一年戦争の兵器たち (シモノツキ)
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各種設定
地球連邦 師団編制表


Wikiに連邦軍は米軍をモデルに2009年、編成されたと記載されていたので2009年以降の編制を元に設定してあります。


【地球連邦陸軍 師団編制】

〇歩兵師団

・師団司令部

:師団本部(及び本部大隊)

 ・3個歩兵旅団戦闘団

 :旅団本部(及び本部中隊)

  ・3個歩兵大隊

  :大隊本部(及び本部中隊)

   ・3個歩兵中隊

   ・重火器中隊

  ・偵察大隊

  :大隊本部(及び本部中隊)

   ・2個機動偵察中隊

   ・偵察中隊

  ・野戦砲兵大隊

  :大隊本部(及び本部中隊)

   ・2個野戦砲兵中隊(105mm榴弾砲 6門/Co)

   ・野戦重砲兵中隊(155mm榴弾砲 6門/Co)

   ・目標捕捉小隊

  ・旅団工兵大隊

  :大隊本部(及び本部中隊)

   ・2個戦闘工兵中隊

   ・前方支援中隊

  ・歩兵支援大隊

  :大隊本部(及び本部中隊)

   ・野戦整備中隊

   ・衛生中隊

   ・3個歩兵前方支援中隊

   ・偵察前方支援中隊

   ・工兵前方支援中隊

   ・砲兵前方支援中隊

  ・通信ネットワーク支援中隊

  ・軍事情報中隊

 ・戦闘航空旅団

 :旅団本部(及び本部中隊)

  ・4個航空大隊(ヘリ 24~30機/Bn)

  ・航空支援大隊

 ・砲兵旅団

 :旅団本部(及び本部中隊)

  ・2個砲兵大隊

  ・旅団支援大隊

  ・通信中隊

 ・化学防護中隊

 ・憲兵中隊

 

〇機甲師団

・師団司令部

:師団本部(及び本部大隊)

 ・3個機甲旅団戦闘団

 :旅団本部(及び本部中隊)

  ・3個戦車大隊

  :大隊本部(及び本部中隊)

   ・2個戦車中隊(戦車 14両/Co)

   ・2個機械化歩兵中隊

  ・機械化偵察大隊

  :大隊本部(及び本部中隊)

   ・3個機動偵察中隊

  ・機動砲兵大隊

  :大隊本部(及び本部中隊)

   ・3個自走砲兵中隊(自走砲 6門/Co)

   ・目標捕捉小隊

  ・機械化工兵大隊

  :大隊本部(及び本部中隊)

   ・2個戦闘工兵中隊

   ・機材中隊

  ・機甲支援大隊

  :大隊本部(及び本部中隊)

   ・野戦整備中隊

   ・衛生中隊

   ・3個歩兵前方支援中隊

   ・偵察前方支援中隊

   ・工兵前方支援中隊

   ・砲兵前方支援中隊

  ・通信ネットワーク支援中隊

  ・軍事情報中隊

 ・戦闘航空旅団

 :旅団本部(及び本部中隊)

  ・4個航空大隊(ヘリ 24~30機/Bn)

  ・航空支援大隊

 ・化学防護中隊

 ・憲兵中隊

 

 

 

例)第22機甲師団

・第22師団司令部

:第22師団司令部付大隊

 ・第22機甲旅団戦闘団

 :第22機甲旅団本部

  ・第22機甲旅団付本部中隊

  ・第221戦車大隊

  :第221戦車大隊本部

   ・本部管理中隊

   ・A中隊(戦車)

   ・B中隊(戦車)

   ・C中隊(機械化歩兵)

   ・D中隊(機械化歩兵)

  ・第222戦車大隊

  :第222戦車大隊本部

   ・本部管理中隊

   ・E中隊(戦車)

   ・F中隊(戦車)

   ・G中隊(機械化歩兵)

   ・H中隊(機械化歩兵)

  ・第223戦車大隊

  :第223戦車大隊本部

   ・本部管理中隊

   ・I中隊(戦車)

   ・J中隊(戦車)

   ・K中隊(機械化歩兵)

   ・L中隊(機械化歩兵)

