サトラレ八幡 (149)
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#1 はじまり

「もう四月だけど寒いな…」

 

俺は無事三年に進級し小町も総武に入ることが出来た。そして今日は入学式。つまり小町の高校デビューの晴れ舞台。俺は調子に乗っていつもより早く家を出ていた。いつも通りの道をいつも通り通り過ぎていると丁度青信号が点滅しはじめたので俺は横断歩道の前で止まり、また青になるのを待っていた。その時

 

「待っていっちゃダメ!」

 

女性の声が後ろから響き後ろを振り返ると女性が転んでおり手には犬用リードを巻きつけているがその先には何もいなかった。

 

(…?犬がいない…?)

 

その先にいたはずの犬を探しているとその犬は俺の真横を通り過ぎ道路へ飛び出していた。歩行者用の信号は未だに点滅して車用の信号もまだ赤だから大丈夫。大丈夫のはずなんだが

 

(なんか胸騒ぎがする…)

 

その予感が的中したのかトラックが止まる気配もなく犬に向かって進んでいた。

 

(っ!?まずい!間に合え…!)

 

俺は走り出し、なんとか間に合い犬を抱きかかえる。

 

(…あれ…デジャブ?)

 

そんなことを思っていると衝撃が俺を襲い俺は目蓋を閉じた。

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「知らない天井だ」

 

人生で一度は言ってみたいセリフを言えたことを噛みしめながら周りを見渡した。真っ白の部屋に俺が転がってるベッドそして点滴やら心電図やらが置いてあった。どうやら病院にいるらしい。いるらしいのだが

 

(どう考えても普通の病室じゃねえな)

 

あまりの高級感にちょっとびびりながら、なんでこうなったのか思い出していた。

 

(確か…いつもより早く家を出て…それで…そうだ犬が飛び出て俺も飛び出したんだ。それでトラックにはねられたのか…学習しないな俺)

 

一年の時の入学式のことを思い出し少し自分に呆れる。

 

(けどあの犬はどうなったんだ…?無事ならいいが)

 

その時病室の扉が開き、

 

「目が覚めたかね比企谷君」

 

白衣を纏った男の人とナースらしき人が入ってくる。おそらく俺の担当医なんだろう。

 

(担当医の人か…)

 

「では早速容態だけどトラックに轢かれたにしては軽傷だ。腕と足が折れているがそれ以外は特には異常はなかったよ」

 

先生が容態を話していく中でその時に初めて自分の怪我に気付く。

 

(やべえ犬のことで頭いっぱいで全然気付かなかったどんだけ馬鹿なんだ俺)

 

「あ、あの俺と一緒に犬といたも思うんですけどその犬は…?」

 

「…ああ…わんちゃんなら無事だよ気にしなくていい」

 

(良かった…とりあえず安心だな。だけどこの怪我なら3、4週間は学校に行けねえなぁ…せっかく小町の晴れ舞台なのに…)

 

「…それじゃあ安静にしてるんだよお大事に」

 

そう告げると病室から出ていった。けど気になることがあった。

 

(一瞬…一瞬だけどナースの人と担当医の顔が歪んだ…?)

 

気になり考えてみたが眠気が襲ってきたのでそのまま身を任せ深い眠りに入った。

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「…先生」

 

「ああ、彼は決まりだ。…彼の家族と友人に事情を説明する確か妹さんがいたはずだ。その妹さんに近しい人を集めるよう言っといてくれ。」

 

「わかりました」

 

了承の意を告げ、ナースは走っていった。

 

「…しかし…後天的なサトラレとは…」

 

この日なんともない日常の中で物語の歯車が回り始める。



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#2 その心

私はいつものSHRを終わりがけの時に

 

「重大な報告がある」

 

そうゆうと談笑を交わしていた生徒は私の方を向き少し真剣な顔をする。私はそんな生徒を見ながら少し前のことを思い出していた。

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「小町ちゃんヒッキー目が覚めたの!?」

 

そう言いながら小町君の家に入ってくる由比ヶ浜とその後ろにいる雪ノ下。とても動揺しているのが表情から分かる。

 

「落ち着け由比ヶ浜。それは小町君にもわからないらしい」

 

「そうなんです…お兄ちゃんの入院している病院のナースさんからお兄ちゃんの親しい人を集めるようにって…」

 

なるほどそれでこのメンツか。今この場には陽乃に川崎、戸塚、材木座、雪ノ下、由比ヶ浜、小町君、一色そして私が集まっていた。

 

「怪我に関しては心配いらないそうです…ただ話があるとだけ…」

 

その時玄関のチャイムがなり、小町君が玄関に向かう。そして戻ってくると白衣の男がいた。

 

「どうも比企谷君の担当医です。今日はお話がありお集まりいただきました。」

 

担当医を名乗る男は床に座ると早速話し始めた。

 

「まず電話でも言った通り怪我に関しては二箇所の骨折で済んでます。特に後遺症も残りませんその点はご安心を」

 

その言葉に少し安堵する一同しかし

 

「ただ…一つ問題がありまして」

 

その言葉にまた緊張が走る。

 

「彼は…サトラレになったみたいです」

 

サトラレ

 

