東方異世界生活記 壱 (ジシェ)
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霊夢編
第一話


最初は霊夢の話しです。何の話しかぜひ予想してみて下さい。ちなみにスタートから未完です。
1/20弍を公開しました。よければそちらもお願いします。


ここは幻想郷。忘れられた者達の集う世界…だった。

だが、私の眼前にはいつもの風景はなかった。

周りには小さな黒い粒のようなものが飛んでおり、普通だとは思えないような状況。

だと思えば、紫や早苗から聞いた『外』の世界の光景と酷似していた。

私のいる場所は山。どうやら神社ごと来たらしい。

だけど高いところから見える景色は、見知らぬ大きな建物や、紫のスペルで出る鉄塊が走っている。

そしてなにより、能力が使えない。

 

「本当にここ……どこ?」

 

私は諦めた。

 

―――――――

 

「とりあえず家に入りましょう。そして状況をまとめよう。」

 

そう思い家に入った。

そこにはいつも通りの我が家、唯一変わらぬ安寧の地。

当然私はお茶を入れ、縁側に座り落ち着いた。

 

「………ふぅ。」

 

一息入れ、状況のまとめに取りかかる。

 

(なんとなく原因に予想はついてるけど、一応確認はしたい。なら簡単なやり方はこれね。)

「紫おばあちゃー」

「ぶん殴るわよ?」

 

やっぱり予想通り、原因は紫だった。

 

「あの企画本当だったのね。でも私参加は拒否したはずだけど?」

「霊夢がやるのに意味があるのよ。」

「?」

「いやだって貴方、面倒くさがりだから修行なんてサボってるし。」

「だって面倒だし……」

「異変も最初動くの魔理沙だし。」

「魔理沙が行動早いだけだし。」

「ずぼらで女の子らしくないし。」

「最後のは関係ないでしょ!?」

「そこで私は考えたのよ。貴方にはその全てを改善出来るような世界に行ってもらおうと!」

「とりあえず早く帰してほしいんだけど……」

「NO!」

「なんで!?」

「この世界はちょっと特殊な外の世界よ。悪魔という存在がいて、それを退治する職業もある。貴方はこの世界で、能力が不安定なまま!悪魔と対峙して!立派な真人間になってもらうわ!」

「どういうことよ……」

「まぁ最初は学生からね。この鍵を使えば塾に行けるわ。どこの戸…いえ、扉からでも塾に通じてるわ。それからは生活も授業も頼んである人がいるから。その人を頼ればいいわ。」

「え?じゅくって?」

「この世界の寺子屋みたいなものよ。とりあえず物置小屋の戸にでも使いなさい。私がいじって鍵穴着けたから。とりあえずその人のところに行きなさいな。だいたい事情は話したわ。」

(その人も巻き込まれたのか。気の毒に……)

「ああそれと期限はまだ決めてないけど、終わった後もし私の満足いく感じで貴方が成長していたら、報酬も用意してるから。」

「五十円くらいなら許すわ。」

「この世界でのおよそ五十万じゃないの……まぁ、結果によっては考えるわ。」

「その言葉忘れたら夢想転生ね。」

「はいはい。じゃぁ私はもう行くから。他の参加者もいるしね。ああそれと、その人頼らなきゃ貴方は生活もままならないから絶対に行きなさい。」

「分かってるわよ。五十円のために頑張ってやるわ。」

(現金な子。)

「それじゃあ頑張りなさい。」

「次会う時はお金用意してなさいよ!」

 

紫は隙間を開いて帰っていった。

私は紫の言う人のところにとりあえず行こうと思い、物置小屋に向かった。

そして本当に『じゅく』なるところに行けるのか、半信半疑で鍵穴に鍵を差し込んだ。

おそるおそる戸を開いてみると、広い通路が広がっていた。

そしてその時、私はあることに気付いた。

 

「頼んである人って……顔も何も聞いてなかった……」

 

私は途方に暮れた。

 




どうでしょう?つまらないと感じたら申し訳ありません。とりあえず少しこれからの方針を言います。
霊夢編から始めますが、一話、二話となるべく続けません。霊夢編一話、次は魔理沙を予定してるので魔理沙編一話、そして霊夢編二話……というように進めます。
一人を集中すると僕も飽きますし内容そんなに続けて思いつかないしこうさせて頂きます。もしかしたら原作未完でこの小説も終わるかもしれませんし、お願いします。長文失礼。これからは気をつけます。初回なので許して下さい。


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第二話

今回原作キャラ登場=原作分かるということで後書きで原作名書きます。後今回設定一つ追加してます。
まぁ原作にそういう描写なかったので、元々それの設定があるようなら気付かなかったのでお許しを。


とてつもなく広い通路。

あまり明かりがない空間。

時々ある扉。

宛もなくさ迷う私。

さ迷っていた時間……五分。

 

「………はぁ」

 

私は歩くのを諦めて、その辺のとてつもなくを開けて椅子に座った。

時間の問題か場所の問題か、人とすれ違うことはない。

私は机に突っ伏して、どうするか考えた。

そして出した結論。

 

「……帰ろ」

 

鍵を適当に差して開いた。

 

――――

 

扉を開き博麗神社に戻ったはいいが、数十分して戻ったことを後悔した。

私はお茶を入れて縁側に座っていたのだ。

しかし数十分後には部屋に隠れていた。

何故かは知らないが人が集まっていたのだ。

一人二人ならまだいいが、十数人はいた。

私が隠れた理由は分かるだろう。

この神社に住人がいることを知られたらまずいからだ。

少し考えれば分かることだったが、そもそもここは一体何処なのか?

この人々の反応からして、空き地に突然神社が現れたということだろう。

つまり今見つかれば、何者かと質問攻めを受けることは間違いない。

 

(面倒事は勘弁……)

 

私はばれないよう、奥の方に逃げた。

すると、前に人が一人現れた。

 

「……!」

 

私は驚いて声をあげそうになったが何とか堪え、その人物に声をかけた。

 

「あなた誰?」

「とりあえず小声で……僕は奥村雪男と言います。紫さんからある程度話しは聞いてるので安心して下さい。」

「紫から?……もしかして私のことを頼まれたのって……」

「僕です。異世界から来たということも聞いてるので、常識から教えるよう言われてますよ。」

「紫め……でもよく信じたわね?」

「異世界なら既にありますから。」

 

少し会話をしていると、人の声が聞こえてきた。

 

(あいつら……人の家に勝手に入ったわね……)

「ここだと面倒ですし、とりあえず移動しましょうか。」

「移動といっても逃げ場ないわよ?向こうは人がいるし、隣の部屋は壁だし。」

「紫さんがこの家を少し改装してますよ。隣の部屋の壁に扉がついてました。そもそも僕はそこから入ったんです。」

「扉……まぁ人の家勝手に改装したのは今度怒るけど、丁度いいからその扉からあの廊下行きましょ。」

「そうですね。とりあえずそこに移動すれば説明も出来るので、行きましょう。」

 

私達は隣の部屋に移動した。

そして壁を見たら本当に扉がついていた。

私は紫をどうしようかと考えながら、鍵を差し込み、扉を開いた。

そこには先と全く変わらない景色があった。

私達は歩きながら現状の確認をした。

 

「では、とりあえず他の塾生のところへ行きましょう。」

「他の塾生?」

「…本当に紫さんは何も説明しなかったんですね……ここは祓魔塾。祓魔師の見習いに悪魔や祓魔の方法などについて教える場です。」

「あはは…一応塾って聞いてはいたけど、そもそも塾が何かよく分かってなかったから……それでその悪魔ってのは?」

「長いので追って説明します。まずは他の塾生に挨拶に行きます。僕も教師として入るのは初めてですから、博麗さんを迎えに行くので、少し遅れてますしね。」

「なんかごめんなさい。」

「いえ……ここが教室になります。とりあえず今日の授業の参加は必要ありません。聞いてもまだ分かることはないので……適当な席に座って休んでて下さい。必要ならこちらで指示をだします。」

「ええ…分かったわ。」

 

私達は古そうな扉を開いて、教室に入った。

 




はいということで原作名公開!
『青の祓魔師(エクソシスト)』
時系列は雪男が初めて教室に来て、兄と喧嘩する前ですね。一話ずつ霊魔理更新すると予定していたんですけど、もしかしたら次の人も近々更新するかもです。更新は順番とは限りませんね多分。既に違いますし……


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第三話

基本一つの世界に二人以上とします。一人は寂しいので。だから霊夢編も魔理沙編も幻想郷の住人が他にも出ます。が、あくまで視点は『~編』の『~』のところに描かれてる人です。人数上限はまあ……多くても五人くらいで。


私は言われた通り適当に端の席に座った。

少し周りを眺めてみたが、十にも満たない生徒数。

幻想郷の寺子屋でも(人外含め)二十はいる。

戦える人が少ないのか、それとも悪魔はそこまで害を与えないのか。

よくは分からないがとにかく少ない。

そう考え眺めていると、黒髪の少年が雪男に叫んだ。

聞く気もなかったから無視して現状についてや神社のことを考えていると、不意に何かが割れる音がした。

教卓を見ると、したにガラスの破片が散らばっており、微かに悪臭を漂わせていた。

直後、女生徒の一人が『悪魔…!』と言い、悲鳴をあげた。

そちらを見ると、小さい玉のようなものがいて、人を襲おうとしていた。

私はその生き物が危険だと判断して、弾幕を当てようとしたが、能力が使えない。

 

(そうだった……能力使えない…)

「博麗さん!」

 

もたもたしている内に、その生き物は私に飛びかかっていた。

私はどうしようかと迷ったが、幻想郷の妖怪と比べれば弱いと思い、叩いた。

やはり効かないようだが、博麗の巫女として、私は厳しい修行を経ている。

たとえ弱くなろうと、こんなものに負けはない。

私はその生き物を蹴り飛ばし、後ろへ退がった。

すると蹴り飛ばされたそれは、何かに撃ち抜かれた。

 

「皆さんは早く教室の外へ!博麗さんもこっちに!」

「……!」

 

言われた通り私は教室を出た。

 

「ザコだが数が多い上に完全に凶暴化させてしまいました。すみません、僕のミスです。申し訳ありませんが…僕が駆除し終えるまで外で待機していてください。」

 

そうして私達は指示に従い、待つことにした。

もう一人生徒がいたが、その生徒は扉を蹴り閉めてしまった。

中からの音はあまり聞こえず、私達は二人が出てくるのを待った。

 

―――――

 

中々出て来ないので、髪を後ろに結んだ少女が扉を開いて現状を聞きに行った。

教室を覗くと、椅子や机が燃えており、酷い惨状になっていた。

火を使う能力か道具でもあるのか、まあ分からないから考えるのをやめた。

私達は雪男の指示に従い、別教室で授業を再開した。

もちろん私は……何も分からなかった。

 

―――――

 

「………」

「さて、博麗さん。一応僕や他の生徒達には寮……あ…宿が用意されているんですが、博麗さんの部屋も用意出来ます。博麗さんは神社から通えますし、寮は必要ないと思いますけど……泊まってみたいなどもあると思うので……どうしますか?」

「………神社から通うわ。特に問題もないし…それで…常識教えるとか言ってたでしょ?とりあえずこの世界のこと教えてくれるかしら?」

「はい…まずは金銭についてでも教えましょうか。」

 

私達は神社に戻り、雪男から金銭や学校についての説明を受けた。

まあ当たり前だけど一日では終わらなかった。

「休みの日にでもまとめて教えてしまいたかったのですが、僕も祓魔師(エクソシスト)としての仕事があるので……今日と同じように、授業後に教えることにします。」

「授業はどうすればいいの?」

「しばらくは平気だと思います。参加する必要もありません。分からないことだらけで倒れられても困りますから……」

「そんなに頭弱くないわよ。」

「兄がそういう性格なんですよ…」

「た、大変ね……まあ意味ないこともしたくないし、神社でおとなしくしてるわ。」

「お願いします。神社にいてくれれば、授業は僕から行きます。今日と同じくらいの時間に来ますので、この時間にはいてください。」

「ええ。……そういえばこの鍵は一体なんなの?」

「ああ……その鍵については僕もほとんど知りません。紫さんが作った、『神社の鍵』らしいですが、それくらいしか……塾に繋がるからくりもよく分かりませんし、そもそもどう作ったのかも……すみません。」

「ふぅん……まあいいわその内直接聞くから。」

「では、今日はもう行きます。お疲れ様でした。」

「お疲れ様ー」

 

雪男が帰るのを見送り、私は床に転がった。

 

「異世界か……」

 

私は様々な感情を抱きながら、その日は眠りについた。

 




これからも多分説明書きます。合計十話くらいで説明いらなくなると思うので、それまでは前と後が長いのも許して下さい。そこからも分からないと感じたところは説明します。お許しを。


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第四話

私は縁側でお茶を飲みながらぼーっとしていた。

町に行こうにも金銭の感覚がまだ微妙に分からない。

そもそも元々金がないのにここで使う金があるはずもない。

第一ここから見える町に行っていいのか分からない。

格好は?店は?何をしに?何もない。

案内してくれそうなのも雪男だけ。

結局は待つしかない。

塾も今日はなさそうだし。

 

「…能力でも試そうかな…」

 

紫が言うには使いずらいというだけで使えはするはず。

つまりいつもの数倍の力を込めれば使えるはず。

 

「ぐぅ……ぐぐぐ……」

(ただの弾幕くらい……)

 

いくつかの少弾幕を作ることに成功した。

使う力はいつもの三倍。

『夢想封印』並みの力が使えても、威力を抑えて五回、全力なら二回が限界。

幻想郷で霊力が切れることなんてなかったからなんとなくだが、おそらくこの程度しか使えない。

しかもここまで霊力を込めることがなかったので、発動までに時間がかかる。

ただの弾幕で三秒、『夢想封印』を使うなら十秒程かかる。

「これは…気軽には使えないわね。まさか溜めが必要とは……」

(そもそも何故ここまで使えないの?)

 

やはり疑問は出るが、おそらくこれは雪男に聞いても分からない。

なら答えは簡単。

 

「…面倒くさいから…考えるのやめよう。」

 

これが結論。

 

―――――

 

「博麗さん。いますか?」

「?雪男?」

「はい。約束通り来ました。」

「それで今日は何を教わるの?」

「とりあえずそちらに教材を置きましょうか。」

「教材?」

「はい。祓魔師についてある程度書かれた説明書…のような物と、祓魔塾の教科書類です。」

「ふーん……目を通した方がいいの?」

「まぁ…通した方がいいとは思いますが、おそらく理解が出来ないかと…」

「…確かに。」

「とりあえず先日の復習から入りますね。」

「ええ。」

 

それからお金について向こうとの違いを完全に覚え、相場などについて教わった。

その後町のどこに何があるか。

食料品の購入場所。

服屋などの生活必需品の売り場を聞いて、地図も書いてもらった。

その日の授業は終わり、帰る前に聞かなきゃいけないことをきた。

 

「とりあえず分かったんだけど、そもそもお金なんてないわよ?」

「紫さんから博麗さん用に預かってます。…全部渡すと三日も経たずに使いきると言われたので、月に五千円渡すようにします。食費だけなら平気だと思うので。」

「……紫が優しいのが不気味ね。いままでお小遣いなんてくれなかったのに。」

「いままでの生活が気になりますね…」

「…まあ酷かったと思うわよ?三日間絶食もたまにあったし。」

「よく生きてますね…」

「周りにいい奴が多くてね。本当に…恵まれてたわね。」

「………」

「まあお金はなかったから苦労したけどね。」

「働けば…こちらとは違うのか…」

「幻想郷にも仕事くらいあるわよ。」

「なら働けばよかったんじゃ…」

「面倒くさい」

「…え?」

「働きたくない。」

「……典型的駄目人間じゃないですか。」

「……仕方ないじゃない。博麗の巫女の仕事は異変解決よ?異変起きなきゃ暇よ。里で仕事探すなんて面倒だし。」

(いままでの生き方が窺える。というより…)

「とにかく、お金が少しでもあるのが嬉しいのよ。お酒は飲めないけど、こっちの世界の食べ物気になるし、色々買うわ。」

「良ければ兄に作ってもらいますか?兄はお小遣い二千円ですし、材料の代金を出せば作ってくれると思いますよ?」

「そう…この世界の料理なんて私は知らないから、料理得意な人に作ってもらえるのはありがたいわね。」

「ただ、塾の休み時間か今の時間くらいしか渡せませんね。」

「それでいいわよ。作ってもらった方が楽だし。」

「…そうですか。」

「じゃお願いね。」

「はい。では、今日はもう終わりにして帰ります。お疲れ様でした。」

「ええ。」

 

雪男が帰った後、少し教材に目を通したが分からないことばかりで、すぐに読むのをやめた。

その日は能力を使ったせいか疲れていたので、布団も敷かずに雑魚寝した。

 

翌日、体の節々が痛く、雑魚寝したことを後悔した。

 

 




しばらく原作入れませんねこれは。もしかしたら次の回でいろいろすっ飛ばして原作入ってるかも。気分次第ですね。


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第五話

原作ではしえみの回の前辺りかな?正確にはその回での霊夢側の話です。


雪男との勉強会も、日常に必要なことは大体終わった。

明日は依頼があるというので早めに帰って行ったが、そろそろ私が町に行ってみるのもいい頃合いだと言われ、翌日町に下りてみることにした。

 

[所持金:4000]

 

町に下りて最初に気付いたのは、周りの視線だった。

雪男が言う通りこの服はこちらでは目立つようだ。

 

(向こうでは普通なのになぁ…)

 

それどころかもっと派手なのも酷いのもいるのに…と思いながら、私は服屋を探した。

 

それから五分ほど歩き、服屋を見つけたのだが、そこで雪男に聞いた相場を思い出した。

服は上下合わせて安くても千円は確実に超す。

対して私の所持金は、前日に雪男に千円渡し、兄から貰った弁当で消えた。

雪男が言うには五百円ほどで弁当を作ってくれたらしい。

というかまとめ売りの安い物で作っているらしいので何食分かは作れるらしい。

それでも今の私には結構な贅沢だ。

とりあえず、服か食費かどちらか選ぶ状況になってしまった。

 

「………」

(……まぁ…いいか…)

 

正直目立つのは嫌だが食費の方が大事なので、服はまた雪男に頼むことにして、私はスーパー(?)に行くことにした。

インスタント(?)なる簡単な食事が出来る物があるらしいので、それを買いに行く。

コンビニ(?)というところもあるらしいが、スーパーの方が安いらしい。

当然ながらそちらを選ぶに決まっている。

私は貧乏だからこそ、節約が得意なのだ。

 

(まぁお酒とかですぐに使い切るから意味ないけど。)

 

その酒も、この世界では飲めないことを考えると、凄く残念だ。

 

―――――

 

スーパーについたはいい。

まさかこの世界に、向こうの世界の知人がいるなんて誰が予想出来ただろうか。

 

「………」

「何で霊夢がいるの?」

「咲夜こそ…」

『…………』

 

そういえば確かに、紫は一つの世界に一人とは言ってない。

悪魔がいる世界なら、悪魔に仕えていたメイドがいても、おかしくはないだろう。

そして悪魔本人も。

 

「フランもいるのね。」

「霊夢だ!久しぶり!」

「ええ、久しぶり…かしら?」

「十日ぶり位だと思うわよ。」

「それって久しぶりなの?」

「……」

「ねえ霊夢!魔理沙は!?」

「見てないわね。この世界に来たのは私だけだと思ってたし。」

「そっかぁ……」

「そういえばレミリアは?」

「紫が言うにはお嬢様もいるらしいけれど…」

「まだ見てないよー?」

「……まぁいいわ。こっち来てからのこと聞きたいし、どこかで話さない?」

「そうね……買い物も終わったし、私達の家の方に行きましょう。」

「え待って。まさか紅魔館ごと来たの?」

「そんなわけがないでしょう。二階建てのアパートよ。」

「アパート?」

「……紫様は何も教えずに送ったのね。」

「そうよ。」

「……妹様、もう帰るので、その猫とお別れして下さい。」

「うん!バイバイ!」

「にゃ~」

「ずっと撫でてるとは……それでどっち行けばいいの?」

「ついてきて。」

「ええ。」

 

―――――

 

「あんたらにしては随分小さいとこに住んでるわね。」

 

扉が六つ、階段一つ、敷地としては博麗神社の三分の二、そして隣に畑。

レミリア達が住んでいた紅魔館は博麗神社の二、三倍の敷地…いや、敷地だけ言うなら霧の湖も含め数十倍。

例え主人とメイドの二人の家とはいえ、元と比べて貧相過ぎる。

そして部屋に入ると部屋は五つ。

厠、台所、風呂の基本と、食事処と私室のみ。

そして驚くことに、この五つの部屋のみが彼女らの生活スペース。

他の扉は他人が住んでおり、内部構造は同じらしい。

はっきり言って……

 

「貧乏…」

「向こうで貧相巫女のあなたに言われたくはないわね。」

「いやだって紅魔館と比べると…」

「妹様の望みよ。」

「?フランの?」

 

当の本人はどこから連れて来たのか、再び猫とじゃれている。

というか部屋に平気で入れている。

そんなフランはとりあえず置いといて、正直フランが希望する理由が欠片も分からない。

 

「………」

「その様子だと予想もつかないようね。」

「だってフランがここに住みたい理由なんて分かるわけ…」

「はぁ…妹様は紅魔館を出て日が浅いのは分かるわよね?」

「そりゃまぁ当事者だし…」

「紅魔館にいきなり出入り出来るようになって、あの狭い部屋で五百年近く過ごしていたのに、落ち着くと思う?」

「あぁ~慣れって奴?」

「だと思うわ。」

「フランが願って紫が勧めた?」

「…妹様は、『外の世界の普通位で小さい家』に住みたいと言っていたわ。紫様は、『ならアパートかしら』と言って、ここに住むことになったわ。」

「なるほど…でもあなたからしたらどうなの?」

「私は妹様が住みたいならどこでもいいわ。」

「はぁ…大した忠誠心だこと。レミリアは耐えれずに紫に別行動を?」

「いいえ。お嬢様は元々別行動よ。一人で暮らしてみたいらしいわ。」

「あいつ家事なんて出来るの?」

「……」

「まぁ見つけたら教えるわ。」

「えぇ。私もお嬢様が心配だから…お願いするわ。」

「全く…変に心配かける奴ね…」

「お嬢様は自由気ままだから…今頃どこかで思いの外楽しんでると思うけど…私は少し寂しいわね。」

「……また会えるわよ。どうせこの世界にいるならすぐ見つかるでしょ。紫のことだから、近くに住ませてるだろうし。」

「そうね。」

 

私達は少しだけ感傷的になりながらも、この世界での暮らしについてを話した。

勿論食事を驕ってもらった(たかった)のは言うまでもないだろう。

そして、今日の目的であった町の散策も、当然出来なかった。

 

 




原作キャラの登場早いですね…まぁお察しの通りだと思いますがこの二人に出てもらいました。理由は簡単!僕が出したかった。レミリアファンには申し訳ないですが、別の話展開にお嬢様には協力してもらいましょう!
さて…いつ出すか衝動書きには考えるのが辛い…そして先に言うとこの世界で出そうと思っている東方キャラはもうこれで全員になったです。魔理沙側と妖夢側も既に二人ずつ考えている(話は考えてない)ので予想してみて下さい。二百文字越えたので長文失礼とそしてさよならです。


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第六話

咲夜と会ってから数日。

これといった用事もなく、町の店に買い物に行ったこと以外では外出もしていない。

雪男との常識の勉強もある程度平気になり、服の代金を雪男が前借りさせてくれたことで、周りからの奇異な目もなくなった。

ただのシャツとスカートを三着ずつ、安いもので見た目の同じようなものを買ったおかげで、二千円程度に留められた。

そして余りは先に渡してくれたので、所持金は少し増えた。

 

[所持金五千二百円]

 

そして雪男からコンビニ弁当はおよそ五百円と聞いており、カップ麺というものは安いけど栄養がないと教わった。

どちらを選ぶかは言わずとも分かるだろう。

 

[所持金四千八百円]

 

―――――

 

「では今日は塾の授業に関することをやりましょう。」

「一応悪魔については分かったと思うけど、教科書に書いてあるものはさっぱりね。」

「僕は悪魔薬学の担当なので、他は教えられる程ではないですが、基本程度なら教えられます。」

「じゃあその薬学ってのから始めましょ。」

「はい。ではまず………」

 

―――――

 

「とりあえず各授業のさわりだけ教えましたが、どれくらい分かりました?」

「……私は実践派ね。実際に使えば分かるけど、口頭じゃ確実とは言えないわね。」

「博麗さんは性格はともかく覚えは早いので、すぐに他の塾生と同じ程度には出来るでしょう。」

「言ってくれるわね。まあ頑張るわよ。」

「頑張って下さい。……」

「どうかした?」

「いえ…あと二日程でどれくらい出来そうですか?」

「二日?……まあ一人で教科書眺めて分かる程度でいいなら……二十ページくらいは出来ると思うわ。暗記とかは無理だけど……」

「十分です。実は一週間程の合宿があるんです。」

「がっしゅく?」

「簡単に言えば生徒が一ヶ所に泊まって、数日掛けて教えあうということです。」

「ふーん…だから追いついた方がいいって?」

「はい。そこで追いつくことが出来れば、授業に参加も出来ると思いまして…近々試験もありますし、どうですか?」

「うーん…まあ授業に参加しなきゃここに来た意味が微妙になってくるし…二日で頑張ってみるわ。」

「分かりました。では一応他の塾生達にも伝えておきます。」

「ええ。」

「今日は終わりにしますか?」

「そうね。とりあえずもう少し私は教科書読んでみるわ。今日はお疲れ様。」

「お疲れ様でした。」

 

―――――

 

雪男が帰ってから少し教科書を読んでみた。

以前と違い、かなり分かるようになった。

とはいえまだ完璧ではない。

悪魔と戦えるようになるのは一体いつになるやら……

私にはまだ、想像も出来ない。

 

―――――

 

二日で追いつくのはやはり難しく、合宿二日目からの参加となった。

三日で何とか他の塾生に勉強は追いついた。

そして合宿に参加することを周りに伝え、授業を無事終えた…まではよかった。

今私…いや私達は、結構な重さの石……に見せかけた悪魔を、正座して膝に乗せていた。

 

「では皆さん、仲良く頭を冷やして下さいね。」

 

事の発端はこうだ。

聖書:教典暗唱術の授業で、出雲という少女と、坊(?)という少年(?)が喧嘩を始めた。

それを見ていた雪男は、連帯責任と言い、周りも含め全員にこの石を持たせた。

そして三時間この状態でいるように言い、部屋から出て行ってしまった。

合宿の時間の三時間もこのままというえげつなさ。

 

(初めての授業でこれは……鬼か…?)

 

そのようなことしか考えられない。

この石は、持ち続けると重くなる悪魔なだけあって、既に結構な重量になっていた。

三時間後には巨岩でさえ軽く感じることだろう。

私はまだ平気ではあるが、しえみという少女にはきついだろう。

各々苦しむ声を上げながら、まさか二人がまた喧嘩を始めるとは思わなかった。

すると突然、辺りが真っ暗になった。

停電という事態らしいが、私には大体見える。

その内ピンク頭……志摩が部屋から出ようとする。

扉を開けると……

 

「……なんやろ目ぇ悪なったかな…」

「現実や、現実!」

 

気持ち悪い異形の化け物が扉を破壊して入って来た。

 

(悪魔…!教室で見たものとは格が違う…!)

 

今のこの状況…引率の教師は外出、戦闘経験皆無の子供のみ、更には敵は二匹。

 

(絶対絶命って……まさしく今のことじゃない?)

 

悪魔との初戦闘は、予想外に早く始まった。

 




vs.屍(グール)戦です。……今霊夢はどう戦えばいいでしょう…?


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第七話

(グール)に扉を壊され、ギリギリのところで志摩は攻撃を回避した。

屍の頭は二つあり、片方の頭は、破裂するように口を開けた。

飛び散った体液は私達の全身に降りかかった。

 

「ニーちゃん…!ウナウナくんを出せる?」

「ニーッ!」

 

しえみの連れた小さな悪魔は、体から巨大な木の根のようなものを出し、私達の前に広げた。

屍はそれを壊しながらこちらに近づく。

すると、突然皆が咳き込み始めた。

 

「…皆、どうした?」

「さっきはじけた屍の体液を被ったせいだわ…あんた…平気なの…!?」

 

燐は平気そうにしているが、他は全員辛そうだ。

かく言う私も、皆程ではないが辛い。

この場で問題なく戦えるのは燐だけだった。

だからだろうか。

燐は一人で屍の囮になると言った。

坊の静止を無視して一人部屋を出る燐。

追う屍は一匹、片方はここに残った。

 

「…なんて奴や…」

「結局一匹残ってますけどね!(意味あったんか?)」

「二匹よりは時間が出来たわ。今の内に何か…」

「…このままボーッともしてられん!詠唱で倒す!」

 

坊はそう言うが、志摩は無理だと判断しているようだ。

坊の話では、屍系の致死説が集中している福音書は全て暗記している、全部言えばどこかに当たると、確実性はない。

子猫丸という小さい少年は、前半半分を自分が受け持つと言った。

出雲がそれを止めるが、しえみが頑張っているのに自分何もしないわけにはいかないと叫び、無謀と罵る出雲に向かい、引っ込むように言う。

志摩は仕込み杖を出し、いざとなったら援護すると言った。

二人は詠唱を始め、出雲はまだ迷っている。

私も何もしないわけにはいかない。

 

(弾幕…威力が足りない…なら…!)

 

木の根が消えると同時に、本気の夢想封印を叩きこむ。

本気で溜めるなら一分はかかる。

私は霊力を全力で込め、力を溜め始めた。

変わらず根を破壊しながら、屍は着々と進んでいた。

 

―――――

 

坊が最後の章に入るころには、屍は目前まで迫っていた。

するととうとうしえみが倒れ、根が消える。

倒れたしえみに近づいた出雲が、驚いた顔をしている。

吹っ切れた顔をし、出雲は二匹の狐を召喚した。

短い詠唱をし、彼女は屍に向き直った。

 

「『(たまゆら)の払い』!」

 

彼女の攻撃に、少し怯む屍は、しかし坊へ手を伸ばす。

しかし今度は、私がそれを阻む。

 

「霊符…『夢想封印』!」

 

きらびやかに光る複数の弾幕は、順に屍へと衝突し、吹き飛ばしながら破裂する。

それと同時に電気が付き、坊の詠唱が終わる。

 

「”その録すところの書を載するに””耐えざらん”!」

 

屍は消しとび、全員が一先ず安心する。

私も力を消費したために脱力してしまった。

皆が喜んでいると、燐が戻ってきた。

 

「お前らも倒したのか?スゲーじゃ え?」

「なん…なんやお前なんて奴や!死にたいんかー!?」

 

燐を坊が殴り飛ばす。

私はしえみの方へ行った。

 

「大丈夫?」

「う…うん。」

「あんたがいなかったら、全員無事じゃなかったかもね。ありがと。」

「博麗さん…」

「……あたし、あんたが大ッ嫌い…!」

「!」

「でも今回は助かったわ。それだけ…!」

「…う、うん!」

「素直じゃないわね。」

「う、うるさい!」

 

私達がほのぼのしていると、雪男が戻ってきた。

隣の別の教師を連れて。

と思ったら、天井から理事長が現れた。

一度しか見てないが、あんなに印象的な格好間違えるはずがない。

理事長が指を鳴らすと、天井、襖、果ては床下から、祓魔塾講師が現れる。

そして何かに気付いた坊が口を開くのを遮り、理事長が声高らかに話し始めた。

 

「そう!なんと!この強化合宿は候補生(エクスワイア)認定試験を兼ねたものだったのです!」

 

私も何となく察してしまった。

以前雪男から祓魔師の位を纏めたものを見せてもらったが、候補生は祓魔師の最下級の者だ。

しかし私達は、塾生として、祓魔師の末端程度であり、仕事も何もない。

認定試験ということはつまり、私達を本当に祓魔師にするための、講師達の仕組みだったのだ。

 

―――――

 

騙されたことに苛立っている燐や、理事長の話しで納得している坊ら。

それぞれ心境は違えど、試験の結果を心待ちにしているようだ。

皆で試験のことについて振り返ったり、外野を決め込んでいた他の二人に坊は怒っていたり、それを無視してゲームやら腹話術やらしてる二人がいたり、実際結果を考えてるのは子猫丸と出雲の二人くらいかもしれない。

それからまた全員で話していたりして、雪男の指示により今日は解散となった。

結果は理事長が翌日伝えるそうだ。

 

―――――

 

「無事全員候補生昇格…!おめでとうございま~す!」

 

まさかの外野二人も含め、候補生に全員昇格。

祝いにもんじゃをご馳走すると言うので有り難く頂きましょう。

その日私達(特に私)は、店のもんじゃを食べ尽くす勢いだった。

 

 




燐vsネイガウス先生ははしょってます。基本霊夢視点のこの物語は、霊夢がいないところは切ります。いるところでも原作に描写がなければ切ります。お許し下さい。
あとなんとなくキリがいいので、次回はおまけみたいにします。二巻までで切ったところの会話や、日常会話を書くつもりです。…まあ霊夢編の更新はまた先になりますけどね。


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第八話

遅れてすみませんでした。正直忙しかった…もう一つの小説でも謝罪はしたのですが、まあ色々とあったのです。向こう読んでない人ほとんどだと思うのでこちらでも謝罪させて頂きます。本当もう一月は空けないようにしますのでこれからも読んで頂けると幸いです。


「…はぁー…」

 

私は今、縁側でお茶を飲んでいた。

何故だか忙しない日々だった気がするから、こうやってのんびり出来るのがとてもいい。

というのも今日は、雪男が来ない。

なんでも候補生(エクスワイア)の訓練の準備があって夜に来れないらしい。

本来なら候補生はそれぞれ任務(と称した雑用)があるのだが、私はまだ免除されている。

だから暇であり、好きなことが出来る。

勉強でもというのは私には無理だ。

 

(こんなときはいつも魔理沙が来て……)

 

一月程だというのに、私は少し寂しいのかもしれない。いつも一緒だった親友がいないことが、私にとって珍しく、非日常なのだった。

まぁ……ただ暇なだけなのだが。

寂しいとか感じるほど殊勝な人間ではなかった。

私は魔理沙がいないとき、基本惰眠を貪っている。

まあいつも通りだ。

私は寝る準備をして布団を被った。

しかし魔理沙がいなくても、私の日常は変わらないのだろう。

ただ人が変わるだけで…いや…

 

「何も気にせず接せるのは…魔理沙だけね…」

「私達はお邪魔だったかしら?」

「そうね。寝たいし帰ってもらって構わないけど?」

「えー!?もう帰るのー?」

「冗談よ。」

「霊夢も寂しいからかしら?」

「蒸し返すな。」

 

魔理沙といた時のように、二人と他愛もない話を続けること数十分、階段を上がる人影が見えた。

 

「あら?参拝者かしら?」

「こんな所に来る人がいるの?」

「失礼な。幻想郷でも週に数人はいたわよ。」

「………」

 

などと貶されたことに憤慨していると、その人影は私達の方へと近づいてきた。

フードを被った男子制服のズボンを履いた性別不詳の怪しい人物は、参拝ではないらしく、一直線に私の前まで来た。

 

「上一級監察官の…あー名乗れないけど祓魔師だから、あんまり警戒しないでほしい。」

「何の用?今日は休みをもらってるはずだけど…」

「その前に、そこの二人は?」

「?ああ二人とも悪魔は見えるし祓魔師についても知ってるから、気にしなくていいわよ。」

「はい。ですが席を外した方がよろしいでしょう。」

「助かる。」

 

二人が離れるのを確認し、その人物は話を切り出した。

……よくよく見れば見覚えがあるような?

 

「……それで、何の用なの?」

「他の候補生も任務に出てるわけだからな…お前にも行ってもらう。」

「………」

「露骨に嫌そうな顔してるな…そんな顔しなくても明日からだから安心しな。」

「それで、何するの?」

「ん…まあ今日は連絡だけ。内容は明日伝える。」

「正直言って、私に出来ることは限られるわよ?」

「安心しな。お前には他とは違い……始めから戦闘を行ってもらう。」

「…それこそ早いんじゃないの?」

「候補生の初任務が雑用程度のものなのは、育てるべき後輩どもを無意味に危険にさらすわけにはいかないからだ。」

「は?そんな危険とかいってたら仕事なんて出来ないでしょ。危険にさらすのが無意味?なんかだおかしくない?」

「まあ聞け。教師がセッティングした比較的安全と言える任務をいくらかこなし、ある程度の働きを見せたもなが、ちゃんとした任務を与えられる。この段階が下級の祓魔師だ。」

「………ああ、任務を出来るかどうか試すわけね。その段階の私達が候補生…」

「そうだ。つまり候補生に戦闘は、監督がいる時のみ許される。」

「無視して私に戦闘任務をやらす意味が分かんないんだけど…」

「ここしばらく見ていたが、通常戦闘経験の浅い候補生の中でも、お前だけはなんの動揺もなく、冷静に対処を行っていた。そして常識を知らない無知さ。正直雑用の方が難易度高いだろう?更には祓魔師の中でも上一級の私の知らない攻撃。はっきり言って未知だ。」

(そりゃこの世界のものじゃないし……)

「だから見極める必要がある。お前が実は悪魔なのかそれとも…全く別の、人間でも、悪魔でもない何者か。」

「……もしかしてこれってあんたの私情でやらされる任務?」

「……言っとくが断ることなんて出来ないぞ?会社でもそうだが、社会では上司の命令は絶対だからな。」

「……はぁ……それで、どこ行けばいいの?」

「それはな…お前達の教室さ。」

 




新しい人物なんて出しませんよ!(話通りならおそらく出る)ま正体は原作読んでたらすぐ分かるけど多分次…の次の回で出るしあまり気にせずに。つかセリフ多いな。改善出来るよう文才鍛えたいな…
追記:おまけのことですが、書こうと思ったら1000文字越えなかったんで、もう少しストックを増やすためにあと何話か先にやります。


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第九話

フードの人の話方は、今だけ真面目にしておきます。後から相当変わるので、原作読んでて違和感半端ない人は、今だけと考えてて下さい。


候補生は全員雑用程度の任務ばかり。

当然実戦などなし、悪魔憑き石拾いに悪魔の檻掃除、資材運び、監督の教師もいる安全なもの。

対して今私が行っているのは…紛れもなく実戦。

といっても、小物退治程度。

以前教室に集合した悪魔達。

教師陣で全て片付けたが、一度悪魔が来たところは、悪魔が再び来やすくなる。

定期的に祓魔しなければ使用出来ない程になるかもしれない。

私に任されたのは、端的に言えば囮だ。

私が惹き付け、未だ正体を明かさないこのフードが悪魔を祓う。

本来私は必要ない。

故にこれは、私の力量を計るためのものだ。

と私は予測しているが、実際は分からない。

終われば分かるだろう。

 

―――――

 

「それで…どれだけいるのよ。」

 

私は(ゴブリン)を蹴り倒し、魍魎(コールタール)に清水噴霧機を使い、次々と消していった。

正直飽きた。

大物も来なければキリもない。

単純作業を三十分程繰り返しており、もう嫌になってきた。

 

「まああと少しだろうね。(そろそろ大物一匹くらい…)」

 

しかしその思い虚しく、作業は更に三十分かかった。

密かに女性が考えていた大物も来なかった。

 

―――――

 

「結局ほぼ単純作業だったけど…戦闘なんてあった?」

「…一応鬼は下級の祓魔師の仕事だからな…実戦には間違いない。数が多ければ才能のない下級祓魔師は対処しきれないこともある。」

「なら私は優秀な方かしらね。」

 

当然だろう。

幻想郷ではもっと面倒くさい妖怪どもを相手にしてきたのだ。

小鬼風情に傷を負うのも馬鹿らしい。

妖怪程強くないのなら、能力がなかろうと苦労はしない。

 

「こちらとしては以前の…夢想封印というのを見たかったが…想定より相手が弱かったな…」

「これ他の候補生でも問題なかったんじゃないの?」

魍魎王(コークス)が出ることも予想していたんだが…仕方ない。」

 

彼女は少し思案するような表情を見せ、任務終了を告げた。

やっと終わった私は、とっとと帰って寝たい…と思っていたのだが、フランの相手をする約束を思い出し、二人の住むアパートへ向かった。

フランの寂しそうな顔は想像したくない。

 

―――――

 

「夢想封印…あれは弾幕か……」

 

彼女の頭に、一人の少女の姿が思い浮かんだ。

 

「まさか…なぁ…」

 

―――――

 

「それで直行したの?」

「終わったんだからいいでしょ別に。」

「…雪男さんに報告しなくていいの?」

「別にいいでしょ。上級ってことは雪男の上司なんだし、面倒いし。」

 

咲夜に呆れた表情で見られた。

しかし自分の怠惰な生活よりも、フランとの約束を優先したことで、多少甘くなってくれたらしい。

何に関してもフランはいい子だ。

 

「ねえ霊夢!これやろ!?昨日咲夜が買ってくれたの!」

「マリ◯カート?てか何これ?」

「ゲームよ。外の世界ではやるべき物と、紫様がおっしゃってたわ。自機を操作することが出来る遊びよ。分かりやすく言えば、貴女の陰陽玉みたいなものね。これは…64…だったかしら?」

「へぇ…面白いの?」

「妹様はやっていたけど…大変そうだったわ。」

 

咲夜が大変とは珍しい。

正直魔理沙が好みそうな分野だが、私も興味がある。

やらせてもらおうではないか。

 

―――――

 

「待って二位でサンダーはおかしいでしょ!?」

「まだ負けないよ~♪」

………

「妹様…!それは…酷いです…!」

「うわえぐっ…」←サンダー、復活、スター、池ポチャ

「ごめんね咲夜。でも…勝ちたいもん♪」

………

「待って待って!私最下位なんだけど!」

「そのまま置いてくよー!」

「あ、落ちましたね。」

「ここ無理!」←ヨッ◯ーバレー

 

―――――

 

異常に白熱した。

あの咲夜が叫んでた。

フランは凄く楽しそうでよかった。

 

「五時間続けてやるとは…恐ろしきゲーム…!」

「すみません…私が止めるべきでした…」

「一緒に白熱してたからねぇ…」

「あまり目に良くないらしいので、次からはもう少し気を付けましょう…」

「楽しかった♪次はこっちもやってみたいな♪」

「……大◯闘…スマッ◯ュブラザーズ?」

「こちらは昨日はまだやってませんでしたね。」

「うん!楽しみ♪」

 

少し試そうと起動したら、再び長時間遊んでいた。

夕食は頂いた。

 

 




他の面々にもやらせたいなぁゲーム。ただ魔理沙がいるの天才君の家でゲームないからなぁ…
上とは全く関係ないんですけど、別小説の投稿話をこちらで投稿したことを改めて謝罪します。本当にミスっただけです。この話を読む人の大半は分からないと思いますが、本当に気を付けなきゃいけないことだと思ったので、主自身が忘れないよう繰り返し謝罪させて頂きます。


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第十話

また遅れた。すみません。オリ小説書き始めたのは関係ないですけど宣伝しときます。遅れた理由は特にないです。もう本当忙しいとかでもなく更新しないですみませんでした!


