ガンダムNT ティターンズ・レムナント (嗚呼、刻が見える)
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プロローグ 青い炎のニュータイプ

宇宙世紀0093第二次ネオ・ジオン抗争。

 

「ガンダム。サイコ・フレーム。そしてニュータイプ。星をも押し返すエネルギー。素晴らしい!!」

 

ニュータイプを研究する施設であるオーガスタ研究所の巨大モニターを前に青髪青目の白衣を着た男がまるで指揮者のように両手を広げて喜んでいた。

 

目をかっぴらいて恍惚な表情で見つめるモニターのその先には優しげな光が地球に降下するアクシズを押し返す映像がリアルタイムで流れていた。

 

「アムロ・レイ。シャア・アズナブル。実に懐かしい響きじゃないか。六年前のグリプス戦役を思い出す。そしてあのカミーユ・ビダンの壊れ様も。」

 

右頬に走る牙にも見える縫い傷に触れる。

グリプス戦役。アースノイド至上主義のティターンズとスペースノイド守ろうとするエゥーゴの内戦。ジオンの残党たるアクシズの参戦。あれほど混迷を極めた戦場はもう二度とないだろう。

男もあの時その場にいた兵士の一人だった。

 

その中で一際活躍する一筋の光。

バイオセンサーという時代遅れのサイコミュで人の意思をエネルギーに転化してみせた歴代最高のニュータイプ。もっともその評価と裏腹に悲惨な末路迎えたわけだが・・・。

 

あのZガンダムが纏った光よりも遥かに優しく暖かい光。だが、その実ニュータイプの命を吸って放つ蛍火だ。

 

「地球を人の住めない星にして、強制的に人類を宇宙に旅立たせることで人類の革新を成す。まったく答えを急ぎすぎだ。犠牲を伴う革新は怨恨を残すだけだとキャスバル・レム・ダイクンの時に痛いほど味わっただろうに。まあ、逆にアムロ・レイは悠長過ぎるとも言えるか?」

 

人を信じる。その言葉は確かに響きだけは良いが中身がない。シャアが言うとおりその前に地球が沈む。

 

「だがお前たちのおかげだ。サイコフレームの共振。人の意思のエネルギー化。星を押し返すほどのエネルギーがあれば人類の革新など容易い。謀らずしもお前たちのおかげで筋道が整ったぞ。シャア・アズナブルが成し遂げれなかった目的はこのオレが果たしてみせよう。このブライアン・ホワイト様がなぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンダムNT ティターンズ・レムナント

 

主人公

ブライアン・ホワイト

海のように青い髪が特徴の男。

祖父は連邦でもトップクラスの資産家であり、ティターンズの出資者の一人。父は連邦の高官。

一年戦争時、地球に避難する途中で災難に遭い宇宙をさ迷うことになる。その時ニュータイプとしての素質を開花、やらかす。その事が連邦に伝わりオーガスタ研究所に入れられるも家系が家系だけにエコヒイキ。調子にのってワガママし放題。

グリプス戦役ではティターンズとして活躍。強化人間達を統率。シロッコと大暴れ。何気にカミーユと戦って生き残る。シロッコが倒されると大人しく研究所にヒッキー。

ニュータイプ研究の第一人者。

自身のニュータイプ能力も高い。強化人間を造るのに彼一人居れば事足りると言われる程の知識と技術を持っている。

 

 

 

 



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1 未来が白紙に戻った日 リタ・ベルナル

不思議な感覚はピキーンと弾けると脳内に明確なイメージが流れ込む。

 

巨大なモビルスーツがその憎悪のままに宇宙を破壊する。

そこに立ち向かう二機のガンダム。

一つは白を基調に赤く輝くサイコフレームが目を引くガンダム。もう一つは二つの羽のようなサイコミュを持つ金色のガンダム。

勝つためにはヨナとミシェルの協力が必要。

 

 

でも、わたしは・・・。

 

 

ノイズが走る。帰って来た。

あまりにも現実離れした現実の光景。これから待ち受ける悲劇。逃げるだけの選択肢しかないコロニー落としとは訳が違う、自分たちが左右する打破しなければならない未来。

おでこから流れる冷や汗を拭う。激しい動機は生きてる心地がして少しだけ安心する。だから、目をつぶって深呼吸。

 

 

わたしに未来はない。

 

 

あの金色のガンダム。

あれがわたし。でも乗ってるわけじゃない。きっとわたしは・・・。

 

だからそれまでに。

 

 

「リタ! どうしたの、急に飛び出してさ」

 

「うわ! いまの、何? ヨナ……ヨナも見たよね?」

 

「あんたがやったの? ねえ、リタ!」

 

「これから起こること?」

 

「止められないの?」

 

 

