創造(つくりもの)の鷹 (黒宮怜狐)
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第一話 飛び立ち

処女作だお。

文章力?文才?何それ美味しいの?な主が見切り発車でスタートさせた作品です。

今回の話は設定の話が多めですよー

では、創造(つくりもの)の鷹、スタートです!


まだ、朝日が登っていない時間、徹夜の俺は眠い目を擦りながら頭をフル稼働で回していた。何をしているか?と聞かれたなら答えは簡単。

艦船の設計図(的なもの)を書いているのだ。

存在しない艦。俺が考えたらどんなもんができるかと。

時代設定は古鷹型重巡洋艦竣工後。詳しくは設定していないがだいたい、ソロモン沖海戦より5年以上前の技術のみで設計しているとしている。

追加設定として、古鷹型の後継重巡として造られる予定だったなど、様々なものがあるがウィ〇などで調べた付け焼き刃なのでおかしなところがあると思うが気にしない。こりゃ妄想だし。

と、ここでどうしてこんなことをしようとしているか簡単に説明しよう。誰に?とは聞くな。

艦これをやっていたら船の設定を作ってみたくなった。つまり「俺が考えた最強の軍艦」だ。

……我ながらアホらしい。

そんなことを考えながら脳内タスクの二つ目をだし、艤装を考える。

とりあえず古鷹なら20.3だよな……でも後継設定だしな……

そんなことを考えながら俺は深い眠りに落ちていった。

 

??年?月?日 位置????の砂浜

 

「起きてください!起きてください!」

 

………五月蝿いな、今起きるよ……。

グダグダ思いながら目を覚ますとそこには照りつける太陽、綺麗な砂浜、キラキラ光る水平線。

…………どこだここ。

 

「どこだここ!」

 

口から出た高い声など気に出来ず、砂浜に

あれ?俺は部屋で寝てたよな?なんで砂浜に居るんだ?

そもそもなんで立って寝てんだ?……夢か?

女の子のような柔らかい頬っぺたをつねる。

痛い。夢じゃないな。

……頬っぺた柔らかったな今。俺だいぶ強ばった顔してるからかなり硬かったはずなのに……。

鏡か何かないか?……無いよな。

だってここ海だもん……なんで海にいるのか知らんけどさ。

……って言うか誰だ今の声。

周りを見渡すが誰もいない。

「ここですよ!こーこー」

 

声のする方を見るとそこには10cm程の小人がいた。

 

「小人?!」

 

「うーん、惜しい。私は妖精ですね、グレムリンなど、悪く言われることもありますけど」

 

10cmの小人……もとい、妖精がそう口を開く。

 

「妖精?そんなもの居ないでしょ……あ、まさか俺って死んだ?ここ天界?」

 

「違いますよー、ふざけてんですか?」

 

失敬な、大真面目で聞いたんだけどな。

 

「じゃあ、ここはどこだよ」

 

いや、マジでどこだよここ。見渡しても街らしきものも全く見えねぇーぞ。

 

「ここですか?ここはサボ島、ソロモン諸島の島の内の一つですね」

「サボ………島?ソロモン諸島って、海外だよな……なんで俺そんなとこにいるんだ?」

 

と言いながら周りを見渡す。といってもやはり周りは海と砂浜、そして背後には鬱蒼としたジャングル。

クソが着くほど暑いし、話を聞く前に、日陰に移動しようと言う。

 

「分かりました、とりあえず木陰に移動しましょうか、と言っても暑さはそんなに変わらないと思いますけどね!」

 

なんか、この妖精丁寧に話す割にウザったく感じるな……セーラー帽とか被って可愛いのにさ。

そう思いながら日陰に移動する。

 

「では、説明をしますね。今からは質問は説明が終わるまで控えてくださいね」

「分かった」

 

割とマジめに話をする雰囲気をだした為真面目に聞く。相手が真面目なら自分も真面目にこれ常識。

 

「まず、大前提として貴方は一度死にました「はぁ?!」静かにしてください。」

「ご、ごめん」

 

いや、死にましたはインパクトでかいって。それが大前提ってなんだよって、本当に。

 

「そして、生き返されました。艦娘として」

「艦娘?」

 

艦娘って……艦娘ってことはここは艦これの世界か?!

 

「そうです。貴方は重巡洋艦の艦娘『滅鷹(めつたか)』として生まれ変わりました」

「滅……鷹?!」

 

『滅鷹』俺が全力で調べあげて付け焼き刃で描いた重巡洋艦と同じ名前じゃないか。しかも艦これの延長線上に史実に存在した艦を調べても出てこなかった名前………ならほぼ自分の考えた物で確定じゃないか?!

 

「自分の内側を見るように集中してみてください。自分の経歴が思い出せるはずです」

 

何かが腑に落ちないが言われた通りにやってみるか……。自分の内側を見るように……自分の内側を見るように……

 

「お、おおおおおお?!」

 

頭の中に艦だった時の感じが思い浮かぶ。内容としては古鷹型の次に建造されたが大本営でも上位の位の者十数名と乗組員および滅鷹が参加する作戦の艦長しか知らされない隠された艦でサボ島沖海戦のち、行方不明……俺が考えた設定と酷似し過ぎているな。

やっぱり滅鷹は俺が考えた艦でほぼ間違えないようだ。

というか

 

「おえぇ、なんか気持ち悪いぃ」

「初めて思い出す方はそういう方も多いようです。こればっかりは妖精の私でもどうしようもないので……ごめんなさい♪」

 

ちょっと今この妖精ボロだしたな、やっぱり礼儀正しくしているようでうざいタイプだ。

 

「とにかく思い出せたなら貴方についている艤装の使い方もわかるはずです。とりあえずは大丈夫ですね」

「艤装?」

 

体中くまなく見てみると、機銃のようなものや肩辺りから伸びたアンテナそして、古鷹のような左肩から腕にかけて付いた大きな主砲。

これを見たことによって俺は艦娘になったんだと言うことを改めて自覚した。

 

「では、質問はありますか?無ければ私は艤装内で仕事することになりますので」

「これからどうすればいい?後、鏡とか無いか?」

 

この状態になったには何かの巡り会わせかもしれないし気にするのはやめだ。それよりこれからどうするか指針が無ければ動くこともできない。

 

「これからは、日本へ行くもしくはどこかの泊地へ行くあとはドロップ艦として拾ってもらうくらいですかね。それくらいしかないです」

 

ふむ、分からない所に行くよりは有名なところに行く方が何かと便利になりそうだ。なら日本に行くのが一番かな。

 

「分かったじゃあ日本に行こう。何日くらいかかる?」

「そうですね、何もトラブルが起きずにずっと走り続けたとしたら大体30~40日でしょうか?」

「30~40?!何もなくても?!」

 

多分補給とか、そもそも食事や睡眠の事なども考えるともっと伸びる!こりゃ運が悪けりゃ二か月の航海か?

 

「補給、睡眠、食事の事を考えるとどうなる?」

「そうですねぇできるだけ節約して大体五日は伸びるでしょうか♪」

「何でちょっとうれしそうなんだ……まぁいいや、それで行こう」

「分かりました。あ、これ鏡です」

 

そう言われると手鏡が渡される。俺はそれを覗くと……美少女が現れた。

サラサラなショートボブのような髪型の黒髪、少し丸い顔、綺麗な肌。

気にしてこなかったが自分が滅鷹を考えた時のダルダルの服はセーラー服に変わっていた。その服の形は古鷹型ほぼ同じだが色は黒に近い紺で古鷹型とはまた違うことを示している。そして、スパッツを穿いている。

胸は……うん。龍驤よりは大きい。

 

「容姿が確認できたところでアドバイスです。もう少し女性らしい立ち振る舞いを心がけるといいと思いますよ?」

「分かりました。善処します。」

「そう、そんな感じです」

 

とりあえず、こんな感じの口調で大丈夫なようだ。というか艦に女性の立ち振る舞いとかわかるのだろうか?まぁいいや、俺は元々は人間だったわけだし。ただ、この妖精の真似をしたってのはちょっと何となく気に食わんな……。まぁいいや。

 

「では、質問はこれくらいで大丈夫ですか?」

「多分大丈夫です」

 

大丈夫……だよな?

