わる。

 

『御存知! 『ウルトラマンゼロ』!!』

 

そして、映像が帝国華撃団からウルトラマンゼロへと変わる。

 

「! ゼロさん!?」

 

『突如帝都に現れた謎の巨人! その圧倒的な力で怪獣や宇宙人を薙ぎ倒し! 身体の色を変える変身で能力を変える等、その力は計り知れません! 正に“神秘の超人”!!』

 

ゼロが紹介され始めた事にさくらが驚いていると、ワイドゼロショットを放つゼロや、ストロングコロナゼロやルナミラクルゼロの姿が映し出される。

 

『一体彼は何者なのか? 何処から来て何処へ行くのか? 今帝都のみならず、世界中で注目される存在です。さて、其れでは開催の日程と勝敗予想を………』

 

「ちょっと待てコラッ!」

 

やがて、アナウンサーが世界華撃団大戦の開催日程と勝敗予想を流し始めると、初穂が憤慨した様子を露わにする。

 

「もう終わりなんですかっ!? 殆どゼロさんの紹介じゃ無かったですか!!」

 

「開催国なのに、あんまりです。ゼロさんを紹介したのは評価しますけど」

 

さくらとクラリスもそう声を挙げる。

 

「ふふ………随分と舐められたものね………」

 

「成敗したい………」

 

クールに流すアナスタシアと、対照的にクナイを取り出して怒りを見せているあざみ。

 

「まあまあ、落ち着けよ。アナウンサーに怒ったって仕方が無い」

 

「悔しくないんですか!?隊長!」

 

「そうだぜ! アンタ、其れでも男かよ!?」

 

誠十郎が落ち着かせようとするが、さくらと初穂が噛み付く様にそう返して来る。

 

「静かになさい」

 

と其処で手を叩きつつ、カオルを伴ったすみれが姿を見せた。

 

()()を出せば、嫌でも取材されるわ。要は、“無視出来ない様になれば良い”のです。“下馬評が最低()()()()()”、勝てば否応無く注目される」

 

『だな。ガタガタ抜かす奴ぁ、実力を見せ付けてやりゃあ良いんだ』

 

すみれの言葉に、ゼロが同意する。

 

「“帝国華撃団此処に在り”と、目に物見せてお遣りなさい」

 

「神崎司令の言う通り………俺達は、()()()()出場するんだ。だから、この華撃団大戦で如何戦い、如何勝つのか、其れを話し合おうじゃないか」

 

誠十郎がそう言うと、さくら達は気持ちを切り替え、華撃団大戦を勝ち抜く作戦会議へと入る。

 

(………イラストレーターの話では………今回の華撃団大戦こそが、“帝国華撃団、そして世界の大きな転機になる”と………一体どの様な………)

 

その時すみれは、以前イラストレーターから言われていた帝国華撃団と世界の大きな転機について、一抹の不安を抱いていた。

 

「其れで神山くん、帝国華撃団が勝つ為の作戦は思い付いた?」

 

しかし今は、其れを頭の片隅に追い遣り、華撃団大戦への作戦について誠十郎に尋ねるのだった。

 

「“帝国華撃団としての強み”を活かして戦おうと思います」

 

「帝国華撃団としての強み? 其れは何かしら?」

 

「俺達の強みは……! 勿論! ()の事に決まってるだろ!」

 

と其処でゼロが主導権を奪取し、立ち上がりながらそう言い放った。

 

「俺が必ず! 帝国華撃団を優勝させる!!」

 

「「「「「…………」」」」」

 

一片の疑いも無くそう言い放つ誠十郎(ゼロ)の姿に、花組一同は呆気に取られた様な表情となる。

 

(オイ、ゼロ!)

 

大言を吐いてしまった事に、誠十郎は焦るが………

 

「フフフ………実の所、其れが“1番の強み”かも知れないですわね」

 

しかし何と、すみれは誠十郎(ゼロ)の言葉を肯定した。

 

「今の花組は出来たばかりの部隊。チームワークも未だ未だ未熟ですわ。結束力を引き出せるか如何かは………神山くん、()()()()ですわ」

 

(ほ、本当に俺が“切り札”だった………全力で頑張ろう………)

 

『そうだぜ、誠十郎。その気概を忘れんじゃねえぞ』

 

すみれからの言葉を受け、誠十郎が決意を新たにすると、ゼロは主導権を返した。

 

「其れで神山くん。作戦は引き続き考えて貰うとして………もう1つ、“お願いしたい事”が有るの」

 

「何でしょうか?」

 

「開催国の代表として、各国の参加者に挨拶して来て欲しいのよ。私もサコミズさんもちょっと外せない用事があるから………(わたくし)の代理として、お願い出来るかしら?」

 

「分かりました………上海華撃団にもですか?」

 

すみれの代理として各国華撃団への挨拶を頼まれる誠十郎だが、表情を強張らせてそう尋ね返す。

 

銀座での戦闘の際に、明らかにさくらを殺そうとしていたシャオロン。

 

流石に看過出来る事では無く、上海華撃団とWLOFに抗議を上げた。

 

しかし、上海華撃団からの解答は今だ無く、WLOFに至っては『華撃団同士の事は華撃団同士で話し合って解決せよ』と言う、完全に職務放棄な答えが返って来た。

 

その為、帝国華撃団と上海華撃団は現在も気不味い関係が続いているのだ。

 

「そうですわね………()神山くんが上海華撃団の人達と会うのは好ましく無いわね。そちらには後で私が言っておくわ」

 

「お気遣い、感謝します」

 

すみれもその辺の事情を考慮し、上海華撃団は後回しで良いと結論付けた。

 

「あの………私も一緒に行って良いですか? どんな人達が相手なのか、会っておきたいんです」

 

と其処で、さくらが遠慮がちにそう言って来た。

 

「えぇ、構わないですわ。失礼の無い様にね」

 

「はい!」

 

「では、開催セレモニーも終わった事ですし、一先ず解散にしましょう」

 

さくらに許可を出すと、すみれはこの場を解散とするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

いよいよ新サクラ大戦の目玉『世界華撃団大戦』の開幕となります。
しかし、この華撃団大戦………
トンでもない事になります。
詳しくはこの後の展開にて………

また、今回も上海華撃団の出番は大幅カットとなります。
説明した通り、あんな事があった後で普通に交流出来るかと言われたら、答えはNOですからね。

次回は倫敦華撃団と伯林華撃団と会合。
どちらも衝撃的な展開になりますので、お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『倫敦華撃団と伯林華撃団』

チャプター2『倫敦華撃団と伯林華撃団』

 

黒騎士 ランスロット

 

降魔『業火』

 

地底怪獣 デットン登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都中央駅・大帝国ホテルに通じる連絡通路前………

 

華撃団大戦に参加する、各国華撃団への挨拶をすみれに代わって任された誠十郎(+ゼロ)とさくらが最初に訪れたのは………

 

帝都中央駅に隣接している『大帝国ホテル』を拠点としている『倫敦(ロンドン)華撃団』だった。

 

「大帝国ホテルに滞在か………お金持ちな華撃団だな」

 

『何か嫌味ったらしいぜ』

 

ホテル住まいな倫敦華撃団にそんな感想を漏らす誠十郎とゼロ。

 

「高級過ぎて………入るの、ちょっとドキドキしちゃいます」

 

根っからの庶民なさくらは、高級ホテルである大帝国ホテルに入るのに若干の躊躇いを覚える。

 

「確かに少し緊張するな………でも、“帝国華撃団の代表”として、堂々と入ろう」

 

「はい!」

 

しかし誠十郎が毅然とした態度を見せると、さくらも表情を引き締める。

 

そして、2人は揃って大帝国ホテルへと入って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大帝国ホテル・ロビー………

 

「これは………凄いな」

 

『まるで光の国みてぇだな』

 

思ったよりも高級(豪華)な内装に誠十郎が感嘆の声を漏らしていると、ゼロは故郷を思い出す。

 

「高級ホテルってこんな感じなんですね。ステキです………」

 

さくらも思わず溜息を漏らす。

 

「ねえ、キミ………中々強そうだね!!」

 

とその時、ロビー奥の階段の上からそんな声が降って来た。

 

「「………!?」」

 

その声に、誠十郎とさくらが反応した瞬間………

 

「行くよ………勝負!!」

 

声の主………ランスロットが其処から跳躍!

 

「でやあああっ!!」

 

上段に振り被った剣を、さくら目掛けて振り下ろしながら降下して来た!!

 

「!!」

 

さくらは驚きながらも、天宮國定を抜き放ちつつ振り下ろされた剣を躱す!

 

「さくら!!」

 

「フッ!!」

 

誠十郎が声を挙げる中、さくらは反撃とばかりに横薙ぎを繰り出すが、弾かれる。

 

ランスロットは、そのまま剣をまるで小枝でも振るかの様にして、次々と連撃を繰り出して来る。

 

「ははっ! これが帝国華撃団の実力なの!?」

 

「くっ………!」

 

防戦一方のさくらに向かって、ランスロットは挑発するかの様にそう言い放つ。

 

其処で、さくらは後ろに跳んで一旦距離を取る。

 

「勝つのはあたし達………倫敦華撃団だ!」

 

するとランスロットは、刀を顔の脇に構え、鋭い突きを繰り出した!!

 

その突きがさくらを刺し貫いた!

 

………かに思えたが、

 

「!? 何っ!?」

 

驚くランスロット。

 

さくらは紙一重で躱しており、僅かに切れた髪がパラパラと宙に舞う。

 

「はあああああっ!」

 

其処でさくらは、剣を壁に突き刺してしまったランスロットに向かって、身体を独楽の様に回転させての横薙ぎを繰り出した!!

 

「!? なっ!?」

 

しかし、今度はさくらが驚く。

 

「“二剣”で無ければやられていたよ………」

 

ランスロットはもう1本の剣を抜き、さくらの横薙ぎを背面で受けていた。

 

「アンタ、やるね」

 

「クッ!」

 

直ぐ様飛び退いて、距離を取るさくら。

 

(雰囲気が変わった………!)

 

そして、二剣となったランスロットの雰囲気が変わった事を瞬時に感じ取る。

 

「さあ………行くよっ!!」

 

再度さくらに斬り掛かって行くランスロット。

 

『誠十郎! 代われっ!!』

 

「!? ゼロッ!?」

 

と其処で、ゼロが誠十郎の身体を動かし、両者の間に割って入った!

 

「!? 神山隊長っ!?」

 

「!? 馬鹿っ! 急に飛び込んで来るなっ!!」

 

さくらは驚きで動きを止めたが、ランスロットは剣を止められず、誠十郎に斬り掛かってしまう!

 

が!!

 

「よっとっ!」

 

何と誠十郎(ゼロ)は、振り下ろされたランスロットの二剣を、其々()()()白羽取りして止めて見せる!

 

「!? なっ!?」

 

「!!」

 

ランスロットは驚愕に目を見開き、彼女を止めようと現れたアーサーも思わず固まった。

 

「クッ!!」

 

直ぐ様飛び退き、誠十郎(ゼロ)から距離を取るランスロット。

 

「………キミも強いね。私の剣を“素手で”受け止めたのは、キミが初めてだ」

 

しかし尚、戦意は折れていない様子で、ギラつく目で誠十郎(ゼロ)を見遣る。

 

「そいつは光栄だな」

 

其れに対し、誠十郎(ゼロ)は不敵に笑って返す。

 

「改めて勝負しようじゃ無いか」

 

「良いぜ………乗ってやるよ」

 

ランスロットがそう言い放つと、誠十郎(ゼロ)はそう返して………

 

()()()()()構えを取った。

 

「? 何故抜かない? その腰の刀は飾りかい?」

 

腰に携えている二刀を抜かずに構えを取る誠十郎(ゼロ)に、ランスロットが怪訝な顔をする。

 

「“抜かない”んじゃねえ………()()()()()()()だけだ」

 

すると、誠十郎(ゼロ)はそんな言葉を返した。

 

「! 貴様! ふざけるなよっ!!」

 

舐められていると思ったランスロットは、怒りも露わに斬り掛かる。

 

『オイ、ゼロッ!?』

 

「任せておけって………」

 

誠十郎が慌てるが、ゼロは両腕にエネルギーと霊力を集中させる。

 

「ハアアアアアアッ!!」

 

二剣を、誠十郎(ゼロ)目掛けて振り下ろすランスロット。

 

「フッ!」

 

迫り来る二剣に対し、誠十郎(ゼロ)は腕を構える。

 

すると、『ガキィンッ!!』と言う金属同士がぶつかり合った様な鈍い音が響き渡る。

 

「!? 嘘だろっ!?」

 

「へへっ」

 

驚愕するランスロットに対し、誠十郎(ゼロ)は不敵に笑う。

 

ランスロットが振り下ろした二剣は、誠十郎(ゼロ)の()で止められていた!

 

エネルギーと霊力を集中して、腕を硬化させたのだ!!

 

嘗て、師匠・ウルトラマンレオが、『奇怪宇宙人 ツルク星人』と戦った時に使った戦法である。

 

「こ、こんな事がっ!?………うわああああっ!!」

 

戦慄しながらも、二剣で目にも止まらぬ連撃を次々に繰り出すランスロット。

 

「よっ! ほっ! はっ!」

 

しかしその全てを、誠十郎(ゼロ)は硬化させた腕で全て防いで見せる。

 

ランスロットの剣が命中する度に、鈍い金属音が響き渡るが、誠十郎(ゼロ)の腕には掠り傷1つ付かない。

 

「か、神山隊長………凄い………」

 

誠十郎(ゼロ)の絶技に言葉を失うさくら。

 

「…………」

 

その様子を見ていたアーサーは、最早ランスロットを止める事も忘れ、口を開いたまま愕然としていた。

 

と………

 

不意に、『パキィーンッ!!』と言う、金属が砕けた様な破砕音が鳴り響いた。

 

「そ、そんな………」

 

ランスロットが膝を着く。

 

その手に握っている二剣は、刀身が中程から砕けて無くなっていた。

 

如何やら、硬化させた誠十郎(ゼロ)の腕の防御による反動に耐え切れなかった様だ。

 

「如何する? 未だやるか?」

 

「………私の………負けだ………」

 

誠十郎(ゼロ)がそう問うと、ランスロットは力無くそう返したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、ようこそ、帝国華撃団の諸君。僕が倫敦華撃団団長、『アーサー』だ」

 

若干引き攣った顔をしながらも、必死に取り繕った様子で自己紹介をして来た、倫敦華撃団の隊長もとい団長の『アーサー』

 

「君が、帝国華撃団の隊長………神山 誠十郎くんか。ランスロットが失礼をしたね。ケガは無かったかな?」

 

「ああ、この通り。掠り傷1つ無えよ」

 

そう言って、ランスロットの剣を受け止めていた腕を見せる誠十郎(ゼロ)。

 

その言葉通り、ランスロットの剣を受け止めていた腕には、傷1つ付いていない。

 

「そ、そうか………“宇宙人を生身で退けた”と言う噂は聞いていたが、如何やら本当の様だね」

 

冷や汗を流しながら、アーサーは頷く。

 

(ゼロ! 何て事をしてくれたんだ!?)

 

『何だよ? 別に怪我したワケじゃねえだろ?』

 

(“そう言う問題”じゃ無い! お前が腕で剣を受け止めようとした瞬間は肝が冷えたぞ!!)

 

しかし誠十郎本人は、ゼロに対してそう抗議の声を挙げていた。

 

「今日は態々挨拶に来てくれてありがとう。天宮さんは素晴らしい剣士だ。そして君も“途轍も無い”戦士だ。華撃団大戦、楽しみにしているよ」

 

と其処で、再度取り繕ったアーサーがそう述べる。

 

『じゃ、後は任せたぜ』

 

「(オ、オイ!………ったく)此方こそ。“胸を借りる”積りで、挑ませて貰います」

 

と其処でゼロが引っ込み、誠十郎は何とか平静を装ってアーサーに返す。

 

(胸を借りる、か………“皮肉”にしか聞こえないよ)

 

その誠十郎の言葉に、アーサーは内心でそう思うのだった。

 

「…………」

 

一方、剣と共にプライドも砕かれたランスロットは、誠十郎を睨み付ける様に見据えていた。

 

「えっと、改めて初めまして。神山 誠十郎です。その………」

 

「ランスロットで良いよ、神山………さっきの事は気にしなくて良い。剣を砕いてしまったのは、あたしが“未熟”だからだ」

 

挨拶して来た誠十郎にそう返すものの、その顔は納得が行っていない様子だ。

 

「見てろ………華撃団大戦の場でリベンジだ! 今度は必ずあたしが勝つ!!」

 

誠十郎をビッと指差しながら、ランスロットはそう宣言する。

 

(これは………大変な人の機嫌を損ねてしまったかも知れないな)

 

『面白くなってきたじゃ無えか、誠十郎』

 

内心で冷や汗を流す誠十郎に、ゼロは無責任にそう言うのだった。

 

「神山くん。君達の健闘を祈るよ」

 

と其処で、アーサーがそう言いながら右手を差し出し握手を求めて来た。

 

「ありがとうございます」

 

其れに対し誠十郎も自分の右手を差し出し、ガッチリと握手を交わす。

 

「では、他の華撃団の方々への挨拶も有りますので、コレで失礼致します」

 

「ああ。試合でまた会おう」

 

最後にそう言い合うと、誠十郎(+ゼロ)とさくらは、大帝国ホテルを後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都中央駅・大帝国ホテルに通じる連絡通路前………

 

「さくら。ランスロットさんは強かったかい?」

 

帝国ホテルを出た誠十郎が、さくらにそう尋ねる。

 

「はい。強かったです。今まで戦った誰よりも………」

 

「『倫敦の黒騎士』か………流石は“最強剣士”と言われるだけの事は有るな」

 

「はい………でも正直、神山さんの方が凄かったですよ。剣を腕で受け止めるなんて」

 

「ああ、いや………」

 

流石に返答に困る誠十郎。

 

「お陰で(わたし)、楽しくなって来ました」

 

「………楽しく?」

 

「だって、沢山の華撃団の人達と競い、戦える! こんな経験、そうそう出来る事じゃ無いですよね!?」

 

『相変わらず、前向きな奴だぜ』

 

前向きなさくらの言葉に、ゼロが感心する。

 

(わたし)、今まで以上に華撃団大戦が楽しみになりました!」

 

「ははっ………ホントに前向きな意見だな。其れでこそ、さくらだ」

 

「さあ、神山さん! 次は伯林(ベルリン)華撃団に会いに行きましょう!」

 

「ああ、そうだな………」

 

そう言い合うと、次に伯林華撃団の元へと向かう誠十郎(+ゼロ)とさくらだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

大帝国ホテル・ロビー………

 

「帝国華撃団・天宮 さくら………あたしに“2本目の剣を抜かせる”なんてね。そして神山 誠十郎………あんな屈辱を覚えたのは初めてだよ!」

 

「正直、“本当に人間か?”と疑ったよ。彼個人の実力()()で勝敗が決まるものでは無いが………かと言って“無視出来る存在”では無い」

 

先程のさくら、そして誠十郎(ゼロ)との戦いを思い出し、ランスロットとアーサーは苦い顔を浮かべていた。

 

「まさか帝国華撃団にあれ程の存在が居たとは………ひょっとすると、伯林華撃団()()()強敵になるかも知れないな」

 

「関係無いよ。帝国華撃団だろうと伯林華撃団だろうと………“戦うだけ”さ」

 

其処でランスロットは、不敵な笑みを浮かべてそう言い放つ。

 

「ランスロット………何時も言っているけど、僕達は“騎士であり華撃団”なんだ。戦う事ばかりに囚われていてはいけないよ?」

 

「またお説教? やめてよ。あたしは、戦う事が出来れば其れで良いの。其れが“()()()()守る事や華撃団の為になれば良い”んでしょ?」

 

そんなランスロットをそう注意するアーサーだったが、ランスロットは何処吹く風と言った様子である。

 

「全く………」

 

アーサーは、そんなランスロットの姿に一抹の不安を感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその頃………

 

誠十郎(+ゼロ)とさくらは………

 

伯林華撃団が滞在している空中戦艦を目指して、銀座の街を歩いていた。

 

「しかし、何とか間に合ったかな?」

 

「何がですか?」

 

不意にそう漏らした誠十郎に、さくらが尋ねる。

 

「華撃団大戦だよ。隊長になった頃は、“如何にもならない”と思ってたけど………皆一生懸命、特訓に従いて来てくれた。充分に、勝てる可能性は有る」

 

「そ、そうですか………」

 

誠十郎の言葉に、さくらはゼロ直伝の特訓の事を思い出し、若干引き攣った表情となる。

 

「本当は、もうちょっと連携とか深めたかったんですけど」

 

「大丈夫。怪獣や星人との実戦での経験値も有る。君達は強くなってる。俺が保証するよ」

 

「………はいっ!」

 

『まっ、俺から言わせれば未だ未だだけどな』

 

さくらに向かって誠十郎はそう言うが、ゼロが茶々を入れる。

 

(ゼロ………そりゃ、“お前の基準”から見ればそうかも知れないが………)

 

と、誠十郎がゼロにそう返していると………

 

「きゃあああ!!」

 

突如として悲鳴が響き渡った!!

 

「何だっ!?」

 

「何っ!?」

 

慌てて辺りを見回す誠十郎とさくら。

 

「神山さんっ! 彼処です! 降魔ですっ!!」

 

キシャアアアアアアッ!!

 

さくらが指差したその先では、人々の襲い掛かろうとしている数匹の降魔『業火』の姿が在った。

 

「降魔だとっ!?」

 

「早く帝劇に戻りましょう!」

 

「いや、街の人達の避難が先だ!」

 

誠十郎とさくらがそう言い合っていると………

 

「無用だ。3秒で片付ける」

 

何処からとも無く、そんな声が聞こえて来た。

 

「!? 何だっ!?」

 

誠十郎がそう言った瞬間………

 

暴れる降魔『業火』達の中に、1機の霊子戦闘機が降り立った!

 

其れは、十字状のスリット上を移動するカメラアイを持ち、両腕に機関砲を装備した白銀の機体………

 

伯林華撃団の『アイゼンイェーガー』だった!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

そのアイゼンイェーガーに、1匹の降魔『業火』が襲い掛かる。

 

が、次の瞬間!!

 

アイゼンイェーガーは両腕の機関砲を展開したかと思うと………

 

まるで舞う様な無駄の無い動きで、機関砲を連射。

 

降魔『業火』達は次々に撃ち抜かれ、倒れ伏し、全滅。

 

その間、僅か3秒!

 

「「…………」」

 

『へえ………』

 

その一瞬の出来事に、誠十郎とさくらは呆然となり、ゼロも感心した様に呟く。

 

やがて、降魔『業火』を片付けた白銀のアイゼンイェーガーの隣に、もう1機の橙色掛かったアイゼンイェーガーが降り立つ。

 

その2機から、其々に搭乗者が降りて来ると、何かを言い合う。

 

「………!」

 

と其処で、誠十郎とさくらの存在に気付いた銀色のアイゼンイェーガーに乗っていた人物………エリスが近寄って来る。

 

橙色のアイゼンイェーガーに乗っていたマルガレーテも其れに続き、誠十郎とさくらの前に立つと2人揃って姿勢を正し、敬礼して来た。

 

「伯林華撃団隊長、エリスだ」

 

「帝国華撃団・花組隊長、神山 誠十郎です。ご協力、ありがとうございました」

 

自己紹介するエリスにそう返しながらお礼を述べて、頭を下げる誠十郎。

 

「協力等していない。“()()()降魔を倒しただけ”だ」

 

「「…………」」

 

やや冷淡とも取れるその物言いに、誠十郎とさくらは思わず黙り込む。

 

「………帰投する。行くぞ、マルガレーテ」

 

「Jawohl!」

 

そして、直ぐに帰投しようとマルガレーテに呼び掛ける。

 

と、その時!!

 

グアガアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

突如、咆哮と共に誠十郎達の直ぐ傍の石畳の地面を突き破って、『地底怪獣 デットン』が出現した!

 

「!? なっ!?」

 

「怪獣っ!?」

 

『アレは地底怪獣 デットンだ!』

 

エリスとさくらが驚きの声を挙げ、ゼロがその怪獣の名前を告げた瞬間!

 

グアガアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

デットンは咆哮と共に、搭乗者の居ないアイゼンイェーガー2機を蹴り飛ばした!!

 

「!? アイゼンイェーガーッ!!」

 

エリスが思わず声を挙げた瞬間、2機のアイゼンイェーガーは建物の側面に叩き付けられた!!

 

火花を散らし、蒸気漏れを起こして擱座するアイゼンイェーガー。

 

グアガアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

其れを確認すると、デットンは誠十郎達を見下ろす。

 

「! うっ!」

 

「ひっ!?」

 

身長55メートルのデットンに見下ろされ、強豪と言われている伯林華撃団のエリスとマルガレーテも流石に怯んだ。

 

「! さくら! 2人を連れて離れろっ!!」

 

と其処で、ゼロと入れ替わった誠十郎が、刀を1本抜きながらさくらにそう言う。

 

「! 神山さん!?」

 

「ハアッ!!」

 

さくらが驚きの声を挙げた瞬間、誠十郎(ゼロ)は刀をデットン目掛けて投擲した!

 

投げ付けられた刀は、デットンの左目に突き刺さった!!

 

グアガアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?

 

目をやられたデットンが、悲鳴の様に咆哮を挙げる。

 

「コッチだ、不細工野郎! コッチへ来いっ!!」

 

其処で誠十郎(ゼロ)は、デットンに向かってそう挑発の言葉を投げ掛け、さくら達から離れる様に走り出した。

 

グアガアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

目をやられた事か、挑発された事への怒りか、デットンは誠十郎(ゼロ)を追ってさくら達から離れる。

 

「! 誠兄さん!」

 

「無茶だっ!!」

 

思わず誠兄さん呼びしてしまうさくらと、声を挙げるエリス。

 

グアガアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

と其処でデットンは、平手打ちの様に建物を叩き、瓦礫を誠十郎(ゼロ)目掛けて飛ばした!!

 

「!? うおおおおおっ!?」

 

飛んで来た瓦礫が直撃し、舞い上がった粉塵で誠十郎(ゼロ)の姿が見えなくなった。

 

「誠兄さあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーんっ!!」

 

グアガアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

悲鳴の様な声を挙げるさくらに、今度は貴様達の番だと言わんばかりにデットンが向き直る。

 

と、その時!!

 

「おおりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーッ!!」

 

上空から現れたゼロが、デットンの脳天に急降下キックを見舞った!!

 

グアガアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?

 

モロに喰らったデットンが、地面に叩き付けられる様に倒れる。

 

「セヤッ!!」

 

「! ゼロさんっ!!」

 

「! アレが噂の!!」

 

「ウルトラマンゼロ………」

 

着地を決めたゼロにさくらが歓喜の声を挙げ、エリスとマルガレーテは直で見るゼロの迫力に言葉を失う。

 

(ゼロ! 街の人の避難が未だ終わってない!)

 

「分かってる! 速攻で片付けてやる!!」

 

未だ街の人々の避難が終わっていない為、即座にケリを着けようと、ゼロはウルティメイトブレスレットを叩いて、ストロングコロナゼロに変わる!

 

「テエヤッ! ウルトラハリケーンッ!!」

 

デットンを捕まえると、ウルトラハリケーンで上空へと投げ飛ばした!!

 

「ハアッ!!」

 

其処で今度はウルティメイトブレスレット自体が輝いたかと思うと、ウルティメイトイージスが装着され、ウルティメイトゼロとなる。

 

「ウルティメイトゼロソードッ!!」

 

そして右腕のウルティメイトゼロソードから、ソードレイ・ウルティメイトゼロを“斬撃波”としてデットンに放った!!

 

斬撃波のソードレイ・ウルティメイトゼロは、デットンを縦一閃に両断!!

 

グアガアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?

 

デットンは、そのまま断末魔と共に空中で爆発四散したのだった。

 

「やったっ!」

 

「強い………圧倒的では無いか」

 

「…………」

 

さくらが飛び上がって喜びを露わにし、エリスはゼロの強さに感嘆し、マルガレーテは不機嫌そうに黙り込んだ。

 

「………ルナミラクルゼロ」

 

其処でゼロは、ルナミラクルゼロへと変身。

 

「ミラクル・リアライズ」

 

ミラクル・リアライズで、壊れた街とアイゼンイェーガーを修復する。

 

「シュワッ!!」

 

其れを確認すると、空の彼方へと飛び去って行った。

 

「さよなら~、ゼロさ~~んっ!」

 

「お~~い、さくら~!」

 

さくらがその姿を手を振って見送っていると、同じ様に手を振りながら誠十郎が現れる。

 

「! 誠………神山さん! 無事だったんですね!?」

 

「ああ、ウルトラマンゼロが助けてくれたんだ」

 

また危うく誠兄さんと言い掛けながらも、誠十郎の無事を喜ぶさくらに誠十郎はそう返す。

 

「神山隊長。無事で何よりだ」

 

其処で、エリスも誠十郎にそう言って来る。

 

「エリスさん」

 

「済まないが、帝国華撃団の基地へアイゼンイェーガーを入れさせて貰えないだろうか?」

 

「えっ?」

 

と、続いての申し出に、誠十郎は首を傾げた。

 

「あのウルトラマンゼロの光線で修復された様だが、()()()()チェックを行いたい。ココからならば、私達の空中戦艦より帝劇の方が近いからな」

 

「ああ、そういう事ですか………」

 

其れを聞いて、納得が行った表情となる誠十郎。

 

『ま、当然だな。初穂達だって最初から信じたワケじゃねえしな。いきなり俺がした事を信じられ無いのも無理無えさ』

 

「(すまん、ゼロ)分かりました。直ぐに神崎司令に許可を取りますので」

 

「助かる………」

 

エリスは、申し訳無さそうに頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後………

 

令士とイデを中心とした帝劇整備班メンバーにより、アイゼンイェーガーは帝劇へと搬送。

 

エリスとマルガレーテも、予定外の帝劇訪問を行う事となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『地底怪獣 デットン』

 

身長:55メートル

 

体重:2万トン

 

能力:ブルドーザー2500台分の怪力

 

初登場作品:帰ってきたウルトラマン第3話『恐怖の怪獣魔境』

 

霧吹山に出現し、サドラと交戦になった後、帰ってきたウルトラマンことジャックと共同で交戦。

 

追い詰めるものの、劣勢になると逃亡を計り、スペシウム光線で倒された。

 

実は初代ウルトラマンで使われたテレスドンの着ぐるみだったのだが、劣化が酷くなっており、補修を兼ねた結果、別の怪獣になったしまった。

 

その為、設定ではテレスドンの弟とされている。




新話、投稿させて頂きました。

倫敦華撃団と伯林華撃団と初会合。

倫敦華撃団では、原作ではさくらとのみ交戦でしたが、此方では誠十郎(ゼロ)も参戦。
レオ直伝の戦法でランスロットを打ち破ります。
お陰で目を付けられる事に………(笑)

一方、伯林華撃団は原作通りに降魔を退けるものの、続けて現れたデットンの前に思わぬ窮地に。
そこへゼロが登場。
ウルティメイトイージスの力であっという間にケリを着けます。
そして、伯林華撃団は帝劇への訪問をする事となります。

次回はいよいよ華撃団大戦の開幕式。
ですが、原作よりもトンでもない事態に………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『世界華撃団壊滅! 透明円盤は侵略者だった!!』

チャプター3『世界華撃団壊滅! 透明円盤は侵略者だった!!』

 

宇宙ハンター クール星人

 

ミサイル超獣 ベロクロン登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

「報告は以上になります」

 

「そう………分かったわ。大変だったわね」

 

デットンの襲撃を受けた伯林(ベルリン)華撃団を連れて帝劇に帰還した誠十郎は、すみれに向かって報告を終える。

 

「突然の訪問、申し訳有りません」

 

同席していたエリスが、すみれに向かって頭を下げる。

 

「いいえ、此方こそ。降魔の撃退をして頂き、感謝致します」

 

「勿体無いお言葉です。帝国華撃団・花組、“伝説のトップスタァ”………神崎 すみれ殿にそう言って頂けるとは」

 

恐縮した様子のエリス。

 

すみれの事をかなり尊敬している様だ。

 

「ところで………『ウルトラマンゼロ』について、帝国華撃団はどれだけ御存知なのですか?」

 

と其処でエリスは、ゼロの事について尋ねる。

 

「“彼の存在”に関しては、我々に降りて来る情報が殆ど無く、謎に包まれています。WLOFの上層部ではプレジデントGを始め、危険視している幹部も多数居る様ですが………」

 

「………()()()、如何思いますの?」

 

「えっ………?」

 

するとすみれは、エリスにそう問い返した。

 

「其れは、如何言う………?」

 

「大切な事は“()()()聞いた話”では無く、“()()()見て感じた事”では無くて?」

 

「!?」

 

すみれの言葉に、ハッとした様な様子を見せるエリス。

 

「……流石は、伝説の初代帝国華撃団の隊員です。感服致しました」

 

「ふふふ………」

 

敬礼するエリスを、すみれは微笑んで見遣る。

 

「あの………其れで、お願いが有ります」

 

「あら、何かしら?」

 

「よろしければ少し………“昔の話”を聞かせて頂けないでしょうか?」

 

(わたくし)の話で良ければ………喜んで」

 

「! ありがとうございます!」

 

『何だ、あんな顔も出来るんだな』

 

嬉しそうな顔をするエリスを見て、ゼロがそう呟く。

 

「其れじゃ………神山くんはもう下がって良いですわ。他の華撃団へのご挨拶は、後日改めてで良いわ」

 

「ハッ!」

 

誠十郎は敬礼すると、支配人室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・階段前………

 

「もう1度言ってみなさいっ!!」

 

「!? 何だっ!?」

 

2階を訪れた誠十郎の耳に、怒声が聞こえて来る。

 

『其処の部屋からみてぇだぞ』

 

「資料室か………」

 

ゼロが、声は資料室から聞こえて来たものだと言うと、誠十郎は確認する為に資料室の中へと入った。

 

其処には、クラリスと伯林華撃団のマルガレーテの姿が在った。

 

(クラリスと………伯林華撃団のマルガレーテさん? 如何したんだ?)

 

『少なくとも、“友好的な雰囲気”ってワケじゃ無さそうだな』

 

ゼロの言う通り、クラリスはマルガレーテを睨み付ける様に見ており、やや険悪な雰囲気が漂っている。

 

「何度でも言ってやる。“カビ臭い本”と言った。只の()()だ」

 

「カビ臭くなんてありません! どの本も、大切な想いが書かれた()()()()です!」

 

(成程、そう言う事か………)

 

2人の遣り取りで、大体の状況を把握する誠十郎。

 

「“カビの生えた想い”ね。()()()演劇ばかり上演している訳だわ。どんな想いも、“活かせなければ意味が無い”。()()()()()と調和してこそ、一流の脚本………貴女には、到底辿り着けない境地ね」

 

と元からの性格なのか、攻撃的な台詞が続くマルガレーテ。

 

『言われっ放しってのも癪だな………』

 

「(! ゼロ! おま………)流石は“天下の伯林華撃団様”だな。言う事が違うぜ」

 

すると其処で、ゼロが主導権を取り、そう言いながら2人の間に割って入った。

 

「! 神山さん!」

 

「帝国華撃団の隊長………」

 

クラリスが驚くのとは対照的に、誠十郎(ゼロ)に興味なぞ無い、と言った視線を向けるマルガレーテ。

 

「フン………世界で初めての華撃団、その歴史()()は見事だわ。でも、嘗ての栄光は失われたまま。今のお前達は、只の“三流華撃団”。華撃団大戦に参戦したところで、勝てる確率は………「0%」なのよ」

 

「! 貴女!!」

 

誠十郎(ゼロ)に対しても見下した様な台詞を吐くマルガレーテに、クラリスが再度憤慨するが………

 

「止せ、クラリス」

 

「! 神山さん!」

 

他ならぬ誠十郎(ゼロ)が止めると、そのままマルガレーテの前に立ち………

 

「“難しい言葉”使えるんだな、偉い偉い」

 

そう言って、マルガレーテの頭を()()()撫でた。

 

「!? なっ!?」

 

「………フフッ」

 

誠十郎(ゼロ)の思わぬ行動にマルガレーテは初めて表情を崩して驚き、クラリスも思わず笑いを零す。

 

「! 貴様………!」

 

マルガレーテは、直ぐに“子供扱い”された事に激昂した様子を見せたが………

 

「余り“強い言葉”を遣うなよ。()()見えるぞ」

 

そう言って凄んで見せる誠十郎(ゼロ)。

 

「!?」

 

その瞬間、マルガレーテは誠十郎(ゼロ)の背後に何か“巨大な者”が居るのを幻視し、黙り込む。

 

「計算ばかり頼りにしていると足を掬われるぞ。“人間は機械じゃない”んだ。本当に()()()()()なんて出来やしないんだ」

 

直ぐに普通の状態に戻ると、言葉を失っているマルガレーテにそう言う。

 

「………チッ!」

 

何も言い返す事が出来ないマルガレーテだったが、せめてもの反抗か、あからさまに舌打ちして見せる。

 

「やれやれ………可愛気の無い奴だぜ」

 

そんなマルガレーテの姿に、誠十郎(ゼロ)は肩を竦めて呆れた様に笑うのだった。

 

「………ところで、ウルトラマンゼロについて訊きたい。誰か詳しい人は居る?」

 

すると其処で、マルガレーテはそう尋ねて来た。

 

如何やら、彼女もゼロについての情報を収集しようとしている様だ。

 

「! ハイ! 其れは私ですっ!!」

 

と、先程までの怒りの様子は何処へ行ったのか、嬉しそうに手を上げてそう言うクラリス。

 

「貴女が?………まあ、良いわ。ウルトラマンゼロについて教えて貰おうかしら」

 

「喜んでっ!!」

 

訝し気な視線を向けるマルガレーテだったが、クラリスは全く気にせず、ゼロの話をし始める。

 

(もう心配無さそうだな………)

 

『全く………如何なるかと思ったぞ。早く身体を返せよ』

 

(ワリィワリィ。言われっ放しじゃ腹が立つからな)

 

ゼロと誠十郎はそう言い合うと、主導権を誠十郎に返し、資料室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、誠十郎(+ゼロ)は見回りに入り………

 

帝劇内を彷徨いていたマルガレーテをスパイだと思い、不意打ちを掛けようとしていたあずみを止め………

 

アナスタシアの部屋で彼女が星が好きな事を知り………

 

地下格納庫で整備されていたアイゼンイェーガーについて令士に聞き………

 

1階ロビーでゲキゾウくんに変身すると、華撃団大戦での応援をして貰う為に宣伝し………

 

こまちから新商品の開発費の捻出を頼まれ、一計を案じてカオルに認めさせると、お茶菓子買いの遣いを頼まれ外出。

 

みかづきで、ひろみから出された和菓子クイズに解答しつつお遣いを済ませ、途中歌舞伎の『男許水涅槃』を見て感動していたアナスタシアの感想を聞きつつ、帝劇へ帰還。

 

その後、食堂で白秋のオムライスへの熱い思いを聞いた後、カフェ・ジル・ド・レに居ると言う初穂の電文を受けて向かったり………

 

さくらの演劇の稽古に付き合って壁ドンを披露したりとしていると、すみれからエリスが帰るとの電文が入り、皆で見送りに出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・1階ロビー………

 

エリスとマルガレーテの見送りに、ロビーへと集まった花組の面々。

 

「エリスさん、マルガレーテさん、今日はありがとうございました。お気を付けて」

 

「お礼を言うのはコチラの方だ。神山 誠十郎、改めてすみれさんによろしく伝えておいてくれ」

 

誠十郎が代表する様に言うと、エリスはそう返す。

 

「其れから………若し、ウルトラマンゼロに会ったら、『ありがとう』と伝えておいてくれ」

 

『もう伝わってるぜ』

 

「ハイ、確かに伝えます」

 

エリスが続けてそう言ったのにゼロが返すのを聞きながらも、誠十郎は敢えて了承する。

 

「…………」

 

一方、マルガレーテの方はかなりげんなりとした様子で、窶れた様にも見える。

 

「あの………マルガレーテさん? 大丈夫ですか?」

 

「…………」

 

心配そうに声を掛ける誠十郎だが、マルガレーテは返事をする元気も無いのか、げんなりとしたままだった。

 

「マルガレーテさん! また来て下さいね!! 未だ未だゼロさんについて語りたいですから!!」

 

と、そのマルガレーテにゼロの事を話していたクラリスは活き活きとした様子でそう言う。

 

「!? ま、未だ有るの!?」

 

「当たり前です! 今日話したのは“全10部構成”の内の()()()()です! ダークロプスやベリアル銀河帝国との戦いやビートスター、フューチャーアースの事とか、語り尽くせて無い事が一杯有るんですから!!」

 

初めて言葉を発し、狼狽するマルガレーテに対し、クラリスは瞳をコレ以上無いくらいに輝かせて返す。

 

「………もう嫌」

 

そんなクラリスを見て、マルガレーテはとうとう泣き出しそうになってしまう。

 

「で、では、失礼する。華撃団大戦でまた会おう」

 

エリスもコレには顔を引き攣らせ、やや慌てて逃げる様にマルガレーテを連れて帝劇を後にしたのだった。

 

『俺の武勇伝は無限大だぜ』

 

「は、ははは………」

 

自慢する様なゼロの言葉に、誠十郎は苦笑いを零すしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして日時はアッと言う間に流れ………

 

遂に世界華撃団大戦開幕式の日となった。

 

 

 

世界華撃団大戦・試合会場………

 

『会場で、そして中継で御覧の皆様、お待たせしました! 2年に1度の平和の祭典………華撃団競技大会。通称【世界華撃団大戦】が………いよいよ此処、帝都で幕を開けます!!』

 

アナウンサーの実況が響く中、客席一杯の観客達の歓声を浴びながら、花組は他国の華撃団員達と共に競技場内に整列していた。

 

ふと其処で、さくらが1枚の“色褪せたブロマイド”を取り出し目を遣る。

 

(真宮寺 さくらさん、見ていて下さい。(わたし)達………頑張ります)

 

憧れの人に向かって、そう誓いを立てるさくら。

 

其処で会場の各所に設置されているモニターに、プレジデントGの姿が映し出される。

 

『私は世界華撃団連盟・事務総長のプレジデントG』

 

(やっぱいけ好かねえ野郎だぜ)

 

再びプレジデントGの顔を見る事となったゼロがそう漏らす。

 

『此処に、第三回世界華撃団大戦の開会を宣言………』

 

と、プレジデントGが開会宣言を行おうとしたその瞬間………

 

モニターが突然砂嵐に変わった。

 

『な、な、何だ一体!?(来たか………夜叉)』

 

動揺した様に見せながら、実は来訪者である夜叉の存在を“知っている”プレジデントG。

 

しかし………

 

回復したモニターに映し出されていたのは、彼の予想した夜叉の姿では無かった………

 

『世界各国の華撃団の諸君に告ぐ。即座に武装解除して我々【クール星人】に全面降伏せよ』

 

其処に映し出されていたのは、まるでシラミを逆様にした様な姿の6本の手か脚かを持ち、腹部と胸部の付け根に2つの眼を持ち、下半身は長い尾となっている異形………

 

『宇宙ハンター クール星人』の姿だった!

 

『アレはクール星人!』

 

(クール星人!?)

 

親父(セブン)が“地球で()()()戦った侵略宇宙人”だ。戦闘力は無えが、搦め手を使う知能派だ』

 

クール星人の姿を見たゼロと誠十郎がそう言い合う。

 

「(な、何だ、アイツは!? 夜叉は如何した!?)全面降伏だと!? ふざけた事を抜かすなっ!!」

 

思わぬ存在の登場に驚きながらも、其れを表には出さず“事務総長としての威厳”を見せようとするプレジデントG。

 

『人類なんぞ、我々から見れば“昆虫の様なモノ”だ』

 

「んだとっ! どっちが昆虫だぁっ!?」

 

自分も虫の様な姿をしている癖に、人間を昆虫呼ばわりして来たクール星人に、初穂が憤慨した様子を見せる。

 

『如何やら“我々の恐ろしさ”を理解していない様だな。今、分からせてやろう』

 

すると、クール星人がそう言い放ったかと思うと………

 

突如()()()()空から、光弾が放たれて来た!!

 

光弾は、プレジデントGの空中戦艦に直撃!!

 

空中戦艦は1撃で木っ端微塵になった!!

 

「わ、私の船があああああああッ!!」

 

プレジデントGの情け無い悲鳴が響き渡った瞬間………

 

更に2発、3発と連続して光弾が、やはり何も無い空から放たれて来る。

 

光弾が空中戦艦に命中すると、空中戦艦は一瞬にして木っ端微塵になる。

 

“華撃団の最高戦力”である筈の空中戦艦が、まるで蝿の様に撃ち落とされて行く。

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

「助けてくれーっ!!」

 

途端に、客席を埋め尽くしていた観客達が悲鳴を挙げて逃げ惑い始める。

 

流れ弾を防ぐ為に取り付けられている霊子障壁のお陰で、観客席に残骸が降り注ぐ事は無いが、パニックを起こしている観客達は出口に殺到して混乱が起きている。

 

「撃て撃てっ!!」

 

「応戦しろっ!!」

 

と、空中戦艦隊もやられてばかりでなく、光弾が発射された空に向かって主砲や対空機銃での攻撃を始める。

 

しかし、空中戦艦隊の攻撃に手応えは無い………

 

直後に、先程までとはまるで逆の方向から光弾が放たれ、また空中戦艦1隻が爆発四散する。

 

「なっ!? 何時の間にっ!?」

 

「レーダー手! 敵は何処だっ!?」

 

「駄目です! レーダーに反応無し!!」

 

レーダーで敵の位置を探ろうとするが、何の反応も示さない。

 

「ど、如何なってるんだ!?」

 

『クール星人の円盤は強力なステルス性能を持つ上、姿を消す事が出来るんだ。だが、俺には見えるぜ! ウルトラアイ!!』

 

ゼロがウルトラアイで透視すると、誠十郎の目にもまるで“扇風機の羽根の様な形”の赤い円盤が見える。

 

「! アレかっ!?」

 

誠十郎がそう声を挙げた瞬間、クール星人の円盤から光弾が放たれ、また空中戦艦が1隻撃沈される。

 

『神山くん! 聞こえるっ!?』

 

「! 神崎司令!」

 

其処で、すみれから通信が入る。

 

『観客達がパニックを起こしてるわ! このままじゃ“観客席が障壁で()()()()()()()”死者が出る可能性が有ります! 直ぐに避難誘導に向かってっ!!』

 

「分かりました! 皆っ! 先ずは観客を避難させるんだ!!」

 

「「「「「! 了解っ!!」」」」」

 

誠十郎の呼び掛けで我に返った花組の面々は、観客席へと向かい、観客の避難誘導を始めた。

 

「何をしている華撃団! 早く何とかしろっ!! ()()()()お前達を維持していると思っている!?」

 

とその直後、スピーカーから完全に動揺しているプレジデントGの喚く声が響き渡る。

 

冷静さを失っているのか、吐く言葉は暴言に近い。

 

観客の避難よりも、敵を撃破する事を優先させるなぞ、優先順位を履き違えている。

 

『如何やらまだ我々の恐ろしさを理解していない様だな………【ベロクロン】よ!! 華撃団を倒せっ!!』

 

すると、未だモニターに映し出されていたクール星人がそう言い放ったかと思うと………

 

空に、まるで()()()()()()赤いヒビが入った!!

 

「!? なっ!?」

 

「空にヒビがっ!?」

 

“有り得ない非常識な光景”に、避難誘導をしていた初穂とクラリスが驚愕する。

 

次の瞬間、ヒビ割れていた空がまるでガラスの様に砕けて割れた!!

 

「! 空が割れた!!」

 

「まるで“この世の終わり”の様な光景ね………」

 

あざみが驚きを露わにする中、余りに非常識な事に他人事の様に呟くアナスタシア。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

割れた空の部分には、血の様に真っ赤な空間が広がっており、黒いブツブツとした体表に、頭部と両肩から背中に掛けて珊瑚の様な突起物を持つ巨大生物が姿を見せていた。

 

「! 怪獣っ!?」

 

『違う! アレは【超獣】だ!!』

 

「『超獣』!?」

 

『嘗て『異次元人 ヤプール』が地球上の生物と宇宙怪獣を超獣製造機で融合させて作った“怪獣を超える”生物兵器。言わば“兵器としての力を持つ怪獣”だ』

 

「兵器としての怪獣………」

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

ゼロが誠十郎にそう説明していると、その超獣………『ミサイル超獣 ベロクロン』は赤い空間から飛び出し、華撃団大戦の会場内へと降り立って来た!!

 

「各国華撃団! ()()()()()()だ! その化け物を倒せっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

プレジデントGが事務総長命令を発令するのを聞いた各国華撃団員達は、慌てて整列させてあった霊子戦闘機に乗り込んで行く。

 

そして、ベロクロンを一斉に包囲した。

 

「掛かれっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

ベロクロンとの交戦を開始する各国華撃団。

 

しかし………

 

「オイ、コラッ! 射線に入るなっ!!」

 

「そっちこそ人が戦ってるのに撃って来ないでよ!!」

 

「イデッ!? 何処に目を付けてるのっ!?」

 

「そっちこそ邪魔するなっ!!」

 

其々の国の華撃団が、其々の戦い方で戦い始めてしまった為、彼方此方で“華撃団同士の小競り合い”が起こる。

 

其れもその筈………

 

降魔大戦以降、WLOFの主導によって各国に設置された華撃団だが………

 

プレジデントGの方針により、通常の華撃団同士の交流は、華撃団大戦以外は殆ど無かった。

 

他国の華撃団は、“華撃団大戦で()()相手”と認識している華撃団が大半であり、合同での訓練等も行われていない。

 

つまり、“華撃団同士での連携”等取れる筈も無いのだ。

 

そんな()()()()等、ベロクロンの敵では無かった。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

咆哮と共に、口から1億度の火炎を放つベロクロン。

 

「「「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」

 

真面に浴びてしまった霊子戦闘機が、一瞬で溶解して爆散する。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

「!? うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

更に足を踏み出すと、足元に居た霊子戦闘機を踏み潰した。

 

「オノレェッ!!」

 

「仕掛けるっ!!」

 

と、飛行能力を持つ霊子戦闘機達が飛翔すると、今度こそベロクロンに攻撃を加えようとする。

 

だが………

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

再度ベロクロンが咆哮を挙げると、その特徴的な突起物から、次々にミサイルとロケット弾が放たれた!!

 

「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」

 

飛翔した霊子戦闘機達は次々とミサイルの餌食となり、爆散して行く。

 

更に、雨霰と放たれたミサイルとロケット弾は試合会場の彼方此方にも着弾。

 

平和の祭典が行われる筈だった会場が、瞬く間に瓦礫の山へと変わって行く。

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

「落ち着いて下さいっ! 大丈夫ですっ!!」

 

観客席の障壁にも次々にミサイルとロケット弾が着弾し、爆音と振動が避難する観客達の恐怖心を更に煽る中、さくらは必死にパニックを納めようとする。

 

「クソッ! 何て数のミサイルだっ!!」

 

「コレでは近付けない!」

 

「コレが………“怪獣の力”か」

 

シャオロン・アーサー・エリスの上海・倫敦・伯林華撃団と言った強豪華撃団は持ち堪えているが、やはり他の華撃団と連携は取れておらず、個々の実力で敵う相手では無いベロクロンを前に攻めあぐねていた。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

ベロクロンが勝ち誇る様に咆哮を挙げると、放ったミサイルの1発が、プレジデントGの居る場所を直撃した!

 

「!? ヒイイッ!? 何をしている、華撃団!! 早く! 早くソイツを倒せぇっ!! “能無しの華撃団は()()()()”ぞっ!!」

 

障壁で防がれたものの、プレジデントGは尻餅を着いて悲鳴を挙げ、甚大な被害を受けている各国華撃団に向かってそう怒鳴り散らす。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その言葉で、各国華撃団は引くに引けなくなる。

 

プレジデントGはワンマンで強権を行使する事で有名であり、“華撃団組織のトップ”でありながらも、“敵に回したく無い()()()()”となっている。

 

その彼が『潰す』と言えば、その華撃団は必ず潰されてしまう。

 

最早、各国の華撃団の生き残る道は、ベロクロンとクール星人を倒すしか無かった。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

「「「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」

 

そんな、各国華撃団達の思いをアッサリと踏み躙る様に、次々と霊子戦闘機達と試合会場を破壊して行くベロクロン。

 

更にクール星人の見え無い(ステルス)円盤の攻撃も続いており、既に空中戦艦隊は当初の3分の1にまで数を減らしている。

 

 

 

 

 

爆発し墜落する空中戦艦………

 

虫の様に潰されて行く霊子戦闘機………

 

炎を上げる瓦礫と化して行く試合会場………

 

平和の祭典の会場は、“この世の地獄”と化していた………

 

 

 

 

 

「マズイッ! このままじゃ華撃団は全滅だ!!」

 

その光景にそう叫ぶ誠十郎。

 

『あと少しで避難が終わるってのに!』

 

ゼロが、未だ避難が終わっていない観客達を見てそう言う。

 

本当ならば今直ぐにでも変身して戦いたいが、今誠十郎(+ゼロ)がこの場を離れてしまっては、逃げ遅れる人が出てしまう。

 

「神山さん! 私がっ!!」

 

とその時!!

 

近くに居たクラリスがそう声を挙げた!

 

「! そうか! 頼む、クラリス!!」

 

「ハイッ!!」

 

誠十郎が思い出した様に返すと、クラリスは魔導書を広げた。

 

「ゼットン! お願いっ!!」

 

クラリスがそう叫ぶと、魔導書から光の球が飛び出し、ベロクロンの元へと向かうと………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ゼットンが出現した!!

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

『!? 何だとっ!?』

 

突如現れたゼットンに、ベロクロンもクール星人も驚きを露わにする。

 

「ゼットンッ! 行くよっ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

魔導書を広げているクラリスがそう言うと、ゼットンは返事の様に咆哮するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

チャプタータイトルからいきなりトラウマで申し訳ありません。

帝劇を訪問した伯林華撃団。
エリスはもてなされますが、マルガレーテは思わぬ目に遭う事に(笑)

そんなこんなで華撃団大戦開幕。
しかしそこへ現れたのは夜叉………ではなく『クール星人』
自慢の見えない円盤で、空中戦艦を次々に撃墜。
更に何と『超獣』を繰り出してきました!
A第1話で地球防衛軍を壊滅させたミサイル超獣 ベロクロンにより、世界の華撃団も壊滅の危機に。
作中で書きましたが、プレジデントGがアレですから、多分各国の華撃団って合同訓練とかしてなさそうですし、いきなり連帯とか出来なさそうですよね。
それで超獣に立ち向かうって、ハッキリ言って無謀です。
この世の地獄が作られる中、クラリスがゼットンを繰り出します。
果たして………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『崩れる平和の祭典』

チャプター4『崩れる平和の祭典』

 

宇宙ハンター クール星人

 

ミサイル超獣 ベロクロン

 

一角超獣 バキシム登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・某所………

 

「イカン………このままでは、世界の華撃団は全滅する」

 

大型モニターに映る、華撃団大戦の会場の様子を見た花小路が言う。

 

「華撃団大戦()()での交流も無く、合同訓練も行われていないのでは、連携の取り様が無いわ」

 

「チッ! プレジデントGの弊害がこんな形で出るとはな」

 

かえでの言葉に、米田が舌打ちしながらそう言う。

 

「如何やら“我々の出番”が来たようですな………」

 

「今こそ『()()世界華撃団構想』を発動させる時です」

 

と其処で、ムラマツとキリヤマが進言して来た。

 

「…………」

 

イラストレーターも無言で頷く。

 

「うむ………米田くん」

 

「ええ。コレ以上若い命を散らして堪るかってんだ………『ガンクルセイダー』部隊! 出撃っ!!」

 

花小路が呼び掛けると、米田は()()とは思えない勇ましい声で号令を発したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦・試合会場………

 

「な、何っ!?」

 

「怪獣がもう1体!?」

 

「アレは帝国華撃団の………彼女が呼び出したのか!?」

 

突如現れたゼットンに、シャオロン・アーサー・エリスが驚きを示す。

 

『ベロクロン! ソイツを倒せっ!!』

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

クール星人の声が響くと、ベロクロンはゼットンに向かって火炎を吐く。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

だが、ゼットンはバリアを展開し火炎を防ぐ。

 

そして火炎が途切れると、ベロクロンに向かって行く。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

そのまま、2体は相撲の様に組み合う。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

ベロクロンがゼットンを押し始める。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

かと思えば、逆にゼットンがベロクロンを押し始める。

 

やがて組み合いを解くと、ゼットンが空手チョップを繰り出す。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

怯んだベロクロンに、2撃、3撃と更に連続で空手チョップを喰らわせる。

 

そして、更にパンチを喰らわせる!

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

強烈なパンチを喰らい、大きく後退るベロクロン。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

と其処でベロクロンは、両手の中にリング状の金縛り光線『テリブルハンドリング』を形成。

 

ゼットンに向かって投げ付ける!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

テリブルハンドリングが輪投げの輪の様に掛かって来て、拘束されるゼットン。

 

「頑張って! ゼットン!!」

 

しかし、クラリスが魔導書を開いたままそう声を挙げると………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ゼットンは、テリブルハンドリングをアッサリと引き千切った!

 

そして反撃とばかりに、1兆度の火球を放つ!

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

真面に喰らったベロクロンは、ブッ飛ばされて倒れる。

 

『オノレェ、小癪な………【バキシム】!!』

 

すると其処で、クール星人の苛立たし気な声が響いたかと思うと、またも空にヒビが入ってガラスの様に割れた!

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

割れた空の中に広がる赤い空間から、今度は青とオレンジの体色に、まるで人工物を思わせる1本の角が生えた嘴の様な口の頭部を持った超獣が飛び出し、ベロクロンの傍に着地する。

 

『野郎! 【一角超獣 バキシム】まで!!』

 

「アレも超獣か………」

 

バキシムの姿を見たゼロがそう言うのを誠十郎が聞いていると………

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

バキシムは咆哮と共に、両腕と嘴の様な鼻先から連射式ロケット弾を放つ!

 

「! ゼットンッ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

クラリスが叫ぶとゼットンはバリアを展開して防御する。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

しかしバキシムは、ロケット弾の連射速度を更に上げ始める。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

すると其処で、態勢を立て直したベロクロンも、ミサイルとロケット弾をゼットンに集中させた!!

 

2大超獣からの飽和攻撃に晒されるゼットン。

 

やがて、ゼットンのバリアにヒビが入り始める。

 

「! ゼットンッ!!」

 

思わずクラリスが叫んだ瞬間にバリアは崩壊。

 

ゼットンは、無数のミサイルとロケット弾に襲われる。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

身体から連続で爆発が起こり、ゼットンが仰向けに倒れる。

 

「ゼットン! 立ってっ! お願いっ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

クラリスの声に応えようと、身を起こそうとしているゼットンだが、中々起き上がれ無い。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

そんなゼットンに、ベロクロンとバキシムが迫る。

 

「! マズイッ! ゼットンがっ!!」

 

『誠十郎! 此処まで逃がせば後は大丈夫だ! 行くぞっ!!』

 

誠十郎が声を挙げた瞬間、(ほぼ)全ての観客が安全な状態になったのを確認したゼロがそう言う。

 

「良しっ!!」

 

直ぐ様物陰へと隠れると、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを出現させる誠十郎。

 

「デュワッ!!」

 

ウルトラゼロアイを目に当て、ゼロへと変身する!

 

「セエエエエヤァッ!!」

 

そのまま巨大化したゼロが、ゼットンを守る様にベロクロンとバキシムの前に着地する。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

「俺はゼロ! ウルトラマンゼロだっ!!」

 

足を止めたベロクロンとバキシムに向かって、ゼロはお馴染みの決め台詞を言い放った。

 

「! また()()()かっ!!」

 

「! 彼が………ウルトラマンゼロか………」

 

「ウルトラマンゼロ………」

 

ゼロの姿を見たシャオロンが苦々し気に吐き捨て、初めて直にゼロを見るアーサーは驚きを示し、エリスは感慨深そうにする。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

と其処で、バキシムの背中の結晶体がドクンと脈打ったかと思うと、ゼロに向かって両手から赤い破壊光線『バキシクラッシャー』が放たれる。

 

「ハアッ!!」

 

後ろにゼットンが居るので、ゼロは躱さずにバリア・ウルトラゼロディフェンサーを展開して防ぐ。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

すると今度は、ベロクロンがミサイルとロケット弾を放って来る!

 

「エメリウムスラッシュッ!!」

 

ゼロはエメリウムスラッシュを薙ぎ払う様に放ち、撃墜する。

 

「うおおおおっ!!」

 

其処でゼロはベロクロンに突撃し、横っ面を殴り飛ばす!

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

「セイヤッ!!」

 

ベロクロンが怯むと、バキシムが襲い掛かって来るが、空中後ろ回し蹴りを放って()なす。

 

「ウララララララララァッ!!」

 

そして、怯んでいたベロクロンの胸に連続パンチを叩き込む。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

「フンッ!!」

 

ベロクロンが悶えると、ゼロはその頭を挟み込む様に摑む。

 

「セエエアァッ!!」

 

そしてそのまま、力任せにスイングして投げ飛ばす!!

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

投げ飛ばされたベロクロンがバキシムにぶつかり、両者は絡み合う様に倒れる。

 

「ワイドゼロ………」

 

その2体に、ゼロはワイドゼロショットを放とうとしたが………

 

上空から光弾が降って来て、ゼロに命中する。

 

「! うおっ!?」

 

更に光弾は2発、3発とゼロに降り注ぐ。

 

「チイッ! 邪魔すんなっ!! エメリウム………」

 

光弾を放ってきたクール星人の円盤に向かってエメリウムスラッシュを放とうとしたが………

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

ベロクロンが、倒れたまま口を開いて連装ミサイルランチャーを展開し、大型ミサイルを放った!!

 

「! おうわっ!?」

 

真面に喰らってしまったゼロはブッ飛ばされて、地面に叩き付けられる様に倒れる。

 

『良いぞ、ベロクロン! このまま空と地上からの両面作戦でウルトラマンゼロを倒すのだっ!!』

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

クール星人の声に呼応するかの様に、ベロクロンとバキシムが態勢を立て直す。

 

「野郎………!」

 

と、ゼロが起き上がったその時………

 

風を切る音と共に、“無数のジェットエンジンの噴射音”が聞こえて来た。

 

「!?」

 

『何だっ!?』

 

ゼロと誠十郎が空を見上げると、其処には………

 

編隊を組んで飛んで来る戦闘機部隊………『ガンクルセイダー』の姿が在った。

 

『スモーク噴射!』

 

その内の1機のパイロットがそう言うと、ガンクルセイダー部隊は機体下部から色取り取りの煙を噴射し始める。

 

そのまま旋回飛行を続けていると………

 

まるで“子供の落書き”の様な、色取り取りのカラーリングとなったクール星人の円盤の姿が露わになった。

 

『イ、イカン! 光学迷彩が塗り潰された!!』

 

「目標視認!! 全機、攻撃開始っ!!」

 

クール星人の焦った声が挙がると、ガンクルセイダー部隊は装備されていた4連装並列型ミサイルポッドから、次々にミサイルを放つ。

 

回避運動を取るクール星人の円盤を追い掛けるガンクルセイダー部隊。

 

「何だ? あの戦闘機は!?」

 

『聞こえる?皆。“アレ”は私達の味方よ』

 

ガンクルセイダー部隊の姿に初穂が声を挙げると、タイミング良くすみれからそう通信が送られて来る。

 

「神崎司令!?」

 

「ホントですか!?」

 

『ええ。そして………()()()()()()()()、“新たな世界の守り手”よ』

 

さくらとクラリスの問いに、すみれはそう断言した。

 

『新たなる世界の守り手………』

 

「何だか良く分からねえが、今がチャンスだぜっ!!」

 

誠十郎が呟く中、ゼロは態勢を立て直す。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

更に、ゼットンも漸く起き上がる。

 

そして、テレポートでベロクロンに肉薄して組み付いた!

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

「そっちは任せたぜ! テヤアアアッ!!」

 

その様子を見ながら、ゼロはバキシムの方へと向かって行った。

 

 

 

 

 

ゼットンVSベロクロン………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ベロクロンをドンドン押して行くゼットン。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

其処で、ベロクロンはゼットンを引き離そうと、口内に連装ミサイルランチャーを出現させる。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

だがその瞬間!

 

ゼットンはベロクロンの顎にアッパーカットを見舞った。

 

強制的に閉じられたベロクロンの口内で、発射しようとしていた大型ミサイルが暴発!

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

弱点の口の中で爆発が起こり、ベロクロンは口から黒煙を上げながら悶える。

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

苦しみながらも、ゼットンに向かって爪先からビームを発射する。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

しかし、ゼットンはそのビームを“吸収”。

 

逆に波状光線『ゼットンブレイカー』として撃ち返した!!

 

グロロロロロロォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

嘗て、初代ウルトラマンを倒したゼットンの必殺技には耐えられず、ベロクロンは大爆発を起こし、木っ端微塵に吹き飛んだのだった。

 

 

 

 

 

ゼロVSバキシム………

 

「オラオラオラオラァッ!!」

 

両手に握ったゼロスラッガーで、バキシムを次々と斬り付けるゼロ。

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

斬り付けられる度に火花を散らし、大きく後退るバキシム。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

するとバキシムは頭を下げ、最後の切り札であり名前の由来ともなっている1本角を大型誘導ミサイル『ユニコー・ボム』として放った!

 

「セエリャアッ!!」

 

だが、ゼロは迫って来たユニコー・ボムに向かって、後ろ回し蹴りを放つ。

 

ユニコー・ボムは蹴り返され、バキシム自身に直撃した!!

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

最大の武器を自ら喰らい、瀕死となるバキシム。

 

「トドメだッ!!」

 

其処でゼロは、握っていたゼロスラッガーをカラータイマーの左右に装着する。

 

「ゼロツインシュートッ!!」

 

光刃のエネルギーを光線に転化して広域に照射する、“通常時の”ゼロの最大光線『ゼロツインシュート』を放つ。

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

瀕死のバキシムが其れに耐えられる筈も無く、巨大な爆発と共に消し飛んだ!!

 

「フッ!」

 

ゼロスラッガーをウルトラ念力で頭部へと戻すと、上空を見上げるゼロ。

 

其処では、黒煙を上げるクール星人の円盤をガンクルセイダー部隊が追い込んでいた。

 

「敵は弱っている! 一気に止めを刺すぞっ!!」

 

『ええい、オノレェッ! 已むを得ん! 一時撤退だぁっ!!』

 

と、最早勝ち目は無いと悟ったのか、クール星人の円盤が離脱を図る。

 

「逃がすかよっ!!」

 

しかし、ゼロがウルティメイトブレスレットへ右手を翳したかと思うと、ブレスレットから『ウルトラゼロランス』を取り出し、クール星人の円盤目掛けて投げ付けた!!

 

『!? ヌオオオッ!?』

 

ウルトラゼロランスは、クール星人の円盤の3つの羽の1枚を破壊。

 

其れによって、バランスを崩したクール星人の円盤は失速し始める。

 

「今だっ! 一斉射撃っ!!」

 

その隙を見逃さす、ガンクルセイダー部隊は一斉にミサイルを発射。

 

クール星人の円盤から次々と爆発が上がる!

 

『た、高が“昆虫如き”にいいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーッ!!』

 

恨み節の断末魔と共に、クール星人の円盤は炎に包まれ墜落。

 

地面に叩き付けられると、そのまま爆散した!

 

「やったぜっ! 見たか昆虫野郎っ!!」

 

その光景を見た初穂が、そう声を挙げる。

 

「でも………」

 

しかしクラリスは、暗い表情で辺りを見回す。

 

華撃団大戦の試合会場は瓦礫の山と化しており………

 

彼方此方に、“空中戦艦や霊子戦闘機だった物”が散乱している。

 

「各国の華撃団は粗壊滅ね………」

 

「犠牲は大きい………」

 

アナスタシアとあざみがそう言い放つ。

 

「…………」

 

さくらも何とも言えない表情で、瓦礫の山と化した試合会場を見遣っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クール星人の繰り出した超獣を退けたゼロ。

 

幸いにも、花組の活躍で観客達に怪我人は出たものの、死者は1人も出なかった。

 

しかし………

 

世界華撃団大戦の試合会場は無残に破壊され………

 

各国の華撃団は壊滅状態となってしまった………

 

だが、其れは………

 

“『真の世界華撃団構想』の幕開け”でもあったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『宇宙ハンター クール星人』

 

身長:2メートル

 

体重:75キロ

 

能力:特に無し

 

初登場作品:ウルトラセブン第1話『姿なき挑戦者』

 

ウルトラセブンが地球で初めて戦った宇宙人。

 

見えない円盤で人間を攫い、工業地帯を攻撃し、迎撃に出たウルトラホーク1号も撃墜する等したが、本人に戦闘能力は粗無い。

 

ウルトラセブンのアイスラッガーで倒されるが、其れまでの時間は僅か数秒であり、【ウルトラシリーズの最速勝利記録】として有名。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ミサイル超獣 ベロクロン』

 

身長:55メートル

 

体重:44万440トン

 

能力:全身や口内に装備されたミサイル・ロケット弾発射口、火炎放射、手からの光線

 

初登場作品:ウルトラマンA第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』

 

異次元人ヤプールが送り込んだ超獣第1号であり、Aが地球で初めて戦った相手。

 

全身から放つミサイルで地球防衛軍を全滅させる等、怪獣を超えた超獣の強さを見せ付けた。

 

能力からも分かる通り全身が武器であり、火力だけで言えばウルトラ怪獣の中でも1、2を争う。

 

最後は弱点の口内にパンチレーザーを浴びて怯んだところにメタリウム光線を食らって倒された。

 

後のシリーズに登場した際には、ミサイルが武器と言うのもあって、ウルトラ版板野サーカスが披露されたりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一角超獣 バキシム』

 

身長:65メートル

 

体重:7万8000トン

 

能力:両腕・鼻先から放つロケット弾、赤い破壊光線『バキシクラッシャー』、頭部の1本角を発射する『ユニコー・ボム』

 

初登場作品:ウルトラマンA第3話『燃えろ! 超獣地獄』

 

デザイン性の高さで抜群の人気と知名度を兼ね備える。

 

子供に化けてTACを撹乱し、その隙に本部を攻めると言った活躍を見せた。

 

超獣の特徴である『空を割って現れる』と言う演出を初めて見せた。

 

Aとの戦いでは奮戦するも、最後はエーススパークを受けて動きが止まった所へ、ウルトラスラッシュを受けて首を落とされた。




新話、投稿させて頂きました。

ゼットンVSベロクロンの戦いは、ゼットンが流石の強さを見せますが、クール星人は更にバキシムを投入。
2対1で不利になったところに、満を持してゼロ登場。
負けじとクール星人も参戦しますが………
そこへ、何と『ガンクルセイダー部隊』が登場!
ゼロとゼットンを援護し、クール星人の円盤を撃墜します。

最新作では巨大ロボットを駆使してますが、やはり私的に防衛チームと言えば戦闘機ですね。
怪獣と戦うなら、ヒットアンドアウェイ戦法の執れる戦闘機が有利じゃないかと思うので。
霊子兵器は都市防衛と言う設計思想上、如何しても目視距離での戦闘になりますので。

数有る防衛チームの戦闘機の中からガンクルセイダーをチョイスしたのには2つ理由があります。

1つは、ウルトラシールズで最後に『ポンポン砲』を装備した機体だからです。
合成とCGの発達で、平成以降の防衛チームの戦闘機とかって、レーザーやビームといった光学兵器や、CGのミサイルが中心になりましたからね。
しかし、昭和シリーズをよく見ていた私からすると、あのポンポン砲の独特の迫力が好きでして。
それにサクラ大戦シリーズの世界で、光学兵器は技術的に難しいと思ったので、ポンポン砲装備で1番新しいガンクルセイダーを選びました。

そしてもう1つは………
ガンクルセイダーは『ある円谷作品』に出てきたマシンのリメイクと言う点です………

いよいよ次回………
真の世界華撃団構想の正体が語られます。
そして、プレジデントGの受難日々の始まりでもあります(笑)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『ウルティメイト華撃団』

チャプター5『ウルティメイト華撃団』

 

上級降魔・幻庵葬徹

 

キリエル人・アゴナ

 

炎魔戦士 キリエロイド登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・プレジデントGの滞在拠点………

 

「何たる事だ! この様な事態になるとは!!」

 

プレジデントGが苛立ちを隠そうともせず、拳を握った両手を自らの執務机に叩き付けて叫ぶ!

 

「何故夜叉では無く、“あんな輩”が現れた!! コレでは、計画が台無しではないか!!」

 

怒りの余り小刻みに震えながら、プレジデントGがそう言うと………

 

「何が台無しなのだぁ?」

 

「!?」

 

突如、背後から渋さと鋭さを併せ持つ独特の低音から生まれる声質と語調で声を掛けられ、プレジデントGが驚きながら振り返ると、其処には………

 

「フフフフ………」

 

あのローブの人物の姿が在った。

 

「貴様、何者だ!? 此処は私、WLOF事務総長であるプレジデントGの執務室だぞ! 如何やって入った!?」

 

「騒がしい奴よ………」

 

突如現れた不審者に、プレジデントGは喚き立てる様に矢継ぎ早に問い質すが、ローブの人物は小馬鹿にする様に笑う。

 

「クッ! 警備兵! 曲者だっ!! 出合え! 出合えーっ!!」

 

其処で、プレジデントGは警備兵に召集を掛ける。

 

しかし、幾ら待っても誰も来る気配が無い。

 

「!? 如何した!? 何をしている!? 早くコイツを………」

 

「少し黙れ………」

 

とローブの人物が、プレジデントGに向かって腕を伸ばして掌を広げる。

 

「!? ぐ、あ………」

 

すると、“何も触れていない”のにプレジデントGの首が絞め付けられ、その状態で宙に浮かび上がる。

 

「き、貴様………私にこんな事をして………只で済むと………」

 

「ぶるあああああああっ!!」

 

プレジデントGが息も絶え絶えにそう言った瞬間、ローブの人物は独特な叫び声と共に腕を振り、プレジデントGを投げ飛ばす。

 

「ガハッ!?」

 

壁に背中から叩き付けられた後、床に落ちるプレジデントG。

 

「ゴホッ! ガハッ! ゲボッ!」

 

「只で済むかだとぉ? 貴様こそ我にそんな口を利いて只で済むと思っているのかぁ?」

 

噎せ返るプレジデントGを見下ろしながら、ローブの人物は被っていたフードを脱いで見せた。

 

其処には、厳つく左頬に大きな傷跡が有り、丸いレンズの眼鏡を掛けた人物の顔が在った。

 

「!? お、お前………いや、貴方様はっ!?」

 

其れを見た途端、プレジデントGは打って変わって態度を改める。

 

「漸く思い出したかぁ? そう………このぉ『キリエル(ひと)』である『アゴナ』の事をぉ?」

 

そう言いながら、ローブの人物………『キリエル人・アゴナ』は、露出させていた顔を『キリエロイド』の顔に変える。

 

「アゴナ様!!」

 

プレジデントGがそう言った瞬間、その身体が怪しい光に包まれ………

 

その姿が石膏像の様に白い肌で、右目から口に掛けての部分が欠けて、怪しく光る球が埋め込まれた異形………

 

上級降魔『幻庵葬徹』へと変わった!

 

そう………

 

プレジデントGの正体は、上級降魔だったのである。

 

10年前の降魔大戦の際、密かに生き延び、本物のプレジデントGを暗殺して成り代わったのだ。

 

そしてWLOFの全ての権力を掌握。

 

世界中に華撃団を設立させたかの様に見せ掛け、連携を疎かにし、“イザと言う時”に脅威とならないようにし、更には恨み深き帝国華撃団を()()()()潰そうとも画策していたのだ。

 

「知らぬ事とは言え、数々のご無礼! 何卒お許し下さいっ!!」

 

そんな幻庵は床に跪くと、キリエロイド・アゴナに向かって土下座する。

 

「フンッ!」

 

「! グハッ!?」

 

其処へキリエロイド・アゴナは、土下座している幻庵の頭を踏み付けた。

 

「直ぐに我に気付かぬとはぁ………この愚か者めがぁ。“我の言葉は降魔王様の言葉である”事を忘れたかぁ?」

 

「も、申し訳ございません………」

 

頭をキリエロイド・アゴナに踏み躙られながら、幻庵は唯々謝罪する。

 

プレジデントGの時の彼からは、想像も出来ない光景である。

 

しかし、其れもその筈………

 

このキリエロイド・アゴナ、もといキリエル(ひと)・アゴナは………

 

降魔王の懐刀だった人物なのである。

 

降魔王からの信頼を一身に受けており、尚且つ自らの存在を華撃団側に一切秘匿していた、と言う切れ者なのだ。

 

「し、しかしアゴナ様。今まで何処に居られたのですか? あの大戦以来、まるで姿をお見掛けせず、てっきり降魔王様と共に『幻都』に封印されてしまったと………」

 

「ぶるあああああああっ!!」

 

と、幻庵のその台詞を聞いた瞬間、アゴナは幻庵の頭をサッカーボールの様に蹴り飛ばした。

 

「グバアッ!?」

 

頭を蹴り飛ばされた幻庵は身体ごとブッ飛ばされ、またも壁に叩き付けられる。

 

「我が封印されただとぉ? 貴様ぁ………我を舐めているのかぁ?」

 

「い、いえ………決してその様な事は………」

 

「フン、まあ良い………」

 

其処でキリエロイド・アゴナは、キリエル(ひと)・アゴナへと戻ったかと思うと、来ていたローブを脱ぎ捨てる。

 

すると、まるで軍の将軍が着ている様な制服を身に纏った姿が露わになる。

 

「コォレより“降魔王様復活”に向けた作戦を開始するぅ。貴様にも存分に働いて貰うぞぉ」

 

「えっ!? ま、待って下さい! 其れならば既に“私の計画”が………」

 

降魔王復活の為の計画なら、既に自分が進めていると言おうとした幻庵だったが………

 

「我の計画と貴様の計画ぅ………降魔王様がどちらをお選びになられると思うぅ?」

 

「う………」

 

キリエル(ひと)・アゴナにそう言って睨まれると、忽ち言葉を飲み込んだ。

 

「理解したかぁ? 忘れるなよぉ、幻庵………“全ては降魔王様の為に”だぁ」

 

「ハッ………承知致しました………」

 

そう答えて、幻庵はプレジデントGの姿に戻る。

 

しかし、その顔には屈辱の怒りが浮かんでいたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・地下司令室………

 

あの悪夢の様な開会式から数時間が経ち………

 

夜も更ける中、花組の面々(+ゼロ)は司令室に集合していた。

 

「………大変な事になりましたね」

 

クラリスが、重々しく口を開く。

 

「各国の華撃団の被害は甚大………」

 

「組織的な戦闘能力を喪失した華撃団も有るそうよ………」

 

其れとは逆に、淡々とそう告げるあざみとアナスタシア。

 

「無事だったのは、上海(シャンハイ)華撃団・莫斯科(モスクワ)華撃団・倫敦(ロンドン)華撃団、そして伯林(ベルリン)華撃団だけだったそうです」

 

さくらが沈痛な面持ちでそう語る。

 

「やっぱり中止だろうな、華撃団大戦………出場する華撃団が居ないんじゃ、如何しようも無えよ」

 

「其れに就いては、もう直ぐWLOFから発表が有るそうだ」

 

初穂の言葉に、誠十郎がそう返した瞬間………

 

司令室のモニターに映像が映し出された。

 

其処に映し出されたのはプレジデントG………

 

ではなく、キリエル(ひと)・アゴナだった。

 

『御機嫌ようぅ、諸君。私はぁ『ジェネラルA』』

 

自らを『ジェネラルA』と名乗るキリエル(ひと)・アゴナ。

 

「『ジェネラルA』………?」

 

「オイオイ、プレジデントGは如何したんだ?」

 

さくらと初穂が首を傾げると、他の面々も困惑を露わにする。

 

『プレジデントGは、先の混乱の責任を取って辞任したぁ。以後、WLOFの最高責任者は私が務めるぅ』

 

「! プレジデントGが辞任っ!?」

 

『あのいけ好かない野郎がか?』

 

「!?」

 

誠十郎とゼロが驚きの声を挙げる中、アナスタシアが一瞬狼狽した様な様子を見せたが、直ぐに取り繕う。

 

『さてぇ………諸君等が今最も気になっている事ぉ。其れは“華撃団大戦”の事に他ならぬだろうぅ?』

 

「「「「「「………!」」」」」」

 

矢鱈とねちっこい言い回しでジェネラルAはそう告げると、誠十郎達は再度画面に注目する。

 

『華撃団大戦はぁ………()()()()()開催するぅ!』

 

その中で、ジェネラルAはそう宣言した。

 

『現在ぃ、破壊された試合会場はぁ急ピッチで修復を行っているぅ。明後日までには完了するだろうぅ』

 

「予定通りって………」

 

「って言うか、会場直すよりも壊滅した華撃団の立て直しの方が先だろう!?」

 

さくらと初穂がそう言い合った瞬間………

 

『尚ぉ、先の騒動に於いて壊滅した華撃団はぁ………そのまま解散するものとするぅ!』

 

「!? なっ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

ジェネラルAがそう告げ、誠十郎が思わず声を挙げ、さくら達は言葉を失った。

 

『そもそも壊滅したのはぁ、その華撃団がぁ、弱かった事が原因。弱き華撃団等ぉ、我がWLOFには必要無しぃ! 必要なのは()()華撃団よぉ』

 

「ふざけんな! 無茶苦茶じゃねえかっ!!」

 

我慢出来なくなった様に、初穂が怒声を挙げて立ち上がる。

 

「プレジデントGも評判は良くなかったですけど………このジェネラルAって人は其れ以上です」

 

「傍若無人………」

 

クラリスとあざみも、呆れた様に声を挙げる。

 

「酷過ぎます! 華撃団が無くなった国の人達は、如何やって降魔と戦えば良いんですか!?」

 

さくらも怒りの声を挙げる。

 

「…………」

 

只1人、アナスタシアだけが無言でモニターを見遣っていた。

 

『これは決定事項であるぅ。如何なる反論・反抗も許さぬぅ………以上であぁる』

 

言いたい事を一方的に告げ、ジェネラルAは回線を切断した。

 

『トンでもねえ事になりやがったなぁ………』

 

「“壊滅した華撃団は解散”だなんて………正気の沙汰とは思えない」

 

ゼロの言葉に、誠十郎も憤りを隠さずにそう言う。

 

「全くですわね………」

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

其処で響いて来た声に、一同が視線を向けると………

 

「ジェネラルA………プレジデントGよりも厄介な人物がWLOFのトップになってしまったわね」

 

其処にはすみれの姿が在り、その後ろに控える様にサコミズ………

 

そして、米田とかえでの姿が在った。

 

「神崎司令!………其方の方々は?」

 

「君達の()()()さ」

 

誠十郎が立ち上がり、米田とかえでに気付いて尋ねると、サコミズがそう返して来た。

 

「紹介しますわ。此方は、帝国華撃団の『初代総司令・米田 一基』さんと、『2代目副司令・藤枝 かえで』さんよ」

 

そして、すみれが新生花組の面々に、米田とかえでを紹介する。

 

「!? 初代総司令と元副司令!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

其れを聞いた途端、誠十郎は立ち上がって姿勢を正して敬礼し、さくら達もそれに倣った。

 

「おいおい、そう固くなんなってぇ。今の俺は“()()呑んだくれの爺”なんだからよぉ」

 

「またそんな事を言って………」

 

そんな誠十郎達に、米田は飄々とした態度で返し、かえでが呆れた様に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後米田は、何時もはすみれが座る席に座り、傍にかえで・すみれ・サコミズを控えさせると、新生花組の面々に向かい合った。

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

新生花組の面々は、『生ける伝説』とも言える人物を前に、未だ若干の緊張の色を浮かべている。

 

「さてと………何から話したもんかなぁ?」

 

米田は、白髪の頭を掻きながら呟く。

 

「僭越ながら、米田さん。先ずは“彼女達が一番心配している事”を解消してあげて下さい」

 

其処で、サコミズが米田に上申する。

 

「するてぇと、解散を命じられた華撃団の事か?」

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

米田がそう言うと、新生花組の表情が変わる。

 

「如何やら、そうみたいね」

 

「解散を命じられた華撃団なら大丈夫だ。今は、“俺達の下で”再編を進めているところだ」

 

かえでがその様子から察すると、米田はそう告げる。

 

「! ホントですか!?」

 

「良かった………」

 

途端に、さくらとクラリスが安堵の息を漏らす。

 

「待って下さい。貴方方の下で、と言うのは………如何言う事ですか?」

 

しかし其処で、アナスタシアがそう疑問を口にする。

 

「“言葉通りの意味”だぜ」

 

「解散を命じられた華撃団の人達は、WLOFに代わる“()()世界華撃団構想の為の組織”への参加を承諾してくれたわ」

 

「!? 真の世界華撃団構想の為の組織だって!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

米田とかえでがそう返すと、初穂が仰天の声を挙げ、他の一同も驚きを示す。

 

「その通りですわ。そして………帝国華撃団も、本日只今を以てその組織へ参加する事を決定致しました」

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

すみれがそう宣言すると、再度驚きを露わにする花組の面々。

 

「因みに、試合会場でクール星人の円盤を撃墜した戦闘機部隊………アレは、その組織の“対怪獣戦闘援護部隊”よ」

 

「! あの戦闘機部隊が!」

 

クール星人の円盤を撃墜したガンクルセイダー部隊を思い出してそう言う誠十郎。

 

「お前達も見ただろう? プレジデントG、そしてジェネラルAのあの傍若無人な様を」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

米田の言葉に、誠十郎達は沈黙で肯定する。

 

「WLOFは、権力がトップに集中する構造になってやがる。ハッキリ言って、今の華撃団は嘗てはプレジデントG………今はジェネラルAに私物化されていると言って良い」

 

米田は、怒りの表情を浮かべながらそう断言する。

 

「今のままでは、“コレまでに無い強大な脅威”に晒された場合、真面に戦う事は出来ないわ」

 

「確かに………」

 

試合会場での戦闘で、各華撃団同士の連携が上手く行かず、却って被害を増やしてしまった状況を思い出し、誠十郎が呟く。

 

「其れに、今や華撃団の敵は降魔()()じゃ無え」

 

「怪獣や超獣、宇宙人と言った“新たな脅威”の問題も有るわ」

 

「今こそ、華撃団………いや、全人類の力を合わせ、()()()()()に立ち向かう………そうで無けりゃあ、この先人類は生き残れ無ぇ」

 

「「「「「…………」」」」」

 

話が壮大になり、唖然とするさくら達。

 

「貴方方は………今までその為の準備を進めておられたのですか?」

 

辛うじて、誠十郎が米田とかえでにそう尋ねる。

 

「………かえでくん」

 

「ハイ………」

 

米田が呼び掛けると、かえでは持っていたクリップボードに挟んであった紙を外し、作戦司令室の机の上に広げた。

 

「!? コレはっ!?」

 

「「「「「!!」」」」」

 

その紙を見た誠十郎達が、驚きを露わにする。

 

紙には“子供が描いた”と思われる絵が描かれていたが………

 

その絵は、如何見ても怪獣や超獣、宇宙人………

 

そして、ウルトラマンにしか見えなかったからだ。

 

更には、“WLOFが暴走して行く”と言う過程を描いたかの様な絵も見受けられる。

 

「『イラストレーター』が描いたイラストだ」

 

「『イラストレーター』?」

 

「元帝国華撃団・夢組の唯一の少年隊員だった子よ。予知能力を持っていて、降魔大戦で全華撃団が消滅し、()()()()()()()()()()()()にこのイラストを描いたの」

 

「イラストレーターの予知の的中率は()()()()………今まで、1度たりとも外れた事は無い」

 

「“100%の予知”………」

 

『ソイツはスゲェな』

 

イラストレーターの能力に、ゼロも感心する。

 

「我々はこの予知を元に、今日まで秘密裏に事を進めて来た。全てはWLOFの目を掻い潜り、連中に代わる真の世界華撃団構想の為の組織の設立の為にな」

 

「コレ以上プレジデントG、そしてジェネラルAによって私物化されたWLOFに好き勝手させるワケには行かないわ」

 

「壊滅した華撃団の各母国では、今回の事で反WLOF論が燃え上がっている。勿論、日本政府そして陸海軍も、今回の事で“WLOFから距離を置くべき”だと認識した。コレで、堂々と支援を受けられる」

 

米田・かえで・サコミズがそう言う。

 

「! ひょっとして、帝劇への陸海軍の支援が再開したのは!?」

 

「ええ、そうよ。皆米田さん達が手を回してくれたの。サコミズ副司令もその“同志”の1人よ」

 

誠十郎の言葉に、すみれがそう返す。

 

「そうだったんですか………ありがとうございます。皆さんのお陰で、帝国華撃団は立ち直る事が出来ました。花組隊長として、改めてお礼を申し上げます」

 

立ち上がると、米田達に向かって深々と頭を下げる誠十郎。

 

「若造。そう思うんなら、1つ頼まれてくれねえか?」

 

「えっ? な、何ですか?」

 

米田から思わぬ言葉が返って来て、誠十郎はやや狼狽する。

 

「実を言うとな………その真の世界華撃団構想の為の組織には、未だ名前が無えんだよ」

 

「はあ………」

 

「でだ………組織の名前を、お前さんに付けて貰いたい」

 

「!? ええっ!? じ、自分がですかっ!?」

 

思わぬ大役を任せられ、完全に動揺する誠十郎。

 

「凄いです! 隊長!!」

 

「ビシッと良い名前付けてくれよ!」

 

「頑張って下さい、神山さん」

 

「期待してる………」

 

「フフ、キャプテンのセンスが問われるわね」

 

さくら・初穂・クラリス・あざみ・アナスタシアが、そう囃し立てて来る。

 

「そ、そんな無責任な………いきなり言われて思い付くワケ………」

 

戸惑うばかりの誠十郎だったが………

 

「なら、良い名前が有るぜ!」

 

(!? ゼロッ!?)

 

其処で、ゼロが意識を入れ替えてそう言い放った。

 

「ほう? どんなだ?」

 

米田は誠十郎の様子が変わったのを悟りながらも、追及せずに笑って問う。

 

「WLOFに代わる新たな世界華撃団………その名も! 『ウルティメイト華撃団』だ!!」

 

そして誠十郎(ゼロ)は、握った拳をアピールする様に構えてそう命名した。

 

「ウルティメイト………」

 

「華撃団………」

 

(って、其れ『お前のチーム』の名前だろ!?)

 

さくらと初穂が反芻する中、誠十郎は“名前の由来”がゼロの『ウルティメイトフォースゼロ』からである事にツッコミを入れる。

 

「素晴らしいです!」

 

ゼロフリークなクラリスが、目を輝かせていの1番に賛同の声を挙げる。

 

「ウルティメイト華撃団か………良い名前じゃねえか」

 

そして、当の米田にも好評の様子である。

 

「良し。俺達の組織は、今日から………『ウルティメイト華撃団』だ!」

 

(い、良いのか………?)

 

決定を告げる米田だったが、誠十郎は何処か釈然としないのだった。

 

「さて、この話は以上だが………他に何か聞きたい事が有るか?」

 

「………あの」

 

と、一通り話を終えた米田がそう言うと、さくらがおずおずと言った様子で手を上げた。

 

「おう、天宮 さくらだったな。ふふ、さくらか………何が訊きてぇ?」

 

「あの、米田さんは、真宮寺 さくらさん達が………“嘗ての華撃団の皆さん”が如何なったかご存知なのですか?」

 

一瞬誰かを思い出していたかの様な様子を見せた米田に、さくらはそう尋ねる。

 

「「「「「………!」」」」」

 

その質問に、誠十郎達の視線も米田に集まる。

 

降魔大戦にて、降魔王と共に消滅した嘗ての帝都・巴里(パリ)紐育(ニューヨーク)の華撃団………

 

しかし、“()()消滅したのか”は明かされておらず、その詳細は謎に包まれている。

 

「…………」

 

さくらの問いに、目を閉じて考え込む様子を見せる米田。

 

「………そうだな。お前達には“知る権利”が有る。話してやろう………降魔大戦の真実をな」

 

やがて意を決した様子を見せると、降魔大戦………

 

『嘗ての“華撃団消滅”の真相』を語り始めるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『炎魔人 キリエル(ひと)・アゴナ』

 

身長・体重・能力:不明

 

イメージCV:強力若本

 

初登場作品:ウルトラマンティガ第3話『悪魔の預言』

 

嘗てティガと死闘を繰り広げたキリエル(ひと)の一族。

 

声に見合った強力な能力と戦闘力を持っており、彼の前では幻庵なぞその辺の石ころに等しくなる。

 

性格は傍若無人そのものであり、何を考えているか分からない。

 

『降魔王の懐刀』であるとされるが、果たして自己顕示欲の強いキリエル(ひと)が誰かの配下に付く事が有るのだろうか?………




新話、投稿させて頂きました。

遂に明らかになったローブの人物の正体!
意外! それがキリエル人!!
しかも降魔王の懐刀!?
力でも、地位でも、そして中の人の迫力でも明らかにプレジデントGこと幻庵より上です(笑)
なので彼は降格となりました。
勿論、見っとも無く色々と画策しては失敗する予定なので、その様子をお楽しみ下さい(爆)

キリエル人を選んだ理由は、肩書である炎魔人が星人とかよりサクラ大戦の世界にマッチしていると思ったのと、ネタバレなので伏せますが、終盤で考えているある展開の為です。
しかし気になるのはキリエル人・アゴナの目的。
果たして自己顕示欲の強いキリエル人が誰かの下に付くなんてあるのか?
その傍若無人な態度で何を考えているのか?

一方、突然のWLOFトップの交代劇と華撃団解散命令に戸惑っていた花組の前に現れたのは、米田さんとかえでさん。
御2方から遂に、真の世界華撃団構想の話がされます。
一応、WLOFが設立した華撃団の隊員達は、上層部が降魔だと知らないワケですから、人々を守ろうと華撃団に入った志は本物ですからね。
吸収と言う形ですが、救済措置を取りました。
そして始動する新たな世界華撃団構想………『ウルティメイト華撃団』
その目的は次回にて。

そして、夜叉が来なかったので、米田さん達から例の二都作戦について話して貰います。
この辺も改変が入るのでご注目下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『二都作戦』

チャプター6『二都作戦』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・地下司令室………

 

新生花組の面々に対し、米田は“嘗ての華撃団が消滅した”『降魔大戦』の()()を語り始める。

 

「嘗ての帝国・巴里(パリ)紐育(ニューヨーク)の華撃団が消滅した()()()()………其れは『二都作戦』が原因だ」

 

「二都………作戦? 其れは一体?」

 

『二都作戦』と言う聞き慣れない言葉に、誠十郎は尋ねる。

 

「『降魔王』は知っているな? 降魔大戦の引き金となった、コレまでに無い強大な力を持った降魔だ」

 

「帝国・巴里・紐育の3華撃団は力を合わせて立ち向かったけど、徐々に追い詰められて行ったわ」

 

「…………」

 

米田とかえでの言葉に、当時の事を思い出したのか、すみれが苦い顔をする。

 

「そんな中、『或る作戦』を実行する事が決まった」

 

「其れが、『二都作戦』………」

 

「一体、どんな作戦だったんですか?」

 

逸る気持ちを抑え切れず、さくらがそう尋ねる。

 

「『二都作戦』………読んで字の如く、()()()()()()()………『幻都』を作り出し、其処に“降魔王を封印する”計画よ」

 

「『帝都』と『幻都』………」

 

『成程。其れで【二都作戦】ってか』

 

かえでの言葉に、誠十郎とゼロは納得が言った様に頷く。

 

「如何やって、もう1つの帝都………『幻都』を作り出したんですか?」

 

「『帝鍵』と呼ばれる“神器”の力を使ったんだ」

 

さくらの問いに、今度は米田が答える。

 

「………!」

 

その『帝鍵』と呼ばれる神器の話が出た瞬間、アナスタシアが一瞬反応した様に見えたが、誰も気付かなかった。

 

「帝鍵は、その力で“魔を封印する都”『幻都』を生み出した」

 

「そんな事が………『帝鍵』。正に、神器と呼ぶに相応しい力ですね」

 

「でも、その結果………“大きな犠牲”を払う事になっちまった」

 

米田の顔が歪む。

 

「帝鍵の強大な力を引き出すには、膨大な霊力が必要だったわ。帝鍵の起動には、帝都・巴里・紐育、全華撃団の霊力が使われ………」

 

「そして、皆さんは“幻都に()()()封印されてしまった”の。“降魔王を()()()()()()為の(かなめ)”として」

 

かえでもすみれも、表情を暗くしながらそう言う。

 

「そ、そんな………」

 

「降魔王が封印された事で、二都作戦は『成功した』とされた。“全華撃団隊員の消滅”と引き換えに、な」

 

「これが『10年前に起きた事実』よ」

 

「その『帝鍵』は、今何処に有るのですか?」

 

其処でアナスタシアが、米田達に向かってそう質問した。

 

「確かに、そんな()()()()を持つ神器を野放しには出来ません」

 

「「「…………」」」

 

誠十郎もそう言うが、米田達の答えは“沈黙”だった。

 

「? 如何されました?」

 

『オイ、まさか……?』

 

「すまねぇ………其奴は分から無えんだ」

 

誠十郎が首を傾げ、ゼロが嫌な予感を感じると、米田は重々しく口を開いた。

 

「封印の後、陸海軍にも協力して貰って隈無く捜索したにも関わらず、()()()()()()()()わ」

 

「何処かに再び出現しているのか………其れ共、力を使い果たして消滅したのか………其れさえも不明ですわ」

 

「…………」

 

かえでとすみれの言葉に、アナスタシアがまたも一瞬表情を険しくした。

 

「あの………真宮寺 さくらさんは………嘗ての華撃団の人達は無事なんですか?」

 

其処でさくらがそう尋ねる。

 

「楽観的な事は言えねえ………だが、“降魔王が再び出現していない”という事は、封印が今だ続いていると言う事………つまり、“要となっているアイツ等が()()()()()()()って証拠”だ」

 

「勿論、私達も何度も救出の為の作戦を試みたわ。けど………肝心の『帝鍵』の行方が分からなくて、“手の打ち様が無い”と言うのが現実よ」

 

「…………」

 

そう返す米田とかえでに、さくらは複雑な表情を見せる。

 

其処で、サコミズがパンッ! パンッ!と手を鳴らした。

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

「皆、落ち込む気持ちは分かる。けど、先ずは“目の前の問題”を解決する事が先決だ」

 

「目の前の問題?」

 

「其れは一体?」

 

サコミズの言う“問題”が何か分からず、初穂とクラリスが首を傾げる。

 

「我々は明日………『ウルティメイト華撃団』の設立を宣言する」

 

「そうすれば当然、WLOFが反応する筈よ。『自分達を差し置いて、何を言うんだ!?』ってね」

 

「確かに………」

 

ジェネラルAの傍若無人っ振りを思い出しながら呟く誠十郎。

 

「恐らく連中は、ウルティメイト華撃団の中核である帝国華撃団を、自分達の下に残っている華撃団を使って、“華撃団大戦で叩きのめそう”としてくる筈だ」

 

「『力こそ正義』と言う様な今のWLOFなら、公衆の面前で帝国華撃団を叩き潰し、そのままウルティメイト華撃団を吸収しようとして来る筈よ」

 

「そんなっ!?」

 

さくらがまさかと言う様に声を挙げるが、ジェネラルAの態度を見る限り、否定出来ないのが現状である。

 

「WLOFの下に残ってる華撃団と言えば………」

 

上海(シャンハイ)華撃団、莫斯科(モスクワ)華撃団、倫敦(ロンドン)華撃団、そして伯林(ベルリン)華撃団………」

 

「皆強豪ばかりじゃないですか!」

 

誠十郎に続く様に、あざみがWLOFの下に残っている華撃団の名を挙げると、クラリスが悲鳴の様な声を挙げる。

 

「説得して、WLOFを抜けさせる事は出来ないんですか?」

 

「私達もそう思ったけど、その4つの華撃団はWLOFが設立された頃から所属していて、所属国の政治家や官僚の中には()()()()を持つ人達が多いの」

 

「つまり、“WLOFに付いてりゃ甘い汁を吸える”って(やから)が大勢居る、って事だ」

 

誠十郎の問いに、かえでと米田がウンザリした様子でそう返す。

 

「仮に、“華撃団の隊員がWLOFに良い感情を持っていない”としても、()()()()()()()()()って事ね」

 

「何だよ、ソレ! んな事が許されて良いのか!?」

 

淡々と言うアナスタシアに対し、初穂が憤慨した様子を見せる。

 

「人間と言うのは、欲深い生き物ですね………」

 

クラリスも呆れた様にそう呟く。

 

「勿論、手を拱いてばかりじゃないわ。元巴里華撃団総司令『イザベラ・ライラック』夫人や、元紐育華撃団総司令『マイケル・サニーサイド』氏が、WLOFと繋がって無い政治家や官僚に働き掛けているわ」

 

「其れを実らせる為にも………お前さん達には華撃団大戦で優勝して貰いたい」

 

「! 他の華撃団の人達と戦えって言うんですか!?」

 

かえでと米田の言葉に、さくらが驚きの声を挙げる。

 

「“戦って勝つ事”が、その華撃団の隊員達と所属国の、政治家や官僚達の()()()()()()()事になるわ」

 

「其れに、ジェネラルAが言ってたろ。『弱い華撃団は必要無い』って。残ってる華撃団の連中も、“負ければ容赦無く切り捨てる”だろうさ。そうなればコッチのモンだ」

 

「でも………!!」

 

「さくら」

 

尚も納得が行かない様子を見せるさくらだったが、其処で誠十郎が制した。

 

「! 神山さん………」

 

()()()するんじゃない。俺達は、他の華撃団を“倒す”為に戦うんじゃ無い。寧ろ、()()()()()()んだ」

 

「救う為………」

 

「そうだ。“WLOFに縛られている”華撃団の人達を助けるには………“全力で戦って勝つ”しか無い!」

 

さくらの目を見据えながら、誠十郎はそう言い放つ。

 

「…………」

 

さくらもまた、誠十郎の目を見返す。

 

「………分かりました。他の華撃団の人達を救う為にも………戦います!!」

 

そして遂に、覚悟を決めた表情となり、そう宣言した!!

 

「その意気だぜ、さくら!」

 

「倒す為では無く、救う為に戦う………正にその通りですね」

 

「里の掟、17条………仲間とは相争うべからず」

 

「フフフ、嫌いじゃないわよ。そう言う考え方」

 

それに続く様に、初穂・クラリス・あざみ・アナスタシアも声を挙げた。

 

「その意気ですわ」

 

「流石は帝国華撃団ね………“あの子達”を思い出すわ」

 

すみれとかえでが、そんな新生花組の様子に笑みを零す。

 

「頼むぜ。“『帝鍵』が見付かる”って前提が必要になるが………華撃団が()()()()()統一されれば、“幻都に居るアイツ等”を助け出す事も出来るかも知れ無え」

 

「! ハイ! 頑張ります! 必ず優勝してみせます!!」

 

米田の言葉に、さくらが更にやる気を見せる。

 

「さて………大分話し込んじまったな」

 

「今日はコレで解散としよう。明日はしっかりと休んで、華撃団大戦に備えるんだ」

 

「「「「「「了解っ!!」」」」」」

 

サコミズが解散を宣言すると、新生花組の面々は席から立ち上がって敬礼するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………さて、すみれ。実はお前にも“話”が有る」

 

「えっ………?」

 

新生花組の面々が司令室から出て行った後、米田はすみれにそう声を掛けた。

 

「実は………二都作戦の事で、“貴女にも伝えていない事”が有ったの」

 

「!? 何ですって!?」

 

続くかえでの言葉に、すみれは驚きの声を挙げる。

 

「あの時、お前は引退していた身にも関わらず、無理をして光武を動かしてたな」

 

「ええ。結局、二都作戦を“発動する前”に完全に力尽きてしまって、皆さんに置いて行かれてしまいましたけど………」

 

当時の事を思い出し、すみれの顔に影が差す。

 

「実はなあ………作戦が発動するってタイミングで………大神の野郎が、『()()()()()()()』って言って来てやがったんだ」

 

「!? 大尉が!?」

 

再び驚きの声を挙げるすみれ。

 

「ですが、二都作戦は………」

 

「ああ、()()()()()開始された………最初は、俺も聞き間違いかと思った。だがな………」

 

「元々、二都作戦は“賢人機関を飛び越えて、()()が強引に推して来ていた”事は覚えてるわね?」

 

「ええ………」

 

「実は二都作戦の後………“作戦に関わった全ての政府関係者”が謎の変死を遂げているの」

 

「!?」

 

「大神からの作戦中止の決定………消えた帝鍵………変死した政府関係者………如何にも怪しい臭いがプンプンしやがる」

 

3度(みたび)驚くすみれに、米田は険しい表情でそう呟く。

 

「全ての謎は、『帝鍵』が“文字通り”鍵となってる………」

 

「………分かりましたわ。一刻も早く帝鍵を見付け出しますわ」

 

「頼むぜ。俺達も出来る限り捜索してみる」

 

すみれと米田達は、帝鍵の捜索を急ぐ事で意見を一致させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・誠十郎の部屋………

 

「ゼロ………お前の“力”で、幻都に封印されている華撃団の人達を助ける事は出来ないのか?」

 

ウルティメイトブレスレットを構えながら、ゼロにそう言う誠十郎。

 

『難しいな………聞いた限りじゃ、その【幻都】ってのは“降魔王を封じておく為の空間”………()()()空間じゃねえ。ウルティメイトイージスの力でも、行けるか如何か分からねえ』

 

しかし、ゼロからはそんな言葉が返って来る。

 

『其れに、降魔王って奴の“強さ”がどれ位なのか、もな。ビビってるワケじゃ無えが、“嘗ての華撃団が束になって敵わなかった”って相手だろ?迂闊に踏み込むワケには行かねえ』

 

「確かに………」

 

『【帝鍵】………だったか? ソイツの事が分かれば、何とかしようも有るかも知れねえが………』

 

「やはり『帝鍵』を見付けるしか無いか………だが一体、何処に在るのやら………」

 

全く以て所在が不明な『帝鍵』を探し出さない事には始まらないと知り、誠十郎は思わず天を仰ぎ見た。

 

『心配するな、誠十郎。行き方さえ分かりゃあ、直ぐにでも行ってやる。其れよりも、お前には“考えるべき事”が有るだろう?』

 

「ああ、分かってる………“華撃団大戦を勝ち抜き、()()()()()()()()()()()華撃団を解放する”。其れが、今の俺達の使命だ」

 

ゼロにそう言われ、誠十郎は改めて華撃団大戦での優勝を決意するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日………

 

ウルティメイト華撃団の存在が世に公表され、当然WLOFが反応。

 

“その存在を認めない”と一蹴。

 

そして華撃団大戦のルールと試合形式を変更し、ウルティメイト華撃団の代表・帝国華撃団の参加を命令。

 

これにより、華撃団大戦は帝国華撃団を挑戦者とし、WLOF所属華撃団と次々に戦う、“挑戦式のトーナメント戦且つ直接対決での試合”となった。

 

帝国華撃団が華撃団大戦で優勝すれば、WLOFは()()()()傘下に入ると宣言。

 

だが逆に、WLOF所属華撃団にウルティメイト華撃団の代表である帝国華撃団が敗れれば、“直ちにウルティメイト華撃団を解散しろ”と言って来た。

 

ウルティメイト華撃団はこの条件を受諾。

 

更に翌日………

 

壊滅した華撃団の復興を無視して資金を注ぎ込み………

 

僅か2日で再建させた世界華撃団大戦の試合会場にて………

 

第1回戦が開始されようとしていた。

 

帝国華撃団の最初の相手は………

 

『上海華撃団』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

米田の口から語られた嘗ての華撃団が消滅した降魔大戦の真実………『二都作戦』
基本的には原作と同様ですが、降魔王と共に封印された嘗ての華撃団の面々は戦い続けているのではなく、封印の要になっているという事になってます。
幻都というワケの分からない場所で10年以上戦い続けていると言うのはやっぱり如何考えても無理が有ると思ったので。

そして更に気になる要素が………
・大神さんは直前で作戦中止を考えていた。
・二都作戦は賢人機関を飛び越えて当時の政府がゴリ押しした。
・その際の関係者達は、大戦後に全員謎の変死を遂げている。
米田さんの言う通り、怪しい臭いがプンプンしてます。
この辺が後どう明かされるか、楽しみにしていて下さい。

で、WLOFが強行した華撃団大戦ですが………
帝国華撃団がウルティメイト華撃団代表として、WLOFに残留している華撃団に挑戦すると言う形を取ります。
やっぱり華撃団大戦は新サクラ大戦の中核要素なのでやらないとと思いまして。
なので、私なりに納得出来る形に変えてみました。
戦いに勝ったら相手の華撃団を解散させてしまうと言うジレンマが結局有耶無耶のまま話が進んでしまったので、その辺の解消してみました。
直接対決方式のみにしたのは、原作の最初は仮想敵を倒してポイントを稼ぐってシステムが、小説で描写すると淡々とした作業描写になってしまうので、盛り上がり所である華撃団同士の直接バトルに注力する事にしました。

説明会ですので後書きも長くなってすみません。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター7『上海華撃団』

チャプター7『上海華撃団』

 

上海華撃団

 

三つ首怪獣 ファイヤードラコ・アナザー 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

帝国華撃団の控え場所………

 

「何だよ………いきなり上海(シャンハイ)と戦うのかよ」

 

「寄りにもよって………残酷です」

 

戦闘服姿で待機している花組とすみれ、カオルの中で、初穂とクラリスがそう呟く。

 

“例の1件”以来疎遠となっているが、上海華撃団は帝国華撃団が立ち直る前に“帝都の防衛”を担ってくれていた華撃団であり、花組の面々も良く知る仲だった。

 

その上海華撃団と1回戦から戦わなければならなくなった事に、少なからず動揺が有った。

 

「よう」

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

其処へ声が響いて来て、花組の面々がその方向を見遣ると………

 

「久しぶりだな………」

 

「「…………」」

 

既に殺気を放っているシャオロンが、俯き加減のユイと見知らぬ戦闘服の男を伴って現れた。

 

「シャオロン………」

 

「ユイさん………」

 

誠十郎がシャオロン、さくらがユイに視線を向ける。

 

「!………」

 

ユイは気不味そうに視線を逸らす。

 

「オメェは誰だ? 見ねぇ顔だな?」

 

其処で初穂が、見知らぬ戦闘服の男に問い質す。

 

「ニーハオ、花組の皆さん。ワタシは上海華撃団の隊員『シィエナァン』アルヨ。ドゾよろしく」

 

戦闘服の男………『シィエナァン』は、まるでインチキ中国人の様な喋り方で笑顔を浮かべて挨拶して来る。

 

しかし………

 

その笑顔は、何処か薄気味悪かった………

 

「「…………」」

 

クラリスとあざみが、そんなシィエナァンの雰囲気を感じ取り、無意識に警戒態勢を取る。

 

「『シィエナァン』………『蠍男』ねえ」

 

一方アナスタシアは、シィエナァンの名が日本語に直すと『蠍男』になる事に、訝し気な様子を見せる。

 

「漸くだ………漸くテメェ等を叩き潰せる時が来たぜ。しかもこんな大舞台でな」

 

邪悪な笑みを浮かべてそう言い放つシャオロン。

 

その姿に、嘗ての爽やかさは微塵も感じられない。

 

下手をすれば“狂人”と言われても違和感が無い程である。

 

「………シャオロン。お前は“今のWLOFに”何の疑問も抱かないのか?」

 

と其処で、誠十郎はシャオロンにそう問い質し始める。

 

「あのジェネラルAの態度を見ただろう?今やるべき事は、各国の華撃団の再建の筈だ。なのに、壊滅した華撃団をアッサリと切り捨てて華撃団大戦を強行するなんてマトモじゃない」

 

「そうですよ! こんな試合で、私達が戦う理由なんて無い筈です!!」

 

さくらもそう声を挙げたが………

 

「ウルセェッ! “WLOFの意向”なんざ知った事じゃ無えっ!!」

 

「なっ!?」

 

「!?」

 

シャオロンの思わぬ反論に、誠十郎とさくらは絶句する。

 

「俺は()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ! テメェ等なんざ必要無え! 俺達が居れば十分なんだ! 『上海華撃団が帝都を守る!!』 其れが()()()()()()姿()なんだ!!」

 

「…………」

 

叫ぶ様にそう言い放つシャオロンの後ろで、シィエナァンがまたあの邪悪な笑みを浮かべている。

 

「! ユイさん! ユイさんは其れで良いんですか!?」

 

「!!」

 

さくらが今度はユイに呼び掛けると、ユイはビクリッと身体を震わせる。

 

「私達は人々を守る華撃団です! 決して“誰かの私利私欲の為”に戦う存在じゃ無かった筈です! 『ジェネラルAのWLOF』の下で戦う事が、誰かを守る事になるんですか!?」

 

「わ、私は………」

 

「ユイ! 慣れ合うんじゃ無えっ!!」

 

「!!」

 

何かを言おうとしたユイを遮り、シャオロンが叫ぶ。

 

「ユイさん!」

 

「………ゴメン………ゴメン、さくら………」

 

震えながら、絞り出す様にそう呟くユイ。

 

「ユイさん………」

 

そんなユイの姿に、さくらは何も言えなくなる。

 

「……如何やら、お前の目を覚まさせてやるには………もうブン殴るしか無さそうだな」

 

其処で、誠十郎は覚悟を決めた表情となり、シャオロンを見据えてそう言い放つ。

 

「ブン殴る? “テメェ等()俺を”? ハハハハハハハッ!! 面白(おもし)れぇ冗談だぜっ!!」

 

そんな誠十郎の台詞に、シャオロンは嘲笑で返す。

 

「ま、精々頑張る事だな…。この“亜細亜の龍・上海華撃団”が、瞬きする間に屠ってやるぜ!!」

 

シャオロンは、吐き捨てるようにそう言うと踵を返し、ユイとシィエナァンを連れて去って行く。

 

と一瞬………

 

シャオロンの身体から、“赤黒いオーラの様な物”が立ち上ったかの様に見えた。

 

『!? 今のは!?』

 

(ゼロ! アレは!?)

 

『………気を付けろ、誠十郎。あのシャオロンって奴………ひょっとすると………』

 

その様子に、ゼロは“或る懸念”を抱いた。

 

「皆。色々と有るでしょうけど、其れは一旦置いて頂戴。いよいよ華撃団大戦の初戦。この戦いは、最早帝国華撃団再興()()では無く、“ウルティメイト華撃団の存在と正当性”をアピールする場でもあるのですから」

 

と其処で、すみれが皆にそう呼び掛けた。

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

其れを受けて、花組の面々は一旦上海華撃団の事を忘れ去る。

 

「改訂されたルールによると、華撃団大戦は3対3での戦いとなります。途中での選手交代も認められません」

 

「選抜した3人で最後まで決着を付けろ、という事か………」

 

『コッチは向こうの土俵に乗ってる身だ。ルールに関しちゃ、言われた事に従うしか無え』

 

カオルの説明に、誠十郎とゼロがそう言い合う。

 

「加えて、隊長には“出撃義務”が有りますので………1番選手は神山さん、と言う事になりますね」

 

「と言う事は、後2人か………」

 

其処で、誠十郎は花組の面々を見遣る。

 

「「「「「…………」」」」」

 

花組の面々は、引き締まった表情で誠十郎を見返していた。

 

“選ばれても選ばれなくても異議は無い”と言う様に。

 

「頼むわよ、神山くん」

 

「ハッ!」

 

すみれに敬礼して返すと、誠十郎は改めて花組の面々に向き直る。

 

「今回出撃する隊員は、俺を含めて3名………出撃する隊員は“その力”で、待機する隊員は“その想い”で戦ってくれ! ()()のは3名………だが、“全員の絆”で勝つぞ!!」

 

「当たり()ぇよ!」

 

「私達は、()()()花組ですから」

 

「戦いも、応援も………手は抜かない」

 

「“想いは1つ”。其れが花組の力よ」

 

「私達の絆で………奇跡を見せてやりましょう!!」

 

誠十郎の言葉に、初穂・クラリス・あざみ・アナスタシア・さくらが威勢良く返事を返す。

 

「では、神山さん。1回戦の出場選手は誰にしますか?」

 

「1回戦のメンバーは………」

 

カオルの言葉に、誠十郎は1回戦の出場メンバーを告げるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

『世界華撃団大戦、第1回戦は上海華撃団と、ウルティメイト華撃団の新生・帝国華撃団の戦いです!』

 

既に上海華撃団が待機しているスタジアムに、実況者の声が響き渡る。

 

『今回の世界華撃団は、異例の事態となっております。先日の【地獄の開会式】で世界中の華撃団が壊滅………WLOFは、“其れ等の華撃団を切り捨てる”と発表。其処へ【真の世界華撃団】構想の組織………【ウルティメイト華撃団】なる存在が名乗りを挙げました』

 

実況者の声と共に、スタジアムの巨大モニターにウルティメイト華撃団のエンブレムが表示される。

 

『WLOFから切り捨てられた華撃団を吸収し、瞬く間に巨大組織となったウルティメイト華撃団。その中核を成すのが、あの新生・帝国華撃団です』

 

続いて、新生・帝国華撃団の無限達が映し出される。

 

『しかし、WLOFはこの組織の存在を否定。“華撃団大戦にてその是非を問う”と宣言し、ウルティメイト華撃団は其れを了承。謂わば今回の華撃団大戦は、“WLOF対ウルティメイト華撃団の戦い”と言う構図になります』

 

今度は、WLOFとウルティメイト華撃団のエンブレムが相対する様に並べて表示される。

 

『地獄の開幕式以降の対応に批判が噴出しているWLOFと、突然現れたウルティメイト華撃団。果たして我々は、どちらを信じれば良いのでしょうか? 全ては、この試合で明らかになります』

 

「ケッ! 『どちらを信じるか?』だと!? 下らねえ事言いやがって!!」

 

コクピットの中で、実況者にまで悪態を吐いているシャオロン。

 

「…………」

 

傍に佇んでいるユイ機からは、覇気が感じられない。

 

「フフフフ………」

 

一方、青色の王龍に乗ったシィエナァンは、相変わらず不気味な笑みを浮かべていた。

 

『あ! 今、帝国華撃団が姿を見せました!!』

 

と其処で、実況者のそう言う声が響き、上海華撃団の正面に帝国華撃団の無限3機が現れる。

 

現れたのは………

 

「絶対に、勝って見せる!」

 

「忍者、望月 あざみ………参る!」

 

「皆! 行くぞっ!!」

 

さくらとあざみを伴った誠十郎だった。

 

「フフ、龍の餌食になるのはテメェ等か? 力の差を見せてやるぜ!」

 

「シャオロン。“()()お前”に………龍を名乗る資格は無い!」

 

シャオロンの言葉に、誠十郎はそう返した。

 

『さあ………皆様、準備はよろしいでしょうか? 『上海華撃団』対『帝国華撃団』………いよいよ試合開始です! 其れでは! 華撃団大戦! レディィィ・ゴゥッ!!』

 

「うおおおおおおおおおっ!!」

 

と、実況者の試合開始の合図と共にゴングが鳴らされた瞬間!!

 

シャオロン機が、誠十郎機に突撃して来た!!

 

「!!」

 

驚きながらも、繰り出された拳を交差させた二刀で受け止める。

 

「神山誠十郎ぉっ! テメェはこの俺が潰すぅっ!!」

 

「シャオロン! くうっ!!」

 

最早狂気さえ感じさせるシャオロンの言葉と共に、勢いまで殺し切れなかった誠十郎機が押されて行った。

 

「! 神山隊長!!」

 

「隊長っ!!」

 

さくらが驚いている中、あざみは素早く2機を追おうとする。

 

「!?」

 

しかし殺気を感じて立ち止まると、その眼前にシィエナァン機が跳び蹴りと共に飛び込んで来た!

 

「お嬢ちゃんの相手は私アルヨ」

 

「お嬢ちゃんじゃない………あざみは忍者」

 

「アイヤー、ニンジャアルカ。ニポンの神秘ネ」

 

構えを取るあざみ機を見据えながら、シィエナァンは相変わらずスッ惚けたインチキ中国人口調を続ける。

 

「シャオロン! シィエナァン!」

 

2人に遅れて、ユイ機が近付いて来るが………

 

その前にさくらの無限が立ちはだかる。

 

「! さくら………」

 

「ユイさん………お相手して貰います」

 

「…………」

 

さくらの言葉に、ユイ機は一瞬間を置いて、構えを取った。

 

『おおっと! 早くも、厳しく激突が始まりました!! 上海華撃団の王龍と帝国華撃団の無限が其々戦闘を開始です!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(元プレジデントGの)現・ジェネラルAの執務室………

 

「フフフフフ………戦えぃ、上海華撃団。其れこそ龍の様になぁ」

 

モニターで、試合の様子を観ていたジェネラルAが面白そうに笑う。

 

その右手には、()()()()()が握られていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あざみVSシィエナァン………

 

「フッ! ハアッ!」

 

掛け声と共にアクロバティックな動きをしながら、あざみが次々と手裏剣やクナイを投擲する。

 

「ホッ! ホッ! ホッ!」

 

しかしシィエナァン機は、其れを全て蹴りや手刀で叩き落として行く。

 

「ニンッ!」

 

すると其処で、あざみ機が印を結んだかと思うと、煙と共に消え失せる。

 

「おおっ!? 消えたアルッ!?」

 

キョロキョロと辺りを見回し、あざみ機を探す素振りをするシィエナァン機。

 

その背後の空中に、あざみ機が音も無く出現する。

 

「貰ったっ!!」

 

そのまま、無防備なシィエナァン機の背中に向かって跳び蹴りを繰り出す。

 

「!?」

 

だが蹴りが命中するかと思われた瞬間、嫌な物を感じたあざみは、態と機体を失速させた。

 

するとその眼前を、何か“黒い物”が鞭の様に撓って通り過ぎた!

 

「!!」

 

「おおっと、気付かれたアルカ」

 

着地したあざみ機がシィエナァン機から距離を取り、“黒い物”の正体を確認する。

 

「フッフッフッフッ」

 

其れは、霊子戦闘機『王龍』の特徴の1つ・『尻尾』だった。

 

しかしシィエナァン機の尻尾は、シャオロン機やユイ機に比べて長く、更に()()も生えていた。

 

「尻尾………」

 

「これぞ私の得意技。この尻尾が最大の武器ネ」

 

シィエナァン機が両手を地面に衝け、2本の尻尾をグネグネと動かす。

 

その姿は、正に(サソリ)である。

 

「…………」

 

あざみ機はそんなシィエナァン機から距離を取りつつ、左腰の小太刀を右手で逆手に構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくらVSユイ………

 

「はああああぁっ!!」

 

「フッ!」

 

ユイ機の繰り出した正拳突きを、独楽の様に回転して躱すと、背中に横薙ぎを繰り出すさくら機。

 

「ハイッ!!」

 

「!!」

 

しかし、素早く裏拳が繰り出されて来たので、後退する。

 

「………?」

 

其処で、さくらは違和感を感じた。

 

「ハアアアアァァァァァーーーーーーッ!!」

 

さくら機に向かって次々に拳や蹴りを繰り出すユイ機。

 

其れを後退しつつ躱し、躱し切れないものは刀で弾いて防ぐさくら機。

 

「………やっぱり」

 

其処でさくらの感じていた“違和感”が、()()へと変わる。

 

「ハアアッ!!」

 

その瞬間、ユイ機が大きく踏み込んで体重の乗った拳を繰り出す。

 

だが………

 

「!? 嘘っ!?」

 

その拳は、さくら機の峰に返した刀で受け止められた。

 

「ユイさん………貴女、迷ってますね」

 

「!?」

 

「動きにキレが有りません。“本当は分かってる”んじゃ無いんですか?今の上海華撃団が………()()()()()()()()()()()()()()って」

 

「わ、私は………」

 

「もう止めて下さい! 今は“私達が戦っている場合じゃない”んです!!」

 

「…………」

 

其処で、ユイ機がさくら機から離れる。

 

「私………何やってるんだろう………?」

 

そしてそのまま膝を折り、両手を地面に突いた。

 

「ユイさん………」

 

そんなユイ機に、さくら機が手を差し伸べる。

 

「さくら………」

 

その手を取ろうとするユイ機。

 

しかし………

 

突如、ユイ機のモノアイが不気味に発光した!!

 

「!?」

 

殺気を感じたさくらが、咄嗟に機体に防御姿勢を取らせた瞬間!

 

不意打ちをする様にユイ機の拳が叩き込まれた!

 

「ぐうっ!? ユイさんっ!?」

 

「えっ!? ち、違うっ!! 私は………」

 

反動で後退したさくら機が呼び掛けると、“ユイの戸惑いの声”が返って来る。

 

ユイ機はモノアイを不気味に発光させたまま、さくら機へと襲い掛かる!

 

「わ、王龍が! 勝手にっ!?」

 

()()()()()()()()()を一切受け付けなくなった王龍。

 

「くっ!!」

 

先程までとは打って変わり、動きに全く容赦が無くなったユイ機がさくら機を追い詰め始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誠十郎VSシャオロン………

 

『オイ、誠十郎! さくらの方の様子が変だぞ!!』

 

「! 何だ!? あの動きは!?」

 

ゼロがユイ機の様子に気付くと、誠十郎も其れを確認して驚きの声を挙げる。

 

「余所見してんじゃ無えっ!!」

 

そんな誠十郎機に、シャオロン機は容赦無く襲い掛かる。

 

「グウッ!」

 

繰り出された手刀を、二刀を交差させて受け止める誠十郎機。

 

「死ねぇっ! 神山ぁっ!!」

 

「待てシャオロン! ユイさんの機体の様子がおかしい! 一旦試合を中止しよう!!」

 

殺気を漲らせているシャオロンに向かって、ユイ機の異常を察知した誠十郎がそう呼び掛けるが………

 

「うるせぇっ! 死ねぇっ!!」

 

シャオロンは全く意に介さず、攻撃を続けて来る。

 

「くうっ! シャオロン! ユイさんが危ないかも知れないんだぞ!!」

 

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇっ!!」

 

更に呼び掛ける誠十郎だったが、シャオロンから返って来るのは狂った様な罵声だった。

 

「…………」

 

するとその瞬間………

 

誠十郎機がまるで脱力した様に腕を下ろし、その場に立ち尽くした。

 

「くたばれええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!! 神山ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

絶好のチャンスに、シャオロン機は炎を纏った拳を振り被って襲い掛かる!

 

………その次の瞬間!!

 

二筋の閃光が走ったかと思うと、『何か』が宙に舞い地面に落ちた。

 

「なっ!?」

 

驚愕するシャオロン。

 

彼の機体からは、()()が無くなっていた。

 

先程、宙に舞い地面に落ちたのはシャオロン機の両腕だった。

 

「この………馬鹿野郎おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

シャオロン機の両腕を斬り飛ばした誠十郎機は、そのまま怒声と共に縦横無刃「嵐」を繰り出した!!

 

「うがああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

全身を斬り刻まれ、傷痕だらけになったシャオロン機が、そのまま仰向けに倒れ、スパークと蒸気を噴出した。

 

「…………」

 

そんなシャオロン機を一瞥すると、誠十郎機はさくら機とユイ機の元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あざみVSシィエナァン………

 

「アイヤー、隊長やられたアルカ?」

 

その様子を見たシィエナァンが、呑気にそう言う。

 

しかし、彼の機体は2本の長い尻尾であざみ機に絶え間無く攻撃を続けている。

 

「隙が無い………」

 

2本の尻尾の攻撃を躱しながらも、攻め手を欠いているあざみ機。

 

「ホレホレ、逃げ回ってばかりじゃ何も出来ないアルヨ」

 

「………その通り」

 

と、シィエナァンが挑発する様にそう言い放ったかと思うと、あざみ機が霊力を開放する。

 

「オッ?」

 

「望月流忍法………無双手裏剣!!」

 

そして必殺技を繰り出すと、無数のクナイ型手裏剣がシィエナァン機へと殺到した!

 

「ホワアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

迫り来るクナイ型手裏剣を、2本の尻尾を振り回して叩き落して行くシィエナァン機。

 

「!!」

 

と其処で、あざみ機がシィエナァン機に向かって突撃した!

 

「必殺技を目眩ましにした積りアルカ? 無駄ねっ!!」

 

だがあざみ機が到達する前に、シィエナァン機はクナイ型手裏剣を全て叩き落し、2本の尻尾であざみ機を迎撃しようとした。

 

が!

 

「!? アイヤッ!? 動かないアル!?」

 

突然尻尾が動かなくなり、シィエナァンが尻尾を確認すると、其処には………

 

“可動部分の隙間()()”にクナイ型手裏剣が突き刺さっている尻尾の姿が在った。

 

「何と!? さっきの手裏剣はこの為カ!?」

 

「!!」

 

シィエナァンが驚愕している間に、あざみ機はシィエナァン機に組み付く。

 

「ハアッ!!」

 

そしてそのまま跳び上がったかと思うと、空中で自機諸共逆さまになり急降下!

 

シィエナァン機の頭部を地面に叩き付けた!

 

飯綱(いずな)落とし』である!!

 

「…………」

 

「アイヤー、やられたアルカ………」

 

叩き付けたシィエナァン機から離れて油断無く構えを取るあざみ機だが、シィエナァン機は彼の呑気な声と共に蒸気漏れを起こして動かなくなる。

 

「ハハハハハ。まあ、こんなものアルカ」

 

「…………」

 

負けたと言うのに、“()()悔しさが感じられない”シィエナァンの態度に疑問を抱きながらも、あざみ機もさくら機とユイ機の元へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくらVSユイ………

 

「止めて王龍! 止めてぇっ!!」

 

「ぐううっ!?」

 

ユイの悲鳴も意に介さず、彼女の王龍は容赦無い連撃をさくら機に浴びせて行く!

 

「!? キャアッ!!」

 

と其処で、不意に繰り出された回し蹴りを真面に喰らってさくら機がブッ飛ばされ、転がりながら仰向けに倒れた!

 

ユイ機は仰向けに倒れたさくら機に向かって地を蹴り、トドメを刺そうとする。

 

「止めてえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」

 

再び悲鳴を挙げるユイ。

 

その瞬間!!

 

誠十郎機が右腕、あざみ機が左腕を摑み、ユイ機を拘束した!

 

「! 隊長! あざみ!」

 

さくら機が起き上がる中、誠十郎機とあざみ機に組み付かれたユイ機は、2機を振り解こうと暴れる。

 

「グウッ! 何だこのパワーはっ!?」

 

「明らかに“機体の限界”を超えてる」

 

明らかにカタログスペックの何倍ものパワーを出しているユイ機に振り回され、誠十郎とあざみが思わずそう漏らす。

 

「あざみ! 出力最大だ!!」

 

「了解っ!!」

 

しかし、誠十郎機とあざみ機も出力を最大にして無理矢理抑え込む。

 

ユイ機はさくら機に背を向ける形で、漸く止まる。

 

「さくら! 今だ!! 霊子機関を狙えっ!!」

 

「! ハイッ!!」

 

誠十郎の指示で、さくら機はユイ機の背中・霊子機関部に向かって突きを繰り出す!

 

「ハアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

渾身の突きが、ユイ機の霊子機関を貫通!

 

モノアイの光が徐々に消えて行ったかと思うと、ユイ機は脱力して漸く止まる。

 

「止まった………」

 

「一体何だったんだ、今のは?」

 

ユイ機が完全に停止した事を確認したあざみ機と誠十郎機が離れる。

 

「ユイさん!」

 

さくら機は、ユイを助け出そうとする。

 

『決まったぁっ! 華撃団大戦の第1回戦! 勝利したのは………帝国華撃団です!!』

 

「「「「「「「「「「わああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

と其処で、実況者が帝国華撃団の勝利を伝え、観客席から割れんばかりの歓声が響き渡る。

 

「ふざけるなああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

だが、其れを消し飛ばす凄まじい怒声が響き渡り、観客達は一瞬にして黙り込んだ。

 

「!? シャオロン!?」

 

誠十郎が驚愕の声を挙げる。

 

彼の視線の先には、両腕を無くして全身滅多斬りにされたにも関わらず、立ち上がっているシャオロン機の姿が在った。

 

「そんな………あの損傷で動ける筈無い………」

 

その光景に、あざみも信じられないモノを見る様な目になる。

 

「テメェ等なんざ要らねえんだ………俺達が居れば良いんだ………上海も帝都も………俺達が守るんだ………其れが“俺達の価値”なんだ………」

 

何やら、ブツブツと呟き始めるシャオロン。

 

「うおわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

と、シャオロンが獣染みた咆哮を挙げた瞬間!!

 

シャオロン機から“赤黒いオーラの様な物”が発せられた!!

 

「!? アレはっ!!」

 

『間違い無い! 【マイナスエネルギー】だっ!! アイツ、クレッセントと戦った時に奴のマイナスエネルギーを浴びてやがったんだ!!』

 

驚愕する誠十郎に、ゼロがオーラの正体が『マイナスエネルギー』である事を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェネラルAの執務室………

 

「その力………解放せよ」

 

と、モニターに映るマイナスエネルギーの立ち上るシャオロン機を見ながら、ジェネラルAはダークリングを取り出し、持っていた怪獣カードをリードした。

 

『ファイヤードラコ』

 

ダークリングからくぐもった闇の声が響くと、カードを挿し込んでいたのとは反対側の方向から赤い竜巻の様なエネルギーが放たれ、ジェネラルAの執務室から飛び出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華撃団大戦の試合会場………

 

ダークリングから放たれたエネルギーは試合会場まで到達し、シャオロン機に降り注いだ!!

 

「! うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」

 

途端に、シャオロン機から発せられていたマイナスエネルギーのオーラが増大。

 

シャオロン機の姿がマイナスエネルギーの塊となる。

 

「えっ!? な、何っ!?」

 

すると其処でユイ機が浮かび上がり、まるで吸い込まれる様に、マイナスエネルギーの塊となったシャオロン機へ引き込まれて行く。

 

「い、嫌ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

「ユイさん!」

 

さくら機が慌てて手を伸ばしたが、1歩間に合わず、伸ばした手は虚しく空を切った。

 

「さくらああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

ユイの悲鳴が木霊する中、彼女は機体ごとマイナスエネルギーの塊に呑み込まれた!

 

「! そんな! ユイさん!!」

 

「ハハハハハッ! 遂に来たぜぇっ!! ヒャッハーッ!!」

 

さくらが思わず叫ぶ中、シィエナァンが喜々として、自ら機体ごとマイナスエネルギーの塊の中へ飛び込んで行った!

 

「!?」

 

「なっ!? 自分から飛び込んで行ったっ!?」

 

シィエナァンの思わぬ行動に驚くあざみと誠十郎。

 

ユイとシィエナァン、そして2人の機体をも飲み込んだマイナスエネルギーの塊は、そのままドンドンと巨大化。

 

やがて、粘土の様に変形して形を作り始めたかと思うと………

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

黄色、緑、青の3つの首を持つ龍の様な怪獣………

 

『三つ首怪獣 ファイヤードラコ・アナザー』となったのだった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

遂に上海華撃団との対決の時。
その戦いは単純な激突ではなく、ウルティメイト華撃団とWLOFの存在意義を掛けた戦いとなります。
今回はさくらとあざみを選抜しましたが、都合によりさくらは以後の試合にも出ずっぱりになります。
この作品でのメインヒロイン補正と思って、どうかご了承ください。

そんな中、判明したシャオロンの狂気の理由………
何と、クレッセントと戦った際に、マイナスエネルギーを浴びて、その影響を受けていたのです。
正確には、元々抱えていた歪んだ感情が、マイナスエネルギーで増幅されたって事になりますが………

ユイの機体に細工がされていたり、謎の3人目『シィエナァン』の存在などがあったものの、見事勝利を納める帝国華撃団。
しかし何と!!
ジェネラルAがダークリングと怪獣カードを使い、上海華撃団をファイヤードラコ・アナザーへ変えてしまいます!
アナザーと付いている理由は次回の怪獣大百科にて。
果たして、上海華撃団を救う手立てはあるのか!?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター8『虚しき勝利』

チャプター8『虚しき勝利』

 

三つ首怪獣 ファイヤードラコ・アナザー

 

さそり怪獣 アンタレス・ブラザー 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

「うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

 

「怪獣だあっ!!」

 

「上海華撃団が怪獣になっちまったーっ!!」

 

突如としてマイナスエネルギーの塊と化し、其処からファイヤードラコ・アナザーとなった上海華撃団の姿を見て、観客達は慌てふためいて出口に殺到する。

 

「シャ、シャオロン!」

 

「ユイさん!」

 

「人間が………怪獣に!?」

 

誠十郎・さくら・あざみも、驚愕を露わにファイヤードラコ・アナザーを見上げる。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

其処でファイヤードラコ・アナザーが、足元の誠十郎達を見下ろす。

 

「「「!!」」」

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

誠十郎達が驚きを示した瞬間、ファイヤードラコ・アナザーはボールを蹴るかの様に右足を振った!

 

「! 危ないっ!!」

 

咄嗟に、誠十郎機がさくら機とあざみ機を突き飛ばした!!

 

「! 神山隊長っ!?」

 

「隊長っ!?」

 

さくらとあざみが声を挙げた瞬間、ファイヤードラコ・アナザーの蹴りが誠十郎機に叩き込まれる!

 

「うおわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

誠十郎機はまるで玩具の様にブッ飛ばされ、空の彼方へ消えた!

 

「誠兄さあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーんっ!!」

 

誠十郎機が消えた空に向かって手を伸ばしながら悲鳴を挙げるさくら。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

と、誠十郎機をブッ飛ばしたファイヤードラコ・アナザーは、残る2人に視線を向ける。

 

「「!!」」

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

咆哮と共に、さくら機とあざみ機に襲い掛かろうとするが………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

突如現れたゼットンが、ファイヤードラコ・アナザーを後ろから羽交い締めにした!

 

「ゼットン! そのまま押さえて!!」

 

「今、ウルティメイト華撃団に加入した華撃団の隊員達が観客の避難誘導に入ってくれたわ」

 

「よっしゃあっ! 今回はキッチリと相手してやるぜ!!」

 

其れに続く様に、クラリス機・アナスタシア機・初穂機が試合会場へと入って来る。

 

「初穂! 誠兄さんが! 誠兄さんがっ!!」

 

「落ち着け、さくら!!」

 

誠十郎がブッ飛ばされてしまった事で動揺しているさくらを、初穂が落ち着かせようとする。

 

「神山さんなら大丈夫です!」

 

「其れを1番知ってるのは貴女じゃないの、さくら」

 

「!!」

 

クラリスとアナスタシアからもそう言われ、さくらは落ち着きを取り戻す。

 

『その通りよ』

 

『神山くんの機体のシグナルは途切れていない。彼は生きている。安心し給え』

 

更に其処へ、すみれとサコミズからもそう通信が入って来た。

 

「ホントですか! 良かった………」

 

『兎に角! 神山くんが戻るまで、私が指揮を執ります! 全員、怪獣を迎撃して観客達が避難する時間を稼いで頂戴!』

 

漸く安堵した様子を見せたさくらに、すみれは続けてそう呼び掛ける。

 

「けど、あの怪獣は()()()()()………」

 

しかし其処で、あざみがファイヤードラコ・アナザーを見上げながらそう呟く。

 

「チキショウッ! 如何すりゃ良いんだ!?」

 

何だかんだで上海華撃団とは付き合いの長い初穂も、苦悩を露わにする。

 

「皆さん! ()は戦いましょうっ!!」

 

「! クラリス!?」

 

すると其処で、意外にもクラリスがそう声を挙げた。

 

「諦めなければきっと何とかなります! 兎に角今は、()()()方法を模索しましょう! そして、その努力が及ばなかった時には………きっとゼロさんが助けに来てくれます!!」

 

「「「「…………」」」」

 

クラリスの言葉に聞き入るさくら・初穂・あざみ・アナスタシア。

 

「………そうですね! 戦いましょう!!」

 

「ああ! アイツ等にコレ以上に酷い事はさせねえ!!」

 

「ギリギリまで頑張って………ギリギリまで踏ん張ってみせる」

 

「そして如何にもこうにも、如何にもならない時には………ウルトラマンゼロの力を借りましょう」

 

そしてさくら達は、ファイヤードラコ・アナザーに向かい会うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

無限ごと蹴り飛ばされてしまった誠十郎は………

 

『大丈夫か?誠十郎』

 

「ああ………何とかな」

 

何とか受け身を執って着地に成功した誠十郎に、ゼロが呼び掛ける。

 

「しかし、かなり遠くまで飛ばされてしまった………」

 

コクピットのモニターに、遠方に映る世界華撃団大戦の試合会場を拡大して映し出しながらそう言う誠十郎。

 

今からでは、全速で飛ばしたとしても戻るまでに時間が掛かり過ぎてしまう。

 

『誠十郎、俺が行く。上海華撃団の奴等も救ってやらねえとな』

 

「頼む、ゼロ」

 

其処で、誠十郎は無限を自動操縦で会場に向かう様にセットすると、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを取り出す。

 

「デュワッ!」

 

ウルトラゼロアイを装着した誠十郎の姿がゼロへと変わり、光となって無限から飛び出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

暴れるファイヤードラコ・アナザーを羽交い締めで押さえ付けようとするゼットン。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

と其処で、ファイヤードラコ・アナザーの3つ在る首の内、左側の青い首が鞭の様に撓り、ゼットンに頭突きをお見舞いした!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

かなりの石頭の頭突きに、ゼットンは思わずファイヤードラコ・アナザーを放してしまい、後退る。

 

「おおりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

其処で、初穂機がファイヤードラコ・アナザーを転ばせようと、足に向かってハンマーを振るう。

 

しかしハンマーが当たるかと思われた瞬間、ファイヤードラコ・アナザーの姿が忽然と消える。

 

「!? 消えたっ!?」

 

「初穂! 上っ!!」

 

「!?」

 

さくらの言葉に、初穂が空を見上げると………

 

其処には、自身の身長の何倍もの跳躍をしたファイヤードラコ・アナザーの姿が在った。

 

そのまま、やや離れた場所へと着地するファイヤードラコ・アナザー。

 

「其処っ!!」

 

そのタイミングを狙って、あざみ機が無数のクナイと手裏剣を投擲する。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

するとファイヤードラコ・アナザーは、咆哮と共に振り返りながら回し蹴りを繰り出す。

 

風切り音と共に、鋭い蹴りがあざみ機が放ったクナイと手裏剣を叩き落とす!

 

「!!」

 

まさか叩き落されるとは思わなかったあざみが驚きを露わにする。

 

「其処っ!!」

 

今度は、アナスタシア機が中央の緑色の首を狙って氷の弾丸を放つ。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

だが、ファイヤードラコ・アナザーの中央の緑色の首は咆哮と共に大きく口を開くと、其処から火炎を吐いてアナスタシア機の銃弾を蒸発させた。

 

「アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

と、必殺技のアルビトル・ダンフェールを放つクラリス機。

 

無数の魔導弾が、ファイヤードラコ・アナザーを取り囲む様に迫る。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

しかし、ファイヤードラコ・アナザーは向かって来た魔導弾に向かって次々にパンチや蹴り、手刀を繰り出して叩き落としてしまった!

 

「! そんなっ!?」

 

「あの動き………“シャオロンさん達が何時も使ってる”功夫(クンフー)!?」

 

クラリスが驚愕する中、さくらはファイヤードラコ・アナザーの動きが“シャオロンの功夫”のソレである事に気付く。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

其処でファイヤードラコ・アナザーの中央の首が再び口を開き、辺りに火炎を撒き散らす!!

 

「「「「「!!」」」」」

 

花組メンバーは、慌てて散開して火炎を避ける。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

するとファイヤードラコ・アナザーは散らばった花組メンバーの内、さくらに狙いを定めて尻尾を振るった!

 

「! ハアッ!!」

 

既の処でさくら機は跳躍し、横薙ぎに振るわれた尻尾を躱す。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

しかし其れを読んでいたかの様に、左の青い首が口を大きく開けて近付き、さくら機に噛み付いた!

 

「!? キャアッ!?」

 

ファイヤードラコ・アナザーに摑まるさくら機。

 

と、次の瞬間!

 

ジューッと言う“何かが溶ける様な音”と共に、さくら機の装甲から煙が上がり始めた。

 

「!? 装甲が溶け始めてる!?」

 

「いけない! 毒だわ!!」

 

さくらが驚愕すると、アナスタシアがそう推測する。

 

装甲すら溶かす強力な毒によって脆くなり始めたさくら機を、ファイヤードラコ・アナザーの左の首は噛み潰そうとする。

 

さくらの無限から鉄が軋む鈍い音が響き始める。

 

「嫌あっ!!」

 

「さくらぁっ!!」

 

さくらが思わず悲鳴を挙げ、初穂が叫ぶ。

 

その時!!

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

上空から現れたゼロが、ファイヤードラコ・アナザーに飛び蹴りを喰らわせる!

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

「わわわっ!?」

 

衝撃でファイヤードラコ・アナザーは倒れ、さくら機も解放されて着地する。

 

「セヤアッ!!」

 

続いてゼロも着地を決める。

 

「ゼロさんっ!!」

 

「待ってたぜっ!!」

 

ゼロの姿を見たクラリスと初穂が歓声を挙げる。

 

「ゼロさん! あの怪獣は()()()()()()()()なんです!」

 

「分かってる! 俺に任せておけっ!!」

 

さくらの言葉にそう返しながら、ゼロは構えを執る。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

其処でファイヤードラコ・アナザーも起き上がると、功夫の構えを執る。

 

「へっ、面白れぇ! 師匠(レオ)直伝の宇宙拳法、受けてみやがれ!!」

 

そう叫んで、ファイヤードラコ・アナザーに右腕を振り被って殴り掛かるゼロ。

 

だが、ファイヤードラコ・アナザーはその拳を片手で受け止める。

 

「ヘヤッ!!」

 

其れを読んでいたゼロは、素早く身体を回転させて左腕で裏拳を繰り出す。

 

しかしファイヤードラコ・アナザーは、其れも両腕で防御姿勢を執って防ぐ。

 

「オリャアッ!!」

 

するとゼロは、防御姿勢を執ったファイヤードラコ・アナザーの腕を摑み、そのまま身体を縦に回転させる様に投げ飛ばす。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

だが、ファイヤードラコ・アナザーはそのまま1回転して難無く着地を決める。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

そして今度は、ファイヤードラコ・アナザーの方がゼロに向かって行く。

 

ゼロに向かって右のハイキックを繰り出すファイヤードラコ・アナザー。

 

「フッ!」

 

其れを防ぐゼロだが、ファイヤードラコ・アナザーは右足を下ろさず、そのまま鞭の様に撓らせて次々と蹴りを繰り出す。

 

「うおっと!」

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

ゼロは身体を横に回転させながら、バックステップを踏んで距離を取るが、ファイヤードラコ・アナザーは蹴りを繰り出す勢いを利用し、軸足を摺り足の様にズラして追撃して来る。

 

「! のうわっ!?」

 

遂にその蹴りがゼロの胸に命中し、ブッ飛ばされるゼロ。

 

「このぉっ!!」

 

倒れたままゼロスラッガーを投げるゼロ。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

しかし、ファイヤードラコ・アナザーは両腕を振ってゼロスラッガーを弾き飛ばす。

 

「フッ! エメリウムスラッシュッ!!」

 

立ち上がりながらゼロスラッガーを頭部に戻したゼロは、続けてエメリウムスラッシュを放つ。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

だが、ファイヤードラコ・アナザーは大きく跳躍して回避!

 

「!?」

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

見上げたゼロ目掛けて跳び蹴りを繰り出す!

 

「おうわっ!?」

 

再び胸に蹴りを喰らい、後退るゼロ。

 

「いけない! ゼットンッ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

其処で、クラリスがゼロを援護しようとゼットンに呼び掛け、1兆度の火球を放つ。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

しかし、背後から迫って来ていた1兆度の火球を、ファイヤードラコ・アナザーは回し蹴りで掻き消す!

 

「! 嘘っ!?」

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

クラリスが驚く中、ファイヤードラコ・アナザーは素早くゼットンに接近。

 

掌をゼットンの身体に押し当てたかと思うと………

 

突然ゼットンがブッ飛ばされた!!

 

「! 寸勁っ!!」

 

あざみがファイヤードラコ・アナザーが“寸勁”を繰り出したのだと見抜く。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

倒れたゼットンは起き上がれない。

 

ウルトラマンの光線にも耐える頑強な表皮も、“()()()直接ダメージを与えて来る”寸勁に掛かっては意味が無かった。

 

「! ゼットン! 戻ってっ!!」

 

已む無くゼットンを魔導書へと戻すクラリス。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

其処でファイヤードラコ・アナザーは、残ったゼロに向き直る。

 

「チッ、やるじゃねえか」

 

『“功夫を使う怪獣”だなんて、質の悪い冗談だ』

 

攻めあぐね悪態を吐くゼロと誠十郎。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

そんなゼロに気を良くしたかの様に、ファイヤードラコ・アナザーはジリジリと距離を詰めて来る。

 

「チイッ………!」

 

構えを執りながらも、迂闊に手が出せないゼロ。

 

 

 

 

 

………と、その時!!

 

 

 

 

 

!? グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

突如、ファイヤードラコ・アナザーが悲鳴の様な咆哮を挙げた!

 

「!?」

 

『何っ!?』

 

「「「「「!!」」」」」

 

ゼロと誠十郎、花組の面々も驚きを露わにする。

 

何故なら………

 

ファイヤードラコ・アナザーの()()()()()()が………

 

中央の緑色の首に噛み付いたのだ!!

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

ファイヤードラコ・アナザーは、腕を使って中央の首に噛み付いた右の首を引き剥がそうとするが、右の首は噛み付いたまま離れない。

 

「何だ? 仲間割れか?」

 

『如何なってるんだ?』

 

思わぬ事態に、ゼロも誠十郎も困惑する。

 

「黄色い首………」

 

とその時、さくらの脳裏に“『黄色』が()()()()()()()()()()”であった事が過る。

 

「! ひょっとしてあの黄色い首………ユイさんなんじゃ!?」

 

「!? 何っ!?」

 

「そう言えば………」

 

さくらがそう声を挙げると初穂が驚き、クラリスもユイのシンボルカラーを思い出す。

 

「若しそうだとしたら………」

 

「彼女は今“必死に(あらが)っている”、と言う事ね」

 

あざみとアナスタシアもそう推測する。

 

その推測を裏付けるかの様に、ファイヤードラコ・アナザーの動きが鈍くなり始める。

 

『ゼロ! 今だっ!!』

 

「おっしゃあっ!!」

 

“絶好のチャンス”だと誠十郎が言うと、ゼロはウルティメイトブレスレットを叩いた。

 

「………ルナミラクルゼロ」

 

ウルティメイトブレスレットから青い光が溢れ、落ち着いたトーンの低い声と共にハープの様な効果音が響き、ルナミラクルゼロへと変わる。

 

「フルムーンウェーブッ!」

 

そして、ファイヤードラコ・アナザーの周りを高速で浮遊して回りながら、フルムーンウェーブを放つ。

 

無数の光の粒に包まれたファイヤードラコ・アナザーの姿が、徐々に小さくなって行き………

 

最後には3機の王龍へと分離し、地面に転がった。

 

「ユイさん!」

 

「シャオロンッ!!」

 

直ぐに、花組の面々が救助に向かう。

 

『ふう、コレで一安心だな………』

 

その光景を見て、安堵の息を吐く誠十郎。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………だが!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エ゛エーイッ!!」

 

突如、奇声が響いたかと思うと、シィエナァン機のハッチが弾け飛んだ!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

「!? 何っ!?」

 

『こ、今度は何だっ!?』

 

思わず足を止める花組の面々と、驚くゼロと誠十郎。

 

と、ハッチが弾け飛んだシィエナァン機から“何か”が飛び出し、試合会場の地面に着地する。

 

「シィエナァンさん?」

 

其れが、搭乗者であるシィエナァンである事を確認したクラリスが声を挙げた瞬間………

 

「エ゛エーイッ!!」

 

シィエナァンが奇声を発し、その身体が赤い光を放ったかと思うと………

 

赤い煙を放出しながら身長よりも長い2本の尻尾と、両手足と2本の尻尾の先端に鋏を持った、巨大な怪獣の姿へと変わった!!

 

「!?」

 

「なっ!? また怪獣に成りやがった!?」

 

その光景を見たさくらが驚き、初穂が声を挙げる。

 

「いや、違う! コイツは『さそり怪獣 アンタレス』! “人間に化ける能力”を持った怪獣だっ!!」

 

「ええっ!?」

 

「じゃあ………シィエナァンは………」

 

「“()()()()怪獣だった”って事ね………」

 

ゼロがそう言うと、今度はクラリスが驚き、あざみとアナスタシアは再び推測する。

 

「その通り! 上手く上海華撃団に潜り込んで貴様を倒す事が出来ると思ったが………あの小娘め! 余計な事をしやがってっ!!」

 

と其処で、2本尻尾のアンタレスが人間の言葉でそう言い放つ。

 

「こうなれば仕方無い! ウルトラマンゼロ! 俺自身の手で貴様を始末してやる!!」

 

「お前もフルムーンウェーブを浴びた筈だ。何故其処まで俺に敵意を向ける?」

 

「“あんなモノ”がこの俺に効くか!? 『弟』の為にも貴様を殺す!」

 

「『弟』だと?」

 

「そうだ! 嘗て、貴様の師匠・ウルトラマンレオに倒されたアンタレスは、『俺の弟』だ!!」

 

「!? 何っ!?」

 

何と、この2本尻尾のアンタレスは、嘗てレオが倒したアンタレスの『兄』だった!

 

「ウルトラマンレオ………奴だけは絶対に許さん! 先ず弟子である貴様を殺し、その死体を見せ付けて俺と同じ思いを味合わせてから、じっくりと嬲り殺しにしてやるのだ!!」

 

如何やら、2本尻尾のアンタレス………『アンタレス・ブラザー』は、“弟の復讐の為”にゼロを倒す積りの様だ。

 

「ヘッ、逆恨みも良いとこだぜ。しかも、捕らぬ狸の皮算用だな………師匠(レオ)()()()()()()奴の仲間が、俺に勝てると思ってるのか?」

 

「黙れっ! 俺は弟とは一味違うぞっ!!」

 

ルナミラクルゼロである為に口調が落ち着いている事が余計に癇に障ったのか、アンタレス・ブラザーは両目からショック光線を放つ。

 

「フッ!」

 

其れを跳躍して躱すと、ルナミラクルゼロから通常状態へ戻り、アンタレス・ブラザーに飛び掛かるゼロ。

 

「おおりゃあっ!!」

 

「ぬおおっ!?」

 

そのまま倒れ込む様にしてアンタレス・ブラザーを投げ飛ばす。

 

「ハアアアッ!!」

 

だが、アンタレス・ブラザーは素早く起き上がると、2本の尻尾の先端から火炎を放射する!

 

「おっとっ!!」

 

連続バク転で距離を取って躱すゼロ。

 

「エ゛エーイッ!!」

 

またもや奇声を挙げ、大きく跳躍したかと思うと、飛び蹴りを繰り出して来るアンタレス・ブラザー。

 

「うおっ!?」

 

ゼロは回転する様に動いて躱すと、アンタレス・ブラザーの側面を取る。

 

「貰ったっ!!」

 

そのまま右の拳で殴り掛かったが………

 

「フッ!!」

 

アンタレス・ブラザーは其れを見切っていたのか、左の鋏でゼロの右腕を挟み込んだ!

 

「うおっ!? コイツッ!!」

 

「馬鹿めっ!!」

 

素早く左の拳を繰り出したが、其れも読まれていた為、右の鋏で挟み込まれる。

 

「ぬあっ!?」

 

「フンッ!!」

 

其処でアンタレス・ブラザーは、自分の両足でゼロの両足を踏み付ける!

 

更に、2本有る尻尾の片方をゼロの身体に巻き付けた!!

 

「!?」

 

「ハハハハハハッ! 弟は足で尻尾を切られて敗北したが、コレでは足技も使えまい!?」

 

勝ち誇る様にそう言い放つアンタレス・ブラザー。

 

彼の言葉通り、嘗てレオと戦ったアンタレスは、得意技の組み付いて動きを止めてからの尻尾攻撃を、レオの足技で攻略されて敗北した。

 

しかし、尻尾を2本持つアンタレス・ブラザーは、片方を相手の身体に巻き付ける事で完全に拘束。

 

弟が敗れた足技を封じたのである。

 

「終わりだっ! ウルトラマンゼロ! レオへの手土産にしてくれる!!」

 

アンタレス・ブラザーがそう言い放つと、残る1本の尻尾がアンタレス・ブラザーの頭上から伸び、ゼロの首を狙う。

 

「「ゼロさんっ!!」」

 

さくらとクラリスの悲鳴が木霊する。

 

しかし、アンタレス・ブラザーは()()()()()()を犯していた………

 

レオに破られた必殺攻撃を強化・改良したまでは良かった………

 

だが、今アンタレス・ブラザーが戦っているのはウルトラマン()()では無く、ウルトラマン()()なのだ!

 

「ハッ!!」

 

ゼロの掛け声と共に、ウルトラ念力で独りでにゼロスラッガーが外れ、迫って来ていたアンタレス・ブラザーの尻尾を切断した!

 

「!? 何ぃっ!?」

 

アンタレス・ブラザーが驚いている間に、ゼロスラッガーは更にゼロの身体に巻き付いていたもう1本の尻尾、両手足の鋏をも切り裂いた!!

 

「ぬおおっ!?」

 

「ヘッ! “その程度”で、この俺を如何にか出来ると思ったのかよ!? 2万年早いぜ!」

 

忽ちゼロを解放してしまい、蹌踉たアンタレス・ブラザーに向かってゼロがそう言い放つと、その手元にゼロスラッガーが戻って来る。

 

「ハッ!!」

 

その戻って来た2つのゼロスラッガーを合体させ、弓状の剣・『ゼロツインソード』に変えるゼロ。

 

「セヤアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

そして必殺の『プラズマスパークスラッシュ』を繰り出す!

 

光輝くゼロツインソードの刃が、アンタレス・ブラザーに叩き込まれる!

 

「ハッ!!」

 

そのままアンタレス・ブラザーの背後に着地するゼロ。

 

その瞬間………

 

アンタレス・ブラザーの首がボトリと地面に落ちた。

 

「言ったろ………師匠に勝てなかった奴の仲間が、俺に勝てると思ってるのか?ってな」

 

ゼロツインソードをゼロスラッガーにして頭部に戻すと、首の無くなったアンタレス・ブラザーに背を向けたままそう言い放つゼロ。

 

………しかし!!

 

「未だだぁっ!!」

 

何と!!

 

首の無くなったアンタレス・ブラザーの身体が、斬り落とされた首を拾い上げ、ゼロに向かって投げ付けて来た!

 

「!? なっ!?」

 

「ウルトラマンゼロォッ!! せめて貴様だけはぁっ!!」

 

驚くゼロにアンタレス・ブラザーの首が迫る!

 

が、ゼロに到達すると思われた瞬間!!

 

何処からとも無く『赤いエネルギー弾』が飛んで来て、アンタレス・ブラザーの首に命中した!!

 

「!?」

 

「うおおおおおっ!? 弟よーっ!! スマンッ!!」

 

ゼロが驚く中、アンタレス・ブラザーの首はそう断末魔の叫びを残し、木っ端微塵に爆発した。

 

残っていた身体も、首が無くなったのを切っ掛けにした様に切断面から火花を噴出させながら倒れ、爆発四散した。

 

「あっぶねー。“アンタレスは首を斬り落とされても向かって来た”って師匠(レオ)が言ってたっけ………」

 

『其れにしても、さっきの攻撃は一体?』

 

思わず額を拭うゼロと、アンタレス・ブラザーにトドメを刺した赤いエネルギー弾の正体を気にする誠十郎。

 

しかし、試合会場の()()には何も見当たらなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場・観客席の出入り口………

 

「未だ未だ甘いぞ、ゼロ」

 

観客が居なくなり、無人となった客席の出入り口で、『雲水の様な格好をした壮年の男』がゼロを見上げながらそう言い放つ。

 

「まあ良い。今は………」

 

其処で男は視線を落とし、花組の面々に救出されている上海華撃団に目を遣る。

 

「………アイツの方が()か」

 

その中で、応援に駆け付けたウルティメイト華撃団の隊員達によって担架で運ばれて行くシャオロンを見ながら、そう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予想外の事態に見舞われたものの………

 

世界華撃団大戦・第1回戦は………

 

帝国華撃団の勝利で幕を閉じた。

 

だが、予想していた事ではあったが、敗れた上海華撃団には、ジェネラルAから即座に解散命令が出された………

 

花組の面々に勝利の喜びは無く………

 

只虚しさだけが込み上げて来たのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

シャオロン「俺は今までずっと上海と帝都を守って来た。

 

これからも俺がずっと2つの都市を守る。

 

他の奴等や何かにやらせねえ!

 

其れが『俺の存在価値』だった筈だった………

 

其れが無くなったら、俺には………

 

次回『新サクラ大戦』

 

第3.5話『立ち上がる龍と燃える獅子』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

俺は………一体“何の為に”戦って来たんだ………」

 

???「その顔は何だ! その目は! その涙は一体何だっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『三つ首怪獣 ファイヤードラコ・アナザー』

 

身長:80メートル

 

体重:3万トン

 

能力:中央の緑の首が火炎・左の青い首が毒の牙・右の黄色い首が噛み付き

 

初登場作品:ウルトラマン80第35話『99年目の竜神祭』

 

嘗て80が戦ったファイヤードラコを元にし、マイナスエネルギーと怪獣カードを組み合わせ、上海華撃団を取り込んで誕生した怪獣。

 

その為、原典のファイヤードラコとは異なる存在故に、アナザーと付いている。

 

首の色も、赤だった中央が緑色、白だった右が黄色と、上海華撃団の王龍のカラーリングを模している。

 

上海華撃団が得意とした功夫と、火炎・毒の牙を使ってゼロと帝国華撃団を苦しめるが、原典と同じ様にユイの意識が宿っていた黄色い首が反逆。

 

その隙を突かれ、ルナミラクルゼロのフルムーンウェーブで浄化され、元に戻ったが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さそり怪獣 アンタレス・ブラザー』

 

身長:1.7~56メートル(尻尾の全長は80メートル)

 

体重:200キロ~3万トン

 

能力:目からのショック光線、尻尾の先端からの火炎

 

初登場作品:ウルトラマンレオ第14話『必殺拳!嵐を呼ぶ少年』

 

嘗てレオと戦って敗れたアンタレスの兄。

 

弟の復讐の為、先ずレオの弟子であるゼロを倒そうと、上海華撃団に潜入。

 

やがて正体を現して直接交戦した。

 

特徴である長い尻尾が2本となっており、これを使ってレオに破られた必殺技を強化し、対策した。

 

しかし、ゼロスラッガーを持つゼロ相手に使った為、破られてしまう。

 

プラズマスパークスラッシュで首を落とされたが、執念でゼロに一矢報いようとする。

 

だが、謎の赤いエネルギー弾によって散った。




新話、投稿させて頂きました。

ファイヤードラコ・アナザーと化した上海華撃団を元に戻そうと奮戦する帝国華撃団とゼロ。
功夫に苦戦しながらも、何とかルナミラクルゼロの力で浄化に成功。

しかし、何と!
シィエナァンの正体が発覚!
奴は『さそり怪獣 アンタレス・ブラザー』だった!
レオに倒された弟の復讐に燃えるアンタレス・ブラザーだったが、レオの為に改良した技をゼロにかけてしまし、破られます。

そして解散を言い渡された上海華撃団………
次回はその上海華撃団の掘り下げ話です。
そして客演回でもあります。
いよいよ最初の客演ウルトラマンが登場です。
何と、いきなりレジェンド級のあのウルトラマンが登場です!
シャオロンに渇を入れてくれます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第3.5話『立ち上がる龍と燃える獅子』
チャプター1『泥まみれ男ひとり』


第3.5話『立ち上がる龍と燃える獅子』

 

チャプター1『泥まみれ男ひとり』

 

宇宙超人 スチール星人・ソドロ

 

暗闇宇宙人 カーリー星人・ジャッパー登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

「それじゃあ、神山くん。上海華撃団への使者、お願いするわね」

 

「ハッ! 了解しました!」

 

支配人席に着いているすみれに敬礼する誠十郎。

 

華撃団大戦の第1回戦が終わり、幾何(いくばく)かの日が流れた。

 

敗北した上海華撃団は、ジェネラルAによってアッサリと解散させられた。

 

しかしそれは、ウルティメイト華撃団にとっては()()()()展開だった。

 

アッサリと切り捨てられた事で目が覚めた中()政府は、コレまで渋っていたウルティメイト華撃団への参加に対し、前向きになり始めたのである。

 

そして今日、誠十郎が“使者”として直接上海華撃団の元へ向かう事となった。

 

本来なら、試合後“直ぐにでもするべき話”だったのだが………

 

帝国華撃団自体の、ウルティメイト華撃団への所属変更に伴う事務処理、更には上演中だった舞台『超決戦! ベリアル銀河帝国』が千秋楽を迎えていた事もあり、其方に忙殺されてしまっていたのである。

 

(正直、上海華撃団には未だ思う処は有る………しかし今は、“そんな事を言っている時”じゃ無い)

 

『だな。俺が言う事じゃ無えが、“蟠りは捨てて、一致団結”して行かねえとなら無え』

 

支配人室から出ながら、心の中でそう交わす誠十郎とゼロ。

 

「神山隊長」

 

と其れを待っていたかの様に、さくらが姿を現した。

 

「さくら」

 

「上海華撃団の所へ行くんですよね? 私も連れて行ってくれませんか?」

 

誠十郎に向かって、さくらはそう頼み込む。

 

「舞台の方は良いのか?」

 

「クラリスが、未だ次の舞台の脚本を書き終えて無いから、その間ちょっと休憩になったんです。其れに………“ユイさん達の事も心配”だから」

 

表情に陰を浮かべながら、そう話すさくら。

 

(さくら………)

 

『ったく、人が好過ぎるぜ………』

 

シャオロンに殺され掛けた彼女は、()()()()上海華撃団を恨んでも良い筈である。

 

だが、彼女はユイを心底心配し、自分を殺そうとしたシャオロンをも助けようとした。

 

そんな彼女の優しさに、誠十郎とゼロは軽く感動を覚える。

 

「分かった。じゃあ一緒に行くか?」

 

「! ハイッ!」

 

誠十郎(+ゼロ)は、さくらを連れて上海華撃団の帝都での拠点………

 

銀座横丁に在る中華料理店・『神龍軒』に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座横丁・『神龍軒』………

 

「! こ、コレはっ!?」

 

「!!」

 

だが、誠十郎(+ゼロ)とさくらが神龍軒に辿り着くと………

 

其処には衝撃的な光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

銀座横丁の一角に位置し、本場の中華料理店を思わせる造りの神龍軒。

 

その神龍軒は、窓ガラスが粗全て割られ………

 

黄金の龍の形をした看板や、店先に飾られていた大きな中華人形やショーケースはバラバラに壊されており………

 

『出て行け!』、『怪獣野郎!』、『化け物め!』と言った誹謗中傷の貼り紙が壁一面に貼られている。

 

 

 

 

 

「酷い………」

 

余りの酷さに言葉を失うさくら。

 

「シャオロン達は………?」

 

不安を露わにしながらも、誠十郎はさくらと共に店の中へと入って行く。

 

入店してみると、店の中も酷い有様だった。

 

椅子やテーブルは叩き壊されて引っ繰り返され………

 

天井は一部が剥がれ落ち………

 

1番大事な調理場は、棚や冷蔵庫が全て倒れて調理器具と食材が、床一面に散乱していた。

 

「………誰?」

 

そんな中に佇み、箒で必死にゴミを掃いていたユイが、俯いていた顔を上げる。

 

その顔はすっかり(やつ)れており、明らかに疲労の色が見える。

 

よく見ると、涙の痕も有る。

 

「ユイさん………」

 

「! さくら………」

 

さくらの姿を認めたユイの手が止まる。

 

「ハハハ………ゴメンね。折角来てもらったのに、こんな状態で………」

 

「一体何が有ったんだ?」

 

力無く笑ってそう返すユイに、誠十郎が問い掛ける。

 

「其れは………」

 

と、ユイが答えようとしたその瞬間!!

 

石が神龍軒の中へと投げ込まれ、無事だった数少ない窓ガラスが割れて飛び散る!

 

「!?」

 

「ユイさんっ!!」

 

咄嗟に誠十郎が2人を守る様に立ち、さくらもユイを抱き締めて床に座り込んで身を低くする。

 

「出てけっ! 怪獣野郎っ!!」

 

「テメェ等なんざ、もう要ら無えんだっ!!」

 

「“化け物”はとっとと消えろぉっ!!」

 

外から聞こえて来る罵声………

 

其れは()()()()()()のモノだった。

 

「! 何て事を!!」

 

咎めようとした誠十郎だったが、市民達は一方的に言いたい事を言い放ち、去って行ってしまった。

 

「………()()()()()()からずっとこの調子なんだ………“私達が怪獣になった所”は放送もされていたし、皆が知ってるんだ………」

 

「そんな! ()()はユイさん達の所為(せい)じゃ………!」

 

「良いの、さくら。“あの人達の言う事は当然”だから………」

 

と、そう言うユイの目から涙が零れ始める。

 

「ア、アレ?………()()出て来ちゃった………もう()()()()()()と思ったんだけどなぁ………アハハハ……」

 

涙を流しながら、乾いた笑いを零すユイ。

 

その姿は、見ていられないくらいに痛々しい。

 

「! ユイさん………」

 

そんなユイを、さくらは優しく抱き締めてやる事しか出来ない。

 

「………シャオロンは如何したんだ?」

 

と其処で誠十郎は、“店がこんな状態にも関わらず”姿の無いシャオロンについて尋ねる。

 

「シャオロンは………“今、帝都を騒がせている”泥棒を捕まえに」

 

「泥棒?」

 

「今朝、初穂が新聞を見ながら言ってました。ココの処、“帝都の彼方此方で宝石や貴金属類を盗んで回ってる泥棒が居る”って」

 

ユイの言葉に誠十郎が首を傾げると、さくらが思い出した様にそう言う。

 

「ソイツを捕まえて、“その功績で上海華撃団の解散を取り消させる”って………」

 

「馬鹿な!“泥棒如き”を1人捕まえたところで、()()ジェネラルAが“解散を取り消す”だなんて思ってるのか?」

 

傍若無人なジェネラルAを思い出しながら言う誠十郎。

 

「私もそう言ったんだけど………シャオロン、自棄になってて、聞いてくれなくて………」

 

『あの野郎、未だ拗らせてんのかよ………』

 

ゼロが呆れる様子を見せる。

 

「放っておく訳にも行かんか………」

 

「神山隊長。ユイさんとコッチは私に任せて下さい。隊長はシャオロンさんを」

 

「頼むぞ、さくら」

 

誠十郎はユイと神龍軒をさくらに任せ、シャオロンを探しに帝都の街へと繰り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都郊外のと或る寺………

 

其処の敷地内の一角に在る建物の庭で、大勢の子供達が遊んでいる。

 

その中に混じり、縁側に腰を掛けて“何か”を作っている雲水の姿が在った。

 

「出来たぞ」

 

そう言って雲水は、作っていた物………風車を目の前に居た少年に手渡す。

 

「わ~、ありがとう」

 

風車を貰った少年は、嬉しそうに其れを手に持って走り回る。

 

よく見ると、他にも風車を手に走り回っている少年少女達の姿が見受けられる。

 

「ありがとうございます。子供達の相手をして頂いて」

 

と其処で、室内で畳に正座していた白秋が雲水にお礼を言う。

 

この寺は、彼女が個人経営している孤児院なのだ。

 

「何、(ついで)だ………さて」

 

白秋にそう返すと、雲水は立ち上がる。

 

「行かれるのですか?」

 

「“地に堕ちた龍”を再び天に上げねばなるまい………」

 

「お気を付けて………『キング殿』にもよろしくお伝え下さい」

 

無言で頷くと、雲水は孤児院を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・某所………

 

「待ちやがれぇっ!!」

 

シャオロンが1人の男を追っていた。

 

追われるその男は、黒い服に黒い帽子、オマケに黒いマントと言う如何にも怪しい男だった。

 

そう………

 

この男こそが、今帝都を騒がせている泥棒なのである。

 

「逃がすかよ! 絶対に捕まえてやるっ!!」

 

“上海華撃団の復活”の為、必死に泥棒を追うシャオロン。

 

しかし、泥棒の逃げ足は尋常では無く、其れこそ()()()()()のスピードで走っている。

 

と、ココでシャオロンにチャンスが訪れた。

 

泥棒の行く手に川が立ちはだかったのだ。

 

「追い詰めたぜっ!!」

 

そう思い、スパートを掛けるシャオロン。

 

だが………

 

「!? なっ!?」

 

その顔が驚愕に染まる。

 

何故なら泥棒は、幅が10メートルは有るであろう川を“()()()()()()飛び越えてしまった”のだ。

 

走りの速さと言い、明らかに()()()其れではない。

 

「クソッ!!」

 

シャオロンは、悪態を吐きながらも素早く橋へと回り、追跡を続行する。

 

「!? うわっ!? ヤン・シャオロンだっ!!」

 

「怪獣だぁっ!!」

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

「助けてくれぇっ!!」

 

と、シャオロンの姿を目撃した市民達が、悲鳴を挙げて逃げ回る。

 

(違うっ! 俺は上海華撃団だ! ()()じゃ無いっ!!)

 

心の中でそう言い返しながら、シャオロンは泥棒を追い続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

「う~ん………シャオロンの奴、一体何処に居るんだ?」

 

頭を悩ませながらそう呟く誠十郎。

 

彼が追っていると言う泥棒について聞き込みを行いながらその足取りを追っていたが、ココまでずっと空振りなのである。

 

『早いとこ見付け無えと(マズ)いぜ。今、帝都の連中にとってはアイツ、()()()()()()()()になっちまってるからな』

 

「分かってる………」

 

と、ゼロの言葉に誠十郎がそう返しながら、角を曲がると………

 

「!? うおわっ!?」

 

突然“凄まじいスピードの何か”にぶつかられ、誠十郎の身体が宙に舞った!!

 

「!? 危ねえっ!!」

 

ゼロが咄嗟に入れ替わり、アクロバットを決めながら無事着地する。

 

「!?」

 

ぶつかってきたのは、あの泥棒だった。

 

「! テメェ………()()()()()()なっ!」

 

するとゼロは、泥棒が“人間では無い”事を見抜く。

 

「!!」

 

泥棒が驚いた様子を見せると、その姿がまるで丸ノコの様な3つの突起が付いた機械を思わせる頭部を持ち、人差し指が異常に発達した宇宙人………

 

『宇宙超人 スチール星人』となった。

 

『! コイツはっ!?』

 

(『スチール星人』だ! 彼方此方の星で盗みを働いているコソ泥宇宙人だ! 昔パンダを盗みに、ウルトラマン(エース)が守っていた地球に現れた事がある!)

 

『………何で“パンダ”なんだ?』

 

ゼロの説明に、疑問を感じざるを得ない誠十郎だった。

 

「このソドロ様の正体を見破るとはな………何者だ、貴様?」

 

「俺は誠十郎! 帝国華撃団・花組の隊長! 神山 誠十郎だっ!!」

 

スチール星人・ソドロに向かって名乗りを挙げる誠十郎(ゼロ)。

 

「帝国華撃団だと? クソッ! “次から次へと()()()()()()に絡まれる”とは………今日は厄日か!?」

 

「“次から次に”だと………?」

 

誠十郎(ゼロ)がその言葉にひょっとしたらと思うと………

 

「此処かっ! 追い詰めたぞっ!!」

 

そう言う台詞と共に、漸く追い付いたシャオロンが姿を見せた!

 

「! シャオロン! やっぱりか!」

 

「!? 神山っ!? 何でこんな所に!?」

 

お互いの姿を確認して驚き合う誠十郎(ゼロ)とシャオロン。

 

「隙有りっ!!」

 

とその隙を突いて、スチール星人・ソドロは再度逃走を開始した!

 

「あ! 待ちやがれっ!!」

 

「オイ待て、シャオロン! お前に………」

 

「退きやがれっ!!」

 

「うおっ!?」

 

シャオロンと話そうとした誠十郎(ゼロ)だったが、シャオロンは誠十郎(ゼロ)を強引に押し退け、スチール星人・ソドロを追う。

 

『駄目だ! 完全に頭に血が上ってるぞ!』

 

「チイッ! 追うしか無えか!」

 

舌打ちをしながらも、スチール星人・ソドロとシャオロンを追い、誠十郎(ゼロ)も走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座横丁・『神龍軒』………

 

「さくら、そんな事してくれなくても………」

 

「気にしないで下さい。お掃除は好きですから」

 

さくらは、箒を片手に神龍軒の店先のゴミを片付けていた。

 

あの後、ユイが落ち着きを取り戻すと、自主的に店の片づけを手伝い始めたのだ。

 

「………ありがとう、さくら」

 

「だから気にしないで下さい。此処は“上海華撃団の()()()場所”じゃないですか」

 

「“大切な場所”か………そうだね。特に“私やシャオロンにとっては”ね」

 

「? ユイさん?」

 

ユイの口調にさくらが首を傾げると、ユイはポツリポツリと語り出す。

 

「私とシャオロンはね………孤児だったんだ」

 

「えっ?」

 

「“ストリートチルドレン”って奴だね。別に私の国じゃ珍しく無かったよ………来る日も来る日もその日暮らし………明日なんて全然見えなかった………“()を生きるのに精一杯”………」

 

遠く悲しい目をして語り続けるユイ。

 

「或る時WLOFの連中が現れて、“適正が有る”って言われて上海華撃団入り………其れからはもう大活躍。今までの生活が嘘だったみたいに“世界が一変した”の」

 

「…………」

 

「でも、本当を言うと………私もシャオロンも、何処かで()()()()()。結果を出せなくなったら捨てられる………また“あの生活に戻っちゃう”って………」

 

「ユイさん………」

 

「だから、『帝国華撃団が再結成された』って聞いた時には、実を言うと………“私達の居場所が奪われるんじゃないか?”って、凄く怖かった」

 

震える身体を自分で抱き締めるユイ。

 

「ユイさん………」

 

と、さくらが何か言おうとした瞬間………

 

「待ちやがれーっ!!」

 

「!? シャオロン!?」

 

「シャオロンさん!?」

 

シャオロンの声が聞こえて来て、その方向を2人が見遣ると………

 

逃げるスチール星人・ソドロを追うシャオロンと、更にその2人を追う誠十郎(ゼロ)の姿が在った。

 

「! 宇宙人っ!!」

 

「ユイッ! ソイツを捕まえろっ!!」

 

さくらが驚きの声を挙げた瞬間、シャオロンがそう叫ぶ。

 

「えっ!?」

 

「早くしろっ!!」

 

「!!」

 

シャオロンに急かされ、ユイは反射的にスチール星人・ソドロの前に飛び出した!

 

「! ユイさん!」

 

「! 止せっ! 危険だっ!!」

 

その姿にさくらと誠十郎(ゼロ)が慌てる。

 

「退けぇっ! 小娘っ!!」

 

スチール星人・ソドロは、立ちはだかったユイを殴り飛ばそうとしたが………

 

「フッ! ハイィッ!!」

 

「!? ゴバァッ!?」

 

ユイは振られて来たスチール星人・ソドロの腕を弾くと、中国拳法特有の足捌きで懐に飛び込み、掌底を見舞った!

 

「ごおおおお………」

 

仰向けに倒れ、腹を抑えて悶えているスチール星人・ソドロ。

 

「観念しなさい、宇宙人! 私が………」

 

ユイがそのスチール星人・ソドロに向かって何か言おうとした、その時………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユイの身体に衝撃が走り、銀色の鋭い刃が()()()突き出て来た!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えっ?」

 

突然の事で呆然となるユイ。

 

「ファファファファファ」

 

ユイの身体を刺し貫いた刃の正体………

 

其れは、鳴き声なのか笑い声なのか分からぬ奇声を発している星人………『暗闇宇宙人 カーリー星人』の肩の角だった!

