undesired enders (tCADE)
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プロローグ
「終わりを望まぬ者」


 ――終わりとは、ある日突然にやって来る。

 

 

 

 

 それまでに積み上げられて来たもの。時間。

その大小に関わらず。ある日、突然に。

 

 終わりにも種類がある。

完成を迎える事による結実の終わり。

完成の後に来たる崩壊によって全てが無に帰す破綻の終わり。

或いは何処にも辿り着け無いままに訪れる中途の終わり。

 

 では、どんな形であれ、終わりを迎えたものはその後どうなるのか。

「無」のままか。はたまた、「無」から再び新たなる「有」を生み出すのか。

 

 永遠に繰り返される破壊と再生。終わりと始まり。

 

英雄たちの邂逅。

拡大する宇宙。

時空の超克。

響き合う幾つもの世界。

繋がりの物語。

 

 いつか、どこかで有り得たかも知れない可能性の欠片たち。

それを名も知れぬ誰かが拾い集め、繋ぎ合わせ、ひとつの形を成していき、

やがて形を失い、壊れゆく。

その営みを幾度となく見てきた。気の遠くなるほどに。

 

 始まりの先には終わりがあり、終わりの先に始まりがある。

もはやその線引きにさえ意味は無いのかも知れない。

だからまた、ひとつの物語を紡ごう。

 

 

 

 

「何だ、ここは…」

 

 

 暗い場所にいる事だけが分かった。意識はある。

水の中に漂っているような浮遊感。

この空間が広いのか、それとも狭いのか。それは分からない。

 

「俺は、どうして、ここに…」

 

 状況が読めない。

何故、ここにいるのか。

どうして、こんな状態に陥っているのか。

自分が何者なのか。

 

 思い出そうにも、思い出せない。

 

「俺は、誰だ…?」

「それはこれからお前が知る事だ」

 

「!? 誰だ…」

 

 何処からともなく、か細い少女らしき声がする。

相変わらず視界は真っ暗なままで、姿は見えない。

遠くにいるのか、近くにいるのか。

 

「誰か、そこにいるのか? 教えてくれ、何でもいい。

知ってる事を教えてくれ。

ここは何処だ? 君は誰だ? どうして俺はここにいる?」

「お前は『終わった』んだ」

 

「終わった…? 終わったって、どう言う……」

「言葉通りの意味だ。お前は『終わり』、全てを失った。

かつての名前も、記憶も、今や意味を持たない。

誰もお前を知らないし、お前も何も知らない。

お前だけではない。

幾つもの世界が次々と同じように終わりを迎えている。

やがて、何もかもが消える。全てが最初から無かった事になる」

 

「そ、そんな…言ってる意味が分からない…

俺は…俺はここにいるじゃないか。現にこうして君と話してる。

俺は『終わって』なんかいない! 『ここにいる』んだ!!」

 

 声の限りに叫ぶと、少女はまた言葉を紡ぎ出した。

 

「ならば、『始める』がいい」

「え……」

 

「お前が『終わっていない』と言うのなら、『始める』がいい。

『ここにいる』限りは、永久にこのままだ」

「うっ……!?」

 

 闇を裂くように、光が漏れる。

それはだんだん大きく、眩く広がり、目の前に立つ少女の姿を浮かび上がらせる。

 

腰まで届きそうな長い黒髪。

深海の如き漆黒を湛えた瞳。

桃色のマフラーが口元を覆っている。

無駄な肉の無い、引き締まった小柄の体躯。

 

「君は……?」

「私の名は…ペルフェクタリア。『終わりを望まぬもの』だ。

お前と私の道が重なり、繋がれたのなら、またいずれ遭う事もあるだろう。

そうなる事を、私も望んでいる」

 

「ペルフェクタリア……待ってくれ、まだ色々と聞きたい事が…!」

「さあ、この闇から足を踏み出せ。そこから全ては始まる」

 

「うっ…!? うわああああああっ……!!」

 

 

 光は闇を飲み込み、今度は眩い光が全てを包み込んだ。

 

 

 今は何も分からない。ただ、これだけは分かる。

ここにはいられない。ここには何も無い。ここに留まり続ける事だけは。

 

「行ってやるさ…! 俺が何者で、何て名で、何処から来て、何をしようとしていたのか…

その全部を知れるのなら…!!」

 

 そう決意し、自ら光の中へと飛び込んだ。

「名も知らぬ誰かの物語」が、今始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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「世界消失の危機! お前の出番だ孫悟空!」

 

――世界は無数に存在する。

 

 本来、それらは交わる事は無い。

世界と世界を隔てる壁によって、お互いを認識する事も無い。

 

 世界が変われば、その世界を司る理も変わる。

一方で悪とされる事象も、もう一方の世界では善であると言う場合もある。

 

 互いに干渉し合わない…名付けるなら「ユニバーサル・ディスタンス」。

それを保つ事によって世界は存続し続ける事が出来るのだ。

しかし、その調和は長くは続かなかった。

 

 ユニバーサル・ディスタンスを踏み越え、別世界への侵略を目論む者たちの暗躍。

或いは人知を超越したオーバーテクノロジーによって世界を隔てる壁は脆くも崩れ去った。

そう言った事件は枚挙に暇が無い。

 

 踏み躙られた平和と秩序を取り戻す……

その心をひとつに合わせ、出自や境遇を超えて手を取り合った英雄たちがいる。

彼らの活躍で世界は守られた。

 

 だが、それも今は昔の話。

謎の少女・ペルフェクタリアが語ったように、

世界そのものが何の前触れも無く消失する事件が後を絶たなかった。

その原因は一切不明。世界消失を観測する事が可能な者はほんの一握り。

さらに、観測する事は出来ても

その事象を食い止める事はほぼ不可能に近かった。

 

 天変地異とも、戦争行為とも違う、世界消失の謎。その対応に臨もうとする者たちがいた。

 

「またひとつ、世界が消えた…」

「ふぅむ。これで何件目でしたかねぇ」

 

 人間が足を踏み入れざる領域。豊かな自然に囲まれた静かな場所。

空中に映し出したビジョンが、世界の終わりを観測する。

その様子を眺める猫型の獣人と、その付き人。

 

それこそが、破壊神ビルス。そして破壊神のお目付け役である天使のウイスだ。

 

「破壊神であるビルス様以外に、このような芸当が出来る者がいるとは」

「何処のどいつだ、ボクを差し置いて勝手な事を…見つけ出して破壊してやる…!!」

 

 物腰柔らかなウイスと相反して、破壊神ビルスはまさに怒り心頭と言った様子だ。

その名の如く破壊を司る神たるビルスの意志ひとつで宇宙そのものを消し去る事さえ容易い事。

 

「ビルス様でないとすると…全王様のご判断でしょうか」

「げっ…! ぜ、全王様だとォ…?」

 

その破壊神さえも頭が上がらない存在、全王。その名を聞くだけで怒りも霧散する。

 

「ビルス様が破壊神としての仕事をサボってばかりいるから、全王様がお怒りでいらっしゃるとか…」

「そ、そんなわけあるか…ボクは至って真面目に破壊神としての職務を全うしているだろうが! うん、多分、きっと…」

 

「このままですと、いずれ我々がいるこの世界もある日突然パッ! っと消えちゃうかも知れませんねぇ」

「冗談じゃない…破壊神が誰かに破壊されるなんて笑い話にもならん! 何とかせねば…!!」

 

