新生怪獣王戦いの歴史 (surugana)
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登場怪獣の設定(ゴジラシリーズ編)

出てきた怪獣の設定などをまとめておきます。

随時更新する予定です。

※怪獣の元ネタの作品を追記いたしました。

※元ネタ事にページを分割いたしました。


怪獣王 ゴジラ (東宝ゴジラシリーズ)

バーニングゴジラが放出した放射線とエネルギーを吸収したゴジラジュニアが新たなゴジラとして新生した姿。

体表の色はかつてと同じ暗い緑で、背びれがやや尖っているのが特徴。

ベビーゴジラからの記憶を引き継いでいるため、性質は穏やかで温厚。

人類に対しての敵愾心も持っておらず、他の種族に対して基本的には友好的に接し、一方で自らの仲間を傷つける存在には果敢に立ち向かう勇敢さも併せ持っている。

最大の特徴は驚異的な環境適応能力と自己再生能力で、デストロアの攻撃を受けて瀕死になりながらも生存し、メルトダウンしたゴジラのエネルギーをすべて吸収できたのはこのため。

それゆえ、Gフォースの測定では熱線の威力はほぼ度程度、体内に宿しているエネルギーの総量は三代目以上と推察される。

主な攻撃技

・スパイラル放射熱線

エネルギーを限界まで蓄積して放つ強化版放射熱線。赤いエネルギースパイラルを帯び、従来の熱線の倍の貫通力を誇る。

・体内放射

熱線のエネルギーを全身から放出して全方位を破壊する熱線の応用技。

・放射熱閃

熱線のエネルギーを背鰭から尾に伝搬させ収束、尾を振り命中した対象を溶断する体内放射の応用技。

 

 

 

紫電龍 バラン (大怪獣バラン)

鳥海山の火口湖から出現した中生代の恐竜、パラノボーダーが進化し巨大化した恐竜型怪獣。

頭部から背中を通り、尾まで連続して生える角状の突起があり、顎から耳にかけても左右に三対の角が生えている。

そして腕と足の間に半透明な皮膜状の器官があるのが外見の特徴。

普段は四脚で活動するが、戦闘の時などは後ろ足で起ちあがり二足歩行となる。

体内で電気エネルギーを作り出す能力を持っており、皮膜の部分から発生させた電気をマイクロウェーブとして放電し、空気をイオン化する事で空中を超音速で飛翔する。

また、この皮膜の表面に電気エネルギーを集める事で、相手の攻撃をそらす強力な力場を形成し、バリアの用に活用すると言う事も可能。

その様な能力を持つことから雷を直接口から摂取する事で電気エネルギーを体内に貯蔵するため、自分の目線より上の明るい発光体を見つけると口を開けて飲みこもうとする習性がある。

秋田県鳥海山の火山活動が活発化した事で覚醒し火口湖より出現。特生自衛隊と交戦したのち飛翔し日本海へ、佐渡島周辺で特生自衛隊の気化爆弾攻撃によって自身の周囲を無酸素状態にされ海面に墜落。

能登半島上陸を目指すも護衛艦隊の迎撃を受け、富山湾付近まで迫るが、陸海空の集中攻撃を受けたのち、前述の特性を見破られ、口中に攻撃を集中され撃破された。

空中からの強襲戦法、口からの放電光線が得意技。

主な攻撃技

・フラッシュボルト

口から発射する紫色の光線。体内の電気エネルギーを光子に変換、収束させて発射するもので、稲妻状の紫色の光線が絡み合うように打ち出される。発射時にはゴジラやラドン同様背部の透明な突起が紫色にスパークし、余剰エネルギーを放出していると思われる。

・パワーフィールド

手足の間の被膜部分にエネルギーを集中させ、電磁エネルギーの力場を形成して攻撃を弾く防御フィールド。反射や吸収を行う従来のバリアとは違い、強力な反発力で攻撃を逸らし捻じ曲げる事で防いでいる。

エネルギーを中和する効果があり、メ―サーを始めとした熱光学兵器に絶対的な優位性を持ち、実弾攻撃も戦車砲程度ならば簡単にはじき飛ばしてしまう。

 

 

幽玄巨蛾 モスラ (VSゴジラシリーズ、平成モスラシリーズ)

インファント島の原住民に神とあがめられる巨大な蛾の怪獣。

地球全体と、そこに生きる生命を守護する地球意思の体現者で、93年にゴジラ、バトラと戦った後、99年に地球に落着するはずだった巨大隕石を破壊するため外宇宙に旅立っていた。

無事隕石を破壊し、99年に地球へと帰還する旅路の途中に地球侵略を目論む異星人の船団を発見し攻撃を仕掛け、そのまま船団を追跡しながら地球への帰還を果たす。

ゴジラとの戦い、宇宙での旅路から体力をほとんど消費して衰弱しており、余命を次の世代に託すためにインファント島で静かに暮らしている。

 

 

宇宙生命 ミレニアン (ゴジラ2000ミレニアム)

約7千万年前に外宇宙から地球に飛来した異星生命体。

滅び行く母星から逃亡するために肉体を量子流体に変化させており、半透明の軟体動物を思わせる姿をしている。

母船内で長い間眠っていたが、光を浴びたことで母船の機能が復活しミレニアン達も覚醒。

自身の肉体を復活させ、地球を植民地とするべく活動を開始する。

量子流体化した触手は電子機器のハッキングや、人と接触させることで脳内思考を読み取ることもできる。

 

 

変貌怪獣 オルガ (ゴジラ2000ミレニアム)

ミレニアンがジュニアから吸収した自己再生遺伝子オルガナイザーG1の制御に失敗し、肉体がゴジラ化した姿。

左右非対称の歪な姿で、巨大な腕のかぎ爪が特徴。

一見動きは鈍いが、跳躍力に優れ、更にその動作を念動力で強化することで外見に似合わない俊敏性を持つ。

主な攻撃技

・指向性思考波 マインドクラッシャー

左肩の孔から収束させた念動力を波動として発射する。

・アイアンクランプスマッシュ

巨大なかぎ爪を振り回し相手にたたきつける。

 

 

変貌怪獣 オルガ・フェイズⅡ

オルガがさらにゴジラからオルガナイザーG1を吸収し変貌した姿。

進化途中の歪な姿だったフェイズⅠからよりゴジラに近い洗練した姿に進化している。

マインドクラッシャーの発射孔が右肩にも追加され、更に強化された念動力を用いてゴジラに戦いを挑むが、ゴジラとの完全融合を目論んだことを逆手に取られ、体内で発射されたスパイラル放射熱線と体内放射によって粉砕される。

主な攻撃技

・ツインマインドクラッシャー

右肩にも追加された発射孔からも打ち出される指向性波動砲。

 

 

水棲怪獣 シーガン (ゴジラ:トレーディングバトル)

ナーガアームリタ湖の湖底に棲息する微小プランクトンが、澱んだ湖底の化学反応の影響で巨大化した怪獣。

背部に翼状のヒレを持ち、エラから取り込んだ水をヒレの毛細状の管から噴射して水中と水上を高速で移動することが出来、短時間ならば滑空することも可能。

食欲と繁殖欲を何よりも優先し、一度大量に増殖すると湖の生物を食べつくして生態系を破壊、毒性の強い排泄物で水質を汚染してしまう事からバランから強く憎まれている。

大きさは15m前後が殆どだが、統率が取れた行動を取ることから、大型の群れのリーダー格の存在もニックは予想している。

 

 

婆羅陀魏山神 バランⅡ (大怪獣バラン+GMK初期案)

ナーガアームリタ湖に住むバランの同種の別個体。

日本に出現した個体と比べて体長がゴジラ並みに大きく、顔の角も長く透明度が高い事から成体であると推測されており、あらゆる能力が格段に向上している。

性質は穏やかで他者を襲うことは殆どなく湖の綺麗な水を何よりも好む。数千年の昔から湖に棲息し、近隣の住民達と共存してきた。

湖の環境と生息する生物、住民を襲うシーガンを徹底的に敵視しており、長きにわたって敵対し続けている。

・フラッシュボルト

口から放射する電撃光線。初代の同一攻撃と比べて三倍の威力を持つ。

・パワーフィールド

全身を包む電磁バリア。こちらも初代より頑丈で、全身を包んだ状態で空中から相手に突撃するなど攻撃に転用することもできる。



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登場怪獣の設定(ガメラシリーズ編)

1ページには書ききれなくなって参りましたのでジャンルごとに分割させていただきます。


守護神獣 ガメラ (平成ガメラシリーズ)

1万2千年の昔、超古代文明アトランティスが当時アトランティス大陸に生息していたリクガメ類を基に生み出した生物兵器

人類と地球環境の平穏を乱すあらゆる存在を打ち倒すために生み出され、戦闘の度に蓄積したデータを基に自身を成長させる能力を持つ

アトランティスの崩壊と共に長期間の眠りにつき、ギャオス復活の気配を感じて再び出現、甲羅の中に頭部と四肢を引き入れた状態で海流に乗って海を漂い根なし環礁として太平洋各地で目撃されていた

ギャオス復活と共に覚醒し、姫神島沖で激しい戦いを繰り広げる

基本的には人類を守護するために戦うが、護るべき対象は地球に住むすべての生命であり、戦いの中で人的被害が出る事も厭わない

が、例外として子供が危険にさらされている場合は何よりもそれを救う事を優先する

体内にあらゆる熱をエネルギーに変換し、呼吸で取り込んだ酸素をプラズマに変換するプラズマエネルギー炉を持ち、これが主な力の源となる

四肢、頭部、尾を甲羅の内に引き込み、四肢からジェット噴射を行い回転して飛行する高速飛行形態と、腕と頭部のみを露出させたまま両足のジェットで飛行する高機動飛行形態に変化することが出来る。最高飛行速度はマッハ3以上

精神が同調した人間の精神的な祈りを超神秘エネルギーマナに変換して自身の力とすることができ、オリハルコン製の神器勾玉を通じて草薙浅黄、藤戸みどりと交信しているが、それも当初はあくまでエネルギー源とみなしただけに過ぎなかった

しかし、二人と拓也の説得を機に徐々に人類そのものも守護する対象と認識を改め、姫神島で戦ったゴジラとも戦友の様な関係になっていく

武器

・ハードスラップ

別名玄武掌。剛腕による打撃。幼体ギャオスを即死させる破壊力がある

・プラズマブリット

別名聖火球。体内にあるプラズマエネルギー炉で生成したプラズマの火球を発射するガメラの主力武器。ゴジラの熱線に匹敵する威力を持つ

・ハイプラズマブリット

別名超熱球。体内に通常よりも多量の酸素を取り込み、高出力・高圧縮させ破壊力を高めたプラズマ火球

・スピニングフレイム

別名紅熱旋。体内で高めたプラズマエネルギーを四肢のジェット噴射に追加して赤い噴射炎を周囲に打ち出し、全方位の敵を焼却する

・ヒートナックル

別名聖炎撃。体内の熱エネルギー炉で生み出した超高温を手のひらに収束させ高熱を帯びた手で相手を粉砕する。ガメラの手首から先が赤く発光する程のエネルギーを内包している

 

 

超遺伝子獣 ギャオス (平成ガメラシリーズ)

超古代文明アトランティスが生み出した遺伝子制御の産物。

爬虫類と鳥類の中間に当たる何かしらの生物を改造したと思われる生物兵器で、単体生殖、自己性転換、異常ともいえる環境適応、自己進化能力を持つ

姫神島で数万年単位の時間を超えた耐久卵から多数のヒナが孵化し、共食いの末に生き残って成長した9羽が同島住民を全て捕食

Gフォース、特生自衛隊、ゴジラ、ガメラと交戦し最終的には全滅した

性質は狂暴かつ残忍。あらゆる生物を捕食対象と認識し、同胞だろうと平然と生き残るために利用する狡猾さと高い知能を持つ

僅かな栄養でも、たった一日でその全長が一回り巨大化するほど成長のスピードは速く、成長するにしたがって苦手としていた太陽光すら克服し、ミサイルで撃墜可能だった当初の耐久性も比較にならない程に向上している

桐島博士の推察では、今回出現したギャオスもあくまで離島と言う環境に適応するために鳥に近い形状に進化しただけで、これがギャオスの本来の姿ではなく、別の環境で生まれれば全く別の姿に変異している可能性があるという

世界各国で出現する可能性は非常に高く、現在Gフォース、国連G対策センターの最重要警戒対象に指定されている

武器

・ヴァイブレート・レイ

喉にある音叉状の骨で鳴き声を増幅し、数百万サイクルの超音波にまで強化した後発射する超音波メス

戦闘機や戦車すら切り裂き、ガメラの肉体にダメージを与え、成長すればゴジラにも効果を発揮する威力になる

・ノイズィ・ウェーブ

複数体で同時に超音波を広範囲に放つ連携攻撃。攻撃を無力化する為に放たれ、ミサイルの電装系を破壊して身を護ったり、相手を怯ませるために使われる牽制技

・シェイバー・ネイル

骨伝導を利用し、喉で発生させた超音波を四肢の爪まで伝搬、切れ味を高める

発動時にはヴァイブレート・レイと同様に爪が黄色に発光する

 

 

超遺伝子獣 水棲ギャオス (平成ガメラシリーズ+独自設定)

ギャオスが海中で誕生し水中下での環境に適応した姿。

バショウカジキの様な体を持ち、頭部は従来のギャオスそのままだが後頭部の鋭角に尖った部分が整流作用を発生させるために延長されている。

太平洋一帯で出現しているとされており、ゴジラによって多数が撃破されている。

武器

・ヴァイブレートレイ・アクア

水中での使用に特化した超音波メス。威力は通常のギャオスのそれと変わらないが発光色が緑となり、水の伝搬力を利用しているため、空中で発射した場合は威力が逆に減衰する

・ボイスターバースト

マッコウクジラのメロン帯と似た器官を有しており、ここで増幅させた超音波を放って広範囲の敵の聴覚にダメージを与える

 

 

超低温怪獣 バルゴン (大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン+大怪獣激闘 ガメラ対バルゴン COMIC VERSION+独自設定)

1万2千年前の超古代文明戦争期に現在の南米大陸で栄えていた文明が生み出した怪獣兵器。

主に南米のジャングルに生息する様々な爬虫類の遺伝子を改造して生み出されており、四つ脚で歩く姿と額の赤い宝石状のエネルギー制御器官、結晶状の背鰭と尾の先端が特徴

体温は-200℃を下回る超低温で、超低温下でも凍結しない特殊な体液によって肉体の代謝を行い、同時に体内電気によってその体液の特性を180度反転させ強力な武器とする

攻め込んだ敵国土を超低温、マナの吸収、電離層の破壊で徹底的に疲弊させて国力を削ぎ、吸収したマナによる自爆で自らを新たなバルゴンの生体製造工場とすることで滅亡させることを目的に生み出された

かつてガメラ及びモスラによって撃破、太平洋に沈んだ巨大大陸ナーカルの山脈に封印されていたが、その封印が不完全であったために1000年に1度生まれる虹の悪魔として山脈の現在の姿であるティアボー島に伝わっていた。

新しい卵がトレジャーハンターマクロム・ジェロムの手で発掘され、調査実験の仮定で浴びた様々な波長の影響で異常巨大化し誕生、鹿児島市を壊滅させた。

プラズマメーサー砲の直撃にも耐える頑強な外皮を持つが、一方で水を浴びると一瞬で細胞が劣化・崩壊していくという弱点を持つ。

武器

・タン・ハンマー

最大で1kmも伸ばすことが出来る先端が楕円形になったバルゴンの舌。ハンマーの様に振り回して相手に打撃を与える、小さな物を絡め取る等精密に制御が可能

・ブリザード・ブレイザー

舌の先端から放出する液化冷凍ガス。-200℃以下の過冷却状態で放出され、浴びた物体は一瞬にして凍結する。また分子結合を増強させ、強力な熱遮断効果を持たせて解凍を困難にさせる効果も併せ持っている

・ディアーヴォル・カルマ

背部の背鰭から放射する高出力プラズマビーム。最大射程は電離層まで到達し、オゾン層や地磁気のバリアを破壊し有害な放射線を地表に降り注がせる。一定以上の高度まで達した後に屈折させて地表・空中の広範囲を薙ぎ払う事も出来、ガメラを昏倒させるだけの威力を持つ

・アイシクル・スピアー

尾の先端にある結晶状物質を冷却して氷を纏わせ、貫通力を強化して相手に突き刺す攻撃。ガメラの皮膚を貫通する威力があり、そのまま超低温を相手の体内に流し込み内側から凍りつかせる。



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登場怪獣の設定(その他の作品編)

こちらでは東宝特撮及びガメラシリーズ以外の作品から登場させた怪獣たちの設定を置かせていただこうと思っています。


恐竜怪獣 リドサウルス (原子怪獣現わる)

グリーンランドの地下に眠っていた恐竜が、1968年にテューレ空軍基地で起こった核爆弾を搭載した爆撃機が墜落した事故で紛失した核爆弾の放射線を浴びて怪獣となった姿。

ゴジラ同様巨大化しており、歩兵の手持ち火器程度では傷一つつかない耐久性を持つ。

元々北米大陸全体に棲息しており、帰巣本能に従って南下しニューヨークに出現した。

市街地を荒らし海中に潜伏した後、海軍の攻撃でモントーク島におびき出され、米軍の総力攻撃を受けたのち、内臓の機能低下を引き起こすアイソトープ弾によって撃退される。

最後モントーク灯台に寄りかかるように絶命したのは、灯台が偶然起こした霧笛の音が同属の鳴き声に聞こえ、助けを求めたから、あるいは救おうとしたからではないかと推察されている。

 

 

大海獣 ビヒモス (大海獣ビヒモス)

恐竜パレオサウルスが放射能の影響で怪獣化したもの。

名前はその姿を目撃した生存者が聖書に登場する生物からとっさに叫んだ言葉に由来する。

帯電体質で口から電撃波を放ち、体に帯びている電磁波の影響でレーダーにも捕捉することが出来ない。

その為英国軍の防衛レーダー網をすり抜けてロンドン島に出現し、テムズ川沿いに侵攻、最後はグリニッジ公園に集結した英国軍の集中攻撃を受けて殲滅された。

・電撃波

口から放つ超高圧電撃。戦車を溶かすほどの威力を持つ。

 

 

冷凍凶獣 レプティリカス (冷凍凶獣の惨殺)

デンマークのツンドラ地方に存在する鉱山から出土した肉片から蘇生した怪獣。

かつて爬虫類から哺乳類に進化する過程で生まれた生物であり、元から強力な自己蘇生能力を持っていた。

だが放射能汚染の影響でその蘇生能力は異常ともいえるほどに強化され、攻撃を受けた肉片からもう一体のレプティリカスが生まれるほどになっている。

コペンハーゲン市に出現し、ちぎれた腕が再生してもう一体に増えるなど甚大な被害を与えたが、GフォースEUから提供されたメーサー砲の攻撃で口中にダメージを蓄積され二体とも殲滅、死体は細胞単位で焼却され北極にて厳重に封印されている。

 

 

貪欲海獣 オクタルス (ザ・グリード)

カンブリア期から深海で生き延びていた古代頭足類の一種が環境破壊の影響で巨大化・狂暴化した姿

定期的に海面付近まで浮上しては付近を航行する船舶を襲撃し、乗員乗客を捕食していた。

特に目立った特殊能力はないが、無数の触手の先端にも口があり、ここで得物を捕食し栄養を吸収する。

Gフォース日本とGフォースチャイナの合同作戦で撃滅された。

 

 

巨大アリ (放射能X)

ニューメキシコ州のホワイト・サンズミサイル実験場近くの砂漠地下に巣を作っていた、全長3mから4mもの巨大アリ

拳銃の弾丸を弾くほど分厚い外骨格を持つが、シアンガスなどに弱く泳ぐこともできないため、巣の中で水攻めにあい全滅した。

かつての核実験の影響によって巨大化したと思われているが、バイオメジャーによる生物実験の産物と言う可能性も指摘されている。

 

 

巨大ヘビ (大蛇王 HONGKONG崩壊の序曲)

台湾の高雄市に出現した全長80mもの巨大なヘビ、生物を巨大化させる実験の過程で生まれたとされるが詳細は不明。

大きさはすさまじいが耐久性は従来の怪獣ほどではなかったようで、台湾軍の攻撃で撃滅される。

 

 

火焔怪獣 ヤンガリー (怪獣大決戦 ヤンガリー)

黄海から出現した怪獣。頬の後ろと頭部後方に三本の角を持ち、両肩にも鎧の肩当の様な外殻を持つのが特徴。

朝鮮半島の神話の登場する聖なる守護神で、人々が危機に陥ると凍った海中から氷堤を伴って現れると言う伝説が残っていた。

性質は温厚で進んで逃げ遅れた人たちの盾となるなど献身的。

熱エネルギーを吸収する特性を持っており、ビームや光線攻撃に非常に強い。

プルガサリとは同じ朝鮮半島の守護者として友情を育んでいる。

武器

・バーニングジャベリン

口から放つ矢じり状の火炎弾。

 

 

守護獣 プルガサリ (プルガサリ)

ソウル市内の地下から出現した怪獣。水牛の様な二本の角と鎧の様な分厚い皮膚が特徴。

不可殺と言う名でヤンガリー同様に朝鮮半島の神話や伝承に記されている聖なる獣で、王朝の圧政や人々の危機にどこからともなく現れては悪しきものを打ち倒すとされている。

動きは重いが堅牢な外皮と自身の倍近い大きさの相手すら投げ飛ばす剛力が主な武器。

武器

・熱火拳

体内の生命エネルギーを熱に変換し、燃える拳を生み出して相手を殴りつける必殺技。

 

 

遺伝子怪獣 グエムル (グエムル 漢江の怪物)

在韓米国軍と癒着していたバイオメジャー傘下の企業が、不法にソウル市内の下水道に流していた違法薬品を、下水道内に棲息する両生類が摂取して怪獣化した存在。

三方向に開く口や不規則に生え、使用する事が出来ない腕等人の不快感を誘う異形な姿を持つ。

大型の個体が小型の個体を統率する性質を持ち、攫ってきた生物を卵を植え付ける母体としていた。

Gフォース部隊とプルガサリ、ヤンガリーの攻撃で小型の群れは全滅し、大型の個体も頭部を破壊され倒れる。

 

 

毒魔虫 ギルタブルル

1997年に当時のサラジア共和国に出現した怪獣。蠍が放射能汚染と毒化合排泄物の影響で巨大化したもので、その名前はバビロニア神話に登場する半人半獣の怪物に由来する。

サラジアのラディダに出現し、都心部を中心に破壊活動を行いラディダを壊滅させる

戦車砲の直撃に耐える頑強さを持つがそれでも既存の怪獣に比べれば決して戦闘力は高くなかったのだが、当時のサラジア政府が対応を誤ったため被害が拡大、隣国セルジアの介入もあって派遣されたGフォース部隊によって撃滅される。

武器

・ギガンシザース

両腕の鋭い鋏。鉄塔を軽々と切断し高層ビルを粉砕するパワーを持つ。

・ポイズニーピック

尾の先端にある鋭い槍状の毒針。滴る毒はコンクリートを溶かす猛毒で、生物が浴びれば一瞬で骨も残らず溶解してしまう。また純粋な貫通力もすさまじく軍艦を一撃で大破させられる。



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登場組織の設定

こちらでは作品に登場する組織の設定を羅列しようと思います。
リアルな政治や国際情勢などには疎いので、あくまで雰囲気でご覧ください。


国連G対策センター(United Nations Godziila Countermeasure Center:U.N.G.C.C.)

ゴジラの脅威に対抗するべく、国連内部に発足した専門機関。

茨城県のつくば市に本部を持ち、世界中の優秀な人材を集め、日夜ゴジラに対する研究、対策を行っている。

現在ではゴジラが人類に対して敵対的な存在ではないため、あくまで監視にとどめ目下世界中で多発している怪獣被害に対抗するための中心組織としての役割が強くなっている。

現在の長官は三代目に当る元G研究所生物教授権藤千夏。

 

 

Gフォース (G-Force)

国連G対策センター隷下の軍事組織。対G用超兵器の開発運用の他、怪獣が出現した場合は現地の特殊戦略担当組織と共同して事態解決に当たる。

現在は大型の怪獣の対策の他、バイオメジャーなどが推し進める生物兵器などの被害に対しての対応に力を入れつつ、かつてのメカゴジラ、MOGERAに代わる新世代対Gスーパーマシンの開発を行っている。

司令官は麻生孝明大佐。副司令官は兵頭巌中佐

 

 

Gハウンド

正式名称Gフォース特別偵察任務部隊

Gフォース歩兵部隊の中でも特に精鋭とされる特殊部隊で、主な活動内容はバイオテロを目論む組織の事前調査及び制圧、発生したバイオテロの迅速な解決、BOW運用が認められた紛争への介入等だが、他にも小型怪獣の殲滅、モナークやGグラスパーと言った研究機関の未開の地での研究活動の護衛なども行っている。

アメリカラクーンシティで発生したバイオハザード事件の後に世界各国のGフォース支部内に正式に発足、事件の解決に当たった人物も多数在籍している。

 

 

特生自衛隊 (Japan Counter-Xenomorph Self Defence Force:J.C.X.S.D.F.)

対怪獣戦を円滑に行うため、特殊生物、即ち怪獣要撃に特化した第四の自衛隊。

陸上自衛隊所属であったメーサー戦車などは全て運用人員を含めここに配置転換されている。

司令部拠点は千葉の習志野駐屯地。

 

 

特殊戦略作戦室

自衛隊統合幕僚監部直属の特殊戦略セクション。その名の通り従来の戦略・戦術では対応不可能な危険な存在である怪獣・異星人と言った存在への対応に特化している。

元々は陸上自衛隊内のゴジラ対応班として発足し、その後怪獣被害と脅威が拡大したことで、より直接的に全自衛隊を指揮する部門として統合幕僚監部内に再編成された。

対怪獣用ドクトリンの研究、新たな脅威の早期発見、対処。有事の際の情報分析、指揮、必要とあればスーパーXシリーズなどの超兵器の直接運用等様々な権限を任されている重要な部門であり、4自衛隊の幹部候補生の中でも特に優秀な、通称ヤング・エリートと称される人物のみが配属を許される。

室長は黒木翔一等特佐。本来ならば将官へ昇進してもおかしくはないのだが、現場第一主義の為昇進の話があるたびに固辞し続けている。

 

 

S.U.M.P. (Special Unit of Metropolitan Police :都市警察特殊部隊)

日本警察が各都道府県に配備している特殊部隊。

対テロ、重犯罪対策の為にアメリカのSWATをモデルに90年代初頭に発足。

対怪獣戦の初出動は96年のデストロイア事件、お台場テレコムセンタービルを占拠したデストロイアの幼体を相手にビル内外で激しい戦闘を繰り広げ、複数の個体を撃破するも多数の殉職者を出した。

その後小型怪獣への初動対応等が本格的に運用目的に追加されたため、全国規模での編成と強化が行われ現在では自衛隊やGフォースと共同で出動する場面も増えている。

 

合衆国対特殊生物要撃軍 (United States Counter-Xenomorph Force : U.S.C.X.F.)

アメリカ合衆国が怪獣迎撃の為に発足した軍事部門。

Gフォース内部での権限の強さを活かし、いち早く日本から導入されたメーサー技術や空中戦艦の開発計画を実施する。

ダイアン・フォスター中佐やダグラス・ゴードン中佐など優秀な人材を多数抱えている。

 

 

欧州特殊戦略作戦軍(European Special Strategic Operations Army : ESSOA)

EUが合同で発足した対怪獣特化軍事部門。EU初の常任軍事戦力で、ヨーロッパ各国に出現した巨大生物や異星人の迎撃、研究、対抗兵器開発を行っている。

少数精鋭、実力主義を謳っており、若いエリートや優秀な人材が数多く在籍。若くして佐官・将校クラスの地位に付いている人物も少なくない。

 

 

特別任務対応軍 (Spetsial'nyy Missiya Perepiska Armiya : SMPA)

ロシアで編成された怪獣迎撃軍事部門。

MOGERA開発でGフォース内部でもアメリカに通じる権限を持つことから数多くの技術を吸収、主に高性能対獣ミサイル兵器の開発を行っている。

 

 

人民解放軍特殊戦略部隊

中国で編成された怪獣迎撃組織。

96年にゴジラの攻撃で香港中心部が壊滅したこともあり、他国の特殊戦略部門よりも一足先に発足に向け動いていた。

李翔中佐をはじめ隊員の士気は非常に高い。

 

 

バイオメジャー

米国の遺伝子工学・製薬系企業による複合体。怪獣の細胞が持つ未知の特性を新たなマーケット開拓の資源と捉え、生物兵器の製造や遺伝子組み換えによる超作物の誕生によって市場の独占及び覇権を画策

G細胞以外の怪獣の細胞を狙い、世界中で慢性的に覚醒を果たした怪獣を品種改良し怪獣兵器として各国の軍隊に売り込もうとするなど、利益獲得のためならば手段を択ばない。

ジェノニクス社、オリジナルバイオゲン社、ワシントンフューチャーテック社等が参画し、近年はトライセル社、H.C.F.、アンブレラ社等も新規参入を果たし生物兵器産業も拡大。

大規模な施設軍隊を所有し、各国にコマンドやエージェントを派遣し暗躍させていることからGフォースからも危険な組織として認識されている。

総帥的存在にいる人物はマリクと言う名前であること以外一切の経歴が不明。

 

 

危機管理情報局 (Crisis Control Intelligence :C.C.I)

内閣府内閣官房安全保障室直属のシンクタンク的組織。国内外の様々な情報を収集・精査し、国防上国家運営上の懸念となる様々な危機に対応し、関係各省への指示を発する。

その活動範囲は多岐にわたり、環境問題やテロ活動や戦争、当然ながら特殊生物災害等も対処の範囲内となり、統合幕僚監部の特殊戦略作戦室と共同で怪獣撃滅作戦の指揮を行う。



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登場メカニックの設定

ここでは劇中で使用された兵器やメカニックの設定を羅列しておきます。
基本的に羅列するのは架空兵器だけになります、キリないですからね…
文中では描写されていないけれど使っている兵器などもあれば書き込む…かも。




アイソトープ弾

リドサウルス撃滅に使用された米軍の対怪獣兵器。

USCXF結成以前からも米軍内では怪獣対策が小規模ながらも進められており、その過程で開発された試作兵器の一つ。

SMAWロケットランチャーから発射され目標に命中すると、体内に放射性同位体を注入し、内臓機能を破壊して対象を殺傷する。

リドサウルス撃滅には効果を上げたものの、ゴジラレベルの大型怪獣への効果は薄いと見込まれ、また周囲の汚染も懸念されたことでこれ以後の使用は確認されていない。

 

 

Mk.2 メーサービーム砲

GフォースEUに自衛隊から提供され、性能実験に使用されていた500万ボルトメーサー砲。

92式メーサータンクに搭載されていたものをけん引式の簡易移動砲塔に改造し、XA-180装甲兵員輸送車を改良した制御車両によって運搬する。

本来は実戦投入の予定はなかったが、レプティリカスの出現に伴い急遽攻撃に投入された。

動力源である英国製の核融合炉との相性が悪く、レプティリカスの撃滅には成功したものの、各パーツに掛かった負荷はすさまじく、砲身が溶解寸前となっていた。

 

 

DAG-MBT-MB92 92式メーサー戦車<改>

特生自衛隊の主力戦闘車両。

89年のビオランテ事件から第一線で活躍してきた名機を実戦で獲得されたデータを基に改良したもので、8連装ミサイルランチャーの搭載や砲塔回頭速度の向上等近代化改修が施されている。

兵装

89式改500万ボルトメーサー砲×1

96式8連装多用途ミサイルランチャー×2

 

 

MBAW-93 93式自走高射メーサー砲<改>

特生自衛隊で運用される局地戦防空車両。

主に戦闘指揮車両として運用され、出力は92式には劣るが射撃精密性で勝る。

本車両も対空レーダーの刷新やミサイルランチャーの追加搭載などの近代化改修が施された。

兵装

93式改200万ボルト対空メーサー砲×2

96式8連装多用途ミサイルランチャー×2

 

 

DAG-MB96 95式レーザータンク<改>

特生自衛隊で運用される大型戦闘車両。

96年のデストイア事変で急遽投入された超低温レーザータンクを改修し正式装備としたもの。

発射するレーザーを回路を切り替えることで通常の熱レーザーと超低温レーザーに切り替えることが出来る。8連装ミサイルランチャーも続けて搭載済み。

兵装

96式改1000万ボルトレーザー砲×1

96式8連装多用途ミサイルランチャー×2

 

 

ASTOL-MB93 93式メーサー攻撃機

特生自衛隊で運用される戦闘攻撃機。

主翼左右翼端に小型メーサー砲を搭載し、空中から目標を攻撃し主に誘導や牽制に使用される。

火力では地上車両に劣るが優れた機動性を持つ。

兵装

93式80万ボルト省電力メーサー砲×2

20ミリ3砲身ガトリング砲×1

70ミリロケット弾ポッド×2

対怪獣用ナパーム弾×6

 

 

MBSA-97 97式プラズマ自走砲

特生自衛隊で運用されるメーサー自走砲。

プラズマビームを発生させる出力砲身を上下で挟むブレードバレルによって、プラズマエネルギーを球状に固定し投射、電磁誘導によってこれまで不可能であったビーム兵器による曲射攻撃が可能となった。

主力部隊のやや後方からの支援攻撃を主に担当する。プラズマ砲の出力は950万ボルト。装輪式で機動性も高い。

兵装

97式950万ボルトプラズマ砲×1

 

 

DAG-MBS-SX3 スーパーXⅢ

自衛隊特殊戦略作戦室直轄の多目的大型戦闘機。

96年のデストロイア事件で初陣を飾り、以後対怪獣戦における自衛隊の主力として活躍している。

主砲レーザー砲は改修したことで超低温モードと超高温モードの瞬時切り替えが可能となった。

兵装

96式改1000万ボルトレーザー砲×1

95式4連装多用途ミサイルランチャー

96式4連装ミサイルランチャー×2

照明弾発射筒×2

 

 

97式24連装自走ロケット砲

74式特大型トラック後部を改造し、多連装ロケットランチャーを接続した対地ロケット砲。

他の通常戦車同様メーサー戦車から自動操縦され、広範囲に弾幕を貼り怪獣の誘導や足止めに効果を発揮する。

ポン、ポン、と発射時に音がすることから前線からはポンポン砲の愛称で呼ばれている。

 

 

フルメタルミサイル

正式名称97式極超音速対獣貫徹弾頭弾。

Gクラッシャーやスパイラルグレネードミサイルの系列にある武器で、高硬度合金製の質量ミサイルで怪獣の頑強な皮膚を貫通することを目的としている。

厚さ10mのコンクリート壁を貫通する威力を誇り、怪獣の弱点へのピンポイント攻撃などに使用される。

 

 

MM1 イノベイター

USCXFが開発した米軍初のメーサー戦車。

700万ボルト砲1門を搭載し、データリンクシステムを利用しての高度な連携戦闘を得意とする。

同軍の主力として数々の対怪獣戦闘で活躍、いくつもの戦果を挙げた。

兵装

Mk-1.700万ボルトメーサー砲×1

 

 

LM1 サラマンダー

USCXFが開発したレールガン搭載戦車。

マッハ7で80mm特殊合金弾を投射し、メーサー兵器に比べて貫通力に優れ、エネルギー攻撃に強い敵などに効果を発揮する。

イノベイターとの複合運用がUSCXF陸軍の基本編成である。

兵装

エレクテックM226A 80mmレールガン×1

 

 

UX-94-SRF MOGERAⅡ=SRF

Gフォースが開発した対G超兵器。正式名称Mobile-Operation-Godzilla-Expert-Robot-Aerotype

95年のスペースゴジラ事件で大破した機体を回収し、前年に同じく大破したメカゴジラの予備パーツなどを有り合わせ、緊急時に備え修復を行っていた。

急ごしらえのでっちあわせ品に近く、性能は本来の6割程度に低下してしまい、強度不足から分離・合体機能も封印されている。

アサルトボート迎撃の為に結城晃達かつてのパイロットを招集し出撃、月軌道外縁付近でアサルトボートと交戦状態に入り、そのままアサルトボートを攻撃しながら大気圏に突入。

排熱が間に合わずオーバーヒートを起こし、戦闘中に被弾した個所から自己崩壊を起こし始めたため、パイロットたちの判断で安全な海面へと軌道を変更されたのち脱出、機体はマッハ10の速度で海面に突入し大爆発、完全に損失した。

 

 

DAG-MBT-MB-99 99式メーサー戦車

特生自衛隊の新たな主力車両として開発された新型メーサー戦車。

92式メーサー戦車の後継車両として開発された新型メーサー車で、これまでのパラボラ型の砲塔から、95式レーザータンクの様な十字型に配置された開放型ブレードミラー増幅指向システムが採用された。

92式よりもやや全高が低く、車両先頭から後部にかけて高くなっていくデザインからスコーピオンのあだ名を持つ。

300万ボルトメーサー砲を並列に2門砲身の中央に配置し、ミラー内で出力されたメーサーエネルギーを共振・増幅させることで2.4倍までエネルギーを強化して照射する。

海岸部に近い怪獣の接近が懸念される部隊から順に配置転換を行いつつ、92式と並行運用されている。

兵装

99式300万ボルト連装メーサー砲×2

 

 

MBAW-98 98式自走メーサー高射砲

特生自衛隊の新型対空メーサー車両。

装輪式車両によるけん引方式で、連装増幅式メーサー砲の他に対空ミサイル用のランチャーも装備した複合兵装を搭載、無人車両の母機としての役目も持ち、操縦席後部には専用の制御シートを有している。

主兵装の対空メーサー砲は99式と同じくブレードミラータイプを採用しているため、93式よりも収束率が高く、射程距離は2割向上している。

93式とは並行しての運用が想定されており、93式が99式を指揮するという場面も少なくない。

兵装

98式400万ボルトメーサー砲×2

97式20mm地対空ミサイル×4

 

 

XF-1 対獣戦闘機

特生自衛隊航空部隊にて運用される初の対怪獣戦用戦闘機。

ベクタードスラスターと可変翼を採用、X字型に配置された上下尾翼が外見的特徴

さらにMG-Tecの産物である重力制御姿勢補助装置を搭載することで、ある程度の慣性や空力的な限界を無視しての高機動マニューバが可能となった。

エンジン部分は換装が容易で、必要に応じて化学ロケットエンジンに換装することで空間戦闘にも対応する。また各部の耐久性が格段に向上したため、主翼自体にもハードポイントを設置し、従来の戦闘機、攻撃機では搭載できないほどの各種兵装を搭載し様々な戦場、戦況においても高いパフォーマンスを発揮する。

轟天号の艦載機として月岡一尉率いる第一航空隊及び小林一尉率いる第二航空隊所属の8機が搭載され、各地の空自基地にも特自所属機の配備が始まっている。

兵装

30mm機関砲×1

98式短距離空対獣ミサイル×4

99式中距離空対獣ミサイル×2

99式対獣ビーム砲×2

その他対地大型爆弾等

 

 

MPM-01 ジャガー

サイバネティクス技術の権威伊吹吾郎博士が開発した汎用パワードスーツ。型式番号はMulti Purpose machine for Militaryの略で、民生品として重作業や土木、介護など民間にも同列機が採用されている。

戦闘を前提とした本機はパワードスーツと名付けられているが小型の人型兵器に近く、全高は7m程。

耐熱セラミクスと耐弾耐刃合金の複合装甲を持ち、最適な角度で攻撃を受けた場合は40mm機関砲の直撃にも耐える堅牢さを持つ。背部内蔵小型ジェットエンジンと合わせての最大跳躍高度は約100m。

超人的な身体能力を持つ特殊能力者ハイヤードと連携し、主に小型怪獣との戦闘を想定されて作られた兵器で、初出動となったグエムル戦においてその高性能をいかんなく発揮、華々しいデビューを飾った。

ツインアイの形状などヒーロー然としたデザインは市民からの評価も高く、広報や隊員募集のポスター等にも登場することが多い。

兵装

腕部対人用非致死性パルスガン×2

35mmアサルトライフル×1

背部2連装マルチランチャーラック×2

メーサーバイブレートブレード×2

4連装超音速ミサイルランチャー×1

 

 

MPM-02 レオーネ

伊吹博士が開発した戦闘用パワードスーツの重火力仕様。

ジャガーの2倍近い重量を持ち、全身のハードポイントに搭載した各種火器による制圧・射撃を得意とする。装甲も強化されており、腕部装甲は防御盾を兼ねているためジャガーの2倍の耐久度を誇る。

脚部足裏に無限軌道を装備し、陸上での低下した機動性を補っている。

高性能複合センサーとそれを防護する追加装甲を持つため、頭部形状はバイザータイプを採用。

兵装

腕部対人用非致死性パルスガン×2

45mm対物狙撃銃×1

背部40mm4銃身ガトリングキャノン×2

腰部2連装地対地ミサイルランチャー×2

4連装超音速ミサイルランチャー×1

 

 

MPM-03 ティグレス

伊吹博士が開発した戦闘用パワードスーツの高機動仕様。

関節の可動領域に干渉する装甲を可能な限りそぎ落とし、ジャガーから3tの軽量化に成功。

背部バックパックのウイングユニットに搭載された高出力バーニア、脚部の追加スラスターによって短時間ではあるが空中を滑空することが出来、四肢のワイヤーアンカーと併用することでさらに滑らか且つ立体的な空間軌道を可能とする。

半面耐久性を犠牲に機動性を確保しているため、操縦には技量は必要となるため、鍛錬や実戦で高い評価を受けた熟練者に優先的に配備されている。

また、軽量化したスペースに高性能電子機器を搭載することで偵察任務や前線管制を行う指揮官機としても運用が可能。

腕部対人用非致死性パルスガン×2

38mmマルチショット・キャノン×1

20mmサブマシンガン×2

ウィングブレード×2

高分子ワイヤーガン×4

メーサーバイブレートダガー×4

 

 

ADS-001 轟天級万能航空護衛戦艦 轟天

自衛隊が中心となって発起した空中万能戦艦建造計画『ATRAGON(Anti-TeRrible-guard-Advanced-Gun-Ship-OfeNsed Type 対脅威防衛先進攻撃型武装戦艦計画)』で建造した航空護衛戦艦の一番艦。艦首に巨大なドリルユニットを持ち、これを利用することで地中へ潜航することが出来る。

装甲は超耐熱合金NT-1S、動力源は3基のレーザー核融合炉で、船体下部後方にMG-Tecの一つである重力制御クラスターユニットを搭載。単体での大気圏離脱、突入機能を有し、 水中、水上、空中、宇宙、地中とあらゆる戦場に対応する自衛隊の切り札である。

艦長は特生自衛隊の立花泰三特将。ブリッジクルーは7人、総搭乗員は400名を超え、最大でXF-1を8機搭載可能。

兵装

99式艦首超大型回転衝角

98式36cm連装プラズマメーサー主砲×3

99式180mm連装レールキャノン×6

98式VLS×66セル(99式空対獣プロトンミサイル。対空プラズマ機雷弾。フルメタルミサイル等)

Mk.7 40mm対空機関砲×8

99式スパイラルメーサーキャノン×1

 

 

USS AB-01ランブリング級航空打撃戦艦 ランブリング

USCXFが開発した空中戦艦の一番艦。轟天号と共通した艦体を持ち、艦首モジュール部分を換装することで独自の兵装を持たせることが出来る。

艦載機能と攻撃力を重視した設計で、本艦一隻だけで独立して行動することが可能なユニットとして完結することが最初から想定されている。

外見の特徴は艦首に搭載された艦体の半分近い大きさのマグナムメーサーキャノン。エネルギー共鳴収束技術によってMOGERAのプラズマメーサーキャノンの倍近い威力を持つが、冷却とエネルギーチャージに時間が掛かるため連射能力は低い。

艦載機はXXF-1を9機。開発が遅れているが、対怪獣用の可変戦車の搭載も予定されている。

艦長はリドサウルス事件で活躍した元海軍ダグラス・ゴードン大佐。

兵装

X-01マグナムメーサーキャノン

40cm連装プラズマメーサーキャノン×3

150mm連装レールガン×6

Mk.4 VLS×70セル

M9M7 40mmCIWS×10

 

 

S-01 エクレール級飛行戦艦 エクレール

ESSOAが建造した空中戦艦の一番艦。フランスが中心となって建造した艦で、艦首下部に巨大な特殊合金製のメーサー大鉄球を装備する。高密度分子金属製の直系60mにもなる金属球を発射し、質量衝撃と表面にまとったメーサーエネルギーの複合効果でダメージを与えることを目的としている。

鉄球の制御と重量を補うためにエネルギーリソースを割いているため、艦首のプラズマメーサーキャノン以外は電力消費が少ない実弾兵器しか装備していないのが特徴。

艦載機は開発中だが搭載可能航空機数は戦闘機が6機、その他ヘリなどの航空機を4機ほど搭載可能。

艦長はヴィジョネイラー能力者でもあるセレスティーヌ・ヴュレ大佐

兵装

メーサー大鉄球

艦首プラズマメーサーキャノン

200mm連装レールキャノン×3

36cm連装副砲×6

多用途VLS×60セル

EM-01 35mm対空チェーンガン×10

 

 

SPS-54 ペイルーン級航空打撃戦艦 ペイルーン

ロシア軍が建造したSMPA所属の空中戦艦一番艦。MOGERAで実用化されたブルーダイヤモンドコーティングを艦体の重要区画に施した防御力を重視した設計が特徴。

艦首特殊兵装はハイパーメーサージャベリン。貫通力に優れたスティンガーメーサービームを発射する砲塔であり、同時に先端部分にメーサーエネルギーを纏わせた状態で有線射出し、突き刺した状態で電流を流し込むGクラッシャーを応用・発展させた兵器でもある。