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

「ユイイイイイイォォォォォォォーーーーーーーーッ!!」

 

我に返ったさくらとシャオロンの悲鳴が木霊する。

 

「!? ガハッ!?」

 

其処でユイは、口から夥しい量の血を吐き出し、ガクリと脱力した。

 

「ファファファファファ」

 

カーリー星人は、そんなユイをゴミでも捨てるかの様に無造作に放り捨てる。

 

「! 危ねえっ!!」

 

慌てて誠十郎(ゼロ)が落下地点に回り込み、キャッチする。

 

「ガフッ!………ガッ!」

 

辛うじて生きてはいるものの、更に吐血を繰り返すユイ。

 

「おお、ジャッパー先生! ありがとうございます!」

 

其処でカーリー星人の事を先生と呼びながら、スチール星人・ソドロが立ち上がる。

 

「やっぱり用心棒を雇っておいて良かったぜ」

 

如何やら、カーリー星人はスチール星人・ソドロに雇われた用心棒の様だ。

 

「ファファファファファ………堪らねえぜ………“女を刺し貫く感触”は何時味わって良いものだ………」

 

カーリー星人・ジャッパーはユイを刺し貫いた感触に酔っており、恍惚とした様子を見せている。

 

「この野郎っ! よくもユイをぉっ!!」

 

と、シャオロンが怒りのままに、そのカーリー星人・ジャッパーに殴り掛かる。

 

「ムンッ!」

 

「!? グガアッ!?」

 

しかし、カーリー星人・ジャッパーは肩の角を振り回し、アッサリとシャオロンをブッ飛ばす。

 

「男に用は無い。オイ、ソドロ。もっと女を刺し貫かせろ」

 

「ハイハイ、分かってますって。では、次の仕事に行きましょうか?」

 

カーリー星人・ジャッパーとスチール星人・ソドロはそう言い合い、2人して凄まじいスピードで走り去って行った。

 

「ま、待て………」

 

ダメージが大きかったのか、起き上がれないシャオロンが2体に向かって手を伸ばす。

 

「ユイさん! ユイさん! しっかりして下さいっ!!」

 

「直ぐに医療班を寄越してくれっ!! 大至急だっ!!」

 

一方、さくらと誠十郎(ゼロ)は串刺しにされたユイを必死に応急処置しつつ、上海華撃団の施設がWLOFによって稼働を止められている為、帝劇医療班の出動を要請するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・医療室………

 

「「「「「「…………」」」」」

 

沈痛な面持ちで佇んでいる花組の面々。

 

「…………」

 

同席しているシャオロンに至っては、絶望し切った顔となっている。

 

彼等の視線の先には、治療器『霊子再生槽』に入れられているユイの姿が在った。

 

コレは、体内の霊力を加速させる事で自然治癒能力を高める装置であり、嘗ての帝国(帝都)華撃団でも使用されていたものである。

 

帝劇の物は元々旧式の物だったが、援助が再開されて立て直しが進んだ際に、最新式の物に取り換えられていた。

 

しかし、その最新式霊子再生槽を以てしても、助かるか如何かは“本人の気力次第”とされている。

 

「ユイさん………」

 

「チキショウッ!!」

 

さくらが泣きそうになりながら呟き、初穂が壁を殴り付ける。

 

「如何してこんな事に………?」

 

「ユイ、死なないで………また神龍軒で“ももまん”が食べたい………」

 

クラリスは祈る様に両手を組み、あざみも心配そうに霊子再生槽を覗き込んで居る。

 

「………キャプテン。星人の方は?」

 

「今、陸海軍と警察が総力を挙げて探している。その間、市民達には外出禁止命令が出されたよ」

 

一方、アナスタシアも沈痛な表情を浮かべつつも、逃亡している星人達の行方を気にし、誠十郎がそう返す。

 

「………ユイ」

 

そして相変わらず絶望し切った表情のまま、ユイを見ているシャオロン。

 

「…………」

 

やがて幽霊の様な足取りで、誰にも気取られる事無く医療室から出て行った。

 

「………皆。こうしていても仕方無い。今は兎に角、逃げた星人達への対処が先だ。このまま野放しにしていては、第2、第3のユイくんを出してしまう事になる」

 

と其処で、誠十郎は花組の面々に向かってそう呼び掛けた。

 

「………ハイ」

 

「見てろよ、ユイ。お前のお返しはタップリとしてやるぜ!」

 

「コレ以上の犠牲者は出させません!」

 

さくら・初穂・クラリスは表情を引き締め、星人達への怒りを燃やす。

 

「………? シャオロンは?」

 

「アラ? さっきまで居た筈なのに………?」

 

其処で漸く、あざみとアナスタシアがシャオロンが消えた事に気付くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・路地裏………

 

「…………」

 

医療室から姿を消したシャオロンは、帝劇からも抜け出し、外出禁止命令が出されて人通りが全く無くなった帝都の街を彷徨い歩いていた。

 

やがて、空に暗雲が立ち籠め始め、ボタボタと雨が降り出す。

 

まるで“シャオロンの心情”を表すかの様に………

 

と、その雨に滑ったのか、シャオロンが転倒。

 

倒れ込んだのは、ゴミ捨て場の中だった。

 

「…………」

 

しかし、シャオロンは起き上がらない………

 

ゴミに埋まったまま、冷たい雨に打たれ続ける。

 

その頬を伝っているのは、雨水なのか、涙なのか………

 

「………ハ………ハハハハ………結局、()()戻っちまった………」

 

乾いた笑いを挙げるシャオロン。

 

ゴミに埋もれている状態が、“ストリートチルドレンだった頃の記憶”を呼び覚ましていた。

 

すると………

 

「無様だな………」

 

「!?」

 

突然そう言う声が聞こえて来て、シャオロンが顔を上げると其処には………

 

「何時までそうしている積りだ?」

 

あの雲水の姿が在った。

 

「何だテメェは?………放っといてくれ………()()()()()………この姿が似合ってんだよ………」

 

自嘲の笑みを浮かべて、雲水にそう返すシャオロン。

 

「その顔は何だ! その目は! その涙は一体何だっ!!」

 

その途端、雲水はシャオロンを怒鳴り付けた!

 

「!?」

 

「お前の涙で、あの敵が倒せるのか? この地球が救えるのか?」

 

「…………」

 

「………龍は()()()()()だが、“空を飛ばねばならぬから、空を飛ぶ”。“火を噴かねばならぬから、火を噴く”。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ………?」

 

「トカゲは、()()()()()()を可能にしても、“やらねばならぬ事”が有ったのだろう。『不可能を可能にしよう』そうすれば、多くの者を助けられる」

 

「多くの………者を………」

 

「お前は()か? 其れ共“只のトカゲ”か?」

 

シャオロンにそう問い質す雲水。

 

「俺は………俺は………」

 

「来い。お前を再び“龍にしてやる”」

 

「アンタ………誰なんだ?」

 

其処でシャオロンがそう問うと、雲水は編み笠の鍔を左手で上げる。

 

「俺は『ゲン』………『おおとり ゲン』だ」

 

そう言う雲水………『おおとり ゲン』の編み笠を上げている左手の指には………

 

獅子を(かたど)った指輪『レオリング』に付けられた赤い宝石『獅子の瞳』が輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

解散させられた上海華撃団ですが、それだけでなく、帝都市民からも風評被害を受けます。
そんな中で、帝都を騒がせていた泥棒を捕まえようとしたシャオロン。
しかし、その泥棒の正体はスチール星人・ソドロであり、その用心棒であったカーリー星人・ジャッパーにより、ユイが重傷を負ってしまう。

完全に絶望したシャオロンの前に現れたのは、あの雲水………『おおとり ゲン』!
カーリー星人が相手と言う事で、感想への書き込みもあった様に、もうお察しがついていられるでしょう………
そう!
シャオロンには『伝説のアレ』を受けて貰います!!
色々言われて来た彼ですが、多分次回を見た皆さんは、『そこまでやる事無いだろう!!』と言いたくなるでしょうね(笑)
まあ、お楽しみに。

シャオロン………死ぬなよ!(爆)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『男だ! 燃えろ!』

※注意

今回、作中でシャオロンが行っている特訓は非常に危険です。

シャオロンは特殊な訓練を受けており、専門家の指導の元、安全に配慮して行っています。

皆さんは決して真似をしないで下さい。


チャプター2『男だ! 燃えろ!』

 

宇宙超人 スチール星人・ソドロ

 

暗闇宇宙人 カーリー星人・ジャッパー

 

奇怪宇宙人 ツルク星人・ギリツ

 

怪異宇宙人 ケットル星人・スプリー登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・司令室………

 

警報が鳴り、司令室に集合した花組の面々。

 

「銀座の宝石店を例の星人達が襲撃しました」

 

「現在、警官隊と陸軍が交戦中やが、ハッキリ言って歯が立たん状況や」

 

カオルとこまちがそう説明する中、司令室のモニターには、怪光線でパトカーを破壊するスチール星人・ソドロと、突進で陸軍の装甲車を紙細工の様に貫くカーリー星人・ジャッパーの様子が映されていた。

 

「コレ以上被害を出すワケには行きませんわ。神山くん、出撃命令を」

 

「分かりました」

 

すみれに促されて誠十郎は立ち上がり、花組の面々を見回す。

 

「…………」

 

すると、さくらだけがやや表情を曇らせている事に気付く。

 

「さくら。ユイさんやシャオロンの事が気に掛かるのは分かるが、今は星人を倒す方が先決だ」

 

その理由を察した誠十郎が、さくらにそう言う。

 

「シャオロンくんの行方は此方でも探している。そっちは任せてくれ」

 

其れを補足する様に、サコミズも言って来た。

 

「………ハイ。分かりました」

 

2人にそう言われ、さくらは表情を引き締めた。

 

「よし! 帝国華撃団・花組、出撃せよ!」

 

「「「「了解っ!!」」」」

 

誠十郎の号令で、花組の面々は出撃して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

シャオロンは………

 

帝都郊外の砕石所跡………

 

「ハアッ! ハアッ! ハアッ!」

 

荒い息遣いのまま、砂利の上を必死の形相で走っているシャオロン。

 

「シャオローンッ! 逃げるなぁーっ!! 逃げるんじゃ無ーいっ!!」

 

そのシャオロンを、ゲンが追い掛けている。

 

………『ジープ』に乗って。

 

「!? うわあっ!?」

 

追い付かれたシャオロンは、咄嗟に横に転がりゲンが乗るジープの突進を回避。

 

しかしゲンは、直ぐにジープを反転させ、再びシャオロンへと向かう。

 

「シャオロン! 車に向かって来いっ!!」

 

「! うわああっ!!」

 

シャオロンに無茶振りしながら、追い回し続けるゲン。

 

何故こうなったのか………?

 

話は数時間前に遡る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前………

 

「オイ、こんなとこに連れて来て………何する積りだ?」

 

「直ぐに分かる………」

 

あの路地裏での出会いの後、雨が止んだこの砕石所へと連れて来られたシャオロン。

 

「…………」

 

ゲンの言葉を信じ、此処まで従いて来たシャオロンだが、再度疑念が湧いて来る。

 

「………“分かり易い”奴だな」

 

しかし、ゲンはそんなシャオロンの心を見透かしていた。

 

「! テメェッ!!」

 

シャオロンは忽ち激昂し、ゲンに背後から殴り掛かった。

 

だが、次の瞬間!!

 

「!? グハッ!?」

 

シャオロンは、“ゲンの()()()背中から地面に叩き付けられて”いた。

 

ゲンの姿勢は、先程と“まるで変わっていない”様に見える。

 

「…………」

 

シャオロンからしたら、「いきなり上下が反転した」かと思ったら、“地面に叩き付けられていた”と言う認識であり、何が起こったのか全く分からない。

 

そして、腐っても“拳法家”であり上海華撃団の隊長でもあるシャオロンは………

 

ゲンが、“自分なぞ足元にも及ばない高みに居る実力者”である事を察する。

 

「無駄な事をやっている暇は無いぞ。コレから“あの星人に()()()()()()”だからな」

 

「! アイツに………勝てるのか!?」

 

ユイに重傷を負わせたカーリー星人・ジャッパーの事を思い出しながら、シャオロンは立ち上がってゲンを見遣る。

 

「其れは()()()()だ………コレから課す“特訓”を乗り越える事が出来れば、少なくとも負ける事は無い」

 

「…………」

 

「如何する、やるか? 言って置くが、1度『受ける』と言ったからには、途中で泣き言を言っても聞かんぞ?」

 

確認する様にシャオロンを眼光鋭く見据えながら、ゲンはそう言い放つ。

 

「………やる! やってや………いや! やらせて下さい!! 老師(ラオシー)!!」

 

シャオロンは膝を着き、包拳礼を執ってゲンに特訓を願う。

 

如何やら完全にゲンを実力者と認識し、礼を尽くし始めた様だ。

 

しかし、直ぐにシャオロンは………

 

その言葉を、“文字通り”死ぬ程後悔する事になるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び砕石所の中を歩いて行くと………

 

其処には1台の車………『ジープ』が停まっていた。

 

「? この車は?」

 

「“特訓に使う物”だ」

 

「えっ?」

 

「シャオロン………お前が相手にしようとしているカーリー星人は、その“両肩の角を使った突進”が最大の武器だ」

 

「!!」

 

ゲンの言葉に、シャオロンはユイに瀕死の重傷を負わせたカーリー星人・ジャッパーの事を思い出す。

 

「奴を倒すには、“弱点”である眉間を攻撃するしか無い。だが、その為には奴の突進に対し()()()()向かって行かねばならん」

 

「奴に、正面から………」

 

()()お前に必要なモノは、“自分を突き刺し、殺そうとして来る存在”への『恐怖心の克服』だ」

 

「えっと………?」

 

ゲンの言わんとする事が分からず、困惑するシャオロン。

 

「シャオロン………俺は今から、()()()()()()()で行く」

 

「えっ………?」

 

「其れを乗り越え、恐怖心を克服するのだ」

 

「えっと、つまり………?」

 

困惑を続けるシャオロンを無視し、ゲンはジープに乗り込む。

 

そして(おもむろ)にエンジンを掛けると、思いっ切りアクセルを踏み込んで、シャオロンに突っ込んだ!!

 

「!? うおわっ!?」

 

慌てて避けるシャオロン。

 

「シャオロン! 逃げるなっ! 逃げるじゃないっ!!」

 

ゲンは直ぐ様ジープを反転させ、再度シャオロンに向かって行く。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい、老師(ラオシー)! まさか、コレが特訓ですかっ!?」

 

「そうだ! コレ(ジープ)を星人だと思えっ!! 向かって来いっ!!」

 

否定して欲しかったシャオロンの言葉を、ゲンはアッサリと肯定する。

 

「た、助けてくれええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

シャオロンは悲鳴を挙げて逃げ出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は現在に戻り………

 

彼是(かれこれ)数時間、シャオロンはゲンの乗るジープに追い掛け回されているのだ。

 

「シャオローン! 逃げるなーっ!! 逃げるじゃ無ーいっ!!」

 

「お願いです老師ーっ! 止めて下さーいっ!!」

 

懇願する様に叫ぶシャオロン。

 

その顔に、演技は一切無い。

 

正に“追い詰められた人間の表情”其の物だった。

 

「ハア………ハア………ハア………い、息が………」

 

段々と、呼吸するのも難しくなる程に疲労が蓄積し始めているシャオロン。

 

「シャオロン! 向かって来い! 来るんだぁっ!!」

 

そんなシャオロンに向かって、ゲンが操るジープがアクセル全開で突っ込む。

 

「!? うおわっ!?」

 

とうとう避け切れず、軽く撥ねられボンネットの上に乗っかった!

 

「ぐはっ!?」

 

そして、直ぐ様振り落とされる。

 

「…………」

 

ゲンはまたもやジープを反転させ、地面に倒れたままのシャオロンに突っ込んで行く。

 

「あ、あああ………」

 

恐怖で顔が引き攣り、疲労で立ち上がる事も(まま)ならないシャオロン。

 

そのシャオロンに向かって、ジープは何の躊躇も無く突っ込んで来る。

 

(だ、駄目だっ! 死ぬ! 死んじまうっ!!)

 

シャオロンの脳裏に、とうとう死の予感が過り始める。

 

その瞬間、“猛スピードで”突っ込んで来ている()のジープが、まるでスローモーション映像の様にゆっくりになる。

 

(ああ、コレが“死ぬ直前”ってヤツか………俺は………間違い無く地獄行きだろうな………)

 

達観したかの如く、まるで他人事の様に考えるシャオロンの脳裏に、走馬灯が過り始める。

 

と、その走馬灯が終わるかと思われた最後の瞬間………

 

カーリー星人・ジャッパーに串刺しにされたユイの姿が浮かび上がった。

 

(!! ユイッ!!)

 

するとその途端………

 

突っ込んで来るジープが、カーリー星人・ジャッパーの姿に変わる。

 

「!!」

 

そしてジープ(カーリー星人・ジャッパー)が、シャオロンを跳ね飛ばすかに思われた瞬間!!

 

「タアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

気合の雄叫びと共に、疲労困憊していたのが嘘の様な大跳躍を見せるシャオロン。

 

「!!」

 

ゲンはブレーキを掛け、上空を見上げる。

 

其処で、シャオロンは前方宙返りを決めると………

 

「イヤアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

落下速度を加えた拳を、ジープのボンネットに向かって振り下ろした!!

 

そのシャオロンの拳は、ジープのボンネットを突き破ってエンジンを破壊!!

 

ジープのボンネットから黒煙が上がった!!

 

「ハア………ハア………ハア………」

 

拳を引き抜きながら、ジープから離れるシャオロン。

 

「…………」

 

ゲンも、無言でジープから降りる。

 

「………見事だ。良く己の恐怖心に打ち克った」

 

老師(ラオシー)………」

 

()()()()ならば問題有るまい………行け、シャオロン。再び“龍”となってな」

 

「! ありがとうございますっ!!」

 

シャオロンは、ゲンに向かって再び包拳礼を執った後、背を向けて駆け出して行った。

 

「…………」

 

其れを無言で見送ったゲンだったが、やがて自身も其れを追う様に採石場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座の一角………

 

「先生! もう良いでしょう!? そろそろ行きましょう」

 

「チイッ! つまらん! 女は居ないのか、女は!?」

 

破壊されたパトカーや装甲車の残骸が辺りに散乱する中で、スチール星人・ソドロとカーリー星人・ジャッパーがそう言い合う。

 

「其処までですっ!!」

 

其処へ、そう言う声が響いたかと思うと、上空に現れた翔鯨丸から花組の無限が降下して来る。

 

「「「「「「帝国華撃団、参上!!」」」」」」

 

スチール星人・ソドロとカーリー星人・ジャッパーに向かい、見得を切ってそう言い放つ帝国華撃団。

 

「チイッ! 帝国華撃団か!!」

 

「華撃団………女が居るかぁ?」

 

スチール星人・ソドロは舌打ちをするが、カーリー星人・ジャッパーは嬉しそうに呟く。

 

「コレ以上! この帝都での無法は許しません!!」

 

ファファファファファッ!!

 

と、さくらが勇ましくそう言い放った瞬間、カーリー星人・ジャッパーが奇怪な鳴き声と共に突進して来た!!

 

「!?」

 

「さくら! 避けろっ!!」

 

思わず固まってしまったさくら機を、誠十郎機が引っ張る。

 

カーリー星人・ジャッパーはさくら機への狙いを外し、後方に在った建物の壁に激突!

 

途端に、激突した面の壁が崩れ、建物全体が崩壊した!!

 

「マジかよ!? 何て威力の突進だっ!?」

 

「あんなの喰らったら、一溜りも無いわね………」

 

「………!!」

 

初穂とアナスタシアが思わずそう漏らすと、若し“自分が喰らっていたら”と想像して顔が青褪めるさくら。

 

ファファファファファッ!!

 

と其処でカーリー星人・ジャッパーが、今度はクラリス機に向かって突進を繰り出した!

 

「クラリス! そっちに行ったっ!!」

 

「! くうっ!」

 

あざみに言われ、クラリス機は魔導書を開き、魔法陣をバリアの様に展開する。

 

だが………

 

ファファファファファッ!!

 

何と、カーリー星人・ジャッパーの突進の一突きは、魔法陣のバリアをガラスの様に打ち砕いてしまった!!

 

「!? そんなっ!?………!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

呆けてしまったクラリス機に、カーリー星人・ジャッパーの突進が命中。

 

クラリス機は弾き飛ばされ、地面を転がった!

 

「クラリス! 大丈夫かっ!?」

 

「だ、大丈夫です! ギリギリ躱しました!!」

 

慌てて誠十郎機が助け起こすと、クラリスはそう返す。

 

しかし、彼女の機体は右腕が肩口から無くなっていた。

 

ファファファファファッ!!

 

奇怪な鳴き声を挙げながら、カーリー星人・ジャッパーは角に刺さったままだったクラリス機の右腕を無造作に放り捨てる。

 

「先生! そんな奴等に構って無いで、早く逃げましょう!?」

 

「黙ってろ。折角の『女』を前にして、おめおめと引き下がれるか?」

 

スチール星人・ソドロが逃げようと促してくるが、カーリー星人・ジャッパーは従う様子を見せない。

 

「ああもう、カーリー星人はコレだから………こうなったら………」

 

ファファファファファッ!!

 

と、スチール星人・ソドロが何か怪しい動きを見せる中、カーリー星人・ジャッパーは今度は初穂機に向かって行った。

 

「! 野郎っ!!」

 

突進して来るカーリー星人・ジャッパーに対し、自慢のハンマーをフルスイングする初穂機!

 

だが、ハンマーがカーリー星人・ジャッパーに接触した瞬間………

 

「!? うおわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

何と初穂機の方が弾き飛ばされ、建物の壁に叩き付けられた!

 

「!? 初穂っ!? 彼女のハンマーでも駄目なのか!?」

 

『カーリー星人の突進は()()()も跳ね返すパワーが有る。“生半可な攻撃”じゃ駄目だ!』

 

驚く誠十郎に、ゼロがそう言って来る。

 

「其処っ!!」

 

「にんっ!!」

 

今度はアナスタシア機が銃、あざみ機がクナイを投げて攻撃する。

 

ファファファファファッ!!

 

無数の銃弾とクナイを浴びるカーリー星人・ジャッパーだが、意にも介さず奇怪な鳴き声を挙げる。

 

「!? 効いてない!?」

 

「何て奴なの………」

 

あざみが驚き、アナスタシアも思わず冷や汗を流す。

 

ファファファファファッ!!

 

奇怪な鳴き声を挙げ続け、カーリー星人・ジャッパーは再度さくら機に狙いを定める。

 

「!?」

 

「さくらっ!!」

 

さくら機が慄くと、直ぐ様誠十郎機がカバーに入る。

 

ファファファファファッ!!

 

カーリー星人・ジャッパーは、“そんな事は関係無い”と2人纏めて串刺しにしようとする。

 

「待てっ!!」

 

「「「「「!?」」」」」」

 

「んん?」

 

だが其処で、そう言う声が聞こえ、花組とカーリー星人・ジャッパーがその声の主を見遣る。

 

「…………」

 

其処には特訓場の採石場跡から駆け付けた、ボロボロのままのシャオロンの姿が在った。

 

「! シャオロンさん!」

 

「何であんなボロボロなんだ………?」

 

驚くさくらと、ボロボロの姿に疑問を抱く誠十郎。

 

「何だ、()()()か………貴様に用は無い。引っ込んでろ」

 

カーリー星人・ジャッパーは、そんなシャオロンを歯牙にも懸けず、犬でも追い払うかの様に手を振る。

 

「負け犬じゃねえ! 俺は………亜細亜の龍! 上海華撃団の隊長! ヤン・シャオロンだ!!」

 

しかしシャオロンは、カーリー星人・ジャッパーに向かってそう吠え返した。

 

「! ぬっ!?」

 

その気迫を受け、カーリー星人・ジャッパーが一瞬怯む。

 

「シャオロン………」

 

『何が有ったんだ? 気迫がまるで違うぞ?』

 

そんなシャオロンの姿に、ゼロがそう呟く。

 

「貴様如きが、“この俺を怯ませた”だと?………巫山戯るなぁっ!!」

 

と、シャオロンの気迫に一瞬だが怯んだカーリー星人・ジャッパーはプライドを傷付けられた事に憤慨し、シャオロンに向かって突進を繰り出した!!

 

「!!」

 

するとシャオロンは、そのカーリー星人・ジャッパーに向かって、()()()突撃した!!

 

「なっ!? 自分から突っ込んで行きやがった!?」

 

「無茶ですっ!!」

 

その光景を見た初穂とクラリスが悲鳴の様な声を挙げる。

 

「馬鹿め! 死ねえぇっ!!」

 

シャオロンを串刺しにしようと肩の角を向けるカーリー星人・ジャッパー。

 

両者の距離が一気に詰まる。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

凄惨な光景を想像し、思わず顔が引き攣る花組の面々。

 

 

 

 

 

………だが、しかし!!

 

 

 

 

 

「! 此処だぁっ!!」

 

衝突直前、シャオロンは大きく跳躍した!!

 

「!? 何っ!?」

 

思わずカーリー星人・ジャッパーが空を見上げると………

 

「イヤアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!」

 

シャオロンは宙返りを決め、落下の勢いを乗せた拳をカーリー星人・ジャッパーの眉間に叩き込んだ!!

 

「!? ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

急所を攻撃されたカーリー星人・ジャッパーは、眉間を押さえて倒れ、悶え苦しむ。

 

「せ、先生っ!?」

 

其処へ今まで傍観していたスチール星人・ソドロが近寄って来る。

 

「やった………やったぜ! ユイッ!!」

 

見事雪辱を果たし、ユイの仇を取ったシャオロンは歓喜の声を挙げる。

 

「オ、オノレッ! オノレェッ!! 地球人如きがぁっ!!」

 

しかし其処で、悶絶していたカーリー星人・ジャッパーが突然起き上がると、怒りの声と共にその身体が赤い煙を放つ。

 

そして、人間大の時とはまるで違う見た目となって巨大化した!!

 

「ああ、先生! もう!!」

 

其れに続くかの様に、スチール星人・ソドロも巨大化する!!

 

「なっ!?」

 

「巨大化したっ!?」

 

「踏み潰してやるっ!!」

 

シャオロンとさくらが驚いていると、カーリー星人・ジャッパーはシャオロンを踏み潰そうとする。

 

「! シャオロン! 危ないっ!!」

 

シャオロンを助けようと、誠十郎機が大きくジャンプし、カーリー星人・ジャッパーに斬り掛かろうとする。

 

「邪魔だぁっ!!」

 

「!? うおわっ!?」

 

しかし、サイズ差からアッサリと弾き飛ばされる!

 

「其れっ!!」

 

更に駄目押しとばかりに、スチール星人・ソドロが誠十郎機の墜落地点に向かって破壊光線を放った!!

 

誠十郎機の落下地点から、爆発と共に巨大な火柱が上がった!

 

「「「「「隊長っ!!」」」」」

 

さくら達の声が木霊する。

 

其処へ!!

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

「ぐぎゃっ!?」

 

「ぬうっ!?」

 

上空から現れたゼロが、スチール星人・ソドロとカーリー星人・ジャッパーを纏めて蹴り飛ばした!!

 

「「ゼロさん!!」」

 

「ウルトラマンゼロ………」

 

歓喜の声を挙げるさくらとクラリスに、今までと違う視線を向けるシャオロン。

 

「俺はゼロ! ウルトラマンゼロだっ!!」

 

「ほう、貴様がゼロか?」

 

「ゲゲッ!? ウルトラマンゼロッ!? お前まで現れるとは!?」

 

何処か嬉しそうなカーリー星人・ジャッパーとは対照的に、ゼロの登場に慌てた様子を見せるスチール星人・ソドロ。

 

「スチール星人にカーリー星人! コレ以上の好き勝手はさせねえぜ!!」

 

「ゼロさん! 頑張ってっ!!」

 

スチール星人・ソドロとカーリー星人・ジャッパーにビッと指差してゼロがそう言うと、さくらの声援が飛ぶ。

 

と、その瞬間!!

 

閃光が走ったかと思うと、さくら機のハッチが斬り飛ばされた!!

 

「えっ?………!? キャアッ!?」

 

さくらが思わず間が抜けた声を挙げると、今度は何者かに襟首を摑まれ、無限の中から引き摺り出された!

 

「!? さくらっ!?」

 

「さくらさんっ!?」

 

其処で初穂とクラリスが見たのは………

 

「フフフフフ………」

 

「油断したな………」

 

『怪異宇宙人 ケットル星人・スプリー』に襟首を摑まれて囚われ、『奇怪宇宙人 ツルク星人・ギリツ』の刃となっている腕を首筋に突き付けられているさくらの姿だった。

 

『!? さくらっ!?』

 

「『ケットル星人』に『ツルク星人』!? 未だ居やがったのか!?」

 

「ナイスですよ、先生方!」

 

誠十郎とゼロが驚きを示すと、スチール星人・ソドロがそう言い放つ。

 

如何やら、この2体もスチール星人・ソドロが雇った用心棒らしい。

 

「チイッ、ソドロめ………つまらん真似を………」

 

「さあ、ウルトラマンゼロ! 抵抗しないで貰おうか。若し抵抗すれば、あの娘が如何なるか、分かるな?」

 

カーリー星人・ジャッパーが不満そうにするのを聞き流し、スチール星人・ソドロはゼロに向かって得意げに言い放つ。

 

「クソッ!」

 

「ゼロさん! (わたし)に構わずに戦って下さいっ!!」

 

「黙れ、小娘」

 

悪態を吐くゼロに、さくらがそう呼び掛けるが、その瞬間ツルク星人・ギリツが刃の腕を押し込む。

 

「ッ!」

 

刃を突き付けられていたさくらの首の皮が僅かに切れ、赤い血が彼女の白い肌に滴る。

 

「! さくらっ!!」

 

「駄目よ、あざみ。今動いたら」

 

あざみが飛び出しそうになるが、アナスタシアが今はマズイと止める。

 

「クッ! 如何すれば………ん?」

 

シャオロンも舌打ちをしていたが、其処で“何か”に気付く。

 

その次の瞬間!!

 

「さあ、如何するウルトラマンゼ………!? ゴバッ!?」

 

「なっ!?………ゲバッ!?」

 

「!? キャアッ!?」

 

突如、ケットル星人・スプリーとツルク星人・ギリツがブッ飛ばされ、解放されたさくらが()()に受け止められる。

 

「大丈夫か?」

 

「えっ? あ、ハイ」

 

助けた人物………ゲンに声を掛けられ、さくらは反射的に返事をする。

 

老師(ラオシー)っ!!」

 

「ええっ!? 老師っ!?」

 

シャオロンの声に、初穂が驚く。

 

「!? アレはッ!?」

 

『ゼロ!? 如何したんだ!?』

 

しかし、其れ以上に驚いていたのはゼロで、誠十郎が“出会って以来初めて見る”ゼロの動揺に困惑する。

 

「き、貴様はっ!?」

 

「何だとっ!?」

 

「馬鹿なっ!? 何故この地球にっ!?」

 

更に、カーリー星人・ジャッパーとツルク星人・ギリツ、ケットル星人・スプリーも驚きを示す。

 

「ええい!!」

 

「オノレェッ!!」

 

と其処で、ツルク星人・ギリツとケットル星人・スプリーも巨大化する。

 

「離れていろ………」

 

「ハ、ハイッ!」

 

ゲンがそう言うと、さくらはその迫力に押される様に離れる。

 

するとゲンは、被っていた編み笠を天に放り投げたかと思うと………

 

拳を握った両腕を身体の前で交差させ、正拳突きの様に右手を突き出した後、素早く左手を突き出し………

 

「レオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!」

 

と叫ぶと、左手薬指のレオリングの瞳が光を放った!!

 

その瞬間、ゲンの姿は“50メートル以上の赤い巨人”に変わり、空中で宙返りを決め、地響きと共に着地を決めた。

 

「!? ウルトラマンッ!?」

 

「ろ、老師はウルトラマンだったのか!?」

 

さくらとシャオロンが、新たに現れた赤いウルトラマンを見て驚愕する。

 

()()()は………まさかっ!?」

 

と、ゼロからウルトラマンの話を聞いていたクラリスは、その赤いウルトラマンの正体を察する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう………

 

其れは『獅子座L77星』生まれのウルトラマン………

 

愛する人を、大切な仲間を、帰るべき故郷さえをも失いながらも………

 

第2の………否、『()()()故郷』である地球を守る為………

 

時に傷付き倒れながら、何度も立ち上がった不屈の闘士………

 

誰よりも“生きる辛さと厳しさ”を知る者………

 

そしてウルトラ兄弟の一員であり、ゼロの師匠………

 

『ウルトラマンレオ』だった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

出ました!
伝説の『ジープ特訓』!!
当時でさえ狂気の沙汰と言われた伝説のアクション。
ゲンを演じた真夏 竜さんが本気で死ぬと思った過酷さ。
それが時を得て蘇りました(笑)

その特訓の甲斐あって、見事にカーリー星人にリベンジしたシャオロン。
しかし、相手が巨大化した上、更なる用心棒も出現。
そこへ満を持て登場!!
真紅の獅子!
ウルトラマンレオ!!
その活躍にご期待ください!

それと前回説明し忘れてしまいましたが、上海華撃団の過去は私の捏造で公式設定ではありませんので、誤解の無いようお願いします。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『獅子の瞳が輝いて』

チャプター3『獅子の瞳が輝いて』

 

宇宙超人 スチール星人・ソドロ

 

暗闇宇宙人 カーリー星人・ジャッパー

 

奇怪宇宙人 ツルク星人・ギリツ

 

怪異宇宙人 ケットル星人・スプリー登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座の一角………

 

「し、師匠っ!? 何でこの地球にっ!?」

 

『!? 何っ!?』

 

「ゼロさんのお師匠さん!?」

 

レオの姿を見たゼロが驚き、誠十郎とさくらもビックリした様子を見せる。

 

「やっぱり! あの方は………ウルトラマンレオ!!」

 

一方でクラリスは、何処ぞのGUYS隊員の様に目を輝かせる。

 

「ウ、“ウルトラマンが()()”だと!? 聞いていないぞ! 冗談じゃないっ!!」

 

と其処で、スチール星人・ソドロが悲鳴の様な声を挙げると、脇目も振らずに逃走した!

 

「あ! テメェッ!!」

 

「追え、ゼロ」

 

「えっ!?」

 

レオがそう言って来て、ゼロは再度驚きの声を挙げる。

 

「話は後だ。此方は任せておけ。コイツ等も“()()用が有る”みたいだからな………」

 

そう言うレオの視線の先には、殺気を溢れさせているカーリー星人・ジャッパー、ツルク星人・ギリツ、ケットル星人・スプリーの姿が在った。

 

「ウルトラマンレオ………」

 

「同胞の仇………」

 

「今此処で討ってくれる」

 

肩の角を揺らすカーリー星人・ジャッパーに、両手の刃を鈍く光らせるツルク星人・ギリツ、そして巨大な槍・アトミックランスを構えるケットル星人・スプリーがそう言い放つ。

 

「むんっ!」

 

其れに対し、レオは得意の宇宙拳法の構えを執る。

 

「行け! ゼロッ!!」

 

「! 分かったぜ、師匠っ!!」

 

ゼロはこの場をレオに任せ、スチール星人・ソドロを追ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・某所………

 

「ヘエッ! ヘエッ! ヘエッ! 此処まで来れば………」

 

自慢の速さでかなり離れた場所まで逃げて来たスチール星人・ソドロ。

 

しかし………

 

「ハアッ!!」

 

その眼前に、ゼロが土煙を巻き上げながら着地する!

 

「!? うおおっ!?」

 

「逃がしゃしないぜ」

 

急ブレーキを掛けたスチール星人・ソドロに向かって、ゼロはそう言い放つ。

 

「うぐうっ! オノレェッ!!」

 

逃げ切ったと思ったのにアッサリと追い付かれ、スチール星人・ソドロは自棄になった様に右手を上げたかと思うと、その手に“刀身が燃えている剣”が出現した!

 

「其奴はファイヤー星人の………盗んだのか? 手癖の悪い野郎だぜ」

 

「五月蠅いっ! 死ねぇっ!!」

 

ゼロが呆れた様に言う中、スチール星人・ソドロは燃える剣を振り下ろして来る。

 

「おっと!」

 

側転しながらサッと回避するゼロ。

 

「うおおおっ! 死ねぇっ! ウルトラマンゼロォッ!!」

 

そんなゼロを追い、燃える剣を振り回すスチール星人・ソドロ。

 

「よっ! ほっ! はっ!」

 

しかし、元々剣の心得なぞ無いスチール星人・ソドロの太刀筋は滅茶苦茶で洗練もされておらず、ゼロは軽々と回避し続ける。

 

「ぬおおっ! オノレェッ!!」

 

スチール星人・ソドロは、怒りのままに大きく横薙ぎに、燃える剣を振るう。

 

「ハアッ!!」

 

ゼロは其れを、大きく跳躍して躱すと、そのままスチール星人・ソドロの背後へと着地。

 

「………ルナミラクルゼロ」

 

そして、ルナミラクルゼロへとタイプチェンジをすると、ウルトラゼロランスを取り出した。

 

「ぬおおおっ!!」

 

そんなゼロに向かって、スチール星人・ソドロは大上段から燃える剣を振り下ろす。

 

「むんっ!」

 

ルナミラクルゼロは、ウルトラゼロランスを横にして其れを受け止める。

 

「ハアッ!」

 

そのまま、ウルトラゼロランスごと両腕を突き出すと、燃える剣はスチール星人・ソドロの手から離れてアッサリと宙に舞った!

 

「あっ!?」

 

「レボリウムスマッシュ」

 

間抜けな声を挙げてしまったスチール星人・ソドロに、ルナミラクルゼロは右掌を押し当て、そのまま衝撃波を放つ!

 

「!? ぐおおおおおっ!?」

 

「ミラクルゼロスラッガー」

 

そして、ブッ飛ばされる最中(さなか)のスチール星人・ソドロに向かって、ミラクルゼロスラッガーを放つ。

 

「ゲボアッ!?」

 

無数のゼロスラッガーに斬り刻まれるスチール星人・ソドロ。

 

更に、駄目押しとばかりに弾いた燃える剣が落ちて来て、その特徴的な頭部を刺し貫いた!

 

「!? ガバッ!? む、無念んんんーーーーーっ!!」

 

未練がましい断末魔を挙げると、スチール星人・ソドロはバタリと倒れ、爆発四散したのだった。

 

「自業自得だぜ」

 

『ゼロ! 早くお師匠さんの所に戻ろう! 相手は3人だ! 加勢しないと!』

 

「ああ~?別に“心配無い”と思うぜ?」

 

『えっ?』

 

「だって、“俺の()()”だぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンレオVSカーリー星人・ジャッパー、ツルク星人・ギリツ、ケットル星人・スプリー

 

「「「「…………」」」」

 

星人3人に取り囲まれた状態で、構えを執り続けているレオ。

 

圧倒的に不利な状況の筈なのに、その姿に動揺は微塵も感じられない。

 

「ウルトラマンレオ! 死ねえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」

 

最初に仕掛けたのは、ツルク星人・ギリツ。

 

両腕の刃を鈍く光らせ、レオに斬り掛かる。

 

「むんっ!」

 

しかしレオは全く慌てず、両手でツルク星人・ギリツの両腕部分を摑んで受け止める。

 

「貰ったあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

両手が塞がったレオに、すかさず今度はカーリー星人・ジャッパーが必殺の突進を繰り出すが………

 

「デヤアアッ!!」

 

「ゴバアッ!?」

 

レオはツルク星人・ギリツを抑えたまま、後ろ回し蹴りを繰り出し、アッサリとカーリー星人・ジャッパーを弾き飛ばす。

 

「テヤアアアアァァァァァーーーーーーッ!!」

 

と今度は、ケットル星人・スプリーがアトミックランスを構えて突っ込んで行くが………

 

「イヤアッ!!」

 

「おうわっ!?」

 

「ぎゃあっ!?」

 

レオは抑えていたツルク星人・ギリツを投げ付けた!

 

「グウアッ! オノレェッ!!」

 

弾き飛ばされたカーリー星人・ジャッパーが立ち上がると、再度レオに向かって突撃して行く。

 

「串刺しになれえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」

 

トップスピードに乗った突進がレオに迫る。

 

「ムンッ!!」

 

だがレオは、その突進が命中するかに思われた瞬間、独楽の様に回転しながら身を翻して躱したかと思うと………

 

「イヤアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーッ!!」

 

赤熱化させた右手の手刀・『ハンドスライサー』で、カーリー星人・ジャッパーの左肩の角を叩き斬った!!

 

「ぐああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

角の折れた左肩を手で押さえながら、カーリー星人・ジャッパーが仰け反ると………

 

「エイヤアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

まるで燕返しの様に、振り下ろしたハンドスライサーを瞬間的に振り上げて右肩の角も叩き斬る!!

 

「があああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「イヤアァッ!!」

 

更に、悶えたカーリー星人・ジャッパーに横蹴りを喰らわせて距離を取る。

 

「むううんっ! エイヤアァッ!!」

 

そして、火球状の赤い光球・『エネルギー光球』を眉間目掛けて放つ!

 

「!? ぬおあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

直撃を受けたカーリー星人・ジャッパーの身体が赤色に発光したかと思うと眉間が爆発。

 

直後に、今度は全身が爆発して木っ端微塵になった!

 

「す、凄い………」

 

「アッと言う間に1人やっつけた………」

 

「………ゼロに輪を掛けて強いぜ」

 

「流石はゼロの“お師匠さん”ね………」

 

立ち所にカーリー星人・ジャッパーを倒したレオの実力に、さくら・あざみ・初穂・アナスタシアが圧倒される。

 

「アレが宇宙拳法の技! 正に“真紅の獅子”! ウルトラマンレオ!!」

 

「ろ、老師………スゲェ………」

 

クラリスは感動で目が輝き捲っており、シャオロンも呆気に取られていた。

 

「ぬおおおっ!!」

 

と其処で、ツルク星人・ギリツが再び両腕の刃で斬り掛かる。

 

「エエヤアァッ!!」

 

だが、何と!!

 

ツルク星人・ギリツが振るって来た右腕の刃に、レオは真正面から()()()()()粉砕した!!

 

「なっ!? ぬおおおっ!!」

 

驚きながらも素早く左腕の刃を振るうツルク星人・ギリツだったが………

 

「エイヤアァッ!!」

 

その刃も、レオの拳によって砕かれた!

 

「なああっ!?」

 

「イイヤアァッ!!」

 

自慢の武器を失ったツルク星人・ギリツに、レオは正拳突きを喰らわせる!

 

「!? ゴバナッ!?」

 

その正拳突きの余りの威力に、ツルク星人・ギリツの正拳突きを喰らった反対側の背中が弾けて、肉片が飛び散った!

 

「ア………ゴ………ア………」

 

「ぬうううんっ! イヤアアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!」

 

身体の中身が殆ど無くなったツルク星人・ギリツへのトドメに、レオは真っ直ぐに伸ばした両腕から発する光線・『シューティングビーム』を放つ!

 

「!?!?」

 

ツルク星人・ギリツは、断末魔を挙げる間も無く爆発四散した。

 

「ウルトラマンレオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!」

 

と、残るケットル星人・スプリーが、アトミックランスを構えて猛烈な突進による突きを繰り出す。

 

「ムンッ!」

 

だがレオは、その突きをアッサリとアトミックランスの先端を両手で摑んで止める。

 

「イヤアッ!!」

 

「! ゴハアッ!?」

 

そして前蹴りを繰り出すと、ケットル星人・スプリーはアトミックランスを手放し、蹌踉て後退る。

 

「ムウンッ!!」

 

レオは、奪ったアトミックランスを両手で持つと膝に叩き付けて圧し折り、放り投げた。

 

「! ぬうっ! うおおおっ!!」

 

ケットル星人・スプリーは大きく跳躍し、レオの頭上を跳び越える。

 

「イヤアァッ!!」

 

其れを追う様にレオも大跳躍!

 

ケットル星人・スプリーが着地すると………

 

「ヤアアアァァァァーーーーーッ!!」

 

その背に向かって、燃える右足の跳び蹴り………必殺の『レオキック』を繰り出す。

 

嘗て戦ったケットル星人も、着地の瞬間を狙い、この技で倒した。

 

「馬鹿めっ! 嘗ての同胞とは違うぞっ!!」

 

だが、このケットル星人・スプリーは弱点を克服していたのか、素早く立ち上がると、レオキックを繰り出しているレオの方に向き直り、防御姿勢を取った。

 

「エイヤアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

しかし、レオはキックを敢行。

 

レオキックが、ガードしていたケットル星人・スプリーの両腕に当たったかと思うと………

 

何と両腕が粉々に砕け、更にそのまま直撃した上半身も木っ端微塵になった!!

 

「ヌンッ!!」

 

下半身だけになった、ケットル星人・スプリーの背後に着地を決めるレオ。

 

下半身だけになっていたケットル星人・スプリーの身体がバタリと倒れたかと思うと、そのまま爆発四散した。

 

「ス、スゲェ………」

 

「星人3人を相手に、まるで苦にして無かったわね」

 

「寧ろ逆に圧倒してた」

 

初穂・アナスタシア・あざみがレオの強さに舌を巻く。

 

「ゼロさんが強いのも納得です」

 

「ホント、そうだね………」

 

クラリスとさくらも、そう呟く。

 

「老師………」

 

そして、シャオロンもレオを見上げる。

 

「…………」

 

と、その視線に気付いたのか、レオがシャオロンを見遣る。

 

「!」

 

レオとシャオロンの視線が交差する。

 

「………!」

 

やがてシャオロンは、レオに向かって包拳礼を執って深々と頭を下げた。

 

「…………」

 

其れを見たレオが、満足そうに頷く。

 

「………イヤアッ!!」

 

そしてレオは、空の彼方へと飛び去って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

宇宙空間にて………

 

飛び去ったレオが宇宙へと出ると、程無くしてゼロがやって来た。

 

「師匠。何故、この地球に?」

 

「今、様々な宇宙で、怪獣や星人が“()()()を目指している動き”が有る。俺はその調査をしていて、この地球へと辿り着いた」

 

ゼロの問いに、レオはそう返す。

 

『この地球に怪獣や星人が!?』

 

「やっぱり、“何者か”がこの星(地球)へ怪獣達を呼び寄せてやがったのか………」

 

誠十郎が驚きの声を挙げると、ゼロもそう呟く。

 

「………彼が、()お前と一緒に戦っている人間か?」

 

と其処で、今度はゼロと融合している誠十郎の存在を感じ取ったレオがそう尋ねて来る。

 

「ああ。神山 誠十郎………ちょいと情け無い所も有るが、立派な奴だぜ」

 

『オイ、情け無いって何だよ?』

 

ゼロの紹介に、誠十郎は不満気に呟く。

 

「そうか………神山 誠十郎。ゼロが世話になっているな」

 

『いえ。俺の方こそ、ゼロには何時も助けられています』

 

レオの言葉に、誠十郎はそう返す。

 

「そうか………俺はそろそろ行かねばならん。この事を光の国へ報告せねば、な………ゼロ、そして神山 誠十郎。恐らく、この先も様々な困難が立ちはだかるだろう。だが、“お前達が力を合わせれば必ず乗り越えられる”………其れを忘れるんじゃないぞ」

 

『ハイ!』

 

「分かってるって」

 

誠十郎はしっかりと返事を返し、ゼロも若干砕けてはいるが、承知と頷く。

 

「頼んだぞ………」

 

そう言い残すと、レオは地球から離れて宇宙空間に消えて行った。

 

『これからも、様々な怪獣や星人が引っ切り無しに出て来るワケか………』

 

「ああ………けど、必ず乗り越えてやるさ! ()()()()()な!」

 

『ああ!』

 

ゼロと誠十郎はそう言い合い、地球………帝都へと帰還するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座某所………

 

「お~~い!」

 

「あ! 神山隊長!」

 

地球へと戻ったゼロは、見付からない様に変身を解除。

 

誠十郎へと戻ると、手を振りながら花組の元へと戻った。

 

「隊長さん! 無事だったか!」

 

「ああ、危ない所だったけどな」

 

「良かったぁ………安心しましたよ」

 

初穂に誠十郎がそう返すと、クラリスが安堵の息を吐く。

 

「………神山」

 

と其処で、シャオロンが誠十郎に声を掛けた。

 

「シャオロン………」

 

「「「「「…………」」」」」

 

シャオロンを見ると、さくら達に若干の緊張の色が走る。

 

「………その」

 

と、シャオロンが何か言おうとした瞬間………

 

「オイ、見ろ! ヤン・シャオロンだぞ!!」

 

「ホントだ!」

 

「怪獣野郎だっ!!」

 

戦闘が終わった事を確認しに出て来たのか、帝都市民達が集まって来た。

 

「!」

 

途端に口を噤むシャオロン。

 

「オイ、帝国華撃団! 何でソイツをやっつけないんだよ!?」

 

「ソイツは怪獣だろう!? 早く退治してくれよ!」

 

「そうだそうだ!」

 

口々に“シャオロンを退治せよ”と叫ぶ帝都市民達。

 

「待って下さい! 確かにあの時、上海華撃団は怪獣になりましたが、其れは彼等の所為では………」

 

「アンタ、帝国華撃団の隊長だろ!?」

 

「帝国華撃団が怪獣を庇うのか!?」

 

宥めようとする誠十郎だが、興奮している帝都市民達は聞き入れない。

 

(マズイ………このままだとマイナスエネルギーが………)

 

その様はマイナスエネルギーが発生しそうな程であり、ゼロが危機感を覚える。

 

「ですから………」

 

「帝都から出てけ! 怪獣野郎っ!!」

 

と、その時!!

 

帝都市民の1人が、シャオロンに向かって石を投げ付けた!

 

「!!」

 

立ち尽くすシャオロン。

 

だが………

 

「!? うっ!?」

 

何と、さくらがシャオロンの前に躍り出て、代わりに石礫を浴びた!

 

「!? さくらっ!?」

 

「「「「!?」」」」

 

「!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

その場に居た全員が、驚き固まる。

 

「っ!」

 

石礫は、丁度こめかみ辺りに命中し、切れた皮膚から血が流れ出す。

 

「さくら! 何て事を!!」

 

女優の命である顔を負傷した事に、誠十郎が慌てながらハンカチを取り出して、血が流れるさくらのこめかみに当てる。

 

「私は大丈夫です、神山隊長………」

 

と、そのハンカチを自分の手で押さえると、さくらが帝都市民達の方に歩み寄った。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

血を流しながら近付いて来たさくらの迫力に、帝都市民達は狼狽し、全員が1歩下がる。

 

「皆さん………」

 

するとさくらは、そんな帝都市民達に向かって頭を下げたかと思うと………

 

「シャオロンさんを………許してあげて下さい」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

そう言って、帝都市民達を驚愕させた。

 

「! さくら!………君は………」

 

「「「「…………」」」」

 

誠十郎と初穂達も、信じられないモノを見る様な目でさくらを見遣る。

 

「天宮………」

 

シャオロンも目を見開いている。

 

「確かに、“色々な事”が有ったかも知れません………でも! シャオロンさんだって()()()なんです! “人々を守る為に戦っていた”んです!! だから………お願いします!」

 

そう言い放ち、頭を下げ続けるさくら。

 

「………!」

 

其処へシャオロンがさくらの隣へ移動した思うと、その場に跪いて、帝都市民達に向かって土下座する!

 

「申し訳ありませんでした!」

 

そして、心からの謝罪の言葉を口にするシャオロン。

 

「全ては、この俺の不徳の致すところです………本当に申し訳ございません!」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

そんなシャオロンの姿を見て、言葉が出なくなる帝都市民達。

 

「オイ、オメェ達………こうまで頭下げられて、“許さねえ”だなんて、江戸っ子なら言わねえよなぁ?」

 

すると其処で、帝都市民達の背後からそう言う声が聞こえて来たかと思うと、スーツ姿で如何にも堅気(カタギ)では無い雰囲気の男が現れる。

 

周囲には、その手下と思しき連中の姿も在る。

 

「! ダ、『ダンディ団』の『団 耕助』!?」

 

「ダンディ団って………あの東城会と共に、帝都の裏を全て取り仕切ってるって言う!?」

 

帝都の裏社会のトップに君臨する人物の登場に、帝都市民達は動揺を露わにする。

 

「安心しな。俺達ゃ堅気(カタギ)には手は出さねえ。ま、アンタ等が()()()()()()()()()をした時には別だがな」

 

団はそう言ってニヤリと笑う。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

其れだけで、帝都市民達の背筋に寒気が走る。

 

「で、如何すんだ? お前さん達………ソイツを許すのか? 許さねえのか?」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

団の問い掛けに、帝都市民達は再度シャオロンを見遣る。

 

「「…………」」

 

この一連の間、シャオロンは隣のさくらと共に頭を下げ続けていた。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

その姿を見た、帝都市民達の表情からはドンドンと険が取れて行く。

 

(マイナスエネルギーが消えた………?)

 

其れに伴ってマイナスエネルギーも消滅し、ゼロは驚きを露わにする。

 

「その………悪かったよ」

 

「すまなかった」

 

「許してくれ」

 

そして、口々に謝罪の言葉を口にする。

 

「! ありがとうございます!」

 

「………ありがとうございます」

 

さくらは喜びを露わにし、シャオロンは尚も頭を下げ続ける。

 

「其れでこそ“江戸っ子”だぜ」

 

と其処で、団は懐から何かを取り出したかと思うと、さくらに向かって投げた。

 

「わっ、と!」

 

其れをキャッチするさくら。

 

其れは塗り薬であった。

 

「“良く効く”って評判の軟膏だ。女優さんの顔に傷が有っちゃいけねえからな。塗っときな」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「気にすんな。何たって俺達は………『ダンディ』だからな」

 

団はそう言うと、手下達と帝都市民達を引き連れて去って行った。

 

………何故か、フィンガースナップでリズムを刻んで踊りながら。

 

「良かったですね、シャオロンさん」

 

「天宮………本当にすまねえ」

 

其れを見送ったさくらがそう言うと、シャオロンはさくらの方に向き直り、再度土下座する。

 

「もう良いですよ。気にしないで下さい」

 

「…………」

 

朗らかに笑ってそう言うさくらに、シャオロンは土下座したまま涙を流すのだった。

 

「ったく、お人好しにも程が有るぜ」

 

「でも、さくらさんらしかったです」

 

「許せる人間は強い………正にさくらはそう」

 

其処へ、初穂・クラリス・あざみがそう言いながらさくらの周りに集まる。

 

「さくら………」

 

『………優しさを失わないでくれ。弱い者を(いたわ)り、互いに助け合い、何処の国の人達とも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。例え、その気持ちが何100回裏切られようと』

 

誠十郎も感慨深そうにさくらを見ていると、ゼロがそんな言葉を呟いた。

 

(ゼロ、其れは………?)

 

『嘗て「ウルトラマン(エース)」が、地球を去る際に残した言葉だ。“今でも変わらずに願い続けている”、な………』

 

(………何100回裏切られても、信じる事を止めないでくれ、か)

 

Aの変わらぬ願いの言葉は、確かに誠十郎の心に響いた。

 

「…………」

 

とそんな中、アナスタシアは1人、何かを考えている様な様子を見せていた。

 

「? アナスタシア? 如何したんだい?」

 

「………ねえ、キャプテン。あの、レオってウルトラマン………()()()姿()()()()()()()わよね?」

 

「ああ、其れが何か………?」

 

「ひょっとしたら、ウルトラマンゼロも普段は人間の姿をしていて、何処かに潜んでるんじゃないかしら?」

 

「!?」

 

『おっと………流石に鋭いな』

 

アナスタシアの思わぬ指摘に誠十郎は動揺するが、ゼロは余裕を見せる。

 

「い、いや、其れは………! ハイ! 此方誠十郎!」

 

何と返せば良いかと誠十郎が必死に考えていた所へ、天の助けとばかりに帝劇から通信が入る。

 

「! ホントですか!? 分かりました! 直ぐ伝えます!! 皆ー! ユイくんが目を覚ましたそうだ!!」

 

「! ホントですか!?」

 

「! ユイ!………良かった………ユイ」

 

其れは、昏睡状態だったユイが目覚めたと言う連絡であり、誠十郎が即座に皆へ伝えると、さくらが声を挙げ、シャオロンも漸く立ち上がって安堵の表情を浮かべた。

 

「コレで1件落着だな」

 

「ええ………あ! 浮かびました! 脚本のアイデア!!」

 

初穂に返事したクラリスが、新たな脚本のアイデアを思い付く。

 

「じゃあ、最後にアレをやって帰る」

 

「良し! じゃあ、行くか!」

 

あざみがそう言い、誠十郎が音頭を執る。

 

「せーの!!」

 

「「「「「「勝利のポーズ、決めっ!」」」」」」

 

シャオロンと共に勝利のポーズを決め、花組はユイ達の待つ帝劇へと帰還したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後ユイは、経過も順調で程無く退院。

 

破壊されていた神龍軒も、お詫びも兼ねた帝都市民達の手で再建。

 

上海華撃団は、正式にウルティメイト華撃団への参加を表明し、設備も再び使用可能となった。

 

そして帝劇では、クラリスが今回の事件からインスピレーションを受けて執筆した新たな脚本の劇………

 

『怪獣使いと少年』が公開された。

 

差別や未知なるものへの恐怖心、集団心理の恐ろしさを一切オブラートに包まず、生々しく描写したこの作品は、“帝劇始まって以来の異色作”として帝都市民に衝撃を与えた。

 

其れと同時に、帝都市民達の心に深く刻まれる事となり、人々はこの話を“反面教師”とし、人に優しく在る様に誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

あざみ「お待たせ。やっと、あざみの出番。

 

でも、あざみは忍者としては、まだまだ実力不足。

 

その所為で、隊長が………!

 

やっぱり、私じゃ………皆を守れないのかな?

 

次回『新サクラ大戦』

 

第4話『仮面の下』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

あざみは、本物の忍者になれる………?」

 

???「フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3.5話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『宇宙超人 スチール星人・ソドロ』

 

身長:1.75メートル~49メートル

 

体重:60キロ~2万8000トン

 

能力:頭部から放つ怪光線と高温火炎

 

初登場作品:ウルトラマンA第40話『パンダを返して!』

 

当時大流行していたパンダを盗みにやって来たという、変わった星人。

 

犯行時は人間に擬態しているが、時速60キロ以上で走る事が出来る。

 

パンダグッズに飽き足らず、本物のパンダを母星に密輸しようとしたが、Aに倒される。

 

尚、スーツは1、2話で使われたセパレートタイプのAのスーツを改造したもの。

 

実はオーブにて、写真でだがさらりと再登場していたりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『暗闇宇宙人 カーリー星人・ジャッパー』

 

身長:2.3メートル~58メートル

 

体重:160キロ~2万8000トン

 

能力:両肩の鋭い角での突進、電撃、ビーム

 

初登場作品:ウルトラマンレオ第6話「男だ! 燃えろ!」

 

レオ初期に登場した通り魔宇宙人の1人。

 

その鋭い角で次々に女性を襲い、MAC隊員も殉職させた。

 

等身大と巨大時で姿がまるで違う。

 

この星人への対策として、レオ(ゲン)はセブン(ダン)からかの有名なジープ特訓を受ける。

 

最後は突進を躱されて動けなくなった所で角を切断され、その切断された角を弱点の眉間に突き刺されて倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『奇怪宇宙人 ツルク星人・ギリツ』

 

身長:2.4メートル~54メートル

 

体重:50キロ~2万トン

 

能力:両腕の鋭利な刃

 

初登場作品:ウルトラマンレオ第4話「涙よさよなら…」、第4話「男と男の誓い」

 

レオ初期に登場した通り魔宇宙人の1人。

 

やはり等身大と巨大時で姿がまるで違う。

 

両腕の刃で次々と人々を惨殺し、レオの犯行に見せかけようとしたのか、或いは挑発の為にかレオを象った宇宙金属製のレリーフを現場に捨てて行った。

 

その刃の切れ味は抜群で、自動車のドアごと人間を胴体から真っ二つにしてしまう。

 

1度はレオを倒すが、特訓で3段攻撃を身に着けたレオに歯が立たず、最後は両腕を切断され、倒れた所にその腕の刃が突き刺さり死亡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『怪異宇宙人 ケットル星人・スプリー』

 

身長:1.9メートル~49メートル

 

体重:80キロ~2万4000トン

 

能力:ミサイルも発射出来る巨大槍『アトミックランス』

 

初登場作品:ウルトラマンレオ第11話「泥まみれ男ひとり」

 

レオ初期に登場した通り魔宇宙人の1人。

 

等身大と巨大時の差異が小さい。

 

平均年齢が20万歳と言う超高齢の種族。

 

その為、若く繁栄している連中が大嫌いと言う傍迷惑な宇宙人。

 

超高齢とは思えぬ程に身体能力が高く、レオと互角か其れ以上。

 

特に跳躍力が優れているが、其れが災いし、着地の隙を衝かれてレオキックで倒された。

 

尚、有名なレオヌンチャクはこの回で登場した。




新話、投稿させて頂きました。

ウルトラマンレオ、強し!
星人3人を相手に圧倒!
嘗ては1度敗れた相手も、アレから更に強くなったレオの前では敵ではありません。

そしてレオから齎された情報………
やはり何者かが、サクラ大戦の地球に怪獣や星人を呼び寄せている。

一件落着かと思いきや、またも帝都市民達の風評被害に晒されるシャオロン。
しかし、さくらの身体を張った説得と、特別ゲストのダンディ団の活躍で無事解決。
これで上海華撃団も正式にウルティメイト華撃団の仲間です。

次回はあざみ回。
忍者である彼女のメイン回なので、あの宇宙忍者が登場です!
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第4話『仮面の下』
チャプター1『侵略者は誰だ?』


第4話『仮面の下』

 

チャプター1『侵略者は誰だ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

元プレジデントG・現ジェネラルAの執務室………

 

「ほうれぇ、新しい玩具(オモチャ)だぁ」

 

そう言って、執務机の上に1体のスパークドールズを置くジェネラルA。

 

「へへへ、ありがとよ、アゴナの旦那」

 

其れを喜々として受け取ったのは朧だ。

 

「前に貰ったのは、華撃団の連中に盗られちまったからな……すまねえ」

 

「気にするなぁ。代わりは幾らでも有るわぁ」

 

以前、ジェネラルAから貰ったゼットンがクラリスの元へ渡った事を詫びる朧だが、ジェネラルAは気にするな、と返す。

 

「其れよりも、より多くの人間共を苦しめて殺して来い。“この世に破壊と殺戮を振り撒く”………其れこそが降魔であろう」

 

気安い態度で接して来ている朧を咎める事も無く、寧ろ高く買っている様子のジェネラルA。

 

「へへへ、旦那は話が分かるから良いぜ。幻庵の野郎は計画が有るだの、作戦に従えだの五月蠅くて堪んなかったからなぁ」

 

元は()()であった筈の幻庵に対し、グチグチと不満を漏らす朧。

 

「フハハハハハ! 小賢しい策なぞ不要よぉ! 全てを力でケリを着ける事こそが魔の美学! 力こそパワーッ!!」

 

「全くだぜ! ヒャッハッハッハッハッ!!」

 

やがて、2人揃って呵々大笑し始めた。

 

「…………」

 

その様子を、執務室の扉の隙間から幻庵が恨めしそうに覗いていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻庵の執務室………

 

「オノレェッ!! 何故この私を差し置いて、アイツが重宝されるのだ!! あんな、暴れるだけしか能の無い上級降魔の面汚しが!!」

 

不満を露わに執務机に拳を叩き付けるプレジデントG………

 

否、彼の今の名は『ミスターG』

 

ジェネラルAによってWLOF事務総長の座から引き摺り下ろされた幻庵は、現在WLOFの1エージェントに降格されてしまったのだ。

 

そして、ジェネラルAからは“小間使い”の様な扱いを受けている。

 

その姿には、元事務総長だった頃の栄光は欠片も無い。

 

「クソッ! クソッ! クソォッ!!」

 

「ミスターG! お止め下さいっ!!」

 

何度も何度も拳を執務机に叩き付け、机が壊れるのではないかと思われた瞬間に、ミスターIが止めに入った。

 

「ハア………ハア………ハア………」

 

其処で漸く落ち着きを取り戻したミスターGは、荒くなった呼吸を整える。

 

「ミスターG。此処は私にお任せ下さい」

 

「ミスターI………」

 

「“功績を挙げれば良い”のです。文句の無い功績を挙げれば、必ずやジェネラルAもミスターGの事を見直す筈です」

 

自信満々にミスターGにそう語るミスターI。

 

「成程………確かに」

 

其れを聞いて、ニヤリと笑うミスターG。

 

その前提条件自体が既に間違っているのだが、カムバックに燃えるミスターGは思い至らない。

 

「良し! 行け、ミスターI! お前に任せる!! 手段は選ぶな!!」

 

「ハッ! 承知致しました!」

 

ミスターIはそう答えると、ミスターGの執務室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・WLOFの滞在拠点の廊下………

 

(ミスターGが失脚した事で、側近である我々黒服部隊も今や組織内での立場が無い………ミスターGには何としてもトップの座に返り咲いて貰わねば………でなければ、“()()出世の道”は無い!)

 

そんな事を考えながら、足早に廊下を歩くミスターI。

 

如何やら、彼も“自分の欲望”の為に動いており、ミスターGへの忠節なぞコレっぽっちも無い様だ。

 

と、その時………

 

 

 

 

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

 

 

 

足早に歩くミスターIの背後から、奇妙な笑い声が聞こえて来た………

 

「? 何だ?」

 

ミスターIが足を止めて振り返ると其処には………

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

まるで蝉の様な顔をした、両手が巨大な鋏となっている異形の姿が在った。

 

「!? な、何だ貴様はっ!?」

 

驚きながらも、直ぐ様懐から拳銃を抜き放つミスターI。

 

しかし………

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

ミスターIが発砲するよりも早く、異形が両手を向けたかと思うと、鋏の間から赤い光線が放たれた!

 

「!? ギャアアアアアァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

その光線がミスターIに命中したかと思うと、ミスターIは仰け反った姿勢のまま固まる。

 

そして、その身体がグラリと揺れて床に倒れたかと思うと………

 

まるで陶器の様に砕け散った!!

 

バラバラの破片になった“ミスターIだったモノ”は、やがて白い煙を上げて蒸発する様に消えてしまう。

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

其れを見た異形が、またも不気味な笑い声を響かせたかと思うと………

 

その姿がミスターIへと変わり、ニヤリと笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、そんな事は露知らず………

 

帝劇の食堂では………

 

「こ、コレは! 美味いぞおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

誠十郎が口から光線を吐いて、巨大化して帝劇を中から突き破る………

 

………様なイメージが見えるリアクションを執る。

 

「ホント、美味しいです!」

 

「ああ、こりゃ最高だぜ!」

 

「箸が止まりません!」

 

「はむはむ」

 

「フフ、確かに絶品ね」

 

花組の面々も、口々に舌鼓を打っている。

 

「未だ未だ沢山有るから、遠慮しないで食べてね」

 

そんな花組の面々に、ユイがそう言う。

 

「ああ、その通りだぜ」

 

隣には、岡持ちを手にしているシャオロンの姿も在る。

 

「ありがとうございます、シャオロンさん」

 

「気にすんな。初戦突破祝いと詫びも兼ねてんだ」

 

さくらの言葉に、屈託無い笑みを浮かべてそう返すシャオロン。

 

その様子に、以前の剣吞な雰囲気は無い。

 

「如何やら、もう心配無いみたいだな」

 

そんなシャオロンの姿を見て、漸く落ち着いた誠十郎がそう言葉を掛ける。

 

「ああ、老師に散々(しご)かれたのも応えたからな………散々………」

 

しかし、シャオロンは老師………ウルトラマンレオことおおとり ゲンの事を語り始めた途端、顔色を悪くし始める。

 

「? シャオロン?」

 

「あっ!? イケない!!」

 

誠十郎が怪訝な顔をすると、ユイが慌てた様子を見せ………

 

「うわあああっ! 老師~! ゴメンナサイ~ッ! もう生意気言いません! だから、ジープは! ジープは勘弁して下さ~いっ!!」

 

シャオロンは子供の様な声を挙げながら、頭を抱えて半泣きで屈み込んだ。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「ど、如何したんだっ!?」

 

突然のシャオロンの奇行に、花組の面々はギョッとし、誠十郎も困惑する。

 

「シャオロン! 大丈夫! 大丈夫だから!!」

 

「老師~! お願いです~! 止めて下さ~い!!」

 

ユイがそんなシャオロンの隣に屈み込むと、彼の頭を胸に寄せる様に抱き締める。

 

そうしている内に、段々と落ち着きを取り戻すシャオロン。

 

「い、一体全体、コレは………?」

 

「あの日以来、ずっとこの調子なの。“老師”って人の事を思い出す度に、こうなっちゃって」

 

『無理も無えぜ。“()()()()”を受けたみたいだからな』

 

唖然とする誠十郎に、ユイがそう説明すると、ゼロがそう呟く。

 

(ゼロ? 何か知ってるのか?)

 

『昔、師匠(レオ)があのカーリー星人と戦う為に、親父(セブン)から特訓を受けたらしいんだが………如何も其れが、“車に乗った親父に追い回される”ってモノだったらしい』

 

(はあっ!? 車で追い回すっ!? 危険なんてモノじゃ無いだろ!?)

 

“危険”と言うのも生易しいレベルの特訓法に、誠十郎は心の中で絶叫する。

 

『そん時は、かなり切羽詰まってた状況だったらしくてな………師匠も、親父に文句を言える立場じゃ無かったらしい』

 

(………つくづくお前の親父と師匠って、どんな人なんだよ?)

 

そう語るゼロに、誠十郎はレオと未だ見ぬゼロの父親・ウルトラセブンに疑念を募らせるのだった。

 

「………すまねえ、取り乱した」

 

と其処で、漸く完全に落ち着きを取り戻したシャオロンが、立ち上がりながらそう呟く様に言う。

 

「い、いや、大丈夫だ。気にしてないよ」

 

「今日は、もう帰らせて貰うぜ………」

 

「ゴメンね。お皿とかは後で取りに来るから。ホラ、シャオロン」

 

誠十郎が返すと、シャオロンは力無くそう言い、ユイに支えられる様にして帝劇を後にする。

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

何とも言えない表情で、その後姿を見送る花組の面々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、食事を終えた処でサコミズとカオルを連れたすみれが現れ、2回戦の相手が決まった事を告げた。

 

「支配人、次の対戦相手は………?」

 

「次の相手は………『露西亜(ロシア)』の『莫斯科(モスクワ)華撃団』よ」

 

「莫斯科華撃団………」

 

帝国華撃団の2回戦の相手は、『莫斯科華撃団』の様である。

 

「強豪とは聞いてますけど………殆ど情報の無い華撃団ですね」

 

「あの国は昔から秘密主義だしね。華撃団の情報も、出し惜しみして秘匿しているそうよ」

 

クラリスの言葉に、アナスタシアがそう返す。

 

「恐らく、“世界で最も謎に満ちた華撃団”と言っても過言じゃないだろうね」

 

「謎に満ちた華撃団、か………」

 

「事前情報が殆ど無いのはちょっと不安ですね」

 

サコミズの言葉に、初穂とさくらがそう言う。

 

「気後れする積りは無いが………さて、如何戦ったものか」

 

と、誠十郎も考え込む様な素振りを見せると………

 

「………アレ? あざみは、何処行ったんだ?」

 

何時の間にか、あざみの姿が消えている事に気付く。

 

「あ、あれ? さっきまでいましたよね?」

 

「居た筈ですよ? でも、何時の間に………」

 

「時々有るんだよな、彼奴。居なくなる前に、声掛けてくれれば良いのによ」

 

あざみと付き合いの長いクラリス・さくら・初穂がそう言う。

 

「う~ん………まあ、良いか。後で探してみるよ」

 

誠十郎はそう言うと、あざみの事は一旦後回しにする。

 

「兎に角! 次の莫斯科華撃団戦も絶対に勝ちましょう!」

 

其処でさくらが、皆にそう檄を飛ばす。

 

「そうですね。この勢いで………次回公演の方も、上手くやりたいです」

 

「そうね。降魔に加えて怪獣や星人の襲来で、帝都の人達は不安の中に居る筈よ。その人達に笑顔を取り戻すのは、私達“歌劇団”の大切な役目だわ」

 

クラリスの言葉に、アナスタシアが帝国華撃団のもう1つの姿・帝国歌劇団の役割について熱弁を振るう。

 

「アナスタシアの言う通りだぜ! 今必要なのは、皆の笑顔だ」

 

「ええ。私達の公演で、帝都を笑顔にしましょう!」

 

其れを聞いた、初穂とさくらが意気込みを語る。

 

「よーし、燃えて来た! 公演も大成功! 華撃団大戦も大優勝してやるぜ! 行くぜ、皆! 力を合わせて、やり抜くぞ!」

 

「「「「「おーっ!!」」」」

 

初穂の喝に、全員が気合の声を挙げた。

 

「ふふふ………」

 

「…………」

 

そんな花組の姿にすみれは笑みを零し、サコミズも無言で頷いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、その場は解散。

 

誠十郎は書類仕事を片付けると、帝劇内の見回りに出た。

 

すると、中庭にて何やら悩んでいる初穂に遭遇する。

 

『珍しいな。アイツがあんな風に悩んでる姿を見せるなんて』

 

「初穂、如何したんだ?」

 

ゼロが意外そうにする中、誠十郎は初穂に声を掛ける。

 

「ああ………実家から“帰って来い”って連絡が来たんだ」

 

「確か初穂の実家って、神社だったよな?大丈夫か? 何か有ったのか?」

 

実家からの呼び出しと言う事に、誠十郎は不安を抱く。

 

「いや、もう直ぐ“奉納の神楽”の時期だから。毎年この時期にやってるからな。只………“あの親父(オヤジ)”の事だから、そのままアタシに神社を継がせる気かもな」

 

「そんな!?」

 

「心配すんなって。アタシは、未だ花組を辞める気なんて無えよ」

 

思わず声を挙げる誠十郎に、初穂はそう返した。

 

「神社の仕事が嫌いってワケじゃねえ。けど、今は未だ舞台で演じていたいし、何より“帝都の平和”を守らなきゃならねえからな!」

 

「ああ、初穂は花組の大事な隊員だ。若し実家に連れ戻されそうになったら言ってくれ。力になるよ」

 

「へへ、ありがとよ。隊長さん」

 

誠十郎の言葉に、笑顔でお礼を言う初穂。

 

その後、誠十郎は再び見回りへ向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕刻………

 

銀座大通り・銀六百貨店の屋上遊園地………

 

「其れじゃあ、『頭領』。また」

 

「うむ、元気でのう」

 

あざみが『頭領』と呼ぶ赤い仮面の老人に別れを告げ、何時もの様に忽然と姿を消す。

 

「…………」

 

あざみが消えた後も、暫くその場に立ち尽くす仮面の老人。

 

地平線に沈もうとしている夕日で、その老人の影が伸びて行く。

 

と、その時………

 

一瞬だが、その老人の影が………

 

『人ならざる者』の姿となったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

あざみ回の始まりです。

失脚したプレジデントGこと現ミスターG。
自分の為にもミスターGにカムバックして貰おうと動き出したミスターIでしたが………
謎の怪人によってアッサリと殺害されてしまいます。
そしてそのミスターIへと成り済ます怪人。
一体何タン星人なんだ?(笑)

一方、帝劇では上海華撃団と和気藹々とするも、シャオロンはすっかりあの特訓がトラウマになってしまった様子。
強く生きろ(爆)

さて、次なる対戦相手ですが、原作では倫敦華撃団でしたが、この作品では先行登場する莫斯科華撃団とになります。
挟むならこのタイミングしかないなと思いまして。
しかし、莫斯科華撃団との戦いまではちょっと掛かります。
気長にお待ち下さい。

初穂との会話がちょっと変わっておりますが、これは後の初穂回への伏線となってます。

そしてあざみが頭領と呼ぶ人物。
此処には大きな改変が入っています。
楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『望月 八丹斎』

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


チャプター2『望月 八丹斎』

 

バルタンバトラー・ゲカホ 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日・帝劇にて………

 

「………そう言えば、あざみを見ていないな」

 

さくら達とすみれ達に朝の挨拶を済ませた誠十郎が、そう思い立って声を挙げる。

 

『昨日居なくなって其れっきりだったな』

 

「そうだった。忙しくて、つい忘れてたよ」

 

ゼロの指摘に、頭を掻く誠十郎。

 

その後、あざみの部屋へと向かったが不在だったので、気になった誠十郎は帝劇の皆にあざみについて聞いて回った。

 

 

 

 

 

経理室のカオルを訪ねると、令士が『蒸気天国』なるスケベ雑誌を()()で購入しようとしていた事を露見させ………

 

大道具置き場で『キミは堕天使 あのコは悪魔』なるポエミーなクラリスのノートを発見して届けに行くと、中身を見たのか問い詰められ、危うく重魔導の餌食にされそうになり(尚、クラリスもあざみを見ていないそうだ)………

 

舞台にて、アナスタシアの指導で爆発的に演技力を向上させているさくらの姿を目撃し、アナスタシアの指導に感謝を告げた後にあざみについて尋ねたが、彼女も行方を知らなかった………

 

今度は楽屋に移動し、初穂と話し込んでいたさくらに初穂と共に改めてあざみを見なかったか?と尋ねたが空振りだった。

 

 

 

 

 

(ん~~? あざみの奴、何処行ったんだ?)

 

『如何やら、普段から“居なくなるのが常”みてぇだな』

 

全く目撃情報の無いあざみに誠十郎が思わずぼやくと、ゼロがそう言って来る。

 

すると其処で、スマァトロンが鳴った。

 

(ん? こまちさんから電文だ)

 

こまちからの電文が届いたらしく、確認する誠十郎。

 

『助けて! 神山さん!!』

 

電文には本文が無く、題名だけにそう打ち込まれていた。

 

「!? コレはっ!?」

 

『只事じゃ無えぞ! 何か有ったな!?』

 

「クッ!!」

 

誠十郎は、直ぐ様こまちの居る売店へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・売店前………

 

「早く言え。望月 あざみは何処だ?」

 

淡々とした様子で、こまちにそう問い質しているのはミスターI。

 

………その手には、黒光りする拳銃が握られている。

 

「アンタに何を教えられるかい!?」

 

そんなミスターIに対し、気丈に言い返すこまちだが、銃を突きつけられている恐怖は隠せず、足が小刻みに震えている。

 

「こまちさん!」

 

其処へ現れた誠十郎が直ぐ様間に割って入り、こまちを背に回して庇う。

 

「! 神山さん! 助かったわー!」

 

「…………」

 

安堵の息が漏れるこまちとは対照的に、様子の変わらないミスターI。

 

「お前は、確か……?」

 

『あの時、プレジデントGの傍に居た奴だ』

 

「帝国華撃団・隊長、神山 誠十郎………望月 あざみは何処だ?」

 

誠十郎とゼロがミスターIの事を思い出していると、ミスターIは銃口を誠十郎に向けた。

 

「! あざみ!? 何故あざみを!?」

 

「お前が知る必要は無い」

 

あざみが指名された事を誠十郎は問い質すが、ミスターIは冷たくそう返す。

 

「さあ、望月 あざみを出せ」

 

「断る! あざみは帝国華撃団の隊員! 大切な仲間だ!!」

 

「ならば()()

 

ミスターIはそう言い、銃の引き金に指を掛けた。

 

「!?」

 

『誠十郎!!(マズイ! 代わらねえと!!)』

 

反射的に身構える誠十郎と、意識を入れ替えようとするゼロ。

 

その時!!

 

「!? 其れはっ!?」

 

ミスターIが誠十郎の左腕………ウルティメイトブレスレットを見て動揺を見せた。

 

「!?」

 

『何だ………?』

 

突然動揺を見せたミスターIに、誠十郎とゼロは困惑する。

 

「クッ!」

 

そして、今までの態度が嘘の様に踵を返して逃げ去って行った。

 

「何だったんだ………? ん?」

 

突然逃げ出したミスターIに困惑するばかりの誠十郎だったが、其処で足許に1枚の写真が落ちているのに気付く。

 

『アイツが落としたのか?』

 

「そうみたいだな………」

 

何かの手掛かりになるか、と写真を拾い上げると、写っているものを確認する誠十郎。

 

其処には、隠し撮りしたと思われるあざみと、彼女と話していると思われる奇妙な“赤い仮面を付けた老人”の姿が在った。

 

「!? コレは!? あざみ!?」

 

『どうやら、コイツがあざみを探してる理由みたいだな………』

 

「神山さん! 大丈夫かいな!?」

 

誠十郎とゼロがそう言い合っていると、こまちが駆け寄って来る。

 

「こまちさん! あざみを見ませんでしたか!?」

 

其処で誠十郎は、あざみの事を尋ねる。

 

「えっ? あざみはん? さあ~、出掛けたのは見たけど、何処へ行ったかは………」

 

「戻ったら自分の部屋か俺の部屋で待機する様に言って下さい!」

 

こまちが戸惑いながらそう返すと、そう言い残して帝劇から飛び出して行った!

 

「あ、神山さん!………何が有ったんや?」

 

残されたこまちは、只困惑するばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あざみを探し、帝都を走り回る誠十郎(+ゼロ)

 

しかし、1番可能性が高かった『みかづき』が空振りに終わり、神龍軒の方も尋ねてみたが、シャオロン達はあざみを見ていなかった。

 

「あざみ………一体何処に居るんだ?」

 

『誠十郎。“あの写真の場所”は如何だ?』

 

やや焦りを見せ始めた誠十郎に、ゼロがそう言う。

 

「! そうか! 銀六百貨店の屋上遊園地!」

 

誠十郎は、あの写真の場所が銀六百貨店の屋上遊園地であった事を思い出し、直ぐ様其処へと走り出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座大通り・銀六百貨店の屋上遊園地………

 

「あざみの写真に写っていた場所は、この観覧車の近くで間違いない筈だが………」

 

今日は遊園地は営業しておらず、屋上に人影は無かった。

 

「ん? アレは………」

 

そして、誠十郎は観覧車の下にあざみと、あの仮面の老人の姿を発見した。

 

和やかに話しているかの様に見えるあざみと仮面の老人。

 

すると其処で、不意に仮面の老人があざみへ手刀での突きを繰り出した!

 

「! 危ないっ!!」

 

あざみは難無く躱したが、今度は素早く振り下ろしの手刀を繰り出そうとしており、誠十郎は咄嗟に両者の間に割って入り、仮面の老人の手刀を受け止める。

 

すると仮面の老人は、誠十郎の足を払って来た!

 

「!?」

 

『チイッ!!』

 

反応出来ず転ばされそうになった誠十郎だったが、其処でゼロが入れ替わり、普通の人間では有り得ない反応速度で受け身を執って素早く立ち上がった。

 

「!?」

 

誠十郎(ゼロ)のその様に、仮面の老人は僅かに動揺を見せる。

 

「隊長!?」

 

其処であざみが、誠十郎(ゼロ)が現れた事に驚きを示す。

 

「………里の掟41条、驚いても大声を出さない」

 

と、其れを見た仮面の老人が、あざみに注意する様にそう言う。

 

「あう………」

 

途端に、あざみはシュンとした様子を見せる。

 

「! お前は!?」

 

一方誠十郎(ゼロ)は仮面の老人を見て、“何か”に気付いた様な様子を見せる。

 

「………儂は望月流忍術頭領………『望月 八丹斎』じゃ」

 

其処で仮面の老人………望月流忍術頭領『望月 八丹斎』は、そう名乗りを挙げた。

 

『と、頭領?………望月だって? じゃあ若しかして、あざみの………?』

 

八丹斎の言葉に、誠十郎は“或る可能性”に思い至る。

 

「儂は名乗ったぞ。お主こそ何者じゃ?」

 

「………俺は誠十郎。帝国華撃団・隊長の神山 誠十郎だ」

 

()()()()()()()()、八丹斎に向かってそう名乗る誠十郎(ゼロ)。

 

「ああ、あんたが華撃団の隊長さんか。あざみから、全て報告を受けておるよ」

 

其れを聞いて、八丹斎は合点が行った様な様子を見せる。

 

「あざみよ、今日は帰って良いぞ。儂は、隊長さんとちと話が有る」

 

「でも………」

 

八丹斎の言葉に、あざみは渋る様な様子を見せる。

 

「心配するで無い。大丈夫じゃ。取って食ったりはせん」

 

「う、うん………其れじゃあ、隊長。頭領を………よろしくお願いします」

 

八丹斎がそう続けると、あざみは誠十郎(ゼロ)に向かってペコリと頭を下げ、何時もの様にいきなり消えるのではなく、歩いてその場を去って行った。

 

「さて………コレでゆっくりと話が出来るのう」

 

「ああ、俺も“色々と()が有る”からな」

 

『ゼロ? 如何したんだ?』

 

意識を入れ替えたままで、八丹斎に対し警戒を露わにしているゼロに、誠十郎が首を傾げる。

 

「うむ。さて………神山くんと言ったかな? 何か、儂に聞きたい事が有る様じゃが」

 

そう言って、八丹斎は近くに在ったベンチに腰を下ろす。

 

「先ず教えろ。お前とあざみは“如何言う関係”だ?」

 

「儂か? 儂は………あざみの“育ての親”じゃよ」

 

『其れにしては、凄い身の熟しだったな。その仮面も、かなり変だし………正直、“()()育ての親”とは思えないが?』

 

誠十郎が、八丹斎の身の熟しを思い出しながらそう言う。

 

「当然だな。コイツは“人間じゃ無え”んだから」

 

『!? 何っ!?』

 

するとゼロがそう言い、誠十郎は驚愕の声を挙げる。

 

「………やはりお主が()()か」

 

一方、八丹斎も何かを確信したかの様な様子を見せたかと思うと、顔に付けていた赤い仮面を外した。

 

其処に在ったのは“普通の老人”の顔である。

 

 

 

 

 

………だが、しかし!!

 

 

 

 

 

八丹斎の背後に出来ていた彼の“影の形”が変わり始め、()()()()()()となる!

 

その変わった影の中に、ぼんやりと浮かび上がる異形の姿………

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

『!? 宇宙人!?』

 

「ああ、そうだ。俺が知ってる姿とちょいと違うが、コイツは俺達ウルトラマンと因縁深い宇宙人………『バルタン星人』だ」

 

再度驚愕の声を挙げる誠十郎にゼロがそう返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう………

 

其れは、幾度と無く地球侵略を企て………

 

何年にも亘りウルトラマンと戦い続けた星人………

 

『宇宙忍者 バルタン星人』だった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「儂はバルタン星人………またの名をバルタンバトラー・ゲカホ。ウルトラマン………儂を倒しに来たのか?」

 

八丹斎の影の中に浮かんでいるバルタン星人改めバルタンバトラー・ゲカホがそう問い質す。

 

「お前が、他の連中みたいに“この星(地球)を侵略する”って企てるんならな………」

 

『!!』

 

一触即発になると思い、誠十郎に緊張感が走る。

 

「………“侵略”か。()()()()をどれ程繰り返して来たか………」

 

しかし、バルタンバトラー・ゲカホは何処か“遠い目”をしてそう呟く。

 

『えっ?』

 

肩透かしを喰らう事になった誠十郎が戸惑いを見せる。

 

「………何で“宇宙人”のお前が、あざみの()()()()なんだ?」

 

そんな誠十郎の戸惑いを感じながら、ゼロはバルタンバトラー・ゲカホに問い掛ける。

 

「其れは………」

 

何やら言い淀むバルタンバトラー・ゲカホ。

 

「「…………」」

 

両者の間に沈黙が流れる。

 

「『…………』」

 

じっと、バルタンバトラー・ゲカホが口を開くのを待つゼロと誠十郎。

 

「………儂が」

 

やがて、意を決した様に口を開くバルタンバトラー・ゲカホ。

 

「………儂があの子の両親を………『()()()しまった』からじゃ」

 

『!? 何だって!?』

 

バルタンバトラー・ゲカホから語られた衝撃的な言葉に、誠十郎は三度(みたび)驚愕の声を挙げた。

 

「………詳しく聞かせて貰おうか?」

 

対するゼロは冷静なまま、更にバルタンバトラー・ゲカホに問い質す。

 

「アレは………儂がこの星(地球)に辿り着いた時のことじゃった」

 

そして、バルタンバトラー・ゲカホは語り出す。

 

彼が、あざみの両親を………

 

()()()()()()()時の事を………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ミスターIが押し入る様にあざみを探して帝劇へとやって来た。
一先ずは退散させた誠十郎は、すぐさまあざみを探しに掛かる。

そしてやっと見つけたあざみの傍には、彼女の祖父であり望月流忍術の頭領『望月 八丹斎』と会合。
しかし、ゼロはすぐさまその正体を看破。
八丹斎はバルタンバトラー・ゲカホであった。
そして彼の口から語られる衝撃の事実。
あざみの両親を殺してしまったとは如何言う事なのか?

バルタンバトラーと言うのは、カードダス作品の『大怪獣ラッシュ』の映像作品に登場したタイプのバルタン星人です。
如何いう作品かと言うと、所謂ウルトラシリーズ版モンハンですかね。
このバルタンバトラー、かなりスタイリッシュなデザインで一見するとバルタン星人だと分からないくらいですが、映像作品での活躍は凄くカッコいいです。
ググって見るとそのカッコよさが良く分かります。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『あざみの家族』

チャプター3『あざみの家族』

 

バルタンバトラー・ゲカホ 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バルタン星人………

 

母星を、狂った科学者の核実験によって失った流浪の民………

 

やがて、地球へと流れ着いた一団は………

 

“地球を故郷にしよう”と侵略を仕掛けた。

 

だが、その野望は初代ウルトラマンによって阻止された。

 

其れでも、バルタン星人は幾度と無く執拗に地球を狙い、その度にウルトラ戦士に倒される。

 

やがては、ウルトラマンへの復讐も行う様になったバルタン星人。

 

彼等は、日々地球を含めた他星への侵略や、ウルトラ戦士への復讐戦に燃えていた。

 

しかし………

 

そんな戦いの日々に疲れた者も出始めた。

 

ゲカホもその1人だ。

 

そして彼は、戦いを続ける同胞を見限り、一族から脱走したのだ。

 

当然、他のバルタン星人達はこの裏切りを許す筈も無く、容赦無い追撃を掛けた。

 

その追撃から何とか逃げ延びたゲカホは、やがてこの太正時代の地球へ漂着。

 

秘かに侵入を果たせたかに思えたが、追撃を受けて損傷していた彼の宇宙船は大気圏突入後に大破。

 

そのまま墜落する事となり、ゲカホは脱出には成功したものの、宇宙船の墜落地点には人が居り、巻き込まれて死んでしまった。

 

其れこそがあざみの両親であった。

 

あざみの両親の亡骸を確認したゲカホは、その近くに2人が必死に守ったであろう赤ん坊のあざみを発見。

 

責任を感じたゲカホは、その日から『望月 八丹斎』となり、罪滅ぼし(贖罪)の為、彼女を必死に育てて来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座大通り・銀六百貨店の屋上遊園地………

 

『そんな事が………でも、其れは………』

 

「理由は如何あれ、()()()()()()()()()()()()()()()()のは事実じゃ………」

 

バルタンバトラー・ゲカホの所為(せい)では無いと言おうとした誠十郎だったが、其れを制する様にバルタンバトラー・ゲカホはそう言う。

 

『…………』

 

何も言えなくなる誠十郎。

 

「経緯は分かった。けど、何でアイツは“忍者”なんて名乗ってやがんだ? 宇宙忍者と言えば、お前達バルタン星人の異名じゃねえか」

 

其処で、今度はゼロが疑問を呈する。

 

「………物心付いたあざみが、両親の事を知ろうとしないとでも思ったか?」

 

「…………」

 

「最初は、正直に罪を告白しようとも思った………じゃが、出来なかった」

 

其処で八丹斎は遠い目をする。

 

「そして儂は嘘を吐いてしまった………“お前の両親は、忍者の里の掟で長い任務に出ておる”と………『任務が終われば帰って来るから、其れまでにはお前も立派な忍者になるんじゃよ』、と………」

 

「其れであざみの奴は、忍者の修行なんかをしてるワケか………」

 

「そうでも言わねば、生きる事を諦めそうじゃったからの………()()()()を持たせるしか………そうするしか、無かったんじゃ………そして、儂が教えてやれるのは『バルタンの宇宙忍法』だけじゃった………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八丹斎(ゲカホ)の回想………

 

「お祖父ちゃん………お母さんは、未だ帰って来ないの?」

 

「ああ………未だ、任務中との事だ。“我慢して修行しなさい”、と言っておったそうじゃよ」

 

幼いあざみからの問い掛けに、八丹斎は動揺を隠しながらそう返す。

 

だが、あざみに対して嘘を吐く度に、彼の胸にはズキズキと痛みが走っていた………

 

「………うん。分かった。あざみ、頑張る。頑張って、凄い忍者になる! そうすれば………きっと、お母さんも、お父さんも………あざみを、褒めてくれるよね?」

 

「!」

 

そんなあざみの言葉を聞き、更に胸に痛みの走る八丹斎。

 

「居ない間、良く頑張ったって………ギュッとしてくれるよね?」

 

「ああ………そうじゃ。その通りじゃ。その日を目指して、修行あるのみじゃぞ、あざみ!」

 

「うん! 頭領、よろしくお願いします!」

 

真っ直ぐな目で八丹斎を見ながら、あざみはそう言う。

 

「…………」

 

そんなあざみの目が、八丹斎を更に苦しめるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座大通り・銀六百貨店の屋上遊園地………

 

『成程………あざみにそんな過去が………』

 

「だから、あんな風に“忍者として振舞っている”と言う事か………」

 

誠十郎とゼロが納得した様にそう言い合う。

 

「儂は大嘘吐きな上に()()()じゃ………ウルトラマン………儂を倒してくれ。そしてあざみに伝えとくれ………“儂はお前の家族では無く、只の()じゃった”とな」

 

「…………」

 

そう言う八丹斎(ゲカホ)を見る誠十郎(ゼロ)の目が鋭くなる。

 

『! ゼロ! お前………』

 

ゼロが“本当に”八丹斎(ゲカホ)を倒す積りかと思った誠十郎が慌てるが、相手が星人なので止めて良いのか?と躊躇する。

 

しかし………

 

「………やなこった」

 

誠十郎(ゼロ)はそう言うと、八丹斎(ゲカホ)に背を向けた。

 

「!!」

 

『! ゼロ!!』

 

八丹斎(ゲカホ)と誠十郎が驚きを示す。

 

「お前が“あざみを利用している”なら倒す積りだった………だが、お前は間違い無く、『あざみのお祖父ちゃん』………()()だ。アイツから家族を奪う真似なんぞ、したか無えよ」

 

顔だけ振り返り、八丹斎(ゲカホ)を見ながらそう言い放つ誠十郎(ゼロ)。

 

「じゃが! あざみの両親を奪ったのは儂じゃ! 儂は罪を償わなければならん!!」

 

「もう十分に()()()()ぜ………」

 

「何?」

 

「あざみを見りゃ分かる。あんなに“真っ直ぐに育ってる”じゃねえか。其れはお前がアイツを大切にしていたからだろ? だったら………もう其れで十分じゃ無えか?」

 

「ウルトラマン………」

 

「俺達ウルトラマンが倒すのは、“()()()怪獣や宇宙人達”だ………“純粋な子供の()()”は倒したりなんかしねえよ」

 

そう言って誠十郎(ゼロ)は、ヒラヒラと手を振りながらその場から去って行った。

 

「…………」

 

残された八丹斎(ゲカホ)は暫しの間、ベンチに座り込んだまま呆然としていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座大通り………

 

『ゼロ………』

 

「何だ、誠十郎? てっきり俺が、あの爺さんを倒しちまうと思ってたのか?」

 

『いや、其れは………』

 

「ま、今までずっと宇宙人は“敵”として戦って来たからな。お前が躊躇したのも分かる」

 

『…………』

 

図星を衝かれて黙り込む誠十郎。

 

「でも、人間にだって良い奴と悪い奴が居る様に、宇宙人にだって色んな奴が居る。少なくとも、俺はあのバルタン星人が悪い奴だとは思って無え」

 

『………ああ、そうだな』

 

忍者を自称しながらも、根は真っ直ぐで純真なあざみの事を思い出し、誠十郎は同意した。

 

『………じゃ、後は任せたぜ』

 

「えっ? ゼロ?」

 

と、銀六百貨店を出て、銀座大通りに出た所で、ゼロが主導権を誠十郎に返す。

 

「隊長!」

 

すると其処には、誠十郎が出て来るのを待っていたかの様なあざみの姿が在った。

 

「! あざみ!? 帰ったんじゃ無かったのか?」

 

「その………頭領と隊長の事が気になって………」

 

如何やら、2人の事が気になって、帰るに帰れずに居た様だ。

 

「そうだったのか………」

 

「ごめんなさい………」

 

「はは、謝る必要は無いよ」

 

頭を下げるあざみに、誠十郎は笑って返す。

 

「………隊長、頭領は何か言ってた?」

 

「えっ? そ、其れは………」

 

しかし、続くあざみの質問にやや狼狽する。

 

「………やっぱり、お小言を言ってた? いっぱい掟を破ってるから」

 

その様子を見たあざみが、勘違いをする。

 

「ああ、いや! そんな事は言ってないよ! 上手くやってるか、心配してただけさ!」

 

其処で誠十郎は、慌ててそう取り繕った!

 

(ゼ、ゼロ! 如何すれば………!?)

 

『自分で考えろよ。“隊長”だろ?』

 

ゼロに助けを求めるが、(にべ)も無く断られる。

 

(そんな~!)

 

「其れは大丈夫。ちゃんとやってる」

 

誠十郎の心の中での悲鳴等露知らず、あざみはそう返して来た。

 

「あざみには、頭領に教えて貰った忍術が有るんだから」

 

「あ、ああ。あざみは、凄いと思うよ」

 

「ううん。あざみは、未だ未だ………頭領はね、もっともっと………ホントにずーっと、凄い。大ガマや大ヘビを呼んだり、一瞬で姿を消したり………何100人にも分身したり、攻撃されても空蝉(うつせみ)で平気だったり」

 

「そ、そうなんだ………」

 

『後半、思いっ切り“バルタン星人の宇宙忍法”だな』

 

あざみの言葉を聞いたゼロがそう呟く。

 

「あ、信じてないでしょ?」

 

其処であざみは、誠十郎が自分の言葉を疑っていると感じ、ジト目で見詰める。

 

「(いや、信じてはいるが何と言うか)………流石に、信じられ無いかな?」

 

誠十郎はやや悩んだ後、無難にそう返す。

 

「大ガマとか大ヘビとか、幾ら何でも無理に決まっているよ」

 

「その無理を本当にするから、頭領は凄い!………でも、隊長の言う事も分かる。きっと、信じられないのが普通」

 

力説するかに思われたあざみだったが、直ぐに落ち込んだ様子を見せる。

 

「あざみ………?」

 

「頭領の話をすると、皆今の隊長みたいな目をするんだ。忍者なんているワケ無いって。何バカな事を言ってるんだ?って」

 

「あざみ………」

 

「でも、忍者は絶対に居るんだ。何より、()()()()()()()()()から」

 

そう言うと、あざみは誠十郎に背を向けて歩き出す。

 

「! あざみ! 待ってくれ………!」

 

誠十郎が慌てて後を追おうとしたその時!!

 

「見付けたぞっ!!」

 

そう言う台詞と共に、ミスターIが多数の黒服エージェント達を引き連れて、忽ち誠十郎とあざみを取り囲んだ!!

 

「!!」

 

「! お前は!?」

 

咄嗟に、あざみを庇う様に立つ誠十郎。

 

「望月 あざみ………大人しく我々と一緒に来て貰おうか。(ついで)に貴様もな、神山 誠十郎」

 

懐から取り出した銃を2人に向けながら、ミスターIはそう言い放つ。

 

「貴様、正気か!? こんな街中で!?」

 

白昼堂々、しかも人通りの多い大通りでこんな行動に出たミスターIの暴挙を信じられず、誠十郎が叫ぶ。

 

こんな事をすれば、益々WLOFの立場が悪くなるばかりである。

 

『WLOFのエージェント』としては、信じられ無い行動だった。

 

「何だ何だ?」

 

「あの連中、WLOFの奴等か?」

 

「囲まれてるって、帝劇の人じゃないか?」

 

誠十郎の思った通り、通行人達が誠十郎達を取り囲んでいるミスターI達に不審の目を向ける。

 

「ミ、ミスターI! 民衆の目が………」

 

「この2人を連れて行け」

 

エージェントの1人が人々の視線が向けられている事を告げるが、ミスターIは気にする様子も無く、淡々とそう言い放つ。

 

「ミスターI! 我々の目的は『プレジデントGの復帰』です! こんな事をしていたら、益々………」

 

と、エージェントが更に言葉を続けた瞬間………

 

銃声が響き、そのエージェントの額に穴が開いて、血飛沫を撒き散らしながらバタリと倒れた。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

ギョッとする誠十郎達とエージェント達。

 

「………命令に従わない者は必要無い」

 

そのエージェントの死体を、無感情な眼差しで見下ろすミスターI。

 

握っている拳銃の銃口からは硝煙が立ち昇っている。

 

「!? キャアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

「人殺しーっ!!」

 

何の前触れも無く、エージェントの1人を撃ち殺したミスターIを見た人々が悲鳴を挙げて逃げ惑い始める。

 

「酷い………」

 

「貴様! 本当に気が狂ったのか!? 仲間の命を何だと思ってる!?」

 

あざみが目を背け、誠十郎はミスターIにそう怒りの声をぶつける。

 

だが………

 

「命? 何だ、ソレは? 命とは何だ?」

 

「!? なっ!?」

 

ミスターIは、まるで“()()()()()が理解出来ていない”かの様な言葉を返し、誠十郎は思わず絶句した。

 

『コイツ………まさか!?』

 

そして、ゼロはミスターIに“或る疑念”を抱いた。

 

「もう1度言う………望月 あざみ、神山 誠十郎………我々に従え。其れとも………?」

 

と其処でミスターIは、逃げ惑う帝都市民達に銃口を向ける。

 

如何やら従わない場合、今度は帝都市民達を撃つ積りの様だ。

 

「! 待て! 分かった! 言う通りにする!!」

 

「其れで良い………」

 

慌てて誠十郎が叫ぶと、ミスターIは不気味な笑みを浮かべて銃を下ろした。

 

「………あざみ、すまない」

 

「大丈夫………でも、コイツ………絶対におかしい」

 

帝都市民達を守る為とは言え、巻き込んでしまった事を謝罪する誠十郎と、ミスターIの異常さに何処か恐怖を感じているあざみ。

 

「コイツ等を連れて行け………」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

ミスターIの命令に、一瞬ビクリとしながらも従うエージェント達。

 

ハッキリ言って、彼等も逃げ出したいと思っているが、逆らえば“撃ち殺されたエージェントと同じ目に遭う”と思い、逆らう事が出来なかった。

 

誠十郎とあざみは、両手を後ろに回された上で手錠を掛けられ、エージェント達によって連行される。

 

「………フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………」

 

その様子を見ていたミスターIの口から、不気味な笑い声が漏れたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ゲカホがあざみの両親を殺してしまったと言った事………
それは彼がバルタンの一族から脱走し、このも星へと流れ着いた際の事故によるものだった。
自分を倒してくれと言うゲカホに、ゼロはあざみ家族は倒せないと言って去る

そして待っていたあざみと共に帰路についた誠十郎(+ゼロ)だったが………
そこへミスターIが強襲。
帝都市民を盾にしたやり方に逆らえず、捕らわれの身となる2人。
果たして、ミスターIに何が起こったのか!?(棒読み)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『あざみとバルタン星人』

チャプター4『あざみとバルタン星人』

 

バルタンバトラー・ゲカホ

 

バルタン星人・アシサ 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・地下………

 

作戦司令室………

 

「神山隊長とあざみが攫われた!?」

 

戦闘服姿で作戦司令室に集まった花組の中で、さくらがそう驚きの声を挙げる。

 

「市民からの通報です。“WLOFのミスターIを中心としたエージェント達によって拉致された”と」

 

「WLOFのエージェントに!?」

 

カオルがそう説明すると、今度はクラリスが声を挙げる。

 

「如何言う事なの? そんな事をしたら益々支持を失うだけよ」

 

WLOFの行動の意味が分からず、僅かに困惑した様な様子を見せるアナスタシア。

 

「分からんわ。あてにいきなり銃を突き付けて来る様な奴やで。もう狂っとるんちゃうか?」

 

「…………」

 

こまちの身も蓋も無い言葉に、アナスタシアは何処か複雑な表情を見せる。

 

「兎に角! 直ぐに助けに行くぞ!!」

 

初穂が話をそう纏め、誠十郎とあざみを取り戻しに出撃しようとする。

 

と、その時………

 

司令室に警報が鳴り響いた!

 

「!? 魔襲警報!? 降魔だわ!」

 

「そんな! こんな時に………!」

 

最悪なタイミングでの降魔の出現に、さくらは思わずそう声を挙げる。

 

「皆、落ち着いて」

 

「“隊長が居ない時”だからこそ、各人の技量が試される。大丈夫、冷静に対処すれば何とかなる」

 

「「「「!」」」」

 

すみれとサコミズの言葉で、さくら達は動揺を収める。

 

(だが、神山くんと望月くんが連れ去られたタイミングでの降魔出現………果たしてコレは偶然なのか………?)

 

しかしサコミズは、内心で“降魔の出現タイミング”に疑念を抱いていた。

 

「今は降魔の迎撃を優先します。神山くんは後で必ず来るわ………帝国華撃団・花組! 出撃っ!!」

 

「「「「了解!」」」」

 

先ずは現れた降魔への対処を優先し、すみれの号令で出撃する花組だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

誠十郎(+ゼロ)とあざみは………

 

「こんな事になるとはな………」

 

護送車に乗せられ、後ろ手に手錠を掛けられた誠十郎がそう呟く。

 

「…………」

 

隣に座っているあざみも、同じ様に後ろ手に手錠で拘束されていた。

 

其処で、不意に護送車が停まる。

 

「! 停まった………?」

 

更に其処へ、“外で何かを話している様な声”が聞こえて来る。

 

「………あの仮面の男を捕まえろ。中の2人を餌に誘い出せ」

 

耳を澄ましていると、ミスターIのそう言う声が聞こえて来た。

 

「! 仮面の男………まさか、アイツ等の狙いは!?」

 

「頭領………?」

 

あざみが驚きに目を見開いていると、何人もの足音が離れて行く。

 

「! 駄目っ!!」

 

途端にあざみが立ち上がったかと思うと、その手から手錠がスルリと外れる。

 

「!? あざみっ!?」

 

誠十郎が驚きの声を挙げた瞬間、あざみは天窓を突き破って車外へと飛び出して行った!!

 

「あざみ! 待つんだっ!!」

 

「!? 捕虜が逃げたぞ! 捕まえろ!!」

 

「撃て! 構わん! 発砲しろっ!!」

 

と、見張りに残っていたと思われるエージェント達の声が聞こえたかと思うと、続いて銃声が響いて来る。

 

「! あざみ!!」

 

『誠十郎! 代わるぞっ!!』

 

すると其処で、ゼロが意識を交代。

 

「ハアッ!!」

 

手錠を力任せに引き千切る!

 

「オウリャアッ!!」

 

そして、頑丈そうな扉に向かってケンカキックを繰り出すと、分厚い扉が木の葉の様にブッ飛んだ!!

 

「「ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」」

 

丁度扉の前に居た、残っていたエージェント2人が巻き込まれて一緒にブッ飛ばされた後、外れた扉の下敷きになった。

 

「あざみ!」

 

誠十郎(ゼロ)はそれを気にする事無く、あざみの元へと急いだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・ミカサ記念公園………

 

「漸く見付けたぞ………」

 

八丹斎を包囲し、拳銃を向けているエージェント達の中に居たミスターIがそう言う。

 

「何じゃお主達は?」

 

そんなエージェント達を見据えながら、飄々とした様子を見せる八丹斎。

 

「望月 八丹斎………いや、“バルタン星人”のゲカホ。貴様を殺す」

 

すると、ミスターIが何と八丹斎の正体を看破して見せた。

 

「!? 星人!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

途端に、エージェント達の顔にも驚愕が浮かぶ。

 

「………貴様、さては………」

 

ミスターIに向ける八丹斎の視線が鋭くなる。

 

「動くな、星人め! 妙な真似をしたら………」

 

と、八丹斎の正体が星人であると知ったエージェントの1人が、恐怖からか拳銃の安全装置を解除する。

 

その途端………

 

「勝手なマネをするな………」

 

「ゲバアッ!?」

 

そのエージェントに、ミスターIが裏拳を喰らわせる。

 

余りの威力に、エージェントの首の骨が圧し折れる。

 

ブッ飛ばれたエージェントは、地面に倒れてピクピクと痙攣していたかと思うと、やがて動かなくなる。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

またもや仲間の命をアッサリと奪ったミスターIに、エージェント達は更なる恐怖に包まれる。

 

「………()()()()()“命を命とも思わん”奴め」

 

「命? フォッフォッフォッフォッ! ゲカホ………この星で暮らす内に、随分と“要らぬ感情”を覚えた様だな」

 

そんなミスターIを睨み付ける八丹斎だが、ミスターIは嘲笑で返す。

 

と、其処へ………

 

「頭領!!」

 

突然、八丹斎の傍にあざみが現れる。

 

「!? あざみ! 何故来たっ!?」

 

あざみの登場に、八丹斎は驚きを露わにする。

 

「!? 貴様はっ!?」

 

「如何やって逃げ出した!?」

 

捕らえていた筈のあざみが現れた事に、エージェント達も驚愕する。

 

「ほほう? コレは丁度良い。貴様も1人で死ぬのは寂しかろう。ソイツも一緒に送ってやろう」

 

「! 止めろっ! この娘は関係無いっ!!」

 

「“裏切り者の味方は皆殺し”だ」

 

必死に叫ぶ八丹斎に、ミスターIは冷たくそう返す。

 

「裏切り者………?」

 

一方あざみは、ミスターIが八丹斎の事を“裏切り者”と言った事に首を傾げる。

 

「ミスターI! さっきから何を言っているのです!?」

 

と、周りに居たエージェント達も、ミスターIの言葉の意味が分からず困惑を示す。

 

すると………

 

「“茶番”は此処までとしよう………フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ」

 

ミスターIが両腕を上げ、不気味な笑い声を響かせ始めたかと思うと………

 

その姿が『バルタン星人』となった。

 

「ミ、ミスターI!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

「!? 星人!?」

 

その様子に驚愕するエージェント達とあざみ。

 

「やはりお前か………『アシサ』」

 

しかし八丹斎だけは、そのバルタン星人………『アシサ』の姿を見てそう呟く。

 

「フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………裏切り者は逃しはしない。決してな」

 

バルタン星人・アシサは、不気味な笑い声を響かせながら言い放つ。

 

「う、動くなっ! 星人っ!!」

 

「ミスターIを何処へ遣ったっ!?」

 

と其処で、エージェント達が一斉にバルタン星人・アシサへと銃を向ける。

 

「フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………」

 

しかし、エージェント達が発砲するよりも早く、バルタン星人・アシサが両手の鋏から赤色凍結光線を薙ぎ払う様に発射!

 

「「「「「「「「「「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」」」」」」」」」」

 

エージェント達が悲鳴を挙げると、その身体が忽ち固まり出す。

 

やがて完全に固まると次々にグラリと倒れ、陶器の様に砕け散って行く。

 

「!?」

 

「見るんじゃない、あざみ!」

 

凄惨な光景に、八丹斎は咄嗟にあざみの目を覆った。

 

「お前達にもう用は無い………」

 

砕け散ったエージェント達の破片が蒸発する様に音を立てて消滅しているのを見ながら、冷たくそう言い放つバルタン星人・アシサ。

 

「アシサ………貴様」

 

「その怒りの感情は何だ、ゲカホ? 嘗てはバルタン戦士として名を馳せ、数多(あまた)の敵を(ほふ)ったお前が………」

 

八丹斎の怒りの形相に、バルタン星人・アシサは“理解出来ない”と返す。

 

「儂はもう“疲れた”んじゃ………出来る事なら、この星で平穏に暮らしたかった………じゃが、犯した罪からはやはり逃れられん様じゃのう」

 

「! 頭領!?」

 

八丹斎がそう言うと、目を覆っていた手を外しながらあざみが何かを言おうとしたが………

 

「下らん感情だ。お前も老いには勝てぬか………死ね」

 

其れよりも早く、バルタン星人・アシサが両手を八丹斎とあざみに向け、白色破壊光弾を次々に放った!!

 

「!?」

 

「あざみっ!!」

 

驚くあざみの前に八丹斎が躍り出たかと思うと、その姿が『異形』………バルタンバトラー・ゲカホへと変わった!!

 

その姿はバルタン星人・アシサとは異なり、全身が甲冑の様な機械的・未来的な姿になっており、“左手が()()()()()になっている”。

 

バルタンバトラー・ゲカホは、右腕の鋏から刃を出現させると、高速で連続斬撃を繰り出し、白色破壊光弾を全て斬り落とした!!

 

「やっと“その気”になったか、ゲカホ。その姿を見るのも久しぶりだ。バルタン一族の中でも稀にしかいない『戦士タイプ』のな」

 

バルタン星人・アシサは、バルタンバトラー・ゲカホの姿を見ながらそう言い放つ。

 

「頭領………」

 

「………あざみ、スマンのう。儂は“お前の祖父”等では無い………バルタンバトラー・ゲカホ、其れが『儂の正体』じゃ。()()()()()()()()()()()()()()()な」

 

あざみに背を向けたまま、バルタンバトラー・ゲカホは遂に自らの罪を告白した。

 

「憎んでくれて構わん。寧ろ其れが()()じゃ。儂は“お前を騙し続けておった”んじゃ」

 

俯き加減で、そう言葉を続けるバルタンバトラー・ゲカホ。

 

全てが終わった………

 

そんな諦観の境地に達した様に。

 

だが………

 

そんなバルタンバトラー・ゲカホの背に、軽い衝撃が走った。

 

「!? あざみっ!?」

 

あざみが抱き着いて来たのだ。

 

「………知ってた」

 

「!? 何っ!?」

 

「頭領が()()()()()()()()()()()()()事………実は宇宙人だって事………“全部()()()()”」

 

驚愕するバルタンバトラー・ゲカホに、あざみは彼の背に抱き着いたままそう言った。

 

「ならば、何故………!?」

 

「でも、其れを言ったら………“頭領が居なくなっちゃう”と思ったから」

 

「!?」

 

「頭領が居なくなったら………あざみは()()()1人になっちゃう………そんなの嫌だ………だから言え無かった」

 

バルタンバトラー・ゲカホを抱き締めているあざみの腕に力が籠る。

 

「あざみ! じゃが、儂はお前の両親の仇………」

 

「違う! 頭領は頭領! “あざみの大切な………()()()()()()だよ”!!」

 

「! 儂を! 儂を()()………お祖父ちゃんと呼んでくれるのか!?」

 

「当然だよ! 宇宙人でも関係無い! “あざみにとって、頭領は()()()()()”だよ!!」

 

「! あざみっ!!」

 

バルタンバトラー・ゲカホは振り返り、あざみを抱き締め返す。

 

その目からは熱い涙が溢れている。

 

「理解不能な感情………やはり貴様は“老い()れ”だ」

 

そんな感動的な光景を意にも介さず、バルタン星人・アシサは両手を2人に向け、再び白色破壊光弾を放とうとする。

 

「「!?」」

 

バルタンバトラー・ゲカホとあざみは離れると、お互いに武器を構えて立ち向かおうとする。

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

回転しながら飛んで来た刀が、バルタン星人・アシサの腕を弾いた!!

 

「!?」

 

バルタン星人・アシサは驚きながらも、宙に舞う刀を目で追う。

 

「………無粋な真似してんじゃ無えよ」

 

やがて、その刀は現れた主………誠十郎(ゼロ)の元へと戻り、彼は其れを右手でキャッチすると逆手に握る。

 

「君は!?」

 

「! 隊長っ!!」

 

「何者だ!?」

 

バルタンバトラー・ゲカホ、あざみ、バルタン星人・アシサの声が誠十郎に飛ぶ。

 

「俺は誠十郎! 帝国華撃団・花組の隊長! 神山 誠十郎だっ!!」

 

誠十郎(ゼロ)は、もう1本の刀を左手に逆手に握り、高らかにそう名乗るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

拉致された誠十郎とあざみを取り返しに行こうとした花組だったが、降魔の出現によって阻まれる。

一方、捕らわれの身となった誠十郎とあざみは無事脱出。
遂にミスターI(偽)の正体が明らかに………
まあ、バレバレでしたけど、バルタン星人です。
姿は初代をイメージして下さい。

そのバルタン星人・アシサの狙いはやはりバルタンバトラー・ゲカホ。
裏切り者の始末に来たアシサの前で、ゲカホはあざみに己の正体と罪を告白。
しかし、何と!
あざみは全てを知っていた!
例え宇宙人であっても………ゲカホはあざみの祖父であり、唯一の家族だったのだ。

感動的な場面に水を差すアシサに、誠十郎(ゼロ)が立ち向かいます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『宇宙の忍者』

チャプター5『宇宙の忍者』

 

バルタンバトラー・ゲカホ

 

バルタン星人・アシサ

 

四次元ロボ獣 メカギラス・荒吐 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・ミカサ記念公園………

 

「貴様………やはり」

 

現れた誠十郎(ゼロ)を見て、バルタン星人・アシサは“何か”を確信した様子を見せる。

 

「爺さん、あざみ………コイツは俺に任せな」

 

そんなバルタン星人・アシサを見据えながら、誠十郎(ゼロ)は二刀を構える。

 

「隊長」

 

「ウル………神山くん」

 

其処で、バルタンバトラー・ゲカホは八丹斎の姿に戻ると、あざみと共にその場を少し離れる。

 

「オノレ………邪魔をするか!」

 

バルタン星人・アシサは忌々し気に叫んだかと思うと、誠十郎(ゼロ)目掛けて赤色凍結光線を放つ。

 

「おっと!」

 

しかし、誠十郎(ゼロ)は其れを跳躍して回避。

 

そのままバルタン星人・アシサの頭上を飛び越えて、背後に降り立つ。

 

「セエヤッ!!」

 

「チイッ!」

 

そして素早く逆手に握った二刀を振るうが、バルタン星人・アシサは左手の鋏で受け止める。

 

「フオォッ!!」

 

「フッ!」

 

反撃にと、身体を回転させる様にして右手の鋏で横薙ぎを繰り出すが、誠十郎(ゼロ)はバックステップして躱す。

 

「フォッフォッフォフッ!」

 

その誠十郎(ゼロ)目掛けて、白色破壊光弾を連射するバルタン星人・アシサ。

 

「フッ! ハッ!」

 

誠十郎(ゼロ)は連続バク転で躱して行く。

 

「セエヤッ!!」

 

そして連射が途切れた瞬間、二刀を投擲した!

 

「フオォッ!!」

 

高速回転しながら飛んで来た二刀を、バルタン星人・アシサは両手を振って弾き飛ばす。

 

だがその瞬間、誠十郎(ゼロ)は一瞬で距離を詰める。

 

「!?」

 

「おうりゃあっ!!」

 

そして、強烈なボディブローを喰らわせる!!

 

「!?」

 

「ハアッ!!」

 

思わずのめり込んだ状態のバルタン星人・アシサを、脇に抱え込む様にして捕まえる誠十郎(ゼロ)。

 

「神山ハリケーンッ!!」

 

そして、ウルトラハリケーンならぬ“神山ハリケーン”で竜巻を発生させながら、高速回転させて上空へと投げ飛ばす!!

 

「フォッフォッフォフッ!?」

 

上空高くへと舞い上がったバルタン星人・アシサに、先程弾いた二刀が襲い掛かる!!

 

「!?」

 

×の字に斬り裂かれた、バルタン星人・アシサはそのまま地上へと落下し、地面に叩き付けられた!!

 

(良し!)

 

『いや、()()だ!』

 

(!? 何っ!?)

 

勝ったと思う誠十郎だったが、ゼロは油断無く二刀を手元に戻して構える。

 

すると、倒れていたバルタン星人・アシサの背中が割れ、其処からまるで脱皮の様に“無傷の”バルタン星人・アシサが姿を見せた!

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

(!? 脱皮した!?)

 

『“バルタンの宇宙忍法”だ』

 

誠十郎が驚き、ゼロがそう返した瞬間………

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

バルタン星人・アシサが2体に分裂した。

 

(!? 増えたっ!?)

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

誠十郎が驚いていると、バルタン星人・アシサは更に3体、4体と分裂。

 

そして青く半透明の姿になると、誠十郎(ゼロ)の周りを回り始めた。

 

(ど、どれが本物なんだっ!?)

 

『落ち着け、誠十郎。分身は奴の十八番(おはこ)だ。“心の眼”で見極めろ! お前と俺なら出来る!』

 

(! 心の目で………)

 

其処で誠十郎(ゼロ)は目を閉じ、意識を集中させ始める。

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

そんな誠十郎(ゼロ)を小馬鹿にする様に、不気味な笑い声を響かせるバルタン星人・アシサ。

 

「…………」

 

だが、誠十郎とゼロは其れを無視して更に意識を集中させる。

 

すると、目を閉じている2人の脳裏に、分身して自分達の周りを回っているバルタン星人・アシサのイメージが浮かび上がる。

 

その分身が1体、また1体と消えて行き………

 

やがて1体だけが残った状態となる。

 

「!! 其処かっ!!」

 

誠十郎(ゼロ)は、その1体が居た場所に向かって蹴りを繰り出す!

 

「フォッ!?」

 

その蹴りは、見事にバルタン星人・アシサの本体を捉え、海際のフェンスまでブッ飛ばした!

 

ぶつかったフェンスが、飴の様にグニャリと変形する。

 

「やった!」

 

「嫌………未だじゃ」

 

あざみが思わず歓声を挙げたが、八丹斎が厳しい表情のままでそう言う。

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

と、のそのそと起き上がっていたバルタン星人・アシサが再び脱皮。

 

元気な状態となり、またも仕切り直しとなる。

 

(駄目だ! コレじゃキリが無い!)

 

『チッ! 変身して光線が撃てれば1発だってのに………』

 

誠十郎の言葉に、ゼロが愚痴る様に返す。

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

すると其処で、バルタン星人・アシサの方が勝負を着けようと巨大化した!!

 

「! 野郎っ!!」

 

フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………

 

変身出来ない誠十郎(ゼロ)を踏み潰そうと、バルタン星人・アシサは右足を上げる。

 

 

 

 

 

しかし、次の瞬間!!

 

 

 

 

 

その身体に“何か”が命中したかと思うと、大爆発を起こした!!

 

「!? 何だっ!?」

 

誠十郎(ゼロ)が驚きの声を挙げると、やがて爆煙が晴れて来て………

 

黒焦げで瀕死となっているバルタン星人・アシサの姿が露わになった。

 

(? 如何してまた脱皮しないんだ?)

 

バルタン星人・アシサが、脱皮で“ダメージを回復しようとしていない”事に疑問を持つ誠十郎。

 

「まさか………?」

 

と、ゼロは“或る可能性”に思い至る。

 

其処へプロペラ音が聞こえて来て、ミカサ記念公園の上空に翔鯨丸が進入して来た。

 

機体に備え付けられている主砲の砲口からは、硝煙が立ち昇っている。

 

(翔鯨丸! さっきの砲撃の正体は翔鯨丸か!!)

 

誠十郎が、砲撃の正体が翔鯨丸の主砲であった事を察していると………

 

「コ、コレは………スペ………シウム………」

 

バルタン星人・アシサがそう呟き、その言葉を最期として大爆発を起こし、木っ端微塵となった!!

 

「ハハハ! 見たか!! イデさん特製の『スペシウム弾頭弾』の威力を!! “ウルトラマンの光線を解析して作り出した元素エネルギー”を込めた特製砲弾だぞ!!」

 

「“霊子エネルギーを『所定の方法』で変換すると、ウルトラマンの光線と同じ元素エネルギーになる”って事を発見した俺の事も忘れないで下さいよ、先生」

 

「分かってる、分かってる」

 

翔鯨丸からイデと令士の声が響いて来る。

 

(イデさん! 令士! さっきのはイデさんと令士の発明か!)

 

『俺の光線を解析するとは………やるな、アイツ等』

 

合点が行った様子を見せる誠十郎と、イデ達の技術力の高さに素直に感心するゼロ。

 

「神山くん! 緊急事態よ! 急いで天宮さん達の救援に向かって頂戴!!」

 

すると其処で、今度はすみれの声が翔鯨丸から響いて来た。

 

(救援? さくら達に何か有ったのか!?)

 

『みてぇだな………身体返すぜ、誠十郎』

 

やや焦りが感じられるすみれの声から、かなり拙い状況である事を誠十郎が推察すると、ゼロが主導権を返す。

 

「あざみ! 行くぞ!」

 

「! うん! 頭領………」

 

誠十郎が呼び掛けると、あざみは一旦八丹斎に向き直る。

 

「あざみ、望月流忍術頭領として申し渡す………“免許皆伝”じゃ」

 

「!」

 

「もうお前に教える事は何も無い………コレからは“忍の”では無く、()()()に従って生きよ」

 

「己の………掟」

 

「そうじゃ。お前こそ………“()()()者”じゃ」

 

あざみをジッと見据え、八丹斎はそう断言した。

 

「!………はい!」

 

其れを聞いたあざみは、表情を引き締めて力強く頷いた。

 

そして、誠十郎と共に翔鯨丸へと乗り込んで行った。

 

「…………」

 

ミカサ記念公園から離れて行く翔鯨丸を見送る八丹斎。

 

其処で彼は、“青と白に塗られ、小さな窓の様な物が3つ付いた機械”を取り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翔鯨丸へと乗り込んだ誠十郎(+ゼロ)とあざみは直ぐ様戦闘服へと着替え、収納スペースに収められている自分達の無限の元へと向かった。

 

「………隊長」

 

と、無限へと乗り込もうとしたところで、あざみが誠十郎を呼び止めた。

 

「ん? 如何した、あざみ?」

 

無限へと乗り込もうとしていた姿勢で止まり、あざみに尋ね返す誠十郎。

 

「隊長………あざみは『本物』になれると思う?」

 

「…………」

 

其れを聞いた誠十郎は無限への搭乗を中断し、あざみに向き直る。

 

「あざみは忍者。本当に、忍者………だけど、誰もあざみが忍者だなんて信じて無い。“本物の忍者”が居るなんて信じてる人はいない」

 

「あざみ………」

 

「頭領は免許皆伝だって言ってくれたけど、誰から見ても、あざみは『ニセモノ』………如何したら、『本物』になれる?」

 

『ニセモノに本物か………』

 

あざみのその言葉で、ゼロはジードの事を思い起こしていた。

 

『誠十郎………」

 

(大丈夫だ、ゼロ。分かってる)

 

ゼロが何かを言おうとしたが、誠十郎は其れを制した。

 

「………その答えはもう出てるじゃないか」

 

「えっ?」

 

誠十郎の言葉に、あざみは驚いた様な様子を見せる。

 

「あざみは八丹斎さんが宇宙人でも関係無い。自分のお祖父ちゃんだ。そう言ってたろ?」

 

「うん………」

 

「つまり、“そう言う事”だ………何が本物で何かニセモノを決めるのは………()()()()なんだ」

 

「自分自身………」

 

「そうだ。あざみが自分の事を忍者だと信じるなら、もう君は忍者なんだ。先ず自分が信じなきゃ、誰も信じてはくれないさ」

 

そう言いながら、誠十郎はあざみの前へ屈み込み、視線を合わせる様にする。

 

「………隊長は? 隊長はあざみが忍者だって、信じてくれる?」

 

「勿論。隊長として、あざみをずっと見て来たんだ。何より………」

 

「? 何より?」

 

「………実はな。ホントは内緒なんだけど、俺はウルトラマンゼロと“友達”なんだ」

 

「!? ええっ!?」

 

誠十郎の思わぬ言葉に、あざみは驚く。

 

「ゼロから聞いたんだけど、バルタン星人は“宇宙忍者”と呼ばれているんだ」

 

「! 宇宙忍者!?」

 

「そうだ。つまり、そのバルタン星人の八丹斎さんから教えを受けたあざみは紛れもなく忍者………いや、宇宙忍者だよ」

 

「あざみが………宇宙忍者」

 

「其れに………ウルトラマンにも忍者が居るそうだ」

 

「! ウルトラマンにも!?」

 

「ああ、フーマって言うらしい」

 

「ウルトラマンにも忍者が………」

 

あざみが嬉しそうに笑う。

 

「だから、俺は………周りが如何思っていようと、あざみが忍者だって信じているよ」

 

「ありがとう………誠十郎!」

 

「ふふふ………ん? 誠十郎?」

 

隊長では無く、名前を呼んで来たあざみに首を傾げる誠十郎。

 

「うん、誠十郎………そう呼んじゃ、駄目?」

 

「勿論、構わないよ。俺も、あざみって呼んでるんだし………ははっ、まあ、お相子ってヤツだな」

 

「………うん!!」

 

あざみが笑顔で頷いた瞬間………

 

『魔幻空間に突入致しますわ! 衝撃に備えてっ!』

 

如何やら現場である上野公園に到着したらしく、すみれのそう言うアナウンスが流れて来た後、翔鯨丸に軽い衝撃が走った。

 

展開されていた魔幻空間内へ突入を果たした様だ。

 

『魔幻空間内に突入!………!? いけないっ!?』

 

と、アナウンスの途中ですみれが焦った様な声を挙げたかと思うと、今度は翔鯨丸に大きな衝撃が走った!!

 

「!?」

 

「わあっ!?」

 

誠十郎とあざみが転びそうになると、船内にレッドアラートが鳴り響く。

 

「何だっ!?」

 

『敵の攻撃を受けた! 飛行を維持出来ない! 不時着する!! 君達は無限で飛び出すんだ!!』

 

イデが、船内放送で誠十郎の声に応えるかの様に言って来た。

 

「! あざみ! すまんっ!!」

 

「えっ!?」

 

誠十郎は戸惑うあざみを無視して抱き上げると、そのまま彼女の機体へと押し込んだ!

 

「! 誠十郎っ!!」

 

「大丈夫だ! 直ぐに俺も出る!!」

 

あざみの声に誠十郎がそう返したかと思うとハッチが閉まり、あざみ機が翔鯨丸から射出された!

 

「! くうっ!!」

 

戸惑いながらも、あざみ機は空中で姿勢を整え、何とか着地する。

 

その直後、翔鯨丸が黒煙を曳きながら、離れた場所へ派手に粉塵を巻き上げながら不時着したのだった。

 

「!? 誠十郎っ!!」

 

誠十郎機が飛び出さなかった事に、あざみの脳裏に一瞬最悪の想像が過る。

 

「何だぁ? 白い機体の奴はくたばったのか? くふふふ、ソイツは大戦果だな」

 

「! その声は………朧っ!!」

 

其処へそう言う声が聞こえて来て、その声が朧のモノである事に気付いたあざみが、声のした方に向き直る。

 

其処には、激しく損傷して火花を散らしているさくら達の無限と、倒れて苦しそうに悶えているゼットン………

 

「ヒヒヒヒヒ………」

 

そして、其れを見下すかの様に不気味に佇んでいる銀色の巨大なメカ怪獣の姿が在った。

 

良く見れば、頭頂部に朧の傀儡機兵・荒吐がくっ付いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其れは嘗て『四次元宇宙人 バム星人』が作った侵略用兵器………

 

『四次元ロボ獣 メカギラス・荒吐』だった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

バルタン星人・アシサと戦う誠十郎(ゼロ)
しかし、宇宙忍法を繰り出すバルタン星人・アシサに対し、あざみの目を気にして変身出来ない誠十郎(ゼロ)は決め手を欠く。
しかし、そこへ翔鯨丸が救援に到着。
何とあのメテオール『スペシウム弾頭』をイデさんと令士が開発。
スペシウムが弱点のバルタン星人に致命的なダメージを与えました。

そして窮地に陥っているさくら達の救援に向かう中、あざみは自らの悩みを誠十郎に打ち明ける。
誠十郎も成長してきてるので、今回はゼロのアドバイスなしであざみを励まします。
ヒーロー自身がヒーローと友達だって言って子供を励ましたりするのって王道ですよね。

だが、突然の攻撃で翔鯨丸が誠十郎を発進させられぬまま不時着。
1人放り出されたあざみの前に待ち構えていたのは朧とメカギラス。
傀儡機兵とロボ怪獣を合体させるって言うのをやってみたかったので、今回の朧の怪獣はロボット怪獣になります。
勿論、荒吐は只くっ付いてるだけではないので、どんな力を見せるかご注目下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『口寄せの術』

チャプター6『口寄せの術』

 

四次元ロボ獣 メカギラス・荒吐

 

汐吹き怪獣 ガマクジラ

 

EXエレキング 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔幻空間内………

 

「あ、あざみか!? 気を付けろ! コイツ………かなり強いぞ!!」

 

愛用のハンマーを杖代わりにして膝を着いている初穂機から、あざみ機にそう通信が飛ぶ。

 

「あざみ! 神山隊長はっ!?」

 

同じ様に愛刀を杖代わりに何とか立っているさくら機からは、誠十郎の事を尋ねられる。

 

「………誠十郎は………翔鯨丸と一緒に………」

 

あざみは答え難そうに、誠十郎が翔鯨丸から飛び出せなかった事を告げる。

 

「!? そんなっ!?」

 

「ヒャハハハハハッ! やっぱりくたばりやがったのか! 呆気無いもんだぜ! 人間てのはよぉっ!!」

 

さくらが顔を青褪めさせると、朧の嘲笑が響き渡る。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

と其処で、漸く立ち上がったゼットンが、メカギラス・荒吐に向かって火球を放つ!

 

「無駄だぁっ!!」

 

しかし火球は、メカギラス・荒吐の頭部に命中するかと思われた瞬間に“光る壁”が出現し、霧散してしまう。

 

「! バリアッ!?」

 

「そらよっ!!」

 

キイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

あざみが驚きの声を挙げた瞬間、メカギラス・荒吐は上顎からミサイルを連射!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

連続でミサイルを浴びてしまったゼットンが、ブッ飛ばされて再び倒れる。

 

「いけないっ! 戻って、ゼットンッ!!」

 

コレ以上は危険だと判断したクラリスが、ゼットンを魔導書へ戻した。

 

「ヒャハハハハハッ! 裏切り者の怪獣野郎の力なんざそんなもんだ! さあ………次はお前達の番だぜ」

 

朧が高笑いを響かせた後、メカギラス・荒吐が花組を見下ろす。

 

「今度ばかりは絶体絶命かしらね………」

 

アナスタシアが、まるで他人事の様にそう呟く。

 

と、其処へ………

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

上空から現れたゼロが、メカギラス・荒吐に向かってウルトラゼロキックを繰り出す。

 

「ああん?」

 

しかし、朧が気怠げな声を漏らすと、ウルトラゼロキックはメカギラス・荒吐に当たる直前でバリアに防がれた。

 

「うおっ!?」

 

そのまま反動で弾き飛ばされるゼロだったが、空中で姿勢を整えて着地する。

 

『何て堅いバリアだ………』

 

「80のサクシウム光線を防いだ、って話は聞いてたが………コイツは厄介かも知れねえな」

 

「出やがったなぁ、ウルトラマンゼロ。あの時、俺様を虚仮(コケ)にしやがった事を死ぬ程後悔させてやるぜぇ」

 

ゼロの姿を見た朧が、憎悪の炎を燃やし始める。

 

如何やら、ペダン円盤に向けて放ったワイドゼロショットに巻き込まれた事を相当逆恨みしている様だ。

 

「へっ! 自業自得だぜ! 大体“周りを見て無かったお(メェ)”が悪いんだろうが?」

 

「うるせぇ! テメェは黙って俺様に()られれば良いんだ! 荒吐っ!!」

 

ゼロの指摘に朧が怒鳴り返したかと思うと………

 

メカギラスの頭部に合体していた、荒吐の蜘蛛を思わせる足が左右に分離して其々、右手・左手へと変形したかと思うと………

 

メカギラスのペンチ状の手が外れ、代わりに荒吐のパーツが変形した右手・左手が合体する。

 

『!? 変形したっ!?』

 

「行くぜぇっ!!」

 

誠十郎が驚きの声を挙げると、メカギラス・荒吐は両手を突き出したかと思うと………

 

何と、拳部分が分離しては生え、分離しては生えを繰り返す事で、無数の拳をゼロ目掛けて放った!!

 

『!? 手がっ!? 幻術かっ!?』

 

「こんなモンッ!!」

 

ゼロは、迫って来ていた無数の拳をエメリウムスラッシュで薙ぎ払う。

 

次々に爆発する無数の拳。

 

しかしその爆発を突っ切って、更に無数の拳がゼロに迫った。

 

「!? うおおおっ!?」

 

バリアを張るのも間に合わず、ゼロの身体に無数の拳が次々にぶつかり、爆発した!

 

「ヒャハハハハハッ! 殺してやるよ! ウルトラマンゼロッ!!」

 

キイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

朧の叫びとメカギラス・荒吐の咆哮が重なり、口部から破壊光線が放たれる!

 

「おわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

自身と周囲に破壊光線が命中し、ゼロは爆炎に包まれる。

 

「「ゼロさんっ!!」」

 

「ぐうっ!」

 

さくらとクラリスの悲鳴が響く中、ゼロは膝を着く。

 

「ワイドゼロショットッ!!」

 

だが怯まず、メカギラス・荒吐に向けてワイドゼロショットを放つ。

 

「無駄だって言ってんだろぉっ!!」

 

だが、やはりバリアで防がれ、本体には届かない。

 

「クソッ!!」

 

『何て強力なバリアなんだ………』

 

ゼロが悪態を吐き、誠十郎も冷や汗を流す。

 

「そうら! 吹き飛びやがれぇっ!!」

 

其処でメカギラス・荒吐は、再び両手をゼロに向け、無数の拳を飛ばす攻撃を仕掛ける!

 

「クッ!!」

 

ゼロがバリアを展開しようとした、その時!

 

「望月流忍法………奥義! 無双手裏剣!!」

 

あざみ機が必殺技を使って、無数のクナイと手裏剣でメカギラス・荒吐の拳を全て叩き落した!!

 

「!? 何ぃっ!?」

 

「! あざみっ!!」

 

「そんな小細工………あざみには通じないっ!!」

 

朧とゼロが驚きの声を挙げる中、着地を決めた機体の中で、あざみはそう言い放つ。

 

「チッ! やるじゃねえか………ああ、認めてやるよ。お前の『忍術』は大したもんだ」

 

其処で不意に、朧はそんな事を言い始めた。

 

「如何だ、俺と組まないか? 絶対に楽しくさせてやるからよ」

 

そして何と、あざみを自らの仲間に誘い始めたではないか。

 

「お断り。あざみはお前の仲間になんかならない」

 

当然、あざみは朧の誘いを一蹴する。

 

「そう言うなって。見てみろよ、ソイツ等を………」

 

朧は満身創痍な花組の面々を指す。

 

「駄目なお仲間さん達だなぁ。隊長さんに至っては先にくたばっちまうしよぉ。コイツ等が今までやってこれたのは全部あざみちゃんのお陰………コイツ等は何も出来ない。一緒に居ても、良い事無いと思うよ?」

 

「…………」

 

「ねえ? 俺と楽しもうよ! こんな奴等無視してさ………ハハハッ!!」

 

あざみの沈黙を肯定と受け取ったのか、朧が得意気に笑う。

 

だが………

 

「ニセモノの笑顔………黙れ!」

 

「何っ!?」

 

「皆は確かに忍術とか使えない………でも! 本当のあざみを見てくれる!! あざみの本当の気持ちを………分かってくれる!!」

 

『あざみ………』

 

「お前の様な奴が皆を嗤うな! 皆は………あざみにとって………“()()()仲間”なんだ!!」

 

「うっ!?」

 

あざみから発せられる本物の迫力に、朧は思わず後退る。

 

「其れにお前は、大きな勘違いをしてる………」

 

「何だとっ!?」

 

「誠十郎は生きてる………あざみの………本物の隊長は死んだりなんかしない!!」

 

確信に満ちた声でそう言い放つあざみ。

 

「貴様あああああ! 俺の誘いを断るだと? じゃあ要らねえよ! 全員纏めて殺してやるぅぅ!!」

 

朧は忽ち激昂し、あざみ機に襲い掛かろうとする。

 

「!!」

 

あざみ機が身構えたその時………

 

突然メカギラス・荒吐の足元に穴が開き、メカギラス・荒吐が勢い良く落ちた!!

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「!? 何だっ!?」

 

『突然地面に穴が!?』

 

朧の悲鳴が響く中、花組とゼロ、誠十郎は驚きの声を挙げる。

 

「フォッフォッフォッ………怒りで我を忘れるとは、修行が足りて居らんのう」

 

と其処で、そう言う声が聞こえたかと思うと、あざみ機の肩に八丹斎が降り立った。

 

「!? お祖父ちゃんっ!?」

 

「爺さんっ!?」

 

『何で此処に!?』

 

「えっ!? 誰?」

 

「「「??」」」

 

あざみとゼロ、誠十郎が驚き、八丹斎と面識の無いさくら達は首を傾げる。

 

「フォッフォッフォッ、“孫が困っておる”のに、助けん祖父は居らんじゃろ」

 

其れに対し、八丹斎は惚けた様に笑いながらそう言い放つのだった。

 

(ジジ)いいいいぃぃぃぃぃーーーーーーっ! テメェの仕業かあぁっ!!」

 

と其処で、朧が更に怒りの咆哮を挙げると、メカギラス・荒吐が漸く落とし穴から抜け出す。

 

「ふむ、どれ………軽く()()()()()とするかのう」

 

其れに対し、八丹斎は惚けた態度を崩さず、“あの機械”を取り出した。

 

「!? アレは!? まさか………!?」

 

その機械を見たゼロが驚きの声を挙げた瞬間………

 

「臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 列! 在! 前!」

 

八丹斎は機械を手にしたまま、九字の印を結び始めた!

 

「望月流忍術! ()()()()()!!」

 

そして結び終え、そう叫んだかと思うと………

 

『バトルナイザー! モンスロードッ!!』

 

機械………『バトルナイザー』のカバーが開いてそんな電子音声が響いたかと思うと、光るカードが2枚放出される。

 

放出されたカードは、バトルナイザー上部のスリット部分にリードされる。

 

グゴオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

キイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

すると、そのカードから2体の怪獣が飛び出して来た!!

 

『か、怪獣を召喚したっ!?』

 

「やっぱり『バトルナイザー』! あの爺さん、『レイオニクス』だったのかよ!?」

 

誠十郎とゼロが揃って、違う意味で驚きの声を挙げる。

 

そう………

 

八丹斎が手にしている機械の名は『バトルナイザー』

 

怪獣使いである『レイオニクス』の証であった!

 

 

 

 

 

グゴオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

召喚された怪獣の1体は、緑色でブツブツとしたイボが無数に有る体表をした、ガマガエルとクジラを合わせた様な怪獣………

 

『汐吹き怪獣 ガマクジラ』

 

 

 

 

 

キイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

もう1体は、『宇宙怪獣 エレキング』………

 

否。其れは、“只の”エレキングでは無く………

 

三日月状の角と牛の様な白地に黒の模様の体表こそ共通しているが、手足が無く、まるで蛇の様な長い体を持ったエレキング………

 

『EXエレキング』だった!

 

 

 

 

 

『きょ、巨大なカエルに蛇!?』

 

「ガマクジラにEXエレキングか! 成程………“忍者らしい”怪獣じゃねえか」

 

誠十郎は驚きの声を挙げ、ゼロは成程なと言う様に頷く。

 

「な、何だぁっ!? ええいっ! 俺様のメカギラス・荒吐がそんなヘンテコな怪獣になんざ負けるかぁっ!!」

 

突如出現したガマクジラとEXエレキングに驚いたものの、朧は直ぐ様メカギラス・荒吐を2体に向かって突撃させる。

 

グゴオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

するとガマクジラが、頭部からその名の通り汐を吹いた!!

 

「ケッ! コレが何だってんだよっ!!」

 

塩水塗れになるが、意にも介さないメカギラス・荒吐。

 

キイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

其処で今度は、EXエレキングが動いた。

 

その長い身体をくねらせて、メカギラス・荒吐へと向かう。

 

「先に死にてぇのはお(メェ)かぁっ!!」

 

そのEXエレキングに向かって、破壊光線を放つメカギラス・荒吐。

 

キイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

しかし、何と!!

 

EXエレキングは自らの身体を電気エネルギーに変換し、破壊光線を擦り抜ける!

 

「!? 何ぃっ!?」

 

朧が驚いている間に、EXエレキングはそのままメカギラス・荒吐の身体へと巻き付く。

 

キイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

そして、お得意の放電攻撃を浴びせた!!

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

忽ち悲鳴を挙げる朧。

 

ガマクジラが塩水を吹き掛けた事で通電率が上がっており、忽ちメカギラス・荒吐は彼方此方から黒煙を上げ始める。

 

「ウルトラマンゼロ! 奴のバリアはこの“空間自体のエネルギー”を利用しておる! この空間を消せば奴はバリアを使えんっ!!」

 

其処で八丹斎が、ゼロに向かってそう叫んだ!

 

「! 成程! だったらっ!!」

 

ゼロは飛び上がったかと思うと、空高くへと上昇!

 

そしてカラータイマーが輝いたかと思うと、五角形のシャイニングエナジーコアに変化し、その姿が金と銀が主体となった派手な姿………

 

『シャイニングウルトラマンゼロ』へと変わった!

 

「シャイニングスタードライヴ」

 

そして、最大の技である『シャイニングスタードライブ』………

 

『時間操作能力』を発動させた!!

 

時間を逆行させた事により、朧が展開させていた魔幻空間が消滅する!

 

「!? ま、魔幻空間がっ!?」

 

漸くEXエレキングから解放された朧が、魔幻空間が打ち消された事に動揺する。

 

「コレで終わりだ! シャイニングエメリウムスラッシュッ!!」

 

その朧のメカギラス・荒吐に向かって、シャイニングウルトラマンゼロは上空からシャイニングエメリウムスラッシュを放つ!

 

通常時とは比べ物にならない光の柱の様な光線が、メカギラス・荒吐に向かって一直線に降り注いだ!!

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

その光の奔流に呑み込まれたメカギラス・荒吐は、朧の叫びと共に爆発する間も無く『消滅』した!

 

「ス、スゲェ………」

 

「トンでもない威力だったわね………」

 

メカギラス・荒吐が居た場所に、ポッカリと大穴が開いているのを見て、初穂とアナスタシアが戦慄気味にそう呟く。

 

「ああ、アレがシャイニングウルトラマンゼロ………何て美しいんでしょう」

 

「綺麗………」

 

一方クラリスとさくらは、初めて見たシャイニングウルトラマンゼロの神秘的な姿にうっとりとしていた。

 

「デュアッ!!」

 

「ガマクジラ、エレキング、ようやった。戻れ」

 

グゴオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

キイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

そしてゼロが飛び去って行くと、八丹斎はガマクジラとEXエレキングをバトルナイザーへと戻す。

 

「お祖父ちゃん………」

 

其処であざみ機のハッチが開き、あざみが姿を現す。

 

「スマンのう、あざみ。つい心配で余計な世話を焼いてしまったわい」

 

「ううん………ありがとう、お祖父ちゃん」

 

「…………」

 

笑顔でそう言うあざみに、八丹斎も無言で嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

「お~い! 皆~っ!!」

 

と其処で、誠十郎が手を振りながらやって来る。

 

「! 神山隊長!」

 

「誠十郎! 良かった! 無事だったんだ………」

 

誠十郎の姿を見て、あざみが安堵した様子を見せる。

 

「ああ、ウルトラマンゼロが助けてくれたんだ。すみれさん達も皆大丈夫だ」

 

「ホントか! 良かった~」

 

「流石はゼロさんですね!」

 

誠十郎がそう言うと、初穂が安堵し、クラリスがそう声を挙げる。

 

「神山隊長………」

 

其処で八丹斎は、あざみ機の肩から降りると、誠十郎と向き直った。

 

「八丹斎さん………」

 

「これからも、あざみをよろしくお願い致す」

 

「はい。精一杯、あざみを守ります」

 

「うむ………ウルトラマンゼロにもよろしくお伝えくだされ」

 

『ああ、分かったぜ』

 

八丹斎の言葉に、誠十郎とゼロは力強く頷くのだった。

 

「おーい、隊長ー! あざみー! 何してんだよー。“何時もの”やるぞー!」

 

と其処で、勝利のポーズに入ろうとしていた花組の中から初穂がそう呼び掛けた。

 

「お祖父ちゃんも」

 

「ああ、いや、儂は写真は………」

 

「駄目?」

 

小首を傾げて八丹斎にそう問うあざみ。

 

「ううむ………ちょっとだけじゃぞ」

 

「! うん!」

 

根負けした様に八丹斎がそう言うと、あざみはその手を引いて花組の元へと向かった。

 

「忍ぶも忍ばぬも、忍者次第! 思いのままに突き進め! 其れじゃあ、皆。用意は良い?」

 

「「「「「…………」」」」」

 

あざみの問い掛けに、花組は無言で頷く。

 

「せーの………勝利のポーズ………決めっ!!」

 

ポーズを執る花組メンバーの中心で、揃って屈託の無い笑みを浮かべて仲良くダブルピース………“バルタン星人のポーズ”をしているあざみと八丹斎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

ジェネラルAの執務室………

 

「ぶるあああああああっ!!」

 

「ぐはっ!?」

 

例によって床とキスさせられた後、ジェネラルAに頭を踏み躙られるミスターG。

 

「貴様ぁ、何を勝手な事をしているぅ? 挙句に、星人に出し抜かれるだなぞ言語道断ん!」

 

「も、申し訳ございません………」

 

頭を踏み躙られながらも、ミスターGは只々謝罪するしかない。

 

「言った筈だぞ、幻庵。貴様の小癪な策なぞ不要。全ての事は(ワレ)が進める。其れが降魔王様の意思だぁ。黙って従えぃ!!」

 

「ハハーッ」

 

平伏を続けるミスターG。

 

(クソッ! クソッ! クソッ! 今に、今に見ていろ、アゴナ! 私が! 私こそが“降魔王様の右腕”なのだ!!)

 

だが、その内心には激しい怒りと憎悪が渦巻いていた。

 

(そうだ、幻庵。もっと怒れ! 憎め! 恨め! 其れこそ(ワレ)が望む事よぉ)

 

しかしジェネラルAにとって、其れは()()()()()()であった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

すみれ「あの降魔大戦の時、私だけが先に力尽きてしまった………

 

だから、私だけが取り残された………

 

私だけが残ってしまった………

 

如何して………

 

私だけが置いて行かれてしまったの………?

 

次回『新サクラ大戦』

 

第4.5話『菫 -バイオレット-』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

私に出来る事など………もう何も無いのでしょうか………」

 

???「諦めるなぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『宇宙忍者 バルタン星人』

 

身長:ミクロ~50メートル

 

体重:0~1万5000トン

 

能力:分身、空蝉、鋏から放つ赤色冷凍光線や白色破壊光弾

 

初登場作品:初代ウルトラマン第2話『侵略者を撃て』

 

言わずと知れたウルトラシリーズを代表する宇宙人。

 

手をチョキにしてフォッフォッフォッと笑う真似は、誰もがやった事があるであろう。

 

ステージショーやゲーム、漫画を問わず、ウルトラ怪獣の顔として広く登場している。

 

その反面、有名になり過ぎた故か、近年では映像作品への出番が恵まれていない。

 

この作品では登場したゲカホは、大怪獣ラッシュのバルタンバトラー。

 

アシサは初代の容姿をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『四次元ロボ獣 メカギラス』

 

身長:60メートル

 

体重:5万トン

 

能力:口からのミサイルや破壊光線、バリア

 

初登場作品:ウルトラマン80第5話『まぼろしの街』

 

『四次元宇宙人 バム星人』が拉致した地球の人々を使って作り上げた侵略用ロボ怪獣。

 

見た目は昭和版メカゴジラに良く似ている。

 

四次元空間を自在に移動し、UGMの基地を攻撃。

 

80の攻撃も全てバリアで防ぐと強敵ぶりを見せたが、ウルトラ伝統『回ればなんとかなる』戦法で、80が首に攻撃を集中。

 

バリアが間に合わず、ショートして動きが止まったところで四次元空間から引き摺り出され、サクシウム光線で倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『汐吹き怪獣 ガマクジラ』

 

身長:35メートル

 

体重:1万トン

 

能力:汐を吹く

 

初登場作品:初代ウルトラマン第14話『真珠貝防衛指令』

 

その名の通り、ガマガエルとクジラを合わせた様な怪獣。

 

何と真珠を主食としており、養殖の真珠貝を全滅させた(トンでもない被害である)

 

原作劇中では、終始科学特捜隊が相手をしており、初代ウルトラマンは最後に出て来てトドメを刺した為、余り強くは思われていない。

 

しかし、実は攻撃に対して即座に耐性を身に着けると言った凄い能力を持っている。

 

尚、この回は、あの『実相寺 昭雄』監督のウルトラシリーズ初監督作品である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『EXエレキング』

 

身長・体重:不明

 

初登場作品:PS2ゲーム『ウルトラマン ファイティングエボリューションリバース(FER)』

 

ゲームオリジナルの怪獣で、当初は改造エレキングと呼ばれていた。

 

ゲームならではアレンジで、手足の無い蛇かウナギの様な姿となったエレキング。

 

放電攻撃のみならず。自らを電気エネルギーと化して相手を貫くと言う戦法を使う。

 

しかし、その体形ゆえ、打撃攻撃に弱い。

 

尚このゲームには、後に着ぐるみが作られたEXゴモラやEXレッドキングのデビュー作である。




新話、投稿させて頂きました。

メカギラス・荒吐のバリア戦法に苦戦するゼロと花組。
しかしそこへ何と、八丹斎が登場。
レイオニクスでもあった彼は、バトルナイザーでガマガエルとEXエレキングを召喚。
隙が出来、アドバイスを受けたゼロが、遂に見せたシャイニングウルトラマンゼロ。
得意のシャイニングスタードライブで魔幻空間を消し、シャイニングエメリウムスラッシュで見事朧を撃破します。

一方、やはりジェネラルAからパワハラを受けるミスターG。
益々恨み辛みを募らせますが、如何やらそれもジェネラルAの計算の内。
果たして一体何を企んでいるのか?

さて、莫斯科華撃団戦の前に幕間が入ります。
すみれさんのメイン回です。
やはり中の人も言ってましたけど、1人だけ残ってしまった事には相当な苦悩があったと思います。
その辺をちょっと掘り下げて行こうと思いまして。

そしてその話で登場するのはあのウルトラマンです。
打ち切りとなってしまったものの、ウルトラシリーズに新しい風を吹き込み、世界観を広げ、その一貫した姿勢は高く評価されました。
多分、トラウマになったけど好きって人は多いんじゃないんですかね。
原典ではなく、他作品に客演した際のエピソードが下地になります。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第4.5話『菫 -バイオレット-』
チャプター1『太正世界の光』


第4.5話『菫 -バイオレット-』

 

チャプター1『太正世界の光』

 

スペースビースト ベドレオン・クライン

 

バグバズンブルード 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???………

 

帝都の街が燃えている………

 

その燃え盛る帝都を見下ろす様に立っている降魔王………

 

その降魔王に向かって行く、色取り取りの霊子甲冑達………

 

「ああ………“()()この夢”ですわね………」

 

その中の霊子甲冑の1機で、名前と同じ菫色をした光武の中で、すみれがそう呟く。

 

その姿は、“若かりし頃のもの”となっている。

 

そう………

 

コレは、すみれが屡々(しばしば)見ている夢………いや、『悪夢』だった。

 

勇ましく降魔王へと向かって行く霊子甲冑の軍団………嘗ての帝都・巴里(パリ)紐育(ニューヨーク)華撃団の面々。

 

しかしその中で、突如すみれ機が失速。

 

やがては完全に停止し、戦列から落伍した。

 

コクピット内の霊力を表すメーターが0を示す。

 

「くっ!!」

 

其れを見たすみれが、忌わし気に舌打ちする。

 

そんな彼女の目の前で、帝都・巴里・紐育華撃団の面々は降魔王へと向かって行く。

 

「“(わたくし)を置いて行く”なんて………絶対に許しませんわ!」

 

すみれはハッチを開け、帝都・巴里・紐育華撃団の後ろ姿に向かって必死に手を伸ばす。

 

「お願い………待って! 待って!! (わたくし)を………(ひと)りにしないで!!」

 

そう叫んだところで目が覚める………

 

其れが“()()()()悪夢”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、この日………

 

彼女が見ていた悪夢は、大きく変わる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すみれの叫びが木霊した瞬間………

 

目の前が光に包まれ、景色が一変したのだ。

 

先程まで居た燃え盛る帝都から………

 

“謎の遺跡が聳え立つ森の中”へと。

 

「!? コレはっ!?………!?」

 

今まで見た事の無い夢の続きにすみれが驚くと、自分の姿が()()()()()になっている事で更に驚く。

 

「! 呼んでいる?………(わたくし)を?」

 

すると其処で、すみれは遺跡から“()()が自分の事を呼んでいる”様な感覚を覚える。

 

「…………」

 

一瞬逡巡したすみれだったが、直ぐに意を決した様に遺跡の方へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謎の遺跡内部………

 

導かれるままに、遺跡の奥深くへとドンドン足を踏み入れて行くすみれ。

 

「………!」

 

やがて、彼女の眼に………

 

奇妙な“石碑の様な物”が飛び込んで来た。

 

「コレは………?」

 

すみれは、(ほぼ)無意識にその石碑に手を触れる。

 

その瞬間、再び目の前に光が溢れた!!

 

「うっ!?」

 

思わず、腕で目を覆うすみれ。

 

やがて光が収まったかと思うと、彼女は今度は謎の空間の中に居り………

 

目の前に“銀色の巨人”が佇んでいた。

 

「!? ウルトラマンッ!?」

 

すみれは、その巨人が“ゼロと同じウルトラマン”である事に気付き、またも驚く。

 

「………貴方が(わたくし)を呼んだのですか?」

 

「…………」

 

すみれの問いに、銀色のウルトラマンは頷く。

 

「…………」

 

(わたくし)()を………?」

 

其処で銀色のウルトラマンは、すみれに“力を与える”と言って来た。

 

「何故(わたくし)に? しかも()()………」

 

仲間に置いて行かれ、戦えるだけの霊力さえも失った自分に、今更「力を与える」と言う銀色のウルトラマンの事をやや不審がる。

 

「…………」

 

「“()()(わたくし)が受け取る事”に意味が有る? 一体如何言う事ですの?」

 

銀色のウルトラマンに更に問い質そうとしたすみれだったが、其処で目の前が再び光に包まれる。

 

「うっ! ま、眩しい………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・すみれの私室………

 

「!? ハッ!?」

 

すみれは、支配人になってから新築した帝劇の私室のベッドで目を覚ました。

 

「………やっぱり夢でしたのね」

 

すみれは、ゆっくりと身を起こしながら窓の外を見遣る。

 

時刻は早朝………

 

漸く日が昇り始めようとしている時だった。

 

「全く………何時もの悪夢だけで無く、“妙な夢”まで見てしまいましたわ」

 

すみれは、頭を抑えて先程の悪夢と銀色のウルトラマンの事を思い出す。

 

「けど………妙に気になりますわね。あのウルトラマン………」

 

だが彼女の脳裏には、銀色のウルトラマンの事が深く刻み込まれていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其れから少し時が流れ………

 

すっかり日が天に上った銀座にて………

 

今日も今日とて、人々が行き交っている。

 

「………ん?」

 

と、1人の通行人がふと足を止めて、路地裏へと続く道を見遣る。

 

何やら、路地裏の方から音がして来ているのだ。

 

まるで“何かを貪り食っている”かの様な音が………

 

「何だぁ?」

 

その音が気になり、路地裏へと入って行く通行人。

 

やがて人気の無い裏路地へと出ると、2つの“人型のモノ”が“地面に落ちているモノ”に群がっている。

 

「オ、オイ? アンタ等、何やってんだ?」

 

その人型のモノへと声を掛ける通行人。

 

すると、人型のモノが振り返り………

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

不気味な咆哮と共に、異形の姿を晒した!!

 

「!? ヒイッ!? ば、化け物っ!?………!?」

 

驚く通行人だが、“()()驚くべき事”に気付く。

 

先程までその化け物達が群がっていた“モノ”………

 

其れは降魔・業火の()()だった。

 

その死骸の処々に食い千切られた跡が有り、化け物の口には肉片らしき物がぶら下がっている。

 

「こ、降魔を食ってやがるっ!? う、うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

大慌てで逃げ出す通行人。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

人型の化け物は、涎を撒き散らしながら咆哮を挙げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

帝劇地下・地下司令室にて………

 

「2回戦が延期?」

 

集まった一同の中で、誠十郎がそう聞き返した。

 

「ハイ。莫斯科(モスクワ)華撃団が、“本国での緊急任務”の為に一時帰国するので2回戦の日程をずらす、との事です」

 

カオルがそう説明する。

 

「“本国からの呼び出し”とあっては仕方無いわね」

 

「けど、何か“向こうの都合”で振り回されてる気がして腹立つな」

 

アナスタシアと初穂がそう言い合う。

 

「でも、其れ程の『緊急任務』って何でしょう?」

 

「確かに、気になりますね………」

 

「司令は何かご存知ですか?」

 

クラリスとさくらがそう言うと、誠十郎がすみれに尋ねる。

 

「…………」

 

しかし、すみれは物思いに耽っている様子で、誠十郎の問い掛けに気付いていない。

 

「? 神崎司令?」

 

「! あ、ああ、御免なさい。何かしら?」

 

誠十郎が再度声を掛けると、漸く気付いたすみれがやや慌てて返事をする。

 

「大丈夫ですか? 会議中に考え事だなんて、司令らしくないですよ?」

 

「無理しないで。司令に倒れられたら大変」

 

「今日は私が代行を務めますから、ゆっくり休んでは如何ですか?」

 

らしくないすみれの姿に、誠十郎・あざみ・サコミズが心配する。

 

「大丈夫ですわ。心配させてごめんなさい」

 

しかし、すみれはそう返して誤魔化す様に笑った。

 

「司令………」

 

『何か話し難い事なのか?』

 

そんなすみれの姿に、誠十郎は更に心配を募らせ、ゼロもそう声を挙げる。

 

と、その時!!

 

司令室内に警報が鳴り響いた!

 

「「「「「!!」」」」」

 

「警報!? 降魔かっ!?」

 

「銀座大通りで、降魔らしきモノを目撃したとの通報や!」

 

花組メンバーが反応し、誠十郎が声を挙げると、こまちからそう報告が挙がった。

 

「会議は一旦中止! 皆さん、直ぐに出撃して下さい!! (わたくし)も翔鯨丸で現地に向かいます!!」

 

其処ですみれは先程までの事を振り切り、直ぐにそう指示を飛ばした!

 

「分かりました! 帝国華撃団・花組、出撃せよ!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

誠十郎の号令が飛び、花組メンバーは直ぐ様出撃準備に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座大通り………

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「助けてくれえぇっ!!」

 

人々が悲鳴を挙げて逃げ惑っている。

 

「其処までです!」

 

と其処へ、上空に現れた翔鯨丸からそう言う声が響いたかと思うと、6機の色取り取りの無限が降下して来る!

 

「「「「「「帝国華撃団! 参上!!………!?」」」」」」

 

着地すると、何時もの様にポーズを決めながら高らかに名乗りを挙げた帝国華撃団だったが、そのまま驚愕して固まった。

 

何故なら、その目の前には………

 

キシャアアアアアアッ!?

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

“悲鳴の様な咆哮を挙げて逃げ惑う()()()”を追い回している、ナメクジかアメーバを思わせる異形達と人型の異形達の姿が在ったからだ。

 

「な、何だあの化け物は!?」

 

「降魔を追い回してる?」

 

初穂とあざみがそう言った瞬間………

 

キシャアアアアアアッ!?

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

1匹の降魔が、ナメクジかアメーバを思わせる異形と人型の異形に捕まった。

 

次の瞬間!!

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

何と異形達は降魔の身体に噛み付き、その肉を貪り食らい始めたではないか!!

 

「!? なあっ!?」

 

「な、何て奴等なの!? 降魔を食べてるわっ!!」

 

コレにはさくらは(おろ)か、普段から冷静なアナスタシアさえも驚きを隠せなかった。

 

キシャアアアアアアッ!?

 

生きながら身体を貪り食われていた降魔が断末魔を挙げ、助けを求める様に伸びていた手がパタリと地面に落ちる。

 

その腕も、異形達によって貪られ食われる。

 

「うっ!?」

 

余りに凄惨且つグロテスクな光景に、クラリスが吐き気を催して手で口元を覆う。

 

『マズイ! 誠十郎、変身だっ!!』

 

すると其処で、ゼロが誠十郎に変身を促して来た。

 

「えっ!? 如何したんだ、ゼロ。そんな、いきなり」

 

何時もならギリギリになってから変身を促すゼロが、()()()()変身を促して来た事に驚く誠十郎。

 

『ゴチャゴチャ言うな! 急げっ!!』

 

「!? わ、分かったっ!!」

 

しかし、ゼロの有無を言わせぬ迫力に押され、直ぐ様ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを取り出した!

 

「デュワッ!!」

 

其れを装着し、誠十郎はゼロへと変身!

 

テレポートで一旦離れた後、人間サイズのまま、花組の前へと降り立った!!

 

「!? ゼロさんっ!?」

 

「オイオイ、今日は随分早い登場じゃねえか?」

 

「しかもその大きさで………」

 

未だ戦闘も開始していないのに、いきなりゼロが“人間サイズ”で現れた事にさくら・初穂・アナスタシアが驚きの声を挙げる。

 

「花組! 気を付けろ! “奴等”は危険だっ!!」

 

そんな声を無視して、ゼロは降魔達に襲い掛かっている異形達を指し示しながらそう警告した。

 

「!? ゼロさん! あの化け物の事を知ってるんですか!?」

 

漸く吐き気が収まったクラリスが、ゼロにそう尋ねる。

 

「ああ、良~く知ってるぜ。“この宇宙で()()()()()連中”だ」

 

「そんなに!?」

 

ゼロの言葉に、あざみが驚きの声を挙げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ等は『スペースビースト』………“自分達以外の生き物は()()捕食対象としか見ていない”怪獣だ」

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

ゼロのその言葉を肯定するかの様に異形………『スペースビースト』達………

 

『ベドレオン・クライン』と『バグバズンブルード』は、涎を撒き散らしながら咆哮を挙げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

今回の幕間話はすみれさん回です。
やっぱり1人残されたすみれさんの苦悩は凄かっただろうと思います。
司令になった立場の手前、誠十郎や新生花組の面々には弱気な姿は見せられないだろうし、原作に於いては米田さん達も登場してませんから。
そんなすみれさんの苦悩を少しでも和らげる為に今回の話を思いつきました。
鍵を握るのはあの銀色のウルトラマンです。
彼の名前がヒントになるかと。

そして何と!
ウルトラシリーズの中でも厄介さは1、2を争うあの敵………
スペースビーストが帝都に出現!!
いきなり降魔を食らうと言う衝撃的な登場をしてくれてます。

そして次回、いよいよ………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『デュナミスト』

チャプター2『デュナミスト』

 

スペースビースト ベドレオン・クライン

 

バグバズンブルード

 

宇宙怪獣 ベムラー 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神崎家………

 

銀座に宇宙の悪魔『スペースビースト』が出現していた頃………

 

「…………」

 

神崎邸の1階バルコニーに、浮かない様子で佇んでいる人物が居た。

 

すみれの父であり、神崎重工・社長『神崎 重樹』である。

 

「すみれ………」

 

空を見上げながら、娘・すみれの名を呟く重樹。

 

「アナタ、此処に居たのね」

 

と其処へ、すみれと良く似た女性………彼女の母・『神崎 雛子』が現れる。

 

「ああ、雛子………」

 

「またすみれさんの事を考えていたの?」

 

「…………」

 

雛子の問いに、重樹は沈黙で返す。

 

「そんなに思い詰めないで。あの子だってもう子供じゃ無いのよ。“アナタの()()の事”だって分かってくれているわ」

 

そう言いながら、雰囲気の暗い重樹の傍に寄り添う雛子。

 

 

 

 

 

降魔大戦の後に賢人機関が解散させられ、WLOFが組織されると、神崎財閥はWLOFと取引を行う様になった。

 

嘗ての最大のスポンサーであった神崎財閥が離れた事は、帝劇の没落に拍車を掛ける事となる。

 

しかし、コレまで事実上神崎財閥を取り仕切っていた重樹の父であり、すみれの祖父『神崎 忠義』は今だ存命ではあるものの、高齢の為にその手腕を発揮出来無くなり、神崎財閥は現在重樹が舵取りを行っている。

 

降魔大戦の爪痕は酷く、神崎財閥の傘下企業も甚大な被害を受けていた。

 

その補填をする為には、WLOFの霊子戦闘機開発に参加し、資金援助を受けるしか無かった。

 

そうしなければ何100、何1000と言う社員達とその家族が路頭に迷う事になってしまう………

 

其れを考えると、重樹は帝劇への援助を打ち切って、WLOFと取引するしか無かった。

 

結局、あの『悪夢の開幕式』でWLOFの信頼が失墜した事に因って、神崎財閥はWLOFと手を切る事が出来、帝劇への援助も再開する事が出来た。

 

其れでも………

 

重樹はすみれが自分の事を恨んでいると思い、未だに顔を合わせられずにいるのである。

 

 

 

 

 

「親にとって、子供は何時までも子供さ………」

 

そう言って重樹は空を見上げる。

 

すると………

 

その空に、青い光る球が出現した。

 

「? アレは………?」

 

「あら? 何かしら?」

 

重樹と雛子がそう呟いた瞬間、青い球は神崎家の敷地内に降りて来て………

 

ギイヤアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

青い球が弾け、中から刺だらけの怪獣………『宇宙怪獣 ベムラー』が現れた!

 

「!? なっ!?」

 

「怪獣っ!?」

 

2人が驚愕の声を挙げた瞬間!

 

ギイヤアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

ベムラーは、口から青い熱線を発射!

 

熱線が地面に当たると、大きく爆ぜた!

 

爆ぜた地面の破片が、雛子へと向かう!

 

「!?」

 

「雛子っ!!」

 

咄嗟の事で、動けずに居た雛子を重樹が庇う。

 

「!? ぐっ!?」

 

重樹は、雛子の代わりに大きな破片を頭に受けてしまい、バタリと倒れる。

 

「! アナタァッ!!」

 

ギイヤアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

雛子の悲鳴を掻き消す様に、ベムラーは咆哮を挙げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、銀座大通りでは………

 

「スペースビースト………」

 

「ああ、しかも厄介な事に、奴等は知的生命体………つまり、“人間”を()()()()()()()

 

「!? マジかよっ!?」

 

ゼロの言葉に、初穂が若干青褪めながら驚きの声を挙げる。

 

「正確に言うと、“知的生命体が捕食される瞬間に発する恐怖の感情”を(かて)にしているらしいんだが………」

 

「どっちにしろ、降魔まで餌にする様な奴等よ。野放しには出来ないわ」

 

「放って置いたら、どれだけ被害が出るか分からない………」

 

アナスタシアとあざみがそう言い、とうとう降魔達を喰らい尽くしたベドレオン・クラインとバグバズンブルード達を見遣る。

 

と、その時!!

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

ベドレオン・クラインとバグバズンブルード達が一斉に散開する。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「マズイッ! 人間を捕食しに向かったぞ!! 食い止めるんだ!!」

 

「ハイ、ゼロさん!」

 

「こんな危険な生き物を野放しには出来ません!」

 

ゼロの指示にクラリスとさくらがそう返すと、ゼロと花組は分散してスペースビースト達の撃破に向かった(誠十郎機は自動操縦になっているので、見せ掛けて離脱した)。

 

 

 

 

 

一方、翔鯨丸の方でも………

 

「カオルさん! 住民の避難状況はっ!?」

 

「未だ完全ではありません。多くの人達が、戦闘地域から逃げ遅れています」

 

「クッ! 仕方有りませんわね………翔鯨丸を着陸させて! (わたくし)達も避難誘導に向かいますわ!」

 

「! すみれ様! 其れは危険です!」

 

自ら避難誘導に向かうと言い出したすみれを止めようとするカオル。

 

「危険は承知の上ですわ! 早くしなさい!」

 

「! ハ、ハイッ!!」

 

しかし、すみれの気迫に押され、翔鯨丸を着陸させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座大通り………

 

「エメリウムスラッシュッ!!」

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!?

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

ベドレオン・クラインとバグバズンブルード達を纏めて薙ぎ払うゼロ。

 

「今の内だ! 早く逃げろっ!!」

 

「た、助かったぁっ!」

 

「ありがとう、ウルトラマン!」

 

捕食される寸前だった市民達が、這う這うの体で逃げ去って行く。

 

「良し、次だ!!」

 

『ゼロ! 幾ら何でも急ぎ過ぎじゃないのか? もう少しペースを考えた方が………』

 

何時もと比べて矢鱈とハイペースに見えるゼロに、誠十郎は心配の声を掛けるが………

 

「心配すんな! これ(ぐらい)如何って事は無え! 其れに、“()()()倒さねえとならねえワケ”も有る」

 

『ワケ?』

 

「さくら達には言いそびれちまったが、スペースビーストは体内の器官から『ビースト振動波』と呼ばれる特殊な波動を発していて、其れによって各個体が情報を共有し、“環境や外敵に対抗した()()”をする事が出来る」

 

『!? と言う事は!?』

 

「まごまご()ってたら、コッチの事を学習して更に手が付けられなくなっちまう。だから“速攻で叩く”しか無えんだ」

 

『聞けば聞く程、恐ろしい生物だ………』

 

スペースビーストの特性に、誠十郎は戦慄を隠せなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

「誰かーっ! 逃げ遅れた方は居りませんかぁーっ!!」

 

市民の避難誘導を手伝っていたすみれが、逃げ遅れた人が居ないか確認しながら街中を走る。

 

「う、うう………」

 

「!?」

 

すると其処で、路地の真ん中で俯せに倒れている女性を見付ける。

 

「大丈夫ですか!? しっかりして下さいっ!!」

 

直ぐ様駆け寄り、助け起こすすみれ。

 

「! に、逃げて下さい! コレは罠です!」

 

「!?」

 

しかし、女性がそう言ったのを聞いて驚いた瞬間!

 

直ぐ傍の建物の2階が爆発!

 

大量の瓦礫が、すみれと女性目掛けて降って来る!

 

「!!」

 

すみれが咄嗟に女性を庇うと、その背に巨大な瓦礫が命中した!

 

「!? ああっ!?」

 

悲鳴を挙げるすみれに、瓦礫がそのまま圧し掛かる。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

動けなくなったすみれと女性の前に、ベドレオン・クラインとバグバズンブルードが現れる。

 

「くうっ! 小癪な真似を………大丈夫ですか!?」

 

自身の怪我等は二の次に、女性を気遣うすみれ。

 

「…………」

 

しかし、女性は気を失っていた。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

ベドレオン・クラインとバグバズンブルードは、2人を捕食しようと汚らしく涎を撒き散らしながら近付いて来る。

 

と其処で、すみれの持っていた通信機が鳴った。

 

「! カオルさん! 直ぐに救援………」

 

『すみれ様! 大変ですっ!!』

 

相手がカオルであるのを確認したすみれが救援を要請しようとした処、其れを遮ってカオルの叫びが木霊する。

 

「! 何ですの!?」

 

『神崎家に怪獣が現れました! 家には重樹様と雛子様が居られるそうです!』

 

「!? 何ですってっ!?」

 

『未確認情報ですが………重樹様が負傷されたと!』

 

「お父様がっ!?」

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

驚愕するすみれの許に、ベドレオン・クラインとバグバズンブルードが更に近付いて来る。

 

最早すみれの命は風前の灯………

 

しかも、遠く離れた実家の両親の命まで(おびや)かされている………

 

“絶望的な状況”とは、正にこの事である。

 

(ココまでですの!? 大尉を………さくらさん達を迎える事も無く………こんな無様に………)

 

すみれの目に、涙が浮かぶ。

 

(やはり………もう力の無い(わたくし)に出来る事等………()()()()のですの………?)

 

ゆっくりと目を閉じ、最期の時を迎えようとするすみれ………

 

(………いいえ! そんな事は許しませんわ!!)

 

しかし再び目を見開く。

 

(わたくし)を誰だとお思いですの!? 帝国歌劇団の元トップスタァ、神崎 すみれですわ! この程度で諦める柔な精神なぞ、最初から持っておりませんわ!)

 

すみれは必死に瓦礫を押し退けようとする。

 

()()()()を迎えるまで………再び逢えるその日まで! (わたくし)は決して!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『諦めるなぁっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

そう言う声が聞こえた気がして、その目の前に光が溢れ出した。

 

そして、その光の中から『短刀状の物体』が現れた。

 

「!!」

 

その瞬間、すみれは(ほぼ)無意識に右手で其れの柄を摑み、続いて鞘の部分を左手で摑んだかと思うと、勢い良く引き抜いた!!

 

「神崎司令っ!!」

 

と其処で、さくら機が救援に駆け付けたが………

 

その彼女の目の前で、“光の柱”が立ち昇る。

 

「キャッ!? 何っ!?」

 

さくらが思わず声を挙げた瞬間………

 

巨大な拳が、ベドレオン・クラインとバグバズンブルードを叩き潰した!!

 

「!?」

 

驚愕の表情を浮かべたさくらがその巨大な拳を見上げると、其処には………

 

「…………」

 

膝立ちの状態の“銀色のウルトラマン”の姿が在った。

 

「!? ウルトラマンっ!?」

 

「…………」

 

驚愕の声を挙げたさくらに向かって、銀色のウルトラマン………『ウルトラマンネクサス・アンファンス』は、右手を伸ばす。

 

その手の中には、あの女性の姿が在った。

 

「! 市民の方が………」

 

さくらは、直ぐ様ネクサスの手から女性を受け取る。

 

さくらが女性を受け取った処で、ネクサスは立ち上がると………

 

「シュウワッ!!」

 

一瞬にして大空高く飛翔!!

 

「キャアッ!?」

 

余波でさくらが声を挙げる中、ネクサスは雲を切り裂き、突き抜けながら飛び去って行った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神崎家………

 

「アナタ! アナタ! しっかりしてっ!!」

 

意識の無い重樹に必死に呼び掛ける雛子だが、重樹は一向に目を覚まさない。

 

ギイヤアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

そんな2人に向かって、ベムラーは再度熱線を吐き掛けようとする。

 

「!!」

 

咄嗟に、雛子は重樹に覆い被さる様に身を伏せた。

 

その時!!

 

「ヘヤァッ!!」

 

突如現れたネクサスが、ベムラーの頭を抑え込む様に飛び掛かり、熱線発射を阻止した。

 

「!? アレは………ウルトラマン?」

 

ネクサスを見て、今帝都で話題のウルトラマンである事に気付く雛子。

 

「シュウワッ!」

 

ネクサスは、ベムラーを神崎邸から引き離す。

 

「大丈夫ですかっ!?」

 

と其処で、レスキュー隊員達が駆け付けた。

 

「! 主人が! 頭に地面の破片を受けてっ!!」

 

雛子がそう叫ぶと、レスキュー隊員達は直ぐに重樹のメディカルチェックを行う。

 

「………大丈夫! 気絶しているだけです!」

 

重樹が気絶しているだけなのを確認すると、直ぐに気付けを行うレスキュー隊員達。

 

「………雛子?」

 

重樹はゆっくりと目を覚ます。

 

「貴方! 良かった………」

 

「すみれ………」

 

「えっ?」

 

「ずっとすみれの声が聞こえていた気がする………」

 

「…………」

 

重樹がそう言うと、雛子はベムラーと戦っているネクサスに視線を向ける。

 

(まさか………?)

 

「早く! 此処を離れましょうっ!!」

 

“或る可能性”に思い至るが、其処でレスキュー隊員がそう言いながら、重樹に肩を貸して立ち上がらせる。

 

「! ハイ!」

 

其処で雛子は視線を戻し、重樹を支えているレスキュー隊員達と共に避難を開始する。

 

「…………」

 

すると、レスキュー隊員の1人が足を止めてネクサスへと視線を向けた。

 

「シュウアッ!!」

 

ネクサスはベムラーを肩車で投げ飛ばす。

 

「………!」

 

と其処で、ネクサスがレスキュー隊員に気付き、視線を向けた。

 

「「…………」」

 

レスキュー隊員とネクサスの視線が交差する。

 

「………シュワッ!」

 

やがてネクサスはレスキュー隊員に向かって頷き、再びベムラーに向かって行った。

 

「『孤門』! 何やってる!?」

 

「! ハイッ!!」

 

レスキュー隊員『孤門』も仲間に呼び掛けられて、慌てて避難するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

スペースビーストの脅威が帝都を襲う中、自ら市民の避難誘導に出たすみれさんは、罠に陥り、絶体絶命の危機に。
更に、実家である神崎家では両親にも危機が!
絶対絶命のその時………
遂に彼女は光を掴みます!

降臨、ウルトラマンネクサス。
そしてネクサスと会合するとあるレスキュー隊員………

次回、突然手に入れたウルトラマンの力に、すみれさんは戸惑いを隠せません。
そんな彼女に対し、ゼロは………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『ウルトラマンとは』

チャプター3『ウルトラマンとは』

 

スペースビースト ベドレオン・クライン&グロース

 

バグバズンブルード 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座に現れたスペースビーストを、途中救援に来た上海華撃団と共に如何にか掃討し終えた花組一同は、帝劇へ戻ると直ぐに司令室へ集合していた。

 

 

 

 

 

帝劇地下・地下司令室………

 

モニターに映し出されている、銀座に現れた銀色のウルトラマン………ネクサスの姿。

 

さくらに、助けたと思われる民間人を託すと、一瞬で空高く舞い上がる。

 

其処で映像が切り替わり、今度は神崎家に現れたベムラーと戦うネクサスの姿が映し出される。

 

「銀座に現れたこのウルトラマンは、助けたと思われる民間人を天宮さんに託して飛び去り、殆ど時間を置かずに神崎邸に出現。怪獣を撃破しています」

 

「一体何者なんだ?」

 

「ゼロさんのお知り合いでしょうか?」

 

カオルの説明を聞いた初穂とクラリスがそう言い合う。

 

(ゼロ。あのウルトラマンを知ってるか?)

 

其処で誠十郎は、ネクサスの事をゼロに尋ねる。

 

()()()()()()が………』

 

(? 如何した?)

 

歯切れが悪いゼロの様子に、誠十郎は首を傾げる。

 

『アイツの名は【ウルトラマンネクサス】………【()()()()()()()()()()()()()()()()だとされている」

 

(!? ウルトラマンノアって、あの!?)

 

誠十郎は、左腕のウルティメイトブレスレットを見遣る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウルトラマンノア』

 

太古より、“全宇宙の平和を守り続けている”と言い伝えられる伝説の存在である。

 

神々しい姿と神の如き力を持つ、正に『()()のウルトラマン』だ。

 

その存在を含めて殆どが謎に包まれており、『決して“諦めない”者の前に姿を現す』と言う特徴が有る。

 

ゼロのウルティメイトイージスも、ノアから“授かった物”だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『只、何と無くだが………アイツはノア()()()()気がする』

 

(如何言う事だ?)

 

『恐らく、俺のウルティメイトイージスみたいに、“ノアの力の一部を与えられた()()”が変身したんじゃないか?』

 

(誰かが………)

 

「あの………神崎司令は、未だ具合が悪いんですか?」

 

と、ゼロと誠十郎がそう言い合っていると、さくらがそう尋ねた。

 

「ハイ。未だ部屋に御籠りになられたままです………」

 

心配そうな様子を見せるカオル。

 

「帰還するや否や、私室に戻って休むやなんて………しかも、会議もサコミズはん任せや」

 

「司令らしく無いわね。何か有ったのかしら?」

 

こまちとアナスタシアも、怪訝そうな顔でそう言う。

 

(………まさか?)