 

 

――惑星バンパ。

 

 水も無い、荒れ果て渇ききった星。

そこに、彼はいた。

 

「よう、ブロリー! 今日もいっちょやろうぜ!」

「……」

 

「あいつ、また来てる…」

「まったく、サイヤ人は戦闘民族とは言うがあいつの場合は

ホントにそれしか考えてねえみたいだな」

 

対にそびえる岩場。その頂きに立つ2人の男を見て、

異星人の男女は呆れ返るようにぼやいた。

 

「あいつ…名前何て言ったっけ? ホント、変なヤツ…」

「よっ、ほっ…!」

 

 柔軟運動。軽く飛び跳ね、全身の筋肉を緩ませる。

山吹色の道着。生涯変わる事の無い、ところどころ反ね返った独特の髪型。

平和を愛しながら、強い者と戦う事を何より好む、地球育ちのサイヤ人。

 

 世界消失の危機が密かに迫る中にあっても、彼は些かも変わる事は無い。

 

 

 

 男の名は、孫悟空。またの名を、カカロット。



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「出動、スペース・スクワッド!」

 銀河連邦警察。

宇宙犯罪組織マクーに代表される悪の組織を撲滅し、宇宙の秩序を守り続ける警察組織。

近年、急速にその勢力を拡大させ始めた謎の新興組織「邪教団・幻魔空界」と戦うべく

銀河連邦警察が秘密裏に結成した特殊チームがあった。

 

 その名は、「スペース・スクワッド」。

 

 スーパー戦隊、宇宙刑事…銀河にその名を馳せた英雄たちを

一同に集めると言う銀河連邦警察主導によるプロジェクトだ。

 

 初代宇宙刑事ギャバンこと、一条寺烈から熱き宇宙刑事魂を受け継ぎ、

スペース・スクワッドの隊長に任命された十文字撃は、

幻魔空界の動向を追っていたが、ある時を境としてその足取りはまったく掴めなくなってしまった。

 

「くそっ…! 手がかりゼロとは…奴ら、一体何処に隠れやがったんだ」

 

 銀河連邦警察内のラウンジで、撃はひとり苛立っていた。

 

「まあ、そう焦りなさんな、よ!」

 

 背後から、撃の頬に冷たい缶コーヒーを押し付けてくる男。

驚きの余り、座っていたソファから思わず転げ落ちそうになる。

 

「おわっ!? 何すんだよ、舟!」

「ぶはははは、作戦大成功」

 

「大分熱くなってるな、撃。俺たちの事にも気づかないとは」

「快もいたのか…まあ、確かにな…」

 

 コーヒーを撃に押し当てた陽気な男、烏丸舟。

対して冷静沈着な日向快の態度を目の当たりにし、撃も少しクールダウン出来た。

彼らも撃の同僚にしてスペース・スクワッドの一員だ。

 

「お前の気持ちも分からんでもないが、独りで煮詰まってても仕方が無えさ。

幻魔空界が次に何を仕掛けてくるかはさておき…

ちょっとばかり気になるヤマがある」

「何だ?」

 

「これを見ろ」

 

 快がテーブルの上に小型情報端末を広げる。

とある星系の惑星の様子を映した映像…

 

「えっ…?」

 

 すると、惑星が色を失い、最後には砂のように消えて行ったのだ。跡形も無く…

 

「ど、どう言う事だ、これは…まさか幻魔空界の仕業か?」

「それはまだ断定できない。が、これと同様の現象が次々と報告されている。

しかも、その頻度は日を追う毎に増えているんだ」

「おまけに発生原因は不明、場所も、日時も、てんで規則性の無いバラバラっぷりと来た。

ある日突然に、だ。

流石に看過できないってんで、俺たちにも調査依頼の声がかかったってわけ」

 

「確かに、こいつは見過ごせないな。舟、快。ひとまずこの映像の宙域に行ってみよう。

刑事の基本は現場捜索だ」

「へっ、いつもの調子が戻ってきたな、隊長サン!」

「了解だ。早速向かおう」

 

「…」

 

 撃、快、舟、若き宇宙刑事たちの姿を、階段の踊り場から一望する2人の男…

 

「あいつら大丈夫でしょうか、烈隊長」

「俺たちが見込んだあいつらだ、大丈夫…と言いたいところだが、

今回の事件、どうにも根が深そうだ。こんなケースは今までに類を見ないからな」

 

 彼らこそ、伝説の宇宙刑事。

宇宙刑事ギャバン/一条寺烈。そして宇宙刑事シャリバン/伊賀電だ。

 

 留まる事なく拡大を続ける謎の消失事件。

果たしてスペース・スクワッドは、この未曾有の怪事件を解決することが出来るのか?



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「蒼き水平線、重なる時」

 争いとは、相容れない価値観の違いから発生する。

 

「グレイゴーストォォォッ! 今日こそはァァァァッ!!」

「重桜のエースか……!」

 

 例えその果てに、共通の目的を見据えていたはずであったのだとしても……

 

 全体の7割を海に覆われたこの蒼き星に突如として出現した

謎の勢力「セイレーン」。

人類に牙を剥くセイレーンに対抗すべく人工的に生み出された少女たち、

Kinetic Artifactual Navy - Self-regulative En-lore Node…通称「KAN-SEN」。

 

 しかし、セイレーンは自らの技術を提供する事によってKAN-SENの勢力を

大きく二分させた。

 

 毒をもって毒を制すの考えから、セイレーンの技術を積極的に取り入れる事で

飛躍的な勢力拡大を成し遂げた重桜、鉄血などに代表される

「レッドアクシズ」と、

その正反対に人類の力のみでセイレーンを打倒する事を志すユニオン、

ロイヤルなどから成る「アズールレーン」。

 

 両者の間に生じた溝は深く、今もこうしてアズールレーン所属の

ヨークタウン級2番艦、エンタープライズと

レッドアクシズ所属の翔鶴型空母2番艦、瑞鶴による激しい戦闘が

繰り広げられていた。

 

 すべては、セイレーンの掌中で踊るウォーゲームでしか無いのか…

 

「でぇぇぇぇぇえええッ!!」

 

 水上をジグザグに滑るように疾走し、瑞鶴が研ぎ澄まされた刀で斬りかかる。

 

「チッ…!」

 

 対するエンタープライズは大型の弓で鍔迫り合いに持ち込む。

 

「フッ…! よくやる…!!」

「……!!」

 

 そのまま強引に押し切ろうとする瑞鶴だったが、エンタープライズは

刀の切っ先を受け止めたままの状態で、弓の弦を引き始めた。

 

「何ッ…」

「喰らえッ!!」

 

 零距離発射。

エンタープライズの思惑をいち早く察した瑞鶴は咄嗟に距離を空け、

退避しようとする。

放たれた矢は蒼き炎を纏い、艦載機へと姿を変えた。

 

「イカれてる…!」

 

瑞鶴に迫る艦載機群が機銃を一斉掃射。

 

「舐めるッ…なああああああああッ!!」

 

 弾丸の尽くを超高速の剣舞で叩き斬って応戦。

両者一歩も譲らず。永遠に続くかと思われた戦いに一石を投じる何者かの砲撃。

 

「!?」

「誰!? どこからの攻撃だ!?」

 

 瑞鶴とエンタープライズの間を断ち割るかのようにして撃ち込まれた

砲撃によって水柱が高く高く立ち昇る。

 

「おうおう、派手にやってんじゃねえか」

 

 そこには、左目を眼帯と前髪で覆い、巨大な対艦刀を担いだ女が不敵な笑みを

浮かべて仁王立ちしていた。エンタープライズや瑞鶴と同じく、

艤装を纏って水上に立っている。

 

「なっ……!? 貴様、何処の所属のKAN-SENだ!? 