 

「分かりました。私の仕事はここで終了ですね。ここからは私との会話はできなくなります」

「え?!」

「ごめんなさい。艤装を動かすためには私は会話するという能力を捨てなければならないのです。妖精は一つの事しかできないので」

 

この妖精ならこういうことを言ってからかいそうだがマジなトーンで話しているのでこればっかりはどうにもできず言っていることも本当らしい。

 

「……分かりました。短い間でしたけどありがとうございました」

「ま、居なくなるわけでは無いですから。あ、一つ忠告です。絶対に艤装をつけたまま海に潜ろうとしないでくださいね?死よりも怖いことが起きますので。では、ありがとうございました♪お話しするの少し楽しかったですよ♪」

 

そういうとぱたりと何も言わなくなった。つまりここからは会話できる相手はいなくなることになる。

 

「ま!いいか、一人は好きだし。じゃ、いっきまーす。しゅっつげーき♪なんてな」

 

こうしてよくわからず死んで、何故か自分の思い描いた艦が史実にあり、その艦娘になっているなど分からないことだらけだが特に気にせず。艦娘人生を謳歌する俺、もとい滅鷹の物語の始まりじゃー!

 

「……あ、どの方角か聞くの忘れた」

 

自分ですら大丈夫か不安になってきた。




初めてこういうのを書いて分かったこと。

やっぱり難しいんやなって。


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第二話 羽ばたき

処女作の第二話だお。

古鷹好きな提督が書いている、見切り発車な物語、最低100話行くまでは終わらせるつもりはない!

今回の話はあまり話は進まない……かもかも。即効、鎮守府で活躍する姿が見たい人はごめんね。
次か次の次には着任する予定だから……ただし予定は未定!

それと……素人が書いたもんが投稿初日にUA100越え!ありがとうございます!
しおりも3件、お気に入りも2件……最初は目を疑いました。こんな作品ですがこれからも誠心誠意頑張っていきますので応援よろしくおねがいします!(`・ω・´)ゞ

では、創造(つくりもの)の鷹、第二話 羽ばたき スタートです!


??年?月?日位置サボ島、ジャングル前の木陰

 

どうするか……あのうざったい妖精に聞こうにももう話せないからな。

動くなら海図か何かがいるな、あと方位磁石だな。方向が分からなきゃどうしようもない。

暑さ的に多分赤道上のどっかなんだろうけど前世は海外なんか行ったことは無い。

艦これは第二次世界大戦辺りの海戦の話をもじったのが多いはずだし大西洋付近は無いと思うから北に向かえばいいんだろうけど……。

クソッ、こんなことなら地理をちゃんと勉強しておくんだった。

太陽の傾きから方角が分かるっていうけど赤道付近の傾きって北と南は分からないはず……無理に移動しようものなら南極に行く気がする。俺軽く方向音痴だし。

 

「……迷子だなぁ」

 

生まれ変わったばっかのはずなのに迷子とはこれいかにって感じだが。

 

「悩んでても仕方ないか―」

 

運のパラメータ(Luk値)が高けりゃ、日本に着けるだろ。

あ、違うな。港かどっかに数回は上陸しないと死ぬからまずは港だな。

島をたどっていったらどっかに港町たどり着けるかな。俺英語とかできねぇからどうなるか分からないけど。

そう考えてる間にも時は進み、照り付ける太陽は少しづつ傾いていく。

やばい、日が沈む前に動かないとまずい。こうなったら仕方ない。島沿いに行くしかないか。

移動することに決めた俺は事は急げと砂浜へ戻り。さぁ、初めて海に立つぞ。勇気を持て俺。

スキー用のブーツのような靴を履いた右足を海水に付ける。

すると「ゴゴゴゴゴッ」と唸り声をあげて右足に浮遊感を感じる。まるで人を駄目にするクッションの上に立った時のような感覚。いやそれ以上か。陸地に付いている左足の感覚との差の違和感がすごい

左足をあげると予想外に右足が沖へとかなりのスピードで進む。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!」

 

だが舐めるな!前世の俺のバランス感覚・体感は世界一ぃぃぃぃぃ!

エビぞり目前の体は実は意外にも体勢を立て直し、左足を海面に付ける。

沖に出るころには完全にバランスをとるための感覚をつかみ切っていた。

 

「水上のスケートだなこりゃ」

 

自分で言ったが言い得て妙だと思う。動き方はスケートに感じる。

そして僥倖。よく見ると真正面に大きめな島が見える。それと右側にも。ただ、港町はここからはどちらの島にも見えない。しかも人工物も見えないところから真ん前の島も右側にある島も無人島だろう。

とりあえず、俺は真正面の島に向かうことにした。

あ、そうだ。一応女になったのなら、一人称を改めるべきだろうか。鎮守府に付いた時に困るだろうし。

うーん、(わたし)とか?いや、慣れてる方なら(わたくし)の方がいいだろうか、会社だと(わたくし)を使う方が多かったしな。ほかに女性が使う一人称だと吾輩とかか?いや、服装とかで会わんな。なら、黒潮みたいにうちとかか?……俺って何処で建造された設定だっけ?場所によっては全く合わんく感じるな、やめておいた方ががいいか?

 

「クッ……此処で女性経験が無い事が仇になるとは」

 

自分の事になるわけだし、もう一度自分の事を思い返すのもいいかもしれない。一人称を決める材料になるし。ということで一人称決めは後回し!

もうすぐ島のに着くわけだから上陸方法を考えなければ。

 

「あ」

 

これどうやって止まるんだ?えーと、えーっと。

慌てふためく、とかその程度じゃない。目測あと何キロもあるかと行ったところだ。これ乗り上げたら艤装とかどうなるんだ?破損でもしてみろ。俺は一生あそこの島に取り残される気がする。

上陸するにしてもゆっくりと近づかなければならないにもかかわらずスピードが落とせない。

初の感想が水上のスケートならハの字にすれば止まるか?

ただそれを試すのは怖い。なぜなら推進力は足にあるから。試してみて進み続けたら両足の艤装がぶつかり合うことになる。もちろんこのスピードだ。最悪沈むことになる。……やばい。ピンチすぎる。

覚悟を決めてハの字にしてみるか?などと考えていると。

 

「思い出せたなら貴方についている艤装の使い方もわかるはずです」

 

というあのうざったい妖精の声が脳内で再生される。

……洋上でこんなことしても大丈夫か心配だがそうするしかない。自分の内側を見るようにと、唱えながら目をつぶる。

そうすると、艦の時の思い出と共に内部での船員の行動が手に取るようにわかる。

船の速度調整をしているところに焦点を当てるよう念じるとどういう感じに体が動いているかが分かった。

「長く見続けるとまた気持ち悪くなるかもな」と思いすぐに目を開くと島はすでに目の前に迫っており急いでかかとに体重をかけ、速度を落とす様に身体に念じる。

するとみるみる速度は落ちなんとか打ち上げられることは回避した。

 

 

??年?月??日、日の入り、位置サボ島近くの島

 

「あ、危なかった」

 

俺は四つん這いになって砂浜の上で休憩していた。

この島にたどり着くころには日は欠け月の灯りが少しずつきれいに見えてきていて夜の航行は危ないと見ていたところからぶつかりそうになったということと二つの意味で本当に危なかった。

そして、四つん這いで休憩しているのは、ただ単に疲れた(と言ってもさほど疲れれてはいない)だけでなく、さっき第二の過去の自分の事を見たせいなのか頭の中がぐちゃっとして気持ちが悪いせいもある(こっちの方が理由としては大きい)。

 