  ・第224機械化偵察大隊

  :第224機械化偵察大隊本部

   ・本部管理中隊

   ・第1偵察中隊

   ・第2偵察中隊

   ・第3偵察中隊

  ・第225機動砲兵大隊

  :第225機動砲兵大隊本部

   ・本部管理中隊

   ・第1自走砲兵中隊

   ・第2自走砲兵中隊

   ・第3自走砲兵中隊

   ・目標捕捉小隊

  ・第226機械化工兵大隊

  :第226機械化工兵大隊本部

   ・本部管理中隊

   ・第1工兵中隊

   ・第2工兵中隊

   ・第3工兵中隊(機材中隊)

  ・第227機甲支援大隊

  :第227機甲支援大隊本部

   ・第227野戦整備中隊

   ・第227衛生中隊

   ・第221戦車支援中隊

   ・第222戦車支援中隊

   ・第223戦車支援中隊

   ・第224偵察支援中隊

   ・第226工兵支援中隊

   ・第225砲兵支援中隊

  ・通信ネットワーク支援中隊

  ・軍事情報中隊

 ・第30機甲旅団戦闘団 

 :略

 ・第44機甲旅団戦闘団

 :略

 ・第37戦闘航空旅団

 :第37戦闘航空旅団本部

  ・第37戦闘航空旅団付本部中隊

  ・第371航空大隊(偵察)

  ・第372航空大隊(空中強襲)

  ・第373航空大隊(全般支援)

  ・第374航空大隊(攻撃/偵察)

  ・第37航空支援大隊

 ・第22化学防護中隊

 ・第22憲兵中隊



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一年戦争の兵器たち
DFA-03 コロニー生まれの流れ星


 宇宙世紀0079年。

 地球から最も離れたスペースコロニー「サイド3」はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑みました。一年戦争の始まりです。

 圧倒的なまでに国力の差があるジオン公国は短期間の内に地球連邦に大打撃を加え、早期講和に持ち込むべく悪魔のごとき作戦を立案しました。

 「コロニー落とし」、ブリティッシュ作戦です。

 連邦軍の中枢、南米ジャブローに対しコロニーを質量兵器として落下させる作戦です。

 しかし、この作戦は失敗に終わります。

 その後、連邦宇宙軍をルウム戦役で壊滅させると、連邦政府を和平交渉の席に着かせることに成功します。

 しかし、ジオンの捕虜となっていたヨハン・イブラヒム・レビル宇宙軍中将の脱走と「ジオンに兵なし」演説により、連邦政府は徹底抗戦を決意。

 ジオンは早期講和にも失敗してしまいました。

 ジオン軍上層部は戦争に勝利する為に、戦場の舞台を地球に移すことにします。

 地球に降下し重力戦線を形成するにあたりジオン軍にはいくつもの課題がありました。

 その一つが航空戦力の充実化です。

 ジオン軍は地球で対決することとなる連邦地上軍、特に連邦空軍の存在は大きな障害になると捉えていました。

 当時の連邦空軍は陸軍や海軍に比べてコロニー落としの被害が少なかったこともあり、かなりの戦力を有していました。

 それに対しジオン軍には大気圏内で活動可能な航空戦力は皆無でした。

 それもその筈です。ジオンはコロニー国家であり、コロニー内には“大気圏”が存在しないからです。

 地球侵攻を控えたジオン軍には航空機、特に戦闘機の開発は急務でした。

 

 ジオン技術本部はマルティン・シュローダー技術大尉に大気圏内戦闘機の開発を命じます。彼は大気圏内航空機の研究をしていた数少ない人物の一人でした。

 シュローダーは直ちに開発チームを招集します。

 開発チームの1人ヘルムート・ユルゲン元技術少尉はこう語ります。

「もう、めちゃくちゃでした。数日の内に具体案を出して使える物を用意しろと言われました。なので、私達は過去の研究データの中から使えそうな物をピックアップしたんです」

 ピックアップされた候補は地球環境を再現したシミュレーターによるトライアルを受けることになります。

 戦闘機としてこの航空トライアルで選出されたのが「ドップ」でした。

 この機体は非常に高い旋回性能と速度から高い格闘戦能力がありました。ミサイルの使えないミノフスキー粒子下における有視界戦闘にはうってつけの機体だったと言えます。

「ドップは航空機としてはかなり独創的な形と言えます」

 そう語るのは軍事評論家のカロル・アダムス氏です。

「通常航空機は航空力学を始めとする航空工学に基づいて設計されますが、これには殆どそれがありません。大気圏という概念がないコロニーならではの問題だったと言えるでしょう」

