葉山の受難 (もよぶ)
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第一話

「雪ノ下雪乃が男子と付き合いだしたらしい」

既に学校中の噂になっているようだ、当然であろう何しろ知らぬものはいない学校一の美少女である、もう片方は文化祭、体育祭といろいろ悪い方面で噂がある上に今年から開催されたプロムは雪ノ下雪乃を手に入れるため反対する保護者達を彼が恫喝し開催にこぎ着けたらしいという噂が流れるほど曰く付きの男なのだ。

 

「雪ノ下さん付き合い始めたんだって」

「えーだれだれ?やっぱ葉山君?」

「それが違うの、ほら、めったに誰とも話をしないあいつ、ひきなんとかってあそこの・・・」

「えーマジで?あいつヤバイ噂しか聞かないんだけど?そういえば雪ノ下さんを無理やり手に入れる為に色々やったとか・・・脅されてるのかな・・・可愛そう」

 

やれやれまたか、葉山は重い腰を上げ噂話をしてる女子達のもとへ行く

 

「君たちなにか用かな?俺のこと話してたみたいだけど?」

「あ!葉山君、雪ノ下さんが付き合いだしたって知ってる?なんかあの変なやつとらしいの!葉山君の方が絶対お似合いだと思うんだけど!」

「そうみたいだね、でも残念ながら俺には他に気になってる人がいるんだよ」

というと二人は目を輝かせる

「えー!本当?だれだれ?三浦さん?海老名さん?」

「さーだれでしょう?もしかすると君たちの身近な人かもしれないよ?でも告白するとしたら卒業の時かな?」

こう言うと

 

「え?それってもしかして・・・」

と二人は顔を見合わせぼそぼそと話始める、これで彼女たちの頭から比企谷達の話題は消滅した。

 

二人が付き合いだしてからちょくちょくこういうことは起きている、他のクラスとなるとわからないが大きな問題になってないところを見ると、結衣や優美子のいるところは彼女らがうまくやっているんだろう。

 

葉山本人としてはあの二人が付き合い始めたということに関して少しほっとしているのだった。

なにしろあの二人にはあまりに色々有りすぎたからである。

自分も関与していることがいくつかあるので、これから多少は協力をしないとなとは思ってはいるのだ。

 

しかし噂程度であの二人の仲が裂かれるとは全く思ってはいないのではあるのだが、放っておくと嫉妬した男どもや、目の前の女子の様に余計な気遣いをして比企谷に何かを言ったりしたりするか分らないのである。

 

そして何かが起きてしまうと今度は雪ノ下雪乃が何をするかわからない、そしてその結果、陽乃さんが動いて最終的に被害が来るのは自分になるのは想像に難くない、つまりは保身のためということもある。

 

ただそんな事より葉山にとってもっと大きな問題が生じていた。

ピロリンと葉山のスマホにLINEメッセージが届いたという通知が来る

 

「あ!もしかして葉山君、それって気になる人から?」

女子達が色めき立つ

メッセージの相手を確認すると葉山はニッコリと笑うと

「どうやらそのようだ、ちょっと失礼するよ」

女子達は完全に葉山の相手の話で盛り上がっている中自分の席へ戻る葉山

 

「んなわけないだろ・・・」

ボソッと独り言を言い席についた葉山はため息をつき内容を確認する。

相手は雪ノ下雪乃であった。

 

『あなたにこんなことを聞くのは誠に遺憾なのだけれど男性と一緒に歩く時に毎回女性から手を繋ぐというのは、男性から見るとはしたない女として見てしまったりするのかしら?』

 

葉山のLINEに雪ノ下から男女の接し方の相談みたいなものが良く来るようになったのだ。

 

もし困ったらいつでも相談に乗ると二人につい言ってしまったことがある。

その時二人ともいらないだの不要だだのいっていたがその結果がこれである。

 

しかも枕には必ず遺憾だのなんだのと入れてくる、ため息混じりになんと返答をするか考えてるとさらに別な人からLINEが来る

 

『おまえにこういうこと聞くのは癪なんだが彼女の家で二人っきりになりたいと思うのはどうなんだ?いやらしいことする気満々だろこいつとか思われたりしないだろうか?そんな気はさらさらないんだが、いや少しはあるんだが、いやあわよくばとか思ってないが、いや高校生活最後の思い出とか彼女が拒否らなかったらとかまあ色々あるんだがそれはまず置いといてどうなんだ?なかなか周りが放っておいてくれなくてな、二人っきりで話がしたいとか同じ本を読んだ感想を言い合いたいとかそういう理由なんだが』

 

相手は比企谷八幡、この男も雪ノ下と同様接し方について聞いてくる、海浜合同プロムの時連絡先を教えたのだがその結果がこれである。

しかも雪ノ下同様必ず枕詞に聞くのが嫌だけどみたいな言葉を淹れてくるあたりどうしようもない。

 

「クドい、そして無駄に長いよ、それに同じクラスですぐ近くにいるんだから直接聞きに来いよ・・・大体お互いそんなこと気にする様な性格じゃないだろ・・・」

頭を抱える葉山

 

以前、いつでも相談に乗ると言ってしまった手前言いにくいがなぜ自分ばかりにこんなことを聞くのか、もっと他にいるだろうと面と向かって苦言を申し立てたことがあるが、雪ノ下の場合は

 

「仕方ないじゃない、あなた以外にこういうことに詳しい人が私の知り合いにいると思って?」

「陽乃さんやいろはや結衣がいるだろ?」

 

「姉さんは特定の男性と付き合ったことなんてないでしょ?それにそんなこと聞いたら散々バカにされて笑われた挙句比企谷くんに迷惑がかかるわ、一色さんに聞くと小町さん経由で比企谷くんの耳に入る可能性があるでしょう?それと由比ヶ浜さんに聞けとかあなた正気?バカ?」

 

このあと散々人のことを罵倒して

「とても遺憾なのだけれどほかに聞く人がいないのよ、あとこの件姉さんに伝えたらどうなるかわかっているわよね?比企谷くんにも内緒よ?気を使わせたら悪いし何より恥ずかしいもの」

そう言うとさっさと立ち去ってしまった。

 

比企谷の場合は

「大体俺の周りでこの手の事情に詳しい奴がお前以外にいると思うか?この件に関しては小町は正直あてにならん、あいつは自分の姉を増やすことに執着していてな、相談したらいつのまにか由比ヶ浜や一色が混じることになるからできん」

 

他の男どもに聞けよと言ったが

 

「戸塚にそんな気を遣わせるとかおまえ正気か?バカなのか?他には材木座一派ぐらいだがあいつらは二次元に生きているから駄目だ、セーブはこまめにしとけとか平気で言いそうだからな、戸部だと翌日はクラス全員が相談内容を知ることになるから駄目だ、本牧に聞いたことあるがあいつはもう人の話を聞いちゃいねぇ、逆に受験が大丈夫か心配になるまである」

 

この後自分がいかに友達が少ないか、ボッチのコミュ障なのかを熱弁され

「んじゃ悪いがまた相談するから、他の人にバラしたら雪ノ下さんにあることないこと吹き込むからな、無論雪ノ下にも秘密だ、あいつに余計な気を使わせるわけにはいかないし恥ずかしいからな」

 

そういうと去っていった。

 

「なんなんだあの二人、恥ずかしいなら俺に聞くな!俺を何だと思っているんだ?大体俺だって彼女いた事なんてねぇよ!特に比企谷!毎日一緒に弁当食べる仲間がいて何がボッチだ!いい加減にしろ!」

人に見られないよう悪態をつく葉山であった。

 



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第二話

自称ボッチの比企谷は昼休みになると奉仕部部室で雪ノ下や由比ヶ浜、一色、小町と一緒に弁当を食べてるのであった。

たまに戸塚や戸部も混じってくる、材木座もいつのまにかいる。

部室とはいえ空き教室を占拠、美少女に囲まれ騒がしい男子もいる、もはやだれが見てもリア充なのだが比企谷からするとこれもボッチらしい。

 

因みに葉山は、クラス替えにより二年までのグループメンバーがバラバラになったので特定の人とつるむ事はなくなっていた。

クラスが違っても友達だとか言っていたような気もするが現実はこんなもんである、たまに戸部や三浦や由比ヶ浜はやって来るが、海老名は同士を募ってそっちと一緒にいる事の方が多いし、大和や大岡なんぞ三年になってから一度も見てない。

 

今年は受験もある為、新しくグループを作るということをしなかったのだが、最もなんだかんだで人気が高い葉山のこと、お昼になるといろんな女子や男子から声をかけられ毎日誰かと一緒に食事をするはめにはなっていたのだ。

 

ブツクサと文句を言いながら頭を抱えていると今度は別な人からメッセージが

 

『あたしが好きな人と二人っきりになりたいんだけどあたしの友達もその人のこと大好きだから困ってるの、隼人君なんとかできないかな?あと優美子が隼人くんのことばかり話して対応に困るから構ってあげてね?』

なんとかって俺にどうしろと?それと結衣は色々吹っ切れ過ぎるだろ、立場逆転してるじゃないか

 

由比ヶ浜は比企谷達が付き合いだしてしまった辺りから色々吹っ切れたのか、三浦相手にもハッキリ強く物を言うようになり、三浦も生来からの面倒見の良さもあり、逆に由比ヶ浜に気を使うようになってしまったため結果として立場が逆転してしまったようだ。

 

『葉山先輩、ちょっと雪乃先輩と結衣先輩を呼び出してくれません?放課後2時間ぐらい、その間に既成事実作ろうと思うので、今日ならイケるはずです!』

いろは、おまえは学校で何する気なんだ?仮にも生徒会長だろ?

 

『八幡と話すと雪ノ下さんの話題で楽しそうなんだけどそればっかりだからちょっと寂しくなったよね、葉山君も寂しい?』

戸塚、何故に俺が寂しいと想うんだ?それに前みたいに嫁になってくれと言われてたほうが良かったのか?それはそれでアレじゃないだろうか?

 

『葉山殿、最近八幡がかまってくれないのよ、我寂しい』

君には遊戯部の二人がいるだろ

 

『最後に思いっきり生ハヤハチが見たいから隼人君脱いで』

・・・・・

 

対処が仕切れなくなった葉山は唐突に叫んでしまう

「あーもう!うるさい!」

「葉山君どうしたの?」

隣の席の女子が心配そうにこちらを見ている

 

「ああ、受験勉強で疲れていてね・・・大丈夫だよ心配させてごめん」

といつもの愛想笑いをすると女子はぱっと顔を赤らめて黙り込んでしまった。

とりあえずこれでごまかせたと安堵のため息をもらす葉山。

 

雪ノ下、比企谷以外にも比企谷の知り合いが葉山に無遠慮なメッセージを送るようになり、その対処に頭を悩ませていた。

材木座や遊戯部の二人になつかれてしまっているのはこの際別にどうでもいい、戸塚や一色や由比ヶ浜も適当に返信しておけば問題はない。

 

だが他人との接点が薄かったあの二人はいざお互い付き合うことになった現在、どうしていいかわからないことがかなり多いようで疑問が出るたびに自分に質問をするようになったのだ。

 

とある日の授業中、葉山のスマホにメッセージが届く、チラッと見るとプロムの時に作った関係者専用LINEグループに雪ノ下のメッセージが入っていた。

その内容を見て葉山は机に肘をついて額に手をやり深いため息をついた後ボソッと独り言を言う

「雪乃ちゃん、勘弁してくれよ・・・」

 

内容はこうだった

 

『明日比企谷くんの分もお弁当を作ってくるわ、だからあなたの好きよ比企谷くんな食べ物を教えてもらえないかしら?』

 

変な変換の仕方でもして予測変換にやられたのか?

いつもどんなやり取りしてるんだ?まあ予想つくけど!

とうんざりと言った表情をしているとLINEに次々とメッセージが入る

 

『雪ノ下、それは知っている、大丈夫だ』

 

『ごめんなさい、勝手に予測変換が出てしまったのよ、でも本当に好きよ?』

 

こいつらなにやってんの?いやマジで、今授業中なんだけど?

そう思い比企谷の方を見る

 

うわー気持ち悪いなー

 

ちょっと赤くなり凄い顔でニヤニヤしている。

他人のニヤニヤ顔というのは大変気持ちが悪い。

 

『わかっている、ただ今お前が発言しているのは知り合い全員が見れるグループのだ』

 

『これって消せないのかしら?』

『消せるらしいが諦めろ、こういうことは良くあることだ』

『そう、それじゃ関係者全員の頭から直接消さないと駄目ね』

 

『大丈夫!我もう知ってるから!全部知っているから!歪ませるとか!人生くれとか!誰にも言わないから!我だけは助けてほしいなり!』

『あ!この人また自分だけ逃げようとしてる』

『秦野、今授業中、あとこの先輩はいつもそうだろ』

 

『やっぱヒキタニ君パネーわやべーわ』

『先輩達が熱々なのは結構ですけどそういうのはちゃんと確認してからにしてほしいですね』

『あーあたしも好きな人にお弁当作ってみたいなー』

 

『由比ヶ浜、それはやめておけ』

『ひどいし!』

 

『やっぱ義兄さんはすごいっす!』

『大志、その文字はなんだ?お前放課後校舎裏な』

『あ?あんたうちの弟になにしてくれようとしてんの?大志、代わりにあたしが行くから家に帰るときに醤油買ってきてね』

 

『比企谷くん?なんで財津君が知っているのかしら?あとでじっくり二人っきりでゆっくり聞かせてもらうわ、それと川崎さん?比企谷くんに手を出すつもりなら私が相手になるから、私こうみえて強いのよ?』

 

『へぇー、金持ちはちがうね、何でも手に入って』

『あなた言っていいことと悪いことがあるのをご存じ?いいわ決闘ね』

『望むところ』

 

『私としてはヒキタニくんと隼人くんの尻闘(ケッとう)が見たいんだけど』

 

カオスすぎんだろ・・・なんで弁当の話から決闘になっているんだよ、しかも今授業中だろ、あと最後のは見なかったことにする、ものすごいねっとりとした視線を感じるけど無視だ無視、それよりエスカレートする前に納めないと

 

『ちょっと二人とも落ち着こうか、雪ノ下さん、比企谷への弁当の話じゃなかったのか?』

とメッセージをいれたところ

 

「おい!葉山!授業中になにをしている!お前弛んでるんじゃないか?!廊下に立ってろ!」

 

何故か俺が先生に見つかり注意されることに

比企谷の方をみるとなんのことですか?

みたいな面をしている、睨み付けるとぷいっと目をそらしやがった。

 

葉山はため息をつくと

 

「すみませんでした、廊下に立ってます」

 

もう無茶苦茶だ。

ため息を深くつくと廊下へと出る葉山であった。

 

廊下に出ると少し向こうのクラスの廊下には既に巨体が立っている、その向こうには黒髪ロングの女子が腕組みしながら廊下に出てきた。

 

葉山は初めは無視を決め込んでいたが強烈な視線を感じる、ちらっと見ると案の定J組の彼女はこちらを仁王立ちでにらんでいた。

「雪乃ちゃん怖すぎるだろ」

とりあえず顔をこわばらせて一応微笑んでみたところ間にいた材木座が何を勘違いしたのか喜んでる

 

またもやLINEが入る

『尊い笑顔をいただいた!我は幸せなり!』

いや君にじゃないんだが

『あの男に反論しようとしたら見つかって廊下に立たされてしまったわ、絶対に許さない』

「雪乃ちゃん本当にしっかりしてくれよ・・・」

ついボソッとつぶやいてしまう。

「放課後も俺がフォローすんの?やっぱこの流れだと」

頭が痛くなり座り込む葉山、それを見て何を勘違いしたかサムズアップをする材木座であった。

 



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第三話

俺ガイルは男子連中もキャラが立っていて魅力ある連中ばかりですよね。
比企谷を中心に男子たちもフリーダムに暴れるので葉山は振り回されます。



葉山が廊下にしばらく立っているとまたLINEが入って来る。

男同士でないと話せないこともあるという戸部の強い意見で作られたグループがあり、そこに来ているようだ。

 

内容を見てまた頭を抱える

『川崎先輩ってかっこいいよな、川崎先輩に1000ペリカ』

『相模に同意、俺は1500ペリカ』

『刻むとはチキンだな、氷の女王は空気投げの達人である、氷の女王に2000ペリカ』

『家の姉ちゃんは強いし美人なのに義兄さんは見る目がない、姉ちゃんに10000ペリカ』

 

こいつら賭け事始めやがった、誰か止めろよ、しかもペリカってなんだよ、どこで換金してるんだよコイツラいつの間に地下帝国の住人になったんだよ!

 

『お前ら雪ノ下を舐めすぎ、10万ペリカ更に倍プッシュだ』

『ヒキタニ君やベーって人生かけるつもりだベ、そして俺にはもう賭けるペリカがないべ』

『戸部、弱すぎるお前が悪い、そして雪ノ下には全てを賭ける価値がある、何なら俺の魂も上乗せしてやる』

『八幡は本当に雪ノ下さんのこと好きなんだね、んじゃ僕も雪ノ下さんに10000ペリカだね』

『ふ、すまんな、あと戸塚は別枠だから安心してくれ』

 

え?戸部はいつの間にこいつらと賭け事する位仲良くなってんだ?