「では、明日の任務のため今日は早めに終わります。」

「昨日みたいな雑用?」

「一応候補生の中ではちゃんとした実戦だったんですが…聞いた時は驚いたんですよ?明日の任務については明日全員に一緒に説明します。」

 

雪男が帰るのを見届け、私は布団を敷いた。

いつも通りの生活。

考えるとフラン達のとこに行く以外街に繰り出すこともない。

授業を受け、帰って寝るだけの生活。

はっきり言って暇過ぎる。

 

「何かないかな…」

 

具体的にはゲームのような便利な暇潰し。

明日他の候補生に聞いてみよう。

 

―――――

 

「漫画ねぇ…」

「雪男も読むしな。」

「ふーん…」

 

ゲーム程高くなく手軽なものはないかと聞いたら、漫画というものを進められた。

何か聞いたら、ゲームの物語のみを紙に纏めたものらしい。

それは面白いのだろうか。

自分で操作する方が楽しいのではないかと思うが、暇だし安いらしいし、買ってみようと思う。

他に初任務の話や、フードと人形を手に嵌めた子供の軽い罵倒を坊がしていた。

 

「…てか女子遅ない?」

 

確かにしえみと出雲が中々来ない。

 

「すみません!遅れました…!」

 

そこには着物ではなく、制服を着たしえみがいた。

どうやら出雲と、面識はないが元塾生の朴という二人に、制服の着方を教わっていたようだ。

その格好を見てデレデレになっている男子連中。

動じない雪男は教師として正解だが…正直この胸に目を奪われないのは枯れてるように思う。

というか羨ましい。

そう思うのは私もやはり女なのだろう。

まあこうデレデレになられたら気持ち悪いだけだが。

ふむ…そう考えると損しかないな。

過去にも考えた覚えもあるが、同じ結論だった気も…

 

「……」

「えーでは全員そろったところで、二人一組の組分けを発表します。」

 

今回の任務は二人一組で(ゴースト)の捜索。

組分けは三輪 宝、山田 勝呂、奥村 杜山、神木 志摩。

そして私は単独。

…何故?

 

「博麗さんには僕が付きます。まだ心配なことが多いので…」

「ああそうゆうこと。」

 

その後霊についての説明を終え、全員解散した。

 

―――――

 

「それで、霊っての探すの?」

「はい。」

 

他同様当てずっぽうで探すしかない。

 

「…こうゆうの面倒なのよね…」

 

いつもいつも異変の主犯を探して飛び回るし、結局魔理沙が先に着くこともあるし、見つからない時はとことん見つからない。

たどり着いたと思ったら主犯は実は紫とか、主犯を倒しても終わらないとか、面倒なことこの上ない。

 

「まあ勘頼りで行きますか。」

 

―――――

 

勘頼りで歩き回っていたら、雪男が少し席を外すと、別れた。

丁度子供の霊と、それを追うしえみがいた。

とゆうか突っ込んで来る。

 

「は、博麗さん!その子…」

「逃がすか。」

 

反射的に捕まえた。

と同時に、上から音がした。

上にあった…遊具(?)が崩壊し、三人の頭上に降ってくる。

 

『ぎゃはは!スゲー!えいがみたいだ!』

「しえみ、そいつ捕まえといて。」

「博麗さん?」

 

『ガアア!』

 

「!」

 

獣の雄叫び。

それも幻想郷にいたような類のもの。

その咆哮の直後、とてつもない地震が起こった。

 

(そんなに撃てないけど…)

 

私はこの程度耐えられるが、しえみはそうはいかない。

背にはらは変えられない。

 

「夢想封印!」

 

飛来する瓦礫を吹き飛ばす。

 

「平気?」

「あ、ありがとう…!」

『…あはは!』

 

霊は突然笑い出し、自分の生い立ちを喋った。

病気で寝床から出られなかった。

外でも遊べない。

叱られたこともなかった。

だっこしてもらったこともなかった。

だから楽しかったと言い、成仏していった。

 

「あっ…」

「……」

「…よかった…」

 

無事に成仏出来たことに対してか。

はたまた最後に楽しい思い出を作れたことか。

真意は分からないが、彼女は微笑んだ。

 

「そうだ!燐が!」

「?そういえば…」

「博麗さん!」

「あ、雪男。用は終わったの?」

「それよりケガは…」

「!燐!」

 

雪男よりも先に、へたりこむ燐を見つけ、しえみは燐のところへ駆け寄る。

手を差し伸べるしえみの手を、燐は払う。

余程精神的に弱っている。

 

「…兄さん…何があった…」

 

その雪男の問いを無視し、フードが燐の前に出る。

愚痴を言った彼女(?)は、おもむろに上着を脱ぐ。

 

「アタシは上一級祓魔師の霧隠シュラ。日本支部の危険因子の存在を調査するために―正十字騎士団ヴァチカン本部から派遣された、上級監察官だ。」

 

 

 




前回のフードは同一人物です。


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第十一話

何か色々重なって時間ありま…いやあったけど、けど…流石に書く気どころか何もするき起きない状態になってました。まあそれでも書かなかった自分が悪いので謝っておきます。本当ごめんなさい。


「上級祓魔師…監察官…!」

 

誰が言ったかも分からない。

しかしかなり上位の者なのは一目で分かる。

 

(強い…!)

 

隙だらけに見えるのに、常に奥村燐という存在に対して気を張っている。

他者との対話中に別の対象を監視するのは言う程簡単じゃない。

燐の怪我を心配するしえみを放り、燐を連れて雪男と共に去って行く。

私達は解散の指示を受け、各々帰宅を始めた。

 

―――――

 

「……」

 

私は燐を連れて行ったシュラに対して…実に無関心だった。

確かに強いことは強いだろうが、おそらく私なら身体能力だけで圧倒出来る程度だろう。

それ以上に、私に恐怖を与えた存在。

 

『奥村燐』

 

遊具が壊れて落下してきた廃材、壊したのは燐だ。

正確には燐が戦っていた相手。

あの時私がいなければ、燐はしえみを助けていただろう。

燐は、青い炎の手を伸ばしていた。

妖怪でさえ生ぬるい獰猛さ、施設一つを破壊し得る能力、しえみを助けようとした青い炎。

それに抱いたあまり感じることのない感情。

 

(私が…殺されると思うなんて…)

 

博麗の巫女として、妖怪と戦うために、厳しい修行を成してきた。

その甲斐あって恐怖という感情が薄かった。

自分の強さに絶対の自信を持っていた。

しかし今は、自分の力が弱いことを理解して、無意識に自分を卑下している。

私が恐怖したのは、絶対に勝てないという絶望。

実力差の理解。

少なくとも奥村燐は、人間ではない何か。

今の私では絶対に敵わない五大老クラスの化け物。

 

「あれが人間なら私なんて可愛い方ね…」

 

私はそんなこと考えても、別に戦うわけじゃないと考え、早々に眠ることにした。

 

―――――

 

「霊夢~♪あ~そ~ぼ~♪」

「…フラン…ふふっ…まったくあんたは…」

「?」

 

この子は私が悩むのが馬鹿らしくなる程に無邪気だ。

人が自分の不甲斐なさを情けなく思ってるというのに、知ったことじゃないと笑いかける。

 

(しかも夜に平気でやって来るし。)

 

「霊夢~遊ぼ~よ~」

「分かったわよ。何するの?」

「えっとね~…」

 

―――――

 

先日の件があったのも関係なく、日常的に塾は始まる。

その中でも、一つだけ違うことがある。

 

「この度ヴァチカン本部から日本支部に移動してきました。霧隠れシュラ18歳でーすはじめましてー」

 

燐を連れて行った監察官が、また同級生として塾に通っていた生徒が、教師として塾に来たことだ。

勿論突然のこと、気になることばある。

勝呂が『何故生徒として通っていたのか』、『前任の教師はどうしたか』と聞くが、『大人の事情』で片される。

そんな中遅れて来た燐が、入り口で言い訳をしながら入って来る。

それからはいつも通り、勝呂と出雲が喧嘩したり、燐が馬鹿を晒し続けたり、何も変わらない日常。

燐のことやシュラが来たことなど、誰一人として気にしなかったのだった。

 

 

 




リハビリ…?いやオリの方書いてるからリハビリではないか…次は早く出します。ちなみにこれの半分は十日前には書いてました。……五人目…そろそろ書こうかな…


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第十二話

一昨日からあった時間…apexとダンカグやってたらいつの間にか日を跨いで…時間忘れて熱中するのは皆さんも気を付けて下さい。遅れました。


「ずずー…」

 

シュラが来て数日、特に問題もなく日常を過ごしていた。

任務という名の軽い雑用程度ならあったが、襲われることもなければ塾の催しもなく、塾の授業に参加しては神社で休み、暇な時にはフランの所へ。

そんな日常が続いていた。

 

―――――

 

「それで…何で私はこんな所に連れて来られてるわけ!?」

 

何故か森に連れて来られていた。

しかも咲夜とフランも一緒に。

 

「雪男さんに呼ばれたのでしょう?」

「あんたらが来るのは予想外だけどね。」

「わー!小っちゃい滝!」

「…楽しそうだこと。」

「私達も雪男さんに呼ばれたのよ。意図は分からないけれど…今頃向かっているところでしょう。」

「……まあそれはいいけど…」

 

魍魎の群れはいつものことだが、別の気配が奥からする。

 

「面倒なのがいるわね…」

「巫女の勘だとどの程度?」

「封印されてるようだし、放っておけばいいでしょ。」

 

封印されてるということは危険な存在ということ。

何故そんな場所に連れて来られたかは本当に分からないが、危険なら雪男が指定するわけがない。

つまりはそこまで危険性はない…と判断していいだろう。

 

「まあ最悪封印が解けようと、そんなに問題はないでしょ。」

「…私も妹様も能力が上手く使えないの。体術だけなら霊夢は圧倒的だし、何かあれば頼むわ。」

「任された。幻想郷でなくとも、二人を守るのは私の役目だもの。仕事はするわ。」

(賽銭が欲しいだけね…)

「雪男達もそろそろ来ると思うけど…」

 

しかしそれから更に十分程待ち、ようやく合流した。

候補生も全員揃っている。

 

「お待たせしました。」

「お?あんたらあの時の…」

「またお会いしましたね。」

「遅いわよ。」

 

合流してからは候補生とフラン達の紹介をしあい、テントと結界の準備を始めた。

結界を張るということは夜は完全に安全ではないのだろう。

それからは志摩がうるさかったこと以外は問題はなかった。

 

―――――

 

「~~♪」

 

フランはとても楽しそうにしている。

こういったことは経験がないのだろう。

今は夕飯を食べ終えて…肝試しという感じの訓練の説明を受けていた。

ちなみに以外にも燐の料理は上手かった。

 

「これから皆さんにはこの拠点から四方散り散りに出発してもらい、この森の何処かにある提灯に火を点けて戻ってきてもらいます。」

 

三日間の合宿期間内に達成すれば実戦任務の権利を与えられる。

生活に必要なものはバックに、危険になったら花火を打ち上げる。

花火を上げた者は棄権、二分程でシュラか雪男が向かうことになる。

候補生の皆は開始と同時に走り出した。

 

「……実戦って…」

「霊夢はこっちな~。」

「お二人もこちらへ。」

 

二人に呼ばれる。

どうやら私は候補生の訓練には参加しないようだ。

 

「三人には僕達と、教師陣として行動してもらいます。」

「でも私も候補生よ?二人は塾と関係すらないし…」

「博霊さんは実戦任務も問題ないという報告を…勝手に行動したシュラさんから受けています。」

「だから悪かったっての。そうゆえことだからリタイアした奴いたらよろしく~♪」

「サボりはよろしくないのでは?」

「平気平気~♪」

「…咲夜とフランは何で連れて来たの?それに…実力だけなら燐の方が上よ?」

「お二人についても紫さんから聞いているんです。それに…」

「あれの妹なら問題ないでしょ~。」

「……?あれ?」

「!」

 

フランを妹と呼ぶのなど一人しかいない。

それに気付いた咲夜の形相は鬼のようだった。

 

「お嬢様の居場所を知っているのですか!?」

「知ってるけど…教えにゃ~い。」

「止め止めー咲夜、殺してどうするの?」

「………」

「レミリアさんが教えないよう言ってるんですよ。」

「お嬢様が…?」

「レミリアさんは今、祓魔師として既に働いています。実を言うと博霊さんより早くこの世界に来ていたようです。悪魔の説明も受けていたようで…狩りを楽しんでいました。」

「…元気なら…いい…です…」

 

咲夜はへたりこみそうになる程安心している。

 

「燐は候補生として、能力の抑制を促す必要がある。だからあっち側。」

「三人は元々の実戦経験、能力からしてこちら側に。ですので…サボる人もいますし、協力をお願いします。」

「…分かりました。しかし代わりに、私も祓魔師…候補生として活動します。」

「願ったりですが…いいんですか?」

「はい。同じ仕事なら、いずれ会えるでしょう。」

 

こうして候補生と教師陣の間のような立場に、私と咲夜は落とし込まれた。

 

 



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第十三話

合図によって訓練が始まる。

候補生は森に向かって一斉に走り出す。

五分程だろうか。

五人で拠点で待機していると、森の方から大量の絶叫。

そして輝く青い炎。

 

「~~~~!!」

「ぷっくっくっ…ほらみろ!訓練開始十分と経たず炎使ったぞあいつ!」

「隠してるのよね…あれ…私が知ったのも偶然だし。」

「さっきの青い光は炎なのですか?あいつとは…?」

「きれー!」

 

シュラは酒も入って笑い放題。

雪男は怒りか呆れか分からない複雑な顔。

咲夜は知らないために疑問符。

フランはその光を喜び眺める。

一瞬の出来事でここまで場が変わるとは…

かくゆう私は、本当に隠しているのか分からなくなった。

 

「!」

「……」

「…咲夜。気付いてるわね?」

「当然です。」

 

仮にも教師陣として動いている以上、こちらを除いている者を逃す理由はない。

しかし…シュラが気付いてないはずがない。

シュラと雪男は燐のこれからの話をしており入りずらい。

 

「少し見に行きますか?」

「…いえ…攻撃されたらで十分でしょ。攻撃してきたら容赦しない。」

 

私は睡眠と食事を邪魔されるのは嫌いなのだ。

晩酌の邪魔は許せない。(シュラの酒)

 

「いつでも戦える準備はしておきましょう。」

「そうね。フラン。あんまり森行かない。」

「はーい。」

 

果たして敵か味方か。

特に何もなく夜は更けていく。

 

―――――

 

「……午前四時をまわりましたね。」

「……貴方も大変ですね。」

「十六夜さんも…」

 

数時間の間に酔って眠ったシュラさん、霊夢。

そして人間に合わせた生活で、すっかり習慣になって早めに眠った妹様。

雪男さんと…お互いに苦労が絶えないと苦労を言い合う。

しかし突然の花火の音に、驚いてシュラさんが起き上がる。

 

「ギブアップですね…」

「…僕が回収に行くので、十六夜さんはシュラさんが寝ないよう見張ってて下さい。」

「…はい。」

 

―――――

 

空が白んで来た頃…

 

「すぴー…すぴー…」

「あいつら遅いわね…」

「………」

「宝も寝てんの…?」

「ま、大丈夫大丈夫~なんかあっても…ね?」

「?」

 

霊夢はまだ寝ている。

シュラさんの反応からするに私達を眺めているのは味方のようだし…神木さん、宝さんは帰ってきた。

 

「雪男さんはまだ戻らないのですか?」

「んー邪魔だからちょっと出てってもらったからね~」

「邪魔…?」

 

そう会話していると、他の面々も帰還する。

 

「全員…?」

「あら?確かに全員いるな~さっきの花火は誰の…」

『ひゅー…』

 

考える時間はなく、先程まで私達を見ていた何者かが、空から突然降って来た。

わざわざ落ちる音も着地も口に出して。

 

「ゴー!ベヒモス!」

『グルルオオ"オ"!』

「ふがっ!何!?ん!?」

 

流石の雄叫びに、霊夢も目を覚ます。

 

「待ちくたびれたよ…!」

「何!?」

 

土から現れた蛇は、頭から燃え上がり四方に散る。

辺りが光り、巨大な結界を創り出す。

 

魔法円を描いた時に中にいた者を守り、それ以外を弾く絶対牆壁。

そう説明されたこの結界。

そして先に襲ってきた者。

八候王(パール)の一人、地の王《アマイモン》。

シュラさんは、その襲撃に備えると言った。

 

「…霊夢。」

「これは…何?」

「敵よ。さっき上で見てたのが襲ってきたわ。」

「へぇ…戦うの?」

「…戦うというより護るみたいね。」

「なるほ ど!?」

「お前らも浴びろよ~」

 

頭から聖水をかけられる。

 

「……」

「…話しを聞かないからよ。」

「………」

 

―――――

 

「…結界があるなら、私達は待つだけね。」

「そうね。…もし戦闘に入るようなら働きなさい?」

「…フランを起こさない程度にね。」

「全く…」

 

 

 

 

 

 




咲夜視点にしなきゃ半日分くらい飛ばしてスタート霊夢が起きるくらいになってた。一応他の視点もあることもありますよ~こうゆう時だけだけど。ちなみに今回短いのはちょっとした調整です。霊夢編次話は少し長いかも。他の人と終了合わせたいから度々調整しますすみません。


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第十四話

またまた遅くてすみません。エルデンリングが楽しくて…バイト時間も増やして本当にモチベがなくて…三つ投稿してるのに投稿する気ないとかもう罵倒していいんでお許しください!


「それで…護るったってここにいるだけ?」

「そうね。ここには来れないみたいだし、出ない限りは安全…」

「…あれは?」

「あれ?」

 

私はしえみの方を指差しながら聞いた。

迷いなく結界の外へ歩いて行くしえみ。

咲夜は驚き、他も慌てる。

 

「止めろ!」

 

しかし止まることなく結界外へ。

その頭上からはアマイモンが現れる。

どうやら虫豸(チューチ)の卵を産み付けられたようで、完全に操られているようだ。

そのまましえみは連れ去られる。

それを追う燐、燐を追うシュラ、順繰りに追いかける候補生達。

 

「……私達はどうしようか?」

「追う方がいいかもしれないわね…貴女は行きなさい。私は妹様と待ってるわ。」

「まあいいけどね…」

 

フランが起きる前に終わらすとしよう。

勝てるかは分からないけれど。

 

―――――

 

「あいつら速いわね…」

 

飛ぶことが多いとはいえ、まさかこれ程衰えているとは…

そう思いながら走る。

その時だ。

眩い程の青い光。

この世界における最上位の悪魔。

《サタン》の炎。

それの指すものは、燐が候補生の前で、その炎を解放したことに他ならない。

 

「……」

 

サタンへの憎しみは大きい。

恐らく燐は、今まで通りの生活は送れなかろう。

 

「私には関係ないけどね。」

 

ここは幻想郷じゃない。

だから護る理由も仲良くする義理もない。

けれど…

 

「博麗の巫女であるなら、『人間』を護るのは仕事よね。」

 

―――――

 

呆けた三人、驚く出雲、皆それぞれ困惑していることだろう。

楽しげに跳ね回るアマイモン、必死に戦う燐、どうしたものかと私がいる。

 

「…とりあえず離れた方がよさそうね。」

「そうね。」

「…いたのね。」

 

いつの間にかフランを担いだ咲夜が後ろにいた。

シュラが連れて来たようだ。

私達は全員でこの場を離れることにした。

少し離れて見てみると、

 

「今日のお遊戯はこれにて終了☆」

 

と、二人の腕を掴むピエロの姿があった。

突然現れたピエロによって、二人の戦いは止められた。

 

―――――

 

呼吸がしずらくなる頃には、既に橋のような場所まで離れていた。

休める程度まで離れた所で、雪男はしえみを背から降ろした。

そしてシュラを睨み付け怒鳴った。

しえみも少し怒ったように説明を求める。

そんなやり取りの最中…

 

「いやぁ青いな…まるであの夜のようじゃないか。」

 

屋上に現れた男。

 

「……」

「霊夢?」

「…咲夜、構えなさい。」

 

その視線は私達…フランに注げられている。

 

「まさか元『聖騎士(パラディン)』ともあろう者が、悪魔を二匹も飼っているとは…」

 

その男はフランから視線を外し、私達へ名乗り、部下に指示を出していた。

フランを今からどうこうするつもりはないようだ。

しかし彼は…いや彼らは、サタンの子である燐を見逃す気はないようだ。

シュラと彼…『アーサー・A・エンジェル』の会話では、『サタンに纏わるものの排除を容認する』という指示がシュラに出ていたらしい。

その会話の途中に現れた燐とピエロ。

燐は理性を失っており、獣の咆哮と相違ない雄叫びを上げていた。

 

「シュラ、この青い炎を噴く獣は、サタンに纏わるものであると思わないか?」

 

アーサーは、間違いなく燐を殺す気だ。

燐の首を掴み上げ、その剣は首へと向けられる。

 

「サタンの胤裔は誅滅する。」

 

その剣が燐の首を跳ねるよりも先に、シュラの刀が振るわれた。

 




アーサーこの回ではOだったんですよねー間違いって作者が言ったけど。


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第十五話

チュウニズムとディビジョンとFGOと…嵌まると長いのばっかやってるよ自分…


「霧隠流魔剣技…蛇腹化…『蛇牙(だぼう)』」

 

シュラの剣は蛇のようにくねりながら、鋭い牙でアーサーを狙う。

しかしその剣をものともせず、アーサーはシュラの首に剣を当てる。

何故サタンの子を育てるのか。

前『聖騎士(パラディン)』は歴代最低だったなど。

問答を繰り返す末に、燐はアーサーに連れて行かれた。

理事長は被告人として、シュラは参考人として、燐と…フランは重要な証拠として、裁判を行うという。

私達候補生は、雪男を引率として医務室へ向かう。

最後列にいた私、咲夜、雪男を除いて。

 

「行かせると思うの?」

「全くね。」

「博麗さん!?十六夜さん!?」

「フランは私の暇潰しになるのだから、連れて行かれるのは困るんだけど?」

「妹様をペット扱いしたことも許せませんね。」

「では、メフィストと彼女には、何の関係もないと?」

「あるわけないでしょ。」

「当然です。」

「……」

「アーサー、本当に何の関係もない。燐はともかく、二人はさっき候補生になったばかりだ。私らは大人しく付いて行くから、解放しろ。」

「…まあいいだろう。」

 

シュラの説得もあり、フランは解放された。

それで許される程、咲夜は甘くない。

誰の目にも留まらぬ速さで、アーサーの背後からナイフを突きつける。

私はそれを見慣れている。

咲夜の、『時間を操る程度の能力』だ。

 

「!?」

「主を獣扱いされて、怒りを抑える従者がいますか?」

「…これは驚いたな…」

 

正直私も驚いている。何せ私の能力さえ、まともに発動しないこの世界。

飛ぶだけさえ出来ないのなら、時を止めるのなど絶対に不可能だろう。

 

(後で聞き出す…でもとりあえず…)

 

「痛っ」

「殺してどうするのよ。」

 

軽く咲夜の頭をこずく。

 

「…そうね…」

「全く…とにかくフランを解放してくれたし、もういいわ。でも、これだけは覚えてなさい。私達に手を出すのなら、相応の覚悟をすることを。」

「…肝に命じておこう。」

 

そんなやり取りを終え、アーサーは燐を連れて去って行った。

 

「……」

「それで咲夜?色々聞きたいんだけど?」

「…神社にでも行きましょうか。」

 

私達三人は、候補生への説明を無視して、まずは神社へ向かうことにした。

事情は後から雪男に聞けばいいだろう。

 

―――――

 

「それで…何で能力使えたの?弾幕でさえまともに使えないのに。」

「能力を使うのは、霊力や魔力といった、所謂『気』のようなものなの。パチュリー様から聞いたけれど、それは簡単に言ってしまえば、どんな力も生命力らしいわ。」

「……てことは…あんた…!?」

「ええ。どんなに使い辛かろうと、とてつもない疲労と魂の摩耗、それさえ耐えれば、使えないことはない。」

「つまりそれは、寿命を縮めるような行為でしょ!?何あんなに軽く使ってるのよ!?」

「確かに怒りもあったけれど…確実に確かめなければならないことがあったのよ。」

「自分の能力で通用するか?それとも奴個人の力を確かめるとか?とにかくもうやめてよね!」

「ええごめんなさい。危険が目前に迫った時だけにするわ。」

「本当かしら…それで?何を確かめたかったの?」

「お嬢様の無事と、幻想郷の秘密保護よ。」

「…へ?」

「奴が私の能力に何の反応も示さず、ただ『速い』と考えたのは、お嬢様に関心が向けられていないから。雪男さんを疑うわけじゃないけど、お嬢様が無事かどうかは断言出来ない。」

「確かにレミリアが捕まって拷問でもされてたら、能力のことも幻想郷のことも知ってるはずだものね…それをあいつの耳に入らないのもあり得ない。」

「ええ。これでお嬢様の心配はしなくても平気と分かったわ。あとはさっき貴女が言った通り。私の能力で倒せるかどうかの確認。」

「成る程ね…つまり私達の能力は、個々の切り札になりうる。」

「…そろそろ雪男さんが来るかしら。」

「そうね。」

 

異世界から来たと雪男は知っているけれど、幻想郷の情報を聞かせるのは、あまり得策ではない。

雪男が来るまでに咲夜の能力誤魔化す言葉考えないと。

 




こっちは結構久しぶりな気しますね。実際一ヶ月更新してない…弐も十日前ですか…


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第十六話

雪男が神社に来てから、幾らか説明を受けた。

雪男と燐の親は『サタン』と呼ばれる最高位の悪魔である。

燐はその力の一端である青い炎を使える。

雪男にはその力はなく、不思議とただの人間。

彼らの育ての親である藤本神父は、燐の力を降魔剣というものに封印してきた。

凡そ16年の間、本人の自覚もなく、常人として過ごしてきた。

 

「その監視が霧隠シュラさん…いえ、抹殺が任務ですか…」

「…メフィストとあんたらの父親は…何が目的だったの?」

「僕はシュラさんから初めて聞きましたが…悪魔に対抗する武器を作る…と…」

「本当に?」

「…」

「本当に…それが目的でしょうか?」

「何が言いたいのですか?」

「私はあまり貴方方との関わりも…ましてや父親になど会ったこともありません。しかし…」

「武器のためだけに、あんな風に愛情注ぐ?」

「……」

 

驚くように目を見開く雪男。

私は雪男から父が死んだことは聞いたことがある。

どう死んだのか、何故死んだのか、何も知らないようだった。

しかし燐は明らかに父を慕っており、雪男も尊敬した口振りをしていた。

雪男はその中に、苦しむように憎む言葉を捻り出していたこともあったが…それでも、彼らの父親は、親として立派だったと断言出来る。

それほどに感情が入り交じりながら、向かう最後は同じだった。

父親の死に対する悲しみ。

これは私や咲夜には…よく分かるものだった。

燐が覚醒してからすぐに死んだ。

それなら、単純に考えて燐が殺したか、燐を守るため死んだか、その二択しか考えられない。

燐の言動を思い返すと、燐は最後を見たのだろう。

他人を庇うなど、例え家族でも難しいだろう。

それが出来るだけで、その人がどれだけ立派だったかすぐに分かる。

 

「あんたらは、そんな打算的に育てられてないよ。」

「…そう…かもしれませんね。僕には…分かりません…」

「…私は自分の能力を怖いと思ってたのよ。」

「?」

「霊夢?」

「燐の能力はたくさんの人の命を奪った。青い夜のこと、聞いたからね。」

「…そうです。兄は危険です。それこそ、理事長に止められなければ…」

「そうね。だから燐自身も、自分の能力を怖がってる。でもね、能力だけが恐怖を生むわけじゃない。」

「…僕も…兄は怖いですよ。」

「それだけ?燐に自分が殺されるのが怖いだけ?違う。親を死なせた燐を憎みながら、死んでくれと兄に願いながら、燐を守るために、わざわざ世話もしてやってる。」

「……」

「怖いのは燐じゃない。置いていかれて、一人になるのが怖いのよ。そういうの…よく分かるわ。」

「…霊夢……貴方には、私達(幻想郷の皆)がいるわ。」

「ありがと咲夜。」

「……」

「よく考えて、思い詰めて、ゆっくり立ち直るといいわ。頑張りなさい。雪男先生。」

 

雪男は静かに帰って行った。

咲夜とフランは…フランが寝てるから今日は泊まっていくようだ。

 

「しかし霊夢?あんならしくないことして、急にどうしたの?」

「別に…ただ…」

「ただ?」

 

(昔の私と重なっただけ…)

「何でもな~い。」

「何なのよ…」

 

―――――

 

翌日、塾は普通に開講した。

燐は変に整えた髪で現れたり、それをしえみが怒鳴ったり、そんな燐を雪男が連行したり、どうやら奥村兄弟は中々に強いようだ。

まだ立ち直ってないのは、少なからず燐と仲の良かった連中だけだ。

それと塾に咲夜も参加し始めた。

フランも半分遊び感覚で参加している。

咲夜は流石の能力と元々の紫からの前情報から問題なく授業を受けている。

というか一度見た冊子の詠唱文とか何で覚えられるのか…咲夜も妖怪でしょ…本人には言えないけど。

とにかくしばらくかかるかもしれないが、当人達は立ち直ったようだし、他も時間をかけて受け入れるだろう。

そんな中、特に時間が経つでもなく、私達候補生全員と他祓魔師多数で、京都への遠征任務を言い渡された。

 

 




霊夢は母親を妖怪大戦争で失い、レミリアとフランの父親は虐待をしている。その話を咲夜は聞いたことがある。という二次いくつか見たんですよね…実際どうだかはZUN氏のみ知るところですが、今回はその二つを使わせてもらいます。


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第十七話

遅くなったけどあけおめです!今年もよろしくお願いします。


「…何故こんなことに…」

「手伝うくらいいいでしょ。付き合いなさいよ。」

「まあいいですが…妹様も楽しそうですし…」

「見て見て霊夢!あれ!でっかいお山!」

 

京都なる場所へ向かうため、電車なる巨大な乗り物に乗り込んだ。

候補生になった咲夜も一緒に遠征に連れて行かれるようで、フラン同伴でやって来た。

確かに景色はいい。

速度も…体で風を感じる飛行と比べればそうでもないが、いい具合の振動。

正直眠くなってきた。

 

「お三方共に来て下さりありがとうございます。」

「雪男いたのね。結局詳細聞かずに来たけど…私達は何するの?で何で私達はしえみ達と違う車両なの?」

「私達は主に教師陣と同様…つまり候補生ではなく、祓魔師として活動するのでしょう?」

「はい。十六夜さんの言う通り、基本的にお二人には僕と同じ立場で仕事して頂きます。便宜上候補生にはしていますが、下一級祓魔師と同等の権限、任務を与えられています。」

「多少好きに動いてよしってことね…」

「…お嬢様…レミリア様の階級は…?」

「僕と同じ中一級です。任務から考えて…もしかしたら今回の任務で出会えるかもしれないですね。」

 

つまりレミリアも京都の任務を受けているということ。

咲夜としては至上の喜びだろう。

しかしまあ…レミリアは望まなそうだし、見つけてもそれとなく避けておこう。

見るからに機嫌よくなったし。

 

「とにかく任務詳細は?」

「そうですね。基本は僕達と候補生の監督役です。祓魔師としての仕事を説明しても分かりえませんから。京都に着いたら、とりあえずは警備について頂きます。」

「ずっと警備じゃないでしょ?他の任務もしくは…候補生が勝手した時?」

「……いえ…もしかしたら…僕らお二人の上司に当たる者達が倒れる場合もあります。その場合は…個人で動いてもらいます。候補生も例外なく…」

「…任務関係なく何かあったわね?」

「……」

「まあいいわ。何か起きたら勝手に動く。私達は貴方達に縛られずに行動させてもらうわ。」

「そうね。特に妹様やお嬢様に関係するものなら…任務など私の知る所ではありません。」

「お二人はそれで構いません。…そろそろ着きますね。僕は他の候補生の元へ戻ります。」

「行ってらっしゃ~い。」

「行ってらっしゃいませ。」

「では。」

 

雪男はそのまま隣の車両に移動した。

 

「お話終わった?」

「ちゃんと待ってて偉かったわね。」

「うん!えへへ…」

 

フランの頭を軽く撫でる。

フランを撫でるのは何故か心地いい。

本人可愛いから、小動物らしくて癒されるのだろう。

これがレミリアなら…癒されないが…面白いだろう。

 

「ここが京都ですか…」

「凄い建物の数ね…雰囲気も建築も幻想郷に近い…」

「あ!えーと…雪男さんがこれ置いてったよ。私が待ってる間読んでてって。」

「色々書いてあるわね。観光…スポット?」

「色んな建物が書いてて面白いよ。」

「ふーん…」

「任務が終わり次第出かけましょうね妹様。」

「うん!」

 

任務中の行動より先に任務終了後の予定が決まった。

 

それからはほとんどの時間警備だった。

室内が騒がしかったので、何か一悶着あったのだろう。

庭など雑草が伸び放題だった。

私も咲夜のように、室内の仕事をもらえばよかったかもしれない。

そして…夜が来た。

 

「酒ね~♪」

「霧隠さんが間違えたのですね。」

 

今夜は楽しい夜になりそうだ。

 

 



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第十八話

更新してなかった理由はありません。強いて言うなら寒暖差アレルギーで頭痛いくらい鼻水出ることです。一週五百円ティッシュが消えます。秋には頻度増やすので壱弐共々お許し下さい。なんなら対策教えて下さい今年初めてなって喘息も苦しいんです。…愚痴ってすみません。


「……」

 

朝起きたら誰もいない。

騎士団連中も寺の人達も…咲夜達もいない。

 

「咲夜ー?フランー?」

 

呼んでも返答はない。

どうしたかと聞きに来る人もいない。

 

(これは…)

 

誰もいないと言うより、ここが私のいた場所ではないように感じる。

それこそ…紫が歪めた空間(マヨゐガ)のような…

 

「…?こんなところに扉…?襖じゃないの…?」

 

怪しさ満点の扉が一つ。

食堂に見覚えのない扉があれば誰でも気付く。

やはりここは少し違う所なのだろう。

 

「…ま…開けるしかないわね。」

 

何があろうと力尽くで蹴散らしてくれる。

そう思い開けた扉の先は、拍子抜けする程に見覚えのある場所だった。

 

「おや?最初のお客は霊夢だったかい。久しぶりだね。」

「…霖之助さん。」

 

幻想郷で魔理沙やアリスの家以上に通っていたであろう憩いの場。

しかして内装には少しの変化があった。

 

「これは?」

「今回のイベントに協力しているんだよ。君達に必要な時、必要な物を、一つだけ与える。代わりにその度、君達のいる世界から、納得いく物を僕は貰う。その約束で、彼女に協力しているのさ。」

「…ここにある物が、今私に必要ってこと?」

「どうだろうね。」

「…何よそれ。」

「生憎僕には君達の状況は分からなくてね。何が必要かは分からないのさ。」

「何の意味があるのよそれ…」

「言っただろう?君は必要な物を一つ選べばいいのさ。」

「……」

 

ガラクタの集まりのような場所を漁る。

とは言え必要なものなど検討も付かない。

そもそも向こうで今何が起きてるでもないのだ。

そんな時に用途も分からないガラクタを貰った所で…

 

「!」

「おや?何か見つけたかい?」

「ええ…」

 

何故か引かれるように手に取ったそれは、私には何かも分からないものだった。

しかし勘が働いたのか、これが必要なことだけは分かる。

 

「それは『倶利迦羅(クリカラ)』。用途は…降臨…ね…」

「降臨…」

「まあここにあるものはほとんど紫から聞いてるけどね。その剣は『倶利()羅』と同時に存在し、違う力を持った名剣らしいよ。君のいた世界には両方あったんだね。」

「…どんな力あるかは聞いてないの?」

「詳しくは聞いてないよ。収集物でもないし。でもこれだけは聞いたな…その剣の別称は、『降神剣』。文字通りなら神降ろし…君には最高の贈り物じゃないかな?」

「…成る程ね…ふふ…いいわ。これを頂戴。」

「毎度。…少しおかしいかな?」

「買ってないからね。とにかくありがとね。」

「頑張りな。また来ることを期待してるよ。」

「またね。霖之助さん。」

 

燐の降魔剣と同種のもの。

燐が力を使う時、剣を抜くことが恐らく条件。

それはつまり、燐の悪魔…サタンの子としての力を剣に封じているということ。

しかし封じるだけの剣かと思えばそれは違う。

生まれつき力を封じていたとも思えないし、剣そのものがなまくらだったとも思えない。

燐の力がなくとも名剣だったのは間違いない。

なら、別の力…例えば名前通り、悪魔の力を使えるのなら…

そしてこれが同じ力を使えるなら…

 

「…大禍津日神(おおまがつひのかみ)。」

 

そう言い、剣を抜こうとした…

しかしとてつもない悪寒と、悪い予感に、無意識に躊躇した。

今の私に、強力な神を降ろすことは出来ないようだ。

しかし戦闘で使う切り札には十分だろう。

予想通り神を降ろす剣として、私の力となった。

 

「さてと後は…」

 

この歪んだ空間からどう脱出するかだ。

 

 

 




紫は解放してくれませんでした。チュートリアルは大事。後香霖堂は最初からこうする予定でした。今は言えないけど他の人達に必要なもので手に入らないもの多いんで。なので霖之助は話には関わりません。あくまでお助けキャラであり紫の協力者です。


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第十九話

ガッシュのアニメyoutuveで見れるよ~漫画と途中から全く違うけど面白いから見てね~…そのせいで魔理沙の方の話ばっか考えてます。


「何なのよこれ……」

 

私は依然としてこの空間から脱出出来ないでいた。

後ろを見れば香林堂はなく、辺りを見ればネジやらボルトやらガラクタばかり。

悪趣味な紫のこどだ。

どうせこの剣を使えるまで出す気ないのだろう。

昔は出来るまで死ぬ気でやるような修行もしたものだ。

まあ適当なところで出るよう設定しているはず。

ならばこちらは剣に慣れよう。

倶利迦羅の力は絶大…こと悪魔を相手するなら敗北はない。

しかしその消耗もおそらく半端じゃない。

神を降ろしたとして、何秒保つだろうか。

大禍津日神のような以前に使うことの出来た神でさえ、今は降ろせない。

どころか普通の能力すら使えないのだ。

剣を使って精々十秒…降ろす神によっては最大一分と言ったところか。

少なくとも大禍津日神や天照大御神などの強力なものは十秒保たないだろう。

 

「たく…これ私じゃなかったら叫んでるわよ?」

(クソババアってね)

 

そんな愚痴を言っても解放されまい。

とにかく能力を強化するしかない。

降ろす霊力が足りない以上、手段は限られる。

霊力を増やす、効率化する、いっそ使わず休む手もある。

まあサボりなんてしたら一生出れなそうだけど。

回復なら瞑想でもすればものの数分。

しかし増やすのは時間的に無理があるし、効率化するにも精々使う神を片端から調べるしかない。

それでさえ時間がない。

任務中の私を何日も拘束しないだろうし、いて一日が最高。

出来ることは…それこそ体を鍛える程度か。

剣に適当な神を降ろして耐えるのを繰り返し、霊力回復ついでに逆立ちでもしよう。

そうとなればまずどれほどなら降ろせるのか試す。

 

「まずは…甕速日神(みかはやひのかみ)…」

 

甕速日神なら、日の神と分かりやすい。

剣身に炎が纏う程度だろう。

火を広げることも出来れば御の字。

それに最上位神の二つ下程度なら実験に丁度いい。

 

―――――

 

舐めていた。

いや予想外だった。

神の力は絶大…そう分かっていたはずなのだ。

辺り一面焼け野原になる程度は想定内だが、十秒もしない内に焦げ切った。

そしてこれは三十秒程保った。

三十秒以内なら敵なしだろう。

 

「まあその分疲労は半端ないけどねぇ…はぁ…」

 

何とか気合いで長々火を放ったが、耐えれなくなった瞬間倒れ込んだ。

今はうつ伏せで倒れている。

指一本動かない。

とてもじゃないが霊力回復中に修行は出来ない。

ついでにもう一つ気付いたことは、倶利迦羅には刀身がないこと。

降りた神がいなくなったら、空の鞘と柄だけ。

やはり鞘と柄が特別なようだ。

まあとりあえず…

 

「寝る…」

 

―――――

 

あれから使っては寝ることを繰り返し四十柱目…最高時間はおよそ一分。

同じ神を降ろすことも出来た以上、本人が来ているわけではない。

まあそこは神降ろしと同じく力を借りてるだけのようだ。

一応倒れるか倒れないかの瞬間は把握出来た。

戦闘続きでも最悪扱える程度に加減も出来る。

最も把握出来てよかったことは、切り替えが可能なこと。

霊力さえ保てば、何柱かを切り替えて使える。

一分程度なのはもどかしいが、一分以内なら誰よりも強くなれる。

 

「ここまで使えば十分ね……そろそろ出らんないのー?紫ー?いつまでここにいればいいのよー?」

 

大声で言ってもなにも返されない。

となると自力で出ろとでもいうつもりか。

そう思っていた時…

 

「どこだよここは…」

「…燐?」

「あ!?…霊夢?」

「何であんたここにいんのよ?」

「そっちこそ…つかここ処刑場じゃ…」

「…待て今何て?」

「処刑場…」

「あんのクソババアがー!」

 

ここが燐の処刑場なら、実質私も脱出不可能。

そもそも歪んだ空間からの脱出は自力じゃ出来なかった。

外から来た燐が出れなきゃ出る手段はない。

処刑場ということはここに永久に閉じ込めるということだろう。

 

「あーもー!やっと出れると思ったのに…!」

「俺だって…こんなとこで死ぬわけには…わけに…は…」

「あ?」

 

燐の言葉が詰まった。

憤りも、脱出の意思も、全てが別の感情で埋め尽くされる。

 

「死ぬ…べき…なのか…?」

「はぁ?」

「だって俺…皆が言う通り化け物で…」

「…はぁ…いい!?あんたが化け物かどうかなんて知ったこっちゃないわよ!でもね…あんたが諦めたら私まで出らんないでしょうが!」

「……だけど…」

『燐!』

 

うじうじしてる馬鹿に説教始めるところなのに…遠くから誰かが走ってくる。

 

「しえみ!?」

「あんたまで…うん?待てよ…」

 

しえみが私達みたいに閉じ込められたり処刑されるとは考え辛い。

となるとしえみは自力で入り込んだ?

