イカれた金剛石はバニーガール先輩の夢を見ない。 (リン オクムラ)
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1話

思いつきで始めてしまった…。なんか青ブタの思春期症候群を解決する話が何故か、そう何故かジョジョの四部っぽく感じてしまったから


グレートだぜ、こいつぁーよ」

 

そう一人ボヤいた。少年の名前は梓川咲太という。この世界では『そういうことになっている』。では、この世界でなければどうなるだろうか。そう、彼の名は、本当の名は『東方仗助』であった。

そのひと昔前の不良の様なリーゼントは『前』となんら変わらないものであった。

 

「仕事行ったら、いきなり周りのものがすげースピードで腐ったりぶっ壊れたりしたと思ったら、気がついたら赤ん坊になっていた。何行ってんのかわかんねぇーだろォーがよォーおれにも何が何だかワカンねぇ。ただわかるのはこれが『夢』なんてチャチなもんじゃあなく、紛れも無い『現実』ってことだ」

 

と、彼は後にそう語った。誰かのスタンドによる攻撃だろうか、そういえば承太郎さんがアメリカでなんかやってるとかなんとかいってたよーなと仗助は振り返る。

と、前置きはそこまでにして、なぜ『梓川咲太』改め、『東方仗助』がこうも面食らっているのかというと、超至近距離にバニーガールがいたからだ。そう、バニーガール。普通なら仗助はこの程度では驚かない。その状況に驚いた。ここがカジノだとかキャバクラだとか『そういうところ』なら彼はそう驚かなかっただろう。

しかし、彼がいる場所は違う。ここは図書館だった。

 

「問題はこの原因が『どれ』かってことだ」

 

周りはバニーガールに気がついていなかった。そのバニーガールの正体は国民的な元天才子役にして、元女優、そして仗助が今通う学校の一つ上の上級生『桜島麻衣』だった。そして、彼女は自分の姿が周りに見えてないことに気づいているのだろう。だからあんな格好でうろついているのだろう。それにしたってバニーガールを選ぶとは、クレイジーなやつだなと仗助は正直ちょっと引いた。

考えられる可能性はいくつかある。

第一に目の前の桜島麻衣がスタンド攻撃を受けた『被害者』であること。

第二に桜島麻衣が自分のスタンドを制御できてない『スタンド使い』であること。

第三に最近なにかと噂が多い『思春期症候群』と呼ばれる都市伝説が原因であること。

 

「静ン時の静みてーに自分のスタンドを制御出来てねーなら、ちょっとあぶねーよなぁー。まあ被害者でもおんなじことなんだけどよォー」

 

もう17年は会えていない、血の繋がらない妹は生まれながらのスタンド使いだった。彼女のスタンド絡みでバスと競争したりしたのは今となってはいい思い出である。

 

「さーて、どォーすっかなぁ」

 

「あら、まだ私のこと見える人がいたのね。それじゃ」

 

「おいおいおい、ちょっと待てよ!?」

 

「何?」

 

「アンタ桜島先輩だろォ?おれの一個上の学年よォ」

 

「あなた、峰ヶ原高校の生徒なのね?そういえば一昔前の不良みたいな格好してる生徒がいるって聞いたことがあったけどあなたなのね?」

 

と、仗助の頭に目を向けつつ、そう言う。

 

「おれは『梓川咲太』。ここじゃあ『そういうこと』になってるみてえっス」

 

「私は桜島麻衣よ。まあ、知ってるみたいだけど。今日見たことは誰にも言わない方が賢明よ。頭のおかしい人に思われてしまうわよ」

 

そう言って踵を返して桜島麻衣は立ち去ろうとする。

 

「あー、ちょっと待ってくれよ先輩。今から帰ろうってのを止めようってわけじゃあねえ。ほんのちょっと数秒だけ、たった数秒しかかからねえカンタンなことだぜ。ただ『質問』に答えてくれるだけでいいんだ。ただ個人的に知りたいだけなんだよあんたが『どっち』なのかをよォ〜…」

 

ゴゴゴゴと空気が重くなる。その時、ある一つの共通点を持つものだけにわかる変化が起こった。

ドギャァンという擬音が似合うような勢いで出てきたソレ。名を『クレイジー・ダイヤモンド』。梓川咲太…東方仗助のスタンドである。スタンドとはパワーのあるビジョン、生命エネルギーが具現化したもの。それぞれに何かしらの能力があり、彼のスタンドは『治す』能力である。