専用艦載機の開発が遅れているため、Su-57の空母離発着仕様機を8機艦載している。

艦長はスヴェトラーナ・カシリン大佐。84年のゴジラ第二次東京侵攻時に殉職したカシリン大佐の娘に当たる。

艦首ハイパーメーサージャベリン

スティンガーメーサービーム砲

40cm連装プラズマメーサー砲×3

35cm連装副砲×8

VLS×75セル

30mmCIWS×10

 

 

001-S 火龍級飛行突撃戦艦 火龍

人民解放軍特殊戦略部隊が建造した空中戦艦の一番艦。その級名の通り、艦前方の装甲を厚くし、別名ブレードメーサーと呼ばれる龍剣電子砲を艦首下部に装備した突撃力を重視した設計、推進機器の性能もよく、第一時生産分の空中戦艦の中では最も快足を誇る。

龍剣電子砲は収束率の高いブレードメーサービームを発射する以外にも、メーサーエネルギーを収束、固着させることでメーサーエネルギーの刀身を形成し、艦体そのものを動かすことで相手を切断すると言った攻撃も可能である。

艦載機はJ-16の対怪獣戦仕様機7機。陸戦部隊の強襲揚陸も考慮し艦下部に降下ハッチを設けている。

艦長は李翔大佐。

兵装

艦首龍剣電子砲

ブレードメーサービーム砲

C/99 連装プラズマメーサーキャノン×3

98B式電磁力投射副砲×8

A-4515 多目的VLS×60

AKC38 CIWSシステム×12

 

 

GX-813 試製01式多用途航空機 グリフォン

特生自衛隊が開発した多機能航空機

92年に北海道の平野で破壊された23世紀人のタイムマシン、マザーの残骸の中から回収された小型タイムマシン、KIDSの予備機をリバースエンジニアリングし開発された

テレポートシステムやタイムトラベル機能はブラックボックスかつ、マザー大破の時点で完全に破壊されており解析は不可能であったものの、飛行システムの一部の解読に成功、空力的な作用を無視した鋭角的な飛行やホバリングなどを行うことが出来、サイズこそ倍近い差があるが、本体の左右後部にエンジンユニットが伸びる特徴的な形状に類似点が垣間見える

機体後部のペイロードが非常に多く、戦闘攻撃機としてだけでなく現地での簡易研究施設や兵員の輸送等運用用途は非常に広い

現在試作段階にあり、複数の基地で試験運用が繰り返されている

兵装

機首部25mmガトリングガン

99式収束フォトン砲

98式短距離空対獣ミサイル×12

99式中距離空対獣ミサイル×8

 

 

DD-147 ふるたか級ヘリ護衛艦あいづ

海上自衛隊第二護衛艦群所属の汎用護衛艦。初めて本格的な対怪獣戦を想定して建造されたふるたか級の3番艦で、主砲部は将来的に水上戦仕様のメーサー砲、或はレールガンユニットへの換装を前提とした設計が為されている

また、潜航艇やヘリユニット、グリフォン航空機の艦載運用が可能で簡易的な母艦としても機能する

同隊に同級艦のあこう、くらしきが所属し、飛行生物撃滅作戦の指揮艦として運用された

兵装

Mk112八連装発射機×1

アスロックSUM

ハープーンSSM

MK45mod2単装砲×2

MK15ファランクス20mmCIWS×2

 

 

MBAR-01 メーサーライフル

ハイヤード部隊員向けに開発された、史上初の対獣用携帯メーサー兵器

10万ボルトメーサー弾を700発発射可能で、トリガーグリップ後方のストックにバッテリーマガジンを挿入するプルバップ方式を採用している

平均的な有効射程距離は850m。フルオート、セミオート、2点バーストの切り替え機能を持ち、小型怪獣には十分な殺傷力を発揮する

銃身下部はオプション用レールとなっており、レーザーサイトやグレネードランチャー、対獣用ショットガン、エアバースト弾用グレネードランチャー等を追加搭載できる

対獣用兵器としては十二分の破壊力を持つが、重量は20kgオーバーと凄まじい重さで、ハイヤード能力者の様な超人的な身体能力を持つ人間でなければ持ち上げることも出来ず、機関部の冷却系に課題が残っており、フルオートで全弾発射した場合強制冷却に3分間かかるなど欠点も多い

対人兵器としては強力すぎることもあり、技術及び実在品は全てGフォースにおいて厳重に管理され、Gフォース歩兵部隊、特殊部隊でのみ運用されている

 

 

N02-04 98式ハイパワーレーザービーム車<改>

84年に実用化され、ゴジラ襲撃時に運用されたハイパワーレーザービーム車の後継車両

対獣用機材として派生したメーサー兵器シリーズとは別に、本来の超高高度迎撃用機材として改良、強化された車両にあたる

動力源をメーサー車と共通のヘリウム核融合炉にし、レーザー主砲を搭載したレールの可動部位を増価させたことでよりフレキシブルに射角を変更し、狙撃の精密性と威力が向上した。発射されるレーザー光は紫

主に陸上自衛隊の高射特化部隊、普通科連隊、航空自衛隊の格高射群に配備され高高度の弾道ミサイルなどの迎撃任務に就いている

ギャオスを始めとした空中を高速で飛翔する目標への迎撃にも有効と判断されており、飛行型怪獣出現の際には出動要請が掛かることも多い

 

 

00式支援航空機 しらさぎ

航空自衛隊と特生自衛隊が共同で開発した多目的航空機

MG-Tecを流用した大規模ペイロードを活かした物資・人員輸送などを行うほか、各種機材を持ち込むことで前線指令室としての運用も想定されている

特生自衛隊のMFS計画で開発が進む対特殊生命体超兵器との連携を前提に設計されており、反重力システムを応用したけん引機構は複数機による連携こそ必須であるものの数十万tクラスの大型兵器の輸送が可能であり、その機能を応用しホワイトラドンの輸送作戦にも投入された

武装

99式30mm対空機関砲×4

 

 

XF/A-1 ナイチンゲール

USCXFが開発した米国発の対怪獣用戦闘攻撃機

コクピット後部の大型カナード翼と速度域によって翼角が変化する可変尾翼、後退翼の先端部に外翼として前進翼を備える特殊な可変主翼が特徴的な機体で、ペットネームは告死鳥とも呼ばれるサヨナキドリに由来する

日本のXF-1同様に重力制御による姿勢制御機能を有し、鋭角的な機動や空中静止、後退と言った従来機を超越した高い先頭力を誇る

広大な北米大陸全域をカバーする為に高い巡行性能を持たされ、XF-1と比較すると機動性に優れ運動性で劣る

試作された第一期ロットの内8機がランブリングの艦載機として配備され、グレン・ニック大尉率いる第887特殊戦術飛行隊、ジャック・モートン大尉率いる第888特殊戦術飛行隊にて運用を開始、北米本土の各基地への配備も進んでいる

武装

・GAU-25M2D ラディカライザー40mmガトリング砲

・AXRM-01X スケイルペネトレイター高速空対獣ミサイル×6

・AXM-202 ドラゴンキラー中距離空対獣ミサイル×6

・M100X サンダーバード100万ボルト機動メーサー砲

 

 

単一指向性対獣用爆裂弾ブラストボム

Gフォースが特殊戦略作戦を想定し開発した新型爆弾

特殊な対爆合金で精製されたシリンダー内部で発生させた爆発のエネルギーをシリンダーの開口部に向けて放出させる単一指向性爆弾の一種

一基で戦車を空中で一回転させる破壊力を生み出すが、あくまで対怪獣戦における側面支援を想定した兵器であり、主に足止めや牽制に使用される

重量は100kgにもなり、接地時には専用のリベットで地面に固定し、カードキーとパスワードを併用したロックを解除しなければ起動する事が出来ない

 

 

M6100 98式電磁制御高周波加熱領域形成システム

ビオランテ事件で若狭湾一体に展開されたサンダーコントロールシステムの発展型

システムの一連の構造はかつてのM6000と同様だが制御系が発展しており、落雷を垂直に落下させる事しかできなかったかつてのシステムと違い、フィールド内の電圧を複数の電位差発生装置を連動させて制御し、指定した方向に向けて湾曲させより正確に対象に向けて落雷を発生させることが可能となった

対バルゴン戦の切り札として八代市内に展開される

 

 

サンライトSY-1

国連科学委員会と国連宇宙局、G対策センターが共同で開発した新世代宇宙船

次世代の高性能宇宙船を開発する国連主導のプロジェクト、SY計画の1号機であり、予算の獲得や各種技術の水平展開を目的に、更に宇宙における自衛手段獲得の為にGフォースからも技術が提供され、Gフォース宇宙軍の扱いとなり、搭乗スタッフも全員がGフォース所属の扱いとなる

試作機ながら宇宙船としての機能は既に既存の宇宙船とは一線を画しており、追加装備無しでの大気圏突破及び突入、無補給での地球火星間の往復を1か月で達成するほど

内部にもキャビン兼小型ラボが内蔵され、普段は月や火星の地質、地球の大気や電離層の調査を主任務としている

同時に本機は異星人や宇宙怪獣殿戦闘を想定した戦闘攻撃機であり、機体前部を戦術偵察戦闘機『αラプター』に、後方部を高速戦闘攻撃機『βバスター』に分離する機能を有しており、瞬時の分離・合体が可能である

装甲は提供された超耐熱合金NT-1をベースに宇宙での極限環境に対応させた発展合金NT-1A+

MG-Tecの一つ、重力制御機構である『ケプラーエフェクトシステム』を2基搭載し、指向性を持たせた重力子グラビトロンで機体を包むことで空間中を浮遊する

試作段階の装置であるため推進に関してはメインにプラズマ推進システムを採用し、増速や急制動などに使用用途は限定されているが、最終的には重力制御のみで機体を完全に制御する宇宙船の開発をSY計画は目標としている

 

 

αラプター

サンライトSY-1の前方部分が分離した戦術偵察戦闘機

機長及びガンナーの二名で操縦され、本機の機長はSY-1の合体時には副長の役目に就く

優れた加速性能と運動性を誇り、この状態でもオプションなしでの大気圏突入が可能

偵察機の名の通り、機体各部に高性能な各種センサーを有し、本機が入手した各種データは速やかにβバスター側に転送され分析される

主翼及び後部のスタビライザーに簡易重力制御装置を内蔵し、主翼そのものが角度を変更する事で推力を偏向し、本体のスラスターと併用する事で異次元じみた急激なマニューバを行うことが可能

一回りほど大きい機体ながらその性能は最新の対獣戦闘機に匹敵する

武装

・パルスレーザーガン

機首部に搭載されたレーザー砲。速射モードと照射モードを切り替えることが可能で、ドゴラの細胞を焼き切る威力を持つ。レーザー光は青

・マルチクラスターミサイル

機体下部ウエポンベイから発射される統合航宙ミサイル。目標手前で弾頭カバーが分離し小型弾を発射する

・GALA

Gravity Acceleration Linear Artilleryの略で、重力加速式レール砲の意味、ガーラと読む

機体上面に格納されており、射撃時に二門の方がせり上がり展開、電磁力と重力による複合加速を行い超高速で徹甲弾を射出する。サンライトSY-1の合体時にも使用可能

 

 

βバスター

サンライトSY-1の後部部分が分離した高速戦闘攻撃機

サンライトSY-1の機長ジミー・デイビット大尉がそのまま本形態時の機長を務め、操縦士、火器管制要員、機関士の4名で操縦される

αラプターよりも一回り大きい船体を持ち、運動性でαラプターに劣る一方で直線的な速力と全身と機首左右から伸びるウエポンブレードユニットに搭載された各兵装による高い攻撃力が特徴

また各種研究や実験に使用される高性能コンピュータを搭載しており、αラプターが収集した各種情報はレーザー通信を用いて本機のコンピュータに送信され、常時情報の処理を行う前線管制機の役目も持つ

本機のみでも大気圏突入及び突破は可能だが、最大速力は2機のケプラーエフェクトシステムを連動させる必要がある為、合体時にのみ発揮される

武装

・パルスレーザーガン

機首部から発射されるレーザー砲。αラプターと同種の物だが左右4門搭載され瞬間火力で勝っている

・プラズマドライバーキャノン

左右ウエポンブレードユニット先端から発射するプラズマ砲。ブレードユニットが上下に展開され、バレル内部で球状に固着させたプラズマエネルギーを重力を用いて発射する

・GALA

αラプターが装備している物と同種の重力加速レールガン、ウエポンブレードユニット上下に4門搭載され、プラズマドライバーキャノンの副砲の役目を果たす

・ロングレンジミサイル

大型の巡航ミサイル。射程距離に優れ破壊力も高い。本体下部のウエポンベイから発射される

・ハイマニューバーミサイル

追尾性能に優れた高機動ミサイル。機体背面のミサイルランチャー内部に75発搭載

 

 

 

F・I フィエルテ

ESSOAフランス支部とGフォースEUが共同で開発した対獣戦闘攻撃機、フィエルテはフランス語で名誉・誇りを意味する

ダブルデルタ翼、機首部カナード、重力制御装置と推力偏向スラスターを有し、日本のXF-1の運動性やアメリカのナイチンゲールの巡行性と言った突出した面こそないものの、総合的に高水準な性能と高い操縦性と実現しコスト面に優れている

本機で編成されたエクレール艦載の第668戦術機動飛行隊は元ガルーダパイロットのランディ・ジョンソン大尉によって率いられるフランス空軍から選りすぐられた精鋭部隊である

武装

・M25レーザーキャノン

速射モードと高出力モードを切り替えられるレーザー砲。発射光は青

・ソシエール短距離空対獣ミサイル×6

・ウルスポレールM2中距離空対獣ミサイル×4

・その他精密誘導爆弾等

 



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第1話

1996年の夏、バース島の自然核分裂の影響で体内原子炉が暴走したゴジラと、完全生命体デストロイアの戦いはゴジラの勝利に終わった。

 

無限の再生力を持つと思われたデストロイアはゴジラによって倒され、そのゴジラも暴走した肉体が崩壊し、ゴジラの放出した放射線をゴジラジュニアが全て吸収、ゴジラジュニアは急成長し、新たなゴジラへと新生した。

 

完全にゴジラとなったジュニアは東京を離れ、生まれ故郷であるベーリング海にあるアドノア島に移動。

以後アドノア島はエリアGと呼称され国連の管理下となり、Gフォースの管理・監視下に置かれたゴジラは、島から出ることなく、穏やかに暮らしていた。

Gフォースの超能力スタッフによるサイコメトリングによっても、彼(もしくは彼女)が人類に対し敵愾心を持っていないことは証明されている。

 

 

戦わないで済むのなれば、それに越したことはない。

人類は定期的に各国の原子力発電などで発生する核廃棄物をアドノア島の一区画に集積し、ゴジラが島の外に出ないようにした上でゴジラとの共存の方法を探る方針を取った。

 

人類とゴジラ、緩やかな緊張状態が続くと思われた矢先、その事件は起こった。

 

 

 

1996年の秋、グリーンランドにある米空軍テューレ空軍基地との通信が突如途絶。

現地に向かった救援部隊が目撃したのは、壊滅した基地施設と巨大な生物と思われる足跡、そして生存者の怪獣が現れたと言う証言であった。

 

その後もラブラドル海で原因不明の船舶事故が続発し、テューレ基地生存者の証言から米軍は怪獣が出現し大西洋を南下していると判断。

三軍に警戒命令を発し、同時に米国内の特殊生物調査機関『モナーク』に事件調査を依頼した。

 

やがて、ニューヨーク州ポート・チェスターにそれは現れた。

身長70mを超える4足歩行の巨大怪獣だ。

港町を破壊しながら上陸したその怪獣は、そのままアメリカ東海岸沿いを南下しマンハッタンに侵入。

史上初の怪獣の襲撃に混乱した米軍は対応に遅れ、都市部を中心に被害が多発。

だが、アメリカ海軍第2艦隊所属の駆逐艦が独自に行動し、呼応した海軍所属航空機と連携し怪獣への威嚇攻撃と海上誘導、市民避難を敢行。

結果怪獣は海へと消え、辛うじて最悪の被害は免れた。

 

その後、モナークの調査によって怪獣の正体は古代恐竜リドサウルスであること。

かつてグリーンランドで発生した爆撃機の墜落事故で行方不明となっていた核爆弾の放射線の影響で巨大化・怪獣化した存在であり、帰巣本能に従ってニューヨークに現れたことが判明。

米軍は国連G対策センターに緊急支援を打診し、派遣されたGフォーススタッフと共同でのリドサウルス撃滅作戦を開始する。

 

 

数日後、水中に潜伏していたリドサウルスへ潜水艦からの魚雷攻撃が行われ、リドサウルスは追い立てられ迎撃部隊が展開するモントーク島に上陸。

陸海空軍の多重攻撃によってじわじわと体力を奪われ、新型兵器アイソトープ弾を用いた最終攻撃が行われる。

歩兵部隊による決死のアイソトープ弾攻撃は成功し、致命傷を負ったリドサウルスは突如鳴り響いたモントーク灯台の霧笛に応えるように断末魔を発すると、そのまま灯台にのしかかるようにして倒れ込み息絶えた。

史上初の米国本土への怪獣の襲撃事件はこうして幕を閉じたのである。

 

 

同年冬、怪獣の出現事件は欧州でも発生していた。

イングランドのコーンウォール州で続発していた原因不明の漁船沈没事件の犯人である、パレオサウルスが放射能の影響で突然変異した怪獣ビヒモスが出現したのだ。

英海軍の防衛網を突破したビヒモスは口から電撃波を放ちながらテムズ川をさかのぼり、グリニッジ公園で英国軍の総攻撃を受け撃滅される。

 

 

ほぼ同時期、デンマークのツンドラ地方にある鉱山内部で、古代生物の肉片が凍結した状態で発見される。

研究の結果、肉片は古代生物レプティリカスの肉片であり、細胞が生きている状態だと判明。

国立研究所にて培養・蘇生実験が行われるが、度重なる核実験の放射能によって細胞は変異しており、研究者の予想以上のスピードで蘇生、巨大化。

復活したレプティリカスは研究所を破壊してコペンハーゲン市内へ侵攻を開始。

迎撃に出たデンマーク王国軍と交戦に入り、一時は右腕を粉砕するなど戦闘を優位に進めるが、分断された右腕が自己再生して二体目のレプティリカスとなり、戦況は一変。

GフォースEUの提案によって、口内にメーサービーム発射装置からの攻撃を行って殺傷し、その後細胞を粉砕分裂させること無くメーサーによって焼却する作戦がとられ、見事撃退に成功する。

 

 

その他にも、南シナ海に出現した巨大頭足類。

放射能の影響で巨大化し、ニューメキシコで繁殖していた巨大アリ。

台湾に出現した巨大蛇など、世界各国で怪獣による被害が頻発する。

 

 

これを重く見た国連G対策センターは、あらゆる怪獣、即ち特殊生物の脅威から人類を守り抜くためにGフォースの規模拡大を決定。

 

同時期に日本国はより円滑に怪獣に対する特殊戦略作戦を実行するため、怪獣迎撃に特化した第四の自衛隊、特生自衛隊を発足。

今回の怪獣襲撃においてノウハウがない事から後手に回った各国は、怪獣の迎撃対応において最も実績を持つ自衛隊に倣って、同様の対特殊生物迎撃、特殊戦略作戦に特化した軍部門の、怪獣の研究を行う部署の設立を急務としていくのであった。

 




勢い任せで見切り発車してしまいました。

駄文で投降も不定期となると思われますが、お暇ならおつきあいくださいませ。


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第2話

基本的に事態が動き出すのは00年代に入ってからですね。


日本で発足した特生自衛隊を皮切りに、世界各国では特殊生物対策に特化した軍部門が続々と生み出されていた。

 

アメリカでは合衆国対特殊生物要撃軍『USCXF』

欧州では欧州特殊戦略作戦軍『ESSOA』

中国では『人民解放軍特殊戦略部隊』

ロシアでは特別任務対応軍『SMPA』

 

各国の怪獣迎撃組織はGフォースから齎された技術を研究し、独自のメーサービーム兵器を筆頭とした怪獣用特殊装備の開発を進めていく。

 

 

さらに、日本の自衛隊からのある提案が、国連G対策センターによって採決された。

それは特殊戦略作戦の要として、陸海空宇に対応可能な万能母艦の建造計画『ATRAGON計画』。

既に日本で建造が開始されている、万能戦艦轟天号の基本設計データをGフォース経由で各国に提供し、怪獣迎撃力を高めるというものであった。

最初に建造計画に着手したのはアメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、オーストラリアの6か国。

モジュール化された船首部分に各国の特色となる装備が搭載されることとなった。

 

 

97年春、メカキングギドラからリバースエンジニアリングされた23世紀技術、通称『MG-Tec』の民間利用が一部解禁。

超高効率太陽光発電システムや重力制御装置の解放によって燃料資源問題に光明が差し、宇宙開発計画も加速。

月、火星、木星への探査船団が派遣されることとなった。

 

 

同年夏。三枝未希、かねてから交際のあったGフォースパイロット新城功二中尉と結婚。新城未希となる。

ほぼ同時期にGフォース兵器開発部門主任青木一馬も国立生命科学研究所の五条梓博士と結婚。

Gフォース、国連G対策センターのスタッフたちから盛大な祝福を受ける。

 

 

同年冬。特生自衛隊はついに初陣の時を迎える。

同年初頭より火山活動が活発化しつつあった、秋田県と山形県の県境にある鳥海山の火山活動調査に赴いていた国の調査隊が、火口湖より怪獣が出現したと通報。

古生代の爬虫類パラノボーダ、通称バランと認定された怪獣に対して特生自衛隊及びGフォースが出撃。

にかほ市と由利本荘市に展開した陸上部隊と航空部隊による同時攻撃が行われるも、体内に電気エネルギーを持ち、全身の被膜に電流を流して電磁バリアを貼ることが出来るバランに対し外側からの攻撃は効果を発揮しなかった。

 

その後バランは雷を口から吸収して電気エネルギーを蓄え、飛翔し佐渡島方面へ日本海を南下。

バランの飛行能力が空気をイオン化して行われていることを看過したGフォースは、バランの飛行ルート上で燃料帰化爆弾を爆裂させ真空状態の空間を作り、バランを墜落させる作戦を決行。

作戦は成功し、バランは能登半島沖に墜落。富山湾からの再上陸を目論むも、海岸線に展開していた特生自衛隊とGフォースが迎撃作戦を開始。

 

スーパーXⅢの冷凍攻撃で海面を凍結させて身動きを封じ、雷を口から摂取することから、目線から上で発光する物があると口を開けるというバランの習性を利用し、照明弾を用いて解放された口部目掛け、自衛隊が開発していた新兵器、フルメタルミサイルが発射されバランの口中を直撃。

内側からのダメージにはバランも耐えられず、更に自衛隊が開発していた新型メーサー兵器97式プラズマ自走砲の一斉砲撃を受けついに殲滅される。

特生自衛隊の初戦は課題こそ残すものの見事白星で締めくくられた。




読んでいただきありがとうございます。
00年代に入るまでは技術力を高めるシーンが多いと思われます…


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第3話

前話と同じくしばらくはこんな感じで技術発展するお話が続く、かも?
合間合間にいろいろ小ネタを仕込んでいきます。


98年。USCXF、至上初のメーサー砲搭載戦闘車両MM1 イノベイター、同レールガン搭載戦闘車両LM1 サラマンダーの開発に成功、同軍の主力車両として配備を開始。

他国の特殊戦略作戦軍でも続々とメーサー系統戦闘車両の配備が進み、その戦力は増強していく。

 

 

重力制御技術の獲得によって従来と比べ格段に宇宙への物資輸送、安定した航行が可能となった事から、国連科学委員会は月と火星、木星の地球近傍惑星の開発計画を始動。

 

かつてアポロ11号が月に至上始めて着陸した静かの海に、月面開発拠点としてディアナ・ベースの建造を開始。

 

 

火星においては衛星ダイモス、およびフォボスを地球からの遠征宇宙船団の中継拠点として改造し、衛星基地とする計画がスタート。

 

 

木星の衛星軌道には、木星大気の研究と太陽系外縁系を観察するための拠点としてのミネルヴァ基地の建設が予定された。

ただし、地球から木星までは重力制御技術を用いても長大な距離であり、道中での遭難などの危険性から火星の衛星基地が完成次第、手始めにそこからの無人機械による遠隔建造が行われる予定となった。

その後、より宇宙開発を促進するため、従来の宇宙船よりも重力制御技術を多用する革新的な宇宙航行船を開発する『SY計画』が同国連科学委員会によって採決される。

 

 

山根健吉、東京大学を卒業、小沢芽瑠の誘いもあってG対策センター北米支部へ入局が決定。

 

 

世界各国で様々な特殊能力を持つ少年期青年期の男女の確認数が増加。

国連生命科学研究所は彼ら彼女らの強制的な軍事利用や営利的な搾取を防ぐための保護条約をユネスコと共に採択する。

 

青木梓、ゴジラ化したジュニアとアドノア島でゴジラ化以来初めて邂逅。

ゴジラは梓を記憶しており、嬉しそうに鳴き声を上げるなど彼女を歓迎した。

その後の調査で、ゴジラが各国が定期的に支給する核廃棄物の他、島の中央部に生えているゴジラの倍以上の高さの巨木に成る緑色の果実を主食にしていることが判明。

ゴジラの肉体を賄うほどの高い栄養価から食料危機への解決に役立つのではと研究が進められることとなった。

 

 

アメリカ中部にある中規模都市ラクーンシティ周辺で猟奇的殺人事件が多発。

同市警特殊部隊S.T.A.R.S.(スターズ)が捜査を開始し、市近隣のアークレイ山地内にある洋館が製薬企業アンブレラの秘密研究所であり、そこで製造されていた生物兵器『B.O.W.』が流出して起きたバイオハザードであることがスターズの隊員たちによって判明。のちに洋館事件と呼ばれるようになる。

洋館事件から生還したS.T.A.R.S.の生存者達はラクーン市警にアンブレラへの強制捜査を願い出るも、アンブレラと癒着関係にある市警上層部はその情報を握りつぶし、隠ぺい工作を図ってしまう。

そこで、S.T.A.R.S.の生存者であり元空軍パイロットであるクリス・レッドフィールドは、軍時代の伝手を使ってUSCXFにその情報をリーク。

 

USCXFはICPO、Gフォースと共同して独自の捜査を開始し、アンブレラと多数の上院議員、そしてラクーン市各部門のトップとの強力な癒着関係を看破。

生物兵器の製造を『人為的な特殊生物災害のきっかけ』として同市に米陸軍特殊部隊等と共に強制突入。

研究成果の確保を目論みアンブレラが送り込んだ保安部隊U.S.S.やアンブレラと協力関係にあるバイオメジャーのコマンド部隊と激しい戦闘となるも、現地の新人警察官やレッドフィールド捜査官の身内。

更にアンブレラの特殊部隊から離反した傭兵やS.T.A.R.S.隊員などの協力者と共に、市内地下にある研究施設を制圧。

B.O.W.を一掃しブライアン・アイアンズラクーンシティ警察署長をはじめとした一連の事件の関係者を一斉検挙した。

 

 

後に彼ら容疑者の証言からアンブレラ社と癒着関係にある大物議員なども多数逮捕され、アメリカ議会は一時大パニックとなるものの、若手有志議員たちによって浄化され立ち直ることとなる。

この事件以後、Gフォース内には小型の生物兵器への対策や生物兵器の不法製造を行う団体への捜査・逮捕権を持つ特殊部隊『Gハウンド』が結成され、人為的なバイオハザード等もGフォースの管轄となった。

 

丸友観光、強引な地上げや宅地開発等の裏で自治体との談合が行われていたことを社員たちが内部告発し、倒産。

元社長秘書の安藤健二が告発に参加した社員達を集めて環境保全活動を行うベンチャー企業『コスモス』を起業。

 

98年末。新城未希、男の子を出産。夫新城功二の恩人で元Gフォース隊員結城晃から名前を捩り勇気と命名。

のちに母親譲りの超能力者であることが判明する。

 

 



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第4話

今回も無駄に小ネタ多し……
何かきっかけがないと宇宙用兵器何て作らないだろうなと思いこんな感じのイベントが起こりました。

ちょっとだけシーンを加筆。ゴジラさんの出番追加です。


99年。

地球近傍天体を観測するスペースガード財団と、Gフォースが所有する宇宙レーダーが冥王星軌道外に突如出現した多数の異常物体を検知。

総数400を超える物体は従来の彗星以上の速度で地球への衝突コースを取っていた。

国連は、火星開発船団に対し隕石の軌道変更を行うため、核弾頭の発射を指示。

だが彗星群と思われたものは、木星軌道周辺で発射された核弾頭を回避し、更にその彗星群を93年に外宇宙へと旅立ったモスラがすさまじい速度で追跡していることも確認される。

 

 

モスラの行動と能動的な回避運動、更にモスラから新城未希を始めとしたテレパシストたちが、彗星群が地球への明確な侵攻の意思があると精神波を受信したことで、彗星群を地球に接近する危険度の高い地球外生命であると認定。

Gフォースは各国に警戒命令を発令した。

 

世界中でメテオインパクトに備えた住民避難が行われ、アメリカとロシアは休眠状態にあった攻撃衛星を再起動し、火星軌道の内側に入り込んだ彗星群へと核弾頭を発射。

更にGフォースは福岡の戦いで大破し、辛うじて修復が終了していた、唯一の宇宙戦闘能力を持つ対G超兵器『MOGERA』に彗星群の迎撃を指示。

 

現役復帰を果たした結城晃以下かつてのMプロジェクトのメンバーが招集され、宇宙へと飛び立った。

モスラの猛攻と核弾頭の近接起爆によって、400以上あった彗星群、否、アサルトボートの集団は月軌道以遠でMOGERAと交戦状態になる頃には150近くにまで数を減らしていた。

 

MOGERAは会敵と同時に全兵装を全開。

地球到達までに少しでも数を減らすべく、ダメージやオーバーヒートを考慮せずにすさまじい攻撃を展開する。

それまで回避以外の反応を示さなかったアサルトボートも、減った数に危機を感じてか、モスラを迎撃するグループとMOGERAを迎撃するグループ、そして地球に殺到するグループに分散。

 

そこで体力的な限界が近い事を悟ったモスラが分散して足止めを行う2グループを一気に相手取る戦法に出、それを理解したMOGERAチームは全力で地球へ向かうグループに攻撃を仕掛けた。

ついに地球の大気圏にアサルトボートは突入し、それぞれが世界各国の主要都市を目指す。

MOGERAは一隻でも多くのアサルトボートを撃破すべく、大気圏に突入しながらもすべての武器を継続発射。

熱圏突破をする頃には機体が限界を迎え、万が一に備え安全な太平洋の中心への落下コースを取らせると同時にクルー全員が脱出。

最後の役目を果たしたMOGERAは南太平洋にあるホーン諸島とバトア島のちょうど中間地点に落下。パーツの50%が消滅するほどの大爆発を起こすのだった。

 

 

一方、大気圏を突破できたアサルトボートの数は僅か30程度。

極東大阪、北米のオハマ、欧州ドイツのミュンヘン付近のそれぞれ3エリアに分散して降下し、中から3本の細い脚で駆動する異星人の戦闘ユニット『トライポッド』が出現。

すでに周辺に展開していた各国の特殊戦略部隊、Gフォースと交戦に突入する。

 

トライポッドは戦車砲の直撃にも耐えられる電磁バリアを装備しており、当初投入された従来の地上・空中戦力では有効的な攻撃を行えず、トライポッド側のビーム攻撃に苦戦することとなる。

だが、遅れて到着した各特殊戦略軍が開発した試作型のメーサー、およびレールガン兵器の投入で戦局は一変する。

 

大阪会戦ですでに着陸したトライポッドを撃滅した特生自衛隊から、メーサーの同時照射でシールドに負荷をかけ、抵抗力が弱まったシールドをレールガンで貫徹する戦法が有効であると世界中に伝達されたのだ。

通常兵器が面で制圧射撃とかく乱を行い、相手の死角からのメーサー・レールガンの混合攻撃によって次々トライポッドは撃破されて行く。

 

 

同時刻、アドノア島にも3機のアサルトボートが着陸し、中からトライポッドが出現。

その場に現れたゴジラはトライポッドに興味を示し、最初は静かにその動向を観察していた。

だがトライポッドはゴジラに攻撃を開始、困惑しながらもゴジラもある程度トライポッドに呼びかけを行っていたが、その場に居合わせた国連職員へもトライポッドは危害を加え、ゴジラも完全にトライポッドを敵と認識。

放射熱線を撃ち込み、一撃ですべてのトライポッドをバリアごと粉砕する。

穏やかな気質を持ちながらも親譲りの力を持っていることを実感した国連職員たちは、改めてゴジラに畏怖を感じるのだった。

 

 

 

やがて最後の一機のトライポッドをUSCXFが追い詰めると、中から緑の体表を持つ爬虫類の様なエイリアンが出現し、ふらついたまま倒れ伏した。

接近し捕獲を試みる歩兵部隊がエイリアンの前までたどり着いた瞬間。

エイリアンが突如自爆!

一矢報いようとしたのだ。

 

だが、接近した兵士はその爆発に巻き込まれることはなかった。

黒いボディースーツに身を包んだ謎の少女がすさまじいスピードで、兵士を爆発の影響圏から救い出したのだ。

そのまま少女は呆然とする兵たちの前から姿を消した。

 

 

実は、日本がいち早くトライポッドを撃滅出来たのは日本だけの功績ではなかった。

戦闘が始まる少し前、防衛相地下の特殊戦略作戦室に3人の少女が現れた。

彼女たちは地球においてM88と言う名で確認されている遠い銀河から、難民として地球へやって来たヴァンガード族と呼ばれるヒューマノイド型異星人の末裔であり、今地球へ来襲しようとしているエイリアンたちの弱点を知って居るのだという。

 

人ならざる身体能力や電子機器をハッキングする技術から彼女たちをアドバイザーとして意見を参考にし、負荷をかけたシールドに貫通力の高い質量兵器を極超音速でぶつけるという戦法が実施され、それは見事に成功した。

 

 

その事実はトップシークレットと言う形でGサミット参加国の上層部に伝えられ、彼女たちは今後あり得るだろう外宇宙からの侵略に対するアドバイザーと言う立場を極秘裏に与えられた。

 

 

その後、破壊されたトライポッドの中から収容されたエイリアンを検死したところ、一部のエイリアンは地球における気管支炎、即ち風邪に罹っていたことが判明。

免疫がないがゆえに急速に伝搬したとされ、最後のエイリアンが殺害前に衰弱していたのはそのためだったのだ。

 

これが善意と悪意、それぞれを持った隣人との最初の出会いであり、国連G対策センターは今後外宇宙からの脅威への対策も本格的に考慮することが必須であると痛感した。

 

迎撃手段がほぼ各国の攻撃衛星に依存し、機動的に対応可能なオプションが一切ない事は、火星や月で開発を行っている開拓団員が窮地に立つも同義だからだ。

 

同時に、唯一の可動可能であった対G兵器であるMOGERAの損失も大きく、Gフォースは新たな汎用超戦闘マシーンの開発計画を動かさざるを得ない状況に陥る事となった。

 

尚、宇宙のアサルトボードを全滅させたモスラは無事地球のインファント島に帰還。以後インファント島周辺はエリアMとして国連の管理下に置かれることとなる。

 

 

 

 

 

最後に余談だが、かなりの綱渡りな作戦を取った新城功二大尉は妻である新城未希女史にこっぴどく怒られ数日間家に帰れなかったという。



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第5話

まだまだある意味した準備回。ちょっとずつ伏線もばらまいたり…
そんな回でございます。

時系列的な所は矛盾もあるので、後々全体的に見直すかもしれません。


99年。この年は様々な新世代対怪獣兵器が相次いで登場する年であった。

 

 

自衛隊ではATRAGON計画で建造された轟天級万能航空護衛戦艦『轟天』が就役。

艦長には立花泰三一等特佐が就任し、陸海空特の四自衛隊から選抜された精鋭クルーで運用され、統合幕僚本部直属の航空護衛艦隊所属第一航空護衛隊唯一の所属艦として、今後の国土防衛の要と言う重大な任を任される。

同じくUSCXFではランブリング、ESSOAではエクレール、SMPAではペイルーン、中国特殊戦略部隊では火龍の轟天のバリエーションがそれぞれ就役した。

 

 

ほぼ同時期、特生自衛隊は3機種の新世代対怪獣用迎撃兵器『99式メーサー戦車』、『98式自走メーサー高射砲』、『XF-1対獣戦闘機』を発表。

更にGフォースでは超人的な身体能力を持つ超能力者『ハイヤード』によって編成された歩兵部隊がGハウンド内に発足し、歩兵部隊ではハイヤードの身体能力に歩調を合わせるため、サイバネティクス技術の権威である伊吹吾郎博士が開発した汎用パワードスーツユニットを配備。

機動性に優れた『MPM-01ジャガー』、火力に優れた支援モデル『MPM-02レオーネ』、偵察用に加速性と格闘能力が高められた『MPM-03ティグレス』と命名され、通常の歩兵部隊では対応しきれない局面での活躍が期待されることとなる。

 

 

新城夫妻、第二子で長女の未来誕生。

つくばより東京都多摩市、聖蹟桜ヶ丘に夫功二が新居を建て転居。

 

 

青木夫妻、長男一也誕生。

 

 

韓国ソウル市内を流れる漢江から突如両生類を思わせる怪物が複数出現。

川辺に居た多数の民間人を、全身から生える腕と尾で捕獲し下水道へと逃げて行った。

怪物に連れて行かれてしまった被害者の少女が、携帯電話で家族にかけた電話により、怪物は群れの長が卵を産み付ける母体として捕らわれたことが判明。

韓国政府はすぐさまGフォースに救援を要請し、極東支部から派遣されたGハウンド部隊とMPM部隊が中国特殊戦略部隊と共に下水道へと突入。

途中怪物―グエムルと命名された―の小型種から奇襲を受け苦戦しながらも、グエムルと互角に戦闘を繰り広げるハイヤード部隊の奮闘と、MPM部隊の火力によって打倒に成功。

捕らわれた民間人を救助し外界へと逃走する。

 

 

それに怒った大型グエムルは下水網を破壊しながら地表へと出現。

展開していた韓国陸軍車両部隊の攻撃もものともせず暴れまわり、辛うじてGハウンドのハイヤード・MPM部隊の機動力と火力で侵攻を阻止している状態であった。

 

 

すると、黄海に突如氷堤が発生、更に氷堤は漢江を遡りながらソウル市に接近し、やがてその凍った波の中から三本の角を持つ怪獣が、そしてソウル市の地下から水牛の様な角を持った怪獣がそれぞれ現れた。

 

 

2体は同調するように巨大グエムルの前に立ちふさがり、暴れまわるグエムルへと攻撃を仕掛ける。

力と防御力で勝る二本角の怪獣はグエムルの攻撃を剛腕で押さえつけ、三本角の怪獣は抑えつけられたグエムルへ向かい槍状の火炎エネルギー弾を発射しその巨体にダメージを与えていく。

 

すると、一瞬のスキを突いてグエムルが長い尾で三本角の怪獣を抑えつけ、群れのリーダーを守るかのように小型グエムルの集団が二本角の怪獣にまとわりつき攻撃を仕掛ける。

 

そこに中国特殊戦略部隊の李翔中佐率いる火龍が到達。

グエムル殲滅を優先した中佐の判断でブレードメーサーキャノンとプロトンミサイル攻撃が行われ、小型グエムルは一掃。

大型もダメージを受け三本角の怪獣を手放してしまった。

体勢を立て直した二体の怪獣は連携してグエムルに最後の攻撃を挑む。

炎の様なエネルギーを宿した二本角の怪獣のパンチによって頭部を破壊され、グエムルはついに大地に倒れ伏した。

 

 

勝利を確信し雄たけびを上げる二体の怪獣。

Gフォースは即座に二体の怪獣を迎撃できるように体勢を整えるが、二体ともに地中と海へ現れた時と同じように去っていき、軍の追跡も振り切ってしまうのだった。

 

 

 

後に、G対策センターはグエムルと言う怪物の出現原因を解明。

在韓米軍と癒着関係にあったバイオメジャーが違法廃棄物を地下下水道に垂れ流し、それを浴びた下水道内に生息していた両生類の肉体が異常成長した事が原因であることが判明し、在韓米軍と製薬企業双方は大きな批判を受けることとなる。

 

 

 

一方、グエムルを撃退した怪獣はそれぞれ朝鮮半島に伝わる神話に由来し、古来より人々を守護する神獣『プルガサリ』と『ヤンガリー』ではないかと韓国市民の間では考えられるようになった。

 

 

これをきっかけに、G対策センターは古来の伝承や神話に登場する神獣、幻獣、魔獣こそ、かつて地球上に出現した怪獣の姿ではないかと予想。

今それが復活しつつあるのではないかと考え、世界各国の大学の考古学、生物学研究室に、世界各国に伝わる幻獣伝説研究の協力を要請するのだった。




誤字指摘ありがとうございました。

時々変な事故を起こしてしまい申し訳ありませんです。


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第6話

お久しぶりです。大規模戦闘シーンは難しく時間が掛かってしまいました。
やっとジュニア君の活躍シーンが描けました。
ゴジラの強さとそれに負けない人類兵器の強さ、バランスとって描くのがとても難しい……




99年。

特生自衛隊は次世代の対特殊生命体用兵器を開発するMFS計画を発動する。

目標はメカゴジラ同様のゴジラ型戦闘マシーンの建造で、当初は機体のメインフレームに96年に死亡した先代ゴジラの骨を利用することが予定されていた。

今現在、かつてのゴジラの骨はつくばのG対策センターに封印されていたからだ。

 

だが、G対策センターや国連生命科学研究所のスタッフたちが、計画に対し非常に強く難色を示した。

ゴジラは同族に危害を加える存在に強い怒りを示す習性をもつため、骨を人類が利用するとなれば、それは今ある程度安定した関係にある現代のゴジラとの間に再び決定的な亀裂を作りかねないと言う事であった。

 

ゴジラとの完全な敵対は何としても避けたいのは当然であり、自衛隊はその意見を汲んで方針を転換。

保管されているゴジラの全身骨を様々な非破壊検査で徹底的に分析し、その構成を再現した堅牢なメインフレームを新たに作り上げ、ゴジラのDNA配列を参考にしたDNAコンピューターで制御する機動兵器へと設計を変更したのだった。

 

 

日本海溝を探査中の日本の深海艇わだつみが、鹿島灘沖にて強力な磁力線を放出する謎の岩塊を発見。

内閣府内閣官房安全保障室直属組織CCIは調査の為に船団を派遣した。

 

推定7千万年前からそこに存在し続けているとされる岩塊は、探査艇が照射した探照灯の光に反応して急浮上。

内部の熱エネルギーと磁力線の放出が強まった事からCCIは岩塊を怪獣、あるいは外宇宙から太古に飛来した異星人ではないかと判断。

オブザーバーの少女たちのデータベースにも照合されなかったこともあり、特生自衛隊に出動を要請。

海岸線に車両部隊が展開し、潜水艦部隊と護衛艦隊も岩塊を包囲するように海上に集結。上空には今回が初出動となる轟天号の姿もあった。

 

 

潜水艇は岩塊の浮上を阻止するために重りを巻き付けるなどの作業を行っていたが、既に僅かな海面からの太陽光でも十分にエネルギー転換が出来るほどに浮上していた岩塊は、一気に水面を突破し空中へ飛翔。

 

警戒する各部隊を尻目に、唐突に進路を西に向け加速。

包囲網をすり抜けた岩塊はそのままG対策センター本部上空へと飛来し、半透明の触手の様なものを生やしてセンター周囲の回線からネットワークへの侵入を図った。

設備の一部がダウンして運用不可能になる中、G対策センターとGフォース指令室のディスプレイには意味不明な文字の羅列が高速で並び、やがてそれは明確な言語となった。

 

 

我々はミレニアン。個を超え全となった支配者である。我々は今再び王の戴に舞い戻り、千年王国の建国を宣言する。

 

 

Gフォースはこれを異星人、ミレニアンからの宣戦布告であると断定。

本部及び中国、アメリカ支部のスーパーコンピュータを併用してハッキングへのカウンターを開始。

ネットワークの完全掌握と言う最悪の事態は防がれるが、出現した怪獣のデータ等機密情報のいくつかを取得されてしまう。

 

 

 

Gフォースからの協力要請を受けた自衛隊は、直ちに轟天号と海上待機中の護衛艦群に攻撃命令を発令。

 

轟天号からは月岡一尉と小林一尉が率いるXF-1部隊が出撃し、ミサイルとメーサーが雨霰の様に岩塊へと殺到した。

着弾した攻撃は岩塊を次々と破壊し、その内側からは銀色の流線形で出来たミレニアンの母船が出現する。

 

母船は船体周囲をフォースフィールドと呼ばれる力場で包み込んでおり、ミサイルやメーサービームは命中するも本体にダメージは確認されず、更にそのフォースフィールドを外側に向け放射することでXF-1部隊を吹き飛ばし撃墜寸前に追い込む。

轟天号は立花特将の指示でXF-1を援護しつつ母船前方に展開し、攻撃を一点に集中しフィールドを突破する作戦に出る。

 

 

小型低出力な航空機搭載仕様とは比べ物にならない高出力メーサーと、ヴァンガード一族から齎された陽子制御技術を応用したプロトンミサイルは、フィールド上からでもなお母船を大きく揺るがし、危険と判断したのか母船はハッキングを停止し、北に向け逃げ始めた。

 

 

轟天号はGフォースの追撃許可を即座に受信し、その後を追う。

直線上にはベーリング海のアドノア島が存在していた。

 

 

ほぼ同時刻、アドノア島近海の海底からも、鹿島灘と同様の岩塊が浮上。

空中で振動して堆積した表面の岩を振るい落とすと、二隻目のミレニアンの母船となってアドノア島上空へ飛来。

 

日本の同胞からの情報を得て再起動した2隻目は、アドノア島中央上空で静止すると、つくばのGフォース基地同様に国連研究施設へとハッキングを開始。

様子を見るために現れたゴジラの胴体に量子流体状の触手を突き刺すと同時に、船体から赤い霧の様なものを放出し始める。

 

 

篠田博士を始めとした国連スタッフの分析によって、母船は人体に有害なレベルで金属粒子を散布し、同時にジュニアのゴジラ細胞を吸収して解析していることが判明。

 

Gフォース基地へのハッキングしたことや、ゴジラ細胞を求めていることから、篠田博士は彼らは肉体を取り戻すために、ゴジラ細胞内部に存在する自己再生能力遺伝子『オルガナイザーG1』を求め、そして自分たちに最適な住環境に地球の大気組成を作り替えようとしていると推測する。

 

 

攻撃を受けて母船を敵と認識したゴジラは熱線を発射して母船を迎撃。

母船はフォースフィールドを展開して防ごうとするも、一瞬抵抗は出来たがそのままに貫通され船体後部に被弾。

防御が不可能だと判断した母船はそのまま空中でゴジラの攻撃を回避しつつ収束させた波動攻撃を行い、一進一退の攻防が始まった。

 

 

国連スタッフを巻き込まないようにゴジラは苦慮しながら戦っていたが、そこにエリアG警護の為に周辺基地からスクランブル発進した米ロの両空軍機が飛来。

ゴジラを援護し母船に攻撃を仕掛けゴジラから引き離す。

 

 

体勢を立て直したゴジラは熱線を連射するが、高い機動性を持つ母船は掠りこそするもなかなか直撃出来ず、迂闊に連射すれば周囲の森を燃やし火災を発生させてしまう。

直接狙撃が無理と判断したゴジラは敢えて熱線の発射を辞め、体内でエネルギーチャージをしながら母船の前で仁王立ちした。

攻撃をやめたと判断した母船は熱線攻撃と戦闘機のミサイル攻撃をかわすために高速でジグザグに機動しながらゴジラに接近、再び量子流体触手を伸ばしゴジラを突き刺そうとした。

 

その時

 

ゴジラはおもむろに体を反転させ、同時に体内でチャージした熱線のエネルギーを背鰭を通じて尻尾の先端部分へと収束させた。

 

熱線の青白いエネルギースパークを纏い、音速で振るわれた尻尾の攻撃、『放射熱閃』は鋭いブレードの様に母船を直撃、その船体を両断する。

 

 

爆発しながらゴジラの目の前に割けて墜落する母船。

ゴジラは勝利の雄たけびを上げながらも油断せずじりじりと母船へと接近する。

すると、両断された母船の残骸から銀色の量子流体がまるで液体のようにあふれ出し、驚くゴジラの目の前で一つの形を作り出していった。

 

半透明で細長い4本の足と2本爪の両腕、昆虫を思わせる頭部と青白く透けて見える量子流体の肉体。それこそがミレニアンの正体だった。

 

 

ミレニアンは立ち上がると同時にその姿に異変が現れた。

半透明だった体表はゴツゴツとした岩肌の様になり、地面につくほどの長い両腕は巨大なかぎ爪を持ち、いびつに膨れ上がった胸部からは前方に向けて直角に首が伸び、その先端には悪魔や怪物を思わせる頭部がある。

 

 

宇宙怪獣『オルガ』

ミレニアンがオルガナイザーG1を吸収しつつも完全に制御しきれず、肉体が怪獣化。否ゴジラ化してしまったのだ。

 

醜悪なその姿に戦慄する篠田博士たち。

だが篠田博士の娘でクラッキングされたコンピュータを介してミレニアンの意識とリンクしてしまった篠田博士の娘篠田イオは、ミレニアン達はかつての肉体すら超越した姿になれたことに悦びを感じていると恐怖する。

 

 

ゴジラに匹敵する怪獣となったオルガは、背部の孔から超能力を収束させた波動を放射しゴジラを攻撃。

歪な外見に似合わない素早さを持つオルガは超能力でその脚力を強化してゴジラを翻弄。

 

背後からの波動攻撃や巨大なかぎ爪の攻撃はゴジラにダメージを与えるが、母船との戦い同様にゴジラはオルガの攻撃の瞬間に合わせて尾を振るいカウンター攻撃を仕掛け、オルガを大きく吹き飛ばすことに成功する。

 

 

地面にたたきつけられたオルガに熱線を撃ち込みながら殺到するゴジラ。

だがそこにつくばで復活したもう一隻のミレニアンの母船が現れ、オルガを援護する。

 

母船からの波動攻撃でゴジラが怯んだ隙に立ち上がり、母船と連携して波動攻撃を仕掛けるオルガ。

ゴジラを援護するために戦闘機部隊が母船に攻撃を仕掛けるが、オルガとの連携反撃で複数機が撃墜される。

 

そこに母船を追跡してきた轟天号が到着。

残存していた航空機部隊は轟天号艦載のXF-1部隊と合流して再び母船へと攻撃を仕掛ける。

展開される人類とゴジラ、オルガとミレニアンの共同戦闘。

 

 

轟天号の攻撃の隙を突いた母船はオルガと戦闘中のゴジラを攻撃。

怯んだゴジラにオルガはかみつき、再びオルガナイザーG1を吸収していく。

オルガの顔はよりゴジラに近い形に変貌し、背びれが巨大化。

機能性のなかった両腕のかぎ爪は大きさは変わらず、より指らしい形へと変化していく。

新たに右肩にも波動放射口が生み出されたオルガは、両肩から強力な波動放射を行ってゴジラを攻撃、最大出力の波動放射を受けてゴジラは吹き飛ばされてしまう。

 

 

前半身が口から大きく裂け、そのままゴジラを飲み込もうとするオルガ。

ゴジラの窮地を察した立花特将は航空機部隊にオルガへの集中攻撃を指示。

自身は轟天号に母船への突撃を命令する。

母船周囲のエネルギーフィールドの出力が、波動攻撃を行う瞬間に弱まる事を立花特将は見抜いていたのだ。

 

 

轟天号に相対し波動エネルギーをチャージする母船。

そして発射するタイミングに合わせ、轟天号は母船の波動発射孔に向けプラズマメーサーとプロトンミサイルを2発発射。

弱まったフォースフィールドをメーサーが貫通し、できた穴から侵入したプロトンミサイルが発射孔を直撃!

