雄英高校1年A組銀八先生 (icy tail)
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第1話

ヒロアカと銀魂のコラボって見ないと思って書いてみました!
よろしくお願いします!


侍の国。僕らの国がそう呼ばれたのは今は昔の話…

 

「って!どこなんだよここはぁー!!?」

 

人の往来が激しい街中で地面に膝をつき頭を抱え叫んでいる男が1人。

 

「ナレーションなんか流してる場合じゃねェって!どうなってんだこれ!?おかしいだろ!扉くぐったら異世界ですってかバカヤロー!!」

 

この物語の主人公、坂田銀時は大パニックに陥っていた。

少し時間は遡る。

 

 

 

 

 

 

 

「ジィさん。スクーターの調子が悪くてよォ。ちょっと見てくれや」

 

銀時は動かなくなったスクーターを引きずって源外のところに来ていた。

 

「ん?またオメェか?今月入って何度目だよ!もっと大切に乗れってんだ!」

 

「んだとォ!?もとはといえばてめェが毎度毎度適当な修理してるからだろォが!…ってなんだあれ。扉か?」

 

いつものようにちょっとした言い合いが始まると思ったが、ふと銀時の視界に扉が見えた。

源外が説明をしようとすると、銀時は聞くつもりもないようでふらふらとその扉に向かって行った。

 

「ん?あれはなぁ…さっき出来たばっかりのものなんだが…」

 

「どこでもドアってか?扉だけあるけどよ」

 

そう言いながら銀時はドアノブを掴んだ。

源外が慌てて銀時を止めようとするが…

 

「おい!それに触るな!それは…」

 

「はいはい。そーゆうのいいから。っとどこにつながってるんですかーっとな」

 

扉を通ってしまった。

 

「タイムスリップができる扉だ!帰る方法はまだできてないが…ってあぁ。行っちまったよ。………まあいっか」

 

源外が言い終わる頃には銀時の姿は見えなくなっていた。

少しだけ悩むような素振りを見せた源外だったが…開き直ったのか銀時のことは放り投げて新しい発明に取り掛かった。

そして冒頭に戻る。

 

「あンのクソジジィ!!!どうしてくれんだこれェ!!!」

 

どこからどうみても自業自得ではあるのだが、銀時は盛大に人のせいにして叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…。どうすっかなコレ」

 

あらかた不満を吐き出した後、銀時はとりあえず歩き出した。

そうして歩いているとバカみたいにでかいビルのモニターにニュースが流れているのを見つけた。

 

『本日の東京のーーー』

 

「はぁ!?東京!?ってことはここは日本!?」

 

(いやいやいや!あり得なーい!俺は信じませんそんなこと!)

 

銀時が現実逃避をしていると…

 

 

ドッカーン!!!

 

 

近くで大きな音が聞こえた。

音のした方を見てみると、ヒト型のでかい何かが大暴れしていた。

 

「なんだありゃ?この時代にも天人がいんのか?」

 

一人言のように呟いた銀時だったがいつの間にか集まっていた野次馬の中にいるスーツを着た中年の男が答えてくれた。

 

「何言ってんだ、にいちゃん。あれはヴィランだぞ」

 

「はい?ヴィラン?」

 

「おいおいマジかにいちゃん!?記憶喪失かなにかか?」

 

(おっ!これはチャンスなんじゃね?今のうちに聞いとかないとな)

 

「実はそうみたいなんだよー!色々と教えてくんない?」

 

「そうなのか…。まあいい、実はなーーー」

 

纏めると、この時代には『個性』というものがある。個性は人それぞれで基本的には親の個性の延長線上で引き継がれることが多いようだ。

その個性に伴って『ヒーロー』と『ヴィラン』がでてきたようだ。

 

「ーーーとまぁこんな感じだ」

 

(なんか個性以外は俺の時代とあんま変わらないんだな)

 

「いやー、助かったわ。ありがとな」

 

「ま、いいってことよ。おっ、ヒーローの登場だな」

 

言われて暴れているヴィランの方を見てみると、近くのビルの上に体が木のようなもので覆われている人?がいた。

回りで騒いでいる人達の話を聞く限り『シンリンカムイ』と言う名前のようだ。

そして、そのシンリンカムイが腕から伸ばした木のようなもので敵を拘束しようとしたが…

 

『キャニオンカノン!!』

 

突如現れた巨大な女が横からかっさらっていった。

これにより事件は終息し、集まっていた野次馬も散り散りに去っていく。

 

「おっさん色々と教えてくれてありがとな。俺はもう行くわ」

 

「ああ。じゃあな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時は街の中心部から離れ住宅街のようなところを歩いている。

 

「とりあえずこれからどうすっかなァ」

 

実際問題このままの状態が良くないのは明らかだが、すぐに帰れないのはほぼほぼ確定している。

扉はくぐった後、すぐに消えてしまったようで帰る手段がない。

 

「まあ今はそんなこと考えても仕方ねェか。それにしても…個性か…」

 

この時代に神秘的な力があるのはさっきので分かったが、なんにせよ自分にも何かしらの変化が起こってる可能性があるのだが…

 

「ん?…あれ?自分にも?………はっ!!!」

 

(こ、これはっ!この状況はっ!俺の都合のいい能力が宿っている可能性があるんじゃね?いや、あるに違いねェ!)

 

1つの可能性に思い至った銀時は近くあった公園に急いで向かい、回りに誰もいないかを素早く確認する。

そして…

 

「か~~め~~は~~め」

 

出したくても出せなかったが何回も練習した動作を始める。

銀時は全身全霊を込めて腕を突き出した。

だが…

 

「波ァァァァァァァ!!」

 

出なかった。これっぽっちも出なかった。

しかし、こんなことでは少年の心をもった銀時は諦めない。

 

「…はっ!そうか!溜めが足りなかったのか!」

 

こう言った事にはよく回る頭をフル回転させて問題点を探しだしまた動作を始めた。

 

「か~~~め~~~は~~~め~~~」

 

今度こそはと腕を突き出そうとしたその時、どこかから子供の声が聞こえた。

 

「お母さーん!ねぇねぇ見て!変な人がいる!」

 

「こらっ!見ちゃいけません!」

 

そう言うと子供の手を引いて走って去っていった。

 

「………帰るか」

 

少年の心を持ったおっさんの夢は静かに散った。

 

 

 

 

 

 

 

「って!帰る場所ないんだった!」

 

少年の心を爆発させて撃沈した後、恥ずかしさで忘れていたがここが江戸ではない限り家がない。ついでに仕事もない。さらには一文無しだ。

 

「何も知らないところで家も仕事も金もないとか…マダオ一直線じゃねェか!」

 

(今、もともとマダオだろって思ったヤツ。切腹な)

 

「それにしてもどうすっかなぁ。できるなら仕事しながらそこに下宿させてくれるところに帰る方法が分かるまで雇ってもらうのが一番なんだが…。そんなとこ絶対ないよなぁ。身分証も何もないしよォ」

 

そんなことを考えながら歩いていると…

 

「ん?」

 

何かを踏んだようだ。

拾い上げて見てみるとそこには…

 

『教員大募集!雄英高校で教鞭を振るってみませんか?あなたの力が未来ある若者に力を与える!さァ!ここがあなたのティーチャーアカデミアだ!』

 

と書いてあった。

 

「コ、コ…コレだぁーーー!!!」

 

とりあえず方針は決まったようだが、今の銀時はこれから待ち受ける受難をまだ知らない。

この物語は過去からタイムスリップしてきた坂田銀時が雄英高校であんなことやこんなことをする物語である。

…なに?

肝心なところが分からないって?

そんなの見てからのお楽しみだよ。

 

 

 

 




めちゃくちゃ強引な展開にしちゃいましたが勘弁してください!
個性もない、身分も分からない銀さんが雄英高校に入れる方法ってまったく思い付かなかったです!


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第2話

チラシを拾ったあと、すぐに移動を開始した。

チラシに載っていた地図を見ながら歩くこと30分。

 

「えーっと、雄英高校はっと……は?」

 

目の前にあったのは、銀時がいた時代では考えられないような規模の建物だった。

自分の価値観を見直す必要があることに今さらながら気づいた銀時であった。

 

「…はぁ。とにかく行くか」

 

そうして門をくぐろうとすると、誰かに話しかけられる。

 

「おい。止まれ」

 

「ん?俺?」

 

目を向けると銀時と同じくらいの年の小汚ない格好をした男が立っていた。

 

(こいつはホームレスだな。長谷川さんと一緒だ。いわゆるマダオ)

 

銀時が失礼なことを考えていると、男が続けて話しかけた。

 

「ああ。あんただ。ここで何してる」

 

「お前に説明する必要があんのか?」

 

「だから聞いてるんだ」

 

「はぁ?あんたホームレスだろ?俺は忙しいから早く公園のベンチにでも帰んな。しっしっ」

 

「…。俺は…」

 

追い払おうと思い、鬱陶しそうに手でジェスチャーをすると、銀時の手に握られているチラシを見た男がポケットから何かを取り出して見せてきた。

 

「こういう者だ」

 

「あん?雄英高校講師相澤消太だぁ?」

 

それはこの男が雄英高校の教師であることを証明する名刺だった。

銀時は男の顔と名刺に何度か視線を往復させると…

 

「…。すんませんしたァ!!!」

 

とりあえず土下座した。

ただの土下座じゃない。ジャンピング土下座だ。

 

「…はぁ。もういい。あんたここの教員試験受けに来たんだろ」

 

「はい!そうでございます!」

 

素早く立ちあがり敬礼しながら答える。

 

「こっちだ」

 

「はい!どこまでもお供させていただきます!」

 

(マジで入る前にゲームオーバーになるとこだったァ!)

 

 

 

 

 

 

 

門の前での一件が終わり、校内を歩いている。

 

「あのー…」

 

「なんだ」

 

「どこに向かってるんでしょうか?」

 

「校長室だ」

 

「ああ~!校長室ね!…って!はいぃー!?」

 

「着いたぞ」

 

「おい!ちょっと…」

 

相澤は銀時の話を聞かずに校長室をノックする。

 

「教員試験を受けたいと言う者を1名連れてきました。」

 

『入りたまえ』

 

「失礼します。…なにしてんだ、早く入れ」

 

「嘘だろ…。はぁ、失礼します」

 

どうしようもないので部屋に入ると、中にはスーツを着たちっちゃい動物がいた。動物が、いた。

大事なことだから2回言った。

 

「相澤さん、相澤さん」

 

銀時は小声で相澤に話しかける。

 

「なんだ」

 

「明らかに校長不在じゃん!校長のペットしかいないよ!」

 

「何言ってんだ。あの方が校長先生だ」

 

「…」

 

(こ、校長かよォォォォォ!!)

 

「Yes!ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は…校長さ!」

 

(しかも聞こえてたァァァ!!)

 

「わ、私は坂田銀時であります!」

 

綺麗な敬礼で自己紹介をする銀時。

 

「いつも通りで構わないよ!緊張してちゃ君の本質が分からないからさ!」

 

「あっ、ハイ!分かりました!工場長!」

 

「校長さ!じゃあ早速面接を始めるのさ!」

 

こんなぐだぐだな感じだが、面接は始まった。

 

「じゃあまずは君のことについて教えてくれるかな」

 

「えー、坂田銀時です。無職で無一文で家無しです」

 

「そうかそうか。じゃあ次は…」

 

(嘘ついても仕方ないと思って正直に言ったが…普通に信じたな)

 

「個性を教えてくれるかな」

 

「個性はないです。あっ、でも木刀から醤油は出せます」

 

「ふむふむ。…実技試験にしようか相澤くん」

 

「はい。その方が良いかと」

 

「じゃあ早速移動だよ!」

 

(これ大丈夫なのん?)

 

 

 

 

 

 

 

 

連れてこられたのは広い体育館のような場所。

 

「それじゃ気を取り直して実技試験を始めるよ!」

 

「何をすればいいんですか?工場長」

 

「校長さ!とりあえず相澤くんと戦ってみて!」

 

「は…?戦うの?」

 

「さっさと始めるぞ」

 

「えぇ…」

 

なんやかんや言いながら開始位置に着く。

相澤は準備ができているようで開始待ちのようだ。

 

(これは多分負けたらダメなやつだよな…)

 

「では、始め!」

 

校長の合図で試合形式の試験が始まった。

 

「行くぞ」

 

そう言って蹴りを放ってくるのをかろうじて避ける。

 

「うおっ!っぶねェ!」

 

「雄英の教師になりたいんだったら本気で来い」

 

「言われなくても…分かってらァ!」

 

銀時は木刀を抜いて応戦する。

 

「くっ…。この力は…」

 

どうやら相澤はなにかしらの個性を発動したようだがなにも起きない。

銀時は続けざまに木刀を横薙ぎに振るう。

 

「オラッ!」

 

「ぐっ!増強系の個性じゃないのか!?」

 

「さっきの話聞いてなかったのか?」

 

「本当に無個性なのか…」

 

「とにかく…次行くぞ」

 

そこからは一方的だった。

相澤が攻撃しようが当たらない、さらには捕縛もできない。なにか野生の勘のようなもので避けられる始末だ。

 

「背中がァがら空きだぜっ!」

 

「ぐはっ…」

 

「ふぅ。これで…終わりだな」

 

銀時は倒れた相澤に木刀を突きつける。

 

「…ああ。降参だ」

 

 

 

 

 

 

 

相澤との実技試験が終わり校長のところに戻って講評の時間。

 

「いやー強いね坂田くん!」

 

「まあ、それほどでも」

 

「謙遜しなくていいよ!ね、相澤くん?」

 

「はい。正直に敵いませんでした。それにまだ本気じゃなかったと思います」

 

(は?そんなとこまで分かるの?)

 

「いやっ、そんなことは…」

 

「嘘をつくなよ。あの木刀が真剣だったら、俺は一合目で斬られて終わりだった」

 

「確かにそうだけどよォ…」

 

「まあなんにせよ…合格さ!明日からよろしくね!」

 

「えっ?マジ?合格?……よっしゃァァァァ!!!」

 

校長の口から合格が告げられ大はしゃぎするおっさん。

よほど嬉しいようである。

まあ仕事に就けないとどう考えても野垂れ死ぬ以外の未来はなかったと考えると妥当ではある。

大はしゃぎしている銀時をよそに校長と相澤は小声で密会をしていた。

 

「相澤くん。実際のところどうなの?」

 

「私の考えになってしまいますがよろしいですか」

 

「構わないとも」

 

「正直、木刀じゃなく真剣で本気の坂田なら、全盛期は無理でしょうが今のオールマイトさんとはやりあえると思います」

 

「それほどか…」

 

「はい」

 

「分かったよ!これは良い拾い物をしたね!相澤くんグッジョブさ!」

 

こうして物語は動き始める。

 

 

 

 




イレイザーとマイクと銀さんって絶対に気が合うと思うんですよね!
まあ3人の絡みは後々ですが、銀さんをどれくらい強くしようか迷いましたが…思いきりました!
できるだけ毎日あげていこうと思うのでよろしくお願いします!
感想などもお待ちしてます!


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第3話

今回から原作入ります!


銀時が合格を告げられたあと校長室に戻って今後の事を話すことになった。

 

「さぁ、坂田くん!君は晴れて雄英高校の教員になったわけだが…足りないものがある!」

 

「はい!工場長!なにが足りないのでしょうか!」

 

「校長さ!君に足りないものはプロヒーローの免許なのさ!」

 

「どうすればよろしいでしょうか!」

 

「まぁそれはこちらで何とかするんだけどね!坂田くんにやってもらいたいことは『ヒーロー名』を考えることさ!」

 

「ヒーロー名ィ!?」

 

「そうさ!プロヒーロー免許を取得するにあたって必要になるからね!」

 

「苦手なんだよなァ。そうゆうの…」

 

「坂田くらいの使い手なら異名くらいあってもおかしくないと思うがな」

 

「げ…」

 

(コイツはエスパーかなんかかよォ!?)

 

「あったみたいだな。それでいいんじゃないか」

 

「いや、それはちょっと…」

 

「まあとりあえずなんて呼ばれていたのか教えてくれよ!」

 

「…『白夜叉』」

 

「へぇ…」

 

「ふむ。決まりだね!」

 

「はぁ!?」

 

「他に思い付くんなら言ってみろ」

 

「………ちっ。わーったよ」

 

「じゃあそれで申請しておくね!」

 

「へいへい」

 

「あっ!それと、家無いんだよね?雄英の寮を使っていいからね!相澤くん、後で案内してあげて」

 

「分かりました」

 

「マジ!?ヒャッホーイ!!!」

 

また大はしゃぎするおっさんであった。

 

 

 

 

 

 

そして月日は流れて春。

今日は入学式である。

雄英高校の教員は職員室に集まって朝の朝礼を始める。

 

「みんなおはよう!」

 

『おはようございます!根津校長!』

 

「うん!それじゃ朝礼を始めるよ!」

 

話は進み、それぞれの担当が発表される。

 

「オールマイトくんは主にヒーロー基礎学を担当!」

 

「はい!」

 

「イレイザーヘッドくんは1年A組の担任!頑張ってね!」

 

「はい」

 

(ぷっ!イレイザー担任だってよォ!ド~ンマイ!)

 

「白夜叉くんは…」

 

「はい!保健体育を所望します!工場長!」

 

欲望丸出しのおっさんがここにいた。

だか、現実とは無情である。

 

「1年A組の副担任ね!イレイザーヘッドくんの補佐役として頑張ってね!」

 

「………」

 

(聞き間違いだよね!?1年A組の副担任なんてな~い!ありえな~い!)

 

「あ、あの~校長殿ォ?僕の役職をもう一度教えて頂けますか?」

 

「1年A組の副担任さ!」

 

「………ちょーォっと待てェい!!!おかしいだろォが!!!まだ教員になって1年くらいしか経ってねェんだぞ!!!」

 

「他に役職がなかったからさ!」

 

「諦めろ白夜叉」

 

「でもよォ!あっ!そうだ!マイク変わってくれよ!」

 

「おいおい!何言ってんだあ!ギン!俺は英語担当だぜえ?」

 

「俺が英語やるからよォ!」

 

「もう決まったから諦めなよ!」

 

「…マジかよォ」

 

こうして朝の朝礼が終わり解散。

各担任は教室へ向かうのだが銀時は校長の指示で入学式の方に参加することになった。

そして朝礼が始まったのだが…

 

(あれ?イレイザーがいねェぞ?どうしたんだ?)

 

 

 

 

 

 

結局イレイザーが入学式に来ないまま初日が終わり、次の日ホームルーム。

 

「おはよう」

 

『おはようございます!』

 

「今日はこのクラスの副担任を紹介する」

 

『副担任ー!?』

 

イレイザーが放った一言により教室がざわつきだし、全員の興味がドアの方に向く。

 

「入ってくれ」

 

「どんな先生かな?」

 

「女の先生か!?」

 

「有名な人かなぁ?」

 

みんな期待するように騒いでいる。

だが入ってきたのは死んだ魚のような目をした覇気のない男だった。

その男が教壇に立ち未だに騒いでいる生徒達に向かって言葉を発した。

 

「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ。発情期ですかコノヤロー」

 

この一言で全員の意思が瞬時に一致した。

 

"なんか変な人きたあ!!!"

 

そしてみんなが静まったのを確認すると銀時は自己紹介を始める。

 

「はい、どォも。今日からこのクラスの副担任になった坂田銀時でーす」

 

「先生!」

 

銀時が紹介を終えると即座に手を挙げる生徒が一人。

 

「ん?どォした?そこのメガネくん。いや、新八くん」

 

「新八くん?私の名前は飯田天哉ですが…。っと、そんなことより!先程の発言といいその咥えているタバコといいなんなんですか!雄英高校の名誉ある教員としてあるまじき行い!」

 

「何を言っているんだ新八くん。さっきのはお前達が騒いでいたのがわりィし、これはレロレロキャンディだ」

 

「くっ!そ、それは…!ですがキャンディの棒から煙は出ないでしょう!」

 

「そんなに疑うんなら…ほれ」

 

そう言って口からレロレロキャンディを出して見せる。

 

「んなっ!」

 

「はい。先生は大変傷つきました。よって新八くんは除籍処分にィっ!…いってェな!何すんだイレイザー!」

 

「アホ。いい加減にしろ。もうホームルーム終わるぞ」

 

「あん?…もォそんな時間?んじゃまあみんなよろしくなー」

 

そう言って銀時は教室から出ていった。

教室は微妙な空気が支配していた。

 

「先が思いやられるな…」

 

頑張れイレイザーヘッド!

負けるなイレイザーヘッド!

 

 

 




感想等お待ちしてます!


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第4話

ある日の朝。

寮を出て雄英高校まで歩いていると門の前に人ごみができていた。

 

「はい。どいたどいた。邪魔ですよー」

 

銀時が通り抜けようとすると一斉にマイクを向けられた。

どうやらマスコミのようだ。

 

「オールマイトの授業について教えてください!」

 

「ん?なにィ?オールナイト授業?なにそれ?」

 

「いや、オールマイトの…」

 

「んん?オールナイトォ?」

 

「あぁ!もう!何でもないです!」

 

マスコミは怒ったように銀時のもとから去っていった。

 

「なんだったんだ?アイツら」

 

 

 

 

 

 

教室に移動し、ホームルーム。

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見させてもらった」

 

(わ、忘れてたァァァ!!)

 

「あ、あぁ!み、見させてもらった!」

 

イレイザーはちらっと銀時を見たがすぐに話に戻った。

見逃してくれたようだ。

 

「ふぅ」

 

「次はないからな」

 

「ひぃっ!」

 

「どーしたの先生?」

 

「な、何でもねェよ!何でもないったら何でもないんだよォ!」

 

「す、すいません…」

 

「おい」

 

「ひっ!きゅ、急に怒鳴って悪かったな!糖分が足りなかったみたいだ!」

 

「は、はあ…?」

 

「まあいい。さてホームルームの本題だが今日は君らに学級委員長をきめてもらう」

 

『学校っぽいの来たー!!!』

 

そして結局、緑のモジャモジャとポニーテールのお嬢様が委員長と副委員長になったみたいだ。

そして昼にまたマスコミが騒ぎを起こして一悶着あったみたいだが詳しい内容は分からなかった。

そして本日最大の謎は…

 

「なんで新八くんが委員長になってんの?」

 

「俺に聞くな。知らん」

 

謎は迷宮入りだ。

小学生探偵呼んでこないと無理だな。

その後、本日の業務が終わり職員室に戻ると先生がみんな集められていた。

 

「ん?どした?なんかあったのか?」

 

「よお、ギン!なんか門が粉々に壊されてたみたいだぜ?マスコミの騒ぎの原因がそれみたいだ!」

 

「みんな集まったみたいだね」

 

そして校長から話を聞く。

多分、ヴィランの仕業だと言うこと、近々なにか起きるかもしれないから教員は常に注意を配っておくこと等といった話だった。

 

(なんか嫌な予感がするんだよなァ)

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日のヒーロー基礎学の時間。

 

「今日のヒーロー基礎学だが…俺と白夜叉とオールマイト、そしてもう一人の四人体制で見ることになった」

 

「はーい!質問!白夜叉って誰ですか?」

 

「俺だ」

 

「坂田先生が白夜叉!?…ぷっ!似合わねえ!」

 

(無視だ無視。ガキの戯言に耳を貸すな)

 

「恥ずかしくないのー?」

 

「…」

 

(…無視だ)

 

「いい大人がカッコつけちゃって!」

 

ブチッ

 

「上等だ!こらァ!表出ろやァ!」

 

自称、少年の心を持ったおっさんには我慢ができなかったようである。

これが銀時がクオリティーだ。

自分の半分の歳の生徒と言い争う教師…

なんと滑稽なことか。

 

「お前らうるさい。話が進まん。白夜叉も落ち着け」

 

「ちっ。へいへい」

 

『すいませーん』

 

「話に戻るが今日のヒーロー基礎学は…災害水難なんでもござれ。人命救助訓練だ!!」

 

「訓練場まではバスで行くらしいから早く準備しろよー」

 

『ハーイ!』

 

 

 

 

 

 

バスの中。

銀時もいつもの着物姿に戻っている。

生徒達は個性の話をしているようだ。

 

「そういえば!坂田先生の個性ってなんですか?」

 

「ん?俺は無個性だ」

 

『はあああ!!!???』

 

「っんだよ!うるせェな!」

 

「無個性なのに雄英で教師してるの!?」

 

「教員試験受かったんだからいいんだよ」

 

「じゃあその木刀で戦うんですか?」

 

「実はそれがすごい業物で…的な?」

 

「そうそう。この木刀は洞爺湖ってところで仙人に作って貰った名刀中の名刀よ」

 

「おおっ!やっぱり!?すげぇ!」

 

嘘である。

まぁ名刀っちゃ名刀ではあるが。

銀時は通販で買っているからただの木刀と勘違いをしているが本当は業物だったりする。

それにしてもこの時代にも売っているとは銀時自身も思っていなかったようだが。

 

「もう着くぞいい加減にしとけよ…」

 

「うーぃ」

 

『ハイ!!』

 

バスは訓練場に到着した。

ウソの災害や事故ルーム、略してUSJだ。

大丈夫なのかな?これ。

 

「うーっす。13号」

 

「どうも。坂田さん。先輩」

 

「ああ。それよりオールマイトは?ここで待ち合わせるはずだが」

 

「先輩それが…通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで、仮眠室で休んでいます」

 

「不合理の極みだなオイ」

 

「なにィ!?アメコミおじさん来ないのォ!?ってか俺も仮眠室で仮眠させてくれ!」

 

ちなみに銀時もオールマイトの個性のことはさわりだけ知っている状態だ。

詳しくは知らない。ってか銀時が興味ないらしい。

 

「何言ってんだアホ。始めるぞ」

 

始める前に13号がお小言を生徒に聞かせている。

13号の話が終わったあたりで広場の方になにか違和感を感じた。

 

「ん?…イレイザーなんだあれ?黒いモヤみたいのがあるぞ」

 

「…!一かたまりになって動くな!」

 

「白夜叉!13号!生徒を守れ」

 

「オイオイ。マジかよ、ありゃあ…」

 

「ヴィランだ!!!」

 

(嫌な予感的中かよ…。ついてねェな)

 

イレイザーの指示で警戒体制をとっていると、黒いモヤからヴィランがどんどん沸いてくる。

 

(あの黒いモヤも個性だな)

 

「おい、『消太』」

 

イレイザーの隣に並んだ銀時はいつもの飄々とした雰囲気がなくなり、侍の顔になっていた。

 

「ああ。分かってる。アイツの個性、相当厄介だ」

 

「ああ、あと…俺が見た限り特にヤバイのがあの脳ミソのやつだ。あの手の奴はヤバイだろうが、まだガキだなありゃ」

 

「そうか。…こうゆう時のお前は本当に頼りになるな。『銀時』」

 

「お互い様だ、気にすんな」

 

銀時がイレイザーと相手を観察していると、

リーダーっぽい手のやつと黒いモヤが話し出した。

 

「13号に…イレイザーヘッドですか…。ん?もう一人教師がいますね。まあいいでしょう。それよりオールマイトがいないようだ」

 

「子どもを殺せば来るのかな?」

 

(コイツ…)

 

生徒は明らかに怯えている。

オールマイトの不在、慣れない環境、敵との接触。

こうなるのも無理はない。

だが、生徒達は知らない…坂田銀時を。

敵は知らない…白夜叉を。

この男がどれ程の男なのかを。

 

 




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第5話

USJにヴィランが乗り込んできた。

目的はどうやらオールマイトを殺害するつもりらしい。

肝心のオールマイトがいないことに気づいた敵はオールマイトを誘き出す為に生徒を殺すとのたまった。

 

「消太、どうすんだ?」

 

「13号には指示をだしたが、多分外との連絡もとれなくなってるだろうな」

 

「そりゃあな。これで外と連絡がとれたら敵はただのアホだ」

 

「ああ。とりあえず俺が先に行く」

 

「無理だけはすんなよ」

 

銀時とイレイザーが二人で話していると、それを聞いていた緑谷が騒ぎだした。

 

「相澤先生は、一人で戦うんですか!?あの数じゃいくら個性を消すっていっても!!」

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。銀時!13号!任せたぞ」

 

そう言ってイレイザーは敵のもとに飛び込んでいった。

 

「坂田さん!こっちはどうしますか!」

 

「とりあえず生徒には勝手な行動をとらせんな」

 

「分かりました!みんなこちらにっ!?」

 

生徒達を避難させようと動こうとしたところで黒いモヤが目の前に現れた。

 

「させませんよ」

 

「お前ェら!ぜってぇに動くなよ!」

 

「無駄なこと。私の役目は…散らして嬲り殺す」

 

黒いモヤのヴィランが個性でこちらの戦力を分散させるつもりなのに気づいたが遅かった。

 

(油断した!やべェ!)

 

銀時は近くにいた上鳴、耳郎、八百万の3人の手を取り近くに引き寄せ叫ぶ。

 

「ちっ!お前ェらぁ!!絶対に一人にはなんな!!近くにいるやつ誰でもいいから手を掴めェ!!」

 

銀時の叫びを最後に数名の生徒はモヤに飲み込まれて消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

山岳ゾーン。

ここに銀時達は飛ばされた。

 

「八百万!耳郎!上鳴!いるか!」

 

「はい!」

 

「います!」

 

「平気っス!」

 

どうやら無事に同じところへ飛ばされたようだ。

たが…

 

「ガキ共が来たぜぇ!」

 

「とりあえずこいつらを殺せばいいんだよなぁ!?」

 

「おい!女もいんぞ!しかも二人とも上玉だ!」

 

何十というヴィランに囲まれていた。

圧倒的に不利。

銀時以外の3人はそう思っていることだろう。

 

「ど、どォすんすか!先生!」

 

「まぁお前らは下がってろ」

 

「で、ですが先生は個性が…」

 

「大丈夫だ。成り行きでお前らの副担任になったが、もォ大切な俺の生徒だ。それに…個性がないから弱いってのは誰が決めたんだ?」

 

「それは…」

 

「まぁ見てろ」

 

そう言って銀時は一歩踏み出す。

 

「なんだぁ?お前は?一人でやるってのかぁ?」

 

「生徒の前だからって粋がってんじゃねえぞ!先生よぉ!」

 

相手も圧倒的に有利な状況で調子に乗っているようだ。

しかし、この男の前にたった時点で勝ち目がないのに誰も気がつかない。

一歩、また一歩と敗北が近づいているのに気がつかない。

 

「俺ァ今、機嫌がすこぶる悪ィんだ。楽に逝けると思うなよ?クソヤロー共」

 

銀時の啖呵を気に戦場が動く。

そしてわずか3分後…

 

「うそ…でしょ」

 

辺りには気絶した敵が転がっていた。

 

「んだよ、ストレス発散にもなりゃしねェ」

 

そう言って銀時は歩いていき地面に木刀を突き立てる。

すると地面から敵が一人出てきた。

 

「うぎゃっ!な、なんで分かった!?」

 

「勘」

 

銀時は首を鳴らしながら適当に答えた。

 

「勘なわけがあるはずがぁっ!!」

 

敵がすべて話終える前に木刀で殴り飛ばした。

 

「ちょっと黙ってくんない?口くせェ」

 

これにて山岳ゾーン決着。

 

 

 

 

 

 

 

銀時が敵を始末したあと。

 

「お前らー。無事かー?」

 

「モチロンっす!先生!」

 

「はい!助かりました!」

 

「ありがとうございます!」

 

さっきまでと比べて尊敬の眼差しのようなものを感じる。

女子二人に至っては少し熱を帯びているように見える。

銀時は気づいていないが。

 

「それにしても何者なんですの?先生は」

 

「何者って言われてもなァ」

 

「びっくりしましたよ!あんなに強いなんて!」

 

「まあ、あんな雑魚共に負けるほどヤワな生き方はしてきてねェよ。…今はそんなことよりどォ動くかだな」

 

「広場の方に戻るのがいいかと!」

 

「そう…だな。じゃ行くぞ」

 

そうして広場に戻ると…

 

「残念だよイレイザー。個性を消せるって言っても圧倒的な力の前には無個性と一緒だもんなあ」

 

「ぐっ…」

 

脳ミソ敵にイレイザーが組伏せられていた。

抵抗しようとしたのか体のいたるところがボロボロになっている。

 

「相澤先生!!」

 

「アレはやばいって!」

 

「…っ!」

 

3人がそれぞれの反応を示すなか…

急に銀時の姿が掻き消え、イレイザーを組伏せていた脳ミソ敵が吹き飛ばされた。

 

「おい。俺のダチになにしてんだてめェ」

 

脳ミソ敵を吹き飛ばした銀時はイレイザーを抱き上げる。

かろうじて意識はあるようだ。

 

「ぎ、ん…とき」

 

「無理して喋んな!消太!」

 

銀時はイレイザーを上鳴達のところに連れていき預けた。

 

「消太を頼んだ」

 

「は、はい!」

 

銀時は立ちあがって向き直り、木刀を突きつける。

 

「てめェらには地獄への片道切符をくれてやる」

 

白夜叉。

怒れる夜叉が動き出す。

 

 

 




感想等お待ちしてます!


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第6話

銀時が動き出す。

イレイザーと八百万、耳郎、上鳴の3人は皆がいる門のところに移動したようだ。

 

「てめェらには地獄への片道切符をくれてやる」

 

「…はー。なんなんだよお前は。おい黒霧あんなのいたか」

 

「死柄木弔。私もあの方のことは…」

 

「あっそ。まあいいや。脳無殺れ」

 

死柄木がそう言うと銀時が吹っ飛ばした脳無とやらが起きあがり勢いよく殴り掛かってきた。

 

「ぐっ!コイツ…!?」

 

銀時はとっさに木刀で受け止めるが受けきれずに吹き飛んだ。

 

「なんだ、口だけかよ。ヒーロー」

 

銀時は立ち上がりながら考える。

 

(なんだこの違和感は…)

 

銀時は立ちあがり脳無に突進して行く。

脳無は正面から来た銀時を両手で掴もうとするが、銀時がスライディングで避け股下を抜けて振り返り様に脇腹に木刀を叩き込む。

しかし全く効いた様子もなく脳無の拳をモロにくらった。

 

「ッらァ!…コイツ!?効いて…ぐぁっ!」

 

「お前の攻撃なんて効くはずないだろ。脳無は対オールマイト用に作ったサンドバッグ人間なんだから。パワーもオールマイト並、さらにショック吸収と再生の個性を持ってる。そんなオモチャが効くはずないだろ」

 

自分のオモチャを自慢する子供のように話す死柄木。

だが、銀時はなにもなかったかのように立ちあがり告げる。

 

「そォゆうことかよ」

 

「は…?オールマイト並みのパワーだぞ!?なんでだよ!」

 

「通りで軽いわけだ。デカブツの拳には重みがねェ。そんな空っぽの拳じゃあ効かねェよ」

 

「くそっ!おい脳無!」

 

死柄木の合図で脳無が向かってくるが、銀時にはもう当たらない。

なんなく躱すと木刀を顔面に叩き込んだ。

 

「もう当たらねェよ。感情がねェから動きが一辺倒だ。」

 

脳無はすぐに起きあがり突っ込んでくるが銀時に拳が当たる気配がない。

そしてまた銀時が脳無を吹っ飛ばした。

こと戦闘に於いて、銀時は疑いようのない天才だ。

野性的な勘で体が勝手に動くようになっているほどである。

そんな銀時に脳無の考え無しの攻撃など当たるはずがない。

だがこのまま消耗戦に持ち込まれると勝ち目はないのも確かだ。

 

(もう負ける気はしねェが…木刀じゃあヤツのショック吸収を突破できねェ!どうすりゃいいか…)

 

再び脳無を吹き飛ばした後、

銀時が頭を悩ませていると…

 

「先生!これを!」

 

「ん?…おっと!」

 

何かが飛んできた。

それを受け取った銀時は…

 

「…!こいつは…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡り、

銀時が脳無を圧倒し始める少し前。

 

『相澤先生!』

 

門の前にいた生徒が集まってくる。

 

「…大丈夫だ」

 

どうやら動けはしないようだが話せるくらいまでには回復したようだ。

重症ではあるが命に別状はないようで生徒も少し安心したようである。

 

「おい!あれ!」

 

「坂田先生!?」

 

「一人で戦ってるの!?」

 

誰かが銀時が戦っているのを見て騒ぎ出す。

 

「安心しろ」

 

「でも!」

 

「バスで無個性だって!」

 

「それに相澤先生でも歯がたたなかったのに!」

 

「あいつは、銀時は…俺よりも数段強い」

 

『…は!?』

 

銀時の戦いを見ていないものは皆放心している。

 

「本当だぜ!!」

 

「本当です!何十人という敵を数分で全滅させてました!」

 

「お前ら。しっかり見ておけよ」

 

『は、はい!』

 

そうして戦況は銀時に傾き脳無の攻撃が当たらなくなった。

 

「すごい…!」

 

「本当に木刀一本であの化け物とやりあうなんて…」

 

そこに爆豪と切島も戻ってきた。

 

「みんな無事だったか!?」

 

「うん!それよりあれ!」

 

「ん?坂田先生!?」

 

「あの天パ教師の動き…本能で動いてやがる」

 

「はあ!?体が勝手に反応してるってことかよ!?」

 

「あれが…白夜叉かァ!」

 

爆豪は気がついたようで、凶暴な笑みを浮かべた。

銀時の型のない、荒々しいが洗練された無駄のない動き。

流派はないが完成されている。

それが今の自分の完全なる上位互換であると。

爆豪のなかで1つ目標が決まった瞬間だった。

 

「相澤先生!少し様子が…」

 

何かに気づいた緑谷が相澤先生を呼んだ。

 

「どうした!」

 

「脳無の個性で坂田先生の攻撃が全く効いてないみたいです」

 

「オールマイト用に造られたってことは…」

 

「打撃に強ェってことだ」

 

「打撃………っ!八百万!個性で刀を造れ!すぐにだ!」

 

「は、はい!」

 

そして…

 

「できましたわ!」

 

「よし、銀時に向かって投げろ!」

 

相澤先生の言葉に八百万は頷き銀時に投げる。

 

「先生!これを!」

 

無事に受け取った銀時に八百万は続ける。

 

「それは八百万家に代々伝わる名のある刀鍛冶が打った名刀を私の個性で造った物です!質は保証しますわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八百万から刀を受け取った銀時は思い出していた。

 

「そうか。あいつの打った刀はこの時代まで受け継がれてんだな。やっぱり…しっくりくらァ」

 

1つの歪みもない刀身。

鍔の部分には鈍く輝く銀の龍。

 

「また世話ンなるぜ。鉄子」

 

銀時は刀を抜き放ち。

脳無と死柄木の方にゆっくりと歩いて行く。

 

「おいおい!あんな強いヒーローがいるなんて聞いてないぞ!どうなってんだよ!」

 

「あん?俺はヒーローなんてそんな大層なモンじゃねェよ」

 

「ふざけんな!じゃあお前はなんなんだよ!」

 

銀時はあの時とは違い敵に刀を向けながら真剣に言い放った。

 

「宇宙一バカな侍だコノヤロー!」

 

決着の時は近い。

 

 

 

 




どうやって展開するかすごく悩みましたがこれにしました!


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第7話

銀時が刀を受け取り、最終局面。

 

「宇宙一バカな侍だコノヤロー!」

 

「くそっ!脳無!」

 

死柄木の命令で脳無が向かってくる。

しかし、銀時は楽々躱して刀を振るった。

 

「当たらねェ…よっ!!」

 

脳無の右腕が宙を舞う。

 

「全く痛がらねェってのも変な感じだな…。血もでねェし」

 

だが、再生の個性ですぐに腕がはえてきた。

そこで、脳無の再生を観察していた銀時が何かに気づいた。

 

(ん?血もでない…?ってことはコイツのもとになってる人間はもう生きてねェってことか)

 

銀時はヒーローになった以上殺しはしないと決めていて、脳無を無力化することを目的として戦っていた。

しかし…

 

「本当にただの操り人形ってんなら話は違ェ。俺ァ…てめェを斬るぜ」

 

再生を終えた脳無が再び襲いかかってくるが銀時には通用しない。

また腕が宙を舞った。

同じことを何度か繰り返していると…

 

「やっぱりな。再生っつっても限界があんだろ?」

 

「はあ!?何を言って…おいおい、まじかよ!」

 

脳無の再生のスピードが格段に遅くなった。

 

「まぁ道理だな。ナメック星人だって腕を再生すんのに体力使うからなァ」

 

「そんなの聞いてないぞ…。おい黒霧」

 

「お任せを!」

 

「そろそろ終ェだ!…っ!?」

 

銀時が脳無に刀を振るうと腕が黒いモヤに飲み込まれ攻撃が届かなかった。

 

「させませんよ!白夜叉とやら!」

 

そしてその隙に脳無が銀時に一撃を見舞った。

銀時は吹き飛び壁に激突した。

 

「やべっ…!うぁっ!」

 

「ナイスだ黒霧。初めからこうしとけば良かったな」

 

「いつつ…。こんなこともできんのかよアイツの個性は」

 

ダメージは無いものの状況は悪い。

 

(わりとやべェな。アイツが厄介すぎる)

 

「おい黒霧。もう一度だ」

 

「無論!」

 

銀時に向かってくる黒霧と脳無。

 

(ちっ!どうすりゃ…)

 

その時、

 

「やらせねェよ!モヤモブがァ!」

 

爆豪が横から飛んできて黒霧を掴み地面に押し付けた。

 

「!!?」

 

「てめェに実体があんのは分かってんだ!動くんじゃねェぞ!」

 

「くっ…!油断を…」

 

さらに脳無も足を凍らされ動けなくなっていた。

 

「先生。手伝いますよ」

 

「おおっ!助かったぜ!ボンバーマン!轟!」

 

「おい天パァ!誰がボンバーマンだコラァ!」

 

「俺たちも戦いますよ」

 

プロヒーローならここで下がってろとでも言いそうだが銀時は違ったようだ。

 

「マジ?助かるわー。向こうも3人いるから卑怯じゃねェよな?な?」

 

まあ考えなしではないのだが、いかんせんノリが軽いせいか聞こえが悪い。

なんにせよ状況は完全にこちらに傾いた。

 

「よし。じゃあボンバーマンはそいつ押さえてろ。轟はあのデカブツな」

 

「分かりました」

 

「おいコラ!なんで半分ヤローのことは普通に呼んでんだ!このダメ教師がァ!」

 

「おーおー!なかなか見所あるぞ?ボンバーマンくん!君にはツッコミ検定1級を与えよう!」

 

「そんなんいらんわ!早く行けやッ!」

 

「へいへい。行くぞ轟」

 

ちなみに新八は免許皆伝である。

 

「轟。お前はとりあえずあのデカブツの足元に向かって攻撃してくれ」

 

「分かりました」

 

「よし。んじゃ行くぞ」

 

轟が氷から抜け出し再生を終えた脳無に向かって再度氷を放つ。

それを飛んで避けた脳無の着地点に銀時は回り込む。

 

「上出来だ!」

 

そして着地のタイミングで初撃を当てると、目にも止まらぬ速さで斬撃を放ち始めた。

 

(再生する暇を与えねェ!このまま殺りきる!)

 

「おォォォォォォォォォらァッ!!!」

 

そして銀時が最後の一太刀を振りきった。

だがその瞬間、痛みを感じないが故か脳無が最後の足掻きかのように銀時に向かって渾身の拳を放つ。

しかし届かなかった。

 

「残念だが。やらせねぇよ」

 

轟が咄嗟の判断で脳無の手足を凍らせたのだ。

 

「助かったぜ。轟」

 

銀時は轟に礼を言い、刀をゆっくりと大上段に構える。

 

「…これで!終ェだ!!!」

 

そして袈裟斬りに渾身の力で振り切った。

そして、脳無は糸の切れた人形のように倒れ、活動を停止した。

 

「あとは…てめェだけだ」

 

「くそがっ!白夜叉!お前は必ず殺す!あの子供たちも全員だ!」

 

銀時は死柄木に刀を向けて言い放つ。

 

「てめェが、てめェらがどこで何をしてようが俺は構わねェよ。けどな、俺のこの剣。こいつが届く範囲は俺の国だ!好き勝手はさせねェ!」

 

「くっ…!」

 

死柄木は銀時の威圧感にたじろいで一歩下がる。

 

「お、おい!黒霧!いつまでそんなガキに押さえつけられてんだよ!」

 

「も、申し訳ありません。油断しました」

 

黒霧は銀時の戦いを集中して見ていた爆豪の一瞬の隙をついて抜け出したようだ。

 

「…ちっ。帰るぞ。ゲームオーバーだ」

 

「承知」

 

そうして二人は黒いモヤに包まれる。

 

「今回は失敗だったけど次は必ず殺す。平和の象徴オールマイトも、お前もだ白夜叉」

 

その言葉を最後に消えていった。

 

「出直してこい。小悪党」

 

これにて戦いの幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いを終え銀時は皆が集まっている門のところに戻った。

 

『先生ーーー!!!』

 

すると生徒が銀時に駆け寄り銀時を囲んだ。

 

「先生すげえよ!あんなに強いなんて!」

 

「うんうん!ビックリした!」

 

「普段はあんなに適当なのに!」

 

「かっこよかった!」

 

みんなが口々に言う。

 

「あーあー!うるせェうるせェ!」

 

「先生照れてるー!」

 

そんなとき、

 

「銀時」

 

「ん?…消太!大丈夫なのか!?」

 

イレイザーが肩を借りながら歩いてきた。

 

「ああ。それよりも…助かった。ありがとう」

 

「んなもん気にすんなって。俺が護りてェから護っただけだ」

 

「いや、それじゃ気がおさまらん」

 

「んー。それじゃ…あとでイチゴ牛乳おごってくれや。糖分が切れそうだ」

 

銀時が言うとイレイザーは呆れたように笑った。

 

「…ふっ。分かった。それでいい」

 

敵は逃がしたが銀時の活躍により被害は最小限。

後にオールマイト、雄英高校に所属するプロヒーローが駆けつけUSJに散らばっている敵を拘束。

USJ事件は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイトが駆けつけた時の一幕。

 

「もう大丈夫!私が…あれ!?」

 

「おいおい。遅ェよ、オールマイト。もう終わっちまったぞ」

 

「な!マジかよ!ホーリーシットだっ…!」

 

オールマイトは両膝をつき悔しがっていましたとさ。

 

 




USJ編完結!
良い感じで書けたように思います!
感想などお待ちしております!


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第8話

USJ事件が終わり、1日臨時休校を挟んで登校日。

 

「うーぃ。おはよー」

 

『おはようございます!』

 

「やっぱり相澤先生は休みなんですか?」

 

「ああ、俺が休ませた」

 

クラスの雰囲気が少しどんよりしている。

 

「まぁとりあえずホームルーム始めるぞー」

 

『はーい』

 

「今日のホームルームは…えーっと、なんだったっけ?」

 

『…』

 

「…忘れたんで明日話しまーす」

 

銀時が適当に終わらせようとしたところで教室の扉が開いた。

 

「おい。アホかお前は」

 

『相澤先生!!?』

 

「何してんだよ。休んどけって言ったろ」

 

「アホ抜かせ。起きたらベッドに縛られてて起きれなかったんだよ」

 

「え、まじで?おかしなこともあるもんだなあ」

 

「…はあ。まあいい。とにかくお前ら、戦いはまだ終わってねぇ」

 

「戦い?」

 

「まさか…」

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

 

「あー。体育祭だったな。そういえば」

 

『クソ学校っぽいの来たあああ!!』

 

後はイレイザーが引き継ぎ説明を終えた。

 

「まぁ頑張れよー。お前らー」

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英体育祭当日。

銀時はイレイザーとマイクと一緒に実況席にいた。

 

「なになに?こんなすげェの?ウチの体育祭って」

 

「はぁ!?知らなかったのかよ!?」

 

「雄英体育祭は超有名だぞ」

 

「そ、そういえばそうだったな!」

 

(危ねェ!タイムスリップのことはさすがに言えないよな)

 

「おっと!仕事だ!」

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちがーーー』

 

マイクの声を合図に生徒たちが入場してくる。

入場が終わり選手宣誓。

今年の1年の主審はミッドナイトだ。

 

「選手宣誓!!」

 

「18禁なのに高校にいてもいいのか」

 

『おいコラァ!誰だ今言ったやつは!気になっても言うんじゃねェよ!ミッドナイトさん引っ込んじまうだろォが!』

 

『おいっ!ちょっ、ギン!』

 

『アホが…』

 

会場中に声が届いているのを忘れて欲望を曝け出すダメな大人がここにいる。

その後、爆豪が選手宣誓でやらかしたが第一種目の障害物競争が始まる。

 

『スターーーーーート!!』

 

一斉に走り出す生徒たち。

 

『さーて実況してくぜ!解説はプレゼントマイクと!』

 

『イレイザーヘッドだ』

 

『はい、どォも。銀さんでーす』

 

早くも第一関門がやってくる。

 

『さぁ!いきなり障害物だ!!まずは手始め…第一関門!ロボ・インフェルノ!!』

 

『実技入試の時の仮想敵だな』

 

『金かけてんなー雄英』

 

目の前に現れた巨大ロボを轟が個性で凍らせて一番に抜けた。

後続への妨害も忘れていない。

 

『1-A轟!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィー!!』

 

『ありゃあ、アレだな。なんかずりィな』

 

その後続々とA組の生徒が第一関門を突破していく。

 

『1-A爆豪!下がダメなら頭上かよー!!クレバー!』

 

『個性使って空も飛べんのかよ…。…個性ほしいぜチクショー!』

 

『おい銀時。それは解説じゃなくて感想だ』

 

他の生徒も奮闘しているようだ。

 

『すげェな。八百万の個性って大砲も造れんの?』

 

『八百万の知識量あってこそだ』

 

『ん?…もしかしてジャンプも造れんのか!?』

 

『なに考えてんだよ!ギン!』

 

『無理だろ』

 

『いや、俺のジャンプ愛があれば…!』

 

もうこの会話が誰に聞こえていてもいいようだ。

続々と第一関門を突破していき、第二関門。

 

『落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーーーーール!!!』

 

『まあようは綱渡りだな』

 

『それは言っちゃいけねぇよ!』

 

有利な個性以外の生徒は皆が立ち止まってしまう。

 

『実に種々な方がチャンスを掴もうと励んでますねイレイザーヘッド、マイク』

 

『何足止めてんだあのバカ共…』

 

『あのサポート科のやつのって自分で作ったのか!?銀さん欲しくなっちゃうよ!』

 

『お前はいくつだ、おっさん』

 

『あぁん!?いくつになっても心は少年なんだよコノヤロー!』

 

足を止めていた生徒たちもなんとか乗り越えていく。

そして最終関門。

 

『早くも最終関門!!かくしてその実態は…一面地雷原!!怒りのアフガンだ!!』

 

『発想がアホだな』

 

『威力は抑えてあるぞ』

 

『そう!だが音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!』

 

『人によるだろ』

 

『おっ、先頭が入れ替わるぞ』

 

爆豪が轟に並び追い抜こうとしている。

 

『おっと!ここで先頭がかわったーー!!喜べマスメディア!!おまえら好みの展開だああ!!後続もーーー』

 

プレゼントマイクが興奮しながら解説しているなか、一人のアホが言った。

 

『この障害物競争って空飛べたら障害無くね?』

 

『…』

 

『…』

 

"………"

 

会場中が静まりかえった。

そんな時、大きな爆発が起こった。

 

『こ、後方で大爆発!!?何だあの威力!?』

 

『え、なに?無視?』

 

『緑谷がなんかしたな』

 

『おい、無視?』

 

『なんと!緑谷が地雷の爆発を利用して猛追!…っつーーか抜いたあ!!!』

 

『…』

 

結局そのまま銀時は喋らず緑谷がもう一度爆発を起こし後続を退け一位でゴールした。

 

 

 

 



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第9話

続いて第二種目は騎馬戦。

この騎馬戦はポイント制のチーム戦で四人一組で行われるのだが…

 

「予選通過一位の緑谷出久くん!!もちP1000万!!」

 

ちなみに二位は205Pだ。

 

『おいおい!これはまさか…!』

 

『なんだ』

 

『集団リンチの練習かなにかなのか!?』

 

『お前はもう黙ってろ』

 

銀時はまったく懲りていないようである。

そしてチーム決めが終わる。

 

『さぁ!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!!』

 

『なかなか、面白ぇ組が揃ったな』

 

『俺はウチのクラスの連中しか分かんねェな』

 

『そういえば!なんでギンは実況やってんだ!?』

 

『ん?…なんでだ?ノリ?』

 

『はぁ…』

 

頑張ってくれ!イレイザーヘッド!