 

そして、スタンド使いにはルールがある。そのうちの一つ、スタンド使いにしか、スタンドを視認できないというもの。

 

「なあ、あんた、おれの後ろにいる『コイツ』が見えるかい?」

 

「何を言ってるの…?何も見えないわよ」

 

本気で何を言ってるのかわからない、と言った感じの彼女に、ものは試しということで『クレイジー・ダイヤモンド』で寸止めするように殴りかかった。しかしながらその焦点は全くと言っていいほど『クレイジー・ダイヤモンド』にあっていない。

 

「…なら、いいんだ。あんたがどっちか分かったしよォ〜」

 

「もういいかしら。それじゃあね」

 

「もし」

 

最後に仗助は麻衣に向けて言葉を掛ける。

 

「もし、あんたが助けを求めるんならよォ、別に俺は『協力』してもいいぜ。あんたのそれを調べればおれは『帰れる』かもしれねえしよォ〜。おんなじ学校にいるんだし、なんかあったら声かけてくださいっス」

 

と、だけ声をかけた。

 




今作の設定

梓川咲太/東方仗助

見た目は完全に仗助。経歴は青ブタ世界では咲太に近いが峰ヶ原高校の制服がブレザーから学ランとセーラーに変わっている。もちろん改造済み。なんだかんだ2回目の学校生活を楽しんでたりする。1回目はスタンド使いとドンパチやって殺人鬼を追ったりしてたけど2回目の高校生活は至って平穏(ジョジョ基準)
スタンドは相変わらずクレイジー・ダイヤモンド。精神年齢的にはジョジョ四部の頃よりかなり上になったが髪型をバカにされるとキレる性格は変わっておらず入学2日目にして停学を食らった。


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2話

朝、妹を起こしていつものように学校へ向かう。なんだかんだ二度目の高校生活であるが一度目よりも平和に過ごせてはいた。そして、いつものように途中であった国見祐真とダベりながら学校へ向かっていくのだ。

 

「国見よォ、桜島先輩って」

「残念だったな咲太」

「べつに先輩に告白したってわけじゃあねえよ。ただあそこにいる先輩、『見えてる』か」

「そりゃあな。急にどうした?」

「いや、見えてるってんなら別に問題はねえ」

 

そうやってダベりながら、登校しいつもの如く授業をテキトーに聞き流し、国見やもう一人の友人である双葉理央と共に喋りながら帰る。

 

そして、帰りの駅で桜島麻衣を見かける。しかし、その時彼女は周りの野次馬に盗撮されていた。

 

「ねえ、あれ」

 

「やっぱりそうだよなぁ?」

 

別に、麻衣を助けようとかそんな気はなかった。単純にそういう行為がムカついただけ。いつもならテキトーに流して終わり。しかしながら、顔見知りがそういう目に遭っているのを放っておくっていうのもなんとなく仗助の中に後味の良くないものを感じる。ただそれだけ。

 

「芸能人ってのも大変だよなァ。別に仕事してるわけじゃあない時にもこうやって撮られるんだからよ」

 

そう言いながら盗撮してる男に割り込む。

 

「なんだよお前」

 

「あ?おれは別にここに立っているだけだぜぇ〜?盗撮してるあんたと違ってよォ」

 

「なっ、ち、ちがっ」

 

「ガキじゃあねえんだからそういうコトはやらねえ方がいいんじゃあねえか。今の時代はよォ〜そういう行動はいつ火種になってもおかしくねえぜ」

 

仗助がまだ一度目の高校生だった時はまだ、スマホみたいなものはなかったが、今の時代はそういう行為で炎上するSNSがよくある。仗助自身はスマホは持っていないからイマイチピンとこないが、話自体はよく聞く。

そして、図星を突かれたからか、逆上した男はある禁句を仗助に向かって言った。

 

「う、うるせえ!お前みたいな頭にハンバーグ乗っけてるみたいなヤツに言われたくねえんだよ!」

 

「おい、あんた。今おれの頭のことなんつった?」

 

そしてプッツンとキレた仗助の出来上がりである。

 

「おれの頭がサザエさんみてえだとォ?」

 

「な、そこまで言ってな

 

「確かに聞いたぞコラーーーッ!!!」

 

そして、無意識にスタンドの腕で男を殴り飛ばした。

 

「ギャァァァ!!」

 

「おれの頭にケチつけてバカにしてムカつかせたヤツあ何モンであろうと許さねえ!」

 

