その出会いは奇跡のようなものでした。【完結】 ( 白黒魂粉)
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第1章 とんでもなく可愛い後輩に告白されて?!

書きたくなってしまったので作りました。

良ければ見納めください……。


春先のある日、下駄箱の中に入っていた手紙を読んだ僕は指定されたその場所に来ていた。

 

「桜田先輩…今日は来てくれてありがとうございます!」

 

そこに居たのは紛れもない美少女。同じ制服を着ていることからおそらくは同じ高校の生徒なのだろう。

だが、残念なことに他学年と全く関係を持っていなかった為、俺はその子と初対面なのだ。

 

「あぁ、君もわざわざ……ありがとう…?」

 

そして…何よりこんな状況初めてなので何を言ったらいいのか分からない。

でも何か話題を作らないとだめだよな…と頑張って思考を巡らせるが

やはり何の話題も思いつかなかった。

するとラブレターをくれたであろう少女が口を開いた

 

「そっ……その…私…東風谷早苗と言います……その…えっと……」

 

モジモジと緊張で言葉がでない様子の彼女をじっと見つめて待っていると彼女はグッと拳を握ってこちらを向いた。

 

「わ…私と……付き合ってください!!」

 

その日、俺は生まれて初めて異性に告白というものをされた。

嬉しさで胸がいっぱいになった。俺なんかが告白してもらえるなんて

思えないほどに彼女は美人だった。

だが、それ故に俺は

 

「…………ごめん、それは……無理。」

 

彼女の思いを踏みにじる行為をした。

 

「え………、あ。そうですよね……だめ…ですよね……」

 

悲しそうな目をして俯く彼女を見ながら、俺は続けて

 

「…うん、ほんとに申し訳ないのだけど……俺と君とでは…

釣り合わないと思う……。だってーーー」

 

君みたいな美人が俺と一緒にいるなんて、そんなことあってはいけない

のだから。

「そうですよね!私…ごめんなさい!!あっ……それじゃあ…今日は

ありがとうございました……」

と言おうとした…が、彼女はそれを遮り涙目でその場を去っていった。

 

 

その日の眠りは最悪だった。

 

翌日、いつものように学校に行くとクラスメイトから変な視線で見られていた。

 

何かしたっけな…と考えるも…思いつくのは昨日のこと……昨日のこと…?!

まさか……と考えていた頃には俺はクラスの女子に呼び出されていた。

 

「ねぇ桜田……昨日の事なんだけどさぁ……なんで告白受けなかったの?!説明しなさいよ!!」

 

とてつもない剣幕で捲し立てるクラスメイト。【告白】という言葉に反応してこちらの方にギャラリーとしてやって来るクラスメイト。

何があったのかはよく知らないが、面白そうという気持ちでどこからともなく現れた陽キャの集団。

そんな連中のど真ん中に座らされている俺。

 

「あー…それは……」

 

なんとか穏便に済ませたくて、裏返りそうになる声をなんとか抑えながら説明する。

 

「俺と彼女とでは……やっぱり、合わないって言うかさ……?ほら、

あんなの美女と野獣だよ。美女と野獣………」

 

そう言うと女の子は

「はぁ?!なんなの!?あんたみたいな冴えない奴があんなに可愛い

子に告られるなんてこと二度と無いチャンスだったのに!?」

 

「そこまで言う……?」

 

そんなやり取りを繰り返してる間に休み時間が終わった。

 

「おーい、授業始めるぞー。席つけよー」

 

「……ッチ!桜田、お前放課後ちょっとツラ貸せよ!」

 

そう言われて、俺……桜田優也は席に着くのだった。

 

チャイムが鳴り響いた。

 

「はい、今日の授業はこれで終わり。何もないやつは早く帰れよー」

 

そんな声と同時にクラスにあった緊張も解け、俺達生徒はそれぞれ自由に放課後を過ごすことになる。

最も、今日の俺はそういう訳にもいかず、クラスの女子と陽キャ数名に囲まれてある神社まで連れられてきた。

 

「ここはどこですか……?」

 

上手く状況が呑み込めないのでそう聞いてみた。

すると

 

「ここは東風谷ちゃんのお家!今からあんたが行って告白してくるの!」

 

「えっ…何で……」

 

「何でも糞もない!!ちゃんとしてこないと明日からあんたの席…無くなってるからね……」

 

そう脅すだけ脅して、彼女たちはその場を立ち去って行った。

 

残された俺はどうしたものかと立ち止まって考えていたのだが、いじめの標的にはなりたくなかったので申し訳ない気持ちになったが…東風谷さんに話をしに行くことを決心して、石段を登り始めた。

 

登り始めて数分後、ようやく神社にたどり着いた俺はそこを見渡した。

 

「………広っ…」

 

まぁ、ちょっとは心の準備もいるだろうし…という気持ちで俺は賽銭箱の方まで行って賽銭を入れた。

 

ただただ無の感情で鐘を鳴らしていると、

 

「あれ……?先輩がどうしてここに……?」

 

本日、俺が会いたくないけど会わなくてはいけない少女……東風谷早苗が現れてしまったのだった……




ここまで読んでくださりありがとうございます。
これからぼちぼち続けていくので良ければ御覧になって下さい!
面白かったら感想と評価の方よろしくお願いです!!

次回!
早苗さんのお家に上がった優也は一体どうなる?!

乞うご期待


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神様との遭遇

2話目。



「あっ!良かったら上がってください!」

 

そう言われて断ることも出来ず、俺は彼女について行くことになった。

神社の中は掃除が行き届いていてとても綺麗だった。

 

「そう言えば…君の保護者の方とかは大丈夫なの?」

 

「?えぇ。特に問題はないと思います。基本見えない所にいらっしゃるので」

 

少し疑問が残る回答だったのだが、まぁいいかと思考を振り切って彼女と他愛もない会話を続けていく。

 

「はい、ここが私のお部屋です。お茶を用意しますのでちょっとここで待ってて下さいね。」

 

「わかったよ。えっーーと」

 

なんと呼べばいいのだろうと考えて返事が止まる。

それをみて彼女は少し笑って

 

「好きに呼んでもらっていいですよ。先輩」

 

と言ってくれた。

 

俺は少し照れながらも

「わかった。東風谷」

とだけ答えた。

 

東風谷は部屋を出ていて、1人そこに待っていたのだがトントンと足音が近付いて来るのを感じた。

東風谷が戻ってきたのか?と思っていると部屋に入ってきたのは紫の髪をした女性だった。

 

「……?東風谷さんの保護者の方ですか…?」

 

そう訪ねるとその人は驚いた顔でこちらをみて

「えっ……見えてるの?私が……」

と言っていた。

 

俺はその意味がよく分からなかったのだが

「えぇ、見えてます。貴女は……」

とりあえずこの人が東風谷とどういう関係なのか知らないといけないと思い彼女にそう聞く。

 

するとその女性は

「私はここの神社で祀られている神様だよ。八坂神奈子って言うんだ。」

と、よく分からない返事で返されてしまった。

 

「えっ……?神様?」

少しユニークな方だな……と思った

しかし、ここで変に刺激するのは不味いと思い、俺は自称神様の神奈子さんと会話を続けることにする。

 

「いや〜それにしてもまさかあの早苗が彼氏を作ってくるなんてね〜!」

…ん?なんか語弊があると思うぞ……?

 

「どうだい?家の早苗は?!可愛いやつだろ?」

 

「えぇ…俺には勿体ないくらいですよ…」

 

「まぁまぁ!早苗が選んだ男なんだ!きっと君も優しい男なんだろう!

早苗を宜しくたのむよ!」

 

なんかどんどん話が訳の分からない方向へいってる気がする…

ここは訂正しておいた方が………

 

「いやぁーそれにしても良かったよ。ウチの可愛い早苗を泣かせるような事があったらこっちも全力で報復することになっていたんだから」

 

ハッハッハと笑いながらそう言う神奈子さんを見て俺の背筋には冷たい汗が流れるのを感じた。

 

「まぁまぁ、これから早苗のことよろしくね!優也くん!」

 

そう言って神奈子さんは部屋を後にして行った。

あれ?俺はあの人に名前を伝えていたか……?まぁ、多分東風谷から

聞いたのだろう。

と頭に残った疑問を流すのだった。

 

「先輩。お待たせしました〜」

少しすると東風谷がお茶を運んできてくれた。

 

「こちら、粗茶ですが」

 

「ありがとう。頂くよ。」

 

そう言ってお茶を飲み、俺は東風谷に先程の神奈子さんのことを尋ねることにした。

 

「……そう言えば、さっき神奈子さんって人がここに来てたんだけどあの人って何者なんだ?」

 

「え?神奈子様が見えたんですか?」

 

「……?見えないものなの?」

 

すると東風谷は

「見えない……というか認識すらできないはずなんですけど…あのお方はここら一帯で祀られている神様なので…」

と神奈子さんと同じことを言った。

 

「神様……?本物の?」

恐る恐るそう聞くと

「はい、本物ですよ。何かあったんですか?」

 

「いやー何も無かったよ。」

とりあえずはこの話は忘れよう。

俺は報復とかが怖い訳では無いのだから……

 

冷や汗が止まらない中、俺は東風谷と会話を続けるのだった……

 

 




神奈子様がでてきたました。
次回は諏訪子様がでてきます。

それではまた


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石段の下で

3話目〜


あれから数時間東風谷と話していた。

途中からは彼女に勉強を見て欲しいと言われたのでそれをやっていたら

いつの間にか太陽は沈んでいた。

 

「あ……もうこんな時間ですね。先輩、今日はありがとうございました。」

時計の針は既に8を指しており、流石に悪いと思ってくれたのか東風谷もそう言ってくれた。

 

「構わないよ。それじゃあ今日はありがとうね」

 

「こちらこそ!あ……それと…なんですけど……」

 

「?どうしたんだ?」

 

「良かったら明日も勉強を教えて貰ってもいいですか?まだ分からない所がいっぱいあって……」

 

「なんだ、そんなことか。それなら構わないよ。それじゃあまたね」

 

そう言って俺は神社を後にして石段を降りていく。

勉強を教えることはこちらの復習にもなるので別に何度でもやって構わないのだ。

それに……どうせ帰る場所に俺の居場所はないわけだからな。

 

そう考えながら歩いていると、石段の最下段に人影があることに気が付いた。

こんな時間に参拝するのか?と思いながら歩いているとその人物はこちらをじっと見つめてそこから動こうとしない。

少し疑問に思いながら石段を降りきるとその人物の姿がようやくはっきりとみえた。

それは恐らく自分よりも年下の少女だった。

 

「ねぇ、君のお家はどこだい?」

流石に無視する訳にもいかないと思い、俺は彼女にそう尋ねた。

すると彼女は少し微笑んで

「へぇ、見えるってのは本当なんだ。」

と呟いた。

 

「……!まさか君は…」

すぐに察してしまった。この人は多分神様だと、普通の人間には見えないと言われている神様なのだろうと。

「そう。私はこの神社の神…守谷諏訪子。ミジャグジ様だよ」

 

「へ、へぇ…俺はーー」

 

「桜田優也くんだろ?君のことは早苗から聞いてるよ」

 

「……へ?」

 

「早苗のことを振ったってことも知ってる。あんなに可愛い子のことを振るなんてね…なんて面食いなんだ…って思ったよ」

 

「そういう訳では…」

 

焦りながら訂正しようとするが、諏訪子さんはすぐにニッとわらって

「別に私は怒っていないよ。そこまで親バカではないからね、でも……」

 

「あの子には時間が無い。決めるならなるべく早く……ね?」

 

それだけ言って、諏訪子さんは俺の目の前からスッーと透過してしき

俺の視界から消えていくのだった……。

 

 

時間がない……か。

彼女は……東風谷早苗は一体何を抱えているんだ?

俺の頭にはその疑問だけが残っていた。携帯を確認した時には時刻は既に9時を回っていて、俺はやばいと感じてすぐに走りだすのだった……

 

 

 

桜田優也……か。

早苗も面倒な男のことを好きになったもんだ。

そう考えながら早苗の所まで迎う

 

「あ、諏訪子様。どうかしましたか?」

 

「いやー少し話さないかい?」

 

「?構いませんけど」

 

どうかしましたか?と言う早苗に私は単刀直入に彼のことを尋ねた。

 

「この前言っていた桜田優也って言う子のこと……まだ好き?」

 

すると早苗は照れくさそうに笑って

「はい…昨日は振られてしまいましたけど……諦めきれません…だから

今日先輩が来てくれたことに少し驚いているんです。それに……」

 

早苗は嬉しそうに

「明日からも勉強を教えにここに来てくれますから。」

と答えた。

 

「そう。わかった、私は早苗のこと応援しているからね!それじゃあおやすみ」

 

「はい!おやすみなさい。」

 

そうして早苗と別れた。

私が部屋から出た所で神奈子と出くわす…彼女もどうやら気がついていたらしい。

 

「一杯呑む?」

そう私が提案すると、彼女も快く引き受けてくれた。

 

器に注いだ酒を呑みながら、私達はこう結論付けた

「彼のことはまだ早苗に任せよう。私達が出る幕はないよ。」

そう、これは当事者達の問題だ。

 

少なくとも数ヶ月後には私達はこちらの世界からは居なくなるのだから……

 

 




とりあえずこのシリーズ終了するまでは他の作品作りたくない

次回また進展します


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ノーヒントの恋愛

昨日は申し訳ない。
ちょっと野暮用で投稿できなかった。


「それから…ここはどうするんですか?」

 

「ここは……この式を当てはめたらできるはずだよ。」

 

「やってみます!」

 

あの日からほぼ毎日、多分1ヶ月位の間、俺は東風谷の神社まで行って彼女に勉強を教えていた。

あの日以降で神奈子さんや諏訪子さんに出会うことは無かったのだが、

どうやら家を開けていると東風谷から伝えられた。

 

「……よし、それじゃあ今日はここまでにしようか。」

 

頃合いを見て俺は彼女にそう言った。

 

「そうですね…。今日はこの辺りで終わりにしておきましょうか」

 

東風谷もそう言ってぐーっと身体を伸ばしていた。

それにしても……だ。

 

なんで俺みたいなやつにこんな美少女が告白なんてしてきたんだとつくづく思うのだ。

東風谷の方をジッと見つめて考えていると、東風谷が顔を赤くして

「どうかしました…?」

と尋ねてきた。

 

俺は彼女から視線を外して

「いや…どうして君があの日俺に告白してきたのかが今でも分からなくてな。……ちょっと考えていた。」

と考えを吐露した。

 

すると東風谷はちょっと考えて

「そんなことですか?それなら聞いてくれたらいいのに…」

と照れくさそうに言った。

 

「教えてくれるのか?」

 

「いいえ。今はまだ…でも先輩なら思い出してくれると信じてます。」

 

「思い出してくれる…?俺は東風谷と面識があったのか?」

 

「これも言いません。ノーヒントで頑張ってください。」

 

そんな事言われてもなぁ…俺自身東風谷と初めて会ったのはあの日だし、俺が忘れてるとしても東風谷みたいな美少女のことを忘れるなんて考えつかないんだけどな…

考えていても仕方がなかったので、一度考えるのを辞めて俺は守谷神社を後にして帰ることにした。

帰る途中、東風谷のことを思い出そうと、記憶を探ったのだが、やはり思い出すことはできなかった。

 

ー同時刻 守谷神社ー

 

先輩が居なくなった部屋で私は一人呆然と座っていた。

 

先輩…まさか本当に忘れているなんて……

私と先輩は元々とても仲の良い友達だったのだ。…幼少期の話になるのだが、元々髪の色が緑だった私に気味悪がらずに話しかけてくれたのが先輩だった。

彼とは毎日遊んでいたし、守谷神社に来てくれたことだってある。

だがしかし…

ある日を境に彼はどこかへ行ってしまった。

そして地区が違うこともあり、私達は別々の小学校、中学校へと進んだ。

そして今に至るのだ。

 

「早苗〜ご飯食べよ〜」

諏訪子様が呼んでる…時計を見たら9時過ぎ……最近はいつもこんな時間になってしまってる…

 

「はーい、今向かいますねー」

そう言って私はスっと立ち上がって諏訪子様の元へと向かうのだった。

 

 




伏線回でした。


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幼き日の思い出

続きです。
桜田優也青年の過去の話です


「優也くん!優也くん!」

 

何だ………誰かに声をかけられて、俺は目を覚ました。

ここはどこなんだ…と周囲を見渡すと、そこはいつか見た事のある施設だった。

俺の前には緑の髪色をした少女がそこにいた。

 

「君は……ここはどこ…?」

 

目を覚ましたばかりで頭がぐらぐらしていたのだが、俺は少女にそう聞いた。

少女はキョトンとした顔で

「?どうしたの?ここは〇〇園でしょ?」

 

……あぁ、そうだった。

両親が共働きだったから俺はいつもこの施設の世話になっていたんだっけ。

 

「そういえば君は?」

俺は彼女にそう尋ねる。

彼女はムッとした顔で俺の顔にずいっと顔を近づけて

「いつも言ってるでしょ?私は早苗!そろそろ覚えてよ!」

 

「あ、あぁ〜ごめんね。早苗ちゃん。」

そうだったそうだった。

この子とは毎日会ってるのになんで忘れてしまうんだろうか…?

 

「優也くーん??お母さんお迎えきたよー?」

 

「あ!先生呼んでるよ!いこ!」

俺は早苗ちゃんに手を引かれて先生の場所へと向かった。

 

「先生ー!」

 

「あら、早苗ちゃん。優也くん連れてきてくれたの?」

 

「うん!あっちでお昼ねしてたんだよ!」

 

「あら、ありがとうねぇ。」

 

そんな会話をする2人を見ながら、俺は母親に話しかけられる。

 

「それではそろそろ…早苗さんもありがとうね。また明日」

 

「うん!それじゃあね、優也くん」

 

「あ、うん。またね」

 

そう言って母親の車に乗り、俺は家に帰った。

 

帰り道、母親がこう言った。

 

「そうだ。あんた、明日引越すから」

 

「……わかった。」

 

俺の母親は突然こんなことを言いだすのだ。

これまでに苗字は3度変わっている。

次の苗字はどうやら桜田というらしい……。

それと同時に、兄弟も増えると母親に伝えられている。

 

虚ろな目で、俺はこの人に何とも思われていないんだと感じ、それでも棄てられることのないように俺はただただこの人の言いなりの人形になる他なかった。

 

次の日から、俺はその施設元いその街からも去ることとなったのだ。

 

 

 

「……あ」

 

目が覚めた…。時計は7時を指していてそろそろ起きなければいけない時間だった。

夢か……今のはいつの記憶だったっけ?