「あれを見ると今の自分が船なのか人なのかが分からなくなってくるんだよなぁ……」

 

気持ち悪いのは多分そういう理由だ。他にもいろんな原因があるかもしれないけど。

しかし、前世の俺は眠気ビンビンで設定を作り続けていたからどういう設定にしたのか思い出せないし、結局艤装の使い方は昔の記憶を見ないと分からないから、何度もこの感覚に苛まれることになるんだろうな。

さて、夜の航行は危ないしどうしようか……。

 

「そういえば……喉乾いた……」

 

人間は一日2Lの水分量がいるらしい、どっかで聞いた。艦娘がそれに該当するのかは分からないが喉が渇くということは少しはそれに近いのがあるのだろう。

まだ全然我慢できる程度だがやっぱり何か飲んでおいた方がいいのだろうか。

 

「といっても、ヤシの木とか見えないんだよなぁ」

 

たどり着いた砂浜にはヤシの木のようなものは見えない。湧き水などがあるかもしれないが、この暗さでジャングルの中に入っていくのは怪我の危険性とかがある。あまり得策とは思えない。

動こうにもどうしようもなく夜間の行動が危険な時は……

 

「よし!寝よう!」

 

と言ってもこのまま砂浜でおやすみなさいは危険すぎる。ちょうどそこの崖に洞穴があるし、そこで寝よう。

横になって寝れるほど大きな洞穴に横になる。

いろいろあったが明日もどうにかしなければならない。日本に行けたらいいが無理そうならドロップ艦として拾ってもらうのもいいだろう。こんな所で死んでたまるか。

 

「じゃあ、おやすみ」

 

誰に言うまでもなく、独りで呟いた。

 

 

??年??月?日位置????

 

目を覚ました俺は海の上にいた。何故だ?

そう思ったがすぐに理由が分かった。中の乗組員があわただしく動き回っている。

つまり、これは第二の俺、つまり『滅鷹』が船だったころの夢だろう。

内部の声は聞き取れないが夜の航海のようで月明かりが甲板を照らしているのがよく分かった。

全速力で動く(滅鷹)はおそらく作戦遂行中なのだろう。

周りを見ても何の艦も見えない。周りに守ってくれる仲間がいない。何となく、それがすごく気になった。

 

「独りか寂しいな」

 

どうしても言いたくてそう俺はつぶやいた。

そして、俺の意識は覚醒へと導かれていった……

 

 

??年?月?日、日の出、位置サボ島近くの島、海岸

 

波の音が目覚ましとなり、目が覚める。

夢を見ていた気がする……どんな夢だったか覚えてないけど。

丁度日の出の時に起きたようでまだ辺りは薄暗く感じる。

速く出発しよう。俺は艦娘人生……いや、艦生?まぁ、どっちでもいいやを終わらせるわけにはいかない!

というわけで砂浜に立ち、右足を海水に付ける。

昨日と同じように「ゴゴゴゴゴッ」と唸り声をあげて右足の出港準備ができたことを知らせるが昨日の失敗を繰り返さないようにまだ出ないように制御しつつ左足を海水に付ける。

左足も「ゴゴゴゴゴッ」と唸り声をあげ、出港準備ができたことを伝える。

さて、とりあえずどこに行こうか。この島を一周ぐるっと回ってみてもいいと思うが、自身の燃料が心配になってくる。昨日の島、サボ島から見えていたあの島に行くのがいいのだろうか……ただ、昨日は気が付かなったが

 

「なーんかいやな予感がするんだよな」

 

そう、いやな予感。何というか赤い靄というか、自分が危険信号を発している気がしてならない。

……主砲とかの使い方も知っておいた方がいいかもしれない。

念には念を一応艤装すべての記憶を見ることにする。

自分の内側を見るように……自分の内側を見るように……

そう念じながら目を閉じる。

いつものように船の時の記憶が思い出され、使い方が頭の中になだれ込んでくる。

 

「うぇぇぇ、やっぱり気持ち悪い」

 

さぁ、覚悟を決めよ。あそこに行けばどうにかなるかもしれない。

と言う訳で、

 

「重巡滅鷹、出撃します!なんてね♪」




今日の感想
人によっては3時間やら5時間でできるって聞いたことがあるけど絶対嘘だと思った。
ほぼ一日かけて書き上げました。やっぱ大変やわ……


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第三話前編 能ある鷹の爪

処女作の第三話だお。今回は前後編で分かれているお。
後編はとある艦娘の視点で書かれるお。誰とは言えないお。

見切り発車って打つときなぜか幹発車って打っちゃうけど今日も見切り発車な話をやっていく。
今回の話は滅鷹初の戦闘。さてどうなるかな。




??年??月?日位置アイアンボトムサウンド

 

さぁ、あの島に向かって全速前進だ!

さっき、使い方を知ったばっかのアンテナをびんびんに働かせ島に向かう。

すると、すぐに何かを感知する。何かというか……

 

「敵の反応っぽい感じがすごいわ」

 

水上電探ってこんな精度とか範囲とかいいんだな。仮定敵の位置がまるわかりだ。

えーっと、一番まとまっている奴で数は1,2,3,4……

 

「多分30位か?なら行けるな」

 

……あれ?今……なんで行けるなって言ったんだ?初戦闘になるかもしれないんだぞ?しかも一人で。無理に決まっているだろう?沈むかもしれないんだぞ?

でも、体の奥が熱く燃え滾る。まるで闘争を求めるように。

そう考えているうちに身体は敵の方へ向かってしまっていた……

 

 

??年??月?日位置アイアンボトムサウンド東側

 

大体この辺りだろうかそう思うと更に気分が高揚してくる。もうすぐ敵に合えると。

 

「うーん、俺ってこんな好戦的な性格だったかなぁ?」

 

自らに問いかけるが勿論返答は「NO」。なら多分、俺ではなく(滅鷹)がそうなのかもしれない。

ただ、身体が闘争を求める以上自分の意志で止めることはできないと思う。

腹をくくるか、俺。運が良ければ勝てるかもしれない。

 

「見えた」

 

電探で見つけた大艦隊の進路を予測して待ち伏せの形で止まっていた時に視認したと同時にそう呟く。艦これのでの敵は深海棲艦。そして、あれはどう見ても深海棲艦と一致していた。

今ならまだ逃げれるかもしれないという思いとこれだけの数と相手できるんだという思いが混ざり合う。

正直、あの数だ。すでにばれていてもおかしくはない。もしかしたら、あの島に向かおうとした時点ですでにばれていたのかもしれない。

六隻艦隊の五編成の超大規模艦隊。隊列は先頭が駆逐艦、その奥に重巡と軽巡が入り交じり、その奥はよく見えない、が空母の姿は()()()()()()()()()()()。本当にいないのなら逃げれるかもしれない。

と思ったところで、さらに嫌な予感がした。逃げるのは得策ではない。此処で逃げたら後悔する。そんな気がした。

 

「しょうがない、やるしかなさそうだ」

 

自分の直感には素直に従うといいってばっちゃが言ってた。

 

「ただ、どうするか……こっちの戦力は1、あっちの戦力は30。しかも俺は戦ったことがないときた」

 

俺の身体はこの程度ピンチでも何でもないと、むしろ早く戦いたいと武者震いをするほどだが、俺自身は初めての戦闘、実際に動かすのは俺の意思で体が勝手に動いてくれるなんて思っていない。

大体の距離は少しずつ縮まっているが先頭との距離が100キロほど、射程ってどんなもんなのか分からんが、後50キロは近づかないと当てられそうもない。でも近づくとおそらく、というか確実に見られる。

いや、見られるだけならいいが撃ってくる恐れもある。

側面から叩きたいが地形がそうはしてくれない。丁度仮定敵のいる地点が入り江のようになっていて門のようにも見える。

 

「ただの突撃は……絶対得策ではないな。唯悪戯に命を落とすだけになる。まぁ、当たり前だけどさ」

 