俺何も聞いてないんだが?

というかカモにされすぎだろ?

ってかそもそも賭け事は駄目だろ!

流石にこれを看過するわけにも行かないと思い

 

『君たち彼女らを賭け事の対象にするなんて止めないか?比企谷はむしろ止めるべきだろ?』

とメッセージを送った途端

 

「葉山、お前成績いいからって本当に弛んでるな、他の生徒の迷惑だぞ」

 

様子を見に来た先生にまた怒られた。

ついさっきまでLINEをしていたはずの向こうに立っている巨体を見ると気をつけの姿勢のままだ、どうやってたんだ?

何もかもが面倒になりまたもやその場に座り込んでしまう葉山

 

「先生、なんで俺廊下にいるんでしょうね?」

そんな葉山を心配そうに見る先生

「本当にどうした葉山?大丈夫か?保健室行くか?」

「・・・そうさせてください」

 

保健室で寝ているとまたメッセージがくる

『なんであの男が保健室に行っているのかしら?比企谷くんだったら私も行っていたのに』

『雪ノ下、また送り先間違えてる』

 

『お兄ちゃん、小町はまだ叔母さんにはなりたくないな』

『そうね、雪乃ちゃん?そういうのはまだ早いとお姉ちゃん思うな』

 

『げ!誰だよこの人グループに入れたの!』

『そんなの今保健室で寝ている男にきまってるじゃない、明日は病院のベットで寝てもらおうかしら?』

 

『雪ノ下さん?病院のベットで寝るのはあんたかもしれないんだけど?』

『川崎さん?いい度胸ね、後悔させてあげるわ』

 

もうやめろよ、そして陽乃さん招待したの俺じゃないよ・・・

本格的に胃が痛くなった葉山はそのまま授業終了まで寝ることにした。

 

尚、決闘については何処かから情報が漏れ出したらしく、美人同士の本格的キャットファイトが見れると学校中の生徒(主に男子)が見に来てしまったそうだ。

葉山は厚木先生を適当な理由で校舎裏に呼び出し現場に偶然立ち会わせ中止にさせることに成功したが、何しろ大勢人が居たため色々有耶無耶になって誰も捕まらなかった模様。

 

その日の夜のLINEでは

『あいつチクりやがったな』

『隼人君には失望したべ、俺のペリカどうするべ』

『あはは、まあ誰もケガしなかったし良かったんじゃないかな?八幡も雪ノ下さんがケガしたら嫌でしょ?』

『もし雪ノ下がケガをしたら俺も同じとこに傷を作る、キズナイーバーだな』

『八幡?ネタが古いぞお主』

『クソ!うちのねーちゃんが一番強いのに・・・』

『大志君大丈夫だよ、俺たちはわかる、川崎さんはかっこいい、そして雪ノ下さんよりエロい、是非ともダブル大富豪を・・・』

『おい貴様ら、今の発言聞き捨てならねぇな、アレか?胸か?つつましい胸最高じゃねぇか!やるなら葉山とやれよ、俺だけ脱がされてるのはなんか納得行かねえ』

 

『葉山先輩が脱いでもかっこいいだけでしょう?』

『いや、写真に収めてな?全校生徒にばらまくんだよ、そうするとだ・・・駄目だ女子が大喜びする未来しか見えない!これが格差社会か!』

 

『フム、では全員で奴のペリカを巻き上げると言うのはどうだろうか?』

『隼人君はペリカもってねーべ、んでこういう賭け事には乗ってこねーべ』

『いいか戸部よ、まず一緒に遊ぼうと軽く誘ってだな、初めは気持ちよく勝たせるんだよ、そしてこれならと思わせてペリカを買わせて少しずつ敗けを増やして気がついたら泥沼だ、相模弟と秦野にやらせれば問題ない』

 

『流石八幡、ゲスな事考えさせたら日本一であるな!』

 

『当然だ、雪ノ下のお墨付きだからな、そうだ、雪ノ下と言えば・・・』

 

『比企谷、黙って聞いていれば・・・いいか?俺の藤沢が一番だ!沙和子!愛してる!』

『は?本牧、黒髪ロングの正統派美少女にかなうわけないだろ?二人っきりになるとデレが凄い雪ノ下こそ究極だ』

『ああ?妹系メガネっ子だぞこっちは?最高にして至高だろうが!』

 

『八幡?本牧君?喧嘩は駄目だよ?』

『すまんな戸塚、おい本牧、お前も葉山からペリカ巻き上げる計画につき合え、成功したらサイゼでさっきの続きだ』

『ああ、任せろ』

 

君たち、俺も見えてる場所で俺への悪巧みをするなよ・・・

分っててやってんのか?

この分だと俺の方から飯でもおごってあげた方がよさそうな気がする、むしろそうしないとこいつらマジでよからぬことやりそうな勢いじゃないか。

 

しかも戸塚までかよ、喧嘩は駄目なら雪乃ちゃん達をまず止めろよ、なんかだんだん染まってきてないか?

もう本当にこいつら仲良すぎだろう。

 

延々と続く自分への文句と悪巧みと比企谷と本牧ののろけのやり取りを見てまたも頭が痛くなる葉山であった。

 



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第四話

おごらされる葉山、そして好き勝手にする男子たち。
もう関わりたくないと思うのですがそうは問屋が卸さない。


次の日葉山が学校に行くと比企谷達はすでに登校していたようだ、校舎に入ると見知った顔がこちらをチラチラ見る視線を感じる。

教室につくと比企谷は材木座と何事かささやいてる模様、しばらくすると巨体に見合わず材木座が忍者のごとくその場を離れるLINEにまたメッセージが入ってくる

 

『よし!朝の打ち合わせ通りプランAで行くぞ!』

『あれ?さっきプランBって言ってただろおぬし』

『ヒキタニ君!プランDの準備出来たっしょ!』

 

・・・君たちまとまり無さすぎだろう、プロムやったの時のあの実行力はなんだったんだ?

いきなりポンコツになりすぎじゃなかろうか、やっぱ雪乃ちゃんがいないと比企谷は駄目駄目だな・・・

というか相変わらず俺も参加しているグループでやり取りするなよ。

気が付いてないのか?

 

ともかく放置しておくとまためんどくさいことになると思い、葉山は深いため息をつくと比企谷に話しかける

「なあ、比企谷」

「うわっいきなり話しかけんな!ボッチはなぁ・・・」

 

「・・・ボッチって・・・それはもういい、なあ、今日一緒に晩飯食わないか?奢るよ?」

こいつ一人にでもこっちから奢ってやればこれ以上変なことに発展することはないだろ、流石に今日飯をおごるという人を賭け事で嵌めようとするなんてことはしないだろうし、そうしてしまえば自ずと悪巧みも無くなるだろと思ったが、ここで誤算が生じる

 

「おごってくれるってマジで!さすが葉山殿!我焼き肉がいい!カルビは飲み物!」

いつの間にか後ろにいた材木座が歓喜のあまり叫び出す。

 

「え?ちょっとまって」

 

と材木座を押さえるがもう遅い

「え?葉山君本当に?僕楽しみ!」

何か棒のような物を持った戸塚が現れた。

その棒で俺になにする気だったの?

 

「まじか!隼人くんやベーわ!」

バケツを持った戸部も現れる

 

「葉山先輩さすが、尊い・・・」

と遊戯部の二人も出てくるが、その手に持ってるロープはなんだ?

 

本牧も出てくるが手に持ってるのはなんとサスマタ

「本牧、そのサスマタはなんだ?」

流石にこれを持ってうろつくのまずいだろと思ったが

「ああ、俺生徒会だからな、俺と藤沢がちょっと手を回してな、まあなんだプランCの為的な?」

また違うプランかよ!

それに職権濫用って言うんだよそれは!

 

「せっかく姉ちゃんにつくってもらったのにな」

と大志くんが出てくるがその手に持ってるのはどうみても網

その網を一晩で作ったの?!川崎さん凄すぎだろ!

なんで君たちは物騒なものばかり持っているんだ?俺を賭け事で嵌めるつもりじゃなかったのか?

 

LINEのやり取り途中まで見てたけどアホらしくなってそのまま寝たのが良くなかったな、俺なにされるとこだったんだろう?

朝からどっと疲れてしまい、よろよろと自分の席に着く葉山であったがそこに比企谷の容赦ない言葉が浴びせられる。

 

「さすがみんなの葉山様だな、んじゃ焼き肉頼むわ、食い放題のとこでいいぜ」

「いいぜじゃないだろ・・・」

結局食べ放題の安い店を食べログで「焼肉 安い」で雑に検索して店を決めることにした。

なんか星が凄く少なかったが構うものかとあきらめ気味で放課後皆を連れていくことにしたのだ。

 

しかし店に着くとまた問題である、肉の消費速度が半端ない上にやかましいのだ。

戸部は材木座にわんこそばの要領で次々肉を渡し、材木座は肉を飲み込んでる。

カルビは飲み物ってマジかよ!

でも豚と鳥はちゃんと焼かないと腹壊すぞ?

 

唯一真面目と思われた戸塚は実は肉の焼き方にうるさかったりとまるで落ち着かない。

ホルモンの焼き方でマジ切れして説教食らうとは思わなかった。

「下手に焼くと火が出すぎて火事になるかもしれないんだよ?葉山君わかってるの?」

そんなこと言われてもしらないよ!

 

大志くんも家の姉ちゃんはとシスコンっぷりを発揮しまくってて、遊戯部に至っては同意してるかのようでエロい目でしか見てない。

大志くん、ちょっと気を付けたほうがいいよ?

そしてこいつらも手が止まらない、メガネ曇ってるのにどうやって肉を判別してるんだろう?

 

比企谷と本牧は自分の彼女どっちが上かで胸倉つかみあって揉めている、しかも内容は他人が聞いたら赤面するようなことばかりである。

しかも顔が微妙に赤いのだが・・・興奮してるからだよね?

飲んでるのウーロン茶だよね?ウーロンハイじゃないよね?今の時期にやらかすと進学やばいからね?大丈夫?

幸い?にも呂律は回っているので酔ってはいないと思われる、あと話の内容から察するに二人ともまだ清い交際の様だが・・・

 

そしてトイレに行った隙に勝手に延長されてた。

この時は流石に自分のキャラを考えずに叫んでしまった

 

「お前らドンだけ食うんだよ!」

 

「んなの満足するまでに決まってるだろうがなあ本牧」

「そうだな、まだ足りない、藤沢の魅力を伝えるには言葉が足りん」

「は?雪ノ下の魅力の方が万倍あるっつうの!」

君たち、満足って彼女のことを言い足りないってこと?

んじゃあ焼肉じゃなくてもいいだろ?

勘弁してくれ

 

「八幡の言うとおりである、戸部殿、レバーを頼む」

君は少し自重したまえ、そしていつの間に戸部と仲良くなってるんだ?

 

「イヤー隼人君やべーわ、材木座君やべーって、俺さぁ肉が飲み物って知らなかったわ」

いや、飲みものじゃないぞ?大丈夫か戸部?こいつらがおかしいんだからな?

 

「葉山君、ここお肉育てておいたからさ、ちゃんと食べなよ?」

戸塚、君なんか怖いよ

 

「あー姉ちゃんや京華にも持って帰りたいんで持ち帰りいいっすか?」

食べ放題で持ち帰りは駄目だろ!

 

「・・・へー川崎さんに・・・んじゃあこの肉を・・・」

ちょっと待とうか?君たちなんか変なもん入れてんじゃないだろうな?

ってか持ち帰りは駄目!

 

突っ込みつかれて椅子に倒れこむように座る葉山に

「おい葉山、俺が言うのもなんだが食わないと損だぞ?」

と比企谷

「君ねぇ・・・既にこの状態が損なんだけど」

いつものさわやかさはどこへやら、くたびれ切った葉山は深くうなだれてしまうのだった。

 

「イヤーくったくった!他人の金で食う飯はうまいな!さすが葉山様、またよろしく!」

「葉山先輩!ありがとうございました!」

 

礼なのかなんなのかわからん事を言われひきつった笑いを返す葉山。

「あれ?これって結局巻き上げられてるよな?」

なんだかんだで結果的に比企谷達の目論見通りになってしまったことに気が付き、空っぽの財布を見てもうかかわらんでおこうと強く思う葉山であったが、残念ながらそうはいかないのであった。



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第五話

多分八幡雪乃のデートってなんだかぎこちないものになりそうなんですよね、お互い普通を知らないので、というわけで普通を知ってそうな葉山に質問するわけです。


あくる日、比企谷から呼び出される

「あーそのなんだ、週末雪ノ下と出かけることになってだな、普通に買い物して映画を見て飯を食うことになったのだが、すまんがその時に着ていく服のコーディネートをお願いしたい」

 

「なんで俺が・・・それと普通にデートって言えよ」

もう関わりたくないと思っていたのであしらうことにしたが比企谷は話を続ける

 

「俺に服のセンスがあるわけないだろ?いつも小町にお願いしてるんだがいい加減自分でやらんとな、でも俺はセンスがない、下手な格好をして雪ノ下に恥をかかせたくないんだ!すまん!この通り!土下座でも何でもする!」

と膝をつく比企谷、

 

普通の人ならこの辺りで狼狽してしまうだろうが葉山は違った。

 

「材木座君に聞いたが、君の土下座はただのポーズでヨガを披露してるのと変わらんそうじゃないか?」

呆れ顔の葉山に不敵な笑みを浮かべる比企谷

 

「ふっ、そうだな、確かに土下座は俺の十八番だ、頭を下げることに何の躊躇もない!だが周りで見ている人にとってはどうだろうな?」

そう言われて葉山があたりを見回すと

 

「葉山君が誰かを土下座させてるんだけど・・・」

「えー葉山君ってあんなことさせる人だったっけ?」

「うわー酷いな、いじめじゃないか?」

 

通りがかった生徒が皆ぼそぼそとしゃべっているのが聞こえる

「フフフ、どうだ葉山?俺が頭を下げることによってお前の評判は若干下がる!」

 

しかしこういった声も聞こえてきた

 

「土下座している奴の目あれやばいんじゃね?」

「あれ葉山君にすごく迷惑かけたんだよきっと」

「土下座してる奴は人生償うべきだな」

 

「・・・こ、こうやって俺の評判は地に落ちるがな!これぞ骨を断たせて肉を切る!大丈夫!八幡泣いていないから!これは汗!目から汗が出てるんだよ!勘違いしないでよね!」

 

あきれ顔になる葉山

「涙目になるぐらいなら初めからやるなよ、君が致命傷になってるじゃないか、それより君にプライドってのは無いのか?雪ノ下さんに今の姿見せられるのかよ・・・」

と涙目になっている比企谷へ手を差し伸べるが

 

「雪ノ下の為ならクソみたいなプライドなんぞ捨ててやる、そして雪ノ下も俺の得意技をきちんと理解してくれている、何も心配はない」

と比企谷はその手を無視して立ち上がる

 

葉山は深いため息をつくと

「まったく・・・そんなに理解し合ってるならどんな格好でもいいだろ・・・じゃあな」

踵を返そうとする葉山に比企谷は縋り付く

 

「ちょっちょっと!なあ頼む、お前ぐらいしか知らないんだよ、リア充気取ってて表面上は女子ウケが良い格好をナチュラルにできるやつなんて」

「・・・少しは言い方ってものがあると思うんだけどね・・・大体なんで俺が君にそんなことを教えないといけないんだ?嫌だね」

 

葉山はかかわりたくないとその場から離れようとするがまたも比企谷に呼びとめられる

「おい待てよ、お前がそのつもりなら仕方ない、こればっかりは言いたくなかったんだがな」

「何だよ?まだなにかあるのか?」

 

「ああ、お前修学旅行のこと忘れてないよな?『ずっと前から好きでした』か、修学旅行の時俺あんなこと言わないといけなかったんだっけ?おかげで雪ノ下と由比ヶ浜泣かせちゃったしなー、誰のせいだったかなー?」

 

「君という人は本当に・・・分かったよ、俺の負けだ、服買うの付き合うよ、だからもうやめてくれないか?」葉山は降参だとばかりに渋い顔をして両手を上げる

 

「すまんな、それと飯食うところもアドバイスをくれ、雪ノ下が行ったことなさそうなところ教えろ」

「教えろって、途端に調子にのるな君は、大体そんなのはどこでもいいだろ、得意のサイゼでいいじゃないか」

「流石にサイゼは行き過ぎてな、『あなたと一緒ならばどこにいても良いのだけれどたまにはには違うところにも行ってみたいわね』と言ってくるんだ、それにサイゼの味は再現できると言って実際に作ってもらったしな、もうサイゼに行く理由が無くなってしまった」

 

「マテ、作ってもらったって君は雪ノ下さんの所に一人でいったのか?」

「いや、家に来てもらった、無論小町もいたからお前が想像するようなことはやっていないぞ?料理作って食べた後はあいつずっとうちのカマクラをいじってたな、その姿がまたかわいいんだよ、なんというか美しいというかこのまま世界が止まってくれないかなと・・・危うく家に泊まってく?まで言いそうになったわ」

 

「十分だ、のろけはもういい」

なんだこののろけっぷり、比企谷はこんなキャラだっけ?