簡単にゆうなら周囲にその思考が筒抜けになってしまう病。一千万人に一人の確率で生まれてくる存在であり、例外なく天才である。そんなサトラレになったとゆう担当医しかし

 

「待ってください確かサトラレは先天性のものでしょうこれまで彼は普通の人間でしたよ」

 

「そこについては我々も国も分かっていません。トラックに轢かれたことが原因なのか今も議論中です」

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その後は大変だった。その場にいた私と陽乃以外の全員が理解しどうすればいいのか混乱した。サトラレであることが本人に知られてはならないこれは鉄則であるからそこはすぐに決まった。そのあとも学校や親など相談し、比企谷は治り次第学校に来ること、友人である雪ノ下、一色、妹である小町君の教室を比企谷の教室の両隣にうつすこと。そして全校生徒にそれを伝えることがつい先日決まりそれは担任で各自報告してほしいとのこと。

 

「クラスメイトである比企谷が事故に遭い今休学をしているんだがそのことについてだ」

 

私がそう切り出すと真面目な空気は何処かに行き、なんだどうでもいいという風な空気に変わった。

 

「ちゃんと真面目に聞け。…比企谷はなにかしらの影響によりサトラレになった。原則として比企谷にサトラレであることを悟られてはいけない。もしばれるような事があればサトラレ本人は精神崩壊を起こしかねないからだ。」

 

少しざわつく教室。それもそうだ後天性のサトラレなど聞いたこともない。すると一人の生徒が

 

「比企谷ってヒキタニのことですよね?だったら別にどうでもいいですよあいつクズですし」

 

その一言にクラス全体て確かにという声が上がり始める。比企谷を知る者は顔を歪め、三浦も心なしか少し怒っているように見える。…教師が肩入れをするのは良くないんだが…

 

「あと君たち」

 

私の真剣な顔に静かになる。

 

「少し比企谷の心の中を聞いてみるといい。もしかしたら何かわかるかもな…ではSHRは終了する」

 

私のその言葉に嘲笑などが見えるが一部は少し憑物が取れたような顔になっていた

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「ヒキタニが来るのって今日だっけ?だったらみんなで心の声を聞いて笑ってやろうぜw」

 

一人の生徒の言葉でクラスが湧き上がる。そんな中由比ヶ浜と戸塚、川崎は嫌悪に顔を歪め、葉山は唇を噛みしめ、三浦はやはり怒っていた。そんな三浦がクラスに何かを言おうとすると

 

(しかし久しぶりの学校だな…)

 

そんな声が聞こえてきた。

 

(ヒッキーの声だ…ほんとに心の声が聞こえる…)

 

(てゆうか俺も学習しないよなほんとに一年の時にも事故ってボッチ確定演出があったのに…はぁ…ドアまで来たか憂鬱だな…やだな…帰りたい…帰って寝たい…働きたくない)

 

そんな言葉に

 

(ふふっヒッキーはやっぱりヒッキーだなぁ)

 

(比企谷のやつ能天気な…)

 

(ふふっ八幡らしいや)

 

(お兄ちゃん…ほんとにごみいちゃんじゃん…)

 

(この男腐ってるわねほんとに)

 

(さすが先輩ぶれない)

 

各々がいろんなことを思うがいつも通りなことに安心していた。

 

(てゆうか久しぶりに教室入るの緊張するんだけど…まぁ、存在感薄すぎて入っても気付かれないんですけどね!)

 

するとガラッと扉が開き、比企谷八幡が入ってくる。__________________________________________________________

 

俺は久しぶりの学校に来ていた。今すぐ帰りたい気持ちを抑えて教室の扉を開けると全員俺をガン見していた。

 

(え、なに怖いんですけどなんでこんな見てんの?あれか、学校こなさすぎてUMA認定された?)

 

いつもは、見られるとしても嫌悪の視線ばかりだったのに今日は好奇の視線を向けられていた。

 

「おはよう八幡!」

 

そんな中、戸塚が挨拶をする。

 

「うっす」

 

(ああ〜久しぶりに戸塚にあったそれだけで癒されるそれだけで今日頑張れるわさすが戸塚。てゆうかなんで戸塚が女の子じゃないんだよ。この世界の神、頭狂ってんだろ)

 

クラスメイト(((…悔しいけどわかる)))

 

「は、八幡が元気そうでよかった!」

 

そう心配をしてくれる戸塚

 

「…心配かけて悪かった」

 

(戸塚が心配をしてくれてる。やべえ超嬉しいこのまま戸塚コースに…は流石にまずいか…でも毎朝味噌汁作ってくれ)

 

「え…」

 

そう呟く戸塚を見ると何故か顔が真っ赤だった。

 

(顔が赤い…?風邪か…?)

 

「戸塚ちょっと」

 

俺は断りを入れて戸塚のおでこと自分のおでこをくっつける。

 

「え、ちょっ、は、八幡?」

 

(熱は…ないな。あんだけテニス頑張ってるし、今、発熱するのは辛いだろうからなよかった。でもなんで真っ赤なんだ…?)

 

(は、八幡が近い!)