 この航空トライアルでは「ガウ」や「ルッグン」などのジオン航空部隊の中核をなしていく機体が数多く選出されました。VTOL機やローター機が多く採用される中、「ドップ」はある意味冒険に出た機体と言えます。

「ドップ」は地球侵攻作戦に間に合わせる為、ジオン技術本部にて急ピッチで量産がなされました。

 

 宇宙世紀0079年3月1日。ジオン地球方面軍は第一次降下作戦を開始します。

 欧州に降り立ったジオン軍は瞬く間に空挺堡を確保。電撃的な侵攻を成功させました。

 ジオン軍はカザフスタンの連邦宇宙軍バイコヌール宇宙基地を占領。

 ジオン第1地上機動師団が続々と地球に降り立つなか、創隊されたばかりのジオン航空総隊もバイコヌール宇宙基地へと降り立ちます。シュローダー達、開発チームも最終調整の為に地球へと降りました。

 こうしてバイコヌール宇宙基地に併設された飛行場に「ドップ」を始めとしたジオン製航空機が運び込まれ、遂に地球の空を飛ぶときが来たのです。

 当時の状況をヘルムート・ユルゲン元技術少尉はこう語ります。

「それまでシミュレーターでしか飛ばした事のない機体を本物の大気の中で飛ばすのです。非常に緊張したのを憶えています」

「ガウ」や「ルッグン」が順調に初フライトを成功させる中、「ドップ」の番がやって来ました。

 この初フライトで「ドップ」は飛ぶことができず、滑走路から少し浮いただけで直ぐに墜落してしまいました。原因は揚力の不足でした。

 既に地球侵攻を開始したジオン軍には戦闘機が必要不可欠です。かといって今更、新規で設計する時間もありませんでした。

 シュローダー達、開発チームは強引な手段で「ドップ」を飛ばします。

「ドップ」のエンジンは宇宙戦闘機用の高出力エンジンにリミッターを設定した物が積まれていました。このリミッターの設定値を空中分解ギリギリの所まで引き下げたのです。

 更には離陸用にバーニアを取りつけ離陸に必要な推力を得ます。

 こうして2日後に「ドップ」は飛行を成功させますが、この機体は想定より大きな空気抵抗を受けたことにより空中分解を起こします。

 リミッターの再設定をおこない、試作5号機にてようやく安定した飛行性能を手にいれました。

 飛行するようになった「ドップ」でしたが、新たな問題が浮上しました。

 リミッターを下げたことによるエンジン出力の上昇と、想定よりも大きな空気抵抗を受けたことにより「ドップ」の燃料効率は非常に悪く、航続距離が短かったのです。

 この航続距離の短さは「ドップ」をガウ級攻撃空母に艦載することもあってか、さほど問題とはされず、一年戦争終結まで航続距離が伸びることはありませんでした。

 しかし、現場の将兵からは航続距離の短さは評判が悪く、一部の機体では現地改修により増槽を付け足して運用された記録が残されています。

 戦線に投入されたコロニー生まれの戦闘機、「ドップ」はその格闘戦能力を存分に発揮し、連邦空軍が運用する地球生まれの戦闘機と互角に渡り合いました。連邦空軍では戦場で本機と交戦する場合、格闘戦は避けるよう厳命されたほどです。

「ドップ」は連邦軍将兵から、その航続距離の短さを皮肉って「流れ星(シューティングスター)」や「彗星(コメット)」の渾名がつけられました。この「流れ星(シューティングスター)」の渾名は後にジオン側にも逆輸入され親しまれることとなります。

「ドップ」が戦線に投入されると開発チームは解散しました。

 開発主任だったシュローダー技術大尉はその後オデッサに移りました。そして鹵獲した連邦軍航空機の技術調査をおこない、ジオン製航空機にその技術をフィードバックしていきます。

「ドップ」も宇宙世紀0079年5月に改修を受け、離陸用バーニアを除去。離着陸用のフラップが装備されます。

 

 軍事評論家のカロル・アダムス氏は「ドップ」をこう語ります。

「ドップが飛行機なのかは我々軍事評論家の中でも議論が尽きません。ドップは純粋な飛行機というよりはロケットやミサイルに近い物だからです。しかし、このドップがジオン地球方面軍の空を終戦まで守ったのは事実です」

 

 

 




第1話がドップなのは「ドップって兵器てして色々欠陥あるのにどうして採用したんだろ?」っていう妄想からはじまったからですw


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MA-04X ザクレロは迷機だったのか?