まず、やるなら簡単に倒せそうな駆逐艦からやって外側の戦力を削るのがいいだろうか、いや、中央をたたき混乱を起こす方がいいかもしれない。

 

「後者の混乱のほうがいいかもしれないな」

 

とりあえず、理解してくれるか分からないがあの、妖精を呼び出す。

 

「今から自分は、単独で大艦隊に攻撃しに行きます。できるだけ頑張るので、手伝ってください」

 

伝わったか分からないが敬礼したので伝わったと思う。その後、大きな丸を身体を使って作ったのは口調の評価のだろうか、余計なお世話だ。

目をつむる。集中をし、意識を変えていく。

俺の前世の時の教訓『勇気を持て、意志を固めろ、敵はお前よりはるかに弱い』を思い出せ。

 

「俺……いや、(わたし)なら勝てます。私は単独なら最強で最恐で最狂です」

 

なんとなくだが、俺が完全に滅鷹になった気がした。なりきりでは無く、滅鷹が自分なんだと、再認識した気もした。

 

「さて行きますか。重巡洋艦滅鷹…………出撃します!あいつらに、最高の悪夢を見せてあげる♪」

 

こうして超大艦隊撃滅作戦を遂行することになる。

 

 

??年??月?日位置アイアンボトムサウンド東の小島、敵超巨大艦隊までの距離残り40キロ

 

一応、自分が付けている艤装を確認しておこう。

主砲2基、副砲及び高角砲6基(内訳副砲2:高角砲4)、対空機銃6基、水上電探及び対空電探2基(内訳1:1)、魚雷8基40門、水上偵察機が1機。

今回は、あの大編隊に水上偵察機を飛ばすと間違いなく落とされるうえに警戒されるため、余裕ができるまで使わない。いや、使えないだな。

さて、此処からの砲撃は先頭には届く。そう確信がある。

だが狙うは駆逐艦の奥の重巡でも、赤いオーラを発している奴、エリートだったか、フラッグシップもいるようだが、重巡ネ級の方が強いし恐らく指揮系統を握るならその辺りだろう。

問題はこの主砲がどこまで貫けるかだが……何となくだけど絶対に貫ける気がしてならない。

一応地図にも載らないような小島で待ち伏せしているが待ち伏せが知られている気がする。

 

「まぁ、分かっていても叩き潰してあげますけどね♪」

 

 

??年??月?日位置アイアンボトムサウンド東の小島、敵超巨大艦隊までの距離残り35キロ

 

「ようやく狙える距離ですね♪さぁ、地獄のショーの始まりですよ♪」

 

なんだか、今から死にに行くようなものなのに楽しくなってきた。

速くあの艦隊を壊滅させたい。あの深海棲艦が絶望するのが見てみたい。そう思う。

その前に確認できていない深海棲艦の確認だ。

奥の方に目線を動かすすると

 

「嘘……だろ……」

 

軽巡洋艦と駆逐艦に囲まれて見えたのは南方棲戦姫だった。

俺、1艦で姫とやらなきゃならないのか……。

 

「……やってやりますよ」

 

そういうと、俺はネ級エリートに向けて砲を放った。

それと同時に副砲で周りの深海棲艦を一撃で沈めていく。

指揮系統が狂ったのか周りは何が起こったのかと慌て、中には味方にぶつかる深海棲艦もいた。

俺は、その中に全力で突っ込んでいく。

 

??年??月?日位置アイアンボトムサウンド東、敵超巨大艦隊中央部付近

 

突如現れた滅鷹()に動揺する奴もいたが直ぐに砲を向け速射。だがそれがいけない。

速射された弾のいくつかは味方の頭や体を撃ち抜き、沈みはしないもののダメージを与える。

これで、少しは弾薬の消費を抑えられるだろう。流石に全ての弾が一発で沈ませるほどのダメージを出すとは思っていない。ちなみに他の弾は至近弾もあるが、ほとんどが的外れ。

魚雷をばら撒きつつ、高角砲を駆逐ロ級後期型に向けて撃つ。これで数隻を轟沈。残りは二十三隻。

と、ここでまずいと思ったのか南方棲戦姫が発艦し、制空をとりつつ砲撃、弾着観測射撃というやつなのだろうか。

 

「そんなちゃちな攻撃当たるわけないでしょう」

 

簡単な砲撃なんかは簡単によけられる。油断していなければ全ての砲撃を避ける自身もある。

奇襲の効果はここまで、ここからは攻撃が激化すると思うため回避に専念しつつ隙あらば必ず当たる距離で撃っていく。

二十三隻の砲撃は雨のようにしか感じなった。でも大きく、目で追えるほどの遅い雨は俺には当たらない。

隙を見つけては撃つ戦法で二十隻まで数を減らす。これで一艦隊分と三分の二をやった。

此処からは俺が隙を見つけては撃っていることに気づいたのか隙無く撃ってくる。スピードの調節、蛇行の不規則化などで命中弾を確実に回避していく。

それでも少し自分が疲れてきたのか、それにも対応して撃ってきているのか至近弾が多くなる。

それでも尚、一隻ずつ轟沈させていく、時には近づき、時には遠距離砲撃を。

制空権をとられている以上弾着観測射撃は出来ない為、長距離も目視での砲撃、もちろんそうなると一発、二発と外す数も多くなって行く。

それでも十五隻まで数を減らす。服は返り血の様なものがべっとりと付き、のどがカラカラになり、腹もかなりすいてきた。でもこれで二艦隊分と二分の一。終わりは近い。

ここまで損害が出れば、相手は本気で殺す以上の話になり、全方位を塞ぐような砲撃や、魚雷。

流石に被弾を貰ってしまうが装甲のおかげでノーダメ―ジ。

こちらも水柱のおかけで位置の把握がすぐにできなくなり攻撃のチャンスになった。

全門斉射によりちまちまダメージを与えていた深海棲艦八隻を同時に沈める。これであと、七隻。

すでに体力やのどの渇き、腹の減り具合は限界を迎えているがまだやれる。

 

「貴方たちの絶望の顔が見たいの♪まだ……倒れないわよ♪」

 

とりあえず、孤立している重巡ネ級を沈める。これで六隻。四艦隊分を潰した。

すでに服は真っ赤に染まり、髪や頬にもついている感触がする。それでも攻撃の手を止めない。

高角砲を駆逐艦に向け掃射。これで二隻。あと四隻。

副砲を残った駆逐艦と軽巡に向け発射。それと同時に残り少ない魚雷を移動予測位置に向けて発射。

これで残りは南方棲戦姫だけになった。

 

「ナ……ナゼダ。ナゼダァァァァァ!」

 

そう言葉を発すると南方棲戦姫は主砲を発射。

多分絶好調なら避けれただろうが、今は体力がほとんどと言って良いほど無い。

その丸わかりな砲撃に直撃してしまい艤装が悲鳴を上げ、服が破れ、血があふれ出す。

大破状態と言ってもいいだろう。と言ってもアドレナリンが大量に放出しているからか痛みは感じないが。

 

「やってくれたわね!痛みを感じさせながら嬲り殺してあげる♪」

 

そういって全砲門を南方棲戦姫に向け、掃射。

全ての砲弾は南方棲戦姫に真っ直ぐに飛んでいき、肉体をえぐり、艤装を破壊。

海の藻屑と化していった。

 

「はぁ、はぁ。はぁ、はぁ」

 

やり切った。あの三十隻もの超大艦隊を俺の手で……。だが、

 

「うぁぁぁぁぁ!」

 

アドレナリンが切れたのか全身に痛みが走り、腹に受けた砲弾のダメージによって腹から血が噴き出す。

全身の体液が口から出そうになるのを止め、航行をしようとするが。

 

「ウァッ」

 

身体が倒れ、半分沈みかけているのが分かる。

 

「あぁ、私……死ぬんだ。沈むんだ」

 

そんなことを思うとひしひしと恐怖に駆られる。「死にたくない」「沈みたくない」と身体が無理に動こうとするがこんな状態で動けるはずがない。

 

「そんなことさせません!」

 

そんな声が聞こえ、俺の意識が途絶えた。




さて、今回の感想

戦闘表現難しすぎるっぴ!おかしなところがあったらガンガン言ってくだしあ!
では、後編を書いてきます!(`・ω・´)ゞ


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第三話中編 能ある鷹の爪②

※予定変更のお知らせ
前回の話で前後編と言いましたが全中後編の三部編成に変えることをお伝えします。
やっぱり予定は未定だったよ

処女作の第三話中編ですお。今回はちょっと変なところで終わった感じがすると思うお

やはり、見切り発車、今日も今日とて、見切り発車、でも今日も明日も終わらせぬ

さぁ、イクゾ!デッデッデデデデ カーン

と言う訳で第三話中編能ある鷹の爪②スタートです!