仕方ないので知ってる範囲でアドバイスをする

 

「彼女は君たちが行くようなファーストフードとかあまり行ったことがない、寿司も回る寿司なんて行ったことすらないんじゃないか?」

 

「マジか回転寿司ね、いい情報を教えてもらった悪いな」

そういう訳で放課後比企谷の服を選びに行くことになった。

めんどくさいから、ららぽーとの適当なアパレル系の店に行ってキレイめなカジュアルなコーデを数パターン選んでやった。

こいつは意外と手足長いから大体の物は似合うようだ。

選んでやったら

「これで雪ノ下に恥かかせず済むな、どうだ?似合うか?」

とドヤ顔、どんだけ好きなんだ。

でもドヤ顔が少しむかついたから高めの服で取り揃えてやった、金が無くなると涙目になってたが

 

「そういえば小耳にはさんだんだが、君は親から予備校代食拗ねているそうじゃないか?」

「貴様・・・どこでそれを!」

「結構ため込んでるんだろ?そのお金を使って例えばもう一工夫した服を買えば雪ノ下さんも惚れ直すと思うけどね」

そう言ってまたも高めの服を選んでやる

 

「うーんこれなんかもいいね、あとこのアウターを組み合わせると・・・ばっちりだな、雪ノ下さんきっと気に入ると思うよ?」

「マジか!おい!ATMはどこだ?」

ATMに連れて行ったら嬉々として諭吉先生を何枚も引き出してさっきの服をさっそく購入してた。

少し心が痛んだが、焼肉の時は散々人の金で食ってたからそのお返しだ。

 

次の日の放課後、部活に行こうとする葉山の元へまたもや雪ノ下よりメッセージが飛んでくる

 

『比企谷くんが回転寿司というところに連れて行ってくれるそうなのだけれど作法が分らないわ、カウンターでなら何度か経験があるのだけれど回転って何がどう回転しているのかしら?全くわからないわ、教えなさい』

もうなんなんだよ・・・知らなすぎるだろ・・・それに回転寿司に作法なんてあったのか?

頭を抱える葉山、面倒なので回転ずしの概要と作法とかそんなものはないと返すとまたすぐ返答が来る

 

『あなた、そんなこと言って私を陥れるつもりなのでしょう?比企谷くんの前で恥をかかせ呆れさせ別れさせるつもりね?残念ながらあなたの思い通りにはならないわ、だって私は比企谷くんの人生を貰ったんだもの』

 

いや今はそういうことを言っているのではなくてだな・・・

葉山は深いため息をつく、スマホの画面にはいかに自分が比企谷八幡を好きなのかや、彼との出会いがいかに運命的かののろけが次々と表示されている。

読めば読むほど赤面するような内容である。

 

いい加減止めないとと思いとりあえず返信する

『比企谷からすると雪ノ下さんの『初めて』の体験を見たいんだと思うよ、男からすると女性を驚かせたり喜ばせたりしたいものだからね、わからないところはその場で聞けばいい』

 

『あなた、私が失敗して笑いものになったらどうするの?比企谷くんに恥をかかせたいの?』

誰も笑わないから、比企谷も笑って許すから、むしろ雪ノ下さんが初めての経験で悪戦苦闘するとこを見たいんだと思うよと懸命になだめるメッセージを送ると

 

『わかったわ』

 

これを最後にメッセージの嵐は止まった。

葉山がふと時計を見ると

「勘弁してくれよ・・・」

すでにかなりの時間が経過しており部活はもう終わる時間である

 

「雪乃ちゃんと比企谷をブロックした方がよくないか?いやしたらしたで大変なことになりそうだな・・・

部活に行ってもいないのにものすごく疲れた葉山はそのまま自宅へと帰ろうと教室を出ると、比企谷がものすごい勢いで走ってくる。

 

「よかった、まだいたか」

いったいなんなんだと顔をしかめる葉山

 

「雪ノ下がカラオケに行きたいと言っている、女受けする曲を教えてくれ」

またも無茶振りである

「君が好きな歌を歌えばいいだろ・・・もう帰るから邪魔をしないでくれ」

 

「俺にプリキュアのオープニングをメドレーで歌えってのか?材木座とだったら朝まで歌える自信はある!でも相手は雪ノ下だぞ!絶対引かれるにきまってるだろ!お前ぐらいしかいないんだよ、女受けする愛してるーだの好きだーだのその手の雰囲気出せる曲知ってるの!」

 

「君は本当に・・・」

と葉山はあきれ顔になっていると

 

「すまん!この通り!」

とまたもや土下座である、もうそろそろ部活にいった連中が帰ってくる時間だ、見られたら今度こそ変な噂が立ちかねない

「わかった、俺の負けだよ・・・んじゃあちょっとレクチャーしてやるからカラオケ行くぞ」

「マジか!すまん、さすがみんなの葉山様だこのお礼はあとで精神的に・・・」

「それって結局何もしないってことだろ・・・」

 

というわけで一緒にカラオケにいく比企谷と葉山、女受けしそうな曲を数曲教えることにした。

あとデュエット曲も何曲か教えたのだが、男同士でデュエットは大変気持ちが悪い、なんかカラオケボックスの扉の窓に見知った赤い眼鏡がいたような気がするが幻覚だろう。

色々諦めた葉山は窓の外の赤メガネが鼻時を出して倒れているのを見て見ぬふりして比企谷とデュエット曲を歌い続けるのだった。

 

デート当日の夜葉山のスマホは鳴りっぱなしであった。

 

『雪ノ下が回転寿司を見て感激していてな?遊園地みたい!って子供みたいにはしゃぐんだよ!その姿といつもとのギャップがな?わかるだろ?んで食べた皿を戻そうとしてな?違うぞと指摘したら真っ赤になって・・・それがまたかわいいんだ!わかるだろ?それとな・・・』

 

『生まれて初めて男の人としたわ、由比ヶ浜さんとは何度かしたことあるのだけれど、やっぱり比企谷くんとするのはまた違うわね、途中疲れて息切れしてしまったのだけれど比企谷くんって意外と太いのよ?それで攻めてくるので私もそれに答えるように頑張って喉を使ったの・・・ああこれはカラオケのデュエットの話で歌声の話なのだけれど』

 

どうやら結果は別に知りたくもなかったのだが大成功だったそうだ。

 

『あとやっぱり作法はあったじゃないの、カウンターに蛇口が付いていたからてっきり手を洗うものだとばかり思っていたのだけれど比企谷くんから「危ない!」って手を掴まれて本来はお茶用のお湯が出るところだって教えてもらったわ、危うく火傷するところだったのだけれど比企谷くんからギュッと手を握ってもらえたから不問にするわ』

 

こんな感じで歓喜とも感謝とも自慢ともとれるようなメッセージが二人から次々に来て読むのもめんどくさい状況になっていたのである。

 

「むしろ比企谷の方がはしゃいでるだろ・・・わかるだろ?って何度使うんだ?俺にはお前がわからん、そして雪乃ちゃんはなんか微妙に卑猥じゃないか?大丈夫だよな?カラオケボックスはカメラ付いてるからな?下手なことして停学とかやめてくれよ?」

 

正直他人の惚れ気話なんぞ興味ないのだが、この二人がやらかしてしまうと自分にも被害が来るのでハラハラである。

怪しいことしていないかの確認の為二人に対する文句をぶつくさと言いつつ律義に次々と飛んでくるLINEを読む葉山であった。



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第六話

数日後

「雪ノ下と二人っきりで毎日もっとゆっくりと話をしたいのだが」

またもや比企谷からの相談である、ただ今度は教室で普通に直接話をしてきた。

 

「君がみんな見てる前で話しかけてくるなんて珍しいな」

若干うんざり気味で比企谷を見る葉山

 

「込み入った話は、直接話したほうが早いことに気がついたんでな」

いやそれ普通わかるだろ?

と言うか今聞かれてるのは全然込み入った話じゃないだろ

 

「それでだ、さっきも言ったが二人っきりでゆっくり話す方法何かないか?」

こいつはアホなんだろうかといった視線を送りつつ葉山は答える

「普通にすればいいだろ」

「部室だと由比ヶ浜や小町や一色がいてなかなか難しくてな、たまにとか戸塚とか来るし、いや別に小町やあいつらが邪魔というわけでは無いんだ、雪ノ下が喜ぶしな?戸塚が来てくれる時なんて天にも昇る気持ちだしな、材木座?知らない名前だな・・・ともかくまあそれはそれとしてだ、どうすればいいと思う?」

 

「・・・家に帰った後電話でもすればいいだろ」

呆れを通り越してあきらめ気味に言うと

「ばっかお前、雪ノ下に電話とか恥ずかしくて出来るわけないだろ!すこしはボッチの気持ちも考えろ、用もないのに何となく電話とかハードル高過ぎんだよ」

 

今のこいつのどこがボッチなんだろうか、俺の周りより遥かに濃い面子が取り囲んで、二人でゆっくり話す時間がないと相談に来ているヤツがなぜボッチなのだろうか?

 

と、もはやあきらめ気味になった葉山のスマホに着信がある

「ちょっと失礼」

と一旦廊下に出て電話に出る、相手は雪ノ下

「どうかしたのか?学校で電話なんて珍しい」

「ごめんなさい、比企谷くんとのことで相談があるものだから」

なにか重要な要件なのかと思い少し焦った葉山だったが、またかとうんざり気味な口調になる

 

「・・・なんで電話してくるんだ?LINEでいいだろ」

「文章だけど長くなってしまうということが分かったから電話で簡潔に済ますことにしたのだけれど」

したのだけれどじゃないだろ、なんだこのカップル、思考がリンクでもしているのか?

 

葉山は少しイラついて頭をがりがりとかく

「比企谷くんと二人っきりでゆっくりお話がしたいのだけれど難しくて・・・あ!別に由比ヶ浜さん達が邪魔というわけでは無いの、むしろ由比ヶ浜さん達の事も大好きだしお話しするものとても楽しいのよ?でも比企谷くんとももっとお話ししたいの、比企谷くんの声をもっと聴きたいのよ?あなたにこの気持ちわかるかしら?」

 

やっぱり相談内容が一緒だよ・・・マジで思考がリンクしてないか?

何か妙な契約儀式でもしてるんじゃないだろうな?

黙っているとのろけが始まりそうなのでさっさと済ますことにする

 

「そもそも俺に電話する前に比企谷に電話して話せばいいだろ」

「それができたら苦労しないじゃない、何より理由がないのに電話するなんておかしいでしょう?」

何この似た者同士、今のあんたらの方が十分おかしいよ

 

「例えば優美子なんかは・・・」

「三浦さんと一緒にしないでくれるかしら?私と彼女は住んでる世界が違うのだから」

ぴしゃりと言われてもういったいどうすればいいのかと頭を悩ませる葉山

「それなら、例えば具体的に比企谷と何を話したいんだ?」

 

「愛の言葉ね」

 

恥ずかしがることもなく即答とは、俺が言うのもなんだが君たちは爆発した方がいいんじゃないかな?

 

「んじゃその愛の言葉とやらを言い合うゲーム的なものをやろうと電話すればいい、人に聞かれたら恥ずかしいとかそういう理由で、例えば片方ずつ言って言葉に詰まったら負け、罰ゲームとか、実際愛してるゲームってのがあるからそれ参考にすればいい」

 

「愛してるゲーム?興味あるわ、ぜひ詳細を教えなさい」

「・・・ネットで動画検索すればいい」

「あなたは色んな女性と年中そういうゲームをしているんでしょう?いいから教えなさい」

 

本当にこの二人は俺をなんだと思っているんだ?

名誉毀損で訴えてやりたい気分だ。

まあ訴えてもこの二人が相手だとひどい目に合わされるのはこっちだなと半ば諦め気味に参考になりそうな動画を雑に検索する。

ちなみに検索の一番上に来た動画はいかにも私たち青春してます的な陽キャな女子と男子がキャッキャウフフしている動画だった、雪乃ちゃんがものすごく嫌いな感じの動画だよなこれ?

でもまあいいか、めんどくさいしとアドレスを教える。

 

「今アドレス送ったからそれ見て参考にしてくれ」

「・・・あら?あなた、たまには役に立つのね」

と電話を切られる

「たまにはって・・・ハー、もう引企谷といい雪乃ちゃんといいなんで二人はこうも・・・」

葉山は額に手をやるとよろよろと席に戻る

 

席に戻ると比企谷がまだいた

「ずいぶん長かったな、うんこか?」

 

「・・・まあそんなところだ、ところで君は雪ノ下さんから電話が来たらちゃんと出るんだろうな?」

「当たり前だ、すべてを捨ててでも電話に出る」

電話一本に重すぎだろう・・・

 

「んじゃ心配ないな、ほら席に戻れ受業が始まる」

いぶかしげな視線を送る比企谷を無視して午後の授業に取り組むことにしたのだった。

 

次の日、比企谷は二限目になってようやく登校してきた模様、比企谷の目は腐っているどころかゾンビ化していた。

 

「葉山、昨日の夜雪ノ下から電話が来てな?あいつとゲームをやってたんだよ!結局俺が負けたんだが幸せな気分だ、んでそのままずっと話をしてな?気がついたら日が昇っていた、おかげで俺はほぼ徹夜だ、少し仮眠をとったので遅刻してしまったが、雪ノ下も少しは寝ているはずだ、徹夜はお肌に良くないからな」

 

来て早々こちらに報告してきた、マジか何時間電話してるんだこいつら?

それで遅刻したのか、今年は受験なんだぞ?大丈夫か?

やけに興奮気味な比企谷を見て若干引き気味になる葉山

 

「スマホって充電しながら電話すると熱くなるのな、初めて知った」

うんそうか、そして君の席はあっちだ

「雪ノ下が愛の言葉ゲームをやろうと言ってきてな、交互にずっと言い合うんだが、さっき使った言葉を使ってはだめなんだ」

そのゲームを提案したのは俺だ、でも細かいルールや勝負の詳細なんぞ聞きたくないのだが

 

「雪ノ下の口からあんな言葉が聞けるなんて・・・」

ニヤニヤ顔がとても気持ち悪い

 

「なあ、年齢的にもう結婚って出来るんだよな?高校卒業と同時に結婚してもいいかな?」

こいつはバカなのか?

「あのな?言わなくてもわかると思うが今の時点で結婚とか色々問題しか起きないからな?」

 

「それは分かってるんだが・・・分かりたくない、雪ノ下も恐らく同意見だ、式はこの間の教会にしようかと思ってるんだが、平塚先生呼んだらやばいかな?でも呼ばないと後が怖いしな」

 

ダメだこいつ早くなんとかしないと・・・

ほとんど寝てないのでハイになっているんだろうか、比企谷は妄言を延々と垂れ流す機械と化しているようだ。

兎に角現実に戻さないと

「のろけはもういいから、ほら授業始まるぞ、受験あるんだからしっかりしないと、結婚よりも大学落ちたら大変だろ?」

 

「そうだな、落ちたら専業主夫の道でもいいかもな、雪ノ下はどんなことがあっても一緒と言ってるしな」

「バカなこと言ってないで席に戻れ、先生来るぞ」

 

まだなにか言いたそうな比企谷を追い返す葉山、因みに罰ゲームの内容は弁当に苦手なもの入れたからそれを残さず食うことらしい、授業終了と同時に比企谷が教えに来た。

だから俺に報告に嬉々として来るな、後ろにいる赤い眼鏡と三年になって増えたその同志達が鼻血噴出しているぞ。

 

雪乃ちゃんは学校に遅れるのを覚悟で弁当作りに励んでいるとか、昼には間に合わせるらしいが学校よりも弁当を作ることを優先とかどうなってんだ?

そもそも雪乃ちゃんから弁当作ってきてもらってる時点で罰ゲームの意味はないんじゃないだろうかと二人の将来がとても心配になる葉山だった



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第七話

八幡、雪乃はバカップルを超えたバカなカップルになりそうな気がしてならない。

尚、原作だとこの時期雪乃は実家にいますが今作品では一人暮らしに戻っている設定です。


また数日後の昼休み、今日は珍しく葉山は一人で食事をしていた。

一人でもやはり女子からは見られているのか黄昏ているのがかっこいいだの、声をかけてきなよとかボソボソとしゃべってるのが聞こえる。

 

ちなみに今日は比企谷も教室で食事をしていた、珍しいと思ったら今日締め切りのレポートをまだ書いていなかったらしくパンをかじりつつスマホをいじりながらレポートを描いてる模様、ずいぶんと器用だな。

 

ブラックコーヒーを飲みつつサンドイッチをほおばっているとまたもやLINEが入る、相手は雪ノ下、電話で簡潔に済ますんじゃなかったのかとコーヒーを飲みながらだるい気持ちで見ると

 

『初めては彼氏の部屋でというのが一般的らしいのだけど、比企谷くんの家にお邪魔して自分から体を求めに行ったらふしだらな女と思われないかしら?私のマンションでも良いのだけれどそれだと余計にいやらしい女と思われそうで嫌だわ』

 

「ぶはっ!ゲッホ!ゲッホ!」

 

吐き出した時にコーヒーが気管に入ったらしい、咳き込みが止まらない

「葉山君大丈夫?」

クラスの女子たちが集まってくる

「大丈夫、ちょっと咳き込んだだけ、ゲッホ、だから、ゲッホ」

めちゃくちゃ苦しいがなんとか女子たちをなだめて席に戻らせる、雪乃ちゃんはいったいどうしてしまったんだ?