 

 

 

「MA-04X ザクレロ」。

 一年戦争中に開発されたジオン公国軍の宇宙戦用MAです。

 戦争終結後ジオンへ進駐した地球連邦軍に接収されて以来、迷機と言う位置付けでした。

この「ザクレロ」は本当に迷機だったのでしょうか? 今回は「ザクレロ」の秘密を紐解いて行きます。

 

 宇宙世紀0070年、地球連邦軍との対決が現実味を帯びてくるとジオン公国軍は様々な新兵器の開発をスタートしました。

 開戦すれば地球連邦宇宙軍との艦隊決戦は避けられないと考えていたジオン公国軍上層部は、艦隊決戦に先立ち敵艦隊を襲撃する新兵器の開発を0071年、MIP社に指示しました。

 当初要求された性能は以下の通りでした。

・ミノフスキー粒子下における有視界戦闘能力があること。

・高速で敵防宙網を突破できるだけの推進力。

・マゼラン級戦艦を撃沈ないし戦闘継続困難な損傷を負わせられるだけの攻撃力。

・1~2名乗りであること。

 MIP社の開発チームは既存の突撃艇をモデルに高速突撃艇として本機の開発を始めます。

 0071年の年末頃には試作一号機が完成。

 当初は一般によく知られる「ザクレロ」の姿とは異なり、機体下部にある大型スラスターは無く黄色い本体部分のみでしたが、「ザクレロ」特有の「複眼」はこの頃から既に装備されていました。

 この複眼はカメラアイやセンサーの集合体であり、広範囲を索敵可能でした。一説では死角は機体後部の一部分のみだったとも言われています。

 武装は4連装ミサイルランチャー2基と機体正面に132mm対艦ライフルを改装した132mm対艦連装砲を内蔵していました。

 しかし、ここにきて軍から仕様の追加要求が届きます。

 追加要求は2つ。

・ビーム兵器を搭載すること。

・近接戦闘用兵装を搭載すること。

 この要求に開発チームは悩まされる事になります。

 当時のビーム兵器はメガ粒子砲しかなく、その殆どが艦艇用の大型な物でした。

 MIP社は以前からメガ粒子砲の小型化の研究開発を進めてはいましたが「ザクレロ」に搭載するには未だ大型でした。

「ザクレロ」の開発は暗礁に乗り上げることとなります。

 同時にMIP社はジオン軍次期新型機動兵器のトライアルに向け「MIP-X1」の開発を進めていました。「ザクレロ」の開発資金や人員が「MIP-X1」に回され、開発は更に遅れることとなります。

 

 0074年、ようやく「ザクレロ」の開発に光が見えます。

 ジオン公国の名家、ヨッフム家が開発資金の援助を申し出たのです。余談ではありますが「ザクレロ」の機体名称は開発資金を提供したヨッフム家によって付けられたとも言われています。

 充分な開発資金を得たことにより「ザクレロ」の開発は再び軌道に乗ります。

 しかし、MIP社が開発を進めていた小型メガ粒子砲は未だに試作の域を出ておらずとても「ザクレロ」に搭載できる代物ではありませんでした。

 そこで、ラインメタル社が開発した拡散メガ粒子砲を搭載することになります。

 0075年11月。当初の予定から大幅に遅れて「ザクレロ」は完成します。

 拡散メガ粒子砲を搭載する為に機体に内蔵されていたメインスラスターを除去。代わりに機体下部に大型スラスター2基を取り付け必要な推進力を確保しました。

 両翼にはヒートナタを装備し近接戦闘能力を獲得します。

 コックピットはパイロットとガンナーの2名が乗り込む複座式を採用。

 口を模した機首のマーキングも既に描かれていました。

 

 完成した「ザクレロ」でしたがジオン軍は既にMS(モビルスーツ)を主力兵器として運用することを決定しており、本機はあくまで艦隊決戦における補助兵器としての採用が見込まれていました。