 

『ひょっとするかも知れねえな』

 

しかし、誠十郎とゼロは“或る可能性”に思い至る。

 

「きっと疲れが溜まっていたんだろう。すみれさんだって人間だ。そう言う事も有るさ」

 

と其処で、サコミズのフォローが飛ぶ。

 

「そうですね。ずっとこの帝劇を“1人で支えてた”んですから」

 

「だな。偶にはゆっくりと休んだって、罰は当たら無えよ」

 

「休む事も任務の内」

 

さくら・初穂・あざみが、すみれを気遣う。

 

「兎に角、今はスペースビーストへの対処を優先しよう」

 

「今日出て来たのは全て倒したと思うけど、未だ安心は出来ないわね」

 

「性質を考えると、1匹だけでも生き延びていたら大変ですからね」

 

続くサコミズの言葉に、アナスタシアとクラリスがそう言い合う。

 

その後も2、3話し合い、会議は終了となったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・すみれの私室………

 

「…………」

 

日もすっかり落ち、夜の闇を帝都の灯りが照らす中、すみれは自室の灯りも点けず、窓際に佇んでいた。

 

「…………」

 

やがて、懐からあの『短刀状の物体』………『エボルトラスター』を取り出す。

 

その中央部分に在る“宝石状の物”が淡く発光している。

 

「………()()(わたくし)なのですか?」

 

すみれはそう呟き、エボルトラスターを強く握り締める。

 

と其処で、部屋の扉を誰かがノックした。

 

「! 何方(どなた)?」

 

()()()()()

 

すみれが問い質すと、扉越しに“誠十郎の声”が聞こえて来る。

 

「神山くん?………いいえ、“ゼロ”ね。どうぞ」

 

「邪魔するぜ」

 

直ぐに、誠十郎では無くゼロの方だと気付いたすみれに許可され、誠十郎(ゼロ)が入室する。

 

「………()()()()お前だったのか」

 

誠十郎(ゼロ)は、すみれが手にしているエボルトラスターを見て、彼女がネクサスである事を確信する。

 

『神崎支配人が………ウルトラマン』

 

「…………」

 

誠十郎が呟く中、すみれはエボルトラスターを持っていた手を下げる。

 

「………如何だ? “ウルトラマンになった気分”は?」

 

と其処で、誠十郎(ゼロ)はすみれに尋ねた。

 

「やるべき事が有る………出来る事が有る。そんな()()()使()()が、“自分の中に流れ込んで来た”様な気がしますわ」

 

「『…………』」

 

「ウルトラマンになるという事は、その使命を背負う事なのかも知れませんわね………ですが、其れは“今までの帝国華撃団としての人生”でも同じ事でした………いえ、人間誰しもが何等かの使命を背負っている。“ウルトラマンだから”と、()()()()()()()()のだと思いますわ」

 

『!!』

 

「そうだな………」

 

すみれの言葉に誠十郎は驚き、ゼロは同意する。

 

「ですが………」

 

其処ですみれの表情に影が差す。

 

「あの時、(わたくし)はスペースビーストが現れた現場を離れ、自分の家族を守った。“()()よりも()()を優先した”………コレは、『帝国華撃団司令』として決して許される事では有りませんわ」

 

『支配人、其れは………』

 

(わたくし)が勝手な事をすれば、多くの人に迷惑が掛かります。今の(わたくし)は………“そう言う立場”に居るのです」

 

『…………』

 

フォローしようとした誠十郎だったが、続くすみれの言葉で『摩利支天』の艦長だった頃を思い出し、何も言えなくなる。

 

「“家族を助けたい”と思うのは()()()

 

しかし其処で、ゼロはそう言い放った。

 

「ゼロさん………」

 

「俺も、嘗てベリアルが脱獄して怪獣墓場で暴れてた時、親父の危機と知って飛んで行った。そん時になって、“セブンが俺の親父だ”って()()()知ったんだけどな」

 

「…………」

 

「そんなに難しく考えるんじゃ無えよ。“守りたいと思ったものを守る”のは、俺達ウルトラマンだって同じだ。()()()()()、ノアはお前に“その力を託した”んだと思うぜ」

 

すみれの掌中のエボルトラスターを見てそう言うゼロ。

 

「…………」

 

其処ですみれは、再びエボルトラスターを持ち上げて見遣る。

 

エボルトラスターは、今だ中央部分に在る宝石状の物から淡い光を放っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

銀座の地下・地下鉄の保線用作業員通路内にて………

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーー………

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーー………

 

1匹のベドレオン・クラインとバグバズンブルードが弱々しく咆哮を挙げている。

 

昨日の戦闘の際、生き永らえた個体の様だ。

 

しかしその身は瀕死であり、力尽きるのも時間の問題だろう。

 

「フフフフフ」

 

そんなベドレオン・クラインとバグバズンブルードの前に、1人の人物が現れる。

 

ジェネラルAことキリエル(ひと)・アゴナだ。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーー………

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーー………

 

アゴナに向かって咆哮するベドレオン・クラインとバグバズンブルードだが、既に襲い掛かる気力も無い。

 

「スペースビースト………貴様等も“有効に()()させて貰う”ぞ」

 

アゴナはそう呟くと、2匹に向かってダークリングを翳した。

 

ダークリングから怪しい光が放たれる。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

その光を浴びたベドレオン・クラインとバグバズンブルードが忽ち回復!

 

そして、そのまま巨大化を始めた!!

 

「フハハハハハハハッ!!」

 

アゴナは、その様子を見て高笑いしたかと思うと瓦礫が降り注ぐ中、スーッと消えて行った。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

やがて、ベドレオンとバグバズンブルードは道路を突き破り、銀座の街中に姿を現す!

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

そして其処で、ペドレオンの姿が巨大化形態である『ペドレオン・グロース』に変わり、バグバズンブルードも両肩にクワガタの様な大顎が生え、胸部にも爪状のトゲが無数に生えると言う変化が起きた。

 

「うわあぁっ! 怪獣だぁっ!!」

 

「助けてくれぇっ!!」

 

ペドレオン・グロースとバグバズンブルードの姿を見た市民達が逃げ出し始める。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

そんな市民達の恐怖を煽るかの様に2体は咆哮を挙げ、やがて建物を破壊しながら前進を始めた。

 

“と或る場所”を目指して………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・地下司令室………

 

2日続けての警報に、花組の面々は直ぐ様戦闘服姿で集合した。

 

「銀座に2体の怪獣が出現しました」

 

「今映像に出すで」

 

カオルがそう言うと、こまちがモニターに銀座の映像を映し出す。

 

其処には、建物を破壊しながら突き進んでいるペドレオン・グロースとバグバズンブルードが映し出された。

 

「! スペースビーストッ!! しかもあんなに()()()なってる!?」

 

「やっぱり、昨日の奴に生き残りが居たのね………」

 

さくらが驚きの声を挙げると、アナスタシアが苦い表情をする。

 

「現在、2体は街を破壊しながら()()()()進撃を続けている」

 

「一直線? 何処かを目指してんのか?」

 

サコミズの説明に、初穂がそう口を挟む。

 

「………()()です」

 

「え?」

 

「2体が現在の進行ルートを維持した場合………間も無く此処、“大帝国劇場に到達します”」

 

「!? という事は!?」

 

「! 私達の基地を狙って来た?」

 

カオルの言葉に、クラリスとあざみがそう驚きの声を挙げる。

 

「恐らく、昨日の戦いで(わたくし)達を“最優先で排除すべき対象”である、と認識したのでしょう………」

 

そう推察を述べるすみれ。

 

その表情には、未だ迷いの様なモノが見える。

 

「帝劇を()らせるワケには行かない! 皆! 急いで出撃だ!! 敵は強大だが、倒せない相手では無い筈だ!!」

 

「「「「「ハイッ!!」」」」」

 

誠十郎が鼓舞する様にそう叫び、花組の面々が勇ましい返事を返す。

 

「帝国華撃団・花組、出撃せよ!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

号令が掛かると、一斉に無限の在る格納庫へと向かう花組。

 

「…………」

 

すみれは其れを見送ると、コッソリとエボルトラスターを取り出す。

 

中央部分に在る宝石状の物からの光が、激しく点滅を繰り返している。

 

まるで“危機を知らせている”かの様に………

 

「…………」

 

そんなエボルトラスターを見て、すみれは苦悩する様子を見せる。

 

(わたくし)は………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座・帝劇前………

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

ペドレオン・グロースとバグバズンブルードは、もう帝劇の目と鼻の先にまで到達。

 

不気味に触手をくねらせるペドレオン・グロースと、相変わらず口から涎を撒き散らしているバグバズンブルード。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

そして2体は、一気に帝劇へと迫ろうとする。

 

「其処までですっ!!」

 

と、其処で!

 

帝劇から6つの影が飛び出し、ペドレオン・グロースとバグバズンブルードの前に立ちはだかった。

 

「「「「「「帝国華撃団! 参上っ!!」」」」」」

 

ペドレオン・グロースとバグバズンブルードに向かって、勇ましく名乗りを挙げる帝国華撃団。

 

「大帝国劇場は()らせません!」

 

「アタイ達の家には、指一本触れさせ無いぜっ!!」

 

「あざみの掟その2、大帝国劇場は大切な場所」

 

「次の公演の脚本はもう出来てるんです!」

 

「“帝都の象徴”をそう簡単に潰せると思わない事ね」

 

さくら・初穂・あざみ・クラリス・アナスタシアが、口々に言い放つ。

 

「よし、皆! 行くぞっ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

そして誠十郎がそう叫ぶと、一斉にペドレオン・グロースとバグバズンブルードに向かって行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『宇宙怪獣 ベムラー』

 

身長:50メートル

 

体重:2万5000トン

 

能力:口から吐く青い熱線

 

初登場作品:初代ウルトラマン第1話『ウルトラ作戦第一号』

 

『全ての始まり』の敵。

 

宇宙の平和を乱す悪魔のような怪獣であり、コレを初代ウルトラマンが追って来たのが、地球人とウルトラマンのファーストコンタクトとなった。

 

恐竜を思わせるオーソドックスな外見であり、宇宙空間を青い球となって飛ぶ。

 

その状態で逃亡しようとしたところを、スペシウム光線で倒された。

 

その後スーツがギャンゴに改造されたのもあり、映像作品での再登場は無かったが、ウルトラ銀河伝説で復活。

 

後の作品にもちょくちょく登場し、オーブでは強化体も登場した。




新話、投稿させて頂きました。

この作品でのネクサスは、ノアがすみれさんに力の一部を与えて変身させたという設定になります。
この設定にした理由は後々の展開の為です。
何れ明かされますので、それまではお楽しみに。

突如与えられたウルトラマンの力に悩むすみれさん。
そこへ、生き延びていたスペースビースト達がアゴナに強化されて出現!
帝劇を目指して侵攻して来ます。
果たして、すみれさんの決断は?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『ジュネッスバイオレット』

チャプター4『ジュネッスバイオレット』

 

スペースビースト ベドレオン・グロース

 

バグバズンブルード 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座・帝劇前………

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

バグバズンブルードが腕を振り、建物を破壊したかと思うと、その瓦礫が散弾の様に飛ぶ。

 

「フッ! ハアッ!!」

 

しかし、その瓦礫を足場に、あざみ機がバグバズンブルードに接近。

 

「ニンッ!」

 

そしてバグバズンブルードに向かって、焙烙火矢型の手投げ弾をばら撒く。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

多数の爆発で一瞬怯んだかに見えたバグバズンブルードだったが、直ぐに態勢を立て直し、あざみ機を叩き落そうとする。

 

「ドロンッ!」

 

しかし、バグバズンブルードの手が当たるかと思われた瞬間、あざみ機は煙と共に消える。

 

「ハアアアアァァァァァーーーーーーッ!!」

 

「オリャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!」

 

其処で、今度はさくら機がバグバズンブルードの右脚、初穂機が左脚を狙って、其々刀とハンマーを振るう。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

しかし何と!

 

バグバズンブルードは跳躍して回避したかと思うと、そのままビルの上に乗っかった。

 

「!?」

 

「何っ!?」

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

驚くさくら機と初穂機に向かって、バグバズンブルードは飛び掛かる。

 

「!!」

 

「危ねっ!!」

 

慌てて回避行動を取ると、バグバズンブルードの手に付いた鋭い爪が、石畳の地面を大きく爆ぜさせる。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

相も変わらず涎を撒き散らしながら咆哮を挙げるバグバズンブルード。

 

「うっ」

 

「ったく、気持ち(わり)ぃ野郎だぜ!」

 

「でも、油断は出来ない相手………」

 

その姿に生理的嫌悪を覚えるさくらと悪態を吐く初穂に、傍に現れたあざみ機からあざみがそう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

「行かせませんっ!!」

 

帝劇を目指して進撃するペドレオン・グロースに向かって、魔導書を開いたクラリス機が重魔導を浴びせようとする。

 

『待つんだ、クラリス君!!』

 

すると其処へ、慌てた様子のイデから通信が入る。

 

「イデさん!?」

 

『解析の結果、そのスペースビーストの身体は殆どが水分で、其れも全てが“可燃性物質”だ。若し誘爆すれば、相当な被害が出る」

 

「! そんなっ!?」

 

イデからの報告に、クラリスが思わず声を挙げると………

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

ペドレオン・グロースは、帝劇目掛けて頭部の触角から火球を放った!

 

「! クウッ!」

 

クラリス機は火球に先回りすると、帝劇を守る為に大きく魔法陣を展開。

 

火球は魔法陣に当たって燃え尽きる。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

するとペドレオン・グロースは、連続で火球を放ち始める。

 

「ぐううっ!」

 

魔法陣に次々に火球が命中し、クラリスが呻き声を漏らす。

 

迂闊に攻撃出来ない為、相手の攻撃を防ぐ事しか出来ない彼女は、文字通り防戦一方だ。

 

だが其処で………

 

ペドレオン・グロースに弾丸が命中したかと思うと、命中した部分が凍り付いた。

 

「!!」

 

「此処は私の出番ね」

 

クラリスが驚いていると、銃口から硝煙を立ち昇らせているアナスタシア機から、そう通信が送られて来る。

 

「アナスタシアさん!」

 

「ハッ!」

 

次々に、銃弾をペドレオン・グロースに浴びせるアナスタシア機。

 

ペドレオン・グロースの身体がドンドン凍り付いて行く。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

堪らず悲鳴の様な咆哮を挙げるペドレオン・グロースだが、直ぐに両腕の触手をアナスタシア機に向かって伸ばす。

 

「させるかぁっ!!」

 

だが、その間に誠十郎機が割って入り、迫り来る触手を二刀で次々に斬り飛ばす。

 

「フォローありがとう、キャプテン」

 

「隊長として当然さ。アナスタシア、このまま奴を氷漬けにしてしまうんだ」

 

「その積りよ」

 

誠十郎の指示に応え、アナスタシア機は更に弾丸をペドレオン・グロースに浴びせて行く。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

ドンドンと凍り付いて行き、次第に動きが鈍くなり始めるペドレオン・グロース。

 

「良いぞ! このまま………」

 

と、誠十郎がそう言い掛けた瞬間!

 

突如、アナスタシア機の背後の石畳が爆ぜ、舞い上がった土煙の中から細い2本の触手が現れる。

 

「!? なっ!?」

 

「! しまったっ!!」

 

アナスタシアが驚き、誠十郎機が慌てて斬り捨てようとしたが1歩間に合わず、アナスタシア機の両腕に触手が巻き付き、そのまま地中へと引き摺り込まれた!

 

「アナスタシアッ!!」

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

誠十郎の叫びが木霊した瞬間、ペドレオン・グロースが密かに口の中から伸ばしていた触手を地面から引き抜く。

 

引き抜かれた触手の先端には、拘束されたアナスタシア機の姿が在った。

 

「クッ! このっ!!」

 

拘束を解こうとするアナスタシア機だったが………

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

「!? あああああっ!!」

 

触手から電撃が放たれ、アナスタシアが悲鳴を挙げる。

 

そして、彼女の機体はガクリと脱力して動かなくなった。

 

「アナスタシア! アナスタシアッ!!」

 

『アカンッ! 気を失ってしもうたみたいや!』

 

呼び掛ける誠十郎に、こまちからそう通信が送られて来る。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

ペドレオン・グロースは、動かないアナスタシア機を見せ付ける様に突き出す。

 

「アナスタシアさんを人質にっ!?」

 

「クソッ! 確実に賢くなってるっ!!」

 

『この“学習能力の高さ”がスペースビーストの恐ろしい所だ………』

 

クラリスと誠十郎の声に、ゼロがそう呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・地下司令室………

 

「アカン!! アレじゃ攻撃出来ひん!!」

 

「何とかしてアナスタシアさんを解放させないと………」

 

こまちとカオルが、何とかしようと情報を精査する。

 

「「…………」」

 

サコミズとイデも難しい顔をしている。

 

「…………」

 

そしてすみれは、モニターに映るアナスタシア機を人質にしているペドレオン・グロースを睨む様に見詰めている。

 

ふと其処で、エボルトラスターを取り出す。

 

エボルトラスターは、相変わらず“警告”の様に発光している。

 

(わたくし)は………)

 

だが、すみれの心には今だ迷いが在った。

 

只々エボルトラスターを握り締めるだけのすみれ。

 

 

 

 

 

………その時!

 

 

 

 

 

()()()()()! 行くんだっ!!』

 

「!?」

 

“突如聞こえて来た()”に、すみれは驚愕を露わにする。

 

何故なら、其れは彼女にとって“とても()()()()()声”だったからだ。

 

「今のは………まさか!?」

 

と、そう呟いた瞬間………

 

すみれの意識は彼女の身体を離れ、“不思議な空間”の中に入って行った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???………

 

「!? 此処はっ!?」

 

自分が居る場所に驚くすみれ。

 

今、彼女が居るのは“改装される前”の、“彼女が()()()()大帝国劇場”の前だった。

 

ご丁寧に、すみれの姿も“()()()のモノ”となっている。

 

「………すみれくん」

 

「!!」

 

自分を呼ぶ声がして、其れが聞こえて来た方を見たすみれの眼に飛び込んで来たのは………

 

初代帝国華撃団隊長・『大神 一郎』の姿だった!

 

「大尉っ!!」

 

すみれが驚きの声を挙げると、更に………

 

「すみれさん」

 

「すみれ」

 

「すみれー!」

 

「すみれはん」

 

「すみれさーん」

 

「すみれ」

 

『真宮寺 さくら』・『マリア・タチバナ』・『イリス・シャトーブリアン』こと『アイリス』・『李 紅蘭』・『ソレッタ・織姫』・『レニ・ミルヒシュトラーセ』が現れる。

 

「さくらさん………マリアさん………アイリス………紅蘭………織姫さん………レニ………」

 

「よ~、元気そうじゃねえか………“サボテン女”」

 

そして、最後にそう言う台詞と共に『桐島 カンナ』が姿を見せる。

 

「カンナさん………」

 

「すみれくん、行くんだ」

 

呆然となっていたすみれに、大神がそう言う。

 

「えっ?」

 

「“()君に出来る事をする”………其れを躊躇する必要なんて無い」

 

「ですが、(わたくし)は………」

 

「何ウジウジしてやがる!?お前らしく()えぞ!!」

 

大神に続く様に、カンナが言い放つ。

 

「すみれ。貴女は“1人じゃ無い”わ」

 

「例え身体は離れていても………」

 

「心は何時も繋がってるんだよ」

 

「私達の絆は不滅デース」

 

「僕達は、()()………“()()()()()()

 

マリア・紅蘭・アイリス・織姫・レニもそう言って来る。

 

「すみれさん。()()()()()………帝都をお願いします」

 

「…………」

 

最後にさくらの言葉を聞いた瞬間、すみれの心の中に在った迷いは完全に消えていた。

 

その右手に、エボルトラスターが現れる。

 

「皆さん………ありがとうございます」

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

すみれが笑顔を浮かべてそう言うと、大神達も全員笑顔を浮かべる。

 

「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」

 

何時の間にか、その傍には巴里(パリ)華撃団と紐育(ニューヨーク)華撃団の姿も現れており、同じ様に笑顔を浮かべていた。

 

そしてその瞬間、光が溢れ………

 

「…………」

 

すみれの目の前に、ネクサスが現れる。

 

「………分かりました。貴方が何故、(わたくし)に“力を託した”のか」

 

「…………」

 

ネクサスを見上げながらすみれが言う。

 

「“皆さんとの絆は繋がっている”………だから(わたくし)は………決して()()()()()わっ!!」

 

「…………」

 

すみれがそう宣言した瞬間………

 

ネクサスの姿が一瞬………

 

『ウルトラマンノア』に変わった様に見えた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・地下司令室………

 

「…………」

 

現実へと戻ってきたすみれは、一瞬モニター越しにペドレオン・グロースとバグバズンブルードを見据えた。

 

「………サコミズさん。申し訳有りませんが、後をお願い出来ますか?」

 

「すみれさん?」

 

突然のすみれの言葉に、一瞬戸惑うサコミズ。

 

「…………」

 

「………行って下さい。後の事はお任せを」

 

しかし迷いを振り切ったすみれの顔を見て、悟ったかの様な様子を見せたかと思うとそう応える。

 

「お願いしますわ」

 

そう言い残して、すみれは司令室を後にした。

 

「!? すみれ様っ!?」

 

「ちょっ! すみれはんっ!?」

 

すみれの突然の行動に、カオルとこまちが驚きの声を挙げる。

 

「行かせてあげなさい」

 

「サコミズさん!?」

 

サコミズまでもがそう言って来て、カオル達は更に戸惑う。

 

「大丈夫だ………」

 

サコミズは只優しく微笑む。

 

“心配は要らない”と言う様に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・中庭………

 

司令室から飛び出したすみれは、中庭へと躍り出たかと思うと、エボルトラスターの鞘の部分を左手で握って左腰の辺りに構え、右手で柄の方を握る。

 

「…………」

 

目を閉じ、集中する様子を見せるすみれ。

 

脳裏に大神達の姿が過る。

 

「光………絆………ネクサス!」

 

そしてカッと目を見開いたかと思うと、エボルトラスターを鞘から勢い良く引き抜いた!!

 

「シュアッ!!」

 

エボルトラスターから溢れた光の中から、ネクサスが飛び出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座・帝劇前………

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

人質のアナスタシア機を見せ付ける様にしながら、クラリス機と誠十郎機に迫るペドレオン・グロース。

 

「アナスタシアさん! アナスタシアさん!」

 

クラリスが必死に呼び掛けているが、アナスタシアから応答は無い。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

と其処で、バグバズンブルードが合流して来た。

 

「隊長!!」

 

「アイツ、アナスタシアを!?」

 

「卑怯な………」

 

さくら機・初穂機・あざみ機も誠十郎達に合流すると、アナスタシアが人質にされている事に気付く。

 

『誠十郎! 此処は俺に任せろっ!!』

 

「其れしか無いか!」

 

と、誠十郎が変身しようとしたその時!!

 

突如伸びて来た光の鞭がアナスタシア機を包み込んだかと思うと、一瞬でペドレオン・グロースから奪い去った!

 

「「「「「!?」」」」」

 

誠十郎達が驚きながら、光の鞭が伸びて来た方向を見遣ると、其処には………

 

「…………」

 

アナスタシア機を抱えて佇むネクサスの姿が在った。

 

「! 銀色のウルトラマンッ!!」

 

(! 神崎司令!!)

 

『そうか………“()()を決めた”か』

 

さくらが驚きの声を挙げ、その正体を知る誠十郎も内心で驚愕するが、ゼロだけは“全てを分かっていた”かの様に呟いていた。

 

「…………」

 

ネクサスは、アナスタシア機を光の鞭『セービングビュート』で離れた場所の地上へと優しく降ろすと、ペドレオン・グロースとバグバズンブルードに向き直る。

 

「シュアッ!!」

 

其処で、ネクサスが左腕を構えたかと思うと、『アームドネクサス』が光を放つ。

 

そして左腕を戻す様に振ったかと思うと、ネクサスの姿が銀色から紫………

 

否、鮮やかな『菫色』を纏った姿………

 

『ウルトラマンネクサス・ジュネッスバイオレット』へと変わる。

 

「! 変わったっ!?」

 

「ジュワッ!」

 

さくらが声を挙げた瞬間、ネクサスは左腕に右腕を添える様な構えを執る。

 

すると右の拳に光が宿り、その拳を円を描く様に動かしたかと思うと、天に向かって突き出した。

 

右手の光から、『フェーズシフトウェーブ』が放たれて上空で花火の様に弾け、ドーム状に光が広がって行く。

 

そのドームの範囲内では、黄金の光がシャワーのように降り注ぎ、地表からは水泡のような光が立ち昇る。

 

「あの光は………?」

 

クラリスが呟いた瞬間、ドーム状の光は完全にネクサスとペドレオン・グロース、バグバズンブルードを包み込み………

 

その姿を忽然と消してしまった!

 

「!? 消えたっ!?」

 

『如何やら、異空間を作り出して其処へ“自身とスペースビーストを隔離した”みたいだね』

 

あざみが驚きの声を挙げると、イデが直ぐに解析結果を知らせて来る。

 

「!? 異空間!? 降魔の魔幻空間みたいな事が出来んのか、あのウルトラマン!?」

 

「驚いてる場合じゃ無い! さくらはアナスタシアの安否を確認! 残りは俺と一緒に周辺の警戒だ! 未だ油断は出来ないぞ!」

 

初穂が驚きの声を挙げるが、其処で誠十郎が食い気味にそう指示を飛ばした。

 

「「「「! 了解っ!!」」」」

 

花組は直ぐ様散開し、さくらがアナスタシアの安否確認に向かい、他の者は周辺の警戒に入る。

 

其処で誠十郎は、無限を自動操縦に切り替えるとコッソリと機体を降り、路地裏に身を隠して変身する。

 

「デュワッ!」

 

ウルトラゼロアイを装着した誠十郎の姿が、ゼロへと変わる。

 

「良し………」

 

そして意識を集中させると、ノアから授かったウルティメイトブレスレットがネクサスが展開している異空間………『メタフィールド』の存在を感じ取り、発光する。

 

「デエヤッ!!」

 

そして其れによってメタフィールドに干渉。

 

ゼロもその中へと飛び込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メタフィールド内………

 

赤土色の荒野の様な地面に発光する物質が点在し、空にもオーロラの様な光が満ちている空間内で、ネクサスはペドレオン・グロースとバグバズンブルードと睨み合う。

 

「シュウアッ!!」

 

其処でネクサスは、両手の拳を合わせる様な構えを執る。

 

するとアームドネクサスが光を放ち、其れを媒介にして両端に刃の付いた薙刀………

 

『アームドグレイヴ』を形成した。

 

「セアッ!!」

 

そのアームドグレイヴを手に取ると、回転させながら振り回し、まるで“舞を舞っている”かの様な優雅な型を見せる。

 

すみれの特技『神崎風塵流』の型だ。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

とその瞬間、バグバズンブルードが咆哮と共にネクサスへ飛び掛かる。

 

「!!」

 

迎え撃とうとしたネクサスだったが………

 

「オオオリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

突如現れたゼロが、ネクサスに飛び掛かろうとしていたバグバズンブルードにウルトラゼロキックを見舞った!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

バグバズンブルードは地面に叩き付けられ、そのまま地上を滑って行く。

 

「!?」

 

「すみれ! コッチは任せなっ!!」

 

驚いた様な様子を見せたネクサスに、ゼロはそう呼び掛けてバグバズンブルードに向かい会う。

 

「………シュアッ!!」

 

ネクサスは一瞬間を置いて、ペドレオン・グロースに向かって行った。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

起き上がったバグバズンブルードが、ゼロに激しく敵意を向ける。

 

「来いっ! お前の相手は俺がしてやる!!」

 

そう言って、ゼロは両手にゼロスラッガーを握った。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

バグバズンブルードが、咆哮と共にゼロに向かう。

 

「ハアッ!!」

 

対するゼロもバグバズンブルードへと向かう。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

「フッ!!」

 

咆哮と共に振られたバグバズンブルードの左手の爪の攻撃を、右手に握ったゼロスラッガーで受け止めるゼロ。

 

「ハアッ!!」

 

そして左手のゼロスラッガーで斬り掛かったが、バグバズンブルードの右手の爪に受け止められる。

 

「セエヤッ!!」

 

其処でゼロは両腕を上へ振り上げ、バグバズンブルードの腕を払う。

 

「ハアッ!!」

 

そして、がら空きになった胴体をゼロスラッガーで左右から横薙ぎに斬り付ける。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

バグバズンブルードは悲鳴の様な咆哮を挙げながらも、その場で跳び上がってゼロにドロップキックを見舞う。

 

「うおっ!?」

 

モロに喰らったゼロが後ろに退がる。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

追撃を掛けようと距離を詰めるバグバズンブルード。

 

「オラッ! そりゃあっ!」

 

其れに対しゼロは、ゼロスラッガーを2つ共投げ付ける。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

飛んで来たゼロスラッガーを爪で弾き飛ばすバグバズンブルード。

 

「エメリウムスラッシュッ!!」

 

間髪容れず、エメリウムスラッシュを放つゼロ。

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

だが、バグバズンブルードは跳躍して躱し、そのままゼロに襲い掛かる。

 

「………フッ」

 

しかし、ゼロが不敵に笑ったかと思うと………

 

何と、外れたと思われたエメリウムスラッシュが、弾かれたゼロスラッガーに当たり反射!

 

バグバズンブルードの背中に命中した!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

忽ち失速し、地面に叩き付けられるバグバズンブルード。

 

「ハアッ!!」

 

其処で、ゼロはウルトラ念力でゼロスラッガーを手繰り寄せ、カラータイマーの左右に装着。

 

「ゼロツインシュートッ!!」

 

そのまま、ゼロツインシュートを放つ!!

 

キシャアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

光刃から変換されたエネルギーの奔流に耐え切れず、バグバズンブルードは光に呑まれる様に消滅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ネクサスVSペドレオン・グロースの方は………

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

咆哮と共に、その巨大な口から無数の触手をネクサス目掛けて伸ばすペドレオン・グロース。

 

「シェアッ!!」

 

しかし、ネクサスはアームドグレイヴを振り回し、迫り来る触手群を次々と斬り落とす。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!!

 

「ヘヤッ!!」

 

ならばと、頭部の触手から火球を放つが、其れもアームドグレイヴで斬り払われる。

 

「シュウワッ!!」

 

其処でネクサスはアームドグレイヴを横薙ぎに振るい、光粒子エネルギーの刃『パーティクル・フェザー』を飛ばす。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!?

 

三日月状の光の刃が、ペドレオン・グロースの頭部の触手を切断する。

 

「シュイアッ!!」

 

其処でネクサスは跳躍。

 

落下の勢いも乗せて、アームドグレイヴをペドレオン・グロースの身体に突き刺す!

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!?

 

「セエヤァッ!!」

 

そして、その状態で自ら回転。

 

ペドレオン・グロースをアームドグレイヴの先端に突き刺したままスイングする!

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!?

 

ペドレオン・グロースの叫びが響いた瞬間にアームドグレイヴの刃が抜け、投げ飛ばされる!

 

傷口から形容し難い色の体液を撒き散らしながら、地面に叩き付けられるペドレオン・グロース。

 

「シュアッ!!」

 

其処でネクサスは、アームドグレイヴを振り回す。

 

すると、アームドグレイヴの刃から光の炎が溢れ始める。

 

やがてその炎は鳥………不死鳥(フェニックス)の形を取り始める。

 

「シュウワッ!!」

 

そしてネクサスが身体を1回転させながらアームドグレイヴを振るうと、その光の炎の不死鳥がペドレオン・グロースに向かって飛翔!

 

ジュネッスバイオレットの最大必殺技『フェニックス・シュトローム』だ!!

 

不死鳥(フェニックス)がペドレオン・グロースに直撃すると、その身体が光の炎に包まれる。

 

キュイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!?

 

断末魔が響き渡る中、ペドレオン・グロースは分子レベルで焼却され、光の粒子となって消滅した。

 

「…………」

 

其れを見届けると、ネクサスは構えを解いて佇む。

 

「…………」

 

その隣にゼロが並び立つ。

 

「「…………」」

 

ネクサスとゼロはお互いに頷き合い、ネクサスは光を放ってメタフィールドを解除したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座・帝劇前………

 

「…………」

 

元の世界に戻ってきたすみれは、帝劇の前に佇んでいた。

 

その手にはエボルトラスターが握られている。

 

「………ありがとう」

 

すみれは1度エボルトラスターを見遣ったかと思うとそう呟き、懐へと仕舞う。

 

「神崎司令っ!」

 

と其処へ、誠十郎がやって来る。

 

「神山くん………」

 

『見付けたみてぇだな。“ウルトラマンになる()()”をよ』

 

すみれが反応すると、ゼロがそう言う。

 

「ええ………(わたくし)と皆さんは今だ繋がっている………其れを教えてくれる為に、彼は(わたくし)の元へと来た………きっとそうよ」

 

すみれが空を見上げながらそう返す。

 

「隊長ーっ!」

 

と其処で、花組の面々が姿を見せる。

 

「! 神崎司令!」

 

「「「「!!」」」」

 

すみれが一緒なのに気付くと、慌てて姿勢を正す。

 

「………皆、もう大丈夫よ。戦いは終わったわ」

 

そんな花組の面々に、すみれはそう告げる。

 

「! ホントですか!?」

 

「ええ、ゼロと………あの“銀色のウルトラマン”のお陰でな」

 

さくらの問い掛けに、誠十郎がそう返す。

 

「そう言や、あのウルトラマン………何て名前なんだ?」

 

「凄く無口だったから分からなかった」

 

と其処で、初穂とあざみが声を挙げる。

 

「ネクサス………」

 

「えっ?」

 

不意に呟いたすみれに、クラリスが戸惑う。

 

「彼の名はネクサス………ウルトラマンネクサスよ」

 

「ウルトラマン………ネクサス」

 

其れを気にせずすみれはそう言葉を続け、アナスタシアが反芻する。

 

「ウルトラマンネクサス………頼もしい味方が増えましたね!」

 

「…………」

 

無邪気に喜ぶさくらを見て、すみれはひっそりと微笑みを浮かべた。

 

「まっ! 何はともあれ、終わったんなら、アレ行っとくか!」

 

「神崎司令。よろしければご一緒に」

 

と其処で、初穂がそう声を挙げると、誠十郎がすみれを誘った。

 

「フフフ、では久しぶりにやらせて頂こうかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では皆さん………行きますわよ!!」

 

「「「「「「「勝利のポーズ、決め!」」」」」」」

 

すみれを中心に、花組の面々は勝利のポーズを決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜………

 

帝劇・支配人室にて………

 

「ふう~………コレで報告書は全部ね」

 

報告書に目を通し終えたすみれが、大きく息を吐きながらそう呟く。

 

「さて………」

 

ふと其処で、視線を机の上に在る電話に向けた。

 

「…………」

 

一瞬考える様な素振りを見せたかと思うと、受話器を取りダイヤルを回す。

 

『ハイ、神崎でございます』

 

「その声は宮田かしら? 久しぶりね」

 

『! す、すみれ様! すみれ様でございますかっ!?』

 

「ええ、申し訳有りませんけど、お父様とお母様の予定を確認して貰えるかしら? 久しぶりに一緒に食事でもと思いましてね」

 

『! ハイ! 直ちに!!』

 

「ふふふ………」

 

受話器の向こうから慌しい様子が伝わるのを聞きながら、すみれは軽く微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

誠十郎「帝劇に現れた謎の少女『クラーラ』

 

記憶を失っていた彼女を引き取りに現れたのは何と莫斯科(モスクワ)華撃団!?

 

だが、如何にも様子がおかしい………

 

彼等は“本当に”莫斯科華撃団なのか?

 

更に謎の怪人が帝都に現れる。

 

果たして、クラーラに隠された秘密とは?

 

次回『新サクラ大戦』

 

第5話『太陽より愛をこめて』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

クラーラ………君は一体?」

 

???「光の絆、繋いでみせます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4.5話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『ペドレオン』

 

体長:2~10メートル(クライン)、20~50メートル(グロース)

 

体重:不定(クライン)、2万5000~4万5000トン(グロース)

 

能力:頭部の触角から放つ火球、触手からの電撃、口を発光させて放つ衝撃波

 

初登場作品:ウルトラマンネクサス第1話『夜襲 -ナイトレイド-』、第2話『異生獣 -スペースビースト-』

 

ネクサスで最初に登場したスペースビースト。

 

ブロブタイプと呼ばれる分類に入る。

 

小型のクライン、大型のグロースの他、飛翔型のフリーゲンと言う形態も存在する。

 

1話から人間を次々に捕食すると言うスペースビーストの凶悪・凶暴性をまざまざと見せ付けた。

 

そしてこの敵との出会いから、孤門 一輝の壮大な物語が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バグバズンブルード』

 

身長:1.8~40メートル

 

体重:150キロ~3万3000トン

 

能力:鋭い爪と素早い動き

 

初登場作品:ウルトラマンネクサス未放送回「詩織 -ロストメモリーズ-」

 

戦闘員タイプのスペースビースト。

 

初登場回が未放送な為、どちらかと言うとウルトラマンX第20話で登場した方が有名。

 

テレビシリーズ初のネクサス客演であり、各所に盛り込まれたネクサスオマージュの要素が堪らない神回。

 

Xを苦戦させたが、ネクサスにメタフィールドに連れ込まれ、ダブルウルトラマンの攻撃で分子レベルで分解されて消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラナビ

 

『ウルトラマンネクサス・ジュネッスバイオレット』

 

身長:49メートル

 

体重:4万1000トン

 

新たなるデュナミスト・神崎 すみれによって宿ったネクサスの新たな形態。

 

彼女の名の通り、鮮やかな菫色が特徴。

 

両腕のアームドネクサスを媒介に、両端に刃の付いた薙刀『アームドグレイヴ』を形成出来、其れを使ってすみれの神崎風塵流で戦う。

 

ジュネッス(姫矢)をパワー、ジュネッスブルー(憐)をスピードタイプとするなら、この形態はテクニカルタイプとも言える。

 

必殺技は神崎風塵流・鳳凰の舞をベースにした『フェニックス・シュトローム』




新話、投稿させて頂きました。

スペースビースト達の帝劇侵攻を阻止する花組だったが、アナスタシアが人質にされて大ピンチに。
しかしそこで………
掛け替えの無い仲間達との絆を思い出し、迷いを振り切ったすみれがネクサスへ変身。
ジュネッスバイオレットへと覚醒します。

すみれさんをネクサスにしたのはコレが最大の理由ですね。
大神さん達との絆はまだ繋がっている、途切れていないと言うのを表したかったんです。
また後々への伏線でもあります。

そして次回からはいよいよ先行登場の莫斯科華撃団編。
元がアニメ1クール分の話なので、長くなると思いますが、どうかお付き合い下さい。
あのウルトラマンも登場しますので、お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第5話『太陽より愛をこめて』
チャプター1『ツングースカの惨劇』


第5話『太陽より愛をこめて』

 

チャプター1『ツングースカの惨劇』

 

円盤生物 シルバーブルーメ

 

宇宙大怪獣 ベムスター

 

機械人形 ゴブニュ(ヴァハ) 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

露西亜(ロシア)・ペトログラード上空………

 

吹雪が吹き(すさ)ぶ中を、1隻のWLOF級空中戦艦が飛行している。

 

莫斯科(モスクワ)華撃団の空中戦艦だ。

 

「進路、異常無し」

 

「警戒を怠るな。宇宙人共が“積み荷”を狙って来ないとも限らん」

 

レーダー手からの報告に、艦長席に座る莫斯科華撃団の隊長がそう返す。

 

「………隊長。やはり“彼女”を我々の元へ引き入れるのですか?」

 

と其処で、隊長の隣に立っていた副隊長がそう尋ねる。

 

「当然だ。其れが『祖国からの指示』だ」

 

「正直、未だ納得出来ません。あんな幼い少女を………しかも彼女は!」

 

()()副隊長」

 

「!!」

 

“同志”と付けて呼ばれた副隊長がビクリとする。

 

「貴様、『祖国の()()』に異議を唱える気か?」

 

「い、いえ! そんな!? 自分は………」

 

()()()()()()()だ」

 

「………了解」

 

副隊長は、其れ以上何も言えなくなる。

 

権威・全体主義(ツァーリズム)的思想が強い露西亜は、華撃団もその影響を強く受けていた。

 

と、その時!!

 

「! 未確認飛行物体、接近!!」

 

「何っ!?」

 

レーダー手から報告に、隊長が声を挙げる。

 

「は、速いっ!? ああっ、衝突しますっ!!」

 

だが、未確認飛行物体の速度は尋常では無く、一瞬にして莫斯科華撃団の空中戦艦へと接近。

 

空中戦艦に衝撃が走る!!

 

「「「「「!? うおおっ!?」」」」」

 

艦橋に居た隊員達が声を挙げた瞬間………

 

艦橋の窓を“何か”が覆い尽くした!

 

「!? 何だっ!? 何が起こっている!?」

 

副隊長が、慌てながらもそう問い質す。

 

艦橋の窓を覆っている(モノ)………

 

其れは、無数の巨大な“触手”だった。

 

更に、黄色い液体の様な物が滴って来たかと思うと、ジューッ!という音と共に、空中戦艦の彼方此方から白い煙が上がり始めた。

 

「!? 溶解液っ!? まさかっ!? 怪獣か!?」

 

彼方此方が溶け始めている空中戦艦を見て、隊長が悲鳴の様な声を挙げる。

 

 

 

 

 

その予測通り………

 

莫斯科華撃団の空中戦艦に衝突して取り付き、触手と溶解液で攻め立てているのは、まるで“クラゲ”を思わせる円盤状の怪獣………

 

嘗て防衛チーム『MAC』を全滅させた『ブラックスター』から来た悪魔の使者………

 

『円盤生物 シルバーブルーメ』だった!!

 

 

 

 

 

「撃て! 攻撃しろっ!!」

 

「し、しかし! 敵は本艦に取り付いています! このまま攻撃を行うと、本艦にも被害が………」

 

「構わん! このままではどの道()られるだけだ! 攻撃しろっ!!」

 

「ダ、了解(ダー)ッ!!」

 

シルバーブルーメを引き剥がそうと、隊長の命令で空中戦艦の武装がシルバーブルーメに照準を合わせ、発射される。

 

取り付いているシルバーブルーメに対して攻撃している為、空中戦艦にも被害が出るが、そんな事には構っていられない、と次々に攻撃が繰り出される。

 

やがて、僅かだがシルバーブルーメの触手が緩んで、剥がれそうになる。

 

「良し! 良いぞっ!!」

 

希望が見え始め、隊長が歓声を挙げるが………

 

更なる絶望が襲い掛かった………

 

「!? 新たな未確認飛行物体接近っ!!」

 

「!? 何だとっ!?」

 

レーダー手が新たな未確認飛行物体接近の報告を挙げたかと思うと………

 

ピギャアッ! キュイイイィィィィッ!!

 

吹雪を切り裂く様に、腹部に五角形の器官を持つ、平たい鳥の様な怪獣………

 

『宇宙大怪獣 ベムスター』が現れた!!

 

「ま、また怪獣がっ!?」

 

「クソッ! 武装の半分を奴に向けろ! 撃て! 撃てぇっ!!」

 

副隊長が悲鳴を挙げる中、隊長は武装の半分をベムスターに回して攻撃させる。

 

ピギャアッ! キュイイイィィィィッ!!

 

しかし、MATアローのミサイル攻撃すら物共しなかったベムスターには、空中戦艦の攻撃も通用せず、委細構わず突き進む。

 

そして空中戦艦に肉薄したベムスターは、身体を垂直に立てたかと思うと、腹部の口『吸引アトラクタースパウト』を開き、空中戦艦の艦首を呑み込んだ!

 

「うおっ!?」

 

「霊子エネルギー並びに蒸気圧力、急速低下!!」

 

「!? 何っ!?」

 

「か、艦首に取り付いた怪獣が、本艦のエネルギーを全て吸い上げています!!」

 

ピギャアッ! キュイイイィィィィッ!!

 

莫斯科華撃団の空中戦艦のエネルギーを全て吸収して行くベムスター。

 

やがて、艦橋の照明が落ちた。

 

「エネルギー更に低下! 全システムダウンッ!!」

 

「な、何とかしろっ!!」

 

隊員からの報告に、最早真面な指揮も出来ない隊長。

 

と、次の瞬間!!

 

艦橋の天井が突き破られた!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

莫斯科華撃団の隊員達が見上げた先には、既に空中戦艦の殆どを呑み込み始めていたシルバーブルーメのグロテスクな体内が広がっていた。

 

其処から、艦橋中に黄色い溶解液が噴射される!

 

「ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

「ウワアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

幾つもの断末魔が木霊し、莫斯科華撃団の隊員達は無残に溶かされて行った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

阿鼻叫喚の地獄絵図となっている空中戦艦の最深部………

 

まるで()()されているかの様な部屋の中では………

 

「キャッ!!」

 

幼い茶色掛かった銀髪の少女が、艦に走った衝撃で床に転ぶ。

 

少女が居る部屋は、簡素なベッド以外に物が無く、扉は1つで覗き窓には鉄格子が填められている。

 

まるで牢屋の様な小部屋だった。

 

「…………」

 

未だ振動が走る中、立ち上がった少女は不安気に両手を胸の前で組む。

 

「姉さん………」

 

と、少女がそう呟いた瞬間………

 

部屋の扉が轟音と共に大きく歪んだ!!

 

「!? ひっ!?」

 

思わず少女が悲鳴を漏らすと、まるで扉を殴っている様な音が数度響き、その度に扉が大きく変形する。

 

やがて隙間が出来たかと思うと、其処から手が突っ込まれ、鈍い音を立てながら分厚い扉を抉じ開けた。

 

「…………」

 

現れたのは、茶色っぽい体に7つの光るカメラアイを持つ人型ロボット………

 

『機械人形 ゴブニュ(ヴァハ)』だった!

 

「ヒッ!」

 

ゴブニュ(ヴァハ)の姿を見て、再度悲鳴を挙げる少女。

 

「…………」

 

一方ゴブニュ(ヴァハ)は、少女の姿を確認すると手を伸ばしながら近付く。

 

「あ、あ、ああ………」

 

「…………」

 

ゆっくりと迫って来るゴブニュ(ヴァハ)の姿に、少女の顔がドンドンと青褪めて行く。

 

「…………」

 

遂に、眼前に立ったゴブニュ(ヴァハ)の手が少女に届こうとする。

 

 

 

 

 

………その瞬間!!

 

 

 

 

 

「! 嫌ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

少女の叫びと共に、その身体から“強烈な光”が発せられた!!

 

「………!」

 

その光に呑まれたゴブニュ(ヴァハ)は、“一瞬で”消滅。

 

そして、光はドンドンと広がって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

露西亜・ペトログラード上空………

 

ピギャアッ! キュイイイィィィィッ!!

 

殆どスクラップになった莫斯科華撃団の空中戦艦を、どんどん呑み込んで行くシルバーブルーメとベムスター。

 

と、その次の瞬間!!

 

空中戦艦を“()()()()消滅させながら”、強烈な光が広がった!!

 

ピギャアッ!? キュイイイィィィィッ!?

 

その光を浴びた、シルバーブルーメとベムスターがゴブニュ(ヴァハ)と同様に消滅する。

 

光は吹雪を吹き飛ばし、まるで太陽の様に辺り一面を照らし出した。

 

「! 遅かったかっ!?」

 

と其処で、地上に白いマントを翻して仮面を付けた“謎の怪人剣士”が現れた。

 

体型と声から察するに、女性の様である。

 

やや呆然とした様子で光の広がる空を見上げる白マント。

 

やがて光は収まり、辺りは静けさを取り戻す。

 

と、空の1点に光が輝く。

 

「!!」

 

白マントは、直ぐ様その光の下へと走る。

 

やがて真下へ到着して足を止めると、光が徐々に降下して来る。

 

その姿が、目視で確認出来る距離にまで迫り正体が明らかになる。

 

 

 

 

 

其れは、背中からまるで“天使の様な白い翼を生やした”、あの少女の姿だった。

 

 

 

 

ゆっくりと白マントの許へと降りて来る少女。

 

と、白マントの頭上まで降りて来たかに思われた瞬間、翼が弾ける様に消えてそのまま重力に引かれて落下する。

 

「!!」

 

落ちて来た少女を抱き留める白マント。

 

「…………」

 

少女は気を失い、目を閉じていた。

 

「力を使い果たしたのか………」

 

少女を見ながら、白マントはそう呟く。

 

(私ではこの子を()()事は出来ても、()()事は出来ない………だが、“彼等と彼女達”なら………)

 

やがて、白マントは少女を抱えたままその場を後にしたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???………

 

一面が窓になっているテラスの様な場所に、金髪の若い男が佇んでいた。

 

「失礼します、『カミンスキー』様」

 

其処へ、後ろ髪をギブソンタックで纏めた青み掛かった銀髪の女性が姿を現す。

 

「莫斯科華撃団の空中戦艦の撃墜を確認した、との報告が入りました」

 

「そうですか………『クラーラ』は?」

 

女性の方を向かずにそう問い質す『カミンスキー』と呼ばれた男。

 

「残念ながら“確保には失敗した”と………如何やら、謎の存在に保護されて()()へと向かっている様です」

 

「帝都ですか………ならば()()()()ですね。ジェネラルAにもご挨拶せねばと思っていた処ですから」

 

其処でカミンスキーは、女性の方へと近付く。

 

「貴女にも“存分に働いて貰います”よ、『レイラ』」

 

『レイラ』と呼んだ女性の頬へと手を伸ばそうとしたカミンスキーだが………

 

「ハイ、カミンスキー様。仰せのままに………」

 

其れを躱す様に、レイラは頭を下げると踵を返して足早にその場を離れて行った。

 

「フッ………やれやれ………」

 

そんなレイラを見送りながら、カミンスキーは困った様に肩を竦めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日の早朝………

 

大帝国劇場にて………

 

朝日が帝都を照らし始め、小鳥の(さえず)りが響く中、帝劇正面玄関の扉が開け放たれる。

 

「うう~~ん、良い天気だ。今日も絶好の公演日和だな」

 

伸びをしながら出て来た誠十郎が、雲1つ無い快晴の空を見上げてそう言う。

 

『お前的に言うなら、“モギリ日和”じゃないのか? 誠十郎』

 

そんな誠十郎に、ゼロがそうツッコミを入れる。

 

「ゼロ、其れを言うなって」

 

やや不満気にしながら、誠十郎は左腕を構えてウルティメイトブレスレットに向かってそう言う。

 

『ハハハハ、ワリィワリィ………! 誠十郎! 柱の陰だ!!』

 

軽く謝るゼロだったが、其処で何かに気付いて声を挙げる。

 

「えっ!?」

 

誠十郎が確認すると、正面玄関にある3つの柱の内、中央の柱を支えている土台部分の陰から、“腕の様な物”がはみ出していた。

 

「!!」

 

直ぐ様誠十郎が正面へと回ると、其処には………

 

「…………」

 

土台に背を預ける様に座り込み、気を失っているあの少女の姿が在った。

 

「! 君! 如何した!? 君!?」

 

「…………」

 

少女の肩を摑んで呼び掛ける誠十郎だが、少女からの反応は無い………

 

「! 大変だ!」

 

「神山さん? どないしたんや? 朝からそんな大声出して?」

 

誠十郎が少女を抱え上げると、其処へ売店の準備に来たこまちが姿を見せる。

 

「こまちさん! 来客用の部屋を開けて下さい!!」

 

「えっ!? そ、その子は!?」

 

「説明してる暇は有りません! 早くっ!!」

 

「わ、分かったわっ!」

 

説明もそこそこに、誠十郎は少女を抱き抱えたまま、こまちと共に来客用の部屋へと向かったのだった。

 

「…………」

 

その様子を、帝劇正面の建物屋上の縁で白マントが見下ろしていた。

 

「………頼むぞ、神山くんに花組の諸君。そして………ウルトラマンゼロ」

 

白マントは、そう呟くと踵を返して人間らしからぬ跳躍力で屋根から屋根へと跳んで、姿を消したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『円盤生物 シルバーブルーメ』

 

全長:0.4~29メートル(無限大)

 

体重:1.2キロ~1万トン以上(無限大)

 

能力:150メートルまで伸びる触手、溶解液

 

初登場作品:ウルトラマンレオ第40話『恐怖の円盤生物シリーズ! MAC全滅! 円盤は生物だった!』

 

ウルトラシリーズ史上最悪のトラウマ怪獣。

 

悪魔の惑星『ブラックスター』から飛来した円盤生物の第1号。

 

登場回のサブタイトル通り、地球防衛チームMACを全滅させた上、多くの一般市民やゲン(レオ)の親しい人も殺害すると言う類を見ない被害を出した。

 

円盤生物はその名の通り、円盤状の形態に変形出来、更に小型化もして潜伏出来ると言う厄介さを持つ。

 

最後はレオのスパーク光線で倒されたが、その際に体内からドロドロに溶かされたマッキー2号を引き摺り出すシーンもかなりのショッキングである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『宇宙大怪獣 ベムスター』

 

身長:46メートル

 

体重:6万1000トン

 

能力:腹部の口・吸引アトラクタースパウト、角から放つベムスタービーム

 

初登場作品:帰ってきたウルトラマン第18話『ウルトラセブン参上!』

 

強豪怪獣の1体。

 

此方もシルバーブルーメの様に、防衛チームの宇宙ステーションを飲み込んで全滅させるというのを度々やらかしている。

 

腹部の口・吸引アトラクタースパウトであらゆるエネルギーを吸収出来、ウルトラマンの光線さえ吸収してしまう。

 

防御力も高く、MATの攻撃をまるで寄せ付けなかった。

 

帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックも1度は敗れるが、ウルトラセブンによって届けられたウルトラブレスレットにより勝利を収める。

 

その後も幾度と無く登場し、ウルトラマン達を苦戦させている。

 

また、ヤプールによって強化された改造ベムスターや、モデルにした怪獣戦艦ベムズン等も存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『機械人形 ゴブニュ(ヴァハ)』

 

身長:2メートル

 

体重:350キロ

 

能力:強力な怪力

 

初登場作品:ウルトラマンティガ第19話『GUTSよ宙へ・前編』、第20話『GUTSよ宙へ・後編』

 

謎の喜界島から送られたロボット。

 

中身はがらんどうだが、機体を構成する金属そのものがコンピューターでありエンジンでもあるというハイテク兵器。

 

理由は不明だが、GUTSの新戦力『アートデッセイ号』に搭載されたマキシマオーバードライブの破壊を狙う。

 

無数のヴァハが合体すると、巨大なオグマと呼ばれる個体になれる。




新話、投稿させて頂きました。

遂に始まりました、アニメ版から先行登場となる莫斯科華撃団編。
その莫斯科華撃団ですが………
やはり全滅は避けられない運命でした………
まあ、あの2体に襲われては全滅も必須と言えますが………

そして謎の少女は謎の白マントの手で帝劇へ。
果たしてその意図は?
そして正体は如何に(笑)

カミンスキー達も登場しておりますが、レイラの様子が?………
この理由は後々明らかになります。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『謎の少女・クラーラ』

チャプター2『謎の少女・クラーラ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・来客用宿泊室………

 

「…………」

 

ベッドで眠る少女を、医療資格を持つこまちが診察している。

 

「こまちさん、如何ですか?」

 

そのこまちに誠十郎が尋ねる。

 

「「「「「…………」」」」」

 

騒動を聞いて集まって来た花組の面々も、不安気な様子を見せている。

 

「………うん、大丈夫やな。ちょっと疲労してるみたいやけど、怪我も無いし、このまま寝かしとけば目を覚ます筈や」

 

「良かった~」

 

こまちがそう言うと、さくらが安堵の息を吐き、初穂達も安心した様子を見せる。

 

「其れにしても………この()は、如何して帝劇の前で倒れていたのでしょう?」

 

「今時行き倒れか?」

 

となると、疑問が湧くのが“少女の正体”であり、クラリスと初穂がそう言い合う。

 

「何か“身許(名前)とかが分かるモノ”は持って無かった?」

 

「いや、荷物らしき物は何も無かったよ」

 

「つまり、現状では“この()の事は一切分からない”って事ね………」

 

あざみの質問に誠十郎が返すと、アナスタシアがそう言う。

 

「兎に角、俺はすみれさんに報告して来る。その()が目を覚ましたら教えてくれ」

 

「了解しました」

 

誠十郎はそう言って客室を出ると、すみれの許へと向かった。

 

「其れにしても、豪い可愛らしい()やなぁ」

 

「ホント………まるでお人形さんみたいです」

 

少女の端整な容姿に、こまちとクラリスがそんな感想を漏らす。

 

「肌なんかもスゲェ色白だな」

 

露西亜(ロシア)系かしら?」

 

初穂の言葉を聞いて、アナスタシアがそう推測する。

 

「露西亜………ひょっとして?」

 

「あざみ? 如何したの?」

 

アナスタシアの言葉を聞いて、あざみが“或る可能性”に思い至ると、さくらが声を掛ける。

 

すると………

 

「………う………ううん………」

 

寝ていた少女から声が漏れる。

 

「お? 気が付いたみたいや」

 

「…………」

 

こまちがそう言った瞬間、少女がゆっくりと目を半開きにする。

 

「…………」

 

「お嬢ちゃん、大丈夫かいな?」

 

覚醒したばかりでぼんやりとしている様子の少女に、こまちがそう声を掛ける。

 

「!?」

 

途端に、少女は目を見開いたかと思うと、掛けられていた布団を撥ね退けながら飛び起きる。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

思わぬ行動に驚く、花組の面々とこまちの間をベッドから飛び出した少女は擦り抜けて行き、そのままドアを開けて外へと飛び出して行った。

 

「! あ、コラッ! 何処行くんだっ!?」

 

「未だ動いたらアカンで!」

 

其処で我に返った初穂とこまちが叫ぶ。

 

「混乱してるみたいね。倒れる前に何か有ったのかしら?」

 

「其れよりも! 早く追いましょう!!」

 

「若しも華撃団の施設に入り込まれたら大変」

 

アナスタシアがまた推測していると、クラリスがそう言い、あざみも同意する。

 

「待ってっ!!」

 

そして、さくらが飛び出したのを皮切りに、初穂達も少女の後を追ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大帝国劇場・支配人室………

 

「………と言うワケで、客室へと運びました。勝手な事をして申し訳有りません」

 

報告を終えた誠十郎が、行き倒れていた様子とは言え“部外者”を勝手に帝劇内へ入れた事に対して頭を下げる。

 

「気にしないで良いわ、神山くん。(わたくし)だって同じ事をしたわ」

 

「ありがとうございます」

 

すみれがそう言い、誠十郎は再度頭を下げる。

 

「しかし、その少女………気になりますわね?」

 

「今、さくら達が様子を見ていて………」

 

と其処で、ドタドタと大人数が階段を駆け下りている音が聞こえて来る。

 

「うん?」

 

「何ですの?」

 

誠十郎とすみれは、直ぐに確認に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大帝国劇場・階段………

 

「ハアッ! ハアッ!」

 

「オイ、待てって!!」

 

息を切らしながらも階段を駆け下りる少女に、初穂の声が飛ぶ。

 

其れでも少女は止まらない。

 

「未だ動いちゃ駄目ですよ!」

 

「ジッとしとき!」

 

「ハアッ! ハアッ!」

 

続いてクラリスとこまちの声が飛ぶが、やはり少女は止まらない。

 

「あざみ、回り込める?」

 

「お任せ………」

 

其処で、アナスタシアがあざみに先回りする様に言う。

 

しかし………

 

「!? あっ!?」

 

其れより先に少女が足を滑らせ、その身体が階段から宙を舞う。

 

「!? 危ないっ!!」

 

「おい、如何したんだ?」

 

「何の騒ぎですの?」

 

さくらが叫んだ瞬間、誠十郎とすみれが支配人室から出て来て、階段下に現れた。

 

その2人の目に飛び込んで来たのは、“階段の踊り場から落下して来る少女の姿”だった。

 

「!?」

 

「! 危ないっ!!」

 

驚くすみれと、素早く落下地点に回り込む誠十郎。

 

「フッ!」

 

「はうっ!」

 

見事クラーラをキャッチする事に成功する。

 

「大丈夫かい?」

 

お姫様抱っこで抱えた少女に、誠十郎はそう尋ねる。

 

『大丈夫か?』

 

「!?」

 

其処で少女の脳裏に、“誠十郎()()()()()()の姿”が浮かぶ。

 

しかし、その顔が良く思い出せない。

 

「…………」

 

「あ、あの………?」

 

少女はジッと誠十郎を見詰め、誠十郎は戸惑うばかりだ。

 

「隊長~」

 

「!?」

 

と其処へ、やや不機嫌そうな声が聞こえて来て誠十郎が視線を向けると、其処には………

 

「まさか、そんな“子供”に手ぇ出すとはなぁ………」

 

「其れは如何かと思うわ、キャプテン」

 

“軽蔑する様な眼差し”を向けながら、そう言って来た初穂とアナスタシア。

 

「地獄に落ちて下さい」

 

クラリス(など)は“ゴミを見る”様な目だ。

 

「………ロリコン」

 

あざみも、冷たい視線を向けてそう呟く。

 

「ご、誤解だああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

 

“有らぬ疑い”を掛けられ、誠十郎は悲鳴の様な声を挙げる。

 

すると………

 

「…………」

 

その一団の中から、さくらが誠十郎の方へ歩み寄って来た。

 

「さ、さくら! コ、コレは………」

 

さくらからも何か言われるのかと、慌てて弁明しようとする誠十郎だったが………

 

「…………」

 

「あ………」

 

さくらは何も言わず、誠十郎が抱き抱えている少女の頭を優しく撫で始めた。

 

「大丈夫………此処には“貴女を傷付ける人”なんていないよ」

 

「………!」

 

驚いた様子でさくらを見遣る少女。

 

「だから、怖がらないで………ね?」

 

優しい笑顔を浮かべ、そう言うさくら。

 

「…………」

 

其処で、少女は漸く落ち着きを取り戻した様子を見せた。

 

「さくら………」

 

「「「「…………」」」」

 

誠十郎が驚き、初穂達も呆気に取られる。

 

「………皆、駄目だよ。この()()()()()()んだから」

 

「「「「…………」」」」

 

振り向いたさくらがそう言うと、気不味そうな様子を見せる初穂達だった。

 

「何や、修羅場になるかと思ったで」

 

「ふふふ」

 

遅れてやって来たこまちがそう言うと、すみれが思わず笑いを零す。

 

「………あの………降ろしてください」

 

「! あ、ああ! ゴメンよ」

 

と其処で少女に言われ、誠十郎は彼女を床へと降ろした。

 

「こんにちは、お嬢さん」

 

すると、すみれが少女と“視線を合わせる”様に屈み込んで挨拶をする。

 

「あ………」

 

(わたくし)は神崎 すみれ。此処大帝国劇場の支配人ですわ。お嬢さんのお名前は?」

 

「………『クラーラ』………『クラーラ・M・ルシュコヴァ』」

 

其処で漸く少女………『クラーラ・M・ルシュコヴァ』の名前が判明した。

 

「では、クラーラさん。貴女は、如何して大帝国劇場の前で倒れていたの?」

 

「………分からない」

 

「分からない?」

 

「何も………()()()()()()()んです」

 

「!?」

 

クラーラからの思わぬ返事に、すみれの表情が強張る。

 

「覚えていない………?」

 

「其れって………?」

 

「「「「「…………」」」」」

 

誠十郎やさくら達も唖然となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しして………

 

帝劇2階・客間前の廊下………

 

「………ふう~」

 

「こまちさん。如何でした?」

 

客間から出て来たこまちに、待機していた一同を代表する様に誠十郎が尋ねた。

 

「アカン。如何やらホンマに『記憶喪失』みたいや。“自分の名前”以外、全然覚えてへんみたいやわ」

 

お手上げ状態と言う様に、こまちは答える。

 

「『記憶喪失』………」

 

「やっぱり“理由(ワケ)有り”みたいね………」

 

さくらが呟くと、アナスタシアは推測が当たっていた事を確信する。

 

「不安でしょうね………“自分が何者であるか”すら分からないなんて………」

 

「今如何してんだ?」

 

クラリスが憐れむ様に言うと、初穂がこまちに尋ねる。

 

「やっぱり疲れとったみたいやから、眠ったとこや。只、“気になる事”が有ってな………」

 

「? 気になる事?」

 

こまちの言葉に、あざみが首を傾げる。

 

「念の為に霊力計測器で彼女の霊力を計って見たんやけど………かなり高い値が出たんや」

 

「! 其れって………?」

 

「彼女は“何処かの華撃団の隊員”である可能性が高い………と言う事ですか?」

 

さくらが驚き、すみれがそう推測する。

 

「断言は出来へんけどな………」

 

「若しそうだとしたら、何処の所属なんだ?」

 

「名前と容姿から察するに露西亜系………ひょっとすると」

 

「………莫斯科(モスクワ)華撃団」

 

初穂・アナスタシア・あざみがそう言い合う。

 

「けど、莫斯科華撃団は未だ本国で任務中に筈じゃ? 其れが如何して帝都に?」

 

「其れは、あてに聞かれても困るわ」

 

「相手が“()()()()()()の華撃団”では、確かめるのも難しそうですわね」

 

クラリスの質問にこまちが困った様子を見せ、すみれも顎に手を当てて難しい顔をする。

 

ウルティメイト華撃団とWLOFの関係は最悪であり、莫斯科華撃団の事を問い合わせても、諜報活動か?と疑われかねない。

 

「ですが、警察に任せるというワケにも行きませんわね。彼女は(わたくし)達で保護します」

 

「宜しいんですか、司令?」

 

「まさか、放り出すワケにも行きませんでしょう。あんな小さな()を」

 

誠十郎の言葉に、すみれはそう返す。

 

「分かりました。皆、聞いての通りだ。あの()………クラーラをなるべく気に掛けてやってくれ」

 

「ハイ、隊長!」

 

「しょーが無えなぁ」

 

「分かりました」

 

「委細承知」

 

「分かったわ、キャプテン」

 

誠十郎の指示に、花組の面々が其々に返事を返す。

 

(あの()の霊力を計った時、“霊力計測器の反応が()()()()()()”気ぃがするけど………故障かいな? 後で、令士はんかイデはんに見て貰わんと)

 

(如何にも“何か起こりそうな予感”がするぜ………)

 

そんな中、クラーラの霊力を測定していた時に“違和感”を感じたこまちと、何か“嫌な予感”を覚えるゼロだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜………

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

ジェネラルAの執務室………

 

「初めまして、ジェネラルA。私は『ヴァレリー・カミンスキー』と申します。お見知り置きを」

 

執務机に着いているジェネラルAに向かって、カミンスキーは畏まった様子で挨拶をする。

 

「…………」

 

傍には、あの“レイラ”と呼ばれた女性が控えている。

 

「ぶるあぁ、楽にせい」

 

そんなカミンスキーに、ジェネラルAは楽にする様に言う。

 

「…………」

 

その隣に控えているミスターGは、“胡散臭いモノ”を見る様な目でカミンスキーを見ている。

 

「恐れ入ります。其れで早速ですが、ジェネラルAに是非“ご提案したい事”がございます」

 

「言ってみろ」

 

「ハイ。莫斯科華撃団の事については既にご存知でしょうか?」

 

「うむ。『“何者か”の奇襲を受けて全滅した』とな。全く、情け無い連中よ」

 

全滅した莫斯科華撃団の事を、まるで扱き下ろすかの様な物言いのジェネラルA。

 

「では、私達を“()()()莫斯科華撃団”として編成して頂けませんでしょうか?」

 

「!? 何っ!?」

 

「ほう?」

 

カミンスキーの提案に、ミスターGが驚きの声を挙げ、ジェネラルAは不敵に笑う。

 

「このままでは、世界華撃団大戦2回戦は“帝国華撃団の()()()”………そうなると、WLOFとしては益々“都合の悪い展開”になるのではないでしょうか?」

 

「ふふふ」

 

痛い所を突く様なカミンスキーの台詞だったが、ジェネラルAは只笑うだけだ。

 

「貴様! 何を勝手な事を! 大体、いきなり現れたパッと出の貴様等なぞ、信用すると思っているのか!? 其れに、其処の女は!!」

 

ミスターGがそういきり立ったが………

 

「黙れ」

 

ジェネラルAがそう言って右手の人差し指を上げたかと思うと、ミスターGの身体が青い炎に包まれた!

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

全身を焼かれ、床を転げ回るミスターG。

 

「カミンスキーと言ったか?………良かろう。好きにしろ」

 

そんなミスターGの姿を気にする事も無く、ジェネラルAはアッサリとカミンスキーの提案を受け入れた。

 

「ありがとうございます。付きましては、もう1つ“お願い”が有るのですが………」

 

「良きに計らえ」

 

「ハイ、実は………」

 

その後も、ジェネラルAとカミンスキーはどんどん話を進めて行く。

 

「…………」

 

只1人、静かに控えていた『レイラ』と言う女性は、“何かを耐える”かの様に両手を握り締めていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

帝劇の保護された謎の少女、クラーラ。
原作通りに記憶喪失となっており、何も覚えていません。
しかし、何やら印象に残っている人物が居る様で………
一体誰なんだ?(棒読み)

さくらに露骨にヒロイン補正入れてますが、ご了承ください(笑)

そしてカミンスキーはアゴナと接触。
ミスターGの相変わらずの扱いはさておき(爆)、ヤバそうな協力体制が………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『故郷のメロディ』

チャプター3『故郷のメロディ』

 

誘拐怪人 ケムール人 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラーラが保護された翌日………

 

帝劇2階・サロンにて………

 

其処には、誠十郎の背に隠れる様にしているクラーラに向かい合う形で、花組の面々が集まっていた。

 

「じゃあ、クラーラ。改めて自己紹介させて貰うよ。俺は帝国華撃団・花組の隊長、神山 誠十郎。そして、彼女達が花組の隊員達だ」

 

「私は天宮 さくら」

 

「東雲 初穂だ」

 

「望月 あざみ」

 

「クラリッサ・スノーフレークです。クラリスって呼んで下さい」

 

「アナスタシア・パルマよ。よろしく」

 

誠十郎を皮切りに、次々と自己紹介する花組メンバー。

 

「…………」

 

そんな花組メンバーを、クラーラは誠十郎の後ろに隠れたまま何処かおっかなびっくりな様子で見ている。

 

(う~ん、やっぱり警戒してるみたいだな………)

 

『無理も()えさ。“自分が何者か”さえ分かって()えんだからな』

 

そんなクラーラの姿を見て、誠十郎とゼロが心の中でそう言い合う。

 

『………ん?』

 

其処で、ふとゼロは視線を感じた。

 

「…………」

 

何と、クラーラが誠十郎の左腕に填められているウルティメイトブレスレットを見ていたのだ。

 

(コイツ、まさか………?)

 

「ねえ、クラーラちゃん。私達に何か出来る事、無いかな?」

 

自分に感付いているのかとゼロが思った瞬間、さくらがクラーラへそう声を掛けた。

 

「えっ………?」

 

「何かして欲しい事があったら、遠慮無く言ってね」

 

「………如何して?」

 

「“困ってる人を助ける”のは、華撃団の隊員として当然だもの。其れに………」

 

「? 其れに?」

 

「私、クラーラちゃんともっと仲良く………『友達』になりたいんだ」

 

笑みを浮かべてクラーラに言うさくら。

 

「『友達』………」

 

「駄目、かな………?」

 

「………ううん、嬉しい」

 

其処で、クラーラは初めて誠十郎の陰から出る。

 

其れを見たさくらが、クラーラの方に近付く。

 

「よろしくね、クラーラちゃん」

 

そう言って右手を差し出すさくら。

 

「あ、クラーラで良いです………」

 

クラーラは、そう言いながら控え目にさくらの手を取った。

 

「じゃあ私もさくらで良いよ、クラーラ」

 

「うん………よろしく、さくら」

 

さくらとクラーラは、互いに笑顔を浮かべる。

 

「凄いですね、さくらさん………」

 

「あそこまで踏み込んでいけるのは(ひとえ)に“人柄”ね」

 

そんなさくらの姿を見て、クラリスとアナスタシアがそう言い合う。

 

「こりゃあ、あの子の面倒はさくらに任せた方が良さそうだな」

 

「適材適所………」

 

其処で初穂とあざみがそんな事を言う。

 

『其れが良いかも知れねえな』

 

「さくら………頼めるか?」

 

ゼロもその意見に同意し、誠十郎はさくらに尋ねる。

 

「分かりました。私に任せて下さい」

 

笑顔で返事を返すさくら。

 

こうして、さくらがクラーラの世話係に任命されたのだった。

 

 

 

 

その後、さくらはクラーラを連れて帝劇内を案内。

 

一通りの案内を終えると、後は帝都の街を案内しようと思い、玄関へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・玄関………

 

「其れじゃあ、行って来ます」

 

「あ………行って来ます」

 

「ああ、気を付けてな」

 

出掛けるさくらとクラーラを、誠十郎が見送る。

 

「クラーラ」

 

少し歩くと、さくらはクラーラに向かって右手を差し出した。

 

「あ………」

 

クラーラは一瞬戸惑ったものの、やがてさくらの手を取り、握った。

 

「ふふふ………」

 

笑ってクラーラに歩調を合わせて歩くさくら。

 

「…………」

 

其れに釣られる様に、クラーラも笑みを浮かべる。

 

人種は完全に違うが、その雰囲気はまるで姉妹の様で、微笑ましい光景だった。

 

「………出掛けるのか。好都合だな」

 

しかし、その2人をやや離れた後方から尾ける様に歩く怪しい人物が居た………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事とは露知らず、帝都の街中を歩くさくらとクラーラ。

 

「凄い人………」

 

通りを歩く人の多さに、クラーラが思わずそう呟く。

 

「コレが私達の街、帝都だよ。ちょっと前まで、降魔から受けた傷痕が残ってたり、最近は怪獣や星人の被害が相次いでるけど、皆元気に一生懸命生きてる。そんな人達が沢山住んでる街なんだ」

 

“自分達の守る都市”を自慢する様にさくらは言う。

 

(降魔………怪獣や星人………)

 

クラーラは、“降魔”や“怪獣”と言った単語に引っ掛かりを覚える。

 

「さて、何処から行こうか? 先ずはやっぱり………」

 

「………あ!」

 

と、さくらが何処へ向かおうかと思案し始めたその時、クラーラがふと足を止めた。

 

「! ととっ! 如何したの、クラーラ?」

 

「…………」

 

不意に止まったクラーラに驚くさくらだが、クラーラは視線を“或る店”へと注いでいた。

 

「………楽器屋さん?」

 

クラーラが視線を注いでいる店………

 

其れは小さな楽器屋だった。

 

クラーラは、そのショーウィンドウに飾られている『或る楽器』に注目している。

 

「『ハーモニカ』………」

 

其れは『ハーモニカ』だった。

 

「ハーモニカ、好きなの?」

 

「分からない。けど………この楽器の事………()()()()()()様な気がして………」

 

ハーモニカを見ていると、失われた記憶が刺激されるのを感じるクラーラ。

 

「………買ってみようか?」

 

其処で、さくらはクラーラにそう提案する。

 

「そ、そんな! 私は別に………」

 

「気にしないで。“友達になった記念”だと思ってくれれば良いよ」

 

「さくら………」

 

驚きながら見上げて来るクラーラに笑顔を返し、さくらは一緒にその楽器屋へと入って行った。

 

(人通りが無くなった場所に出てからだな………)

 

そして、その2人を相も変わらず尾け回している怪しい人物………

 

良く見ると、耳がピクピクと動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都郊外の森林地帯・小高い丘の上にて………

 

「うわあ~~」

 

「此処からだと、帝都の街並みが一望出来るんだよ」

 

さくらの言葉通り、丘の上からは帝都の街並みが一望でき、クラーラは感嘆の声を漏らす。

 

「あの街には色々な人が居て、様々な営みが(はぐく)まれている………其れを守るのが、私達“帝国華撃団の使命”なんだ」

 

「使命………」

 

「うん、大変だけど………“凄く()()()()()()使命”だよ」

 

「…………」

 

さくらが笑顔でそう言うと、クラーラは再び帝都に視線を向ける。

 

「さて、其れじゃあ………早速吹く練習をしようか?」

 

其処で、先程楽器屋で買ったハーモニカを取り出すさくら。

 

「うん………」

 

さくらからハーモニカを受け取ると、傍に在った切り株に腰を掛けるクラーラ。

 

(しめしめ………良い具合に人気(ひとけ)の無い場所へ来てくれたな………)

 

其処であの謎の人物が、茂みに姿を隠しながらコッソリとさくらとクラーラに近付いて行く。

 

「~~♪~~♪………わあ~~」

 

ハーモニカを吹き、音を鳴らすクラーラ。

 

音が鳴った事に感激した様子を見せている。

 

「うふふ。其れじゃあ、先ずはどんな曲から吹いてみようか?」

 

そんな様子を微笑ましく思いながら、さくらは一緒に付いて来た練習用の楽曲の楽譜を取り出す。

 

(良し、今がチャンスだ!)

 

と、其処で謎の人物が一気に飛び出そうとする。

 

しかし………

 

「………~~♪~~♪」

 

「!?」

 

突然クラーラが曲を吹奏し始め、謎の人物の動きが止まる。

 

「クラーラ………?」

 

さくらも、突然吹奏を始めたクラーラに驚きを示す。

 

「~~♪~~♪」

 

クラーラは目を閉じ、集中して吹奏を続けている。

 

(何だろう? このメロディ………優しいけど………何処か“物悲しい”気がする)

 

クラーラが奏でるメロディから、そんな印象を受けるさくら。

 

「~~♪~~♪」

 

尚も吹奏を続けるクラーラ。

 

『………これ、“俺の()()()()”なんだ』

 

其処で、彼女の脳裏に『“ハーモニカの様な物”を吹く、テンガロンハットに茶色のレザージャケット姿の青年』の姿が過る。

 

「!?」

 

思わず吹奏が止まる。

 

(今のは………?)

 

「クラーラ、その曲は?」

 

呆然となっていたクラーラに、さくらが声を掛ける。

 

「あ、えっと………身体が自然に………」

 

と、自分でも気付かぬ内に吹奏していたクラーラが如何説明すれば、と悩んでいると………

 

「グアッ!!」

 

あの謎の人物が、茂みの中から倒れる様に飛び出して来た!

 

「!?」

 

「!? 誰ですかっ!?」

 

突然現れた謎の人物に、クラーラとさくらが驚く。

 

「ぐうう、頭が………オノレェ、妙な事をしおって………」

 

謎の人物は頭痛がする頭を抑えながら立ち上がったかと思うと………

 

「ええい! こうなれば強硬策だ!!」

 

そう叫んで、その身を黒い異形の姿へと変えた!!

 

「!? 星人っ!?」

 

「!?」

 

咄嗟にクラーラを背に庇うさくらと、そのさくらの背にしがみ付くクラーラ。

 

フォッフォッフォッ………

 

そんな2人を、独特な位置に付いた目で見遣る、頭にホースのノズルの様な触角の生えた星人………『誘拐怪人 ケムール人』

 

「帝劇に連絡を!」

 

さくらはスマァトロンを取り出し、帝劇へ連絡を入れようとしたが………

 

フォッフォッフォッ………

 

其処でケムール人が、頭の触角の先端から“透明な液体”を発射した!!

 

「!? 危ないっ!?」

 

直感的に(当たったらマズイ)と感じたさくらは、スマァトロンを手放すとクラーラを抱えて横っ飛びした。

 

と、そのスマァトロンに液体が掛かったかと思うと………

 

スマァトロンが溶ける様に消えてしまった!

 

「!? スマァトロンがっ!?」

 

フォッフォッフォッ………

 

焦った声を挙げるさくらを見ながら、ケムール人は不気味な笑い声を響かせる。

 

「! クラーラ! 走ってっ!!」

 

「!!」

 

已むを得ず、逃げの一手を打つさくら。

 

フォッフォッフォッ………

 

そのさくらとクラーラを、ケムール人は独特な走り方で追い掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

帝劇・正面玄関前では………

 

「………良し! コレで良いかな?」

 

出掛けたさくらに代わって掃き掃除をしていた誠十郎が、綺麗になったのを確認してそう言う。

 

「さくらとクラーラは今頃何してるかな?」

 

と、出掛けた2人の事を気にしていると………

 

『誠十郎! 星人の気配だ!!』

 

不意にゼロがそう告げて来た!

 

「何っ!?」

 

『! ちょっと待て!………近くにさくらとクラーラも居るぞっ!?』

 

「!? 何だって!? でも、連絡は無いぞっ!?」

 

『きっと何か有ったに違い()え! 行くぞ、誠十郎!』

 

「よしっ!!」

 

誠十郎は、直ぐ様物陰へと移動。

 

「デュワッ!!」

 

そして、ウルティメイトブレスレットから取り出したウルトラゼロアイを装着。

 

「セヤッ!!」

 

ウルトラマンゼロへと変身すると、空に舞い上がる。

 

「! アッチかっ!!」

 

直ぐ様、ゼロは気配のする方向へと飛ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都郊外の森林地帯………

 

「ハア………ハア………」

 

「クラーラ! 頑張ってっ!!」

 

息を切らし始めて来たクラーラを、さくらがそう励ます。

 

「逃がしはせんぞぉっ!!」

 

そんな2人を、相変わらず独特な走り方で追うケムール人。

 

しかし、パトカーの追跡をも振り切るその速さは健在である。

 

今は森の中に居る為、木々が邪魔をして素早く走れないが、其れでも徐々に距離を詰めて来ている。

 

「追い付かれちゃう! さくら! 私を置いて逃げて!!」

 

「何を言ってるの、クラーラ! そんな事出来ないよ!!」

 

追い付かれるのも時間の問題と見たクラーラがそう言うが、其れを聞き入れるさくらでは無い。

 

「ええいっ! 面倒だっ!!」

 

と其処で!!

 

業を煮やしたのか、ケムール人が巨大化した!!

 

「「!?」」

 

其れに驚いて思わず2人が足を止めてしまった瞬間、一気に距離を詰めて2人に向かって手を伸ばす!!

 

「! クラーラッ!!」

 

さくらは、咄嗟にクラーラを抱え込む様にして屈み込む。

 

フォッフォッフォッ………

 

ケムール人の不気味な笑いが木霊した、その時!!

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

現れたゼロの、ウルトラゼロキックがケムール人の頭に命中!

 

フォッフォッフォッ………!?

 

ケムール人は、不気味な笑い声を響かせながら倒れる。

 

「セヤッ!!」

 

その間に、さくらとクラーラを守る様に着地を決めるゼロ。

 

「俺はゼロ! ウルトラマンゼロだっ!!」

 

「! ゼロさんっ!!」

 

ゼロの姿を見たさくらが歓喜の声を挙げる。

 

「!?」

 

一方、ゼロの姿を見たクラーラの脳裏に、“或るヴィジョン”が浮かぶ………

 

 

 

 

 

其れは、リング状のカラータイマーを持ち、巨大な剣を携えた“ウルトラマンらしき光の巨人”と………

 

“胸に三日月状の傷を持ち、全体的に棘々したシルエットで刀を手にしている魔人”が()()()()()()()()()だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ウルトラマン」

 

「? クラーラ?」

 

クラーラがそう呟いた瞬間………

 

「テメェは『誘拐怪人 ケムール人』か!?」

 

「ウルトラマンゼロ! 貴様に構っている暇は無い! その小娘(ガキ)を渡せっ!!」

 

起き上がったケムール人が、ゼロに向かってそう言い放つ。

 

『!? クラーラをだと!?』

 

「テメェ、何でクラーラを狙ってやがる!?」

 

クラーラが狙われていると知り驚く誠十郎と、ケムール人にそう問い質すゼロ。

 

「貴様が知る必要は無い!」

 

「そうかよ………だったら“無理矢理聞き出す”までだ!!」

 

そう言って、ゼロはケムール人に向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

帝劇で保護される事となったクラーラ。
アニメ版と同様にさくらが早速仲良くなり、帝都の街を案内する事に。
しかし、クラーラを狙ってケムール人が出現!
何故彼女が狙われるのか?

そして記憶の失われたクラーラの脳裏に浮かんだもの………
一体何処の風来坊と闇の人なんだ?(笑)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『莫斯科華撃団』

祝!!

ガールズ&パンツァー最終章第3話、公開!!

コロナ渦でもこれだけは見に行かないと………

明日見に行きますが、皆さんも映画を見る際には感染対策を万全に


チャプター4『莫斯科華撃団』

 

誘拐怪人 ケムール人

 

怪人黒マント

 

偽莫斯科華撃団 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都郊外の森林地帯………

 

「オラッ! オラッ! オラアッ!!」

 

フォッフォッフォッ………

 

不良の喧嘩の様に、ヘッドロックを掛けたケムール人の頭を殴り付けているゼロ。

 

フォッフォッフォッ………

 

しかし、ケムール人はヘッドロックを掛けられたままの状態でゼロの身体を摑んだかと思うと、そのままバックドロップを繰り出す。

 

「うおっ!?」

 

地響きと共に地面に叩き付けられるゼロ。

 

「お前も消えろっ!!」

 

ケムール人の方が素早く起き上がり、ゼロに転送液を浴びせようとする。

 

「セヤッ!!」

 

しかしゼロは、倒れたままゼロスラッガーを放ち、ケムール人の触手を切断!

 

「!? ぐわああっ!?」

 

「セラァッ!!」

 

更にゼロスラッガーを戻しながら起き上がると、バックスピンキックを浴びせる。

 

フォッフォッフォッ………

 

今度は、ケムール人の方が地面に叩き付けられる様に倒れる。

 

「キャアッ!!」

 

「クラーラ! 今の内に!!」

 

振動に思わず悲鳴を挙げるクラーラの手を引いて、さくらはその場を離れようとする。

 

と、其処で!!

 

その2人の眼前に、新たな影が現れた!!

 

「「!?」」

 

「…………」

 

其れは鉄仮面を付け、全身黒尽くめの上に黒いマントを羽織った怪人だった。

 

「貴方は………!?」

 

と、さくらが言い掛けた瞬間!

 

「………!」

 

黒マントは人間とは思えぬスピードで距離を詰め、さくらを突き飛ばした!

 

「!? あうっ!?」

 

木の幹に(したた)かにぶつかり、へたり込むさくら。

 

「!? さくらっ!?」

 

「………!!」

 

とクラーラが声を挙げた瞬間に、黒マントはその身柄を確保する。

 

「キャアッ!?」

 

「! クラーラッ!!」

 

「!? しまったっ!? 別の刺客が居やがったのか!?」

 

クラーラの悲鳴で、ゼロも黒マントの存在に気付く。

 

「離して! 離してぇっ!!」

 

「…………」

 

逃れようと藻掻くクラーラだが、黒マントはビクともしない。

 

「クラーラ!………! ぐうっ!?」

 

助けようとするさくらだが、全身に鈍い痛みが走って上手く動けない。

 

「野郎!………!? うおっ!?」

 

「邪魔はさせんぞっ!」

 

「テメェッ! 離せっ!!」

 

ゼロの方もケムール人にしがみ付かれ、動きを封じられる。

 

「…………」

 

そんな2人を尻目に、クラーラを連れてその場から立ち去ろうとする黒マント。

 

「さくらぁっ!!」

 

「クラーラッ!!」

 

クラーラに向かって必死に手を伸ばすさくら。

 

と、その時!!

 

白い影が風の様に吹き抜けたかと思うと、黒マントの手からクラーラが姿を消した!

 

「!?」

 

さくらが視線を向けると其処には………

 

「…………」

 

クラーラを抱き抱えて佇む、あの白マントの仮面剣士の姿が在った。

 

「今度は白マント!?」

 

「…………」

 

さくらが驚く中、クラーラを下ろす白マント。

 

「あ、あの………?」

 

「離れていなさい」

 

「! ハ、ハイッ!」

 

白マントにそう言われ、さくらの許に戻るクラーラ。

 

「…………」

 

其れを確認すると、白マントは腰の刀を抜いた。

 

「………!」

 

其処で、黒マントが白マントに襲い掛かる。

 

「フッ!!」

 

繰り出されて来た鋼鉄の手を刀で受け止める白マント。

 

「ハアッ!!」

 

そしてそのまま、その細身の身体からは信じられないパワーで弾き返す。

 

「………!!」

 

すると黒マントは、両手に鉤爪を出現させる。

 

今度は、その鉤爪で斬り掛かって来る。

 

「フッ!!」

 

白マントが跳躍して躱すと、黒マントが振るった鉤爪は、大木の幹を細切れにした!

 

「ハッ!!」

 

と、今度は着地を決めた白マントが仕掛ける。

 

「………!」

 

振るって来た刀を鉤爪で受け止めようとした黒マントだったが………

 

「甘いっ!!」

 

何と、白マントの1撃は黒マントの鉤爪をアッサリと斬り裂いた!!

 

斬り裂かれた鉤爪が、バラバラと地面に落ちる。

 

「す、凄い………」

 

「…………」

 

漸く痛みの引いて来たさくらが立ち上がりながら呟き、クラーラも目を見開いている。

 

(アレ? でも………あの太刀筋、()()()が?)

 

其処でさくらは、“白マントの太刀筋”に見覚えを感じる。

 

「ええい! トンだ邪魔が!!」

 

「何時までもしがみ付いてんじゃ………()えっ!!」

 

「!? うおおっ!?」

 

と其処で、ゼロがストロングコロナゼロへフォームチェンジ。

 

しがみ付いていたケムール人を無理矢理引き剥がした!!

 

「オラッ! オラッ! オラアァッ!!」

 

ストロングコロナアタックで何度も殴り付けるストロングコロナゼロ。

 

フォッフォッフォッ………

 

「ウルトラハリケーンッ!!」

 

そして、ウルトラハリケーンで上空高く投げ飛ばす!!

 

「ガルネイトォバスタアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

そのままガルネイドバスターを放つストロングコロナゼロ。

 

フォッフォッフォッ………

 

ガルネイドバスターが直撃すると、ケムール人の身体が風船の様にブクブクと膨らんだかと思うと、爆発四散した!!

 

「へっ! 俺に勝とうなんて2万年早いんだよ!」

 

『しかし、何故奴はクラーラを………?』

 

お馴染みの台詞を決めるゼロと、結局ケムール人がクラーラを狙った理由が分からず、首を捻る誠十郎。

 

「ハアッ!!」

 

一方の白マントの方も、刀を振るって黒マントの右腕を肩口から切断。

 

「………!」

 

黒マントの斬り飛ばされた腕からは無機質な機械が覗き、スパークを発している。

 

「!? 機械っ!?」

 

其れを見たさくらが驚きの声を挙げる。

 

「…………」

 

すると、黒マントは斬られた肩口をもう片方の手で押さえながら、白マントに背を向けて走り去る。

 

如何やら、形勢不利と見て撤退した様だ。

 

「退いたか………」

 

其れを見た白マントは、追撃せずに刀を鞘へと納める。

 

「あ、あの!」

 

白マントへと声を掛けようとしたさくらだが………

 

「また会おう、()()()

 

白マントはそう言うと踵を返し、木の枝の上を次々に跳躍して去って行った。

 

「あ! ちょっと!………アレ? 何であの人、“私の名前”を?」

 

唖然とするさくらだったが、白マントが自分の名を知っていた事に疑問を覚える。

 

と、その時!!

 

「あう………」

 

短い悲鳴と共に、クラーラが脱力して座り込んだ。

 

「! クラーラッ!!」

 

「…………」

 

慌てて抱き抱えるさくらだったが、クラーラの意識は無い。

 

如何やら、緊張の糸が切れて気を失った様だ。

 

「クラーラッ! クラーラッ!!」

 

「さくら!」

 

さくらが呼び掛けていると、通常状態に戻ったゼロが、右手をさくらの目の前に降ろす。

 

「乗れ。帝劇まで送ってやる」

 

「! ありがとうございます、ゼロさん!」

 

さくらは、直ぐ様クラーラを抱き抱えたままでゼロの右手の上に乗る。

 

「シュワッ!!」

 

さくらとクラーラを乗せた右手を上げると、ゼロは飛翔して帝劇目指して飛んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫し時が流れ………

 

帝劇地下・作戦司令室………

 

モニターにケムール人と黒マントの姿が映し出されている。

 

「あの星人と黒マントは、()()()()クラーラを狙ってました」

 

「! クラーラをだとっ!?」

 

さくらの報告に、初穂が驚きの声を挙げる。

 

「如何してクラーラさんが狙われたんでしょう?」

 

「其れは分からない。だが、ひょっとすると………」

 

「“彼女の失われた記憶”が関係している………かも知れない、という事ね?」

 

クラリス・誠十郎・アナスタシアもそう言い合う。

 

「クラーラは?」

 

「今は眠ってる。色々な事が有ってショックを受けたみたいで………」

 

あざみの問いに、表情を曇らせながら答えるさくら。

 

「星人が狙って来る………余程“大きな秘密”があの子には有る様ですわね」

 

険しい表情でそう言うすみれ。

 

「神崎司令………」

 

「ですが、我々のやる事は変わりません。何が有ってもあの子を守る………何故なら(わたくし)達は、()()()()()()()()()から」

 

さくらが不安気な様子を見せたが、すみれは次の瞬間には毅然とした表情でそう言い放った。

 

「! ハイッ!!」

 

途端にさくらは、嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「にしても驚いたで、さくらさん。ウルトラマンゼロに連れられて帰って来たのには」

 

其処でこまちが、ウルトラマンゼロの手に乗った状態で帝劇に帰還してきた際の事を思い出し、そう言う。

 

「アハハハ………! あ! そう言えば!」

 

さくらが苦笑いを零していると、何かを思い出したかの様な素振りを見せる。

 

「? 如何した、さくら?」

 

「クラーラがゼロさんを見て反応してたんです」

 

「ゼロさんを?」

 

初穂にそう返すと、クラリスも反応する。

 

「クラーラはウルトラマンとも関わりが有る?」

 

「益々分からないわね………」

 

あざみが首を傾げ、アナスタシアも考え込む様な素振りをする。

 

「まあ、(わたくし)達があれこれと言っていても仕方有りませんわ。全てはクラーラさん次第………」

 

と、すみれが言い掛けた瞬間………

 

警報が鳴り響いた!!

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

「何事ですっ!?」

 

花組メンバーが反応し、すみれが即座に問い質す。

 

「未確認飛行物体接近! かなり巨大です!!」

 

「モニターに映像を出すで!」

 

カオルがレーダーを見ながらそう報告すると、こまちがモニターを外部カメラの映像に切り替える。

 

其処には、帝都の街に巨大な影を落としながら帝劇へと近付いて来る………

 

お椀の様な半円状で、蜘蛛の足を思わせる装飾が付き、中心部に城の様な司令塔が聳え立っている飛行物体が映し出されていた。

 

「!? 何アレッ!?」

 

「野郎! 新手の星人の円盤かっ!?」

 

驚きの声を挙げるさくらと、円盤状の形から星人の物かと(いぶか)る初穂。

 

すると………

 

『帝都の皆様、お騒がせして申し訳有りません。此方は莫斯科(モスクワ)華撃団。空中移動要塞セバストーポリです』

 

その飛行物体から、外部スピーカーでそう言う声が響いて来た。

 

「!? 莫斯科華撃団だとっ!?」

 

今度は誠十郎が驚きの声を挙げる。

 

「次の対戦相手………」

 

「一体何の用なのかしらね?」

 

「其れにあの空中要塞は?」

 

あざみ・アナスタシア・クラリスも次々に声を挙げる。

 

『帝国華撃団の皆様に“大事なお話”が有ります』

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

と、続いて空中要塞からそう言葉が響くと、花組メンバーは視線をすみれへと向けた。

 

「………お会いしてみましょうか。“謎の莫斯科華撃団”について知る良い機会ですわ」

 

少し考えた後、すみれは『()()・莫斯科華撃団』を受け入れる事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・食堂………

 

自称・莫斯科華撃団との会談場所に選ばれたのは食堂だった。

 

すみれと誠十郎を中心に花組メンバーが集結している中、自称・莫斯科華撃団の面々が姿を現す。

 

先ず最初に姿を見せたのは、あのカミンスキー。

 

その傍に控える様にレイラの姿が在り、2人の後ろに“顔を鉄仮面で覆い、全身を黒いロングコートで隠した人物達”が控えている。

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

異様な集団を目の当たりにした花組メンバーが、警戒する素振りを見せる。

 

「………ようこそ大帝国劇場へ。(わたくし)が帝国華撃団司令・神崎 すみれですわ」

 

そんな中、カミンスキー達に向かって挨拶するすみれ。

 

しかし彼女の眼差しも、カミンスキー達に疑念を向けていた。

 

「初めまして、ミス神崎。伝説の初代帝国華撃団のメンバーとお会い出来て光栄です。私は莫斯科華撃団隊長のヴァレリー・カミンスキーと申します」

 

そんな視線を気にする事も無く、カミンスキーはすみれに畏まった挨拶を返す。

 

しかし、その態度は()()()()()()()、今一つ信用出来なかった。

 

『胡散臭い野郎(ヤロー)だぜ』

 

ゼロも、ストレートにカミンスキーをそう評する。

 

「………其れで? 本日はどの様なご用件でいらっしゃったのでしょうか?」

 

ゼロと同じ思いを感じていたが、そんな事はおくびにも出さず、すみれはカミンスキーに問い質す。

 

「ハイ。()()()()()()()()の少女………クラーラ・M・ルシュコヴァを引き取りに参上しました」

 

「!? クラーラをっ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

カミンスキーの言葉に、さくらが驚きの声を挙げ、花組メンバーも表情を強張らせた。

 

「さくら? 如何したの?」

 

すると其処へ、“当の本人”であるクラーラが姿を見せる。

 

「! クラーラッ!!」

 

「おお、クラーラ! 無事でしたか! 安心しましたよ」

 

クラーラの姿を認めると、やや芝居掛かった調子でそう言い放つカミンスキー。

 

「!?」

 

一方のクラーラは、カミンスキーの姿を見た途端にビクリと身体を震わせる。

 

「! クラーラッ!」

 

と其処で、レイラがクラーラに近付いた。

 

「あ………!」

 

途端に、クラーラは後退(あとずさ)る。

 

「? クラーラ?」

 

その様子に、怪訝な顔をして足を止めるレイラ。

 

「………その()は“記憶を失っている”んだ」

 

其処で誠十郎がそう説明する。

 

「! 記憶を!?」

 

「おや、其れは其れは………」

 

レイラは驚くが、カミンスキーは胡散臭い笑みを浮かべたままである。

 

「………クラーラ。本当に覚えていないの? 私よ……()()()()、『レイラ・M・ルシュコヴァ』よ」

 

「!? クラーラのお姉さん?」

 

「ホントかよ?」

 

すると何と、レイラが自らをクラーラの姉と名乗り、さくらが再度驚きの声を挙げるが、初穂は疑いの眼差しを向ける。

 

()()………()()()()()?」

 

当のクラーラも、実感が湧いていない様子である。

 

「本当に覚えていないの?」

 

「…………」

 

レイラの問いに、顔を背けて沈黙で返すクラーラ。

 

「………『ガイ達』の事も?」

 

「!?」

 

と、レイラが小声でそう問い質した瞬間、クラーラの脳裏にあの茶色のレザージャケット姿の青年………

 

そして、黒地に赤のスマートなスーツを着た青年の姿が浮かんだ。

 

「!? ううっ!?」

 

途端に、クラーラは頭痛に見舞われ、その場に倒れてしまった!

 

「「! クラーラッ!」」

 

慌ててレイラが抱き起こし、さくらも駆け寄る。

 

「………彼女は莫斯科華撃団の隊員だったのですか?」

 

俄かに騒然となる中、すみれはカミンスキーにそう問い質す。

 

「ハイ。昨日の極秘任務中に行方不明となってしまっておりまして………まさか帝都に居るとは思いも寄りませんでした」

 

「極秘任務とは? 他の隊員達が姿を隠している理由やあの空中要塞は一体?」

 

「其れは申し上げられません。何せ()()()()ですからね」

 

「…………」

 

飄々とそう言い放つカミンスキーに、すみれは段々と疑いの眼差しを隠し切れなくなる。

 

「さて、余り長居してもお邪魔でしょう………クラーラを引き取らせて頂きます」

 

「! 其れは………!?」

 

「お待ち下さい、カミンスキー隊長」

 

カミンスキーが一方的に話を進めようとし、すみれが憤り掛けた(ところ)、其れを遮る様にレイラが声を挙げた。

 

「レイラ?」

 

「クラーラはかなりのショックを受けている様です。今は未だ、此処へ置いてあげて頂けないでしょうか? 其れに、其処まで()()()物事を進めては………」

 

首を傾げるカミンスキーに対し、レイラはそう言いながら花組メンバーを見遣る。

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

花組メンバーは、全員がカミンスキーに対して猜疑に満ちた眼差しを向けていた。

 

「………まあ、良いでしょう。では、クラーラの事は()()()貴方方に任せる事に致しましょう」

 

するとカミンスキーは、やれやれと言う様に肩を竦めてそう言った。

 

「ですが、彼女(クラーラ)()()()()()()()()()()()()………“そう言う運命だ”という事をお忘れ無く」

 

最後に意味深な言葉を残し、カミンスキー達は莫斯科華撃団隊員達を伴って帝劇を後にする。

 

「…………」

 

レイラも、抱き抱えていたクラーラをさくらに託す。

 

「クラーラ!」

 

「………()()………よろしくお願いします」

 

「!!」

 

去り際に、レイラは“さくらにだけ”聞こえる様にそう囁き、カミンスキー達を追って去って行った。

 

その顔は、何処か悲し気だった………

 

程無く、帝劇上空に陣取っていた空中要塞セバストーポリが離れて行く。

 

『如何やら、思ったより根が深そうだな………』

 

(莫斯科華撃団が出張って来るとは………クラーラ………彼女は一体?)

 

ゼロがそう言う中、誠十郎は去り行くセバストーポリ(空中要塞)を見送った後、さくらに抱き抱えられて気を失っているクラーラを見遣るのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『誘拐怪人 ケムール人』

 

身長:1.9メートル~30メートル

 

体重:40キロ~1万5000トン

 

能力:頭から噴出する液体で対象を強制テレポートさせる

 

初登場作品:ウルトラQ第19話『2020年の挑戦』

 

ウルトラQを代表する星人。

 

高度な科学力を持つが、肉体が衰えて来ており、若い肉体を狙い2020年のケムール星から地球へ飛来。

 

掛けた対象を強制的にテレポートさせる液体で、人間を次々に攫った。

 

衰えているとは言えど、その肉体はパトカーの追跡を振り切るほどの速さで走れ、巨大化も可能。

 

最後は、弱点である東京タワーからXチャンネル光波を浴びせられて倒される、というウルトラシリーズでも珍しい“東京タワーに敗北した”星人。

 

その後、『ウルトラマンギンガ』でウルトラマンと初対戦。

 

2020年に放送された『ウルトラマンZ』では、正当な続編である『2020年の再挑戦』が放送された。

 

アニメ『かいじゅうステップワンダバダ』にも出演しており、主題歌に合わせて矢鱈とキレのあるダンスを披露すると言う動画が、YouTubeの円谷公式チャンネルで視聴出来る。




新話、投稿させて頂きました。

ゼロとケムール人が激突している最中に、今度は黒マントが出現。
あわやのところで、再び現れた白マントの介入で事なきを得る。
果たして、彼女は何者か?(棒読み)

そして帝劇へと現れた偽莫斯科華撃団。
クラーラを連れ戻そうとしますが、彼女を庇う様なレイラの言葉で、一旦は引き下がります。
しかし、これで済むはずが無い。
果たして何をしてくるか?
そして、レイラが言った『ガイ達』とは?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『クラーラの不安』

ジャグラスジャグラーの青柳 尊哉さんがご結婚なされました。

まさか彼の存在を匂わせ始めたところで、こんなニュースが出て来てビックリしてます。

ともあれ、青柳さん、おめでとうございます!


チャプター5『クラーラの不安』

 

火星怪獣 ナメゴン

 

暗黒星人 シャプレー星人 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座・帝劇付近………

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

気合の掛け声と共に、ハンマーを振るう初穂機。

 

キシャオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

「!? おうわっ!?」

 

しかし、『火星怪獣 ナメゴン』の軟性の身体には通用せず、跳ね返されてしまう。

 

「やあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

今度は、さくら機が刀で斬り掛かったが………

 

キシャオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

「!? ぬ、抜けないぃ!?」

 

此方も、軟性のナメゴンの身体を斬り切る事が出来ず、刃が途中で止まって抜けなくなってしまう。

 

キシャオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

必死に刀を抜こうとしているさくら機に、ナメゴンが触角の様な目を向ける。

 

「さくらさん! 危ないっ!!」

 

「!!」

 

クラリスの声に、さくら機が刀を手放して離脱すると、直後に先程までさくら機が居た場所にナメゴンの目から放たれた硬直光線が直撃する。

 

「チキショー! やり難い相手だぜ!!」

 

態勢を立て直した初穂機からそう言う声が響く。

 

「刀が………」

 

刀がナメゴンの身体に刺さったままになってしまい、丸腰となったさくら機からは不安気な声が挙がる。

 

「2人共、もう少しです! あと少しで………」

 

と、そんな2人にクラリスがそう言っていると………

 

上空から風切り音が聞こえて来た。

 

「! 来ましたっ!!」

 

そう言ってクラリス機が空を見上げると、編隊を組んで飛んでいるガンクルセイダー部隊の姿が在った。

 

『お待たせしました! これより散布致します!!』

 

と、ガンクルセイダー部隊からそう通信が入ったかと思うと、機体下部の爆弾倉らしき部分の扉が開く。

 

そして、其処から大量の水の様な液体が噴射され、ナメゴンの身体に浴びせられた!

 

キシャオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

ナメゴンが悲鳴の様な咆哮を挙げ、その身体から白い煙が上がり始めてどんどん溶けて行く。

 

「やった!」

 

「成功です!」

 

「へっ! やっぱ“ナメクジ”だな! ()()()()()()ぜっ!!」

 

さくら・クラリス・初穂が歓声を挙げる。

 

そう。ガンクルセイダー部隊が浴びせた液体は、「塩水」だった。

 

“ナメクジ型”の怪獣であるナメゴンにとって塩水は大敵であり、嘗てのナメゴンも海に落ちて絶命している。

 

キシャオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

見る見る内に溶けて小さくなって行くナメゴン。

 

そして、とうとう完全に消えて無くなってしまった………

 

「ふう~、何とかなりましたね」

 

ナメゴンが溶けた跡に落ちていた刀を拾い、鞘へと納めたさくら機からそう声が響く。

 

「隊長達は大丈夫か?」

 

「直ぐに救援に行きましょう」

 

そして初穂とクラリスがそう言い合うと、3機の無限は直ぐに帝劇へと帰還して行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

帝劇・2階の階段前の廊下にて………

 

「待てっ!!」

 

「逃げられ無いわよ」

 

二刀を手にしている誠十郎とデリンジャーの様な拳銃を手にしているアナスタシアが、“帝劇への侵入者”を追う。

 

「チイッ! 小癪なっ!!」

 

侵入者………昆虫のような巨大な複眼と金色の服、透明な上着が特徴の星人・『暗黒星人 シャプレー星人』が独特な形状の銃を向ける。

 

「! 危ないっ!!」

 

「!!」

 

誠十郎がそう叫んで物陰に身を隠し、アナスタシアも其れに倣うと、シャプレー星人の銃から光線が発射されて廊下の床を焦がした。

 

「今の内に………」

 

2人が身を隠したのを見たシャプレー星人は、そのまま階段を下ろうとしたが………

 

「逃がさないっ!」

 

突如、その前に現れたあざみがクナイを投擲。

 

「!? うおっ!?」

 

クナイはシャプレー星人が持っていた銃を弾き飛ばした。

 

「大人しくする!」

 

続いてあざみは分銅鎖を取り出して、シャプレー星人を捕縛しようと試みる。

 

「小娘がぁっ!!」

 

だが、シャプレー星人の口が開いたかと思うと、其処から光弾が放たれる。

 

「!?」

 

咄嗟に分銅鎖で防いだものの、衝撃でバランスを崩したあざみは階段を転げ落ちる。

 

「! あうっ!」

 

踊り場まで落ちたかと思うと、壁に強かに背を打ち付ける。

 

その隙に、シャプレー星人は階段を駆け下りて行った。

 

「! あざみ!」

 

踊り場の壁に凭れ掛かっているあざみに、アナスタシアが慌てて駆け寄って助け起こす。

 

「アナスタシア! 頼むっ!!」

 

誠十郎は、アナスタシアにあざみを任せてシャプレー星人を追った。

 

「!!」

 

シャプレー星人は1階まで降りたかと思うと、支配人室を見付ける。

 

『マズイ! すみれが狙われるぞっ!!』

 

「! 神崎支配人!!」

 

シャプレー星人が狙いをすみれに定めた事を察したゼロが声を挙げ、誠十郎が叫ぶ中、シャプレー星人は支配人室の扉を開け放つ。

 

「神崎 すみれ! 命は貰った!!」

 

が、シャプレー星人がそう叫んで支配人室に飛び込んだ瞬間、光弾が命中!

 

「!? グアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

シャプレー星人は悲鳴を挙げ、爆発四散した。

 

「! 支配人!?」

 

「この(わたくし)の命を狙おう、だ等と………()()()()()図に乗らないで頂きたいわね」

 

一瞬遅れて誠十郎が支配人室へ入ると、其処にはデュナミストの武器『ブラストショット』を構えたすみれの姿が在った。

 

『やるじゃ()えか、流石だな』

 

「申し訳有りません。自分が不甲斐無いばかりに、支配人を危険に………」

 

ゼロが軽口を叩くが、誠十郎はすみれの手を煩わせてしまった事を詫びようとする。

 

「気にしなくて良いわ、神山くん。しかし………こうも襲撃が続くと流石に………」

 

ブラスショットを仕舞いながら、すみれは険しい表情を浮かべてそう呟く。

 

実は帝劇近くに怪獣が出現し、星人が帝劇内へ侵入して来たのはコレで“3日()()”なのだ。

 

幸いにも怪獣は全て撃退され、侵入して来た星人も、イデが『こんなこともあろうかと』発明して置いた『星人探知機』によって早々に発見出来ており、重要区画への侵入は何とか免れている。

 

だが、このまま襲撃が続けば帝劇のスタッフも無事では済まなくなり、公演を開く事さえ(まま)ならなくなる………

 

イデは現在、風組や帝劇スタッフの護身用武装の開発を進めているらしいが、未だ時間が掛かるようだ。

 

「敵の狙いはやはり………」

 

「神山くん、“其れ以上は”()()よ」

 

「! すみません」

 

怪獣や星人達の狙いはクラーラであると口に仕掛けた誠十郎だったが、すみれが制する。

 

「…………」

 

しかし、その遣り取りを、支配人室入口の陰でクラーラが聞いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時は流れ………

 

事後処理が終わり、静けさを取り戻した帝劇の時計台に在る隠れ部屋にて………

 

「…………」

 

クラーラが膝を抱えて(うずくま)っていた。

 

()()()()()()………“だから帝劇が襲われる”………)

 

自分の所為(せい)で帝劇が襲撃を受けている。

 

そう考えるクラーラの気持ちはドンドンと沈んで行く………

 

(私は“此処に居てはいけない”………“()()を運んでしまう”………)

 

やがてはそんな考えが頭を過り始める。

 

「クラーラ」

 

「!?」

 

と其処へ、“()()()()は居ない筈のこの場所”に誰かの声が響き、驚きながら顔を上げると………

 

「フフフ」

 

何と、カミンスキーが不敵な笑みを浮かべて佇んでいた。

 

「!?」

 

慌てて立ち上がると若干後退るクラーラ。

 

()()()()()帰って来る決心は付きましたか? クラーラ」

 

「!?」

 

カミンスキーのその問いに、クラーラはビクリと身体を震わせる。

 

「帝劇が狙われる理由………其れは君の考えている通り、“君自身が狙い”だからです」

 

「私が………」

 

「君が此処に留まっている限り、奴等は際限無く襲って来ます。そして何れは帝国華撃団のメンバーも………」

 

「! 止めてっ!!」

 

その続きを聞きたく無い、とクラーラは手で耳を塞いでその場に蹲る。

 

「君がコレ以上、帝国華撃団の皆さんに迷惑を掛けたく無いと思うのなら、私達の許へ戻って来るのです。大丈夫です。何も不安に思う事はありません。“我々は()()仲間なのです”から」

 

「仲間………」

 

「さあ、クラーラ。我々の許へ………」

 

そう言って、“胡散臭い”笑みを浮かべたままクラーラへと手を伸ばすカミンスキー。

 

「…………」

 

立ち上がったクラーラは、そんなカミンスキーの姿を暫し見遣る。

 

と、其処で………

 

「クラーラーッ! 何処に居るのーっ!?」

 

クラーラを探しているさくらの声が響いて来た。

 

「! さくらっ!」

 

「おっと、()()が入ってしまいましたね。今日はコレにて………ですが、クラーラ。“()()()()()()は我々の許以外に無い”。その事をお忘れ無く」

 

「!!」

 

再度クラーラがビクリと震える中、カミンスキーは持っていた傘を広げたかと思うとそのままフワリと浮かび、展望窓から飛び去って行った。

 

「クラーラ! 此処に居たんだ、探したよ」

 

その直後に、さくらが展望室へと現れる。

 

「…………」

 

「? クラーラ? 如何したの?」

 

俯いているクラーラを見たさくらが、首を傾げながら尋ねる。

 

「さくら………私が『此処から出て行く』って言ったら、如何する?」

 

「えっ!?」

 

クラーラの言葉に驚くさくら。

 

「怪獣や星人が現れるのは私の所為(せい)………私が狙われているから、帝劇が襲われちゃう。だから、私なんて居ない方が………」

 

「クラーラッ!!」

 

と其処で、さくらは怒った様な声を挙げてクラーラの目の前に座り込み、その両肩を摑む。

 

「さ、さくら………?」

 

「何でそんな事言うの!?」

 

戸惑うクラーラに、さくらは怒った様子のままでそう言う。

 

「だ、だって、()()()()()()皆に迷惑が………」

 

「私達が、何時クラーラの事を迷惑だ、なんて言ったの!?」

 

クラーラの言葉を遮り、さくらはそう言い放つ。

 

「さ、さくら………」

 

「…………」

 

そしてそのまま、さくらはクラーラを抱き締める。

 

「!!」

 

「クラーラ………“自分が居たら迷惑が掛かる”なんて………そんな()()()事言わないで。クラーラが居なくなっちゃったら、私寂しいよ」

 

先程までとは打って変わり、優しい口調でそう言うさくら。

 

「如何して………?」

 

「だって、()()()()()()。それ以上の理由が要る?」

 

「!!」

 

さくらの言葉に目を見開くクラーラ。

 

『気にするな。「()()」なんだからな』

 

そして脳裏に、あの“コートの青年”が浮かび上がる。

 

「さくら………」

 

やがて、クラーラもさくらを抱き締め返す。

 

「………ありがとう」

 

「クラーラ………」

 

2人は暫し、そのまま抱き合っていた。

 

「ふむ………もう少し揺さぶりを掛ける必要が有りそうですね」

 

そんな2人の様子を、空中に浮かんだ状態でちゃっかりと覗いていたカミンスキーは、邪悪な笑みを浮かべてそう(うそぶ)いたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空中移動要塞セバストーポリ・テラス………

 

「…………」

 

陽が傾いて夕日が差し込む中で、1人テラスに佇んでいるレイラ。

 

その瞳は沈み行く夕日をジッと見詰めている。

 

『どうせ“地球は丸い”んだ。またそのうち、何処かで会えるだろう』

 

その脳裏に、クラーラと同じく“コートの青年”が思い浮かぶ。

 

「………『ガイ』」

 

そう呟き、思いに耽るかの様に目を閉じるレイラ。

 

「………~~♪~~♪」

 

やがて“或るメロディ”を口ずさみ始めた。

 

其れは、“クラーラが無意識に演奏していた”あのメロディだった。

 

「~~♪~~♪」

 

優しくも、何処か物悲しいメロディがテラスに響く。

 

すると………

 

「グアアアッ!?」

 

「!?」

 

突然絶叫が聞こえて来て、レイラが驚きながら振り返ると其処には………

 

「レ、レイラ………“その歌は止めなさい”と言った筈ですよ………」

 

強烈な頭痛に頭を押さえて蹲っているカミンスキーの姿が在った。

 

「申し訳ございません。カミンスキー様」

 

頭を下げて謝るレイラだが、その言葉は何処か事務的に聞こえる。

 

「………まあ、良いでしょう。其れよりも、“例のモノ”は用意出来ていますか?」

 

カミンスキーは不満そうにしながらも、漸く頭痛が収まったので立ち上がるとそう尋ねる。

 

「ハイ、既に………」

 

とレイラがそう言うと、テラスの窓がモニターへと変わり、映像が映し出される。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

其処には、真っ赤な空間の中で不気味に目を光らせている“バキシムに似た”超獣の姿が在った。

 

「結構。コレでクラーラも我々の許へ帰って来ざるを得なくなるでしょう、フフフ………」

 

その超獣の姿を見ながら、不気味に笑うカミンスキー。

 

「…………」

 

一方のレイラは、カミンスキーには見せない様に“何かに耐えるかの様に”グッと拳を握り締めていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『火星怪獣 ナメゴン』

 

身長:30メートル

 

体重:1万トン

 

能力:目から放つ硬直光線

 

初登場作品:ウルトラQ第3話『宇宙からの贈りもの』

 

火星から帰還した無人探査機に乗せられていた金色の卵から誕生した宇宙怪獣。

 

名前の通り、ナメクジの怪獣である。

 

火星人により地球人の闇雲な宇宙開発に対する挑戦か、或いは威嚇を目的として送り込まれたと推測されている。

 

ナメクジなだけに塩水に弱く、最後は海に落ちて溶けた。

 

ウルトラマンメビウスでも存在が示唆されており、ウルトラマンZの雑誌スチール写真では、特空機セブンガーと戦っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『暗黒星人 シャプレー星人』

 

身長:1.7メートル

 

体重:60キロ

 

初登場作品:ウルトラセブン第20話『地震源Xを倒せ』

 

『核怪獣 ギラドラス』を使い、地球の中心核に存在する物質『ウルトニウム』を採掘しようと来訪した。

 

地質学者の村博士の助手の榊として地球に潜伏していたが、正体を見破られ、ウルトラ警備隊のソガ隊員とアンヌ隊員に倒された。

 

『ウルトラ銀河伝説』で再登場を果たし、変身前のメビウス=ヒビノ・ミライを追い詰める活躍を見せたが、初代ウルトラマン=ハヤタに倒される。

 

この作品以降、巨大化能力は持たないが高い戦闘力を持つ宇宙人として、度々登場している。

 

実は元はあの『宇宙帝王 バド星人』としてデザインされていたが、製作時に急遽入れ替えが行われ、此方がシャプレー星人となった。




新話、投稿させて頂きました。

帝劇への襲撃が連日連夜続く事態。
狙いはやはりクラーラであり、カミンスキーが裏で糸を引いていた。

思い悩むクラーラだが、さくらの言葉で踏み止まる。
しかし、カミンスキーの更なる策略が………

果たして『ガイ』とは一体?(棒読み)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『白マント』

チャプター6『白マント』

 

一角紅蓮超獣 バキシマム

 

機械人形 ゴブニュ(ヴァハ) 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナメゴンとシャプレー星人の襲撃から一夜明け………

 

早朝から、帝劇に警報が鳴り響いた。

 

花組メンバーは直ぐ様大鏡裏のシューターへと飛び込み、戦闘服姿となって司令室へ集合した。

 

 

 

 

 

帝劇地下・地下司令室………

 

「銀座上空の映像です」

 

花組メンバーが集合したのを確認したカオルが、モニターに銀座の空の映像を映し出す。

 

其処には、ガラスの様に赤いヒビの入った空が映し出されている。

 

「!? コレはっ!?」

 

「あの開会式の時と同じじゃ()えかっ!?」

 

其れを見たさくらと初穂が驚きの声を挙げる。

 

空に入る赤いヒビ………

 

其れはあの『悪夢の開会式』で、ベロクロンとバキシムが出現した際のモノと全く同じだった。

 

「解析の結果、“あの開会式での現象と同一のもの”である、と言う結果が出た」

 

「つまり、また“あの時と同じ事”が起きる、と言う事ね?」

 

イデの報告に、アナスタシアが表情を険しくしながらそう言う。

 

「只でさえ襲撃が続いていると言うのに………」

 

「此処へ来て駄目押し………」

 

クラリスとあざみも、苦い顔で呟く。

 

「皆。疲れているのは分かっているけど、事が事だ。全力で以て臨んで欲しい」

 

花組メンバーを気遣いつつも、決して油断はせぬ様にと念を押すサコミズ。

 

「分かっています。よし! 帝国華撃団、花組! 出撃………」

 

「待って! 神山くんは残って」

 

「!? えっ!?」

 

イザ出撃しようとしたところ、すみれから思わぬ制止を受け、誠十郎は驚く。

 

「今までの襲撃では、全て“怪獣の出現と共に()()()()()()()()が出ている”わ。今回も、そうなる可能性が高いと考えるのが妥当ね。だから、神山くんには残って欲しいの」

 

「せやな。何やかんや言うて、生身で1番強いんは神山さんやからな」

 

すみれの言葉に、こまちが星人と何度も交戦していた誠十郎を思い出してそう言って頷く。

 

『誠十郎。相手が“超獣”となると分が悪い。多分、すみれは“直ぐに()()()()()様にして欲しい”って言ってるんだ』

 

「………分かりました。自分は帝劇内で待機します」

 

と、その裡に隠された“すみれの真意”を読み取ったゼロがそう言うと、誠十郎は頷いた。

 

「御免なさいね………今回の指揮は(わたくし)が執ります。帝国華撃団・花組! 出撃よっ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

そしてすみれの号令一下、花組メンバーは誠十郎を残して出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座・帝劇近く………

 

避難命令が出され、人気の絶えた街中に佇む花組の無限。

 

空に入っているヒビはドンドンと広がって行っており、今にも割れそうな様子である。

 

『来るわよ! 皆、気を付けて!!』

 

「「「「「!!」」」」」

 

すみれがそう通信を入れると、5機の無限が身構える。

 

その瞬間!!

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

空がガラスの様に割れ、その中に広がる赤い空間から“バキシムに似た超獣”が姿を見せた。

 

「! アレは開会式の!?」

 

「いえ、良く見ると似てるけど違うわ」

 

「強化体………でしょうか?」

 

さくら・アナスタシア・クラリスがそう言い合う。

 

そう………

 

その超獣はバキシムの強化体………

 

『一角紅蓮超獣 バキシマム』だった。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

バキシマムは赤い空間の中から飛び出すと、地響きと共に銀座の街中へ降り立った。

 

「! ゼットンッ!!」

 

と、クラリスが直ぐ様ゼットンを呼び出す。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

バキシマムと対峙するゼットン。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

バキシマムはゼットンに両腕を向けると、火球・紅蓮火炎弾を連続発射する。

 

しかし、ゼットンはテレポートで回避してバキシマムの背後に回り込む。

 

そして、1兆度の火球を放つ。

 

火球はバキシマムの背中へと直撃したが………

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

何とバキシマムは意にも介さず、ゼットンの方に振り返る。

 

「! ゼットンの火球が効かない!?」

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

クラリスが驚きの声を挙げる中、バキシマムは赤く鋭くなった頭部の角をゼットン目掛けて発射。

 

腕を振って弾き飛ばすゼットンだったが、何と!

 

弾き飛ばされた角・『一角紅蓮ミサイル』は、炎を纏ったかと思うとブーメランの様に反転して、再びゼットンに襲い掛かった!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

真面に喰らったゼットンが倒れる中、一角紅蓮ミサイルはバキシマムの頭部に再装着される。

 

「ゼットン! くうっ! アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

クラリス機がバキシマムに向けて必殺技を放つ。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

しかし、無数の魔導弾が命中しながらも、バキシマムは全く怯まない。

 

そして再度両腕から紅蓮火炎弾を薙ぎ払う様に連射!

 

「!? キャアッ!!」

 

「うおわっ!?」

 

「!?」

 

直撃こそ避けたものの、次々に起こった爆発で吹き飛ばされる花組の無限達。

 

更に火炎弾は街の彼方此方に直撃し、帝都の街が燃え上がる。

 

「!? 帝都が!?」

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

さくらの悲鳴の様な声が挙がる中、バキシマムは咆哮を響かせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・クラーラの部屋………

 

「振動が此処まで………さくら達は大丈夫なのか?」

 

戦闘によって帝劇へと伝わって来る振動を感じながら、心配気に窓の外を見遣る誠十郎。

 

「誠十郎………」

 

とそんな誠十郎の手を、クラーラが握る。

 

「ああ、ゴメンよ、クラーラ」

 

不安にさせてしまった事を詫びながら、誠十郎はクラーラに視線を合わせる様にしゃがみ込む。

 

「誠十郎。私の事は良いから、さくら達のところへ行って」

 

「クラーラ………」

 

そう訴え掛けて来るクラーラに、誠十郎は表情を曇らせる。

 

「大丈夫だ、クラーラ。さくら達は強い。俺が居なくても平気さ」

 

「誠十郎………」

 

「って、こんな事を言っちゃあ隊長として立つ瀬が無いけどな」

 

(おど)けて笑って見せる誠十郎。

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

突然天井を突き破って、『何者』かが室内に突入して来た!!

 

「!? キャアッ!?」

 

「!? 何だっ!?」

 

悲鳴を挙げるクラーラと、直ぐ様彼女を庇う様に背後に回す誠十郎。

 

「…………」

 

舞い上がる粉塵の中から姿を現したのは、ゴブニュ(ヴァハ)だった。

 

「!?」

 

その姿を見た瞬間、クラーラの脳裏に、“失われた記憶の一端”が過る。

 

「嫌あっ!!」

 

「クラーラッ!?」

 

頭を抱えて尋常では無い怯え方をするクラーラに、誠十郎が驚きを示す。

 

「…………」

 

一方、ゴブニュ(ヴァハ)はクラーラの姿を確認すると、近付いて来る。

 

「クッ! させるかっ!!」

 

誠十郎は二刀を抜き、ゴブニュ(ヴァハ)へと斬り掛かる!

 

「…………」

 

しかし振られた二刀は、ゴブニュ(ヴァハ)の身体を傷付ける事は出来ず、表面で火花を散らすだけに終わる。

 

「!? 何っ!?」

 

驚愕の声を挙げた誠十郎の首を、ゴブニュ(ヴァハ)の右手が摑む。

 

「!? ぐあっ!?」

 

そのまま片腕で持ち上げられる誠十郎。

 

「…………」

 

ゴブニュ(ヴァハ)はそのまま、誠十郎を窓目掛けて投げ付けた!

 

「!? おうわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

窓を突き破り、外へと投げ出される誠十郎。

 

「誠十郎っ!!」

 

「…………」

 

クラーラが叫んだ瞬間、ゴブニュ(ヴァハ)は彼女の腕を摑んだ!

 

「! 嫌っ! 離してっ!!」

 

振り解こうとするクラーラだが、非力な少女の力ではゴブニュ(ヴァハ)を引き剝がす事が出来ない。

 

「…………」

 

そのままクラーラを連れ去ろうとするゴブニュ(ヴァハ)だったが………

 

「オオリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

気合の雄叫びと共に戻って来た誠十郎(ゼロ)が、ゴブニュ(ヴァハ)に飛び蹴りを見舞う。

 

其れを喰らったゴブニュ(ヴァハ)の頭が外れ、壁に叩き付けられた後、床に転がる。

 

「! 誠十郎っ!?」

 

「ワリィな、ちょっと不覚を取っちまった」

 

驚くクラーラに、誠十郎と入れ替わったゼロがそう詫びる。

 

「! ()()()()()!? ()()()()()()()!!」

 

しかし何と!

 

クラーラは、“ゼロが誠十郎と入れ替わっている”のを見抜いた。

 

「! 何っ!?」

 

『まさか、ゼロに気付いたのか!?』

 

ゼロと誠十郎が驚きを示していると………

 

「…………」

 

何とゴブニュ(ヴァハ)の外れた頭が浮かび上がり、再び胴体へとくっ付いた。

 

「!?」

 

「何っ!?」

 

「…………」

 

7つのカメラアイを発光させると、クラーラと誠十郎(ゼロ)に向き直るゴブニュ(ヴァハ)。

 

「チイッ! しぶとい野郎だ!!」

 

『ゼロ! 此処で戦うのは不利だ!!』

 

「分かってる! クラーラッ!!」

 

「キャッ!?」

 

誠十郎の言葉に、ゼロはクラーラを抱き抱える。

 

「ハアッ!!」

 

そして、ゴブニュ(ヴァハ)が開けた天上の穴から外へと飛び出す。

 

「…………」

 

ゴブニュ(ヴァハ)も背中のブースターを噴かして穴から飛び出す。

 

両者は、帝劇の屋根の上にて再度対峙する。

 

「クラーラ。お前の言う通り、俺は誠十郎じゃ()え。けど“お前の味方”だ! 信じろっ!!」

 

「!!」

 

誠十郎(ゼロ)がクラーラにそう言うと、クラーラの脳裏に“コートの青年”の姿が浮かぶ。

 

「………うん、信じる」

 

「ありがとよ! さて………」

 

「…………」

 

2人の遣り取りが終わると、ゴブニュ(ヴァハ)は待っていたかの様に動き出す。

 

帝劇の屋根を踏み締めながら、ゆっくりと誠十郎(ゼロ)達の方へと向かって来る。

 

「…………」

 

二刀を(たずさ)えて身構える誠十郎(ゼロ)。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

と其処へ、遠くの方からバキシマムの咆哮と爆発音が連続で聞こえて来る。

 

「!?」

 

『超獣の声!? まさかさくら達が!?』

 

その声にゼロと誠十郎が反応した瞬間………

 

「!!」

 

ゴブニュ(ヴァハ)が、再度背中のブースターを噴射して一気に突撃して来た!!

 

「! 野郎っ!!」

 

其れに遅れを取る誠十郎(ゼロ)では無く、迎撃しようと二刀を振り被ったが………

 

突然上空から現れた人影が間に割って入り、居合いの様に振るった刀でゴブニュ(ヴァハ)を弾き飛ばした!!

 

「「!?」」

 

「大丈夫か?」

 

驚く誠十郎(ゼロ)とクラーラが見たのは、あの白マントの姿だった。

 

「お前は!?」

 

『さくらの報告にあった白マントか!?』

 

白マントの姿を見て、さくらからの報告を思い出す誠十郎とゼロ。

 

「…………」

 

弾き飛ばされたゴブニュ(ヴァハ)が、のっそりと起き上がる。

 

「………コイツの相手とその少女は私に任せろ」

 

「!? 何っ!?」

 

其処で白マントが誠十郎(ゼロ)の傍に寄ってそう言い、誠十郎(ゼロ)は驚きの声を挙げる。

 

「超獣の相手は()()()()()()()()だろう………()()()()()()()()()()

 

「!!」

 

『ゼロを知っている!?』

 

ゼロの正体を看破した白マントに、2人は驚愕を露わにする。

 

「! お前、ひょっとして………?」

 

其処で誠十郎(ゼロ)が、“白マントの正体”に或る推測を立てる。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

しかし其処で、再度バキシマムの咆哮と連続した爆発音が聞こえて来る。

 

「!!」

 

「行き給え。このままでは、さくら達が危ないぞ」

 

「…………」

 

再度そう促され、誠十郎(ゼロ)は少し考えた後、クラーラを見遣る。

 

「クラーラ」

 

「誠十郎?………ううん、ウルトラマンゼロ………それが貴方の名前なの?」

 

「ああ、そうだ」

 

「………私は大丈夫だよ。だから、さくら達を助けに行って」

 

「すまねえ………」

 

誠十郎(ゼロ)は一瞬苦悩を見せながらも、左腕を構えてウルトラゼロアイを出現させる。

 

「デュワッ!!」

 

そしてウルトラゼロアイを目に装着し、ウルトラマンゼロへと変身!!

 

「ハアッ!!」

 

そして、花組メンバーとバキシマムが戦っている現場に向かって飛翔するのだった。

 

「…………」

 

飛び去るゼロを見送ったクラーラの脳裏には、あの“大剣を持つ光の巨人”の姿が過る。

 

「では、お嬢さん。私から離れない様に頼むよ」

 

「ハイ………」

 

そして白マントの傍に寄ると、その背中越しに不気味に佇むゴブニュ(ヴァハ)を見据えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

遂に超獣を繰り出して来たカミンスキー。
バキシマムって何ぞ?って方に説明すると、児童雑誌で行われたバキシム強化改造計画の最優秀作品なのです。
ソフビ化もされていますが、残念ながら映像作品への出演は無く、アーケードゲームの『大怪獣バトル』でしかその姿は拝めません。

しかし、バキシムの強化体だけあって凄まじい力を発揮します。
頼みのゼロも、ゴブニュからクラーラを守らなければならない状況に。
そこへ登場したのは、またも白マントです。
果たして、その正体は?(笑)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター7『クラーラの秘密』

チャプター7『クラーラの秘密』

 

一角紅蓮超獣 バキシマム

 

ゴブニュ(ヴァハ)

 

怪人 巨大黒マント

 

上級降魔??? 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座………

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

咆哮と共に、薙ぎ払う様に紅蓮火炎弾を連射するバキシマム。

 

爆発と共に次々と建物が吹き飛んで行く。

 

「クッ! このぉっ!!」

 

アナスタシア機が、少しでも被害を食い止めようと飛び交う紅蓮火炎弾に向けて、氷の銃弾を放って迎撃するが焼け石に水である。

 

「テメェッ!! いい加減にしやがれぇっ!!」

 

更に、初穂機が必殺の東雲神社の御神楽ハンマーを繰り出し、強力な1撃をバキシマムの足へと叩き込んだ。

 

「!? うわあっ!?」

 

しかし、初穂機の渾身の攻撃も通用せず、強靭な表皮にアッサリと跳ね返されてしまう。

 

「やああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

 

今度は、さくら機がジャンプしながら刀で斬り掛かったが、コレも表皮に火花を散らしただけで終わる。

 

「くうっ!!」

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

と、さくら機の着地の瞬間を狙って、バキシマムが足を振り上げて踏み潰そうとする。

 

「!? しまっ………」

 

「さくらっ!!」

 

しかし、あざみ機が空中でさくら機を掻っ攫い、共に回避に成功する。

 

「ありがとう、あざみ」

 

「気にしないで………でも、このままじゃ駄目」

 

お礼を言うさくらに、あざみは苦い顔でそう返す。

 

既に幾度と無く攻撃を加えているものの、バキシマムはダメージらしいダメージを受けた様子が無い。

 

状況は、花組が完全に不利である。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

そんな花組に向かって、勝ち誇るかの様に咆哮を挙げるバキシマム。

 

 

 

 

 

と、其処で!!

 

 

 

 

 

「ウルトラゼロキイイイイィィィィィックッ!!」

 

雄叫びと共に上空から現れたゼロが、ウルトラゼロキックをバキシマムの頭部に命中させた!

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

頭から爆発の火花を挙げ、地響きと共にバキシマムは地面に倒れる。

 

「セヤッ!!」

 

「! ゼロさんっ!!」

 

「待ってたぜっ!!」

 

着地を決めたゼロに、さくらと初穂が歓声を挙げる。

 

「コイツ………“バキシムの強化型”か?」

 

『あの“開会式での超獣”か?』

 

バキシマムを見てゼロがそう言うと、誠十郎が開会式に現れたバキシムの事を思い出す。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

と其処で、起き上がったバキシマムが咆哮を挙げたかと思うと、両腕をゼロに向けて紅蓮火炎弾を連射する。

 

「ハアッ!!」

 

ゼロはバリア・ゼロディフェンダーを展開し、紅蓮火炎弾を防ぐ。

 

「エメリウムスラッシュッ!!」

 

そして紅蓮火炎弾が途切れると、バリアを解除すると同時にエメリウムスラッシュを発射。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

直撃を受けるものの、構わずゼロに突進して来るバキシマム。

 

「チイッ! オラアッ!!」

 

突進して来たバキシマムと組み合うゼロ。

 

『構わずに突っ込んで来るなんて!』

 

「超獣は痛みや恐怖を感じない! “完全に動きを止める”しか()えっ!!」

 

驚く誠十郎にそう返しながら、ゼロはバキシマムを押し切ろうとする。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

「うおっ!? コイツッ!!」

 

しかし逆に、バキシマムのパワーに押され始める。

 

「チイッ! オラアッ!!」

 

其処でゼロは、相手の力を利用して巴投げで投げ飛ばす。

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

地面に頭から叩き付けられたバキシマムだが、怯まず直ぐ様起き上がる。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

そして、ゼロ目掛けて一角紅蓮ミサイルを放つ。

 

「セヤッ! ハアッ!」

 

ゼロも、ゼロスラッガーを2つ共投擲して対抗。

 

しかし、一角紅蓮ミサイルはゼロスラッガーを弾き飛ばし、そのままゼロに直撃する。

 

「うおわっ!?」

 

今度はゼロが真面に喰らい、身体から火花を挙げて地面に倒れる。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

一角紅蓮ミサイルを頭部に戻すと、勝ち誇るかの様に咆哮するバキシマム。

 

「チイッ! 調子に乗んなよっ!!」

 

其処で、ゼロはゼロスラッガーを手元に戻すと、ゼロツインソードに合体させて持ち、立ち上がると同時にバキシマムに向かって行く。

 

「ゼロさんを援護しましょう!」

 

「「「「了解っ!!」」」」」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

其処へ続く様に、さくら達花組メンバーとゼットンもバキシマムに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

帝劇の屋根の上では………

 

「ハアッ!」

 

気合の一閃でゴブニュ(ヴァハ)の腕を斬り落とす白マント。

 

「…………」

 

しかし、斬り落としたがらんどうの腕が浮かび上がると、切断部分にくっ付いてしまう。

 

「やれやれ、()りが無いな………」

 

声色や表情からは窺えないが、白マントは苦々しい様子を見せる。

 

「…………」

 

そんな白マントとゴブニュ(ヴァハ)を、物陰からおっかなびっくりと窺っているクラーラ。

 

「………已むを得ないか」

 

すると其処で、白マントが刀を握っていた腕を下げ、やや脱力したかの様な様子を見せる。

 

「………?」

 

その白マントの姿に、ゴブニュ(ヴァハ)が怪訝そうな様子を見せたかと思うと………

 

「………ハアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

その瞳が赤く光り、身体からも赤いオーラの様な物が立ち昇り始める。

 

「…………!?」

 

ゴブニュ(ヴァハ)が怯む様な様子を見せた瞬間!

 

「セヤアアアアアッ!!」

 

白マントは、一瞬にしてゴブニュ(ヴァハ)に肉薄。

 

刀を、両手で掲げる様に構えて垂直に振り下ろす唐竹割りを繰り出した!!

 

一瞬の間の後、ゴブニュ(ヴァハ)の脳天から股間に掛けて赤い光が走り、真っ二つに分かれる。

 

切断面が赤く発光しており、そのまま再生する事無く倒れたかと思うと、爆発四散するゴブニュ(ヴァハ)。

 

「ふう………何とかなったか」

 

刀を振り、爆散したゴブニュ(ヴァハ)を見てそう呟く白マント。

 

と、その時!!

 

「キャアッ!?」

 

「!?」

 

クラーラの悲鳴が聞こえて白マントが振り返ると、其処には………

 

「離して! 離してぇっ!!」

 

「…………」

 

クラーラを左腕で確保している黒マントの姿が在った。

 

「しまったっ!? コイツも来ていたのか!?」

 

「…………」

 

直ぐ様クラーラを助けようとする白マントだったが、黒マントが其れよりも早く背中のブースターを噴かして飛翔。

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

クラーラの悲鳴が響く中、空高く舞い上がってしまう。

 

「クッ! 待てっ!!」

 

すると、白マントは大きく跳躍。

 

やがて跳躍限界点に達したかと思うと………

 

何と、その背から“鳥の様な白い翼”が出現!!

 

黒マントを追って飛翔するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座………

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

紅蓮火炎弾を連射するバキシマム。

 

「ウルトラゼロディフェンダーッ!!」

 

だがゼロは、ウルティメイトブレスレットを盾・『ウルトラゼロディフェンダー』に変形させて左手に持ち、紅蓮火炎弾を防ぎながら接近。

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

そして、右手のゼロツインソードを振るが、バキシマムはクロー状の両腕で受け止める。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

しかし其処で、ゼットンが背後に回ってバキシマムの尻尾を両手で摑んだ。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

振り解こうとするバキシマムだが、ゼットンは必死で抑える。

 

「隙有りだっ!!」

 

其れによって生じた隙を衝き、ゼロはクロー状の両腕を弾き飛ばすと、再度ゼロツインソードを横薙ぎに振るい、バキシマムの身体に斬り付けた!

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

バキシマムのボディに横一直線の傷が入り、緑色の血液の様な液体が噴出する。

 

「アポリト・ミデンッ!」

 

「天剣・桜吹雪っ!!」

 

その傷目掛けて、アナスタシア機が番傘状のライフルからレーザーを放ち、さくら機が斬撃波を飛ばす。

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

傷口が広がり、緑色の血液が辺りに飛び散る。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

しかし、超獣であるバキシマムは全く怯まず、アナスタシア機とさくら機目掛けて一角紅蓮ミサイルを発射する。

 

「クッ!」

 

「キャアッ!!」

 

衝撃波で吹き飛ばされながらも、ギリギリのところで直撃は回避する両機。

 

「今ですっ!!」

 

其処で、クラリスが空中に魔法陣を横向きに出現させた。

 

「おっしゃあっ!!」

 

すると初穂機が、その魔法陣の上へと跳躍したかと思うと、魔法陣を足場にして更に空高く跳躍。

 

「おりゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

そして機体を縦に回転させながら、勢いを載せたハンマーの1撃を、一角紅蓮ミサイルが外れていたバキシマムの頭頂部に叩き込む!

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

霊力をふんだんに込めたその1撃によって、バキシマムの頭頂部が爆発。

 

其れによりコントロールが途切れ、戻れなくなった一角紅蓮ミサイルがフラフラと宙を漂う。

 

「にんっ!!」

 

その一角紅蓮ミサイルに向かって、鎖分銅を投げ縄の様に投げて巻き付けるあざみ機。

 

「ハアアアアアアッ!!」

 

そして、機体の出力を最大にして如何にか振り回すと、バキシマム目掛けて投げ付けた!

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

自らの一角紅蓮ミサイルをまたも傷口へと食らうバキシマム。

 

一角紅蓮ミサイルはバキシマムのボディの傷口に深々と突き刺さった。

 

「くうっ!」

 

しかし、相当無茶をしたのか、あざみ機が膝を突き、関節部から蒸気漏れを起こす。

 

「あざみ!!」

 

「私は大丈夫。それよりもアイツを………」

 

心配の声を挙げる初穂に、自分の事は気にせずバキシマムにトドメをと呼び掛けるが………

 

「!? 何か来ますっ!!」

 

クラリスが“接近して来るモノ”が有る事に気付いて声を挙げる。

 

其れは、クラーラを抱えて飛ぶ黒マントの姿だった。

 

「!? クラーラッ!!」

 

「!? 何っ!?」

 

さくらが悲鳴の様な声を挙げ、ゼロも反応する。

 

「如何してクラーラさんがっ!?」

 

「クソッ! 隊長さんの奴、何やってんだよっ!?」

 

『クウッ!』

 

クラリスも声を挙げ、事情を知らぬ初穂が誠十郎を責める様に言うと、誠十郎は苦い声を漏らす。

 

と、其処へ………

 

「待てっ!!」

 

その黒マントを追って、背中の翼で飛ぶ白マントが現れる。

 

「! 白マントッ!?」

 

「飛んでる!?」

 

続いて現れた白マントが、空を飛んでいる事にさくらとあざみが驚きの声を挙げる。

 

と、その時………

 

「………!」

 

黒マントの鉄仮面の目の部分が赤く光ったかと思うと、彼方の空から“無数の黒い影”が飛んで来る。

 

「!? アレはっ!?」

 

其れは、ゴブニュ(ヴァハ)の“軍団”だった。

 

まるでイナゴの大群を思わせるゴブニュ(ヴァハ)の軍団は、地上に降りて来たかと思うと、1つの形に纏まって行く。

 

やがて其処には、巨大なゴブニュ(ギガ)の姿が現れた!!

 

「が、合体したっ!?」

 

クラリスが驚きの声を挙げた瞬間、黒マントがゴブニュ(ギガ)の頭頂部へと降り立つ。

 

右手を翳したかと思うと、其処から紫色の稲妻状のエネルギーが放射され、ゴブニュ(ギガ)に流れ込む。

 

すると、ゴブニュ(ギガ)の7つのカメラアイが発光。

 

その形が粘土の様に変形し始めたかと思うと………

 

何と、巨大な黒マントの姿となった!!

 

「なっ!? 巨大黒マントッ!?」

 

「もう“何でも有り”ね………」

 

今度は初穂が驚きの声を挙げると、アナスタシアが他人事の様に呟く。

 

巨大黒マントは、手に投げナイフを出現させたかと思うと、地上の花組に向かって投げ付けて来る。

 

「「「「「!?」」」」」

 

人間サイズだった頃とは比べ物にならない大きさとなった投げナイフを、花組は慌てて散開して躱す。

 

投げナイフは、次々に地面に刺さると爆発する。

 

「キャアッ!?」

 

「うおわっ!?」

 

煽られた花組の無限達が地面の上を転がる。

 

「野郎っ!!」

 

其処でゼロが、巨大黒マントに向き直ったが………

 

『ゼロ、駄目だ!! 今攻撃したらクラーラを巻き込んでしまう!!』

 

「チイッ!」

 

誠十郎の指摘通り、巨大黒マントの頭頂部には、黒マントに捕まっているクラーラが居るので、今のままでは攻撃出来ない。

 

「! クッ!」

 

翼で飛んでいる白マントも、巨大黒マントの攻撃で近付けないでいる。

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

と其処で、援軍の登場で息を吹き返したかの様に、バキシマムが尻尾を摑んでいたゼットンを振り解く。

 

そして、巨大黒マントの方を向いていたゼロに襲い掛かる。

 

「! うおっ!?」

 

反応が間に合い、バキシマムの両腕のクローをゼロツインソードとウルトラゼロディフェンダーで防ぐが、動きを封じられるゼロ。

 

其処で巨大黒マントは、背中のブースターを噴射し始める。

 

如何やら、このままクラーラを連れて離脱する積りの様だ。

 

「! させないっ!!」

 

すると、さくら機がそうはさせるかと巨大黒マントに向かって突撃する。

 

「!? さくらっ!?」

 

「! 止せっ! 無茶だっ!!」

 

無謀な突撃に初穂とゼロが声を挙げるが、さくら機は止まらない。

 

「ハアアアアアアッ!!」

 

機体出力を限界(リミット)以上に発動し、巨大黒マントの頭頂部目掛けて大跳躍するさくら機。

 

「クラーラッ!!」

 

「! さくらっ!!」

 

その姿に気付いたクラーラが声を挙げるが、次の瞬間!!

 

「…………」

 

巨大黒マントの右腕が再び粘土の様に形を変え始めたかと思うと、巨大なペンチへと変わった!

 

そして、その右腕で大跳躍して来たさくら機を捕まえた!!

 

「!? しまっ………」

 

た、とさくらが言い切る前に、そのままさくら機をプレスし始める巨大黒マント。

 

さくら機が見る見る内に変形し、潰されて行く。

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

コクピット内が徐々に狭くなって行く様に、さくらは思わず恐怖の悲鳴を挙げる。

 

「さくらっ!!」

 

「さくらさんっ!!」

 

初穂達から悲鳴が挙がるが、如何する事も出来ない。

 

「さくらっ! クソッ! 邪魔するなっ!!」

 

クワクワクワクワガーッ!!

 

頼みのゼロもバキシマムに動きを封じられている。

 

最早原型が無くなり始めたさくら機から、爆発と共に手足が外れる。

 

そして完全に潰されてしまうかと思われた、その時!!

 

「止めてええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

クラーラの叫び声が木霊し、その身体から強烈な光が発せられる!!

 

その光は、一瞬にして彼女を拘束していた黒マントと巨大黒マント、そしてさくら機を呑み込んで消滅させる。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「!? 何っ!?」

 

『この光はっ!?』

 

初穂達とゼロ、誠十郎が驚きの声を挙げる中、光は尚も広がってゼロ達にも迫って来る。

 

「! ハアッ!!」

 

直感的に“マズイ”と感じたゼロは、バキシマムを無理矢理振り解いて、その光の方に向けて投げ飛ばす。

 

クワクワクワクワガーッ!?

 

バキシマムはその光に触れた瞬間、黒マント達と同様に一瞬で消滅してしまう。

 

「! 逃げろっ!!」

 

「ゼットン! 戻って!!」

 

其れを見た初穂達が慌てて退避し始め、クラリスもゼットンを魔導書に戻す。

 

しかし、間に合いそうに無い。

 

「マズイッ!!」

 

其処でゼロは、その光を包み込む様にバリアをドーム状に展開!

 

光をバリア内へと抑え込む!!

 

「ぐうっ! うおおおっ!!」

 

相当なエネルギー量なのか、バリアを展開し続けているゼロが苦悶の声を漏らし、カラータイマーが点滅を始める。

 

広がり続けていたかに思えた光だが、やがて終息を始め、徐々に消えて行く。

 

「ぐっ!?」

 

光が消えたのを確認し、バリアを解除した瞬間に膝を突くゼロ。

 

カラータイマーは激しく点滅している。

 

と、光が放たれた中心地点に“光点”が出現する。

 

「!!」

 

「! アレはっ!?」

 

其処でゼロと初穂達が見たものは………

 

背中から“天使の様な白い翼”を生やしたクラーラの姿だった。

 

「クラーラ………?」

 

「あの姿は………?」

 

その“人ならざる姿”に、あざみとアナスタシアが茫然と呟く。

 

「………ハッ!?」

 

と、其処で目を閉じていたクラーラが、我に返った様に目を開ける。

 

「そうだ………私は………」

 

自分の両手を見て、ワナワナと震え出すクラーラ。

 

失われた記憶の一部が蘇り、自分が“()()であるか”を思い出したのだ。

 

「! さくらっ!?」

 

と其処で、黒マント達と同様に光に呑み込まれたさくらの事を思い出し、慌てて周囲を見回す。

 

しかし、さくら機の姿は何処にも無かった………

 

「そ、そんな………あ、あああ………」

 

()()()さくらを死なせてしまった”と思い込み、クラーラは更に震え出す。

 

其処へ、突如上空から巨大な影が降りて来た。

 

「! 莫斯科(モスクワ)華撃団のセバストーポリ(移動要塞)ッ!?」

 

其れは、莫斯科華撃団の空中移動要塞セバストーポリだった。

 

『クラーラ、聞こえますか?』

 

「!?」

 

セバストーポリの外部スピーカーから、カミンスキーの声が響いて来る。

 

『コレで分かったでしょう? “貴女が()()()()場所”が何処なのか? さあ、戻って来なさい、クラーラ』

 

「…………」

 

カミンスキーの言葉に、クラーラは俯いて黙っていたかと思うと………

 

「さくら………ゴメン………ゴメンね、さくら」

 

さくらへの謝罪の言葉と共に涙を流し、セバストーポリへと向かって飛んだ。

 

「! クラーラさん!」

 

「オイ、待てっ!!」

 

クラリスと初穂が慌てて叫ぶが、クラーラは振り返らずにセバストーポリに向かって行く。

 

「チイッ!………!? グウッ!」

 

ゼロが追おうとしたものの、消耗が激しく、立ち上がったかと思ったらまた膝を突いてしまう。

 

やがて、クラーラの姿がセバストーポリの中へと消えると、セバストーポリはゆっくりと上昇し始め、見えなくなってしまう。

 

「………ルナミラクルゼロ………ミラクル・リアライズ」

 

其処でゼロは、ルナミラクルゼロへとフォームチェンジすると、最後の力を振り絞ってミラクル・リアライズを照射。

 

バキシマムの攻撃で、甚大な被害が出ていた街を修復する。

 

「…………」

 

其れを見届けると、何時もの様に飛び去るのでは無く、溶ける様に消えて行った………

 

「ゼロさんが………」

 

「其れよりもさくらは如何したんだ!?」

 

ゼロが消えてしまった事にクラリスが呆然としていると、初穂が叫ぶ。

 

彼女の脳裏には“最悪の想像”が過っている。

 

と、その時………

 

初穂達の目の前に、『何か』が降りて来た。

 

「「「「!?」」」」

 

「…………」

 

其れは背中に“黒い翼を生やし、右目の部分を結晶状の仮面で隠した”()()()()()だった。

 

その腕の中には、ボロボロで頭から血を流しているさくらが抱き抱えられている。

 

「! さくらっ!!」

 

「貴女は一体………?」

 

初穂が声を挙げ、クラリスが異形の女性を警戒する。

 

「! 妖力反応を感知!」

 

「と言う事は………()()()()っ!?」

 

其処で、あざみが異形の女性から“妖力反応”が出ている事に気付き、アナスタシアがそう声を挙げる。

 

その言葉で、初穂達は一斉に身構える。

 

「…………」

 

しかし、上級降魔の女性は反応を見せない。

 

すると其処へ、その眼前に白マントが降り立つ。

 

「「「「!?」」」」

 

「…………」

 

初穂達が驚く中、白マントは上級降魔の女性に近付く。

 

「…………」

 

其処で上級降魔の女性は、さくらを白マントへと差し出す。

 

「…………」

 

白マントはさくらを受け取り、抱き抱える。

 

「………ゴメンなさい」

 

と、白マントに抱き抱えられたさくらに向かって、上級降魔の女性はそう呟いて悲し気な表情を見せた。

 

「「「「!?」」」」

 

その様子に初穂達が驚きを露わにしていると………

 

「…………」

 

上級降魔の女性はその黒い翼を広げ、黒い羽根を撒き散らしながら飛び去った。

 

「あ!」

 

「追跡を!」

 

「待て! 今はさくらの方が先だ!!」

 

クラリスが声を挙げ、あざみが追跡しようとしたが、初穂がそう言って止める。

 

「………貴女は一体誰かしら?」

 

アナスタシアが、さくらを抱き抱える白マントに向かって問う。

 

「………その質問に答える為にも、帝劇へ御案内願おうか?」

 

白マントはそう返し、抵抗する積りは無いとアピールするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『一角紅蓮超獣 バキシマム』

 

身長:66メートル

 

体重:7万9000トン

 

能力:一角紅蓮ミサイル、紅蓮火炎弾

 

バキシムの強化体。

 

元は児童雑誌で行われたバキシム強化改造計画の最優秀作品。

 

名前のセンスと、元を損なわずに炎属性を追加したデザインで秘かに人気が高い。

 

残念ながら、映像作品への出演は無く、アーケードゲーム『大怪獣バトル』シリーズでしかその姿は拝めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『機械人形 ゴブニュ(ギガ)』

 

身長:60メートル

 

体重:8万トン

 

能力:ティガ・パワータイプを上回る怪力、自爆装置

 

無数のヴァハが合体し、巨大なロボットとなった姿。

 

ティガのパワータイプをも上回る怪力と強力な自爆装置を内蔵している。

 

この作品では、黒マント(ゴーレム)から妖力を供給され、巨大黒マントへと変化。

 

元がヴァハの集合体である事を活かし、身体の形を自在に変化させた。




新話、投稿させて頂きました。

ゼロが参戦し、形勢逆転かに思われたバキシマム戦。
しかし、白マントがヴァハに相手をしている隙を衝き、黒マントがクラーラを拉致。
取り戻そうと無茶をしたさくらは、巨大黒マントに殺されそうになってしまう。

そこで、クラーラが再び力を解放。
バキシマム達は消滅したものの、さくらまでも巻き込んでしまったと思い込んだクラーラは、カミンスキーに誘われるがままに莫斯科華撃団に下ってしまう。

しかし、さくらは謎の上級降魔によって救出されていた。
急ぎさくらの手当の為、花組は白マントを引き連れて帝劇へと帰還する。

次回はいよいよクラーラと白マントの正体が発覚。
そして私の独自解釈と設定が行われますので、予めご了承ください。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター8『降魔人間』

チャプター8『降魔人間』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・格納庫………

 

謎の白マントを伴い、帝劇へと帰還した初穂達。

 

さくらは直ぐ様医務室へ運ばれたが、幸いにも命に別状は無かった。

 

「お前が居ながら、何やってたんだっ!?」

 

「………すまない」

 

怒鳴りながら詰め寄る初穂に、誠十郎は只々頭を下げるしか無い。

 

あの後、重い身体を引き摺りながら、如何にか初穂達よりも先に帝劇へと帰還した誠十郎。

 

当然ながら、クラーラを攫われてしまうと言う失態を犯した誠十郎には厳しい視線が向けられた。

 

だが、ゼロである事を言えない誠十郎は、只管其れを受け止めるしか無い。

 

「彼を責めないでくれ。私にも責任は有る」

 

しかし其処で、白マントがフォローに入る。

 

「………其れで、貴女は一体何者なのかしら?」

 

今度は、アナスタシアが白マントを厳しい視線で見据える。

 

「私は………」

 

すると、白マントはその白いマントと仮面を脱ぎ捨て………

 

「村雨 白秋さ」

 

その正体………『村雨 白秋』の姿を晒した!

 

「!? は、白秋さん!?」

 

「「「「!?」」」」

 

『やっぱりか………』

 

誠十郎と初穂達は驚くが、ゼロは予想通りと言った様子を見せる。

 

「村雨さん………」

 

と其処へ、すみれが格納庫に姿を見せた。

 

「神崎支配人。待っていたよ」

 

「“全て”を聞かせて頂けますね?」

 

「勿論だ」

 

すみれの問いに、白秋は微笑みながらそう返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・作戦司令室………

 

「さて。先ずは、何から話せば良いかな?」

 

さくらを除く花組メンバーとすみれ、そしてサコミズを前に白秋がそう切り出す。

 

「白秋さん………貴女は“何者”なんですか?」

 

すると、一同を代表する様に誠十郎がそう尋ねた。

 

「私は………“君達が『降魔』と呼ぶ存在に近い者”だ」

 

「「「「!!」」」」

 

白秋のその言葉に、初穂達が身構える。

 

「落ち着きなさい」

 

しかし、すみれが其れを制する。

 

「! 支配人! けどコイツ、今“自分で”『降魔だ』って………」

 

「彼女がその気なら、とっくに襲い掛かって来ているわよ」

 

警戒心をマックスにしている初穂を、すみれがそう諭す。

 

「其れに、彼女は『降魔と呼ぶ存在に()()()』と言った。つまり、厳密には“降魔とは()()()存在”と言う事だよ」

 

更に、サコミズもそう言葉を添える。

 

「なら………貴女は一体“何”なの?」

 

アナスタシアが視線を鋭くしたまま、白秋に再度問い質す。

 

「その前に、此方からも質問させて貰うよ………君達は、『降魔』についてどれぐらい“知っている”んだい?」

 

しかし白秋は、逆に誠十郎達にそう問い掛けた。

 

「米田さんによれば、『1521年、北条 氏綱によって行われた降魔実験の失敗に()り汚染され、江戸湾に沈められた“【大和】の地で亡くなった数万もの住民の怨念”が生み出した亜生物』………だと伺っていますが」

 

すみれが、嘗て米田から聞いた話を思い出しながらそう答える。

 

「その認識は“全てでは無い”な………」

 

「? 如何言う事ですか?」

 

「“江戸湾に沈められた『大和』の地で亡くなった住民の怨念”で生み出された………其れは正しい。では、抑々(そもそも)“『大和』の地”とは一体何なのかね?」

 

「其れは………」

 

すみれは答えに窮する。

 

「白秋さんはご存知なのですか? 『大和の地』とは何なのか」

 

「『大和の地』とは………」

 

誠十郎が尋ねると、白秋は一瞬間を置くと“驚くべき答え”を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘗て、銀河の遥か彼方に存在した星………『()()()()()()()()()使()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

「「「「!?」」」」

 

「大和の地が………宇宙船!?」

 

白秋のその言葉に、誠十郎達は疎か、すみれも驚愕を隠せなかった。

 

「そう。そして“大和の地の民”とは………その宇宙船に乗っていた惑星ヤマトの住人………『ヤマト星人』さ」

 

「! 宇宙人!」

 

「惑星ヤマトは、この地球と同じく美しい星だった………しかし運悪く、ブラックホールと衝突してしまい、滅亡した。生き残ったヤマト星人達の中に、辛うじて残った惑星ヤマトの一部を宇宙船に改造し、この地球へと流れ着いた者達が居た………」

 

「…………」

 

其れを聞いたあざみが、祖父・八丹斎(やったんさい)(バルタンバトラー・ゲカホ)から聞いた彼の故郷・バルタン星の事を思い出す。

 

「だが、当時の地球の人々に“宇宙人”と言う概念を理解する能力は無かった………ヤマト星人達はこの星(地球)の人々に恐れられ、迫害された」

 

「そして、北条 氏綱によって降魔実験に掛けられ、宇宙船ヤマト………大和の地ごと江戸湾に沈められた、と?」

 

先程のすみれの話を、サコミズが反芻する。

 

「そして、その邪念によって生まれた亜生物を『降魔』と名付けた………正に、彼等(地球人)からしてみれば“うってつけの名前”だったのだろうね。『()()()()()魔』とは」

 

そう呟く白秋の表情は、何処か悲し気に見える。

 

「では村雨さんは、その降魔実験に掛けられた大和の地の民と同じ………“ヤマト星人”なのですか?」

 

「その通りだ」

 

「ちょっと待てよ! て事は………アンタ一体幾つなんだ!?」

 

クラリスの言葉を白秋が肯定すると、初穂がそう疑問を呈した。

 

「さてな。もう気の遠くなる月日を過ごして来たからな。少なく共、1000や2000では収まらないな」

 

「そんなに!?」

 

「驚く事では無いさ。この広い宇宙では、ヤマト星人は寧ろ()()な方だと言える」

 

「宇宙は、私達が想像している以上に広大な世界みたいね………」

 

話のスケールが大きくなって来て、アナスタシアが圧倒された様子を見せる。

 

(まさか白秋さんが宇宙人………しかも、そんなに長生きしていたなんて………)

 

『けどアイツの言う通り、宇宙人にしては割と“短命”な方だぜ。俺だって5900歳だしよ』

 

(!? 何ぃっ!? お、お前、そんな歳だったのか!?)

 

『地球人に換算すると“学生ぐらい”だそうだぜ。因みに、俺の親父(ウルトラセブン)は1万7000歳だ。キングの爺さん(ウルトラマンキング)なんて30万歳以上らしいぞ』

 

(………ウルトラマンってのは、ホント“規格外”だな)

 

そして、誠十郎はゼロとウルトラマンの年齢についての話に圧倒されていた。

 

「この星に流れ着いた同胞達が虐げられていると言う話を聞いた私は、放浪の末に漸く辿り着いたが………その時には既に“全てが終わった後”で、ヤマト星人の邪念から生まれた『降魔』が猛威を振るっていた」

 

と其処で、白秋が話を続ける。

 

「だが、長い月日を経て………“ヤマト星人の記憶と性質を()()()()()降魔”が現れる様になった」

 

「“先祖返り”………ですわね」

 

すみれがそう呟く。

 

「私は、その子達を見付けては保護している」

 

「! じゃあ、さくらが言っていた、貴女が“孤児院で面倒を見ている子供達”は………?」

 

「そう、ヤマト星人の記憶と性質を取り戻した降魔………いや、“ヤマト星人の子供”さ」

 

「そうだったんですか………」

 

合点が行った様子を見せる誠十郎。

 

「するとクラーラさんも………?」

 

「「「「「!!」」」」」

 

其処ですみれがそう呟くと、誠十郎達はハッとした様子を見せる。

 

彼女(クラーラ)が見せた()()()は“降魔のもの”………

 

つまり、彼女も先祖返りをして“ヤマト星人の記憶と性質を取り戻した()()”………ヤマト星人ではないかと。

 

「そうだ………と言いたいが、彼女には少し“複雑な経緯(いきさつ)”が有る」

 

「複雑な経緯?」

 

誠十郎がそう問うと、白秋の口から再び驚くべき言葉が飛び出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女は………露西亜(ロシア)の研究機関が“降魔の細胞を人間の細胞と掛け合わせて()()()()創り上げた人造人間”………連中曰く、『降魔人間(ナディエージダ)』だそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? なっ!?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

トンでもない話に誠十郎達は疎か、すみれとサコミズも絶句する。

 

「降魔人間………」

 

「“人工的に創り上げられた”って………」

 

「そんな事………」

 

「正に“神をも恐れぬ行為”ね………」

 

初穂達が言葉を失う。

 

「…………」

 

すみれも険しい表情を浮かべている。

 

嘗て『黒鬼会』の首領であり、陸軍大臣でもあった『京極 慶吾』が降魔の死体を使った降魔兵器を作り………

 

亜米利加(アメリカ)の大企業『ダグラス・スチュワート社』の社長であった『ブレント・ファーロング』は、『無人霊子甲冑』と偽った『生体兵器ヤフキエル』を開発。

 

“降魔の力を()()()()兵器”とは幾度と無く戦って来たが、今回のコレはベクトルが違う。

 

「勘違いしないで欲しい。確かに、彼女は“降魔人間として創り出された”が、性質は確かに()()()()()()()だ」

 

「「「「「…………」」」」」

 

しかし、白秋がそう断言したのを聞いて、一同の顔には安堵の色が浮かぶ。

 

「! ちょっと待て! じゃああの時、“さくらを助けた()()()()”は………?」

 

「アレは………レイラだ」

 

「やはりね………」

 

初穂の問いに白秋がそう返すと、アナスタシアが納得が行った様な表情を見せる。

 

「彼女は先に創られた所為(せい)でノウハウが不足していたのか、クラーラと比べて“力が弱い”らしい。なので、力を解放するとあの様な姿になってしまうそうだ」

 

「其れで、あんな上級降魔みたいな姿に………」

 

“翼が有る”以外は人間と変わらない白秋やクラーラと比べて、レイラの姿が際立っていたのを思い出しながら呟く誠十郎。

 

「私が、彼女達と知り合ったのは数年前の事だ。“露西亜で『降魔人間』なる存在の研究が行われている”………そんな話を聞いた私は露西亜へ飛び、『或る2人』と共に彼女達………レイラとクラーラの姉妹を発見した」

 

其処で白秋が語り出す。

 

「降魔人間の研究目的………其れは言うまでも無く“軍事利用”だった。だが、その研究の中心人物だった者………『ナターリャ・ルシュコヴァ』が疑問を抱いた」

 

「ルシュコヴァ?」

 

「クラーラさんにレイラさんと()()苗字………」

 

「と言う事は………?」

 

「ああ、“彼女達の母親”だ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

クラーラとレイラの母親が、“降魔人間研究の中心人物”で在った事に何度目とも知れぬ驚きを示す誠十郎達。

 

「彼女は、生み出されたレイラとクラーラに何時しか愛情を覚える様になり、研究目的に疑問を抱いた。其処で私は『或る2人』と協力し、研究データを全て破壊した上で彼女達を脱走させた」

 

「脱走………」

 

「そして人知れず暮らせる地へと誘い、其処で普通の人間としての暮らしを始めさせた。人目を憚る必要は有ったが、紛れも無く平穏な時を過ごしていたよ………だが、最近になって“思わぬ不幸”が彼女達を襲った」

 

「思わぬ不幸?」

 

「ナターリャの身体が………不治の病に蝕まれていたんだ」

 

「!? じゃあ………?」

 

「彼女は、程無く亡くなってしまった。最後までレイラとクラーラの身を案じて、な」

 

白秋の表情に、一筋の悲しみの色が浮かぶ。

 

「そして、時を同じくして『奴』が現れた」

 

「『奴』?」

 

「ヴァレリー・カミンスキー………」

 

「!? 莫斯科(モスクワ)華撃団の隊長が!?」

 

「いや。奴は、“莫斯科華撃団の隊長”等では無い」

 

「えっ?」

 

白秋がそう返して来て、誠十郎は首を傾げる。

 

「正体は不明だが………奴は、“レイラとクラーラが()()()()()()()()()接触して来た”らしい」

 

「! 何ですって!?」

 

「その理由も分からんが、少なく共“()()()()()()を企んでいる”のは間違い無いだろう」

 

「「「「「…………」」」」」

 

“帝劇を訪問して来た際のカミンスキーの胡散臭い態度”を思い出し、苦い表情をする誠十郎達。

 

「クラーラを逃がす為に、レイラは奴に恭順した様な態度を取った。試みは成功し、クラーラはカミンスキーの手から()逃れた………しかし、今度は“()()()莫斯科華撃団”に発見され、捕まってしまった」

 

「! 莫斯科華撃団もクラーラを!?」

 

「其れが、例の“極秘任務”だったワケですわね」

 

緊急の任務で帰還したと言う、“本物の莫斯科華撃団”を思い出してそう言うすみれ。

 

「しかし、本物の莫斯科華撃団は怪獣に襲われ、空中戦艦ごと全滅した」

 

「!? 莫斯科華撃団が全滅!?」

 

「クラーラもあわやと言うところだったが、絶体絶命の危機に陥った事で、本能的に降魔人間………“ヤマト星人の力”を発揮し、莫斯科華撃団の空中戦艦ごと怪獣を消滅させた」

 

「では、彼女が記憶喪失になったのは………?」

 

「恐らく、襲撃のショックと身体への負担も考えずに()()()()力を使った事から来る反動だろう」

 

すみれにそう推測を述べる白秋。

 

「その彼女を(わたし)が保護し、帝劇へと託させて貰った」

 

「何故(わたくし)達の所へ?」

 

「君達なら“彼女を()()()()()()”と思ってね」

 

「救う………?」

 

「彼女は降魔で在り、人間で在り、ヤマト星人で在り………“そのどれでも無い”と言う、非常に()()()()()()だ。其れを、受け入れられるとすれば君達しか居ない、と思ってね」

 

其処で白秋は、一瞬誠十郎を見遣った。

 

「!」

 

「“ウルトラマンと共に戦い………()()()()()()()()を良く知っている君達”にね」

 

誠十郎が反応するも、其れに気付いていない振りをして、白秋は言葉を続けた。

 

「「「「…………」」」」

 

そして、初穂達は少し考え込む様子を見せたかと思うと………

 

「あざみは、もうクラーラを友達だと思ってる。例え、“彼女が何者でも”関係無い」

 

最初に声を挙げたのは、バルタンバトラー・ゲカホを祖父に持つあざみだった。

 

「例え相手が何者でも、心が有れば………きっと分かり合えます」

 

クラリスが魔導書を開き、ゼットンのページを撫でながらそう言う。

 

「アタシは難しい事は良く分からねえ………けど、さくらは“クラーラは友達だ”って言ってた。だったらアタシは、“そう思えるさくらの気持ち”を信じる!」

 

クラーラと笑い合っていたさくらの事を思い出しながら、初穂は掌に拳を打ち付ける。

 

「…………」

 

そんな中、アナスタシアは1人目を閉じ、腕組みをして考え込んでいる様子を見せた。

 

「アナスタシア………」

 

だが、誠十郎が心配そうに声を掛けると………

 

「フッ………ココで反対したら“空気の読めない奴”みたいね。良いわ、私も乗ってあげる」

 

不意に笑みを浮かべ、そう言って来た。

 

「ふふ、其れでこそね」

 

その様子を見たすみれも、笑みを浮かべる。

 

「取り敢えず、今日はココまでとしよう。クラーラくんの事は、相手側の出方を見ないといけない。皆、連日の出動で疲れているだろうから、一先ず身体を休めるんだ」

 

其処で、サコミズが場を纏める様にそう言った。

 

「「「「了解」」」」

 

サコミズの指摘通り、疲労がピークに達していた初穂達は、重い身体を引き摺りながら、自室へと引き上げて行った。

 

「「…………」」

 

と、最後に出て行く誠十郎が白秋とアイコンタクトを交わす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

帝劇の屋根の上にて………

 

「待たせてしまったかな?」

 

「いや、丁度良かったぜ」

 

待ち構える様にしていた誠十郎(ゼロ)に、白秋がそう声を掛ける。

 

「其れじゃあ、ココからは()()教えて貰おうか………何で俺の事を知っていた?」

 

白秋にそう問い質す誠十郎(ゼロ)

 

『…………』

 

今は内に引っ込んでいる誠十郎も、白秋を注視する。

 

「“君の事は良く聞いていた”からね………()()()()()()()()()殿に」

 

「!? キングの爺さんにだと!?」

 

しかし、白秋のその答えに、誠十郎(ゼロ)は驚きを露わにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

白マント………白秋さんの正体が明らかに。
そして、その白秋さんから語られた衝撃の事実!

降魔が元は宇宙人であり、更にクラーラ達が降魔人間!?

ウルトラシリーズあるある。
『伝説の生物や妖怪の正体が実は怪獣や宇宙人』

この辺の解釈・改変は正直かなり難産でした。
降魔人間の存在で、降魔との共存が呈されたアニメ版新サクラ大戦ですが、となると旧作で大神さん達が絶対正義を掲げて戦っていたのは何だったんだってなってしまいますし、そもそも降魔の設定自体が結構あやふやなところがあるので色々と難しかったです。

そこで考えたのが、降魔は元は宇宙人で、共存出来る降魔はその宇宙人として性質を取り戻したからってのは如何かと?
ウルトラシリーズとクロスしている本作だから出来る展開かと。

で、降魔人間の設定も弄ってます。
そもそも降魔人間を創る事が降魔との共存に繋がるって発想が理解出来なかったので、当初から軍事目的で作られたとし、良心の呵責に耐え切れなかった研究者が脱走させたと。
或る2人と言うのは、恐らく皆さんの想像通りです。

さて、次回は白秋とウルトラマンキングとの関係についてと、カミンスキーとジェネラルAの動きです。
いよいよ偽莫斯科華撃団との華撃団大戦です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター9『卑劣なる余興』

チャプター9『卑劣なる余興』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の帝劇の屋根の上にて………

 

「お前、キングの爺さんの事を知ってるのか?」

 

「ああ。嘗て宇宙を放浪していた頃に、偶然知り合ってね。この地球の事もキング殿が教えてくれたんだ」

 

やや驚いていた誠十郎(ゼロ)に、白秋はそう説明する。

 

『ゼロ。キングと言うのは?』

 

(ああ、『ウルトラマンキング』………俺達ウルトラマンの間でも“神のような存在”とされている、()()()()()さ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウルトラマンキング』

 

光の国のプラズマスパーク建設に尽力した、ウルトラ長老の1人である。

 

M78星雲・光の国、レオとアストラの故郷・獅子座L77星、そして『ウルトラマンジョーニアス』のU40でもその存在が認知されている。

 

万年単位を生きるウルトラ一族の中でも“30万年以上”と言う桁違いな年月を生きており、全宇宙の平和を見守っている。

 

その能力は、ゼロの言葉通りに神懸っており、他のウルトラマンとキングを比べた場合、『ウルトラマンと地球人程の差が有る』とまで言われる。

 

嘗て、ベリアルが破壊した宇宙と()()()()()修復した事も有る。

 

その絶大な力故に、基本的には自ら事態に介入して来る事は無く、前述した様な“余程の事態”でないと動かない。

 

しかし、レオやアストラ、ジード等と言った“自らの力ではどうしようもない境遇”に陥っている、または“孤軍奮闘せねばならない者”に対しては慈悲深く力を貸している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そんな凄い人だったのか………其れを“爺さん”呼ばわりって、お前………』

 

(別に良いだろ?爺さんなのはホントなんだしよ)

 

キングの偉大さに圧倒されると同時に、そんな“偉人”を爺さん呼ばわりしているゼロに呆れる誠十郎。

 

「本当の事を言うと、同胞達の救出に失敗した後、私はこの星を去る積りだったのだが、“何れこの星に『ゼロ』と言うウルトラマンが訪れる。その時に()()()()()()()()()()が有る。其れ迄は留まっていてくれ”と頼まれてね」

 

「キングの爺さん………俺が何れこの星に来る事を分かってたのかよ。相変わらずの慧眼だな」

 

「ウルトラマンゼロ………改めて頼みたい。クラーラとレイラを頼む。“生まれ方の違い”こそ有るが、彼女達も“私の()()”………ヤマト星人なのだよ」

 

其処で白秋は、誠十郎(ゼロ)に向かって頭を下げて頼み込む。

 

「分かってるって。クラーラもレイラも、きっと俺が………いや、()()()助け出してやらぁ!」

 

『勿論だ!』

 

ゼロと誠十郎は、クラーラとレイラの救出に改めて決意を固めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

そのクラーラは………

 

 

 

 

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

ジェネラルAの執務室………

 

「ぶるあああああぁぁぁぁぁぁ」

 

「…………」

 

唸り声を漏らしているジェネラルAの前に、クラーラがおっかなびっくりと言った様子で佇んでおり、その後ろにはレイラが控えている。

 

「貴様がクラーラかぁ………フフフ、愛らしい奴めぇ」

 

「!」

 

渋さと鋭さを併せ持つ独特の低音から生まれる声質と語調で、そんな事を言われたクラーラがビクリと震える。

 

「この小娘が完全なる『降魔人間』か。よもやこの様な形で本物を見る事になろうとはな」

 

と其処で、ミスターGがクラーラを見下ろしながらそう言い放つ。

 

「アレだけの資金を()()()()()()研究機関が何者かに壊滅させられ、データも全て失われたと聞いた時には憤ったものだが、まさか“完成品”が存在していたとはな………」

 

眼鏡のレンズを光らせるミスターG。

 

そう………

 

何を隠そう、露西亜(ロシア)に降魔人間の研究を始めさせたのはミスターGだったのだ。

 

未だプレジデントGだった頃、“戦力強化と露西亜をWLOFに取り込む”一環として、『戦闘の際に採取した』と偽り、降魔の細胞を露西亜に提供したのである。

 

更には、研究機関への資金援助も秘密裏に行っていた。

 

しかし、研究所は何者かに襲撃され、データも全て破壊された為に計画は失敗。

 

表には知られていないものの、“プレジデントG時代の汚点”となっていた。

 

「この研究が上手く行けば、“人間共を降魔にしてやる方法”も見い出せる筈。さあ、クラーラよ! 偉大なる降魔皇様の為に、その身を捧げて貰うぞ!」

 

そう言ってクラーラに迫ろうとするミスターG。

 

「ヒッ!」

 

「待って下さいっ!!」

 

と、クラーラが怯えた声を挙げた瞬間、彼女を守る様にレイラが間に割って入った。

 

「私が代わりになります! だからこの娘に手を出さないで!!」

 

「! 姉、さん………」

 

そう叫ぶレイラを見て、クラーラが初めて彼女を姉と呼ぶ。

 

「黙れ! この()()()()()()()()()め! 貴様とクラーラでは力が違い過ぎる! 役立たずは引っ込んで居ろっ!!」

 

「!!」

 

ミスターGがそう言い放つと、レイラが思わず顔を伏せる。

 

と………

 

「ぶるあああああああっ!!」

 

ジェネラルAがミスターGの後頭部を右手で鷲摑みにしたかと思うと、顔面をそのまま床に叩き付けた!!

 

「ブブッ!?」

 

「貴様ぁ………何を()()()話を進めておるぅ? プレジデントGだった頃の癖が未だ抜けんのかぁ? この愚か者めがぁっ!!」

 

そう罵倒すると、ジェネラルAはミスターGの顔を床で擦り下ろし始める。

 

「ギャアアアアアアァァァァァァァッ!?」

 

床がドンドン真っ赤に染まって行き、悲鳴を挙げるミスターG。

 

「ヒッ!?」

 

「クラーラ! 見ては駄目!!」

 

クラーラが更に怯えると、レイラがその光景が見えない様に彼女を抱き締める。

 

「失礼、遅くなってしまいました。おや? お取込み中でしたか?」

 

「構わぁん、今済んだところだぁ」

 

其処へカミンスキーが現れてそう問うと、ジェネラルAは漸くミスターGを解放する。

 

「…………」

 

すっかり顔を擦り下ろされたミスターGは、ピクピクと痙攣して動く気配が無い。

 

「フフフ、クラーラ………“その力”を存分に振るって頂きますよ?」

 

今度は、カミンスキーがクラーラに近付く。

 

「!!」

 

「カミンスキー様!」

 

クラーラがビクリと震え、レイラが何か言おうとしたが………

 

「待てぇい、カミンスキー」

 

其れを遮り、ジェネラルAがカミンスキーを制する。

 

「“この娘の力が欲しい”のならば()()()()が有る」

 

「ほう? 其れは何ですか?」

 

「フフフフ」

 

カミンスキーの問い掛けに、ジェネラルAは邪悪な笑みを返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程無くして………

 

帝国華撃団に、2回戦の日程が決まったとの通知が届けられた。

 

其処には、更に“驚くべき内容”が書かれており………

 

花組メンバーは憤りを覚えつつも、世界華撃団大戦の会場を訪れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

帝国華撃団の控え場所………

 

「『クラーラさんを“この試合の()()”にする』だなんて………」

 

「チキショウッ! 何考えてやがんだ!?ジェネラルAの野郎は!?」

 

トンでもない試合内容に、クラリスが信じられないと言う様に呟き、初穂は怒りを露わに壁を殴る。

 

「でも裏を返せば、これで“クラーラを()()()奪還出来る”って事ね」

 

其処でアナスタシアが言う。

 

「多分、ううん、きっと“罠”………でも、あざみ達は負けない」

 

あざみもそう言い、表情を引き締める。

 

「そうだな。俺達は勝つ。“勝ってクラーラを()()()()”んだ!」

 

『その意気だぜ、誠十郎』

 

誠十郎も改めてそう決意を固め、ゼロも檄を飛ばす。

 

「皆さん。天宮さんの分も頑張って下さい」

 

すみれがそう言うと、誠十郎達は頷く。

 

さくらは未だ怪我が治っておらず、機体の修理も終わっていない為、“今回は無理だ”と思い、帝劇に残して来たのだ。

 

「其れで、神山さん。今回の出撃メンバーは如何しますか?」

 

其処で、カオルが誠十郎に尋ねる。

 

「今回は………」

 

誠十郎が出撃メンバーを告げようとした、その時!!

 

「待って下さいっ!!」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

そう言う声が響き、一同が視線を向けると其処には………

 

「ハア………ハア………」

 

白秋に肩を借りて如何にか立っている、さくらの姿が在った。

 

頭に巻かれたままの包帯からは血が滲んでいる。

 

「!? さくらっ!?」

 

「おまっ!? 何しに来たんだよ!? そんな身体で!!」

 

誠十郎と初穂が仰天の声を挙げる。

 

「ハア………ハア………」

 

さくらは、其れには答えず白秋から離れると、ふらつきながらも誠十郎の許に近付く。

 

「神山隊長………私を出場させて下さい!」

 

「なっ!?」

 

「無茶ですよ、さくらさんっ!!」

 

有り得ない筈のさくらの申し出に、誠十郎は再度仰天し、クラリスも慌てて止めて来る。

 

「さくら! 無茶はいけないっ!!」

 

「其れに、貴女の無限はこの前の戦いで大破しているじゃないの」

 

あざみもさくらを止め、アナスタシアもそう指摘する。

 

「無限なら大丈夫です。イデさんと司馬さんに無理を言って何とかして貰いました。其れに痛み止め(鎮痛剤)も打って貰ってますから」

 

しかし、さくらは弱々しいながらも笑みを浮かべてそう返す。

 

「! 白秋さん!」

 

「すまない。“如何しても連れて行って欲しい”と聞かなくてね」

 

其処で、誠十郎は白秋を咎めようと声を掛けたが、当の彼女はシレッとそう返す。

 

「………さくら、気持ちは分かるが、駄目だ。君を出撃させるワケには行かない。()()()()だ。君は、帝劇へ戻って治療に専念するんだ」

 

「嫌ですっ!!」

 

「! さくら………」

 

試合には出せないと言う誠十郎だったが、さくらは声を荒げて拒否した!