現地時間2020年10月5日、時間一一〇〇、位置ショートランド泊地、視点 大淀

 

「平和だなぁ」

 

小野柱(おのばしら)提督がつぶやく。この人は本土の提督とは違い、いつものんびりしている。口癖は平和だなぁ。

 

「そんなことを言う暇があったら、書類仕事に集中してください」

 

私ひとりっきりに任せるのではなく。と続けようとするのを抑え書類に目を落とす。デイリー報告もまだ完了していないのに。そう頭の中でぼやきながら。いつものスピードで書類の精査を終わらせていく。

 

「いやいや、君のスピードについていける人なんていないよ。大淀」

「なら最低でも追いつくように努力をしてください」

 

この会話も何度目だろうか。すでにここまでが日課のように感じる。毎日がゆっくりとした時間が流れ、戦時中ということを忘れてしまいそうだ。と言ってもずっとこのままなことはあり得ないと思う。この楽しい時間はいつか崩れてしまうと。

 

「いけませんね。ネガティブな考えをしてしまいました」

「……珍しいね。大淀が独り言を言うなんて」

 

いけない。声が出てしまっていたようです。小野柱提督は心配性だから、これに関してかなりの追求をしてくるかもしれない。提督に要らぬ心配をかけるのは艦娘としてあるまじき行為なのに。急いで話題をそらそうとする。

 

「提督、此処の資料間違っていますよ」

「ん?あ、本当だ。ありがとう……でもさっきの一言に関しては詳しく聞かせてもらうからね」

 

やっぱり駄目だったよ。この逸らし方はもう使えなさそうですね。また漏らしてしまった時のそれ仕方を考えなければいけません。

 

「……分かりました。ですが書類を終わらせてからにくださいね」

 

と言ったのち、書類仕事に戻る。何故そんなことを言うかというと、小野柱提督の追求は最低でも一時間、最高だと五時間まで続いたことまであるから。心配してくれるのはうれしいことだけれど、そのせいで書類仕事が終わらないと、最悪大本営から提督を解任させられるかもしれない。

それだけはさせられないので書類だけは終わらせるように催促する。

そんなことをしていると、走ってくる足音が聞こえる。島風さんでしょうか。泊地内は走ってはいけないと何度言えばいいのか……

 

「失礼する!」

 

ノックもせず開け放たれた扉には長門さんが立っていた。

長門さんは規律には厳しい方なのでよほどのことが無ければ破らないはず。つまり何かがあったということ。

 

「どうした!」

 

提督もそのことを察知したのかほぼ怒鳴り声で聞き返す。

 

「哨戒班から伝達、駆逐艦十隻、軽巡洋艦九隻、重巡洋艦十隻、姫級一隻の大規模侵攻艦隊が此処ショートランド泊地に向かっていると!」

「間違いないのですか?」

 

それだけの大規模侵攻艦隊が来るということは本格的に侵攻するということ。誤情報を別の泊地などに伝えるわけにはいかない。

 

「あぁ、何度確認しても三十隻以上はいるそうだ」

「まずいぞ、流石にその数を相手にするとなるとうちの艦娘だけでは足りないかもしれない。ブイン基地に連絡!少しでも戦力を稼げ!」

「私は緊急招集をしてきます!」

「あぁ!頼む」

 

そう言われると私は放送室に走っていきます。できるだけ早く緊急招集をして作戦を考えなければ。

緊急時の時のために執務室と放送室は近いため、すぐに着くことができます。

 

「緊急招集、緊急招集。全艦娘は速やかに食堂に集まってください。繰り返します。全艦娘は……」

 

 

現地時間2020年10月5日、時間一一三〇位置ショートランド泊地内の食堂、視点 吹雪

 

大淀さんの放送によって艦娘全員がこの大食堂に集められました。

大食堂に入った時の提督の顔を見た沖はただ事ではないと思い更に気を引き締めます。

緊急招集はこの泊地でも滅多に鳴ったことのない警報の一つです。最後に鳴ったのは私が着任する前で、それも一回だけだそうです。

 

「ここに集まってもらったのはほかでもない。深海棲艦の大艦隊がこちらに向かっているそうだ。数は最低三十隻」

 

食堂がざわつきます。私もそんな数の大艦隊は聞いたことも見たこともありません。しかもその大艦隊がこっちに向かってきてると言われればざわつかないことは無いと思います。

 

「そこで、我々及びブイン基地の艦娘と共に撃退作戦に出ることにした日時は今日の一五〇○。出撃艦娘は明石や大鯨と、少数の防衛のため指定する艦娘以外のすべての艦娘だ。なぜなら、敵には姫級戦艦がいるためだ」

 

更に食堂がざわつきます。姫級……年に一回出るか出ないかの私たち全員でかかっても勝てるかどうかの深海棲艦の親玉とも言われているものです。そんなのがこのショートランド泊地に向かっているなんて……

 

「ただ、実数の確認ができていない。そのため精鋭艦で偵察隊を組みたいと思う。異論はあるか?」

 

あるわけがありません。何といっても姫級の居る大艦隊です。偵察機では限界がありますし、最新の情報を送るためには偵察隊の編成に文句を言う人はいないでしょう。

 

「ではメンバーを発表する。旗艦を神通とし、那珂、川内、吹雪、睦月、夕立とする。この隊はすぐさま出撃!」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

私の名前が呼ばれ、返事を返します。偵察隊に選ばれた人たちと共に出撃港に艤装を付けて向かいます。

 

「大変なことになっちゃったね。吹雪ちゃん」

「そうだね。でも、この泊地を守るためには頑張らなくちゃ!」

「そうっぽい~」

 

緊張感のない会話ですがそのおかげでちょこっとだけ落ち着きを取り戻すことができます。

 

「皆さん行きますよ。偵察隊、出撃します!」

 

 

現地時間2020年10月5日、時間一三〇○、位置アイアンボトムサウンド東

 

「前情報によるとこの付近に大艦隊が発見されているそうですが……」

 

神通さんがそう言います。私も聞いていた位置の付近な気がしますが、敵の気配は感じません。

 

「……ぽい?」

「どうしたの?夕立ちゃん」

 

夕立ちゃんが何かを嗅いでいる。こういう時は何かを見つけている、もしくは感じ取ってる時だと夕立ちゃん言っていた。

 

「あっちに何か居るっぽい!」

 

そう言って指をさしたのは小さい、地図にも載らないような島。

 

「夕立ちゃん、あれ島だよ?」

「違うっぽい!島の向こう側っぽい!」

 

夕立ちゃんがさしていたのは島の向こう側だったらしい。どうしようかと神通さんに聞くと

 

「こういう時の夕立さんの嗅覚は、当たります。深海棲艦の艦隊に見つからないように慎重に行きましょう」

「わかりました」

 

神通さんの一声であの島に向かうことに決めた。やっぱり神通さんが旗艦だと頼りになるなぁ。

 

 

2020年10月5日、時間一三二四、位置アイアンボトムサウンド東の小島

 