「ザクレロ」は軍による最終テストを前にして形式番号「MA-04X」が与えられます。通常、形式番号は採用が決定してから与えられるものです。

 これは、MIP社とジオン技術本部の間で密談があったとも、開発資金を援助したヨッフム家に配慮したためとも言われています。

 こうして0076年1月に「ザクレロ」は軍による最終テストを受ける運びとなりますが、ここで「待った」がかかります。本機の性能に総帥府が疑問を持ったからです。

「ザクレロ」は再びその性能を検証され、結果最終テストを目前にして不採用が決定されます。

 理由は高速突入時の姿勢制御能力と攻撃力不足でした。

「ザクレロ」のテスト前に実施されたジオン軍次期新型機動兵器のトライアルにてMIP社が開発した「MIP-X1」はAMBAC(能動的質量移動による自動姿勢制御)による高い姿勢制御能力を持っていました。

 軍上層部は「ザクレロ」にも同様の性能を期待していましたが本機にはAMBAC用のアーム等はなく姿勢制御は機体背面のバーニアで行っていました。また、このバーニアだけでは高速突入中に細かな姿勢制御が出来ませんでした。

「ザクレロ」が搭載した拡散メガ粒子砲も問題がありました。この時搭載していた初期の拡散メガ粒子砲は射程距離が短かったのです。

 この事から軍は「ザクレロ」を小型艦艇と同程度の能力しか持たないと判断し不採用となったのです。

 本機の開発は打ち切られる事となりますがMIP社では先行量産も行われており、約30機前後が既に生産されていました。

 その後「ザクレロ」は、ジオン技術本部に引き取られ各種兵装や装備のテスト機として活躍することとなります。

 

「ザクレロ」の殆どは実戦に投入されることはなく。ア・バオア・クー攻防戦にて数機が投入されたという記録が残されています。

 また、ホワイトベース隊の航海日誌には本機と思われる機体と遭遇。RX-78-2「ガンダム」と交戦したと記録されていますが、ジオン側に出撃記録は残されておらず未だに謎に包まれています。

「ザクレロ」は戦後、連邦軍に接収されるとその独創的なフォルムと機体ごとに異なる装備も相まって開発コンセプトの解らない「迷機」と見なされました。

 

 不採用に終わった「ザクレロ」ですがその開発データやコンセプトは後の「ビグロ」へと引き継がれ大成功を納めることになります。

「迷機」と呼ばれた「ザクレロ」はMA(モビルアーマー)という新しい兵器の先駆けとも呼べる存在だったのです。

 

 

 



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M61A5 MBT 巨人に挑みし老兵

 

 

宇宙世紀0079年1月3日。

地球から最も離れたスペースコロニー「サイド3」はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に対し独立戦争を仕掛けました。

一年戦争です。

ジオン軍はブリティッシュ作戦、ルウム戦役などの緒戦で連邦宇宙軍を壊滅させると次の目標を地球へと定めました。

ジオン軍による地球侵攻が迫るなか連邦地上軍は「コロニー落とし」の復興もままならぬまま、対応に追われることとなります。

ルウム戦役でジオン軍新型機動兵器MS(モビルスーツ)「ザクⅡ」は華々しい活躍を遂げ、連邦宇宙軍の壊滅と言う戦果を持ってその性能を見せつけました。

連邦地上軍はこのMS(モビルスーツ)がきたるジオンの地球侵攻でも使用されると予想していました。

この18mの巨人に対抗する手段でとして期待されたのが連邦陸軍の主力戦車「61式戦車」でした。

今回はこの「61式戦車」に焦点を当てたいと思います。

 

宇宙世紀0050年代。連邦地上軍はある問題を抱えていました。保有する兵器の旧式化です。

0022年以来、地球圏では暴動こそ有れど大きな争乱はなく平和な時代が続いていました。

その為、兵器の更新などは積極的に行われず、当時の主力戦車「26式戦車」が優秀だったこともあってか兵器の旧式化は真剣に議論されて来ませんでした。

0057年になると各種兵器の老朽化による故障や事故、稼働率の低さが問題視され、連邦軍はようやく各種兵器の更新計画、「57年計画」をスタートさせます。

この「57年計画」によって0061年に設計・制式採用されたのが「M61A1 MBT」、通称「61式戦車」です。

全長11.6m、全幅4.5m、全高3.6mのこの戦車最大の特徴は150mm滑空砲2門を搭載する2連装砲塔です。

従来の戦車は単装砲が主流でした。これは2連装砲塔が砲塔内スペースの圧迫や重量、乗員の増加等のデメリットを多く抱えていたからです。

しかし、砲の軽量化や駐退復座機の小型化、エンジン出力の上昇などの技術の発展により2連装砲塔のデメリットを打ち消すことに成功します。これにより「61式戦車」は高い攻撃力を得ることになります。