扉か何かで区切りがあるなら、この内部から破壊はできるかもしれない。

出入口が壊れれば、強制的に空間から追い出される可能性も…

私の神降ろしでも足りなかったのなら、これは燐にしか出来ない。

火力ならこいつの方が上だ。

ならどうにかしてやる気を出させなければ…

 

「くるな!」

「!」

「何よ急に…」

「俺は…炎を操る自信がない。お前らを燃やし殺すかもしれない…雪男やシュラ、霊夢なら平気かもしれないけど…しえみは駄目だ。お前らを…傷付けたくないんだ…」

「……」

 

何があったかは知らないが、きっとまた暴走したのだろう。

好き勝手炎を使って、誰かを危険に晒したのだろう。

確かに候補生じゃ対処も出来ない。

燐の心配は、決して杞憂ではない。

 

「俺はこのまま…死んだ方がいいのかもしれない…」

 

だからこそ苦しみ、だからこそ自分を殺す。

誰かのために…今目の前にいる仲間のために、自分がこれ以上苦しまないために。

だから私は…

 

「無駄なこと考えんなこの馬鹿。」

 

燐の腹に蹴りを入れた。

 

 




長くなりそうで切っちゃった。唯我独尊傍若無人…金の亡者な博麗霊夢…イメージ的には。


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魔理沙編
Level.1


サブタイで分かると思うけど漫画ごとの話数数えします。もしかしたらそこで分かるかも…?


私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ。

しかし今、私はとても驚いている。

魔法使いである私が魔法を使えないのだ。

 

 

「でも八卦炉は弱いけど使えんだよな~」

 

ちょっと雷が出るくらい。それだけ。

紫から説明は聞いたけど、どんな世界か分からない。

もう日が傾いてて少し暗い。

地図もらってこの場所行くよう言われたのによく分からない。

 

「道聞くしかないか。……おーい」

「?私ですか?」

「おう!ちょっと道聞きたいんだぜ!」

「えっと……その地図の場所ですか?」

「そうだぜ!目印の建物も分からないし参ったぜ……出来れば案内してほしいくらいだぜ!」

「あ……大丈夫ですよ。行きましょうか。」

「ありがとな!」

「いえ。そんなに遠くないですから。」

 

そう言って歩きだした。

本当に遠くなかったようで、紫に聞いた感じの家に着いた。

 

「案内ありがとうだぜ!今度あったら上手いキノコあげるぜ!」

「だ、大丈夫です。こんなことでお礼貰ったら駄目ですよ……」

「貰えるもんは貰っとくべきだぜ?とにかくありがとな!」

「はい。では…」

 

紫に言われた家に着いたはいいけど、勝手に入ったらまずい。それくらいの常識はある。

かといって家がたくさんあるここで叫ぶのもさすがに非常識。

 

(そういえばアリスの家に呼び鈴みたいなのあった気がするな。あるか?)

「…………お!これかぜ?」

 

押そうとした瞬間、中から鈍い音が聞こえた。

マスパで人壁に叩きつけたときと同じ音。

緊急性を感じて私はすぐさま扉を開けた。

声が上の方から聞こえた気がしたから、階段を上った。

廊下の奥を見たとき、子供と犬が部屋の外で座っていた。

声をかけようとしたその時、ヒステリックにも聞こえる声が、廊下まで響いた。

 

『あの子供と一緒にいても、あなたには災いしかふりかからないのよ!』

 

その言葉を聞き、子供は泣きながらこちらに来る。

 

「おい……?」

「………」

 

犬は少しこちらを見、子供は私には気がつかないかのように歩いていく。

 

「………」

 

心配で追おうとしたら、またヒステリックな声が部屋から響いた。

 

『私は…私はこの子を王に育て上げる!あなたが本を渡さないなら…その手をひきちぎってでも本を奪い、燃やしてあげるわ!』

(王?本?いったい何のことだぜ?)

 

気にはなったが、子供が心配な私は、すぐに子供を追いかけた。

階段の前に立ったとき、子供の悲鳴が聞こえた。

 

「うぁああああ!」

「!?」

「ガッシュ!?」

 

部屋から同い年くらいの少年が飛びだし、私を見て一度驚いたように動きを止め、すぐさま私に叫んだ。

 

「ガッシュは!?ガッシュはどこにいる!?」

「え?あ……」

「くっ!」

 

少年は階段をかけ降りた。

私も続いて降り、様子を見てみた。

そして見てみると、間一髪のところで子供をかかえて飛び退く少年の姿だった。

体から岩が生えた(先ほどの犬なのだろう)犬に、光輝く本。

二人が少し会話をした後、少年が犬に噛みつかれ、蹴り飛ばされた。

それから更に会話をし、フードの男がフードを取った。

その顔は笑っていた。

また再び犬が突進をし、少年達を襲う……が、子供の口から放たれた電撃によって吹き飛ばされた。

また二人は言い争い、子供が涙を流した。

そんな二人に向かい、容赦なく岩が飛ぶ。

私は八卦炉を取り出したが、使えないことを思い出し、手をおろした。

少年が子供を庇い、その岩に激突した。

血だらけになる少年の背中を見ても、私は動けなかった。

幻想郷で見慣れたものとは違う。

本当に命の危険がある戦い。

能力が使えれば助けられたかもしれない。

だが自分に今力はない。

いつもと何もかもが違う。

ただ能力が使えないだけで、私は命のやり取りも出来ないような臆病者だった。

霊夢の母が、妖怪と戦って死んだことを思いだした。

私は、ただ動けずに場を見ることしか出来なかった。

 

「あなたは、こんな戦いに、関わらない方がいいわ。」

 

女性と黒い少年は私の横を通り、そう呟いた。

黒い本は輝き、女性は何かを呟いた。

 

『レイス』

 

直後、犬は扉に叩きつけられた。

 




時系列は一巻ラスト位です。魔理沙男口調はちょっと原作より強めかもです。臆病設定はなんとなく他の二次制作で多いからです。入れてみました。そしてもう原作分かりますね?
なので原作名公開!
『金色のガッシュ!!』
予想させずすみません。出だし全く思いつかなかったんです。話し入る前だといつ入るか分からないし……
すみません。


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Level.2

さっそく順番無視しちゃいました。向こう(霊夢編)はまだ原作出てないしこっち先出しました。次で原作キャラ出ますし。すみません。次は間違いなく霊夢編です。


犬が何かに吹き飛ばされ、扉を壊さんばかりにぶつかった。

私は唖然とした。

私の視界には何も映ってなかったのだから。

 

「俺の(ゴフレ)が……そんな……一撃で…」

「本を置いて失せろ…」

 

悲鳴を上げながら扉を開け、走り去っていった。

本を落とし、犬も残して消えていった。

 

「次はあなたね…」

 

そう言い、彼女は呟いた。

 

『グラビレイ』

 

その一言で、少年は床に突っ伏した。

まるで見えない何かに潰されているように。

 

「今ならまだ手くらいは動かせるわ…上から降りかかる力があなたの体を潰さないうちに、本を渡しなさい。」

「やな…こった……」

「そう…」

 

無慈悲にも力を増す女性に、少年は血反吐を吐きながら耐えていた。

『なぜ本をかばう!』――『なぜ私をかばった!』

『私は化け物なのだろ!?』――『私がここにいると、悪いことばかりおこるのであろ!?』

金髪の子は涙を流しながら、そんなことを叫ぶ。

 

「もう私には…友達はいないのだ……一人も…いなくなったから…もう…なにも悲しいことなどないから……」

 

その言葉を聞いて、私は思い出した。

家を出た時のこと。

一人で泣いていた、子供の時のこと。

手を差し伸べた、霖之助を。

 

「ちょっと待てぇー!」

「!?」

 

私は階段から飛びだし、少年達の前に立った。

私は女性に向き直り、こう言った。

 

「お前は酷い奴だ!二人を何も知らないで、小さい子供に悪いことばかり言う!この二人が何をした!?私には、親友同士みたいにしか見えなかったぜ……」

 

私は振り返り、子供に叫んだ。

 

「お前もそうだ!何が一人だ!お前を想う人がいて、何が悲しくないだ!一言くらい言い返してやれよ!友達がこんなに言ってるのに、ただ泣いてるだけじゃ駄目だろ!?」

「階段で震えていたくせに……随分と偉そうだな…」

「そうだ…私は震えてた……でもそれがどうした!?二人がこんなになって戦ってるのに、関係ないからって無視出来るか!これ以上二人を傷つけるなら、私はお前らを許さない!」

 

「チッ…シェリー…」

「………」

「シェリー……!」

「ブラゴ、一番大きいのをぶつけるわよ……」

「!…大丈夫なのか……?」

「これに対応出来なきゃ…どのみち他の誰かに殺されるだけよ…」

 

「おお……何かすげぇ光ってるな…やばそうだぜ…!」

「なぁあんた…あんたのおかげで…覚悟が出来たよ。」

「……へへ…」

「……ガッシュ!お前は俺の友達だ!化け物だろーが関係ねぇ!友達なんだよ!お前に助けられたでけー借りを返さなきゃいけねーんだ!戦えガッシュ!ずっとこの世界に残って、俺にこの借り返させやがれ!迷惑かかるから戦えないなんて言ってみろ!ぶっとばすぞ!」

「…うぅ…清…麿…」

「やるんだガッシュ!奴の背負ってるものなんか考えるな!お前が生き残るために……この世界にいるために!あいつらと戦うんだ!」

「ウヌゥ……!」

 

「………」

「シェリー」

「ええ……終わりにしましょう……」

 

黒い本は大きな輝きを見せ、少年の赤い本は…『金色』に輝いていた。

 

(!?…奴らの本…まさか…あの色は…)

「戦うぞ!」

「ウヌゥ!」

『ギガノレイス』!

『ザケル』!

(でかい!なんて密度のエネルギーだ!まさか…)

 

二つの巨大なエネルギーは相殺された。

煙のうちに、女性のもとへむかう少年に、私は気付かなかった。

 

「俺の赤い本は…あきらめな…てめぇが…何度来ても…渡さねぇぜ…今日みたいに……返り討ちに…して…やる…」

 

 

 

「き…清麿!清麿!」

「大丈夫。死んではいないわよ。」

「!」

「意識が戻ったら伝えておくことね。今回は見逃すけど……また、必ず本を奪いにくると…その時まで、その本を大切に守り生き抜きなさいと…赤い本を燃やすのは私達だけってことをね…」

「どういうつもりだぜ?」

「あなた……ただの気紛れよ…あなたもいつか本を手にしたら、生き抜きなさい…あなたたちを倒すのは……私達だけよ…」

「私はもう会いたくないぜ。」

「……そう…でも…また会いましょう…」

 

そう言い残し、二人は部屋を出ていった。

 

「とりあえず応急処置くらいしとくか?」

「ウヌ!」

 

――――

(すこし区切ってオマケ)

――――

 

「なぁ、高嶺って人の家って、ここで合ってるよな?」

「ウヌ!清麿は高嶺清麿というのだ!」

「合っててよかったぜ…起きたら自己紹介くらいするかな。」

「ウヌゥ私はガッシュ・ベルなのだ!」

「私は霧雨魔理沙だぜ!よろしくな!」

「よろしくなのだ!」

 

 




アニメではレイスは紫の玉で描かれてますけど漫画は清麿が見えないって言ってたので見えないとします。前書きと後書きは最初は長いかもですけどその内無くします。最初はこれでもお許しください。


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Level.3

清麿は病院の回ですね。魔理沙は見舞いには来るけど病院の話は原作で。華さん(清麿のお母さん)と魔理沙の話を書きます。遅れてすみません。あとコメントで三人目は六月前半と言いましたが、その三人目の話はちょっと書くの難しくて遅れてます。二つで迷ってるけど、多分書きやすい方にします。どっちも書きずらいですけど。すみませんが気長にお待ちください。


私は凄く戸惑っている。

理由は様々だ。

家の修理を手伝っていたら、母親と思える女性が帰宅した。

そのすぐ後に、突然清麿が倒れた。

どうすればいいかも分からないし、ガッシュも慌てていたから、女性に助けを求めた。

台に置かれていた何かを押して、清麿が倒れたのと、場所を言っていた。

その後数分も経たない内に凄い音を出して何かが家の前に止まり、人が降りてきた。

私の箒みたいなものかと思い、全員が乗り込むので、私も付いていくことにした。

大きな建物に入ったと思ったら、清麿が連れていかれ、一体何事かと騒いでいた気がする。

華さんからここは病院だと言われたが、永遠亭しか病院を知らないためとても驚いた。

ここまでで分かるだろう。

私は知らない物だらけのこの世界に戸惑っているのだ。

これまでを振り返りながら、私は華さんに連れられ、病院を後にした。

 

「ここまで付き合ってくれてありがとうね。貴方が魔理沙ちゃんで合ってる?」

「合ってるんだけど……私のことどう聞いてるんだぜ?」

「夫から、『見知らぬ女性から彼女を預かってほしいと頼まれた。どうかそっちで預かってもらえないか?』って電話で来たの。ガッシュちゃんみたいにあまり事情が分からない子もいるし、人が多い方が楽しいから『分かったわ。』って返事したの。だから貴方も無理に事情を話すことないわ。」

「華さん……」

「でもその服だと目立つわね。」

「服?……そうか?」

 

華さんや清麿の格好を見ると、確かにおかしな気はするが、ガッシュの格好をみるとそんな気もしなくなる。

どちらにせよ幻想郷と全然違う格好だし。

 

「清麿も平気みたいだし、服でも買いに行きましょうか。」

「でも金なんて持ってないぜ?」

「それくらいいいわよ。これから家で暮らすんだから、家族だと思って頼って。」

「……ありがとうだぜ!」

(ガッシュ達についてはまた後で話すか。)

 

そうなのだ。

まだ私は清麿にもガッシュにも何の説明もしていない。

今思うと清麿が華さんから話しを聞いていたから聞いてこなかったのだろうが、それより先に清麿の治療と家の修理を優先した。

結果、何も説明しないまま病院に行き、今に至る。

 

「それじゃあ行きましょうか。」

「おう!」

「……魔理沙ちゃん何か男らしいわね。」

「……昔から身に付いてて…」

「とりあえずデパートに行きましょう。」

「えーと…デパートって何だぜ?」

「うーん……いろんな物を売ってる…大きいお店?」

「??」

「……実際に行きましょうか。」

 

 

 

 

それから私はまた、幻想郷になかったものを大量に見て、触ったり乗ったり着たりして、一日を過ごした。

帰るころには夜になっており、ガッシュと一緒に三人で夕飯を食べた。

凄く美味しかった。

 

「この部屋を好きに使ってね。」

「ありがとうだぜ。……なぁ華さん…」

「なぁに?」

「どうしてこんなによくしてくれるんだぜ?何も話さないし、迷惑なだけなのに…」

「そんなことないわ。人が多いと楽しいわよ?それに……清麿と同じくらいに見えるから、娘が出来たみたいで嬉しいんだもの。」

「……これからもよろしくだぜ。」

「こちらこそ。」

 

凄く優しいこの人を霖之助と重ねて見てしまう。

 

(霖之助もこんな風だったな……帰ったら感謝の言葉の一つくらい言うか……)

 

霖之助のことが、とてもありがたかったと感じた。

この人のおかげで、そう思うことが出来た。

私はこの人に感謝しながら、その夜は眠った。

 

 




華さんの口調全然違う気がする。違和感覚えても気にしないで下さい。自分が一番合ってないって思ってるので。


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Level.4

魔法出ます魔法!ちょっと違うけど魔法だよ!……原作上あまり使わせられない……魔理沙可哀想…


「でっかい木ーーー!!

でっかい葉ーーー!!!

ワアーーーーー!!!!」

 

ガッシュがとてつもなくはしゃいでいる。

それは何故か。

私がいる場所、それは……植物園。

ガッシュの言う通り大きな木や葉がたくさん生えている。

ガッシュがはしゃいでいるのに対し、清麿は注意しているが、ガッシュは止まらない。

正直私も少し恥ずかしい。

 

―――――

数十分前

―――――

 

私は清麿に自分のことを説明していた。

異世界から来たこと、この世界のことを何も知らないこと、様々な事情を。

 

「そうか……多分親父にその…紫さんって人が説明したんだろうな。今度聞いてみるよ。まぁ何にしても、お袋があんたのこと気に入ってるし、追い出したりしないよ。」

「ありがとな!」

「ああ…さてと、次は俺達の方か。」

 

その後清麿から、ガッシュについてやあの時の戦いについてを聞いた。

千年に一度の魔物の王を決める戦い。

ガッシュはその候補の一人であり、本に書かれた術を唱えることで、あの時のような電撃が撃たれる。

本を燃やされると資格がなくなり、ガッシュは魔界へと帰ってしまう。

そんな会話をしていると、突然ガッシュが飛び込んできた。

 

「清麿!どこかへ連れていくのだ!?」

『……』

「公園行ってガキどもと遊んでろ!」

「急にどうしたんだぜ?」

「ウヌゥ……実はの……」

 

要約すると、ナオミという子に動物園に行くことを自慢され、とても悔しいからどこかへ連れて行ってほしい。

そういうことらしい。

 

「まあいいんじゃないか?清麿。私もこの町をもっと見てみたいぜ!」

「ヌオォー!そうであろ!?清麿!皆で遊びに行こうぞ!」

「たく……」

 

―――――

 

「ハハ、しっかし変わんねーな。日曜なのに数えるほどしか、人が入ってねーし……」

「なーにが変わらないって?」

「うおあ!?ハ…ハハ…お久し…ぶりです。」

 

突然後ろからやって来た女性は、清麿と知り合いのようだ。

とても親しげに話している。

 

「清麿、スキありー!」

「ぐおぅ!」

「コラ!」

 

ガッシュが草木を使って清麿に蹴りを入れたことで、女性はとても怒っていた。

それから急に笑いだして、今度は清麿が怒って歩いて行ってしまった。

 

「あいつ、いじめられてた頃、学校サボってよく来てたもん……」

「何!?」

「何の話しだぜ?」

「あんたは……」

「霧雨魔理沙だぜ!よろしくな!」

「あたしは木山つくし。よろしくね。しかし…あの清麿が女の子連れてくるなんてね。」

「いやぁー事情があって清麿の家で世話になってるんだぜ。」

「あんたも、清麿の友達かい?」

「ウヌゥ!魔理沙ももう友達なのだ!」

「…みたいだぜ?」

「なんか安心したよ。清麿が普通の中学生みたいになってて…」

「清麿は、いつもここに来てたのか?」

「たまにね。ここあいつなら100円で入れるし、時間潰すには丁度よかったのよ。まああたしも、本当は入れちゃダメなんだけど……」

 

つくしは少し思い悩む顔をして、話しを続けた。

 

「つらいときに逃げるところってのは必要かなーって……」

「…つくしは清麿を守っていたのだな?」

「そんなんじゃないよ。あたし実際何もしてないし……あたしが本当に守ってるのは、ここの植物達なの。みんな強いし、元気づけてあげればそのぶん、素直に上武になってくれる…みんな大切な友達よ!」

「つくしはいい奴だな。私も友達にしてくれぬか?」

「え?」

「私も友達にしてもらいたいぜ!」

「……もちろんよ。いつでも遊びにおいで。」

 

三人でほのぼのとした会話をしていると、突然園内に叫び声が上がった。

 

『ジュロン』!

 

園内のそこらかしこから悲鳴が聞こえる。

辺りを見渡すと、たくさんの人が太いツルに縛られていて、それは私やつくしも例外ではなかった。

 

「つくし!魔理沙!」

 

体の痛みで意識が薄れる中、男の声が聞こえた。

おそらく魔物の本の持ち主。

それもかなり性格の悪い奴だ。

このツルをどうにか出来ないか力を込めるが、縛られた状態では力が入らない。

その時、視界の端に偶然だがある『もの』が映った。

距離はあったし、目は開けているのが精一杯だった。

だというのに、まるで魅入られるかのように、私の瞳はそれを映した。

黒猫の人形を抱え、こちらをじっと見つめる少女の姿を。

菖蒲(あやめ)色の本』を持つ少女を。

そちらに気を移していると、ガッシュの術がツルを破壊した。

 

「魔理沙!歩けるか!?」

「…平気だぜ…」

「すまん…魔理沙、つくしを連れてここから離れてくれ。」

「二人は…」

「あいつを倒す!」

「……分かったぜ。」

「気を付けろよ。…つくし…スマネェ…少しだけ…あんたの友達を傷つける…」

「なら…謝る代わりにあいつらぼこぼこにしちまえ!」

「ああ!行くぞ!ガッシュ!」

「ウヌ!」

 

私は二人に背を向け走りだした。

 

―――――

 

「つくし、ここで少し休んでてくれだぜ。」

 

園の外につくしを寝かせ、私は園内を走った。

さっきの少女を見つけるために。

何故私が、ここまで引き寄せられるのか知るために。

 

―――――

 

どれだけ走ったかも分からない。

ガッシュ達は園内の人達を、全員助けることに成功したらしい。

既に縛られていた人達はいなくなっていた。

だが、それを確認した直後、清麿の叫び声が上がった。

少女は気になるが、清麿とガッシュがピンチなのを、無視して行ける程、私は恩知らずでもない。

私は考えもせずに、彼らの下へ走りだした。

 

―――――

 

私が着くと、清麿は締め上げられていて、ガッシュはぼろぼろになって床に倒れていた。

そして前には、敵の魔物とパートナーが、笑っていた。

私にはどうしようも出来ない。

これは魔物同士の戦い。

邪魔する方法も策もなく、無闇に入れば危険なもの。

だがこの戦いは、本が燃えればそれで負け。

ならと私は考えた。

少し雷を出す程度でしか使えないこの八卦炉でも人間相手なら使える。

あわよくば本を燃やせる。

そもそもがおかしかったのだ。

魔物が術を使えるこの世界で、どうして魔法は使えない?

私の中にある魔力はどうなった?

紫は、何故能力が完全に使えないものと言わなかった?

 

「答えは簡単だぜ…使えないわけじゃないからだぜ!」

 

私はありったけの力を込めて八卦炉を突き出した。

普段のマスパと比べてしまえば小さい。

しかし本を燃やすなら十分な雷を、私は八卦炉から放出する。

狙いがずれて本には当たらなかったが、本を持つ手に当たり、本の持ち主は本を落とした。

直後に疲労で倒れてしまったが、それは逆に運がよかった。

そのおかげで、清麿達にさえばれることがなかった。

意識を失う前最後に私が見たのは、ガッシュの盾が、相手の攻撃を跳ね返すところだった。

 

―――――

 

「……ん…うあ……?」

「ウヌ!清麿!魔理沙が目を覚ましたのだ!」

「……ガッシュ…?」

「魔理沙、大丈夫か?」

 

目を覚ました私がいたのは、高嶺家の客間。

私は自分の状態を確認した。

どうやら植物園から家まで運んでもらったらしい。

ケガというケガもなく、気絶したのが疲労のせいだと分かって、清麿達はほっとしていた。

 

「何かあったのか?」

「いや……うーん…分からなくなったぜ…」

「魔理沙。あの魔物なんだが、魔理沙が何かしたのか?」

「すぐ近くで倒れていたのだ。」

「パートナーも不自然に本を落としたし、魔理沙が倒れていたのも近くだったから……」

「あ、それはこれのおかげだぜ。」

「倒れてたときも持ってたが、それは何なんだ?」

「ミニ八卦炉だぜ!まぁ何故だか小さい雷しかでなくて、ガッシュが羨ましいぜ……」

「それがあいつの手に当たったのか…すごいな。」

「そんなすごくないぜ。ちょっとした電気だしな。それに……悪い…本も燃やせなかったぜ。」

「何言ってるのだ?私達はそれに助けられたのだ。だから謝る必要もないのだ。助けてくれてありがとうなのだ!」

「ガッシュの言う通りだ。魔理沙がいなきゃ勝てなかったかもしれん。ありがとう。」

「へへ……照れるぜ…」

 

その日はすごくいい気分だった。

 




アニメでは水野いましたね。漫画ではいないし、漫画準拠で。まだ水野を魔理沙に会わせてはいけない。あと場面の移り変わりは話し上結構あると思うので、まあご注意を。…魔理沙のキャラに違和感感じる。


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Level.5

やぁ皆、これは一人言のようなものだが誰かいるなら聞いてほしい。

私は最近だと結構健康的な生活を送っていたんだ。

朝七時程に起きて花さんの手伝いをして、散歩がてら町を散策していく。

途中つくしのところへ寄って、世間話をして帰る。

外に行かずに清麿の父親の書斎で本を読んだりもする。

そうして夜九時、十時程に寝る。

ここまでで何かおかしなことはあっただろうか?

いいやない、少なくとも私は普通に思う。

なら普通じゃないところも挙げよう。

私にとっては普通だが、魔法の実験をしたりもする。

書斎の本から解読して、他国の言語を習得しようとしたり、『赤い本』についての考察をしてたり、とにかく暇はない。

さぁ、ここまでで今の私の状況に繋がるものはあるだろうか?

聞いて考えてみてくれ。

 

「すぅー……すぅー…」

 

可愛い寝息をたてて、少女が私の布団に寝ているのだ。

というか昼寝から起きたらいた。

起きた時にこんな事態になって、私はどうすればいい?

しかも…

 

(……菖蒲色の本…魔物だぜ…)

 

植物園で見たことのある少女。

しかしガッシュの敵かもしれないのだ。

話しを聞きたいが起こすのは少し可哀想に思う。

まぁ私は無慈悲に起こすから、今までの問答は何も意味を成さないけどな!

 

「起きろー」

 

軽く揺さぶる、反応はない。

もう一度揺さぶる、反応はない。

頬を引っ張る、少し嫌がる、しかし起きない。

扉まで転がした、やっと起きた。

 

「んぅ……ん?」

「やっと起きたぜ…」

「魔理沙…起きた…」

「寝てたのはそっちだぜ。」

「うん…魔理沙…」

「何だぜ?というか何で名前…」

「魔理沙…尾けてた…」

「はぁ!?全然気付かなかったぜ!」

「…魔理沙…本…」

「本?これかぜ?」

 

私は菖蒲色の本を取って聞く。

 

「うん…」

「それで…何で寝てたか聞かせてくれるのかぜ?」

「うん…でも…読んでくれたら…理由は分かる…」

「読む?…どこを?」

 

ぱらぱらとページを捲り、読める場所を探す。

すると色の変わっている文字を見つけた。

 

第一の術『パペルク』

 

「…『パペルク』?」

「やっぱり…読める……魔理沙が…私のパートナー…」

「…ガッシュと同じなんだよな?」

「うん…私も魔物…」

「…一つだけ、絶対に確認しなきゃいけない。お前は、ガッシュを倒そうとしてるかぜ?」

「ううん…王様…興味ない…」

「そうなのか?」

「うん…私…眠りたいだけ…」

「おお……」

 

どうやらとてつなくマイペースな子のようだ。

どことなく霊夢を彷彿とさせる。

 

「それで、何でここで寝てたんだぜ?」

「最初から…話す…」

 

要約するとこうだ。

植物園で見つけた時、私がパートナーと判断した。

というのも、本はパートナーになる人間のことを見つける役割を持つらしい。

最悪何ヵ月も会えない子もいるらしいが、生き残る限り必ず巡り合うようになっているらしい。

私を見つけた時に、本が光ったことから、パートナーとの判断をしたようだ。

それから私を尾けて、家を特定。

しかし清麿とガッシュを警戒し、私に近づけなく、一人のタイミングを見計らって、家に侵入。

話そうと思ったら寝ていて、起きたら話そうと考え、今に至る。

 

「別にガッシュも清麿も魔物だからってすぐに攻撃仕掛ける程好戦的じゃないぜ…」

「そうなの…?…話したことないから…分かんない…」

「確かに…まぁ戦う気ないなら別にいいぜ。」

「うん…それで…このお家にいさせてほしい…」

「うーん私に聞かれても…花さんに聞くしか…」

「ん…じゃあ…聞く…」

「いや悪いけど、今花さんは出掛けてるぜ。」

「…じゃあ…待つ…」

「お、おう…」

(マイペース過ぎるぜ…会話が続かない…)

 

説明とかなら必要な会話だから話せるが、世間話は無理そうだ。

 

「……そういえば…『パペルト』ってどんな術なんだぜ?」

「…分かんない…けど…私の術だから攻撃呪文じゃない…と思う…」

「むぅ…」

 

と話していると、清麿とガッシュが帰って来たらしい。

ガッシュは一緒に学校に行ったわけではない(たまに行く)ので、偶然その辺で会ったのだろう。

 

「ちょっと二人に説明してくるぜ。」

「うん…」

 

―――――

 

「それで、この子を家に置いといてほしいんだぜ。」

「ウヌ!私からも頼むのだ!」

「俺はいいけど…お袋は…」

 

何やら少し考えているようだ。

そして苦笑いしながら言った。

 

「…お袋は歓迎すると思うな…」

「母上殿ならきっと許してくれるのだ!」

「ならよかったぜ…しかし…」

(別の世界から来た私に、パートナーが現れるなんて、おかしいと思うけどな…まぁ、常識なんて考えるだけ無駄だな。)

「…どうした?」

「何でもないぜ。そういえば名前聞いてなかったな。」

「……アミュ……私の名前…」

「おう!よろしくな!」

「俺は高嶺清麿。こっちは…」

「ガッシュ・ベルなのだ!」

「私は霧雨魔理沙だぜ。」

「……雷の…ベル…?」

「ウヌ?」

「お前、ガッシュの魔界の頃のこと知ってるのか!?」

「ううん…何で…?」

「ガッシュは記憶喪失なんだぜ。」

「ウヌゥ、魔界のことは覚えてないのだ…」

「…そっか…うん…ガッシュは…虐められてたことしか…知らない…」

「そ、そうか…」

「ウヌゥ…私は虐められてたのか…」

「うん…でも…ベルの名前は…」

「魔界だと有名な名前なのか?」

「……ううん…でも…知ってる人は…知ってる…でも…記憶がないなら…聞かない方が…いいと思う…」

「どういうことだ?」

「…きっと…私から話していいことじゃ…ない…」

「そんなに重要なことなのか?」

「うん…でも…いつか…分かる…」

「そうか…」

「…なら…気長に考えればいいぜ!その名前がどんな意味だったとしても、名前なんて関係無いんだからな!」

「ああ!どんな意味があろうとガッシュはガッシュだ!記憶は取り戻したいが、不安を感じる必要はない!」

「ウヌ!」

「うん…」

 

私達はそう結論付け、この話しを区切った。

そしてその日高嶺家に、新たな住民が住むことになった。

 




ということでコルル回に絡ませたいがため、ここで出しました。呪文は『パペルト』、アニメ限定シナリオの
魔鏡編の魔物の使用術です。第二も同じく魔鏡編より。
第三からはオリジナルにします。まぁイメージ的な問題で呪文はそうなりました。魔理沙の相棒=霊夢=ぐーたら
というイメージから、アミュちゃんのコンセプトは、常に眠そう、無気力、面倒くさがり、時に積極的、となっています。ちなみに姿は菖蒲色の髪の小さい霊夢のイメージです。最後に名前がどこから来たかですが、菖蒲色を検索すると、赤のような紫のような色とのことから、
赤のあ、紫のむ、よりあむ=アミュという変換が行われました。ちなみに色も霊夢のイメージ繋がりです。
オリキャラだから結構考えました。名前適当とか考えた人は一度名前を考えることをしてみて下さい。苦労が分かりますので。絵は書けないので頭の中で補填して下さい。長文になりましたが読んで下さりありがとうございます。ではまた。


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Level.6

先日アミュと出会ってから、術の検証をすることにした。

それについて分かったことを纏めよう。

1.呪文を対象に向け発動することで、人形の動きと同じ動きをさせられる。

2.効力は術を発動し続ける限り無限。

3.心の力というものの消費は継続。

4.人形を持たない状態での術の発動は出来ない。

 

「正直戦闘向けではないのぜ…」

「いや…術を唱えてから本を直接狙えば、戦わずに本を奪うことが出来る。」

「心の力ってのは結局なんなんだろうな?」

「さぁ……でもあの植物の魔物のパートナーが言う限りでは、術を使うためのエネルギーらしい。」

「電気とかと同じ?」

「ああ。おそらく継続して発動させると、長時間は続かないだろう。」

「…ガッシュの戦いの手伝いとかは無理そうだな。」

「大丈夫なのだ!アミュは私が守るのだ!」

「ガッシュもそう言ってるし、戦闘は任せてくれ。」

「私達も出来ることはするぜ。な?アミュ!」

「まぁ…いいよ…」

 

それから心の力についてを少し話していたら、花さんが夕飯に呼んでいたので、話を切り上げて夕食をとることにした。

アミュについては大喜びで受け入れ、私と同じ客間に泊めてもらうことになった。

特にやらなきゃいけないこともないので、すぐに眠ることにした。

夕食時、テレビを見ていた清麿の顔が少し険しくなったことに、その時の私は気付いてなかった。

 

―――――

 

「珍しいな。ガッシュと公園行くなんて。」

「ああ…少し気になることがあってな…」

「そーか…アミュ一人にも出来ないし、私は家にいるけど、魔物が出たら呼んでくれよ?」

「ああ。」

 

事前に話した呼び方は、『ザケル』を上に放つものだった。(アミュとガッシュは早めに寝てた)

あまり遠くだと音も視認も出来ないが、モチノキ町内なら問題ないだろう。

 

(二人は公園…花さんは出かけ、アミュは寝てる。)

「暇だぁ……」

 

清麿の父親の本を読むにも難しすぎて分からない。

魔術書類もない。

魔法の研究も八卦炉使用のもののみ。

それも危険なためにあまりすることもない。

アミュが寝てるために術の詳しい詮索も出来ない。

 

「私も寝るかな…」

 

昼寝をすることにした。

 

―――――

 

「………zzz」

 

五分後…

 

「………zzz」

 

十分後…

 

「……zzz…!?」

 

布団から転がり過ぎて壁にぶつかった。

 

「……痛いぜ…」

 

私は頭を抑えながら、時間を確認した。

十二時程の時間だった。

アミュの寝てる場所を見ると、アミュはいなくなっていた。

不意に入り口の襖を見ると、アミュが立っていた。

 

「起きてたのぜ……」

「魔理沙…早く……」

「?どうしたんだぜ?」

「ガッシュが…魔物と戦ってる……」

「!?何で分かるのぜ!?」

「……後で…」

「そうだぜ…!どこかも分かるか!?」

「公園……」

 

何故アミュが分かるのかは私には分からない。

しかしパートナーを信じないわけにもいかない!

すぐさま私は帽子を被り、八卦炉を持って家を出た。

少し訂正、アミュをおぶって公園に向かった。

 

―――――

 

公園に着いた私達が最初に見たのは、紫色の爪が、ガッシュの肩を貫くところだった。

 

「ガッ…」

「お主しおりちゃんだな!?コルルのおねーちゃんのしおりちゃんだな!?私はガッシュ・ベル!コルルの友達だ!もう攻撃はしない!お前も攻撃をやめるのだ!」

 

私が叫ぼうとするのを遮り、ガッシュは相手の本の持ち主に向かって叫んだ。

相手の本の持ち主は、謝り続け、魔物の子を助けてほしいと叫んだ。

本の持ち主の静止を無視し、魔物の子はガッシュを地面に叩き付ける。

 

「アミュ!」

「うん……!」

「『パペルト』!」

「!」

 

コルルと呼ばれた魔物の子は、術の聞こえたこちらを睨んだ。

そしてガッシュに振り下ろされようとした爪は、ガッシュを貫くこともなく、下ろされることもなかった。

 

「…間に合ったぜ……?」

「!?……!?」

 

アミュが人形を上に上げたことで、ガッシュを庇おうとした女性に爪がかかることはなかった。

 

「はあ……危なかったー…」

「魔理沙…アミュも…どうしてここに…いや、後にしよう。今は…」

 

清麿はコルルとしおりの方を見た。

二人は泣きながら抱き合い、しおりがコルルに向かって優しく囁いていた。

 

―――――

 

「!あれ…ここは…?……ガッシュ…なぜここに…?あなたは…?」

 

コルルは辺りを見渡して、自分が何をしたのかを理解したようだ。

壊れたトラックや、ぼろぼろの公園を見て、自分がやったことを問いていた。

それから彼女は本を、燃やすことを願った。

この本を持つ限り、また戦いは起こる。

もし同じことが起きてしまったら、この子は耐えられないだろう。

耐えかねたコルルが、清麿の方を見た時、アミュが言葉を発した。

 

「燃やして……」

「!な…何を言うのだ!?私には…」

「ガッシュは…耐えられる…?この子と同じこと……自分の大切な人を……自分で傷付けること……」

「し…しかし…」

「……分かって……この子の覚悟……無駄にしないで……」

「うぅ……ウヌゥ…き…清麿……」

「……『ザケル』」

 

彼女の本は燃えた。

これで彼女が他人を傷付けることはなくなった。

アミュは涙を堪え、それ以外は皆泣いていた。

私は帽子で顔を隠した。

女性とのお別れをし、彼女はガッシュに向き直った。

 

「魔界にやさしい王様がいてくれたら…こんな…つらい戦いは、しなくてよかったのかな…?」

「う…ウヌ、ウヌ、そのとおりだ!コルル、そのとおりだぞ!」

 

彼女は再びアミュに顔を向ける。

 

「ありがとう。ガッシュを説得してくれて…」

「ううん……元気でね……」

「うん!」

 

彼女の本は燃え尽きた。

それと同時に、彼女も魔界へと帰った。

 

「…清麿…私は……やさしい王様になる…!」

「ああ…!」

 




読み返してて泣きそうになった。涙腺脆くて困る。ガッシュはそういうところ多いから原作は読むべきです。


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level.7

兄共々apexにはまってしまった…更新一週間は空けないようにするので見放さないで下さい!