ようやく第二種目の騎馬戦が始まる。

 

『さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙をあげる!!!』

 

全員が組み終わり、マイクの合図で始まった。

 

『START!!!』

 

勢いよく緑谷チームに向かっていく騎馬が多く見える。

 

『おおーっと!開始早々狙われる騎馬が一騎だぁ!』

 

『ほれ見ろ。集団リンチが始まるぞー』

 

『まぁ道理ではあるな』

 

開始2分。

緑谷チームはうまく逃げているようだ。

 

『混戦混戦!!各所でハチマキ奪い合い!!』

 

『なぁマイク。あれっていいの?』

 

『ん?なになに?』

 

見てみると、障子が一人で緑谷チームに突進している。

ように見えるがちゃんと人が乗っているようである。

 

『すげーな!峰田チーム!圧倒的体格差を利用しまるで戦車だぜ!』

 

『人間戦車ってかァ?いいじゃねェか!』

 

『えらく興奮してるな』

 

『男のロマンよ!ロマン!』

 

『ん?おおおおお!!?騎馬から離れたぞ!?良いのかアレ!!?』

 

『おいおい!ありゃ反則じゃねェのか?明らかずるくねェ?』

 

爆豪が騎馬から離れ個性で空中を移動して緑谷に迫っている。

確かにずるい気もするが…

 

「テクニカルなのでオッケー!!地面に足ついてたらダメだったけど!」

 

審判のミッドナイトの許可がおりた。

 

『良いに決まってんだろォ!誰だ今ずるとか言ったヤツ!』

 

『お前だろ』

 

変わり身が早い銀時。

 

『ずるとか言ったヤツは次から死刑で!ファイナルアンサー!?』

 

『…誰かここかわってくれ』

 

イレイザーの受難は続く…!

こうして騎馬戦は進み途中経過。

 

『7分経過した現在のランクを見てみよう!』

 

『…ん?』

 

『…あら!!?ちょっと待てよコレ…!』

 

『ぷっ…くくっ…ボンバーマン0って…!w』

 

『こりゃどーなってんだあ!?』

 

『あれれー?なんだっけか?宣誓の時の!『俺が一位になる』だったか?…ぶっ!だぁーっはっはっは!!!腹がっ!腹がよじれるぅぅぅ!!!www』

 

『おい、お前が煽ってどうすんだ』

 

B組の物間レベルの煽りを披露する銀時であった。

酷い大人だよほんとに。

 

『残り時間約1分!!轟がフィールドをサシ仕様にし1000万奪取!!!とか思ってたよ5分前までは!!』

 

このまま緑谷チームが逃げ切ると思ったところで轟チームが奥の手を出すようだ。

 

『なーーー!!?何が起きた!!?速っ速ーーー!!』

 

『一時的な超加速ってとこか』

 

『新八くんすげェ!眼鏡掛け機から人間に昇格だよこりゃぁ!』

 

『お前は何言ってんだ』

 

『逆転!!轟が1000万!!』

 

『ボンバーマンもハチマキ取り返したな』

 

『ここにきて大混戦だあ!!』

 

そして、様々な攻防があり騎馬戦が終わりを迎える。

 

『TIME UP!!』

 

決勝に進むのは轟チーム、爆豪チーム、心操チーム、緑谷チームになった。

 

 

 

 

 




なんか銀さんがボケ倒してイレイザーが突っ込むのが流れになりつつある…!

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第10話

騎馬戦が終わりインターバルをはさむ。

 

『なかなか白熱してたぜ騎馬戦!!なぁイレイザー!ギン!』

 

『ああ、そうだな』

 

『あれ?ギンは?』

 

『さっき出ていったぞ』

 

その頃…

 

「厠はどこだ?」

 

銀時は厠を探していた。

 

「おっ!あったあった!…ん?」

 

見つけて行こうとしたところで微かに話し声が聞こえて立ち止まる。

少し聞き耳をたててみると、どうやら轟と緑谷が話しているようだ。

 

「…ちっ。嫌なこと聞ィちまったな」

 

銀時は頭をかきながら一人言のように呟いた。

そして、厠に向いていた足を返して歩き始める。

嫌そうな態度を見せている銀時だが、足取りには迷いがない。

会場を歩き回ること5分。

 

「やっと見つけたぜ。ナンバー2さんよォ」

 

「…なんだお前は」

 

「保護者面談にきた副担任ってとこだ」

 

「お前か、焦凍のクラスの副担任とやらは。…それでなんのようだ」

 

「なかなか過激な子育てをしてるようだからよォ。ちょっとご教授いただこうかってな」

 

銀時は飄々とした態度で言った。

 

「…お前に話すことなどない」

 

エンデヴァーはそそくさと去ろうとするが、銀時はそれを許さない。

自分の生徒の人生がこの男に脅かされているのだ。

例え親だとしてもそんなことは許せない。

 

「おい。待てよ」

 

「っ!」

 

銀時は低い声で言いながら木刀を顔に突きつける。

エンデヴァーは自分が反応すらできなかったことに驚愕しているようだ。

 

「あんたが自分の息子にどんな教育しようがそりゃあ自由だろうな。でも…俺の生徒になんかしようってんなら

俺ァ黙ってねェぞ」

 

護ると決めたものは相手がどんなに強大でも護る。

例え、国が相手でも宇宙最強の種族が相手でも。

例え、それが親であっても。

それが坂田銀時なのである。

 

「ふん。お前には分かるまい。焦凍にはオールマイトを越える義務がある!そのために俺が造った子だ!」

 

「…そォかい。なら勝手にやんな」

 

エンデヴァーには口で言っても分からないと、早々に切り上げることにした銀時。

 

(このままいけばいずれ争うときがくんだろ)

 

そうして背を向けて歩き出した。

 

「…はぁ。めんどくせェな。教師ってのはよォ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実況席に戻った銀時。

今は全員参加のレクリエーションが行われている。

 

『ギンも戻ってきたことだし!気を取り直して行くぜぇ!借り物競争だあ!』

 

『紙に書いてあるものを持ってゴールしないとゴールとは認められないからな』

 

『紙に書いてあるのは物だけじゃないらしいからな。頑張れよー』

 

そうして実況をしていると。

急に扉が開いた。

 

「坂田先生!一緒に来て!」

 

「あん?なんだよ芦戸か」

 

「いいから!」

 

「ちょっ!おい!」

 

そうして銀時の手を引いて走り出す芦戸。

そしてゴールした。

 

「ふぅ!やった!一位だ!」

 

「ははーん!分かったぞ!あれだな!好きな人だろ?」

 

銀時はなにかを悟ったかのようにいった。

 

「それでは紙に書いてあるものを読み上げてください」

 

「私のお題は…」

 

「銀さん困っちゃうよ?一応先生だし?まぁ…」

 

「残念な大人です!」

 

「…はぁ!?」

 

「残念な大人。はい認めます」

 

「いぇーい!」

 

「いや、ちょっと待てェ!!誰が残念な大人だァ!ってかセメントス!なんでお前も認めてんだよ!」

 

「いや、銀さんにはぴったりかと思って」

 

銀時がそんなことを話していると、

 

「それじゃ!坂田先生ありがとねー!」

 

芦戸が走って行ってしまった。

 

「ちょっ!待っ…」

 

それから同じようなお題で連れていかれることが何回か起こった。

 

『なにが残念な大人だァ!なにがケチそうな人だァ!なにが金に汚そうだァ!俺がなにしたってんだチクショー!』

 

『まぁまぁ落ち着けってギン!俺はそうは思わないぜ?な?』

 

『日頃の行いだろ。…ぷっ。くくっ』

 

『なに笑ってんだこらァ!』

 

銀時は荒れに荒れていた。

マイクがフォローしようとするがダメみたいだ。

イレイザーが珍しく笑ってるし…

そしてそろそろ借り物競争が終わるという頃にまた一人実況席にやったきた。

 

「坂田先生!」

 

「八百万か!も、もォ俺は行かねェぞ!」

 

「教師だろ。早く行ってこい」

 

「テメっ!楽しんでんだろ!オイ!」

 

結局行くことになった銀時。

そして、

 

「それではお題を教えてください」

 

「もォ聞きたくねェ!やめろ!やめてくれェ!」

 

「お題は…尊敬する人ですわ!………あら?」

 

「やめっ…へ?尊敬する人?」

 

銀時の顔に光が指す。

 

「ち、違いました…。尊敬する人から最も遠い人でした…」

 

紙の隅っこに小さな文字で書いてあったみたいだ。

 

「…」

 

銀時は無表情になりその場をさって行く。

 

「あっ!先生!違うんですの!先生…!あぁ、行っちゃいました…」

 

八百万は銀時を呼び止めようとしたが少し遅かったようだ。

 

「尊敬する人だと思っていましたのに…。私が見落としていたばっかりに…」

 

色々と事情はあったようである。

まぁ銀時は勘違いしたままだけどね。

実況席に戻った銀時。

 

「ギ、ギン!気にすることはないぜ!子供の戯言だからよ!」

 

「ああ。気にするなよ。…ぷふっ」

 

「…」

 

二人を無視して実況席に座り、自分のマイクをオンにした。

そして…

 

『ハイ。てなわけで決勝戦はじめまーす』

 

無理やり開き直ることにしたようである。

 

 

 

 




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第11話

色々あったが無事に決勝戦が始まる。

 

『ヘイガイズアァユゥレディ!?色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!』

 

『決勝は一対一のシンプルな戦闘だ』

 

『まぁ程々になー』

 

『そんじゃ早速!一回戦!緑谷出久 対 心操人使!』

 

『相手を場外に落とすか行動不能にする、あとは降参させる。それで勝ちだ』

 

『命に関わるよーなことはすんなよ?ヒーローは敵を捕まえるために拳を振るうのだ!』

 

『そんじゃ…ハイ、スタート』

 

銀時の気の抜けた声で試合が始まった。

始まったのだが…

 

『あの、バカが…』

 

『ありゃりゃー。完璧に上手いことやられてんなありゃあ』

 

『オイオイどうした!緑谷!開始早々…完全停止!?』

 

緑谷が心操の挑発に耐えきれずにまんまと術中にはまってしまった。

 

『全っっっっ然目立ってなかったけど彼、ひょっとしてやべえ奴なのか!!!』

 

『だからあの入試は合理的じゃねぇって言ったんだ』

 

そういって個性に関する資料を出したイレイザー。

 

『洗脳か…。アイツは…』

 

銀時はなにか思ったことがあるようだ。

しかし、今の銀時の呟きを拾った者はいないようだ。

銀時がなにかを考えているうちにフィールドでは動きがあった。

 

『…これは!緑谷!!とどまったああ!!?』

 

そしてそのまま緑谷が心操を場外に投げて勝利した。

 

『勝者!緑谷出久!!二回戦進出!』

 

緑谷と心操は少し何かを話してお互いに去っていく。

銀時は去っていく心操の背中をじっと見つめていた。

 

(アイツは強くなる。足元すくわれんじゃねェぞガキ共)

 

分かるヤツにしか分からないことだ。

銀時は言葉には出さないがやっぱり案外過保護なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷たちの試合が終わり続いてすぐに次の試合が始まる。

 

『続きましては~こいつらだ!瀬呂範太 対 轟焦凍!』

 

『…ちっ。轟のヤツ…』

 

(よろしくねェな。ありゃあ)

 

『どうかしたか』

 

『なんでもねェよ』

 

『そんじゃ!スタート!』

 

始まった瞬間に瀬呂が速攻で轟を場外に投げようとした。

だが…轟が大規模の氷を出現させ、瀬呂もろとも凍らせた。

 

(アイツが血に縛られている限り前には進めねェ…か)

 

会場中がどんまいコールで埋め尽くされるなか、銀時は考えを巡らせていた。

 

(これに関しちゃアイツの意思が必要だ。アイツ自身が"自分"を見つけなきゃ意味がねェ)

 

『ーーーン!ギン!おーい!どしたー?』

 

『ん?おお。わりィ。少しな』

 

『…』

 

イレイザーは何かに気がついた様子だ。

銀時はアイコンタクトで問題ないと伝える。

 

『気を抜くなよギン!そんじゃ次行くぜえ!塩崎茨 対 上鳴電気!』

 

上鳴が完封された。

 

『瞬殺!!あえてもう一度言おう!瞬・殺!!』

 

『なにも考えず個性をぶっぱなすやつがあるか』

 

『アイツはそーとーアホだな』

 

『はぁ…。銀時に言われたら終わりだな』

 

『ンだとォ!?俺のどこがアホだってんだ!あぁん!?』

 

騒がしい実況席。

ある意味マイクより騒いでいる銀時であった。

 

『さぁー!どんどん行くぞ!飯田天哉 対 発目明!』

 

始まったのだが、どうやらおかしなことになっている。

発目のサポートアイテムの披露会のようだ。

 

『何コレ…?』

 

『売り込み根性たくましいな…』

 

『新八くん見てるとヅラを思い出すぜ…あのクソ真面目っぷりが特によォ。ってか新八くんは何個属性を持ってんの?』

 

『言ってる意味がよく分からん』

 

その後も試合はどんどん行われていく。

 

『青山の個性は燃費が悪いな』

 

『なんか芦戸みたいな天人がいたような…』

 

『すげーぜ!常闇の個性もめちゃ強ー!』

 

『八百万になにもさせなかったな』

 

『おいおい!ありゃあもしかして…!』

 

『一応聞いとくが…なんだ』

 

『と、常闇は……スタンド使いだっ!』

 

『聞いた俺がバカだった…。はぁ…』

 

銀時に振り回されるイレイザー。

もはやいつもの光景である。

 

『真っ向勝負の殴りあいだぁ!!!』

 

『若いってのはいいねェ。なあばぁさんや』

 

『だれがばぁさんだ』

 

『真っ向勝負の殴りあいを制したのは…』

 

『引き分けか』

 

『この場合ってどォなんの?』

 

『二人が目を覚ましたあとに簡単な勝負をする』

 

『ってことで!次行くぜ!』

 

次が一回戦の最後の組になる。

 

『爆豪勝己 対 麗日お茶子!!』

 

『調子こいた割に良いとこなしのボンバーマンの登場だァ!!!テメェらぁ!!!盛り上がれェェェ!!!』

 

『おい。煽んじゃねぇ』

 

銀時!フルスロットル!

 

 

 

 



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第12話

シリアス銀さんです!


銀時の煽りで会場が盛り上がったあと、試合が始まる。

 

『そんじゃ行くぜぇ!スタート!!!』

 

合図と共に麗日が突撃していく。

しかしそれを爆豪は容赦なく迎撃する。

 

『ボンバーマンは強ェけど、個性の能力的には麗日にも充分勝機はあるな。…にしても容赦ねェなー』

 

『ああ。ま、勝負だからな』

 

『麗日!間髪入れず再突進!』

 

幾度となく麗日は攻めるが、それを難なく交わしながら迎撃する爆豪。

 

(…正直、アイツの戦闘センスは本物だな)

 

『休むことなく突撃を続けるが…これは…』

 

『ん?…ほー。こりゃあ…』

 

そんなとき客席のプロヒーローの一部からブーイングが起こった。

 

『一部から…ブーイングが!しかし正直俺もそう思…わあ肘っ!ギンまで!?』

 

『今、遊んでるっつったのプロか?何年目だ?シラフで言ってんならもう意味ねぇから帰れ』

 

『ほんっとになァ。恥ずかしィぜ』

 

『銀時はブーイングに加わると思ってたがな』

 

『バカ言え。あそこで加わっちまったら俺ァあいつらの教師を名乗れねェ』

 

『…ふっ、そうだな』

 

『みんな正面切ってやってんだ。そりゃあ侮辱になる』

 

たまに発動する真面目モード。

悔しいが…憎めない。

フィールドでは…

 

『流星群ーーー!!』

 

『気付けよ』

 

だが麗日が放った奇策は虚しくも一撃で防がれてしまった。

 

『会心の爆撃!!麗日の秘策を堂々…正面突破!!』

 

『さすがに派手だな。でも…結構ギリギリだったみてェだな』

 

策を破られてしまった麗日は力尽き倒れてリカバリーガールの所へ運ばれていった。

 

『ああ麗日…ウン。爆豪一回戦とっぱ』

 

『ちゃんとやれよ…やるなら』

 

『さァ!気を取り直して!小休憩挟んだら二回戦だ!』

 

切島と鉄哲は腕相撲で勝った切島が二回戦に進んだようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しの休憩を挟んで二回戦が始まる。

 

『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!!緑谷 対 轟!!スタート!!』

 

始まった瞬間に轟が氷結を放った。

だが…

 

『おオオオ!!破ったあああ!!』

 

『確かにすげェが…』

 

(全く制御ができてない中でのフルパワー。ありゃあ良くねェな…)

 

緑谷が防いだ。

 

『まーーーた破ったあ!!!』

 

『うん?…ちっ。お互いに…か』

 

(轟も…だな。時期に限界がくる。片方だけじゃあな)

 

そして数回同じことを繰り返したあと…

 

『轟!緑谷のパワーに怯むことなく近接へ!』

 

近接戦へと持ち込もうとした轟を再び離した緑谷。

銀時は何かを感じ取ったみたいだ。

 

『圧倒的に攻め続けた轟!!とどめの氷結をーーー』

 

『…ふっ。そォかい』

 

『ーーーん?なんだ?ギン!?』

 

『…いや、まだ終わんねェよ。この試合に臨む覚悟がちげェ。あぁゆうバカは…強ェんだ』

 

銀時が言うのと同時に緑谷が壊れた指で攻撃を放った。

そして…

 

「皆…本気でやってる。勝って…目標に近づく為に…っ。一番になる為に!半分の力で勝つ!?まだ僕は君に傷一つつけられちゃいないぞ!」

 

(緑谷を見てっと向こうのバカ達を思い出すぜ)

 

「全力で!かかって来い!!」

 

緑谷の啖呵に一部の人間が息を飲む。

 

『これもアイツの"力"だ。俺ァ…あぁゆうバカは嫌いじゃねェ』

 

銀時は緑谷に何かを感じた。

それはなんなのか…。

銀時にしか分からないことだ。

そんな中フィールドでは動きがあった。

 

『モロだぁーーー!生々しいの入ったあ!!』

 

緑谷が轟に一撃入れた。

 

『こりゃあ…』

 

(流れが変わる…!)

 

そして…

 

「君の!力じゃないか!!」

 

『…!…ほんっとによォ!思いだしちまうなァ!』

 

『銀時…』

 

『困ってるヤツをほっとけねェ!体が勝手に動いちまう!そんなどォしようもねェバカ達をよォ!』

 

銀時が声を上げたのと同時に轟から炎が燃え上がった。

轟は呪縛から解放されようとしている。

そこにエンデヴァーが大声で轟の変化を喜んでいる声が会場に広がる。

しかし…

 

『残念だったな、クソ親。オメェの声は届きゃしねェよ』

 

轟には届かない。

虚しい叫びだ。

 

『次が…最後だ』

 

銀時が呟いた瞬間にお互いの全力を持って力がぶつかり合い、大きく煙をたてる。

 

『何今の…。お前のクラス何なの…』

 

『散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ』

 

『オイこれ!勝負はどうなって…』

 

『まぁ見てろ』

 

煙が晴れて立っていたのは…

 

「緑谷くん…場外!轟くん…三回戦進出!!」

 

ミッドナイトが声高らかに宣言し、幕が降りた。

会場からちらほら声が上がるが、銀時の発言のお陰か悪く言うヤツはあまりいないようだ。

実況席では…

 

「よいしょっと」

 

銀時は立ちあがり扉に向かって歩き出す。

 

「どこに行くんだ」

 

「ちょっと厠に行くだけよ」

 

「…そうか」

 

そう言うと銀時は実況席から出ていった。

 

「頼んだぞ。銀時」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よォ。待ってたぜ…轟」

 

「…先生」

 

銀時は轟の前に立っていた。

 

「何か用ですか」

 

「少しは見えたかよ?自分の道はよォ」

 

「っ!あんたには関係ーーー」

 

「あるぜ。俺の…生徒だからな」

 

轟はうつむき黙ってしまう。

 

「俺は個性もねェし、親もいねェ…」

 

「…!」

 

「けどよォ。ホントに大事なモンってのは…持ってる奴より持ってねー奴の方が知ってるもんだ」

 

「先生…あんたはっ!」

 

顔を上げた轟。

 

「轟。"自分"を捨てんなよ。あんな奴に振り回される必要はねェ。」

 

銀時は轟に伝えるべきことを話し始める。

その声には芯が通っているように感じる。

 

「どんなに転んでも傷ついても…自分の力で、自分の道を行け。」

 

「せん…せ、い」

 

轟の目には涙が溜まり、声が震えている。

 

「汚れたっていいじゃねェか。…小汚なくても自分らしく生きてく事の方がよっぽど上等だ」

 

あまり長く話すことでもないと銀時は踵を返し歩き始める。

 

「ありがとう…ごさいます…!」

 

銀時は背中を向けながら手だけをあげて返し、実況席に戻っていった。

 

「しっかり成長してもらわねェとな。帰るに帰れねェからよ…」

 

銀時の呟きは誰の耳にも届くことはなく消えていった。

 

 

 




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第13話

轟との話を終えて実況席に戻る途中。

 

「そォいや…アイツのとこにも行っとくか」

 

銀時はどこかに寄るために進路を変えた。

 

「よォ、バーさん。邪魔するぜ」

 

「うん?銀時かい」

 

「ああ。緑谷は…いたいた」

 

「坂田…先生」

 

銀時は緑谷の見舞いに訪れていた。

 

「ありゃ。オールさんもいんじゃんか」

 

「白夜叉くん。緑谷少年に会いに来たのか」

 

「まーな。一応、副担任だからな」

 

「だ、大丈夫なんですか!?オールマイト!」

 

「ん?ああ。白夜叉くんも雄英の教師だからね。説明はしてあるんだよ」

 

「それにしても…緑谷」

 

「は、はいっ!?」

 

「多分よォ…今回のは褒められたやり方ではなかったかもしんねェ」

 

「そう…ですよね」

 

「けどな。自分が進むと決めたならとことん行けよ」

 

「何言ってんだい!銀時!」

 

「バーさん」

 

「…あたしゃ知らないからね」

 

「すまねェな」

 

「白夜叉くん…」

 

「俺の経験談だが…緑谷みたいなバカには口で言っても仕方がねェ。だがそれを間違ってるとも思わねェ。少なくとも俺はな」

 

「…先生」

 

「緑谷。オメェに言いてェことは一つだ」

 

銀時は緑谷をまっすぐ見つめながら言った。

 

「自分で背負い込むって決めたんなら…途中で放り出すなよ。覚悟をもって背負え。それが責任ってやつだ」

 

「っ!はいっ!」

 

「そんじゃ俺は戻るわ。バーさん、オールさん邪魔したな」

 

そう言って銀時は部屋を出ていった。

オールマイトは銀時の背中を見ながら呟いた。

 

「い、一体どれ程の経験を積めば…。あの若さで彼は何を見てきたと言うんだっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実況席に戻った銀時。

 

『おせーぞ!ギン!お前が推してる爆豪の試合始まってんぞ!』

 

『なにィ!?ボンバーマンは負けそうか!?どォなんだよ!?』

 

『なんで嬉しそうに負けそうか聞いてんだ』

 

さっきまでのシリアスはどこへやら…。

まぁこれが坂田銀時なのだが…。

 

『おおーっと!カァウゥンタァーー!!!』

 

『うっひょー!いいねェ!切島ァ!やっちまえェェェ!!!』

 

『…はぁ』

 

諦めちゃったイレイザー。

 

『切島の猛攻になかなか手が出せない爆豪!!…って、ああー!!効いた!!?』

 

『嘘だろォ!?』

 

切島の猛攻は惜しくも爆豪に阻まれ撃沈した。

 

『爆豪のエゲツない絨毯爆撃で三回戦進出!!』

 

『かーッ!ダメだったかチクショーめ!』

 

『お前のそれは教師としてどうなんだ』

 

イレイザーの言うことはごもっともだ。

そして、準決が早くも始まる。

 

『よっしゃー!準決サクサク行くぜ!轟 対 飯田!スタート!』

 

『おー。新八くんもタイマンなら結構強ぇな。でも…相性がなァ』

 

飯田は轟に凍らされる前にレシプロで勝負を決めようとしたようだが、あと一歩の所でマフラーを凍らされ、機動力を奪われ負けてしまった。

 

『飯田!行動不能!轟!炎を見せず決勝進出だ!』

 

続いての試合。

 

『爆豪 対 常闇!爆豪のラッシュが止まんねぇ!!』

 

『タイマンだと意外と相性が目立つな』

 

『まぁ仕方ねえだろ』

 

一瞬の隙をついて爆豪が仕掛けた。

 

『裏を取ったあ!!』

 

『ボンバーマンやるねェ』

 

個性を光で無力化された常闇が降参して決着。

会場では銀時の影響かボンバーマンコールがちらほら起こっていた。

それに対して爆豪が噛みついているようだ。

 

『決勝は…轟 対 爆豪に決定だあ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さァ!いよいよラスト!!雄英一年の頂点がここで決まる!!決勝戦!轟 対 爆豪!!!今!!スタート!!!!』

 

マイクの合図で試合が始まった。

轟が速攻で大規模の氷を生み出しフィールドを巨大な氷が襲った。

 

『いきなりかましたあ!!爆豪との接戦を嫌がったか!!早速優勝者決定か!?』

 

『なーんかうまい具合に調節されてんじゃねェの』

 

しかし爆豪には通用しないようだ。

 

『爆発で氷結を防いでモグラみてえに掘り進めたのか!』

 

爆豪は轟に接近して氷を避けつつぶん投げる。

 

『轟!氷壁で場外アウトを回避ーー!!!』

 

『やっぱ近接だと爆豪が一枚上手か』

 

再び爆豪が接近して右手を振ろうとしたところを轟は左手で掴んだ。

だが、炎を使わなかった。

 

「てめェ!虚仮にーーー」

 

爆豪がイラつき声を荒げようとしたその時。

 

『轟ィ!!!なに迷ってやがんだこらァ!!!』

 

銀時が自分のマイクを掴み大声で怒鳴った。

 

『おいっ!ギンっ!』

 

『マイク。言わせてやれ』

 

『ここで迷うくれェなら自分から場外に降りやがれ!!!血の呪縛がなんだってんだ!そんな石ころに目をくれてんじゃねェ!!!』

 

「あのクソ天パ教師っ!」

 

「っ!先生…」

 

『自分の道くれェ自分の足で歩きやがれェェェ!!!』

 

銀時の魂の叫びが木霊する。

会場から一瞬音が消えた。

そして次の瞬間…轟の左側から炎が噴き出す。

 

『そォだ。それでいい』

 

「悪ぃな爆豪。本気で行く」

 

轟は爆豪に向けて言い放った。

 

「あぁ!受けてたつぜぇ!!!」

 

爆豪は手に小さな爆発を起こし、凶悪に笑いながら言った。

そして…

 

「ケッ!たまには役に立つじゃねェかぁ!!!坂田先生よぉ!!!」

 

爆豪は実況席の銀時の方を向きながら嬉しそうに言った。

 

『あーあー。出来の悪ィ生徒を持つと先生は大変だぜ。全くよォ』

 

『嬉しそうだな』

 

『な、何なの?』

 

一人だけ着いていけていないマイクであった。

そしてフィールドではお互いの全力を持って決着が着こうとしていた。

爆豪は麗日戦で見せた火力に回転を加えて威力を底上げしている。

轟は緑谷戦で見せた技だ。

 

「榴弾砲着弾!!!」

 

「膨冷熱波!!!」

 

2つの技がぶつかり合い大きな爆発が起こる。

観戦していたプロヒーローにより観客への被害は免れたようだ。

 

『おいおい!どうなってんだコレ!?お前らのクラスはマジでなんなの!!?』

 

『焚き付けたのは俺だが…し、死んでないよね?ね?』

 

『おい。なに言ってんだ』

 

『お、おちつけ!と、と、とりあえずタイムマシンを探せ!』

 

『お前が落ち着け。よく見てみろ』

 

フィールドに目を移すと、轟が場外に吹っ飛び、爆豪はフィールドの端に辛うじてとどまっていた。

これで決着が着いた。

 

『技を放ったときの位置取りが肝だったと考えます。ハイ』

 

『おい。もうおせえぞ。取り繕えてないからな』

 

銀時の失態は置いておくとして…。

轟はフィールドの端に立ってその場で技を放っていたのに対し、爆豪は助走をつける形で接近して技を放った。

二人の技の威力がほぼ互角であったことを考えるとこれは必然だ。

 

「轟くん場外!よって、雄英体育祭一年の部優勝は爆豪勝己くん!!!」

 

『ふっ。なかなかやるじゃねェかボンバーマン』

 

『だから取り繕えてねえって』

 

銀時はもう置いときます。

会場はボンバーマンコールで埋め尽くされている。

少し過激な性格だが爆豪は認められたようだ。

これにて一年の部は決着。

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英体育祭も終わりに向かい。

表彰式。

予定通り進んでいたのだが…

 

「私が!全てのメダルを授与したいところなんだがっ!轟少年と爆豪少年は白夜叉くんにお願いしようと思う!いいかな?ミッドナイトくん」

 

「許可します!」

 

「はぁ!?聞いてねェよそんなの!」

 

「いいから行ってこい」

 

会場中の視線が銀時に向く。

 

「…ちっ!わーったよ!」

 

銀時は諦めてオールマイトからメダルを受け取り轟の前に立った。

 

「どォよ気分は」

 

「少し…スッキリしたと思います。けど、まだ迷ってる部分もあります」

 

「そォかい」

 

「だから、これから少しずつ清算していきます。ちゃんと自分で考えて自分の足で行きます」

 

「ああ。そォしろ。ま…なんかあったら相談くらいのるからよ。頑張れや」

 

銀時は頭をかきながら恥ずかしさを隠すように言った。

 

「はい。ありがとうごさいました」

 

「おうよ。教師…だからな」

 

そして最後は爆豪だ。

 

「よォ。ボンバーマン」

 

「その呼び方やめろやッ!」

 

「まーまー。いいじゃねェか。それにしても…散々バカにしたが、優勝しちまうとはなァ」

 

「まだ足んねェよ。完膚無きまでの一位には程遠い」

 

「そォかよ。まァ…おめっとさん。『爆豪』」

 

「っ!キ、キメェよ!クソがっ!」

 

「へっ。言ってろ」

 

こうしてメダル授与は終わった。

最後はオールマイトが締めるようだ。

 

「皆さんご唱和下さい!!せーの!」

 

『プルス…』

 

「「おつかれさまでした!!!」」

 

『そこはプルスウルトラでしょ!』

 

「そーだそーだ!なに言ってんだオールマイトー!」

 

「えっ!?ちょっ!白夜叉くん!?」

 

最後にオールマイトともう一人言っていた人がいるのだが…。

もう分かるよね?

ってなわけで!

締まらなかった…けれど、これにて雄英体育祭は終了だ!

 

 

 




体育祭編終わりました!
シリアスが少し多かったかな?
そんなことはないか…
まぁ、感想等お待ちしてます!


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第14話

体育祭が終わり休みを挟んでの登校日。

 

「おはよう」

 

「はよー」

 

『おはようございます!』

 

「今日のヒーロー情報学。ちょっと特別だぞ」

 

「そうだぞー。特別なんだぞー」

 

いる意味あんのか?銀時は…。

そんな中、皆が緊張で息を飲む。

 

「『コードネーム』ヒーロー名の考案だ」

 

『胸ふくらむヤツきたああああ!!』

 

一斉に喜びの感情が爆発した。

 

「そんなに喜ぶことかァ?…若いって良いねェ」

 

「プロからのドラフト指名に関係してくるからちゃんと考えろよ」

 

「ハイ。ってなわけで集計結果出しまーす」

 

銀時が色々はしょって集計結果を出した。

 

爆豪 4210

轟 4123

常闇 360

 

「例年はもっとバラけるんだが…二人に注目が偏った」

 

「ちっ!なんでボンバーマンにこんなに指名がくんだよ。見る目ねェなプロ」

 

「おいコラァ!!聞こえてんぞクソ天パァ!!」

 

銀時と爆豪の絡みももはやいつもの光景と化している。

 

「静かに。…これを踏まえ、指名の有無関係なく職場体験ってのに行ってもらう」

 

「それでヒーロー名か!」

 

「俄然楽しみになってきたァ!」

 

皆が口々に思ったことを話始める。

そこでイレイザーが口を開いた。

 

「まァ仮ではあるが適当なもんは…」

 

「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」

 

イレイザーが全部言い終わる前に誰かが割って入ってきた。

 

「この時の名が!世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!!」

 

『ミッドナイト!!』

 

「まァそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。銀時も手伝うんだぞ」

 

「へいへーい」

 

そして15分後。

 

「じゃそろそろ出来た人から発表してね!」

 

ミッドナイトの合図で始まった。

皆が思い思いのヒーロー名を発表していく中、一人だけバカがいる。

 

「爆殺王」

 

「アホかオメェは。オメェには既にぴったりなのがあんだろが」

 

「うっせェ!クソ天パがっ!」

 

爆豪だ。

もう諦めてた方がいい領域まで浸透しているのだが…。

本人は認めたくないらしい。

 

「残ってるのは再考の爆豪くんと…飯田くん、そして緑谷くんね」

 

「おいおい。新八くんもかァ?」

 

「…」

 

銀時は飯田に話しかけるが何かを考えているのか返事がない。

 

「ん?もしもォ~し」

 

「…」

 

「あん?飯田ー」

 

「…!は、はいっ!」

 

「早く決めろよー」

 

「わ、分かっています!」

 

(なーんかあったなこりゃ…。あとで緑谷あたりに探りいれるか)

 

思い詰めたような顔をした飯田。

それを見た銀時は…。

やっぱり案外過保護である。

その後、飯田と緑谷も決まりあとは爆豪だけになった。

 

「爆殺卿!!」

 

「そこのアホ。もォ諦めろー。時間の無駄だぞー」

 

「…………クソがっ!か、仮だかんな!クソ天パァ!」

 

爆豪が取り敢えず諦めてフリップをだしたが…

 

「うェェ。オメェのツンデレなんて需要ねェよボンバーマンくん」

 

「ぶっ殺すッ!!!」

 

銀時の余計な一言により爆豪がキレて銀時の顔面を爆破した。

 

「っぶねェな!!!こらァ!!!やんのか!?あぁん!!!」

 

「上等だァ!!!」

 

辛うじて避けた銀時は爆豪に噛みつく。

そして爆豪も銀時を挑発する。

 

「おい。お前らやめろ」

 

イレイザーが起きたことによりおさまったが…

やっぱり心は子供な銀さんであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わり放課後。

銀時は教室に残っていた。

 

「緑谷。ちょっと来い」

 

「えっ!?さ、坂田先生!?」

 

「ほれ。いいから」

 

「は、はいっ!」

 

銀時は緑谷を連れて教室を出ていこうとしている。

出ていく寸前に気づいたようにイレイザーに向き直る銀時。

 

「そォいや…消太ー。生徒指導室だっけ?まぁ、使うかんな」

 

「…ああ。わかった」

 

そして今度こそ教室を出ていった。

二人が出ていった後の教室は騒然としていたらしい。

銀時と緑谷はある空き教室に来ていた。

 

「…っと。ここか。んじゃ入ってくれ」

 

「し、失礼しますっ!」

 

「早速だが…」

 

「は、はいぃ」

 

緑谷は銀時の雰囲気に飲まれ失神寸前だ。

 

「飯田になんかあったのか?」

 

「い、いや!ぼ、僕はっ!…へ!?」

 

「だァかァらァ!飯田になんかあったのかって聞いてんだよ!アンダースタァァァン!?」

 

「い、飯田くんの事ですか…。実は…ですねーーー」

 

緑谷は何かに安心したのかある程度落ち着いて話し出した。

 

「ーーーって事があったらしくて…」

 

「…そォか。兄貴がヒーロー殺しに…ねェ」

 

(多分だが…飯田は復讐しに行くだろォな)

 

「まぁ分かった。こっちでも警戒しておくわ」

 

「はい!ありがとうごさいます!」

 

「ああ。そんじゃ帰っていいぞ」

 

「失礼しました!」

 

「おーぅ。気をつけて帰れよー」

 

(また面倒事に巻き込まれるかもなァ…)

 

「はぁーーーー。ほんっとに教師ってのは大変だよ。全くよォ」

 

そう言った銀時の顔に嫌そうな色はなかった。

なんだかんだ教師に適応できている銀時であった。

 

 

 

 

 




ヒーロー殺し編が始まります!
感想お待ちしてます!
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第15話

職場体験が始まり3日がたった頃。

銀時は保須市…ではなく自分の部屋でくつろいでいた。

 

「ほぉー。この時代のジャンプも捨てたもんじゃねェな。こりゃあなかなか…」

 

教師ってのはとか言ってた割りに全く緊張感がない様子だ。

そんなとき部屋の扉が勢いよく開いた。

 

「おい!ギン!やべえぞ!」

 

マイクが焦ったように部屋に入ってきたようだ。

 

「まぁ…いい年してジャンプ読んでるってのは確かにやべェよなー」

 

銀時は緊張感の欠片もなく答えた。

 

「なに言ってんだ!ちげえよ!イレイザーがめっちゃ怒ってんぞ!何か約束あったんじゃねえの!?」

 

「そんなもん…アレ?き、今日って何日?」

 

「今日は○日だ!」

 

「…。ちょっとドラえもん呼びにいってくる」

 

「ギン!引き出しの中なんか入れねぇぞ!おい!なにしてんだぁ!」

 

銀時が現実逃避を始めたところで少し時間は遡る。

 

 

 

 

 

「消太。飯田の職場体験先はどこになってる?」

 

「…保須市のマニュアルのとこだ」

 

「そォか…。俺ァ行くぜ」

 

「だろうな。分かった。○日の10時に駅に来てくれ」

 

「は?消太も行くの?」

 

「お前一人だと心配だ」

 

「…ふっ。勝手にしな」

 

 

 

 

実は緑谷と話した日の放課後にこんな会話があった。

そして今は約束の日の12時を回ったところだ。

 

「や、やべェよ…。アイツ怒るとめんどくせェんだよ…」

 

銀時は頭の中で必死に言い訳を考えている。

 

「誰が怒るとめんどくさいって」

 

そこでマイク以外の誰かが話しかけてきたが銀時は気づかない。

 

「アイツだよ!消太!変に真面目だからよォ…ってんん?」

 

異変に気づいた銀時はゆっくりを後ろを振り返る。

そこには…

 

「こんなとこで何してんだ」

 

イレイザーが立っていた。

どう見ても怒っている。

 

「こ、こんにちわー」

 

「時間くらい守れないのか…アホが!」

 

そう言ってイレイザーは銀時に向かって回し蹴りを放った。

 

「ァバッキォ!!」

 

自業自得である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、マイクと別れ銀時とイレイザーは電車に乗っていた。

 

「いつつ…。なにもおもいっきり蹴ることはねェじゃんかよォ」

 

「自業自得だろアホ。銀時のせいでもう夕方になっちまう」

 

「で、でもよォ…」

 

「おい。着いたぞ」

 

駅に着き、予約しているホテルへ歩いている。

だが…

 

「消太」

 

「ああ。様子がおかしい」

 

二人はまわりを見回し警戒を強めていると、遠くで悲鳴が聞こえた。

 

「向こうだ。行くぜ」

 

「了解」

 

そう言って二人は走りだし、現場に向かう。

すると脳無が2体暴れまわっていた。

 

「ありゃあ…!」

 

「あの時の脳無に似てるが少し違うな…」

 

状況を確認していると横から知った声が聞こえた。

 

「さ、坂田先生!?相澤先生も!?」

 

「緑谷じゃねェか」

 

「せ、先生!い、飯田くんがっ!」

 

緑谷は焦ったように言った。

 

「ヒーロー殺しか…。緑谷。お前は逃…」

 

「オメェは先に行ってろ」

 

銀時はイレイザーが言い切る前に被せるように言った。

 

「っ!なに言ってんだ!プロのヒーローでも手がでない相手だぞ!なに考えてる!」

 

珍しく声を荒げるイレイザー。

 

「まぁ待て。…緑谷。行くんだな」

 

銀時は真剣な顔で緑谷に問いかける。

 

「はい!」

 

「俺の言った事覚えてるよなァ?」

 

「はいっ!」

 

「分かった。なら行け」

 

「は、はいっ!ありがとうございます!」

 

緑谷は走って飯田のいるであろう所に向かっていった。

 

「銀時…お前」

 

「心配すんな。責任は俺が取る」

 

「…はぁ。お前だけに責任は取らせん。早く脳無を片付けるぞ。お前も…行くんだろ」

 

そう言ってイレイザーは一足先に脳無に向かっていく。

 

「…俺にゃもったいないダチだよ。ほんとに」

 

銀時は頭をかきながら呟き、そして走り出す。

銀時の顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が始まったのだが…

 

「なー消太ー」

 

「なんだ」

 

「こいつら…弱くね?」

 

意気込んで行った割りに緊張感がなくなってしまったみたいだ。

敵は空を飛べるヤツもいるのだがイレイザーの個性のせいで全く意味がなくなっている。

実際はイレイザーが個性を消して銀時が攻撃するといったチートのような戦術だからなのだが…。

 

「とりあえず終わらせるぞ」

 

「りょーかい」

 

脳無2体が一斉に襲いかかってくるが意味がない。

 

「銀時頼んだ」

 

「はいよっ!ソイッ!オラッ!」

 

イレイザーが個性を消して、銀時が気の抜けた掛け声で頭に一撃ずついれて戦闘は終了した。

 

「怪我人と脳無の回収は俺がやっとくから銀時はあいつらの所に行ってやってくれ」

 

「おぅ。助かるぜ」

 

銀時が走り出そうとした瞬間に何かがすごいスピードで二人の間を通り抜けた。

 

「なんだァ!?」

 

「っ!飛べる方に逃げられる!」

 

倒したと思っていた飛ぶ個性を持った脳無が一瞬の隙をついて逃げ出した。

 

「油断したっ…俺の個性の範囲外だ…!」

 

「諦めるのはまだ早ェぜ消太!」

 

「なにか策があるのか!」

 

イレイザーは少し期待を込めた目で銀時を見た。

なかなかに珍しい光景だ。

一方の銀時はそう言って懐から何かを取り出し、野球の投球のようなフォームに構えた。

 

「パワーローダーのおっさんに頼んどいて良かったぜ!」

 

そして…

 

「ジャスタウェイ!!!」

 

ぶん投げた。

その銀時が投げたおもちゃの様なものが脳無に当たった瞬間、大爆発が起こり真っ黒になった脳無が落ちてきた。

 

「へっ!きたねェ花火だ!」

 

「…」

 

くそっ…!

新八がいないのが悔やまれるっ!

 

 

 

 




シリアスからのギャグ!
ギャグからのシリアス!
これぞ銀魂節!
あ、あと…ジャンプがあるという設定は多目に見てください…。

感想お待ちしてます!
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第16話

銀時の気の抜ける攻撃で戦闘を終えたあと銀時は緑谷たちを探していた。

 

「いやー。俺もバカだなァ。場所聞いてねェよ…」

 

そう言いながら銀時が走っていると目の前の路地から急に炎が吹き出てきた。

 

「うおっ!こりゃあ轟の…」

 

銀時が路地を覗くと轟と緑谷がヒーロー殺しと思われる敵と戦っていた。

そして轟の叫びが響いた。

 

「やめて欲しけりゃ立て!!!なりてえもんちゃんと見ろ!!」

 

そして…

轟がヒーロー殺しに攻撃されるのを防ごうと銀時が踏み出そうとした瞬間に飯田が復活した。

 

「レシプロ…バースト!!」

 

その飯田の攻撃でヒーロー殺しは後退した。

 

「おーおー。子供の成長ってのは早いねェ」

 

『先生!!』

 

「銀さん嬉しくなっちゃうよ。まぁ何にせよ無事でなによりだ」

 

「ハァ…。また一人っ!!?」

 

ヒーロー殺し、ステインは銀時を見て驚き息を飲んだ。

 

「んー?どしたァ?ヒーロー殺しさんよォ」

 

「…なんだ…おまえは。本物…オールマイト以外にもいたとは…」

 

銀時から何かを感じ取ったステイン。

 

「あん?本物ォ?」

 

「ハァ…!そこのヒーロー。名前は」

 

「…白夜叉だ」

 

「そうか…。白夜叉。俺と戦え…!」

 

ステインは銀時に正面からタイマンの勝負を挑んだ。

だが…

 

「えっ。嫌だけど…」

 

あっさり断った。

 

『…は?』

 

そしてなぜか轟たちが呆けていた。

断られたステインは問答無用と銀時に向かって斬りかかった。

 

「ハァ…!」

 

「ちっ!断っただろォ…がっ!」

 

銀時はステインの攻撃をあっさり躱し木刀で吹っ飛ばした。

 

「あ、あんなにあっさり…!」

 

「やっぱりすげえ」

 

「こんなに強いとはっ…!」

 

USJでの戦いを見ていない飯田は相当驚いているようだ。

轟はもはや尊敬している。

 

「人の話を聞かねェ奴だな。んー。…そんじゃヒーロー殺しの相手はお前らがやれ」

 

「へっ?坂田先生がやればすぐに…」

 

緑谷が言い終わるまえに銀時が遮った。

 

「いや、ダメだ。飯田」

 

「ハ、ハイ!」

 

「乗り越えてこい。そんで…兄貴を継いでやれ」

 

「っ!先生っ!ありがとうございますっ…!」

 

「なに泣いてんだバカヤロー。兄貴に報告するまでそれはとっとけ」

 

「ハ、ハイッ!」

 

「ほれ。行った行った」

 

銀時のこう言うところが人を惹き付ける魅力なのだろう。

そしてタイミングよく吹き飛んだステインが立ち上がってきた。

 

「ハァ…。生きる価値のない贋物は粛清する。犠牲が必要だ…!」

 

「そォかい。オメェには何も見えちゃいねェ」

 

「ハァ…!俺を殺していいのは…本物だけだ…!」

 

「コイツらにゃ可能性しかねェよ。それが見えてないオメェじゃ勝てやしねェ」

 

ステインには理解できないだろう。

だがこれこそが銀時とステインの決定的な差なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

決着は意外とあっさり着いた。

三人の連携、タイミング、運。

全てが上手く噛み合った結果だ。

銀時が控えてくれていたのも背中を押したことだろう。

 

「お疲れさん。なかなか良かったぜ」

 

銀時が声をかけると飯田が真っ先に銀時に頭を下げた。

 

「先生っ!僕は…」

 

だが、銀時はそれを止める。

 

「飯田。謝る相手が違ェだろ」

 

「っ!そう…ですね」

 

飯田は緑谷と轟に向き直り深く頭を下げた。

 

「二人とも…僕のせいで傷を負わせた。本当に済まなかった…。何も…見えなく…なってしまっていた…!」

 

これからのことは飯田次第だ。

そして続々と他のプロヒーロー等が集まってきた。

だが、次の瞬間。

辺りに異様な圧力がのし掛かるかのような感覚が支配した。

 

「偽物が蔓延るこの社会も。徒に力を振りまく犯罪者も。粛清対象だ…。ハァ…ハァ…」

 

倒れていた筈のステインが起きあがり己の信念を語りだした。

 

「全ては…正しき…社会の為に」

 

皆がステインの圧に動けなくなっている中、ステインに向かい歩き出す者が一人。

だが、まだ誰も気づかない。

 

「正さねば…。誰かが…血に染まらねば…!英雄を取り戻さねば!!来い…来てみろ贋物ども。俺を殺していいのは本物の英雄だけだ!!」

 

「言いてェことはそれだけか?」

 

銀時がステインの目の前に立っていた。

 

「白、夜叉…!本物の…!」

 

そして…銀時は木刀を振りかぶりながら言った。

 

「英雄だァ?そんなモン誰かが決めるモンじゃねェ。犠牲が必要なモンでもねェ。皆に…仲間に認められてなるモンだ。…だからオメェは何も見えちゃいねェってんだ!もォちっと…魂見開いて生きろこのタコスケェェェ!!!」

 

銀時は全力でステインに木刀を叩き込んだ。

この一撃によりステインは完全に意識を失い、今回の事件は終息した。

この事件を気に白夜叉の名前が轟くことを銀時はまだ知らない。

 

 

 




ヒーロー殺し編終わっちゃいました!