我らレッドアクシズの同盟者か!? それともアズールレーンの……」

 

「どっちでもねえ。それに俺はカンセンじゃねえ。艦娘だ」

「カン……ムス……? 一体貴様は…」

 

「俺の名は天龍」

 

 自らを艦娘と名乗る女…天龍の登場により、戦場は一気に混迷を極める。

 

「瑞鶴! どうにも状況が不鮮明だわ! ここは一時撤退するのよ!」

 

「翔鶴姉…くっ! 覚えていろ、グレイゴースト! 

それと邪魔をしてくれた天龍…とか言うの!

この借りは必ず返す!」

 

 随伴していた姉、翔鶴の指示により、瑞鶴は戦場から去って行った。

 

「追い払えたか…」

「瑞鶴に翔鶴…随分と聞き慣れた名前だが、どうにも俺が知ってる連中とは

違うみてえだな」

 

 静けさが戻った海。エンタープライズは謎の乱入者、天龍の方へ向き直る。

天龍もまた、穿った視線でエンタープライズをまじまじと見つめていた。

 

「お前ら、艦娘じゃないようだが、何だって互いに潰し合うような真似してんだ?

ぶっ潰すなら深海棲艦だろうが」

「深海棲艦…? 済まない、それはセイレーンの間違いではないのか?」

 

「話が噛み合わねえな。まあ、そもそもここが何処だかも

分かってねえんだけどよ。

気がついたらこの海にいた。ここは何処だ?」

 

「どうやら、色々と話を整理する必要があるようだ。

良ければ、我らの拠点へ来てくれ。そこで少し情報をまとめよう」

「いいぜ。どうせ行くアテも無えからな」

 

 艦娘とKAN-SEN。出会うはずの無い者達の出逢い。それは偶然か、必然か。

はたまた、世界を取り巻く異変が生み出した産物か……



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「音響き、翼羽撃く」

 聖遺物。

 

 それは、長い人類の歴史において神話、

伝承として現代に伝えられる超技術の総称である。

時折、古代遺跡などから発掘されたと言う報告もあるが、

その殆どは経年劣化により本来の力を失ってしまっているものが殆どだ。

だが、ごく稀に、機能を保持したままのものも発見される。

 

 聖遺物は人智の及ばぬ力を有し、

使い方を誤れば世界そのものさえも滅亡させてしまう危険性を持つ。

かつて、聖遺物を巡り、いくつかの戦いが勃発した。

 

 その戦場の真ん中で、歌を歌い続ける少女がいた。

正義を信じて握り締めた拳で、誰かの手を繋ぐために。

 

例え、その手を払い除けられても。

例え、その想いを踏み躙られても。

少女は歌を歌った。

 

 やがて、少女の歌は想いを貫き通す槍となり、全てを優しく包み込んでいった。

 

 少女の名は、立花響。

歌によって起動する聖遺物「ガングニール」を身に纏いて戦う

シンフォギアの装者。

 

 世界の平和を脅かす超常的な脅威に立ち向かうべく、

国連によって組織された「S.O.N.G」の一員となった響と仲間たちに、

新たなる戦いの時が迫っていた…

 

「ギャラルホルンが?」

 

 世界各地に点在する聖遺物の中でも、大きな損傷も無く、

形状と権能を保持し続けるものを「完全聖遺物」と呼ぶ。

 

 響が事故によってガングニールの装者となるよりも以前に発掘されるも、

人間の手による制御を一切受け付けなかったため、

厳重に封印、保管するより他に無かった、禁断の完全聖遺物「ギャラルホルン」。

それが、今になって突然活動を活発化させたと言うのだ。

 

 ギャラルホルンの権能…それは、並行世界へ繋がる門を開く事。

発生時期、繋がる先、その一切はギャラルホルンに委ねられる。

 

『うむ…並行世界との繋がり…放置していては危険だ。

そのために、響君達には調査に向かってもらいたい』

 

 響に武術のいろはを伝授した師匠であり、S.O.N.G司令である風鳴弦十郎により

シンフォギア装者たちに招集命令が下った。

 

「まっかせてください、師匠!」

 

 しかし、事態は急展開を迎える。

 

「ギャラルホルンが開いたゲートから、未確認物体が出現!!」

「何だとゥ!?」

 

 けたたましい警報音。

ギャラルホルンが保管されている地下施設へ急行する響たちの前に現れたのは、

並行世界のゲートから無理矢理に這い出てこようとする怪物の姿。

 

「うええ!? な、何これ…」

「詮索は後だ! 蹴散らすぞ、立花!!」

 

【――balwisyall nescell gungnir tron――】

【――Imyuteus amenohabakiri tron――】

 

 響が、そして天羽々斬の装者、風鳴翼が詠唱すると共に、

シンフォギアを装着する。

 

 これこそが、ギャラルホルンがもたらす混沌。

好むと好まざるとに関わらず、

招かれざる来訪者を並行世界より無差別に呼び寄せる。

 

 少女の歌が、今再び戦場に響き渡る…



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「始まりの男と終わりなき旅人」

「またひとつ、世界が破壊された…」

 

 

 男の瞳は、世界の終わりを俯瞰していた。

 

ひとつ、ふたつ…弾かれたビリヤードの玉が千々に飛び、

 

ぶつかり合うように

 

互いに引かれ合う世界は衝突と崩壊を繰り返す。

 

 

 

 そんな光景を、男はこれまでに何度も見てきた。

 

長い長い旅路の中で。始まりがあれば、必ず終わりが来る。

 

そして終わるこそから、新たなる始まりが訪れる。

 

それは「必然」である事を、男は知っていた。

 

 

 

「だが、これは自然の流れじゃない」

 

 

 

 長身に黒いスーツを着こなし、

 

首からトイカメラを提げた男の背後から姿を現す、

 

神々しき装束と聖人めいた眼差しを湛える金髪の男。

 

 

 

「お前か…初めて会った時とは、

 

随分と雰囲気が変わったじゃないか」

 

 

 

 2人はお互いを見知っていた。時には共闘した事もある。

 

 

 

「色々とあったのさ。色々とな」

 

 

 

 世界の理から外れ、全てを見守り続ける使命を帯びた者。

 

全ての世界を巡り、全てを繋ぐ者。

 

 

 

「で、これが自然の流れじゃないとすれば…」

 

「この現象を人為的に起こしている奴がいる。

 

だが、それが何者なのかは…」

 

 

 

「なら、次の旅の行き先は決まった」

 

「行くのか?」

 

 

 

「ああ。こんな事をしでかす奴の面を拝んでみたい」

 

「相変わらずだな、アンタは」

 

 

 

小さく笑みをこぼす金髪の男を見て、

 

 

 

「そう言う顔の方が、俺の知っているお前らしい」

 

 

 

 トイカメラで1枚。

 

旅の行く先々で出逢う得難き瞬間瞬間をカメラに収める。

 

それが彼――門矢士のライフワーク。

 

 

 

「またいつか逢おう…葛葉紘汰」

 