 

チャージされていた波動エネルギーもバーストしたことで母船の半分が大爆発を引き起こす。

 

トドメを刺すべく立花特将は轟天号の機関を最大に、艦首回転衝角の起動を命令。

エネルギーを纏って唸るドリルは身動きすらできなくなったミレニアンの母船に直撃し、粉々に粉砕した。

 

 

最後の母船が破壊されたことを感知し、戦闘機部隊の一斉攻撃を受けたオルガは一瞬怯み、それを見逃さなかったゴジラはあえて大きく開かれたオルガの口中へ突入。

両腕で口の両端を掴んでオルガが身動きを取れなくすると、体内でずっとチャージしていた熱線のエネルギーを、スパイラル放射熱線と体内放射、その両方として一気に開放する。

 

身動きすらできなくなっていたオルガにその攻撃を回避することはできず、上半身を中心に粉々に大爆発を引き起こす。

残された両足と両腕の一部も、細胞から崩壊して黒い粉末となってその姿は完全に消滅した。

 

オルガの完全消滅を見届けたゴジラは、周囲を飛び回る轟天号と戦闘機部隊を労う様に咆哮し、見守っていた篠田博士らを一瞥した後、島の奥へと歩んでいく。

 

立花特将はそれを敬礼で見守り、轟天号を日本へと向けるのだった。

 

 

 



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第7話

お久しぶりです。
今回はバトル描写は控えめ、でも少しずつ怪獣と人とが歩み寄っていく。
そんな感じの話になったかなと思います。


2000年。

新世紀が目前に迫ったこの年の初頭、国連G対策センターの会議室には東都大学の考古学教授藤戸拓哉の姿があった。

彼はこの1年の間、国連G対策センターと特生自衛隊の依頼を受けてフリーライターの寺沢健一郎と共に、日本各地の古文書や民間伝承、土着信仰に登場する幻獣や魔獣、聖獣と怪獣の関係を調査していた。

 

 

その結果、漢字伝来以前の先史時代より、日本各地には多数の怪獣が出現していたことがほぼ確実である、という結論が出された。

 

古代の壁画などから、モスラやバランなどの怪獣と思われる姿が確認されており。

ほかにも戦国時代の出雲、山口、丹波等では土着信仰の象徴であった『魔神』と呼ばれる石像が突如動き出し、当時圧政を敷いていた権力者たちを打ち負かしたという伝説が存在していた事も新たに判明。

 

更に日本書紀や古事記と同時に編纂されたとされる歴史書、『護国聖獣伝記』と言う文献には、日本全土に出現した当時の怪獣たちの情報が網羅されており、日本武尊が八岐大蛇となった悪神を天から現れた神、宇宙戦神と一体化し覆滅したという記述が記されていることも記されていた。

 

 

これらの記述に出現した怪獣のような存在について、ヴァンガード一族のデータベース上の資料と一部が合致した。

宇宙秩序を守るために宇宙を旅している生命体、或は自己意識を持った金属生命体などで、これら特殊生物の姿を古代日本の人々が神話に当てはめた姿ではないかと推察される。

 

これ以後も藤戸教授への研究以来は継続され、各地ににスタッフを増員派遣して一層の詳細な探求を行う必要があるという結論を出し、この会議は終了する。

 

 

 

3月下旬、チベット高原西部にある複数の宗教の聖地であるカイラス山の近くにある小さな村を、国連G対策センターが派遣した調査団が訪れていた。

 

数か月前からカイラス山周辺で、震源地が移動する地震が複数発生。

更に山に近いナーガアームリタ湖周辺で、謎の発光現象がたびたび確認された事から、なんらかの巨大生物の存在の可能性を懸念したG対策センターが調査団を結成し、派遣したのである。

 

一行のリーダーはモナーク所属の生物学者、ニック・タトプロス博士。

同じくメンデル・クレイブン博士とエルシー・チャップマン博士もモナークから派遣され、中国からもアイリーンとリンのチェン博士姉妹。

 

日本からは生物学者の魚崎博士と古生物学者の真嶋博士が、その他、自然現象を考慮して地質学者や水質学者も多数一行に参加していた。

 

調査団の護衛は、USCXF所属、元Gフォースメカゴジラチームの一員だったキャサリン・曽根崎大尉率いる極東方面第8歩兵大隊第6歩兵中隊。

 

 

一行がまず訪れたのは、ナーガアームリタ湖の岸辺にある小さな町。

人口1000人にも満たず、古くからの習慣と現代的な文明が共存するのどかな町の郊外を、調査活動の拠点としたのだ。

 

気の良い町の住民たちは外からの異邦人である調査団を暖かく歓迎し、交流も盛んに行われ町はお祭り騒ぎの様相を呈していた。

だが、湖や周辺で何か異常を感じなかったか、と言う調査団の質問に町民たちは一様に何も知らないと返すばかりで、この時にだけ頑なになる姿にニックと、彼と親しくなった第一小隊長のフォード・ブロディ少尉は違和感を感じていた。

 

 

調査を開始してから数日後、ナーガアームリタ湖の水中調査を行うため、ニックとフォードは湖の上に浮かぶ小型クルーザーに乗っていた。

 

水中探査用のプローブとドローンを使って水質や棲息している生物についての調査を行おうとしたのだ。

 

透明度が高い美しい湖の中を探るうちに、水深は400m近くとかなり深く、更にソナーの探査結果から、南側の湖底部分には巨大な穴が開いており、さらに底から地底湖の様にさらに深い部分があると判明。

魚を始めとした水棲生物の生息量や種類も、この湖での漁業が町の食事情を一手に担っている事からも十分と言え、100mクラスの巨大生物が生息できる環境であるとニック達は結論付けた。

 

 

と、ソナーの異変をボートに乗っていたクレイブンが発見する。

地底湖になっている部分から何か巨大なものが浮かび上がり、どんどんと水面、ニック達の真下に向かって浮上してきているのだ。

 

慌ててフォードの部下がクルーザーを発進させると、今までボートが居た水面が俄かに泡立ち、紫色の水煙を上げ始める。

そして泡が最も大きくなった次の瞬間、水面に巨大な生物が顔を出した。

 

 

両腕が鎌、背中に翼状のヒレを持ち、緑色の外殻と薄い黄色の皮膚を持った、昆虫や甲殻類の様な怪獣だ。

目測15m程と小型だが、一匹二匹、三匹とどんどんと数を増やし、紫色の液体で湖を汚し続ける。

 

その姿は岸辺からも確認でき、目撃した住民たちは口々にシーガン!と叫びを上げて恐れおののいた。

見守っていたリン博士が住民たちを問い詰めると、あの怪獣はシーガンと言う名前で昔からこの湖に住み着いており、恐ろしい毒と鎌で湖に住む生物をすべて殺して食べつくし、時には村すら襲う魔獣だと言う。

 

 

全力でシーガンから距離を取るニック達の乗るクルーザー。そのエンジン音に気づいたシーガンの一匹が小型クルーザーに目を付け、雄たけびを上げると残り二匹を従えて小型クルーザーに向かって進み始めた。

 

ヒレと尾を使って水上を進むシーガンはみるみる小型クルーザーへと接近。

護衛に乗り込んでいたフォードと彼の部下たちはライフルを使って必死に反撃するが、シーガンの頑丈な外殻を貫通することはできず、岸辺のキャサリン達が発射した対獣バズーカ砲も器用に体を沈めて回避してしまう。

 

ついに小型クルーザーに追いついた!鎌を振り上げるシーガン、それでもフォードは叫びながら反撃を辞めない!

 

 

その時、水面下から飛び出した何かがシーガンを吹き飛ばした!

 

 

間一髪を救われたニック達がクルーザー上から振り向くと、一匹の巨大な怪獣がクルーザーを攻撃したシーガンを口にくわえこんでいた。

 

黄金の体表。

頭部から背中に連なる透明な針の様な背鰭。

ニックはその怪獣に見覚えがあった。

 

 

数年前、日本の妙高山から出現し、特生自衛隊が出動し、対応した初の相手。

 

紫電龍 バラン

 

バランは口にくわえたシーガンに、そのままフラッシュボルトを発射。

断末魔を上げて瞬時に焼き尽くされたシーガンは炭化してボロボロに崩れ、バランは口からシーガンの死骸の一部を苦々しげに吐き捨てると、残り二匹のシーガンを睨みつけ威嚇する。

 

二匹のシーガンは怯えたようにその場に釘付けになるが、意を決してバランに突進。迎え撃つバランは水面からジャンプし、上から片方のシーガンを殴りつけ粉砕。

 

最後の一匹がバランの背中に乗って鎌を振り下ろし攻撃を仕掛けるが、特に痛がるそぶりもないまま身をひるがえして水面にシーガンを叩き落すと、そのまま尾の一撃で同じく粉砕してしまった。

 

 

唖然とする派遣調査団を尻目に、事態を見守っていた町民たちは歓声を上げ、バランに向かって婆羅陀魏様!と言う言葉を放ち、バランの勝利を祝福する。

バランは町民たちの姿を一瞥すると、静かに湖面に体を沈め、その場から去っていった。

 

 

その日の夜、ニック達は町長たち町の重役たちを庁舎で睨みつけていた。

怪獣など見た事が無い、と言う町民たちの証言が嘘だったから当然だ。

そして町長たちは少しずつ、バランとシーガンについて話し始めた。

 

 

はるか数千年以上の昔、この土地に町民たちの先祖が居住地を拓き始めたころから、既にバランとシーガンはナーガアームリタ湖に住み着いていた事。

 

バランは湖の生態系の頂点に立つ存在で、そのバランスを崩す存在であるシーガンを敵視し、ずっと戦い続けている事。

 

町民たちは湖や周囲の自然を必要以上に開拓して生態系を崩さない代わりに、シーガンからバランに守られ、バランが好む湖の澄んだ水を護る為に村の周囲で取れる古代樹で作った炭で湖の水を清める一種の共存関係にあり、バランを土地の守護神婆羅陀魏神として崇め祀っている事。

 

この土地が様々な宗教の聖地になっているのはバランの存在がある事を。

 

 

そして、怪獣と言う存在が憎悪の対象として見られている今の世で、バランの存在が勝手に殲滅する対象にされてしまうことを恐れたから、バランの存在を誰もがおのずと隠してしまったのだ、と。

 

 

そして実際、バランは村の人々の牙をむくことなく、湖で漁をする漁師のボートに寄り添うように並走したり、おぼれた子供を背中に乗せて岸まで運んだりと、まるで現地の住民と共存するイルカやクジラの様な関係性を両者が築いている。

 

 

湖で泳ぐバランの姿に声をかける町の子供たちの姿を、ニックはどこか上の空のままに見つめていた。

 

彼にとって、怪獣とは地球の生態系の中から逸脱してしまった悲劇の被害者であり、同時に間違った存在であったからだ。

だが、この地では人と自然と怪獣とが、それが当然であるように共存し、互いを尊重しながら生きている。

 

ニックの警護役に就いていたキャサリンとフォードは、彼のその言葉にそんな難しい事ではないのかもしれない、と返した。

キャサリンは日本人の夫と国際結婚した仲で、フォードも中学生まで日本で暮らしていた経験があり、それまでの安定した状態から一気に経験のしたことのない環境に放り出されてしまう戸惑いと難しさを知っていたからだ。

 

それを解消するのは、結局はお互いが踏み出し互いを尊重できるかでしかなく、それは一度踏み出してしまえば簡単な事でもある、と二人は語る(キャサリンは簡単だからこそ実行するのは難しいけれど、と続けたが)。

 

その日の夜、再び設けられたG対策センター調査団と村の有力者の会談で、バランの存在をG宅策センターには報告するが、危険な怪獣としては報告しないと約束し、町の人々は安堵。調査団はバランと湖の生態系の調査を続行する。

 

 

調査は再開され、様々な角度からバランの生態と湖の生態系を研究し、貴重なデータの収集に従事。

また、先ほどバランに斃されたシーガンの死骸を解析し、シーガンはプランクトンの様な微小生命体が異常進化した怪獣であることが判明。湖の地底湖部分に多数生息していることから、よどんでいる地底湖で何らかの化学反応が発生し、それの影響で巨大化したのではないかと言う推察がなされた。

 

時は流れ、調査団の撤収の時が訪れた。すっかり打ち解けた町の住民達は皆別れを惜しみ、涙する者すらいるほどだ。

 

 

最後の車両の準備が出来るまでの間、ニックはナーガアームリタ湖の岸辺を眺めていた。

自分の価値観を変えた存在が住む美しい湖。その主に再び会えるのではないかと思ったからだ。

しばらくすると、その主、バランが湖面に顔を出していた。ゆっくりとニックに向かって接近し、手ですぐに触れられるほどの距離で二人は相対する。

ニックを迎えに来たフォードの部隊の隊員がライフルを慌てて構えるが、フォードはあえて手でそれを制する。

 

アメジストの様な紫のバランの瞳にニックが映る。見つめ合う一人と一体、互いに言葉はなく、やがてバランは身をひるがえし、静かに湖の中に去っていった。

 

バランは何を思ったのだろう、拒絶か、再訪の歓迎か。真相はわからないが、ニックは少なくともバランの瞳に強い意志と確かな理性を感じた。

彼は、彼らは生きているのだ。自分の意思で、自分の決断で。

 

 

数日後、帰還した調査団の報告を受けたG対策センターは、この地のバランをバランⅡと命名し、ゴジラやモスラと同じ低警戒観察にのみ認定すると決定した。



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第8話

これにて20世紀は閉幕
いよいよ21世紀に時代は移り変わります


00年夏ごろ、全米に激震が走った。

洋館事件に端を発し、ラクーンシティを壊滅寸前に追いやったバイオハザードの元凶であるオズウェル・E・スペンサーが、裁判所への移動中何者かによって襲撃、行方不明となったのだ

重要人物だけあって護送はFBIが主導となって行われていたが、周辺住民に負傷者を出すほどの大規模な銃撃戦となり、職員にも多数の死傷者を出す大惨事となった

 

現場検証の結果、スペンサーの血痕がなく、監視カメラの映像からもスペンサーの抹殺を目論んでの襲撃ではなく、彼を当局から拉致もしくは奪還することが目的のものとされ、ジェームズ・マーシャル大統領は直ちにFBIとFBCにICPOとG対策センターと協力しての世界規模での捜索を下命

 

大統領直属の特別エージェントとなっていたレオン・S・ケネディと元陸軍特殊戦略部隊所属のジャック・クラウザーも調査に参加する

 

捜査の渦中で、スペンサーの車両襲撃を行った犯人側で、南米の犯罪組織『聖なる蛇』の構成員が複数紛れ込んでいることが銃撃戦で射殺された犯人の死体の身元から判明

 

レオンとクラウザーは、聖なる蛇のリーダーであるハヴィエ・ヒダルゴを調査するべく南米へ飛ぶ

 

一方、MI-6とCIA「IMF部隊」の調査から、FDCは事件の渦中であるアメリカから独立し、ある程度自由に動くことが出来るアンブレラフランス支部、アンブレラロシア支部が合同で今回のスペンサー奪還を図ったことを突き止めていた

追跡の結果、スペンサーはフランス領海にある孤島ロックフォート島のアンブレラの施設に逃げ込んでいることも、フランス対外治安当局DGSEの追跡で判明した

そこでGフォースEUは陸軍特殊化学防護部隊を現地に派遣することを決定、アドバイザーとしてGハウンド所属のバリー・バートンとレベッカ・チェンバースを招集

フランスも国家憲兵隊空挺介入中隊を出撃させ、DGSEのエージェントフィリップ・ローシェ率いる諜報員チームも作戦に参加していた

 

 

ロックフォート島に突入した合同部隊は、既に同島が何者かの襲撃を受け、現地職員が多数死亡しているところを発見する

B.O.Wも多数が稼働し調査は熾烈を極めるが、事前に潜入していたフィリップが、数日前にアンブレラパリ支局で捕まっていたクレア・レッドフィールドとロックフォート島の住民の生き残りであるスティーブ・バーンサイドを救出

彼女らの証言から、島の管理者でありアンブレラフランス支部の有力者であるアルフレッド・アシュフォードとアレクシア・アシュフォードの兄妹が今回の事件の黒幕の一人であることが明らかにされた

Gフォースは辛うじて島を制圧することに成功するが、スペンサーの姿は既に島には無く、アルフレッドも間一髪で取り逃がしてしまう

島の管理システムのデータも消去されてしまうが、ぎりぎりで吸い出されたデータから、アルフレッドが向かったのはロシア北東サハ共和国にある秘密基地であることを突き止めた

 

 

南米へ飛んだレオンとクラウザーは、現地協力者を失い、B.O.Wの大群に襲われながらも、道中で出会った少女マヌエラを連れながらもハヴィエの元に近づいていく

そしてハヴィエの口から、この一連の事件の真相が明かされることとなった

 

マヌエラはハヴィエの娘であり、彼女は土着の未知の風土病に冒されていた

彼女の命を救うため、ハヴィエはスペンサー奪還の為の手ごまを求めて接近を図ったアルフレッド、元ソ連軍大佐でアンブレラ親衛隊隊長セルゲイ・ウラジミールの提案を受け入れる

彼らから提供された新ウイルス『t-Veronica』を投与されたマヌエラは死を免れるが、定期的な臓器交換を必要とする体となり、スペンサー奪還と証拠隠滅を図ったセルゲイの奇襲で聖なる蛇の構成員もほぼ壊滅状態となってしまったのだ

 

レオンとクラウザーに追い詰められたハヴィエは自らにt-Veronicaを投与して怪物に変貌。二人を追い詰めるが、意を決したマヌエラによって二人は窮地を奪還、レオンによってハヴィエは倒され聖なる蛇はついに滅亡する

マヌエラを連れてヘリに乗り込んだ二人だったが、レオンの携帯端末にエイダからt-Veronicaのワクチンの試作設計図と、サハ共和国にあるとされるアンブレラのロシア秘密基地の正確な地図データが送信されてきた

 

マヌエラをG対策センター北米支部に託したレオンとクラウザーは、返す刀でクリス、ジル率いるGハウンド部隊と合流し、ロシアでのアンブレラとの最終決戦に向かうのだった

 

数日後、クリス、ジル、レオン、クラウザー、バリー、レベッカ、クレア、スティーブはSMPA、Gフォースロシア支部の陸戦部隊、Gハウンド部隊と共にロシアアンブレラ秘密基地を強襲した

 

アンブレラ残党の反撃はすさまじく、U.S.Sの残党の他、ハンターの大群、またセルゲイが独自に調節したテイロス、イワンと言ったカスタマイズタイラント、ノスフェラトゥと呼ばれる謎の怪物が多数投入され、Gハウンド部隊にも大きい被害が出る

だが、元スターズ部隊の連携と優れた身体能力を持つレオン、クレア、クラウザーと言った人材の奮闘によってついにその全てが打倒される

 

基地が崩壊していく中、セルゲイとアルフレッドを抹殺し真のアシュフォード家当主となったアレクシアの二人は自らを怪物化させ、クリス達に最後の戦いを挑む

マシンガンやライフルと言った軽火器は愚か、ロケットランチャーの直撃にもひるまない二大モンスターに一同は窮地に陥るが

増援として現れたハイヤード部隊の隊長熊坂誠勝少佐が、ある秘密兵器を運び込んできた

 

小型怪獣対策用にGフォースが研究し、ついに完成した新兵器、メーサーライフルだ!

 

熊坂と、彼から託されたクリスによって発射されるメーサーライフル

高速で連射される電磁エネルギーの弾丸は一瞬で二体のモンスターの肉体を焼き尽くし、トドメを刺すことに成功した

 

 

全ての障害を排除したGフォース部隊は、この基地に隠れているであろうスペンサーの身柄を拘束するべく捜索を続行する

 

 

やがて基地のすぐ外でスペンサーは発見されるが、クリス達がたどり着くころには既に死体となっていた

そしてそこにはもう一人意外な人物の姿があった

 

元スターズ隊長であり、アンブレラの幹部であった裏切者、アルバート・ウェスカーである

 

彼は『ある事』をスペンサーに問い詰め、同時にアンブレラに引導を渡すべくひそかに基地に潜入していたのだ

そしてひそかに基地を脱したスペンサーを相手にすべてを聞き出し、既に用無として射殺したのである

 

思わず銃を向け合うクリスとウェスカー

 

だが、基地近くのクレバスの底から大きな唸り声が響くと、周囲を見回す彼らの前に一体の怪獣がクレバスから姿を現した

 

暗い灰色の身体、頭部には角が生えた四つ足の怪獣は、クリス達を睨みつけるように見つめた後、静かに再びクレバスの奥へと姿を消した

 

そしてその一瞬のスキを突いて、ウェスカーの姿も吹雪の中に消えていたのである

 

一連の事件の黒幕であったスペンサーが死に、完全にアンブレラと言う企業は崩壊

一連のバイオハザード事件はこれでひと段落と言う形になった

 

だが、スペンサーの脱走は米国側にも手引する人間がいたという可能性が根強く残っており、クリス達バイオハザードに立ち向かう戦士たちは、これが終わりではなく新たな始まりであることを、口に出さずとも予感していたのである

 

 

 

 

 

00年12月

 

複数の明るい話題が世をにぎわせた

南極地下で『エレメントX』と仮称された未知の鉱物が発見され、精製する事でテクスメキシウムと言う常温超高効率電動物質へと変化するのである

常温下でも数ギガワットの電流が流れ、レーザー核融合システムの効率を数倍にはね上げるこの物質は、国家のパワーバランスを作用しかねないことから、慎重に慎重を喫して扱われることが国連会議で決定した

 

同じく、数年前から開始されていたSY計画の一番船、スターライトSY-1がついに就航

月面の有人基地として建造が進んでいたディオナベースも、それに続くように完成。少数人数による月開発のための移住が開始されたのである

無補給で地球から木星重力圏まで到達可能な新世代宇宙船の存在と、長らく夢物語であった月への移住の可能性は大きく、宇宙開発はさらに加速人々はこのニュースを20世紀最後にして最大のクリスマスプレゼントと呼び喜んだ

 

 

そして、21世紀が訪れる

何とか平和に迎えることが出来た新世紀、穏やかな100年になることを誰もが己の信じる神に願い、今はただ大いに喜ぶのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2001年1月、南インド洋クリスマス島周辺を航行中の漁船が、小さいが、移動する謎の環礁を目撃した




今回特撮映画以外のキーワードもちょっとちりばめてありますが、あくまでお遊びなのでニヤリとしていただければ幸い

果たしてロシアに現れた怪獣はナンナノカナー


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第9話

いよいよもう一体のG編へと入っていきますぞー!


異変が起こったのは、01年の梅雨も終わりかけの頃であった

 

現在、世界の主要国では地球環境を悪化させ、新たな怪獣出現の呼び水になる懸念が強い核分裂式の原子力発電が全面的に禁止されている

その代わり主流になったのは、衛星軌道上にある超高効率太陽光発電衛星からの、マクロウェーブによるエネルギー送電、もしくはレーザー核融合による発電であった

昨年南極で発見されたエレメントXの存在は、核融合発電の効率を飛躍させる可能性がある夢の新元素で、各国は国連に管理されたわずかな量を自国に持ち込み研究を行っていた

 

海竜丸はかつてプルトニウムを輸送する任務に就いていた大型貨物輸送船である、放射線対策のために厳重な隔離装置が幾重にも搭載された本船は最も安全な海上の城であり、日本政府が求めていたエレメントXの輸送に最適な船であった

 

南極のマクマード基地を旅立ち、ニューカッスル港を経由した海臨丸は、海上保安庁の巡視船「のじま」に警護されながら一路日本を目指す

上空にはのじま所属の対潜警戒ヘリの姿もあり、一見すれば安全な旅路であった

…無論、怪獣と言う脅威からすれば圧倒的に無力であるが、有事の際にはマレーシアとフィリピン空軍機がスクランブル発進する手はずになっている

 

事件が起こったのは、海竜丸がフィリピン海溝近くを航行していた時である

突如のじまに海竜丸から、座礁事故が発生したという緊急連絡が入った

だが、今いる場所は3000m以上の水深がある海のど真ん中である。本来ならばあり得ない

 

ライトを片手に海竜丸の甲板クルーが目撃したのは、海面の下に見える巨大な環礁だった

海図にも載っていない謎の環礁にクルーが困惑するなか、大きな揺れが海竜丸を襲う

なんと環礁が自ら動き、海竜丸から離れていったのだ

そのままのじまの真下を通過し、海の中に消えていく巨大環礁

のじま船長はありえないその挙動にただ絶句するばかり

 

この事件が、巨大生物が原因の可能性があるとして、CCIが情報収集を始めると、年明け直後から南太平洋のクリスマス諸島、ギルバート諸島近海ですでに環礁が現地の漁業関係者などに目撃されており、海流に沿って日本に徐々に接近していることが判明する

国家環境計画局の土橋局長は、環礁の調査を海竜丸と契約していた八洲海上保険と合同で行うことを決定

東都大学准教授で、藤戸拓哉教授の妻である藤戸雅子女史をオブザーバーとして派遣、その中にはのじまクルー米森良成の姿もあった。真相究明の為に無理やり調査に同行したのだ

 

その頃、長崎市内の動物園に、青木梓の姿があった

懇意にしている鳥類学者の平田教授が、何らかの事件に巻き込まれた可能性があると、彼を経由して知り合った同じ鳥類学者の長峰まゆみから相談を受けたのである

長崎県警の大迫力と共に向かったのは、五島列島の最南端にある孤島姫神島

 

現地に到着した一同は驚愕する

島の全世帯が住む村が壊滅状態にあったのだ。家屋、自動車、漁船。すべてが滅茶苦茶に破壊され、誰一人住民の姿はなかった

破壊された村の中を進んでいると、梓はある特徴に気付く。破壊された物体は全て上部から破壊されていた。まるで空を飛ぶ何か、もしくは家よりも大きい何かに襲われたかのように

そして真弓があるものを民家の陰に見つける

白い粘着質の、異臭を放つ物体。溶けかけのアイスか形が崩れた豆腐のようなモノ

異臭に誘われたのか磯部の虫や節足動物がまとわりついている

鳥類が吐き出す未消化物ペリットに似たそれを調べると、内側からはいくつもの『人が身に着けていたモノ』が現れた

 

衣服の切れ端

動きを止めた腕時計

平田が持ち歩いていたボールペンも

 

 

数時間後、夕暮れも差し迫る姫神島のヘリポートに長峰たちの姿があった

村を襲撃した何かの危険性を考え、夜行性であれば不意に山から襲い掛かってくる可能性もあり、これ以上島にいることは危険と判断したのである

ふと、梓は気づいた。先ほどまで聞こえていた鳥や虫の鳴き声が聞こえなくなっていた

さざ波の音と風の音、風に揺れる木のさざめき、オレンジがかった空間に満ちる不気味な静寂

その時、その静寂を切り裂いて巨大な影が梓たちの真上を通過していった

 

翼長15m程、茶色の体色に巨大な翼を羽ばたかせる鳥の如き姿

真弓は一瞬それをラドンだと重い声を上げた。梓はそれを否定する。全体的なフォルムも大きさも速度も違う。あれがラドンならば今頃自分たちは衝撃波で吹き飛ばされていただろう

 

何にしても、『アレ』が飛び立ったのは新たなえさを求めてで間違いないだろう。今それをどうにかできるのは自分たちだけだと真弓たちは警察のヘリで追跡を開始

同時に大迫は自衛隊に怪獣出現の報を知らせていた

 

北上したその鳥は福岡沖の能古島の近くまで飛行した末、一路反転して真弓たちの乗るヘリへと狙いを定めた

目の前まで迫る飛行怪獣、とっさに真弓と梓はヘリの扉を開け、手に持っていたレーザーサイトとカメラのフラッシュをひたすらに連射した

夜行性ならば強い光に弱いだろうと言う目論見は成功し、目の前で強烈な光を目に浴びた飛行生物は絶叫してバランスを崩しヘリから大きく離れると、そこに向かって飛来したミサイルが数発直撃し空中で撃墜された

 

GX-813グリフォン

特生自衛隊が試作した新型航空機で、下関沖合での試験運用中の第6航空隊所属機が急遽駆け付けたのだ

それに遅れて岩国基地の米軍飛行隊や築城基地と新田原基地の航空隊も続々と駆けつけ、ヘリの護衛に就く

 

窮地を脱して息をついた真弓は、戦闘機の軌跡を追いかけていると、その先にある姫神島上空を見て愕然とする

島の上空を、先ほど撃墜されたモノの同族が数匹、島の上空で甲高い声で鳴きながら旋回していたのだ

 

今度の休暇は休めないだろう。梓はそう確信した

 

 

 

 

 

 

 

 

アドノア島では、しきりに空を見上げながら低く小さな唸り声をあげているゴジラの姿があった

それは緊張、或は敵意ある存在を認識した際の警戒の仕草であり、人には気づけない何かを優れたテレパシー能力で感じているのではないか、とアドノア島のG対策センター職員はすぐに対応できるよう留意するべし、と言う報告書をGフォース本部へと提出する

 

それが正解だとわかるのは、数日後のことである



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第10話

話数も二桁台。皆様の応援のお陰でございますねー

そしていよいよ、二体のGの邂逅です


飛翔生物と梓達が邂逅した翌日、CCIと特殊戦略作戦室はG対策センターとのテレビ会議を行っていた

 

出現した生物はヘリに追従するほどの優れた飛翔能力を持ち、人を明確に捕食対象として認識し、かつ出現した個所が国境にほど近い孤島である事から広い活動域を持ち、周辺国に被害が拡大する懸念もある

速やかな対処殲滅が必要であるとの結論に達するのに時間は掛からなかった

 

同時期、梓と真弓は現地派遣されたG対策センターや特生自衛隊の化学検証班と合流し、ヘリ内から撮影した映像やグリフォンに撃墜された死骸を基に飛翔生物の生態を少しでも解き明かそうとしていた

そこには事件に妻が巻き込まれたと聞き、あわてて娘と共に駆け付けた梓の夫青木一馬の姿もある

翼竜マニアとして有翼生物の飛行プロセスなどにも詳しく、小型航空機を自作するほどの航空力学への知識を買われて会議に参加していた

 

検証の結果、既に最高速度はマッハ1と戦闘機に匹敵する機動性を持つ一方、耐久性は怪獣としては低く、従来型の空対空ミサイルでも十分に撃破可能な程度しかない事等徐々に生態が明かされて行く

しかし、バラバラになった死骸の中にあった音叉状の骨の用途だけが依然として謎のままであった

 

翌日早朝、夜明けと同時に飛翔生物撃滅作戦が発令された。姫神島の周囲を生物の活動が緩慢な昼間のうちに護衛艦隊で包囲し、日が暮れて活動が活発化、空中に出現すると同時に包囲している護衛艦から照明弾と探照灯を一斉に生物に向けて集中させ、強烈な光でパニックを起こさせると同時に一斉攻撃を仕掛け反撃、回避の暇を与えずに一気に決着をつけると言うものだ

 

万が一包囲網を生物がすり抜けることを考慮して、長崎県の沿岸各地には陸上部隊が配置され、上空では第二次攻撃命令が下された時に備え戦闘機部隊が旋回待機している

 

第一次攻撃の主力は第二護衛艦群所属の護衛艦8隻と陸自の戦闘ヘリ部隊、特生自衛隊のグリフォン飛行隊だ

後詰として沖縄から出撃し米軍の艦隊も待機しており、蟻一匹通さない鉄壁の防衛線が幾重にも構築されたことになる

後は夜を待つだけとなった

 

 

特殊戦略作戦室が緊張に包まれたのは、攻撃部隊の配備が住むとほぼ同時であった

アドノア島のG対策センター職員からのアラートメッセージが届いたのである

ゴジラの姿がアドノア島から消えた

ゴジラは核をエネルギー源をしているためか、どの個体も電波を吸収しレーダーに映りにくいという特性を持っている

その為一度取り逃がした場合再補足は非常に難しい

 

何故ゴジラが島を出たのか?どこに向かったのか?不明な事は数多くあれど、兎にも角にもG対策センターは太平洋北半球各国に第二種警戒態勢を発令、特殊戦略作戦室も海自と空自に北海道周辺の北方海域の捜索強化を厳命する

 

 

 

 

同時期、米森達けんざきクルーは南西諸島のさらに南の海域で目的であった漂流環礁を発見する

最大直径80m程の環礁はちょうど山のように中心点が盛り上がっており、そこにはモノリスとしか表現しようのない謎の遺物が突き刺さっていた

そこには何か文字のような文様が刻まれており、周囲の岩の陰からはいくつもの勾玉状の金属塊が発見される

発掘と捜索が続けられる中、ふと金属板に触れた米森は、金属板が人の体温の様な熱を帯びていることに気付く

そして、心臓の鼓動の様な一定のリズムで音を発していることも……

 

瞬間、金属板に亀裂が走り、環礁全体が発光。すさまじい勢いで振動し始める

慌てて避難しようとした米森、だが足を踏み外した彼は他のクルー数人と一緒に海中に投げ出されてしまう

 

必死に水面に上がろうともがいていると、環礁が動いたことで発生した膨大な水泡の向こうに何かが見えた

 

巨大な牙が映えた口、強く眼前を見据える眼。巨大な環礁の、否、環礁だと思っていた生物の顔だ

巨大な亀の様な怪獣はそのまま一直線に日本へ向かって進んでいく。まるで何かを追い求めているかのように

 

 

 

夕暮れが迫る姫神島上空を複数機の無人ドローンが飛行する

騒音によって飛行生物を刺激せずに観察するために運用されているもので、姫神島中央の山中にある巣を発見することに成功していた

それまで洞穴の奥で眠っていた生物の体温が上昇し、徐々に活動が活発化していく

 

作戦旗艦あいづのCICに乗り込んでいた佐竹一等陸佐の指揮の元、生物撃滅作戦がいよいよ始動する

 

 

島からドローン全機が退避すると同時に、護衛艦後部から発進したヘリ部隊、飛来したグリフォン部隊が島の上空を包囲し、攻撃は命令があれば即座に開始できる状況であった

 

と、戦闘空域に接近する民間ヘリをレーダーが捉えた。元々草薙が環礁の遺構をピックアップするためにチャーターしたヘリで、米森と雅子が乗り込み、環礁、否怪獣を追い越し現れたのだ

 

あいづ後方のヘリポートに誘導されると、ブリッジに通された米森と雅子は環礁の正体が巨大生物、即ち怪獣であった事、今も日本列島、否この作戦海域を目指し向かってきている事を佐竹と防衛庁地下の黒木に告げる

 

あいづ艦長島﨑一等海佐から艦の一部をそちらの警戒に回す、と言う提案が出たが、ほぼ同時に飛行生物が空に向かって飛び立ったと哨戒機より入電

 

一瞬の思考で黒木は速攻で飛行生物の撃滅を行い、返す刃で接近する怪獣に備えると判断する

 

島からすべての飛行生物が飛び立った。その数全部で9羽(頭?)