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第17話

ヒーロー殺しの事件は終わりを迎え、無事に職場体験を終えた。

ヒーローの見えないところで悪意が動き出そうとしているのと同時に一人の男が注目を浴びていた。

その男こそ坂田銀時である。

職場体験を終えて授業が再開する日の朝礼。

銀時はいつも通り時間ギリギリに職員室に到着した。

 

「はよーっす」

 

銀時が気の抜けた声で入室すると一斉に視線が銀時に向く。

 

「な、なんだよ」

 

おかしい空気を感じた銀時に向かって校長が口を開く。

 

「いやー!すごいじゃないか!坂田くん!」

 

「はい?なにがすか?」

 

「まぁまぁ!これを見たまえよ!」

 

そう言って校長はリモコンを操作して大きいモニターに映像を流し始めた。

 

『言いてェことはそれだけか?』

 

その映像の中には見知った顔が映っている。

 

「は…?」

 

『英雄だァ?そんなモン誰かが決めるモンじゃねェ。犠牲が必要なモンでもねェ。皆がーーー』

 

「オイィィィィ!!!」

 

映し出されたのは先日のヒーロー殺しと銀時の最後のやり取り。

銀時は認識した瞬間に木刀をモニターに向けて投げつけた。

 

「なにすんだ!こっからがイイトコなんだぞ!」

 

マイクが銀時に向かって言った。

 

「あ、ごめん…じゃねェェェ!!!ふざッけんな!!!なんだよコレ!!?は、恥ずかしィィィ!銀さんもォお婿に行けねェよ!」

 

今思うと銀時がいた時代には携帯という概念自体あまり浸透していなかった。

だからか動画が拡散されるなんてことは銀時の頭には全くなかったのだ。

 

「なに言ってんだ。すげえ評判いいぞ」

 

「それにテレビで大々的に取り上げられてる訳じゃねえからマスコミが押し掛けてきたりとかはないから安心しろよ!」

 

「それにしたってこりゃあ恥ずいぜ…さすがによォ」

 

銀時は珍しく肩を落としていたのだった。

朝礼の後、銀時は職員室を出て教室の前に来ていた。

いつものように扉を開けて中に入る。

 

「うーぃ。…ん?」

 

誰かと目が合った。

 

「あ?」

 

ベストジーニストの所に行っていた爆豪だった。

髪の毛は8:2にピッチリと分けられているが…。

銀時は笑うこともなく無言で爆豪に近づいていき優しく肩を叩いた。

そして…

 

「悩みがあるなら…聞くぜ?」

 

「優しくすんなやッ!」

 

『怒るとこそこかよ…』

 

爆豪の検討違いなツッコミにクラスの心は一つになった。

ちなみにヒーロー殺しとのことはめちゃくちゃ聞かれた銀さんであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー。いい汗かいたぜ」

 

銀時は着替えるために更衣室に来ていた。

最近はイレイザーに頼まれて授業がない時間に組み手に付き合っている。

しっかりと対価は貰っているが。

糖分という形でしっかりと。

 

「とりあえず着替えるか。…ってなんでオメェらがいんだよ」

 

銀時が中に入るとA組の生徒が更衣室で着替えていた。

 

「ヒーロー基礎学終わって着替えてんすよ!」

 

「あー。もォそんな時間か」

 

「先生は何してたんすか?」

 

「保健体育の実技」

 

『ぶふぉっ!!!』

 

「大人のっ…!?」

 

銀時がからかうように言うとみんな一斉に吹き出した。

峰田だけ違った反応をしていたが。

 

「ってゆうのは嘘だ。エロガキ共」

 

「ちょっ!やめてくれよ先生!」

 

「反応するのが悪ィ。ガキはスカートのチラリズムで一喜一憂してろー」

 

完全に銀時のペースである。

これが大人の余裕!…だと思います。ハイ。

そんな時。

 

「こんなところに穴が!!!緒先輩方が頑張ったのか!!!」

 

峰田が女子更衣室に繋がる穴を発見した。

 

「うひょー!!!坂田先生もどぉすか!?好きでしょ!?」

 

「あん?ガキの体にゃ興味ねェよ」

 

銀時は興味なさげに断った。

そこで横から上鳴が声をあげた。

 

「そぉいえば!今日のヒーロー基礎学にミッドナイト先生も来てたな~!もしかしたら…」

 

嘘である!

それを聞いた銀時は…

 

「…」

 

銀時は…!

 

「どけごらァ!!!オメェらにはミッドナイトさんは早ェわボケェ!!!俺が責任を持って見るからどきやがれェ!!!」

 

速攻で手のひらを返し、力ずくで穴の前を陣取った。

そして穴を覗くと…。

 

「プリプリデカプリコちゃんは~っと!…ん?なんだァ?」

 

何も見えなかった。

ちゃんと見ようと目を凝らた瞬間。

 

「「バルス(ですわ)!」」

 

耳郎のプラグと八百万が創造した棒のような物が穴から伸びて銀時の目にぶっ刺さった。

 

「ノォォォォォォ!!!!!」

 

駄目な大人に天罰が下りましたとさ。

 

 

 




なんか閑話みたいになってしまった…。
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第18話

更衣室での一幕が終わりホームルーム。

イレイザーが話を始める。

 

「夏休み、林間合宿やるぞ」

 

『知ってたよー!やったー!!!』

 

「ただし…期末テストで合格点に満たなかった奴は…学校で補習地獄だ」

 

「勉強は全くの専門外だから俺んとこには聞きにくんなよー」

 

他人事のように言う銀時。

まぁ他人事であるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

期末テストの前日。

会議室にてテストの概要についての話し合いが行われていた。

 

「敵活性化のおそれ…か」

 

「もちろんそれをーーー」

 

銀時はこの時代の事をあまり知らないため話に参加していない状況だ。

ある程度話が進み明日のテストの話になった。

 

「これからは対人戦闘・活動を見据えてやるよ!」

 

「具体的にはどうするので?」

 

「そうだね…」

 

話がつまりそうになった時にイレイザーが口を開いた。

 

「我々も動くべきかと。合理的にいきましょう」

 

「ふむ。具体的には?」

 

「生徒二人に対して我々教師が一人で対人戦闘でよろしいかと」

 

「ふむふむ…相澤くんグッジョブさ!決定だね!」

 

イレイザーの案で決定のようである。

そんな時に銀時が他人事のように口を開いた。

 

「いいんじゃね?それでよ」

 

「他人事だな。銀時もやるんだぞ」

 

「嫌だね。ガキ相手に本気になれっかよ」

 

「はぁ。お前は…」

 

「まぁまぁ!ここは僕に任せてくれよ!」

 

銀時の発言にイレイザーが返そうとしたところで校長が待ったをかける。

 

「坂田くん!これが何か分かるかな?」

 

「あん?…っ!こ、これはっ!」

 

校長がポケットから何かを取り出し銀時に見せる。

すると銀時は驚きをあらわにした。

 

「あそこの甘味処の1ヶ月パフェ食い放題券じゃあねェか!!!」

 

「コレ、欲しいかい?」

 

「えっ!なになに!?くれんの!?」

 

「いや~タダじゃな~」

 

「ガキ二人を半殺しにすりゃあいいんだろ!?任せてくれよ~そんくらいよォ!」

 

手のひらの返し方がえげつない銀時。

てか物騒なこと言ってるけど大丈夫なのか…。

 

「交渉成立さ!」

 

「ヒャッホーイ!!!」

 

『お見事です校長!』

 

見事な手腕を見せた校長。

銀時!チョロすぎるぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてテスト当日。

担任のイレイザーが説明をする。

 

「それじゃあ演習試験を始めていく。言っとくが赤点もあるからな」

 

生徒たちは仕入れた情報通りのロボットを使った演習だと思っている。

生徒たちが各々話始めると、イレイザーの捕縛布の中から校長が出てきていきなり話始めた。

 

「諸事情があって今回から内容を変更しちゃうのさ!今回は二人一組でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

 

そして対戦のペアの発表をイレイザーがしていく。

 

「まず、轟と八百万がチームで…俺とだ」

 

「そして、緑谷と爆豪がチームで相手は…」

 

「デ……!?」

 

「かっ……!?」

 

「私がする!」

 

オールマイトが二人の相手をするようだ。

そして…

 

「上鳴と芦戸がペアで…」

 

「誰とやんだ!?」

 

「誰?誰?」

 

「白夜叉とだ」

 

「マジか~!?大分ヤバイね~」

 

芦戸はいつもの調子で答えたが上鳴は…

 

「げっ…」

 

「か~みな~りくん!あ~そび~ましょ~!」

 

銀時は笑いながら言うが目が笑っていない。

完全に更衣室での一件の逆恨みである。

 

「俺、今日が命日かも…」

 

「なに言ってんだァ?死ぬわけねェだろ?」

 

「そ、そっすよね?いやー、心配して…」

 

「半殺しで勘弁してやるよ」

 

「…助けてくれぇぇぇぇぇ!!!」

 

A組の男性陣はほとんどが上鳴に合掌した。

そうして一斉に試験が開始される。

スタートの合図はリカバリーガールが行う。

 

『それじゃあ今から雄英高一年期末テストを始めるよ!レディイイ…ゴォ!!!』

 

それぞれの会場で試験が始まった。

 

「に、逃げの一手だろ!?」

 

上鳴は始まった瞬間に芦戸に提案する。

だが、芦戸は上鳴の置かれている状況がなんのその銀時と戦ってみたいらしい。

 

「えー、私は戦ってみたいんだけど!」

 

二人が作戦?を考えていると銀時がゆっくり歩きながら言った。

 

「逃がすわきゃねェだろ?殺戮パーティーの始まりだァ!!」

 

「き、来たーーー!!?」

 

「ほら!やるしかないよ!」

 

「行くぜガキ共!」

 

銀時はそう言って地面を蹴り、上鳴の脇腹に向かって木刀を振るう。

 

「ちょっ!まっ…ぐぇっ!」

 

そして、その勢いのまま体を回転させて芦戸に回し蹴りを決めた。

 

「はやっ!…うわっ!」

 

食らった二人は地面を何回か跳ねて転がった。

 

「ヒーローがなんぼのもんじゃい!」

 

「い、いったぁ~!」

 

「ガ、ガチじゃん!死ぬってマジで!」

 

銀時はこんな感じだがしっかり手加減はしている。

それに気づいていないのは力の差が大きいからか…。

 

「次ィ!行くぜェ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分がたった頃。

 

「はぁ…はぁ!マ、マジでもう限界!」

 

「はぁ…はぁ!だ、だね!なんも効かないよ!」

 

二人はボロボロになって建物の陰に隠れていた。

 

「どぉする?やっぱ逃げる?」

 

上鳴はとにかく逃げたいみたいだ。

そこで芦戸が…

 

「ううん!作戦思いついちゃった!あのねーーー」

 

「マジ!?それ上手くいくか!?」

 

「やるしかないっしょ!」

 

「わ、分かった!行こう!」

 

そう言って二人は銀時の前に姿を現す。

 

「おっ、いたいた。もォ飽きてきたしそろそろ終ェだな。正直、ガキをいたぶる趣味もねェし」

 

銀時は二人に向かって歩き出す。

 

「上鳴行くよ!」

 

「お、おう!」

 

二人は仕掛けるようだ。

 

「全力っ!アシッドショット!」

 

まず、芦戸が銀時に向かって一転集中の酸で攻撃する。

 

「甘ェ!オラッ!…アレ!?」

 

それを銀時は木刀で払い除け、芦戸に攻撃を仕掛けようとしたが空振った。

銀時の木刀は刃の部分が溶けて無くなっていた。

 

「成功!上鳴っ!」

 

「離れてろよ!放電!!」

 

そして、空振って放心している銀時に上鳴が放電を放つ。

 

「アババババババ」

 

「ナイス!今のうちに!」

 

銀時が怯んでいるうちに芦戸が銀時の横をすり抜けゴールを目指して走り出す。

 

「ウェ…っぶねぇ!ギリ大丈夫だった!行けー芦戸!」

 

「っなんのォ!行かせねェ!…はぁ!?」

 

銀時は出来る限りの早さで復活し、芦戸を追うために振り向き走り出そうとしたが…

銀時が振り返ると芦戸が目の前にいた。

そして、またあの攻撃を食らうことになる。

 

「うっそぴょーん!バルス!」

 

「あァァァァァ!目がァ!目がァァァァァ!」

 

銀時は目に酸を受けて地面をのたうち回る。

その隙に二人はゴールを目指し走り出す。

 

「先生ー!威力は抑えてあるから少ししたら治るからねー!」

 

「いやー!まさか成功するとはっ!?」

 

二人が銀時の横を抜けていく時に上鳴だけ足をつかまれた。

もちろん銀時に。

 

「待ちやがれェ…」

 

「上鳴バイバーイ!」

 

「ちょっ!?ウソでしょ!?」

 

「もォ勝ち負けなんて知らねェ。芦戸がゴールするまでに二人で遊ぼうぜェ」

 

「ひっ…!」

 

「か~みな~りくん。あ~そび~ましょ~」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

銀時の目は血走っていてもはやホラーだ。

このあと、上鳴がどうなったかはご想像にお任せします。

 

 

 

 

 




感想などお待ちしてます!
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第19話

無事に試験は終わり次の日のホームルーム。

 

「予鈴が鳴ったら席につけ」

 

「うーす」

 

イレイザーと銀時は教室に入り教壇にたつ。

 

「おはよう。今回の期末テストだが…残念ながら赤点が出た。したがって…林間合宿は全員行きます」

 

『どんでんがえしだあ!』

 

実技の結果が奮わなかった数人はとにかく叫んだ。

 

「うるせェぞー。まず…筆記は赤点ゼロな」

 

「実技で切島、上鳴、砂藤、瀬呂が赤点だ」

 

安心したのか少しずつざわつきだす。

 

「合理的虚偽ってやつさ」

 

「お前それ好きだよな」

 

『ゴーリテキキョギィイー!!』

 

「ただ全部嘘ってわけじゃない。赤点は赤点だ」

 

「そーだぞー。合宿中に補習やるらしいから頑張れよー」

 

嬉しそうにはしゃいでいた赤点組が沈黙したのは言うまでもない。

こうして前期の学校生活が終わりいよいよ夏休みになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

林間合宿当日。

今はバスで移動中だ。

生徒たちは皆思い思いにはしゃいでいる。

 

「なー消太。コイツら大丈夫か?緩みすぎてね?」

 

「…今くらいいいだろ」

 

「お前がそんなこと言うなんて珍しいじゃねェの」

 

「ほっとけ」

 

そして目的地に到着した。

 

「休憩だー…」

 

「つか何ここ?パーキングじゃなくね?」

 

生徒たちは休憩のためにバスが止まったと思っているようだ。

そこでイレイザーが口を開く。

 

「何の目的もなくでは意味が薄いからな」

 

その時、横から誰かの声が聞こえた。

 

「よーうイレイザー!」

 

「ご無沙汰してます」

 

「煌めく眼でロックオン!」

 

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!』

 

「消太。どちら様?なんか自己紹介ギャグみたいなことやってっけど」

 

「今回お世話になるプロヒーロー『プッシーキャッツ』の皆さんだ」

 

ここには二人しかいないが四人一チームのヒーロー集団らしい。

今いるのは『マンダレイ』と『ピクシーボブ』だ。

銀時は合宿に来ることも知らなかったみたいである。

そんな時…

 

「初めましてっ!ピクシーボブって言います!」

 

「あー。ども」

 

ピクシーボブが銀時に近づいていき挨拶をした。

だが少し様子がおかしい。

 

「銀様ですよね!ヒーロー殺しの時に活躍した!」

 

「…はぁ!?銀様だァ!?」

 

「はい!一目惚れしました!」

 

『えぇーーーーー!!?』

 

ピクシーボブのド直球な告白により、それを聞いていた生徒たちは驚愕の声をあげた。

 

「マンダレイ。あの人に何があったんですか」

 

「なんか、この間のヒーロー殺しの事件の動画を見て王子様だなんだとかって騒いでたから…」

 

イレイザーとマンダレイが話している中、生徒たちは銀時の返事を待っているようだ。

皆が注目しているが、銀時は…

 

「チェンジで」

 

『チェ、チェンジーーー!!?』

 

そう。

銀時は積極的な女性が苦手なのである。

 

「がっくし…」

 

「アホ、流石に失礼だ。ピクシーボブ。すいません」

 

「だってよォ。なんかあの人、俺の知り合いにいる残念な女共に雰囲気似てるんだよ」

 

「だ、大丈夫!私はこんなことじゃ諦めないから!」

 

諦めた方が良いことに気づくのはいつになるのか…。

このチャランポランの酷さに気づけるのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だかんだで強制的に合宿を開始したA組。

とりあえず宿泊施設まで森を抜けさせるみたいだ。

 

「ねぇねぇ!銀さん!私の個性すごいでしょ?ねぇ?」

 

「あー。すごいすごい。まじですごい」

 

銀時は適当にあしらう。

 

「そんな褒められると照れちゃうよ~!///」

 

だが、ピクシーボブは気づいてすらない。

恋は盲目とはこのことである。

 

「おーぃ。コイツの耳どォなってんの?幻聴聴こえちゃってるの?」

 

「仲良くなるの早いな」

 

ちなみにあのあと、銀時は敬語と銀様呼びを止めるように言い、名前が呼びにくいと言ったら本名で呼んでくれと頼まれたらしい。

 

「しかし…無茶苦茶なスケジュールだねイレイザー」

 

「まァ、無茶は出ます。緊急時における個性行使の限定許可証・ヒーロー活動認可資格。その仮免。敵が活性化し始めた今、彼らにも自衛の術が必要だ」

 

生徒たちは何とか上手くやっているようである。

 

「では引き続き頼みます。ピクシーボブ」

 

イレイザーがピクシーボブに言った。

 

「…。銀さんは?」

 

だが…。

 

「…なんだよ」

 

「銀さんは何か言ってくれないの?」

 

「はぁ?」

 

「なら頼まれないっ!ふん!」

 

「「じーーーっ」」

 

イレイザーとマンダレイがめちゃくちゃ銀時の方に視線を送ってくる。

 

「…はぁ。わーったよ。あー。なんだ…頼むわ流子」

 

「やばい!鼻血でそう…!」

 

「ちょっとコイツ殴っていい?いいよな?」

 

結局ぐだぐたになった。

ピクシーボブには銀時がどう写っているのか…。

本人にしか分からないことだが。

それにしても…

 

「結構お似合いだと思うんだけどねぇ」

 

「確かに」

 

「も~!やめてよ~!お似合いの夫婦なんてっ!///」

 

「ちょっとォ!誰かお医者さん呼んできてェ!この人耳と頭がおかしいんですゥ!」

 

「「ほらね」」

 

二人の運命や如何に。

…なんちゃって!

 

 

 

 

 




ラブコメの波動を感じる…!
こんな作品じゃなかった筈なのに…!
書いてたら楽しくなってしまった…!


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第20話

生徒たちが森に入ってから時間がたち、夕方。

 

「やーーーっと来たにゃん」

 

「遅ェよ。今何時だと思ってんの?ナメてんの?」

 

頑張った生徒たちに対して酷い言い様である。

 

「どうした銀時。お前も森に行きたいのか」

 

「オメェら!なかなかやるじゃねェか!銀さんは信じてたぞ!」

 

それなら初めからしなきゃいいのに…。

 

「とりあえずお昼は抜くまでもなかったねぇ」

 

「なにが三時間ですか…」

 

「腹へった…死ぬ…」

 

生徒たちは皆死にそうなくらい疲れている様子だ。

 

「悪いね私たちならって意味アレ」

 

「実力差自慢の為か…」

 

「ねこねこねこ…でも正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ君ら…特に」

 

そう言ってピクシーボブは生徒を指差した。

 

「そこの4人。躊躇の無さは経験値によるものかしらん?うーん!三年後が楽しみ!ちょっと前の私ならツバつけてたとこだよ!でも…」

 

次いでピクシーボブは銀さんに駆け寄り腕に抱きつきながら言った。

 

「今の私には銀さんがいるから!」

 

「おい!引っ付くんじゃねェ!」

 

銀時は嫌そうにしているが、それを見た一部の生徒から異様なオーラが吹き出している。

 

「オイラ達が森で死にそうになってる時に…」

 

「自分は女とイチャイチャしてやがったんすか…」

 

特にヤバイのが峰田と上鳴。

それと…

 

「ふーん。そうゆうことね」

 

 

「少し教育が必要みたいですわね」

 

耳郎と八百万だ。

 

「ちょっ、ちょっとオメェら落ち着けェ!銀さんは何も悪いことしてないから!流子が勝手にィ!…あっ、やべ」

 

『流子ーーー!!?』

 

「ご、誤解だ!!!俺は無罪だァ!!!」

 

「「ギルティ」」

 

「「死刑(ですわ)」」

 

「く、来るな!ちょっ、あァァァァァァ!!!」

 

日頃の行いが悪さが災いした銀時であった。

この日銀時は気絶したまま目覚めなかったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

合宿二日目。

 

「お早う。諸君」

 

「うーっす。なぁ消太」

 

「なんだ」

 

「いや、なんかよォ。昨日の途中から記憶がないんだけど…なんか知ってるか?」

 

「…。いや、なにもなかったぞ」

 

「そォか。まぁいいや」

 

知らない方が良いこともあるぞ銀時。

その後イレイザーから説明を受け二日目が始まる。

 

「今日から君らの個性を伸ばす。死ぬ程キツイがくれぐれも…死なないように」

 

そうしてA組が特訓に入ったあとB組が合流してきた。

 

「よう、イレイザー、白夜叉」

 

「ん?おー、ブラドか」

 

「時間がないんでなB組も早くしろ」

 

「しかし私たちも入ると40人だよ。そんな人数の個性たった6人で管理できるの?」

 

気になったことをB組の生徒が言った。

 

「だから彼女らだ」

 

すると…

 

「そうなのあちきら四位一体!」

 

「煌めく眼でロックオン!!」

 

「猫の手、手助けやって来る!!」

 

「どこからともなくやって来る…」

 

「キュートにキャットにスティンガー!!」

 

『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!』

 

四人揃ってフルverだ。

それぞれ個性の説明付きだった。

 

「なんか増えてんだけど…しかも暑苦しィ」

 

「む。主が白夜叉か。我は虎と言う。よろしく頼む」

 

「あちきはラグドール!ヨロシクー!」

 

銀時に気づいた昨日いなかった二人は近づいてきて挨拶をしてきた。

 

「あー。よろしくな。…なんだよ」

 

挨拶をしたあと、ラグドールは銀時の事をじっと見ている。

 

「んー?銀さんって…過去かむぐっ!」

 

「ちょーっと黙ろォか!」

 

銀時はラグドールの口を急いでおさえて小声で言った。

 

(ラ、ラグドールさん!いや、ラグドール様!それは秘密で頼んます!300円あげるからァ!)

 

銀時の必死なお願いにラグドールは首を縦に振った。

銀時はラグドールには頭が上がらなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個性を伸ばす特訓中。

銀時は切島と鉄哲の前に立っていた。

 

「よォし。オメェら始めんぞ」

 

「うっす!」

 

「よっしゃー!」

 

「そんじゃ…気張れ。体から力抜くなよ」

 

銀時が言うと、二人は個性を発動した。

 

「行くぞ。…オラッ!」

 

「「ぐっ!!」」

 

銀時は個性を発動した二人に向かって木刀を振るった。

この二人の個性を伸ばす特訓は持続時間の延長と強度の底上げだ。

だからとにかく銀時が木刀でぶっ叩く。

 

「どんどん行くぜ」

 

「「押忍!」」

 

そして、銀時の連打が50を越えた頃。

 

「だハハハハハハ!!!そらっそらァ!!!」

 

銀時は変なテンションになっていた。

 

「ぐはあっ!」

 

「ぐうっ!」

 

「力抜くんじゃねェぞコラァ!俺専用のストレス発散マシーンなんだからよォ!」

 

もはや目的が変わってしまっている。

とにかく鬼畜。

 

「はぁ…はぁ!まだ…まだぁ…」

 

「はぁ…もっとこいやぁ…」

 

その言葉を最後に二人は倒れて気絶した。

 

「ちっ!情けねェ!流子!水持ってきてくれェ!」

 

「は~い!銀さんどーぞ!」

 

「サンキュー!」

 

銀時は気絶した二人に水をかけて強制的に起こす。

 

「…はっ!俺は…」

 

「…ぶはっ!…ありゃ?」

 

「早く起きやがれ!続き始めんぞ!」

 

「「お、押忍っ!!」」

 

生き生きしている銀時の特訓は続く。

 

 

 

 

「うわー。えげつねぇ」

 

「あそこが一番の地獄だな」

 

「坂田先生笑ってるし…」

 

生徒たちは明らかにドン引きしていた。

 

 

 

 

 




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第21話

合宿三日目。

個性を伸ばす特訓の続きだ。

生徒たちは皆体がキツイようだが、特に補習組が酷い。

 

「補習組。動き止まってるぞ。だから言ったろキツイって」

 

「おーおー。見てらんねェなー。なぁ…切島ァ!」

 

銀時は不気味に笑いながら言った。

 

「お、押忍!教官!」

 

「今日も存分にしごいてやるから覚悟しとけよォ」

 

「押忍!ありがたき幸せ!」

 

綺麗な敬礼で答える切島。

他の生徒はドン引きしています。はい。

そこでピクシーボブが口を開く。

 

「ねこねこねこ…それより皆!今日の晩はねぇ…クラス対抗肝試しを決行するよ!」

 

生徒たちは合宿がキツすぎて忘れていたようである。

 

「というわけで!今は全力で励むのだぁ!!!」

 

『イエッサァ!!!』

 

そして三日目の合宿が終わり夕食の後。

 

「腹もふくれた!皿も洗った!お次は…」

 

『肝を試す時間だー!!』

 

生徒たちははしゃいでいる。

特に補習組が。

だが…

 

「その前に大変心苦しいが補習連中は…これから俺と補習授業だ。銀時そっちは頼んだぞ」

 

『ウソだろっ!?』

 

そうしてイレイザーに連行されていく。

 

「おー。任せろー。そんじゃ俺から一曲」

 

銀時はイレイザーに返事をした後、わざとらしく咳払いをして…

 

「んんっ。ドナドナド~ナ…」

 

「坂田先生悲しくなるからやめてぇ!!」

 

とりあえず合掌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肝試しが始まりなん組かの生徒が出発した。

その時、何かを感じ取った銀時だか…

 

「…ん?っ!流子ォ!!」

 

「飼い猫ちゃんはジャマね」

 

「えっ…なに?きゃっ!」

 

少し遅かった。

ピクシーボブが敵にやられて気絶してしまった。

 

「何で…!何で敵がいるんだよォ!!!」

 

「やばい…!」

 

「ご機嫌よろしゅう雄英高校!!我ら敵連合開闢行動隊!!」

 

銀時たちの前に二人の敵が現れた。

ピクシーボブは敵の足元で倒れている。

 

「この子の頭潰しちゃおうかしら、どうかしら?ねえどう思う?」

 

「させぬわ!このっ…」

 

「虎」

 

「銀時!だが…っ!」

 

虎は銀時に抗議しようと振り返ったが、銀時の異様な雰囲気に息を飲んだ。

 

「待て待て早まるなマグ姉!」

 

敵側もおさまったようだ。

そしてもう一人の敵が話始める。

 

「生殺与奪は全て…ステインの仰る主張に沿うか否か!!」

 

「ステイン…!あてられた連中か…!」

 

ステインと言う言葉に飯田が反応する。

 

「そして、アァそう!俺はそうおまえ君だよメガネ君!…ん!?」

 

敵は銀時を視界に入れた。

 

「おぉ!!!これは大当たりだ!マグ姉!白夜叉がいるぞ!」

 

「あら…そうねえ。手間が省けたわね」

 

「保須市にてステインの終焉を招いた人物であり、ステインの思想を真っ向から打ち砕いた人物。申し遅れた…俺はスピナー。彼の夢を紡ぐ者だ」

 

そう言って武器を構える敵。

虎が我慢の限界に達し一歩踏み出そうとしたところで銀時が口を開いた。

 

「もォ…いいかよ」

 

「はぁ?何を言って…」

 

「それでいいのかって聞ィてんだ。…オメェらの遺言は…最後の言葉はそれでいいのかって聞ィたんだ」

 

銀時の気迫に敵は後退る。

 

「っ!?お、お前だけはこの手でっ!」

 

「っ!待ちなさい!スピナー!」

 

焦ったようにスピナーは銀時に突撃していく。

マグネの制止の声も届いていないようだ。

 

「そォかい。なら…」

 

「粛清してや…ぐぇっ!!?」

 

スピナーが銀時に斬りかかろうとするが、銀時には遅すぎる攻撃だ。実力差が大きすぎる。

簡単に交わし渾身の力でスピナーの顔面に木刀を叩き込んだ。

 

「あの世に行かせてやるよ。トカゲ野郎」

 

銀時の一撃をモロに食らったスピナーは木を何本が薙ぎ倒しながら吹き飛び動かなくなった。

死んではいないようだが完全に気を失っている。

 

「次はテメェだ。おかま野郎」

 

「な、なによこれ!こんなの聞いてないわよ!…バケモノじゃない!」

 

今さら気づいても遅すぎる。

一番怒らせてはいけない男を怒らせたのだ。

 

「逃げるしか!…きゃっ!」

 

マグネは即断で逃げる決意を固め逃げようとしたが…

 

「逃がすわけないだろう」

 

虎が前に立ちはだかり行く手を阻んだ。

 

「銀時。悪いが参戦させてもらう。我もピクシーボブがやられて相当キテるからな」

 

「そりゃあいい。良かったなァおかま野郎。特別に俺達二人で相手してやらァ」

 

「いいえ。三人よ」

 

銀時が横にならび、さらにマンダレイもきた。

 

「ひっ…!」

 

マグネは既に絶望している。

 

「一名様ご招待だァ!さァ!あの世へお連れするぜ!帰りの便は無ェからなァ!」

 

「や、やめて!…きゃぁああああ!!!」

 

これから死ぬよりも酷い目にあうことになる。

銀時がいる時点で勝ち目がなかったことに今更ながら気づいた敵であった。

そして、敵を処理したあと。

 

「流子!大丈夫か?」

 

銀時たちはピクシーボブの元に来ていた。

 

「ぎ、銀さん…。見て…たよ。カッコよかった…」

 

「そォかい。…そんな口が利けんなら大丈夫だな。まあ…ゆっくり休め」

 

「うん。ありが…とう。大好き…」

 

ピクシーボブはその言葉を最後に気を失ってしまったようだ。

 

「…ちっ。調子狂うぜ…全くよォ」

 

銀時は頭をかきながら呟いた。

 

「銀時。主は良い男だな。ピクシーボブを頼んだぞ」

 

「そんなんじゃねェ!」

 

「む。そうなのか」

 

「あはは…。でもやるときはやるんだね。見直したよ」

 

「違ェよ。俺ァただ…俺の手が届く範囲くれぇは護れる男でありてェんだ。そんだけだ」

 

「やはり…ピクシーボブを任せた。主しかおらん」

 

「…そうね。ピクシーボブをお願いね!」

 

「だからそんなんじゃねェっての!」

 

本当に頼りになるときはとことん頼りになる男だ。

悔しいがかっけぇ…!

 

 

 

 

 




原作と大分違う展開になっちまった…!
どうしよ…

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第22話

銀時たちは敵を無力化したあと、回りの状況を探るべくどう動くかを考えていた。

 

「奴らの目的が銀時ならこちらから動くのは良くないな」

 

「そうね。銀さんはここに…」

 

「悪ィが俺ァ行くぜ。ガキ供が戦ってるかも知れねェ。…教師の俺が行かねぇでどォするよ」

 

「む。しかし…」

 

その時…

 

「マンダレイ!!洸汰くん!無事です!」

 

「君…」

 

緑谷が森から飛び出してきた。

 

「緑谷じゃねェか。…っ!その怪我はどォした!?」

 

「坂田先生!こ、これはさっき敵と戦って…ってそれよりも!敵の目的は坂田先生とかっちゃんです!」

 

「…ちっ。爆豪か…」

 

銀時は何かを考えるように少しうつむいた。

そして…

 

「マンダレイ。戦闘の許可を出してくれ」

 

「大丈夫なの!?」

 

「マンダレイ!お願いします!相澤先生からも伝言預かってます!」

 

「わ、分かった!『A組B組総員!プロヒーローイレイザーヘッド、白夜叉の名に於いて戦闘を許可する!!』」

 

マンダレイのテレパスにより戦闘の許可が伝えられた。

 

「すいません!もう一つ!かっちゃんが狙われてる!テレパスお願いします!」

 

「かっちゃ…誰!?あっ!待ちなさいちょっと!」

 

そう言って緑谷はどこかへ走って行ってしまった。

 

「ちょっと銀さん!あの子…ってあれ?銀さん!?」

 

いつの間にか銀時もいなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マンダレイ達の前から姿を消した銀時は森を走っていた。

 

「なんか嫌な予感がすんだよなァ」

 

銀時は足を止めないまま考えを巡らせる。

 

「…ってなんで俺がアイツの事を心配しなきゃなんねェんだよ!覚えとけよボンバーマンめ!」

 

銀時が大きい声で不満を吐露すると、なにかが銀時に向かって迫ってきた。

 

「っ!?っぶねェ!」

 

辛うじて交わし相手を確認する。

 

「なんだってんだ!?…あん?ありゃあ…」

 

「先生っ!俺に…近づかないで…くれ!」

 

「常闇か…!」

 

(個性が暴走してやがんのか)

 

「ちっ!次から次へと…」

 

「坂田先生!」

 

「ん?緑谷と障子か。こんなとこでなにしてんだ」

 

「と、常闇君の個性が暴走していて動くにも…」

 

銀時が緑谷たちと話している間にもどんどん力が増していっている。

 

「俺のことは…いい!ぐっ…!静まれっ…黒…影!!」

 

常闇は力を抑えることに手一杯だ。

いつまでもつか…。

 

「オメェら!ちょっとこっち来い」

 

銀時はそう言って二人を連れて木の陰に移動した。

 

「あのままじゃあ常闇は自分の個性に飲まれちまう」

 

「はい!だから早く助けないとっ!」

 

「まぁ落ち着け。こーゆう時こそ冷静にだ」

 

「はい。先生…常闇の個性は光さえあれば静まると思います」

 

障子は冷静に且つ端的に言った。

 

「分かってる。俺に任せな」

 

「なにか策が?」

 

「あぁ。とっておきだ」

 

緑谷と障子は銀時を信じて無言でうなずいて見せた。

そして、銀時は一人で木から飛び出し懐からアレを取り出し投げた。

そう…我らがジャスタウェイだ。

 

「これでも…くらいなッ!」

 

(ジャスタウェイの爆発の光で無力化すりゃあ!)

 

綺麗な放物線を描いてジャスタウェイは常闇の近くに落ち爆発。

…しなかった。

 

「…」

 

「「…」」

 

常闇が暴れていて騒がしいはずなのに音が消えた気がした。

そして…

 

「に…」

 

「「に…!?」」

 

「逃げろォォォォォ!!!」

 

「ちょっ!ウソでしょ!?って逃げ足はやッ!!?」

 

「緑谷走るぞ!掴まっていろ!」

 

やっぱりいまいちキマらない銀時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時のヘマで常闇から逃げている銀時達。

 

「はぁ…はぁ!なんか…見えんぞ!」

 

「氷が見える!轟君たちです!」

 

逃げていた先には轟と爆豪たちが敵と交戦していた。

 

「!?」

 

「あ…?」

 

敵であるムーンフィッシュはこちらに気づいた途端、攻撃を仕掛けてきた。

だが…

 

「どきやがれェ!そこのキメェのォ!邪魔だァ!!!」

 

銀時は走っていた勢いそのままにムーンフィッシュの個性でできた刃のようなものを足場にして登っていき脳天に木刀を叩き込んだ。

 

「肉…ぎゃっ」

 

勢いよく地面に落下したムーンフィッシュは意識こそあったものの、銀時たちを追いかけていた暴走した常闇の黒影に踏み潰されて動かなくなった。

 

「轟!爆豪!どちらでもいいから光をっ!!!」

 

「先生!?障子と緑谷も…あれは常闇!?」

 

轟たちは未だに事態を飲み込めないでいるようだ。

 

「早く光を!!!常闇が暴走した!!!」

 

『ア゛ア゛ア゛暴れ足リンゾォ!!!』

 

常闇は暴れまわって地形を変えていく。

そしてやっと状況を理解した二人が個性を発動した。

すると…

 

『ひゃん!』

 

さっきまでのが夢だったかのようにあっさりと終わった。

 

「ハッ…ハッ。すまない…」

 

個性の暴走が静まった常闇が頭を下げる。

 

「お前との個性の相性が残念だ」

 

「それにしても…あの敵はどうなった?」

 

「多分…倒した?と思うけど…」

 

「あそこで気を失ってるぞ」

 

障子が指差した先に体が地面に埋まったまま気絶しているムーンフィッシュがいた。

 

「まぁ、かねがね作戦通りだ」

 

そこで銀時はしれっといい放った。

 

「絶対ウソでしょ!?坂田先生もめっちゃ叫んでましたよね!?」

 

「さすが先生!」

 

「轟君!?」

 

轟は銀時の味方らしい。

まぁ本当に信じているのだが…。

 

「さっきの逃げてきたのが作戦だァ?笑わせんじゃねェよクソ天パァ!」

 

「あァン!?あんな雑魚に苦戦してたらしいボンバーマンくんが何か言ってるなァ!?」

 

「ンだとこらァ!俺一人でも楽勝だったわ!ボケェ!!」

 

「ぷっ!教えてやるよォボンバーマンくん!それは負け犬の遠吠えって言うんだよ?辞書引いてみたらァ?」

 

ぶちっ

 

「…今日と言う今日は許さねェ!ここで決着着けたらァ!俺の爆破でそのダセェ頭をもっと酷くしたるわ!」

 

ぶちっ

 

「…こンのクソガキがァ!天パをバカにした罰として職場体験の時のおしゃれ(笑)な髪型にしてやんよォ!一生直らないようにセメダインで固めてやるからなァ!」

 

雄英名物が始まりました!

みんな拍手!

…ってのは冗談だけどいつものが始まった。

ちなみに始まった瞬間に轟の個性で二人とも凍らされた。

 

 

 

 

 




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第23話

銀時と爆豪の小競合いが終わったあと。

 

「轟ー。もォ少し優しく止めてくれよー。銀さん死んじゃうよー」

 

「すいません…」

 

轟はしょんぼりしながら個性で銀時を温めていた。

 

『自業自得なのに…』

 

その光景を見ながら同じことを思った緑谷と障子。

 

「はぁー。生き返るー。…ん?っ!オイ!」

 

暖を取っていた銀時だが、ふと何かに気づいた様子だ。

 

「爆豪と常闇はどこいった!?」

 

「えっ?かっちゃん達ならそこ…に?」

 

爆豪がいなくなっていた。

気づいた銀時たちは森を走り一本の道のような所に出た。

そこには…

 

「麗日!?」

 

「障子ちゃん皆…!」

 

「あっ!しまっ…」

 

女を取り押さえている麗日と蛙吹がいた。

だが気取られている麗日の隙をついて女は逃げ出してしまった。

 

「何だ今の女…」

 

「敵よ。クレイジーよ」

 

「って!そんなことより!かっちゃん見なかった!?」

 

「爆豪ちゃん?見てないわ」

 

皆が話しているなか、銀時だけは違う方を向いていた。

 

「…オイ。テメェか」

 

「さすが白夜叉。よく気づいたね。でも少し遅かったみたいだ」

 

「アイツらに何しやがった」

 

「彼らなら…俺のマジックで貰っちゃったよ」

 

突如現れた敵の手には玉のような物が二つ浮いている。

 

「こいつぁヒーロー側にいるべき人材じゃあねえ。もっと輝ける舞台へ俺たちが連れてくよ」

 

敵に気づいた緑谷が叫ぶ。

 

「…!?っ返せ!!!」

 

「返せ?妙な話だぜ。我々はただ凝り固まってしまった価値観に対しそれだけじゃないよと道を示したいだけだ」

 

「返せよ!!!」

 

緑谷は完全に冷静さを失っている様子だ。

そこで銀時が動く。

 

「残念だが…あの二人はオメェらの手にゃ余る」

 

銀時は地面を蹴って敵に肉薄するが上手く避けられてしまう。

 

「何を言うか白夜叉。もう遅いんだよ」

 

「そぉかもな。でもオメェらじゃ手に終えねェよ。特に爆豪のやつはなァ」

 

銀時は先を見据えて話しているようだ。

だがそれを理解できる人間はここにはいない。

 

「まあいい。忠告として受け取っておこうか」

 

そう言って敵は無線のようなもので仲間に指示を出したあと、轟たちの攻撃もかわし飛んでいってしまった。

 

「オメェら。俺はああ言ったが…諦めんなよ。最後まで抵抗はすんぞ」

 

「分かってます」

 

「必ず取り返すっ!!」

 

(向こうにワープできる奴がいる時点でほぼ詰みなんだがなァ…。ガキ共を信じてみますかね)

 

「相手が欲をかいてきたらそこがチャンスだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵、Mr.コンプレスに逃げられたあと、追いかけるために銀時たちは人間弾になって空を飛んでいた。

緑谷の奇策で麗日が浮かし蛙吹が投げる形で飛んでいるのだ。

 

「ムリムリムリィィィ!速すぎィィィ!!死んじゃうゥゥゥ!!」

 

「ちょっ!先生暴れないでください!」

 

「バランスが!」

 

「おおおおおお!?」

 

「!?」

 

コンプレスはこちらに気づいたがもう遅い。

銀時たちはコンプレスを押し潰す形で敵が集まっている広場に降り立った。

 

「荼毘!白夜叉がいるぜ!このガキ共も知ってる!!誰だ!?」

 

「白夜叉ぁ…!」

 

荼毘は銀時を見つけた途端に個性で最大火力の炎を浴びせた。

 

「やべェ!テメェら避けろォ!」

 

「ま、間に…」

 

銀時は振り返って言うが間に合わない。

 

「ちっ!くそっ!…っらァッ!!!」

 

銀時は木刀を横凪ぎに力一杯振るい炎を割った。

 

「オイ!無事かテメェら!」

 

「は、はい!」

 

「助かりました」

 

銀時のおかげで後ろへの被害は無かったようだ。

だが、それぞれ敵が襲いかかってきていて。

そっちの対応に終われている。

 

「…ちっ。さすがにやるな」

 

「荼毘!俺じゃなかったら消し炭だったぞ!」

 

コンプレスは辛うじて難を逃れ荼毘に抗議した。

 

「悪い。取り乱した」

 

「次は合図してくれよ。…それよりも…どうする?」

 

「殺すさ」

 

「焦るなよ。正直、ここにいる全員でかかっても良くて相討ちだ」

 

「…爆豪は?」

 

「もちろん……!?」

 

コンプレスがポケットを確認し、なにかに気づいた時障子が声をあげる。

 

「逃げるぞ!!個性はわからんがさっき見せびらかしたこれが常闇と爆豪だなエンターテイナー」

 

「障子くん!!」

 

緑谷たちが歓喜し走り出す中、銀時は…

 

「趣味が悪ィな…インチキマジシャン。本物はどこだ」

 

「インチキとは言ってくれる。だが…正解だよ。ダミーだ」

 

そう言ってコンプレスは舌をだす。

そこには先程の玉のような物が二つ。

 

「くっそ!!」

 

「ちっ!やっぱりか…!」

 

銀時たちが再び行動を起こそうと動き出そうとしたその時。

 

「合図から5分経ちました。行きますよ、荼毘」

 

「っ!ワープの…」

 

黒霧が姿を現した。

 

「種は割れちまったが…トリックは成功だ。そんじゃーお後がよろしいようで…っ!?」

 

爆豪と常闇を持ったコンプレスが黒霧の個性で消える直前、どこかからレーザーが放たれ、コンプレスの口元に直撃した。

その攻撃により、コンプレスは二つの玉を落とした。

その瞬間轟と障子が飛び出し手を伸ばす。

銀時は荼毘と黒霧に足止めされて動けないでいた。

 

「轟!障子!とりやがれェ!」

 

銀時の声が響く。

そして、障子は掴んだ。

だが…

 

「哀しいなあ…轟焦凍」

 

轟は届かなかった。

その後、荼毘の合図でコンプレスが個性をとき常闇は救出したが爆豪一人がさらわれてしまった。

 

「かっちゃん!!」

 

「来んな…デク」

 

緑谷の叫びは虚しく響いた。

 

「あ…っ…ああ゛!!!」

 

完全敗北。

出来うる最善を尽くしたが届かなかった。

そこにいる全員が下を向いてしまっている。

その時、銀時が口を開く。

 

「下なんか向いてんじゃねェ」

 

「先…生。か、かっちゃんが…」

 

「オメェは諦めるってことか」

 

「え…」

 

「下向いて絶望して…それで終わりか」

 

「…っ」

 

「助けてェなら前を見やがれ。地面に希望なんか転がっちゃいねェぞ」

 

「っ!は、はいっ!」

 

銀時の言葉には芯があった。

誰もが絶望する中で鈍く輝く光。

生徒たちを導くために誰よりも前を向かなければいけないことを銀時は知っている。

どんな絶望も仲間と共に切り抜けてきたのだ。

それはどこにいても変わらない。

 

(諦めねェよ。ヒーロー…だからな)

 

 

 




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第24話

林間合宿が幕を閉じた。

結果的に多大な被害を受けた雄英高校。

その翌日、銀時とイレイザーとブラドは警察署で調書を取られていた。

 

「ーーーです。今回の敵襲撃はかねがねこんな感じです」

 

それぞれ事の経緯と自分の動き等を話した。

 

「イレイザーヘッド、ブラドキング、白夜叉ありがとう。…敵連合のメンバー。名前などは特定できるけど、統一性がない。探るのはなかなか難しいね」

 

「どォしたもんかねェ」

 

「敵の居場所さえ分かれば…」

 

話をしていると猫の頭をした男が入室してきた。

 

「塚内さん!2週間前の聞き込み調査の人物と特徴が一致しました!」

 

「本当か!?でかしたぞ!」

 

何か進展がありそうだ。

銀時はイレイザーに視線を向ける。

 

「消太」

 

「ああ。銀時は謝罪会見でなくていいぞ。校長にも許可は取ってある」

 

「おい!イレイザー!大丈夫なのか!?」

 

イレイザーの発言によりブラドが驚いているが…

 

「大丈夫だ。銀時は副担任として公式発表されてないからな」

 

「恩に着るぜ」

 

銀時は静かに決意を固めている。

自分の大切なものを護るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに翌日。

銀時は負傷した生徒の見舞いに訪れようと病院に来ていた。

 

「んーと…ここか。…ん?」

 

銀時が病室のドアを開けようとした時、中から声が聞こえた。

 

「ここで動けなきゃ俺ァヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ!なァ緑谷!!まだ手は届くんだよ!」

 

切島が大きい声で何かを訴えている。

それを聞いた銀時は…

 

「…また今度にすっか」

 

踵を返して帰路につく。

その銀時の顔には笑みが浮かんでいた。

そして夜。

銀時の視線の先には緑谷、轟、切島、飯田、八百万がいる。

だが、少し揉めているようだ。

そこで…

 

「よォ。こんな時間に何してんだ?」

 

銀時は前に出ていって話しかけた。

 

「っ!坂田先生…!」

 

「ぼ、僕たちは…あの…」

 

どう説明していいか迷っているようだったが…

 

「まぁ大体分かるけどな」

 

「悪いすけど止めないでくださいね」

 

銀時と生徒達のにらみ合いが続く。

 

「オメェら…」

 

『…っ』

 

全員が息を飲む。

いざとなったら銀時が相手でも抵抗する気があった。

そして…

 

「俺も誘いやがれ!コノヤロー!」

 

銀時はおちゃらけるように言った。

 

『はっ…?』

 

「まず俺だろォ普通!」

 

「はっ?えっ、あの…止めないんですか?」

 

「えっ?逆になんで止めなきゃ行けねェの?」

 

『…』

 

銀時の言いように沈黙するしかないようだ。

 

「なに?止めてほしいの?ぶっ飛ばしてほしいの?Mなの?」

 

「い、いやいや!助かります!」

 

「心強いっすよー!」

 

取り敢えず乗っかるスタイルで行くことにした。

 

「おっし!…あぁそーだ、飯田と八百万」

 

先程までとは違う雰囲気で二人を呼ぶ銀時。

 

「は、はい!」

 

「な、なんでしょうか!」

 

「オメェらは来んな」

 

『なっ!?』

 

「中途半端な気持ちで来られても邪魔になるだけだ」

 

『…っ』

 

二人とも思い当たる節があるようだ。

 

「意志が無ェと…死ぬぞ」

 

銀時の底知れぬ迫力にその場にいる全員が息を飲む。

 

(ここで一歩踏み出せねェなら…連れて行けねェ)

 

「俺らが戦闘を避けた所で向こうは手を出してくんだ。中途半端な気持ちじゃあ行くだけ無駄だ」

 

(さァ…どォする)

 

少しの沈黙の後、二人は勢いよく顔を上げ、言った。

 

「僕はっ…!僕は彼を!爆豪くんを助けたい!」

 

「わ、私も爆豪さんを助け出したいですっ!」

 

二人の目には意志が宿っていた。

少なくとも銀時にはそう映った。

 

「…そォかい。じゃ、オメェらの教師として1つ言っておくぞ」

 

『…っ!』

 

「『助けたい』じゃねェよ…『助ける』んだ」

 

『は、はいっ!』

 

(こんくらい言い切れるようになってもらわにゃ目を離せねェっての)

 

坂田先生は頼れるときはとことん頼れるのである。

 

「まぁ…オメェらは前だけ見てりゃいい。背中は俺が護ってやんよ」

 

『先生っ…!』

 

全員が銀時に尊敬の眼差しを向ける。

飯田にいたっては号泣している。

 

「んじゃぁ爆発物(爆豪)を回収しに行きますかァ!チーム銀さん出動!行くぜテメェらァ!」

 

「はいっ!」

 

「おっしゃぁ!」

 

「待ってろ爆豪」

 

「必ず助ける!」

 

「爆豪さん!必ず!」

 

皆が決意を胸に歩き出す!のだが…

 

「…あっ、先に行っててくんね?ちょっとトイレ」

 

全員がしっかりズッコケましたとも。

さっきのシリアスはなんだったのか…

さすが銀時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トイレに行くと言って離れた銀時は…

 

「これで心配無用だ。良かったな…蛙吹」

 

「ケロッ…気づいてたんですね」

 

近くで隠れて見ていた蛙吹の所に来ていた。

 

「まぁな。…オメェは行かねェのか」

 

「ええ。先生が行くって言っても反対なのは変わらないの」

 

「そォかい。んじゃ行くわ」

 

「ちゃんと…帰ってきてくださいね」

 

銀時は背中越しに手を上げて返す。

 

(護るさ…必ず。俺の『魂』に誓ってな)

 

爆豪救出作戦が始まる。

 

 

 

 

 




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第25話

爆豪救出作戦が決行された。

 

「いいですか?発信機の示した座標は神奈川県横浜市神野区」

 

「ぜんっぜん場所が分かんねェ」

 

そりゃ江戸には県とか無いもんな。

 

「まぁ発信機を辿りますので。2時間ほどで着くので10時頃の到着です」

 

「りょーかい。着いたら起こしてくれー」

 

そう言って銀時は本当に寝てしまった。

全く緊張感がない。

 

「すげ。マジで寝てる」

 

「よく寝れるな」

 

轟たちは若干呆れ気味だ。

2時間後、到着。

 

「ついた!神野区!」

 

「人多いな」

 

「ふぁ~。あー、眠っ。帰ろォかな…」

 

意志がどうこう言ってた奴が一番無気力なんだよな…。

そして、八百万の提案で変装することになり、某激安の何でも売っている所に入った。

 

「ぷっ…くくっ!オメェら笑わせんなよっ…ぷっ!」

 

『あんたにだけは言われたくないっ!』

 

皆それぞれちゃんと変装しているが銀時は…

 

「なに言ってんだ!これが俺の真の姿なんだぜっ!」

 

さらさらストレートヘアーのカツラをかぶってはしゃいでいた。

 

「ちゃんと変装してくださいよぉ!有名人なんすから!」

 

そう言って切島が銀時の頭に手を伸ばす。

 

「ちょっ!やめろやこらァ!俺からこの髪を奪うんじゃねェ!鬼!悪魔!それでもヒーローかァ!」

 

控えめに言ってちょーめんどくさい。

 

(もう、ほっとこう)

 

皆の意思は一致した。

その時…

 

「お?雄英じゃん!!」

 

どこかから声が聞こえた。

バレたかと思い振り返ろうとしたが

 

『では先程行われた雄英高校謝罪会見の一部をご覧下さい』

 

ビルについている大きなモニターに会見の様子が映し出された。

進んでいくに連れてモニターを見上げている人たちから野次が飛ぶ。

仕方がないことだが結果が全て。

守れなかったのは事実だ。

 

(消太たちに嫌なこと押し付けちまった。俺もやることなんねェと顔向けできねェな…)

 

「…オメェら行くぞ」

 

銀時は最後まで見ることなく出発を促す。

 

「せ、先生!」

 

「ちょっ!おい!行くぞ!」

 

銀時の顔は普段のおちゃらけた顔ではなく真剣な顔に変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして発信機が示す場所に到着した。

人通りが多い道を避け建物の間の細い道を通り窓から倉庫の中を覗くと脳無と思われるモノが液体に使って複数体あった。

 

「あ、あれは…!」

 

「脳無…!?」

 

その時…隣の建物が急に破壊された。

 

「ど…どうなってるんだ!?」

 

「いっててて…」

 

「っぶねェ。って…あん?他のヒーローも来てんのかよ」

 

「Mt.レディにギャングオルカ…ベストジーニストまで…!」

 

「虎さんもいますわ…!」

 

どうやら自分達が動く前にプロヒーローが突入したようである。

そして、細い道を戻っている時。

 

「とりあえず戻るっ!?伏せろォ!!!」

 

銀時は叫んだ。

次の瞬間…今まであったものが跡形もなく吹き飛んだ。

 

「せっかく弔が自身で考え、自身で導き始めたんだ。出来れば邪魔はよしてほしかったな」

 

そして一人の男が佇んでいた。

 

「さて…やるか」

 

この男こそオール・フォー・ワン。

周囲は絶望に満ちていた。

 

「アイツはやべェ…。オメェら無事か?」

 

『…っ』

 

轟たちは恐怖や何やらでまともに声すら出せないようだった。

 

(仕方がねェか…。コイツらには荷が重すぎらァ)

 

「八百万。刀を創造してくれ」

 

「っ!?」

 

八百万は銀時がしようとしていることを理解して涙目で首を横に振った。

 

「時間がねェ。早くしてくれ」

 

「い…っ!」

 

八百万は絶対に首を縦に振らないつもりであった。

だが…

 

「悪ィな八百万。オールマイトがいねェ今…奴の相手は俺しかできねェ。心配すんな、俺ァ死なねェよ」

 

銀時は静かに燃えていた。

これまでとは段違いの意志の強さ。

護るための剣を振るう侍となる。

 

「…。わ、分かり…ました」

 

銀時の尋常ならざる雰囲気に束縛のような状態から解放された轟たち。

八百万は刀を創造してくれ銀時に渡した。

 

「サンキューな。オメェらはここから動くな…って言いてェとこだが…チャンスがあったら取りに行け。条件は失敗しねェことだ」

 

『は、はいっ!』

 

「んじゃあ俺ァ行く。…死ぬんじゃねェぞ」

 

そう言って銀時は飛び出していった。

白夜叉が動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でオール・フォー・ワンはゆっくりとベストジーニストに歩み寄っていた。

 

「さすがNo.4!!ベストジーニスト!!僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだ!!」

 

「…っ!」

 

そして止めを刺そうとしたその時。

 

「やらせねェよ。化けモンが」

 

「む?君は…白夜叉か」

 

銀時が間に入った。

 

「よォ。ヒーローの登場だ。覚悟しやがれ」

 

「個性を持たない君には興味はあまり無いんだ」

 

「そォかよ」

 

銀時がにらみ合うなか、何もない空間から爆豪が現れた。

 

「ゲッホ!!くっせぇぇ…んっじゃこりゃあ!!」

 

「爆豪ッ!」

 

「あ!!?なんでテメェが…!」

 

「ここに呼んだのは間違いだったかな」

 

その後、敵連合の連中も姿を現した。

オール・フォー・ワンは死柄木に名にかを告げたあとこちらに向き直る。

 

「さぁ白夜叉。始めようか。君は僕に何を見せてくれるのかな」

 

「テメェに見せるモンなんてありゃあしねェよ。…俺がテメェを斬る。それで終ェだ」

 

銀時とオール・フォー・ワンの戦いが始まる。

 

 

 

 

 




オールマイトは原作よりも遅れています!