「怖いことが始まる……哀しいことも」

 

 

 

 

一年戦争が始まった。

 

 

 

 

 

 

しばらくしてある日。夜眠りにつくと、突然青い炎がぽっと点く夢を見るようになった。

 

最初は小さな種火だった。

ゆらゆらと揺らぎながら暗闇を照らすように一生懸命燃えていた。まるで何かに手を伸ばそうとするみたいに。

 

そんな夢を続けてみる。

その炎は少しずつ大きくなっていった。明くる日も明くる日も足掻くようにもがくように、のたうち回りながら少しずつ少しずつ広がり続ける。

 

その内その青い炎はとても立派な火柱になっていて、でも不思議と怖さは全然なくて。

 

いつか見た未来を燃やし始めた。

 

 

 

 

 

わたしが見た未来を完全に焼き尽くした日。

その日はわたしがティターンズに連れていかれる日で、無機質なお部屋の無機質な椅子に座らされていた。そして、腕に注射を射たれるその時だった。

 

「………ッ、……!!」

「…………!………。」

 

ドアの向こう側が異様に騒がしい。集団の歩く音近付いてくる。そしてわたしのいる部屋が勢いよく開け放たれた。

 

「オレの研究所でホントに好き勝手やってたみたいだなぁ!オレがティターンズでパイロットやりながらサイコガンダムの調整やらフォウのカウンセラーとか強化人間のデータまとめたり色々頑張ってる間に何やってやがるオールドタイプの馬鹿どもが!」

 

あまりにも苛烈な青い炎がそこにいた。

青髪、青目の軍服を着た青年。目があった瞬間にイメージが共鳴する。

 

「おいおいおい。何気にカミーユ・ビダン並みじゃねぇか!?お前ら因みにどんな実験する予定だったんだ。ちょっと内容見せてみろ。」

 

呆気に取られて固まってるスタッフを押し退け気味に資料をぶん取ってパラパラめくると「アア?」と明らか機嫌が悪い声が漏れる。数秒頭を抱えるとスタッフを資料で思いっきりぶん殴った。

 

「マジで馬鹿じゃねぇのお前ら?マシンより人的資源の方が足りてねぇんだよ!なんで脳ミソ弄るのに直接開く必要あんだ馬鹿が。バトルシミュレーションあってテスタメントが無ぇわけねーだろ!なんで新世紀迎えてんのにお前らだけ旧世紀の手法とってんだ!」

 

スタッフと言い合いして怒鳴り散らして一段落すると、こちらを向いてわたしに目線を合わせてくれる。あの炎と同じ色。同じ暖かさ。それで、同じように怖くない。

 

「うちの馬鹿どもが手荒な真似したろ。すまん。オレはブライアン・ホワイト。お前は?」

「わ、わたしは、リタ・ベルナル。」

「よし。リタ・ベルナルだな。リタ・ベルナル、リタ・ベルナル。・・・ん、覚えた。では、改めてリタ・ベルナル。まず最初にお前をここに連れてきた奴の名前を教えてくれるか?」

「え、えと、エスコラさ」

「あのオッサンか。よし、傀儡にしてやるぞ。」

 

手を押し付けるようにぐりぐりとわたしの頭を撫でると立ち上がった。

 

「まずはこの研究所の実権を握るか。・・・賄賂が必要だな。まあお祖父様に頭下げれば何とかなるか。おい、お前ら今のうちに必要な機材やら欲しいもんまとめとけよ。ちょっと目を離すとすぐブラックだ。・・・死者の悲鳴が聞こえねぇ連中は楽そうで羨ましい限りだよ。じゃあ行くぞリタ・ベルナル。」

 

そう言って手をさしのべてくれる。

 

これがブライアン・ホワイトさん、ドクターとの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

ーーーお・。

 

 

ーーーーーーーーー・タ・・・・、・・い。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーリタ・ベルナル!

 

 

「リタ・ベルナル!おい、聞こえているか。おーい。」

「はっ、あ、ドクター。あははっ、ちょっとボーッとしちゃって。それで何のようですか?」

「いや、お前ボーッとしてたってそんなレベルじゃ・・・まあ、いいか。」

 

あれから十数年。わたしは生きてる。

目の前にはドクターも変わらずとはいかないけど一緒にいる。元気に白衣をヒラヒラさせて毎日忙しそうにしてる。

 

「先日、お得意様のアナハイム・エレクトロニクス社から依頼があった。ニュータイプの資質が高いテストパイロットが必要なんだそうだ。そこでリタ・ベルナル。君にその依頼を任せたい。」

「良いですよ。えーと、いったいどんな機体なんですか?」

「ああ。詳しく説明しよう。」

 