 

「すまんな戸塚、顔が赤かったから熱かと思ってな。なさそうで安心した」

 

「う、うん。心配ありがと八幡」

 

「ああ…そうだ。これ」

 

俺はカバンをあさり、風邪薬などを出す。

 

「体調悪い時とかに使え、多少は楽になるはずだ」

 

「わぁ〜ありがとう!でもよくこんなに持ってるね!」 

 

「ま、まぁ今日はたまたま持ってきてただけだ。ほら退院したばっかだし」

 

(…前に部室で由比ヶ浜と雪ノ下が体調悪そうにしてたからな。その時から持ち歩いといてよかった。)

 

「ふふっ八幡は優しいね!」

 

何処がだとツッコミを入れ、自分の席に向かう。

 

(ていうか見られすぎじゃね?めっちゃ視線感じるんだけど…)

 

そう思い周りを見渡すと誰も俺を見ていなかった。

 

(あれ?勘違い?あらやだ恥ずかしい)

 

そう思いいつもどおりイヤホンを出して寝たフリをしようとした時にふと視界に由比ヶ浜の姿が映った。

 

(由比ヶ浜が伏せてる…?)

 

(やばい…!ヒッキーがそんな前のこと覚えて私たちのために薬を持ち歩いてるなんて、にやけちゃうばれちゃうダメ)

 

(大丈夫かよあいつ…まさか体調が悪いのか?心なしか耳も赤い…)

 

俺はそう思い由比ヶ浜用に薬を用意する。

 

(さてどうやって渡そう。スクールカースト最底辺の俺が話しかけるわけにもいかないしな…)

 

すると葉山と目があう。何故かしまったという顔をする葉山。

 

(なんでしまったみたいな顔してんだあいつ、やめろ俺に視線を送るな、海老名さんが喜んじゃうだろ)

 

そう思い少し、げんなりしていた。

 

(待てよ…)

 

俺は葉山に外に出るようにアイコンタクトを送る。

 

(気付け…廊下に出るぞって気付け…まぁこんなんで気付くはずないんですけどね…これでわかったら…え、席立ったぞあいつ…廊下に出た。え?伝わったの?)

 

俺は少し時間をおき廊下に出るすると葉山が待っていた。

 

「…よく分かったな」

 

「あんだけ視線を送られれば普通気付く。それでなんのようだ?君から俺に話しかけるのは珍しいだろう」

 

全部わかってるけど用件を聞く葉山

 

(普通なの?あれでわかるの普通なの?え、なにリア充グループでは普通なの?)

 

「まぁその体調が悪そうだから由比ヶ浜にこの薬を渡してやってくれ。お前が気を使ってる風に俺からって絶対言うなよ」

 

※この声も心の声として周りに聞こえてます。

 

「あ、あぁわかった」

 

俺から薬を受け取りクラスに戻っていく葉山。俺は外から由比ヶ浜に薬を渡したのを確認するとクラスに戻り自分の席に座り寝たふりを決めていた。しかしそのうちほんとに眠くなりそのまま寝てしまった。

 

クラスメイト((((((…ヒキタニ優しい…?))))))

 

自分たちのイメージと違う心の声に動揺し、少しそのイメージを疑い始めたクラスメイトだった。



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#3 疑い

「おい比企谷」

 

俺は名前を呼ぶ声が目が覚める。

 

(誰だよ…寝かせろよ…)

 

そう心で悪態をつきつつ、顔を上げると怖い笑顔の平塚先生が立っていた。俺は現実逃避をするため今の時間割を見ると…

 

(oh…今は4時間目現文の授業てことは…つまり目の前の平塚先生は幻覚じゃない…てかどんだけ寝てんの俺…)

 

俺は立ち上がりなんとか弁明を試みる。

 

「平塚先生人間は英気を養うために寝ると言われています。つまり俺が寝ていたのは平塚先生の授業を万全に受けるためであって…」

 

そう俺が言い始めると拳を構え

 

「問答無用っ!!それに他の授業も受けろ!!!」

 

「ぐえっ!!」

 

構えられた拳は綺麗に俺の腹に吸い込まれクリーンヒットする。

 

(普通に痛いんですけど…この人手加減ってものを覚えろよだからけっ…)

 

そこまで考えるといきなり平塚先生がこちらを振り向き俺を睨む

 

(なんでこっち睨んであの人…心読むなよ雪ノ下かよ)

 

クラスメイト(雪ノ下さんに読まれるのはデフォルトなんだ…)

 

平塚先生は一通り俺を睨むと、前を向き教卓に立ち授業を始める。俺は席に座りその授業を聞きながら考えていた。

 

(…てゆうかあの人普通に美人だよな。それにかっこいいし、あんな白衣似合う人いないでしょ。)

 

平塚先生が少し顔を赤くする。

 

(…?少し顔が赤くなった…?なんでだ?)

 

クラスメイト(だからお前のせいだよ)

 

声には出さないけど心で突っ込むクラスメイト。

 

(そいやあの人普段大人なのに案外純情ですぐ顔赤らめるからな。そうゆうギャップがすごい可愛い。それにスタイルもいいし、なんで結婚できないんだろうあの人、ほんとに周りの見る目がないんだろうな。後10年くらい若かったら絶対好きになってふられる自信あるのに、振られちゃうのかよ)

 

「へっ!?」

 

「ん!?」

 

平塚先生がいきなり素っ頓狂な声を上げ、少し驚く。

 

(やべえよ変な声出しちゃったよ…あの人いきなりどうしたの顔がすごいことになってるし)

 

平塚先生は顔をタコのように赤くしもじもじしている。

 

クラスメイト(…確かに可愛い…)

 

(風邪かな…大丈夫なのか?後で薬差し入れとこ…それにしても結婚か…早く結婚して専業主夫になりたい…働きたくない…相手いないんですけどね!)