 

 

 時空が歪み、士を招き入れるかの如くオーロラが生まれる。

 

それを潜れば、また新しい世界が士を待っている。

 

終わる事無き旅に身を投じる士に、

 

「始まりの男」へと至った葛葉紘汰は祝福を贈った。

 

 

 

「気をつけてな。何か大きな事が起こる予感がする」

 

「何、そんなのは今に始まった事じゃないさ」

 

 

 

 ポケットに両手を突っ込み、

 

無作法に歩きながら士がオーロラの中へと消えていくと、

 

やがて時空が正常化する。

 

 

 

「頼んだぞ…みんな」

 

 

 

 士を見送った紘汰が想いを馳せるのは、

 

かつて共に手を取り合い、世界の危機を救った同志たち。

 

人間の自由と平和を守る英雄に贈られる称号を持つ者。

 

 

 

 その名は「仮面ライダー」。

 

 

 

「しかし…こんなに急速に世界の崩壊が

 

連続して訪れるなんて事は今まで無かった。

 

それを意のままに出来る奴がいるとすれば、そいつは…」

 

 

 

 世界崩壊の裏に潜む謎の存在。

 

これまで数々の強敵を相手に戦い続けてきた紘汰でさえも、

 

その脅威を感じざるを得なかった。



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第1章
「まだ見ぬ”あした”へ」


「……ーい」

 

 声が聞こえる。

 

「おーい」

 

 誰かが呼んでいる。暗闇の中で。

 

「う…」

「起きた?」

 

 差し込んでくる外界の光に網膜を刺激されながら

瞼を開けると、朧気ながらに像が浮かび上がってくる。

ようやくそれが何かを認識出来た時には、

こちらを覗き込む少女の顔が逆さまになって視界を占有していた。

 

「うわっ!? 誰!?」

「あたし? あした。九十九神 葦咫(つくもがみ あした)だよ」

 

 反射的に飛び起き、名を尋ねる。

中腰にしゃがみ込んだままの格好で、少女は笑って、そう名乗った。

 

 少女とは言っても、あの黒髪の少女・ペルフェクタリアではない。

髪の毛は栗毛色のショートボブ。

金色の瞳。陶器のように青白い肌。セーラー服のような制服を

着ているところからすると10代半ばと言ったところか。

ペルフェクタリアと共通する所はあまり見当たらない。

 

「俺…俺の名は…」

 

 名前。自分の名前。思い出そうとすると記憶に靄がかかったような感覚に陥る。

思考がかき回されて形を成さない。

 

「駄目だ…やっぱり分からない…」

 

 両手で頭を抱える。何とか思い出そうと。だが、思い出そうとすればするほど

全身の血液が逆流し、嗚咽を催す。

 

「うっ…!」

 

「大丈夫? 気分悪い?」

「いや…いいんだ…それより、葦咫…色々と聞きたい事がある。

ここは何処だ? 君は何処から来たんだ? 何でも良い、知ってる事を教えてくれ」

 

「うーん…あたしもよく分からないんだけど、あたしが暮らしてた場所、無くなっちゃったんだ」

「え…?」

 

 葦咫が言うには、ある日突然、彼女が暮らしていた世界は色を失い、

人も、街も、あらゆる物が無に帰して行ったのだと言う。

自分の名前と、世界が終わる光景。それが、彼女に残された最後の記憶。

 

「もしかしたら、キミもあたしと同じかも知れない。でも、自分の名前も分かんないって、寂しいね」

「そうか…そう言えば、あのペルフェクタリアとか言う子が言っていた…

お前は『終わった』と…」

 

 恐らくだが、葦咫の世界で起こった現象に似たものに巻き込まれ、

自分に関する記憶の全てを失ってしまったのではないか。現状ではそう考えるしかなかった。

 

「葦咫…君に会えただけ、俺はまだ幸運だったかも知れない。

何故こうなったのか、どうすれば失ったものを取り戻せるのか…一緒に探しに行こう」

「うんっ! そうだね!」

 

 蒼白い顔色に反して、とても活発で元気な娘だ。

いつまでも落ち込んでいられない。そうだ。決めたじゃないか。

自分が何者で、何と言う名で、何処から来て、何をしようとしていたのか…

失くしたもの全てを取り戻すと。

 

「でもさ、名前が無いって困るよね? 何て呼んだらいい?」

「当の本人が思い出せないからな…好きなように呼んでくれればいいよ」

 

 こうして、不思議な少女、葦咫との旅が始まった。

未だ先の見えない道のりに、ほんのわずかな光明が差した。



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「俺の名は」

「ポチ」

「……」

 

「タメゴロー」

「……」

 

「チャッピー」

「……」

 

「葦咫、さっきから言ってるのは……」

「キミの名前。何かあった方がいいかなーと思って。

でもなかなか良いのが思い浮かばないね」

「はは……」

 

 相変わらず先の見えぬ暗闇の中を進む。

だが、今は独りではない。こんな状況下でもマイペースを貫く葦咫の存在は、

大きな心の支えになっていた。

 

「んっ……?」

 

 光だ。進む道の先。僅かながらの光が見える。

 

「あれ! 出口かな!?」

「分からないけど……」

「行ってみよう!!」

 

 喜び勇んで、葦咫は駆け出した。

 

「あっ、ちょっと待って……!」

 

 すぐさま追いかけたが、まったく追いつけない。

何と言う脚力。ぐんぐん距離を離されていく。

 

「速っ……!?」

 

 一体、あの光の先には何があるのだろうか。

 

「光……光?」

 

 少しずつ近づいていくにつれ、何かが頭の中に浮かんでくる。

 

「光……そうか、俺の名は……」

 

 それは、失われていたはずの、自分の名前。

 

「えいっ!!」

 

 そうしている内に、葦咫は光の中へと飛び込んで行ってしまった。

 

「あっ、葦咫!! ええい、なるようになれ!!」

 

 伸ばす手は葦咫には届かず。一足遅れでその身を光の中へと委ねる。

その先にあったものは……

 

「……街だ」

 

 そこは街の真ん中にある公園だった。

青い空。生い茂る緑。往来する人々。仕切られたフェンスの向こうには高いビルが立ち並ぶ。

 

「やったね! 出られたよ! わーい! わーい!」

 

 葦咫は噴水の前で両腕を飛行機の翼のように広げて走り回っている。

 

「葦咫、無事だったのか……良かった」

 

 光に飛び込んだ先で離れ離れになってしまったら

どうしようかとヒヤヒヤしていたが、

杞憂なようで安堵した。そっと胸を撫で下ろす。

 

「葦咫……俺、ここに来る間に自分の名前を思い出せたような気がする。多分」

「ホント!?」 

 

「俺の名は……コウジ。師惧丸光侍(シグマル・コウジ)だ」

「コウジ……コウジかぁ! うん! いい名前!」 

 

 何故か、確信があった。唐突に浮かんできたその名前。

何処か懐かしく、そして馴染む。

 

「で、コウジ。ここは、どう? キミが知ってる場所?」

「いや……それはまだ分からない。葦咫も知らない場所なのか?」

「うん……あたしも一緒かな」

 

「それはこれから調べていくしかないか……でも、少しは進展したような気がする。

焦る事は無いんだ」

「名前も思い出せたしね!」

「そう言う事」

 