確かにこんなの誰かに聞かれたら大変まずい、LINEで聞くのは正解だが、なぜそんな考えに至ったのか理由を問いただすと

 

『大学は新入生の女性を次々と犯すような下卑た男どもの巣窟なのでしょう?もちろん私はそんなのとは接点を持たないつもりなのだけれど、もしそんな男どもにハイエースに連れ込まれたらきっと抵抗できないでしょう、だからそうなる前に比企谷くんに私のすべてを捧げたいの』

 

んなわけないだろ・・・大学を何だと思っているんだ?そしてハイエースとか具体的過ぎるだろ

 

『この間比企谷くんと遊戯部に行った時に見たのよ、『清楚な彼女が大学生になった結果』というラノベが置いてあって、比企谷くんはラノベが好きでしょう?それにこれからの参考になるかもと思って、でも私がラノベとか恥ずかしいから黙って持ってきてしまったの、そして読んだら戦慄したわ』

 

いやそれただのエロ本なんじゃないか?勝手に持ち出すのもどうかと思うが、その前に彼らは学校になんて物持ち込んでいるんだ、ともかく雪乃ちゃんから取り上げてあとで説教だな。

と考えていると

 

『私がもしそうなったら男どもの一族郎党皆社会的に抹殺して私も死ぬ覚悟だわ、でもその前に比企谷くんに私のすべてを捧げておきたいの、すべての穴を・・・わかるでしょう?』

 

分からないよ!一族郎党とか怖すぎだろ、そして穴とか具体的すぎるだろ!エロ本読みすぎだ!

声にならない突っ込みを入れていると今度は比企谷からである

 

『なあ、そういえば普通付き合ってどのくらいでするもんなんだ?家でやりたいが家は小町が何か仕掛けてそうだし雪ノ下のとこはあの人が絶対何か仕掛けてるだろうしな、やっぱラブホがいいのか?未成年で入ってもばれないもんか?最近二人っきりになると雪ノ下のことをやけに意識してしまってな、お前だったら余裕で知ってるだろ?もう本当にどうにかなってしまいそうなんでな』

 

「そういえばってタイミング良すぎだろ・・・大体君はそんなこと考える前にさっさとレポートを終わらせろよ・・・」

というかこいつら本当に俺が知ってる比企谷八幡と雪ノ下雪乃なんだろうか?

だんだん自信が無くなってきた。

比企谷を見るとレポートを書く手が止まってないようだ。

「頭の中は雪乃ちゃんでいっぱいかよ・・・よくレポート書けるな」

 

頭を抱える葉山だったがここは学生らしくさせないとと思い直し

 

『とにかく俺たちは今受験が一番大事だ、そういうことは受験が終わってから考えようか?受験前にそういうことして勉強が手につかなくなるとかまずいだろ』

 

と二人に送るとすぐさま返信が来る

 

『でもキスぐらいはしたいのだけれど、キスと言えば恋人同士ではどんなキスが一般的なのかしら?この『清楚な彼女が大学生になった結果』によると彼氏とは軽いフレンチキスだけど下卑た男どもとは無理やりとはいえいきなりディープキスをしているわ、本来はどっちなのかしら?』

 

『キスもまだなんだよなぁ、ああお前はキスなんて日常茶飯事だろうから鼻で笑うかもしれんが俺たちにとっては真剣な悩みなんだよ、俺達?雪ノ下はまだ誰ともキスしてないよな?どうなんだその辺?もしかして俺だけ?』

 

どんだけキスしたいんだよ、まあわからんでもないけど!本当こいつら勘弁してくれよ、特に比企谷は俺をいったい何だと思っているんだ?

いろいろ言いたいことはあるがそこは葉山ぐっとこらえると

 

『キスについて知りたければここがお勧めだ、あとは各自解釈してやればいいと思うよ?でも時と場合を考えてね』

とイラついてる感情を見せることなくさわやかなメッセージと共に「やる夫で学ぼう!キスのあれこれ」のアドレスを教えてあげた。

これキスうんぬんもそうだがキスの歴史や文化背景も知れて面白いんだよね。

 

ただのハウツー動画よりもあの二人にはこういった学ぶ系の方がいいだろ、きっと正しいキスとはという議論からスタートして真面目に考えてなかなか実行に移さないだろう、あの二人はなんだかんだで真面目だし。

 

因みにスマホだとAAが崩れてしまうのが難点だがアプリを入れれば普通に見れる、読み物としても面白いのでキスをする予定がない人でも大変おすすめだ。

 

二人にメッセージを送った後比企谷を見るとレポートそっちのけでスマホを凝視している、アレ結構面白いからな、でも君はレポートをやるべきだろ。

 

その様子を見て教えたことをちょっぴり後悔する葉山だったが、5分もたったころに比企谷のスマホに着信があったようだ、何事か話していたが突如表情を変えてスマホを文字通り放り出しどっかに走って行ってしまった。

 

「いったいどうしたんだ?」

葉山は放り出されたスマホを拾い上げるとちょうど着信が来る、相手は比企谷の妹の小町

 

知らない間柄ではないので代わりに出ることにした

「もしもし」

「あれ?おにいちゃん?」

「残念、比企谷はこれ放り出してどっかに走っていったよ、俺は葉山だ」

 

「ありゃりゃ、葉山先輩でしたか!全くお兄ちゃんは・・・んじゃ伝言お願いします!今日小町たちはこれからちょっと用事があって海浜高校に行かないといけなくて、放課後も部活でられないってお兄ちゃんにいっといて下さい!雪乃先輩には伝えたのでそっちは大丈夫です!ではよろしくお願いします!」

 

「うん、わかった伝えておくね、生徒会頑張ってね」

「はい!あと結衣先輩も手伝ってくれるそうなので連れて行きます!そういうことでよろしくです!」

 

と電話を切られる

 

ははあ成程、だと今奉仕部の部室にいるのは雪乃ちゃんだけか・・・もしかして比企谷が走っていったのって雪乃ちゃんに何かあったのか?

着信履歴を見ると確かに雪ノ下雪乃とある、スマホも届けないといけないしちょっと心配になったので奉仕部の部室へと行くことにした。

 

部室の扉の前まできてノックをするが返事がない

 

「?おかしいな?」

明かりはついているので間違いなく中にだれかいるはずだ

 

「失礼するよ」

と扉をガラッと開けると

 

「違うわ、目を閉じるのよ?」

「すまん雪ノ下、あと顔の角度はクロスするようにだろ?いくぞ・・・」

「ええ・・・ん・・・もう一回やりましょ?」

「次はこっちに挑戦しようぜ?」

「ふふふ、あなたの口、マックスコーヒーの味がするわ?」

「お前の口は紅茶の味がする、しかし本当にキスの間は手のやり場に困るな」

「あなたの好きなところでいいのよ?」

「んじゃここだな」

「きゃっ、んもうエッチ・・・ん・・・」

 

バタン

 

扉を閉める葉山

「なに学校でキスの実践やってるんだよ・・・しかもノックの音にも気が付かない上に俺にも気が付かないとか夢中になりすぎだろ・・・」

どうやら実践してみましょうと雪ノ下が比企谷を呼び出した模様、扉の向こうではチュッチュッとした音が微妙に聞こえてくる。

今度は唇を啄むキスを実践してる模様、葉山はアドレスを教えたことをちょっぴり後悔しため息をつくとドアをガンガンと強くノックをする

 

ガタガタ

 

中から慌てて移動するような音が聞こえると

「どうぞ」

雪ノ下の声がする

 

「しつれいするよ」

と葉山は中に入る、二人を見ると微妙に顔が赤いし汗をかいているようだ。

こいつら夢中になりすぎだろ、心の中で突っ込みを入れつつ

「比企谷、忘れ物」

とスマホを渡す。

 

二人とも無言でこちらを見ている、いや睨んでると言った方がいいのか、葉山は再度ため息をつくと雪乃に向かう

 

「雪ノ下さん、遊戯部の連中から聞いたんだが、本が一冊無くなってるそうだ、もしかして『間違って』持ってきてたりしないかな?俺が返しておくから」

葉山は「間違って」の部分を強調しそう言うとハッとなる雪ノ下

 

「な、なんのことかしら?私は・・・」

「俺は今から遊戯部に行く用事があるから、もし『間違って』持ってきてたらついでに返しに行くけど?」

と今度は若干強めに言うと、雪ノ下はカバンを漁り一冊の本を取り出す

「・・・そ、そうね、そういえば、この本間違って持ってきてしまったの・・・ごめんなさい、私が返しに行くわ・・・」

 

「それには及ばない、俺が返してくるからね?」

と本を受け取る葉山、幸い本にはカバーがしてあり比企谷にはわからない模様

 

「なんだその本?」

比企谷が聞いてくる、葉山は本をポケットへ入れながら

「ちょっとした実用書だそうだ、カバーもかかっててわからないからね、間違いやすいんだろ」

適当にごまかすとそれよりと比企谷へ向き直る

 

「そんなことよりだ、あのな比企谷?レポート出さないとやばいぞ?今日締め切りなの忘れてないよな?俺は見せないから自分でやれよ?」

と言いうと

 

「比企谷くん?ちゃんと卒業できるのよね?留年したらわかってるわね?これでは安心してさっきの続きもできないわね!しばらくお預けね!」

どうやら雪乃ちゃんはお怒りの模様

「すまん!雪ノ下!この通り土下座でもなんでもするから!それだけは!」

「土下座する暇があったらレポート書いたらどうかしら?・・・そういえばあの男にも土下座してたそうね?噂を聞いたわ?」

とこちらを睨みつけてくる

 

あ、そういやそうだったな、なんかどうでもいいので忘れてた。

「ちょっとまて雪ノ下、それはだな・・・」

という比企谷を制して

「比企谷くんは黙ってて?葉山くんどういうことかしら?あなた比企谷くんになにか・・・」

 

もうこの人多分俺が何言っても聞かないだろうな、それにデートの為のアドバイスとか力説したら多分比企谷が色々かわいそうになるなと思う葉山

 

「それは男の約束でね、言うことはできないし別にやましいことはない、比企谷も納得している」

「あなた、そんなことを私が信じるとでも?」

と追及しようとしてくるので色々めんどくさくなる葉山

 

「例えばこの本の中身は俺は興味もないし読みたいとも思わない、『間違って』持ってきたんだろ?あるべきところに代わりに返しに行くだけ、そもそも君たちをどうこうするなら既に色々やってる、違うかい?」

 

と件のカバーがかかっている状態のエロ本を雪ノ下へ見せる

「なあ、その本、本当になんなんだ?俺にも読ませろよ」

とその様子を見ていた比企谷が興味深そうに言ってくるので

 

「実用書といっただろ、これは恋愛のハウツー本だよ、雪ノ下さんは比企谷との付き合い方をいろいろ考えてるみたいだからね、遊戯部に何故か置いてあったらしい、もしかしたら連中も色々考えてるのかもな」

と適当な作り話をする

 

「そっか、雪ノ下すまんな、苦労を掛けて」

「え・・・ええ、そうね、一般的な恋愛なんて知らないですものね、そうね、葉山くんの言う通りなの、ごめんなさい」

 

よしこれで一件落着だ

「んじゃ比企谷、レポート忘れんなよ」

と鎮火した爆弾に火をつけて部室を出る、後ろでは雪乃ちゃんがまたお怒りモードになって比企谷へ説教を始める。

 

しかしさっきの甘い雰囲気とは一転、比企谷はお叱りを受けているようだが、雪乃ちゃんもキスに夢中になっていたくせにどの口がそういうんだろうか?

しかもエロ本に触発されてとか、でもこの事態招いたのはやっぱ自分だよなぁと葉山は脱力感と後悔に襲われながら遊戯部の部室へと向かうことにする。

 

「失礼するよ」

遊戯部には相変わらず材木座と相模秦野がいた。

葉山は開口一番

「全員正座」

にこやかにその場にいた全員を正座させ、雪ノ下から没収したエロ本を見せながらこういうのは学校に持ってこないように、特に材木座は受験があるんだから問題を起こすなということを説教するのだった。

ついでに比企谷にも見せるなと言っておいた、見られて中身がこれだったら色々大変なことになりかねないからである。

 

教室に戻る途中廊下で三浦に遭遇

「あ、隼人久しぶり」

 

本当に久しぶりである、前のグループで未だに接触があるのは結衣と戸部ぐらいなものだ。

姫菜は3年になってからは教室の隅でほかの女子と俺と比企谷をねっとりとした視線で眺めている

一度話しかけたら、ものすごく残念そうな顔で

「なんでヒキタニ君と同じクラスになったのにそっちに話しかけないかな・・・これって運命だよ?」

と言われる始末、しかも同志とやらが周囲にいて皆一様にうなずくので接触しないようにしている。

因みに全員メガネである。

大岡と大和はどこのクラスになったかもしらん。

 

「なんか最近疲れてない?大丈夫?」

「え?そうだね、ちょっと比企谷達がね・・・」

と言ったとたん

「あ?ヒキオが隼人になんか迷惑かけてんの?ちょっとあーし文句つけてくる、どこ?部室?」

と三浦は怒り出す。

 

その様子に疲れ切った葉山は感激のあまり

「優美子・・・君だけだよ、俺の味方は・・・」

と三浦を抱きしめてしまう

「え・・・ちょっと隼人・・・こんな所じゃ・・・」

 

ちょうどその場にいた生徒たちも騒ぎだす

 

「葉山君が三浦さんを抱きしめてる!」

「三浦さんにはかなわないよ・・・」

「すごい!これスクープじゃね?」

「けっリア充め!」

 

「ちょっと隼人・・・ダメ・・・」

と身をよじる三浦にハッとなる葉山

 

「あ、ああゴメンね、ちょっと疲れてね、もう大丈夫」

「・・・隼人・・・疲れてるんなら今日あーしが癒してあげようか?」

「学生の常識の範疇ならな」

 

というわけで放課後二人は一緒に遊びに行くことになった。

 

ちなみに教室に戻った際、先に戻っていた比企谷に

「リア充はすげぇな、人前で抱き合っちゃうんだからな」

と皮肉交じりに言われたので

 

「君たちが部室で何をしようが勝手だが、人が入って来ても気が付かないのはどうかと思うけどな!」

とこちらも皮肉交じりに言ってやると

「え・・・もしかして・・・みてた?」

とたんに目が泳ぎだした、いい気味だ。

 

ちなみに比企谷のレポートは間に合わなかったらしく廊下で先生に土下座しているのを見た。

いきなり土下座とか普通の人はビビるだろ・・・

その後教室で一人猛烈な速度でレポートを書いていたところ見るとどうやらなんとかなるようだな。

 

夢中になるのは結構だがやるべきことはやれよと思うと

「じゃあね比企谷、がんばれよ」

と葉山はさわやかに言うと背後に恨みがましい目つきを感じながら廊下で自分を待っている三浦の元へ行くため教室を後にするのだった。




「やる夫で学ぼう!キスのあれこれ」
これ面白いです、キスに関する色々なことが知れるのでSS書く人の参考にもなります。


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第八話

その後もことあるごとに葉山のスマホには質問やらなにやらが飛んでくる、特に比企谷がやばい、高校三年生という大事な時期ではあるが男女とも体は大人であるし、性欲も旺盛である、特に比企谷の場合は相手は学校一の美少女、しかも恐らく比企谷が何をやっても受け入れるレベルであることは想像に難くない。

 

しかも雪ノ下は一人暮らしである、黙っていると盛りのついた猿のように・・・いやまあたとえが悪かった、とにかく薄い本のようなことを毎日実行することになるのは間違いない。

 

今日も比企谷から雪ノ下のいい匂いに耐えられんだの、雪ノ下からは受験に影響が出ない正しい性行為とはだのどう返答していいかわからないような質問がバンバン飛んでくる。

最もそれに対して葉山は律義に返答をしてしまうため余計に質問が加速する結果となっていた。

 

無視をしようものなら、やれ既読無視だの、返事が遅いだの送ってきて、挙げ句には直接電話がかかってくるのである。

 

試しに雪ノ下からのLINEを無視してみた事があるが、夜にも関わらず電話がかかってきて

「あなた?無視するとはいい度胸ね、こちらは困っているのよ?困っているといえば、昔チェーンメールなんてのがあったわね?あれ解決したのは誰だったかしらね?彼のおかげよね?私が困るということは間接的に彼にも迷惑がかかるのよ?そもそも私と彼はお互いの人生を・・・」

 

開口一番ものすごく怖い、そしていつの間にかのろけにシフトするのである、そしてその電話は永遠に止まらない。

 

面倒なので上の空で適当に相槌をうつと

「あなた本当に聞いているの?」

と言ってくる。

 

だから俺じゃなくて比企谷と話せよ!