「ひいいいいっ」

 

「待ちやがれテメェッ!!!!」

 

「ご、ごめんなさい、ごめんなさいいいいいいい!?」

 

「ドラララララララッドラァッ」

 

「アダパアッッッッ!?!?」

 

そして、逃げようとする男に向かってさらに追撃を喰らわせる仗助。歳を食ってそれなりに精神的に大人になったかと思いきや、地雷を踏まれたときにプッツンするのはいつになっても変わらないらしい。『まだ怒りたりねえぞコラァーーーッ』と更なる追撃を食らわされる。

 

(なんなのアレ…人が勝手に吹き飛んだ…?)

 

しかし、スタンド使いではない麻衣からすると仗助がキレたあといきなり人がブッ飛んだようにしか見えなかった。

 

(しかも何でかしら?傷が治っていってる…?いえ、きっと目の錯覚ね…。自分が『異常』な状態だからってそうそうこんな非現実的なことが起こるわけがないわ)

 

そして、仗助の『治す』能力で即座に顔面の傷は『治され』る。ただし、仗助がプッツンしてるせいか、その顔は男の元々の顔の造形とは違ったものになってしまった。しかしながらこの『治す』能力のおかげか仗助が停学以上の罰則を食らうことは無かった。ようは傷が残ってないから問題として大きく取り上げられないのだ。仗助自身はそこまで考えてなく、ただ単にブチギレている中で無意識に能力を使っているだけである。

 

因みにその後、男はキレ続ける仗助からなんとか逃げたあと、変わり果てた顔が原因で破局したらしい。

 

「ありがとう。…ちょっとやりすぎな気もするけど」

 

「お、おう?」

 

「何?『余計なことしないで』とでも言われるかと思った?」

 

「正直なぁ。先輩はそういうの素直に言うようなタイプじゃねぇってかよォ〜なんつーか露伴のヤロウほどとはいかねえけどちょっと『近い』気がするからなぁ」

 

いきなり認識されねーからってバニーガールガール姿で現れたりするブッ飛んだとことかも露伴にちょいと似てるよなぁ。とか思ってたりする。正直な話、仗助自身はこの先輩とうまくやっていくって言うことが想像できなかった。

 

「それにおれも頭にして途中から何も考えずにただあのヤロウを殴ることだけ考えてたからなぁ〜なんつーかシャクゼンとしねぇって言うかよ、そんな妙な感じがするんスよ」

 

「側から見てても凄まじいまでの怒りっぷりだったわね」

 

「…この髪型はよォー。昔、本当に昔におれを助けてくれた人がしてた髪型なんスよ。おれはあの人にあこがれて同じ髪型にしてんだ。だからこそ、それをけなすヤツは許せねえ。この髪型をけなすってことはあの人のコトもけなすっつーことだからな」

 

桜島麻衣は、少しだけ『梓川咲太』に対しての見方を変えた。不良っぽい見た目の割には正義感に厚く。そう、見た目と髪型をけなされたときにプッツンするところ以外には学校内で大した問題を起こさない、いやその二つ以外に問題がないごく普通の生徒だったから。80年代の不良のような見た目をしているがその実そこまで悪い人ではないのではと。見た目で勘違いさせてるのはわかってるはずだけど、そこを直さないあたり、その恩人に対してのリスペクトは側から見るよりよっぽど大きいんじゃないかと、麻衣は思った。

 

「で、先輩はこんな微妙な時間に何してたんスか?学校が終わってから結構時間経ってるっスよね」

 

「君にばったり合わないように時間潰してたの。無駄だったみたいだけど」

 

「べつに先輩に会おうとしておれはこんな時間まで待ってたわけじゃあないぜ。フツーに国見や双葉とダベってたらこんな時間になってたんだよなぁ」

 

億泰や康一とはまた違った性格をしてる二人だし、別に『スタンド』を使えるわけでも、一緒に闘いを乗り越えたわけでも、事件を解決したわけでもない。ただ単に気が合うダチってだけの二人だがこの世界に於いて数少ない『信頼』できる友人であった。いつか億泰や康一をあいつらと合わせてみたいとも仗助は思ってる。億泰は見た目は仗助と同じで厳ついし、康一は平凡な感じであるが二人とも頼りになるいいヤツなのだ。

 

「友達いたんだ」

 

「そりゃいるに決まってんだろ!おれのことなんだと思ってんスか!?」

 

