戦姫絶唱シンフォギア ーTHE TACHYON_TIME ー (メンタル湯豆腐)
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無印編
終わりを迎えた彼の始まり


メンタル湯豆腐と申します。
シンフォギアにハマってしまって我慢出来ずに書き始めてしまいました。
文才皆無な上にオリ展開増し増しなのでそこの所はお許し下さい…
オリ主がシンフォギアの世界に入るまでの経緯を簡潔に出しております。



此処は、漆黒に沈んだ何も無い虚無の世界。

何も無い孤独な暗闇のような空間の中、世界を救い続け粒子の光が仄かに煌めく全身装甲のスーツを身に纏ったヒーローがいた。

どれだけの時間が流れているのか分からない中、呆然とした様子で後悔に飲まれながらその場に立ち尽くしていた。

 

生きているのか死んでいるのかすらも分からない状況の中、自責の念に押し潰されるように呟くと溜め息を吐きながら暗闇の一点をぼんやりと見上げるように見つめている。

ふと、思い出すように脳裏に浮かぶ出来事は、遠ざかりながらも闇に飲み込まれていく地球…そして、通信機から劈くような噪音と共に流れてきた仲間達の断末魔。

 

誰も助けられなかった。現状打つ手も無くただ佇む事しか出来ない彼にとって、何度も何度も脳裏を駆け巡るその事実は苦痛でしかなかった。

無念と後悔だけが積み重なり、悔しさで視界が涙でぼやける…しかし、下手にスーツも脱げず涙も拭えない。

敗北を味わっただけで無く手の打ちようも無いあまりにも絶望的な状況の中、彼は護りたかった大切な仲間達に謝るように呟く事しか出来なかった…。

 

 

かつて彼は人々にヒーローとして必要とされ、幾度と無く多くの凶悪な敵を倒し、幾度と無く世界の脅威を救い続け讃えられていた。

悪意に満ちた強敵と戦う度に彼は大切なものを失い続けた。それでも人々を護る事を止めなかった。

平和になるにつれて彼の存在を必要としていた人達も彼の事を恐れ、やがて彼は世界を脅かす敵として人々は迫害を続けた。

 

護る筈だった人々から産まれた悪意はかつてない最悪な悪を生み出し、彼へと襲い掛かったのだ。彼は怯む事なく戦い続けた。

悪戦苦闘を強いられても、幾度と無く窮地に追い込まれても強敵を追い詰め、死闘の末に倒し戦いには勝利した。

だが、ヒーローを…彼を称賛する人は既に誰も存在しなかった。

 

やがて、人々から産まれ敵を生み出した悪意は止まる事を知らず、地球を…世界そのものを飲み込む強大な闇と姿を変え、世界の崩壊が目始まった。

不安、疑惑、怒り、怨み、嫉妬、憎悪、劣等感、そして、辿り着く絶望…

負の連鎖は止まる事を知らず闇は力を増していき、世界の崩壊は速く激しさを増していく。

 

目の前で起きる悪夢を食い止める為、彼は死力を尽くし必死に走り続け、時間を超え次元を超え世界を駆け抜け続けた。

それでも人々の悪意を止められずにいた。それでも彼は人々を信じて止まる事はしなかった。

やがて、彼は限界を越えてしまった事で世界から弾き出された。

護る存在である筈の人々から最後まで敵として恐れられ、拒絶された彼は光の無い虚無の世界を彷徨う事になった…

 

 

「……うぅっ……」

 

どれくらい時間がだったのだろうか。

いつの間に気を失っていたのか分からないものの、意識を取り戻した彼は気怠そうに上体を起こして何も無いはずの周囲を見渡していた。

絶望感に飲まれていた状況の中、何も無いはずの虚無空間内で変化が起きていたのだ。

世界から外れたこの存在しない場所で『何か』が視界内に音も無く現れる。

 

「…何だ、あれは?」

 

怪しげな異物の出現に戸惑う彼だったが、気力は沸かないものの鉛のように重い身体を起こせばアレが何か知る為に近付こうと意識を集中して注意深く見る。

光が無い空間の中で奇妙にテカテカと光っているその『何か』は最初は一つだけだった。

やがて、小さな個体が一つ、大きな個体が一つ、宙に浮かぶ個体が一つ…と、まるで人の個性のように様々なソレらは何も無い空間で絶えず増え続けていく。

 