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第26話

銀時はオール・フォー・ワンと睨み合っている。

死柄木たちは黒霧の個性の強制発動でどこかに飛ばすようでこちらには参戦させないようだ。

 

(コイツは今まで戦ってきた奴らとは違ェ。明らかに異質…雰囲気がまるで別モンだ)

 

数々の強敵と戦ってきた銀時ですら驚くような相手が目の前に立っている。

 

「来ないのかい。ならこちらから行こうか」

 

そう言って手をかざし衝撃波の様なものを放ってくる。

 

「っ!?ぐおっ!やっ…ベェ!」

 

とっさに木刀と刀をクロスさせて受けたが簡単に後ろに吹き飛ばされた。

 

「ふむ。やはり放出系と増強系は相性がいいな」

 

「随分と余裕じゃねェか」

 

「っ!ぐっ…!」

 

さっきの攻撃で吹き飛ばされたと思っていた銀時がオール・フォー・ワンの後ろから現れ刀を振るった。

ギリギリの所で腕を硬化させて防いだようだが、明らかに驚いている様子だ。

 

「…何をしたんだ?」

 

「あん?特別なことなんざしてねェよ」

 

(正直ヤバかったぜ…。奴が全力だったら確実にダメージを受けてたな)

 

「そうか。まあいいよ」

 

次はさっきと比べ物にならない程の力を感じる。

 

「これで…終わるからね」

 

(周りの被害を考えると避けれねェ…か。仕方ねェ!)

 

その攻撃を銀時は正面から受けた。

 

「ぐっ!!!っおォォォォォォォッ!!!」

 

(こんなもんッ…鳳仙のジジィの攻撃に比べりゃあ屁でもねェェェェェ!!!)

 

そして…

 

「ッらァァァァア!!!」

 

正面から受けきった。

 

「…これは認識を改めざるを得ないな。驚いたよ」

 

「ハァッ…ハァッ…ハァッ!興味ねェんじゃ…ハァッ…なかったのかよ」

 

銀時は額の汗を拭いながら言う。

 

「思考とは常に変化するものだよ。こう言うこともあるさ」

 

「そォ…かよ。まぁいい…反撃開始だ」

 

(コイツと遠距離でやり合うのは圧倒的に不利だ。距離は開けねェ)

 

「フッ!オラァッ!」

 

「速いが…軽いね。っ!?」

 

銀時は素早く二刀を振り切りそのまま体を回転させて全力で打ち抜いた。

 

「甘ェよ!せェェェッラァッ!!!」

 

「ぐっ…!だが…っ!?」

 

これ以上やられまいと、オール・フォー・ワンが銀時に向かって個性を発動しようと手を上げようとした所で銀時は刀で腕を斬り落とし、地面に腕を縫い付けた。

 

「だからよォ!甘ェんだよ!」

 

「ぐおぉっ!こ…れはっ!?」

 

そして、木刀で目にも止まらぬ連打を浴びせる。

目まぐるしく動く超至近距離での戦闘では銀時が一枚上手のようだ。

 

「吹き飛びィ!!!やがれェッ!!!」

 

息が続く限りの攻撃を与え、最後の一振りで渾身の一撃を見舞った。

オール・フォー・ワンは近くの建物に激突し大きな砂煙を上げた。

 

「ハァッ…ハァッ。まぁ…だろォな」

 

「…さすがに驚いた。個性が無かったら立てなかったかもしれない」

 

砂煙が晴れるとそこには、オール・フォー・ワンが立っていた。

 

「趣味の悪ィマスクが取れてんぞ。大丈夫かよォ」

 

(つくづく個性ってモンはずりィな)

 

強がってはいるが今のが効かないとなるとほぼほぼ詰んだも同然だ。

 

(…こうなったら刀で頭を…)

 

銀時が思考を巡らせていると…

 

「ん?…やはり来ているか」

 

「オール・フォー・ワン!」

 

「オールマイト」

 

ものすごいスピードでオールマイトが突っ込んできた。

 

「坂田くん!無事か!?」

 

「無事じゃねェ。遅ェよ」

 

「す、すまない!それにしても…君は凄まじいな。一対一であれほどの手傷を負わせるとは…!」

 

「ギリギリだったけどな。…あとは任せていいんだよな、オールマイト」

 

「ああ!私が…やる!」

 

「なら頼んだぜ。俺ァあっちだ」

 

ここでオールマイトにバトンタッチ。

銀時は爆豪救出に戻るようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイトが参戦してくる少し前。

 

「すげぇ…!」

 

「次元が…違う」

 

銀時の戦いに目を奪われていると。

オールマイトが戦場に現れた衝撃で意識を戻した。

 

「っ!こんなことしてる場合じゃないっ!飯田くん!皆!」

 

「緑谷くん…!」

 

「決して戦闘行為にはならない!僕らもこの場から去れる!それに…オールマイトが来たってことは坂田先生が自由に動ける。と思う…から」

 

緑谷が作戦を説明した。

銀時の後押しもあって皆が緑谷の提案に乗ったようだ。

 

「皆…行こう!」

 

そして…

 

「来やがったな。俺も急ぐか」

 

銀時は飛んでいく緑谷たちを見上げながら呟き、走り出す。

緑谷たちは作戦を成功させ爆豪の手を掴んだ。

 

「やればできんじゃねェか!」

 

銀時は自分のやるべきことを実行するための目的地に到着した。

そこでは…

 

「逃がすな!遠距離ある奴は!?」

 

「荼毘に黒霧!両方ダウン!」

 

「あんたらくっついて!!」

 

爆豪を連れて飛んでいくのを見たコンプレス、スピナー、マグネは焦ったように言った。

そして、マグネの個性で何かをしようとしていたのだが。

 

「よォ。おっひさ~」

 

そこに似つかわしくない声が響く。

 

『し、白夜叉っ!?』

 

「楽しそうなことしてんじゃねェか!俺もォ…混ぜやがれェ!」

 

銀時は凶悪な笑みを浮かべ歩み寄る。

 

「ひっ…!」

 

「こ、来ないで!」

 

「くっ!」

 

スピナーとマグネは完全に怯えている。

そして、3人は一瞬にして意識を失い転がったのだった。

 

「先生!」

 

緑谷たちが振り返り叫ぶ。

銀時は手をあげて答えた。

 

(そォだ。オメェらは前だけ見てろ。少しでも早く前に進めばいい。その背中を護るのが俺の仕事だからよォ)

 

爆豪救出作戦は無事に成功。

あとは…

 

「あっちだな」

 

銀時の目線の先ではオールマイトとオール・フォー・ワンがやりあっていた。

最終局面へ。

 

 

 

 

 




銀時視点だから爆豪の出番無しっ!泣


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第27話

爆豪救出作戦を終えた銀時はオールマイトの元へ向かっていた。

死柄木たちはオール・フォー・ワンにより強制的にどこかに飛ばされてしまったようだ。

 

「よォ。爆発物は処理したぜ」

 

「助かった坂田君!」

 

「ん?おめぇはあん時の銀髪のにぃちゃんじゃねぇか」

 

「誰だじぃさん?」

 

「この方…グラントリノは私の先生だった方だよ」

 

「ほぉー。オールマイトのねェ。坂田銀時だよろしくなじぃさん」

 

「おぅよ。って自己紹介なんかしてる場合じゃねえか…」

 

挨拶もそこそこにオール・フォー・ワンに向き直る。

 

「また君か白夜叉」

 

「うちのアホの回収が思ったよりも早く終わったんでな」

 

「やはり君が噛んでいたか…。まぁ過ぎたことは仕方ない。仕切り直しと行こう」

 

「あぁ。最終ラウンドだ」

 

銀時がそう言った瞬間にオールマイトが突進していった。

 

「じぃさん!俺らはサポートだ!」

 

「分かっとる!」

 

銀時はオールマイトを追って走り出した。

二人は上手く間に入り込みオールマイトの負担を軽減させていた。

だが…

 

「ちとやべェな…」

 

「活動限界か…」

 

オールマイトから煙が立ち上り、体の半分が変身前の姿に戻ってしまっている。

そして、二人がオールマイトに気を取られているとオール・フォー・ワンが銀時に放ったものと同等かそれ以上の規模の攻撃を放ってきた。

 

「くるぞ!避けて反撃を…」

 

「避けて良いのか?」

 

そう言ったオール・フォー・ワンの視線の先には逃げ遅れた一般人が動けなくなっていた。

 

「っ!?くそっ!オールマイトォ!」

 

「オールマイト。ヒーローは守るものが多くて大変だね。さて…それじゃあまずは君が守ってきたものを奪う。無様な姿を晒せ」

 

攻撃を正面から受けたオールマイトは相殺したと共に変身前の姿に完全に戻ってしまっていた。

空にはヘリが飛んでいてこの戦闘の模様がテレビで中継されているようだ。

 

「奴の狙いはコレか…!」

 

「…」

 

(嫌な予感がしやがる…。折れてくれるなよ平和の象徴)

 

銀時は思考を巡らせる。

だが、さすがにこればかりはどうしようもない。

この時代の人間ではないのだから。

 

「この姿を晒そうとも私の心は依然平和の象徴!一欠片とて奪えるものじゃあない!」

 

銀時の思った通りオールマイトに灯る火は消えない。

 

「素晴らしい!なら…これも君の心には支障がないかな?」

 

続けてオール・フォー・ワンが芝居がかった様に言った。

 

「死柄木弔は…志村菜奈の孫だよ」

 

「っ!!?う、うそを…」

 

先程とは違い、それを聞いたオールマイトから火が消えようとしていた。

 

「分かってるはずだよ。僕のやりそうな事だ」

 

「…」

 

呆然と立ち尽くしているオールマイト。

だが、そこに歩み寄る者が一人。

 

「オールマイト。笑顔はどう…」

 

オール・フォー・ワンが決定打を与えようとしたその時。

 

「おい。歯ァ食いしばれ」

 

「…坂田くぐふっ!?」

 

銀時がオールマイトを殴り飛ばした。

これにはオール・フォー・ワンも仲間であるグラントリノまで唖然としている。

銀時は周りなど全く気にすることなく、オールマイトを見下ろして言った。

 

「何を勝手に絶望してやがんだ。ヒーローが自分の事情で足止めてんじゃねェぞ」

 

「…っ」

 

「俺にはオメェに何があったなんて分からねェし知りたくもねェ。だがよ…オメェを信じて待ってる奴らほったらかしにして何が平和の象徴だ」

 

「っ!」

 

「オメェはいつもみてぇに気持ち悪いくらい豪快に笑って、オメェを信じてる奴らを安心させてやりやがれってんだ!コノヤロー!」

 

「…まさか君に諭されるとはな」

 

銀時の言葉はオールマイトの体に一本の芯を打ち立てた。

少なくとも今の戦いで折れるような安っぽいモノではない。

 

「分かったならさっさと立ちやが…っ!?ぐぁっ!」

 

銀時がオールマイトに手を貸そうとしたその時、横から衝撃波が銀時を襲った。

 

「こんな気持ちは久しぶりだよ。白夜叉」

 

オール・フォー・ワンが吹き飛んだ銀時に向かって言う。

 

「君はここで消しておかないといけないようだ。弔の為にも」

 

「坂田君!!」

 

「待て!俊典!おめぇは備えとけ!」

 

オールマイトが飛び出そうとした所でグラントリノが止めた。

 

「そォ…だぜ。ゴフッ…オール…マイト」

 

銀時は何とか立ち上がったがモロに食らった為か口から大量の血を吐き出した。

 

「やはり君は危険だ。殺すつもりで打ったんだけどね。急所からずらしたのか」

 

「オメェに…1つ教えてやらァ」

 

銀時は口元の血を拭い、息を整えて言った。

 

「さっきオメェはヒーローは守るモンが多くて大変だって言ってたよなァ。確かにそォだ。けどなァ…オールマイトみてェな根っからのヒーローって奴は…守るモンが多けりゃ多いほど力を発揮する。そんな…最強のお人好しなんだよ」

 

「そうかい。君たちヒーローの精神論は聞き飽きたよ。…じゃあね白夜叉」

 

そう言う銀時に向かい手をかざすオール・フォー・ワン。

だが、銀時の目線は後ろに向いていた。

 

「つれねェ事言うなよ。なァ?オールマイト」

 

「ああ…!多いよ…!ヒーローは…守るものが多いんだよオール・フォー・ワン!!だから…負けないんだよ」

 

そこには、最後の力を振り絞り拳を握るオールマイトが立っていた。

片腕だけのマッスルフォーム。

だが、迫力が段違いだ。

 

「今度こそ本当にバトンタッチだ。坂田君」

 

「毎度毎度遅ェんだよ。平和の象徴さんよォ」

 

差し出された手を叩こうとした銀時はよろけてしまい倒れかけた。

 

「おっと。倒れたらカッコつかねぇぞ銀時」

 

だが、グラントリノが現れ銀時を支えた。

 

「悪ィなじぃさん。…おらよ。確かに渡したぜ」

 

銀時は今度こそオールマイトに手渡した。

 

「ありがとう。確かに受け取った」

 

熱気に当てられたかのように全てがオールマイトを後押しする。

駆けつけたプロヒーローたちも自分たちにできる事を片っ端から行っていた。

 

『みんなあなたの勝利を願っている!』

 

全ての声援、気持ちが力に変わっていく。

 

「煩わしい。もう終わりにしよう。確実に殺す為に、今の僕が掛け合わせられる最高・最適の個性たちで…君を殴る」

 

オール・フォー・ワンも全力を持って片をつけるつもりだ。

オールマイトは相手の攻撃を上手く相殺し、全力の一撃を叩き込む。

 

「おおおおお!!!」

 

そして…

 

「勝ちやがれェェェ!!!オールマイトォォォ!!!」

 

「UNITED STATES OF…SMASH!!!」

 

腕を思い切り振り切ってオールマイトは腕を高々とあげる。

オールマイトの勝利だ。

 

「ヒーローの…勝利だ」

 

銀時はその言葉を最後に気を失った。

 

 

 




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第28話

神野での戦いが終わり場所は病院。

気を失った銀時は目を覚ました。

 

「…ん、知らない天井だ」

 

お約束である。

 

「病院か…。あの後、気を失っちまったんだな」

 

銀時が神野での出来事を思い出しているときに、ドアがノックされた。

 

「坂田さん。入りますよ…あら?」

 

扉を開けて入ってきたナースが目を覚ましている銀時に気づいた。

 

「目を覚ましたんですね!先生を呼んできます!」

 

そう言って足早に出ていってしまった。

そして白衣を着た医者が入ってきて診察が始まった。

 

「初めまして坂田くん。結果だけ教えちゃうね」

 

「あ、ハイ」

 

「えーっと…あばら骨3本骨折に全身打撲。あと、肺も少しやられてるね。良く立ってられたよ」

 

診察結果を聞いた銀時は顔面蒼白になった。

 

「そ、そんな酷いの?…あれ…な、なんか急に痛みがァ。あたたたたァッ!」

 

「今日だけは我慢してね。明日になったらリカバリーガールが特別に来てくれるって言うからさ」

 

「あ、明日ァ!?死ぬゥ!死んじゃうゥ!へ、ヘルペス!ヘルペスミィィィ!!!」

 

「ヘルプミーね」

 

結局、銀時は叫んだことにより痛みで失神した。

こいつはアホだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

「チユー!ほれ!終わったよ!」

 

「サンキュー。バァさん」

 

「あんまり無茶するんじゃないよ!全く!」

 

「へいへい。分かってますよー」

 

銀時はリカバリーガールに治療してもらい、取り敢えずは回復したようだ。

リカバリーガールは小言を言いながら帰って行った。

 

「ふぁ~。…ちょっと寝るか」

 

とその時ドアが開いた。

 

「銀時。入るぞ」

 

「ん?おお、消太か」

 

入ってきたのはイレイザーだ。

イレイザーはベットの横にあるイスに座り話始めた。

 

「怪我の具合はどうだ」

 

「バァさんのお陰でなんとかな」

 

「そうか。…銀時、すまなかった」

 

そう言って頭を下げるイレイザー。

 

「は?ちょっ!おい!」

 

「お前一人に生徒の命を預けてしまった…!」

 

イレイザーは拳を強く握りしめながら精一杯の謝罪をした。

 

「…はぁ。なんだよ。そんなことかァ?焦って損したぜ」

 

だが、銀時はそれを軽く流す。

 

「そんなことでは…!」

 

「結果的にあいつらにゃ何もなかったんだ。気にすることねェよ」

 

「だが…」

 

「何もしないで後悔するなんてクソつまらねェ事はさせたくなかったからよォ。俺があいつらに教えられる事なんざ限られてるしな」

 

この厳しい社会を生き抜くために必要なことだと銀時は思っているのだ。

 

「銀時…」

 

「危険だったかも知んねェが…あれが最善だった。少なくとも俺ァそう思う」

 

「…ふっ。お前がそう言うんだったら…そうなのかもな」

 

イレイザーも銀時に毒されたものだ。

だが不思議と嫌な感じはしない。

これが坂田銀時の魅力なのかも知れない。

その後、何でもない話をしてイレイザーは帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに翌日。

 

「明日退院か~。まだ寝たりねェよ…」

 

いつもの様に一人で愚痴っていると。

 

「銀さ~ん!」

 

「げっ…流子」

 

「来ちゃった!」

 

ピクシーボブがお見舞いに来た。

例の通りベットの横にあるイスに座り話始める。

 

「テレビで見てたよ!カッコ良かった!」

 

「へいへい。どォも」

 

「それとね!あとは~!」

 

(コイツ…)

 

ピクシーボブはいつもの様に元気に振る舞っている。

だが銀時は気づいていたようだ。

 

「あとね!あの…「流子」」

 

そして遮るように銀時が名前を呼ぶ。

 

「な、なにっ?」

 

「別に無理するこたぁねェよ」

 

「む、無理…なんて…」

 

こう言っているピクシーボブだが徐々に涙が滲んでくる。

 

「うぅっ…ラグドールが…どうしたら良いのか分からなくって…!私…何にもできなかった…!」

 

「そォか。まぁ…全部吐き出しちまえ」

 

銀時の言葉を合図に自分の感情を吐き出したピクシーボブ。

それを銀時は最後まで真摯に聞いていたのだった。

女の涙には弱いのである。

 

 

 

 

 

「ぐすっ…銀さんありがとね…」

 

「大したことしてねェよ。ただ聞いてただけだしな。まぁ…1つ言える事はオメェらが今までやって来たことは無くならねェし、護って来たモンはちゃんとそこに残ってんだ。だからよ…ゆっくりやりゃあいい」

 

「銀さん…」

 

「相談くれェならいつでも聞いてやっからよ」

 

少し照れたように頭をかきながら銀時は言った。

ピクシーボブはこのぶっきらぼうな優しさにやられたのだ。

 

「っ///…っもう!好き!大好き!」

 

「へいへい。うるせェうるせェ」

 

「き、今日はもう帰る!」

 

「おー。じゃなー」

 

ピクシーボブは顔を真っ赤にしながら走って出ていってしまった。

 

「…騒がしくていけねェな」

 

やはり言葉とは裏腹に少し嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピクシーボブが帰った1時間後。

病室がざわざわしていた。

1Aの連中が来ているのだ。

 

「ホイ!あがり!」

 

「あっ!オイ!ウノって言ってなかったぞお前!」

 

「言いました~!」

 

他にも…

 

「うっわ!マジで!?」

 

「マジマジ!最近はコレらしいぞ!」

 

「俺も使おうかな…」

 

などなど。

そして…

 

「うるッせェェェェェ!!!病院では静かにしやがれェェェェェ!!!」

 

『いや、アンタが一番うるさいよ!』

 

「ってかなに?なんなの?邪魔しに来たの?帰ってくんない?」

 

「お見舞いです!」

 

「ウソです。死んでください」

 

こんなやり取りを何度か繰り返し帰って行った。

本当に邪魔しに来ただけみたいだ。

 

「なんだったんだアイツら…。ん?」

 

どっと疲れがたまった様子の銀時。

 

「よォ」

 

「ボンバーマンじゃねェか」

 

そんなとき爆豪が入ってきた。

 

「…」

 

なぜか悔しそうな顔でうつむく爆豪。

 

「なんだよ」

 

「…ちっ!クソがっ…!…お前に助けられた訳じゃねぇからなぁ!一人でも何とかしたわ!ボケェ!」

 

本当はお礼を言いにきた爆豪くん。

銀時の顔を見たら言えなくなりました。ハイ。

 

「えっ、なに?それを言いにわざわざ来たの?俺の事好きなの?キモいんだけど…」

 

めっちゃ引いてる銀時。

 

「っ!死ねやァ!」

 

爆豪は銀時が怪我をしているのを構わず襲いかかった。

 

「ちょっ!ま、待て!け、怪我人なんだけどォォォォォ!」

 

結局茶番だった。

感動なんてありませんよー!

 

 

 

 




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第29話

銀時は退院し、登校日の前日。

 

「急に引っ越しって言われてもなァ…」

 

「いいから早く行くぞ」

 

「わーってるよ」

 

銀時は荷物をまとめて新しく建てられた寮の前に来ていた。

 

「よし。集まってるな」

 

「あん?なんでコイツらいんの?」

 

そこには1Aの生徒が全員集まっていた。

皆は口々に許可がどうたらと話している。

 

「そう言えば銀時には言ってなかったな。…銀時とお前らには今日からこの寮で生活してもらう」

 

『はい!』

 

生徒は元気良く返事をしたが…

 

「…聞いてないんだけどォォォ!!?」

 

「そりゃな。言ってないからな」

 

「ってかなに!?ガキと同じとこに住めってか!?冗談キツイぜおい!」

 

「大マジだ」

 

「嫌だね!俺ァ前の寮に戻る…!?」

 

銀時が荷物を持って住んでいた寮に帰ろうと歩き出そうとした瞬間…大きな爆発が銀時の視線の先で起こった。

 

『解体作業完了!撤収だ!』

 

『イエッサー!』

 

簡単に言うと、寮が吹き飛びました。

 

「諦めついたか?」

 

「………はい」

 

肩を落とす銀時。

まぁ野宿よりかはマシだろうな。

銀時が諦めたあと、イレイザーが生徒に向かって話始めた。

 

「さて、真面目な話になるが…轟・緑谷・切島・飯田・八百万。この5人は爆豪救出に赴いた」

 

『…っ』

 

皆が息を飲む。

 

「その様子だと行く素振りは皆も把握していたワケだ」

 

「消太!それはっ…」

 

イレイザーは銀時を手で制して続ける。

 

「オールマイトの引退がなけりゃ俺は…爆豪・耳郎・葉隠以外全員除籍処分にしてる」

 

『っ!?』

 

「だが…俺も銀時に君たちの事を任せて向かわせた。分かってて止めなかったわけだ」

 

「消太…」

 

「まぁそう言うことだ。君たちには正規の手続きを踏み、正規の活躍をして…信頼を勝ち取ってくれるとありがたい」

 

『っ!はい!』

 

「以上!さっ!中に入るぞ元気に行こう」

 

そう言ってイレイザーは先に中にいってしまった。

 

「まぁよ…あんなだが消太だって心配してるって事だ。それだけは理解しとけよ」

 

『はいっ!』

 

「んじゃ行くぞ。ほれ、早くしろよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程の一件が終わり銀時は部屋で寛いでいた。

すると…

 

「先生ー!部屋見せてー!」

 

扉が急に開いた。

 

「ねぇ。許可してないんだけど…」

 

「うっわ!きたねぇ!」

 

「こんな短時間でどうやってこんな汚くなるんすか!?」

 

掃除係の新八がいないと部屋が常に汚くなってしまう。

ダメな大人の典型である。

 

「先生ー!あの糖分ってやつ何ですか?」

 

銀時の部屋にはよろず屋にも飾ってあった掛け軸がある。

これがないと落ち着かないらしい。

 

「俺の体の8割は糖分でできてるからな!って違ェよ!出て行きやがれ!」

 

勝手に入ってきて好き勝手言われて少し怒っている銀時。

 

「まーまー!そんなこと言わないで!」

 

銀時がぐちぐち言う中、芦戸がなだめてきた。

 

「…はぁ。で、なに?」

 

「今ね!部屋王決定戦してるの!」

 

「ふーん。そんで結果は?」

 

「んーとね…論外っ!」

 

「うん。帰って」

 

ゆっくりしていたのに邪魔されて散々である。

そして夜。

銀時は呼び出され外の広場に来ていた。

そこには爆豪救出に赴いた轟たちもいる。

集まったことを確認すると蛙吹が話をした。

 

「まぁそう言うこった。俺がいたからって言っちまえばそれまでだが…まぁ、俺がいなくても行ってたろ?」

 

『…っ』

 

「ヒーローを目指すんなら裏切るってのはご法度だからな。今回は少なくとも蛙吹の気持ちを裏切ったんだ。俺が言えた義理じゃねェが良く考えろよ」

 

『は、はいっ!』

 

銀時が話終えた所で蛙吹が銀時に歩み寄る。

 

「坂田先生。ありがとうございます」

 

「俺だってコイツらと同じだ。蛙吹の気持ちを分かってて連れてったんだ。悪かったな」

 

「ケロッ。あの時は私も先生を信じていたの。だから…ありがとうございます」

 

「…ふっ。そォかい」

 

こうして夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、登校日。

 

「昨日話した通り、まずは仮免取得が当面の目標だ」

 

『はい!』

 

「そこで今日から君らには一人最低でも二つ…」

 

「必殺技を作ってもらいまーす」

 

『学校っぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァア!!!』

 

仮免試験に向けての必殺技を作るために体育館に移動した。

必殺技を作るのはセメントス・エクトプラズム・ミッドナイトが指導するようである。

ある程度の説明が終わり、皆が思い思いに動き出す。

 

「必殺技ねェ。俺も個性があればなァ…」

 

銀時は生徒たちを見ながらつぶやく。

 

「お前も作ればいいだろ」

 

「でもよォ。俺にできっかねェ」

 

「なにがだ」

 

「手からビーム出したりさァ…」

 

かめ○め波!的なね?

 

「ああ」

 

「刀振って衝撃波飛ばしたり…」

 

月○天衝!的な?

 

「ああ」

 

「回りからは見えない幽霊が代わりに殴ってくれたりとかさァ…」

 

スター○ラチナ!的な感じ?

 

「銀時」

 

銀時の妄言を最後まで聞くことなくイレイザーは銀時を呼ぶ。

 

「ん?」

 

「諦めろ」

 

「うん…知ってた」

 

銀時の目から一筋の水がこぼれた。

やはりこの男には必殺技は向いていないようだ。

 

 

 

 




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第30話

仮免試験が迫る中、体育館にて必殺技を作るために生徒たちは奔走している。

 

「皆頑張っちゃって。青春だねェ」

 

「おっさん臭いぞ銀時」

 

銀時とイレイザーは生徒たちを眺めながら話していた。

そんな時…

 

「オイ」

 

「あん?どしたァボンバーマン」

 

爆豪が歩み寄ってきた。

 

「…ちょっと付き合えや」

 

「え、嫌だけど…」

 

「なっ…!テメッ!」

 

「いやさァ。頼みかたってモンがあるだろォ?」

 

銀時はいやらしい笑みを浮かべながら言った。

 

「…ちっ!………ちょっと練習に付き合ってくれ」

 

「あぁん?それが人にものを頼む態度ですかァ?」

 

納得できなかったのかもう一度要求する銀時。

 

「…くそがッ!…ち、ちょっと練習に付き合ってく、くだ…さい」

 

爆豪は額に青筋をたてながらも言い切った。

だが…

 

「ふむふむ………却下でぇーす!笑」

 

銀時は満面の笑みを浮かべながら言った。

マジで子供です。

このダメ人間は。

結局このあと、いつもの様に小競り合いが発生しイレイザーに止められた。

 

「んで何だよ」

 

「必殺技はもぉいいからよォ…俺と戦いやがれぇ!」

 

結局は付き合う事になった銀時。

爆豪は銀時との組み手をご所望だった。

 

「めんどくさっ!俺にメリットがねェじゃん」

 

「…学食の日替わりデザート1週間」

 

「乗ったァァァ!!!」

 

なんだかんだ銀時の扱い方を分かっている爆豪。

それにしてもチョロい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時と爆豪の組み手が始まって10分がたった。

 

「もらっ「甘ェ」!?ぐぁっ!」

 

10分がたったが爆豪は1度も銀時に攻撃を当てられていなかった。

もう何度目か分からないほど吹っ飛ばされ、爆豪はボロボロだ。

 

「何度も言うが、動きが分かりやすいんだよ。同年代相手にゃ通じるだろうが格上相手にそれじゃ無理だぜ」

 

「そォ…かよッ!まだまだぁ!!」

 

「仕方ねェ!オメェが諦めるまで付き合ってやんよォ!」

 

そして、あと5分で今日の特訓は終了となる頃。

 

「何度も同じ…ッ!?」

 

「っ!この感覚ッ!おらァ!」

 

「うおっ!?」

 

(こんな短時間で成長しやがるとはなァ。マジもんの天才かよ…ゴリラん所の総一郎君並だぜこりゃ)

 

「いっつぅ…やるじゃねェかよ爆豪」

 

「っハァ!ちらっと見えた…いや感じたぜェ!あんたらの世界をよォ!!!」

 

感覚に体が追い付くような不思議な体験。

これこそが銀時が戦闘中に無意識にやってのける野生の勘のようなものだ。

その片鱗を爆豪が見せた。

爆豪の場合、これに意図的な加速や小回りが加わる。

そうなったことを考えると近接では手に追えなくなることは明らかだ。

 

「末恐ろしいぜ。ホントによォ」

 

そして、本日は終了。

 

「だぁー!あん時だけかよ!クソッ!」

 

「はぁー。疲れた…」

 

(そんな簡単にやられても困るっての)

 

「ふぁ~。早く帰って寝よ」

 

「…ありがとよ」

 

「んー何か言ったか?」

 

「な、何でもねェ!」

 

さりげなくツンデレ爆豪。

銀時には届きませんでした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

今日も同じく体育館。

銀時はいつもの様に眺めていると…

 

「先生!」

 

「おー緑谷か。どしたァ?」

 

「少しアドバイスを貰いたくて…」

 

「そォか…まぁ話してみろ」

 

「はい!あの…」

 

こうして緑谷から話を聞いた銀時。

簡単に纏めると腕が壊れないためにはどうしたらいいかと言うことらしい。

そっちをかばうことを考えて必殺技の方も全く進んでないみたいだ。

 

「なーんかオメェは色々考えてっけど頭固ェのな」

 

銀時はすでに答えが分かっている様子だ。

 

「え、えーっと…」

 

「俺が口で言っても意味ねェからな…おっ!良いこと思い付いたぜ」

 

「な、なんですか!?」

 

「まぁ待ってろ。おーい瀬呂ー!」

 

何かを思い付いた銀時は瀬呂を呼んだ。

 

「坂田先生どうしたんすか?」

 

「ちょっとテープでコイツの腕を纏めて上半身をぐるぐる巻きにしてくれ」

 

「了解しました!」

 

「えっ!?ちょっ!」

 

そして、瀬呂の個性で緑谷の両手を使えなくした。

 

「よーし。準備完了だ」

 

「な、何をするんですか!?」

 

緑谷は少し怯えた様子でいる。

 

「今から俺がそこそこ大きい石をそこそこの力で投げる。それをどうにかしろ」

 

「ど、どうにかしろって…」

 

めちゃくちゃ説明が大雑把な銀時。

とにかく特訓開始だ。

 

「んじゃ行くぞー」

 

そして、その辺に転がっている手頃?な石を拾って構えた。

 

「せ、先生!そこそこの大きさじゃないの!?そんなの当たったら死にますって!僕の顔くらい大きいじゃないですかっ!」

 

緑谷は必死に抗議するが銀時は聞く耳を持たない。

そして…

 

「はい、いーちっ!」

 

「へっ…?」

 

銀時が投げた石…と言うか岩はものすごいスピードで飛んでいき緑谷の顔面すれすれを通った。

 

「はい、にーいっ!」

 

唖然としている緑谷を他所に銀時は二つ目を投げた。

 

「死っ!ぬっ!」

 

辛うじて避けたが…

 

「はい、さーんっ!」

 

地獄のような特訓が始まった。

そして、20球を越えた頃。

 

「はぁっ…はぁっ…!な、何も考え…られないっ!」

 

「よーし。次行くぞー」

 

(そろそろか)

 

「はい、にじゅういちっ!?やべェ!ミスった!」

 

銀時が投げた岩はすっぽぬけ、授業を見に来ていたオールマイトの方へ飛んでいく。

 

「っ!?危なっ!僕が!…はぁーあ!!!」

 

その岩を緑谷は足で破壊した。

 

「オールマイト!大丈夫ですか!?」

 

「ああ。坂田君め…私をダシに使ったな」

 

一応、銀時は手を合わせて謝っているようだ。

 

「えっ?」

 

「気づかないのかい?それだよ」

 

オールマイトは緑谷の足を指差した。

 

「はっ!そうかっ!足か!」

 

「やっとかよォ。…それが正解だ」

 

緑谷も少し何かを掴んだようだ。

やり方は過激だが見事なお手並みでした。

 

 

 

 

 




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第31話

訓練の日々は流れ、ヒーロー仮免許取得試験当日。

 

「緊張してきたァ」

 

「試験て何やるんだろう…。ハー、仮免取れっかなァ」

 

生徒たちは緊張で弱音を吐いたりしている。

 

「取れるかじゃない取ってこい」

 

「あんだけ付き合ってやったんだァ…取れなかったじゃ済まさねェぞ」

 

銀時とイレイザーはプレッシャーを掛けていくスタイルだ。

 

「この試験に合格して仮免許を取れれば晴れてヒヨッ子だ。頑張ってこい」

 

『っしゃあ!なってやろうぜ!ヒヨッ子によォ!!』

 

そして切島の合図で気合いを入れ直そうとしていた。

だが…

 

「いつもの一発決めて行こーぜ!!せーのっPlus…」

 

後ろの方から誰かが割り込んできた。

しかも特大の音量で。

 

「Ultra!!」

 

「勝手に他所様の円陣へ加わるのは良くないよ、イナサ」

 

「ああ!しまった!!どうも大変!失礼!致しましたァ!!!」

 

急に入って来たかと思うと、今度は地面に頭を叩きつけながら謝罪した。

 

「土下座とは違ェ新たな謝罪スタイルとは…なかなかやりおるわこの小僧」

 

「お前は何言ってんだ」

 

皆は驚いているが、銀時はなぜか感心していた。

イレイザーのツッコミが冴え渡るぜ!

そんな時…

 

「ああー!!あなたは!!」

 

その混ざってきた男は銀時の方に勢い良く寄ってきた。

 

「なんだよ、ザ・変人君」

 

感心していた割にはひどいや呼び方である。

 

「白夜叉さんですよね!ファンっス!!ヒーロー殺しの時の言葉!感動したっス!」

 

「へー。そォなんだ」

 

めちゃくちゃ他人事のような銀時。

 

「自分!夜嵐イナサって言います!よろしくお願いしまっす!!」

 

「おー。よろしく、山嵐君」

 

「夜嵐っス!」

 

なんか変な化学反応が起こりそうな二人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜嵐たち、士傑高校の生徒たちが去った後。

 

「なんか色々とヤバいヤローだったな」

 

「銀時…お前覚えてないのか?」

 

「相澤先生知ってる人ですか?」

 

イレイザーの呟きを聞いていた葉隠が問いかけた。

 

「ああ。ありゃあ…強いぞ。昨年度の推薦入試、トップだったにも拘わらず…なぜか入学を辞退した男だ」

 

「…ん?あー、思い出したわ。そぉいやいたなァ…うるせェ奴」

 

皆が推薦を蹴った事を驚いている。

 

「変だが本物だ。マークしとけ」

 

イレイザーが釘を指した所でまた誰かがやって来た。

 

「イレイザー!?イレイザーじゃないか!!」

 

イレイザーは振り返って相手の顔を見た瞬間に見たこともないくらい嫌そうな顔をしている。

 

「テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは久し振りだな!!よし、結婚しようぜ」

 

「しない」

 

「しないのかよ!!ウケる!」

 

やって来たのはMs.ジョークだった。

挨拶代わりのジョークを飛ばしている。

そこに銀時がニヤニヤしながらやって来た。

 

「あんれー?消太も隅に置けませんなァ~!ヒューヒュー!」

 

「ほら!祝福されてるよ!結婚しよう!」

 

「そーだそーだ!照れてねェで結婚しちまえー!」

 

初対面で息ピッタリの2人。

 

「だからしない」

 

「ブホッ!やっぱりしないんかい!ウケる!」

 

「おいおい!ひでェじゃねーの!男見せろよォ~!」

 

「ウザさ倍増…」

 

イレイザーからしたら最悪のコンビのようだ。

 

「アッハッハ!面白かった~!白夜叉だよね!コンビ結成しよう!お笑いの頂を目指そう!」

 

「ほほう!なかなか見る目があるじゃあねェか!だがここだけの話…ツッコミをさせたら右に出るものがいねェ地味メガネを知ってるんだが…トリオでどォだ?」

 

2人とも楽しそうに話している。

銀時の提案にジョークは…

 

「ふむふむ!なかなかどうして悪くない!じゃ、けってーい!」

 

即決だった。

 

「まぁ…組まないけどね」

 

だが、さっきまでのが嘘のように真顔になる銀時。

 

「結局組まんのかいっ!!もうええわ!」

 

「「どうもありがとうございました~!」」

 

うん。漫才でしたね。

本当にコンビ組んだらどうだろうか?

初対面、初会話で漫才完成しちゃってるよ…。

 

「…はぁ。過労で倒れるかもな…はぁ」

 

と、とにかくイレイザー頑張ってぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イレイザーの災難が決定事項となった後。

 

「いやー!楽しかった!改めてよろしくな!白夜叉!」

 

「おう。よろしく」

 

「で、結局何しに来たんだよ」

 

「あー!そうそう!皆おいで!雄英だよ!」

 

ジョークが呼ぶと、学生がこちらに歩いてきた。

 

「おお!本物じゃないか!!」

 

「すごいよすごいよ!TVで見た人ばっかり!」

 

「傑物学園高校2年2組!私の受け持ち。よろしくな」

 

紹介の後は生徒同士で交流しているようだ。

イレイザーは時間が迫っているのを確認すると声をかけた。

 

「おい。コスチュームに着替えてから説明会だぞ。時間を無駄にするな」

 

『はい!!』

 

そして、生徒たちは着替えに行った。

だが去り際の生徒の会話を聞いていたジョークがイレイザーに質問をした。

 

「…?ひょっとして…言ってないの?イレイザー」

 

「ああ。結局やることは変わらないからな」

 

「あん?何のことだ?」

 

「白夜叉も知らないの!?毎年恒例の…"雄英潰し"のこと」

 

「ほーぅ。なかなか面白そうなイベントじゃねェの」

 

「イベントって!」

 

ジョークは銀時の反応に少し驚いていた。

 

「そんなモン鼻くそほじりながら楽々越えて貰わにゃ困るぜ。…なァ消太」

 

「ああ。もちろんだ」

 

雄英高校の教師として考えることは同じだ。

そんなことで躓いていたら置いていかれるだけ、嫌なら這いずってでも登ってこい。

これが1年A組のスタイルなのである。

 

 

 

 




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第32話

仮免試験が開始される。

銀時たち教師陣は観客席に移っていた。

 

「イレイザーが一人も除籍にしてないなんて珍しいじゃん!なに?気に入ってんの?」

 

ジョークが気になっているのか、先程の話を掘り返してきた。

 

「別に」

 

「なかなかにしぶてェ奴らだってことは確かだな」

 

「ふーん。気に入ってるなら尚更言ってあげれば良かったのに」

 

「…理不尽を覆していくのがヒーロー。悪いがウチは他より少し先を見据えてる」

 

「まぁ雄英潰しなんてちゃちなモンでやられんなら…すでに消太が除籍にしてんだろォよ」

 

「ほーん。そうなんだ」

 

そんなことを話していると、会場全体に仮免試験の概要が流れる。

 

「第一次選考だァ?しかも玉遊びかよ」

 

銀時は試験の概要を聞いて呆れている。

 

「そう言えば銀時は仮免試験受けてないのか」

 

「まーな」

 

そうなのだ。

銀時は雄英の手回しで飛び級でプロになった。

 

「はぁ!?白夜叉はプロヒーローじゃないの!?」

 

「銀時はプロだ」

 

「うーん?なんか頭がこんがらがってきた!?」

 

「俺も仕組みは分からねェんだが…気づいたらプロだったんだよなァ」

 

銀時自身もどう言った手回しをしたのかは知らない。

 

「それにしても…実質チーム戦みたいなモンか」

 

「先着ってことで攻めたもん勝ちな印象を受けるけど、これ違うね…違くない?」

 

「団結と連携。そして、情報力が鍵になりそうだな」

 

仮免試験第一次選考。

先着100名が合格だ。

銀時たちが話していると、会場で大きな動きが見られそうだ。

 

「ん?アイツは…」

 

「夜嵐か」

 

銀時の視線の先には、個性で数えきれないほどのボールを巻き上げている夜嵐がいた。

 

「あれよォ…下にいる奴ら大丈夫か?」

 

「ウチの連中はいないみたいだし、俺は知らん」

 

「アッハッハ!イレイザーひどっ!」

 

自分達の生徒がいたら気が気でないだろうがジョークも含め、呑気な物だ。

そして夜嵐が巻き上げたボールを一斉に下にいる生徒たちに向かって投げ飛ばした。

その瞬間、会場の全体に風が吹き抜けた。

 

「うおっ!?」

 

「…さすがにやりすぎだな」

 

結局、今の攻撃で120人を一斉にリタイアさせて夜嵐が1抜けした。

 

「轟とかボンバーマンも大概だが…アイツも相当だな」

 

「ああ。個性の強さだけなら轟や爆豪以上だろうな…今はな」

 

「ホントにあんた達自分の所の生徒好きだねぇ!」

 

「「好きじゃねぇ」」

 

「ブハッ!息ピッタリかよ!」

 

夜嵐の通過を気にフィールドではどんどん動きを見せている。

そして、通過者が半数の50を越えた頃。

 

「轟のヤツは通過したな。それにしても、随分時間が掛かったじゃねェの」

 

「左右の出力調整にてこずってるみたいだな」

 

「そんなに難しいモンなのかねェ。…ん?」

 

「あっちは…爆豪たちか」

 

銀時とイレイザーは爆豪たちの方に目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆豪と上鳴は士傑高校の肉倉と対峙していた。

 

「緑谷たちの方行っときゃ良かった!!」

 

「じゃァ行けやカス」

 

「行けるワケねーだろ!だって切島が…あんなんなっちゃったんだぞ!!?」

 

爆豪たちと一緒に行動していた切島は肉倉の個性で肉の塊の様にされていた。

 

「これは示威である。就学時より責務と矜恃を涵養する我々と、粗野で徒者のまま英雄を志す諸君との水準差」

 

「嫌いなタイプだ…責務?矜恃ィ?ペラペラペラペラと…口じゃなくって行動で示して下さいヨ先パイ!」

 

肉倉は爆豪の物言いに怒り、個性を発動する。

それを爆豪は正面から新技で蹴散らした。

 

「新技の乱れ撃ち…名付けて徹甲弾・機関銃!!」

 

「ちっ…!」

 

「散ったキモイのが…戻ってく!?」

 

肉倉は落ち着かせる様に一度深呼吸をして再度個性を発動した。

 

「私が手折り気付かせよう。帰属する場に相応しい挙止。それが品位であると」

 

「何なんだこの人は!!」

 

「うるせえ奴だ。ブッ殺す」

 

爆豪は突っ込んでいき、上鳴は何かを肉倉に向かって投げた。

 

「飛び道具か…目障りだ。先に丸めてやろうか」

 

肉倉が上鳴を警戒しながら呟くと、爆豪がやって来る。

 

「俺を!無視すんな!」

 

そして爆豪は肉倉に向かって攻撃を放つ。

 

「してないが?」

 

だが、分かっていたかの様に防がれてしまう。

さらに肉倉は爆豪に気づかれない様に爆豪の背後に切れ端を飛ばしていたようだ。

だが…

 

「ッハァ!見えてんぜェ!先パイよォ!」

 

(認めたくねぇが…くそ天パとの組み手がなかったら避けられなかったなァ!)

 

個性の微調整で体制を立て直し、ものすごい速度で肉倉の背後に回り拳を叩き込んだ。

 

「なっ!?ぐぅっ!」

 

「すげーぜ!爆豪!」

 

「…実力はあるようだな」

 

肉倉はダメージは無いようですぐに立ち上がった。

 

「オイ!アホ面!次で決めんぞ!」

 

「あ、ああ!って俺は何すればいいの!?」

 

「いいから合わせろや!いいなァ!?」

 

「ちょっ!まっ!」

 

爆豪は上鳴の制止を聞かずに突っ込んで行った。

 

「同じ手は食わんぞ」

 

「あぁそォかよ!そろそろ…0だァ!」

 

「っ!?ぐおぉっ!?な、なんだ!」

 

肉倉が爆豪から距離をとるために後ろに飛んだ。

その瞬間、肉倉の背中で小規模の爆発が起こった。

 

「もう1つの新技…接着弾だァ!!」

 

「あ、あの時かっ!」

 

そして、その爆発によってバランスを崩した肉倉は上鳴の新技の射程内に丁度入ってきた。

 

「アホ面ァ!撃てや!」

 

「ひゅー!良い位置来たぜ!」

 

「む!?…ぐあ!!?」

 

上鳴の指先から放たれた電撃をモロに食らった肉倉。

痺れで個性の調節が緩み切島が元に戻ってゆく。

 

「ざまぁないっスね先輩。散々言ってくれちゃって」

 

「っ!立場を自覚しろという話だ馬鹿者が!!!」

 

上鳴の言葉に冷静さを失った肉倉は緩んだ個性の事をほったらかしにして叫んだ。

そして…

 

「最後くらい役に立ちやがれェ!!クソ髪ィ!!」

 

「っらァ!!!」

 

元に戻った切島の全力の腹パンで肉倉は沈んだ。

その後、肉倉の個性で丸められて転がっていた他校の生徒達をリタイアさせて爆豪たちは通過した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻って観客席。

 

「ボンバーマン達も通過しやがったか」

 

「銀時。あの体にくっ付ける爆弾はお前の入れ知恵か?」

 

「ん?…なんのことやら」

 

接着弾は訓練の時に銀時が爆豪の攻撃を避けながら懐に小さいジャスタウェイをバレないように入れて爆発させる、と言う嫌がらせから爆豪がヒントを得て編み出した技なのである。

銀時がそれを誘導したのかは銀時にしか分からないが…。

 

 

 




接着弾はタッチ・ボムと読みます!
ネーミングセンスは見逃して下さい…!
触れた部分に爆弾を仕掛けて爆発させる技です!
威力はあまり強くはないですが、意識外からの攻撃なので結構効きます!
爆発する条件は、
・仕掛けてから15秒がたった時
・爆豪が腕に装着しているグレネードに付いているボタンを押す
です!