「不良よ」

 

ぐうの音も出ない正論である。

 

「確かにこの見た目だしよォ〜避けられるっつーのはよくあるっスけどそれでもツルんでくれるダチっつーのは割といるもんっスよ」

 

「そう…」

 

その時、麻依の携帯から着信音が鳴る。仗助自身はよく知らないがどこからのアイドルグループが歌ってる歌っぽいというのはなんとなくわかった。複数人の女性の声が歌からは聞こえるからである。スマホの着信画面の『マネージャー』の文字を見た瞬間麻衣は『拒否』というボタンを押した。

 

「出なくていいんスか?」

 

「もう電車来たし…あの人の用件はわかってる」

 

そして、二人は電車の中に入っていった。

 

 

 

 

 



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3話

『前』の世界の2011年、空条承太郎が昏睡状態に陥った。それを救う手がかりとして東方仗助はとある一冊のノートの復元を頼まれた。承太郎がその時何に巻き込まれただとかそういうことはよくはわからなかった。『DIO』の残したノートの復元にしか仗助は関わらなかったからだ。

その後、世界は加速し、一巡し、そして…。東方仗助は全く別の『誰か』である『梓川咲太』として『生まれたことになっていた』。

仗助自身には何が起こったのかよくわかっていなかった。しかし、自分は戻らなくてはならないと思っている。こちらにも大切なものや放って置いてはならないものもある。『妹』の『かえで』のこととかどうにかしなければならない問題がいくつかあることにはある。それが全て終わったら、何もかもが解決したなら、自分は帰らなくてはならない。思春期症候群と呼ばれる『病気』の『症状』には色々なものがあった。ともすればスタンドと同じように多種多様である。だとするならば、『思春期症候群』を使うことで『前』の世界に戻ることはできないだろうか、と『梓川咲太』は考えている。『妹』の時に色々調べた中には一人の人間が複数の思春期症候群の『症状』を『発症』した例もあった。

 

(思春期症候群の『発動条件』と『狙った効果』がわかればよォ〜それを使って帰ることができるかもしれねえ。じじいのこともあるし早いとこ向こうに戻る条件を探さなきゃあならねえ。『思春期』症候群っつーぐれえだから、もしかしたら『発症』に『年齢制限』があるかもしれねーからなぁ)

 

実のところ、仗助が積極的に桜島麻衣の思春期症候群に関わろうとした理由がそこにあったのだ。麻衣を『調べる』ことによってその『症状』と『発症条件』を知るためである。

 

「今日は『認識』されてるみてーっスね、先輩。前はよォおれ以外の人間にはまるで風景に溶けこんでるかのように、そこに有っても有るように感じねえ言っちまえば幽霊みてーに誰にも『認識』されてなかったってのに」

 

「……」

 

麻衣は言葉を発さない。

 

「ただこの『現象』は先輩が操れるってワケじゃあないみてーだな。操れるっつーならよ。あんな図書館の中でバニーガール姿でうろつくみてーなクレイジーな行動したりだとか、盗撮された時に『認識』できねーようにしちまえばいい話なんだからよォ〜。ま、先輩に『そういう』シュミがあったりしたなら別の話なんだがなぁ〜」

 

「な!?そんな趣味わたしは持ってないわよ!?」

 

甚だ不名誉だっていう顔をしながら、仗助に食ってかかるように否定する麻衣。仕方ないと言った顔をしながら『現象』について話す。

 

「なんとなく気まぐれで江の島の水族館に行ったの。でも、家族連れで賑わっている水族館の中で、誰も私を見ていないことに気がついたのよ。いつもなら見られるどころか声をかけられて魚を見るどころじゃないのに」

 

仗助は黙って聞いている。そこから麻衣の表情が険しくなっていった。

 

「それで帰りがけに喫茶店に入った瞬間ハッキリした。『いらっしゃいませ』の声もかけられないし、席にも案内されないもの。びっくりして急いで藤沢まで帰ってきたらみんな普通にわたしを見てた。江の島でのことは気のせいじゃないかって思ったんだけど、やっぱり気になって調べ回ってたの」

 

「…それでバニーガールっスか」

 

「あの格好なら見えてたら見るでしょ。気のせいを疑う余地もなく。まあ見えてても全く騒がない誰かさんのことに気づくのにはちょっと時間がかかったけど」

 