「今度は…何だ?」

 

奇妙な光景に困惑する彼だったが、同時に背筋が凍えるような悪寒を感じ取る。

何かが起きる…何度も地球を救った彼の直感がそう感じた直後、空間に裂け目のような亀裂が入り渦のような穴が開いたのだ。

裂け目はみるみるうちに大きくなると共に、大群のように増え尽くしたソレらを出迎えるように広がっていく。

 

「…一体、何が起きているんだ!?」

 

生気すら失っていた彼だったが今起きている状況に危機感を覚え正気に戻る。

それと同時に、今この空間で発生した裂け目の穴は脅威である事、そして、今もなお目の前で増え続けているアレらが危険な存在である事はヒーローとして戦ってきた直感が彼に訴えていた。

 

「何とかして止めないと…!」

 

身体にはまだ力が入る。

いや、何もかも失った事で全て諦めていただけでまだ戦える。

見た事のない敵を前に彼は臆せず拳を強く握り締め、気力を奮い立たせる。

すると、身に纏っているスーツから燈っていた瑠璃色の光が強く輝きを放ち煌めいていく。

 

「…行くぞっ」

 

フルフェイスヘルメットの眼部が瑠璃色の光で満たされ、粒子のような光が灯りを灯すように煌めき彼を包むように迸っていく。

そして、静かに呟いた彼は大量に現れたそれらに向かって一歩踏み出した。

同時に粒子の光が小さな爆発のように弾けて散らばると共に、彼は瑠璃色の閃光と化し駆け抜けていく。

空間に開いた裂け目に音もなく移動していく異形達の動きが、まるで時間が遅くなっているようにゆっくりとした動きで進んでいた。

あの裂け目を閉じるのが先か、それともあの怪物達を倒すのが先か…この場に絶えず表れている異形達の数からキリが無いと判断した彼は、空間の裂け目の破壊を試みる。

しかし、何もないはずの場所に現れた異形達も、開いた裂け目が何なのか分らない彼にとって、答えが見つかるとは考えられなかった。

 

「あの裂け目からなら、この空間から脱出できるのだろうか…」

 

身に纏っている瑠璃色の光が輝きを強めると共に加速しながら走っている最中、彼はすぐさま別の方法を思い付く。

あの異形が出る場所があるなら、この空間から抜け出せるのではないかと考えたのだ。

 

「危険すぎるけど、ここから出て奴らを止められるのなら……」

 

現在、彼の目の前にある裂け目に突入するのは危険だと分かっていた。

だが、ここに閉じ込められたままでは何も出来ないまま朽ち果ててしまう。

ならば、一か八かあの裂け目に突入してこの空間を脱出できる可能性がある今なら、帰るべき場所に辿り着ける方法が見付かる可能性があると考えた彼かは決心する。

 

「試してみる価値はある、やるぞ…」

 

まず、彼はその場に現れ続けている異形達の周囲を走り出した。

この空間から脱出する為の速さを得る為に、裂け目に突入する為の速さに到達する為に走り続けていく。

纏っていた光は稲妻の如く迸るように異形達を取り囲むように駆け抜け続けていく。

走って加速を続ける事でより輝きを増せば加速による衝撃波が発生し現れている異形達を吹き飛ばしていく。

 

走る、走る、走り続ける。

かつて、世界を守る為に駆け抜けたように、この何もない虚無の空間から脱出するために…纏った光が彼を覆い尽くす程の輝きを放つ。

必要な速さを得た今が気だと確信した彼は、裂け目に向かって走り出した。

 

「…うおおおおおおぉぉっ!!」

 

そして、彼は稲妻のように裂け目へと突入していった。

裂け目に彼が吸い込まれるように彼が入ると共に迸った瑠璃色の閃光は虚無の空間を覆い尽くした。

やがて、光が途絶えた空間には彼の姿も、増殖するように増えていた異形の姿も…何も居なくなっていた。

 




ひとまず此処までです。
次はツヴァイウィングのコンサートでノイズ達との戦闘、ツヴァイウィングとの戦闘(?)を予定してます。
オリ主紹介は本編ライブが終わった辺りで出したいと思います。
それと今後の展開も踏まえてアンケートも考えております。


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