 

「クラーラの事は聞いてます………けど、“其れが何だ?”って言うんですか! クラーラは“私の友達”です! だから………“絶対に()()助ける”んです!!」

 

毅然とした表情で、キッパリとそう言い放つさくら。

 

如何やら、1歩たりとも引き下がる積りは無い様だ。

 

「………貴方の負けよ、神山くん」

 

「! 神崎司令!」

 

と其処で、すみれがそう言って来て、誠十郎は思わず声を挙げる。

 

「天宮さん」

 

「ハイ」

 

「『帝国華撃団司令』として、貴女の出場を許可します。但し………決して“無茶はしない事”を約束して貰います」

 

「! ありがとうございます!」

 

すみれに向かって頭を下げるさくら。

 

「………隊長さん。もう1人はアタシにしてくれ」

 

すると、今度は初穂がそう名乗り出た。

 

「! 初穂?」

 

「さくらがこんなんじゃフォローしねえといけねえだろ? ならアタシの出番だ。この中じゃ、アタシが“1番長い付き合い”なんだかんな」

 

ジッと誠十郎の目を見据え、そう言う初穂。

 

「………分かった。もう1人は初穂にしよう」

 

「あんがとな」

 

「初穂………」

 

「お前のフォローが出来んのはアタシだけだろ。任せておけって」

 

さくらに向かって、ドンッと胸を叩きながら初穂は言う。

 

「では、出撃メンバーは神山隊長、天宮さん、東雲さんですね」

 

「皆さん、気を付けて下さいね」

 

「クラーラをお願い」

 

「頼んだわよ」

 

カオルが確認の為にそう言うと、クラリス・あざみ・アナスタシアは誠十郎達にそう檄を飛ばす。

 

「よし! 帝国華撃団・花組! 出撃せよっ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

そして誠十郎の号令に、全員で敬礼するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

『さあ、長らくお待たせ致しました。いよいよ世界華撃団大戦、2回戦の開始です!』

 

実況者の声がスタジアム内に響き渡る。

 

しかしその観客席に、観客の姿は全く見当たら無い………

 

開幕式に続き、1回戦である帝国華撃団と上海華撃団の戦いに於いても怪獣が出現し、人々は“スタジアムに行くと怪獣に遭遇する”と思い込んでおり、客足がすっかり遠退いてしまったのだ。

 

だが、試合内容()()は気になる様で、人々は街頭に設置されたテレビで、試合の様子に注目している。

 

『あ! 今、帝国華撃団が入場して来ました!!』

 

と其処で、帝国華撃団がスタジアム内に姿を見せた。

 

「! コレは!?」

 

入場した誠十郎が驚きの声を挙げる。

 

試合会場が、上海華撃団と戦った時の様なスポーツのコートの様なものでは無く、“市街地の様な姿”となっていたからだ。

 

その中心部には、高い塔の様な構造物が聳え立っている。

 

「! アレはっ!?」

 

その塔の天辺を見たさくらが驚愕の声を挙げる。

 

何故なら其処には………

 

「…………」

 

十字架に磔にされたクラーラの姿が在ったからだ。

 

意識が無いのか、その目は閉じられたままである。

 

「クラーラッ!!」

 

「何て事だ………」

 

「野郎! 悪趣味な真似しやがってっ!!」

 

非道なる所業に、憤りを隠せないさくら・誠十郎・初穂。

 

と其処で、誠十郎達を見下ろす様に、試合会場内のビルの上に3つの影が現れる。

 

「「「!!」」」

 

莫斯科(モスクワ)華撃団のエカテリーナだ。

 

「ご機嫌よう、帝国華撃団の皆さん。今日は良い試合を致しましょう」

 

装飾が青色をしているエカテリーナから、カミンスキーの芝居掛かった声が響く。

 

「「…………」」

 

一方、装飾が金色のレイラ機とノーマル機は無言で佇んでいる。

 

「! カミンスキー!」

 

「テメェッ! クラーラはお前んとこの隊員なんだろう!? 何で“あんな真似”しやがる!?」

 

誠十郎が声を挙げ、初穂がクラーラをまるで見世物の様に扱っている事へ怒りをぶつける。

 

「そう怒らないで下さい。コレは演出………まあ、言ってしまえば()()()()()()()()()()と言うモノですよ」

 

しかし、カミンスキーはそんな怒り(など)何処吹く風と言う様に、シレッとした態度でそう返す。

 

巫山戯(ふざけ)ないで下さいっ!!」

 

と其処で、今度はさくらが怒りの声を響かせた。

 

「貴方なんかにクラーラは渡さない………私が………必ず助け出して見せます!!」

 

刀の切っ先をカミンスキー機に突き付け、さくらはそう宣言する。

 

「さて、そう上手く行きますかね?」

 

カミンスキーは、其れでも不遜な態度を崩さない。

 

『さくらちゃん! 無理はするんじゃないぞ! 君の身体もだが、無限だって何とか動かせる様にした状態なんだからな!』

 

「…………」

 

令士がそう通信を送って来たが、さくらは険しい表情のままでモニター越しにカミンスキー機を睨み付けたままだった。

 

『さあ………皆様、準備はよろしいでしょうか? 『莫斯科(モスクワ)華撃団』対『帝国華撃団』………いよいよ試合開始です! 其れでは! 華撃団大戦! レディィィ・ゴゥッ!!』

 

そんな中、実況者の試合開始の合図と共にゴングの音が響き渡り、試合が開始される………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

白秋とキングの関係が明らかに。
何れゼロが太正世界の地球を訪れると読んでいたキング。
やはりお見通しの様です。

一方、偽莫斯科華撃団に連れ去られたクラーラは、ジェネラルAの策略で試合に景品に。
機体と身体に無茶をさせて出撃したさくらですが、果たしてクラーラを助けられるのか?
次回、カミンスキーの恐るべき正体が明らかになります。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター10『戦慄! カミンスキーの正体!!』

チャプター10『戦慄! カミンスキーの正体!!』

 

偽莫斯科華撃団

 

蛾超獣 ドラゴリー

 

殺し屋超獣 バラバ 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

「さあ………ショーの始まりです!」

 

カミンスキーがそう言うと、彼のエカテリーナが箒のような形状をした機体の身長を超える程の巨大なレーザー銃を構え、発砲。

 

「「「!!」」」

 

迫って来たレーザーを、誠十郎達は散開して躱す。

 

「カミンスキーッ!!」

 

其処で誠十郎機が大きく跳び上がり、ビルの上に居たカミンスキー機に斬り掛かった!!

 

「おっと」

 

カミンスキー機はレーザー銃を棍棒にして、誠十郎機の二刀を受け止める。

 

「お前だけは許さんっ!」

 

「怖い怖い。穏やかに行きましょう」

 

怒りを露わにする誠十郎に対し、カミンスキーは挑発する様に小馬鹿にした態度を取る。

 

「…………」

 

その間に、今度は莫斯科華撃団隊員が乗っていると思われるエカテリーナ3号機が動く。

 

ビルの上から跳躍すると、さくら機に迫る。

 

「!!」

 

迎え撃とうと彼方を構えるさくら機。

 

そのさくら機に向かって、エカテリーナ3号機は胴体に内蔵された2門の機関銃を発砲する。

 

「おおりゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

しかし其処へ、初穂機が間に割って入り、ハンマーを機体の前でバトンの様に回転させ、機関銃弾を全て弾き飛ばす。

 

「! 初穂っ!!」

 

「さくらっ! お前はクラーラのとこへ行けっ!!」

 

「えっ!?」

 

「助けるんだろ!? アイツ(クラーラ)を!!」

 

「!!」

 

そう叱咤されてさくらは、再度塔の上に磔にされているクラーラを見遣った。

 

「………初穂、お願い!」

 

そして、一瞬躊躇する様な様子を見せたが、機体を反転させて塔の方へと向かった。

 

そのさくら機を、エカテリーナ3号機が追おうとしたが………

 

「オリャアッ!!」

 

初穂機がハンマーで殴り掛かって阻止する。

 

手前(テメェ)の相手はアタシだっ!!」

 

ハンマーを構え直し、初穂はそう宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、クラーラが拘束されている塔へと向かったさくら機は………

 

「待ってて、クラーラ。今行くから」

 

モニター越しにクラーラを見ながら、塔へと急ぐさくら機。

 

だがその前に、新たなエカテリーナが立ちはだかった。

 

「!!」

 

「…………」

 

レイラの機体だ。

 

「レイラさん!」

 

「…………」

 

レイラ機は“問答無用”とばかりに、レーザー銃を棍棒にしてさくら機に殴り掛かる。

 

「! クウッ!」

 

さくら機が回避すると、レーザー銃は建物の壁に当たり、破片を撒き散らす。

 

「レイラさん! 待って下さいっ!!」

 

「…………」

 

クラーラの姉であるレイラとは戦えないと訴えようとするさくらだが、レイラ機からは()()()()()()()が続く。

 

「クウッ!………?」

 

回避を続けるさくら機だったが、其処でさくらは“或る事”に気付く。

 

(狙いが()()………?)

 

そう………先程からのレイラ機の攻撃は、どれも“狙いが甘く”、コレまで激戦を潜り抜けて来たさくらからすれば、“回避するのは容易な攻撃”ばかりだった。

 

実際に、カウンターを打ち込めるタイミングが次々に見えている。

 

(!? まさかっ!?)

 

其処でさくらは、“或る可能性”に思い至る。

 

「!」

 

と其処で、レイラ機がレーザー銃を大きく振り被った。

 

強烈な1撃の予備動作だが、同時に“隙も大きな”体勢だ。

 

「! 隙有りっ!!」

 

当然、さくらはその隙を見逃さず、レイラ機に袈裟懸けを繰り出した!!

 

袈裟懸けは諸に入り、レイラ機に斜めの大きな傷が入る。

 

レイラ機はスパークを発し、蒸気漏れを起こして動かなくなった。

 

「………レイラさん………貴女、態と?」

 

「…………」

 

レイラが“()()隙を晒して攻撃させたのでは無いか”と問うさくらだったが、レイラの答えは沈黙だった。

 

しかし、さくらにとって其れは“肯定の意”と取れた。

 

「………ありがとうございます。“クラーラは()()助けます”」

 

動かなくなったレイラ機に向かってそう告げ、さくら機は再度塔を目指し始めた。

 

「………天宮 さくら………頼むわ」

 

その背を見送りながら、レイラは沈黙したエカテリーナの中でそう呟いた。

 

だが、その時………

 

そのレイラ機の頭上を、3つの影が通り過ぎた!!

 

「!? アレはっ!?」

 

その影の“正体”を見たレイラは、驚愕の声を挙げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央の搭の頂上………

 

「クラーラッ!!」

 

塔の頂上へと到達したさくらが叫ぶ。

 

「…………」

 

クラーラは相変わらず気を失ったまま磔にされている。

 

「! 今助けるから!!」

 

そのクラーラを助け出そうと近づくさくら機。

 

だが、その瞬間!!

 

眼前にレーザーが着弾し、爆風でブッ飛ばされる!!

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

さくら機は背中から叩き付けられた後にバウンドして1回転し、俯せに倒れる。

 

「ぐ、うう………な、何が………?」

 

何が起こったのかと機体を立ち上がらせながら顔を上げるさくら。

 

すると、その眼前に3つの影が降り立つ。

 

「!?」

 

その影を見て、さくらは驚愕する。

 

其れは3機のエカテリーナ………

 

()()()()()()()()莫斯科(モスクワ)華撃団の残りの隊員達の機体だった。

 

「エカテリーナ!?」

 

『ああっと!? コレは如何した事でしょう!? 突如として莫斯科華撃団のエカテリーナが新たに3機出現!! 出場選手に選ばれなかったメンバーと思われますが!?』

 

突然の乱入に、さくらも実況者も困惑の声を挙げる。

 

直後、3機のエカテリーナはレーザー銃を構え、さくら機に向かって発砲して来た!

 

「!?」

 

慌てて立ち上がり、回避運動を取るさくら機。

 

そんなさくら機に向かって、3機のエカテリーナはレーザー銃を連射する。

 

「くうっ!?」

 

『ああーっと!? 乱入したエカテリーナが帝国華撃団を攻撃!! コレは明らかなルール違反だ!!』

 

余りにも堂々とした(明から様な)ルール違反に、実況者も驚愕を露わにする。

 

当然ながら、街頭テレビ等でその様子を見ていた人々からも、非難の声が挙がる。

 

しかし、直後に中継が途切れ、人々は試合会場の様子を窺えなくなったのだった。

 

3機のエカテリーナは、さくら機の前に降り立つ。

 

「くうっ!」

 

刀を構えるさくら機。

 

其れに反応する様に、3機のエカテリーナもレーザー銃を構える。

 

「其処を………退()いてぇっ!!」

 

一気に突破しようと、さくら機が思いっ切り踏み込んでダッシュする。

 

しかし、何時もの様に速度と距離が出ない。

 

「くっ! 機体の調子が………」

 

無理をして直した機体が悲鳴を挙げている様だ。

 

そんなさくら機に、容赦無くレーザーを叩き込もうと3機のエカテリーナが引き金(トリガー)に指を掛ける。

 

 

 

 

 

が、その瞬間!!

 

 

 

 

 

エカテリーナ達に其々、魔導弾・氷の弾丸・クナイ(苦無)が叩き込まれた!

 

「!?」

 

「さくらさん!」

 

「お待たせっ!」

 

驚くさくら機の前に、クラリス機とあざみ機が降り立つ。

 

「クラリス! あざみ!」

 

「ルール違反をしたのは()()()()()よ」

 

そして、一瞬遅れてアナスタシア機も降り立つ。

 

「アナスタシアさんも!」

 

「さくら! コイツ等は任せて!!」

 

「さくらさんはクラーラさんを!」

 

鎖分銅を振り回すあざみ機と、魔法陣を展開させるクラリス機から、さくら機へそう通信が送られる。

 

「! 分かった!」

 

直ぐ様3機のエカテリーナを擦り抜け、クラーラの許へと向かうさくら機。

 

エカテリーナの1機が振り返りながらレーザー銃を向けたが、氷の弾が命中して銃身が凍り付く。

 

「邪魔はさせないわよ………」

 

硝煙の立ち昇る銃を構えたアナスタシア機から、そんな声が響く。

 

「クラーラッ!」

 

漸く、クラーラの眼前にまで辿り着いたさくら機はハッチを開放。

 

さくらが機体から降りて、クラーラが拘束されている十字架に近付く。

 

「う………!? ハッ!? 此処は?………!? さくらっ!?」

 

其処で漸く意識を取り戻したクラーラが、さくらの姿を見て驚愕の声を挙げる。

 

「気が付いたのね! 今助けるから!!」

 

直ぐ様クラーラを十字架に縛り付けている縄を解こうとするさくら。

 

「! さくら! 止めて! 私はさくら達とは一緒に居られないの! だって私は………!!」

 

「全部知ってるっ!!」

 

「!? えっ!?」

 

“自分は降魔人間である”と告白しようとしたクラーラだったが、其れを遮って言って来たさくらに再度驚愕の表情を浮かべる。

 

「でも“其れが何だ?”って言うの!? そんな事くらいで“私がクラーラを()()()()理由”になると思ってるの!?」

 

「さくら………」

 

「其れに………クラーラには“知らないといけない事”が有るの」

 

「えっ!?」

 

「だから絶対に助ける! だって………『()()』なんだから!!」

 

「!!」

 

その瞬間、クラーラの目にはさくらとあの“コートの青年”が重なって見えた。

 

「さくら………」

 

クラーラの頬を熱い涙が伝う………

 

其れは(まさ)しく、()()()()だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタジアム………

 

「素晴らしい。実に“素晴らしい()()”です」

 

そんな光景を嘲笑っているカミンスキー。

 

「カミンスキー! 貴様ぁっ!!」

 

誠十郎機は怒りを露わに二刀で斬り掛かる。

 

「天宮 さくらさんは随分と()()でいらっしゃる様ですね。隊長として、その愚かさを忠告して挙げるべきでは無いのですか?」

 

カミンスキー機はレーザー銃でその二刀の攻撃を受け止める。

 

「黙れっ! 貴様(キサマ)に………さくらを嗤う資格は無いっ!!」

 

益々怒りのボルテージが上がり、遂に誠十郎機の二刀がカミンスキー機のレーザー銃に食い込み始める。

 

『行け! 誠十郎!!』

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

ゼロの声を後押しに、誠十郎機は遂にカミンスキー機のレーザー銃を斬り裂いた!!

 

「おやっ?」

 

「闇を斬り裂く、神速の刃! 縦横無刃・嵐っ!!」

 

場違いなカミンスキーの呑気な声が響いた瞬間、誠十郎機の必殺技がカミンスキー機に叩き込まれる!!

 

両腕と両足を斬り飛ばされ、全身を(くま)無く斬り刻まれたカミンスキー機が、試合会場の地面に転がる。

 

スパークと蒸気漏れを起こし、動かなくなるカミンスキー機。

 

「終わりだ、カミンスキー。貴様には“()()()聞きたい事”が有る」

 

刀の切先を、倒れているカミンスキー機に突き付けながら、誠十郎はそう言い放つ。

 

「フッ」

 

だが、カミンスキーが不敵に笑った瞬間!

 

突如カミンスキー機が光を放ち始めた!!

 

『!? 誠十郎! 逃げろっ!!』

 

「!?」

 

ゼロが慌てて警告して来たが間に合わず、誠十郎機は咄嗟に防御姿勢を取る。

 

その次の瞬間!!

 

カミンスキー機は大爆発を起こした!!

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

防御したものの、諸に爆風を浴びた誠十郎機はブッ飛ばされ、試合会場内の建物の壁に叩き付けられた!!

 

其処へ瓦礫が降って来て、誠十郎機は完全に埋もれてしまう。

 

「じ、自爆か!?」

 

『いや、違う!!』

 

自爆したのかと問う誠十郎だが、ゼロが否定すると………

 

「ハハハハハッ!!」

 

何と、燃え盛るエカテリーナの残骸の中から、赤紫のオーラに包まれた()()のカミンスキーが、宙に浮かびながら出現した!!

 

「!? 宙にっ!?」

 

『この禍々しい気配………テメェ、やっぱり!!』

 

空に浮かび上がったカミンスキーに驚愕する誠十郎と、その身体から立ち昇るオーラで“何か”を確信するゼロ。

 

「“お遊び”はココまでとしましょうか………『ドラゴリー』! 『バラバ』!」

 

と、カミンスキーがそう叫んだかと思うと………

 

初穂達と戦っていたレイラ機を除くエカテリーナ達が、カミンスキーと同じ赤紫のオーラに包まれて浮かび上がる。

 

「!? 何ぃっ!?」

 

「コレはっ!?」

 

「!?」

 

「何なの!?」

 

初穂達の驚きの声が挙がる中、4機のエカテリーナは其々2機ずつのペアを組んだかと思うと………

 

何と、その姿が粘土の様にグニャグニャと変形し始めた!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

そして、ペアだったエカテリーナ同士がくっ付き、2つの巨大な粘土の様な塊になったかと思うと………

 

グルルルルルルルルッ!!

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

『蛾超獣 ドラゴリー』と『殺し屋超獣 バラバ』となり、試合会場内へと降り立った!

 

「!? 超獣っ!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

誠十郎が声を挙げ、さくら達が驚愕を露わにした瞬間………

 

グルルルルルルルルッ!!

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

ドラゴリーが両手からミサイルを放ち、バラバが頭部に装備された剣からショック光線を発射。

 

試合会場内の建物状の構造物が次々に爆発!

 

さくら達が居る塔にも攻撃が命中!

 

「!? キャアッ!?」

 

「ニンッ!?」

 

「! しまっ………」

 

幸いにも崩落は免れたが、衝撃でクラリス機・あざみ機・アナスタシア機が足を踏み外して落下した!

 

「! 皆っ!!」

 

「フフフフ」

 

さくらが思わず声を挙げた瞬間、赤紫のオーラに包まれたカミンスキーが降り立って来る。

 

「! カミンスキー! クラーラ! 離れてっ!!」

 

其れを見たさくらは、直ぐ様解放したクラーラを下げると無限に乗り込み、カミンスキーに刀を向けたが………

 

その瞬間、カミンスキーの姿が()()()に現れる!!

 

「!?」

 

「邪魔です………」

 

驚くさくらの無限に向かって、カミンスキーはまるで虫でも払うかの様に無造作に腕を振った。

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

すると1トン半以上も有る無限が、まるで玩具の様にブッ飛ばされた!!

 

ブッ飛ばされた衝撃で右手脚が千切れ、更に床に叩き付けられた衝撃で左手脚が千切れ飛び、さくら機はダルマ状態となって塔の上に転がった。

 

「! さくらっ!?」

 

「フッ」

 

慌てて駆け寄ろうとしたクラーラの首根っこを摑み、まるで猫の様に片腕で持ち上げるカミンスキー。

 

「いや! 離して! 離してぇっ!!」

 

「クラーラッ!!」

 

クラーラが手足をバタバタとして暴れていると、ハッチをパージして脱出したさくらが、今度は天宮國定を手に斬り掛かって行く。

 

「!? ぐうっ!?」

 

しかし途中で全身に痛みが走り、耐えられずに転倒して倒れた。

 

「か、身体が………」

 

如何やら痛み止めの効果が切れてしまった様だ。

 

「さくらっ!!」

 

「優しいですね、クラーラ。自分よりも彼女の心配をするなんて」

 

クラーラが声を挙げると、嘲笑を浮かべたカミンスキーがそう言う。

 

「ヴァレリー・カミンスキー………貴方は………何者なの………?」

 

全身に走る痛みで脂汗を流しながらも、さくらはカミンスキーを睨み付けてそう問い質す。

 

其処でカミンスキーは、“驚くべき()()”を明らかにした!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が名は、『()()()() カミンスキー』………偉大なる()・『ヤプール』様の使徒なり!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

偽莫斯科華撃団との対戦。
レイラと仲間達に手助けを受け、クラーラの元へ辿り着くさくら。

しかし、そんな姿を嘲笑っていたカミンスキーが超常的な力を見せたかと思うと………
何と、偽莫斯科華撃団が超獣に!?
そしてカミンスキーの正体が明らかに………

何と!!
奴は異次元人!!
ヤプールの一派だったのです!!
この作品ならではの正体です。

まさかの異次元人登場に大ピンチと言えるでしょう。
ですが………
そう!
世界中が君を待っていた!!
次回、いよいよ『彼』が登場です!!

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター11『銀河の風来坊』

チャプター11『銀河の風来坊』

 

異次元人 カミンスキー

 

異次元超人 カブト・ザ・キラー

 

蛾超獣 ドラゴリー

 

殺し屋超獣 バラバ 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

「異次元人?………ヤプール?」

 

突如明かされた“カミンスキーの()()”に、困惑した様子を見せるさくら。

 

『あの野郎! やっぱり“ヤプールの一味”だったのか!!』

 

「ゼロ、ヤプールと言うと、あの超獣を造っていたって言う………?」

 

『ああ。俺達ウルトラ一族にとってはエンペラ星人と同じで、決して“()()()()()敵”だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヤプール人』………

 

異次元に生息している“知的生命体”で、超獣を使っての地球侵略を目論んだ。

 

個体差や人格は有るものの、“()()()ヤプール人の意識は共有されている”という集合体精神を有している。

 

その性格・性質は、極めて卑劣且つ陰惨。

 

度々、人間の負の感情を利用した狡猾な作戦を立て、相手を精神的に追い詰める事を得意とする、悪魔の様な存在だ。

 

更に、人間等の他の知的生命体の負の心を好んでマイナスエネルギーに変え、“自らのエネルギー源”としている為、“その存在を完全に消し去る事は()()()”とされる。

 

故に、(エース)を初めとしたウルトラマン達に幾度と無く敗れているものの、その度に復活して復讐すると言う嫌らしいまでの執念深さも持っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、クラーラ………貴女にプレゼントを差し上げましょう………“絶望”と言う名のね」

 

と其処で、カミンスキーはそう嘯くと、クラーラを(とら)えていない方の手を倒れているさくらに向けた。

 

その掌に、赤紫色のエネルギーが集まる。

 

「!!」

 

「! 止めて! さくらを殺さないで!! お願いっ!!」

 

狙われたさくらが目を見開き、カミンスキーがさくらを殺す積りだと察したクラーラが更に暴れるが、カミンスキーの拘束は(ほど)けない。

 

「さくらっ!」

 

「さくらさんっ!!」

 

初穂機とクラリス機が救援に向かおうとするが………

 

グルルルルルルルルッ!!

 

「! アッチッ!?」

 

「キャアッ!?」

 

ドラゴリーが、口から火炎を放って妨害する。

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

バラバも、あざみ機とアナスタシア機を行かせまいと右手の鉄球に仕込まれたアンカーを鞭の様に振り回す。

 

「駄目! 突破出来ないっ!!」

 

「くうっ!」

 

あざみとアナスタシアから苦い声が漏れる。

 

「ふふふ、良いですよ、クラーラ。さあ、更なる絶望を………」

 

「ハアアアッ!!」

 

と、不気味に笑うカミンスキーに、何者かが蹴り掛かった!!

 

「おっと」

 

「! キャッ!?」

 

さくらへの攻撃を中止し、腕でその蹴りを防いだカミンスキーだったが、衝撃でクラーラが解放される。

 

「クラーラッ! 逃げなさいっ!!」

 

着地を決めた蹴り掛かった人物………レイラがそう声を挙げる。

 

「姉さん!?」

 

「レイラ………やはり来ましたか」

 

驚くクラーラと、“予想していた”と言わんばかりの表情を浮かべるカミンスキー。

 

「カミンスキー!」

 

そんなカミンスキーを、レイラは怒りを露わに睨み付けてる。

 

「怖い怖い。レイラ、君にそんな表情は似合いませんよ。君にはやはり、笑顔が似合う」

 

「黙れっ! 上っ面だけの言葉なぞ聞きたくない!!」

 

まるで口説いているかの様な甘い言葉を口にするカミンスキーだが、レイラは益々怒りを滾らせる。

 

「“上っ面だけ”だなんて、心外です。私は“貴女を()()()愛しています”」

 

「お前の言葉なぞ………私の心には、何1つ響かないっ!!」

 

と、レイラがそう叫んだかと思うと、その身体から光が溢れ………

 

背中に黒い翼を生やし、右目の部分を結晶状の仮面で隠した異形………『上級降魔レイラ』へと変わる。

 

「! 黒い翼の上級降魔!」

 

「やっぱりアイツが!!」

 

其れを見たクラリスと初穂が声を挙げる。

 

「美しい………レイラ。“()()()()()その姿の美しさ”………()()()()()()()()よ」

 

「黙れと言っているぅっ!!」

 

尚も甘い言葉を続けるカミンスキーだったが、上級降魔レイラは怒りのままにカミンスキーに突撃し、殴り掛かった!!

 

「フッ」

 

だが、カミンスキーはその拳をアッサリと掌で受け止める。

 

「やれやれ、やはり君は私に心を開いてはくれない様ですね………所詮は“出来損ない”と言う事ですか」

 

カミンスキーは、態とらしく溜息を吐いたかと思うと………

 

その身体が赤紫色のオーラに包まれ、まるで鎧武者を思わせる異形の姿へと変わった。

 

『!? 【エースキラー】!? いや、違う………バキシムと同じ“強化体”か!?』

 

その姿が、嘗てウルトラマンAを苦戦させた強敵『異次元超人 エースキラー』に酷似している事に気付いたゼロがそう言う。

 

「“貴女の出来損ないの力”が、この『カブト・ザ・キラー』に通用するのか………試してあげましょう」

 

カミンスキーの声で、エースキラーの強化体『異次元超人 カブト・ザ・キラー』はそう言い放つ。

 

「クッ!」

 

其処で上級降魔レイラは一旦距離を取る。

 

「フッ………エメリウムスラッシュッ!」

 

「!? えっ!?」

 

するとカブト・ザ・キラーがそう叫び、さくらが驚愕していると、その額からエメリウムスラッシュが放たれた!!

 

「!? ぐあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

真面に喰らってしまった上級降魔レイラは、爆発と共に床に叩き付けられる。

 

「ミラクルゼロスラッガー」

 

続けてカブト・ザ・キラーがそう言ったかと思うと、その周りに8つの赤紫色のゼロスラッガーが出現。

 

上級降魔レイラに向かって次々と飛んだ!!

 

「!?」

 

咄嗟に、翼を使って真上に飛んで躱す上級降魔レイラ。

 

「クウッ! ハアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

其処で今度は、落下の勢いを乗せた飛び蹴りを繰り出す。

 

「フッ」

 

だが、かなりの威力が有った筈のその蹴りも、カブト・ザ・キラーの蟹の様な左腕の鋏で挟まれ、止められてしまう。

 

「ウルトラハリケーンッ!」

 

そしてそのまま、上級降魔レイラをウルトラハリケーンで投げ飛ばすカブト・ザ・キラー。

 

「!?」

 

竜巻が発生する程の勢いで投げ飛ばされ、身動きが取れない上級降魔レイラ。

 

「ワイドゼロショットッ!!」

 

その上級降魔レイラに向かって、カブト・ザ・キラーがワイドゼロショットを放つ!

 

「!!」

 

咄嗟に身を捻るが、カブト・ザ・キラーが放ったワイドゼロショットは、上級降魔レイラの背の翼を焼く。

 

「! ああああっ!?」

 

上級降魔レイラの悲鳴が響き、背の翼が燃え上がった状態で落下し、地面に叩き付けられる。

 

「姉さんっ!!」

 

「ゼロさんの技を、こんなに!?」

 

クラーラも悲鳴の様な声を挙げ、さくらがカブト・ザ・キラーが次々にゼロが使っていた技を繰り出した事に驚愕する。

 

「フフフ、これぞ“偉大なる神”………ヤプール様のお力です」

 

「う、ううう………」

 

カブト・ザ・キラーからカミンスキーの得意気な声が響き、翼がすっかり焼け焦げた上級降魔レイラが呻き声を漏らす。

 

「いや………いや………嫌ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

と、姉の痛々しい姿に遂に感情が爆発したのか、クラーラの背に真っ白な翼が出現し、その身体から凄まじい妖力と霊力が溢れる!

 

「其れを待っていました!」

 

その途端、カブト・ザ・キラーはクラーラの方に向き直り、クラーラの発したエネルギーを胸の結晶部分で吸収し始めた!!

 

「!? ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

エネルギーが吸収され、悲鳴を挙げるクラーラ。

 

「! クラーラッ!!」

 

「おお、素晴らしい………コレが“貴女の力”ですか! クラーラッ!!」

 

さくらが叫ぶ中、カブト・ザ・キラーは恍惚の声を漏らす。

 

「あ………」

 

そして、とうとう全てのエネルギーを奪われたクラーラから背の翼が消え、バタリと倒れる。

 

「ご苦労様でした、クラーラ。コレで“貴女の役目は終わり”です」

 

そのクラーラへと近付くと、またも右手で首根っこを摑み、動物の様に持ち上げるカブト・ザ・キラー。

 

「や、止めろ………汚い手で妹に触るな………」

 

と、上級降魔レイラがそう言いながらやっとの思いで立ち上がる。

 

「では返してあげましょう」

 

するとカブト・ザ・キラーは、その上級降魔レイラに向かってクラーラを投げ付けた!!

 

「!!」

 

驚きながらも咄嗟にクラーラを受け止める上級降魔レイラ。

 

「ぐあっ!!」

 

しかし、弱った身体では受け止め切れず、共にブッ飛ばされる。

 

「ぐうっ!!」

 

其れでも、必死にクラーラを庇って背中から地面に着地する上級降魔レイラ。

 

其処で、その身体が光に包まれたかと思うと、人間の姿に戻る。

 

「如何やらココまでの様ですね。最期は姉妹仲良く葬ってあげましょう」

 

そんなレイラとクラーラを冷たく見下ろしつつ、カブト・ザ・キラーが両腕を広げると、その胸に怪しい光が集まり出す。

 

ゼロツインシュートを放つ積りの様だ。

 

「く、う………」

 

無意味だとは知りつつ、レイラは身を翻してカブト・ザ・キラーに背を向け、自らの身体でクラーラを庇う。

 

と、其処へ………

 

「やらせないっ!!」

 

天宮國定を正眼に構えたさくらが、2人を守る様にカブト・ザ・キラーに立ちはだかる。

 

しかし全身の痛みは引いておらず、腕も足も小刻みに震えており、その姿は非常に弱々しい………

 

「! 天宮 さくら!?」

 

「さくら! 逃げて!!」

 

「…………」

 

レイラとクラーラが叫ぶが、さくらはコレが“自分に出来る最後の抵抗”だとばかりに、天宮國定を正眼で構え続ける。

 

「お優しいですね。2人の旅路に御一緒なさるのですか? では、良い旅を………」

 

「さくらぁっ!!」

 

『誠十郎、急げっ!! 変身だっ!!』

 

遂にカブト・ザ・キラーからゼロツインシュートが放たれそうになり、誠十郎とゼロは慌てて変身しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~♪~~♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? ぐあああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

何処からとも無く“ハーモニカの様な音のメロディー”が響き、カブト・ザ・キラーが頭を押さえて(うずくま)った。

 

グルルルルルルルルッ!?

 

キュアアアアアアアアッ!?

 

更には、ドラゴリーとバラバまでもが苦しんでいる様子を見せる。

 

「な、何だぁっ!?」

 

「苦しんでる?」

 

「如何言う事なの?」

 

突然苦しみ出したドラゴリーとバラバに、初穂・クラリス・アナスタシアは驚いて首を傾げる。

 

「………この音楽(メロディー)所為(せい)?」

 

あざみは、先程から流れているメロディーの所為(せい)か?と推測する。

 

「!? コレって!?」

 

さくらは、そのメロディーがクラーラが以前、“ハーモニカで奏でていたモノ”と同じ事に気付く。

 

『!? コイツは!?………ったく、良いタイミングで来やがって』

 

「ゼロ!? 何を言ってるんだ!?」

 

突然安堵の声を漏らしたゼロに、誠十郎が困惑する。

 

「!! コレは!?」

 

「!?」

 

そして、他の面々よりも強い驚愕の様子を見せているレイラとクラーラ。

 

~~♪~~♪

 

更にメロディーが響き渡ったかと思うと………

 

「…………」

 

何時の間にか、“ハーモニカの様な物”を吹いている、“テンガロンハットに茶色のレザージャケット姿”の青年の姿が塔の上に在った。

 

「!?」

 

「誰だ、アイツ!? 何時の間に!?」

 

さくらが驚き、初穂も思わず声を挙げる。

 

「!!」

 

その青年の姿を見たクラーラが目を見開く。

 

『気にするな。【()()()()()()()な』

 

何度も浮かび上がって来ていたコートの青年の姿が、目の前の人物と一致してその顔をハッキリと思い出せた!

 

「き、貴様! 何者だぁっ!?」

 

強烈な頭痛に余裕が無くなったのか、カブト・ザ・キラーが乱暴な口調で青年に問い質す。

 

「………俺か? 俺は………」

 

其処で青年はハーモニカの様な楽器………『オーブニカ』を吹くのを止めると、帽子を取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ガイ』………『クレナイ ガイ』だ」

 

青年………『クレナイ ガイ』はそう言い放ち、カブト・ザ・キラーを睨む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガイッ!!」

 

「ガイ………私の………太陽」

 

そして、ガイの姿を見たクラーラが笑顔を見せ、レイラは嬉し涙を流してそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

遂に正体を現した異次元人カミンスキー。
クラーラの力を引き出す為に、絶望を与えようとするが、その前に妹を守る為にレイラが立ちはだかる。

しかし、カミンスキーはエースキラーの強化体『カブト・ザ・キラー』へと変身。
ゼロのデータを収集して同じ技を繰り出すカブト・ザ・キラーに、レイラまでもが倒れてしまい、クラーラは力を発動。
それを待っていたとばかりに吸収し。己が物とすると、レイラとクラーラを始末に掛かる。

絶体絶命かと思われた、その時!!
世界中が君を待っていた!!
オーブニカの音色と共に………

夕日の風来坊・クレナイ ガイ見参です!!

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター12『銀河の光が我を呼ぶ!』

チャプター12『銀河の光が我を呼ぶ!』

 

異次元超人 カブト・ザ・キラー

 

蛾超獣 ドラゴリー

 

殺し屋超獣 バラバ 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

「クレナイ………ガイ?」

 

突如現れた青年・クレナイ ガイを怪訝な目で見遣るさくら。

 

「妙な真似をして………貴方から先に始末して差し上げます!!」

 

と、先程の頭痛の恨みか、カブト・ザ・キラーが標的をガイに変え、ゼロツインシュートを放とうとする。

 

「ハアッ!!」

 

「!? ぐあっ!?」

 

しかし其れよりも早く、ガイがカブト・ザ・キラーの横っ面に右の拳を叩き込んだ!

 

「フッ!」

 

「グホッ!?」

 

続けて、左の拳を腹へと叩き込む。

 

「セヤッ!」

 

「ゲバッ!?」

 

カブト・ザ・キラーが思わず腹を押さえると、上体が下がった事で見えた背中に肘打ちを叩き込む!

 

「ぐううう………」

 

床に叩き付けられる様に倒れたカブト・ザ・キラーだったが、フラつきながらも直ぐに起き上がる。

 

「おりゃあっ!!」

 

「! ぐあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

しかし何もさせる事無く、ガイの強烈な横蹴りが炸裂し、そのままブッ飛んで塔の上から落ちて行った。

 

「フッ………」

 

其れを確認すると、ガイはジャケットの乱れを直す。

 

「す、凄い………! うっ!」

 

ガイの身体能力に圧倒され、緊張が解けた為か力が抜けたさくらは、天宮國定を杖代わりにその場に両膝を突いた。

 

「大丈夫か?」

 

そんなさくらにガイが近付くと………

 

「「ガイッ!!」」

 

「おっと!?」

 

レイラとクラーラが、人目も憚らずガイに抱き着いた。

 

「ガイ! 私の太陽………会いたかった………」

 

「相変わらず情熱的だな、レイラ」

 

嬉し涙を流しながら強く抱き着いてくるレイラに、ガイは笑いながらそう返す。

 

「ガイ~」

 

「クラーラもだな」

 

クラーラの方も、涙を浮かべながらガイの足にしがみ付いている。

 

「えっと………」

 

何やら話し掛け辛くなり、さくらが困惑する。

 

と、その時!!

 

「オノレエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!」

 

怒りの叫びと共に巨大化したカブト・ザ・キラーが、さくら達が居る塔を見下ろしながら現れる。

 

「「「「!?」」」」

 

「全員纏めて殺してやるぅっ!!」

 

相当頭に来たのか、胡散臭い態度をかなぐり捨て、左腕の鋏で塔を殴り付けて破壊するカブト・ザ・キラー。

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

バラバラになった塔の上から投げ出され、さくらが悲鳴を挙げる。

 

「! さくらっ!!」

 

「2人共! あの()の所へ!!」

 

同じ様に吹き飛ばされていたクラーラが叫ぶと、ガイがそう促す。

 

「! 分かったわ!」

 

「任せて!」

 

2人は直ぐにさくらの許へ向かう。

 

「さくらっ!」

 

「天宮 さくらっ!」

 

そして、2人で挟み込む様にしてさくらの身を確保する。

 

「良しっ!!」

 

其処でガイは、左手にリング状の器具………『オーブリング』を握った!!

 

オーブリングから光が溢れたかと思うと、“無数の銀河系が浮かぶ宇宙のような空間”………『インナースペース』が展開される。

 

そして、黒タイツ姿となったガイが、右手に1枚のカード………『ウルトラフュージョンカード』を握る。

 

其れは、“巨大な剣を構えたウルトラマンの姿”が描かれているフュージョンカードだった。

 

そのフュージョンカードを、オーブリングへとリードする。

 

『覚醒せよ、オーブオリジン!』

 

するとオーブリングから虹色の光が溢れ、其処から短剣の様な物………『オーブカリバー』が出現する。

 

「オーブカリバー!」

 

ガイがそう叫んで右手を伸ばすと、その手にオーブカリバーが収まる。

 

そのオーブカリバーを構えると、リングの部分を手で回転させる。

 

すると、リング部分に4つの『火』・『水』・『土』・『風』のエレメントマークと、中心のオーブのマークが光を放つ。

 

その状態のオーブカリバーを頭上へ掲げると、柄の部分に在ったトリガーを人差し指で押す。

 

すると、ガイが“オーブニカで奏でていたメロディー”が響き渡り、再度『火』・『水』・『土』・『風』のエレメントマークが発光したかと思うと、オーブのマークと共に光を放つ!

 

「ティヤッ!!」

 

そしてその光の中から、銀と黒を基調に胸部から腕に掛けて赤いラインが入ったリング状のカラータイマーを持つウルトラマン………

 

『ウルトラマンオーブ・オーブオリジン』が現れる。

 

オーブオリジンは、さくら達を左手で優しくキャッチしつつ、右手に大剣となったオーブカリバーを握りながら試合会場内へ着地を決める。

 

「…………」

 

そして、そのまま左手を下げてさくら達を降ろす。

 

「! あの人もウルトラマンッ!?」

 

「貴様っ!!」

 

さくらとカブト・ザ・キラーが驚きの声を挙げる。

 

「銀河の光が我を呼ぶ!」

 

其処でオーブは立ち上がると、カブト・ザ・キラーを睨み付けながら、頭上にオーブカリバーを振り被って構えを執った!

 

「オノレェッ!!」

 

グルルルルルルルルッ!!

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

苛立ちも露わに叫ぶカブト・ザ・キラーの両隣に、ドラゴリーとバラバが並び立つ。

 

『誠十郎! 俺達も行くぞっ!!』

 

「良し! デュワッ!!」

 

其処で、誠十郎もウルトラゼロアイを装着。

 

ウルトラマンゼロとなって無限から飛び出し、オーブの隣へ降り立つ。

 

「! ゼロさん!」

 

「久しぶりだな、オーブ。お前がこの地球と関わりが有ったとはな」

 

「詳しい話は後程」

 

「ああ、そうだな」

 

其処でゼロも構えを執った。

 

「ゼットン! お願いっ!!」

 

其処へ、更にクラリスが魔導書を開いてゼットンを呼び出す。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

「!? コイツは!?」

 

「心配すんな、オーブ。“その”ゼットンは()()だ」

 

「! 分かりました!」

 

突如現れたゼットンに驚いたオーブだったが、ゼロの言葉を聞き、クラリス機の姿を見て納得した様子を見せる。

 

「さくら!!」

 

と其処へ、さくら達の許に白秋が駆け付ける。

 

「! 師匠っ!!」

 

「直ぐに離れるぞ。彼等の邪魔になる」

 

驚くさくらに白秋はそう告げると、さくら・レイラ・クラーラと共に退避する。

 

「頼んだぞ、クレナイ ガイ」

 

「…………」

 

去り際にそうオーブに呼び掛け、オーブは頷く。

 

「行けぇっ!!」

 

グルルルルルルルルッ!!

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

と其処で、カブト・ザ・キラーがドラゴリーとバラバを嗾けた!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

「ハアッ!!」

 

ゼットンがドラゴリーと組み合い、オーブがオーブカリバーでバラバの左腕の鎌を受け止める。

 

「ゼロさん! コイツ等は俺達が引き受けます!! ゼロさんは奴を!!」

 

「頼んだぜっ!!」

 

バラバを押さえながらオーブはゼロにそう言い、ゼロはカブト・ザ・キラーに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼットンVSドラゴリー………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

グルルルルルルルルッ!!

 

ドラゴリーと激しく組み合うゼットン。

 

グルルルルルルルルッ!!

 

と、不意を衝く様にドラゴリーが口と目から怪光線を放った!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

真面に喰らったゼットンが倒れる。

 

グルルルルルルルルッ!!

 

すると、ドラゴリーが倒れたゼットンの顔を右手で鷲摑みにする。

 

嘗て『巨大魚怪獣 ムルチ(二代目)』を引き裂いた怪力を、ゼットンにも喰らわせようと言う算段だ。

 

「ゼットン! 火球を!!」

 

と其処へクラリスの声が響き、ゼットンは顔を摑まれたまま火球を発射!!

 

グルルルルルルルルッ!?

 

右腕が消し飛ばされ、ドラゴリーがバランスを崩して後退(あとずさ)る。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

其処で、更にゼットンは倒れたままテレポートしたかと思うと、ドラゴリーの背後に出現。

 

やや屈み込み、ドラゴリーの腰に腕を回す様にして捕まえたかと思うと………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

何と“バックドロップ”を繰り出した!!

 

グルルルルルルルルッ!?

 

脳天を思いっ切り地面に叩き付けられるドラゴリー。

 

“痛みや恐怖を()()()()”超獣だが、ダメージが大きかったのかバグを起こした様にフラつく。

 

「今よ! ゼットンッ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

其処で再度クラリスの声が飛び、ゼットンは火球とゼットンファイナルビームを同時発射!!

 

グルルルルルルルルッ!?

 

その両方を真面に喰らったドラゴリーは耐え切れず、身体が一瞬膨れ上がったかと思うと、爆発四散したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーブVSバラバ………

 

「ハアアアアッ!!」

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

オーブカリバーの縦斬りの1撃を、左手の鎌で受け止めるバラバ。

 

「セエエエヤアッ!!」

 

オーブ(オリジン)は直ぐ様身体を回転させ、今度は横薙ぎを繰り出す。

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

だがバラバは、今度は右手の鉄球を振り上げ、オーブカリバーを弾き飛ばす。

 

「うおっ!?」

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

体勢の崩れたオーブ(オリジン)に、バラバは鼻先からの火炎放射を見舞う。

 

「うおわあああっ!?」

 

炎に包まれたオーブ(オリジン)が後退る。

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

そのオーブ(オリジン)を追って、火炎を噴射しながら歩を進めるバラバだったが………

 

「フッ!!」

 

オーブ(オリジン)はオーブカリバーを右手で見せ付ける様に構えると、左手でリング部分を回転させる。

 

すると、リング部分に在ったエレメントの内の『風』のエレメントが光を放ち、トリガーが押される。

 

「オーブウインドカリバーッ!!」

 

そしてそう叫んでオーブカリバーを振るうと、巨大な竜巻が発生。

 

竜巻はバラバを呑み込み、空高く舞い上げた!!

 

キュアアアアアアアアッ!?

 

咆哮が木霊した瞬間、バラバは竜巻の中から放り出される。

 

重力に引かれて落下し、脳天から地面に叩き付けられた!

 

「ハアッ!!」

 

すかさずオーブ(オリジン)は、今度は『土』のエレメントを選択して、オーブカリバーのトリガーを押す。

 

「オーブグランドカリバーッ!!」

 

叫びと共に、オーブカリバーの刀身を地面に突き立てるオーブ(オリジン)。

 

すると、オーブカリバーから地を這いながら円を描く様な動きで2条の光線がバラバに向かう。

 

キュアアアアアアアアッ!?

 

漸く起き上がったバラバに、オーブグランドカリバーの光線が直撃!!

 

バラバの身体から激しい爆発が上がる!!

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

しかし、超獣であるバラバは全く怯む事無く、オーブ(オリジン)に向かって右手のアンカーを放った。

 

アンカーはオーブカリバーごとオーブ(オリジン)の右腕に巻き付く。

 

「!? しまったっ!?」

 

キュアアアアアアアアッ!!

 

オーブカリバーと右腕を封じられたオーブ(オリジン)に向かって、バラバは最大の武器である頭部の剣を射出した!!

 

身動きを封じられたオーブ(オリジン)に、バラバの剣が迫る。

 

だが、其処で!!

 

インナースペース内のガイが、再び左手にオーブリングを構えた。

 

「セブンさん!」

 

そして右手にウルトラセブンのフュージョンカードを握り、オーブリングにリードする。

 

『ウルトラセブン!』

 

『デュワッ!』

 

オーブリングからコールが響いて光が放たれたかと思うと、ガイの左隣にウルトラセブンのヴィジョンが現れる。

 

「ゼロさん!」

 

続いてガイは、ゼロのフュージョンカードをリード。

 

『ウルトラマンゼロ!』

 

『デアァァァッ!』

 

今度は、左隣にゼロのヴィジョンが現れる。

 

「親子の力、お借りします!!」

 

ガイがそう言い、右腕を真横に伸ばすポーズから両腕を拳にして交差し、胸を張って力こぶを作る様なポーズを執った後、オーブリングを掲げる。

 

『フュージョンアップ!』

 

オーブリングから声が響くと、オーブオリジンとなったガイにセブンとゼロのヴィジョンが重なる。

 

『ウルトラマンオーブ! エメリウムスラッガー!』

 

そして、オーブの姿がセブンとゼロの意匠を併せ持つ………

 

『ウルトラマンオーブ・エメリウムスラッガー』へと変わった!!

 

「セヤアッ!!」

 

オーブスラッガーショットとアイスラッガーを纏めて飛ばすオーブ(エメリウムスラッガー)。

 

アイスラッガーが剣を粉砕し、オーブスラッガーショットがアンカーをバラバラにしたかと思うと、そのままバラバにも襲い掛かる!

 

キュアアアアアアアアッ!?

 

全身をズタズタに斬り裂かれたバラバは、衝撃で両目が飛び出す!!

 

「フッ! ES(エメリウムスラッガー)スペシウムッ!!」

 

そのバラバへのトドメに、オーブ(エメリウムスラッガー)はエメリウムスラッガー最大の技であるES(エメリウムスラッガー)スペシウムを放つ!

 

キュアアアアアアアアッ!?

 

断末魔の咆哮と共に、バラバは爆発四散したのだった。

 

「良し!」

 

其れを確認したオーブはオリジンの姿に戻ると、カブト・ザ・キラーと戦うゼロの許へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『蛾超獣 ドラゴリー』

 

身長:67メートル

 

体重:5万8000トン

 

能力:口からの火炎・怪光線、手からのミサイル『バーニングウイング』、目からの怪光線

 

初登場作品:ウルトラマンA第7話「怪獣対超獣対宇宙人」、第8話「太陽の命・エースの命」

 

ムルチ(二代目)を素手で引き裂いた事で有名な超獣。

 

超獣が“怪獣を超える存在”である事を印象付けた。

 

メトロン星人Jr.と組んで(エース)を追い詰め、1度はエネルギー切れで勝利したかに思われたが、Aは太陽エネルギーを得て復活。

 

土手っ腹にパンチで風穴を開けられ、エースブレードで首を落とされた挙句、メタリウム光線で爆殺されると言う、超獣退治の専門家であるA名物のオーバーキルで倒された。

 

後に、『メビウス』に於いて再登場。

 

“嘗て倒された個体が復活した”と言う設定の為、以前と同じ様にミサイルの破壊を行おうとしてしまう、と言うコミカルな面を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『殺し屋超獣 バラバ』

 

身長:75メートル

 

体重:8万5000トン

 

能力:左腕の鎌、右手のアンカー付き鉄球、頭部の射出可能な剣から放つショック光線、鼻先からの火炎放射

 

初登場作品:ウルトラマンA第13話「死刑!ウルトラ5兄弟」、第14話「銀河に散った5つの星」

 

Aがゴルゴダ星に向かった隙を衝く様に地球に出現した超獣。

 

放射能の雨と言う色々と危ない物に守られ、TACの攻撃をまるで寄せ付けない強さを見せた。

 

Aが帰還した際には1度追い込まれるものの、ヤプールがゴルゴダ星に捕らわれたウルトラ兄弟を人質にしたので、難を逃れる。

 

しかし再戦時にはエースキラーが倒され、ウルトラ兄弟が救出されていた為、憂いの無くなったAに自らの武器であった頭部の剣を投げ返され、更に後頭部に飛び蹴りを喰らって目が飛び出す。

 

更に左腕の鎌も奪われた挙句、首を落とされて倒された。

 

その後は、両腕が『暴君怪獣 タイラント』の腕として利用された事が有名になってしまっていたが、『ウルトラマンZ』にて半世紀ぶりに再登場。

 

新たな能力までも会得し、Zの最強形態である『デルタライズクロー』を圧倒する強さを見せた。

 

最後は救援に駆け付けたAとの合体技『スペースZ』を喰らい、嘗てと同じ様に目が飛び出して、真っ二つになった。




新話、投稿させて頂きました。

遂に登場したクレナイ ガイ。
カブト・ザ・キラーを退け、何やらレイラとクラーラから熱い感情を向けられる。
しかし、和んでいる暇は無い。

巨大化したカブト・ザ・キラーと超獣共と戦う為に変身。
ウルトラマンオーブの登場です。
ゼロも変身し、ゼットンも登場。
先ずはドラゴリーとバラバを撃破。

次回、ゼロがカブト・ザ・キラーと対峙しますが、そこで思わぬ展開が………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター13『悪魔、降臨』

チャプター13『悪魔、降臨』

 

異次元超人 カブト・ザ・キラー

 

スペースビースト イズマエル 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

「フッ! ハッ! オリャアッ!!」

 

「ヌアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

両手に握ったゼロスラッガーと、両腕の鋏で激しく斬り合いを繰り広げるゼロとカブト・ザ・キラー。

 

「ヌアアッ!!」

 

「ハッ!!」

 

カブト・ザ・キラーの両腕同時の攻撃を、腕をクロスさせてゼロスラッガーで受け止めるゼロ。

 

「死ねぇっ! ウルトラマン!! ヤプール様の怨敵よぉっ!!」

 

「ったく、ヤプールのしつこさにも参るぜ! テメェみてぇな信奉者なんて生み出してよぉ!」

 

「黙れ! 我が神を侮辱するかっ!?」

 

「あの陰険野郎が()だなんて、冗談も大概にしやがれっ!! エメリウムスラッシュッ!!」

 

其処でゼロは、不意を衝く様にエメリウムスラッシュを発射!

 

「!? グアアアアアアァァァァァァァッ!?」

 

顔面に真面に喰らったカブト・ザ・キラーが、白煙を上げて蹌踉(よろ)めき後退(あとずさ)る。

 

「オノレェッ!!」

 

カブト・ザ・キラーは腕をL字に組み、ワイドゼロショットを放つ。

 

「ハアッ!!」

 

其れに対し、ゼロもゼロスラッガーを頭に戻して“本家本元の”ワイドゼロショットを放つ。

 

ゼロのワイドゼロショットと、カブト・ザ・キラーのワイドゼロショットが激突!!

 

一瞬、均衡の様子を見せたが……

 

「オリャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!」

 

ゼロが気合を入れる様に叫んだかと思うと、ゼロのワイドゼロショットがカブト・ザ・キラーのワイドゼロショットを圧倒!!

 

「!? ウガアアアアァァァァァーーーーーーッ!?」

 

そのままゼロのワイドゼロショットを喰らい、爆発と共に吹き飛ばされるカブト・ザ・キラー。

 

「ヘッ! “猿真似の技”で、俺に勝てると思ってたのかよ!?」

 

「オ、オノレェ………」

 

そう吐き捨てるゼロの前で、未だ致命的なダメージには至っていなかったのか、カブト・ザ・キラーが立ち上がる。

 

「ゼロさん!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

と其処で、バラバとドラゴリーを片付けたオーブ(オリジン)とゼットンがゼロの両隣に並び立つ。

 

「ぐうっ!?」

 

「カミンスキー。お前の負けだ」

 

『諦めろ、カミンスキー』

 

苦い声を漏らしたカブト・ザ・キラーに、オーブ(オリジン)と誠十郎がそう言い放つ。

 

「………フ………フフフ………フハハハハハハハッ!!」

 

すると突然、カブト・ザ・キラーは狂った様に笑い始める。

 

「! 何が可笑しいっ!?」

 

「………何故私が、“()()()()()()エネルギーを吸収した”のか、分かりますか?」

 

ゼロが問い質すと、カブト・ザ・キラーはそう返す。

 

「何だとっ!?」

 

「全ては“我が神(ヤプール)を蘇らせる為”です!!」

 

そう言った瞬間、カブト・ザ・キラーの身体からクラーラから吸収したエネルギーが溢れ始める。

 

「野郎! まさかヤプールを!?」

 

『!? 蘇らせる積りだって言うのか!?』

 

「さあご復活ください!! ヤプール様あああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

カブト・ザ・キラーの絶叫とも取れる叫びと共に、溢れ出ていたエネルギーが天に向かって放出される。

 

放出されたエネルギーが、空の1点にヒビを入れる。

 

其処から超獣が出現する時の様に、ドンドンとヒビが広がって行く。

 

「! マズイッ!!」

 

「ヤプール様ぁっ!! 今1度そのお姿をおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

ゼロが焦った声を挙げ、再度カブト・ザ・キラーの絶叫が木霊したその瞬間!!

 

「“そぉれを待っていた”ぞぉ、カミンスキー」

 

スタジアムの片隅に現れたジェネラルAがダークリングを取り出し、2枚の怪獣カード………『ペドレオン』と『バグバズンブルード』のカードをリードした。

 

すると、リードしたカードが怪しい光を放ちながら“1枚の()()カード”へと変わる。

 

『イズマエル』

 

ダークリングからくぐもった闇の声が響くと、カードを挿し込んでいたのとは反対側の方向から赤い竜巻の様なエネルギーが放たれ、空のヒビへと命中する。

 

途端に、空に入っていたヒビの色が赤から紫へと変わる!

 

「!? 何っ!?」

 

「!? 何だっ!?」

 

『「!?」』

 

カブト・ザ・キラーにとっても想定外の事の様で、ゼロ・誠十郎・オーブ(オリジン)と同じ様に動揺する。

 

やがて、空に入っていたヒビの部分がガラスの様に割れたかと思うと………

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

其処から、まるで“複数の怪獣が合体した”様な外見をした怪獣が咆哮と共に現れる!

 

『!? ゼロ! アレはまさかっ!?』

 

その怪獣を見て、誠十郎は戦慄を覚える。

 

何故なら、その怪獣を構成している体の一部に、先日退けた恐るべき敵………

 

『スペースビースト』の意匠が有ったからだ!!

 

「ああ、間違い()え。奴はスペースビースト………しかも複数のスペースビーストが合体した()()()ビースト、『イズマエル』だ!!」

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

ゼロがそう声を挙げる中、イズマエルは再び咆哮を挙げてカブト・ザ・キラーの前に降り立つ。

 

「ば、馬鹿なっ!? 何故貴様の様な奴が!? 私が蘇らせようとしたのはヤプール様………」

 

と、カブト・ザ・キラーが完全に動揺していると………

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

イズマエルが、カブト・ザ・キラーを抱き抱える様に捕まえ、そのまま身体の至る所に存在する頭部の口で貪り喰らい始めた!!

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

悲鳴を挙げるカブト・ザ・キラーの身体が、ドンドン喰われて無くなって行く。

 

「ヤ、ヤプール様ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

自らが信奉するヤプールに助けを求め、右手を天に上げるカブト・ザ・キラーだったが、その右手もイズマエルに噛み付かれ、喰われてしまった。

 

『! カミンスキー………』

 

「自業自得だ。同情はしねえが………」

 

無残な最期を遂げたカブト・ザ・キラーことカミンスキーに、誠十郎とゼロは複雑な様子を見せる。

 

「ご苦労だったな、カミンスキー………フハハハハッ!!」

 

ジェネラルAはカミンスキーを嘲笑い、その場から消えて行った。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

と、カブト・ザ・キラーを喰らい終えたイズマエルが、今度はゼロ達に狙いを定める。

 

「! 来るぞっ!!」

 

「!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ゼロがそう叫ぶと、オーブ(オリジン)とゼットンが身構える。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

次の瞬間、イズマエルは頭部の口から熱線を中心に身体の各所からも熱線・電撃・火球を一斉に放った!!

 

「! ゼットンッ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

クラリスが叫ぶと、ゼットンが前に出てバリアを展開。

 

イズマエルの一斉攻撃を受け止めるが………

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

イズマエルの咆哮と共に攻撃の激しさが増してバリアにヒビが入ったかと思うと、そのままブチ破って一斉攻撃がゼットンを直撃した。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

爆発と共に吹き飛ばされ、地面に倒れるゼットン。

 

「! ゼットンッ!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

クラリスの悲鳴の様な声が響く中、ゼットンは起き上がろうとしたが、そのまま力尽きる様に地面に横たわった。

 

「! 戻って! ゼットン!!」

 

慌てて、ゼットンを魔導書へと戻すクラリス。

 

「ゼットンのバリアを破って1撃で………」

 

「想像以上に厄介な奴みてぇだな」

 

オーブ(オリジン)とゼロがそう言い合いながら、油断無く構えを執る。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

すると其処へ、イズマエルが2人に向かって突進して来る。

 

ゼロとオーブ(オリジン)よりも頭1つ大きいにも関わらず、巨体に似合わぬスピードで一瞬にして両者に迫る。

 

「! うおっ!?」

 

「ぐうっ!?」

 

何とか受け止めた2人だが、イズマエルを止める事は出来ず、2人掛かりにも関わらずドンドン押されて行く。

 

「ぐうっ! 何てパワーだっ!!」

 

「合体しているだけはあるな!!」

 

「ゼロさん!!」

 

「花組! 逃げろっ!!」

 

其処へクラリスの声が響くと、ゼロは花組に向かってそう叫んだ!

 

「! けどっ!!」

 

「コイツは俺達に任せるんだ! 早く行けっ!!」

 

今度は初穂が声を挙げるが、ゼロが更にそう続けた。

 

「………撤退しましょう」

 

「!? アナスタシアッ!?」

 

其処でアナスタシアがそう言い、あざみが驚きの声を挙げる。

 

「残念だけど、今回ばかりは“相手が悪過ぎる”わ。私達が居た処で、却って()()()()よ」

 

「「「!!………」」」

 

アナスタシアの言葉を自覚しているのか、初穂・クラリス・あざみが悔しそうに沈黙する。

 

「さ、早く!」

 

「ゼロ………」

 

「ゴメンなさい………」

 

「あざみ達は無力………」

 

悔しさを滲ませながらも、初穂達はスタジアムから撤退して行った。

 

「すまねえ………」

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

と、ゼロが申し訳無さそうにしていたところへ、イズマエルが右腕を振り被り、『スペースビースト・ノスフェル』の鋭い爪が生えた手で2人を斬り裂く!!

 

「!? うわっ!?」

 

「うおわっ!?」

 

火花を上げてブッ飛ばされる2人。

 

「チイッ! エメリウムスラッシュッ!!」

 

「オーブフレイムカリバーッ!!」

 

反撃にとゼロがエメリウムスラッシュ、オーブ(オリジン)がオーブカリバー『火』のエレメントを光らせ、オーブカリバーで円を描いて出現させた円形のリング………『オーブフレイムカリバー』を放つ。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

しかしエメリウムスラッシュは通じず、オーブフレイムカリバーは『スペースビースト・ゴルゴレム』の頭部で形成された左手で掻き消されてしまう。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

そして、またも咆哮と共に一斉攻撃を見舞うイズマエル。

 

「!? うおわっ!?」

 

「おうわっ!?」

 

真面に喰らったゼロとオーブ(オリジン)が倒れ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタジアムからやや離れた場所にて………

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

「! ゼロさん………!」

 

「「ガイ………」」

 

白秋・すみれ・カオルと共に避難したさくら・クラーラ・レイラが、スタジアムの方から断続的に聞こえて来るイズマエルの咆哮と爆発音に不安気な声を挙げる。

 

「………カオルさん、村雨さん。すみませんが、天宮さん達をお願いします」

 

すると其処で、すみれがそう言い残すとスタジアムの方へと戻って行った。

 

「! すみれ様!?」

 

「神崎司令!?」

 

「心配するな。彼女は“彼女に出来る事”をしに行ったんだ」

 

すみれの突然の行動にカオルとさくらが驚きの声を挙げるが、1人白秋だけが“分かっている”かの様子でそう言う。

 

「…………」

 

やがてすみれは、物陰へと隠れると………

 

エボルトラスターを取り出し、抜き放った!

 

「シュアッ!!」

 

光と共にネクサス(アンファンス)が現れ、スタジアムへと飛んだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

咆哮と共に、倒れているゼロとオーブ(オリジン)に向かって来るイズマエル。

 

「ぐうっ!………強い!」

 

『前に戦った奴等とは大違いだ………』

 

「多分、前に現れたスペースビーストはコイツが送り込んだ“尖兵”だったってワケか………」

 

オーブ(オリジン)がオーブカリバーを杖代わりに起き上がり、誠十郎の言葉にそう推察するゼロも何とか起き上がる。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

と其処で、イズマエルが再び口から熱線を放つ。

 

………しかし、その瞬間!!

 

上空から光が降りて来て、イズマエルの熱線を掻き消した!!

 

「『「!?」』」

 

ゼロと誠十郎、オーブ(オリジン)が驚きを示すと………

 

「…………」

 

光の中からネクサス(アンフォンス)が出現した!!

 

「! 貴方は………ネクサスさん!?」

 

再度驚きを示すオーブ(オリジン)。

 

歴代のウルトラ戦士達の知識を持ち、何人かとは共闘した事の有るオーブも、ネクサスと出会うのはコレが初めてだった。

 

「シュアッ!!」

 

ネクサスはアンフォンスからジュネッスバイオレットへと変身。

 

「シュウアッ!!」

 

そして両手の拳を合わせ、アームドグレイヴを出現させて手に取る。

 

「良し! 行くぞっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

「セアッ!!」

 

其処でゼロが声を挙げ、3人のウルトラマンはイズマエルに向かって行った!!

 

「デエエヤァッ!!」

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

先ずは、オーブ(オリジン)がオーブカリバーで斬り掛かったが、イズマエルは右手でオーブカリバーを受け止める。

 

「シュウアッ!!」

 

其処へネクサス(ジュネッスバイオレット)が、アームドグレイヴでガラ空きになっていた右脇を斬り付ける。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?

 

「オリャアッ!!」

 

初めて怯んだ様子を見せたイズマエルの横っ面に、ゼロがウルトラゼロキックを叩き込む。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?

 

蹌踉けたイズマエルだが、寸前で踏み止まって倒れる事を阻止すると、ゼロに向かって一斉攻撃を見舞う。

 

「ハアッ!!」

 

「セイヤァッ!!」

 

ゼロは地面の上を転がって回避し、その隙にオーブ(オリジン)が、今度は身体を独楽の様に回転させて横薙ぎを繰り出す。

 

その1撃は、イズマエルの左肩の突起を斬り飛ばす!

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?

 

「シュアッ!!」

 

悲鳴の様に咆哮を挙げるイズマエルに向かって、ネクサス(ジュネッスバイオレット)がアームドグレイヴを振り回し、其処からパーティクル・フェザーを次々に放つ。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?

 

パーティクル・フェザーの連射を受けたイズマエルは、火花を伴った爆発を次々に上げて後退る。

 

『良し! コレなら!!』

 

「行けるぞ!!」

 

光明が見えて来て、誠十郎とゼロが声を挙げる。

 

だが、その瞬間!!

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

イズマエルが大きく咆哮したかと思うと、背中の部分が盛り上がり始める。

 

「「!?」」

 

「何っ!?」

 

『何だっ!?』

 

ゼロ達が驚いた次の瞬間!!

 

盛り上がっていた背中の部分が弾け飛び、其処から“巨大な黒い翼”“が出現した!!

 

「「「!?」」」

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

思わず3人のウルトラマン達が身構える中、イズマエルは咆哮と共にその翼を羽ばたかせ、空へと舞い上がった。

 

『………悪魔』

 

その姿を見て、誠十郎は思わずそう呻く。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

その次の瞬間!!

 

更に激しさを増したイズマエルの一斉攻撃が、上空から3人のウルトラマンに降り注いだ!!

 

「!? うおわっ!?」

 

「ぐああっ!?」

 

「シュエアッ!?」

 

その攻撃は、試合会場どころかスタジアムをも一瞬にして消し飛ばし、ゼロ達を爆炎の中へと消し去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『異次元超人 カブト・ザ・キラー』

 

身長:40メートル

 

体重:4万3000トン

 

能力:コピーしたゼロの必殺技

 

エースキラーの強化体。

 

バキシマムと同じく、児童雑誌で行われた「エースキラー強化改造計画」最優秀作品が元ネタ。

 

残念ながら、此方も映像作品への出演は無い。

 

ゼロの必殺技を使うのは本作オリジナルの設定で、原典ではエースキラー同様ウルトラ兄弟の必殺技を使う事が出来る。




新話、投稿させて頂きました。

いよいよカミンスキーのカブト・ザ・キラーとの決戦。
猿真似の技など通用せず、圧倒するゼロでしたが、追い詰められたカミンスキーは何とヤプール復活を狙う。

しかし、それを読んでいたジェネラルAの介入により、何と最強のスペースビースト『イズマエル』が召喚されてしまう!!
カブト・ザ・キラーを食らい、圧倒的な力でゼットンを降して、ゼロ達も窮地に追い込むイズマエル。

すみれのネクサスが参戦するも、イズマエルの力は衰え知らず。
今までにない絶体絶命な状況。
果たして、如何乗り切るのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター14『光の絆、繋いでみせます!』

チャプター14『光の絆、繋いでみせます!』

 

スペースビースト イズマエル

 

???

 

伝説妖精 ムゲラ 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタジアムからやや離れた地点………

 

「ああ! スタジアムが………」

 

イズマエルの攻撃で吹き飛んだスタジアムが在った場所を見て、さくらが震えた声を漏らす。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

「正に悪魔だな………」

 

その上空に翼を羽ばたかせて浮かび、咆哮を挙げているイズマエルを見て、白秋が呟く。

 

「さくらっ!! 無事か!?」

 

とそこで、ゼロに言われてスタジアムから撤退していた初穂達が合流する。

 

「! 初穂! 皆!! 如何して!?」

 

「すまねえ。ゼロに言われて撤退したんだ」

 

「残念ですが、この戦いで私達に出来る事はありません………」

 

「せめてゼロ達の邪魔にならない様にするしかなかった………」

 

さくらの声に、初穂・クラリス・あざみが悔しさを滲ませた声で答える。

 

「…………」

 

アナスタシアは沈黙しているが、彼女からも悔しさが伝わって来る。

 

「そんな………」

 

そんな初穂達の様子に、さくらも言葉を失う。

 

「………姉さん」

 

とそこで、クラーラがレイラに声を掛ける。

 

「! クラーラ………」

 

「…………」

 

顔を向けて来たレイラに、ジッと視線を向けるクラーラ。

 

「…………」

 

その視線を受けて、レイラはクラーラが何を言いたいのか察する。

 

「…………」

 

更に、傍でその様子を見ていた白秋も、2人が何をする積りなのかを察する。

 

「皆さん、今は兎に角避難を………」

 

カオルがそう促した時………

 

「カオルさん、ゴメンなさい」

 

「私達は戻ります」

 

クラーラとレイラがそう宣言した。

 

「!? えっ!?」

 

「戻るって………」

 

「!? まさか、スタジアムに!?」

 

カオルが驚き、さくらとクラリスがまさかと言う顔をする。

 

「オイ! 何言ってんだ!?」

 

「私達が行ったところで、出来る事は無いわよ」

 

初穂とアナスタシアがそう言って止めようとするが………

 

「確かに、私達が行っても、共に戦う事は出来ない………」

 

「でも! 『届ける』事は出来る!!」

 

しかし、レイラとクラーラはそう反論する。

 

「『届ける』………?」

 

「私達はガイを………皆を信じていると」

 

「ウルトラマンは負けない………その想いを、届けたいの!!」

 

あざみが首を傾げると、レイラとクラーラはそう言葉を続けた。

 

「「「「「!!………」」」」」

 

2人の言葉に、花組の面々はハッとした様な表情となる。

 

「確かに、今の我々では彼等と共に戦う事は出来ないかも知れない………だが、彼等を信じる心は誰よりも持っているのではないかい?」

 

そこで更に、白秋も言って来た。

 

「「「「「…………」」」」」

 

考え込む様な様子を見せた花組だったが………

 

「………行きましょう!」

 

「「「「!………」」」」

 

やがてさくらが決心した様にそう言うと、初穂達が一瞬驚いた様子を見せたが、頷いて見せる。

 

そして、初穂機がさくら、クラリス機がレイラ、あざみ機がクラーラ、アナスタシア機が白秋を肩へと乗せる。

 

「! み、皆さんっ!?」

 

「カオルさん、ゴメンなさい! 先に逃げて下さい!!」

 

慌てるカオルを尻目に、さくら達は再度スタジアムへと向かったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタジアム跡………

 

「ぐうう………」

 

「くう………」

 

「シュア………」

 

焼野原となったスタジアム跡に膝を着いているゼロ、オーブ(オリジン)、ネクサス(ジュネッスバイオレット)。

 

全員のカラータイマーとコアゲージが点滅している。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

そんなウルトラマン達を勝ち誇るかの様に、上空から見下ろしているイズマエル。

 

「クッソォ………流石は最強のスペースビーストだぜ………」

 

「このままじゃ………」

 

ゼロとオーブ(オリジン)がそう言い合っていると………

 

「ゼロさん!!」

 

「ガイッ!!」

 

さくらとクラーラの声が響き、花組の面々が再びスタジアム跡へと現れた!!

 

「!? クラーラ!? レイラ!?」

 

「! バカ! 何戻って来てんだ!!」

 

驚くオーブ(オリジン)と、思わず怒声が飛ぶゼロだったが………

 

「頑張れー! ゼロさーん!!」

 

「負けないでー! ガイーッ!!」

 

「負けんじゃねえぞぉっ!!」

 

「立ち上がって下さーいっ!!」

 

「ゼロ達はきっと勝つ!!」

 

「そう信じているわ」

 

さくらとクラーラが叫んだのを皮切りに、全員がゼロ達に向かって声援を送り始める。

 

「お前等………」

 

「今の私達は無力かも知れない………」

 

「だが、君達を信じる心は誰よりも持っている積りだ」

 

レイラと白秋からもそう声が飛ぶ。

 

「へっ………ったく、しょうがねえ奴等だぜ」

 

「信じてくれる人が居るならば、俺達は………ウルトラマンは、無敵だ!!」

 

「シュアッ!!」

 

その声援を背に受けながら、ゼロ達は立ち上がる。

 

ボロボロのその姿は痛ましい………

 

だが、それでも………

 

必ず勝つと言う確信を感じさせてくれた!!

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

ネクサス(ジュネッスバイオレット)の『エナジーコア』が発光を始めた。

 

「!!」

 

ネクサス(ジュネッスバイオレット)自身も驚いていると、やがてその光がエナジーコアの中心の収束し、光の塊となってオーブの方へ飛んだ!

 

「!?」

 

放たれた光の塊は、オーブのカラータイマーに吸い込まれる様に消え、インナースペース内のガイの手元に現れる。

 

「!? コレはっ!?」

 

ガイが驚きを露わにしていた瞬間、光が弾け、中から『ウルトラマンネクサスのウルトラフュージョンカード』が出現した。

 

「ネクサスさんの力………使わせて頂きます!!」

 

それを見たガイは、オーブリングを構える。

 

「ウルトラマンさん!」

 

『ウルトラマン!』

 

『ヘァッ!!』

 

先ず初代ウルトラマンのカードをリードすると、ガイの左隣に初代ウルトラマンのヴィジョンが出現。

 

「ネクサスさん!」

 

『ウルトラマンネクサス!』

 

『シュアッ!!』

 

続いてネクサスのカードをリードすると、右隣にネクサスのヴィジョンが出現する。

 

「光の絆、繋いでみせます!」

 

そして、オーブリングをまるでエボルトラスターを引き抜く様な動作で天に掲げてトリガーを押した。

 

『フュージョンアップ!』

 

オーブリングから声が響くと、オーブオリジンとなったガイに、ウルトラマンとネクサスのヴィジョンが重なる。

 

『ウルトラマンオーブ! スペシウムシュトローム!』

 

初代ウルトラマンとネクサスの意匠を併せ持つ形態………

 

『スペシウムシュトローム』となったオーブが光の中から飛び出す!!

 

「受け継がれてゆく魂の絆!」

 

ポーズを決めながら、オーブ(スペシウムシュトローム)はそう言い放つ。

 

「! あの姿はっ!?」

 

「ネクサスさん………?」

 

オーブの姿がネクサスと良く似た姿となった事に軽く驚くさくらとクラリス。

 

「シュウアッ!!」

 

とそこで、オーブ(スペシウムシュトローム)が空へと舞い上がる。

 

そして凄まじい飛行スピードで、イズマエルを肉薄し、殴り飛ばした!!

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?

 

バランスを崩して錐揉みしながら落下したイズマエルだったが、すぐに空中で体勢を整えると、オーブ(スペシウムシュトローム)に向かって一斉攻撃を放つ。

 

「セアッ!!」

 

だが、オーブ(スペシウムシュトローム)は宙返りやバレルロールと言った、まるで戦闘機のマニューバの様な飛行で一斉攻撃を躱す。

 

「銀色の………流星」

 

そんなオーブ(スペシウムシュトローム)の姿を見たレイラが思わずそう呟く。

 

「シュアッ!!」

 

そこへ更にネクサス(ジュネッスバイオレット)が参戦。

 

オーブ(スペシウムシュトローム)に気を取られていたイズマエルを、アームドグレイヴで斬り付ける!

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?

 

袈裟懸けに傷を負ったイズマエルは、悲鳴の様な咆哮を挙げながらも、怒りを露わに更に激しい一斉攻撃を放つ。

 

「シュアッ!!」

 

「ヘヤッ!!」

 

しかし、高速で飛び回るオーブ(スペシウムシュトローム)とネクサス(ジュネッスバイオレット)を捉える事は出来ない。

 

「良し! 今だっ!!」

 

その瞬間、地上に残っていたゼロがウルティメイトブレスレットを構えたかと思うと………

 

巨大な超弓状の形態………『ファイナルウルティメイトゼロモード』へと変形させた。

 

「ハアッ!」

 

ファイナルウルティメイトゼロモードのウルティメイトイージスを構えると、両端部分から出現した光の弦を引きながら、空中のイズマエルへと狙いを定めるゼロ。

 

ウルティメイトゼロ最大の技である『ファイナルウルティメイトゼロ』の体勢だ。

 

「…………」

 

「オイ、ゼロ! 何やってんだ!? 早くて撃てよ!!」

 

しかし、そのまま動かなくなった為、初穂が焦った様に声を挙げる。

 

「駄目だ! 今撃っても奴には効かねえ! ギリギリまでエネルギーをチャージしねえと!!」

 

ゼロがそう返すと、ウルティメイトイージスのクリスタル部分の1つに光が点る。

 

「けど、それまでアイツに気づかれないか………」

 

まだオーブ(スペシウムシュトローム)とネクサス(ジュネッスバイオレット)の方に注意が行ってるイズマエルを見ながら、あざみが不安そうに言う。

 

「祈るしかないわね………」

 

「「「「…………」」」」

 

アナスタシアがそう言うと、さくら・クラリス・レイラ・クラーラは両手を組んで祈り始めるのだった。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

オーブ(スペシウムシュトローム)とネクサス(ジュネッスバイオレット)に攻撃を当てられなくなり、苛立ちが募って行くイズマエル。

 

「シュアッ!!」

 

「ヘヤッ!!」

 

飛び回っているオーブ(スペシウムシュトローム)とネクサス(ジュネッスバイオレット)も、回避一片では無く、共に三日月型の光刃『ボードレイ・フェザー』を放って反撃している。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?

 

被弾したイズマエルの身体から次々に火花が飛び散る。

 

だが、致命傷には至っておらず、イズマエルの怒りのボルテージが更に上がる。

 

と、その時………

 

イズマエルは不意に下を向き、ファイナルウルティメイトゼロのチャージを行っているゼロの姿に気づく。

 

「!? 気付かれた!?」

 

「ゼロさん!!」

 

「クソッ! 後少しだってのに!!」

 

クラーラとさくらが叫ぶが、ファイナルウルティメイトゼロモードのウルティメイトイージスには、まだ光の宿っていないクリスタルが1つだけ有った。

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

すぐさまゼロに向かって急降下するイズマエル。

 

「! マズイッ!!」

 

「シュアッ!!」

 

オーブ(スペシウムシュトローム)とネクサス(ジュネッスバイオレット)が慌てて後を追うが間に合わない!

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!

 

ファイナルウルティメイトゼロモードのウルティメイトイージスを構えているゼロに向かって、熱線の発射態勢に入るイズマエル。

 

「間に合ええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

ゼロの叫びが木霊する中、遂に熱線が放たれる………

 

 

 

 

 

かと思われた瞬間!!

 

 

 

 

 

何処からともなく飛来した『赤黒い三日月形の光刃』が、イズマエルの左目に命中!!

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?

 

左目が潰れ、イズマエルが悲鳴の様な咆哮と共に悶える。

 

「!?」

 

「今のはっ!?」

 

その三日月形の光刃を見てレイラとクラーラが驚きを示す。

 

と、そこで!!

 

遂にファイナルウルティメイトゼロモードのウルティメイトイージスの最後のクリスタルに光が点る。

 

「よっしゃあっ! 喰らええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

空かさずゼロは、ファイナルウルティメイトゼロをイズマエルに向かって放つ。

 

「ウルトラフルバーストッ!!」

 

そこでオーブ(スペシウムシュトローム)も、空中でインサイドループした後に胸と両手から2種類の光線を発射する必殺技『ウルトラフルバースト』を放つ。

 

「シュウワッ!!」

 

そしてネクサス(ジュネッスバイオレット)も、必殺のフェニックス・シュトロームを放つ!!

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?

 

流石の3体のウルトラマンの必殺技に耐える事は出来ず、分子レベルで分解された上で燃やし尽くされ、完全消滅した。

 

「ハアッ!!」

 

戻って来たファイナルウルティメイトゼロモードのウルティメイトイージスを回収して構えたゼロの両隣に、オーブ(スペシウムシュトローム)とネクサス(ジュネッスバイオレット)が降り立つ。

 

何時の間にか傾いていた太陽が、3人のウルトラマンの姿を照らし、幻想的な光景を作り出す。

 

「やったぜっ!!」

 

「ゼロさん………」

 

「ガイ………」

 

初穂が歓声を挙げ、他の面々も喜びを露わにする中、頬を染めながらゼロとオーブ(スペシウムシュトローム)の姿を見上げるさくらとレイラ。

 

「…………」

 

そんな中で、突然クラーラが、あざみ機から飛び降りると、何処かへと駆け出した。

 

「!? クラーラ!?」

 

「如何したの!?」

 

レイラとさくらの声も聞こえていない様子で、クラーラは走りを止めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタジアム跡の一角………

 

「ぐ、ぐううううう………」

 

瓦礫に寄り掛かる様に手を着き、苦しそうな声を漏らしている人影………

 

カミンスキーだ。

 

しぶとい事に、生き延びていた様だ。

 

しかし、その身体は所々が結晶状に変化しており、今にも崩れ落ちそうになっている。

 

「まだです………まだ終わりませんよ………私は………神の使徒なのですか」

 

だが、その目に宿る執念は、微塵も衰えていない。

 

「そうです! 私こそが神の使徒! 我が神・ヤプール様の復活を成すまで! 私は決して………」

 

と、そこまで言いかけた瞬間!!

 

その胸から、銀色の刃が突き出した。

 

「………あ?」

 

思わず間抜け声を漏らしながら、カミンスキーが振り返ると………

 

「残念だが、お前はもうお終いだ………」

 

日本刀の様な刀を手に、トゲトゲした見た目の魔人の姿が在った。

 

「き、貴様は!?………」

 

「フンッ!!」

 

驚くカミンスキーの身体に突き刺さっていた刀………蛇心剣を振り上げる魔人。

 

「ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

顔が縦に半分に割れたカミンスキーが汚い悲鳴を挙げながら魔人の方を振り返ったかと思うと………

 

「蛇心剣抜刀斬!」

 

魔人は蛇心剣でカミンスキーを滅多斬りにした!!

 

「あ………」

 

最後は情けない声と共に、カミンスキーの身体はバラバラになって爆発。

 

魔人の足元に、結晶化していたカミンスキーの身体の一部が転がる。

 

「ハッ………」

 

それを鼻で笑ったかと思うと、徐に踏み潰す魔人。

 

そして、魔人の姿が怪しく光ったかと思うと、黒地に赤のスマートなスーツを着た青年の姿となる。

 

「やれやれ………結局尻拭いかよ」

 

青年………『ジャグラスジャグラー』は、疲れた様に肩を落とす。

 

「ダークリングの気配を感じて来てみたは良いが、まさか奴が持ってるとはな………」

 

忌々しそうに表情を歪ませるジャグラー。

 

「しゃーねえ………今回は諦めるか」

 

そう呟くと踵を返し、その場から去ろうとする。

 

と、そこへ………

 

「ジャグ兄!」

 

「!? ゲッ!?」

 

聞こえて来た声に露骨に嫌そうな顔をするジャグラー。

 

その表情のまま振り返ると………

 

「やっぱりジャグ兄だ!」

 

嬉しそうな笑顔を浮かべているクラーラの姿が在った。

 

「クラーラ………」

 

「ジャグ兄ぃ!」

 

嫌そうな顔のままのジャグラーに、クラーラは駆け寄って抱き着く。

 

「さっきの攻撃、やっぱりジャグ兄の新月斬波だったんだ!」

 

「チッ………お前の前で使ったのは失敗だったぜ」

 

「ジャグ兄、如何してそんな顔してるの?」

 

「お前のせいだよ………」

 

相変わらず嫌そうな顔のままそう言うジャグラー。

 

しかし、それでもクラーラを振り解こうとはしていない………

 

「むう~、ジャグ兄、またそんな事言って………まだガイと喧嘩してるの?」

 

「喧嘩じゃねえって言ってんだろ。アイツとは相容れないだけだ」

 

「でも、友達だったんでしょう?」

 

「友達じゃねえよ………」

 

「嘘! だってジャグ兄、ガイと一緒に戦ってた時、凄く息が合ってたじゃない!」

 

「…………」

 

もう話すのも嫌になってきたのか、ジャグラーは沈黙する。

 

 

 

 

 

実はジャグラーは、以前にもこの地球を訪れた事があった。

 

『降魔人間』なる存在を知った彼は、その力を手に入れようとしたのだ。

 

それを察知したガイも、ジャグラーを追って参上。

 

その途中で白秋とも出会う。

 

彼女からヤマト星人と降魔の事を聞かされ、更に研究所で乱暴な扱いをされていたレイラとクラーラを見て、思う所が有ったのか、ジャグラーは計画を変更。

 

成り行きでガイと協力し、レイラとクラーラを助け出し、研究データを全て破壊したのだ。

 

その際に、レイラはガイに、クラーラはジャグラーへ好意を抱いたのだ。

 

そして2人をナターリャと共に人目に付かない地へと誘った後………

 

その後、『巨大人工頭脳 ギルバリス』の存在を知ったジャグラーはそちらへと向かい、ガイは後輩に当たる『ウルトラマンジード』の元へと向かったのだ。

 

 

 

 

 

「離せ。俺はもう行く」

 

そこで漸くクラーラを引き剥がし、その場から去ろうとする。

 

「えっ!? ガイや姉さんに会わないの?」

 

「良いんだよ、俺は………」

 

「ガイと姉さんの邪魔したくないの? やっぱりジャグ兄は優しいね」

 

「………じゃあな」

 

もうツッコム気力も無いのか、その場を後にしようとするジャグラー。

 

「あ、待ってっ!!」

 

しかし、クラーラはそんなジャグラーの袖を掴んで再度引き留める。

 

「何だよ………?」

 

「ジャグ兄。ちょっと屈んで」

 

「あ?」

 

「良いから、早く」

 

「…………」

 

渋々と言った様子でクラーラの前に屈み込むジャグラー。

 

「よいしょ、よいしょ………」

 

するとクラーラは、ジャグラーの髪を整え始める。

 

「オイ、何やってんだ?………」

 

「ちょっと待って、もう少し………出来た!」

 

やがてクラーラは、ジャグラーの髪型をオールバックに決める。

 

「うん、似合う! 前からこの髪型、ジャグ兄に似あうんじゃないかって思ってたんだ」

 

「………ハア~。もう良いか? 今度こそ行くぞ」

 

呆れた様に溜息を吐きながらジャグラーは立ち上がり、今度こそその場を後にする。

 

「あ! ビランキさんに会ったら、優しくしてあげなきゃ駄目だよー!」

 

「ウルセェッ!!」

 

最後のクラーラからの声に思わず怒鳴り返すジャグラー。

 

「ったく………それにしても、華撃団とか言ったか? この星の都市を守る組織………そこ隊長がウルトラマンゼロか………」

 

そこでふと、華撃団の事を思い遣る。

 

「隊長、ね………フフ………それも面白いかもな。名前如何すっかなぁ………ジャグラー………蛇………蛇倉………」

 

闇の笑みを浮かべながら、ジャグラーはスタジアム跡から姿を消すのだった。

 

「………ジャグ兄」

 

ジャグラーが居なくなったのを確認したクラーラは、少し寂しそうな表情を浮かべた。

 

「クラーラッ!」

 

「此処に居たのか」

 

とそこへ、さくらとレイラ、続いてガイを筆頭に、花組の面々が姿を現す。

 

「あ、皆………」

 

「急に居なくなったから心配したよ」

 

「誰か居たの?」

 

クラーラに向かってさくらとレイラがそう言う。

 

「………ううん。誰も居なかったよ」

 

しかし、クラーラはそう言って誤魔化した。

 

「…………」

 

だが、ガイだけは心当たりを感じていたが、敢えて口に出さなかったのだった。

 

何はともあれ………

 

後程通達された事だが………

 

世界華撃団大戦・第2回戦は………

 

帝国華撃団が勝利したとされ………

 

花組は遂に、準決勝へと駒を進める事になったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2回戦が有った日の深夜………

 

白秋の孤児院にて………

 

「そろそろ来る頃だな………」

 

夜空を見上げているガイがそう呟く。

 

「「…………」」

 

その傍には、レイラとクラーラの姿が在り、更に白秋が保護していた孤児達………ヤマト星人の性質を取り戻した降魔の子供達の姿が在った。

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

更に花組の面々と白秋の姿も有り、共に夜空を見上げている。

 

すると、瞬いていた星の1つがキラリと光を放ったかと思うと、どんどんと大きくなって来る。

 

「来たか」

 

ガイがそう言った瞬間、光は孤児院の上空まで到達。

 

やがて、まるで遊園地の様な大型宇宙船『プレジャーパーク』となった。

 

「うわあ~~………」

 

「凄い………」

 

「本当に遊園地みたいね………」

 

「コレが宇宙船かよ………」

 

「素敵です………」

 

プレジャーパークの姿を見たあざみ・さくら・アナスタシア・初穂・クラリスが感嘆の声を漏らす。

 

とそこで、上空に浮かぶプレジャーパークから一筋の光が降りて来て、そこからややずんぐりとした宇宙人が現れた。

 

「『ムゲラ』。来てくれてありがとう。助かったぜ」

 

『アレが『ムゲラ』か………俺も見るのは初めてだぜ』

 

ガイがそう言う中、ゼロがその宇宙人………N66星系レクリア星の『ムゲラ』の姿を見て、そう呟く。

 

「あ、えっと………初めまして」

 

そのムゲラの前に立ち、ペコリと頭を下げるクラーラ。

 

「…………」

 

ムゲラは微笑みながら、その右手をクラーラに向かって差し出す。

 

「あ………」

 

クラーラは一瞬戸惑いながらも、その右手を取って握手を交わし、笑みを浮かべた。

 

「ムゲラ。同胞達の事をよろしく頼む」

 

「…………」

 

そこで今度は白秋がそう言い、ムゲラは頷いて見せる。

 

ガイの提案により、レイラとクラーラ、そして白秋が保護していたヤマト星人の子供達は、ムゲラの星・N66星系レクリア星で保護される事となった。

 

残念ながら、この地球はまだ異星人と共存出来るレベルには無い………

 

レイラやクラーラ、ヤマト星人達の事が知られれば、また謂れ無き迫害を受ける可能性が高い。

 

そこでガイが友人で会ったムゲラを通じ、彼女達の保護を願い出たのだ。

 

尚、白秋は地球に戻り、更にヤマト星人に先祖返りした者達を探す積りだそうだ。

 

「クラーラ………」

 

さくらがクラーラの前に歩み出る。

 

「さくら………」

 

「元気でね。お別れするのは寂しいけど………何時か必ず、クラーラ達がこの地球で生きて行ける様にしてみせるから」

 

「! うん! 私も、何時か必ず帰って来る! さくらの………掛け替えの無い『友達』の居るこの地球に」

 

「クラーラ………」

 

「…………」

 

さくらとクラーラの目から涙が零れそうになるが、グッと堪える。

 

この別れは一時の物………

 

何時か必ず、この地球で共に生きて行ける日が来る。

 

そう信じているからだ。

 

『ゼロさん。本当なら手助けに残りたいところなんですが………』

 

『気にすんな。コイツ等を無事にレクリア星まで送り届けなきゃならないからな』

 

テレパシーでそう言葉を交わすガイとゼロ。

 

ガイは念の為、プレジャーパークの護衛を務め、レクリア星まで付き添う事になっている。

 

万が一、途中で宇宙怪獣や侵略宇宙人の襲撃を受けないとも限らないからだ。

 

『すみません。送り届けしだい、俺もこの地球に戻って来ます。この不穏な気配を放っておくワケには行きませんからね』

 

『ああ、その時は頼むぜ………オーブ』

 

とそこで、プレジャーパークから再び光が伸びて来て、レイラとクラーラ、ガイ、ヤマト星人の子供達、そしてムゲラを包み込んだ。

 

「皆さん、本当にありがとうございました」

 

「皆、さようなら………ううん! またね!!」

 

最後にレイラが深々と頭を下げてお礼を言い、クラーラが別れを告げようとして、再会の約束へと言い直す。

 

直後に、その姿は光に包まれ、プレジャーパークへと吸い込まれて行った。

 

レイラとクラーラ達を乗せたプレジャーパークは徐々に上昇し、遠ざかって行く。

 

「クラーラーッ! また会おうねーっ!!」

 

それが見えなくなるまで、大きく手を振って見送るさくら。

 

「さくら………」

 

そんなさくらの姿を、背中から優しい目で見つめる誠十郎。

 

「何時の日か来ると良いな………地球人と他の星の人と手を取り合える日が………」

 

『来るさ。必ずな………』

 

誠十郎の呟きに、ゼロは確信を持ってそう返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

初穂「祭りだい!!

 

今日は東雲神社の縁日!!

 

アタシも奉納の神楽を舞うんだ。

 

えっ?

 

神楽を舞う理由?

 

実はな………

 

この東雲神社にはある言い伝えがあるんだ。

 

次回『新サクラ大戦』

 

第5.5話『東雲神社の伝説』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

あ、アンタは、まさか!?………

 

???「物の怪がこの世に現るるのは事の道理なり。されど、その物の怪を打ち破らんとする心。それさえあれば百戦して危うからず」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『イズマエル』

 

身長:60メートル

 

体重:6万1000トン

 

能力:合体しているスペースビーストの全ての力が使える

 

初登場作品:ウルトラマンネクサス第36話『決戦 -フェアウェル-』

 

ネクサス本編に登場した全てのスペースビーストが合体した最強のスペースビースト。

 

その強さは半端では無く、撃墜された事の少なかったナイトレイダーのクロムチェスターを全機撃墜。

 

デュナミストが弱っていたのを差し引いても、ネクサスを圧倒する強さを見せた。

 

この作品に登場した個体は、降魔人間の力を吸収した事により、ザ・ワンの様に翼を持ち、飛翔能力を得た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無幻魔人 ジャグラス ジャグラー』

 

身長:1.95~49メートル

 

体重:100キロ~4万7000トン

 

能力:蛇心剣抜刀斬、蛇心剣新月斬波

 

ガイと同じ惑星O-50の出身で親友だった男。

 

しかし、ガイがオーブの力に選ばれた事で溝が出来、後に決別。

 

その後紆余曲折の末、彼なりの正義で行動する様になり、ガイとは腐れ縁のライバルの様な関係に。

 

演者の熱演のお陰で、非常に高い人気を誇るキャラクターで、彼の仕草は『闇の○○』と称されている。

 

後に『ウルトラマンZ』にて、地球防衛チームの隊長役として出演する事になり、ファンを驚かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『伝説妖精 ムゲラ』

 

身長:130センチ

 

体重:80キロ

 

能力:壊れた物を直したり、傷を癒す事が出来る

 

初登場作品:ウルトラマンコスモス第45話『遊園地伝説』

 

N66星系レクリア星の宇宙人。

 

宇宙旅行中に仲間と逸れ、地球の遊園地『ファンタジーランド』に住み着いた。

 

そこを訪れた子供たちに多く目撃された事から『ファンタジーランドで写真を撮ると映りこむ妖精』という都市伝説となった。

 

その後、迎えにレクリア星の大型宇宙船『プレジャーパーク』が来訪。

 

防衛軍と一触即発となってしまうが、コスモスの介入で事なきを得て、仲間と共に自分の星へ帰って行った。

 

かいじゅうステップワンダバダにも、デフォルメされた『ムゲちゃん』として登場している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラナビ

 

『ウルトラマンオーブ・スペシウムシュトローム』

 

身長:50メートル

 

体重:5万トン

 

オーブが初代ウルトラマンとネクサスのフュージョンカードを使ってフュージョンアップした姿。

 

TV本編には登場していないアーケードゲーム『ウルトラマンフュージョンファイト!』のみで見れる姿。

 

顔つきはネクサスに似ており、カラータイマーもエナジーコア状になっているが、下半身の模様は初代ウルトラマンに近い。

 

必殺技は空中でインサイドループした後に胸と両手から二種類の光線を発射する『ウルトラフルバースト』




新話、投稿させて頂きました。

イズマエルの前に絶体絶命のゼロ達。
しかし、仲間達からの声援を受けて、オーブがスペシウムシュトロームへフュージョンアップ。
オーブ出すと決めた時、スーツが無いフュージョンアップ形態を出したいと思ってまして。
後に登場予定の後輩も、ゲームのみの形態が登場するかも?
ゼロのファイナルウルティメイトゼロ発射までの時間を稼ぎ、見事勝利します。

そしてそれをさり気無くアシストした存在………
お待たせしました!
闇の人こと、ジャグラス ジャグラー登場です。
実は彼がこの地球にやって来た事で、ガイもやって来て、レイラやクラーラに出会ったのです。
幼女に好かれるジャグラー………面白いと思いませんか?
そして彼がこの後何処へ向かったかは、言うまでもありませんね?

そして、レイラとクラーラ、ガイは一旦離脱となります。
残念ながら、この地球はまだ宇宙人と共存出来る環境に無いですからね。
でも、さくらが約束した様に、何時かはそうなる時が来るでしょう。

さて、次回は幕間であり、初穂回です。
ゲーム原作には事実上彼女の回が無かったので、アニメのエピソードを元にオリジナルで作り上げます。
意外なウルトラシリーズのキャラも登場し、更に大きく物語が動く展開もありますので、お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第5.5話『東雲神社の伝説』
チャプター1『不穏な予感』


第5.5話『東雲神社の伝説』

 

チャプター1『不穏な予感』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・格納庫………

 

「う~~ん………コレは駄目だな………」

 

「やはり無茶が祟った様だね………」

 

令士とイデが、格納庫に運び込まれたさくらの無限の残骸を見てそう言う。

 

スタジアム跡から奇跡的に回収出来たが、元々突貫修理だった上に、試合中にカミンスキーによって大破させられていた機体は、最早とっくに限界を超えていた。

 

「そう………ですか」

 

それを聞いて落ち込んだ様子を見せるさくら。

 

無茶をした自覚は有るが、やはり結果を聞くと気分が沈んでしまう。

 

「取り合えず、もし出撃が掛かった時は予備機として保管している三式光武を使うしかないな」

 

「すまない、さくらちゃん。出来る限り、新しい無限を手配出来る様に僕達も頑張るよ」

 

「い、いえ! そんな! 私が悪いんですから、そんな事言わないで下さい!」

 

申し訳無さそうにするイデに、さくらがやや慌ててそう返す。

 

「さくら」

 

「此処にいらっしゃったんですか」

 

とそこで、格納庫にあざみとクラリスが姿を見せた。

 

「あ、あざみ、クラリス。如何したの?」

 

「むう、今日は東雲神社の縁日の日」

 

「皆さんで行きましょうって仰ってたじゃないですか」

 

さくらが訪ねると、あざみが頬を膨らませてそう言い、クラリスが補足する。

 

「! あ! そうだった!! ゴメンね、あざみ! それじゃあ、司馬さん、イデさん。これで」

 

「ああ、気を付けてな」

 

「楽しんで来るんだよ~」

 

慌てて令士とイデに挨拶をすると、さくらはあざみ、クラリスと共に格納庫を後にした。

 

「………しかし、先生。コレは実際、厄介な事態ですよ」

 

「うむ………」

 

それを見届けると、令士とイデは難しい顔になる。

 

霊子戦闘機の手配事態はすぐに済む。

 

問題はそれをさくらに合わせて調整するという事である。

 

一口に霊力と言っても、その性質は1人1人違っており、その為、霊子甲冑も霊子戦闘機も、搭乗する隊員に合わせて調整やカスタマイズを行う必要が有るのだ。

 

「さくらちゃんは元々潜在的な霊力が高い上に、この所は実戦経験の賜物か、それが更に伸びている………」

 

「喜ばしい事だけど、その分霊子戦闘機の調整も難しくなって来ている………」

 

「下手をしたら、無限じゃさくらちゃんの霊力を受け止め切れない可能性が有ります」

 

そう懸念する令士とイデ。

 

実際に彼女の霊力の上昇は凄まじく、偽莫斯科華撃団との件が無くとも、何れ彼女の無限は限界を迎えていた可能性が有る。

 

「如何したものかな………?」

 

考え込むイデは珍しく、困った様な表情を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

幻庵の執務室………

 

「クソッ! クソッ! クソッ!」

 

悪態を吐きながら書類の束を引っ繰り返しているミスターG。

 

「何故私がこの様な事を………」

 

その顔は怒りと屈辱に歪んでいる。

 

世界華撃団大戦の2回戦、帝国華撃団と(偽)莫斯科華撃団の対戦の後………

 

ジェネラルAの工作により、偽莫斯科華撃団の正体や降魔人間の事が世間に知られる事は無かったが、当然ながら多くの情報が秘匿された事と、試合会場にまたも怪獣の出現を許した事で、WLOFの支持は更に低下。

 

預かり知らぬ間に偽物を自国の華撃団扱いされていた露西亜も、遂にWLOFから脱退。

 

現在はウルティメイト華撃団入りの審査を受けている状況である。

 

即ウルティメイト華撃団入りとならなかったのは、降魔人間の研究をしていた事がウルティメイト華撃団側に知られていた為、流石にすんなりにとは行かなかったのだ。

 

それでも、華撃団不在という状況を1日でも早く改善したい露西亜は、各国に低身低頭な姿勢を取り、信頼回復に必死となっている。

 

最早WLOFの権威は地に落ちたも同然。

 

にも拘わらず、ジェネラルAはそれに対し何ら手を打とうとしていない。

 

「ふざけおって………私が今までどんな思いで今の地位を築き上げたと思っているんだ………」

 

降魔皇の為と心底嫌な人間の振りをし続けていた自分の努力を無に帰す様なジェネラルAに恨みを募らせながら、尚も書類を引っ繰り返し続けミスターG。

 

以前、夜叉から受けた報告の内容を探しているのだ。

 

あの開幕式以来(実際はそれよりも更に前からなのだが)、夜叉とは連絡が取れていない。

 

更にミスターIを始めとした直轄の黒服部隊は、以前あざみと八丹斎との騒動で全滅。

 

朧はジェネラルAに付いている為、ミスターGは使える手駒を全て失っていた。

 

なので全ての事を自分でやらなけらばならないと言う、彼からしてみればかなり屈辱極まりない状態だった。

 

「! 有った! コレだ!!」

 

漸くミスターGは目当ての資料を見つける。

 

それは夜叉が消息不明になる直前に送って来た『帝鍵』らしき物が在る可能性が高い場所のデータだった。

 

「『帝鍵』さえ有れば降魔皇様は復活出来る………そうすれば私こそが真の腹心だと認められる筈だ! 見ていろ、アゴナ!!」

 

邪悪な笑みを浮かべてそう言い放つミスターG。

 

その資料の上部には、『東雲神社』と言う文字が刻まれていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

何かの工場を思わせる場所にて………

 

「漸く完成か………」

 

青い衣装に身を包んだ男が、カプセルの様な物の前でそう呟く。

 

そのカプセルには所々赤いランプが付いており、それが点滅していて、時折蒸気を噴き出している。

 

徐々に点滅と蒸気を噴き出す感覚が短くなって行ったかと思うと、やがてピタリと停止する。

 

そしてカプセルが、まるで卵の殻が割れたかの様に2つに別れたかと思うと、中から人影が現れ、ゆっくりと青い衣装の男の前に歩み出て来た。

 

「…………」

 

それは、サロメ星人に拉致された夜叉だった。

 

そう………

 

青い衣装の男の正体は、サロメ星人なのだ。

 

「…………」

 

サロメ星人の前でジッと佇む夜叉。

 

その姿は、以前の黒いマントに灰色の衣裳ではなく………

 

初代帝国華撃団が使用していた桜色の霊子甲冑用戦闘服姿となっている。

 

しかし、手足と腰部に、銀色のプロテクターの様な物が取り付けられているという差異がある。

 

「仮面を取って構わんぞ、夜叉………いや、『真宮寺 さくら』」

 

「了解しました………」

 

サロメ星人にそう言われると、夜叉は特徴であったその仮面を外す。

 

「…………」

 

仮面の下から現れたのは、『真宮寺 さくら』の顔であった。

 

しかし、その目から光は消えており、表情は全く無く、一切の感情を感じさせない。

 

「気分は如何かな?」

 

「スキャン開始………スキャン完了。異常箇所無し。システム、オールグリーン」

 

サロメ星人の問いに、真宮寺 さくら(?)はまるで機械かロボットを思わせる返答を返す。

 

「宜しい………では、お前に初任務を与える」

 

「任務、了解………任務内容をインプットします」

 

「帝国華撃団の基地である大帝国劇場を襲撃せよ。目的は『お前達』の性能テストだ。可能な限り、データを収集した後に帰還せよ」

 

「インプット完了………大帝国劇場を襲撃、戦闘データを収集します」

 

と、真宮寺 さくら………

 

否、『にせ真宮寺 さくら』がそう言ったかと思うと………

 

その背後に、にせ真宮寺 さくらが出て来た物と同一のカプセルが多数出現!

 

次々と開いたかと思うと、何と!!

 

多数の夜叉が、ぞろぞろと湧き出る様に現れた!!

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

仮面のスリットの部分を怪しげに発光させながら無言で佇む、にせ真宮寺 さくらと同様に手足と胴体に銀色のプロテクターを付けた夜叉(SR)軍団。

 

かなり不気味な光景だ。

 

「行け! 真宮寺 さくら! 夜叉(SR)軍団よ!!」

 

「「「「「「「「「「サロメ星に栄光を!!」」」」」」」」」」

 

サロメ星人の号令が掛かると、にせ真宮寺 さくらと夜叉(SR)軍団は、右手を掲げる様なポーズを執り、そう声を挙げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事が起きているとが露知らず………

 

帝国華撃団のメンバーは………

 

 

 

 

 

東雲神社・境内………

 

「わあ~~!」

 

「賑やかですね」

 

屋台が立ち並ぶ境内の様子を見て、あざみとクラリスが感嘆の声を漏らす。

 

「コレが日本のお祭り………縁日なのね………」

 

初めて縁日を見たアナスタシアは、興味深げな様子を見せている。

 

「正直、意外だったな。アナスタシアも参加したのは。縁日に興味が有ったのかい?」

 

そんなアナスタシアの姿を見ながら、誠十郎がそう尋ねる。

 

「縁日にと言うより、初穂が披露する神楽の方に興味が有ってね」

 

「皆~! コッチコッチ~!」

 

と、アナスタシアがそう返していると、神楽殿の方に進んでいたさくらから皆に呼び声が掛かる。

 

幼馴染の実家という事で、色々と分かっている様だ。

 

「ふふ、お呼びみたいね」

 

「ああ、先ずは初穂に挨拶しないとな」

 

アナスタシアと誠十郎はそう言い合うと、あざみとクラリスを連れて、神楽殿へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神楽殿へと向かう途中の道にて………

 

その路肩に、小さな祠の様な物が在った。

 

「ん? この祠は………?」

 

気になった誠十郎が近づいて中を覗き込むと、仏像と共に刀の様な物が奉られていた。

 

「あ! 神山隊長! 駄目ですよ、あんまり近づいちゃ! それは封印の祠なんですから!」

 

それに気づいたさくらが注意を飛ばして来る。

 

「封印の祠………?」

 

注意を受けた誠十郎が下がりながら首を傾げる。

 

「ハイ。前に初穂から聞いたんですけど………この辺りでは嘗て、9つの尻尾を持つ巨大な狐の妖怪が暴れ回っていたそうなんです」

 

「9つの尻尾………ひょっとして、『九尾の狐』?」

 

さくらの説明に、あざみは9本の尻尾を持つ狐の妖怪と聞いて、有名な『九尾の狐』を思い起こす。

 

「そうとも言われてます。姿を自在に消す事が出来、狐火を使って村々を焼き払っては家畜や人を食べ回っていたそうです」

 

「人食い妖怪………」

 

人をも食べると言う話に、クラリスがやや顔を青くする。

 

「人々は困り果てていたそうですけど、そんなある日………『錦田小十郎景竜』と言う旅の剣豪が現れたんです」

 

「『錦田小十郎景竜』?」

 

「『物の怪を見極める力』を持っていて、全国を放浪して妖怪を退治してきた侍なんです。その人とこの地の居た巫女が協力し、巫女が封印の神楽で九尾の狐を弱らせ、景竜が斬り捨てたと」

 

「凄い話だな………」

 

感心した様に誠十郎が呟く。

 

「そして景竜さんは、再び九尾の狐が蘇る事が無い様に、この祠を立て、自らの刀を奉納して封印の楔にしたそうです」

 

「すると、今日初穂が舞う神楽と言うのが、その封印の神楽ってワケね」

 

「ハイ、そうなんです。その巫女さんが東雲神社の初代神主で、代々そう言い伝えられてるそうなんです」

 

アナスタシアの推察を肯定するさくら。

 

「成程。この地の平和が保たれているのはその錦田小十郎景竜と初穂さんのご先祖様のお陰なんですね」

 

「良いお話」

 

クラリスとあざみもそう感想を告げる。

 

(錦田小十郎景竜か………まるでウルトラマンみたいな人だったんだろうな)

 

『この地球にも昔、俺達みたいな奴が居たって事か』

 

誠十郎も、ゼロとこっそりそんな会話を交わす。

 

「さ、道草を食っちゃいましたね。急ぎましょう」

 

と、すっかり道草を食ってしまったとさくらが言い、一同は改めて神楽殿へと向かう。

 

「…………」

 

しかし、アナスタシアだけが立ち止まり、祠の方を振り返った。

 

(封印の楔として使われている刀………ひょっとすると………)

 

その脳裏に、ある可能性を過らせながら………

 

「アナスタシアー! 如何したーっ!?」

 

と、足が止まっていた事に気付いた誠十郎が、やや遠方からアナスタシアに呼び掛ける。

 

「ああ、ゴメンなさい、キャプテン。何でも無いわ」

 

その声でアナスタシアは考えを一旦振り払って、再度足を踏み出す。

 

と、誠十郎達が居なくなった後………

 

奉納されている景竜の刀が、カタカタと音を立てていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

前回での無茶が祟り、さくらの無限が廃棄に。
三式光武を再利用しますが、更に代替機もすぐ用意出来ない状況に。

一方、手駒を全て失ったミスターGは自ら動く事に。

そして、1話で行方不明となっていた夜叉の所在が明らかに………
何と、にせ真宮寺 さくらに改造されていた上に、量産されていました!!
夜叉ってロボットみたいな感じだったから、サロメ星人なら解析して量産出来るんじゃないかと思いまして。
それが帝劇を襲撃に来る………
恐ろしい光景です。

そして東雲神社を訪れた花組メンバーは、神社の伝説を聞きます。
さて、分かる人は分かるでしょうが、話に登場した『錦田小十郎景竜』………
そう、ウルトラマンティガで出て来た、あの侍です。
実はガイア(小説)やコスモスでもその存在が匂わされていたりします。
なので、ちょっと出したいなと思って、初穂のエピソードに絡めてみました。
今回彼が封印した妖怪とは、果たして?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『初穂の父』

チャプター2『初穂の父』

 

狐火怪獣 ミエゴン 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東雲神社の神楽殿………

 

「おお、来たか、お前等」

 

神楽殿上で、正式な巫女服に身を包み、右手に神楽鈴、左手に紙垂の付いた榊の枝を手にして予行演習を行っていた初穂が、誠十郎達の姿に気付いて声を掛ける。

 

「頑張ってるね、初穂」

 

「わあ~、雰囲気ありますね」

 

右手を上げて初穂にそう返すさくらと、初めて見る正式な巫女姿に感嘆するクラリス。

 

「そうしてると、正しく巫女だな」

 

「………オイ、そりゃあ、普段は巫女には見えないって言うのか? 隊長さんよぉ?」

 

誠十郎がそう言うと、途端に不満そうな様子を見せる初穂。

 

「あ、いや………そう言うワケじゃ………」

 

「へっ、如何せアタシはそうですよだ」

 

言い訳しようとした誠十郎だったが、初穂はすっかり臍を曲げてしまう。

 

「駄目よ、キャプテン。今のは」

 

『失言だったな』

 

「うう………」

 

アナスタシアとゼロに駄目出しされ、気落ちする誠十郎。

 

「コラ、初穂。折角来て下さった皆さんに、何だその言い草は」

 

とそこで、神殿の方の廊下から、神主らしき人物が現れ、初穂をそう りつけた。

 

「げっ!? 親父………」

 

「初穂のお父さん?………」

 

初穂が嫌そうな顔を見せると、あざみがその人物………初穂の父であり、東雲神社の神主・『東雲 仙吉(せんきち)』の姿を見やる。

 

「お久しぶりです、おじさん」

 

「やあ、さくらちゃん。久しぶり。大きくなったね」

 

顔馴染みであるさくらが最初に挨拶を交わす。

 

「帝国華撃団の皆さんですね。初穂の父の仙吉です。何時も初穂がお世話になっております」

 

そこで仙吉は、今度は誠十郎達の方に視線を向け、深々と頭を下げて挨拶する。

 

「お、オイ、親父、止めろよ! 恥ずかしい!」

 

「何を言ってるんだ。お前の仕事仲間の人達だろう。親として挨拶するのは当然だ」

 

「ったく、別に良いだろう、そんなの………」

 

「全く、誰に似たんだか………」

 

気恥ずかしさからそっぽを向いてしまう初穂を見て、仙吉は溜息を吐く。

 

「初めまして、仙吉さん。自分は帝国華撃団の隊長をさせて貰っている神山 誠十郎です」

 

そんな中で、帝国華撃団を代表して、誠十郎が仙吉に挨拶し、頭を下げる。

 

「貴方が神山さんですか。お噂は初穂からかねがねお伺いしております」

 

「オイ、親父! アタイは一旦下がるからな!」

 

とそこで、父親と一緒に居るのか耐えられなくなったのか、初穂が怒鳴る様にそう言いながら神楽殿を後にした。

 

「あ、待って初穂!」

 

「初穂さん!」

 

「初穂!」

 

「しょうがないわね………」

 

その後をさくら・クラリス・あざみ・アナスタシアが追う。

 

「やれやれ………あの年頃の娘は気難しくて敵いませんよ」

 

「ハ、ハハハ………」

 

呆れる仙吉の言葉に、誠十郎は苦笑いを返す。

 

「………ところで、神山さん。少し、お時間を頂いても宜しいですかな?」

 

とそこで、仙吉は真面目な表情になり、誠十郎にそう尋ねた。

 

「! ハイ………」

 

それを見て、誠十郎は真面目な話であると感じ、表情を引き締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

封印の祠の前にて………

 

「コレか! 封印の祠と言うのは!!」

 

封印の祠の前に立ったミスターGがそう声を挙げる。

 

以前、夜叉から挙げられた帝鍵と思われる物の報告の中に、東雲神社の封印の祠に奉納されている錦田小十郎景竜の刀が含まれていたのだ。

 

「妖怪を封じたと言う剣豪の刀………コレこそが帝鍵に間違い無い!」

 

ギラギラとした目でそう言うミスターG。

 

色々と考えれば筋道が立たない事に気付くのだが、最早使える手駒も無く、こんな事でさえ自分で動くしかない彼は非常に焦っており、正常な思考が出来なくなってきていた。

 

「フフフ、降魔皇様! 今幻都から解放致しますっ!!」

 

ミスターGは札が張られていた祠の扉を抉じ開けると、祀られていた景竜の刀を手に取る。

 

と、その瞬間!!

 

祠の中から火の玉が次々に出現し、ミスターGに襲い掛かった!!

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

忽ち全身が燃え上がり、バタリとその場に倒れるミスターG。

 

火の玉はそのまま空へと昇って行き、空中で1つに合体して行ったかと思うと………

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

9つの尻尾に5本の角を持つ怪獣………

 

『狐火怪獣 ミエゴン』の姿が一瞬浮かび上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度、その時………

 

東雲神社の神殿の裏手の縁側………

 

そこに誠十郎と仙吉の姿が在った。

 

「初穂は如何ですか? 帝国華撃団の隊員として立派にやれていますか?」

 

「勿論です。隊長の俺が言うのも何ですが、彼女にはいつも助けられています」

 

「そうですか………」

 

誠十郎の言葉を聞いて、仙吉は空を見上げる。

 

「…………」

 

一方で、誠十郎はやや気を揉んでいた。

 

と言うのも、以前初穂から、父親は自分に神社を継がせる積りだと言うのを聞いており、ひょっとしたら初穂に華撃団を止めさせて欲しいとお願いされるのではないかと思っていたのだ。

 

(やはり初穂に神社を継がせる積りなのか………?)

 

『そうだとしたら、何としても説得するんだぜ、誠十郎。アイツはまだ華撃団を続ける積りなんだかんな』

 

(分かってる、ゼロ)

 

ゼロとそう言い合いながら、仙吉を見据える誠十郎。

 

「………神山さん。実を言うと、初穂にはこの神社を継いで貰いたいと思っていたのですよ」

 

(! 来たか!!)

 

仙吉がそう言ったのを聞いて身構える誠十郎。

 

「ですが、思い直しました」

 

「!? えっ!?」

 

『何っ!?』

 

しかし、続いた言葉が思わぬモノであり、ゼロと共に驚きの声を挙げてしまう。

 

「失礼ですが、あの子が入ったばかりの頃の帝国華撃団は、名ばかりの没落華撃団だと思っていました」

 

「それは………」

 

『否定出来ない………つーか、紛れも無い事実だな』

 

まだ入隊したての酷い有様だった頃を思い出し、誠十郎とゼロは心の中で同意する。

 

「幼馴染のさくらちゃんが入ったからその付き合いで入ったのだとばかり考え、何度も神社を継ぐ様に言いました。しかし、あの子は諦めなかった」

 

「…………」

 

「そして、今や帝国華撃団は嘗ての栄光を取り戻し、事実上WLOFに代わる新たな守り手となったウルティメイト華撃団の中心組織となった。日々、降魔だけでなく、怪獣や宇宙人相手に奮戦している話は聞き及んでいます」

 

「恐縮です」

 

「私から見ても、あの子はもう立派な華撃団の隊員です。親としては危ない仕事からは引いて欲しいと言う気持ちも有りますが………あの子の好きな様にさせてやろうとも思ったのです」

 

「仙吉さん………」

 

「神山さん………どうか初穂の事を、これからもよろしくお願いします」

 

そう言って仙吉は誠十郎の方へ向き直り、深々と頭を下げる。

 

「………ハイ。帝国華撃団の隊長として、初穂は責任を持ってお預かりします」

 

それに対し、誠十郎は表情を引き締め、姿勢を正して毅然とした態度でそう返すのだった。

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

『! 誠十郎! 怪獣の気配だっ!!』

 

(!? 何っ!?)

 

ゼロが怪獣の気配を感じ取り、誠十郎が驚きを示した瞬間………

 

上空に巨大な火の玉が現れる!

 

「!?」

 

「アレはっ!?」

 

仙吉と誠十郎が火の玉を見上げた瞬間………

 

火の玉は大量の火花を散らして爆発!!

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

その爆煙の中から、ミエゴンが咆哮と共に姿を現した!!

 

「怪獣っ!!」

 

『『狐火怪獣 ミエゴン』だ!』

 

ゼロが、それが嘗て別の地球で『ウルトラマンタロウ』が戦った『狐火怪獣 ミエゴン』であると指摘する。

 

「狐?………!? まさか、封印の祠に封じられていた9尾の狐と言うのは!?………」

 

「神山隊長ーっ!!」

 

「こんな所に怪獣がっ!?」

 

誠十郎がまさかと考えていると、騒ぎを聞きつけたさくら達がやって来る。

 

「まさか………封印の祠が!?」

 

「うわーっ! 怪獣だぁーっ!!」

 

「キャーッ!!」

 

「助けてくれーっ!!」

 

仙吉がそう言った瞬間、縁日に来ていた人々もミエゴンの姿を確認し、慌てて逃げ出し始める。

 

「マズイわ………このままじゃパニックが起こるわよ」

 

「クッ! 皆! すぐに避難誘導に!………」

 

アナスタシアの言葉に、誠十郎は皆に避難誘導に向かうよう指示を出そうとしたが………

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

まるでそれを察知したかの様に、ミエゴンが動き出す。

 

しかも、縁日に来ていた人を狙うかの様に。

 

「! 怪獣がコッチに来ますっ!!」

 

「このままじゃ………」

 

クラリスが声を挙げ、あざみも苦い顔をする。

 

「初穂! すぐに封印の祠へ行くんだ!!」

 

とそこで、仙吉が初穂にそう呼び掛けた。

 

「!? 封印の祠に!?」

 

「アレはきっと景竜様が封じたと言う9尾の狐! それが蘇ったと言う事は封印の祠が破られたと言う事だ! 急げっ! 怪獣は父ちゃんが食い止める!!」

 

「!? ハアッ!? 食い止めるって………」

 

何を言うんだと初穂が返そうとしていると、仙吉は神殿の壁に奉納されていた槍を手にし、ミエゴンに向かって行った!!

 

「行くぞぉっ!!」

 

「!? 馬鹿!! 何考えてんだ、親父っ!!」

 

無謀としか言えない行動に、初穂は慌てて仙吉の後を追う。

 

「初穂っ!!」

 

「神山隊長! ど、如何しますっ!?」

 

混沌としてきた状況に、さくらは誠十郎に指示を求める。

 

「クッ! さくら達は避難誘導へ向かってくれっ! 俺は封印の祠を確認してから初穂の方に向かう!」

 

「! 分かりましたっ!!」

 

誠十郎はそう指示を出し、さくら達は縁日に来ていた人々の避難誘導に向かった。

 

『誠十郎、代われっ! 初穂の方も気になる! 急いで封印の祠を確認して向かうぞっ!!』

 

「分かった!………よおし! 行くぜっ!!」

 

そこで誠十郎は主導権をゼロに渡し、封印の祠へと駆けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ミエゴンへと立ち向かって行った仙吉は………

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

咆哮を挙げ、人が居る方向に向かって歩みを進めるミエゴン。

 

「オノレ、化け物っ!! イヤーッ!!」

 

と、その真ん前に辿り着いた仙吉が、手にした槍を振り回しながら、ミエゴンに向かって行く。

 

「! 親父っ!!」

 

僅かに遅れてやって来た初穂が、その無謀以外の何ものでもない行動に悲鳴の様な声を挙げる。

 

「イヤーッ!!」

 

勢い良く突進して行った勢いでミエゴンの足に槍を突き刺す仙吉。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

サイズ差が有るので全然効いていないが、何か異変が起きた事を察したミエゴンが困惑した様な様子を見せる。

 

「イヤーッ! タアァーッ!」

 

そんなミエゴンの様子など露知らず、仙吉は槍を振り回して何度もミエゴンの足を突き刺す。

 

「止めろ、親父! 敵うワケねえだろっ!!」

 

追い掛けて来たのは良いものの、ミエゴンに圧倒され、近寄るに近寄れない初穂が、必死になって仙吉に向かって叫ぶ。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

と、段々と鬱陶しくなったのか、ミエゴンが遂に仙吉に視線を向ける。

 

「オイ、怪獣! コッチだ! コッチに来い!!」

 

すると仙吉は挑発する様に槍を振り回し、ミエゴンにそう呼び掛ける。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

それを理解したのか、単に鬱陶しい奴を始末してやろうと思ったのか分からないが、ミエゴンは仙吉を標的に定める。

 

「良し、来いっ!!」

 

仙吉はそう言い、ミエゴンを人の居ない方へと誘導し始める。

 

「! 親父っ!!」

 

そこで初穂は慌てて我に返り、再度ミエゴンに追われる仙吉を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

封印の祠へと向かった誠十郎は………

 

「! 祠がっ!?」

 

祠の扉が開け放たれているのを見て驚きを露わにする誠十郎。

 

尚、ミスターGの姿は無く、如何やら逃げ帰った様である。

 

『やっぱりあの怪獣は此処に封印されたのか!』

 

「まさか伝説の妖怪が怪獣だったとは………」

 

ゼロの言葉を聞きながら、更に祠を観察する誠十郎。

 

すると、祠の前の地面が焼け焦げ、刀が落ちている事に気付く。

 

「! コレは!?」

 

それは封印の要にされていた景竜の刀であると確認した誠十郎が、刀を拾い上げる。

 

と、その瞬間!!

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「親父いいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーっ!!」

 

「!?」

 

仙吉と初穂の悲鳴が聞こえて来て、誠十郎は反射的に、刀を持ったまま声が聞こえて来た方向へと駆け出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

初穂の父ちゃんが登場。
名前・性格などはオリジナルです。
年頃の初穂から鬱陶しがられてますが、理解有る良い父親です。
そしてウルトラマンタロウの世界の住人に片足突っ込んでます(笑)
民間人が生身で果敢に怪獣に挑んで行く………
ウルトラマンタロウでは良くある事です(爆)

そんなウルトラマンタロウから、狐火怪獣 ミエゴンが登場。
ミスターGが余計な事をしたせいで、封印が解かれてしまいました。
ウルトラシリーズあるある。
封印されている怪獣は、大体蘇る。

勇敢に立ち向かって行った仙吉ですが、果たして………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『初穂の決意』

チャプター3『初穂の決意』

 

狐火怪獣 ミエゴン 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東雲神社の境内………

 

「そら、コッチだ! コッチへ来いっ!!」

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

槍を振り回してミエゴンを挑発しながら、人の居ない方へと誘導する仙吉。

 

「親父ぃっ! もう良い! 早く逃げろっ!!」

 

その後を追っている初穂は、もう気が気で無い。

 

と、その時!!

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

小賢しく逃げ回る仙吉に堪忍袋の緒が切れたのか、ミエゴンの口から火炎放射………狐火が放たれる!!

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

狐火が仙吉の元へ伸びたかと思うと爆発!

 

仙吉が人形の様に吹き飛ばされる。

 

「!? 親父いいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーっ!!」

 

初穂はが悲鳴の様な声を挙げて、慌てて駆け寄る。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

ミエゴンは目障りな奴を片付けて満足したのか、踵を返して、再び人の居る方へと向かって行く。

 

「親父! しっかりしろ!!」

 

その横を擦り抜ける様にして仙吉の元へ辿り着いた初穂が、その身体を支え起こす。

 

「う、ううう………」

 

仙吉は全身に酷い火傷を負っており、呻き声を漏らす。

 

「馬鹿野郎! 何やってんだ!?」

 

「初穂!!」

 

とそこへ、景竜の刀を手にしたままの誠十郎が現れる。

 

「! 隊長さん! 親父が! 親父が!!」

 

「! 仙吉さん!」

 

仙吉の姿を確認した誠十郎が慌てて駆け寄る。

 

「隊長ーっ!!」

 

「避難誘導は終わったわっ!!」

 

とそこで、さくらとアナスタシアの声が響いて、花組メンバーが現れる。

 

「! 初穂さんのお父さん!?」

 

「大変! すぐに手当てしないと!!」

 

そこでクラリスが火傷を負って倒れている仙吉の姿に気付き、あざみが忍者道具の1つとして持ち歩いていた救急セットを取り出す。

 

「親父! しっかりしろっ!!」

 

「は、初穂………良く聞きなさい………」

 

とそこで、仙吉が初穂に何かを言おうとする。

 

「仙吉さん! 喋らない下さい! 傷に障ります!」

 

「人には自分の損になると分かっていても………人の為に働かなくちゃならん時ってのがあるんだよ………」

 

傷に障ると言う誠十郎だが、仙吉は構わず話し続ける。

 

「………その時、決して逃げ出しちゃならない………分かるだろう? 初穂?」

 

「!!」

 

仙吉の言葉に目を見開く初穂。

 

それは正に、華撃団として戦う事への精神そのものだった。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

とそこで、ミエゴンの咆哮と共に爆発音が聞こえて来た。

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

見ると、現着した翔鯨丸が、ミエゴンに向かって砲撃を行っていた。

 

『皆さん! お待たせしました!!』

 

『今無限を射出するでぇっ!!』

 

反撃のミエゴンの火炎放射を避けながら、翔鯨丸からカオルとこまちの声が響いたかと思うと、誠十郎達の無限と、さくらの三色光武が射出される。

 

「良し! 全員搭乗! 初穂! 君は仙吉さんを安全な場所へ!!」

 

「! 分かったっ!!」

 

誠十郎の号令で、花組メンバーは三式光武と無限に搭乗。

 

そして初穂機が、応急処置を済ませた仙吉を連れて離脱する。

 

「「「「「帝国華撃団! 参上っ!!」」」」」

 

残る誠十郎達が、ミエゴンに向かって見えを切る。

 

「行くぞっ!!」

 

「「「「了解っ!!」」」」

 

そして一斉にミエゴンへ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、仙吉を連れて離脱した初穂は………

 

「………お願いします」

 

「お任せ下さい!」

 

安全圏まで離脱すると、待機していた救急隊員に仙吉を託す。

 

「…………」

 

そして、去り際に一瞬振り返りながらも、すぐに他のメンバー同様にミエゴンの元へ向かった。

 

『人には自分の損になると分かっていても………人の為に働かなくちゃならん時ってのがあるんだよ………その時、決して逃げ出しちゃならない………分かるだろう? 初穂?』

 

脳裏に先程の仙吉の言葉が反復する。

 

(………あの時、アタシの脳裏に先ずさくらの姿が浮かんだ)

 

その言葉を聞いた時、初穂の脳裏にはさくらの姿が浮かんでいた。

 

没落華撃団だった頃からずっと前向きで、決して諦める事をしなかったさくら。

 

一方の自分は、何処か諦めていた節が有った。

 

(………正直アタシは………さくらに劣等感を感じてたのかも知れねえ)

 

さくら達と比べて、自分にはコレと言うモノが無い………

 

帝撃に入隊したのも、目指すものを見つける為であり、さくらの様に誰かを守り、助ける為の『強さ』を身に付けようとしてと言う所も有った。

 

(まだ自分なりの強さっての分からない………けど!)

 

そこで初穂は、モニター越しにミエゴンの姿を見据える。

 

「今此処で………逃げ出しちゃならねえって事は分かる!!」

 

初穂のその言葉と共に、彼女の無限はハンマーを握り締め、更に速度を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミエゴンVS花組………

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

咆哮と共に火炎放射を足元に居た花組に見舞うミエゴン。

 

「散開っ!」

 

「「「「!!」」」」

 

しかし、花組は誠十郎の声で散開して躱す。

 

「そこっ!!」

 

「えいっ!!」

 

そしてアナスタシア機とクラリス機から、氷の銃弾と魔導弾が見舞われる。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

身体中から火花を伴った爆発が次々に上がり、ミエゴンは怯んだ様子を見せる。

 

「にんっ!!」

 

「ヤアアッ!!」

 

そこであざみ機とさくら機がジャンプし、クナイを飛ばして、刀で斬り付ける。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

「良し! 一気に決めるっ!!」

 

と、更に怯んだ様子を見せたミエゴンに向かって、誠十郎機が必殺技を繰り出す!!

 

「闇を斬り裂く、神速の刃! 縦横無刃・嵐っ!!」

 

必殺の縦横無刃・嵐が炸裂する!!

 

………かに思われた瞬間!!

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

ミエゴンの5本有る頭の角先から爆発が上がったかと思うと、白い煙がシャワーの様に広がり………

 

ミエゴンの姿が消えてしまった!!

 

「!? 何っ!?」

 

誠十郎機は、ミエゴンが居た位置を素通りして終わる。

 

「消えたっ!? 奴は透明になれるのか!?」

 

と、誠十郎が驚きの声を挙げた瞬間………

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

花組の背後を吐く様にミエゴンが再出現!!

 

不意を突く様に火炎放射を放った!!

 

「!? 危ないっ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

間一髪の所で誠十郎が反応し、花組メンバーも慌てて散会し、難を逃れる。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

しかし、その間にミエゴンはまた姿を消してしまう。

 

「また消えたっ!?」

 

「クラリス! ゼットンを出せないの!?」

 

「すみません。まだ前の戦いのダメージが癒えてなくて………」

 

さくらが声を挙げると、アナスタシアがクラリスにゼットンを出せないかと問うが、クラリスはまだイズマエルから受けたダメージが癒えていないと返す。

 

そこで、空中にミエゴンの姿が現れたかと思うと、花組を踏み潰そうと落下して来る。

 

「! 危ないっ!!」

 

「「「「!!」」」」

 

今度はあざみが声を挙げて、またも散開する花組。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

「!? うおわあっ!?」

 

しかし、1番距離の近かった誠十郎機が、衝撃波に煽られて地面を転がる。

 

運悪く、転がされた先は坂となっており、誠十郎機は転がり落ちて行った。

 

「おわああああぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

「! 隊長っ!!」

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

さくら機が救援に向かおうとしたが、そうはさせないとミエゴンが火炎放射を見舞う。

 

「キャアッ!?」

 

直撃が避けたものの、炎の壁が出来て、誠十郎機の元へは向かえなくなる。

 

「隊長っ!!」

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

さくらの声が響く中、ミエゴンが咆哮を挙げ、再度姿を消す。

 

その次の瞬間には、別の方向から火炎放射が見舞われる。

 

「! くうっ!!」

 

アナスタシア機が咄嗟に、伸びて来た火炎に向かって氷の弾丸を連射し、相殺する。

 

「待たせたなっ!」

 

とそこへ、漸く初穂機が到着する。

 

「初穂!」

 

「ん? オイ、隊長さんは如何した!?」

 

「それが………」

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

誠十郎機の姿が見えない事を問い質そうとした瞬間、またも何も無い空間から火炎が伸びて来る。

 

「!? おわっ!? 何だっ!?」

 

「初穂! 気を付けて! 敵は透明になれる能力を持ってる!」

 

驚きながらも初穂機が回避すると、あざみからそう声が飛んだ。

 

「何だとっ!? クソォッ!! 厄介な奴だぜっ!!」

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

そう言っている間にも、再度ミエゴンの咆哮と共に、先程とは別方向から火炎が伸びて来る。

 

「おわっ! チキショーめっ!!」

 

何とか回避しながらも、初穂は悪態を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

転がり落ちた誠十郎機は………

 

「クッ! マズイな………」

 

坂の下まで辿り着き、漸く止まった誠十郎機だったが………

 

既に周りはミエゴンが放った狐火で炎に包まれており、脱出出来る場所が無い。

 

『誠十郎! 後は俺に任せろっ!!』

 

「ゼロ、頼む!」

 

そこでゼロは自分の出番だと言い、誠十郎はウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを取り出す。

 

「デュワッ!!」

 

ウルトラゼロアイを目に装着した誠十郎の姿がゼロへと変わる。

 

そして、光となって無限から飛び出して行った。

 

と、それから少しして………

 

突如無人となっていた無限のハッチが、独りでに開く。

 

中から、誠十郎が流れで持ち込んでしまっていた景竜の刀が、青白い光に包まれて浮かび上がる。

 

そして、まるでゼロを追う様に空を飛んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、ミエゴンと戦う花組メンバーは………

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

「そこっ!!」

 

「当たって下さいっ!!」

 

姿を現したミエゴンに向かって、アナスタシア機とクラリス機が氷の弾丸と魔導弾で攻撃するが、命中する寸前でミエゴンの姿が消えてしまう。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

「! そこかっ!!」

 

「ハアアァァァーーーーッ!!」

 

と、別の場所にミエゴンが姿を見せると、初穂機とさくら機が向かう。

 

しかし、辿り着いたと思った瞬間に、またも姿を消すミエゴン。

 

「ああ、クソッ! コレじゃ鼬ごっこだぜ!!」

 

「初穂、相手は狐………」

 

「そう言う意味で行ったんじゃねえよっ!!」

 

あざみからのツッコミに苛立ちからか怒鳴り返す初穂。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

とそこで、またもミエゴンが姿を現す。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

しかしそこで、ミエゴンは空に向かって火炎放射を開始。

 

「? 何っ?」

 

「「「「??」」」」

 

何の積りかと花組メンバーが見上げていると………

 

何と放たれていた火炎が球形に纏まり出し、巨大な火球と化した!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

花組メンバーが驚愕の表情を浮かべた瞬間、ミエゴンは咆哮を挙げ、巨大火球は花組メンバーに向かって降り注いだ!

 

「!? 嘘だろっ!?」

 

「み、皆さん! 早く逃げないと!!」

 

「駄目よ………もう間に合わない………」

 

初穂とクラリスが慌て、アナスタシアが思わず諦めの声を漏らす。

 

花組絶体絶命か!?

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

ウルトラゼロキックの体勢で飛んで来たゼロが、巨大火球を蹴り砕く!!

 

「フッ!!」

 

「「! ゼロさんっ!!」」

 

着地を決めたゼロに、さくらとクラリスが歓喜の声を挙げる。

 

「俺はゼロ! ウルトラマンゼロだ!!」

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

そして、咆哮を挙げるミエゴンに向かって、高らかに名乗りを挙げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ミエゴンを誘い出す仙吉でしたが、とうとうその狐火の餌食になってしまいます。
しかし、それでも尚、初穂に誰かの為に戦う事を説いてみせる。
元ネタはウルトラマンタロウ第26話『僕にも怪獣は退治できる! 』からです。
あの台詞はヒーローは何故戦うのか言うのを表現した名言だと個人的に思ってます。

姿を消せるミエゴンに苦戦する花組ですが、ゼロも参戦。
そして、景竜の刀が………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『錦田小十郎景竜』

チャプター4『錦田小十郎景竜』

 

狐火怪獣 ミエゴン

 

にせ真宮寺 さくら

 

夜叉(SR)軍団 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東雲神社の境内………

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

「おっとっ!」

 

ミエゴンの火炎放射を跳躍で回避し、背後へと回り込むゼロ。

 

「エメリウムスラッシュッ!」

 

そしてそのままエメリウムスラッシュをお見舞い。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

「オラァッ!!」

 

怯んだミエゴンに殴り掛かるゼロだったが………

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

今度はミエゴンが大跳躍して回避。

 

「うおっ!?」

 

殴り損ねたゼロは、少しバランスを崩しながらも持ち堪える。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

と、ミエゴンは空中で咆哮を挙げたかと思うと、そのまま姿を消す。

 

「ヘッ! 俺にそんな手が通用すると思ってるのか!!」

 

すぐさまウルトラアイでミエゴンの姿を探そうとするゼロ。

 

だがそこで………

 

ゼロの周りに無数の火の玉が浮かび上がった!

 

「!? 何っ!?」

 

「! 狐火っ!!」

 

驚くゼロと、それが狐火である事に気付くあざみ。

 

次の瞬間には、無数の狐火がゼロに襲い掛かる!

 

「うおっ!? とっ!?」

 

次々に狐火に襲い掛かられるゼロだが、腐っても歴戦の勇士。

 

アクロバットな動きを決めながら全て躱して行く。

 

「チキショーッ! コレじゃ奴を見つけられねえっ!!」

 

しかし、それで精一杯であり、ミエゴンを見つける為にウルトラアイを使う事が出来ない。

 

「ゼロさんが危ないっ!」

 

「そこっ!!」

 

「えいっ!!」

 

さくらの声が挙がると、アナスタシア機とクラリス機が、ミエゴンが居ると思われる場所に向かって氷の弾丸と魔導弾を放つ。

 

しかし、どちらの空振りだった様で、何も無い空間を通り抜ける。

 

「クッ! 駄目だわ………当てずっぽうに攻撃しても無駄よ」

 

「でも、このままじゃ………」

 

「如何すりゃ良いんだ!?」

 

アナスタシアとあざみの苦い声が漏れる中、初穂がそう言った瞬間………

 

その頭上から、何かが舞い降りて来た!

 

「!? コレはっ!?」

 

驚く初穂。

 

それは、青白い光を放つ、景竜の刀であった。

 

景竜の刀が更に光を放ったかと思うと、その後ろに1人の半透明な侍の姿が浮かび上がった。

 

「!? アンタは!?」

 

『拙者は………『錦田小十郎景竜』と申す』

 

驚く初穂に向かって、半透明の侍………『錦田小十郎景竜』はそう名乗りを挙げる。

 

「!? 錦田小十郎景竜っ!?」

 

「それって、あの怪獣を封印したって言う!?」

 

「「!?」」

 

あざみとさくらが仰天の声を挙げ、クラリスとアナスタシアも驚きを露わにする。

 

『うむ、もし万が一に奴………ミエゴンが蘇った時に備え、ワシはこの刀に思念の一部を込めて置いたのだ。奴を再び倒す方法を伝える為にな』

 

「! 奴を倒す方法が有るのか!?」

 

『うむ………お主は東雲の巫女の血を引く者だな?』

 

「ああ、東雲 初穂だ」

 

『ならば話は早い。封印の神楽を舞うのだ』

 

「! 封印の神楽!」

 

ハッとする初穂。

 

縁日で舞っていたあの神楽が、元は封印の為のモノと言い伝えられている事を思い出したのだ。

 

『封印の神楽を使えば、奴の妖力を弱らせる事が出来る。その隙を衝くのだ』

 

「………本当にそれで奴を倒せるのか?」

 

『それはお主しだいじゃ』

 

「ちょっ! そんな適当な………」

 

あんまりと言えばあんまりな物言いに、さくらが思わずツッコミを入れる。

 

「…………」

 

しかし初穂は、決意を固めた顔となると、持ち込んでしまっていた神楽鈴と榊の枝を手に、無限から降りた!

 

「! 初穂っ!!」

 

「「「!!」」」

 

「…………」

 

あざみが声を挙げ、さくら達も驚きを露わにする中、初穂は目を閉じて集中し始める。

 

(アタシに出来るかのか?………いや、余計な事は考えるな………今は只………舞うだけだ!)

 

そう改めて心を決めるとカッと目を見開き………

 

その場で神楽を舞い始めた。

 

神楽鈴の音が辺りに響き渡る。

 

『! 初穂っ!?』

 

「アイツッ!?」

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

その音で気付いた誠十郎とゼロが驚きの声を挙げると、ミエゴンの悲鳴の様な咆哮が響き渡り、ゼロの周囲に次々と現れていた狐火が消え、その姿が現れる。

 

「!………」

 

その姿を一瞬見やりながらも、神楽を続ける初穂。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

ミエゴンが益々苦しんでいる様子を見せる。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

するとミエゴンは、初穂に向かって火炎を放とうとする。

 

しかし、ミエゴンの口からは白い煙がポッと出ただけだった。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

驚きながら何度も火炎を放とうとするミエゴンだったが、まるで火が出て来ない。

 

『! 怪獣が弱ってる!?』

 

「初穂のお陰か! やるじゃねえかっ!! よっしゃあっ!! こっからは俺の番だぜっ!!」

 

その瞬間、ゼロは一気に攻勢に転じた!!

 

「オラァッ!!」

 

先ずミエゴンの横っ面に右ストレートをお見舞い。

 

更に続けて、左足でのロー、ミドル、ハイの3連続蹴り。

 

軸足を代えての右足での顎への横蹴り。

 

「セエリャアッ!!」

 

ジャンプしてからゲンコツの様に振り下ろすパンチを脳天へと見舞う。

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

封印の神楽により力を封じされているミエゴンは真面な反撃さえ出来ない。

 

「コイツでトドメだっ!! ワイドゼロショットッ!!」

 

そしてゼロは、トドメのワイドゼロショットを放つ!!

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

放たれたワイドゼロショットはミエゴンを直撃!

 

一瞬の間の後、ミエゴンの身体は木っ端微塵となった。

 

「やったぁっ!!」

 

「…………」

 

さくらの歓声が挙がる中、初穂は神楽を舞い終える。

 

「凄いです、初穂さん! 正に巫女でしたよ!!」

 

「ホント、大したものね………」

 

東洋の神秘を目撃したクラリスとアナスタシアが、初穂を手放しに誉める。

 

「そんなんじゃねえよ。アタシは只………自分に出来る事をやっただけさ」

 

「初穂、良い顔してる………」

 

「うるせぇ!」

 

屈託無い笑みを浮かべた初穂の事をあざみが指摘すると、照れ隠しの様に怒鳴る。

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

突如森の木々を飛び越える様にして、何か巨大な物が飛び出し、初穂達に影を落とした!!

 

「「「「「!?」」」」」」

 

反射的に影を見上げる花組メンバー。

 

それは、ミエゴンの9本有る尻尾の内の1本だった!!

 

『!? 尻尾がっ!?』

 

「野郎! まだ生きてやがったのかっ!?」

 

花組メンバーに襲い掛かろうとしていたミエゴンの尻尾の姿を見た誠十郎が慌て、ゼロがすぐさまエメリウムスラッシュを放とうとするが………

 

それよりも早く、景竜の刀が尻尾に突き刺さった!

 

「「「「「「『!?』」」」」」」

 

キュリラアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

ゼロ達と花組メンバーが驚く中、ミエゴンの尻尾は青い炎に包まれて消滅した。

 

そして、景竜の刀が落ちて来て、地面に突き刺さる。

 

『尻尾の1本くらいならば、今の拙者でも倒せる………』

 

そこで再び、半透明の景竜の姿が出現する。

 

「錦田小十郎景竜………」

 

『物の怪がこの世に現るるのは事の道理なり。されど、その物の怪を打ち破らんとする心。それさえあれば百戦して危うからず』

 

そう言ったかと思うと、景竜の姿が更に薄くなり、消えて行く。

 

『強者は常に孤独だ。強者は勝ち続けなければならない。その為に孤独になる………と言いたいところだが、お主等はそうとは限らんようだな………さらばだ、破邪顕正なる者達よ』

 

最後にそう言い残すと、景竜の姿は完全に消えた。

 

「…………」

 

初穂は少し考えていた様な素振りを見せた後、地面に突き刺さったままだった景竜の刀と傍に落ちていた鞘を拾い、汚れを払って納刀する。

 

「…………」

 

そして、景竜への感謝を示すかの様に、天に向かって掲げた。

 

「………シュワッ!!」

 

それを見届けると、ゼロは空へと飛び去って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

初穂達は封印の祠を修復し、再度景竜の刀を納め、封印の神楽を奉納した。

 

仙吉も、幸い命には別状は無いとの知らせが届き、ホッと胸を撫で下ろした。

 

そして、日がすっかり落ち、夜闇が帝都を覆う中、翔鯨丸で帝劇へと帰還を開始したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翔鯨丸の格納庫内………

 

「…………」

 

自分の無限の前で佇んでいる初穂。

 

「初穂。如何したんだ?」

 

そんな初穂に気付き、誠十郎が声を掛ける。

 

「ああ、神山。いや、な………実を言うとな………アタシ、ちょっと迷ってた事が有ってな」

 

「そうなのか?」

 

「ああ………けど、今日の事で何か吹っ切れたって言うか」

 

「そうか………済まなかったな。隊長なのに力になってやれなくて」

 

「そんな、謝らないでくれよ。アタシが勝手に悩んでただけだって」

 

気付いてやれなくて申し訳無いと頭を下げる誠十郎に、初穂は気にするなと返す。

 

「ま、兎に角。コレからは更に一層頼りになる初穂ちゃんとして頑張っからよ! お前も頑張れよな!!」

 

「ああ、ありがとう」

 

朗らかに笑ってそう言う初穂に、誠十郎も笑みを浮かべて返す。

 

2人供気付いていないが、何時の間にか初穂の呼び方が、『隊長さん』から『神山』呼びになっていた………

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

突如、翔鯨丸に振動が走り、非常事態を告げる赤色灯が点灯した!!

 

「!? 何だ!? 今の衝撃は!?」

 

誠十郎がそう言うと、壁のモニターに映像が映し出される。

 

 

 

 

 

そこには、黒煙を上げる帝劇の様子が映し出されていた!!

 

 

 

 

 

「て、帝劇が………!?」

 

「帝劇が、燃えてる!!」

 

クラリスと初穂が唖然としながら声を挙げる。

 

「! アレは………人?」

 

するとそこで、モニターが帝劇の黒煙を上げている場所………

 

舞台部分の上部に備え付けられていたステンドグラス状のガラス屋根に空いた穴の部分を拡大。

 

そこから見えている舞台上に、何者かが立っている事にアナスタシアが気付く。

 

その瞬間、上空を覆っていた雲が晴れて行き………

 

月明りがその人物を照らし出した。

 

 

 

 

 

「…………」

 

それはサロメ星人によって改造された夜叉………

 

『にせ真宮寺 さくら』だった!!

 

 

 

 

 

「真宮寺………さくらさん?」

 

その姿を見た天宮 さくらがショックを受ける。

 

「…………」

 

とその瞬間、にせ真宮寺 さくらは峰に弦の様な物が付いた刀を振るい、斬撃波を飛ばす。

 

その斬撃波が客席に当たり、爆発を上げる!!

 

「!?」

 

「アイツが犯人!!」

 

その爆発で天宮 さくらがハッと我に返り、あざみがそう声を挙げる。

 

「さくら! 真宮寺 さくらと言うと、あの………」

 

にせ真宮寺 さくらの姿を見て声を挙げた天宮 さくらに、誠十郎が声を掛けるが………

 

「違う………」

 

「さくら?」

 

「あの人が………アレが真宮寺 さくらさんの筈が無い!!」

 

天宮 さくらは怒りを露わに三式光武に乗り込むと、カタパルトへ移動する!

 

「! 待て! さくら!!」

 

誠十郎の制止も届かず、天宮 さくらの三式光武はカタパルトで射出!

 

そのまま舞台天上に空いた穴を擦り抜けて、舞台上でにせ真宮寺 さくらと対峙した!!

 

「さくら! クッ! カオルさん! 急いで着陸を!!」

 

焦りながらも誠十郎は、翔鯨丸をすぐに着陸させる様にブリッジのカオルに通信を入れる。

 

天宮 さくらと同じ様に無限で降下しようととも考えたが、コレ以上舞台の場所に無限を降ろすのは物理的に不可能だと思い、翔鯨丸を着陸させて降りる事にしたのだ。

 

「………帝国華撃団を確認。我が名は真宮寺 さくら。帝国華撃団に死を」

 

一方、三式光武の姿を確認したにせ真宮寺 さくらは、感情の一切無い声でそう言い、さくら機に向き直る。

 

「黙れっ! 真宮寺 さくらさんを騙る偽物! 正体を現しなさい!!」

 

それを聞いて更に怒りを募らせながら、さくら機はにせ真宮寺 さくらへと斬り掛かった!

 

しかし………

 

「…………」

 

さくら機が振った刀は、にせ真宮寺 さくらの素手の片手でアッサリと受け止められてしまう。

 

「!? そんな!?」

 

「…………」

 

さくら機は必死に刀を動かそうとしているがビクともせず、にせ真宮寺 さくらは涼しい顔をしている。

 

「…………」

 

と、不意を衝く様ににせ真宮寺 さくらが掴んでいた刀を離す。

 

「!? キャアッ!?」

 

バランスを崩したさくら機が後退る。

 

「…………」

 

するとそこで、にせ真宮寺 さくらは刀を鞘へと納め、居合い抜きの様な体勢を取る。

 

「破邪剣征………桜花放神!!」

 

そう言い放ち、再度抜刀して正眼に構えたかと思うと振り上げ………

 

一気に振り下ろして桜色の斬撃波を放った!!

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

真面に喰らった三式光武は刀が砕け、手足がバラバラになり、一瞬でスクラップ状態にされた!!

 

「あうっ!?」

 

ハッチも吹き飛び、天宮 さくらの身体が舞台上に投げ出される。

 

「…………」

 

その天宮 さくらに止めを刺そうと近づいて来るにせ真宮寺 さくら。

 

「し、真宮寺………さくらさん………」

 

痛みに苦しみながらも、何かの間違いだと訴える様な目でにせ真宮寺 さくらを見上げる天宮 さくら。

 

「………標的を抹殺します」

 

しかし、にせ真宮寺 さくらは感情の一切無い目と声色で、無情に刀を振り上げる。

 

「!? そん………な………」

 

天宮 さくらの目が絶望で光を失う………

 

そんな天宮 さくらに向かって刀を振り下ろすにせ真宮寺 さくら。

 

だが、その時!!

 

「フッ!!」

 

突如現れたゼロ(人間サイズ)が、ゼロツインソードでにせ真宮寺 さくらの刀を受け止めた!

 

「!?」

 

「ゼロさん!?」

 

ゼロの登場に、にせ真宮寺 さくらは僅かに驚いた様子を見せ、天宮 さくらの目も光を取り戻す。

 

「ハアッ!!」

 

「!!………」

 

ゼロツインソードを振り抜くと、にせ真宮寺 さくらはゼロから一旦距離を取った。

 

「ウルトラマンゼロを確認………イレギュラー発生………対応の指示を………」

 

「あのプロテクターは………まさか?」

 

イレギュラーであるゼロの出現に、にせ真宮寺 さくらはサロメ星人に対応の指示を求め、ゼロはにせ真宮寺 さくらの身体に付いているプロテクターを見て嫌な記憶が脳裏に過る。

 

「………任務継続………ウルトラマンゼロと交戦………データを収集します」

 

「何ゴチャゴチャ言ってやがる!!」

 

ブツブツと呟く様に喋っているにせ真宮寺 さくらに痺れを切らした様に、ゼロがゼロツインソードで斬り掛かる。

 

「…………」

 

それを躱しながら、身体を回転させてゼロに向かって横薙ぎを繰り出すにせ真宮寺 さくら。

 

「フッ!」

 

しかしゼロは、ゼロツインソードで受け止める。

 

「ハッ!」

 

「…………」

 

そのままにせ真宮寺 さくらの刀を弾くと再度斬り掛かったが、にせ真宮寺 さくらはバックステップして躱す。

 

「…………」

 

そして刀を引いたかと思うと、ゼロの顔目掛けて突きを繰り出す。

 

「おっと!」

 

「………!!」

 

ゼロは首を曲げて回避するが、そこでにせ真宮寺 さくらは刀を思いっきり振り下ろし、ゼロツインソードを床に叩き落とした!!

 

「!!」

 

「ウルトラマンゼロを倒します………」

 

武器の無くなったゼロに再度突きを浴びせようとしたが………

 

「甘いぜっ!!」

 

そこでゼロは、ウルトラ念力でゼロツインソードを動かし、思いっ切り上に上げた!!

 

「!!」

 

今度はにせ真宮寺 さくらの刀が弾き飛ばされて宙に舞い、客席に突き刺さった。

 

「セエエヤアアッ!!」

 

隙有りとばかりにゼロは小さくジャンプしてからのウルトラゼロキックをにせ真宮寺 さくらへと叩き込む!!

 

「!?!?」

 

真面に喰らったにせ真宮寺 さくらの身体が、舞台袖へと吹き飛ぶ!

 

「コレでトドメだっ!!」

 

と、空中に浮かんでいたゼロツインソードをゼロスラッガーへと戻したかと思うと、両胸に装着し、ゼロツインシュートの体勢となる!!

 

「!!」

 

そこで天宮 さくらがギョッとした表情になる。

 

「ゼロツイン………」

 

「待って、ゼロさん!!」

 

「!? おわっ!?」

 

真宮寺 さくらが危ないと思った天宮 さくらは、思わずゼロツインシュートを放とうとしていたゼロを止めようと、背後から抱き着く。

 

それによって狙いがズレ、ゼロツインシュートはにせ真宮寺 さくらは左半身を霞める程度に終わった!

 

「!? 真宮寺さんっ!?」

 

愕然となった天宮 さくらだったが、やがて煙が晴れて来ると………

 

「…………」

 

そこには肩口から無くなった左腕部分と、左半分が無くなった顔の部分からメカ部分を露出させ、スパークを発しているにせ真宮寺 さくらの姿が在った。

 

「!? 機械っ!?」

 

「やっぱりアレはサロメ星人の!!」

 

驚愕する天宮 さくらと、にせ真宮寺 さくらにサロメ星人の技術が使われている事を確信するゼロ。

 

 

 

 

 

と、次の瞬間!!

 

舞台上に、無数の夜叉(SR)達が現れた!!

 

 

 

 

 

「!?」

 

「何っ!?」

 

愕然となる天宮 さくらと驚くゼロ。

 

「オリジナルの損傷率、レッドゾーン………」

 

「新たなる指令コードにより、オリジナルを緊急回収………離脱致します」

 

その中の2体が、損傷しているにせ真宮寺 さくらを両脇から抱える。

 

如何やら回収する積りの様だ。

 

「! させるかぁっ!!」

 

すぐさまにせ真宮寺 さくらに向かってワイドゼロショットを放つゼロ。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

しかし、その前に夜叉(SR)達が立ちはだかり、その身を盾にしてワイドゼロショットを受け止める。

 

ワイドゼロショットを受けた夜叉(SR)達が爆散する!

 

「! 野郎っ! ロボットらしい真似を!!」

 

ゼロの悪態が響く中、爆煙が晴れると、にせ真宮寺 さくらの姿は何処にも無かった。

 

「クソッ! 逃がしたか………」

 

「あの真宮寺 さくらさんは偽物だった………」

 

にせ真宮寺 さくらが、その名の通りやはり偽物で有った事に安堵する天宮 さくら。

 

(憧れの人の名を騙っていた………許せなかったのに………全然敵わなかった………)

 

しかし、憧れの人物の名を騙り、帝劇を破壊すると言う暴挙を行ったにせ真宮寺 さくらに、手も足も出なかった事は、大きなショックであった。

 

そこで天宮 さくらはゼロを見やる。

 

自分が全く敵わなかったにせ真宮寺 さくらをアッサリと下したゼロ。

 

それだけでなく、思い返せば自分はゼロに助けて貰ってばかりだったと言う事実が頭を過る。

 

(結局私は………ゼロさんが居ないと何も出来ない………)

 

天宮 さくらの心は………

 

そんな思いに押し潰されていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

さくら「帝国華撃団は立派に再興した………

 

でも、それは私が勝手にそう思ってただけだったんじゃ………

 

怪獣や宇宙人が現れれば、結局最後に戦うのはゼロさん………

 

何も変わって無い………

 

ゼロさんが居ないと私達は戦えない………

 

ううん………

 

ゼロさんさえ居れば、華撃団なんて必要無いんじゃ………

 

次回『新サクラ大戦』

 

第6話『さくらと小さな英雄』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

どうせゼロさんが今に来てくれますよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5.5話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『狐火怪獣 ミエゴン』

 

身長:62メートル

 

体重3万3000トン

 

能力:口から火炎を吐く、姿を透明に出来る

 

初登場作品:ウルトラマンタロウ第15話『青い狐火の女』

 

9本の尻尾を持つ狐の怪獣で、伝説の妖怪『九尾の狐』の正体とされている。

 

その尻尾は、太くて長い1本の尻尾から残りの8本が枝状に生えているという特異な形状をしている。

 

少女カオルの目の前で母親を狐火で焼き殺し、麓の住民たちの住居を狐火で焼き払った。

 

最後はタロウと戦い、火を吐いたまま倒れ、自分の狐火が引火し、自滅する。

 

この作品では、『錦田小十郎景竜』によって東雲神社に封印されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『錦田小十郎景竜』

 

平成ウルトラシリーズで度々登場した剣豪。

 

鬼や怨霊を封印する事に定評がある。

 

ティガの小説作品ではキーパーソンとして活躍する。

 

余談だが、昭和ウルトラシリーズでも、『透明怪獣 ネロンガ』を退治した侍『村井強衛門』が対峙したと言う設定がある。




新話、投稿させて頂きました。

ミエゴンの思わぬ能力にピンチかと思われたゼロですが、錦田小十郎景竜からアドバイスを受けた初穂の封印の神楽によってミエゴンは弱体化。
そこで一気に畳み掛けました。

仙吉も無事で、初穂の葛藤を乗り越えて一件落着………
かと思いきや、帝劇をにせ真宮寺 さくらが強襲!!

憧れの人を汚したにせ真宮寺 さくらに、天宮 さくらは激怒して立ち向かうが、返り討ちにされてしまう。
ゼロの介入で事なきを得たが、天宮 さくらの心にはある思いが………

突っ込まれている点ですが、『夜叉は別に真宮寺 さくらを名乗ってないのに、天宮 さくらが名を騙る偽者扱いしている』って点をこういう形で解消してみました。

さて、次回はさくら回であり、VS倫敦華撃団戦でもあります。
今回の事で自分の存在意義に悩み始めたさくら。
初代ウルトラマンではイデ隊員が感じた悩みを、この作品ではさくらが感じる事に。
やはりこの点はやっておかないとと思いまして。
サブタイトルからも分かる通り、あの初代ウルトラマン神回のリスペクトとなります。
更に倫敦華撃団もやるので、次回のストーリーは長くなるかと。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第6話『さくらと小さな英雄』
チャプター1『さくらの苦悩』


本日はウルトラマンの日!

そしてウルトラシリーズ55周年!!

半世紀以上も続く日本特撮の傑作!!

これからもウルトラの星の輝きのあらん事を!!

そして新作!

ティガリスペクトの『ウルトラマントリガー』も本日より放送開始です。


第6話『さくらと小さな英雄』

 

チャプター1『さくらの苦悩』

 

友好珍獣 ピグモン 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にせ真宮寺 さくらと夜叉(SR)軍団の襲撃から数日後………

 

華撃団大戦準決勝の相手が、英吉利の『倫敦華撃団』に決まった。

 

優勝常連チームである伯林華撃団に匹敵すると言われている倫敦華撃団………

 

コレまで以上に厳しい戦いになると予測された。

 

花組メンバーは闘志を燃やしながら、舞台稽古にも精を出す。

 

そんな中で………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・舞台………

 

にせ真宮寺 さくらによって破壊された舞台だったが、イデや令士を始めとした裏方スタッフ総出の大修理で………

 

奇跡的に使用可能な状態まで修復する事が出来た。

 

そして今、花組メンバーは次の公演『キラー ザ ビートスター』の稽古を行っていた。

 

「…………」

 

その中で、ボンヤリとしている様子を見せているさくら。

 

「オイ、さくら! 何やってんだ!?」

 

「えっ?………」

 

「次! お前の台詞だろうがっ!!」

 

「あっ!?………」

 

初穂の怒鳴り声が響き、稽古が中断される。

 

「如何したんですか? さくらさん」

 

「稽古中にボーッとするなんて、さくららしくない」

 

「………ごめんなさい」

 

クラリスとあざみが心配そうにそう言うが、さくらは俯いてそう返すだけだった。

 

「さくら、やる気が無いのなら舞台を降りなさい。そんな人間に居られても邪魔なだけよ」

 

とそこで、舞台に対し人1倍厳しいアナスタシアから、そんな声が飛ぶ。

 

「………ハイ」

 

すると何と!

 

さくらは言われるがままに舞台を降り、退場してしまった。

 

「!? さくらっ!?」

 

「「「!?」」」

 

コレには初穂達も仰天した。

 

例え失敗しても、挫けずに立ち上がるさくらが、まるで全て諦めてしまった様に覇気が無くなってしまった事が信じられなかった。

 

「さくら! 一体如何したんだ!?」

 

「…………」

 

舞台袖で稽古の様子を見守っていた誠十郎も、驚愕を露わに問い質したが、さくらは何も答えず、その脇を擦り抜けて、大道具部屋から外へ出て行った。

 

「さくら………」

 

『オイオイ、如何しちまったってんだ?』

 

見た事も無いさくらの様子に、ゼロも困惑を隠せない。

 

「神山!」

 

「神山さん」

 

「誠十郎………」

 

「キャプテン………」

 

とそこで、初穂達が誠十郎の元へ集まって来る。

 

「皆………」

 

「さくらさん………如何しちゃったんでしょう?」

 

「さくらが稽古を途中で居なくなるなんて………1度も無かった」

 

「あんだけ舞台に情熱を向けてたってのによぉ………」

 

「正直、私も信じられないでいるわ………」

 

全員が困惑を隠せておらず、口々にさくらを心配する。

 

「俺にもさっぱりだよ。兎に角、さくらと話して来る。皆は稽古を続けててくれ」

 

誠十郎は自分が話して来ると言い、初穂達には稽古を続ける様に促すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・さくらの部屋の前………

 

「さくら。俺だけど、ちょっと良いかな?」

 

さくらの部屋の前に立った誠十郎が、ドアをノックした後にそう尋ねる。

 

「………どうぞ」

 

部屋の中から、何時ぞやアナスタシアに弟子入りを一旦断られた時よりも覇気の無いさくらの声が帰って来る。

 

『こりゃ本格的に参ってるな』

 

「………失礼するよ」

 

ゼロがそう言うのを聞いて、一瞬躊躇しながらも、誠十郎はさくらの部屋に足を踏み入れる。

 

「…………」

 

さくらは、あの時と同じ様に、壁に貼られた初代帝国華撃団の公演ポスター………

 

そのポスターに描かれた『真宮寺 さくら』の姿をボーッと見ている。

 

「さくら………」

 

「…………」

 

誠十郎が傍に寄るが、さくらは『真宮寺 さくら』の方を向いたままだ。

 

「一体如何したんだ? 稽古中にボーッとするどころか、途中で舞台を降りるなんて………さくららしくないぞ」

 

「…………」

 

『こりゃ重症だぜ………』

 

沈黙し続けるさくらの様子を見て、ゼロはそう呟く。

 

「………神山隊長。隊長は何にも思わないんですか?」

 

とそこで、長い沈黙を破って、さくらは吐露する様に誠十郎にそう尋ねた。

 

「? 何がだい?」

 

「私達………帝国華撃団についてです」

 

「華撃団について? ひょっとして、真宮寺 さくらさんが居た帝国華撃団みたいに活躍出来てないと思ってるのか?」

 

「…………」

 

黙り込んださくらを見て、誠十郎は図星だと推測する。

 

「そんな事は無いさ。確かに、まだ嘗ての帝国華撃団には及ばないかも知れないが、俺達だって立派にやって来た。再興は果せているさ」

 

「でも! 怪獣や宇宙人が現れたら、結局最後はゼロさんに頼るしかないじゃないですか!!」

 

「!? それは!?」

 

『………そう言う事か』

 

そう言い返して来たさくらに、誠十郎は思わず目を見開き、ゼロは納得が行った様な様子を見せる。

 

「私達華撃団がどんなに頑張ったって、結局最後に怪獣や宇宙人を倒すのはゼロさんや他のウルトラマンさん達………私達なんて、大抵役に立っていないじゃないですか。ううん、いっそ華撃団だって、ウルトラマンさん達さえ居れば、必要無い存在なんじゃないですか!!」

 

「! さくら! 言い過ぎだぞっ!!」

 

吐き捨てる様にそう言うさくらに、誠十郎は思わず怒鳴る。

 

「誠兄さんに私の気持ちなんて分からないでしょう! 憧れの人の事を汚す奴に手も足も出せずに、結局ゼロさんに助けて貰った情けない私の気持ちなんか!!」

 

「!?」

 

『あの時の事か………クソッ! 何で気付けなかったんだ!!』

 

しかし、そう怒鳴り返されて、誠十郎は黙り込み、ゼロもにせ真宮寺 さくらが襲撃して来た時にその事に気付けなかったのを呪う。

 

「出てって下さい………」

 

「さくら………」

 

「出てってっ!!」

 

話を続けようとする誠十郎だったが、さくらはコレ以上話したくないと強い拒絶を見せる。

 

「…………」

 

その様子に、誠十郎は黙ってさくらの部屋を出て行くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しして………

 

帝劇支配人室にて………

 

「そう………天宮さんがそんな事を………」

 

さくらの部屋を後にした誠十郎は、その足ですみれの元を訪れていた。

 

「申し訳ありません。自分が気付かなかったばかりに………」

 

「神山くんのせいじゃないわ」

 

頭を下げる誠十郎に、すみれはやんわりとそう返す。

 

「それに………彼女の思いは私にも良く分かるわ」

 

「支配人………」

 

「悲しいけど、今の私達はゼロやウルトラマンの方達の力を頼らないと怪獣や宇宙人とは戦えない………それが現実ですわ」

 

エボルトラスターを手にし、苦い顔でそう漏らす様に言うすみれ。

 

華撃団の戦力だけで怪獣や宇宙人を退けた事が無いワケではないが、その戦果は数えられる程しかない。

 

「………ですが、何時までもその厚意に甘んじる積りはありません。帝都、そして地球は、この星で生きている私達自身の手で守らなければならないのです」

 

『その通りだぜ』

 

すみれのその言葉に、ゼロも口を挟んで来る。

 

『本当は俺達に頼らずに、地球人が自分達の力で地球を守るのが正しい。俺達のやってる事は、飽く迄それが出来る様になるまで手助けだ』

 

「ゼロ………」

 

ゼロの言葉に、誠十郎も同意する様に声を出す。

 

「兎も角、天宮さんの事は任せたわよ、神山くん」

 

「ハイ。明日、もう1度さくらと話してみます」

 

最後にそう言い合うすみれと誠十郎。

 

しかし………

 

事態は思わぬ方向へと進む事となる………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

帝劇2階・誠十郎の部屋………

 

早朝からけたたましく鳴るノックの音で、誠十郎は目を覚ます。

 

「ふああ~~………何だ、こんな朝早くから?………」

 

まだ開き切らない目を擦り、覚醒し切れていない頭で起き上がりながら、誠十郎は部屋のドアを開ける。

 

「神山!!」

 

「!? おうわっ!?」

 

途端に初穂が怒鳴り込む様に姿を見せ、寝ぼけていた誠十郎の意識は一瞬で覚醒。

 

「神山さん!」

 

「誠十郎!」

 

「キャプテン!」

 

更に初穂の後ろには、クラリス・あざみ・アナスタシアが控えていた。

 

「皆………一体如何したんだ、こんなに朝早くから揃って………」

 

「さくらの奴が居ねえんだっ!?」

 

「!? 何だってっ!?」

 

初穂の言葉で、驚愕を露わにする誠十郎。

 

「昨日の様子が気になって、皆目が覚めた」

 

「それでさくらさんの様子を見に行ったんですけど………」

 

「部屋のドアが開いていて、机の上にコレが有ったの」

 

クラリスとあざみがそう言い、アナスタシアが1枚の便箋を手渡して来る。

 

そこにはさくらの字で『探さないで下さい』とだけ書かれていた。

 

「! さくら………」

 

『まさかそこまで悩んでたとはな………』

 

誠十郎とゼロは、さくらの気持ちに気付けなかった己を呪う。

 

「神山! 一体全体、さくらは如何したってんだよ!?」

 

「………実は」

 

誠十郎は昨日さくらが言っていた事を皆に話す………

 

「そう………それであんなに落ち込んでたってワケね………」

 

「さくらさんは人1倍、華撃団の隊員である事に誇りを持ってましたから………」

 

アナスタシアが納得が行った表情となり、クラリスは同情の様子を見せる。

 

「ふざけんなよ! 勝手に悩んで勝手に居なくなりやがって!!」

 

とそこで、初穂が怒りの様子を露わに駆け出そうとする。

 

「初穂! 何処へ行くんだ!?」

 

「決まってんだろ! さくらを連れ戻すんだよ!!」

 

「でも、肝心のさくらが何処に居るか分かるの?」

 

「ぐうっ!………」

 

誠十郎の問い掛けにそう返す初穂だったが、続くあざみの言葉を聞いて苦い顔をして足を止める。

 

「………ひょっとすると」

 

「心当たりが有るの? キャプテン」

 

そこで、誠十郎が心当たりが有る様な様子を見せ、アナスタシアが訪ねて来る。

 

「ああ………兎に角、皆。さくらの事は俺に任せてくれ。必ず連れて帰る」

 

誠十郎は初穂達に向かってそう宣言する。

 

「………頼むぜ、神山」

 

「お願いします………」

 

「頑張って」

 

「期待してるわよ、キャプテン」

 

「…………」

 

初穂・クラリス・あざみ・アナスタシアがそう返すのを聞きながら、誠十郎は頷く。

 

そして、すみれから外出許可を貰い、さくらを連れ戻しに出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

そのさくらは………

 

帝都郊外にとある1軒家………

 

「…………」

 

その家の縁側に、相変わらず暗い表情で、脇に天宮國定を置いた状態で、さくらは座り込んでいた。

 

「急に帰って来たから驚いたぞ………」

 

その隣には、ガタイの良い髭を生やした男の姿が在った。

 

「お父さん………」

 

僅かに視線をその男………父である刀鍛冶の『天宮 鉄幹』へと向けるさくら。

 

「大方、何かやらかしたんだろう………」

 

「…………」

 

割と容赦の無い鉄幹の言葉にも、さくらは俯いたまま何も返さない。

 

「それで逃げて来たってワケか。此処に来たってのは、そう言う事だろ」

 

そこで鉄幹は縁側から立ち上がる。

 

「家に居たいなら好きなだけいろ。此処はお前の家なんだから」

 

「………お父さん」

 

「ゆっくりと休め………」

 

そう言い残してその場を後にする鉄幹。

 

年頃の娘に対する不器用な父親の優しさだった………

 

「…………」

 

鉄幹が去った後も、只俯いて縁側に座り込んでいるさくら。

 

その様子は、まるで生ける屍の様だった………

 

「…………」

 

と、不意に立ち上がったかと思うと、天宮國定を残して、フラフラしながら何処かを目指して歩き出したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくらの実家・鍛冶小屋………

 

フラついているさくらが辿り着いたのは、父・鉄幹の仕事場である鍛冶小屋だった。

 

「…………」

 

その鍛治小屋の隣に在った納屋の中へと足を踏み入れるさくら。

 

「………まだ有ったんだ」

 

そして、壁に立て掛けられ、埃を被っていた1本の木刀を手にする。

 

良く見ると、柄の部分に平仮名で『れいけんあたらか』と書かれていた。

 

「懐かしいな………」

 

懐かしむ様な表情となるさくら。

 

それは幼少期、真宮寺 さくらに憧れていた彼女が、その愛刀である『霊剣荒鷹』の積りで振っていた木刀だった。

 

幼き頃故、字を間違えて『あたらか』と書いてしまったのだが………

 

「ははっ、馬鹿だな、私………でも、今の私が有るのはコレのお陰………」

 

『れいけんあたらか』を優しく撫でるさくら。

 

するとそこで、その近くに在った二振りの木刀に目が行く。

 

「あ、コレ………」

 

それを見たさくらの脳裏に、誠十郎の顔が浮かぶ。

 

それは鉄幹が誠十郎の為に作った物であり、コレを使って幼き日のさくらと共に剣の稽古に励んでいたのだ。

 

「私が隊長なら二刀流だって言って、それに誠兄さんは付き合ってくれて………」

 

とそこで、さくらは納屋から見えていた1本の木に視線を向けた。

 

「…………」

 

『れいけんあたらか』を手にしたまま、その木の元へと向かうさくら。

 

それは大きな桜の木であり、良く見ると幹に3本の爪痕の様な傷が刻まれていた。

 

「あの時、降魔が突然現れて、この桜の木を………その時に颯爽と現れて、降魔を倒してくれたのが、真宮寺 さくらさん」

 

さくらの脳裏に蘇る降魔を一刀の元に斬り捨てた真宮寺 さくらの姿。

 

彼女が帝国華撃団に入ろうと志す切っ掛けとなった出来事………

 

さくらの原点であり、原動力だった。

 

この場所は彼女にとってとても大切な場所だった。

 

『誓い』と『約束』………

 

彼女が彼女である為の思い出の場所………

 

真宮寺 さくらと出会い、彼女の様になると誓った………

 

そしてもう1つ………

 

実はさくらは、幼少期の誠十郎と、ある約束を交わしていた。

 

それも彼女にとって、大切な思い出だった。

 

「誠兄さん………」

 

その約束を思い出して頬を染めるさくら。

 

だがすぐにまた暗い表情となった………

 

(私は華撃団から逃げ出した………例え誠兄さんが約束を覚えてくれていたって、もう関係無い事じゃない………)

 

そう思ったさくらの脳裏に、にせ真宮寺 さくらとゼロの事が過る。

 

(私なんて………華撃団なんて、ゼロさんやウルトラマンさん達が居れば必要無い………)

 

またそんな思いが胸中に渦巻き出す。

 

と、その時………

 

さくらが立っている桜の木の裏側で音がした。

 

「?………」

 

何かと思って、桜の木の裏側を覗き込むさくら。

 

すると、何か動くモノが在った。

 

「? 誰………?」

 

そこでさくらは、桜の木の裏へと回り込む。

 

そこに居たのは………

 

キュイキュイキュイ~

 

赤いサンゴの様な身体に白い手足と尻尾を持った小さな怪獣だった!

 

「!? か、怪獣っ!?………!? キャアッ!?」

 

驚いたさくらは思わず後退り、尻餅を着いてしまう。

 

「いった~い………」

 

キュイキュイキュイ~!

 

と、さくらが痛がっている様子を見せると、怪獣は近寄って来て、その傍に座り込んだ。

 

「えっ?………」

 

キュイキュイキュイ~

 

驚くさくらに向かって、怪獣は声を掛ける様に何度も鳴き声を挙げる。

 

「………もしかして、心配してくれてるの?」

 

キュイキュイキュイ~

 

さくらの言葉を肯定するかの様に声を挙げる怪獣。

 

「………ありがとう、大丈夫だよ」

 

そう言ってさくらが立ち上がると、怪獣も立ち上がる。

 

「貴方………悪い怪獣じゃないんだね」

 

自分を心配してくれた事と、クラリスのゼットンの事を思い出し、さくらはそう判断した。

 

キュイキュイキュイ~

 

それを肯定するかの様に、小さな怪獣………

 

『友好珍獣 ピグモン』は鳴き声を挙げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

いよいよ本作のメインヒロインであるさくら回です。
普通メインヒロイン回って最後の方になるんですが、アナスタシアは彼女の設定の特殊さ故に、最後となります。
さくらには他のメインヒロインとしてイベントを入れる予定なので、お楽しみに。

後半には倫敦華撃団戦も入れる予定ですので、今回もチャプターが長くなるかと。
ご了承ください。

そしてそんなさくらですが………
にせ真宮寺 さくらの件で自信を喪失し、華撃団の存在にさえ疑問を覚えてしまいます。
そして、逃げる様に実家へと帰省。
そこで出会ったのは………ピグモン!?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『怪獣酋長』

チャプター2『怪獣酋長』

 

友好珍獣 ピグモン 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都中央駅・大帝国ホテル………

 

アーサーの部屋………

 

「アーサー。本国から連絡があったの?」

 

アーサーの部屋に呼び出されたランスロットが、部屋に入るなりアーサーにそう尋ねる。

 

「ランスロット、ノックぐらいしたら如何だい?」

 

そんなランスロットに溜息を吐きながらも、半ば諦めた様子を見せるアーサー。

 

「今し方決まったそうだよ………次の世界華撃団大戦の準決勝。その勝敗に関わらず、我が倫敦華撃団はWLOFを離脱する事となった」

 

「ふ~~ん、そっか………」

 

それを聞いたランスロットは、椅子に腰掛ける。

 

「流石に本国も、コレ以上今のWLOFには付き合い切れないと判断した様だ。次の試合を最後の義理立てと言うワケさ」

 

「…………」

 

「かと言って、まだウルティメイト華撃団を信用したワケでは無い。恐らく、倫敦華撃団は独自の道を行く………そう言う事になるだろうね」

 

「へ~、そう」

 

話に既に興味を失っている様子で、ランスロットは椅子に座ったまま背凭れに深く凭れ掛り伸びをする。

 

「ランスロット。コレは僕達倫敦華撃団の行く末に関わるかも知れない事だよ。もう少し真剣に聞いたら如何だい?」

 

「関係無いよ。例え倫敦華撃団が如何なろうが、私がやる事は1つ………戦う事だけさ」

 

渋面をしながら注意するアーサーだが、ランスロットは何処に吹く風と言う様子で笑みを浮かべる。

 

獲物を前にした、獰猛な獣の様な笑みを………

 

(………最近、ランスロットの戦闘狂ぶりに磨きが掛かっている様に見える。一体何が………)

 

そんなバトルジャンキー度が加速しているランスロットに、アーサーは疑問を感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

帝都郊外・さくらの実家にて………

 

「………何年ぶりだろうな。もう、此処へ行く事は無いと思っていたのに………」

 

さくらの実家の前に立った誠十郎がそう呟く。

 

『此処にさくらが居るのか?』

 

「ああ、さくらが行くとしたら、此処以外無い」

 

尋ねて来たゼロに確信を持って答えると、誠十郎は庭の方へと回る。

 

「10年ぶり………ぐらいか? ああ、此処は変わって無いな」

 

懐かしい光景に、誠十郎はノスタルジーを感じる。

 

(さくらと2人で裏山に入って、剣術の練習とかキノコ狩りとかしてたな………おじさんの鍛治仕事について行って、1日中、野山を亀回ったりもしたっけ………)

 

思い出が次々と脳裏に蘇る。

 

「………ん?」

 

「…………」

 

とそこで、誠十郎は縁側に座って鞘から抜いた天宮國定を眺めている鉄幹の姿に気付く。

 

………その様子は何処か複雑そうだった。

 

「鉄幹さん!」

 

「ん? お前は………」

 

「ご無沙汰しています、神山 誠十郎です」

 

「誠十郎………ああ、誠ボンか! 誰かと思ったぜ」

 

誠十郎に自己紹介され、鉄幹は思い出した様に笑みを浮かべる。

 

「大きくなって見違えたな。噂は聞いてるぞ。降魔だけじゃなく、怪獣や宇宙人相手に奮戦してるそうじゃないか」

 

「恐縮です………あの、鉄幹さん。それは、さくらの刀ですよね?」

 

誠十郎は、鉄幹が持っていた天宮國定に言及する。

 

「ああ。刃こぼれが無いかと思ってな………」

 

「さくらは………此処に居るんですか?」

 

「ん? アイツ、黙って出て来たのか?」

 

「あ~、いや、それは………」

 

「誠ボン、嘘が下手だな」

 

誤魔化そうとした誠十郎だったが、鉄幹には見透かされていた。

 

「………さくらの奴なら、多分鍛治小屋の方だろう。スマンが、序にコイツも持って行ってやってくれ」

 

そう言うと、鉄幹は天宮國定を鞘に納め、誠十郎に差し出す。

 

「鉄幹さん………」

 

「何が有ったかは知らんし、口出しする積りは無い………だが、アイツを連れ戻せるとすればお前だけだろうな」

 

「…………」

 

誠十郎は無言で鉄幹から天宮國定を受け取り、鍛治小屋の方へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鍛治小屋………

 

「此処も変わっていないな………何もかも、あの頃のままだ」

 

鍛治小屋の光景も変わっていない事で、誠十郎はまたノスタルジーを感じる。

 

「………さくらは?」

 

キュイキュイキュイ~

 

「キャアッ! ちょっと、止めて!!」

 

とそこで、鳴き声の様な声と、さくらの声が響いた。

 

「! さくらっ!!」

 

慌てて声が聞こえて来た場所へと向かう誠十郎。

 

そこで彼が見たのは………

 

「わっ! ちょっと! 駄目だって!」

 

キュイキュイキュイ~

 

飛び跳ねているピグモンに寄り掛かれているさくらの姿だった!