「どうですか?那珂ちゃん」

「んーぼんやり、深海棲艦みたいなのが」

「ぼんやりでもいいです。居るということですか?」

「うーん、多分?」

 

一番視力のいい那珂ちゃんの偵察によるとぼんやり見えるようです。

 

「どうしますか?神通さん」

「そうですね……那珂ちゃん、敵はこちらに向かってきていますか?」

「分かんない、でも動いてないように感じる。川内ちゃんはわかる?」

「……多分、動いてないと思う」

 

川内さんも一緒に偵察をしていますが、どちらもはっきりとは見えていないようで、待ち伏せされているなら動けない状態です。

 

「……しっ」

 

急に川内さんが唇に指を当て、静かにするように伝えます。それと同時に「ドガァァン」と言う砲撃の音がかすかに聞こえます。

 

「気づかれたっぽい?」

「いえ、おそらくなにかと交戦しているのかと。提督に指示を聞いてみます」

 

そういうと通信機器を取り出し、電文を送る。すぐに返信が返ってきたようで

 

「「何が起きているのか確認しろ」とのことです」

 

そういうと隊列を組みなおし、ばれる危険があるからできるだけゆっくりと進みます。

そして見えてきたのは……

 

「「「「「「なに……あれ」」」」」」

 

そこに居たのは服が真っ赤なボロボロの一人の艦娘が無傷の姫級の深海棲艦と対峙しているところでした。このままだと沈んでしまうかもしれない行かなきゃ。

 

「吹雪さん!待ってください!今あそこにあなたが行っても彼女を助けられる可能性は低いです!」

 

そう言われて服を掴まれ制止を受けます。流石軽巡の力です。全然解ける気がしません。ですが。

 

「私の目の前で、沈むのを見たくないんです!」

 

そういいながら力を出し切り、制止を振り切り、あの艦娘へ全速で向かいます。

「間に合って……お願い!」そう思いながら、全力で。

まだ、半分の距離があるときにまた「ドガァァン」という音を聞き前を向くと……

 

「え……」

 

深海棲艦は後ろ向きに倒れているところが目に入りました。あんなに強い姫級を一撃で?ですが今はそんなことを考えるわけにはいきません!早くいかなきゃ、あのダメージじゃ……!

いつもよりももっともっと早く進み、あと少しの所で声が聞こえてきます。

 

「うぁぁぁぁぁ!」

 

痛みで悶える声です。やっぱり大ダメージを受けているのでしょう。早く、もっと早く!

「ばちゃん」と倒れる音が聞こえます。見ると少しずつですが、沈んでいくのが見えます。もう少しの所で……!

 

「あぁ、私……死ぬんだ。沈むんだ」

「……そんなことさせません!絶対に!」

 

そういうとその艦娘に手を伸ばし、引っ張り上げ、肩に腕を掛けます。背中に弱いですが、鼓動を感じ、まだ沈んでないことに気づき少し安心しますがまだ安心できるわけがありません。早くドッグに入れなきゃ、取り返しのつかないことに!

 

「私この艦娘を鎮守府に連れていきます!神通さんは提督に連絡をお願いします!」

 

返事を気にせずに急いで帰ります。ここまで来たのが大体一時間……でも私が全力で走り続ければ!




今日の感想

反省一つ目 なんか終わらせ方が微妙に感じる。もっとうまく終わらせられたら……私の力不足ですね。
反省二つ目 艦娘のキャラが上手く定められていなく感じた。調べなおしてしっかりと固めなければ。

今回から入れる次回予告
次回はまた別の艦娘たちの視点になりますお。
新しい艦娘にどったんばったん大騒ぎな話の予定!

さぁ、次の話も頑張って書きますかぁ……では、「さぁ!張り切って参りましょー」(`・ω・´)ゞ


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第三話後編 能ある鷹の爪③

※お詫び兼お礼

遅くなって……本当にぃ申し訳ない。堀とか堀とか堀で忙しかったんだ。結局フレッチャーは出ていないが……。
そしてUA500越えありがとうございます!しおりも九件、お気に入りも十二件。本当に光栄に思います!まだまだ堀と一緒に頑張っていきますよー!

三話後編ですお。今日も今日とて中盤がなんか違和感を感じるお

堀も見切り発車な三流提督の書いたお話。まだ失速はせんぞ!

と言う訳で第三話後編 能ある鷹の爪③いっくぜー!


現地時間2020年10月5日、時間一四二〇、位置ショートランド泊地、工廠・船渠内、視点 明石

 

「どうしよっかなー」

 

私の名前は明石。艦種は工作艦で装備改修や修理、入院施設の管理者兼看護師のようなことをやっています。

ただ、今は軽口を叩ける状態じゃないのです。実は新しい艦の方が来るのですが、問題はその方が大破した状態で来るということなんです。

大破状態自体は新造艦でも直すこと自体は簡単なのですが……高速修理材、通称バケツを使うことが難しいんです。なぜなら、バケツはそもそも劇薬。使い方を間違えると人体が崩れ、盲目になったり、四肢が欠損したり。最悪の場合には死亡するもの。多いと死亡、少ないと中途半端にしか治らず、死に至る可能性もありえるんです。見てからの調整が完了しない場合もありますから来るまでの時間に調整をしたいんですけどね。

 

「……いかんせん情報が足りなすぎるんですよねぇ」

 

そう、情報。艦名もしくは艦種さえわかれば大体の必要量が分かるんですけどねぇ。吹雪さんが急いで連れて行った所為で艦種どころが大きさも大体しか分からないって言いますし……。

 

「その大体が吹雪さんよりは大きかったじゃあ分かりませんねぇ」

 

駆逐艦でもまだ大きい方な吹雪さんですけど、それでも絞れるのは軽巡以上という事だけ。

やっぱり、到着を待つしかないのかなぁ……。

そうして、私は悩むことしかできなかった。治療および入渠の準備は出来ているが、バケツの配分量だけがどうしようもできなかった。

分からないものを考えても仕方ないと思いながらも、そのことを考えてしまう。やっぱり、工作艦の性なのだろうか。

 

「結局分からないなら、物がそろっているのかの確認をすればいいのに」

 

自分にぼやいてしまう。直ぐに来る大破艦に今は何もできないことを悔やむ。私は治すことしかできない。戦闘は全くできるようなもんじゃないし、対潜攻撃が得意なわけでもない。なら、できることは万全の準備で迎えてあげたいというのもまた性なのだろう。

ただ私は机に突っ伏して待つしかできないのだ。

 

現地時間2020年10月5日、時間一四三〇、位置ショートランド泊地、工廠・船渠内、視点 明石

 

夕張さんが扉を開け放ったのは机に突っ伏してからそう時間もかかっていないときだった。

 

「明石さん!患者が到着しました!」

「分かりました!」

 

どうしても患者は待ってくれない。急いで治療ドッグに行く。

治療ドッグの開け放たれた扉の奥に見えたものは悲惨の一言だった。すでに死んでいるかと思うほどの大穴がお腹を中心に約半径7センチ開いていた。未だ吹き出続ける血はまだ生きている証だった。

 

「……これは高速修復材が必要ですね。見たことのない艦娘ですが軽巡致死量前までに調整をしたものを使うしかないでしょう」

 

そういうと、自分は薬棚の中から『軽巡』と書かれた引き出しから一本注射針を取り出し艦娘に刺します。少しづつですが七センチだった穴は六センチ、五センチと小さくなり、内臓も治っていっているのが見えます。速度のよって大体どれくらい効いているかは分かるのですがそれでも艦娘によって、それも同じ艦娘でも少しずつ効き具合は違いが出ますし……それで致死量を超えて死亡した件も数は少ないですがあります。

 

「高速修復材の怖いところってそこなんですよねぇ」

 

なんて独り言を呟きながらそれでも逐一目を離さずに治り具合を観察します。見方によっては実験動物に実験しているようにも見えますが、これは安全の為です。艦娘の身体で実験なんてしようものなら大惨事ですよ。