そんなこと思いながら通学の支度をする。

支度をして朝食の準備をしていたら、リビングにある声が響いた。

 

「あ、優也おはよう。」

寝間着の姿で寝癖のついた髪を整えながら声をかけてきた人物は俺の

兄弟である姉の美咲だった。

 

「おはよう、美咲さん。」

 

「……いつも言ってるよね?お姉ちゃんって言って?」

 

「もうそんな歳じゃないでしょ…ご飯は出来てるから早く食べよ」

 

そう言って食卓に並べた料理を食べ始める。

食事の途中には会話は殆どない。俺も、美咲さんもただ無言で用意した料理を食べていた。

すると静寂を割くように美咲さんはこちらに話しかけてきた。

 

「そういえば……最近帰り遅いよね?どこ行ってるの?」

 

「え……別に…ただ学校で居残りして勉強してるだけだよ。」

 

「ふーん…ま、母さんとかとすれ違わないように気をつけるのよ。あの人、最近夜にまた出歩いているらしいから」

 

「わかった。気を付けるよ。……それじゃあ俺はそろそろ行くね」

 

そう言って俺は食器をシンクに置きバッグを持ちあげる。

時刻は8時前…授業開始の数分前には教室に入っておきたい性なので、俺は早足に自転車に跨り、ペダルを漕ぎ始めた。

 

 

母さんか…………あれから数年過ぎて、母は俺に話しかけることも無くなり、ただ同じ家に住んでいるだけの関係になった。

元々俺に対する態度も冷めていて俺には愛情もないのを感じていたので

特に思うこともなかったのだ。

 

何をしているのかは分からないけど…俺には関係の無い話か…

そう考えながら俺は片道30分で高校に向かうのだった。

 

 




早苗出てこないっていうね。
&新キャラです。

あまり重要なキャラではないです


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文化祭、貴方は誰と?

なんかお気に入り登録してくれる人が10人越えてました。

ほんとにありがとう。

シンプルにモチベに繋がってます。感謝感激


新学期が始まりテストも終わった頃…俺たちの学校では他校よりも少し早い文化祭を実施している。

 

その日は中等部と高等部の生徒達が自由に互いの校舎を行き来して

様々な出し物を出したりするお祭りイベントだ。

 

俺もこのイベントは結構楽しみにしていて、それにこの地域でも有名な行事ということもあり、外部の人間も多く行き来することになる。

 

「そういえば来月には文化祭ですねー」

 

「そういえばそうだな。」

 

帰り道、東風谷にそう言われて俺も相槌を返す。

俺も楽しみだ。他のクラスの出し物や出店などを見て回るのも、自分のクラスでそれを運営することも。

 

「そういえば先輩達は何をするか決まりましたか?」

 

「いや、まだこれと言って案は出ていないな。そっちは?」

 

「私のクラスもです…。定番のものじゃない特別な出し物をしたいって

思ってるんですけどいいのが考えられなくて…」

 

……そう。何か他とは違う特別な出し物。

この思想に囚われてしまうと結局時間が足らずに物足りない出し物で本番を迎えることになるのだ。

それの性で外部の連中に冷やかしを食らったりする羽目になる。

 

それが嫌ならさっさと方針を決めて下準備を始めておかなければならない。

 

「あっ…私いい事思いつきましたよ!」

 

「?何が?」

 

東風谷にそう聞き返す。

すると彼女は得意気にしながら

 

「私たちは占いをやるんです!私直々にその人の運勢を占ってあげたら

いいと思いませんか?!」

 

「あー…いいかもしれないな……問題は……」

 

その占いとやらを他の奴らが信じるかどうかと客を効率よく回すことが可能なのかという所。

それにそんなことをしたら東風谷の時間は殆どクラス出し物で掻き消えることになる。

 

「東風谷の時間が殆ど無くなってしまうぞ?」

 

「へ?別に私が抜けたくなったら手相占いに切り替えたらいいんですよ。それに私も文化祭を回ってみたいですしね。」

 

「……先輩と。」

一泊置いてそういう東風谷に対して俺は

 

「まぁ構わないよ」

 

とだけ返した。

 

「えっ?!いいんですか…?私てっきり断られるのかと思ってて……」

 

「1人で回るのも確かにいいんだが……俺自身、あんまり友達が作れなくてな。」

 

仕方の無いことだ。

クラス替えで友達だった人達と離れ離れになり、それから追い討ちをかけるかの如く東風谷の告白を受けた俺に対する学年としての風当たりというのは最悪に等しいものとなった。

こんなに人気者の彼女がどうしてお前なんかに…

クラスの陽キャ君に言われた言葉だ。

全くもってその通りだと思った。

まぁ、結局彼女と過ごす時間が今は一番長いのもあってか、俺が学年で浮くことになるのは、そう時間がかからなかった。

 

「だからまぁ……もし良かったらなんだが…」

 

とても照れくさい…多分今俺の顔は真っ赤なのだろう。

頭をかきながら絞るような声で

 

「俺と…一緒に文化祭を回ってくれないか?」

 

とその言葉を伝えた。

 

東風谷は嬉しそうに笑って

「……分かりました…当日…楽しみにしていますね!」

 

と返事を返すのだった。




前回早苗さんがあまり出てこなかったのもあるので、今回は多めで登場しましたね。

あ、ちなみに現在は6月です。

次回、文化祭準備です。

お楽しみに


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文化祭に向けて

お待たせしましたー
遅い時間にぽんと公開〜


後日、俺たちのクラスのホームルームにて学級委員の生徒たちが司会を務めて、文化祭にて何をするか決めることになった。

 

『俺が考えて来たのは…お化け屋敷、カフェ、劇。……それと屋台だ』

 

それに賛同するクラスメイト達。

オーソドックスだが、これらを実施するクラスが多いのもまた事実。

これなら今から準備すればきっと当日までに準備を完了させるのは容易いだろう。

俺もそれに便乗する。

 

問題は次だ。

果たして何をするのか、これらの案からどう絞って何を運営するのか…

それの為の話し合いが始まって行くのだった…。

 

 

『はい、それでは厳正なるクジの結果、カフェと屋台の2つに絞られました〜。後は多数決で決めるので皆さん顔を伏せてください。』

 

ほっとんど中略したが、なんやかんやでここまで決まった。

屋台とかは外なので熱い可能性があるが、それでも客の利用数は多い。

それを見越して俺は屋台の方に票を入れることにする。

 

『…はい、それじゃあ今年やる我々の出し物は……カフェに決定!』

 

…あれ、あんまし人気じゃなかったかな…

票を確認できないのでどうだったかは分からないが、今年はカフェをすることになった。

やるからには全力で頑張ろう。ヨシ。

 

 

ー早苗のクラスー

 

「今年の出し物なんですけど!占いとかどうですか?!」

 

今日のホームルームでクラスの学級委員だった私は先日考えた案をクラスの人達に提案した。

 

『東風谷さん、占いってどうやるの…?』

クラスメイトの一人がそう聞いてくる。

私は

「その名の通りです!お客さんの運勢を私たちで占うんですよ!」

と自信気に答えた。

それでもクラスメイトの人達はあまりピンと来ていないらしく

首を傾げていた。

 

「そうですね……詳しく言うなら手相占いをするんですよ。私たちで

その人たちの手相を見るんです。あとはマニュアル通りのことを言っておけば占いになりますよ♪」

 

私がそういうとクラスの人達も納得した様子にみえた。

なので私は最後のひと押しにと

 

「それに……手相を見るだけなら簡単に済みますし…多分ほかのクラスでもやらないので被りという点は問題ないと思います!反論がなければ拍手を!」

 

疑問を持たれると答えるのが面倒だ。

だからさっさとこの案で終着させてしまうべく、私は彼らに同意をさせておく…

よし、これで途中で抜けることも可能になるだろう。

私は内心でニヤリと笑っていた。

 

 

「東風谷のクラス、占いをするのに決まったのか?」

帰り道、俺は東風谷にそう尋ねた。

東風谷はコクリと頷き

「はい、今年は手相占いをするということで満場一致でした。

あとは準備を進めていくだけです。」

と自信満々に語っていた。

 

「へー…頑張れよ。」

「はい!精一杯頑張ります!……そういえば先輩のクラスは何をするんですか?」

「俺の?…俺のところは喫茶店をするらしい。」

 

そう、喫茶店。

俺はそこで接客をするように頼まれた。

なので俺は当日も朝はそちらの対応で動くことができない。

 

「俺はそこで接客で朝はずっとクラスにいるよ。…良かったら来いよ。」

 

「接客…?分かりました!絶対行きますね!」

 

東風谷はどこか嬉しそうにそう言うのだった。

 

 

そして準備は順調に進んでいき…………俺たちは

文化祭当日を迎える………。




次回、文化祭当日!

お楽しみにね!


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文化祭。神様の占い

1日空いちゃった。
おまたせです


今日は文化祭当日。

各々のクラスがその当日のために一致団結して準備をしてきたことだろう。

俺たちのクラスもその為に運営方針や役割分担等でいざこざがあったのだが、それらを乗り越えて今日を迎えることが出来た。

俺は今年、数ある役の中で初めは店の注文を受ける役になっていたのだが、結局裏方の仕事に変わったこともあり、当日は殆ど仕事のないフリーな状態だった。

 

俺はそのお陰で暇だった訳で、屋台を適当に回ることにした。

そしてある程度屋台を回ってベンチにて一休みしながらふと東風谷のことを考えついた。

 

「そう言えば……東風谷のクラスでは占いをしているんだったな…

行ってみるか。」

 

まぁ、知り合いが出し物をしているのなら見に行くのが礼儀という物だろう。

そう思い立ち、俺はベンチを立ち上がって東風谷のクラスへと向かうのだった。

 

 

「1年1組は占いをやってまーす!良かったら貴方の運勢を占って見ませんかー?」

 

「いいね。やってみるよ」

 

「ありがとうございまーす!こちらでーす!」

 

東風谷のクラスの近くで客引きの生徒にそう言われて案内してもらうことにした。

 

「お客様おひとりご案内しまーす!」

 

そう言われながら、受付の子に料金を支払い、仕切られた場所にて占いをしてもらうことになりそこに案内された。

 

「それでは〜」

「どうもありがとう。」

 

そう言われて俺は仕切られた1つの空間にある椅子に腰掛けた。

 

「貴方の運勢を占います……って桜田先輩ですか?」

 

「…来ちゃった。」

 

「それはちょっと恥ずかしいですよー…まぁ、占いますね。手をこちらに向けて出して下さい」

 

「はい、どうぞ。」

 

「神社の巫女直々の占い…楽しみにしてくださいね!」

 

そう言われて手を差し向ける。

東風谷は手に持っていた虫眼鏡を手に向けてまじまじと凝視していた。

 

そして数秒後に東風谷が再び口を開く……

「ふむふむ…先輩はこれからの人生で1度生死に関わる事件に巻き込まれるかも知れません……。」

 

「マジで言ってる?」

 

「はい。生命線が途中で切れてますのでもしかしたら数年後に何かしらの形で死にかけるかも知れませんので…気を付けて下さいね。」

 

なんかとんでもないことを聞かされた気がする……と言ってもいつ起きるのかもわからないことに恐怖しても仕方ないのかもしれないのだろう……それなので俺は前向きに考えることにした。

 

「まぁ…起きないことを祈りながら生活することにするよ。ありがと」

 

「いえいえ、あっ私もうすぐ交代の時間なので良かったら教室の前で待っててください!」

 

「分かった。待っとくね」

 

それだけ言って俺は教室を後にした。

東風谷もそれから数分後に教室からでてきたので、俺は東風谷と合流して文化祭を回ることにした。

 

「どこにします?」

 

「とりあえず昼ごはんを食べないか?腹減っただろ」

 

「良いですね!行きましょう。」

 

そうして俺たちは色んな出し物や屋台を回って行った。

そして気が付いたら3時を過ぎていた。

 

「結構回ったなー」

時計をふと見て俺はそんなことを言った。

すると東風谷はふふっと笑って

 

「そうですね、なんか先輩と話していたら時間が経つのが凄く早く感じますよ」

 

「なんだよ…恥ずかしいじゃないか…」

 

「事実ですからいいんですよ。……先輩もそう感じますか?」

 

そう言われて俺は少し考えて顔に手を当てる。

 

「まぁ……否定はしない…けどさ」

 

「えへへ。後1時間、楽しみましょう!」

 

「そうだな!」

 

そうして残りの1時間、俺たちは文化祭を楽しんだ。

 

そして……

 

『4時になりました。これにて今年度の文化祭は終了致します。

繰り返すます…これにてーーー』

 

文化祭の終了を知らせる放送が構内に響いた。

 

「終わりましたねー」

放送がなり止んだ時、東風谷がそう言った。

それに俺も

「そうだな。」

と返す。

 

あっという間だった。

あとは片付けやらをするだけだ…打ち上げもあるかもしれないが……

どうせ俺は呼ばれることはないので知ったこっちゃない。

 

とりあえず片付けの手伝いに参加する為、俺は東風谷に

「すまん、とりあえず片付けに行くからここで解散しよう。」

と言い、東風谷の元から離れた。

 

ーーー

 

「ただいまぁー…おやすみ…………」

 

そして俺は学校から下校し、溜まった疲れのせいなのか自室に入った途端に眠りに着くのだった……。

 

数時間後、俺はある人物からの電話のコールにて目を覚ますことになる。




果たして誰からの電話なんでしょうかね?

次回に続きます。



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呼び出されてしまった……彼女に

1日空いてごめんね!

その分今回多めだよ!


「……誰だからだ…?」

 

瞼を擦りながら携帯を持ち上げて画面を確認した。

携帯の画面には【非通知】とだけ表示されていた。

 

「…………でるか……もしもし?」

 

「もしもしおはようございます。桜田先輩のお電話でお間違いないでしょうか…?」

 

電話の先から聞こえる声は東風谷の声だった。

……なんで俺の番号知ってるんだ?こいつ。

それにどこか電波が悪いのか、風当たりの音がビュウビュウと聞こえていた。

 

「…そうだけど…そちらは東風谷ってことで間違ってないよな?」

 

「はい。東風谷です!先輩、こんばんはです!」

 

「……元気だな…今何時だっけ……」

 

そう言いながら時計をちらりと見ると、時計の針は10を指していた。

 

「げ……寝すぎた…」

 

「…やっぱり寝てらっしゃったのですね。何度も電話をかけたのにでてくれないわけです。」

 

「それはすまなかった。……それで何の用だ?」

 

そうだ。東風谷は一体なんで俺に電話をかけてきたんだ。

それを確認する為、俺は彼女に質問を投げかけた。

すると東風谷の声のトーンが少し下がって…

 

「……もしよろしければなんですけど…今から会えませんか?」

 

そう言われた。

俺は電話で済ませられないのかと少し考えたのだが、何か深刻な様子なのかと思い

 

「あぁ、大丈夫だ。どこで待ち合わせる?」

 

と返した。

 

東風谷は少し嬉しそうなトーンで

 

「でしたら…30分後に……私達の学校の屋上に来てください。」

 

「……わかっ……て、え?屋上?まて東風谷お前今どこにいるんだ?」

 

「…………」

 

それから少しの間無言の沈黙が返ってきて……

 

「待ってます」

 

と言われて通話は終了した。

 

「…………はぁあぁあああああああぁああああああああああああああああああぁぁぁ???」

 

俺は大急ぎで部屋を飛び出し、自転車を飛ばすのだった。

 

 

 

「はぁ…はぁ……東風谷め…なんでここに来てるんだよ……」

 

学校に着いた。思いの外早く着くことができた。

ここに来るまでの記憶がすこし飛び飛びなのだが、それでも俺は15分という速さで学校に辿り着くことができたのだ。

 

屋上に上がる為、俺は階段をゆっくりと上っていく。

夜の学校は、それだけで雰囲気がでていて少し怖かった。

それに俺は今部屋着だ。

制服姿という訳ではない。

 

どちらかというとコンビニにも行かないような服装なのだ。

……特に上が…だ。

アニメの柄が着いているという訳ではないが、それでもこの服は俺からしたら……というか家族(美咲さん)からしてもかなりダサイって言われてる。

そんな服装で東風谷に会うのもなんかなぁ……と思ったが、それももう仕方ない。

ダサイって言われたならそれも笑い飛ばしてやろう。

 

そう思いながら俺は階段の最後の段を上りきった。

…なんとかここまで辿りつけた。

とにかく早くあいつに会おう。そうしよう。

 

そうして俺は屋上の扉をゆっくりと開いた。

 

そこから見えたのは月の光に照らされながらこちらを見据える東風谷の姿だった。

 

「……先輩、来て下さりありがとうございます。…こっちに来てもらってもいいですか?」

 

「分かった。今行く」

 

一体どんな要件だったんだ……?皆目見当もつかないので、東風谷が話し出すのを待つことにする。

 

「それで、どんな用だったんだ?電話では言えないことなんだろ?」

 

「はい。こう言うのは直接言いたくて…」

 

「…何か悩みでもあるなら聞こう。言ってみろ、ここには俺たち以外誰も居ないからな。」

 

「いえ…悩み……という訳ではないのですが…そうですね……まぁ、今日はお疲れ様でした。最後の年に先輩と一緒に回れて楽しかったです。」

 

「気にするなよ…来年だってあるんだから」

 