 気持ちが上向きになってきた。

下ばかり向いていたのが、やっと前を見据えられるようになったような。

師惧丸光侍と九十九神葦咫の旅は、今ようやくスタートラインを切ったのだ。



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「運命が交錯する日」

 




 光侍と葦咫が訪れた街は至って平和そのものだった。

 

 人が行き交い、ビルが立ち並び、生活音が遠くから聞こえてくる。

この公園にしてもそうだ。

子ども達が力いっぱいに走り回り、ベンチに腰掛けながら談笑する母親たちに

会釈をして通り過ぎてゆく老人。

 ここが自分が求めていた世界なのかは分からない。

けれど、拒む理由も無い。

果ての無い暗闇でたったひとり、無限の時を過ごし続けるより遥かにマシだ。

ここで新しく全てをやり直すのも悪くないだろう。

 

「葦咫。君はどうする?」

「うーん……」

 

 噴水の外縁に座る光侍の隣で葦咫は眉を潜ませ、腕組みをして唸っていた。

 

「ここ……あたしの帰る場所なのかな、って」

「え?」

「思い出せないんだけど……大事な事を忘れてるような気がして」

 

 不確かな記憶の奥底にある、ここではない何処かを探し求め続けるか。

それを忘れ、ここで新しい自分として生きていくか。

光侍と葦咫は2つの選択肢を前に、揺れていた。

 

「きゃーッ!?」

「!?」

 

 しかし、「それ」は2人に決断する時間を与える事無く現れた。

平穏な公園を引き裂く悲鳴に、光侍達は反射的に視線を上げる。

 

「な……!?」

 

 突如出現した怪物の群れ。

それはゆっくりと蠢き、公園にいた住民たちの元へと躙り寄ってくる。

 

「ば、化け物……!?」

 

 怪物の内の一体が伸ばした触手が鞭のように撓って地面を打つと、

コンクリートがいとも容易く砕け割れる。

狙いは逃げ足の遅い老人だ。

 

「あ……あわわ、た、助けてくれ……!」

「危ない! おじいちゃんが!!」

 

 そう思うが早いか、葦咫は疾風の如き速さで飛び出し、

老人の元へと一足飛びで辿り着き、

軽々と抱きかかえてその場を離れる。

 

「みんな! 逃げて! 早く!」

 

 光侍は残された人々を最寄りの出口へと誘導し、避難させた。

 

「一体何なんだ、こいつら……!?」

 

 後を追わせないよう、公園の出口を塞ぐようにして怪物たちと対峙する

光侍と葦咫。

徐々にその相対距離は縮まっていく。そして骸骨の兵士が引き絞った弓矢が放たれた。

 

「!!」

 

 放物線を描き、飛んでくる矢。光侍の心臓目掛けて。まさにその瞬間。

 

「マシュ!」

「はい!!」

 

 巨大な盾を構えた黒い甲冑姿の少女が、光侍と葦咫の前に割って入り、

矢を防いだ。

 

「た、助かった……?」

「間一髪、って所かな」

 

 光侍達を救ったのは、2人の少女。

マシュ・キリエライト。そして、藤丸立香。

 

「あなた達は一体……?」

 

「説明は後。まずはここを切り抜ける。マシュ、迎撃準備!」

「了解です、マスター!」



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「騎士王と光の御子」

マシュ・キリエライト、そして藤丸立香。

突如として出現した2人組の少女。

群がる怪物達を相手に立つ2人の背中を、光侍と葦咫は唖然とした様子で見つめていた。

 

「マシュ、行ける?」

「はい、大丈夫、です……これくらいの相手なら……!」

 

 敵との距離を保ちつつ、小声でやり取りするマシュと立香。

だが、マシュの返答は何処かぎこちない。巨大な盾を構える高さも下がり気味だ。

 

「――迎撃!」

「はい!!」

 

 立香は承知していた。マシュの体の不調を。だとしても、マシュは決して音を上げる事は無いのだろうと言う事も。

故にあまり時間はかけられないと言う事も。

 

「はあぁッ!!」

 

 刀を振り上げるスケルトン兵の太刀筋を見極め、バックステップで回避した後、

レンジ外から横薙ぎの盾で粉々に打ち砕く。

堅牢な盾は守ると同時に、強力な武器としても機能する。

 

(行ける……これなら……!)

 

 倒せない相手ではない。各個撃破。少しずつ数を減らしていけば。

 

「ふっ! やあぁッ!!」

 

 敵を近寄らせないように立ち回るマシュ。すると、今度は槍を携えたスケルトン兵が強襲する。

 

「くっ……!!」

 

 マシュの戦い方を学習したのか、今度はスケルトン兵が間合いの外から槍を突き出して攻めてくる。

反撃をしようにも、攻めの手が今一歩足りない。防戦一方を余儀なくされる。

そこにつけ込み、他のスケルトン兵も便乗して一気に攻め立ててきた。

 

「いけない! このままじゃマシュが……!」

「はぁ……! はぁ……!!」

 

 押し込まれるマシュ。息が切れる。汗が伝い落ちる。集中力が途切れ始める。

 

「――マシュ。無理はしないように」

「!? アルトリア卿!?」

 

 精悍なる声と共に、一陣の風がマシュの横を通り抜ける。次の瞬間、マシュに集中攻撃を仕掛けていたスケルトン兵5体が

バラバラに吹き飛び、その中心には刀身の無い剣を携えた金髪の少女騎士が立っていた。

 

 騎士王、アルトリア・ペンドラゴン。

 

「そうそう。戦いは本業に任せな!」

 

 さらに、赤い閃光が戦場に駆け抜け、残る敵を残らず刺し貫く。それは一振りの槍。

役目を終え、主の手へと吸い込まれるようにして戻っていく槍を受け取る、

逆立つ青髪、長身体躯の男。

 

 光の御子、クー・フーリン。

 

 セイバーとランサー。

アルトリアとクー・フーリンの登場により、均衡していた戦況は一気に覆され、戦いは終局を迎える。

 

「マシュ、やっぱり体が……」

「はぁ、はぁ、す、すみません、マスター……」

 

 緊張の糸が解け、マシュの姿が甲冑から非戦闘用の制服へと変わった。

駆け寄る立香に体を預けるようにして項垂れる。

 

「ほえぇ……す、凄い……」

「一体、あの連中は……」

 

 新世界を訪れた早々、波乱を含んだ出遭いを果たした光侍と立香たち。

彼らを待ち受ける運命とは……



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「グランドオーダーを越えし者」

 人理継続保障機関フィニス・カルデア。

立香とマシュが所属する組織の名称である。

 

 西暦2016年。何者かによる歴史介入によって

古の昔より連綿と紡がれてきた人類史すべてが焼却され、

歴史そのものが滅び去る危機に瀕した。

 

 アルトリアやクー・フーリンと言った

人類史に名を残す英雄の在りし日の姿「サーヴァント」と契約を結び、

使役するマスターとしての素養を持つ立香は

人類史のターニングポイントとなる

7つの特異点修復を目的とした「グランドオーダー」の旅へと旅立つ。

 

 過酷な冒険の旅を潜り抜け、人理焼却を企てた元凶へと辿り着いた立香は

グランドオーダーの旅の中で巡り会ったすべてのサーヴァント達と力を結集し、

ついに奪われた未来を取り戻すことに成功する。

 