一定高度に到達した段階で、待機中の各艦より照明弾が発射され、同時に掃海艇による探照灯に照射が行われた

一瞬のうちに明滅する探照灯が下から、すぐ頭上で炸裂した照明弾が上から生物に光を浴びせかけ、閃光に包まれた飛行生物全てがパニックを起こし、甲高い悲鳴を上げる

続けてあいづ、あこう、くらしきを始めとした各艦が艦対空ミサイルを発射。レーザー誘導されたミサイルは瞬時に生物に着弾し瞬く間に2羽が撃墜される

その爆風に巻き込まれた1羽が閃光から逃れられたためか、高度を落として低空で護衛艦の防衛網をすり抜けるように逃げ出す

空中待機中のグリフォン部隊に追撃命令が下り、2機のグリフォンが生物を追走。真後ろに付き、ロックオンシーカーでターゲットを補足すると同時に、生物の面前の海面が爆発したかのように飛沫が上がる

 

海を割って表れたのは、米森達が追いかけていた巨大怪獣だ。背を覆う巨大な甲羅は宛ら亀の様であるが、肘から生えた角が凶悪さを印象付けている

怪獣は巨大な牙が生えた口を開いて咆哮すると、目の前まで接近していた生物を羽虫を払うかのように殴り伏せる

回避しきれず剛腕の直撃を受けた生物は水面に叩きつけられ、そのまま腕を振り下ろされて絶命した

 

と同時に、亀の怪獣と戦闘領域を挟んだ真反対側の水面で何かが煌めき、海面が爆ぜ青い光が島上空の飛行生物の群れの脇に伸び、掠める

 

まず出てきたのは、黒く筋肉質な長い長い尾であった。尾で水面を殴り、山脈の如き背鰭を揺らし、顔を外気に晒したそれ――ゴジラは大きく息を吸った

 

人間たちがその姿にあっけに取られている間に、背びれは青く放電し、口中に蓄積されたエネルギーが爆ぜ、バーストすると同時に再び飛行生物の群れへ延びる

目標は、初撃を受けて混乱し大きく群れから離れた一羽だった

熱線は一直線に伸び、寸分違わず生物に直撃。一瞬も耐えることなく生物は空中で巨大な火球となった

 

 

巨大怪獣が吠える

 

ゴジラが吠える

 

2大怪獣の咆哮が共鳴する。それは宛ら、空を舞う生物に向けられる死刑宣言の様であった




誤字脱字などございましたらどしどしご指摘ください


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第11話

第一ラウンドはいったんお開き。ガメラサイドの怪獣達も結構強化しております

お気にいりや感想など改めてありがとうございます
励みになります


飛翔生物殲滅作戦はもはや作戦継続どころの話ではなくなっていた

 

展開していた護衛艦群のすぐ近くに出現したゴジラと、亀型巨大怪獣

2体はあまりにも艦隊に近すぎた。ゴジラの熱線の様な光熱攻撃でなくとも、少しでも機敏に動けばすぐさま打撃が届くほどの距離

明確に人に対しては攻撃を仕掛けてこないことが確定しているゴジラはともかくとして、亀型怪獣が安全な存在とは限らない

何よりもまず優先されるのは少しでも距離を取り、安全を確保することだ

黒木と佐竹の一喝を受けて各艦の首脳部は混乱から脱し、それぞれに行動を開始

南東と北西にそれぞれ出現した2大怪獣と対極的に、海自部隊はそれぞれ北東と南西に向け艦を移動させる

 

各レーダー設備も水上の怪獣に対して全てが指向される形となる。それを知っているとは思えないが、飛翔生物は亀型の怪獣を見るや否や異様に興奮したようになり

個々にその場から飛び去って行く

各艦艇からの対応攻撃が不可能だと判断した佐竹は、上空待機中のグリフォン隊、および周辺に配備されている空自航空隊に追撃命令を下した

現場直掩を行っていたグリフォン隊のうち3機、築城基地から派遣された築城基地のF-15とGフォース空軍のF-16部隊がそれぞれに爆音を立てて飛翔生物を追う

 

 

一方、怪獣達から距離とを取りつつある各艦艇は、再び攻撃態勢を整えつつあった

ゴジラは飛翔生物を目で追い、飛び立った先を睨みつけていた亀型怪獣に、話しかけるかのように柔らかい鳴き声を放つ

本来ゴジラは温厚な性格で、基本的には外部の見慣れない存在に対してもこうして友好的な態度での接触を行う

これまでのアドノア島への来訪者が攻撃的過ぎたのである

 

だが、亀型怪獣はゴジラに見向きもしないまま、ずっと空を睨みつけている

まるで狩人が直前で得物を逃がしたかのような苦々しさが、周りの護衛艦にいるクルーたちからも感じられていた

 

と、亀型怪獣は一転して身をひるがえし、海中に向かって沈んでいく

島﨑艦長は怪獣が移動を開始したと判断し、追尾をソナー手に命じようとして、その手を止めた

艦が揺れているのだ、明らかに異常な速さで、そして怪獣が沈んだ辺りの水面が光っている

揺れが強まり、何かに捕まらなければ立っていられないほどに大きくなる

揺れの強さに比例して、水底から唸るような轟音が強まっていく

 

瞬間、水中から何かが飛び出してきた。先ほどの怪獣だ。だがその姿を見た一同は驚愕に目を見開く

頭部、四肢、そして尾をリクガメの様に体の内側に引き込み、その代わりに四肢の穴からジェットの様な噴煙とエネルギーを放出しながら上空で滞空している

やがて体を捻るように回転させると、その勢いをジェット噴射で加速させ、まるで円盤の様に超高速で回転しはじめ、飛翔生物を追いかけるかのように全く同じ方向へ向かって飛び去ってしまった

 

 

 

数分後、あいづ後部のヘリ甲板に梓はいた。飛翔生物、怪獣に続いてゴジラもまた移動を始めていた

あいづクルーと一馬に見守られながら、梓はそれを見送ろうとしていたのだ

 

梓の視線に気づいたゴジラは動きを止め、身を向き直して梓と相対する

迫力に周囲の自衛官や一馬が息をのむ中で、梓だけが優しくゴジラを見つめていた

どんな姿になったとしても、彼女にとって彼は可愛い息子なのである

ゴジラも同じく、瞳には優しい雰囲気が浮かんでいた。尾は甘えるしぐさである左右への旋回振りを行っており、梓の姿を見て安堵しているようにさえ見える

やがてゴジラはあいづが波に揺れないよう、静かに、完全に水中に姿を消した

 

 

先ほどまでの騒乱が嘘のように、姫神島近海は静まり返っていた

これ以上この海域で出来ることは何もない。事後処理を黒木、佐竹、島崎の首脳陣が行っていると、空自基地より通信が入る

飛翔生物追跡の任に就いていた戦闘機部隊が、生物が口から放った黄色い光線によって反撃され、Gフォース所属機が撃墜されてしまったという

そのまま生物の追跡は失敗。ゴジラもまた追尾が不可能なほどの深海に身を沈め、足取りを追うことは不可能となり、辛うじて亀型怪獣のみが瀬戸内海への着水と潜水が確認されるにとどまった

明らかだ、作戦は失敗した

 

 

例え一回の戦いが失敗に終わろうとも、人と国土が脅威にさらされている以上、行動をしないわけにはいかない

梓と真弓は、大迫や長崎県警のSUMP、Gフォース陸戦部隊の護衛を受けながら再び姫神島に上陸

巣穴から共食いの結果死亡したと思われる大量の生物の死骸と卵の破片を発見

炭素同位元素分析をしたところ、卵は10000年単位で時間を超えた耐久卵であること、ヒナのすべてが雌である事を知る

同時に、一馬等Gフォーススタッフも姫神島近海で撃墜された二羽の生物の遺骸と、追跡して空中で生物と交戦した戦闘機のカメラなどから生物攻略のヒントと見つけようとしていた

そして一馬は、長らく存在意図が不明であった首の部分の音叉状の骨の正体に行きつく

この骨は音波を共鳴・増幅させる為の機関であり、ここで増幅させた音波を超音波の領域で指向性を持たせて口から放出していると一馬たち解析スタッフは見破った

光線で目視可能なまでに指向させ、発射された所謂超音波メスによって、F-16の機体の分子間結合を切断、航空隊を返り討ちにしたのだ

 

そしてもう一つ、この事実を知って真弓は戦慄した

撃墜された生物の遺骸は、先日最初にグリフォンに撃墜された最初のものよりも一回り巨大化していたのだ

殆どの餌を食べつくした環境で、わずか数日のうちにそこまで成長していたのである

最高飛行速度も一馬の計算では当初より増速しており、このままではこれまでの飛行怪獣の様にミサイルや戦闘機を振り切るほどになるのも遠い話ではないとしている

どこまで巨大化し、どこまで強大となるのか、それまでに果たしてすべての生物を撃滅できるのか

 

 

米森と雅子は都内に戻った後、雅子の伝手で紹介された夫拓也が解読した、怪獣の背の遺物に記されていた碑文について説明を受けるため、横浜にある草薙邸を訪れていた

そこで雅子と拓也が驚いたのは、草薙邸に拓也たちの娘みどりが居た事だ

草薙の娘浅黄は、みどりのクラスメイトで友人であり、偶然遊びに来ていたのである

 

そこで拓也は解読に成功した碑文の内容についての展開を行った

古代のカナダやアイルランドで使われていた古文字、そしてルーン文字との共通点があり、同じ言語圏、或は共通の系統下にある文字である可能性が高く、翻訳自体は容易であったと言う

 

大いなる水瓶枯れる時、初めにギャオスありき、其は災いの影にして破滅の呼び笛。死の虹、悪なる刃、悍ましき無限、魔の母、汚れた魚、笛の音に応えて、封印を破り目を覚まさん。我等、我々は過ちに驚くが遅すぎき。最後の希望ガメラを時のゆりかごに託す、この言の葉を心得るべくば、ガメラと共に絶望に立ち向かえ

 

まるで予言のような内容だが、拓也は既にこの内容について察しがついていた

つまりこれは過去からの警告なのである。太古の昔に封印された怪獣が、再び目覚め、人々に牙を剥く可能性がある、まるでかつてのバトラのように

拓也はそう思えてならなかった

 

そして、碑文と同時に大量に怪獣の背で発見された、勾玉状の物体の材質検証も同時に行われており、拓也はその結果も手にしていた

米森がくすねていたそれは、現在の地球上に存在しているあらゆる金属に該当しておらず、未知の金属でできている事しかわかっていなかった

研究所は通称としてその構成物質をオリハルコンと呼んでいた。オリハルコンとは、かつて大西洋に存在していたという、海の底に沈んだアトランティス文明で使われていたとされる未知の金属の事だ

大西洋と言う点では、このルーン文字の起源とも合致している。超古代文明の存在は怪獣史的にも無視できない存在であり、あながち間違っていないとも拓也と雅子は思っていた

 

米森は確信していた、あの飛翔生物こそがギャオスで、それを追って現れた怪獣がガメラである、と

 

 

 

 

米盛からプレゼントされた勾玉が浅黄と緑の手の上で淡く輝いていることに、大人たちはまだ気づいていなかった




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第12話

大変長らくお待たせいたしました、第12話。ギャオスとの戦いも佳境に入ってきます
オリジナル展開も交えつつ、楽しんでいただければ幸いです


Gサミットに参加していたG対策センターと特殊戦略作戦室のスタッフは、手元にある書類に記された内容について、重い雰囲気のままに議論を交わしていた

拓也が持ち込んだ、亀型怪獣の背に存在していた碑文の解析内容。荒唐無稽と言うのは簡単だが、過去からの警告が持つ重さはモスラの存在から重々承知していた

 

とりあえず、亀型怪獣と飛翔生物をそれぞれ碑文内容に即して前者をガメラ、後者をギャオスと呼称する事が決定

ギャオスに対しての対応は依然変わりなく、速やかに発見し迅速に殲滅する事

異常な成長性と環境適応能力、そしてあらゆる生物を捕食対象とする狂暴性

優れた飛翔能力と組み合わされたそれは紛れもなく世界規模での人類に対する脅威であり、一刻も早い対処は必須であった

現在姫神島から逃げ出した残り5羽のギャオスは、その後西日本各地のレーダー施設のログなどから、複数羽のグループに別れてそれぞれに日本列島沿いに北上している事

飛行速度からの計算で、近畿から東海地方のいずれかの山地に潜伏していると推測されている

現在該当地域ではすべての山々で入山活動が禁止され、人口密集地では特生自衛隊が中心となって投光器が設置、陸上自衛隊は航空自衛隊と協力して過疎地からの住民の避難が行われ、港湾部では派遣された護衛艦が投光器の役目を果たしている

しかし、真弓と梓は一つの懸念があった

 

いずれギャオスは太陽光すら克服するのではないか?

元々夕暮れ時とは言え、完全に日が没する前に飛びたてるくらいには光に耐えられるのだ

あの黒々とした巨体が青空の下を飛び回るようにならない、とは誰に言えただろう

 

一方で、ガメラへの対応についてはあまり進展がなかった

彼の怪獣が果たして明確な人類の敵か如何かがまだ不明だったからである

今回ガメラは水上に出現してギャオスを攻撃し、取り逃がした末に追跡しその場を後にした

碑文の内容が確かであればあれが狙っているのはギャオスただ一つ

結果的ではあるが、陸上に上陸して都市に被害を及ぼしたわけではない。だが実際に内陸にギャオスが出現し、人口密集地周辺で戦闘になった場合、ガメラは果たしてどういった行動に出るだろう

最期の希望と言われる通り、人類を守護することを優先するか?それとも周辺への被害など関係なくギャオスを滅するには手段を択ばないのか?

 

かつてのジュニアやモスラは、移動過程で建築物の破壊被害こそ発生させているが、両者とも意図的に破壊しないように動いていたことが、研究の結果判明している。が、ガメラはどうなのかはわからない

甚だ身勝手ではあるが、たとえギャオスを倒すという点で利害が一致していたとしても、その過程で出る被害を無視することは出来ない。そこで銃を向ける相手かどうかが決まるのだ

 

結局は状況次第で、以上の結論は出ず。会議は終了となった

 

 

同日夜、高知県室戸市に住む住民が、南の海が青白く発光し爆発音を耳にすると言う現象を体験

翌朝にはすぐ近くの高岡漁港にギャオスの翼の破片と思われる物体が多数流れ付いた

現場に急行したGフォースと特生自衛隊は回収した肉片の破損状況から、ゴジラの熱線を受けてはがれ飛んだギャオスの破片と推定、海上自衛隊が周辺の海域を捜索するも死骸は発見されなかった

夜のうちにこの海域でゴジラとギャオスが交戦したのだろう

夜に室戸市民が目撃した発光と爆発音もこの戦闘であったと思われる

 

一向に謎なのは、日本中のレーダーサイトが稼働している中で、なぜ移動しているギャオスが捕捉できないか、であった

梓と真弓は非常に低空を飛行し、かつ夜間も明かりが強い人口密集地を避けて移動しているためにレーダー網に掛からないのではないか、と言う仮説を建てるも、決定的とは言えない

 

 

さらに翌日、事態は動いた

小豆島近海で、ガメラ探索を行っていた海自の潜水艦がガメラを補足。ソナー音を聞いたガメラは覚醒し、両足だけを格納した高速飛行形態になり一気に浮上、海面から飛び出し東に向かって飛行した

通達を受けた空自の偵察航空隊をも振り切り、長野県上空で姿を再び消す

 

そのニュースを高校で聞いた浅黄は、ガメラの元に行かなければ、と言う強い衝動を感じ、思わず高校を飛び出す

慌ててそれを追いかけ引き留めるみどり。だがみどりも同じような衝動を感じ取っており、一人ではなく一緒に往こうと提案し、ある人物に電話をかけた

出たのは拓也だった

 

 

 

同日の夕方ごろ、米森と草薙は木曽山脈のふもとにある宮田村に向かっていた。ギャオスの足取りを追っていた真弓たち調査隊に、付近の山から異様な鳴き声のような音がするという情報が入り、一足先に現地位置していたのだ

ちなみに梓と一馬は連れて来ていた一也少年の事も考慮し調査隊からは離脱し、一足先に都内の実家に帰宅していた

 

遠くから半鐘の音が響いていることに米森は気づく。間違いなく何かが起こっていることを二人は察し、車を加速させた

 

 

到着した天竜川沿いにある村に、やはりギャオスはいた

全身に傷を負い、夥しい量の血を滴らせながら、牧場の家畜舎に顔を突っ込んでいる。ゴジラに攻撃され、肉片をばらまいたのはこの個体だったのだろう

闇夜に紛れて何とか逃れ、この地に隠れ付いていたのだ

消防団や自分たちの護衛についている自衛隊員と共に村民を避難させ、逃げ遅れた少年を連れていた真弓は、牛や豚を貪るギャオスの傷が急速に回復していることに気付く

驚異的な生命力だ。と、すべての家畜を胃に納めたギャオスが顔を持ち上げ、首を動かす

次の得物を探しているのだ。このままではそれは自分たちになる

 

少しでも距離を、と駆ける真弓。だが吊り橋の中央で、橋床の裂け目に足を取られ転倒。抱きあげていた少年が痛みと恐怖で限界を超えて号泣し、その泣き声にギャオスが気付いてしまう

ゆっくりと、まるで愉しむ様に低速で浮上し真弓に向かうギャオス

そこに避難民をすり抜けて米森が現れ、間一髪で二人を伏せさせギャオスの牙から救いだす

起ち上って駆けだす三人に、狩りを妨害され怒ったギャオスが再び攻撃を仕掛ける。口を大きく開くと、超音波メス『ヴァイブレート・レイ』の発射段階に入った

口から放たれる高周波は人が耐えられる代物ではなく、吊り橋を支えるボルトがはじけ飛び、米森の腕時計も表面のプラスチックが砕け散ってしまった

そして音に苦しみ倒れる米森と真弓、せめて子供だけはと折り重なる二人に、ギャオスがヴァイブレート・レイを放つ

 

だが、その光が三人を切り刻むことはなかった。谷底からガメラが現れたのだ!

ガメラは腕を三人の盾にするように差し出し、その身でヴァイブレート・レイを受ける

甲羅ほどの耐久性はガメラの皮膚は持たない。表面を超音波で破壊され、緑色のガメラの血が米森達の周囲に降り注ぎ、鉄が焼けるような嫌なにおいが充満する

 

ガメラが自分たちを救ったと判断した米森は、それ以上ガメラが傷つかぬようにと最後の力を振り絞って吊り橋を渡り切り、草薙と消防団員がそれを出迎える

 

三人を目で見送ったガメラは、どこか安心するような表情で頷き、鋭い視線をギャオスへと向けた。そこに宿るのは怒りだ、か弱い存在を甚振り、悦んで殺す虐殺者への怒り

 

それを受けて脅えるのはギャオスである。自分の傷では目の前の宿敵には敵わない。恐れ慄いたギャオスは一目散にその場を逃げ出し、ガメラは再び空へとそれを追跡する

 

米森は確信する。ガメラは人類の味方だ、と

 

 

ギャオスを追うガメラは南東方向に高速で飛行していた

と、櫛形山上空に差し掛かったガメラの甲羅のスリットから光が漏れだす。大きく口を開けて息を吸い、それを吐き出すと漏れ出ていた光が口中に収束し、巨大なプラズマの火球となって打ち出された

ガメラの放ったプラズマ火球『プラズマブリット』はギャオスに一瞬で着弾し、断末魔を上げる間もなく5羽目のギャオスは殲滅された

 

空自と特自の航空隊にスクランブル発進の命令が下る。

ガメラを追跡していたレーダーに、ガメラ以外の飛行体の存在を知らせるランプが灯った

 

隠れていた4羽のギャオスたちだ。傷つき役に立たなくなった同胞を囮に使ったのである

ガメラの後ろを取ったギャオスたちはヴァイブレート・レイを一斉に発射。脚の噴射口の周囲に攻撃を集中させ、大ダメージを与える

痛みに悲鳴を上げながら、なんとかギャオスに反撃を加えようとするが、直線速度で勝りながらも運動性ではガメラは勝てない。そして何より数が違う

 

 

自衛隊はギャオス迎撃の為に部隊を展開していた。富士駐屯地所属の、98式ハイパワーレーザービーム車<改>が導入され、戦闘機部隊と連携し攻撃の機会を探っている

だが空中の怪獣同士の戦いは目まぐるしく、なかなか狙いを絞れない

 

ガメラとギャオスは戦いながら更に南寄りに進路を変更、芦ノ湖上空を通りすぎ、湯河原から真鶴の上空に差し掛かっていた

4体のギャオスはそれぞれ速力が低下したガメラを取り囲むように分散し、四方八方からヴァイブレート・レイや、柔らかい頭や腕を狙って脚の爪で切り裂くように攻撃を仕掛けていく

 

 

悲鳴を上げながら避難する群衆を尻目に、それを見つめる3人の姿

浅黄とみどり、そして拓也だ。みどりは拓也を呼び出し、無理を承知でここまで車で連れてきてもらっていたのである

かつてのモスラ事件の際、みどりに大きな迷惑をかけた拓也はそれ以来彼女の願いをどうしても断れないでいる。今回もそうだった

 

やがてバランスを崩したガメラは真鶴岬の山間に落着、木々を薙ぎ払いながら仰向けに力なく横たわってしまった

そこに飛来するのはギャオスだ。巨大な餌を貪るように首筋や腕に噛みつき、肉片を引きちぎろうとする

 

するとどうだろう。浅黄とみどりの二人の腕や首筋、ガメラが傷ついた所と同じ部位にうっすらと傷が浮かび上がってくる

ガメラのギャオスへの怒りと受ける痛みが、二人が手を重ねて握りしめる勾玉を通じて伝わってくる

それを察した拓也は二人に勾玉を手放すよう叫ぶが、二人は首を横に振るばかり

これがガメラと人のつながり、これがなくなればガメラは勝てなくなってしまう。と

 

 

 

ギャオスにまとわりつかれて藻掻いていたガメラの動きが段々と緩慢になっていく、と同時に、仰向けになった腹部の皺に赤い光が灯ったのを拓也は見つけた

G対策センターでも、探査衛星による分析の結果、ガメラの体内温度が急激に上昇していることが分かる。かつてメルトダウンを起こしたゴジラ程ではないが、生物が発する熱としては明らかに異常だ

 

浅黄たちにもそれは伝わっていた。丹田を中心に全身が紅く火照って高熱が起こり、立っていることもままならなくなった二人はその場にへたり込んでしまう

 

腹の赤い光はガメラの全身に血管の様にいきわたり、とうとう体そのものが紅く発光し始める

それが何を意味するのか、拓也は理解した。自爆するつもりなのだ、ギャオス諸共に

そしてそれが起これば、今ガメラと同調している娘みどりと浅黄はどうなってしまうのか?

 

 

意を決した拓也は二人の手に自分の掌を重ねて勾玉に向け怒鳴りつける

自分の娘を勝手に巫女扱いしておいて、自滅にすら巻き込む等ふざけるな、二人はまだお前を信じているのにお前が一番最初に諦めてどうするのか

俺はまだみどりの嫁入り姿も見ていないし、孫だって抱いていない。こんな所でこんな形で娘を喪うわけにはいかない、と

 

 

そして浅黄とみどりも必死にガメラへ思いの丈を叫ぶ。人を信じて欲しい、私達も一緒にギャオスに立ち向かう。だから諦めないで一緒に歩んで、と

 

 

果たして、その声はガメラの心についに届いた。自爆シークエンスを急遽停止したガメラは、四肢と頭を体に格納し、最後の力を振り絞り、四肢のブースターからチャージした自爆用のエネルギーも込めた赤いジェット炎を放出しながらその場で高速で回転する

高熱の強化ジェットを回転しながら放出し回転する『スピニングフレイム』によって焙られたギャオスたちは熱に耐えきれず急上昇、ガメラも一時空中へ避難し、その隙を指揮所に居た黒木は見逃さなかった

 

 

待機していた航空隊と陸上部隊に一斉攻撃を命令。各戦闘機から一気に空対空、空対獣ミサイルが発射され、地上のハイパワーレーザービーム車からも青白いレーザーがギャオスに向け放たれる

レーザーは集中して一羽のギャオスに向け照射された

その高熱は左右両方の翼を貫き、胴体と頭部にも次々と突き刺さって一瞬でその一体の命を奪う

もう一羽は地面ギリギリで弾幕をすり抜け、木と稜線を盾にミサイル攻撃をしのいだ

残り二羽は回避行動が間に合わずミサイルが殺到した、が

二羽のギャオスは同時に口から向かってくるミサイルに向け、高周波を放出した。ヴァイブレート・レイとして指向されるほどの収束率はないが、放射状の範囲に向かって放たれた高周波は互いに増幅しあって強化され、範囲内にあったミサイルすべてを破壊してしまう

数発ほど範囲攻撃を逃れたミサイルはあったが、それも航法装置などに異常が発生してギャオス追尾は不可能となり、空中で自爆処理させられる

 

爆発の光と煙を陰に二羽のギャオスは富士の樹海方面に逃走、残る一羽は低空で海の、拓也と浅黄たちがいる場所に向かっていた

ガメラ殲滅を邪魔された八つ当たりとばかりに、大きく口を開いて狂気の叫びをあげながら三人に迫るギャオス

ついにヴァイブレート・レイが発射され、せめて二人だけでもと浅黄とみどりを庇う拓也

 

 

だが、攻撃を受けた痛みはなく、自分の周りが異様に暗くなっていることに気付く

 

目の前に壁があった

青緑色のごつごつとした、岩の様な壁…否、それは巨大な『尾』であった

 

みどり達を庇い、超音波の刃を自らの身で受け止めながら、ゴジラがそこに姿を現していた

 

慄くギャオス、だがすべてがもう遅い

まるで姫神島の時の生き写しの様に、ゴジラは熱線で目の前のギャオスを粉砕した

 

黒焦げになって真鶴の海に散らばっていくギャオスの遺骸。ゴジラはすぐ近くにいるみどり達を潰さないように、静かに唸って勝利の味をかみしめ、顔をみどり達に向けた

 

ゴジラの視線を受け、かつてインファント島近海で先代のゴジラに殺されかけた拓也は息をのむが、みどりと浅黄は、自分たちを救ってくれた頼もしい尾に手で触れる

湿った冷たい感触の奥に、ほんの少しだけの温もりがある

 

ありがとう、と拓也に連れられてゴジラから離れつつ二人が感謝の声を上げて手を振ると、安心したようにゴジラは頷いて顔を上げた

 

その先に居るのは、全身に傷を負いながらも未だ健在なガメラの姿

 

再びゴジラは大きく咆哮する。思いをガメラに届かせるように

 

そして、今度はガメラもそれに応えるように叫びをあげた

 

二大怪獣の咆哮が木霊する。決戦の時は近かった




書いてて思いましたが藤戸さんが便利キャラすぎる…もうちょっと他の登場人物との配分も考えねば

後勾玉でこっちから訴えかけられるかどうかはオリジナルでございます。どうもあれ使って人とリンクする意味って原作だと描かれてなかった気がしたので、こんな感じとなりました


ちなみにこの時空ではVSモスラで幼虫が護衛艦に体当たりしたのは無かったことにしています……

誤字脱字など発見されましたらどんどんご指摘くださいませ


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第13話

丁度いいところで区切れたので、今回は少し短めに
いよいよ次回、GGVSギャオス決着!……まで行けるといいな




ゴジラ、ガメラは海へ、そして自衛隊の攻撃を逃れた残り2羽のギャオスは富士樹海に姿を消した

数日後自衛隊とGフォースは樹海を中心に、富士山周囲に避難命令を発令。無人となった富士吉田市内に移動司令部を設置し、地上部隊を展開

樹海を包囲しギャオス捜索を行っていた

しかし、敵を一か所に追い詰めつつも最後の詰み手に至るまでが難航を極めている

 

理由は敵、即ちギャオスが潜伏している場所にある

青木ヶ原樹海は南北およそ8km、東西はおよそ6kmに及ぶ広大な原生林で、その中を貫く国道71号線は戦闘車両の展開には狭く、ギャオスが降下したらしき箇所も71号線から最短距離で2km、遊歩道を迂回しながら進めばそれ以上の距離を歩かなければいけない

視界の効きにくい森の中を数kmにわたって歩兵戦力だけで行軍するのは非常に危険であり、日が落ちればギャオスからの襲撃の可能性も発生し危険度は更に高まる

更に、偵察衛星が樹海内を偵察したところ、地上部にギャオスの姿は確認できず、おそらく樹海地下、かつて噴火した溶岩の隙間に構成された洞窟内部に潜伏している可能性が高かった

 

視界が効かず行動が阻害される場所を長距離進み、更に行動が制限され逃げることもままならない洞窟の中に突入するなど自殺行為に等しい

 

かと言ってこのままではさらにギャオスの成長は促進され、巨大、狂暴になるだろう

 

Gフォース側からハイヤード隊とMPM部隊を編成して、航空支援を受けつつ地上から進軍する事が一番安全性が高いと提案され、自衛隊、CCI側も轟天号の出撃準備に入った

最悪の場合、天然記念物に指定されている樹海を上空から制圧爆撃で焼き払ってでも、ギャオスを殲滅するべしという機運が高まる

 

真弓と米盛は会議を複雑そうに見守るしかできなかった

 

 

 

会議終了後の午後である

真弓と米盛は、梓と彼女と一緒にやってきた未希に連れられて、茨城にある筑波生命工学研究所を訪れていた

撃破されたギャオスの遺骸から採取された染色体の解析が完了したのだ

出迎えたのは未希の古くからの知り合いである同研究所の研究主任、桐島一人

 

会議室で一人は、苦々しい表情で解析結果の顕微鏡写真をプロジェクターにセットする

壁に映し出される電子写真に写る染色体は僅か一対。真弓や梓はもちろん、未希や米盛もその写真に疑問を抱く

染色体とは、簡単に言えば生物が進化の過程で経験してきたデータを蓄積した設計図ともいえる有機物質だ

長い時の中で進化と変異を繰り返す生物は、現在の生態において無駄ともいえる染色体を複数持つのが当然であり、一対しかないと言うのはありえない

現在確認されている中でもっとも染色体が少ない生物は、2対だけのトビキバハアリ

最大がシダ類の630対。人間ですら23対存在する

しかも、一人が言うにはたった一対の染色体に様々な生物の作用部分が混ざり込んでおり、サンプルとなった4羽のうち2羽の染色体がXX、1羽がXY、最後の1羽に至っては部位ごとにXXとXYが混在していたという

 

一人は言う、こんな遺伝子を持った生物が自然界に自然に存在するなどありえない

間違いなく、人為的に生み出された生物、しかも戦闘と殺戮に特化した生物兵器である、と

単位生殖で爆発的に繁殖し、地球上のあらゆる場所に適応、進化し、そこに居るあらゆる生物を食い尽くす

ガメラの碑文にあった通り、ギャオスこそ災いの影だ

絶句する全員の前で、一人は小さくつぶやいた

 

どうやら、人間は既に自分達の過ちに一回滅ぼされた後らしい

 

 

 

夕方、一行は一人と別れ、つくばの生命科学センターを訪れていた

先日ガメラと精神を同調させ、疲労から意識を失った浅黄とみどりがここのメディカルセンターに入院している

元々は地元の病院に搬送されたが、精神的な疲労が原因で、自分以外の他者と精神同調を行った後なら本格的な検査が必要だろうから、と未希と一人の妻でセンター長を務めている桐島明日香博士の提案で受け入れられていたのだ

一行を出迎えたのは飛鳥、草薙、雅子、両ほほに絆創膏を付けた拓也だ。今回の一件で娘を危険にさらしたため、草薙と雅子に一発ずつ顔を殴られたのである

 

病室でベッドに横たわり、安らかに呼吸している浅黄とみどり。物理的な傷はほとんど癒えているが、今も数時間眠っては十数分だけ目が覚め、またすぐ眠りにつくのを繰り返している

怪獣と言う巨大な生物と精神を同調させると言うのは、人間にとってはそれだけ難しく危険な行為だと言う事だ

かつては才能に溢れた未希すら、ゴジラを足止めするために精神力を使い果たし数日間意識が戻らなかったこともある

 

2人のカウンセリングは未希自身が行っており、精神面での後遺症もほとんど見られず、次に目を覚ませば後は簡単な検査だけで退院できるだろうと判断されている

その報告に、不安な情報ばかりが押し寄せていた一同は胸をなでおろした

 

 

 

しばらくして、浅黄の元に残った草薙以外の一行は入院棟の屋上で休憩をはさんでいた

そこで真弓が言う。なぜガメラが生み出されたのか。ギャオスはアトランティスで最初生物兵器として生み出され、戦争に投入されたのではないか

実際、インファント島の遺跡の発掘・研究結果からおおよそ1万2千年前、まだコスモスの文明が崩壊するよりも前に、当時の古代文明全てを巻き込んだ大戦争があった可能性が示唆されている。と未希と拓也が情報を補強する

だが、アトランティス人はギャオスの制御に失敗、暴走し増えすぎたギャオスはアトランティス自身にも牙を剥き、そしてアトランティス文明、或はその中の良識的な人々が、はギャオスを殲滅するためにガメラを新たに生み出した、しかし間に合わなかった

それでも、後の世に再びギャオスが現れた時、その時代に生きる人々の為にガメラを託し、歴史から消えていった

 

厄介な問題を残してくれた。とぼやく米盛に、私達だって人の事を言えない、と長峰がいい、梓とみどりが同意する

 

過剰な環境破壊による生態系の崩壊、核廃棄物の問題、そして、怪獣

繁栄に身を任せ、取り返しのつかない事態になっているのかもしれない

だが、それでも生きたいと思うのが人間だし、それが当然である、とも拓也と米盛は言う

 

今人間は、自らの過ちを償いながらも必死に生き残ろうとする道を探す、最後のチャンスの中にいるのだろう

怪獣、異星人、自らと違う存在との共存の模索

核に頼らないエネルギー資源の獲得

 

難しく、そして成功するかどうかもわからない。だがそれでも挑まなくてはいけない、人と人とが争い合っても生きていける時代は、おそらくもう終わってしまっているのだから

 

未希の言う言葉にうなずき、この問題を解決すると改めて決意する一同

だが、そんな決意をあざ笑うかのように、G対策センターの敷地一体に警報が鳴り響き、職員たちの動きがにわかにあわただしくなる

と、そこにGフォースの制服姿の功二が慌てて駆け込み、告げる

 

二羽のギャオスが江の島海岸に出現した

 

 




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第14話

あけましておめでとうございます。そしてお久しぶりです
いよいよガメラ1編最終話となった14話をお送りします。また細かく区切ってもアレなので一気に最後まで書き上げました
原作とかなり変わっておりますがご容赦くださいませ


江の島海岸にギャオス現る。ありえない報告にGフォース、特殊戦略作戦室共に混乱していた

 

樹海がある富士山周辺から江の島海岸までは直線距離で77kmも離れている

距離もそうだが、何よりギャオスに地下の岩盤を掘削する能力があるとも思えない

だが実際に二羽の巨鳥は夕闇迫る江の島海岸に存在し、江ノ島水族館に顔を突っ込んで中で飼育されている水棲動物たちを貪り食っている

 

後に判明したことだが、ギャオス2羽は地下を掘り進んで江の島まで移動したわけではなかった

古くから、富士山北西麓の地下にある火山噴火の溶岩で出来た洞窟は江の島まで続いていると言う言い伝えがあり、それが真実であった

一際巨大なガスの噴出痕が長く長く続き、藤沢の地下まで広がり、そこを通じてギャオスは人類側の防衛網を突破したのだ

 

 

幸運にもギャオスの飛行能力を考慮し、関東一円に避難命令が発令されていたため水族館に客の姿はなく、周辺の住民も既に避難を完了させている

 

だが、自衛隊とGフォースは完全に出鼻をくじかれる形となった。富士周辺に展開している陸上部隊は移動に時間がかかりすぎ、その上空中待機中であった航空機部隊も丁度定時交代の時刻であった

幸運にも厚木基地にて待機中であった轟天号の艦載XF-1部隊が発進可能状態で待機していたため、即座に全機がスクランブル発進

同じく厚木基地所属の米軍空母艦載機部隊もその後を追って随時出撃していった

江の島に近い米軍横須賀基地所属のミサイル巡洋艦にGフォースを経由しての支援指示が届けられ、衛星によって捕捉されたギャオスへの攻撃が開始された

 

江ノ島水族館の魚や動物たちをすべて食べつくしたギャオス二羽は、久方ぶりの食事に満足したような声を上げ、破壊した水族館の跡地に座り込んでいる

その姿を探査衛星から解析していたGフォース基地では、ギャオスの体内にギャオス本体とは別の熱源があることを発見する

複数の小規模な熱源がギャオスの下腹部に集まっているのだ

 

……妊娠している

司令部の人員は総毛だった。同時に米海軍が発射したミサイルがギャオスに迫る

着弾数十秒前になったところで、二羽のギャオスは首をしきりに回転させて何かを調べ探るような仕草をした後、一気に水族館跡地から飛翔した

寸前になって発射されたミサイル群が水族館に着弾する

 

直撃を受けて水族館に爆炎が立ち上がる。と、爆風の中から紫色の粘液に紛れて白い何かが飛び出してきた

卵の破片だ。矢張りギャオスは既に妊娠し出産を行おうとしていたのだ

 

寸ででミサイルを回避したギャオスたちは卵を破壊された怒りの鳴き声を上げ、凄まじい速度で北上を開始する

そこに第二派の艦対空ミサイルが飛来するが、それを全てギャオスは回避した

翼を自在に変形させ、翼長100mはあろうかと言う巨体が空中で躍動する

鮮やかな回避運動、反転するミサイルに対して発射されるヴァイブレート・レイ

ミサイルは次々と超音波の刃に破壊され、空中が爆発の光で照らされ、煙を突っ切ってギャオスは進む

だが海の果てには未だ落日に至っていない太陽があり、本来ならばまだギャオスは行動が緩慢なはずだ

何故日の光が強いこの時間帯であんなにも素早く動くことが出来るのか?

 

困惑するGフォース司令部に、つくばから現地に向かって移動中のGフォースヘリより通信が入る

連絡を入れたのは真弓だ。彼女と米盛、草薙親子に藤戸親子がヘリに乗り込んでいた

意識を取り戻した浅黄とみどりがガメラの接近を感知し、それを知らせるべく現地に向かっていた

その機中で、Gフォース司令部に送られてくる映像データを未希が持つデバイスを経由して転送し分析していたのだ

真弓はギャオスの顔に着目していた。目の部分に赤黒く光を反射する、遮光板の様な器官が見て取れる

既にギャオスは太陽への対抗が完了していたのだ。もはや太陽すら人間の力にはなれない

それだけでなく、その部位がフィルターの様な役目を果たし、ミサイルが放っている誘導用の電波を目視しているのだという

ハチドリが紫外線を目で見ることが可能な様に

そしてそれに加えて鋭敏な聴覚があり、接近する発射音でミサイルの兆候をつかんでいたのだ

 

真弓の解説に司令部の一堂は愕然となる。もはや一刻の猶予もない、このギャオス二羽を速やかに殲滅しなければ日本が、否、世界が滅んでしまう

 

 

小林、月岡率いるXF-1隊がギャオスを補足した頃、ギャオスは既に川崎市の上空にまで到達していた

扇島にある自動制御された工業企業の製鉄施設が無人のまま稼働しており、その光に誘導されたギャオスは地上の工場施設に向かって無差別にヴァイブレート・レイを照射。直撃した工場群が炎に包まれる

 

XF-1部隊が攻撃を開始した。増槽をパージしミサイルを発射。運動性でXF-1に劣る米軍航空機隊は上空に残って援護に徹し、XF-1とF-16改の即席編隊が速度を上げて突撃する

 

ミサイルを感知したギャオスは体を高速でローリングさせて全てを回避し、逆に戦闘機部隊に突撃。すれ違いざまにヴァイブレート・レイと翼から生み出す衝撃波で複数のF-16を撃墜する

重力制御装置のお陰で強引な空中機動が可能なXF-1部隊は辛うじて撃墜を免れるが、自機よりも優れた空中飛翔能力を持つギャオス相手のドッグファイトは厳しく、辛うじて発射位置に付けてもビーム、ミサイル共に悉く回避されてしまう

 

意識がレッドアウトするギリギリでのマニューバー戦が繰り広げられる中、ついに小林機の真後ろをギャオスが取る。口が開かれ、その奥に黄色い輝きが見えたその瞬間

ギャオスの真上から炎の塊が飛来した!

 

小林機とギャオスの合間を縫うように落下してきた火球によってギャオスはスピードを落とさざるを得ず、小林機は上空に向かって退避する

 

そしてそれとすれ違うかのように、雲の合間から爆光を伴ってガメラが現れる!

 

傷を癒し、浅黄、みどりとの交流を経て人の心の強さを得たガメラは勇猛果敢にギャオスに向かって頭部から突撃を仕掛ける!

回避できなかったギャオスは体当たりを受けて吹き飛ばされ、態勢を整えるとガメラが連射するプラズマブリットを回避しながら速度を上げ、ここに怪獣同士の空中戦が開始された

 

一方、それを目撃したもう一羽のギャオスは相方を援護しようとするが、それを阻止せんと眼前を光の帯が貫く!

 

振り返れば、浮島に上陸したゴジラの姿があった

3度に渡って逃げおおせたギャオスにゴジラの怒りが向かう

 

なぜゴジラがここまでギャオスに怒りを向けるのか

それは、ゴジラの一族が持つ固有能力に端を発する

ゴジラとその同族は、身振りと鳴き声だけではなく、脳波同士をテレパシーの様に伝達することでコミュニケーションを取っている。その強さは地球の反対側にいても互いに伝え合うことが可能なほどで、ゴジラはアドノア島にいながら、常に頭の片隅で母たる梓の心の声を聞こうとしていた

そこに、姫神島の上空でギャオスに襲われた時の、梓の恐怖心が強烈な精神波となって飛び込んで来る

愛しい母に向かって悍ましい口を広げ襲い掛かる醜悪な悪魔。ゴジラがこれを許せるはずもない

そしていざ日本で戦ってみれば、ギャオスは他の多くの人の心に恐怖を植え付け、凄まじい恐怖の感情がゴジラに雪崩れ込む

人類を半ば同族として認識していたゴジラは、ギャオスを自分『達』の絶対な敵と判断したのだ

 

眼前の相手に怒りを抱いているのはギャオスも同じ、幾度も自分たちを邪魔した忌々しい存在に対し、成長しきったギャオスもこれまでと同じではないとばかりに、今度は逃げずに躍りかかる

 

ゴジラの目の前にヴァイブレート・レイを放って建物を爆破し、一瞬の衝撃と煙でゴジラのスピードが落ちたところに、両足を高く掲げ、猛禽類の狩りのようにギャオスが襲い掛かる

鋭い爪がゴジラの顔面を削り、スパークが散る

見ればギャオスの足の爪が黄色い光を帯びている。ヴァイブレート・レイの応用で、喉の骨で発生させた超音波を骨伝導で足の爪にまで伝搬させ爪の殺傷力を高めたシェイバーネイルだ

超振動する爪でゴジラの顔を集中的に狙い、頭部に向かってもヴァイブレート・レイを撃ち込むギャオス

苦悶の声をゴジラは上げ、腕と尾を振り回して顔から引き離そうとするが、素早いギャオスはその攻撃を回避して常に頭部やや上を陣取って、熱線を封じたままゴジラへの攻撃を繰り返す

 

とうとう奴もゴジラ並みか

麻生司令の呟きが司令部に溶けていく

 

一方、ガメラとギャオスの空中戦も熾烈を極めていた。速度に優れるガメラと運動性に優れるギャオスは相変わらずで、速度で追い詰めたガメラを急激な機動でギャオスは引き離し、プラズマブリットを掻い潜ってはヴァイブレート・レイを撃ち込み、ガメラはそれを甲羅で受け止めるを繰り返す

 

 

一進一退の攻防が続く中、ガメラは急に機首、頭部を真上に向け急上昇する

尻目を挑発するようにギャオスに向けると、成長によってガメラと互角にまで強大となったギャオスはそれに乗り、翼を折りたたんで全身を細くし、凄まじい速力を発揮してガメラに追従する

ガメラ、ギャオス共に速度はマッハ3を突破、XF-1部隊の追従も不可能な速度で垂直に上昇し、ついには大気圏を突破する

ガメラの上空を取り、ギャオスは嗤う。それは高い知能を持ったがゆえに同じく得てしまった油断と慢心

それを同じく高い知能を持つガメラは利用した

足のジェットの推力を敢えて弱め、ギャオスに自分をオーバーシュートさせたのだ

そのまま足に噛みつき、今度は大気圏に向かって自分から突入する

断熱圧縮によって赤熱化する二大怪獣。ゴジラ並みの体躯を手に入れたとはいえ、ガメラやゴジラ程の熱耐性を持ち合わせていないギャオスは全身を焼き尽くす熱に絶叫する

 

熱圏を突破し落下するガメラ、地上でギャオスを狙うゴジラを、多摩川を挟んだ羽田空港の上空、Gフォースヘリの中から米森と浅黄たちが見守っている

ガメラの感覚を追って、ヘリの天井越しに空を見上げる浅黄とみどりの頬にうっすらと紅い線が伸びる。足に食らいつくガメラを引きはがそうとギャオスが放ったヴァイブレート・レイのダメージがフィードバックしているのだ

幸運だったのは、交信器具である勾玉を二人同時に触ったことで浅黄とみどりの二人が同時に交信者になった事でダメージのフィードバックが二人に半分ずつに分かれている事だろう

 

熱に耐えかねたギャオスは、がむしゃらにヴァイブレート・レイを連射してガメラを引きはがそうとする

 

浅黄たちの全身に、ガメラからのダメージが痛みとなって襲い掛かる。苦しむ娘を案じて、強く手を握りしめる、草薙と拓也たち

ゴジラも、一瞬の隙を突かれ首筋にギャオスが噛みつき、苦悶の唸り声をあげている

 

このままでは…その時、未希が浅黄とみどりに向かって叫ぶ

ガメラに、ゴジラの方に向かってギャオスを投げつけ、ゴジラと同時に攻撃するように伝えて欲しいと

 

勾玉を強く握りしめる浅黄とみどり、一方未希も胸にぶら下げるモスラの紋章を模したネックレスを握り、ジュニアに向かって思念を送る

ギャオスをガメラに向かって投げて欲しいと。かつてより自分の超能力の力は落ちている。怪獣達の思念を読み取ることはできるが、自分から伝えることはできなくなりつつあった

でも、もしここで伝えることが出来るなら…!

 

ガメラと、ゴジラ。二大怪獣の瞳に意思の炎が宿り、互いを無音のままに見つめ合う

種族も違う

姿も違う

だが今だけは、同じ未来の為に二体の怪獣は戦うことを決めた。この悪魔を打ち倒すという未来の為に

 

ギャオスを黙らせるためにガメラは空中でスピン、空中回転攻撃シェルカッターでギャオスをヴァイブレート・レイが撃てない状態に追い込み、その超回転の勢いのままゴジラに向けてギャオスを投げつける

 

一方のゴジラも、熱線のエネルギーをチャージしながら頭にかじりつくギャオスを離れないならばと言わんばかりに両腕で抑え込み、全身を回転させてギャオスへと投げつけ、同時に熱線を発射!

 

ゴジラの放った熱線はギャオスを押し上げ、ガメラから投げつけられたギャオスに向かって吹き飛ばしていく

一方ガメラも体内のプラズマエネルギー精製炉を限界まで稼働させ、従来発射している数倍の大きさまで巨大化させたプラズマ火球『ハイ・プラズマブリット』を発射する!

