超次元GAME ネプテューヌEX-AID (シンコウイチロウ)
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PROLOGUE
上空を雨雲に覆い尽くされ、街中が陰鬱に黒ずんでいる。
ざあざあと音をたてて降りしきる大雨の中、
「きつい……何で急に……」
つい先ほどから、なぜか体調が異様に悪かった。
おもりでもぶら下がっているのかと思うくらい全身がだるい。頭が万力に締められているかのように痛み、息をするのも苦しい。
おまけにこの大雨。今朝の天気予報で『今日は降水確率0%の日本晴れ!』というアナウンサーの言葉を信じたため傘は持ち歩いておらず、膨大な雨水に打たれたせいか体中が寒かった。
――風邪? それともインフルエンザ? もしかしたらもっと重い病気とか……。
――とにかく、病院にいってお医者さんに診てもらおう……。もらった薬を飲んで、家でぐっすり眠れば良くなるはずだ……。
やがて交差点に差しかかる。
濡れる視界の中、目の前の信号が青に変わったのを確認し、ずぶ濡れのアスファルトの上に描かれた横断歩道を重い体を引きずりながら歩きだす。
その時――
左右を確認してなかったからか。
それとも、この大雨のせいで視界が悪かったからか。
水びだしの道路を、タイヤがスリップしたからか。
右前方から走行してきた大型トラックに、笑夢人の身体は意識とともに吹っ飛ばされた。
■■■■■■■...
「あ、れ――」
両瞼を開く。
気がつくと、笑夢人は広大な部屋の中にいた。
四方の壁、床、天井が、何枚もの黒いパネルで構成されている、学校の体育館ほどの広さはある空間。
そして、笑夢人の目の前には、
「ピーンプーンペーンポーン♪ 初めまして、
ピンクとグリーンの二色のメッシュが入った、蛍光イエローのセミロングヘア。その上に乗った、リボンのついたミニハット。
ドットや音符の柄が可愛らしくあしらわれた、スカートの長いコスチューム。
某動画サイトの人気キャラクターが、画面からそのまま引っ張り出したかのような姿をした少女が、両手をきゃぴきゃぴと動かしながら喋っていた。
「えっと……ピッポーピポパポ……?」
「そう、ピッポーピポパポ♪ ポッピーピポパポじゃなくて、ピッポーピポパポ♪ 気軽にピッポーって呼んでいいよ♪」
戸惑う笑夢人に、笑顔で返すピッポー。
しかしその後、いきなり表情を悲しげなものに変えて。
「まず、笑夢人くんにはひっじょ~に悲しいお知らせがあります♪ 残念ながら笑夢人くんはトラックにひかれてしまい、そのショックで死んでしまいました♪」
ポッチ~ン♪ と目じりに涙を浮かべながら手を合わせるピッポー。
彼女の言葉に、笑夢人は「ああ――」と呆けた声を上げた。
「あれ? ぜんぜん驚いてないね? 普通は泣いたり怒ったりすると思うけど?」
「あーえっと……ははは……」
ポピ? と首をかしげるピッポーに対して、笑夢人は空虚な笑いを浮かべた。
――たぶん、自分は死んでもいいと思っていたのだろう。
だから、目の前の少女から自分の死を告げられても、なんの抵抗もなく受け入れることができた。
「あの……じゃあ僕、これから天国にいくんですか? それとも地獄?」
「んーん? 天国にも地獄にもいかないよ? ていうか、君はまだ死んでないしね♪」
「――は?」
思わず笑夢人は目を丸くする。
「え、だって、さっき死んだって――」
「あーごみんごみん♪ 元の世界では確かに死んだけど、君の存在自体はまだ消滅しないの♪ 君には今から、異世界転生してもらいます!」
ズビシッと指を刺され、笑夢人は面食らう。
「異世界……転生……?」
「そ、異世界転生♪ 最近ラノベやアニメでめっちゃポピュラーなあの異世界転生だよ♪ と、いうわけで――パピプペポチっとな♪」
ぽかんと言葉が出ない笑夢人の目の前で、ピッポーは懐から何かを取り出した。
スマホより一回り大きな直方体の物体。その真ん中あたりに設置された一つのボタン。
彼女はそれを、珍妙な掛け声とともに押下する。
その直後、笑夢人の立っていた床のパネルの一枚が消失した。
「へ――」
襲いかかる浮遊感。
しかしそれは一瞬のもので、すぐに急激な重力によって体が下に引っ張られ――
「それじゃ頑張って世界を救ってね? 天才ゲーマー
「う、うわああああああああああああ――――!?」
笑夢人は悲鳴を上げながら、枝から切り離されたリンゴのごとく落ちていった。
練習用として書いた作品ですが何卒よろしくお願いいたします。
感想、ご指摘、遠慮なくどうぞ。
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