「そ……そうですよね…勘違いです…アハハ…」

 

「まぁ…今日はありがとうな。楽しかったよ、東風谷。」

 

そう言うと東風谷は照れた様子だった。

 

それから暫く談笑が続いた。

いつものように何かと下らない話で盛り上がった。

すると…突然思いついたように東風谷が立ち上がった。

 

「どうかしたか?」

 

「先輩。貴方の運勢を占います…占わせて下さい。」

 

「さっきやったじゃないか」

 

「あれはあくまでも手相占いです。それに生命線しか見ていません。

今度は……私の…巫女の本気です。」

 

「……お、おう…分かった。」

 

「それでは少し目を閉じていて下さい。」

 

言われた通りにする。

俺はギュッと瞼を閉じて東風谷からの返事を待った。

東風谷も何かを唱えているらしく、俺はどんな結果になるのかと多少

楽しみになってきていた。

 

「……神の代弁者たる東風谷早苗の名のもとに…この者に降り掛かる

災難を祓え…」

 

最後にそんな台詞を唱えたかと思ったら俺の背中に突然衝撃が走った。

 

「……ウッ…?!なんだ急に…」

 

「運勢を占いました!先輩はほとんどの事柄において大吉ですよ!」

 

俺の背中を擦りながら東風谷はそう言った。

ほとんど……ねぇ…

 

「例えば?」

 

「そうですね…金運とか?…将来かなりの額手に入れるでしょう!」

 

それは生涯年収の話だろうか……それとも何か一括でドカンと手に入るのかどちらなのだろう。

 

「他には?」

 

「他にはですか?……仕事運とかも凄く良いですよ。何かと信頼されて仕事が振り込んできます!それに人受けも凄く高い!」

 

……将来の職場はブラックなのだろうか…それとも俺が虐められているのだろうか……

何かと不安になることを聞いてしまい、少々後悔したのでこれ以上は聞かないでおこう。

 

そう思った矢先、東風谷が付け加えるように俺の耳元で

 

「それに……恋愛運なんてぶっちぎりで凄いんですよ?なんて言っても……運命の赤い糸で結ばれた人が今、貴方のすぐ側にいるんですから…」

 

と囁いた。

 

「…なっ……え…ちょっと?」

 

動揺した。

こんなこと言われるのは慣れていないし、最近では俺に好意があるとしても友達としての雰囲気がでてたと思ったのに…

 

「先輩。そろそろいい機会です…きっと先輩の考えも変わってると思います。この言葉を言って貴方に嫌われるのは嫌ですが……それでも私は貴方にこの言葉を送ります…!」

 

東風谷は本気のようだ。

その目が全てを語っていて……俺は逃げ場のない状態で東風谷に言われてしまった……

 

「ま…まっーーー」

 

「先輩、私は先輩が好きです!私と付き合ってください…!!」

 

その、告白の言葉を……




第二の告白。
男子ってこういうのに弱いんでしょ?経験ないからしらんけど。
でもこんな最高のロケーションで告られたら流石に憧れるよね!!

それではまた次回!!
良かったら感想とか待ってます!笑


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桜田の過去。

お待たせしました


「こういうシチュエーションなら普通なら『はい分かりました』と返すんだろうけど…」

 

俺は東風谷の方を向きながらそう切り出す。

 

「……すまない東風谷。俺は……まだ、お前と付き合うことは出来ない」

 

そう…おれは彼女と付き合う訳にはいかないのだ。

 

「本当にすまない…!嫌ってくれてもいい。軽蔑してくれてもいい…それでも……君とは付き合えない……幸せになる事は…出来ない…!!」

 

断る理由は無いのだろう。

だが、俺に彼女の手をとることは出来ない。

俺という……【桜田優也】という名の人間に、幸せになる権利はない。

それは俺が幼少期の頃から決まった決定事項であり、それを覆すことは

今の俺には不可能なのだ。

 

「……詳しく…聞かせて貰えませんか?」

 

東風谷がそう言ってくれた。

彼女の顔を直視できない………罪悪感から来るものだった。

俺に勇気をだして告白してくれた彼女を俺は二度も振ったのだ、彼女に深い傷を負わせたに違いないのだろう。

 

だが、彼女に話せば少しは楽になるのかもしれない……

焦燥した俺の心は癒しを求める程に麻痺してしまっていて、正常な判断も下させないまま…俺は口を開くのだった……

 

「……俺が小学生に入る前の頃だ……」

 

 

……あれは、確か俺がちょうど施設を抜けた時の話しだろう。

俺の母親が、新しい婚約相手を俺に紹介したのだ。

 

そいつの名前は桜田優成。

見かけは優しそうな人で、彼にも一人連れ子がいた。

その連れ子の子は俺の姉にあたる人物で名前が美咲…っていう名前だったんだ。

彼女はとても明るく、それでいて年もそこそこ離れてたことあって大人の様に振る舞う人だった。

その美咲さんとは直ぐに仲良くなる事ができた。

 

 

再婚して俺は直ぐに以前の街を出ることになった。

桜田優成の家に引っ越すことになったんだ。

今住んでいる家がその桜田邸だ。

俺は新しい家庭で優しい人達に囲まれているんだと思った。

 

だが、実際は違ったんだ。

桜田優成……俺の新しい父親は…自分の子供を一度殺していた。

 

気がついてしまったのは再婚から1年が過ぎた頃……小学1年の時だった……。

ふとした好奇心から父親の部屋に入った時に、彼の計画手帳なる物を見てしまったのだ。

その事を彼は直ぐに察知し、俺に詰め寄ってきたことでそれが確かなものだと言うことを悟った。

 

そして彼が俺の母に近付いた理由も本人が俺に教えてくれたんだ。

 

『君の母さんと結婚したのはね……君のような連れ子をこの手にかける為なんだよ……。』

 

ってな。

怖かったよ、母親に言っても聞き入れてくれない。

聞き入れる訳もなかった…寧ろ静かな人形の様な子供が急に騒ぎ出すようになったと煙たがられる始末だ。

俺には美咲さんだけが頼りだった… 俺は毎日いつでも美咲さんと一緒に行動した。

 

恐怖で気が狂いそうな毎日だった…

だが、ある日の事だ。

俺はふとした事で、優成の殺害の証拠を見つけたのだ。

その証拠にて、奴は自身の子供だけでなく、その妻もその手にかけたことが分かった。

 

俺は直ぐに警察に通報し、奴は捕まった。

捕まる間際に奴からは

『お前が幸せになることはないからな…!父親を売る餓鬼なんて……さっさと始末しておけば良かったんだ…!!お前も母親も…俺が刑務所を出た時……俺は真っ先にお前を殺しにやってくるからな!!』

そう言われた。

その言葉だけは今も鮮明に覚えている。

 

母親はそれ以降精神を病んでしまった。それとは対照的に美咲さんはどこか吹っ切れたような態度を見せるようになっていた。

かくいう俺も、どこか落ち着ける様になっていた……

 

 

そして……小学1年の俺は、自分の父親を警察に売ったクソ野郎と、

そんな理由で俺は誰とも関わることが出来ずに孤立することとなった。

 

中学でこの学校に入った理由というのもそれが原因だ。

再スタートという意味も込めていたんだ。

 

それに……

 

 

「それに……?」

 

「東風谷。今年なんだ…やつが出所するの」

 

「え……嘘ですよね……?」

 

「本当の話だ。残念なことに証拠の数が少ないこともあってか奴の刑期は短めになっている。」

 

そう、幸せになる事はできない。

俺が彼女と付き合ってしまえば、彼女にも危険が及んでしまうのだから。

 

「東風谷。お前には危険な目にあって欲しくない。だからこそ…俺はお前とは付き合えないんだ。」

 

すまない…そう言い残して、俺は屋上を去るのだった。

 

夜風が冷たく、俺に当たった。




急に重くなるやん…そう思うでしょ?
俺も思った。

桜田青年の人生濃すぎるよね。

幼少期で3回苗字が変わって
親が殺人鬼で、それを逮捕して恨まれて
挙句その性で虐められるっていう……。

幼少期〜少年期にかけて暗すぎる……

まぁ次回は明るめになります。
それじゃね!


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欠落した日常

お待たせしました


翌日、俺はいつもと変わらずに朝学校へと向かった。

 

いつもどうりに授業を受け、休み時間を過して…本当に何も無いかのように時間があっという間に過ぎていった……

 

(何かが欠落してる)

俺はふとそんなことを思った。

 

何かだ…その何かが何なのかは分からない。

ただ、俺のこの生活の中で大切な何かが無くなっていることに気が付いた。

 

 

もしかするとその欠落したものというのは東風谷のことではないのか?

 

…と言っても、東風谷という大切な後輩を俺の不幸に巻き込んではならないと思った。

だからこそ俺は彼女の願いを踏みにじってでも彼女の手を払ったのだ。

 

それで彼女がこちらに関わらなくなるのは致し方ない。

彼女は美人だ。それに人望だって人並み以上にはある。

 

そんな奴なら俺なんてちっぽけな男のことはさっさと忘れてしまって

別な男のことを好きになるだろう。

 

それで彼女が幸せになるのなら、俺はその幸せを祝福しようじゃないか。

それが、俺が彼女にできることなんだから……

 

 

 

1週間が過ぎた。

 

孤独感が俺の考えを毒しているのが分かった。

いつもなら考えないであろうネガティブな事まで俺は考えてしまう。

 

恐ろしい……喋ることのできる人物がいないというのはここまで心細いものだったのか。

 

俺はその事を実感した…しざるを得なかった。

だが、弱音は言ってられない。

元々クラスからは浮いた存在だったのだから今更1人になったくらいでへこたれてなんかいられるものか。

 

そう自分自身に言い聞かせて、俺は今日も一人になった。

 

ー守矢神社ー

 

「早苗、どうかしたのかい?」

 

家に帰った早苗の様子を見て心配した神社の神は早苗にそう尋ねていた。

 

早苗はどこかうっすらと笑って

 

「……神奈子様…諏訪子様……私…ふられちゃいました……」

 

と目に涙を浮かべながらそう伝えた。

 

神奈子は驚いた様子だ。

 

「えっ……?!優也にかい?!一体どうして……!?」

 

「私に危険が及ぶから……私とは付き合えないって…」

 

その言葉を聞いて、神奈子は桜田優也という男が今、どんな心境にいるのかを考えた。

彼は早苗と付き合うことが出来ない…その理由としては早苗の言っていた通りの理由なのだろう。

なら何故?何故彼といると危険が及ぶのだろうか。

その事を聞く必要があるな……と推測し、早苗の気持ちの整理が着くまでそっと、彼女の傍にて彼女の背を摩るのだった……

 

ーー

 

「思いついた。全てを丸く収める方法を」

 

「諏訪子?一体どういうものなんだ?」

 

早苗から全ての話しを聞いた二人の神は、早苗を寝かしつけた後で話し合った。

そして一つの答えが出たようだった。

 

「今優也の体には早苗の送った神の遣いが憑依されてる。そしてそれは私達でも捕えることはできる。」

 

「……?どういうことだい?」

 

「簡単な話さ。彼に危険が及ぶことがあるならば私達でそれを跳ね除けてしまえばいい。……それまでは早苗とは接触させないようにしてね」

 

「…?なんで接触させないの?」

 

神奈子は不思議そうに諏訪子にたずねた。

 

「今や優也は早苗に依存している状態なんだ。

普通依存している存在から離れられるとどうすると思う?」

 

「?そりゃあそれを求めて行動するんじゃないの?」

 

「そう。でも優也はその事が出来ない。…いつ自身の父親が襲ってくるのかが分からないから。」

 

「……?すまない全く分からない」

 

「ありゃりゃ。……ま、なら今回は私に任せておいてよ。

きっと早苗も彼も両方幸せに終わらせるからさ」

 

「わかった、そこまで言うなら任せる」

 

自信気に言う諏訪子に神奈子はそう了承した。

 

そうして翌日、諏訪子は先の方法を早苗に伝え早苗もそれに了承した事で、一定期間桜田優也にこちら側から近付くのを完全にストップさせることとなった。

 

無論、この事を桜田は知らない。

 




恋愛には引きが必要ですのでね。

完全に遮断する方法については早苗の付けた神の遣いで桜田の位置が分かるのでそれで避けてる訳ですね。

早苗さんはストーカーかな??

次回、桜田優成襲来


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最悪の知らせ

お待たせしました。
ちょっとテスト勉強でやれませんでした。
ごめんね


「それではテストを返却する」

 

文化祭から1ヶ月が過ぎた。

俺たちは学期末の試験を受けてたった今その答案が返却された。

結果としては中間の時よりもある程度点数が上がったくらいだった。

 

「明日からは二学期の範囲の勉強になるが、しっかりと自宅学習をやっておくように。……それと桜田、後で私の所に来てくれ。以上だ。」

 

それだけ言って、授業は終了した。

 

俺たちの学校ではテスト返却日は午前だけで終わるのだ。

それ故に娯楽施設に遊びにいく生徒も多く見える。

 

……俺は行かないわけだが。

 

とりあえずは先生の所へと行っておこう。

そう思い、俺は答案をカバンに詰めて職員室へと向かうことにした……

 

 

「失礼します」

 

そう言って職員室のドアを開く。

俺を呼び出した教師の名前を呼んで、なんの用だったのかを訊ねた。

すると廊下へと連れて行かれて、教師は口を開いた。

 

「あぁ、実はな…桜田。お前1年の東風谷と仲良かっただろ?」

 

「…え…?まぁそう……ですね。」

 

それが何の用なのだろうか…もうだいぶ彼女と会っていないのだが…

 

「それでな…どうやら最近東風谷の元気がないらしくてな……桜田。

何か知らないか?」

 

「俺は知りません。最近は彼女と合っていませんので。」

 

「ほぉ…?それは何か理由があるのか?」

 

「いえ……最近は勉強自分の勉強で忙しかったので…」

 

「そうか…。学校内で一番お前と一緒にいると聞いていたからな……

また気にかけてやっておいてくれ。」

 

「はぁ……。」

 

そう答えると教師は

 

「頼んだぞ。それじゃあ帰ってもいいぞ」

 

とだけ言って、職員室へと戻って行った。

 

「さて、俺も帰るか。」

 

そう呟いて、俺も自転車置き場へと向かうのだった…。

 

 

 

自転車をこいでいる最中、突然携帯に電話がかかってきた。

 

誰からだ?と思い携帯の画面を見るとどうやら美咲さんからだった。

彼女から電話をかけてくるなんて珍しいなぁ……と思いながら自転車を一度道端にとめて電話にでる。

 

「もしもし?美咲さん。どうかしたの?」

 

「もしもし。繋がったようね…良かったぁ……!」

 

なんだ…?いつもとは違う雰囲気で何かあったのかと思った。

 

「何かあったの?」

 

「あ、えぇとね…落ち着いて聞いてね…実は……」

 

次の言葉を聞いた時、俺は全身に鳥肌がたつ程の衝撃を受けることとなった…。

 

「お父さんが……刑務所から出てきたって……」

 

「……な?!もうなのか…!?」

 

「そう…だから暫くは別の場所に住む場所を借りてあるからそっちに直行して。詳しい住所は後で画像送るから。」

 

「分かった…そっちも気をつけてね…。」

 

「……それじゃあ。また後で会いましょう」

 

それだけ言って電話は切れた。

 

遂に……遂にこの時が来てしまった。

あの男は何がなんでも俺に復讐しに訪れるだろう……

その時が来た時……俺は無事でいられるのだろうか。

 

(東風谷には……まだ逢いにいけないな…)

 

いつ何が来てもいいように、俺はその時の覚悟を決めるのだった…

 




桜田優成、世に放たれる。

優也の因縁の男が遂に出てきてしまった。
殺人者の彼が何故刑務所を出られたのかを説明しますと

警察が殺人の証拠を掴めきれなかった為に刑期が大幅に
下げられました。

そういえば早苗さん出てませんね。次回でます




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結界の話

おまたせ


ー守矢神社ー

 

「早苗。今大丈夫?」

 

とある週末の日のこと…

 

境内の掃除をしている私に諏訪子様が話しかけてきた。

 

「どうかしましたか?」

 

と私は諏訪子様にたずねた。

声のトーンが少し低い時に御二方から話しかけられる時はだいたい何か

大切なことを伝える為に来たというパターンなのだ。

だから今回も何かあったのだろう。

 

「……それがさ、今月神社に来てる参拝客の数なんだけど…」

 

どうやら神社運営の話らしい。

 

「それがどうかしたんですか?」

 

「それがね…先月よりもかなり減ってるの。それも目に見えて」

 

「そんなに減っていました…?全然気が付きませんでした私……」

 

「そう…。だからもう今年の秋くらいには結界を潜ろうと思ってるの。」

 

……結界を潜る…これが意味することはこの世界から永久的に離れることを指す。

こことは別の世界…妖怪と人とが共存する美しき世界……【幻想郷】

と呼ばれる場所に行くことを意味していた。

 

「…それはいいと思います。」

 

もし、幻想郷に行ってしまって桜田先輩と会えなくなるのは悲しい。

それでもこれが東風谷早苗の……守矢の巫女としての役目なのだから…

致し方ないこと。文句なんて言えない

 

「早苗…それでも私はあなたの恋路の妨げにはなりたくないんだ。

……だから私たちは早苗が桜田という少年のことをどうにかするまでは何とかここに留まろうと思ってる。」

 

「え……?本当ですか…?」

 

それなら…何とか先輩も振り向いてくれる……?

幻想郷に行けば先輩の安全は確実に保証される。

そうならば先輩と一緒に幻想郷への結界を潜ればいいのよ…!

……ならば、早速この事を先輩に伝えないと…

 

でも……私は今まで先輩の周りに表れもしなかった。

そんな後輩にいきなりそう言われて先輩はどう思うんだろうか……

私の頭の中は様々な思考でグルグルと渦巻いていた…

 

ーーー

ーー

 

〜桜田視点〜【前回の数時間後】

 

「……ここが一応美咲さんに言われてた場所か。」

 

そこは俺にとってはよく知っている場所…と言える所だった。

何故かって?