 カルデアが秘密裏に推し進めていた人工サーヴァント計画――

つまりはデミ・サーヴァントとしてこの世に生を受けたマシュ。

人理焼却を企てる一派のテロ行為によってカルデアが炎上する中、

立香がマスターとして初めて契約を交わしたサーヴァントとなったと同時に

唯一無二のパートナーとして共にグランドオーダーを戦い抜いた。

 

 しかし、最終決戦の後に体内の魔術回路が不全に陥り、

マシュはかつてのように戦う事が出来なくなっていた。

先の戦いで苦戦を強いられたのはそのためである。

 

 多くの犠牲と代償を払いながらも平和を取り戻した立香たちは

大規模な人理焼却の影響で歴史上に散発したいくつかの微小特異点の調査のために

この場に訪れ、光侍と葦咫と出遭う事になったのだが……

 

「……この世界の人間じゃない?」

「信じてもらえないかも知れませんが……」

 

 情報収集のために話を聞くことにした立香だったが、

彼女が求める答えを光侍たちが持っているはずも無かった。

「おかしな事を言うものだ」と首を傾げられるか、

ともすれば「からかっているのか」と憤慨されかねないと

覚悟しながら光侍が答えると、

 

「いや、信じるよ」

「え……?」

 

 対する立香は笑顔を浮かべ、あっさりとそれを肯定した。

 

「私達も似たようなもんだし。そう言う事もあるでしょ。ね、マシュ?」

「は、はい…レイシフト、と呼ばれるものですが、これについては少し説明が長く……」

 

 方法は違えど、立香たちカルデアの一行もまた、光侍たちのように世界を超えてきた者。

グランドオーダーの中でいくつもの人知を超えた超常現象を潜り抜けてきたためか、

立香の態度は至って平静で、包容力のある余裕を湛えていた。

 

「そうだな。それに、そっちの嬢ちゃんはどうにも普通の人間じゃないようだしな」

「あたし? あたし、人間じゃないの?」

 

 さらに、クー・フーリンは葦咫の素性を看破していた。

 

「俺たち風に言えば魔力……妖気みてえなもんを感じる。そいつはただの人間には無えもんだ。

カルデアにも似たような連中がいるが、そう言う奴らは「妖怪」とも呼ばれるらしいな」

「そうなんだ…どうしよう、光侍。あたし、妖怪なんだって」

「いや、どうしようって言われても……」

 

 思わぬ形で判明した、葦咫のルーツ。驚きと半信半疑が入り混じった、ぽかーんとした気の抜けた声。

顔を合わせる光侍ともども、動揺せざるを得なかった。



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「世界と己を識る旅」

「じゃ、じゃあ……クー・フーリン、さん?

俺はどうですか?」

 

 葦咫のルーツを瞬時に看破してみせたクー・フーリンになら、

自分が何者かと言う事も分かるかも知れない。

期待に胸を膨らませる光侍であった、が……

 

「普通だな」

「え?」

 

「そこら辺にいる、ただの人間だ。お前は」

「そ、そうですか……」

 

 切って捨てるような即答。

感情を切り替える間も無く、どんな表情をすればいいかも分からなかった。

 

「ま、まあまあ! いいじゃん、光侍!

あたしなんて妖怪だよ、妖怪! 光侍が普通の人間だって事が

分かっただけいいじゃん! ね? えーと、えーと……

んーと、んーと……」

 

 フォローになっているのか、いないのか。

放心する光侍を思いつく限りの言葉で何とか慰めようとする葦咫。

ただ、その真摯な気持ちだけは伝わる。屈託の無い、本当に純粋な娘なのだ。

 

「うん、ありがとう、葦咫……」

 

「しかし、ランサー。ただの人間が、レイシフトにも似たような現象で

世界を飛び越えるなどと言う事が可能なのだろうか?」

「ああ? まあ、な。そう言われると何とも言えねえが」

 

 アルトリアの指摘に、クー・フーリンも思わず頬を掻き、眉を潜める。

 

 カルデア一行が行った「レイシフト」とて、決して手軽に行えるものではない。

マスターとしての素養がある以外は、光侍と同じく普通の人間と変わりがない立香とて、

レイシフトを行うための適正無くしてはこれを実現させる事は出来ない。

 

 まして、異なる世界を飛び越えると言う行為自体が、

本来は人智を超えた力でも介在しない限り、実現させる事は難しいだろう。

 

「如何します、マスター? コウジとアシタ。この2人の処遇を」

「う~ん……」

 

 腕組みをしながら考え込む立香が出した結論は……

 

「私達もこの世界に来たばかりで、これから調査をイチから始める所だし、

あなた達さえ良かったら、一緒に行ってみない?」

「え? いいんですか?」

「面白そう! そうしようよ、光侍!」

 

「面白そうって……大したタマだな、嬢ちゃん」

「あたしたちも、知りたいもん。この世界の事。自分達の事!」

 

「葦咫……」

 

 葦咫の言葉に、ハッとする。この娘はいつだって、自分より一歩前に進んで、

目の前に広がる世界へと視野を向けている。

ならば自分も、立ち止まってはいられない。光侍もまた、決断した。

 

「お願いします。俺たちも、連れて行って欲しい。足手まといにはならないつもりです。

危ない所を助けてくれた、あなたたちの役に立てるなら」

 

「先輩、それでは……」

「よし、決まり! これからよろしく!」

「はい!」

 

 固い握手を交わす、光侍と立香。

人理を救った、カルデアのマスターとの出会いは、

光侍と葦咫にいかなる変化を及ぼすのか……?



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第2章
「無謀なる炎、尽きる事無く」


 

 

 ――ロストグラウンド。

 

 かつて、神奈川県と呼ばれたその地域は未曾有の大災害「大隆起現象」によって

文明は完全に崩壊し、日本本土との繋がりも隔絶された。

いつしか、荒廃したその大地はそう呼称されるようになる。

 

 大隆起現象の発生と前後するようにして、ロストグラウンドで誕生した新生児の中に、特異な能力を有する者が現れるようになる。

 

 

 アルター能力。

 

 

 精神感応によって物質を分解・再構成し、超常的な現象を引き起こす。

本土の人間たちはアルター能力者を人ならざる者として忌避し、

対するアルター能力者達もまた、劣悪な環境下で今日を生き延びるため、

或いはその能力を誇示するため、ついには悪事に利用する者も増加し始めた。

 

 本土側はアルター能力者を危険視し、隔離する目的でロストグラウンドを完全封鎖した。

持つ者と、持たざる者。

相反する存在は決して相容れる事は無く、互いの不信感は日に日に募るばかりであった。

 

 そんなロストグラウンドにおいて、自分の力のみを信じ、拳を振るう無頼の男がひとり。

その名をカズマ。

右腕を鋼に変え、あらゆる障害を突き砕くアルター能力「シェルブリット」の使い手。

 アルター使いで構成された、アルター犯罪者を取り締まる特殊部隊「HOLY」の若きエース、自律型アルター「絶影」を持つ男、劉鳳。

 

 カズマと劉鳳。

宿命の出遭いを果たしたその日から、

己の信念を貫くため。我が道を阻む障壁を打ち砕くため。

幾度となく熾烈な戦いを繰り広げていく。

 

 やがて、ロストグラウンドにおいても最強のアルター使いと呼ばれるまでに至った

カズマと劉鳳の力と力のぶつかり合いは

大隆起現象を凌駕する「再隆起現象」を引き起こし、

ロストグラウンドに秘められし謎、「向こう側の世界」への扉を開く。

 

 アルター能力のルーツ。無限にも等しい力が貯蔵された空間。

それを我が物にしようと企んだ野望の男、「無常矜侍」を撃破した後も、

本土側からのロストグラウンド介入は続いた。

 

 それから数年後。

世界各地で次々とロストグラウンドと同様の大隆起現象が同時多発的に発生。

その発生場所でもアルター能力者が確認されたと言う報告が届いた。

 

 もはや人類に安息の場所は無い。

今日と言う日を生きるために、人は戦わねばならない。

 

運命と。

境遇と。

苦境と。

そして、自分自身と……

 

「この毒虫どもが。信念無き行いは、悪以外の何者でもない! その悪を俺は憎む!」

「さあ、喧嘩だ喧嘩! 