 

クラスメイト(やっぱりクズじゃね…?)

 

(相手ならいるのに…鈍感馬鹿)

 

(相手ならいるじゃないの誰とは言わないけれど)

 

(…別にあんたのこと嫌いじゃないし、私はいいけどね)

 

(責任取るって言ったのに)

 

(ごみいちゃんはほんとにごみぃちゃんだね〜)

 

(しかし…この学校女子の顔面偏差値高くね?)

 

クラスメイト(…確かに)

 

(このクラスだけでも由比ヶ浜、三浦、川崎、海老名さんそれに相模も)

 

((っ!?))

 

(えっ!?)

 

そう言われ心の声を聞くことに集中する由比ヶ浜と川崎にまさか言われると思ってなかった相模が驚く。

 

(それに他にも雪ノ下とか一色とか平塚先生、卒業生だけど雪ノ下さんに城廻先輩。高校の入学条件に、美人であることって項目がありそうなほど多い。…てか由比ヶ浜はおバカの子だし)

 

(誰が馬鹿だヒッキーのアホ!)

 

(…否定はできないわね)

 

(まぁでも一番可愛いのは…)

 

((((!))))

 

(誰がなんと言おうと戸塚と小町だ。これは覆らないし譲らない。我が妹ながら可愛いからモテてしまうだろう。でも彼氏は許さん。できたら?ふっ…聞くな)

 

クラスメイト(…何する気なんだ…)

 

(まぁそんなとこだろうと思ったけど…)

 

(流石ねシスコン谷君)

 

((…シスコン))

 

(お兄ちゃん嬉しんだけど全部筒抜けなんだよ…ポイント高いけど低いよ…)

 

「今日はここまでだ。各自予習復習をしておくように。では起立」

 

そんなことを考えていると授業が終わる。

 

(今日もベストプレイスで飯食うか…)

 

八幡がクラスを出て見えなくなったのを確認すると

 

「……なんかイメージと違ったな」

 

「あ、あぁ確かに噂通りの人物とは別人だ」

 

クラスがざわつき始める。自らのイメージと噂それらとは心の中がかけ離れており混乱する。

 

「な、なぁほんとに暴言言ったのかな?」

 

「それは…」

 

一部を除きクラス全員が相模を見る。当の本人は動揺し、少し沈黙していたがなんとか口を開こうとした時

 

「それなら聞けばいいだろ?今ヒキタニはサトラレなんだし」

 

「で、でもそれは悪いんじゃ…」

 

「いいんだよ、噂通りならクズなんだからさっさと化けの皮を剥がせばいんだよ」

 

その言葉にクラスは沈黙し、自然とやる流れになっていた。それでも一部は少し動揺する。

 

(ど、どうしよう。このままじゃさがみんが…ヒッキーがした意味が…)

 

「ちょっ」

 

由比ヶ浜は抗議の声を上げようとするが葉山がそれを止める。

 

(なんで止めるの!?)

 

そう思い葉山を見ると険しい顔をしていた。そのまま時間はすぎ、クラスの中で色々な情緒が入り乱れる中、とうとう八幡が戻ってくる。




すぐに完結させるつもりだったので、案外急ピッチで進めています。もしもっと見たいという声があれば、予定より完結を伸ばすつもりなんですけどどうでしょうか意見をくださるとありがたいです


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#4 確信

(やっぱ見られてる…)

 

昼休みをベストプレイスで過ごし、教室に帰っている途中不特定多数に見られていることに不信感を抱く。文化祭の事で人に見られる事自体は珍しくない。でも今回はこれまでの嫌悪の視線じゃなく好奇の視線。しかも来た時からずっと

 

(俺が学校にいない間になんかあったのか?)

 

こんなことを考えていると教室の前に着く。

 

(はぁ…結局ずっと見られてた。ぼっちは視線に敏感なんだからあんま見ないでよね!まぁ自業自得なんですけど)

 

俺は扉に手をかけ、開ける。すると

 

(……………………………………葬式?)

 

教室の空気はドッと重かった。そしてクラスメイトは扉の音に反応し、全員俺のことを見る。

 

(何この空気…重いんですけど…ていうか何で全員見てんの俺のこと、なにこれ)

 

そんな雰囲気に呆気を取られていると

 

「なあヒキタニ」

 

クラスメイトの一人が俺に話しかける。いきなり話しかけられ俺は驚き、何か言葉を返そうとするが、俺の返答を待たずしてクラスメイトは俺に間髪入れずに質問をいれる。

 

「お前さ、何で相模に暴言吐いたんだ?」

 

(っ!?)

 

それを聞き俺は焦り何とか表情に出さないことに成功したが内心は焦っていた。

 

(何で今更そんなことを?)