「61式戦車」は0062年から本格的に量産され各方面に配備されていきました。0063年にはコロニー内や月面での運用を想定した電気駆動式のA2型が連邦宇宙軍陸戦隊に採用されます。

最新技術の粋を結集して設計された「61式戦車」は究極の主力戦車(MBT)と言える存在でした。

しかし、その高い性能が故に後継機の開発が進まず、数々のマイナーチェンジを施されながら0079年においても、連邦陸軍の「陸の王者」として君臨し続けていたのです。

 

一年戦争開戦時、連邦陸軍で広く運用されていたのは「M61A5 MBT」、後期型と呼ばれるタイプです。

全長11.6m、車体長9.2m、全幅4.9m、全高3.9m、最高速度は90km。主砲は150mm滑空砲から155mm滑空砲へと変更されました。

この砲はジオン軍が運用する主力MS「ザクⅡ」の正面装甲を2000m先から貫通可能でした。

砲塔も再設計され、低くなり被発見率が下げられます。

また、電子戦装備や自動追尾機能等の発達により乗員は3人から2人へ省力化され車長は砲手を兼任することになります。これは当時、連邦軍の人員不足も一因だとされています。

一年戦争開戦前の連邦軍は、平和な時代が続いていたことによる軍縮政策と志願者数の減少から極度の人手不足に陥っていました。

各方面軍の多くの部隊で縮小や改変が行われ、欧州方面軍だけでも最盛期の半分近くにまで縮小されていました。

その為、戦前の連邦軍では装備の無人化、自動化が盛んに行われた記録が残っています。

「61式戦車」も戦術データリンクによる衛星を介した精密照準が可能であり、砲手は車長と兼任でも高い射撃能力を維持して見せました。

しかし、ミノフスキー粒子によって無人化の進んだ連邦軍は大混乱に陥ります。

人手不足を補う兵器群が全く使えないガラクタと化したのです。

「61式戦車」もその自動化の進んだ高い性能を万全に運用するのは、2人の乗員では困難を極めました。

こうして「61式戦車」はその性能を充分に発揮できないままジオン軍の「ザクⅡ」と戦うことになったのです。

 

宇宙世紀0079年3月1日、キシリア・ザビの「鷲は舞い降りた」の演説と共にジオン軍は第一次降下作戦を開始、中央アジア カザフスタンから東欧 ウクライナにかけて降下しました。

欧州方面軍及びアジア方面軍はジオン軍の正確な降下地点を事前に察知出来ず、ほとんど不意討ちに近い形で攻撃を受けることになります。

更に、ミノフスキー粒子による通信網への影響は当初の想定より深刻でした。

欧州方面軍司令部が降下したジオン軍の全容を把握できたのは降下から3日後でした。無線通信よりも伝令の方が効果的だったと言う手記も残されています。

ジオン軍はオデッサに空挺堡を確立。西進を続けていました。

欧州方面軍はウクライナ リヴィウに展開していた第22、31の2個機甲師団をオデッサに向け前進させます。

こうして、0079年3月6日に両軍はキシナウ近郊で衝突します。「キシナウ攻防戦」です。

 

「キシナウの戦いは61式とザクが初めて大規模に衝突した戦いでした。この戦いは連邦、ジオン双方に大きな影響を与えました」

戦史研究家ドワイト・シュテッケル氏はこの戦いを一年戦争 重力戦線初期における最も重要な戦いの一つだと言います。

キシナウ攻防戦において連邦軍は2個機甲師団、戦車 約400両、火砲 約100門、航空機 約150機、兵士 約25000人を投入します。対するジオン軍はMS 39機、戦闘車両 約100台、兵士 約8000人でした。

6日未明ジオン軍は1個MS中隊を中核にキシナウ市街で抵抗する連邦軍第15歩兵旅団戦闘団を包囲すべく後方へと進出させていました。

オデッサへと向かう第22機甲師団の先頭、第44機甲旅団戦闘団第443戦車大隊はこのMS中隊と遭遇します。

セルゲイ・パスダヴァ軍曹(当時)はこう振り返ります。

「私は先遣中隊の先頭、つまりは大隊の一番前で街道沿いに前進を続けていました。すると、操縦手のベレンコ上等兵が森の向こうに何かいると言うのです。望遠カメラを向けると木々が不自然に揺れていました。同時に小隊長から無線で停止命令が下されました」