 

「! さくらぁっ!!」

 

すぐさま誠十郎は、ピグモンに飛び掛かろうとする。

 

「!? えっ!? 誠兄さんっ!?」

 

キュイキュイキュイ~!?

 

驚くさくらとピグモン。

 

『待て、誠十郎! そいつは敵じゃないっ!!』

 

「!? 何っ!?」

 

しかしゼロがそう言って制止を掛けた事で、誠十郎は寸前で思い止まる。

 

「あ、危なかった~………」

 

キュイキュイキュイ~………

 

さくらとピグモンは、揃って安堵の様子を見せる。

 

(ゼロ、この怪獣は………?)

 

『そいつは『友好珍獣 ピグモン』だ。名前の通り、友好的な怪獣だ』

 

(そうなのか………)

 

ゼロとそう会話を交わしながら、誠十郎はピグモンに視線を向ける。

 

「誠兄さん………如何して此処に?」

 

とそこで、さくらが暗い表情を浮かべて、誠十郎にそう問い質す。

 

「如何してって………さくらを連れ戻しに来たに決まってるじゃないか」

 

「…………」

 

誠十郎がそう返すと、さくらはスッと視線を逸らした。

 

「さくら………」

 

『まだ駄目みてぇだな………』

 

さくらの変わらぬ様子に誠十郎とゼロは頭を捻らせる。

 

キュイキュイキュイ~

 

するとそこで、ピグモンが今度は誠十郎の方に、さくらの時と同じ様にピョンピョンとジャンプしながら寄り掛かって来る。

 

「おわっ!? 何だっ!?」

 

「誠兄さん!?」

 

キュイキュイキュイ~

 

誠十郎とさくらが驚きの声を挙げる中、ピグモンは誠十郎に向かって鳴き続ける。

 

「一体何なんだ?」

 

「もしかして………何かを伝えたいんじゃ?」

 

キュイキュイキュイ~

 

さくらがそう推察すると、ピグモンは肯定するかの様にさくらを見て頷いて見せた。

 

(ゼロ、分かるか?)

 

『ちょっと待て。テレパシーを使ってみる』

 

そこでゼロが、テレパシーを使ってピグモンと対話を試みる。

 

? キュイキュイキュイ~?

 

と、テレパシーが届いたのか、ピグモンは動きを止める。

 

『ふんふん………それで?………!? 何っ!?』

 

ピグモンと対話していたゼロだったが、突然驚きの声を挙げる。

 

(如何した、ゼロ!?)

 

『マズイ事が起きてやがる! 『ジェロニモン』が現れやがった!』

 

(『ジェロニモン』!?)

 

『ああ、『怪獣酋長 ジェロニモン』………死んだ怪獣を蘇らせる能力を持ってやがる』

 

(!? 怪獣を蘇らせるだって!?)

 

コレまでに戦って来た怪獣や宇宙人とは別のベクトルでヤバいジェロニモンの能力に、誠十郎が驚愕の声を挙げる。

 

『如何やらこの近くで邪霊を集める儀式をやってるらしい。それであらゆる次元から怪獣達の邪霊を集めて、怪獣軍団を作り上げる積りみてぇだ』

 

(怪獣軍団だって!? 只でさえ強い怪獣が軍団になって襲って来たら………)

 

『コイツは如何やら、その儀式の最中に間違って復活させられたらしい。それでその事を知らせようとして様だ』

 

(そうだったのか………)

 

キュイキュイキュイ~

 

話が通じた事が嬉しいのか、ピグモンがピョコピョコと跳び上がる。

 

「誠兄さん? 如何したんですか?」

 

「大変な事になったぞ、さくら。怪獣酋長 ジェロニモンがこの近くに居る」

 

「怪獣酋長?」

 

「ソイツが怪獣達の邪霊を集めて復活させ、怪獣軍団を作り上げる積りみたいだ」

 

「!? ええっ!?」

 

誠十郎の言葉に驚きの声を挙げるさくら。

 

「このピグモンはその儀式で間違って復活させられ、それを知らせに来てくれたんだ」

 

キュイキュイキュイ~

 

誠十郎の言葉を肯定する様に、ピグモンが鳴き声を挙げながら飛び跳ねる。

 

「誠兄さん………何でそんな事が分かるんですか?」

 

しかし、誠十郎がゼロと一心同体になっている事を知らないさくらは、怪訝な様子でそう問い質す。

 

「!? あ、いや………それは………と、兎に角! 帝劇に連絡だ!!」

 

誠十郎は答えに窮し、誤魔化す様にそう言って、スマァトロンを取り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

「何ですって!? 怪獣軍団!?」

 

誠十郎からの報告を受けたすみれが驚愕の声を挙げる。

 

『ハイ。ゼロが言うには、怪獣酋長 ジェロニモンはそれだけの事が出来る力が有ると………』

 

「怪獣酋長………」

 

ジェロニモンの肩書を反復するすみれ。

 

初代帝国華撃団も、『反魂の術』と呼ばれる魔の呪術によって蘇った様々な敵と戦った事が有る。

 

今回のジェロニモンに事は、その事を彷彿とさせた。

 

「………分かりましたわ。すぐに花組を向かわせるわ」

 

『お願いします。自分とさくらは出来る限りジェロニモンの情報を集め、可能ならば儀式の妨害を試みます』

 

「天宮さんは大丈夫なの?………」

 

『正直、まだ………ですが、事が事だけに、今は少しでも手が必要です』

 

「無茶をしては駄目よ、神山くん」

 

『ハイ………』

 

その言葉を最後に、通信が切れる。

 

「…………」

 

すみれは一瞬逡巡した様な様子を見せたが、すぐに今度は格納庫の令士へと通信を送る。

 

『此方格納庫。司馬です』

 

「出撃よ、司馬くん。花組の機体を全機、轟雷号に搭載して頂戴」

 

『しかし、すみれさん。さくらちゃんの機体はまだ………』

 

「………『試製桜武』の使用を許可します」

 

『!? なっ!? で、でも、あの機体は!?』

 

『試製桜武』と言う名前を聞いた令士が動揺を露わにする。

 

「暇を見つけてはコツコツと整備していたのでしょう? イデさんも見ていたそうよ」

 

『………参ったなぁ。すみれさんばかりか、イデ先生にまでお見通しだったってわけか』

 

観念したかの様にそう言う令士。

 

「ほほほ………『帝劇のトップスタァ』に隠し事は出来ませんのよ」

 

得意げに笑ってそう言うすみれ。

 

「今天宮さんは大きな試練が課せられているわ。けど、それを乗り越えられた時………彼女は超えられる。彼女の中の夢を。今こそ、追い続けた夢に挑む時ですわ」

 

『了解しました。『試製桜武』を搭載しておきます』

 

そう言って、令士は通信を切った。

 

(私に出来るのはココまでよ………後は貴方次第よ、天宮さん)

 

すみれは椅子から立ち上がると窓際へと移動し、空を見上げた。

 

(『試製桜武』はあのさくらさんさえ、乗りこなせなかった機体………ですが、天宮さんが試練を乗り越えれば必ず………)

 

見上げる空に、真宮寺 さくらの顔が浮かぶ。

 

(さくらさん………貴方に憧れていた娘は、今貴方を超えて行くかも知れませんわ)

 

そう思うすみれの顔に、僅かに笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

さくらを追って彼女の実家を10ねんぶりに訪れた誠十郎。
そこで彼もピグモンと出会う。
ゼロを介し、ピグモンからジェロニモンの話を聞く誠十郎達。

一方、出撃準備に入った帝劇では、謎の機体の存在が………
果たして、すみれの期待通りに、さくらは立ち直れるのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『小さな英雄』

チャプター3『小さな英雄』

 

友好珍獣 ピグモン

 

怪獣酋長 ジェロニモン

 

暴君怪獣 タイラント 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都郊外・さくらの実家付近………

 

キュイキュイキュイ~

 

「この近くなのか? ジェロニモンが居るのは………」

 

ピグモンに案内されて、誠十郎とさくらがやって来たのは、岩肌が剝き出しになっている岩石地帯だった。

 

「…………」

 

一方で、さくらはまだ暗い表情で、俯き加減のままだった。

 

「さくら………」

 

『大丈夫なのかよ………?』

 

その様子に、ゼロも不安を隠せない。

 

本来ならば置いて行きたかったところだが、事が事だけに少しでも戦力が欲しかった。

 

また、戦いの場に引っ張り出せば戦わざるを得ないだろうと言うショック療法の意味も有った。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

とそこで、唸り声の様な咆哮が聞こえて来た。

 

「!!」

 

「! アッチか!!」

 

すぐにその咆哮が聞こえて来た方角を特定する誠十郎。

 

キュイキュイキュイ~

 

ピグモンが真っ先に進もうとしたが………

 

「待て、ピグモン。君は此処で待っていてくれ」

 

誠十郎はそう言って押し止める。

 

キュイキュイキュイ~

 

「此処から先は危険だ。コレは俺達、帝国華撃団の仕事なんだ。分かってくれ」

 

抗議の様に鳴くピグモンを、誠十郎はそう言って説き伏せる。

 

「さくら、行くぞ」

 

「あ………」

 

そして、落ち込んだままのさくらの手を取り、半ば強引に連れて行く。

 

キュイキュイキュイ~………

 

そんな2人を、ピグモンは何処か納得行かない様子で見送ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岩石地帯の奥地………

 

「! 居た!」

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

誠十郎の視界に、黒い身体に白い髭を持ち、頭部から背中に掛けてカラフルな羽毛が生えている怪獣………『怪獣酋長 ジェロニモン』の姿が飛び込んで来た。

 

ジェロニモンは何やら怪しげな動きを繰り返しており、その動きをする度に眼前で赤紫色の怪しい光が走る。

 

「アレは………?」

 

『多分、怪獣達を復活させる為の儀式だろう』

 

(だとしたら、早く止めないと。さて、如何する?………)

 

ゼロの推測に、誠十郎は思案顔となる。

 

「…………」

 

一方でさくらは、暗い表情のまま、今度は空を見渡していた。

 

「? さくら? 何をやってるんだ?」

 

「………ゼロさんが、今に来ますよ」

 

この期に及んでそんな事を言い放つさくら。

 

「! いい加減にしろ、さくら! 棚から牡丹餅の精神で勝利が得られると思っているのか!? ゼロは俺達が精一杯努力して戦って、初めて力を貸してくれるんだ!!」

 

そんなさくらの態度に、誠十郎は思わず怒鳴り声を挙げてしまう。

 

すると………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

その怒鳴り声が聞こえたのか、ジェロニモンがギョロリと誠十郎とさくらに視線を向けた!

 

「!? しまった!? 気付かれたっ!?」

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

誠十郎が焦った瞬間、ジェロニモンが大きく咆哮。

 

すると、上空から7つの青い火の玉の様な物が降りて来る。

 

「!? アレはっ!?」

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

その7つの青い火の玉を、念力で1つに合わせて行くジェロニモン。

 

そして巨大な1つの青い火の玉が出来上がったかと思うと………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

『暴君怪獣 タイラント』が出現した!!

 

『タイラントッ! よりによってコイツかよ!!』

 

(ゼロ! あの怪獣はっ!?)

 

『暴君怪獣 タイラント………7体の怪獣・超獣・星人が合わさって出来た合体怪獣だ。嘗て親父を含めた5人のウルトラマンを倒した事も有る奴だ』

 

(なっ!? ウルトラマンを5人も!?)

 

嘗て、ゾフィー・初代ウルトラマン・ウルトラセブン・ウルトラマンジャック・ウルトラマンAを1度は倒した事もあるタイラントの強さに戦慄する誠十郎。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

とそこで、ジェロニモンが指示を出す様に右手を突き出したかと思うと、タイラントが誠十郎とさくらに向かって迫って来た!

 

「! マズイッ! さくらっ!!」

 

「あっ!?」

 

さくらの手を取り、タイラントから逃げる様に走り出す誠十郎。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

そんな2人を、タイラントは地響きを立てながら追い掛ける。

 

そして、2人に向かって『異次元宇宙人 イカルス星人』の耳から、アロー光線を放つ。

 

逃げる2人の周りで、次々に爆発と共に火柱が上がる!

 

「うおっ!?」

 

「!!」

 

それでも必死に逃げる誠十郎とさくら。

 

「ゼロさーん! 何をやってるんですかーっ!! 早く来て下さーいっ!!」

 

そんな中で、さくらは情けなくゼロに助けを求める。

 

「さくら………」

 

『…………』

 

そんなさくらの姿に、誠十郎もゼロも何も言えなくなる。

 

「ゼロさーんっ!!」

 

尚もゼロに助けを求めるさくら。

 

と、そこで!

 

タイラントの頭に砲弾が命中!

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!?

 

爆発と共に、タイラントの動きが一瞬止まる。

 

「!!」

 

「アレはっ!?」

 

さくらが驚き、誠十郎が空を見上げると、そこには………

 

主砲の砲口から硝煙が立ち昇らせている翔鯨丸の姿が在った!

 

「何ちゅう奴や! スペシウム弾頭弾が大して効いてへんで!?」

 

「今までの怪獣とは一味違う様ですわね」

 

バルタン星人・アシサを倒したスペシウム弾頭弾を食らってもピンピンとしているタイラントの姿を見て、ブリッジのこまちとすみれがそう声を挙げる。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

とそこで、タイラントがお返しとばかりに、翔鯨丸を見上げながら口を開いたかと思うと、火炎放射『デスファイヤー』を放つ!

 

「! 回避っ!!」

 

「クウッ!!」

 

すみれの声で、操舵を担当したカオルが舵輪を目一杯切る。

 

直撃は避けたものの、左翼に命中し、炎上する。

 

「左翼炎上! 緊急消火装置作動!!」

 

「不時着よ! 花組を射出して!!」

 

カオルの報告が挙がる中、すみれの声が響き、翔鯨丸から初穂機・あざみ機・クラリス機・アナスタシア機が射出される。

 

「ゼットンッ!!」

 

クラリスが機体が着地すると同時にゼットンを召喚する。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

タイラントとゼットンが対峙する。

 

「神山! さくら! 無事か!?」

 

「初穂! 助かった! ありがとう!!」

 

誠十郎とさくらの安否を確認する初穂に、誠十郎がそう返す。

 

「2人供、早く翔鯨丸に!」

 

「隊長の無限が用意して有る」

 

「それと、さくらの新しい機体もね」

 

クラリス・あざみ・アナスタシアもそう言って来る。

 

「!? 新しい機体!?」

 

新しい機体と言う言葉を聞いたさくらが僅かに反応する。

 

「さくら! 行くぞっ!!」

 

誠十郎は再度さくらの手を取り、不時着した翔鯨丸に向かって走り出す。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

その直後、タイラントとゼットンが激突する。

 

「良し! ゼットンを援護するぞ!!」

 

「「「了解っ!!」」」

 

そして初穂達はゼットンの援護に動くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、不時着した翔鯨丸へと向かった誠十郎とさくらは………

 

「もう少しだ!」

 

翔鯨丸まであと少しの場所まで辿り着いていた。

 

しかし、そこで………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

岩山の陰からヌッとジェロニモンが姿を見せた。

 

「!? ジェロニモン!? 何時の間に!?」

 

誠十郎が驚愕した瞬間………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

ジェロニモンは口から白いガス………『反重力ガス』を放って来た!!

 

「! さくらっ!!」

 

「キャッ!?」

 

咄嗟にさくらを突き飛ばした誠十郎だったが、自身は反重力ガスを真面に浴びてしまう。

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

途端に、誠十郎の身体は大空高くへと舞い上がった。

 

その手から持ちっ放しだった天宮國定が零れ、さくらの傍に落ちる。

 

「! 誠兄さああああぁぁぁぁぁーーーーーーんっ!!」

 

さくらの悲鳴の様な声が響く中、誠十郎の姿が空の青の中に吸い込まれて行く。

 

「お、落ちるっ!?」

 

上空高くへ舞い上げられた誠十郎は、やがて反重力ガスの効き目が切れ、真逆様に落下する。

 

『チイッ! 代わるぜ、誠十郎っ!!』

 

するとそこで、ゼロの意識が誠十郎と入れ替わる。

 

「よっ! ほっ! ハアッ!!」

 

そして、一緒に舞い上げられて落下していた岩々を足場に、徐々に落下スピードを落とす。

 

やがて、地面が見えて来たかと思うと………

 

「セヤッ!!」

 

落下地点に大きくクレーターを作りながらも、難なく着地して見せた!!

 

『た、助かったぁ………』

 

「安心してる暇はねえ、誠十郎! さくらが危ねえっ!!」

 

誠十郎が安堵に息を吐くが、誠十郎(ゼロ)はすぐさま、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを取り出す。

 

やや離れた場所で、ジェロニモンが今度はさくらに迫っていた。

 

「デュ………」

 

そしてそれを右手で掴むと、目に装着しようとしたが………

 

「ゼロさーんっ!! ゼロさーんっ!!」

 

そこへ、さくらの情けない悲鳴が聞こえて来る。

 

「『!!』」

 

それを聞いた誠十郎とゼロの手が止まる。

 

果たして今変身して助けに入って良いのか?………

 

このままでは、さくらは一生ゼロに頼りっきりになってしまうのではないか?………

 

そんな思いが、2人の手を押し止めたのだ。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

遂にジェロニモンは、さくらを踏み潰しに掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

「「『!?』」」

 

響き渡った鳴き声に、誠十郎達が驚愕する。

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

現れたのは、置いて来た筈のピグモンの姿だった。

 

「!? ピグモンッ!!」

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

誠十郎の驚愕の声が響く中、ピグモンは大きく鳴き声を挙げながら、ピョコピョコと激しく跳び回る。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

そんなピグモンの姿に気付くジェロニモン。

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

するとピグモンは、更に大きく鳴き声を挙げ、激しく跳び撥ねる。

 

まるでジェロニモンを挑発してるかの様に………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

その挑発に乗り、ジェロニモンは標的をピグモンに変えた!

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

ピグモンは挑発を続けながら、ジェロニモンをさくらから引き離して行く。

 

「! ピグモンッ!!」

 

「駄目! 逃げてっ! 逃げて、ピグモンッ!!」

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

誠十郎とさくらの悲鳴が響き渡るが、ピグモンはジェロニモンへの挑発を止めない。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

と、そこでジェロニモンは、近くに在った岩山を右腕で払った!!

 

巨大な岩々が宙に舞い、ピグモンへと向かう!

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

逃げるピグモンの周囲に岩の雨が降り注ぐ。

 

そして遂に!!

 

キュイキュイキュイ~ッ!?

 

1発の岩が、ピグモンへと直撃した!!

 

「! ピグモンッ!!」

 

「クウッ!!」

 

慌ててピグモンの元へと走るさくらと誠十郎。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

とそこで、ゼットンとタイラントの声が響いて来たかと思うと、ジェロニモンはゼットンに苦戦するタイラントの姿を目撃する。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

ジェロニモンは、ピグモンを始末して満足したのか、タイラントの方へと向かうのだった。

 

「ピグモンッ!!」

 

「ピグモンッ! しっかりしろっ!!」

 

その間にピグモンの元へと辿り着いたさくらと誠十郎。

 

誠十郎が倒れていたピグモンの身体を抱き起すが………

 

キュイキュイキュイ~………

 

ピグモンは最後に弱弱しく鳴いたかと思うと、ゆっくりとその瞳を閉じ、動かなくなった………

 

「! ピグモンッ!! ピグモオオオオォォォォォォーーーーーーーンッ!!」

 

「そ、そんな………」

 

「!!」

 

さくらが動揺を露わにしていると、誠十郎が掴み掛った!!

 

「!? 誠兄さん!?」

 

「さくら! ピグモンだって俺達の為に命を投げ出して戦ってくれたんだぞ! 帝国華撃団の隊員として、お前は恥ずかしいと思わないのか!!」

 

そしてそのまま、さくらの頬にビンタを見舞った!!

 

「!!」

 

さくらは地面に倒れたかと思うと、赤くなった頬を押さえながら立ち上がる。

 

「………私が………私が間違ってた………ピグモン………ゴメンね………」

 

涙を流しながらピグモンへと詫びたかと思うと、今までとは打って変わり、覚悟を決めた表情となった。

 

「神山隊長………ピグモンを、お願いします」

 

天宮國定を手に、さくらは翔鯨丸の方へと駆け出した。

 

「…………」

 

それを見送ると、誠十郎はピグモンの亡骸を抱き上げ、岩山の陰へと退避する。

 

「………ゼロ、行くぞ!」

 

『ああ、コレ以上の犠牲は………出させやしねぇっ!!』

 

「デュワッ!!」

 

そして、改めてウルトラゼロアイを装着した。

 

「セエエヤァッ!!」

 

溢れた光の中からゼロが飛び出し、ジェロニモンとタイラントの元へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ジェロニモンの怪獣軍団結成阻止に動く誠十郎とさくらだったが、ジェロニモンの呼び出したタイラントによって窮地に陥る。
自信を喪失していたさくらは只管にゼロに助けを求めるばかりで、戦おうとすらしなかった。
しかし………
ジェロニモンに狙われた彼女を助ける為に、ピグモンが犠牲に………
それを見た誠十郎の叱咤により、さくらは自分が間違っていた事に気付いたのだった。

ピグモンに関してですが、生存の方向も考えてはいたのですが、それではさくらが立ち直る理由が弱くなってしまうのと、今後の展開を考え、やはりこの形となりました。
ご了承ください。
無論、只死んだワケではありません。
ピグモンの死は後々へ大きく影響を与えます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『試製桜武』

チャプター4『試製桜武』

 

怪獣酋長 ジェロニモン

 

暴君怪獣 タイラント 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不時着した翔鯨丸の格納庫………

 

「ハアッ! ハアッ!」

 

息を切らせながら、格納庫内へ飛び込んで来るさくら。

 

「待っていましたわ、天宮さん」

 

「! 神崎司令!」

 

そこに待ち構えていたすみれの姿に驚くさくら。

 

「此方へいらっしゃい………」

 

そんなさくらの驚きを無視しながら、すみれは翔鯨丸内の格納庫の一角へさくらを誘う。

 

そこには、見た事の無い桜色の霊子戦闘機の姿が在った。

 

「! この機体は!?………」

 

「『試製桜武』………神崎重工初の霊子戦闘機として、1台だけ作られた試作機体よ」

 

さくらに向かってその霊子戦闘機………『試製桜武』の説明をするすみれ。

 

「『試製桜武』………」

 

「けど、性能が高過ぎて、乗り手の霊力を激しく消耗する為に、誰も乗りこなす事が出来ませんでした………あの、さくらさんでさえね」

 

「! 真宮寺 さくらさんでも、乗りこなせなかった!? そ、そんな機体を………私に?」

 

「今の貴方だから、渡すのよ」

 

再度驚くさくらに向かって、すみれは不敵に笑いながらもそう言い放つ。

 

「私、だから………?」

 

「超えなさい………貴方の中の夢を。今こそ、追い続けた夢に挑む時ですわ!」

 

「………!」

 

すみれにそう言われ、さくらは試製桜武を見やった。

 

「………行きます!」

 

そしてすぐさま乗り込むと、中に在った戦闘服に着替え、天宮國定を座席の後ろに納めた。

 

ハッチを閉め、戦闘服のコネクタ部分が試製桜武と繋がると、霊力が吸われる様な負荷がさくらに襲い掛かる。

 

「ぐうっ………」

 

さくらの口から苦悶の声が漏れる。

 

(お願い桜武………私に………答えて!!)

 

しかし歯を食いしばって気合を入れ、心の中でそう叫ぶと、試製桜武のモノアイに光が灯る!!

 

更に、背部に装着されていたジェットエンジンの様なパーツも稼働し始めたかと思うと、閉じていた翼が展開された!!

 

「はあああああっ!!」

 

さくらの気合の掛け声と共に、試製桜武は刀を抜いてポーズを決める!!

 

「桜武! 行きますっ!!」

 

そして、カタパルトで射出され、飛び出して行った。

 

「………頼むわよ、天宮さん」

 

それを見送ったすみれは、ひっそりとそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岩石地帯の奥地………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

タイラントと組み合いを展開しているゼットン。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

と、不意を突く様に組みを解いたゼットンが、両手で張り手を繰り出し、タイラントを押し退けたかと思うと、そのまま火球を放つ。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

しかし、タイラントは腹部を構成している『宇宙大怪獣 ベムスター』の腹の口『吸引アトラクタースパウト』を使い、火球を吸収してしまう。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

そして反撃にと、身体を回転させて『大蟹超獣 キングクラブ』の尻尾での攻撃を見舞う!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

真面に喰らったゼットンは、岩肌に叩き付けられる様に倒れる。

 

「ゼットンッ! くうっ!! アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

そこでクラリス機が必殺技を発動し、無数の魔導弾をタイラントに向けて放った。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

しかし、背中を構成している『液汁超獣 ハンザギラン』の生命力により、タイラントは無数の魔導弾が直撃してもビクともしない。

 

「望月流忍法………無双手裏剣!!」

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

続いてあざみ機が必殺技を繰り出したが、タイラントはアロー光線で相殺する。

 

「野郎! 東雲神社の! 御神楽ハンマーッ!!」

 

そこで初穂機が、炎を纏って独楽の様に回転しながらハンマーを振り回してタイラントへと向かう。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

するとタイラントは、両足を構成している『どくろ怪獣 レッドキング』の右足を上げたかと思うと、思いっ切り踏み締めた!!

 

途端に、辺り一面に地震の様な振動が走る!

 

「!? うおわぁっ!?」

 

初穂機はバランスを崩して転倒。

 

必殺技は空振りに終わってしまう。

 

「アポリト・ミデンッ!」

 

しかしそこで、アナスタシア機が番傘型ライフルからのビームを放ち、タイラントの鼻先の角へと命中させた。

 

「やったっ!」

 

コレは決まったと思ったクラリスが歓声を挙げたが………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

タイラントが咆哮すると、頭部を構成している『竜巻怪獣 シーゴラス』の角が稲妻を放ち、アルビトル・ダンフェールを掻き消してしまった!

 

「!? そんなっ!?」

 

「クッ!」

 

一転して驚愕の声を挙げるクラリスに、思わず苦い声を漏らすアナスタシア。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

タイラントは再度咆哮を挙げると、両腕を構成している『殺し屋超獣 バラバ』の腕を振り回す。

 

アンカー付き鉄球と鎌が、周りの岩山を破壊し、破片となった岩石が次々と初穂達に降り注ぐ!

 

「! アブネッ!」

 

「ニンッ!!」

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

回避する初穂達だが、タイラントは次々に岩山を崩して岩石を雨霰と飛ばして来る。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

そこでゼットンが、タイラントを取り押さえようとしたが………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

タイラントは、左手の鉄球からアンカーを発射し、ゼットンに巻き付ける。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

そしてそのまま、ゼットンを振り回し、地面に叩き付けた!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

悶えるゼットンに、追い打ちとばかりに腹部から冷凍ガスを浴びせるタイラント。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

身体が凍り付いて行き、動きの鈍るゼットン。

 

「ゼットンッ!!」

 

「野郎っ!!」

 

クラリス機と初穂機が援護に動くが………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

そこで、ジェロニモンが姿を現す。

 

「! もう1匹!?」

 

「コイツがジェロニモンかっ!?」

 

クラリスと初穂がそう言った瞬間………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

ジェロニモンは、初穂機とクラリス機に向かって、反重力ガスを浴びせた!!

 

「!? うおわあっ!?」

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

忽ち2人の機体が空高く舞い上げられる。

 

「! 初穂! クラリス!」

 

「マズイわ! あの高さから落ちたら霊子戦闘機でも!!………」

 

あざみが悲鳴の様な声を挙げ、アナスタシアがあの高さから落ちては霊子戦闘機でも持たないと言った瞬間………

 

「よっ、とっ!!」

 

上空から現れたゼロが、初穂機とクラリス機をキャッチ。

 

そのまま着地を決めると、2機を地面に降ろした。

 

「! ゼロさん!」

 

「あんがとよ、ゼロ! 助かったぜっ!!」

 

「良いって事よ! エメリウムスラッシュッ!!」

 

クラリスと初穂に礼を言われながら、ゼロはタイラントにエメリウムスラッシュをお見舞い。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

直撃を受けて怯んだタイラントは、ゼットンを解放してしまう。

 

「ハアッ!」

 

そこで初穂達とゼロは終結。

 

タイラントとジェロニモンに向き直る。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

タイラントとジェロニモンは、現れたゼロを睨みながら咆哮を挙げる。

 

とそこで、ジェットエンジンの様な音が響いて来た。

 

「ん?」

 

『何だ?』

 

ゼロと誠十郎が反応した瞬間………

 

空を飛んで来た鮮やかな桜色の霊子戦闘機………試製桜武が、派手に地面を抉りながら着地を決めた。

 

「帝国華撃団! 参上っ!!」

 

そう高らかに名乗りを挙げるさくら。

 

「! さくらさん!」

 

「馬鹿野郎! 心配させやがって!!」

 

「お帰り、さくら」

 

「良く戻って来たわね………」

 

その声を聴いたクラリス・初穂・あざみ・アナスタシアから歓喜の声が挙がる。

 

「皆、ゴメン………私の力なんて大した事無いかも知れない………それでも! 私は戦う! ピグモンの為にも!!」

 

さくらは初穂達にそう返しながら、刀の切っ先をジェロニモンとタイラントに突き付けて、そう叫んだ!!

 

『さくら………』

 

(もう心配は要らねえみてぇだな)

 

その様を見た誠十郎とゼロがそう確信する。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

そこで、ジェロニモンが指示を出す様な動きをしたかと思うと、タイラントが突進して来る。

 

「ヘッ! オリャアッ!!」

 

するとゼロが駆け出し、突進して来たタイラントとぶつかり、組み合う。

 

「コイツは俺に任せろ! ジェロニモンは任せたぜ! 帝国華撃団っ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

その脇を擦り抜ける様にして、花組メンバーはゼットンと共にジェロニモンへ向かって行ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花組メンバー+ゼットンVSジェロニモン………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

ジェロニモンが咆哮を挙げながら尻尾を左右に振り出したかと思うと、尻尾の先端部に生えていた羽根が宙に舞い始めた。

 

「!?」

 

「何だっ!?」

 

さくらと初穂が驚きを示した瞬間、その羽根がまるで意思を持っているかの様に飛び回り、花組メンバーに襲い掛かった!

 

「! 危ないっ!!」

 

「クッ!」

 

クラリスが声を挙げ、アナスタシア機を筆頭に回避行動を取る花組メンバー。

 

飛び回っていた羽根が、固い岩肌に次々と突き刺さる!

 

「念力かっ!? まるで手裏剣だぜ!!」

 

「なら、本当の手裏剣を見せてあげる」

 

初穂がそう叫んだかと思うと、あざみ機が崖を蹴り、三角跳びで空中に舞い上がる。

 

そのあざみ機を、忽ちジェロニモンの羽根が取り囲むが………

 

「望月流忍法………無双手裏剣!!」

 

あざみ機は必殺の望月流忍法・無双手裏剣で、手裏剣やクナイを四方八方へと飛ばす。

 

花火の様に飛び散った手裏剣やクナイが、ジェロニモンの羽根を次々に撃ち落とす!

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

だが、ジェロニモンは空かさず新たな羽根を飛ばし、流星群の様にまだ空中に居たあざみ機へ向かわせた!

 

「!?」

 

空中で身動きの取れないあざみ機に襲い掛かるジェロニモンの羽根。

 

「アポリト・ミデンッ!」

 

しかし、アナスタシア機が番傘型ライフルからアポリト・ミデンを放つ。

 

あざみ機へ向かっていた羽根が、極太のビームで薙ぎ払われる。

 

「ありがとう、アナスタシア!」

 

「どういたしまして」

 

隣に着地ながらお礼を言うあざみにそう返しながら、今度はハンドガンをジェロニモンに向けて発砲するアナスタシア。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

しかし、大したダメージは無く、ジェロニモンは反重力ガスを吐く。

 

「フウッ!!」

 

しかし、クラリス機が巨大な魔法陣を展開!

 

反重力ガスが魔法陣に当たると、ジェロニモンに向かって跳ね返る。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

自らの反重力ガスを食らって、空へと舞い上げられるジェロニモン。

 

「アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

そのジェロニモンに向かって、クラリス機とゼットンが無数の魔導弾と火球を放つ。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

ジェロニモンは爆発に包まれたかと思うと、表面が焼け焦げた状態で落下して来て、地面に叩き付けられる。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

「うおりゃああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

と、ジェロニモンがよろけながら起き上がると、初穂機が大跳躍。

 

「東雲神社の! 御神楽ハンマーッ!!」

 

そして、いつもの独楽の様に横回転するのではなく、空中で縦向きに回転しての東雲神社の御神楽ハンマーを繰り出す。

 

炎を纏ったハンマーが、ジェロニモンの脳天に叩き込まれる!!

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

苦悶の咆哮を挙げて後退るジェロニモン。

 

更に、燃え移った炎によって、頭の羽根飾りが燃え始めた!!

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

慌てて頭を叩いて火を消すジェロニモンだったが、消えた頃には羽根飾りはすっかり燃え堕ち、ハゲ頭となっていた。

 

そのジェロニモンの前に、さくらの試製桜武が立ちはだかる。

 

「…………」

 

さくらが目を閉じて、精神を集中させると、試製桜武が右手に握った刀を天に掲げる様に構える。

 

(ピグモン………ごめんなさい………わたしが、迷ってさえいなければ、貴方が死ぬ事は無かった………)

 

脳裏に自分を庇って命を落としたピグモンの事が過る。

 

(許して欲しいなんて言わない………わたしは今まで色々な人達に助けられて来た………真宮寺 さくらさん………花組の皆………誠兄さん………ゼロさん………そしてピグモン………)

 

そこで、カッと目を見開くさくら。

 

「私は皆に助けて貰ったこの命で………戦い続ける!!」

 

さくらの決意に呼応するかの様に、試製桜武が桜色に光を放ち始める。

 

「蒼き空を駆ける………千の衝撃! 天剣・千本桜っ!!」

 

新たな必殺技………『天剣・千本桜』が発動!!

 

天剣・桜吹雪とは比べ物にならない巨大な斬撃波が、ジェロニモンに向かって放たれる!!

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

その斬撃波を食らったジェロニモンの身体が、縦に真っ二つとなる!!

 

そして、一瞬の間の後に、まるでくす玉の様に左右に割れたかと思うと倒れ、爆発四散した!!

 

「ス、スゲェ………」

 

「怪獣を1撃で………」

 

「アレが試製桜武の力………」

 

「と言うよりも、さくらの力かしら?」

 

その光景に、初穂・クラリス・あざみ・アナスタシアは驚愕を露わにする。

 

 

 

 

 

だが、その時!!

 

 

 

 

 

突如、ジェロニモンが爆発四散した地点に、紫色の人魂の様な物が出現する。

 

「「「「!?」」」」

 

「アレはっ!?」

 

初穂達が再度驚愕し、さくらが声を挙げると………

 

紫色の人魂は、ゼロと戦っているタイラントの方へと向かって行ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

さくらの元に届けられた新たな機体『試製桜武』
嘗て真宮寺 さくらでさえも乗りこなせなかった曰くの機体。
しかし、ピグモンの犠牲を繰り返さない為に、決意を新たにしたさくらの手のより、遂に試製桜武は起動!
その力は圧倒的であり、ジェロニモンを葬りさった。
しかし、怪獣酋長はコレで終わりません。
次回、ゼロと戦っているタイラントが………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『邪念の怪獣』

チャプター5『邪念の怪獣』

 

暴君怪獣 タイラント

 

EXタイラント(デスボーン) 登場

 

 

 

 

 

岩石地帯の奥地………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

咆哮と共に、イカルス星人の耳からアロー光線を放つタイラント。

 

「よっ! ほっ!」

 

それを連続で側転してかわすゼロ。

 

「ハアッ!!」

 

そして反撃にと、ゼロスラッガーをタイラントに向かて飛ばす。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

タイラントは右手の鎌を使って、ゼロスラッガーを弾き飛ばす。

 

「フッ! エメリウムスラッシュッ!!」

 

ゼロはゼロスラッガーを頭部に戻すと、今度はエメリウムスラッシュを放つ。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

しかし、それも腹部の吸引アトラクタースパウトを使って吸収する。

 

そして、左腕の鉄球からアンカーを射出する。

 

「オラッ!!」

 

ゼロは眼前まで迫ったアンカーを、回し蹴りで弾き飛ばす。

 

弾き飛ばされたアンカーが地面に突き刺さる。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

するとタイラントはアンカーが伸びたままの左腕を思いっ切り引いたかと思うと………

 

何と!!

 

アンカーが突き刺さっていた地面が岩盤ごと持ち上がった!!

 

「!? 何っ!?」

 

『岩盤ごと地面を持ち上げたっ!?』

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

ゼロと誠十郎が驚きの声を挙げると、アンカーを巻き取り、その岩盤をゼロに叩き付けようとするタイラント。

 

「チイッ! ストロングコロナ、ゼロッ!!」

 

そこでゼロはストロングコロナゼロへタイプチェンジ。

 

炎を纏ったパンチ・ストロングコロナアタックで、岩盤を粉砕する。

 

「オラアァッ!!」

 

そしてそのまま、返す刀でタイラントに殴り掛かる!

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

一瞬怯んだかに思えたタイラントだったが、すぐさま吸引アトラクタースパウトから冷凍ガスを噴射する。

 

「おうわっ!?」

 

強烈な冷凍ガスを浴びたストロングコロナゼロの身体の表面に氷が纏わり付く。

 

「舐めるなぁっ!!」

 

だが、ストロングコロナゼロが気合を入れると、身体から炎が立ち上り、纏わり付いていた氷を蒸発させた。

 

「おらっ!!」

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!?

 

そのまま、ストロングコロナゼロはタイラントにボディブローを食らわせ、タイラントの上体が下がると、首の部分を上から抑え込む様に脇へ抱え込む。

 

「ウルトラハリケーンッ!!」

 

そしてウルトラハリケーンで竜巻と共に空高くへ投げ飛ばした!

 

「………ルナミラクルゼロ」

 

そこでゼロは、今度はルナミラクルゼロにタイプチェンジ。

 

「ミラクルゼロスラッガー」

 

まだ上空に居るタイラントに向かって、ミラクルゼロスラッガーを繰り出す。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!?

 

無数に分裂した光のゼロスラッガーが、タイラントの全身を斬り裂く!

 

「ハッ!」

 

そこでルナミラクルゼロは、タイラント目掛けて飛翔。

 

「パーティクルナミラクル!」

 

そして、光に包まれて、タイラントの吸引アトラクタースパウトへと自ら飛び込んだ!!

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!?

 

戸惑う様な咆哮を挙げたかと思うと、空中で制止するタイラント。

 

その次の瞬間!!

 

タイラントの身体がボコボコと膨れる様な様子を見せたかと思うと………

 

「ハアッ!」

 

その背を突き破って、ルナミラクルゼロが飛び出した!!

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!?………

 

背中に大穴が空いたタイラントは、断末魔の悲鳴を響かせると、ガクリと脱力して落下。

 

派手に土煙を舞い上げた。

 

「フッ」

 

その傍に着地したルナミラクルゼロが、通常状態へと戻る。

 

『片付いたな………』

 

「ああ、さくら達の方は………」

 

と、ゼロと誠十郎がそう言い合っていた瞬間!!

 

紫色の人魂の様な物が飛んで来て、タイラントの死骸に入り込んだ!!

 

「!? 何っ!?」

 

『今のは!?』

 

「ゼロさんっ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ゼロと誠十郎が驚きの声を挙げると、さくら達とゼットンが合流する。

 

「さくら! 今のは!?」

 

「それが………ジェロニモンを倒したら、あの人魂みたいな物が現れて………」

 

「って事は、ジェロニモンの魂か!?」

 

さくらの言葉から、紫色の人魂の様な物は、倒されたジェロニモンの魂だと推察するゼロ。

 

と、その瞬間!!

 

タイラントの死骸が、紫色の怪しい光を放ち始めた!!

 

「キャアッ!?」

 

「「「「!?」」」」

 

「何が起こってやがるっ!?」

 

その光の強さに、思わず目を覆うさくら達とゼロ。

 

やがて光が治まったかと思うと、そこには………

 

全身の組織が骨化し、黒く腐りきった組織が隙間を埋めていると言う、まるでゾンビを思わせる様な醜悪な姿となったタイラント………

 

『EXタイラント(デスボーン)』の姿が現れた!!

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

「うっ!?………」

 

咆哮を挙げるEXタイラント(デスボーン)の醜悪な姿に、クラリスが吐き気を覚えて口元を押さえる。

 

「何て醜悪な姿なの………」

 

「正に地獄の亡者………」

 

アナスタシアとあざみも、冷や汗を流しながらそう呟く。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

とそこで、EXタイラント(デスボーン)の赤く染まった目が、ゼロとさくら達を見据える。

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

ゼロ達が身構えた瞬間、EXタイラント(デスボーン)は腹部から紫色に怪しく光る煙………『怨念ガス』を噴射した!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

咄嗟にゼットンが前に出ると、バリアを張って防ごうとする。

 

しかし、怨念ガスはバリアを擦り抜けてゼットンに命中。

 

ゼットンの身体を紫色に怪しく光る煙が包み込んだかと思うと………

 

一瞬にして全身に裂傷を負い、そこから血液が爆発の様に噴き出した。

 

「!? ゼットンッ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

クラリスの悲鳴が響く中、ゼットンはバタリと倒れ、動かなくなる。

 

「戻ってっ! ゼットンッ!!」

 

慌ててゼットンを魔導書へと戻すクラリス。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

EXタイラント(デスボーン)はまたも咆哮を挙げると、ゆっくりと動き始める。

 

その動きは緩慢そのものだが、それ故に不気味で、正に見た目通りゾンビの様な動きだった。

 

「野郎っ!! ワイドゼロショットッ!!」

 

と、ゼットンをやられたお返しとばかりに、ゼロはEXタイラント(デスボーン)に向かってワイドゼロショットを放つ。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

ワイドゼロショットはEXタイラント(デスボーン)を直撃!

 

大爆発が起きたかと思うと、EXタイラント(デスボーン)はバタリと倒れた。

 

「やったっ!」

 

「へっ! 何だよ! ゼットンを倒したのにはビビったが、見た目通りに脆いじゃねえか!!」

 

さくらが歓声を挙げ、初穂がアッサリと倒されたEXタイラント(デスボーン)を野次る。

 

『………妙だ。手応えが無さ過ぎる』

 

「ああ、嫌な感じだ………」

 

しかし、当のゼロと誠十郎は、余りの呆気無さに違和感を抱いていた。

 

すると、次の瞬間!!

 

倒れていたEXタイラント(デスボーン)の身体から、紫色の怪しい光が立ち上る!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

「!!」

 

驚くさくら達と、すぐさま身構えるゼロ。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

何と、EXタイラント(デスボーン)が起き上がった!!

 

「!? 復活したっ!?」

 

「そんな!? まさか!?」

 

「見た目通りの怨霊ってわけ?………」

 

あざみとクラリスが驚きの声を挙げ、アナスタシアも冷や汗を流す。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

そこで、EXタイラント(デスボーン)が咆哮を挙げたかと思うと、その身体から紫掛かった光の玉が次々に出現する。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

そして咆哮と共に、その怪しい光の玉が四方八方へと飛び散る!!

 

「! 危ねえっ!!」

 

「「「「「!!」」」」」

 

先程のゼットンの事を思い出し、受けるのは危険だと判断したゼロと花組は必死に回避行動を執る。

 

紫掛かった光の玉は、岩石地帯の彼方此方に命中。

 

すると、光の玉が命中した場所が黒一色に染まり、まるで沼の様にドロドロに蕩けた。

 

まるで『祟り場』の様に………

 

『!? 何て凄まじい怨念だ!!』

 

「チキショウッ! ガード出来ねえだなんて反則だろうが!!」

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

誠十郎とゼロがそう言う中、EXタイラント(デスボーン)は咆哮を挙げながら次々に怨念エネルギー弾を発射しまくる。

 

「クッ! アポリト・ミデンッ!」

 

「アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

とそこで、アナスタシア機とクラリス機が、EXタイラント(デスボーン)に向かって必殺技を放つ。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

EXタイラント(デスボーン)の身体が大爆発したかと思うと、バタリと倒れる。

 

しかし………

 

またもEXタイラント(デスボーン)の身体から、紫色の怪しい光が立ち上ったかと思うと、EXタイラント(デスボーン)は何事も無かったかの様に起き上がる。

 

「また復活した!?」

 

「チキショウッ! コレじゃキリが無いぜ!!」

 

「如何すれば………?」

 

あざみが驚き、初穂が叫び、さくらの顔にも絶望が差し始める。

 

その時!!

 

『何を弱音を吐いていますの!!』

 

「「「「「!?」」」」」

 

花組の試製桜武と無限全機に、通信機からすみれの声が響いた。

 

「神崎司令!」

 

『皆さん! 貴方達は何ですのっ!?』

 

さくら達に対してそう問い掛ける様に言うすみれ。

 

「私達は………帝国華撃団です!」

 

『そう! 貴方達は帝国華撃団………帝都を守る、『霊的防衛部隊』ですわ! ならば、怨念や邪霊の相手ならば、本領発揮と言うものでしょう?』

 

「「「「「!!」」」」」

 

すみれのその言葉に、花組はハッとする。

 

そう………

 

帝国華撃団は『霊的防衛部隊』………

 

怨念や邪霊が相手ならば、専門とするところだった。

 

「良し、花組!! 力を合わせるぞっ!!」

 

そこで、ゼロもそう呼び掛けて来た!!

 

「! ゼロさん………!!」

 

さくらは一瞬驚いた様な様子を見せた後、決意を固めた表情を見せた。

 

「「「「…………」」」」

 

初穂達も同様の表情となり、其々の無限を1歩進ませた。

 

「如何すれば良いんですか!? ゼロさん!!」

 

「お前達の霊力を俺に伝えろ! それを俺が光線として奴に撃ち出す!!」

 

『そんな事が出来るのか!?』

 

ゼロの作戦に、誠十郎は思わずそう問い質す。

 

(俺1人じゃ無理だ。だが………お前と俺なら、やれる筈だ!)

 

『! ゼロと………俺なら!!』

 

そう返された誠十郎も、決意を固めた表情となる。

 

(誠十郎! 花組から受け取った霊力はお前が制御しろ! それを俺が光線として奴に撃ち出す!!)

 

『良し! やろう、ゼロ!!』

 

そう役割を分担したゼロだったが、奇しくもそれが適材適所となっていた。

 

 

 

 

 

嘗ての帝国華撃団、そして巴里華撃団の隊長を務めた『大神 一郎』

 

その甥であり、紐育華撃団の隊長を務めた『大河 新次郎』

 

彼等には、ある共通の能力が有った。

 

それは、『他者の霊力を同調させる事が出来る力』

 

米田元司令は、この能力を『触媒体質』と称した。

 

嘗ての帝国華撃団、そして巴里華撃団と紐育華撃団が強敵に打ち勝つ事が出来た事には、大神 一郎・大河 新次郎がこの能力により、華撃団メンバーの霊力を1つに合わせる事が出来たと言う事も有る。

 

そして、その能力は………

 

今の帝国華撃団の隊長である誠十郎にも備わっていたのだ。

 

 

 

 

 

ゼロがEXタイラント(デスボーン)へと向き直り、その後ろに陣取る様に花組が、試製桜武を先頭にVの字の隊形を執る。

 

そこで、左端のクラリス機が右手で、右隣の初穂機の左肩を掴み、右端のアナスタシア機が左手で、左隣のあざみ機の肩を掴む。

 

そして、V字の先端部分に居る試製桜武の左肩を初穂機が右手で掴み、右肩をあざみ機が左手で掴む。

 

コレのより、花組の霊子戦闘機達が1つに繋がる。

 

「…………」

 

最後に試製桜武が、刀を正眼から掲げる様に構えた。

 

「行きましょう! 皆さん!!」

 

「「「「おう!(にん!)(はい!)(ええ!)」」」」

 

さくらの号令で、初穂・あざみ・クラリス・アナスタシアは一斉に霊力を解放!

 

花組の霊子戦闘機全機から、白いオーラの様な物が立ち上り始める!

 

「ゼロさん! 受け取って下さいっ!!」

 

さくらがそう言った瞬間、白いオーラが正面に立つゼロの背に向かって注がれた!

 

『! 来たっ!!』

 

「コレが霊力か! スゲェぜっ!! 力強いが暖かい力がドンドン注がれて来やがる!!」

 

ゼロは頭部のゼロスラッガーを取り外し、カラータイマーの脇へと装着。

 

ゼロツインシュートの発射態勢となる。

 

『ゼロッ! 行けっ!!』

 

「うおおおおおおおっ! ゼロツイン………スピリチュアルッ!!」

 

誠十郎が注がれたさくら達の霊力を制御し、ゼロは霊力を乗せたゼロツインシュート………『ゼロツインスピリチュアル』を放った!!

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

ゼロツインスピリチュアルを受けたEXタイラント(デスボーン)が、先程までとは違い、苦しむ様な様子を見せる。

 

そして、その身体が砂の様に崩れ始める。

 

「! 効いてるぞ!!」

 

「このまま一気に!!」

 

その様子を見た初穂とあざみがそう声を挙げる。

 

しかし、次の瞬間………

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

EXタイラント(デスボーン)の周囲に、紫色の人魂の様な物が現れたかと思うと、それを吸収し始める。

 

すると、崩れ始めていたEXタイラント(デスボーン)の身体が元に戻り出す。

 

「!? まだ再生を!?」

 

「あの人魂………恐らく、怪獣や宇宙人の邪念を呼び出してそれを吸収しているんだわ!」

 

クラリスが驚き、アナスタシアがそう推察する。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

EXタイラント(デスボーン)は、身体を再生させながら、ゼロツインスピリチュアルを掻き分ける様にして進み始める。

 

『コイツ!? 不死身なのか!?』

 

「しぶとい野郎だぜ! 花組! 気合入れろっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

「「「「うおおおおおおおっ!!」」」」

 

誠十郎が戦慄する中、ゼロはそう呼び掛け、花組は更に霊力を振り絞る。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

身体が崩れては邪念を取り込んで再生を繰り返すEXタイラント(デスボーン)。

 

だが、徐々にゼロ達との距離は詰まって来ている。

 

ピコンッ! ピコンッ!

 

とそこで、ゼロのカラータイマーが点滅を始めた!!

 

『! ゼロ!!』

 

「ココまで来たら後は気合の勝負だ! 全て出し切ってやるっ!!」

 

しかし、ゼロは1歩も引かず、ゼロツインスピリチュアルを放ち続ける。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

そんなゼロツインスピリチュアルを受け続けながら、更に距離を詰めて来るEXタイラント(デスボーン)。

 

崩れる身体を、更に邪念を取り込んで再生させようとする。

 

と、その時!!

 

!? グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

突然、EXタイラント(デスボーン)が苦しみ始める。

 

「!? 何だっ!?」

 

「「「「「『!?』」」」」」

 

ゼロと花組が驚きを示した瞬間………

 

キュイキュイキュイ~

 

EXタイラント(デスボーン)の顔の前に、半透明のピグモンの姿が浮かび上がった。

 

「! ピグモンッ!!」

 

「! アイツッ!?」

 

さくらとゼロが驚きを露わにする。

 

キュイキュイキュイ~

 

そんな2人に、ピグモンは何かを訴える様に声を挙げる。

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

それに合わせる様に、EXタイラント(デスボーン)の動きが鈍くなる。

 

「アイツ、自分から取り込まれて、タイラントが邪念を取り込むのを止めてやがるのか!?」

 

「ゼロさんっ!!」

 

そう推察するゼロに、さくらが呼び掛けた。

 

「オッシャアッ! ピグモンッ!! お前の頑張りは無駄にしねえっ!! うおおおおおおおっ!!」

 

「「「「「『おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』」」」」」

 

ピグモンの気持ちに応えるべく、ゼロと花組は、最後の力を振り絞る!!

 

ゼロツインスピリチュアルの勢いがグンッと強くなった!!

 

グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

完全に光線の中へ飲み込まれたEXタイラント(デスボーン)の身体が砂となって崩れて行く。

 

キュイキュイキュイ~………

 

そして、その眼前に浮かんでいたピグモンの姿も、徐々に消えて行った………

 

やがて光が弾けると、そこにはもうEXタイラント(デスボーン)の姿も、ピグモンの姿も無くなっていた………

 

「や、やったぜ………」

 

「あう………」

 

「か、身体が………」

 

「流石に今回は………キツかったわ」

 

途端に、初穂機・あざみ機・クラリス機・アナスタシア機が、力尽きたかの様に尻餅を着く。

 

「ハア………ハア………ハア………」

 

試製桜武のさくらも、呼吸が荒くなっている。

 

「…………」

 

そんな中で、ゼロはゼロスラッガーを頭部へと戻し、EXタイラント(デスボーン)とピグモンが消えた地点を見やる。

 

「………シュワッ!!」

 

そして一瞬顔を伏せたかと思うと、そのまま飛び去って行ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し時間が経ち………

 

さくらの実家の傍の森の中………

 

「…………」

 

そこには小さな墓が建てられ、その前でさくらが跪いて祈りを捧げていた。

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

その背後には、誠十郎・初穂・あざみ・クラリス・アナスタシア、そしてすみれの姿も在り、同じ様に祈りを捧げていた。

 

墓石代わりの石には、こう彫られていた………

 

『小さな英雄、此処に眠る』

 

そう………

 

コレはピグモンの墓だった………

 

「………帝国華撃団司令の名に於いて、人類の平和の為に尽くしたピグモンさんの功績を認め………帝国華撃団特別隊員の称号を与えます」

 

そこですみれが立ち上がり、ピグモンの墓に向かってそう宣言した。

 

「「「「「…………」」」」」

 

そのすみれに続く様に立ち上がる誠十郎達。

 

全員が悲しげな表情を見せている。

 

「…………」

 

只1人、さくらがまだ、墓前で祈り続けている。

 

「………さくら」

 

そこで誠十郎が近寄り、肩に手を置く。

 

「…………」

 

その瞬間、さくらは目尻から一筋の涙を流しながら目を開け、立ち上がった。

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

最後に全員が名残惜しそうにピグモンの墓を一瞥し、その場を後にし始める。

 

(ピグモン………貴方の悲劇を繰り返さない為に………私はコレからも戦う………帝国華撃団として………まだゼロさんに頼る事になるかも知れないけど………それでも!)

 

さくらは1人、帝国華撃団として戦う事への決意を新たにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、帝劇へと帰還した帝国華撃団を待っていたのは………

 

倫敦華撃団戦の日程が決まったと言う知らせだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『友好珍獣 ピグモン』

 

身長:1メートル

 

体重:10キロ

 

能力:人間の子供程の知能が有る

 

初登場作品:初代ウルトラマン第8話『怪獣無法地帯』

 

人間やウルトラマンの味方をする心優しい小型怪獣。

 

時にはその命を投げ出しても人間やウルトラマンを助けようとする健気さと儚さから非常に人気が高い。

 

後のシリーズ作品にも度々登場しており、メディアへの出演も多い。

 

ウルトラQに登場した『隕石怪獣 ガラモン』の流用なのは有名な話で、外見的のは非常に見分けが付け辛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『怪獣酋長 ジェロニモン』

 

身長:40メートル

 

体重:3万トン

 

能力:口からの反重力ガス、尻尾から自在に飛ばして相手に突き刺す毒針羽根

 

初登場作品:初代ウルトラマン第37話『小さな英雄』

 

名前の通りネクロマンサーの様な能力を持った怪獣で、死んだ怪獣を生き返らせる能力が有る。

 

怪獣軍団を組織し、日本に大攻勢を掛けようとしたが、科特隊とウルトラマンによって阻止される。

 

最後は、イデ隊員に新兵器『スパーク8』で倒される。

 

人気の高い怪獣だが、肩書が現在では差別用語に当たる為か、再登場には恵まれていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『暴君怪獣 タイラント』

 

身長:62メートル

 

体重:5万7000トン

 

能力:合体している怪獣・超獣・星人の能力は全て使える

 

初登場作品:ウルトラマンタロウ第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』

 

7体の怪獣・超獣・星人が合体して誕生した合体怪獣。

 

ゾフィー・初代ウルトラマン・ウルトラセブン・ウルトラマンジャック・ウルトラマンAを次々に破った強豪。

 

合体した怪獣達のパーツが上手く纏まっており、デザイン性は非常に高い。

 

後の作品にも強敵として度々登場している(タイ版は忘れるべし)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『EXタイラント(デスボーン)』

 

身長:不明

 

体重:不明

 

能力:邪念を取り込む事で何度でも復活する

 

初登場作品:PS2ゲーム 『ウルトラマン Fighting Evolution Rebirth』

 

EXタイラントが更に怨念を取り込んで復活した姿。

 

見た目は完全に骨と腐った体組織だけと言う、正に怪獣のゾンビ。

 

能力的には大した事は無いが、邪念を取り込んで復活を繰り返すのでとても厄介。

 

しかし、邪念を取り込み過ぎた故、太陽光に非常に弱くなっている。




新話、投稿させて頂きました。

前回の感想でEXタイラントの登場を予想されている方々がいらっしゃいましたが………
EXはEXでも、デスボーンの方でした。

EXタイラントは劇場版のボスクラスですので、流石にゼロと花組だけで対処させるのは勿体無いと思ったのと、今回はさくらのメインストーリーなので、彼女を立ち直らせる→華撃団の活躍を押し出すと言う展開を考えていたので、デスボーンの方が打って付けだと思いまして。
出して欲しいと言うリクエストも有ったので。
通常のEXタイラントも何れは登場させますので、ご了承ください。

次回からは後半戦となる倫敦華撃団戦。
そして何と!
あのウルトラマンがレギュラー入りします!
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『VS倫敦華撃団』

チャプター6『VS倫敦華撃団』

 

倫敦華撃団 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の準決勝………

 

帝国華撃団VS倫敦華撃団の試合の日………

 

帝都の一角にて………

 

「あの、すみません。世界華撃団大戦の会場って何処ですか?」

 

1人の少年が、道行く男性にそう尋ねた。

 

「ああ? 世界華撃団大戦の会場? それなら、この通りを真っ直ぐに行けば着くよ。目立つ建物だから、すぐ分かるさ」

 

尋ねられた男性が、訝し気な様子を見せながら、通りの先を指さしながらそう答える。

 

「ありがとうございます」

 

「なあ、坊主………妙な格好だが、ひょっとして外国帰りか?」

 

とそこで、今度は男性が少年にそう尋ねる。

 

少年の格好は洋服だが………

 

Tシャツにデニムジャケットを羽織り、ジーパンにスニーカーと言う、太正時代では有り得ない服装だった。

 

「え、ええ、まあ………」

 

その質問に対し、少年は何処か曖昧に返す。

 

「悪りぃ事は言わねえ。行くのは止めときな」

 

「? 如何してですか?」

 

「ここ最近、帝都じゃ降魔に加えて、怪獣やら宇宙人やらっつうワケの分からねえ連中が暴れててよぉ。特に世界華撃団大戦の会場じゃ、何か有る度に怪獣が現れてるんだよ」

 

悪夢の開会式以来、世界華撃団大戦の会場では試合が行われる度に怪獣が出現しており、毎回破壊されては建て直しが行われている。

 

なので、好き好んで試合会場へと足を運ぶ者は誰もいなかった。

 

「今日は帝国華撃団と倫敦華撃団の試合の日だ。きっとまた怪獣が出て来るに決まってる」

 

「ありがとうございます。けど、如何して行かないといけないワケが有るので」

 

「物好きだな。ま、兎に角気を付けないよ」

 

行くと言う意思を変えない少年に呆れながら、男性はその場を後にする。

 

「帝国華撃団………確か、『ゼロ』が居るって言っていた部隊の筈」

 

「なら、そこに行けば『ゼロ』に会えるかも?」

 

と、少年の呟きに、何者かが返事を返す。

 

しかし、少年の周囲にはそれらしき人物は見当たらない。

 

「兎に角、行ってみよう」

 

「気を付けてね、『リク』」

 

『リク』と呼ばれた少年は、彼の『影』の中から発せられた声を聞きながら、世界華撃団大戦の会場へと向かうのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

その世界華撃団大戦の会場………

 

帝国華撃団の控え場所………

 

「いよいよ倫敦華撃団との試合か………」

 

「「「「「…………」」」」」

 

そう呟く戦闘服姿の誠十郎の前に、同じく戦闘服姿のさくら達が強張った表情で佇んでいる。

 

「情報に拠りますと、倫敦華撃団はこの試合の勝敗に関わらず、WLOFから離脱する算段の様です」

 

「只、ウルティメイト華撃団への参加要請は出ていません。英吉利らしい二枚舌外交ですわね」

 

サポーターとして付いて来たカオルがそう言うと、すみれが呆れた様子を見せる。

 

「手厳しいですね、ミスすみれ」

 

とそこで、そう言う台詞と共に、ランスロットとそして初めて見る隊員を連れたアーサーが姿を現した。

 

「! アーサーさん」

 

「「「「!!」」」」

 

誠十郎が反応すると、初穂・あざみ・クラリス・アナスタシアも、倫敦華撃団の方へ向き直る。

 

「久しぶりだね、神山くん。この様な形で相まみえる事になってしまったのは残念に思うよ」

 

紳士的な態度でそう言うアーサーだったが………

 

そのアーサーの前に出たランスロットが、剣を抜き放って、切っ先を誠十郎の方へと向けた。

 

「!!」

 

「漸く来たね、神山………君に雪辱を果たす時がね」

 

既に闘志の漲っているギラギラとした目で誠十郎に向かってそう言い放つランスロット。

 

まるで今にも斬り掛かって行きそうな雰囲気だ。

 

『何だ? ヤケに熱り立ってやがるじゃねえか?』

 

(ああ、幾ら何でもおかしいぞ?)

 

そんなランスロットの姿に、ゼロと誠十郎も違和感を覚える。

 

「ああ、もう待ちきれないよ。今すぐこの場で………」

 

とそこで、ランスロットは我慢出来ないと言って、抜身の剣を持ったまま誠十郎に近づこうとする。

 

「! ランスロットさんっ!」

 

しかしそこで、さくらが割って入る。

 

「………天宮 さくら」

 

「止めて下さいっ! こんな所で戦おうだなんて、何を考えてるんですか! 華撃団の隊員としてあるまじき行為ですよ!!」

 

ランスロットが視線を向けて来ると、さくらはそう訴え掛ける。

 

「………へえ」

 

しかし、当のランスロットはさくらを見て何やら感心した様な様子を見せる。

 

「ランスロットさん?」

 

「随分と顔付きが良くなったじゃないか。あの時から随分と腕を上げたみたいだね。ああ、君と戦うのも楽しみになって来たよ」

 

困惑するさくらに向かって、恍惚の表情を浮かべるランスロット。

 

「!!」

 

まるで危険人物の様なその様に、さくらは思わず身震いした。

 

「止めるんだ、ランスロット! 『アパテー卿』も止めて下さい!」

 

そこで漸くアーサーからの制止が入り、見慣れぬ隊員………『アパテー卿』の名も明らかになる。

 

「…………」

 

だが、アパテー卿はまるで鉄仮面の如き無表情で只沈黙していた。

 

「フフフ、決めたよ。神山の前に、先ず君に相手をしてもらうよ」

 

「!?」

 

「そうと決まれば、早速試合と行こうじゃないか! アーサー! 先に行っているよ!!」

 

驚くさくらを余所に、ランスロットは踵を返して戻って行った。

 

「あ、ランスロット!!………全く………お騒がせして申し訳無い」

 

「…………」

 

頭を抱えた後、帝国華撃団の面々に向かって頭を下げるアーサーの横で、相変わらず無表情のままで佇んでいるアパテー卿。

 

「アーサーさん。ランスロットさんは一体如何したんですか?」

 

「僕にも良く分からない。前々から好戦的な所が有ったけど、最近それが酷くなっている様で………」

 

誠十郎の疑問に、アーサーも困惑している様子を見せる。

 

「兎も角、試合では容赦しないよ。母国の人々に、倫敦華撃団は変わらないという事を示す為にも、僕達は必ず勝利する!」

 

しかし、すぐに気を引き締めた様子を見せ、帝国華撃団の面々に向かってそう宣言した。

 

「アーサーさん………」

 

「では、コレで失礼するよ」

 

「…………」

 

誠十郎の呟きを背に、アーサーもその場を後にし、アパテー卿も無言のままその後に続いた。

 

「あのアパテー卿って奴、何か不気味だったな………」

 

「一言も喋らなかった上に、表情が全く変わらなかった………まるで人形みたい」

 

終始一言も喋らなかったアパテー卿に対し、初穂とあざみがそんな印象を抱く。

 

「色々と気になるけど、今は目の前の試合に集中しましょう」

 

「神山さん。今回の出場メンバーは如何しますか?」

 

そこで、アナスタシアがそう言って意識を試合に切り替えさせ、クラリスが今回の出場メンバーを尋ねる。

 

「ランスロットさんのあの様子からすると、さくらさんを出場させないワケには行きませんわね」

 

「となると、さくらさんは決まりですね」

 

「…………」

 

すみれとカオルがそう言う中、さくらは複雑そうな表情を見せる。

 

「では、残りの1人は………」

 

そして誠十郎は、残る1人のメンバーを選抜した………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

『さあ、世界華撃団大戦もいよいよ準決勝! 快進撃を続ける帝国華撃団を迎え撃つのは倫敦華撃団! 伯林華撃団に次ぐと言われるこの最強の騎士団を如何迎え撃つのか! 頑張れ! 帝国華撃団っ!!』

 

何度目とも知れぬ再建を果たした無人の会場に、実況者の声が響き渡る。

 

コレまでのWLOFの不祥事や、帝国華撃団の活躍を目にしてきた結果か、実況者の心もすっかり帝国華撃団寄りとなっており、私情染みた激励まで飛んでいる。

 

とそこで、帝国華撃団サイドの出場ゲートを通り、誠十郎機と試製桜武、そしてクラリス機が現れる。

 

「またこの形に戻したのか………」

 

誠十郎が、スタジアムの形が莫斯科華撃団戦の様な市街地ではなく、上海華撃団戦と同じ競技場の様な形になっているのを見てそう言う。

 

「既に3回目の建て直し………相当な予算が使われている筈です」

 

「こんな事に使うより、もっと大切な事が有る筈なのに………」

 

クラリスとさくらは、降魔や怪獣達への脅威への対策よりも、粗意味の無い華撃団大戦へと予算を湯水の様に使うWLOFに嫌悪感を露わにする。

 

とそこで、誠十郎達の正面に倫敦華撃団の霊子戦闘機………『ブリドヴェン』達が姿を見せる。

 

「ふふふ………さあ! やろうじゃないかっ!!」

 

漆黒のブリドヴェンを駆るランスロットが、既に抜身の状態の2剣を構えながら、そう声を挙げる。

 

「良し………行くぞっ!!」

 

蒼いブリドヴェンを駆けるアーサーも、そう言いながら細身な刀身のロングソードを抜き放つ。

 

「…………」

 

そして最後に、ランスロット機と同様の剣を一振りだけ装備したアパテー卿の純白のブリドヴェンが、無言のまま剣を抜く。

 

『さあ、いよいよ試合開始です! 世界華撃団大戦・準決勝! 『帝国華撃団』VS『倫敦華撃団』! 華撃団大戦! レディィィ・ゴゥッ!!』

 

「アハハハハハハッ!!」

 

と、実況者の試合開始の合図が響くと同時に、ランスロットが歓喜の笑いを響かせながら一気に突っ込んで来た!!

 

その狙いは………

 

さくらの試製桜武だ!!

 

「!!」

 

驚きながらも刀を抜き放つと、峰にもう片方の手を添えて斬り掛かって来たランスロット機の2剣を受け止める試製桜武。

 

だが勢いは殺せず、試製桜武はランスロット機諸共、そのまま床を破壊しながら誠十郎機とクラリス機を置き去りにして滑って行く。

 

「! さくらっ!!………!!」

 

慌てて追おうとした誠十郎だったが、嫌なモノを感じて飛び退くと、先程まで誠十郎機が居た場所を、アーサー機の斬撃が通り過ぎる。

 

「ランスロットには悪いけど、君も相手は僕がさせてもらうよ」

 

「アーサーさん………」

 

二刀を構える誠十郎機と、ロングソードを構えるアーサー機が睨み合う。

 

「「…………」」

 

更にクラリス機も、残るアパテー機と睨み合っていた。

 

「…………」

 

此処へ来ても尚も無言なアパテー卿。

 

(何なの、この人!?………)

 

そんなアパテー卿に、クラリスは不気味な寒気を覚えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ランスロット機から斬り掛かられたさくらの試製桜武は………

 

「そらそらそらそらぁっ!!」

 

「クッ! ハアッ!!」

 

ランスロット機から繰り出される2剣による斬撃を、刀で捌く試製桜武。

 

「やっぱりそうだ! 機体の性能だけじゃない!! 随分と腕が上がってるじゃないか!! 何があったんだい、さくら!?」

 

さくらの腕が格段に向上している事を、ランスロットが問い質す。

 

「………自分の不甲斐無さのせいで………守れなかったモノが在ったからです」

 

ジェロニモンとの戦いで犠牲となってしまったピグモンの事を思い出しながら、さくらはそう返す。

 

「成程ね~。でも良かったじゃないか、お陰で強くなれたんだし」

 

「!!」

 

ランスロットのその言葉に、目を見開くさくら。

 

そして繰り出された2剣の攻撃を受け止め、鍔迫り合いに転じる。

 

「良かった?………ランスロットさん………本気で言ってるんですか?」

 

「だってそうだろ? その守れなかったモノが在ったからこんなに強くなれたんじゃないか。お陰でアタシも大満足さ」

 

ランスロットが心底嬉しそうにそう言った瞬間………

 

「ふざけないで下さいっ!!」

 

さくらの怒声が木霊し、ランスロット機の2剣が弾かれて宙に舞い、ランスロット機の背後に落ちた。

 

「おろっ!?」

 

「確かに私は強くなれたかも知れません! でも! 本当はあの子を守りたかった!! 助けてあげたかった!! だからコレから私は守れるモノを守り続けなくちゃならない!! この強さはその為の物です!!」

 

試製桜武が、刀の切っ先をビッとランスロット機に突き付ける。

 

「貴方も華撃団の隊員でしょう! 守りたかったモノを守れなかった事が良かったなんて言わないで下さいっ!!」

 

「ハハッ!」

 

華撃団の隊員としての誇りを説くさくらだったが、ランスロットは笑いを零し、機体を一気にバックステップさせたかと思うと、床に突き刺さっていた2剣を回収する。

 

「そんな台詞は勝ってから言うんだね! アタシは強い奴と戦えればそれで良いのさ!!」

 

「………貴方には負けない………華撃団の隊員として………絶対に!!」

 

そんなランスロットの態度に、さくらは怒りを露わに叫ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

世界華撃団大戦の会場に向かう謎の少年。
一体誰なんだ?(棒読み)

そして倫敦華撃団との激突。
戦闘狂に磨きが掛かっているランスロット。
一体何があったのか?

そして3人目のメンバー、アパテー卿………
察しの良い方なら、名前で既にコイツが何者なのかお分かりですね。
更に次回ではトンでもないモノが登場します。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております


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チャプター7『暗黒の鎧』

チャプター7『暗黒の鎧』

 

倫敦華撃団

 

金属生命体 アパテー

 

暗黒魔鎧装 アーマードダークネス 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

誠十郎の無限と、アーサーの蒼いブリドヴェンが激しく斬り結んでいる。

 

やがて、2機はバッと距離を取り合った。

 

「流石だね、神山くん。だが、言った通り、僕は負けないよ。倫敦華撃団の団長として、勝利の栄光を手に入れると言う考えに妥協は無い」

 

剣の切っ先を誠十郎機に向けながら、アーサーはそう言い放つ。

 

「だから………この試合、勝たせて貰う」

 

「凄い自信だな。自分が倒されるとは思わないのか?」

 

自信満々にそう言い放つアーサーに、誠十郎は尋ね返す。

 

「思うワケが無いよ。王が敗北する運命など………歴史には存在しない」

 

「ならば、その歴史を………俺が今、作り上げて見せる!!」

 

誠十郎が宣言すると、彼の無限が構えを執り直す。

 

「ホテルで会った時から、思ってたんだけど………ちょっと頭が高いんだよ、キミはね!!」

 

と、アーサーが様子を豹変させながらそう言い放ったかと思うと、一瞬にして彼のブリドヴェンが誠十郎機との距離を詰め、斬り掛かった!!

 

「!?」

 

誠十郎は驚きながらも、二刀の刃を交差させる様に構え、アーサー機の剣を受け止める!

 

「さあ、我が前に跪け!!」

 

『コイツ、戦闘中に性格が変わるタイプか!!』

 

「変わり過ぎだろ!」

 

ゼロの言葉にそう返しながらも、今更この程度の事で狼狽えるワケも無く、アーサー機を弾き飛ばす誠十郎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その近くでは………

 

「えいっ!!」

 

アパテー機に向かって魔導弾を連射するクラリス機。

 

「…………」

 

しかしアパテー機はその場から動かず、剣を振り回して魔導弾を迎撃する。

 

「なら、コレでっ!!」

 

そこでクラリス機は、機体前方に3つの魔法陣を出現させたかと思うと、更にその魔法陣から竜巻を発生させた!

 

3本の竜巻が、絡み合う様にアパテー機に向かう。

 

「…………」

 

すると、アパテー機は居合い切りの様に剣を構え、竜巻を待ち構える。

 

そして、竜巻が眼前にまで迫った瞬間!

 

鋭い横薙ぎの一閃を繰り出した!!

 

迫っていた竜巻が上下に真っ二つにされ、消滅する。

 

「!? 竜巻を斬った!?」

 

「…………」

 

クラリスが驚きの声を挙げた瞬間、アパテー機が一切の予備動作も無く、まるでミサイルの様な突きを繰り出して来た!!

 

「!?」

 

クラリス機は咄嗟に持っていた魔導書を盾代わりに防御!

 

アパテー機の剣は魔導書を貫通したが、クラリス機に届く寸前で止まる。

 

「クウッ!」

 

貫かれた魔導書を手放し、バッと距離を離すクラリス機。

 

「…………」

 

アパテー機は剣を振り、突き刺さったままだった魔導書を捨てる。

 

(やっぱりこの人からは感情どころか人としての気配も感じない………本当に人間なの?)

 

もう1つの魔導書を取りながら、クラリスは此処へ来て尚人間味を感じさせないアパテー卿の様子に更なる疑念を抱く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、やや離れた場所にて………

 

「アハハハハハハッ!!」

 

「クウッ!!」

 

狂った様な笑い声を挙げながら、2剣で次々と斬撃を繰り出しているランスロット機と、それを次々に捌いて見せる試製桜武。

 

「そこっ!!」

 

と、不意を突く様に、ランスロット機が突きを繰り出す。

 

「!!」

 

しかし、試製桜武は跳躍して躱し、そのままランスロット機の頭上を飛び越えて背後に着地。

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

そのまま振り返りながら横薙ぎの一閃を繰り出す。

 

だが、ランスロット機は振り返りもせず、左手の刀を背中に回し、背面受けで防ぐ。

 

「フフフ、この状況………初めて会った時みたいだね」

 

「…………」

 

ランスロットが楽し気にそう言うが、さくらは無言のまま試製桜武に距離を取らせる。

 

「何だよ? 少しぐらいお喋りしたって良いだろう? こんなに楽しい勝負をしてるんだからさあ」

 

「………私はちっとも楽しくなんかありません」

 

と、続くランスロットの言葉に、さくらはそう返した。

 

「うん?………」

 

「こんな意味の無い戦いに楽しさを見出すなんて、私には出来ません………私達華撃団は都市を………そこに住む人々を守る為の戦士です! 守る為に戦う事こそが華撃団の使命です!!」

 

「全く………そう言うの、良いから………さっ!!」

 

怒鳴るさくらに、ランスロットは面倒臭いと言う様子を見せた後、2剣を振り、2発の斬撃波を飛ばす!!

 

「!!」

 

試製桜武は1発目を躱すと、その回避先を狙って飛んで来た2発目の斬撃波を刀で斬り捨てて迎撃。

 

「言っただろう! 私は戦えればそれで満足なのさ! それが結果的に守る事になれば文句無いだろうっ!!」

 

とそこで、ランスロットの台詞と共に彼女の機体が大きく跳躍!

 

「!!」

 

「そうれぇっ!!」

 

試製桜武がそれを見上げた瞬間、ランスロット機は2剣を左右に広げる様に振るう。

 

すると、竜巻の様な巨大な斬撃波が発生!!

 

試製桜武を飲み込んだ!!

 

「!!」

 

「貰ったよ、さくら!!」

 

吹き飛ばされている試製桜武を見ながら、ランスロット機が着地を決めて2剣を構える。

 

竜巻が消えて落下を始めた瞬間にトドメを刺す積りの様だ。

 

………だが!!

 

「桜武! 私に応えてっ!!」

 

さくらがそう叫び、霊力を溢れさせると、試製桜武のモノアイが発光!

 

そして、背部に装着されていたバーニアが変形して火を噴き、翼状の放熱板も展開!!

 

強大な推進力で、竜巻の中を強引に脱出した!!

 

「!? 何っ!?」

 

ランスロットが驚きを示す中、試製桜武はそのままランスロット機へと向かう。

 

「! クウッ!!」

 

咄嗟に左の剣を振るうランスロット機と、擦れ違い様に横薙ぎを繰り出す試製桜武!

 

一瞬光が走ったかと思うと………

 

ランスロット機の左腕が、剣を持ったまま宙に舞った!!

 

「!?」

 

「おおおおおっ!!」

 

驚くランスロットに向かい、試製桜武は着地を決めると同時に再度斬り掛かる。

 

「! チイッ!!」

 

ランスロット機は残る右の剣で防御しようとしたが………

 

「デエエヤアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

試製桜武の繰り出した縦斬りが、残るランスロット機の右の剣の刀身を斬り飛ばし、そのまま機体をも斬り裂いた!!

 

「!?」

 

機体正面に縦一文字の傷が出来たかと思うと、そこから勢い良く蒸気が漏れ出し、ランスロット機は膝を着いた!

 

「ランスロットさん、貴方は確かに強いです………けど! 守る事を! 華撃団の本質を見失った人に! 私は負けませんっ!!」

 

さくらがそう言い放ち、試製桜武は跪いたランスロット機の前で、堂々と納刀を決める。

 

 

 

 

 

勝負有った………

 

………かに思われたが!!

 

 

 

 

 

突如膝を着いていたランスロット機のハッチが爆発した!!

 

「!?」

 

驚きながらもさくらはすぐさま試製桜武に距離を取らせる。

 

爆発でフッ飛んだハッチが、床に叩き付けられたかと思うと………

 

「もう終わり?………嫌だよ………私は………もっと戦いたい………」

 

這い出る様にして、ランスロットが機外へと出て来る。

 

その目の焦点は合っておらず、何処かフラフラとしている様は明らかに正気では無い。

 

「ランスロットさん!?」

 

「!? ランスロットッ!? 如何したんだっ!?」

 

「「!?」」

 

さくらが驚きの声を挙げると、その様子に気付いたアーサーと誠十郎、クラリスも動きを止める。

 

「…………」

 

しかし、アパテー卿だけがランスロットの方へと向き直ったかと思うと………

 

突如として、その機体が光を放って爆発した!!

 

「!? アパテー卿っ!?」

 

「「「!?」」」

 

アーサーの驚愕の声に、誠十郎達も爆発したアパテー機に向き直る。

 

すると………

 

「…………」

 

何と!!

 

燃え盛るブリドヴェンの中から、アパテー卿がヌッと現れた!!

 

己の身が炎に包まれているにも関わらず、まるで熱さを感じていないかの様に平然とした無表情を貫いている。

 

「! アイツは、まさかっ!?」

 

と、その光景を見た誠十郎が、上海華撃団戦の事を思い出し、ある可能性を思い浮かべた瞬間!!

 

「…………」

 

アパテー卿の身体が銀色一色に代わり、まるで粘土の様にグニャグニャと崩れ始め、人としての形を失った!!

 

「「「「!!」」」」

 

驚愕する誠十郎達の前で、アパテー卿だった銀色の粘土の塊は巨大化!!

 

そのまま再度人型を象り始めたかと思うと………

 

!#$%&=¥@?*+

 

形容し難い鳴き声を発して、『金属生命体 アパテー』が出現した!!

 

「! 怪獣っ!!」

 

「まさかっ!? アパテー卿がっ!?」

 

「クッ! 上海華撃団の時と同じかっ!!」

 

クラリスが叫び、アーサーが信じられないと言う様に叫ぶ中、誠十郎は上海華撃団に潜り込んでいたシィエナァン………アンタレス・ブラザーの事を思い出す。

 

と、その時!!

 

!#$%&=¥@?*+

 

アパテーが右腕を構えたかと思うと、拳の部分が再度液体金属化する。

 

!#$%&=¥@?*+

 

そして、その液体金属を、ランスロットに向かって投げつけた!!

 

「!………」

 

液体金属の中へと呑まれるランスロット。

 

「! ランスロットさんっ!!」

 

さくらが声を挙げた瞬間………

 

「そんなに戦いたければ存分に戦うが良いわぁ、黒騎士ぃ。アパテーを通じて貴様に送り込んでいたマイナスエネルギーを存分に使えいぃ」

 

執務室から試合を観戦していたジェネラルAが、ダークリングを取り出し、1枚の怪獣カードをリードした。

 

『アーマードダークネス』

 

ダークリングの、カードをリードした反対側からマイナスエネルギーが放出され、ランスロットを飲み込んだ液体金属へと注がれる。

 

すると忽ち、液体金属がブクブクと膨れ出し、巨大化。

 

そしてそれが徐々に人型を取り始める。

 

『!? アレはっ!?』

 

その人型の形を見たゼロが驚愕の声を挙げる。

 

 

 

 

 

それはまるで禍々しい姿をした甲冑………

 

ウルトラマン達の宿敵である『暗黒宇宙大皇帝 エンペラ星人』が、再戦時に装備する筈だった邪悪な力を秘めた鎧………

 

『暗黒魔鎧装 アーマードダークネス』だった!!

 

 

 

 

 

『フ、フハハハハハハハッ! 力が! 力が溢れて来る!! ああ~………良い気持ちだぁ~~!!』

 

動き出したアーマードダークネスからランスロットの声が響いて来る。

 

「!? ランスロットさんっ!?」

 

さくらが驚きの声を挙げた瞬間、アーマードダークネスは右手で左腰の鞘から、長剣………『ダークネスブロード』を抜き放つ。

 

と、そのダークネスブロードが怪しく光ったかと思うと、アーマードダークネスの左手にもう一振り出現する。

 

『ふ~~~~~~………フオワアァッ!!』

 

そして、ランスロットの声と共に、アーマードダークネスは2剣を思いっ切り振るった!!

 

途端に、まるで天変地異を思わせる巨大な竜巻が発生!!

 

忽ちスタジアムが崩壊を始める!!

 

「「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」」

 

「「うおわっ!?」」

 

さくらの試製桜武とクラリス機、誠十郎機とアーサー機も巻き込まれ、天高く舞い上がるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

狂戦士と化したランスロットを倒したかに思われたさくらですが………
そこでアパテー卿が遂に正体を現す。
名前から予想が付いていたと思いますが、『金属生命体 アパテー』が出現。
更に、その身体の一部とジェネラルAのマイナスエネルギーにより、何と!!

ランスロットがあのアーマードダークネスに!!
間違いなくラスボスクラスの敵に如何立ち向かうのか?
そして次回、あのウルトラマンも!?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております


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チャプター8『運命を覆すウルトラマン』

8月21日に、本作にも出演して居るイデ隊員を演じられた二瓶 正也さんが亡くなられました。

イデ隊員は普段はコミカルなイメージが強いながらも、時折見せるシリアスなシーンがとても印象的なキャラクターで、大好きでした。

例え二瓶さんが亡くなられても、イデ隊員の雄姿は私達の心の中で輝き続け、永遠に色褪せる事は無いでしょう。

ありがとうございました、二瓶さん。

如何か安らかに………


チャプター8『運命を覆すウルトラマン』

 

金属生命体 アパテー

 

暗黒魔鎧装 アーマードダークネス 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

アーマードダークネス(ランスロット)によって、またもや瓦礫の山へと変えられた世界華撃団大戦の試合会場。

 

『フウウウウゥゥゥゥゥ~~~~~~………』

 

力を行使したアーマードダークネス(ランスロット)は、その様を見て満足そうに大きく息を吐く。

 

と、そこで………

 

上空から『何か』が降下してきた………

 

右手にクラリス機、左手にアーサー機を掴んだ試製桜武だ。

 

背部のバーニアを使ってゆっくりと降下し、クラリス機とアーサー機を降ろすと、自身も軟着陸する。

 

「すまない、天宮くん。助かったよ」

 

アーサーがさくらに礼を言う。

 

「いえ、そんな………」

 

「でも、さくらさん。誠十郎さんが………」

 

それに返答をしていたさくらに、クラリスがそう言って来る。

 

アーマードダークネス(ランスロット)の攻撃で上空高くへと舞い上げられた誠十郎機、試製桜武、クラリス機、アーサー機。

 

その中で、限定的ながら飛行能力を持つ試製桜武が他機の救助に入ったのだ。

 

最初は誠十郎機とクラリス機を優先したさくらだったが、他ならぬ誠十郎自身が、『俺よりクラリスとアーサーさんを!!』と言った為、さくらはクラリス機とアーサー機の救出を優先。

 

結果誠十郎機だけが吹き飛ばされて行ってしまったのだ。

 

「………神山隊長ならきっと大丈夫! 今までもそうだったじゃない!!」

 

さくらは一瞬間を空けながらも、クラリスにそう返した。

 

「その通りだぜ」

 

「誠十郎は結構しぶとい………」

 

「悪運も強いみたいだからね」

 

とそこで、そう言う台詞と共に、初穂機・あざみ機・アナスタシア機が姿を見せた。

 

「! 皆っ!!」

 

「ったく、今回もこのパターンかよ」

 

さくらが声を挙げると、何度目ともならぬ世界華撃団大戦のスタジアムでの怪獣との対峙に、初穂が呆れた様に言い放つ。

 

『おお~~! 帝国華撃団が勢揃いだね~! 丁度良いや~………皆で戦おうよぉ!』

 

と、集結した帝国華撃団の姿を見たアーマードダークネス(ランスロット)が、嬉しそうな声を響かせながら2剣を広げて近づいて来る。

 

「「「「「!!」」」」」

 

それを見たさくら達は、一斉に得物を構える。

 

「団員の不始末は団長の責任だ。僕も参戦させて貰うよ」

 

更に、アーサー機も剣を構え直した。

 

 

 

 

 

………そこで!!

 

 

 

 

 

「ハアッ!!」

 

上空から現れたゼロが、土片を巻き上げながら、スタジアム跡へと着地して来た!

 

「! ゼロさん!!」

 

「ウルトラマンゼロ………」

 

さくらとアーサーが、ゼロを見て声を挙げる。

 

『おお~~っ! 噂のウルトラマンゼロまで来てくれるなんて~!! 良~し! 先ずは君と勝負だぁっ!!』

 

と、ゼロの姿を見たアーマードダークネス(ランスロット)が、2剣を構えて突撃する!!

 

「フッ!!」

 

ゼロはゼロスラッガーを両手に握ったかと思うと、ゼロツインソードへ合体させ、斬り掛かって来たアーマードダークネス(ランスロット)の斬撃を受け止める!

 

『私の剣を難なく受け止めたぁ! やるじゃないかぁっ!!』

 

「チイッ! よりによってエンペラ星人の鎧だなんて、厄介な物を持ち出しやがって!!」

 

『エンペラ星人って、前に言っていた………!?』

 

興奮状態で言い放つアーマードダークネス(ランスロット)に、ゼロは愚痴る様にそう言い放ち、誠十郎が以前ゼロから聞いていた話を思い出す。

 

「ゼロさんっ!!」

 

すぐに花組がゼロの援護に入ろうとするが………

 

!#$%&=¥@?*+

 

その前に、アパテーが立ちはだかる。

 

!#$%&=¥@?*+

 

形容し難い咆哮と共に、アパテーの右手がランスの様な形となる!

 

「! くうっ!!」

 

驚きながらも、すぐに刀を構えるさくらの試製桜武。

 

「さくら! 先ずはコイツを!!」

 

「分かってます!」

 

「クラリス、ゼットンは?」

 

「まだこの前の戦いでのダメージが回復してなくて………」

 

アナスタシアにそう返事を返すさくらの横で、クラリスとあざみもそんな会話を交わす。

 

「仕方ねえ! アタシ達だけで!!………」

 

と、初穂がそう意気込んだ瞬間………

 

その横を擦り抜け、更にはアパテーをもスルーして、アーサー機がゼロと戦っているアーマードダークネス(ランスロット)の方へと向かった!!

 

「!?」

 

「アーサーさん!?」

 

「すまない、花組の諸君! だが、倫敦華撃団の団長として! ランスロットは僕が止めなければいけないんだ!!」

 

驚く初穂とさくらにそう言い、アーマードダークネス(ランスロット)へと向かって行くアーサー機。

 

!#$%&=¥@?*+

 

アパテーはアーサー機を追う様子は見せず、ランスになった右手を振り被る。

 

「! 来るっ!!」

 

「「「「!!」」」」

 

あざみの声でさくら達は身構え、止むを得ずにそのままアパテーとの交戦を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼロVSアーマードダークネス(ランスロット)………

 

『ハハハハハハハッ!!』

 

心底楽しそうな笑い声を挙げながら、両手のダークネスブロードで嵐の様な連撃を繰り出して来るアーマードダークネス(ランスロット)。

 

「チイイッ!!」

 

その激しい斬撃の前に、ゼロは防戦一方だった。

 

2剣のダークネスブロードとゼロツインソードが斬り結ぶ度に激しく火花が散る。

 

『何て激しい攻撃だっ!!』

 

「厄介な奴が厄介な力を得ちまったぜっ!!」

 

ランスロットの剣技にアーマードダークネスの強さが合わさり、コレまでにない強敵と化した事に誠十郎とゼロはそう言い合う。

 

『隙有りっ!!』

 

と、その一瞬の隙を衝き、アーマードダークネス(ランスロット)が右の剣で斬り上げを繰り出すと、ゼロツインソードが弾かれて宙に舞い、ゼロの背後の地面に突き刺さった!!

 

「!? しまったっ!!」

 

『貰ったぁっ!!』

 

驚いたゼロに向かって、アーマードダークネス(ランスロット)は左の剣で突きを繰り出す!!

 

「!!」

 

咄嗟に身を捻るゼロだったが、完全には躱し切れず、ダークネスブロードの刃が胸を掠る!

 

「! うおわっ!?」

 

胸から火花を散らして倒れるゼロ。

 

『おおおおっ!!』

 

アーマードダークネス(ランスロット)は間髪入れずに2剣を振り被り、追撃を喰らわせようとしたが………

 

「エメリウムスラッシュッ!!」

 

ゼロは倒れたままエメリウムスラッシュを発射!

 

額のビームランプから放たれた緑色の光線が、2本のダークネスブロードの柄に命中!

 

ダークネスブロードが2本とも宙に舞う。

 

『! むうっ!!』

 

するとアーマードダークネス(ランスロット)は大跳躍し、宙に舞ったダークネスブロードをキャッチする。

 

「!!」

 

しかしその間にゼロも、アーマードダークネス(ランスロット)から離れ、地面に突き刺さっていたゼロツインソードを回収する。

 

「ハアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

そのまま、まだ空中に居たアーマードダークネス(ランスロット)に向かって、プラズマスパークスラッシュを繰り出す。

 

『むううっ!!』

 

光輝くゼロツインソードの攻撃を、2剣を身体の前に交差させて構えた状態で受け止めるアーマードダークネス(ランスロット)。

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

気合の声を挙げ、押し切ろうとするゼロ。

 

しかし………

 

『でりゃあああぁぁぁぁーーーーーっ!!』

 

「!? うおわあっ!?」

 

アーマードダークネス(ランスロット)は2剣を広げる様に振るい、プラズマスパークスラッシュを完全に打ち消し、ゼロを弾き飛ばした!!

 

「グアッ!?」

 

弾かれたゼロは、スタジアム跡の地面に背中から叩き付けられ、激しく土片を舞い上げる。

 

そのゼロから少し離れた位置に、アーマードダークネス(ランスロット)は着地を決める。

 

『フフフフフ………』

 

再度心底楽しそうだが不気味な笑い声を響かせつつ、2剣を構えているアーマードダークネス(ランスロット)が、ゼロとの距離をゆっくりと詰めて来る。

 

「この野郎!………」

 

『ゼロ! マズイぞ! このままじゃ………』

 

「分かってるっ!!」

 

焦る様子を見せる誠十郎に、ゼロも余裕が無いのか怒鳴り返す。

 

と、その時!!

 

「ランスロットッ! 待つんだっ!!」

 

アーマードダークネス(ランスロット)の背後に姿を見せた蒼いブリドヴェンから、アーサーの声が響く。

 

『! アーサーさんっ!?』

 

「アイツッ!?」

 

『…………』

 

驚く誠十郎とゼロだったが、アーマードダークネス(ランスロット)は気に留めずに、ジリジリとゼロとの距離を詰める。

 

「クッ! ランスロット………コレ以上、君の暴挙を許すワケには行かないっ!!」

 

それを見たアーサーが一瞬葛藤した様な様子を見せたかと思うと、その機体から霊力が溢れる。

 

「王に逆らう者に鉄槌を! 喰らえ、断罪! オーバーロード・エクスカリバーッ!!」

 

そして、両手で剣を振り被ると、その刀身に霊力が集まり、巨大なエネルギーの刃を形成する!

 

その巨大な刃を、アーマードダークネス(ランスロット)に向かって振り下ろす!!

 

『ああん?』

 

そこで漸くアーマードダークネス(ランスロット)は振り返り、自分に迫る巨大なエネルギーの刃を確認する。

 

そして………

 

『フンッ!!』

 

左のダークネスブロードを軽く振るったかと思うと、巨大なエネルギーの刃をアッサリと掻き消してしまった!

 

「!? なっ!? ば、馬鹿なっ!? エクスカリバーがっ!?」

 

自身の最大技が呆気無く敗れた事に、アーサーは思わず動揺する。

 

と、そのアーサーに大きな影が落ちる。

 

「!?」

 

見上げたアーサーが見たのは、自身に迫り来るアーマードダークネス(ランスロット)の足だった。

 

避ける間も無く、アーサー機はアーマードダークネス(ランスロット)によって踏み潰される。

 

『アアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!』

 

アーマードダークネス(ランスロット)は狂った様にアーサー機に向かって何度も何度も足を振り下ろす。

 

『ふううぅぅぅぅ~~~~~………』

 

と、漸く落ち着いた様に息を吐き、足を止めたアーマードダークネス(ランスロット)。

 

舞い上がっていた粉煙が治まって来ると、そこには………

 

 

 

 

 

手足が全て千切れ、煎餅の様にペシャンコにされたアーサー機の姿が在った………

 

 

 

 

 

「ガハッ!! ラ、ランス………ロット………」

 

奇跡的にもアーサーはまだ生きていたが、潰れたコックピットに全身を挟まれ、激しく吐血していた。

 

『邪魔しないでよぉ、アーサー………今、私………凄く良い気分なんだからぁ………』

 

恍惚した様子でそう言いながら、ダークネスブロードを振り被るアーマードダークネス(ランスロット)。

 

トドメを刺す積りの様だ。

 

『! マズイッ!!』

 

「止せっ!!」

 

それに気づいた誠十郎が慌て、ゼロがすぐさま止めようと突進したが………

 

『フンッ!!』

 

「!? ぐおああっ!!」

 

アーマードダークネス(ランスロット)は信じられない速度で反応し、逆にゼロにダークネスブロードでの斬撃を食らわせた!!

 

ブッ飛ばされたゼロは、辛うじて残っていたスタジアムの客席部分に背中から突っ込み、客席を押し潰しながら倒れた。

 

『…………』

 

そこで改めてアーサーへのトドメを刺そうとするアーマードダークネス(ランスロット)。

 

「! アーサーさんっ!!」

 

「「「「!!」」」」

 

!#$%&=¥@?*+

 

気付いた花組が声を挙げるが、アパテーに阻まれ、助けに行く事は出来ない。

 

万事休すか!?

 

………と、思われたその時!!

 

「待てぇっ!!」

 

「「「「「「「『『!?』』」」」」」」

 

その場に居る誰のモノでも無い声が聞こえ、思わず全員が動きを止める。

 

「…………」

 

その次の瞬間には、まるでアーサーを守る様に、1人の少年が立ちはだかった!

 

「!? 民間人っ!?」

 

「何でこんな所にっ!?」

 

突如現れた民間人と思われる少年の姿に、さくらと初穂が仰天する。

 

「!? アイツはっ!? 何で此処にっ!?」

 

『ゼロ! 彼を知ってるのか!?………!? まさかっ!?』

 

一方、ゼロはその少年を知っている様子を見せ、その様子を見た誠十郎は『ある可能性』を思い至る。

 

「早く逃げてっ!!」

 

「此処は危険ですっ!!」

 

あざみとクラリスが、少年に逃げる様に促す。

 

「ジッとしてて! 今行くわっ!!」

 

と、アナスタシアが少年を助けに向かおうとそう言った時………

 

 

 

 

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」

 

少年………『朝倉 リク』はそう言い放ち、右手に『ジードライザー(スキャナー)』を構えた!

 

 

 

 

 

インナースペースが展開されるとリクは右脇腰のボックスから、カプセル状の物体………『ウルトラカプセル』を取り出した!

 

「融合(ユーゴー)!」

 

『シェアッ!』

 

リクがそう言って初代ウルトラマンカプセルの脇に付いていたスイッチを上げると、リクの右側に右腕を掲げる初代ウルトラマンのビジョンが現れる。

 

起動させたカプセルを、左脇腰に装着し、グリップ部分を左手で握っていた装填ナックルにセットする。

 

「アイゴー!」

 

『ヌェアッ!』

 

続けて、ベリアルカプセルを起動させると、今度は左側に同じく右手を掲げるベリアルのビジョンが出現する。

 

そして同じ様に、装填ナックルにセットする。

 

「ヒアウィーゴー!」

 

そこで、ジードライザーのトリガーを押し、待機状態にする。

 

そして、2つのカプセルをセットした装填ナックルをベルトから外したかと思うと、ジードライザーで読み込む。

 

すると、ジードライザーの中央の透明部分に、赤と青の遺伝子構造の様な光が宿る。

 

『フュージョンライズ!』

 

「決めるぜ! 覚悟!! ハアアッ! ハアッ!!」

 

ジードライザーから声が響く中、リクはそう言い放ち、ジードライザーを掲げたかと思うと、胸の前に構えて、再度トリガーを押した。

 

赤と青の遺伝子構造の様な光が回転を始めたかと思うと、更に明るく光り始める。

 

「ジィィィィド!」

 

『ウルトラマン! ウルトラマンベリアル!』

 

リクとジードライザーの声が響く中、その姿はウルトラマンへと変わって行った!

 

『ウルトラマンジード! プリミティブ!』

 

 

 

 

 

「ハアッ!!」

 

アーマードダークネス(ランスロット)の前に獣の様な姿勢で着地を決めるウルトラマン。

 

「! ウルトラマンッ!?」

 

「アイツもウルトラマンだったのか!?」

 

現れた新たなウルトラマンの姿に驚愕するさくらと初穂。

 

「でも………何か目付きが悪い」

 

「今まで見たウルトラマンとは大分違うわね………」

 

と、あざみアナスタシアがそのウルトラマンを見て、そんな言葉を漏らす。

 

しかし、彼女の言う通り………

 

そのウルトラマンは、青い鋭い目付きをしており、ボディカラーも基本である赤と銀に黒が混じっていると言う、異色な姿をしていた。

 

「あ、あの方はっ!?」

 

だが、クラリスだけは、ゼロからそのウルトラマンについて聞かされていた。

 

「ジードッ!!」

 

『! ジードだってっ!?』

 

叫ぶゼロに、誠十郎が驚きの声を挙げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう………

 

彼の名は『ウルトラマンジード』

 

あの『ウルトラマンベリアル』の息子に当たる存在であり………

 

運命を覆した、若きウルトラマンだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

暴れ回るアーマードダークネス(ランスロット)。
止めようとしたアーサーさえも薙ぎ倒し、取り返しのつかない事態になりかけます。
しかし、そこへ………
遂に『彼』の登場です!

その名は『ウルトラマンジード』!!
ベリアルの息子である若きウルトラマン!!

そして次回………
遂にゼロの『あの形態』が解禁となります!!

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター9『俺に限界はねぇ!』

チャプター9『俺に限界はねぇ!』

 

金属生命体 アパテー

 

暗黒魔鎧装 アーマードダークネス 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦会場・スタジアム跡………

 

『おお~~! ウルトラマンがもう1人だなんて………嬉しいねぇ~!』

 

「ハアッ!!」

 

新たに現れたウルトラマン………ジードを見て嬉しそうな声を漏らすアーマードダークネス(ランスロット)に相対し、構えを執るジード。

 

と、その背後に在った大破したアーサー機に、黒い影の様な物が取り付く。

 

「リク! この人は僕に任せてっ!!」

 

その影の名から、ペガッサ星人の子供………『ペガ』が、アーサーを抱えた状態で現れる。

 

「ペガ! 頼んだ!!」

 

「うん!」

 

ジードが振り返りながらそう言うと、ペガはアーサーと共に再び影………『ダーク・ゾーン』の中へと避難し、その場から去って行った!

 

『さあ! 君も私の血を滾らせてくれぇっ!!』

 

そこで、アーマードダークネス(ランスロット)が、痺れを切らしたかの様にジードに向かって行く。

 

「ハアッ!!」

 

そこでジードは、両手で地面を叩いたかと思うと跳び上がり、ジャンプニーキックを繰り出す!

 

『グッ!?………おおおおおおっ!!』

 

真面に喰らったアーマードダークネス(ランスロット)はよろけて数歩後退ったが、すぐさまジードに向かって2剣を振るう。

 

「ハッ!!」

 

ジードは前転する様に転がって躱し、そのままアーマードダークネス(ランスロット)の背後に居たゼロの横へ立つ。

 

「ゼロ! コレをっ!!」

 

そう言いながら右手を自身のカラータイマーに寄せたかと思うと、カラータイマーから光の玉が飛び出し、ジードの右手に収まる。

 

そして、その右手をゼロへと向けたかと思うと、その光の玉がゼロのカラータイマーに向かって飛んだ。

 

光の玉がゼロのカラータイマーに吸い込まれたかと思うと、インナースペースの誠十郎の元に現れる。

 

『! コレはっ!?』

 

誠十郎が驚きの声を挙げた瞬間、光が弾け………

 

中からライザーのスキャナーと装填ナックル………

 

そして、『ウルトラマンギンガ』、『ウルトラマンビクトリー』、『ウルトラマンエックス』、『ウルトラマンオーブ(オリジン)』のウルトラカプセルが現れた。

 

「ライザーにウルトラカプセル! 良し、レイトには悪いが………誠十郎! 行くぞっ!!」

 

『!!』

 

ゼロがそう言うと、誠十郎の頭の中に、ライザーの使い方が流れ込んで来る。

 

『良し! 行くぞっ!!』

 

誠十郎はライザーのスキャナーと装填ナックルを手にする。

 

 

 

 

 

「ギンガ!」

 

スキャナーのトリガーを押した誠十郎は、先ずギンガのカプセルを起動。

 

『ショオラッ!!』

 

誠十郎から見て右側に、左手を掲げるウルトラマンギンガのビジョンが現れると、カプセルを装填ナックルにセットする。

 

「オーブ!」

 

続いてオーブ(オリジン)のカプセルを起動。

 

『デュアッ!』

 

今度は左側に、同じく左手を掲げるウルトラマンオーブ(オリジン)のビジョンが現れると、同じ様にカプセルを装填ナックルにセットした。

 

その状態の装填ナックルをスキャナーで読み込むと、トリガーを押す誠十郎。

 

『ウルトラマンギンガ! ウルトラマンオーブ・オーブオリジン! ニュージェネレーションカプセル! α!!』

 

スキャナーから音声が響くと、ギンガとオーブの力を宿したウルトラカプセル………『ニュージェネレーションカプセルα』が形成される。

 

「ビクトリー!」

 

誠十郎は今度は、ビクトリーのカプセルを起動。

 

『テヤッ!』

 

誠十郎から見て右側に、左手を掲げるウルトラマンビクトリーのビジョンが出現すると、カプセルを装填ナックルにセット。

 

「エックス!」

 

続いてエックスのカプセルを起動。

 

『イィィィーッ! サーーーッ!』

 

左側に、左手を掲げるウルトラマンエックスのビジョンが出現すると、カプセルを装填ナックルにセットする。

 

その装填ナックルをスキャナーで読み込み、トリガーを押す誠十郎。

 

『ウルトラマンビクトリー! ウルトラマンエックス! ニュージェネレーションカプセル! β!!』

 

スキャナーから音声が響くと、ビクトリーとエックスの力を宿したウルトラカプセル………『ニュージェネレーションカプセルβ』が形成される。

 

そこで誠十郎は、ウルトラゼロアイをスキャナーへと装着した。

 

「ギンガ! オーブ!」

 

『ショオラッ!!』

 

『デュアッ!』

 

そして先ず、ニュージェネレーションカプセルαを起動。

 

ギンガとオーブ(オリジン)のビジョンが出現し、互いに向かい合うと、装填ナックルにカプセルをセットする。

 

「ビクトリー! エックス!」

 

続いて、ニュージェネレーションカプセルβを起動。

 

『テヤッ!』

 

『イィィィーッ! サーーーッ!』

 

ビクトリーとエックスのビジョンが出現し、同じ様に互いに向かい合うと、装填ナックルにカプセルをセット。

 

ウルトラゼロアイを装着したスキャナーのトリガーを押すと、装填ナックルを読み込む。

 

『ネオフュージョンライズ!』

 

「『俺に限界はねぇっ!!』」

 

音声が響く中、誠十郎とゼロがそう叫び、ライザーを目の前に持って来て、トリガーを押す!

 

「『ハアッ!!』」

 

そして気合を入れると、誠十郎の姿がゼロへと変わり、背後にギンガ、ビクトリー、エックス、オーブ(オリジン)のビジョンが出現!!

 

『ニュージェネレーションカプセル! α! β!』

 

そのビジョンが、次々にゼロに重なる様に融合。

 

『ウルトラマンゼロビヨンド!』

 

そして、ゼロの姿が銀を基調にした紫のカラーリングの物となり、光の中から飛び出した!!

 

 

 

 

 

「俺はゼロ………『ウルトラマンゼロビヨンド』だ!」

 

落ち着いた口調で、最強の戦闘形態となったゼロ………

 

『ウルトラマンゼロビヨンド』が構えを執って名乗りを挙げた!

 

「! ゼロさんの姿が!?」

 

「初めて見るぜ………」

 

初めてみるゼロビヨンドの姿に驚きの声を挙げるさくらと初穂。

 

「ア、アレが………ゼロさん最強の戦闘形態………ゼロビヨンド………ああ、何て神々しい………」

 

「カッコイイ………」

 

ゼロフリークなクラリスは恍惚の表情を浮かべ、あざみも純粋な感想を漏らす。

 

「如何やら、今までの形態とは一味違うみたいね………」

 

そしてアナスタシアは、佇まいからでもコレまでのゼロとは一線を画す形態である事を感じ取る。

 

『おおおっ! 凄いじゃないぁ、ウルトラマンゼロォ!! 凄い力を感じるよぉ………さあ、早く戦おうじゃないかぁ!!』

 

一方、アーマードダークネス(ランスロット)は此処へ来て尚、戦闘狂を拗らせる。

 

「ああ、さっさと終わりにしてやるよ………この下らない戦いをな」

 

ゼロビヨンドがそう言うと頭部に手をやり、の4つに増えたゼロスラッガー………『クワトロスラッガー』を分離させる。

 

そして、それを2組ずつで合体させ、光輝く二刀流のゼロツインソード………『ビヨンドツインエッジ』を構えた。

 

『!? 下らないっ!?』

 

と、その言葉を聞いたアーマードダークネス(ランスロット)が肩を震わせ始める。

 

『下らないだと!? こんなに血潮が滾ってしょうがない戦いを下らない!?………ふざけるなあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!』

 

そして激昂してゼロビヨンドに突撃する。

 

「その言葉、そっくりお前に返すぜ!」

 

それを迎え撃つ為に、ゼロビヨンドも突撃する。

 

「ジードクローッ!」

 

更にジードも、虚空から専用武器………『ジードクロー』を呼び出して握り、アーマードダークネス(ランスロット)に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、アパテーと戦う花組は………

 

!#$%&=¥@?*+

 

形容し難い咆哮と共に、ランスになっていた右手を足元の花組目掛けて突き下ろすアパテー。

 

「ええいっ!!」

 

しかし、何と!!

 

試製桜武が、さくらの気合の声と共に刀を振るい、アパテーのランスを弾いた!!

 

!#$%&=¥@?*+

 

まさか弾かれるなど微塵も思っていなかったアパテーは動揺し、体勢を崩す。

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

そこで初穂機が大跳躍し、縦回転しながらハンマーをアパテーの脳天に振り下ろした!

 

アパテーの頭部がグシャリと潰れて平たくなる。

 

「如何だっ!!」

 

しかし、着地を決めた初穂がそう言い放つと………

 

!#$%&=¥@?*+

 

アパテーは咆哮と共に、潰れた頭を粘土の様にグニャグニャと変形させ、元の状態に戻してしまった。

 

「! 野郎っ!!」

 

「アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

初穂が思わず舌打ちする中、クラリスが必殺技を発動させ、多数の魔導弾をアパテーに向かって放つ。

 

!#$%&=¥@?*+

 

すると、アパテーは今度は左手を粘土の様に変形。

 

巨大な盾を作り出し、魔導弾を全て防いでしまう。

 

「やああっ!!」

 

だが、空かさずにあざみ機が、右手に逆手に持った忍者刀で仕掛ける!

 

大跳躍から勢いに乗せた斬撃を繰り出し、アパテーの盾を斬り裂く!

 

!#$%&=¥@?*+

 

しかし、またしても斬り裂かれた盾がグニャグニャと変形し、元の左手の状態となる。

 

「駄目! 効いてない!!」

 

「幾らダメージを与えても、すぐに修復されてしまうわね………」

 

着地を決めたあざみ機の傍で、アナスタシアがEXタイラント(デスボーン)との戦いを思い出しながらそう漏らす。

 

「如何すれば………」

 

と、さくらがそう呟いた瞬間………

 

『皆、聞こえるかい?』

 

「! イデさん!」

 

通信回線にイデの声が響いた。

 

『僕に考えが有る。良く聞いてくれ………』

 

そしてイデは、自分が考えた作戦を花組へと伝える。

 

!#$%&=¥@?*+

 

とそこで、アパテーが咆哮を挙げたかと思うと、ランスとなっていた右手が変形を始め………

 

巨大なハンマーとなった!!

 

「! 野郎! アタイの真似をっ!!」

 

初穂はそれを見て、自分の武器をコピーされたと察する。

 

!#$%&=¥@?*+

 

アパテーはハンマーとなった右手を振り被り、花組目掛けて振り下ろす!

 

「ハアッ!!」

 

するとそこで、クラリス機が巨大な魔法陣を展開。

 

アパテーのハンマーを受け止める。

 

!#$%&=¥@?*+

 

力任せにハンマーを押し込み、魔法陣を叩き割ろうとするアパテー。

 

「くうっ! 初穂さんっ!!」

 

それに必死に耐えながら、クラリスは初穂に呼び掛ける。

 

「任せろっ!!」

 

そこで初穂機が、アパテーの懐へと飛び込む。

 

「東雲神社の! 御神楽ハンマーッ!!」

 

そして必殺技を繰り出した。

 

初穂機がハンマーを振り回しながら独楽の様に回転し始め、炎の竜巻と化す。

 

その炎の竜巻が、アパテーの身体を熱して行く。

 

徐々に熱を帯び始めたアパテーの身体が、白熱化する。

 

!#$%&=¥@?*+

 

しかしアパテーは特に苦しむ様子も見せず、鬱陶しがったかの様に初穂機に狙いを変更し、ハンマーを振り下ろそうとする。

 

『今だ! アナスタシアくんっ!!』

 

「アポリト・ミデンッ!!」

 

するとその瞬間!

 

イデの合図で、今度はアナスタシア機が必殺技を発動。

 

番傘型ライフルから放たれたレーザーが、白熱化していたアパテーに命中。

 

すると、レーザーが当たっていた部分から、アパテーが凍り付き始めた。

 

そのまま氷は広がり続け、遂にアパテーは全身を氷に包まれた。

 

途端に、凍り付いているアパテーの全身が罅割れ始める!

 

液体状と言えど金属。

 

熱せられた後に急激に冷やされた事で、温度差による破壊が起きたのだ!

 

「今だぁっ!!」

 

「さくらっ!!」

 

「!!」

 

初穂とアナスタシアがさくらに呼び掛けると、試製桜武が必殺技の体勢に入る。

 

「蒼き空を駆ける………千の衝撃! 天剣・千本桜っ!!」

 

放たれた巨大な斬撃波が、氷漬けで罅割れていたアパテーに直撃!

 

アパテーに縦一文字に光が走ったかと思うと、頭部の方から連続で爆発を起こし、粉々になる!!

 

「あざみ!」

 

「望月流忍法………無双手裏剣!!」

 

と、その粉々になったアパテーの破片に向かって、あざみ機が必殺の無双手裏剣を放ち、全て消滅させる。

 

『全ての破片の消滅を確認………』

 

『皆、良くやった』

 

イデがアパテーの破片が全て消滅した事を確認すると、サコミズの声が通信回線に響く。

 

「ふうう~~~~………厄介な相手だったぜ」

 

その言葉を聞いた初穂が大きく息を吐き、安堵の様子を見せる。

 

「ゼロさん達は………」

 

そこでさくらは、アーマードダークネス(ランスロット)と戦っているゼロ達を確認するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼロビヨンド&ジードVSアーマードダークネス(ランスロット)………

 

『オオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーッ!!』

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!」

 

ダークネスブロードとビヨンドツインエッジが高速で振られ、閃光を煌かせながら激しく斬り結ばれる。

 

と、一瞬拮抗したか思われたが、すぐさまにゼロビヨンドの方がアーマードダークネス(ランスロット)を押し始める。

 

『!? 押されてるっ!?』

 

「当然だ………ハッ!」

 

アーマードダークネス(ランスロット)が驚きの声を挙げた瞬間に、ダークネスブロードを2本とも弾き、ガラ空きになった胴体を斬り付けた!!

 

『ガアッ!?………このぉっ!!』

 

僅かに後退りながらも、すぐに体勢を立て成して再度斬り掛かって行くアーマードダークネス(ランスロット)。

 

「ハアッ!」

 

しかし、ゼロビヨンドを飛び越える様に現れたジード(プリミティブ)が、ジードクローで斬り付ける!

 

『ガアッ!? このぉっ! 邪魔するなぁっ!!』

 

「ハアッ!!」

 

反撃に繰り出されたアーマードダークネス(ランスロット)の斬撃を、ジードクローで受け止めるジード(プリミティブ)。

 

「ハッ!」

 

『グッ!?』

 

そしてボディにケンカキックを叩き込んで、距離を離す。

 

「クローカッティングッ!」

 

インナースペース内のリクが、ジードクローのトリガーを1回引いてからスイッチを押し込み、刃先から赤黒い波状光線を放った!

 

クローカッティングはアーマードダークネス(ランスロット)に命中すると、抉る様に回転して、鎧の一部を爆ぜさせた!

 

『ガアッ!?』

 

「エメリウムスラッシュッ!!」

 

その鎧が爆ぜた部分に向かって、ゼロビヨンドが3つになったビームランプから、通常より太いエメリウムスラッシュを放った!!

 

『グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!?』

 

アーマードダークネス(ランスロット)は大きくブッ飛ばされ、背中から地面に倒れる。

 

『馬鹿な! 何故こんな急に押される!? 高が2人掛かりになったぐらいで!?』

 

ゼロビヨンドとジード(プリミティブ)に歯が立たなくなった事に、アーマードダークネス(ランスロット)が混乱した様子を見せる。

 

「言っただろう。下らない戦いはさっさと終わらせるってな」

 

ビヨンドツインエッジを構え直しながら、ゼロビヨンドがそう言い放つ。

 

『下らないとは何だ! 強い奴と戦って何が悪いっ! 強い奴と戦えば、私はもっと強くなれる! 戦いこそが私を高みへ導いてくれるんだ!!』

 

相変わらず自分との戦いを下らないと評するゼロビヨンドに、アーマードダークネス(ランスロット)は激昂する。

 

「強くなって如何すんだ?」

 

『えっ?………』

 

しかし、続くゼロビヨンドの言葉を聞いて思わず沈黙した。

 

「強くなって如何するんだって聞いてんだ?」

 

『そ、それは!?………』

 

重ねて問い質して来るゼロビヨンドだが、アーマードダークネス(ランスロット)は答えられない………

 

本能のまま戦う事を好んでいた彼女にとって、何の為に強くなるか等とは考えた事も無い事だった………

 

「何をしたいかも分からねえのに強くなりてぇのか?………そんな強さなんざ………虚しいだけだぜ」

 

『!?』

 

何処から悲し気な声色でそう言ったゼロビヨンドの言葉を聞いた瞬間、アーマードダークネス(ランスロット)は明らかにショックを受けた様子を見せる。

 

『わ、私は………私は………』

 

何かを言おうとするが言葉が出て来ない………

 

遂には両手に持っていたダークネスブロードを取り落としてしまう。

 

『私は………何の為に………』

 

戦意を喪失するアーマードダークネス(ランスロット)。

 

………かに思われたが!!

 

『!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!』

 

アーマードダークネスの目が怪しく光ったかと思うと、その身体から大量の闇のエネルギーが溢れ出し始める。

 

『!? アレはっ!?』

 

「チッ! アーマードダークネスが暴走を始めやがった! このままだとアイツは闇に飲み込まれて消滅しちまう!!」

 

驚く誠十郎に、ゼロビヨンドがそい推測を述べる。

 

『! ゼロ! すぐにランスロットさんを助けるぞっ!!』

 

それを聞いた誠十郎は即座にそう決断する。

 

「それは僕に任せて下さいっ!」

 

だがそこで、ジード(プリミティブ)がそう言ってゼロビヨンドの前に出た。

 

「任せるぜ、ジード」

 

迷い事無くジード(プリミティブ)にそう言うゼロビヨンド。

 

正に阿吽の呼吸である。

 

 

 

 

 

インナースペース内のリクが、右腰のホルスターから新たなカプセルを取り出す。

 

「融合(ユーゴー)!」

 

『テァッ!』

 

カプセルを起動させると、リクの右側に右腕を掲げる『ウルトラマンヒカリ』のビジョンが現れる。

 

起動させたカプセルを、左脇腰に装着し、グリップ部分を左手で握っていた装填ナックルにセットする。

 

「アイゴー!」

 

『ハァッ!』

 

続けて新たなカプセルを起動させると、左側に左手を掲げる『ウルトラマンコスモス』のビジョンが出現。

 

そして同じ様に、装填ナックルにセットする。

 

「ヒアウィーゴー!」

 

ジードライザーのトリガーを押し、待機状態にすると、装填ナックルにセットしたヒカリとコスモスのカプセルをリードする。

 

『フュージョンライズ!』

 

「見せるぜ! 衝撃!! ハアアッ! ハアッ!!」

 

ジードライザーから声が響く中、リクはそう言い放ち、ジードライザーを掲げたかと思うと、胸の前に構えて、再度トリガーを押した。

 

赤と青の遺伝子構造の様な光が回転を始めたかと思うと、更に青い光を放ち始める。

 

「ジィィィィド!」

 

『ウルトラマンヒカリ! ウルトラマンコスモス!』

 

リクとジードライザーの声が響く中、ヒカリとコスモスのビジョンが重なる。

 

『ウルトラマンジード! アクロスマッシャー!』

 

そして、光の中から、青い身体となったジード………

 

『ウルトラマンジード・アクロスマッシャー』が出現する。

 

 

 

 

 

「ハアアアア………」

 

静かな着地を決めたジード(アクロスマッシャー)が、独特な構えを執る。

 

「!! 変わったっ!?」

 

「青くなったぞ!?」

 

姿を変えたジードに、さくらと初穂が驚きを示す。

 

『アアアアアアァァァァァァァァッ!!』

 

そこで、アーマードダークネス(ランスロット)が悲鳴の様な咆哮を挙げながらダークネスブロードを拾い上げ、ジード(アクロスマッシャー)斬り掛かる!

 

「………!」

 

しかし、アーマードダークネス(ランスロット)の斬撃が命中するかの様に思われた瞬間、ジード(アクロスマッシャー)が一瞬ブレて消える。

 

「ハアアアア………」

 

そして、アーマードダークネス(ランスロット)の背後へと現れた。

 

『!?』

 

「…………」

 

すぐさま振り返るアーマードダークネス(ランスロット)だったが、その瞬間にはジード(アクロスマッシャー)の姿は消え、再度背後へと回り込んでいた。

 

「! 速いっ!!」

 

「正に目にも止まらぬ動きです」

 

「彼もゼロやオーブと同じで、姿を変える事で能力を変える事が出来るのね………」

 

今度はあざみとクラリスが驚きの声を挙げ、アナスタシアがそう推察する。

 

『アアアアアアァァァァァァァァッ!!』

 

苛立ったアーマードダークネス(ランスロット)が、またもや悲鳴の様な咆哮を挙げながら、ジード(アクロスマッシャー)にダークネスブロードを振るう。

 

「スマッシュビームブレード!」

 

するとそこで、ジード(アクロスマッシャー)は右手首に光の剣………『スマッシュビームブレード』を形成し、居合い抜きの様に振るった!

 

ダークネスブロードの刃が2本とも叩き切られ、宙に舞ったかと思うと、地面に突き刺さる。

 

『!?』

 

「ハアッ!!」

 

驚いて動くの止まったアーマードダークネス(ランスロット)の胸目掛けて、ジード(アクロスマッシャー)はスマッシュビームブレードを突き刺す!

 

「ハッ!」

 

一瞬の間の後、スマッシュビームブレードを引き抜くと………

 

その切っ先に、バリアに包まれ、気を失っているランスロットの姿が在った。

 

「! ランスロットさん!」

 

さくらが声を挙げると、ランスロットはバリアに包まれたまま、花組の元へと飛んで行く。

 

グオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

宿主を失ったアーマードダークネスが、悲鳴の様な咆哮を挙げる。

 

「ゼロッ!」

 

「ああ、任せろっ!」

 

そこでジード(アクロスマッシャー)が呼び掛けると、ゼロビヨンドはビヨンドツインエッジを一振りに合体させ、エネルギーを送り込んで巨大化させる。

 

「俺の刃を刻み込め!」

 

その巨大なビヨンドツインエッジを地面を削りながら振り回すと、宿主の居なくなったアーマードダークネスに突撃!

 

「ツインギガブレイクッ!!」

 

そして、『Z』の文字を描く様に斬り付けた!!

 

アーマードダークネスに刻まれたZの文字から光が溢れたかと思うと、そのまま爆発四散!

 

飛び散った破片も、光の粒子となって消滅するのだった。

 

「「シュワッ!!」」

 

それを確認すると、ゼロビヨンドとジード(アクロスマッシャー)は、一旦空の彼方へ飛び去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インナースペース内………

 

「で、リク。何でお前がこの地球に居んだ?」

 

ある程度スタジアム跡から離れたゼロと誠十郎。

 

そしてジードことリクは、インナースペースを共有し、改めて情報共有を行っていた。

 

「セブンさんから連絡が来たんだ。レオさんの報告を聞いて、僕に助けに向かって欲しいって」

 

「親父が? ったく、心配性なんだからよぉ………」

 

心配し過ぎだと愚痴る様に言うゼロ。

 

「君も………ウルトラマンなんだな?」

 

とそこで、誠十郎がリクを見ながら改めてそう問い質す。

 

「あ、ハイ。朝倉 リク、ウルトラマンジードです。貴方が今ゼロと一緒に戦っている方ですか?」

 

「ああ、帝国華撃団・隊長の神山 誠十郎だ。さっきは如何もありがとう。お陰で倫敦華撃団の人達を助ける事が出来た」

 

「気にしないで下さい。当然の事をしただけですから」

 

誠十郎が改めて礼を言うと、リクはそう返す。

 

「あ、そうだ、ゼロ。実はこの地球に来る途中で、ジャグラーさんにも会ったんだけど………」

 

「ジャグラー? アイツか?」

 

ギルバリスとの戦いの時を思い出しながらそう返すゼロ。

 

「うん、何でも………黒幕はダークリングを持ってるから気を付けろって」

 

「! ダークリングだと!?」

 

「ダークリング?」

 

驚くゼロと、ダークリングと言う単語に首を傾げる誠十郎。

 

「宇宙で最も邪悪な心を持つ者のもとを巡り、持ち主の能力を増幅させると言われているアイテムだ。怪獣を呼び出す能力も有る」

 

「! すると、今まで帝都に現れた怪獣達は!?」

 

「ソイツに呼び出されたか、或いは強大な力に引き寄せられて来たかだ。ダークリングを持った奴が居るなら合点も行く」

 

納得した様にゼロがそう言う。

 

「如何やらこの1件………かなり根が深そうだな」

 

「任せて! だからこそ僕が来たんだから!!」

 

「フッ………頼りにしてるぜ、ジード」

 

心配無いと言うリクに、ゼロは笑いを零す。

 

「勿論! ジーッとしてても、ドーにもならないからね!」

 

リクも笑いながらお決まりの台詞を返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

ランスロット「戦いは私の全てだった………

 

結果的に守る事になればそれで良いと思ってた………

 

けど、私はもう戦えない………

 

戦えなくなった私に何の価値が有るの?………

 

次回『新サクラ大戦』

 

第6.5話『黒騎士と青い海の光』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

私には守りたいモノなんて、初めから無かったんだ………

 

???「守るべきモノなんて幾らでもある………俺は嘗てそう言われた事がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第6話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『金属生命体 アパテー』

 

身長:52.5メートル

 

体重:5万2500トン

 

能力:身体中を変形させられる

 

初登場作品:ウルトラマンガイア第3話『その名はガイア』

 

宇宙から飛来した金属生命体の第1号。

 

根源的破滅招来体の一種とされる。

 

金属生命体の名の通り、身体が液体金属で出来ており、自在に姿を変えられる。

 

ガイアのデータを入手しており、能力と合わせてガイアを苦戦させたが、クァンタムストリームで爆散。

 

その後すぐに復活したが、直後に今度はウルトラマンアグルのフォトンクラッシャーを受けて今度こそ倒された。

 

しかし、回収された破片が後に新たな金属生命体を生み出す事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『暗黒魔鎧装 アーマードダークネス(ランスロット)』

 

身長:62メートル

 

体重:3万9000トン

 

能力:長剣ダークネスブロードによる二刀流

 

初登場作品:ウルトラマンメビウスOVD『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』

 

エンペラ星人が光の国との再戦時に装着する予定でいた暗黒の鎧。

 

鎧でありながら自我を持っており、纏った者の力を何10倍にもパワーアップさせる。

 

この作品ではランスロットを依り代としており、彼女の得意とした二刀流を使って猛威を振るった。

 

設定上はレゾリューム光線等も使用可能だったが、ランスロットの気質により使われなかった。

 

余談だが、映像作品ではヒカリ、セブン、悪の戦士であるがベリアルと、宿敵である筈のウルトラマンに纏われる事が多かった。




新話、投稿させて頂きました。

ジードから届けられたライザーで、遂にゼロがゼロビヨンドにフォームチェンジ!
圧倒的な力でアーマードダークネス(ランスロット)を圧倒。
ジードがアクロスマッシャーにチェンジし、ランスロットを救出した事で、アーマードダークネスを撃退します。
アパテーも、花組の連帯とイデの作戦の前に砕け散りました。

しかし、取り込まれていたランスロットには激しい後悔と罪悪感が………
そんな彼女を救う為、次回はあのウルトラマンが登場します!
ヒントは元祖○○ウルトラマンです。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております


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第6.5話『黒騎士と青い海の光』
チャプター1『誇り無き騎士』


第6.5話『黒騎士と青い海の光』

 

チャプター1『誇り無き騎士』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・浅草………

 

帝劇・花やしき支部………

 

翔鯨丸用の予備ドッグに、1隻の宇宙船が鎮座していた。

 

その宇宙船の名は、『ネオブリタニア号』

 

リクの生活拠点である『星雲荘』だ。

 

「スゲェ~ッ! コレが外宇宙技術で作られた宇宙船かぁ~っ!! うお~~っ!! 見た事もねえトンでもないテクノロジーの塊じゃねえかっ!!」

 

ネオブリタニア号を見上げた後、手元の調査資料を見て興奮した様子で歓喜の声を挙げる令士。

 

技術屋として、異星のテクノロジーに触れられる事がとても嬉しいらしい。

 

「オイオイ、司馬くん。燥ぐのは構わないけど、ちゃんとデータを収集するんだぞ。初めて真面に解析出来る代物なんだから」

 

そんな令士に向かってイデが諫める様にそう言う。

 

コレまでにも帝都の襲来した異星人の物と思われる様々なオーバーテクノロジーを回収していたが、その多くは戦闘等の影響で破損した物ばかりであった。

 

その為に、テクノロジーの解析は遅々として進んでいなかったが、ネオブリタニア号の存在により、初めて真面に異星のオーバーテクノロジーを解析出来るのだ。

 

「それにこの宇宙船は『彼』の厚意で解析させて貰えてるんだからね」

 

「分かってますよ! さあ~、忙しくなるぞぉっ!!」

 

まだワクワクを隠し切れない様子で、ネオブリタニア号の方へと向かう令士。

 

「やれやれ………」

 

そんな令士の姿を見て、イデは困った様に笑った後、ネオブリタニア号を見上げる。

 

(コレのデータがあれば『アレ』の開発は一気に進みそうだな………)

 

そう考えながら、イデは令士と共に解析へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

銀座の帝劇・地下指令室では………

 

「えっと………改めて初めまして。朝倉 リク、ウルトラマンジードです。これからよろしくお願いします」

 

「ペガッサ星人のペガです。僕もよろしくお願いします」

 

リクとペガが、すみれと花組一同に向かって挨拶をしていた。

 

「俺は帝国華撃団・花組の隊長、神山 誠十郎。そして、彼女達が花組の隊員達だ」

 

「私は天宮 さくらです」

 

「東雲 初穂だ」

 

「望月 あざみ」

 

「クラリッサ・スノーフレークです。クラリスって呼んで下さい」

 

「アナスタシア・パルマよ。よろしく」

 

それに返礼する様に、花組一同が自己紹介する。

 

「帝国華撃団総司令の神崎 すみれですわ。昨日の戦いでは助かりました。改めて感謝を申し上げますわ」

 

最後にすみれが自己紹介をしながら、倫敦華撃団戦での事で改めて感謝を伝える。

 

「いえ、そんな。気にしないで下さい。ウルトラマンとして当然の事をしたまでですから」

 

「流石ですね、ジードさん。ゼロさんから聞いてた通り、立派な後輩さんですね」

 

そう返すリクに、ゼロから話を聞いていたクラリスが、輝く目で尊敬の眼差しを送る。

 

「あ、リクって呼んで下さい。いや~、それ程でも………」

 

そんなクラリスの様子を見て、リクが気恥ずかしそうに頭を掻く。

 

「ねえ、朝倉くん。ちょっと聞きたい事が有るのだけど………」

 

するとそこで、アナスタシアがリクに質問して来る。

 

「ハイ、えっと………アナスタシアさんでしたね。何ですか?」

 

「貴方は普段はそう言う姿をしているの?」

 

「え? 如何言う事ですか?」

 

質問の意味が良く分からず首を傾げるリク。

 

「貴方が普段は人間と同じ姿をしているのだとしたら………ウルトラマンゼロも普段は人と同じ姿をしているのかしら?」

 

アナスタシアはやや目付きを鋭くしてそう質問を続ける。

 

如何やら、以前レオがやって来た時の疑惑を検めようとしている様だ。

 

「えっ!? ゼロも普段はって………今、そこに………」

 

「! わああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」

 

それを聞いたリクが、誠十郎の方に視線を向けようとした瞬間、当の誠十郎が大声を挙げる。

 

「おわっ!? な、何だよっ!?」

 

「ど、如何したんですか? 『誠十郎』さん!?」

 

驚く初穂と、怪訝な顔を向けるさくら。

 

………さり気無く誠十郎の事を名前呼びしながら。

 

「あ! いや、その!………け、今朝のゴミ出しを忘れてたのを思い出して!!」

 

誠十郎はやや動揺を隠し切れないまま、そう誤魔化しを掛ける。

 

「もう~、驚かせないで下さい」

 

「人騒がせ………」

 

クラリスとあざみが呆れた表情を向けて来る。

 

「まあ、何はともあれ、心強い味方が増えた事を歓迎致しましょう。ですが、皆さん。余り彼を頼りにし過ぎるのはいけませんよ。我々は帝国華撃団………人々を守る事が仕事なのですから」

 

そこで誠十郎をフォローしつつ、リクを歓迎しながらも戒める様にしてすみれが話を纏めた。

 

「「「「「了解!」」」」」

 

それを聞いたさくら達は、すみれに敬礼を返す。

 

(ゼロ、ひょっとして正体を隠しているの?)

 

とそこで、状況を察したリクが、テレパシーでそう尋ねて来た。

 

『ああ、コイツ等も防衛組織だからな。余り俺に頼り過ぎない様にしねえとな』

 

(そうだったんだ………ゴメン)

 

『いや、俺も説明し忘れてたからな。兎に角、アイツ等が自分で気付くか、俺達が明かさなきゃならなくなるまでは黙っといてくれ』

 

(うん、分かった)

 

リクは誠十郎の方を見ながら無言で頷いた。

 

「ねえ、貴方………」

 

「えっ? 僕?」

 

とそこで、あざみがペガの方に声を掛けた。

 

「会場で倫敦華撃団の隊長を助けた時のアレ………紛れも無く『忍法影潜り』。ひょっとして貴方も宇宙忍者なの?」

 

「え、ええ!?」

 

あざみの言葉に戸惑うペガ。

 

「あ~、あざみはバルタン星人の祖父に育てられた忍者でな」

 

「えっ!? あのバルタン星人に!?」

 

誠十郎がそう説明すると、ペガは今度は驚きの声を挙げる。

 

「えっと、あざみちゃん。アレは『ダーク・ゾーン』って言ってね。僕達ペガッサ星人が持っている科学技術で、忍術じゃないんだ。ゴメンね」

 

「そう………」

 

それを聞いたあざみが、ちょっと残念そうな様子を見せる。

 

「でも、凄いね! あのバルタン星人に育てられたなんて………正に現代に生きる忍者なんだ!」

 

「! あざみの事、忍者に見える!?」

 

「勿論! 何処から如何見て忍者だよ!」

 

「! そう………」

 

ペガの言葉に嬉しそうにするあざみ。

 

と、その時………

 

誠十郎のスマァトロンが鳴った。

 

「ん? こまちさんから?」

 

連絡を寄こして来たのはこまちだった。

 

『神山さん! 花組も連れて急いで売店に来てくれやっ!!』

 

『緊急連絡』と銘打たれた命題の内容は、文面からも慌てている様子が伝わって来た。

 

「こまちさん? 如何したんだ?」

 

「誠十郎さん? 如何したんですか?」

 

「こまちが如何かしたのか?」

 

思わず声を挙げてしまった誠十郎に、さくらと初穂が訪ねて来る。

 

「こまちさんが皆を連れてすぐ来て欲しいそうだ」

 

「こまちさんが?」

 

「何かあったの?」

 

誠十郎がそう説明すると、今度はあざみとクラリスが訪ねて来る。

 

「分からない。しかし、かなり慌ててるみたいだ」

 

「兎に角、行ってみましょう」

 

「あ、僕も行きます!」

 

「ペガも!」

 

アナスタシアがそう言うと、一同はこまちの待つ売店へと向かった(ペガはダークゾーンでリクの影に隠れて)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・売店前………

 

「お願いします! 神山くん達に取り次いで下さい!!」

 

「だからちょっと落ち着きやってっ!!」

 

誠十郎達が売店の近くまで来ると、何やら揉めている様子の声が聞こえて来る。

 

「こまちさん! 如何したんですか!?」

 

「ああ、神山さん! 来てくれはったか!」

 

誠十郎を先頭に花組一同が姿を見せると、こまちから安堵の声が漏れる。

 

「神山くん!」

 

するとそこで、こまちと揉めていた人物………

 

『アーサー』が声を挙げる。

 

「!? アーサーさんっ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

アーサーの姿を見た誠十郎と花組一同は驚きを露わにする。

 

「あの人は………」

 

『ペガが助けた人だ』

 

「重傷の筈じゃ」

 

一方でリクはペガに言われて思い出す。

 

世界華撃団大戦・準決勝に於いて、ランスロットが変貌したアーマードダークネスに機体ごと踏み潰されたアーサー。

 

幸いにも一命は取り留めたが、当然ながら重傷であり、倫敦華撃団の空中戦艦の病室に入院中の筈である。

 

それを表すかの様に、頭には包帯が巻かれ、病院着姿の上に戦闘服の上着を羽織っている状態だった。

 

如何やら、病室を抜け出して来た様子だ。

 

更に、如何いうワケか、自分の剣では無く、ランスロットの二振りの剣を携えている。

 

「良かった………来て………くれたか………」

 

誠十郎達の方へ歩み寄ろうとして、そのままバタリと倒れるアーサー。

 

「! アーサーさんっ!」

 

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

誠十郎が慌てて駆け寄って助け起こし、花組一同も傍に集まる。

 

「何をやってるんですか! 貴方は入院中の筈でしょう! すぐに倫敦華撃団の空中戦艦に戻らないと!!」

 

「そ、それよりも………君達に………頼みが………有るんだ………! グウッ!!」

 

すぐに倫敦華撃団の元へ帰そうとする誠十郎だったが、それを遮る様に、アーサーは身体中に走る痛みに顔を歪めながらもそう言う。

 

「頼みって、一体?………」

 

「ランスロットを………! ウウッ!………探してくれ! グッ!」

 

「!? ランスロットさんが如何かしたんですか!?」

 

アーサーの口からランスロットの名が出た事で、さくらが反応する。

 

「彼女は………今………行方不明なんだ………」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

その言葉に、花組一同は再度驚きを露わにする。

 

「! ガハッ!!」

 

とそこで、とうとう内臓にダメージが来たのか、アーサーが吐血する。

 

「! アーサーさんっ!!」

 

「こらアカン! 兎に角、先ずは医務室や!!」

 

「ハイッ!」

 

「手伝いますっ!!」

 

一先ずは、アーサーを医務室へと連れて行く事にした一同だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

帝都の一角にて………

 

「…………」

 

1人の少女が、フラついた足取りで通りを歩いていた。

 

行方不明となっていたランスロットだ。

 

「やだ、何アレ?………」

 

「気味悪いな………」

 

「危ねえぞ、近づくな」

 

道行く人々は、ランスロットの姿を見ると、そんな事を呟きながら道を開けるか、遠巻きに見ている。

 

それもその筈………

 

今の彼女は普段はポニーテールに纏めていた髪をボサボサの状態で垂らしており、纏っている隊員服もボロボロ………

 

全体的に薄汚れており、顔と目に生気は無い………

 

そして、彼女が何より自慢しており、騎士の誇りである筈の剣を携えていない………

 

そんな状態でフラつきながら歩く姿は、浮浪者か或いは幽鬼を思わせる。

 

幸か不幸か、そんな姿により、彼女が倫敦華撃団のランスロットであると気付いている者はいなかった。

 

「………私には………もう………何も無い………華撃団の隊員の資格も………騎士の誇りも………強さも………剣も………」

 

ブツブツとそう呟きながら、フラフラと歩き続けるランスロット。

 

「………ハ………ハハハ………何も………何も無くなっちゃった………」

 

ランスロットは乾いた自嘲の笑いと共に涙を零す。

 

そんな彼女が向かっていた先は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

帝劇で厄介になる事になったリクとペガ。
ゼロの正体を探られるも、何とか誤魔化します。

そこへ、入院中の筈のアーサーが重傷を押して参上。
ランスロットの捜索を願い出ます。
そして、街を浮浪者の様な姿で彷徨うランスロット。
果たして彼女に何があったのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております


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チャプター2『嘗て過ちを犯した男』

チャプター2『嘗て過ちを犯した男』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・医務室………

 

「う、うう………」

 

「全く、無茶する人やな。動けるレベルの怪我や無いのに」

 

ベッドに寝かしつけられ呻き声を漏らしていたアーサーを診察・治療していたこまちがそう呟く。

 

「よっぽど焦ってたんだな」

 

「ランスロットさんが行方不明って言ってましたけど………」

 

「一体如何言う事でしょう?」

 

その様子を見守っていた花組一同の中で、初穂・さくら・クラリスがそう言い合う。

 

「彼女の事は気になっていたところだが………」

 

誠十郎が顎に手を当ててそう呟く。

 

上海華撃団の時と同様、アーマードダークネスと化し、破壊活動を行ったランスロットには批判の声が挙がっていた。

 

更に、上海華撃団の時とは違い、アーマードダークネスとなっていた際の彼女は、ある程度自意識を残していた。

 

つまり、正気では無かったとは言え、自分の意思で破壊活動を行っていたという事になる。

 

英吉利政府が真面ならば、彼女には相応の処分が下されなければならないし、何より彼女自身の罪悪感も半端ではない筈だ。

 

「やはり何らかの処分が下されたのかしら?」

 

「その通りだよ………」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

とそこで、アーサーが声を挙げたので、誠十郎達は驚きながら視線を向ける。

 

「ちょちょい! 喋ったらアカンって!!」

 

会話するのも辛い筈なのに喋り出そうとしているアーサーの姿を見て、こまちが焦る。

 

「今ランスロットは………倫敦華撃団を追放されようとしている」

 

しかし、アーサーは構わずに話しを続けた。

 

「!? 追放っ!?」

 

「やっぱり処分が………」

 

さくらが驚きの声を挙げ、クラリスも目を見開く。

 

「まだ確定では無いのだけど………如何やら彼女はそれを知ってしまい、それで姿を消してしまった様なんだ」

 

「けど、それは当然じゃない。アレだけの事を仕出かしたのよ。追放処分も妥当だと思うわ」

 

「オイ! アナスタシア!」

 

追放処分は当然と言うアナスタシアに、初穂が諫める様に言う。

 

「………ランスロットには………倫敦華撃団以外………もう居場所が無いんだ」

 

「? 如何言う事?」

 

「「「「「「「??」」」」」」」

 

しかし、続くアーサーの言葉を聞いて、あざみがそう言い、他の一同も首を傾げる。

 

「………彼女は」

 

そしてアーサーは、ランスロットの身の上について話し始めた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曰く………

 

ランスロットは実はかなり高い爵位の貴族の家の生まれ。

 

しかし、超が付くおてんば娘だった彼女は貴族………淑女としての暮らしと言うモノが根本から肌に合わず、家族と度々衝突。

 

やがて彼女が騎士道物語にハマり始め、剣を修行し始めると亀裂は決定的なモノとなった。

 

とうとう家を追い出されてしまったのだ。

 

その後は、武者修行の様な放浪の旅を続けて、やがてその腕前と霊力に高さに目を付けたWLOFに発見され、倫敦華撃団へと配属された。

 

度々自分を否定され、家からも追い出されてランスロットにとって、倫敦華撃団は唯一の居場所なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ランスロットさんにそんな事が………」

 

ランスロットの思わぬ過去を聞いて、さくらが思う所がある様な様子を見せる。

 

「それに………彼女は今、剣を握れなくなってしまったんだ」

 

「!? 剣を握れなくなった!?」

 

と、そう言葉を続けたアーサーに、初穂が驚きの声を挙げる。

 

「スタジアムでの事がトラウマになってしまったらしい………剣を手にしようとすると、身体が本能的に拒否してしまうんだ………」

 

「重傷………」

 

剣が全てだったランスロットが剣を手にする事さえ出来なくなってしまった事へ、あざみは信じられないと言った様子を見せる。

 

「頼む! 彼女には他に行く当てが無いんだ! 処分については僕が上と交渉してみせる! だから、ランスロットを………!? ガハッ!!」

 

とそこで、アーサーは再び吐血した。

 

「!? アーサーさん!!」

 

「ああ、無茶し過ぎやって! そんなじゃ治るモノも治らへんって!!」

 

誠十郎が慌てると、こまちは業を煮やした様に鎮静剤入りの注射器を取り出し、素早くアーサーへと打ち込んだ。

 

「うっ!………」

 

短く呻き声を漏らしたかと思うと、そのまま眠る様に意識を失うアーサー。

 

「ふうう~~~~、漸く大人しくなったわ」

 

額の汗を拭いながらやれやれと言った具合にこまちは呟く。

 

「アイツにも色々と有ったんだな………」

 

アーサーから聞いたランスロットの話を思い出しながら、初穂が複雑そうな表情を見せる。

 

「それで?………如何するの、キャプテン?」

 

そこで、アナスタシアが誠十郎を見ながら訪ねる。

 

「探しましょう! ランスロットさんをっ!!」

 

と、一も二も無くもそう言ったのはリクだった。

 

「ランスロットさんだって心の底から暴れたいと思ってたワケじゃないよ! このままじゃ可哀そうだよ!!」

 

ペガもそう言って来る。

 

「勿論だ。彼女は国は違えど、同じ華撃団の仲間だ。俺達はコレからより強大な敵と戦わなければならない。過去の蟠りは捨て、共に未来を守らなければならないんだ」

 

「「「「…………」」」」

 

「フッ、仕方ないわね………」

 

誠十郎の言葉にさくら・初穂・あざみ・クラリスは無言で頷き、アナスタシアもしょうがないと言う。

 

「良し! 手分けしてランスロットさんを探すんだ!!」

 

「「「「「「「了解っ!!」」」」」」

 

花組一同とリクとペガは、ランスロットを捜索しに、帝都の街へ繰り出すのだった(ペガはリクの影の中に隠れて)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

当のランスロットは………

 

「…………」

 

波しぶきが激しく打ち付けている岸の上に居た。

 

「…………」

 

しぶきでずぶ濡れになりながらも、光の無い目で荒れている海を見やっているランスロット。

 

「…………」

 

やがて、ゆっくりと足を進め始めた。

 

ドンドン崖に近づいて行くランスロット。

 

そして遂には崖から足を踏み外す………

 

 

 

 

 

………かに思われた瞬間!!

 

ランスロットの腕を掴み、引き留めた人物が居た!

 

 

 

 

 

「…………」

 

光の消えた目のまま振り返るランスロット。

 

「…………」

 

ランスロットの腕を掴んでいたのは、黒い服を来た長髪の男だった。

 

良く見ると、ランスロットの腕を掴んでいる右腕に、奇妙なブレスレットが付いていた。

 

「………何で止めるんだよ?」

 

恨みがましい様子で男に向かってそう言うランスロット。

 

「………お前が何故死のうとしているかは知らん。だが、海を死に場所にしようとしているのは許せないな」

 

男はランスロットを睨む様に見据えながらそう言う。

 

「………放っておいてよ………そんなの私の勝手じゃないか………」

 

そこで、力尽きたかの様にへたり込むランスロット。

 

「海は地球で初めて生命が生まれた場所………言わば全ての生命の母たる存在だ。そこで死のうとするなど、最大の親不孝だ」

 

「何だよソレ………大体、君は誰なんだよ?………」

 

「………『藤宮 博也』」

 

相変わらず光の無い目のまま見上げて来るランスロットに向かって、男………『藤宮 博也』は名乗りを挙げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座の街中………

 

「神山さん!」

 

「リクくん! 如何だった!?」

 

「駄目です! 何処にも見当たりません!」

 

『一体何処へ行っちゃったんだろう?』

 

ランスロットを探して街中に散っていた一同に中で、誠十郎とリク+ペガが路地裏で合流。

 

お互いにまだランスロットは見つけられていないと報告する。

 

『早く見つけねえとマズイかも知れねえぞ。思い詰めてる奴がやる事っつったら………』

 

「! まさかっ!?」

 

最悪な事態を想像するゼロに、誠十郎も焦る。

 

『リク。緊急事態が発生しました』

 

するとそこで、青雲荘ことネオブリタニア号に搭載されている報告管理システム………『レム』からリクに連絡が入る。

 

「レム? 何が有ったんだ?」

 

『中国の上海に怪獣が出現しました』

 

「!? 上海に怪獣が!?」

 

「!? 何っ!?」

 

レムの報告にリクが思わず声を挙げると、誠十郎も驚きを示す。

 

『現在、緊急帰国した上海華撃団とウルティメイト華撃団のガンクルセイダー部隊が応戦中ですが、苦戦しています』

 

「こんな時に!!………」

 

まだランスロットは見つかっていないが、止むを得ず、花組を招集して帝劇へ戻ろうとする誠十郎だったが………

 

「神山さん! 僕が行きます!!」

 

その誠十郎に向かって、リクがそう言い放つ。

 

「! リクくん!!」

 

「神山さん達はランスロットさんを探すのを続けて下さい!」

 

「上海の方は僕達に任せて!」

 

誠十郎が驚いていると、リクはそう言葉を続け、影から出て来たペガもそう言い放つ。

 

『大丈夫だ、誠十郎。コイツ等の腕は俺が保証するぜ』

 

更にゼロもそう太鼓判を押して来る。

 

「………分かった。上海の方は頼む、リクくん」

 

「了解っ!」

 

誠十郎の言葉に、リクは敬礼しながらそう返す。

 

「レム! すぐに迎えに来てくれないか」

 

『既に到着しています』

 

と、リクが続いてレムへと呼び掛けたかと思うと、3人の居る場所に急に影が掛かる。

 

「「「!?」」」

 

3人が見上げると、そこには宙に浮かぶネオブリタニア号の姿が在った。

 

『すぐに上海へ向かいます』

 

「流石レム。仕事が早いね」

 

レムの言葉にリクがお道化てそう返していると、ネオブリタニア号から光の柱が降りて来て、リクとペガを包む。

 

「神山さん! ランスロットさんの方はお願いします!」

 

「お願いします!」

 

リクとペガがそう言うと、その姿は光の柱の中をエレベーターの様に昇って行き、ネオブリタニア号へと吸い込まれた。

 

そしてネオブリタニア号はゆっくりと旋回したかと思うと、上海に向かって全速力で飛んだのだった。

 

「頼んだぞ………」

 

『心配すんな、ジードの奴に任せておけば大丈夫だ』

 

それを見送る誠十郎に、ゼロがそう言った瞬間、誠十郎のスマァトロンの着信音が鳴った。

 

「ん? さくらか………」

 

連絡をしてきたのがさくらであるのを確認した誠十郎は、続いて文面を確認する。

 

『ランスロットさんらしき人が海の方へと向かったそうです! すぐに向かいます! 他の皆にはもう知らせてありますので、誠十郎さんも早く!』

 

『ランスロットさんを見つけました』と題打たれた電文には、そう言伝られていた。

 

「! ランスロットさんが居たのか!?」

 

『すぐに行くぞ、誠十郎! 行先が海ってのが如何にも気になる!!』

 

「ああっ!!」

 

一抹の不安を感じつつも、誠十郎(+ゼロ)は、すぐさま海の方へと向かって走り出したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

倫敦華撃団を追放されるかも知れないランスロット。
しかし、彼女には華撃団以外に居場所が無い。
取り柄の剣さえ握れなくなり、全てを失った彼女は海へ身を………
しかしそこへ現れたのは………『藤宮 博也』

一方で、上海に出現した怪獣の対応へ向かうジード。
いよいよ帝都以外にも怪獣が出現する様になりました。
これは新たな危機でしょうか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『ワームホールからの刺客』

チャプター3『ワームホールからの刺客』

 

双頭怪獣 パンドン

 

宇宙捕獲メカ獣 Σズイグル

 

ラグストーン・メカレーター登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中国・上海………

 

クワクワアーッ!!

 

咆哮と共に右手を振り下ろし、ビルを叩き壊す赤いゴツゴツとした皮膚に、2つの頭がくっ付いている頭部を持った怪獣………『双頭怪獣 パンドン』

 

クワクワアーッ!!

 

更に2つ有る嘴の付いた口から火炎放射『火炎地獄』を放ち、上海を火の海にして行く。

 

「この野郎ーっ!!」

 

と、怒りの叫びと共に、パンドンの身体に飛び蹴りを喰らわすシャオロン機。

 

クワクワアーッ!!

 

「!? おうわっ!!」

 

しかし、パンドンには余りダメージは無く、逆に振られた腕で弾き飛ばされてしまう。

 

「むむむむむむーっ!!」

 

一方ユイ機は、パンドンの尻尾を掴んで進軍を食い止めようとしている。

 

クワクワアーッ!!

 

「!? キャアッ!?」

 

だが、コチラもパンドンが尻尾を振った事でアッサリと振り払われてしまう。

 

クワクワアーッ!!

 

転がるユイ機に向かって火炎地獄を放とうとするパンドン。

 

そこへ、上空からガンクルセイダー部隊が援護を開始。

 

ロケット弾でパンドンを攻撃する。

 

クワクワアーッ!?

 

それによりパンドンは一瞬怯む。

 

クワクワアーッ!!

 

しかしすぐさま、お返しとばかりにガンクルセイダー部隊に向かって火炎地獄を放つ。

 

回避行動を執るガンクルセイダー部隊だが、1機が躱し切れずに火炎を食らい、黒煙を上げた。

 

「脱出ーっ!!」

 

射出座席でパイロットが脱出し、落下傘が広がると、炎上したガンクルセイダーは墜落して爆散した。

 

クワクワアーッ!!

 

それを尻目に、燃え上がる上海の街を我が物顔で進軍するパンドン。

 

「チキショウッ! 好き勝手やりやがって!!」

 

「このままじゃ、上海が………私達の街が!?」

 

悪態を吐くシャオロンと、燃え上がる上海の街を見て悲鳴の様な声を挙げるユイ。

 

と、その時!!

 

暴れるパンドンに、ビームの様な物が命中する。

 

クワクワアーッ!?

 

「!?」

 

「! アレはっ!?」

 

怯むパンドンに驚くユイよ、ビームを放った存在………ネオブリタニア号を黙視するシャオロン。

 

と、そのネオブリタニア号から光の玉が飛び出したかと思うと………

 

「ハアッ!!」

 

ウルトラマンジード・プリミティブの姿となって、パンドンの前に着地を決めた!

 

「! アレは帝国華撃団から報告の有った新しいウルトラマン!」

 

「ジード………だっけ?」

 

ジードの姿を見たシャオロンとユイは驚きを露わにする。

 

クワクワアーッ!!

 

「ハアッ!!」

 

と、怒りを露わに向かって来るパンドンに対し、ジード・プリミティブもジャンプニーを繰り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

日本の帝都・海辺では………

 

「誠十郎さん!」

 

「さくら! 皆っ!!」

 

誠十郎が、ランスロット捜索で散っていた花組メンバーと合流する。

 

「この辺りに向かうランスロットらしき人を見た人が居ました」

 

「かなりフラフラしてて、傍から見てても危なかったそう」

 

クラリスとあざみがそう報告してくる。

 

「ひょっとすると、もしもって事も有るわね」

 

「オイ、縁起でもねえ事言うなよ」

 

思わず最悪の事態を想像するアナスタシアに、初穂が諫める様に言う。

 

「兎に角、すぐに捜索を………」

 

と、誠十郎がそう言いかけた瞬間、スマァトロンが着信音を立てた。

 

「ん? こまちさん? 上海の件なら、リクくん達が対応してくれた筈だが?………」

 

送信者がこまちである事を確認した誠十郎が、電文を表示する。

 

『アーサーさんが病室から居なくなってもうた! すんまへん、神山さん! まさか鎮静剤を打たれたのに抜け出すとは思ってへんかったんや!』

 

『緊急事態や!』と題された電文には、アーサーが病室から姿を消したと言う驚くべき事態が書かれていた。

 

「!? アーサーさんがっ!?」

 

「! 如何したんですか、誠十郎さん!?」

 

「「「「!!」」」」

 

思わず声を挙げてしまった誠十郎に、花組一同が詰め寄る。

 

「アーサーさんが病室から姿を消したらしい。多分、自分もランスロットさんを探す為に………」

 

「!? アーサーさんがっ!?」

 

「馬鹿じゃねえのか!? 自分の怪我の具合の方が深刻だろっ!!」

 

誠十郎がそう言うと、クラリスが驚きの声を挙げ、初穂も怒鳴る様に言い放つ。

 

「如何するの? キャプテン?」

 

「………先ずはランスロットさんだ。その後でアーサーさんを探そう」

 

指示を求めるアナスタシアに、誠十郎はそう判断を下す。

 

「分かりました! ランスロットさーんっ!! 何処ですかーっ!?」

 

それを聞いたさくらが、いの一番にランスロットの名を呼びながら走り出す。

 

少し遅れて、誠十郎達もその後に続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そのランスロットは………

 

「…………」

 

藤宮の手により砂浜へと運ばれ、そこへ体育座りで相変わらずへたり込んでいた。

 

「…………」

 

その隣に只無言で佇み、波の止せ返す海を眺めている藤宮。

 

「………何も聞かないの?」

 

沈黙に耐えかねたかの様にボソリとそう呟くランスロット。

 

「聞いて欲しいのか?」

 

藤宮は相変わらず海を見ながら問い返す。

 

「…………」

 

そこでランスロットは、再び沈黙する。

 

「………私は………トンでもない事をしたんだ………」

 

しかし、吐露する様にポツリポツリと語り出した。

 

帝国華撃団との試合で、自分が仕出かした事を話すランスロット。

 

藤宮はそれを、やはり海を見たまま聞く。

 

「最強の黒騎士なんて持て囃されて………良い気になってたんだ、私は………何が騎士だよ………」

 

「…………」

 

「騎士は何かを守る存在………私には守りたいモノなんて………何も無かった………」

 

「守りたいモノなんて幾らでも有る………俺は嘗てそう言われた事がある」

 

と、藤宮はそんな言葉をランスロットに返す。

 

「………誰に?」

 

「仲間………いや、友達にだ」

 

藤宮の脳裏に過る、1人の青年………『高山 我夢』

 

「人間は過ちを犯す………だが同時に償う事も出来る生き物だ」

 

「償う………」

 

「お前がコレから如何するかは俺の知った事では無い。だが………何もしない事が正しい事なのか?」

 

そう投げかけると、藤宮は踵を返し、その場から去って行った。

 

「…………」

 

残されたランスロットは、体育座りのまま藤宮が見ていた海へと視線を向ける。

 

「………私は」

 

何かを言おうとしたが、言葉にならない………

 

と、そこへ!

 

「ランスロットッ!!」

 

「!?」

 

聞き馴染みの有る声にビクリとなりながら視線を向けるランスロット。

 

「ゼエ、ゼエ………やっと………ハア、ハア………見つけた………」

 

そこに居たのは、如何見ても顔色が最悪の状態で呼吸も整っていないアーサーの姿だった。

 

その手には、ランスロットの二振りの剣を持っている。

 

「ア、アーサー………」

 

思わず立ち上がるランスロットの脳裏に蘇るアーマードダークネスとなっていた時の記憶………

 

自分は彼を機体ごと何度も何度も………

 

「あ、あああ!?………」

 

ランスロットは罪悪感に押し潰されそうになり、頭を押さえて苦しむ様子を見せる。

 

「ランスロット! 落ち着いて! 僕は………僕は大丈夫だ!」

 

するとそこで、アーサーがそれまでの今にも死にそうだった様子が嘘の様に凛とした表情を見せ、姿勢を正した。

 

「!?」

 

「ランスロット………僕は君に恨みなど抱いていない………寧ろ、君の異変に気付けなかった僕にも責任は有る」

 

驚くランスロットに、アーサーはそう言葉を続ける。

 

「君の犯した過ちは大きい………けれど! だからこそ君はコレからも騎士であらねばならない! それこそが倫敦華撃団の団員としての償いとなる!」

 

「アーサー………」

 

「僕も手助けをする。だから、ランスロット………戻って来てくれっ!!」

 

そう言って、手に持っていた剣をランスロットに向かって差し出すアーサー。

 

「!!………」

 

一瞬躊躇しながらも、その剣を取ろうとするランスロット。

 

しかし、剣に手が触れた瞬間………

 

脳裏に再び、アーマードダークネスとなっていた時の記憶が過る!

 

「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

途端に、ランスロットは悲鳴の様な叫びを挙げて、アーサーが持っていた剣を振り払った!!

 

「!? ランスロットッ!?」

 

「嫌だ………剣を取ったら………また………あの時みたいに………」

 

驚くアーサーの前で、ランスロットは両手で頭を抱えて苦しむ。

 

アーマードダークネスとなっていた事が、完全にトラウマとなってしまっていた。

 

「ラ、ランスロット………」

 

今まで見た事も無いランスロットの弱弱しい姿に、アーサーも言葉を失う。

 

 

 

 

 

………と、その時!!

 

 

 

 

 

突如上空に暗雲が立ち込めたかと思うと、渦を巻く穴の様な物が出現した!!

 

「!?」

 

「!? 何だ、アレはっ!?」

 

驚くランスロットとアーサー。

 

それは『ワームホール』と言われる、一種の空間転移の現象だった。

 

出現したワームホールから、巨大な『何か』が現れたかと思うと、地響きを立てて着地した!

 

「! うわっ!?」

 

「あうっ!?」

 

振動に耐えられず、アーサーとランスロットは転倒する。

 

それは、まるで機械部分と生体部分を併せ持つ怪獣………『宇宙捕獲メカ獣 Σズイグル』だった!!

 

「!? か、怪獣っ!?」

 

グギャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

ランスロットが思わず声を挙げると、Σズイグルが低い咆哮を挙げて動き出す。

 

そして、その視線をランスロット達の方へと向けたかと思うと………

 

身体の中心部に在る凹んだ部分から、光線を発射して来た!

 

「!?」

 

「! ランスロットッ!!」

 

思わず固まってしまったランスロットを、アーサーが最後の力を振り絞って突き飛ばす。

 

「! あうっ!?」

 

「うわああああああっ!?」

 

地面に倒れるランスロットと、Σズイグルの光線を真面に浴びてしまうアーサー。

 

「!? アーサーッ!!」

 

ランスロットが叫んだ瞬間………

 

アーサーの身体は、金属の十字架状のケースに包まれた。

 

そして、そのままΣズイグルの方へと吸い寄せられ、中心部に在る凹んだ部分へとくっ付いた。

 

「ア、アーサーッ!!」

 

「ランスロットさんっ!!」

 

と、ランスロットの悲鳴が木霊すると、誠十郎を始めとした花組メンバーが現れた!

 

「しっかりして下さいっ!!」

 

「何でこんな所に怪獣がっ!?」

 

さくらと誠十郎が倒れたままのランスロットの傍に屈み込むと、他のメンバーはランスロットを守る様に得物を構える。

 

「!? オイ! あの怪獣の身体にくっ付いてるのって!?」

 

「アーサーさんっ!?」

 

そこで初穂とクラリスが、Σズイグルに捕らわれの身となっているアーサーの存在に気付く。

 

と、その時!

 

まだ開きっ放しだったワームホールが怪しい光を放ったかと思うと、新たな影が出現し、Σズイグルの隣にゆっくりと着地した。

 

「「「「「「「!!」」」」」」」

 

グルロロオオオオオッ!!

 

 

 

 

 

それは球体が型のゴツゴツとした身体に、サイボーグの様に機械を埋め込まれた人型の怪獣………

 

『ラグストーン・メカレーター』だった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

上海に出現したパンドンに立ち向かうジード。
一方、ランスロットは藤宮とアーサーから説得を受けますが、まだ立ち直れません。
そんな中で、ワームホールからΣズイグルが登場。
ランスロットを庇ったアーサーが囚われてしまいます。
更に、あのエクリプスモードのコスモスを苦戦させたラグストーン・メカレーターまで登場。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『青き海の光』

チャプター4『青き海の光』

 

双頭怪獣 パンドン

 

宇宙捕獲メカ獣 Σズイグル

 

ラグストーン・メカレーター登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・とある海岸………

 

『アレは………コスモスから聞いた事が有る。ラグストーン・メカレーターか』

 

(ラグストーン・メカレーター?)

 

『ああ、『宇宙狩人 ノワール星人』が使役していた怪獣を奴等の技術で機械化した奴だ。コスモスが2度戦って2度共自力で攻略出来なかったって言う強豪だ』

 

コスモスから聞いていた話を思い出しながら、誠十郎にそう語るゼロ。

 

『しかし、奴は『未来怪獣 アラドス』によって時空の彼方に飛ばされた筈………』

 

グギャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

と、ゼロがそう言いかけると、Σズイグルが咆哮を挙げる。

 

そして、両肩部分の輪っか状のパーツが変形したかと思うと、上昇を始めた。

 

「! アーサーッ!!」

 

「! アーサーさんを連れ去る積りか!?」

 

「野郎! させるかってんだ!!」

 

ランスロットが悲鳴の様な声を挙げ、誠十郎と初穂がそう言った瞬間………

 

グルロロオオオオオッ!!

 

ラグストーン・メカレーターが、誠十郎達の方へ向かって来る。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

得物を構える花組メンバー。

 

とそこで、ラグストーン・メカレーターに砲弾が次々に命中し、爆発を挙げる。

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

「皆さん! 無事ですの!?」

 

すみれの声と共に、翔鯨丸が姿を見せる。

 

「! 神崎司令!」

 

「今無限を射出しますわ! 早く乗り込むのよ!!」

 

誠十郎が声を挙げると、翔鯨丸から無限達と試製桜武が射出される。

 

「良し、皆! 乗り込むんだ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

次々に自分の機体へと乗り込んで行く花組メンバー。

 

「ランスロットさん! 安全な場所まで離れていて下さいっ!!」

 

「あ………」

 

そこでさくらがランスロットへそう声を掛けると、ランスロットが一瞬逡巡する様子を見せる。

 

グルロロオオオオオッ!!

 

とそこで、ラグストーン・メカレーターが大きく咆哮を挙げる。

 

「!!」

 

途端に、ランスロットの脳裏にまたもトラウマの光景が甦る。

 

「! う、うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

ランスロットはアーサーが持って来た二振りの剣を置き去りにし、その場から逃げ出す。

 

「ランスロットさん………」

 

そんな黒騎士と言われた姿が見る影も無いランスロットの姿を見て、さくらは悲しい表情を見せる。

 

「さくら! お前はアーサーさんを!!」

 

「! ハイッ!!」

 

しかし、誠十郎がそう言って来たのを聞くと、すぐに気持ちを切り替え、試製桜武のウイングを展開して飛翔。

 

アーサーを連れ去ろうとしているΣズイグルを追おうとする。

 

グルロロオオオオオッ!!

 

しかし、それを見たラグストーン・メカレーターが、試製桜武に向かって肩からの撃砕光線を発射!

 

「! キャアッ!?」

 

寸前で回避する試製桜武だが、ラグストーン・メカレーターは執拗に試製桜武を攻撃!!

 

「さくらっ!」

 

「クウッ!」

 

そこで、アナスタシア機とクラリス機が氷の弾丸と魔導弾をラグストーン・メカレーターに向かって放つ。

 

氷の弾丸と魔導弾は次々にラグストーン・メカレーターに命中して火花を散らすものの、ラグストーン・メカレーターはまるで応えない。

 

「クウッ!!」

 

とうとうバランスを崩した試製桜武は失速し、地面に軟着陸する。

 

グルロロオオオオオッ!!

 

それを見てラグストーン・メカレーターは唸る様に咆哮する。

 

「クソッ! 邪魔はさせねえってか!?」

 

「先ずコイツを倒さないと駄目………」

 

そんなラグストーン・メカレーターの姿を見て、初穂とあざみがそう言う。

 

「仕方が無い! 先ずはこの怪獣を速攻で撃破する! アーサーさんの救出はその後だ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

止むを得ず、誠十郎は先ずラグストーン・メカレーターを倒し、それからアーサーの救出に当たると判断。

 

「ゼットンッ!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

そこでクラリスが、ゼットンを召喚する。

 

花組一同とゼットンは、全員でラグストーン・メカレーターへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

中国・上海では………

 

クワクワアーッ!!

 

咆哮と共に、ビルを掴んで土台から引っこ抜くパンドン。

 

そしてその引っこ抜いたビルを、ジード(プリミティブ)に向かって投げつける。

 

「! ウワァッ!!」

 

真面に喰らったジード(プリミティブ)は、粉砕されたビルの破片と共に倒れる。

 

クワクワアーッ!!

 

パンドンは倒れたジードに近づくと、右足を振り上げてストッピングを喰らわせようとする。

 

「フッ!!」

 

ジード(プリミティブ)は倒れたまま、咄嗟に振り下ろされた右足を両手で受け止める。

 

クワクワアーッ!!

 

全体重を掛けてジード(プリミティブ)を踏み潰そうとするパンドン。

 

「クウウウッ!………」

 

必死に耐えるジード(プリミティブ)だが、徐々に受け止めている腕が下がって行く。

 

「「双龍脚っ!!」」

 

とそこで、シャオロン機とユイ機が、パンドンにダブルキックを食らわせた!

 

クワクワアーッ!?

 

「! ハアッ!!」

 

パンドンが怯んだ一瞬の隙を衝き、一気に足を押し返すジード(プリミティブ)。

 

クワクワアーッ!?

 

勢い良く倒れたパンドンが、土片を空中に舞い上げる。

 

「ハアッ!」

 

その間に起き上がったジード(プリミティブ)は、一旦距離を取る。

 

「大丈夫っ!?」

 

「!!」

 

ユイがそう聞いて来たのに、ジード(プリミティブ)は無言で頷いて見せる。

 

クワクワアーッ!!

 

とそこで、起き上がったパンドンが、再度ビルを土台から引っこ抜いて持ち上げる。

 

「! 野郎! またっ!!」

 

(何てパワーなんだ!)

 

シャオロンがその様子に憤慨し、ジードは若干焦る。

 

『リク。ココは『ソリッドバーニング』へのフュージョンライズを推奨します』

 

するとそこで、ネオブリタニア号をレムからそうアドバイスが送られて来た。

 

『分かった、レム!』

 

ジードはそれに従い、フォームチェンジに入った!

 

 

 

 

 

インナースペース内のリクが、右腰のホルスターから新たなカプセルを取り出す。

 

「融合(ユーゴー)!」

 

『ダァーッ!』

 

カプセルを起動させると、リクの右側に右腕を掲げる『ウルトラセブン』のビジョンが現れる。

 

起動させたカプセルを、左脇腰に装着し、グリップ部分を左手で握っていた装填ナックルにセットする。

 

「アイゴー!」

 

『イヤァッ!』

 

続けて新たなカプセルを起動させると、左側に右手を掲げる『ウルトラマンレオ』のビジョンが出現。

 

そして同じ様に、装填ナックルにセットする。

 

「ヒアウィーゴー!」

 

ジードライザーのトリガーを押し、待機状態にすると、装填ナックルにセットしたセブンとレオのカプセルをリードする。

 

『フュージョンライズ!』

 

「燃やすぜ! 勇気!! ハアアッ! ハアッ!!」

 

ジードライザーから声が響く中、リクはそう言い放ち、ジードライザーを掲げたかと思うと、胸の前に構えて、再度トリガーを押した。

 

赤と青の遺伝子構造の様な光が回転を始めたかと思うと、更に黄色い光を放ち始める。

 

「ジィィィィド!」

 

『ウルトラセブン! ウルトラマンレオ!』

 

リクとジードライザーの声が響く中、セブンとレオのビジョンが重なる。

 

『ウルトラマンジード! ソリッドバーニング!』

 

そして、光の中から、アーマーを纏った様な赤い身体となったジード………

 

『ウルトラマンジード・ソリッドバーニング』が出現する。

 

 

 

 

 

「ハアッ!!」

 

やや低くなり、機械的なエフェクトが掛かって声を挙げ、胸部のアーマーが変形する中、セブンと同じポーズを決めると、身体の至る所に在る噴射口から蒸気は溢れるジード(ソリッドバーニング)。

 

「! あの姿は!?………老師っ!?」

 

そのソリッドバーニング形態のジードに、レオの姿を重ねるシャオロン。

 

途端に………

 

「! うわあああっ!! ジープは! ジープは勘弁して下さいーっ!!」

 

トラウマが再発してしまう………

 

「ちょっ! シャオロン! しっかりしてっ!!」

 

クワクワアーッ!!

 

ユイが慌てて慰める中、パンドンはジード(ソリッドバーニング)に向かってビルを投げつける!

 

「シュワッ!!」

 

それに対し、ジード(ソリッドバーニング)は頭部に装備されていたジードスラッガーを投擲!

 

ジードスラッガーはビルを斬り裂き、そのままパンドンにまで命中した!

 

クワクワアーッ!?

 

「ハアッ!!」

 

パンドンが悶える中、ジード(ソリッドバーニング)は戻って来たジードスラッガーを右腕に装着し、殴り掛かりに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、帝都・とある海岸では………

 

「どおりゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

気合の雄叫びと共に、ラグストーン・メカレーターの脳天にハンマーを振り下ろす初穂機。

 

「!? イッデェッ!!」

 

しかし、ラグストーン・メカレーターの装甲の前に全く通用せず、逆に跳ね返って来た反動を受けて悶えてしまう。

 

グルロロオオオオオッ!!

 

ラグストーン・メカレーターは、まだ空中に在った初穂機を叩き付ける様に殴り飛ばす!

 

「!? おうわっ!?」

 

初穂機は地面に向かってブッ飛ばされ、そのまま減り込む。

 

「! 初穂っ!!」

 

グルロロオオオオオッ!!

 

それに気を取られたさくらの試製桜武を踏み潰そうとするラグストーン・メカレーター。

 

「! ハアッ!!」

 

試製桜武は寸前で躱し、そのまま踏み潰そうとしてきた足を斬り付ける。

 

しかし、試製桜武の斬撃は表面で火花を散らしただけで、傷を負わせるに至らない。

 

「硬い!………」

 

堅牢なラグストーン・メカレーターの表皮と装甲に、さくらが思わず苦い顔を浮かべる。

 

「ゼットンッ! 合わせてっ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

「アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

そこでクラリスが、ゼットンとの同時攻撃で、魔導弾と火球を浴びせる。

 

魔導弾と火球が連続で着弾し、爆煙に包まれるラグストーン・メカレーター。

 

しかし、その煙が晴れると………

 

グルロロオオオオオッ!!

 

全く無傷な姿を現し、咆哮を挙げる。

 

「!? そんなっ!?」

 

「何て奴なの………」

 

「防御力だけなら、今までの敵で1番………」

 

クラリスが驚愕し、アナスタシアとあざみが重々しく呟く。

 

『通常の状態で、コスモスのネイバスター光線が全く通用しなかった奴だ。生半可な攻撃じゃ通用しねえ』

 

「クソッ! このままじゃアーサーさんが………」

 

ゼロがそう言うのを聞いて焦る誠十郎。

 

既にΣズイグルは空高くまで上昇しており、間も無くワームホールへと到達しようとしていた。

 

(変身のタイミングさえ掴めれば!………)

 

グルロロオオオオオッ!!

 

そう思う誠十郎だが、ラグストーン・メカレーターの激しい攻撃の前に、変身のチャンスを掴めない。

 

「アーサー………」

 

と、離れて戦いを見ていたランスロットが、今にもワームホールに到達しそうなΣズイグルを見やる。

 

「!………」

 

そしてやがてその視線は、砂浜に置かれたままの自身の剣へと移る。

 

「うう………」

 

だが、剣を視界に収めただけで、ランスロットの身体は震えが止まらなくなる。

 

「………アーサー」

 

しかし、再度Σズイグルを見上げ、その胸部に捕らわれているアーサーに視線を向ける。

 

(このままじゃ、アーサーが………)

 

(だからこそ君はコレからも騎士であらねばならない! ランスロット………戻って来てくれっ!!)

 

脳裏に蘇るアーサーからの言葉。

 

「…………」

 

ランスロットは改めて自身の剣を見やる。

 

「! う、うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

そして悲鳴の様に叫びながら、剣の元へと走り出した。

 

「!? ランスロットさんっ!?」

 

その姿に気付いたさくらが驚きの声を挙げる。

 

「わあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

叫びながら剣に向かって手を伸ばし、遂に剣を手にするランスロット。

 

 

 

 

 

その瞬間!!

 

 

 

 

 

グルロロオオオオオッ!!

 

その姿にラグストーン・メカレーターが気付き、両肩から破砕光線を放った!!

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

真面に爆風を受けてランスロットの身体は宙に舞い、そのまま海へと落下した!

 

「! ランスロットさんっ!!」

 

「「「「「!!」」」」」

 

さくらが叫び、誠十郎達も慌てる。

 

ランスロットの姿は浮かんでくる事は無かった………

 

「そ、そんな………」

 

「テメェ! 良くも!!」

 

グルロロオオオオオッ!!

 

さくらの脳裏に最悪の想像が過り、初穂が怒りの咆哮を挙げるが、ラグストーン・メカレーターは嘲笑うかの様に咆哮を挙げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その様子を、離れた場所から見ていた人物がもう1人居た………

 

「…………」

 

藤宮だ。

 

ランスロットが沈んだ海を見据えている藤宮。

 

するとそこで、右手に装着していたブレスレット………『アグレイター』の翼の様な飾りが左右に展開。

 

右腕を拳を握って胸の前に移動させると本体上部が回転し、翼の上部から青いエネルギー波が発生。

 

そのエネルギー波が藤宮を包み、青い光球となったかと思うと、ランスロットが水没した海へと飛び込んで行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

上海では、怪力を発揮するパンドンに、ジードはソリッドバーニングにフォームチェンジして立ち向かう。

一方、帝都では………
Σズイグルがアーサーを連れ去ろうとし、阻止しようとする花組をラグストーン・メカレーターが妨害。
堅牢な装甲に苦戦を強いられる。
そんな中で、意を決して剣を手にしたランスロットだったが、ラグストーン・メカレーターにやられ、海へと姿を消す。
しかしそこへ、遂に海の光が………

次回、あの名シーンが再びです。
このシーンがやりたくて、彼を登場させたと言っても過言ではありませんね。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『黒騎士、復活!』

チャプター5『黒騎士、復活!』

 

宇宙捕獲メカ獣 Σズイグル

 

ラグストーン・メカレーター 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海中………

 

ラグストーン・メカレーターの攻撃で吹き飛ばされ、海中へと没したランスロット。

 

その身はドンドンと沈んで行き、徐々に光の届かない暗闇が広がり始める。

 

(私は………このまま死ぬのかな?………)

 

海底へと沈んで行きながら、そんな想像が過る。

 

(それも良いかな………誰にも見つからず、1人寂しく………私にはお似合いの最期だね………)

 

最早全てを諦め、意識を手放そうとする。

 

しかしそこで………

 

Σズイグルに捕らわれたアーサーの姿が過る。

 

(! アーサーッ!!)

 

その瞬間に、ランスロットの意識は呼び覚まされる。

 

(駄目だ駄目だ駄目だ! アーサーは私を………こんな私を助けようとしてくれた………私の事を恨んで当然の筈なのに………)

 

剣を握り締めたままだった手に力が籠る。

 

(私はアーサーのその想いに応えたい………アーサーが私に騎士である事を望むなら………私は償いの為、騎士で在り続ける!)

 

海中なのも関わらず、目を見開くランスロット。

 

(動け! 動いてくれ、私の身体!! せめて最後に………アーサーを助ける力を私に!!)

 

ランスロットは祈る様にそう念じる。

 

 

 

 

 

と、その瞬間!!

 

暗闇の海底から、青い光が上がって来た!!

 

 

 

 

 

(!!)

 

驚くランスロットを包み込む青い光。

 

(この光………温かい)

 

青い光から安心する様な温かさを感じるランスロット。

 

抜け殻同然だった身体に、力が甦るのを感じる。

 

(力が………溢れて来る!)

 

そして次の瞬間………

 

ランスロットの目の前に、光輝く青い巨人が現れた!

 

(! ウルトラマンッ!!)

 

そう、その青い巨人は紛れも無く………

 

ウルトラマンであった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・とある海岸………

 

グルロロオオオオオッ!!

 

肩からの撃砕光線を連射するラグストーン・メカレーター。

 

「おわっ!?」

 

「キャアッ!?」

 

爆撃の様な攻撃の前に、花組メンバーは逃げ回るしかない。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

と、花組メンバーを助けようと、ゼットンがラグストーン・メカレーターに向かって行く。

 

グルロロオオオオオッ!!

 

するとラグストーン・メカレーターは、片手を地面に付いて身を屈めたかと思うと、向かって来たゼットンに対し、強烈な突進を繰り出した!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

受け止めようとしたゼットンだったが、ラグストーン・メカレーターのタックルは強烈極まりなく、火花を上げて数10メートルもブッ飛ばされた!!

 

「! ゼットンッ!!」

 

「クソッ! このままじゃ、アーサーさんもランスロットさんも!!」

 

クラリスが叫び、誠十郎の焦りが益々募る。

 

グルロロオオオオオッ!!

 

と、その誠十郎機目掛けて、ラグストーン・メカレーターの破砕光線が炸裂する。

 

「!? しまっ………」

 

た、と言い切る間も無く、破砕光線が誠十郎機に直撃!!

 

誠十郎機は爆発・炎上した!!

 

「!? 誠兄さああああぁぁぁぁぁーーーーーーんっ!!」

 

グルロロオオオオオッ!!