あの時、仗助は麻衣に対して頭がちょっとオカシイヤツなんじゃあないかなとか結構失礼なことを考えていた。何しろ仗助の周りにいた杜王町の連中は一癖も二癖もある連中ばっかりだったから。

 

「つまりよォ、先輩のソレはタイミングとかそういうのじゃあなく『場所』が問題ってワケなんだな」

 

「みたいね。今なら世界中から見えないんじゃないかって期待したんだけど、学校では普通だったし今もね」

 

「フツウのヤツなら慌ててどーにかしようとするところだけどよォ〜、先輩なんか楽しんでないっスか?まるで子供が新しいゲームやスポーツを始める時におっかなびっくりしながらも楽しんでやってるときみてーに」

 

「そりゃあ楽しいもの。今までずっと人に見られて、人の目を気にしながら生きてきた。いつも思ってたのよ誰もわたしのことを知らない世界に行ってみたいって」

 

それは言ってしまえば未練や執着といったもの。それは芸能人だからこそ持っているもの。子供の頃から誰かに見られることが当たり前だった麻衣だからこそ感じるものである。

 

「私は今の状況に『満足』しているの。わかったでしょ?私がどれだけイカれた女か。……もう関わらないで」

 

キッパリとそう言って桜島麻衣は電車から降りていった。

 

 

 

(おいおいおい〜ッ!あんなにキッパリ助けはいらないっつってたのに、これはちょっとカッコ悪いんじゃあねーの?)

 

咲太…もとい仗助も降りる駅が同じではあるため降りて、ここでまたあの先輩に会ったら気まずいよなぁ〜とかそういうことを考えていた。しかし…

 

「クリームパンを一つください」

 

シィーーンとその売店のおばちゃんは何も動かない。ピタァァとその場所に立ち続けてどこかを見ている。

 

「あの、クリームパンを一つください」

 

(確か先輩はこの前『藤沢駅』では認識されたっつってたよなぁ〜。じゃあなんで今は『認識』されてねーんだ?もしかしてこの『症状』にはまだ『続き』があるのか?癌とかがほっとくと全身に転移していくみてーに『症状』は今、この瞬間にも『進行』してるってーことかぁ?)

 

それにしてもどーすっかなコレとも仗助は考えている。帰るときどっちにしろ売店の前を通るから助けても、無視しても気まずいのには変わりない。

 

「ま、しゃーねえか」

 

そうして、仗助は麻衣の真横に立つ。

 

「おばちゃん!クリームパン一つもらってもいいっスか?」

 

「あいよ!クリームパン一つね!」

 

そして、仗助はクリームパンの包みをもらった後麻衣に渡す。

 

「困ったことがねえとは言っていたがよォ〜本当はちょっとばかし困ってたりするんじゃあねえか先輩?」

 

「そうね。この店のクリームパンが食べられないのは少し困ったわ。でも、信じるのこんなイカれた話」

 

「信じるも何もおれは『こういうの』には慣れてるからなぁー」

 

仗助が『梓川咲太』になってから、この世界で思春期症候群と呼ばれるモノに関わるのはこれで2回目であった。それに杜王町ではこういった不思議な出来事がよく起こったのだ。あの街はちょっとばかし『スタンド』を持ってる奴が多かったからだ。

 

「先輩のそれはよ多分都市伝説でよく言われてる『思春期症候群』だぜ。『スタンド』かもしれねーとも思ったがよォ〜あんたはあの時『見えて』なかったからなぁ」

 

まあ、スタンド使いからの攻撃を受けている可能性も考えられるが、仗助が今のところスタンドの姿を影もカタチも見てないことから、可能性としては思春期症候群の方がまだ圧倒的に高いと思っている。

 

「思春期症候群なんて、よくある都市伝説じゃない。根拠なんてなにもない。というかスタンドってなによ?」

 

「根拠はあるぜ」

 

「!?」

 

「だから、ちょっと付き合ってくれねぇか先輩。『思春期症候群』が『存在』するっつー『根拠』を説明してやっからよォ〜。ついでにスタンドについても教えてやるぜぇー」

 




ちなみに世界が一巡する前の仗助は90代になったジョセフ の介護もちょくちょくやってたりする設定です。まあ承太郎や徐倫が色々なことに巻き込まれている上に、仗助の腹違いの姉であり承太郎の母親のホリィもそれなりに高齢になっているためなおホリィは仗助の祖父・東方良平と同い年なため2011年時点では60代後半に差し掛かっている)ってことにしといてください。


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