コルルが魔界に帰ってから一日が過ぎた。

友達が魔界に帰ったガッシュは、朝になってもそれを引きずっていた。

私も清麿もアミュも、接した時間は僅かなもの。

だからこそ切り替えることが出来た。

しかしガッシュには、そう簡単に立ち直れることではなかった。

ガッシュが会った魔物に、コルルのような優しい魔物はいなかった。

パートナーや周りの人間を思う魔物は始めてだ。

それに(アミュもだが)ガッシュはまだ子供だ。

私もアミュも、ガッシュを元気にするために、どうすればいいか悩んでいた。

そんな中、清麿が本を持って慌てていた。

 

「清麿どうしたんだぜ?」

「本……?」

「ガッシュ!見ろ!新しい呪文が…第三の術が現れたぞ!」

「おお!凄いぜガッシュ!これで……」

「清麿…私は…私はその呪文で少しは強くなるかの…?」

『!』

「私は…王になりたいとも…王になれるとも思ってない…だが、コルルが泣いてる時…コルルが消えてゆくとき…とても悔しかったのだ…」

「ガッシュ…」

「私が…小さすぎて…何もできぬ私がちっぽけすぎて…とても悔しかったのだ…」

「……大丈夫……」

「アミュ…?」

「ガッシュは……強くなれるよ……」

「…ああ!強くなれるさ!」

「そうだぜ!ガッシュなら、きっと優しい王様になれるぜ!」

「…ウヌ!清麿!特訓に行こう!私は…強くなりたい!」

「ああ!第三の術を試そう!」

「頑張れよ!私は花さんの手伝いしてるぜ。」

「ウヌ!行ってくるのだ!」

「行って…らっしゃい……」

 

二人が出て行くのを見届け、私は花さんのところへ向かった。

 

―――――

 

私は花さんの頼みで、以前のデパートに向かっていた。

花さんから買い物を頼まれたのだ。

そこにまさかの、アミュも付いて来ていた。

 

「アミュが付いて来るとは思わなかったぜ。」

「…魔物の中には……魔力を…探知出来る……子もいるの……」

「心配だから来てくれたのぜ?」

「……暇だった…から…」

「!……そうか!」

「…?」

「何でも。」

 

それから二人で他愛もない会話をしていると、不意に後ろから叫び声が聞こえた。

 

「『ウイガル』!」

「!うぉっ!」

 

私はアミュを抱えて飛び退いた。

 

「ハッハー!いたぜ!本の持ち主だ!」

「あいつら…こんな街中で…」

「さあ、大人しく本を焼かせて!王になるのは私なの!」

「こんなとこで暴れる奴…王になんてさせるか!」

「暴れる場所なんてどうでもいいのよ!王ってのはね!何をしても許される!どんな奴だって、ムカついたら叩きのめせるんだ!強ぇ奴も弱ぇ奴も、私の気分次第!」

「…この…!」

「…許せない…!」

「アミュ!移動するぜ!人がいないところへ!」

「逃がすかよ!『ウイガル』!」

「絶対に倒してやる!」

 

アミュを抱えて再び飛び退き、私は一直線に走り出した。

ここから見える廃屋に向かって。

私達を追う奴らは、倒れた人達を蹴り、どかしながら追って来る。

 

―――――

 

(よし!誰もいないな…)

「アミュ、迎え撃つぞ!」

「うん……!」

(しかし…術一つでどうすれば…)

「大丈夫…」

「アミュ?」

「…使い方…」

(!そうだぜ…どんなに弱くても、上手い使い方が出来れば…)

「こんなとこに逃げ込みやがったか!?どこに行こうが、死ぬのは同じだぜ!」

(アミュの術で魔物を拘束した直後…奴が油断したとこで、本を直接燃やす…)

 

私は八卦炉を取り出し、本を構えた。

 

「やっとやる気になったか!?だが無駄だな!『ウルク』!」

「!」

 

魔物の姿が消えたと思った直後、すぐ横に現れた。

 

「『ウイガル』!」

「うあああ!」

「魔理沙…!」

「ハッ!人間の方はもうダウンかよ!?」

「魔理沙……」

「うう…」

「女は弱ぇな!簡単に終わる!さあ、本を貰おうか!」

 

男はこちらに歩いてくる。

私は攻撃をもろにくらい、動けない。

 

(わけないぜ!)

「『パペルト』!」

「なっ!?」

「ん……!」

「か、体が…動かな…!?」

「はああ!」

 

私は構えた八卦炉で相手の本を燃やした。

制御も上手くいき、本を燃やすだけにとどめることが出来た。

私はついでに男も燃やしてもよかったが…

とにかく本を燃やした以上、勝ったのは私達だ。

 

「な…あ…フェイン…」

「この…くそ…くそがぁ!」

「大丈夫……?…魔理沙……」

「全然平気だぜ!で?お前、どうするんだぜ?」

「ひっ!」

 

男は情けない声を上げて走り去って行った。

 

「初勝利だぜー!」

「…うん…」

 

私は手を上げて喜び、アミュは分かり辛いが喜んでいた。

 

―――――

 

無事に買い物を済ませ帰宅した私は、清麿達に今日のことを話した。

やっぱり本を直接狙うしか勝ち目がないことや、八卦炉の制御。

今後のことについて、私達は話しあった。

夜も更け、眠くなった私達は、話し合いはまた今度にして眠りに就いた。

誰一人として、菖蒲色の輝きを、見ることもなかった。

 




フェインはアミュに倒させる。わりと最初から決まってました。というのも、オリ魔物を出すのは、百人の魔物の子の設定上、アミュ含め四人程が限界なんですよ。ここでそのカードを切るわけにも行かないのでまぁ…哀れフェイン…。


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level.8

霊夢編同様閑話みたいな感じで短めです。…霊夢の方は短めではないけど。ちなみに三巻の内容のほぼ全て清麿側だったため、三巻内容半略というとんでもないことになっています。友情のカレーの回はアニメの方がよかったなぁ…まそゆことで次回は三巻終わりですね。


先日私達は、初の戦闘で見事勝ち残ることが出来た。

問題は山積みだが、それでも生き残ることが出来た。

そんな私達は今日、前と同じくだらけていた。

惰眠を貪る、数日前もこんな状況だった気がする。

実は清麿が学校の行事…遠足というものに行ってしまった。

その清麿にガッシュはついていった(いいのか?)。

花さんは買い出しに行った。

暇だし一緒に行こうかとも思ったが、花さんは買い出しついでに用事もあるからと行ってしまった。

家事も花さんがやって行き、魔導書もなければ霊夢もいない。

マイペースなアミュは寝てしまった。

私も寝るかと思っても、これではまるで穀潰し。

少しでも働かなければと思った私は、一人町に繰り出した。

(アミュには書き置きした。)

 

―――――

 

町に繰り出して一時間、花さんとの散策である程度道を覚えていた私は、雇ってくれる場所でもないか探した。

覚えがある限りスタッフ(暇潰しに英語を勉強した)募集の張り紙が何ヵ所か張られていた気がする。

私は覚えのある場所を周り始めた。

 

―――――

 

『ああー…悪いね。君みたいに可愛い子こっちから頼みたいくらいなんだけど…中学生は雇えなくてね。来年か再来年にまた来てよ。』

「……ここも駄目か…やっぱり難しいのぜ…」

 

今の場所は五件目、年齢、親の許可など、色々と理由はあるけど全部断られた。

正直心折れそうだった。

諦めずにまた少し歩くことにしたけど、やはり自分一人で探すのは難しいと考え、それならいっそ分かりそうな大人に聞きに行こうかと思い、ある場所へ向かった。

 

―――――

 

「それであたしのとこに来たのかい。」

「頼れる大人って花さんかつくしのどっちかしかいないからなぁ…」

「はは、頼ってくれるのは有難いけど、それならいっそうちで雇うよ?」

「!本当か!?」

「清麿とガッシュ…それからあんたに、あたしやここの植物達は助けられたからね。それくらいなんでもないよ。」

「つくし…ありがとうだぜ!」

「それにあたしも話相手くらい欲しいしね。ただ給料は少し安いけどね。」

「こっちも暇潰せるし、植物見れるし得しかないぜ!アミュも連れて来ていいか?」

「もちろん!どうせなら二人で働きに来るといいよ。働くって言っても水やりくらいだし、アミュって子も見てみたいしね。」

「ありがとうだぜ!つくしのとこ来て正解だったぜ!」

「あれ?もう行くのかい?」

「花さんに伝えに行くぜ!こういうの言っとかないと無駄な心配かけるからな!」

「体験談みたいだね…じゃ、待ってるよ。暇な時に来な。」

「また来るぜー」

 

―――――

 

「魔理沙……なんだか……機嫌良さそう…」

「ん…まあな!それでな、アミュ……」

 

―――――

 

一方その頃の清麿

「最高のカレーを作ってやるぞ!」

『おー!』

・・・

「ちょ、待っ…!ごっふぁあ!」

まずいカレーを作ってぼこぼこにされてました。

 




魔理沙暇なとき魔法関係のことしてた、ということにしてここではやることなく暇にさせてごめんね魔理沙。次回…戦闘…出来るかなぁ…?


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level.9

「いやーしかし有難いぜ!これで暇もなくなるぜ!」

「そう……だね…」

「つくしはいい奴だのぅ。私も一緒に行ってもいいか!?」

「アミュもって言ってたし、ガッシュも一緒なら喜ぶぜ!」

「それなら俺も助かるしな。」

「ウヌ!?どういう意味なのだ!?」

「さてな。」

 

林間学校から帰ってきた二人と、皆で笑い合った。

帰る頃には既に夕方で、夕食を食べてから話したためもう八時だ。

なので寝る前に先日のことを話した。

軽い冗談(割りと本気)を清麿がガッシュに言ったり、既にアミュの意識がなかったり、数日いなかっただけだが、やはり二人がいると楽しい。

霊夢がいない分の暇が解消される。

 

「明日もつくしのとこ行くぜ!ガッシュも来るか?」

「ウヌぅ…明日は公園に行くのだ。また今度行こうぞ!」

「友達でも出来たか?」

「ヌゥ…友達と言ってよいのだろうか…?」

 

あまりはっきりと友達とは言えないらしい。

しかし悩む、ということは一緒にいて楽しいのだろう。

 

(魔理沙がガッシュの相手してくれりゃ、学校に勝手に来ることもねぇだろ。)

「なんか企んでるか?」

「別に何も。」

 

少し苦笑いの清麿に聞くが、特に何でもないらしい。

その日は時間も時間ということで眠りについた。

 

―――――

 

「行ってくるのだ。」

「私達も行くか。」

「うん…」

 

既に学校に行った清麿を除き、私達三人は同時に家を出た。

ガッシュは公園へ、私達は植物園へ。

それぞれの方向へ向かう。

 

―――――

 

「にょきまろ……」

「……」

「…子供だし、名前のセンスなんて気にしない気にしない。二人も何か育ててみたら?」

「うーん私はやめとくぜ。ちょっと変に育つだろうし…」

「私も……いい…面倒…」

「女の子らしくないねぇ。」

 

女の子が皆花を愛でるなんて思わないでほしい。

幻想郷で下手に育てて失敗したら……

 

『よくも枯らしてくれたわね。』

 

とか言いながら、想像を絶する拷問を優香から受けるに違いない。

まあと言いつつも成長薬とかは作ったり実験したりちょっと…

関与してないから見逃してくれることを祈るぜ。

 

「まあある意味植物育ててるしさ。」

「仕事だぞ~?」

「分かってるぜ!どこに水やればいい?」

「そっちのはまだだね。あとそっちと……」

 

指示通りに水やりをしていく。

アミュは魔物(スギナ)の術で発生した根で寝ており、手伝う気はないようだ。

というわけでも実はなく、『パペルト』による根の操作で、根を移動していた。

新しく分かったことだが、『パペルト』は対象の変更を任意で行うことが出来る。

つまり対象の根をどかして次の根を、ということが出来る。

心の力の関係上時間はかかるが、専門の人に刈り尽くされるよりはいいだろう。

 

「そういえば…」

 

私は本のページを捲る。

そこには『パペルト』ではなく、第二の術『パペルク』が記されている。

 

「やっぱり…新しい術が増えてるぜ。」

「……新しい…術…?」

「さっき気付いたんだ。読んでる時に違和感があってさ。開かなきゃいけない…みたいな洗脳感があって…」

「何か…」

「…危なそう…」

 

そういうのではない。

開かなきゃいけない、というのも恐らく本の巡り合わせのようなものだろう。

とにかく、新しい術を手に入れていたのだ。

私が好奇心に駆られていると、不意にアミュが何かに気付いたような反応をした。

 

「……!」

「ん?どうかしたか?アミュ?」

「魔物……」

「何!?どこだぜ!?」

「ううん……ここじゃない…ガッシュが……戦ってる…」

「ガッシュが!?」

 

アミュが以前初戦闘の時、魔力を感じられる魔物がいると言っていたが、アミュは自分の知る質の力なら、感じ取ることが出来るらしい。

今はガッシュが術を使っていることを感じたらしい。

 

「どこだぜ!?」

「あっち…」

 

私達はアミュの案内でガッシュの元へ向かった。

ちなみにつくしには魔物のことを軽く話している。

ガッシュが戦っているともなれば、留めることなく見送ってくれる。

明日またここに来よう。

 

―――――

 

「どっちだぜ?」

「こっち…」

 

徐々に近付いているようだ。

アミュも正確な位置を捉えている。

 

―――――

 

私達が着いた時には、今まさに、敵の最大呪文が発動したところだった。

 

「『グランバイソン』!」

 

岩で出来た巨大な蛇が、ガッシュと清麿を襲うところだったのだ。

 

 




アミュの索敵能力
見知った魔力のみにアンテナを張っている。
それにより範囲を広げており、半径50kmの範囲にいる限り把握することが可能。
ということでアミュの索敵能力はそんなに高くはないです。しかしガッシュにのみアンテナ(張っているので、今だけなら70kmまで可能。おおよそゴームという魔物と同程度の索敵範囲になっています。
次回呪文の設定ちょっと弄ってるけど気にしないで下さい。


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level.10

一月?空いてすみませんでした。あまり知り合いにばれたくなくて、ばれないよう書くために誰もいない時にしか編集出来ないんですよ…原作読みながらですし。ずっと同じ部屋で動画見てる兄がいたんですよね!学校から帰ってきたら絶対いるんですよ…寝室同じだから。自分の部屋がほしいです。遅れて本当にごめんなさい。他小説より手間がかかるのでお許し下さい。


「『グランバイソン』!」

「ぬおおぉぉ!」

「ガッシュ!清麿!」

 

おそらく敵の術と思われる蛇と、ガッシュのザケルがぶつかった。

清麿はもう一度ザケルを撃とうとするが、その手に本はなく、少し離れたところに落ちていた。

そしてその前に、一人の男性が立ちはだかる。

本を奪いあうこの戦いにおいて、それは敗北が確定したということだ。

しかしその男性は、本を燃やすどころか、自分の本を清麿に差し出した。

 

「どういうことだぜ?」

「…分かんない…」

 

遠くて会話が聞こえないため、話しかけに近寄った。

すると男性は、自身のパートナーに説教をしていた。

 

「ん?二人とも何でここに…」

「アミュが二人が戦ってるのに気付いて…じゃなくて!そっちこそ何してるんだぜ?」

「君は…?」

 

魔物に説教をする男性は、こちらを訝しんだ目で見ている。

本を抱えているから当然だろう。

 

「この二人は…」

「友達なのだ!」

「友達…?」

「うぬ!」

「……」

 

友達という言葉に何か感じたのか、何かを悟った表情をしていた。

 

「進一殿?」

「…ありがとう…僕は…やっと…」

 

何を感謝してるのか私には分からない。

しかしガッシュも清麿も分かっているようだし、余計なことは言うまい。

その後魔物(エシュロス)の本を燃やし、改めて話したいと、清麿と後日会う約束をしていた。

私は行かなかったが、帰ってきた二人を見ると、悪くはなかったのだろう。

 

―――――

 

エシュロスとの戦いから二日、疲れからか清麿が熱を出した。

思えば二人共、ここしばらく戦い続けていた。

魔物は百しかいないというのに、既に四人。(レイコム、フェイン除く)

内一人には病院送り…疲労は相当なものだろう。

清麿が寝る間に、ガッシュは魚を採りに出掛けた。

病人に魚はどうなのだろう。

花さんも出掛けたため看病は私とアミュが二人でしている。

とはいえやることはない。

清麿は寝ているから暇だ。

出掛けることも出来ない。

アミュは寝てしまった。

 

「……暇だな。」

 

私が退屈な時間を過ごしていると、インターホンが鳴った。

 

「誰だぜ?」

 

私が玄関を開けると、金髪の長身の男と、これまた似た黄色の髪の子供。

その手には黄色い本を携えていた。

間違いなく魔物と本の持ち主だ。

 

「………」

「あれ?ここガッシュの家じゃ…」

「うーんキャンチョメ、どうやら家を間違えたのかもしれないな。」

「何だぜお前ら…」

「私が誰かって?イタリアの俳優、パルコ・フォルゴレさ!お見知りおきを。お嬢さん。」

 

キザったらしい気持ち悪い口調。

まぁ敵とはいえ戦わずに済むなら放っておけば…

 

「時にお嬢さん、ガッシュという子供を知ってはいませんか?」

「知らないぜ。」

 

しらを切ろう。

戦闘になったら面倒くさいタイプ…待った。

これは暇潰しになるのでは?

それにガッシュの戦闘が多い理由も分かるかもしれない。

…どう見ても弱そうだし。

ちょっと試すのもいいかもしれない。

 

「少し待っててほしいぜ。」

「おお!キャンチョメ、ガッシュのことが聞けるかもしれないぞ!」

「うん!ガッシュにだったら…」

 

ガッシュにだったら?

とにかく私はアミュを起こしに行った。

試すというのはとても分かりやすいやり方だ。

 

「『パペルト』!」

「!?体が…!?」

「フォルゴレー!」

「!その本は!?」

「魔物!?」

 

やっぱり私でも勝てる。

正直『パペルト』に対処されなければ負けはない。

距離が短いとはいえ、油断している相手にかけるのは難しくない。

 

「…なぁ、いくつか聞いてもいいか?」

「ほ、本を燃やさないでくれるなら、何でも話そう!だから頼む!燃やさないでほしい!」

「いや別にそんなつもりないけど…まず何でガッシュと戦いに来たんだ?」

「ガッシュは虐められっ子だったから…ガッシュなら…ガッシュなら…」

 

成る程、弱い奴から蹴落とす考えからいくと、ガッシュは適任なのか。

ことごとく返り討ちにしているガッシュの評判は何故上がらないのだろうか。

いやまず何故ガッシュがここにいることが分かるのだ。

魔物同士知り合いだったとしても、アミュのように気配を感じることが出来る魔物は限られる。

もしくはそうゆう相手から聞いているか。

聞いた方が早い。

 

「なんでここにいるのが分かるんだ?」

「…何となく…分かるよ……」

 

答えたのはアミュだった。

曰く魔物同士は惹かれ会う運命にある。

自分の知る魔物が近くにいれば、案外分かるようだ。

それにガッシュは弱いことが周知の事実だった。

これがガッシュに向かって行く魔物が多い理由だ。

 

「アミュは特に戦いに来る奴いないよな?」

「私は…弱い…から…」

 

影が薄いだけだろう。

しかし知りたいことは知れた。

後はこの二人をどうするかだが…

 

「……」

「魔理沙……?」

「ガッシュ達と戦わせてみようぜ!」

「……魔理沙…」

 

ガッシュが弱いと思われているなら、強いと噂を流せばいい。

そうすれば魔物の数も減るだろう。

暇潰しにもなるし。

アミュは気付いている。

敢えて言わないだけだ。

そうと決まれば…

 

「…おお!体が動く!」

「清麿達には話しておくから、ガッシュと戦ってみろよ。そっちのも納得いかないだろ?」

 

ガッシュではなく私達に負けている以上、キャンチョメのガッシュへの認識は変わらない。

戦えば分かるだろう。

ガッシュはもう虐められっ子ではないと。

 

「フォルゴレ…やるよ…ガッシュを倒すんだ!」

「キャンチョメ…お嬢さん、お願いするよ。ガッシュと戦えるように…」

「話しとくから後でまた来てくれ。ああそうだ、言い忘れてたけど…ガッシュもアミュも、あんたらの本は燃やさないって約束するぜ。ガッシュも友達がほしいだろうしな。」

 

良い魔物とはあまり戦いたくない。

あの二人が良い魔物かは分からないが、悪い魔物とも思えない。

もしガッシュと友達になれるなら、『優しい王様』を目指してくれるかもしれない。

まあ結局、私の暇潰しだ☆

 

 




ちなみにですが他小説一話書くのに一、二時間。
これは三、四時間かかります。…言い訳ですごめんなさい。


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level.11

モチベは回復しました…時間はなかったけどね!まああったっちゃあった日もあったけど…ダンカグが…apexが…fgoacが……はいごめんなさい僕の怠慢でした!


暇潰しを画策して数時間。

ガッシュが帰宅、二十分程後に、薬を買いに行っていた清麿も帰宅した。

とりあえずあの二人のことを伝えて、都合の合う時に連絡するように設定した。

問題は、清麿が熱が悪化したことだ。

 

―――――

 

「大丈夫か?」

「ああ…寝てれば治る…」

「ウヌゥ…しかし…」

「何か悪いことしたな…」

「風邪じゃ仕方ないぜ。」

「(…清麿には無理させ過ぎてたのだ…)…」

「ガッシュどした?」

「ウヌ!清麿が早く元気になるために、また魚を捕ってくるのだ!待っておれ!」

「あ、おい!ガッシュ!」

 

私達の話しも聞かずに、ガッシュはどこかへ走り去ってしまった。

病人に魚はどうなのだろう。(二回目)

 

「たく…」

「はは…」

 

体力があまり残ってなかったのか、清麿は突然意識を失った。

その後二人に電話をし、少し遠くなることを謝った。

 

「悪いな。風邪なんて二三日で治るだろうし、待っててくれ。」

『元々無理な頼みだったんだ。どうってことないさ。』

「じゃな。」

『ああ。』

 

連絡を終え、私はアミュの元へ向かった。

清麿が風邪で倒れた間もずっと寝ていたのだ。

風邪のことすら知らない。

清麿を一人家に残すのもまずいだろうし、私はその日、書斎の本を読んで過ごした。

 

「あ、学校って大丈夫なのか…?」

 

失念していた。

花さんは早朝から出掛けているし、私が電話しようにも番号が分からない。

かと言って清麿を起こすのも悪いし、直接行こうにも場所が分からない。

ガッシュも出掛けて学校の場所を聞くことも出来ないし……

 

「むぅ…」

 

数分悩み、多分清麿が既に連絡済みだろうと判断し、書斎で本を読み始めた。

その後、学校から電話が来たのは言うまでもない。

 

―――――

 

時計の音だけが響く中、突然玄関が勢いよく開かれる。

正確には音がした。

足音は清麿の部屋へ一直線に向かい、扉が開く音と共にガッシュの元気な声。

案の定ガッシュだった。

しかも内容的に本当に魚を捕って来たようだ。

 

「魚…まさか生じゃないよな…?」

 

ガッシュは頭から齧り付くが、清麿にもやらせないか心配だ。

私はすぐに清麿の部屋へ向かった。

 

―――――

 

「よかったぜ、無理やり食わせてなくて。」

「うるさい……」

 

ガッシュの騒ぎ声がうるさいらしく、アミュが寝惚け眼(常)で歩いてくる。

 

「す、すまぬのだ!」

「そういえばアミュ、その二人って近所にいたりするのか?」

「……?……どうして……?」

「いや、魔物が律儀に待つなんて信じられないからだよ。コルルを除けば、そんな約束を守る奴なんて…」

「あー…多分ないと思うぞ?なんか…何だろうな…言っちゃなんだけど…落ちこぼれって自分でも言ってたし…」

「…うん……友達…簡単に……裏切らない…と…思う…」

「友達?」

 

アミュから以外な言葉が出た。

この怠惰な魔物に友達がいたのか。

まあちゃんと訂正されたが。

 

「友達…じゃ…ない……?…いじめられっ子…ガッシュと…同じ…?」

「そういえば…ガッシュに魔界の頃の記憶はないが、出会う魔物は口々に落ちこぼれって言ってたな…」

「そうなのか?」

「ウヌゥ…私に友達はいなかったみたいなのだ…」

「ガッシュ…私達は友達だから元気出せって!」

「言ったろ?友達だって。」

「……私も…友達……?」

「ウヌ…ありがとうなのだ!」

 

―――――

 

「悪かったな…清麿の熱も下がったし、明日も休日…戦うのは明日に決めよう。」

『分かった。病み上がりに無理はさせられないからな。予定は必ず空けておこう。』

「時間は…昼頃なら平気なはずだぜ。」

『よし!そうと決まれば…こちらも準備に入ろう!』

「……なあ、ガッシュは…優しい王様を目指してるんだ…もし…もし良かったら、和解出来るなら、仲間になってやってくれないか?」

『お嬢さん…ふっ…喜んで。』

 

いつ私が帰るかも分からない。

いつ敵わない敵が現れるかも分からない。

そのために…コルルの願いのために、仲間を集めるべきだ。

そのための布石を用意しつつ、その日の夜は更けていく…

 




フォルゴレは最後の方好きだった…あ、魔理沙は基本ガッシュのサポーターです。


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level.12

待たせて申し訳ありません!別小説には事情書いてたので…ここからコピペさせていただきます!
新しく買った三、四年前発売のデジモンゲームにガチめに嵌まってサボってました!しかも三作分クリアしてもまだやってます…

上記の通りサボりです!本当にごめんなさい!でも…若干ネタバレかもだけどデジモンの世界は出すつもりです。前準備と思って、多めに見て頂けると凄い有難いです!


清麿の熱が治った翌日、約束通り二人を呼び出した。

戦闘場所は河川敷。

聞けばガッシュの最初の戦闘はここだったらしい。

 

「しかし…本当に来るのか?」

「大丈夫だと思うぜ。向こうがガッシュと戦いたいって言ったんだし。」

「私はあまり戦いたくないのだ…」

 

当然ながらガッシュは戦いに積極的ではない。

この世界に来てから、ガッシュが戦って来た相手達。

その大半…というか全員がガッシュに挑んで返り討ちにあった者達。

既に五人の魔物と戦いながら、全て返り討ちにしているのだ。

あまり気が乗らないのも仕方ないだろう。

 

「おっ…」

「来たな。」

「………」

「…?あれ?フォルゴレは?」

「…女の子に会いに…」

「は?」

 

軟派野郎とは思っていたが、まさか約束を無視するとは…

 

「…清麿、来たら問答無用でザケル食らわせてやろう。」

「おう。」

「フォ、フォルゴレに酷いことしないで!」

「酷いのはどっちだ!」

「ヌゥ…待っててよいのか…?」

「…探すのか?約束破る奴わざわざ…私はもう帰りたいぜ…」

「……ガッシュの鼻なら見つけられるかもしれないしな…俺とガッシュとキャンチョメで探しに行くよ。二人はここで待っててくれ。」

「入れ違いにならないか?」

「まあそしたらアミュに頼む。魔物がいれば分かるだろ?」

「うん……もう……覚えてる…から…」

 

こうして、私達二人が待機、清麿達三人が捜索に出た。

 

―――――

 

あれから一時間、ガッシュ達より先にフォルゴレが来た。

ガッシュ達とは合流していないらしい。

 

「ハッハッハッ!待たせてすまないお嬢さん。ラガッツァやバンビーナが離してくれなくてね。繁華街を出られなかったんだ…ん?キャンチョメやガッシュ君達はどこへ?」

「…お前探しに行ったよ。」

「おっと…それは益々すまないことを…お詫びに…私の曲とダンスを披露しよう!」

「いらん!」

 

ガッシュ達を探しに行く前に、私がガチギレして土下座させたことは…伝えなくていいだろう。

 

―――――

 

「…『ザケル!』」

「ギャアアアアア!!」

 

戦闘が始まる前に、清麿の怒号に近い呪文が飛ぶのも当たり前だった。

 

「フォルゴレ~~!」

 

私達は戦闘前に離れ、観戦者として遠目に見ていた。

そういえばキャンチョメの術は一体どんななのだろうか。

そう思っていた私は、密かに新しい呪文に期待していたが、やり始めたのは呪文ではなく、歌だった。

 

「フォルゴレは無敵の戦士なんだ!行くよ!フォルゴレ!」

 

『鉄のフォルゴレ~~♪無敵フォルゴレ~~♪』

 

もはや物理法則無視並みの直立を見せ、キャンチョメのダンス(?)と同じ動きを始めるフォルゴレ。

その体は…既に黒焦げだった。

 

「『ザケル』!」

「ギャアアアアア!!」

 

容赦なしに二激目を食らわす清麿。

再び起き上がるフォルゴレ。

もはや恐怖すら感じるその行動を見ていた私は、逆にフォルゴレが可哀想に思えてきた。

 

「『ザケル』!」

「ギャアアアアア!!」

 

三度放たれる『ザケル』、食らうフォルゴレ。

虫の息とはまさにこのこと。

知らず歌うキャンチョメ。

一番の鬼畜はキャンチョメかもしれない。

 

「でもあんな『ザケル』食らって耐えるのも凄いな。」

「…うん……」

 

私なら気絶くらいはするかもしれない。

しかし耐えかねたフォルゴレは、キャンチョメの歌で立ち上がらない。

その時清麿が『可哀想になってきた』と言った。

見かねた清麿が放った『可哀想』の一言は、二人の闘志を奮い立たせた。

 

「私達をなめたことを後悔させてやる!『ポルク』!」

 

次の瞬間、キャンチョメの姿は大砲へと変わった。

 

「化ける力をなめるとはおろかだな!これで勝負はついたぜ!」

 

勝ち誇るフォルゴレだったが…様子がおかしかった。

『ザケル』に異常に怯えていたのだ。

大砲なら相殺することも打ち勝つことも出来るだろうに。

つまりあの大砲は…

 

「…幻覚の……術…」

 

「『ザケル』!」

「ギャアアアアア!!」

 

弾が出ないのだ。

術もあれ一つのようで、もはや勝ち目はないようだ。

逃がしてくれと懇願するフォルゴレを、構わないと呆れた清麿は承諾する。

しかし一人だけ、戦意を持つ子供が一人。

一人でも戦うと叫ぶキャンチョメは、自らに新たな可能性を作りだした。

 

「フォルゴレのように、強くてカッコイイ大人になるんだ!」

「………そうだな。ここで逃げてはいかんな…」

 

『鉄のフォルゴレ~~♪無敵フォルゴレ~~♪』

 

見合う二人を見ればいい話しのように見えるが…清麿の顔はやめてほしそうだった。

仕方なく『ザケル』で気絶させようとする清麿、しかしキャンチョメの成長の現れ、新しい術が発現した。

 

「勝つぞ!キャンチョメ!」

「うん!」

 

その言葉に、清麿とガッシュは構え直す。

 

「おー…新しい術か…」

「……」

 

もはや期待出来ない、アミュなどもう寝てるし…

 

「第二の術『コポルク』!」

「第二の術『ラシルド』!」

 

『ラシルド』で防ぎにいく清麿、しかしそれは空振りに終わる。

その時、二人の下から私達からは聞こえない程小さい声で、キャンチョメの声が聞こえた…ようだ。

 

「……小さくなる術か。」

 

まさか…弱くなる術があろうとは…

 

「なあ…もうやめないか…?」

 

小さくなったキャンチョメでは、清麿にただ捕まるだけでおしまいだ。

案の定服を掴まれ、猫のように持ち上げられる。

流石にフォルゴレも諦め、本を閉じ降参する。

 

―――――

 

「なんだったんだ…」

「分からん。」

「ウヌゥ…」

 

普通の戦いよりも変な意味で疲れた清麿であった。

 

 




キャンチョメとフォルゴレ名前長い。


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level.13

ffのカードゲームだけやりたくなってきた今日この頃…ff9起動する自分の指…徹ゲーだーー!


キャンチョメが帰って早数日…私は旅に出ていた。

 

「まあ山来ただけだけど。」

 

暇で暇でしょうがなかったのだ。

清麿の家にある本は清麿がいなければ読めない物ばかり。

植物園のバイトは労働基準法なるもののせいで多くて週四。

アミュはほとんどの時間を睡眠に、ガッシュは公園で子供達と遊び。

花さんは一体どこへ?

他に知り合いもいなければ、行く宛もないのだ。

いっそ私も学校に行こうかとも思うが、学費に授業、問題は山積みだ。

というわけで幻想郷の時にしていた日課の茸狩りだ!

 

「…っても…適当に来たせいで夏とはいえあんまり見つからないんだよなー…」

 

割と大きい籠と茸図鑑を…なけなしの金で買ったというのに…

 

「アミュもいないから本置いてきたし…久しぶりだから方向感覚狂いそうだしなー」

 

日が高い内に帰るとしよう。

 

―――――

 

「結構な収穫だぜ!」

 

茸や野草が籠一杯に溢れている。

流石に魔法の森のような特殊な茸や魔力に関する野草などはなかった。

しかし図鑑を見る限り美味しそうな物もいくらか見つけた。

 

「今日は茸パーティーだぜ♪」

 

その上まだ夕方にもならない時間で帰り始めることが出来た。

私は上機嫌で帰宅を始めた。

 

―――――

 

「ただいまだぜ~♪」

「おかえり……」

「お?起きてたのか。清麿達は帰ってるのか?」

「……これ……」

「?」

 

アミュが出したのは石盤のような物。

それは手紙のように何かが書いてあった。

 

―――――

 

石像の女は預かった。

ガッシュと本の持ち主は午後3時までにモチノキ港8番倉庫へ来い、来なければ女の命は無いと思え。

 

―――――

 

「―!」

 

時刻は三時半。

清麿とガッシュはもう行ったようだ。

 

「―って!呑気にしてる場合じゃないぜ!アミュ!早く行くぞ!」

「…うん……」

 

ここでガッシュが消えたら、アミュ一人で生き残るには限界がある。

それより何より…魔物の戦いに関係ない人を巻き込んだ挙げ句、命を落とすことになど絶対に駄目だ。

 

「早く加勢に行くぞ!」

 

アミュを抱えて全力疾走。

飛べればどれだけ楽なことか…

着く頃にはアミュが吐きそうになっていたのは、運動不足の成れの果てだ。

 

―――――

 

「…ここか…はぁ…」

「…まり…さ…うぅ……」

「…はぁ…本番は…ここから…だぞ…?」

 

息絶え絶えに着いた私達は―

 

「―!?アミュ!」

「……!」

 

強い衝撃に弾かれた。

そこには大きく破壊された倉庫の壁。

 

「清麿!ガッシュ!」

 

返事はない。

しかし壊れた壁から二人の姿を確認出来た。

―血塗れに棒切れを構えた清麿だ。

 

(何して…!?…)

 

清麿が何をするかは分からない。

だが、考えるよりも行動の方が早いのが…

 

「(私だぜ!)『パペルト』!」

「!……!」

 

ガッシュが清麿をおぶって走り出す。

それと同時に発動した『パペルト』は、適当を的確にとらえた。

三目の魔物は動きを制限され、清麿の鉄骨が頭に刺さるのを防げなかった。

その隙を、自他共に認める天才児が見逃すはずもない。

 

「『ザケル』!」

 

『ザケル』は刺さった鉄骨に当たり―爆発した。

 

―――――

 

「やっぱり魔理沙達だったか!助かったよ!」

「ありがとうなのだ!」

「それより清麿怪我…!」

「ああ…いや、それよりも…お前ら!早く水野を返せ!」

 

あの石盤には、清麿の友人を拐った事が書かれていた。

しかし彼らは…人質などとっていなかった。

 

「バカだね、彫刻なんて盗み撮りした写真で十分作れるよ。」

「く…てめぇ!」

「ヒヒ…間抜けめ……それより…まさか協力してる魔物がいるなんて思わなかったよ…かなりの不意を突かれた…」

「……」

 

この戦いにおいて、協力などあり得ない。

彼は暗にそう言っているのだ。

生き残るのは一人だけなのだから…

 

「…まあいい…そうだ…帰る前に面白いことを教えてやるよ…数日前、ガッシュに似た奴をヨーロッパで見かけたんだ…」

「何!?」

 

詳細を聞く間もなく、奴は魔界へ帰って行った。

 

「ガッシュに似た奴…?」

「……」



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level.14

エルデとapexとカービィが誘惑してくる…エルデに至っては二週目なのに飽きない…編集遅くてすみません。


ガッシュに似た奴…三目の魔物はそう言った。

もしかしたらガッシュの家族かもしれない。

赤の他人でも、全くの無関係とも言えなかろう。

ガッシュを保護した清麿の父なら何か知っているかもしれない。

そう思い清麿が連絡した頃には一月帰らないと留守電があった。

肝心な時に居ないと清麿を怒っていた。

どうやら学校でテストもあるようだし、調査は一月後に再開だ。

 

―――――

 

「暇だぜー…」

 

いつも通りアミュは眠り、ガッシュは公園、清麿は学校、そして私はやることなし。

この世界に来てから暇な時間が多くなった。

それも仕方ないのだが…

何せ魔法は存在しないとされていて、茸も季節的にたくさん採れるものでもない。

近くの山など録に広くもないし、植物園も頻繁に行けない。

 

「ああー…」

 

私は暇過ぎて眠りについた。

 

―――――

 

起きる頃には夕方であり、花さんも清麿も帰っていた。

 

「おはよう。また暇だったのか?」

「暇だったぜー」

「ガッシュはまだ帰らないのか?」

「寝てたから知らないぜー」

「……」

 

『ただいまー』

 

丁度ガッシュが帰ったようだ。

 

「おう、遅かったな。」

「何してたんだ?」

「いつもと同じだ!楽しく遊んでたぞよ!」

 

ガッシュはいつも楽しそうで少し羨ましい。

 

―――――

 

それから数日…清麿のテストが始まった。

以前返された歴史のテストが、理不尽に点を悪くされていたようで、今日は少し変に気合いが入っていた。

様子がおかしくて心配したが…まあちょっとした高揚だろう。

 

「しかし学校楽しそうだなー」

「……行きたいの……?」

「うーん…そりゃまあ…気にはなるけど…勉強するとこだしさ…そもそも色々知らない私が行く場所でもないしなー」

「…そう…」

 

実際気にはなる。

学校に通う清麿の顔は、いつも楽しそうで、友達もいるみたいだし、勉強するだけでなく、同年代の人との関わりを持つ場所でもあるようだし…

 

「でも私の行く意味ないよなー」

 

この世界の人間でない私が、通う場所でもないのだ。

 

―――――

 

昼頃…昼飯を食べていると、不意に本が光った。

私が知る限り本が光るのは…新呪文。

 

「どこだ!?」

「……魔理沙……違う…」

「え?」

 

アミュがページを捲っていく。

かなり後ろの方のページ、そこに書いてあったのは…

 

「70名……」

「もう……30人も…帰った…んだ……」

 

残りの魔物の数が70名となったという通達。

 

「…あれ?アミュ…ガッシュって何体の魔物と戦って来た?」

「……五体…?」

「私達が六…まさか五分の一が私達なんて…この町魔物来すぎじゃないか?」

「…そうかも……」

 

その偉業に、気付いたのはその二人だけだった。

 

―――――

 

「行って来まーす。」

「おー」

「行って……らっしゃい…」

 

今日は清麿は友達と出掛けるらしい。

アイドルのコンサートらしい。

正直よく分からなかったが、聞けばプリズムリバーの歌のようなものらしい。

私も聞きたかった…という程でもないが。

ガッシュはどうしても行きたかったのか、ばれないようカバンに入って付いて行った。

あのカバンも便利なものだ。

学校にもあれで付いて行くし。

 

「私は植物園行くぜー」

「…うん…」

 

今日は暇じゃないぜ。

私は意気揚々と植物園へ向かった。

 

―――――

 

魔理沙が植物園に向かって一時間程。

魔物の呪文の気配を感じて目が覚めた。

ガッシュのいる方向。

ガッシュが危ない。

距離の感覚からして植物園から直行出来る。

植物園まで十分、魔理沙に担いでもらって十分。

 

「……魔理沙…!」

 

早く魔理沙の所へ行かなければ…

 

その後吐きそうなアミュを見た魔理沙は、話を聞くのに五分かけた。

 

 

 




細かい町の配置はゲームのマップ参考なので、距離とかは適当です。アミュはとことん運動出来ない設定にしたいので、アミュの十分は常人の五分です。あとアミュは喋りは遅いけど頭の中は普通に思考しています。マイペースだけど喋りが遅いだけです。アミュだけ色々設定考えてるので作品終わったら書くかな~


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level.15

今更だけどlevel.9,10で思い切りミスってたの気付きましたwなんか清麿二回熱出してたw10の方で熱悪化したってことにしときましたんでお許しください


「あそこか!?」

「………(こくこく)」

「よし!」

 

もはや喋ることさえ出来ないアミュを抱え、大きい建物にたどり着く。

円形の巨大な建物…幻想郷だと紅魔館や地霊殿程だろう。

 

「どっちだ!?」

「……」

 

左の方を指差すアミュ。

もはやここまで運動出来ないのは生活に支障を来すのではないか。

ちなみに十分走って五分休み、担がれてこれである。

十五分程は動いてもいないのだが…とにかく魔力の発動場所には着いたようだ。

 

『ガロン!』

 

『セウシル!』

 

丁度始めたところのようだ。

しかしガッシュと清麿の声は聞こえない。

 

「別の魔物同士が戦ってるのか?」

「…はぁ……うん…ガッシュ……清麿…呼びに行った…みたい……」

 

普段と違い息が途切れ途切れだ。

しかしガッシュは一時離脱とはいえ、すぐに戻るだろう。

なら私は、ガッシュ達が来るまで待つ方が…

 

 

「…魔理沙…」

「アミュ?」

「ガッシュは……女の子の方……守ってた…このままじゃ…倒される…」

「!」

 

途切れ途切れで分かり辛いが、つまりはガッシュは守るために戦っていたのだ。

そして今は一対一…ガッシュが守っていた子に勝ち目はない。

そういうことだ。

アミュの言葉は切れていることが多いから、頭の体操になる。

 

「なんて考えてる場合じゃないな。」

 

アミュを抱えて入り口へ。

気付かれない内に近づいていく。

 

『ガンズ・ガロン!』

 

『マ・セシルド!』

 

何発も打たれる鉄球、防ぐ盾、その背後から近づく私達。

 

「『パペルト』!」

「!?なんだこれは…!?体が…」

「やっぱり私達の本領は不意討ちだな…情けないけど。」

「いいよ……別に…」

「今だぜ!攻撃だ!」

「…恵!」

「ええ。『サイス』!」

 

ブーメランのような塊が、私達の止めた魔物に直撃する。

しかし全くの無傷…攻撃にすらなっていないようだ。

 

「そんな攻撃が効くかぁ!」

 

魔物は『パペルト』をも弾き、攻撃を再開する。

やはり強力な魔物に拘束力は低いようだ。

 

「この…!雑魚は雑魚らしくとっととくたばりやがれぇ!」

「『エイジャス・ガロン』!」

 

鎖に繋がれた鉄球、あの類いは本人を拘束しても無駄だろう。

なればこそ…実践の時!