答えは簡単。近所にはよく通った神社があるからである。

なんなら家から出ると石段が見える。

 

「こんなに近かったらさすがに会うんだよな……とは言っても……」

 

俺は石段から目を離して考える。

1ヶ月も会っていないのに今更会ってもどうしようもないのではなかろうか。

文化祭の時に彼女の告白を無下にした俺には当然の報いなのだろう。

 

それでもこんな所に引っ越しさせた美咲さんには複雑な感情だな。

感謝や疑問が入り交じっている。

 

まぁでも……

 

「とりあえずは一人暮らしだ……気持ちリセットして頑張ろう。」

 

やることは…変わらないのだから




次回、未定!!

考えがまとまったらだします


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隣の神様

おまたせ



突然の引越しから数日が過ぎた。

 

俺は東風谷が何時登校するのかを知らなかった為、彼女とバッタリ出くわすことがないように、朝の8時には登校を済ましている生活になっていた。

 

「……早起きは辛いが…それよりも東風谷と出会う方が辛い目に逢いそうな気がする。」

 

実際にはそんなことあるわけがないのだが、そう体に言い聞かせて

何とか登校していた。

 

そんな生活を続けたある日の下校の時間。

その日は終業式が近いためか、昼からは役員の生徒が椅子などのセッティングなどの準備がある為、俺を含む一般生徒は昼までの授業だった。

 

いつもよりも早く家に帰れる……と言っても特にすることはないので

適当に家の周辺を見て回るのもいいか、と思いついたのでそうすることにした。

 

「さて、それじゃあ行ってみようかな」

 

家に帰り昼食を済ました後、俺は家の鍵をしめて外へと出た。

 

「…そういえば美咲さんや母さんと最近あっていないな……」

 

おかしな話だ。

……まさか、一瞬不吉な考えが頭をよぎったがそれを一蹴して俺はブラブラと歩き始めるのだった。

 

ーー

ーーー

 

俺自身、ここまで時間を潰せるとは思っていなかった。

 

ふと腕時計に目をやると出発してからゆうに3時間は過ぎていた。

結構歩いたなぁ……

と丁度見つけた公園のベンチで休憩していると……

 

「ねぇ、隣…いいかな。」

 

と声をかけられた。下を向いていたので、俺はそのまま「どうぞ。」とだけ伝えて、端の方へと寄る。

 

するとその声の主は

 

「……まさか、ちょっと会わないだけでわたしの声を忘れちゃった?」

 

と呆れた口調でそう言った。

 

「…?って、あんたは……東風谷の保護者の自称神様……?」

 

「ほほぉう?随分な言い草じゃないか。誰が……自称神様だってぇ…?」

 

「まったまった!訂正するから許してくれって……ください!」

 

怖すぎるだろ……ほんとにどこからそんな威圧感が出せるのやら…

目の前にいる少女の様な出で立ちをしている彼女が……東風谷の神社に祀られる神様……守屋諏訪子…という存在だ。

 

「全く……そこまで怒っちゃいないからいいけどさ……それよりもどうしてここに?」

 

「俺は……ちょっと時間があったからここら辺の地形を見ておこうかと思って」

 

「へぇ?昔のことは覚えていなんだ…?ふぅーん……」

 

なにかニヤニヤとしながらこちらを見てくる諏訪子を見て

「昔……?なんの話なんだ?」

 

俺はそう尋ねた。

すると彼女は顔に手を添えて

 

「……あぁ、そうか。今の話は忘れて。そんなことよりも……」

 

「そんなことより…?」

 

「最近、どうして君の元気はないのかな?早苗に会えないから?」

 

「………」

 

何も言えない。

羞恥心からなのだろうか、それとも…維持を張ってるだけなのか…

それの全容は分からないが、俺はとにかく黙秘を選択した。

 

「答えない…ってことは図星でいいって事だよね。

……もしそうならごめんね、私から謝っておく」

 

「なんの話しだ?」

 

「そうだね……それを理解してもらう為には…あの子が今まで生きてきた軌跡を知ってもらわないとダメかもしれないね…」

 

遠い目をしながら、諏訪子はゆっくりと彼女の…東風谷の過去を話し始めた……




次回、早苗の過去。
なぜ桜田に拘るのかが判明する……かも

お楽しみに


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早苗の過去

お待たせしました。

昨日はすまねぇ!
遊んでた!!!


「まず……早苗が私たちと同じ神の力を持っていることから話必要があるんだけどね…」

 

「…神の力…?一体なんのことを言ってるんだ」

 

「その通りの意味。あの子は私の子孫に当たる存在で神の血を引いているんだ。その中でも早苗は特に強い力を持って生まれてきた。」

 

………………………

 

 

ある病室に、1人の妊婦がいた。

その妊婦の家系は昔から由緒ある神社の家柄であり、

太古からその地を統べる神に仕える。そのような家系であった。

 

 

そしてその家系にまた、ひとつの生命がこの世に堕ちようとしていたのだ。

元々神の加護のおかげなのか、その家系では安産が続いていたらしい。

 

しかし、今回の母体には何故か異常が発生した。

 

「大丈夫か?!しっかりするんだ!」

 

病室に入ってきた妊婦の旦那がそう妊婦に話しかける。

妊婦の意識は朦朧としており、それに返答する声は無かった。

 

そして……

 

数十時間の陣痛を繰り返し、医師や夫の呼びかけに応えるかのように

妊婦の腹から新生児が取り出された。

その子の産声を聞き、夫達から安堵の息が漏れる。

 

 

「元気な女の子ですよ!よく頑張りましたね!」

産婦人科の女医が妊婦にそう伝える。

妊婦は自身の子を見て、安心に満ちた表情で微笑んでいた……

 

 

 

…それから数年の月日が経った。

 

「お母様!おはようございます!」

 

生まれた子供もすくすくと成長し、元気な女の子になっていた。

 

その少女には他の人にはない特別な能力が備わっていた…

 

「諏訪子様も加奈子様もおはようございます!」

 

そう…彼女の周りには神社の大人とは違う、彼女にしか見ることができない2人の神が存在したのだ。

 

勿論、大人達は早苗のもつ能力のことを信用できておらず、妄言を

言っているのだろうなとだけ思っていたのだった。

 

しかし、大人達が早苗の力を確信せざるを得ない自体が発生することになった。

 

「お母様!地震がきます!今すぐ逃げて下さい!」

 

「何を言っているの?そんな縁起でもないことを言うのはやめなさい。」

 

「本当です!他の皆さんもはやく外へ出てください!」

 

そう早苗が言った数分後に地面が揺れ、倒壊した神社に押し潰されて

神社に住むほとんどの人間がそこで息絶えた。

 

辛うじて生き残ったのは数名の大人とその場に居合わせなかった彼女の父親であった。

 

「早苗……まさかお前の言っていることが本当だったとはな…」

 

「お父様?なんの話ですか?」

 

「いや…早苗、今も神様は見えるのか?」

 

「はい。ずっとこの神社にいらっしゃりますけど……それがどうしたのですか?」

 

「そうか……分かったよ…とりあえずは神社の再建について考えないとな…」

 

なぜ地震を予言できたのか、それは神様に教えられたからだ。

少なくとも、その地震によって彼女は施設に入園することになった。

 

しかし、早苗はその緑色の髪のせいで他の子供から浮いた存在になってしまった為かいつも1人だった。

 

しかし、そんな時に1人の少年が早苗に話しかけたのだ。

 

「なぁ、君…なんでここにいんの?」

 

「え……?地震で…お母様がどこか遠い所に行ってしまって……」

 

「ふぅん…いつか見つかるといいね。……俺、優也。君は?」

 

「私は東風谷早苗といいます!優也さん……でいいですか?」

 

「そんなにかしこまって貰わなくてもいいよ……俺にさん付けはやめてくれ…なんかアレだから…」

 

「分かりました…えっーーと、優也くん?」

 

「あぁ、よろしくね、早苗ちゃん。」

 

その子と出会った後の早苗は、母親が居なくなってからではよく

笑うようになっていた…。

 

そして……その少年に抱くのが恋心に変わるまで、そんなに時間を有さなかった。

 

 

………………………

 

「ここまでが早苗の話だね」

 

そんな……それなら俺は…

「そんな昔に、俺はあいつと関わっていたのか。」

 

「そうみたいだね。君のことをよく私達に話していたよ。」

 

「……そうだったのか…道理で夢に出てくる訳だ…」

 

「そうだねぇ…まぁ、いつでも逢いに来なよ。家だって近いんだからさ

私達は君のことを毛嫌いなんかはしないから……さ。」

(それに……これまでの早苗は彼にしか興味が無いようだし…あっちに行ってしまった場合、早苗自身のメンタルが持つか分からない…。

それなら早苗が神としての力を覚醒させる前に二人をくっつけてしまった方が私達にとっても、この二人にとってもいい事なんだろうな…。)

 

「はーぁ……」

 

「なんでため息をつくんだ?」

 

「いやぁ……ねぇ?(二人とも付き合いたいと思っているのに……この子の人生は悲惨だねぇ…)」

 

……なんだったんだよ…?

俺はベンチから空を見上げた。

 

思いの外、直射日光で目が痛んだ。




こういうこと。

そろそろ彼が出てきます


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これが気持ち

おまたせ


翌日、俺は始業前に守谷神社に訪れていた。

 

参拝客は朝ということもあってか一人もおらず、俺はとりあえず賽銭箱に持っていた硬貨を投げ込んだ。

 

願うことは…そうだな……東風谷ともう一度会いたいということだろうか。

 

一通りの作法を済まし、俺は境内の中に入ろうとするが……

 

「……これで不法侵入になったりしたらアレだな…入るのはやめておくか……」

 

そんな考えが頭をよぎり、そのままUターンして俺は家に戻ろうとする……。

すると、俺の後ろにある人物が立っていた。

 

「加奈子さん……。」

 

俺はその人物(と言っても神様だが…)に挨拶をする。

何故ただの人間の俺に神様であるこの人が見えているのかは全くわからないが、多分霊感が強いんだろうと自己完結していた。

 

「やあ、桜田くん。早苗に何か用かい?なんなら呼んでくるけど」

 

「……いえ、特には…少し近くを通ったので一応やっておこうと思っただけなので」

 

「おいおい、それなら毎日くるのが礼儀だろうよ。君はこの神社の目と鼻の先に住んでいるんだから」

 

「…言い返す言葉もない……」

 

「まぁ……君の事情も早苗から聞いているよ。だから……何かあったら

私達を頼ってくれ、君は早苗にとって大切な存在なんだから」

 

「どうしてそこまで東風谷のことを思っているんです?」

 

「簡単な話さ、あの子が私たちを認知し、私たちの声に付いてきてくれる……そんな大切な家族だからだよ」

 

「へぇ…分かりました。それじゃあ何かあったらその時はよろしくお願いしますね」

 

「あぁ、任せておいてくれ」

 

そう言って俺は石段を降りていった。

 

すると…

 

石段を降りきった所に見覚えのある少女が立っているのを見つけた。

 

あれは……

 

「東風谷…?」

 

俺がそう言葉を呟くと、その少女はゆっくりとこちらに顔を向けて

 

「あれ……?なんで先輩がここに……」

 

「俺は…近くを通ったからせっかくだからとおもってな……」

 

「へ、へぇ……そうなんですか……」

 

空気が重い。

押し潰されそうだ……俺は全く続く気配のない会話をどう切り抜けるかを考えた。

 

しかし、良い案は全く浮かんでこず…俺たちは着々と学校へと近づいていた。

 

「先輩。」

 

すると、黙りきった空気の中で東風谷がそう口を開いた。

 

「ど、どうした?」

 

「先輩は……私と会えない期間、どんな気持ちでしたか?」

 

何を言い出すんだ…と思ったが、声には出さない。

俺は彼女の聞きたい言葉を瞬時に読み解き、その言葉を紡いでいく

 

「俺は…東風谷と会わなかったこの1ヶ月近く…寂しかったよ。

生きている心地はしなかった」

 

こんな気持ちは初めてだった。だからこその気持ちを彼女にぶつける

 

すると彼女は

 

「……私もですよ…それでも、私は先輩がその用事を終わらせて

私の元へ来てくれるのを待っていますから」

 

「東風谷……わかった。君をきっと迎えに行くよ。

…………その時は…」

 

「そこまでは言わないでください。それはその時に聞きたいです」

 

「…わかった。それじゃあ、その時までとっておく。」

 

そうやって、俺たちの会話は終了するのだった。




あいつは出てこないと……
フラグ回挟んだら出番が消えてました

また次回に期待!
それでは


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放課後の君と

おまたせ


「ーーーそれではこれにて一学期、終業式を終了します…」

 

登校してから2時間ちょっとで終業式が終わって、俺たちは成績や

課題などを渡されていた。

 

「課題は配り終わったな?……よし、しっかりと家で勉強するように

成績で1の着いていた者は指定された日に補習を実施するから遅れずに

くるんだぞ。

……よし、それじゃあ、今年も楽しい夏休みだ!羽目を外すのは構わないが…

外しすぎて親になって二学期を迎えるなんてことのないようにな!!」

 

なんて担任のブラックジョークに苦笑いを浮かべながら、俺たちは

教室を後にして行った。

 

「……いまから何をしようか」

 

俺は廊下を歩きながらそんなことを考えていた。

東風谷の所へ行く?……いや駄目だ。なんか恥ずかしい

そんなことを思っていると、携帯に東風谷からの着信が入った。

 

電話に出ると

 

「先輩ですか?いまから行くので下駄箱で待ってて下さい」

 

とだけ言って彼女は一方的に電話を切った。

 

……何をするんだ?そんなことを考えながら、俺は下駄箱の方へと向かうのだった。

 

向かう途中、俺は成績のことについて考える。

昨年度の成績は中の上程度だったのだが、今学期の成績に関しては中々に評価が下がっている項目が見えていた。

5段階での評価なのだが、昨年度よりも下がっている教科がチラホラあるような感じだったのだ。

「勉強だけじゃダメか……」

 

実技に関する部分も頑張るべきなのだろうな……俺は改めてそんなことを思うのだった。

 

「あっ、先輩。待ちました?」

 

「いや別に」

 

「そうですか?なら良かったです」

 

そんな会話を交わしながら俺たちは合流した。

 

「今日は何かあるのか?」

 

「そうですね……特にはないですけど……せっかく午前中出終わったんですから、街に出かけましょうよ!」

 

そう言われるものだから、俺は

 

「街……?まぁいいか。」

 

と返事を返した。

 

そうしてそのまま電車に乗り、街へやってきたのは良いが……

 

「何を話せばいいのか全く分からない…」

 

「私もです……話したい事はいっぱいあるのに……何から話せばいいのか……困りましたねぇ…」

 

「でも時間ならいっぱいあるし、ほら。電車着いたし降りるぞ」

 

とは言っても俺は対して金を持ち歩かない主義の人間なせいで、俺の手持ちには紙幣が数枚と硬貨がちょっとくらいしかないのだ。

 

「それで、昼飯もまだだしどうする?こっちで食べてくだろ?」

 

「そうですね。どこかで頂きましょう」

 

なら……どこに入るかだよなぁ…ここは男らしさを見せるか……いつも俺がいきつけてる所に行くか……

 

「…先輩の行きたい所でいいですからね?先輩の好きな物知りたいので」

 

悩みすぎたか……。まぁ、東風谷がそう言うのなら俺がよく行くあの店にしよう。

 

そうして俺はその店へと向かった。

平日の昼間ならやってるだろ…

そう思いながら俺は大通りから外れた人どうりの少ない場所へと入り込んでいた。

 

「先輩のお店ってこういう普段行かない場所にあるんですか?」

 

「そうだな。今日行くのは知ってる奴が少ない名店だ。……まぁ定食屋だが…味は結構行ける。俺が保証するぜ」

 

そう言いながら俺たちはその店に入った。

 

店内に入ると、店主が表に出てきて

 

『おっ?珍しい奴がくるじゃねぇか!……ん?そっちの嬢ちゃんは

見やい顔だな……それに髪も緑……』

 

「おい、こいつの話は別にいいだろ。そんなことよりもいつもの定食。

やってるか?」

 

『やってるぜ。兄ちゃんはいつものやつな、ちなみにそっちの嬢ちゃんはどうする?』

 

「えっ……?じゃあ先輩と同じもので……」

 

「という事だ。よろしくな」

 

『分かった。出来上がるまで待ってな!』

 

それだけ言って店主は店の裏へと消えていった。

 

「……なんか、凄い人ですね」

 

「ああいうやつだよ、でもいい人なんだ。」

 

「へぇ……」

 

それから数分後、完成した料理を食べた東風谷はその味に驚愕したかのように

 

「凄く美味しいです!」

 

と感想を零したのだった。

 

 




面白かったら感想よろしくンゴ。

次回に続く


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悪魔の手紙

おまたせ




あれから数時間、俺たちはそれぞれの買い物等をしたりして

気がつけば日も傾いていた。

 

「…そろそろ帰るか。荷物もつよ」

 

これ以上遅くなるとあの神様達も心配するだろうし、そろそろ電車に

行こうかと提案する。

 

「あ……ありがとうございます。…そうですね、結構過ごしましたし

そろそろ帰りましょうか。」

 

「あぁ……っと、それじゃ駅に行くか」

 

そうして俺達は駅の方へと向かいだした。

 

 

そうして駅についてそのまま切符を買う。

夕方だと言うのに何故か周りに乗客はいなかった。

そのまま電車に乗るが、満員という訳でもなく普通に座席に数人座っている位だった。

 

「あっ……そうだ、東風谷。」

 

電車に乗っていてふと思い出したことがあり、俺は彼女に話しかける

 

「…?どうかしましたか?」

 

「いや……実はな、明日から長期休みな訳だろ?その間勉強だけするってのもつまらないからさ…お前の手伝いでもさせてくれよ」

 

「もちろんいいですよ!それにそれなら明日からでも構いませんよ?」

 

「本当か?なら明日から行かさせて貰おうかな」

 

「待ってますよ!……あ、これ私の電話番号です」

 

そう言って東風谷は俺に自分の携帯画面を見せてきた。

俺はそれを携帯の連絡帳に登録しておく。

 

「…サンキュ。……ってそう言えば東風谷ってなんで俺の携帯の番号が分かったんだ?」

 

「え……?言いませんでしたか?クラスの人から連絡帳経由で教えてもらったんですよ」

 

……なんてサラッととんでもないことを言われた。

クラスメイトは一体何を考えてるんだよ…と思うが東風谷以外に

関わる相手もいないからまぁいいか。

 

「俺のクラスメイトってあれだな。お前に無茶苦茶甘いな。」

 

そう言えばクラスの女子に美女と野獣だかそんなこと言われてたっけ

そんな女子も今となっては俺に全く話しかけて来なくなっていたのだが

 

「そうですか…?ただちょっと仲良くしてもらってる先輩が運良く

先輩と同じクラスだったって訳ですよ」

 

「ふーん……まぁ、そんなもんか」

 

中高一貫だしな。そんなこともあるのだろう

俺は中学で友達は片手で数える位しか無かったのだがな。

 

「お、そろそろ駅に着くな」

 

そんなことを話してると駅に到着する。

俺達はホームを後にして、守矢神社まで東風谷を送った。

 

「それじゃあまた明日。」

 

「はい。今日は送っていただいてありがとうございました!また後で連絡しますのでよろしくお願いします!」

 

「あぁ、分かった。それじゃあまた」

 

そうして俺は東風谷を見送ってから守矢神社を後にして家に戻った

 

 

 

「ふいー…ただいま………ん?」

 

家に戻ると、いつもなら明るい筈のリビングからひかりは無かった。

 

「なんだ……?美咲さん?居ないの?」

 

返事はない。

どこか出かけてるのか?と思ったが、何も言わずに彼女が出かけることは滅多にない為その考えは違うだろうと首を振った

 

「……なんだこれ」

 

そうしてリビングの机に1つの手紙が置いてあることにきがついた。

 

「……?!そんな……なんで……」

 

その手紙は…美咲さんからのではなく。ましてや母さんのものでもなく……

 

あの男の……桜田優成からのものだった。

 

 

その手紙を読み終えた俺は、鍵をかけることも忘れて家を飛び出していた。

 

なんであいつが……!なんなら俺の家で待ち伏せするのもいいはずなのに……!!