 

さくらの悲鳴が木霊する中、ラグストーン・メカレーターは勝ち誇る様に唸り声を挙げる。

 

「よくも誠十郎を!!」

 

「許しませんっ!!」

 

「ブッ潰すっ!!」

 

怒りに駆られたあざみ・クラリス・初穂がラグストーン・メカレーターに突撃しようとする。

 

「待って! アレはっ!?」

 

するとそこで、アナスタシアが何かに気付いた様に、海の方を向いて声を挙げる。

 

「「「「!?」」」」

 

グルロロオオオオオッ!?

 

そこでさくら達だけでなく、ラグストーン・メカレーターも異変に気付き、海へと視線を向ける。

 

一同の視線が集まる中、海の一角が光輝いたかと思うと………

 

 

 

 

 

何と!!

 

まるで聖書に於けるモーセの海割りの如く、海が真っ二つに割れたではないか!!

 

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

「う、海がっ!?」

 

「割れたっ!?」

 

驚愕を露わにするさくら達。

 

その割れた海の中に、輝く光………

 

その光が徐々に治まって行くと、そこには………

 

青い光の巨人の姿が現れた。

 

「! 青い………ウルトラマン」

 

 

 

 

 

それは地球生まれの光………

 

大いなる海からの青き使者………

 

『ウルトラマンアグル(V2)』の姿だった。

 

 

 

 

 

膝立ちの状態からゆっくりと立ち上がるアグル。

 

良く見ると、掌を上に向けて胸元まで上げている左手の上に人の姿が在った。

 

「アレは………ランスロットさん!?」

 

再度驚きの声を挙げるさくら。

 

浮浪者の様だったボロボロの姿が嘘だった様に、綺麗な団員服を纏い、髪をお馴染みのポニーテールに纏め上げた、二振りの剣を携えたランスロットが、アグルの掌の上に居た。

 

「…………」

 

そのランスロットにアグルが視線を向ける。

 

「…………」

 

振り返ったランスロットは、アグルに向かって無言で頷く。

 

「………ツォワァッ!!」

 

それに対し、アグルも頷き返すと、空へと飛び上がった!!

 

そして、ワームホールへ向かっているΣズイグルを追った!!

 

グルロロオオオオオッ!!

 

と、そうはさせないと、ラグストーン・メカレーターが破砕光線を放とうとする。

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

グルロロオオオオオッ!?

 

しかし、突如現れたゼロが、ウルトラゼロキックをお見舞いし、蹴り飛ばした!

 

「ゼロさん!」

 

「待たせたなっ!」

 

歓喜の声を挙げるさくらに、ゼロはそう返す。

 

グルロロオオオオオッ!!

 

とそこで、ウルトラゼロキックでも余りダメージを受けた様子の無いラグストーン・メカレーターが起き上がり、唸り声を挙げる。

 

「チッ! やっぱ大して効いちゃいねえか………けど、コスモスの雪辱は俺が果たしてやるぜっ!!」

 

 

 

 

 

インナースペースの誠十郎の前に、ニュージェネレーションカプセルαとβが出現すると、ウルトラゼロアイをライザーにセットする。

 

「ギンガ! オーブ!」

 

『ショオラッ!』

 

『デュアッ!』

 

そして先ず、ニュージェネレーションカプセルαを起動。

 

ギンガとオーブのビジョンが現れ向かい合うと、カプセルを装填ナックルにセット。

 

「ビクトリー! エックス!」

 

『テアッ!』

 

『イィィィーッ! サーーーッ!』

 

続いてニュージェネレーションカプセルβを起動。

 

ビクトリーとエックスのビジョンが現れ向かい合うと、カプセルを装填ナックルにセット。

 

ウルトラゼロアイを装着したスキャナーのトリガーを押すと、装填ナックルを読み込む。

 

『ネオフュージョンライズ!』

 

「『俺に限界はねぇっ!!』」

 

音声が響く中、誠十郎とゼロがそう叫び、ライザーを目の前に持って来て、トリガーを押す!

 

「『ハアッ!!』」

 

そして気合を入れると、誠十郎の姿がゼロへと変わり、背後にギンガ、ビクトリー、エックス、オーブ(オリジン)のビジョンが出現!!

 

『ニュージェネレーションカプセル! α! β!』

 

そのビジョンが、次々にゼロに重なる様に融合。

 

『ウルトラマンゼロビヨンド!』

 

そして、ゼロの姿が、ゼロビヨンドへと変わった!!

 

 

 

 

 

「行くぜっ!!」

 

ゼロビヨンドへと変わったゼロが、ラグストーン・メカレーターへと向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ワームホールへと向かうΣズイグルを追ったアグルとランスロットは………

 

上昇を続けるシグナルは、間も無くワームホールへと到達する。

 

(僕は………如何なるんだ?………)

 

絶望的な表情でワームホールを見やるアーサー。

 

とそこで、下から青い光が上って来る。

 

「!? アレはッ!?」

 

アーサーが驚いていると、光はアグルの姿となる。

 

「ツォワァッ!!」

 

Σズイグルに組み付き、上昇を押し止めるアグル。

 

「アーサーッ!!」

 

「!?」

 

その瞬間、アーサーの目の前に2剣を握ったランスロットが躍り出た。

 

「ランスロットッ!?」

 

「動かないでっ!!」

 

そう言い放つと、ランスロットは2剣を振り抜く!

 

一瞬の静寂の後………

 

アーサーを捕らえていた十字架状のポッドのカバーが、火花と共に斬り飛んだ!!

 

「!!」

 

「アーサーッ!!」

 

ランスロットは素早く剣を鞘に納めると、零れ堕ちる様に飛び出たアーサーの身体を受け止める。

 

「ツォワァッ!!」

 

そこでアグルが、Σズイグルから離れたかと思うと蹴りを入れる。

 

グギャアアアアァァァァァーーーーーーッ!?

 

右肩部分の輪っか状のパーツが千切れ飛び、Σズイグルは真っ逆さまになって落下して行く。

 

それを見下ろしながら、再度ランスロットとアーサーをキャッチすると、Σズイグルを追う様に降下するアグル。

 

Σズイグルは、地面に叩き付けられ、派手に土片を巻き上げる。

 

「ツォワァッ!!」

 

アグルは、そこからやや離れた位置へと着地する。

 

そして、ランスロットとアーサーの乗った右手を地面に下げる。

 

「ありがとう、ウルトラマン………」

 

礼を言いながら、アーサーを支えてアグルの手の上から降りるランスロット。

 

「ランスロット………」

 

「ゴメンね、アーサー………私、もう逃げないよ………誰からも認められないし、許されないかも知れない………けど、それでも私はコレからも剣を振る………守らなきゃいけないモノの為に」

 

一片の曇りも迷いも無い瞳で、アーサーにそう言うランスロット。

 

「………ランスロット………今君は本当の騎士になった」

 

それを見たアーサーは、安堵と共に弱弱しくも笑顔を浮かべるのだった。

 

グギャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

と、その時!!

 

咆哮と共に、Σズイグルが土片を舞い上がらせながら起き上がる!

 

「「!!」」

 

アーサーとランスロットが驚いていると、Σズイグルは格納していた両腕を出現させる。

 

そして、指先の発射口を2人に向けたかと思うと、光弾を連射した!!

 

「! ランスロットッ!!」

 

騎士団長のプライドが、瀕死の身体に鞭を打ってランスロットを庇う様に抱き締めるアーサー!

 

「!? アーサーッ!!」

 

ランスロットの声が響く中、光弾が迫り来る………

 

しかし………

 

青白い閃光が走ったかと思うと、光弾が全て真っ二つに斬り裂かれ、爆散した!

 

「「!!」」

 

そこでアーサーとランスロットが見ていたのは………

 

「…………」

 

右手に出現させた光の剣『アグルブレード』を振り切った姿勢を取っているアグルの姿だった。

 

「ウルトラマン!」

 

「…………」

 

アグルブレードを解除すると、アグルはランスロットの視線を向け、頷いて見せた。

 

「………ツォワァッ!!」

 

そして、Σズイグルに向かって構えを執る。

 

グギャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

咆哮を挙げるΣズイグルだが、その様は何処か気後れしている様にも見える。

 

「…………」

 

と、そんなΣズイグルの心情を読み取ったかの様に、アグルは右手で手招きをして、Σズイグルを挑発した。

 

グギャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

その姿を見たΣズイグルは、憤慨したかの様に咆哮を挙げ、両手をアグルに向ける。

 

「ハアッ! オオオオォォォォォーーーーーーッ!!」

 

しかしそこで、アグルも必殺技『フォトンスクリュー』を発動。

 

両腕で円を描く様にしながら、胸の前に青い渦巻く波動弾を形成。

 

グギャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!

 

それを一旦引いて構えた瞬間、Σズイグルが光弾を連続発射する!

 

「ツアァッ!!」

 

その瞬間に、アグルもフォトンスクリューを放つ!

 

フォトンスクリューはΣズイグルの光弾を全て打ち消し、そのままΣズイグルに命中すると、身体を貫いて、背中から飛び出して行った。

 

「…………」

 

身体に大穴が空いたΣズイグルに背を向けるアグル。

 

そしてそのまま歩き出したかと思うと、Σズイグルはスパークを発して木っ端微塵に爆散したのだった。

 

「凄い………」

 

「…………」

 

アグルの姿を見上げるアーサーとランスロット。

 

(あのウルトラマン………ひょっとして………)

 

そして、何故かランスロットの脳裏には、アグルに藤宮の姿が重なるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『宇宙捕獲メカ獣 Σズイグル』

 

身長:75メートル

 

体重:10万5000トン

 

能力:両手から放つ光弾とミサイル

 

初登場作品:ウルトラマンガイア第41話『アグル復活』

 

根源的破滅招来体の1体。

 

ガイアである我夢を罠に掛けて捕らえ、拉致しようとした。

 

しかし、復活したアグル(V2)により、我夢は救出され、フォトンスクリューで倒された。




新話、投稿させて頂きました。

遂にアグル登場!
そして黒騎士ランスロット復活です!!

いや~、この海を割って現れるってシチュエーションがやりたくて、アグルとランスロットを絡めてみました。
原作での『アグル復活』に掛けて、黒騎士としてのランスロットが復活するって言うのを表したくて。

見事アーサーを救出。
Σズイグルも、嘗てと同じ様に撃破です。

残るパンドンとラグストーン・メカレーターは、言ってしまえば消化試合ですが、次回に関する描写もありますので、お見逃しなく。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『ジェネラルAの企み』

祝!!

10月28日発売のスパロボ最新作『スーパーロボット大戦30』の追加参戦DLCにて………

『サクラ大戦シリーズ』が参戦!!

流石にメンバー全員の参戦は無理ですが、遂に家庭用ゲーム機のスパロボで、サクラ大戦のキャラが使えます!!

いや~、両作品のファンが望んで止まなかった夢が遂に叶う日が来ました!!

今からホント楽しみです。

え? 霊子甲冑が宇宙で戦闘出来るのかですって?

そこにアストナージさんが居るじゃろ。


チャプター6『ジェネラルAの企み』

 

双頭怪獣 パンドン

 

ラグストーン・メカレーター登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中国・上海………

 

「ブーストスラッガーパンチッ!」

 

腕に装着したジードスラッガーで、肘のブースターの加速と共にパンチを繰り出し、パンドンを斬り付けるジード(ソリッドバーニング)。

 

クワクワアーッ!?

 

真面に喰らったパンドンが、身体から火花を散らして後退る。

 

クワクワアーッ!!

 

しかし、すぐに反撃とばかりに、火炎地獄を放つ。

 

「ジュワッ!!」

 

ジード(ソリッドバーニング)は、背中のブースターを噴射して大きく跳び上がり、後方宙返りを決めながら一旦距離を取る。

 

「エメリウムブーストビームッ!!」

 

そして、額のビームランプから『エメリウムブーストビーム』を横薙ぎに放ち、パンドンの2つの口を爆散させる。

 

クワクワアーッ!?

 

パンドンが悶えている間に、ジードスラッガーを頭部へ戻すと、右腕部のアーマーを展開させる。

 

すると、右拳から炎が上がり始め、その状態の右手を構えたかと思うと、激しく蒸気が噴出する。

 

「ストライクブーストッ!!」

 

正拳突きを繰り出す様に右手をパンドンへと向けたかと思うと、そこから光の奔流『ストライクブースト』が放たれた!!

 

クワクワアーッ!?

 

ストライクブーストを浴びたパンドンはバタリと倒れ、そのまま大爆発して四散したのだった。

 

「ジュワッ!!」

 

それを確認した後、ジード(ソリッドバーニング)は空を見上げて飛び去り、ネオブリタニア号もその後を追う。

 

「やるじゃねえか、あの目付きの悪いウルトラマンもよぉ………うう、ジープは嫌だ」

 

「ホラ、シャオロン。しっかりして」

 

まだ若干トラウマに襲われながらも、シャオロンはユイと共に飛び去ったジードとネオブリタニア号を見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、日本の方では………

 

帝都・とある海岸………

 

グルロロオオオオオッ!!

 

「フッ! ハッ!」

 

ラグストーン・メカレーターから放たれた2発の破砕光線を、ゼロビヨンドは素早い手刀で弾き消す。

 

そして、一瞬で距離を詰め、ラグストーン・メカレーターを肉薄。

 

「ハアッ!」

 

その身体に連続パンチを叩き込み始める。

 

徐々にパンチを繰り出す速度が上がって行き、とうとう腕が何本も有るかの様に見え始める。

 

グルロロオオオオオッ!?

 

その高速連続パンチの前に、ラグストーン・メカレーターの身体が浮かび上がる。

 

「デリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

その状態で更に高速連続パンチ………『ゼロ百裂パンチ』を打ち込むゼロビヨンド。

 

「ハアッ!!」

 

そして最後に強烈なアッパーカットを食らわせ、空高く打ち上げる。

 

「ハッ!!」

 

するとゼロビヨンドは、テレポートしたのかと思う様な瞬間移動で、打ち上げられたラグストーン・メカレーターの真上に先回りし、両足蹴りで蹴り飛ばす!

 

グルロロオオオオオッ!?

 

打ち上げられたかと思えば蹴り落とされたラグストーン・メカレーターは、地面に叩き付けられる。

 

「クワトロスラッガー!」

 

着地を決めたゼロビヨンドは、続けてクワトロスラッガーを起き上がったラグストーン・メカレーターに見舞う。

 

4つのゼロスラッガーが、頑強なラグストーン・メカレーターの装甲を斬り裂く!

 

グルロロオオオオオッ!?

 

「コレでトドメだ」

 

装甲がズタズタになったラグストーン・メカレーターが悲鳴を挙げると、ゼロビヨンドはクワトロスラッガーを戻し、周囲に8つの紫色の光球を出現させる。

 

「バルキーコーラス!」

 

ゼロビヨンドがそう言った瞬間、その光球から一斉に光線が発射!

 

グルロロオオオオオッ!?

 

8乗の光線がラグストーン・メカレーターを貫き、爆散させた!!

 

「………シュワッ!」

 

それを確認したゼロビヨンドは、飛び去って行く。

 

「誠十郎さん!」

 

そこで、さくらが機体から降り、燃え盛る誠十郎の無限に近づく。

 

「せ、誠十郎さん………」

 

誠十郎機の無残な姿を見て、最悪の想像が過るさくら。

 

と、次の瞬間!!

 

「アチィーッ!!」

 

突如誠十郎機のハッチが開け放たれたかと思うと、背中が燃えている誠十郎が飛び出した!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

コレにはさくらだけでなく初穂達も仰天。

 

「アチチチチチチチチッ!! 水! 水! 水ーっ!!」

 

しかし誠十郎はそれを気にする余裕も無く、海へと走って行って飛び込んだ!!

 

誠十郎が飛び込んだ所から白い煙が上がる。

 

「ブハッ! 助かったぁ………」

 

直後に、戦闘服が焼けて、背中が丸見えの状態になった誠十郎が海中から浮上して来る。

 

「誠十郎さん!」

 

「生きてやがったのかよ!」

 

「良かった~」

 

驚きの声を漏らすさくらと初穂に、安堵の様子を見せるクラリス。

 

「何てしぶとい………」

 

「悪運は強いみたいね」

 

一方で、あざみとアナスタシアは誠十郎の並外れたしぶとさに呆れる様な様子を見せる。

 

「オイオイ、危機一髪の生還にそれは無いだろう?」

 

そんな2人の態度に愚痴りながら、海から上がって来る誠十郎。

 

「誠十郎くん」

 

とそこで、ランスロットに支えられながら、アーサーが姿を見せた。

 

「! アーサーさん! 大丈夫ですか!?」

 

「ああ、何とかね………」

 

弱弱しくも笑ってそう返して見せるアーサー。

 

「ランスロットさん………」

 

「ゴメンよ、さくら。色々と迷惑掛けたね」

 

さくらが声を掛けると、ランスロットは憑き物が落ちた様に柔らかな笑みを浮かべる。

 

「漸く分かったよ。君が何で強いのか………守る為に戦うって事が、どんな力を生むのか」

 

「ランスロットさん………」

 

そう言うランスロットに、さくらは嬉しそうに笑う。

 

「…………」

 

と、そんなランスロットの姿を、海辺の崖の上から見ていた藤宮。

 

「…………」

 

やがて無言のまま踵を返し、その場から去って行った。

 

「!………」

 

そこでランスロットが崖の上を見やったが、そこに既に藤宮の姿は無かった。

 

「? ランスロットさん? 如何しました?」

 

「ああ、いや………何でも無いよ」

 

さくらの問い掛けに、ランスロットは誤魔化す様にそう返す。

 

(………ありがとう、藤宮………多分、青いウルトラマン)

 

そして心の中で、藤宮がアグルであると確信し、礼を言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、立ち去った藤宮は………

 

「『我夢』、Σズイグルを確認した。やはり敵は『根源的破滅招来体』をも利用している様だ」

 

『そうか。アパテーが現れたって情報を聞いたから、若しかしてと思ったけど………』

 

モニター付きの小型通信機で、彼と同じ長髪の青年………『高山 我夢』と連絡を取っている藤宮。

 

「ガイアとアグルの光が俺達を導いたのはその為か………」

 

『僕達よりも先にゼロが来て居たのはビックリしたけどね』

 

「ウルトラマンゼロか………お前は1度在った事が有るんだったな」

 

『うん、前に話した『エタルガー』の時ね』

 

我夢は、嘗てゼロと共に戦った『超時空魔神 エタルガー』の事を思い出す。

 

「奴に合流するのか?」

 

『いや、上海に怪獣が現れた。ゼロとは別のウルトラマンが現れて倒したみたいだけど、今まで日本の東京にしか現れていなかった怪獣が別の場所にも現れた事が気になる』

 

「コレからも東京以外に怪獣が現れるかも知れないと言う事か………」

 

『ゼロともう1人のウルトラマンには東京に居て貰わないと。僕達はそれ以外の場所を引き受けよう』

 

「分かった。そちらと合流する」

 

藤宮はそう言って通信を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

我夢と藤宮の予測通り、帝都以外にも怪獣が出現する様になり、各国華撃団はその対応に追われた。

 

無論、英吉利でも怪獣の出現が確認され、戦力を欲した英吉利はランスロットの処分を保留。

 

ウルティメイト華撃団への加入も決め、他の加入国と協力して、怪獣対策に当たる事となる。

 

当然ランスロットには厳しい目が向けられたが、彼女はそれを受け止め、華撃団の隊員として人々を守る為に剣を振るった。

 

その姿は正に………

 

『騎士』と呼ぶに相応しかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

ジェネラルAの執務室………

 

「ぶるあぁ………失意を利用し、今一度怪獣の素体にしてやろうかと思ったが………」

 

空中に投影している映像で、朗らかに笑っているランスロットの事を見ていたジェネラルAがそう呟く。

 

「時空の狭間で拾った怪獣も思ったより役に立たんかったわぁ」

 

続いて、ゼロビヨンドに倒されたラグストーン・メカレーターの映像を再生する。

 

「まあ、良いわ………所詮は戯れよ」

 

しかし、そう言い放つと、特に気にした様子も見せず、映像を消した。

 

するとそこで………

 

その背後に音も無く人影が現れる………

 

「来たか………夜叉、いや真宮寺 さくらと言った方が良いかぁ?」

 

「どちらでも問題ありません………マスター」

 

ジェネラルAは椅子を回転させて人影………『にせ真宮寺 さくら』の方へと向き直った。

 

「ふふふ、あやつの駒をサロメ星人が拾って改造していたとはなぁ………良い仕事をしてくれたものよぉ」

 

そう言うジェネラルAの脳裏には、にせ真宮寺 さくらこと夜叉の生存を知り、サロメ星人の拠点へ強襲を掛けた時の事を思い出す………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想………

 

サロメ星人の拠点………

 

「ば、馬鹿な………我がサロメのロボット軍団が………」

 

「ぶるあぁ………」

 

キリエロイドの姿となっているアゴナの足元に倒れ伏しているサロメ星人が愕然としながら呟く。

 

2人の周りには焼け焦げたサロメ星人達の死体と、元が何であったのか分からなくなる位に破壊されたサロメ製のロボット達の残骸が散乱している。

 

「まさか夜叉を回収して改造して居たとはなぁ………驚いたわぁ」

 

そう言って、帝劇襲撃の際に損傷し、修理されていたにせ真宮寺 さくらが入ったカプセルを見やるキリエロイド・アゴナ。

 

「丁度良いわ。我の計画に有効に使ってやろう」

 

「計画だと?………貴様の目的な一体何だ?」

 

息も絶え絶えながら、キリエロイド・アゴナにそう問い質すサロメ星人。

 

「世界………いや、全ての宇宙を闇で覆う!」

 

「な………に………」

 

キリエロイド・アゴナのその言葉を聞きながら、サロメ星人は遂に力尽きる………

 

「ぶるあぁ………」

 

そのサロメ星人の死体を態々踏み付けながら、キリエロイド・アゴナはにせ真宮寺 さくらが入ったカプセルの前に立つ。

 

「夜叉よぉ………今から貴様の主はこの我だぁ」

 

カプセル内のにせ真宮寺 さくらを見据えながら、キリエロイド・アゴナはそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在………

 

「では貴様に命ずる」

 

「何なりと………」

 

「これを持って幻庵の元へ戻れい。そして暫くは奴の命令を聞いておれぇ。無論、以前と同じ様になぁ」

 

そう言って、ジェネラルAはにせ真宮寺 さくらに2つの計画書の様な物を差し出す。

 

「畏まりました。命令を実行致します」

 

にせ真宮寺 さくらが書類を受け取ると、空いていた手の方に、夜叉の仮面を取り出し顔に装着。

 

すると、一瞬にせ真宮寺 さくらの姿が闇に包まれ、夜叉の姿へと戻った。

 

「フフフ………フハハハハハハハッ!!」

 

その瞬間に、ジェネラルAは楽しそうに高笑いを挙げた。

 

夜叉が持つ2つの計画書の1番上の書類には、其々こう文字が書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『電脳巨艦プロメテウス』と『F計画』と………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

エリス「人々を守る、それこそが華撃団の使命

 

だが、今の我々は果たしてその使命を全う出来ているのだろうか?

 

しかし、上からの命令には逆らえない………

 

何が最強の華撃団だ………

 

結局我々も軍属………

 

命令に逆らう事は出来ない、規則は絶対だ。

 

次回『新サクラ大戦』

 

第7話『鉄の星と無限の光』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

私達は………コレで良いのか?」

 

???「一つ、腹ペコのまま学校へ行かぬこと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第6.5話・完

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『双頭怪獣 パンドン』

 

身長:40メートル

 

体重:1万5000トン

 

能力:口からの火炎『火炎地獄』

 

初登場作品:ウルトラセブン第48話『史上最大の侵略(前編)』、第49話『史上最大の侵略(後編)』

 

ウルトラセブンの最後の敵。

 

光線も真面に撃てない程に弱っていたセブンを負傷させるまでに追い詰めたが、アイスラッガーで左手と右足を切断されて倒される。

 

しかし、義足と義手を付けて改造パンドンとなって復活。

 

最早真面に戦えないセブンのアイスラッガーを受け止めて見せたが、それを投げたところでウルトラ念力で反射され、首を落とされる。

 

当初は名前の通り、頭が2つ有る怪獣になる予定であったが、当時では技術的に不可能だった為、現在のデザインになった。

 

後に登場する派生系では、頭が2つとなっている個体が居る。

 

セブン最後の敵だが、能力・見た目とも平凡な怪獣であり、セブンが弱体化していた事もあり、余り強豪のイメージは無い。

 

その特徴的な姿は『赤いトンカツ』と揶揄されるが、スーパーファミコンソフトの『ウルトラセブン』では鬼の様に強い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ラグストーン・メカレーター』

 

身長:56メートル

 

体重:7万5000トン

 

能力:両肩から放つ破砕光線

 

『催眠魔獣 ラグストーン』を『宇宙狩人 ノワール星人』が『メカレーター』と呼ばれるサイボーグ改造で強化した姿。

 

只でさえ強固だった身体が更に強化され、タックルは凄まじい威力を誇る。

 

ノワール星人の円盤と協力し、コスモスのエクリプスモードに初めて土を付けたが、最後の力を振り絞った『未来怪獣 アラドス』に時空の彼方に飛ばされる。

 

コスモスの登場怪獣の中で、カオスヘッダー関係を除くとかなりの強豪。

 

この作品に登場したのは、そのコスモスと交戦した個体そのもので、ジェネラルAことキリエロイド・アゴナが時空の狭間からダークリングを使って拾い上げた。




新話、投稿させて頂きました。

パンドンとラグストーン・メカレーターも見事撃破。
ランスロットも元の鞘に戻り、一先ずは安心です。

そしてサラリと来ていたガイアこと我夢。
今後は藤宮と協力し、海外で活躍してくれます。

しかし、此処へ来てジェネラルAが不穏な動きを………
サロメ星人から強奪したにせ真宮寺 さくらを使い、ミスターGこと幻庵にある計画書を流します。
それは何と!!
『電脳巨艦プロメテウス』と『F計画』!?
ヤバい事になるのは間違い無しです!

そして次回は続けて華撃団大戦。
いよいよ伯林華撃団編となります。
花組の残る1人は、事情が事情ですので、後になります。
そちらもお楽しみに………

さて、そんな伯林華撃団編で登場するのは、あのウルトラマン!
断っておきますけど、ジャック兄さんの方じゃないですよ。
彼の残した誓いを一躍有名にしてくれた弟です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第7話『鉄の星と無限の光』
チャプター1『F計画』


第7話『鉄の星と無限の光』

 

チャプター1『F計画』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

幻庵の執務室………

 

「イカンイカンイカンイカン、イカン!」

 

執務机に突っ伏し、髪を掻き毟りながらそう繰り返しているミスターG。

 

「とうとう残るは伯林華撃団だけになってしまったではないか!?」

 

倫敦華撃団が帝国華撃団に敗れ、英吉利はWLOFより離脱。

 

ウルティメイト華撃団に参加した事により、WLOF側に付いている華撃団は伯林華撃団だけとなった。

 

「もし伯林華撃団が敗れれば、WLOFは………」

 

世界華撃団大戦の決勝戦にて、伯林華撃団が敗れれば、WLOFはトドメを刺される。

 

仮に伯林華撃団が勝ったとしても、今や完全に信用を失ったWLOFが支持を受けるのは難しい。

 

そうなれば降魔王の復活どころか、我が身の明日も無い………

 

ミスターGは非常に焦っていた。

 

「何か………何か手は無いのか!?」

 

「………幻庵様」

 

「!?」

 

とそこで、背後から声が聞こえて、ミスターGが驚きながら立ち上がり、振り返ると………

 

「只今戻りました………」

 

そこには何時の間にか佇んでいた夜叉の姿が在った。

 

「! 夜叉っ! 貴様! 一体今まで何をしていたっ!?」

 

音信不通だった部下が突然現れ、ミスターGは怒声と共に詰め寄る。

 

「申し訳ございません………お詫びに此方の手土産をお持ちしました」

 

そう言って夜叉は、ジェネラルAから受け取った『電脳巨艦プロメテウス』と『F計画』の計画書を差し出す。

 

さり気無く、今まで如何していたと言う問いかけを誤魔化しながら。

 

「手土産だと? 何だコレは?………」

 

乱暴に計画書を受け取ると、パラパラと捲り始めるミスターG。

 

「!? コ、コレは!?」

 

しかし、読み進めている内に顔色が変わり始める。

 

「素晴らしい………この力が有れば、WLOFと私の復権も夢では無い!」

 

やがて歓喜の笑みを浮かべてそう叫ぶ。

 

「出化したぞ、夜叉! コレまでの事は不問にしてやる!!」

 

「ありがとうございます………」

 

すっかり好い気になったミスターGに向かって機械的に畏まった態度を執る夜叉。

 

「早速取り掛からねば………フフフ、見ていろ、アゴナ………貴様の天下はもう終わりだ!!」

 

野心に燃えた顔で下剋上を宣言するミスターG。

 

それが全て、キリエル人・アゴナことジェネラルAの掌の上だとは夢にも思っていない………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・地下司令室………

 

「遂に決勝戦か………」

 

「相手は華撃団大戦2連覇の伯林華撃団………」

 

いよいよ数日後に迫った世界華撃団の決勝戦………伯林華撃団との戦いに思いを馳せる誠十郎とさくら。

 

「へっ、伯林華撃団が何だってんだ!?」

 

「今の私達なら、絶対負けません!」

 

「もっと過酷な戦いを潜り抜けて来た………」

 

初穂・クラリス・あざみがそう声を挙げる。

 

ココまで全ての戦いに勝利し、死線を潜り抜けて来た花組にとって、例え相手が華撃団大戦連覇の強豪だろうと、恐れるモノはなかった。

 

「…………」

 

只1人、アナスタシアが何かを考えているかの様に上の空で黙り込んでいる。

 

「? アナスタシア? 如何かしたのか?」

 

「!? えっ!? な、何かしら?」

 

気付いた誠十郎が声を掛けると、アナスタシアは我に返った様に問い返す。

 

「如何したんですか、アナスタシアさん?」

 

「最近ボーッとしてる事が多い………」

 

「らしくねえぜ、オイ」

 

そんなアナスタシアの様子に、さくら・あざみ・初穂が心配の声を挙げる。

 

「ゴメンなさい。ここのところ、色々あったから、ちょっと疲れてて………」

 

「確かに、色々ありましたからねえ………」

 

アナスタシアがそう言うと、クラリスがコレまでの怪獣・宇宙人との戦闘や他国華撃団との戦いを思い出してそう呟く。

 

「無理はしないでくれ。アナスタシアは花組の大事な仲間なんだからな」

 

労わる様に誠十郎が言う。

 

「………仲間、ね」

 

それを受けたアナスタシアは思わずそう呟いたが、小声だった為、誰にも聞こえなかった………

 

「兎も角、その決勝戦まで、もう間も無くですわ。いよいよこの下らない戦いに終止符を打つ時が来ましたわ」

 

「君達の実力は良く分かっている。けど、仮にも相手は2度の華撃団大戦を制している強豪だ。決して油断はせず、心して臨んで欲しい」

 

とそこで、すみれとサコミズが話を纏めに掛かる。

 

「「「「「「了解っ!」」」」」」

 

それを聞いた花組メンバーは全員立ち上がり、2人に向かって一斉に敬礼するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・売店………

 

「いよいよ決勝戦やな~。稼ぎ時やでぇ。こらぁ商売にも気合が入るちゅうもんや」

 

「確か、伯林華撃団って人達が相手でしたっけ? どんな人達なんですか?」

 

帝国華撃団の快進撃を受け、繁盛している売店の様子に満足げにこまちが言い、その手伝いをしていたリクがそう尋ねる。

 

「ああ、前回と前々回の華撃団大戦を連破しとる強豪や。その中心人物がこの隊長のエリスさんとその相棒であるマルガレーテさんや」

 

そこでこまちは、リクにエリスとマルガレーテのブロマイドを見せる。

 

「この人達が………」

 

「マルガレーテって人、まだ子供みたいだけど………」

 

とそこで、リクの影の中に居たペガが、コッソリと顔だけ出して、マルガレーテのブロマイドを見ながらそう言う。

 

「見た目で判断したらアカンで。マルガレーテさんは伯林華撃団の作戦参謀も務めとるんや」

 

「作戦参謀!? 凄~い!」

 

こまちの言葉に感心した様子を見せるペガ。

 

「すみませ~ん! ポスター下さい!」

 

「! はわわっ!?」

 

とそこで、客のやって来たので、ペガは慌ててリクの影の中へ引っ込む。

 

「ハイ~、毎度~!」

 

「コッチにはブロマイドを下さ~い!」

 

「私にも~!」

 

こまちが対応すると、更に続々と客がやって来る。

 

「ハイ~、毎度~! ホラ、リクくん! ボヤボヤしとらんで、在庫持って来てや! じゃんじゃん稼いだるで!」

 

「あ、ハイッ!」

 

すぐさま在庫を取りに向かうリクだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

そのエリスとマルガレーテは、帝都の街中を歩いていた。

 

WLOFのミスターGから呼び出しを受け、向かっているところだ。

 

「オイ、見ろよ、伯林華撃団だぜ」

 

「おお、アレが………」

 

世界華撃団大戦2連覇の猛者だけあり、人々からは注目を浴びている。

 

「なあ、何で伯林華撃団はウルティメイト華撃団に参加しねえんだ?」

 

「もうWLOFに付いてる理由なんざねえだろうに」

 

「ホント、何考えてるんだか?………」

 

しかし、少し前ならば称賛や羨望のみを浴びていただろうが、今伯林華撃団には厳しい視線も向けられている。

 

「! アイツ等!………」

 

「止せ! マルガレーテ!!」

 

そんな帝都市民達に何か言おうとしたマルガレーテを、エリスが止める。

 

「エリス! でも………」

 

「彼等の言っている事は事実だ」

 

「!!………」

 

エリスにそう言われ、マルガレーテは悔しそうな表情を浮かべて俯く。

 

「…………」

 

そんなマルガレーテの姿を見て、エリスも居たたまれない様子を見せる。

 

彼女とて、今のWLOFに義が無い事は分かり切っていた。

 

しかし、伯林華撃団は元は紐育華撃団に続く賢人機関所属の第4の華撃団として設立が進められていた。

 

だが、漸く形になって来たところで降魔大戦が勃発。

 

嘗ての帝都・巴里・紐育華撃団が消滅し、まだ設立間もなく、降魔大戦に参加出来なかった伯林華撃団だけが残された。

 

その後、賢人機関が解散され、WLOFが設立されると、伯林華撃団は真っ先に参加となった。

 

降魔大戦後、降魔は世界中に出現する様になり、一刻も早く伯林華撃団を戦闘が出来る様に仕上げなければならないと言う事情が有ったからだ。

 

故に、独逸とWLOFの関係は深く、政府の中には単純な利益だけでなく、恩義を感じている政治家や閣僚も居り、現状への意見が真っ二つに割れているのが現状だ。

 

独逸政府の結論が出なければ、伯林華撃団は動く事が出来ない………

 

何より、エリス自身も厳格な軍人家系の生まれであり、勤勉・生真面目・ルールに従うと言う生粋な独逸人気質の持ち主であった。

 

他国の華撃団と比べ、軍属としての気風が強い伯林華撃団故の葛藤だ。

 

「………行くぞ」

 

暫しの苦悩の後、改めてWLOFの拠点へと向かい始めるエリス。

 

「…………」

 

マルガレーテは不満顔のままその後に続く。

 

と………

 

「あうっ!?」

 

「キャッ!?………! 何処に目を付けてるの!!」

 

そのマルガレーテに誰かがぶつかり、先程までの憤りから、思わず怒鳴りつけてしまうマルガレーテ。

 

「あ………」

 

しかし、マルガレーテにぶつかったのは、手に赤い風船を持った、彼女よりも遥かに幼い少女だった。

 

「!………」

 

「! マルガレーテッ!」

 

ハッとするマルガレーテと、そんな彼女の姿に気付いて諫めようとしたエリスだったが、その瞬間………

 

怒鳴られた事に驚いた少女が、持っていた風船を手放してしまう。

 

「あ………風船………」

 

「! ああっ!?」

 

エリスが驚いていた間に、風船は空高く舞い上がって行ってしまう………

 

「………う………ううう………」

 

途端に少女の目に涙が浮かび始める。

 

「!? イカンッ!!」

 

「うわああああああ~~~~~んっ!!」

 

エリスが慌てた瞬間、少女は堰を切った様に泣き出した!!

 

「ああ、済まない! 申し訳ない事をした、許してくれ!」

 

「うわああああああ~~~~~んっ!!」

 

慌てて少女に向かって謝罪するエリスだが、生真面目な彼女の固い謝罪は少女に届かない。

 

「本当に済まない! この通りだ!!」

 

(ど、如何しよう?………)

 

必死に頭を下げるエリスと、この様な状況など体験した事が無い為、如何して良いか分からず戸惑うしかないマルガレーテ。

 

「オイ、伯林華撃団が子供泣かしてるぞ?」

 

「とうとうそこまで堕ちたか………」

 

一方、伯林華撃団の前で泣きじゃくる子供の様子を見た帝都市民の間には、誤解による更なる不審が広がって行く。

 

(こ、このままでは!?………)

 

「うわああああああ~~~~~んっ!!」

 

焦るエリスだが、打開策は見出せず、只アタフタとするしかない。

 

「うわああああああ~~~~~~………?」

 

すると突然、少女が泣き止んで、後ろを振り返った。

 

「「??」」

 

その様子に釣られる様に、エリスとマルガレーテも少女と同じ方向に視線を向けると、そこには………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

優しく微笑みながら佇む、何かの制服を着た青年の姿が在った。

 

その右手には、先程飛んで行ってしまった筈の少女の赤い風船が握られている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、私の風船!」

 

「…………」

 

少女がそう言うと、青年は少女の元に近づき、目線を合わせる様にしゃがみ込むと、風船を差し出す。

 

「ハイ」

 

「ありがとう!」

 

青年が差し出した風船を受け取ると、花が咲いた様な笑顔を浮かべてお礼を言い、少女は立ち去って行った。

 

「………ありがとう」

 

それを見送りながら立ち上がった青年は、噛み締める様に呟く。

 

「済まない。君のお陰で助かった」

 

とそこで、エリスも青年に向かってそうお礼を言う。

 

「…………」

 

だが、マルガレーテは疑惑の目を向ける。

 

(コイツ………如何やって風船を取ったの?)

 

青年が如何やって空の彼方へ飛んで行ってしまった筈の風船を取ったのかが気に掛かるマルガレーテ。

 

(………CREW………GUYS?)

 

マルガレーテは、青年が来ている制服の左胸部分に付けられた翼を象ったワッペンにそんな文字が有るのを見つける。

 

「…………」

 

するとそこで、青年がマルガレーテの方を見やった。

 

(!? 気付かれた!?)

 

疑いの目を向けている事に気付かれたのかと身構えるマルガレーテだったが………

 

「…………」

 

そんなマルガレーテに向かって、青年はニッコリと笑って見せた。

 

(!? な、何なの!? コイツ!?)

 

青年の思わぬ態度に、マルガレーテは困惑を隠し切れない。

 

「と、申し遅れた。私は伯林華撃団のエリス。コッチはマルガレーテだ。良ければ、君の名を教えてくれないか?」

 

とそこで、エリスが青年に向かって自己紹介をし、青年の名を尋ねる。

 

「僕は………」

 

それに答え、青年が名乗る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕は『ミライ』………『ヒビノ・ミライ』です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

いよいよ華撃団大戦の決勝戦。
最強の伯林華撃団との戦いです。

追い詰められたミスターGは、帰還した夜叉が持って来たF計画と電脳巨艦プロメテウスに手を付けます。
それがジェネラルAの掌の上とも知らず………

一方、唯一のWLOF所属の華撃団となり、帝都市民から厳しい視線を向けられる伯林華撃団。
しかし、命令を尊寿する軍人気質なエリスは自ら行動を起こす事が出来ずにいた。
そこでマルガレーテが少女とトラブルを起こしてしまう。
困り果てていた2人の前に現れた不思議な青年………
その名は………『ヒビノ・ミライ』

お分かりだと思いますが、原作1話での初登場シーンのオマージュです。
リアルタイムで見ていたので、あの登場の仕方がとても印象的でした。

これからも、よろしくお願いします。


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チャプター2『鉄憲章とウルトラ5つの誓い』

先日発売された『スーパーロボット大戦30』のDLC第2弾に於いて………

何と!

アニメ版『ULTRAMAN』の参戦が決まりました。

まあ、過去にテッカマンブレードやオーガンが参戦していたので、パワードスーツ枠は有りですが………

これによって派生作品ではありますが、サクラ大戦とウルトラマンが公式で共演する事になりましたね。

まだ絡むかどうかも分かりませんけど………

ともあれ、スーパーロボット大戦30、私も楽しくプレイしています。

サクラ大戦の参戦が楽しみです。


チャプター2『鉄憲章とウルトラ5つの誓い』

 

人造ウルトラマン テラノイド 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伯林華撃団がWLOFに呼び出された翌日………

 

早朝のミカサ記念公園にて………

 

「…………」

 

人気の無い公園内にて、エリスが海を臨む柵に手を掛けて寄り掛かり、苦悩の表情をしていた。

 

(如何すれば良い?………)

 

思い悩むエリスの脳裏には、先日WLOFの呼び出しを受け、ミスターGに会っていた時の事が思い起こされる………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリスの回想………

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

ミスターGの執務室………

 

「コ、コレは!?………」

 

「凄い………」

 

電脳戦艦プロメテウスの設計図と、F計画の計画書に目を通し、驚愕の表情を浮かべているエリスと感嘆の様子を見せるマルガレーテ。

 

「如何かね? 我がWLOFの新戦力は?」

 

そんな2人に向かってドヤ顔を見せるミスターG。

 

「………何故、この様な物を?」

 

エリスはすぐに落ち着きを取り戻すと、ミスターGに問い質す。

 

「ウルティメイト華撃団などと言うふざけた連中に騙されている人々の目を覚まさせる為だよ」

 

「騙されている?」

 

「そうだ。ウルティメイト華撃団は今や自分達が平和を守っていると言う様な顔をしているが………結局にところ、あのウルトラマンなどと言う正体不明の異星人の手柄を横取りにしているに過ぎん」

 

「それは………」

 

何か言いかけて口を閉じるエリス。

 

「ウルトラマンは不確定な要素に過ぎん! 大体正体も知れない異星人を信用すること自体が間違っている!」

 

「…………」

 

エリスは只黙り込む。

 

彼女自身は、1度ゼロに助けられた事もあり、ウルトラマン達を信頼している。

 

しかし、それは飽く迄個人的な見解に過ぎず、論理的な根拠は無い。

 

生真面目な彼女からすれば、そんな事を一応は上司に当たるミスターGに言う気にはなれなかった。

 

「だからこそ示すのだよ。我々WLOFこそが平和の守護者だという事を」

 

そう言って笑うミスターGだが、その笑みは邪悪そのもの。

 

心にも無い事を良くもスラスラと言えたものである。

 

「ついては伯林華撃団………特にエリスくんには重要な役目を任せたい」

 

「私に………ですか?」

 

「フフフ………」

 

首を傾げるエリスに、ミスターGは得意げに話し始める………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在………

 

ミカサ記念公園………

 

「独逸本国には既に根回し済み………上層部から正式に命令が下されている………だが………」

 

柵を握り締める手に力が入るエリス。

 

正直、ミスターGが示した計画からは非常に危険な予感がしている。

 

だが、軍人である以上、上からの命令は絶対………

 

生真面目な彼女にそれを断る術は無かった。

 

「クッ! イカン! 隊長である私がこんな様では!!」

 

オマケに、隊長である自分が悩みや葛藤している姿を見せてしまえば部下や仲間にも動揺が広がると考え、誰にも相談出来ずに居た。

 

どんなに大きな問題であろうと、彼女は自分自身で悩むしかない………

 

生真面目過ぎるエリスの弱点である。

 

「こんな時こそ………『鉄憲章』を唱和だ!」

 

そこで彼女は、伯林華撃団の掟である『鉄(くろがね)憲章』を唱え、心を静めようとする。

 

「一つ! 真の戦士たる精神………それは! 覚悟!!」

 

「一つ! 至高の力を持つ戦友………それは! アイゼンイェーガー!!」

 

「一つ! 真の正義………それは! 伯林華撃団!!」

 

「一つ! 華撃団の目指すもの………それは! 平和な世界!!」

 

休めの姿勢で海に向かって、只1人次々に鉄憲章を唱和するエリス。

 

「………フウ~」

 

唱和を終えると肩を落として大きく息を吐く。

 

するとそこで、パチパチパチと言う拍手の音が響いて来た。

 

「!?」

 

エリスが驚きながら振り返ると、そこには拍手の主であるミライの姿が在った。

 

「君は………ヒビノ・ミライ」

 

「お早う。朝早くから元気だね」

 

「ああ、いや………」

 

聞かれていたとも思わず、エリスは若干照れながら頬を掻く。

 

そんなエリスの隣へ近寄って来るミライ。

 

「ヒビノ」

 

「ミライで良いよ。エリスちゃん、今のは何だい?」

 

「エ、エリスちゃん!?」

 

鉄憲章について尋ねるミライだが、当のエリスは『ちゃん付け』で呼ばれた事に戸惑う。

 

「? 如何したの? エリスちゃん」

 

「あ、ああ、いや………」

 

しかし、さも当然な様子を見せているミライを見て、訂正するのは無理だと思ったのか、諦めた様子を見せるエリス。

 

「今のは鉄憲章。我が伯林華撃団の戦う覚悟を心に問う、誓約だ」

 

「へえ、そうなんだ。大切な誓いなんだね」

 

「勿論だ。コレがあるから、私達は戦える」

 

手放しで褒めて来るミライに、エリスは若干気を良くする。

 

「『ウルトラ5つの誓い』みたいなものだね」

 

「? 『ウルトラ5つの誓い』? 何だそれは?」

 

「僕の兄さんが嫌なもの・許せないものと戦える勇気のある人になる為に残した誓いだよ」

 

「ほう、そんな誓いが有るのか。もし良かったら、教えてくれないか」

 

ミライの言う『ウルトラ5つの誓い』に興味が湧いたエリス。

 

「うん、じゃあ、一緒に唱えようか」

 

「ああ、頼む」

 

そう言い合うと、エリスはミライと共に再び海に向かって休めの姿勢を取る。

 

「ウルトラ5つの誓い! 一つ、腹ペコのまま学校へ行かぬこと!!」

 

「!? えっ!?」

 

ウルトラ5つの誓いを唱和し始めるミライだが、エリスはその内容に戸惑う。

 

「…………」

 

「う………ひ、一つ、腹ペコのまま学校へ行かぬこと………」

 

しかし、ミライが期待する様な笑顔を向けて来たので、止むを得ず唱和する。

 

「一つ、天気のいい日に布団を干すこと!!」

 

「ひ、一つ、天気のいい日に布団を干すこと(な、何だコレは?)………」

 

「一つ、道を歩く時には車に気をつけること!!」

 

「一つ、道を歩く時には車に気をつけること(本当にコレが誓いなのか?)………」

 

「一つ、他人の力を頼りにしないこと!!」

 

「! 一つ、他人の力を頼りにしないこと!(おお、やっと真面目なものが………)」

 

「一つ、土の上を裸足で走り回って遊ぶこと!!」

 

「………一つ、土の上を裸足で走り回って遊ぶこと(…………)」

 

ノリノリで唱えるミライに対し、内容に今一納得が行かない様子のエリス。

 

「如何かな?」

 

「あ、ああ………良い誓いだな」

 

「でしょ?」

 

「…………」

 

しかし、満足げに笑うミライを見て、何も言えなくなるのだった。

 

「元気は出たかな?」

 

「えっ?」

 

と、不意にそう言って来たミライに、エリスは驚きを露わにする。

 

「何だか元気が無い様に見えたからね」

 

「!………いや、そんな事は無い」

 

続けてそう言われると、エリスは表情を引き締め、ポーカーフェイスを作る。

 

「もし、僕で良かったら相談に乗るけど………」

 

「気を使ってくれて感謝する。だが、本当に大丈夫だ。何より、伯林華撃団の隊長である私が一般人の君に相談に乗ってもらう等と情けない事は出来はしないよ」

 

「…………」

 

エリスがそう言うと、ミライの顔から笑みが消える。

 

「ましてや、そんな姿を仲間達には見せられない。私は隊長………責任有る立場だ。人に頼ったり、助けを求めるワケには行かない………さっきの言葉でも言っていただろう」

 

エリスはウルトラ5つの誓いの『他人の力を頼りにしないこと』の項目を引き合いに出してそう言う。

 

「………人に甘えないって事は、他人に心配をかけても良いって事じゃないよ」

 

「えっ?」

 

「きっと今のエリスちゃんの仲間の人達はエリスちゃんの事を心配してるよ。どんなに頑張っても1人じゃ出来ない事は沢山有る。そんな時、仲間を頼る事は決して恥ずかしい事じゃないよ」

 

そこでミライは、通信端末『メモリーディスプレイ』を手に取り、それを裏返し、そこに描かれていた炎のエンブレム………『ファイヤーシンボル』を見やる。

 

「ミライ………」

 

ミライのその言葉に、エリスの表情が揺らぐ。

 

「………私は」

 

そして何かを言おうとしたが………

 

そこで、彼女の持っていた通信端末が音を立てた。

 

「! ハイ、こちらエリス………! ハッ! 了解しました!」

 

畏まった様な様子を見せた後、通信を切るエリス。

 

「済まない、呼び出しが掛かってしまった。失礼させてもらう………改めて礼を言う。ありがとう」

 

そう言うと、エリスはミライに背を向け、走り去ろうとする。

 

「エリスちゃん! もし君が本当に助けを求めている時には、僕が必ず助けに行くよ!」

 

「…………」

 

そんなエリスの背に、ミライはそう叫んだが、エリスは振り返らずに走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後………

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

帝国華撃団の控え場所………

 

いよいよ伯林華撃団との決勝戦の日となり、控え場所へと集まっている帝国華撃団のメンバーとリク(+ペガ)。

 

しかし、今日は少々様子が違っていた………

 

「WLOF………しかも元プレジデントGから重大発表だなんて」

 

「決勝戦の前に、如何言う積りなんだ?」

 

誠十郎が呟くと、初穂もそう言って来る。

 

そう………

 

実は会場を訪れた段階になって、WLOFから緊急の発表が有る事を知らされたのだ。

 

「一体何を発表する積り?」

 

「何だか………嫌な予感がします」

 

読めないミスターGの態度にあざみが首を傾げ、クラリスは何か不穏な予感を感じる。

 

「アナスタシアさんは何だと思います?」

 

「えっ? あ、ああ、そうね…………想像出来ないわね」

 

さくらの質問に取り繕う様な、やはり何処か上の空なアナスタシア。

 

「始まりますわ………」

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

と、すみれがそう言った瞬間、控え場所に備え付けてあった大型モニターのスイッチが入り、花組一同の視線が集まる。

 

モニターには、試合会場が映し出され、その中心に佇むミスターGの姿が在った。

 

『私はWLOFのミスターG。本日は世界の皆さんに重大なお知らせがあります』

 

ミスターGの姿がアップになると、演説の様に話を切り出す。

 

その不敵な態度は、プレジデントGの頃を思わせる。

 

「ミスターG………」

 

『あの野郎、今更何んだってんだ?』

 

誠十郎が苦々しい表情を浮かべると、ゼロも今更になってまた出しゃばって来たミスターGを不審がる。

 

「…………」

 

そんな中で、何やら意味有り気な視線をミスターGに向けているアナスタシア。

 

『先ず、コレまでの数々の不祥事に関し、深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ありませんでした』

 

とそこで、ミスターGが深々と頭を下げた。

 

「!? えっ!?」

 

「オイオイ、マジかよ!?………」

 

「信じられません………」

 

その姿に、さくら・初穂・クラリスは有り得ないモノを見る様な目となる。

 

「却って不気味………」

 

「呑まれては駄目よ。ああ言った手は話術の常套手段ですわ」

 

あざみが疑いに目を向けると、すみれも皆に向かってそう言い放つ。

 

『今や我がWLOFの信用が地に落ちたのは当然の事。今世界は、降魔に加え、怪獣や宇宙人と言った新たなる脅威に晒されているのですから』

 

「何や、回りくどいな………」

 

「一体何が言いたいのでしょう?」

 

勿体ぶる様な言い方をするミスターGに、こまちとカオルが若干イラついている様子を見せる。

 

『今、その脅威に対し、ウルティメイト華撃団が対応していますが………果たして、本当にウルティメイト華撃団は信用に値するのでしょうか?』

 

「! 何だとっ!?」

 

「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

とそこで、ミスターGがそんな事を言い放ち、花組一同の表情が一気に険しくなる。

 

『何故ならばウルティメイト華撃団は………『ウルトラマン』と言う宇宙人の手柄を横取りしているに過ぎないからです!!』

 

「言ってくれますわね………」

 

すみれも不快感を露わにしている。

 

『そもそも『ウルトラマン』は正体不明の宇宙人! そんな輩が信用出来る筈がありません!!』

 

「ふざけるな! コレまでずっと怪獣達の相手を押し付けて置いて!!」

 

(何だ? 嫌な予感がするぜ………)

 

(何だろう? 胸がザワザワする?………)

 

憤りを露わにする誠十郎だったが、一方のゼロとリクは不穏な予感を感じる。

 

『ならば如何すれば良いのか? 答えは簡単です………』

 

と、次の瞬間!

 

ミスターGからトンでもない言葉が飛び出した!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『我々の手で制御されているウルトラマンが居れば良いです!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

『!? 何だとっ!?』

 

ミスターGのその言葉に、花組一同もゼロも驚きを露わにする。

 

『ご覧下さいっ!!』

 

そこで、ミスターGがそう声を挙げて、両腕を左右に広げる様なポーズを執ったかと思うと………

 

試合会場の床が開き、そこから巨大な人型の物が競り上がって来た!!

 

「!? アレはっ!?」

 

「マジかよっ!?」

 

「有り得ない………」

 

「嘘………」

 

「…………」

 

現れたモノを見て言葉を失うさくら達。

 

競り上がって来た巨大なモノは………

 

それは紛れも無く………

 

『ウルトラマン』だった。

 

『アレは………ダイナ!?』

 

ゼロは、そのウルトラマンの姿が、盟友である『ウルトラマンダイナ』に酷似している事に声を挙げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ご紹介しましょう。コレぞ我々のウルトラマン………『人造ウルトラマン テラノイド』です!!』

 

そのウルトラマン………『人造ウルトラマン テラノイド』を背に、ミスターGは宝に宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

エリスとミライの2回目の会合となります。
このシーンがやりたくて、伯林華撃団とミライを絡ませました。

鉄憲章を始めて聞いた時、私はすぐにウルトラ5つの誓いが頭を過りまして、そこからエリスとミライを絡ませる案が浮かびました。
一見すると何て事無い言葉の様に思えるウルトラ5つの誓い。
しかし、メビウスで取り上げられて以来、深い考察がなされる様になりましたからね。
果たして、コレを知ったエリスは、どう影響されるのか?
彼女は非常に生真面目な性格で、抱え込む性分の様ですからね。
その辺を掘り下げてみました。

そして遂に登場してしまいました………
人造ウルトラマン………
もうこの後何が起こるのか………
シリーズファンの皆さんは察しがついている事でしょう………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『悪夢の人造ウルトラマン』

チャプター3『悪夢の人造ウルトラマン』

 

人造ウルトラマン テラノイド

 

超合成魔獣人 ゼルガノイド・イビル

 

降魔

 

宇宙球体 スフィア

 

スフィア降魔 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

帝国華撃団の控え場所………

 

「人造ウルトラマン………」

 

「テラノイドだと………」

 

唖然としていた帝国華撃団の中で、さくらと初穂が絞り出す様にそう呟く。

 

「何だか、悪者みたい………」

 

「何て事を………ウルトラマンさん達に対する冒涜です!」

 

テラノイドのデザインを酷評するあざみと、怒りを露わにするクラリス。

 

『ふざけたものを作りやがって………』

 

「まさかWLOFがウルトラマンを作るだなんて………」

 

怒りを露わしているゼロに、唖然としている誠十郎。

 

「悪趣味ですわ………」

 

すみれも不快感を露わにしている。

 

「…………」

 

「リ、リク………」

 

そして自らも人造ウルトラマンに近い存在と言えるリクは、睨む様な眼差しでミスターGの事を見据えており、ペガが少し怯えた様子を見せる。

 

『驚くのはまだお早いですよ、更に!!』

 

と、ミスターGがそう言葉を続けた瞬間、試合会場を巨大な影が覆った。

 

「!? 今度何や!?」

 

「! アレはっ!?」

 

こまちが声を挙げると、カオルが上空から降りて来た物に気付く。

 

それは、WLOF級とは異なる空中戦艦だった。

 

『これぞWLOFの新型空中戦艦! 『電脳巨艦プロメテウス』です!!』

 

「プロメテウス………」

 

「あんな物まで………」

 

得意げに語るミスターGの姿を見ながら、アナスタシアとさくらが呟く。

 

プロメテウスの大きさは、それまでのWLOF級空中戦艦と比べて半分ほどだが、実質装甲を施した飛行船でしかなかった空中戦艦に対し、プロメテウスは元はTPCが開発した宇宙戦艦。

 

その性能の差は歴然としている。

 

『そして、ご紹介しましょう! 我々のウルトラマンとなる人物! それは!!………』

 

ミスターGのその言葉と共に、試合会場に新たな人物が現れる。

 

「!? アレは!?」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

誠十郎が声を挙げると、花組一同も驚きを露わにする。

 

現れたのは………エリスだった。

 

『御存知! 我がWLOFが誇る最強の華撃団! 伯林華撃団の隊長、エリスです!!』

 

『…………』

 

得意げに語るミスターGの横で、何処か気まずそうに佇んでいるエリス。

 

『最強に華撃団の隊長が最強のウルトラマンを操り、最強の戦艦を従える………正に無敵!! コレこそが我々WLOFの真の力なのです!!』

 

力が入っているのか、ミスターGは矢鱈と『最強』と言う点を強調する。

 

「まさか………彼女があのウルトラマンに!?」

 

と、誠十郎がそう呟いた瞬間………

 

「その通りよ………」

 

そう言う台詞と共に、マルガレーテが伯林華撃団の制服を来た少女を連れて現れた。

 

「! マルガレーテさん!」

 

「と、そっちは誰だ?」

 

クラリスが声を挙げると、初穂が初めて見るもう1人の隊員に付いて問い質す。

 

「お初にお目に掛かる、帝国華撃団の諸君。私は伯林華撃団の『ラウラ』だ」

 

そこで見慣れぬ隊員………マルガレーテよりも若干背が高いが同じく小柄で、ロングの銀髪で右目に眼帯をした『ラウラ』はそう自己紹介する。

 

「貴方が伯林華撃団の3人目?」

 

「その通りだ。そして帝国華撃団の諸君、コレだけは言っておくぞ」

 

あざみの問いにそう返すと、ラウラは獰猛な笑みを浮かべる。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その笑みを見た花組一同は、思わず身構えるが………

 

「我が独逸の華撃団はァァァァァァァアアア世界一ィィィイイイイッ!!」

 

「「「「「「「「「「………はあっ?」」」」」」」」」」

 

ラウラの突然の母国愛の叫びに、呆気を取られた表情となる。

 

「ラウラ………アンタ、また………」

 

「我が伯林華撃団こそが世界最強! つまりは世界一という事!! その我等に勝とうと思うなど、愚かの極みイイイイイィィィィィィッ!!」

 

マルガレーテが咎めようとした様子を見せたが、それよりも早くまたも吠え始めるラウラ。

 

「は、はあ………」

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

そのラウラの姿に、誠十郎は思わず間抜けた声を漏らし、花組一同は呆れた表情となる。

 

「フハハハハハハハッ! 我が独逸の偉大さの前に声も出ないかぁっ!!」

 

「…………」

 

その様子を勘違いしたラウラが得意げに笑う横で、マルガレーテは完全に頭を抱えていた。

 

「強さだけでは無いぞぉ! 我が独逸はァァァァァァアアア! 科学力も世界一ィィィイイイイッ!! ウルトラマンでさえ造り出したのだぁ!!」

 

「! じゃあ、あのウルトラマンを造ったのは!?」

 

「如何にも! 我が独逸よぉっ!! あのテラノイドの身体は高純度の霊子水晶で出来ている!! 言わば霊子ウルトラマンよぉっ!!」

 

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

しかし、続けて出た言葉に、花組一同は一斉に顔色を変える。

 

「………もうウルトラマンゼロや他のウルトラマンに頼る必要は無い。コレからは伯林華撃団が降魔に加えて、怪獣や宇宙人を倒すわ」

 

とそこで、漸く気を取り直したマルガレーテが、花組一同に向かってそう言い放つ。

 

「こんな間違ってます!!」

 

「そうだぜ!!」

 

それに対し、さくらと初穂がいの一番に反論する。

 

「それにゼロさんやウルトラマンさん達が地球を守ってくれるのは厚意からなんですよ!」

 

「それを踏み躙るなんて………」

 

クラリスとあざみも、怒りを露わにマルガレーテ達を睨み付ける。

 

「ふん………ウルトラマンゼロの力を借りなければ真面に戦えない三流華撃団の癖に………」

 

「! んだとぉっ!!」

 

しかし、マルガレーテはそう吐き捨て、初穂が憤りを露わにする。

 

「ですが、マルガレーテさん………もし、あのテラノイドと言う巨人がウルトラマンと同等の力を発揮出来たとしても、それは人間が扱うには余りに大き過ぎると思いますが………」

 

そう苦言を呈するすみれだったが………

 

「問題無い。アレを操るのはエリス………伯林華撃団、完璧にして最強の隊長………間違いが起きる可能性なんて、『0%』よ」

 

「その通りィィィイイイイッ!! 我が隊長は世界一ィィィイイイイッ!! ウルトラマンを操る事など、造作も無い事よぉ!!」

 

マルガレーテとラウラは、エリスへの信頼を示す。

 

しかしそれは………

 

彼女の事を完璧な人間だと思っている故の妄信とも取れた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタジアム内………

 

「…………」

 

得意げに無駄な演説を続けているミスターGの横で、エリスは表情にこそ出していないが、不安を抱いていた。

 

果たしてコレで良いのだろうかと………

 

しかし、命令には逆らえない………

 

「………私は本当に成れるのか?………ウルトラマンに?」

 

やがて零す様にそう呟き、背後に佇むテラノイドの事を振り返る。

 

「そして今こそ!!………」

 

と、ミスターGの演説が最高潮に達しようとしたその時!!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

「!!」

 

多数の咆哮が振って来て、エリスがバッと空を見上げると、そこには………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

空を覆い尽くさんばかりの数の降魔が、スタジアムを目指して飛んで来ていた!!

 

「! 降魔っ!!」

 

「おやおや、運の無い方達ですね………エリス隊長! テラノイドを出撃させよ!!」

 

降魔の大群を見たミスターGが不敵に笑いながらエリスにそう命じる。

 

「! 了解!!」

 

敬礼をした後に、エリスはテラノイドの方へと向き直ったかと思うと、右手を掲げる。

 

すると、テラノイドのカラータイマーから光が伸びて来て、エリスを包み込んだかと思うと、彼女の身体が浮き上がり、そのままカラータイマーの中へと飛び込んだ。

 

『テラノイド………起動!』

 

テラノイドからエリスの声が響いたかと思うと、テラノイドの目に光が灯り、拳を握った右腕を真っ直ぐに伸ばし、左腕を肘を曲げて天に掲げるウルトラマンお馴染みのポーズを執った。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

咆哮を挙げながら、降魔達が次々にテラノイド(エリス)に襲い掛かる。

 

『ハアッ!!』

 

対するテラノイド(エリス)は、両腕を突き出し、くさび形の手裏剣状の光弾『ビームスライサー』を連射。

 

襲い掛かって来る降魔達を華麗に躱しながら、ビームスライサーで次々に撃墜する。

 

それは、彼女がアイゼンイェーガーに搭乗している時にしている戦い方だった。

 

更に、上空の電脳巨艦プロメテウスも、船体の各所に設けられた砲門で対空砲火を展開し、次々と降魔を撃ち落として行く。

 

テラノイドとプロメテウス………

 

両者の力は圧倒的であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国華撃団の控え場所………

 

「凄まじいですね………」

 

「正に圧倒的ね………」

 

モニターに映し出されているテラノイドとプロメテウスの戦闘シーンに、カオルとアナスタシアが漏らす様にそう呟く。

 

「当然だァァァッ! テラノイドはァァアアアアアアッ!! 我がゲルマン民族の最高知能の結晶であり誇りであるゥゥゥ! つまり全てのウルトラマンを超えたのだァアアアアアアアアアアアア!!」

 

そんな2人の様子を見て、ラウラが相変わらずハイテンションな様子で自慢する。

 

それに呼応するかの様に、モニターに映し出されているテラノイド(エリス)は、続いて腕を十字に組み、『ソルジェント光線』を放って、降魔達を薙ぎ払う。

 

「流石ね、エリス………」

 

そんなテラノイド(エリス)の姿に、マルガレーテも勝ち誇る様な笑みを浮かべた。

 

『駄目だ! あのままじゃマズイッ!!』

 

(!? ゼロッ!?)

 

「もう止めるんだ! それ以上は駄目だ!!」

 

「リクッ!?」

 

しかしそこで、ゼロとリクが慌てた様子を見せ、誠十郎とペガが驚く。

 

「何? 負け惜しみ? 見苦しいわね………」

 

「! ちょい待ち! 何や、様子がおかしいで!?」

 

「!? えっ!?」

 

皮肉ろうとした瞬間に、こまちがそう声を挙げ、マルガレーテは驚きながら再度モニターを見やる。

 

そこには………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタジアム内………

 

「フハハハハハハハッ! 良いぞ、エリス隊長! その調子だっ!!」

 

次々と降魔を撃墜するテラノイド(エリス)の姿を見て、ミスターGは高らかに笑う。

 

(素晴らしい! デモンストレーションとなる為に用意した下級降魔だが、圧倒するとは! この力さえ有れば、私は再びプレジデントGとなれる!!)

 

やはり、降魔の出現はマッチポンプだったらしく、自らの地位を復活させる為だけに、曲がりなりにも同胞である筈の降魔達を喜々としてテラノイド(エリス)の餌食にしている。

 

「フン、愚か者の幻庵め。全ては我が掌の上よぉ」

 

だが、その光景を陰から隠れて見ていたジェネラルAは冷たくそう言い放つと、ダークリングを取り出し、1枚の怪獣カードをリードした。

 

『スフィア』

 

ダークリングからくぐもった闇の声が響くと、カードを挿し込んでいたのとは反対側の方向から、赤い竜巻の様なエネルギーが放たれる。

 

その竜巻の中から、白く発光する球体に黒い血管の様な紋様が掻かれた物体………『宇宙球体スフィア』が多数出現した!!

 

次々とスタジアムの上空へと飛来するスフィア軍団。

 

「!? な、何だアレは!?」

 

『!? 何っ!?』

 

ミスターGとテラノイド(エリス)が驚きを示した瞬間………

 

スフィア達は、テラノイド(エリス)が倒した降魔達の死骸を吸収。

 

するとその姿が、10メートル程の大きな降魔達となる。

 

更に、頭の部分にまるで脳が露出した様にスフィアを連想させる発光器官が出現。

 

 

 

 

 

キシャアアアアアアッ!!

 

『スフィア合成獣』ならぬ、『スフィア降魔』となった!

 

 

 

 

 

『降魔が変異しただと!?』

 

「ぐうう! またしても邪魔が!! 何をしている、エリス隊長! 早く片付けろ!!」

 

またまた計画が狂い始めたミスターGは苛立ちを露わに、テラノイド(エリス)にそう言い放つ。

 

『しかし、敵の詳細が分からない内に仕掛けるのは………』

 

「命令だ!!」

 

『!!』

 

慎重に行動すべきだと判断したテラノイド(エリス)だったが、ミスターGのその一言で退けなくなる。

 

『ハアッ!!』

 

スフィア降魔に向かってビームスライサーを連射するテラノイド(エリス)。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

しかし、スフィア降魔達はスフィアの能力である『亜空間バリヤー』を展開。

 

スフィア降魔の眼前の空間が歪んだかと思うと、ビームスライサーを防ぐ。

 

『!? バリアだと!?』

 

キシャアアアアアアッ!!

 

そして反撃とばかりに、スフィア降魔達は頭部に出現した発光器官から緑色の光弾を、テラノイド(エリス)目掛けて次々に発射。

 

『ぐああっ!!』

 

テラノイド(エリス)の身体から次々と火花が飛び散り、よろける。

 

「何をしている!? エリス隊長!! それでも最強の華撃団の隊長か!!」

 

『ぐうう………セヤアッ!!』

 

事情もお構い無しにミスターGが喚き立てると、テラノイド(エリス)はソルジェント光線を発射!

 

スフィア降魔は亜空間バリヤーを展開したが、ソルジェント光線はバリヤーを諸共せずにスフィア降魔を爆散させる!

 

「そうだ! その調子だ!!」

 

『ぐうっ!!』

 

気を良くするミスターGとは対照的に、テラノイド(エリス)は苦しそうにソルジェント光線を放ち続け、スフィア降魔を薙ぎ払って行く。

 

 

 

 

しかしそこで、テラノイド(エリス)のカラータイマーが点滅を始めた!!

 

 

 

 

 

『!?』

 

途端にテラノイド(エリス)は膝を着いた!

 

「!? 如何した、エリス隊長!? 何をしている!?」

 

『ち、力が………抜けて行く………』

 

再度喚くミスターGだが、テラノイド(エリス)は苦しそうにそう言い、立ち上がる事が出来ない。

 

カラータイマーの点滅も尋常では無く早くなって行く。

 

そう………

 

ミスターGとエリスは致命的な間違いを犯していた………

 

通常、ウルトラマンは様々な事情により、地球上で活動出来る時間に限りが有る。

 

その為、ウルトラマン達はエネルギー消費の大きい光線技はむやみやたらと使わず、ここぞと言うタイミングで使っている。

 

この縛りを無視出来るのは、ウルティメイトイージスを持つゼロだけだ。

 

だが、テラノイドを建造する際に参考にしたのはゼロのデータであった。

 

その為、ウルトラマン達の情報を殆ど知らされていない伯林華撃団のエリスは元より………

 

今回の計画を主導したミスターGでさえも、ウルトラマン達に活動制限時間が有る事を知らなかったのだ。

 

なので、アイゼンイェーガーに乗っている感覚で銃弾代わりに光線技を乱射したテラノイド(エリス)は、あっという間にエネルギーを使い果たしてしまったのだ!!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

と、それを待っていたかの様に、生き残っていたスフィア降魔達がテラノイド(エリス)目掛けて光弾の集中砲火を浴びせた!!

 

『うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?』

 

最早動く事もままならないテラノイド(エリス)は避ける事が出来ず、次々に光弾を浴びて身体から火花を散らす。

 

そして遂に、そのまま仰向けに倒れる。

 

『う、あ………』

 

起き上がろうと上体を反らすテラノイド(エリス)だったが………

 

『あ………』

 

力尽きた様に倒れ、激しく点滅していたカラータイマーが消え、目からも光が消えた。

 

「わ、私のウルトラマンがぁっ!?」

 

その光景を見たミスターGは髪を掻き毟って動揺を露わにする。

 

 

 

 

 

しかし、最悪の事態はまだコレからだった………

 

 

 

 

 

キシャアアアアアアッ!!

 

倒れたテラノイド(エリス)の身体に、スフィア降魔達が次々に取り付いて行く。

 

そして何と!!

 

テラノイド(エリス)の身体に融合し始めた!!

 

『!? や、止めろぉっ! 私の中に………入って来るなぁ!!』

 

エリスの悲鳴が木霊するが、スフィア降魔達はお構い無しにテラノイドに融合して行く。

 

『うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?』

 

更なるエリスの悲鳴が響いた瞬間………

 

テラノイドが起き上がり、その姿が変異する。

 

カラータイマーと頭部のクリスタルはそのままに、全身がスフィアを思わせる肉体で覆われた不気味な姿となり、背には降魔の翼を思わせる突起物が出現………

 

更に、開閉可能な口部が新たに形成され、鋭い牙が生え揃う………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キシャアアアアアアッ!!

 

『超合成魔獣人 ゼルガノイド・イビル』の誕生だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

現れたテラノイドとプロメテウスですが………
何と、エリスがテラノイドの融合者に選ばれてしまっていました。
なまじ優秀だったばかりの悲劇です。

そして伯林華撃団の3人目。
今まで他国華撃団の3人目は怪獣ってパターンでしたが、今回はれっきとした人間です。
容姿はインフィニット・ストラトスの同名キャラですが、性格はご覧の通りサイボーグドイツ軍人です(笑)
独逸の華撃団は世界一のネタをどうしてもやりたかったので………

しかし、案の定、ジェネラルAの策略により、テラノイドは倒れ、スフィアに加えて降魔まで融合したゼルガノイド・イビルとなってしまいます。
果たして、この悪魔を止められるか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『暴走の魔神達』

チャプター4『暴走の魔神達』

 

超合成魔獣人 ゼルガノイド・イビル

 

電脳魔神 デスフェイサー 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

帝国華撃団の控え場所………

 

『キシャアアアアアアッ!!』

 

「テ、テラノイドが!?」

 

「何て事ですの………」

 

ゼルガノイド・イビルへと変貌したテラノイドの姿に、さくらが戦慄し、すみれも苦い表情を見せる。

 

「エ、エリス………」

 

「何たる事だぁっ!? 我が独逸の結晶がぁっ!?」

 

マルガレーテとラウラも愕然となる。

 

「オ、オイッ! アッチの戦艦の方も変だぞっ!?」

 

「!? 何っ!?」

 

「「「「「!!」」」」」

 

そこで、初穂が電脳巨艦プロメテウスにも異変が起こっている事に気付き、一同は再度モニターに注目する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタジアム内………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

「テ、テラノイドが!?………」

 

ゼルガノイド・イビルとなったテラノイドの姿に動揺するミスターG。

 

するとそこで………

 

上空に浮かんでいたプロメテウスから、異音が聞こえて来た。

 

「!? プロメテウス!?」

 

ミスターGが声を挙げた瞬間………

 

プロメテウスが変形し始めた!

 

まるでパズルの様に形を組み替えて行くプロメテウス。

 

やがて、その姿が人型のロボットとなる。

 

「な、何だと!? あんな機能は無い筈だ!?」

 

ロボット………『電脳魔神 デスフェイサー』を見て驚愕の声を挙げるミスターG。

 

ピピピピピピピ………

 

デスフェイサーの顔の部分に当たるモニターを発光させながら、左腕のガトリングガンを構え、客席の一角に向けて発砲!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

それに合わせる様に、ゼルガノイド・イビルもソルジェント光線を発射!

 

2体の攻撃で客席が完全に消し飛ぶ!!

 

ピピピピピピピ………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

デスフェイサーとゼルガノイド・イビルは、客席が吹き飛んだ部分からスタジアムの外へと出て行く。

 

「ま、待てっ! 何処へ行くんだぁっ!?」

 

若干悲壮感の混じった声で、スタジアム外へと出て行ったデスフェイサーとゼルガノイド・イビルに手を伸ばすミスターG。

 

だが、2体は一瞬たりとも振り向く事無く、ミスターGから遠ざかって行く。

 

その方角は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国華撃団の控え場所………

 

「マズイッ! アッチは市街地だぞっ!!」

 

デスフェイサーとゼルガノイド・イビルが向かったのが、帝都の市街地である事に気付いた誠十郎が声を挙げる。

 

「カオルさん! 至急避難警報を!!」

 

「ハイッ!!」

 

すぐさますみれが指示を飛ばし、カオルが避難警報発令の連絡を入れる。

 

「! エリスッ!!」

 

「ぬおおおっ! コレは一大事ぃっ!!」

 

とそこで、マルガレーテとラウラが踵を返し、その場からは走り去る。

 

「神山くん! 花組一同も出動よ!!」

 

「! ハイッ! 皆、行くぞっ!!」

 

「「「「「! 了解っ!!」」」」」

 

すみれの指示が続いて誠十郎に飛ぶと、誠十郎はさくら達に呼び掛け、無限の在る場所へと向かう。

 

「僕も行きます!」

 

「リク! 気を付けて!!」

 

「頼んだでぇ!!」

 

それにリクも続き、ペガとこまちが見送る。

 

「………考えうる限りの最悪の事態ですわね」

 

一同を見送った後、すみれはモニターに映るデスフェイサーとゼルガノイド・イビルの姿を見て、苦々し気にそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都市街………

 

『緊急警報! 只今、帝都全域に避難命令が出されました! 市民の皆さんは速やかに避難して下さいっ!!』

 

「巨大な機械と魔人が来るぞぉっ!!」

 

「逃げろぉっ!!」

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

既にデスフェイサーとゼルガノイド・イビルの姿は市街地から確認出来る位置まで来ており、緊急警報のサイレンが鳴り響く中、帝都市民達が右往左往しながら逃げ惑っている。

 

ピピピピピピピ………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

そんな帝都市民達の恐怖を煽るかの様に、ゆっくりと地響きを立てながら市街地の方へと迫るデスフェイサーとゼルガノイド・イビル。

 

そして遂に、市街地はと到達しようかと思われた瞬間………

 

「そこまでですっ!!」

 

ピピピピピピピ………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

そう言う声が響き、デスフェイサーとゼルガノイド・イビルの足が止まると………

 

その前に、色取り取りの霊子戦闘機達が現れる。

 

「「「「「「帝国華撃団! 参上ッ!!」」」」」」

 

花組の霊子戦闘機達が見栄を切りながらポーズを決める。

 

ピピピピピピピ………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

花組を見下ろすデスフェイサーとゼルガノイド・イビル。

 

「皆、気を付けろ! 敵は2体だ!!」

 

「片方は僕が引き受けますっ!!」

 

と、誠十郎がそう言うと、その機体の肩に乗っていたリクが飛び降り、ジードライザー(スキャナー)を構えて変身しようとする。

 

が、その瞬間!!

 

「待ちなさいっ!」

 

「むわてえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーいっ!!」

 

そう言う台詞と共に、2機のアイゼンイェーガーが降り立つ。

 

1機はマルガレーテ機。

 

そしてもう1機は、赤金色の機体………ラウラ機だ。

 

「! 伯林華撃団!」

 

「コレは私達、伯林華撃団の問題よ」

 

「その通りぃっ! 貴様等三流華撃団の出る幕では無いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!!」

 

誠十郎が声を挙げると、マルガレーテとラウラはそう言って来る。

 

「! んだとぉっ!?」

 

「貴方達、まだそんな事を!」

 

その物言いに、初穂とクラリスが憤慨する。

 

「今はそんな事を言っている状況じゃない………」

 

「そうですよ! 力を合わせて戦いましょう!!」

 

あざみがそうツッコミを入れ、さくらは今こそ力を合わせる時だと説得に掛かるが………

 

「ヴァカ者がぁ!! 言った筈だぁ! 我が隊長は世界一ィィィイイイイッ!!」

 

「エリス! しっかりして! 貴方ならその程度の状況ぐらい、如何にか出来るでしょっ!!」

 

ラウラが相変わらずハイテンションな様子で言い返し、マルガレーテがゼルガノイド・イビルに向かって呼び掛ける。

 

『ラ、ラウラ………マルガレーテ………』

 

そこで、ゼルガノイド・イビルからエリスの声が聞こえて来る。

 

「! エリスさん!」

 

「まだ意識が残ってるみたいね」

 

誠十郎が驚き、アナスタシアもそう言う。

 

「エリス! テラノイドのコントロールを取り戻して! 伯林華撃団まで、上海や倫敦と同じ轍を踏んだりするなんて、恥曝しも良いところよ!」

 

『ぐ、ぐうううう………』

 

マルガレーテがそう言葉を続けると、エリスの呻き声と共に、ゼルガノイド・イビルの動きが鈍った………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

かに思われた瞬間!!

 

ゼルガノイド・イビルは咆哮と共にマルガレーテ達と花組にソルジェント光線を薙ぎ払う様に放つ!!

 

「「!?」」

 

「! 散開っ!!」

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

驚きながらも回避するマルガレーテ達と誠十郎が慌てて指示を飛ばし散開する花組。

 

その隙間を通り過ぎたソルジェント光線は、そのまま帝都の一角にまで到達し、巨大な爆発を上げる。

 

「ぬおおおっ!? 何たる事ぉっ!?」

 

「エリス! 何をやってるの!?」

 

『うううううう………』

 

あからさまに狼狽するラウラと、怒鳴るマルガレーテだが、ゼルガノイド・イビルからはエリスの苦しそうな声が返って来る。

 

「あの2人………エリスさんの事を尊敬してるのは間違いないんだろうけど………」

 

『幾ら何でもありゃ過信し過ぎってもんだぜ』

 

そんな光景を見た誠十郎とゼロがそう言葉を漏らす。

 

ピピピピピピピ………

 

とそこで、デスフェイサーの方も動き出す。

 

鋏状の右腕『デスシザース』に取り付けられていた『デスシザーレイ』を、誠十郎機に向かって発射する。

 

『! 誠十郎!』

 

「! うおおおおおっ!?」

 

ゼロの声で気付いた誠十郎は、間一髪で回避する。

 

ピピピピピピピ………

 

しかし、その回避先を読んでいたかの様に、デスフェイサーはデスシザースの付け根の部分を伸ばし、誠十郎機を捕まえた!

 

「!? しまったっ!?」

 

ピピピピピピピ………

 

誠十郎が声を挙げた瞬間、デスフェイサーはデスシザースを戻す勢いで振り回し、誠十郎機を空高くへと放った!

 

「!? ぬおおおっ!?」

 

ピピピピピピピ………

 

そして、空中で身動きが取れなくなった誠十郎機に向かって、左腕のガトリングガンを発砲。

 

誠十郎機は蜂の巣にされ、空中で爆散した!

 

「!? 誠十郎さーんっ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

さくらが悲鳴を挙げ、花組一同も愕然となる。

 

と………

 

「デリャアアアアアアッ!!」

 

その瞬間にゼロが現れ、デスフェイサー目掛けてウルトラゼロキックを繰り出す。

 

ピピピピピピピ………

 

「!? うおっ!?」

 

しかし、デスフェイサーはバリア『ジェノミラー』を展開し、ウルトラゼロキックをアッサリと弾き飛ばした。

 

「チイッ!」

 

「! ゼロさんっ!」

 

「ウルトラゼロキックが全く効かないなんて………」

 

ゼロが舌打ちしながら着地を決めると、さくらが声を挙げ、クラリスがウルトラゼロキックさえもアッサリと防いだデスフェイサーに戦慄を覚える。

 

「僕も! ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」

 

そこでリクも、改めてジードライザー(スキャナー)を構えた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インナースペースが展開されるとリクは右脇腰のボックスから、カプセル状の物体………『ウルトラカプセル』を取り出した!

 

「融合(ユーゴー)!」

 

『シェアッ!』

 

リクがそう言って初代ウルトラマンカプセルの脇に付いていたスイッチを上げると、リクの右側に右腕を掲げる初代ウルトラマンのビジョンが現れる。

 

起動させたカプセルを、左脇腰に装着し、グリップ部分を左手で握っていた装填ナックルにセットする。

 

「アイゴー!」

 

『ヌェアッ!』

 

続けて、ベリアルカプセルを起動させると、今度は左側に同じく右手を掲げるベリアルのビジョンが出現する。

 

そして同じ様に、装填ナックルにセットする。

 

「ヒアウィーゴー!」

 

そこで、ジードライザーのトリガーを押し、待機状態にする。

 

そして、2つのカプセルをセットした装填ナックルをベルトから外したかと思うと、ジードライザーで読み込む。

 

すると、ジードライザーの中央の透明部分に、赤と青の遺伝子構造の様な光が宿る。

 

『フュージョンライズ!』

 

「決めるぜ! 覚悟!! ハアアッ! ハアッ!!」

 

ジードライザーから声が響く中、リクはそう言い放ち、ジードライザーを掲げたかと思うと、胸の前に構えて、再度トリガーを押した。

 

赤と青の遺伝子構造の様な光が回転を始めたかと思うと、更に明るく光り始める。

 

「ジィィィィド!」

 

『ウルトラマン! ウルトラマンベリアル!』

 

リクとジードライザーの声が響く中、その姿はウルトラマンへと変わって行った!

 

『ウルトラマンジード! プリミティブ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ!!」

 

ゼロの隣に、ジード(プリミティブ)が着地する。

 

「ゼロ!」

 

「ジード! お前はあのエリスとか言う嬢ちゃんを助けろ! コイツは俺が………」

 

と、ジードにゼルガノイド・イビルを任せ、自分はデスフェイサーに当たろうとするゼロだったが………

 

ピピピピピピピ………

 

突如デスフェイサーが、それまでの鈍重そうな動きが嘘の様な高速移動を見せ、ゼロとジード(プリミティブ)に同時に襲い掛かった!

 

「!? 何っ!?」

 

「! うわっ!?」

 

突然デスフェイサーに組み付かれ、ゼロとジード(プリミティブ)はそのパワーに押されて、ゼルガノイド・イビルから引き離されて行った。

 

「ゼロさん!」

 

「コイツ! 僕達をエリスさんから引き離す気だっ!!」

 

「クソッ! 邪魔すんじゃねえっ!!」

 

さくらが声を挙げる中、デスフェイサーを振り解こうとするジード(プリミティブ)とゼロだが、ウルトラマン2人掛かりにも関わらず、デスフェイサーは引き剥がせない。

 

「こうなると助力は期待出来ないわね………」

 

「なら! 私達だけで!!」

 

アナスタシアが他人事の様にそう言うが、さくらは闘志を衰えさせず、ゼルガノイド・イビルへと向き直る。

 

「ゼットンッ!!」

 

そこでクラリスが、魔導書からゼットンを呼び出す。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

出現したゼットンが、ゼルガノイド・イビルと対峙する。

 

「! 邪魔をするなと言った筈よ! 帝国華撃団!!」

 

「エリス隊長ぉっ! 狼狽えるんじゃない! 独逸軍人は狼狽えないぃっ!!」

 

ココへ来て、尚花組の助力を拒むマルガレーテと、エリスに向かって呼び掛けを続けているラウラ。

 

「! お前っ! まだそんな………」

 

「初穂! もう良いよ!!」

 

「けどよぉ、さくら!!」

 

「そっちが助けが要らないって言うなら………私達が勝手にエリスさんを助けるから!!」

 

怒鳴り返そうとした初穂を諫め、さくらがそう言い放つ。

 

「! ああ、そうだな! そうするか!!」

 

その言葉で察した初穂が笑みを浮かべる。

 

「! 貴方達!!」

 

「行きますっ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

マルガレーテが更に何か言うよりも早く、さくら達はゼットンと共にゼルガノイド・イビルへと向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ゼルガノイド・イビルとなったテラノイド。
更にプロメテウスも電脳魔神 デスフェンサーに。

帝都を襲おうとする2体の前に立ちはだかる花組だったが、伯林華撃団の思わぬ様子を目撃する。
そしたゼロとジードの相手をデスフェンサーがし、花組は伯林華撃団をフォローしつつゼルガノイド・イビルへ立ち向かいます。
一筋縄では行かぬ相手………
そこで次回、いよいよ………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『無限の光』

チャプター5『無限の光』

 

超合成魔獣人 ゼルガノイド・イビル

 

電脳魔神 デスフェイサー 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都市街地の入り口付近………

 

ピピピピピピピ………

 

不気味な電子音を響かせ、ゼロとジード(プリミティブ)に向かってガトリングガンを発砲するデスフェイサー。

 

「うおわっ!?」

 

「うわっ!?」

 

次々と弾丸を浴び、身体から火花を散らすゼロとジード(プリミティブ)。

 

「野郎! エメリウムスラッシュッ!!」

 

「レッキングリッパーッ!!」

 

反撃にとエメリウムスラッシュと光の刃『レッキングリッパー』を放つ。

 

ピピピピピピピ………

 

しかし、デスフェイサーは火花を散らして多少よろけたものの、然程ダメージは無い様子だ。

 

そして、右手のデスシザースから、デスシザーレイを放つ。

 

「おっとっ!」

 

「ハアッ!!」

 

ゼロとジード(プリミティブ)は、其々別方向に転がって躱す。

 

「………ルナミラクルゼロ!」

 

そこでゼロが、ルナミラクルゼロにタイプチェンジ。

 

「ミラクルゼロスラッガー!」

 

そして、ミラクルゼロスラッガーをデスフェイサーに向けて放つ。

 

ピピピピピピピ………

 

しかし、デスフェイサーはモニター部を光らせ、ミラクルゼロスラッガーを全てロックオンし、ガトリングガンで迎撃した。

 

「フッ! ハアッ!!」

 

だがその間に、高速移動で背後に回り込んだルナミラクルゼロが、ウルトラゼロランスを振るう。

 

ピピピピピピピ………

 

デスフェイサーは戦車の超新地旋回の様にその場で回転すると、デスシザースでウルトラゼロランスを挟んで受け止める。

 

「ハアッ!!」

 

とそこで、ジードクローを手にしていたジード(プリミティブ)が、またもやデスフェイサーの背後から飛び掛かる。

 

ピピピピピピピ………

 

が、デスフェイサーはジード(プリミティブ)の方を振り返る事も無く、左腕のガトリングガンを向けて発砲。

 

「!? うわっ!?」

 

弾丸の雨を浴びたジード(プリミティブ)は、ジードクローを手放してしまい、失速して墜落する。

 

「ジードッ!」

 

ピピピピピピピ………

 

思わず声を挙げたルナミラクルゼロを、ガトリングガンの左腕で殴りつける。

 

「おうわっ!?」

 

ブッ飛ばされて転がったルナミラクルゼロは、通常にゼロの状態に戻る。

 

ピピピピピピピ………

 

倒れているゼロとジード(プリミティブ)を見下ろしながら、不気味な電子音を響かせるデスフェイサー。

 

「僕達の動きが読まれてる?」

 

「コレまでの戦闘データを蓄積でもしてやがるのか? だが! それで俺達に勝てると思ったら大間違いだぜ!」

 

動きが読まれている事を察する2人だったが、それで闘志が衰える事は無く、再度デスフェイサーへと向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ゼルガノイド・イビルと戦う花組+ゼットンと伯林華撃団は………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

咆哮と共に、ソルジェント光線をゼットンに向けて放つゼルガノイド・イビル。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

しかし、ゼットンはソルジェント光線を自慢の能力で吸収する。

 

そして、ゼットンファイナルビームとしてゼルガノイド・イビルに向かって返す。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

しかし、ゼルガノイド・イビルは亜空間バリヤーで防いでしまう。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

するとゼットンは格闘戦を挑みに掛かる。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

ゼルガノイド・イビルとゼットンがガッツリと組み合う。

 

しかし、次の瞬間!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

ゼルガノイド・イビルはゼットンの背に両腕を回し、そのままベアハッグで締め上げる!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ゼットンが苦しそうにしながら、ゼルガノイド・イビルを振り解こうと両手で垂直チョップを何度も繰り出す。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

しかし、ゼルガノイド・イビルは効いていない様で、更にゼットンを締め上げる。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

「ゼットン! くうっ!!」

 

ゼットンを助けようと、クラリス機が魔法陣を展開したかと思うと、ゼルガノイド・イビルの背に向かってレーザーを放つ。

 

しかし、ゼルガノイド・イビルの背中から生えていた翼が亜空間バリヤーを展開。

 

クラリス機が放ったレーザーは防がれてしまう。

 

「! ゼットン! テレポートッ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

と、そこでクラリスが叫ぶと、ゼットンはテレポートを使い、ゼルガノイド・イビルのベアハッグから逃れる。

 

そして、ゼルガノイド・イビル目掛けて火球を放つ。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

しかし、またも亜空間バリヤーで防がれる。

 

「ヤアアアッ!!」

 

「オリャアッ!!」

 

さくらの試製桜武と初穂機が、大きく跳躍し、刀とハンマーで攻撃を掛ける。

 

ゼルガノイド・イビルは刀を右腕、ハンマーを左腕で防ぐ。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

「!? キャアッ!?」

 

「うおわっ!?」

 

そして咆哮を挙げると両腕を広げる様に振るい、試製桜武と初穂機を弾き飛ばした!

 

「さくら!」

 

「初穂さん!」

 

だが、地面に叩き付けられる寸前であざみ機とクラリス機がキャッチしてフォローする。

 

「そこっ!!」

 

そこで、アナスタシア機がゼルガノイド・イビルの足元に向かって発砲。

 

地面が凍り付き、ゼルガノイド・イビルの足にも氷が張り付く。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

しかしこれも、ゼルガノイド・イビルが咆哮を挙げながら足を動かすと、アッサリと剥がれてしまう。

 

「クッ!」

 

「エリス! テラノイドを止めてっ!!」

 

「エリス隊長ぉ! 今こそ伯林華撃団の力を見せる時イイイイイィィィィィィッ!!」

 

アナスタシアが舌打ちをする中、マルガレーテ機とラウラ機がゼルガノイド・イビルに向かって威嚇射撃。

 

亜空間バリヤーで防がれるが足を止めるゼルガノイド・イビル。

 

『ううううううぅぅぅぅぅぅぅ………』

 

エリスからは相変わらず苦しそうな声が漏れている。

 

「エリス! しっかりっ!!」

 

「伯林華撃団は世界一イイイイイィィィィィィッ!!」

 

と、マルガレーテとラウラの呼び掛けが更に続いた瞬間………

 

『! うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!』

 

エリスの悲鳴の様な叫ぶが木霊し、ゼルガノイド・イビルが糸の切れた操り人形の様にガクリと動きを止めた。

 

脱力した様な様子と共に、目からも光が消えるゼルガノイド・イビル。

 

「! 止まったっ!?」

 

「まさかっ!?」

 

驚くさくらと信じられないものを見る様な目になる初穂。

 

「そうよ! それでこそエリスよ!!」

 

「流石は我が隊長オオオオォォォォォッ!!」

 

マルガレーテとラウラは歓声を挙げながら、機体を花組の方へと振り向かせる。

 

「コレで分かった? 貴方達とは格が違うのよ」

 

「我ぁが隊長わぁっ!! 我がゲルマン民族の最高軍人の結晶であり誇りであるゥゥゥ!!」

 

勝ち誇るかの様に花組に向かってそう言い放つマルガレーテとラウラ。

 

「チッ! 一々癇に障る様に言いやがって………」

 

そんな2人の様に、初穂が悪態を吐く。

 

「!? 危ないっ!! 後ろぉっ!!」

 

とそこで、さくらが突然そう叫ぶ。

 

「「へっ?」」

 

思わず間の抜けた声を出しながらマルガレーテ機とラウラ機が振り返った瞬間………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

咆哮と共に、ゼルガノイド・イビルがサッカーボールを蹴るかの様に2機を蹴り飛ばした!!

 

「「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」

 

マルガレーテとラウラの悲鳴が響く中、2機は衝撃で手足が千切れ飛び、そのまま建物の壁へと突っ込んだ!!

 

「!? マルガレーテさん!」

 

「ラウラッ!」

 

クラリスとあざみが思わず叫ぶ中、マルガレーテ機とラウラ機は、全身から蒸気漏れを起こし、スパークを発して動かなくなった………

 

「エ、エリス………」

 

「何故だァッ! 隊長オオオオォォォォォッ!!」

 

頭から血を流して朦朧としているマルガレーテと、ゼルガノイド・イビルに向かって叫びを挙げるラウラ。

 

『五月蠅いッ!!』

 

「「!?」」

 

しかしその瞬間………

 

ゼルガノイド・イビルからエリスの怒声が響いて来て、マルガレーテとラウラは思わず黙り込む。

 

『勝手な事ばかり言って………私が………私が普段どれだけ苦労してると思ってるんだ!!』

 

「エ、エリス………」

 

「隊長………」

 

『昔からそうだ! 期待されて! それに応える事を強要されて! 完璧な人間だなんて思われて! もうウンザリだぁっ!!』

 

エリスから、愚痴の様な言葉が次々と吐き出される。

 

「エリスさん………」

 

「相当溜め込んでたみたいね………」

 

クラリスが唖然とし、アナスタシアが何処か同情するかの様に呟く。

 

『私だって人間だぞ! 出来ない事だってあるし、やりたくない事もある! なのに周りがそれを許してくれない! うわああああああああっ!!』

 

キシャアアアアアアッ!!

 

エリスの感情の爆発に呼応するかの様に、ゼルガノイド・イビルが咆哮を挙げながらソルジェント光線を薙ぎ払う様に発射!

 

帝都の一角で連鎖的に爆発が起こる。

 

「おわっ!?」

 

「威力が上がってる!?」

 

「まさか………エリスさんの感情の爆発に呼応してるんじゃ………」

 

爆風に煽られた花組の試製桜武と無限達が倒れそうになり、クラリスがそう推察する。

 

「エ、エリス………」

 

「わ、我々は、何て事をぉ………」

 

漸く自分達がエリスに過度なプレッシャーを掛けていた事に気付いたマルガレーテとラウラが言葉を失う………

 

『………もうやだ………誰か………助けて………』

 

とそこで、遂にエリスの声が涙声となり、弱音が零れ始めた。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

しかし、その感情すらもエネルギーへと変換しているのか、ゼルガノイド・イビルが咆哮を挙げ、またもソルジェント光線をゼットン目掛けて放つ!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

光線吸収能力で吸収しようとするゼットン。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

しかし、ゼルガノイド・イビルが吠えると、ソルジェント光線のエネルギーが更に増した!

 

途端に吸収しきれなくなり、ゼットンはソルジェント光線の直撃を浴び、ブッ飛ばされた!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

「! ゼットン! 戻ってっ!!」

 

身体から白煙が立ち上る程の大ダメージを受けたゼットンを見て、クラリスは慌てて魔導書を開き、ゼットンを戻す。

 

『………お願い………誰か………助けてよ………』

 

涙声のまま、懇願する様に漏らすエリス。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

そんなエリスに感情とは裏腹に、ゼルガノイド・イビルは咆哮を挙げながら花組へと迫る。

 

「「「「「!!」」」」」

 

身構える花組一同。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリスちゃんっ!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

突如、背後から響いて来た声に、花組一同が振り返るとそこには………

 

「…………」

 

ゼルガノイド・イビルを見上げながら佇むミライの姿が在った。

 

『ミ、ミライ………何故?………』

 

「君が本当に助けを求めている時には、僕が必ず助けに行く………約束したよ」

 

戸惑いの声を挙げるエリスに、ミライは笑顔でそう言う。

 

「あの人は一体!?」

 

「お、おい………この展開は、まさか?」

 

「もうパターンになってきてる………」

 

困惑するさくらとは対照的に、同じ様な展開を何度も見て来た初穂とあざみは察しが付く。

 

「彼もひょっとして………」

 

「あ、あの方はぁっ!?」

 

アナスタシアも察しが付く中、唯一クラリスだけが、ミライの正体に予想が付く。

 

「!!」

 

とそこで、ミライが左腕を構えたかと思うと………

 

そこに、炎を思わせるブレスレット………『メビウスブレス』が出現!

 

それに右手を翳すと、中心に在ったクリスタルサークルを回転させた!

 

そして、一旦左腕を引いたかと思うと………

 

「メビウースッ!!」

 

そう叫んで天へと突き出す!!

 

メビウスブレスから光が溢れ、それが『∞』のマークを浮かび上がらせたかと思うと………

 

「ヘヤアァ!!」

 

そこから、1人のウルトラマンが飛び出す!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、嘗て宇宙警備隊のルーキーとして地球に派遣され………

 

掛け替えの無い地球人の仲間と確かな友情で結ばれた無限の可能性を持ったウルトラマン………

 

『ウルトラマンメビウス』だった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

デスフェイサーがゼロとジードを足止めしている間に、ゼルガノイド・イビルが花組を相手取ります。
そんな中でもマルガレーテとラウラがエリスに呼びかけを続け、遂にゼルガノイド・イビルが止まった………
かに思われた瞬間に、感情の爆発したエリスによって、マルガレーテとラウラは撃墜されてしまいます。

とうとうエリスの口から零れる弱音………
しかし………
必ず助ける………
その約束を果たす為に彼が登場!
ヒビノ・ミライ、その正体は………
ウルトラ兄弟の一員! ウルトラマンメビウス!!
反撃開始です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『絆の炎』

チャプター6『絆の炎』

 

超合成魔獣人 ゼルガノイド・イビル

 

電脳魔神 デスフェイサー 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・地下司令室………

 

「何故だろう………あのウルトラマン………初めて見た気がしないな」

 

司令室のモニターで、メビウスの姿を確認していたサコミズが、そう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都市街地の入り口付近………

 

「! ウルトラマン!? やっぱりあの人もウルトラマンだったんだ!」

 

メビウスの姿を見たさくらがそう声を挙げる。

 

「メビウス!? お前まで来てたのかよ!?」

 

「メビウスさん!?」

 

デスフェイサーに2人掛かりで組み付いていたゼロとジード(プリミティブ)も驚きの声を挙げる。

 

「ゼロ、ジード。話は後だ。エリスちゃんは僕が助ける。君達はそっちを頼むよ!」

 

メビウスは2人に向かってそう言うと、教官であったタロウと似た構えを執り、ゼルガノイド・イビルへと向かって行った!

 

「あ、オイ!!」

 

話もそこそこにしたメビウスにツッコミを入れようとしたゼロだが………

 

ピピピピピピピ………

 

デスフェイサーが不気味な電子音を響かせ、組み付いていたゼロとジード(プリミティブ)を弾き飛ばした!!

 

「うわっ!?」

 

「おうわっ!?」

 

倒れるジード(プリミティブ)とゼロだが、すぐに起き上がる。

 

「チイッ! アイツの言う通り、先ずはコイツからだ!!」

 

そこでゼロは、メビウスの言葉通り、ディスフェンサーの相手を優先させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インナースペースの誠十郎の前に、ニュージェネレーションカプセルαとβが出現すると、ウルトラゼロアイをライザーにセットする。

 

「ギンガ! オーブ!」

 

『ショオラッ!』

 

『デュアッ!』

 

そして先ず、ニュージェネレーションカプセルαを起動。

 

ギンガとオーブのビジョンが現れ向かい合うと、カプセルを装填ナックルにセット。

 

「ビクトリー! エックス!」

 

『テアッ!』

 

『イィィィーッ! サーーーッ!』

 

続いてニュージェネレーションカプセルβを起動。

 

ビクトリーとエックスのビジョンが現れ向かい合うと、カプセルを装填ナックルにセット。

 

ウルトラゼロアイを装着したスキャナーのトリガーを押すと、装填ナックルを読み込む。

 

『ネオフュージョンライズ!』

 

「『俺に限界はねぇっ!!』」

 

音声が響く中、誠十郎とゼロがそう叫び、ライザーを目の前に持って来て、トリガーを押す!

 

「『ハアッ!!』」

 

そして気合を入れると、誠十郎の姿がゼロへと変わり、背後にギンガ、ビクトリー、エックス、オーブ(オリジン)のビジョンが出現!!

 

『ニュージェネレーションカプセル! α! β!』

 

そのビジョンが、次々にゼロに重なる様に融合。

 

『ウルトラマンゼロビヨンド!』

 

そして、ゼロの姿が、ゼロビヨンドへと変わった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし! 僕も!!」

 

そこで更に、ジードもタイプチェンジを行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インナースペース内のリクが、右腰のホルスターから新たなカプセルを取り出す。

 

「融合(ユーゴー)!」

 

『セェアッ!』

 

カプセルを起動させると、リクの右側に右腕を掲げる『ウルトラマンゼロ』のビジョンが現れる。

 

起動させたカプセルを、左脇腰に装着し、グリップ部分を左手で握っていた装填ナックルにセットする。

 

「アイゴー!」

 

『ダァッ!』

 

続けて新たなカプセルを起動させると、左側に右手を掲げる『ウルトラマンケン』こと『ウルトラの父』のビジョンが出現。

 

そして同じ様に、装填ナックルにセットする。

 

「ヒアウィーゴー!」

 

ジードライザーのトリガーを押し、待機状態にすると、装填ナックルにセットしたゼロとウルトラの父のカプセルをリードする。

 

『フュージョンライズ!』

 

「守るぜ! 希望!! ハアアッ! ハアッ!!」

 

ジードライザーから声が響く中、リクはそう言い放ち、ジードライザーを掲げたかと思うと、胸の前に構えて、再度トリガーを押した。

 

青と緑の遺伝子構造の様な光が回転を始めたかと思うと、更に紫の光を放ち始める。

 

「ジィィィィド!」

 

『ウルトラマンゼロ! ウルトラの父!』

 

リクとジードライザーの声が響く中、ゼロとウルトラの父のビジョンが重なる。

 

『ウルトラマンジード! マグニフィセント!』

 

そして、光の中から、鎧を纏った様な赤と青の身体となり、ゼロスラッガーを思わせる角を生やしたジード………

 

『ウルトラマンジード・マグニフィセント』が出現する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぜっ!!」

 

「ハアッ!!」

 

ゼロビヨンドが声を挙げると、ジード(マグニフィセント)が構えを執る。

 

ピピピピピピピ………

 

デスフェイサーは2人にガトリングガンを向けたかと思うと発砲する。

 

「ハアッ!!」

 

すると、ジード(マグニフィセント)が前に出て、両腕を突き出し、ウルトラの父のウルトラアレイの形の光を高速回転させ形成したバリア『アレイジングジードバリア』を展開。

 

バリアを破ろうとガトリングガンの連射速度を上げるデスフェイサーだが、アレイジングジードバリアはビクともしない。

 

「ハアアッ!!」

 

と、ジード(マグニフィセント)が気合の声を挙げると、バリアの形状が凹レンズの様に反り返る。

 

それにより、ガトリングガンの弾丸が跳弾し、デスフェイサーへと跳ね返る!

 

!? ピピピピピピピ………

 

イレギュラーな攻撃を受けたデスフェイサーは、僅かに動揺の色を見せながら後退る。

 

「ビヨンドツインエッジッ!!」

 

そこで、両手にゼロツインソードを握ったゼロビヨンドが、ジード(マグニフィセント)を飛び越える様にして現れ、デスフェイサーに斬り掛かる。

 

ピピピピピピピ………

 

だが、その行動を読んでいたデスフェイサーは、デスシザースを構え、ビヨンドツインエッジを2つ共に挟んで受け止める。

 

「おりゃあ!」

 

しかし、ゼロビヨンドは力任せに強引にビヨンドツインエッジを振り切り、デスシザースを破壊した!!

 

!? ピピピピピピピ………

 

またもイレギュラーな攻撃に、今度は完全に動揺を露わにするデスフェイサー。

 

「ヘッ! 所詮は只の機械! 予測した行動を上回る様な攻撃には対応出来ねえみてぇだな!」

 

「ゴリ押しとも言うけどね………」

 

得意げに語るゼロビヨンドに、ジード(マグニフィセント)がツッコミを入れる。

 

「るせぇっ、良いんだよ!」

 

ピピピピピピピ………

 

ゼロビヨンドがそう返していると、デスフェイサーは再度ガトリングガンを構える。

 

「メガエレクトリックホーンッ!」

 

そこでジード(マグニフィセント)が、頭部の角から放つムチ状の電撃『メガエレクトリックホーン』を放つ。

 

!? ピピピピピピピ………

 

ロボットであるデスフェイサーに、電撃攻撃は効果絶大であり、忽ち身体中の回路がショートを起こし、火花を散らす。

 

火花が散った場所から黒煙を上げるデスフェイサー。

 

ピピピピピピピ………

 

しかし、まだ機能停止には至らなかったらしく、鈍い動きでゼロビヨンドとジード(マグニフィセント)の方へと向かおうとする。

 

ピピピピピピピ………

 

頭部のモニター部分が不気味に発光するが………

 

「オリャアッ!!」

 

そこ目掛けて、ゼロビヨンドが跳び蹴りを食らわせる!

 

「オリャリャリャリャリャリャリャリャリャァッ!!」

 

その状態で連続蹴り『ゼロ百裂キック』を繰り出す!

 

モニター部分は完全に砕け、頭部にもヒビが入るデスフェイサー。

 

「ハアアァッ!!」

 

更にそこへ、駄目押しとばかりに、接近したジード(マグニフィセント)が拳に緑色のエネルギーを纏って放つパンチ『メガボンバーパンチ』を食らわせる!

 

胸部装甲が完全に砕けたデスフェイサーが、人形の様にブッ飛び、派手に土片を巻き上げながら倒れた。

 

「トドメだ! ワイドビヨンドショットッ!!」

 

そこでゼロビヨンドは、胸の前で腕を交差させ、左腕を横へ水平に伸ばした後、L字に組んで放つビヨンド版のワイドゼロショット『ワイドビヨンドショット』を放つ。

 

「ビッグバスタウェイッ!!」

 

ジード(マグニフィセント)も、拳を合わせエネルギーをスパークさせた後、腕をL字に組んで必殺光線『ビッグバスタウェイ』を放つ。

 

同時に放たれたワイドビヨンドショットとビッグバストウェイは、途中で螺旋状に絡み合い、起き上がったデスフェイサーの胸部装甲が砕けた部分を直撃!!

 

! ピピピピピピピ………

 

デスフェイサーは断末魔の様に電子音を響かせたかと思うと、そのまま爆発・四散した!!

 

「セヤッ!」

 

「ハアッ!」

 

その爆発を背を向け、ゼロビヨンドとジード(マグニフィセント)はポーズを決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

ゼルガノイド・イビルと戦うメビウスは………

 

キシャアアアアアアッ!!

 

鋭い牙の生え揃った口を大きく開けながら咆哮したゼルガノイド・イビルが、メビウスに向かってビームスライサーを放つ。

 

「ハアッ!」

 

メビウスはメビウスブレスに添えた右手を前に突き出して放つ光刃『メビュームスラッシュ』で迎撃。

 

「セヤアッ!!」

 

そして続け様に、メビウスブレスから放つ電撃光線『ライトニングカウンター』を放つ!!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

亜空間バリヤーで防ぐゼルガノイド・イビルだったが………

 

「セヤッ!!」

 

その隙を衝いて、メビウスは跳躍。

 

ゼルガノイド・イビルの頭上を飛び越えると………見せて、首の後ろに蹴りを叩き込んだ!!

 

キシャアアアアアアッ!?

 

よろけるゼルガノイド・イビルだったが、すぐにメビウスの方へ向き直り、掴み掛かりに行く。

 

「セエヤッ!!」

 

キシャアアアアアアッ!?

 

しかし、メビウスは掴み掛かって来たゼルガノイド・イビルの勢いを利用して、投げ飛ばす。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

そこでゼルガノイド・イビルは、背中の翼を羽ばたかせたかと思うと、空へと舞い上がった!

 

「! シュワッ!!」

 

メビウスもそれを追って飛び上がり、両者はそのまま空中戦に突入した!

 

キシャアアアアアアッ!!

 

上昇しながら、追って来たメビウス目掛けてフラッシュサイクラーを放つゼルガノイド・イビル。

 

「ハアッ!!」

 

キシャアアアアアアッ!!

 

メビウスが身を反らして躱すと、ゼルガノイド・イビルは今度はビームスライサーを連射する。

 

メビウスは急旋回・急降下・急上昇と急な動きの連続で回避する。

 

「セヤッ!」

 

反撃とばかりにメビュームスラッシュを2連射するメビウス。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

アッサリと躱して見せるゼルガノイド・イビルだったが………

 

何と!

 

躱されたメビュームスラッシュが反転し、油断していたゼルガノイド・イビルの背を直撃!

 

キシャアアアアアアッ!?

 

僅かにバランスを崩し、一瞬動きが止まるゼルガノイド・イビル。

 

そこでメビウスは、メビウムブレスのトラックボールを回転させたかと思うと………

 

メビウムブレスから光の剣『メビュームブレード』を形成する。

 

そして、動きの止まっていたゼルガノイド・イビルを一気に肉薄したかと思うと………

 

「セヤアアアアアッ!」

 

気合一閃で、ゼルガノイド・イビルの背中の翼を両翼とも斬り裂いた!!

 

キシャアアアアアアッ!?

 

今度こそ完全にバランスを崩したゼルガノイド・イビルは、頭から地上に向かって落下!

 

そのまま脳天を思いっ切り地面に打ち付け、派手に土片を舞い上げた!!

 

「セヤッ!」

 

キシャアアアアアアッ!!

 

メビウスが着地すると、咆哮を挙げながら起き上がるゼルガノイド・イビル。

 

そして、切断された背中の羽根が粘土の様にグニャグニャになり、再生する。

 

「!?」

 

驚きながらも、構えを執り直すメビウス。

 

『ミ、ミライ………もう駄目だ………私に構わず………コイツを………倒してくれ………』

 

とそこで、苦しそうなエリスの声が響いて来る。

 

「大丈夫だよ、エリスちゃん。必ず助けるから」

 

『駄目なんだ、ミライ………例え助かったとしても………あんな………あんな情けない姿を晒した私など………』

 

メビウスはそう返すが、エリスの弱音は止まらない。

 

先程、弱弱しい姿を晒してしまった事が尾を引いている様だ。

 

………と、その時!

 

「エリス!」

 

「隊長おぉっ!!」

 

『!?』

 

響いて来た声に、エリスが視線を向けると、そこには大破したアイゼンイェーガーから這い出たマルガレーテとラウラの姿が在った。

 

マルガレーテの方は負傷しているのか、ラウラに肩を借りている。

 

『マルガレーテ………ラウラ………』

 

「エリス! ゴメンなさいっ!!」

 

「すまない、隊長おおおおおォォォォォッ!!」

 

そして、エリスに向かって謝罪の言葉を発する2人。

 

『!?』

 

「エリスがそんなに抱え込んでたなんて………私達、全然分からなかった!!」

 

「我々は隊長に完璧を求め過ぎていたのかも知れん!!」

 

驚くエリスの耳に、マルガレーテとラウラの謝罪が続く。

 

「ごめんなさい、エリス! だけど………負けないで!!」

 

「我々の隊長は貴方しかいないのだぁ! 頑張れ、エリスウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーッ!!」

 

涙を流しながらも、エリスに声援を飛ばすマルガレーテとラウラ。

 

『2人供………』

 

「ほらね。エリスちゃんの仲間の人達はエリスちゃんの事を心配してるよ」

 

2人を見ながらエリスが呟くと、メビウスもそう言って来る。

 

『ミライ………』

 

キシャアアアアアアッ!!

 

しかしそこで、ゼルガノイド・イビルが咆哮を挙げ、メビウスに向かってソルジェント光線を放とうとする。

 

………が!!

 

光線を撃つ為の腕を十字に組むポーズを決める直前で………

 

ゼルガノイド・イビルがピタリと止まる!

 

キシャアアアアアアッ!?

 

困惑している様な咆哮を挙げながら、腕を完全に十字に組もうとするが、ピクリとも動かない。

 

『………コレ以上………お前の思い通りにはさせん………』

 

今までとは打って変わったエリスの力強い声が響て来る。

 

何と!!

 

彼女が僅かに主導権を奪い返した様だ!!

 

『私は………伯林華撃団の隊長………エリスだぁ!!』

 

そしてそう叫んだ瞬間!!

 

ゼルガノイド・イビルの身体から霊力が溢れ始める!!

 

キシャアアアアアアッ!?

 

その身体の大部分が降魔の組織で出来ているゼルガノイド・イビルは、体内から溢れて来る霊力に苦しみ、身体がドロドロと溶け始める。

 

「! 今だっ!!」

 

するとそこで、メビウスがメビウスブレスを構えると、そこから炎が溢れる!!

 

溢れ出て来た炎が、メビウスを包み込むと………

 

その身体が、炎をあしらった燃える様な赤い姿………

 

嘗て、地球で掛け替えの無い友情を結んだGUYSの仲間達との絆の象徴………

 

『メビウスバーニングブレイブ』となる!!

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

メビウスバーニングブレイブが気合の声を挙げると、その身体が燃え上がる。

 

「セヤアアアアアッ!!」

 

そしてその状態で、ゼルガノイド・イビルへと突撃すると、そのまま組み付く。

 

次の瞬間!!

 

メビウスバーニングブレイブの身体が大爆発を起こし、ゼルガノイド・イビル諸共に木っ端微塵となった!!

 

「!? エリスウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーッ!?」

 

「馬鹿なぁっ!? 自爆だとぉっ!! 何故そんな事をぉっ!?」

 

まさかのメビウスバーニングブレイブの自爆に、マルガレーテとラウラは言葉を失う。

 

しかし、次の瞬間………

 

爆発地点に光が収束を始めたかと思うと………

 

何と、メビウスバーニングブレイブの姿が再生した!!

 

「!?!?」

 

「何いいいいいィィィィィィィッ!? 生き返っただとおおおおおォォォォォォッ!?」

 

コレにはマルガレーテは絶句し、ラウラも信じられないモノを見る目となった。

 

「…………」

 

そんな2人を余所に、メビウスバーニングブレイブは、胸の前にまで上げていた右手の開く。

 

「う、うう………」

 

その掌の上にはエリスの姿が在り、軽く呻き声を漏らしていた。

 

「…………」

 

その姿を見たメビウスバーニングブレイブは、無言のまま頷くのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『超合成魔獣人 ゼルガノイド・イビル』

 

身長:58メートル

 

体重:5万トン

 

能力:ソルジェント光線、ビームスライサー、フラッシュサイクラー

 

初登場作品:ウルトラマンダイナ第49話『最終章Ⅰ新たなる影』

 

嘗てのテラノイドが変化したゼルガノイドの亜種。

 

スフィアの他に降魔とも融合している為、オリジナルのゼルガノイドよりも能力が上がっている。

 

外見的には色合いが紫がかった降魔の様な物となっており、背の突起物も降魔の翼になっている。

 

エリスを実質人質としたが、彼女が頑張りを見せた事で隙が生まれ、バーニングメビュームダイナマイトで倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『電脳魔神 デスフェイサー』

 

身長:77メートル

 

体重:9万6000トン

 

能力:デスシザース、デスシザーレイ、ガトリングガン

 

初登場作品:劇場映画『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』

 

TPCのキサラギ・ルイ博士を操っていた『宇宙植物獣人 モネラ星人』が『電脳巨艦プロメテウス』を改造して作り上げたロボット怪獣。

 

強力な武装に加え、ダイナのデータをインプットしていた事で勝利。

 

しかし、再戦では恐怖を乗り越えたダイナのストロングタイプでのゴリ押し戦法に圧倒され、最後は最終兵器のネオマキシマ砲をパンチで貫通されて破壊される。

 

そして、機能停止したところで投げ飛ばされて爆散した。

 

尚、今作に登場したものは、能力こそオリジナルと同等だが、動力の関係でネオマキシマ砲が未搭載となっていた。




新話、投稿させて頂きました。

メビウス登場からの逆転劇。

データを読まれたゼロとジードは、ビヨンドの能力でのゴリ押しと、まだデータの無かったマグニフィセントでデスフェンサーを撃破。

そしてゼルガノイド・イビルも、メビウスが必死の奮戦し、マルガレーテとラウラの心からの謝罪を受け、気迫を取り戻したエリスのアシストもあり、絆の炎の力『バーニングブレイブ』で撃破されます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター7『動き出した闇』

チャプター7『動き出した闇』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都市街地の入り口付近………

 

「お~い! 皆~!」

 

「あ、誠十郎さん! 無事だったんですね!」

 

戦闘を終えた花組の元へ手を振りながら現れた誠十郎に、さくらが安堵の声を挙げる。

 

「ああ、ゼロが助けてくれたんだ」

 

「ったく、無事だったのは良いけどよぉ………もうちょっとしっかりしてくれよな」

 

「ココのところ、神山さんの被撃墜率が高い気がします」

 

「隊長が真っ先にやられるなんてあってはならない………」

 

そう言う誠十郎に、初穂・クラリス・あざみが総ツッコミを入れる。

 

「うっ、済まない………」

 

その言葉を甘んじて受けるしかない誠十郎は首を垂れる。

 

「まあまあ、無事だったから良いじゃないですか」

 

そんな誠十郎をフォローするリク。

 

「…………」

 

一方アナスタシアは、何かを疑っている様な目を誠十郎に向けていたのだった。

 

「話は終わったかい?」

 

とそこへ、そう言う台詞と共に再度ミライの姿となったメビウスが、まだ気を失っているエリスをお姫様抱っこで抱き抱えたまま、マルガレーテとラウラを伴って現れた。

 

「! メビウスさん!」

 

「この姿の時はヒビノ・ミライだよ、朝倉 リクくん」

 

リクが声を挙げると、ミライは笑みを浮かべてそう返す。

 

「貴方も………ウルトラマンさんなんですね」

 

「そうだよ。ゼロと同郷のね」

 

「初めまして、ウルトラマンメビウスさん、基ヒビノ・ミライさん。お話はゼロさんから伺っています」

 

さくらに言葉にミライがそう返すと、唯一メビウスの事を知っていたクラリスがそう挨拶する。

 

「う………ううん?………」

 

とそこで、ミライに抱き抱えられていたエリスが意識を取り戻す。

 

「あ、気が付いた? エリスちゃん」

 

「………ミライ………!??!」

 

ミライが声を掛けると、完全に意識が覚醒したエリスは、自分が今、ミライにお姫様抱っこされている状態な事に気付き、一瞬で顔を真っ赤に染める。

 

「~~~~~っ!」

 

混乱したエリスは、降ろしてくれという事も出来ず、只々顔を真っ赤にしたまま、ミライの腕の中で縮こまるのだった。

 

「エリスさん! 無事で良かったです!」

 

と、そのエリスへ声を掛ける誠十郎。

 

「あ、ああ、神山………迷惑を掛けたな。済まない………そしてありがとう」

 

腐っても伯林華撃団の隊長であるエリス。

 

ミライにお姫様抱っこされたままながらも表情を引き締め、誠十郎にそう言う。

 

「お礼ならリクくんとゼロに言って下さい。恥ずかしながら、俺は役に立ってなかったですから」

 

エリスの言葉に、誠十郎はやや自虐気味に返す。

 

「………神山、そして花組の皆も聞いて欲しい」

 

「? ハイ?」

 

「「「「「??」」」」」

 

何だと?と思い、花組の視線がエリスに集まると………

 

「我々伯林華撃団は………華撃団大戦決勝戦の試合を放棄する」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「!? エリス!?」

 

「隊長っ!? 何をっ!?」

 

エリスの思わぬ言葉に、花組は勿論、マルガレーテとラウラも驚愕を示す。

 

「私達はもう君達に負けていた。強さだけではない………正しいと思った事を貫き通そうとする信念と、その身を犠牲にしてでも人々を守ろうとする精神でもな」

 

だが、エリスは吹っ切れた様な顔でそう続ける。

 

「それに今回の事でハッキリと分かった。WLOFに………ミスターGに最早理は一片たりと無い事がな」

 

「「…………」」

 

そこはエリスと如何意見なのか、目を逸らして口を紡ぐマルガレーテとラウラ。

 

「私は本国にその事を訴え、WLOFからの離脱………そしてウルティメイト華撃団への参加を要請する積りだ」

 

「エリスさん………」

 

「今度は共に戦おう………平和を守るものとして」

 

そう言って、誠十郎に向かって右手を差し出すエリス。

 

「! ハイ!」

 

誠十郎はその手を握り返し、両者はガッチリと握手を交わしたのだった。

 

「それじゃあ、僕は彼女を送って行くよ。詳しい話は後でね、リクくん(ゼロもね)」

 

(ったく、後でちゃんと説明しろよな)

 

リクにそう言い、ゼロにもテレパシーを送ると、ゼロが愚痴る様にそう返す。

 

「あ、ミ、ミライ………もし良ければ………伯林華撃団に逗留して言ってくれ。助けて貰ったお礼もしたい」

 

「うん、そちらの帝国華撃団さんの方ではもうリクくんがお世話になってるみたいだし、そうさせて貰おうかな」

 

そこでエリスがそう言うと、ミライは朗らかな笑みを浮かべてエリスの厚意を受け取る。

 

「!?」

 

そのミライの朗らかな笑みを見た瞬間!

 

エリスの胸が一層高鳴った!!

 

「それじゃあ、案内してくれるかな」

 

そう言って踵を返すと、伯林華撃団の拠点へ向かおうとするミライ。

 

「ミ、ミライ………その………つかぬ事を…………本当につかぬ事を聞くが………故郷に恋人が居たりするか?」

 

「「………えっ?」」

 

そこでそんな質問をミライにしたエリスに、マルガレーテとラウラが信じられないものを見る様な目を向ける。

 

「恋人? う~ん、そう言う関係の人は居ないかな?」

 

「! そ、そうか! 居ないか! 居ないのか! そうかそうか!」

 

ミライが居ないと返すと、途端に嬉しそうな様子を見せるエリス。

 

「ミライ! 我が伯林華撃団に心行くまで逗留してくれ! そうだ! 今日の夕食は君の好きな物にしよう!」

 

「良いのかい? それじゃあ、僕はカレーが良いなぁ」

 

「「…………」」

 

エリスとミライの遣り取りを傍から見ていたマルガレーテとラウラは完全に言葉を失っていた。

 

何故なら、今エリスが浮かべている表情は………

 

完全に『恋する乙女』のソレだったからだ。

 

「エ、エリスさんって、あんな人だっけ?」

 

「きっとミライさんが彼女を変えたんですよ、うふふ………」

 

一同を見送り、誠十郎もそんなエリスの様子に戸惑いを隠せず、只1人、ゼロに恋心にも似た好意を抱いているクラリスが、優しい笑みを浮かべていた。

 

「!! ああっ!!」

 

「!? うわっ!? 何だよ、さくら!?」

 

とそこで、さくらが突然大声を挙げ、初穂が驚く。

 

「伯林華撃団が決勝戦を放棄したって事は………私達、帝国華撃団が今回の世界華撃団大戦の『優勝』って事じゃないですか!!」

 

「今気づいたの?………」

 

さくらがそう言うと、あざみが呆れた様な言葉を漏らす。

 

「でも確かにその通りです。私達………華撃団大戦で優勝したんですね」

 

静かだが喜びを浮かべているクラリス。

 

「今回の華撃団大戦は色々とワケが違っていたけど………」

 

「でも、優勝は優勝………」

 

ややネガティブ気味な事を言うアナスタシアに、あざみがそう返す。

 

「だな。けど、嬉しいっちゃ、嬉しいけど………あんまし喜ぶ気にはなれねえぁ………」

 

今までの事を思い出し、やや遠い目をする初穂。

 

「そう言うな、初穂。俺達が優勝した事に意味は在る。WLOFではなく、ウルティメイト華撃団の名の元に、今度こそ本当の華撃団………平和の守り手が復活するんだ」

 

「そうだよ! 帝国華撃団も再興出来て、世界の華撃団も在るべき姿に戻るんだよ!!」

 

しかし、誠十郎がそう言い、唯一を喜びを見せていたさくらも同意する。

 

「そうですね………それは喜ぶべき事ですね」

 

「新しい世界華撃団構想で、きっと世界は良くなる」

 

クラリスとあざみもそう声を挙げる。

 

「…………」

 

しかし、アナスタシアだけは複雑そうな表情を浮かべていた。

 

「? アナスタシアさん? 如何かしたんですか?」

 

「えっ!? う、ううん………何でも無いわ」

 

それに気づいたリクが問い掛けると、アナスタシアは誤魔化す様な様子を見せる。

 

だが、その顔には一抹の憂いが在った。

 

「…………」

 

リクは何と言って良いか分からず、沈黙するしかなかった。

 

「あ、そうだ、神山隊長! 久しぶりに『アレ』、やりましょう!」

 

「おっ! 良いねぇ!!」

 

「そうだな。ココの所、ドタバタとした戦いが続いて、やる暇が無かったからな」

 

そこで、さくら・初穂・誠十郎がそう声を挙げた。

 

「リクさんも一緒にやりましょう」

 

「えっ? やるって、何をですか?」

 

「戦いを終えた花組の伝統………」

 

クラリスがリクを誘い、戸惑うリクにあざみがそう説明する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、行くぞ! せーの………」

 

「「「「「「「勝利のポーズ、決めっ!」」」」」」」

 

ポーズを決める花組に混じり、ドンシャインのポーズを決めているリクの姿が在った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

翌日に記者会見に臨んだエリスは、集まった報道陣を前に、世界華撃団大戦の決勝戦を放棄する事と、伯林華撃団もWLOFから離脱する事、そしてウルティメイト華撃団への参加を宣言。

 

独逸本国では、エリスの独断専行の行為に驚愕が走ったものの………

 

テラノイドの一件は独逸本国でも知れ渡っており、独逸国民の世論は、完全に反WLOFへと傾いていた。

 

それにより、遂に独逸政府もWLOFへの愛想を尽かし、これ幸いとばかりにエリスを支持し、WLOFからの離脱と、ウルティメイト華撃団への参加を決定。

 

帝国華撃団に優勝が決まり………

 

何より所属華撃団を全て失ったWLOFは、その存在意義を失い………

 

当初の宣言通りにウルティメイト華撃団へと下る事となったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

ジェネラルAの執務室………

 

「ぶるあああああぁぁぁぁぁぁ………やはりこうなったか。幻庵めぇ、詰めの甘い奴よぉ」

 

またもしくじった幻庵ことミスターGを詰るジェネラルA。

 

「まあ、良い。全ては戯れよぉ………」

 

だが、すぐさまそう切って捨てる。

 

「だが、余興もコレまでよぉ………夜叉ぁ」

 

「此処に………」

 

ジェネラルAが呼ぶと、その背後に夜叉が音も無く現れる。

 

「幻庵に教えてやれ………『帝鍵』の在り処をなぁ」

 

「畏まりました………」

 

夜叉はジェネラルAに向かって頭を垂れたかと思うと、闇に包まれて姿を消す。

 

「いよいよ始まる………この世の全てを闇へと包む時がぁ」

 

そう言って邪悪に笑うジェネラルAだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミスターGの執務室………

 

「終わりだ………全てお終いだ………」

 

執務机に突っ伏し、只管に嘆いているミスターG。

 

伯林華撃団が決勝戦を放棄した上、WLOFからの離脱を宣言した事で、遂にミスターGはコレまで築き上げて来た全てを失った………

 

最早その心は絶望一色だった………

 

「幻庵様………」

 

とそこへ、先程までジェネラルAの元に居た夜叉が現れる。

 

「! 夜叉ぁっ! 貴様ぁっ!! あの計画書は何だぁっ!? お陰で全てが台無しだぞっ!!」

 

途端に掌返しで夜叉を怒鳴りつけるミスターG。

 

見苦しい事この上ない。

 

「………『帝鍵』の在り処が分かりました」

 

「!? 何だとぉっ!?」

 

しかし、気にせずに放たれた夜叉の続く言葉で、ミスターGの顔に一気に生気が戻る。

 

「ほ、本当かっ!?」

 

「ハイ………帝国華撃団の天宮 さくら………彼女の持つ刀こそが『帝鍵』であると確認しました」

 

驚くべき情報をサラリと告げる夜叉。

 

何と!!

 

さくらの愛刀である母の形見………『天宮國定』こそがミスターG、そして米田達が探し求めていた『帝鍵』だと言うのだ。

 

「帝国華撃団のだと!? オノレェ、神崎 すみれめぇ! 知らぬなどと惚けおって!!」

 

プレジデントGだった頃、すみれに幾度と無く『帝鍵』について問い質し、知らぬ存ぜぬで返された事を思い出し、怒りを露わにするミスターG。

 

「………いや、待て………そもそも奴自身でさえも知らなかったのか? もし知っていれば、嘗ての仲間である旧華撃団メンバーの救出に動いている筈………」

 

しかしそこで、その可能性を思い至り、思案顔となる。

 

「兎も角、探し求めていた『帝鍵』がまさか帝国華撃団の手に在ろうとは………!? 待てよ!? 帝国華撃団と言えば………」

 

ミスターGは、今度は何かを思い出したかの様な表情となる。

 

「フ、フフフ………フハハハハハハハッ!! 漸く私にも運が向いて来たぞぉっ!!」

 

狂ったかの様に歓喜の笑い声を挙げるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっかり忘れていたが、お前に役に立ってもらう時が来た様だな………『アイスドール』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

アナスタシア「遂に帝国華撃団は世界華撃団大戦を制した………

 

もう落ち零れ華撃団などと言う者は誰も無い………

 

花組は立派な華撃団だわ………

 

けどそこは………

 

私の居る場所では無いみたい………

 

次回『新サクラ大戦』

 

第8話『宿命を塗り替えることが使命』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

星の導きには逆らえない………導かれるままに輝くしかないのよ」

 

リク「僕はそんなの信じない! 運命なんて! 変えてやれば良い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第7話・完




新話、投稿させて頂きました。

無事エリスを救出した花組とゼロ達。
エリスがミライ(メビウス)に惚れてしまうと言う珍事があったりしたものの(笑)………
伯林華撃団は決勝戦の放棄を決め、帝国華撃団が華撃団大戦の優勝者となった!

しかし………
既にジェネラルAの新たな陰謀は動き始めていた。
何と!
奴は既に帝鍵の在り処と正体を知っていたのです!
一体如何やって知ったのか?
コレは後々の重要なポイントです。

そして次回はいよいよアナスタシア回。
彼女の持つ事情を考慮し、後回しとなっていましたが、漸くとなりました。
予告からも分かる通り、彼女のストーリーでは、リクが重要なキャラになります。
一体如何絡むのか?
お楽しみに。

これからも、よろしくお願いします。


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第8話『宿命を塗り替えることが使命』
チャプター1『優勝記念公演』


第8話『宿命を塗り替えることが使命』

 

チャプター1『優勝記念公演』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三回世界華撃団大戦は帝国華撃団の優勝………

 

即ち、ウルティメイト華撃団の勝利で終わった。

 

所属華撃団を全て失ったWLOFは、その存在意義を失い、ウルティメイト華撃団の傘下と言う名の、事実上解体となった。

 

今、世界の華撃団は、ウルティメイト華撃団の下………

 

真の平和の守り手としての道を歩み始めた。

 

だが、それと同時に………

 

強大な闇の力が、遂に動き出すのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・中庭………

 

立食パーティーの用意がされていた中庭に、クラッカーの炸裂音が鳴り響く。

 

「「「「「「「「「「優勝おめでとうぉーっ!!」」」」」」」」」」

 

帝劇のスタッフ一同が、パーティーの主役である花組に向かって、お祝いの言葉を掛けながら更にクラッカーを鳴らす。

 

「ア、アハハ………」

 

「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

帝劇を挙げての祝宴に、誠十郎は若干萎縮し、さくらはペコペコと頭を下げている。

 

「何かむず痒くなるぜ………」

 

「ココまでお祝いされてると、逆に委縮してしまいますね」

 

初穂も身体をボリボリと掻いており、クラリスも若干苦笑いを浮かべていた。

 

「…………」

 

「? アナスタシア、如何かした?」

 

そんな中で、1人何処か沈んだ表情をしていたアナスタシアに気付いたあざみが声を掛ける。

 

「………ううん、何でも無いわ」

 

しかし、アナスタシアは若干影が在る笑みを浮かべれそう返す。

 

「…………」

 

気になったものの、深くは追及出来ないあざみだった。

 

「ホラホラ、皆。今日の主役は君達なんだから、もっと大いに盛り上がってくれ」

 

「イデさん………ハイ! ありがとうございます!」

 

とそこで、普段から陽気なイデがそう言い、誠十郎がそう返した事で、さくら達の緊張も解れ始め、優勝記念パーティーを楽しみ始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神山くん」

 

「あ、神崎支配人」

 

パーティーを楽しんでいた誠十郎に、すみれが声を掛けて来た。

 

「先ずは改めて、優勝おめでとう。貴方のお陰で、帝国華撃団は遂にココまで来れたわ」

 

「自分だけの力ではありません。花組や帝劇の皆、そして神崎支配人が居てくれたからこそです」

 

『オイオイ、俺も忘れんなよ』

 

すみれの労いの言葉に、誠十郎がそう返していると、ゼロが割り込んで来る。

 

「分かってるって………ゼロ、本当にありがとう」

 

『へっ、良いって事よ』

 

誠十郎は心からゼロに感謝を伝え、ゼロは何時も通りに返す。

 

「けど、まだ油断は出来ませんわ」

 

とそこで、すみれは表情を険しくした。

 

「? 支配人? それは如何言う事ですか?」

 

「ジェネラルA………そしてミスターGの事が気掛かりですわ」

 

『確かにな。向こうから言い出した条件とは言え、随分アッサリと引き下がったからな』

 

誠十郎が訪ねると、すみれはジェネラルAとミスターGの事を言い、ゼロも同意する。

 

元々華撃団の解散云々は向こうが先に言い出した事ではあるが、あれ程に傍若無人な態度を見せていたジェネラルAだったが、帝国華撃団の優勝をアッサリと認めた。

 

そのアッサリさが却って不気味であり、何か裏が有るのではないかと思わせた。

 

「言われてみれば………」

 

『それに、この地球に怪獣や宇宙人達を呼び込んでる奴の正体もまだ謎のままだしな』

 

「まだ戦いは終わっていない………そんな予感がしてなりませんの」

 

そこですみれは、懐からエボルトラスターを取り出してそう呟く。

 

そんなすみれの予感を肯定するかの様に、エボルトラスターのクリスタルが淡く発光した。

 

「支配人………」

 

「神山くん。油断しないでね………『治に居て乱を忘れず』、嘗て米田司令は大尉にそう言っていたそうよ」

 

「ハイ。気を付けます」

 

すみれのその言葉を受け、誠十郎も表情を引き締めるのだった。

 

「頼むわね………それと、もう1つ大事な事が有るわね」

 

「ハイ、それは………」

 

「『優勝記念公演』ですね!」

 

とそこで、そう言う言葉と共にさくらが姿を見せ、初穂・クラリス・あざみ・アナスタシアもやって来た。

 

「皆………」

 

「ええ、帝国華撃団の世界華撃団大戦優勝を記念した公演………上海華撃団と倫敦華撃団、それに伯林華撃団を交えての合同大規模公演になりますわ」

 

集まった花組を前にそう語るすみれ。

 

参加する華撃団が、壊滅し再建中である莫斯科華撃団を除いた、帝国華撃団と対戦した面子なのには勿論理由が有る。

 

嘗ては敵対した者達が共同で公演を開く事で、過去の蟠りを捨て、強大な脅威に立ち向かう為に手を取り合っているという事をアピールする為だ。

 

「この公演で、ウルティメイト華撃団による真の世界華撃団構想が本格的にスタートするワケになる」

 

「ああ………その通り!」

 

「皆! 気合入れて行きましょう!」

 

「「「「おーっ!!」」」

 

誠十郎の言葉に初穂が同意し、さくらが呼び掛けると、初穂・クラリス・あざみが拳を握った右手を突き上げる。

 

「ふふっ………」

 

その光景に、アナスタシアも微笑ましそうに笑いを零す。

 

「あざみ、頑張る!」

 

「戦うだけがわたし達じゃありません! この日の為に、皆練習を頑張って来たんです。やりましょう! ね、アナスタシアさん!」

 

あざみの後に、さくらがそう言いながら、アナスタシアに声を掛ける。

 

「………ええ、そうね。頑張りましょう」

 

一瞬間を置きながらも、アナスタシアがそう返す。

 

「?………」

 

その間が妙に気になり、首を傾げるさくら。

 

「そう言えば、優勝記念公演の配役はもう決まってるんですか?」

 

「やっぱ主役はアナスタシアだよな」

 

とそこで、クラリスがそう尋ね、初穂がアナスタシアを見やる。

 

「今回の主役にふさわしいのは『私』じゃない………『さくら』だと思うわ」

 

しかしそこで、何と!

 

アナスタシアが主役を辞し、さくらを主役に推して来た!

 

「「「「!? えええええっ!?」」」」

 

アナスタシアからの思わぬ返しに、当のさくらを含め驚きの声を挙げる初穂達。

 

「わ、わたしが主役って………如何してですか、アナスタシアさん!」

 

「貴方はゼロを初めてとして、様々な出会いと別れ、そして戦いを得て………自分だけの強い心を見つけた。その心の力を見せるのが、ウルティメイト華撃団の旗上げである優勝記念公演に必要だと思うからよ」

 

戸惑うさくらに、アナスタシアはそう説明する。

 

「確かに………そうですわね」

 

すみれも同意して来る。

 

「で、でも………わたしに、出来るでしょうか………?」

 

「大丈夫よ。貴方ならきっと素晴らしい舞台に出来る」

 

「如何して、ですか………」

 

「だって、貴方は………私の一番弟子なんですもの」

 

「アナスタシアさん………」

 

『何だかんだ言って、アイツもすっかり師匠面が板について来やがったな』

 

そんな遣り取りを交わすさくらとアナスタシアを見て、ゼロは自身の師であるレオの事を思い出す。

 

「………はい! やります! やらせて下さいっ、わたしに!!」

 

そこで、さくらは覚悟と決意を決めた表情となり、そう宣言した。

 

「アナスタシアさんに教えて貰った全てを………この公演で、出して見せます!!」

 

「「「「「「「「「「おおぉ~~~っ!!」」」」」」」」」

 

途端に、周りで聞いていた帝劇スタッフから歓声と拍手が送られる。

 

「わわっ!? ど、どうも! どうもありがとうございます!」

 

さくらはあわあわしながら、スタッフ達に向かってペコペコと頭を下げる。

 

「良し、主役はさくらに任せよう」

 

「頼みましたわよ、天宮さん。私も期待しておりますわ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

誠十郎とすみれもそう言って来て、さくらはまたも深々と頭を下げる。

 

「…………」

 

と、そんなさくらを横目に、アナスタシアがその場から離れて行く。

 

「? アナスタシア? 何処行くに?」

 

「ちょっと風に当たって来るわ………」

 

あざみが訪ねるとそう返し、アナスタシアはパーティー会場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇正面………

 

「ふう~~………」

 

玄関前に佇み、大きく息を吐きながら空を見上げるアナスタシア。

 

(………すっかり此処(帝劇)に馴染んでしまったわね)

 

空を見上げたままそう思い遣る。

 

(そしてそれを良いと思ってしまっている自分が居る………でも、私は………)

 

そう思った瞬間に、アナスタシアの表情には影が差す。

 

「あの………アナスタシアさん、ですよね?」

 

とそこで、1人の女性が、アナスタシアに声を掛けて来た。

 

「………?」

 

「は、初めまして! いつも、舞台、観てます!」

 

アナスタシアが怪訝な顔で女性を見やると、ファンである事を明かす女性。

 

「ありがとう。嬉しいわ」

 

「あ、あの、コレを………」

 

するとそこで、女性は1枚の封筒をアナスタシアに差し出した。

 

「それから………サインを頂けますか!」

 

続けて、アナスタシアのブロマイドを取り出し、そう強請る。

 

「ええ、お安い御用よ」

 

手慣れた手つきで、ブロマイドにサインを書くアナスタシア。

 

「わあ………ありがとうございます! それじゃあ!」

 

サイン入りになったブロマイドを大事に抱き抱え、女性はスキップしそうな勢いで去って行った。

 

「ふふふ………ファンレターかしら?」

 

アナスタシアはその姿に微笑ましさを覚えながら、封筒を開けて中の手紙を検める。

 

「!? コレはっ!?………」

 

しかし、その内容を読んだ瞬間、驚愕に目を見開いた。

 

「…………」

 

最後まで読み進めたかと思うと、力無く手紙ごと腕を垂れ下げ、俯くアナスタシア。

 

(………如何して今更)

 

手紙を握っている手に力が入り、皺が寄る。

 

「アナスタシアさん」

 

「!?」

 

と、そこで再び声を掛けられ、アナスタシアは慌てて手紙を両手で握り潰す。

 

「如何したんですか? 皆戻って来るのを待ってますよ?」

 

声を掛けて来たのはリクだった。

 

如何やら、中々戻って来ないアナスタシアを探しに来た様だ。

 

「リク………態々ありがとう」

 

「? それ、手紙ですか?」

 

アナスタシアは取り繕って返すが、リクはアナスタシアの手の中で握り潰されている手紙に気付く。

 

「!? ああ、コレは、その………な、何でも無いよの!」

 

途端に、彼女にしては珍しく慌てた様子を見せる。

 

「ゴメンなさい。すぐに戻るわ」

 

そして逃げる様にして、リクの脇を擦り抜けて、帝劇内へと戻って行った。

 

「…………」

 

そんなアナスタシアの様子を、リクは不審そうな目で見やる………

 

「…………」

 

更にその様子を盗み見る様にしていた謎の影があったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

帝国華撃団の優勝を記念した他国華撃団との合同公演。
原作では、アナスタシア回はクリスマス公演の話だったのですが、クリスマスまで世界華撃団大戦が続いているのは幾ら何でも長過ぎると言う意見をチラホラ見かけて、確かにその通りだと思い、優勝記念公演と言う形を取りました。
クリスマス公演は、後日談に描写しようと思います。
クリスマスと言えば、ウルトラシリーズでも色々ありましたからね。

お祝いムードの中で、アナスタシアに不穏な影が………
果たして………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『スタァの重み』

チャプター2『スタァの重み』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・玄関前………

 

「パオォォォーン! ゲキゾウくんの参上だぁ!」

 

久々にゲキゾウくんの姿となった誠十郎が、優勝記念公演の宣伝に精を出していた。

 

「あ! ゲキゾウくん!」

 

「皆! 帝劇で近日! 華撃団大戦の優勝を記念した公演が開かれるゾウ!」

 

ゲキゾウくんの姿を見て近寄って来た少女が出たのを皮切りに人が集まって来て、ゲキゾウくん(誠十郎)は宣伝を開始する。

 

「上海歌劇団、倫敦歌劇団、そして伯林歌劇団も参加する一大公演だゾウ! 是非、楽しみにして欲しいゾウ!!」

 

「へえ………他の歌劇団も参加するのか。しかも花組と戦った歌劇団ばかり………過去を乗り越えて手を取り合うって事か。素晴らしいな」

 

「優勝記念公演………私、絶対に観に来るわ!」

 

他国の歌劇団も参加するという事に、帝都市民達は興味津々であり、皆楽しみで目を輝かせている。

 

「よろしくお願いします! 帝国歌劇団・花組、一生懸命頑張ります!」

 

とそこで、そう言い台詞と共に、さくらが姿をみせた。

 

「! あ、天宮 さくらさん!? ほ、本物!?」

 

「あのっ! あのっ、ファンです! 次の公演も応援しています!」

 

まさかのさくらの登場に、帝都市民達は興奮した様子でさくらの周りに集まり出す。

 

「応援ありがとうございます! 優勝記念公演も、是非お願いしますね!」

 

『アイツもすっかり一端のスタァだな』

 

(さくらも宣伝を手伝ってくれるのか。良し、俺ももっと頑張るぞ!)

 

優勝記念公演の宣伝を手伝ってくれているさくらの姿を見て、ゼロが感慨深そうにし、ゲキゾウくん(誠十郎)も奮起するのだった。

 

「優勝記念公演は最高の公演になるゾウ! お楽しみにだゾウ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

「ふう………皆、応援してくれてる。良かったね、ゲキゾウくん!」

 

一頻りの宣伝を終えたさくらが、満足そうにゲキゾウくん(誠十郎)に声を掛ける。

 

「パオォォォーン!(ありがとう、さくら)」

 

ゲキゾウくんとしてのリアクションをしつつ、心の中でさくらに礼を言う誠十郎。

 

「………ねえ、ゲキゾウくん。ちょっとだけ聞いてくれる?」

 

(ん? 如何したんだ?)

 

とそこで、さくらがそんな事を言って来て、誠十郎はゲキゾウくんの中で首を傾げる。

 

「わたしね………優勝記念公演の主演になったの。それはとても嬉しいんだけど………でも、すっごく怖い」

 

やがて、さくらはそう語り出す。

 

「本当に………わたしが主演で良いのかな? お客さんに、笑われたりしないかな?」

 

(さくら………)

 

「この優勝記念公演は、単純なお祝いの公演だけじゃなく、ウルティメイト華撃団の本格的な始まりを告げるもの………もし、何か失敗しちゃったら………」

 

吐露する様にそう言うさくら。

 

(さくら………元気付けてやりたいが、しかし、今の俺はゲキゾウくんだ………)

 

さくらを元気付けたいと思う誠十郎だが、今はゲキゾウくんに変身している状態なので、如何したものかと頭を捻る。

 

(………いや、それでも出来る事は有る!)

 

しかし、すぐにそう思い直すと………

 

「パオオオオオオン!」

 

ゲキゾウくんとして嘶いた。

 

「ゲ、ゲキゾウ………くん?」

 

突如嘶いたゲキゾウくんに、さくらは戸惑いの色を浮かべる。

 

そんなさくらの頭に、ゲキゾウくんは手を置き、優しく撫で始めた。

 

「あ………」

 

「そんな顔してちゃ駄目だゾウ。さくらちゃんは帝劇のスタァなんだから、笑ってなきゃあ」

 

「………ふふっ、もしかして、元気付けてくれるの? ありがとう」

 

ゲキゾウくんの意図を察したさくらが笑みを浮かべる。

 

「そうだよね。不安なのは当たり前………それを乗り越えてこそ、スタァになれる! しっかりしろ、天宮 さくら! 前を見ろ! 限界を………超えろぉぉぉぉぉぉ!!」

 

そして自らを鼓舞する様に叫び声を挙げた。

 

「ふう………コレで、良し! 何か、元気出て来たぞー!」

 

すっかり元気を取り戻した様子で、右手で拳を握り、天へと突き上げるさくら。

 

「うん! 後は、剣の稽古で邪念を払うべしっ! それじゃ、ゲキゾウくん。わたしは行くね! バイバイ!」

 

最後にゲキゾウくんに手を振ると、さくらは帝劇の中へと戻って行った。

 

(さくら………君は強いな。ははっ、本当に大したものだよ)

 

『アレでこそだな。にしても、誠十郎………励ましにパオオオオオオン!はねえんじゃねえのか?』

 

それを見送ったゲキゾウくん(誠十郎)に、ゼロがそうツッコミを入れて来る。

 

(し、仕方ないだろう! 今の俺はゲキゾウくんなんだから!)

 

『なら、今度はちゃんと神山 誠十郎として励ますんだな』

 

(分かってるって………)

 

更にそう会話を交わすと、ゲキゾウくんの変身を解き、誠十郎の姿に戻る。

 

(剣の稽古をするって言ってたな………様子を見に行くか)

 

そして、さくらを追って、帝劇の中へと戻って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・中庭………

 

(お、居た居た………)

 

中庭にて木刀を振っているさくらの姿を発見する誠十郎。

 

(………ん?)

 

するとそこには、先客の姿が在った。

 

「…………」

 

ベンチに腰掛けたアナスタシアが、食い入る様に木刀を振るうさくらの様子を見ている。

 

『アナスタシアじゃねえか』

 

「何をしてるんだい?」

 

そのアナスタシアに声を掛ける誠十郎。

 

「さくらの練習を見ていたの………綺麗な、迷いの無い剣をね」

 

「………アナスタシア?」

 

意味深な事を言うアナスタシアに、誠十郎が首を傾げると、彼女はベンチから立ち上がる。

 

「ごめんなさい。邪魔しては悪いから、もう行くわ」

 

そして、逃げる様に中庭から去って行った。

 

『何だ、アイツ?』

 

「アナスタシアさん………」

 

その様子をゼロが不信がり、さくらも気付いて心配そうな瞳を向けていた。

 

「アナスタシアさん、何かあったんでしょうか?」

 

そう誠十郎へと声を掛けてくるさくら。

 

「ん~~………後で話でもしてみるか」

 

原因が分からない誠十郎は、兎も角話を聞いてみようと言う。

 

「それはそうと、さくらの方は大丈夫か? 主役をやる事になったけど………」

 

「不安が無いって言うと、嘘ですよね。でも………誠十郎さん。わたしが主役で………本当に大丈夫だと思いますか?」

 

まだ不安が拭い切れていない様子で、誠十郎にそう尋ねるさくら。

 

「さくらなら、大丈夫さ。きっと今までで1番の公演になる!」

 

誠十郎は迷い無くそう返す。

 

「うっ………嬉しいけど、流石に重圧で苦しく………」

 

しかしさくらはプレッシャーを感じてしまう。

 

「ははっ、流石のさくらでも、そんな風になるんだな」

 

「当たり前ですよ。わたしだって、普通の女の子なんですから」

 

「そうだったな。ごめんごめん」

 

心外だと言うさくらに、軽い調子で謝罪する誠十郎。

 

「いえ、でも、誠十郎さんと話してたら、何だか勇気が湧いてきました! ありがとうございます、誠十郎さん! わたし………頑張ります!」

 

そこで何時もの調子を取り戻したさくらが、誠十郎に礼を言う。

 

『それでこそだぜ』

 

「その意気だ。され、それじゃ俺は………アナスタシアの様子でも見て来るよ」

 

「………はい。何だか、元気が有りませんでしたよね」

 

先程のアナスタシアの様子を思い出しながら言うさくら。

 

「心配するのは分かるけど、ココは俺に任せてくれ。さくらは、自分の稽古をしっかりとする事。主役なんだからな!」

 

「………はい! 分かりました、誠十郎さん!」

 

しかし、誠十郎にそう言われ、自分の稽古へと戻るのだった。

 

そして、誠十郎はアナスタシアを探しに、中庭を後にする………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・中庭に通じる扉前………

 

「さくらも心配していたが………本当にアナスタシアは如何したんだろう?」

 

『アイツがあんな姿を見せるなんて、初めてじゃねえか?』

 

誠十郎が先程のアナスタシアの様子を思い出していると、ゼロもそう言って来る。

 

「ちゃんと話してくれれば良いんだが………ん?」

 

とそこで、その当のアナスタシアの姿を、2階へ通じる階段前で見つける誠十郎。

 

その前にはクラリスの姿も在った。

 

「あの、アナスタシアさん。台詞合わせ、一緒にお願い出来ませんか? 脚本で少しイメージが掴み難い所が有って………」

 

「ええ、良いわよ。私で力になれるなら」

 

「ありがとうございます。それじゃあ、資料室へ行きましょう」

 

クラリスに台詞合わせに誘われ、共に2階の資料室へと向かうアナスタシア。

 

(資料室か………)

 

『すぐに行こうぜ、誠十郎』

 

(ああ………)

 

すぐさまにその後を追い、資料室へと向かう誠十郎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・資料室………

 

誠十郎が資料室へと入ると、すぐに台詞合わせをしているアナスタシアとクラリスの姿を確認する。

 

「私達が諦めたら、子供達はどうなるの!? あの子たちは私達の事を信じてる!! ねぇ! 姉さん!!」

 

クラリスが自分の台詞を言い、アナスタシアの台詞を待つ。

 

「…………」

 

しかし、アナスタシアはぼんやりとしている。

 

「………あの、アナスタシアさん? 次はアナスタシアさんの台詞です」

 

「え………? あ、ごめんなさい」

 

クラリスに指摘され、漸く我に返るアナスタシア。

 

「何処か調子が悪いんですか? さっきから、集中出来ていない様ですけど?」

 

「………何でもないのよ。ごめんなさい」

 

心配そうに尋ねるクラリスだが、アナスタシアは何でも無いと返す。

 

『オイオイ、本当にらしくねえぜ』

 

「アナスタシア………」

 

ゼロもそう言う中、誠十郎はアナスタシアに声を掛ける。

 

「………キャプテン」

 

「君が間違えるなんて、珍しいな。えっと………」

 

『考えられる原因としちゃあ、疲れてるってのが妥当だが………』

 

「(そうかも知れないな)皆の指導もしていて大変だし………少し休んだ方が良いんじゃないか?」

 

何処か疑問気なゼロの言葉を受けつつ、アナスタシアにそう言う誠十郎。

 

「………そうね。その方が良いのかも………」

 

「アナスタシアさん………」

 

それを受け入れたアナスタシアの様子を見て、クラリスが心配そうな表情を浮かべる。

 

「………ごめんなさい。今日はもう休ませてもらうわ」

 

そう言うと、アナスタシアは何処か力無い様子で資料室を後にした。

 

「………アナスタシアさん、何かあったんでしょうか?」

 

「そうだな………ちょっと心配だから様子を見て来るよ」

 

「お願いします、神山さん」

 

そして再度アナスタシアを追い、誠十郎も資料室を後にするのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

久々にゲキゾウくんとなって優勝記念公演の宣伝に精を出す誠十郎。
さくらも手伝いに現れるが、主役になった事にプレッシャーを感じている事を吐露する。
ゲキゾウくんと誠十郎としての励ましでプレッシャーを撥ね退けるが、今度はアナスタシアの様子がおかしい。
果たして、彼女に一体何が?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『アナスタシアの憂鬱』

追記

次回1月1日は通常通りに更新致します。


チャプター3『アナスタシアの憂鬱』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・アナスタシアの部屋の前………

 

(アナスタシア………部屋に居るかな?)

 

調子が悪そうだったアナスタシアの様子を窺う為、部屋の前までやって来た誠十郎。

 

そこへ………

 

「アレ? 神山さん?」

 

リクが姿を現した。

 

「リクくん。如何したんだ?」

 

「アナスタシアさんの様子がおかしいってさくらさんから聞いたんで、ちょっと気になって」

 

リクも以前、帝劇の玄関前で、何者かの手紙を受け取り、明らかに様子がおかしかったアナスタシアの姿を目撃していた為、今回の事が気になって見に来た様だ。

 

「そうか………兎に角、本人と話してみよう」

 

そう言うと、誠十郎はアナスタシアの部屋の扉をノックした。

 

「………何方かしら?」

 

中からアナスタシアのやや覇気の無い声が返って来る。

 

「俺だ、アナスタシア。リクくんも居る。少し話をさせてくれないか?」

 

「キャプテン、リク………ごめんなさい。今は独りにしておいて欲しいの」

 

話がしたいと言う誠十郎だったが、アナスタシアは力無く拒否する。

 

「そんな! 放ってなんかおけませんよ!」

 

「何か………悩みが有るんじゃないか?」

 

しかし、リクが食い下がり、誠十郎もそう言葉を続けた。

 

「全く、いつも強引ね、キャプテンは。リクも………分かったわ。入って頂戴」

 

アナスタシアは少し呆れた様な様子を見せると、入室を許可する。

 

「失礼するよ」

 

「お邪魔します」

 

誠十郎とリクが入室すると、部屋の中心に佇んでいたアナスタシアが振り返る。

 

(アナスタシアさんの部屋………何だかちょっと殺風景だな)

 

初めてアナスタシアの部屋に入ったリクは、必要最低限な物しか置いてない様に見える部屋の様子にそんな感想を抱く。

 

(? アレは?………)

 

だからこそ、唯一の私物と思われる星図と天球儀に目が行った。

 

「部屋まで押しけてしまって、すまない」

 

そこで、アナスタシアの元へ近づきながら、押しかけた事を詫びる誠十郎。

 

「だけど、如何にも気になって。今日の君は、何処か様子がおかしい」

 

「…………」

 

続く誠十郎の言葉に、アナスタシアは表情を曇らせる。

 

「………隠し通せそうにないわね」

 

やがて、アナスタシアは腹を括った様に話し出した。

 

「ごめんなさい、キャプテン。私………帝国歌劇団を辞めるわ」

 

「!? な、何だって!?」

 

「ええっ!?」

 

アナスタシアの口から出た意外過ぎる言葉に、誠十郎とリクは揃って驚愕する。

 

「そんな!? 如何して突然!?」

 

「帝劇が嫌いになったのか?」

 

「………いいえ。そんな事、絶対に無い」

 

誠十郎のその言葉をすぐさま否定するアナスタシア。

 

「帝国歌劇団の事は、気に入ってる。でもね、仕方ない事もあるのよ」

 

「それじゃ納得出来ませんよ」

 

「………理由を教えてくれ」

 

そう言うアナスタシアだが、当然リクは納得出来ず、誠十郎も理由を問い質す。

 

「私を迎えたいと………必要だと。そう言ってくれているところがあるから」

 

「他の劇団から、スカウトされたんですか?」

 

「それは、俺達だって同じだ! 君だって、分かってる筈だろう!!」

 

「………ありがとう。でもね、私は1つの所に、居られない女。これは『運命』なのよ………星の導きに、人は逆らう事は出来ない」

 

アナスタシアは、机の上に置かれていた天球儀に視線を向けながらそう言う。

 

「!」

 

『運命』と言う言葉を聞いたリクが顔色を変える。

 

「アナスタシア………」

 

決意が固い様子のアナスタシアに、誠十郎は説得は無理かと思い始めたが………

 

「僕はそんなの信じない!」

 

「!? リク!?」

 

「!?」

 

突然リクが声を荒げ、誠十郎とアナスタシアは驚く。

 

「運命なんて! 変えてやれば良い!!」

 

(リク………)

 

そう叫ぶリクの姿に、ゼロはサイドスペースで彼と共に戦っていた日々を思い出す。

 

リクにとって、『運命』という言葉は様々な意味で因縁の有る言葉なのだ。

 

「リク………強いのね、貴方は。けど、誰もが貴方みたいに生きられるワケじゃないの」

 

何処か達観している様な笑みを浮かべて、アナスタシアはリクにそう返す。

 

「そんなの!………」

 

「止せ、リク」

 

尚も何かを言おうとしたリクの肩を、誠十郎が掴む。

 

「神山さん! でも………」

 

「彼女には彼女の事情がある」

 

「!………」

 

そう言われて、リクは納得が行かないまま黙り込む。

 

「アナスタシア………だけど、これだけは覚えておいて欲しい。帝国歌劇団は、君を何時までも待っている。だって、君はもう帝劇の仲間、家族なんだから」

 

「! キャプテン………」

 

「この帝劇を君の家だと思って、何時だって帰って来てくれて良い」

 

「…………」

 

アナスタシアは、誠十郎のその言葉に俯いて沈黙する。

 

「アナスタシア?………」

 

「………ありがとう。ありがとう………キャプテン」

 

しかし、すぐに顔を挙げて、誠十郎に向かって心から礼を言う。

 

だが、その時に浮かべていた笑みには………

 

何処か悲しみの色が有った………

 

「………何時まで、此処に居られるんだ?」

 

それが気になりつつも、誠十郎はアナスタシアにそう尋ねる。

 

「優勝記念公演までよ。それが、私の花組としての最後の公演になるわ」

 

「そうか。じゃあ、それまでは………」

 

『待て、誠十郎。お客さんだぜ』

 

「「「「アナスタシア(さん)!」」」」

 

とそこで、ゼロがそう言うと、さくら・初穂・あざみ・クラリスが、部屋の中へ飛び込んで来た。

 

「み、皆………また、盗み聞きしてたのか」

 

飛び込んで来たさくら達の姿を見て、誠十郎が呆れた様に言う。

 

「そんなこたあ、如何だって良い! 水くせえじゃねぇか、アナスタシア!」

 

「アナスタシアさんが、世界のスタァですから、帝劇が独り占め出来ないのは分かります」

 

初穂がそう切り出すと、クラリスが続けてそう言う。

 

「けどよ、何処にいてもアタシ達は仲間だからさ………そんな悲しい顔、するんじゃねえよ」

 

「里の掟、8条。仲間は家族。離れていても心は1つ」

 

今度はあざみが印を結ぶ様な仕草をしながらそう言う。

 

「そうです。私達はずっと………心で、繋がっているんです」

 

「貴方達………」

 

「優勝記念公演は、一緒に出来るんですよね? だったら………それまで、わたし達を鍛えて下さい!」

 

動揺を見せるアナスタシアに、さくらもそう言い放つ。

 

「アナスタシアさんが居たから、わたし達は、ここまで来られた。アナスタシアさんを見送る最高の舞台を………わたし達全員で、作りたいんです!!」

 

「…………馬鹿ね、貴方達………私なんかに、こんな………こんな………」

 

若干涙声になったアナスタシアは言葉に詰まる。

 

「アナスタシア………」

 

「こんな気持ちは初めてだわ。自分でなく、全員で成功させたいなんてね………良いわ! 全力でついて来なさい! 最高の舞台を………作り上げるわよ!!」

 

しかし、すぐに調子を戻し、さくら達に向かってそう言う。

 

「「「「ハイ!!」」」」

 

それに対し、さくら達は全員力強く返事を返し、頷いて見せる。

 

「…………」

 

だがリクだけは、最後まで何処か納得が行かない様子であった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナスタシアが帝劇を去ると言う突然の話だったが………

 

さくら達は優勝記念公演をアナスタシアを見送る舞台にしようと一層稽古に熱を入れた。

 

そんな中………

 

上海、倫敦、それに伯林華撃団が帝劇へと集合。

 

いよいよ合同での稽古を始める事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・サロン………

 

顔合わせで各華撃団メンバーが集結し、サロンはやや手狭な状態となっていた。

 

「さくら、久しぶり! 元気だった?」

 

「ハイ! ユイさんも元気そうで何よりです!」

 

「お~い! 私も忘れないでくれよ」

 

「ランスロットさん! お久しぶりです」

 

久しく会うユイとランスロットの2人に挨拶を交わすさくら。

 

「まさかお前等が本当に優勝するとはなぁ………大したもんだぜ」

 

「へへっ、まあそれ程でもねえけどなぁ」

 

優勝を素直に賞賛するシャオロンに、初穂が照れ臭そうに頭を掻く。

 

「帝劇の舞台の脚本は君が書いているそうだね。舞台俳優をしながら脚本家まで務めるなんて、凄いじゃないか」

 

「きょ、恐縮です………」

 

アーサーも、舞台俳優と脚本家を務めているクラリスに賞賛を送る。

 

「神山隊長。その節は大変世話になった。改めて礼を言う………ありがとう」

 

「お礼ならさくら達やゼロ達に言って下さい。恥ずかしながら、俺はあんまり役に立ってなかったですから」

 

テラノイドの件で改めて礼を言うエリスにそう返す誠十郎。

 

「「…………」」

 

そんな和気藹々としている一同の中で、気まずそうに隅に位置取っているマルガレーテとラウラ。

 

まだ若干の蟠りが有る様だ。

 

「ニン!」

 

と、そんな2人の前に、あざみがスッと降り立つ。

 

「!?」

 

「ぬおおっ!? ヤーパンニンジャ!? 東洋の神秘!!」

 

突然現れたあざみに、驚くマルガレーテとラウラ。

 

「…………」

 

あざみはマルガレーテとラウラの事をジッと見つめる。

 

「な、何よ………何か文句でも有るの? ならハッキリと言いなさいよ」

 

ついそんな態度を執ってしまうマルガレーテ。

 

一連の事で、帝国華撃団に負い目は感じているものの、生来の性格ゆえに、素直になれないで居た。

 

「………聞きたい事が有る」

 

「何よ………?」

 

「独逸には………国旗の覆面をしたゲルマン忍者が居るって本当?」

 

「「何だソレ(は)!?」」

 

素っ頓狂なあざみの質問に、マルガレーテとラウラは思わず声を荒げる。

 

「そんなの聞いた事ないわよ!」

 

「そう………」

 

マルガレーテがそう返すと、落ち込んだ様子を見せるあざみ。

 

「あ、えっと、その………」

 

「………何ちゃって。忍者ジョーク」

 

「! バッカじゃないの!!」

 

そのままワイワイと盛り上がる始める3人。

 

如何やら先程の質問は、あざみなりの気遣いだった様だ。

 

「ホラ、2人供。あざみちゃんが仲良くしたいみたいだよ。握手握手」

 

「ちょっ!」

 

「ミ、ミライ!?」

 

そこで、ミライがマルガレーテとラウラの背を押し、握手を促す。

 

「ん………」

 

あざみは萌え袖から手を出し、それに応じようとする。

 

「「!………」」

 

それを見たマルガレーテとラウラは、そっぽを向きながらもしっかりと握手を交わす。

 

「…………」

 

そんな一同の様子を、少し離れた窓際から見渡す様に見ているアナスタシア。

 

「…………」

 

その顔に微笑を浮かべながら、ふと窓の外を見やる。

 

「!?」

 

するとそこで、何かに気付いた様に驚愕の表情を浮かべる。

 

「…………」

 

そして、話し込む一同に気付かれない様にコッソリとサロンを抜け出したかと思うと、そとへと向かったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇傍の路地裏………

 

「………計画を早める」

 

そこに居た人物が、やって来たアナスタシアにそう告げる。

 

「!? そんな!? 優勝記念公演が終わるまでは待ってくれる筈じゃ!?」

 

「事情が変わった………」

 

戸惑うアナスタシアの様子など知った事では無いと、淡々と言葉を続けている人物。

 

「でも………」

 

「嫌だと言うならば、『あの話』は無しだ………」

 

「! 待って! それだけは………」

 

動揺を露わにするアナスタシア。

 

「………分かりました。今夜、実行します」

 

「それで良い………」

 

邪悪な笑みを浮かべる人物………

 

『夜叉』の前で、アナスタシアは俯いたままで居るのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

浮かない様子のアナスタシア。
誠十郎とリクが尋ねると、何と帝劇を去る積りだと。
運命だと言う彼女に、リクは反発する。
アナスタシアに絡むのがリクなのは、この辺が関わってますね。
彼女が良く、星の導き(運命)とか口にしていたので、運命を引っ繰り返したジードと絡ませたいと。

そして各国華撃団も集結し、公演が間近に迫った時………
遂にアナスタシアの秘密が明らかになります。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『アイスドール』

あけましておめでとうございます。

今年も新サクラ大戦・光をよろしくお願いいたします。


チャプター4『アイスドール』

 

上級降魔 夜叉

 

シビルジャッジメンター ギャラクトロン 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上海、倫敦、伯林華撃団との合同稽古も順調に進み………

 

何時もより更に賑やかな帝劇で、華撃団達は交流を深めていた。

 

しかし、その夜………

 

衝撃的な出来事が起こるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜………

 

帝劇・地下司令室………

 

皆が寝静まっていた頃、誠十郎、リク&ペガ、そしてミライが、此処地下司令室へ集合していた。

 

「それで、説明してもらおうか、メビウス。何でお前までこの地球に来たのか?」

 

ゼロの意識が表に出ている誠十郎が、ミライにそう聞く。

 

ゼルガノイド・イビルとデスフェンサーとの件の後、ミライがエリスの誘いで伯林華撃団へ逗留した為、聞きそびれていたのだ。

 

「う~ん、何処から話したら良いかな?」

 

それ対し、ミライは悩む様な素振りを見せる。

 

「言い難い事なんですか?」

 

「ひょっとして、極秘任務とか?」

 

そんなミライの様子を見たリクとペガがそう尋ねる。

 

「いや、そう言うワケじゃないんだけどね」

 

「んだよ、まどろっこしいなぁ。ちゃっちゃっと言えってんだ」

 

『まあまあ、ゼロ。落ち着けって』

 

ミライがそれを否定すると、やや苛付いた様なゼロを、誠十郎が宥める。

 

「アハハ、ゴメンよ、ゼロ。けど、結構複雑な話でね。実は………」

 

漸くミライが、話を切り出そうとしたその瞬間………

 

「「「『!!』」」」

 

誠十郎(+ゼロ)、リク、ミライが一斉に『何か』に反応する。

 

「! ど、如何したの!?」

 

その様子を見たペガが、戸惑いの声を挙げる。

 

「今、何か聞こえたな?」

 

『ああ………』

 

「うん、確かに………」

 

「扉が開く様な音だったけど………」

 

そこでゼロ、誠十郎、リク、ミライがそう言い合う。

 

ゼロと一体化している誠十郎や、人の姿になっているリクもミライも、常人よりも優れた能力を持っており、その聴力が僅かな音を捉えたのである。

 

「チッ、話は後だ! 行くぞ!!」

 

誠十郎(ゼロ)がそう言って司令室を後にし、リクとミライも続く。

 

「あ、待ってっ!!」

 

少し遅れて、ペガもそれに続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・さくらの部屋………

 

「スー………スー………」

 

稽古の疲れからか、ぐっすり眠り、寝息を立てているさくら。

 

「う~ん………むにゃむにゃ………だ、駄目です、誠十郎さん………でも、誠十郎さんなら、わたし………」

 

何やら幸せな夢を見ているらしく、頬がだらしなく緩んでいる。

 

と、その時………

 

部屋のドアが開き、何者かが侵入して来る。

 

「えへへへ………」

 

しかし、侵入者の気配の消し方が完璧なのか、深く寝入っているせいなのか、さくらは気付かない。

 

「…………」

 

侵入者はそのまま真っ直ぐに、『ある物』の前へと移動する。

 

それは、さくらの愛刀『天宮國定』だった。

 

「…………」

 

天宮國定を手に取ると、侵入者はそのまま踵を返し、部屋から出て行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・廊下………

 

「…………」

 

侵入者は天宮國定を手に、階段へと向かう。

 

「待つんだっ!!」

 

「!?」

 

だがそこで、1階から上がって来た誠十郎達と鉢合わせする。

 

「貴方は………」

 

「!? アナスタシアさん!?」

 

驚きの声を挙げるリク。

 

そう………

 

さくらの部屋に侵入し、天宮國定を持ち出したのは………

 

何と、アナスタシアだった!

 

「…………」

 

険しい表情で、誠十郎達を見据えるアナスタシア。

 

「アナスタシア、何をやっているだ? それはさくらの刀だろう?」

 

誠十郎が、困惑しながらそう問い質す。

 

すると………

 

「…………」

 

アナスタシアは無言のまま、銃を抜いて誠十郎達に突き付けた!

 

「!? アナスタシアさんっ!? 何をっ!?」

 

「あわわっ!?」

 

「!!」

 

リクとペガが狼狽し、ミライが身構える。

 

「アナスタシア!? 何をしてるんだ!? 冗談は止めろ!!」

 

「………冗談だと思う?」

 

誠十郎がそう言ってアナスタシアに近寄ろうとしたが、アナスタシアはそれを拒絶するかの様に言い、引き金を引こうとする。

 

「!?」

 

それを見て慌てて足を止める誠十郎。

 

「お願い、キャプテン………私に撃たせないで」

 

そう言って悲しそうな表情を見せるアナスタシア。

 

「アナスタシア………何故だ!?」

 

「それは………」

 

「こういう事です」

 

とそこで、そう言う声が響いたかと思うと、アナスタシアの後方に突然影が現れ、それが夜叉の姿となった。

 

「! にせ真宮寺 さくら!!」

 

「この姿の時は上級降魔の夜叉と呼んでもらいましょうか………良くやりました、『アイスドール』」

 

驚く誠十郎に向かってそう言い、傍に居たアナスタシアの事を『アイスドール』と呼ぶ夜叉。

 

「! 夜叉様………」

 

アナスタシアは夜叉の方を振り返ったかと思うと、その前に膝を着いた。

 

「! まさか………アナスタシア、君は!?」

 

「降魔の………スパイ!?」

 

「嘘だっ!!」

 

誠十郎とペガがそう思い至り、リクが即座に否定する。

 

「………その通りよ」

 

だが、他ならぬアナスタシアが肯定する。

 

「………それで? さくらちゃんの刀を如何する積りだい?」

 

そんな中で、ミライだけが冷静にそう問い質す。

 

「これこそが、あたし達が探し求めて来た神器。帝都を斬り、幻都を呼ぶ剣………即ち、『帝剣』」

 

すると、天宮國定を左手に取った夜叉の口から、驚くべき事実が知らされた。

 

「『帝剣』………!?」

 

『そいつはすみれ達が言ってた!?』

 

誠十郎とゼロが、二都作戦の説明の際にすみれや米田達が言っていた事を思い出す。

 

「それがさくらの刀だったなんて………如何言う事なんだ!?」

 

探し求めていた『帝剣』が、さくらの母の形見の刀であった事に戸惑いを隠せない誠十郎。

 

「これさえ手に入れば、最早全ての目的は為ったも同然………ご苦労様です、アイスドール」

 

「そ、それでは夜叉様! 約束を!!」

 

夜叉からの労いの言葉を聞いたアナスタシアが、立ち上がりながら期待に満ちた目を夜叉に向ける。

 

「約束? 何の事です?」

 

「えっ?………」

 

と、夜叉からの返しに、アナスタシアが困惑した瞬間………

 

何時の間にか抜かれていた刀を右手に握っていた夜叉が、その刃をアナスタシアの腹に突き刺した!!

 

「!? ガハッ!?」

 

背中まで刃が貫通し、アナスタシアは盛大に吐血する。

 

「!? アナスタシアァァァァァァァッ!!」

 

「「「!?」」」

 

誠十郎の悲鳴の様な叫びが響き、リク達も愕然となる。

 

「だ、騙してた………の………ね………ずっ………と………」

 

口から血を滴らせながら、アナスタシアが憎悪の目で夜叉を睨み付ける。

 

「アイスドール………貴方は思っていたよりも愚かな女ですね………降魔が約束など守るワケが無いでしょう」

 

「そ………ん………な………」

 

そう言い返され、アナスタシアが絶望した様な表情となった瞬間………

 

「ふっ! ハアッ!!」

 

夜叉は刀を引き抜くと、トドメとばかりにアナスタシアを斬り付けた!!

 

「アアアアアァァァァァァッ!?」

 

アナスタシアの悲鳴と共に鮮血が飛び散る。

 

だが、夜叉は駄目押しとばかりに、夜叉は刀を逆手に握り、アナスタシアに向かって振り被る。

 

「! 止めろおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!」

 

「!!」

 

誠十郎が叫ぶと同時に、リクが飛び出す。

 

「! ハアッ!」

 

更に、ミライがメビウスブレスを出現させ、メビュームスラッシュを放つ。

 

メビュームスラッシュは、夜叉の手に命中。

 

刀を握っていた手首が切断され、刀が床に落ちて突き刺さる。

 

「あ………」

 

「アナスタシアさん!!」

 

そして斬られて倒れようとしていたアナスタシアを、リクが受け止める。

 

「夜叉ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

誠十郎が怒りの叫びと共に夜叉に斬り掛かる。

 

「ふっ………」

 

しかし、夜叉は大きく後ろに向かって飛び、誠十郎の斬撃を回避する。

 

「まあ、良いでしょう………コレさえ手に入れば、それは用済みです………」

 

無くなった右手首からスパークを発しながらも、夜叉はまるで気にする様子を見せず、天宮國定こと帝剣を持ったまま空間転移で姿を消した。

 

「! 待てっ! 帝剣を………」

 

『誠十郎! 今はアナスタシアの方が先だ!!』

 

追い縋ろうとした誠十郎に、ゼロがそう言う。

 

「アナスタシアさん! アナスタシアさん! しっかりして下さいっ!!」

 

何度も呼び変えるリクだが、アナスタシアはグッタリとして動かず、傷口からは止めど無く血が流れ出ている。

 

「いけない! すぐに医務室へ!!」

 

「! アナスタシアッ!!」

 

ミライがそう言ったのを聞いて、誠十郎も慌ててアナスタシアの元へ駆け寄り、大急ぎで医務室へと運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後………

 

ミカサ記念公園にて………

 

「こちら夜叉………帝剣の回収に成功………損傷は軽微」

 

何者かへ報告を送っている夜叉。

 

「了解………命令を受諾………今暫く、幻庵に従います………」

 

そう言って報告を終えると、その場を離れようとする夜叉。

 

「見つけたぜっ!!」

 

だがそこへ、上海華撃団の王龍2機が現れる。

 

「さくらの刀を返せっ!!」

 

更にそう言うランスロットの台詞と共に、倫敦華撃団のブリドヴェン2機も姿を見せる。

 

「お前は完全の包囲されているぞ」

 

そして最後にエリスの言葉と共に、伯林華撃団のアイゼンイェーガー3機も現れ、夜叉は完全に包囲される。

 

「おや………負け犬達がお揃いで」

 

「言ってくれるじゃない!」

 

「強がりは止めたまえ。如何に上級降魔と言えど、僕達全員を相手に出来ると思っているのかい」

 

それに動じる処か挑発までしてきた夜叉に、ユイが憤慨した様子を見せるが、アーサーがそう言い放って、彼のブリドヴェンが剣の切っ先を向ける。

 

「負け犬は何匹集まろうと所詮負け犬です………」

 

そう言いながら、夜叉は手首から先が無くなった右腕を上げる。

 

すると、そこから魔法陣が展開!

 

それが上空へと放たれたかと思うと、巨大化する!!

 

「!?」

 

「何だアレはっ!?」

 

マルガレーテとラウラが驚きを示した瞬間………

 

その魔法陣から、まるで機械で出来たドラゴンの様な白いロボットが出現!!

 

地響きと共にミカサ記念公園内に着地した!!

 

「! コイツはっ!?」

 

ギュオーン、ガシャ!

 

エリスが声を挙げると同時に、ロボット………『シビルジャッジメンター ギャラクトロン』は独特な駆動音を発し、赤いカメラアイを不気味に発光させて起動。

 

それと同時に、腹部の赤い球体から光が伸び、夜叉を吸い込む。

 

『さあ、遊んであげます………この玩具でね』

 

ギャラクトロンから夜叉の声が響いて来て、左腕の回転式の大剣『ギャラクトロンブレード』を展開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

さくらの刀を持ち出そうとしたアナスタシア。
誠十郎達と鉢合わせした彼女は銃を向けて来る。
そこへ現れる夜叉。
何と、アナスタシアは降魔のスパイだったと言う。
そして語られる驚きの事実!
何と、さくらの刀『天宮國定』こそが、探し求めていた神器『帝剣』だと言うのだ。

帝剣を夜叉へと差し出したアナスタシアは、約束と言う言葉を出したが、夜叉はそんな彼女を文字通りアッサリと斬り捨てた。
トドメこそ防いだが、瀕死となったアナスタシア。
果たして彼女の命運は?