 

俺はチラッとクラス全体を見た後、相模と由比ヶ浜の方を見る。すると相模は顔を下に向け、由比ヶ浜は何か思い詰めた顔をしてこちらを見ている。よくみると葉山も表情が曇っており、三浦もずっとこちらを見ている。

 

(…俺が昼飯を食っている間にこの教室でなにかがあったんだ。俺か相模のことに関して。しかも何かしらの確証がないとこうは聞いてこないつまり下手なことはできない。…どうする。)

 

俺は必死に頭をひねり、考える。

 

(前までの方法をとるのは簡単だ。でも…)

 

俺はまた由比ヶ浜を横目に見る。

 

(また修学旅行のようなことにはなりたくない、前までなら考えられなかったけど、今は…あの場所があいつらが好きだ。だから…でも……くそっ)

 

(ヒッキー…私たちのことを考えてくれて…)

 

さらに苦悩する八幡とは別にその心の声を聞いたクラスメイトは気付き始める。

 

クラスメイト(方法ってことはなんか理由があったんだ…)

 

(……違うこれは前の俺から引き継いだ仕事、あくまで不可抗力だから…だから今回だけは例外だ)

 

(ヒッキー…)

 

無理やり自分に言い聞かせた八幡はチラッと由比ヶ浜に視線を送り心の中で謝り、話しかけたクラスメイトに答えを返す。

 

「…別に最低だったから最低だって言っただけだ。言った理由なんてそう思ったからとしか言いようがない。…わからないんだったら何度でも言う、あいつは最底辺の人間なんだよ。結局自分が可愛いだけで自己中でそんな奴に最底辺だって言って何が悪いんだ?」

 

(あの時の俺にしかできなかった間違ったやり方の優しい世界の完成。)

 

ここでチラッと葉山を見る。

 

(葉山が入ってこなかったのは予想外だったけどこれで全員のヘイトが俺にむ…く…。)

 

八幡はクラス全体をチラ見をしそこで初めて異変に気付く。

 

(…なんでだ、何で、おかしい。俺は視線には敏感だ。だからわかる、今、俺を悪として見ている奴がいない)

 

周りのクラスメイト達は大体の状況を察し、ある程度理解し八幡の行動の真意を知った。心の声も相まって、八幡を見る目が変わり誰一人として悪として比企谷八幡を見ることができなかった。そんな周りの変化に八幡に近しい人間はそれぞれ反応を示す。

 

(みんなのヒッキーを見る目が変わった…)

 

(ヒキオのやつそんなこと考えて…)

 

(八幡…)

 

(考えればわかることだけどね)

 

八幡は自分にヘイトが向くように、喋るが喋れば喋るほど反対の効果をもたらすことに、焦る。

 

(まさか最初っから全部気付かれて…まずい焦りすぎてその可能性を考えてなかった。もし全部最初っから知っていたなら今の方法は逆効果になる)

 

その考えが頭に浮かんだ時点で八幡の焦りが加速していく。その反対に周りは冷静になり、話しかけたクラスメイトは

 

「…ありがとうヒキタニ」

 

八幡にお礼を言った後苦虫を噛み潰したような顔をし席に戻る。

 

(まずい…俺へのヘイトが完全に消え失せてる)

 

自分へのヘイトが消えていることに悪態をつきつつ、周りを観察する。

 

(どうする、どうする。)

 

そんな風に焦り考えている八幡を見てクラスメイトは完全に認識を改める。

 

クラスメイト(…ものすごく優しい)

 

ここでチャイムがなり、先生が教室に入ってくる。

 

「ほら〜授業始めるぞ〜。…ん?どうしたんだお前ら」

 

(まぁヒキタニの声が漏れ漏れだったからわかるけど)

 

入ってきた教師は、教室の異様な空気に気付き問いかけるが、クラス全体が何でもないと一蹴し、先生も「そうか」とだけいい、全員に席に座るよう指示した。俺はそんな微妙な空気と気分の中、先生の指示に従い席に座る

 

(今日中にどうにかしないとまずい。どうにかしないと、雪ノ下が熱を出してまで成功させたかったものが壊れてしまう)

 

しかしすぐに案も浮かばず、あっという間に時間が経ち、放課後まで縺れ込んだ。

 




後書き
お久しぶりです。案外続けて欲しい!と言うコメントが多かったので続けようと思います。そこでアンケート何ですが、当初は相模も葉山も多少しばかれるくらいを予定してたんですけどコメントを見ると案外厳しめのを期待している声があったので聞きたいんですけど。この先葉山と相模ボコボココースか葉山と相模どっちも救済コース、葉山だけもしくは相模だけボコボココース、どれがいいですか?これからのことなのでコメントをしてくださると助かります。よろしくお願いします。それではまた次回お会いしましょう


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#5 変化

(なんもねえ…)

 

何も思いつかないまま六時間目が終了し、掃除時間に入る。その間に考え続けるがやはり何も思い浮かばない。しかも今日中という期限付き。あの時雪ノ下が体調を壊してまで成功させたものが壊れるそのことがさらに心を焦らせる。

 

(何がどうなってるのかさっぱりだ。手元の手札も情報も少なすぎる。何なら俺が切れる手札はゼロに等しい。この状況でどうすれば…)

 

その時背後から声を掛けられる。

 

「「ヒッキー(比企谷君)」」

 