 

夜の静かな住宅地に、俺の足音だけが高く鳴り響いていた。




読んでくれてありがとう!

遂に登場してきたぞ……!
桜田優成が

彼との因縁をここで終わらせることができるのか…?

次回に続く


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狂っている親子

おまたせ



守矢神社近くのアパートから俺の自宅までは場所が真逆ということもあってか、それなりの距離がある。

自転車で全力を出しても15分くらいはかかるだろう。

 

しかし、指定されたのはあの家ではなかったのだ。

桜田優成という男に指定されていた場所は……

 

その場所に到着した時、そこには二人の人物がいた。

一人はこちらを観察する様に眺める男と、気を失っているのか

壁にもたれて動かない女性。

 

「おっ?その息のキレ具合からして、お前が優也だな?」

 

男かそう口を開いた。

10年も塀の中にいたせいか、どこか清潔感の無いその男の声は

幼少期の俺の記憶にこびり付いた酷く気分を害するような声だった。

 

「……そうだ、美咲さんを…離せよ……」

 

「馬鹿か?そんなことするわけないだろ。」

 

な…………こいつ…自分の子供のことも平気で使うのか……?!

 

「おい、俺が10年前サツに捕まった時のこと覚えてるよな?」

 

「…………?」

 

「あの時俺がお前に言ったこと……それを果たすために来てやったんだぜ……」

 

「…どういうことだ……」

 

「そうだな……まぁ手始めに……あの神社のガキから殺すことにするよ

あのガキの事が好きなんだろ?目の前で綺麗に殺してやるからな」

 

なんてことを楽しそうに俺に話す。

 

恐怖する……こいつはやってしまう。ターゲットが東風谷に向いてしまった……俺の責任だ……俺が東風谷のことを思ってしまったばかりに彼女を危険に晒してしまう……!

それだけは……

 

「……させるか……」

 

「あ……?なんだよ」

 

「そんなことさせるかって言ってんだよーーー!!」

 

俺は優成に襲いかかるように奇襲をかける。

戦闘技術なんて俺にはない。

だからこそできることは意表をついての一撃にかけるしかない……!

 

俺は握りしめた拳を奴のみぞおちに突き出した。

 

ドスン…と重々しい音がなり…奴は膝をつく。

 

「……つっ…!てめぇ……やってくれるじゃねぇか……!」

 

優成が人間とは思えないような形相でこちらを睨む。

 

「東風谷に手を出してみろ……俺がお前を殺してやる……」

 

とりあえずは美咲さんのが心配だ…

俺は優成から離れ、横たわる美咲さんの元へと駆け寄った。

 

「美咲さん…!しっかりしてくれ……!!」

 

肩を持ちそう呼びかける。

何かされていなければいいのだが……

すると美咲さんが目をゆっくりと開けた

 

「ん……、、、ってあれ?優也……?ってここは?」

 

「良かった……無事だったんだね」

 

「あっ……!そうだ……!父さんが!」

 

「それなら暫くは動けないはずだ。さぁ、早く警察の元へ行こう!」

 

そう言って美咲さんを起こして、俺は近くの交番へと向かって歩き出す。

 

すると後ろから

 

「ハハハッ馬鹿が……美咲は俺よりも狂ってるってことを知らねぇのかよ……」

 

なんてことを優成が呟いたように聞こえた。

 

それとほぼ同時に

 

「警察はいいかな。私は可愛い弟と一緒に居たいだけだから」

 

という声と同時に何か電気を走らせるような音がした。

 

「えっーーー……?!」

 

背中に激痛が走った。

後ろを振り向くと、そこに見えたのはスタンガンを俺に向けて使っている美咲さんの姿だった……

 

なん……で…

 

そんなことを思いながら、俺の意識はフェードアウトして行った……




はい。急展開ね

今まで全く出番のなかった美咲さんが遂に動き出した…!

次回に続く


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桜田の電話

おまたせ!

そう言えば今日でこのシリーズ作成開始1ヶ月ですよ!

時の流れは早いねぇ!!


…………ッ?!

 

何故か彼の反応が途絶えた……?!

 

「加奈子!」

 

「分かってる……!でも一体どうして…?!」

 

「分からない…でもとりあえず今は早苗に気付かれないようにしないと……」

 

少なくとも今早苗を危険な目に合わせる訳にはいかない。

打開策を練らなければ……

 

「とにかく行ってみないと分からない…!私は反応が消えた地点まで

行ってくるから諏訪子はここを頼む!」

 

そう言って加奈子の神力が神社から遠ざかっていった。

 

ここから彼のいた場所まではかなりの距離がある為、向こうまで移動してしまうと私たちの信仰では何も出来ないが、少なくとも現状把握程度のことはできるだろう……

 

「早苗……今は気が付かないでくれよ……!」

 

 

はぁ……先輩に電話かぁ……前はすぐかけることが出来たのにな…

 

心境の変化というのだろうか、文化祭の時は躊躇うことなく電話をかけることが出来たのに、今はそれができない。

 

恥ずかしさ……でもあるのだろうか…?

 

でも、やっぱりかけないことには始まらないもんね……!

 

そう思い携帯に手をかけようとした時だった。

 

「……?加奈子様が遠ざかっている……?」

 

加奈子様の神力がここから離れた所に行ってるのが分かった。

 

「なんでだろ……?何かあったのかな…?」

 

そんなことを思い、私は諏訪子様の元へと向かう。

 

「諏訪子様……?何かあったのですか…?」

 

「……!早苗……特に何も無かったよ?」

 

「それじゃあどうして加奈子様がここから出ているのですか?滅多に

外に出る方でもないはずなのに……」

 

「早苗……。今は気にしなくてもいいの、だから今日はゆっくりと休んで?お願い。」

 

そう言われてしまっては何も言い返すことが出来ない。

私は頷き、そのまま自室へと戻った。

 

「……あの慌て用…何かあったんだろうけど……まぁいいよね。

先輩に電話しよーっと」

 

そんなハプニングがあったためか、先輩に電話をかけようと決心することが出来ていた。

私は携帯を手に取って、登録してある連絡帳から先輩の番号を選択する。

 

「あった。よーっし、それじゃあかけよーっと!」

 

電話をかける。

 

コールの音が1回……2回……と鳴っていた。

 

そして……

 

ピッ…そんな音と一緒に電話が繋がった。

 

「もしもし?」

 

しかし、電話に出たのは先輩ではなく、誰か別の女性の声だった。

 

「あれ?この電話って桜田優也さんの番号であっていますか?」

 

恐る恐るそう尋ねると

 

「……あー…そうですね、これは優也ので間違いないですよ。……弟に何か?」

 

と、そう返ってきた。

……なるほど、先輩のお姉様なのか…

 

そんなことを考えながらも、私は本題へと話題を移す

 

「あの、優也さんは今電話にでることって出来ますか?

実は明日の事でお電話させて頂いたのですけど……」

 

「……今は電話に出ることは出来ませんね。弟は今眠っているので」

 

そうだったんだ……疲れていたのかな…?

 

そんなことを考えるが、それでも何か違和感を感じ取る

 

「そう言えば…どうして優也さんのご兄妹の方がこの電話に出られているのですか?」

 

普通ならスルーするだろう。

それか先輩本人を起こすはずなのに……その疑問を電話越しの彼女にぶつける…。

 

すると驚きの答えが帰ってくることになる……

 

「え?だってまぁ……弟が今後この携帯に触れることは万が一にもありませんからね。

……それでは、もう会うこともないと思いますが……お元気で」

 

「……?!待ってくださ……」

 

そこまで言って電話は途切れた。

 

 

……一体今…先輩はどこにいるの……?!

 

私は先輩に憑けていた遣いの場所を探り出すのだった…………

 




ありがとう!

物語はどんどん深みに落ちていく……

1ヶ月にしてようやくシリアスな雰囲気に足を浸かり始めましたね……?

これから感動的な展開に持って行けるかは私の実力次第なので期待はしないようにお願いします

それでは次回もお楽しみに


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姉というサディズム

お待たせしました。
諸事情で投稿が遅れました


「…………」

 

蒸し暑い……ここは一体…?

 

そんなこんなで目を覚ます。

ゆっくりと瞼を開けると、そこは暗闇の空間で周りを見渡しても何も無かった。

ただの無の空間であった。

 

……なんだここ…とそんなことを思いながら、俺は立ち上がろうと

腰をあげる。

 

しかし、何故か立ち上がることができない。

そこでようやく俺は自身が縛られていることに気が付いた。

 

「……なっ…?!どうして……!?」

 

なんでだ……俺は何故こうなった……?

混乱する頭を何とか整理しつつ、俺はその訳を考えた。

 

「そうだ…!俺は美咲さんを助けに行ってそこで………………」

 

ならここは俺の実家なのだろうか…?

もしもそうだとするなら俺は全く知らない部屋に閉じ込められているということになる……

 

「……せめて誰か来てくれれば……」

 

手首と脚を縛られた状態では何もできない。

俺は横たわった状態のまま、ただ何かを待つことにした……。

 

ーーー

ーー

 

ギィーーーと突然扉が開く音がした。

そこから入ってくる光に目を痛めながらも、俺はその光に包まれたシルエットの人物を見つめた。

 

「あら?元気だった?」

 

「……そう見える?」

 

「えぇ!可愛いお姉ちゃんが会いにきたんだもの!元気いっぱいに

見えるわよ?」

 

……なんでだろうか…会話がどこか成立していない

 

というか会話しようという気が全くない。

 

「……なんで俺に攻撃したのさ…俺は美咲さんを……」

 

「助けに来てくれたんでしょ?可愛い弟に心配までしてもらって

お姉ちゃんすごく嬉しいわよ。」

 

「ならなんで……!」

 

そう言うと美咲さんの雰囲気がドッと重くなる。

 

なんだ……この空気……そう思っていると美咲さんがゆっくりと口を開けて行ってこう言った

 

「簡単な話よ?ここまで大切にしてくれる弟だもの。私も私なりの愛情表現をしてあげたくってね?……伝わってるかしらね?」

 

「あれが愛情表現……?ふざけたことを言うのはよしてくれ……!

あれば愛情表現なんかじゃな……?!」

 

そこまで言って、俺は言葉を止めた。いや、止めざるを得なかった。

 

なぜなら……こちらを冷たい視線で見つめながらスタンガンを構える

美咲さんの姿が見えてしまったからだ。

 

「ふざけてなんかいないわよ…だってこれを受けている優也の顔が

とっても私の好みなの。……だからこれも仕方の無いことなのよ

…それに……」

 

それに……その言葉の次に来るのは一体なんだ……

俺は唾を飲む……恐ろしい、まさか美咲さんにこんな裏の顔があっただなんて……

そして美咲さんの口から再び言葉が発せられた……

 

 

「可愛い弟を他の女に盗られたくないしね。優也があの子のことを

忘れるまではここに幽閉するつもりなのよ。」

 

その時の美咲さんの顔は笑顔だった……が、その目はどこか濁っており、数日前までの輝いた視線というものは無くなっていた…。

 

 

 




どんどん狂っていく。

お姉ちゃんはサディズムだった……!?

次回に続きます。


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特定

おまたせ!

バイトで心身共にやられてました!


……あれからどれだけ時間が過ぎたかは分からない。

 

だが、俺はこの極限的な状況に耐えられずに徐々にだが思考力が

削がれていってることは確かだった。

 

「………………」

 

もはや言葉も話さない…。

一日に二回だけやってくる美咲さんだけが俺の話し相手なのだが、

話すことが無い。

 

俺は何故こんな目に合わなければならない?

 

そんな考えが頭をよぎる。

 

そうだ、その通りだ…俺は普通に学生として毎日を過ごしているだけなのに……!!

なんで義理の家族にここまで無茶苦茶な目に合わされないといけないんだーーーー!!!

 

「……くっ…そ……」

 

俺を縛る縄をどうにかしようと藻掻く。

しかし、縄は硬く縛られていてどうやっても解けないし、これ以上しても余計にキツくなるだけだと思い、動きを中断する。

 

 

「………………ちくしょう……」

 

何も出来ない俺は、ただそう呟くことが出来なかった……

 

 

 

既に限界は近い…そう思った時、俺の身体から金色の光が発生したーーーーー!!!

 

 

〜守矢神社〜

 

「ダメだ。どうしても特定できない」

 

「私もだよ……それにこの街から離れているならそれだけで私達の

効力も効きづらくなってるしね……」

 

「何とか……もう一度探してみるよ」

 

「分かった。私もこっちで探ってみる。」

 

終業式の日から早くも5日が過ぎていた…。

 

加奈子様と諏訪子様が先輩の存在を探そうとこうしてくれているのだが、それでも先輩の存在を探知することはできないでいた。

 

私も力に……

 

何よりもあの先輩の姉を名乗る人物から早く先輩を助け出さなければ……そうしないと先輩がどんな目にあうか……

 

そう思うだけで私の体は恐怖で震える。

 

それだけは避けなければ……なんとか……なんとか…先輩を…

 

 

その一心で先輩に憑依させた使いを探す。

 

先輩の体に危険が起こった時、あの使いはとてつもない神力を発生させることができる。

それを探知することで私は先輩のことを探すことになるのだが……

 

「どうして……?」

 

やはり見つけることができない。

何がいけないのだろうか、何故先輩を見つけることができないんだろうか?

 

「……どうすれば……」

 

不安で俯いてしまう…。

何もできない自分が情けない……

自身の想い人一人助けられないで何が巫女……何が神様ですか……!!

 

自身への怒りでおかしくなりそうだった……。

そんな時だった…

 

 

「……?!!あれって……!!」

 

 

ボッと何か光の柱のような物が遠くの方で起こった。

 

しかし、あれはただの人間では見ることのできない光だ。

 

神の使いが発する特別な………………

 

「早苗!あれは…!?」

 

加奈子様達が気づき急いだ様子で私にそう言った。

 

私はただ一言……

 

「……先輩、そこですね」

 

その一言だけを呟いた。

 

あの場所は加奈子様達の活動範囲外だ……

 

だが、場所が分かったのなら一刻も早く救出する……

 

何故か私の心から、とてつもない自信とそれを超えるアドレナリンが

溢れ出ていた。

 

 




次回、遂に早苗さんが動くーー!!

お楽しみに


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一方的な説得

おまたせ

楽しんでね


暗い密室の中で、俺は鞭で打たれていた。

打っているのは当然美咲さんで、俺は両手を天上に縛られる形で

ひたすら上半身を責め続けられていた。

 

時間の感覚は殆どないので、どれだけやられたか分からないのだが、

ある時美咲さんの動きが止まった。

 

……?と美咲さんの方を見ると、美咲さんはニコリと笑って

 

「ねぇ、そろそろ私のモノになる気になれた?」

 

何度目だろうか、俺はその言葉を尋ねられ続けられていた。

 

「…………」

 

逃げならない状況の中で、俺は何度も美咲さんに虐げられていた。

そのせいですでに身体のあちこちには生傷が発生しており、そこから

血が流れてでている。

 

 

というかここまで攻撃を続けて息を切らさない美咲さんは一体何者なんだ…?