でも今の人の話を聞かないラブラブぶりからすると雪乃ちゃんと話しているのばれたら俺は比企谷に弁解の余地もなく殺されるんじゃないだろうか?

 

ともかく放置してたら受験勉強なんぞそっちのけになりそうな勢いである、どちらかが落ちてしまったりすると恐らくもう片方も故意に浪人するとか言い出しそうだ、そしてその結果陽乃さんが動いて・・・

 

最終的に自分も色々手伝わされ平穏な生活は送れない可能性が高い。

大学は一人暮らしをする予定なのだ、めんどくさいしがらみから解放されたいという気持ちはある。

「やっぱ高校の時は俺があの二人を見てないと駄目だよな・・・」

 

なんとかなだめつつ肉体的接触はキス程度にするよう説得を繰り返す毎日であったが、流石に限界はある、部室に二人っきりだと恐らく歯止め役がいないのでキス以上に発展する可能性が高い、流石にあの二人も学校でどうこうはしないとは思うが何がきっかけでそうなるのかわからないのである。

 

小町に話して協力してもらおうかと思ったが、この手の場合、障害があると逆に燃えるのが定石である。

あからさまな監視がついてしまうとそれをくぐり抜けたくなるのが人の性なので、本人たちが自然と出来ない雰囲気になる様にしないといけない、無論二人の仲は今までどおりの状態でである。

 

「あの二人お互いのこと好きすぎるだろ・・・一体どうしたらいいんだ?」

無理難題を抱え込んで廊下で一人ぼーっと外を見ていると

「隼人君、ちょっといい?」

 

聞き覚えのある声に呼ばれる、振り向くと由比ヶ浜が三浦と立っている。

「結衣に優美子かどうした?」

 

同じクラスになった為か二人はよく一緒にいることが多い、でも人間関係は変化しているようだ、今まで優美子の後ろにいる事が多かったが今は結衣の方が積極的になることが多くなっている。

 

ともかく結衣は何か話があるらしい

「もし隼人君が優美子と付き合ってるみたいな感じになってたとして「ちょちょっと、結衣?恥ずかし「優美子?ちょっと黙ってて?」ゴメン・・・」優美子と仲のいい女の子がどういう感じで接してきたらそっちとも仲良しになれるかな?もちろん優美子とその人は仲が悪くならない方向で」

 

これって比企谷達のことだよな?アレに介入するなんて無理ゲーってやつでは?

あと優美子は立場弱くなりすぎだろう・・・前は平気でジュース買ってきてとか言ってたのになぁ・・・

 

諦めさせた方が結衣の為ではと思った葉山だったがここで一つひらめきが宿る

 

「うん、そうだね、その人たちに遠慮せずできるだけ長い時間一緒にいるといいと思う、自分のことをよく見てもらうってのは大事だからね、裏であれこれ画策するのが一番良くない」

うん、言ってて自分が凄く嫌になったな、俺って屑だなぁ・・・

 

「そっか・・・遠慮しちゃうのが良くないのか・・・」

由比ヶ浜はうんうんとうなずいている

「そうだね、特にその仲のいい女子と今まで以上に仲良く接するのが大事じゃないかな?そうすれば男の方は二人を同時に見ることになるからね、必然的に結衣のことも見てくれるようになると思うよ?」

 

「そっか!隼人君!ありがとう!優美子、あたし部活いくから!」

「ちょっと結衣!あーしとカラオケに行くって・・・」

「隼人君と二人っきりで行けばいいじゃん!割引チケットはペアだからちょうどいいし!じゃーバイバーイ」

 

結衣は走っていった、そして顔を真っ赤にした優美子が一人残されている

「・・・でもさ・・・」

一人ブツブツとつぶやいている

 

とにかく、これであの二人も過度な接触は控えるだろ。

結衣が積極的になれば二人っきりという状況も起きにくくなるからな。

なにより雪乃ちゃんと結衣が前のようにべたべたしていれば比企谷も接触は避けるだろう

 

陽乃さんが知ったらまた揉めるかもしれんがまあいいか!多分雪乃ちゃんと比企谷がどうにかするだろ!よしこれで当面の問題は解決できた。

なんかゲスイ作戦な気もするが肉欲におぼれて浪人するよりは遥かにましだ。

 

晴れやかな顔になる葉山だったが

「隼人・・・あのさ・・・」

優美子のことを忘れてた。

 

「ああ、そうだね優美子、また二人っきりで遊ぼうか?」

「うん!」

去年よりもいい笑顔をするようになったなと思いその笑顔に癒やされながら一緒に遊びに行くことにしたのだった。

 

数日後

『由比ヶ浜さんが前のように部室に毎日顔を出してくれるの、親友と恋人両方が常に一緒にいるのよ?あなたにこの素晴らしい気持ちがわかって?』

と歓喜に満ちたLINEが飛んできた。

うんそうなると思った、でもそういうことは俺じゃなくて別な人に言うべきじゃないかな?

 

『由比ヶ浜が来てくれたおかげで部室に百合の花が咲き乱れているのだが、いや由比ヶ浜の事は嫌いじゃないし雪ノ下と仲良くしているのはいい事なんだが、雪ノ下と二人っきりになる機会が激減してしまった、これは受験勉強をしろという神の啓示か?なあ?俺はどうすればいいんだ?』

 

高校生の義務を神の啓示と言うかこいつは、君は勉強しろ、雪乃ちゃんと同じ大学に行くんだろ?

 

しかしやっとこれで正常化されたとホッとする葉山であった。

 

由比ヶ浜効果は絶大だった、それからほとんどキスだの性行為だのといった質問はなくなり、バカげた質問メッセージもなくなっていった。

実際のところどうかはわからないが、たまに三人で歩いているところを見ると健全なお付き合いをしていると信じたいところではある。

幸いにも陽乃さんからの追及は無い模様、あの人こっちにかまうの止めるようにしたのだろうか?

 

材木座からLINEが飛んでくる

『八幡が全く構ってくれなくなった・・・そんなにあのおなご共の方が大事なのかよ!こうなったら我の封印されしアカシックレコードを解放するしかあるまい!』

 

なんだ?何か余計なことするんじゃないだろうな?

そのなんとかレコードってのはなにか聞いてみるもイマイチ要領が得ない、ともかく余計なことをして雪乃ちゃんの怒りを買わないようにと釘を刺しておいたが・・・

 

一抹の不安を覚える葉山だったが、この時材木座を問い詰めておけばよかったと後々後悔するのである。



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第九話

陽乃さんもポンコツになっております。
まともなのは葉山のみ、大変です。


遊戯部の部室にて

 

「八幡は昨日もあのおなご共と一緒に遊びに行くとか、我を放置しすぎであろう!」

ドンと握りこぶしをテーブルにたたきつける材木座

 

「あのーちょっとやめてもらえませんか?うるさいですよ?」

「そうですよ、それにあの人達に割って入るのって無理でしょう?」

 

材木座は怒りをあらわにしているが相模と秦野は白い目で見ている。

「ええい!黙れ!我はこの秘蔵の禁書を用いたプロジェクトYを実行する!」

と薄い本を懐から出す

 

「ちょっとまたそんなもん持ってきて」

「そうですよ、この間葉山先輩に怒られたばっかりじゃないですか」

抗議の声を上げる二人に対し不敵に笑う材木座

 

「ムッフッフ、これは以前のような代物とはそもそもジャンルが違うのだ!そしてこれは作戦にとても重要なアイテムなのだ!」

 

「さっきのプロジェクトYって奴ですか?いったいなんなんですか・・・」

と材木座が持ってきた薄い本を受け取り読む二人

「・・・これってあれですか?ま〇マギの同人の百合本じゃないすか」

と二人が怪訝な顔をしているとノックをする音がする

 

「めずらしいな、入部希望者か?」

と相模が扉を開けるとそこにいたのは雪ノ下だった。

相模はそのまま硬直してしまう

 

「財津君から呼び出されたのだけれど、なんの用かしら?比企谷くんと由比ヶ浜さんとお話しするのに忙しいのだけれど、さっさと要件を言ってくれるかしら?」

 

「あんたいったいなに始めようとしてるんすか!」

秦野が叫ぶ

 

「ヌッフッフ、雪ノ下殿、由比ヶ浜殿と今まで以上に仲良くなりたいとは思わぬか?」

机に両肘をつきゲンドウスタイルになった材木座は言う

 

「何を言っているのかしらこの男は?帰ってもいいかしら?」

と帰ろうとする雪ノ下に

 

「ちょっちょっと待つのだ、まずはこれを読んでいただけぬか?」

と先ほどの同人誌を見せる

「・・・なんかこの黒い髪の女の子は私に少し似てるわね・・・こっちのピンクの紙の子は活発そうで由比ヶ浜さん似?かしら?」

と本を開く雪ノ下だったが読み始めてすぐ本を閉じる

 

「あなた、こんなものを読ませてどういうつもりかしら?〇されたいのかしら?」

怒気が半端ない、あまりの怒りのオーラに相模も秦野も足がすくんでしまう

 

「ま、まあ落ち着くのだ、良いか?雪ノ下殿の回りの女子の中でやたらと仲がいい二人組とかおるであろう?」

「・・・それがどうしたのかしら?」

「その二人が手を繋いでいるのを見たことは無いか?」

「・・・あるわね、それとこれと何の関係が?」

 

「その二人この本のような関係であるぞ?」

というと雪ノ下はバカにしたような顔で

「あなたの妄言に付き合ってられないわ」

そういって席を立つが

 

「待つのだ、例えば由比ヶ浜殿は友達にしてはやけに距離が近いとは思わぬか」

「・・・そうね・・・確かに近いわ・・・」

「であろう?由比ヶ浜殿としては親友の定義としてこの本のような関係が当たり前なのだよ、だから近い」

「・・・そうなの・・・?」

若干不安げな表情になる雪ノ下

 

「そうだ、我はおぬしら二人を見て少し不安になってのう、由比ヶ浜殿があんなにアピールしているのに手も繋がない、とても由比ヶ浜殿が不憫になってな、雪ノ下殿は我が言うのものなんだが人付き合いの幅が狭い、だから親友ができても常識がわからないと思ってな、我が注意喚起をするためこうやって来ていただいたわけよ!」

「そんなこと知らないわ・・・」

「まあ、ほれ我はその手の情報にも詳しい、これを差し上げるので勉強されるといいぞ?」

と先ほどの同人誌を指さす

 

「でもこの手の本を持っている事は由比ヶ浜殿に言わない方がいいであろう、女子同士の常識を知らなかったとか由比ヶ浜殿からあきれられるぞよ?」

「わかったわ、他にも持っていたら見せてもらえるかしら?」

「無論だ、あと八幡にも内緒にしておいた方がいいぞ?俺と由比ヶ浜どっちが大事だとか言われたら困るであろう?」

 

「そうね、そんなこと言われてしまったら私どうしたら・・・」

頭を抱える雪ノ下

「さしずめまず由比ヶ浜殿とこのような関係になることを目標にしたらよかろう?八幡は黙っていても一緒にいてくれるでな?何しろ人生を・・・」

 

と材木座が調子に乗って話を続けると

「あなた?それ以上言うのをやめなさい、私たちの告白を汚すつもりかしら?そう言えば前にLINEで私たちの告白のこと知ってると書いてたわね・・・やっぱり物理的に脳から消去しないとダメかしら?」

雪ノ下がものすごい目つきで睨んでくる

 

あまりの怖さに足がすくむ材木座

 

「・・・ま、良いこと教えてもらったし不問にしておくわ、とりあえず、これはいただくわね、あなたは参考になりそうなこの手の本を定期的に私によこしなさい」

そう言うと雪ノ下は出て行った。

 

ほっと安堵のため息をつくと三人だったが

「あんたは一体何を考えてるんですか!」

相模が叫ぶ

 

「ヌフッこれであの氷の女王は由比ヶ浜殿に夢中になるであろう、そうなると八幡は必然的にあぶれる!これで前のように一緒に遊ぶ時間ができる!これぞプロジェクトY(百合)ちなみにあのおなご二人のイニシャルとかけておる!我天才!」

 