その声にびくっと肩を震わせる。一瞬知らん顔をしようと思ったが、名指しで呼ばれているため無視するわけにもいかずゆっくりと後ろを振り返った。すると案の定

 

「話があるのだけれど少しいいかしら」

 

そこには雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣が立っていた。

 

________________________________________________________________________________

 

俺たちは場所を移し、最初に雪ノ下が口を開く。

 

「比企谷君昼休みのことは由比ヶ浜さんから大体聞いたわ」

 

(やっぱり伝わってますよね…)

 

内心冷や汗をかく。修学旅行の件もあり少し身構える。自覚もあってやったからなおさらに。

 

「そう身構えないでほしいのだけれど…」

 

「そうだよヒッキー。気にしてないって言ったらうそになるかもしれないけど…ちゃんと私たちのこと考えてくれたでしょ?」

 

「ぐっ…」

 

何でわかんだよこいつ…。

 

「嬉しかった。前までのヒッキーなら周りも私たちのことも関係なしにやってただろうけどあの時私やゆきのんのこと考えて躊躇したんでしょ?だからあの時私の事見たんだよね?」

 

もう筒抜けですかさいですか…。

 

「概ねの話は由比ヶ浜さんから聞いたわ。私も嬉しかった。真意は分からないわそれでもあなたが少しでも私達のことを考えて躊躇したなら嬉しかっただから…その…あの時みたいには…」

 

あの時って言うのは、俺達の中でも禁忌と言っていいレベルで封印されてる話。他ならぬ彼女達から言われたことそして本当に嬉しそうなその表情にホッとする。

 

(よかった…)

 

安心した俺の事なんて見抜いているのか二人共優しい眼差しで俺のことを見ていた。

 

「んんっ。そ、それで何で呼ばれたんだ?」

 

その視線が妙に恥ずかしく半ば強引に話を変える。

 

「ええ、その事なのだけれど…今回は何もしないでいいと思うの」

 

「へ…?」

 

俺は思わず間抜けな声を上げる。もしかしてずっと悩んでるのも筒抜けだった?あらやだ恥ずかしい。まあ理由の方はバレてないといいなあなんて考えていると少し雪ノ下の頬が赤いことに気付く。…ほんとにばれてないよね?何?この子達エスパーなの?そう考えているとその理由を雪ノ下が話始める。

 

「だってこれは依頼されたわけでも個人的に頼まれたわけでもないのでしょう?なら私たちが関与することじゃないわ」

 

「いや…でも」

 

「でも…何かしら」

 

「これは前回俺が先送りにした結果だ。なら俺が…」

 

「あら、あれは元々相模さんの依頼の延長線上でやったことでしょう?依頼も文化祭も終わった今何か行動する理由はないはずよ」

 

「…」

 

黙り込んでいる俺を見て由比ヶ浜がさらに言葉を紡ぐ。

 

「もしこれから起こることを想像して何か思ってるなら…」

 

由比ヶ浜は力強い眼で俺を見据える。

 

「私たちを信じて」

 

ただそう告げられる。もし心配事があるならそうはならないから私たちを信じろと。何の根拠があるのかわからないが本当に大丈夫な気がしてくる。不思議だ前の俺ならそんなの信じられるかと一蹴しただろう。でも今は信じたいという気持ちがあふれ出る。

 

(ほんとに大丈夫なのだろうか?…いやこいつらがここまで断言してるんだ、恐らく大丈夫なんだろう)

 

俺の中でそう結論付け、二人の目をしっかり見る。

 

「わ…かった。その…信…じる」

 

「ふふっ…ありがとう比企谷君」

 

「ありがとうヒッキー」

 

その言葉を言うときに目をそらした俺を見てか微笑みながら感謝を述べる雪ノ下と由比ヶ浜。やはりどうも恥ずかしい。

 

「掃除もあるしそろそろ教室に戻りましょうか。それではまた後で」

 

「うんバイバイゆきのん、また部室で!」

 

俺も雪ノ下に別れを告げ、由比ヶ浜の後ろを歩きながら教室に戻る。

 

「ヒッキー何でそんな後ろ歩いてるの?」

 

後ろを振り向きながら純粋になぜ?という感じで聞いてくる。

 

「いやまあ後ろが好きだし…」

 

(学年最底辺の俺と歩いてるところなんて見られたくないだろうからな)

 

特に理由が思いつかなかったから適当に誤魔化すと由比ヶ浜は立ち止まり頬をむくれさせる。

 

「む~っ」

 

何か声まで出してる。

 

(え、何この子何に拗ねてんの。そういうのやっても怖いとかじゃなくてかわいいからやめてね)

 

「…!えへへ」

 

(ヒッキーに可愛いって言われちゃった…ってそうじゃなくて!)

 

一瞬にやけ顔に代わったが又頬を膨れさせる。忙しいなこいつ。そして何を思ったのか俺に近寄り俺の腕をつかみ引き寄せる。

 

「い・っしょ・に!いくよ!」

 

そう言い俺の腕に抱きついた状態で歩きだす。こうなると必然的に隣を歩かなきゃいけないわけで尚且つ俺の腕を抱えてるんですよ。つまり

 

(む、むねが…)

 

(え?…あ)

 

ずっと俺の腕に男の憧れであるものが当たっているのだ。由比ヶ浜もそれに気付いたのか顔を赤くし立ち止まってしまう。

 

(うーっ。恥ずかしいけどヒッキーが意識してくれるなら…)

 

(気づいたか…これでかいほ…)

 

解放されるなんて考えていると先程よりも何を思ったのか更に胸を押し当て歩き出す。

 

(あの、由比ヶ浜さんっ!?)