 

ゴジラが放った熱と圧力、電子が肉体を燃やし、潰し、貫通する感覚の中、ギャオスは目の前に同胞が、自分と同じように宿敵の熱攻撃に押し込まれながら自分に向かって来ている光景を見る

それはギャオスが見た最後の景色、断末魔を上げる暇すらなく、二羽のギャオスは空中で熱線と火球の挟み撃ちになり大爆発を起こした

 

川崎駅一体のエリア上空にまで広がる、プラズマの衝突で発生したバースト

オーロラの様な幻想的な空模様を見て、浅黄とみどりは脱力する。小さな体躯で怪獣に立ち向かった少女たち、草薙も、拓也も雅子も、そんな娘の姿に誇らしさと痛ましさを同時に感じ涙ぐむ

 

工場街の廃墟に着陸するガメラ、向かい合うゴジラ。二体は同時に咆哮する。共鳴する咆哮がどこまでもどこまでも響き渡り、ガメラは浅黄とみどりを一瞥すると、そのまま空へと消えていった

米盛には、一瞬だけだがガメラの表情が柔らくなったように見えた

ゴジラも未希のいる方向へ、自らの行いを誇る様に鳴くと海に向かい、日本を去っていく

 

ガメラの声が聞こえなくなった。悲しむ浅黄とみどりの頭を未希が撫でる。きっとこっちからの声は伝わっているから大丈夫。またいつか会える、と

 

戦いは終わった。だが、これはある意味で始まりだ。大西洋を起源とする文明が生み出したギャオスが日本にいたと言うことは、地球規模での渡りを行った可能性がある、と拓也と米盛、真弓は言う

今もこの世界のどこかで新たなギャオスが産声を上げる瞬間を待ちわびているかもしれない。その可能性は非常に高い、否、むしろ時間の問題だろう

その時こそ、再びガメラは現れるだろう。災いを消し去る希望として、そしてゴジラも

 

人類は歩みを進めなくてはならない。ギャオスの復活を抑制し、地球生命ともっと寄り添いあって生きる世界を創るために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼等の再会の時は、ここにいる全員が思うよりも余程早く、最悪な時になる等とは、誰もが想像だにしていなかった




誤字脱字などございましたらどんどんご指摘ください。


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第15話

長らくお待たせいたしました…方向性などで悩んでいましたが何とか形になってきています
第15話をお送りいたします


ギャオスとの戦いが終わってから数か月、秋も深まってきた晩秋の頃

昨今俄かに、トレジャーハンター業界が活気づいている

それまでオカルトや似非歴史扱いされていた超古代文明の信ぴょう性が、インファント島の現存する遺跡群の研究や、ガメラギャオスと言った当時の残滓と言える怪獣の存在で確定的となり

改めて伝承や口伝に登場する現人類史以前に存在していたかもしれない、古代の遺物の価値が好事家の間で高騰したのである

それに欲をかいたトレジャーハンターの活動が活発化、発掘作業を行う国に無許可での発掘、サルベージを行う悪質なトレジャーハンターの数が増加

そう言った悪質な連中は平然と遺物の捏造を行うこともあり、好事家も良識を持たない人間は贋作と理解した上でステイタスになれば何でもいい、と言う悪循環となり、ある種の社会問題となってしまっていた

これを重く見た国連科学委員会U.N.S.C.とユネスコは、世界各国と合同で規制を強化する方針を取る

 

同じ頃、ルポライター寺沢健一郎は南太平洋のキリバス共和国に居た

同国最東端のライン諸島の南端に小さいティアボー島は存在する

1941年、米軍と日本軍が激突する後のガルヴァニック作戦の事前準備に、このティアボー島をキリバス諸島群へ部隊を展開するための橋頭保として連合軍が確保、多数の米兵が島に進出し当時の様子を日記や報告の形で残していた

この時に記された米兵の日記を偶々入手したところ、現地の島民との交流を記した文面の中で、虹を背負う悪魔と言う伝承を島民が語った事に健一郎は気づく

 

不吉な枕詞が付属した虹と言うキーワードに健一郎は聞き覚えがある

それはかつて藤戸拓也が解読した、ガメラの甲羅に載っていた石碑のフレーズだ。あちらでは死の虹、こちらでは虹を背負う悪魔。何かしらのつながりがあると健一郎の感が告げており、それに従うことに彼は決めるのだった

 

 

健一郎がティアボー島に滞在して今日で二週間程になる。人口わずか500有余名、観光資源も皆無なキリバスの辺境の島を訪れた日本人を島民は皆珍しがっていたが、陽気で外界からの渡来者にも快く接する島民と健一郎が意気投合するのに時間は掛からなかった

現在彼は村で唯一のスーパー兼民宿を拠点とし、島のあちこちを探索したり、村の人々を相手に島に伝わる口伝やしきたりについての情報を集めている

彼の世話をしているのは、村長の娘アーヤとカレンの2名。閉鎖的な村の環境を憂慮し、外の世界で新たな知識を得て欲しいと考えていた村長と当人二人にとっては、外の世界の知識を得るのにちょうどいい機会であった

 

人当たりの良い村民は、健一郎の質問の殆どには快く答えてくれた。島の成り立ちや伝承について、戦時中米兵と殴り合いになった、その時島民と結婚した子孫が自分だという自慢話等

だが死の虹、虹を背負う悪魔の話題になると住民たちは皆口をつぐんだ。正確には、一定以上の年齢の村民は話をはぐらかしたり話を逸らす一方、それよりも若い世代の村民は純粋に意味を理解していないように健一郎は感じた

島の情報が記載されているキリバス政府の公的資料などを読み解けば、島内のほとんどを占める森林地帯の奥深くに何時頃に建築されたのか不明だが小さな遺跡が残っていることは分かる

だが元々国家予算が多くない国と言うこともあり、学術的な調査はされていなかったようだ

この遺跡が怪しいが、自分だけで到達することは難しいと健一郎は理解もしていた

 

そんなある日、ティアボー島の沖合に、クレーンやガントリーを甲板上に多数設置した見慣れない船が現れ、そこから何人かの人物が島に上陸。村長に対し島の発掘調査を行うと宣言した

現れた集団のリーダーの名はマクロム・ジェロムと名乗り、その名に健一郎は心当たりがあった

フランスの新鋭IT企業の創始者で、数年前にTIMES紙のパーソン・オブ・ジ・イヤーを飾ったこともある

企業経営者とは別に、趣味としてトレジャーハンティングを行い海底から沈没船を引き上げ財宝を手に入れたことがニュースになった事もあるが、同時にユネスコが制定した沈没遺産を保護する条約を破ることも平然と行っており、評判のいい人間とはお世辞にも言えない

彼は悪びれることもなく島の森林の奥にある遺跡部分の発掘を行うと宣言、人員を村民からも募集するが、その高圧的な態度から参加する村民は出てこず、自分の許可もなく勝手な事をするなと怒る村長にもキリバス共和国政府からの許可状を見せて黙らせる

横柄な態度に怒りを感じた健一郎の記事にするという挑発にも動じなかった

 

翌日からマクロム一派は島の中央で発掘作業を開始、平然と爆発物や銃器を持ち込んで森林を切り開き、森の中央部にある古代遺跡への道を作り上げると、遺跡を解体しながら内部を掘り進んでいる様だ

いきなり自分達が住む島で好き放題し始めた外部の人間に怒った村民は抗議の声を上げるが、恫喝に近い警告を受けては引き下がるしかできなかった

 

やがてマクロム一派は発掘と伐採作業を終了し、撤収の準備を始めた。切り開かれた森をそのままに揚々と引き上げるマクロム達

健一郎はマクロム自身が運転するトラックの上に載っている物を見て驚愕する

太陽の光を浴びて紅、蒼、橙と極彩色に輝く人一人分はあろうかという大きさの宝石。おそらくはオパールだろう巨大な宝石だった

それを見た瞬間村の大人たちの一部が息をのむ、或は悲鳴を上げると言ったりアクションを取った。そして顔面蒼白となった村長が一団から飛び出しトラックを止めようとするが、それも目に入らないのかマクロム達は船へと引き上げていく

 

後に残され途方に暮れる村長に、健一郎は問いかける。あの宝石はなんなのか、森の奥の遺跡には何があったのか

 

憔悴しきった顔の尊重はただ一言、バルゴンが解き放たれた。とだけ呟くのだった

 

 

バルゴン。それはこの島の村民に伝わる虹を背負う悪魔の名。遙か太古より数千年に一度目覚め、島の様な大きな体で暴れまわり、背負った虹でこの世全てを死と冬で埋め尽くす、始まりは鮮やかに輝く石である。それは宝ではない、悪魔の始まりである

そう健一郎が渡された古文書には残されていた

代々の村民はその伝承の通り遺跡や島そのものに誰も近づかせないようにしていたが、大戦中の連合国兵士との邂逅と人類文明電体のグローバル化の波によって島の若い世代には外の世界に興味を持ち、島民たちの中には伝承は所詮迷信であるという考えも広まりつつあった

ならば狭い島で一生を終えるよりは、とある年を境に言い伝えの継承を辞めていたのである。それゆえ、伝承そのものの知名度が一定の世代で完全に二つに分かれていたのだ

 

だが、伝承は真実だった。その通りの巨大なオパールを見た村長は確信したという。最も、時すでに遅きに失していたのだが

あれが外の世界に解き放たれるのを防がねばならない。バルゴンの正体は島の人間もわからない、だが伝承がその通りであれば、あの宝石はまさに怪獣の卵だ。覚醒する前にマクロム達を止めなければ

 

健一郎は国連G対策センターから、現地調査中の緊急事態に備え、Gフォース基地に直通で世界中から連絡を送れる専用の衛星携帯電話を持たされている

それで島で起こった出来事とバルゴンの伝承についてを麻生司令官たちに伝えると、自分もマクロムを追うこととした

村長の提案で、バルゴンを殺す時に必要だと代々村の長の家に受け継がれている、これまた巨大なダイヤモンドを持ち、アーヤとカレンの姉妹も健一郎に同行。G対策センターの緊急措置により、パスポートを持たない彼女ら二人も国外での行動が許可された

 

日本まで行くのは時間がかかる。空路でティアボー島を立った健一郎たちは、首都タワラから飛行機に乗ってグアムを経由し日本への帰国ルートを取った

幸運だったのは、国連がアメリカ経由でグアム政府に便宜を図り、グアムにある米軍アンダーセン空軍基地から特別機を飛ばしてくれる手筈が整ったことだ

タワラからグアムまで日数がかかっており、先に島を出発したマクロム達からは大分遅れている

だが、国連の調査でキリバスはマクロムに発掘の許可など出していない事、あの時提示した許可証は偽造されたものの可能性が高い事から、今度どこかの港に寄港すればそれを理由に彼らを一時拘束することも可能だと健一郎は踏んでいた

しかし、既に事態は健一郎の想像を超えた方向に進んでいた

 

アンダーセン基地で健一郎が受け取ったG対策センターからの電話

それによると、マクロム達の船はフィリピンにある拠点に戻る途中、カロリン諸島、ディナイー島付近でメーデーを発した直後に通信が途絶

ミクロネシア連邦海軍の救助機がスクランブルし駆けつけた時には、既に海面に船の残骸がバラバラになって散乱し、謎の液体で海の水面が紫色に変色していたという

 

バルゴンの卵の行方は、わからなくなってしまった




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第16話

お待たせしました、バルゴン編の新しい話をお送りします
そして今回はちょっと意外なゲスト怪獣の姿も…?


南海での異変と同時期、日本の九州でも異変が起き始めていた

 

九州鹿児島の桜島火山、昭和火口の麓の一部が噴火の衝撃と噴火地震の影響で崩落、露になった溶岩空洞の中に、巨大な卵が確認された

従来生物のそれとはかけ離れた巨大な卵の存在から、自治体は国連G対策センターと特生自衛隊に通報

国立生命科学研究所の大前博士が派遣されると、そこには既に長崎大学から派遣された長峰真弓の姿があった。発見の報を聞いた彼女自身が、ギャオスの卵の可能性があると自ら立候補したのである

 

卵の大きさは高さ35m、横60mととてつもなく巨大で、クレーター上に整地された岩盤の上に、既に日本では絶滅したとされる巨木を破壊して作り上げた巣材が敷き詰められている

更に卵自体の下面を見ると、接地面を中心にシダ状の植物が卵の表面に付着していた

 

大前博士はそれに見覚えがあった。かつてアドノア島にて発見された現在のゴジラの幼体。ベビーゴジラの卵に付着していた古代植物シプニオキスに酷似している

と言うことは、この卵の中に眠っているのは……

 

次の瞬間、卵の表面に亀裂が走り、中から高温の蒸気が噴き出してくる

顔を庇いながらたたらを踏む大前博士と真弓、急激な温度差から広がった霧が晴れると、卵の上部が完全に割れ、中に居たモノの姿が露出していた

 

 

長いくちばし、後頭部に生えた三本の角。視界全てを覆う程巨大な翼

 

 

かつて幕張でベビーゴジラを巡り、ゴジラ、メカゴジラと三つ巴の熾烈な戦いを繰り広げた翼竜の末裔、ラドンだった

 

だが、その体表はかつてのラドンの茶褐色、或いは赤みがかった紫とは違い、全身が太陽光を反射するほどの純白に包まれ、翼の皮膜に至っては青みがかった銀色に輝いている

 

眠気を振り払うようにふるふると頭を振り、大きく欠伸をする姿は愛らしさを感じさせるが

見たところ幼体と言う程かつてのラドンとの外見的差異はなく、体格も一回りほど小さい程度だ

卵の中で超過成長したのだろうか

音を出さないようにじりじりとラドンから身を遠ざける二人だが、運悪く真弓が小石を踏んでしまい、転がっていく音に反応したラドンが二人に目を向ける

 

ラドンと二人の目が合う。得物として認識されたか、それとも矮小な人間なぞ意にもつかないか

 

ずい、とラドンが卵の殻から身を乗り出し、口を開いて顔を二人に近づけていく

紫色に染まったラドンの口内は、ギャオスに食べられかけた過去を持つ真弓からすれば血の気が引く光景だ

ラドンの熱を持った吐息が二人の体を撫でる、この距離ではもはや逃げることもできないが、何故かラドンは口を開けたまま、二人から一定の距離で静止してしまった

甲高い声だけをひたすら鳴らし続けるラドンに、立ち上がりながらも二人は困惑していたが、鳥類学者である真弓はこの行動に覚えがあった

孵化して間もない鳥の雛は親が運んできた餌を食べるが、その時大きく嘴を開いて親鳥にアピールする

親から見れば、雛鳥の大きく開かれた嘴の縁の色と口内の色が目印になるからだ

 

つまりこれは、大前と真弓、あるいは真弓を親と刷り込まれたラドンが、彼らに餌を強請っている……?

 

ベビーゴジラの様な小型体は兎も角、大型怪獣が人を親と認識するなどと言う前例は聞いたことが無い、何をどうすればいいかと困惑してしまう二人だったが、その場に現れた乱入者の金切り声に、事態は動き出す

 

真弓たちのやや後方、石壁が崩れたかと思うと、まるで空気を出し入れして音を出す幼児玩具の人形を思わせる音を放ちながら、ソレは現れた

 

緑の複眼、茶褐色の棘張った本体に3対6本の脚、巨大なハサミを持った両腕

 

人の数倍はあろうかという巨大な昆虫が、砕かれた壁の内側から這い出してきたのである

 

驚愕し足をすくませる二人、見ればその後ろからも同じような巨大昆虫――メガヌロンは姿を増やしていた

前にはラドン、後ろにはメガヌロン。絶体絶命の状態に陥ってしまった二人

そこに向かって、得物を見つけたと言わんばかりにメガヌロンが集まり――

 

 

 

 

数匹まとめてラドンが嘴で啄んでしまった

 

 

 

 

柄杓で水を汲む様に地面ごとメガヌロンを纏めて掬い上げ、頑丈な嘴と奥に生えそろった歯でバリバリと、本来ならば機関銃すらはじき返すメガヌロンの外骨格を噛み砕いていく

一塊を飲み込み、それが終わるともう一塊、と十匹はいただろうメガヌロン達は、逃げる間もなく全てラドンの餌となった

 

御馳走様と言わんばかりに真弓に向かって小さくラドンは吠え、満足したかのように巣に体を縮ませて眠りにつく

 

事態に追いつけない二人は、大きな音と声に気付いて駆けつけた自衛隊員と合流し、なんとかその場を後にするのだった

 

 

それから数日、ラドンを朝に夜にと観察を続けた真弓たちは一つの結論に至る

矢張りあのラドン――白い体色からホワイトと名付けられた――は、真弓を刷り込みによって親と認識している

 

大前博士が姿を見せてもある程度の反応は返すが、それと真弓が顔を出したときの反応はケタ違いだ

現在ラドンの巣の周囲は、ラドン自身の危険性もあるが、定期的に周囲の岩穴からメガヌロンが出現することもあって非常に危険であり、非常線が張られている

それほど遠くから一目で真弓を見分けるあたり、怪獣の視力とはすさまじいもののようだ

現在は生まれたばかりということもあり、ラドンは飛翔する能力を持つまでには至っておらず、真弓が定期的に顔を見せる事、周囲から無尽蔵にメガヌロンが湧いてくるために餌にも困っていないことから、状況は一時的ではあるが安定している

 

 

だが、ラドンをずっとこのままと言うわけには当然行かない

いずれメガヌロンも数が尽き、肉体が成長すれば餌を求めて移動をし始めるだろう

ここ桜島は鹿児島湾のほぼ中心に存在し、多数の市民が生活していることもあるが、鹿児島県内の主要都市である鹿児島市、姶良市、垂水市や霧島市は目と鼻の先にある

被害を出さないためにも、ラドンの今後を速やかに検討する必要がある

 

言ってしまえば、選択肢は二つしかない

ラドンを危険が及ばない場所まで移送するか

その場で殲滅するか、だ

 

現在桜島を包囲するように鹿児島湾に面した各市に地上部隊が展開しており、黒木の命令一つで即時攻撃が可能になっている

迅速な対応と言う意味では、このまま飽和攻撃を行うことが望ましいが、それで終わって本当にいいのか?と言う疑問をG対策センターのスタッフも持っており

何より真弓自身がその方針に大反対を示していた

 

では桜島から安全地帯までの移送が可能か?と問われれば、その会議に参加していた大前博士と青木梓、新城未希は可能性として一つのプランを提示する

 

それは、今回のホワイトラドンの卵、そしてかつてのベビーゴジラの卵に付着していた古代シダ、シプニオキスを用いるもの

 

このシプニオキスと言う植物は、古くより古生代全域の地層で化石が発見されていた古代の植物で、人が認識できないメロディ状の脳波に似た波長『メロディ・ウェーブ』を放っている

生命科学研究所のサイキッカー達が発見したこれを再現し、メロディ化した音楽、通称サイキック・メロディは、それを聞いたベビーゴジラの野性的な本能を活発化させ、結果ベビーは一時的に興奮状態に陥り、更にベビーの脳波越しにこれを知覚したアドノア島のラドンも生命力が活性化し、ウラニウム熱線の発射能力を得て復活した

 

当初はその作用から、シプニオキスは幼体の生命力と本能を活性化させ、孵化と同時にいち早く自立行動させるための育児補助を目的に、ゴジラザウルスやラドンの祖先であるプテラノドンが巣に敷き詰めていたと考えられていた

 

だが、昨今の研究の中でシプニオキスが放つメロディ・ウェーブは、その周辺の環境、気温、湿度、気圧、地中の水分量などからリズムや音程が変化し、変化したメロディによってゴジラに与える精神的な影響もまた変わってくると言うことが分かってきた

リラックス効果のあるメロディ、不安感を与え警戒心を強めさせるメロディ、不快感を与え闘争意欲を抑えるメロディ、高揚感と幸福感を与えるメロディ等、これをもしゴジラザウルスやプテラノドンが理解していたのなら

彼等はシプニオキスをある種の情緒教育に使っていた可能性はある、ゴジラ族の知能はとても高く、否定はできない

 

既にメロディのパターンは幾つか音源化されており、これによってシプニオキスが繁殖していた子世代生物がベースとなった怪獣の行動に、こちらから干渉出来るのではないかと期待されている

 

無論かつてのTプロジェクトの様な洗脳の類ではなく、与える影響もそこまで大きいわけでもないため、確実性があるとは言えないが

少なくともホワイトラドンは巣と卵にシプオニキスが付着していることから、ある程度の効果は期待できると大前は語る

 

 

具体的な作戦内容は、真弓の姿を見せ、ホワイトラドンがリラックスしている状況を作り出し、そこに上空にスピーカーユニットを装備させたGフォースヘリを接近させ、睡眠導入効果があるメロディパターンのサイキック・メロディを流しラドンの意識レベルを低下、或は完全に睡眠状態にさせ

特生自衛隊がMFSプロジェクトの一環で開発した大型多目的航空機しらさぎを用いて湾外まで航空輸送、現地で大型輸送ドッグに収容し、安全な海域、或はアドノア島まで輸送する

 

茨城県の日立市にある茨城漁港には、Gフォース所有の超大型フロートドッグ船が常時待機している

これはかつて丸友観光がインファント島からモスラの卵を運び出す際に使用したドッグ艦の改良型で、怪獣を輸送することを想定としたこのドッグ船なら安全にアドノア島まで運搬が可能である

 

そしてアドノア島に到着させてからは、当地の主であるゴジラにラドンの身をゆだねるのだ

温厚なゴジラがラドンを受け入れるのであればそれで良く、万が一戦闘になりゴジラがラドンを打ち負かすのであれば、それもまた良し、とGフォースも計画には協力的だった

 

会議自体は非常に混迷していた。幾らまだ人的被害が出ていないとはいえ、怪獣相手にそこまでするべきなのか?と言う自衛隊の高級官僚の意見も間違ってはいない

だが、そこで真弓が再び強く出た

ガメラの碑文の警告に従うのであれば、今度こそ人が自然に歩み寄っていかなくてはいけない

怪獣と言えど自然であり、それを不必要に奪っては何時までも悲劇は繰り返されるままだ

 

 

結局、アドノア島までの輸送には轟天号が帯同し、万が一の際には即座に撃滅戦を行う、と言う保険案が付随し、この作戦の決行が決まるのだった

 

揃いも揃いし防衛官僚を前に啖呵を切った真弓に大前は称賛を送り、真弓も母親としての強さが何となく理解できたようだ

と興奮で赤くなった頬を抑えながら微笑みを返す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の事、日本とフィリピン政府が合同で行っていた、フィリピン海溝の合同海底資源調査団に、不思議なオーダーが下った

彼等が調査しているシアルガオ島の東側にある海溝の低地で、異常な海中の温度低下現象が見受けられたという報が、PAGASA――フィリピン大気地球物理天文局――から齎されたのだ

海底探査用の無人超耐圧ドローンを、海溝沿いに沈降させ、海溝の最深部の探索を目論む一同

そこには驚くべき光景が広がっていた

 

海溝の底8000m、カメラに映る一面の海底平野が凍り付いている

 

ドローンの探照灯を反射し、地面から逆に伸びる氷柱がまるで青白い水晶の様に輝き、それが海底を海溝沿いにずっと続いていた

かめらをむけた海溝壁面を見れば、深海に生きる生物は全て凍り付いて死亡しており、周囲の水温も氷点下6度近くにまで下がっている

異常な光景に一同絶句していると、突如としてドローンのカメラにノイズが走り通信が途絶、操縦が完全に不能となり反応もしなくなった

恐らく超低温の水に機材が耐えられなくなり故障したのだろう

 

最後にカメラが捉えたのは、遙か北、日本に向けて伸びていく果てしない氷の回廊であった

 

何かが日本を目指している、それを知る者はまだ少ない

海の中で再び目覚めた、守護者のみであった




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第17話

ネタがまとまったので今回は早めに投稿できました。今回もお楽しみいただければ嬉しいです!


ラドンについての協議が纏まった直後、Gサミットの面々は健一郎を加え、太平洋で行方不明になったバルゴンの卵についての報告を聞くことになった

 

破壊されたマクロムのサルベージ船の検証報告が上がり、会議に参加した各員のタブレットにデータが表示される

 

船体の8割がバラバラになるほどの破壊の起点は船の中央下部、設計図上では、確保した貴重品のデータを採取するためのラボ区画にあった

高性能コンピュータの他、非破壊検査用のレーザー装置やX線検査マシン等もそこには設置されている

 

その部分から船体上下に強烈な破壊作用が働き、前後真二つに引き裂かれた

そこから炎上爆発したならば自然であるが、どうにもそうではないようなことが分かった

一部の破片は急激な温度低下に晒された結果金属疲労を起こしており、採取したパーツ類を集め、その状態になるようシミュレーションしてみると、どう考えても一度氷点下、それも-100℃近い状態で完全に凍結し、そして温度が上昇して融解したというプロセスを経て爆発炎上し、船体がバラバラになったとしか考えられないという

 

実際200名近い乗員のうち、犠牲者197名、その8割近くが検死の結果凍死したという結論が出ている

 

だがそれもおかしな話だ。赤道にほど近いミクロネシアは通年で気温は高く、水温もどれだけ低くても20℃を下回ることは殆どない

あの海域で凍死が発生するなど異常な何かがない限りありえないのだ

 

そして異常な低温と言えば、数日後に発生したフィリピン海溝の怪奇現象だ

あの後も研究チームは海溝最深部に注目、底部の土や地下部を詳細に調査した所、海底部地表面の土よりも、更に十数m地下の土の方が含まれる氷の分子結合強度が強く、地底ソナーによる検査で、高さ数十m程の空洞が存在していること、海底氷結回廊は南側が北側よりも早く溶けだしている事も判明

即ち超低温熱源は海底地表部ではなくその地下に存在しており、かつ地中を南から北に向かって移動しているという

 

二つの怪事件が一つに結び付きつつある。海底を南から北に向かって移動する冷凍熱源、これはマクロムの船で目覚めたバルゴンなのではないか?

健一郎がティアボー島で得たバルゴンの伝説では、バルゴンは死と冬で世界を埋め尽くすと謡われている

この冬、と言うキーワードとこの冷凍怪事件は関係があるのではないか?

 

少なくとも南太平洋の地下をナニカが移動していることは明白であり、G対策センターは太平洋沿岸の各国に第一種警戒態勢を発令した

 

そして、健一郎と協力者であるアーヤとカレンからバルゴンについての証言を得ようとしたが、それもあまり上手くいかなかった

アーヤとカレンが持ち寄ったバルゴンの情報があまりにも少なかった

元々は口伝で代々伝わってきた伝承であり、ディナイー島を開拓した古代の人々は文字を持っていなかったこともあって情報は非常に少ない

分かっていることは、彼女らが持ち込んだ巨大なダイヤがバルゴンを死に誘うと言うことと、雨と水こそが死を洗い流すというキーワードのみ

G対策センターは至急調査チームを編成してディナイー島に送る予定だが、マクロム達の横暴で遺跡が破壊されている可能性もあり、情報の更新は難しいかもしれなかった

 

二日後、いよいよホワイトラドン移送作戦が開始された

 

桜島上空に、4機の大型航空機が飛来する。1式特殊支援航空機、AC-1しらさぎだ

特生自衛隊が開発した大型航空機で、MG-Tecを使用した従来航空機とは次元が違う積載量を活用した大型機材の運搬や武装を搭載しての戦闘支援などを想定した機体である

今回は機体下部のマルチベイに大型ウィンチギミックを搭載し、4機のしらさぎから発射したこれをGフォースのMPM部隊がホワイトラドン本体に巻き付け、洋上で待機しているドッグ艦まで航空輸送する手はずになっている

 

少し離れた場所には轟天号とスーパーXⅢも待機しており、アドノア島までドッグ艦の護衛を行う予定だ

霧島市内に設置された移動司令本部には大前の姿もあり、状況を固唾をのんで見守っていた

 

 

一方、桜島の非常規制線では真弓がハイヤード隊員に護衛されながらホワイトラドンに向かい、メガホンを使って声をかけている

 

真弓の姿を見たホワイトラドンは高い鳴き声を上げる。これは彼が嬉しい時によくする仕草だ。自分の何十倍も大きい体なのに、全力で甘えようとしてくる姿に真弓の母性本能が擽られる

そして改めて決意する、この作戦は何としても成功させなければならないと

 

一歩だけ下がった真弓は、メガホンからノートパソコンに接続されたスピーカーに持ち帰る

そして彼女が頷くと、ノートパソコンを隊員が操作し、スピーカーからリラックス左様と睡眠導入効果があるサイキック・メロディが流れ始めた

そしてそれに合わせ、桜島周囲を飛行中のヘリのスピーカーからも同様のサイキック・メロディが流れ始める

 

 

真弓自身がギリギリの距離からメロディを流すことを提案したのだ。自分の方から音が流れれば、彼女自身の歌や声とホワイトラドンも認識してより効果が深まるだろうから、と言う理由でだ

 

ゆったりとした、荘厳さとどこか不気味なメロディが火山一体に響き渡る

幸運にもホワイトラドンの巣は背後を洞窟の壁が覆っており、前方から流れ込んで来た音楽を反響させ増幅させるような形状となっていた

最初はどこからか流れる音楽に不思議そうに首をきょろきょろと動かしていたホワイトラドンだが、メロディが何度も繰り返されるうちに、全身の動きが緩慢になり、瞬きの回数が増えていく

人が舟をこぐように首を揺らし、移動司令本部がモニタリングしている意識レベルもゆったりと低くなって行った

 

あと一息、誰もがそう確信した瞬間だった

それまでの低下していたモニターの意識レベルが急激に覚醒状態に引きあがっていく

 

カっと目を見開くホワイトラドン、野生の本能が迫る危機を察知し、一瞬で眠気を吹き飛ばした

 

 

迫る、悪意が迫っている。警戒しなければいけない、守らなければいけない、目の前にいる小さな母を、自分自身が

 

 

 

困惑する真弓の目の前で、翼をいっぱいに広げ、体を立ち上がらせたホワイトラドンが天に向かって吠える

その高音は周囲のヘリのスピーカーを破壊するほどで、慌ててヘリ部隊と、しらさぎ部隊が桜島上空から後退していく

 

作戦は失敗したのか?司令本部とGフォース基地、そして特殊戦略作戦室に緊張が走る

その時、鹿児島上空をモニターする偵察衛星を担当していた士官が叫ぶ

鹿児島湾の水温が急速に低下している!

 

 

 

 

 

異変は移動司令本部にいる大前達、桜島にいる真弓たちにも目に見えていた

 

七色の光、虹が出ている。だがそれは普通の虹ではない、鹿児島湾の水中から、垂直に真上に向かって虹が出ていた

アングルの角度で直線に虹が見えると言うことはよくあるが、完全に水面から垂直に虹が空に向かって伸びていた

そしてその虹が収まると、その虹が伸びていた場所から海が紫色に染まっていく、不気味な紫色の液体が湾一帯に広がっていくと同時に、中心部では荒々しく海が波立っていく

 

広がる紫、激しくなる波飛沫、そしてそれが頂点に達した時、水が天に向かってはじけ飛んだ

 

そして上空へと延びていく水柱は、その動きの途中で水面から昇ってくる極超低温の冷気の洗礼を受け、水柱の形を保ったままに凍り付く

巨大な氷の尖塔が鹿児島の海に出来上がると、そこを中心に海が凍結していく

 

氷の柱が砕け散る。爆発の様な音と同時に、それを見つめる人々は獣の咆哮を聞き取った

 

 

 

濛々と立ち込める水蒸気が晴れると、そこにソレはいた

 

 

 

四つ足、茶褐色の体色

コモドドラゴンの様な正面に長く、大きく裂け、鋭い牙が並んだ口

顔の先端、鼻の上には長い一本角が伸び、額には血の様に紅い、ルビーの様な六角形

体はトゲトカゲの様に至る所に長く凶悪さを感じさせる角が生えそろい

背びれは七列、首から尾にかけて整列しプリズムの如き輝きを放ち

極めつけには尾の先端が、まるで巨大なオパールを思わせる結晶体の塊となっていた

 

 

ぞっとするような殺意を込めた目でぎょろぎょろと周囲を見渡したソレは、天に向かって悍ましい音色の咆哮を放つ

 

 

Gフォース基地で映像を見ていたカレンとアーヤがガタガタと震える。二人の肩に手を置きながら、健一郎はゴクリと唾をのみ、賢明に自分の背筋に走る恐怖を抑え込んでいた

 

死を伴い、虹と共に冬を背負って現れた魔獣

 

そう、あれこそがバルゴンだ




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第18話

今回もバルゴン編の続きでございます
次々回あたりでバルゴンとの戦いにも終止符が打たれる…はず!


金属が軋む様な、耳障りな鳴き声をあげながらバルゴンは鹿児島工業地帯の一角、七ツ島に上陸

額の赤い宝石と角を不気味に輝かせながらドッグや工場を次々と破壊し、県道219号線沿いに北上を開始した

ぐりぐりと左右の両目を別々の方向に向けながら、まるで愉しむかのように破壊の限りを尽くすバルゴン

前足で鉄塔や煙突を粉砕すると、足元で爆発が起こる。だが、その爆発で発生した火は、なんとその形のままに根元から凍っていき、燃焼した化学燃料が固形化したオブジェとなってしまう

 

米軍の偵察衛星がバルゴンをサーチした所、バルゴンの体温は何と氷点下100℃前後と言う観測結果が表示された

そしてバルゴンの周囲50m以内は氷点下99℃とその体温に匹敵する程に気温が低下し、極超低温空間となってしまう

バルゴンが存在するだけで、その周囲は凍り付いてしまうのだ

 

 

怪獣を見慣れている日本人の真弓から見ても、その光景は異常だ

生物にとって本来熱は生きるために必須なもので、それが周囲の気温を上げ熱するのならば、怪獣と言う存在を加味してもまだ自然である

だが、肉体から周囲を、そして本来ならば塩を含み凍りにくいはずの海水すら一瞬で氷結させてしまう生物など聞いたこともない

あれもまた、ギャオスと同じく超古代に人が生み出してしまった罪の一端、怪獣兵器なのだろう

 

そして、桜島内の真弓たちラドン対策チームにも退避命令が出た。隊員たちが可能な限り機材を回収し、名残惜しそうにホワイトラドンを見つめる真弓を促して行く

真弓の視線の先、ホワイトラドンはまんじりともせずにバルゴンを見つめていた

いや、もしかしたらホワイトラドンは待っているのかもしれない。真弓が危険な領域から遠ざかることを

ジープに乗り込んでため息をつく真弓。落ち着かないまま窓の外に流れる景色を眺めていると、携帯電話への着信に気付いた

相手は先日のギャオス事件で世話になった草薙からだった。もしやとの予感を抱きつつ出てみると、それは即座に正解であったと判明する

浅黄とみどりがガメラが目覚めた事を感じ取ったという

 

 

 

凍結していく街並みを敢えて破壊しながら突き進むバルゴンの姿には、明確な悪意が感じ取れる

ラドン以上の脅威であるとGフォースは断定し、自衛隊と連携しての撃滅命令が下された

 

ラドン警戒の為に鹿児島市街地に展開していた陸上部隊が北上するバルゴンを迎え撃つために移動、上空待機していた自衛隊とGフォースのそれぞれの航空機隊も地上部隊を掩護する為にバルゴンに殺到する

 

警戒するのは、バルゴンを中心とした半径200m以内の超低温領域

そこに入り込めば戦車や戦闘機と言えど一瞬で凍り付き身動きが取れなくなってしまう

 

最前線に自動操縦化された90式戦車<改>、74式戦車<改>が展開、足止めと誘導を同時に行いながら、メーサー部隊の火力集中点で待ち構え強力な弾幕を形成する

 

メーサービームと実弾の雨がバルゴンに打ち込まれ、後方に展開していた自走砲、ロケットランチャー部隊も追撃を仕掛ける

バルゴンの全身で大小さまざまな大きさの爆発が起こる

数発は頭部に直撃し、思わず痛がるように身を捩じったバルゴンは、低い唸り声と強い怒りの籠った咆哮を上げる

 

バルゴンの額の赤い宝石と鼻先の角が強く発光し、大きく開かれた口からは鞭のようにしなりながら長い長い舌が飛び出してくる

蛇が首をもたげるように柔軟に撓った鋭い舌の先が左右に裂けると、そこから青みがかった液体状のガスが噴き出される

念性の強い液体ガスはビルの外壁や地面、高架線、バルゴンに攻撃を加えていた車両部隊にも吹きかけられ、その瞬間に凍結する

先ほどまでの激戦が嘘のように静まり返る鹿児島市内。一瞬で凍り付いた市街地を見回したバルゴンは嗤う様に鳴き、空から攻撃を仕掛けてくる航空機部隊にも冷凍ガス『ブリザード・ブレイザー』を吹き付けた

戦闘機部隊も空中で凍結し、機体に掛かる空力に耐えきれず、飛行しながら機体がバラバラに砕け散る

 

第一次攻撃部隊が壊滅したことを知り、霧島市内の移動司令拠点も撤収作業を開始、桜島から撤退してきた真弓たちの部隊も合流し、二人はとりあえずお互いの無事を確認し安堵する

 

と、桜島のホワイトラドンが動いた。巣から飛び立つと垂直に上昇して高度を稼ぎ、そのままバルゴンに向かって飛翔する

 

周囲の環境が異常変化していることを感じ取り、その根源こそが目の前の存在だと見抜き排除する事こそ、小さき母を守る最適解だと判断した

小さく、生まれたばかりでまだ飛び方すらおぼつかない体で、戦う恐怖を本能で押し殺して、ホワイトラドンは翔んだ

 

姶良市や霧島市側から増援として展開した自衛隊も蹴散らしたバルゴンは、鹿児島市の中心市街地を執拗に破壊しながら、上空から攻撃を仕掛けてくるスーパーXⅢや轟天号と小競り合いを繰り返していた

両艦の主砲とも言える熱エネルギーレーザー砲、プラズマメーサー砲ともに明確なダメージにはならず、バルゴンのブリザード・ブレイザーも届かない高度を維持しているため、互いに千日手状態になっていた

 

すると、小柄な体格を活かして鋭角な軌道でビルの間をすり抜けてきたホワイトラドンが、両足を猛禽類の様に前に向け、加速していた速度そのままにバルゴンの横腹に飛び込んだ

爪が頑強な皮膚を貫き、吹き飛ばされるバルゴンは白波スタジアムに叩き込まれ

ホワイトラドンは鹿児島県庁舎に着陸する

吠えて威嚇するホワイトラドンに対し、横合いから攻撃を受けたバルゴンは自衛隊へのそれよりも上の怒りと、それを与えた存在の小ささを見て、矜持を傷つけられたような屈辱感を抱く

底冷えするような唸り声を上げ、爪で切り裂かれた横腹から紫色の血を滴らせながらホワイトラドンを見上げるバルゴン

一方のホワイトラドンにバルゴンを見下ろす余裕はなく、ただ母を守ると言う思いだけで恐怖を押し殺していた

 

 

上空で二体の怪獣の睨み合いを見守っていた轟天号のレーダーに、高速で戦闘エリアに向かってくる飛行物体が認識される

発熱パターンがライブラリーに存在しており、それを確認したレーダー手は大声を上げる

 

曇天を切り裂いて、空から高速回転する物体が飛来する。飛行形態のガメラであった

突如自分達に真上から降り注いだ明るい光に、バルゴンホワイトラドン共に驚き空を見上げる

回転しながら高度を下げたガメラは頭部と腕を甲羅から突き出して直進し、バルゴンに向かってプラズマブリットを3発連射、周辺の球戯場や競技場毎バルゴンに直撃し大爆発を起こす

 

加速のままに着陸したガメラは地面を滑り、鹿児島大学のキャンパスを破壊しながら停止、ホワイトラドンとバルゴンを挟み込む様な形になる

 

一瞬目を向け合うガメラとホワイトラドン。次の瞬間ホワイトラドンは空へ飛び、ガメラはバルゴンに向かって突進

敵の敵は味方である、生物的な本能で理解した二体は即席で連携を取る決断を下した

立ち上がろうとするバルゴンの背中をホワイトラドンが鋭い嘴で突き、一方のガメラはバルゴンの頭を両腕で抑え込み、首筋に鋭い下牙を突き立てようとしていた

 

バルゴンはガメラに比べ一回り大きく、パワーを活かして二体を何とか引きはがそうとするが、ガメラはエルボークローを首筋に何度も叩きつけ決して逃がさんとその力を緩めない

ガメラは力圧しのままに東側の海岸線にバルゴンを押し込んでいき、ラドンもすれ違いざまに何度も嘴で背中を打つ一撃離脱戦法でガメラを援護する

バルゴンの焦るような声が大きくなる。角と宝石の発光が強くなり、ついにバルゴンも反撃を始めた

 

まず首を抑え込むガメラの力が弱まった一瞬の隙に拘束を解くと、長い舌を砲撃の様に勢いよく口中から打ち出す『ハンマー・ストライク』を、柔らかいガメラの腹部に直撃させ自身から引き離す

そのまま鞭のように舌を振り回し、背中に向かって突進してきたホワイトラドンを薙ぎ払って吹き飛ばす

ビル群に倒れ込むガメラと鹿児島市電を巻き込んで大地に叩きつけられるホワイトラドン

 

二体の怪獣から距離を取ったバルゴンは、身を振るうと口を半開きにし、目をカっと見開く

すると、背中の七列ある背鰭が七色に眩しく発光し、首元と尾部の前後端から背中の中央に向けて光が収束していく。光は巨大な球体となって背中の上で膨張していき

バルゴンが一際大きく吠えると同時に、七色の光の柱となって上空に発射された

虹色のエネルギー光は上空で鋭角に曲がり、複数に別れて地面へと降り注いで来た

それは身動きを取れなくなっているガメラ、ホワイトラドンを周囲の街諸共に薙ぎ払い、周辺は獄炎に包まれた火焔地獄となり、二体の怪獣は大爆発に飲み込まれ見えなくなる

 

それだけでなく、照射された虹色の破壊光線『ディアーヴォル・カルマ』は、上空に居た轟天号、スーパーXⅢにも直撃。想定されていなかった真上からの激烈なダメージで推進系の一部を損傷したスーパーXⅢは出力が低下、高度が下がり、そこにブリザード・ブレイザーが浴びせかけられる

超高温と超低温、あまりにも温度差がある状態に次々に置かれたことで操縦系統を始めとした機体のあちこちでエラーが発生し、コンソールディスプレイがエラーメッセージで埋め尽くされる

黒木からスーパーXⅢの機長の任を引き継いでいた雨沢修は、辛うじて機体を安定させると、いち早く戦闘領域からの離脱を指示

くやしさを滲ませながら、なんとか墜落と言う最悪の状況だけは避けることが出来るのだった

 

 

瞬時にして一面が破壊し尽くされた鹿児島市内。形勢が逆転し、ディアーヴォル・カルマの直撃を受けたガメラはダメージがひどく身動きが取れず。そこにやってきたバルゴンは至近距離からブリザード・ブレイザーを浴びせかけていく

瞬時に絶対零度の極超低温化合液で全身が包み込まれ、シャーベット状に凍り付いていくガメラ

腕の力だけで何とかバルゴンに近づいていくが、その歩みも徐々に弱まり、やがてはバルゴンに怒りの籠った瞳を向け、戦う意思は抱いたままその姿は一つの氷の彫刻となってしまう

 

勝利を確信したバルゴンは高々と舌を伸ばし、鹿児島の市街地を氷と雪で染めていく

虹を背負い、死と冬で世界を埋め尽くしていくその姿は、まさにティアボーの言い伝え通りであった

 

バルゴンが勝利の美酒に酔っているその後ろで、全身に傷を負いながらもまだ意識を失っていなかったホワイトラドンが、弱弱しくも立ち上がり、その姿を風に乗せ宙に飛び立つ

忌々しい鳥が生きていたことに気付いたバルゴンは、トドメとばかりにごくわずかなブリザードをホワイトラドンへと吹きかけた

 

全身の筋肉が凍り付き、血流が動きを止め、意識が徐々に黒く染まっていく中、それでも必死にホワイトラドンは少しでも空高くへと飛び上がろうともがき続け

やがて全身が脱力し、痛々しい声を空に溶かしながら、遙か上空から桜島の火口に向かって落下する

 

火口にその姿が消え、マグマが天高々と跳ね上がる

まるでホワイトラドンの断末魔を思わせる光景に、真弓は膝から崩れ落ちてしまった

 

 

 

バルゴンの足を止めるものはもうここにはいない、死と冬に支配された鹿児島を尻目に、バルゴンは北へ北へ向かっていった




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第19話

…ご無沙汰しております。あるゲームに嵌ったり夏の暑さでへろへろになったり急に創作意欲駄々下がりで完全に燃え尽きておりました
これからも更新頻度は上がらないかもしれませんが続けていきたいとは思っております…
そんな作品ではありますが時間に余裕がありましたらお付き合いくださいませ…


惨劇から一夜明けた鹿児島。バルゴンは防衛線を突破し九州縦貫自動車道に沿うように北上を開始、現在は霧島市横山町付近を移動している

航空機部隊が複数回にわたって行動遅延を目的とした爆撃を行うも、何れも虹色光線の対空攻撃で撃退され成果は発揮できていない

そしてバルゴンも数km進んでは眠ると言う事を繰り返しており、じりじりとした嫌な戦いが繰り広げられていた

 

一方、壊滅した鹿児島市内では、Gフォース、自衛隊、在日米軍が現地入りし、共同でがれきの撤去、救助作業を並行して行っていた

普通科部隊が忙しそうに走り回る隙間を縫って、移動作戦本部にスーツ姿の男性陣が入ってくる

特生自衛隊とGフォースは全国各地の大学と協力関係にあり、有事の際には事件現場の近隣の大学から必要とされる情報や技術の専門家を招集することがある

怪獣との戦いにおいて一番重要な事は如何に早くその怪獣の能力や弱点を見つけるかであり、専門知識を持ったアドバイザーの意見は欠かせない

今回は襲撃現場の直近にあった鹿児島大学から物理学や生物学の専門家が駆けつけ、その中にはデストロイア事件で活躍した伊集院研作博士の姿もある

同大学での講演を予定し鹿児島市内のホテルに滞在していたため、事態解決に協力したいと駆け付けたのだった

 

Gフォース、特殊戦略作戦室、現地司令部が画像会議を開始したのは正午になってからだ

現地鹿児島ではバルゴンが生み出した氷の処理に戸惑っていた。異様なほど氷結した部分が頑丈で、本日の気温25℃とかなりの夏日でありながら殆ど溶け出してすらおらず、こういった作業では世界一とされる陸自でも撤去に苦労していると報告が提出される

分析に参加していた伊集院博士はバルゴンが口から放った青い冷凍液にその謎のカギがあるとして、冷凍液のと体液のサンプルの検証を行う事を決定

特殊戦略作戦室はバルゴンの行動の検証と予想を繰り返していた

北上したことで鹿児島に近い川内原発の安全こそ確保されたものの、このまま一直線に北に向かえばその先には九州一の人口密集地帯である福岡に到達する

それまでの間に、何かしら攻略のカギとなる弱点、或は誘導に活用可能な習性を見つけなければいけない

 

残された時間は決して多く無い、そして大抵そういう時に限ってバッドニュースだけは数多く報告される

先立ってバルゴンと戦い破損したスーパーXⅢだが、作戦終了後佐世保にある三友重工の大型船舶用ドッグに緊急退避しており、そこでの整備の結果、次の作戦への展開、それどころか直近での修復すらほぼ不可能だという報告が上がって来た

原因はバルゴンの放った冷凍ガスと虹色の光線だ

あの二つの攻撃を立て続けに浴びたことで極度の温度変化が引き起こされ、機体内部の電装系やメインフレームが著しく損傷してしまっていた

元々スーパーXⅢは搭載している兵装が殆ど冷凍兵器と言う事から、基本的な対低温処理は徹底されているが、バルゴンの攻撃力はそれを上回っていた

絶対零度に近い超低温冷線の直撃までは想定されていない

同じような攻撃が直撃した轟天号が装甲パネルの交換で済んだのは、設計の段階から外宇宙の様な極限的な環境下での運用を想定していたのが功を奏した結果だった

それに加え、現在自衛隊ではMFS計画とSXⅣ計画が並行して動き、更に新型メーサー兵器を始めとした新兵器開発も続いて行われているため、どうしてもスーパーXⅢの修復の優先度や予算配分はどうしても後手に回ってしまうのだ

現在パイロットクルーたちは機体から降りて前線指揮所にて戦術構築の支援を行っているが、機長の役目を黒木から引き継いだ雨沢修三等特佐の落胆は大きいという

 

続けて、ティアボー島からアーヤとカレンの二人の手で持ち込まれた巨大ダイヤモンドを用いた誘導作戦についての作戦結果検証が行われた

開始されたのは夜明け前の午前5時15分、2機のしらさぎが大隈横川駅付近で山に寄りかかって眠るバルゴンの上空に飛来

前方の機体が下部ハッチを展開し、そこから防御フレームで出来た箱にティアボー島のダイヤモンドを入れて下ろし、後方のもう一機が同じく機体下部ハッチから高出力レーザーライトをダイヤモンドと同じ高さに待機させる

島の口伝にあったダイヤモンドがバルゴンを死に誘うと言う一節から、このダイヤモンドにバルゴンが興味を示し誘導することが出来るのではないかと言う仮説から行われた作戦だ

後方のしらさぎにはアーヤとカレンが島の大切なものだからと乗り込み、護衛としてハイヤード隊員の平田浩一郎、啓次郎兄弟も脇に控えている

無色のレーザーがダイヤモンドに向かって照射され、ダイヤモンドを通過して増幅、白く輝く光線となって眠るバルゴンの顔を不気味に照らし出す

不快感をあらわに唸り声を上げて目を覚ますバルゴン、睨むようにヘリを見上げ、少しだけ首を伸ばす……それだけだった

どれだけ光線を照射しても興味をそそられて動くような事はせず、苛立ったような鳴き声と共に角やトゲが光り出す

光線の攻撃が来る前ぶれだとしらさぎの機長が判断し、二機は速やかにバルゴンの射線の外へと退避

唖然とするアーヤとカレン。可能性としては一番高い行動だったが、これで伝承から取れる手段は皆無となってしまった

 

 

僅かではあるが吉報も舞い込んできている

Gフォース経由で米国USCXFが先ごろ開発に成功した、対怪獣用戦闘攻撃機XF/A-01ナイチンゲールで編成された部隊が援軍として派遣されることとなった

元々米国の空中戦艦ランブリングの艦載機部隊であり、各国の米軍基地に配備された同機の操縦ノウハウを現地のパイロットたちに伝授する教導部隊として活動しており、グァム基地に逗留中の彼等が急遽実弾装備を行ったうえで、沖縄基地にて轟天号に合流する手はずになっていた

 

 

伊集院博士は福岡の大学にある研究施設に到着し、現地の研究員たちと共にバルゴンの二種類の体液の秘密を解き明かすため奮闘していた

オンラインのテレビ通話で茨城にいる桐島一人ともつながっており、既に向こうにも検体が到着。リアルタイムで双方が情報を共有させながらその作業は続いている

 

青い冷凍液、紫色の血液。バルゴンの体内に存在する子の二種類の体液は、0.4%ほどの組成の違いしかないが、持ち合わせている特徴はまさに正反対だ

青い冷凍液は水分の分子結合を増強させ、通常の水で作り出した氷の数十倍もの耐久性と耐熱性を与え、付着した物体から急速に熱を奪う

このせいで鹿児島とガメラは未だ氷の下に沈んでおり、復興作業に入れずにいた

一方で紫色の血液は超低温下においても水分子の結合を防ぎ、氷点下においても液体状を維持させることのできる凍結防止剤、或は融氷剤としての特性を持っている

恐らくこの体液のお陰でバルゴンの新陳代謝は非常に低い体温でも維持され、氷点下においても血液が凍結することなく体内で循環しているのだろう

伊集院博士は未だ証拠は見つかっていない勘の段階だが、この二つの体液は本当に簡単な反応現象を起こすことで機能が反転すると言う確信があった

では何が原因でバルゴンの体液はまったく別の特性に切り替わるのか、それを突き止めることが出来れば、バルゴン攻略の目途がきっと立つはずだ

焦燥感を必死に抑えながら、伊集院博士は次々コンピュータが吐き出すデータと睨み合い続けていた

 

 

午後、霧島市役所の屋上に真弓の姿はあった。火口から濛々と煙を上げる桜島を見つめている

心にあるのはホワイトラドンの事。今でも火口に落ちる時の苦しげな悲鳴が耳にこびりついて離れていなかった

意気消沈していた彼女の元に、なんと米森がみどりと浅黄を連れて現れた、ガメラが気になった二人はいてもたってもいられず家族に直談判、丁度日本に寄港してい数日間の休日を享受していた所、直哉と拓也から二人を託されたのである

氷漬けになったガメラを見て意気消沈する浅黄とみどり、真弓も無力感に苛まれるが、そんな三人を勇気づけるように未希が告げる

ガメラもホワイトラドンもまだ生きている、と

 

 

 

 

 




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第20話

あけましておめでとうございます。今回もだいぶ期間が空いてしまい申し訳ありません!