「この人ほんとバカだな・・・」

「遊ぶことより受験でしょう・・・」

高笑いをする材木座に呆れ顔の遊戯部の二人であった。

 

~~~~~~

 

材木座君からの妙なLINEの後、注意深く三人を観察していたが、特に変わったことはないようだった、いつも通りベタベタしている模様、強いて言えば学校にいるときは雪乃ちゃんと結衣はよく手を繋いでるようだ、二人の距離がいつもよりなんか近いような気もするが・・・

 

『我の秘伝のアカシックレコードを展開した!これで、かの氷の女王も禁断の愛に目覚め、八幡は暇になるであろう!』

 

こんなLINEも飛んでくる、少し不安になって観察しているがあまり変化は無いようだが?

 

『毎日楽しくて仕方がない』

相変わらず雪乃ちゃんからはこんなLINEがバンバン飛んでくる、だからそれを比企谷に言えよ!

でも状況は悪くなってないようなので一安心していいのかなと思っていたのだがこれは大きな間違いだったようだ。

 

数日後

 

今目の前には陽乃さんがいる、帰宅途中にファミレスに連れ込まれたのだ。

しかも微妙に不機嫌だ、最近特にこの人の機嫌を損ねるようなことをした覚えはないのだが?

 

陽乃さんは終始無言だ、変わりに俺が料理をいくつか頼み、お互い一口食べた後陽乃さんはこちらを睨みつけてくる

「あのさー隼人、あんたなにか余計なことしてない?」

開口一番これである。

 

「なんのこと?全然わからないんだけど?」

「とぼけないで、雪乃ちゃんと比企谷くんのことよ!」

 

余計なこと?受験もあるので肉体的接触を避けるよう色々やったことなのだろうか?

キスしまくってるとか徹夜で電話で話をしたりとか?

キスに関しては俺のせいでもあるかもしれんが、大半は俺のせいではないだろう、二人の仲をどうこうしている訳でもないのに?

と頭に疑問符を浮かべる葉山に陽乃は声を荒げる

 

「一向に雪乃ちゃんの「初めて」が撮影できないじゃないの!」

 

は?この人何言ってるんだ?

「えっと、陽乃さん?どういう意味かな?」

「だから!雪乃ちゃんと比企谷くんは付き合い始めたわけでしょ?そうなるともうあの二人絶対やっちゃうでしょ!はたから見ても、もうあと一歩じゃない!だから内緒でカメラをあちこち取り付けたのに全然撮影できないの!」

あれ?この人こんなにバカだったのかな?

ってかあちこちってマンションの部屋中につけてるのか?

 

やっぱこの人なんか仕掛けてたか。

あきれる葉山

「前にそういうのは早いだのなんだの言ってたでしょう、俺たちは今年受験なんですよ?そんなのにうつつを・・・」

と説得しようとしたが

 

「ああでも言わないと学校で始めちゃう勢いだったじゃない!それに受験なんてのはわかってるわ!だからせめて二人っきりでいちゃいちゃしてるところでもいいから撮影したいの!でも比企谷くん全く雪乃ちゃんのとこに行こうともしないじゃない!代わりにガハマちゃんが頻繁に行くようになってるのよ?なんで?」

 

なんでと言われても・・・

「それは受験が近いから一緒に勉強とかではないのでしょうか?」

 

「これ見ても同じこと言えるの!?」

と陽乃さんスマホで動画を見せてくる、どうも件の隠しカメラで盗撮もとい撮影したものらしい

 

『由比ヶ浜さんは胸が大きくてうらやましいわ』

『あん、あんまり揉まないでよゆきのん』

『私のも揉んでいいのよ?』

『ゆきのん、最近なんか変じゃない?ちょっとコミュニケーションが過剰かなーって』

 

『あら?女同士これが普通なのでしょ?由比ヶ浜さんだって今までよく抱きついて来たじゃない?』

 

『そうだけど・・・まあいいか!んじゃお言葉に甘えまして、デヘヘーゆきのーん』

『ん・・・ウフフ、いまとっても幸せよ?』

『ゆきのん、あたしも・・・』

 

「・・・なんですかこれ?」

動画にはリビングでいちゃついている二人が映っている

「私が聞きたいわよ!あんたが余計なこと言ったんじゃないの?」

 

「俺が言ったのは雪乃ちゃんと仲良くしたらと言っただけで、こういうことをしろとは全く言ってないし、それに比企谷とのことがある前から結衣は雪乃ちゃんの所によく行ってたの知ってるでしょう?」

 

「そりゃ知ってるけどさ・・・なに?んじゃあ前からこういう仲だったってこと?これじゃまるでレズじゃん!」

と声を荒げる陽乃葉山は落ち着くようなだめる

 

「ちょっと陽乃さん落ち着いて、声が大きいですよ・・・大体雪乃ちゃんが同性愛者だったら比企谷とああいう仲にならないですよね?それにそういう性癖かどうかなんて一番あなたが知ってるでしょう?」

 

「知ってるわよ!だから困ってるんじゃない!これじゃいつまでたっても雪乃ちゃんの初めてが見れないじゃないの!」

バチーンとテーブルを叩く陽乃

 

もうこの人も勘弁してくれよ・・・

と頭を抱える葉山

「ともかく、そういうのは高校卒業してからと俺はアドバイスしています、陽乃さんも雪乃ちゃんを盗撮している暇があったら彼女の勉強を見てやるとかしたらいいでしょう?」

「あの子にはそんなの必要ないわ、それより今のままじゃ雪乃ちゃんが・・・」

「女子同士で多少過激なスキンシップなんてたまにありますよ、確かに学校でも手をつないでいたりしますがそれで比企谷との仲がどうこうなってるわけではないので安心してください」

 

最近性行為うんぬん等のLINEは来なくなったのだが、それでもやはり雪乃ちゃんからは男子が好みそうな流行りの~はとか比企谷からは女子が好みそうなデートスポットだとか流行りのスイーツを教えろだのは未だに来るのだ。

誰が見ても相思相愛なのは間違いない。

 

「あんたを信じていいのね?」

「嘘は言っていません、信じるかどうかは好きにしてください、んじゃ俺はこれで」

そう言うと葉山はファミレスを出ることにした。

 

因みにファミレスで飲み食いした分は払わずに出てきた。

「迷惑料ってことでいいよね」

そう言うと葉山は文字通りダッシュで家に帰るのだった。

 

しかしながら帰ってから陽乃さんからLINEが来ている。

『閃いたわ、なんかのお祝いって名目で雪乃ちゃんと比企谷くん達を呼び出すの、そして上手いこと部屋に二人っきりにさせて反応を見るのはどうかな?』

 

いい加減諦めてくれないかね?

 

『反応っていくら二人っきりにしても他の人がいる家でどうこうするはずないでしょう』

 

『だから、こっそりお菓子や飲み物にアルコールを混ぜるのよ!大学じゃよくあるのよ?目当ての女の飲み物にわからないようにアルコール入れてなんてね?実際スクリュードライバーなんてそういう目的に使われる飲み物だし』

 

なんだこの人怖すぎるだろ

『いくらなんでも未成年に飲酒は駄目ですよ!』

『大丈夫、私新歓コンパでアホな先輩に飲まされてねー、ほら、私酔えないでしょ?逆に相手潰して色んなドリンクの製法を根こそぎ聞き出したの、酔っても次の日になればすっかり元通りなんて便利なのもあるしねー』

 

この人の怖すぎだろ

でも飲酒は駄目だ

 

『飲酒は駄目です、今年は受験なんですよ?止めないとそっちの親に言いますよ?』

もうほっとけと思う葉山だったが陽乃はしつこく食い下がる

 

『ふーん、ファミレスであんた食い逃げしたよね?その分払ってあげたんだけど?逆に私があんたの親に言ってあげようか?そちらのご子息は食い逃げして会計を人押し付けて知らぬ存ぜぬなんですよー?ってね』

 

おいまじか、それは勘弁してくれ、この人の事だからあることない事事実を拡大して一部を切り取って話すだろ!

圧倒的にこちらが不利じゃないか!

 

何もかも諦めた葉山

『分かりましたよ・・・んで何のお祝いにするんです?』

 

『え?しらないわ?んじゃ適当にセッティングよろしくね!食べ物と飲み物は準備しとくから!』

 

「丸投げかよ!」

つい自室で叫んでしまう葉山、それは心配なった親が様子を見に来くるレベルであった。

 

次の日

「ったくあの人は妹の事となると本当に・・・しかもお祝いとかどうすれば?」

 

ぶつぶつ言いながら授業を受ける葉山、比企谷を見ると相変わらずニヤニヤして授業なんて上の空のようだ。

「頼むからしっかりしてくれよ?」

昼休み、一人で窓の外を見ながらボーッと考えてると教室に三浦と由比ヶ浜が入ってきた。

 

「隼人、今度結衣の誕生日のお祝いするんだけど・・・」

季節は六月も半ば、そう言えば!

葉山はポンと手を叩く

 

「結衣はヒキオ達に祝ってもらうらしいけどあーしあんま雪ノ下さん達と仲良くないし、別でお祝いするし、前のグループのメンバーでさ・・・」

と話を続ける三浦に

 

「優美子!やっぱり君は最高だよ!」

と抱きつく葉山

「わわわ!」

抱きつく二人を見て慌てる由比ヶ浜

三浦に至っては突然の事で気を失った模様

 

教室は大騒ぎになる

「葉山君が三浦さんを抱き締めてる!」

「えー!三浦さんじゃ勝ち目ないよ」

「うわっリア充はどこでも盛りやがって、TPOをわきまえろよ」

 

なんか最後に聞き覚えのある声がした気がするが、鏡で自分の顔見た方がいいとおもうよ。

 

気絶した三浦をお姫様抱っこする葉山

「保健室に連れていくから」

と教室を出る。

 

後ろでは大騒ぎであった。

保健室にて、三浦を介抱する葉山、しばらくすると三浦は目を覚ます。

「隼人・・・」

 

顔が赤いようだがそれよりもだ

「結衣の誕生日だけど比企谷達と祝おうよ、人は多い方がいいだろ?」

と説得にかかる葉山、三浦は何が起きてるのか理解出来て無いようだ。

「し、しつれーしまーす」

由比ヶ浜もおずおずと保健室に入ってくる。

「結衣、君の誕生会俺たちと比企谷達みんなでやろう」

 

「え?いいの?」

「優美子もそれでいいよな!」

の葉山はニコッと笑う

「う、うん!」

まだ理解が追い付いてない三浦は流れで頷くのだった。

 

「・・・すまん結衣、あとでちゃんとみんな呼んでお祝いやるから許してくれ・・・」

 

教室に戻る葉山、因みに比企谷へ誕生会のことを話すと。

「え?お前も?ってか三浦は大丈夫なの?雪ノ下と喧嘩したりしない?」

そこは大丈夫、もしもの事があったら俺がフォローすると伝えると渋々納得したようだ。

放課後今度は一色からLINEが飛んで来る。

『葉山先輩、マジでちょっと先輩と二人っきりにさせてほしいんですけど』

 

いろははまだ諦めてなかったのか?

ややこしくなるから諦めた方がいいと思うのだが

 

『それはそれとして、結衣先輩の誕生会わたしも行きますので』

え?大丈夫なんだろうか?

 

陽乃さんへ計画を伝えると

『ガハマちゃんの誕生会か、それなら雪乃ちゃんも比企谷くんもは断れないね!んじゃ私も行くから、会場は雪乃ちゃんのとこね!』

 

それからどうやったのかは知らないが本当に誕生会は雪乃ちゃんのマンションで執り行われる事になった。

 

「仕方ないから陽乃さんの言うとおりにしたけど、上手いこと阻止した方がいいよな、でもなんかめんどくさくなってきた」

ため息をついてがっくりと肩をおろす葉山であった。

 



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第十話

ポンコツ陽乃の大作戦、葉山は無論阻止します。
しかし酔っぱらった連中は暴走して大忙しです。


誕生会当日

 

「おい葉山」

 

「なんだい?比企谷?」

 

「この面子はどういう事だ?」

「どうって・・・君は彼女らに不満なのかい?」

 

「不満とかじゃなくてだな、なんか変だろ!戸塚とか!お前のとこの奴とか!何で呼んでないの!?小町なんて「お兄ちゃん男になるんだよ」とかわけわからんこと言ってたし!」

 

今現在、雪ノ下のマンションにいるメンバーは

雪ノ下、比企谷、由比ヶ浜、一色、三浦、葉山、陽乃の7人である。

 

どうやら小町ちゃんは陽乃さんが懐柔済みのようだ

「他の面子は都合がつかなくてね、いいじゃないか、ここにいるメンバーは結衣のことが本当に大好きな人ばかりなんだからさ」

 

「そうね、私は由比ヶ浜さんのこと『特別に』大好きよ?」

「あ、あーしだって結衣のこと大好きだし・・・」

「大好きって・・・えへへー」

照れる由比ヶ浜

 

「でも何で姉さんがいるのかしら?」

陽乃さんは先程からキッチンで何やら怪しげな液体の調合に勤しんでる模様

 

「ま、まあ陽乃さんも結衣のことを祝いたいんだよ、きょうの料理は陽乃さん特製だからね」

「そう?確かに姉さん珍しく張り切ってくれてるようだけど・・・」

しばらくすると陽乃さんが満面の笑みで色とりどりのドリンクを持ってくる、

「さーみんな!お姉ちゃん特性ドリンクができたわよー?」

あれが例の怪しいお酒か

 

「私の親友に乾杯!」

雪ノ下が音頭をとって乾杯をする。

 

「さーみんな!おねえちゃん特性のケーキよ?食べて食べて!」

これ絶対ブランデーとか入ってるよな、しかも通常より多く・・・

 

「おいしー、すごいね!ゆきのんのお菓子もおいしいけど陽乃さんのもすごくおいしい!」

「すごいし!」

「さすが雪乃先輩のお姉さんですね・・・っく!これではわたしのいいところが!」

 

「そう・・・確かにおいしいけど・・・」

由比ヶ浜や三浦は感激して叫ぶが一色は悔しそうにしている模様、雪ノ下は複雑な表情をしていた

 

「でもまあ、雪ノ下の作ってくれるお菓子のほうが俺の口には合いますね」

と陽乃のお菓子をほおばりながら比企谷は雪ノ下へ言うと

「比企谷くん・・・」

雪ノ下は恍惚とした表情で比企谷を見る。

 

「えーゴホン、今回は結衣先輩の誕生会なのでいちゃいちゃはまた別の時間にお願いしますね」

と一色

 

そんな一色をちょっとにらむ陽乃だったが表情をすぐさま変えると

「はいはーい、たっくさんあるからどんどん食べて!飲み物もたくさんあるからねー」

と料理も持ってくる

 

「喧嘩はやめてくれよ?・・・しかしあれ全部何がしかのアルコール入りなんだよな・・・」

陽乃の態度やおいしそうに食べてるみんなを見てなんともハラハラする葉山だった。

 

数時間後

 

案の定全員出来上がってふらふらになっている、葉山はノンアルコールのドリンクのみ渡されていたので素面である。

陽乃も配ってばかりで全く飲んでいない。

 

「ふふふ、さあ比企谷くんと雪乃ちゃんを寝室のベッドの上に運んで並んで寝かせるのよ!酔っ払って前後不覚になった二人はお互いの欲望をむき出しにして獣のようにお互いを求め合うの!カメラはベッドの真上にあるから!ベスポジよろしく!」

 

「・・・あの、その二人を運び込むのは俺がやるの?」

「は?当然じゃない」

 

「・・・ちょっとトイレ行ってきます」

くたびれた顔でトイレにこもる葉山は携帯を取り出しとあるところに連絡をする

 

「もしもし、葉山弁護士事務所ですか?○○さんいます?・・・どうも、実は家の父が伝え忘れたとかで・・・」

しばらく電話した後、葉山がトイレから出ると陽乃は携帯に着信がある

 

「うげーお母さんからだよ・・・はいもしもし・・・えー今必要?なんでよ!だってそれ明後日だって・・・んモーわかったわよ!はいはい今から戻ります!」

 

陽乃は舌打ちをすると

 

「将来のためだとかでお母さんに法律関係の書類書けっていわれてたんだけどなんかそれ今すぐ必要なんだって!あんたんとこに出すやつなんだけど!なんとかならないの?」

「俺がどうにかできるわけないでしょう・・・」

視線をそらして肩をすくめる葉山

 

「仕方ないわね・・・いい!さっき言ったことちゃんとやっといてね!撮った動画は勝手に転送されるから、あとで確認するからね!」

 

と不機嫌になりながら陽乃は帰った。

 

「やれやれやっと行ったか」

無論今の話は葉山の電話によるものである、こんなこともあろうかと仕込んでおいたのだ。

葉山の父は現在出張中である、その為こういった細かいことは本人に確認されることはないので、面倒ごとになりそうな場合は父の名前を使って回避しようとあらかじめ色々調べておいたのだ。

 

「とりあえず成功か、さて、一応比企谷は形だけでもやっておくか、陽乃さんいなくなったし雪乃ちゃんは移動させようとしたら起きて抵抗されたとか言って死角に転がしとけばいいだろ」

 

先日見た盗撮動画でリビングに仕掛けられたカメラの位置はある程度場所はわかっていた。

とりあえず比企谷をベッドまで運び寝かせることにした。

「んー?ん?」

比企谷が目を覚ましたようだ

「目を覚ましたか、んじゃこの計画もおじゃんだな、おい比企谷?大丈夫か?」

と比企谷をベットに寝かせる葉山、しかし考えが甘かった。

 

「んー雪ノ下?雪ノ下?いい匂いだ・・・」

と葉山の尻に手を回す比企谷

「おい、目を覚ませ!俺は葉山だって!俺にそんな趣味は・・・っとおい!」

 

無理矢理引っ張られベットに押し付けられる。

「なあ雪ノ下、そんなものは脱ごうぜ?」

と比企谷は葉山のズボンを脱がし始めた

「お、おい!まて!ちょっと!」

「雪ノ下の尻ってごつごつしてんだな・・・胸の方は俺がもみまくってお前の姉ちゃんより大きくしてやるから・・・」

と今度は葉山の上着の中に手を入れ始める

 

「おい!ちょっとやめろ!」

葉山の服は乱れて半裸状態である

「やめろって言ってるだろ!」

と葉山はベッドから比企谷を突き飛ばし床に転がす。

比企谷は目を覚ますことなく床に転がってそのまま寝てしまった。

 

「まったく・・・」

と服を直そうとする葉山だったが背後に人の気配を感じる、振り向くと三浦だった。

「隼人・・・」

「や、やあ優美子・・・ん!んぐー!」

三浦は葉山に飛び掛ると一気にディープキスをかます