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第33話

爆豪たちの戦闘を遠目に眺めていた銀時たちだが、その後はフィールドが入り乱れ確認することは出来ずに第一次選考が終わった。

 

「アイツら…」

 

「まぁ全員通ったみてェだしいいじゃねェか」

 

終了間近の解説で雄英勢がギリギリ通過したのを知ってイレイザーは若干イライラしている。

 

「やっぱ雄英はすごいねー!全員でしょ?」

 

そんなイレイザーを気にすることなく笑いながら話しかけてくるジョーク。

 

「いや、あんなんで満足してもらっちゃ困る」

 

「ま、そォだな。回りの奴らと同じじゃあな」

 

「かーっ!二人揃って厳しいことで!」

 

「普通だ」

 

そんな話をしていると最終選考が始まった。

 

「次は…救助か」

 

「うェー。仮免受けなくて良かったぜ…」

 

「なんでなんで?」

 

「だってよォ…人を助ける『練習』だろ?それで本気になれねェって」

 

「銀時らしいな」

 

「アッハッハ!練習ね!確かにそうだ!」

 

プロが何を言ってるんだって感じだが、全くもって銀時らしい。

 

「だが…銀時は基本グータラしてるちゃらんぽらんだからな」

 

「だァれがちゃらんぽらんだ!こらァ!超省エネ人間なだけだ!地球に優しい男なんだよ俺ァ!」

 

「なに言ってんだアホ」

 

「ブフォッ!ち、地球に優しい男って!くくっ…ぷっ!」

 

自称、省エネ人間の銀時の戯言をイレイザーがいなし、ジョークが爆笑している。

大分、カオスな状況だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場の方では試験が開始され、それを眺めている銀時たち。

 

「なーんかイマイチつまらねェな」

 

「救助だから仕方ないだろ」

 

そんな時…

 

「おー。またアイツか。大胆だねェ」

 

夜嵐が個性でいっぺんに救出していた。

 

「派手な個性の割りに、ある程度調整ができてるな」

 

この様に感想を言いながら見ていると敵役としてギャングオルカが会場に現れた。

 

「敵役ねェ…。俺もいっていい?」

 

「頼むからやめてくれ。確実に爆豪がリタイアする」

 

「そんなこと…するわ。むしろ、そのためだけに行きてェ」

 

銀時が敵役でいたら、爆豪がリタイアする未来しか見えないイレイザー。

銀時なら本当にやりかねないからたちが悪い。

 

「絶対やるなよ」

 

「………分かってるっての」

 

「その間はなんだ。…まじでやめろよ」

 

結局、試験が終わるまでイレイザーが銀時を見張っていたのは言うまでもない。

そして試験が終わり、合格者の発表後、銀時とイレイザーの前に1Aの生徒たちが集まっていた。

 

「まずは…おつかれ」

 

「おー。お疲れさん」

 

生徒たちは緊張が抜けたのかリラックスしているように見える。

数人を除いて。

 

「まぁ、こんな試験くらい余裕で合格してくれたと思うから…ん?どォかしたか?」

 

ちなみに銀時は結果を知っている。

銀時がそう言うとみんな一斉に爆豪と轟の方を見た。

 

「あっ…ごめん…。落ちてるだなんで思わなくて…」

 

銀時はわざとらしく言った。

 

「…ちっ。くそがッ!」

 

「…」

 

爆豪は自分が悪いのを分かっているのか言い返してこない。

轟は銀時に言われてガチで落ち込んでいる様子だ。

そして、銀時は轟の方に歩み寄った。

 

「轟。なんで落ちたか理解してッか?」

 

「…先生。士傑の奴から親父の名前が出てきたときに感情的になってしまって…」

 

「そォか。…それはオメェ次第だかんな。早く決着つけろよ」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

師匠と弟子って感じで微笑ましい光景だ。

続いて爆豪。

 

「爆豪」

 

「…ちっ。なんだよ」

 

銀時は真面目な様子で爆豪に歩み寄り肩に手を置いた。

爆豪も真面目な空気を感じ取ったのか聞く姿勢を見せている。

なんだかんだ師弟関係と言えるのではないだろうか。

そして…

 

「…ざまぁ!」

 

全力で煽りに行った。

 

「テ、テメェ…!」

 

「日頃の行いだよォ?爆豪く~ん?」

 

「テメェだけには言われたくねェわ!くそがァッ!」

 

やっぱりこの二人はこの関係から変わることはないのかも知れない。

 

「図星だからってそんなに怒んなよォ!オメェは…ってェ!?」

 

「おい。お前は仮免試験すら受けてないだろうが。その辺にしとけ」

 

銀時がトドメを差しに行こうとした時にイレイザーが止めに入ってきた。

 

「あっ!ちょっ!言うなって!」

 

「あぁん?受けてねェのかよ。…それであんなこと良く言えたもんだ」

 

「んだとォ!?俺だったら余裕で受かるっての!オメェみてーな無様はさらしません~!」

 

「ハッ!言い訳かよ…ダッセェ」

 

「あぁん!?受かってから言いやがれガキんちょ!」

 

二人の言い合いがエスカレートしてきたところでイレイザーが間にはいってきた。

 

「おい。お前ら静かにしろ。…まぁなんにせよ、轟と爆豪は反省しろよ」

 

「はい」

 

「…うす」

 

こうして仮免試験は幕を閉じた。

轟と爆豪は後日、別で再試験を受けることになっているようだ。

 

 

 

 

 




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第34話

仮免試験が終わり、夏休み最終日の夜。

銀時は仕事を…

 

「Zzz…」

 

仕事を…

 

「Zzz…Zzz…」

 

サボって寝ていた。

すると急に部屋に設置されている内線電話から監視ロボットの通信が入った。

 

『オイ白夜叉!』

 

「Zzz…んぁ?」

 

目を覚ました銀時。

 

『オタクノ生徒ガ…』

 

「Zzz…」

 

だが、またすぐに寝てしまう。

 

『…オイ!白夜叉!』

 

『…むにゃむにゃ…Zzz…』

 

音声のボリュームをあげる監視ロボットだが銀時は起きない。

 

『オイ!!!白夜s』

 

「うるっせェェェ!!!まだ夜中でしょうがァァァ!!!」

 

仕方がないとボリュームを最大にして流した瞬間に銀時が急に起き上がり、木刀を内線電話に向かってぶん投げた。

 

『…』

 

「よし…おやすみ…Zzz…Zzz…」

 

やっと静かになり、改めて布団をかぶり寝始める銀時。

そんな時部屋の扉が急に開いた。

 

「銀時。仕事中にすまない。一緒に来て…オイ」

 

「Zzz…Zzz…」

 

イレイザーは寝ている銀時に気づき声をかけるが起きない。

ふと視線に壊れた内線電話が目に入った。

 

「…コイツ。…オイ。起きろ…オイ」

 

「Zzz…んん…ちっ、しつけェな…まだ夜だ…ろ…」

 

近づいて声をかけ、起きないので体を揺さぶる。

すると、不機嫌そうに起き上がり声のする方を向きながら悪態をつく銀時。

その目の前にはイレイザーだ。

 

「こ、こんばんわ…」

 

「おはよう。内線電話の修理代は給料から抜くように校長に言っとくからな」

 

「…ハイ」

 

言い返すことができずに肩を落とす銀時。

そんな銀時をよそにイレイザーは本題に入る。

 

「まぁいい。取り敢えず一緒に来てくれ」

 

「ん?こんな時間にどっか行くのか?」

 

「ああ。うちの生徒がグラウンドβにいるらしい」

 

「はァ?誰よ」

 

「緑谷と…爆豪だ」

 

「…わーったよ。行くわ」

 

グラウンドβにいるらしい生徒の名前を聞いた銀時は一瞬思案顔になり、結局行くことに決めた。

イレイザーと一緒に寮を出て向かおうとすると、そこには…

 

「相澤くん。坂田くん」

 

「あん?なんでアンタがここにいんだよ」

 

「オールマイト。…また緑谷と爆豪ですよ。演習場で揉めていると…」

 

オールマイトがいた。

そして、二人のことを任せてほしいと言ってきたのだ。

 

「ああ。まさにその事だが…私に任せてくれないか…?」

 

「マジ?んじゃお願いしやーす」

 

「銀時…はぁ…分かりました」

 

銀時がそれを適当に頼んだことによって、イレイザーも仕方なくオールマイトに頼むことになった。

 

「恩に着るよ。それじゃ」

 

そして、オールマイトは歩いて演習場に向かっていったのだった。

オールマイトが去った後。

 

「…銀時。良かったのか?」

 

「いいんだよ。腐ってもNo.1…あの人の言葉が一番響くだろォよ」

 

「そうか…」

 

イレイザーの心配をよそに銀時は何ともないように言ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイトが緑谷達の所に行ってから数分がたった頃、2人を連れて戻ってきた。

そして、今は治療室で説教タイムだ。

 

「試験終えたその晩にケンカとは元気があって大変よろしい」

 

言葉とは裏腹にめっちゃ怒っているイレイザー。

2人を捕縛布で締め付けている。

 

「随分派手にやったみてェだなァ…アホ2人!www」

 

銀時はと言うと、ニヤニヤしながら2人の頭を交互に木刀でコツコツ叩いていた。

この男だけは今の状況を楽しんでいる。

 

「いッ!オイ!てめェ!やめろやッ!」

 

「いたっ!?ちょっ!先生!?」

 

地味に痛いし、うざいしで、たまらず抗議の声を飛ばす2人。

それを聞いた銀時はさらに調子に乗る。

 

「あァん!?反省が足りないんじゃないのォ?ちょっとボス!こいつらどォします?殺っちまいますか?」

 

「誰がボスだ。ってかふざけすぎだアホ」

 

どこぞのチンピラみたいなことを言っている銀時を黙らせて説教を続けているとオールマイトが割り込んできた。

 

「相澤くん待って!原因は私にあるんだよ!」

 

「はい?…原因?何です」

 

慌ててオールマイトは事の成り行きを説明し、イレイザーをなだめにかかる。

 

「………んん」

 

「まぁだからと言って夜中に抜け出してケンカしていいって事にはならねェよな?…何だよ」

 

部屋にいた全員が一斉に銀時を見る。

なぜか心配するような表情だった。

 

「いや…何でもない。まぁそう言うことです。然るべき処罰は下します」

 

銀時がもっともな事を言ったことに一瞬だけ時間が止まったような感覚が空間を支配したが、イレイザー続けた。

 

「先に手ェ出したのは?」

 

「ボンバーマンです!」

 

爆豪が答える前になぜか自信満々で答える銀時。

さすがに爆豪がキレる。

 

「何でてめェが答えンだ!こらァ!」

 

「えっ…違うの?」

 

だが、銀時は信じられない物を見るような目で爆豪を見る。

少し心配するような雰囲気なのが逆にムカつくが…

 

「ぐっ…俺」

 

「んだよ!マジでびびったぜ~!」

 

「ちっ…!」

 

「あはは…。で、でも僕もけっこう…」

 

結局、先に手を出したのは爆豪だが、緑谷も進んでやっていたらしい。

 

「爆豪は4日間!緑谷は3日間の寮内謹慎!その間の寮内共有スペース清掃!朝と晩!!+反省文の提出!!」

 

最後はイレイザーが捲し立てるように処分を言い渡し、解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日は緑谷と爆豪が不在のまま、始業式などを終えて普通の授業が再開された。

これから行われる、インターンの話をさわりだけして初日は終わった。

そして、そこから2日後。

緑谷が復帰した日の午後の授業。

 

「じゃ緑谷も戻ったところで本格的にインターンの話をしていこう。…入っておいで」

 

「あん?誰か来てんの?俺聞いてねェぞ?」

 

イレイザーが言うと、皆が不思議そうな顔で教室の扉の方を見る。

どうやら、銀時も知らなかったようだ。

 

「職場体験とどういう違いがあるのか。直に経験している人間から話してもらう。心して聞くように…現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名…通称『ビッグ3』の皆だ」

 

扉が開かれ入ってきたのは3人の生徒。

 

「ん?おお!ミリオに環じゃねェか!…げっ…波動もいんのかよ…」

 

「銀さん!お久しぶりですね!」

 

「もーっ!ねじれちゃんって呼んでって言ってるでしょー!銀さん!」

 

「坂田先生…どうも…」

 

入ってきた3人は銀時の知っている生徒だったようだ。

A組の生徒たちはぽかんとしながら見ている。

 

「なになに?おめェらビッグ3なんて呼ばれてんの?出世したなァ」

 

「何言ってるんですか!銀さんのお陰でもあるんですからね!」

 

「大したことしてねェっての…ってか何だよおめェら」

 

銀時は普段騒がしい連中が静かなことを不思議に思い教室を見回すと、皆が驚いた顔をして銀時達を見ていることに気づいた。

 

「何で仲良さげなの先生!?」

 

「今年から赴任したんですよね!?」

 

「ん?あー。なんだ?教育実習?だっけかな…まぁそんなんでコイツらのクラスに少しついてたんだよ」

 

そうなのだ。

銀時は教員として採用された後、入学式の少し前までミリオ達のクラスで教育実習生として着任していたのだ。

 

「おい、その辺にしとけ。時間がもったいない。天喰から自己紹介してくれ」

 

そんなこんなでビック3による特別授業が始まる。

 

 

 

 

 




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第35話

ビック3を招いた授業。

イレイザーの指示で天喰から自己紹介をすることになった。

 

「天喰からな」

 

「…」

 

天喰は視線をA組の生徒達に向ける。

なぜか視線が鋭くなっている。

 

『…っ!?』

 

(まーだ直ってねェのか?)

 

生徒達はその視線に気圧されるように一様に驚いた顔をする。

銀時だけは呆れたように頭を掻いている。

 

「駄目だミリオ…波動さん…ジャガイモだと思って臨んでも依然人間にしか見えない。頭が真っ白だ…辛いっ…!帰りたい…!」

 

『ええ…!?』

 

弱音から始まり、終いには黒板の方に向いてしまった。

 

「環よォ…それ直せって言ったろーよ」

 

「俺には無理です…ニンゲンコワイ…!」

 

「駄目だこりゃ」

 

先程まで迫力に驚いていた生徒達もその光景に動揺している。

そんな時、波動が割り込んできた。

 

「あ、聞いて天喰くん!そういうのノミの心臓って言うんだって!ね!人間なのにね!不思議!」

 

「さらに面倒くせェやつが…」

 

銀時は少し顔をひきつらせながら話し始めた波動を見ている。

波動は全く気にすることなく話を続けていく。

 

「彼はノミの『天喰環』それで私が『波動ねじれ』今日はインターンについて皆にお話してほしいと頼まれて来ました」

 

ここまで話すと急に障子の席に寄っていく波動。

 

「けどしかし…ねえねえところで君は何でマスクを?風邪?オシャレ?」

 

「これは昔に…」

 

すると、早口で捲し立てるように質問を始めた。

慌てて答えようとした障子を無視して次は轟に…

 

「あら、あとあなた轟くんだよね!?ね!?何でそんなところを火傷したの!?」

 

「…!?それは…」

 

「うーわ。やっぱ始まったよ」

 

銀時は何かを知っているようで、少し顔をひきつらせながら見ていたが、やがて歩き出した。

 

「芦戸さんはその角折れちゃったら生えて…」

 

「ハイ、ストップな波動」

 

銀時は誰彼構わず質問して回る波動の後ろに立ち、頭にチョップをかました。

 

「いった~い!何するの!銀さん!」

 

「アイツら困ってんだろ。やめてやれ」

 

結構痛かったのか、涙目で抗議する波動。

 

「もう!…それにしても…銀さんのその死んだ魚みたいな目はなに!?なんか辛いことがあったの!?ねえ!?」

 

「全く懲りてねェな…はぁ」

 

懲りずに次の標的を銀時に決めた波動はまた質問を始めた。

銀時は呆れてため息をついている。

そこで、今まで黙って見守っていたイレイザーが口を開いた。

 

「…合理性に欠くね?」

 

「全くだぜ…強くなった代わりに頭弱くなったろおめェら」

 

「ふ、2人とも安心して下さい!!大トリは俺!なんだよね!」

 

他の2人の失態を一手に引き受け前に出たミリオ。

であったが…

 

「前途ーーー!!?」

 

『!?』

 

「多難ー!っつってね!よォし!ツカミは大失敗だ!」

 

(やっぱ前よりアホになってらァ)

 

結局3人とも駄目だった。

銀時が呆れる程だから相当だ。

そして結局…

 

「フム。そうだねェ…何やらスベリ倒してしまったようだし…君たちまとめて俺と戦ってみようよ!!」

 

『え…ええ~!?』

 

ミリオの提案をイレイザーが許可をして模擬戦闘を行うことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育館γ。

ここで模擬戦闘を行う。

ミリオはやる気満々で準備体操をしているが、A組の生徒達は少し遠慮しているようだ。

 

「あの…マジすか」

 

「マジだよね!」

 

やる気のミリオをよそに他のビッグ3の2人はあまりよろしくないようだった

 

「ミリオ…やめた方がいい」

 

「通形ちゃんと考えないと辛いよー」

 

2人の話によると今回の模擬戦闘でこれから先のヒーローへの道に支障が出るかもしれないとのことだ。

この2人の物言いに不満を露にする生徒が数名いた。

様は舐められていると思ったのだろう。

耐えきれずに抗議をしようとしたその時、銀時が割ってはいった。

 

「まぁいいじゃねェか。やらせてやろーぜ」

 

「坂田先生…」

 

「丁度いい機会だ。それに…こんな事で折れちまう様なヤワな教育はしてねェよ」

 

「…はぁ。知りませんよ」

 

「やっぱり!銀さんならそう言うと思ったの!私!」

 

こんなわけで模擬戦闘が始まる。

 

「よォし!そんじゃぁ…」

 

「始める「作戦会議ターイム!」ええっ!?銀さん!?」

 

「なに?不満でもあるの?上級生のくせに?」

 

「ぐっ…分かりました…!」

 

いい感じで話がまとまりそうだったにも関わらずナチュラルにぶち壊す銀時。

流石の一言だ。

ミリオはちらっとイレイザーに視線を送ったが、イレイザーは傍観するつもりらしい。

なんだかんだ銀時には甘い。

 

「おめェら集まれりやがれ!」

 

『は、はい!』

 

そして、作戦会議タイムになる。

 

「よし、集まったな。まず始めに言っとくが…これは作戦会議と言うより忠告だ」

 

『???』

 

銀時は集めた生徒達に向かって話し始めるが、皆首を傾げている。

 

「いいか?これからミリオと戦ってどう感じるか、何を思うか。これが大事だ。この際だからはっきり言っとく…おめェらじゃほぼ100%勝てねェ」

 

「っ!そんなっ…」

 

「先生!」

 

「まぁいいから聞け…勝ち負けなんざ意味がねェ。これからやるのは戦いじゃなくて勉強なんだからな」

 

『勉強…?』

 

「そうだ。ここでちっぽけなプライド振りかざすくれェならやらねェ方がマシだ。まぁ…とにかくがむしゃらに行け」

 

銀時は真剣に話を続ける。

もうそこには普段のおちゃらけた銀時はいない。

 

「あと1つ…ミリオの個性を見て、多分だが『強い』だ『ずるい』だなんて思うかもしれねェが…アイツの個性はおめェらの誰の個性よりも使い勝手が悪い。それだけは忘れんな」

 

『はいっ!』

 

「うし!そんじゃ勉強してこい!ガキ共!」

 

『よっしゃぁ!』

 

作戦会議を終えて、銀時は皆を送り出す。

生徒達はやる気満々で出ていった。

 

「若いってのはいいねェ」

 

「自分が焚き付けておいて何言ってんだ」

 

銀時が生徒達の背中を見つめながら呟くと、横からイレイザーが歩いてきた。

 

「消太か。まぁ…ただやられるだけじゃ見てるこっちもつまんねェからな」

 

「ふっ…銀時らしいな。それにしても…言わなくて良かったのか?」

 

「ん?何を?」

 

「通形がプロを含めて最もNo.1に近い男だってことだよ」

 

「………まぁ、大丈夫だろ」

 

「…そうか」

 

ここだけの話、銀時は言うのを忘れていただけだ。

さっきまでカッコ良かったのにやっぱり締まらない銀時であった。

 

 

 

 




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第36話

作戦会議タイムが終了し、模擬戦闘が始まる。

 

「銀さんが噛んでるから油断はできないよね!」

 

そう言って身構えるミリオ。

警戒しながらも初手は譲るようだ。

 

『よろしくお願いしまーっす!!』

 

こうして開始された。

 

「とりあえず皆聞いて!」

 

開始早々に向こうから仕掛けてこないことに気づいた緑谷が皆に声をかける。

 

「無闇矢鱈に攻撃をするのはやめよう。通形先輩の個性はすり抜ける個性だと思うから僕たちの視界を自分から塞ぐのは悪手だ」

 

緑谷の意見を聞いた皆は頷き、それぞれの最適な行動を取るために動く準備はできているようだ。

そして、まずは近接が仕掛けていく所からA組の生徒は行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、決着。

終わってしまえば僅か10分程で全滅させられてしまった。

 

「ちょっと張り切りすぎちゃったよね!」

 

『つ、強かった…』

 

A組の生徒は全員がお腹を押さえて下を向いてしまっていた。

 

「まぁ…あんなに苦戦させられるなんて思ってなかったよ!銀さんに何て言われたの?」

 

「勝ち負けなんていいから勉強してこい…と」

 

「うんうん!銀さんらしいよね!」

 

ミリオはそう言って銀時の方を見る。

 

「んー。まァ…及第点じゃねェ?ミリオ相手に初見であんだけやれりゃ良い方だろ」

 

「1対20だけどな」

 

「オイ!いい感じに纏めようとしたんだから言うなって!」

 

銀時はいい感じの事を言ったがイレイザーが余計なことを言った。

珍しい光景だ。

 

「んんっ!まぁ…あとはミリオに直接教えてもらえ。個性の事とかインターンの事とかよ」

 

『…は、はいっ!』

 

銀時がそう言うと生徒達はミリオ達の前に集まり話が始まったのだった。

そして、授業が終わり教室に戻っていく生徒達。

銀時はミリオ達の方に歩いて向かっていた。

 

「ミリオ。ちょっといいか?」

 

「銀さん?どうしました?」

 

「今度のインターンよォ…ミリオん所に俺も同行するから」

 

「本当ですかっ!?サーも喜びます!」

 

全くもって急な話だったがミリオは気にすること無く嬉しそうにしている。

 

「おーよ。宜しく言っといてくれ」

 

「分かりました!」

 

ここから新たな物語が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミリオ達、ビッグ3との特別授業があった日から数日。

銀時は駅にいた。

 

「あっ!銀さん!おはようございます!」

 

「うーっす」

 

「えっ!?さ、坂田先生!?なんで!?」

 

当たり前の様に合流してきた銀時に驚きを露にする緑谷。

どうやら何も聞いていないようだ。

 

「あん?言ってねェの?」

 

「あははっ!忘れてたよね!」

 

「ちょっと不安になってきた…」

 

ミリオは全く気にした様子もなく笑いながら言った。

緑谷はこれから先のことが少し心配になってしまったようである。

だが、そんな緑谷をよそに3人は出発した。

電車に揺られること1時間。

 

「ここがサーの事務所だよね」

 

「1年振りくらいか」

 

「おォ…」

 

目の前には少し大きな建物がある。

銀時は懐かしそうに…と言っても1年だが。

緑谷は見上げながら明らかに緊張していた。

 

「おいおい!角ばるなよ!良くないぜ!」

 

「そーだぞー緑谷。こうゆー時はむしろ自分の家の様にだな…」

 

そう言いながら銀時は1人で建物に入っていってしまった。

 

「いや…先生…それは違うと…」

 

「ただいま~!」

 

「えっ!?ちょっ!?先輩!?」

 

緑谷は呆れたように入口を見ていたが、ミリオは銀時の言ったように自宅に帰った時のように続いていった。

やっぱり銀時とミリオは波長が合うらしい。

緑谷も遅れながら中に入っていった。

 

「ああ!そう言えば…サーはユーモアを最も尊重してるんだ。だから必ず一回サーを笑わせてね」

 

「へ?」

 

中に入り、廊下を歩いている時に急にミリオが緑谷に言い聞かせるように話し始めた。

緑谷は良く分からないと言う顔をしている。

そうして1つのドアの前に到着した。

 

「さてあのドアの先だ!強くなりたいなら己で…「おーぅ!帰ったぞー!」あらら?」

 

ミリオは緑谷に開けさせようとしていたらしいが、空気の読めない…と言うよりかは、読む気がない銀時は普通にドアを開けて入った。

そこには…

 

「まったく…大きな声出るじゃないか」

 

「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 

変な機械にかけられている女と、それを見ている長身の男がいた。

始めてみる人には刺激が強い光景だ。

 

「ふむ…中々興味深いじゃねェの…!」

 

「ええっ!!?」

 

「あはは…やっぱり銀さんとサーは気が合うんだよね!」

 

だが、銀時のS心には結構響いたみたいだ。

そんな話をしているとこちらに気づいたのか男がこちらに振り向いた。

その視線は威圧的なモノが含まれているように感じる。

そして、男は視線はそのままに銀時の前に歩み寄ってきた。

 

「…」

 

「…」

 

にらみ合う2人。

すると急に…

 

バババババババババッ!ババッ!

 

目にも止まらぬ早さで何かを始めた。

それは言うなれば、超高速のアルプス一万尺とでも言うべきか…何か挨拶のようなものだった。

 

「衰えてねェみたいで良かったぜ…未来さん」

 

「ふっ…それは何より。私も流石と言っておこう。銀時の行動を予知するとやはり少しぶれる」

 

挨拶?を終えた2人はお互いに称えながら拳を合わせる。

何か通じ合っているようだった。

 

「み、見えなかった…!」

 

「相変わらずだよね!」

 

「ちょっと~ヒャヒャ!と、止めてくださいよ~アヒャヒャ…!」

 

いい感じの再会に思えるが現状は中々の地獄絵図なのであった。

波乱のインターンの幕開けだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談。

1年前の銀時とサーの出会い。

 

「なーミリオ。そのサーってのはどんなヤツなんだよ」

 

「んーとですね…気難しい人ではあるんですけど、ユーモアを大事にしてる人ですかね…?」

 

「なんだそりゃ」

 

銀時は生徒達のインターンの付き添いで色々なヒーロー事務所を回っていた。

そして次はサー・ナイトアイの事務所に向かっていた。

ってかもうドアの前にいた。

 

「それじゃ行きましょ…「お邪魔しやーす」ええっ!?」

 

やっぱり銀時は普通に扉を開いた。

この時はむしろ銀時を紹介するミリオの方が銀時よりも緊張していたかもしれない。

 

「…誰だ」

 

「今年から雄英高校の教員になった坂田銀時でーす」

 

銀時はとりあえず適当に挨拶をした。

ミリオは流れに着いていけずに、遅れながら銀時の事を説明する。

だが…

 

「ちょっ!銀さん!サ、サー!この人が昨日電話で話した…」

 

「そうか…お引き取り願おう」

 

「えっ!?サー!?」

 

ナイトアイは速攻で帰るように促す。

 

「んじゃ、お邪魔しやしたー」

 

「銀さん!?」

 

銀時はそれを聞いた瞬間にはもう既に入ってきたドアの方へと動き出していた。

 

「…ちょっと待ってぇぇぇぇぇ!!!」

 

狭い室内にミリオの絶叫が響いた。

そして、なんやかんやで…

 

「えっ、なに?なんでこうなったの?」

 

「私も知らん」

 

「やっぱりお互いを分かり合うなら肉体言語が一番だよね!ってことで…戦おう!」

 

「うん。意味が分からないよミリオくん?」

 

「その通りだ。無意味なことはしない」

 

そう言って銀時は帰るためにドアに向かい、ナイトアイはデスクのイスに向かって歩き始めた。

 

「…最終手段だよね…!」

 

ミリオはそう言うと別々で2人に近寄り、耳元で何かを言った。

すると…

 

「やってやらァァァァァ!!!ジャンボパフェが俺を待っているゥゥゥゥゥ!」

 

「貴様の様な奴がオールマイトと同等など…断じて認めん!!!」

 

いささか、邪道ではあるが上手く乗せることに成功したミリオ。

2人がぶつかり合う前にミリオはそそくさとドアの外に出た。

銀時とナイトアイはと言うと、3分間のガチバトルと洒落込むらしい。

 

「行くぜェ!」

 

「来るがいい」

 

こうして始まった。

そして1分がたった頃。

 

「くっ…!?コイツ…!」

 

(俺の行動を先読みしてやがんのか!)

 

「…っ!?この男…!」

 

(細かい動作と速さのせいで予知がぶれるだと…!?)

 

お互いに驚愕していた。

もう既に始まる前の目的は頭の中にはなかった。

そして、銀時が動く。

銀時は懐の中を探っているようだった。

 

「…この部屋の中ならどうなってもいいんだったよなァ?」

 

「…っ!」

 

(なんだこれは…!煙…なのか…?)

 

ナイトアイが見た予知の内容が分かる前に、床に何かがぶつかる音と共に部屋中をいくつもの爆発音が支配した。

それと同時に煙が充満する。

そして…

 

「予知…破ったぜ。名付けてジャスタウェイ祭!」

 

「ゴホッゴホッ…!貴様…」

 

銀時は充満する煙の中で、ナイトアイに木刀を突きつけていた。

ナイトアイは険しい表情で銀時を見上げながら呟く。

 

「なんだァ?ずるいとは言わせねェぞ」

 

銀時は見下ろしながら言った。

そして、返ってきた言葉は…

 

「…………いい!実にいい!」

 

銀時の予想していた物とは全く逆の答えが返ってきた。

たまらず呆けてしまう銀時。

だが、そんな銀時を気にすること無くナイトアイは続けた。

 

「は…?」

 

「とても愉快だ!認めよう!坂田銀時!宜しく頼む」

 

「…あー。まァ…よろしく。えーと…」

 

ナイトアイのテンションに毒気を抜かれた銀時は握手に応じた。

 

「佐々木未来。ヒーロー名はサー・ナイトアイだ」

 

「おぅ。んじゃあ…サーナイトさん」

 

ポケ◯ンかよ!?

大丈夫なの?それ?

 

「ふむ…あまり好かんな…」

 

「なんだよ…じゃあ未来さんで」

 

「それで頼む。改めて宜しく頼もう…銀時」

 

「ああ。未来さん」

 

こんなことがありましたとさ。

 

 




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第37話

色々あったが、ナイトアイの事務所に到着した銀時達は本題に入る。

 

「サー!この子が昨日お伝えした1年生です!」

 

「…」

 

ミリオがそう言って緑谷の背中を押し、前に出させた。

ナイトアイは無言で緑谷の頭から足の先までみる。

無言で眺められることに緑谷が耐えられなくなる寸前で、銀時が緑谷の頭に乱暴に手を置きながら言った。

 

「んで…俺の生徒だ」

 

「む…銀時の生徒か」

 

少し空気が緩んだのを感じたのか、緑谷は一歩踏み出すとおもむろに行動を開始した。

良くは分からないが顔をいじっている。

そして…

 

「緑谷出久です!!」

 

オールマイトの顔真似をした。

完成度は中々高いのだが、面白いかと言われると…って感じ。

 

「オールマイトを馬鹿にしているのか?」

 

案の定、スベった。

ってかちょー怒らせた。

 

「えっ…なに?今のって笑わせる為にやったの?ちょっと嘘だろ…センスのセの字もねェな。まァ、まとめると…0点」

 

「ぐはっ…!」

 

銀時にいたっては、酷評どころか確実に心を折りにかかっている。

実際に緑谷は膝から崩れ落ちた。

そして、その後になぜか緑谷とナイトアイでオールマイト談議が始まってしまった。

 

「ビネガースーサイド事件…ご存知ないですか…?」

 

「…もちろん知ってーーー」

 

興味を無くした銀時はと言うと。

 

「アヒャヒャヒャヒャ!ち、ちょっと!坂田さん!やめっヒャヒャヒャ!」

 

「ふむふむ…ほぉ~。こりゃすげェ…!」

 

真剣なふりをしてバブルガールが拘束されている機械の調節レバーを自分好みにいじっていた。

 

「も、もう無理っアヒャヒャヒャッ!ミ、ミリオくん助けっヒャヒャヒャ!し、死んじゃうよぉ!」

 

「やっぱりこれ欲しいな…後で未来さんに聞いてみっか」

 

「ぎ、銀さん!そろそろ…」

 

明らかに異常な状況なのに、銀時は電気屋に家電を見に来た人、程度のテンションだ。

慌ててミリオが止めにはいった。

 

「ん?ああ、そうだな。んじゃ…」

 

そう言ってレバーを持った銀時。

後は、それを下に下げれば良いだけだ。

だが…

 

「や、やっと…ってあれ!?さ、坂田さん!?それ逆っ!」

 

「何ィ?聞こえねェなァ…!」

 

銀時は悪魔のような笑みを浮かべながら一気にレバーを上にあげた。

Sの絶頂だ。

 

「待っ…あァァァァァァァァ!!?」

 

無情にもバブルガールの悲鳴が響いたのであった。

 

「あ、悪魔がいるんだよね…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時がSを発揮している間に、話はまとまったようで部屋の外に出された。

 

「ぎ、銀さん!大丈夫なんですか!?あの条件で…!」

 

「まァ…正攻法でいきゃ無理だろォな」

 

「で、ですよね…」

 

ミリオが言っている条件と言うのは、3分以内にナイトアイから判子を奪って書類に押す事だ。

銀時が無理だと言ったのは、ナイトアイの個性が『予知』だからだ。

行動をあらかじめ読まれてしまうとなるとほぼ100%無理ゲーだろう。

 

「なら何で変えてもらわなかったんです!銀さんからサーに言えば多少は…」

 

「そ、そうですよ!坂田さんが言えば…」

 

「なァ…ミリオ、泡女。ヒーローってのはピンチを乗り越えて行くんだよな?」

 

「…えっ!?まぁ…そう、ですね」

 

「泡女!?それ私!?」

 

「ならよ…乗り越えて貰おうじゃねェの」

 

「銀さん…!」

 

「ちょっと無視ですか!?ねぇ!?」

 

約1名、騒いでいる奴がいるがとにかく無視されている。

そんな時、部屋の中から音が聞こえ出した。

3分の間、銀時達は話すことなくドアを見つめていた。

そして、3分後。

 

「そろそろか…うーぃ。終わったかァ?」

 

「失礼しまァす!!」

 

「終わりました?ものすごい音立ててましたけど」

 

中に入ると部屋はぐちゃぐちゃに散らかっていて、緑谷は悔しそうに床に手をついていた。

銀時はナイトアイの様子を確認して部屋を見渡す。

 

「ほォ…」

 

銀時は違和感に気づいたようだ。

中でどのように動いていたのかがある程度理解できたらしい。

そんな時、ナイトアイが口を開く。

 

「採用だ」

 

「わぁ!すごい!!!やったあ!!!」

 

「ええ!?全く達成できてないですけど…」

 

結果は採用。

緑谷は訳が分からないと混乱している様子だ。

まぁ、認められた訳じゃないが第一関門は突破できたようでなによりだ。

緑谷がミリオに祝福されているのを余所に、銀時はナイトアイに歩み寄る。

 

「どーよ?緑谷は」

 

「…オールマイトに見初められ、銀時の元で学んでいる。あれくらい出来て当然だ。だが…」

 

「ミリオとは別の『何か』を感じたってか?」

 

「…間違ってはいない」

 

「ふっ。そォかい」

 

ナイトアイの考えは依然変わらない。

だが、緑谷に何かを見たのも事実なようだ。

こうして、緑谷のインターンは始まりを迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

今日はパトロールをメインでやるらしい。

ちなみに銀時も泊まり込みでの付き添いだ。

始めは嫌がっていた銀時だったが、ナイトアイが用意したVIPルームを見た瞬間に掌を返してはしゃいでいた。

バブルガールがパシりとしてこき使われたのは言うまでもない。

 

「本日はパトロール兼監視。私と銀時、ミリオとバブルガールと緑谷の二手に分かれて…」

 

「サ、サー!バランスがおかしいですよね!?」

 

「…冗談だ」

 

ナイトアイがパトロールの人員の振り分けを始めると、どう考えても振り分けがおかしい。

ミリオが慌てて止めにはいると、今のは冗談だったらしいが…

 

『絶対に本気だったよ…』

 

信じている人はいなかった。

結局、ナイトアイとバブルガール、銀時とミリオと緑谷で分かれることになった。

 

「ってかよォ、未来さん。監視ってのは何を監視するんだ?」

 

「『死穢八斎會』という、小さな指定敵団体だ。そこの若頭の治崎という男を監視してほしい」

 

銀時が質問をすると、ナイトアイは治崎の写真を見せながら説明を始めた。

 

「ん。りょーかい。…にしても最近って趣味の悪ィマスク流行ってんの?衝撃的にダサいんだけど…高級チ◯カップかよ」

 

「ちょっ!先生何言ってるんですか!?」

 

「…くくっ…」

 

「サーも笑ってないで止めてください!」

 

銀時の発言にドン引きする者と、ナチュラルにツボる者がいた。

それにしても、大分辛辣な物言いである。

 

「まァとにかくコイツに気を付けりゃ良いわけだな」

 

「ああ。くれぐれも気取られぬように。では、行動開始」

 

『イエッサー!!』

 

ナイトアイの指示で別れて歩き出す。

 

「監視っつってもなァ。そんな簡単に見つかるモンかねェ」

 

「取り敢えず行くんだよね!」

 

「あはは…うおっ!?」

 

3人は話しながらも歩きを進める。

しばらく歩いていると、路地から小さな女の子が飛び出してきて緑谷にぶつかった。

前を歩いている銀時とミリオはまだ気がついていない。

 

「ごめんね?痛かったよね」

 

「………あ」

 

緑谷が膝をついて話しかけるも、女の子の様子が少しおかしい。

少しすると銀時とミリオも気付いて近寄ってきた。

 

「なに?誘拐?それとも…ロリコン?」

 

「緑谷くん…」

 

「ち、違っ…」

 

銀時の物言いに反論しようとしたその時、女の子が出てきた路地から1人の男が出てきた。

 

「ダメじゃないか。ヒーローに迷惑かけちゃあ。帰るぞエリ」

 

その男とは、さき程の写真の人物…治崎だった。

 

(始まりの村で魔王に遭遇したんですけどォォォォォ!)

 

見事なフラグ回収だった。

初日にして初接触、どうなるか。

 

 

 

 

 




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第38話

銀時達がパトロールを始めて僅か数分後。

監視対象の治崎と接触していた。

 

「うちの娘がすみませんね、ヒーロー」

 

こちら側の気も知らず、話しながら歩み寄ってくる。

 

「遊び盛りでケガが多いんですよ。困ったものです」

 

愛想良く話しかけてくる治崎を緑谷は信じられないと言うように見ている。

 

(ちっ…。予想外すぎんぜまったくよォ)

 

銀時はミリオにアイコンタクトでフードを被せるように指示を出し、治崎の前に出る。

 

「いやァ。こっちこそすんませんねェ」

 

「いえ、お気になさらずに。…うん?あなたは…白夜叉さんじゃないですか。こんなところで何を?」

 

銀時は早く納めようとしたようだったが、銀時に気づいた治崎が少し探るような素振りを見せてきた。

 

「コイツらの職場体験の付き添いっすよ」

 

「へぇ…」

 

「んじゃ急いでるんで。おめェら行くぞ」

 

「はい!」

 

「はいっ…」

 

これ以上追求される前に立ち去ろうとしたが、緑谷の様子が少しおかしい。

見てみると、緑谷とぶつかった女の子…エリが震えながらすがり付いているように見えた。

 

(あのチビ…明らかに…だが今は緑谷の方だ)

 

銀時は今の現状での最適な行動を取るために女の子に近寄った。

 

"緑谷。俺に任せろ"

 

治崎に気付かれないように緑谷に小声で話しかけ黙らせる。

 

「おー。どうした?何か怖いことでもあったのか?」

 

銀時はエリの頭に手をのせると、優しく撫で始めた。

治崎に感づかれないように、細心の注意を払いながら演技をする。

 

「…っ!」

 

エリは驚いた様に顔を上げ銀時を見る。

その顔は心なしか安心したような、年相応の表情とでも言うような顔だった。

だが、そんな顔もすぐに戻ってしまい目に涙が溜まっていく。

そして、すがるように小さく呟いた。

 

"たす…けて…"

 

"ああ。必ず助けてやる。だから…待ってろ"

 

銀時のその言葉を聞いたエリは感じたことのない感覚に戸惑いながらも緑谷を離し立ち上がった。

そして、治崎の方に駆けていった。

 

「ご迷惑をおかけしました。では、お仕事頑張って」

 

銀時達が黙って見ているなか、治崎は路地の奥に消えていった。

少しの沈黙の後、ミリオが口を開く。

 

「銀さん!治崎は…」

 

「ああ。ありゃあ黒だ…真っ黒。あーゆうクソみてェな奴を腐る程見てきた…間違いねェ」

 

「っ!ならなんでっ!あの子を助けなかったんですか!先生なら助けられたんでしょう!?なんでっ…!」

 

銀時の話を聞いた緑谷が声を荒げる。

 

「まァ落ち着け。無闇に突っ込めばいいって訳じゃねェんだ。それに…あのチビは必ず助ける」

 

「…わかり…ました…!」

 

「取り敢えずサーと合流しましょう!報告しないと!」

 

緑谷は納得こそしていないものの、銀時のいままでの活躍を見てきたからか、大人しく引き下がった。

その後、ミリオの言った通り行動を始めた。

前を歩く2人の後ろで銀時は考えていた。

 

(チビのあの時の反応は…温もりを知らねェのか…。ちっ…昔の俺を見てる様で気分悪ィぜ)

 

そう、銀時はエリの事を昔の自分に少し重ねていた。

暗闇でひたすらに剣を振り続ける様な感覚。

エリもそうだ、何も見えない暗闇でただひたすらに苦しんでいる。

その様子が分かってしまった。

銀時はため息を吐きながら1人呟く。

 

「はぁ…俺もこの世界に毒されちまったかなァ…必ず助けるなんてよォ」

 

1人の女の子を救うために白夜叉は動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治崎との接触の後、銀時達はナイトアイと合流した。

 

「マジで焦ったぜ。思いっきりフラグ回収しちまったよ」

 

「すまない。事前に見ておけば防げた」

 

「まぁとりあえず無事で良かったよ!」

 

こんな感じでお互いに状況の確認等を終えた。

その時、ミリオが思い出したようにナイトアイに報告をする。

 

「あ!そうだ!サー!新しい情報を得ましたよね!治崎には娘がいます!」

 

「娘…?」

 

「エリちゃんと呼ばれていました。手足に包帯を巻かれていて…とても怯えていました」

 

「ああ。あと…治崎は黒だ。アイツは確実に何かやってんぞ」

 

「そうか…情報を集めなくては…」

 

それぞれ、その時の状況や分かったことなどを伝える。

銀時自体、なにが行われているかは分かっていないが野性的な勘が告げている。

その根拠のない話をナイトアイは、銀時を信用する1人として納得しているようだ。

 

「バブル。この後はミリオと緑谷と3人でパトロールを続けてくれ」

 

「えっ!?は、はい!」

 

「頼んだ。銀時は一緒に来てくれ」

 

「りょーかい」

 

そうして、また新しく二手に別れた。

ナイトアイと銀時は少し路地を入ったところにある、静かなカフェの様なところに入った。

 

「ここなら誰にも話を聞かれることはない…話してくれるか」

 

「ああ。こっから先は俺の経験則と勘だが…治崎は娘を自分の野望のために『使って』やがる」

 

「っ!」

 

「内容までは分かんねェ。だが、確実に娘を使って何かを進めてんなありゃあ」

 

「そう…か…。ヤツを止めるためにはその子を保護する必要があるか…」

 

「そォだな。それに…約束しちまったからな」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「いや、何でもねェ。それよりも早く情報を集めんぞ」

 

「ああ。すぐにでも動こう」

 

ある程度の方針は決まった。

ここから確かな情報を集め、行動を起こすために最善を尽くさなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のインターンの後、ナイトアイの事務所は緑谷を呼ぶことなく少しの時間が流れた。

その間は、銀時も学校で普通に授業をしていた。

今日はナイトアイからの連絡で指定の場所に集まるようだ。

 

「消太。行こーぜ」

 

「ああ」

 

銀時とイレイザーは集合場所に電車で向かう。

到着し中にはいると数多くのヒーローが集まっていた。

その中には知り合いもいた。

 

「うーぃ」

 

「おっ!銀時じゃねぇか!お前さんも呼ばれてたのか!」

 

「よォ、じぃさん。元気してたかよ」

 

「はっはっは!元気も元気!ピンピンしとるわ!」

 

神野で共に戦ったグラントリノも呼ばれていたようで話しかけてきた。

そうして話していると銀時の方に誰かが寄ってきた。

 

「おーおー!あんさんが白夜叉か!」

 

「あん?」

 

銀時が声の方に振り向くとまんまるとした体の男が立っていた。

その男は銀時をじっくり観察して言った。

 

「んー。なんや案外普通やな!夜叉っちゅうくらいやから鬼みたいなんを想像しとったわ!」

 

「…誰だ?あんた。…ってかその腹…バランスボールでも丸飲みにしたの?」

 

お互いに元々の気質か、中々に酷い言いようだ。

銀時にいたっては普通に悪口になっている。

男は銀時の言葉を聞いて少しポカンとした後に笑いだした。

 

「………ぷっ!あっはっはっ!なんや面白いやないの!にーちゃん!俺はファットガムや!よろしゅう!」

 

「ん?あー。坂田銀時だ」

 

「おう!銀な!」

 

良くは分からないがファットは銀時の事を気に入ったらしい。

そんなやり取りをしていると、入口が開く。

入ってきたのはビッグ3の面々と、緑谷、切島、麗日、蛙吹の4人だった。

 

「グラントリノ!?相澤先生も!?…坂田先生まで!?」

 

銀時が入口の方を眺めているとねじれが銀時に飛び込んでいった。

何故かは謎だ。

 

「あー!銀さんもいる!なんで?ねぇなんで?」

 

「ちょっ!おいこら!いちいちひっつくな!」

 

「銀さんも呼ばれたの?なんで?ねぇ!」

 

「あァ!うぜェ!離れやがれ!」

 

そうして2人でわちゃわちゃやっていると誰かがねじれの頭に軽くチョップした。

 

「ねじれ。ステイ」

 

「んー?あっ!リューキュウ!」

 

来たのはプロヒーローのリューキュウだった。

ねじれはリューキュウに気付くと、銀時を離してリューキュウの方に行った。

 

「はぁ…助かったぜ。すまねェな」

 

「いえ。苦労は分かるので。…挨拶がまだでしたね。私はリューキュウです。よろしくお願いします白夜叉さん」

 

「ああ。坂田銀時だ。んー…なんか誰かに似てんなァ…」

 

「えっ!?あ、あのー…」

 

銀時は挨拶もそこそこにリューキュウを頭から足の先まで眺めてそう言った。

見方によってはセクハラだ。

 

「…あー!あの、あばずれ酒乱女に似てんだ!雰囲気だけど!」

 

「あ、あばずれ…酒乱…ぐすっ…」

 

そして、思い出してスッキリした銀時はデリカシーの欠片もない言葉でリューキュウを攻撃した。

効果はバツグン!

リューキュウは泣いた。

クールビューティーが台無しだ。

銀時のせいだけど。

 

「あっ…わ、悪ィ!言い過ぎた」

 

「…ぐすっ…別にいいです。どうせ私なんて…」

 

「あー!銀さん泣かせたー!いけないんだー!」

 

「あっ!おまっ!静かにしろっ!」

 

回りに気付かれないうちに事態を片付けようとした銀時だったが、ねじれの声に皆が視線を向けてしまったようだ。

女性陣はドン引き、男性陣からは非難の視線を頂戴した銀時であった。

 

 

 

 




リューキュウって普段の感じは月詠に少し似てる気がするんだよな!