停止したパスタヴァ軍曹はハッチから身を乗り出します。

「あの時のことは今でも憶えています。双眼鏡を覗くと、林の上にザクの頭が見えたんです。写真や映像で見たことはありましたが、実際に見た時の衝撃は凄かったです。言葉も出ませんでした」

この時パスタヴァ軍曹の前に現れたのは1個MS小隊、3機の「ザクⅡ」でした。

第443戦車大隊は直ぐ様攻撃に転じます。

3機の「ザクⅡ」は不意を突かれ2機が撃墜、1機は中破しつつ後退していきました。

この戦闘で連邦軍は勢い付きます。「61式戦車」の攻撃力は「ザクⅡ」に通用することが確信できたからです。

この段階でジオン軍もキシナウに接近する連邦軍の大部隊に対抗するため戦力をキシナウに集中させます。

「ジオン軍は接近する連邦軍を東欧に展開する軍の主戦力であると捉えていました。これを包囲し撃滅することで東欧での主導権を握れると考えていました」

こうして翌3月7日。キシナウ市街から北東に60kmの地点で両軍は激突しました。

最初に戦端を開いたのは第31機甲旅団戦闘団第311戦車大隊でした。

ミノフスキー粒子下での戦闘経験など皆無だった彼らは戦前からの訓練通り、長距離からの砲撃を試みました。

これは殆ど効果がありませんでした。「61式戦車」の長距離精密砲撃能力は衛星とのデータリンクが不可欠だったからです。

その場から動かないトーチカや砲台ならともかく、素早く動くMSに当てることは困難を極めました。

しかし、同じように「ザクⅡ」の攻撃も「61式戦車」に効果を上げませんでした。

「ザクⅡ」の装備する120mmザクマシンガンは、スペック上では徹甲弾を使用した上で61式の正面装甲を800mの距離から貫通するとこができましたが、1500mを越える長距離戦では役に立ちません。

280mmザクバズーカは有効な攻撃手段でしたが弾速が遅く、回避されやすいという弱点も抱えていました。

連邦軍は従来の長距離戦では戦闘に決定打を与えられないと悟ります。ジオン軍も同様でした。

8日、連邦軍は大きく戦術を変換します。最初に動いたのは第31機甲師団隷下の第50機甲旅団戦闘団でした。

「中隊全車突入の命令が下りました。隣の501戦車大隊の支援を受けながら、502戦車大隊の2個戦車中隊が敵陣に突入したのです」

グレゴリー・ヤシュ少尉(当時)は4両の「61式戦車」を率いて前進しました。

連邦軍は長距離戦を止め命中の望める距離まで接近することにしたのです。

「それまで61式とやりあったのは最大でも2個小隊規模でした。大隊規模の61式が向かってきて自分も仲間も恐怖を覚えました」

そう語るのは「ザクⅡ」のパイロットとして参加していたハンス・ヴェンク曹長(当時)です。

ヴェンク曹長の言う通り地球降下以来、破竹の勢いで進軍するジオン軍に抵抗していたのは歩兵主体で編制された歩兵旅団戦闘団でした。時折遭遇する「61式戦車」も中隊規模を出ない程度だったのです。

ジオン軍は大軍で向かって来る「61式戦車」の前に恐慌状態に陥ったと記録されています。

4両の「61式戦車」を率いるヤシュ少尉は混乱するジオン軍に約1200mの位置から激しい攻撃を加えます。

「攻撃に集中していると隣に居たモルダヴィエ軍曹の61式が反撃を受け吹き飛びました」

先に述べた通り1000m先からザクマシンガンの攻撃を受けても「61式戦車」の正面装甲は耐えられます。

しかし、実際には多くの「61式戦車」が1000m以上の距離から攻撃を受け撃破されていました。

後の調査の結果、撃破された「61式戦車」の殆どが上面装甲に被弾していました。

戦車の上面装甲は正面や側面に比べて薄く出来ています。「61式戦車」も従来通り上面は薄く設計されていました。

「ザクⅡ」を始めとしたMSの全高は約18mあります。対する「61式戦車」は約4m。その高低差からザクマシンガンの120mm徹甲弾は上面装甲に命中、貫通したのです。