話の区切り的に一気にここまで行かないと見せ場にならない!と思い今回だいぶ長くなりました
ですが、ゴジラ世界でバルゴンと戦うならこれは必須だよな…?と言う装備と、バルゴンを生物兵器として見た場合の利点や弱点などの理屈付けはうまくできたかなーと思います
また本年もこんなSSですがよろしくお願いします!


日向灘上空、冷たい風が吹き渡る午前六時。

薄らと東の空が明るくなり出した頃、南西方向から飛来する4つの飛行物体をレーダーが感知

速やかにIFFが味方の識別信号を受信しレーダー上に米軍の最新鋭戦闘攻撃機であると判別した

 

XF/A-1 ナイチンゲール

前進翼状態と後退翼の二形態に可変する主翼、コクピット横の大型カナード翼を持つ特徴的な外見の機体で

日本のXF-1同様重力制御操縦補助装置を搭載し、驚異的な機動性を有している

パイロットは元アストロノーツと言う異色の経歴の持ち主グレン・ニック大尉以下4名

ランブリング所属の第887特殊戦術飛行隊である

轟天号の艦橋後方の装甲版が展開され、解放されたデッキより4機が艦内に格納されると、轟天号は北へと転進し再びバルゴン追尾の任務に就くのだった

 

 

日も昇った午前、先日よりもわずかに解凍が進んだバルゴンの凍結を今日も自衛隊、Gフォース、警察や消防民間のボランティアが必死に破壊する作業を続けている頃

黒木達の元にニューギニアから連絡が入った。

沈没したマクロムの船から救助された二人の生存者が目を覚まし、現地捜査員の事情聴取を受け船が沈没するまでの経緯が判明、国連を通じて情報がもたらされ集まった黒木やGフォース上層部の前で開示される

 

生存者の一人、今回事情聴取を受けた男はマクロムに雇われた宝石検査を行うためのレーザー照射装置の技師だった

マクロムはティアボー島から発掘した巨大なオパールをさっそく船内の様々な検査機材に掛けた。

レーザー、プラズマ、赤外線、紫外線、α線、β線、γ線、X線

ありとあらゆる最新検査機材に次々と掛けられ、その巨大なオパールのデータが集まってくるうちにマクロムの笑みはどんどん深まっていたという、その時までは

 

突然、オパールが光り始めた。目が眩むほどのまばゆい閃光を放ったかと思うと、高熱を帯び、機械を溶かしながら床へと転がると、蒸気を噴き上げながら罅が入っていく

見守っていたマクロムが何事かと目を向けると、オパールのようだった宝石は黒く焦げ付き、割れた内側から大型犬か狼ほどの大きさの一体の生物が現れたという

それはおもむろにこちらに目を向けると、検査室の強化ガラスを砕きながら飛び出しマクロムの首筋に噛みついた

悲鳴を上げる間もなくマクロムは息絶え、その死体の肉を獣が貪ると同時に凄まじい冷気が周囲を凍らせていく

壁、床、天井、機材、そして恐怖に慄く船員たちすらも巻き込んで冷凍地獄は広がっていき、男は慌てて船の上層へと逃げ始めた

だが段々と船が揺れ始め、獣の鳴き声はどんどんと大きくなっていく

船の竜骨が軋む音が鳴り響き、激しい揺れにある者は海へ、あるものは裂けめに落下し、階下から飛び出して来た触手の様なものに巻き取られて行く者もいた

やがてデッキ近くまで男は逃げてきたが、甲板を突き破っていつの間にか数十mまで巨大化した獣の頭が現れた

船は崩れ始め、猛烈な冷気に全身が凍り付きそうになる

そこから逃げることもできないと思った男は船内の倉庫に逃げ込むとそこに冷却装置が故障した業務用冷蔵庫があることに目を付ける

外部の温度変化を遮断出来、頑丈なこれに入れば…と考えた男は激しい揺れの中で必死にもがいて冷蔵庫の中に入り込み扉を閉めた

同時に耳をつんざかんばかりの怪物の―バルゴンの咆哮が鳴り響き、落下する感覚と水面に冷蔵庫が叩きつけられる衝撃で男は意識を失い

再び意識を取り戻したのはニューギニア海軍の救助部隊が冷蔵庫の扉を開いた時、腕を掴まれ助かった事を理解すると同時に再び意識を失った

と言う事である

 

G対策センター長官の権藤千夏とG生物研究所の青木義郎博士は、この証言と先立ってティアボー島に到着したG対策センターの研究団による遺跡の調査データを比較する

ティアボー島の遺跡を調査した所、インファント島の先住民であり超古代文明の生き残りであるコスモス族が使う古代エリアス文字で記された碑文と、ガメラの背で見つかった石碑より発見された通称『ガメラ文字』で記された複数の碑文を発見していた

それはバルゴンが数千年に一回のスパンでこの遺跡より生み出される、成長しきる前に速やかにダイヤモンドを使って水に沈めて殺せ、と言う内容であった

 

そこから青木博士は、マクロムが船内で行った卵への複数のエネルギー照射がバルゴンを異常活性化させ、本来ならば生まれた直後は小型なはずのバルゴンを巨大化させたのではないかと推測

千夏もそれに同意し、また一つ人類の過ちが怪獣を生み出してしまったと痛恨する

 

一方、何故バルゴンについてエリアスの言葉で記されていたのか、そして今バルゴンは何を求めて九州を北に進んでいるのか、と言う疑問に突き当たった

産まれてすぐのバルゴンはダイヤモンドによって誘導されると言うが、巨大化したバルゴンは健一郎らが行ったダイヤモンドによる誘導に興味を示さなかった

それはバルゴンがダイヤモンドよりも優先する何かがあると言う事に他ならない

それに悩んでいると、会議で使われる円卓の中心が突然発光し、閃光の後にある文様が光で刻まれた

十字の周囲4方向に延びる8つの光、それは間違いなくモスラの紋章だ

異変を察知した警備兵がドアを開けると、そこに1人の女性が入ってくる

平田ミカ。かつてベビーゴジラの卵に付着していたシプニオキスからサイキックメロディを再現した超能力者の一人で

今は半引退している新城未希に変わってサイキックセンターのサイコメトラーとしてGフォースに協力している

 

彼女は動揺する会議室の面々を落ち着かせると、手をモスラの紋章にかざして精神を集中

すると紋章の上に、モスラの精神の分離体であるフェアリーとオレンジ色のゆったりとした民族衣装姿の女性が二人現れた

 

コスモス

1万2000年前に崩壊した古代インファント文明の末裔、モスラの巫女を務める二人の小美人だ

彼女達はGフォースの面々を前に挨拶もそこそこに、まずはバルゴンの対応に動けない事を詫びた

モスラは外宇宙の隕石破壊と異星人のアサルトボードとの戦いで生命の殆どを使い果たし、次の世代に命を繋ぐために今インファント島を離れることが出来ないでいる

こうしてフェアリーを伴って幻として皆さんの前に現れるのも少しずつ溜めた力を使い、ミカさんの手助けがあってやっと出来たのだと

 

続けて、麻生司令の何故バルゴンの事を知っているのかと言う問いにも、彼女達は答えを示す

バルゴンは古代インファント文明をはじめとした超古代文明が全盛期であったころ、地球全体を巻き込んだ世界戦争で生み出された兵器の一体であり

現在の南アメリカ大陸で興った文明がアマゾンに住む爬虫類を母体に改造した怪獣兵器である事

それが海を渡ってかつて太平洋にあった巨大大陸ナーカルで栄えていたムゥ連邦帝国と古代インファントに攻め込み、モスラとムゥの守護神である龍神によってある山脈に封じられた

その後にナーカル大陸が天変地異と怪獣、外宇宙からの侵略者と言った多重災害によって海底に没し、山脈の一部が今のティアボー島になったという

そして、バルゴンの卵が安置されていたティアボー島最奥の遺跡がある島最大の山

その山そのものが、なんとモスラと龍神によって倒されたかつてのバルゴンの遺骸だった

正確には、モスラに倒されたバルゴンの遺骸が長い月日の間に地層の中に埋もれ、バルゴンの体格に沿って堆積物が蓄積された結果山になってしまったのだ

 

バルゴンが生み出された目的がコスモスから明かされる、それは衝撃的な内容だった

バルゴンに備えられた能力は三つ

まずは超低温エネルギーを体内で生成し、冷線として放射し侵入した敵対国の国土を氷結させる

もう一つは背中から放たれる超高出力のプラズマエネルギービーム。最大出力で放たれたそれは成層圏やそれよりもっと高度が高い磁力線圏まで到達し、地球を有害な放射線や紫外線から守っているオゾン層や放射線帯に干渉・破壊し宇宙から降り注ぐ有害なエネルギーで敵国領土を物理的に汚染・破壊し生物の住めない土地にする事

最後の一つは、マナを用いて強制的な自己循環だと言う

マナとは、一個の生命体である地球そのものがもつ超自然的なエネルギーで、地下にある次元空間のズレた流動路、俗に言うオカルトや風水で気脈や龍脈と呼ばれる地球の血管を流れているもので

それをエネルギー源として、敵国領土内で自分自身を自爆させるのだ

半径数kmを巻き込むほどの大爆発と凄まじい圧力はバルゴンの肉体を形成している各種有機物の性質を変化させ、爆発の後に残る遺骸はそのまま新たなバルゴンを生み出す生体工場となる

こうして適地を侵略、崩壊させつつ自分自身を複製することで相手の領土の価値を低下させ国力を低下させ国土自体を疲弊させる。それがバルゴンの生み出された目的なのだ

 

 

では、モスラに倒され死んだはずのかつてのバルゴンがティアボー島の遺跡の中枢であるならば、何故数千年に一度バルゴンの卵が生み出されるのか

カレンたちの疑問にコスモスたちはあくまで推測、と前置きをしたうえで

現在のゴジラよりも巨大な体格になっていたかつてのバルゴンをモスラは完全に封印することが出来ず、体内の生育器官がほんのわずかながら機能を維持し、長い長い時間を掛けて卵を生み出していた

そこに、古代文明の崩壊から生き延びた古代インファント文明の人々が漂着しバルゴンを発見、封印を強化することも補強することもできない彼らは定期的に産まれたバルゴンの幼体を駆除することで世界に氾濫するのを防いでいたのだろう

やがてユーラシア大陸から入植してきた現在のティアボー島の先祖たちにそのしきたりを教えてきたのだと述べ、最後に本来バルゴンが目覚め人の手に余るほど強大になったなら私達とモスラが対処するべきだが、それが出来るだけの力が今のモスラには無い、と二人は頭を下げた

そして、おそらく今の急激に巨大化し性質が変異したバルゴンはマナを自力で吸収することが出来ず、代替となるエネルギー源を求めているのだろう、とも

 

 

 

各方面から上がってくる情報が、まるでパズルのピースの様に噛み合い一つの形に組みあがってくる

結局はまた、欲に目がくらんだ人間が原因の自業自得だったわけだ

それでも、無辜の人々が怪獣の手によって命が奪われることだけは何としても防がなければいけない

この場にいる面々が必ずやバルゴンを撃滅すると改めて口にし、そして一番肝心なバルゴンの弱点をコスモスに質問しようとすると、まるで映像にノイズが走ったかのようにコスモスたちの姿が乱れ始める

実は、コスモスからテレパシーを受け取ったミカが自身の超能力を使い中継器の役割を果たし、自分の脳内に送られてくるコスモスたちの姿をこの場に投影していたのだが

彼女自身の精神力がもう限界となり、その中継が途切れてしまった

その場にうずくまってしまったミカを精神センターのスタッフが抱えて退席していくのを一同は感嘆の思いを込めて見送る

弱点こそ聞き出せなかったものの、入手できた情報はどれも値千金の価値がある

バルゴン攻略にあたり必要な情報は後二つ、弱点とバルゴンが何を求めてどこに向かっているかの目標だ

 

後者に関して、自衛隊とGフォースには心当たりがあった

熊本県の上益城郡にある陸上自衛隊大矢野演習場、その地下50mに作られた第六特殊機材格納庫

自衛隊とG対策センターの中でも限られた人間のみがその所在と内に保管されている機密倉庫で、耐熱合金NT-1Sを加工した100枚もの積層装甲版によって隔離されたそこには、かつて福岡に襲来した宇宙怪獣スペースゴジラが形成したバトルフィールド、その結晶が保管されている

大半の結晶生命体はスペースゴジラの死後に内包していたエネルギーの自然放出で消滅したが、エネルギー漏洩を遮断できる程に成長した一部の結晶体はエネルギーを内包したまま、消費しきるまでは生命活動を続けており

迂闊に破壊しようとした場合は危険である事、またこの結晶生命体の構造を解析することでエネルギーを効率よく制御、管理する技術を獲得できることが想定されたため、本演習場の地下に作られた特別格納庫で隔離保存されている

現に現在Gフォースが開発を進めている新型対G兵器や轟天号に施された抗エネルギーコーティングは、この結晶生命体の構造を再現し従来の人工耐熱ダイヤモンドコロイドと混合したものだ

格納庫内部に保管されている結晶生命体が内包しているエネルギー総量は電力に変換した場合大都市を一か月間淀みなく稼働させるのに十分な量であり

バルゴンはこれを目指し現在も九州を北上していると思われた

 

バルゴンが求める物、それも今白日の下にさらされた

これをバルゴンが手に入れればコスモスの語った大爆発をバルゴンが起こし九州に大きな被害が出るだろう

だが逆を言えば、バルゴンがこれを求めている限り、これを使って誘導することも可能なのだ

そこに、福岡の大学から連絡が入った。モニターに映るのは伊集院博士、目の下に隈が出来無精髭が生えたまま、見た目を取り繕う暇もなかったのだろう

開口一番に彼は言った

バルゴンの体液の秘密、そして弱点がわかった、と

 

 

会議室の面々が見守る前で、モニターの向こう、大学の実験室で青紫色の液体で満たされたビーカーを研作博士がテーブルに置く

鹿児島市内から採取されたバルゴンが舌より放出した冷却液だ、それの入ったビーカー対して博士は一対の電極を入れ、発電機の電源を入れる

電源がうなりを上げ、博士が発電機の出力を上げると、会議室の一同は驚きの声を上げた

ビーカー内に満たされた液体の色が、青紫色から赤みがかった紫に、鹿児島湾内やガメラに攻撃されて吹き飛んだもう一種類のバルゴンの体液の色に変化したのだ

研作博士は言う、この液体、バルゴンの体液は一定の電流を流すことで化学変化を引き起こし、色と共に特性を全く正反対の物に変えると言う

元々限りなく近い構成の液体と言う事で、何かがきっかけで特性が変化したと言うあたりを付けていた研作博士だったが、その変化を与える何かを見つけることが出来ず思い悩んでいた

だが、ふとバルゴンの鹿児島市内での行動を最確認している時にあることに気付いたのだ

バルゴンの破壊活動が特に執拗だった建造物に一定の法則があったのだ

理工科学系の大学の研究室であったり、電気製品製造会社の倉庫であったり、特に地元電機メーカーの工場が原型をとどめなくなるほどの破壊を受けていたことから、あることをひらめいた

バルゴンが産まれたばかりの時に強烈に惹かれるもの、ダイヤモンド

ダイヤモンドは伝導電子を持たない絶縁体なのである

 

そこから先ほどの電流をバルゴンの体液に流すと言う実験をつくばの一人博士と共同で行った所、見事体液の特性を突き止めることに成功した

つまり、バルゴンは体内電流によって体液の特性を変化させる能力を持ち、それを制御するには絶縁体を摂取する必要があった

バルゴンの破壊活動が活発だった場所はそれぞれ絶縁体の生産や貯蔵を行っていた場所で、そこでバルゴンはダイヤモンドの代わりとなる絶縁体を摂取したというわけだ

つまり強力な冷凍液も電流を流すことが出来ればその特性を変化させ無力化が可能だと言う事

そして同時に、自衛隊が採取したバルゴンの皮膚組織を一人博士が分析した所、水に非常に弱く、濡れることで急激に細胞の劣化と崩壊が促進されることもわかっていた

だから古代インファントの人々は産まれてすぐのバルゴンはダイヤモンドでおびき出し、水に沈めろと伝承を残した、全てがつながって行く

そこで黒木は気づく、だからバルゴンが出現した鹿児島湾やマクロムの船が沈んだ海域がバルゴンの体液で紫色に染まり、フィリピンの地下に回廊を作り日本まで進んできたのだ

 

バルゴン対策に必須なのは、弱点となる大量の水と、冷凍液を無力化しうるための電気

その二つを同時に用意する事……一つの装置を、その場にいる誰もが思いついていた

 

かつてゴジラの体内に注入された抗核エネルギーバクテリア、その活動を促進させるため、京都の若狭湾一体に展開された、弾道弾迎撃用の人工雷発生装置

 

 

 

 

 

 

M6000TCシステム




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第21話

お久しぶりです、バルゴンとの決戦までの一幕で一区切りとさせていただきます!
終盤直前の中休み的な回だと思ってください
あと今回長峰さんが今後の彼女のアイデンティティとなるある言葉を未希さんから授かることに


M6000TCシステム

 

正式名称試製88式電磁制御高周波加熱領域形成システム。

冷戦下の1980年代に自衛隊が複数考案していた、核弾道弾迎撃システムのうちの一つだ

航空機から放出されたヨウ化銀コロイドを核に成長した人工雷雲

負の電荷を発生させ落雷を誘発させる電位差発生装置

発生した落雷の高周波と熱エネルギーを増幅させるソニックビーム車

の三つで構成される

 

 

電位差発生装置の上部に到達した物体に向け落雷を発生させ、ソニックビームによって増幅された熱によって物体を加熱し破壊する、電子レンジと同じマイクロウェーブによる電磁加熱を行うための大規模システムだ

1989年のビオランテ事件以来二度目の実戦投入命令に伴い、熊本県八代市の高岳から南西部に広がる広大な平野地に展開されることとなった

 

主戦場となる八代市、人口密集地になる熊本の市街地からは住民が一斉に避難し、その上空をヨウ化銀散布装置を搭載した多数のグリフォンやしらさぎの編隊が通り過ぎる

人工雷雲が形成され、作戦が開始されるまであと4時間

 

 

 

矢代市内の南西部、球磨川を中心とした田園地帯のTCフィールド内部に戦車部隊、特生自衛隊のメーサー各車両を中心とした主力部隊が展開する

彼等の目的は命を懸けてバルゴンをTCフィールド内にくぎ付けにする事

 

護衛艦あこう、くらしきの二隻が八代海の入り口に当たる樋島付近に、湾外には在日米軍の駆逐艦が4隻

八代海を挟んだ天草市の海岸線には自走砲、MLRS、プラズマ自走砲などの特火部隊が主力部隊を砲撃で支援するため待ち受け、湾内上空には轟天号と、その指揮下にあるXF-1、ナイチンゲールによる即席混合航空隊

攻撃ヘリ部隊と対獣戦闘仕様のグリフォン部隊も待機している

 

 

発達した黒雲から雨が滝のように流れ落ちる最中、陸海空の精鋭がGフォースの指揮下に結集する

作戦の目的は雷雨によってバルゴンの冷凍液を無力化しつつダメージを与え、総火力をもって圧力をかけバルゴンを八代海に追い落とす事

ガメラが無力化されホワイトラドンは生死不明、ゴジラもギャオスの一件からしばらくアドノア島には戻っておらず太平洋一体の沿岸に出現したギャオスタイプの怪獣を討伐していることから援軍も期待できない

その上で貴重な戦力であるスーパーXⅢが戦線離脱と状況は最悪に近い、だが戦う事を辞めるわけにはいかない

多くの人々の命と未来が掛かっているのだから。作戦に挑む各員の士気は高い

 

 

 

作戦部隊の展開を熊本城二の丸広場に敷設された作戦指揮本部で見守っていた黒木は、ふと手元の端末に目を落とす

そこには未希が発案した、ホワイトラドンの再覚醒計画の要綱が表示されていた

 

うやむやのままに失敗したシプニオキスを用いたラドン輸送作戦

それを応用し、かつてアドノア島で瀕死になっていたラドンが、シプニオキスのサイキックメロディでファイヤーラドンとして復活した時と同様の環境を作り上げれば、ホワイトラドンを復活させる事ができるのではないかと言う物

 

概要を読み終えた黒木の顔に、苦笑とも微笑とも取れる柔らかい表情が浮かぶ

自分も随分と甘くなったものだ。かつての、ヤングエリートの長と持て囃されていた自分ならばとてもではないが怪獣と言う作戦への不確定要素の復活など承認しなかっただろう

 

しかし、ゴジラ達怪獣との戦い、ゴジラジュニアと言う存在を通じて、黒木の認識が確かに変わっていた

それが成長なのか、それとも精神的な弛緩なのかはわからない

それでもかつて三枝未希が言った言葉が心の奥に確かにあるのだ

 

『敵と勝つか負けるかだけなのだとしても、味方が多くて、敵が少ないに越したことはありませんよね?』

 

怪獣と言う巨大な脅威が跋扈する今の世界は、黒木の持論通り、勝つか負けるか、生きるか滅ぶかの厳しい世界なのだろうが、未希の言う事にも一理ある

敵が全て敵である必要などないのだ

歩み寄る、和解すると言う戦略もまたあるのだと

国防を預かる人間としては失格の思考かもしれない、だがそう信じたいと黒木は思っていた

 

 

九州を北上しているバルゴンの上空に、二機のしらさぎと護衛のグリフォン3機が飛来した

二機のしらさぎがそれぞれ、レーザー発射装置と結晶生物の欠片をウィンチアームで機体下部のハッチより展開

バルゴンと二機が同一線上に並ぶように距離と高度を調節する

忌まわしそうに見上げていたバルゴンだったが、視界に結晶が見えると目の色が変わった

そして前方のしらさぎから発射されたレーザー光が、結晶生物に命中し光とエネルギーを反射、増幅してバルゴンに照射される

自分が最も求めていたエネルギー、それを直で浴びたことでバルゴンは興奮し

その感情を表すように額と背鰭の結晶が赤青緑と極彩色に発光、悶えるように体をくねらせ興奮した鳴き声を上げた

 

バルゴンが反応した、作戦の第一段階が成功した瞬間だった。

そのまましらさぎはバルゴンとの距離を一定に保ちながら誘導を開始、冷凍怪獣の進路は北から北西に変化し、決戦の地へと導かれていく

作戦開始まであと3時間

 

 

 

熊本城から直線距離で約70km、南九州から避難してきた人々を受け入れつつ、また自分達もいざと言う時にはすぐに避難できるようにと緊迫した空気がどこか流れている久留米市内に健一郎たちの姿があった

 

カレンとアーヤがせっかく日本に来たのだから、と健一郎が精神的に追い詰められていた彼女達を、決戦前にリラックスさせるべく食事に誘い、護衛の平田兄弟も健一郎のおごりでラーメンに舌鼓を打っていた

最悪の海外旅行にしてすまない、と頭を下げる健一郎だが、カレンもアーヤも微笑んで首を横に振る

怖い思いをしたけれど、いい出会いもたくさんあった、日本の国は楽しくて好きだ、と

その視線はそれぞれ平田兄弟に向いていて、気恥ずかしげに目を反らす二人に健一郎は大笑いするのだった

作戦開始まであと2時間

 

 

 

桜島ではホワイトラドン復活作戦の準備が進められていた。

大型スピーカーを機体下部にウインチでけん引したCH-47が火口上空を旋回し、地上班の準備が終わるのを待っている

地上でも特殊音響装置を積載したジープが火口の周囲に配置された。

搭乗員はスピーカーユニットの最終チェックを終えると速やかに退避する。噴出したマグマが落下してくる可能性が十二分にある場所だ、危険を冒さないで済むのならばそれに越したことはない。

 

麓にある指揮所。隊員が着々と準備を進める姿をみどりと浅黄はストーブの前に身を寄せ合って見つめていた

そこの真弓と米森が現れ、紅茶とコーヒーを注いだ紙コップを手渡す

二人はガメラの復活もホワイトラドンの復活も信じているようだ、だが顔には不安が浮かんでいる

無理もない。半年前までは戦いとは無縁だった学生でしかないのだから

 

一方真弓の顔も浮かないままだ、ホワイトラドンを復活させる。そうすれば彼は再びバルゴンに戦いを挑むだろう

息子を戦いに赴かせ、傷付かせることが母親の役目だろうか?

このまま火山の揺り籠の中で眠らせてあげることの方が、親の行いとして正しいのではないか?

答えの出ない逡巡を見透かして、米盛は声をかける

子供がどんな未来を選んだとしても、信じて見守るのも親の務めだ、全ての生命は最後の瞬間まで生きたいと思っている、私達人間と同じだ。

それを無視してはならない、と

心でそれを反芻する真弓。そうだ、勝手に彼の心を代弁するなどただの傲慢にすぎない。

生きてこそなのだ、全ては

作戦開始まであと1時間

 

 

西に只管進み、八竜山の麓まで誘導されたバルゴンはそこでそれまでの積極的な足を急に止めた

空を覆う曇天、漂う磯と雨の香り、遠くに見える戦車部隊のサーチライトの明かり、目の前の田園地帯に設置された見慣れない機械

全てがバルゴンの動物的な本能を刺激する。何かが不味い、この先には自分への危険が待っている

その判断は正しかった。だがそれは既に遅かった

 

黒木がバルゴンの動きが止まったと判断すると、速やかに命令を下す

モニター前の士官がコンソール内のスイッチを押すと同時に、バルゴンの立っていた箇所がある八竜山の麓の一部が一斉に爆発

バルゴンの背丈以上の爆炎が上がり、人工的な地滑りが起りバルゴンはTCフィールドの内部まで崩れた岩や地面と共に押し流されてしまった

単一指向性対獣用爆裂弾ブラストボム

メインシリンダー内部で炸裂した爆発のエネルギーを一定方向に指向させて放出させる新兵器で、もしもバルゴンが危機を察知して逃げようとした際にその逃走を阻止するべく、事前に八竜山の麓一帯に埋設されていたのだ

更に雷鳴が轟くと、一瞬で前が見えない程の豪雨が降り出し、バルゴンの全身を濡らす

バルゴンが悲鳴を上げ、全身の細胞が水分で破壊され、赤紫色の体液がにじみ出て来た、一人博士や研作博士の読みはやはり当たっていたのだ

攻撃開始、黒木と麻生司令が同時に声をあげる

バルゴンとの最後の戦いが始まった




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第22話

皆さまお久しぶりです。ダイジェスト風にするべきか個々のシーンをしっかり描くかで悩みに悩んで時間がかかってしまいました…本当に申し訳ありません

対バルゴン編ももう間もなく一区切り、楽しんでいただけたなら幸いです


始まった最終決戦

全身を雨粒に打たれ、バルゴンの体表から赤紫色の体液がにじみ出てくる

苦悶の唸り声をあげ、苦悶にもだえる姿に黒木と麻生は全部隊に一斉攻撃の命を下す

地上に展開している部隊の使命はバルゴンをTCフィールドに押しとどめる事

バルゴンが山の側に逃げようとすれば後方に展開した部隊と協調して圧力を高め、そこに天草市側や湾内湾外の支援攻撃部隊からの攻撃も降り注ぐ

 

自分が最悪の場所に足を踏み入れたことを理解したバルゴンは懸命に口から冷凍ガスを放ち、更に地面の電位差発生装置を破壊して安全エリアを作ろうと藻掻くがそれも想定の範囲内

改良された電位差発生装置はコンピューターによって同時に管理されており、複数の発生装置が連動して電圧を制御することで

かつてのTCシステムでは電位差発生装置に向かって直に落雷を落とすことしかできなかったところを、落雷を誘導し目標に向かって発生させることが可能となっている

幾つもの閃光の筋がバルゴンを包む様に突き刺さると、口から放たれる青紫色の冷凍ガスはその色と性質を変え、ただの体液となって周囲にまき散らされるばかり

やはり研作博士らの目論見通りの結果となった

最大の好機が訪れている、これを活かさない手はない

 

一時的に止んだ落雷を縫って戦闘地帯の上空を四角形に編隊を組んだCH-47が通過し、バルゴンの上空に到達した瞬間何かを投下する

バルゴンの全身を包み込むサイズ、東京製綱が開発した鋼より強く絹糸よりしなやかと開発者が太鼓判を押す特殊な帯電ネットだ

全身を覆いつくすネットに不快感を感じる間もなく連続して落雷がバルゴンに突き刺さる

それはネットを通じて全身に隙間なく広がっていき、肉体を灼き赤紫の体液を滴らせることとなった

 

苦しみのたうつバルゴン。そこに上空から飛来した戦闘機、攻撃ヘリ、メーサー攻撃機も追撃を駆ける

陸海空の多重攻撃は確実にバルゴンを最大の弱点である海へと近づけていった

作戦は順調だ、油断することなく攻撃を続ければ、バルゴンを撃滅できる

そう誰もが思っていた

だが…

 

 

頭部に一発のミサイルが直撃する

全身を包む激痛と屈辱感、ついにバルゴンの怒りが爆発した

周囲の雨粒が蒸発し霧になるほどの怒号を放ち、バルゴンの頭部のクリスタルが、背中を一直線に貫く水晶の背鰭が赤く明滅する

バルゴンの体が蒸気に包まれる、体内の高エネルギーが体表に当たる雨を蒸発させていた

高エネルギーの反応を司令部も感知、すぐさま周囲の各部隊に一斉に退避指示が下されるが

一手、遅い

 

 

帯電ネットが熱に耐えきれず弾け地切れると同時に生み出される目も眩む様な赤い閃光、

バルゴンの背から放たれた極太の虹色の光の柱ディアーヴォル・カルマ

天を衝いたそれは雨雲を貫き、光の柱を中心に円形に雲が瞬時に蒸発、霧散する

頂点に達した虹光は柱の上に球体を作り出し、それは四方八方に降り注ぎ地表の全てを薙ぎ払う死の虹と化した

電位差発生装置、ソニックビーム車と言ったらTCS構成機材、バルゴンを包囲していた主力車両部隊、海を挟んだ対岸の野砲部隊、更には湾内のくらしきのヘリ甲板が吹き飛び、湾外の米軍駆逐艦が直撃を受け爆散

上空の航空機にも被害が及び、落下してくるディアーヴォル・カルマの光線が数機のヘリと戦闘機に直撃、更に光の奔流が周囲に電磁波を嵐の様にまき散らしたため、それによって計器が破損したグリフォンが二機湾内に不時着

追尾してくる光線をXF-1とナイチンゲール部隊はなんとか回避

だが轟天号が直撃を受けブリッジに激震が走った。推進系をはじめ各回路に発生したダメージを補修要員が必死に修復を行う

 

 

爆風と轟音が飛び交う地獄と化した八代市郊外

天高くに昇った爆炎は遠く熊本にある前線指揮所でも確認でき、更に爆発で発生した地震も伝わって来た

周囲の隊員たちが混乱する中、黒木と麻生は混乱を沈めながら、後方で待機しているしらさぎとグリフォンの予備要員にすぐさま再び戦場上空へのヨウ化銀コロイド散布を命じる

だが、前線に展開していた車両部隊の損耗率は45%程

天草市の支援部隊、湾内外の支援攻撃部隊にも被害が及び、TCSを構成する電位差発生装置とソニックビーム車が多数破壊されたことで落雷制御機能も大幅に低下

更に上空の雷雲が霧散したため再びヨウ化銀を散布し人工雲を発生させるには最低でも2時間も時間が必要となる

まず、間に合わない

混乱を収束させ、残存部隊を球磨川以北に後退させ体勢を立て直したとして、バルゴンに対して再び有利に立てるだけの札がほぼない状態になってしまった

嫌な汗が黒木の顔を伝い落ちていく

それでも諦める事だけはできない。司令部の後方退避命令を下しつつも、黒木は必死に脳を回転させ状況の改善を図っていた

 

 

 

同時刻、桜島ではラドン復活作戦が開始された

ヘリに吊り下げられた大型スピーカーを通してサイキックメロディが鳴り響き、それを桜島を囲う様に設置された音響増幅装置が効果を高める

真弓はホワイトラドンに向けて祈る。どんな選択肢を選んでもいい

ただあなたに生きて欲しいと

浅黄とみどりも、同じくガメラに向けて強く思いを届けた

目覚めて欲しい、共に歩んで欲しい

手と手を重ね、二人に握りしめられた勾玉が熱を帯び赤く煌めく

 

 

 

熱いマグマが揺蕩う、地の底の暗闇

凍った体を大地の熱が溶かし、ホワイトラドンは静寂の中で傷を癒していた

頭に浮かぶのはバルゴンの恐怖、そして母の事

戦う事への恐怖もあったが、何より大切な母を守れなかったことが悔しかった

 

ふと、ホワイトラドンは何かが聞こえてくることに気付いた

それは歌だ。シプニオキスの思念波を通じて、子供たちが歌うサイキックメロディがホワイトラドンの元に届いた

親が子に強く幸福に生きることを願う、そのイメージがラドンに染み渡る

そして子供達の声に、シピニオキスの思念波に乗って一つのイメージがホワイトラドンの脳裏に浮かびあがった

目をつむり、手を握り、懸命に自分を想い願う真弓の、母の姿

 

カっとホワイトラドンは目を見開く。母親が自分の生を願っている、それは子供にとって何よりの希望だ、勇気が胸の奥から無限に湧き上がってくる

それは実際にホワイトラドンの肉体にも変化を与えた

全身から紫色の光が心臓の脈動に従って断続的に溢れ出し、全身に力が巡り、傷が癒え、翼が大きく大きく広がっていく

自分を包む溶岩の何倍もの熱を体内に感じながら、ラドンは一目散に火口へ、空に向かって飛びあがった

全ては、大切な人を守るために、戦うために

 

 

噴火の危険から自衛隊に連れられて桜島を離れ、垂水市にある牛根麓稲荷神社の境内から桜島を見守っていた真弓たち一同

火口付近では今もサイキックメロディが断続的に流れ続けているが、まだ島にも火山にも変化はない

やはりだめなのか…

 

 

その時、微かにだが地面が揺れ始めた

火山性の地震は、それを米森が知覚した瞬間一気に強くなり、浅黄とみどりが思わず転げそうになるほどになった

同時に、桜島の火口が赤く明滅する。断続的な発光は直ぐに継続的な光に変わり、やがて天高くに向かって赤々とした赤熱の柱が伸び上がった

かなり離れたここでも熱を感じるほどで、手を顔の前にかざしつつも真弓は炎の柱を凝視する

柱は伸びて伸びてやがて弾け、一つの影が弾けた柱の中から飛び出して来た

 

聞き覚えのある甲高い鳴き声。そう、ホワイトラドンだ

翼は一回りほど大きくなり、月明かりを反射して輝く銀色の体は紫焔を纏っている

雄々しい意志を感じさせる瞳の上、頭頂部の三本の角が、火山のエネルギーを内包していると表すかのように赤い光を引いていた

 

思わず笑顔になって崖のギリギリまで駆け出す真弓。声を上げながら手を振ると、ホワイトラドンもしっかりと真弓を見つめ返し鳴き声を返した

母の姿を確認したホワイトラドンはそのまま鹿児島湾上空を旋回、七ツ島からバルゴンの上陸ルートをトレースするように低空で飛行する

 

するとどうだろう、バルゴンが凍らせた市街地の氷が、ホワイトラドンの体から発せられる熱で音を立てて溶けていく

だが不思議な事に、同じくホワイトラドンの熱波を浴びた、真下で活動中の自衛隊員や救助隊員は穏やかなぬくもりを感じるだけで火傷一つ負う事はなかった

体内の熱を完ぺきに制御可能なホワイトラドンだからこそ出来る荒業だった

やがて

ひとしきり鹿児島湾に沿って飛んだホワイトラドンは、鹿児島大学キャンパス跡にある巨大な氷塊、ガメラの元に着陸した

翼を広げ、氷塊を挟んで包み込む。薄紫色の光がホワイトラドンから放たれ、氷塊が融解し目を開けられない程の水蒸気がホワイトラドンの姿を隠していく

水分が蒸発する音だけが霧の向こう側で響く時間が過ぎ、やがて情発音すらも搔き消え、静寂が周囲を包む

自衛隊員がかたずをのんで見守っていると、濛々とした水蒸気の壁の向こうで何かが赤く、そして紫色に光り、聞き覚えのある大きな大きな鳴き声が響いた

 

次の瞬間、水蒸気を熱風が吹き飛ばし、空に向かって二つの存在が急上昇した

高速飛行形態に変形したガメラとホワイトラドンが、それぞれ赤と紫の光を引きながら空を進んでいく

ガメラが復活した、なんとか吹き飛ばされずに済んだ自衛隊員はひたすらにそれを連呼するのだった

 

 

桜島を挟んで反対にいた真弓たちも、通信を傍受した自衛隊員からガメラ復活の報を聞き、北の空を見上げる

遠く高い空に、さらに北へと向かう二条の赤と紫の光が見て取れた

 

米森が言う、バルゴンにリベンジに向かうんだと

真弓はうなずき、勝利を願い続けるのだった




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第23話

お久しぶりです、長らく…大変長らくお待たせいたしてしまいました…
バルゴンが四脚の怪獣であった事、ガメラとホワイトがどう連携すれば迫力ある戦闘シーンになるのか、そしてダイジェスト風という形で進めている以上シーンごとの描写のバランスはどうするべきか、ととにかく悩みつつプライベートも忙しかったため、こんなにも時間がかかってしまいました。
お待ちいただいていた方々には深くお詫び申し上げます。
そして今回駆け足ですが対バルゴン編最終話となります、どうぞお楽しみくださいませ!


TCシステムと防衛線を突破したバルゴンは全身から体液を滴らせながらも球磨川を渡って熊本県八代市内を北上

一面に広がる田畑がバルゴンの血で染まり、その周囲を攻撃で生き残った地上車両部隊が包囲、距離を取りながら必死の攻撃を続けている

だがその総火力は明らかに低下しており、明らかにバルゴンの動きを抑えきれていない

ヨウ化銀コロイドを搭載した航空機部隊の到着も間に合いそうになく、上益城に防衛ラインを引きなおす提案も黒木とGフォース司令部の間で持ち上がっていたその時だった

 

鹿児島のラドン復活作戦従事部隊より連絡が入った。ガメラ、およびラドン復活、北西へ飛翔す

 

 

 

程なくしてバルゴンによって斑に穴が穿たれた黒い雨雲が赤い光を帯び始める

その熱によって生じた渦で黒雲は蒸発し、銀色の体に赤い炎を宿したホワイトラドンが、そしてガメラが現れた

 

性懲りもなく再び現れた忌まわしい敵に苛立ちをバルゴンは募らせる

エネルギーは手に入らず、それでいて人間どもには手痛いダメージを受けた屈辱の怒りがさらに燃え上り、背鰭を光らせディアーヴォル・カルマを発射した

消耗は無視できないが、今度こそ息の根を止めなければいけない

 

空中で直角に折れ曲がりこちらに向かってくる死の虹をガメラは低空に逃れ、ホワイトは体をきりもみ回転させて回避

マグマの高温を宿すホワイトの翼は、その被膜から高熱の空気をジェットの様に噴射する事で急速な機動角度の変更を行うことが出来る

鋭角な軌道を描きながら破壊光線を回避したホワイトの角と背鰭が青く輝くと、ゴジラの放射熱線よりも色が濃い青色の光波熱線『ボルカニック熱線』が口から放射されバルゴンの表皮を焼き、爆発が夜空を焦がした

サイキックメロディが活性化させたホワイトの生命力は、かつてのファイヤーラドン同様の能力を彼に与えているのだ

 

ホワイトの熱線のダメージに怒りの叫びをあげ、バルゴンは後ろ足だけで起ち上るとディアーヴォル・カルマの攻撃をさらに強めた

鬱陶しい鳥の一羽くらいは瞬く間に返り討ちにしてくれようとバルゴンは考えたが、それは油断でしかない

 

バルゴンの熱線をホワイトが引きつけている間に、低く低く低空からガメラはバルゴンに肉薄

地表すれすれで陸上形態に変化すると着地して地を滑り、その勢いのまま左腕の肘を前に突き出してバルゴンに突撃した

当然ガメラのエルボークローはバルゴンの胸の部分に深々と突き刺さる

大量の出血を伴いながら、悲鳴を上げるバルゴンはガメラに海岸の際まで押し出された

相手が自分の弱点を狙っていると察知したバルゴンは必死に尾を地面に突き刺して勢いを殺すが、200mもない所まで海が迫っている

唸り声を上げながら組みあいお互いを睨みつける二大怪獣

体格こそバルゴンの方が大きいが、立ち上がったバルゴンの懐に上手くガメラは潜り込んでおり、バルゴンが押しのけるのは難しい

一方ガメラは脚の隙間からジェットの噴煙を吹かし上げながら一歩一歩確実にバルゴンを海面に追い詰める

 

焦るバルゴンの背や側面をホワイトが攻撃して集中を乱し、重量のバランスが崩れるとガメラがまた一歩前進する

あと数歩もすれば海岸、という所でバルゴンは怒りの声を上げ、体を支えていた尾をおもむろに振り回すと、ガメラの柔らかい脇腹めがけて突き立てた!