 

結局教室につくまで解放はされず、終始殺気が混じった視線を送られる八幡であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも149です。お待ちしていた方申し訳ありません。これまで来たたくさんのコメント拝見しました。本当に嬉しかったです。ここまで遅くなってしまった理由なんですが申し訳ないことに自分のモチベの問題です。またコツコツと書いていきますので応援よろしくお願いします。またどんなことでもコメントしてくださると励みになります。閲覧ありがとうございました。また次回会いましょう。


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#6 提案

結局あの後教室に帰っても相模が悪意の目でさらされていることはなかった。しいて言えば俺が奇妙な視線と殺気のこもった視線で見られたくらいだろうか。いやほんとこわかったねうん。そうこうしているうちに掃除は終わり、部活の時間がやってくる。

 

「ヒッキー!一緒に部室いこ!」

 

ホームルームが終わるなり由比ヶ浜は直ぐ俺の席にやってくるなり俺の腕を両手でつかみそう告げる。

 

「あの由比ヶ浜さん?それって拒否権って存在します?」

 

提案してる風にそう言うが俺の腕はしっかりホールドされ逃げられないようになっていた。

 

「うっ…もしかして嫌だった…?」

 

拒否されると思った由比ヶ浜は上目遣いで悲しそうに問いかけてくる。

 

「い、いや別に嫌じゃないけど…」

 

(逆に由比ヶ浜に抱きつかれて嫌だなんて言う男子居ないだろ…)

 

「えへへ…ならいっしょに行こう!」

 

「わかったわかったからそう引っ張るなよ…」

 

半ば強引に腕を引かれ教室を出て部室まで一緒に向かう。腕を組みながら。

 

(殺す気?俺のこと殺す気なの?さっきから凄い見られてるんですけど。ボッチにこの視線はきついんですけど…)

 

恨めしく由比ヶ浜の方を見るがさっき同様顔を真っ赤にしている事に気付く。

 

(…顔赤くするくらいならするなよ…勘違いしちゃうだろ…)

 

顔を真っ赤にしている由比ヶ浜をみたことで嫌でも腕に当たっているそれのことを意識させられてしまう。

 

(…勘違いしてもいいのにヒッキーの馬鹿)

 

結局顔を真っ赤にした二人は大した会話もせず部室の前に到着する。

 

「由比ヶ浜もう部室についたし離してくれ」

 

「え!?…ああうんそうだよねついたもんね…」

 

名残惜しそうに俺の腕から離れる由比ヶ浜には気付かないふりをして部室へと入る。

 

「うーっす」

 

「こんにちはさっきぶりね」

 

「お兄ちゃんやっほー!」

 

扉を開けると雪ノ下と小町が挨拶を返す。そう晴れてこの学校に入学した小町は入学式があったその日にもう入部届をかき奉仕部への入部を果たしていた。

 

「やっはろー!小町ちゃん!ゆきのん!」

 

「やっはろーです!結衣先輩!」

 

「ええ由比ヶ浜さんこんにちは」

 

由比ヶ浜が部室に入るなり小町は立ち上がり由比ヶ浜へとちかよりはぐをしている。

 

(いつの間にそんなに仲良くなってたの?てか俺の時と反応違いすぎない?)

 

そんなことを思い少しダメージを受けながらいつもの定位置へと移動しカバンから本を取り出す。

 

「ところで比企谷君その…体は大丈夫なのかしら?」

 

席に着くなり雪ノ下は俺の方を覗き込みながら問いかけてくる。気になるのか由比ヶ浜と小町も俺の方を向いている。実は八幡は面会ができないようになっていたため小町ですら担当医からしか状況を聞いていなかったのだ。

 

「まあ大丈夫だぞ。特に後遺症とかあるわけでもないし」

 

それを証明するかのように骨折していた方の腕を軽く回す。

 

「流石の再生能力ねゾンビ谷君。とても真似できないわ」

 

「誰がゾンビだ誰が。俺が腐ってるのは目と性根だけだ」

 

「そこは認めるんだ…」

 

(…ああ久しぶりだな)

 

そんな他愛もない会話日常でありふれたようなそんな会話を八幡は懐かしく感じていた。面会謝絶状態だったため三週間ぶりのこの会話を心から楽しんでいた。

 

「まあお兄ちゃんが無事でよかったよ!あ、これ小町的にポイント高い!」

 

「はいはい高い高い」

 

俺はそう言いながら横にいる小町の頭に手を伸ばしなでる。ちなみに席順は俺ら三人は前と変わりなく俺と由比ヶ浜の間に小町がいる形になっている。

 

「もうお兄ちゃん小町もう高校生なんだけどな…」

 

そう悪態をつきながらもまんざらでもなさそうに身をよじる小町。そんな小町を羨ましそうに見る人影が二つ。

 