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第39話

会議が始まる前に色々とあったがやっと話が始まるらしい。

ちなみにリューキュウにはちゃんと謝って許して貰ったようだ。

 

「んじゃ未来さん。はじめよーぜ」

 

「もちろんだ。それでは…あなた方に提供して頂いた情報のおかけで調査が大幅に進みました」

 

ナイトアイが話し始めると、学生達は詳しい内容を知らないみたいでなぜ呼ばれたのかを、まだ理解していないようだ。

ナイトアイは続ける。

 

「死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか。知り得た情報の共有と共に協議を行わせて頂きます」

 

そこから、何故に死穢八斎會を監視、調査していたのかを説明し、話が進んでいく。

そして情報の共有に移ると、関西の方でトラブルにあったファット達から重要な情報が語られる。

 

「先日の烈怒頼雄斗デビュー戦!今までに見たことない種類のモンが環に打ち込まれた!…個性を…壊すクスリ」

 

『個性を壊す…!?』

 

ファットが口にすると、一瞬騒がしくなる。

プロヒーローからしても、今の社会からしても致命的なモノであるのは確実だった。

そこで、天喰が打ち込まれたのを知っているミリオが慌てて立ち上がる。

 

「え…!?環、大丈夫なんだろ!?」

 

「ああ…寝たら回復していたよ」

 

天喰が無事だったのを確認したミリオはほっとした様子で席に着いた。

そのやり取りを見ていた1人のプロが続いて口を開いた。

 

「回復すんなら安心だな。致命傷にはならねえ」

 

「いえ…その辺りはイレイザーヘッドから」

 

ここで、イレイザーの抹消との違いを簡単に聞くと、まったくの別物と言うことが分かった。

 

「今回は環は大丈夫だったけどよォ。それが他でもそうとは限らねェ。これは俺の勘だが…下手すっと壊すどころか、個性そのものが使えなくなるくれェに考えといた方がいいと思うぜ?」

 

「っ!?そないなこと!」

 

「できるんだよ。プッシーキャッツのラグドールは個性を奪われて使えなくなったんだ。できる確率の方が圧倒的に高ェ」

 

「俺も銀時の意見は正しいと思います」

 

「私もです。それ程に危険だと考えて欲しい」

 

イレイザーとナイトアイは銀時の言葉を肯定する。

それを聞いた全員が息を飲む。

それ程に大きな問題だ。

少し、どんよりした空気が流れるがここで止まるわけにもいかない。

そこで、銀時がまた口を開く。

本当に真剣な時は頼りになる男だ。

 

「んん!…んで、ファット。環に打ち込まれた薬は調べられたのか?」

 

「環に打ち込まれたのは無いんや。ただ…切島くんが身を挺して弾いたおかげで、中身が入った一発が手に入ったんや!」

 

「うおっ!?俺っスか!!ビックリした!!」

 

「ほォ…アレを実践でやったのか?」

 

「あっ!ハイ!ギリギリでしたけど通用したっス!」

 

個性伸ばしの特訓の時、ただただストレス発散のために滅多打ちにしていた訳ではない。

本当の目的は最高硬度の底上げと持続時間の延長なのだ。

ちゃんと上手く作用したようで良かった。

 

「話戻すけど…そのクスリの中身を調べた結果、ムッチャ気色悪いモンがでてきた…」

 

「血やら細胞…だろ?」

 

ファットの話を聞いていた銀時が確信を持っているように答えた。

 

「そや。銀は知っとったんか」

 

「いや、ほぼ予想だったんだけどよォ…確信に変わっちまった訳だ。そんでその血やら細胞をどっから取ってるかっつーと…」

 

銀時はそこまで言うと顔を真っ青にして冷や汗をかいている2人…緑谷とミリオに視線を向けた。

 

「「エリ…ちゃん…!」」

 

「十中八九そうだろォな…ほんッとに良い趣味してやがんなァ。自分の娘によォ…!」

 

『っ!!?』

 

今まで冷静に話していた銀時だったが治崎の考えられないような悪行を思い浮かべると体から怒気が溢れだす。

その迫力はオールマイトと同等のもの。

普段怒らないからこそ迫力が段違いに感じられる。

イレイザーとナイトアイ以外の面々は雰囲気に飲まれてしまっている。

しかしまぁ、随分とヒーローに染まったものだ。

 

「銀時。落ち着け」

 

「…ふぅ。あぁ、悪ィな」

 

「お、鬼どころやないで…」

 

イレイザーに諭されて怒気をおさめる銀時。

話に戻るようだ。

 

「話に戻りますが…治崎の個性は『オーバーホール』対象の分解・修復が可能という力です。分解…一度壊し、治す個性。そして個性を破壊する弾」

 

「そこでしっかり繋がる訳だ」

 

治崎が企んでいることの全貌が見え始める。

緑谷とミリオは未だにうつ向いて悔しそうにしている。

 

「ってかよ。接触した時に白夜叉もいたんだろ?なんでその時に保護しなかったんだよ」

 

「すまねェ。それは俺が指示した。あーゆう連中ってのは俺達が思ってるより用心深いかんなァ。だが…あん時に保護すべきだったな…」

 

「いや、全て私の責任だ。気取られないようにと指示を出したのは私なんだ。居合わせた3人ともその娘を救けようと行動したのです」

 

敵を逃がした事を話した銀時をナイトアイが擁護した。

そして、この会議での一番重要な目的が語られる。

 

「私たちが目指す目的は…」

 

「今度こそ必ずエリちゃんを…!!」

 

「保護する!!」

 

「っつーことでいいんだよなァ?」

 

「ああ。その通りだ。そして、一度で確実に叩くために我々がリストアップした八斎會と関係のある場所をそれぞれ探っていただきたい」

 

一部から慎重すぎると言う声もでたが、この内容を詰めていくことになった。

さらに、ナイトアイの個性で敵の情報を探ることも難しいようで却下されてしまった。

 

「そして、最後に…この作戦に於いて1人だけ個性を壊すクスリを前に自由に立ち回れる者がいる」

 

最後にこの作戦の中核を担う人物の紹介が始まった。

個性持ちには致命的な個性破壊のクスリ。

その影響を受けずに動ける人物が1人。

 

「はぁ?個性持ってりゃ誰にでも効いちまうんだろ?」

 

「そやそや!法螺は吹くんやないで!」

 

「本当にいるんですよ。ここに」

 

真っ向から否定したファットとロックロック。

信じられない気持ちは分かるが本当にいるのだ。

注目を集めるために立ち上がったイレイザーが隣の銀時を指差す。

 

「銀が?どーゆうこっちゃ!?」

 

「あー。俺、無個性なんだよね」

 

『………はぁぁぁぁぁ!!!?』

 

銀時が何の気なしに普通に言った言葉に一瞬音がなくなり、数秒後、部屋中に絶叫が響き渡った。

だが、それも仕方のない事だ。

銀時を詳しく知らない者は、ヒーロー殺しの時に活躍したヒーローとしか認識がない。

そのヒーロー殺しはプロが何人もやられる程の強敵だったのだ。

無個性の人間が倒したなんて思い付く筈もない。

 

「う、嘘やろ…」

 

「信じがたいことですね…」

 

信じられないと言った表情で銀時を見る。

銀時は居心地が悪そうだ。

 

「それは事実です。私とイレイザーヘッドとグラントリノ。あと、雄英の生徒達が保証します」

 

「それは分かった。けどよ、戦力にはなんのかよ?」

 

「確かにそれはありますね。白夜叉さんには申し訳ないですが」

 

「それも保証します。…これは元オールマイトのサイドキックだった私が断言しましょう」

 

そう言ってナイトアイは立ち上がる。

何故か少し誇らしげだ。

 

「オールマイトが第一線から退いた今、私は銀時…白夜叉より強い者を知らない!」

 

「ここは俺からもだ。全盛期のオールマイトを間近で見てきた俺から見ても銀時は相当強ぇぜ」

 

「何この公開処刑!?新手のいやがらせかよォ!?」

 

ナイトアイに続いてグラントリノが。

銀時は止めるために立ち上がるが、無情にも次がスタンバイしていた。

 

「じゃあ僕もいくんだよね!銀さんは雄英でトップに立ってる僕が手も足も出ずに負ける位強いんだよね!」

 

「も、もうこの辺で…」

 

「そぉなんスよ!坂田先生は名のあるプロヒーロー達が一撃でやられちまうようなヤバイ敵とも互角以上に渡り合ってたんスから!」

 

恥ずかしさで死にかけていた銀時が止めようとするも、この手の話が好きな切島が興奮気味に立ち上がり止めを指した。

 

「…」

 

切島の一撃により銀時は沈んだ。

最強の筈の男が速攻で戦闘不能になるという、ある意味珍事件だった。

その後、会議は無事に終わり解散となったのであった。

 

 

 

 




久々の赤バー復活!
めっちゃ嬉しいです!
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第40話

会議が終わった後、銀時とイレイザーで少しすり合わせをしてから会議室を出た。

すると、一階のテーブルで雄英の生徒陣が浮かない様子で座っているのを見つけた。

 

「…通夜でもしてんのか」

 

「若ぇのは元気だけが取り柄なんだからよォ。んな顔すんなよ」

 

「先生!」

 

こちらに気づいたのか顔をあげる生徒達。

 

「あ、学外ではイレイザーヘッドで通せ」

 

「俺は何でもいいぞー」

 

そんなことを言いながらテーブルに近寄っていく。

 

「いやァしかし…今日は君たちのインターン中止を提言する予定だったんだがなァ…」

 

「ええ!?今更なんで!!」

 

イレイザーの言った事に過剰に反応する切島。

まぁ気持ちは分からなくもないが。

イレイザーはそのまま緑谷達の方に話をしに行った。

銀時はと言うとミリオ達の方に向かったようだ。

 

「ミリオ…顔を上げてくれ」

 

「ねえ。私、知ってるの。ねえ通形。後悔して落ち込んでてもね仕方ないんだよ!知ってた!?」

 

「その通りだぜ。ミリオ」

 

天喰とねじれが落ち込んでいるミリオを励ましている所に銀時も来て、ミリオの肩に手を置いた。

 

「…銀さん」

 

「下向いてて何ができるよ?救けてェんだろ?」

 

弱々しくこちらに顔を向けたミリオに銀時は言った。

 

「そんなの救けたいに決まってる…!」

 

うつ向きながらも力強く言うミリオ。

銀時は続けて言った。

 

「なら前を向け。顔を上げろ。…これは緑谷にも言ったがよォ…地面にゃ希望なんか転がっちゃいねェよ。掴みてェなら…救けてェなら…誰よりも前を見ろ。分かったか?」

 

「っ!…もう!大丈夫です!」

 

「そりゃあなによりだ」

 

どうやら吹っ切れたようで、ミリオはいつも通りに戻った。

イレイザーの方も話はついたようで、銀時はイレイザーの方に戻った。

銀時が戻ったのを確認すると、次は全員に聞かせるように話し出す。

 

「今回はあくまでエリちゃんという子の保護が目的。それ以上は踏み込まない。一番の懸念は敵連合が関わってくるかだが…銀時はどう思う」

 

「俺ァ関わってくると思うね。ただの勘になっちまうがな」

 

「いや、充分だ。銀時の勘は良く当たる。…とまあそう言う事だ。頭に入れておくように」

 

『了解です!』

 

こうして話し合いは終わり、解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議があった翌日。

学校では普通に授業が行われているが、銀時は教室ではなく廊下を歩いていた。

 

「どォすっかなァ。…とりあえずパワーローダーのおっさんとこ行ってみるかね」

 

そう言って工房に向かって歩き出した銀時。

授業も出ずに何をしているかと言うと…

 

 

 

 

 

少し時間は遡り、会議があった日の夜。

寮に戻りくつろいでいると部屋のドアがノックされた。

 

「銀時、入るぞ」

 

「あん?…消太か。どォしたよ?」

 

入ってきたのはイレイザーだ。

 

「言い忘れてたんだが、銀時…刀を用意してくれ。出きるだけ早くだ」

 

「刀だァ?なんでって…言うまでもねェか」

 

「ああ。最大戦力のお前には本気で行ってもらわなきゃな」

 

イレイザーは銀時に刀を用意するように話に来たらしい。

確かにこれは必須だ。

今回は木刀だけで乗り切れる程簡単ではない。

 

「分かった。そんで…刀売ってるところか、刀鍛冶に心当たりはあるか?」

 

「まぁ、少し調べてみたんだが…なかった」

 

「そォか…。まァ、刀使ってるヤツなんていねェもんなァ。とりあえず探してみるわ」

 

「ああ。頼む」

 

 

 

 

 

こんな会話があったのだ。

そして、始めに思い浮かんだのがジャスタウェイを再現してくれたパワーローダーの所だった。

工房に到着しドアを開ける。

 

「うーす。パワーさん、いるかー?」

 

「ん?ああ、銀時か。どうかした?」

 

「刀が欲しいんだけどよォ。打てる?」

 

「また急だね。打てなくはないけど…専門外だから1週間はかかるよ?それにできたとしても品質は保証できないね」

 

パワーローダーはいたが、刀は専門外のようだ。

いくら天才肌で通っていたとしてもちゃんとした刀を作るのは難しいみたいだ。

 

「まァ、そーだよな…」

 

「悪いね」

 

「いや、大丈夫だ。そんじゃ邪魔したな」

 

そう言って工房を出た銀時。

ちょうど昼休みの時間になったようなので一旦寮に戻ることにした。

 

「いやー、どーすっかねェ…ん?」

 

自室に向かって歩いていると、部屋の前にイレイザーが寄っ掛かっている。

どうやら銀時を待っていたようだ。

 

「来たか…ちょっといいか?」

 

銀時は了承して部屋に通した。

するとすぐに本題にはいる。

 

「進展はあったか?」

 

「パワーローダーのおっさんの所に行ったんだが…ダメだった。正直すでに行き止まりなんだが…」

 

「…まぁそうだろうな。個性が当たり前になったこの時代に刀を使う人間はほとんどいないだろう」

 

特に顔が広いわけでもない2人からすると中々に難しい問題だ。

さらに、銀時以外で刀を使ってる人自体を見ない。

だが…

 

「だよなァ。…まァ、1つだけ心当たりはあるんだけどよォ」

 

「ああ。俺もそれを言いに来たんだ」

 

お互いに1つだけ心当たりがあるみたいだ。

あまり乗り気ではないがそれ以外に方法が思い浮かばないようで、行く決心をする。

 

「…やっぱ行くしかねェか」

 

「行ってこい」

 

「…はぁ。わーったよ」

 

これで、昼の話し合いは解散となった。

そして放課後。

銀時はある人物を呼ぶために教室に来ていた。

 

「八百万ー。いるかー?」

 

「あら?坂田先生?」

 

「いたいた。ちょっと来てくれ」

 

「分かりました!」

 

その人物とは八百万だった。

銀時は八百万を呼び、教室を出る。

 

「坂田先生。なんでしょうか?」

 

「あー。急で悪ィんだけどよ…今日、お前ん家行っていいか?」

 

話し始めた銀時だが、色々とはしょりすぎてとんでもないことになっている。

八百万は完全に勘違いしてしまっていた。

 

「へ…?///せ、先生!今なんと仰いましたの!?///」

 

「あん?だからお前の実家に行きたいんだけど…って何で顔赤くなってんだよ」

 

「あ、あの…そ、そう言うのはまだ早いかと…///で、でも先生なら…」

 

勘違いは加速し、八百万はぶつぶつと一人言を喋りだしてしまった。

しかも、なんか色々とダメな事を言っちゃってる八百万さん。

 

「んん?…やっべ!八百万!違くてだなーーー」

 

やっと気づいた銀時はちゃんと説明をした。

死穢八斎會の事は口外禁止となっているため、言ってはいないが今後、必ず銀時には刀が必要になるだろう。

 

「そう言う事でしたの…。分かりました。お父様とお母様に話してみます」

 

「ああ。頼むな。それにしても…何て勘違いしてしてんだよ!いやらしい子!」

 

「っ!///せ、先生の説明不足ですわ!///」

 

こんな事がありながらも無事に八百万の家にお邪魔することになった銀時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着きましたわ!ここが私の家です!」

 

「で、でかすぎィィィ!」

 

(な、なんだよ!これェ!お嬢様なのは知ってたけどここまでとは…!磯村君(全蔵)の屋敷の何倍あんだよ!?)

 

八百万の家…と言うか屋敷に到着した銀時。

想像の遥か上をいく程に巨大な屋敷を前に怖じ気づいていた。

 

「どうかしましたか?早く行きましょう!」

 

「お、おお」

 

中にはいると案の定、出迎えがありさらに銀時を縮込ませる。

もう帰ろうかと思ったその時、奥の大きな扉が開き、2人の男女が歩いてきた。

さらに、その後ろには執事のような者があの刀を持っていた。

 

「初めまして、坂田先生。お噂はかねがね。百の父です」

 

「母です」

 

「ど、どォも…じゃねェ!は、初めまして。百さんのクラスの副担任をしています。坂田銀時です」

 

「百さん…!?///」

 

優雅に挨拶をしてくる2人に対し、銀時は柄にもなくできるだけ丁寧に返した。

1人場違いに顔を真っ赤にしているヤツがいるがスルーの方向で話を進める。

 

「ははっ。そんなに畏まらなくても結構ですよ?」

 

「…ふぅ。すんません。助かります」

 

ここから話は思っていたよりすんなり進んだ。

 

「娘から話は聞いています。…宜しかったら使ってやってください」

 

「い、いいんすか?そんなにあっさり…」

 

銀時が驚いてしまう程にあっさりと差し出された。

話を聞いてみると…

 

「はい。元々は祖父の趣味でして。私はこれといって愛着はないので。それに…あなたの様なヒーローに使われた方が打った方も喜ぶでしょう」

 

「…そォ…ですか。それじゃあ使わせて貰います」

 

そう言って銀時は刀を受け取った。

愛着がないと言っていたが、本当に綺麗に保管してあったようだ。

こうして、刀探しは終わりを向かえた。

刀を受け取ったあとは夜飯をご馳走になり帰路に着くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃお邪魔しました。大事に使わせて貰います」

 

「ええ。お気をつけて」

 

「またいらしてくださいね」

 

「それでは、私も寮に戻ります!」

 

こうして、銀時と八百万は家を後にした。

帰り道で。

 

「すまねェな。夜飯までご馳走になっちまって」

 

「いえ。私も楽しかったので!」

 

話ながら2人で歩いていると、八百万が何かを聞きたそうにチラチラと銀時の方を見ている。

 

「ん?どうかしたか?」

 

「あっ!いえ…坂田先生はその刀を打った方を知っていらっしゃるのかと…」

 

「あー。まァ…な。古い知り合いだ。昔、世話になったんだ」

 

「そうでしたの。それとーーー」

 

その後は他愛もない話をしながら帰路を歩いた。

歩きながら銀時は想いを馳せる。

刀は使う人によってはただの鉄の塊だ。

だが、時に魂が宿ると言う。

それを銀時は身をもって経験しているのだ。

護るための剣。

銀時は決意を新たに歩みを進める。

 

(今度は折らねェ。絶対にだ)

 

決戦の時は近い。

 




閑話みたいなものです!
次から乗り込みます!

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第41話

八百万の家にお邪魔した翌日。

早くも決行日が決まったようで連絡がきた。

この前と同じように一度集められ説明を受けると、本拠地にいるらしい。

ナイトアイが八斎會の者を発見し、予知で見たため確証もとれている。

そして、決行日。

警察署の前に総員集められていた。

 

「ふぁ~。あーねむ。はぁ…こんな朝っぱらからやんのかよォ」

 

「お前はこんな時でも変わらないな」

 

現在は朝の8時。

ナイトアイが指揮を取り、色々とやっている。

そんな中、銀時は欠伸をしながら愚痴をこぼしていた。

 

『先生!』

 

イレイザーに窘められていると、学生組が寄ってきた。

 

「よォ。朝から元気だねェ」

 

「本当ですよね。着いていけないですよ」

 

「うわー。無気力2人組だ」

 

こんな感じで談笑していると、遂に時間がやってきた。

 

「相手は仮にも今日まで生き延びた極道者。くれぐれも気を緩めずに各員の仕事を全うしてほしい!出動!」

 

こうして、八斎會邸宅への移動が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八斎會邸宅の入口前。

厳戒態勢の中、決行される。

令状を読み上げてからの突入と言うことで、警察側を仕切っている人が歩み出る。

 

「令状読み上げたらダーッ!!と!行くんで!速やかに…」

 

後ろに振り返り最後の確認だ。

少し後ろの方ではヒーロー達が待っている。

 

「あれ?坂田先生は?」

 

「さっきまでいたけど…」

 

「あのアホ…!」

 

学生組が回りを見渡すなか、イレイザーは銀時を見つけていた。

銀時はと言うと…

 

「はーい。抵抗はやめて大人しく出てきなさーい」

 

警官の横を通り抜け、一番前に出ていた。

何故かメガホンをもってだ。

さらに、もう片方の手には何やら袋のようなものを持っている。

 

「さもないと…」

 

「ちょっと!ヒーロー!困りま…」

 

警官は銀時の事を止めようとしたが遅く、手に持っていた袋のようなものを門の上から投げ込んだ。

その袋は空中で広がり、中に入っていたものがあらわになる。

それは…銀時愛用の爆弾だった。

もちろんジャスタウェイだ。数は10程。

そして、ジャスタウェイ達が門の向こうで地面と接触した瞬間に、大爆発が起こった。

 

BOOOOOOOOM!!!

 

「爆撃しますよ~」

 

『もうしてるじゃねぇかぁぁぁぁぁ!!!』

 

銀時の馬鹿みたいな暴挙に、警官は叫び、銀時を知らない他のヒーロー達はドン引きしている。

門は跡形もなく消し飛び、煙で見えないが奥の方では人のうめき声が聞こえる。

もはや、どっちが極道か分かったもんじゃない。

さすが銀時。

空気を読むつもりがない。

さらに銀時は続ける。

 

「よォし!てめェ達ァ!下手な小細工はいらねェ!突入だ!責任は!…えーっと、あー。…未来さんが取る!行くぜェ!!!」

 

何とも気の抜ける掛け声。

しかも、責任の全部をナイトアイに押し付けると言う荒技まで使いやがった。

ナイトアイはと言うと…

 

「…くくっ…!実に愉快だ!いいだろう!全責任は私が取る!銀時に続け!!!」

 

実に楽しそうだった。

ナイトアイ的には銀時の一連の行動はユーモアに溢れていると感じたらしい。

やはり、この人も大概だった。

 

「ハッハッハ!ほんまにおもろいなぁ!銀!乗ったで!サンイーター!烈怒頼雄斗!行くでぇ!」

 

「坂田先生怖っ…」

 

「さすが先生!押忍!行きます!」

 

「俺もこっちの方が性に合ってるぜ」

 

「アイツ…終わったら説教だな」

 

ファット達、ロックロック、イレイザー等、どんどん踏み込んでいく。

実に予想外な展開だが、幕開けだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

跡形もなくなった門を越えて少し進むと、倒れた組員達の奥から大男が突っ込んできた。

 

「あんたら…それでもヒーローですかァ!!!」

 

「うおっ!?びっくりさせんじゃ…ねェ!!!」

 

先頭にいた銀時はギリギリ交わし、すれ違いざまに首元に木刀を叩き込んだ。

 

「ったぁ!?…何するんですかァ!!!」

 

「はぁ!?結構本気で打ったんだけど…」

 

大男は銀時の一撃をモロに食らったにもかかわらず、痛がるだけで大したダメージにはなっていないようだった。

そして、振り返り再度突っ込もうとしたところで誰かが間に割って入った。

 

「彼はリューキュウ事務所で対処します。白夜叉さん達は先に行ってください」

 

「おー!サンキュー!リュー…龍ゥ!!?マジモンの龍じゃあねェかァ!!?」

 

銀時は振り返り礼を言おうとすると、そこには龍がいた。

めちゃくちゃ驚く銀時。

ってか作戦に参加してる人の個性くらい把握しようぜ…

 

「これが私の個性ですよ。ほら、早く行って」

 

「あ、ああ。…そォいや…波動達を頼む。大事な生徒なんだ」

 

「ふふっ。おまかせください」

 

リューキュウに急かされ、走り出そうとした銀時は思い出したように振り返って言った。

こう言う所が普段はチャランポランだが、回りに認められる理由なのだろう。

銀時達はリューキュウに任せ、走り出した。

屋敷の中に入り、少し進む。

 

「未来さん。案内頼む」

 

「ああ。任された。…こっちだ」

 

中に入ってからはナイトアイ、先導の元進んでいった。

目的は隠し通路がある部屋だ。

 

「いやァ…それにしても!はぁ~!スッキリしたぜェ!」

 

「お前…いつか極道者に刺されんぞ」

 

「はっ!極道がなんぼのもんじゃい!こちとら、最強の宇宙海賊と事を構えてんだ!極道なんて鼻くそよォ!」

 

先頭から少し下がった銀時はイレイザー達と並んで進んでいる。

なにやら物騒な事を言っているが気にしていない。

 

「銀のお陰で敵さんが警戒してたとか関係なくなったな!」

 

「始めっから問答無用で突入しとけば良かったんだよ」

 

「いや、警察に協力して貰ってる時点でダメでしょう」

 

進みながらもまだ他の連中もまだ余裕があるみたいだ。

そうして進んで行くと、ナイトアイが予知で確認した隠し通路への入口に到着した。

 

「ここだ」

 

通路の開きかたを知っているナイトアイが操作をして、通路が開く。

 

「んなとこ普通分からねェな…あん?…なんか来んぞ!」

 

通路が開ききると、銀時が言った通り3人飛び出してきた。

銀時が木刀を抜こうとしたところで、ナイトアイ事務所のサイドキック2人が前に出た。

 

「ここはお任せを!バブルガール!1人頼む!」

 

「了解!」

 

流石のお手並みで2人は即座に3人を拘束した。

 

「ナイス!泡女!中々やるじゃねェの!」

 

「ちょっと坂田さん!その呼び方やめてって言ってるじゃないですか!」

 

「んじゃ今のうちに行こーぜ!」

 

「無視しないでぇぇぇ!!!」

 

いじられ役が板についてきたバブルガール。

取り敢えず、無力化してから合流するらしく、銀時達は先に進んだ。

 

「もうすぐだ!急ぐぞ!」

 

隠し通路は地下に繋がっており、階段を下っていく。

すると、そこは行き止まりだった。

 

「なっ!?行き止まりじゃねえか!!」

 

「説明しろナイトアイ」

 

「まァ落ち着けって…ミリオ、見てきてくれ」

 

「分かりました!」

 

言い合いになる前に、銀時が気を利かせてミリオに壁を抜けて見てくるように指示を出す。

 

「壁で塞いであるだけです!ただ、かなり厚い壁です」

 

結果的には壁に塞がれているが、通路は続いているようだ。

道が塞がれている事を聞かされたプロ達は少し慎重になっているためか動きが止まっている。

そこで…

 

「いいじゃねェか…おら!そこのガキ2人!初仕事だ」

 

「ハイ!」

 

「押忍!」

 

銀時が緑谷と切島に呼び掛ける。

2人は一切躊躇することなく歩み出て壁の前に立った。

ちゃんと覚悟はしてきているようでなによりだ。

そして…

 

「スマァーッシュ!!!」

 

「烈怒頑斗裂屠!!!」

 

壁をぶっ壊した。

これには他のプロ達も少し侮っていたと認めたようだった。

そして、先に進もうとしたところで異変に気づく。

 

「っ!!道が…」

 

「道が!!うねって変わってく!!」

 

個性でこの現象が起こっているのは理解しているが、明らかに規模が桁違いだった。

さらに、話を聞く限りだとこれ程に大規模に影響を及ぼすことなど難しいようだった。

軽いパニック状態。

その中でも一際酷いのが天喰だった。

 

「道をつくり変えられ続けたら向こうは…ああ…ダメだ…もう…女の子を救い出すどころか俺たちも…!」

 

「環!!」

 

「この…バカちんがァ!…ついでにお前も…だァ!」

 

その環に喝を入れたのはミリオと銀時だった。

銀時にいたっては結構強めに木刀で小突いている…ミリオも一緒に。

 

「いだっ!?」

 

「い、痛い!?なんで!?」

 

シリアス突入の流れを見事にぶったぎった銀時。

ミリオは普通に混乱している。

 

「環!てめェコラ!その癖直せっつったろォが!」

 

「で、でも…実際に…!」

 

「でもじゃねェ!男が泣きごと言ってんな!俺もミリオもおめェを認めてんだ!こんなちっぽけなピンチじゃ太陽は沈みはしねェよ!おめェはその太陽を食らうんだろォが!」

 

「っ!」

 

「ミリオもだ!なにをそんなに追い込まれてんのか知らねェけどよォ!笑えてねェぞお前!子供の1人や2人笑いながら救けてやんのがヒーローだろォが!」

 

「銀さん…!」

 

シリアスは消え去ったかと思いきや、銀時の熱い言葉が響いた。

不意にみせるこの熱さがまさに銀時らしい。

ミリオと天喰はちゃんと前を向けたようだ。

 

「ったくよォ。強くなってもまだまだガキンチョじゃねェか…ほんとによォ」

 

もう2人は折れないだろう。

これも坂田銀時と言う男の強さなのだ。

 

 

 




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第42話

銀時達は目まぐるしく変化する通路の対応に追われていた。

ミリオだけは個性で意気揚々と先に進んでいった。

そんな時、銀時が痺れを切らして口を開く。

 

「ちっ。これよォ…どっかに個性使ってるヤツがいんだよなァ?」

 

「そうだな。あまり遠くにはいないと思うが…」

 

「この辺の壁全部ぶった斬っていい?腹立ってきた」

 

「おっ!それいいやん!いったれ!」

 

そう銀時が言った数秒後、また目まぐるしくうごめき始めた。

そして、回りに気を取られた次の瞬間、銀時達が立っている床に大きな穴があいた。

 

「うおっ!?」

 

落下は一瞬。

落ちた先は広間のような空間だった。

 

「冗談キツいぜ…」

 

「広間…?」

 

「ますます目的から遠のいたぞ!良いようにやられてるじゃねえか!!」

 

相手の思いどおりにされて、イラつく者や困惑する者など様々だ。

この状況はよろしくない。

そうしていると…

 

「おいおいおいおい。空から国家権力が…不思議なこともあるもんだ」

 

3人の敵が現れた。

ますます相手の狙い通りと言うわけだ。

 

「よっぽど全面戦争したいらしいな…!さすがにそろそろプロの力見せつけ…」

 

ファットが流石に我慢ならないといった様子で前に出ようとした。

それを制した者が1人。

 

「そのプロの力は目的の為に…!!こんな時間稼ぎ要員…俺1人で充分だ」

 

それは環だった。

銀時の言葉とミリオに背中を押されたのだろう。

 

「何言ってんスか!?協力しましょう!」

 

当然、はいお願いしますとはならないだろう。

だがここで銀時が環に歩み寄った。

 

「環が自分からかって出るなんて珍しいじゃねェか。…自暴自棄じゃねェんだよな?」

 

「もちろんです。これが最善だ」

 

「そォか…分かった。おめェに任せる」

 

「っ!?正気かい!銀!」

 

銀時のまさかの言葉に突っ掛かるファット。

だが、銀時は続ける。

 

「ああ。まァ…流石に3対1ってのはよォ。未来さん一番厄介なのはどいつだ?」

 

「うむ…窃野だろう。あの刀を持ってるヤツだ。個性は窃盗…目で見ているものを自分の手に引き寄せる」

 

銀時にふられたナイトアイは思惑が分かった様で、淡々と説明した。

イレイザーも気がついたのか銀時に問いかけた。

 

「…援護必要か?」

 

「いや、いらねェ」

 

銀時はそう言って前に出る。

どうやら銀時は環の負担を減らすために1人片付けるつもりのようだ。

 

「あれあれ?天下の白夜叉が相手してくれるの?嬉しいねえ」

 

「そりゃ良かった。感謝しろよ?チンピラくん」

 

標的にされた窃野は道化じみた態度で完璧に舐めている。

対する銀時も煽るように返した。

銀時の煽りにピクリと反応した窃野。

内心はキレているのだろう、確実に勝つために銀時の腰に差してある刀に手を伸ばそうとした。

だが…

 

「…へへっ。それにしても…良い得物もってんじゃん」

 

「え、なに?欲しいの?なら…」

 

「ああ。ま、勝手に貰うんだけどね「くれてやるよ」はぁ!!?」

 

銀時は窃野が個性を発動する前に、窃野の顔目掛けて刀をぶん投げた。

当然、自分の顔目掛けて刀が飛んできているときによそ見はできない。

この時点で窃野の個性は行き場をなくす。

全て銀時の掌の上だった。

 

「っぶねえ…!はぁっ…はぁっ!し、死ぬかと思っ「窃野ぉ!!!」っ!!?」

 

「なに?今度は死にてェの?忙しいヤツだなァ」

 

ギリギリの所で刀を躱した窃野は死を間近に感じたせいか、肩で息をして悪態をつこうとした。

その時、仲間である宝生の叫び声が耳にはいる。

勢い良く顔を上げ、続けて聞こえてきた気の抜けた声が聞こえる方に顔を向けると、目の前に木刀が迫っていた。

避けられるはずもなく…

 

「た、助け…ぐぇっ!!!」

 

銀時の全力の一撃をモロに顔で受けた窃野は、錐揉み回転しながら吹き飛び、壁に突き刺さって動かなくなった。

もう一生目覚めないのではなかろうか…。

そして、銀時は最後に一言。

 

「安心しろ…峰打ちだ」

 

キメ顔で言う銀時だが、新八がいたなら盛大に突っ込んでいるだろう。

まぁ、1つ言いたいのは…相手が死ななかったら峰打ちってことにはならないよ…。

とりあえず台無し!

キマらない男、坂田銀時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ後は任せたぜ。環」

 

「はい!」

 

手早く敵の1人を葬った銀時は、環に後を託す。

環は物怖じした様子もなく返事を返す。

そんなやり取りをしていると、宝生が怒りをあらわにして叫ぶ。

 

「ふざけんなよ!こら!仲間1人やられて行かせるわけねえだろうが!」

 

「よそ見してていいのかよ?言っとくが…環は強ェぞ」

 

「がぁっ!?」

 

銀時が宝生に向けて言った瞬間、タコの足が宝生をつかんで壁に叩きつけた。

環が動き出したようだ。

敵2人を壁に拘束した環は振り返り言った。

 

「皆さん!ミリオを頼むよ!坂田先生の忠告を聞いたって言っても、あいつは根っからのヒーローだ。多分無理する。だから助けてやってくれ」

 

その声を聞きながら銀時達は走り出した。

そして、道中。

 

「色々と言いたいことはあるが…流石だな銀時」

 

「ああ。惚れ惚れする手並みだった」

 

イレイザーとナイトアイは先程の戦闘…と言うか、一方的な踏襲を振り返り銀時を称賛する。

そう思っているのはこの2人だけではないようでファット達も続けて言う。

 

「あんな個性の潰され方したらトラウマなるで!敵さんは気の毒やったなあ!」

 

「あれで無個性だろ…。いまだに信じらんねぇ」

 

「追い付くどころか離されてね?俺達…」

 

「切島くん、それは…うん…」

 

「うるせェうるせェ。褒めてもなにもでねェぞー」

 

銀時は、照れ隠しなのか受け流すような返しだった。

まぁ皆の気持ちも分かる。

間近で見てきたイレイザーや実力を知っているナイトアイならまだしも、戦闘を初めて見た者は必ず驚くだろう。

こんなに強くて無個性かと。

それほどにこのヒーロー社会では異質の存在なのだ。

こんな話をしながら銀時達は進んでいく。

 

「妙だな。地下を動かす奴が何もしてこない」

 

「逆に不気味だな…っ!?消太ァ!!」

 

「くっ!?」

 

敵に動きがないことを不思議に思いながら進んでいると、急にイレイザーの近くの壁がせり出しイレイザーを別の空間に押し出そうとした。

いち早く銀時が叫ぶが間に合わなかったようでイレイザーがせり出した壁と接触し、別の空間に強制的に移動させられると思われたが…近くにいたファットと切島がイレイザーを弾き、自分達が飛ばされてしまった。

 

「ちっ!マジで壁ごとぶった斬っちまうか…うおっ!?避けれ…」

 

痺れを切らした銀時が刀に手を伸ばした所で、銀時のそばの壁が銀時に迫る。

 

「先生!!!」

 

「銀時!!!」

 

銀時が最後に見たのは、必死にこちらに手を伸ばす緑谷とイレイザーの姿だった。

銀時は1人分断されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってェ!?んだよコレ!」

 

分断されてしまった銀時は悪態を付きながら立ち上がる。

取り敢えず状況確認だ。

 

「…何もねェし誰もいねェか。どォすっか…うおっ!?またかよっ!」

 

銀時が頭を悩ましていると、またうごめき始めた。

そして、銀時を中心に押し潰す勢いで向かってきた。

 

「…ちっ!」

 

向かってきた壁を刀で次々と斬る。

こんなことで潰されるような銀時ではないが、どうにも腹が立つ。

しかも、今の敵の攻撃でどっちから自分がこの部屋に来たのかも分からなくなってしまった。

 

「敵の思うツボってのも腹立つな…うしっ!決めたぜ!こっち行こー」

 

そう言って銀時は進む方向を決めたかと思うと壁を豆腐でも斬るかのようにスパスパと斬りながら進んで行く。

銀時がどこの戦場にたどり着くのか…もしくはどこにもたどり着けないのか。

神のみぞ知ると言ったところだ。

 

 

 

 




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第43話

それぞれの戦場で戦いが始まる中、銀時は取り敢えず前に進んでいた。

 

「よっ!ほっ!…はぁ疲れたァ~」

 

進んでも進んでも何もない部屋か通路に出る。

 

「んだよコレ…こんな事ならジャスタウェイ残しときゃ良かったぜ」

 

自分の計画性のなさと一時のテンションに身を任せたせいなのだが、銀時は悪態を付きながら次の壁の前に向かう。

すると…

 

「あー。マジ疲れたァッ!?」

 

目の前の壁から岩でできたようなトゲが顔目掛けて伸びてきた。

辛うじて避けた銀時だったが、額から血がたれてきている。

恐らく銀時じゃなかったら避けることができず顔面に串刺しになっていただろう。

 

「っぶねェ!!マジで三途の川見えたぞ今ァ!」

 

額の血を拭い、前の壁に向けて斬撃を放つ。

壁が崩れ銀時の目に入った光景は…

 

「怖っ!ミリオじゃないと避けれねェだろアレ…」

 

トゲを避けながらエリを庇っているミリオの姿だった。

まだ誰も銀時の存在に気づいていない。

 

「この子ごと…!」

 

「ああ。壊れても支障はない」

 

銀時はいまだにいつも通りだったが、治崎の声が耳に届いた。

それを聞いた瞬間に表情が一変した。

 

「なにを…言ってやがんだあの野郎…」

 

治崎はさらに続ける。

ミリオは険しい表情で治崎の攻撃を躱している。

 

「すぐに修復すれば蘇生出来る。原型を留めていなくとも元通りに治せる。その子は身を以て知っているハズだ」

 

治崎はエリをただの道具としか思っていない。

それが分かった銀時は走り出した。

その顔はいつもの気の抜けた顔ではない。

まさに鬼…夜叉だ。

 

「壊理が傷を負ったらどうする。この状況下治せるのは「オイ」っ!?があっ!!?」

 

「銀さん!!!」

 

銀時はミリオに気を取られている治崎に木刀を叩き込む。

刀で首を断ち切らなかったのはギリギリ理性が残っていたからか…。

銀時に気づいたミリオは先ほどまでの険しい表情を一転させ嬉しそうに叫んだ。

 

「よォ。ミリオ。それと…ガキンチョ」

 

銀時はミリオとエリに歩み寄り、エリの頭を乱暴気味に撫でた。

それは、あの時と同じように不器用ながらも優しさのある温かい手だった。

少なくともエリはそう感じたのだ。

エリは驚いたように顔を上げ銀時を見る。

 

「あ、あの時の…ダ、ダメだよ…!皆殺されちゃう…」

 

エリは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに頭を振り銀時達に言った。

 

「アホ。ガキが一丁前に心配すんなっつの。安心して守られとけ」

 

「…っ!………うん」

 

それを聞いた銀時はかるーくチョップをかまし、ぶっきらぼうに言った。

だが、エリにはそれだけで充分だったようだ。

この人なら何とかしてくれる。

そう思ってしまうほどに頼もしい横顔に映った。

 

「痛いじゃないか…白夜叉。お前も有象無象共と同じようだ」

 

「また厄介なのが来やしたね」

 

声がした方に顔を向けると、治崎が立ち上がっていて、横にクロノもいた。

治崎はどうやら吹き飛んだ先に壁を作って衝撃を少し殺したらしい。

ほとんどダメージがないようだ。

 

「おい壊理。早く戻ってこい。そんな薄っぺらい希望にすがって何になる。またお前のせいで死ぬぞ」

 

「…っ」

 

「っ!治崎ぃ!!!」

 

治崎の言葉にエリはうつむき、震えてしまう。

きっと頭のなかで色々な光景が流れているのだろう。

それも考えられない程に残酷な。

だが、それを見て黙っている銀時ではない。

 

「黙りやがれ。クソ外道が」

 

「…はっ。お前に何が分かる。俺はそいつを使って世の中に蔓延る無駄に数の多いだけの病人を治すんだよ」

 

「おめェの薄汚れた理想なんて分かりたくもねェよ。ただ1つ分かることは…おめェがどうしようもねェクズ野郎だってことだけだ」

 

銀時は刀を抜いていいはなった。

治崎が喚こうが銀時には関係ない。

目の前の敵を黙らせるしか方法がないのなんて分かっている。

言葉ではどうしようもない…価値観があまりにも違うのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今までの不利な状況とは違い、2対2。

お互いに距離を保ったまま銀時はミリオに話しかける。

 

「ミリオ。行けるか?」

 

「もちろん!銀さんがいれば負ける気がしないよね!」

 

先程までの険しい表情はどこへやら、ミリオに笑顔が戻っている。

いつもとは違う、銀時の真剣な雰囲気も頼もしさを倍増させているだろう。

 

「そりゃあ良い。ガキ…エリは俺が預かる。あのクソ外道の個性だとミリオが自由に動ける方が都合が良いからな」

 

「分かりました!エリちゃんをよろしくお願いします!」

 

「ああ。ちゃんと掴まっとけよ?」

 

「うん…!」

 

(やっぱり温かい…安心する…)

 

刀を持っていない方の腕でエリを抱えると、腕に抱きつき顔を胸に埋めてきた。

 

「あはは!ずいぶん懐かれてますね!」

 

「…特になんもしてねェんだがなァ」

 

頭をかきながら銀時は言う。

取り敢えず準備完了だ。

 

「んじゃ…ヒーローらしく退治といくか。背中は守ってやる。前だけ見とけよ」

 

「はい!やる気出てきたぁ!」

 

そうして2人は並び立つ。

改めて考えると、現時点で全てのヒーローを含めて最強のタッグなのではないだろうか。

元々、銀時に着いていける人物自体数えるほどしかいないのだが…。

一方の治崎達もダメージが抜けたようで動き出そうとしていた。

 

「クロノ。さっさと終わらせる…やるぞ」

 

「ええ。オーバーホール」

 

治崎の合図でクロノが銃を構える。

個性を破壊する薬が入った銃だ。

 

「さっきの修復で逃げ道は無い」

 

「あの通り抜ける個性も、白夜叉のは分かりやせんが…こいつを撃ち込みゃこっちの勝ちです」

 

そう言ってクロノは銃に指をかけ、治崎が足場と遮蔽物を崩す。

 

「銀さん!来ます!」

 

「分かってらァ!」

 

銃の標的にされたのは足場が崩れる前に上手く避けた銀時ではなく、空中に避難したミリオだった。

銀時は着地と同時に走り出す。

 

「当たるわけにはいかないよね!」

 

ミリオはマントで目眩ましをして避けるのか体を隠す。

クロノは取り敢えずマントに向かって銃をうったが上手く避けられたようだった。

 

「ズラされた…!ヒーローのマントってかっこつけだと思ってやした」

 

そんな悪態を付きながらマントが地面に付くのを警戒しながら見ているクロノ。

だが、ミリオはそこにはもういない。

完璧に意表を付いた。

クロノが気づく前にミリオは地面に潜ってクロノの顎に向かって拳を突き上げにかかっている。

 

「クロノ!」

 

ミリオの虚を付く行動にギリギリ気づいた治崎はクロノに呼び掛けながら個性で妨害をする。

もし、ミリオ1人だったら避けられていただろうが、ここにはもう1人いる。

 

「ミリオ!構わず振りきれェ!」

 

銀時はミリオの行動を予測してクロノの方に回り込んでいたのだ。

そして、地面から伸びてきた岩を両断しミリオへの妨害を防いでみせた。

そして…

 

「分かって…ますっ!!!」

 

ミリオは銀時を信じて初めから振りきるつもりでいたらしく、思い切り振りきった。

 

「なっ…がはっ!!」

 

「クロノ!!!」

 

クロノは後ろに回転しながら吹っ飛んだが、途中で治崎が個性で壁を作り受け止める。

気絶させることは叶わなかったが、大分ダメージが入ったようだ。

 

「…ふぅ。初めてにしちゃ上出来だな」

 

「いやー、銀さんがいると動きやすいですよ!」

 

ミリオの個性を使った自在な動きに合わせる銀時。

先を読んでサポートに回ることが出来るこの実力は相手の予想を遥かに上回っていることだろう。

さらに、治崎とクロノは銀時が無個性と言う事を知らない。

圧倒的にこちら側に戦況が傾いた。

なんにせよ、戦いははまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 




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第44話

銀時とミリオは初めてとは思えないコンビネーションで初撃を完璧に当てた。

クロノはモロに攻撃を受けたが、治崎の個性で修復し即座に回復したようだ。

 

「す、すいやせん…オーバーホール。油断しやした」

 

「いいから構えろ。来るぞ」

 

単純な戦闘となるとクロノは少々足手まといなのだろう。

さらに、銀時とミリオは2人ともヒーロー界でもトップクラスの強者だ。

 

「次行くぜ」

 

「はい!」

 

銀時の合図でミリオは地面に潜って姿を眩ます。

銀時はどこにミリオが現れてもフォローできるように構えている。

そんな時…

 

「…鬱陶しいな。クロノ少し下がれ」

 

治崎が床に手を置き個性を発動する。

 

「通り抜けるアイツは避けれるが…白夜叉、お前じゃこれは避けれないだろ」

 

すると、銀時の回りの床や壁が変形しトゲが無数に伸びてくる。

エリを抱えた状態で四方八方からの攻撃。

しかも速度も早いし、殺傷能力もある。

だがまぁ…相手が悪い。

 

「ふっ…ほっ、よっ…っと!…あ、ぶ、ねェッ!!!」

 

銀時は最小限の動きで躱しながら、躱しきれない者は斬り、時には掻い潜るなどをして全く意に介した様子もなく避けてみせた。

そして、最後は刀を横に一閃。

目の前に伸びた遮蔽物が真っ二つになった。

 

「…ちっ。ふざけたことを…!あれも個性によるものか…忌々しい…っ!?」

 

「ずいぶんと余裕そうじゃないか!治崎!」

 

簡単に避けられた治崎は悪態を付きながら銀時を睨み付ける。

だが、銀時に気を取られていると後ろからミリオの声が聞こえる。

慌てて振り返るが遅く、拳が迫っていた。

 

「無駄…だよね!!!」

 

「くそっ…がっ!」

 

治崎は受け止めるために手を出したがミリオの個性の前には意味がなく、顔面にモロにくらい吹っ飛んだ。

銀時はと言うと、絶賛安否確認中だ。

 

「…ふぅ。おー、エリ。大丈夫だったか?」

 

「うん…あっ!血が…!」

 

そう言って肩と首もとを指差したエリ。

銀時は気づいていなかったようだが少しかすっていたようだ。

 

「ありゃ?ちっとばかし掠ってたかァ。ま、大丈夫だぞ。痛くねェし」

 

「ごめん…なさい…」

 

銀時は気にするなと言うが、エリは責任を感じてしまい。

うつむいて、震えてしまう。

やはりこれもこれまでに育ってきた環境のせいなのだろうか…。

銀時は…

 

「んなこと気にすんなっての。それによォ…こーゆう時は『ありがとう』で良いんだよ。」

 

エリの頭に手を置いて言い聞かせるように言った。

 

「っ!…え、えっと…あり…が、とう?」

 

「おぅ。それで良い」

 

あれ?なんか、銀時がカッコ良く見える。

すげー良いヒーローに見える。

ってかガキは嫌いとか言いながら面倒見はいいんだよなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治崎を殴り飛ばしたミリオが駆け寄ってきた。

先ほどの銀時への集中攻撃を見ていたので、少し焦っている。

まぁ、心配は無用だが。

 

「銀さん!エリちゃんは!?」

 

「大丈夫だ。ってかよォ…おめェまた強くなったんじゃねェの?1人で勝てんじゃね?」

 

「良かった!…って、いやいやいや!そんなこと言ったら銀さんが1人で行った方が絶対に良いですよね!?」

 

「バカ言え。あんなの刺さったら痛ェだろ…おわっ!?」

 

場違いな話をしていると、足元からトゲが伸びてくる。

慌てながら避け、治崎が飛んでいったほうに目を向ける。

そこには服で殴られた箇所を擦りながら歩いてくる治崎がいた。

 

「つくつぐムカつくな…。病人が」

 

「へっ、言ってろ。俺から言わせりゃおめェのがよっぽど病人だぜ。なに?世の中に蔓延る病人を治すだっけ?新世界の神にでもなるつもりですかァ?先に中二病治したら?」

 

「…壊してやる」

 

銀時の容赦ない煽りが発動。

治崎は静かに怒るタイプのようだ。

内心では相当キレてると思われる。

治崎はまた個性を発動し囲うようにして銀時を狙う。

 

「ちまちま避けんの面倒くせェな。…ふっ…らァッ!」

 

それを銀時は腰の回転を使って凪払うように一閃する。

全てが両断されただの岩と化した。

 

「まだだ」

 

「んだよ…しつけェな。…あん?今なんか…」

 

「ね、ねぇ…おにいちゃんが…!」

 

治崎は間髪いれずに銀時に攻撃を仕掛ける。

銀時は攻撃を避けながら横目で治崎を視界の端に入れていたが、治崎が銀時の方から一瞬視線をそらしたように見えた。

それと同時に腕のなかにいるエリがミリオがいるであろう方向とは少し別のところを指差した。

 

「…アイツ。んなとこにいたか?」

 

銀時は次々と迫ってくる攻撃を避けながら治崎が向いたであろう方向を見る。

そこには先程まで治崎の近くに控えていたクロノがいた。

そして…銃を構えた。

 

「っ!ミリオっ…いや!行くっきゃねェ!」

 

銀時は敵の思惑に気づきミリオがいるであろう方に目を向ける。

目に入ったのは、上手く誘導されたであろうミリオが自分より背の高い岩の柱に囲まれている光景だった。

さらに、ミリオは個性を休むことなく使ったのだろう、息を荒げながら回りを警戒していた。

銀時はミリオの個性のことも、今自分がするべきことも、最悪の状況も、全て瞬時に理解して治崎の攻撃を潜り抜け最短で走り出した。

 

「はっ…はっ…はっ…!」

 

(ミリオの個性は呼吸ができなくなる…休みなく個性を使ってりゃ息切れになるのは当たり前だ…!くそっ!完璧に嵌められた…!)

 

銀時はミリオの元に向かいながら、思考を巡らせるが、もう1つしかミリオを助ける方法はないと分かっている。

いまだに銀時に向かって攻撃は来ているものの、銀時はそのことごとくを避けて走る。

 

「終わらせねェ!おめェを!ルミリオンを!終わらせてたまるかよォォォ!!!」

 

銀時の咆哮が響く。

だが、個性を発動しているミリオには届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治崎は銀時がミリオの方に向かっているのに気づいているが、気にせずにミリオに意識のほとんどを向けている。

次にミリオが個性を解くとき、その時が最後だと治崎は確信しているのだ。

無情にもその時が訪れようとしている。

そして…

 

「…撃て!クロノ!」

 

「これで…勝った…!」

 

治崎の叫びと同時にミリオを囲んでいた岩の柱が粉々になり、視界がひらける。

クロノは迷うことなく引き金を引いた。

弾がミリオに迫るのを見ながら治崎は唸るように呟いた。

 

「病人が」

 

ミリオに訪れる先程までと違い長めのインターバル。

軽い酸欠状態でなければ何が起こっているのかを理解することもできたであろう。

 

「…っはぁ!…はぁ…はぁ!き、きっつぅ…。ぎ、銀さんは…えっ…?」

 

ミリオが肩で息をしながら銀時を探そうとしたその時、横から誰かに押され倒れた。

 

「…ぐっ!ってェ…!」

 

そして、耳に入ったのは銀時の痛みを耐えるような声だった。

ミリオはすぐさま振り返り状況を把握する。

するとそこには自分の代わりに弾を受けた銀時が右手を伸ばしたまま横たわっていた。

 

「銀さん!!銀さんっ!!」

 

「…大丈夫だ」

 

ミリオが銀時に駆け寄る中、治崎は銀時を見下ろしながら吐き捨てるように言った。

 

「あーーーーーー。実に醜い。まぁ…これでヒーローごっこは終わりだよ。良かったじゃないか…白夜叉ぁ」

 

「…へっ。言ってろ…クソ外道が」

 

銀時はさも強がっている風に言葉を発する。

治崎も強がりだと思うことだろう。

さて、ついに銀時が個性を壊す弾を食らった。

『無個性』の銀時がだ。

これからどうなるのだろうか…。

まぁとりあえず…

 

(個性とか関係なくちょ~痛いんですけどォォォォォ!!!)