そして、夜叉を追撃に出た世界華撃団の面々だったが………
何と夜叉はあの『ギャラクトロン』を召喚!
果たしてこの強敵を相手に、世界華撃団の面々は如何戦うか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『帝劇、絶体絶命!』

チャプター5『帝劇、絶体絶命!』

 

シビルジャッジメンター ギャラクトロンMK2 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・医療室………

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

アナスタシアが入れられた霊子再生槽の前に集まり、鎮痛な表情を浮かべている誠十郎(+ゼロ)・さくら・初穂・クラリス・あざみ・リク・ペガ。

 

「「…………」」

 

霊子再生槽の操作をしている令士とこまちも、険しい表情を浮かべている。

 

「令士、こまちさん………アナスタシアの容態は?」

 

やがて、誠十郎が重々しく令士とこまちに尋ねた。

 

「霊子再生槽はフル稼働している。だが………」

 

「アカン………このままやと、時間の問題や」

 

「!? そんなっ!?」

 

令士とこまちから返って来た答えを聞いて、さくらが顔を青褪めさせる。

 

「オイ! 何とかしてくれよ!!」

 

「出来るならとっくにやってる! 傷が深過ぎるんだ!!」

 

怒鳴る初穂に、令士がそう怒鳴り返す。

 

その手は悔しさを表すかの様に、血が出んばかりに握り締められている。

 

「それに………アナスタシアさん自身が助かろうと思うてへんよう何や」

 

「! アナスタシアさん自身がって………」

 

「如何言う事?」

 

と、続くこまちの言葉に、クラリスとあざみが驚きを示していると………

 

「………もう………私には………生きている理由が無いからよ………」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

響いて来た弱々しい声に、その場に居た全員が驚愕する。

 

それは、霊子再生槽に入れられているアナスタシアの声だった。

 

薄らとだが、目も開かれている。

 

「アナスタシア! 意識が戻ったのか!?」

 

「「「「「「アナスタシアさん!」」」」」」」

 

誠十郎を始め、さくら達は慌てて霊子再生槽の傍に寄る。

 

「キャプテン………皆………何故私を助けようとしているの? 私は………皆を裏切ったのよ………」

 

「アナスタシア………俺達は、仲間だろ」

 

「何か………事情が有るんですよね」

 

アナスタシアの言葉に、誠十郎とさくらがそう返す。

 

「………本当にバカね………そんなだから………私にも騙されるのよ………! ゴホッ!」

 

そう言っていた途中で、苦しそうに咳き込むアナスタシア。

 

「アナスタシア、良いんだ。今は、無理に話さなくて良い」

 

「………いいえ、言わせて………コレが………最後だから………」

 

無理に喋らなくて良いと言う誠十郎だが、アナスタシアはそう返して来る。

 

「アナスタシアさん!」

 

「縁起でも無いこと言わないでよ!」

 

『最後』などと不穏な事を言うアナスタシアに、リクとペガが慌てる。

 

「私は………いつだって………偽りの生を生きて来たわ………私が、私だった事なんて………1度も無い………」

 

そんな2人を無視する様に、アナスタシアは語り出す………

 

「私の家族は………昔………戦争に巻き込まれて死んだの………そして孤児になった私を………『ある人』が拾って育ててくれた」

 

「『ある人』?」

 

「………プレジデント………いいえ、ミスターGよ」

 

「!? 何だってっ!?」

 

「「「「!?」」」」

 

アナスタシアの口から出た人物の名に、誠十郎とさくら達が驚愕する。

 

降魔のスパイであったアナスタシア………

 

そんな彼女を育てたのがミスターGだと言うのだ。

 

それは即ち………

 

「ミスターGは………降魔だったのか!?」

 

「…………」

 

誠十郎の言葉を、アナスタシアは無言で肯定する。

 

『道理で最初からいけ好かねえ野郎だと思ったぜ』

 

「そんな………」

 

「WLOFが………降魔に乗っ取られてたんですか!」

 

ゼロがそう呟く中、さくらとクラリスが信じられないと声を挙げる。

 

「でも、そうだと考えれば………まだプレジデントGだった頃の傍若無人ぶりにも納得出来る」

 

「チキショー! ふざけやがってっ!!」

 

あざみが続いてそう言うと、初穂が悔しさの余り壁を殴り付ける。

 

「あの開会式での出来事以来………ずっと音沙汰が無かったのだけど………この前、急に連絡が来て………帝剣を手に入れろって………」

 

「! もしかして、あの時の!?」

 

リクが少し前に、アナスタシアが手紙を受け取っていた事を思い出す。

 

「私は彼の為に働いた………スパイとして………自由に使える………駒として………それしか………道を知らなかったから………」

 

「アナスタシア………」

 

「彼が………降魔だと知ってからも………同じだった………人も………降魔も………私には、変わらなかった………」

 

「…………」

 

アナスタシアの言葉に、何とも言えなく様子を見せるペガ。

 

「いいえ………降魔の方が、良いとさえ思った………だって………ミスターGは………私の家族を………蘇らせてくれる………そう約束してくれた………」

 

「! 家族を蘇らせる!?」

 

「んな事出来んのかよ!?」

 

「待て………神崎司令に聞いた事がある………降魔には死者を蘇らせ、意のままに操る秘術………『反魂の術』と言う秘術が有ると」

 

さくらと初穂が驚きの声を挙げると、誠十郎が以前にすみれから聞いた話を思い出してそう言う。

 

「戦争で………人に殺された………私の家族と………大好きだった家族と………また、会わせてくれるって………だから………私は………」

 

「アナスタシアさん………」

 

「でも………それももうお終い………彼は………約束を守る気なんてなかった………ごめんなさい………お父さん………お母さん………」

 

と、徐々に言葉が弱くなって行くのに呼応するかの様に、アナスタシアのバイタルサインが弱くなって行く。

 

「! アカン! バイタルが!?」

 

「アナスタシアちゃん!」

 

「私………こんな風に………なっちゃった………駄目な………私で………ごめんなさい………」

 

こまちと令士が慌てて霊子再生槽の操作を行うが、バイタルサインは弱くなって行く一方だった。

 

「もう………会えない………天国には………行けない………でも………もう………疲れちゃった………」

 

「アナスタシア!!」

 

「「「「「「アナスタシア(さん)!!」」」」」」

 

死へと向かおうとしているアナスタシアに、誠十郎達は必死に呼び掛ける。

 

「皆………本当に………ごめんなさい………でも………もう………眠らせて………きっとコレが………星の導き………私の『運命』なのよ」

 

「違うっ!!」

 

とそこで、リクが叫んだ!

 

「そんな運命だなんて僕は信じない! もしそうだったとしても、変えてやれば良い!!」

 

「リクくん………」

 

アナスタシアの部屋を訪れた際に言った事を再度言うリク。

 

「リク………」

 

そんなリクの事を見つめていたアナスタシアだったが、やがて力尽きた様にその目が閉じられる。

 

「! アナスタシアさん!」

 

「オイ、退いてろ!」

 

「死なせへん! 絶対に死なせへんでぇっ!!」

 

呼び掛けるリクを押し退け、令士とこまちが必死に霊子再生槽の操作を続ける。

 

「皆!!」

 

とそこへ、医務室にミライが飛び込んで来た。

 

「! ミライくん!」

 

「夜叉の追撃に出てくれたエリスちゃん達が危ないんです! すぐに救援に向かいましょう!」

 

誠十郎達にそう告げるミライだったが………

 

そこで、警報が鳴り響いた!!

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

『緊急事態発生! 帝劇付近に謎の巨大ロボットが出現! 至急迎撃に出て下さい!!』

 

誠十郎達が反応すると、カオルのやや焦っている様なアナウンスが響いて来る。

 

「こんな時に!!………ミライくん! すまないが、エリスさん達の方を頼む!! 俺達は帝劇を守らなければ!!」

 

「………分かりました!」

 

誠十郎にそう返すと、ミライは医務室を後にする。

 

「僕達も!………」

 

「待て、リクくん。君はペガと一緒にアナスタシアに付いていてやってくれ」

 

「えっ!?」

 

「頼む………」

 

自分も続こうとしたリクを押し止め、誠十郎が頭を下げて頼み込む。

 

「………分かりました」

 

「リク………」

 

その誠十郎の姿を見て、リクは神妙な面持ちで頷いた。

 

「………良し! 行くぞ、皆!!」

 

「「「「了解っ!!」」」」

 

そのリクの姿を見た後、誠十郎はさくら達に呼び掛け、医務室を後にした。

 

「…………」

 

残されたリクは、再度霊子再生槽のアナスタシアに視線を向ける。

 

患者が危険な状態を告げるアラームは鳴り続けており、令士とこまちが必死に霊子再生槽の操作を行っている。

 

「僕には何も出来ないのか………」

 

付いていてやってくれと言われたものの、そんなアナスタシアに何もしてやる事が出来ず、リクは悔しさに顔を歪ませる。

 

『アナスタシア・パルマを救う方法が有ります』

 

しかしそこで!

 

レムからそう通信が送られて来た!!

 

「! レム! 本当か!?」

 

『ハイ。ですが………極めて高いリスクを伴います』

 

「何だって良い! アナスタシアさんを助けられるなら!!」

 

リスクが高いと言うレムに、リクは構わないと断言する。

 

『………分かりました。良く聞いて下さい』

 

一瞬の沈黙の後、レムはアナスタシアを助ける方法を説明し始めるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

帝劇へと迫る謎のロボットの迎撃に出た誠十郎達は………

 

「アレか!!」

 

射出口から飛び出し、車道へと着地した無限と試製桜武の中で、ロボットの姿を確認した誠十郎がそう言う。

 

 

 

 

 

ラ~

 

進路上の建物を粉砕しながら、地響きと共に帝劇へと迫るギャラクトロンに似たロボット………

 

『シビルジャッジメンター ギャラクトロンMK2』

 

 

 

 

 

『ギャラクトロン! しかもMK2の方か!! 気を付けろ、誠十郎! アイツは強敵だ!!』

 

「お前がそこまで言うとは、余程の相手なんだな………」

 

ギャラクトロンMK2の姿を見たゼロが誠十郎に警告し、それを受けた誠十郎はやや戦慄を覚える。

 

ラ~

 

とそこで、ギャラクトロンMK2は右手を構えたかと思うと、手先のマシンガン『ギャラクトロンゲベール』を発射する。

 

「! 散開っ!!」

 

「「「「!!」」」」

 

誠十郎の声が飛び、慌てて散会するさくら達。

 

ギャラクトロンゲベールは先程まで誠十郎達が居た場所に命中し、派手な爆発を起こす。

 

「! 凄い威力………」

 

「真面に喰らったらヤベェぞ!」

 

「!………」

 

その威力に、今度はさくら・初穂・あざみが戦慄する。

 

「ゼットンッ!!」

 

とそこで、クラリスが魔導書からゼットンを呼び出す。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ラ~

 

ゼットンとギャラクトロンMK2が睨み合う様に対峙する。

 

「良し! ゼットンを中心に戦うんだ!!」

 

「「「「了解っ!!」」」」

 

そして花組は、ゼットンを中心にする様にフォーメーションを組み、ギャラクトロンMK2との戦いに突入するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

瀕死のアナスタシアから語られた事実。
遂にミスターGの正体が花組に露見します。

絶望のアナスタシアは死を選ぼうとしますが、リクが呼び止める。
そして、レムから彼女を助ける手段があると教えられる。
相当な危険を伴うと言うその方法とは?

そして帝劇にもギャラクトロンMK2が強襲!
またもや強敵が現れましたが、実は更に………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『ロボット怪獣総進撃』

チャプター6『ロボット怪獣総進撃』

 

シビルジャッジメンター ギャラクトロン

 

シビルジャッジメンター ギャラクトロンMK2

 

無双鉄神 インペライザー 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミカサ記念公園………

 

「撃てぇっ!!」

 

エリスの掛け声で、伯林華撃団のアイゼンイェーガー全機が、ギャラクトロンに向かって両腕の機関砲を発砲する。

 

ギュオーン、ガシャ!

 

しかし、ギャラクトロンが独特の駆動音を立てると、魔法陣の様なバリアが展開。

 

機関砲弾は、全てそのバリアで弾かれてしまう。

 

その直後、ギャラクトロンの赤い目が不気味に発光する。

 

「! 散開っ!!」

 

「「!!」」

 

エリスはすぐさまそう言い放ち、アイゼンイェーガーは散開。

 

直後にギャラクトロンの目から赤い閃光光線が放たれ、先程までアイゼンイェーガー達が居た場所を薙ぎ払う。

 

光線の当たった地点に魔法陣が次々と出現し、その場所から次々に爆発が起こる。

 

「うおおおっ!!」

 

「はあああっ!!」

 

とそこで、今度は上海華撃団の王龍2機が、大きく跳び上がって、ギャラクトロンの背後から跳び蹴りを仕掛ける。

 

ギュオーン、ガシャ!

 

「うおわっ!?」

 

「キャアッ!?」

 

だがそれも、ギャラクトロンは後頭部から伸びる大きな鉤爪の付いた『ギャラクトロンシャフト』を振るい、弾き飛ばしてしまう。

 

「ヤアッ! トゥッ! トアアッ!!」

 

「セイッ! ハアッ!」

 

足元に取り付いた倫敦華撃団のブリドヴェン達が、剣で脚部を斬り付けているが、火花が散るだけで傷1つ付かない。

 

「駄目だ! 何て装甲なんだ!?」

 

「王の剣が通用しないなんて………」

 

ギャラクトロンの装甲に驚くランスロットと、悔しさに顔を歪めるアーサー。

 

『気にする必要はありません。このギャラクトロンの前では当然の事です』

 

とそこで、夜叉の声が聞こえて来たかと思うと、ギャラクトロンは足を上げる。

 

「! ランスロットッ!!」

 

「!!」

 

踏み潰す積りだと察したアーサーが叫び、ランスロットと共に離脱。

 

直後にギャラクトロンは足を振り下ろし、大きく地面を爆ぜさせる。

 

『良く逃げられましたね。しかし、コレは如何です』

 

するとそこで、ギャラクトロンがクロー状の右腕を構えたかと思うと、魔法陣が展開してクロー部分が分離!

 

そのまま移動砲台となって、ビームを放ちながら3国華撃団に襲い掛かる!!

 

「おわっ!? アブねぇっ!!」

 

「ちょっ! 反則だろう、それはっ!?」

 

腕を飛ばして砲台にすると言う何とも常識破りな攻撃にやや浮足立つ3国華撃団。

 

「! そこっ!!」

 

移動先を計算で導き出したマルガレーテが、予測射撃で機関砲を放つ。

 

しかし、本体に攻撃した時と同様に魔法陣バリアが展開され、防がれてしまう。

 

「クッ!」

 

「ぬううっ! あの爪にもバリアがあるのか!?」

 

悔しがるマルガレーテと、相変わらずハイテンションは様子のラウラ。

 

とそこで、浮遊していたクローが、マルガレーテとラウラの方を向き、その砲門を光らせた!

 

「「!?」」

 

思わず硬直してしまい、動けないマルガレーテとラウラ。

 

「! マルガレーテ! ラウラ!」

 

エリスが慌てて援護に入ろうとしたその時!!

 

「セヤアッ!!」

 

上空から現れたメビウスが、クローに跳び蹴りを見舞う!

 

弾き飛ばされたクローが地面に叩き付けられ、何度かバウンドしたかと思うと、再び浮遊。

 

ギャラクトロンの右手の魔法陣へと向かったかと思うと、再度腕部として接続される。

 

「! ミライ! 来てくれたのか!!」

 

『ウルトラマン………』

 

メビウスの登場に喜びを露わにするエリスと、苦々し気な表情となる夜叉。

 

「ハアッ!!」

 

ギュオーン、ガシャ!

 

メビウスが構えを執ると、ギャラクトロンは駆動音を響かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

ギャラクトロンMK2の襲撃を受けていた帝劇では………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ギャラクトロンMK2に向かって、ゼットンが火球を連続で放つ。

 

しかし、ギャラクトロンMK2の両肩の突起部分が発光したかと思うと、ギャラクトロンMK2を包み込む様にバリアが展開。

 

火球はバリアに当たり、雲散する。

 

ラ~

 

反撃とばかりに、手先のマシンガン『ギャラクトロンゲベール』と手の甲のビームキャノン『ギャラクトロンシュトラール』を同時発射するギャラクトロンMK2。

 

それをゼットンはテレポートで回避したかと思うと、ギャラクトロンMK2の背後に出現。

 

そのまま殴り掛かろとしたが………

 

ラ~

 

後頭部の鶏冠の様なパーツ………『ギャラクトロンベイル』が分離し、回転しながらゼットンに命中する!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

真面に喰らったゼットンはブッ飛ばされ、派手に倒れる。

 

ギャラクトロンベイルはそのままギャラクトロンMK2の手に収まる。

 

「おりゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

とそこで、初穂機が気合の雄叫びと共に、横薙ぎにハンマーを振るい、ギャラクトロンMK2の足をブッ叩く。

 

だが、ギャラクトロンMK2の装甲に負け、ハンマーは弾き返される。

 

「っ! 何て装甲だっ!?」

 

ラ~

 

戦慄交じりの驚きを覚えていた初穂機に向かって、ギャラクトロンMK2がギャラクトロンベイルを振り下ろす。

 

「!? うおっ!?」

 

初穂機は躱したものの、地面に命中したギャラクトロンベイルは、そのまま大きな亀裂を作り出す。

 

「にんっ!」

 

とそこで、あざみ機がアクロバティックな動きでギャラクトロンMK2の身体を翔け上がり、要所要所に焙烙火矢型爆弾を見舞う。

 

ギャラクトロンMK2の各所で次々と爆発が起こるが、やはり損傷は見られない。

 

ラ~

 

ギャラクトロンMK2は、まだ空中に居たあざみ機に向かって、ギャラクトロンベイルを投擲!

 

回転しながらあざみ機へと向かうギャラクトロンベイル。

 

「!!」

 

「あざみさん!!」

 

クラリス機が空中に魔法陣を展開させ、ギャラクトロンベイルを受け止める。

 

「く、うっ! だ、駄目っ!!」

 

しかし、完全には防げず、咄嗟に軌道を反らす様にする。

 

あざみ機からは外れたが、そのまま建物を次々に横に真っ二つにして行く。

 

ラ~

 

ギャラクトロンMK2が一声鳴くと、ギャラクトロンベイルはブーメランの様にその手元へと戻る。

 

「さくら! 同時に仕掛けるぞっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

そこで、誠十郎機と試製桜武が跳び上がり、必殺技の体勢に入る。

 

「闇を斬り裂く、神速の刃! 縦横無刃・嵐っ!!」

 

「蒼き空を駆ける………千の衝撃! 天剣・千本桜っ!!」

 

ラ~

 

霊力を帯びた3本の刀と、ギャラクトロンベイルがぶつかり合う。

 

「ぐうううっ!!」

 

「ハアアアッ!!」

 

一瞬拮抗したかに思われたが………

 

ラ~

 

「! おわっ!?」

 

「! キャアッ!?」

 

ギャラクトロンMK2が鳴くと、誠十郎機と試製桜武は弾かれ、地面を転がった。

 

「くうっ! 強い………(何とか変身のタイミングを掴まないと)」

 

機体を立ち上がらせながら、ゼロへ変身するタイミングを計る誠十郎。

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

『上空に高エネルギー反応! 何か来ます!!』

 

「!? 何っ!?」

 

「「「「!?」」」」

 

カオルからの報告が響き、誠十郎達は一斉に空を見上げる。

 

すると上空から巨大な火の玉の様な物が降って来て、丁度誠十郎達がギャラクトロンMK2と交戦している場所の反対側に落下!

 

巨大な爆発が起こり、黒煙が立ち上ったかと思うと………

 

グルルルルルルルル………

 

獣が唸っている様な鳴き声と共に、頭部と身体が一体化しており、顔面にガトリングガン、両肩にも砲門を装備した黒いロボット………

 

『無双鉄神 インペライザー』が姿を現した!!

 

『インペライザーだと!? 厄介な時に厄介な奴が!!』

 

「アレも厄介な奴なのか………」

 

更なる強敵出現にゼロは悪態を吐き、誠十郎も冷や汗が流れる。

 

グルルルルルルルル………

 

そこで、インペライザーが前進を開始。

 

進路上の建物を踏み潰しながら、帝劇を目指し始めた。

 

「! アイツも帝劇を狙ってる!」

 

「野郎! させるかってんだっ!!」

 

あざみがそう言うと、初穂機がインペライザーの方へ向かおうとする。

 

ラ~

 

だが、そうはさせないとばかりに、ギャラクトロンMK2がギャラクトロンベイルを振り下ろして来る!

 

「! おわっ!? クソッ、邪魔すんなっ!!」

 

躱したものの、インペライザーの元へは向かえなくなる初穂機。

 

「ゼットン! お願いっ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

クラリスが叫び、ゼットンがテレポートでインペライザーの前へと移動。

 

その行く手に立ちはだかる。

 

グルルルルルルルル………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

唸るインペライザーに対し、先制攻撃と火球を放つゼットン。

 

火球はインペライザーに直撃!

 

顔面部分が木っ端微塵になるインペライザー。

 

しかし、その直後!!

 

インペライザーに金属製と思われる身体が、まるで粘土の様にグニャグニャと歪み始め………

 

何と木っ端微塵となってしまった顔面部が再生したではないか!

 

「! 自己修復だとっ!?」

 

グルルルルルルルル………

 

誠十郎が驚きの声を挙げた瞬間、インペライザーは上半身を高速で回転させ始める!!

 

そしてガトリングガンと両肩の砲門『ガンポート』を乱射!!

 

フルバースト攻撃『バニシングサークル』により、四方八方に攻撃が飛び、ゼットンと帝都の街に襲い掛かる!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ゼットンは咄嗟にバリアを展開。

 

しかし、インペライザーの回転がドンドン速度を増し、それに比例して連射速度もアップ。

 

受け止めているゼットンのバリアが揺らぎ始め、とうとうヒビが入ったかと思われた次の瞬間!

 

ガラスの様にバリアが砕け、インペライザーの攻撃が次々にヒットした!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

ゼットンはバタリと倒れ、そのまま強制的にクラリスの魔導書へと戻る。

 

「! ゼットンッ!」

 

「おわっ!? コッチにも来たぞっ!?」

 

クラリスが思わず声を挙げていると、初穂が叫び、インペライザーの攻撃が誠十郎達にも襲い掛かる。

 

しかも、一見滅茶苦茶に撃っている様に見えてチャンと狙いを定めており、ギャラクトロンMK2には1発も当たっていない。

 

帝都の街にも被害は及んでおり、あっという間に辺り一面が炎に包まれて行く。

 

「帝都が!?………」

 

その光景にさくらが愕然となっていると、遂に1発の光弾が帝劇へと直撃コースを取った!

 

「! 帝劇がっ!!」

 

「神崎司令っ!!」

 

あざみと誠十郎が慌てて叫んだ瞬間………

 

帝劇が多角形を無数に組み合わせた様な光の壁に包まれ、光弾はその光の壁に命中し、雲散した。

 

「! アレはっ!」

 

『見たかい! こんなこともあろうかと、密かに開発して於いたバリアマシンを!!』

 

誠十郎が驚きの声を挙げると、通信機からイデのご機嫌な声が響いて来る。

 

「! イデさん!」

 

「流石イデさんだぜ! あんなモン用意してたなんてよぉ!!」

 

用意周到なイデの発明品に、さくらと初穂が舌を巻く。

 

グルルルルルルルル………

 

とそこで、インペライザーがその光景に怒ったかの様に回転を止めたかと思うと、右腕がまた粘土の様に変形し、巨大な大剣『インペリアルソード』となる。

 

そして、バリアを展開したままの帝劇へと近づいたかと思うと、インペリアルソードを叩き付ける様に振り下ろした!

 

バリアを破れずに弾き返されたが、インペライザーは何度も何度もインペリアルソードを叩き付ける。

 

すると、ガラスにヒビが入るかの様に、バリアに亀裂が生じ始める。

 

「! マズイ! バリアが!!」

 

ラ~

 

誠十郎が叫んだ瞬間、見計らっていたかの様にギャラクトロンMK2が、誠十郎達に向かって、ギャラクトロンゲベールとギャラクトロンシュトラールを連射する。

 

「うおわっ!? クウッ! このままじゃっ!?」

 

2大ロボット怪獣の前に苦戦を強いられる誠十郎達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・医療室………

 

「良し! コレで良いか、レムちゃん!」

 

『十分です、司馬整備長』

 

レムの指示で、霊子再生槽を改造した令士。

 

改造された霊子再生槽には、何かをセットする様な装置が取り付けられ、更にコードが伸びている。

 

その伸びているコードは、リクが手にしているジードライザーのスキャナーと装填ナックルに取り付けられている。

 

『リク、確認しますが、本当に宜しいんですね』

 

「ああ………」

 

「リク………」

 

レムからの問い掛けに、神妙な面持ちで頷くリクに、ペガが心配そうな視線を向ける。

 

『分かりました………では、始めましょう』

 

「…………」

 

そこでリクは、右腰のホルダーから、ウルトラカプセルを取り出し始める。

 

取り出したウルトラカプセルを、霊子再生槽に取り付けられた何かをセットする様な装置にセットして行く。

 

やがて、コスモスカプセルを除く全てのウルトラカプセルをセットし終えると、残っていたコスモスカプセルを装填ナックルの方にセットした。

 

「………ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」

 

そして意を決した様に、コスモスカプセルをスキャナーでリードした!

 

すると、ジードライザーに取り付けられていたコードを光が走り、先ずウルトラカプセルをセットした装置に流れ込む。

 

途端に光の強さが増し、それが今度は霊子再生槽へと流れ込んだ!!

 

すると、再生槽内のアナスタシアの傷が急激に治癒し始め、顔色が見る見る良くなって行く。

 

「バイタル上昇中!!」

 

「良し、成功だ!!」

 

バイタルサインも正常になり始め、こまちと令士が歓喜の声を挙げる。

 

しかし………

 

「ううっ! ぐうっ! あああっ!!」

 

コスモスカプセルのリードを続けているリクの身体にスパークの様なモノが走り、苦しそうな声が漏れ始める。

 

「! リクッ!」

 

「リクッ!!」

 

「耐えてくれよ、リクくん!!」

 

「ハイッ!!」

 

ペガとこまちが慌てるが、令士だけはそう呼び掛け、リクは気を強く持ちながらリードを続ける。

 

 

 

 

 

レムが考えたアナスタシアを救う方法………

 

それは、ヒーリング能力を有するコスモスカプセルの力を使う事だった。

 

しかし、アナスタシアの傷は深く、コスモスカプセルだけでは力不足であった。

 

そこで、令士が突貫で作った機械で、他のウルトラカプセルをブースターにし、能力を向上させたのだ。

 

しかし、ウルトラカプセルを使う為にはジードライザーを使う必要が有り………

 

全てのウルトラカプセルを使うと言う途轍もない負荷を、リクはその身で受け止めなければならない。

 

それがレムの言う極めて高いリスクだった。

 

 

 

 

 

「アナスタシアさん………」

 

負荷に襲われながらも、アナスタシアに視線を向けるリク。

 

「諦めないで…………アナスタシアさんだって、きっと運命を変えられる………もし力が足りない時は………僕が力になります!」

 

再生槽内のアナスタシアにそう呼び掛ける。

 

「だから………目を覚まして下さい!! アナスタシアさん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ギャラクトロンと戦う3国華撃団とメビウス。
そして、MK2と戦う帝国華撃団。
しかしそこで………
帝国華撃団の方にインペライザーが増援で出現。
ゼットンも倒れ、誠十郎は変身のタイミングが取れず、帝劇は絶体絶命の状態に。

そんな中………
ウルトラカプセルの力を使い、自らの命を懸けてアナスタシアを救おうとするリク。
果たして、その思いは彼女に届くのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター7『明日に向かって 進み続ける』

チャプター7『明日に向かって 進み続ける』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???………

 

「? 此処は………?」

 

気が付くと、アナスタシアは暗闇の中に立っていた。

 

光源1つ無いのに、自分の姿だけがハッキリとしている。

 

「私は………死んだのかしら?………だとしたら、此処はあの世かしら?」

 

何処か他人事の様にそう呟くアナスタシア。

 

「随分と殺風景なのね………地獄で永遠に責め苦を受ける事になると思ってたけど………」

 

とそこで、アナスタシアの耳に何かが聞こえて来る。

 

「? 赤ん坊の泣き声………?」

 

声が聞こえて来るその方向を見やると………

 

天文台らしき場所の置き去りにされている籠に入れた赤ん坊の姿が在った。

 

「アレは………?」

 

アナスタシアがそう呟いた瞬間………

 

『今日から君は………『朝倉 リク』だ』

 

目の前の光景が、赤ん坊を抱き上げながらそう言う壮年の男性のモノへと変わった。

 

「!? リク!?………じゃあ、あの赤ん坊は!?」

 

男が赤ん坊に『朝倉 リク』と名付けたのを聞いてハッとするアナスタシア。

 

そこで再び場面が切り替わり………

 

街を破壊している『ベリアル融合獣 スカルゴモラ』と対峙したリクの姿を映し出す。

 

『ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!』

 

お決まりの台詞と共にジードライザーを構えたかと思うと、その姿がジード(プリミティブ)へと変わる。

 

そして激戦の末に、スカルゴモラを必殺の『レッキングバースト』で撃破するジード(プリミティブ)。

 

「ひょっとしてコレは………リクの記憶?」

 

困惑しているアナスタシアの目の前で、ジードの戦いの日々が次々に展開される。

 

その中で繰り返し出て来る名前があった………

 

「? 『ベリアル』………? 誰の事?」

 

『ウルトラマンベリアル』………

 

光の国に生まれながら悪に走ったウルトラマンであり………

 

リクにとって関わりの深い者だった。

 

そして………

 

『ストルム星人 伏井出 ケイ』により、衝撃的な事実が明かされる………

 

「え………?」

 

それを聞いたアナスタシアは、最初理解が追い付かなかった。

 

「模造品?………リクが………作られた存在?」

 

リクことジードは、伏井出 ケイがベリアルの遺伝子を使って生み出した人造生命体である。

 

生み出された理由は、ベリアル復活の為に必要なウルトラカプセルを起動させる為に必要なエネルギー体『リトルスター』を回収する為だと。

 

真実を知らされ、心が折れかけたリクだったが………

 

名付け親であるあの男性………『朝倉 錘』との出会いにより、新たな力と共に立ち直った。

 

だが、間髪入れずに………

 

遂にリクは、自身の遺伝子上の父親………

 

『ウルトラマンベリアル』と対峙する事になった。

 

『息子よ………迎えに来た。父、ベリアルの元へ来い』

 

「アレが………ベリアル」

 

ジードと対峙する黒いウルトラマンを見てそう呟くアナスタシア。

 

当然ながら、リクはベリアルを拒絶し、両者はゼロも交えながら泥まみれになりながら激しく争う。

 

そんな中で、べリアスは怪獣カプセルの力を使い、『ベリアル融合獣 キメラベロス』となり、ジードを吸収。

 

精神世界でジードを言葉巧みに洗脳し、そのまま吸収されてしまうかに思われたが………

 

ゼロの奮戦とキングの手助けを受けた、嘗て両親を伏井出 ケイに奪われた少女・『鳥羽 ライハ』の呼び掛けにより、リクは正気を取り戻し、分離に成功。

 

そして、ライハの祈りのよって受け取ったリトルスターにより、ウルトラマンキングカプセルの起動に成功。

 

最強の形態『ロイヤルメガマスター』となった。

 

「美しい………」

 

ロイヤルメガマスターの姿を見て、アナスタシアの口からそう言葉が漏れる。

 

『どれだけ俺を否定しようと、お前はベリアルの息子! 生きている限り、俺の名前からは逃れられん!』

 

『逃げるつもりはない! この体があなたから作られたものでも、この魂は僕のものだ!』

 

『変えられるものか! 運命を!』

 

『変えてみせる!! 僕の運命は僕が決める!!』

 

尚も揺さぶりを掛けて来るべリアルに、リクは真っ向から反論。

 

遂にはロイヤルメガマスターの必殺技『ロイヤルエンド』を食らわせ、ベリアルは倒された………

 

かに思われたが、実は生きており、新たなる姿………『ベリアルアトロシアス』となる。

 

その前に再び立ちはだかるジード(リク)。

 

いよいよ宇宙最大の親子対決の決着が着こうとしていた。

 

激戦の最中、ジード(リク)はベリアルの心の内を垣間見る。

 

膨大な負の感情を感じ取ったジード(リク)は、殴りかかってきたベリアルを抱き寄せ、涙を流しながら言葉を投げかけた。

 

『何度も何度もあなたは生き返り………深い恨みを抱いて………』

 

ジード(リク)の思わぬ行動に戸惑いを見せるベリアル。

 

『疲れたよね? もう、終わりにしよう………!』

 

『分かった様な事を言うな!』

 

そして、遂にその時が訪れる………

 

両者は必殺技であるレッキングバーストとデスシウム光線の撃ち合いとなり………

 

ジードが撃ち勝った。

 

『ジィィィィィドォォォォォ―――ッ!!!』

 

『さよなら………父さん』

 

最後の最後で自分の名を呼んだベリアルを、ジード(リク)も初めて父さんと呼んだのだった………

 

「リク………」

 

余りにも壮大で、そして悲し過ぎるリク(ジード)の人生に、アナスタシアは知らず知らずの内に涙していた。

 

「コレが貴方の言う………運命を変えるという事なのね」

 

『彼の言う言葉の重みが分かったかね………』

 

とそこで、アナスタシアの背後から威厳のある声が聞こえて来た!

 

「!? 誰っ!?」

 

アナスタシアが驚きながら振り返ると、そこに光源が現れ、暗闇だけだった空間に光が広がり始める。

 

「うっ!?」

 

余りの眩しさに腕で目を覆うアナスタシア。

 

それでも光源の中に良く目を凝らすと………

 

まるで王を思わせるシルエットが有る事に気付く。

 

「貴方は?………」

 

『朝倉 リクを良く知る者、とだけ言っておこうか………』

 

アナスタシアの問い掛けに、シルエットの人物はやはり威厳の有る声で答える。

 

『アナスタシア・パルマよ………朝倉 リクの記憶に触れ、今君は如何したい?』

 

「…………」

 

シルエットの人物からの問い掛けに、アナスタシアは俯いて考える素振りを見せる。

 

「………正直、まだ分からないわ………もう私は花組には居られない………降魔の方にも戻れない………もう何処にも居場所が無いわ………けど」

 

そこで、ギュッと拳を握り締める。

 

「まだ………まだ死にたくない! 死ぬわけには行かない! リクは逃げずに戦った! 自分の運命から!!」

 

先程までのリクの記憶の事を思い起こしながらそう言うアナスタシア。

 

「私はずっと逃げていた。星の定めには逆らえない………それが運命だって言い訳して………でも! リクは本当に運命を覆した! 変えて見せた! なら! 私だって!!」

 

『ならば行くが良い。君の運命を変えられるのは、君自身だ………』

 

そう言って、シルエットの人物がアナスタシアに向かって開いた右手を向けたかと思うと、そこから光の粒子が溢れ出て来て、アナスタシアを包み込む。

 

「コレは?………」

 

『若きウルトラマンの事を頼んだぞ………』

 

「貴方は、ひょっとして………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・医療室………

 

「!? うわあっ!?」

 

とうとう負荷に耐え切れなくなったリクが弾き飛ばされ、壁に叩き付けられた!

 

「リク!」

 

「………アナスタシアさんは?」

 

ペガが助け起こすが、リクは自分の身に構わず、アナスタシアの事を気に掛ける。

 

「………バイタル、正常値に移行」

 

「やったで! もうコレで大丈夫や! 後は意識が戻るのを待つだけや!」

 

令士がそう呟いた瞬間、こまちが歓喜の声を挙げる。

 

「良かった………」

 

弱弱しくも安堵の笑みを浮かべるリク。

 

とそこで、医務室内に衝撃が走った!!

 

「! はわわっ!?」

 

「クソッ! 誠十郎の奴、苦戦してんのか!?」

 

ペガが慌て、令士は誠十郎達が苦戦しているのかと想像する。

 

「!!」

 

途端に、明らかに疲労困憊の様子のリクが立ち上がり、装置にセットして有ったウルトラカプセルを回収して医務室を後にしようとする。

 

「! リク!!」

 

「オイ!?」

 

「大丈夫なんか!?」

 

戦いに行こうとしているのを察したペガ、令士、こまちが慌てる。

 

『リク。今の貴方の状態では真面に戦えません。変身出来るか如何かさえ怪しい状態です』

 

レムが無情にそう言って来るが………

 

「………ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」

 

だが、リクはいつも通りにそう言い放ち、フラつきながらも医務室を後にした!

 

「! リクッ!」

 

「あのバカ!」

 

ペガが慌て、令士が思わず悪態を吐く。

 

と、その時………

 

何かが開く様な音が響く。

 

「「「!?」」」

 

ペガ、令士、こまちが振り返ると、そこには………

 

「皆………」

 

霊子再生槽を自ら開け、起き上がったアナスタシアの姿が在った。

 

「!? ブフッ!?」

 

「ちょっ! 見んといときぃっ!!」

 

「アナスタシアさんっ!!」

 

再生槽に入れられていた為、全裸だったアナスタシアの艶姿を見て思わず鼻血を出す令士と、そんな令士の目を慌てて塞ぐこまちに、すぐさま医務室のベッドのシーツを剥がしてアナスタシアに掛けてやるペガ。

 

「ありがとう、ペガ」

 

シーツを身体に巻き付けながらペガに礼を言うアナスタシア。

 

「司馬くん。私の機体は出せる?」

 

「!? 何っ!?」

 

「アカンで、アナスタシアさん! アンタ、死ぬ1歩手前やったんやで!!」

 

アナスタシアの問いに令士が驚愕し、出撃する積りなのを悟ったこまちが慌てて止めようとする。

 

「気遣ってくれてありがとう………でも、私は行かなきゃならないの」

 

「あわわっ!」

 

しかし、アナスタシアはそう返しながら、フラ付きながらも立ち上がろうとしたので、ペガが慌てて肩を貸す。

 

「ありがとう、ペガ」

 

「アナスタシアちゃん………まさか、今度は戦って死のうとかって考えてるんじゃないだろうな?」

 

とそこで、令士がアナスタシアを睨む様に見据えながらそう言う。

 

………鼻に若干血が染みている詰め物をしているので、今一締まらない姿だが。

 

「いいえ、違うわ」

 

「!………」

 

しかし、アナスタシアは即座にそう返して来たので、令士は驚いた様に目を見開く。

 

「私はリクを、花組の皆を助けに、そして………自分の運命を覆しに行くの」

 

令士に向かってそう言い放つアナスタシア。

 

その顔に先程までの絶望の色は無く、只覚悟と決意の決まった表情だけが在った。

 

「………分かった! すぐに用意するぜっ!!」

 

令士は破顔すると、彼女の機体を用意する為、すぐさま格納庫へと向かった。

 

「ちょっ! 司馬さんっ!?」

 

「ペガ、悪いけど、このまま格納庫まで連れてってくれないかしら?」

 

こまちが更に慌てていると、アナスタシアは肩を貸してくれていたペガにそう頼み込む。

 

「………うん、分かった」

 

「ありがとう………」

 

ペガは一瞬迷った様子を見せたが、すぐにアナスタシアに肩を貸したまま歩き出す。

 

「ちょっ! ペガくん! ああ、もう! しゃあないなぁ!!」

 

それを見てこまちも、諦めたかの様にペガが支えているのと反対側に付き、アナスタシアに肩を貸した。

 

「こまちさん………」

 

「この借りは高くつくで! 返すまで帝劇から出て行かせへんからな!!」

 

「………分かったわ」

 

ペガとこまちに肩を貸され、アナスタシアは格納庫を目指すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

死に縁に居たアナスタシアは、ウルトラカプセルを治療に使われた影響か………
リクの記憶を垣間見る。
彼の言う『運命を覆す』と意味の重さを知ったアナスタシア。
そんなアナスタシアを導いた威厳の有る声………
一体、何トラマンキングなんだ(笑)

無事治療に成功したリク。
しかし、誠十郎達の苦戦を察し、疲労困憊の身体を押して前線へ向かう。
そして、その後に………
アナスタシアが続くのであった。
次回は注目です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター8『胸の中で目覚めた閃光(ひかり)』

チャプター8『胸の中で目覚めた閃光(ひかり)』

 

シビルジャッジメンター ギャラクトロンMK2

 

無双鉄神 インペライザー 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座・帝劇………

 

グルルルルルルルル………

 

帝劇に貼られているバリアに向かって、執拗にインペリアルソードを叩き付けるインペライザー。

 

バリアに入っているヒビが、徐々に広がって行く………

 

グルルルルルルルル………

 

そして、遂に!!

 

インペライザーが渾身の一撃を叩き付けた瞬間!!

 

バリアはガラスが割れた様にパリーンッ!と砕け散った!!

 

「! バリアがっ!?」

 

グルルルルルルルル………

 

さくらの悲鳴の様な声が響く中、無防備となった帝劇に向かって、インペリアルソードを振り被るインペライザー。

 

「イカンッ!!」

 

と、誠十郎が叫んだ瞬間!!

 

「ハアッ!!」

 

帝劇から飛び出した光が巨大な人型となり、インペリアルソードを振り被っていたインペライザーに跳び膝蹴りを叩き込んだ!!

 

グルルルルルルルル………

 

インペライザーはブッ飛ばされ、ビルに凭れ掛る様に倒れた。

 

「ハアッ!………ウッ!?」

 

光はジード(プリミティブ)の姿となり、着地を決めると構えを執ったが、直後に呻き声を漏らして膝を着いた。

 

ピコン、ピコン、ピコン………

 

カラータイマーもいきなり点滅が始まり、警告音を鳴らしている。

 

「! リクくんっ!?」

 

「如何したんだ!? いきなりタイマーが鳴ってんぞっ!?」

 

出現直後にも関わらずいきなり疲労困憊状態なジード(プリミティブ)の姿に、さくらと初穂が仰天する。

 

「何かあったのか!?」

 

『分からねえ。だが、アイツの事だ。また無茶しやがったんだろ、ったく!』

 

誠十郎とゼロがそう言い合っていた瞬間………

 

グルルルルルルルル………

 

インペライザーがまるで映像を巻き戻したかの様な動きで起き上がり、ガトリングガンとガンポートを一斉射。

 

「!? ウワアァッ!?」

 

ジード(プリミティブ)は避ける事もバリアを張る事も出来ず、真面に喰らう。

 

「ウウ、ア………」

 

背中から地面に叩きつけられる様に倒れ、起き上がれずに居るジード(プリミティブ)。

 

「! リクくん!」

 

ラ~

 

と、そのジード(プリミティブ)の姿に気を取られた誠十郎に、ギャラクトロンMK2がギャラクトロンシュトラールを放つ。

 

「!? うおわああっ!!」

 

直撃を受けた誠十郎機が、爆炎に包まれる。

 

「! 神山隊長っ!!」

 

「「「!!」」」

 

さくらが悲鳴を挙げ、初穂達もギョッとする。

 

だが、次の瞬間………

 

爆炎が吹き飛び、誠十郎機を守る様な形でゼロが現れた!!

 

「! ゼロさん!!」

 

「やっと来たか!!」

 

何時もと比べて登場の遅かったゼロに、初穂が愚痴る様に言う。

 

「ワリィな、こっちにも事情があんだよ」

 

ラ~

 

ゼロがそう返していると、ギャラクトロンMK2がギャラクトロンベイルを構える。

 

「ジード! 待ってろ! すぐにコイツを片付けて………」

 

ギャラクトロンMK2を片付けてからジードの元へ向かおうとしたゼロだったが………

 

そこで、インペライザーに数発の弾丸が命中したかと思うと、命中箇所が凍り付いた。

 

「!? 何っ!?」

 

「あの攻撃は!?………」

 

ゼロが驚きの声を挙げ、クラリスがその攻撃が良く見知った物である事に気付くと………

 

1機の無限が、倒れているジード(プリミティブ)を守る様にインペライザーの前に立ちはだかった。

 

「やらせはしないわ!」

 

そう言って、その無限のパイロット………アナスタシアは、インペライザーに銃と番傘型ライフルを向ける。

 

「! アナスタシアさんっ!!」

 

「アイツ!? 如何してっ!?」

 

死にかけていた筈のアナスタシアの登場に、さくらと初穂が驚愕する。

 

「ひょっとして………」

 

「リクが何かしたの………?」

 

一方、クラリスとあざみは、アナスタシアの復活に、リクの不調が関係しているのではと推測する。

 

「ア、アナスタシアさん………駄目です………まだ出て来たら………」

 

「それは貴方だってそうでしょう、リク」

 

必死に起き上がろうとしていたジード(プリミティブ)の方を振り返りながらそう返すアナスタシア。

 

グルルルルルルルル………

 

そんなアナスタシア機に向かって、インペライザーが身体に付いた氷を落としながらゆっくりと近づいて来る。

 

「!!」

 

アナスタシア機は拳銃と番傘型ライフルをインペライザーに向かって斉射する。

 

しかし、氷の弾丸もライフルのレーザーも大して効果が無く、インペライザーは構わずに歩き続けて来る。

 

「アナスタシアさん! 逃げてっ!!」

 

ジード(プリミティブ)が必死に叫ぶ。

 

「いいえ………私はもう逃げないわ」

 

だが、アナスタシアは微塵も恐怖を見せず、1歩も退かない。

 

「私はずっと逃げていた………星の運命(さだめ)を………運命って言葉を言い訳にして。その為に花組の皆だけじゃなく、多くの人の心を踏み躙って来た」

 

「アナスタシアさん………」

 

「でも! 私はもう逃げないっ! リク! 貴方が運命を変えた様に! 私も自分の運命(さだめ)を変えて見せる! そう………」

 

そこでアナスタシアは、インペライザーを睨み付ける様に見据え………

 

「明日を照らすのは星じゃないわっ!!」

 

自ら語っていた星の運命(さだめ)と言う言葉を否定する様にそう叫んだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナスタシアの胸の中心に、光が輝き出した。

 

「!?」

 

「!? アレはっ!?」

 

『エネルギー反応一致。間違いありません………『リトルスター』です』

 

アナスタシアが驚き、リクがまさかと言う様子を見せ、レムがそれを肯定。

 

その光は正しく………

 

『リトルスター』だった。

 

「…………」

 

本能的に、両手を胸の前に持って来るアナスタシア。

 

すると、胸の中の光が光球となって飛び出し、その手の中に納まる。

 

『若きウルトラマンを頼んだぞ………』

 

脳裏にあの威厳のある声がリピートされる。

 

「!………」

 

アナスタシアは機体を反転させると、ハッチを開ける。

 

「リク! 受け取ってっ!!」

 

そして光球を包んでいた両手を、ジード(プリミティブ)に向かって伸ばした。

 

光球がアナスタシアの手を離れて飛び、そのままジード(プリミティブ)のカラータイマーに吸い込まれる。

 

インナースペースへと現れた光球は、リクの右腰に在ったカプセルホルダーへと吸い込まれる。

 

すぐさま、それによって生成された新たなウルトラカプセルを取り出すリク。

 

『ジュア!』

 

『『ダイナカプセル』の起動を確認しました』

 

新たに生成されたウルトラカプセル………

 

それは『ウルトラマンダイナ』のカプセルだった。

 

「アナスタシアさん………ありがとう!」

 

ダイナカプセルを握り締め、アナスタシアに礼を言うと、リクは脳内に流れ込んで来た新たなフュージョンライズ形態を試みる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「融合(ユーゴー)!」

 

『ジュア!』

 

カプセルを起動させると、リクの右側に左腕を掲げる『ウルトラマンダイナ』のビジョンが現れる。

 

起動させたカプセルを、左脇腰に装着し、グリップ部分を左手で握っていた装填ナックルにセットする。

 

「アイゴー!」

 

『ハァッ!』

 

続けて新たなカプセルを起動させると、左側に左手を掲げる『ウルトラマンコスモス』のビジョンが出現。

 

そして同じ様に、装填ナックルにセットする。

 

「ヒアウィーゴー!」

 

ジードライザーのトリガーを押し、待機状態にすると、装填ナックルにセットしたダイナとコスモスのカプセルをリードする。

 

『フュージョンライズ!』

 

「進むぜ! 彼方!! ハアアッ! ハアッ!!」

 

ジードライザーから声が響く中、リクはそう言い放ち、ジードライザーを掲げたかと思うと、胸の前に構えて、再度トリガーを押した。

 

青の遺伝子構造の様な光が回転を始めたかと思うと、黄色い光を放ち始める。

 

「ジィィィィド!」

 

『ウルトラマンダイナ! ウルトラマンコスモス!』

 

リクとジードライザーの声が響く中、ダイナとコスモスのビジョンが重なる。

 

『ウルトラマンジード! マイティトレッカー!』

 

そして光の中から、青い身体に赤い手足、胸部に金と銀のプロテクターと頭部にV字状のパーツが装着されたジード………

 

『ウルトラマンジード・マイティトレッカー』が出現する。

 

 

 

 

 

「フッ!」

 

左手の親指で、まるで帽子の鍔を上げる様なポーズ決め、ジード(マイティトレッカー)が構えを執る。

 

「変わった!!」

 

「新しい姿か!!」

 

「凄くヒーローっぽい………」

 

「おお~~!」

 

その姿に歓声を挙げるさくら・初穂・あざみ・クラリス。

 

「リク………」

 

アナスタシアも、感慨深そうにジード(マイティトレッカー)の姿を見上げていた。

 

「この感じ………起動したのはダイナのカプセルか!」

 

そしてゼロは、ジードが手にした新たなウルトラカプセルが、ダイナの物である事を感じ取る。

 

「ゼロ! 一気に片付ける!! ギャラクトロンを!!」

 

「! 良し! 任せろっ!!」

 

そう言われたゼロは、ジード(マイティトレッカー)が何をする積りか瞬時に察し、ギャラクトロンMK2に向かって突撃!

 

ラ~

 

突っ込んで来るゼロに対し、ギャラクトロンゲベールとギャラクトロンシュトラールを斉射するギャラクトロンMK2。

 

ゼロの姿が爆炎に包まれた………

 

「ストロングコロナ! ゼロォッ!!」

 

しかし直後に、ストロングコロナとなったゼロが飛び出して来る。

 

ラ~

 

「遅せぇっ!!」

 

バリアを展開しようとしたギャラクトロンMK2だったが。それよりも早く、ストロングコロナゼロの炎を纏った拳が、ギャラクトロンMK2の右肩のバリア発生装置を破壊。

 

ラ~

 

「むんっ!!」

 

バランスを崩したギャラクトロンMK2を、抑え込む様に首を脇へと挟み込む。

 

「ウルトラハリケーンッ!!」

 

そしてそのまま、ウルトラハリケーンで投げ飛ばす!!

 

投げ飛ばされたギャラクトロンMK2は、インペライザーに激突!!

 

その瞬間!!

 

「フレイムコンプレッションウェーブッ!!」

 

ジード(マイティトレッカー)がコスモスのブレージングウェーブと似た動きで、必殺の『フレイムコンプレッションウェーブ』を放った!!

 

炎の様な収束したエネルギーを真面に浴びるギャラクトロンMK2とインペライザー。

 

すると、超重力空間が形成され、2体がまるで自動車のスクラップの様に超圧縮!!

 

直後に空間に穴が開き、スクラップとなったギャラクトロンMK2とインペライザーだった物は吸い込まれてしまった!!

 

「!? 今のは!?」

 

『如何やら異空間へ送り込んでしまったみたいだね。凄い技だよ』

 

「異空間って………マジかよ」

 

さくらが驚きの声を挙げると、イデが分析の結果を述べ、初穂がその説明に軽く戦慄を覚える。

 

「よっしゃあっ!!」

 

「…………」

 

ゼロが思わずガッツポーズを執る中、ジード(マイティトレッカー)はゆっくりと残心を解く。

 

「リク………」

 

そのジード(マイティトレッカー)の傍に、アナスタシア機が寄って来る。

 

「…………」

 

ハッチが開いたままなので、姿が見えているアナスタシアに向かって、ジード(マイティトレッカー)は無言で頷いた。

 

「…………」

 

それに対しアナスタシアも、軽く笑みを浮かべ、頷き返す。

 

「! ウッ!………」

 

と、直後にジード(マイティトレッカー)が膝を着いたかと思うと、その姿が光と共に小さくなって行く。

 

「! リクッ!!」

 

アナスタシアが、慌てて機体を光の収束地点へ向かわせると、倒れているリクを発見する。

 

「リクッ!!」

 

「リク!」

 

機体から飛び出すと同時にペガも現れ、2人でリクを助け起こす。

 

「大丈夫?」

 

「へ、平気だよ、コレぐらい………」

 

心配そうに尋ねるペガに、リクは強がって笑って見せる。

 

「リク………」

 

「アナスタシアさん………良かった、元気になって………」

 

「………貴方はもう」

 

とそこで、アナスタシアはリクを胸に抱き締めた。

 

「わっぷっ!?」

 

「ありがとう、リク………本当にありがとう」

 

抱き締める腕に力が入り、アナスタシアの目尻から一筋の涙が流れ落ちた………

 

(く、苦しい………)

 

尚リクはその豊満なバストの谷間に埋められる形となっており、男としてとても羨ましいシチュエーションだが、当の本人は息が苦しくそれどころではなかったのだった。

 

「アワワ………(ライハやモアが見たら大変だよぉ)」

 

そしてそんなアナスタシアとリクの姿を見て、リクと親しい2人の女性の事を思い起こすペガだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『シビルジャッジメンター ギャラクトロンMK2』

 

身長:61メートル

 

体重:6万7000トン

 

能力:戦斧「ギャラクトロンベイル」、マシンガン「ギャラクトロンゲベール」、ビームキャノン「ギャラクトロンシュトラール」、近接格闘用ブレード「ギャラクトロンクリンガー」

 

初登場作品:劇場版『ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!』

 

ギルバリスによって強化改造されたギャラクトロンの新型。

 

手足が人間の様になっており、青い鎧や金色の斧のようなパーツが追加されて、近接戦に強くなっている。

 

強力なバリアに加え、装甲も堅牢で、ゼロ、オーブ、ジードのフォームチェンジを駆使した攻撃に悉く耐えている。

 

劇中では中ボス的存在な筈なのだが、ラスボスのギルバリスよりも強いんじゃないかと思わせる程。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無双鉄神 インペライザー』

 

身長:60メートル

 

体重:6万トン

 

能力:三連装ガトリングガン、二連ビーム砲『ガンポート』、大剣『インペリアルソード』、ドリルミサイル

 

初登場作品:ウルトラマンメビウス第29話『別れの日』、第30話『約束の炎』

 

エンペラ星人の作りだした自立戦闘兵器。

 

強靭な装甲に加え、自己修復能力があり、身体の一部が損傷しても瞬時に修復してしまう。

 

更に、腕は粘土の様に変形し、大剣『インペリアルソード』やドリルミサイルとなる。

 

メビウスを圧倒し、救援に現れたタロウのストリウム光線を浴びて上半身を吹き飛ばされるも稼働し続けた(流石に直後には撤退した)

 

ウルトラダイナマイトにも耐えたが、最後はGUYSの仲間達との絆でバーニングブレイブとなったメビウスのメビュームバーストで倒された。

 

後に13体もの数が送り込まれ、数の暴力を見せつけた。

 

実は上半身に再生装置があり、それを破壊されると再生出来ない。




新話、投稿させて頂きました。

バリアを破ったインペライザーの前に立ちはだかるジード。
しかし、アナスタシアへの治療行為の代償で、疲労困憊状態。
救援に駆け付けたアナスタシアの攻撃も通じず、あわやと思われたが………

何と!
アナスタシアにリトルスターが!!

この展開がやりたかったんですよねぇ。
アナスタシアの台詞はお分かりでしょうが、GEEDの証の2番です。
星の運命(さだめ)と良く口にしていた彼女が、それを超えて行くという意味で、ジードと絡め、この台詞を言わせてみたかったんですよねえ。

そんな彼女のリトルスターは『ウルトラマンダイナ』
この理由は、先ずオーブと同じ様に、TV版では出ていないフュージョンライズ形態を登場させようと思い、どれにするか選んでいたところで、今回のマイティトレッカーが目に留まり、コスモスがあるからダイナが有れば成れるのと、ダイナは『明日を目指すウルトラマン』ですから、星の運命(さだめ)を超えて行く事を決意したアナスタシアに目覚めるのに相応しいと思いまして。

さて、次回はメビウスと3国華撃団。
ギャラクトロンは強敵ですが、そこへ………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター9『急変』

チャプター9『急変』

 

シビルジャッジメンター ギャラクトロン 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミカサ記念公園………

 

「セヤッ! ハアッ!」

 

メビュームブレードで連続してギャラクトロン斬り付けるメビウス。

 

しかし、ギャラクトロンの装甲からは火花が散るだけで、斬り裂くまでには至らない。

 

ギュオーン、ガシャ!

 

と、ギャラクトロンは左腕を回転させ、大剣『ギャラクトロンブレード』を構えると、メビュームブレードを受け止める。

 

そのまま両者は鍔迫り合いとなるが………

 

『無駄です………』

 

夜叉がそう言った瞬間、ギャラクトロンはギャラクトロンブレードを大きく振り抜き、メビュームブレードの刀身を斬り飛ばした!!

 

斬り飛ばされた刀身は、光の粒子となって消滅する。

 

ギュオーン、ガシャ!

 

「ウワッ!?」

 

直後に、クロー状の右腕でパンチを見舞い、メビウスはブッ飛ばされる。

 

「ミライッ! オノレェッ!!」

 

それを見たエリス機が、ギャラクトロンに向かって発砲するが、やはり魔法陣のバリアの阻まれてしまう。

 

ギュオーン、ガシャ!

 

そこで、ギャラクトロンの目が不気味に発光する。

 

「! セヤアッ!」

 

それを見たメビウスが、すぐさまその場から転がる様に離れる。

 

直後に、ギャラクトロンの目から閃光光線が放たれ、次々に魔法陣を出現させながら爆発を起こす。

 

「ハアッ!」

 

と、発射直後の隙を狙い、そのギャラクトロンの目に向かってメビュームスラッシュを放つ。

 

メビュームスラッシュは、ギャラクトロンの右目に直撃!

 

ギャラクトロンの右目部分が破壊され、内部機器が露出する。

 

『オノレェッ!』

 

夜叉の怒りの声が響いたかと思うと、ギャラクトロンシャフトがメビウス目掛けて伸びる。

 

「! ウワァッ!?」

 

先端の鉤爪で、メビウスの首を挟み込み、そのまま宙へと浮かばせる。

 

ギュオーン、ガシャ!

 

そのメビウスに向かって、ギャラクトロンブレードを構えるギャラクトロン。

 

嘗てのオーブの様に、串刺しにする積りだ!

 

「! やらせるかぁっ!!」

 

『引っ込んでいなさい、負け犬!』

 

エリス機がいの1番に飛び出し、救出しようとしたが、夜叉の声と共にまたギャラクトロンの右腕が外れ、移動砲台として3国華撃団に襲い掛かって来る!

 

「! くうっ!?」

 

「キャアッ!?」

 

「またコレかよ!?」

 

エリス機は回避行動を執り、ユイが悲鳴を挙げ、シャオロンが愚痴る様に叫ぶ。

 

ギュオーン、ガシャ!

 

「グウ! アアッ!」

 

『終わりです………』

 

必死に鉤爪を外そうとしているメビウスに向かって、遂にギャラクトロンブレードを突き刺そうとするギャラクトロン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如上空に空間の穴が発生した!!

 

「!?」

 

「アレはっ!?」

 

それに気付いたアーサーとランスロットが驚いていた瞬間………

 

「イーッサ!」

 

独特な掛け声と共に、ゼロと同じ『ウルティメイトイージス』を装着しているウルトラマンが飛び出して来た!!

 

「シュワッ!」

 

そのウルトラマンはそのまま、右腕のウルティメイトゼロソードで、メビウスを拘束していたギャラクトロンシャフトを斬り裂いた!!

 

『!? 何っ!?』

 

バランスを崩して後退るギャラクトロン。

 

「クッ! ハアッ!!」

 

メビウスは着地を決めると、残っていた鉤爪部を放り捨てる。

 

「大丈夫ですか?」

 

そこで、ウルティメイトイージスを装着しているウルトラマンが声を掛けて来る。

 

「君は確か………」

 

「初めまして。私は、『ウルトラマンエックス』です」

 

『それと、特殊防衛チームXio(ジオ)の『大空 大地』です』

 

メビウスに向かってそう自己紹介するウルトラマン………『ウルトラマンエックス』と、彼と『ユナイト』している青年『大空 大地』。

 

「新しいウルトラマン……」

 

「ええい! ウルトラマンは何人居るのだ!?」

 

新たに現れたエックスに呆気を取られているマルガレーテと、次々に増えて行くウルトラマンにそんな事を言うラウラ。

 

ギュオーン、ガシャ!

 

『何人来ようと同じ事です!』

 

とそこで、体勢を立て直したギャラクトロンから、夜叉の声が響く。

 

「! 話は後で!」

 

「ハイ! 先ずはコイツを!!」

 

そこでメビウスと、『ウルトラマンゼロアーマー』を解除したエックスがそう言い合って構えを執る。

 

ギュオーン、ガシャ!

 

ギャラクトロンが両腕を広げる様なポーズを執ったかと思うと、腹部の赤い宝玉が発光する。

 

「大地!」

 

『ココはコレだ!』

 

と、インナースペースの大地が、左手に持っていた『エクスデバイザー』に、『サイバー怪獣 サイバーベムスター』が描かれた『サイバーカード』を挿入。

 

『サイバーベムスター・ロードします』

 

エクスデバイサーから女性の声が響くと、エックスの身体をサイバー状のエネルギーが集まり、それが鎧を形成!

 

『サイバーベムスターアーマー・アクティブ』

 

左手にベムスターの腹部・吸引アトラクタースパウトを模した盾を装着した鎧………『ベムスターアーマー』が装着された!!

 

「! 鎧を纏った!?」

 

「あんなウルトラマンも居るのか………」

 

エックス独自の能力に驚きを示すランスロットとアーサー。

 

『虚仮威しをっ!!』

 

夜叉は構わず、ギャラクトロンの腹部からの閃光光線を発射する。

 

「セイッ!」

 

それに対し、メビウスの前に出て、左手の盾を構えるエックス。

 

ギャラクトロンの閃光光線が命中した!

 

………かと思われた瞬間!!

 

閃光光線が盾の吸引アトラクタースパウトによって吸い込まれてしまう!!

 

『!? 何っ!?』

 

「『ベムスタースパウト!!』」

 

驚く夜叉の耳に、エックスと大地の声が響いたかと思うと、エックスは盾に吸収した閃光光線をそのままギャラクトロンに向かって撃ち返した!!

 

自らの光線によって光球が在った腹部を貫かれるギャラクトロン。

 

大爆発と共に、ボディに巨大な風穴が空いた!!

 

『ぐううっ!?』

 

夜叉の呻き声が漏れる。

 

と、それと同時に、浮遊砲台と化していたギャラクトロンの右腕の動きが鈍った!

 

本体が大ダメージを負った事への影響が出た様だ!

 

「! チャンスッ!」

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

その隙を見逃さず、ユイ機とシャオロン機が同時に跳び蹴りを見舞い、地面へと叩き落す。

 

「今だ!!」

 

「装甲の継ぎ目を狙えば!!」

 

そこで今度は、ランスロット機とアーサー機が装甲の継ぎ目を狙って斬り付ける!!

 

流石のギャラクトロンの装甲も、継ぎ目を狙われては脆かったらしく、剥がれ落ちて内部機器を露出させる!

 

「今だ! 全弾斉射っ!!」

 

「「!!」」

 

そこへ、エリスの掛け声と共にアイゼンイェーガー3機での一斉射撃が炸裂!!

 

内部機器がズタズタになって行き、遂に大爆発を起こすギャラクトロンの右腕!!

 

「ハッ!!」

 

その様を見たメビウスは、バーニングブレイブへとタイプチェンジ!

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

メビウスブレスから発生した炎のエネルギーを胸の部分に集中させて、巨大な火球………『メビュームバースト』を形成する。

 

「大地! エレキングアーマーだ!!」

 

『OK!!』

 

更にエックスも、大地に今度はサイバーエレキングのサイバーカードを読み込ませる。

 

『サイバーエレキング・ロードします』

 

音声ガイドが流れると、エックスの身体を稲妻の様なサイバーエフェクトが包み込み………

 

『サイバーエレキングアーマー・アクティブ』

 

右腕に発射装置の様な物を付属しているアーマー………『サイバーエレキングアーマー』が形成された!!

 

「ハアアアアアアァァァァァァァ………『エレキング電撃波』!!」

 

その右腕から、必殺技である黄色と青の電撃………『エレキング電撃波』を放つエックス。

 

「ハアッ!!」

 

それに合わせてメビウス(バーニングブレイブ)も、メビュームバーストを放つ!

 

火球と電撃波が、ギャラクトロンを直撃!!

 

『!?』

 

一瞬の間の後、ギャラクトロンは大爆発を起こし、木っ端微塵となった!

 

「やったぞぉ!」

 

「手強い相手だった………」

 

それを見て歓声を挙げるラウラと、安堵の息を吐くマルガレーテ。

 

しかし………

 

「………まさか新たなウルトラマンが現れるとは………想定外でしたね」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

上空から響いて来た声にメビウスとエックス、それに3国華撃団が見上げると、そこには………

 

「ですが、詰めが甘かったですね………」

 

下半身が無くなり、顔の半分も壊れて内部機器が露出しているものの、残った左手でしっかりと帝剣を確保している夜叉の姿が在った。

 

「! まだ生きてるっ!?」

 

半壊状態にも関わらず、未だに機能している夜叉の姿に戦慄するユイ。

 

「!? 高エネルギー反応っ!? 海から!?」

 

とそこで、エリス機が海の方から何かが近づいて来るのを感知する。

 

やがて海面が盛り上がり始めたかと思うと、そこから………

 

空中移動要塞セバストーポリが出現した!

 

「! アレは偽莫斯科華撃団が使っていた空中要塞!?」

 

「見て! 人影が!!」

 

シャオロンがそう言うと、ランスロットがセバストーポリの艦橋の上に人影が在る事に気付く。

 

「! ミスターGッ!!」

 

カメラを望遠に切り替えたエリスが、その人影がミスターGである事を確認する。

 

「…………」

 

すると、夜叉がテレポートを使い、一瞬にしてミスターGの元へと移動する。

 

「! しまったっ!?」

 

「幻庵様………帝剣です」

 

「おおっ! 良くやった! でかしたぞ、夜叉っ!!」

 

アーサーがしくじったと言う表情をする中、ミスターGは夜叉からふんだくる様に受け取る。

 

「ふ、ふふふふ………フハハハハハハハッ!! やったぞぉっ!! 神器『帝剣』は我の手に有り! 今こそ、帝都の滅ぶ時だ!!」

 

歓喜の笑い声を挙げながら、帝剣を鞘から抜き放つミスターG。

 

その姿が、怪しい光に包まれ、幻庵葬徹へと変わる。

 

「! アレがっ!?」

 

「記録で見たのと同じ………降魔大戦で降魔王の右腕だった上級降魔………『幻庵葬徹』!」

 

ミスターGが幻庵へと変わる様を目撃したエリス、マルガレーテが驚愕を露わにする。

 

と、その時!!

 

セバストーポリからエネルギーの様な物が漏れ始め、帝剣へと集まって行く。

 

「カミンスキーめ! 全く良い物を残して行ってくれたぁ!! お陰で贄となる魂の代わりが出来た! 出でよ、幻都よぉっ!!」

 

エネルギーが集まった帝剣を、大上段に構えた後に振り下ろす幻庵。

 

すると、帝剣から巨大な斬撃波が飛び、それが空に亀裂を作り出した!!

 

そこから稲妻の様なエネルギーが放出され、セバストーポリに降り注いだかと思うと………

 

セバストーポリが、不気味な魔城へと変貌を遂げた!!

 

「これだ………これが、封じられし魔の力! ふははは………降魔王様!! 漸く………漸くです!! 人間を滅ぼし………帝都を………世界を滅する時は来た!!」

 

歓喜の声を響かせる幻庵。

 

「我が名は幻庵葬徹! 絶望するが良い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

すみれ「まさか幻都が降臨してしまうなんて………

 

そもそも、天宮さんの刀が帝剣だったなんて………

 

一体如何言う事なんですの?

 

二都作戦は一体何だったの?

 

次回『新サクラ大戦』

 

第9話『邪悪なる真実』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

そんな!?

 

それじゃあ、帝剣とは………

 

二都作戦とは!?………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第8話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『シビルジャッジメンター ギャラクトロン』

 

身長:61メートル

 

体重:6万1000トン

 

能力:ギャラクトロンシャフト、ギャラクトロンブレード、ギャラクトロンスパーク

 

初登場作品:ウルトラマンオーブ第14話『暴走する正義』・第15話『ネバー・セイ・ネバー』

 

突如としてオーブの居る地球に送り込まれて来た謎のロボット。

 

地球人を争いの火種を生む危険な存在であると一方的に断定、更に食物連鎖を間違った進化だと言い放って破壊活動を開始。

 

その正体は、全宇宙の知的生命体の排除を目論むギルバリスが送り込んだモノ。

 

強固な装甲と魔法陣バリア、様々な強力な武装を使い、1度はオーブを敗退させる。

 

その後サンダーブレスターとなったオーブに完膚なきまでに破壊されたが、後に量産機であった事が判明。

 

軍団で送り込まれて来ると言う悪夢を見せた。




新話、投稿させて頂きました。

夜叉の乗るギャラクトロンと戦うメビウスと3国華撃団。
しかし、相手が相手だけに大苦戦。
そこへ何と!
サプライズゲスト・ウルトラマンエックスと大空 大地登場!

ちょっと登場が唐突に思われるかと思いますが、実はエックスと大地には大事な役割をやってもらいたいと思ってまして。
いよいよ最終決戦となりますから、ロボットアニメのお約束的な事をやろうかと。
どう言う事か、お分かりになりますよね?

エックスの参戦で如何にかギャラクトロンを撃破しましたが、夜叉はロボとなった耐久力で脱出。
遂に幻庵に帝剣が渡ってしまいます。
お恥ずかしいお話ですが、セバストーポリの処分を忘れていたので、原作で試合会場の観客の命を生贄したのの代わりの、セバストーポリを使うという形で帝剣を発動させました。

さて、いよいよ次回から帝剣の謎などが明かされて行きます。
当然改変が入っておりますので、楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第9話『邪悪なる真実』
チャプター1『強襲! ジェネラルA』


第9話『邪悪なる真実』

 

チャプター1『強襲! ジェネラルA』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『帝剣』が幻庵の手に渡り………

 

東京湾に巨大な魔城が出現。

 

そこへ大量の降魔が現れ、何時の間にやら量産されていたWLOF級空中戦艦の艦隊も現れた事で、3国華撃団とメビウス、エックスは止むを得ず一時撤退。

 

緊急の対策会議が開かれる事となった。

 

 

 

 

 

帝劇・地下指令室………

 

「君が………」

 

「ハイ。Xeno invasion outcutters………Xio(ジオ)の大空 大地です。コッチが………」

 

『初めまして。私はウルトラマンエックスだ』

 

誠十郎に向かって自己紹介する大地と、エクスデバイザーの中から声を発するエックス。

 

「大地さんも、この地球の異常を感知して?」

 

「そうなんだ。他のウルトラマンの人や、リクくんまで来てたのは驚いたけどね」

 

「改めてお礼を言わせてもらうよ。どうもありがとう」

 

『いえ、こちらこそ、共に戦えて光栄でした』

 

リクの問いに大地はそう返し、ミライがギャラクトロンとの戦いの事で改めて礼を言うと、エックスがそう言う。

 

「『帝鍵』は、結局奪われれしまったのね?」

 

とそこで、モニターに映し出されている東京湾の半分ほどを埋め吐く程の大地に聳え立つ幻庵の魔城を見ながら、すみれがそう呟く。

 

『申し訳ありません、神崎司令………我々が居ながら………』

 

通信モニターで中継を繋げているエリスがそう謝罪する。

 

『『『『『『…………』』』』』』

 

同じ様に其々に通信モニターに映し出されている華撃団隊員達も、申し訳無さそうにしている。

 

流石に帝劇の地下指令室に全ての華撃団が集結しては手狭となる為、他国の華撃団は其々の空中戦艦から中継での会議参加となっている。

 

「仕方ありませんわ。そもそも天宮さんの刀が帝鍵だなんて、誰も知らなかったのですから」

 

「でも、本当に如何して、わたしに刀が『帝鍵』何ですか? あれは、只の………お母さんの形見で………」

 

すみれがそう返していると、当のさくらが困惑を露わにする。

 

「わたくしにも詳しい事は分からないわ………しかし、あの刀が帝鍵であり、それが幻庵葬徹の手に渡ったとなると、目的は只1つ………」

 

「降魔皇の復活………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

誠十郎がそう呟くと、一同の空気が一層重くなる。

 

「降魔皇が復活したら………帝都は、如何なるんでしょう?」

 

「あの決戦の時………全華撃団の力を結集しても、幻都に封じる事しか出来なかった敵よ。もし復活すれば、帝都は疎か、世界中が、一瞬で闇に落ちるわ」

 

「「「『『………』』」」」

 

世界を一瞬で闇に落とすと言われる降魔皇の力に、ゼロ達の間にも緊迫感が漂う。

 

「絶対に………復活させては駄目なの」

 

「しかし、如何すれば………」

 

「慌てないで。まだチャンスは有るわ………見て」

 

如何すれば良いのかと頭を捻る誠十郎に、すみれはモニターを指し示しながらそう言う。

 

すると映像が、魔城からその上空に空いている時空の裂け目の様な物に切り替わる。

 

「今出現しているのは幻都へと繋がっている空間の亀裂であって、幻都ではないわ。つまり、まだ幻都の封印は解かれていないという事よ」

 

「! ホントですか!?」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

すみれの言葉に、一同の顔に希望が差す。

 

「けど、幻都が現れるのは時間の問題よ。その時間がどれだけ有るかも分からない………希望は有るけど、楽観は出来ないわ」

 

「分かっています。何か手立てを考えないと………」

 

「一つだけ………手はある」

 

とそこで、その場に居る誰のものでも無い声が聞こえて来た。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

花組の皆が驚きながらその声がした方を振り返ると………

 

「………鉄幹さん?」

 

そこにはさくらの父・鉄幹の姿が在った。

 

「お、お父さん………如何して此処に?」

 

突如として機密エリアである地下指令室に現れた父の姿に、さくらは戸惑う。

 

「………これが、私の役目だからな」

 

「『手は有る』って………何か、知ってるんですか?」

 

さくらにそう返す鉄幹に、誠十郎は先程の言葉について問い質す。

 

「うむ」

 

「…………」

 

「『帝剣・天宮國定』………私が鍛え、さくらが持っていた帝鍵の銘だ」

 

「! 帝鍵を作ったのは貴方だったのですか!?」

 

鉄幹の言葉に、珍しく驚きを露わにするサコミズ。

 

「嘗てその力で帝都を二つの都市に切り裂き、片方の幻都に降魔皇ごと封印した神器。その封印が解かれれば、幻都が復活し、降魔皇は復活する」

 

「そうです………だから早く、帝剣を取り戻さないと!」

 

「………帝剣は、その強大な力の為、この世に必ず『1本しか存在出来ない』。新しい帝剣を生み出せば、敵が持つ帝剣の力は失われ………封印を解く事は出来なくなる」

 

「あ、新しい帝剣を………作る………」

 

思ってもいなかった方法に、誠十郎は驚く。

 

「そうだ。それが………この状況を打破する、最後の手段だ!」

 

「やった………やったよ、皆! これが、わたし達が勝つ為の、逆転の一手! これで世界を守れるよ!」

 

さくらがすぐさま喜びを露わにする。

 

「ああ………やった………やったぞ!!」

 

誠十郎も歓喜する様子を見せた。

 

『…………』

 

しかし、ゼロは何かに引っ掛かりを感じていた。

 

「早く、帝剣を作りましょう、鉄幹さん!!」

 

「………新しい帝剣を打つ為には………『必要なモノ』が有る」

 

「何でも言って下さい! 絶対に、揃えて見せます!!」

 

決意を込めてそう言う誠十郎だったが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天宮家の女が持つ『絶界』の力………さくら、お前の命が必要だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え………?」

 

鉄幹が言った言葉の意味が理解出来ず、呆然となる。

 

「な………何、言ってるの………お父………さん?」

 

当のさくらも絶句する。

 

「さくら………天宮家の運命に従い、命を捧げる時が来たのだ」

 

しかし、鉄幹はまるで他人事の様に、淡々と言葉を続ける。

 

そして、更に………

 

衝撃的な事が語られる!

 

「お前の母・ひなたも、二都作戦の時に………自分の命を差し出した。今の『帝剣・天宮國定』は、お前の母の………命で出来てるのだ」

 

「!? そ………そんな!?」

 

「………!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

想像だにしていなかった事実に、その場に居た全員が言葉を失う。

 

「お母さん、も………? わたしの刀………帝剣に………?」

 

そしてさくらは、『ある事実』に気付く。

 

「え、じゃあ………お父さん………お母さんの命を、お父さんが………?」

 

そう………

 

今の話が本当ならば………

 

鉄幹は帝剣を打つ為に、自分の妻であり、さくらの母である天宮 ひなたの命を犠牲にしたのだと………

 

「そ、そんな………そんな!!」

 

余りの出来事に、さくらは膝から崩れ落ちた。

 

『あの時感じた違和感の正体はソレか………クソッ!!』

 

ゼロは以前天宮國定から感じ取った違和感の正体を知り、悪態を吐く。

 

「さくら………」

 

「お、おい………おっさん! 今、アンタ、何て言った?」

 

「帝剣に命を捧げるって………本気なんですか!?」

 

「娘の命だよ………? 冗談でしょ?」

 

初穂・クラリス・あざみが、何を馬鹿な事を言う様な声を挙げる。

 

「この様な事、冗談で言わぬ」

 

「妻を犠牲にして、次は娘の命まで奪おうって言うの? 大した父親ね」

 

「分からぬなら、もう1度言おうか? 天宮の命を用いねば、帝剣は作り出せん!」

 

皮肉るアナスタシアを無視し、鉄幹は再度繰り返す。

 

「…………」

 

「さくら。己の運命を………受け入れよ」

 

まだ打ちひしがれているさくらに、鉄幹は容赦無くそう言い放つ。

 

「鉄幹さん! 使うなら………俺の命を使え!」

 

とそこで、見かねた様に誠十郎は鉄幹に言う。

 

「誰の命でも良いワケではない。言った筈だ。帝剣を作るには………さくらの命が、必要なのだ」

 

しかし、鉄幹は飽く迄冷たく返す。

 

「そんな………そんな事って!!」

 

「…………」

 

「くそっ………! こんな事………あってたまるか!」

 

悪態を吐く誠十郎。

 

(大尉が二都作戦を中止すると言っていたのはこの事を知ったからでしたの?)

 

一方、すみれは以前米田から聞いていた話を思い出していた。

 

(けど、作戦は決行された………他に打つ手が無かったから………いいえ………あの大尉が、『犠牲を出す事を前提とした作戦』を良しとするワケがありませんわ!)

 

嘗ての帝国華撃団隊長・大神 一郎は、他者の命を軽んじる様な事を嫌う人間であった。

 

例えどんなに絶望的な戦いであっても、必ず全員で生還する………

 

そんな理想論とも取れる事を実際にやってのける男であった。

 

その大神が、犠牲を前提とした二都作戦を決行する筈がない。

 

(では、一体何故二都作戦は決行されたと言うの………?)

 

「さくらよ。数多の命を救え。お前の命が、この世界の人々を救うのだ」

 

と、すみれが考え込んでいる間にも、鉄幹はそう言ってさくらに迫る。

 

「わたし、は………」

 

「さくら!」

 

遂にさくらが立ち上がり、何かを言おうとするのに、誠十郎が待ったを掛けようとする………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはりそう言う手段で来たかぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

突如、渋さと鋭さを併せ持つ独特の低音から生まれる声質と語調の声が響き渡り、一同が驚いていると………

 

「ぶるあぁ………」

 

突如としてさくらと鉄幹の傍に、ジェネラルAが姿を現した!

 

「!? なっ!?」

 

「ふんっ!!」

 

驚愕するさくらの首に右腕を回し、拘束するジェネラルA。

 

「! さくらっ!?」

 

「ぶるあああああああっ!!」

 

そして鉄幹に向かって、左手から衝撃波を浴びせた!!

 

「!? うわああああっ!?」

 

巨漢の鉄幹がまるで人形の様にブッ飛び、司令室のモニターに叩き付けられて、床に落ちた!

 

「! 鉄幹さんっ!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「しっかりしい!」

 

誠十郎が声を挙げ、カオルとこまちが駆け寄る。

 

「あああっ!? 腕が! 腕がぁっ!?」

 

苦悶の表情で悲鳴を挙げる鉄幹。

 

余程強く叩き付けられたのか、モニターは罅割れ、鉄幹の左腕が有らぬ方向に曲がっていた。

 

「テ、テメェはっ!?」

 

「ジェネラルA!?」

 

「違うなぁ………我は………」

 

と、初穂とクラリスがそう言った瞬間、ジェネラルAの身体を炎が包み込み。

 

「我はキリエル………キリエル人のアゴナよ」

 

そのキリエロイド・アゴナへと変わり、一同に向かってそう言い放ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

遂に帝剣を手に入れた幻庵。
緊急事態に華撃団とウルトラマン達は作戦会議を開く。
そこで鉄幹によって明かされた帝剣の真実。

正直、新サクラ大戦で1番気に入らなかった設定ですね。
すみれさんが思っている通り、犠牲有りきの神器なんて、大神が使おうと思う筈がありません。
でなきゃ、真宮寺さくらの為に魔神器を破壊する筈がありません。
なので、大幅に改変が入ります。

原作の様に幻都が現れていないのは、その布石です。

そして何と!!
ジェネラルAことキリエル人・アゴナが強襲!!
さくらを人質にとり、鉄幹を負傷させます。
更に、次回!
トンでもない事をしでかしてくれます!

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『暴露』

チャプター2『暴露』

 

キリエル人・アゴナ

 

炎魔戦士 キリエロイド 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・地下司令室………

 

『! キリエル人だと!?』

 

(ゼロ! 知ってるのか!?)

 

『直接見たのは初めてだが………大昔から存在していたらしい精神生命体だ。人間の心を支配し揺さぶる悪魔の様な奴だ』

 

「ぶるあああああぁぁぁぁぁぁ………」

 

ゼロと誠十郎がそう遣り取りしている中、さくらを拘束したまま低く唸るキリエロイド・アゴナ。

 

「くうっ! は、放して………! あうっ!?」

 

「喚くな、小娘がぁ」

 

さくらが逃れようと身を捩ると、キリエロイド・アゴナは更に首を締め上げる。

 

「! さくら! さくらを放せっ!!」

 

それを見た誠十郎が、怒りのままに飛び掛かろうとしたが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「動くな、神山 誠十郎!! いや………『ウルトラマンゼロ』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? なっ!?」

 

「! 何ぃっ!?」

 

「神山さんが………ゼロさん?」

 

「まさか………」

 

「「!!」」

 

『『『『『『『!?』』』』』』』

 

キリエロイド・アゴナの思わぬ暴露に、誠十郎は元より、初穂・クラリス・あざみ、カオルとこまち、そしてモニターの先の3国華撃団メンバーは驚愕する。

 

「………やっぱりそうなの?」

 

一方、何処かでそんな予感がしていたアナスタシアは、納得が行った様な表情を見せる。

 

「ゼロさんが………誠兄さん?」

 

さくらも驚愕に目を見開いている。

 

「な、何を………」

 

「惚けるのかぁ? ならば、こうしてやろう」

 

何とか誤魔化そうと誠十郎が口を開いた瞬間、キリエロイド・アゴナはノーモーションで左手から火球を放った!

 

「!!」

 

慌てる誠十郎。

 

この状況では、躱せば他の誰かに当たってしまう。

 

ミライ達のフォローも間に合わない。

 

『誠十郎! 仕方ねえっ!!』

 

とそこで、ゼロがそう言って、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを出現させる!

 

「! うおおおっ!!」

 

すぐさまそれを掴んで目に当て、誠十郎はゼロへと変身!

 

「ハアッ!!」

 

ウルトラゼロディフェンサーを展開して、火球を防ぐゼロ。

 

「! ゼロッ!」

 

「本当に、神山さんがゼロさんに………」

 

「「…………」」

 

遂に誠十郎がゼロへと変身する様を目撃する事となり、唖然となる初穂達。

 

「せ、誠兄さん………」

 

さくらも信じられないと言う表情をしている。

 

「ふんっ!」

 

とそこで、キリエロイド・アゴナがさくらの眼前に左手を翳す。

 

「!?」

 

その掌から怪しい光が放たれたかと思うと、さくらの瞳から光が消え、ガクリと気を失う。

 

「! さくら! テメェッ!!」

 

「ウルトラマンゼロォ。この娘を助けたくば、幻庵の魔城へと来るのだなぁ………フハハハハハハハッ!!」

 

怒りの声を挙げるゼロを気にも留めず、キリエロイド・アゴナはさくらと共に怪しい光に包まれ、司令室から姿を消した。

 

『! さくらっ!!』

 

「クソッ! 何てこった!!」

 

誠十郎が悲痛な叫びを挙げ、ゼロは思わず悪態を吐く。

 

「ゼロ………いや、神山………なのか?」

 

とそこで、初穂が恐る恐ると言った様子でゼロに声を掛ける。

 

「「「…………」」」

 

あざみ・クラリス・アナスタシアを始めとした他の面子もゼロに注目している。

 

「…………」

 

ゼロはゆっくりと一同の方を振り返ったかと思うと、その姿が光に包まれ、誠十郎へと戻る。

 

「「「「「!………」」」」」

 

その様に改めて驚きを示す一同。

 

「皆………その………俺は………」

 

何と説明したものかと、誠十郎は言葉に詰まる。

 

「皆! 説明は後よ! 今は鉄幹さんを医務室に!」

 

「「「「「「!!」」」」」

 

しかし、すみれがそう言い放ち、一旦誠十郎とゼロの事は置いて置き、鉄幹を医務室へと運ぶのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室………

 

「完全に折れとるなぁ。全治1ヶ月ってところや」

 

鉄幹の治療を終えたこまちがそう言う。

 

「…………」

 

添木を当てられ、首から三角巾で釣っている左腕を右手で触りながら、鉄幹は無念の表情を浮かべている。

 

「そうですか………」

 

「オイ、神山。もう良いか? 話して貰っても?」

 

誠十郎がそう言うと、初穂がそう言って来る。

 

「こっちの準備は出来てるよ」

 

と、トランク型キネマトロンを用意していたイデがそう言い、キネマトロンを起動させると、画面に3国華撃団の面々が映し出される。

 

「………それじゃあ、話させてもらうぜ」

 

そこで、誠十郎はゼロと意識を入れ替えた。

 

「! ゼロ………か?」

 

「ああ、そうだ」

 

「時々神山さんが豹変したした様に見えた事があったのは、ゼロさんになってたからなんですね」

 

「納得………」

 

クラリスとあざみが、誠十郎(ゼロ)の様を見てそう言う。

 

 

 

 

 

そのまま誠十郎(ゼロ)は、自分の素性とこの地球に来た理由、そして誠十郎と一体化した理由を説明した………

 

 

 

 

 

『じゃあ、帝都中央駅で降魔を生身で倒したってのは、お前等の事だったのか!?』

 

シャオロンがゼロが誠十郎と一体化した時にあった帝都中央駅の出来事を思い出してそう言う。

 

『光の国………宇宙警備隊………マルチバース………』

 

『余りにもスケールが壮大過ぎて、正直圧倒されてしまったよ』

 

エリスとアーサーは、桁違いのスケールの話に圧巻される。

 

「黙ってて悪かったな………」

 

「ゼロ………」

 

申し訳無さそうに言う誠十郎(ゼロ)に、初穂が近づいたかと思うと………

 

「………あんがとな」

 

「! 何っ?」

 

突然礼を言われ、誠十郎(ゼロ)は困惑する。

 

「アタイ達が今までやって来れたのはお前のお陰だ」

 

「黙っていたのだって、事情が有ったからなんですよね?」

 

初穂とクラリスがそう言い合う。

 

「ゼロは私達の仲間………」

 

「今更何か言う事なんてないわ」

 

『我々も同じだ』

 

『『『『『『…………』』』』』』

 

続いてあざみとアナスタシアがそう言うと、エリスを始めとした3国華撃団の面々も無言で頷いた。

 

「お前等………へへ、ありがとよ」

 

誠十郎(ゼロ)は照れ臭そうに鼻を擦る。

 

「………それで、コレから如何しましょう?」

 

とそこで、カオルがそう言って話をコレからの事に切り替えさせる。

 

「あのアゴナってキリエル人が降魔皇の仲間だとするなら、天宮さんは恐らく幻庵の魔城ね」

 

「………やはり、乗り込むしかありませんね」

 

すみれがそう推察すると、ゼロから交代した誠十郎がそう言う。

 

「誠ボン、さくらを取り戻すんだ。そうすれば、私が片腕でも帝剣を打って見せる」

 

「! おっさん! アンタ、まだそんなこと言ってんのか!?」

 

とそこで、誠十郎にそう言って来た鉄幹の言葉を聞いて、初穂が怒鳴りつける。

 

「現実を見ろ! 今の状況で打てる手立ては新たな帝剣を打つ事だけだ! だから10年前! 私は妻の命を使った!! ひなたもそれを受け入れた!!」

 

しかし、鉄幹は逆に怒鳴り返す。

 

「ひなたは、大切な人達を守る為に………何よりさくらの未来を守る為に………命を懸けたのだ!」

 

「犠牲者はいつもそうだ。文句だけは美しいけれど………」

 

「!?」

 

と、飽く迄正論だと通そうとした鉄幹に、イデがピシャリと冷や水を浴びせた。

 

「イデさん………」

 

温厚な彼らしからぬ怒りと嫌悪を露わにしたイデの表情を見て、誠十郎も思わず黙り込む。

 

「兎に角! アタイ達は新しい帝剣なんか必要無えっ!!」

 

「そもそも幻庵達を倒してしまえばそれで済む話………」

 

「その通りよ………」

 

初穂・あざみ・アナスタシアが口々に言う。

 

「それに………今此処にはウルトラマンさんが4人も居るんです! 例え降魔皇が復活したとしても、決して遅れは取らない筈です!」

 

クラリスも、誠十郎を始め、リク・ミライ・大地を見ながらそう言い放つ。

 

「「「…………」」」

 

それを聞いたリク・ミライ・大地は、力強く頷いて見せる。

 

『無論我々も協力する。降魔皇の復活は世界の危機だからな』

 

『『『『『『………』』』』』』

 

当然、3国華撃団の面々の気持ちは同じだった。

 

「良し! 行くぞっ!! さくらと帝剣を取り戻し、幻庵達を倒し、降魔皇の復活を阻止する!!」

 

そしてその場を締める様に、誠十郎がそう高らかに宣言する。

 

「………やっぱり………花組の隊長はこうじゃないと、ね」

 

そんな誠十郎の姿に、大神の姿を重ねながら、すみれは微笑んだ。

 

「貴方達の覚悟に、わたくしも賭けます!………勝ちますわよ、この戦い!!」

 

「すみれさん!」

 

「いよいよ帝国華撃団の『切り札』を切る時が来たみたいね………」

 

「! 『切り札』!? それは一体!?」

 

初めて聞く、帝国華撃団の『切り札』なる存在に、誠十郎が驚きを示す。

 

『こちら司馬。すみれさん、準備完了しましたぜ』

 

とそこで、キネマトロンの映像に、何やら機関室の様な場所に居る令士の姿が割り込んで来た。

 

「令士!? お前、今何処に居るんだ!?」

 

「詳しい事はまた後で………一旦司令室へ戻りますわよ」

 

見慣れぬ場所に立つ令士の姿に誠十郎が尋ねるが、それを遮る様にすみれがそう言う。

 

「わ、分かりました………」

 

一抹の謎を残しながらも、一同は再び司令室へと向かう。

 

「…………」

 

一方、1人取り残された鉄幹は、診察用の椅子に腰掛けたまま、若干顔を伏せていた。

 

『犠牲者はいつもそうだ。文句だけは美しいけれど………』

 

「………私は………間違っていない」

 

脳裏に先程のイデの言葉が反復し、鉄幹はそう呟く。

 

まるで自らにそう言い聞かせているかの様に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

華撃団の本拠地を強襲してきたアゴナ。
誠十郎とゼロの正体を暴露し、さくらを連れ去ります。
幸い、誠十郎とゼロは今までの活躍があり、すんなりと受け入れられましたが………
連れ去られたさくらですが、勿論大変な事になります。

そして尚も新しい帝剣を作ろうとしている鉄幹。
そんな彼に、イデさんのあの名台詞を言ってもらいました。
結局犠牲者を賞賛するのって、只の綺麗事なんですよね………
自分は間違っていないと思う鉄幹ですが、後にそれが根底から崩される事になります………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『悪夢の誘惑』

チャプター3『悪夢の誘惑』

 

キリエル人・アゴナ

 

炎魔戦士 キリエロイド

 

上級降魔 幻庵葬徹 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾・幻庵の魔城………

 

「おかしい………何故幻都が現れない?」

 

帝剣を手にしたまま、空に出現している空間の亀裂を見上げながら、そう疑問を呈する幻庵。

 

本来ならば、空間の亀裂から幻都が現れ、降魔皇が復活する筈だった。

 

しかし、実際に出来たのは幻都へ繋がっていると思われる空間の亀裂だけであり、幻都は出現していない………

 

「セバストーポリのエネルギーだけでは不十分だったのか?………! まさか!? 封印されている華撃団共の仕業か!?」

 

そこで幻庵は、降魔皇と共に幻都に封印されている嘗ての帝国華撃団と巴里華撃団、紐育華撃団の仕業かと推察する。

 

「オノレェ! 忌々しい華撃団共めぇ!!」

 

「案ずるなぁ、幻庵ん~」

 

「!?」

 

とそこで、背後から聞こえた声に振り返ると、さくらを連れたキリエロイド・アゴナの姿が目に入る。

 

「アゴナ………様………! そいつは帝国華撃団の!?」

 

「幻庵よぉ、帝剣の力を発揮するにはこの娘の力が必要なのだぁ」

 

「!? なっ!? 如何言う事ですか!?」

 

驚く幻庵に対し、キリエロイド・アゴナは帝剣の事を説明する………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何と!? 帝剣にその様な秘密が!?」

 

「ぶるあぁ、探し求めていた割に下調べが甘いなぁ、幻庵ん~」

 

「ぐうっ!………」

 

キリエロイド・アゴナの指摘に、幻庵は悔しそうに押し黙る。

 

「まあ、良いわぁ。この娘の力が有れば、幻都の封印は解かれるのだからなぁ………」

 

とそこで、キリエロイド・アゴナは捕まえていたさくらを乱暴に投げ捨てる。

 

「!? あうっ!?………ううう………此処は?………!?」

 

その衝撃で目を覚ましたさくらが、一瞬困惑しつつも、幻庵とキリエロイド・アゴナの姿を認めると、表情を強張らせながらも立ち上がる。

 

「ぶるあぁ、お目覚めかぁ? 天宮 さくらぁ」

 

「!!」

 

独特のイントネーションで話し掛けて来るキリエロイド・アゴナを、さくらは睨み付ける。

 

「フフフ、そう警戒するなぁ。貴様にはやって貰いたい事が有るのでなぁ」

 

「やった貰いたい事?………! 帝剣っ!!」

 

とそこで、幻庵の手に握られている帝剣………天宮國定に気付くさくら。

 

「返して! それはお母さんの!………」

 

「そうだぁ、貴様の母親の命で出来た剣よぉ」

 

「!!」

 

『今の『帝剣・天宮國定』は、お前の母の………命で出来てるのだ』

 

キリエロイド・アゴナの言葉を聞き、さくらの脳裏に鉄幹から聞いた話がフラッシュバックする。

 

「お母さん………」

 

「天宮 さくらぁ、幻都の封印を解き、降魔皇様の復活に協力してもらおうかぁ?」

 

すると、何と!

 

キリエロイド・アゴナは、さくらに対し、降魔皇の復活に協力しろと言って来た。

 

「! なっ!? ふざけないで下さい!! 誰がそんな事!!」

 

「何故拒否するぅ?」

 

当然さくらは拒否するが、それを見て不思議そうに首を傾げるキリエロイド・アゴナ。

 

「当たり前です! わたしは帝国華撃団の隊員です! 帝都を守る私が、降魔に協力なんか!!………」

 

「帝都に守る価値など有るのかぁ?」

 

「有るに決まってます! 帝都には沢山の人々の笑顔と幸せが有って………」

 

「その幸せが貴様の母親の犠牲の上に成り立っていてもかぁ?」

 

「!?」

 

キリエロイド・アゴナの言葉に、さくらは思わず目を見開く。

 

「貴様の母親は帝都を守る為に帝剣に命を捧げ、犠牲となったぁ………しかぁしっ! 帝都の者共はそんな事など露知らず、のうのうと生きて居るぅ」

 

「そ、それは………」

 

「いや、貴様の母親だけではないぃ。嘗ての帝国・巴里・紐育の華撃団の活躍すら忘れ去ろうとしておぉるぅ。寧ろ、そいつ等が犠牲になってくれたお陰で自分達は助かったぁなど思っているのではないかぁ?」

 

「! ち、違う! そんな事! そんな事!!………」

 

必死にキリエロイド・アゴナの言葉を否定しようとするさくらだったが、出来ない………

 

何故なら、キリエロイド・アゴナの言っている事は事実だから………

 

「何故ぇそんな帝都の人々の事を命を懸けて守ろうとするぅ? 貴様の母親や華撃団の犠牲など欠片も気にしていない連中をなぁ」

 

「わ、わたしは………わたしは………」

 

「しかも今度は貴様に犠牲になれと言って来たではないかぁ? これからも帝都は何かを犠牲にし続けて繫栄していくだろうなぁ………」

 

「!!………」

 

「天宮 さくらぁ………本当に帝都に………守る価値など有るのかぁ?」

 

「あ………あああっ!?」

 

とうとう何も言い返せなくなり、さくらは頭を抱えて沈黙する。

 

憧れの真宮寺 さくらの様に、帝都を守ろうと決意した思い………

 

それが今、足元から全て崩れ落ちて行った………

 

「天宮 さくらぁっ!!」

 

「!?」

 

と、突然キリエロイド・アゴナが叫びを挙げ、さくらは思わずキリエロイド・アゴナの姿を見やってしまう。

 

その瞬間に、キリエロイド・アゴナの目に、怪しげな炎の光が走った!!

 

「!!………」

 

その怪しげな炎の光を見てさくらの瞳から、光が消える………

 

そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???………

 

「!? 此処は!?………」

 

さくらが意識を取り戻したかと思うと、目の前の景色に驚く。

 

何故なら、今さくらが居るのは幻庵の魔城では無く………

 

実家の前だったからだ。

 

「わたしの家? 如何して?………」

 

「さくら」

 

困惑しているさくらに、背後から女性の声が掛ける。

 

「!?」

 

さくらは驚愕しながら即座に振り返る。

 

何故ならその女性の声はさくらが良く知っており………

 

『もう2度と聞く事が無い』筈の声だったからだ。

 

「さくら………」

 

そこに居たのは、巫女の様な服を来たさくらに良く似た女性………

 

そう、帝剣を作り出す為に命を捧げて死んだ筈のさくらの母親………

 

『天宮 ひなた』だった。

 

「お母………さん」

 

「やっと会えたわね………さくら」

 

目を見開くさくらに、ひなたは優しく微笑みながらそう言う。

 

「! お母さんっ!!」

 

途端に、さくらは涙を流しながらひなたに抱き着いた。

 

「お母さん! お母さん! お母さん!」

 

「ああ、さくら………私の愛しい娘………」

 

泣きじゃくるさくらを優しくあやすひなた。

 

「わたし! お父さんがお母さんを犠牲にして帝剣を作ったって聞いて! 帝都を守る為に、今度はわたしが犠牲にならなきゃいけないって言われて! もうわたし………何を信じれば良いのか分からないよぉっ!!」

 

泣きじゃくりながら胸の内を告白するさくら。

 

「大丈夫よ、さくら。もう何も心配しなくて良いわ。全て忘れてしまいなさい。そして此処でお母さんとずっと一緒に居ましょう………」

 

「お母さん………」

 

「そう………ずっとね」

 

とそこで、抱き着かれているさくらに見えない様に………

 

ひなたは邪悪な笑みを浮かべたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾・幻庵の魔城………

 

「あははは………お母さん………ずっと一緒だよ………あははは」

 

そう呟くさくらに表情は無く、瞳から完全に光が無くなっており、人形の様な無表情のまま、涙を流していた。

 

「コレでこの娘は我々の意のままよぉ………」

 

「何と………」

 

さくらの心をアッと言う間に掌握したキリエロイド・アゴナに、幻庵は驚く。

 

「さて………幻都の封印を解く準備を始めようではないかぁ? 任せるぞぉ、幻庵ん」

 

「えっ?………」

 

「何を呆けておるぅ? 降魔皇様の復活は我等が悲願ん。それが目の前に迫っているのならばぁ、速やかに行うべきであろうがぁ」

 

「え、ええ、その通りです!」

 

幻庵はそう言うと、内心でガッツポーズを執っていた。

 

(やった! やったぞ!! アゴナめ! 遂に私の凄さに気が付いたか! これで降魔皇様が復活した暁には、私が降魔皇様の右腕だと証明される! 遂に私は栄光を取り戻したのだ!!)

 

自分勝手に都合良く解釈する幻庵。

 

「フフフフ………」

 

そんな幻庵の内心を見透かし、笑っているアゴナ。

 

と、その時………

 

幻庵は疎か、アゴナさえも気付かなかったが………

 

帝剣の刀身に埋め込まれている宝玉の1つが、一瞬だけ光を放ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

帝劇・地下指令室………

 

「! き、君達は!?」

 

「「「「!?」」」」

 

地下指令室へと戻って来た誠十郎達を、意外な人物が出迎えた。

 

「神崎司令! お待ちしておりました!」

 

「何時でも行けますよ~」

 

それは、いつきとひろみだった。

 

しかも、2人とも普段の服装ではなく、黒い華撃団の隊員服を纏っていた。

 

「ご苦労様です、いつきさんにひろみさん」

 

「し、司令! コレは一体!?………」

 

「帝国華撃団・月組隊長………西城 いつき、ココに見参です!」

 

「じゃぱーん、同じく月組隊員、本郷 ひろみで~す」

 

驚いていた誠十郎に向かって、いつきとひろみはそう名乗りを挙げた。

 

「月組?………」

 

「そう………彼女達は帝国華撃団の隠密行動部隊・月組の隊員なのですわ」

 

「普段の姿は、世を忍ぶ仮の姿って事です!」

 

誠十郎に向かってそう説明するすみれといつき。

 

「黙っていてゴメンなさ~い、誠十郎さん。けど、月組は諜報活動を主としていますので、誰が何処に居るかは仲間にも極力秘密にしないといけなかったんです~」

 

ひろみもいつもの間延びした様子でだが、真剣な表情でそう言う。

 

「そう、だったんですか………いえ、隠していたと言うのは俺も一緒です。気にしないで下さい」

 

「そうそう、それ! まさか神山さんがウルトラマンゼロだったなんて! いつき、カンゲキ!!」

 

と、誠十郎がゼロであった事を知ったいつきが、いつもと同じ調子でそう声を挙げる。

 

「私達月組の情報収集能力を持ってしても分からなかったウルトラマンゼロが、まさか帝劇内に居たとはねえ」

 

「灯台下暗しですね~」

 

「あ、あはは………」

 

『普段のあの態度は演技じゃなくて素か』

 

先程までの雰囲気とは打って変わって和気藹々とするいつきとひろみを見て、ゼロはそうツッコミを入れる。

 

「そ、それよりも、司令。帝劇の切り札と言うのは?」

 

話を元に戻すべく、すみれにそう尋ねる誠十郎。

 

「それは実際に見た方が早いわね………総員! 配置に付きなさい!!」

 

するとすみれはそう号令を掛け、カオル達がそれに従って指令室に在ったコンパネの前に立つ。

 

そして更に………

 

すみれの目の前の床から、操舵輪らしき物が備え付けられた台座が競り上がって来た。

 

その次の瞬間!

 

帝劇全体に振動が走る。

 

「! な、何だっ!?」

 

「「「「!!」」」」

 

誠十郎と初穂達が驚いていると、モニターに銀座に設置されている監視カメラから撮っている帝劇の様子が映し出された。

 

「帝劇・霊子水晶、動力全開放!!」

 

そうすみれが叫んだかと思うと………

 

帝劇の中庭に設置されていた巨大な霊子水晶が輝き出し、光の柱を立ち上げた!!

 

「出力250%………300………行けるで!!」

 

「銀座四つ角からの切り離し承認、最終ロック解除!………すみれ様!!」

 

「帝劇………発進!!」

 

こまちとカオルの報告を聞いたすみれが、そう号令を掛けた瞬間………

 

 

 

 

 

何と!!

 

帝劇が丸ごと空へと飛び上がったではないか!!

 

 

 

 

 

「はあ!? な、何だそれ!!」

 

「し………信じられません」

 

「「…………」」

 

余りの出来事に、初穂とクラリスは仰天し、あざみとアナスタシアも言葉を失う。

 

しかし、驚くのはまだ早かった!

 

帝劇はドンドン上昇して行ったかと思うと、ある高度で停止しホバリング。

 

すると………

 

帝劇が無くなった銀座の区画から………

 

何かがロケットの様に垂直に飛び出して来た!!

 

「!? アレはっ!?」

 

『戦艦か!?』

 

それは、巨大な空中戦艦であった!!

 

垂直に発進して来た空中戦艦は、ホバリングしている帝劇の真下まで迫ったかと思うと停止。

 

その後スラスターを吹かして、水平に向きを変える。

 

するとホバリングしていた帝劇が下降を始め………

 

空中戦艦の中心部にドッキング!!

 

艦橋部を形成した!!

 

「ドッキング成功!」

 

「やったっ!」

 

「これぞ帝国華撃団の切り札………『弩級空中戦艦・ミカサ 三型』よ!」

 

カオルとこまちが歓声を挙げるのを聞きながら、すみれは帝国華撃団の切り札………『弩級空中戦艦・ミカサ 三型』の名を明らかにした。

 

「て、帝劇の地下にこんな空中戦艦が隠されていたなんて………」

 

「このミカサは嘗ての帝国華撃団の切り札だった『超弩級空中戦艦 ミカサ』の残骸を使って建造されているわ」

 

驚きっぱなしの誠十郎に、すみれは懐かしそうな表情をしながらそう言う。

 

とそこで………

 

ミカサの周りに、3隻のWLOF級空中戦艦が現れる。

 

上海・倫敦・伯林華撃団の空中戦艦だ!

 

『神崎司令、こちらは合流完了しました』

 

『スゲェ………コレがWLOF級空中戦艦の原型になったミカサかよ』

 

『嘗ての帝国華撃団が使っていた超弩級空中戦艦 ミカサから作られた物………素晴らしい』

 

アーサー・シャオロン・エリスからそう通信が入る。

 

「コレなら行ける!」

 

『私の事も忘れないで下さい』

 

誠十郎が希望を感じ始めたところで、そう割り込みで通信が入り、4隻の空中戦艦に、ネオブリタニア号が合流した。

 

「レム!」

 

『リク、遅くなりました。これよりネオブリタニア号は華撃団艦隊に合流します』

 

リクが声を挙げると、レムからそう返事が返って来る。

 

「さあ………行きますわよ!」

 

すみれがそう言い、華撃団艦隊はアゴナと幻庵が待ち構える魔城へと進路を執るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

アゴナに連れ去れたさくら。
心を揺さぶられたさくらは、アゴナの洗脳をうけてしまいます。
ウルトラシリーズでも度々問われる『地球と人類に守る価値は有るのか?』ってパターンです。
多くのウルトラマン達がこの問題に苦悩しつつも、それでも守る価値が有ると信じてくれたから、地球は今まで無事でした。
恐らく、大神さん辺りなら即答で有ると返すでしょうが、さくらは帝都を守る為に母親が犠牲になったと聞かされたばかり………
この点を突き付けられるとやはり信念が砕けてしまうかと………

そんな事になってるとは思わない帝国華撃団では………
遂にいつきとひろみが正体を明かしました。
彼女達にはまた後程に少し出番があります。
その際には噂の『超隊長』も出るかも?

そして帝国華撃団の伝統の切り札………
『空中戦艦ミカサ』出撃です。
原作ではミカサ記念公園に隠されてましたが、この作品では帝劇が普通に立ち直っているので、展開の都合もあって、従来の様に帝劇の地下に隠されているという事にしました。
また、更に後程に凄い援軍も登場する予定です。
楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『降魔と機兵』

チャプター4『降魔と機兵』

 

降魔

 

帝国機兵 レギオノイド(α)・(β) 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾・上空………

 

「魔城を視認しました!」

 

「周辺に多数の降魔とWLOF級空中戦艦も確認や!」

 

いよいよ魔城が肉眼で確認出来る距離まで華撃団艦隊は迫り、カオルとこまちがそう報告を挙げる。

 

「改めてスゲェ数だな………」

 

魔城の周辺に集まっている降魔達と空中戦艦隊を見て、初穂がそう呟く。

 

僅かに身体も震えている。

 

「初穂、怖いの?」

 

「ああ、正直言って怖えーよ………」

 

あざみの問い掛けに、初穂はそう吐露する。

 

「けど、ビビッてなんかいられるかよ! アタイ達はさくらを助けて幻庵とアゴナの野郎をブッ飛ばすんだ!!」

 

だが、すぐに闘志溢れる顔となり、左の掌に拳を握った右手を叩き付けた。

 

「うん!………」

 

「さくらさん、待ってて下さい………」

 

「必ず助けるわ………」

 

それを見たあざみが力強く頷くと、クラリスとアナスタシアも決意を新たにする。

 

「さくら………」

 

そして誠十郎も、魔城を睨み付けながら、拳を握り締めていた。

 

「頼むわよ、神山くん。このミカサが貴方達を魔城内部へ送り届けるわ。天宮さんを救出した後に幻庵達を撃破。そして帝剣を奪還し、幻都を再度封印しますわ」

 

『援護と外の降魔達の足止めは我々が引き受ける』

 

すみれが作戦を確認すると、3国華撃団を代表してエリスがそう返す。

 

「了解です」

 

と、誠十郎がそう返したところで、警報が鳴り響く。

 

「降魔達と空中戦艦隊が動き出しました!」

 

「コッチに気付いたみたいや! ドンドン迫って来るでぇ!!」

 

カオルとこまちが、徐々に赤い光点が増えるレーダーを見ながらそう叫ぶ。

 

「全艦、突撃陣形!! 何としても突破いたしますわよ!!」

 

すみれがそう叫ぶと、華撃団艦隊がミカサを守る様に陣形を組み直す。

 

「主砲、発射準備!」

 

『主砲、発射準備! 手を止めるな、急げ!!』

 

更にすみれがそう号令を掛けたかと思うと、機関室の令士が檄を飛ばし、ミカサの艦首下部が変形し、主砲である『決戦兵器 93サンチ決戦砲』が出現する。

 

「主砲、照準固定!」

 

「目標、魔城外壁………着弾誤差予測1メートルありません。いけます!」

 

主砲の照準が合わさると、カオルの報告が挙がる。

 

「主砲………撃て!」

 

そして遂に、ミカサの主砲が火を噴き、緑色のエネルギーが発射された。

 

と、次の瞬間!!

 

放たれたエネルギーが、まるで散弾の様に幾重にも分離!!

 

そして稲妻の様にジグザグに飛びながらホーミングして、次々に降魔を撃墜して行く!!

 

ミカサの前方に球形の爆炎が幾つも咲き誇り、レーダーの光点が凄い勢いで減って行く。

 

と、エネルギー波はやがて魔城へと迫ったかと思うと、再び1つに纏まって行き、最初に照準を合わせた場所へと着弾!!

 

魔城の外壁に大穴を開けた!!

 

「やったっ!!」

 

『やるじゃねえか!!』

 

誠十郎が歓声を挙げ、ゼロも予想以上のミカサの戦闘能力に感嘆の声を漏らす。

 

「魔城外壁の破壊に成功したで!」

 

「このまま突入しますわ! 機関最大!!」

 

こまちの報告を聞きながら、すみれはミカサを破壊した魔城外壁の箇所へと突っ込ませようとする。

 

だが、そうはさせないと、WLOF級空中戦艦隊がミサイルを発射して来る。

 

「敵ミサイル接近! その数多数っ!!」

 

レーダー上に示されているミサイルを表す光点の数に、カオルが悲鳴の様な報告を挙げる。

 

『対空砲火! 撃ち方始めぇっ!!』

 

『迎撃します』

 

すると、3国華撃団の空中戦艦とネオブリタニア号から対空砲火と迎撃レーザーが放たれ始め、ミサイルを撃墜して行く。

 

しかし、ミサイルは次から次へと撃ち込まれて来る。

 

キシャアアアアアアッ!!

 

更に、その隙間を縫う様にして、倒されていなかった降魔達が群がって来る。

 

「降魔接近!」

 

「クソッ! まだアレだけの数が!………」

 

カオルの報告に、迫り来る降魔達を見ながら、誠十郎が苦い顔をする。

 

とそこで、3国華撃団の空中戦艦の甲板上に、王龍、ブリドヴェン、アイゼンイェーガー達が現れる。

 

降魔達を直接迎撃する積りの様だ。

 

「良し、俺達も………」

 

「!? 空間の歪みを多数確認!!」

 

自分達も出ようと誠十郎が初穂達に号令を掛けようとした瞬間に、カオルからそう報告が挙がった。

 

「!? 何っ!?」

 

「何ですって!?」

 

誠十郎とすみれが声を挙げた瞬間、魔城の周辺に多数の空間の歪みが発生し………

 

そこから2本の角を持つ両腕がキャノン砲となっているロボット兵………

 

『帝国機兵 レギオノイド(β)』が次々と現れた!!

 

更に、魔城を支えている東京湾の大地にも、同様に空間の歪みが発生し………

 

両腕部がドリルに換装されている『帝国機兵 レギオノイド(α)』が現れる!!

 

『レギオノイドだと!?』

 

ゼロが驚きの声を挙げた瞬間、空中の レギオノイド(β)が両腕のレギオノイドガンビームを一斉発射!

 

地上のレギオノイド(α)も、目からレギオビームを放ち始める。

 

「うわっ!?」

 

「くうっ!?」

 

華撃団艦隊に容赦無く襲い掛かるビームの雨。

 

盾となっている3国華撃団の空中戦艦とネオブリタニア号は元より、ミカサにも次々と直撃弾が襲う。

 

「被弾率20%を突破! 盾になってくれている3国華撃団の空中戦艦は50%を超えています!!」

 

悲鳴にも似た報告を挙げるカオル。

 

技術レベルが遥かに上であるネオブリタニア号は耐えているが、3国華撃団の空中戦艦の損傷は広がる一方である。

 

もし3国華撃団の空中戦艦が撃沈されれば、次はミカサの番である。

 

盾になっている3国華撃団の空中戦艦を失えば、ミカサに火力が集中する事となり、そうなれば1分と持たないだろう………

 

「すみれさん! 僕達が出ます!!」

 

「「!!」」

 

とそこで、リクがそう言ってジードライザーを取り出し、ミライと大地も変身しようとする。

 

「駄目よ! 貴方達には活動制限時間が有るのでしょう!!」

 

だが、すみれはそう言って押し止める。

 

そう………

 

ウルティメイトイージスを持つゼロ以外のウルトラマンが活動出来るのは3分間のみ。

 

もしココで変身してしまえば、アゴナ達と戦う前にエネルギーが尽きてしまう事になる。

 

「けど、このままじゃっ!?」

 

と、リクが食い下がろうとした時………

 

突如メインモニターが砂嵐状態となったかと思うと、幻庵の姿が映し出された!!

 

「! 幻庵………葬徹!?」

 

『ご機嫌様………帝国華撃団の諸君』

 

「態々一体何の用ですの?」

 

誠十郎が驚く中、小馬鹿にする様な態度を執っている幻庵を睨み付けながらすみれがそう言い放つ。

 

『今更、貴様達が抗っても無駄だ。帝剣に加え、絶界の力を持つ女もコチラの手に有る………幻都降臨は最早なったも同然!』

 

「ふざけるなっ! さくらを返せっ!!」

 

『落ち着け、誠十郎!』

 

挑発する様な幻庵の言葉に、誠十郎が怒鳴り返し、ゼロが諫める。

 

『そういきり立つな。それに降魔皇様の復活はお前にとっても良い事ではないか。なあ………神崎 すみれ』

 

「えっ!?」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

とそこで、不意に幻庵がそんな事を言い、その場に居た一同の視線がすみれに集まる。

 

「…………」

 

すみれは幻庵を険しい表情で睨み付けている。

 

『幻都の封印が解かれれば、確かに降魔皇様は復活する。だが同時に………旧華撃団の者達も帰って来るのだ』

 

「………!」

 

それを聞いた誠十郎が、ハッとした様子を見せる。

 

『お前は、それを望み、それを願い………長きに渡って戦い続けて来たのではないのか?』

 

「…………」

 

『分かるか? お前の目的は、我が目的と同じなのだ。逆らうな、すみれよ。今すぐに撤退し、幻都の降臨を見守ってくれ』

 

此処へ来て幻庵は、すみれに対し、揺さぶりを掛けて来た。

 

旧華撃団メンバーの帰還………

 

幻庵の言う通り、それはすみれが心から願い、その為に今日まで帝劇を守って戦い抜いて来たのだ。

 

(すみれさん………)

 

『疑うんじゃねえ、誠十郎。アイツがこんな話に頷く奴じゃねえのはお前が1番知ってるだろう』

 

一瞬不安が過った誠十郎だったが、ゼロがピシャリとそう言い放つ。

 

「(! そうだ………すみれさんはそう言う人だ!)すみれさん! 俺は信じてます!!」

 

『ふふふ………さて、お前の考え通りに、すみれは動くかな?』

 

すみれに向かって真っ直ぐにそう言う誠十郎だが、幻庵は更に揺さぶりを掛けて来る。

 

『さあ、舞台から降りるのだ。そして………我と共に祈ろう。幻都の復活を!』

 

「………戯言はそれでお終いですの?」

 

『!? 何っ!?』

 

しかし、すみれから返って来たのは、嘲笑だった。

 

「大尉は………さくらさん達は………居なくなる時、目の前で、わたくしを見て笑いましたの………『ああ、良かった………すみれさんが残ってくれて………これであたし達がいなくなっても、帝都は安心だ』って」

 

目を閉じ、その光景を思い出しながらそう呟くすみれ。

 

「皆を助ける為に、降魔の口車に乗って………帝都を危険に晒す? はっ………! そんな事をしたら、花組の皆に顔向け出来ませんわ!!」

 

『貴様ぁっ!!』

 

「悪を倒して正義を示す………! わたくしを………帝国華撃団・花組を………舐めないで頂けます事!!」

 

「すみれさん!」

 

『やっぱりな』

 

凛としたすみれの姿に、誠十郎は笑みを浮かべ、ゼロも頷く。

 

『くっ………その言葉、もう取り消す事は出来んぞ! ならば、掛かって来るが良い! 貴様等に、真の絶望を教えてやるわ!!』

 

そう捨て台詞を残し、幻庵からの強制通信は切断された。

 

「ふう………馬鹿の相手も疲れますわ」

 

「すみれさん、かっこ良かったです」

 

「オホホ………ありがとう」

 

誠十郎の言葉に、すみれは振り返って笑顔を見せる。

 

「いや、おっかねぇだろ」

 

「これが帝国華撃団、花組トップスタァの貫禄ですか………」

 

「………里の掟、103条。神崎 すみれは怒らせるな。絶対だぞ」

 

「………流石ね」

 

初穂・クラリス・あざみ・アナスタシアも、改めてすみれの偉大さを思い知る。

 

「………本当に、良かったんですか?」

 

と、只1人、カオルが不安そうにすみれにそう尋ねる。

 

「ええ………あの方達は、しぶといですから。それに………」

 

「? それに………」

 

「何だか、意外と近い内に再会出来そうな気がしますわ」

 

何処か確信をしている様な様子でそう言うすみれ。

 

「良し! 俺達も出るぞっ!!」

 

「「「「了解っ!!」」」」

 

そこで、誠十郎がそう言い、花組も霊子戦闘機で出撃しに艦橋を後にする。

 

「すみれさん! やっぱり僕達も行きます!! ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!!」

 

「「!!」」

 

更にリクがそう言って飛び出し、ミライと大地も続いた。

 

「………本当の戦いは、コレからですわ」

 

それを見送ると、すみれは再度魔城を睨む様にしながら、そう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

魔城への突入作戦を開始する華撃団艦隊。
しかし、敵の数は圧倒的。
更にレギオノイドまでが増援に現れる。

そして、突如として現れた幻庵がすみれに揺さぶりを掛けて来る。
しかし、すみれはそれをキッパリと撥ね退けるのだった。

中々話が進まなくて申し開けありません。
最近思う様に筆が進まないのと時間が無くて………
けど、必ず完結まで書き上げますので、ご安心ください。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『万能戦艦、出撃せよ!』

チャプター5『万能戦艦、出撃せよ!』

 

降魔

 

帝国機兵 レギオノイド(α)・(β)

 

復讐ロボット ザムリベンジャー

 

戦闘円盤 ロボフォー

 

傀儡機兵・神滅 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾・幻庵の魔城………

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

「タアアアアアッ!!」

 

シャオロン機とユイ機が、炎を纏った蹴りと拳で、降魔を次々に叩き落し、上海華撃団の空中戦艦の甲板上に着地する。

 

「王に逆らう者に鉄槌を! 喰らえ、断罪! オーバーロード・エクスカリバーッ!!」

 

!?!?!????!!!………

 

倫敦華撃団の空中戦艦の甲板上に居たアーサー機が、必殺のエクスカリバーを放ち、レギオノイドを纏めて薙ぎ払う。

 

!?!?!????!!!………

 

しかし、撃破された以上のレギオノイドが新たに現れ、降魔達も更に大量に出現する。

 

「クソッ! 切りが無い!!」

 

降魔達を斬り捨てながらそう漏らすランスロット。

 

「此処は敵の本拠地………」

 

「戦力は無尽蔵だとでも言うのかぁっ!? オノレエエエエエェェェェェェッ!!」

 

「弱音を吐くな! 何としても魔城への道を開くんだ!!」

 

マルガレーテとラウラもそう愚痴るが、即座にエリスが叱咤し、3機のアイゼンイェーガーは弾幕を展開させ続ける。

 

『しかし、現状で魔城へと辿り着ける確率は5パーセント以下です』

 

と、ネオブリタニア号のレムがそう現実的な数字を示した瞬間………

 

艦隊の中心に居たミカサから、3つの光が飛び出す!

 

「! アレはっ!?」

 

エリスがそう言った瞬間………

 

「セヤッ!」

 

「イーサッ!」

 

「ハアッ!」

 

光は其々、メビウス・エックス・ジードの姿となり、魔城周辺の大地の上に着地する。

 

「「「「「帝国華撃団! 参上っ!!」」」」」

 

更に、ミカサの甲板上に、帝国華撃団の無限達も現れる。

 

!?!?!????!!!………

 

地上に居たレギオノイド(α)が、すぐさま3人のウルトラマンの元へと向かって行く。

 

空中に居たレギオノイド(β)も、次々に着地して3人のウルトラマン達の元へ向かう。

 

それにより、華撃団艦隊への攻撃が弱まる。

 

「行くよ!!」

 

「「『ハイ!!』」」

 

メビウスの掛け声で、エックス(+大地)とジードは、レギオノイド達へ向かって行く。

 

レギオノイド達はウルトラマン達へ群がるが、降魔達とWLOF級空中戦艦隊は、引き続き華撃団艦隊に群がる。

 

「俺達も行くぞっ!」

 

「おうっ!」

 

「さくら………待ってて」

 

「今助けに行きます」

 

「ココが正念場よ………」

 

帝国華撃団も降魔達と交戦を開始。

 

全戦力を駆使し、何としてでも魔城への到達を試みるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔城・地上部………

 

「『アタッカァァァァーーーーー、Xッ!!』」

 

2人の叫びと共に、エックスが両腕・両脚をX字に開くと、全身からX字の高熱火炎が発射され、レギオノイド達を薙ぎ払う。

 

!?!?!????!!!………

 

「ハッ!」

 

レギオノイド(α)が繰り出して来た腕のドリルを、メビュームブレードで受け止めたかと思うと、そのまま弾き飛ばすメビウス。

 

「セヤッ! ハアッ!」

 

そして素早く斬撃を繰り出すと、レギオノイド(α)の両腕を、肘部分から切断!

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ! セヤアアアアアッ!!」

 

両腕の無くなったレギオノイド(α)に、プラズマ電撃の『ライトニングカウンター』を拳に乗せて零距離で放つ『ライトニングカウンター・ゼロ』を食らわせる。

 

背中側から巨大な爆発が起こったレギオノイド(α)の残骸がバタリと倒れる。

 

「レッキングリッパーッ!!」

 

胸の前で両腕を交差させ、前腕の鰭状の部位から放つ切断光線『レッキングリッパー』を放つと、複数のレギオノイドの首を跳ね飛ばすジード(プリミティブ)。

 

そこで、メビウス・エックス・ジードは一旦集結。

 

「ハアアアアアアッ! セヤアアアアアッ!!」

 

「『ハアアアアアアァァァァァァァ………ザナディウム光線ッ!』」

 

「ハアアアアアアァァァァァァァ………レッキングバーストォッ!!」

 

そして、必殺光線である『メビュームシュート』、『ザナディウム光線』、『レッキングバースト』を一斉発射!!

 

レギオノイド達は次々に爆散して行った。

 

「良し! 行けるぞっ!!」

 

降魔を斬り捨てながらメビウス達の活躍を見て、そう確信を抱く誠十郎だったが………

 

『新たな空間の歪みが発生!』

 

「!? 何っ!?」

 

指令室のカオルからそう報告が入り、驚きの声を挙げた瞬間………

 

地上に1つ目で白いボディに黒い幾何学模様の刺青の様なラインの入ったロボット怪獣………『復讐ロボット ザムリベンジャー』が大量に出現!

 

更に空中にも、UFO型のロボット怪獣『戦闘円盤 ロボフォー』が大量に出現する!

 

『ザムリベンジャーとロボフォーか!』

 

ゼロがそう言った瞬間………

 

ピピピピピポピ………

 

地上のザムリベンジャー達が一斉に活動を開始。

 

両手のクローを展開させたかと思うと、指先部にミサイルが装填され、一斉に発射される!

 

「! ウワァ!!」

 

「ヌウッ!?」

 

「ゼアッ!?」

 

ミサイルが自身が周辺に着弾し、後退るメビウス達。

 

「ハッ!」

 

「セヤッ!」

 

「レッキングリッパーッ!」

 

と、反撃にとメビュームスラッシュ、『Xスラッシュ』、レッキングリッパーを放つが………

 

ピピピピピポピ………

 

ザムリベンジャー達はバリアを展開させ、防いでしまう。

 

そして再度、ミサイルの一斉射撃が繰り出され、メビウス達の姿が爆炎に包まれる!

 

「! 皆っ!………!?」

 

誠十郎が声を挙げた瞬間、今度はロボフォー軍団の攻撃が、華撃団艦隊に襲い掛かる!

 

レーザー光線『リアンレーザー』や側面部に出現した砲門からのロケット弾攻撃が華撃団艦隊に次々と命中する!

 

「キャアッ!」

 

「クソッ! ココへ来て新手かよ!!」

 

甲板上でも次々に爆発が起こり、クラリスが悲鳴を挙げ、初穂がロケット弾をハンマーで弾き飛ばしながら叫ぶ。

 

とそこで、ロボフォー軍団から緑色の光線が放たれたかと思うと、上海・倫敦・伯林華撃団の空中戦艦とネオブリタニア号に命中。

 

上海・倫敦・伯林華撃団の空中戦艦とネオブリタニア号が動きを止めてしまう。

 

「!? 如何したっ!?」

 

『分かりません! 操縦不能です!!』

 

エリスが問い質すと、艦橋要員から慌てた様子でそう返事が返って来る。

 

『ストップ光線です。物体の動きを停止させてしまう効果があります』

 

「何よ!? その反則技!?」

 

「んなの有りかよ!?」

 

レムの解析に、ユイとシャオロンがふざけるなと叫ぶ。

 

「マズイッ! コレでは………」

 

と、アーサーが声を挙げると、彼の懸念通り、ロボフォー軍団と降下、空中戦艦隊は、動けなくなった上海・倫敦・伯林華撃団の空中戦艦とネオブリタニア号を放置し、ミカサへ攻撃を集中させ始めた!

 

ミカサの船体から次々に黒煙が立ち上り始める。

 

『損傷率50パーセントを突破!』

 

『機関、出力低下! アカンッ! このままやと!!………』

 

カオルとこまちの悲鳴にも似た報告が響く。

 

『弱音を吐くんじゃありません! 例えミカサが墜ちたとしても、神山くん達を魔城へ辿り着かせるのよ!!』

 

「! すみれさん!!」

 

『目的を履き違えないで、神山くん! 今やるべき事は天宮さんを救出して帝剣を取り戻し、降魔皇の復活を阻止する事よ!!』

 

「!!」

 

すみれの玉砕覚悟の覚悟に、誠十郎は黙り込む。

 

『その為なら、ミカサの1隻や2隻! くれてやりますわ!!』

 

「では、早速沈めさせてもらいましょうか………」

 

とそこで、そう言う声が聞こえたかと思うと、ミカサの甲板上に呪術陣が出現。

 

「「「「「!?」」」」」

 

誠十郎達が身構えると、そこから無限よりも一回り大きい傀儡機兵が現れる。

 

『!? アレは!?………神威!?』

 

その傀儡機兵が、嘗て戦った事の有る『魔操機兵・神威』に酷似している事に気付くすみれ。

 

「『傀儡機兵・神滅』………それがこの機体の名です」

 

「! その声は………夜叉か!」

 

『傀儡機兵・神滅』から聞こえて来た声が夜叉のモノである事に誠十郎が気付く。

 

「その通り………」

 

するとそこで、神滅のハッチが空き、コックピット内が露出する。

 

「なっ!?」

 

「!?」

 

「うっ!?」

 

そのコックピットの中を見た初穂とあざみが驚愕し、クラリスが思わず吐き気を覚える。

 

そこには、先の戦いで損傷した下半身と右手首、そして顔の半分の部分がコードやら何やらで神滅と接続され、宛ら生体ユニットの様になっている悍ましい夜叉の姿が在った。

 

「何て姿なの………」

 

「直すよりもコチラの方が効率が良いと判断したまでです………」

 

嫌悪感を露わにそう言うアナスタシアに、夜叉は淡々とそう返す。

 

とそこで………

 

更に呪術陣が複数展開されたかと思うと………

 

そこから新たな神滅が出現した!

 

「!? 何っ!?」

 

「マジかよっ!?」

 

アッと言う間にミカサの甲板上が神滅で埋め尽くされ、誠十郎達は愕然となる。

 

「コレが絶望と言うモノです………貴方達が頼りにするウルトラマン達もあの様です」

 

そう言って夜叉が指し示す先には………

 

ピピピピピポピ………

 

「! ウワァ!!」

 

「ヌウッ!?」

 

「ゼアッ!?」

 

ザムリベンジャー軍団のミサイルと展開したクロー部分からの破壊光線の一斉射撃を浴びせられているメビウス達の姿が在った。

 

3人とも既にカラータイマーが点滅を始めている。

 

『メビウスッ! エックスッ! ジードッ! クソォ! 俺が行けりゃあ………』

 

すぐにでも変身して救援に向かいたいゼロだが、目の前の神滅軍団を放っておくワケには行かない。

 

ココは誠十郎のまま指揮を執る必要が有った。

 

「終わりです………帝国華撃団」

 

死刑宣告の様にそう告げる夜叉。

 

「「「「「!………」」」」」

 

誠十郎達の顔に、絶望の色が過り始める。

 

『まだですわ!!』

 

「! すみれさん!?」

 

「「「「!!」」」」

 

しかし、そこで即座に反論したのはすみれだった。

 

『わたくし達は決して諦めない! 何故ならば………それが帝国華撃団だからですわ!!』

 

どんなに絶望的な状況でも決して希望を捨てず、諦めない………

 

それは大神 一郎や真宮寺 さくら達と共に戦い抜いて来た初代帝国華撃団のメンバーであるすみれの信念だった。

 

と、その時………

 

『そうだ、すみれ。それでこそ帝国華撃団だ!!』

 

通信回線にそう言う声が響き、光線がロボフォー軍団、レギオノイド軍団、降魔達、WLOF級空中戦艦隊を薙ぎ払った!!

 

「!? 何っ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

その光景に、夜叉と共に誠十郎達も驚愕する。

 

『! 機能回復!』

 

『戦線に復帰します』

 

そして、上海・倫敦・伯林華撃団の空中戦艦とネオブリタニア号の機能が回復し、再度ミカサを守る様に陣形を組む。

 

『!? 今の声は!?』

 

『後方より、空中戦艦が1隻接近中!』

 

『何やこの速度は!? 音速の2倍以上は有るで!?』

 

すみれが聞こえて来た声に聞き覚えを感じていた中、カオルとこまちからそう報告が挙がる。

 

そう報告通り、ミカサの後方から、銀色の戦闘機の様な形状をした空中戦艦が、ガンクルセイダー部隊を引き連れ、信じられないスピードでやって来た。

 

『すみれ! 待たせたなっ!!』

 

『米田さん!!』

 

そこで、その空中戦艦から通信が入り、指令室のモニターに米田の顔が映し出される。

 

『おおっ! やっと調整が終わったんですか!』

 

『すまねぇな。かなり手間取っちまってよぉ』

 

そこでイデが通信回線に割り込んで来てそう言い、米田が申し訳無さそうに返す。

 

『イデさん!? あの空中戦艦は………』

 

『アレこそ僕が極秘裏に開発を進め、ネオブリタニア号のデータを参考に漸く完成に漕ぎ着けた新型の空中戦艦!』

 

『その名も『万能戦艦マイティ号』よ!!』

 

すみれの問い掛けにイデと米田がそう返す。

 

 

 

 

 

魔城の上空を闇を切り裂くかの様に、その銀色の巨体を輝かせている空中戦艦………

 

その名も!!

 

『万能戦艦マイティ号』!!

 

蒸気時代の悪・降魔達から帝都を防衛する勇者達の戦船だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

魔城への突入を試みる華撃団艦隊とウルトラマン達。
しかし、叩いて叩いても現れる増援に新手も出現。
遂にはミカサの甲板上に夜叉の操る神滅軍団も現れて大ピンチ。

………かと思われた瞬間!
米田さんが『万能戦艦マイティ号』で颯爽と登場です。
ネオブリタニア号解析の下りは、コレの登場の為の伏線でした。
実はガンクルセイダーを出した時から、マイティ号を出そうと思っていまして。
遂に念願叶って登場となりました。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『援軍と強化』

チャプター6『援軍と強化』

 

傀儡機兵・神滅 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾・幻庵の魔城………

 

「マイティ号………」

 

『あんな物造ってやがったのか』

 

ミカサやWLOF級空中戦艦とは一線を画すマイティ号の姿に、誠十郎とゼロは感嘆の声を漏らす。

 

と、そこで………

 

『マグネリュームエネルギー、照射!』

 

米田の号令が掛かると、マイティ号から地上に居るメビウス・エックス・ジードに向かってエネルギー波が照射された。

 

エネルギー波はカラータイマーに命中したかと思うと、点滅していたカラータイマーが、忽ち青に戻った!

 

「! コレは!?」

 

「エネルギーが戻った!」

 

『凄いっ!』

 

エネルギーが回復した事に、メビウスとエックス・大地が驚きの声を挙げる。

 

「ありがとうございます!」

 

ジード(プリミティブ)がお礼を言うと、マイティ号は返礼の様に翼を振って見せた。

 

「オノレェッ!」

 

その光景に、夜叉が苛立った様に叫び、神滅が刀を握っている右手を上げたかと思うと、またも敵軍の増援が現れる。

 

「調子に乗るな! 貴様等に有るのは絶望だけだ!!」

 

夜叉のそう言う台詞と共に、神滅軍団は一斉に刀を構える。

 

「「「「「!!」」」」」

 

身構える誠十郎達だったが………

 

『初穂ちゃん! クラリスちゃん! あざみちゃん! アナスタシアちゃん! 君達の無限をパワーアップさせるよ!』

 

そこでイデからそう通信が入る。

 

「!? パワーアップッ!?」

 

「そ、そんな事が出来るんですか!?」

 

『こんなこともあろうかと、密かに開発して於いたのさ!』

 

「何時の間に………」

 

「イデさんって何でも出来るのね………」

 

驚く初穂とクラリスに、若干呆れているあざみとアナスタシア。

 

『それじゃあ行くよ! 『モンスアーマー』! 転送っ!!』

 

イデがそう言い、目の前に在った機械を操作したかと思うと………

 

『モンスアーマー・転送します』

 

機械からエクスデバイザーと同じ人工音声が流れ、大帝国劇場の時計台の文字盤部分から、初穂機・クラリス機・あざみ機・アナスタシア機に向かってサイバー状のエネルギーが照射された!

 

すると………

 

 

 

 

 

『サイバーゴモラアーマー・アクティブ』

 

初穂機に、『サイバーゴモラアーマー』が!!

 

 

 

 

 

『サイバーゼットンアーマー・アクティブ』

 

クラリス機には、『サイバーゼットンアーマー』が!!

 

 

 

 

 

『サイバーベムスターアーマー・アクティブ』

 

あざみ機には、『サイバーベムスターアーマー』が!!

 

 

 

 

 

『サイバーエレキングアーマー・アクティブ』

 

そしてアナスタシア機には、『サイバーエレキングアーマー』が装着された!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? 何だと!?」

 

『アレはエックスの!?』

 

またも夜叉が驚愕し、ゼロも声を挙げる。

 

『やった! 成功だ!!』

 

「あの時、イデ隊員とやっていたのはコレだったのか、大地」

 

その光景に大地も歓声を挙げ、出撃前にイデに呼び出された際にやっていた事の真実を知ったエックス。

 

「す、スゲェッ!!」

 

機体状態を表すモニターのスペックが跳ね上がってのを見た初穂が驚愕の声を挙げる。

 

「流石イデさんです!」

 

「カッコイイ………」

 

「ホント、何でも出来るのね………」

 

クラリス・あざみ・アナスタシアも感嘆の声を漏らす。

 

「あ、あのイデさん。俺には何かないんですか?」

 

とそこで、1人ハブられていた誠十郎が困惑しながら訪ねる。

 

『君には自前が有るだろ………ゼロくん』

 

『! 成程な! 誠十郎! 行くぜっ!!』

 

するとイデはゼロにそう呼び掛け、ゼロは合点が行った様子を見せたかと思うと、誠十郎の左腕のウルティメイトブレスレットが輝き………

 

誠十郎機に『ウルティメイトイージス』が装着された!!

 

「! なっ!? 無限にイージスが!?」

 

『如何だ、誠十郎。コレで文句ねえだろ?』

 

「あ、ああ………良し!」

 

ドヤ顔していると思われる様子でそう言って来たゼロに、誠十郎はやや呆れながらも、ウルティメイトイージスを装着した無限に構えを執らせる。

 

「虚仮脅しをぉっ!!」

 

そこで、夜叉の叫びと共に、神滅軍団が花組へと襲い掛かる。

 

「皆! 行くぞっ!!」

 

「「「「了解っ!!」」」」

 

それに対し、花組一同も誠十郎の号令で一斉に突撃するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初穂機(ゴモラアーマー)VS神滅(量産型)………

 

初穂機(ゴモラアーマー)に向かって刀を振るう神滅(量産型)。

 

「おっとっ!!」

 

それを初穂機(ゴモラアーマー)は、クローの付いた右腕のプロテクターで受け止める。

 

「おっりゃあっ!!」

 

更にそのまま、腕を捻り、神滅(量産型)の刀を圧し折る!

 

神滅(量産型)は圧し折られた刀で突きを繰り出して来るが………

 

「喰らうかよっ!!」

 

今度は自慢のハンマーを振り、神滅(量産型)の右手を刀ごと叩き潰す。

 

「ゴモラ振動波ぁっ!!」

 

そして、両手を突き出す様に構えたかと思うと、そこから青いエネルギーが集まり、神滅(量産型)に向かって放射された!!

 

振動波を浴びた神滅(量産型)のボディに、無数の細かい亀裂が生じる。

 

「トドメだぁっ!!」

 

と、初穂がそう言ったかと思うと、ゴモラアーマーの両腕パーツが機体から外れ、ハンマーに装着される。

 

再度ゴモラ振動波が発動し、ハンマーが振動波を帯びる。

 

「東雲神社の! 御神楽ハンマーッ!!」

 

炎に加え、超振動を纏った御神楽ハンマーが繰り出され、跳び上がった初穂機が、高速縦回転で縦回転しながら、炎と振動波を帯びたハンマーを神滅(量産型)に叩き込む!!

 

「光になれええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

振動波を帯びたハンマーにより、神滅(量産型)は粉微塵に粉砕され、消滅したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラリス機(ゼットンアーマー)VS神滅(量産型)………

 

神滅(量産型)が刀を振るい、地を這う斬撃波を飛ばす。

 

「フッ!」

 

だが、クラリス機(ゼットンアーマー)がガード姿勢を執ったかと思うと、機体を包む様に多角形のバリアが展開。

 

斬撃波はバリアに当たって雲散する。

 

すると神滅(量産型)は高速移動で踏み込んで来て、今度は直接斬撃を喰らわせようとする。

 

しかし、刀の刃が当たるかと思われた瞬間、クラリス機(ゼットンアーマー)はパッと姿を消す。

 

目標を見失い、困惑した様子を見せる神滅(量産型)。

 

その背後に、テレポートしたクラリス機(ゼットンアーマー)が再度出現。

 

「ハアッ!!」

 

ボディに装着されているアーマー部分から、1兆度の火球を放った!!

 

真面に喰らった神滅(量産型)は、背中部分が完全に吹き飛び、断面部が飴の様にドロドロに溶けていた。

 

それでもぎこちなく動き、クラリス機(ゼットンアーマー)を半分溶けた刀で斬り付けようとしたが………

 

「ゼットントルネードッ!!」

 

クラリス機(ゼットンアーマー)はバリアを展開させて高速回転し、その勢いに乗せた体当たりを食らわせ、神滅(量産型)を弾き飛ばす!

 

そして死に体の神滅(量産型)からやや離れた位置に着地すると、開いた魔導書を手にする。

 

「アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

そして1発1発全てが魔導弾から『1兆度の火球』に変化したアルビトル・ダンフェールを放つ。

 

無数の1兆度の火球を纏めて喰らった神滅(量産型)は完全に蒸発し、消滅したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あざみ機(ベムスターアーマー)VS神滅(量産型)………

 

「ニンッ!」

 

左腕に手甲に代わって装着されたベムスターシールドを、ブーメランの様に投擲するあざみ機(ベムスターアーマー)。

 

神滅(量産型)は飛んで来たベムスターシールドを刀で弾き飛ばす。

 

しかし、弾き飛ばされたベムスターシールドが突如機動を変え、神滅(量産型)の背後から襲撃!

 

神滅(量産型)の背部に在った翼が、2枚とも斬り飛ばされる。

 

「そこっ!!」

 

するとあざみ機(ベムスターアーマー)は、鎖分銅を投げ縄の様に投げつけ、神滅(量産型)をグルグル巻きにして拘束する。

 

「むんっ!!」

 

そのまま神滅(量産型)を引き倒そうとするあざみ機(ベムスターアーマー)だったが………

 

神滅(量産型)の方がパワーは上で有り、巻き付けていた鎖はアッサリと引き千切られる!

 

「! うわっ!?」

 

それによってバランスを崩したあざみ機(ベムスターアーマー)がバランスを崩して転倒する。

 

そのあざみ機(ベムスターアーマー)に、隙有りとばかりに地を這う斬撃波を繰り出す神滅(量産型)。

 

「………掛かった」

 

しかし、それを見たあざみが『してやったり』と言う様に笑うと、ベムスターシールドがあざみ機(ベムスターアーマー)と斬撃波の間に割って入る。

 

そしてそのまま斬撃波を吸引アトラクタースパウトで吸い込んだかと思うと、ベムスタースパウトで神滅(量産型)に撃ち返す!

 

自らの斬撃波を食らい、縦半分に斬り跡が入る神滅(量産型)。

 

「望月流忍法………無双手裏剣!!」

 

そこであざみ機(ベムスターアーマー)必殺の無双手裏剣が繰り出され、エネルギーを吸収して大型化させたベムスターシールドも投げつける!

 

全身にクナイが刺さり、今度は横一文字に斬り裂かれた神滅(量産型)は、紫色のスパーク発したかと思うと、一瞬間を置いて大爆発した………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナスタシア機(エレキングアーマー)VS神滅(量産型)………

 

神滅(量産型)の振った刀が、アナスタシア機(エレキングアーマー)を斬り裂いた!

 

………かと、思われたが!

 

斬り裂かれたアナスタシア機(エレキングアーマー)の姿が陽炎の様に揺らいだかと思うと、消えてしまう………

 

「残念、それは幻よ」

 

困惑した様子を見せる神滅(量産型)に、背後に現れたアナスタシア機(エレキングアーマー)からアナスタシアがそう言い放つ。

 

自らの持つ霊力による氷の能力と、エレキングアーマーに宿っている電気エネルギーを使った電磁波で、虚像を作り出したのだ。

 

神滅(量産型)は背後に現れたアナスタシア機(エレキングアーマー)を斬り捨てるが、それも陽炎の様に揺らいだかと思うと消えてしまう。

 

「そこっ!!」

 

実体のアナスタシア機(エレキングアーマー)は、神滅(量産型)から少し離れた位置に現れたかと思うと、左手の拳銃を連射。

 

電撃を帯びた氷の弾丸が、命中箇所を凍り付かせると同時に内部機器にダメージを与える。

 

関節部から黒煙を上げ、ガクリと膝を着く神滅(量産型)。

 

「トドメよ!」

 

そこでアナスタシア機(エレキングアーマー)は、左手の拳銃を番傘型ライフルに持ち帰ると、右腕に装着されていたエレキングアーマーの特殊アームを向ける。

 

「アポリト・ミデンッ!」

 

番傘型ライフルからエネルギー砲、特殊アームから電撃波が放たれ、それが螺旋状に絡み合って神滅(量産型)を貫く!

 

ボディに大穴を開けられた神滅(量産型)は、スパークを発したかと思うと、そのままバタリと倒れ、爆散したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誠十郎機(ウルティメイトイージス)VS神滅(夜叉)………

 

「セエエエイッ!」

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

神滅(夜叉)の素早い連撃を、右手のウルティメイトゼロソードと左手に握った刀で捌く誠十郎機(ウルティメイトイージス)。

 

「小賢しい真似を………そんな付け焼き刃の力で如何にかなると思っているのですか!」

 

夜叉がそう言ったかと思うと、神滅(夜叉)が誠十郎機(ウルティメイトイージス)から距離を取った。

 

「魔力解放! 『幻装・武御雷』!!」

 

そして刀を天に向かって掲げたかと思うと、刀身に紫色の雷が落ち、神滅(夜叉)から紫色のオーラが立ち上り始める。

 

途端に、神滅(夜叉)から放たれている魔力が段違いとなる。

 

「死になさいっ!!」

 

夜叉の叫びと共に、誠十郎機(ウルティメイトイージス)に向かって巨大な斬撃波を放つ神滅(夜叉)!!

 

………しかし!!

 

「セヤアアアアアッ!!」

 

誠十郎が気合の雄叫びと共にウルティメイトゼロソードと刀を振るうと………

 

神滅(夜叉)の放った斬撃波は、アッサリと掻き消された!!

 

「!? 何っ!?」

 

「付け焼き刃だと?  俺とゼロがどれだけ一緒に戦って来たと思ってるんだ!!」

 

『そうだ、誠十郎! 俺とお前は一心同体だ!!』

 

驚く夜叉に、誠十郎とゼロがそう言い放つ。

 

「貴様が絶望を持って向かって来ると言うなら………俺は、『俺達』は! 希望の力でそれを迎え撃つ!!」

 

更に続けて誠十郎がそう叫ぶと、霊力が溢れ、ウルティメイトゼロソードと刀の刀身に巨大な光の刃が出現する。

 

「ウオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!」

 

そして気合の雄叫びと共にウルティメイトゼロソードを垂直に振るい、ソードレイ・ウルティメイトゼロを放つ!

 

「! ぐうううっ!?」

 

咄嗟に左手の鞘を捨てたかと思うと、刀を両手で持って、ソードレイ・ウルティメイトゼロを受け止める神滅(夜叉)。

 

しかし、放たれたソードレイ・ウルティメイトゼロの威力は凄まじく、神滅(夜叉)は徐々に後退って行き、余波で機体の各所が爆発を起こし出す。

 

更に、受け止めている刀の刀身にも、ヒビが入って行く。

 

「こんな!? こんな事がぁっ!?」

 

信じられないと言う悲鳴を挙げる夜叉。

 

「夜叉ぁっ! コレで終わりだああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

とそこで、誠十郎の叫びと共に、誠十郎機(ウルティメイトイージス)が左手の刀を横薙ぎに振るい、2発目のソードレイ・ウルティメイトゼロを放った!!

 

2発目のソードレイ・ウルティメイトゼロは、神滅(夜叉)の受け止めていた1発目のソードレイ・ウルティメイトゼロと合わさり、十字状の斬撃波となると、ヒビの入っていた神滅(夜叉)の刀を粉砕!!

 

そのまま神滅(夜叉)を十字に斬り裂いた!!

 

「任務、失敗………アゴナ様………申し訳ありません………」

 

自身の身体も斬り裂かれた夜叉は最期にそう呟き、神滅諸共に大爆発した。

 

「片付いたか………」

 

神滅(夜叉)が完全に消し飛んだのを確認した誠十郎がそう呟く。

 

『コレで邪魔をする者は居ないわ! 機関最大出力!! 一気に魔城に突撃よ!!』

 

そこで、すみれの声が通信回線に響き、ミカサは一気に魔城の穴を開けた外壁部へと突撃するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

早速大活躍のマイティ号。
そして更に………
何と、無限がパワーアップ!

無限のパワーアップは前々から考えていました。
何せ原作だと、お約束だった機体乗り換えがさくらだけでしたからね。
他のメンバーにも何か欲しいと思い、この作品らしくウルトラな要素でパワーアップさせようと思いまして。
それで思いついたのが、エックスのモンスアーマーを装着させるというものでした。
丁度初穂達と相性が良さそうな組み合わせだったので。
エックスを登場させたのはこの為です。

あっという間に神滅軍団を蹴散らしました。
夜叉はこれで退場となります。
原作ではラスボスの幻庵より強いと言われた夜叉ですが、正直色々と不明瞭な点が多かったので、何の意図があって登場させたのか分からないキャラでした。
真宮寺さくらが悪墜ちしたのではないと言うには安堵しましたが。
なので、私の作品では飽く迄只の偽者で強い敵として退場させる事にしました。
ご了承ください。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター7『突入』

チャプター7『突入』

 

上級降魔 朧

 

ウルティノイド ダークメフィスト・ドライ

 

愛憎戦士 カミーラ 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾・幻庵の魔城………

 

『魔城に突入しますわ! 衝撃に備えてっ!!』

 

いよいよ主砲で破壊した外壁部分へと突入しようとしているミカサ。

 

「「「「「!………」」」」」

 

甲板上に居た花組メンバーが一旦艦内に引っ込もうとする………

 

 

 

 

 

だが、その時!!

 

 

 

 

 

「見つけたぜぇっ!! 帝国華撃団っ!!」

 

恨みの籠った声と共に、傀儡機兵・荒吐が突如現れる!

 

「!? アレは、荒吐!?」

 

「と言う事は!?」

 

「朧っ!?」

 

「あの野郎! 生きてやがったのか!?」

 

「しぶとい………」

 

シャイニングウルトラマンゼロのシャイニングエメリウムスラッシュを受けて、メカギラスごと倒されたと思われていた朧の登場に、誠十郎・クラリス・アナスタシア・初穂は驚き、あざみが呆れた様に呟く。

 

「テメェ等を行かしゃあしねえぜぇっ!!」

 

と、そんな花組メンバーの反応など気にせず、荒吐の脚部となっている巨大な手を幻術で増殖させ、放って来る!

 

「! チイッ!!」

 

迎撃に戻ろうとする誠十郎機(ウルティメイトイージス)だったが………

 

それよりも早く、他のメンバーの機体が飛び出し、荒吐の放った幻術手を破壊する。

 

「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」

 

そしてそのまま、荒吐に組み付いた!!

 

「!? うおおっ!? 離しやがれっ!!」

 

4機の無限に組み付かれた荒吐は耐え切れず、重力に引かれて落下を始める。

 

「! 皆っ!!」

 

「お前は行けっ! 神山ぁっ!!」

 

「!?」

 

慌てて追おうとした誠十郎を、初穂がそう叫んで押し止めた。

 

「コイツは私達に任せて………」

 

「誠十郎はさくらを助けて!」

 

更に続けて、アナスタシアとあざみもそう言って来る。

 

「さくらさんはきっと神山さんを待ってますっ!!」

 

「!!」

 

最後にクラリスにそう言われ、誠十郎はハッとする。

 

『………神山くん』

 

「すみれさん………」

 

『天宮さんを助けられるとしたら貴方だけよ』

 

「! ハイ!」

 

更にそこで、すみれからもそう言われ、誠十郎は迷いを捨て、艦内へ退避した。

 

『では、行きますわよ!………突入!!』

 

そしてその次の瞬間………

 

ミカサは魔城の破壊した外壁部に突撃!!

 

そのまま船体を半分ほど減り込ませて止まった。

 

「チイッ! やられたか!………まあ、良い。如何やら入ったのは1人だけだ。ココでお前等を始末すれば、アイツも助からねえなぁ」

 

魔城を支えている大地へと降り立った初穂達を見下ろしながら、朧はそう言い放つ。

 

「馬鹿言ってんじゃねえ! 神山とゼロが負けるか!!」

 

「寧ろ貴方の方が何度負けたと思ってるの?」

 

「誠十郎とゼロは必ずさくらを取り戻す」

 

「そして幻庵とアゴナを倒し、降魔皇様の復活も阻止して見せます!」

 

初穂・アナスタシア・あざみ・クラリスはそう言い返し、彼女達の無限が構えを執る。

 

「ハッ! 俺様は生まれ変わったんだ!! 大いなる闇の力でなぁっ!!」

 

するとそこで、朧は荒吐のコックピットハッチを開け、機外に身を晒したかと思うと、『黒い棒のような形状をした物』を取り出した。

 

「ヒャハハハハハッ!!」

 

そして高笑いを挙げながら、その棒状の物………『ダークエボルバー』を両手で水平に握り、左右に引っ張って伸ばした!

 

 

 

 

 

途端に怪しい光が溢れ出し………

 

朧の姿が、緑色の目をした黒い巨人へと変わった!!

 

 

 

 

 

「!? なっ!?」

 

「ウルトラマンッ!?」

 

朧が変わったその巨人の姿が、ウルトラマンにそっくりな事に、初穂とあざみが驚きの声を挙げる。

 

「いえ、違うわ………」

 

「アレはウルトラマンじゃありません」

 

しかし、アナスタシアとクラリスは、その黒い巨人から醸し出されている禍々しい気配を感じてそう言い放つ。

 

「ヒャハハハハハハハッ! コレが俺様の新しい力だぁっ!!」

 

恍惚気味な様子の笑い声を挙げながら、黒い巨人………

 

『ウルティノイド ダークメフィスト・ドライ』は咆哮を挙げる。

 

「さあ………お前達に絶望を与えてやるぜぇっ!!」

 

右腕の『アームドメフィスト』に装着された、鉤爪状の『メフィストクロー』を構え、初穂達ににじり寄り始めるダークメフィスト・ドライ。

 

「待てっ!!」

 

しかしそこで、ジード(プリミティブ)が割って入る!

 

「! リクッ!」

 

「僕が相手だ!」

 

「ああん? 邪魔するんなら、お前から先に殺してやるぜぇ、ウルトラマン」

 

アナスタシアが声を挙げる中、ダークメフィスト・ドライはジード(プリミティブ)に標的を変える。

 

(コイツ………強い! 気を抜いたらやられる!!)

 

ダークメフィスト・ドライの強さを感じ取り、ジード(プリミティブ)は気を引き締めて、フォームチェンジに入った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「融合(ユーゴー)!」

 

『ヌェアッ!』

 

ベリアルカプセルを起動させると、リクの右側に右腕を掲げる『ウルトラマンベリアル』のビジョンが現れる。

 

起動させたカプセルを、左脇腰に装着し、グリップ部分を左手で握っていた装填ナックルにセットする。

 

「アイゴー!」

 

『ダァッ!』

 

続けて新たなカプセルを起動させると、今度は左側に同じく右手を掲げる『ウルトラマンキング』のビジョンが出現する。

 

そして同じ様に、装填ナックルにセットする。

 

「ヒアウィーゴー!」

 

ジードライザーのトリガーを押し、待機状態にすると、装填ナックルにセットしたベリアルとキングのカプセルをリードする。

 

「ハッ!!」

 

『ウルトラマンベリアル! ウルトラマンキング!』

 

そこで再度ジードライザーのトリガーを押すと、音声と共にジードライザー中央の透明部分にある遺伝子構造の様な箇所から虹色の光が溢れる。

 

その虹色の光の中から、杖の様な剣が出現。

 

『我、王の名の下に!』

 

更に音声が響く中、リクは装填ナックルからキングのカプセルを外して右手に取ると、杖の様な剣………『超絶撃王剣 キングソード』を左手で握る。

 

そして、キングのカプセルを、キングソードへセットする。

 

『ウルトラマンキング!』

 

「変えるぜ! 運命!!」

 

キングソードから威厳有る音声の流れる中、リクはキングソードを右手に持ち帰ると、左手をキングソードの前に翳す。

 

『トワッ!』

 

「ハッ!」

 

そして、キングソードを突き出す様に構えたかと思うと、持ち手部分に在ったトリガーを押した。

 

「ジィィィィィィィィド!!」

 

リクの姿が光を放ち始め、そこへベリアルとキングのビジョンが重なり、大きく跳び上がる。

 

『ウルトラマンジード! ロイヤルメガマスター!』

 

そして神々しい光と共に、キングソードを手にした金色のマントを翻したジード………

 

『ウルトラマンジード・ロイヤルメガマスター』が出現する!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ!………」

 

音を立てず、優雅に着地を決めるジード(ロイヤルメガマスター)。

 

「!? アレは!?………何て神々しく威厳有る姿………正に王の貫禄! 美しい………」

 

「ちょっと、アーサー! 後にしてよぉっ!!」

 

ジード(ロイヤルメガマスター)の姿を見たアーサーが思わず見惚れてしまい、ランスロットからツッコミを入れられる。

 

「ケケケケ、そんな金ピカになったくらいで俺様に敵うと思ってるのかぁ?」

 

「フッ………ハアッ!」

 

そんなジード(ロイヤルメガマスター)の姿を見て余裕綽々な様子のダークメフィスト・ドライに、ジード(ロイヤルメガマスター)はキングソードを剣モードで構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

魔城の外壁に突っ込んだミカサから、内部へと突入した誠十郎(+ゼロ)は………

 

「さくら………何処に居るんだ?」

 

形容し難い形状の魔城内部を疾走する誠十郎機。

 

『妙だ、誠十郎。さっきから敵の気配が全くねえ………』

 

そこで、突入してからコレまで、降魔の1匹も出て来ていない事に、ゼロがそう呟く。

 

『恐らくコレは………』

 

「罠、だろうな………」

 

ゼロにそう返す誠十郎。

 

彼もコレが罠である事は承知していたが、さくらを探す為には踏み込んで行かねばならない………

 

虎穴に入らずんば虎子を得ず、である。

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

突如怪しい光が光ったかと思うと、それが魔城内部全体へと広がる。

 

「! 魔幻空間っ!!」

 

それが魔幻空間の展開現象である事に誠十郎が気付いた瞬間、彼は愛機ごと空間内に引き摺り込まれる。

 

途端に、目の前の光景が一変した。

 

「コレは………銀座!?」

 

展開された魔幻空間は帝都・銀座であり、誠十郎機は大帝国劇場の真ん前に居た。

 

『誠十郎! アレはっ!?』

 

「!!」

 

ゼロの声に、誠十郎が正面を見やると、そこには………

 

「…………」

 

やや俯いた状態で立っているさくらの姿が在った。

 

「! さくらっ!!」

 

すぐさま無限のハッチを開け、姿を晒す誠十郎。

 

「さくら、俺だ! 助けに来たぞっ!!」

 

「…………」

 

呼び掛ける誠十郎だったが、さくらは俯き加減のまま返事をしない。

 

「さくら? 如何したんだ?」

 

「無駄だ」

 

「その小娘には最早誰の言葉も届かんわぁ」

 

誠十郎が怪訝な様子を見せると、帝劇の屋根の上に幻庵とアゴナが姿を現す。

 

「! 幻庵っ!!」

 

『アゴナ!』

 

誠十郎は幻庵を、ゼロはアゴナを睨み付ける。

 

「貴様等! さくらに何をしたっ!?」

 

「なあぁにぃ、只真実を教えてやっただけの事よぉ………」

 

「帝都に最早守る価値など無いと言う事をな!」

 

怒る誠十郎を見下ろしながら、アゴナと幻庵はゲラゲラと笑う。

 

「! このぉっ!!」

 

『待て、誠十郎! アレはっ!?』

 

「!?」

 

腸が煮え繰り返る誠十郎だったが、そこでゼロに呼び掛けられ、再度さくらを見やる。

 

すると、何時の間にかさくらの隣に、ひなたが立っていた。

 

「!? ひなたさん!?」

 

『誰だ?』

 

「さくらの母親だ! そんな、まさか………」

 

死んだ筈のひなたが現れた事に、誠十郎はやや狼狽する。

 

『落ち着け誠十郎! ありゃ幻だ!』

 

「! 何っ!?」

 

ゼロにそう言われ、誠十郎が目を凝らすと、ひなたの姿が薄く透けているのに気付く。

 

『さくら………私とさくらのまた引き離そうとする人がやって来たわ………貴方を犠牲にして帝都を救う積りよ………倒すのよ、さくら。私達の為に』

 

「うん………分かったよ、お母さん」

 

幻のひなたが怪しい笑みを浮かべてさくらにそう言ったかと思うと、さくらが顔を上げる。

 

その目に光はまるでなく、顔は能面の様な無表情であった。

 

「! さくらっ!! そのひなたさんは偽物だ! 目を覚ますんだっ!!」

 

「ぶるあああああぁぁぁぁぁぁぁ、天宮 さくらよぉ。今こそ貴様の真の力を見せてやれぇっ!!」

 

慌てて誠十郎が呼び掛けるが、そこでアゴナが、さくらに向かって『何か』を投げつけた。

 

「…………」

 

無表情のまま、その投げつけられた『何か』をキャッチするさくら。

 

それは金と黒に染められた角ばったデザインのスティック………

 

『スパークレンス』だった。

 

「…………」

 

スパークレンスを掲げ、ボタンを押したかと思うと、上部が左右に展開し、カラータイマーの様な部分が露出。

 

そしてそこから闇の様なオーラが溢れ、さくらを包み込んだかと思うと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忽ちその姿は、超古代の闇の巨人………

 

『愛憎戦士 カミーラ』となったのだった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

いよいよ魔城へ突入かと思われた瞬間………
生きていた朧が出現!!
実に第4話以来の久々の登場です。
初穂達は誠十郎をさくらの元へ行かせる為に、朧の相手を買って出ますが………
何と、朧は『ウルティノイド ダークメフィスト・ドライ』へと変身!!
駆け付けたジードも『ロイヤルメガマスター』へチェンジし、激突へ。

一方………
魔城内部へ突入した誠十郎(+ゼロ)は、魔幻空間へ引き込まれたかと思うと、幻の帝都の中へ。
そこでさくらを発見するが、完全に洗脳されていた彼女は何と!!
『愛憎戦士 カミーラ』へと変身します!!

立て続けの闇の巨人出現です。
果たしてどうなるか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター8『闇の巨人達』

チャプター8『闇の巨人達』

 

ウルティノイド ダークメフィスト・ドライ

 

愛憎戦士 カミーラ 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔幻空間内………

 

「さ、さくらっ!?」

 

『アレは!?』

 

カミーラへと変身したさくらを見上げ、驚愕を露わにしている誠十郎とゼロ。

 

「ぶるあああああぁぁぁぁぁぁぁ、愛憎戦士 カミーラよぉ! 後は任せたぞぉ!!」

 

「愛した女と戦えるかな? ハハハハハハッ!!」

 

そんな誠十郎達を尻目に、アゴナと幻庵は高笑いを残して姿を消す。

 

『野郎! 高みの見物か!!』

 

「フウウウウ~~~~………」

 

と、ゼロがそう言った瞬間、カミーラ(さくら)が動き出す。

 

「!!」

 

身構える誠十郎。

 

「…………」

 

しかし、カミーラ(さくら)の視線が向けられたのは誠十郎ではなかった。

 

「!? 何っ!?」

 

カミーラが視線を向けたのは、アゴナと幻庵が居なくなった帝劇の方だった。

 

「…………」

 

そのまま帝劇に向かって拳を握った右腕を振り被るカミーラ(さくら)。

 

「!! さくらっ! 止めろぉっ!!」

 

「フワアッ!!」

 

誠十郎の制止も虚しく、カミーラ(さくら)は右腕を振り下ろし、帝劇の時計台を破壊した!!

 

「ウワアァッ!!」

 

更に今度は足を振り上げたかと思うと、外壁の一部を踏み潰す!!

 

「ウワアアアアァァァァァーーーーーッ!!」

 

咆哮を挙げ、更に帝劇を叩き壊して行くカミーラ(さくら)。

 

「止めろっ! 止めるんだ、さくらぁっ!!」

 

必死にそう叫ぶ誠十郎。

 

例え本物でなくとも、あれ程に帝国華撃団に誇りを持っていたさくらが帝劇を破壊するなど、悪夢以外の何ものでもなかった。

 

『誠十郎! 行くぞっ!!』

 

と、ゼロもマズイと感じ、すぐさまウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを出現させる。

 

「! デュワッ!!」

 

誠十郎はすぐさまウルトラゼロアイを装着し、ゼロへと変身した!!

 

「ハアッ!!」

 

「フウウウウゥゥゥゥゥ~~~~~………」

 

地響きを立てて着地を決めるゼロだったが、その時には既に帝劇は跡形も無く破壊され尽くされてしまっていた………

 

『帝劇が………』

 

「さくら! お前、如何言う積りだ!?』

 

愕然とする誠十郎と、カミーラ(さくら)に向かって問い質すゼロ。

 

「………如何言う積り? 誠十郎さんやゼロさんこそ如何言う積りなんですか?」

 

しかし、カミーラ(さくら)は逆にそう問い返した。

 

「何だと?」

 

「二都作戦の時、降魔皇を封印出来たのはお母さんの命を使ったから………けど、帝都の人達はそんな事なんて知らずにいて、誰も感謝なんてしてない………そして降魔王が復活しそうだから、今度は私の命を犠牲にしろって………」

 

『さくら! それは違………』

 

「そんな帝都や人々を何で守らなきゃならないんですか!? 折角お母さんと会えたのに、また引き裂こうとするんですか!?」

 

否定しようとした誠十郎の声を遮り、カミーラ(さくら)の激昂の声が木霊する。

 

「そうですよ! 帝都に守る価値何て無い! 帝国華撃団なんて、必要無いんです!!」

 

『さくら! お前!!………』

 

「ウワアアアアァァァァァーーーーーッ!!」

 

とそこで、カミーラ(さくら)の右手に氷の鞭『カミーラウィップ』が出現!

 

それをゼロに向けて振るった!!

 

「!? うおっ!?」

 

慌てて転がる様にして回避すると、カミーラウィップは先程までゼロが居た地面を爆ぜさせた。

 

「ハアッ! ハアッ! ハアアッ!!」

 

尚も回避を続けるゼロに向かってカミーラウィップを振り回すカミーラ(さくら)。

 

幻影ではあるが、帝都の街がドンドン瓦礫の山に変わって行く………

 

『さくら!』

 

「誠十郎! 今は戦うしかねえ! 手加減して止められる相手じゃねえ!!」

 

『クソオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!!』

 

ゼロの言葉に、誠十郎は無力感からの咆哮を挙げるしかなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インナースペースの誠十郎の前に、ニュージェネレーションカプセルαとβが出現すると、ウルトラゼロアイをライザーにセットする。

 

「ギンガ! オーブ!」

 

『ショオラッ!』

 

『デュアッ!』

 

そして先ず、ニュージェネレーションカプセルαを起動。

 

ギンガとオーブのビジョンが現れ向かい合うと、カプセルを装填ナックルにセット。

 

「ビクトリー! エックス!」

 

『テアッ!』

 

『イィィィーッ! サーーーッ!』

 

続いてニュージェネレーションカプセルβを起動。

 

ビクトリーとエックスのビジョンが現れ向かい合うと、カプセルを装填ナックルにセット。

 

ウルトラゼロアイを装着したスキャナーのトリガーを押すと、装填ナックルを読み込む。

 

『ネオフュージョンライズ!』

 

「『俺に限界はねぇっ!!』」

 

音声が響く中、誠十郎とゼロがそう叫び、ライザーを目の前に持って来て、トリガーを押す!

 

「『ハアッ!!』」

 

そして気合を入れると、誠十郎の姿がゼロへと変わり、背後にギンガ、ビクトリー、エックス、オーブ(オリジン)のビジョンが出現!!

 

『ニュージェネレーションカプセル! α! β!』

 

そのビジョンが、次々にゼロに重なる様に融合。

 

『ウルトラマンゼロビヨンド!』

 

そして、ゼロの姿が、ゼロビヨンドへと変わった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビヨンドツインエッジッ!!」

 

両手にゼロツインソードを握るゼロビヨンド。

 

「フッ!」

 

そこでカミーラ(さくら)も、カミーラウィップを氷の刃『アイゾード』へと変える。

 

「シャアッ!」

 

「テヤッ!」

 

カミーラ(さくら)の繰り出して来た袈裟斬りを、左手のゼロツインソードで受け止めると、右手のゼロツインソードを横薙ぎに振るうゼロビヨンド。

 

「ハッ!」

 

しかし、カミーラ(さくら)は跳躍して回避したかと思うと、ゼロビヨンドの頭上を飛び越え、背後に着地。

 

「チイッ!」

 

ゼロビヨンドはすぐさま振り返ったが、その瞬間に振り返りもせずに繰り出されたアイゾードの突きを喰らってしまう。

 

「グハッ!?」

 

刺された部分から光エネルギーを血飛沫の様に飛び散らせながらよろけて後退るゼロビヨンド。

 

「フッ!」

 

そこでカミーラ(さくら)が、アイゾードを握ったまま構えを執る。

 

『!? あの構えは!? マズイ、ゼロッ!!』

 

「天剣………千本桜っ!!」

 

それが何の構えであるか気付いた誠十郎が叫んだ瞬間、カミーラ(さくら)は必殺の天剣・千本桜を繰り出す!!

 

「! ツインギガブレイクッ!!」

 

ゼロビヨンドは咄嗟にツインギガブレイクを繰り出し、飛んで来た斬撃波を相殺する。

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

しかし、その間に突っ込んで来ていたカミーラ(さくら)が、アイゾードで突きを繰り出して来る。

 

「うおっ!?」

 

「ハアッ! ハアッ! ハアアッ!!」

 

間一髪首を曲げて回避したゼロビヨンドだったが、カミーラ(さくら)は連続で突きを繰り出して来る。

 

「よっ! はっ! ほっ!」

 

「フアッ!!」

 

それにボクシングの回避の様に次々と躱すゼロだったが、そこでカミーラ(さくら)は不意を突いてアイゾードを再度カミーラウィップに変えて振るう。

 

カミーラウィップはゼロビヨンドの両手首に巻き付き、ゼロビヨンドはゼロツインソードを手放してしまう。

 

「!? しまっ………」

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

た、と言い切る前に、はそのままカミーラウィップを振るい、ゼロビヨンドを投げ飛ばす!

 

「おわああっ!?」

 

投げ飛ばされて空中で1回転すると、ビルの上に背中から叩き付けられ、ビルを押し潰すゼロビヨンド。

 

「チイイッ!」

 

とそこで、ゼロビヨンドはウルトラ念力で、地面に落ちていたゼロツインソードをクワトロスラッガーに戻し、カミーラ(さくら)へ放つ。

 

「フッ! ハアッ!!」

 

カミーラ(さくら)は再びアイゾードを構えると、クアトロスラッガーを次々に跳ね飛ばすが、その間にゼロビヨンドは体勢を立て直し、一旦距離を取ってクアトロスラッガーを頭部に戻す。

 

「エメリウムスラッシュッ!!」

 

3つのビームランプから、通常時とは比べ物にならないエメリウムスラッシュを放つ。

 

「グウウウウウウッ!!」

 

そのエメリウムスラッシュをアイゾードで受け止めるカミーラ(さくら)。

 

「!? ウワアァッ!!」

 

しかし、受け止め切れずにアイゾードが消滅する。

 

「ウオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!」

 

そこでゼロビヨンドは一気にカミーラ(さくら)に接近。

 

その横っ面を思いっ切り殴り飛ばした!!

 

「!!」

 

『目を覚ませ! さくら!!』

 

よろけて後退ったカミーラ(さくら)に向かって、誠十郎は叫ぶ。

 

『お前は真宮寺 さくらさんに助けられ、その姿に憧れて帝国華撃団に入ったんだろ! そのお前が帝都を滅ぼす降魔皇の復活を許すのか!!』

 

「………結局誠兄さんも帝都を守る為に、私に犠牲になれって言うんですね」

 

呼び掛けを続ける誠十郎だったが、カミーラ(さくら)には届かない………

 

『さくら、違う! 俺は!!………』

 

「五月蠅い! 黙れ黙れ黙れぇっ!!」

 

尚も説得を試みた誠十郎の言葉を遮り、カミーラ(さくら)は叫び散らす。

 

「嫌いだ! お父さんも、帝都も、華撃団も、誠兄さんも! 皆皆嫌いだあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

完全に負の感情が暴走し始めるカミーラ(さくら)。

 

途端にその身体から、凄まじい闇とマイナスエネルギーが溢れ出す!!

 

「『!? うおわぁっ!?』」

 

その量は半端では無く、溢れ出した際の衝撃波だけで、ゼロビヨンドがブッ飛ばされる。

 

「そぉうぅだぁ、天宮さくらぁっ!! それを待っていたぁっ!!」

 

とそこで、突如としてアゴナの声が響いて来た。

 

「! アゴナッ!!」

 

ゼロビヨンドが声を挙げた瞬間………

 

地面から怪しげな炎が立ち上り、ゼロビヨンドとカミーラ(さくら)を包み込んだのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

魔城・外部では………

 

「ひえあぁっ!!」

 

メフィストクローでジード(ロイヤルメガマスター)に斬り掛かるダークメフィスト・ドライ。

 

「ハアァ!」

 

ジード(ロイヤルメガマスター)はキングソード(剣モード)で受け止める。

 

「ひゃひゃひゃひゃあっ!!」

 

「フッ、ハアァ!」

 

そのままメフィストクローを何度も振るって来るダークメフィスト・ドライだが、ジード(ロイヤルメガマスター)はその1撃1撃を見逃さず的確に受け止める。

 

「ハッ!」

 

「グハッ!?」

 

そして一瞬の隙を衝き、身体ごと回転しながらの横薙ぎを叩き込む。

 

「野郎っ!!」

 

背中を向けたままのジード(ロイヤルメガマスター)に、再度メフィストクローを叩き込もうとするダークメフィスト・ドライだったが………

 

「ハアァ!」

 

ジード(ロイヤルメガマスター)は振り返ると同時に、左手に逆手に持ち替えたキングソード(剣モード)で受け止め、空いた右手でダークメフィスト・ドライの腹に掌底を叩き込む。

 

「ゴフッ!?」

 

よろけて後退った後、腹を押さえて膝を着くダークメフィスト・ドライ。

 

「ハアァ」

 

そのダークメフィスト・ドライを見下ろす様にしながら、優雅に構えを執っているジード(ロイヤルメガマスター)。

 

「この、金ぴか野郎っ!!」

 

そんな姿に怒り心頭と言った様子で、ダークメフィスト・ドライは三日月形光線『ダークレイフェザー』を放つ。

 

『アン! ドゥ!』

 

「ハッ! スウィングスパークルッ!!」

 

空かさずインナースペースのリクは、キングソード(剣モード)に2回左手を翳し、回転しながら刀身に集めたエネルギーを放って斬り付ける必殺技『スウィングスパークル』を繰り出した!

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァッ!?」

 

ダークレイフェザーはアッサリと打ち破られ、逆にスウィングスパークルの直撃を浴び、ダークメフィスト・ドライは汚い悲鳴と共に倒れる。

 

「ハアッ」

 

「良いわよ、リク!」

 

そのダークメフィスト・ドライを見据えながら優雅に構えを執るジード(ロイヤルメガマスター)に、アナスタシアが声援を送る。

 

「ヘッ! 何でぇっ! トンだ見掛け倒しじゃねえかよ!!」

 

一方初穂は、ジード(ロイヤルメガマスター)に圧倒されているダークメフィスト・ドライに向かってそう言い放つ。

 

「クソがぁ! もっとだ! もっと闇の力が有れば………」

 

「? 闇の力?」

 

ダークメフィスト・ドライから洩れた愚痴に、クラリスが一抹の疑問を感じた瞬間………

 

突如として魔城に地響きが走る。

 

「! 何っ!?」

 

あざみがそう声を挙げたかと思うと、魔城の天辺から、まるで火山の噴火の様に火柱が立ち上る。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

その場に居た全員の注目が、その火柱に集まった次の瞬間………

 

火柱が弾け、中からゼロビヨンドとカミーラ(さくら)が姿を現した。

 

「! ゼロさんっ!?」

 

「アッチの巨人は………」

 

声を挙げるクラリスと共に現れたカミーラ(さくら)を注視するアナスタシア。

 

「ウワアアアアァァァァァーーーーーッ!!」

 

「!? あの声は!?」

 

「さくらっ!? さくらなのか!?」

 

そこでカミーラ(さくら)が咆哮を挙げ、それによりあざみと初穂が気付く。

 

「! 此処はっ!?」

 

『!? 外に出たのか!?』

 

魔幻空間から魔城の外へと転移された事に戸惑うゼロビヨンドと誠十郎。

 

「時は来たぁっ!!」

 

とそこで、そう言う台詞と共に、アゴナと幻庵が宙に浮かんだ状態で現れる。

 

「! アゴナ!!」

 

『幻庵!!』

 

「幻庵よぉ、今こそ帝剣の真の力を解放させるのだぁ!」

 

「天宮 さくら! その力、使わせてもらうぞっ!!」

 

ゼロビヨンドと誠十郎の声が響く中、アゴナが呼び掛け、幻庵が帝剣を天に翳す。

 

すると、帝剣の刀身が光を放ち始める。

 

「アアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

そしてカミーラ(さくら)が、闇とマイナスエネルギーの塊となり、帝剣へと吸い込まれた!!

 

『! さくらああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!』

 

「さあ、今度こそ復活の時です! 蘇り下さい! 降魔皇様ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

誠十郎の悲鳴の様な声が響く中、幻庵がそう言い放つと、帝剣の刀身から凄まじい負のエネルギーが放たれ、上空の時空の裂け目へと撃ち込まれたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

カミーラとなったさくらと戦うゼロと誠十郎。
誠十郎が必死に呼び掛けるも、さくらには届かない………
遂に感情が暴走を始める。

一方、ロイヤルメガマスターとなったジードは、ダークメフィスト・ドライの朧を難なく捌いている。
しかし、如何やらまだダークメフィスト・ドライは本調子ではない様子………

そこで遂に!!
カミーラ(さくら)のマイナスエネルギーとして吸収した帝剣が、時空の裂け目を刺激。
遂に降魔皇が復活するのか!?

しかし………
次回遂に、アゴナの目的が明らかになります。
そして、帝剣と降魔皇の衝撃の事実が明らかに!?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター9『明かされる真実』

チャプター9『明かされる真実』

 

??? 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾・幻庵の魔城………

 

カミーラ(さくら)が、闇とマイナスエネルギーの塊となり、帝剣へと吸い込まれ、更に上空の次元の裂け目に撃ち込まれたかと思うと………

 

裂け目は一気に拡大を始めた!!

 

「! 裂け目が!?」

 

「イカン! あのままでは幻都の封印が解かれる!!」

 

ミカサの方でも、すみれが声を挙げた瞬間に、鉄幹が艦橋へ飛び込んで来た!

 

「! 天宮 鉄幹さんっ!?」

 

「ちょっ! 戦闘中に入ってきたらアカンッ!!」

 

驚くカオルと慌てて追い出そうとするこまち。

 

「フハハハハハハハッ! いよいよだぁっ!! 遂に降魔皇様が復活なされるのだぁっ!!」

 

一方、長年の悲願が達成されようとしている幻庵は、喜びを爆発させている。

 

「さあ蘇り下さい、降魔皇様っ! そして世界を闇に包み、人間共に死と恐怖をぉっ!!」

 

絶叫の様にそう叫ぶ幻庵。

 

………その瞬間!!

 

「余興はココまでよぉ」

 

アゴナがそう言ったかと、思うとダークリングを取り出した。

 

「!? ダークリング!?」

 

『って事は、コイツが俺達の世界に怪獣や宇宙人を呼び寄せていたのか!?』

 

それを見たゼロと誠十郎が、以前ジャグラーからリク経由で齎された情報を思い出していると………

 

「ぶるあああああああっ!!」

 

アゴナが独特な咆哮と共に、ダークリングを掲げた!

 

広がっていた次元の裂け目に溜まっていた凄まじいエネルギーが飛び出し、ダークリングへと降り注いだ!