喧嘩をやってやるうううううううううううううううううううううァッ!!」

 

 男たちは刻み続ける。この荒れ果てた大地に。



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「咲き誇れ勇者」

 時は、神世紀。

西暦と言う時代は、「バーテックス」と呼ばれる怪物達によって蹂躙され、

戦禍の炎に巻かれて消えた。

 

 際限の無いヒトの文明の発展は、天の神の怒りに触れ、

四国以外の土地とそこに生きるあまねく生命の一切を焼き尽くし、

外界への行き来さえをも禁じた。

 

 それから300年あまりの月日が流れ。

天の神と考えを違える地の神の集合体「神樹」の加護により、

四国は結界によって守られる事で、僅かに生き残った人々は

日々を生きる事が出来る。見せかけの平穏の中で……

 

 神樹を信仰する組織「大赦」は、

結界を破り、尚も人類抹殺のために侵攻を続けるバーテックスに対抗すべく、

素養を持つ選ばれし少女たちは「勇者」と称され、

神樹より賜った装束を纏いて過酷な戦いに身を投じる事となる。

 

 人類とバーテックスの300年にも渡る戦い。

そのいつ終わるとも知れない攻防の中で、数え切れない程の生命が散って行った。

花が咲き、枯れ、散り、種を育む営みのように。

 

 

「嫌なんだ。誰かが傷つくこと、辛い想いをすること……!

誰かがそんな想いをするくらいなら、私が! 勇者になる!!」

 

 

 その膠着に、転機が訪れる。

 

 

 讃州中学勇者部。

人のためになる事を勇んで行う部。

その実態は、バーテックスと戦う使命を背負う「勇者」の資格を持つ

少女たちを集める事が主目的であった。

 

 世界の裏側に隠された、残酷過ぎる真実。

血と涙の果てに、結城友奈たち勇者部はその力の全てを結集し、

ついに12の星座の名を冠したバーテックスの全てを撃破する事に成功する。

 

 辛い戦いは終わった。

再び、元の平穏な生活へと戻れる。そう思われていた矢先、

友奈達勇者部に新たな試練の時が訪れる。

 

「ここは…?」

 

 神樹の導きによって、時空を超え、一同に集結した歴代勇者たち。

西暦と神世紀。出会うはずの無かった出会い。

 

 話によれば、神樹を構成する土地神の一部が造反神として反旗を翻し、

バーテックスを伴って四国の各地を制圧し始めているのだと言う。

造反神がこのまま勢力を拡大し続け、神樹を構成するバランスが崩壊してしまえば

世界は完全に崩壊する。

 

 それを阻止すべく、友奈たちはかつて失った勇者の力を再び授けられ、

造反神を鎮める戦いへと挑むのであった。

しかし……

 

「東郷さん! あれ見て!」

「どうしたの、友奈ちゃん…ああっ!?」

 

 樹海。勇者とバーテックスが戦うための異空間。

その樹海に、空間の揺らぎが発生している。

そこへ、バーテックスが無理矢理に侵入しようとしているのだ。

 

「バーテックスが、揺らぎの中に…!?」

「まるでトンネルみたい……あれって何処に繋がってるの?」

「分からない……だけど、あれがもしも現実空間に続いているとしたら…」

「!? みんなが危ない!」

 

 どうにか、バーテックスの流出を阻止しようと揺らぎに飛び込んだ友奈と

その親友、東郷美森。その先には…

 

 

【――balwisyall nescell gungnir tron――】

【――Imyuteus amenohabakiri tron――】

 

 

「歌……!?」

 

 

 友奈は耳にした。美しくも力強き、その歌声を……



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「過去と未来の魔法少女」

 ――繰り返す。私は何度でも繰り返す――

 

 

 建物の尽くは倒壊し、大地は豪雨によって水没し、

曇天の空を覆う分厚い雲の隙間から柔らかな光が差し込む。

終わりを告げる光。俄に残る天気雨が流星のように降り注ぐ。

 

 まただ。またこの光景だ。

『あいつ』は、高笑いと共に何もかもを蹂躙し、何もかもを奪い、破壊し、

何事も無かったかのように去っていく。

そしてその姿を誰にも認識される事は無い。

名もなき人々には、大災害級の嵐がやってきたようにしか思われないのだから。

 

 ワルプルギスの夜。

世界に呪いと災厄を呼ぶ存在「魔女」。その集合体。

残酷な運命を塗り変えるため、

ワルプルギスの夜の襲来を予見し、独り戦い続ける魔法少女がいた。

 

 

 暁美ほむら。

 

 

 しかし、ワルプルギスの夜の力は強大過ぎた。

何度挑んでも、どれだけ策を講じても、ワルプルギスの侵攻を食い止める事は出来なかった。

けれど、諦めるわけにはいかない。それだけの理由がある。

だから、繰り返す。例え出口の無い迷宮の中を永遠に彷徨う事になっても。

 

 さあ、また砂時計を返そう。砂が落ち切るまでの束の間の時を。

 

 

「…まどか……今度こそ、私は――」

 

 

 

 

 ――運命を変えたいなら、神浜市に来て。この街で、魔法少女は救われるから――

 

 

 舞台は変わり、ワルプルギスの夜の襲来によって

壊滅的被害を受ける事が運命づけられた街、見滝原市から

やや離れた場所に位置する新興都市、神浜市。

 

 そこには、謎の生物インキュベーターと契約を交わした魔法少女達が多く存在した。

魔女と戦う運命を背負いし魔法少女。

 

 その神浜に、妹のういを探すためにやって来た少女、環いろは。

何故か、妹の存在をつい最近まで忘れてしまっていた彼女は、

現地の魔法少女達と出会いながら、ういの行方の手がかりを探している内、

神浜市の裏側で暗躍する組織「マギウス」を取り巻く事件へと巻き込まれていく。

 

 マギウスが掲げる「魔法少女の解放」とは?

いろはの妹、ういは何処に行ってしまったのか?