 

「『パペルク』!」

 

第二の術『パペルク』は、アミュのぬいぐるみを巨大化、動かす術。

練習で一度使った時にはそれしか分からなかった。

しかし少なくとも、そのパンチ一発は岩を砕く威力をしている。

つまり強化されているのだ。

人形を投げ、少女の方で発動すれば…

 

「!?」

「人形の壁の出来上がりってな。」

 

そして岩を砕くパンチということは…

 

「……!」

「な…!?俺の術を…!」

 

地面を殴れば当然崩れる。

地面伝いのこの術は、その瞬間に効力を失う。

そしてぬいぐるみは、そのまま即戦力として戦える。

 

「いけいけー!」

「くそ!レンブラント!もっと攻撃だぁ!」

「『ガンズ・ガロン』!」

 

所詮はぬいぐるみと侮るなかれ。

強化された拳は岩をも砕く。

それなら体はどうだろうか?

答えは簡単。

 

「並みの魔物より硬いぜ!」

「……魔理沙…でも私達…」

「…逃げるぜ!」

「この…逃がすかぁ!」

「『ガロン』!」

 

ぬいぐるみがなければ私達は丸腰。

迫り来る敵の術。

およそあれを防ぐ術はない。

一人ならやられただろう。

 

「『セウシル』!」

「!?この…協力したところで…てめぇらは戦うんだぞ!?何故邪魔しやがる!」

「ガッシュが守ってた…理由はそれだけだぜ!」

「…王様に…興味もないもん……」

 

ガッシュが守っていたということは、彼女は優しい魔物だということ。

ならば最後まで協力すれば、誰かが優しい王様になる可能性は高くなる。

 

「雑魚は雑魚らしくくたばれって?その雑魚に追い詰められる気分はどうだぜ?」

「ふざけるな!雑魚が徒党を組もうが、俺が負けるはずがねぇだろ!」

「『ガンズ・ガロン』!」

 

両手を広げ、鉄球を私達両方に打ち出す。

数は少なくなったが、威力は変わらず。

少女達は術で防ぐ。

私達は…伊達に弾幕ごっこばっかしてたわけじゃない。

 

「あっはっは!霊夢より遅いな!」

「魔…理沙……ちょっと…止まっ…」

 

アミュには申し訳ない。

しかし時間稼ぎは十分だ。

 

「『ザケル』!」

「よっと…」

 

真横を敵と雷が通過する。

 

「遅いぜー」

「待たせたのだ…!」

「うわっ!ガッシュ大丈夫か?」

「魔理沙達も来てたのか。」

 

ガッシュと清麿が姿を現した。

 



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level.16

バイト重なり体調崩し、ゲームも出来ず寝続けて、やっと更新出来る暇と体調になりました!もっと更新早くしなきゃ…


二人が合流し、三対一の構図になる。

もしここに来たのがガッシュでなければ、撤退の選択肢が奴にはあったのだろう。

相手を嘗めているから、そういう妥当な判断も出来なくなるのだ。

そしてそれは、こちらにとっての大きなチャンスになる。

 

「『ザケル』!」

「ぐがあぁあああ!」

 

電撃が壁ごと敵を吹き飛ばす。

 

「さてと…ちゃっちゃか終わらして、早くライブ再開だぜ。」

「そうだな。ガッシュ!」

「当然なのだ!」

「………」

「ああ…ちょっとアミュ動けなそう。」

「…分かった。とはいえ…ザケルを二発まともに受けて、まだ平気そうだ。」

「…頑丈だな…ザケルの溜め撃ちって出来るのか?」

「分からん。が、もうそれしかない。ガッシュ。至近距離で全エネルギーをぶち込む。呪文のサポートはないと思ってくれ。」

「ウヌ!」

「よし!お前なら出来る!奴の攻撃でお前によけられないものはない!奴に組み付くつもりで突っ込めぇ!」

「オオオ!」

 

ガッシュの猛ダッシュが始まる。

鉄球、鉄柱、鎖まで…全てをかはして突撃する。

流石に手負いなためにかすりはしたが、ほとんどは回避しきっている。

そしてそれは、敵を怒らせた。

私達も言われた。

いつかは敵になると。

助ける意味などないと。

何故揃って邪魔をするのかと。

しかしガッシュから出た言葉は、そんな先のことなど関係なかった。

 

「かわいそうだったではないか!」

 

彼女は泣いていた。

コンサートを壊さないでくれと、涙しながら訴えた。

あざ笑って攻撃をした、お前を許さないと。

ガッシュの叫びは、涙する少女の心も動かした。

 

「クソ生意気な落ちこぼれがぁ!この技でくたばりやがれ!」

「『ギガノ・ガランズ』!」

「!?奴め!まだあんな技を!?」

「『マ・セシルド』!」

「な…な…このクソ女がぁあ!」

「やらせると思うか?」

 

殴打を繰り出す敵。

掴むガッシュ。

次の瞬間には、ザケルで焦げる敵の姿が。

 

「ふざけるなーー!なんで俺様がガッシュごときに倒されなければならん!」

 

やはり頑丈な魔物だ。

そんな相手を、私達が黙って見ているわけがない。

 

「『パペルク』。」

「…やっちゃえ……」

 

再度攻撃を繰り出される前に、聳え立つ人形の殴打が、魔物の顔面に決まる。

 

「落ちこぼれとか格下とか…そう言ってるから負けるんだぜ。窮鼠猫を噛むってな☆」

「……魔理沙……それじゃ…格下って…認めてるよ…」

「…確かに。まいいや。さ、本だしな。」

「っ…!」

「ありゃ…逃げた…」

「仕方ない。ガッシュ…『ザケル』!」

「ぐあぁあ!」

 

弱いとは言え電撃。

逃げようとした魔物のパートナーは気絶した。

悪人には丁度いい罰だな。

 

「終わったな。」

「ああ。さてと…」

 

清麿は少女とパートナーに振り替える。

…何か身構えているから、何考えてるか分かりやすい。

恐らく襲われると思ってるんだろうな。

そんなの気にせずに、清麿はコンサートに戻るようにと、ガッシュはお礼を、それぞれ言って去ろうとする。

それを少女が呼び止める。

何故敵に背を向ける。

ガッシュの答えは、いい奴だから戦いたくない。

王になれるのは一人だけというルールが、『仲間』という関係を失わせている。

しかしガッシュはそんなことどうでもいいのだ。

コルルのために、『優しい王様』を目指すために。

自分の信念を曲げないために。

 

―――――

 

女性…大海 恵はコンサートへ、少女…ティオは裏へ、それぞれ戻った。

清麿とガッシュは席へ。

私達はというと…舞台裏から見せてもらえることになった。

流石に席を他人から譲ってもらうのも無理だしな。

コンサートは…正直あんまり分からなかったぜ。

 




魔理沙にコンサートは分からない。ていうより別格の楽団いるし仕方ないって感じです。アミュは寝ました。


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level.17

FFT獅子戦争やってました。今更言い訳しません。更新遅いのはゲームやってるからです。これからもこんな感じだけどよろしくです。


ティオと出会って数日…度々清麿の家にティオが遊びに来るようになった。

流石に恵は来ないが、仲間の魔物が増えたのは僥倖。

ガッシュの遊び相手にも、私達の話相手にもなってくれる。

尚寝てるアミュは…やはり人付き合いに向いてない。

そんなある日の一コマ―

 

「ティオはガッシュの友達だったんだよな?魔界ではどんなだったんだ?」

「え?そんなこと聞きたかったの?」

「いや~ガッシュ記憶ないし、アミュも教えてくれないからさ。色々気になってな…」

(それに…三目の魔物の話から…アミュが悩む姿を時々見るし…)

「魔理沙?」

「…何でもないぜ。とにかく何でもいいから教えて欲しいんだぜ。」

 

それから色々と教えてもらった。

流石にただの友達(聞く限りいじめっこ)では家族のことは知らないようだ。

しかし性格も行動も、魚好きというのも変わりなし。

記憶がないからと変化は特になかったようだ。

 

「―ガッシュのことなんてこれくらいしか知らないわ。」

「そっか…」

 

出来れば私が帰るまでに記憶を取り戻してやりたい。

友達として、それくらいのことは…な。

 

「あ!そうだ!ガッシュについてなら一つ…!」

「何かあったのか?」

「前にイギリスでガッシュに似た子を見たわよ!」

「ガッシュに似た…?」

 

先の話ではガッシュは一人っ子のはず。

詳しく聞けば姿はほとんど変わらないらしい。

しかし纏う空気は全くの別物、ティオが近づくことを躊躇う程に禍々しいものだった。

 

「そんなに似てたのか…?」

「うん…髪も目も全然違った…見つけても近づいちゃ駄目!戦うことになんてなったら…間違いなく負ける。」

「そんなにか…分かったぜ。気を付ける。清麿が帰ったら伝えとくぜ。」

「うん。」

 

ガッシュのことを話し終え、それからはちょっとした世間話と、恵のこととか話して一日過ごした。

まあ夕方には帰ったが。

ティオが帰った直後に、清麿が丁度帰ってきた。

入れ違ったようだ。

 

「ティオ来てたんだな。」

「おう。ガッシュのこと話してたぜ。」

「ウヌ?私のことか?」

「偶然ガッシュと帰りに会ったんだ。」

「ウヌ!ティオも元気そうで良かったのだ。」

 

さっきのことを清麿とガッシュにも話した。

ガッシュと似た魔物に気を付けるように。

 

「分かった…実は親父から遊びに来るように葉書が来ててな。夏休み中はイギリスに行くんだ。ガッシュに似た奴を見ても、近づかないよう気を付けるよ。」

「外国行くのか?むー…」

「パスポートとか用意出来るなら…魔理沙も連れて行けるんだが…」

「んー…紫がくれるならな~…」

「親父に魔理沙のことを頼んだ人だよな?その人は今どうしてるんだ?」

「知らないぜ。てか知ってる奴もいないぜ。あいつ程神出鬼没で怪しい奴他にいないぜ。」

「随分だな…」

「別に嫌いではないけどな…どうにも何するか分からないのが不気味だぜ。」

「そうか…夏休み中はイギリスにほとんどいるし、もし来れるなら来たらいい。親父の本読ませてやるよ。」

「無理だったら土産に何冊か頼むぜ~」

「持ってこれたらな。」

 

最も紫が、パスポートなんて都合よく用意するわけないが。

土産…期待してるぜ。

 

―――――

 

「…『ゼオン』…まだ…――の……?」

 




漫画では10日前くらいに撮影とティオは言ってます。でもこちらでは聞いてるの魔理沙なので9日前になります。しかし予定はずれない!清麿は死にかけながら夏休み初日を過ごしてもらう!てことで時間軸にずれはありません。


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level.18

今年の夏は病気の寝落ちを十回以上しました…翌日何度熱を出したか…まだ夏続くのぉ…?


ティオが来た翌日…というか今日もいるが…清麿はイギリスに行く準備を慌ただしくしていた。

明日からは夏休み…昨日のティオから聞いた話では、ガッシュに似ているが、危険な存在と判断した奴がまだイギリスにいるかもしれない。

十分に注意するため、経路の確認と、遭遇地点の付近を避けるようガッシュに説明していた。

そんなことをガッシュが聞くかは不安だが…

 

「ガッシュは何か思い出さないのか?」

「ウヌゥ…やはり何も思い出せぬのだ…清麿が言っておったが、私が倒れてた森にでも向かえば…何か手掛かりがあるのかの?」

「さあ…しかし…」

 

この前からアミュの様子がおかしい。

いつもより口数が少ない割には寝てもいない。

何かを考えるかもしくは…

 

(魔力を探ってる…?)

 

やはりアミュは何かある。

霊夢程じゃないが私も勘は…役には立つ!

ガッシュに似た奴と知り合いか…ガッシュのことについても隠してることがあるようだし…『ベル』が何なのかも教えてくれない。

アミュは何を隠しているんだ… ?

 

―――――

 

本人に聞くことも出来ずに翌日になった。

花さんの声もあまり聞こえてないようだった。

今日からとうとう夏休み…清麿とガッシュは、三日後にはイギリスに行く。

どうにかいつもの調子に戻ってもらわねば…

 

(喋らないアミュと二人きりは流石に辛い!)

 

私も寝てるだけになってしまう。

せめて会話が出来る程度にしないと…

 

―――――

 

もう夕方だ。

そろそろ清麿も帰る頃だ。

本当にアミュが一言も喋ってくれない。

いっそ強引に…叩いてみるか?

そう思っていたら清麿が帰ってきた。

少し疲れた顔をしている。

 

「どうかしたのか?」

「いや…」

 

どうやら学友との約束を全く覚えてなかったらしい。

色々考えていたら、生返事で誘いを受けていたらしい。

紙に予定を書いていたが、端から見ても地獄のような日程だ。

しかもUFOやらツチノコやら、この世界では偶像のようなものも探すらしい。

解決出来るのだろうか…

それに二日目はプールに行くようだが、もはや一日目の日程から考えて罰ゲームにも程近い。

本当にイギリスに行けるのだろうか…

 

「……」

「?清麿?」

「…いや…魚取りは八卦路があれば…と思って…」

「清麿…犯罪じゃなかったか?それ。」

「…すまん。」

「…野球はどうにかなるんじゃないか?」

「いや…山中のことだし…どんな無茶するか…」

「UFOとツチノコこそ無茶だぜ…」

「…仕方ない。受けた俺が悪いし…」

「まあ…協力出来ればするぜ?」

「ふむ…!そうだガッシュ!協力してくれ!上手く行けば、すんなり予定を終わらせられるかもしれん!」

「ウヌ!何でも言ってくれ!」

「…一応付いてくぜ?その調子だと不安だ。」

 

―――――

 

「お、来たな。?誰だ?」

「ああそうか…家の居候だ。」

「魔理沙だ!よろしくな!」

「高嶺…水野が泣くぞー?」

 

要らぬ解釈をしているようだ。

まあそんな話題すぐに消えたが。

すぐに野球の話に戻ったが…案の定無茶な要求を受けていた。

炎の燃える魔球完成まで付き合えと。

しかもどっちかは駄目らしい。

のっけから無理だろう。

そう思ったが…清麿が本を取り出した。

山中がボールを投げた瞬間に弱めの『ザケル』。

当然ボールは引火、消し炭になった。

弱めとはいえ遮蔽なし…山中も煽りを受けた。

まあ燃えて消えたわけだから、勢いで圧しきって完成ということに…こうして野球は即終わった。

 

(……すまん。)

 

納得する山中も山中だが、実行して放置する清麿も清麿だ。

まあ…見てみぬふりする私も私だ。

 

―――――

 

続く釣り、虫取と…蜂の捕獲やら釣る数やら…素でやっても日で終わるか怪しい難題ばかり…更には危険あり。

おかげで終わる頃には清麿の顔は腫れだらけだ。

まあ森暮らしの私は無傷だが。

ガッシュなんて魚齧って歩いている。

原因とはいえ、一番体の脆い清麿がぼろぼろな姿は実に痛々しい。

 

(明日プールで溺れないか…?)

 

―――――

 

野球、虫取、魚釣りときて次はツチノコ探し。

ここは事前の準備により難無く終わった。

具体的にはガッシュにツチノコの格好で噛みついてもらうというものだった。

さほど私と歳は変わらないだろうに…ガッシュとツチノコの見分けが付かないのは少し心配だ。

提案した清麿も、最初に上手く行けばとか言ってたしな。

とはいえ残りは一つ。

術の誤魔化しも私の協力も効かない以上、最も難関な約束だ。

 

(こんな馬鹿げた内容の一日なら…アミュも連れ回せばよかったか…)

 

今更連れてきても遅いな。

それから行ったUFOの召喚儀式…

 

『アーブダークショーン!!』

 

子供の声量とは思えない声が、大音量で木霊することになった。

ちなみに私とガッシュは飽きて早めに寝た。

私達の方が二人より早く起きたが、清麿は夜通し叫んでいたようだ。

 

―――――

 

「…久しぶり……『ゼオン』…」

「……『――』」

 

 




漫画開く気力なくてただ寝る日多かったんですよね…だから壱だけ更新出来ず他は二、三日掛けて思考…バイトとか関係なく今年は地獄でした…そういえば話変わるけどアミュは本名じゃありません。最後の『――』が分かりずらいと思って書きました。


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level.19

いつの間にか10000ua突破してましたありがとうございます!


「……おや?」

「…始め…まして…」

「始めまして。僕は森近霖之助。まさかこんな場合もあるとはね…君は誰かな?幻想郷の者ではないね。」

「…アミュ…魔理沙の……パートナー…」

「…成る程…いきなりで驚いたろう。少し説明するよ。ここは――」

 

それから僕は、彼女にこの店の説明をした。

彼女で『二人目』の客だ。

彼女が使える物が果たしてあるのかどうかは分からないが、紫が連れて来たのなら、何か理由があるのだろう。

必要なものが…

 

「どうやらこれだけが君専用らしい。」

 

専用のものはたった一つ。

ただの玉にしか見えない。

不思議なことに能力を使ってさえ全く不明なものだ。

 

「これは…?」

「…ここに…あった…んだ……」

「?」

 

『ここにあった』。

彼女は確かにそう言った。

つまりこれは元々、彼女のものだったのだ。

紫が盗んだか偶然拾ったか…

正体は分からないが大切なものなのだろう。

 

「見つかったようだね。」

「ん…」

「じゃあすぐにでも戻るといい。ここは特殊な場所…君がいて何もないとも言い切れない。」

「…ん……ありがとう…」

「どういたしまして。…魔理沙のこと、よろしく頼むよ。」

 

―――――

 

「……ここは…?」

 

ここはいつもの寝室。

つまりあれは、眠っている間の出来事だったということだ。

不思議なこともあったものだ。

 

「……」

 

ふと手を広げると、小さな玉が転がりおちた。

これがあるということは、夢であって夢ではない。

そんな空間だったのだろう。

何とも不思議だ。

だが見つけた。

この世界にあるはずがないのに。

これがあれば『あの子』を見つけられる。

その場まで向かえる。

まずは見つけよう…止めるために。

 

―――――

 

「……見つけた…」

 

捉えた魔力を下に、私は能力を使った。

魔物が固有で持つ能力…私の場合、それは『瞬間移動』

行きたい場所に、どこまででも行ける能力。

ただし制限はある。

この身ではそもそも行えないこと。

何より、私の持つぬいぐるみと、この玉…『ベステ』がいること。

見つけた場所は国内じゃない。

この能力がなければ、向かうのに時間が必要だった。

 

「……今…行くよ…」

 

―――――

 

「…久しぶり……『ゼオン』…」

「……『――』か…」

「今は…アミュ…」

「…どうでもいい。何の用だ。お前がガッシュといたことは知っている。まさか…記憶を返せとでも言うつもりか?」

「……違う…私は……止めに…来たの…」

「ちっ!その間の抜けた言葉…つくづく苛つくぜ。俺はガッシュだけじゃない。お前も倒すつもりだ。」

「……まだ『許せない』の…?」

「俺から『バオウ』を奪ったことが…許せるものか!俺は必ず越える…!ガッシュも…お前も…父上も…皆越える!精々生き残るがいい…いずれ必ず、その顔を絶望に染めてやる。」

「……」

 

言葉では止められない。

実力行使も、術がなければ戦えない。

そもそも今の私では勝てない。

ここまでだ。

もうゼオンには…何を言っても届かない。

ガッシュが打ち勝つ以外に…あの子は揺るがない。

いつか…ガッシュがゼオンを倒すことを…

 

―――――

 

帰ってきてみれば誰もいない。

どうやらまだ夏休みの約束は続いているそうだ。(話は聞いてた)

…こんな夜中に?―11時

まあ恐ろしい予定だったから終わらなかったのだろう。

下に落ちてる予定表を見て、改めて私はそう思った。

 

―――――

魔理沙side

―――――

 

「清麿、起きるのだ!朝だぞ!」

「せめて家で寝ようぜ。」

「う…ん…!?もうこんな時間か!?二人共急げ!間に合わんぞ!」

「何!?まだ行くのか!?」

「そうだぜ!プールで溺れるぞ!?」

「やかましい!」

 

何故かは知らないが、清麿は遊びに必死だ。

そんな性格ではなかったはずなのに。

しかし…それもそのはずだった。

 

「俺の友達との遊ぶ約束なんだ…」

 

華さんから聞いた。

清麿はガッシュと会うまで、頭の良さを妬まれ、虐めにも近い陰口を叩かれ、教師に嫌われ、居場所がなかった。

そんな清麿にとって、初めての経験なのだ。

『友達との約束』は。

その上プールの約束は、そんな以前の清麿に、唯一友達と言えた子との約束。

必死になっても仕方ない。

 

「行くといいぜ!楽しめよ!」

 

そんな約束に、部外者の私が入るのもおかしな話だろう。

そんなこととは裏腹に…

 

「何言ってんだ?魔理沙も行くぞ。」

「ウヌ!皆で遊ぶ方が楽しいのだ!」

 

楽しい方が優先なのだ。

彼らにとって、内も外もない。

全て内なのだ。

まるで幻想郷のように…全てを受け入れる。

 

「分かった…私も行くぜ!」

 

―――――

 

ちなみに走る方がボロボロの清麿が漕ぐ自転車より速いので先に向かった。

水着がないからだ。

プールには貸し出しもある。

着替えて待つとしよう。

 




種族固有の能力とかガッシュとゼオンには原作なかったんですよね。まあアミュは瞬間移動ということで。ちなみに原作上この会話はイギリスです。アミュの瞬間移動は、自身の感覚で把握出来る距離まで…およそ…ネタバレかもだから言えないけど50kmより広くです。…まあ把握出来るなら魔物の場所なら際限なしですけどね。


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妖夢編
第一話


やっと三人目を出せました。この話し最初完全に想像です。宣言から一月程ですか…とりあえずスタートです!


紫様は言った。

私の刀はこの世界において最強だと。

紫様は言った。

未熟が故に、失うものがあるかもしれないと。

紫様は言った。

強くなりたいのなら、守りたい何かを見つけろと。

紫様は―――

 

『世界すら切れるようになりなさい。』

 

その言葉に、私は答えた。

最初から決まっていて、自分の中で分かっている答えを。

 

『私は幽々子様を守ります。何を切ってでも。』

 

「……ふふ……この世界で、あなたがどれほど強くなれるか。見物させてもらおうかしら。」

「何があるかなんて私には分かりませんが、もし強くなるために、今の私に足りないものがあるのなら、私はそれを手に入れます。そうでなければ…紫様の優しさを無駄にしますから。」

「そうね。あなたは私が無意味にこんなことをするとは思ってないから、気付くとは思っていたわ。」

「他の人も…ですよね?」

「全員ではないけれど、確かにそうね。」

「……頑張ります。」

「ええ。」

 

―――――

 

紫様と分かれ、私はあるところに向かった。

私と似ている、しかし違う人種が集まる特別な場所。

紫様が言うには、獣を操る者や、炎を操る者、狼に変化する者までいる場所のようだ。

私はそこで、様々なことを学ばなければならない。

強くなるための術だけでなく、紫様が求めたものを、私は見つける。

だから…私は門をくぐり、それを目にした。

 

『いらっしゃい!』

 

二十人程の男女が、長机を囲んで座っていた。

 

「…………」

「あら?随分と呆けた顔してるね?あなたの歓迎で集まったのよ?」

「……あの……これは……?」

「頭領があなたを『夜行』に入れることを決めたの。聞いてない?」

「えっと……」

「その様子だと聞いてないね。とりあえず自己紹介しようか!私は花島亜十羅!妖獣使いよ!と言っても、今はこの子だけね。」

 

蝙蝠に似た生物が服から顔を出し、軽く会釈する。

 

「お、お願いします…」

「んじゃ次は……」

 

―――――

多いので割愛

―――――

 

「ん~とりあえずこんぐらい?今結構人いないからね。頭領もうじき帰ってくるし、とりあえず聞きたいことある?」

「……まずここはどこなのでしょうか?」

「裏会所属の一団体、夜行よ。仕事はいろいろ。中には護衛とか捜索とかもあるわ。人種も……いろいろね。」

「私は何をすれば?」

「まずは家事類や雑用。それから……まぁ模擬戦ね。」

「…誰と?」

「私」

「……では、何と戦っているのですか?」

「妖と呼ばれる霊や怨念の成れの果て。夜に生きる人外の……化け物達。」

 

のらりくらりとそう言って、「この子達は違うけどね。」と言い加えた。

正直幻想郷に近い。

しかし全く別の世界だと実感させられた。

この夜行の人達一人一人が、私より圧倒的に強い。

能力の問題か技術の問題か。

どちらだとしても、私が見てきた人達と比べて大分強い。

そして何より幻想郷と違うこと。

それは――本物の死闘。

この世界での敗北は、死となる。

それ程までのことが分かる程、彼女からは『死』の匂いがした。

まるでそこに、幽々子様がいるような。

本物の闘いを知る彼女らに、私が勝るものなど、何一つなかったのだ。

 

(最初からこれは……紫様もいい性格してますね…)

 

―――――

 

「じゃあ始めるわよ~」

 

そう言い、亜十羅さんは何かを呼んだ。

近くにいたのだろう、熊が走ってきた。

模擬戦の場は山。

それも結構広い。

 

「私は基本的に戦わない。戦うのはこの子。」

「その熊を倒せばいいのですか?」

「違うわ。ルールは簡単。雷蔵……この子のことね。雷蔵から一時間逃げ続けること。雷蔵への直接攻撃は禁止。山を下るのも駄目。ルールはこれだけ。」

「……もし捕まったら?」

「特にないわ。数十分動いてくれるだけで、どの班に入れるべきかはなんとなく分かるから。」

「……」

「強いて言うなら、雷蔵から逃げ切ることは無理ね。」

「何故ですか?」

「雷蔵は妖、雷を使う獣よ。当然足も速ければ、雷を落とす。自信があるなら、頑張って逃げ切ってみせることね。」

「……」

「じゃあ始めるわよ。始めてから十秒数えてから雷蔵は動くわ。これは、鬼ごっこだからね。」

 

彼女が「始め!」と叫ぶと同時に、私は走りだした。

木で身を隠すようにして、私は山を登る。

少しして元の場所を見ると、雷蔵が構えていた。

そして十秒が経ち、走りだした雷蔵は、信じられない程の速度で走りだした。

 

「!?」

(速い…!?あの巨体であそこまでの速度が……!?)

 

魔理沙の箒並みの速度で走る雷蔵から、少しでも離れようとするが、圧倒的に速い。

追い付かれそうになり、私は木を切り倒すことで時間を稼いだ。

多少でも時間稼ぎにはなったようで、雷蔵の足が止まる。

と同時に、私の横に雷が落ちる。

 

「!」

「私は言ったわよ?雷蔵は『雷を使う』って。」

 

私はそれがどういうことか正確に理解してなかった。

それから逃げる度、雷を落とされ、撃たれ、果ては蔦から巡らせ、私の進路を防いでいく。

 

「はぁ…はぁ…」

「もう諦めるなら言いなさい。終わりにするわ。」

(…まだ二十分…今と同じ逃げ方じゃ稼げない。なら…)

 

私は再び走りながら、手近な木を切っていった。

当然雷蔵は今までと同じく、越えたり迂回したりで追ってくる。

だから私は、その足場に仕掛けた。

 

「グァ!?」

「?雷蔵?どうしたの?」

 

おそらくそれで気付いただろう。

足場に蔓を束ねることで、簡易的な罠を置いたことに。

以前紫様から、剣以外にも戦闘で役立つ手段を聞いたとき、私は視ることを得意とした。

辺りを見て、利用出来る物を最大限利用して、罠や罠への誘導をした。

 

「へえ~やるね。トラップ仕掛けるとは……でもそうなると、あんたのとこに行くまでにも仕掛けてあるだろうね。」

「……」

「雷蔵、時間までは鬼ごっこ楽しみな!」

「グァ!」

 

―――――

 

結果私は捕まった。

おおよそ四十分は逃げることが出来たが、単純な速度で敗けた。

どころか雷蔵は倒した木を吹き飛ばしても来るので、飛んできた木が邪魔で私の進路も邪魔された。

 

「なかなかやるねぇ~いろんな班に入れれそうだよ。」

「……ありがとうございます。」

「まぁ私の報告から、考えるのは頭領だから、決まったら伝えるよ。とりあえずお疲れ。」

「はい…」

 

―――――

 

その日、私は部屋の一室を借りて眠りに着いた。

頭領という人物は、帰って来ることはなかった。

 

 




これの原作との話しの絡みは最初はありません。なので何が原作か分かるのは四、五話くらいになると思います。古いし出だし主人公関係ないし……でも最後の方には妖夢がいる場所の話しがあるし、覚えてる人は分かるかな?まぁ頑張って予測下さい。主人公でたら原作出します。


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第二話

一月空いたのは謝罪します。投稿ランダムなの小説情報で書いてるのでお許し下さい!


夜行に来て三日、頭領なる人物に出会うことはなく、また私が何かしなきゃいけないこともなく、ただ鍛練の日々。

強いて言うなら家事類は行っていたが、他には特に何もしていない。

この三日暇を持て余していた私がしていたのは、鍛練以外に、ここの人を観察していた。

結論から言ってしまおう。

まともな人がいない。

と言っても日ごとに顔ぶれは代わり、おそらく全員は見ていないと思う。

遊びで木を根から抜いて振り回したり、常に紙袋を被っている人、子供の遊びでさえ能力が使われている。

 

「…私はまともなのかな…」

「まあ夜行メンバーからするとまともな方じゃない?」

「アトラさんいつの間に…そういえば頭領さん全く帰ってこないみたいですけど、私は何をすればいいですか?」

「家事とかしてくれてるじゃない。」

「いえ…皆さんがしているような仕事をしてみたいんです。」

「危険だし大変だよ?なんでわざわざ…戦闘狂?」

「違います…強くなりたいんです。私、まだまだ未熟ですから…実戦で鍛えて、一人前になりたいんです。」

「…お師匠さんのため?」

「…それもあります…でも一番は、守りたい方がいるからです。

「そっか…紫って人に連れられてここに来たんだっけ?」

「はい。」

「強くなるために旅にでも出たの?」

「似たようなもの…かもしれません。私は、紫様が私のために、ここに連れて来てくれたことを無駄にしたくありません。だから、幽々子様を守れるくらい、私は強くなりたい。」

「ふふ…守りたいって思うのは大事だよ。その想いは、ずっと大事にね。私も…ここにいる子達を守るために戦っているから。」

「…アトラさんがお姉さんのように見えて夢かと思いました…」

「怒るよ?」

 

―――――

 

「けっこうアトラさんと話してたな…頭領さんいつ帰るんだろう?」

「あ!新しく入った人だね!?」

「へ…?」

「そういえばすこし前に新人が来たって箱田君言ってたな。」

「えっと…あ、私魂魄妖夢です。」

「僕は秋津秀よろしくね!」

「影宮閃だ。」

「魂魄さんはどの班になったの?刀持ってるし戦闘?」

「頭領帰ってねぇだろ。」

「あ、そっか。」

「つか立ち話してる暇ねえだろ。」

「そうだった!ごめんね魂魄さん。ちょっと急いでるからもう行くね。」

「は、はぁ…」

 

嵐のような人だった。

というかなんだか霊夢と魔理沙に空気が似てる気がする。

 

「そういえば…幽々子様はどうしてるかな…」

 

あの二人から、霊夢達を思いだして、ふと幽々子様のことも頭を過った。

その場にいない主を想い、私は昔を思い出した。

従者なのに料理を最もしていた。

異変では主の望みを叶えることも出来ず。

…店の食料を全て平らげられることであった財政難。

 

「…私あんまり幽々子様との思い出ってない…?」

 

不安にかられる結論が出てしまった。

 

「……考えると私がいないと幽々子様不安…」

 

何故だかそんな風に空回りしてしまっている。

紫様(藍様)が幽々子様のお相手をしてくれるようだけど、一緒にいないと不安に感じてしまう。

そう考えると、私は根っからの従者なのだろう。

 

(それでも思い出とかないのは少し寂しいな…)

 

帰ったら何かして差し上げよう、そう私は心に決めた。

 

「……」

 

ここの人達は何も知らないはずの私を仲間に入れてくれた。

何も聞かず、ただ一人の人として見てくれた。

たった数日でも、私のために様々なことをしてくれた。

思えば最初にそうしていたのは誰だろう。

…決まってる。

 

「幽々子様が最初だった。」

 

お師匠様もそうだった。

だけど初めは幽々子様だった。

誰にでも残るような思い出はなくとも、私にとっては毎日が思い出だった。

 

「お礼の一つくらい、帰ったら言おう。」

 

その日私は、主への信頼を再確認した。

それが従者としてではなく、魂魄妖夢としての、西行寺幽々子という方への忠誠だった。

 

―――――

 

「…あ、妖夢ちゃん見つけた。」

「アトラさん?どうかしたんですか?」

「頭領が帰って来たのよ。それで呼びに来たの。」

「頭領さんが?」

「ええ。」

 

新しい不安は以外とすぐに起きるものだった。

 




アトラさん漢字出すの分けなきゃ出来なくて面倒だし、原作で片仮名か平仮名か忘れたけど漢字表記はされてなかったので、アトラさんは片仮名表記でお願いします。


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第三話

ここの頭領の評価は高い。

皆でかかっても倒せない相手でさえ、一人で片付ける。

妖混じりと呼ばれる特異な能力を持つものを、その上制御しきれず家族を傷付けたものでさえ受け入れる。

過去には仲間を殺し回った上司に向かって怒鳴ったこともあるらしい。

優しく、頭が良く、なによりも強い。

夜行の皆、この人を信じている。

だから私は、今が信じられなかった。

 

「初めまして。俺がここの頭領、墨村正守。皆から少しは聞いてるかな?」

「初め……まして…私は魂魄妖夢です。…あの…」

「…鋭いね。」

「…?」

「この部屋に入ってから、おそらく何か感じとったんだろ?だから…そんなに恐怖した顔をしてる。」

「…何か…黒い…影が見えます。憎悪や恐怖…黒い感情が…気持ち悪い感覚が…」

「……ごめん。試させてもらったんだ。」

 

そう言った直後、彼からその感覚が消えた。

 

「この夜行には、様々な能力を使う者が集まる。君も何度も見ているだろ?ここに来たということは、君にも特異な力があると思った。」

「今の感覚に気付いたことで、何か分かったのですか?」

「感覚…五感とは違う第六感。それが鋭いものは気付くことが出来る場合がある。夜行でも、気付けるのは数人程度。」

「私の能力は剣を扱うだけです。特異な能力は…これといってありません。」

「そうか。だとすれば武術を会得した者の鋭い感覚を得ているわけだ。よく鍛練しているね。」

「…ありがとうございます。」

「……決まりだ。君の所属は、諜報班にする。」

「諜報…ですか?」

「君の感覚、それはかなり鋭い。おそらく人の気配を感じる能力なら、夜行所属の面子よりも鋭いだろう。箱田君がいないとき、死角の敵を見つけられるのは大きい。戦闘能力もあるなら、最悪捕らえられる心配もない。」

「確実ではないですよ?気配を殺して近づく敵もいるはずです。」

「そうだね。しかしある程度敵が見つかるなら、後は戦闘班の出番だ。問題ない。それにアトラから聞いた限り、環境の利用がとても上手いらしいね。」

「多少視覚を訓練しただけです。」

「多少でその判断が出来るなら十分だ。判断力もある。これほど向いてる人もいないだろう。」

「…分かりました。諜報班として以降仕事をこなします。」

「頼もしい仲間が増えるのは、夜行にとって喜ばしい。これからよろしく。」

「はい。よろしくお願いします。」

 

会話を終え、私は部屋を出た。

聞いていた印象は、あながち間違いないかもしれない。

あの人の表情は、優しげで穏やか。

話し方も祖父のような静かさだった。

言ってはなんだが少し老けてると思った程に。

だが、その目に笑みは見えない。

憎しみや怒りに捕らわれているかのような、暗い目をしていた。

 

「…あれが…頭領…」

 

何よりも、あの人は別格だった。

体に纏う死の匂い、数多く屠ってきた、戦人の空気。

だから私には、あの人はとても危うく見えた。

 

―――――

 

「妖夢ちゃん!どうだった?」

「諜報班になりました。改めてお願いします。」

「そか…なんだか分かってた。」

「?」

「私は貴方が来た時、初めて声をかけたんだよ?あまり長くはないけど、ここで一番話したのは私だから…」

「……そうですね。…ところで諜報って何をすればいいんですか?」

「指令が頭領から来るけど、今までの諜報班がしたことといえば…策敵に情報収集とかね。」

「…それだけですか?」

「まあそれだけでも大変だからね。多分貴方もそんな感じなことすると思うわよ。」

「そうですか…今日は少し皆さんの話しを聞いてみることにします。それだけとは思えないですし…」

「…疑ってる?」

「いいえ。」

「まあ…ならいいけど…まっ、とりあえず行ってきなさい。これが初仕事だよ。指令者は自分のね。」

「……はい!」

 

こうして私は、夜行諜報班所属となった。

 

 

 

 




例によって正守の口調がおかしい。アトラも。そのへん目を瞑って下さいお願いします。


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第四話

口調整わねぇ…半分諦め入ってますがお許し下さい!
追記:この回を読んで原作分からない人はまだ知りたくなければ後書きを飛ばして下さい。


私は夜行内を歩き周った。

これから何をすればいいのか、どこに行けばいいのか、様々聞いて回った。

 

『諜報って言うと情報収集とか?』

『どったかに潜入したりもいるなぁ。』

『知らん。戦闘班がわざわざ調べる意味もない。』

『閃とかは結構行ったり来たりして忙しないかも…』

『面倒を受けおってくれる班。』

 

