名探偵コナン〜新一の幼女化〜 (桂ヒナギク)
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第一話:小さくなったら女体化もしていた

「犯人は、館の構造を隅々まで把握しており、あの時自由に動き回れた人物。そう……奥さんを殺害したのは、あなたです!」

 高校生の工藤(くどう) 新一(しんいち)が、館の主である車椅子の男性を指差す。

「なにを寝ぼけたことを言ってるのだ? 第一ワシの足は怪我をしているのだぞ? そんな状態でどうやって壁伝いに部屋を行き来できるのだね?」

 新一は背後にあった地球儀を主に向かって投げ飛ばすと、その主が車椅子から降りてかわす。

「旦那様!?」

 しまった! というような顔をする主。

「あんたの足は一ヶ月前に治ってんだよ!」

「主治医の先生が吐いたぞ。観念しろ」

 新一の横で口を開くのは、焦げ茶色のスーツを着ている小太りの目暮(めぐれ)警部だ。

「クソ!」

 逃げ出す主。

「逃すかよ!」

 新一が先ほど車椅子に当たって跳ね返ってきた地球儀を主の後頭部に蹴り飛ばす。

「ぐわ!」

 吹っ飛んでタンコブを作り、警官隊に連行される主。

 新一が見事事件を解決すると、報道陣が押し寄せてきてインタビューを行う。

 その様子がテレビの映像に流れており、それを見ながらゲラゲラ笑っていると、新一の頬に空手の道着が当たる。

 振り返ると、幼なじみの毛利(もうり) (らん)が不満そうな顔で立っていた。

「なに怒ってんだよ?」

「別にあなたの活躍のおかげでお父さんに仕事の依頼が来ないからって怒ってるわけではないわよ」

「いや、蘭の父さんに依頼が来ないのは俺のせいじゃなくて、腕のせ——」

 蘭が電柱に拳を放ち破壊する。

「別に怒ってなんかいませんよーだ」

 新一はその光景を見て驚く。

「それより、今度の休みにトロピカルランドに行くって話、忘れてないわよね?」

「ああ、そういえばそんな約束してたな」

「忘れないでよね」

 他愛もない話をしながら学校へ向かう二人。

 ……。

 …………。

 ………………。

 その日、トロピカルランドでは、新一と蘭がジェットコースターに乗った。

 発車したコースターはトンネルに入り、脱出すると新一の後ろの男が首なし遺体と変わり果てた姿になっていた。

 ターミナルに着き、警察が駆けつける。

 新一は事件を殺人と判断し、持ち前の推理力で犯人が新一の前に乗っていた体操部の女子大生であることを見抜き解決に導いた。

 その後、帰り際に同じコースターの最後部に乗っていた黒尽(くろず)くめの男の一人を発見し、新一は後を追った。

 そして、黒尽くめの男の怪しい取引に夢中になっていると、もう一人の仲間に棒のようなもので殴られ、倒れて意識が朦朧(もうろう)とする。

「こいつ、さっきの探偵ですぜ。バラしやすかい?」

「いや、チャカはまずい。ここはこれを使おう。組織が新開発した、体に残らないこの毒薬をな」

 そう言って、金髪ロングヘアーの男が、懐からカプセルの入ったケースを取り出した。

「あばよ、名探偵」

 男がカプセルを新一の口に押し込み、無理やり水を飲ませた。

「ずらかるぞ」

 二人の黒服の男は去っていった。

 ……。

 …………。

 ………………。

「おい! 誰か死んでるぞ!」

「なに!?」

「いや、まだ息がある。頭から血を流しているな。救急車だ! 救急車を呼べ!」

 少女は目を開けて起き上がる。

(警察か。よし、奴らのことを洗いざらい話してやる)

「大丈夫か? お嬢ちゃん」

(お嬢ちゃん? 何言ってんだ? 俺は男子高校生だぞ?)

 警察官の一人が無線で連絡している内容が聞こえてくる。

「年齢は六か七。小学生です」

(小学生?)

 少女はダボダボの服に気づいた。

(これは!?)

 少女は自分の体が縮んでしまったのでは、と考える。

「とりあえず、本部の託児所に……」

(冗談じゃねえ!)

 少女は慌てて警察官たちの前から逃げ出した。

 逃げる途中、通りかかったブティックのガラスに反射した自分の体を確認する。

「体が縮んでる!? その上女体化!? そんなバカな!」

(とにかく家に……)

 少女は工藤邸まで駆けった。

 門の前に辿り着き、扉を開けようとするが、ドアノブに手が届かない。

 ドカーン!——と、隣の家の阿笠邸で爆発が起きると、阿笠(あがさ) 博士(ひろし)が爆風で吹っ飛んできた。

博士(はかせ)ー!」

 少女が阿笠に駆け寄った。

「なんじゃ君は?」

「俺だ! 新一だ!」

「そうか。新一の親戚の子か。新一なら今は留守じゃぞ」

「じゃなくて、俺が新一なの! 変な奴らに変な薬飲まされて幼女化しちまったんだよ!」

「薬で幼女化? そんな薬があったらお目にかかりたいぐらいじゃ」

 阿笠が少女の手を掴んだ。

「怪しいから警察に連れていく」

 少女は阿笠の手を振り解いた。

「阿笠博士、あなた先ほどまでコロンブスにいたよね?」

「どうしてそれを?」

「おまけに体の前側が濡れていて、背後はそんなに濡れていない。それは雨の中急いで帰ってきた証拠だ。そして、ひげについたケチャップ。それから汚れたズボンの裾。ズボンが汚れたということは、コロンブスの前の工事中の道路を通ったから。違いますか?」

「ほ、本当に新一なのか?」

「ああ、そうだよ。とにかく俺ん家へ入れてくれよ」

 阿笠は少女を工藤邸に上げた。

 少女は寝室のクロゼットを開け、子ども用の服に着替えた。

「しかし、いまいち信じられんな。薬で小さくなった挙句に女体化してしまうなんてのう」

「なあ、博士。俺の体を元に戻す薬を開発してくれよ」

「それにはまずその毒薬とやらの成分がわからんとな」

 書斎のドアが開き、蘭がやってくる。

「し……阿笠博士? 新一はいないの?」

「さっきまでいたんじゃがな」

「その女の子は?」

「新一の親戚の子じゃよ」

「へえ。でも新一、何も言ってなかったよ」

 蘭が少女を見る。

「君、名前は?」

 少女は本棚をチラッと見る。

 探偵の探偵という本が目に入る。

「玲奈。私の名前は北川(きたがわ) 玲奈(れな)だ」

「玲奈ちゃんか。いい名前だね」

「そうじゃ!」

 阿笠が何かを思いつく。

「蘭くん、その子を暫く預かってくれんかのう? その子のご両親が事故で入院してしまってのう。面倒を見る人がいないんじゃ」

「別にいいですけど」

「そうか。よかったな、玲奈くん」

「でもお父さんに相談しないと」

 かくて、父親が探偵をやっている蘭の家へ転がり込むことになった玲奈。

 これからどんな事件が彼を呼び寄せるのか。

 



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