 

だがまぁ……

 

「…………ことわる…」

 

絶対にこの人のモノになるなんてゴメンだ……

反抗の意志を含めた視線を彼女にぶつける。

身体や神経がどれだけすり減ろうとも、俺はぜったいにこの人には

従わない。

 

「そっか……そうよね…だって優也は一度決めたことは絶対にに成し遂げる位に芯が強い性格だったもんね……

お姉ちゃんそのことすっかり忘れてたよ」

 

だからね……

 

とうっすらと笑みを浮かべながら、彼女は

 

「その芯をへし折る位、可愛がってあげる。時間だっていっぱいあるんだからね!」

 

そう、満面の笑みを浮かべて俺にそう言っていた。

 

次の瞬間から、彼女による鞭打ちが再開される。

 

「………………」

 

俺はただ無言でその一方的な暴行を受け続けるのだった………………

 

 

 

「よし…たしかこの辺ですよね……?」

 

私は昨日先輩から放出された先輩の神力を辿って先輩の家の近くまでやって来ていた。

 

先輩の家は私の住んでいる所からすぐの所にあり、朝からその神力の元を辿って回っているのだが、それでもよく分からない。

 

まるで地下に眠っている地脈のような…………

 

まさか?

 

私は地面を見つめた。

 

「先輩はいま地下に……いるのかも…?」

 

だとすればどう探すかは直ぐにわかる話で、私は直ぐに地下に意識を集中させながら歩き出す。

 

私では地脈を読むことはできないので、地下から何か反応があれば、それは先輩に憑けた私の使いの力だ。

 

「これなら……!あっ!!」

 

見つけた!

この反応は確かに昨日のものだ!

 

私はすぐさまその反応の方へと向かう…

もう少しだ…もう少しで先輩を助けることが出来る……!!

 

そんなことを思いながら駆け足で向かっていると…

 

「なあ、ちょっとすまない、お嬢ちゃん。」

 

「へっ……?」

 

見慣れない風貌をした男の人が私に話しかけてきた。

 

その人は不思議そうにしながら

 

「誰かを探してたのか?」

 

と私に尋ねてきた。

 

「……え?何故それを…」

 

この人、どこかおかしい……そう思った次の瞬間だったーーー

 

「へぇ、やっぱり君が東風谷早苗か。」

 

と目付きを変えて、隠し持っていた容器から液体を私の顔に噴射した。

 

「……?!な…何を……」

 

急激な眠気に襲われる……これは不味い…意識を保つことすら出来そうにない……!

 

「優也を助けに来たんだろ?……俺の娘がお前と話したがっていたからな……連れてってやるよ」

 

「……なっ……ふ…」

 

ふざけないでください。そう言おうと思った私の体は既に限界を迎え

私の意識はそこできれてしまうのだった……

 

 

 




次回、早苗対美咲

直接対決!


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理解できぬ価値観

おまたせ


「ん……、ん…」

 

だんだんと意識が回復してくる…

ここは……?

 

「あ、目が覚めたみたいね。ご機嫌は如何かしら?」

 

目の前に一人の長髪の女性がこちらを見ながら立っていた。

 

「あなたは……?…?!なんで私……!?」

 

尋ねようとした時、私の両手が後ろで縛られてることに気付いた。

 

「え?だって……あなたが東風谷早苗さんでしょ?私の優也を誑かす悪い女の子……」

 

「なっ……何で私の名前を……!?……貴方は……」

 

ここてようやく気が付いた、ここの近くから先輩の気配がする。

やはり地下だ。

この家の地下にあるであろう個室に先輩がいる……!

つまり……この人が先輩の………………

 

「あら、その様子だと私が誰か分かったのかしらね?

……なら自己紹介をしておくは…私は優也の姐の桜田美咲。

よろしくね、東風谷さん」

 

なんてことを笑顔で言っている美咲という女の人……

 

それよりもだ……それよりも私は彼女に尋ねたかった…

 

「そんなことよりも……!なんで先輩を監禁なんてするんですか?!」

 

すると彼女は顔に手の指を当てる素振りをして

 

「強いて言うなら……あの子の苦しむ姿が見たかったから?

それと優也のことが好きだから…」

 

……言っている意味が分からない…私の理解力では彼女の考えは

絶対に理解することができないだろう…そう思ってしまった。

 

「意味が分かりません……好きだったら尚更なんで……?」

 

「そんなことは簡単よ。貴方みたいな害虫から優也を守るにはこれが一番手っ取り早いもの」

 

「……?!」

 

「意味が分からないかしら?でも……貴方に理解してもらう必要は微塵も無いもの。

……それに理解してくれるとも思ってないしね。」

 

そう言って彼女は私の背後へと歩き……

 

チャキ…と金属音を鳴らして何かを手に持った。

 

「……何を…?」

 

「喋らないで」

 

首元に冷たい物が宛てがわれる。

それが何かというのは直ぐに理解出来た。

 

「…………脅しですか?」

 

「喋るな…と言ったはずよ。それにこれは脅しじゃない」

 

手に震えが無いよ様子かして、普段からやっているのだろうか。

迷いの無い手の動きをしていて、私はどうすることもできないのだと

悟った。

 

「いい?東風谷さん。私から貴方への条件はたった一つよ」

 

そう言って私の耳元で美咲がそう囁いてくる。

 

「……私の優也の事は今日で忘れて……自分の神社へ帰りなさい?

そうするだけでもう私は……私たちは貴方に関わることは無くなるは」

 

いい条件でしょ?と付け加える彼女の問いを聞き、私は

 

「……ふざけ……ないでください…そんな条件飲めるわけ……ないでしょう…!」

 

と怒気を含めた声で返す。

 

すると覚めた声で一言

 

「そう、残念」

 

私の首元から電流が流される…………

 

「……が……ぁ……?!」

 

そのとてつもない電圧に私は耐えることが出来ず、そのまままた意識を飛ばされるのだった。




女ってこえーや

次回もお楽しみ


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拘束の解放

大変お待たせしました


「……なんだ……?」

 

真っ暗の地下室の中で、俺は何かの感覚を感じ取っていた。

その感じというのは俺にも理解できないもので…何か……家の中に

美咲さんとアイツ以外の誰かが入ってきたかのような……

 

すると…いつかの時のように、俺の身体が淡い光を帯びていっていた。

 

「…………?!こ…れは……」

 

なんだ……これは何かの合図か……?

 

そんなことを考えていると、地下室の扉が突然開かれた。

 

「…入るわよ?……何してるの」

 

「……別に…」

 

入ってきたのは美咲さんと…………東風谷…?!

美咲さんの手には襟を捕まれて引き摺られて来たであろう気を失っている東風谷の姿があった。

 

…何故東風谷がここに…………?!

 

「な………」

 

呆気に取られている俺の様子に気がついたのか、美咲さんが東風谷を

見せびらかすようにしながら

 

「あぁ、この子?私がせっかく家に返すチャンスをあげたのに言うことを聞かないから眠られせてきたのよ。

せっかくだから貴方にあげる。好きに使って構わないわよ」

 

そう言って投げ込むように襟を離し、美咲さんは地下室の扉を閉めた。

 

 

 

「…………おい、東風谷……」

 

縛られているせいで上手く動けないが、何とか東風谷の方まで這って移動する……

 

「……しっかり……よし……生きてはいるな……」

 

手首を確認して脈かあるのを確認して一安心する。

大丈夫だ……今はなんとか気を失ってるだけ……

 

 

「まただ……それに前よりも光が強い…?」

 

これで三度目だろうか……俺の身体はまた光を放っていたのだ。

この光は一体なんなんだ……?

そう思っていると、俺は東風谷の身体もまた、光を放っていることに気が付いた。

 

「……え…?どうして東風谷も……?」

 

何故だ…?

なぜ東風谷の身体も光っているんだ……?

まさかこの光は東風谷に反応していたのか……?!

 

その考えに至った俺はどうすれば良いのかを考える。

 

暫くして光は消えていっていた、また暗い状態になってしまったがそれはそこまで問題ではない。

とにかく今どうするか……だ。

 

しかし、この縛られた状態…俺ではこの状況を打破することは出来ないだろう。

 

いや………東風谷ならどうだ?

 

気を失ってるとはいえ、縛られているのは手を後ろにされているだけだ。

 

これをどうにかできれば……

 

『………先輩?』

 

「東風谷か……?!身体はなんともないか?」

 

「……はい、何とか…あの、私のポケットに小型のナイフがしまってあるので取り出してもらってもいいですか?」

 

「分かった……、」

 

東風谷のスカートからナイフを取り出す。

 

それを使って、俺は東風谷の手を縛っていたロープを切った。

 

 

「ありがとうございます。…先輩の拘束も。」

 

「分かった。……頼む」

 

「……よし、出来ました」

 

そうして東風谷に俺の拘束を解いてもらう。

 

久々にまともな状態で立ち上がったが……とてつもない立ちくらみが俺を襲った。

 

「……先輩、?!無理しないで下さい…先輩はここで安静に」

 

「…そういう訳にも行かない……これは俺の家族の問題なんだ……

それを東風谷に解決してもらう訳にはいかない……」

 

よろよろとおぼつかない足取りでなんとか体勢を保ちつつ、俺はゆっくりと扉の方へと向かって行くのだった……




いよいよ決着をつけに行く……!

次回、直接対決。

お楽しみに


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決着の時

大変お待たせしました

桜田誘拐編ラストです!


「……歩けますか?」

 

東風谷に支えて貰いながら、なんとか地下室の階段を登りきる。

 

そろそろ動きにも慣れてきたな…

そう思い、俺は東風谷の支えをやめてもらって自身だけでたった。

 

「……よし、もう大丈夫だな」

 

「…もう慣れたんですか?」

 

東風谷が驚いた様子で尋ねてきたので俺は笑って

 

「まぁ、運動神経はいい方だからな……こんなのはすぐ治るさ」

 

と返した。

 

 

「あれ?音がしたと思ったら……」

 

突然リビングのドアが開いて、そこから声がした。

 

声の主は言わずもがな美咲さんだ。

 

手にはスタンガンとムチを構えていて、特にスタンガンの方が既に

バチバチと音を立てていた。

 

「美咲さん、俺は家を出ていくよ」

 

「はぁ?させる訳ないでしょ…?」

 

「どうして?」

 

「じゃあ優也は鳥を飼う時に逃げないようにゲージに入れないの?

……それと同じよ」

 

……俺はペットって訳なのか……?

 

そんなことを考えてると、東風谷が口を開いた…

 

「ふざけないでください!!先輩は……貴方のペットではないです!」

 

その声に美咲さんは少し驚いた表情を見せたのだが、直ぐに

余裕の表情に戻って

 

「……だから何?少なくとも貴方には関係ないでしょう…東風谷さん?」

 

「…………!!」

 

こんな状況でも煽れるのか…美咲さんはやはり怖いな。

 

まぁでも……

 

「少なくとも油断もしてない俺にそんな武器は通用しない

……もうやめにしないか?美咲さん…」

 

そういうと美咲さんは下に俯いてクククと笑っている様子だった…。

 

「通用しない……?馬鹿ねぇ…優也に当たらないならそっちの東風谷さんを狙うだけなのよ?」

 

そう言ってムチをしならせて東風谷の方へと飛ばす……!

 

「危ない…!!」

 

咄嗟に東風谷の肩を抱き、ムチの攻撃の盾になる。

 

 

「……ッッ!」

 

とんでもない痛みだ…でも……

 

「この程度……舐めてもらったら困るよ…!」

 

「相変わらず打たれ強いわね……でもまだまだ…!!」

 

すぐさま第2第3のムチが俺の体を襲う。

 

動かしたての俺の体はそれを受ける事に生気が減り、意識が飛んでいくのを感じた。

 

(守るだけじゃダメだ……!なんとか懐に潜り込まないと……!!)

 

そうしようにもまずはムチを何とかしなければならない……!

 

そう思いながら、じわじわと距離を近づけて行く…

 

「先輩!危ないです!」

 

背中を押される…何があった…?!

咄嗟のことに判断が少し遅れたが、直ぐに状況判断に移る。

 

足元には水……と言っても水滴のような物がいくつかみえる。

 

「あ……危なかった…すまん東風谷!」

 

そう言って意識を美咲さんに移した俺は滑り込むかのように一気に廊下を疾走する…!

 

このまま勢いをつけて殴り掛かれば……!!

 

そんな思いを胸に俺は遂に美咲さんの目の前まで走り込むことに成功する。

 

そして拳を強く握りしめた俺は…その拳をそのまま彼女の眉間に目掛けて振り抜いた…!!

 

 

 

 

 

しかし、その拳は意図も容易くかわされてしまう……

 

「…そんなパンチで終わるなら簡単すぎるよね?」

 

そんなことを囁きながら、美咲さんは冷静な態度で俺の体にスタンガンの電流を喰らわせた。

 

「……がっ………!ぐっ…………う……」

 

意識が完全に堕ちていく……

 

東風谷…せめて……彼女だけでも無事に返さなければ……!!

 

崩れゆく意識の中で、俺は必死にそう願った。

 

願うしかなかったのだ……その願いが叶えられたどうか、それは俺の知ることではなかった……

 

 

「先輩!」

 

そんな……あの美咲っていう人、想像してるよりも格段に強い……!

 

彼女がこちらを向く。

 

「…次は……貴方よ?」

 

そう言いながら、廊下をジリジリと進み私との距離を徐々に詰めてきていた。

 

「……逃げないの?」

 

確かに後ろに下がって距離を取らないと行けないのだろう……それでも

……それでも私は…!

 

「えぇ…、逃げてたら……先輩を…助けられませんから!!」

 

その時、意識を失っていた先輩の身体から緑の光が発生したーー!

 

「…なっ?!なによこれ!?」

 

どうやらその光は彼女にも確認できるらしく、どこか焦っている様子だった。

 

……隙が生まれた。

これが恐らく最初で最後のチャンスだろう…!!

 

私は駆け出す。

なんとか一撃を入れて無力化出来ればそれでいい……!

 

そうして私は彼女目掛けて飛び蹴りを喰らわせた。

 

「……しまっ……ッ…?!」

 

その衝撃に彼女は後方に吹っ飛び、その反動で所持している武器も手から離れる。

 

そのまま壁に衝突し、彼女が起き上がるような気配はしなくなった。

 

「はぁ……はぁ…先輩……」

 

スタンガンをすかさず回収し、急いで先輩の安否を確認する。

 

彼は意識を失っているらしく、どれだけ呼びかけても反応はなかった。

 

頬を叩いて起こそうとするが、それでも彼の目は閉じたままだ……

 

「…とにかく、一旦ここから離れないと……」

 

そう思い私は先輩の肩を支え、玄関の方へと歩き始める。

 

 

「……!あなたは…」

 

玄関の前に1人の男性が立っていた。

彼はこちらをジッと見つけて、ため息をつく

 

「ふぅ……なんだ、終わりか」

 

「……どういうことですか」

 

「何、美咲がやられたんならこの茶番も終わりだなって事だ。」

 

「……?どういうことですか?貴方は私達の前に立ちはだかるのではないのですか?」

 

「しないよそんなこと。俺はもうお前らの前に現れたりはしない」

 

それに……と付け加えるかのように付け足して

 

「復讐心とかはない……と言ったら嘘になるが、俺はもうそいつに

対してそこまでの執着はない。

それと神様のお気に入りに手を出せる程肝は座っちゃいないからな」

 

 

「だから……そいつのことは頼むわ。一応元親の俺から神様へのお願いって奴だ。

今を持って桜田優也は俺の子じゃ無くなった。

そいつは絶縁だ。」

 

それだけ言い捨てて、彼……桜田優成は私を横切って美咲の方へと歩いて行った。

 

それを見た私は直ぐに先輩を支え直して歩き始める。

 

そして…………私は今度こそ…桜田の家から脱出した。




次回…お楽しみに!



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やるべき事

お待たせしました


桜田の家から逃げ出して2日が経った……その間桜田の人達が守矢神社にやってくるということはなかった。

 

「先輩…」

 

先輩はあれから直ぐに神社に戻り、彼を眠らせている。

それから彼の意識が戻った様子は無かった。

 

加奈子様が私の様子を確認に来た。

 

「彼の様子は?」

 

「まだ目覚めていないようです…それにいつ目覚めるかも……」

 

「そうか……分かった。早苗も調子には気を付けてくれ」

 

「分かりました、それでは……」

 

「?どこか行くのか…?」

 

「はい。少しそこまで……」

そう言って私は神社を出る。

 

何処に行けばいいか……そんなことは私にも分からない。

何をすれば先輩の目が覚めるかも分からない。

 

 

歩いて歩いて歩いて…………気が付けば森の方に来ていた。

 

 

「……随分遠くまで来てしまってしまいました…」

 

「それにここは……」

 

見覚えのあるような気がする……、そんなことを思った。

 

「あら……貴方……?どうしてこんな所にいるのかしら……?」

 

森の中を進むと、見慣れない女性と目が合った。

なぜこんな所に……と思うのだが…

 

「…少し……悩み事が…」

 

何故かその時は彼女の言葉に返答してしまった。

 

 

「へぇ……そうなのね…」

 

そう言いながら彼女はこちらにゆっくりと歩み寄って来て

 

「良かったら私に聞かせてくれないかしら」

 

と尋ねてきた。

 

「……言ってみれば何か糸口が見つかるかも……でしょ?」

 

確かにそうかもしれない…

 

「そうですね……でしたらお話してもいいですか?」

 

それから私は彼女にこれまでのことを話した。

 

女性は私の言葉に頷きながら応答してくれた…。

 

「ーーーと、そこまでが私が経験したことです」

 

「…へぇ…それは大変だったわね……お疲れ様…と言いたい所なんだけど……」

 

まだ終わってない。

先輩の目はまだ覚めていないから…

 

「先輩はまだ……」

 

「そうよね…私はその彼のことが聞いただけでどんな状態なのか分からないけど…」

それでもね…

とひとこと付け足して彼女は

 

「君が彼のことを思い続けていれば…きっといつか……その彼は目を覚ますと思う……確信は無いんだけどね…」

 

と、そう微笑みながらそういった。

 

私も微笑み返しながら

 

「そうなれば……いいんですけどね…」

 

「えぇ…きっとそうなるわよ…貴女は自分を信じて彼のことを見守ってあげて」

 

「そうですよね…分かりました…!」

 

何も出来ない…そういう訳ではないと彼女は教えてくれた。

ならやることは決められた…

 

「私、戻ります」

 

「えぇ、きっとそれがいいと思うわ。……早く彼の元へ行ってあげて」

 

「分かりました。それでは……」

 

そう言ってわたしは先輩の元へ向かう為森を歩き始める。

 

やるべき事は彼を信じるだけなのだから…!