 

銀時は心の中で精一杯叫んでいた。

 

 

 

 

 




いやーここの展開は迷いました…。
ミリオをどうすべきか…シリアスを通すべきか…。
まぁとりあえず次も期待しててくださいな。

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第45話

銀時が撃たれた。

実際はなんともないのだが、敵は盛大な勘違いをしている。

 

「くくっ…。個性なんてものが備わってるから夢を見る。自分が何者かになれると…精神に疾患を抱えるんだ」

 

「…はっ。んなモンなくても俺は俺にしかなれねェよ」

 

(完璧に騙されてやがんな。ミリオには当たらなかったが…痛かったからぜってェ一発かますぜ)

 

銀時は傷口をおさえながら治崎に言った。

心の中では物騒なことを考えているが取り敢えずまだ泳がせるつもりのようだった。

 

「…イラつくな。お前はもう守る側の人間じゃないんだよ。弁えろよ白夜叉」

 

「治崎ぃ!お前ぇ!!!」

 

あまりの物言いにミリオは銀時が無個性で演技をしていることも忘れて声を荒げる。

まぁその方がやりやすいのが確かだが。

 

「一番滑稽なのはお前だよルミリオン。白夜叉に守られてるお前はすでにヒーローですらない」

 

「っ!くそっ…!」

 

治崎の言葉に苦しげな顔で拳を強く握るミリオ。

銀時は気にするなと肩に手を置きなだめた。

それよりもミリオは真面目に忘れているようだ。

これが演技だったら大したものだ。

 

「ミリオ。気にすんな。なにがあろうと俺は俺…お前はお前だ。意思さえありゃあ変わることはねェよ」

 

(なんかミリオのやつ俺が無個性なことガチで忘れてねェ?大丈夫か?)

 

「銀さん…!俺のせいで…!」

 

銀時は内心で少し呆れながらも演技をしていた。

すると、治崎が少しイライラした様子で話をしてきた。

 

「…はぁー。茶番は終わりにしようか…さぁエリを渡せ」

 

「悪ィが…答えはNOだ」

 

「そうか。なら消えろ」

 

銀時が迷いなく答えると、治崎は無表情で吐き捨てるように言いながら個性を発動した。

すると、銀時の回りから刺が伸び銀時を襲う。

 

「銀さん!!!エリちゃん!!!」

 

「…ちっ。悪運の強い奴だ」

 

治崎は銀時をエリごと殺すつもりで、一切の躊躇もなく攻撃を放った。

その攻撃で銀時は串刺しになったと思われたが、上手くかわしダメージは避けていた。

治崎は忌々しげに呟いたが、銀時は治崎に目もくれずエリの心配をする。

 

「いっつつ…。大丈夫かよ?エリ」

 

「わ、私は大丈夫…っ!ち、血が…」

 

「へっ…心配すんな。かすり傷だ」

 

「あー。こんなに腹が立つのは久しぶりだ。分かった…俺が直接壊してやろう。お前に触れさえすれば全てが終わる」

 

その光景を見て、治崎が対に自らの手で止めを指すべく動いた。

治崎は先ほどの攻撃でほぼ磔のような状態の銀時にゆっくり近づいていく。

だが、これこそが銀時の狙いなのだ。

銀時はダメ押しに口を開く。

 

「やってみろよ…極道者(社会のゴミ)が」

 

「…クッ…ハハッ…ハハハハハッ………死ね」

 

銀時の言葉に狂気的に笑い手を伸ばす。

治崎の最後の言葉は人間が発したと思えないほどに冷たい声だった。

そして、治崎の手が銀時に…

届くことなく地面に落ちた。

 

「…は?」

 

「オ、オーバーホール!!!」

 

今の今まで控えていたクロノが叫ぶが全く届いていない。

伸ばしたはずの治崎の手は銀時には届かない。

気づいたときには肩から先がなくなっていた。

一瞬だが、全ての時間が止まったような沈黙。

そして、傷口から血が吹き出すと共に表現しようのない痛みが全身を駆け巡った。

 

「がぁっっ!!?あァァァァアッ!!!う、腕っ…!!!」

 

「痛ェだろ…これでちったァ分かったかよ。エリの気持ちが。壊されるモンの気持ちがよ」

 

銀時は痛みを耐えるようにうずくまる治崎を見下ろしながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治崎の頭には様々な感情が渦巻いていた。

特に大きいのが痛みと困惑だった。

 

「ぐぅっ…はっ…はっ…!な、んでだ…!た、確かに個性は…ぐっ…消えた…はずだっ!」

 

「はぁ?何を言ってんだ?おめェ」

 

治崎は一番の疑問を痛みに耐えながらも叫ぶように言った。

それを聞いた銀時は、呆れたように返した。

だが、治崎はまったく理解が追い付いていないようだ。

 

「な、なにを…」

 

「いつ俺が個性を持ってるって言ったよ」

 

「…は?」

 

「だからよォ…いつ俺が個性を持ってるって言ったんだよ」

 

そして、三度目の追及でようやく1つの答えにたどり着いた。

白夜叉が…坂田銀時が、無個性だと言うことに。

だが…

 

「個性がない…だと。個性がない奴がヒーローの真似事をしていたと…そう言うことか」

 

治崎は理解が追い付かないのか、放心したように呟く。

銀時は治崎の本質を真っ向から打ち砕くかのように確信をつく。

 

「なんだかなァ。治す治すって言ってる割にはよォ…おめェが一番執着してやがるな。個性によォ」

 

「っ!」

 

そこで初めて治崎の顔が痛み以外の理由で歪んだ。

銀時はそんな治崎に目もくれず続けた。

 

「まァいいけどよ。それより早く腕治せよ。治せんだろ?こんなモンじゃねェぞ…エリが味わってきた痛みは」

 

「ぐっ…!」

 

治崎は忌々しげに銀時を睨んでいる。

治崎にとって銀時は1番の害悪だろう。

壊す個性がない、だが誰よりもヒーローだ。

 

「んだよ…別に治さねェなら治さねェでいいけどよ。んじゃ左腕もいっとくか」

 

…やっぱりヒーローじゃないかもしれない。

多分悪魔とか鬼の類いだ。

銀時は無表情のままゆっくり治崎に歩み寄っていく。

すると…

 

「先輩!!!無事ですか!!?」

 

「あん?…緑谷ぁッ!?」

 

「先生!?ま、間違えたぁぁぁぁ!」

 

銀時の横の壁が吹き飛び緑谷が現れ、その勢いのまま銀時の顔面目掛けて拳を振り抜いた。

銀時は現れたのが緑谷だったためか警戒を怠りモロにくらい盛大に吹き飛んだ。

 

「ぎ、銀さーん!!!」

 

ミリオの叫びが空間を支配した。

銀時のまともな初ダメージは緑谷の一撃となった。

 

 

 




シリアスブレイク!

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第46話

緑谷に続き部屋に突入してきたナイトアイとイレイザー。

ナイトアイは取り敢えず状況確認を始める。

 

「倒れている側近2人…片腕を失った治崎とその近くに1人」

 

さらに部屋を見渡し続ける。

 

「ほぼ無傷のミリオとエリちゃん…あとは…」

 

そして、最後に視線を向けたのはもちろん…

 

「あのバカタレに殴り飛ばされた銀時…うむ、宜しくないな」

 

ナイトアイは冷静に状況把握をしているが、内心笑いそうになっているのは内緒だ。

ユーモア的にはなかなか面白かったようである。

等の緑谷は、あれ程意気揚々と壁を壊して登場した割にハチャメチャにあたふたしている。

 

「ど、ど、ど、どうしよう!?ま、間違えたとかで済む問題じゃないぞ…これ…」

 

緑谷達がくる前までのシリアスはどこへやら、微妙な空気が流れている。

しかし、そんな状況で敵が待ってくれるはずもない。

 

「…よく分からないがチャンスだ。今のうちに白夜叉を消す…っ!?個性が…消された…」

 

「間一髪だった!デク!早く銀時を起こしてこい!」

 

治崎が当然のように倒れている銀時に攻撃をしようとしたが、ギリギリの所でイレイザーが個性を消した。

イレイザーは素早く指示を飛ばし緑谷に銀時を起こしにいくように言った。

 

「は、はい!」

 

「急げよ…問題児!」

 

緑谷は急いで銀時の方に向かう。

そこには、ミリオとエリが心配そうに銀時を見ていた。

 

「せ、先輩!先生は!?」

 

「緑谷くん!銀さんはまだ起きてないよね!」

 

銀時はいまだに倒れたままだった。

緑谷はとりあえず今の状況は不味いと揺さぶり声をかける。

 

「先生!先生!起きてください!先生!」

 

「………んんっ……うん?ありゃ…俺ァやられちまったのか…?」

 

すると、銀時は目を覚ます。

だが、当たりどころが悪かったのか少し記憶が飛んでしまっているみたいだ。

 

「先生!良かった…!」

 

「銀さん!大丈夫ですか!?」

 

「ああ…っつぅ。頭が痛ェ…」

 

とりあえず、目覚めたことに安堵する2人だった。

銀時は頭をおさえて痛がる素振りを見せる。

力を制御しきれていないと言ってもオールマイトの力だ。

効かないはずがない。

緑谷としてはとりあえず本人から聞かれるまでは黙っておこうと思っていたみたいだが、ミリオが真っ先に話してしまう。

 

「確かに…なかなかいいの貰ってましたからね!緑谷くんに!」

 

「あっ!ちょっ!先輩!?」

 

緑谷が止めようと来たが時既に遅く、銀時はミリオの言葉を聞いて思い出してしまったようだ。

 

「あん?緑谷だァ?………オイ。陰毛小僧コラ」

 

「す、す、すいませんでしたぁぁぁ!!!わ、わざとじゃないんです!!!」

 

「謝ってすめばポリ公はいらんのじゃボケェ!覚悟しとけよ…この件が終わったら…処す!」

 

「あぁ…短かったなぁ…僕の人生」

 

「あ、あはは…ド、ドンマイだよね!」

 

「どん、まい…?」

 

激おこの銀時。

緑谷は人生諦めモードに突入した。

その近くでミリオは合掌、エリはミリオの真似をして合掌している。

なかなかカオスな状況であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「銀時!大丈夫か?」

 

「ああ。ダメージは受けてねェよ。敵からのはな」

 

「うぐっ…す、すいません…」

 

銀時が目覚め、イレイザーとナイトアイに合流した。

エリはミリオに預け銀時は万全の状態だ。

イレイザーの問いに銀時は嫌味ったらしく答え、緑谷が気まずそうに謝る。

 

「まぁ、全員無事でなによりだ。ミリオも…よく頑張ってくれた…!」

 

「いえ、銀さんがいてくれたから良かったです!多分、銀さんがいなかったら僕は個性を失っていました…」

 

「まぁ俺にゃ失くなる個性がねェかんな。ほんとにヒヤヒヤしたぜ」

 

「なっ!?撃たれたのか!?本当に何もなかったのか!?」

 

「ん?ああ。大丈夫だから落ち着けって、未来さん」

 

銀時が撃たれたと知り、取り乱すナイトアイ。

だが、銀時は全く気にしたようすもなくいつも通りに答える。

まぁここは戦場だ。

いつまでも話している暇はない。

 

「んなことより…さっきの緑谷のせいであのクソ外道を逃がしちまったかんなァ。どォすっか」

 

「うっ…」

 

「おい。もうその辺でやめてやれ」

 

「へいへい。それより…アイツはどこ…っ!緑谷ァ!」

 

イレイザーに緑谷いじりをやめるように言われた銀時は全く反省したようすもなく、辺りを見回す。

そして、何かに気がついたと同時に叫んだ。

 

「ちっ!デクっ!」

 

「へっ!?うわっ!?イ、イレイザーヘッド!」

 

だが、遅かったようだ。

とっさに隣にいたイレイザーが緑谷を庇い緑谷は助かったが、イレイザーが相手の攻撃を食らってしまった。

しかも、1番厄介なものだ。

 

「2人まとめて串刺しにしたつもりだったんですが…まぁいいでしょう。これで個性が使えるでしょうしね」

 

攻撃を仕掛けてきたのはクロノだ。

攻撃を受けたイレイザーは動きが遅くなっている。

クロノの個性によるものだろう。

 

「よくやった、クロノ。これで…振り出しだ」

 

「ちっ!構えろォ!棘くんぞ!」

 

銀時が叫んだ次の瞬間、治崎の個性による攻撃が起こる。

銀時は難なく避けられたが、いかんせん規模が大きい。

治崎には近づくことができない状態だ。

他の連中も避けるのに手一杯のようである。

 

「こんな奴らに俺の計画を台無しにされてたまるか!」

 

そんな中、治崎は先ほどの攻撃で倒れていた仲間を自分の足元に連れてきた。

治崎はなにかを堪えるように、絞り出すように語りだす。

 

「なァ音本…!嫌だよなァ…!?俺がこんなところで終わるのは!!」

 

治崎はゆっくりと倒れている仲間、音本に歩み寄り手を伸ばす。

 

「音本、本当によくやってくれたよ。お前なら、俺のために…死ねるだろう!?」

 

そして、音本に治崎の手が触れた瞬間、2人の体が弾けた。

その弾けた体はすぐに修復され、1つの体になる。

これも治崎の個性の効果、破壊して融合したのだ。

 

「これでゼロに戻った。まぁ…マイナスよりかはいいだろう。さて、壊理を返してもらうぞ」

 

「あれもアイツの個性かよ…えげつねェな。どこぞのサイヤ人かよ…合体して強くなるとかよォ」

 

銀時は目の前で起こった光景を見て呟く。

真剣な表情だが、発する言葉はこんな時でも銀時らしい。

なんにせよ、第2ラウンドだ。

 

 

 

 




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第47話

治崎が自分の仲間と融合した。

単純なパワーアップなのだろうが、銀時に切り落とされた腕も修復されている。

 

「最低の気分だが…さっきよりはいくらかましだな」

 

「めんどくせェことになっちまったな…っ!?オイ!消太はどこいった!?」

 

「えっ…!?…い、いないです!」

 

治崎の変化を気にしていた銀時が一旦回りを見回すと、クロノの個性で動きを遅くされたイレイザーがいなくなっていた。

さらに、クロノもいない。

こうなってくると、ほぼ確実にイレイザーはどこか他の場所に連れていかれたと思っていいだろう。

 

「ちっ…」

 

(俺がここを離れっか?それしか…)

 

銀時は頭をフル回転させて考える。

下手をしたらすぐにでも殺されてしまうかもしれない。

イレイザーがいくら強いと言っても、戦闘能力を失った状態では勝負にすらならないだろう。

そうして考えていると、近くに気配を感じた。

 

「随分と余裕じゃないか。白夜叉ぁ!」

 

「銀時!屈め!」

 

「…っ!?っぶねェ!」

 

銀時は治崎の声と被るように聞こえた声に従い、しゃがみこんだ。

銀時の頭の数センチ上をナイトアイの武器である押印が通過した。

そして、治崎に向かいまっすぐに飛び、体勢を崩すにいたる。

それにより、銀時に向かっていた治崎の手は逸れてギリギリのところで体に触られることはなかったが、銀時の来ている着物の袖の部分に治崎の指がかすった。

すると、指が触れた部分が塵になってなくなる。

本当に触られた時点でゲームオーバーだ。

 

「悪ィ、未来さん。助かったぜ」

 

「ああ。それよりも戦いに集中しろ。触られたら終わりだぞ」

 

「分かってるんだけどよォ…ってかエリはどうしたんだ?」

 

「イレイザーヘッドとエリちゃんの事なら安心するといい」

 

取り敢えずナイトアイに礼を言う銀時。

ナイトアイは銀時に集中するように言うが、尚も頭を悩ませている。

そんな銀時にナイトアイはある方向を指差して言った。

その先には…

 

「銀さん!イレイザーヘッドの事は俺に任せてほしいんだよね!個性でしらみ潰しに探してきます!」

 

「っ!その手があった!ミリオ頼んだぜ!」

 

「ハイっ!」

 

ミリオが近くの壁に手を当てながら立っていた。

銀時は即座に顔を上げ、ミリオの提案に乗っかる。

ミリオは返事をした後、すぐに壁を抜けていった。

少し離れたところには、ナイトアイからエリを預かった緑谷が手を上げてこちらに合図を送っていた。

これで不安はなくなった。

銀時は一度大きく深呼吸をして刀を構え直す。

 

「…はぁ~。すまねェな。もォ大丈夫だ」

 

「ふっ…では、共闘といくか」

 

「そりゃあいい。背中は任せるぜ、未来さん」

 

「もちろんだ。銀時も…いや、聞くまでもないか」

 

ナイトアイは銀時の横に立ち押印を構える。

この2人、実は今回が初めての共闘なのだが…心配はいらなそうだ。

2人は治崎の前に並び立つ。

 

「いつまで続けるつもりだ。そのヒーローごっこを…虫酸が走るんだよ」

 

「はっ、言ってろ。俺もおめェのクソみてェな考えにゃ虫酸が走るね。それも全身を全力ダッシュされてるね。あー気持ち悪ッ」

 

「こんな時にもユーモアを忘れないとは…さすがだな!銀時!」

 

「…壊してやる…全てを。お前たちの全てを…!夢は所詮夢でしかない」

 

こんな時でも自分のスタイルを貫く銀時の物言いに、ナイトアイは堪らず拍手を送る。

ここは戦場だと言うのに…この2人はとことん波長があっているようだ。

そんな2人をよそに治崎は狂気的に、淡々と言って銀時とナイトアイに突っ込んできた。

それが合図となり戦場が動く。

 

「来やがったな。んじゃ、行くぜェ!」

 

「ああ。行こう」

 

治崎を迎え撃つべく戦闘態勢に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ナイトアイからエリを預かった緑谷は絶賛悩んでいた。

 

「僕もイレイザーヘッドを探した方がいいのか…それとも…」

 

緑谷はそう言いながら隣にいるエリを見る。

エリは銀時達の方に目を向けていた。

 

(エリちゃんの安全が第一だ。下手に動いて敵と出くわしたら危ない…よね)

 

一応、方針は決まったようだ。

実際にこの館の中にまだ他の敵がいると言うことも考えられる。

まだ学生の緑谷がエリを庇いながら戦うとなると…考えるまでもなく詰む。

最善だろう。

 

「それにしても…」

 

緑谷もエリが見ている戦場に意識を向ける。

そこには今までとは比べ物にならない程の攻防が繰り広げられている。

緑谷が入っていくのは難しいだろう。

 

「すごいなぁ…。まだまだ遠いや」

 

自分の先生達を見て、緑谷は呟く。

あんな次元にいつ行けるのかと言う気持ちと、あんなにすごい人達に教わっていると言う気持ちが混ざり不思議な気分だった。

そうしてしばらく立ち尽くしていると、不意に足の辺りに違和感を感じた。

そちらを見てみると、エリが辛そうにしながらも必死に目を背けまいと銀時達を見続けていた。

よく見れば震えている。

 

「…っ」

 

「エリちゃん…」

 

普段の緑谷であれば、慌てながら捲し立てるように言いそうな場面だ。

だが、不思議と落ち着いていた。

そして半ば無意識にこんな言葉が出てきた。

 

「大丈夫だよ…エリちゃん。坂田先生が必ず助けるって言ったんだから。ね?」

 

あの時、初めて治崎と接触した時。

側にいた緑谷には聞こえていたのだ。

2人の交わした言葉が。

その時の事を思い出しながら、噛み締めるようにもう一度言う。

 

「うん。やっぱり大丈夫だ。本気になった先生は…誰よりもヒーローだから!」

 

「っ!うんっ!」

 

(本当に…すごいなぁ)

 

エリもあの時の事を思い出したのか、弾けるように顔をあげて笑いながら言った。

自分もいずれは人をこんな笑顔に出きるようなヒーローになりたい!

そんなことを思わせてくれる程に年相応の眩しい笑顔だった。

銀時が放つ鈍い光は、緑谷にはまだ眩しすぎるみたいだ。

 

 

 




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第48話

お待たせしました!
取り敢えず死穢八斎會編が終わるまではこの小説に集中しようと思います!


戦場では、銀時とナイトアイが治崎と対峙している。

治崎は目の前の2人を消すために正面から突っ込んできている。

 

「おーおー。さっきより大分速ェな」

 

「ふっ。何を言っている。銀時やオールマイトと比べれば大したことはない」

 

2人はそう言いながら左右に分かれるように飛んだ。

 

「ちっ…うざったいな。まとめて死ね」

 

治崎はナイトアイの方に方向転換しながら4本の腕を地面と接触させる。

すると、次々と棘が地面からのび、2人を襲った。

 

「…これは当たったら痛そうだ…ふっ!」

 

ナイトアイはお得意の経験と予測で上手く避け、治崎に押印を投擲する。

治崎は突進したまま顔に飛んできた押印を防ぐために腕をかざした。

だが…

 

「…ぐぅっ!?なんだこれは…」

 

予想外の衝撃に突進が止まる。

腕は今の一撃で砕かれたのか、力無く垂れている。

 

「これは特別製でな。重さ5キロの押印だ」

 

「やっかいな…」

 

治崎の動きが止まったことにより、銀時の方の攻撃もおさまった。

銀時は最後の1つを真っ二つに切り裂いて、つまらなさそうに言う。

 

「ほっ!…なァんかこの攻撃飽きてきたんだけど。おい、お山の大将さんよォ!他に無ェの?」

 

本心からの言葉なのだが、治崎のストレスは高速で溜まっていく。

ナイトアイはまだしも、銀時と治崎とでは経験も素の実力も、何もかもが違う。

修復の力でダメージこそ無いが、治崎はこれまでの攻防で1度も銀時にダメージを与えられていないのだ。

 

「…っ」

 

「んだよ。それならウチのガキ共のがまだ厄介だぜ」

 

押し黙る治崎を見据えながら銀時は歩いてナイトアイのもとに向かった。

 

「ん?未来さん、ちょっとカスってんじゃねェか。服破けてんぞ」

 

「…私を銀時やオールマイトと一緒にするな。一対一の勝負では多分私は勝てない」

 

そんな話をしていると、また地面から棘が伸びてくる。

2人は難なくかわすがまた二手にわかれてしまった。

 

「芸のねぇヤローだ」

 

銀時はそうボヤきながら躱していく。

治崎はどうやらナイトアイの方に攻撃を集中させているらしく銀時の方は足止め程度の攻撃だ。

避けながらナイトアイの方を眺めていると、合図が飛んできた。

 

「ん?…りょーかい。っと」

 

合図を受けた銀時は走り出し、ナイトアイの正面になるように位置取った。

そして、合図を送る。

すると、ナイトアイは治崎の攻撃を上手く躱しながら押印を投擲した。

 

「…よし。ふッ!」

 

向かう押印は1つのみ。

治崎は馬鹿にしたように鼻で笑いながら難なく避けた。

 

「はっ、こんなもの当たらなければ何の問題もない」

 

「そうだな…当たらなければだがな」

 

そんな治崎に対し、中指でメガネを上げながら言うナイトアイの口元はわずかに笑みが浮かんでいる。

 

「つくづく腹が立つや…」

 

「ふぅ~!良い球きたァ!…そーらッ!」

 

戦いが始まってから今までずっとペースを握られ続け、依然として余裕な態度を崩さない2人に思わず不満をこぼす。

だが、その一瞬の隙が命取りだ。

 

「なに…がぁっ!!?」

 

背中の方から聞こえた銀時の声に振り返ろうとした瞬間に背中に物凄い衝撃を受けて前のめりに吹き飛び、ナイトアイの少し横の壁に激突した。

 

「いや~!ナイスコースだったぜ!未来さん!」

 

「ふっ…銀時の打った押印は速すぎて目で追えなかったぞ」

 

吹き飛んだ治崎に目もくれずハイタッチを交わす2人。

この2人がやったことは単純なことで、ナイトアイが避けられることを前提で投擲した押印を正面に回り込んでいた銀時が木刀で打ち返しただけだ。

まぁ、当たったら人が吹き飛ぶような物を簡単に打ち返す銀時の技術には脱帽だが…

なんにせよ、初共闘で初連携が見事に噛み合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時とナイトアイの連携により見事に吹き飛んだ治崎は地面に大の字で倒れながら個性で体を治していた。

 

「………い」

 

その目はどこか虚ろでなにかを呟いている。

 

「……ない」

 

弱々しい声量とは裏腹にどこまでも黒く、地に響くような声で治崎は言った。

 

「たりない」

 

それは力への渇望か、自分が目指す野望なのか。

 

「何もかもが…たりない」

 

今まさに、治崎の頭の中では様々な光景が鮮明に写し出されていた。

たどり着いた先にあったのはこの社会の根本を否定するような野望だ。

それはヒーローからすると絶対的な悪だとしても、自分だけがそれを正義にすることができる。

そして、その方法は1つだけだ。

 

「全てを壊して…この腐った社会を俺が治す」

 

今、治崎の中で何かが変わった。

身に宿した狂気が、計り知れない憎悪がまだ未熟だった治崎を1つ上のステージに押し上げた。

 

「その為の第一歩がお前達だ…サー・ナイトアイ、白夜叉ァ!」

 

治崎はそう言って寝転んだまま地面に手をつき個性を発動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、銀時とナイトアイの2人。

治崎が倒れてから数分がたった。

銀時とナイトアイはさすがに不信感を募らせ始めている。

 

「アイツ…何を企んでやがんだ?」

 

「ふむ…治崎の個性からしてあの程度の攻撃で終わるとは思えん…」

 

そう言って顔を見合わせる2人。

 

「ん?」

 

「む…」

 

少しの振動を感じ取った2人は警戒心を強める。

すると2人の視線の先に、治崎が個性で作り上げたであろう巨大な岩でできた腕が地面から伸びてきた。

 

「おいおい…」

 

「これは…先程までとは違う」

 

よく見ると、2本の腕の間に柱のようなものが伸びており、その上に治崎がたっている。

 

「いけ」

 

治崎が手を触れて個性を発動すると銀時達の足元に先程までと同じように棘が伸びてきた。

 

「ちっ…!」

 

「っ!これは…」

 

床に逃げ場がない場合、逃げるなら飛ぶしかない。

空中に投げ出された2人に無慈悲にも向かってくる巨大な拳。

 

「未来さん」

 

「…なんだ」

 

「これ…死ぬんじゃね?」

 

「………かもしれんな」

 

迫る驚異を前にして銀時とナイトアイはこんな話をしていた。

そして、改めて迫る拳に視線を移した銀時は、1度深くため息を吐いた後に大きく息を吸い込んで叫んだ。

 

「緑谷ァァァァァ!!!ヘルゥゥゥゥゥゥプッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリを守りながら戦場を見つめている緑谷。

治崎の行動により戦況が大きく動いたことを確認すると即座に動き出した。

 

「…っ!?エ、エリちゃん!背中に乗って!」

 

「う、うん」

 

エリを置いていくことはできないため、背中に乗せてフルカウルを発動させる。

 

(ワン・フォー・オール…20%!)

 

「ちゃんと掴まっててね!」

 

足に力を込めようとした次の瞬間…

 

「緑谷ァァァァァ!!!ヘルゥゥゥゥゥゥプッ!!!」

 

銀時の叫びが耳に届いた。

 

「っ!行くよっ!」

 

「う、うん…!」

 

背中越しに掴む力が少し強くなったのを確認して緑谷は地面を蹴った。

目にも留まらぬ速さで飛び、銀時は達に向かう岩の拳に近づいた。

 

「はあぁっ!!!」

 

勢いそのままに1つ目の軌道を蹴りでずらし、そのままそれを足場に飛び上がった緑谷は空中で1回転…

 

「一撃でっ…マンチェスタースマッシュ!!!」

 

強烈なかかと落としでもう1つを砕いた。

 

「ふぅ…成功!」

 

無事に成功したことを確認した緑谷は着地すると銀時とナイトアイの元に向かった。

 

 

 

 

 

 




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第49話

銀時達のピンチを救った緑谷は着地した後、2人の元に向かった。

 

「っ!?さ、坂田先生!その傷…」

 

「…ああ」

 

駆けつけて見てみると、銀時だけは所々に攻撃を受けたかのように服が汚れている。

緑谷は助けるのが遅れてしまったのかと思い、悔しそうに頭を下げた。

 

「くっ…すいませんっ…」

 

「…おい」

 

緑谷の言葉を受けて、うつむきながら銀時は声を発する。

 

「は、はいっ…!」

 

緊張した様子の緑谷だったが、帰ってきた言葉は…

 

「…歯ァ食いしばれ」

 

勢いそのままに返事をした緑谷。

おかしいと思ったその時には目の前に拳が迫っていて思いっきり吹っ飛んだ。

 

「はい……へ?…ぶへっ!!?」

 

「てめェは俺に何か恨みでもあんのか!?あァん!?」

 

「いだっ!…ちょっ!せ、先生!?何するんですかっ!」

 

地面を転がった緑谷は銀時の奇行とも呼べる行動に抗議する。

しかし…

 

「こっちのセリフじゃボケェ!何で未来さんのは軌道ずらしただけなのに、俺の方は砕きやがったんだ!?破片が横殴りに降ってきたわ!」

 

「え゛っ…!?」

 

まさかの事実に顔を真っ青になる緑谷。

そんな緑谷にゆっくりと歩みより、通りすぎ様に肩に手を置いた銀時は感情のない声で言った。

 

「ハッハッハ!緑谷くん!……………これが終わったらマジで覚悟しとけよ」

 

「…」

 

ナイトアイとエリの元へ向かう銀時に背を向けたまま緑谷は膝から崩れ落ちた。

そんな緑谷をよそに銀時はエリの安否確認のため近くに寄っていった。

 

「よー、エリ。無事だったか?」

 

「うん!緑のおにいちゃんはどうしたの…?」

 

安否確認を終えると、話が聞こえなかったであろうエリが緑谷を指差して疑問を口にした。

 

「あー、あれはな…人生終了のお知らせをしただけだから気にすんな」

 

「?」

 

「ぷっ…くくっ…!」

 

銀時が絶妙な濁し具合で言うと、エリはいまいちピンとこなかったらしく首を傾げている。

一方、ナイトアイは絶望している緑谷を見てある程度の状況を理解し、笑いを堪えていた。

戦場なのに楽しそうだな、おい。

その後、緑谷に蹴りをいれて強制的に立ち直らせた銀時達はすぐさま状況の確認を始めた。

 

「どうするか…銀時」

 

「ああ。正直、未来さんの個性だとあの質量の攻撃は相性最悪だ」

 

事実、先程の危機的状況で銀時は刀でどうにか防ぐことはできたであろうが、ナイトアイの方はほぼ詰みだった。

だから、銀時は迷うことなく緑谷を呼んだのだ。

 

「そうだな」

 

「…まァ…俺がエリを預かって、未来さんと緑谷で組むのが一番いいだろ」

 

「…了解だ」

 

「分かりました!」

 

こうして方針が決まり、腕を修復した治崎が攻撃を放ってくるのを合図にそれぞれ行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイトアイと緑谷は治崎の攻撃を掻い潜りながら、距離を詰めていく。

 

「急ぐぞ、デク!」

 

「はいっ!距離を詰めれば大技は使えない!」

 

2人が考えている通り近寄ってしまえば先程の大技が来ることはない。

しかし、治崎自身も個性の出力が底上げされているようで地形変形の速度と練度が先程とは別物になっている。

 

「無駄だ」

 

上手く避けながら接近してくる2人に視線をやったまま、治崎は地面に手をついて個性を発動する。

今までの直線的な攻撃ではなく、枝分かれや曲がるなどある程度自分の意思でコントロールが効くようになったようだ。

 

「っ!?こんな…!」

 

「くっ…!一旦下がるぞ!」

 

「は、はい!」

 

たまらず下がるナイトアイと緑谷。

元々、遠距離の攻撃が少ない2人にとって相当に厄介だろう。

 

「この力……ははっ!感謝するよヒーロー!お前達のお陰でごみ掃除が簡単に済みそうだ!」

 

治崎は楽しげに口許を歪めながら皮肉を口にする。

ナイトアイはこの状況を打破するべく銀時の方に視線をやるが、銀時も対処に追われていて援護は望めない。

 

「やるぞ、デク。油断はするな」

 

「ナイトアイ…僕が道を切り開きます。その隙に攻撃をお願いします」

 

「できるのか…?」

 

「はい…やれます!」

 

「……分かった。信じよう」

 

「ありがとうございます!それじゃあ行きましょう!」

 

緑谷は何か策を思い付いたようで、ナイトアイに提案をする。

ナイトアイは少し沈黙した後に首を縦に振った。

そして、気合いを入れ直した2人は再び地面を蹴り治崎に向かう。

 

「こざかしい」

 

改めて向かってくる2人を見て、小さく呟いた治崎は個性によって無数の棘をはやし迎撃するが…

 

(20%じゃ駄目だ…!指の1本や2本くらいっ!)

 

「よしっ…SMASH!!」

 

それに対し、緑谷はデコピンの形に構えて100%の出力でぶっぱなした。

指を犠牲にしたデコピンにより発生した衝撃波は2人の目の前を覆うように伸びていた棘をことごとく粉砕し吹き飛ばす。

 

「っ!?ぐおっ…」

 

緑谷によって粉砕された破片が小さい弾丸となり治崎に殺到する。

 

「…っつぅ…ナ、ナイトアイ!」

 

「分かっている…ふッ!」

 

視界を塞がれた治崎の頭部目掛けて、重さ5キロの押印が真っ直ぐに飛ぶ。

ダメージを負っても個性で修復できてしまう治崎に対しては、一撃で意識を刈り取るには頭を狙うのは定説だ。

だからこそ…

 

「甘いなァ…ヒーロー」

 

治崎は首を少し動かすだけで簡単に避けた。

つまらなさそうに言う治崎だが、注意がナイトアイに向くことを見越して緑谷が破片を足場に背後に回り込んで拳を握る。

 

(もらっ…)

 

ここで決めるため、100%の出力で拳を振りきろうとした緑谷。

 

「デクっ!!!」

 

しかし、こちらの王手のはずなのにもかかわらず、ナイトアイの焦ったような声が響く。

 

「な…んで」

 

「…これで1人だ」

 

絶妙なタイミングで振り返る治崎の口許には邪悪な笑みが浮かんでいた。

無情にも緑谷に向かって伸びてくる治崎の手。

そんな時、緑谷は走馬灯のように今までの記憶が流れてきた。

オールマイトから力を受け継いだことから死んだ魚の目をしているのになぜかカッコいい副担任のことまで全てだ。

 

(死ね……ないッ!オールマイトはこんな時だって笑って何とかしてしまうヒーローだ!坂田先生はこんな時だっていつもの感じで簡単に乗りきってしまうようなヒーローだ!)

 

そんな事が頭に浮かんできた緑谷の顔にはこんな時なのに自然と笑みが浮かぶ。

 

(コイツ…笑って…)

 

(継承者…か)

 

そんな緑谷を見て顔を歪ませる治崎とは別に、ナイトアイの中では緑谷がかつてのオールマイトとミリオに重なった。

 

「諦めて、たまるかァァァ!!!」

 

緑谷は治崎と交錯する瞬間に、無理やり軌道を変え拳を真下に思い切り振り抜く。

次の瞬間、嫌な予感を感じながらも手を伸ばす治崎の視界から緑谷が掻き消えた。

それと同時に治崎も弾けるように後方に吹き飛んだ。

 

「ぐうっ…!」

 

「がぁっ…!」

 

互いに部屋の壁に激突することで勢いが止まった。

緑谷は治崎の個性の餌食にならなかったものの、右腕が力なく垂れ、体にもダメージがあるようだ。

 

「デク、良くやった。少し休んでいろ」

 

「はぁっ…はぁっ…了解、です」

 

ナイトアイは緑谷の安否を確認すると、即座に治崎の方に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治崎は壁に埋もれた体を個性で地形変形によって抜け出し悪態をつく。

 

「ぐっ…ふざけたことを…!」

 

個性でダメージを修復しながら体を起こすと同時にナイトアイが治崎の元に到着した。

 

「お前の野望もここまでだ。銀時には歯が立たず、学生のデクとミリオにも良いようにやられたんだ貴様は」

 

「…」

 

ナイトアイの的を射た言葉に治崎は無言のまま個性を発動することで答える。

どうやら、本当に諦めが悪いらしい。

そこから、約1分の間攻防が続く。

 

(やはり私では治崎に及ばないか。俺の最後の役目は…)

 

激しい動きのなかで、ナイトアイは予測や経験を活かしやりあっていたが、次期に限界がくる。

だが、ナイトアイの目的は戦闘で圧倒することでは決してなかった。

我々、ヒーローの勝利を完璧なものにするために未来視を発動する。

しかし…

 

(………視え、ない)

 

ナイトアイが欲した未来は視えなかった。

全員が無事で、治崎が捕まる未来が視えなかった。

 

「くくっ…ははっ!知ってるよナイトアイ。お前、未来が視えるんだよなァ?何を視た」

 

「…」

 

唖然とするナイトアイ。

銀時もいる、ミリオもほぼ無傷だ。

こんな状況なのにナイトアイが目にした未来は真っ暗だった。

 

「脆いなァ、ヒーロー」

 

治崎が気味の悪い笑みを張り付けながらそう言った瞬間に、放心していたナイトアイの腹部を治崎の個性でできた棘が貫いた。

 

「ごふっ…!」

 

傷から、口から血が溢れ出す。

そんなナイトアイにとどめを差すために、治崎が地面に手を置いて言う。

 

「お前の視た通りになるようにまずはお前から壊してやろう」

 

ナイトアイに向かって伸びる棘は全てが急所に当たることだろう。

当たれば死ぬのは確実。

この極限の状況でナイトアイは恐怖ではなく、過去を悔やんでいた。

思い出すのはオールマイトとの記憶。

オールマイトの死を視てからの記憶だ。

 

「わ、たし…は、また…同じ、ことを…」

 

「同じゃねェよ、未来さん」

 

今にも消えそうな声で呟いたナイトアイの前に何者かが立ちはだかった。

その人物…銀時はナイトアイに向かっていた棘を全て両断しナイトアイに向き直る。

 

「あんたが視たようにはならねェし、させねェ」

 

「…ぎ、ん…とき…」

 

銀時は静に、だが芯のある声で言った。

 

「未来くれェ俺が何度だって変えてやる。だからよ…んな顔すんな」

 

ナイトアイが視た未来は変わるのか…

最終局面に入る。

 




なんか、死穢八斎會編は頑張って書いてるけど…くどいですかね?
時間かけすぎ?
すごい不安です…



感想、評価お待ちしてます!


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第50話

やっとモチベーションが上がってきた!
今まで1日1話上げていた自分を誉めてやりたくなりました!
ってことで、本編どーぞ!


ギリギリのところでナイトアイを助けた銀時。

銀時は傷口をおさえながら見上げるナイトアイに続けて言う。

 

「俺ァ…アンタのいない未来も、手のかかるガキ共がいない未来もごめん被るぜ」

 

「だ、だがっ…ちょっとした予知とは違う…!私が視た物はもっと…」

 

「いいから見てろ。アンタが視た予知なんて曖昧なモンじゃねェ…俺がその目に見せてやるよ。アンタが…いや、俺らが望む明るい未来ってやつを」

 

「銀時…」

 

ナイトアイは、銀時の言葉に期待や困惑、嬉しさをはらんだなんとも言えない顔でゆっくりうなずいて見せた。

それを見て満足したのか、銀時は治崎の方に歩み寄る。

治崎は割って入った銀時を忌々しげに睨みながら言った。

 

「やはりお前か、白夜叉。お前がいる限り俺は前に進めないらしい」

 

「はッ。はなっから前に進んでねーだろォが」

 

「そうだとしても、俺がこの腐った社会を正せば…俺が向かう方向が自然と前になる。結果は変わらないさ。お前達は全員死んで終わりだ」

 

「あっそ。まァ、お前の思う通りにゃならねェさ。俺がさせねェしな。ってことだからよォ…精々、足掻いてみるこった」

 

この言葉を最後に銀時はエリを抱えたまま治崎に向かって走り出した。

治崎も銀時を消すべく迎え撃つ。

手を着いた所から銀時目掛けてすごい勢いで棘が伸びる。

 

「…ふッ!」

 

銀時は一刀で全てを両断し、勢いそのままに治崎に迫る。

 

「ちっ…まだだ」

 

「甘ェよ…うおっ!?」

 

治崎の目の前で刀を構えて踏み込もうとした銀時だったが、急に足場が崩れ体制を崩す。

足元を確認するために一瞬下に視線を向けてから前を見ると治崎の手が目前に迫っていた。

銀時は慌てて座り込むことで避ける。

頭の上すれすれを治崎の手が通過した。

 

「っぶねェ…なッ!」

 

銀時は座った体制のまま、エリを体に寄っ掛からせ、空いた左手で素早く腰に差してある鞘を取り出し治崎の顎を撃ち上げる。

 

「っ!?…がっ!?」

 

顎を打ち上げられた治崎は、強制的に上を向かせられ銀時が視界から外れる。

嫌な予感がした治崎は、2本の腕で地面を押すようにして後ろに飛び距離を取ろうと動く。

治崎のその行動と同時に、銀時は右手に握られている刀を逆手に持ち変えて腹を目掛けて真横に振るった。

 

「ちっ…流石に強いな」

 

ギリギリの所でかわした治崎は悪態をつく。

地の利があるにも関わらず、ことごとく上をいかれてしまう。

 

「ふー。大丈夫かよ?結構揺れんだろ?」

 

「ううん、平気」

 

そんな治崎とは違って銀時は余裕そうにエリの安否確認を行っている。

やはりその光景は治崎からすると癇に触るようで低い声で言葉を発した。

 

「壊理、これが最後だ…こっちに来い。お前の力は使い方の分からないそいつらからしたら毒にしかならない。お前のせいでまた人が死ぬことになるぞ」

 

「…っ。わ…たし、は…」

 

「エリ。心配いらねェよ」

 

治崎の言葉に今までの光景を思い出してしまったエリは涙を流しながら体を震わせる。

銀時はそんなエリの頭を優しく撫でながら安心させるように言う。

 

「俺ァよ、お前が今までどんな事をされてきたのかなんて分からねェ。けどよ、どんな事をされても、その痛みに…苦しみに1人で耐えてきたのは分かる。お前は壊れてなんかいねェよ。…よく、頑張ったな」

 

「…っ!」

 

「だから、今はおとなしく護られとけ。俺達、ヒーローに任せとけ」

 

銀時の言葉を受けたエリは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら大きく何度も頷いた。

銀時はエリのその様子を見て、優しげに笑ったあと治崎に視線をやり口を開く。

 

「残念。おめェはお呼びじゃねーらしいぜ?」

 

「…なぜ分からな…」

 

悔しげにうつむく治崎が1歩を踏み出そうとしたところで天井が嫌な音をたてて大きくしなった。

 

「あん?」

 

「っ!?」

 

弾けるように顔を上げた次の瞬間…

 

「ドンピシャ!!」

 

地上で戦っていたリューキュウ達が、敵と一緒に天井を破って落ちてきた。

 

「随分と派手にやってんなァ」

 

こんな慌ただしく動く戦場で銀時は驚きもせずに呑気なことを考えていた。

ってか口に出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リューキュウ達が落ちてきたことによって、さらに場が乱れる。

幸いにも誰も押し潰されることはなかったが、僅かに隙ができてしまう。

全員の視線が落ちてきたリューキュウ達に向けられた一瞬の隙をついて、治崎が個性を発動する。

さらに、治崎が狙ったのはエリを抱える銀時ではなく、負傷して倒れているナイトアイだった。

 

「ちっ!緑谷ァ!エリを頼む!」

 

「えっ!?は、はいっ!」

 

空中に投げ出されたナイトアイを確認して、迷うことなく銀時はリューキュウ達が落ちてきたと同時に動き出していた緑谷にエリを預けて走り出そうとする。

だが、エリが銀時の腕から緑谷の腕に移る一瞬の隙を治崎につかれてしまう。

 

「くははっ!どうやら、俺の運はまだ尽きていなかったらしい!……返してもらうぞ」

 

治崎の声が聞こえてきたかと思うと、2人の間を縫うように岩の柱が地面から勢いよく伸びてきた。

それにより、空中に投げ出されるエリ。

 

「い、いやっ…!」

 

「なっ!…治崎!!」

 

「ふざけやがって…!」

 

よく見ると、少し離れたところに地上に向かって伸びる柱がある。

そこに治崎が立っていて、次期にエリが治崎の手に渡ってしまうだろう。

銀時は頭をフル回転させて最適な行動を始めた。

 

「緑谷!俺が木刀でおめェを投げ飛ばす!エリをアイツから奪い返してこい!」

 

「分かりましたっ!!」

 

銀時は野球のバッターのようなフォームに構えて緑谷の足を押し出すように思い切り振り切る。

 

「っぅおらァッ!!」

 

緑谷をエリの元へ向かわせた銀時はすぐに視線を切り、ナイトアイの方へ走り出した。

ナイトアイは空中に投げ出され今にも落下しそうになっている。

先ほどの負傷で意識はあるものの体が動かないらしい。

 

「はっ、はっ、はっ…今日はこんなんばっかだな!チクショー!」

 

走りながら悪態をつく銀時。

ギリギリ間に合うかどうかと言ったところ…銀時は飛び込んだ。

いわゆるダイビングキャッチ。

 

「っし!ナイスキャーーーッぐえっ!?」

 

結局、ナイスキャッチとはいかずに背中で受け止めることになった。

 

「…す、すまないな、銀時」

 

「ってて…ま、気にすんな」

 

無事を確認し、肩を貸してナイトアイを立たせたところで、緑谷が向かった先…地上の方で大きな衝撃波が起こる。

 

「うおっ!?…んだよ!次から次へと!」

 

「あれは…」

 

2人が見上げた先にいたのは、空中で戸惑った顔でエリを抱える緑谷の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡り、銀時によってエリの救出に向かう緑谷。

 

「エリちゃん!!」

 

エリは未だに空中で彷徨っていて、治崎の手には渡っていないが次期に治崎が手を伸ばせば届くところまで行ってしまう。

 

「…しつこいな」

 

「お前の思い通りにはさせないぞ!治崎ッ!」

 

必死に手を伸ばす緑谷。

だが、ほんの少しだけ治崎の方が有利な状況だった。

 

「残念だったな。エリ、お前の未来はこっちにこそある」

 

そう言ってエリに手を伸ばす治崎。

その顔には狂気的な笑みが浮かんでいた。

 

「……めて」

 

「さァ、こっちだエリ」

 

その手をエリは…

 

「やめてっ…!」

 

「…は?」

 

自分の意思で振り払った。

それは初めての拒否、抵抗。

 

「わ、私はっ!あなたに壊されることより…救けられることを選ぶ…!」

 

その大きな決意がエリを覚醒させた。

体の内側から大きな力の波が溢れてくる。

銀時、緑谷、ミリオ、ナイトアイが身を削って与えた安心感が、希望が…1人の少女の心を揺らしたのだ。

その小さな希望が火種となり大きく燃え上がった。

エリは暗闇に引きずらんと伸びる手を振り払い、まばゆい光に手を伸ばした。

 

「おにいちゃん!」

 

「エリちゃん!もう…離さないよ!」

 

こちらに手を伸ばすエリをしっかりと受け止める緑谷。

その光景を見た瞬間…今まで呆けていた治崎の意識が覚醒して手を伸ばす。

 

「返せ!!」

 

手を伸ばすのと同時に個性による攻撃が向かってきた。

 

「もう!あんな顔はさせない!君を決して離さない!…っああああ!!」

 

空中で思うように動けない状況で、緑谷は左足をフルパワーで振り抜く。

その瞬間、緑谷は瞬間移動のごとく治崎の視界から消える。

 

「……!?」

 

治崎は意味が分からないと虚空を見つめるが、緑谷が消えた数瞬後、体を押し潰すような大きな衝撃波が襲い掛かり、地面に勢いよく叩きつけられた。

 

「があぁっ!!!」

 

緑谷自身も状況を飲み込めていないらしく、治崎が落ちた方を凝視している。

 

「え…」

 

蹴りによる勢いがおさまり、落下を始めた頃にやっと状況を飲み込み、自分が無意識下で100%をぶっぱなしたのだと理解した。

 

「な、んで…足が…う、腕も治って…」

 

にも関わらず、自分に返ってくるダメージがない。

さらには負傷していた右腕までも治っている。

緑谷は未だに答えが分からないまま…だか、確実に自分の仕事を完遂させたのであった。

ここから、1人の少女を護るための最後の戦いが始まる。

 

 

 




やっとここまできた!
ってか戦闘描写とエリの描写がマジ難しいです…
上手く書けている自信が…ないよっ!
もし、変なところがあったら遠慮なく指摘してください!



感想、評価お待ちしてます!


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第51話

緑谷がエリを取り返した時、銀時はナイトアイを連れてリューキュウ達のもとに向かっていた。

 

「よォ。無事みてェだな」

 

「「坂田先生!」」

 

「白夜叉さん。先程の衝撃は…」

 

「ああ。おそらく緑谷だ」

 

「デクくんが…」

 

「すごいわね」

 

「あの子が…」

 

先程の地上での大きな衝撃波が緑谷によるものだと聞いた3人は驚きを隠せないでいる。

話もそこそこに銀時は手早く本題にはいる。

 

「悪ィんだが、未来さんを頼む」

 

「分かりました。白夜叉さんはどうするのですか?」

 

「俺ァ、緑谷の加勢に行く」

 

そう言ってすぐに走り出そうとする銀時をナイトアイが止めた。

 

「待て、銀時…私の視たのは緑谷が治崎によって殺される未来だった」

 

「だからよォ、んなモン俺が…」

 

急に話し始めたナイトアイに銀時は不満そうな顔で言うが、それに被せるようにまた話し始めた。

 

「だが…私が視た未来にはお前がいなかった。なぜかは分からない。でも…だからこそ、銀時がいることで変わる未来があることを私は信じている。…緑谷を、エリちゃんを頼んだぞ。銀時」

 

「…ああ。頼まれた。アンタも絶対に死ぬんじゃねェぞ」

 

「約束しよう」

 

銀時は今度こそ走り始める。

ナイトアイは相当無理をしていたのか、その背中を見送ってから力なく座り込んだ。

時を同じくして、治崎は緑谷に吹き飛ばされて地面に叩き落とされて尚、意識を保っていた。

 

「壊理…!!ダメだ、おまえは…俺のモノだ」

 

全身から血を噴き出しながらも体を修復していく。

 

「オヤジの宿願を果たす為におまえがいるんだ、壊理」

 

体を修復し終えた治崎は、リューキュウと共に落ちてきた倒れている仲間の元へとゆらゆらと歩み寄る。

そして、その仲間に手で触れると、音本の時と同じくお互いの体が弾けてまた1つになる。

仲間を吸収して巨大になった治崎は地上へ向けて動きだした。

緑谷を殺してエリを奪い返すべく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治崎との戦場が地上に移ろうかと言う時、イレイザーを探しに向かったミリオは個性を使い広大な地下を走り回っていた。

 

「ここも違う!…ここも!…ここも!」

 

ほとんどの所は回っているが、未だに見つけられていない。

 

「こう言う時こそ冷静に…むむ、うーん……おおっ?…おおっ!」

 

(戦いの被害が出来るだけこない場所…もっと下!)

 

ミリオが頭の中でどんな風に考えを巡らせていたのかは分からないが、とにかく閃いたようでまた走り出した。

そして、さらに探すこと数十分。

ようやくクロノがイレイザーをさらった部屋の前にたどり着いた。

 

(やっと見つけたよね!)