緑色の血しぶきが飛び、ガメラが悲鳴を上げる

ぐりぐりとえぐるように突き立てられた尾の先端、結晶部位はバルゴンの能力で凍結しており、鋭い氷の刃によってより貫通力が高められている

その上突き立てられた結晶から超冷気がガメラの体内に直接注ぎこまれ、再びガメラの体が内側から凍り始めた

悲鳴が上がるガメラの口から緑色の血が垂れ、それすらも徐々に凍り付き氷柱へと変貌を遂げる

そこにさらにバルゴンが追い打ちをかけていく

伸ばした舌をまるでロープの様にガメラの首に何重にも巻き付け、渾身の力を込めて締め上げた!

熱を奪われ、呼吸を奪われ、血を奪われ、ガメラの体から少しずつ力が抜けていく

 

 

だがガメラは止まらない

自分の痛みを和らげるため、二人の少女が必死に苦しみに耐えている

だからガメラは歩みを止めない、体内の熱エネルギー炉が最大効率で稼働させ、ぶれる足に一層の力を籠める

徐々にバルゴンによる超冷温に、ガメラの超熱量が勝り始めていた

凍った血は再び溶けてしたたり落ち、全身が内側から薄く輝き始め、クローを突き刺していない手で握ったバルゴンの舌が手の高温で焼け焦げる

 

その姿に、勝っているはずのバルゴンが悲鳴を上げた

本能的に怯み、後ろに一歩後退するのをホワイトが見逃すはずもない

上空から高速で舞い降りたホワイトはバルゴンとガメラのごくわずかな隙間、体を90度横に倒し、翼が地面と垂直になる様にして狙いを付ける

ホワイトは口中で生成したボルカニック熱線のエネルギーを口から放つのではなく、そのまま飲み込み全身、特に両方の翼に行き渡らせて行く

翼がボルカニック熱線のエネルギーで発光し、熱線のエネルギーを放出する事でさらに加速を得たホワイトは一気に二体の怪獣の隙間をすり抜け、エネルギーで満たされた翼による切断攻撃、『ウインギングスライサー』でバルゴンの舌を切り裂いた!

 

 

毒々しい色合いのバルゴンの体液が噴水の様に切断された舌の断面から噴き出し、ガメラとバルゴンの体を紫に染めていく

反撃最大の好機、促すホワイトの声にガメラはうなずくと、最後の力を振り絞り、絶叫を上げて悶えるバルゴンの額、極彩色に輝く宝石を熱で蒸気を上げる右手でむんずと掴み、そのまま海に向かって足から噴煙を放って突進

紅いジェット噴射はバルゴンの体を浮かび上がらせ、胸にエルボークローを突き刺したままガメラは低空で八代海上空を飛び越え、富岡湾沖に突入した!

 

巨大な水柱が上がり、海が紫色に染まっていく

バルゴンの全身が溶け始める

必死に足搔き、激痛と死の恐怖の中なんとかガメラを引きはがそうとするが、それも出来ないまま額の宝石がガメラの握力と熱に負け、ついに砕け散った

背から放つディアーヴォル・カルマのエネルギーを制御する器官でもあったそれが失われ、とうとうバルゴンのあらゆる反撃能力はついに失われた

背中から暴走した虹色の光が四方八方に放出され、深夜の海を明るく輝かせる

薄れゆく意識の中でバルゴンが見た最期の光景、それは怒りの形相で口中にプラズマエネルギーを凝縮させるガメラの姿だった

 

 

バルゴンとガメラが富岡沖に沈み、海中での光の乱舞が収まると同時に、先ほどの落下で発生したそれの数倍の大きさの巨大な水柱が上がる

数秒も間を置かず、それを飲み込む勢いで今度は海底からの大爆発が海を焼き尽くした

 

 

司令部で固唾を飲んで状況を見守る黒木たち、真弓たちもヘリで熊本上空に差し掛かっていた

爆発の正体は?勝ったのはガメラか?それともバルゴンか?

 

海を焦がす黒煙の周囲をホワイトが旋回し、ガメラを呼ぶように鳴き続けると、海の底から円盤状態のガメラが飛び出してきた

ガメラが勝った。バルゴンは倒されたのだ

 

熊本の司令指揮所でもおもわず歓声が上がり、ため息をついて黒木は椅子に座り込む

ギリギリの勝利、否実質敗北した上で首の皮一本繋がった、今回はそんな状態だろう

 

 

真弓たちもヘリの中で心の底から安堵していた。浅黄とみどりがガメラを、真弓がホワイトをそれぞれ見つめ、ガメラたちも視線を返し見つめ合う

と、眼下の水面が青白く発光すると、水中から光の柱が吹き上がりそれに巻き込まれて何かが空中に飛び出し水面に落下した

 

それは異形だった

矢じりを思わせる頭部の形状は間違いなくギャオスだが、頭部後方の二角は長く背まで伸び、銀色の体色とバショウカジキを思わせる体型は魚のそれだ

水棲に適応し進化したであろう変異したギャオスは腹部に巨大な穴をあけ、体液をまき散らしながら水中へと沈んでいく

そして入れ違う様に少し遠くの水面が白く発光し、海面に大きな波を立たせ、ゴジラが現れた

 

ギャオスとの戦いからしばらくの間、同様の存在を懸念し太平洋一帯を回遊しアドノア島に戻っていなかった彼だが、先ほど海に没した水棲ギャオスを追って九州近海までやって来ていたのだろう

 

戦いを終え息をつくゴジラだが、すぐ目の前の光景に珍しくぎょっと目を見開いている

無理もない、空を見上げれば戦友であるガメラが、かつての義兄とよく似たホワイトと共に飛んでいるのだから

一方のガメラ側は既にゴジラの姿も見慣れたもの、ゆっくりと高度を落とすと、本能で傍らの戦友がいるべき場所が分かったのか、はたまた自分と共にいるべきではないと理解したのか、柔らかい鳴き声と身振りでホワイトをゴジラの方へと誘導する

 

ホワイトも最初は見た事もないゴジラに怯えに近い態度を取っていたが、ガメラに促され、ゴジラの周囲を飛んでいるうちに彼の内なる本能が徐々に目覚めていく

互いの温度、匂い、鳴き声、仕草、全てがお互いを共に生きる存在であると訴えかけてくる

 

ヘリからその光景を眺めていた真弓は後ろ髪を引かれる思いながらに決断する

彼がいるべき場所にいることが出来るように、怪獣たちが脳波で思いを伝えあうことが出来るなら…強くホワイトに向かい念じた

貴方はゴジラと一緒に生きて、と

そして真弓はヘリの操縦士に現場から離れるよう促し、窓から目を反らす

赤くなった目を誰にも見られないように

 

真弓の思いが通じたか、ホワイトは何度も何度も離れていくヘリを追いかけそうな素振りを見せ、やがてホワイトの判断を待っていたゴジラの方に向き直る

全てを察したゴジラもゆっくりと背を向け、ホワイトを引き連れて日本を去っていく

目指す先は故郷であり、ホワイトの新たな安住の地であるアドノア島

 

ガメラもヘリに乗る浅黄とみどりに目を配り、空の彼方へと消えていく

戦いが終わり、静寂を取り戻した九州、長い夜がやっと明ける

 

 

戦いを終え、自衛隊では損傷したスーパーXⅢ、戦いの連続からメンテナンス作業に入った轟天号と戦力の大きな低下を受け、MFS計画を加速させることを決定

G対策センターも新たにアドノア島の住人となったホワイトラドンについての研究と脱走防止の対策に追われることとなる

 

 

後日、ティアボー島にあったバルゴンを製造する生体プラント遺跡はGフォースと国連軍の手で完全に破壊され、二度とバルゴンが生み出されることはなくなった

アーヤとカレンは正式にパスポートを取得し日本の大学へ留学が決定

その事を報告し、村の宝である巨大ダイヤを返すべく、健一郎は再びティアボーの地を訪れる

村長と二人成長する子供達の姿を、父として語り合いながら酒を飲みかわすのだった

 

 

 

 

 




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第24話

執筆熱が残っているうちに少しでも!と言う事で今回は大分早く投稿することが出来ました!
ガメラ系怪獣の話が続いていたので今回は久しぶりに東宝系怪獣のお話に、文量のバランスなどはまだまだ試行錯誤中なので変な所があってもどうかご容赦くださいませ


MG-Tec 

メカキングギドラの残骸をリバースエンジニアリングしたことで現代人が手に入れた23世紀のオーバーテクノロジーの通称

 

かつてはメカゴジラやMOGERAと言った対G超兵器にのみ使用されていた極秘技術であったが

近年一部の技術が民間にも解禁され

重力制御装置

高効率太陽光発電システム

超高硬質カーボンの精製法

より効率的になった核融合システム

と様々な分野において活用されている

 

 

地球の対地同期軌道上を周回し、地上に送る電力を発電する超高効率太陽光発電衛星システム(HSSPS)もその一つだ

規則正しく宇宙空間に並べられた発電衛星の姿は宇宙の畑とも呼ばれ、全自動で24時間割り当てられた地区で利用される電力を発電し続けている

発電衛星群は一定のエリアごとに区分けされ、保守点検を行うエンジニアたちが暮らす拠点であると同時に、発生した電力をマイクロウェーブへと変換し地上へと送信する送信装置も兼ねている専用の宇宙ステーションに管理・保守点検されている

 

 

 

12月の中旬頃の事

その宇宙ステーションの一つ、欧州のフランスエリアへの発送電を行うEUFSS03から、突如エマージェンシーコールが地上の欧州宇宙機関ESA、そして国際連合宇宙局に向けて発信され、異常な電波によって妨害され途絶してしまった

ESAと国連宇宙局はすぐさま宇宙レスキュー部隊の派遣を決定、同時に近隣宙域を航行していた一隻の宇宙船にも事故現場への急行を打診する

 

SY-1サンライト

MG-Tecの一つである重力・慣性制御システムを発展多用し、将来的に推進力の全てを制御した重力で行う完全推進剤非依存推進システム及びそれを搭載した恒星間移動も視野に入れた高性能宇宙船開発計画の試作一号機である

 

全長50mを超える大型機でありながら、高性能重力子制御システムが生み出す運動性は最新の宇宙戦闘機にも匹敵、内部には小型ながら採取したサンプルを解析するラボ等も備えられている

また開発建造は国連科学委員会と国連宇宙局、そしてG対策センターが共同で行っているため、宇宙戦闘攻撃機と分類されている

 

 

機長ジミー・デイビット大尉は指示を受諾するとすぐさま了承し機体を指定されたポイントに急行させた

一縷の望みを賭けたクルー一同だったが、現場宙域で彼らが見たのは原形をとどめないまでに破壊されつくしたEUSSS03と無数の発電衛星の残骸であった

 

この事故で、フランスエリアに向けてのマイクロウェーブ送電効率が68%も低下したが、地上における核融合発電設備にはまだ発電可能上限に余裕があった事、フランス以外のエリアからのマイクロウェーブ送電の割合の見直しを図ることで辛うじて真冬の欧州における大規模停電と言う最悪の事態は防がれた

 

 

 

数日後

フランス第三の都市リヨン近郊、ヴェルダン山脈内にあるリヨン=モン・ヴェルダン空軍基地

その中心部にある作戦会議室に、世界各国の諜報機関の精鋭エージェントたちの姿があった

英国のMI6、アメリカはCIAのIMFチーム、アメリカ街頭寮直属機関であるオメガセクター、国際諜報機関V.S.S.E.、カナダのCSIS、ドイツのBND、日本も警視庁外事課の駒井刑事に防衛庁情報局員と、まさに世界中のエージェントの博覧会の様相を呈していた。フランスからもフィリップ・ロシェ率いるチームが参加している

リヨンに本部を置くICPOの捜査官の姿もあり、彼等彼女等は昨今世界中を騒がせている宝石強盗を一網打尽にすることを目的に今この地に集結しているのだ

 

 

 

その宝石強盗と言うのもただの宝石強盗ではない

時は1997年までさかのぼる

 

ビオランテ事件以後も陸軍を中心とした軍事政権に支配されていたサラジア共和国だったが、冷戦終結の余波から民主化革命の波が中近東の国家にも波及し

サラジア国内でもブルーローズ革命と後に呼ばれる民主化革命運動が盛んとなっていた

利権を失う事を拒否した当時の政府は武力で革命勢力に圧力をかけ徹底的に弾圧、革命勢力の壊滅を狙っていた

だが丁度その時、サラジアの首都ラディダを蠍型怪獣ギルタブルルが襲撃。首都を中心に多大な被害を国内に発生させるも、混乱の中で指導者層は場当たり的な対応に終始し、軍も戦力を逐次投入するか、前線で奮闘する兵を尻目に上層部が国外に逃亡するなどして一気に求心力が低下、事実上国家機能が崩壊してしまう

そこを隣国のセルジナ公国が介入し、Gフォースが派遣されギルタブルルは撃滅、国連による大規模な復興支援も開始され、完全に民意を失った旧政府関係者が追放され民主主義国家として再出発を果たし、周辺の中東国家の民主化も急速に進む事となった

 

 

この時に国家防衛を放棄し国外に逃亡、あるいは地下に潜伏した一部の旧サラジア軍上級将校たちが結集して現地でゲリラ組織となって権力奪還を目的とした反新政府活動を続けており、そのゲリラ組織が秘密裏に密入国させたゲリラ構成員や傭兵、現地協力者であるマフィアが件の宝石強盗の正体なのである

手に入れた貴金属類宝石類をブラックマーケットに流すことで資金を獲得し、それを元手に武装をより強化する事を目論んだのだ

 

現在ICPOでは、その宝石強盗集団がパリのヴァンドーム広場にあるグランサンクと呼ばれるフランスの五大ジュエラーを襲撃すると言う情報を掴んでおり

今回この場に派遣された各エージェントと、彼らに協力するフランス警察の特殊部隊GIGN、RAIDの精鋭で一網打尽にする作戦が実施される予定だ

 

平和になったサラジアの為にも、闇世界に貴重な宝石類が消えていくのを防ぐためにも、絶対に失敗する事は出来ない

 

 

 

 

そして強盗団による宝石店襲撃日と推定された当日、パリ市内は戦場と化していた

強盗団が防弾トラックの群れで宝石店前に乗り付けた瞬間に、彼等を包囲する形で警察特殊部隊とエージェントの精鋭チームが現れ銃撃戦が勃発

ライフルやマシンガンどころかロケットランチャーすら繰り出して必死に抵抗する強盗団と一進一退の攻防が続いていた

 

 

 

同じ頃、リヨン=モン・ヴェルダン空軍基地にあるフランス空軍の中枢部、統合軍航空部隊司令官ではパリを中心とした数百km地帯の上空で飛び交う異常な電波を受信していた

航空管制通信すら妨害する強い強度の電波でフランス中の通信網が大混乱に陥っている

 

国連宇宙局では発生した電波の波長がEUFSS03の緊急通信を遮断した物と同じであるとして、再びサンライトSY-1を電波の発信源と思われる宙域へ派遣

同時にGフォースEUにエクレールの出撃を打診する

 

 

 

依然特殊部隊と強盗団の間で激しい銃撃戦が繰り広げられていたパリ市内

彼等の頭上の空が突如黒雲に包まれたかと思うと、雷とは違うスパークが雲の内で発生し、そこから異形の存在が現れた

半透明な白と青、あるいは緑の体表。その内側で体内器官が規則的に発光し、雲の上から地表まで伸びる無数の長い触手を持っており、その姿はタコやイカ、あるいはクラゲをほうふつとさせ

空気が細い管から抜けるような不気味な鳴き声を発している

 

 

 

周囲の人々の悲鳴と通信障害からエージェントチームも空の異常に気が付くが、その頃には生物から伸びた触手が強盗団のバンに巻き付き車体をへし折っていた

衝撃でバンが爆発し、近くに停車していた強盗団の他のトラックや車も次々と誘爆、隠れていた団員が爆発に巻き込まれて吹き飛び、エージェントチームが爆発に怯んでいる隙に見せの裏口から強盗団の残党は逃走を図った

だが店内に飛び込んだ彼らは異様な風景に愕然とする

店員も客もいなくなったジュエリーショップの店内、防弾ガラスに守られて展示されていたはずの宝石を、裏口や窓から侵入した同じような触手が貪るように飲み込んでいたのだ

唖然としているうちに生物の触手がさらに何本も押し寄せて建物を圧迫、一人の団員が柱の崩壊に気付いて何とか逃げ出すが、残りの全員が崩壊に巻き込まれてしまった

 

 

そして唯一生き残った強盗犯も、逃げた先に回り込んだエージェントたちの目の前で触手にからめとられ、悲鳴を上げながら全身から発火し、燃えながら空へ高く高く運ばれて行ってしまう

地面には犯人がこぼれたダイヤが転がり、エージェントたちの顔をむなしく反射しているのだった




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第25話

箸休めのドゴラ編最終話となります。
はてさて次回登場する怪獣は…?


宇宙から突如飛来した無定形の怪獣、首都パリに出現した個体に対応するべくエクレールが出撃したが、現れた数は一体ではなかった。

ほぼ同時期に2体の同種の存在が確認され、1体はフランス南部、地中海に面したマルセイユ。

もう1体は欧州大陸を挟んだ真反対、英国本島に面した港湾都市ダンケルク

そちらにはGフォースEU、フランス空軍、およびESSOAの航空機部隊が即座に発進、フランス海軍も軍艦を派遣し迎撃作戦を開始した。

 

 

パリ上空に到着したエクレールのリニアカタパルトが展開され、電磁加速を賭けられた6機の航空機が発進する。

フランス初の対特殊戦略作戦用多用途戦闘機として開発されたF・I フィエルテだ

ダブルデルタ翼とカナード翼を持つ優れた運動性が持ち味の機体で、日本のXF-1、アメリカのナイチンゲール同様に重力制御装置を内蔵し空力に縛られない機体制御が可能である。

指揮を執るのはかつてGフォースで対G超兵器ガルーダの正規パイロットを務めていたランディ・ジョンソン大尉。

 

 

 

主兵装であるミサイルとレーザーカノンを発射し怪物に攻撃を仕掛けるフィエルテ戦隊。

だがミサイルの直撃で分裂したはずの怪獣の体組織は、生命活動を停止することなく発行を続け、小型の怪獣となってしまった。

物理的な爆発ではむしろ敵を増やすだけと判断したエクレール艦長ヴュレ大佐は光学兵器攻撃に切り替える物の、凄まじい大きさを持つ怪獣の細胞を完全に焼却するには火力があまりにも足りなさすぎた。

 

出撃命令を受けたサンライトSY-1が大気圏に突入、パリに到着した時には怪獣は既にパリ中心部から西側に進み、フランスの経済中心地であるラ・デファンス地区の工場地帯を破壊し、崩壊させた建築物から何かを吸い出していた。

黒く鈍い光を放つそれは、現在様々な分野で活用されているMG-Tecの産物であるスーパーカーボン繊維の素材となる炭素結晶体だ。

これは先日破壊された超高効率太陽光発電衛星でも使用されているもので、当然それを保守するEUFS03でも大量に備蓄されていた。

 

 

 

この怪物が先日の宇宙遭難事件の真犯人と言うわけだ。

すぐさまサンライトSY-1も攻撃に参加するが、物理的な攻撃は怪獣の分裂をただ促進するだけにすぎず、結局破壊した工場から炭素素材を吸いつくすと、怪獣はそのまま黒雲の中に姿を消していった。

それはマルセイユとダンケルクでも同様で、港湾設備内に備蓄されていた流通途中の炭素繊維素材が怪獣によってすべて貪られており、その過程で発生した被害もまた甚大だ。

複数の工場、倉庫から火の手が上がり、十万tクラスの輸送船が複数転覆、あるいは沈没してしまっている。

 

 

 

 

 

翌日、フランス空軍の中枢であるパリ第117空軍基地で早速今回の怪獣の事件に対する対策会議が開かれることとなる。

各セクションの首脳陣が集まり、被害状況と怪獣についての情報共有、確認が行われた。

まず、今回出現した怪獣を古代ガリアの神話に登場する死神からドゴラと命名。

戦闘で本体から分離した細胞を解析した結果、この怪獣の外見上の肉体は細胞レベルの微小なドゴラが集まって構築された群体であることが判明した。

複数のドゴラ細胞が分裂と増殖の過程で生命活動に必要なパーツとしての機能に特化して成長し、空を埋め尽くす巨大なドゴラの異様となっていたのである。

自然界でいうなればカツオノエボシ等に似た生体を持っていることになる。

ミサイル攻撃を受けてはじけ飛んだドゴラの破片が空中に留まっていたのはこのためだ。

メーサー大鉄球の制御にリソースを割く為に特装砲である艦首のハイパープラズマメーサーキャノン以外をすべて実弾兵装で固めているエクレールとの相性は最悪と言っていい。

レーザー砲を装備しているフィエルテの攻撃は細胞を直接焼却できるためダメージを与えることが可能だが、巨大な細胞となったドゴラを完全殲滅するのは難しいだろう。

 

また、ドゴラ出現の際に発生する大規模電波障害は生命活動が活発化したドゴラが群体内で意思疎通を行う際に発生する生体電気が原因であると推測された。

 

 

 

他方、ドゴラが今回フランスを襲撃した理由も戦闘中に判明している。

ハイパーカーボン繊維の素材となる炭素こそがドゴラ達のエネルギー源。宝石店を襲ったのもダイヤモンドの存在を探知したからだろう。

 

炭素繊維で作られるハイパーカーボン工材は今後のあらゆる分野において必須であり、これを貪られることは人類の発展の停止を意味する。

そして同時に、炭素を捕食対象としていると言う事はいずれドゴラは人をも食べ始める可能性を持ち合わせていることを意味していた。

 

炭素は人の肉体を形作るうえで無くてはならない元素だ。

筋肉、骨格、DNA、RNAの根幹は炭素であり、人体を構成する元素の割合で言えば酸素の次に多く、体重50kgの成人男性で言えばそのうちの9kgが炭素の割合になる

一般的に流通しているダイヤモンドよりも余程量は多く、いずれ人やそれ以外の生命体も有効な炭素接種元として味を占めるだろう。

その前に何としてもドゴラ撃滅の糸口を見つけ出さなければならない。

 

 

 

ドゴラのフランス襲撃から数日後。

今までに無いタイプの怪獣の姿と性質に人々が頭を悩ませていた時、破壊されたマルセイユの炭素貯蔵庫近くで検証を続けていたGフォースの化学研究班が奇妙な物体を発見する。

一抱え程もある奇妙な色の木片、あるいは石の様な塊。それが貯蔵庫の裏手あちこちに転がっていた。

研究所に持ち帰って精密な検査を行ってみたところ、驚くべきことが分かる

先立って回収されたドゴラの細胞と非常に組成が似通っている。

更に検証を進めていくと、それはチャグロゼニモンスズメバチと言う、欧州全体を生息域にする地中棲のスズメバチの毒によって化学変化が起こり、結晶化・死亡した物であると判明した。

 

地中に有ったスズメバチの巣が貯蔵施設が破壊される過程で地上に露出し、怒ったスズメバチの反撃を受けてドゴラの細胞が変化してしまったのだ。

 

これこそドゴラ最大の弱点であると見抜いたGフォースとESSOAは世界中に蜂毒の組成を公表し、世界規模での生産を依頼。

早速世界各国で合成蜂毒薬品を大量に生産、アメリカや日本は轟天号、ランブリングをも用いてフランスへと輸送。

更に欧州環境機関が人口降雨研究の中で開発した大型噴霧器を蜂毒散布の為に提供

エクレール、フィエルテの搭載する全ミサイルも弾頭に蜂毒を内蔵した炸裂式ミサイルに変更され、ドゴラ迎撃の為にESSOA、GフォースEUのメーサーを始めとした対獣迎撃部隊もパリ市内、マルセイユ、ダンケルク両港に展開する。

 

迎撃準備完了から二日後、再びパリ上空で大規模な衛星通信障害が発生、エクレールとサンライトSY-1、フィエルテ部隊が出撃し、花の都を暗く包み込む暗雲の中にドゴラの姿を見つける。

続けてマルセイユ、ダンケルクにも再びドゴラ出現の報が舞い込んできた。

 

攻撃命令が発生され、各航空隊、高射部隊は次々と蜂毒入りの対空ミサイルを発射、メーサー部隊も火力支援を行い、空を包み込まんばかりに巨大化したドゴラに向かって攻撃が突き刺さる。

前回は何食わぬ顔で空を進んでいたドゴラだったが、やはり今回は蜂毒が効果を発揮、苦しむ様に体内の発光器官を滅茶苦茶に明滅させると、明確な敵意を持って航空機に向かい触手を伸ばしてくる。

フィエルテは鋭角軌道で、サンライトは機体の前後を二機の航空機に分離させて回避する。

サンライトSY-1は分離・合体機能を有した万能宇宙機だ、前方は速力と運動性に優れた戦術偵察戦闘機『αラプター』に、後方は大推力と大火力を両立した高速戦闘攻撃機『βバスター』へと分離し巧みなコンビネーションを発揮することが出来る

レーザービームとミサイルの雨を放ちながら触手の間を潜り抜ける二機の攻撃を受け、ドゴラの結晶化は更に侵攻。

ついに半透明だったその体はステンドグラスを思わせる極彩色の角ばった物に変質し、きしむ様な音を立てて身動きを止めた。

そこにエクレールが突撃、メーサー大鉄球を真正面から撃ちこむと、ついにドゴラは粉々に砕け散った。

 

マルセイユ、ダンケルクにおいても奮戦の結果二匹のドゴラの撃滅に成功したと連絡が届き、司令本部には歓喜の声が鳴り響く。

 

 

パリを襲った宇宙の悪魔は人々の努力によって撃退された。

一方で今回の戦いの推移は、空からの襲来者への備えの甘さを痛感させるものとなった。

改めて本格的な地球へ襲来する空の脅威への対策を講じなければいけない。

国と人々を守る役目につく者達はそれを痛感するのだった。

 

そう、空の果てからも脅威は地球へとやってくる。

地球への衝突コースを取る隕石をNASAが発見したのは、年も明けて直ぐ、2002年初頭の事であった。

 




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第26話

お久しぶりです、今回から新しいエピソードがスタートします!
果たしてちゃんと書ききれるのか不安ですが全力で頑張ります!
そろそろモスラとか出したいのですがそれをやるにはどうしてもこっちを先にやらないといけないジレンマも…



NASAが地球への落下軌道に乗る複数の隕石群を発見したのは、落下予想日時の僅か二日前。

 

地球への衝突の懸念がある近傍天体は、一定以上の大きさであれば本来は最低でも地球への最接近一週間前頃までにはその大体を捕捉する事が出来る。

Gフォースの宇宙レーダーが各国の監視網、木星、火星、月の開拓団のレーダーネットワークと連携して常に太陽系の全領域に目を光らせているためだ。

 

 

だが数週間前に地球に飛来した大規模太陽風と、昨年末欧州に出現したドゴラにより磁力帯に混乱が起きたことで、衛星軌道上の天体観察衛星ネットワーク本来のスペックが発揮できず制度が格段に低下してしまっていた。

 

幸運にも解析の結果、隕石その物の大きさや質量は決して大きい物ではない事。

落下軌道も太平洋上から北海道南西部にかけて、人的被害の懸念が少ない場所と言う計算結果がはじき出されている。

そして少なくとも、データ上では人工物=外宇宙からの侵略者の可能性が低い、と言う事も。

パニックを懸念した各国は流星群と一般市民に発表することを決定した。

 

 

 

隕石落下当日。隕石は計算で算出された軌道そのままに、北マリアナ諸島上空から地球の大気圏に突入。

断熱圧縮の影響で隕石は三つの破片に分裂し、茨城県の沖合約345kmの地点、岩手県三陸海岸沖合約90kmの地点にそれぞれ落下。

最後に最も巨大な本体核は、北海道白老町付近で流星群を観察しようとしていた札幌青少年科学館の観望会ツアーの子供達の真上を通り越し、支笏湖北西1km、千歳市奥潭付近に落下。

陸自は真駒内から化学防護小隊を出動させ、特自もヘリにて生物災害対応班を派遣した。

だが季節は年明け直後の真冬、折しも北海道南部は大雪が降り注いでおり、陸路空路共に現地入りにすら時間がかかり、本格的な調査は夜が明けてからと言う事となった。

 

 

翌朝、雲一つない快晴の直下。先発した自衛隊員が落着跡で作業を進めている所に一機のグリフォンが着陸。

CCIから派遣された宮坂四郎博士、特自内の特殊生物研究セクションGグラスパー所属の山口剛博士、二人の護衛役として小早川時彦三等殊佐の三名と、埼玉の大宮化学学校から科学的・生物学的汚染に対するスペシャリストとして、渡良瀬佑介二等陸佐と部下の花谷保三尉がそれぞれ派遣された。

化防小隊指揮官笹井小隊長と合流した各々は笹井から奇妙な事を知らされる。

化学的、生物学的な汚染は確認できず、また特殊生物と思われる異常な生命体も発見されていない。

 

だが、予想された落下軌道に比べて着弾したと思わしき箇所に若干のずれがあった事。

ヘリによる上空からの3Dスキャニングによるクレーター形状と、更に周辺の森林の燃焼具合から、着地寸前に一方方向に急激な高熱を帯びた気流の噴出があったことが判明。

まるで落下の勢いを和らげるために制動が掛かったようだと言う。

勿論何かしらの偶然が積み重なれば発生しうる現象ではあるが、すでに地球は異星生命による侵略を数回受けている。

また何かしらの存在が地球に潜入した可能性があるとして四郎はGグラスパー及び特自にスタッフの増員派遣を要請した。

 

 

同日の夜、支笏湖上空に緑色のオーロラが発生、隕石の落下によって磁力線のひずみが発生したと思われ、その奇妙な光の下で探索作業を続けていた祐介達は、夜の雪の中で立ち往生した車と、乗車していた札幌青少年科学館の職員穂波碧、同所長野尻明雄を救助する。

二人は発生したオーロラを調べるために札幌からやってきたのだ。

隕石の正体が気になると言う碧に祐介は宇宙から飛来した隕石は何かしらの特殊生物が関係しているかもしれないと言う推察を話し、碧、昭雄ともに今後何かあった場合調査への協力を約束。

どこか穏やかな雰囲気が場に漂う中、ふと祐介がタバコを吸うためにライターの火をつけると、彼の顔に匹敵する巨大な炎がライターから噴き出すという異常事態が発生、場が凍り付いた。

 

 

隕石落下から3日目の深夜、キリンビールの北海道千歳工場でビール用を始めとした数百ダースのビール瓶が消失。

更に千歳市、恵庭市、北広島市、札幌市の南部各地で電話通信、インターネット通信用光ファイバーケーブルが損失すると言う事件が発生。

 

NTT職員帯津満と懇意にしていた碧は祐介達との邂逅から、損失が恵庭岳近辺から時間に沿って北上しつつ発生していることを見抜き、翌日ビール工場の事件調査に出向いていた祐介達にもそのデータを示し、何かが札幌の中心部に向かって移動していることを告げる。

 

自分達の見えないどこかで、悪意を持った何かがうごめいていることは間違いない。

祐介達は隕石から出現した特殊生物による被害であると断定し、自衛隊、警察と共同して必死にその「犯人」を捜査探し出すべく奔走した。

だが、事態は既に彼の想定を超える規模にまで膨れ上がっていたのである。

 

 

 

隕石落下から5日経過した早朝の札幌。92年のギドラ事件の際にゴジラによって倒壊させられ、復興の中で復活を果たしたさっぽろテレビ塔に見下ろされる市営地下鉄南北線大通駅から、警察に緊急入電が入る。

 

真駒内駅行始発電車の車掌から奇妙な生物により運転手が殺害され、乗客にも被害が出ていると言う連絡が入ったと言う。

 

 

これを特殊生物災害と断定、北海道知事の承認を受け道警所属のSUMP、イプシロンチームとオミクロンチームが出動し、祐介達自衛隊も一報を受け札幌に急行する。

 

先着したSUMPの2チームは、地下鉄大通駅とすすきの駅の2か所から構内に突入を敢行。

大火力のロケットランチャーや火炎放射器は狭い地下鉄の構内では誘爆、誤爆の危険性、更に要救助者に被害を与える可能性がある事から持ち込みは禁止された。

後にこれは別の意味で隊員達の命を守る事となる。

 

 

構内に降りたSUMP隊は地下鉄車両を発見。救助の為に接近を試みたところ、突如地上との通信が途切れ、構内の四方八方から甲殻類、或いは昆虫を思わせる謎の生物が出現しSUMP隊員に襲い掛かる。

対特殊生命体戦を想定しているSUMPは奇襲に驚きながらも懸命に反撃。

幸運にも生物はライフル弾が効力を発揮し、隊員たちは傷付き無尽蔵に現れる生物に苦戦しながらもじりじりと車両に向かって距離を縮めつつあった。

そこに祐介達自衛隊化学班も、特自の緊急要請を受けたグリフォン2機で大通公園に緊急着陸。

フル武装の上で地下鉄に突入しSUMP隊に合流、戦局を打破し一気に車両内に雪崩れ込んだ。

 

 

そこは地獄だった。

血の海、数時間前まで生きていた人間の一部だった物が散乱する、百戦錬磨の彼等すら目を背け吐き気を催す地獄のような光景が車両内に広がる。

だがわずかながらの生存者を確認できる。一人でも生きているのならば絶対に助ける。

そう決意した祐介はSUMP、自衛隊の全隊員を地下鉄車両に乗り込ませ、無理やり運転席のドアを突破すると地下鉄を再起動させ強引に発進。

押し寄せる生物群を蹴散らしながら大通駅まで何とか運転すると待機していた後詰の自衛隊員と共に生存者、負傷者を懸命に外に向かって運び出す。

笹井も、保も、時彦も血まみれだった。

 

 

ついに生存者を連れて駅から脱出したその時、凄まじい地鳴りと共に、すすきの駅に隣接しているロビンソン百貨店札幌店が激しく振動し、窓ガラスが、壁面が砕け散り地面へと降り注ぐ。

 

 

唖然とする祐介達の目の前、ビルの屋上を突き破って、何かの『つぼみ』がその姿を現していた。




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第27話

まさかの連日投稿!連休だったので只管ガメラ2見ながらなんとか形に。
最近はゴジラもガメラもいろんな企画が動いていて素晴らしいなあ…



さて、今回はいよいよ花谷隊員の名台詞です!


謎の生物に襲われた札幌市営地下鉄、死者数は全車両の乗客の5割にも昇り、老若男女関係なく多くの人命が奪われた。

正月休みの連休中の始発、乗客自体の数が少ない事が不幸中の幸いであったが、それを素直に喜べる人間は何処にもいない。

 

 

 

グリフォンで先行した祐介達に遅れて化防小隊の第二陣が各種計測装置などを伴って到着。

札幌中央病院に被害者を送り届けた祐介達が現場に戻る頃には地下鉄構内の各種データが揃いつつあった。

 

札幌駐屯地の北部総監部で開示された地下鉄構内のデータは恐るべきものだった。

構内の酸素濃度は78%、これは通常の空気の中に存在している酸素の4倍の量を意味する。

地球に生息する殆どの生物にとって、酸素は生きる上で必要不可欠な元素だ。

それこそ人間であろうとゴジラであろうと、酸素が無ければ死んでしまう。

だが同時に、濃度が高ければ高いほどいいと言うわけではない。

高濃度の酸素を長時間に渡って吸い込むと、気道粘膜や肺胞が障害され、重篤な場合は呼吸不全に陥り死に至る。

 

 

あの生物、特に草体が行っていることは、アドノア島でミレニアンが行ったテラフォーミングと同じものと見て良いだろう。

彼等の存在を許せば、地球はあらゆる既存生命が生きていくことが不可能な星に成り代わる。共存の可能性はない。

 

そして同時に、SUMP隊が被害者を想定して重火器を持ち込まなかった事が結果的に彼らの命を救っている。

現在の高濃度酸素下で爆発を起こせば、大量の酸素に一気に引火し地下鉄構内は火の海になっていただろう。

爆炎、もしくは大量の酸素が一気に消費され急性的な酸欠を引き起こし、死傷者の数は膨れ上がったに違いない。

 

 

草体、と呼称された巨大植物と宇宙生物を速やかに殲滅するべし、と国連G対策センター並びに日本政府は要請を下し、自衛隊及びGフォースは作戦を開始する。

 

 

札幌中心部は立ち入り禁止となり、移動司令部をさっぽろテレビ塔直下の公園に設置。

Gフォースの歩兵部隊とMPM部隊が生物が地上に出現しないよう、植物の出現によって崩壊したデパート周囲を固める。

 

 

地下鉄構内では植物を排除するため、根や茎にプラスチック爆弾の設置が行われていた。

 

これは碧に知見を求めた祐介が、彼女から聞いたハキリアリとアリタケの共生をヒントに発案した作戦だった。

生物と草体が依存関係にあるならば、まず片方を駆除する事が出来ればもう片方はそれ以上の繁殖を行う事が出来なくなる。

無尽蔵に出現する生物を危険な構内で完全に駆除するよりも、移動する事が出来ない草体を破壊する方が早い、と言うわけだ。

 

まず地下鉄構内とデパート地下に爆破を発生させ、充満している高濃度酸素への引火を利用して草体の下層部と根を完全に破壊。

栄養供給を絶つことで草体からの高濃度酸素放出を寸断し、その上で地上においてデパートを東西から挟む様に展開しているGフォースの冷凍メーサー部隊の攻撃で草体本体を凍結させ破砕する。

本来ならば直接メーサー部隊の攻撃で草体を真っ先に破壊したいところだが、周囲の高濃度酸素への引火で大爆発を起こす可能性があったため、このように複数の順序を踏む必要があった。

 

 

一方、碧にはまだ懸念していることがあった。

彼等が高濃度酸素を放出し続けている理由と、草体がどうやって繁殖を行うか、その手段だ。

植物は自分達の種族を繁栄・保存させるため、様々な工夫を凝らして自らの種子を新たな地に向かって放出する。

あるものは種子を動物に食べさせ排出によっての散布を狙い。

あるものは風に乗って少しでも遠くに種子を飛ばそうとし。

あるものは、接触などの外的要因で種子を弾き飛ばす。

恒星間、或いは星系間すらも考慮した『渡り』の方法は何なのか、碧にはそれが懸念だった。

 

翌日夕方、札幌の市民避難と爆破準備が着々と進む中、碧と満は札幌大学のコンピュータ室にいた。

草体の繁殖方法がどうしても気になった彼女は満と祐介に相談し、特殊戦略作戦への協力と言う事で大学の高性能コンピュータを貸し切ったのである。

突飛な発想だけれど…と恐縮する碧に、彼女等に協力するため大学に残った四郎は彼女の発想を肯定する。

 

 

スミレ、ホウセンカ、カタバミ等、種子を内包する実が収縮と硬化を起こし、何かしらの刺激を受けることで破裂、種子を遠くに飛ばすと言う性質を持っている。

高濃度酸素を利用すると言う事についても、ある意味でこれはタンポポの様な風を利用して種子を遠くに飛ばす方式の一種とも言えるし、コアラの餌として有名なユーカリはその油分にテンペルと言う非常に揮発性の高い成分を内包している。

これが落雷や自然の熱波などで引火する事で周囲に広大な山火事を引き起こし、周辺の自分たち以外の植物を軒並み焼き尽くす。

その後、事前に地面に落ちた耐火機能を持つ種子から新たなユーカリが発芽しその生息範囲を広げる、と四郎は植物の恐るべき性質を解説した。

 

 

同時に、満はコンピュータに入力した各種データから、草体が種子を大気圏外打ち上げるとする場合、発生する爆発はどのような規模になるかを計算していた。

 

その結果に、碧も、満も、四郎も総毛だった。

爆発範囲を意味する赤い円が、札幌中心部を模した3Dモデルを完ぺきに飲み込んでしまう。

推定半径、約6km。住民が避難している藻岩山や彌彦神社もそれに巻き込まれてしまう。

今自分達がいる北海道大学も。

3人は慌てて大学を飛び出すと、作戦司令部にいる祐介や作戦の指揮を執る大河内一等陸佐にデータと情報の全てを開示した。

ほぼ同時刻、草体からの酸素噴出量が増加し札幌市の上空にオーロラが出現、電波妨害もひどくなり、特殊戦略作戦室との通信も途切れてしまう。

 

発射が間際に迫っている事は間違いなく、避難か作戦続行かで司令部の意見も分かれる中、祐介の進言から地下鉄構内限定でを爆破を行い酸素供給を寸断する事を大河内連隊長が決断。

 

 

速やかに爆破が行われ、駅入り口から黒煙が吹き上がってくる。

と同時に草体からの酸素発生が停止し、草体内部の温度が急激に低下した。

一撃を加えることに成功したのだ。

作戦が成功した…と思われたその時、電波妨害が解かれ、回復した特殊戦略作戦室から驚くべき情報が司令部に飛び込む。

 

 

三陸沖海底よりガメラが出現し、札幌方面に向かって飛び立った!

 

 

祐介達が驚愕する中、既に札幌に到達していたガメラはすすきの市街地に着陸する。

甲羅が巨大化し、顔つきも鋭く牙が延長しているように見える。

ガメラは怒りの形相で草体に接近すると、周囲の高濃度酸素を取り込みながら草体に向かってプラズマブリットを発射。

花の部分を吹き飛ばしたかと思うとそのまま草体を両腕で掴み、デパートを破壊しながら大通りに投げつける。

自衛隊員やMPM部隊が必死に逃げる中、叩きつけられた草体に向かって複数発のプラズマカブリットをガメラは再び発射。

札幌の空を爆炎で紅に染めながら、草体を完全に焼き尽くしてしまった。

 

 

ガメラの奮闘を薄く笑みを浮かべながら見守る碧たち。

だがその直後、破壊された草体跡から無数の生物が出現する。爆弾設置作業中にかなりの数が駆除されたはずだが、それが無駄だと思えるほど、まるで絨毯か波の様に市街地を黒く染めながら進んだ生物はガメラの体にまとわりついていく。

ガメラの姿が完全に見えなくなるほどの生物の数、しかもところどころ、放電しているかのように生物が発光し、腕を振り乱しながら苦しむガメラの悲鳴が響き渡る。

 

 

唖然とそれを見ていたGフォースと自衛隊だが、黒木の一喝に我を取り戻すとメーサー部隊、MPM部隊がガメラを援護する為に体表の生物に攻撃を開始。

苦痛を和らげ、呼吸を安定して行えるようにガメラの頭部周辺の生物に向かい通常モードに切り替えたメーサービームを発射する。

メーサービームが直撃し、もぎ取れるように数十匹の生物が顔から分離する。

だがその数は余りにも膨大で、攻撃に反応したかのように百匹ほどの群れがメーサー部隊にまで襲い掛かってきた。

慌ててメーサー部隊は後退し、車両に飛び掛かりそうになった生物をジャガーやティグレスが車両周囲を飛び回りながら銃撃で駆除していく。

 

悪魔の群れに貪り食われるかのように、苦しみ緑色の血をまき散らしながら悲鳴を上げるガメラ。

 

呆然と見上げていた保が独り言のようにつぶやく。

 

 

 

 

 

 

 

 

主が、お前の名は何かとお尋ねになると、それは答えた。

 

 

 

我が名はレギオン。我々は大勢であるが故に。

 

―マルコによる福音書5章9節―




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第28話

前回投稿してからものすごい勢いでお気に入り登録の数増えたんですよ…ナンデ?ドウシテ?

と、とりあえず気を取り直してレギオン編3話目です。一応これで原作は大体半分くらいまで消化した感じに。
ただそうは問屋が卸さないのが怪獣の恐ろしい所、果たしてどうなっていくのやら
お楽しみいただけたら幸いです!


全身に纏わりついた宇宙生物の放電攻撃を受け苦しむガメラ。

悶絶しながら幾つものビルを崩し、やがて大通りに倒れ込んでしまう。

アスファルトに降り積もった雪をガメラの血が緑に染め、その姿を見た大河内司令官はメーサー部隊による援護攻撃を再び指示。

 

だが、メーサー部隊が体勢を立て直す前に異変が起こる。ガメラの頭部を包み込んでいた生物の一団が、まるで何かに引き寄せられるかのように離れて行った。

 

その一瞬の隙をガメラは見逃さない。

脳裏に浮かぶ浅黄とみどりの応援の声に応え、四肢を引き込むとスピニングフレイムを発動し紅いジェット炎を放出しながら円盤形態へと変化。

 

高熱で纏わりつく怪物たちを焼き尽くしながら空の彼方へと飛び去って行った。

 

 

 

戦いがひと段落し、自衛隊ががれきの撤去作業を始める中、碧があるビルの屋上を指さす。

そこには近隣の商店街が使用する電力を配電するための受電設備があり、剝き出しの高圧線に多数の生物がまるで虫取り網に絡みつくようにして死んでいた。

どうやら転倒したガメラの頭部から離れた生物の一団のようだ。

あんなところで何を?