 

 

 

「…どうだった諏訪子?あれから様子は」

 

「変わらない様だったよ。でも目は暫く覚まさないと思う。」

 

……だとすると困ったことになる。

彼が意識を戻さないとなると私たちが結界を越えるのに支障がでるかもしれない。

 

「それなら…もういっその事………」

 

「加奈子?まさか……」

 

諏訪子は私の目論みに気がついたのか驚いた様な様子でこちらを見ている。

 

「いや、最終的に決めるのは早苗に任せよう。……少なくとも今年…

いやこの夏の間には…私達はこの世界を去らなければ行けないのだから…残りの時間であの子に決めてもらおう…」

 




そろそろ終わりが見えてきてる。

ではまた次回もお楽しみに


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憶測の話

おまたせ

先月はいっぱい読んでくれてありがとう!

これからもよろしくお願いします!


「それでもそれは……!」

 

諏訪子は加奈子のその考えに食いついた。

その選択を早苗に迫ったとして、この少年が本当にその結末を受け入れられるのか…ましてやこの世界から存在を消すことを許してくれるのか……そんな考えが頭をよぎったからである。

 

それにそんな決断を早苗にさせるということは、いざとなっては彼女を傷つけしまうかもしれない…

 

二人が両思いなのは知っている…

それでも……パニックにはなると思った。

突然これまでの日常が激変してしまえば、それに直ぐ対応しろなんてことは出来ない。

 

「…私が決めても、諏訪子が決めても…結果は同じだよ。

だったら……もう当事者達に委ねよう。」

 

「……分かった…それが最善の行為なら…それでいこう。」

 

そうとなれば、二柱の神々はただ当事者である早苗を待つだけであった……。

 

 

「……という訳だ。」

 

あれから数時間後に戻ってきた早苗に加奈子はそう伝えた。

早苗の表情はやはり暗い。

 

「少し……時間を下さい…」

 

先程決心したことも、環境が変わるということを踏まえるとその心は揺らいでしまう。

 

「……先輩…私はどうすれば……」

 

気を病むとふと暗い思想に心を蝕まれる……

 

どうして彼にだけこんな事が押し寄せるのだろうか。

彼が一体何をしたの言うんだろうか。

何もしてない筈なのに……彼は巻き込まれただけなのに……

 

「おかしいですよ…こんなの……」

 

それでも私は……守矢の巫女としての務めを果たさなければならないという役目がある。

結界を越えるというのはもう以前から決定されていた話だ。

 

なら……いっそ………………

 

いいのかも…しれない……私のわがままで先輩を…あっちの世界へ…

 

 

私と一緒に………………

 

 

渇いた薄ら笑いがその部屋で響いていた。

 

 

「…加奈子様、私は先輩を幻想郷に連れて行きます。」

 

「…!そうか。なら……そうしよう。私達も彼が目を覚ます為に色々と手は施してみるからな」

 

「ありがとうございます。加奈子様、諏訪子様」

 

ニコリと2人に微笑む早苗。

どこかふっ切れたような感じもするが、これまで通り…今日も彼女は

いつものように神社の手入れをする。

 

幻想入までの時間はもう少ない…。

 

神としての力が薄い2神ではもう引き伸ばすことは難しいのだ。

それは早苗も然り。覚醒したはいいが、それに見合った実力や経験がない為、自身の意思でその神としての力を行使することは出来ない。

それにその力を…神としての力を得たことに早苗はまだ気が付いていなかった。

「……なあ、諏訪子。もしかしてなんだが」

 

「…何か分かったの?加奈子」

 

彼の額に手を当てて加奈子はあることに気がついた。

 

そう、彼の熱がないのだ。

感じ取ることが出来なくなっていた。

 

霊体……という訳ではなかった。

 

そして加奈子はそのことを諏訪子に説明する。

 

「今、この子が目覚めない理由はもしかしたら……………かもしれない」

 

「……!?そんなことが…前例は無いが……いや…それでも……」

 

それを聞いた諏訪子は困惑した様子でマジマジと桜田の方を眺める。

 

そしてこの言葉を繋げた…

 

「人が……神の力を授かるなんてことは…………ありえるのか…?!」




次回に続きます



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夢の中

おまたせしました

なんか色々ありました。

おくれてごめんね


……現実での意識は…………多分無い

夢を見ている……そんな感覚だった。

 

それでも夢の景色……ってな感じはなくて、それでいてどこか…水の中をただ浮かんでいるような……そんな感覚だった。

 

「ーーーーーーー…。」

 

声はでなかった。

それもそうか。

そんな解釈をして、また現実と空想の境界を揺らめくようにしながら

俺は時間を使っていった…。

 

……それからどれくらいか時間がたった。

 

身体の痛みはもう殆どない……そう思えた。

 

それでも…身体を自由に動かそうとすることだけは……出来なかった。

 

藻掻くことも出来ないので、俺は考えることを放棄した。

 

 

 

「ーーーー!ーーーー!!」

 

俺以外の声が聞こえる。

遠すぎて聞こえないが…それでも……この声はーー

 

東風谷…?

 

東風谷なのか?

 

その時、動かそうとしても動かなかった体が動いた。

 

「……!なんで俺は今まで……!!」

 

そうだ。俺はあそこで倒れて……それから……!!

 

『彼女に助けて貰ったんだ。俺の……いや、今は俺たちの主にな』

 

俺のすぐ側から聞き覚えのある声がした。

 

「……?!誰だ君は……?いや、なんだその姿は……」

 

俺は……鏡でも見ているのか…それほどまでに俺と酷似した顔の男が

俺の目の前に佇んで、俺の方を見ながら微笑んでいた。

 

『俺?一言で表すならお前だ。桜田優也…お前自身だよ』

 

「意味が分からない。そんなことを聞いてるんじゃない」

 

『……まぁこれで分かるって言われたらそれはそれで嫌だから良いけどさ。 それでもお前は、俺が何か言っても信じてはくれない…なら……

 

そう言いながら男は此方へ手を向ける

 

「何を……?!」

 

『簡単な話じゃないか、お前にこれまでの事と…それからこれから起きることを簡潔にその頭に流し込んでやるのさ。』

 

「どういう事だ…?!言ってる意味がさっぱりーーー」

 

『そんな言い合いするよりもこっちのが直ぐなんだよ。

黙って記憶観賞してろ』

 

そうして男の手からは信じられないほどの光が発生した。

 

「眩……!?何も……見えな……」

 

いや、違う……何か見える……

 

光の中から……何かが……アレは…………

 

「東風谷……?」

 

 

 

 

「……え?先輩が……ですか?」

 

加奈子にそう言われた早苗はそんな言葉をこぼす。

 

「あぁ、これが今一番わかりやすくて、一番しっかりとした理由のある

説だ。」

 

「だとしたら……先輩はどうなるんですか……」

 

「いつかは目を覚ますかもしれない……でも、もしかすればこのまま人の寿命を迎えて死んでしまうかもしれない。」

 

そんな……

 

「じゃあ。先輩はずっと寝たきりなんですか?」

 

「確証はないから断言はしない…けどその確率はきっと高い。」

 

「でも、向こうに行ってからでも時間はある……!彼のことは…」

 

「その事なんですけど…………」

 

昨日決めたこと。

先輩は幻想郷に連れていく。

でも……………………

 

「私はここに先輩を遺します。……この世界に」

 

それは……その決断を行動に移すまでは……出来なかった。

 

「そうか…分かった。ならそうしよう」

 

「でも……どうすればいいですかね」

 

「まぁそこは考えていこう。彼の身の安全は何より大切なことだからな」

 

そう言って加奈子は早苗の元を離れた。

 

早苗は桜田の元へ向かい、彼の名前を呼んだ。

 

「先輩……そろそろ…起きてください……お願いです……」




次回、本当の桜田の過去!!

お楽しみに


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少年の記憶

おまたせ

ほんとに遅れてごめんなさい。

ちょっとリアルが忙しかったです

詳しくはTwitter参照。ユーザー情報にリンクはってるよ


少年時代の夏休み…

 

桜田優也という少年はその日、自分のことを知っている少女と出会っていた。

 

「…早苗?……どこかで聞いたことがあるなぁ…」

 

少年は首を傾げながらそんなことを呟いた。

 

母親の再婚相手の男の呪縛から一時的とはいえ離れることができた彼は

男の噂のせいで学校生活に多少面倒な面もあったが、それ以上に満足していた。

 

そんな彼は隣町にあるかつて自分が幼少期に過ごした町へと久方ぶりに訪れていたのだ。

 

そんな彼の元に一人の少女がやってきていた。

その少女は他の子達とは違う髪の色をしていて、1度会ったら恐らく忘れることの無いような、そんな感じのする女の子だった。

 

「君とどこかで会ったことある?」

 

「忘れたの?!あの施設に通ってたじゃない?あれ…ちがう?」

 

「あそこには確かに通っていたけど……なんでだろ…よく覚えていないや」

 

というか、施設の記憶自体が曖昧な俺からしたら、そこで出会った少女のことを覚えていないのも妥当なのかと思えてしまう……。

 

「じゃあ、もう1回自己紹介から始めましょ!私は東風谷早苗。

ここの近くの守矢神社に住んでるの!」

 

「あーあの神社に…俺も今からそこに行こうと思っていたんだよ。

俺も自己紹介した方がいいかな。」

 

「え?……まぁ自己紹介は別に…それよりも守矢神社に参拝に来てくれるの?!じゃあ直ぐにいこう!」

 

そう言って手を引かれながら、俺たちは神社へと向かって走り出した。

 

走りながら俺は「なんで走るのー?」と彼女に尋ねてみると

早苗は「せっかく会ったんだからいっぱいおしゃべりしたいの!」と

教えてくれた。

 

そうなんだ……と答えてからはまたしんどくならないようにお互い黙って走っていた。

……坂道の斜面なので、少し転けるのが怖かったのだが…

 

「着いたよー」

 

ここが……初めて来るけどやっぱり神社ってデカくて広いんだなー…なんてことを思った。

 

「それじゃあちょっとまっててね」

 

そう言って早苗は敷地の建物の中へと消えていき、数分経ってからまた

戻ってきた。

それから俺も建物内に入っていいと許可を貰ったらしいので、お邪魔することになった。

 

「それじゃなんのお話をしようかな〜」

 

「俺の話は多分つまらないから、早苗の話を聞かせてよ」

 

「わかったー私はね〜」

 

それからはそんな会話が続いて行ったのだと思う。

 

 

 

 

そこで記憶は途切れた。

 

「……これは…」

 

『これがお前が忘れた……いや、忘れさせられた記憶の1部だ。

……この期間までの記憶に関しては何もされていない。』

 

……単純に何も考えてなかったって事か…なんてことで自己完結させた。

 

『それから暫くはお前と主はこんな楽しい時間を過ごして行ったさ。

……あの時が来るまではな…』

 

そう言ってまた、俺の意識が飛んでいく。

 

つぎの記憶が徐々に…徐々に俺の頭の中に入って来た……




次回、物語の核心と言える部分に触れていきます。

それではお楽しみに


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記憶の復活

お待たせしました。

待ってくれた方ほんとにごめんなさい……!!

いつもより長めなので許して下さい……(( ¯• •¯ ))ガクブル

それではどうぞ


この記憶は何時のだろうか……記憶と記憶の合間の中で俺はそんな考えを抱いていた。

 

ーー

 

早苗と再開してから半年程たったくらいのことだった。

俺は夏休みが終わっても彼女と頻繁に交流していた。

 

「ねぇ…優也くん。」

 

「?どうした?」

 

「もう冬休みに入ったけど……優也くんはどうして夏休みが終わってからも遊びに来てくれたの?」

 

「……わからね、でも……俺の小学校の連中はつまらない奴ばっかだからかな、話しててたのしくないんだよ」

 

早苗と居る方が楽しいんだよ。

とつけ足しながらそんなことを早苗に伝える。

 

「へぇー…」

 

早苗も少し興味があったくらいで…それ以上の返事は無かった。

 

 

それに今となっては早苗と一緒にいる方が楽しいような…そんな気がする。

 

「あ、そう言えば…ねぇ優也くん」

 

それから暫く経って、思い出したように早苗がおもいだしたような口ぶりでこう言った

 

「……?どうしたんだ?」

 

「もうすぐ新年でしょ?だから今くらいからお正月の準備をしないといけないからお正月が終わるまでは会えないと思うからよろしくね」

 

「分かったー。……っと、よし。これで良し。」

 

「…?何してたの?」

 

「え?普通に宿題だけど」

 

そう言うと早苗は目を丸くして

 

「え?宿題…?もうやってるの?」

 

と言った。

俺は終わらせたのを片付けながら

 

「そりゃまぁ…やらないと後で面倒じゃん。」

 

「それもそうかも……でも私宿題とか言っても分からないから…」

 

「結局やらないといけないんだからやるべきじゃない?

……どうせ暇なら今からやるか?まあ教えてやるからよ。」

 

「え?いいの?」

 

「別に小学4年生の問題を解くぐらい俺にだってできるよ」

 

「じゃあお願いしてもいい?」

 

「任せてよ」

 

こんなやり取りの後、俺は早苗に勉強を教えていた。

それはまるで、先日の俺の様子を表しているようだった…。

 

 

 

「ねえ、こんなにテストで点をとれたよ!」

 

正月が明けても俺は週末には早苗に勉強を教えていた。

そして来週からは春休みだ。

 

あの学校に行かなくていいのはとても良い。

 

「やるじゃないか。流石だな」

 

「優也くんが教えてくれたおかげだよ。ありがとうね」

 

ニコリと笑いながらそう言う早苗。

おれも少し嬉しくなってしまう。

 

「照れるな…まぁでも良かったよ」

 

俺もそんなことを言って、雑談を交わす。

 

集まりすぎて、もう話すことが無いくらいにはこの半年に早苗と会っているな……そんなことも思っていた。

それにこれからもそれが続くと思っていた。

 

「優也くん、聞きたいことがあるんだ」

 

雰囲気の変わる声で早苗がそういった。

いつもとは違うトーンの声だった。

 

「な、なんだよ」

 

「…もし、私がここから…この神社から居なくなって……この世界から完全に消えるってなったらどうする…?」

 

「どういうことだ?いなくなる……?」

 

いきなり難しい言葉を使われて混乱する。

早苗は何を言っているんだ……

 

「冗談じゃないの、私はこれからの数年間の間に……」

 

震える声でそう言い…早苗は言った。

 

「この世界から別の…遠い世界に行くことになったの」

「……?!訳が分からない……」

 

「でも本当なの…信じてくれる……?」

 

その様子からからかっているわけではないだろう。

つまりは早苗の言葉に嘘はない。

 

「分かった、信じるよ。でもなんでその事を俺に?」

 

「だって……私の一番仲良しで好きな人だから。」

 

「……え?」

 

「だから…私はずっと前から優也くんが好きだったの」

 

……ここで告白されるのか。

そう思った。……本来なら俺は断らないといけないだろう。

でも…断ってしまうと、彼女の心に傷を作ってしまう……

 

「……分かった、その答えはまた次に会った時にしよう。」

 

「今じゃダメ?」

 

「あぁ、ダメだ。俺にも心の整理が必要なんだ」

 

そう言い俺は返事を濁した。

 

「…分かった。じゃあ絶対に再会できるようにおまじないをかけるね……」

 

「…?まじない……?」

 

「うん、そこに座って。」

 

言われた通りの場所に座り直す。

 

そして早苗は俺の前に座り、長いお経のような物を唱え始めた……

 

「……完了だよ」

 

「あ、出来たのか……」

 

実感がなかった。

何か出来たのだろうか……?

 

「それじゃ、私これからすることがあるから。」

 

今日はもうお開きにしよう。

とのことだったので、俺は神社を後にする…。

 

そして神社から離れて行くに連れて…………

 

「……何か抜け落ちているような…」

 

「……なんだ…?何か…足りない……」

 

少しずつ……早苗と再開した半年の記憶が抜け落ちて行くのが

分かった……。

 

 

 

視界が暗転する…

 

『それが、俺とお前の始まりだ。』

 

前にたったソレがそういった。

 

「じゃあ、俺は二度彼女の告白を……」

 

『そうだ……お前は主の告白を踏みにじった。

…………忘れているということもあったがな』

 

「なんで俺は、忘れて……」

 

小5から小6までの記憶は確かに曖昧だ。

その当時のことについて聞かれてもよく分からない記憶が入り交じっているくらいで……

 

『何故忘れたのか、そんなことは簡単だよ…お前は何も悪くはない』

 

主の…術式が甘く、副作用が起き、記憶が消えただけだ。

 

と付け加えた。

 

「でも俺は……」

 

『責任を感じるのなら、今すぐにでも目を覚まして主を安心させてやれ……と言いたいが、』

 

「何かもんだいでも?」

 

『目覚めた時にはお前……もしかするとここの人間じゃ無くなってるかもしれない』

 

「なっ……?!どういうことだ…」

 

『今回の件でお前の体に俺の力を流して傷を癒していた訳だが……

お前の体に俺の……神のチカラが入りすぎた。』

 

『今のお前は……半分人間で半年神様の半神半人になっている…』

 

『この事実に、お前はどう思う。お前は何をする。決めろ、お前は

主の……東風谷早苗のなんだ』

 

「つまり……俺はもう戻れないわけだ。」

 

………………最も、もう後戻りする気もないんだけどな……

 

「俺は…東風谷早苗のことを世界で1番……!!」

 

 

 

 

『よく言った。……そして時は満ちた。さあ、目覚めの時だ』

 

その言葉を言い終わった後、俺の視界はまた反転して……

 

 

そこで目が覚めた。

頭がとても痛い…ずっと動かしてなかったからだろうか……

体をグッと伸ばして全身に血を巡らせる。

 

さて……

 

「行くか。早苗の所に」

 

立ち上がり、部屋の外へと向かう。

 

そうして俺は…ゆっくりと歩き始めた……




ついに、ここまで来ました。

優也は目覚め、早苗の元へ……

はい、次回が最終回です。

優也と早苗の最後を…是非、見届けて下さい…!