などなど、アトラさんでさえまともに教えてくれてた気がする話しばかり。

結局行き着くのは同じ班の面子だった。

まあ当然のことだろう。

 

「ということで先輩に仕事を教わりたいです。」

「何で俺が…」

「まあまあ閃ちゃん、どうせ今暇なんだし、いいじゃない。」

「他にもいるだろ…細波さんとか…」

「大体任務中じゃないかな。というか細波さんがいることほとんどないと思うけど…」

「そうだが…ちっ…」

「押し付けようとしてたね~。」

「…あの…それで結局どう…」

「仕事のことでしょ?でも教えるも何も指令待ちだしね。僕達もそうだし、聞くだけあんまり意味ないと思うよ?」

「そうですか?でも何か共通で覚えておいた方がいいこととかは…」

「……特にないかな。」

 

ということらしい。

結局聞いて回った意味は特にはなかったようだ。

私はアトラさんの元へ戻り、結果の報告をした。

といっても世間話のようなものだが。

 

「そんなもんだよここは。他人の仕事なんて把握している人なんていないのよ。」

「本当ですね。仕方ないことではありますが。」

 

それからしばらく話していたが、数分後子供達が来て、遊びに付き合うことになった。

指令が来るのはアトラさんの予想では二週間程後と考えられるらしい。

それまで暇そうにしているわけにも行かない私は、それからしばらく、修行と雑用をこなして過ごした。

 

―――――

一月後……

―――――

 

「全然仕事任せてもらえませんね…」

「あははっ!仕方ないわよっ!夜行は裏会でも生粋の嫌われ者集団だからね。そうそう新人に任せられる比較的安全な仕事はないのよ。」

「…別に安全な仕事なんて求めてないんですが…」

「そりゃそんなのないからね。でもね妖夢ちゃん。そんなあなたにとっておきのお話があるのよ…」

「?」

「頭領からの指令、今回の仕事はあなたも入ってるのよ。まあ中高生程の年齢の何人かを送るものでね。閃とかもいるよ~。」

「若い人での任務ですか?でもそれじゃ…」

「監督はちゃんといるわよ。拠点も用意してあるしね。ただあなたは女の子だから、別の場所に行ってもらうけど…」

「別に構いませんが…」

「他が構うわよ。とりあえず現地の専門家さんのお宅を拠点にしてもらうわ。」

「…いつの話ですか?直前に言われても用意出来ませんが…」

「安心してよ~ちゃんと時間はとったわ。四日後に向かうから、用意しておいて。」

「分かりました。それで仕事内容は教えてもらえないんですか?」

「まさかっ!ちゃんと説明するわ。」

 

それから私はアトラさんの説明を聞き、自分の部屋へと戻った。

内容のまとめとしては至極単純な話、現地の専門家の手伝いだそうだ。

妖が多く集まる場所に行き、協力して退治する。

大まかな内容としてはこのようなものだ。

若い人で囲ったのは、専門家の中心人物が同じ年程の者であり、その場所は中学校という場所(中高一貫)らしいので、潜入もしやすいかららしい。

妖は夜にしか行動しないらしいが、万が一校内で昼に現れた時、対処するなら生徒の方が楽に済む。

 

「それで、結局その場所はどこなのですか?」

「実はね…そこは頭領が通ってた学校なのよ。その名も…『烏森』!」

 

彼女は声高らかに言い放った。

 

 




年末は忙しいので遅れてすみません。課題やったり掃除したり授業受けたり嫌になってapexに逃げ……なんでもありません。とりあえず遅れてすみません!
あと『烏森』出たら原作分かると思うので原作名公開します。『結界師』というもので少し古いものになります。以上です、では。


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第五話

学校入る時期はネタバレだからまだ言えませんが、とりあえずあと三、四巻分は後です。すみません。


「……何だか懐かしい気がします…」

 

私は既に夜行を出発し、滞在先へと出向いていた。

懐かしいというのは、その屋敷の外見である。

隣にもう一軒似た屋敷もあるが、白玉桜と似た造り。

高い木が一つ佇んだ庭。

道場があることくらいしか全く違うことはない。

その屋敷の表札には、『雪村』と書かれていた。

 

「……貴方が夜行から来た人かしら?」

「はい……あの、何か警戒されてませんか?」

 

呼び鈴を押し、戸を開けた同い年程の見た目の少女は、何故かとても警戒していた。

訝しむような目でこちらを見ており、周りを少し見渡している。

 

「えっと……」

「…ごめんなさい。少し前に鬼を連れた人に騙されたからね…」

「…そうなんですか…」

 

少女は気を緩めたのか、警戒を解き、玄関の方へ翻った。

 

「とりあえず入って。話は聞いてるし、大丈夫。」

「は、はい!失礼します。」

 

屋敷へ入ると外見は白玉桜と似ていたが、内装は全く違う造りだった。

その一室に案内され、少し待つよう言われた。

数分後、祖母なのか、一人のお婆さんを連れて戻って来た。

二人は対面に座り、話し始めた。

 

「時音から、志々尾君のことは聞いています。しかし交代する程の問題とは思いませんが?」

「え?」

「?何かおかしなことが?」

「いえ…確かに既に来ていることは聞いていますが…貴方方の補佐という任務を与えられています。交代の話は聞いてないのですが…」

 

事実来る前に受けた説明では、補佐という話は聞いている。

しかし初任務を一人で行うなどという暴挙は聞いていない。

 

「…では、こちらの戦力の増強…ということですか…」

「そう判断していました。説明された内容では、貴方方だけで対処し切ることが出来ない敵が現れたと…これから先、そういう相手が増えていけば、危険だと…」

「…そうですか。分かりました。もう一度問い合わせてみます。貴女がこちらで宿泊されることは確認していますので、時音に案内を任せます。」

「はい。よろしくお願いします。」

 

多少ごたつきはしたが、問題なく挨拶も終わり、私は時音と呼ばれた少女の案内で、客間に通された。

 

「とりあえずこの部屋は自由に使っていいわ。仕事は夜だから、夜までは自由に過ごしてて。」

「はい。ありがとうございます。」

「同い年みたいだし敬語なんていいわよ。」

「いえ、これが普通なので…」

「そう?まあ何かあったら呼んで。」

「はい。」

 

無事にこの屋敷で泊まる許可を得た。

 

―――――

 

時間は過ぎ、時刻は十時を回った。

仕事着なのか、白い着物のように着替えた時音は、槍のようなものを持って玄関を開けた。

私は既に外におり、準備を待っていた。

 

「お待たせ。それじゃあ行きましょ。」

「はい。」

 

―――――

 

『………』

「お前なぁ――――!―――!――!?」

「あいつ…」

「あの二人は…?」

 

着いて早々、二人の少年が喧嘩をしていた。

と言っても片方ががなっているだけで、もう片方はどこふく風なのだが…

それを見た時音が、右手の人差し指と中指を付けた構えをとった。

それを下に振り抜き、叫んだ。

 

「落ち着けぇ!」

『ぎゃー!』

 

突然二人の頭を、四角く透明な何かが穿った。

これが現地の専門家、『間流結界術』というものらしい。

どういったものなのかというと、その工程は至極単純。

結界をはる位置、大きさを決め、結界をはる。

ただそれだけであり、幻想郷の能力程、特殊なものではない。

はった結界は解除、そして消滅も出来る。

それが『間流結界術』と呼ばれるものである。

 

「今度は何があったの!どうせ横取りされただけでしょ!いい加減諦めなさい!」

「結界で囲った奴取るんだぞこいつ!」

「他の獲物行けばいいでしょう。」

「そ、そりゃまぁ…そうだけど…」

「はぁ…もういいわよ。それより裏会から限君と兼任の人が新しく来たから、せめて紹介くらいさせてあげなさい。」

「あ、初めまして。魂魄妖夢です。」

 

なんとなく気の抜けた挨拶ではあるが、とりあえず顔合わせは済み、仕事に移ることにした。

 

「じゃあこれから各自討伐していって。魂魄さんは私と来て。」

「分かりました。」

「大物来たら呼びなさいよ。一人で行かない。」

「分かってるっつーの!」

「本当に分かってるの…?まあとりあえず行きましょ。」

「はい。」

 

こうして私の初仕事が始まった。

 




まあ毎度のことながら口調が整いません。正直この小説は口調とかは原作とそうとう違うと思いますけど、目を瞑って頂けますと本当にありがたいです。


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第六話

えー…遅れて申し訳ありません。『白望記』の方では既に書いたのですが…バイト新しく始めたらモチベーション維持が出来ず…書く気が起きない状態になってしまって…時間はあったけど投稿することが出来ませんでした。と言いますが実はこっちは更に書く時間も少なく…まあここまで全部言い訳なので流して下さい…とにかく更新もう少し早くしなきゃと思います。また更新遅れたら本当に申し訳なく思います。


「あんたらは…!」

 

時音さんは少しイラついたように言う。

 

「なんで短時間でそんな喧嘩出来んのよ!?今日何するか分かってるの!?」

「そりゃ…分かってるよ…」

「?」

 

『何をする』ということは、普通に狩るだけじゃないようだ。

そうして時音さんが説教をしていると、何かが走って来る音と、女性の声が聞こえた。

 

「お待たせー!」

 

そこにいたのはアトラさんだった。

雷蔵に乗って走って来た。

雷蔵から飛び、見事な着地を見せたアトラさんは、雷蔵の紹介をした。

雷蔵はというと、志士尾さんと目が合っていた。

すると、途端に雷蔵は志士尾さんに飛びかかった。

アトラさんが解説をする。

 

「雷蔵は限が大好きなのよ。」

 

曰くじゃれてるだけだそうだ。

雷蔵と志士尾さんの関係を話していると、雷蔵が放電する。

そういえば放電するんだった。

もろに受けて平気でいる志士尾さんも相当頑丈だ。

などと考えていると、志士尾さんがアトラさんに、早く始めるように言う。

凄く帰ってほしそうだ。

 

「妖夢ちゃんおいで。」

「え?はい…」

「雷蔵!」

「え…!」

 

私は拐われるように雷蔵に乗せられ、屋上まで翔上がる。

 

「じゃあ課題を説明しまーす。」

 

制限範囲は校内、制限時間は一時間、その間にアトラさんを捕まえること。

正直何でするのか聞いてない私には分からない。

何かの特訓なのか…

 

「妖夢ちゃんはその辺に集まる妖を倒して。あくまでこれは…あの子達の課題だからね。」

「あの…課題って一体…」

「開始!」

「ちょっと待っ…!」

 

説明もされずに、アトラさんは雷蔵の吐く雲に紛れて姿を消した。

一人取り残された私は、とりあえず校内を見て行くことにした。

構造を理解しておけば、戦いを有利に進められる。

水場や火元を知っておけば、利用出来る場面もあるかもしれない。

とりあえずぐらうんど?を離れ、ちょっとした森林を歩く。

 

―――――

 

「ここにいるのも小さいな…」

 

何匹か片付けていくが、どれも腕程の大きさのもの。

『戦い』ではなく、『狩り』になる。

それも虫を潰すような程度の低い…

とても危険とは思えない。

私をここに送る意味はあったのだろうか。

そうこうしている間にも、向こうは雷蔵を倒したようだ。

雲がない。

雷蔵の雲は雷雲になっていて、移動、攻撃も制限される。

そのため先に倒したのだろう。

そして目標のアトラさんだが…空を飛び回っている。

三人もまだ行動を起こさない。

作戦会議でもしているのだろう。

 

「連携の特訓…かな。」

 

飛ぶアトラさんを、空中に結界を張り捕らえようとする。

志士尾さんは、それを足場に飛ぶ。

結界の位置、着地の瞬間、志士尾さんの動きを把握し、的確に結界を張る。

 

「あれなら捕らえられそう…」

 

その光景を、その辺にいる妖を狩りながら眺めていた。

 

―――――

 

課題が終わり、アトラさんの妖獣が呼びに来た。

ぐらうんどに集まり、アトラさんは三人を誉める。

 

「今回黙って見ててくれてありがとね。妖夢ちゃん。」

「いえ…」

「三人…特に限は、いつも一人みたいに振る舞ってるのよ。妖も一人で狩る。協力する気なんてさらさらない。」

 

他の人に聞こえないように、彼女は私に近付く。

 

「あの子は一人を嫌ってる。孤独を恐れてる。自分自身を嫌ってる。だからあの二人の存在は、あの子にとって特別なのかもしれない。」

「あの…?」

「あなたも…少しは気に掛けてあげて。ふふっ年も近いし以外とすぐに心開いたりしてね…」

 

それは彼女の切実な願いだった。

アトラさんは志士尾さんにも耳打ちをして、そのまま帰って行った。

孤独を恐れることが、私には分かる。

私もそうだったのだから…

 




最後のは特に伏線じゃないです。妖夢の祖父のことです。最後に…モチベーション回復のため五人目を書くかもしれません。その場合別小説として投稿する予定なのでこちらはこの四人になります。各キャラのファンの方にはお手数おかけしますが生活記二もお読み下さい。
こうしないと下手したら何千話になるか分かりませんから…それにあくまで予定です。五人目いつかは完全に決めてるわけではありません。今回前も後も長くて申し訳ありません。


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第七話

ちょっと集中することあって昼間書けなかった…夜は書けたけど。気分投稿なしじゃ速攻失踪ですねこれ。遅れてごめんなさい。


「……」

 

結局私が狩った妖は雑魚ばかり。

それからしばらくしても、強い妖など一体も現れなかった。

私が来た意味はあったのか。

この三人で十分ではないか。

そういう疑問を、三人が特訓(と言いつつ遊び)している横で考えていた。

どうにも今は…退屈だ。

 

―――――

 

(退屈とは思ったけど…)

 

先日とは打って変わり、異常な量の妖が攻めて来た。

曇天は空を黒く染め、そこから大量の妖が飛び交う。

ほとんどが雑魚とはいえ、数が多過ぎる。

千にも昇る妖の数々、それを私達は、四人だけで狩っていく。

良守さんが巨大な結界で大量に囲み、時音さんが細かい結界で串刺し。

志々尾さんが爪で八つ裂きにし、私が剣で切り落とす。

あまりに単調、しかし一向に数は減らない。

 

(数が多い…普通こんなに湧くもの…?)

 

そう考えながら狩り続ける。

ふと結界師二人を見ると、時音さんが良守さんを諭していた。

やはり、この数は以上らしい。

時音さんは大物を警戒している。

そして…その警戒は正しかった。

上空の雲の中から、炎の塊が一つ。

妖をも焼きながら飛来した。

 

「……おい。お前らだけか?」

 

そいつは面倒そうに言う。

そして何故だか激怒した。

 

「こちとら殺る気で来とんじゃ!手ぇ抜いてんじゃねぇぞ!」

 

強者がいないことに激怒している。

その妖は残念そうに、攻撃を開始した。

 

(二人のとこに…!)

 

結界師は身体能力は一般人と大差ない。

故に攻撃の的になるのはとても危険だ。

 

(間に合わないな…なら…)

 

二人が結界で防ぐことに賭けて、私は志々尾さんと攻撃を狙った。

更に二人には火球が二つ、左右から襲う。

二人が最初の火球を弾くのを視認、直後志々尾さんが投げた木を目眩ましに、弾幕を放つ。

あまり威力が出ないとは言え、妖一体くらいは倒せる。

それが雑魚ならば。

その妖は木を叩き割り、弾幕を受けたが無傷だった。

 

「…だーっはっはっー!」

 

突然笑いだし、こちらにみくびっていたと謝罪する。

そしてその妖は、本気を出すと言った。

姿は男性から六本腕の馬となり、全身に炎を纏い始めた。

火球を二方向に放ち、志々尾さんを殴りに向かう。

私も斬りかかり、翻弄するように攻撃をする。

ものともせずに殴打を繰り出す。

 

「がっ…」

 

殴打は回避したものの、燃える腕で志々尾さんの足を掴む。

間一髪結界で弾きはしたが、なければ足はなくなっていたことだろう。

 

「結!」

 

良守さんが一瞬立ち止まった妖を結界で囲う。

滅しようと手を振り下ろすが、纏う炎をそれを防ぐ。

 

(滅も出来ない…まともに斬るのも…志々尾さんの爪も防がれる…)

 

全員が攻めあぐねていると、妖は志々尾さんに狙いを定めて猛攻を始める。

火球、連打、突進、その攻撃の全てを一人に注ぐ。

私も加勢に入ろうと刀を構えた―瞬間、別方向から『刀』に襲われる。

 

「!?」

 

受け流すことに成功し、体制を直す。

そして眼前には、スーツを着た男性が立っていた。

 

「……」

「…やっぱりお前からも似た匂いがする。」

 

…変態か!?

まあそういうことではないのだろうが…男性の姿でそれは…誤解されてもおかしくないと…

 

「お前からは孤独を感じる。俺や志々尾限のような不自由さだ。」

「……そんなことはありませんが?」

「惚けるなよ。似た者同士、よく分かる。お前…俺達と来ないか?」

 

妖の仲間になれ。

暗にそう言っているのだ。

 

「なるわけがないでしょう。敵の甘言に乗る程、安くはありませんよ。」

「こっちに来れば不自由さもなくなる。好きに生きて、死すら消える。あいつは断ったが、お前でも良さそうだ。」

「志々尾さんがならなかったのは、孤独も、不自由さも、解いてくれる友人がいたからです。私にも…大切な人がいる!貴方に付き、その方に顔向け出来ない愚か者になるなら…いっそ腹を斬る!」

「……残念だ。お前もあいつも、選択を間違えるから…死ぬことになる。」

 

その男は私に斬りかかる。

さっきの馬の妖や志々尾さんをも凌ぐ速度で。

 

「!くっ…」

「それで防いだつもり?」

「ああああ!」

 

防いだと思った刀は、突然軌道を変えて腹を刺す。

 

「宣言通りお腹刺してあげたよ。」

「くぅ…!」

 

横薙ぎにした剣は軽々と避けられ、次々繰り出す剣撃は、尽く防がれる。

技ではない。

生物としての圧倒的速度の差。

そこには、あまりに実力の差があった。

 

(…強い…!)

 

私は純粋に、そう思った。

 




この人作中かなり強い部類だったと思う。序盤なのにラスボス感ヤバかったですよね。…まあ後半化け物(文字通り)ばっかか。


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第八話

wikiで初めて火黒の設定色々知った。てかアニメ限定の話とか知らなかった。


「妖と妖怪では相当な力の差がある。だからあっちは志々尾君に近接戦を任せて、残りはサポートに徹している。」

「だから…なんですか…」

「……君…妖混じりかな?」

「!」

「いや…幽霊…?まあとにかく、君からは人間以外の気配を感じる。この刀を防げるのが何よりの証拠だ。」

「……」

「君は人間にも、妖にも馴染めない存在のはずだ。だから俺達のように、実力だけを見ている集団にしか馴染めない。」

「そんなことは…」

「無いと言い切れるのかい?」

「……」

 

確かに、人間が、家族が、主が、死に逝く姿を目の当たりにしている。

私は…これまで確かに孤独だった。

亡霊として主が生き返っても。

友人が増えても。

いずれ無くなる。

失ってしまう。

 

「俺は孤独を恐れる者が嫌いなんだ。だから君も、志々尾君も、殺すことに躊躇いはない。」

「…なら、早く殺せばいい。私は、最後まで抗わせてもらいます!」

「いいね…その覚悟はかなりいい。けれど…何故君に、俺は手を出さないと思う?」

「…?」

「彼も君も…あそこの術師二人も、強くなる素質を持つからだ。だから君達が強くなれるために、導いてるんだよ。」

「……強く…?」

「俺も元は人間。技を高めるのに躍起になっていた…それで気付いた…俺の技に必要なのは、強者の存在!だから殺さずに生かしておくんだよ。」

「……」

 

まるで風見幽香のような価値観。

完全なる戦闘狂。

 

「孤独を恐れること。人間に最も必要ない無価値な感情だ。孤独であることを受け入れ、孤独(ひとり)であることを好機とし、強さだけを求める修羅と化す。強くなりたければ、全てを捨てるんだ。」

「…貴方は…つながりを失って、強くなって、それでいいんですか!?」

「それが邪魔なら、切り捨てるのは道理だろう?」

「…なら、何で黒茫桜にいるんですか?何で強者を探すのではなく作るのですか?本当は…貴方が一番、つながりを求めているんじゃないですか?」

「……俺が…孤独を…恐れている?」

「本当は、強者と戦いたいんじゃない…殺してほしいんです。耐えられなくて、殺してくれることを望んでいる。」

「…黙れ。」

 

今までより一層速い速度で刀が頬を掠める。

しかしそれが私を切ることはなかった。

 

「…俺がつながりを求めるはずがない。いつか見たあの男を倒すため、全てを捨てたことに、今更後悔なんてない。」

「……つながりを失った人間が、まともでいられるはずがないんです。全て失ったら…自分が自分であることも、分からないんですから。」

「………」

 

その妖は刀を全てしまい、その場から飛び退く。

そのまま空に待機していた妖に乗って去って行った。

 

「……つながりを失うのは…悲しいことなんです…」

 

全てを捨てた彼と、全てを失った私。

そこに大きな違いはないだろう。

その後に出会った人々が、私と彼を組み分けた。

 

「…行きましょう。」

 

私は哀愁を感じながら、時音さん達の元へ駆けて行く。

―――――

 

(あれは…!?)

 

空にいる馬のような妖は、巨大な火球を作っている。

まるでとどめとでも言わんばかりに…

 

「!志々尾さん!?完全変化を…!?」

 

妖混じりには、完全に妖になる『完全変化』という切り札がある。

しかし原則禁止されており、使用者は裏会を破門にされることも覚悟しなければならないもの。

それを使うということは…

 

(それ以外に勝機が得られない程追い詰められてる!)

 

しかしその顔は諦めでも、自棄になっているでもない。

勝利を目指して覚悟している。

放たれる火球には目もくれず、志々尾さんは敵へ跳ぶ。

放たれた火球は時音さん達が受け止める。

 

(まだ…うっ!)

 

貫かれた腹部の痛みはかなりのもの。

しかし…時音さん達が亡くなるかもしれないのに、何もしないわけにいかない。

 

「ふぅぅ……」

 

私は時音さんが志々尾さんのために張った結果を足場に、妖の元まで翔る。

 

「!魂魄さん!?」

 

(ここ!)

 

志々尾さんが破った防御に追い討ち、妖の胴に刃を突き立てる。

絶対に逃がさない。

 

「ぐわぁ!」

 

血を吐く妖の首は、志々尾さんによって落とされる。

こうして強大な敵との初戦は、こちら側の勝利を納めた。

 

 




馬…実は原作ではここでは生きるんですよね…残念ながら次の登場あまり意味ないし、ここで退場で。アニメでもここで消えてるみたいですしね。火黒は…もしかしたら原作から少し外れる話しがあるかも。気分次第ですね。


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第九話

遅れてすみません。風邪で寝込んだせいで四、五日ゲームとか出来なくて…ポケモン発売だしと積みゲー急いでやってたら時間が…ポケモンは…発売日から二日寝なかったですね~w…すみません更新します失踪はしません。


妖の首が切れ落ちる。

その死体は、私と共に落下する。

それを時音さんの結界が受け止める。

 

「はぁ…うっ…こほっこほっ!」

 

妖を倒したことに安堵した私は、腹の傷を忘れて脱力した。

やはり腹の傷の痛みは大きく、少し咳き込んでしまった。

 

「魂魄さん!」

「だ、大丈夫です…!?」

 

私はお腹に手を当てて驚いた。

傷がない。

確かに貫かれた腹部に、穴どころかかすり傷すらない。

 

「血が…!」

「いえ……痛みはありますけど…傷は…」

「くは…!はぁ…」

「志士尾!」

「はぁ…問題ない…」

 

苦しい勝利ではあったものの、全員無事の勝利。

あれほどの相手なら、これは奇跡だろう。

とはいえ苦勝、私の腹部もそうだが、志士尾さんはその比じゃない。

志士尾さんは意識を失った。

完全変化した妖混じりは、それを律するための抑制装置、『炎縄印』を体に刻んでいる。

その上完全変化をしていても、元の体は人間。

志士尾さんの体は、いくらこの地の力があろうと癒えることはない。

 

「このままじゃ…」

「志士尾!おい!」

「限君!」

「翡葉さんが救護班手配していると思います…けど…」

 

間に合わないかもしれない。

それほどに、体が壊れかけている。

 

「祈るしか…」

「そんな…!」

 

あるいはこの地なら…

 

『…ふふ…♪』

 

「!」

「魂魄さん?」

 

子供の声がした。

笑う子供の声が…

その直後、志士尾さんの体を、白い何かが覆った。

 

「!?」

 

咄嗟のことで志士尾さんから体を反らしてしまった。

しかし二人はどうしたのかと疑問の表情。

 

(二人には見えてない…?)

 

白いものはすぐに消えた。

何をするでもなく、地面に消えていく。

志士尾さんに何かしたのかと思い見ると…傷がない。

ぼろぼろだった体はすり傷さえなく、今も体を焼いているはずの炎縄印は、役目を終えたように解けていく。

 

「何が…」

「う…」

「志士尾!」

「限君!」

「…気を失って…?!炎縄印が…!」

 

本人も目を覚まして驚いている。

そして体を動かしてみている。

何事もなかったかのように体は元気になっている。

 

『……』

 

全員が何が起きたのか分からないでいると、遠くから墨村さんを呼ぶ声。

 

「良守ー!」

 

墨村さんの家のおじいさんと、翡葉さんが走って来た。

 

「!志士尾…炎縄印はどうした…?」

「…分かり…ません…」

「…また禁を破ったな…」

「!待って!限君が戦ってくれなかったら今頃あたし達…」

「……」

「…すみません…」

「…ちっ…」

「翡葉さん…私からも弁明させて下さい。彼がいなかったら、この地ごと、あの妖に焼かれていました。」

「…処分を下すのは頭領だ。直に来る。弁明するならその時にしろ。」

「…はい。」

 




ポケモンやりたいのと原作で妖夢出せる場所ないのとリハビリ用でガチで短めです。投稿ギリギリ文字数です。原作35巻ありながら出せる場所ざっと見て10巻くらいなんですよ…調整です。妖夢編は短めですごめんなさい。


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第十話

妖夢編の度に一回止まってる気がする…正直今回は遅れの理由ありません。エルデンリング初期レベル縛りとapexセンチネル縛りをやってたせいで中々他のことをやる気にならなかったんです。すみません。


座る志士尾さんを見て頭領が最初に放った言葉は、叱るのではなく安否の確認だった。

炎縄印がないことを問い詰めるでもなく、無事だったことに安堵していた。

最初に他人の心配をする辺り、墨村の人なのだろう。

それから詳しく説明をして、志士尾さんの状態や烏森の状況を話した。

 

「――分かった。魂魄さんは引き続き烏森に。いままで通りサポートを頼むよ。それから…」

「……」

「限。翡葉から状態は聞いた。無事で良かった。」

「…頭領…俺は…」

「…確かにお前は禁を破った。一度は翡葉の忠告で思い留まったようだが…」

「…俺…夜行を抜けます。」

 

その言葉は、流石の頭領でさえ驚かした。

 

「姉ちゃんに謝りに行って…どこか遠くに…もう俺が、ここにいる資格も意味もない…」

「限…お前が夜行に来たことで、助けられた奴らも多い。お前が完全変化をしたおかげで、俺の弟もこの土地も守られた。資格なら十分にある。」

「俺…今回の戦いで満足したんです。今までの自分から、計り知れない成長を感じました…だからこそ…また妖に飲まれて、誰かを襲うのが怖い…」

 

墨村さんは昔、時音さんに怪我を負わせたことがトラウマになり、他人のことばかり考えるようになった。

おそらく彼も、同じような過去があるのだろう。

自分が自分でいられない、そんな感覚を。

 

「志士尾さん、迷惑ならいくらでもかけて下さい。傷付けるかもしれない。恐怖を与えるかもしれない。それくらい大丈夫です。もしそんな時が来たって、皆で止める。不安を感じる必要なんてないんです。」

「……」

「…限。完全変化による罰は、お前に与えない。」

「え…?」

「元より禁止しているのは、本人が無事ではすまないからだ。今のお前なら、炎縄印なんて拘束も必要ない。それから、お前は自分のやったことや、その感情を悪だと思っているが、今のお前が間違えたことなど一つもない。今の自分を誇れ。」

 

今日の行いに選択肢があるのなら、志士尾さんの選択は、全て正解だったことだろう。

その自分を非難することも、叱咤することも、何故必要だろうか。

 

「成長したその力で、これからも俺達を…烏森を守ってくれ。」

「…はい…!」

 

―――――

 

その後、志士尾さんは一度休暇を取った。

姉の元…実家へ帰るため。

今まで拒んできた手紙を全て読み、感謝を伝えるために。

志士尾さんがしばらく離れた以外、私達は以前と同じ日常を送っていた。

何故か日に日に墨村さんの傷が増えているが。

 

「どうしたんですか?その傷。」

「ああ、ちょっとカラスに…」

「カラス?」

 

詳しくは話してくれなかったが、多分捕まえて結界の練習でもしてたのだろう。

 

「良守!侵入者だ!」

 

言うやいなや、辺りに大量の人影。

完全に包囲されている。

その人影全て、墨村さんが結界で捕らえてしまった。

精度も速さも遥かに上がっている。

修行の成果を垣間見た。

滅しようと手を振り降ろす直前、別の結界に手を止められる。

 

『そこまでだ良守。』

 

空からした声の主は頭領だった。

となれば必然、人影の正体は…

 

「ひどいなぁー。ちゃんと弟さんに説明しといてくださいよー」

 

墨村さんの張った結界は、全て違う壊され方で消えていく。

夜行の本拠地をしばらくこちらに移すということらしい。

夜行の面々全てが揃っていた。

 

「そんな訳で、まとめて世話になるんで。」

 

『よろしく!』

 

結界師の家二軒は、これから騒がしくなりそうだ。

 




一巻分近く話し改竄してるから限の話とかまじで悩んだ。本来葬式からスタートなんで辛い…


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第十一話

結界師の家二軒には、現在夜行の面々が集まっている。

男女に別れ、雪村家には女性のみ。

しかしそこにアトラさんの姿はない。

それとなく時音さんが聞いていたが、アトラさんは志士尾さんと行ったらしい。

せっかくの機会だったから、また話したいと思ったのだが…

 

「…あの…刃鳥さん。」

「どうしたの?」

「志士尾さんの家、しばらく誰もいないんですよね?」

「そうね…でも掃除くらいなら私が…」

「…しばらくそちらで過ごしてもいいでしょうか…?」

「…そう…そうね…一人くらい定住した方がいいかもしれないわね…」

「ありがとうございます。少し…一人になりたくて…」

 

私は弱い。

本気の殺し合いも知らない私は、戦闘における赤子も同然。

志士尾さんが命掛けで戦う中、最も得意とする戦法で、完全な敗北を喫した。

強くならなければならない。

 

―――――

 

「悩んでるわね~」

「…紫様?」

 

集中のために瞑想していると、背後から声がした。

聞きなれた声だ。

 

「どうして紫様が?」

「私は貴女達をそれぞれの世界に送ったら、時々眺めてるのよ。主力が外界に出てる状況、博麗大結界の管理や妖怪の管理、他諸々確かに大変だけど、貴女達の状況を監視するのも必要なのよ。」

「それで…私が悩んでいるから見にきたんですか?」

「まあそうね。他は楽しくやってたり、思いがけない成長を見せたり、貴女だけなのよ。そこまで悩んでいるの。」

「…情けないですね…」

「いいえ。そんなことないわ。貴女は貴女。他の何者でもないただ一人の少女…私が来たのは、貴女がいらない悩みを抱えているからよ。」

「いらない悩み…?弱いことを嘆いて、強くなりたいと苦難することがいらないことなんですか…?」

「ええ。貴女に一番足りないのは…強くなりたいっていうことに固執して失った自信。」

「自信…」

「思えば貴女の周りは強い人が多いわ…その上学んだ剣は中途半端。祖父を失った喪失感による失うことへの不安。主人の望みさえまともに叶えられない。その心は、貴女の才能を殺し続けてる。」

 

才能など私にはない。

努力しても努力しても、才能のある努力家には勝てない。

どれだけ戦いを挑んでも。

どれだけ鍛練を積んでも。

長い間生きているのに、その高みにはたどり着かない。

二十に満たない友人にも、師と扇いだ祖父にも、勝つことは出来ない。

 

「貴女は何のために強くなるの?」

「幽々子様を守るために…」

「もう何年何十年と共にいる主…守っているのは他でもない貴女よ。自信を持っていい。自らを誇っていい。貴女は既に…十分に強いのだから…自身が思うよりも…ね。」

「……」

「…そろそろ夜ね。」

 

そう言い紫様は帰って行った。

 

「……」

 

―――――

 

夜の学舎にこれ程人がいることなどあり得るのか。

しかし以前の奴らが来ることに警戒するのは、決して間違いではない。

ただ…

 

「過剰戦力ですよね…」

「そうでもない。」

 

一人言を呟くと、頭領に窘められる。

 

「黒芒桜の連中が総出なら…楽に勝てはしない。少なくとも数体は別格のものがいるはずだ。」

「……」

 

以前にここを襲った馬の妖。

確かに別格の強さを誇っていた。

そいつは倒したが、まだあの剣士がいる。

この場の何人が闘えるだろうか。

それほどに強い。

馬の妖でさえ勝てないだろう。

 

(そんなのがまだ何体も…)

 

警戒をし過ぎて損はしない。

 

「……」

 

小物を幾らか仕留めながら、いつも通りに過ごしていた。

しかし状況は一変した。

黒芒桜の奴らが再び攻めて来た。

黒い雲をの中を蠢く虫、数は過去最高だろう。

しかし私が何もしなくとも勝てるだろう。

凄いのは数だけだ。

一体一体は野良の小物と変わりない。

 

(それでも…)

 

一歩を踏み出すには十分だ。

私は二刀の剣を振るった。

その瞬間はいつも以上に、早く感じた。

普段よりも早く、鋭い二太刀が、数十の妖を仕留めた。

 

―――――

 

「迷いのある剣じゃ真っ直ぐ振ることさえ出来ない…妖忌の言った通りね…」

 

 




紫は他の世界でも出るかもしれないです。そもそも全部思いつきですし。


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第十二話

飛来する妖を倒し続ける内に、徐々に雲は晴れていった。

強い力は感じなかった。

おそらくあの人型の妖は来ていない。

一つ確かな情報は、あの馬の妖…牙銀の立場は幹部級。

敵の戦力はかなり削がれただろう。

既に雑魚をけしかけることしか出来ない程。

 

(でも…油断は出来ない。)

 

あの刀は結界を切る。

あの話術は味方を裏切らせる。

あの気配は皆を萎縮させる。

あの存在一つで…戦況は変わる。

頭領なら倒せるだろうけれど、あの速さは人間に追い付ける速度じゃない。

もし戦うのなら…

 

(私が…)

 

「動ける者は――」

 

頭領の指示が飛ぶ中、時音さんが叫ぶ。

 

「良守が…いません!」

 

―――――

 

戦闘終わりに主な守護者の行方不明。

ざわつく皆に指示を出した頭領の冷静さは流石の一言。

とにかく雪村家にて全員の治療へ向かった。

 

「……」

「どうしたの?」

「刃鳥さん…いえ…何か嫌な予感がして…」

「サポートする対象が片方消えたから?」

「…私と志士尾さんの傷を付けた敵…そいつが今回いなかったんです。それにもし…良守さんが一人でそいつに会っていたら…」

「…少しごめんね。…はい。」

 

頭領からの電話のようだ。

顔を見るだけで何があったかよく分かる。

 

「…予感…当たりよ。全員注目。」

 

良守さんは拐われた。

その会話を見ていた影宮さんまで。

今すぐ黒芒桜へ向かう連絡が頭領から来た。

動ける者全員で、黒芒桜を潰しに出る。

 

―――――

 

黒芒桜への抜け道…その場所に、夜行、墨村家当主、そして雪村家の結界師が集結していた。

時子さんの話では、抜け道は完成したものの、既に先の世界の崩壊が始まっていると。

その危険を考え、行く人数は絞られた。

 

「まず俺と―蜈蜙。それと白道、黄道。それから―」

 

箱田さん、保護者として行正さん、そして良守さんのお祖父さん。

当然私は呼ばれない。

しかし…

 

「頭領。私も行きます。」

「…人数を絞る上で、君を連れて行くわけにはいかない。例えそれが…出自不明の子だとしても…」

「…相手に二刀流の剣師がいます。あの人とは…私が決着を付けなければなりません。」

「堂々と命令違反を行うと?」

「はい。」

 

二人を救う任務を放棄、戦いを目的とした潜入。

正に命令違反そのものだろう。

それでも…私には必要なこと。

 

「必要なら、夜行を抜けます。」

「…分かった。但し、良守達を回収次第撤収は変わらない。例え決着が付かなくとも、無理矢理にでも連れ帰る。」

「!ありがとうございます!」

 

氏名された全員が蜈蜙さんに運ばれ、入り口を抜ける。

 

―――――

 

箱田さんのおかげで飛行中に二人を見つけた。

白い世界に飲まれた二人を。

 

「なんだあれは!?」

 

結界師本人が言う以上、まともな結界ではないのだろう。

しかし声は届くようで、中にいる影宮さんに頭領が確認した。

良守さんの意識もなく呼吸もしていない。

とても危険な状態のようだ。

しかしそれほど巨大なものの端、遥か真下に、私はあるものを見つけた。

偶然視界に捉えたもの…刀の破片を。

 

「頭領…すみません…」

「魂魄さん!?」

 

呼び止める声も無視して飛び降りる。

人間なら死ぬ高さでも、私なら特に問題はない。

着地した私は、その破片に少しずつ近づく。

拾い上げた時に確信した。

あの結界で、あの剣師は消されたのだと。

 

「…迷いは…断ち切れましたか…?」

 

破片は彼の魂の現れ…彼そのもの。

戦うことが叶わなず、救うことも出来ない。

そんな私に出来ることはただ一つ。

魂の籠ったこの破片だけでは意味はないだろう。

それでも…

 

「どうか…素晴らしい来世を…」

 

私の持つ二刀は、その破片を切り裂いた。

これが私に出来る、最後の供養だ。

 

―――――

 

二人を回収して(回収してもらって)、蜈蜙さんにもう一度結界に向かってもらう。

道中下を見ると、城が消え、黄金色の野原が出来上がる。

黒芒桜は終わった。

それを表すようなすすき野原が…私達を見送った。

 

 




火黒出番なし!そして計二巻分完全カット!話に出来るとこ少ねぇよ…


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第十三話

モチベを保つ方法……ゲーム禁止とか…?絶対無理


蜈蚣さんのムカデに乗って脱出を謀る。

しかし予想外に早い世界の崩壊に、尾の先端が飲まれ始める。

折角無事に二人を回収出来ても、世界に飲まれたらもともこもない。

なんなら私の来た意味は実質なかったし…

更に言えば静止無視で飛び降りたし…

 

(帰ったら説教覚悟しないと…まぁ…)

 

後悔はない。

何にしても生きて帰ることが出来なければ後悔してしまうだろう。

ただの剣士の自分には、この状況で出来ることはない。

それがとても歯痒い。

そう考えていると、ムカデを白い何かが覆う。

聞けば頭領のお祖父さんが、この一角のみを支えているらしい。

これで少し猶予は伸びた。

しかし間に合うかどうかは本当に賭け。

蜈蚣さんと結界師の方々の頑張り次第。

本当に…何の役にも立てない。

外では時音さん達が頑張ってくれてるのだろう。

網のような結界術が迫る。

外から時音さんとお祖母さんが回収しようとしてくれてる。

それに捕らわれた私達は、そのまま引き抜かれるように脱出した。

 

―――――

 

良守さん以外は受け身を取って着地した。

ただでさえボロボロなのに傷は大丈夫だろうか。

などと眺めていたら…

 

「あ、時…」

 

名前を言い切る前に良守さんは吹き飛んだ。

時音さんの渾身の一撃が頬を叩いたようだ。

とても少女とは思えない程の怒声を上げ、泣きながら良守さんに説教している。

その様子に戸惑った良守さんは、自分の心情や周りへの影響を連ね謝った。

時音さんはそれを抱き締め、自分を大事にするよう囁いた。

恐らく彼女がずっと思い、彼が知らないふりをしていたことなのだろう。

こうして黒芒桜は滅んだ。

大勢の人を巻き込みながら、たった一人の少年によって…

 

―――――

 

「それでは、お世話になりました!」

 

頭領率いる夜行の方々は、今日を持って烏森を撤退する。

良守さんと個人的に仲良くなった人はお別れをし、また頭領は良守さんを嗜める。

そのやり取りを眺めている私は…見送る側だ。

 

「それじゃあ…後は任せるよ。」

「はい。」

「それから限のことだけど…僕の命令でしばらく夜行には戻らない。彼らには…時間が必要だ。アトラはもう数日で戻る。そしたら限の部屋に二人で過ごしてもらうから、そのつもりで。」

「戻る目処は立ってるんですか?」

「まだ…けれどそう遠くはないよ。限はとても…優しい子だからね…」

 

懐かしむような遠い目。

志士尾さんとのやり取りを思い出しているのだろう。

 

「…頭領も大概ですけどね。

「ん?」

「何でも…お疲れ様です。」

「…最後に一つ。良守も君も…何なら時音ちゃんも、無茶はしないように。これは命令だ。」

「はい!」

 

そう言い残して彼らは去った。

 

―――――

数時間前…

―――――

 

「罰を…免除ですか…?」

「ああ。君は十分働いてくれた。一度や二度の命令無視には目を瞑ろう。」

「私は何も…」

「今回の戦いでは確かに。しかし先日、限や良守、時音ちゃんと共に敵の幹部級を討伐。並びに同格の撃退を単独で行い、雑魚狩りの数も決して少なくない。十分だ。」

「……」

「…納得しないならもう一つ、君の最大の功績を伝えよう。」

「?」

「三人の命を救ったのは、紛れもなく君の働きによるものだ。」

「…私が…?」

「君はどうにも…自信がないな…もっと誇っていいんだよ。君は全然、役立たずなんかじゃない。」

「……知り合いにも…同じことを言われました…」

「…良い友人がいるようだね。とにかく罰を与える気はない。これは決定事項だ。」

「ありがとうございます。」

「それじゃ、話はおしまい。ああそれと…君には引き続き結界師の補佐を命じる。最後に…補佐の範囲を広げるために、烏森に通ってもらう。」

「…え?」

 

 

 




文字縮小とか初めて知った…


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第十四話

やっぱり妖夢が本編に関われるのは原作中盤以降になりそうです…他より絡めるのが不可能過ぎて…


今でさえ信じられない。

今まで白玉桜の外にろくに出ることなく、また庭師兼世話役の仕事をこなしてきた自分が…

 

「学舎に通うなんて…」

 

勿論普通の人間じゃなく、また少々の言語の勉強しかしたことのない私を、すぐに通わせることはなかった。

少なくとも良守さんと同じところまで学習してから通う。

この世界では寺子屋と違い、小、中、高と学校があり、今の良守さんは中学二年生。

つまり小学校の勉強含め、計八年分を学ばなければならない。

計算や言語はともかく…科学や歴史、地理などは一から調べなければ何も分からない。

なので朝に稽古を、夜になるまで主だっては勉強、夜は結界師補佐としての仕事。

この生活を数ヶ月することになった。

計画としては凡そ苦でもない。

 

「なので予定としては一、二ヶ月程あれば学校に通えそうです。」

『……』

 

そう二人に伝えると、良守さんはともかく、時音さんからも信じられないものを見るような顔をされた。

 

「あ…もしかして遅かったですか?それなら休憩を削って…」

「そうじゃないの!そうじゃなくて…むしろその生活…大丈夫なの?」

「……?」

「あー…本気で分かってないわね…」

「何かおかしかったでしょうか…?」

「普通ではないわね。色々と貴方のことは聞いてるけど…八年分の勉強を…まあ国語とか道徳とか、続かないものを除いても、一、二ヶ月で出来るのは異常よ。」

「え?」

「夜行の人は、事情様々で一般教養がない人も多いのは知ってる。だから貴方も初めから学ぶでしょう?例え歳が私達と近くても、文法や歴史、計算式…はっきり言って八年分を私が学ぶよう言われても半年は掛かるわ。」

「……」

「貴方の計画通りやれば私ももっと早く出来るでしょうね。けどそんなに勉強ばかり修行ばかり、果ては仕事含めなんて…今からやれって言われても私は絶対に嫌。」

「……?」

「この計画で楽だと思ってるの…?」

 

実際楽だろう。

むしろ勉強は娯楽だ。

剣は好きだし、勉強も好き。

仕事はその成果を試す場としてとても充実しているのでは?