 

「本当にこれで治ってくれればいいんですけどねぇ」

 

これ以上投与すると軽巡の場合だと本当に死んでしまうかもしれない。重巡でも人によっては効く濃度ではあるはずですし。

それでも失敗してしまったらと思うと怖くて怖くて仕方ありません。自分のミスで人を殺すことになっては工作艦としては駄目です……。まず解体ものでしょう。提督がそんなことするとは思えませんが。

失敗は許されない。そう思うとどうしても目が霞み、集中が散漫になってしまいます。

そう感じていた時、治りの速度が少しずつ遅くなっているのに気が付きました。

 

「これは……追加したほうが良いでしょうか」

 

ただ、即決はいけません。もう少し様子を見なくては。と思っている間にも約三センチの向こうの診療台の見える穴は閉じる気配を見せなくなってしまいました。

 

「これは追加する必要がありそうですね」

 

そう呟くと、自分は薬棚に入っている追加用注射バケツを取り出し注射をします。

そうやって、閉じる気配を見せなくなれば注射を繰り返し、完全に穴が塞いだのは二時間をたったころ頃でした。

 

「ふぅ……ようやく傷が閉じました……あとは点滴で少しずつ栄養剤を入れていくのがいいですね」

 

点滴を入れるにしてもまずは病室に運ぶとしますか。報告書類は後でも大丈夫ですし。

担架に艦娘を乗せ病室へと運びます。

 

「しかし……よくあれで生きてましたねぇ」

 

いくら人より耐久力や生命力が高いとはいえ病気や出血多量で死亡することはあります。それを四十分は曳航されたのですし……。

 

「……あれ?そうですよ。何で今まで気が付かなかったんでしょう。七センチは穴が開いているのに四十分曳航されんですよね。普通死にますよ」

 

大破と言ったって限度はあります。正確に大破を説明すると()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()であって人体に影響が出るほどのダメージが出た時は曳航をせず放棄……と言うと聞こえは悪いですが。位置によっては救出が不可ということが多くあります。

 

「今回は近かったうえに発見が早く救出も早急だったことを考慮しても……死亡しないってことは……あり得るんですかねぇ」

 

その辺りは調べてみないと分かりませんね。大本営だったら犯罪艦娘を使ってそういう実験してそうですし。最大生存記録とか。

治療室と病室は近いので直ぐに病室に付きます。というか近くないと運ぶのに不便ですからね。

艦娘を担架からベットに移すと、忘れないうちに提督に連絡を入れ、病室で艦娘の事を調べながら提督の事を待ちます。

 

「でも、分からないんですよねぇ。この艦娘の名前。艦の頃に見たことあるならだれか思い出したりすると思うんですけど」

 

そう呟きながら、大本営のデータベースに接続し、艦娘のデータを調べます。

 

「……やっぱりないですねぇ。大体察してましたけど」

 

大本営にデータがない。つまり新造艦ということです。いつもなら心躍るところなんですけど。困りましたねぇ。これで「治療に失敗して死亡しました」はかなり許されない話です。情報が聞き出せないですし、新造艦発見報告書の方も書けなくなってしまいます。

そんなことを考えていると背を向けていた病室の扉がゆっくりと開き一人入ってきます。

 

「あの……」

「あ、吹雪さん。どうしましたか?」

 

どうしたかと反射的に聞いてしまいましたが吹雪さんなら容態を見に来たんでしょう。恐らくそうです。

 

「あの……容態の方はどうですか」

「一応一命はとりとめたと考えて大丈夫ですが、目は離せない状況ですね。何が起きるかわかりませんし」

 

吹雪さんは「そうですよね」と言った後、黙りこくってベットの隣に置いた椅子に座ってしまいました。

とある時のこともあって自分のせいで死んでしまうのではないかと心配なのでしょう。

 

「あの、この艦娘を見つけた時の事を教えてもらってもいいですか?いろいろ書く必要もありますし、単純にどうしてあぁなったのかの気になりますし」

「……わかりました」

 

吹雪さんの口から発された言葉は不可解な点がいくつかあるものでした。

 

「……その話は本当なんですか?」

「はい」

「……にわかに信じられません。全門斉射とはいえ一撃で……。いえ、それ以前に最初の砲音からほぼ直ぐと言って良いほどついたのに30の艦がいないというのも気になります」

「でも、帰投するまで一隻も見ていませんし、姫級を置いて撤退するなんてありえないと思います!」

 

吹雪さんは嘘を吐いているようには思えません、もちろんあの大破を見て錯乱したとも思えません。それでも……それでもあり得ないという思いで頭がいっぱいになります。一撃で倒せるのもあり得ない、三十隻前後を一気に沈めたというのもあり得ない。そんなの私はともかく大和さんでもできるかどうか……。

 

「どうした?」

 

そうやって考え込んでいた私の肩を叩いたのは提督でした。私はすぐに吹雪さんに聞いた話をします。

 

「……どう思いますか?」

「……信じられん。が、信じるしかないだろう。そうでもなければ、こうしてこの陸には上がっていないだろうさ」

「……そうですね。まずは起きて話を聞いてからです」

 

話を聞いてからどうするか決めましょう。それまでは書類仕事を済ませておきますか。




今回の黒宮反省会

私に足りないものは表現・思想・根性・頭脳そしてなによりもォォォオオオオッ!!

速さが全く足りない!

今回もやる次回予告!

「次回、滅鷹散る!」
デュエ〇スタンバイ!


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第四話 死にかけの邂逅

お詫びと感謝の儀。

大変遅くなってしまい申しわけございませんでした。リアルの方が忙しくなり、こちらにも艦これにも手を付けにくくなってしまったのが原因です。なおイベントは参加し、E4でつまっている模様。……ですが寝る間も惜しんで描いた作品なので読むのだポッター。

UA1000突破及び感想一件、しおり十三件、お気に入り二十七件ありがとうございます! このご恩は一生…!!! 忘れません!!!!

と言う訳でいつもの

第四話ですお。今回のは寝る間を惜しんで描いた作品なのにいつもよりいい出来だと思いますお。
いつも毎日見切り発車。イベント中でもそれは変わらん!
と言う訳で第四話 死にかけの邂逅 張り切ってまいりましょー!


なぞのばしょ

 

俺は浮かんでいた。海の上に。また、独りで。

あの夢とは違うのは俺がおそらく死んだときの恰好ということ。

艦でもなければ艦娘でもない。100%人間の俺と言えばいいだろうか。

身体に艤装はついていないが、なぜか浮かんでいる。辺りは真っ暗で見えるのは周囲三メートルくらいか?

そこ以外は闇に閉ざされたとかそういうちゃちなもんじゃなく、墨で塗りつぶされたかのようだった。

 

「で、ここは何処だ」

 

今回で三回目か?俺ってどこかに連れ去られる才能でもあるんかな?たぶん、連れ去られているわけでは無いんだろうけどさ。でもさ、最低限位置が分かる場所がいいな。なんもわかんねぇよ。

 

「何があったんだっけな?」

 

確か、三十隻の超大艦隊に突っ込んで……。

 

「あぁ……つまり二度目の死か?本当の天界か?いや地獄かもしれんけどさ」

 

腹に大穴空いたらいくら艦娘でも死ぬじゃん。海の上でじゃなくてもさ。

 

「……ん?あれ?」

 

俺はあの時大破状態だとは思ったけど、普通腹に大穴空いたら死ぬ、艦娘でも例外ではないはずだし。ならさ

 

「なんで俺は沈まなかったんだ?」

 

そう、あのダメージなら即落ち二コマ並みに早く沈んでもおかしくないはずだ。それなのに少しずつ沈んでいったとはいえ、戦闘終了時にパッと沈まなかったんだ?そもそも、戦闘中に「I'll be back」って親指突き上げて死んでもおかしくはない。

 

「……わからん!さっぱりわからん!」

 

もういいや、なんでも。とりあえず

 