「ん・・・隼人!好き!・・・ん・・・」

 

「ん・・・んぐー・・・優美子!ちょっと落ち着こうか?」

「嫌・・・隼人・・・」

と三浦は葉山を抑えまたキスをする

「んー、ん、ぷはぁ、マテマテ、落ち着け優美子、まずこの手をどけような?」

ものすごい力である、伊達にテニス経験者を名乗ってはいない。

「待たない・・・好きよ・・・はや・・・ん”ん”-」

唐突に口を押えトイレに走り出す三浦

「お”お”え”-」

「やれやれ・・・」

三浦はトイレで吐いているようだ

 

「まったく本当に・・・」

トイレで便器を抱えてグロッキーになっている三浦を床に寝かせる、因みに体を横にしとかないと吐いたもので喉が詰まるから仰向けは絶対禁止、足を少し開かせて倒れないように寝かせること、これ豆な?

 

寝室に戻った葉山、床転がってる比企谷を見ると

「既成事実、既成事実・・・」

うつろな目をした一色が比企谷のズボンを脱がしパンツに手をかけているところだった。

 

「まてまてなにやってんだ!」

「既成事実、既成事実・・・これが先輩の・・・」

 

パンツを脱がした一色は比企谷のモノ見て恍惚とした表情になっている

「えーっとこれを咥えるんでしたっけ・・・」

と一色が口を開いたので

 

「勘弁してくれよ!」

と葉山は一色を引き剥がす

「むーやめてくださいよー先輩のー咥えないと・・・」

「ほら、これが先輩のだから」

と皿に残っていたソーセージを一色の口に放り込む

 

「ん・・・んぐ・・・しぇんぱいのって意外と小さいんですね・・・まるでポークビッツですよ、私がフランクフルトぐらいまで大きくして出してあげますからね・・・」

とちゅぱちゅぱとソーセージをしゃぶる一色

 

「ふう、なんとかなったか・・・」

と雪ノ下達の様子を見に行くと

「まあ、こうなってるよな・・・」

 

そこにはほぼ裸になった雪ノ下と由比ヶ浜が抱き合っていた

「んふーヒッキーえへへへ、えっちー」

「比企谷くん・・・あなたって胸板がとっても厚いのね・・・」

 

「・・・まあこれはいいか・・・」

これに触るのはいろいろまずいような気がしたので放置しておくことにした。

「それじゃ片づけでもするか・・・」

阿鼻叫喚の地獄絵図になった会場を片付けにかかる葉山であった。

 

因みにまた誰かが動いて変なことにならないように一晩中テレビ見たりしながら起きてたのだが、朝になって目が覚めた雪ノ下からあらぬ誤解をかけられて叩き殺されそうになったので無理矢理比企谷を起こしてどうにか落ち着かせると言った一幕もあった。

 

後日、またもや陽乃さんにファミレスに拉致される

「・・・隼人・・・言いたいことわかるよね?」

「さて・・・俺にはなんのことやら?」

 

バンとまたもやテーブルを叩くと

「あんたと比企谷くんの絡みなんてどこに需要があるのよ!」

 

「ちょっと陽乃さん声が大きいですよ・・・」

ええ、なぜか後ろからものすごい視線を感じるんですよね、主に赤いめがねの・・・なんでいるんだ?

 

「それと!あんたのファーストキスとか別に見たくもないんだけど!」

「だから声が大きいですって・・・」

後ろからハヤハチのファーストキスとか聞こえるぞ・・・したのは優美子とだからな?

 

「お母さんにも怒られたんだけど!お酒飲ませるなんてどういうことだって!」

ウチの親父に軽く話したからな、父親経由で伝わったか?

まあざまあみろだな

 

「おかげでお母さんの監視の目が厳しくなって気軽に遊びに行けなくなったんだけど!どうしてくれるの?」

「知りませんよ、大学生なんだから勉強したらどうです?」

たしなめる葉山だったがお怒りモードに入った陽乃は止まらない

 

「雪乃ちゃんは相変わらずガハマちゃんと絡んでるし!」

「二人ともお互いを比企谷と思ってたみたいだからいいでしょう・・・」

「あんたが引き離せば・・・」

 

「陽乃さんは俺がああいう状態の雪乃ちゃんに触って無理に引きはがせと?もし雪乃ちゃんが俺を比企谷と勘違いして抱き着いてきたらどうすんです?」

 

「そうね、そしたらあんたを〇すわ」

「ほら、そんなのどうしろっていうんですか、大体初めから無理だったんだんですって、アルコールなんてリスク高すぎるし、結衣もいるからあの二人は一応卒業までは我慢すると思うけどね?だからあの二人に無理に干渉しない方がいいでしょう、それとも結衣を無理やり引き離して本格的に嫌われものになる?多分一生口きいてくれなくなるよ?それでもいい?」

 

「でも・・・」

と食い下がる陽乃だったが

「卒業したら幅も広がるからあの二人も色々開放的になって今まで以上に見せつけてくれると思うし、それにおばさんにばれた場合でも大学生ならば仕方がないと言ってくれるかもしれません、だからもうちょっと待ちましょう?」

と葉山が言うと

「・・・そうね・・・んじゃそうするわ」

ようやく納得してくれたようだ。

「それがいいと思う、カメラのことも内緒にしときますから」

 

そう言うと葉山は席を立って外に出ることにした。

今回はきちんと自分の分は払って店を出る。

「あの人のシスコンぶりも大概だよな・・・」

 

後日、葉山はお詫びも含めて再度由比ヶ浜の誕生会を開く、今回はカラオケボックスで健全な会である。

呼んだメンバーは陽乃を除く前回のメンバープラスいつもの面々である。

由比ヶ浜は二度も誕生会を開いてくれたということでうれしくて仕方ないらしいようで大いにはしゃいでいた。

前回の誕生会については雪ノ下だけが陽乃がアルコールを仕込んできたということを感じてはいたようだが他のメンバーは酔って記憶が飛んだらしく何が起きたか追及もされなかった。

 

因みに比企谷は雪ノ下と絡んだ夢を見ていたらしく

『雪ノ下の尻は柔らかいと思っていたんだが、実は硬かったりするのか?』

というLINEが飛んできたので

 

『君はバカなのかな?』

と返信しといてあとは無視することにした。

なんかこっちに何かをものすごく言いたそうな顔してるけど無視だ無視。

 

ただこの時撮影された葉山と比企谷の絡みが流出、クラスの後ろからねっとりとした視線とひそひそとした話声を聞くことになり、また落ち着かない日々を過ごす羽目になるのだった。

 



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第十一話

後日、海老名が珍しく葉山に話しかけてきた。

 

「隼人君、動画見たよ?」

「・・・何のことかな?」

多分あれのことだろうとは思ったが話題にもしたくないのでとぼける葉山

 

「愚腐腐腐・・・とぼけないでよ?ヒキタニくんとベッドで激しくヤッてたでしょ?みんなものすごく捗ったって喜んでたんだよ?」

ほらやっぱりアレだ、どうせあの後陽乃さんに接触して手に入れたんだろう、あのタイミングで姫菜があそこにいるなんてなんというバッドタイミングだ

 

「・・・この際仲間内で見るのは仕方がない、でも拡散するのは止めてくれないか?比企谷達にも迷惑がかかる」

陽乃さんも気軽にデータを渡すなよ・・・また面倒ごとが起きたじゃないかと頭を抱える葉山、

「あーそれは大丈夫、見るときは私のスマホでしか見せてないからさ、それよりいいもの見せてもらったからお礼がしたいなと思って」

 

「お礼?別に・・・」

その話題に触れないことがお礼だと言おうとしたが、海老名から衝撃の事実を伝えられることになる。

 

「んーなんか動画貰った時に聞かれたんだけど、雪ノ下さんと結衣が百合に走ってるとか?なんか知らないかって聞かれたんだけどさ、実は思い当たる節があって、ちょっと確信が持てなかったからその時は知らないって答えたんだけど・・・」

「・・・詳しく聞こうか・・・」

 

海老名はニヤっと笑うと話を続ける

「この間の結衣の誕生会の時ざ、ざざ虫?君が雪ノ下さんにこっそり薄い本を何冊か渡してたんだよね、雪ノ下さんはお金握らせてたから多分代わりに買わせてたのかもしれない」

薄い本?と首をひねる葉山

「それで最近とらの〇なで彼を見たんだけど、彼が買っているジャンルがことごとく黒髪ロングの女の子と明るいギャルっぽい女の子が絡んでるものばかり買っていたんだんだよね・・・百合本ってやつ?」

 

「そういえばアカシックレコードを解放するだとか雪ノ下さんに見せるだとかなんかLINE来てたな・・・」

「へえー・・・それちょっと見せて?」

と海老名にLINEの会話内容を見せた

 

「このアカシックレコードって同人誌のことだと思うよ?多分構ってくれなくなったからって雪ノ下さんを百合本で洗脳して結衣とカップルにしてヒキタニくんと距離を置かせようとしたんじゃないかな?」

「・・・ええ・・・なんて余計なことを・・・」

 

「私も最近あの二人の距離ずいぶん近くてちょっと変だなって思ってた、でも雪ノ下さんとヒキタニくんの関係全然変わってないよね?百合って男が混じるのはタブーなんだけど・・・でもそのおかげでいいハチハヤが見れたんだけどね」

 

「それは全く関係ない、ともかく情報ありがとう、これは内密にね、その動画のこともね」

「どういたしまして、大丈夫、私は口硬い方だから秘密にしとくね?もちろん隼人君とヒキタニくんの仲のことも秘密にしておくからさ」

そういうと海老名は自分の席に戻っていった。

 

「なんか変だと思ってたが材木座君が発端か・・・陽乃さんにこの件ばれると材木座君が社会的に抹殺されるよな・・・」

 

放課後葉山は遊戯部へ行くことにした。

中からは材木座の声が聞こえる、葉山はノックもせずに扉を開けると開口一番

 

「全員正座、理由はわかるよね?」

 

「ほら!また俺達とばっちりですよ!」

「もうこの先輩マジ勘弁してくださいよ・・・」

と相模と秦野は材木座を睨み嘆きつつあきれ顔

 

「ふーん?なんのことやら?我なーんも・・・」

としらばっくれる材木座だったが、葉山は材木座の肩を思いっきりつかんで迫る

「そういうのはいいから、同人誌の件だよ?わかるだろ?」

「あ、あれは~その~ほら!雪ノ下殿が~」

と下手な言い訳をしようとする材木座を制してさらに迫る葉山

 

「あのね?マジでこれ以上問題起こさないでくれるかな?いや本当にね?マジで、フォローする俺の身にもなってくれるかな?」

顔は笑顔だが目が全然笑ってない、葉山の手には力が入り材木座の肩をメリメリとつかむ、

「ヒー、も、申し訳ございませんでしたー!!!」

材木座は恐怖を感じてその場で土下座する

「君たちもだよ?二人もいてなんで彼の暴挙を止められなかったのかな?」

完全にとばっちりである

「い、いやそれは・・・」

 

「連帯責任だ、そこに正座」

葉山は言い訳なんて聞きたくないとばかり冷たく言い放つ

「ほらやっぱり俺達とばっちりだ!」

相模と秦野は叫んで材木座の隣に正座、結局この日またも葉山の説教を受ける三人であった。

 

ただ今回は雪ノ下から同人を取り上げようにもすでに結構な量の同人誌を渡していたらしく回収するには大変な量、その為

『材木座君から変な本貰っただろ?ああいうのはごく特殊な事例だから一般的ではない、彼には制裁をくわえておいたからね、結衣とは普通に仲良くすること、陽乃さんにばれたらめんどくさくなるよ?』

とLINEで忠告するに留めるしかなかった。

無論返答は

『なんのことかしら?由比ヶ浜さんは私の親友よ?・・・でもご忠告感謝するわ』

とわかってるのかどうなのかわからない返事が返ってきた。

 

「やれやれ、もうこれ以上は勘弁してくれよ?」

その後、雪ノ下と由比ヶ浜を見ると前よりはべたべたしていないように見えた。

一応忠告は受け取ってくれたらしいがそれでも普通よりは明らかに二人の距離は近い。

 

「今まで通り普通の相談のLINEも来るし、一応は大丈夫かな・・・」

でもこれ以上問題が起きたら色々諦めようかなと思う葉山であった。

 

月日は流れ受験シーズンが近くなると比企谷と話すことも減ってきた、ねっとりとした視線もその余裕を失ったのか最近感じてない。

「大学に行ってしまえば俺はお役御免だな」

しかしながら男どもからメッセージは未だにバンバン飛んでくる、特に材木座がうざったい

 

『八幡が二人にかかりっきりで我はいつも放置!なあ葉山殿!我はどうすればいい?寂しくて死ぬ』

いや君、比企谷達は受験勉強だろ?それに君は毎日遊戯部の方へ顔出してるんじゃ?

大体どうすればと言われても受験勉強しろとしか言いようがないのだが。

 

『隼人君!やべーわ俺予備校行ってても全然やべーわ』

戸部、お前は勉強しろ

 

『ダメ元でスポーツ推薦狙ってみたけどやっぱり駄目だったよ、でも大学に行ってもテニスは続けたいな、葉山君もサッカー続けたい?』

戸塚、君だけが一番まともだ、比企谷が結婚してくれという気持ちも大変わかる

 

『葉山先輩!先輩が逃げないように連絡先確保しといてくださいね!絶対に既成事実作るのでその時は協力よろしくお願いします!』

いろは、君は何を言っているんだ?

それに何故俺に言ってくるんだ・・・

 

『ねえ隼人・・・最後にさ・・・』

そうだな優美子、でも君とは最後にはならないつもりだ

 

『あー息抜きにはちはやが見たいなー』

・・・・君とは最後にしたいかな?

 

『高校生の雪乃ちゃんの初体験を動画に収めることが出来たはずなのに・・・これからに期待だね、その時はあんたも協力しなさい』

この人まだ諦めてないのかよ、そして勘弁しろ!

 

受験の結果はなんとか皆志望校に合格した、葉山も念願かなって一人暮らしをする事となる。

比企谷や雪ノ下は葉山とは違う大学になった。

彼らもアパートを借りて一人暮らしである。

 

案の定いきなり同棲するとか言い始めたので葉山は両親達が卒倒するから止めておけと釘をさしておいたのである。

でも今後どうなるかはわからない、後は自己責任に任せるしかないだろう、これ以上は彼の知ったことではない。

 

因みに今年のプロムでは最後に比企谷と雪ノ下カップルのダンスが披露された、これは二人への忖度であることは想像に難くない。

 

ただ、雪ノ下とのダンスが終わった後、由比ヶ浜が飛び入りで比企谷とダンスをし、それが終わった後は今度は一色もと、事情を知らぬ者にとっては何が起きてるのか分からない事態となっていた。

 

「波乱万丈だった高校生活も終わりだな」

ダンスも終わり皆がやがやと騒いでいる時に葉山は最後だしと、雪ノ下へ挨拶でもしようかと近づく、すると材木座が雪ノ下となにか話しているようだ、手には本らしきものを持っている

 

「葉山殿に死ぬほど怒られたので持ってきたくは無かったのだが・・・これが百合本では邪道と言われてるおぬしが希望している例のジャンルのものだ」

 

「本当に色々あるのね・・・私をこうしてしまったあなたには責任があるのよ?結局あなたの目論見外れてしまってごめんなさいね。私と比企谷くんの仲はこんなもので離れたりしないわ、でもこれのおかげで由比ヶ浜さんと今まで以上に仲良くする方法が分かったんですもの、それには感謝ね」

 

遠目に見ると材木座が本を渡しながらなにやら話しているようだ。

「?なにしゃべってるんだ?それにあの本はなんだ?もしかしてアレが例の?」

雪乃ちゃんはそれを手にすると結衣の元へ走り出し読ませているようだ。

なんか結衣が顔を赤くして手をブンブンふっている、なんか揉めているようだが?

最終的には二人で泣きながら抱きあっていた。

 

あの二人仲良かったけど比企谷のことがあるしな、流石に大学違うしこれでお別れなんだろう。

 

「これで最後か、俺も連中とはこれで最後だし、アレは見逃してやるか」

そう思うと少しだけ感傷的になる葉山だった。

 




これで終わり?
いえ最後に爆弾が待っています。


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第十二話

卒業し大学へと進学する葉山、一人暮らしを開始することになり、アパートを借りる。

引っ越しも終わり一息ついているとLINEが入ってきた。

 

『久しぶりで悪いのだけれど引っ越しが終わって落ち着いたら比企谷くんにすべてをささげる予定なの、でもそのまえに予習をしたいのだけれど予習の為に最適な動画を教えなさい』

 

久々にメッセージが来たと思ったらこの子アホなのか?

比企谷に任せればいいだろと返信しておく、今度はその比企谷からメッセージが飛んでくる

 

『久しぶりだな葉山、突然で悪いんだがやるときはゴムはいつつけたらいいんだ?はじめからつけてたら結構間抜けだよな?』

半ば呆れているとどんどんメッセージが飛んでくる

 

『避妊具は女性が用意するものなのかしら?でも比企谷くんのサイズが分からないわ、どうすればいいのかしら?』

『やっぱ男がリードしなきゃだめなのか?ゲームの知識は役に立つのか?』

『比企谷くんも一人暮らしをするから比企谷くんのアパートでするのだけれど、どう誘ったらいいのかしら?女性から誘うとふしだらと思われて嫌われたりしないかしら?』

『なあ、どういう風に雰囲気もっていけばいいんだ?いきなりがばっとやるのは体が目的とか思われたりしないか?』

交互に次々とメッセージが入ってくる。

 

こいつらアホなのか?

だんだんめんどくさくなった葉山であるが次のメッセージを見て驚愕する

 

『ファーストキスは私がもらったのだから比企谷くんの童貞は由比ヶ浜さんがもらうべきなのかしら?』

 

は?

 

『お前にとっては日常茶飯事だろうが童貞の俺がいきなり二人を相手ってのは難易度がベリーハードすぎる、一人ならまだしもどうやってそういう雰囲気に持っていくんだ?いきなり脱いでおくってのは変だよな?今からドキドキが止まらんのだが、やはり一回抜いといた方がいいのか?お前の時はどうだったんだ?大至急教えろ』

 