 

「はあ…良守も見習ってほしいわ…」

 

そういえば大分前から良守さんがいない。

私達が話してる間、妖を倒していたのだろう。

 

「まあ…貴方が大丈夫ならいいわ。良守と同じ学年で転入するんでしょ?頑張ってね。」

「はい!」

 

―――――

 

その会話があってから、宣言通り一月と半月程で、全ての勉強を完了した。

この学校は編入のため試験がある。

正確には学力を計るための制度の一つらしい。

結果に関係なく、学校には入れるらしい。

私にはとても丁度いいものだ。

テスト自体は一日で終わった。

結果は登校日初日、クラスに顔を出してから先生に渡されるらしい。

自分の勉強がちゃんと出来ていたか、試せるのはいいことだ。

それに時音さん達以外の一般人との交流も、私には良い機会だろう。

登校日まで三日。(土日は休みらしい)

この待ってる間も、私にはとても楽しみだ―

 

 




学校通うまでの一幕…つまるところは準備期間です。妖夢編だけはどうにも出来ない…夜行所属が失敗だったか…?


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第十五話

今回も準備期間かな…最悪読み飛ばしても平気な回…はぁ…ストーリー繋がり薄いよ…妖夢編…(←作者が元凶)


学校まではまだ三日ある。

その間に多少を学ぼう。

最もそれは勉強ではない。

学生の本分は勉学だが…はっきり言って私の役には立たない。

幻想郷では必要ないし、この世界で一生を終えるつもりもない。

故に学ぶのは剣。

私の剣技である魂魄の流派は、段幕に流用することや直接戦闘、また基本的な威力も速さも強い。

だがこの世界では段幕が出せないようで、私には遠距離からの一方的攻撃に対策が出来ない。

そのカバーは結界師のお二人がしてくれるが、一人で戦う場合も想定する必要はある。

更に言えば結界のような一般人には不可視の攻撃も、志士尾さんのような速度もない私には、妖を一般人のいる場所で倒せない。

学ぶ必要があるのは主にその二つ。

遠距離戦闘、そして人の目を掻い潜る術。

夜行の方々に聞いて回ろう。

 

―――――

 

「それでまず俺の所に来るとは…随分信用してくれたね?」

「頭領なら当然当てがありますよね?」

「………まあいくつか言いたいことはあるけど…まずは短刀でも携帯するといい。」

「短刀?」

「そもそも学校で刀を持たせるわけにはいかないからね。精々携帯出来ても短刀くらいさ。」

「……あ…」

 

刀を一時でも手放す思考がなかった。

この国では銃刀法違反とやらで刃物を持ち歩けない。

学校内でも当然だ。

もはや体の一部の二刀を置いていく必要があるのか。

 

「……」

「まあ君なら短刀でも十分だろう。それに君の刀は長過ぎる。短刀なら振る速度は当然上がる。この三日間、とりあえず短刀を扱ってみるといい。三日もあれば君なら出来るさ。」

「……そうですね。三日間、夜は短刀を使います。どうにか支給頂けませんか?」

「裏会の基本装備の一つだよ。装備を使う人だけだけど。刃鳥の所に行くといい。」

「ありがとうございます。

「ああそれと…遠距離での戦い方についてだけど…」

「はい!それも課題で…」

「無理に遠距離で戦う必要はない。」

「……?でもそれは…以前に烏森に現れた馬のような例も…」

「あのタイプが現れたら、他の誰かに任せればいい。そうでなくとも今の君なら…それも切れると思う。」

 

今の私。

紫様からの助言で成長したであろう私。

しかし何故頭領はそれを知っている?

紫様の存在は、ここでは私しか知り得ないというのに。

 

「俺は部下のことはよく見るよ。…複雑だが良守や時音ちゃんもね。だから何となく君が変わったように感じた。今の君なら炎の上から敵も切れる。」

「…そう…でしょうか…」

「ああ。それにそのタイプ以外なら、君の速さで追い付けない者はそう現れない。苦手なことは、得意な者に任せればいい。それでも手に負えないなら…頭領()の出番だ。」

 

絶対の自信。

頭領が頭領たる所以。

この精神、能力、頭としての器、これが若くして裏会の組織の一つを纏める彼の実力。

 

「…頼もしい限りです。」

 

頭領との会話を区切り、私は刃鳥さんの下へ向かった。

 

―――――

 

「…っ!…っ!」

 

剣を振る速度を上げるのは簡単じゃない。

長年の修練の末、速度も威力も上がるものだ。

その基本は素振り。

こと桜観剣は長い故に筋力が必要になる。

素振りをすれば腕力は自然と強くなる。

それは振る速度にも影響する。

力強く振ることが基本的な素振りだ。

しかし技を学ぶ者なら、それに更に流れ…流麗さが重要だ。

力だけでは技にならない。

自分に合う形、構え、振る速度の緩急、同じ動作の繰り返しに見えても、全ての動きは違うのだ。

それが全て一致した振り…それを基本の動きと出来た時、初めてその動作を極めたと言える。

あくまでその副産物として、速度は上がる。

剣を振る速度を上げるというのはそういうことだ。

とても三日で出来ることじゃない。

だがだからこそやりようもある。

短刀なら構えが逆さになるのは必然。

自由な動きが短刀の魅力。

時音さんの結界なら、自由な動きの練習にはもってこいだ。

短刀を振るなら必ず結界は見る。

目を養えれば、自然と反応も速くなる。

反射的に体が動く程に目を、脳を鍛えれば、日常内で誰にも気付かれることなく、妖を倒すのも容易となろう。

幸いその基礎は学んだ。

それが出来ないなら、私に魂魄妖忌の弟子である資格はない。

目や脳を鍛え、神経伝達の速度を上げる。

それが今の私の目標となる。

学ぶべき…そして今しか学べない新しい挑戦だ。

まあもしかしたら、必要なのも今だけかもしれないけれど…

 

 




剣のことは適当…ではないです。流石に調べます。検索すれば以外と出るんだよねこういうの…


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優曇華編
標的1


原作主要キャラの名前が出たら原作出すようにします。
多分次話で出ます。
追記:上の標的はターゲット読みです。


月から逃げて初めてだった。

姫様の我が儘から、師匠の実験台から、てゐの悪戯から、その全てから解放された。

紫様に感謝していると言っても過言じゃない。

 

(まぁ少し寂しいですが…)

 

他の人はどうか知りませんが、私はこの世界の基本は知っていました。

というのも、この企画により私が世界を渡る前、『本当の事情を話せるような人がいない』と言われたのです。

これを聞く限り他の人は一人二人くらいは異世界出身だと話しているのでしょう。

なので私は、渡る前に常識や金銭感覚、そして家を用意してもらいました。

必要と言われ紫様に勝手にさせられたことではありますが、私は満足していました。

それともう一つ、紫様が勝手に用意したことですが、私は幻想郷でいう寺子屋、つまり学校に通うことが決まっているそうです。

なんでも、年によって学校が別れており、勉学の方は幻想郷の遥か先らしいです。

私はその学校でする勉強のところぐらいまで先に予習しました。

師匠達もいないから自分の時間が有り余る。

初めて来た場所でも自分の場所がある。

この世界の人と同じ程の知識がある。

お金に問題はありますが、基本的なことは全て完璧と言えるでしょう。

唯一の不満は薬を自作しても、確認してくれる人も、ましてや売れる人もいないことですが、そこは仕方ないと割り切っています。

とにかく、これまで生きてきた中で、かなり充実した時間になるのは間違いないはずです。

 

「そういえば…耳もないんでしたね…」

 

普通の人として生活する以上、あの耳は隠さなければならない。

紫様が境界を操って、耳を外したことで問題はありません。

ただ少々落ち着きませんが。

とりあえず紫様が運んでくれた私の私物を部屋に広げることから、私の異世界での生活の一日は始まりました。

 

―――――

 

「そういえば能力は平気…?」

 

私の能力は目を見てしまうと強制的に発動してしまう。

もし能力が健在なら、町の人を狂気に染めてしまうかもしれない。

そんなパンデミックのようなことは望んでない。

 

(……眼鏡ってあったっけ…?)

 

私は一応だて眼鏡を付けることにした。

 

―――――

 

荷解きが終わり、私はこの世界についてのメモ書き(紫様が置いていった)を読み始めました。

そもそも私が学校に通う理由が分かりませんし、お金の稼ぎ方も分からないから色々書いてありました。

ある程度は知っていても、まだ基本でさえ知らないことはあるので助かります。

 

―――――

 

学校に通う理由……関わってほしい人が関連している。

おそらくこれは私が会った方がいい人でしょう。

稼ぎ方……アルバイト。

アルバイトというのは時間による給金で働く一時的な雇用のこと…でおそらく合ってます。

幻想郷で例えるなら、咲夜さんとは違い、赤蛮鬼さんのような働き方でしょう。

(赤蛮鬼は幻想郷の食事処で働いてる)

私が稼ぐとなるとアルバイトでしょう。

どこで働くかは後々考えます。

学校に通うのは一週間後。

それまでに私がやることは、生活必需品の購入、授業の再予習、近辺地理の把握、能力の再確認、といったところでしょうか。

 

「アルバイトは…学校に慣れてからでも平気ですね。」

 

お金は一月毎に紫様が至急してくれるから心配は実際ありません。

働くのが当然と思ってしまっているだけです。

あまり自堕落に生活して、姫様のような駄目人間にはなりたくないので。

まあそんな姫様でも嫌いではありませんでしたが。

せめてお師匠様に実験台にされた後に絡むのは止めてほしいです。

とにかく働くのはもっと先と決めました。

なのでまずは、学校までの距離、食料品や雑貨類を売ってるお店を探すところから外出を始めました。

 

―――――

 

その後無事に大体の地理を把握し、学校までそこまで遠くないことを確認した私は、授業の予習をして眠りに就きました。

 

 




二次創作から考えると、霊夢、魔理沙、妖夢の三人が一緒が多いと思うんですけど、次点はフランになると思うんですよ。ゲーム実況とかから考えるとですがね?ただフランは霊夢側で出したから無理。そう考えると妖夢から繋がる次点は憂曇華になったので四人目決定です。カップリングも多いですしね。ここまで来ると五人目は当分先です……


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標的2

やっぱり原作とキャラが違う!と嘆いています。今回はまだ原作名出せませんでした。色々疑問に思いつつ気にしないで下さると私は嬉しいです。


街に出ると、知らない物ばかりで少しはしゃいでしまった。

薬品に関係する物なら分かる物は多い。

しかし関係ない物では分からない。

娯楽関係は幻想郷と比べて充実し過ぎている。

食料品も幻想郷にない物が多い。

中でもインスタントなどは妖夢に進めたいと思った。

冷蔵庫も大きい上に性能も多い。

布団は紅魔館のベッドのような物が一般的。

なにより、一つの場所で大体の物が買えるデパートなどは驚いた。

紅魔館より大きい建物は幻想郷にはない。

下見で来た学校にも驚いた。

これが学舎なのかと、住居ではないのかと。

幻想郷との違いに、驚いたことを挙げればきりがない。

これが、七日の間に私の抱いた、外の世界の感想だ。

 

―――――

 

今日から学生となることに、私は心踊らせていた。

あらかじめ聞いていた時間より三十分前に来る程には。

 

 

「少し速かったですね…」

 

職員室に向かって先生方に挨拶するにしても、十分もかからないだろう。

多少時間を潰せないか…と考えていると、白い球が飛んできた。

それは壁にぶつかった後、足下に転がり動きを止めた。

 

「なんでしょう…これ…」

「悪い!ぶつからなかったか?」

 

校庭の方から少年が走ってきた。

私は拾い上げた球を返し、改めて校庭の様子を観察した。

スポーツについてもある程度知っていたため、何をしていたかは想像がついた。

サッカーに野球、ハードルを走っているのは陸上という競技だろう。

三十分、いや二十分ほどここで時間を潰すのもいいと思った。

 

―――――

 

チャイムの音に気付き、時間を確認してみると、時間まで五分程となっていた。

私は急いで職員室へ向かい、先生方への挨拶を済ませ、自分の教室へと案内してもらった。

そして、あることに気付いた。

教室での私の紹介、先生が呼んだ名前は、『八意』だった。

私の名前は、『八意鈴仙』となっていた。

どういうことかと混乱していると、紹介が終わり、自己紹介をするよう促される。

 

「あ…えと…八意鈴仙です。お願いします。」

 

誰かに聞くことも出来ないため、私はこの日八意鈴仙となった。

 

―――――

 

後に知ったが、私の本名の形態は、この世界では少し珍しいようだ。

この世界の名前は、外国人なら名前の後に名字。

日本人なら名字の後に名前、と分けられていて、確かにミドルネームはたった七日とはいえ見たことがない。

そのために紫様が少し名前を変えて書類の提出をしたのだろう。

当の私はというと、少し嬉しく思った。

師匠はどうかは知らないが、私は師匠を、母のように慕っている。

だから、家族のように、形だけでもしてもらえたのは、少しだけ、嬉しかった。

 

―――――

 

紹介から四時間、私の席の周りはようやく空いた。

というのも、転入生は知り合いもいないため、色々と質問を受けるというのは分かっていた。

好きなものは、どこから来たか、彼氏はいるか、など色々。

正直に言えば少し疲れた。

でもいい人ばかりで、学校の案内をしてくれたり、今日持って来ていなかった教科書を見せてくれたり、色々と助けてくれた。

思い返していると、先程仲の良くなった少女が話しかけてきた。

 

「まだ学校のことで聞きたいことある?」

「ううん、大丈夫。教室の場所とかは後で見てみるから。」

「そっか。何か分からなかったら聞いてね。」

「…私のしゃべり方直ってる?」

「え?ああうん。大丈夫だと思うよ。」

 

実は敬語で受け答えしていると、クラスメイトの一人が、『敬語なんてやめよっ!なんか他人行儀みたいで嫌!』と言ってから、直そうとしていたのだ。

 

「それならいいけど…」

「しゃべりやすいしゃべり方でいいと思うよ。」

「…そうですね。ありがとうございます。」

「ううん。別にいいよ。」

 

授業のため話すのをやめ、席に戻った。

初日で彼女のような親切な子と話せてよかったと思った。

…彼と話してはいないが、実は今朝の野球少年も同じクラスだった。

 

―――――

 

放課後になり、私は帰宅した。

一緒に先程の少女と私も含め四人で帰っていたが、道が違うため少し歩いて別れた。

それから帰宅した私は、私服に着替え、授業の復習をし、夕食を済ませお風呂に入った。

そして出た後、私は学校に携帯を忘れたことに気付いた。

帰る途中、メールすると言われていたのに…と思い、夜も遅くはなっていたが、学校に取りに行くことにした。

思えば知らない道具を使うことに、少し舞い上がっていたのかもしれない。

私は一応制服に着替え、夜の学校へ向かった。

 

 




野球少年と仲良くなった少女は原作キャラです。多分察しが良すぎる人には野球少年で原作ばれたかもしれないですね…次回間違いなく主人公出ます!では。


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標的3

まだ原作出なかった。次回確実に出ます。鈴仙の口調は友達間のため敬語なくした普通の子って感じで特徴なくなってしまいましたがご了承下さい。


夜……ということもあり、私は早足で学校へ向かった。

別に昼でも夜でも変わりないとは思うが、夜の方が不審者に遭遇しやすいというのは基礎知識だ。

さすがに私も変態や不良に好んで会いたいとは思わない。

…想像してしまうと少し怖くなった私は速度を少し上げたのだった。

 

―――――

 

二十分程でついた学校には、特に昼との違いもなく、少し暗い程度だった。

時刻としては八時近く、まだ人がいてもおかしくない時間だ。

つまり私はばれずに潜入する必要が出来……などと考えるはずもなく、諦めて明日にしようかと歩きながら考えていた。

しかし以外なことに、外周を少し周った限り、既に電気のついた部屋はなかった。

この暗さで人がいるとは到底思えない。

私は少しおかしく思いながらも、入って平気そうと考え、玄関口から入った。

思えばこの時、何故人がいないのに開いているのか考えなかったのだろう。

 

―――――

 

「えっと……あ、あった!」

 

携帯を見つけた。

中を見ると、やはりメールが届いていた。

私は忘れていった携帯を今とりに来たことを伝え、返信が遅れたことを謝罪した。

彼女は『大丈夫だよ!それより夜道は危険だから、気を付けて帰ってね。』と、私の身を案じる返信をした。

まあ夜だろうがそこまでの危険はないと思うが…

とにかく私は安心し、帰宅を始めた。

時間は既に九時を回った。

 

―――――

 

「…あれ?閉まってる…?」

 

入った時同様、玄関口から出ようとすると、扉は何故か閉められていた。

警備員の人が丁度よく閉めてしまっただけだろうと特に慌てることはなかったが、どう帰るか悩んでしまった。

ここが閉まっても職員用玄関は内側に鍵がある。

窓も同じく内側に鍵はある。

出るだけならそう難しくはない。

しかし鍵を開けっ放しで行くのは、自分の家でもないのに駄目ではないか?

かといって玄関口の鍵があるわけでもない。(例えあっても使うのは無理)

あとは屋上からの脱出くらいしかない。

しかしこれも他人に見られた時がまずい。

どこの女子高生が屋上から飛び降りて無事でいられるのか。

それだけで化け物認定されてしまう。

かといってゆっくり降りるのもそれはそれで…

 

(……どうしよう…)

 

―――――

 

困っている彼女を見て、微笑んでいたのは私こと八雲紫である。

そもそも鍵を閉めたのも警備員を帰らせたのも私だ。

これからここで始まる戦いを、私は彼女に見せようと思ったのだ。

 

(あの子変なところで真面目だし、この手で閉じこめれば出ないとは思ったけど……)

 

『……やっと解けた…次は…』

 

「予習始める?普通。」

 

まさかの授業の復習予習を始めた。

女子高生が深夜の学校で勉強とかなかなかに凄い。

普通の子ならいろんな意味で鍵とか気にせず帰宅する。

…そろそろ始まる時間なので、出来ればあれに気付いてほしい。

既にリングは設置してあるのにと、少しもどかしい気分の私は、いっそ放置しようかと眺めているのであった。

 

―――――

一時間後

―――――

 

「ん……そろそろ止めようかな。…どうやって出よう。鍵開けっ放しでももういいかな?泊まるのもありかも…」

 

と自問自答していると、急に外が光った。

正確にはグラウンドに何故かあるリングが。

私は何かは分からなかったけど、人がいることを確信したのでとりあえず向かうことにした。

 

―――――

おまけ:自習前

―――――

 

「どうしよう……人が来るの待とうかな…警備員の人なら深夜でも来ると思うし…」

 

ふと昼のことを思い出し、机の中に手を入れた。

そこには記憶の通り教科書やノートが入っており、人を待つには丁度よかった。

多少こちらに来る前に勉強したとはいえ、まだ不安が残る学力。

家より集中出来るし、逆にいいかもしれないと、私は数学から始めるのであった。

 




もう分かる人多いと思う。原作知ってれば。鈴仙の勉強の流れは思いつきです。というのも原作では0時程に始めるというのに、どれだけ頑張っても学校来たあたりでは九時くらいだったので…真面目過ぎるとどうなるかの想像です。ちなみに友達の実体験らしいです。(聞いた)


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標的4

遅くなりましたすみません。


「……?」

 

外が夜だというのに明るい。

それも昼以上に。

時刻はそろそろ十一時、一時間以上いるのに警備員どころか誰一人として来ない。

だというのにグラウンドがあれである。

だから来てみたのだが、その場にいるのは見知らぬ方々。

中には生徒、クラスメイトもいる。

一体何事だろうか。

 

―――――

 

「!誰だ!」

『!?』

 

恐る恐る近付くと、場に似合わない赤ん坊に気付かれ、その場の数人が驚いた顔をしていた。

よく見るとやはり生徒がいるが、見知った顔は三人。

 

 

全員クラスメイトだ。

しかしそれ以外は全く知らない。

私を見てナイフを構える目元を隠した男性。

剣を構える長髪の男性。

ただの一般人でしかない私は、数人に敵意を持った目で睨まれていた。

 

「八意!?なんでまだ残ってんだ?」

「山本さん達こそ何を…」

 

クラスメイトに話を聞こうとしたら、それを遮り、女性が宣言した。

 

「晴れのリング、ルッスーリアvs笹川了平、勝負(バトル)開始!」

「勝負?」

「こ、こっちの話だから!早く帰った方が…」

「そ、そうだな!てことでまた明日な!」

 

山本さんも沢田さんも、何やら慌てた様子で私を帰そうとする。

一体なんなのだろうか。

 

「あの…」

「ツナ、そいつには言って平気だぞ。」

「喋る赤ん坊!?」

 

あり得ない。

そうあり得ないはずだ。

赤ん坊が立って喋る、それも流暢に。

医者の弟子である私が、それに興味が湧かないはずもない。

 

「紫から聞いたぞ。お前にこの戦いを見せるようにな。」

「紫さんから?」

「誰だ?」

 

どうやら赤ん坊だけが紫さんから話を聞いているらしい。

事情を話せる相手がいないと言っていたはずなのに…

 

「紫のことは気にしなくていいぞ。口止めされてるからな。とにかく鈴仙には後で説明してやる。今は黙って了平の方に集中しろ。」

「リボーンさんが言うなら…」

「リボーン!?関係ない人を巻き込むなよ!」

「関係大有りだぞ。説明はしねぇが、こいつもマフィア寄りだ。」

「えー!?この人もマフィアなのー!?」

「うるせぇぞツナ。」

 

何やら私は蚊帳の外で、二人の言い合いが行われていた。

私はどうしようかと考えたが、紫さんが見るよう言ったのに、無視するわけにもいかないと、その場に留まることにした。

言い合いの間にもリングの二人は戦っていた。

白髪の方は先輩であり、ボクシングと呼ばれる格闘技を得意とするらしい。

対する相手は、サングラスをかけた女性のような口調の男性であり、ムエタイなる格闘技を得意とするらしい。

リングは輝いており、赤ん坊からサングラスを借りなければ中は見えなかっただろう。

故に先輩の方は、あまり視界が正常ではない。

蹴られ殴られ相手の独壇場。

 

「私の思う究極の肉体美とは、朽ち果てた冷たくて動かない肉体♪」

「それって死体のことじゃねーか!?」

「酷い……」

「ふざけるな!」

 

果敢にも走りだし、先輩は相手を殴り飛ばした。

空中にいる相手に、先輩は確実に拳を当てた。

しかし悶絶しているのは先輩の方だった。

 

「ぐあっ!腕があぁ!」

「晴れの守護者らしく逆境をはね返してみせたのよん♪私の左足は鋼鉄が埋めこまれたメタル・ニーなのもうあなたの拳は使いものにならないわ。」

 

先輩の左腕は、おびただしい量の血を流していた。

確かに彼の言う通り、もうこれ以上動かすことさえ激痛を伴う。

直後、空中から声がした。

 

「立てコラ!」

「コロネロ!」

 

鳥に捕まれ飛ぶ赤ん坊。

それは、先輩の師らしい。

その赤ん坊が言うには、細胞を休めてベストな状態にするため、右拳は使っていなかったらしい。

その声を聞いた先輩は立ち上がり、右手を掲げ言い放った。

 

「この右拳は、圧倒的不利をはね返すためにある!」

 

その宣言を聞いた相手は笑い、とてつもない速度で動き始めた。

対応出来ず拳を食らう先輩は、尚諦めず構える。

そして相手を捉えた先輩は、拳を全力で振り上げた。

 

極限太陽(マキシマムキャノン)!」

 

振り上げた拳は相手の顎を捉え、殴り飛ばした。

しかし相手は余裕そうに着地した。

 

「クリーンヒットしてたらちょっとやばかったかしら。」

 

観客は悔しそうにするが、先輩は確かに当てたと言った。

直後照明が砕けた。

辺りは夜の暗さを取り戻し、先輩は瞳を開いた。

 

「拳圧で照明を砕いたのなら凄かったですね。」

「え?」

「どーいうことかしら?」

「ルッスーリア、奴の体を見てみなよ。」

 

先輩の体には、塩の結晶が浮いていた。

先輩は汗の水分が照明の熱により蒸発し、残った塩分を拳で打ち出すことにより、照明を破壊したのだ。

 

「よく分かったな。」

「………」

 

拳圧だけでそんなことが出来るなど、私は思っていない。

正確にはこの世界でそれ程の拳を持つ人が一般人などあり得ないと思っている。

幻想郷なら美鈴さんとか優香さんとか出来る人はいると思うけれど……

とにかくからくりが分かった彼は、それでも余裕だと言わんばかりに、同じことをした。

先輩の体から結晶を弾き、照明を割る。

先輩がやったものより、明らかに高度な技術を使う。

それでも尚諦めない。

その拳は、三度相手に向かっていく。

しかしその拳は、彼の持つメタル・ニーによって完封されてしまった。

 

「うわあああ!」

「そんな…!右手まで…!」

 

沢田さんが狼狽えていると、背後から数人の人間が近付いてきた。

先輩の妹、私のクラスメイトの京子さんと、黒川さん、そして沢田さんの父親。

京子さんは、この戦いをケンカだと思っているようだ。

だから言った。

ケンカはやめてと。

しかし先輩は止まらない。

 

「たしかに額を割られた時…もうケンカはしないと約束した…だがこうも言ったはずだ…」

 

『それでもオレも男だ…どうしてもケンカをしなくちゃならない時が来るかもしれない…しかし京子がそれほど泣くのならもうオレは…』

 

「負けんと…!」

「た…立った…!」

「みさらせ!これが本当の…極限(マキシマム)太陽(キャノン)!」

 

先輩の拳が、相手のメタル・ニーを砕いた。

 

 




今回あまりセリフ付けられなかった。鈴仙いるだけで大きく変わるところ争奪戦ではないかもしれない…未来編からじゃなきゃ活躍させられない主をお許し下さい!ということで原作公開!『家庭教師ヒットマンREBORN!』
…余談ですが前、後書きでルビって使えないんですよね…なので家庭教師はカテキョーっていうルビを付けといて下さい。


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標的5

妖夢編と揃えるため一旦妖夢編を飛ばしてこちらを更新します。妖夢編を見たかった方はすみません。


「うぎゃあああ!」

「決まった!」

 

沢田さんが声を張り上げ喜ぶ。

一方ルッスーリアの方は、メタル・ニーが砕かれたことを信じられないようだ。

仲間達は勝負ありといい、コロネロと呼ばれた赤ん坊は、よくやったと先輩を誉める。

しかし尚諦めず、ルッスーリアは闘おうとする。

 

「すごい執念だ…!」

「ちげーぞ。」

 

沢田さんは執念と言い、リボーンと呼ばれた赤ん坊は違うと言う。

そう、これは執念ではない。

表情、呼吸、動悸、言葉、その全てが向けられている感情は…恐怖。

焦る彼から、血飛沫が散る。

それに高校生である沢田さんや先輩達は、酷く動揺する。

 

「弱者は消す。それがヴァリアーが常に最強の部隊である所以の一つだ。」

 

リボーンはそう説明する。

沢田さんは更に動揺を強くする。

人が傷付く姿、死ぬ姿を、慣れていないのだろう。

しかしそんな彼を無視し、女性達は勝負の終わりを宣言する。

 

「たった今ルッスーリアは戦闘不能とみなされました。」

「よって晴のリング争奪戦は笹川了平の勝利です。」

 

それに続き、次回について宣言し、ファイトリングごと消え去る。

 

「明晩の対戦は…雷の守護者同士の対決です。」

 

―――――

 

「……」

「色々説明するが…その前に聞くことがあるぞ。」

 

私達は…リボーンと私は、皆から離れ、二人で話していた。

 

「なんでしょうか?」

「…お前達は何者だ?あの紫って奴も、お前も、ボンゴレの調査で何も情報が手に入んねぇ。しかもあいつは、よく分かんねぇ空間を操って現れる。」

「…正直私もあまり分かりません。それに…」

 

異世界などと正直に言う訳にもいかない。

紫さんが何を言ったのかも知らない。

 

「…互いに詮索しても無駄みてぇだな。」

「…そうですね。」

「ヴァリアーについての話と、ツナ達についての話、二つ話して解散するぞ。」

「分かりました。」

 

―――――

 

(奴らは一体何者だ?)

 

ボンゴレ秘匿の死ぬ気の炎を知る八雲紫。

まるで先を予見しているかのような胡散臭さ。

数多あるマフィアの秘匿情報を平気で掴む調査力。

そいつが連れて来た八意鈴仙。

そして、あいつの現れた透明(・・)な空間。

 

(一体あれは…)

 

―――――

 

「相撲大会…ですか?」

「う、うん…」

 

それで誤魔化される京子さんが心配になる。

争奪戦についてをリボーンさんから聞いた私は、学校の屋上で他にも色々聞かせてもらっていた。

マフィア間共通で最大と認められるボンゴレファミリー。

そのボス候補、沢田綱吉。

その守護者である先輩、山本さん、獄寺さん。

ボス候補を決めるための真剣勝負。

それがリング争奪戦。

リボーンさんは家庭教師として沢田家に滞在している。

一般人である京子さんや黒川さんには、相撲大会で誤魔化していると言う。

 

「よく誤魔化せますね…」

「うん…」

「てめぇこそ何なんだ?!」

 

獄寺さんがイラついたように言う。

 

「リボーンさんが言うから気にしなかったが…色々おかしいだろーが!」

「ご、獄寺君…!」

「十代目!こいつが敵の可能性もあります!ヴァリアーの手先の線も…」

「ねぇな。」

 

いつの間にかリボーンさんが柵の上に座っていた。

 

「リボーン!」

「敵の可能性がないとは言わねぇが、ヴァリアーの部下はあり得ねぇ。」

「ど、どういうことですか?」

「ボンゴレの情報網は全マフィア間最高レベルだぞ。XANXUS(ザンザス)の素性でさえ、全てでなくとも多少は洗える。」

「えっと…」

「まだ分からねぇのかダメツナ。こいつは何も分かんねぇんだ。」

「それじゃあ本当に敵かもしれないじゃないですか!」

「そうとも限らねぇ。」

 

確かに私は信頼を得るのは難しい。

考えると争奪戦を行う最中、一般生徒が居残っているのを気付かれないだけでも相当おかしい。

紫さんが根回しをたのだろう。

 

「九代目は信頼してるみてぇだぞ。現に…」

 

彼はその小さい体躯のどこに隠していたのか、小さな箱を取り出した。

その中に入っていたのは…

 

指輪(リング)?」

「九代目から渡すよう言われた物だぞ。()からの贈り物らしいぞ。」

「贈り物って…」

 

指輪を貰う理由なんてないのでは…

まさか紫さん目覚めましたか…?

…ないでしょう。

 

「そいつはボンゴレリング程ではないにしろ、相当な石で造られた指輪らしい。名前はバリエラリングらしいぞ。」

「バリエラリング?」

「そいつがお前に送られた物だぞ。」

「でもなんで…」

「知らねぇぞ。」

「え…」

 

怪しまれたままだし、謎も残るままだが、その日に話すことは話したのでそのまま解散となった。

授業を普通にこなし、帰宅する。

そして争奪戦になり、私は悲惨な光景を見てしまう。

五歳程の子供の雷に打たれる姿を。

 

「ランボぉ!」

 




後書きですが遅れてすみません。


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標的6

2000文字越えたなぁ…モチベ回復して来ててよかよ~


幾度となく、人の死は見てきた。

赤子から老人まで、病死から殺人まで、身内なんて不老不死だからと何度死んだか。

しかし…一桁の年の子供が雷に打たれて、泣くだけで済む姿は初めて見た。

一億ボルトの電圧を受け、無傷に近い。

 

「無事だ!生きてる!」

「あり得ない…」

 

驚愕の現象、その説明を、リボーンさんがしてくれた。

 

「幼少の頃、繰り返し雷撃をうけることでまれに起こる体質変化、雷撃皮膚(エレットゥリコ・クオイオ)だぞ。」

 

雷を通しやすい皮膚のことであり、雷撃を地面に受け流すことで、脳や内臓に対するダメージをゼロにする体質らしい。

 

「でも雷を何度も…それに今でさえ幼いのに、更に若い段階で受け続けたら…生きてるはずがないです。」

(それこそ…生まれつきの能力でもなければ…)

「生まれつきの体質と天性の運、環境があれを創ったんだぞ。」

「可能なんですか…?」

「あれが実物だぞ。だからこそランボは、雷の守護者としてふさわしいんだ。矛としての雷撃、ファミリーの避雷針となる盾、雷の守護者としての使命を、アホ牛はその身で体現しているんだぞ。」

 

その言葉を聞いたランボの相手である、レヴィ・ア・タンは、ランボを蹴り飛ばした。

怒りに任せ、確実に殺しにかかっている。

レヴィが剣のような物を振り上げ、とどめを指そうとする。

直後、ランボはその多過ぎる髪から、バズーカを取り出した。

バズーカごと吹き飛び、その煙から出て来たランボは…青年になっていた。

…何故だかエプロンをかけ、箸で餃子を持って。

 

「ヴおぉい!何だありゃあ!?部外者がいるぜぇ!」

 

敵の長髪が叫ぶ。

その最もな疑問は、仮面の女性、『チェルベッロ』により解消される。

青年は、10年バズーカという兵器により呼ばれた、10年後のランボのようだ。

青年は頭に角を付け、雷を自らに降とした。

 

「くらいな!電撃角(エレットゥリコ・コルナータ)!」

 

その雷を帯電し、角に込めて突撃する。

しかしその突撃が、相手に当たることはなかった。

レヴィの背中にあった武器…パラボラが展開し、ランボを周囲八方から焼いた。

そのあまりの激痛に、ランボは我慢出来ず泣き出した。

そこに追い討ちをかけるように、パラボラを肩投げ刺す。

再びとどめを指そうとするレヴィに対し、ランボが取った行動は…

 

「う……うう…うわあぁあ!」

 

再度の10年バズーカの使用。

 

「ん?」

「何だ…?このただならぬ威圧感は…」

「雷が…脈打ってる…?」

 

更に成長した、20年後のランボが、雷を纏って現れた。

 

「やれやれこの現象、夢でないとすればずいぶん久しぶりに、10年バズーカで過去へ来たようだ。」

 

彼は沢田さん達を見て懐かしむような顔をする。

しかしそんな場合ではないと、彼はレヴィを見る。

 

「昔の俺は相当てこずったようだが…オレはそうはいかないぜ。」

「ほざけ…消えろ!」

 

再び展開したパラボラは、ランボの周囲を無情にも囲い、雷を放射する。

更には避雷針に落雷し、何倍もの電圧へ跳ね上げる。

 

「奴は焦げ死んだ。この電光、ボスに見せたかった。」

 

勝ちを確信している。

しかしそうはいかなかった。

 

「エレットゥリコ・リバース!」

 

彼はその電流を全て地面へと受け流した。

 

「遠い将来開花するかもしれないこの雷の守護者の資質にかけてみたんだが…オレの見込み以上のようだな。」

突然来た沢田さんのお父さんは、そう口ずさむ。

更に怒りを覚えたレヴィは、心臓に直接電撃をくらわせようとする。

その行動に呆れを覚えたようなランボは、ふと見た地面に落ちる角に驚いた。

ランボは落ちていた角を拾い上げ、攻撃を角で防いだ。

すると角のニスが剥がれ、先程獄寺さんが書いたアホ牛の字が顔を出した。

沢田さんのお父さんが言うには、あの角は20年後のランボの物だったようだ。

その角を頭に取り付けたランボは、先の技、『電撃角』を発動する。

しかしその技には致命的な弱点があり、レヴィもそれを見切っていた。

リボーン曰く、リーチが短い。

角に当たらなければ効果がないのだ。

 

「昔の話さ。」

「!」

「電撃が伸びた!?」

 

雷を角の前面に突き出した。

弱点を克服した『電撃角』は、容赦なくレヴィに襲いかかる。

 

「年季が違う。出直してこい。」

 

勝ちを確信し、降参を願うランボは、突然子供に戻ってしまった。

 

「ぐぴゃあああ!」

 

子供のランボは、未来の自分がその場に残していった雷に、自ら焼かれた。

そしてその結果、気を失ってしまった。

すぐさま全員が助けに入ろうとするが、リボーンさんに止められる。

ルール上戦闘区域への侵入は、侵入者共々失格となる。

助けに入れず手をこまねいていると、レヴィは期を逃さずに蹴りつける。

パラボラで叩き、ついにはパラボラに雷を纏い振り上げる。

 

(見てられません…!)

 

能力を使えるかは試していない。

だけど今使えなければ、助けられる命を失うことになる。

 

(お願い…!)