「動くか」

 

海の上ってことは陸があると思う。いや、大海原地獄とかだったら一生無いのかもしれんけど。

そんな頭の悪いことを考えていて気が付く。

 

「臭いがしない……いや、淡水みたいな臭いか?潮の匂いじゃないな」

 

そう、潮の匂いがしないのだ。此処を海とするのなら、潮の匂いがしないとおかしい、此処が現実ならの話だけど。いや、天界とか地獄とかでも臭いとか音とかはする気がするし……。

 

「うーーーーーーん?どういうことだってばよ」

 

どうしても知らないことには結論は出せない。だが仮定はできる。無い頭をフル回転してその仮定を作る。

 

「海のように広いが潮の匂いはしない……というか淡水のような臭いがする……」

 

あー、河か?川じゃなくて広いほうの河。三メートルも見えるなら向こう岸も見えるはずだし……

 

「……あ、此処は三途の川か?つまり、まだ死んでないのか?」

 

どうしよう、これ向き間違えたら死ぬな……最低限日本人として日本で死にたいからまだ生きたいんだけどな……死に場所くらいは選ばせてほしい。

 

「さーて、どちらにしようかなーって」

 

どちらって言っても四方向だけどな。ははは……はぁ。

 

「もうどうにでもなれー!」

 

そう叫ぶと、俺は適当に向いていた方向に向けて走り出した。これで死んだらそういう運命だったってことで。

そうして走り出したら急激に光が強くなる。

 

「うぉ!まぶしっ!」

 

 

??年??月??日時間、一九〇三位置、知らない病室

 

目が覚めると知らない天井だった。……これ結構有名なフレーズだとは思うけどまさか使うことになるとはね。

恐らく昼だろうか、窓から光が差し込んでいる。

 

「……とりあえず、賭けに勝ったみたいだな」

 

天井を見続けながら呟く。背中に当たったベットの感触は自分に何となく生きていると思わせてくれる。

それで此処は何処だ?もう何度目のセリフにはなるが結局その言葉が気に入ってしまっているがあえてもう一度言おう。此処は何処だ?

とりあえず、起き上がってみるか。あの傷だと、どうなってるかわからんし。

そう思い、身体を起き上がらせる。

 

「ってぇっ!」

 

やばい、変な声出た。めっちゃ痛いわ。てそりゃそうだよな、腹に穴開いたんだからな。

そしてまずは現状把握。周りを見渡すと……病院か?此処。

ほぼ白色の清潔感のある壁紙、病院にありそうな棚、そして……生命維持装置。やっぱりそれだけ危険な状態だったのだろうか。

見える範囲はこれだけ。個室で殺風景。まぁ、病院って大体こういうもんだし、まぁ、いいけど。

さて、どうしますか。少し動いたときにナースコールのようなものを見つけたので手に持っているが。

よくよく考えると俺は艦娘、おそらく軍事機密的な物もあってここはおそらく野戦病院。下手に動くと何が起こるかが分からないのよなー。実はミリタリーの知識はある程度話についていける程度の知識しかない。

俺は、艦これオタク(笑)であってミリタリーオタクではないのだ。グハハハハハ。

とりあえず呼び出すのはいいが、問題がいくつか。

まず、日本語が通じるか。あの傷で、俺を日本まで運ぶには無理がある。となると此処は海外。日本語が通じない可能性は大いにある。

二つ目にあの超大規模艦隊を壊滅させたことをよくよく考えると一般的に見ておかしい。たった一隻であの数を壊滅できるなら深海棲艦なんて無限湧きでない限りすでにこの世にはいないはずだ。

つまり、俺は離れ業をしたと同義、此処から観測できたかは分からないけれど俺が回収されたということは誰かが派遣されたと言うことだと思う。……それに気絶する直前に誰かの声も聞こえたし。つまり、なにかしら問題ごとに巻き込まれ可能性大。多少はしょうがないとは思うが、長期的に巻き込まれるとなると流石に嫌になる。

それを回避する方法。一つはある程度はぐらかすこと。数は三十もいなかったとか、自分以外にもいたとか。だが、それをするにはあまりにも知識がない。艦これの世界と言えど、公表されていない情報や、不明な点もあるし。この世界では姫を一隻どころか十二隻で倒すことなど不可能並みに強いとされていれば

面倒事どころかスパイ容疑で拷問かけられてもおかしくないかもしれない、知らんけど。

他に思いつく方法、逃げ出すこと。これは多分捕まるから無理。そして逃亡者生活とか嫌だ。何も悪いことしてないけど。

最終手段……と言うか自分の頭で思いついた一番いい手段は記憶喪失を演じること。と言っても全てではなく一部の。それならば生活には支障をきたさずに隠したい部分を隠せると思う。ばれる恐れはあるが仕方ない。

とりあえずは人が来るまでは外でも眺めていようか。

 

??年??月??日時間、一九一二位置、知らない病室

 

ボーっとし始めて数分がたった。そしてボーっとしていると眠気が回ってくるがもし寝ている合間に人が来るのは計画的にまずい。記憶喪失を演じ今起きた風を装うとなると寝ているところを見られるのはまずい。

そんなことを考えていると廊下から一つの足音が聞こえ、すぐに扉が開く音がする。

俺はすぐにそちらを振り向くとそこに居たのは……

 

「あ……起きたんですね!今明石さんを呼んできます!」

 

吹雪だった。と言ってもすぐに明石を呼びに行ってしまったようだが。

……にしても何故吹雪なんだ?お見舞いに来るほど艦時代にですら仲良くはないというかおそらく初対面の筈。見回りなら自分が工廠組と読んでいる夕張か明石だと思うし……。

 

「あ、スイッチ入れておかないと。男勝りの話し方は似合わないし」

 

そう、小声で呟きボーっとしていた自分に喝を入れる。

俺じゃなくて私……俺じゃなくて私……。

 

「よし」

 

そう呟くと同時に明石が駆けて入ってくる。そして少し遅れて吹雪も入ってくる。

 

「大丈夫ですか?!」

 

そう声を掛けられるが俺はわざと返さない。首をかしげながら明石の目を見続けるまで。おそらくそれが状況が把握できていないことを知らせるには効果的だと思う。

 

「あの……ここは何処かわかりますか?」

「……分からないです」

「では今は何年の何月何日かわかりますか?」

「……ごめんなさい。分からないです」

「じゃあ……名前は分かりますか?」

 

此処が重要。悩んだふりをしながらどうしても思いだせない風を装う。

 

「……ごめんなさい。思い出せないんです」

 

そういうと、明石は青ざめた様子で病室を出ていった。……あれ?ミスったかもしれん。名前は憶えていてもよかったかもしれんな。たまたま戦いの所を忘れていたことにすればよかったかもしれない。やってしまった……。

 

「えっと……ごめんなさい。心配させてしまってるみたいで」

「え、あ、えっと。大丈夫だと思います。あれでも明石さんはしっかりしていますし。あ、私吹雪って言います」

「はい。吹雪さんですね。私の名前は分からないもんですから……ごめんなさい」

 

……なんかすごい。暗い雰囲気になってしまった。と言っても当たり前だ。見ず知らずの人でも記憶喪失だって言われたら何を話せばいいか分からなっくなるはずだし。俺だったらそうなる。

 

「……あの、ごめんなさい。眠くなってきてしまったので、一度寝させてもらってもいいですか」

「あ、じゃあ明石さんが戻ってきたら話しておきますね。おやすみなさい」

 

空気が重くて逃げたくなるのとボーっとしていたのと体の疲れとで実はとても眠いのを治すために寝ると伝えて自分が楽だと思う体勢に移り、目をつむる。

後は明日の自分に任せた……。

 




今日の黒宮反省会。

遅い。何よりも遅い。サラマンダーよりずっと遅ーい。おっそーい(島風)

と言う訳で次回予告

大まかには決まってるけど未定!
デュエルスタンバイ!


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