 

ミリオは壁から顔だけを出しながら中の様子を伺う。

中では倒れこむイレイザーを押さえつけるようにして立つ玄野が天井の方を見上げていた。

押さえつけていることを考えるとイレイザーは生かされているようだが、早く救けるにこしたことはない。

そう思い突入しようとしたその時、ミリオの後ろから声がかかった。

 

「ミリオ…?」

 

「うん?…環!」

 

ミリオが壁から顔を離して声のかかったほうを見ると、環が警察を数人引き連れて通路を走ってきた。

環は所々コスチュームが破れているが、大きなダメージは受けていないようだ。

 

「環!無事で良かった!」

 

「ああ。それよりも、ミリオはこんなところでなにをしてるんだ?」

 

「俺はーーー」

 

ミリオは大まかに戦場で起こったこと、イレイザーがさらわれたことを話す。

 

「そんなことが…」

 

「うん。そして、この壁の向こうにイレイザーヘッドがいるんだよね」

 

「本当か!ならすぐにでも…」

 

「まぁ待ってくれよ、環!俺に考えがあるんだよね!」

 

慌てて突入しようとした環を止めたミリオは確実に助けられるであろう作戦を話した。

その後、すぐに行動を開始する。

一方、部屋の中。

 

「廻…」

 

(お前が負けるはずないよな…)

 

クロノはイレイザーの上に立ちながら、振動を伝えてくる天井を見上げる。

心ではそう思っていても、どうしても胸騒ぎがおさまらない。

不安を隠すように頭を振ってイレイザーに視線を向けようとしたその時、入り口の方から声が聞こえた。

 

「玄野だな。やっと見つけたぞ」

 

「警察だ!おとなしくしろ!」

 

「なっ…」

 

部屋に入ってきたのは環と警察が数人だ。

クロノは焦りながらも冷静に頭を回す。

 

(思っていたよりも早く見つかってしまったか…だが、まだこちらが有利)

 

「そこから1歩でも動いたらこいつの首を貰う…!」

 

クロノは懐からナイフを取り出し、倒れているイレイザーの首もとに当てる。

 

(このまま時間を稼いでいれば、廻が成し遂げてくれ…る)

 

睨みあいが続くかと思われたが、クロノの意識は治崎へ向けた希望を最後に暗転した。

 

「よしっ!成功だよね!」

 

ミリオの奇襲が成功したのだ。

意識を環達の方に向けさえすれば、後はミリオが背後から壁を抜けて一撃。

戦闘能力の高くないクロノは耐えられるはずもなく意識を失った。

 

「ああ。俺達も地上に急ごう」

 

ミリオ達はクロノを縛り、イレイザーを抱えて地上を目指して走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリを抱えて着地をした緑谷は今まで感じたことのない感覚を全身に感じていた。

 

「怪我も…治ってる…!」

 

(体が…熱い…いや、冷たい。100%を出していたはずなのに…!)

 

考えること数秒、緑谷はある1つの結論にたどり着いた。

 

「君の…力なの…?」

 

「…」

 

質問と言うよりかは一人言のように呟いた緑谷。

エリは汗を流しながら無意識で必死に力を押さえ込もうとしている様子だった。

 

「…ぐぅっ!何だ、今度は!体が…内側から引っ張られてるみたいな…!」

 

考えている暇もなく、新たな感覚に襲われる。

そんな時、治崎の声が聞こえた。

 

「力を制御出来ていないんだ。拍子で発動できたものの、止め方が分からないんだろう、壊理!」

 

聞こえる声は次第に近くなり、緑谷の立っている地面から棘が伸びてくる。

即座に避けて距離を取る緑谷。

先ほどまで自分が立っていた場所を確認すると、地下から這い出るように体を異形の形に変化させた治崎が登ってきた。

 

「人間を巻き戻す。それが壊理だ。使いようによっては、人を猿にまで戻すことすら可能だろう。そのまま抱えていては消滅するぞ」

 

「…」

 

緑谷は無言で睨むようにして治崎を見据える。

そんな緑谷を見下ろしながら治崎は続けた。

 

「触れる者全てが無へと巻き戻される。呪われてるんだよ、そいつの個性は。…俺に渡せ!分解するしか止める術はない!」

 

それを聞いた緑谷は、服の一部を破ってエリを背中に固定しながら言った。

答えはもちろん…

 

「絶対、やだ」

 

治崎の話を聞いた緑谷は、自分の体に起こったことを理解した上で言葉を発した。

 

「…そっか。足が折れた瞬間に…痛みよりも早く折れる前に戻してくれてたんだね…とっても優しい個性じゃないか」

 

「そォだな。無個性の俺なんて目じゃねェくらいに、世の中の役に立つ個性じゃねェかよ」

 

緑谷の話に賛同する形で入ってきたのは、遅れて到着した銀時だ。

 

「坂田先生!」

 

「おう。…にしても巻き戻す個性ねェ」

 

「そうだ。白夜叉、お前には分かるだろう?壊理の個性がどれ程に危険で規格外なのかを!」

 

「馬鹿言っちゃいけねェよ。危険なのはおめェの野望であってエリの個性じゃねェ」

 

銀時は治崎にそう返すと、エリに視線を向ける。

 

「俺もお前の力を貸りんぜ、エリ」

 

「さ、坂田先生!今のエリちゃんに触っちゃ…!」

 

ゆっくりと近づきエリに向かって手を伸ばした。

銀時は迷うことなくエリの頭に手で触れて軽く撫でて手を離す。

すると、そこには…

 

「巻き戻すってこたァ…こーゆうことだよな。体が軽ィぜ」

 

攘夷戦争で白夜叉と恐れられた英雄が『当時の姿』で立っていた。

銀時はエリの個性で肉体を巻き戻したのだ。

 

「先生!若返って…!」

 

「そォみてーだな。多分、おめェらと同じくらいの歳だ」

 

まさしく、銀時の全盛期。

これだけでも手をつけられない程の戦力だ。

 

「おめェもそろそろ全力出しとけ。マジで消滅すんぞ。消滅したいっつーんなら止めねェけどよ」

 

「は、はいっ!」

 

(体が戻り続けるスピード…それ以上のスピードで常に大怪我をし続けていたら!)

 

緑谷はフルカウルで全身に巡らせるパワーを100%まで引き上げる。

 

「エリちゃん…僕にも力を貸してくれるかい」

 

(ワン・フォー・オールフルカウル…100%!)

 

さらに、オールマイトの全盛期と違わない程の戦力が加わる。

 

「んじゃ行くか。正義執行だ」

 

「はい!いつでも行けます!」

 

今ここに、正真正銘の最強タッグが結成された。

 

 

 




白夜叉時代の銀時と、100%緑谷の共闘は最初から考えてたんですよね!
やっぱこの展開が一番アツいです!
まぁ、エリの個性で実際にそれが出来るかは分からないですけど…


感想、評価等お待ちしてます!


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第52話

最後の戦場に銀時と緑谷が並び立った。

治崎は相も変わらず自分の目的のために止まることはないようだ。

 

「お前達も壊理も…力の価値をわかってない」

 

治崎自身、エリを1人の人間として見ていない。

自分の野望を叶えるための道具なのだろう。

 

「個性は伸ばすことで飛躍する。俺は研究を重ね、壊理の力を抽出し到達点まで引き出すことに成功した。結果…壊理には肉体どころか種としての流れ…個性因子を消滅させ人間を正常に戻す力が備わっている。」

 

やろうと思えば本当に世界を変えてしまえるような強大で規格外の力。

それを1人の少女が持っている。

だからこそエリは利用されているのだろう。

 

「そして、壊理の力を使うことによって個性で成り立つこの世界を…理を壊す…!」

 

治崎は叫ぶように言った。

そんな時、黙って聞いていた銀時が口を開く。

 

「まァ…確かに個性なんて曖昧なモンがあっから敵っつーアホがわんさか出てくんだろォよ。それに、正義にゃ色んな形があるっつーのも分かる」

 

「そうだ。だからこそ俺は壊理の力を…」

 

治崎の言葉を遮るようにして銀時は続ける。

 

「だがな、エリを…力の使い方も分からねェ子供を、テメーの都合で利用した時点で…おめェは紛れもねェ悪だ」

 

銀時は刀を治崎に向けて突きつけながら言った。

 

「もォ終わりにしようぜ。おめェの理想は聞き飽きた」

 

「…そうか。ならば、お前達を殺して壊理を返して貰う。それで全てを終わらせるとしようか」

 

治崎はその言葉を最後に動きだし、銀時達の方に向かってくる。

銀時はちらっと緑谷に視線をやってから刀を構えた。

 

「緑谷。メインはおめェだ。しっかり決めろよ」

 

「はいっ!…先生、来ます!」

 

治崎はもう目の前の2人しか見えていないようで一点集中で個性によってできた刺をを打ち込んだ。

2人を殺すべく打ち込まれた攻撃は銀時によって細切れに刻まれて届かない。

 

「…ふぅ。図体がでかくなってもやるこたァ変わんねェのな」

 

銀時が呆れたように言う中、緑谷が力強く地面を蹴ると体がぶれ一瞬にして治崎に肉薄した。

緑谷は周辺に被害が及ばないように治崎を蹴り上げる。

 

「おーおー。随分とまァぶっ飛っでんな…っと、俺も行かねェとな」

 

巨体を1蹴りで宙に蹴り上げた緑谷を眺めながら呑気に言う銀時。

気づいたように銀時は遅れて地上に出てきたリューキュウ達の元へ急いだ。

 

「麗日ー。ちょっと俺を浮かせて緑谷ん所にぶん投げてくれ」

 

「わ、分かりまし…って若くなっとる!?」

 

「色々あってよ。まァ、取り敢えず頼むわ」

 

驚く麗日達をよそに銀時は準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治崎を蹴り上げた緑谷は、全身を襲う体の内側に引っ張られるような感覚に顔を歪めている。

 

「ぐっ…!」

 

(エリちゃんの力が強まってる…!)

 

エリの個性は時間がたつごとに強さをまして、ワンフォーオールの力さえも飲み込もうとしていた。

エリ自身も必死に抑えようとはしているがべた踏み状態だ。

 

(早く決着を着けないと…僕どころかエリちゃんも危ない…!)

 

緑谷は気合いを入れ直して宙を蹴って治崎を追う。

一方で緑谷の一撃で宙を舞っている治崎。

 

(俺の考えが成功すれば八斎會は必ず…)

 

治崎の頭にはこれまでの記憶が流れていた。

実際、治崎に着いてきたのは数人だ。

八斎會の組長は治崎の理想に見え隠れする闇の深さにストップをかけていた。

だが、治崎は止まらなかった。

 

「…どいつもこいつも!大局を見ようとしない!!」

 

下からやってくる緑谷を視野に入れた治崎は声を荒げる。

そんな時、横からこの戦いのなかで何度も聞いた気の抜けた、だがなぜか力強さを感じさせる声が鼓膜を揺らした。

 

「そりゃ違ェな。見ようとしてねェのは、目を背けてんのはおめェだ。治崎」

 

「白夜叉…俺が崩すのはこの世界!!その構造そのものだ!!」

 

「馬鹿言っちゃいけねェよ。個性なんかなくたって俺達人間はそう簡単に変わりゃしねェ。金や権力の為に平気で殺しをするクズがいりゃ、困ってるヤツがいたら損得なしで平気で手を差し伸べちまうバカだっていやがる。おめェのちっぽけな力でどうこうできるほど人間は落ちぶれちゃいねェよ」

 

「…っ!白夜叉ァ!」

 

治崎は一瞬銀時に気圧されたように顔を歪めたが、負けじと個性を発動する。

全身に纏っていた物を分解して修復し全てを両腕に纏わせて全力で殴りかかった。

 

「俺の邪魔をするな!!」

 

「ふッ…っラァッ!」

 

その大きな力を持った、だが悪足掻きのような攻撃は銀時の刀に斬られ肘から先が切り離される。

痛がる素振りも見せず、切り離された腕をすぐさま修復し始める治崎。

だが…

 

「緑谷ァ!!」

 

銀時が叫ぶと、銀時の横を抜けて緑谷が治崎に肉薄し修復を始めようとしていた体に連打を浴びせる。

全てが100%の超連打。

 

「目の前の…小さな女の子1人救えないで!皆を救けるヒーローになれるかよ!!!」

 

「なっ…ん、だ…!」

 

修復は間に合うはずもなく、治崎の纏っていた物は弾け飛び生身の上半身がさらされた。

 

「上出来だ。とどめ行くぜ、緑谷」

 

「はい!先生!」

 

なす術もなく空中をさまよう治崎に向かう2人。

銀時は木刀に持ち変えて構え、緑谷は拳を握り腕を振りかぶった。

戦場では、戦ってきた全員が…1人の少女を護るべく立ち上がった全員が2人のヒーローを見上げている。

 

「これでッ!!」

 

「終ェだ、治崎」

 

銀時と緑谷は全身全霊の一撃を見舞った。

 

「はああああああ!!!!」

 

「せェェッラァ!!!!」

 

2人の一撃により、治崎は勢いよく地面に激突し大きなクレーターを作る。

治崎が意識を失って倒れ込んだことで、今ここに決着が着いた。

治崎廻の計画の全てが闇に消えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時達を見上げるナイトアイは希望と言う光に魅せられていた。

 

「未来は変わらないと…いや、違うな…未来は変えられないと思っていた」

 

ナイトアイは、確かに緑谷が殺され治崎が逃亡を成功させるところまで視えた。

最悪の未来だった。

だが、どうだろうか…今まさに自分が目にしている光景は。

 

「これは奇跡ではない…銀時が、緑谷が、ミリオが…繋ぎ、手繰り寄せた必然…か」

 

ナイトアイは眩しそうに空に手をかざしながら言った。

 

「信じて良かった…私にも見えたよ、銀時。明るい未来が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上に降り立った緑谷はすぐさまエリに声をかけた。

銀時は着地した途端にどこかへ走っていったらしく、この場にはいない。

 

「エリちゃん…怪我はない?ごめんよ。僕が至らないばかりに…」

 

緑谷はフルカウルの出力を100%で維持した状態だったが、次の瞬間、明らかにエリの個性が勢いを増し始めた。

 

「がっ…!?」

 

(勢いがっ…このままじゃ呑まれる…!)

 

考える猶予もなく、エリの個性が体を蝕んでゆく。

エリ自身も意識はあるが体から溢れてくる力を制御できないようだ。

 

(嫌!止まって!おにいちゃんが!死んじゃう!)

 

エリの意思とは反対にさらに勢いを増してゆく。

緑谷出久と言う人間が内側から真っ白に塗りつぶされてゆく感覚。

緑谷とエリが必死で抗っていると、聞き慣れた声が耳に届いた。

 

「本日最後の仕事だ、消太。生徒の事は俺達がちゃんと見とかねェとな」

 

どこかに行っていたと思っていた銀時が、いまだにクロノの個性で普段通りに動けないイレイザーをおぶって連れてきた。

 

(ああ。俺達が見ておく)

 

イレイザーが個性を発動すると、制御の効かなくなっていたエリの体から力が抜け、やがて緑谷を侵していた脅威が去っていった。

 

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…!」

 

これでやっと全てが終わった。

敵との戦闘で大怪我を負った者も多かったが、学生組は良い経験になったことだろう。

 

「ふぅ~。今回はちと疲れ…た?んんっ?」

 

おぶっていたイレイザーを降ろして一息着いた銀時だったが、ふと違和感に気づいた。

 

「おいおい!嘘だろォ!?嘘だと言ってくれ…!」

 

銀時は焦ったように騒ぎだし、顔やら体を触っている。

全員が新手の敵かと、辺りを警戒した次の瞬間、銀時の叫びが響き渡った。

 

「も、元に戻ってやがるッ…!俺のピチピチ10代ボディ…カムバァァァァァック!!!」

 

まさかの発言に全員がため息を吐いたり、顔をひきつらせてアホを見ていた。

本当にどうでもいいが、どうやらエリの個性の余波を受けたのか若返る前に戻ってしまったらしい。

なんともまぁ締まらない幕引きだった。

 

 

 




死穢八斎會編終わりましたね!
ヒーロー側が過剰戦力だった事もあってほぼ苦戦する場面がなかったし最後があっさりしすぎだったかな…?
まぁ、まだまだヒロアカが続く限りは書いていこうと思いますので読んでいただけると嬉しいです!

それと何か、このキャラの口調がおかしいんじゃない?
とか、ここをもっとこうした方がいいんじゃない?
的なことも大歓迎ですので是非お願いします!
感想、評価等もお待ちしてます!




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第53話

久しぶりの投稿です!


治崎を退けた後、ヒーローと警察達は怪我人の回収や被害の確認に追われている。

地上では、一際大きな怪我を負ったナイトアイがベットに寝かされ運ばれていた。

それを少し遠目に銀時とミリオとエリを抱えた緑谷が見守っている。

すると、

 

「銀時、ミリオ、緑谷…」

 

「サー!」

 

「ナイトアイ!」

 

ナイトアイが僅かな力を振り絞って話しかけてきた。

どうしても伝えたいことがあるようだ。

 

「私は…1度として、私の予知を疑ったことはなかった。オールマイトとの一件で変えられるはずがないと、諦めていたんだ。…だが、未来を変えんとするお前達を見て私は、明るい未来を願った…いや、無意識に願っていたよ。お前達は、未来を捻じ曲げたんだ」

 

そして、確かに光を宿した目で銀時達を見つめながら言った。

 

「私に明日を信じる力をくれて、ありがとう」

 

「未来さん…」

 

「銀時…今の私は、オールマイトに顔向けできるだろうか」

 

「んなモンできるに決まってんだろ。なんなら引きずってでも連れてきてやらァ。だからよ…絶対に生きて戻ってこい」

 

「ああ」

 

その言葉を最後にナイトアイはゆっくりと目を閉じて運ばれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイトアイを見送った銀時は、地上をリューキュウ達、プロのヒーローと警察に任せて地下に降りている。

雄英の生徒の中で、切島だけがまだ地上に出てきていないようで安否確認に向かったのだ。

 

「お~い!泡女~!」

 

地下を歩いていると、怪我人や地上に戻っていない人の捜索をしているバブルガールを見つけて声をかけた。

先程まで死闘をしていたとは思えないこの緊張感の無さはさすが銀時と言ったところだろう。

 

「さ、坂田さん!?ちょっ、ちょっと!大声でその名前で呼ぶのやめてくださいよ!」

 

慌てて銀時に呼び方をやめさせるように言ったバブルガールだったが、ここでまさかの問題発言が飛び出した。

 

「あー、悪ィ悪ィ。バ○ブガールだったか?」

 

「な、な、な、何言ってるんですかぁ!!?セクハラですよ!ぶっ飛ばしますよ!?」

 

この世の終わりのような顔をしたバブルガールは速攻で回りに聞いていた人がいないかを確認してから銀時に詰め寄る。

だが、銀時は全く悪びれる様子もなく続けた。

 

「はぁ?セクハラはお前の名前と頭ん中だろォが。ほんッとにいやらしい」

 

「あ、あなたねぇ…!」

 

「んん?なにィ?やるの?別にいいけど、俺が勝ったらまたあの拷問器具みてェなのにくくりつけちゃうよォ?」

 

「くうっ…!こんな悪魔みたいな人がヒーローだなんて…しかも恐ろしく強いし…って、そう言えばこんなところで何してるんですか?」

 

悔しそうに握りしめた拳をおろしながらバブルガールは銀時に問いかけた。

一応、この男も生徒の安否確認で来ているのだ。

銀時は思い出したようにして切島の名前を出す。

 

「あー、そーいや…切島見てねェか?」

 

「切島くん…ですか?えっと…」

 

「あれだよ、ファットんとこに行ってた赤い髪の雄英生」

 

「あー!あの熱血くんですか!それなら…」

 

やっとのことで本題に入り、バブルガールから場所を聞いた銀時はゆっくり歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バブルガールと別れたあと、言われた通りの方向に少し歩くと全身ボロボロの男が数人の警察と話しているのを見つけた。

 

「ん?あんなんいたか?」

 

銀時は考える素振りをしながら歩いていくと、ボロボロの男がこちらに気づいて声をかけてきた。

 

「おー!銀!無事に終わったみたいやな!」

 

「あん?馴れ馴れしいヤツだなァ。誰だあんた」

 

銀時は気づいていないが、話しかけてきたのは個性の副作用?により一時的に脂肪が取れたファットガムだ。

めんどくさそうな顔で返す銀時に、ファットは自分のお腹を軽く叩きながら言う。

 

「せやせや!銀はコッチを見んのは初めてやんな!俺や!みんな大好きファットさんや!」

 

「はぁ?いやいやいや、俺の知ってるファットはもっとこう…暇な小学生が夏休みに全力で作った無駄にピカピカしてる泥団子くれェまるっとしてんぞ」

 

失礼な物言いだが、さすがはファットで普通に話しに乗ってきた。

 

「あー、あれなぁ。休み明けに誰が1番丸くて光ってるかの品評会しよんねんな」

 

「そーそー。んで、ヒビでも入った日にゃキチガイの如く暴れだすんだよなァ」

 

「分かる分かる!テレビゲームやり過ぎた子供が親に強制的に電源切られた時くらい怒りよんねん!」

 

こんな中身のない話で盛り上がること10分。

ようやく…

 

「そーいや銀は何しに降りてきたん?」

 

「おっと、忘れるとこだったぜ。切島知らねェか?確か一緒だったよな?」

 

「切島くんならあっちの部屋で寝とる」

 

どうやら、切島は少なからず怪我を負ってしまったようでベットに寝かされているらしい。

 

「寝てるだァ?」

 

「そや。ちと、厄介な敵さんと遭遇してもうてな。守るつもりが守られてもうたわ」

 

ファットは戦闘の時のことを思い出して、悔しそうに、でもどこか嬉しそうに言った。

 

「…そォか」

 

「まあ、切島くんのとこ行ったってや」

 

「あぁ、悪ィな。行ってくるわ」

 

こうして、銀時はファットと別れて切島のいる部屋へと向かった。

部屋に入ると起きていたようで、銀時に気づいて話しかけてきた。

 

「先生…」

 

「よぉ。随分と派手にやったみてェじゃねーか」

 

「はは…やったと言うよりはやられたっスね。多分、先生との特訓がなかったらただの役立たずでした」

 

切島は手を軽く握りながら、力なく言う。

意外にも気持ちが沈むとネガティブになってしまうことが多いようだ。

そんな切島に銀時はファットが先程言っていたことを遠回しに伝える。

 

「そォかい。んじゃ、そんなお前に朗報だ。どっかの誰かさんが言ってたぜ。『守るつもりが守られた』ってよ」

 

その一言で誰の言葉かに気がついたのだろう。

切島は弾けるように体を起こし、強く拳を握りしめて言った。

 

「っ!!!………先生!俺、もっと強くなりてぇ!誰からも!何からも守れる漢になりてぇ!」

 

「…ふっ。仕方ねェ、道は示してやらァ」

 

銀時は仕方なくといった雰囲気を出しているがどこか嬉しそうだ。

今にも走り出しそうな切島に待ったをかけて銀時は目を瞑るように促した。

 

「っス!まずはなにから…」

 

「まァ待て。まずは…ちと落ち着け。んで目ェ瞑れ」

 

「は、はい!」

 

「いいか?お前がこれからヒーローとして、走って走って走って…そんで振り返った時に、お前に守られたヤツが、ありがとうって言ってくれるヤツが、誰よりも多いって考えたらどォよ?」

 

強くなるためには、まず強くなるための明確なビジョンが必要だ。

切島は言われた通りに考えを巡らせる。

 

(誰…よりも。坂田先生よりも…オールマイトよりもっ…!)

 

その瞬間、様々な感覚やら感情が全身に走り体が震えた。

目を開けた切島は興奮したように言う。

 

「………っか、考えただけで震えるっスね!!!なんか、目標ってかビジョン?とにかくそんな感じのが少し見えた気がします!」

 

「んなら、その感覚を忘れんなよ。お前らにゃオールマイトっつー正真正銘の化け物が遥か先に立ってンだかんな。下向いてる暇ねェぞ」

 

「押忍!」

 

轟、爆豪に続いて切島。

銀時は教師として、1人の漢として切島の背中を押した。

やはり、この男は教師に向いているのかも知れない。

こうして、今回の死穢八斎會との争いは無事に幕を閉じたのであった。

 

 




銀時の問題発言は穴埋めってことで皆さんに解釈を任せます!笑
まぁ、地上波だったら確実にピー音が入るとだけ言っておきます!

感想、評価等お待ちしてます!


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第54話

死穢八斎會との争いが終着したその日。

怪我を負った数人は現場最寄りの大学病院へ搬送された。

1人1人精密検査をした結果、ナイトアイ以外は特に後遺症も、命に関わることもないと診断されたようだ。

 

「はい、坂田さんお疲れ様でした。細かい擦り傷以外は特に怪我もなしです」

 

「そっすか。どォも」

 

銀時は診察を終えて部屋を出る。

すると…

 

「銀時」

 

「ん?おー、消太か」

 

イレイザーが診察室の前に立っていた。

どうやら銀時を待っていたようだ。

 

「緑谷達の様子を見に行く。一緒に来てくれ」

 

「はいよ」

 

そうして2人は緑谷達がいる病室に向かって歩き始めた。

 

「消太は怪我大丈夫なのかよ?」

 

「ああ、大したことない。10針縫っただけだ」

 

「うわ…痛ェ痛ェ。なんつーか、たくましいねェ」

 

「バカ言え。お前が異常なんだよ。ずっと前線にいてほぼ無傷だろ」

 

「けっ。ミリオが勝てるやつに俺が苦戦するわけにはいかねーっての」

 

「ふっ。銀時らしいな」

 

「…うっせ」

 

2人でこんな話をしながら歩いていると、銀時が思い出したようにイレイザーに聞いた。

 

「…そーいや、敵連合の奴らはどォなったんだ?」

 

「奴らは…分からん。気づいた頃にはいなくなってた」

 

「………はぁー。消太、多分…1本取られたぜ」

 

「まさか…!」

 

「あァ。そのまさかだろォな。奴らの狙いは…治崎だ」

 

2人が最悪の想像をしている頃、まさにその想像が実現されようとしていた。

治崎の護送中…敵病院までの道のりの高速道路。

 

「ふぅ。砂の個性…厄介だったな」

 

「砂は燃えねェからな」

 

「まぁ…これでチェックだ」

 

治崎を乗せた護送車を襲った死柄木達の前には全身を拘束されて動けない状態の治崎の姿がある。

護送車にはプロヒーローのスナッチが同乗していたが、敵連合の前に散った。

 

「んで、気分はどうだい?自称次期支配者さん」

 

「…殺しに来たのか」

 

「そんなつまらない事するわけないだろう?」

 

「…」

 

「くくっ…無様だねぇ。どうせ、白夜叉1人に良いようにやられたんだろ」

 

死柄木の煽るような口調に終始感情のない表情を貫いていた治崎だったが、死柄木から銀時の名前が出ると、途端に怒りや焦りが浮かんだ。

 

「………するな」

 

「なんだ?聞こえねェよ」

 

「その名前を口にするな!」

 

唸るように叫ぶが、死柄木には逆効果。

むしろ、治崎の余裕のない表情を見れたことに喜びすら感じている。

 

「……ぷっ…アッハッハ!図星かよ!ザマないなァ!」

 

「…っ」

 

「そんなおまえにプレゼントだ。おまえが最も嫌がることを考えてきた」

 

死柄木がそう言うと、まずはコンプレスが治崎の左腕を圧縮の個性で切り離した。

治崎は痛がる様子もなく、視線は死柄木の手に注がれている。

 

「コレさァ。2箱あるけど、どっちが完成品?まァ…いっか」

 

その死柄木の手には、治崎が計画のために作り上げた個性を壊す薬が…

 

「………返せ」

 

「あのな、オーバーホール。『個性』消してやるって人間がさァ、『個性』に頼ってちゃいけねェよな」

 

死柄木は治崎の隣にしゃがみこむと右腕に触れて個性を発動させた。

 

「…っ!!」

 

治崎は思惑に気づき、暴れようとするが意味もなく両腕を失った。

手で触れなければ個性を発動できない治崎は両腕を失い無個性のような状態に。

そして…

 

「これで詰みだ。おまえは晴れて無力非力の『無個性』マン」

 

奇しくも、治崎は自分が全ての力を費やした薬と血清を奪われてしまったのだ。

死柄木は呆然とする治崎の顔を覗き込むようにして見下ろしながら言った。

 

「おまえが費やしてきた努力はさァ!俺のもんになっちゃったよ!!これからは咥える指もなくただただ眺めて生きていけ!!」

 

「あ…ああぁ…」

 

「そんでヒーローにでも助けてもらえよ!『あなた達を壊そうと思って作った薬を奪われたうえに個性を失いました。助けてください』ってなァ!」

 

「あああぁぁああぁあああ」

 

壊れたように叫ぶ治崎から視線を切り死柄木達は歩き出す。

ヒーロー達の成長の裏で、悪も密やかに力を付け始めている。

 

「次は…俺たちだ」

 

悪には悪の道がある。

強大な悪が世界に牙を剥く日は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時とイレイザーは病室を渡り歩き、全員の様子を見終わり、ミリオと緑谷を連れてナイトアイが運ばれた手術室へ向かっていた。

 

「あの…エリちゃんはどうなったんですか?」

 

「まだ熱も引かず眠ったまま。今は隔離されてる」

 

「隔離…ですか」

 

こうして話ながらしばらく歩き、手術室へ到着した。

扉が開き中に入ると…

 

「君たち…」

 

「リカバリーガール!オールマイト…!」

 

リカバリーガールとオールマイトが立っていた。

 

「よォ。あんたはいつも遅すぎんだよ」

 

「…返す言葉もないな」

 

銀時の言葉に自嘲的に笑うオールマイト。

そんなオールマイトをよそにイレイザーはリカバリーガールにナイトアイの事を聞いた。

 

「リカバリーガール。ナイトアイの容態は?」

 

「あと1秒でも遅れていたら危なかった。さっき、やっと落ち着いてきたよ。手術は成功さね」

 

「本当ですかっ!!!」

 

無事に成功したと言うことにその場にいる全員が深く息を吐き出した。

そして、ナイトアイが横になっているベッドに視線を向ける。

全員が黙って見つめる中、オールマイトが1歩踏み出した。

 

「ナイトアイ…」

 

「オール…マイト…ようやく会う気に…?」

 

オールマイトが声をかけると、ナイトアイはゆっくりと目を開いた。

 

「ああ、すまなかった。私は君に…ひどい事を…」

 

「随分としおらしいな…。オールマイト…私は、別にあなたを恨んじゃいないよ…」

 

責任を感じて項垂れているオールマイトにナイトアイは続ける。

 

「あなたは1人でどこまでも行ってしまう…行けてしまうから…その先に待つ未来を視てしまったから…あの時のあなたの覚悟が恐ろしくて仕方がなかったんだ」

 

「ナイトアイ…君は…」

 

「でも…抗うと決めてくれたなら…私は、良い…」

 

「…ああ。抗うさ…だから、今度こそ見ていてくれ」

 

オールマイトの力強い言葉に安心したのか、ナイトアイはふっと笑みを浮かべた。

その後、それぞれ少しだけ会話をして面会を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時は手術室を出て、通路の途中にあるイスに腰掛けている。

すると、そこに遅れて出てきたオールマイトがやって来た。

 

「隣、いいかな?」

 

「…仕方ねーな」

 

銀時は嫌そうな顔をしたが、オールマイトの手にいちご牛乳が握られているのを確認して横にずれた。

座ってしばらく沈黙が流れると、オールマイトが話し出した。

 

「坂田君、まずはありがとう」

 

「別に礼を言われるような事はしてねェよ」

 

「いや、今回の死穢八斎會との一件…君がいなかったらこんな上手くはいかなかっただろう」

 

「はぁ…そんなモンかねェ?」

 

「そうさ。なぁ、坂田君…………私は選択を間違ったのかな。」

 

そんな話をしていると、唐突にオールマイトがきりだした。

どうやら、本題はこっちのようだ。

この場合の選択とは何なのか…

だが、銀時は迷うことなく答えた。

 

「…間違っちゃいねェさ。ただ、強すぎる光ってのは影も濃くなっちまう。あんたが残した正義とあんたが生み出した悪は紙一重なんだろーよ」

 

「そう…か。分かってはいたんだ…私は、全国民の正義を背負うには脆すぎた」

 

「んな悲観すんなって。あんたがいたからガキ共は夢を追えるんだ。あんたってゆう明るい光のお陰で迷わず歩いていけてんだよ」

 

「……ありがとう。坂田君」

 

こんな湿っぽい話を少しした後、オールマイトは席を立った。

 

「こんな話に付き合わせて悪かったね。私はそろそろ行くよ」

 

「ああ」

 

銀時に礼をいって去っていくオールマイト。

その背中を見送りながら銀時は珍しく難しい顔でため息をはいた。

 

「はぁー。平和の象徴ねぇ…少なくとも、俺にゃ無理だよ…オールマイト」

 

 

 




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第55話

長い間お待たせしてすいません。
久しぶりの投稿ですが、楽しんでいただければ幸いです。


死穢八斎會との抗争に関わったメンバーが、ナイトアイ以外全員退院してそれぞれ持ち場に戻った。

緑谷達も寮に戻り、心配されながらも全員が無事と言うことで居残り組も安心できたようだ。

そして、その翌日。

 

「なんで俺が仮免の引率なんてしなきゃいけねェんだよ」

 

「まぁまぁ。これも教師の仕事だからさ」

 

「そーだぜ!ギン!イレイザーが来れねーんだからお前しかいないって訳だ!」

 

「ったく…めんどくさいったらありゃしねェ」

 

銀時はオールマイト、マイクと共に仮免講習を受ける爆豪と轟を待っていた。

少し待つと、2人がやって来た。

 

「おはようございます」

 

「っす」

 

「オイオイ。教師より遅れてくるたァ偉くなったもんだなァ問題児コラ!」

 

「ちっ。遅れてねェだろが」

 

「す、すいません!先生!」

 

不満タラタラの銀時に轟は素直に謝るが、爆豪は面倒くさそうに悪態をつく。

 

「よし!轟は許す!ボンバーマンは帰れ!しっしっ!」

 

「へいへい。すいやせんしたー」

 

「心がこもってないからやり直し~。ほら、早くしろ皆まってんぞ。手をついてデコを地面にこすり付けて無様に許しを乞え」

 

「んなことやらねぇよ!クソが!」

 

いつもの光景となっている小競り合いをしながらも、バスに乗り込んで移動を開始した。

バスに揺られること数十分、会場に到着。

 

「じゃァ上で見てるぞ!」

 

「ケッパレよー!ヒィア!」

 

「また引率とか面倒だからちゃんと受かれよー」

 

銀時たち教師陣は客席から見学と言うことで、2人を見送って移動をする。

3人で客席に向かっているとどこからか声を掛けられた。

 

「おや…元No.1ヒーローじゃないか。焦凍の引率ご苦労」

 

「エンデヴァー!」

 

声のした方に視線を向けると、エンデヴァーがオールマイトを睨みながら仁王立ちしていた。

 

「ちょうどいい…お前とは…むっ?き、貴様は…!」

 

「あん?」

 

どうやらオールマイトにしか注目していなかったらしく、遅まきながら銀時に気がついたエンデヴァー。

これまた忌々しげに鋭い視線を銀時に向けている。

以前の体育祭での出来事を根に持っている様子だ。

 

「貴様はあの時の…!」

 

「んー、えーと…ああ!ドラクエ5貸してくれた篠崎君?」

 

「…」

 

銀時は全く覚えている様子はなく、エンデヴァーは額に青筋を浮かべながらぷるぷる震えている。

ヤバイ空気を察知したマイクが即座にフォローに入った。

 

「ち、違ぇよ!ギン!エンデヴァー!元No.2ヒーローの!轟の親父さんだぜ!」

 

マイクの説明を聞いて思い出した銀時の口から飛び出したのはあまりにも辛辣な言葉だった。

 

「ん?あー、あん時の願望押し付けてたモンスターなペアレントか」

 

「おいおい!ギン!そりゃやべーって!」

 

またまた焦りながら銀時に迫るマイク。

エンデヴァーは言葉を発さないまま体から吹き出す炎の火力があがっている。

そんなとき、この地獄のような状況を終わらせるべく動いたのはオールマイトだった。

 

「2人ともそこまで。ただでさえ注目されてるんだ、早く行くよ。エンデヴァーも…わざわざ君から話しかけてきたってことは、なにか話があるんだろう?とりあえず座って話そう」

 

「……まあいい。早く行くぞ」

 

さすが元No.1。

物怖じすることなく場を収拾させた。

この後の気苦労を想像してマイクが大きなため息をはいたのは言うまでもない。

引率の3人にエンデヴァーを加えた一行は、客席に到着。

オールマイトは他の参加者に気を遣い目立たない席に行くように提案した。

 

「なるべく目立たない席にしよう。皆の邪魔にな「焦凍ォォォォォ!!!」る…」

 

だが、そんなことを露知らずエンデヴァーは急に叫びだした。

なにやらお門違いなエールを贈ろうとしているみたいだ。

実際に轟はこちらに見向きもしないで無視をしている。

 

「おまえはこんなところで躓くような人げもごっ!!?」

 

「うるせーよ。いつまで一方通行な親バカ発揮してんの?なに、なんなの?轟の心に直接攻撃してんの?ドメスティックなバイオレンスですかァ?」

 

エンデヴァーが最後まで言い終える前に、銀時が片耳を塞ぎながら口に何かを押し込んで強制的に黙らせた。

 

「さ、坂田君!?なにしてるの!?」

 

「ん?いや、ポケットにバスで食ったスナック菓子のゴミがあったからそこにあるゴミ箱に入れた」

 

「ぶふぉっ…ぷっ…!ギ、ギンっ…!そ、それは…ぷっ、さすがにダメだって…!」

 

銀時の暴挙にオールマイトはさすがに慌てている様子だ。

等の本人は全く悪びれもせずにゴミ箱(エンデヴァーの口)を指差している。

マイクは必死に笑いを堪えているが、銀時にしか見えないようにサムズアップをしている。

 

「ごほっごほっ…!き、貴様は消し炭にされたいようだな…!」

 

「そんなカリカリすんなよ。カルシウム不足なんじゃねェの?」

 

復活したエンデヴァーが銀時に詰め寄るが、銀時は見向きもせずに適当に流している。

エンデヴァーが我慢の限界に達する寸前にこれまたオールマイトが2人の間に入った。

 

「2人ともいい加減にしないか。もう始まるし、皆こっちを見てる。早く座って」

 

「へーい」

 

「………ちっ!」

 

エンデヴァーは数秒銀時を睨み付けていたが、ようやく視線を切って席に着いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮免の試験が始まった。

爆豪と轟、さらに士傑の夜嵐と現見の4人は特別試験として…

 

「…なにコレ?」

 

「どっからどー見ても…子守りだな」

 

「なぁ、帰っていい?」

 

「もちろん駄目だよ」

 

小学生の相手をしている。

どうやら、試験内容としては時間内に子ども達の心を掌握すると言うなんともアバウトな内容のようだ。

試験が始まって数分がたったが、特に変わり映えもなく生意気なマセガキ達に4人が振り回される光景が続いていた。

唯一、変わったことと言えばMC魂とやらが限界に達したマイクが審査員席に乗り込んで実況を始めたことくらいだ。

 

「そう言えば…話って?」

 

「………知っているか。ここ1ヶ月のーーー」

 

銀時が退屈そうに眺めていると、横でオールマイトとエンデヴァーが話を始めた。

銀時は特に気にする様子なくボーッと会場を眺めている。

すると、会話に一段落着いたのかオールマイトが小声で話しかけてきた。

 

「坂田君」

 

「なんだよ」

 

「ちょっと付き合ってあげてくれないかな。エンデヴァーが轟少年の事を聞きたいみたいなんだよ。帰りに何か奢るからさ、頼むよ」

 

「…はぁ。めんどくせーなァ」

 

銀時は流石に断ろうか悩んだが、オールマイトの後ろで目を血走らせながら仁王立ちしているエンデヴァーを見て、後々の面倒を考えて受けることにした。

 

「…して、白夜叉。貴様の目から見て焦凍はどう写る」

 

「どうって言われてもなァ…ま、個性では頭一つぬけてんじゃねーの?」

 

「ふっ、当然だな…なぜな「だが」ら…」

 

「俺から言わせりゃ個性だなんだっつーよりも、もっと早く見てやらねェといけねー大事なモンがあると思うがな」

 

「っ!貴様に何が分かる!!!」

 

「はっ、分からねェよ。分かりたくもねェ」 

 

「焦凍は、焦凍には才能がある!強力な個性もある!俺もだが、いずれはこの元No.1をも越えるヒーローにする!その為には俺のもとで学ばせるのが一番だ!」

 

「あんたの願望なんざ聞いてねェよ。んで、轟がそれを望んだのか?」

 

「ぐっ…」

 

体育祭の時と変わらず、エンデヴァーは自分の野望のために轟を育てようとしていた。

銀時は一瞬睨むようにして黙らせ、また口を開く。

 

「はぁー。まぁ、あんたがどォ動こうと勝手だけどよ…轟は轟自身の力であんたとオールマイトを越えなきゃ意味ねーだろ」

 

顔を強張らせて押し黙っているエンデヴァーに銀時は続ける。

 

「あんたの道をなぞらせたところで轟は先には進めねェよ。それに…本当にスゲー親のガキってのは背中見せときゃ立派に育つモンだ」

 

「エンデヴァー。今、君が向き合おうとしている問題の答えは…きっとすごくシンプルだ。助けを求める人々のために、轟少年のためにどれだけ強く在れるか」

 

銀時が言い終わると、いままで傍観していたオールマイトが口を開く。

2人の言葉を受けてエンデヴァーは難しい顔をしながら席に着き轟の方に視線を向けて黙ってしまった。

それから程なくして試験は終了。

4人は無事に合格できたようだ。

生徒達に合流するために銀時達も移動を開始した。

会場の外に出ると、エンデヴァーがゆっくりと轟の元に歩み寄って何やら話をしている。

嫌がられてはいるが…

銀時が少し離れたところで眺めていると、オールマイトが近寄ってきた。

 

「坂田君、ありがとう。エンデヴァーもああ見えて色々と抱えてるみたいでね…」

 

実際にエンデヴァーは長い間オールマイトと比べられてきた事だろう。

中には、勝てるはずもない、オールマイトに助けてほしかった…そんなことを言われて白い目を向けられた事もあるだろう。

それでもNo.1に手を伸ばし続けてきた。

 

「けっ…んなこたァ見りゃ分かるっての。俺ァあいつが今まで何をしてきたとか、どんなヒーローだとか詳しいことは分からねェ。けど、あんたみたいな強い光と長年比べられても腐らねぇで足掻いてきたバカだってのは分かる」

 

だからこそ…

 

「俺ァそーゆうバカを笑わねェ」

 

形はどうあれ、全員がそれぞれ向かうべき道を進み始めている。

こうして、仮免講習は幕を閉じた。

 

 



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第56話

皆さんお待ちかねの話ですよ~!
お楽しみください!


仮免講習から数日。

インターンはしばらく様子見となり、学校での普通の生活に戻った。

銀時は何時ものように学校に行くための準備をしていると、部屋のドアがノックされた。

 

「俺だ。入るぞ」

 

「消太か。どーした?」

 

ドアを開けたのはイレイザーだった。

何か話があるようで訪ねてきたらしい。

 

「エリちゃんが目を覚ましたらしい。召集がかかったから今から行くぞ」

 

「おー、ようやくか。ってか消太は個性の事もあるし分かるけど、俺必要なくね?」

 

「いや、エリちゃんたっての希望らしい。随分懐かれたようだな」

  

話を聞くと、どうやら、エリの意識が回復したようで病院の方から連絡が来たようだ。

イレイザーはエリの個性が暴走しないように、銀時はただ単にエリが会いたがっているらしい。

 

「マジで大したことしてねーんだがなァ…ま、分かった。準備はできてっから行くか」

 

結局2人で向かうことに。

なんやかんやで少し嬉しそうな銀時。

やはり心配だったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は移って病院。

面会の受付を済ませた2人はエリがいる病室へ通された。

 

「失礼します」

 

「うーす。っと…元気そうじゃねーか、エリ」

 

病室の扉を開けて中にはいると、エリが銀時に駆け寄り抱き着いた。

どうやら、今日銀時が来るのを聞かされていたらしい。

 

「銀さん…会いたかった」

 

「おう。仕方ねーから会いに来てやったぞ」

 

銀時はそう言ってエリの頭を少し乱暴気味に撫でた。

エリは嬉しそうに身をよじっている。

何か、髪の色も相まって親子のように見えなくもない。

 

「顔が緩んでるぞ、銀時パパ」

 

「はァ!?ゆ、緩んでねーし!全然嬉しくなんかねーし!…ってかパパじゃねェ!」

 

イレイザーが茶化すように言うと、銀時は捲し立てるように否定した。

どうやら自分でもらしくないことをしている自覚があるようだ。

 

「その状態で言われても説得力ないぞ」

 

「ちっ…エ、エリ、そろそろ離れ「やだ」勘弁してくれ…」

 

数分後、検査のために来た医者と看護師にも微笑ましいものを見るような視線を向けられた。

結局、銀時はエリの昼ごはんが来るまでずっと抱き着かれたままだった。

昼食をとった後、銀時とイレイザーはエリの個性についての話を聞き一段落ついたようで、病室に戻ってきている。

 

「銀さん…ルミリオンさんと緑のおにいちゃんは…?」

 

「ん?あの2人は今日は来ねーよ。どォした、会いてーのか?」

 

「うん。私のせいでいっぱい怪我させて苦しい思いもさせちゃったから…ちゃんと、『ありがとう』って言いたいの」

 

エリは治崎との一件で自分を守って戦ってくれたミリオと緑谷にお礼を言いたいらしい。

 

「ふっ…そォかい。ならしっかり言ってやんな。あのアホ2人なら泣いて喜ぶだろーよ」

 

「うん!」

 

エリのお見舞いを終えた銀時とイレイザーは帰路に着いた。

まだ、銀時の前以外だと感情表現が乏しいエリだが、それもいずれ改善していく事だろう。

あの時、エリが緑谷に伸ばした手は…少女の覚悟は、確かに治崎の施した呪縛を解くに足る一歩なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリのお見舞いの翌日。

ヒーロー基礎学の時間は仮免試験の前から引き続きで必殺技の開発だ。

生徒達はそれぞれ必殺技を作るために思い思いの行動をしている。

銀時はと言うと、イレイザーと少し遅れて体育館に到着した。

 

「なーんか、あいつらと会うの久々だな」

 

「お前が色々とやらかすからだろうが」

 

「はっ。俺ァ悪いことはしてないね。むしろ感謝してほしいぐらいだぜ」

 

「極道相手とは言え、なにもしてこない内に爆弾を投げ込むやつがあるか」

 

「ボランティアだよボランティア。ゴミ掃除なんだから結果的に良いことしてんだろ」

 

「お前は本当に…はぁ…」

 

銀時は警察が仕切っていたにも関わらず、突入前にジャスタウェイを投げ込むという暴挙を行ったせいで、警察に呼ばれて指導を受けていたらしい。

さらには個性破壊の銃弾を撃ち込まれたという事で、病院で検査をしたため学校に行けていなかったのだ。

イレイザーは全く悪びれもしない銀時の態度に頭を抱えてしまっている。

そんなイレイザーをよそに、銀時は誰かを探す素振りをしている。

 

「また爆豪と組み手か?」

 

「んなめんどくせェ事しねーよ。ちょっくら俺の怨みを地獄に流してくるだけだ」

 

銀時の視線が緑谷に向いていることに気がついたイレイザーが念を押すが、止めるつもりはないようだ。

 

「…やりすぎるなよ」

 

「ん?止めねーのか?」

 

「止めない。あれはアイツが悪いからな」

 

「そりゃあ何よりだ」

 

そう言うと銀時は1人で生徒達の方に歩きだした。

緑谷のいるところに向かう途中で銀時に気がついた生徒が数名寄ってきた。

 

「おーう。真面目にやってっかー?」

 

「あっ!坂田先生!」

 

「先生学校に全然来ないから心配してたんですよ!」

 

「悪ィ悪ィ。色々あったんだよ」

 

なんだかんだ慕われている銀時。

生徒に囲まれて少し話したあと、また歩きだす。

そして、ようやく緑谷のもとへたどり着いた。

肝心の緑谷は青山となにかしていて、銀時に気づいていない。

 

「み~どり~や君!」

 

「うん?…あっ!坂田先生!やっと学校来れたんですね!」

 

銀時が声を掛けると緑谷は振り向いたのだが、どうやらあの時の事を忘れているらしい。

銀時は返事を返すことなく緑谷の肩を片手で掴んだ。

緑谷はどんどん掴む力が強くなっていることに抗議するが…

 

「さ、坂田先生?なんかちょっと痛いんですけど…っていだぁっ!?」

 

「はっはっは!忘れちまうなんていい根性してるじゃねーか!…陰毛小僧コラ」

 

意味が分からない様子だった緑谷だが、この銀時の言葉で全てを思い出し顔から血の気がひいていく。

緑谷が僅かに抵抗しようとしたが全く意味がなく、銀時の鼻フックによって体をつり上げられた。

 

「ひっ…!ちょ、ちょっとまっぶぇっ!?い、いふぁいいふぁい!お、おろひてくだふぁい!」

 

緑谷は痛みに耐えかねて抗議の声をあげるが、銀時には届かない。

そして遂に、あの新八直伝の必殺技が繰り出されることになる。

 

「これが最後のチャンスだ緑谷ァ!!!雄英高校校訓28条を言ってみろォ!!!」

 

「え゛っ!?ほ、ほうふん!?えっと…」

 

答えなんぞ初めからないのだが、銀時は緑谷が全て言い終える前に思い切り振りかぶってぶん投げた。

 

「そんなモン!あるわけねェだろボケェェェェェ!!!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!?ぶべっ!!!」

 

緑谷は物凄いスピードでセメントスが個性で作ったコンクリートの柱に顔面からダイブした。

 

「い、いだい…。む、無茶苦茶すぎるよあの人…」

 

緑谷は顔を手で擦りながら悪態をつくが、続けざまに頭に金属製の何かが当たりそれが手元に落ちてきた。

 

「いってて…なんだこ…れ」

 

手に落ちてきたのは銀時が愛用している爆弾…ジャスタウェイだった。

緑谷は全てを理解したが遅く、ジャスタウェイは力強く発光を始める。

そして大爆発。

 

「ちょまっ…ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

体育館に緑谷の叫びが木霊した。

 

「地獄流し完了!いっぺん…いや、ひゃっぺん死んでこい」

 

これぞ、銀時が緑谷の報復のためだけに作った必殺技。

その名も、

『鼻フックデストロイヤーファイナルドリームfeat.ジャスタウェイ』

生徒及び必殺技開発に携わっている教師陣がドン引きしていた事は想像に難しくないだろう。

 

 

 




緑谷への報復完了しました!笑
こーゆう話は書いてて楽しいです!
また次回もよろしくお願いします!

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