は?は?

あれ?いったいどうしてこうなったんだ?

イマイチ理解が追い付かない

 

『隼人君、ちょっと恥ずかしいけど男の人の視点での意見が欲しいんだけどさ、初体験が二人同時とかどうなのかな?私も初めてはヒッキーがいいなと思ってたし、ゆきのんは構わないって言ってるんだけど・・・なんか百合?とか?ゆきのんが中二から親友とはかくあるべきとか言われてもらったっていうやけに薄い漫画本を読まされて・・・女の子同士がアレするのが描いてあって・・・その百合って男が入るのは本当は邪道なんだけどヒッキーは特別だから問題ないとかで、その漫画にも女の子同士絡んでいるところに男の人も絡んできてて・・・よくわかんないよ』

 

おれもよくわかんないよ・・・

そこではっと気が付く葉山

「材木座君がプロムの時渡してたあの本、やっぱり姫菜が話していた同人誌とやらだったのでは?そういえば姫菜は男が入るのはタブーだとか言ってたな」

大体の経緯はつかめた

「結衣に百合の男が絡む本を見せて洗いざらいぶちまけたのか!そしてそれを受け入れてしまったのか?それでこれから比企谷も交えて3人で?」

 

どうも危険な方向へとシフトしてしまったようだ。

「もうどうしようないなこれ、なんだかめんどくさくなったな・・・」

 

葉山はおもむろにとある人物に電話をする。

「こっちは引っ越しが終わった、うん、うん、そうか・・・んじゃあこれから一緒に飯食いに行こう」

電話を切るとまだLINEが届いている

ちらっと見ると、既読無視はマナー違反だとか送られてきているようだ。

 

それを鼻で笑い3人をブロックする

「ふっ、何がマナーだ、そっちは倫理的にどうなんだって話だよな、さて、優美子と飯に行くか!」

静かになったスマホ片手にそろそろ夕方に差し掛かる街へと繰り出す葉山だった。

 

半年後、陽乃のLINEに雪乃からのメッセージが届く

 

「あれ?雪乃ちゃんから?めずらしー!どれどれ・・・」

『姉さんにこんなことを聞くのはどうかと思うのだけれど、比企谷くんが最近お尻ばかり責め立てるの、これって大丈夫なのかしら?ゆるくなったりしないかしら?今まで聞いていた人が私をブロックしてしまったので仕方なく聞くのだけれど』

 

唖然とする陽乃にさらに続く

 

『それとやっぱり八幡と暮らすことにしたわ、シェアハウスというところに引っ越したの、結衣さんも一緒よ?家に帰ると親友と彼がお帰りと言ってくれるの、毎日が本当に楽しくて仕方ないの、もちろん夜の方も三人一緒よ?それに今年からやりたいことたくさんあるの、高校の時にやれなかったこと、本当にたくさんあるわ、今からとても楽しみなのよ?姉さんにこの気持ちがわかるかしら?・・・ごめんなさい、わからないわね、それと引っ越し先は教えないのであしからず、とにかく八幡は避妊も兼ねているからとお尻ばかり、でも勉学の方も疎かにしてないので安心して?それはそれとして本当にお尻大丈夫なのかしら?結衣さんと締め付け具合を比べるなんて言って際限なく突いてくるのよ?そうやって二人とも毎日お尻を限界まで責められて私も結衣さんも立てないぐらいへとへとになるの、最近は高校の時の制服を着てしようってリクエストされるの、昨日なんかは高校の時の制服で下着を穿かないで一日過ごせなんて言われてたのよ?その格好で私が台所に立つと、穿いてないものだから料理中に八幡がお尻を直接責めてきて、立つのもやっとなのに今度は前をペニスバンドをつけた結衣さんに責められて料理どころでは無くなって大変だったの、それでね・・・』

 

と、延々と性生活を送りつけてくる

 

「雪乃ちゃん!なにやってるの!?」

理解が追いつかなくなり大学構内で叫びだす陽乃。

比企谷、雪乃、由比ヶ浜に直接電話をしたが全く出ない、LINEも同様、返ってくるのは雪乃からの

「それでお尻は大丈夫なのかしら?」

のみである、その為葉山に何故こんなことになっているのかと問いただす電話をする

 

「はい、葉山ですが・・・はい?雪乃ちゃんが?三人で?へー・・・いえ俺はなにもしりませんよ?・・・いや本当に知らないですって、大学も違うし・・・だからそんなに心配なら自分で・・・なんで俺が?・・・比企谷に聞けばいいでしょう・・・え?出ない?知りませんよ・・・すみませんが今忙しいんで・・・あーはいはい」

「お待たせ、隼人、ん?電話?誰から?」

「ああ、ちょっと身内から、大したことじゃないよ?でもまたかかってきそうだから電源切っとくか」

「大丈夫なの?」

「大丈夫、さあ優美子、行こうか」

 

今頃陽乃さんは状況把握の為あちこち駆けずり回ってるんだろう、高校の時はこちらが散々引っ掻き回されたわけだが俺たちはもうあのころとは違う、戸部から聞いた話だと比企谷は春休みの間車の免許取ったらしいし、今度はどう動くのやら。

少しだけクスリと笑う葉山、それを不思議そうにみる三浦だった。

 

 

しかし他人事と思っていた葉山だったが比企谷達が借りたシェアハウスは実は葉山のアパートの真裏にあったのだった。

 

 

週末

「優美子、このアパートの一階が俺の住んでるとこ」

葉山は三浦を自分のアパートへと連れてきていた。

なんで連れてきたのかといえば理由は一つである、むろん三浦もそれは分かってて勝負下着である。

 

「へー、意外と普通なんだ」

「まあね、もっと高級っぽいの期待した?こんなもんさ」

そう言うと葉山は部屋の扉を開ける

 

「よう、お帰り」

バタン

 

急いで扉を閉める葉山

「あれ?今ヒキオいなかった?」

「優美子にもそう見えた?そんなはずは」

 

もう一度部屋の扉を開けると

 

「ごめんなさい、ちょっと説明させてほしいのだけど」

バタン

 

再度扉を閉める葉山

「今の雪ノ下さんだよね?」

「・・・逃げよう、優美子」

と葉山がその場から離れようとするとバーンと内側から扉が開き

 

「ゴメン隼人くん!緊急事態で・・・って優美子?あ・・・そっか邪魔しちゃってゴメンね」

「結衣!あんた何やってんの?!」

驚く三浦、諦め顔になった葉山は仕方がないと行った顔で

 

「もう分かった!話を聞くよ・・・」

 

部屋に入るとやはり比企谷と雪ノ下もいる。

勝手に冷蔵庫からお茶を出してくつろいでいる模様。

 

「君たちどっから入った?」

「そこのベランダの窓、鍵掛けないのは不用心だぜ?一階なんだから鍵かけとけ」

 

比企谷、君は不法侵入って言葉知らないのかな?

「ごめんなさい、実は姉さんに私の愛の巣がバレてしまったの」

愛の巣?しかも私のと言ったか?

「それであの人が平塚先生と乗り込んできてな、あの先生しばらく見てない間にパワーアップしてた」

 

窓の外からウオーと言う叫び声が聞こえる。

葉山がカーテン越しに外を見ると

「アレ平塚先生か・・・」

「ヒキガヤー!キサマ!私はハーレム作れなんて一言も言っておらんぞ!!出てこい!説教してやる!」

裏のシェアハウスは窓が空いているのか、ここまで声が聞こえる

「雪乃ちゃーん?隠れても無駄よー?」

「アレは陽乃さんか?」

この人もかなりの大声を上げている。

 

「宅急便ですと言ってたからドア開けたらあの人たちがいてな?急いで閉めたんだが平塚先生がドアを蹴飛ばして入ってきやがった」

 

「大丈夫なのかそれ?」

「大丈夫じゃない、取るものもとりあえず逃げたんだが、車止めてるところが家の前なんでな、とりあえず逃げるところがここしかなかったんで逃げさせてもらった」

 

「なんで俺がここにいるって知ってるんだ・・・まさか・・・」

自分がここに住んでるのを知ってて引っ越したのか?

「まさか、単に偶然だ、お前がここにいるってのは戸部から聞いた」

戸部、余計なことを・・・あとで説教だな

と考えてると三人でなにやら相談をしている

 

「どうしようかしら?流石にここに住むわけにはいかないわよね?」

「とりえず遠くに逃げないとな、車取ってくるからその間あの二人を家の中に釘付けにする必要がある」

「ヒッキーどうするの?」

「こういう時の頼みの綱がいる、奴を使う」

とどこかへ電話する比企谷

 

「・・・よう、実はちょっと困ったことになってだな、家に来てほしいんだが・・・そう引っ越し手伝ってもらった所だ・・・ああそうだ、お前が雪乃に見せたっていう同人も持ってこい・・・何で知ってるかって?普通に雪乃から聞いた・・・は?名前で呼ぶのは当り前だろ?俺の彼女だからな・・・うるせぇ!なんでお前を名前で呼ばないといかんのだ!いいからさっさとこい!」

 

「比企谷、今のはもしかして」

「ああ、材木座だ、あいつらに引っ越し手伝ってもらったんでな」

あいつらってことは遊戯部の二人もか?今年受験じゃなかったか・・・とばっちりうけてばかりで大変だな

としばらくしてると比企谷の携帯に材木座から着信がある

 

「八幡?なんか恐ろしい顔をした女人が二人もいるんですけど!!おぬし今どこにいるの?!どうなってる・・・」

電話の向こうでバタバタ音がすると

「比企谷くーん?おねえちゃんだよー今どこかなー?」

陽乃が携帯を奪ったらしい、かなり怖い声がする。

 

「あーお久しぶりです、そこにいるそいつ、実は雪乃と結衣を今そいつが持ってる本で同性愛者にしたてようとしてましてね?今更気が付いたんで説教しようとしたんですわ、なんで代わりに説教してあげてください、あともう一回そいつに代わってください」

 

「・・・ふーん・・・」

材木座に代わる

「八幡?なんかこの雪ノ下姉上殿がめっちゃ怖い顔で睨んできてるんですけど!あと平塚先生が!なんかシャドウ始めてるんだが!我殺されるんじゃないのか?どうしてくれるのだ!」

材木座はものすごいおびえようだが

 

「材木座、俺達相棒だよな?今お前の力が必要なんだ、頼むからその二人を足止めしてくれないか?お前だけが頼りなんだ」

と比企谷がやさしく諭すように言うと

 

「・・・ヌフッフッフ仕方ないのう八幡よ!この相棒かつ盟友である材木座義輝がしかと承った!ここは我に任せてお前は先に行け!八幡!」

人生で言ってみたいベスト10のセリフを叫ぶと途端に元気になった材木座、そのまま電話を切る

 

「よし、これでしばらくは大丈夫だろ、車取ってくるから待ってろ」

 

「君という人は本当に・・・」

呆れる葉山に

「ほめるなよ、照れるだろうが」

比企谷はそう言うとそのまま家に向かって走っていったのだが、外からはブヒーという悲鳴が聞こえる・・・材木座君は大丈夫なのか?

 

比企谷がなんとか車を奪取したのか外からクラクションの音がする

外に出て見るとフォルクスワーゲン・タイプ2である。

 

「ずいぶんと微妙な外車だな、しかもバンとは」

「えーかわいくていいじゃん!あたしは好きだな」

「レトロな感じが私的に気に入ってるのだけど」

「別にかっこよさとか求めてないしな、それにたまに旅行するから、車中泊が簡単にできる、みんなでバイトして買った」

「そうか、んじゃあお気をつけて」

と三人を見送って部屋に入ろうとする葉山だったが

 

「葉山、実は車を出すときに見つかってな・・・」

比企谷が指をさすと向こうの角から顔を出す陽乃が見えた

「・・・おい、みつかってるじゃないか!」

 

陽乃はおもむろに携帯を取り出し電話している、すると葉山の携帯に着信がくる

「隼人?あんたも比企谷くんに加担してたんだ・・・ふーん・・・どうなるかわかってるよね?」

その電話を返事もせずに切ると

 

「くそ!優美子!乗れ!逃げるぞ!」

さっきから事態に追いついていけずぼーっとしていた三浦をバンに詰め込む

「おい!比企谷、君という奴はどれだけ俺を巻き込めば気が済むんだ!?」

 

「まあしょうがねぇだろ、やっちまったもんは、このお詫びはいずれ精神的にな?」

「だからそれは結局なにもしないってことだろ!」

その言葉を無視すると比企谷は車を発進させた。

 

とりあえず当てもなく走り出す車

「後ろにキャンプの残りのジュースやらお菓子があるから食っていいぞ」

と比企谷に言われるが飲み物がマックスコーヒーと桃のジュース、あとティーセットがある、普通は烏龍茶とかスポーツドリンクじゃ無いのか?

飲み物が偏り過ぎだろう

 

「しかしこういう車って意外とするもんじゃ?3人でバイトしたって買えるものではないだろう?」

葉山の疑問はもっともである、この手の車はとても学生が数か月のバイトした程度で買えるようなものではない

「あーそれな、雪乃の親父さんのところでバイトさせてもらってな?」

「そうよ、母や姉さん達には内緒でバイトさせてもらったの、父は私の味方だからお給料も弾んでもらったわ、八幡なんてものすごく気に入られちゃったのよ?もう就職先が決まったも同然ね」

 

「どこの親父も娘には甘々だからな、結衣も結構気に入られてただろ?こいつ意外と事務処理能力が高いんだぜ?」

「でへへー、単純な計算とか書類関係は大丈夫かな?」

「そうと知っていれば高校の時にもっとこき使っていたのに、失敗だったわ!」

「それな!」

そして三人で大爆笑である

 

「君たちはずいぶんと呑気だな・・・」

さっきから呆れっぱなしの葉山

 

「うふふ、実は父から三人の関係について聞かれたのよ?」

「そりゃ比企谷と雪ノ下さんは恋人同士で、結衣とは親友とか?だろ?」

これ以上何があると答える葉山だったが

 

「ちょっと違うな、まあ詳細は恥ずかしいから言わんが」

「そうね、説明したのだけれど父はよくわからなかったらしくて私と人生の約束しているのに結衣さんは絶対に嫌われたくないなくてはならない存在?んで私と結衣さんは親友以上の関係?君は二股宣言でもしてるのかね?と聞いてきたわね」

 

「そういうつもりではないとは説明したんだが、君は若いのに色々すごいな、将来大物になるやもしれん!とかなんだとかやたら持ち上げられてな、そのせいもあって妙に気に入られて給料もいっぱいくれた」

「でも、私たちの関係を簡単に受け入れてくれるなんてもしかして父は浮気してたり愛人を囲ったりしているのかしらと少しだけ不安になったわ・・・」

 

「・・・陽乃さんが聞いたら卒倒するんじゃないか?」

「大丈夫よ?父は母と姉さんに内緒にすると言ってくれたわ、でも私が事務所に行くたびに何故かはしゃいで周りがドン引きしてるのには閉口するわね」

「ゆきのんのお父さん、ゆきのんが来るとすごくテンション上がってちょっとキモくなるよね・・・」

「家の親父も小町としゃべるだけでテンション上がってるからな、千葉の親父の宿命なのかもしれん」

 

雪ノ下家の父親を懐柔済みとは・・・本当にどうなるんだ?

またも呆れることしかない葉山だったが

 

「そういやお前の親父さんにもあったぜ?お前にすごく迷惑かけてると言ったら、「どんどんかけていい、弁護士になるともっと面倒なことが待ってるからな、これからもうちの息子と仲良くやってくれ」だとさ、だからこれからもよろしくな?」

 

親父、余計なこと言うなよ・・・

またも頭を抱える葉山

 

車が高速に入った辺りで

「あー!後ろから戦車みたいな車が追いかけてきてる!」

由比ヶ浜が叫ぶ、後ろを見るとやたらといかつい車が追いかけてきている。

 

「アレは米軍で使ってるハンヴィーってやつだな、たまに中古で流れる、俺も欲しいんだが・・・」

「おい比企谷、そんな呑気なこと言ってられないぞ、乗ってる人がまずい」

運転席には何かを叫んでる平塚先生と助手席には鬼の形相をしている陽乃さんが見えた

「平塚先生、車変えたんだな、しかしどっからあんな車を・・・」

「あんな車に乗ってては結婚は絶対無理ね・・・」

 

比企谷の携帯に材木座からの着信がある

「八幡?なんか我、軍隊みたいな車に押し込められたんだけど!なんかこの二人怖いんだけど!」

どうも材木座君も詰め込まれたらしい

 

「八幡、何処へ行こうかしら?」

「逃亡者が逃げるのは北と相場が決まってる、北海道とかどうだ?実はすでに向かっている」

「あー!それいいね!あたし賛成!ジンギスカン食べたい!ね!優美子!」

「え?あ、うん・・・」

三浦は次々起きる事態に全くついていけてないようだ

 

「君たち本当にこれからどうするつもりなんだ・・・」

「明日に向かって生きていく・・・とか?」

「ヒッキーちょっとつまらないかな?しかも古い」

「八幡?セリフが臭いし古いわ」

 

「・・・俺も優美子もそれに入ってるのか?」

「降りたきゃ降りてもいいぜ?ただその時はあの人達の相手をしないといけないがな」

 

携帯の向こうから聞こえる材木座の叫び声を上げているのを聞くととてもそんな気にはなれない、がっくりと肩を落とす葉山に比企谷は前を向きながら言う

「先の事なんて誰も知らないって言うからな、ここまで来たら一蓮托生、呉越同舟まあそんな感じだ」

「本当に君たちは・・・」

 

まだまだ続きそうな受難に北海道へ向かって飛ばす車の中、葉山はマックスコーヒーを飲みその甘さに顔をしかめ、ため息混じりにボソッとつぶやく

「こいつらといると退屈はしない、だがどう考えてもこいつらのラブコメは間違いまくってる」

 




明日に向かって生きていくは歌から取っています。
昔死ぬほど聞いたのかなんか頭から離れません

最後にラブコメってカップル成立して終わりみたいな感じですが、彼らに関しては終わらない気がします。
回り巻き込んでめんどくさかったりややこしかったりするトラブルがどんどん降ってくるんではないかなと、なんかそんな気がしました。

アンソロも出ましたし今後も色々あると嬉しいなと個人的に思います。

お付き合い頂き、ありがとうございました。


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