「ザクの攻撃を避けるべく、部下には行進間射撃をして敵に肉薄するよう命令しました」

ヤシュ少尉の率いる3両の「61式戦車」は2両で「ザクⅡ」の周囲を絶えず移動して注意を惹き付けた所で最後の1両が後ろから攻撃し撃破しました。

この複数車で敵を撹乱し、背後から一撃を加える戦術はのちに「61式戦車」の対MS戦闘の基本となります。

混乱から立ち直ったジオン軍の動きは迅速でした。突破を謀る第50機甲旅団戦闘団の側面を1個MS中隊が急襲します。

「突然、側面から攻撃を受け中隊長車が撃破されました。横から近づくザクに我々は全く気づいていませんでした」

車長が砲手を兼任する「61式戦車」は攻撃の際、車長は砲撃に集中する必要がありました。レーダーの使えないミノフスキー粒子の影響下ではどうしても周囲の警戒に隙が生まれます。

この弱点は致命的でした。

側面から急襲を受けたヤシュ少尉ら第502戦車大隊は瞬く間に壊滅します。

ヤシュ少尉の「61式戦車」も被弾し操縦手のモロトフ伍長は即死、ヤシュ少尉は間一髪で脱出に成功、随伴していた機械化歩兵に救出されます。

9日になるとジオン軍は反撃に転じ、MSを集中運用することで連邦軍の機甲旅団戦闘団を撃破していきます。

ジオン軍がキエフ方面から進出し包囲する動きを見せたこともあり、3月9日16時、欧州方面軍はオデッサ攻略を中止、撤退を決断します。

連邦軍の戦力を削ぎたいジオン軍は追撃戦に移行します。

「敗走する敵を追っていると突然攻撃を受けました。僚機のザクマシンガンが吹き飛んだんです」

撤退中の連邦軍の殿(しんがり)はキシナウの第15歩兵旅団戦闘団と損害が比較的軽微だった第44機甲旅団戦闘団が担当していました。

追撃戦を行うヴェンク曹長はこれに遭遇します。

「戦車掩体に潜みながらザクがくるのを待ってました。小隊長から必中の距離まで引き付けろと命令されていました」

パスタヴァ軍曹の小隊は森林に潜んで襲撃し、「ザクⅡ」を追い返します。

パスタヴァ軍曹の「61式戦車」がそうしたように第44機甲旅団戦闘団の各大隊は林や稜線に隠れながら「ザクⅡ」を待ち伏せ、中隊ごとに連携して攻撃します。

MSには随伴する歩兵は居らず潜伏する連邦軍の発見は困難を極めました。

第44機甲旅団戦闘団の「61式戦車」は側背面から「ザクⅡ」を待ち伏せて襲撃し大きな戦果を挙げます。

ジオン軍はキシナウ市街でもゲリラ戦を展開する第15歩兵旅団戦闘団に苦戦し、追撃を断念します。

この一連の「キシナウ攻防戦」で連邦軍は投入した「61式戦車」の約半数にも及ぶ200両近くを失う大損害を被りました。

この戦闘の結果、連邦軍は各機甲師団ごとの反撃を諦め機甲師団を集中運用、集中投入する戦略を取るようになります。

ジオン軍は大軍の「61式戦車」を打ち破ったことで進軍は更に勢いづき、「61式恐るるに足らず!」という楽観論が蔓延ることになります。

 

その後も連邦陸軍の「61式戦車」は各地で戦闘を続けます。

対MS戦術も発展を続け、北米では有線通信を使用し観測手と連携した長距離精密砲撃が効果を挙げました。東南アジア等の密林に置いては隠掩蔽がしやすく、待ち伏せ攻撃が絶大な戦果を挙げ局地的な膠着状態を作り出すことに成功しています。

連邦軍初の量産型MS「RX-79 ジム」が投入された戦争後半以降も連邦陸軍の主戦力は依然として「61式戦車」が勤めていました。

「ジムは量産性に優れたMSでしたがオデッサ攻略以降、次の主戦場となる宇宙軍に優先的に配備されていました。終戦のその日まで、重力戦線を支えたのは「61式戦車」だったのです」

ドワイト・シュテッケル氏は「61式戦車」を連邦陸軍の勝利を支えた影の功労者だったと評価します。

一年戦争が終結すると連邦軍はMSへの装備変換が急速に進みます。

重力戦線を支えた老兵はその姿を戦場から消したのでした。




色々書いてたら長くなってしまった。


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