一同が疑問に思った瞬間、静かに地面が振動し始める。それは時間を置かずに大きくなり、地下からせりあがってくるのが分かった。

保が叫び、一同がその場から全力疾走で逃げ出した直後、すすきの駅の入り口を吹き飛ばし、先ほどまでの生物よりも二回りほど巨大な生物が現れた。

 

黑を原色とし、曲面が多く一つ目のそれまでの生物とは正反対、象牙色、鋭角的なフォルム、1対の目。そしてその巨体を空中に制止させるほどの揚力を生みだす羽。

 

白い生物は忌々しそうに祐介達を一睨みすると、南西に向かって飛び去って行く。

 

 

 

その姿は空自の警戒網によって速やかに捕捉され、追撃機が千歳基地からスクランブルする。

空自のF-15と特自のXF-1が2機ずつの4機編成の航空隊だ。

 

4機は津軽海峡上空で大型飛行生物に追いつき、視認。武装ロックを解除し攻撃を行おうと加速する。

だが、生物は鞘翅と思われる羽根の甲羅部分から何かを空中に投下した。

カプセル状のそれは空中で溶けるように消えると、飛行生物を黒く小型化させたような3匹の生物となって追撃する戦闘機隊に襲い掛かって来る!

 

 

予想だにしなかったところで発生した空中戦。

大型生物より放たれた飛行生物は、左右に分かれた角の中央部分から砲弾状の電撃を発射し攻撃を行ってくる。

羽根で飛行しているとは思えない程運動性も鋭く、戦闘機隊と互角の戦いが繰り広げられた。

3匹中2匹はXF-1の攻撃で撃墜に成功したが、残り1匹のが粘り強く追撃を妨害し、なかなか大型生物への攻撃可能位置に着くことが出来ない。

間もなく生物は今別の上空に到達し、本土に上陸されてしまう!その瞬間であった

 

上空を飛ぶ最後の飛行生物、そこに下方から青白い熱線が撃ちこまれ、正確に打ち抜き、爆破する。

 

驚いたXF-1のパイロットがキャノピーから海面をのぞき込むと、そこにはゴジラの姿があった。

 

 

バルゴンの事件以来、定期的にアドノア島を抜け出してはギャオスの変意種を倒すために様々な場所に出現していることが確認されていたが、まさかこのタイミングで日本の領土内にいたとは。

ゴジラの攻撃の精密さに驚くパイロットたちだったが、遠く聞こえるゴジラの声に大型種への攻撃を敢行。

全機からミサイルが一斉に発射され、大型生物へと殺到、直撃した。

 

爆発光が2つ3つと空中を明るくし、水面に向かって巨大な影が落下する。

辛うじて生物の本土到達は防ぐことが出来た。そう思えた。

 

 

 

 

空自の追跡によればガメラは石狩湾に墜落し、同じくゴジラもその姿を消し2体が今どこにいるのかは知れない。

交信者である浅黄とみどりにGフォースがコンタクトを取ろうと試みるが、あいにくと二人共学校の友人たちと共に、冬休みを利用してスキー旅行に出た後であった。

 

草体に続き、生物は保の放った言葉からレギオンと呼称された。

ガメラに纏わりついた小型レギオンは、ガメラが水面に突入したことですべて溺死しおびただしい数の死骸が小樽から石狩にかけての海岸線に漂着。

一方、撃墜された大型レギオンは攻撃を受けて飛び散った羽根こそ発見されるも、死骸までは発見に至っていない。

 

自衛隊並びにGフォースは大型種は生存しているとして警戒はとどめず、東北一体で警戒を続けることを決定。

同時並行してレギオンの生態を研究調査し、少しでも早く対抗策を見つける事に全力を尽くしていた。

 

 

すすき野の戦いから数日後、四郎や剛の協力の元レギオンの死骸の検分が実施される。

その場でこそ、筋肉を持たず、関節と外骨格を体内に充填した圧縮酸素ガスによって動かしている事、珪素質で出来た体組織を持つ程度しか判明しなかった。

だが、その体組織の構造が半導体に酷似していることを満が見抜く。

 

 

それをきっかけに、碧や四郎がレギオンの生態を次々に見抜いていく。

元から頭の中にあった懸念が完全に形となったのだ。

大量に消失した光ファイバーケーブル類と、ビール瓶。どちらも半導体と同じくシリコンの化合物から出来ている。つまりシリコンが彼らの餌なのだ。

その上、シリコンは地球上において酸素に次いで多い元素だ。土や砂の殆どは酸素と結びついたシリコンで出来ている。

その二酸化ケイ素を分解し精整する過程で酸素が分離し、その分離した酸素を、レギオンは草体の育成及び種子発射の爆発力を強化するために使用、発射される種子にレギオンは卵を植え付け渡りを行う。

だからこそあの2種類の生物は共存関係にある。

 

一方で祐介や保には疑問があった。自然土からシリコンはいくらでも作り出せる。なら何故レギオンは土や自然の少ない札幌まで北上し草体を植え付けたのか?

彼等が最初に地球にやってきた場所は北海道の雄大な自然のど真ん中だ、そのまま陣地形成を行っていれば大量の酸素とシリコンを確保できたはずだ。

 

 

各々が問題に頭を悩ませながらも食を進める。

と、時彦と四郎の指の間で静電気が走った。

その光景を見た満の頭に、一つの発想が下りてくる。

再びレギオンの構造拡大写真をまじまじと見つめると、あることに気付いた。

小型レギオンの頭部の構造は、一種のトランシーバーの様になっていると言う。

角がそれぞれ電波の送信器と受信機の役目を持っており、取り入れた電磁波を体内で意味のあるデータに変換する。

 

満としてはそれはあくまでレギオンのコミュニケーション手段について予測したに過ぎなかったが、その一言が更に大きな突破口に繋がった。

はっと思い立った祐介は鞄から大きなファイルを2つ取り出すと、それを1ページずつめくり記入されている文に目を凝らす。

それはレギオンに惨殺された犠牲者の所有物の一覧だった。

業務用無線機。携帯電話、携帯ゲーム機、音楽プレーヤー、デジタルカメラ、ラジオ、ICカード。

 

続けて生存者について記述されたファイルにも目を通す、そして確信した。

犠牲者は全員、何かしら電波を放出するデジタルガジェットを所持していた。

迂闊だった、祐介や保は生存者に何かしらの共通点があると思っていた。だがそれは逆だった。

犠牲者に共通点があったのだ。あまりにも多数の人間が殺害されたため、それが却って共通点を見えなくさせていた。

 

 

ならばレギオンがすすき野に巣を作り草体を植え付けた事にも合点がいく。

自分達と違う周波数帯でコミュニケーションをとる存在は、生存競争において邪魔な敵と言える。

電波電磁波が過密な都市部はレギオン達からすれば自らの社会の発展保存を妨害する敵陣地に見えた事だろう。

敵陣に侵入し、中枢部に巣をつくり占領。草体を爆破して敵陣を壊滅させたうえで種の渡りと保存も同時に行う。

それがレギオンの生存戦略なのだ。

ならば、レギオンはおそらく南下を始めるはずだ。東北或いは北陸の人口密集地を経由して、最終的には関東、日本の中枢部である。

 

東京を目指して。




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第29話

レギオン仙台編が終わりました。
ガメラ2の山場とも言うべき仙台の戦い、このような結果となりましたが果たして読者の皆様の期待に応えられましたでしょうか…


数日後、つくばのG対策センターに召集されていた祐介と碧は、会議の直後に仙台市郊外のパチンコ店に小型レギオンが出現したとの報を受けた。

やはりレギオンはすでに本土に潜入を果たしていた。

 

碧の提案で時彦と保を伴って満が現場に向かい、祐介達もグリフォンで現地に直接乗り込んで行く。

 

夜を徹して自衛隊によるレギオンの捜索が行われるが、奮闘もむなしく翌朝早朝仙台駅目の前に草体が出現。

周囲のビルを突き破って根が市の中心部一帯を占領し、しかも出現から殆ど間を置かず花弁が開いてしまっていた。

 

 

 

札幌の草体が数日の時間を置いて発芽から爆裂に至ったのに対して、余りにも変化が早すぎる。

碧は札幌から更に南で気温が高い仙台では成長が早いのではと推測するが、祐介はたった6度の温度差でここまで成長スピードに違いが出るのかと戦慄を隠せない。

 

 

しかも不幸なことに、普通科連隊が地下への侵入を試みたが、仙台駅の仙石線ホームを地下茎が貫いて崩壊させている為突入は不可能。

また地上の各部にも大量の根が張り巡っており、酸素供給を破断するには現状の爆発物では足りず、しかも高濃度酸素が大気中に拡散しつつある今、地下構内のみを爆破しても連鎖的に地表にまで影響を及ぼす可能性がある。

 

 

事ここに至って、Gフォース及び自衛隊は草体を爆発前に駆除することは不可能と判断、住民の避難を最優先とし、仙台駅を中心とした半径8km圏内に避難命令を、12km圏内に避難勧告を発令。

 

 

祐介の指示で碧も彼等と別れ避難する事となり、仙台中心部から見て南東にある航空自衛隊霞目飛行場に案内された。

 

そこでは陸路での避難が間に合わなかった住民たちを避難させるべく、現時点で東北方面で稼働可能な全ての輸送ヘリ、グリフォン、しらさぎがひっきりなしに避難民を少しでも遠くへ輸送するべく奮闘している。

 

避難民の列に碧が混ざりそろそろとヘリに向かい進み始めたその頃、ヘリのコクピットに緊急通信が入る。

 

 

 

松島湾からガメラが、そして霞目の目と鼻の先の長浜海岸からゴジラが出現、仙台市に向けて進軍を開始した!

 

 

 

連絡からほどなくしてガメラが霞目飛行場上空に飛来、ゴジラも姿を現し、未だ飛行場に残っていた輸送ヘリが次々と離陸していく。

 

 

と、地鳴りがどこからともなく鳴り響き、やがて大人が立つこともままならない揺れが避難民たちを襲う。

阿鼻叫喚する飛行場内。

と、地中から放たれた青いビームが上空で警戒していたメーサー攻撃機2機を直撃。

爆発炎上した機体の破片が降り注ぐ中、ゴジラの背後の地面から飛び出してきた巨大な、白い死神の鎌を思い起こさせる節の付いた脚がゴジラを、そして着陸するために高度を下げたガメラを直撃する。

 

二頭は折り重なるようにして滑走路に倒れこみ、その振動で碧の前の列を進んでいた松葉杖姿の少女が転倒してしまう。

友人らしき二人とともに少女を助けた碧は懸命に少女たちを励まし、何とかヘリのデッキに乗り込んだ。

 

 

 

そのヘリを見下ろしながら頭を振り立ち上がるゴジラとガメラ。

2大怪獣はヘリを背に立ちふさがると、これ以上は進ませぬと気合を入れる。

同時に再び地面が爆発するように爆ぜる。

 

 

ゴジラよりも巨大な白い体躯。

槍の穂先を思わせる頭部。

全身に生えた鋭利な突起。

青い複眼でゴジラとガメラを睨みつけ、ガラスが擦れあうような不快な鳴き声を上げ、大型レギオン=マザーレギオンがその姿をついに現したのだ。

 

 

 

ゴジラとガメラに、いやヘリに向かって地響きを立てて突き進むマザーレギオン。

ガメラはそれに猛然と突進し、ゴジラは熱線を放ちながら後に続いた。

 

だがゴジラの熱線はマザーレギオンの頭部周囲に映えそろう干渉電波放射爪、『ディストーションクロー』が形成する不可視のエネルギーバリアによって反らされ、マザーレギオン本体の後方に散っていく。

まさか自分の必殺技が効かないとは!

驚きの表情を浮かべ、それでもゴジラはマザーレギオンに突進する。

 

 

 

ゴジラとガメラとぶつかり合いそれでもなおじりじりと2体を押し戻すマザーレギオン。

 

 

怪獣たちの戦いの影響で、ヘリは上昇に必要なローターの回転数が稼げず立ち往生していた。

 

目の前で繰り広げられる神話の戦いに避難民が悲鳴を上げる中、碧は目の前にいる少女たちがおびえることもなくゴジラとガメラを見つめていることに気づく。

 

 

 

 

けん制のためにゴジラは一回熱線を使ったが、それでもすぐ近くにヘリと人々がいる以上全力を出してマザーレギオンを攻撃できない。

レギオンの頭部の角を抑え込み、何とかその足を止める2体だったが、レギオンの前脚、鋭い鋏でもある大槌腕スレッジアームがその刃に青白いプラズマを帯び、ゴジラの脇腹につかみかかる。

同じく地中からは全長の倍の長さがある後脚、太鎌脚サイズレッグが飛び出し、ぐるりと関節の制限を超えて向きを変え、ガメラの体に突き刺さった。

 

悲鳴を上げるゴジラ、ガメラ。その体から赤と緑の鮮やかな血が流れだす。

 

 

 

マザーレギオンの目的は、ゴジラ達が草体に到達できないように爆破までの時間を稼ぐ事。

霞目飛行場からの伝令からレギオン出撃の報を聞いた祐介はそう判断する。

すでに草体の花弁周辺では活性化した酸素による断続的な爆発反応が発生しており、間違いなくゴジラ達は間に合わない。

すでにこの戦いの勝敗は決してしまってる。

そう判断した祐介の進言に従い、草体を包囲していた自衛隊、およびGフォースは草体周辺からの撤退を決定した。

 

 

 

マザーレギオンは時間は十分に稼いだとみて、この戦いの決着をつける事にした。

サイズレッグをに突き刺さったガメラをそのまま自身の後方に向かって投げ飛ばすと、地面にたたきつけられたガメラを何度も打ち据える。

 

一方ゴジラに対しては、空いた左のスレッジアームも使って左右から滅多打ちに殴りつけた。

体格で負けるゴジラはこの攻撃になすすべがなく、遂には打ち据えられたガメラと同じ場所に向かって放り出されてしまう。

流血し、全身に傷を負い、ふらつき、それでも立ち上がる二頭。

 

 

そこに、ヘリに背を向けたマザーの隙をついて、2機のしらさぎが強行接近。

機体下面のハッチから射出したマグネットアンカーでヘリを掴むとその場から全速力で離脱する。

 

 

ヘリを守り切ることができたガメラたちだったが、マザーレギオンは頭部の斬大角スラッシュアキュートを左右に開閉させると、そこと頭部頂点の角の3点の間で超高出力のマイクロウェーブを生成。

青色の破壊光線、マイクロ波シェルとして発射した。

 

 

直撃を受けたガメラの甲羅が抉れ、ゴジラも6万トンの重量が嘘のように吹き飛ばされる。

2発目の発射体制に入るマザーレギオン。

ゴジラとガメラは受け止めるように放射熱線とプラズマブリットを同時に発射!

 

3体の怪獣の真中で3つの光波攻撃はぶつかり合い、一瞬の拮抗の末にマイクロ波シェルが熱線を押し切り2頭に直撃してしまう。

 

ゴジラもガメラも吹き飛ばされ、さらに追い打ちとして放たれたマイクロ波シェルが2頭を打ち据え、周囲の燃料庫やガスタンクを爆破し炎が2頭の姿をかき消していく。

 

 

爆風は上空に避難したヘリをも大きく揺るがし、椅子に向かって倒れこんだ碧は少女が発したガメラを呼ぶ声にハっとする。

視線の目の前、少女――草薙浅黄と、藤戸みどりの手の中には勾玉があった。

 

 

 

 

意識を失い、倒れ伏すガメラとゴジラ。

厄介な敵の無残な姿に満足したのか、マザーレギオンは再び地下を掘り進みその姿を消す。

無音の静寂に包まれる、廃墟と化した霞目飛行場。

 

 

ゆらりと立ち上がったのはガメラだった。

隣で倒れ伏す戦友が、意識を失いながらも生きていることに安堵すると、全身の痛みに耐え、一歩、また一歩と草体に向けて歩き始める。

 

 

 

その姿を避難中の祐介は車の中からすれ違いざまに見上げていた。

それほどの傷を負って、間に合わないだろうに、それでも往ってくれるのか。

 

 

 

草体周囲の温度が急上昇し、根のあちこちから濃縮された高濃度酸素が蒸気のように吹き上がる中を進むガメラ。

ふらつき、膝をつきかけ、それでも長い長い時間をかけて草体にたどり着いた彼は、そのおぞましい花の花弁を両の手で強く掴み、握りしめる。

熱に皮膚が焼けこげる中、ガメラはそのまま両足からジェット噴射を開始した。

プラズマを帯びた赤いジェット炎が吹き上がり、熱で早まった血流から緑色の血液が一層噴き出してくる。

とぎれとぎれの意識の中、何度も何度も草体を持ち上げようとするガメラ。

遂に根から草体が引きちぎれ、その勢いのままにガメラは仙台市の上空に向けてぐんぐんと上昇し始める。

 

 

少しでも高く、少しでも遠く。

誰も傷つけることがないように、そこに自分を換算することがないままにガメラは空へと昇っていく。

 

 

 

 

やがて眼でその軌跡すら見えないくらいに達した時、空の果てで光がはじけた。

 

 

 

太陽がもう一個できたと思えるほどの超巨大な爆発。

発生した衝撃波は仙台中央の高層ビルを揺らし、ガラスが砕け降り注ぐ。

地上に届いた熱は街路樹を焼き、ビルの表面を焼き尽くし、溶かし尽くし。

それでも地表で爆発していた場合の何百倍も被害は少なく。

 

 

 

仙台湾沖に展開している在日米軍艦隊所属空母ラングレーの艦上。

何とか危機を脱した碧と浅黄たちがいるこの空母のデッキも、激しい振動に襲われた。

悲鳴を上げる避難民たち、デッキクルーや彼女らが見上げる先、仙台市の上空に超巨大な火球が出現していた。

何が起こったか、何があったのか。誰もが理解してしまった。

 

 

ガメラが去ってからしばし、遅れて目を覚ましたゴジラは戦友の姿を探して仙台市に向かう。

そして彼は見てしまう、夕日を背に、悲しみの咆哮を上げるゴジラ。

 

 

 

 

黒く焼け焦げ、駅前大通りの中央に落下した、炭化したガメラ。

その姿はまるで磔刑にかけられ息絶えた救世主の様であった。

 

 




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第30話

当シリーズ30話に到達いたしました、これも皆さんの応援あってこそです!
改めて感謝申し上げます!本当にありがとうございます!

そして連続投稿が途切れてしまいましたが、実はコロナになってしまいまして先日までぶっ倒れていた有様でございました…遅れてしまい申し訳ありません。
後遺症こそありませんがまあしんどかった…

さて今回はレギオン決戦の準備回。原作とは違うストーリーの流れになっていますが、こう言う浪花節な展開はガメラとは似合わない?かもしれませんが、果たして皆さまどういう感想言抱かれますでしょうか?


ゴジラとガメラの敗北。

その事実は日本のみならず世界中に衝撃を与えた。

人類に味方する数少ない、そして最大戦力である彼等二体でもレギオンに太刀打ちできないとなれば、人類の滅亡がにわかに現実味を帯びてくる。

 

動揺が人心に広がる中、それでもそれに懸命に対処しようと奮戦する人々もまた存在する。

 

 

G対策センターの会議室、祐介は強い口調でレギオンのせん滅を口にする。

東北有数の仙台市を通り過ぎた以上、レギオンは間違いなく東京を目指すだろう。

地中に姿を消したレギオンの姿を一刻も早く見つけ出し、首都圏到達前に撃滅しなければいけない。

 

G対策センターではすでに満と協力して、小型レギオン=通称ソルジャーレギオンの行動パターンに対して、一定の法則性を見つけ出していた。

 

 

千歳市のビール工場の電源規格、札幌地下鉄の変電施設、ガメラの頭部から離れたソルジャーレギオンが密集した商店街の発電機。

そしてパチンコ店のイルミネーション。

これらの電磁波は複数のフィルターを用いて処理することで、共通の波長パターンを見つけ出すことができた。

 

碧や四郎曰く、これはハチやアリが外敵が出現した際に分泌させ、群の攻撃性を向上させるフェロモンと同じ働きをすると推察された。

レギオンにとってこの波長を発生させる存在こそが最大限の攻撃対象なのだ。

 

 

少なくともこれを使えばソルジャータイプのレギオンは誘導できる。

そしてもう一つ、Gフォース側から提案があった。

 

 

レギオンの軍団そのものを、つくばのGフォース基地に向け誘導することで、東京への進出を阻止あるいは遅延させようという作戦だった。

 

 

現在未だレギオンの居場所は不明だが、推定して南東北から北関東内の山岳地地下を掘り進んでいると思われ、電磁波探知機と対怪獣用に開発された地下震度測定器を用いた探索が進んでいる。

 

 

これでレギオンの位置を割り出し、Gフォース基地の消費電力を補っている3つのレーザー核融合炉の運転を全開に。

発生させた電磁波を宝篋山と筑波山にある電波送信所から指向性を持たせて放出、大型も含めたレギオンを転身させようと言うものだ。

 

 

敵を反抗の要たるGフォースの総本山に引き寄せる作戦内容は、非常に危険で反対意見も多かったが、これは麻生指令、兵頭副指令からもたらされた作戦でもあった。

 

 

自分たちの目の前を素通りして、首都に敵が侵攻する様を手をこまねいて見ている事だけは絶対にできない。

スーパーXⅢの修復は棚上げ、ゴジラとガメラが敗北しガメラは戦闘不能と状況は最悪と言っていい。

ならば僅かでも勝利の可能性をあげられるならば、実施可能な手段は全て切るべきだ。

 

 

まず、現在Gフォース地下ドッグで開発中の新型対怪獣長兵器SMG-2ndは、ドッグ船に移送され、日立港沖合300kmにあるG対策センター所有のメガフロート基地、『トワイライト1』へ移送。

職員も全員を八王子市に建設された、国連G対策センター南関東支局と、八王子にある特生自衛隊八王子戦術研究センターに避難させ、同時に基地機能も移転。

関東平野の北端にあたるつくば市の平原部でレギオンを待ち受け、そして最悪の場合は本部地下の核融合炉を自爆、本部諸共にレギオンに大ダメージを与える。

まさに背水の陣だ。

 

ここで一つGフォース内で悶着が起こる、基地の自爆システムは扱えるセキュリティレベルの問題から、麻生司令と兵頭副司令の二人にしか発動させることはできない。

それは万が一レギオンが基地に到達した場合、二人は基地とともに消滅することを意味する。

当然功二や清志を始め佐々木総隊長からも反対意見が噴出したが、今年それぞれGフォースへの出向と任期が切れる自分たちだからこそしなければならない任務であると、二人はこれを固持。

後ろ髪を引かれる思いで、職員たちは基地機能移転の作業を開始するのだった。

 

 

G対策センターの外郭組織である国連生命開発研究所も避難・移転作業が進められており、最後までそれを見守った明日香は、同じく職員を退避させた一人の運転する車に乗って一路八王子を目指した。

 

怪獣との戦いというよりも、これはまるで戦争だ。

一人の言葉がやけに脳内で反芻される明日香だった。

 

 

やがて、福島県檜山間上空でレギオンを捜索していた陸自ヘリが巨大な電波源を探知。

グリフォンの震度計、衛星の熱源探査も合致し、レギオンであると断定された。

 

即座にG対策センター内の核融合炉の運転が全開状態となり、世界各地のGフォース基地とスーパーコンピューター同士の電波通信が増大、その中で生じた電波をレギオンがいるだろう方面に向け指向する。

 

しばしの時間の後、まっすぐに南西に向けて地下を進んでいたレギオンの動きが止まり、南に向きを変え、つくば市に転身。

南進し始めた。

 

レギオンの誘導が成功した!

 

すぐさま自衛隊はレギオン迎撃のため、地上部隊をレギオンが出現すると見做された常陸太田市、国見山の麓へと集結させる。

展開される戦車部隊の中には、正式採用されて以来初の実戦投入となった0式自走電磁砲の姿もあった。

配備されたメーサー車は全て超低温レーザー仕様に回路が切り換えられている。

ゴジラの熱線すら反射するレギオンの電磁バリアを貫通しての攻撃は無効であると考えられ、冷凍レーザーによる凍結を狙ったものだ。

 

 

那珂川を第一次防衛ライン。

黒沼川を第二次防衛ライン。

そして霞ケ浦を最終防衛ラインとし、主力部隊を支援する野砲部隊、対空高射部隊もそれぞれの防衛線に配備。

上空には轟天号、航空機部隊。

村松海岸沖には対艦ミサイルを備えた護衛艦隊。

投入可能なあらゆる精鋭部隊が茨城の地に集結する、特に自分たちの本部の司令官たちの命がかかっているGフォース隊員の士気は高い。

 

 

人員の避難が完了し、麻生と兵頭、二人しかいないGフォース指令室。

機械音とモニター音だけが鳴り響く、今までにないほど静かなこの場所で、二人は静かにコーヒーを飲んでいた。

コーヒーは兵頭が淹れたもの、インスタント以外を飲むのは何年ぶりだろうかと二人は苦笑する。

93年にG対策センターとGフォースが発足して以来、二人にとって人生とは怪獣との戦いそのものだった。

ゴジラを、あらゆる怪獣を討伐し人類に平和を齎す事こそ自分たちの使命であると。

だが時代は移り変わり、Gフォースの、人類と怪獣とゴジラの在り方も変化しつつある。

戦うことしか出来ない、頑迷な自分たちではこれからの時代には取り残されてしまうだろう。

かつての麻生ならば浮かべなかっただろう柔らかい笑みが浮かんでいる。

結局貴方を追い落とせなかったと大げさに嘆く兵頭の顔にも笑顔があった。

 

託すべき未来は若者たちに託された、自分たちはただ消え去るのみ。

ただその前に最後の大仕事が一つ残っている、それだけなのだから。

 

 

 

 

前線指揮所に赴いた祐介たちと別れた碧は、浅黄とみどりを連れて羽田空港に向かっていた。

 

目的地は仙台、炭化したガメラの元に二人を連れて行かなければいけないのだ。

浅黄もみどりも、口をそろえて言う。

 

 

 

ガメラは生きている。

 

ガメラはレギオンを許さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗く静かな海の底。

傷を癒し、パワーをチャージするためにゴジラはじっと身をかがめていた。

瞑った目の奥で繰り返されるのは、焼き尽くされた戦友の変わり果てた姿。

自分の弱さがまた誰かを傷つけてしまった。

悔しさと苛立ちが溢れそうになるのを、歯を食いしばって身の内に封じ込める。

あの白い外訪者だけは絶対に倒す。

呼吸のたびに背びれに青白いスパークを帯電させながら、その時をただ待つのであった。




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第31話

いよいよマザーレギオンとの最終決戦開始です。
人類にも意地がある、レギオンも後がない。
人類もレギオンもお互いに総力でぶつかり合うストーリー展開となりました。

お楽しみいただければ幸いです!


国見山を望むように待ち構える戦車部隊。

 

 

後方の支援攻撃部隊の自走ランチャー砲が、接近するマザーレギオンに対する先制攻撃を行う為稼働し始めた。

 

 

D-03 試製03式旋穿削岩弾。

地震などで落盤事故や地崩れが発生した際に、岩盤を破壊して速やかに要救護者を救助するための、本来ならば救助作戦用に開発された対地ミサイル機材だ。

 

 

レギオンの電磁妨害を想定して事前入力した深度と距離で爆発するようにセッティングし、数発のミサイルが国見山の山体に命中するとドリル状の先端を回転させながら弾頭部が潜航する。

 

 

しばしの後、地面の底から腹に響くくぐもった爆発音と振動が発生。

爆発で生じた振動は少しの後に沈静化するが、入れ替わるようにさらに大きな地鳴りが発生して徐々に大きくなり、地面のあらゆる物体を揺らす。

 

 

レギオン出現!

国見山の山体を内側から吹き飛ばしてマザーレギオンが現れる。

怒りを感じさせる、普段よりも低い鳴き声を上げながら歩を進める白い悪魔に一斉攻撃が放たれた。

 

 

砲弾、ミサイル、対地爆弾、メーサービーム、機関砲。

地上部隊と航空部隊、支援陣地からの野砲や、湾内の護衛艦からのミサイルによる波状攻撃。

初手のアドバンテージを確保するように猛烈な攻撃を浴びせていく。

本来ならばミサイルはレギオンのディストーションクローが放出する電磁波によって、航法システムを破壊されて終端誘導が不可能であるが、陸上部隊の最前線を形成する無人戦車部隊に搭載されたレーザーデジグネーターによって命中精度を何とか補っていた。

 

 

 

だが、そんな小さい都市ならば一瞬で消滅させるような火力を受けても、レギオンの歩みは止まらない。

ディストーションクローが形成する不可視の電磁波障壁は冷凍レーザーを受け止めて直撃を妨げ、直撃する砲弾は甲高い音を立てて白磁色の外殻に弾かれる。

 

 

ミサイル、爆弾、ロケット弾の攻撃もダメージを与えているようには見えず、レールガンの直撃すら効果を見出せない。

鬱陶しいと言わんばかりにレギオンはスラッシュアキュートを展開し、中心部の濁った結晶状の物体に青い光を灯す。

 

 

仙台の時よりも狭い角度で展開されたスラッシュアキュートからマイクロ波シェルが発射される。

 

アキュートの角度はマイクロウェーブの収束率を高め、貫通力が増した青い光は前面に展開していた地上部隊を飲み込み、久慈川を挟んだ反対側の支援部隊すらも巻き込んで消滅させた。

 

 

 

次々と誘爆する車両の爆炎はレギオンの数倍の登頂高数倍の高さまで広がり、夕暮れの空を赤く黒く染めていく。

レギオンから一直線に伸びる地表をえぐった砲撃の痕跡が、破壊力の高さを雄弁に語り、生存した隊員たちを震え上がらせるのに十分だった。

 

たった一回の攻撃で、第一次防衛線に展開されていた部隊のおよそ5割が損失。

生き残った部隊は、支援部隊からの地帯砲撃の援護を受けながら久慈川を越えて那珂市内まで後退、平野部で第二次防衛線の地上戦力との合流を図る。

 

 

 

 

続いてマザーレギオンは腹部にあるエッグチャンバーから多数のソルジャーレギオンを、背部外殻下のコクーンスポットから10匹ほどの中型レギオン=オフィサーレギオンを射出する。

 

 

羽根が生えたソルジャーレギオンはマザー周囲を包囲していた攻撃ヘリやメーサー攻撃機、上空の戦闘機、轟天号に向かって飛翔。

更に群れの半分ほどが久慈川以南、第二次以後の防衛ラインに向かって飛んで行く。

 

 

どうやらマザーの進軍より先だって先遣となり、人類側の戦力を削ぐことが目的のようだ。

航空隊は迫りくるソルジャーの大群を捌くことで精一杯、群れの南進を阻止する事が出来ないでいる。

 

 

ソルジャーの飛翔を確認したGフォース側は、事前に茨城県の各所に設置していた簡易電波発生施設から、ソルジャーの群れに向かって誘導電波の発信を開始した。

 

 

簡易発生施設は無人運用されるうえに、発信網の下部にはブラストボムが設置されている。

電波発信源にソルジャーの群れが密集し耐荷重を越えた瞬間にブラストボムが起爆、群れを一挙にせん滅する手はずとなっていた。

 

 

 

電波源に向かって、黒い大河の様に空を染めていたソルジャーの大群が別れていく。

だが、一部のソルジャーだけは南進する動きを辞めないでいる。

オフィサーレギオンの周囲にいたグループだ。

オフィサー達はまるでソルジャーを誘導するように群れを先導している。

 

 

オフィサーには電波誘導が効かないのか?

戦場を偵察衛星で観測した所、オフィサー種は体の周囲に強力な電波を放出していることが分かった。

 

恐らくこれが攻撃性が過敏に引き出されたソルジャーをある程度鎮静化させ、オフィサーに追従させる効果があるのだろう。

 

 

戦場を見守っていた四郎曰く、一部のハチやアリ等は、経験豊富な個体がまるで群れ全体の指示系統を中継するように振舞い、効率よく餌の収集や巣の拡張を行うとされている。

彼等は文字通り、マザーと言う司令部からの命令をソルジャーに伝え指示する士官の役目を持っているのだ。

 

 

 

これはもう怪獣を退治するための戦いではない、文字通りの戦争だ。

黒木が忌々しげに呟く。

 

 

二次防衛ライン、最終防衛ラインに襲来する小型種レギオンの群れ。

各防衛線の戦力を漸減する為空を黒く染めてやってきたそれ等。

だが人類側とて当然、誘導が失敗した際の対抗策を講じている。

 

 

主力車両を守る様に、ハイパワーレーザー車部隊、自走高射砲部隊が前進し、猛烈な弾幕を形成する。

機関砲弾と紫のレーザー光に薙ぎ払われ、次々と撃墜されるソルジャー種。

オフィサー種は速やかに全ソルジャーの編隊を急上昇、更に編隊を広げることで弾幕をすり抜けようとする。

 

 

しかし、上昇した編隊に向かって黒沼川後方の陣地群、88式地対艦誘導弾の発射車両から一斉にミサイルが発射される。

群れに向かって上昇した大型ミサイルは、群れの四方を囲む様に位置を揃えると同時に起爆。

黄色い火球が空中に形成され、巻き込まれたレギオンはオフィサー種ソルジャー種問わずに焼き尽くされた。

 

 

発射されたミサイルは本来の88式対艦ミサイルではない。

轟天号を始めとした空中戦艦が装備している、対空プラズマ機雷弾を転用した地対空プラズマミサイルだ。

 

爆発と同時にプラズマ反応を発生させ、一定の空間に巨大な火球を形成するこの装備。

元々は初代バラン戦において、バランの飛行能力を奪うために行われた気化爆弾による空間真空化作戦からアイデアを得た、飛行怪獣の揚力を奪う為のものだ。

その為形成される火球の温度や破壊力はガメラの火球には遠く及ばないが、それでも小型怪獣ならば一瞬で滅却するのに十分である。

 

 

対怪獣戦の基本はいち早く目標怪獣の身体的特徴を判別させ、判明した弱点を一気に突くのが基本だ。

だがレギオンには明確な弱点は存在しておらず、逆に高い知能と戦術でこちらに襲い掛かって来る。

そうなってしまえば、後はお互いの戦力が完全に消え去るまでの消耗戦を挑む以外に道はない。

 

 

そう簡単に東京にたどり着けると思うなよ。

祐介はソルジャーレギオン第一陣壊滅の報を聞いて静かに呟くのだった。




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第32話

お久しぶりです、今回かなり難産だったのですが、何とか話が区切りの良いところまで纏まったので投稿させていただきます。
対レギオン最終決戦、ゴジラ参戦です。

原作見直して思ったのですが、赤雪山麓よりマザー出現からウルティメイトプラズマまでがかなり速いテンポで行われていたので、ここにゴジラ達が参戦するまでの区切り作るの難しくないか…?とうんうん唸っていたらこんなに間が開いてしまいました。

レギオン編もいよいよ佳境。お楽しみいただければ幸いです。


冬の張り詰めた空気が流れる仙台市街地。

レギオンと草体の脅威は去ったが、未だにJR仙台駅を中心とした半径1km圏内は立ち入りが禁止されている。

草体の空中起爆で放射された熱線が空から降り注ぎ、高熱を浴びた一部のビルの鉄筋の強度が下がり、崩壊の危険があるからだ。

の強度が下がり、崩壊の危険があるからだ。

 

仙台市から見て西側にある青葉山。伊達政宗縁の仙台城跡地に避難キャンプが構築され、碧に連れられた浅黄とみどりはそこからガメラを見下ろしていた。

自衛隊やボランティアが炊き出しを行っているテントから熱いお茶を貰い、二人に配る碧。

白く熱を持った吐息が夜空に溶けていく。

自衛隊が設置したサーチライトに照らされる、炭化したガメラ。

祐介曰く、生命活動は完全に停止しているらしい。

それでも、浅黄達は胸の前で強く勾玉を握って目を反らさなかった。

ふと、碧が周りを見渡す。自分たち以外にもガメラを見つめる幾つもの視線があった。

子供達だ。何人もの子供達が祈るような表情のままにガメラを見つめていた。

その瞳に、絶望の二文字は一切浮かんでいない。

 

 

 

Gフォース部隊は那珂川後方まで後退しつつも必死に抵抗を行っていた。

 

マザーレギオンをかく乱させ、反撃による損失を最小限にとどめるため部隊を分散させて包囲網を敷く。

 

周囲の最前線にいるのは無人戦車部隊。無人車両間の通信を復活させ、意図的にマザーレギオンがターゲットとする周波数の電波を車両間で飛び交わせる事で、マザーレギオンが無人車両部隊を全滅させるまで時間を稼ぐ目論見だ。

 

戦車部隊を追いかけながら進むマザーレギオン。

途中、那珂川の中央に差し掛かったあたりで後方の野砲部隊がマザーレギオンを、否マザーレギオン周囲の川底に向けて複数発の砲弾を発射する。

それはメーサー戦車が冷凍攻撃を行う際に、ミサイルランチャーに装てんさせる瞬間冷凍弾頭を戦車向けの砲弾として改良したものだ。

水面に着弾すると同時に、弾頭内部の特殊薬剤が化学反応を起こし、一瞬でレギオン周囲の那珂川を凍結させる。

数百tもの氷の中に閉ざされるマザーレギオン。自身のパワーを使えば氷を粉砕する事も容易だが、その一瞬の時間こそGフォースが求めていたものだ。

川底に接地されていた、数十基のブラストボムが一斉に起爆する!

 

 

見守っていたメーサー戦車の砲塔すら揺れる凄まじい地響き。レギオンの動きを鈍らせた上で、歩行に用いる脚部にダメージを与える作戦だった。

高層ビルすら一瞬で瓦礫に変える破壊力がレギオンの脚部に集中する、濛々と立ちこめる煙から現れたマザーレギオンには傷一つついていない、が。

 

偵察衛星からの動画解析によれば、先ほどよりも僅かな差ではあるが進軍速度にズレが生じている。

分厚い氷の壁の内側でブラストボムの爆風を受けたことで、本体真下の歩行に使用している付属肢が幾つかダメージを受けたようだ。

 

 

傷を与えられるならば、決して倒せぬ無敵の存在等ではない。

ソルジャーレギオンの群れをせん滅した轟天号旗下の航空隊も合流し、第一次防衛線の残存戦力と第二次防衛線の部隊の再編制も済んでいる。

立ち向かう戦士たちの戦意は折れていなかった。

 

 

 

午後18:48 マザーレギオン 第一防衛線 突破

 

 

 

 

マザーレギオンへの攻撃を継続するため、大洗港沖に向け移動中の護衛艦が、北東方面より高速で接近する大型の飛行物体を捕捉する。

雲間を切り裂いて現れ、月明かりに青く照り返す銀色の身体。

ホワイトラドンだ。ゴジラの声を脳波で受取り、アドノア島から飛来したと思われる。

 

 

それと同時に、護衛艦隊が目指す大洗港のやや南側、大貫町の海岸線に海を割ってゴジラが姿を現す。

二体が目指す先は水戸市内北部、マザーレギオンへのリベンジマッチだ。

戦友であるガメラの仇討ち、戦意は高く、ゴジラは時折背鰭に青白いスパークが迸っている。

 

 

ゴジラ、ラドン出現さる。一報を受けた司令部は速やかに前線に展開中の部隊に指示を出し、展開する陣形の再編を行った。

北関東自動車道沿いに分散・集結し、ゴジラの戦場到着までの時間を稼ぐ持久戦だ。

前線を構築する無人戦車部隊の数が減ったことで、遠方の海域からの長距離誘導ミサイル攻撃の命中制度も目に見えて低下し始めている。

 

 

陣形を変え始めたGフォースに対し、マザーレギオンの身体に変化が起こった。

水晶の様に青い複眼が紫色に変色し、更に象牙色の全身の一部が黒く変化する。

天に向かって狂ったように吠えたマザーレギオンは、地面に向かってスラッシュアキュートを深々と突き刺す。

 

 

地下に逃げるのか?黒木たちが警戒する中、マザーレギオンの全身からスパークが定期的に迸る。

だがマザーレギオンは爆弾や砲弾が降り注ぐ中もアキュートを地面に突き刺したまま動くことはない。

不気味な静寂の末に、それは起こった。

 

 

地響きと同時にあちこちのマンホールが上空に吹き飛び、そこから凄まじい蒸気が噴き出してくる。

車両が動けない程の地震が強くなったと思うと、地面が裂け、さらに大量の蒸気と爆風が吹き上がると同時に広範囲の地面が陥没。

メーサー車を中心とした陸上部隊を泥の様に溶けた地面に巻き込み、埋めてしまった。

埋没せずに済んだ車両は何とか陥没地帯から抜け出そうとするものの、そこにマザーレギオンが発射した最大出力のマイクロ波シェルが襲い掛かる。

 

遠方地から見えるほどの火柱が上がり、陥没に巻き込まれて行動不能となった車両と合わせて第一次・第二次防衛線の合同部隊の三割が消失する被害となった。

 

何が起こったかわからずに司令部の面々は愕然としていたが、衛星が取得した各種データから、祐介と保はマザーレギオンがなにを行ったのかをすでに見破っている。

 

 

マザーレギオンは地面深くにスラッシュアキュートを突き刺すと、地下に向かってマイクロウェーブを放出したのだ。

超高出力のマイクロウェーブは水戸市内の上下水道、地中に溜まっていた水分、地下水脈を流れている地下水を瞬時に沸騰蒸発させて水素を発生させ、そこに圧縮酸素を注入。

水素と結合し超大量の酸水素爆鳴気が発生。それが一気に水蒸気爆発を起こしたというわけだ。

更に、涸沼川の堆積で出来た土地であったことも災いし、液状化現象も併発してしてしまい、陸上車両は身動きが取れなくなったところで更に深さ4mもの陥没した大地に叩き落され、容赦なくマイクロ波シェルの洗礼を受けてしまった。

 

四郎も複眼や体色の変化がレギオンの怒りを表していると推測する。

感情の高ぶりによって動物が肉体の一部の色を変化させる事、或いは一定の環境下において肉体が変化する現象を相変異と言い、マザーレギオンの変化は明確に人類に対し怒りを示している事に他ならない。

 

 

陣形が崩れ、懸命に崩壊した地面を乗り越えて後退する車両部隊になおも執拗に攻撃を行うマザーレギオン。

後退の援護を行う為、マザーレギオンに決死の突入を仕掛ける轟天号と航空部隊。

ミサイルとビームの雨がマザーに降り注ぐ中、再びマザーレギオンはソルジャーレギオンとオフィサーレギオンの群れを生みだし、航空隊と轟天号に向けて飛び立たせる。

 

 

群との正面衝突を避けるため、小林隊長の指示を受け航空隊は編隊を広げるが、それよりも更に広い範囲にソルジャーレギオンの編隊が広がっていく。

自分達を通り過ぎ、轟天号を包み込むように広がるソルジャーの群れに困惑を隠せない航空隊パイロット達。

 

だがそこに、『自らの子供達であるはずのオフィサー、ソルジャーレギオン達に向けてマイクロ波シェルをマザーレギオンが撃ちこんだ』事で、マザーの目論見にやっと気づくことになる。

 

電磁パルスを伴った大爆発が茨城の空を明るくする。

マイクロ波シェルの直撃を受けたソルジャーとオフィサーは体内に大量の圧縮酸素をため込んでおり、酸素が急激に熱されたためにプラズマ化、マイクロ波シェルのダメージを更に強化すると同時に周囲に向けて電磁波のバーストを発生させたのだ。

 

ブリッジのパネルから火花が飛び、椅子から吹き飛ばされたクルーが壁に叩きつけられる程の振動と衝撃に襲われる轟天号。

艦下部の重力制御クラスターユニットにもダメージが入り、推力が35%低下、船体の六割にダメージが発生し各セクションからの被害報告がひっきりなしに入って来る。

 

衝撃に巻き込まれた航空隊も、対電波バースト対策が不十分な空自、Gフォース機は操縦システムがダウンし制御不能に。次々とパイロットたちがパラシュートで脱出する。

XF-1部隊も辛うじて空中での爆発は免れるが、2機程が低空で爆圧を受けたことで地表に叩きつけられ飛行不能となってしまう。

 

 

勝利の為に子供すら平然と犠牲にする戦術、司令部の面々は怖気立った。

人ならば憤って当然だが、社会性の生物としては当然の事でもあった。

システムとして生態が形成されたレギオンにとって、あくまで自分達の種を保存する事が最優先なのである。

 

 

 

艦体のあちこちから煙を上げ高度が下がっていく轟天号。重力制御システムの出力低下が原因だ。

ブリッジで立花艦長が睨み付ける先、スラッシュアキュートを開きマイクロ波シェルの発射体勢に入るマザーレギオン。

轟天号に止めを刺すつもりだ。

青白くスパークを興す両角の先、だがその瞬間マザーレギオンの背部を深蒼の熱線が焼く。

 

攻撃態勢を解除し、振り向いたマザーの目の前を何かが通り過ぎた。

ホワイトラドンだ。旋回したホワイトラドンを敵と認定し、マイクロ波シェルを浴びせるマザーレギオン。

挑発するように嘶きながらホワイトラドンはそれを鋭角的に回避すると、マザーレギオンをけん制しつつ高度を上げる。

 

忌々しく睨むマザーレギオンに、背後から聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきた。

青白のスパークを纏った背鰭。

碧がかった山脈の様な黒い体。

鮮やかな色彩の瞳に灯る怒りの炎。

 

ホワイトラドンに続いて、ゴジラも戦場に現れた。

二頭の瞳に浮かぶ、戦友の命を奪った相手への怒り。地球の生態系と人々を脅かす者への怒り。

もう絶対にお前には負けない、そんな決意と共に、2大怪獣は外宇宙の侵略者と対峙するのだった。

 

 

 




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