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最終回 結界を越えて

お待たせ。

ラスト1話楽しんでくれ!!


俺の姿を早苗が見たらどんな反応をするのだろうか…

 

なんてことを考えながらも俺は神社の廊下を歩いていた。

 

「……かなり傷がついていたりしてるな…それに人の気配も……」

しない。それどころかあの神様の気配も無かった。

 

「つまり俺は結界を超えてはいないってことか……?」

 

『その様だな。』

 

突然頭の中に声が響き渡った。

 

『どうやら主は最後の最後で踏みとどまっていたらしい』

 

なるほど…だから俺だけ…

 

「じゃあなんで俺はあの部屋に放置して……いや、まてよ?」

 

俺は目覚めた部屋に一度戻る。

 

やはりそうだ……。その部屋の中をみたら分かった。

 

ここの一室だけは結界を超えないようにしていたんだ。

 

「やっぱりそうだ。東風谷…」

 

『主はやはりお前のことをよく思っているようだ。それにしても……

結界を超えると言っていた筈だったのにな…少し誤算だった。』

 

「そうだな…でもこの部屋以外の所も一応確認しておくか……」

 

そうして部屋を後にする。

どこかに何かないのか……?

そう思いながら俺は部屋を探し回る。

 

すると……

 

「ここは……確か東風谷の……」

 

無意識のうちか、気が付けば東風谷の部屋の前までやってきていた。

 

俺は襖を動かして、中に入る。

 

「なんか空き巣みたいだな……」

 

そんなことをぼやきながら、何かないのかと周辺を見渡した。

 

すると…………一つの物が俺の目にとまった。

 

「ん?これは……」

 

それは机の上に置かれていた日記だった。

 

「日記……?これは読んでもいいのか…?」

 

『読んでも良いだろう…それ以外の手掛かりが見つからない。』

 

ということなので、俺は日記を開いた。

 

それは高校の入学の所から書かれているものだった。

 

4月〇日

 

入学式が終わって、優也くんを見つけた。

目が合ったけど…優也くんは私のことを忘れているのか、そのまま視線を外してどこかへ行ってしまった…。

 

4月△日

 

放課後…優也くんに告白した。

振られることは分かっていた……けど、それ以上に彼が私のことを全く覚えていないということが判明したことの方が悲しかった。

自業自得だけど……これから頑張ろうと思う。

 

4月□日

 

優也くんが神社まで来てくれた。

私に勉強を教えてくれるらしい……、久しぶりの彼は数年前と全く変わっていなかった。

教えるのがとても上手で、毎日来てくれると約束してくれた。

嬉しかった

 

6月〇日

 

今日、優也くんに文化祭を一緒に回ろうと誘ってもらった。

もちろんOKしたし、嬉しさで心が満たされていくようだった。

そうだ、その日のうちにもう一度告白しよう。

優也くんは私を好きでいてくれるだろうか……

 

6月〇□日

 

告白はダメだった。

それでも私は優也くんと一緒に回れたことはとても嬉しかった。

それに…………優也くんの身体にまた、私の遣いを入れ込むこともできた。

今度はきっと成功してくれるはず…数年前の失敗は踏まないだろう…

 

 

6月△日

 

遣いを送ったせいか、体調が優れない…暫く学校は休むことにしよう。

優也くんに逢いたい……それでも気まずさもあるし、仕方ないと言うことにしよう。

 

 

 

 

「……ここから…ん?書かれていないのか?」

 

そこまでページをめくって、俺は次のページがないことに気がついた。

確かこの辺から俺は東風谷と会う機会が減っていたのだ。

 

「……あ、あった。……これは…」

 

俺が誘拐された時の話だろうか、俺の身体から光が出た時のことが書かれていて、そこには…

 

【優也くんの中に居る存在が覚醒した。これならすぐに探し出せるかもしれない。】

 

と書いてあった。

 

「……あと時の……」

 

『その時点で俺の意識もお前の中に産まれたんだ』

 

「そうだったのか…」

 

ペラペラとページをめくる。

それ以上は本当に何も書いていなく、その日までの日記しか記されていなかった。

 

「これが東風谷の心情…か……」

 

俺は床に座り込む。

 

これを知ったところで、俺は東風谷の居る世界へ行く方法が分からないのだから。

あ……そう言えば…

 

「なぁ、お前なら何とかできるんじゃないのか?」

 

『え?それはちょっと出来ないな。』

 

なんでだよ……と思っていたら、それを汲み取ったのか続けて

 

『俺は覚醒しただけで基本的にできることはサポートだけだ。

だから結界を跨ぐような荒技は俺には出来ない』

 

「説明どうも。じゃあどうすればいいんだ……?」

 

神社は探し終えたので、俺は仕方なしに外へと出る。

 

どこかボロついた境内へと出ていくと、そこには桜田優成がいた…。

 

「なっ……?!なんで…お前が……!」

 

「起きたのか、なら話は早い。」

 

スタスタとこちらに歩み寄り、優成はどこか汚れた封筒をこちらに差し出した。

 

「これは…?」

 

と、俺が疑問に思っていると、優成は続け様に

 

「これは東風谷早苗からお前に向けての手紙だそうだ。目覚めたら渡して欲しいと頼まれてな。……俺は確かに渡したからな。」

 

そう言って神社を後にしようとする彼に

 

「まて!……結局、あの美咲さんは一体なんだったんだ」

 

「過ぎた話なんだが……まぁ、俺という遺伝子を継いだ悲しい性を背負っていたんだよ。今は施設で更生中だ…少なくともお前に関わることは今後の人生で一度もない。」

 

もっとも…………そう付け足した後に

 

「お前と出会うことすら、これからの人生では無いんだろうけどな」

 

そう言って、優成は神社から姿を消した。

 

『罪滅ぼしみたいな物か……』

 

「なんの事だ?」

 

『お前は知らなくてもいい。……よし、それならその手紙を開けろ。』

 

言われなくても……そうして俺はその封筒に手を付けた。

 

封筒の封を外すと、中には何か手紙ともう1つ……シールのような物があった。

 

「手紙には…………」

 

 

《先輩へ

 

先輩。この手紙を読んでいるということはもうお目覚めになられたのですね。

この手紙を先輩が読んでいる頃には、もう私は今の現実世界とは別の

幻想郷という場所に暮らしています。

恐らく、遣いの方から詳しい話は聞いていると思います。

それでも私と一緒に居てくれると言うなら…もうひとつの紙に書かれた手順通りの方法を試して、この結界を潜り抜けて来て下さい。

二度と会えないかも知れませんが、私は先輩…優也くんのことが大好きでした。

〜早苗》

 

「……幻想郷…」

 

『地図にも載っていない、忘れ去られし存在が行き着く最果ての楽園……だったか。』

 

「?なんだそれ」

 

『現代社会における存在を否定された異形が辿り着く安息の地と呼ばれている。』

 

「なんで知ってるんだよ」

 

『幻想郷は神々の中でも有名だからな。俺もその程度の知識はある。』

 

『それよりも…お前は向かうのだな?主の元へ』

 

「当然だ。俺はあいつが好きだから」

 

『よく言った。ならばその紙を見よ。』

 

そうして折りたたんであったもう1つの紙をひらげた。

 

「これを地面に敷いて……なんだ?神力を注いで結界に穴を開ける……?」

 

『それなら俺に任せろ、やり方はこうだ』

 

すると、俺の身体から光が発生した。

これは…………あの時の…!?

 

『よし、ならその紙に手を付けて力を流すのだ!!』

 

「分かったーーー!」

 

すぐに手で抑えるようにそこに触れた。

 

すると紙がゆっくりと光を帯びていき…やがて……

 

俺を…いや、神社全体を包むほどのおおきな光となったーーー!!

 

 

 

 

〜幻想郷〜

 

「…?!結界に綻び……?一体何故……」

 

真っ先にその異変に気がついたのは博麗の巫女、博麗霊夢だった。

 

霊夢はすぐにその場所へ捜査へ行き…そこで彼と遭遇した。

 

「……え?なんで人間が……ねぇ!何してんのよー!」

 

「…ん?ここが…」

 

「?何言ってるのか聞こえないんだけどー!」

 

そう言って霊夢はその男に接近する。

 

男はこちらに気がついたのか、霊夢に駆け寄って行って…

 

「済まない、この近くに東風谷早苗という少女は居ないか?」

 

「早苗…?なんであいつの名前を…?貴方一体……」

 

「俺は桜田優也。東風谷早苗の…知り合いなんだ。」

 

その一言で、霊夢は察した。

この人間が早苗が話す桜田という男ということを……

 

ならば話しは速い。

 

「……分かったわ。早苗はこの近くにある守矢神社に居ると思う。だからそこまで案内してあげる。」

 

そう言って霊夢は空を飛ぶ…

それを見た優也は驚いた顔で

 

「空を飛べるのか……?!どういう理屈で……」

 

と言葉を漏らしていた。

 

「ここじゃみんな飛べるのよ。」

 

霊夢はそう言って、優也を持ち上げ、守矢神社の麓まで連れて行った。

 

「はい、ここからは自分の力でどうぞ。私はこれで失礼するわ」

 

「あぁ、助かったよ。ありがとう霊夢。」

 

「気にしないで、まぁ早苗をよろしくね。」

 

そう言って霊夢はどこかへ飛び去った。

 

優也は目線を上げて…1人こう呟いた。

 

「さて…登るか」

 

 

登り始めて早数時間……ようやく登り切った。

 

俺は息を整えて、守矢神社の門を潜る。

 

「あれ…?すいません…もう今日は…………」

 

懐かしい声が聞こえる。俺の事に気がついていないのだろうか…なら、俺が言うべき言葉は……

 

「久しぶり」

 

これだった。俺はただ笑いながらその一言を彼女に伝える。

 

「えっ…………なん…で…」

 

驚いているのだろうか、まともな声が出せていない彼女をみて少し微笑む。

 

そうして……

 

「お前に会いたかった。早苗、お前に会って、この言葉を……返事を伝えたかった。」

 

彼女の方を見つめ、俺はただ一言……こう伝えるーーー

 

「俺はお前のことが……好きだ。俺と付き合ってくれ」

 

彼女は目に涙を貯めながら、笑顔でこう答える。

 

「分かりました…!」

 

ーーー

ーー

 

それから数年が経ち、東風谷早苗はとある外来人と結婚した。

という情報が文々。新聞から発行された。

 

そこに取られた写真に映る二人は…とても……とても幸せに満ちていたという…。

 




ということでこれにて…[完]!!

2ヶ月という期間でしたが、見て頂きありがとうございました!

初めは早苗さんのヤンデレ堕ちからの泥沼展開という案もありましたが、最後まで正統派ヒロインでいてくれました。

ここまで来れたのも見てくださった皆様のおかげです。
本当にありがとうございました!少しでも、皆様の中に何か残すことが出来たのならば幸いであります。



さて…これにてこの二人のお話は終わりです。

これからはまた別の小説を書いていく予定ですので、どこかご縁があればまたお会い致しましょう。

改めて、ここまでご愛読して頂き、誠にありがとうございます。

良ければTwitterやっていますのでそちらの方も見てみてください。

それでは…またいつかお会いする日まで……


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ー番外ー 聖夜の一日

皆様お久しぶりです。
クリスマス特別編です。


「優也くん、今日は留守を頼まれてくれませんか?」

 

「別に構わないけど……何かあるのか?」

 

幻想郷に来てから数年たったある日、珍しく早苗からそんなことを言われた。こういうことを言われる時は今まである程度あったので了承した。

 

「まぁ…ちょっと女子会というか……霊夢さん達と一緒に買い物に出かけるので……それで暫く留守をお願いしたいんです」

 

「そういう事か。分かった、それなら神社のことは俺に任せておいてくれ」

 

「ありがとう!それじゃあ行ってきますね!」

 

そうして早苗は神社を飛んでいった。残された俺は神社の掃除等を進める。

 

「それにしても……」

 

ここの幻想郷という場所は本当に向こうの世界とは常識がかけ離れている。

人が自分の力だけで空を飛ぶなんてことは御伽噺の類いだと思っていたのに……早苗はここに来た時にはもう飛べていたが…

 

それに弾幕ごっこもだ。あれだけの密度の弾を作り出して生身で戦うなんてことは向こうの戦争ではぜったいに行わなかっただろう。

 

それらを含めて、俺はここの世界の異常を正常なのだと受け入れる。それがこの狭い(らしい)幻想郷での賢い生き方なのだと、早苗から言われた。

 

「あれ?早苗はどうしたんだい?」

 

「神奈子様。早苗は霊夢たちと女子会へ出かけましたよ。」

 

「あぁーそういえばそんなこと言ってたねぇ。優也、あんたはどうしてるんだい?」

 

「留守を任されたのでここで待ってるですよ。」

 

「律儀だね〜まぁ、掃除してくれているようだから助かるよ。ありがとうね」

 

「気にしないでください。」

 

箒で落ち葉を集めていく。自然が豊かな立地にある神社はまさかの山のてっぺんに建てられていたのだから驚きものだ。

整備されていたとは言え、この山を登りきったあの時の俺は凄いと思う。今ではそこから階段を使わなくても、ベルトコンベアが作られているので安全に下へ降りることができる。

 

「俺がこっちに来た時よりも発展したよな〜」

 

なんて昔のことを思い懐かしむ。そうこうしてたら何人か参拝客が訪れてきていた。中には妖怪と思われるものもいる。

博麗神社程とは言わないがここの神社にも妖怪がやってくる。立地が立地なのでそれ自体は特になんともないし歓迎するのだが、神社としてそれは頼むどうなのだろうとたまに思うところもあった。

 

 

「あ、優也!」

 

参拝客の中にいたチルノが俺の元に駆け寄ってきた。

 

「いらっしゃい。どうしたんだ?」

 

「知ってるか?今日はクリスマスって言ってプレゼントを貰える日なんだぞ!」

 

あ、だから早苗は霊夢たちと女子会って言っていたのか。なるほどな…

というか幻想郷にクリスマスっていうイベントがあること自体、俺は知らなかったな。

 

「クリスマス?ここでもやってたんだ。」

 

「今年から始まったんだー!だからいつも世話になってる優也にもこれあげる!」

 

そう言って彼女から氷柄のバッジを手渡された。

 

「ありがとう。大事にするよ」

 

「うん!じゃあな〜!」

 

そう言ってチルノも出ていき、俺はまたたそがれるのを続けることにした。

 

 

「というか…俺何も用意してなかったな…」

 

人里で何か買いに行くか?でもここを留守にするのもよくないし……

うーむ…どうしようか…

 

「あれ?早苗は出かけたの?」

 

「諏訪子様…そうですね。霊夢たちの所へ行っちゃいましたよ。」

「ふーん…まぁいいか。はいコレ」

 

「なんです?これ」

 

渡された札のような物を見つめる。何やら術式が施されている感じだ。

 

「それを持っていたら数分間は空を飛べる。」

 

「本当ですか?」

 

「あぁ!私が術を入れたんだ。妖怪に襲われることがあったらそれをかざしてしまえば封印札にもなる。」

 

とんでもなく凄いものを受け取ってしまった…俺からも何か渡せるものは……

 

「お返しとかは考えなくていいんだよ。優也には沢山欲しいものを貰ってるから!私からのクリスマスプレゼント。」

 

「でも……いや…ありがとうございます。大切にします」

 

こういう時は素直に受け取っておこう…。大切な家族からの贈り物だしな。

 

「早苗が帰ってきたらよろしく頼むよ?」

 

「あ、はい。」

 

 

諏訪子様もどこかへ行ったのか気配がしなくなり、そろそろ夕暮れ時になっていた。

神社の掃除はかなり捗り、あらかた掃除も済んだ。これで新年を迎える準備のひとつは終わったと言えるだろう。

やりきったと額の汗を拭っていると、そこに早苗が帰ってきた。

 

「優也くん!ただいま帰りました!」

 

「あ、おかえり。どうだった?」

 

「すごく楽しかったです!それと……ちょっとこっちに来てもらっていいですか?」

 

そう言われて早苗の方に着いていく。境内の階段の方まで歩いて、下を見ると、そこには山の天狗やカッパのみんながいた。

 

「今日はクリスマスですから…みんなでパーティでもと思って。」

 

「なるほど。いいアイデアだ」

 

こんなに大勢で行うクリスマスは生まれて初めてだ。

酒を飲みながら、色んな妖怪たちと話しながら時間を過ごした。

 

「優也くん、少しいいですか?」

 

「どうした?」

 

「これ。受け取ってくれませんか?」

 

「これは?」

 

「私の能力が込められているんです。きっと役にたつかと思います。」

 

「ありがとう。大事にするよ」

 

渡された髪飾りを頭に付ける。

最近の髪が長くてなっていたので、かなり助かったと言える。

 

「俺から渡すものがないんだけど…」

 

「いいんですよ。だって今日は私が留守を頼んだんですから。」

 

「そうか。じゃあ有難くもらっておくよ。それじゃあ戻ろうか」

 

「待ってください。」

 

「え?」

 

「もう少し……ここに居たいです。……クリスマスですし…」

 

「それもそうだな。」

 

そうして俺たちは幸せに過ごしている。クリスマスにこうして過ごせるのは過去の出来事があったからだろう。

早苗と出会ってなければ、俺は間違いなくここの世界には来ていなかった。だから…俺は……

 

「早苗、俺を選んでくれて……ありがとう」

 

「こちらこそ、ありがとうございます。」

 

 




クリスマス間に合いませんでした!!ごめん!

番外編ですが見てくれた方は本当にありがとう!!


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