 

 

 ――みかづき荘。

 

 

「……朝……」

 

 いろはが下宿している屋敷。窓から差し込む朝の光で目が覚める。

 

「起きたのね、いろは」

「あ、やちよさん。おはようございます」

 

 みかづき荘の家主にして、ベテランの魔法少女。七海やちよ。

神浜に点在する怪現象「ウワサ」を追っている。

出会った当初は刃を交える事もあったが、戦いの中で

いろはと心を通わせるようになった。

 

「朝ごはんが出来てるわ。私はフェリシアと二葉さんを起こしてくるから」

「分かりました」

 

 まだ夢の中の同居人達を順番に起こしに行くのは、やちよの日課。

1年前までは大きな屋敷で独り暮らしだったはずが、

随分と大所帯になったものだ。

 

「待っててね、うい。必ずお姉ちゃんが見つけてあげるから……」

 

 決意を胸に秘め、また新しい一日が始まる。



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「行こうぜブロリー! 目指すは破壊神の星」

 世界に迫りつつある新たな脅威に気づく由も無く、ブロリーが暮らす

惑星バンパにやってきた孫悟空は

早速ブロリーとの修行に取り掛かっていた。

 

「うっし、いっちょやってみっか!」

 

 気合充分の悟空はそれぞれ離れた岩山の頂きに立つブロリーと向かい合うや否や、

静かに構える。

その構えは悟空の原点とも言える亀仙流に由来したもので、

相手の出方を窺いつつ

隙を突くというものだ。一方ブロリーはと言えば、そんな悟空の様子など意にも介さず、

無造作に突っ込んでくる。

 

「でぇああああああッ!!」

「おわっと!?」

 

 悟空が立っていた岩山がブロリーの鉄拳で砕け散る慌てて避けるも、

次の瞬間にはまたもブロリーが飛び掛かってきた。

 

 

「ぬあああああああああああああッ……!!」

 

力任せに飛んでくるブロリーの攻撃を、悟空は冷静に、そして確実に捌きながら語り聞かせる。

 

「いいか、ブロリー。おめえは確かに強ええが、キレちまうと周りが何にも見えなくなっちまう」

「……!!」

 

「オラが相手してやるからよ、とりあえず落ち着いて戦ってみろ。

そうすりゃ、もっと強くなれらぁ」

「わ、分かった……」

 

 こうして悟空の指導のもと、ブロリーは少しずつ戦闘経験を積んでいくこととなった。

 

「ふう、腹減ったな。ブロリー、メシにすっぞー」

「う、うん」

 

 修行を切り上げ、悟空の声に反応したブロリーはすぐに駆け寄ってくる。

 

「アンタら、よく飽きもせず毎日のように殴り合ってられるねぇ」

 

 呆れ顔で眺めるのはブロリーを追ってこの星を訪れたチライである。

 

「オラはまだまだ全然本気じゃねえけどな。ブロリーもだけんどよ」

「……そうなんだ」

 

 ブロリーの凄まじいまでのパワーを目の当たりにしておきながら、

それでもなお余裕綽々の態度を見せる悟空に、チライは改めて驚愕するばかりであった。

 

「それがサイヤ人ってもんなんだろうよ」

 

 レモが料理を運んできた。

 

「ほれ、出来たぞ」

「おお! 待ってましたあ!!」

 

 目を輝かせる悟空の隣では、チライもまた期待に満ちた表情を浮かべている。

 

「いただきます!」

 

4人は仲良く食事を始めるのだが、その様子を見たレモは思わず呟いた。

 

「相変わらず良い食いっぷりだな。作り甲斐があるってもんだぜ」

「へへっ、そっかぁ? でもよ、ホントにうめえもんばっかり食わせてくれるからさ。

ついつい食べ過ぎちまうんだよな」

「そう言ってくれるなら何よりだ。これからも腕によりをかけて作るとするかな」

 

「ところでさ、フリーザってやっぱり今でもブロリーの事スカウトしようとしてんのかな?」

 

フリーザは自らの軍を再建すべく、宇宙の各地から屈強な戦士を部下として

引き抜こうとしていた。

レモ、チライ、ブロリー。

皆、宇宙の帝王フリーザの戦力として各地から招集された者たちであったが、

それが今や不思議な縁で結ばれている。

 

「そうだなあ。いずれはこの星に来てまたブロリーを悪い事に利用しようとすっかも知んねえな」

 

 実際、フリーザがブロリーを引き連れて地球にやって来た時は悟空やベジータでも

手に負えない程の大騒動となった。

ブロリーは黙々と食事を続けながらも、

 

「……あの時みたいにならないように頑張る……」と決意を新たにする。

 

 それから幾許かの月日が経過したが、

特にこれといった出来事もなく日々は穏やかに流れていった。

 

そんなある日のこと。

 

「おい、ブロリー。ちょっといいか」

「うん……」

 

 いつものように修行に励むべく外へ出た2人だったが、

その日に限って何故か一向に組手を始めようとしない。

 

「良い事思いついたんだ。フリーザがそう簡単に来れねえ場所」

「どこ……?」

 

「ビルス様ン所さ。あそこならここからも大分離れてるし何よりビルス様が相手じゃ

流石のフリーザも怖くて手が出せねえんじゃないのかなって思ってよ」

 

「なるほど……それは一理あるかも」

「だろ? そんじゃあ早速オラの瞬間移動で行くぞ」

 

 こうして悟空とブロリーはチライ、レモを連れ、破壊神ビルスの住む惑星へと

赴いたのであった。

 

「おっ、ビルス様。ウイスさんも」

「何だぁ? 悟空か……」

「おや、これは珍しいお客様ですねぇ」

 

 悟空たちの姿を見るなり、ビルスは露骨に嫌そうな顔をした。

ちょうど『例の事件』について頭を悩ませていたところだったからだ。

 

「お前たちまで来たということは何か厄介事でも抱えてきたんじゃないだろうな?」

「そんなことねえって」

「それにゾロゾロ知らん顔を連れて来て、まさか僕に押し付けるつもりじゃなかろうな?」

 

「押しつけるなんてとんでもねえ。ただちょっと頼みがあってさ」

「頼みだとぉ!? ボクの手を煩わせるような真似をした日には承知せんぞ!!」

 

「そんな怒ることないじゃんか。こいつ、ブロリーっちゅうんだけど

フリーザに追われててさ。何とかしてえと思って連れて来たんだ」

「ふむ、それは構わないのですが、こちらも少々厄介な事になっていましてねえ」

 

 ウイスは軽く溜め息をついた。

 

「実は突如として星々が消滅する現象が多発しているんです」

「星々が消滅ぅ~? そりゃ一体どういうことだ?」

 

 悟空の問いに対し、ウイスが説明を始めた。

 

「どうにも何らかの力によって星々が次々と消滅しているみたいなんですよ」

「消滅した星の奴らはどうなったんだ?」

「丸ごと消えている。最初からいなかったかのようにな」

 

「何だって!? もしかしてフリーザの仕業か?」

「いいえ、何者かが破壊したのではなく、自然現象に近い様子でして……

いずれにせよ、このまま放っておくわけにはいかないでしょう」

 

「そのブロリーとか言うのと、そっちの……」

「はい、チライと言います」

「レモです……」

「チライ、か。かわいいな……よし、そいつらは預かっといてやるから

悟空、お前はその不可思議な現象について調べてこい」

 

「何だか妙な事になってるみてえだが、サンキュー、ビルス様!

ところで、オラは何処に行けばいいんだ?」

 

「どうやら銀河連邦警察もこの件について調査しているようですよ。

あちらの方角にある気を探ってごらんなさい」

「オッケー。そんじゃ行ってくらあ!」

 

 こうして悟空はウイスの言う気を辿って再び瞬間移動し、

チライたちはビルスと共にこの場に残ることとなった。

 

「ビルス様。ホントはご自分で動くのがめんどくさ~い、なんて思ってたのでは?」

「馬鹿言え、そんな事は無い。それよりそっちのチライとか言う娘。

一緒にアイスでも食わんか?」

 

 



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