 

「!? アゴナ様!? 何をっ!?………」

 

幻庵が狼狽している間に、ダークリングはどんどんエネルギーを吸収。

 

遂には全てのエネルギーを吸い尽くし、次元の裂け目が消滅してしまった………

 

「! 次元の裂け目が………」

 

「そ、そんなぁっ!? 降魔皇様ぁっ!!」

 

漸く成されると確信していた降魔皇の復活が一瞬で潰えた事に、愕然となる幻庵。

 

「アゴナアアアアアアァァァァァァァァッ! 貴様ぁ、降魔皇様を裏切ったかぁっ!!」

 

だが、すぐさま怒りと憎悪を全開にし、アゴナへと飛び掛かる。

 

「ぶるあああああああっ!!」

 

「!? ぐばっ!?」

 

しかし、キリエロイドとなったアゴナにより、頭を鷲掴みにされたかと思うと、そのまま地面に叩き付けられて一瞬で組み伏せられる。

 

「な、何だぁ!?」

 

「仲間割れ………?」

 

突然争い始めたキリエロイド・アゴナと幻庵の姿に、華撃団メンバーにも混乱が広がる。

 

「ぐうううっ!………オノレェッ、アゴナァッ!! 許さんぞぉっ!! よくも我等降魔が悲願! 降魔皇様の復活をぉっ!!」

 

「愚かよのぅ、幻庵。真実を知らぬと言うのわなぁ」

 

幻庵を組み伏せたままそう言い放つキリエロイド・アゴナ。

 

「真実だと!? 何を言っている!? 狂ったか!?」

 

そして次の瞬間………

 

キリエロイド・アゴナの口から信じられない言葉が飛び出した………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そもそも降魔皇とは、『我が創り出した玩具』よぉっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えっ?」

 

「何………だと………?」

 

「い、今奴は何と言った!?」

 

キリエロイド・アゴナの言葉に、華撃団メンバーは完全に動揺する。

 

「…………」

 

すみれでさえも、目を見開いて信じられないと言う様に呆然と立ち尽くしている。

 

「降魔皇様が貴様の創り出した玩具だと!? 馬鹿も休み休み言えっ! やはり狂ったかっ!!」

 

信じられるかとそう返す幻庵。

 

「ならば貴様は降魔皇が何時何処で生まれ、如何やって降魔の皇となったか知っておるのかぁ?」

 

「!?」

 

だが、キリエロイド・アゴナにそう言われた瞬間、幻庵は気付いた………

 

自分の中に在る降魔皇に関わる記憶が………

 

自分が降魔皇の部下であるという事以外に………

 

『存在しない』という事に………

 

「有るワケなかろうなぁ。貴様は降魔皇によって創られた存在………即ち、『玩具の玩具』なのだからなぁ」

 

「そ、そんなっ!? 嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だぁっ!!」

 

自身の存在すらも揺らぎ、崩され去った幻庵が、狂った様に叫び散らす。

 

「オイ、アゴナとやら! 降魔皇は貴様が創ったってのは一体如何言う事だっ!!」

 

とそこで、米田が怒声の様な声色で、キリエロイド・アゴナにそう問い質した。

 

「我はキリエル人の中で最も力を持った存在………即ち、キリエル人の王と成るべき存在だった」

 

それを受けて、キリエロイド・アゴナが語り出す。

 

「だが、愚かにも我以外のキリエル人はそれを認めようとしなかった………そればかりか、王たる我を排除しようとしてきた………最も、返り討ちにしてやったがなぁ」

 

『! アイツ、自分の同族を………』

 

「そして我は絶滅寸前となったキリエル人共に見切りを付け、次元を渡った………その最中に手に入れたのよぉ、このダークリングをなぁ」

 

膨大エネルギーを吸収し、闇のオーラを放っているダークリングを掲げてそう言い放つキリエロイド・アゴナ。

 

「そして確信したのだ。我はキリエル人の王などに納まる器では無かったのだと。我が支配するのは全ての宇宙よ!!」

 

「何つう傲慢だ………」

 

「傲慢では無い。確定した未来よぉ」

 

呆れた様に呟いたゼロビヨンドに、キリエロイド・アゴナは当然の様にそう返す。

 

「そして我はこの宇宙のこの地球をその中心地とする事に決めた」

 

「何故この地球を選んだんですの!?」

 

「知れた事ぉ………この地球には素晴らしい闇の力が溢れていたからよぉ」

 

「!!」

 

キリエロイド・アゴナの言う闇の力と言うのが、降魔を始めとした魔の存在や、呪術や魔術と言った負の力の技術である事を察するすみれ。

 

「先ずは邪魔になるであろう華撃団なる連中を排除する為の玩具………降魔皇を創り出した。その強さは貴様も良く知るところであろう? 神崎 すみれぇ」

 

「…………」

 

そう言われたすみれは、悔しそうに拳を握り、歯を食いしばる。

 

「華撃団の連中が想像以上に善戦した事は想定外だったがなぁ………そこで我は更なる玩具を創り出した。一見して希望とも見える絶望の為の玩具をなぁ」

 

「希望に見える絶望の為の玩具………?」

 

「!? ま、まさかっ!?」

 

キリエロイド・アゴナの言葉に、鉄幹の脳裏に、『ある予感』が過る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうよぉ。貴様等が必死に求めていた『帝鍵』………アレの作り方を考えたのも我よぉ」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

華撃団メンバーに再度衝撃が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんな!? そんな馬鹿なっ!? 帝剣は天宮家に代々伝わる神器だぞ!!」

 

「それは我が植え付けた偽の記憶よお。まあ、天宮家の女が妙な力を持っているのは事実だがなあ」

 

「で、では! 私は何の為に妻の命を!!………」

 

「決まっておろう………無駄死にさせたのよお」

 

「!??!」

 

狼狽する鉄幹に、キリエロイド・アゴナは更に追い打ちを掛ける。

 

「愚かな男よのぉ~。我が考えた帝鍵の生成方を何も疑いもせずに………帝都を救ったと言う功績にでも目が眩んだかぁ? フアハハハハハハッ!!」

 

「う、うわああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!?」

 

キリエロイド・アゴナが嘲笑うと、鉄幹は頭を抱えて蹲り、悲鳴の叫びを挙げた。

 

帝都を救う為、娘の未来の為に妻を犠牲にする事を受け入れた………

 

妻もそれを望んでいたと信じていた鉄幹………

 

だがそれは、たった今全て崩れ去った………

 

「何てこった………」

 

「あの降魔大戦が………壮大なマッチポンプだったと言うのか!」

 

「全ては奴の掌の上か………」

 

降魔大戦の何もかもが全て仕組まれた事だったという事実に、シャオロン・アーサー・エリスは愕然となる。

 

「二都作戦が政府によって強引に押されたのも、作戦に関わった政府関係者が全員変死したのもテメェの仕業かっ!!」

 

「如何にも………直前で帝国華撃団の隊長が気付いたのには驚いたが、最後はダークリングの力で強引に発動させてやったわぁ」

 

「! やはり大尉は二都作戦の中止する積りだったのですね!!」

 

米田の言葉にキリエロイド・アゴナはそう返し、すみれは米田から聞いた話を思い出す。

 

「なら、如何して旧華撃団が消滅してから今の今まで大人しくしてやがった!? 随分と回り諄いじゃねえかっ!!」

 

「そおれはぁ………この為よぉっ!!」

 

と、ゼロビヨンドが更にそう問い詰めた瞬間………

 

キリエロイド・アゴナは、組み伏せていた幻庵にダークリングを向けた!

 

すると!!

 

闇のオーラを放っていたダークリングが、怪しく輝いたかと思うと………

 

幻庵の身体からマイナスエネルギーを吸収し始めた!!

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

マイナスエネルギーを吸収されている幻庵から凄まじい悲鳴が挙がる。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

『な、何をっ!?』

 

「マイナスエネルギーを吸い取ってやがる!?」

 

何度目とも知れぬ驚愕を浮かべる華撃団メンバーに、誠十郎も驚いていると、ゼロビヨンドがそう言う。

 

「マイナスエネルギーとは妬みや憎しみといった『負の感情』………ならばぁ、元々負の存在である降魔がマイナスエネルギーを発すれば、如何なるぅ?」

 

「!? 途轍もない程のマイナスエネルギーが発生する!!」

 

「その通おりぃっ! 故に我は幻庵の行動を監視し、奴が絶頂の所を一気に蹴落とした上で冷遇し、只管に怒りと妬み、憎しみの煽ってマイナスエネルギーを蓄積させていたのよぉ!!」

 

「何………だと………!?」

 

マイナスエネルギーを吸われ続け、遂には自身もダークリングに吸収されようとしている幻庵から微かに声が漏れる。

 

「御苦労だったなぁ、幻庵………貴様の役目はコレで終わりだぁ。最期に最も極上のマイナスエネルギーを貰おうかあ………絶望と言う名のなあぁ」

 

「ウワアアアアァァァァァーーーーーッ!!」

 

絶望の悲鳴と共に、幻庵は完全に、握っていた帝剣ごとダークリングに吸収されてしまった………

 

『幻庵………』

 

そんな幻庵の最期を見た誠十郎は、敵とは言え、同情を禁じ得なかった。

 

「フフフフ………機は熟した」

 

と、神器『帝剣』のエネルギー、さくらが持っていた『絶界』の力、そして幻庵が溜め込んでいたマイナスエネルギーを取り込み、強大な闇のオーラを放っているダークリングを見て、キリエロイド・アゴナはそう言い放つ。

 

「さあぁっ! 今こそ全宇宙を闇に包み、我が支配するのだあっ!!」

 

そう叫んでダークリングを掲げたかと思うと、蓄えられた闇の力とマイナスエネルギーが一気に解放される!!

 

その瞬間に、魔城の上空に在った暗雲が一瞬にして地球全土を覆い尽くす程に拡大!!

 

「魔城を中心に、暗雲が全世界へ拡大!!」

 

「信じられへん………世界が闇に包まれてもうた!!」

 

観測していたカオルと小町から悲鳴の様な報告が挙がる。

 

その直後!!

 

魔城全体に地震の様な凄まじい振動が走る!!

 

「!? うおわっ!?」

 

「のわっ!?」

 

余りに凄まじい振動に、無限に乗っている初穂達は疎か、ウルトラマン達も立って居られなくなる。

 

「コレは!?………」

 

「下から何か巨大なモノが上がって来る?………」

 

「う………な、何なんですか?………この圧倒的な闇の力の感覚は?………」

 

その振動が、魔城の地面の下から何か上がって来ていると言う感覚なのを感じ取るアナスタシアにあざみと、そこから強大な闇の力を感じ取り、気分を悪くするクラリス。

 

と、とうとう地割れが起こり始めたかと思うと、そこから強大な闇の力が噴出!

 

その余波により、降魔やレギオノイド、ロボフォーにザムリベンジャー達が爆散して行く!!

 

「! 急速離脱っ!!」

 

「! 了解っ!!」

 

そこですみれが叫び、魔城の外壁に突き刺さったままだったミカサが緊急離脱。

 

その際に、ゼロ達が魔城内に残して来た誠十郎機が、自動操縦で戻って来て、甲板の上に降り立つ。

 

「! 神山さんの無限!」

 

「急いで回収して!!」

 

すぐさま誠十郎機を艦内へ回収させるすみれ。

 

その直後!!

 

魔城が一瞬にして崩れ落ちた!!

 

「! チイッ!!」

 

「フハハハハハハハッ!!」

 

慌てて空へと退避するゼロビヨンドと、背に翼を出現させ、高笑いと共に浮遊するキリエロイド・アゴナ。

 

そして遂に………

 

魔城を押し退ける様にして、新たな超巨大建造部が競り上がって来た!!

 

「コレは………遺跡、なのか?」

 

現れた超巨大建造物が、まるで遺跡を思わせる姿なのを見て、サコミズが呟いた瞬間………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そおう! コレこそが『超古代遺跡 ルルイエ』よおぉっ!! そしてえぇっ!!」

 

キリエロイド・アゴナがそう言い放ち、巨大建造物………『超古代遺跡 ルルイエ』の中心に、ダークリングを向けたかと思うと………

 

ダークリングに溜まっていた全てのエネルギーがルルイエの中心部へと注がれた!!

 

「さあ! 蘇るのだあぁっ! 邪神よおぉっ!!」

 

キリエロイド・アゴナの叫びが木霊した瞬間………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

ルルイエ中心部の地面が爆ぜ、咆哮と共に………

 

巨大なアンモナイト状の体から無数の触手が生え、下顎に目が付いていると言う特異な姿をした怪獣………

 

否!

 

『邪神 ガタノゾーア』が姿を現した!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

誠十郎「邪神 ガタノゾーアによって闇に覆われた地球………

 

圧倒的なその力に、俺達は手も足も出ない………

 

もう終わりなのか………

 

………いや! 俺は………俺達は諦めないっ!!

 

必ず悪を滅ぼし、正義を示してみせる!!

 

次回『新サクラ大戦』

 

第10話『遥かな星からの帰って来た希望』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

それが! それこそが!!」

 

???「そうだ! それこそが帝国華撃団だ!!」

 

???「ゼロを………俺の息子を舐めるなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第9話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『帝国機兵 レギオノイド』

 

身長:53メートル

 

体重:3万5000トン

 

能力:レギオビーム、ダブルアームドリル(α)、レギオノイドガンビーム(β)

 

初登場作品:劇場版『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』

 

ベリアル銀河帝国の量産型メカ。

 

両腕がドリルなのが陸戦型のα。

 

ガンポッドなのが宇宙戦型のβ。

 

ロボット怪獣にしては量産型の為か珍しく強豪では無い。

 

劇中では数多くの機体が登場し、次々に破壊されていた。

 

しかし、後ので作品で登場したダダがカスタマイズした機体は、ゼロビヨンドと引き分けると言う大健闘を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦闘円盤 ロボフォー』

 

身長:40メートル

 

体重:9万トン

 

能力:レーザー光線「リアンレーザー」、ストップ光線、ミサイル、ロケット弾、リング状の拘束光線

 

初登場作品:ウルトラマン80第24話『裏切ったアンドロイドの星』

 

ファンタス星人に扮したアンドロイドの乗る宇宙船が変形したUFO型ロボット。

 

言わば、ロボット怪獣型の円盤生物。

 

多彩な武装でUGMと80を苦戦させたが、最後はイエローZレイとサクシウム光線、バックルビームと連続攻撃を受け、墜落した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『復讐ロボット ザムリベンジャー』

 

身長:63メートル

 

体重:7万2000トン

 

能力:バリア、両手から放つ強力な破壊光線とミサイル

 

初登場作品:ウルトラマンネオス第6話『ザム星人の復讐』

 

指導者を(結果的に)殺されたザム星人の残党が造り上げたロボット。

 

ザム星人を模した外見をしており、ロボット怪獣らしき強豪。

 

強固なバリアと、圧倒的なパワーでネオスを圧倒したが、セブン21が誘導装置を壊した事で弱体化。

 

頭部をネオス・パンチで破壊されて倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『愛憎戦士 カミーラ』

 

身長:49メートル

 

体重:3万9000トン

 

能力:カミーラウィップ、アイゾード

 

初登場作品:劇場版『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』

 

超古代遺跡ルルイエに封印されていた闇の巨人のリーダー。

 

実は嘗てのティガダークことウルトラマンティガの恋人。

 

3000万年前に超古代文明を滅ぼした張本人。

 

ティガを闇の巨人へ戻そうとしたが、叶わぬと知るとルルイエの闇とガタノゾーアの残留思念を取り込み、デモンゾーアとなる。

 

最期はグリッターティガにデモンゾーアごと倒され、本当は光が欲しかった事を吐露して息を引き取った。

 

悪のウルトラウーマンと言う特殊な立ち位置故に人気が高く、後にはダークネスヒールズの一員に選ばれたり、トリガーにてリブートキャラのカルミラが登場した。




新話、投稿させて頂きました。

降魔皇復活かと思われた瞬間に、遂に動いたアゴナ。
そしてその口から衝撃の真実が明かされます。

何と!!
降魔皇も帝剣も、元はアゴナが創り出したモノだった!!
つまり、降魔大戦は壮大なマッチポンプであったと!

あの犠牲を良しとしない大神さんが、何故帝剣を使ったのか言う理由を考えた結果………
実は帝剣は罠だったと言う事にしようと思い至り、そこから降魔皇も実は仕込みであり、降魔大戦事態が仕組まれていたと言う展開を思いつきました。
こうでもしないと帝剣を使った事に納得の行く理由が出来なかったので。

そして幻庵を冷遇した理由………
それは降魔である幻庵から上等なマイナスエネルギーを収集する為でした。

様々な強大な負のエネルギーを集めて、アゴナが企んでいた事………
そう、皆のトラウマ怪獣………
『邪神 ガタノゾーア』の復活です!
アゴナ曰く、キリエル人の残党は奴にビビッて逃げ出したが、アゴナはこの邪神を制御可能としています。
果たして、1度はティガを葬り、地球を闇に閉ざしたこの邪神を倒せるのか?

次回、希望が帰ってきます………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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第10話『遥かな星からの帰って来た希望』
チャプター1『邪神の闇』


第10話『遥かな星からの帰って来た希望』

 

チャプター1『邪神の闇』

 

邪神 ガタノゾーア

 

超古代怪獣軍団 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡の中心部………

 

ギャアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

「な、何だよ、アレ………?」

 

「何て禍々しい姿なの………」

 

「うう、見てるだけで何だか気分が………」

 

「降魔よりもずっと醜悪………」

 

咆哮を挙げているガタノゾーアの姿を見ていた初穂・アナスタシア・クラリス・あざみがそう漏らす様に呟く。

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

上海・倫敦・伯林華撃団の面々などは、最早言葉を失っていた。

 

『ゼロ!………』

 

「ああ、分かってるぜ、誠十郎………コイツは只の怪獣じゃねえ」

 

「「「…………」」」

 

ゼロビヨンドを含めたウルトラマン達も戦慄を覚えている。

 

「フハハハハハハハッ!! コレが邪神! ガタノゾーアよぉっ!!」

 

そんな中で、高笑いを響かせながら、宙に浮かんでいたキリエロイド・アゴナが降下し、ガタノゾーアの頭の上に陣取った。

 

「『アゴナァッ!!』」

 

それを追って、ゼロビヨンド(+誠十郎)がガタノゾーアの眼前に着地する。

 

「いよいよ我が全ての世界に闇を齎し、唯一の存在として君臨するのだあぁ」

 

そんなゼロビヨンド(+誠十郎)を尻目に、キリエロイド・アゴナは手に持っていたダークリングを掲げる。

 

すると、ダークリングから怪しい光が溢れ………

 

キリエロイド・アゴナは、減り込む様にガタノゾーアの中へと入り込んで行った。

 

「『!?』」

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

その光景にゼロビヨンド(+誠十郎)が驚いていた瞬間、ガタノゾーアに融合したアゴナから独特な咆哮が挙がり、ガタノゾーアの身体からまるで柱の様に闇のオーラが立ち上った!!

 

そしてその立ち上った闇のオーラの柱から、次々と闇の塊が撃ち出され、空の彼方へ消えて行く。

 

「! アレはっ!?」

 

一体何をしているのだとすみれが思った瞬間………

 

「す、すみれ様! 大変です!!」

 

「あの闇の塊は世界中の都市に撃ち込まれとる! そんで、その闇の塊の中から怪獣と降魔が現れとる!!」

 

「!? 何ですってっ!?」

 

カオルとこまちからそう報告が挙がり、すみれが驚きの声を挙げると、ミカサ艦橋のメインモニターに、世界各国の都市の様子が映し出される。

 

そこには先程ガタノゾーアが次々に撃ち出した闇の塊が次々と着弾した都市の光景が在った。

 

そしてその闇の塊の中から………

 

『超古代怪獣 ゴルザ』

 

『超古代竜 メルバ』

 

『超古代怪獣 ガルラ』

 

『超古代尖兵怪獣 ゾイガー』

 

超古代怪獣達が出現!!

 

更に大量の降魔までもが現れ、世界各国の都市は一瞬にして地獄と化した!!

 

「上海がっ!?」

 

「倫敦まで!?」

 

「伯林も!?」

 

超古代怪獣と降魔達の襲撃を受けている都市には、上海・倫敦・伯林も含まれ、ユイ・ランスロット・マルガレーテが動揺する。

 

「何と言う事だぁ!? 我等の街がぁっ!?」

 

「狼狽えるんじゃねえっ!!」

 

ラウラなどは絶望の声を挙げたが、そこで米田の一喝が走った!

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「何の為のウルティメイト華撃団だ! オメェらの都市にだって残ってる連中が居るだろう!!」

 

その米田の言葉を裏付ける様に、モニターの映像に各国の華撃団が出撃した様子が映し出され、配備が進んでいたガンクルセイダー部隊も現れる。

 

「此処が正念場だ! アゴナを倒せばそれで全てにケリが着く!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

そこで、一同の視線が一斉にガタノゾーア(アゴナ)へ注がれる。

 

『フッフッフッ、人間とは愚かよのぅ………在りもしない希望に縋ろうとする事が特になぁ』

 

「ウルセェッ! 勝手に希望を消してんじゃねえよ!!」

 

小馬鹿にする様な態度のガタノゾーア(アゴナ)に、ゼロビヨンドがそう言い放って、ビヨンドツインエッジを構える。

 

「大地! 相手が闇の力を持つなら!」

 

『分かってる!』

 

とそこで、エックスが大地にそう呼び掛けると、インナースペース内の大地の手元に、エックスらしきスパークドールズが出現。

 

そのスパークドールズを掴むと、エクスデバイザーにリードさせる。

 

『ウルトラマンエックス・パワーアップ』

 

エクスデバイザーからそう音声が響くと、大地の手元に虹色に輝く特徴的な形状の剣………

 

『エクスラッガー』が出現!

 

それを右手で握ると、左手の人差し指で刀身側面にあるパネル・フラーポイントを下から上へとなぞると、握りのトリガーを引く。

 

「エクシードエーックス!!」

 

大地がそう叫んで、エクスラッガーでXの字を描く様にしたかと思うと………

 

エックスの身体が虹色に輝き、黒色と銀色を主体に虹色のラインが入った姿へと変わる。

 

そして、頭部にも兜の様な飾りが現れたかと思うと、そこに右手を翳す。

 

「『エクスラッガー!』」

 

兜がエクスラッガーへと変わり、エクシードXの手に納まると、ポーズを決めた。

 

「ハッ!!」

 

更にメビウスも、バーニングブレイブへとタイプチェンジする。

 

『無駄なぁ事を………闇の深さを知るが良いぃ! ぶるあああああああっ!!』

 

そこで、アゴナがまたも独特な咆哮を挙げたかと思うと、再度ガタノゾーアの身体から闇のオーラの柱が立ち上り、辺りに闇の塊を撒き散らす。

 

その塊の中から、世界各国と同じ様に超古代怪獣達と降魔達が出現する。

 

と、1つの闇の塊が、ダークメフィスト・ドライに命中した!

 

「! ウオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ! 来たぜ来たぜ来たぜぇっ!!」

 

途端に、ダークメフィスト・ドライが獣の様に吠える。

 

「! 朧っ!?」

 

「「「!?」」」

 

「力が溢れるぜぇ~………やっぱり素晴らしいぜぇ、闇の力はよぉっ!!」

 

アナスタシアが声を挙げ、初穂達も驚いていると、ダークメフィスト・ドライはそう言いながら、メフィストクローからクローショットをジード(ロイヤルメガマスター)に放った!

 

「! グウッ!!」

 

咄嗟に剣モードのキングソードで受け止めたジード(ロイヤルメガマスター)だったが、余りの凄まじいエネルギー量に2、3歩後退る。

 

「セヤァッ!」

 

それでも何とか弾き飛ばす事に成功する。

 

(パワーが上がってる!?)

 

『アン!』

 

「バルカンスパークッ!!」

 

ダークメフィスト・ドライの力が上がっている事に驚きながらも、ジード(ロイヤルメガマスター)は反撃に必殺の『バルカンスパークル』を発動。

 

杖モードのキングソードから、バルカン砲のようにウルトラエネルギーを変換した無数の光弾が、ダークメフィスト・ドライに向かって放たれる。

 

「ヒャハハハハハハハッ!!」

 

しかし、ダークメフィスト・ドライはバルカンスパークの直撃を浴びながらも、まるで応えている様子を見せない。

 

「! 効かないっ!?」

 

「そんなチンケな技が通じるかっつうんだっ! ぬおおおおおおっ!!」

 

驚くジード(ロイヤルメガマスター)に、メフィストクローを構えて突撃して行くダークメフィスト・ドライ。

 

「くうっ!?」

 

再度剣モードのキングソードで受け止めるが、そのまま押されて行くジード(ロイヤルメガマスター)。

 

「! リクッ!!」

 

すぐにアナスタシア機(エレキングアーマー)が援護に向かう。

 

「アナスタシア!」

 

初穂達も後を追おうとしたが………

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

キイイアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

グルオオオオオォォォォォォォッ!!

 

キュイアアアアアアアアッ!!

 

それを妨害する様にゴルザ、メルバ、ガルラ、ゾイガーが割り込んで来る。

 

「チイッ! 邪魔すんな!!」

 

「初穂! 先ずはコイツ等を!!」

 

「ゼロさん達の援護にも向かわないと!!」

 

舌打ちする初穂にあざみがそう言い、クラリスが焦りを見せる。

 

とそこで、其々の空中戦艦上に居た3国華撃団のメンバーが降りて来た。

 

「手を貸すぜ!」

 

「こんな奴等に構っている暇は無い!」

 

「速攻で片付けるぞ!!」

 

シャオロン・アーサー・エリスからそう声が挙がる。

 

空に居る華撃団艦隊とマイティ号も、対空砲火を撃ち上げて、降魔達を撃ち落としている。

 

「良し! さっさと片付けて、ゼロ達とジードの援護に向かうぜ!!」

 

初穂のその声を合図に、華撃団メンバーは超古代怪獣達と交戦に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ガタノゾーア(アゴナ)と戦うゼロビヨンド、エクシードX、メビウス(バーニングブレイブ)は………

 

「セエエヤアアッ!!」

 

「イーッサ!」

 

ガタノゾーア(アゴナ)に向かってビヨンドツインエッジを振るゼロビヨンドと、エクスラッガーで突き刺すエクシードX。

 

ギャアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

しかし、アンモナイトを思わせるガタノゾーア(アゴナ)の強固な甲羅には傷1つ入らない。

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

「! おわっ!?」

 

「ぬああっ!?」

 

逆にガタノゾーア(アゴナ)の巨大な鋏での薙ぎ払いを喰らってしまい、ブッ飛ばされるゼロビヨンドとエクシードX。

 

「シュアッ!!」

 

そこで、メビウス(バーニングブレイブ)が跳躍したかと思うと、飛び蹴りの体勢となる。

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

そしてそのまま高速回転し、炎を纏った飛び蹴り………『バーニングメビウスピンキック』を繰り出す。

 

ガタノゾーアの甲羅に蹴りが命中し、そのまま火花を散らしながら回転を続けるメビウス(バーニングブレイブ)。

 

ギャアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

「!? ウワァッ!?」

 

しかし、ガタノゾーアが咆哮を挙げて仰け反る様に動くと、メビウス(バーニングブレイブ)は弾かれてしまい、そのまま地面を転がる。

 

『こそばゆいわあぁっ!』

 

アゴナがそう吠えたかと思うと、ガタノゾーアの身体から無数に生えていた触手が、ゼロビヨンド達に襲い掛かった!

 

「チイッ!」

 

「ハアッ!」

 

「セヤッ!!」

 

次々に迫って来る触手を、ゼロビヨンドはビヨンドツインエッジ、エクシードXはエクスラッガー、メビウス(バーニングブレイブ)は手刀で捌く。

 

だが、触手は斬っても斬っても次々と襲い掛かって来てキリが無い。

 

『駄目だ! キリが無い!!』

 

「チイッ! メビウス! エックス! 一気に行くぞっ!!」

 

「分かった!」

 

「了解した!」

 

と、誠十郎が声を挙げると、ゼロビヨンドの呼び掛けで、3人のウルトラマンはガタノゾーアから距離を取る。

 

「ワイドビヨンドショットッ!!」

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!! ハアッ!!」

 

「『エクスラッガーショットッ!!』」

 

そして、ワイドビヨンドショット、メビュームバースト、額に戻したエクスラッガーから放つ7色の光線技『エクスラッガーショット』を一斉に放つ。

 

間に存在した触手群を次々に消し飛ばして、3大必殺技がガタノゾーアへ迫る。

 

そしてガタノゾーアへと直撃したかと思うと大爆発が起こり、ガタノゾーアの姿が爆煙に包まれる。

 

「如何だっ!!」

 

手応えを感じたゼロビヨンドがそう言うが………

 

『フハハハハハハハッ!!』

 

ギャアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

アゴナの高笑いが響き、ガタノゾーアの咆哮が木霊したかと思うと、爆煙が吹き飛んで、無傷のガタノゾーアが姿を見せた。

 

「!? 無傷だとっ!?」

 

『そんなっ!?』

 

「!!」

 

エクシードX、大地、メビウス(バーニングブレイブ)が驚きを露わにする。

 

「貴様が如きが幾ら束になろうと、我には勝てんっ!!」

 

「そんな台詞は聞き飽きてんだよっ!!」

 

勝ち誇るかの様にそう言い放つアゴナだが、ゼロビヨンドは怯まずに、再度ビヨンドツインエッジを構えて突撃するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

邪神 ガタノゾーア復活。
更にダークリングの力でアゴナが融合し、世界中の都市へ超古代怪獣達と降魔をばら撒きます。
正に世界中が大ピンチの状況で、ガタノゾーアへ戦いを挑むゼロ達。
果たして、邪神を倒せるのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター2『絶望の融合』

チャプター2『絶望の融合』

 

超古代怪獣 ゴルザ

 

超古代竜 メルバ

 

超古代怪獣 ガルラ

 

超古代尖兵怪獣 ゾイガー

 

邪神 ガタノゾーア 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡………

 

「スウィングスパークルッ!!」

 

ダークメフィスト・ドライに向かってスウィングスパークルを放つジード(ロイヤルメガマスター)。

 

「ひゃひゃひゃひゃあっ!!」

 

だが、ダークメフィスト・ドライは狂った様な笑い声を挙げながら、メフィストクローを振るい、スウィングスパークルを叩き消す。

 

「ひいーあぁっ!!」

 

そして反撃とばかりにジード(ロイヤルメガマスター)に向かって紫色の光弾『ダークレイクラスター』を放つ。

 

「ハアッ!」

 

キングソード(剣モード)で斬り捨てようとしたジード(ロイヤルメガマスター)だったが………

 

その直前でダークレイクラスターは散弾に変化!

 

「!? ウワァッ!?」

 

驚いて動きの止まったジード(ロイヤルメガマスター)に、散弾化したダークレイクラスターが四方八方から襲い掛かり、膝を着く!

 

「リクッ!? このぉっ!!」

 

アナスタシア機(エレキングアーマー)が援護にと、ダークメフィスト・ドライに向かって、番傘型ライフルから電撃を帯びた冷凍ビームを放つ。

 

「ハハハハハハッ!!」

 

だが、アナスタシア機の攻撃を、ダークメフィスト・ドライは笑いながら広げた左の掌で受け止めてしまう。

 

「クウッ!」

 

「クソッ! コイツ等、手強いぞっ!?」

 

グルオオオオオォォォォォォォッ!!

 

アナスタシアが舌打ちを漏らしていると、ガルラに何度もハンマーを叩きつけていた初穂からそんな声が漏れる。

 

「オリャ! トリャアッ!」

 

「ハイハイハイハイハイーッ!!」

 

ガルラの頭の上に乗っかり、拳の連打を叩き込んでいるシャオロン機とユイ機だが、こちらも効果が無い。

 

「行くよ、ゼットンッ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

呼び出したゼットンと共に、クラリス機(ゼットンアーマー)が1兆度の火球をゴルザ目掛けて放つ。

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

しかし、ゴルザは火球を胸で受け止めたかと思うと、そのまま吸収してしまう。

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!」

 

「ヤアアアァァァァァッ!!」

 

今度はアーサー機とランスロット機が斬り掛かって行ったが………

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

そこでゴルザは、体を丸めて球状になり、逆にアーサー機とランスロット機に突撃した。

 

「!?」

 

「うわっ!?」

 

間一髪回避した2機だったが、ゴルザはそのままルルイエに残っていた遺跡らしき建造物にぶつかり、粉々にした。

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

瓦礫を撒き散らしながら球状から戻り、咆哮を挙げるゴルザ。

 

キイイアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

キュイアアアアアアアアッ!!

 

一方、メルバとゾイガーは、自慢の飛行能力で飛び回り、地上に居るあざみ機(ベムスターアーマー)と伯林華撃団に向かって、目から発射する山吹色の破壊光弾『メルバニックレイ』と口から吐く光弾を空爆の様に浴びせている。

 

「グウッ!?」

 

「のうわぁっ!?」

 

マルガレーテ機とラウラ機が、爆風で吹き飛ばされ、地面の上を転がる。

 

「ニンッ!!」

 

「そこかっ!!」

 

と、空爆が途切れた一瞬の隙を衝いて、あざみ機(ベムスターアーマー)がメルバにベムスターシールドを投げつけ、エリス機がゾイガーに機関砲を放つ。

 

キイイアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

キュイアアアアアアアアッ!!

 

しかし、ベムスターシールドはメルバの宙返りで躱され、機関砲はゾイガーを捉えられずに宙を切る。

 

「クウッ!」

 

「駄目だ! 速過ぎるっ!!」

 

あざみとエリスの悔し気な声が漏れる。

 

闇の力を浴びてパワーアップしている超古代怪獣達を前に、華撃団メンバーは苦戦していた。

 

「持ち堪えろ! 俺達がやられたら、誰がこの地球を守るってんだぁっ!!」

 

米田の必死の叫びが木霊する上空の華撃団艦隊の損害も広がっている。

 

「主砲大破! ミサイルの残段数も僅かです!!」

 

「各国の華撃団の損害も広がっとるっ!!」

 

徐々にミカサが戦闘能力を喪失している事を告げるカオルと、世界各国の華撃団の戦況が悪化している事を伝えるこまち。

 

「…………」

 

サコミズの表情にも完全に焦りが浮かんでいた。

 

「私は………私は何の為に………」

 

真実を知り、絶望した鉄幹は床に這いつくばったまま同じ言葉を繰り返している。

 

(こうなったら!)

 

とそこで、遂にすみれは自らも戦おうとエボルトラスターを取り出す。

 

しかし………

 

(!? 何故ですの!?)

 

何故かエボルトラスターは反応を示さなかった………

 

まるで何かを待っているかの様に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ガタノゾーア(アゴナ)と戦っているゼロ達は………

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

「うおわっ!?」

 

4本有る巨大な鋏の付いた腕を伸ばし、ゼロビヨンドを殴り飛ばすガタノゾーア(アゴナ)。

 

「グハッ!!」

 

殴り飛ばされたゼロビヨンドが、地面に叩きつけられる様に倒れる。

 

ギャアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

ガタノゾーア(アゴナ)は更に続けて、今度はメビウス(バーニングブレイブ)に向かって4本の腕を伸ばす。

 

「ハッ! トアッ!」

 

2本を手刀で弾いたメビウス(バーニングブレイブ)だったが、残る2本を捌けず、両足を挟まれる。

 

「!!」

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

途端にガタノゾーア(アゴナ)は両腕を大きく振り被り、メビウス(バーニングブレイブ)を地面へと叩き付けた!!

 

「! グハアッ!!」

 

地面にクレーターが出来る程に叩き付けられたメビウス(バーニングブレイブ)が、激痛に悶える。

 

その身体が淡く光ったかと思うと、通常の状態に戻ってしまい、カラータイマーが点滅する。

 

『くうっ!!』

 

とそこで、インナースペースの大地が、エクスラッガーのフラーポイントを3回なぞり、更に左手で逆手に持ったかと思うと、底部のブーストスイッチを押し、エクスラッガーの剣先が伸びる。

 

「『エクシードエクスラッシュッ!』」

 

エクシードXはエクスラッガーを地面に突き刺す様にしたかと思うと、虹色のオーラで自らとガタノゾーア(アゴナ)を包み込む。

 

「ツゥアッ!!」

 

そして、再度右手に握ったエクスラッガーで突進する様に斬り掛かった!!

 

ギャアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

だが、ガタノゾーア(アゴナ)が咆哮を挙げると、闇のオーラが立ち上り、まるでバリアの様にエクシードXを止めた!!

 

「『グウウウウウウッ!!』」

 

エクスラッガーの力で闇のオーラを掻き消そうと踏ん張るエクシードXと大地。

 

やがて、エクスラッガーの力で、ガタノゾーア(アゴナ)の闇のオーラが徐々に薄れて行く。

 

『行けるっ!!』

 

『と思ったかぁ? ぶるあああああああっ!!』

 

そう思った立ちだったが、その瞬間にアゴナが吠え、再度闇のオーラが増大!

 

「!? ウワアァッ!?」

 

エクシードXは弾き飛ばされ、エックスの状態に戻ってしまう。

 

更にカラータイマーも鳴り始める。

 

「何て強さだ………」

 

『エクスラッガーの力でも祓えないだなんて………』

 

闇の力を祓う筈のエクスラッガーが通用しなかった事に、エックスと大地が戦慄する。

 

『ぶるあああああああぁぁぁぁぁぁぁ、貴様等には絶望しかない………言った筈だぞおぉ?』

 

それを聞いたアゴナが、畳み掛けるかの様にそう言い放つ。

 

「ごたごたぬかしてんじゃねえ………」

 

とそこで、ゼロビヨンドがフラつきながらも立ち上がると、バルキーコーラスの体勢に入った。

 

『無駄な事をぉ………』

 

「無駄か如何か確かめてみやがれ! バルキーコーラス!」

 

嘲笑うかの様なアゴナの台詞に反論するかの様にバルキーコーラスを放つゼロビヨンド。

 

ガタノゾーア(アゴナ)へと直撃するバルキーコーラス。

 

『フハハハハハハハッ!!』

 

しかし、アゴナのこそばゆいと言う様な笑い声が響き、ガタノゾーア(アゴナ)には効いている様子が無い。

 

「ウオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!」

 

『おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!』

 

だが、関係無いとばかりにゼロビヨンドと誠十郎は咆哮を挙げ、カラータイマーが点滅を始めたのもお構いなしにバルキーコーラスを撃ち続ける。

 

すると、ガタノゾーア(アゴナ)の巨体が、僅かに後ろに下がる。

 

『ぬうっ!?』

 

「誠十郎! 気合いだぁっ!!」

 

『うおおおおおおおっ!!』

 

アゴナが初めて動揺の様子を見せた瞬間、ゼロビヨンドと誠十郎は力を振り絞り、エネルギーと霊力を爆発させる。

 

その瞬間!!

 

バルキーコーラスの光線の太さが2倍となった!!

 

『!? ぶるあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

これまでとは違うアゴナの叫びが木霊したかと思うと、ガタノゾーア(アゴナ)が大爆発を起こした。

 

「ぐうっ、あ………」

 

それと同時に、ゼロビヨンドの姿が通常のゼロの状態に戻り、両膝を地面に着いたかと思うと、両手も着く。

 

カラータイマーは今にも消えてしまいそうな程に激しく点滅している。

 

「ハア………ハア………ハア………」

 

『ゼエ…………ゼエ…………ゼエ…………』

 

最早満身創痍と言った具合に息を荒くしているゼロと顔色を悪くしている誠十郎。

 

やがてガタノゾーア(アゴナ)から立ち上っていたん爆煙が徐々に晴れて来て………

 

ギャアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーー………

 

身体の半分近くを吹き飛ばされたガタノゾーア(アゴナ)姿が露わになる。

 

「如何だ………見たか………」

 

それを見たゼロが不敵にそう言い放つ。

 

『ぶるあああああああぁぁぁぁぁぁぁ、やるではないぁ、ウルトラマンゼロォ。正直見縊っていた様だなぁ』

 

半身を吹き飛ばされているガタノゾーアから響いて来るアゴナの声。

 

その声色は、まだ余裕の様子が見て取れる………

 

「へっ、俺に勝とうなんざ、2万年早いぜ」

 

疲労困憊の身ながらも、ゼロは強がる様にお馴染みの台詞を言い放つ。

 

『フフフフ………ウルトラマンゼロォ………最も絶望する瞬間と言うのを知っておるかぁ?』

 

「何………?」

 

『それは有ると思っていた希望が完全に消え失せた時よおぉっ!!』

 

と、インナースペースのアゴナが吠え、左手のダークリングを構えたかと思うと、右手に1枚の怪獣カードを出現させる。

 

「ガタノゾーア!」

 

『ガタノゾーア!』

 

ギャアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

そのガタノゾーアの怪獣カードをダークリングにリードしたかと思うと、新たな怪獣カードを取り出す。

 

「Uキラーザウルス・ネオ!」

 

『Uキラーザウルス・ネオ!』

 

キュイアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーッ!!

 

新たな怪獣カード………『究極巨大超獣 Uキラーザウルス・ネオ』をダークリングにリードするアゴナ。

 

「全ての宇宙に………闇の終焉を!!」

 

『究極超邪神獣 キラーゾーア!!』

 

ダークリングからくぐもった音声が流れたかと思うと、半身を吹き飛ばされていたガタノゾーアに、Uキラーザウルス・ネオのオーラが融合!

 

その姿が粘土の様にグニャグニャと形を変えながら、巨大化して行く。

 

「なっ!?」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その場に居た誰もが、その光景を目撃して絶句する。

 

やがて巨大化した塊は、下半身がガタノゾーア、上半身がUキラーザウルスの姿をした全長1キロに迫りそうな桁外れに巨体な怪獣………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『究極超邪神獣 キラーゾーア』となった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

闇の力を受けた超古代怪獣達とダークメフィスト・ドライに苦戦するジードと華撃団メンバー。
世界各国の華撃団の戦況も悪化の一途を辿ります。

ガタノゾーア(アゴナ)と戦うゼロ達は………
メビウスが倒れ、エックスもエクスラッガーが通じず、大苦戦。
全ての力を振り絞ったゼロビヨンドのバルキーコーラスが決まったかに見えましたが………
それは本当の絶望の始まり。
ダークリングの力を使い、アゴナはガタノゾーアをUキラーザウルス・ネオと融合させ………
『究極超邪神獣 キラーゾーア』となります。
最早絶対絶命………
けど、次回………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター3『帰って来た希望と舞い降りる光』

チャプター3『帰って来た希望と舞い降りる光』

 

ダークメフィスト・ドライ

 

究極超邪神獣 キラーゾーア 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡………

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

「嘘だろ………」

 

「何………アレ?」

 

「そんな………」

 

「ココへ来てこんななんて………悪夢だわ」

 

咆哮を響かせるキラーゾーアの姿を見上げながら絶望を露わにしている初穂達。

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

上海・倫敦・伯林華撃団の面々も言葉を失っている。

 

「ヒャアッ!!」

 

「ウワァッ!?」

 

交戦を続けていたジード(ロイヤルメガマスター)とダークメフィスト・ドライの方では、ダークメフィスト・ドライの1撃で、とうとうロイヤルメガマスターが解除され、ジードはプリミティブに戻ってしまう。

 

「ウウッ………」

 

「ヒャハハハハハハハッ!! スゲェッ!! コイツはスゲェぜぇっ!!」

 

起き上がれずに居るジード(プリミティブ)を尻目に、ダークメフィスト・ドライはキラーゾーアを見上げながら歓喜の笑い声を響かせる。

 

と、その時………

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

アゴナとキラーゾーアが吠えたかと思うと、キラーゾーアの下半身・ガタノゾーアの口内に闇のエネルギーが収束し始める。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

何をする気だと一同が思った瞬間………

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

キラーゾーアは、収束させていた闇のエネルギーを光線として、沖合に向かって放った!!

 

「!? うおわっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「「「「「「「「「「わあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

余りのエネルギーに、ゼロ達は発射の余波だけで吹き飛ばされそうになる。

 

放たれた光線はやがて沖合の海面へと着弾。

 

その瞬間!!

 

闇の雲が空を覆い、まるで真夜中の様に暗くなっていた世界が、一瞬だけ昼間の様に明るくなったかと思うと………

 

かなり遠くに着弾した筈なのに、ルルイエに居るゼロ達にまで爆風が届く程の大爆発が起こった!!

 

まるで原爆が落とされたかの様な巨大なキノコ雲が立ち上る。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

その光景に言葉を失う一同。

 

『フハハハハハハハッ! 見たか!! 闇の圧倒的な力を!! 最早希望など何処にも無い! 貴様等はココで死ぬのだ! そして我はこの地球を手始めとして、全ての宇宙を闇に包んでくれるわあぁっ!!』

 

「ヒャッハー! 最高だぜぁ、アゴナの旦那ぁっ!!」

 

響き渡るアゴナの勝ち誇る声に、ダークメフィスト・ドライが歓声を挙げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・地下緊急避難用シェルター………

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

愕然とした様子で、モニターに映し出されているキラーゾーアの姿を見やっている帝都市民達。

 

実はアゴナは、一連の様子を強制的に全世界へと発信しており、闇の超古代怪獣達の襲撃を受け、緊急用のシェルターへと避難していた各都市の人々の間には絶望が広がっていた。

 

「華撃団もウルトラマンも敵わないなんて………」

 

「もう駄目だ………帝都は………いや、地球はお終いだ………」

 

人々の口から漏れる諦めの言葉………

 

しかし………

 

「頑張れーっ! 華撃団ーっ!!」

 

「ウルトラマーンッ! 負けないでーっ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

突如響いた声に、帝都市民達は驚く。

 

そこには、モニターに向かって必死に声援を送る子供達の姿が在った。

 

そう………

 

彼等はまだ………

 

華撃団とウルトラマン達の勝利を信じていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルルイエ遺跡………

 

「勝手に勝った積りになってんじゃねえぞ………」

 

カラータイマーを点滅させ、フラつきながらも立ち上がり、キラーゾーアを見上げながらそう言い放つゼロ。

 

「「…………」」

 

その両隣に、同じくカラータイマーを点滅させ、フラフラとしているメビウスとエックスが並び立つ。

 

「ぐ、ううう………」

 

更に倒れていたジード(プリミティブ)も起き上がり、ダークメフィスト・ドライに向かって構えを執る。

 

「ああん? まだやる気かぁ?」

 

『物分かりの悪いにも程があるぞぉ、ウルトラマン共ぉ………』

 

「ウルセェッ! 俺達に勝てると思うなんざ………2万年早いんだよ!!」

 

『俺達は絶対諦めない! 何故なら………それが帝国華撃団であり、ウルトラマンだからだ!!』

 

呆れる様に言い放つダークメフィスト・ドライとアゴナに、ゼロと誠十郎の反論が木霊する。

 

「ゼロ………神山………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

それを聞いていた華撃団メンバーも、消えかけていた心の火が再び燃え上がろうとする。

 

「ウゼエェッ!! 本当にウゼエェんだよ、お前等ぁっ!!」

 

そんなゼロ達の姿に、ダークメフィスト・ドライは心底イラついた様に声を挙げる。

 

『フン、もう良いわぁ………茶番もコレまでだぁ』

 

とそこで、アゴナは興ざめしたかの様な台詞と共に、インナースペース内でダークリングを掲げた!

 

すると、ダークリングが怪しく光り、キラーゾーアの身体から闇のエネルギーが溢れ、上空へと放たれたかと思うと………

 

何と!!

 

ダークリングに吸収されて消えた筈の時空の裂け目が再出現した!!

 

「!? アレはっ!?」

 

『幻都に繋がる時空の裂け目!?』

 

消滅した筈の時空の裂け目が再度現れた事に、ゼロと誠十郎が驚きの声を挙げる。

 

「!? まさかっ!?」

 

その瞬間、すみれの脳裏に最悪の想像が過る。

 

『言った筈だぞぉ………降魔皇は我が作り出した玩具だとなぁ』

 

「!? 降魔皇を復活させる積りか!?」

 

「そんなっ!?」

 

初穂が叫び、クラリスが悲鳴の様な声を挙げる。

 

只でさえ絶望的な状況なのに、この上嘗ての華撃団の力でも封印するのが精一杯だったと言う降魔皇が復活すれば、勝ち目など到底無くなってしまう………

 

燃え上がろうとしていた華撃団メンバーの心の火が、再び消え行こうとする………

 

『さあ! 甦れぇ、降魔皇!!』

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

アゴナとキラーゾーアの咆哮が木霊した瞬間………

 

時空の裂け目が一気に拡大!!

 

ルルイエの上空を完全に覆う程の大きさとなる!!

 

そして、その中心部から………

 

『何か』が飛び出した!!

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

『来たかぁ、降魔皇っ!!』

 

戦慄の走るゼロ達と、嬉しそうに叫ぶアゴナ。

 

もう駄目なのか………

 

誰もがそう思っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………しかし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狼虎滅却ぅ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えっ!?」

 

響いて来た声に、すみれは思わず口元を両手で覆い、目を見開いた。

 

それは、彼女が待ちわびていた人物に声だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「快刀! 乱麻!!」

 

飛び出した来た『何か』が、両手に握っていた二振りの刀で、キラーゾーアを斬り付けたかと思うと、キラーゾーアの身体に青い稲妻が走った!!

 

『!? ぬわあああああああぁっ!? な、何イイイイイイイィィィィィィィィーーーーーーーーーッ!!』

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!?

 

アゴナが驚愕の声を挙げ、キラーゾーアの巨体が仰け反る中、『何か』はルルイエに着地を決める。

 

それは、二振りの刀を携えた純白の『霊子甲冑』………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初代帝国華撃団隊長『大神 一郎』の『光武二式』だった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更にそこで………

 

時空の裂け目から次々と『何か』が飛び出し、大神機の周辺に着地する。

 

それは、大神機と同じ色取り取りの光武二式達………

 

「「「「「「「「帝国華撃団! 参上!」」」」」」」」

 

『初代帝国華撃団』の姿だった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこでまた………

 

時空の裂け目から何かが飛び出し、初代帝国華撃団の両脇へ着地。

 

現れたのは、個性的な見た目をした光武と、大型の霊子甲冑………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「巴里華撃団! 参上!!」」」」」

 

『巴里華撃団』の『光武F2』達!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「イッツ・ショータイム!! 紐育華撃団………レディ………ゴー!!」」」」」」

 

『紐育華撃団』の『スター』達!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「! アレはっ!!」

 

「しょ、初代帝国華撃団!?」

 

「巴里華撃団に、紐育華撃団まで!?」

 

「嘘だろ!?………」

 

「「「「「「!!」」」」」

 

伝説の華撃団の姿を目撃した初穂達や上海・倫敦・伯林華撃団の面々も仰天する。

 

「大尉っ!!」

 

「! その声は………すみれくんかい!」

 

とそこで、すぐさますみれが通信を繋げると、モニターに少々老けた様に見える大神の姿が映し出された。

 

「大尉! 本当に大尉なのですね!?」

 

「ああ、そうだよ………ただいま、すみれくん」

 

思わず目尻に涙が浮かぶすみれに、大神はあの頃と何ら変わらぬ笑みを浮かべてそう返す。

 

「すみれさん!!」

 

「すみれ」

 

「すみれー!」

 

「すみれはん」

 

「すみれさーん!」

 

「すみれ………」

 

「さくらさん! マリアさん! アイリス! 紅蘭! 織姫さん! レニ!」

 

更に続けて、モニターに映し出されるさくら・マリア・アイリス・紅蘭・織姫・レニの姿。

 

そして………

 

「オイオイ、サボテン女。随分老けちまったじゃねえか………」

 

「相変わらずガサツですわね………カンナさん」

 

最後に憎まれ口を叩きながら映し出されたカンナの姿を見て、とうとうすみれの頬に涙が止めどなく伝い始めた………

 

「「「「「「「「「「「すみれ(さん)!!」」」」」」」」」」」

 

とそこで、巴里華撃団のエリカ・グリシーヌ・コクリコ・ロベリア・花火。

 

紐育華撃団の新次郎・ジェミニ・サジータ・リカ・ダイアナ・昴の姿も映し出される。

 

「皆さん………良くぞ御無事で」

 

溢れる涙を拭いながら、すみれはそう呟く。

 

「オイ、大神!」

 

すると、米田からの通信が割り込んで来た。

 

「! 米田さん!」

 

「感動の再会を邪魔して悪いが、1つだけ聞きたい事が有る!………『降魔皇』は如何した!?」

 

「! そうですわ! 大尉達が此方へ帰って来れたと言う事は、降魔皇の封印も!!」

 

米田のその言葉で、すみれがハッと思い出す。

 

初代帝国華撃団・巴里華撃団・紐育華撃団の面々は、二都作戦に於いて、降魔皇を封印し続ける要として、幻都と共に封印された。

 

その彼等が帰って来たという事は、降魔皇の封印も解かれてしまっている筈だと。

 

そこで………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「安心しろ、降魔皇は倒した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場に居た全員の耳に、そんな声が聞こえて来たかと思うと………

 

時空の裂け目から眩い光が溢れ始め………

 

それが弾けたかと思うと、光の塊が飛び出し、空の彼方へ消えて行く。

 

と、ルルイエにも、『7つの光の塊』が降り立つ!!

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その場に居た全員の視線が、その7つの光に集まった瞬間、光は弾け………

 

赤いマント………『ブラザーズマント』を翻した6人のウルトラマン………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙警備隊隊長『ゾフィー』

 

怪獣退治の専門家『ウルトラマン』

 

真紅のファイター『ウルトラセブン』

 

帰ってきたウルトラマンこと『ウルトラマンジャック』

 

光線技の名手『ウルトラマンA』

 

ウルトラの父と母の実子『ウルトラマンタロウ』

 

栄光の『ウルトラ6兄弟』が姿を現した!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてもう1人………

 

額と胸に、『星型』のビームランプ………『アストロスポット』とカラータイマー………『スターシンボル』を持つウルトラマン………

 

もう1つのウルトラの星『U40』最強の勇者………

 

『ウルトラマンジョーニアス』も現れた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

最凶の合体怪獣キラーゾーア。
その力は正に凄まじいの一言。
それでも諦めずに立ち向かおうとするゼロ達。

そんなゼロ達を嘲笑うかの様に、降魔皇までも復活させようとしたアゴナ。

しかし………

現れたのは、何と!!
大神率いる初代帝国華撃団・巴里華撃団、そして大河率いる紐育華撃団だった!

更に………
栄光のウルトラ6兄弟とU40最強の勇者ジョーニアス!!

あのゾフィー兄さんの台詞を是非言ってもらいたかったんですよねー。
因みに、良く勘違いされてますけど、ゾフィー兄さんは自分がゼットンを倒したとは言ってませんので。

さて………
どこぞの副司令なら「勝ったな」と言っている状況ですが………
何故大神達とウルトラ6兄弟達が現れたかの詳細は次回にて。
次回も色々と凄いので、お見逃しなく。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター4『光の国から僕等の為に』

チャプター4『光の国から僕等の為に』

 

超古代怪獣 ゴルザ

 

超古代竜 メルバ

 

超古代怪獣 ガルラ

 

超古代尖兵怪獣 ゾイガー

 

ダークメフィスト・ドライ

 

怪魚超獣 ガラン

 

大蟻超獣 アリブンタ

 

変身超獣 ブロッケン

 

満月超獣 ルナチクス

 

究極超邪神獣 キラーゾーア 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡………

 

「ウ、ウルトラマンが、あんなに………」

 

「「「「「「…………」」」」」」」

 

突如現れたウルトラ6兄弟とジョーニアスの姿に圧倒される華撃団メンバー。

 

「アアアア、アレが栄光のウルトラ6兄弟! それに、U40最強の勇者、ジョーニアス!」

 

只1人、ウルトラマンフリークなクラリスが、興奮した様子を見せている。

 

「大丈夫か? ゼロ」

 

「お、親父………」

 

セブンがフラフラだったゼロに肩を貸す。

 

「!? 親父ぃっ!?」

 

「ゼロのお父さん!?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「やはりあの方が、ウルトラセブン! ゼロさんのお父様!!」

 

と、ゼロの発言を聞いて、今度は驚愕の様子を見せる華撃団メンバーと、更に興奮するクラリス。

 

「遅くなってすまない」

 

「もう大丈夫だ」

 

「良く頑張ったぞ、メビウス」

 

「ゾフィー隊長………」

 

『ウルトラマンさん………』

 

「タロウ兄さん………」

 

そこで更に、ゾフィーがジード、初代ウルトラマンがエックス、タロウがメビウスに肩を貸す。

 

「コレは………」

 

「すみれ様! ウルトラマンです!!」

 

すみれも圧倒されていたところに、カオルからの声が響く。

 

「分かっていますわ。まさか、こんなに………」

 

「いえ、違います!」

 

それに返事をしようとしたところ、それを遮ってカオルが言葉を続ける。

 

「世界各国にウルトラマンが現れました! 怪獣や降魔達と交戦しています!!」

 

「!? 何ですって!?」

 

その報告にすみれが驚愕していると、メインモニターの映像が切り替わり………

 

世界各国に現れた超古代怪獣達と戦っているウルトラマン達の姿が映し出された!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中国・上海では………

 

「エイヤアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

レオの気合の雄叫びと共に繰り出された必殺のレオキックが、ゴルザの頭を粉砕!

 

頭の無くなったゴルザの身体が倒れると、爆発四散する。

 

「イヤアアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!」

 

その傍では、レオの弟である『アストラ』が、ハンドスライサーでガルラを唐竹割りにする。

 

「老師!」

 

「もう1人のウルトラマン、何か似てるけど、兄弟かな?」

 

その光景を見たシャオロンとユイがそう言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に、英吉利・倫敦では………

 

「ジュウウウウワアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

『クァンタムストリーム』を薙ぎ払う様に放ち、上空を飛んでいた降魔諸共にメルバとゾイガーを爆散させる『ウルトラマンガイア(V2)』

 

「オオオオォォォォォーーーーーーッ!! ツォワァッ!!」

 

更に、その背中を守る様に陣取っていたアグルが、フォトンクラッシャーでガルラを爆散させ、周囲に居た降魔達も巻き込む。

 

「! あの時の青いウルトラマン! 赤いウルトラマンは初めて見るな………」

 

(藤宮………)

 

アーサーがそう言う中、アグルに藤宮の姿を重ねるランスロット。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続けて、露西亜・莫斯科では………

 

「オーブスプリームカリバーッ!!」

 

オーブ(オリジン)が、オーブカリバーを頭上で円を描く様に振り回し、メルバへと向けたかと思うと、刀身から虹色の光線が放たれ、メルバを爆散させた。

 

「喰らえっ!!」

 

レイラの叫びが響いたかと思うと、彼女の操縦している『スペースリセッター グローカービショップ』が背中のバーニアを使ってゾイガーに体当たりを喰らわせる。

 

倒れたゾイガーに向かって腕の爪『ビショップクロー』から放つ光弾『ジルサデスビーム』を浴びせて倒す。

 

「姉さん、右っ!!」

 

パイロットをしていたクラーラが、右からゴルザが来ている事に気付く。

 

「!」

 

反応したレイラが操縦桿を引き、グローカービショップがバーニアを吹かして回転しながら、ビショップクローを振って、ゴルザを弾き飛ばす。

 

「そこっ!!」

 

額のランプから発射する光弾『ブレアビーム』を浴びせると、ゴルザは爆散した。

 

「オーブか!」

 

『あのロボットに乗っているのはレイラにクラーラか!』

 

ゼロと誠十郎がそう反応する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独逸・伯林………

 

「ツゥエアッ!!」

 

右腕の『ナイトブレス』から出現させた光の剣『ナイトビームブレード』で、ゴルザを一刀両断する青いウルトラマン………『ウルトラマンヒカリ』

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ! セヤァッ!!」

 

更に続けて、ナイトシュートを放ち、メルバを爆散させる。

 

「ヒカリ! 来てくれたのか!」

 

「あの青いウルトラマンはメビウスの知り合いか!」

 

それに反応するメビウスとエリス。

 

 

 

 

 

その他にも………

 

仏蘭西・巴里には、ウルトラマン80。

 

亜米利加の紐育にはウルトラマンパワード、華盛頓にはウルトラマンスコット、ウルトラマンチャック、ウルトラウーマンベス。

 

濠太剌利には、ウルトラマングレート。

 

印度には、ウルトラマンネオスとウルトラセブン21。

 

新嘉坡には、ウルトラマンマックスとウルトラマンゼノン。

 

馬来西亜には、ウルトラマンリブット。

 

伊太利には、ウルトラマンナイス。

 

埃及には、ウルトラマンゼアス。

 

伯剌西爾には、エレクやロトを中心としたU40のウルトラ戦士達。

 

加奈陀には、ウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリー。

 

南阿弗利加には、ウルトラマンコスモスとウルトラマンジャスティス。

 

芬蘭には、ウルトラマンロッソ、ウルトラマンブル、ウルトラウーマングリージョ。

 

亜爾然丁には、ウルトラマンタイガ、ウルトラマンタイタス、ウルトラマンフーマのトライスクワッド。

 

世界各国にウルトラマン達が現れ、超古代怪獣達や降魔達を次々に倒している。

 

 

 

 

 

「コレは………」

 

「な、何ちゅう凄い光景や………」

 

世界各国で戦っているウルトラマン達の姿に圧倒されるカオルとこまち。

 

「オイ、親父! 何でこんな事になってんだ!? 如何して嘗ての華撃団の連中を!?」

 

「ん? ゼロ、メビウスから聞いていないのか?」

 

と、状況が呑み込めないゼロがそう尋ねると、セブンが首を傾げる。

 

「メビウスから!?」

 

「あ、ゴメン。色々あって、すっかり話すのを忘れてたよ」

 

ゼロが驚くと、メビウスが申し訳無さそうにそう言う。

 

「そう言えば、メビウスさんがこの地球に来た理由………聞きそびれてましたね」

 

ジード(プリミティブ)が、アナスタシアが帝剣を奪取した事で聞きそびれていた、メビウス来訪の理由の話を思い出す。

 

「うん、実は………」

 

そしてメビウスの口から、衝撃的な事実が語られた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘗て、帝剣を使った二都作戦により、降魔皇と共に幻都へ封印された帝国・巴里・紐育華撃団。

 

10年以上もその封印を続けていた彼等だったが、当然降魔皇も只封印されているだけの存在ではなかった………

 

何度も元居た次元へと戻るべく、華撃団の封印を破ろうとした。

 

しかし、華撃団の強固な封印を破る事は出来ず、膠着状態が続いた………

 

そんなある日………

 

降魔王はある手段に出た………

 

それは、元居た地球の有る次元では無く………

 

一旦別の繋がり易そうな次元へと出ると言うモノだった。

 

そしてそんな降魔皇の眼鏡に叶った次元が在った………

 

『怪獣墓場』である………

 

ウルトラマン達によって倒され、眠っている怪獣・超獣・宇宙人達の魂が漂っているその場所は、マイナスエネルギーが渦巻く場所でもあり、邪悪な存在である降魔皇からすれば持って来いの世界だった。

 

まさか帝都ではなく、そんな場所へと出ようなどと思っていなかった華撃団の隙を衝いて封印を破り、そのまま華撃団メンバーを引き連れて怪獣墓場へと降り立った降魔皇。

 

そして降魔皇は、怪獣墓場に漂っていた怪獣・超獣・宇宙人達の魂を邪念に変換して吸収し、更に強大な力を身に着ける事に成功。

 

その力を持って帝都へと舞い戻ろうとするのを。阻止しようとした華撃団メンバーだが………

 

10年以上の封印で疲弊し、霊子甲冑もボロボロになっており、とても対抗出来る状態ではなかった。

 

このまま降魔皇の帰還を許してしまうのか………

 

 

 

 

 

だが、怪獣墓場で暴れ………

 

『彼等』が気付かない筈がなかった。

 

 

 

 

 

怪獣墓場での異変を、M78星雲・光の国の宇宙警備隊はすぐさま感知。

 

事態を重く見た大隊長であるウルトラの父は、宇宙警備隊の事実上最高戦力である『ウルトラ6兄弟』に出動を命令。

 

更に、光の国に伝わる神秘の秘宝………『ウルトラベル』の使用も許可した。

 

宇宙のあらゆる平和を作り出すとされている神秘の鐘の音を浴びた降魔皇は、忽ち力を失い弱体化。

 

そこへ、最後の力を振り絞った華撃団メンバーの霊力を集めた大神と新次郎の『狼虎滅却・震天動地』と『狼虎滅却・超新星』………

 

更にゾフィー達と合体し、スーパーウルトラマンとなったタロウの宇宙最強の光線『コスモミラクル光線』を受け、降魔皇は完全に倒された。

 

だが、10年間もの間、降魔皇を封印し続けていた負担は半端では無く、華撃団メンバーは直後に昏睡状態に陥ってしまう。

 

すぐさま光の国へと搬送され、銀十字軍隊長であるウルトラの母から治療を受けた後、長期の療養が必要であり、U40へ移送された。

 

これは、光の国の太陽であるプラズマスパークの光が、普通の人間には強過ぎる為である。

 

以前、『ZAP』のスペースペンドラゴンクルーが光の国を訪れた際には、宇宙港にバリアを張り、そこから出られないと言う状態だった。

 

なので、普通の人間でも滞在でき、光の国と同等の医療技術を持つU40が療養先として選ばれたのだ。

 

すぐに昏睡状態となってしまった為、確認が取れなかったが、宇宙警備隊は華撃団メンバーをゼロが滞在している太正世界の地球の住人ではないかと推測。

 

その事をゼロ達に確認する為にメビウスが派遣される。

 

だが、到着後のゴタゴタに巻き込まれ、確認が遅れていたところ………

 

帝剣によって作られた次元の揺らぎと、そこから漏れていた強大な悪の気配を感知。

 

それに呼応するかの様に、華撃団メンバーは昏睡状態から回復。

 

大神達から素性と事情を聞かされ、それが帝剣によるものだと知らされた宇宙警備隊は………

 

調査の為に回収していた降魔皇の死骸を分析した結果、何者かによって造られた人造生命体であった事や、レオが報告してきた太正世界の地球の事情から………

 

その次元の裂け目から検知された強大な悪の気配こそ、太正世界の地球で陰謀を企てている黒幕と断定。

 

全ウルトラ戦士に召集を掛け、華撃団メンバーと共に、倒されていたと知らなかったアゴナが、降魔皇を呼び出そうと再度次元の裂け目を作ったのを利用し、太正世界の地球へと舞い降りたのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ!? お前、そんな大事な事を話し忘れてたのか!?」

 

「ゴメン、色々あったから………」

 

「ハアア~~~………」

 

重大な案件をウッカリと話し忘れていたメビウスに、ゼロは思わず大きな溜息を吐く。

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

とそこで、快刀乱麻のダメージから立ち直ったキラーゾーア(アゴナ)が咆哮を挙げる。

 

『オノレオノレオノレェ! よくも我を虚仮にしてくれたなぁっ!!』

 

怒りのままにそう叫びアゴナ。

 

そこで、キラーゾーアの身体から闇のオーラの柱が立ち上る。

 

そこからまたも闇の塊が飛び出し、次々と帝都に降り注いだ!!

 

「「「「『!!』」」」」

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

キイイアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

グルオオオオオォォォォォォォッ!!

 

キュイアアアアアアアアッ!!

 

グルルルゴオオオオオオォォォォォォーーーーーーーーッ!

 

誠十郎達が驚いていると、闇の塊から超古代怪獣達に加え、『怪魚超獣 ガラン』が出現する。

 

『貴様等を始末した後でゆっくりと破壊してやろうと思ったが、止めだあぁ! 今すぐに帝都を灰にしてくれるわぁっ!!』

 

「! テメェッ!!」

 

アゴナの叫びと共に、ガランと超古代怪獣達が帝都を攻撃しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジュアッ!」

 

「ファイヤースティックッ!!」

 

「シルバークロス!」

 

「ジャンミサイル!」

 

「ジャンフラッシャー!」

 

ガランに青い光線、ゴルザに炎の棍棒、メルバに十字状の光弾、ガルラに無数のミサイル、ゾイガーに無数の光弾が命中!

 

進撃を阻んだ!!

 

「! アレはっ!!」

 

ゼロが驚いていた直後、5人の巨人がガランと超古代怪獣達の前に立ちはだかった!

 

「ゼロ! コッチは俺達に任せろっ!!」

 

「オメェはそのデカブツをやっつけな!」

 

「この街は私達が守ります」

 

「1歩たりともとも通しはしないぞ」

 

「僕達が相手だ」

 

5人の巨人………

 

『ウルトラマンダイナ』、『グレンファイヤー』、『ミラーナイト』、『ジャンボット』、『ジャンナイン』が次々とゼロに呼び掛ける。

 

「ダイナ! グレン! ミラーナイト! ジャンボット! ジャンナイン!」

 

「おおおお~~~~っ!? アレがゼロさんの盟友のウルトラマンダイナ! そしてウルティメイトフォースゼロの皆さん!!」

 

何処と無く嬉しそうな声を挙げるゼロと、またも興奮した様子を見せるクラリス。

 

『ええいぃっ! どいつもこいつも邪魔をしおってぇっ!!』

 

と、最早苛立ちを隠そうとしていないアゴナの叫びが響くと、再度闇のオーラの柱から、新たな闇の塊が3つ飛び出し、ルルイエに着弾。

 

キュキリキリキリキリッ!!

 

ブワアアアアァァァァァッ!!

 

グロララララララァッ!!

 

その塊から、『大蟻超獣 アリブンタ』、『変身超獣 ブロッケン』、『満月超獣 ルナチクス』が現れる。

 

『今度は超獣だと!?』

 

「ゼロ! 受け取れ!!」

 

誠十郎が驚きの声を挙げると、セブンがゼロにエネルギーを供給。

 

激しく点滅していたカラータイマーが青に戻る。

 

「ハアァッ!」

 

「シュアッ!」

 

「ムンッ!」

 

更に、ゾフィーがジードに、初代ウルトラマンがエックスに、タロウがメビウスにエネルギーを供給。

 

全員のカラータイマーが青へと戻る。

 

「! エネルギーが戻ったっ!!」

 

ジード(プリミティブ)がそう声を挙げる中、ウルトラ6兄弟とジョーニアスは超獣軍団と超古代怪獣達の前に立つ。

 

「コイツ等は我々は任せろ」

 

「お前達は奴を叩けっ!」

 

「! 頼むぜ、親父!」

 

「お願いします!」

 

ゾフィーとセブンにそう言われ、ゼロ、メビウス、エックスと華撃団メンバーはキラーゾーアへ、ジードは引き続きダークメフィスト・ドライへと向かって行ったのだった。

 

「ゼアッ!」

 

「シュアッ!」

 

「デヤアァッ!」

 

「セアッ!」

 

「テェーンッ!」

 

「トアァーッ!」

 

「シュワッ!」

 

ブラザーズマントを脱ぎ捨てて構えを執るウルトラ6兄弟に合わせて、ジョーニアスも構えを執るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

来たのはウルトラ6兄弟とジョーニアスだけではなかった!
世界各国にウルトラマンが現れ、超古代怪獣達や降魔と交戦を開始しました。

一部出てないキャラについてですが、ユリアンは立場的な問題で前線に行くべきではないと思い、ボーイはギャラクシーファイトに参戦していますが、まだ立ち位置が不明なので見送りました。
ご了承ください。

そして、『あのウルトラマン』についてですが………
ちょっと特殊な形での登場になります。
中の人が都合で出れない事などがあり、彼もまた様々な世界に遍在するウルトラマンとなってますから。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター5『歴戦の勇士の戦い』

シン・ウルトラマン、遂に公開ですね。

私はもうすぐ3回目のワクチン接種があるので、それが終わってから見に行こうと思います。

なので、感想等などでシン・ウルトラマンに触れるのはご自重して頂けると幸いです。


チャプター5『歴戦の勇士の戦い』

 

超古代怪獣 ゴルザ

 

超古代竜 メルバ

 

超古代怪獣 ガルラ

 

超古代尖兵怪獣 ゾイガー

 

ダークメフィスト・ドライ

 

大蟻超獣 アリブンタ

 

変身超獣 ブロッケン

 

満月超獣 ルナチクス

 

究極超邪神獣 キラーゾーア 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡………

 

「行くぜ、アゴナッ!!」

 

「シュアッ!!」

 

再びゼロビヨンドになったゼロと、バーニングブレイブへと変身したメビウスがキラーゾーアの上部を目指して飛ぶ。

 

 

 

 

 

「大地! とっておきで行くぞ!!」

 

『ああ!』

 

更にエックスも、ユナイトしている大地が、初代ウルトラマンとウルトラマンティガのサイバーカードをロードする。

 

すると、エクスデバイザーから『エクスベータカプセル』と『エクスパークレンス』が出現。

 

その2つを合体させ、『ベータスパーク』を作ると、エックスの左肩にティガの胸部プロテクター、右肩にウルトラマンの胸部を模した鎧が装着される。

 

そして、エクシードXの姿に変わると、その上から金色のアーマーが纏われる。

 

「『ベータースパークソードッ!!』」

 

その手に握られた『ベータースパークソード』を振るい、エックス最強の形態………『ベータースパークアーマー』へと変身した!

 

 

 

 

 

「シュワッ!!」

 

ゼロビヨンドとメビウス(バーニングブレイブ)の後を追ってキラーゾーアへと向かって行くエックス(ベータスパークアーマー)

 

「チイッ! 死にぞこない共がぁっ!!」

 

それをダークメフィスト・ドライが追おうとしたが………

 

「お前の相手は僕だって言っただろう!」

 

ジード(プリミティブ)がそう言うと、インナースペースのリクの手元に『エボリューションカプセル』と『ギガファイナライザー』が出現する。

 

 

 

 

 

 

「ウルティメイトファイナル!」

 

『シャッ!』

 

エボリューションカプセルを起動させると、ギガファイナライザーへとセット。

 

そしてそれをジードライザーのスキャナーで読み込む。

 

『アルティメットエボリューション!』

 

「つなぐぜ! 願い!!」

 

そう言いながら、ギガファイナライザーのスライドスイッチを入れるリク。

 

「ジード!」

 

その姿が若い日にベリアル・アーリースタイルに似た姿に変わったかと思うと、そこに金色のライン『ゴールドストリーム』が走る。

 

『ウルトラマンジード! ウルティメイトファイナル!』

 

そして、ジード最強の形態………

 

『ウルティメイトファイナル』へと変身を完了した!

 

 

 

 

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ………」

 

ギガファイナライザーを構えるジード(ウルティメイトファイナル)

 

「そんな姿のなったくらいで勝てると思ってんのかぁっ!?」

 

そのジード(ウルティメイトファイナル)に、苛立ちを隠そうともせずに向かって行くダークメフィスト・ドライだった。

 

「皆、アゴナの方はお願い。私は引き続きリクを援護するわ」

 

そこでアナスタシア機(エレキングアーマー)も、ダークメフィスト・ドライへと向かって行く。

 

「良し! 俺達はアゴナを叩く!!」

 

「でも、隊長。飛行出来るスターは兎も角、あの巨体では………」

 

キラーゾーアへと向かおうと呼び掛ける大神だったが、マリアがそう言って来る。

 

全長1キロ以上の体長を誇るキラーゾーアに、スター以外の飛行能力を持たない数メートルの霊子甲冑や霊子戦闘機では、近づく事さえ難しかった。

 

と、その時………

 

暗雲に覆われている空の一部が光ったかと思うと、そこから無数の光の玉が降りて来て、キラーゾーアを取り囲んだかと思うと………

 

それがまるで天使の輪の様な足場が形成された。

 

「! コレはッ!?」

 

大神が驚きながら暗雲の光っている部分を見上げると、そこにシルエットが浮かび………

 

帝国華撃団初代副司令であった『藤枝 あやめ』こと『大天使ミカエル』の姿が露わになった。

 

「! あやめさん!」

 

「「「「「!!」」」」」

 

「ゴメンなさい、大神くん………今の私に出来るのはこれぐらいなの」

 

驚く大神やさくら達に向かって、ミカエルは申し訳なさそうにそう言う。

 

「………いいえ、十分です。俺達は必ず勝ちます!! 何故なら!!」

 

「「「「「それが、帝国華撃団です(だ、や、だよ)!!」」」」」

 

「ふふ、それでこそよ………貴方達に、大いなる父の祝福が有らん事を………」

 

力強くそう返す大神達に微笑み、ミカエルは暗雲の中の光と共に消えて行った。

 

「良し、皆! 行くぞっ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

大神の号令一下、初代帝国華撃団と巴里華撃団メンバーは、天使の輪の足場を使い、キラーゾーアへ向かって行く。

 

「皆さんっ!!」

 

とそこで、ミカサの甲板上を駆けて来るすみれの姿が在った。

 

「! すみれくん!?」

 

「馬鹿! 何やってんだ! お前はミカサに居ろ!!」

 

既に霊力を失っている筈のすみれが飛び出して来た事に大神が驚き、カンナも慌ててそう怒鳴る。

 

しかし………

 

「!!………」

 

すみれは立ち止まったかと思うと、エボルトラスターの鞘の部分を左手で握って左腰の辺りに構え、右手で柄の方を握って抜き放つ。

 

「シュアッ!!」

 

エボルトラスターから溢れた光の中から、ネクサスが飛び出し、すぐさまジュネッスバイオレッドへとフォームチェンジする!

 

「!? ん何いいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーっ!?」

 

「す、すみれがウルトラマンになっちゃったーっ!?」

 

「アンビリバボーデース!!」

 

仰天の声を挙げるカンナ、アイリス、織姫。

 

「すみれくん………」

 

「…………」

 

流石の大神も戸惑いを隠せなかったが、ネクサス(ジュネッスバイオレッド)はそんな大神に向かって頷いて見せる。

 

「! 皆、アレはすみれくんだ! 何も心配する事は無い!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

大神がそう言うのを聞いて、初代帝国華撃団と巴里華撃団は執り直し、ネクサス(ジュネッスバイオレッド)と共に、改めてキラーゾーアへ向かう。

 

「全機、飛行形態へ! チェンジ、フライトモードッ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

それに続いて、紐育華撃団メンバーを、スターを最大の特徴である戦闘機形態『フライトモード』へ変形させ、キラーゾーアへ突撃して行った!

 

「俺達も!」

 

「続け!」

 

「行くぞっ!!」

 

更に続いて、上海・倫敦・伯林華撃団も足場を利用してキラーゾーアへ向かう。

 

「アタイ達も行くぜっ!!」

 

「ハイッ!」

 

最後に新生帝国華撃団メンバーが向かおうとしたところ………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

「ゼットン? 如何したの?」

 

ゼットンがクラリスに何かを訴え掛ける様な様子を見せる。

 

『ソイツは今、新たな力に目覚めようとしている』

 

「!? 誰ですかっ!?」

 

直後に、テレパシーらしきもので、頭の中に直接声が聞こえて来て驚くクラリス。

 

『お前とソイツが今まで経験して来た数々の戦いの記憶と、お前の役に立ちと言うソイツの思いが頂点に達したんだ。ソイツを信じて呼び掛けろ』

 

「貴方は一体?………」

 

『俺は『レイ』………レイオニクス………いや、『ZAP』のレイだ』

 

そこでクラリスの脳裏に、2本の角が生えた様な機械………『ネオバトルナイザー』を構えるZAPの制服を着た青年『レイ』と、その後ろで咆哮を挙げている『古代怪獣 ゴモラ』の姿が幻視される。

 

「!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

驚きながらも、ゼットンの事を見上げるクラリス。

 

「………ゼットン! 今こそ、その力を!!」

 

クラリスはレイの言葉を信じ、魔導書のゼットンのページを開いた!

 

すると、そこに描かれていたゼットンの姿が光を放ち、同時に本体のゼットンも輝き出す。

 

光の中で、その姿が変わって行き………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

スタイリッシュで人間に近いシルエットに加え、翼と細い尻尾の生えた姿………

 

『宇宙恐竜 ハイパーゼットン・イマーゴ』となった!!

 

「!? ゼットンが!?」

 

「オイオイ! ゼットンまでパワーアップかよ!?」

 

ハイパーゼットンへと変わったゼットンを見て驚きの声を挙げるあざみと初穂。

 

「行くよ、ゼットン!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

クラリス機(ゼットンアーマー)が、ハイパーゼットンの肩に跳び乗る。

 

「御2人も早く!」

 

「お、おうっ!」

 

「ニンッ!」

 

クラリスに呼び掛けられ、初穂機(ゴモラアーマー)とあざみ機(ベムスターアーマー)もハイパーゼットンの肩に乗る。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

そしてハイパーゼットンは翼を広げて、キラーゾーア目掛けて飛翔する。

 

「火力を奴に集中させろ! 正念場だぞっ!!」

 

更に、マイティ号を中心とした華撃団艦隊も、キラーゾーアへ火力を集中させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

超古代怪獣&超獣軍団と戦うウルトラ6兄弟とジョーニアスは………

 

 

 

 

 

ゾフィーVSゴルザ………

 

「ゼアッ!」

 

ゴルザの胸に左水平チョップを叩き込むと、続けて右手の手刀を脳天に叩き込むゾフィー。

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

「ゼッ!!」

 

怯んだゴルザの頭を左脇へ抱え込む様に捕まえると、そのまま右手で何度もチョップをお見舞いする。

 

そして不意に放したかと思うと、その場で跳び上がって胸に蹴りを叩き込む。

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

「ゼアッ!!」

 

ゴルザが後退ると、Z光線を放つ。

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

だがゴルザは、胸部でZ光線を受け止め、そのまま吸収してしまう。

 

「!!」

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

一瞬驚きながらも、すぐに構えを執るゾフィーに向かって、勝ち誇る様に咆哮を挙げるゴルザ。

 

「ゼッ………ゼアアッ!!」

 

するとゾフィーは、両腕を胸の前で構え、右腕を振り被ったかと思うと前に伸ばし、自身の最強技であり、単独での威力は兄弟最強と言われている『M87光線』を放った。

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

Z光線と同じ様に、胸部で受け止め、そのまま吸収しようとするゴルザ。

 

しかし………

 

!? グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!?

 

余りの威力に吸収し切れず、身体が膨れ上がり、そのまま爆発四散したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初代ウルトラマンVSガルラ………

 

グルオオオオオォォォォォォォッ!!

 

「テヤァッ!!」

 

突進して来たガルラに、カウンター気味に前蹴りを叩き込む初代ウルトラマン。

 

グルオオオオオォォォォォォォッ!!

 

ガルラは数歩後退ったが、すぐに再突進して来る。

 

「テッ!!」

 

初代ウルトラマンは、今度は突進を受け止めると、ガルラの脳天に向かって右、左とチョップを叩き込む。

 

そして素早く身体を反転させると、ガルラの首を肩に担ぐ様に掴まえ、背負い投げの様に投げ飛ばす。

 

グルオオオオオォォォォォォォッ!?

 

するとガルラは、投げ飛ばされた際に打ち付けた背中ではなく、喉を押さえて苦しむ様子を見せた。

 

「!」

 

そのガルラの様子を見て、何かに気付く初代ウルトラマン。

 

グルオオオオオォォォォォォォッ!!

 

と、そこで起き上がったガルラが、初代ウルトラマンに向かって頭部の触角から熱線を放つ。

 

「シュワッ!!」

 

だが、何と!!

 

初代ウルトラマンは両手を腰に当てて仁王立ちしたかと思うと、ガルラの熱線を大胸筋で受け止め、そのまま手で払って掻き消してしまった。

 

グルオオオオオォォォォォォォッ!?

 

流石のガルラもコレには動揺し、狼狽えた様子を見せた瞬間………

 

「シュワッ!!」

 

ガルラの喉目掛けて、十字に組んだ手から伝家の宝刀『スペシウム光線』を放つ初代ウルトラマン。

 

グルオオオオオォォォォォォォッ!?

 

弱点で有る喉を攻撃され、ガルラは先ず頭部が吹き飛んだかと思うと、続いて上半身が砕け散り、最後に下半身が木っ端微塵となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラセブンVSアリブンタ………

 

キュキリキリキリキリッ!!

 

セブンに向かって、両手から火炎を放つアリブンタ。

 

「デュアッ!!」

 

しかしセブンは、自慢のウルトラ念力で火炎を逆転させ、アリブンタ自身に浴びせた!

 

キュキリキリキリキリッ!!

 

自分で自分の火炎を浴びて悶えるアリブンタ。

 

「デュアーッ!!」

 

そのアリブンタにセブンは組み付いたかと思うと、そのまま首を押さえて、ネックブリーカー・ドロップをお見舞いする。

 

「デュアッ!!」

 

倒れたままのアリブンタに馬乗りになると、そのままハンマーパンチを連続で叩き込むセブン。

 

キュキリキリキリキリッ!!

 

と、不意にアリブンタが、口から蟻酸を吐き出す。

 

「!!」

 

素早くアリブンタの上から飛び退いて躱すセブン。

 

キュキリキリキリキリッ!!

 

その隙を衝いて、アリブンタが起き上がると、再度火炎を浴びせようとする。

 

「デュアーッ!!」

 

そこでセブンは、頭部に装着されていた宇宙ブーメラン『アイスラッガー』を両手で掴み、アリブンタ目掛けて投げつける。

 

ウルトラ念力でコントロールされ、白熱化したアイスラッガーが、アリブンタの両肩の角を斬り飛ばす!!

 

キュキリキリキリキリッ!?

 

「デヤーッ!!」

 

怯んだアリブンタに、セブンはアイスラッガーを回収すると、額のビームランプから『エメリウム光線』を放つ!!

 

キュキリキリキリキリッ!?

 

エメリウム光線が当たった箇所が爆発したかと思うと、アリブンタはそのままバタリと倒れ、そのまま爆散したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンジャックVSメルバ………

 

キイイアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

空からジャックを強襲しようとするメルバ。

 

「シュアッ!」

 

しかし、ジャックはメルバよりも高く跳び上がったかと思うと、流星キックを繰り出し、メルバを撃墜した!!

 

キイイアァァァァァァーーーーーーーッ!?

 

錐揉みしながら墜落し、地面に叩き付けられるメルバ。

 

「セアッ!」

 

キイイアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

ジャックも着地を決めるが、そこで起き上がったメルバが、メルバニックレイを放つ。

 

「シュワッ!」

 

しかし、ジャックは腕をVの字に組んだ『ウルトラVバリヤー』で防ぐ。

 

そして素早くメルバに接近すると、連続でチョップを喰らわせる。

 

「シュアッ!!」

 

更に飛び上がって空中で体をひねって放つ強力なローリングソバット『ウルトラスピンキック』を喰らわせると、メルバは後退る。

 

キイイアァァァァァァーーーーーーーッ!!

 

地上戦は分が悪いと思ったか、翼を広げて再度飛び上がろうとするメルバ。

 

「セアッ! トアァッ!」

 

だが、ジャックはそれを許さず、左腕に装備されていたダイヤモンド状の飾りのついた金の腕輪………『ウルトラブレスレット』を使い、『ウルトラスパーク』を繰り出した!

 

光刃と化したウルトラスパークが、メルバの右の翼を切断し、戻って来る際には左の翼も切断した!

 

キイイアァァァァァァーーーーーーーッ!?

 

「シュワッ!!」

 

木から落ちた猿となったメルバを、ジャックは跳躍して空中回転を決めながら肉薄!

 

メルバを掴まえると、頭上に掲げる様に持ち上げ、真上に投げ飛ばす!

 

そしてそれを追従する様に再度跳躍し………

 

擦れ違い様に鋭いチョップ………『スライスハンド』で首を切断!!

 

首に無くなったメルバの死骸をバックにジャックは華麗に着地を決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンAVSゾイガー………

 

「トアァーッ!」

 

キュイアアアアアアアアッ!!

 

空中戦を展開しているAとゾイガー。

 

嘗てガッツウイング1号を振り切り、ティガ・スカイタイプの力を借りたマキシマ・オーバードライブ実験機・スノーホワイトで漸く追い付けた飛行速度を誇るゾイガー。

 

「イヤァーッ!!」

 

だが、最高飛行速度マッハ20を誇るAにとって、そのスピードは余りに遅過ぎた!

 

アッサリとゾイガーを追い抜き、進行方向の先に立ちはだかるA。

 

「テヤァッ!!」

 

そして、特徴的な頭部のトサカに空いていたエネルギーホールを使い、光輪『ウルトラギロチン』を放つ。

 

ゾイガーに向かって行ったウルトラギロチンが、直前で2つに分裂!

 

ゾイガーの翼を根本から切断した!!

 

キュイアアアアアアアアッ!?

 

翼を失ったゾイガーは、真っ逆さまに落下し、地面に激突。

 

「テェーンッ!」

 

それを追い、Aも地上に降り立つ。

 

キュイアアアアアアアアッ!!

 

と、そこでゾイガーが起き上がると、Aに向かって口から光弾をマシンガンの様に連射する。

 

「ムッ! トアァーッ!」

 

しかし、Aは長方形の光の壁『ウルトラネオバリヤー』を展開。

 

ゾイガーの光弾を防ぎつつ、お返しとばかりに右手で牽制技『スラッシュ光線』を連射。

 

キュイアアアアアアアアッ!?

 

逆にスラッシュ光線の連射を喰らったゾイガーの身体から次々と爆発が上がる。

 

キュイアアアアアアアアッ!!

 

だが、超古代尖兵怪獣としての意地か、尚も光弾攻撃を続けようと口を開ける。

 

「イヤァーッ!!」

 

けれどもその瞬間にAはバリアを投げ捨てる様に解き、ゾイガーの口目掛けて額のウルトラスターから『パンチレーザー』を発射!

 

キュイアアアアアアアアッ!?

 

「トアァーッ!」

 

完全に怯んだゾイガーに向かって跳躍し、空中で錐揉みを決めてからの跳び蹴りを見舞うA。

 

更に左手で水平チョップを食らわせ、右手で脳天に垂直チョップ!

 

その衝撃で下がったゾイガーの頭をキック!

 

更に跳び上がって、ボディにドロップキックを見舞う!

 

ゾイガーから超獣と似た気配を感じた為、容赦無く攻撃を食らわせて行くA。

 

キュイアアアアアアアアッ!?

 

「ムンッ! イヤァーッ!!」

 

完全にグロッキーとなったゾイガーに向かって、水平に放つ半月状の光刃『ホリゾンタルギロチン』を発射。

 

ゾイガーの首が切断され、ボトリと地面に落ちる。

 

「テェーンッ!」

 

駄目押しとばかりに両腕を横に大きく振りかぶった後にL字に組んで放つ必殺光線『メタリウム光線』を浴びせ、完全に爆砕したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンタロウVSルナチクス………

 

グロララララララァッ!!

 

「ムンッ!」

 

ルナチクスとガッチリ組み合うタロウ。

 

「トアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

不意を衝く様に横っ面にフックを打ち込んだかと思うと、組み合いを解いてボディに連続パンチを見舞う。

 

グロララララララァッ!!

 

衝撃で後退ったルナチクスだが、痛みを感じない超獣はすぐに目玉ミサイルを発射!

 

「トアァッ!」

 

だが、タロウは跳躍して目玉ミサイルを回避すると、空中で数回宙返りを決めて繰り出す強烈なキック『スワローキック』を喰らわせる!

 

グロララララララァッ!?

 

脳天に真面に喰らったルナチクスが、地面に叩き付けられると衝撃でうつ伏せになる。

 

タロウはそのルナチクスの上に馬乗りになったかと思うと、兎型超獣である特徴の1つである頭頂部の長い両耳を両手で掴む。

 

「タアァーッ!!」

 

そしてそのまま力任せに引き千切った!

 

グロララララララァッ!?

 

感覚器官の1つを失った事で、行動に乱れが出て、慌てて起き上がるルナチクス。

 

「トアァーッ!!」

 

その瞬間にタロウは、その顔面にアトミックパンチを喰らわせる!

 

もう1つの兎型超獣の特徴である前歯が圧し折られ、ルナチクスはブッ飛ばされる。

 

「ストリウム光線!!」

 

そこでタロウは右手を掲げ、続いて左手を上げて頭上で組んだかと思うと、両腕を引き絞って身体を虹色に輝かせたかと思うと………

 

腕をT字に組んで、必殺の『ストリウム光線』を放つ!!

 

グロララララララァッ!?

 

ストリウム光線が直撃したルナチクスは、断末魔の咆哮を挙げて爆散したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョーニアスVSブロッケン……

 

「シュアッ!!」

 

ブワアアアアァァァァァッ!!

 

構えを執るジョーニアスに向かって、ブロッケンは2本の尻尾の先からスネーク光線は放つ。

 

「シュワッ!!」

 

しかし、ジョーニアスは飛び上がって回避すると、アクロバティックに宙返りを決めながら、キックを繰り出す。

 

ブロッケンの頭部に命中したキックは、角の片方を圧し折った!

 

ブワアアアアァァァァァッ!?

 

「シュアッ!!」

 

そのままブロッケンの傍に着地したジョーニアスは、ケンタウロスの様な姿をしたブロッケンの胴体部分を抱え込む様にしたかと思うと………

 

「オオオオオオォォォォォォォッ!!」

 

何と、8万3000トンも有るブロッケンの巨体を持ち上げ、投げ飛ばした!!

 

ブワアアアアァァァァァッ!?

 

「シュワッ!!」

 

逆様になる様に叩き付けられたブロッケンの前に跳び上がると、全体重を乗せたニードロップを見舞う!

 

ブワアアアアァァァァァッ!?

 

余りの威力に、口から泡を吹くブロッケン。

 

しかし、痛みや恐怖を感じない超獣は怯まず、素早く身体を回転させて起き上がったかと思うと、2本の尻尾をジョーニアスに巻き付けようとする。

 

だが………

 

「シュアッ!!」

 

巻き付ける直前で、ジョーニアスの姿が光り輝いて消えてしまう。

 

ブワアアアアァァァァァッ!?

 

ジョーニアスを見失い、両手に付いている目も使って探すブロッケン。

 

すると、その右手の方に近づくモノが在った。

 

縮小化したジョーニアスだ!!

 

身体を小さくした事で、ブロッケンの目を眩ませたのだ。

 

その縮小化した状態のまま、ブロッケンの右手の口の中へと飛び込むジョーニアス!

 

「シュワッ!!」

 

そしてそこでそのまま再度巨大化!!

 

ブロッケンの右手が、内側から突き破られ、粉々になる!!

 

ブワアアアアァァァァァッ!?

 

「シュアッ!!」

 

更にそのまま、ブロッケンの横っ面に強烈なパンチを喰らわせる。

 

ブワアアアアァァァァァッ!?

 

「シュワッ!!」

 

続けてまたもや跳び上がったかと思うと、後頭部にキックを見舞い、その反動で空中宙返りを決めながら離れた場所へと着地。

 

2本の指を突き出した両手を扇形に広げ、その手をL字に組んだかと思うと、垂直に立てている右腕にエネルギーが集まる。

 

「シュアッ!!」

 

そしてボール状となったエネルギー光球………『プラニウム光線(Aタイプ)』を、ブロッケン目掛けて投げつけた!

 

ブワアアアアァァァァァッ!?

 

命中したプラニウム光線はブロッケンを包み込み、そのまま爆発四散させたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歴戦の雄姿たるウルトラ6兄弟とジョーニアスの前には、超古代怪獣と超獣軍団など敵ではなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ベータスパークアーマーやウルティメイトファイナルも解禁し、今度こそアゴナとの決着を着けんとするゼロ達。
ミカエルことあやめさんの助けを受け、華撃団メンバーもキラーゾーアへ。
ゼットンもハイパーゼットン・イマーゴにパワーアップします。

そしてウルトラ6兄弟とジョーニアスは………
最早言うまでもなく、超古代怪獣軍団と超獣軍団を蹴散らします。
歴戦の勇士の貫禄です。

そして次回、ダークメフィスト・ドライと戦うジード&アナスタシアの前に………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター6『黒いウルトラマン』

チャプター6『黒いウルトラマン』

 

ダークメフィスト・ドライ

 

??? 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡………

 

ジード(ウルティメイトファイナル)VSダークメフィスト・ドライ………

 

「死ねぇっ!!」

 

あからさまな台詞と共に、メフィストクローをジード(ウルティメイトファイナル)目掛けて振るうダークメフィスト・ドライ。

 

「ハッ!!」

 

しかしジード(ウルティメイトファイナル)は、それをギガファイナライザーで受け止めたかと思うと、そのまま押し返す!

 

「!? うおっ!?」

 

「ハアッ!!」

 

そしてバランスを崩したダークメフィスト・ドライに、ギガファイナライザーの1撃を叩き込む!

 

「!? ぐはっ!?」

 

「ハアアッ!!」

 

ダークメフィスト・ドライが怯んだ瞬間、今度はキックを喰らわせるジード(ウルティメイトファイナル)。

 

「オボアァッ!?」

 

汚い悲鳴と共にブッ飛ばされるダークメフィスト・ドライ。

 

そこでインナースペースのリクが、ギガファイナライザーの握り手の部分のボタンを押すと、スライドスイッチを1回引く。

 

「ハッ!」

 

そして、ギガファイナライザーを突き出す様に構えたかと思うと、再度握り手のボタンを押す。

 

「ギガスラスト!」

 

すると、ギガファイナライザーの先端から、虹色の光線に黄色い光線が螺旋状に絡み付いた光線『ギガスラスト』を放つ!

 

「野郎っ!!」

 

ダークメフィスト・ドライは起き上がると、すぐさまダークレイ・シュトロームをジード(ウルティメイトファイナル)に向かって放つ。

 

ギガブラストとダークレイ・シュトロームが激突………

 

したかと思われた瞬間に、ダークレイ・シュトロームが掻き消され、ギガブラストがダークメフィスト・ドライに直撃する!

 

「グボアァッ!?」

 

諸に喰らったダークメフィスト・ドライは、またも大きくブッ飛ばされて、地面を転がる。

 

「このツリ目野郎っ!!」

 

と、起き上がろうと両手を地面に付いたところ………

 

「そこっ!!」

 

アナスタシア機(エレキングアーマー)が、その手に向かって氷の弾丸を発射!

 

忽ち両手が凍り付き、地面に張り付いてしまう。

 

「ぬあっ!? う、動けねえっ!?」

 

手を外そうと藻掻くダークメフィスト・ドライだが、氷はビクともしない。

 

「アポリト・ミデンッ!」

 

動けなくなったダークメフィスト・ドライの顔面目掛け、電撃を纏ったレーザーを放つアナスタシア機(エレキングアーマー)。

 

「!? ギャバアアアアアッ!?」

 

レーザーに押される様に仰け反ったかと思うと、両手の氷が砕け、そのままコントの様に仰向けに倒れるダークメフィスト・ドライ。

 

「ぬぐああっ!! この裏切り者めぇっ!!」

 

すぐさま起き上がり、アナスタシア機(エレキングアーマー)に向かってメフィストクローを振るおうとしたダークメフィスト・ドライだったが………

 

「ハアッ!!」

 

「グボアッ!?」

 

その瞬間、何処を見ているんだとばかりに、ジード(ウルティメイトファイナル)がギガファイナライザーの1撃を叩き込む!

 

「クソクソクソクソォッ! ふざけやがってぇっ!!」

 

「ココまでよ………観念しなさい、朧」

 

「ハアッ!」

 

またも逆転され、苛立ちMAXなダークメフィスト・ドライに向かってアナスタシアがそう言い放ち、ジード(ウルティメイトファイナル)はギガファイナライザーを構え直す。

 

「ウルセェッ! この朧様が人間やそれに味方する様な奴に負けてられるかぁっ!!」

 

しかし、ダークメフィス・ドライはそう叫ぶと、ダークレイクラスターを放つ。

 

途中で多数に分離した光弾が、ジード(ウルティメイトファイナル)に向かう。

 

「ハアアッ!!」

 

ギガファイナライザーで叩き落そうと待ち構えるジード(ウルティメイトファイナル)だったが………

 

寸前で光弾が全て、アナスタシア機(エレキングアーマー)の方に向かった!

 

「!? えっ!?」

 

「! アナスタシアさん!」

 

意表を突かれたアナスタシアは動けず、ジード(ウルティメイトファイナル)は慌ててアナスタシア機(エレキングアーマー)に覆い被さる!

 

光弾が全て、覆い被さったジード(ウルティメイトファイナル)に直撃する!

 

「! ウワァッ! グアアッ!!」

 

「! リクッ!」

 

アナスタシアの悲鳴が挙がると、ジード(ウルティメイトファイナル)の身体がグラリと揺れ、そのまま横に倒れる。

 

「う、うう………」

 

カラータイマーは点滅していないが、当たり所が悪かったのか、意識が朦朧としているジード(ウルティメイトファイナル)。

 

「リク! しっかりして、リク!」

 

「ヒャハハハハハハハッ! やっぱお前等にはこの手が1番効くみてぇだなぁっ!!」

 

慌てて呼び掛けるアナスタシアを見下しながら、ダークメフィスト・ドライが高笑いを挙げる。

 

「! 朧ぉっ!!」

 

「待ってなぁ………すぐに楽にしてやるぜぇ」

 

睨み付けるアナスタシアを無視しながら、メフィストクローを構えて倒れているジード(ウルティメイトファイナル)に近づくダークメフィスト・ドライ。

 

「!………」

 

するとアナスタシア機(エレキングアーマー)は、ジード(ウルティメイトファイナル)の前に立ち、両腕を広げてダークメフィスト・ドライの前に立ちはだかる。

 

「ああん?」

 

「リクはやらせないわ!」

 

「はあ? 馬鹿か、お前は? んな事したって、2人纏めてお陀仏になるだけだっつーの」

 

「…………」

 

そう嘲るダークメフィスト・ドライだったが、アナスタシア機(エレキングアーマー)はその前に立ちはだかり続ける。

 

「………ハア~、ホント、下らねえぜ、人間って奴はよぉ………じゃあ、2人纏めてくたばりやがれっ!!」

 

呆れた様に溜息を吐きながら、アナスタシア機(エレキングアーマー)ごとジード(ウルティメイトファイナル)を串刺しにせんとメフィストクローを繰り出すダークメフィスト・ドライ。

 

「!!………」

 

アナスタシアは思わず目を瞑る。

 

すると………

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

ザシュッ!と言う、肉が切り裂かれたかの様な音の後、ダークメフィスト・ドライの汚い悲鳴が響き渡った。

 

「!?」

 

何が起こったのかと、アナスタシアが目を開けると………

 

「腕がぁっ!? 俺様の腕がぁっ!?」

 

そこにはメフィストクローを填めていた腕が肘から無くなり、断面から闇のエネルギーが血飛沫の様に飛び散っているダークメフィスト・ドライと………

 

「…………」

 

赤い鋭い爪の生えた腕を振り切った様な姿勢で構えている『目付きの鋭い黒いウルトラマン』の姿が在った。

 

「黒い………ウルトラマン?」

 

アナスタシアは何故かその黒いウルトラマンが、ダークメフィスト・ドライとは違い正真正銘のウルトラマンであると感じ取る。

 

「な、何なんだよぉ、お前はぁっ!?」

 

肘から先が無くなった右腕を左手で押さえながら、ダークメフィスト・ドライが問い質す。

 

「お前、気に食わねえなぁ………俺様がブッ倒してやるぜぇっ!!」

 

黒いウルトラマン………ジードの父『ウルトラマンベリアル』はそう吠え、ダークメフィスト・ドライに向かって行った!!

 

「オラァッ!!」

 

「グアバァッ!?」

 

ダークメフィスト・ドライの頭を左手で掴んで持ち上げたかと思うと、後頭部を地面に叩き付けるベリアル。

 

「オラオラオラオラァッ!」

 

「ゲボッ!? ガバッ!? ブバッ!?」

 

そのまま左手で押さえ付けたまま、右手の拳を何発も顔面に叩き込む。

 

「フンッ!」

 

「ゴホッ!?」

 

そして無理矢理立ち上がらせたかと思うと、腹にヤクザキックを叩き込んで放す。

 

「ヌウウアアアアッ!!」

 

そこでベリアルは、近くに在った遺跡の残骸であるエンタシスタイプの柱を引き抜いたかと思うと、ダークメフィスト・ドライに向かってフルスイング!

 

「ボブハッ!?」

 

「ヌウンッ!!」

 

柱が砕け、ダークメフィスト・ドライが倒れると、残っていた柱の部分を上から叩き付ける様に投げつける!

 

「フハハハハハハハッ!!」

 

完全にグロッキーとなっているダークメフィスト・ドライの背中を、笑い声を挙げながら何度も踏み付けるベリアル。

 

「凄い………」

 

力任せに蹂躙する様な乱暴な戦い方ながら、ダークメフィスト・ドライを圧倒しているベリアルに、アナスタシアが感嘆の声を漏らす。

 

「た、助けてくれえぇーっ!!」

 

圧倒的なベリアルのパワーの前に、ダークメフィスト・ドライは恥も外聞も無く助けを求める。

 

「何だ? もうお終いか? 貴様の様な奴を見ていると虫唾が走る………」

 

そんなダークメフィスト・ドライの姿に興醒めした様子を見せたかと思うと、右手を掲げ、そこに赤いエネルギーを集める。

 

「ヒ、ヒイイィッ!?」

 

情けない悲鳴を挙げ、無様に這いずりながら、何とかベリアルから逃げようとするダークメフィスト・ドライ。

 

「死ねっ!」

 

だが、ベリアルはそんなダークメフィスト・ドライに容赦無く暗黒必殺光線『デスシウム光線』を放った!!

 

「ギャバアアアアアッ!?」

 

逃げる背中にデスシウム光線を喰らったダークメフィスト・ドライはそのまま爆発四散。

 

しぶとかった朧も、遂に最期を向かたのだった………

 

「…………」

 

「フン、つまらん………」

 

圧倒されて言葉を失っているアナスタシアと、ダークメフィスト・ドライが吹き飛んだ場所を見ながらそう吐き捨てるベリアル。

 

「…………」

 

するとそこで、ベリアルは倒れているジード(ウルティメイトファイナル)の方を向き、歩み寄る。

 

「!!」

 

それを見たアナスタシアは、再度機体の両腕を広げてジード(ウルティメイトファイナル)を守る様にする。

 

「…………」

 

そのアナスタシア機(エレキングアーマー)の前で立ち止まるベリアル。

 

「「…………」」

 

両者の視線が交差したかと思うと………

 

「………フン」

 

ベリアルは鼻を鳴らして踵を返した。

 

「!………」

 

アナスタシアが驚いていると、遠ざかるベリアルの姿が徐々に薄くなって行く………

 

そして消えてしまうと思われた瞬間………

 

その姿が一瞬………

 

『赤と銀のウルトラマンらしい姿』へと変わったのを目撃するのだった………

 

「今のは、一体………?」

 

「う、うう………」

 

アナスタシアが困惑を隠し切れずに居ると、そこで漸くジード(ウルティメイトファイナル)の意識が回復する。

 

「! リク! 大丈夫!?」

 

「アナスタシアさん………うん、何とか………」

 

頭を押さえながら、ギガファイナライザーを杖代わりに立ち上がるジード(ウルティメイトファイナル)。

 

「? アレ? あの朧って奴は?」

 

「それが………」

 

ダークメフィスト・ドライの姿が無くなっている事にジード(ウルティメイトファイナル)は困惑するが、アナスタシアは何と説明して良いか分からず、口籠る。

 

(さっき、ベリアル………父さんの気配がした様な気がしたけど………まさかね)

 

しかし、ジード(ウルティメイトファイナル)は、父・ベリアルの気配を何となく察知していたのだった………

 

とそこで、キラーゾーアの方から激しい爆発音が聞こえて来る。

 

「! 兎に角! 今はアッチの方に!!」

 

「! ええ、そうね!!」

 

そこでジード(ウルティメイトファイナル)とアナスタシアも、キラーゾーアとの戦いの方へ参戦するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

今回の話に裏サブタイトルを付けるとしたら………
『大変!パパが来た!!』ですかね(笑)

憐れ、朧………
よりにもよってベリアルに倒されると言う、ある意味最大な皮肉的最期を遂げました。

色々と複雑なベリアル・ジードの親子ですが………
私個人的には、こういう展開を見てみたいって思いがあるんですよね。
所謂、ベジータ的に「勘違いするなよ! 別に息子を助けに来たわけじゃない!!」ってやつです。
最初出た時は、それまでの偽者なんかと違う本物の悪のウルトラマンってのが中々受け入れられなかったんですが、活躍を見ている内に、こういう存在も在りだなって思える様になったんですよね、ベリアル。
最近だと武器になっちゃって面白いですし(笑)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター7『行け、誠十郎!』

チャプター7『行け、誠十郎!』

 

究極超邪神獣 キラーゾーア 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡………

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

『ぶるあああああああっ!! 死ねぇっ! ウルトラマン共おおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!』

 

怒り狂い、余裕と見下した様子が無くなっているアゴナが叫ぶと、身体中そこかしこから無数に生えている触手の先端から破壊光線「フィラーショック」を放つ。

 

至る所から放たれるフィラーショックが、まるで嵐の様に吹き荒れる。

 

「そんなもんでぇっ!!」

 

しかし、ゼロビヨンドはバリアを張り、荒れ狂う光線の暴風雨を防ぐ。

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!! ハアッ!!」

 

そこでメビウス(バーニングブレイブ)が、メビュームバーストを放つ。

 

触手を次々に薙ぎ払い、キラーゾーア本体に命中するが、然したるダメージは与えれれていない。

 

「『ベータスパークブラスター!』」

 

Xの字を描くように剣を振るった後、剣先から光線を発射するエックス(ベータスパークアーマー)。

 

こちらも触手を次々に薙ぎ払い、キラーゾーアへと直撃するが、やはりダメージは無い。

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

とそこで、再びキラーゾーアとアゴナが吠えたかと思うと、今度は全身の生えていた突起「キラー・ウォーヘッド」を生体ミサイルとして発射!

 

納豆の様に白煙を引く生体ミサイルが、落ち着きなく動き回りながら、ゼロビヨンド達に迫る。

 

「クワトロスラッガーッ!!」

 

ゼロビヨンドがクワトロスラッガーを繰り出し、迫るミサイルを迎撃。

 

「ハアッ! セヤッ!」

 

エックス(ベータスパークアーマー)も、ベータースパークソードを振るい、切り払う。

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

だが、キラー・ウォーヘッドは次々にキラーゾーアの身体から生えて来て、弾幕を展開する。

 

「チイッ! キリがねえっ!!」

 

「ココは僕が! ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

ゼロビヨンドがそう言うと、メビウス(バーニングブレイブ)が前に出て、メビュームダイナマイトの態勢を執る。

 

そして、新たなキラー・ウォーヘッドが生えた瞬間………

 

「ハアッ!!」

 

それ目掛けて一気に突撃!!

 

「テヤアアアアッ!!」

 

メビュームダイナマイトを炸裂させ、発射しようとしていた生体ミサイルを誘爆させた!

 

『!? ぬおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!?』

 

流石にコレは効いたのか、キラーゾーアの巨体が揺らぐ!

 

「狼虎滅却 ! 天地神明!!」

 

「破邪剣征………桜花天昇!」

 

「リディニーク!!」

 

「イリス プロディジュー・ジャンポール!」

 

「チビロボ二式!」

 

「公相君!」

 

「オーソーレミオ!」

 

「ブラウアー・フォーゲル!」

 

「エヴァンジル!」

 

「ゲール・サント!」

 

「マルシュ・シャトン!」

 

「カルド・プリジオーネ!」

 

「三の舞………雪月風花!」

 

「狼虎滅却! 雲雷疾飛!!」

 

「ターニング・スワロー!」

 

「ギルティ・ストライク!」

 

「バッファロー・ゴー!ゴー!」

 

「メジャー・オペレーション!」

 

「走馬燈!」

 

「東雲神社の! 御神楽ハンマーッ!!」

 

「望月流忍法………無双手裏剣!!」

 

「アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

「「双龍脚っ!!」」

 

「「エクスカリバー&アロンダイトッ!!」」

 

「「「シュツルム・アングリフ!!」」」

 

その隙を見逃さず、初代帝国華撃団・巴里・紐育華撃団、そして新生帝国華撃団に上海・倫敦・伯林華撃団の面々が仕掛ける。

 

相手が巨体なだけに、ちまちまとやっていては埒が明かないと、全員が必殺技での攻撃を繰り出した!

 

尚、本来アイリス・エリカ・ダイアナの必殺技は回復技であるが、強大な闇の存在であるキラーゾーアには、浄化作用の有る回復技が攻撃として作用しており、ダメージを与えている。

 

『ぬあおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!? オノレェッ! 虫けら共がぁっ!!』

 

アゴナの怒りの咆哮と共に、数10本の触手が絡み付く様に1本に纏まり、その先端から収束させたフィラーショックが華撃団メンバー目掛けて放たれる!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

しかし、その収束フィラーショックの前に「ハイパーゼットンテレポート」で現れたハイパーゼットン・イマーゴが、「ハイパーゼットンアブソーブ」を使い、それを吸収!

 

そのままキラーゾーアに向かって、増幅して撃ち返す!!

 

『!? ヌウウアアアアッ!?』

 

自らの放った攻撃で、束ねていた触手が吹き飛び、ボディにも大きな傷を受けるキラーゾーア。

 

「シュウワッ!!」

 

駄目押しとばかりに、その傷に向かってネクサスがフェニックス・シュトロームを放つ!!

 

『グアアアアアアァァァァァァァッ!!』

 

「今だっ!!」

 

とそこで、ゼロビヨンドが一気にキラーゾーアの上部………Uキラーザウルスの頭部部分へと接近。

 

「覚悟しやがれ、アゴナ! ワイドビヨンド………」

 

そして、ワイドビヨンドショットを見舞おうとしたが………

 

『!? ゼロ! 待てっ!!』

 

「!? 誠十郎!?」

 

誠十郎からの制止が入り、ワイドビヨンドショットを中断するゼロビヨンド。

 

とその時、Uキラーザウルスの頭部部分の額に有るクリスタルが不気味に光り始めたかと思うと………

 

その部分にぼんやりとだが………

 

『天宮 さくら』の姿が照らし出される。

 

「!? さくらっ!?」

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

ゼロビヨンドが動揺した瞬間、キラーゾーアの目から怪光線「キラーアイレイ」が放たれた!

 

「!? うおわあぁっ!?」

 

真面に喰らってしまったゼロビヨンドは錐揉みしながら墜落し、地面に叩き付けられた!!

 

『フハハハハハハハッ! 如何した、ウルトラマンゼロォッ!? この女を助けたいのではないのかぁっ?』

 

人質により再び優位に立ったアゴナが勝ち誇る様にそう言い、ダークリングを輝かせる。

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

すると、キラーゾーアの負っていたダメージが、まるで映像を巻き戻ししたかの様に再生して行った。

 

「! 再生したのかっ!?」

 

『コレじゃ切りが無い』

 

その様を見たエックスと大地がそう声を挙げる。

 

「あの子は、あの時の………?」

 

キラーゾーアの額のクリスタルに捕らえられている天宮 さくらの姿を見て、嘗て自分が助けた子だと思い出す真宮寺 さくら。

 

「さくらくんが助けたと言っていた子か」

 

「隊長、如何しますか?」

 

「コレじゃ攻撃出来ませんよ」

 

真宮寺 さくらに反応した大神に、マリアと新次郎が問い掛ける。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

他の華撃団メンバーも、動きを止め、様子見をしている。

 

「クソッ! 自分が不利になったら人質とは、卑怯だぞ!!」

 

『黙れいぃっ! 勝てばよかろうなのだァァァァッ!!』

 

ゼロビヨンドの罵声に、最早プライドも何もかもかなぐり捨てたアゴナが吠える。

 

「クッ………如何すりゃ良い?………」

 

『………ゼロ。もう俺の身体は治ったのか?』

 

何か手は無いかとゼロビヨンドが考えていたところで、不意に誠十郎がそう尋ねた。

 

「? 何?」

 

誠十郎の問い掛けにゼロビヨンドは困惑する。

 

ゼロが誠十郎と一体化している最大の理由………

 

降魔との戦いで瀕死の重傷を負った彼を治療する為であった。

 

『もう俺とお前は分離出来るのか?』

 

「ああ、お前の身体はもう大丈夫だが………!? まさかっ!?」

 

『俺が………俺が行かなきゃならいんだ』

 

何かを察したゼロビヨンドに、誠十郎は決意を込めた表情でそう返す。

 

「止めても無駄だろうな………分かった! 腹括れ、誠十郎っ!!」

 

するとゼロビヨンドはそう言って飛び上がり、キラーゾーアの頭部を目指した!!

 

「!? ゼロッ!!」

 

「ゼロさん!?」

 

「何をする気!?」

 

ゼロビヨンドの突然の行動に初穂・クラリス・あざみが驚く。

 

『愚かなぁ! たった1人で何が出来るぅっ!!』

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

迫り来るゼロビヨンドに対し、フィラーショックと生体ミサイルを集中砲火で浴びせるキラーゾーア。

 

「フッ! ハアッ! セエエヤアアッ!!」

 

その光線とミサイルの暴風の中を、隙間を縫う様に飛び続けるゼロビヨンド。

 

「! グアッ! おうわっ!?」

 

だが、躱し続けられる量では無く、1発喰らったのを皮切りに連続で被弾し、錐揉みしながら失速する。

 

「グウッ!………ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

しかし、何とか空中で姿勢を整えたかと思うと、再度キラーゾーアの頭部を目指して上昇する。

 

「! 皆! 彼を援護するんだっ!!」

 

「「「「「「「「「「! 了解っ!!」」」」」」」」」」

 

そこで大神が、ゼロビヨンドが何をするのかを察して声を挙げると、その場に居た全員が、キラーゾーアの触手や放たれた生体ミサイルの迎撃に回った!!

 

「行け、ゼロ! 神山! さくらを助けてくれっ!!」

 

「ゼロさん! 神山さん! お願いします!!」

 

「ゼロ、誠十郎………信じてる!」

 

初穂・クラリス・あざみが祈りながら、触手と生体ミサイルを迎撃する。

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

そんな声援を受けながら、ゼロビヨンドは遂にキラーゾーアの頭部へと迫る。

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

そのゼロビヨンドに、キラーゾーアは再び叩き落さんとキラーアイレイを放つ。

 

「ハアッ!!」

 

しかし、間に割って入ったジード(ウルティメイトファイナル)が、ギガファイナライザーで防ぐ。

 

「神山! ゼロ! 頼んだわっ!!」

 

更にアナスタシアのその台詞と共に、氷の弾丸がキラーゾーアの両目に命中し、凍り付かせる!

 

「! 今だっ!!」

 

その瞬間に、ゼロビヨンドは一気に接近し、キラーゾーアの頭に組み付く!

 

「誠十郎ぉっ!!」

 

ゼロビヨンドが叫んだかと思うと、カラータイマーが輝き………

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

中から誠十郎が飛び出し、そのまま天宮 さくらが囚われているキラーゾーアの額のクリスタルの中へと飛び込んだのだった。

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!

 

「! うおっ!?」

 

直後に、ゼロビヨンドが通常のゼロの姿に戻り、キラーゾーアが頭を振った事で引き離される。

 

「………誠十郎、頼むぜ」

 

空中で制止したゼロは、キラーゾーアを見据えながら、何処か祈る様に呟いたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

残るキラーゾーアとの激戦。
巨体に見合った超火力を見舞うキラーゾーアに、一丸となって戦うゼロ達。
しかし、追い詰められたアゴナはさくらを人質に!
彼女を救出する為、今誠十郎が単身飛び込みます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター8『光の巨人』

チャプター8『光の巨人』

 

愛憎戦士 カミーラ

 

鬼女 マザラス星人

 

究極超邪神獣 キラーゾーア 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくらの捕らわれていたキラーゾーアの額のクリスタルへと突入した誠十郎は………

 

「!? 此処は!?」

 

気が付いた誠十郎の目の前に広がっていたのは、さくらの実家の景色だった。

 

「さくらの実家?………!!」

 

一瞬呆然とした誠十郎だったが、そこで殺気を感じ慌てて飛び退くと、その場所を光の鞭が爆ぜさせた!

 

「ハアッ!!………」

 

その光の鞭・カミーラウィップを放った主………カミーラ(さくら)が、残心を執る。

 

「! さくら!」

 

『さくら、その男を殺すのよ!』

 

誠十郎が叫ぶと、カミーラ(さくら)の背後に、幻影のひなたが現れ、悍ましい表情でそう言い放つ。

 

「…………」

 

カミーラ(さくら)は無言でカミーラウィップをアイゾードへ変えると、誠十郎との距離を詰め始める。

 

「止めろさくら! 全てを仕組んだのはアゴナだったんだ! 目を覚ませ!!」

 

「ウワアアッ!!」

 

呼び掛ける誠十郎だったが、カミーラ(さくら)は無言でアイゾードを振り被る。

 

「さくらっ!!」

 

必死の表情の誠十郎に、容赦無くアイゾードが迫る………

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

誠十郎の前に光が現れたかと思うと、それがアイゾードを防ぐ!

 

「!?」

 

驚いたカミーラ(さくら)が距離を取ると、光は細長い形を取り始めて、やがて弾けたかと思うと………

 

『天宮國定』が姿を現した!!

 

「!? 帝鍵!? いや、天宮國定!?」

 

驚く誠十郎の目の前で浮遊を続けている天宮國定。

 

「………!」

 

やがて誠十郎は意を決したかの様にその天宮國定を掴み、構えた!

 

「! ウワアアッ!!」

 

途端にカミーラ(さくら)が怒っているかの様な咆哮と共にアイゾードを構えて突撃して来る。

 

「アアアアッ!!」

 

「ハアッ!!」

 

カミーラ(さくら)が振ったアイゾードと、誠十郎の振るった天宮國定がぶつかり合い、鍔競り合いとなる!

 

「さくら! 俺は………必ずお前を連れ戻す!!」

 

決意と覚悟を決めた顔で、誠十郎はカミーラ(さくら)を見据えながらそう言い放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡では………

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

アゴナの咆哮とと共に、フィラーショックと生体ミサイルを乱射するキラーゾーア。

 

「ハアッ!!」

 

「ハッ!!」

 

「イーサッ!!」

 

「ハアアッ!!」

 

ゼロ、メビウス(バーニングブレイブ)、エックス(ベータスパークアーマー)、ジード(ウルティメイトファイナル)はバリアを張り、その猛攻に只管耐えている。

 

「皆! 踏ん張るんだ!!」

 

「救出が終わるまで耐えて下さいっ!!」

 

大神機と大河機も、花組隊長の特殊能力『かばう』で、隊員達の前に立って攻撃を防いでいる。

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

しかし、防戦に入ったのを良い事に、キラーゾーアの攻撃は激しさを増して行く。

 

「まだか! まだなのか、誠十郎っ!!」

 

段々とゼロに焦りが生じ始める。

 

と、その時!!

 

1発の生体ミサイルがバリアの隙間を擦り抜け、後方に下がっていたミカサに向かう!

 

「! しまったっ!?」

 

「緊急回避!」

 

「アカン! 間に合わへん!!」

 

ゼロが叫び、カオルとこまちに悲鳴が木霊する。

 

………だが!!

 

「デュアッ!!」

 

ミカサと生体ミサイルの間に割って入ったウルトラセブンが、右手に持ったアイスラッガーを振り下ろし、生体ミサイルを真っ二つにした!

 

2つに分かれた生体ミサイルは、ミカサを避ける様に飛んで行き、空中で爆発する。

 

「親父!」

 

「ゼロ! 焦るなっ!!」

 

アイスラッガーを頭部に戻しながら、ゼロにそう言い放つウルトラセブン。

 

「彼は必ず戻って来る」

 

「君が信じないで如何する」

 

ゾフィーとジョーニアスが、M87光線(Bタイプ)とプラニウム光線(Bタイプ)を放ち、生体ミサイルを薙ぎ払う。

 

「人間が我々が思っているよりもずっと強い!」

 

「俺達兄弟は、それを良く知っている!」

 

八つ裂き光輪を次々に投げ付け、触手を切断している初代ウルトラマンとジャック。

 

「だから我々は地球に守る価値が有ると信じ、戦い続けて来た!」

 

「彼等が我々を信じている様に、君も彼を信じるんだ!」

 

キラーゾーアの脚部にストップリングとウルトラフリーザーを放ち動きを止めようとしているAとタロウもそう言う。

 

嘗て地球人と共に地球を守り抜いたウルトラマン達の言葉である………

 

「………そうだな。誠十郎! 信じてるぜ!! 必ずさくらを連れ戻して来い!!」

 

そんな言葉を受け、ゼロは改めて誠十郎を信じ、キラーゾーアの猛攻に耐えるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キラーゾーアの体内に広がる幻影空間………

 

「フウッ! フアアッ!!」

 

「せいっ! でやああっ!!」

 

アイゾードを構えるカミーラ(さくら)と、天宮國定を握った誠十郎が激しく斬り合う。

 

得物がぶつかり合い度に火花が飛び散っている。

 

『さくら! 何をやっているの!! 早く! 早くその男を殺すのよ!!』

 

しぶとく粘る誠十郎の姿を見て、徐々に幻影のひなたが焦り出す。

 

「ハアアッ!」

 

「むんっ!!」

 

何度目とも知れぬ鍔迫り合いとなるカミーラ(さくら)と誠十郎。

 

「さくら、聞け! 二都作戦はアゴナによって仕組まれていたんだ!!」

 

「!?」

 

と、誠十郎のその言葉に、カミーラ(さくら)がビクンと反応する。

 

「帝鍵も元はアゴナが創り方を考えたんだ! その事に気付いた初代帝国華撃団の隊長は作戦を中止しようとした! だが、アゴナが介入して、強制的に発動させたんだ!!」

 

「………何ですか、ソレ」

 

カミーラ(さくら)が低い声でそう呟くと、誠十郎を弾き飛ばす。

 

「うおっ!?」

 

「それじゃお母さんが死んだのには何の意味も無かったって言うんですか!? 何で!? 如何して!?」

 

不安定な感情が更に揺さぶられ、カミーラ(さくら)は両手で頭を押さえて暴れる。

 

「さくら! ひなたさんが犠牲になったのは間違いだったかも知れない! だが! そうなる様に仕向けた奴が居る! それがアゴナだ!!」

 

『さくら! 殺すのよ!! その男を殺しなさい!!』

 

誠十郎が言葉を続けると、幻影のひなたの焦りが増す。

 

「う、ウワアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

絶叫に近い声を挙げながら、アイゾードで誠十郎に斬り掛かるカミーラ(さくら)。

 

「…………」

 

するとそこで………

 

何を思ったのか脱力し、無防備な姿勢となる誠十郎。

 

「! アアアアアアァァァァァァァァッ!!」

 

カミーラ(さくら)は一瞬驚きながらも、構わずにアイゾードを誠十郎の脳天目掛けて振り下ろす。

 

 

 

 

 

………その瞬間!!

 

 

 

 

 

「! ハアッ!!」

 

一瞬にして身体に力を入れ直した誠十郎が、強烈な斬り上げを繰り出した!

 

アイゾードが弾かれ、宙に舞う。

 

「!?」

 

「セヤアアアアアッ!!」

 

そして意表を突かれたカミーラ(さくら)の喉目掛けて、渾身の突きを繰り出す誠十郎。

 

「!!」

 

その瞬間カミーラ(さくら)は、自分の死ぬ様を未来視した。

 

しかし………

 

「…………」

 

誠十郎が放った突きは、カミーラ(さくら)の喉に命中する直前、絶妙なタイミングで寸止めされた。

 

「………如何して?」

 

「………約束したからだ」

 

戸惑うカミーラ(さくら)に、誠十郎はそう言う。

 

「えっ?………」

 

「俺がさくらを守る………そう約束しただろう」

 

「!!」

 

「すまない………今の今までずっと忘れていたよ」

 

誠十郎の脳裏に、幼き日のさくらとの約束が甦る………

 

 

 

 

 

『わたし、絶対になる! 真宮寺 さくらさんみたいになる!!』

 

『じゃあ、俺は花組の隊長になって………必ず、さくらちゃんを守るよ!』

 

『約束だよ』

 

『うん、約束する!』

 

 

 

 

 

「あ、ああ………」

 

「この約束だけは、絶対に守る………さくら、君を守り抜いてみせる」

 

「誠、兄、さん………あああっ!?」

 

カミーラ(さくら)は、再び両手で頭を押さえ、苦しそうにしながら後退る。

 

『殺せぇっ! その男を殺せぇっ!!』

 

その様子を見た幻影のひなたが、最早形振り構わずに叫ぶ。

 

「これからも、隊長として! 神山 誠十郎として! そして1人の男として! 君を守る!!」

 

「誠……十………郎………さ………ん………」

 

「さくらぁっ!!」

 

とそこで、誠十郎は天宮國定を捨てると、カミーラ(さくら)を力強く抱き締めた!!

 

「好きだ! さくら!! 子供の頃からずっと………君の事が好きだ!!」

 

「!?!?」

 

今まで秘めていた己の正直な気持ちをぶちまける誠十郎。

 

「アアアアアアァァァァァァァァッ!!」

 

それを聞いたカミーラ(さくら)の身体から、闇の力が抜けて行く。

 

そして変身が解かれ、さくらの姿に戻ったかと思うと、右手に握っていたスパークレンスが砂の様に崩れ落ちる。

 

「! さくら!!」

 

誠十郎は一旦身体を放すと、両肩を掴んで正面からさくらの事を見据える。

 

「………誠兄さん、わたし………!? キャッ!?」

 

正気を取り戻したさくらが、罪悪感を露わに思想になった瞬間、誠十郎は再度彼女を抱き締める。

 

「………おかえり、さくら」

 

「! 誠十郎さん!!」

 

そう耳元で呟かれたさくらは、涙を流しながら誠十郎を抱き締め返したのだった………

 

『アアアアアアァァァァァァァァッ!!』

 

と、その時!!

 

幻影のひなたが絶叫を挙げたかと思うと、その身体が怪しい光に包まれる!!

 

「「!?」」

 

誠十郎とさくらが身構えた瞬間………

 

幻影のひなたは、和服姿の夜叉、般若の様な鬼面の顔を持ち、異次元金属製の薙刀を持つ星人………『マザラス星人』へと姿を変えた!

 

『死ねえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!』

 

手にしていた薙刀で、さくら諸共に誠十郎を斬り捨てようとするマザラス星人。

 

「! 誠十郎さんっ!!」

 

「! さくら、駄目だ!!」

 

咄嗟にさくらが誠十郎を庇おうとし、誠十郎が慌て引き戻そうとする。

 

 

 

 

 

………その瞬間!!

 

 

 

 

 

地面に落ちていた天宮國定が、眩い光を放った!!

 

「!?」

 

「何だっ!?」

 

『ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?』

 

さくらと誠十郎が驚いていると、その光を浴びたマザラス星人が煙の様に雲散してしまう。

 

光は更に激しさを増して行き、遂には辺り一面が真っ白になったかと思うと………

 

光り輝く巨大な手が、誠十郎とさくらに向かって伸びて来た!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡………

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!?

 

キラーゾーアが突然悲鳴の様な咆哮を挙げ、悶え始める。

 

「!? 何だっ!?」

 

「怪獣の頭部に高エネルギー反応っ!!」

 

ゼロが声を挙げると、カオルの報告が響く。

 

その次の瞬間には、キラーゾーアの頭部を、内側から突き破る様にして、光が溢れ始める!

 

キュアゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!?

 

そして、キラーゾーアが再び悲鳴の様な咆哮を挙げたかと思うと………

 

その頭部が爆発四散!!

 

そこから光の塊が飛び出したかと思うと、ミカサの方へと向かった!!

 

「!? 何やっ!?」

 

こまちが驚きの声を挙げた瞬間、光はミカサの甲板上に降り立つ。

 

光はやがて、人の形を取り始める………

 

「!? 此処はっ!?」

 

「一体何が?………」

 

誠十郎とさくらが我に返ると、光に包まれている事に気付く。

 

やがてその光が動いたかと思うと、ミカサの甲板上に居る事が露わになる。

 

「! ミカサッ!!」

 

「この光って………」

 

驚く誠十郎と、光が人の形をしている事に気付き、上を見上げるさくら。

 

そして、その瞬間に光が完全に治まり………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤と青紫、銀色の身体にプロテクター付きのカラータイマーと、額にクリスタルを持つウルトラマン………

 

超古代の光の巨人『ウルトラマンティガ』が姿を現したのだった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

幻影の空間内で、カミーラ(さくら)を必死に説得する誠十郎。
ゼロ達はその間、キラーゾーアの猛攻に必死に耐える。
そして遂に………
誠十郎の愛が、さくらの目を覚まさせます。
だが、幻影のひなたがマザラス星人へ姿を変え、襲い掛かる!
そこで、天宮國定から光が溢れ………
『ウルトラマンティガ』が現れた!!

お待たせしました!
ウルトラマンティガ、登場です!
何故天宮國定の中から現れたのか?
一体誰が変身しているのか?
その謎は戦いの後に明かされます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター9『今、光を1つに!』

チャプター9『今、光を1つに!』

 

究極超邪神獣 キラーゾーア

 

キリエロイド・アゴナ(融合体)登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡では………

 

「アレは!?」

 

『ウルトラマン………ティガ!』

 

ミカサの甲板上に現れたティガの姿に、エックス(ベータスパークアーマー)と大地が驚きの声を挙げる。

 

「…………」

 

ティガは掌の上に居た誠十郎とさくらを甲板上に降ろす。

 

「「…………」」

 

突如現れ、自分達を救ったティガを唖然としながら見上げる誠十郎とさくら。

 

「…………」

 

ティガはそんな2人向かって無言で頷いてみせる。

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

とそこで、頭が爆発して無くなっていたキラーゾーアから、アゴナの咆哮が響き渡る!

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

一同が注目すると………

 

キラーゾーアの無くなっていた頭の部分がグニャグニャと粘土の様に変形し始め………

 

キリエロイド・アゴナの顔が現れた!!

 

「! アゴナッ!!」

 

「直接融合しやがったのか!?」

 

誠十郎とゼロが叫んだ瞬間に、キラーゾーアの身体から闇のオーラが立ち上り………

 

それが塊となって辺りに飛び散り………

 

またもや超古代怪獣と超獣軍団が現れる!

 

そして何と!

 

帝都に向かって進撃し始めたではないか!!

 

「!? 奴等、帝都に!?」

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

誠十郎が声を挙げた瞬間に、再度アゴナの咆哮が響き、キラーゾーアの背に巨大化したキリエロイド・アゴナの翼が出現。

 

その巨体が宙に浮かび上がり、上昇し始めた!!

 

「! 逃げる気か! そうはさせねえぞっ!!」

 

闇のエネルギーの源で在ったさくらを失った為、遂に逃げの一手になったキラーゾーア。

 

先程出現させた超古代怪獣と超獣軍団も、時間稼ぎのものらしい。

 

それを察したゼロは、キラーゾーアを追った!!

 

「! ゼロさん!!」

 

と、さくらがゼロに向かって叫んだ瞬間、ミカサの甲板上に、誠十郎の無限と試製桜武がエレベーターで上げられて出現した。

 

「! 桜武!!」

 

「さくら、行くぞっ! ゼロの方は任せるんだ!!」

 

誠十郎が自機に乗り込みながら、さくらにそう言う。

 

「! ハイッ!!」

 

さくらはすぐに試製桜武に乗り込むと、誠十郎機と共にカタパルトを使い、帝都へ向かっている超古代怪獣と超獣軍団に向かった。

 

キラーゾーアが死に体な事には、この場に居る全員が気付いており、ゼロに任せておけば問題は無い。

 

ならば、今自分達がする事は、帝都へ向かっている超古代怪獣と超獣軍団の相手であると判断したのだ。

 

「チャッ!!」

 

ティガもミカサの甲板上から飛翔。

 

他のウルトラマン達や華撃団メンバーと合流し、超古代怪獣と超獣軍団へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上昇するキラーゾーアを追うゼロ………

 

「待ちやがれっ!!」

 

『ええい! しつこい奴めえっ!!』

 

追い縋って来たゼロに向かって、キラーゾーアは多数の生体ミサイルを放つ!

 

「よっ! ハッ! エメリウムスラッシュッ!!」

 

しかしゼロは難なく躱し、或いはエメリウムスラッシュで迎撃する。

 

「セリャッ!!」

 

『ぶるあああああああっ!!』

 

ゼロは続けてゼロスラッガーを念力で投擲するが、キラーゾーアは触手を振って弾き返す。

 

「セイリャアッ!!」

 

するとゼロは、その跳ね返されて戻って来たゼロスラッガーを、スピンキックで蹴り飛ばし、再度キラーゾーアへ放つ。

 

『ウルトラキック戦法』だ!!

 

勢いが付いたゼロスラッガーが、キラーゾーアの触手を次々に切断!

 

その隙を衝き、ゼロは一気にキラーゾーアの上半身部分を肉薄したかと思うと、ゼロスラッガーがカラータイマーの左右に装着される!

 

「ゼロツインシュートッ!!」

 

『ぶるあああああああっ!?』

 

至近距離からゼロツインシュートを浴び、キラーゾーアの巨体が後ろに下がって行く。

 

『ぬあああああああああっ!!』

 

しかし、アゴナの気合の咆哮と共に、キラーゾーアが左腕を振るうと、その腕が爆ぜながらも、ゼロツインシュートを掻き消す。

 

「諦めろ、インチキ魔人! お前の負けだっ!!」

 

『ほざけ、小僧がぁっ! こうなれば………ぶるあああああああっ!!』

 

ゼロがそう言うと、アゴナは何度目とも知れぬ咆哮を挙げる。

 

すると、キラーゾーアの姿が怪しげな光に包まれ、小さくなり始めた!!

 

「!? 何っ!?」

 

驚きの声を挙げるゼロ。

 

シルエットが人型となって行き、そして怪しげな光が弾けたかと思うと………

 

「ぶるあああああああ………」

 

そこには、背中にUキラーザウルスの触手を6本生やし、両腕がガタノゾーアの鋏の腕となり、更に両肩にはガタノゾーアの甲羅からUキラーザウルスのキラー・ウォーヘッドが生えているパーツを持った、翼を広げているキリエロイド・アゴナ………

 

『キリエロイド・アゴナ(融合体)』のが姿を現した。

 

と、そこで………

 

キリエロイド・アゴナ(融合体)は、6本の触手と両腕を掲げる様に構えたかと思うと、そこに巨大な火球が形成され始める。

 

「ぶるあああああああっ!!」

 

その巨大火球をゼロ………

 

ではなく、帝都に向かって投げ落とすキリエロイド・アゴナ(融合体)!

 

「!? なっ!?」

 

「早く止めんと、帝都が消し飛ぶぞぉ? フハハハハハハハッ!!」

 

「アゴナッ! テメェッ!!」

 

怒りの声を挙げながらも、ゼロはすぐさま巨大火球を追って降下する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルルイエ………

 

「!? アレはッ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

降って来た巨大火球に、天宮 さくらが最初に気付き、他の一同も空を見上げる。

 

「あの火球は帝都に向かって落ちています!」

 

「物凄いエネルギー反応や! あんなのが落ちたら、帝都が跡形も無くフッ飛んでまう!!」

 

ミカサで瞬時にその巨大火球を分析したカオルとこまちからそう声が挙がる。

 

しかし、華撃団メンバーもウルトラマン達も、帝都へ向かっている超古代怪獣と超獣軍団の進行を食い止めるので手一杯である。

 

巨大火球の方へ向かえば超古代怪獣と超獣軍団の突破を許してしまい、逆に超古代怪獣と超獣軍団を食い止めていれば当然巨大火球は止められない。

 

つまり、どっちみち帝都は破壊されてしまうのだ。

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

とそこで!

 

上空から急降下してきたゼロが、巨大火球を追い越したかと思うと、バリアを張って待ち構えた!!

 

「! ゼロッ!!」

 

誠十郎が声を挙げた瞬間に、巨大火球はゼロが張ったバリアに接触。

 

「ぐうっ! ぬあああああああああっ!!」

 

落ちようと巨大火球を懸命に食い止めようとするゼロ。

 

しかし、巨大火球の速度は緩やかにはなったものの、まだ帝都に向けて落下し続けている。

 

更に、その巨大火球の熱はバリアを貫通し、受け止めているゼロの身体をジリジリと焼き焦がして行っている。

 

「ゼロさん!」

 

「ゼロッ!」

 

思わず動きを止め、上空のゼロを見上げてしまう天宮 さくらと誠十郎。

 

グルオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!

 

そんな2人に向かって、ゴルザが襲い掛かろうとする。

 

「「!?」」

 

ハッとした様に慌てて振り返ろうとした誠十郎と天宮 さくらだったが………

 

「セッ! ハアアアアアアァァァァァァァ………セヤッ!!」

 

そのゴルザに向かって、ティガが必殺の『ゼペリオン光線』を放ち、爆砕した!

 

「!!」

 

「さっきのウルトラマン………」

 

視線をティガへと向ける誠十郎と天宮 さくら。

 

すると………

 

ティガは誠十郎と天宮 さくらを機体ごと抱え込んだ。

 

「! うわっ!?」

 

「何を!?………」

 

「チャッ!!」

 

誠十郎と天宮 さくらの驚きを余所に、ティガは飛翔。

 

巨大火球を支えているゼロの元へと向かった。

 

「「!!」」

 

自分達がしたい事が分かったティガの事を見やる誠十郎と天宮 さくら。

 

「…………」

 

そんな2人向かって、ティガは頷いて見せるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う! ぐおおおおおおっ!!」

 

必死にバリアを展開し、巨大火球を支えるゼロ。

 

だが、巨大火球は止まらない。

 

「クッソォッ!!」

 

悪態を吐きながらも、ゼロは決して逃げようとしない。

 

だが、無情にもその身体は巨大火球から高熱でドンドン焼き焦げて行く。

 

と、そこで………

 

「テエヤッ!!」

 

ティガがゼロの隣へ並び、共にバリアを支え始めた!

 

「! ティガッ!?」

 

「「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」」

 

更に、その両肩には誠十郎機と試製桜武の姿も在り、バリアに向かって霊力を注ぎ始める。

 

「誠十郎! さくら! 馬鹿野郎、逃げろっ! お前等じゃ無理だっ!!」

 

「馬鹿にしないで下さいっ!!」

 

「!?」

 

逃げろと言ったゼロに怒鳴り返す天宮 さくら。

 

「ゼロ! お前には散々世話になった! だからこそ、今! 帝都は俺達の手で守らなければならないんだ! 何故なら俺達は!」

 

「帝国華撃団だからです!!」

 

機体が融解を始めているのも構わず、霊力をバリアに注ぎながらそう返す天宮 さくらと誠十郎。

 

「誠十郎………さくら………」

 

「テヤァッ!!」

 

そんな2人に呼応するかの様に、ティガも必死に巨大火球を支える。

 

「へっ! お前等、ホントによぉ………良おし! 気合入れろよ!!」

 

「おうっ!」

 

「ハイッ!!」

 

2人の覚悟を感じ取ったゼロはそれ以上何も言わず、ティガと共に巨大火球を押し返そうとする。

 

「ぶるあああああああっ!! オノレェッ! まだくたばっていなかったのかぁ!!」

 

とそこで、上空に居たキリエロイド・アゴナ(融合体)が降下して来て、巨大火球を受け止めているゼロ達を見て、苦々しげにそう言い放つ。

 

「ならばぁっ!!」

 

するとそこで、何と!!

 

キリエロイド・アゴナ(融合体)は新たな巨大火球を形成した!

 

「!? あの野郎!」

 

「駄目です! あんなのをもう1発受けたら、幾らゼロさん達だって!!」

 

「ゼロ!!」

 

「神山! さくら!」

 

その様子を目撃した初穂・クラリス・あざみ・アナスタシアが悲鳴の様な叫びを挙げる。

 

「大丈夫だ」

 

「「「「!?」」」」

 

しかしそこで、メルバの首を脇へ抱え込む様にして押さえ付けていたウルトラセブンがそう言って来た。

 

「ゼロを………俺の息子を舐めるなよ」

 

「死ねええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

ウルトラセブンが確信に満ちた声でそう言った瞬間、キリエロイド・アゴナ(融合体)は新たな巨大火球を、ゼロ達目掛けて投げつけた!!

 

「「「負けて堪るかあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」」

 

迫り来る新たな巨大火球を前に、ゼロ、誠十郎、天宮 さくらの気持ちが1つになる!

 

すると、その瞬間!!

 

ゼロの左腕のウルティメイトブレスレットが光を放った!!

 

「テヤッ!!」

 

更に、ティガのカラータイマーからも光が放たれる!!

 

ウルティメイトブレスレットとティガの光は広がり、やがてゼロ達は包まれ、1つの巨大な光の塊となり、巨大火球を2つとも打ち消した!!

 

「!? 何いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!?」

 

驚愕の声を挙げるキリエロイド・アゴナ(融合体)の前で、光は更に広がり………

 

遂には世界中を闇に覆っていた暗雲を全て消し飛ばし、世界中に光が溢れた!!

 

「! 空がっ!!」

 

「晴れたっ!!」

 

シャオロンとエリスがそう言った瞬間、太陽の光を浴びた超古代怪獣と超獣軍団が、溶ける様に消滅して行く。

 

「! 怪獣達まで!?」

 

と、アーサーがそう言った瞬間に………

 

光が収束を始め、その中から………

 

『鎧を纏ったゼロらしきウルトラマン』が姿を現した!!

 

「な、何だ貴様はぁっ!?」

 

動揺を露わに問い質すキリエロイド・アゴナ(融合体)。

 

そこで、上半身に誠十郎の無限を模したアーマーを纏い、背に試製桜武のウイングが装着されていたゼロの右手に………

 

『ティガの意匠が組み込まれた天宮國定』が現れる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はゼロ! 『スピリットウルトラマンゼロ』だっ!!」

 

天宮國定を構えながら、新たなる形態のゼロ………

 

『スピリットウルトラマンゼロ』は、高らかに名乗りを挙げたのだった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

遂に逃げの一手となったアゴナ。
それを追い詰めるゼロ。
するとアゴナはまたも卑怯に、帝都を狙った攻撃を放つ。

必死に食い止めようとするゼロ、誠十郎、さくら、そしてティガの光が1つに合わさり………
今、『スピリットウルトラマンゼロ』が誕生です!!

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター10『スピリットウルトラマンゼロ』

チャプター10『スピリットウルトラマンゼロ』

 

キリエロイド・アゴナ(融合体)登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾に出現したルルイエ遺跡の上空………

 

「スピリットウルトラマンゼロだとぉっ!?」

 

新形態………スピリットウルトラマンゼロとなったゼロに、キリエロイド・アゴナ(融合体)はやや狼狽する。

 

「ええいっ! その様な虚仮脅しでぇっ!!」

 

虚仮脅しと断じると、三度巨大火球を形成するキリエロイド・アゴナ(融合体)。

 

「ハアッ!」

 

しかし、スピリットゼロは、天宮國定を一閃すると、巨大火球を難なく斬り裂いた!

 

「ぬうっ!? ぶるあああああああっ!!」

 

キリエロイド・アゴナ(融合体)は驚きながらも、今度は背の6本の触手を伸ばし、スピリットゼロへと向かわせる。

 

だが、触手がスピリットゼロに当たると思われた瞬間………

 

まるで一瞬にして腐り果てたかの様にボロボロになり、崩れ落ちた!!

 

「何ぃっ!?」

 

「物凄い霊力やっ! メーターが全部振り切っとるっ!!」

 

「並みの降魔なら近づいただけで消滅してしまうレベルです!!」

 

またもキリエロイド・アゴナ(融合体)が驚愕している中、ミカサのこまちとカオルがそう声を挙げる。

 

「エメリウムスラッシュッ!!」

 

とそこで、スピリットゼロはエメリウムスラッシュの構え取った!

 

額のビームランプから、シャイニングエメリウムスラッシュ並みの光線が放たれ、キリエロイド・アゴナ(融合体)に直撃!!

 

「!? ぶるあああああああっ!?」

 

そのままエメリウムスラッシュに押されて、キリエロイド・アゴナ(融合体)は空高くへ舞い上げられて行く。

 

「ハアッ!!」

 

するとスピリットゼロは、ウルティメイトゼロの様に、天宮國定で空間を切り裂いてワープする。

 

「アゴナ、大気圏を突破!」

 

「何処まで行くんや!?………!? 月やて!?」

 

観測していたカオルとこまちは、エメリウムスラッシュで押されているキリエロイド・アゴナ(融合体)が、そのまま月へと到達したの確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月面上………

 

「ぶるあああああああっ!?」

 

月面へと叩き付けられるキリエロイド・アゴナ(融合体)。

 

「セエヤッ!!」

 

直後に、スピリットゼロもワープアウトして来る。

 

「オノレェッ!」

 

「決着を着けてやるぜ! 粘着ボイス野郎っ!!」

 

『全ての元凶、アゴナ!』

 

『覚悟して下さいっ!!』

 

ゼロ、誠十郎、さくらの声が響く。

 

「ほざけええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

激昂の声と共に、両肩のキラー・ウォーヘッドを生体ミサイルとして次々発射する!

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

スピリットゼロは、天宮國定を脇構えで突撃。

 

周囲に次々と生体ミサイルが着弾している月面を、背中の試製桜武のバーニアの加速も乗せて走り抜ける。

 

「セエリャアッ!!」

 

「そんなものでぇっ!!」

 

そのままキリエロイド・アゴナ(融合体)を肉薄すると横薙ぎの1撃を繰り出したが、キリエロイド・アゴナ(融合体)は巨大な鋏となっている右手で受け止めようとする。

 

が、天宮國定の刃が当たった瞬間………

 

頑強な筈のガタノゾーアの鋏が、まるでバターの様にスパッと斬れた!!

 

「!? ぬうおぉっ!?」

 

「ハアッ!!」

 

驚くキリエロイド・アゴナ(融合体)に向かって、一旦天宮國定を引くと突きを繰り出すスピリットゼロ。

 

「! チイイィッ!!」

 

それを飛翔して素早く後退して躱すキリエロイド・アゴナ(融合体)。

 

「小癪小癪小癪ううううううぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーっ!!」

 

怒りの咆哮を挙げながら、右手の鋏と背の触手を再生させる。

 

「ぶるあああああああっ!!」

 

そして、6本の触手の先端を全てスピリットゼロに向けたかと思うと、そこから火炎弾を乱射する。

 

「セヤッ!!」

 

それに対し、スピリットゼロはゼロスラッガーをウルトラ念力で投擲。

 

自在に飛び回るゼロスラッガーが、火炎弾を次々に切り払う。

 

「ハッ!」

 

やがて全ての火炎弾を切り払ったゼロスラッガーがスピリットゼロの元へと戻ったかと思うと、そのまま合体してゼロツインソードとなり、左手に納まる。

 

するとその姿が一瞬ブレたかと思うと、消えてしまう。

 

「!? 何処へ………」

 

行った、と言おうとしたキリエロイド・アゴナ(融合体)の背後にスピリットゼロが音も無く出現。

 

「セリャアッ!!」

 

そのまま天宮國定とゼロツインソードを振るい、触手と翼を斬り裂いた!!

 

「!? ぶるあああああああっ!? オノレェッ!!」

 

汚い悲鳴を挙げながら、振り返りながら鋏の腕で裏拳を繰り出すキリエロイド・アゴナ(融合体)。

 

「フッ! セリャアッ!!」

 

「!? ぶるあぁっ!?」

 

スピリットゼロはそれを跳躍して躱すと、顔面にウルトラゼロキックを見舞う。

 

「オノレオノレオノレエエエエエエェェェェェェェーーーーーーーーッ!!」

 

よろけて後退ったキリエロイド・アゴナ(融合体)が怒りを振り撒くと、再び背の翼と触手が再生させる。

 

「チイッ! キリがねえっ!!」

 

「我は死なぬ! 闇の力が有る限りなぁっ!!」

 

強力な再生能力に辟易するスピリットゼロに、キリエロイド・アゴナ(融合体)は勝ち誇るかの様にそう言い放つ。

 

「だったら一気に決めてやるぜ!!」

 

そこで、スピリットゼロは天宮國定とゼロツインソードを交差させる様に構える。

 

 

 

 

 

するとそこで………

 

 

 

 

 

地球からスピリットゼロに向かって、光のエネルギーが伸びて来た!

 

「!? 何ぃっ!?」

 

キリエロイド・アゴナ(融合体)が仰天する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その地球では………

 

「ゼアッ!」

 

「シュアッ!」

 

「デヤアァッ!」

 

「セアッ!」

 

「テェーンッ!」

 

「トアァーッ!」

 

「シュワッ!」

 

「セエアッ!!」

 

「ハアッ!」

 

「イーサァッ!!」

 

「タアッ!!」

 

ゾフィー、初代ウルトラマン、ウルトラセブン、ジャック、A、タロウ、ジョーニアス、ネクサス、メビウス、エックス、ジードが右手を掲げて、エネルギーを月面のゼロへと送っている。

 

「アタイ達の力を!」

 

「光を!」

 

「そして想いを!」

 

「ゼロ達に!!」

 

初穂・あざみ・クラリス・アナスタシアも機体の右手を上げて霊力を送っている。

 

「「「「「「「!!」」」」」」」

 

上海・倫敦・伯林華撃団の面々も同じ様に機体の右手を掲げて霊力を送る。

 

「今こそ正義を示す時!!」

 

「世界の全ての光、使って下さい!!」

 

勿論、初代帝国華撃団、巴里華撃団、紐育華撃団の面々もだ。

 

そして、世界中で戦っていたウルトラマン達と華撃団隊員達の力も送られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び月面上では………

 

『コレは………ウルトラマンさん達と、初穂達………皆の想い!』

 

『そうだ………この想いが………悪を滅ぼし、正義を示す!!』

 

スピリットゼロに集まって来る途轍もないエネルギーをそう感じ取るさくらと誠十郎。

 

「アゴナ! お前に見せてやるぜ! 俺達の正義の光をなぁっ!!」

 

そしてスピリットゼロがそう言った瞬間………

 

その身体が光を放ち、グリッター状態となる!

 

「ぬあああああああああっ! 我は負けぬ! 絶対に負けぬううううううぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーっ!!」

 

キリエロイド・アゴナ(融合体)がそう吠え、巨大火球………いや、超巨大火球を形成する!

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

そのキリエロイド・アゴナ(融合体)に向かって突撃するスピリットゼロ。

 

「死ねええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!」

 

突撃して来るスピリットゼロに向かって、超巨大火球を放つキリエロイド・アゴナ(融合体)。

 

超巨大火球はスピリットゼロへと直撃。

 

月面を明るく染める程の大爆発が巻き起こる!!

 

「フアハハハハハハッ!!」

 

勝利を確信し、キリエロイド・アゴナ(融合体)は高笑いを挙げる。

 

その次の瞬間!!

 

「デリャアアアアアアッ!!」

 

その大爆発の爆炎の中を、無傷のスピリットゼロが突破して来た!!

 

「!? ぬうあぁっ!?」

 

「天剣無刃! ゼペリオンスパークスラッシュッ!!」

 

驚愕するキリエロイド・アゴナ(融合体)の懐へと飛び込み、天宮國定とゼロツインソードで連続斬りを繰り出す!

 

「ぬあああああああああっ! さ、再生が間に合わぬううううううぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーっ!?」

 

目にも止まらぬ連続攻撃の前に、キリエロイド・アゴナ(融合体)は再生が追い付かなくなる。

 

「終わりだぁっ! アゴナァッ!!」

 

スピリットゼロがそう言った瞬間、天宮國定の刀身とゼロツインソードの刃の部分が光を帯びて巨大化する!

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

そしてトドメとなる、天宮國定とゼロツインソードでの×の字斬りが炸裂!!

 

「ぶるあああああああああああああっ!?」

 

途端に斬り口から一気に光が溢れ、キリエロイド・アゴナ(融合体)の身体が消滅して行く。

 

「ば、馬鹿なぁっ!? 全ての宇宙に神として君臨する筈の我が!? この我があああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」

 

それが断末魔となり、キリエロイド・アゴナ(融合体)は完全に消滅………

 

すると、直接融合していたダークリングが放り出され、突如開いた異空間への穴の中へと吸い込まれて消え去った。

 

ダークリングは『宇宙で最も邪悪な心を持つ者の元を巡る』とされている………

 

また何処かの邪悪な者の元へと向かったのだろうか………

 

それは分からない………

 

しかし………

 

『………終わったな』

 

『ハイ………』

 

「コレでこの地球も平和になるだろう………」

 

誠十郎、さくら、ゼロが、地球の方を振り返りながらそう言い合う。

 

今ココでアゴナは倒された………

 

それは、太正世界の地球に、漸くの平和が訪れたという事だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルルイエ………

 

「やったか………」

 

地球上からも観測出来ていた光を見たウルトラセブンがそう呟く。

 

「やった! アイツ等、やりやがった!!」

 

「勝った! ゼロ達が勝った!!」

 

「帝都は! 地球は救われたんです!!」

 

「漸く全てが終わったのね………」

 

初穂・あざみ・クラリス・アナスタシアも、そう歓声を挙げる。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

上海・倫敦・伯林華撃団、そして初代帝国華撃団・巴里・紐育華撃団の面々も笑みを浮かべていた。

 

とそこで、ルルイエに地震の様な激しい振動が走り始める!

 

「!? うおっ!?」

 

初穂が驚きの声を挙げていると、ルルイエが徐々に沈没を始める。

 

「いけません! ルルイエが沈み始めています!!」

 

「皆! すぐに艦へ戻るんやぁっ!!」

 

カオルとこまちが慌てて通信を送り、華撃団メンバーは次々にミカサや空中戦艦等へ帰還し、ウルトラマン達も飛び上がる。

 

ルルイエはドンドン沈んで行き、そしてとうとう現れた時と同じ様に、海中へと姿を消したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

いよいよ長きに渡る戦いも終わりです。
スピリットウルトラマンゼロとなったゼロ達は月面に戦場を移してアゴナと激突。
再生能力を有するアゴナに手を焼くも、最後はウルトラマン達と華撃団メンバーの光と霊力を受け取り、グリッター状態となり、強力な1撃で撃破!

さて、次回からエピローグ的な話になります。
最後の謎、帝鍵から現れたティガの謎と正体が明らかになります。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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チャプター11『勝利のポーズ、決め!』

チャプター11『勝利のポーズ、決め!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミカサ記念公園………

 

「あ! ゼロさんです!!」

 

ミカサや華撃団艦隊を着水させ、ミカサ記念公園に集まっていた華撃団メンバーの中で、月面から帰って来たスピリットゼロの姿を認めたクラリスが声を挙げる。

 

「ゼロ!」

 

「流石だね、ゼロ」

 

『また助けられたな』

 

変身を解除したリク、ミライ、エクスデバイザーのエックスもそう声を挙げる。

 

「フッ!」

 

ミカサ記念公園の上空に来ると、その場に浮かぶスピリットゼロ。

 

「ゼロ!」

 

「おう、初穂。片付いたぜ」

 

「お疲れ様………」

 

「漸く終わったのね………」

 

初穂が声を掛け、スピリットゼロがそう返すと、あざみとアナスタシアも感慨深そうに呟く。

 

「親父達は?」

 

「他のウルトラマンさん達と一緒にもう帰られました。光の国をそう長くは留守に出来ないって」

 

ウルトラセブン達の姿が見えなかったのでスピリットゼロが尋ねると、クラリスが答える。

 

「何だよ、折角来たってに………」

 

『ゼロさん、お父さんとゆっくり出来なくて寂しいんですか?』

 

「! バッ! 違うっての!!」

 

『ハハハ、何だかんだ言ってたが、やっぱり親父さんの事、尊敬してるんだな』

 

「誠十郎! お前まで!!」

 

「「「「「「「「「「ハハハハハハッ!!」」」」」」」」」」

 

天宮 さくらと誠十郎にからかわれるゼロを見て、華撃団メンバーは笑い声を挙げる。

 

と、そこで………

 

スピリットゼロの身体が光を放ち始める。

 

「!? うおっ!?」

 

『『!?』』

 

ゼロに誠十郎と天宮 さくらが驚いていると、その姿が通常のゼロの状態に戻り、無限と試製桜武に乗った誠十郎と天宮 さくらが地面に着地し、ティガがゼロの隣に浮遊した状態となった。

 

「戻ったのか?」

 

「そうみたいです………」

 

無限と試製桜武から降りた誠十郎と天宮 さくらが、浮かんでいるゼロとティガを見上げながらそう言い合う。

 

「………お前は一体?」

 

ゼロが未だ正体が不明のティガに問い掛けた瞬間、今度はティガの身体が光を放ち始め、小さくなり、誠十郎達が居る地上へと降りて行く。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

華撃団メンバーが驚いている中、光の中から現れたのは………

 

「さくら………大きくなったわね」

 

『天宮 ひなた』だった!!

 

「!? お母さん!?」

 

「!!」

 

驚愕する天宮 さくらの前に、誠十郎が庇う様に躍り出る。

 

アゴナが見せた幻影の事があり、また偽者だと考えたのだ。

 

「ひ、ひなたっ!!」

 

とそこへ、左腕を三角巾で首から吊っている鉄幹が現れる。

 

「! お父さん!」

 

「あなた………」

 

天宮 さくらが驚いていると、ひなたは鉄幹の前に歩み寄る。

 

「ひなた………」

 

ひなたに向かって、無事な右腕を伸ばす鉄幹。

 

「…………」

 

ひなたはニッコリと微笑んで佇んでいた………

 

………かと思いきや!

 

眼前まで来た鉄幹の右手を音も無くキャッチ!

 

「へっ?………」

 

そして鉄幹が間抜けた声を挙げた瞬間………

 

綺麗な『アームロック』が決まっていた!!

 

「!? があああああああっ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

鉄幹の悲鳴が響き、突然アームロックを決めたひなたに驚きを示す華撃団メンバー。

 

「あなた………私はさくらの未来を守る為に帝剣を作るを認めたのよ………なのに、如何してそのさくらを新しい帝剣にしようなんてしたの?」

 

「!? ど、如何してそれを!?」

 

「全部見てたからよ! 『帝剣の中』から!!」

 

笑顔は消え、般若の様な形相でアームロックを更に締め上げるひなた。

 

「グアアアアアアァァァァァァァッ!? お、折れるううううううぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーっ!?」

 

「人間には215本も骨が有るのよ。1本くらい大丈夫よ」

 

「いや、もう既に左腕が折れてるんだが!?」

 

と、鉄幹が涙目で抗議したところ………

 

「フンッ!?」

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

今度は蠍固めを食らわせ始めるひなた。

 

「あなた………先ず最初に私に言わなきゃいけない事が有るんじゃないの?」

 

「す、スマン、ひなた! 私が悪かったぁっ!! 許してくれぇっ!!」

 

「謝るのが遅いっ!!」

 

そこから更に弓矢固めに移行する。

 

「ノオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!?」

 

折れてる腕の痛みと合わさり、気絶寸前の鉄幹。

 

「………アレは本物のひなたさんだな」

 

「ハイ、間違いありません………」

 

幼少期に観た夫婦喧嘩の様子を思い出した誠十郎と天宮 さくらが、引き攣った顔でそう言い合う。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

ゼロを含めた他の一同も、目の前の光景に如何して良いか分からず唖然としている。

 

「あ、あの、ひなたさん? 色々と説明して欲しいのですけど………?」

 

とそこで、誠十郎が恐る恐ると言った様子でひなたに説明を求めた。

 

「アラ、そうだったわね。ゴメンなさいね」

 

「ノオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!?」

 

温和な顔に戻りながらも、鉄幹にコブラツイスタをお見舞いし続けるひなた。

 

「う~ん、簡単に言うと………実は私、死んでなかったの」

 

「!? ええっ!?」

 

「ど、如何言う事ですか!?」

 

あっけらかんと告げられた真実に、天宮 さくらと誠十郎は仰天の声を挙げる。

 

「それはね………」

 

そしてひなたは語り始めた。

 

帝剣を作った際に起きた事と、天宮家の秘密を………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10年前………

 

降魔大戦の最中、アゴナの策略により、降魔皇を封印する為の神器『帝剣』を作る事を決めた天宮夫妻。

 

ひなたも当初は、それしかないと考え、自らの命を帝剣に捧げる事を覚悟した。

 

しかし、ココでアゴナも知らなかった事が起こった………

 

天宮家は何と………

 

ネオフロンティアスペースに存在した『超古代文明人』の子孫だったのだ!

 

ガタノゾーアやギジュラ、闇の巨人達など数々の脅威に晒された末に滅亡した超古代文明だったが………

 

超古代文明人は滅亡したワケではなく、『GUTS』隊長の『イルマ・メグミ』、そして嘗てティガであった『マドカ・ダイゴ』はその子孫である。

 

その生き延びた超古代文明人の中には、外宇宙や別次元に新天地を求めて旅立って行った者達も居た。

 

そして、この太正世界の地球へと辿り着いた1人が、天宮家のご先祖様である。

 

絶界の力とは、超古代文明人が持つ超能力の一端だったのだ。

 

その超古代文明人の記憶と完全な力が、ひなたが帝剣の為に命を捧げた瞬間に覚醒。

 

帝剣に命を捧げるのではなく、一体化する事で、彼女は帝剣の中で生き延びていたのである。

 

しかし、外の様子を知る事は出来ても、自らアクションを起こす事は出来なかったので、それを伝える事が出来なかった。

 

だが、娘とその幼馴染が絶体絶命の危機に陥ったのを目撃した瞬間、ひなたは助けたいと強く願い、その想いが絶界の力で次元を超えてティガを召喚。

 

光となって一体化した事により、帝剣との一体化の解除に成功し、こうして復活出来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………と言うワケなの」

 

「そ、そんな事が………」

 

(超古代文明人………聞いた事はあったが、まさかこの世界にもその生き残りが居たとはな)

 

一通り満足したのか、白目を剥いて気絶している鉄幹を放したひなたが説明を終えると、誠十郎が驚きを露わにし、ゼロもそう思案する。

 

「お母さん………」

 

「さくら、ごめんなさいね。色々と迷惑掛けたみたいで………でも、また会えて嬉しいわ」

 

「! お母さん!!」

 

とそこで、感極まったのか涙を浮かべながらひなたに抱き着く天宮 さくら。

 

「お母さん! お母さん!」

 

「アラアラ、まだまだ甘えん坊ね」

 

泣きながらひなたを抱き締める天宮 さくらとそんな彼女を笑いながら優しく抱き締め返すひなた。

 

「さくら………」

 

「グスッ………良かったなぁ、さくら」

 

「うう、本当です………」

 

そんな天宮 さくらの姿を見て優しく微笑む誠十郎と、感動の涙を流している初穂とクラリス。

 

「さくら、嬉しそう………」

 

「奇跡の再会だもの、当然よ」

 

家族に関しては複雑な事情のあるあざみとアナスタシアも、自分の事の様に喜んでいる。

 

「さくら、良かった………」

 

「ま、めでたしめでたしだな」

 

ユイも涙ぐんでおり、シャオロンも素っ気ない風を装いながらも、目尻に涙を浮かべている。

 

「グスッ、何だかコッチまで泣けてきちゃった」

 

「正に奇跡だね………」

 

ランスロットも貰い泣きしており、アーサーは笑みを浮かべている。

 

「うおおおおおおおっ! 私は今、猛烈に感動しているううううううぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーっ!!」

 

「五月蠅いわよ、ラウラ! エリスも何か言ってやって!」

 

相変わらずのオーバーリアクションを見せるラウラにマルガレーテが辟易しながらエリスにそう言ったが………

 

「ううう! あううう!」

 

当のエリスは号泣と言った良い程の涙を流して感動していた。

 

「…………」

 

そんな2人の姿に、マルガレーテはそっと視線を逸らしたのだった………

 

そして、奇跡の再会は、もう1つあった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その新生帝国華撃団に一同から少し離れた場所にて………

 

「大神………」

 

「皆………」

 

「米田さん、かえでさん、帝国華撃団、並び巴里華撃団………只今、全員帰還致しました」

 

米田とかえでに向かって敬礼する大神。

 

「同じく、紐育華撃団。全員帰還です」

 

その隣に立って居た新次郎も大神に続いて敬礼する。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

そして、背後に控えていた帝国・巴里・紐育華撃団の面々も一斉に敬礼する。

 

「皆………おかえりなさい」

 

「全く、10年以上も待たせやがって………」

 

感慨深く言うかえでの隣で、米田が愚痴の様に呟きながらも笑みを浮かべている。

 

「大尉………」

 

とそこで、すみれが大神の前に立つ。

 

「すみれくん………俺達が居ない間、帝都を守ってくれてありがとう。君が残ってくれていて良かったよ」

 

「ああ、大尉!!」

 

大神の言葉で感極まったのか、そのまま大神に抱き着くすみれ。

 

「す、すみれくん!?」

 

「ああ!? 何やってるんですか、すみれさん!!」

 

「お前! ドサクサに紛れて!!」

 

大神が狼狽すると、真宮寺 さくらとカンナを筆頭に、初代帝国華撃団と巴里華撃団の面々が詰め寄って来る。

 

「良いじゃありませんか。皆さんはずっと大尉と一緒でしたけど、私からしたら10年ぶりなのですから」

 

「それとコレとは話が別だ!」

 

「人は皆平等だと神様も言ってました! だから、すみれさんだけは駄目です!」

 

そう返すすみれだったが、グリシーヌが納得が行かんと言い放ち、エリカがやや頓珍漢な台詞を放つ。

 

「お兄ちゃん!」

 

「隊長!」

 

「大神さん!」

 

「イチロー!」

 

「いいっ!? み、皆!! 待ってくれーっ!!」

 

そのまま大神が、アッと言う間に初代帝国華撃団と巴里華撃団の面々に揉みくちゃにされるのだった。

 

「一郎叔父、大変そうだな………」

 

(((((新次郎(大河、シンジロー)も同じだよ(だろう、ですよ))))))

 

その光景を見て苦笑いで呟く新次郎だったが、紐育華撃団の面々からは心の中でそう突っ込まれていた。

 

「この光景………懐かしいぜ」

 

「ええ、いつもの華撃団の光景ですね………」

 

そんな光景に、米田とかえでは懐かしそうな笑みを浮かべるのだった。

 

「………大尉」

 

と、そこで………

 

すみれが真面目な顔になったかと思うと、大神に向かって敬礼する。

 

「!」

 

「現時刻を持って、帝国華撃団司令並びに、帝国歌劇団支配人の座をお返し致しますわ」

 

軽く驚く大神に向かってそう言うすみれ。

 

「………ありがとう。改めてお礼を言うよ。今までありがとう」

 

それに対し大神は答礼し、改めて自分達無き後、帝劇と帝国華撃団を守り続けてくれていたすみれに感謝を告げる。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

騒いでいた他の華撃団メンバーも、先程の喧騒が嘘の様に大神と同じく答礼した。

 

「すみれさん!」

 

とそこへ、誠十郎を筆頭に新生帝国華撃団や三国華撃団の面々がやって来る。

 

「神山くん………」

 

「すみれくん、彼が?」

 

「ハイ、大尉。現帝国華撃団の隊長………神山 誠十郎少尉ですわ」

 

「そうか、彼が………」

 

そこで大神は、誠十郎の前に歩み出た。

 

「!(この人が初代帝国華撃団の隊長………大神 一郎大尉)」

 

伝説の隊長を前に、緊張を隠せずに居る誠十郎。

 

「改めて自己紹介させて貰うよ。俺は初代帝国華撃団の隊長 大神 一郎だ」

 

「は、初めまして、大尉………神山 誠十郎です」

 

「階級は気にしないでくれ」

 

やや萎縮している誠十郎にそう言いながら、その目を見やる大神。

 

「………成程。流石すみれくんだ。良い隊長を見つけたみたいだね」

 

「ふふふ、彼を引き抜くのは正直苦労しましたわ」

 

すみれの方を振り返って大神はそう言う。

 

「神山くん。良くやってくれた。君達のお陰で帝都を………いや、地球を守る事が出来た」

 

「いえ、俺はそんな………只ガムシャラにやっただけです。花組の皆やゼロ達が居なければ、俺は何も出来ませんでした」

 

「そんな事を言うもんじゃないぞ。君は間違い無くこの地球を救ったんだ。流石は花組の隊長だ」

 

「! ありがとうございます!!」

 

大神に向かって敬礼する誠十郎。

 

大神のその言葉は、何ものにも勝る賞賛だった。

 

「………アラ?」

 

とそこで、真宮寺 さくらが誠十郎の背後に控えていた新生帝国華撃団の面々の中に居た天宮 さくら。

 

「! し、真宮寺 さくらさん………」

 

漸く会えて憧れの人に気付かれ固まる天宮 さくら。

 

「…………」

 

そんな天宮 さくらの姿を見ると、真宮寺 さくらは笑みを浮かべ歩み寄った。

 

「!!」

 

「やっぱりあの時の子だったのね。確か、貴方もさくらって言うのよね?」

 

「ハ、ハイ! 天宮 さくらです! わ、私! ずっと! ずっと真宮寺 さくらさんに憧れてて! それで帝国華撃団に!!」

 

やや早口になりながらそう言う天宮 さくら。

 

「そうだったの………ありがとう。私達に代わって帝都を守ってくれて」

 

「そ、そんな! わ、私なんて………」

 

「ふふ………」

 

ワタワタとしている天宮 さくらの様子に、真宮寺 さくらは笑みを零したかと思うと、アゴナに捕らわれていたせいか、髪がボサボサ気味になっているのに気付く。

 

「………天宮 さくらちゃん。ちょっと後ろを向いて貰えるかしら?」

 

「えっ? こ、こうですか?」

 

突然の真宮寺 さくらの言葉に、天宮 さくらは困惑しつつも言う通りにする。

 

すると真宮寺 さくらは、特徴であるポニーテールにしていた髪に結んでいたリボンを解くと、天宮 さくらの髪を手櫛で軽く整え、自分のリボンを巻いてポニーテールに纏めた。

 

「!? し、真宮寺さんっ!?」

 

「私からのプレゼントよ………」

 

驚く天宮 さくらに、真宮寺 さくらは悪戯っ子の様に笑ってそう言う。

 

「そ、そんな! コレは真宮寺さんの………」

 

「良いの。今の貴方には、十分相応しいわ」

 

「!!」

 

真宮寺 さくらにそう言われて、天宮 さくらは感極まり、涙が零れそうになる。

 

「!!………ありがとうございます!」

 

しかし、泣いてはいけないと強い気持ちで堪え、真宮寺 さくらに心からのお礼を言う。

 

「…………」

 

それを聞いて、真宮寺 さくらは満足そうな笑みを浮かべるのだった。

 

「オイ、お前等。折角なんだ。いつもの『アレ』………やろうぜ」

 

とそこで、浮かんでいたゼロが静かに降り立って来て、一同にそう呼び掛けた。

 

「! ああ、そうだな」

 

「ああ、『アレ』かい!」

 

「『アレ』もしっかり受け継がれてるんですね」

 

それを受けた誠十郎、大神、新次郎が『アレ』に察して言う。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

他の一同も、全員分かっている様子を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、行くぞ! せーの………」

 

「「「「「「「「「「勝利のポーズ、決めっ!」」」」」」」」」」

 

「イエイッ!!」

 

巨大化状態のままのゼロを背後に、初代帝国華撃団・巴里・紐育華撃団、そして新生帝国華撃団と三国華撃団のメンバー………

 

更に、リク、ペガ、ミライ、大地を含めた全員で、勝利のポーズを決めたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

予想されている方もいらっしゃいましたが、ティガの正体は………
天宮 ひなたでした。
以前、活動報告での意見で、ひなたさんを蘇生して欲しいと言う意見がありまして、
確かに完璧なハッピーエンドにする為には、ひなたさんにも生きていて欲しいなと思いまして。
只、死者の蘇生はタブー感が強いので、実は死んでいなかったと言う流れにしようと思い考えたところ………
ティガの超古代文明の事を思い出し、そこから今回の展開を思いつきました。
これならティガを登場させる事も出来るので行けると。

感動の再会を果たして天宮親子とすみれさん達と大神さん達。
いよいよ次回は最終回!
平和になった太正世界。
それは、ゼロ達との別れを意味します………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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エピローグ『さらばウルトラマンゼロ』

エピローグ『さらばウルトラマンゼロ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太正世界の地球での長きに渡るキリエル人・アゴナとの戦いは終わりを告げた………

 

少なくない被害を受けた世界各国だが、ウルティメイト華撃団の活躍もあり、復興は順調に進んだ。

 

そして、帰還を果たした初代帝国華撃団・巴里・紐育華撃団は………

 

そのまま解散となった。

 

アゴナとの決戦の際に、既にボロボロの身体を酷使した為、もう大神達は戦闘に耐えられる状態ではなかったのだ。

 

だが、当の大神達に悲観は無かった………

 

既に立派な後継者達が育っていたからだ。

 

彼女達の引退公演を兼ねた復興祈願の舞台では、新旧各国華撃団メンバーが総出演すると言う、歴史的な大舞台となったのだった。

 

その後、初代帝国華撃団・巴里・紐育華撃団メンバーは、再び司令兼支配人となった大神を残し、故郷や故国に帰還(新次郎は新生紐育華撃団の教官に抜擢され、再び渡米)。

 

其々の道を進みつつ、ウルティメイト華撃団のオブザーバーを務め、更なる後進の育成に励む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平和になった太正世界の地球………

 

それは、ゼロ達との別れも意味していた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・東京湾に面したとある海岸………

 

「さて………」

 

「行っちゃうんですね、ゼロさん………」

 

ウルティメイトイージスを装着したウルティメイトゼロを見上げながら、さくらが寂し気に呟く。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

誠十郎達や三国華撃団の面々も、寂しそうな様子を見せている。

 

「そんな顔すんなって。この宇宙はもう平和になったんだ。俺達の力はもう必要無い」

 

「ゼロくんの言う通りだ。コレからは俺達がこの星の平和を守って行くんだ」

 

ウルティメイトゼロがそう返し、旧華撃団メンバーを代表して来ていた大神も言う。

 

尚、あの戦いの後、すみれが持っていたエボルトラスターは光となって消えてしまっていた。

 

まるでもう必要が無くなったと言う様に………

 

「ゼロ、老師によろしくな………」

 

「ああ、伝えとくぜ」

 

レオへの言付けを頼むシャオロン。

 

「あの青いウルトラマンの正体は分からず終いか………色々とお礼を言いたかったんだけどね」

 

(藤宮………)

 

アグルの正体が分からず終いで残念がるアーサーの横で、ランスロットは一瞬水平線を見やった。

 

「ミライ………私は必ず何時か、光の国へ行く! 私が行けなかった時は、私の意思を継ぐ者がきっと辿り着いて見せる!」

 

「うん、楽しみにしているよ、エリスちゃん」

 

ミリアに何時か光の国へ行く事を宣言するエリス。

 

「リク、改めてお礼を言うわ。ありがとう………貴方のお陰で、私は運命を覆す事が出来た」

 

「ヘヘ………ジーッとしてても」

 

「ドーにもならねぇ!」

 

お決まりの台詞と共にフィスト・バンプを交わすリクとアナスタシア。

 

『アナスタシアからリクへの好意を感知』

 

「シーッ! シーッ!」

 

浮かんでいたネオブリタニア号のレムがそんな事をサーチしていると、先に乗り込んでいたペガが慌てて静かにさせようとする。

 

「皆さん、お世話になりました」

 

「コッチこそ、色々と助かったぜ」

 

「何時でも遊びに来て下さいね」

 

「待ってる」

 

『ああ』

 

大地、初穂、クラリス、あざみ、そしてエックスもそう言い合う。

 

「ゼロ………今まで本当にありがとう。お前が居なかったら、俺はあの日死んでいたし、花組の隊長に成る事も無かった」

 

「誠十郎………」

 

「…………」

 

ウルティメイトゼロに向かって敬礼する誠十郎。

 

誠十郎なりの最大限の感謝の印だった。

 

「ゼロさん、その………もし、わたし達だけじゃ如何にもならない事が起こったその時は………また、助けに来てくれますか?」

 

「当たり前だろう。俺は………『ウルトラマン』だぜ」

 

「! ハイッ!」

 

ウルティメイトゼロの返事にさくらは嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 

「じゃあ………行くか」

 

「「「うん!(ハイ!)」」」

 

そこで、ミライ、大地、リクはノーモーションで変身。

 

4人のウルトラマンが並び立ったかと思うと………

 

「テヤッ!」

 

「ハッ!」

 

「イーサァッ!」

 

「ハアッ!」

 

一斉に飛翔した。

 

『ネオブリタニア号、発進します』

 

それを追う様に、ネオブリタニア号も発進する。

 

「ゼロ!」

 

「ゼロさーん!」

 

とそこで、誠十郎とさくらが駆け出し、他のメンバーも海岸を走り出した。

 

飛び去って行くゼロ達を追い、必死に手を振る誠十郎達。

 

「さようならーっ!!」

 

「ありがとうーっ!!」

 

口々に別れと感謝の言葉で出る。

 

「ハアッ!」

 

やがてその前方に、ウルティメイトイージスで開いた次元の裂け目が出来、ゼロ達はその中へと飛び込んで行く。

 

そして全員が飛び込むと、次元の裂け目は閉じる。

 

誠十郎達は立ち止まり、次元の裂け目が在った位置を見上げながら、手を振り続けた。

 

「………さらばだ、ウルトラマンゼロ………帝都を、地球を救ってくれた勇者よ」

 

只1人、その場に佇んでいた大神が、虚空に向かってそう呟いたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある惑星の黄金の街並みに中に佇む一際目立つ巨大な宮殿状に建造物にて………

 

「キリエル人・アゴナ………死んだか。所詮は我等の誘いを断った愚か者か」

 

その中に佇んでいた黄金でヒューマノイドタイプの異形がそう言い放つ。

 

「………そろそろ『ザ・キングダム』の寿命も尽きる………行動を急ぐ必要が有るな」

 

そう言いながら、黄金の異形………『究極生命体 アブソリュートタルタロス』は黄金に染まっている空を見上げるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太正世界の地球を去ったゼロ達は、その後ジードとペガ、大地とエックスは自分達の宇宙の地球へと帰還。

 

ゼロとメビウスは、そのままM78星雲・光の国へ戻った。

 

 

 

 

 

M78星雲・光の国………

 

「じゃあ、ゼロ。僕は一旦コロッセオの方に顔を出して来るから」

 

「ああ、分かった」

 

到着後、メビウスはコロッセオへと向かう。

 

「さて、今回の事を報告しないとな………ハア~、メンドクセェ」

 

そしてゼロは、太正世界の地球での一連の事を報告する為、宇宙警備隊の本部を目指して飛んだ。

 

と、その時!!

 

「お疲れ様です! 俺は………」

 

「!? なっ!?」

 

突如1人のウルトラマンが飛び出して来て、ゼロは激突してしまう。

 

「イッテッ!! 何だっ!?」

 

「す、スミマセン! え、えっと! お疲れ様です、ウルトラマンゼロさん! 自分、『ウルトラマンZ』と申し上げるもので、あの、その!」

 

「オイ、落ち、落ち着け! 何々だ、お前は? ゼット?」

 

「ウルトラマンゼロさん! いや、ゼロ師匠! 俺を弟子にして下さいっ!!」

 

コレが後に『ゼロの弟子』を自称する事になるまだ『3分の1人前』の若き戦士………

 

最後の勇者『ウルトラマンZ』とゼロの出会いだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新サクラ大戦・光………完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

to be continued 『ウルトラマンZ』&『ウルトラギャラクシーファイトシリーズ』




2年以上の連載となった『新サクラ大戦・光』も、これにて完結となります。

平和になった太正世界の地球。
もうこの地球を守るのは、その世界の人々です。
ゼロ達は去って行きます………

しかし、もしまた危機が訪れれば、ゼロ達は再びやって来るでしょう。
何故なら彼等は………『ウルトラマン』だから。

そして物語は、若き戦士達が引き継ぎます………

長い間ご愛読ありがとうございました。
私はサクラ大戦からオタクの道へ入りました。
そして新サクラ大戦が発売されると聞いた時は嬉しく思いましたが、残念ながらオールドファンが納得出来る出来ではありませんでした。
ならば、自分で納得の行く新サクラ大戦を作ろうと思い筆を取りました。
クロスオーバーが得意だったので、新サクラ大戦の世界を救うにはウルトラマンぐらいの力が必要だと思い、公式でも自由な立場に居るゼロを召喚してみました。
多くの皆様に楽しんで頂けた様で、とても嬉しかったです。

さて、次回作ですが………
誠に申し訳ありませんが、予定はありません。
と言うのも、実を言うと最近執筆活動が苦痛に感じる様になってしまってきていて………
このサイトには掲載していない作品も含めると、もう彼是10年以上はやってきたので、いい加減ネタ切れしたのと歳のせいで体力・気力、更には集中力が落ちているのも自覚しております。
物書きは飽く迄趣味ですので、苦痛に感じたら趣味とは言えないと思い、筆を擱く事に致しました。
楽しみにされていました皆様には本当に申し訳無いと思っております。
今まで応援ありがとうございました。
作品はずっと掲載しておく積りなので、何時でも見て楽しんで下さい。

また何処かでお会いしましょう。
ありがとうございました。


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