他のニュータイプ研究所は分からないけどかなり自由で実験もひどいことしない。

ドクターについてまわって色んな町とか都市に行ったこともある。わたしはきっと幸せなんだと思う。

 

ドクターが後ろを向くとモニターの電源が付いてわたしがこれから乗る機体が映し出された。

 

「これって・・・。」

 

黄金に輝く鳥のようなガンダムだった。

 

「宇宙世紀がもうすぐで百年を迎える。それと同時にジオンはその自治権を返還しなければならない。それに合わせて連邦も宇宙軍を再編する必要がある。」

 

幼い頃見た、あの・・・。

 

「ジオンがそれに大人しく従うとは考えにくい。たとえジオンという国が無くなっても連邦へ向ける感情、宗教、思想はすぐには変わらない。ジオンと連邦はお互いに傷つけすぎた。その溝は簡単には埋まる筈がない。」

 

忘れていた、なんてことない。ずっと心の中に引っ掛かってた。

 

「連邦の馬鹿どもは心通わせ手を繋ぐことよりもジオンの心の支えを折ることでその抵抗を押さえようと考えている。」

 

ヨナ。ミシェル。もしかして、近付いてるの?

 

「ジオンが掲げるジオニズム。その象徴とも言える提唱。人類は宇宙へ進出することで新人類へと進化する。すなわちニュータイプ思想。これを否定することが連邦の完全な勝利に繋がると信じている。」

 

わたしは・・・。

 

「つまりは戦場の勝敗をニュータイプの存在に左右されない強力な機体を造ろうという計画。その名も『UC計画』。その為のフラグシップモデルをAE社に委託した。」

 

・・・大丈夫。だってドクターがいる。今も変わらない。煌々と燃える青い炎。

 

「シャア・アズナブルが産み出したサイコフレーム。アクシズ・ショックでアムロ・レイが星を押し返す奇跡を成した物質。連邦は扱うことをタブーとされたこれを贅沢に使った機体をご所望だ。」

 

わたしの希望。あの未来を燃やし尽くしてくれた人。だから、大丈夫。

 

「フル・サイコフレーム実装型試作モビルスーツ、ユニコーンガンダム。君が乗るのはその三番目の機体。ユニコーンガンダム3号機フェネクスだ!」

 

機体説明とUC計画の詳細が映し出された画面を見ていたブライアンはリタの方に振り返った。

 

「・・・フェネ、クス。」

「そうだ、フェネ、ん?・・・なんか顔色が悪いぞ。大丈夫か。すまん、夢中になって話しすぎたか。体調が優れなかったのか。話は後にして構わん。休め。」

「いえ、大丈夫です。少しやなこと思い出してしまって。でも、もう大丈夫です。お話し、続き聞かせて貰えませんか?」

「あ、ああ、そうか。無理するなよ。なんかあったらすぐ言え。じゃあ、手短に説明するぞ。君に与える任務は二つ。」

「二つ?」

「ああ。まずはフェネクスのデータ収集の協力。そしてフェネクスの奪取だ。」

「だっ、奪取するんですか!?」

「大丈夫。AE社には話が通ってる。訳ありなのさ。この三号機はAE社の後ろ楯には内緒で造られてな。色々都合が悪い。だから、その存在をどうにかしたい。でも壊すのも勿体ない。だから極秘に隠すことにしたらしい。ここにな。」

「えと、理由はわかりましたけどっ。いったいどうやって!」

「そこも抜かりはない。計画は完成してる。心配するな。追い追い詳しく話す。それよりここまでにしよう。今日はもう休め。いいな?」

 

そう言って肩をぽんっ手を置いてとして通りすぎた。やっぱり暖かい人。

 

「あの、ありがとうございます。それと信じてますよ。ドクター!」

「・・・なんだ急に。変な電波を受信するな。オレはお前ほど未来を見るチカラはない。何かあったら報連相を忘れるな。オレに出来ることなら何とかしてやるさ。」

 

 




ブライアン・ホワイト
グリプス戦役時二十歳。ティターンズ所属の強化人間全員の統括リーダーを勤める。立場としてはティターンズに派遣された研究所のスタッフ兼ティターンズのパイロット。都合よく使い分けることができた。

気に入った人をフルネームで呼ぶ癖がある。マスターと呼ばれるのを嫌ってドクターと呼ばせている。

政府にオカルトを研究しろと無理難題を押し付けられた可哀想な研究所。
そこに現れたオカルト側の人間がブライアン。
自身がニュータイプであるため発見からではなく、証明するためのデータ集めから始めることになるため本来のオーガスタ研究所より多くの子供の命を救う結果になっている。

ニュータイプ研究の功績は凄まじく、後ろ楯も強いため瞬く間にオーガスタは掌握されることなった。


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