 

「!?何だ…!?何が…」

「急にどうしたの!?」

「攻撃を…止めた?」

 

能力による幻覚作用、今レヴィの視界には、ランボの姿は遠くに写っている。

他からは普通に見えるが、もうレヴィがランボを殺すことは出来ない。

 

「はぁ…はぁ…!」

 

幻想郷と比べ能力が使いずらい私の疲労は、相当に大きかった。

リボーンさんは構えた銃を下ろし、他の面々も何が何だか分からずに、しかし安堵の表情をしている。

疲れはあるが、私は弾幕をランボの髪に向けて飛ばし、リングを弾きとばす。

レヴィは不意に飛んで来たリングを掴んだ。

その場の誰もが理解し切れないまま、雷の守護者同士の対決は幕を下ろした。

 




おうどんちゃんの能力は正確には波長を操る能力であり、屋敷や竹林を操作して迷宮にすることも可能な能力である。ということで今回ツナには失格にならないでもらいましょう。何故かって?おうどんちゃんに能力の厳しさを教えるためですね~他には特にないです。


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標的7

今回ほぼ回想…だなぁ…短く済ませちゃった…


「……お前か?」

「…っ」

「このリングを弾く前に…何をした?」

「………」

 

知らないふりをしてもすぐに分かる。

激昂したレヴィが私に攻撃をするのもあり得る。

だがそこに、大人しくする理由などなかった。

 

「…子供をなぶり殺すのが楽しいですか…」

「何…?」

「平気で他人を殺すことが、それほど楽しいんですか!?」

 

激昂していたのは自分だった。

親しい人達は不老不死だった。

だからこそ、生に対する感情は人一倍あった。

私は…師匠の弟子だから…

 

―――――

 

『何で医師をしているか?』

『はい!だって師匠の薬安いですよね?』

『そうね。』

『人が好きなわけでもないですよね?』

『嫌いではないわね。』

『別に内臓見たいとかの変態でもないですよね?』

『もしそうなら貴女も同類よ。』

『うっ……まあとにかく!お金でも好きだからでもない。何でなんですか?』

『……そうね…ふふ…優曇華、知ってるかしら?私には蓬莱人を殺す薬は作れないって。』

『え!?師匠にも作れないんですか!?やっぱり蓬莱人は…』

『それが理由よ。』

『……そうなんですか……微力ながら、お手伝いさせてもらいますね!』

『…貴女は優しいわね。なら少し、師匠らしい言葉でも言おうかしら。』

『師匠らしい?』

『ええ。…別に姫様を死なせてあげるために研究、実験として医師を続けてるわけではないわ。』

『え!?嘘だったんですか!?』

『それも理由の一つよ。けれど…死なない人間を作ったことに、私は酷く後悔しているの。それを殺すことで償うなんて、おかしな話しでしょう?死ぬことも、生物の生きる理由なのに…私は姫様を縛ってしまった。』

『…で、でも!私は死ぬのは嫌ですよ!』

『姫様もそうよ。死にたくないから生きる。どうせなら楽しむとかって、好きに生きてる。』

『ああ…(姫様のだらけ回想中)』

『それを作ったのは、一体何かしらね?』

『蓬莱の薬じゃ…?』

『そう。それを作ったのは何故だと思う?』

『死なせたくないから…?』

『…私は…死なせたくないから医師をしているのよ。せめて良い思い出でも作ってから、安らかに眠れるよう、治すことを生き甲斐にしているの。』

『…ただの延命じゃ…』

『あら、そうかしら?始まりには終わりがあるものだからね。延命が駄目なことではないでしょう?』

『駄目とは言いませんが…』

『…私が医師を続ける理由…それは、皆に生きてほしいからよ。』

 

―――――

 

あの人は底抜けに優しいから、それが本心だとすぐ分かる。

私は別に皆が生きてほしいとは思わない。

でも周りの人に生きてほしいとは思う。

たとえ会って数日でも、知り合い、ましてや子供を死なせるつもりは毛頭ない。

 

「それ以上その子を傷付けるなら、勝負なんて知りません!貴方を…撃ち抜く!」

「…ならば貴様から殺すまで…!」

 

その言葉のすぐ後、私の周りにいた人達が、守るように前に出た。

 

「させません!」

「息子の友達を殺させはしないな。」

 

守護者の人達も戦う態勢を取る。

 

「…仲間を護れないなら、こんな戦いに意味なんてない…!皆を傷付けるなら…XANXUS、俺はお前を許さない!」

 

ヴァリアーの全員も戦闘態勢を取る。

 

「くっ!」

 

その時、突然上から矢が射られる。

 

『!』

 

『……あまり私の弟子を虐めないでもらえるかしら?』

 

そこに居たのは間違えるはずもない。

私の師あり、親同然の人…

 

「師匠!?」

「久しぶり…かしらね?優曇華?」

 

八意永琳。

 




霊夢編以外初の他キャラ参戦や。元々ここで出すつもりだったけどね!むしろここしかないけどね!


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標的8

一応お師匠様と連動してもう一人出るんだけど…次に回しますね。他と比べておうどん編は短くなりそうだからね。多分長いのは魔理沙編かな?上手く調整を入れます。
いい忘れてたから追記:明けましておめでとうございます!今年もこの小説をお願いします。


何故ここに師匠がいるのか。

てゐや姫様はいるのか。

とても堂々と空に浮く師匠に、私は疑問が止まらない。

師匠の様相が少し違ったことにも疑問があった。

能力の使い難さから、空を飛ぶほどの力は出ない。

それを補うかのように足に着く何かは、青い炎を噴射している。

おそらくあれで飛んでいるのだろう。

弓の弦も青い炎で出来ており、矢は普通のものではなく藍色の炎で形造られている。

指には二つの炎を放つリング。

片方の形状は私の持つ『バリエラリング』に程近い。

 

「その子を傷つけるのなら、相応の覚悟を持つことね。」

「ししっ♪なーんか面白そう…な!」

 

ベルフェゴールのナイフが師匠に到達することはなかった。

 

「あら…随分と大きい的ね。」

「矢でナイフを落とした…?」

「それだけじゃない。矢を放つ速度が銃並だ。」

「相当な腕だぞ。引く瞬間さえ速い。」

「あの炎…俺と同じ…」

「死ぬ気モードじゃねぇな。知らない技術だ。敵なら厄介だな。」

「安心なさい。私は貴方達の敵ではないわ。」

 

師匠が敵に回る心配はなさそうだ。

それに師匠が見てくれるなら、ランボも命に別状はなさそうだ。

 

「優曇華。探していたわ。紫から話を聞いて漸く見つけた…」

「師匠…」

「ふん…奴はただの不法侵入者だ!」

 

ランボを焼いたレヴィ・ボルタは、開いた傘を破壊され不発。

続く二の矢はレヴィの頬を掠める。

 

「…!」

「次は射抜くわ。」

「凄い…コロネロさんの射撃にも引けを取らない…!」

「……」

「私は戦いに来たわけじゃない。それでも戦いたいと言うのなら…」

 

藍色の矢は、一際大きく燃え上がる。

 

「死ぬ覚悟を決めることね。」

 

ただ一人を除き、全員が息を飲む

少なくともこの場において、師匠は絶対的強者だった。

だがxanxasは笑った。

 

「面白ぇ…!てめぇとはこの戦いが終わったら相手してやる…!」

「…そう。」

 

師匠はあまりにも余裕を見せる。

戦いが起きることなどないという確信を持って。

その姿は、私の見慣れた師匠の姿だった。

 

「優曇華。今日の戦いはもう終わりでしょう?話しがあるわ。一緒に来なさい。」

「は、はい!」

 

師匠はリング争奪戦になど興味はないのだろう。

すぐにこの場から去ろうとする。

次が誰かも分からないまま、私は師匠と先に校舎を出た。

 

―――――

 

「師匠はいつからこの世界にいたのですか?」

「そうね…おおよそ一週間前よ。ただそのための活動は、幻想郷にいた時から行っていたわ。」

「活動?」

「…今から行くのは幻想郷の知り合いの元よ。私と貴女、それ以外にも、まだ何人か来ているわ。」

「え!?もしかして姫様が…」

「違うわ。少なくとも姫様がどこにいるかは私は知らない。今いるのは…思い付きで行動して寺を壊して、あまつさえ家主に喧嘩売った馬鹿な天人よ。」

「……?何かイラついてます…?」

「…何でもないわ。とりあえずその馬鹿に会いに行くから付いて来なさい。」

「…はい…」

 

一体誰なのか…分かるが…師匠がイラつくのも珍しい。

何をしでかしたのだろうか…

 

 

 




天人といったらまぁ…ね?誰か分かるだろうし、何をしたかでも考えてみて下さい。


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標的9

遅れた理由ですが…弐も投稿しました。今は寺子屋組と幽香さんです。それから何故か知らないけど途中で切れてたので削除して再投稿しました。投稿五分で読まれた方…いないことを逆に願います。


師匠に連れられ付いた先は、隠れ家と言える程小ぢんまりとした一軒家だった。

普通の家のように見えるが、建っているのは人気のない河川敷。

周りに何もないことから、かなり異様な光景だった。

 

「…今の私達の拠点よ。」

「えっと…師匠だけでも私の家に来ますか…?」

「……」

 

―――――

 

「よく来たわね鈴仙!」

「天子さん…」

「私もいますよ~」

「……美鈴さん!?」

 

予想外過ぎる人物がいた。

そもそも接点もないから名前を覚えていたのすら以外だった。

二人共、宴会程度しか接点がない。

何故そんな人物が…この四人の接点なんて、一言二言会話する程度だというのに。

 

「天子、とりあえず説明したら?」

「そうね…とりあえずまずは状況確認から始めるわ!」

 

―――――

 

紫さんからの指示の一つに、『ボンゴレファミリー』への接触があった。

私は強制的に同じ環境に連れられたが、二人はマフィアの前に連れて行かれたらしい。

天子さんはいくつかのファミリーを面白半分に壊滅させていき、九代目守護者の一人に連行。

正当防衛として処理され、実力からスカウトされた。

美鈴さんは壊滅こそしていないけれど、逃げるために何人か倒したらしい。

それからは同じく連行、スカウトされた。

師匠もマフィアとの戦闘をしたが、守護者と遭遇するより前に二人に会ったようで、私のことを聞いてすぐに探し始めたようだ。

 

「…全員スカウトされたんですか?」

「私は違うけれど…一緒に行動している点からすると…変わらないわね。」

「面白いじゃない♪」

「私は逃げてただけなんですけどね…」

「…でも何でこんなに接点のない人が集められてるんでしょう?紫さんが送ってるんですから、調整も出来たと思いますけど…」

「何人か聞いてるわ。少なくとも姫様と妹紅は同じ世界。紅魔の姉妹とメイドも一緒に。寺子屋の子達も固まって動いてるわね。」

「衣玖もこの世界にいるって。」

「私は溢れました…パチュリー様と小悪魔も一緒らしくて…」

「……基準…分かりませんね…」

「目下の目標は、永江衣玖の発見。それと…これの習得。」

 

そう言って師匠が出したのは、ちょっとした装飾の施された小さな箱。

習得?

 

「このリングは普通のリングじゃないのよ。」

「そそ。」

「凄いですよね。」

 

三人は口々に言い、リングに炎を灯した。

天子さんはオレンジの、師匠は青と藍の、美鈴さんは黄色の炎を、それぞれのリングから発している。

 

「……ええ!?」

「この世界での戦闘方法の主だったものね。何せ能力が使えないもの。」

「それでも私達は身体能力で十分だから、今は問題ないわね。」

「それよりそれ…どうなってるんですか!?熱くないんですか…?」

「紫曰く…覚悟の炎らしいわ。」

 

生命力を消費して使用する力。

『死ぬ気の炎』と呼ばれる能力らしい。

自らの覚悟、思いの強さが炎を強くし、纏って使えば、強力な強化能力として使えるようだ。

小さな箱は『(ボックス)』 と呼ばれるもので、未来の兵器らしい。

リングの炎を注入することで開匣出来、中に兵器が入っている。

 

「何で未来の兵器を今使えるんですか…」

「あの隙間妖怪に時間の概念ないんてないのよ。」

「場合によるらしいけど…倒す仇がいるようね。」

「仇?」

「とりあえずこれを使えたら凄く強くなれますよ!可愛いですし…」

「可愛い…?」

「……私の匣には弓、天子の匣には剣、美鈴の匣には…虎が入っていたわ。」

「虎!?」

「どうやら動物型の兵器もあるらしいわね。貴女のも開けてみなさい。勿論そのために、炎の使い方も教えるわ。」

「は、はい!」

 

どうやらしばらく修行のようだ。

衣玖さんの捜索を平行して、私は三人に鍛えられることになった。

とは言え炎は一日もあれば使えるようで、匣を開けるのも一緒に出来る。

二日もあれば習得は可能らしい。

その間は、争奪戦の観戦も行けそうにない。

結果だけは、師匠が教えてくれるようだ。

余談だがとも、二人共九代目守護者から仕事を任せられているらしい。

師匠は自由だ。

 




次の戦いは嵐の獄寺とベルフェゴールの対決で、次は雨の山本とスクアーロの対決ですが…飛ばしますね…仇は原作キャラです。リボーンのね?珍しく予定立ててます。巻数的には二十巻近く先のですけど。


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標的10

山本とスクアーロは飛ばさないことになりました。



「…覚悟…?……思い…?」

 

心から思えるのなら、普段通りの意志でも炎は灯せるようだ。

師匠への恩返し。

そのためなら何でもするという『覚悟』。

それはリングの炎となり、覚悟を示す証明となった。

 

「簡単でしょう?」

「はい…それでこれを匣に…」

 

匣の一面、一つだけある丸い窪みにリングを合わせる。

すると中から明らかに匣より『多い生物』が姿を表した。

それも数匹ではなく多数。

 

「わわ!」

 

黒い模様が背側にあり、ヒレが黄色がかった白い魚。

 

「これは…テッポウウオね。」

「テッポウウオ?」

「ええ。別名『アーチャーフィッシュ』。地上の小動物を撃って狩りをする魚よ。銃を使う貴女には似合うかしらね。」

「でも何でこんな数…」

「貴女の属性の性質よ。」

 

炎の属性は計七つ。

雨、嵐、晴、雷、雲、霧、大空。

以上七つの属性それぞれには性質がある。

私の属性は紫色の雲、性質は増殖。

故に増殖したのだ。

とはいえ本体は一匹、何かの拍子に匣から出た時に増殖しただけだろう。

 

「まあ…これはこれで神秘的で少し…」

「そうですね。」

「集合体恐怖症に優しくないわね。」

「…あ、忘れてたわ。」

 

天子さんが部屋の端…箱の集まりを漁り始めた。

中から一つの小さい箱を取り出した。

黒いリングケースを。

 

「これあんたのよ。」

「…またリングですか?」

「さっき七属性あるって話したでしょ?私は大空、永琳は雨と霧、美鈴は晴、貴女は雲。だけど永琳のように、二つの属性を持つ人も少なからずいるのよ。」

「それじゃあ私も…?」

「そ。霧のバリエラリング。」

「あれ?霧って…」

「私の持つのはバリエラリングの複製品よ。」

「バリエラリングも七つでね。作るための石の回収は紫にも難しいらしいわよ?この世界にもうなくて。」

「そうなんですか…この残り二つは永江さんのですか?」

「ええ。私達全員使えないわ。」

「匣も余ってるのよね。」

「あれ?そういえば鈴仙さんの匣ってもう一つありませんでした?」

「あれ?そだっけ?」

 

天子さんが箱の集まりを再び漁り始める。

 

「あ、本当だあったあった。はいこれ。」

「…これも私の…?」

「まあ私達も一つずつではないのよ。永琳のはもう見てるでしょ?」

「……?」

「空を飛んでいたでしょう?あれは私の匣から出た装備の一部よ。」

「足に付いてたのですか?」

「ええ。」

 

つまり師匠の装備は全て匣依存の一式ということ。

能力が使えないのは全員同じなのだろう。

それでも天子さんや美鈴さんがマフィアを撃退出来ていたのは、素の身体能力が人間と異なるからだろう。

多分私や師匠でも複数人を相手に圧倒出来る力は十分ある。

それこそヴァリアー程でなければ。

 

「そもそも今の私達に武器はないも同然よ。この国だと銃刀法違反とかで武器を所持出来ないもの。」

「だから匣は便利で重宝するんですよねー」

「とにかくもう一つ開けてみたら?魚よりは使えるものだと思うわよ?」

「この子も使い用によりますよ…」

 

言いつつ匣に同じく炎を注入する。

しかし反応はない。

 

「あ、言い忘れてたけど匣によって注入する属性も変わるから。多分それは霧の方なんじゃない?」

「そうなんですか?」

 

霧の炎を匣に注入する。

すると今度は開匣に成功した。

中から現れたのは…

 

「今度は鳥ですか?」

「あんたの匣動物ばっかね…」

「可愛いですね~」

「これはトビね。奇襲が得意な生態の鳥類よ。」

「武器の方が助かりますね…」

「……そうでもないわ。貴女が言ったのでしょう?使い用だってね。」

「そもそもハンドガン位なら私があげられるしね。」

「弾幕みたいに炎を打ち出すのもありかもしれませんね。」

 

戦い方は千差万別…それが分かる一日だった。

 

…後から聞いた話だが、獄寺さんは命優先に戦いは負けたらしい。

次の戦いは雨の守護者だ。

 




匣は一人二つあります。永琳は装備、弓。優曇華はテッポウウオ、トビ。天子は剣、?。美鈴は虎、?。三人の匣は後々戦闘時に出します。ちなみにこの回翌日夕方からやってます。夜遅くて保護者(永琳)に強制終了。昼は学校で帰りにやってます。


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標的11

兄貴コロナかかった…自分バイトなんでしばらくニートや…暇なんで度々更新するかも…しなければ…自分もかな…


雨の守護者同士の対決…私は遅れてやって来た。

というのも永江さん探しは全員でやっているのだ。

学校帰りに深夜まで探していると、時間の分からなくなる時がある。

気付いた時には既に開始していた。

 

「は…は…」

 

急ぎ学校に到着したが、そこには…

 

「その時雨蒼燕流は、昔ひねり潰した流派だからなぁ!」

 

胸から肩まで袈裟斬りされた山本さんの姿があった。

 

「潰した…?」

「!八意さん?」

「来てたのか。」

「今…それよりあれは…」

 

スクアーロは強い剣士を探していた。

その中、細々と継承されていた時雨蒼燕流という剣術を知った。

彼は継承者と弟子三人と戦い、勝利した。

どういう経緯かは分からないが、その流派の使い手が今戦っている山本さんだ。

故に山本さんの剣は、スクアーロには通用しない。

相手は無傷。

対し山本さんは浅いながらも一太刀受けている。

勝ち目の目は薄い。

しかし彼は諦めていないようだ。

 

「聞いてねーな…そんな話…俺の聞いた時雨蒼燕流は、完全無欠、最強無敵なんでね。」

 

あくまでも自分の型を信じ、絶対に勝つという覚悟。

今回はその覚悟が仇になった。

剣の打ち合い、その途中に打たれた柱の破片は彼のの右目を打ち、斬りかかろうと五の型を放ったその腕は、一時的に使い物にならなくなった。

 

「スクアーロが放ったのは、『鮫衝撃(アタッコ・ディ・スクアーロ)』」

 

渾身の一振りを強烈な振動波に変え、相手の神経を麻痺させる衝撃剣。

丁寧に解説を入れてくれた敵の一人は、多少は山本さんを認めているようだ。

しかし声音は軽い。

スクアーロも笑っている。

敵からすれば、苦戦する相手とも思われていないようだ。

一度待避して手を回復しようと図る山本さん。

しかしその下からは、剣撃の踏襲。

空間を齧るようと表現された無数の刺突。

 

「『鮫の牙(ザンナ・ディ・スクアーロ)』…」

 

その剣は凄まじく、山本さんを地面ごと突き倒した。

頭上から降り注ぐ水は雨のように、スクアーロの体を洗い流す。

その姿は、正しく雨の守護者であった。

 

「さあ小僧!心臓を切り刻んでやるぞぉ!」

 

得意気に笑う。

もはや絶望的な状況だ。

 

「ガキども!刀小僧の無様な最期を、目ん玉かっぽじってよく見ておけぇ!」

「……」

 

私は匣とリングを取り出す。

最悪乱入してでも、山本さんを助けるために。

どれだけ打ちのめされても諦めない、一人の剣士を救うために。

山本さんはスクアーロの段へ掛け登り、必殺の一撃を撃ち込む。

 

「時雨蒼燕流…攻式八の型…『篠突く雨』」

「な…にぃ…」

 

見切られていたはずの刃は、スクアーロの体を捕らえた。

 

「貴様!時雨蒼燕流以外の流派の流派を使えるのかぁ!?」

「いんや。今のも時雨蒼燕流だぜ。八の型篠突く雨は、オヤジが作った型だ。」

「なるほどな。それで八代八つの型なんだな。」

「ん?」

「八代八つ…つまりあの流派は、一代一つの型を作ってきたんですか?」

「そうだぞ。時雨蒼燕流の継承者は、先人の残した型を受け継ぎながら、新たな型を作り、そしてまた弟子に伝えていくんだ。」

 

それでは継承の度に、枝分かれした無数の型が生まれてしまう。

その疑問が現れる。

しかし継承の方法は独特で、妖夢さんの剣のような細かく教えるのではなく、一度しか見せない型を盗む形式である。

つまり継承が出来なければ、新しい型は生まれず、この流派は途絶えてしまう。

その上に自らを追い込むように最強と唱え続ける。

あつ途絶えてもおかしくないこの流派は、故に滅びの剣と呼ばれる。

だから彼は構えるのだ。

己が真の継承者であると証明するために。

 

「時雨蒼燕流…九の型」

 

剣を振るには些か難しい構え。

いざ放つ直前、スクアーロが動いた。

 

「水が抉られていく!」

 

鮫特攻(スコントロ・ディ・スクアーロ)

剣帝を倒したという奥義。

周囲全てを抉り取る鮫肌のような特攻。

それを山本さんは正面から受ける。

しかしその姿はスクアーロの背後に現れる。

超人的反射神経による攻撃、しかしその剣は空振りに終わる。

背後に現れたその姿は、水に反射して幻影に過ぎない。

本体は…既に斬りかかっていた。

 

『時雨蒼燕流九の型』

 

「『うつし雨』」

 

その剣は、遂にスクアーロの頭部を打ち叩く。

自らの剣を信じ、戦いぬいた山本さんは、この戦いに勝利した。

 




今回おうどんちゃん出番ないな。残念ながらおうどんちゃんの戦う話はまだまだ先になります…少なくとも争奪戦では戦えないです。特訓くらいならあります予定ないけど。


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標的12

胃腸炎は辛いよ…あと長い!


山本さんの勝利に、こちらの陣営は沸き立つ。

それと同時にあちらの陣営は…ボスであるxanxasの笑う声。

仲間がやられ、命の危険に晒されても、尚嘲り止めを刺す。

それが敗者に対するヴァリアーのやり方だ。

しかしそれを静止したのは、この戦いを仕切るチェルベッロの片割れ。

あの場所に水が溢れた時、獰猛な海洋生物が放たれる。

敗者の命の保証は…ない。

倒れたスクアーロの助かる道はなかった。

相手が山本さんでなければ。

 

「よっ」

 

さも当然のように、命を掛けて助けようとする。

体はふらつき、地面は崩れ、今尚迫るその牙に、物怖じせずに脱出を図る。

その差し出された救いの手を、スクアーロは払った。

 

「剣士としての俺の誇りを汚すな。」

 

山本さんを蹴り飛ばしたスクアーロは、そのままこの世を去った。

 

(…許さない。)

 

そんな勝手は許さない。

幻想郷の名医の弟子が、目の前の人の死を、簡単に許してはならない。

私の匣は既に解放されている。

リングを見られるわけにもいかないから隠していたが、供給の終えた匣に、もはや私の力は必要ない。

 

(沢田さん達には悪いけど…)

 

私が助けたとばれないよう、スクアーロには死んだ体にしてもらう。

匣は炎の供給者の思考を捉える。

だからこそ、ばれずにあそこから運び出すことが出来る。

今頃下を壊してでも脱出しているだろう。

そして私にしか出来ない離れ方をすれば、治療まで可能だ。

その方法とは…

 

「うっ…」

「!大丈夫か!?」

「うう…はい…すみませんディーノさん…」

「先に帰った方がいい。巻き込んですまない。」

「大丈夫です…でも…先に失礼します…」

 

戦いに関係なく、こういう場面に慣れていない子供、かつ女性という立場なら、吐きそうに、苦しそうにしていれば、離れるのも難しい

くない。

まあリボーンさんには間違いなく気付かれているだろうが。

難なくその場を離れ、スクアーロを捜す。

外周を一周すれば、どこにいるかも分かる。

丁度真逆に着いた頃、黒服の人が数人、スクアーロを連れて行こうとしている。

あれは…

 

「ロマーリオさん?」

「何で嬢ちゃんがここに…」

「ロマーリオさんも…その人!?」

「ああ…山本がやられた時のために待機してたんだ。なんか魚が運び出してくれてな。こうして助けられた。」

「…ディーノさん…」

「嬢ちゃんも助けに来てたのか?」

「えっと…先に学校で少し調べてて…」

「そうかい。ならこいつは俺達に任せな。」

「は、はい…」

 

予想外な事態だったが、あの人達が代わってくれるなら別に構わない。

その場に必要なくなった私は、そのまま帰ることにした。

 

―――――

 

「……」

「あら…遅かったわね。」

 

家に帰ると、師匠がいた。

湯呑みを置いてこちらに振り返る。

 

「何でここに…」

「今日から私もここに住むわ。」

「え…本当ですか…?」

「不満?」

「いえ!正直その…」

 

寂しかったから嬉しい…というのは、流石に恥ずかしかった。

師匠のことだから分かると思うけど…

 

「ああそれから…永江衣久を見つけたわ。」

「本当ですか!?」

「ええ。でも厄介なことにマフィアに捕まってるのよ。」

「ええ!?」

「まあ彼女も実力的には大丈夫だとは思うけれど…騙されでもしたのかしらね?」

「でもどうやって見つけて…」

「ボンゴレの情報網は侮れないわ。」

「……成る程。」

「そうゆうことだから…貴女も準備しなさい。」

「?何の準備を…」

「殴り込みよ。」

 

―――――

 

「そういえば何で師匠もこっちに?」

「…馬鹿に拠点を吹き飛ばされたのよ。」




はい師匠八つ当たりにマフィア潰しです。しかもボンゴレの後ろ楯があるから質が悪い。


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標的13

ホグワーツレガシーを母の日に買って一緒にやってます。また更新途絶えるよ…気紛れ投稿だよ…


『そういえば紫からもう一つ贈り物って…』

『あら?まだ何かあったのかしら?』

『忘れてたわけじやないわよ!鈴仙にあったら開けろって…これこれ。』

『箱ですか?』

 

天子が箱の束から小さな箱を取り出す。

その箱は大きくした匣のようで、開匣のための炎の注入口もあった。

しかしどの属性で開けるかの説明もなく、中身の説明もない。

 

『…開匣してみる?』

『するよう言われたんですよね?』

『紫が意味なく渡すとも思えないわね…それに…』

 

私はリングに炎を灯し、注入口に炎を注ぐ。

その匣は開くことがなく、しかし炎は吸収していた。

匣はそれぞれの属性で開くことが出来るが、大空の属性を持つ者は、全ての匣を開くことが出来る。

匣の基本情報だ。

つまり天子に開けない匣はない。

 

『貴女も炎を。』

 

天子も炎を注入する。

しかし匣は開かない。

大空の属性に開けないのだ。

 

『あれ?』

『紫のことだから予想はつくけれど…優曇華以外に開けない匣か…もしくは炎の総量で開くか…』

『全員の炎が必要か…ですね?』

『考えられるのはそれくらいね。』

『なら三人で全力で注いでみよーじゃん!』

 

天子が炎を灯す。

家から溢れる程の炎量を、叩きつけるように注入する。

それに習い私と美鈴も炎を注ぐ。

開く気配は微塵もない。

 

『ぐ…』

『無理ね。全員が集まるか…もしくは優曇華なら開くようになっているのかもしれないわね。』

『今は諦めますか…』

『……こんな箱壊せばいいのよ!』

 

微動だにしない匣を見て苛ついた天子は、突然自分の匣を開匣した。

緋想の剣にも似た大空の剣。

刀身が激しく燃え盛るその剣を、力一杯に叩きつける。

 

『この馬鹿…!』

 

予想外に、しかし想像通りに、その衝撃はこのボロ屋を吹き飛ばした。

幸か不幸か荷物類は自重で残ったが、家は跡形もなし。

 

『……』

『あ…』

『…天子。』

『…はい…』

 

その時の私は、きっと阿修羅のような顔だったのだろう。

何せあの天子が、大人しく言うことを聞いたのだから。

私達の荷物は確かに箱に纏めて、しかも箱同士も重ねてたため無事だった。

しかし表に出ていた私の実験器具や、必要になるやもしれないと作った薬品類は全て消し飛んだ。

そこにあるのは粉々の残骸だけだ。

 

『何をすべきか…分かるわね?』

『…はい…』

 

こうして拠点は無くなった。

 

―――――

「やっぱり…」

「今考えると美鈴も連れてきた方がよかったわね。」

「それで二人は今は…「ボンゴレの支部に頼み込んでるわ。まあ永江衣久を助けるだけなら、私達だけで十分よ。」

「…そうですね…」

「それに貴女の初の実戦でしょう?匣の試運転と行きましょうか。」

「はい!」

 

私は雲の匣を開匣する。

小さい上に数の多いこの子達は、索敵においては最高のものだろう。

霧の幻覚で可能な限り姿を隠せば、余程でなければ見つからない。

更には不意討ちなら無力化するのも難しくない。

こういった作戦なら独壇場だ。

永江さんを見つけたら、壁を壊して脱出してもらえばいい。

匣自体が永江さんを知らずとも、私が知っていれば伝わってくれる。

本当に不思議な技術だ。

 

「なるほど…合理的で効率的で…とても安全な作戦ね…」

「これなら無意味に戦う必要も…」

「でも優曇華。」

「?何ですか?」

「これは貴女の匣の試運転であり、貴女の初の実戦よ。」

「…まさか…」

 

師匠の匣は開かれた。

そしてその手に持った弓を、躊躇いなく引き…

 

「…ついでに私の憂さ晴らしでもあるわ。」

 

振り抜いた。

強力な炎の奔流、門は粉々、門番は意識不明、集まるマフィア達。

そんな中、笑顔の師匠は言った。

 

「死ぬ気で暴れなさい。」

 

こんな冷笑を前にして、反逆の精神など…私にはなかった。

 




悲惨に進撃の巨人を一から見たくなりました。…見ませんよ?更新しますよ?(フラグ)


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標的14

幻獣物語2てアプリで最近荒らしが多くて困りまする。
ギルメンと同名の荒らしとか面倒いから止めてほしい


「師匠!私の武器ハンドガン一つなんですよ!?」

 

師匠が色々吹き飛ばし、集まった人の数は百は下らない程。

その上全員が武装済み。

対して私の武器は匣二つとリボルバータイプのハンドガンと短刀。

自殺行為にも程がある。

 

「使い方と言ったのは貴女でしょう?一人で殲滅して見せなさい。私の弟子であるのなら。」

「そう言われても…!」

 

師匠は余裕そうに瓦礫に座っている。

師匠の場合蓬莱人だから死ぬことはないが、私はただの兎…撃たれれば死ぬ。

文字通り死ぬ気で戦わなければ生き残れない。

 

(そうだ…使い方次第なんだ…!)

 

私は魚の数を増やし、眼前に盾のように蠢かせた。

次に数匹を相手に飛ばし、銃を弾き飛ばす。

小回りは効かないが、直線に飛ばすだけならどうにか出来る。

勿論瓦礫に隠れて射撃する人もいれば、魚の突撃を避ける人もいる。

それだけで無力化は出来ない。

魚を避ける人がいれば、私も隙間から射撃する。

弾は入ってるのも合わせて二十四。

相手は百以上…全く足りない。

結局は切り込む他なし…

仮にも軍にいたおかげで、射撃精度と体制の自由さは普通より高い。

短刀で銃を相手するのも…素人相手なら問題ない。

だが相手はプロ。

下手に切り込めばたちまち蜂の巣だろう。

そこで匣の使い方を変えるのだ。

周りを覆うように魚を配置しては、周りの様子も分からず、手も出せなくなる。

だから局所的に展開する。

幸い体は小さくとも、一匹一匹の強度は私以上。

銃弾一発なら問題ない。

 

(集中しろ…!相手の銃口…引き金…視線まで…!全部!)

 

プロでも銃を弾かれ足を貫かれれば、余程でなければ動きが止まる。

可能なら二手、最高でも三手で動きを止める。

弾がくれば魚で受け、直後に短刀で手足を切り裂く。

そうして繰り返す内に…敵は既にいなくなっていた。

 

―――――

 

「へぇ…」

 

流石に元兵士…幻想郷ではあり得ない戦闘スタイル。

強制したのは私でも、それに合わせて完璧な戦いを見せた。

やはりあの子を側に置いてよかった。

 

「さてと…そろそろ終わりね…」

 

―――――

 

「はぁ…!はぁ…!終わった……!」

 

もう全身血塗れだ。

それでも、一人も殺すことなく無力化出来たのは上出来だろう。

 

「あら?もう終わりだと思っているの?」

「え…?……あ!」

 

すっかり忘れていた。

目的は永江さんじゃないか。

 

「で、でも…もう…少し…」

「ええ。休んでいていいわよ。言ったじゃない。私の憂さ晴らしでもあると。」

 

そう言った師匠は、倒れた人達に向けて、弓を引いた。

邪魔だったのか…風圧で吹き飛ばしただけのようだが、やはり師匠ならこの程度瞬殺だったのだろう。

次に弓を下にむけて引いた。

今度は破壊の意思を持って。

 

「さあ…行くわよ。彼女は下にいるから。」

「なんで下にいるって…」

「……貴女にも気配の探り方は教えた方がいいかもしれないわね。」

 

そう言った師匠は少し呆れ気味だった。

 

―――――

 

それからの師匠は別格だった。

見慣れた私でさえ恐ろしいと思う程無慈悲に、また黒い微笑を浮かべながら地下の警備を吹き飛ばした。

殺してはいないようだが、あまりの容赦のなさに身が震える。

しかも壁や床は大破し、修復にどれ程掛かるかも分からない程ボロボロに…

人は怪我だらけ、建物は瓦礫に、地下は廊下だけとはいえ、面した全てが粉々に、ほとんど一矢ずつやってるのが更に恐ろしい。

とても弓の威力とは思えない。

 

「……ここね。」

 

一つの部屋の前で師匠は立ち止まった。

おそらく永江さんがいるのだろう。

師匠は扉と平行して弓を構え、扉ごと部屋の壁を削った。

そこには確かに永江さんがいた。

しかし部屋の様相は捕虜…というよりは…

 

「あら?騒がしいと思ったら、貴女達だったのですね。」

「えっと…これは…?」

「…もしかして貴女…ここの首領にでもなっていたの?」

「ええ。この世界に来た当初は総領娘様を探していました。けれど右も左も分からない地で、闇雲に探しても見つかるはずがなかった。」

「それで首領に?」

「大まかには。急に声を掛けられて、『総領娘様のことを探している』と言ったら、知っていると言われてここに。」

「それってナンパっていうのじゃ…」

「そうですね。その上体に触れようとしてきたから、叩きのめしました。」

「え…」

「そしたらいつの間にかボスに祭り上げられていた。それでここに残ったのです。」

「…やることは全員変わらないわね。」

 

私以外はマフィアを壊滅させて歩いていた。

彼女は、一つのマフィアを壊滅させて、ボンゴレに保護されることなく、トップとして君臨したというとだ。

 

「この地下に首領の部屋があるのは…前首領の趣向かしら?」

「ええ。正確には側近の意向。ボスは一番安全な場所にいてほしいらしいのです。」

「成る程ね…それで捕虜に勘違いされたのね…」

「勘違い?……ああ成る程。私を助けに…ならそろそろ貴女達の下へ行きましょうか。総領娘様もいますね?」

「ええ。惜しいかもしれないけれど、首領は今日でおしまい。」

「ふふ。別に惜しくありませんよ?それよりも…私がいない間に、総領娘様が何かやらかしていないか…そちらの方が気になりますから。」

「…なら首輪でも付けて管理しといてほしいわね。」

「…申し訳ありません。」

 

こうして永江さんも見つかり、無事幻想郷から来た人は合流出来た。

しかしこれなら、ボンゴレの名の下にここのボスと交渉すれば終わりだったのでは…

私の初実戦は、おそらく無駄なことだった。

 

 




その後トビの足に捕まって帰りました。(デジモンのバードラモンに捕まる空と同じ形)


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標的15

FF7……や…何でもないですよ…?


「昼間っからご苦労なことね。」

「あんたのせいだけどね。」

「は、はい…ごめんなさい…」

 

あの天子さんが普通の子供に見える…一体どんなしかり方をしたのだろうか。

 

「貴女のお師匠様を雇えませんか?」

「無理です。」

「私もごめんよ。」

「私はいいのだけれどねぇ…?」

「ひっ…」

「まあとにかく全員揃ったわね。」

「え?美鈴さんは…」

「お待たせしましたー!」

 

少し離れた所から美鈴さんの声がする。

私達は今小屋があった河原にいるが、斜面の反対側から来た美鈴さんに何故気付いたのだろうか。

 

「それじゃ…この匣を開けてみようじゃない。」

「はい。」

 

開かない匣について、先に話は聞いていた。

全員揃った今ならきっと開く。

むしろこれで開かないならただの箱だ。

 

「まあまずは前の三人から…」

 

天子さん、師匠、美鈴さんの順に炎を注ぐ。

しかし開く気配はなし。

 

「次は私が。」

「衣玖は両方注いでね。」

「分かりました。」

 

永江さんの属性は嵐、雷。

当然この作業の前に炎の使い方は指導済みだ。

バリエラリングも匣も、永江さんの分も渡してある。

これで五つの属性の炎が注がれた。

後は私の雲、霧の炎のみ。

霧の炎を注ぎ、最後に雲の炎を匣に注いだ。

すると匣は開いた。

中身は…空だった。

 

「…は?」

「空?」

「ここまでやって空とかないでしょ!?」

 

ひっくり返しても探っても何もない。

本当に空だ。

開けた意味は全くなかった。

…というわけでもなかった。

 

「!?永江さんの匣が…!」

「私のもです!」

「これは…『動物型』匣だけが光ってる…?」

 

私の匣も光っていた。

師匠以外の匣も一つずつ。

 

「…開けてみる?」

「開ければいいじゃない。」

「あんたは動物ないからね!…まあいいわ…鬼が出るか蛇が出るかってやつよ…!」

 

何の躊躇いもなく、天子さんは自分の匣に炎を叩き付ける。

中から出てきたのは蛇…真っ青な蛇だ。

 

「………何も変わってないわね…」

 

蛇は甘えるように天子さんの首に巻き付いた。

天子さんが言う限り、何の変哲もないようだ。

 

「私達も試してみますか。」

 

そう言って永江さんは匣を開いた。

中からは亀が現れた。

人より大きい亀だ。

 

「…こんなのが入っていたのですか…」

「亀…それにトビに蛇。そして虎…ね…」

 

意味ありげに呟く師匠を尻目に私は匣を開く。

いつも通りの二匹が姿を現す。

やはり何も変わってない。

結局あの匣のことは分からずじまい。

 

「わけわかんない…何なのか説明しなさいよこの隙間!」

「怒鳴ってどうするのよ…まあ害がなければそれでいいわ。それより優曇華、そろそろ学校に行ったらどうかしら?」

「え?」

 

確かに既に辺りは暗くなっている。

しかしまだリング争奪戦の時間には早い。

それを師匠が分からないはずもないのに…

 

「いいから行きなさい。」

「?…はい。」

 

師匠のことだから何か考えがあるのだろう。

少し早いが学校に向かうとしよう。

 

―――――

 

「……さてと…」

「何であの子だけ先に帰らせたの?」

「あの子にはまだ必要ないのよ…」

「ふーん…まあ…知らないのもあの子だけだしね。」

「いえ…私にも何のことだか…」

「あ、ごめん衣玖もね。実はさっきの匣…中身については何となく分かるのよ。と言うのも…」

 

天子は一冊の本を取り出す。

本というにはあまりに薄いが。

 

「いずれ必要になるけれど、今は違うのよ。紫が言うにはだけどね。」

「……なるほど…とにかく『唱えて』みましょうか?」

「ええ。お願いするわ。」

「まあ害はないだろうしね…じゃ行くわよ…『形態変化(カンビオ・フォルマ)』!」

 

―――――

 

「…やっぱり誰もいないですね…」

 

門から学校に入るが、周りを見ても誰もいない。

時間はまだ十時。

やはり早かったようだ。

 

「………」

 

とりあえず以前のような危険に対処するために匣を開けておこう。

隠れてやるにも限度がある。

先に開けておけば見つかる可能性は低いだろう。

トビの匣を開き、空から見ているよう伝える。

匣の持続時間は注ぐ炎の量によって決まる。

後は力を使うか、または私が戻すか。

多目に炎を注いだ上力を使うことがない今なら、数時間くらい余裕で保つだろう。

後は皆さんが来るのを待つだけだ。

 




形態変化をうどんちゃんが知るのはいつでしょうね…リアルに時間換算したら本当に不明です。


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