(むう…小町ちゃんずるい…私だって撫でられたい…)

 

(別に羨ましいわけじゃないけれど…私もやってもらえないかしら)

 

ひとしきり撫で終わると八幡は小町の頭から手を放す。小町は名残惜しそうな表情を浮かべるがそれも一瞬ですぐに由比ヶ浜たちと話し始めていた。八幡はそんな三人から視線を逸らし本へと向ける。そこから静かな時間が…。

 

「どうもー!!かわいい後輩のいろはちゃんが遊びにきましたよー!」

 

やってくることはなかった。扉を勢いよく開け元気に一色は入ってくる。そしてすぐに俺を見つけ俺に声をかける。

 

「あ、先輩久しぶりです!もう体は大丈夫なんですか?」

 

「おうもう大丈夫だぞ。要件は終わったか?なら出口はそこだ」

 

(こいつが来る時って基本仕事もってくる時だからな…)

 

「ひどい…先輩ったら可愛い可愛い後輩が心配してたって来たって言うのに…」

 

「うそつけ」

 

「…でもほんとに心配したんですよ?」

 

先程までの媚びるような声音とは違い真剣みを帯びた声でそう言う。流石にそんな声で言われると嘘だと言うことも出来ず

 

「…そうか…そのありがとな」

 

八幡はそっぽを向きながら感謝を述べる。

 

「ふふ~んいえいえ~!」

 

それで満足したのか真剣な表情から楽しそうな表情に変わっている。

 

「それで今日は雪乃先輩達に用があってきたんですけど…」

 

「達ってことは私達も?」

 

「はい!取り敢えず女子たちだけで話したいことがあるんですけど…」

 

一色はちらちらと俺の方に視線を送ってくる。

 

(はいはい分かりましたよ…)

 

「ちょっと飲み物買ってくるわ」

 

俺はそう言うと部室を後にした。

 

***

 

「それで一色さん話って言うのは?」

 

八幡の声が聞こえなくなったあたりで雪ノ下が話を切り出す。

 

「その事なんですけど…ぶっちゃけこれってチャンスだと思うんですよね」

 

「その…何のかしら」

 

「先輩って結構めんどくさいし全然自分の好みとか全然話さないじゃないですか」

 

「確かにヒッキーの好みって聞いたことないかも…」

 

「ええ、どうせ聞いたところで小町さんか戸塚君の名前を出すだけでしょうしね追及してものらりくらりとかわすでしょうね」

 

「まあ、お兄ちゃんですしねー」

 

「でもですよ、今あの先輩の本音が簡単に引き出せちゃうんですよ?」

 

「…つまりこの状況を利用して色々聞きだそうってことかしら」

 

「そうです!この機会を生かす手はないと思うんですよ!」

 

「ええっ!?でもそれってヒッキーに悪いんじゃ…」

 

「そんなこと言って結衣先輩、先輩の心が聞こえるのをいいことにその凶暴なものを押し付けて楽しんでたんですよね?全部筒抜けでしたよ?」

 

「いや…でも…ううっ…」

 

そのことを思い出したの由比ヶ浜は顔を染める。

 

「それじゃあ逆に聞きますけどあの先輩が正攻法で落ちると思いますか?」

 

「…それは…多分…無理だと思う…」

 

「…私は賛成ね」

 

「ゆきのんっ!?」

 

「だってあの男絶対に本音を漏らさないし誰の好意に気付くこともないじゃない。ええ悪いのは全部あの男よふふふっ」

 

雪ノ下が怖い感じの笑みを浮かべる。その様子に若干全員引いていた。実は雪ノ下は八幡への好意を自覚してから八幡の前では本人なりにアピールをしていたのだが全く意に返さないその様子に業を煮やしていた。周りから見れば軽いツンデレみたいなものなんだが本人は全く気づいていない。

 

「ま、まあとにかく依頼と称して色々聞きだそうって話ですよ」

 

「なるほど…でも…。んー…」

 

「結衣先輩よく考えてみてください。どっちにしろどう足掻いても本音は聞こえちゃうんですよ。私は単に奉仕部に依頼をするだけでその時に先輩の本音が聞こえちゃうのは不可抗力だと思うんですよ」

 

「…な、なんかいろはちゃんの思考がヒッキーに似てきてる気が…」

 

「それは誉め言葉として受け取っておきます。…それに確かに不特定多数にそれを聞かせるなら流石に気が引けますけど、なんとここは特別棟のしかも人通りは少ないと来ました。てことは…」

 

「聞いてるのは私達だけ…」

 

「そう言うことです!」

 

(うう…なんかいろはちゃんにいいように言いくるめられてる気がする…でも気になることには気になるし…)

 

「…なら私も賛成…かな?」

 

「よくぞ言ってくれました!お米ちゃんは?」

 

「…え?私はまあ…いいですけど…」

 

「小町ちゃんどうしたの?」

 

いつもより元気がなさげに見える小町を心配そうにのぞき込む。

 

「…大丈夫ですよ!ちょっと考え事してただけです!」

 

明らかに空元気なのだが本人がそう言ってるのもあり由比ヶ浜はそれ以上の追及をやめた。

 

「それにしても何でこんなことを私たちに提案したのかしら。正直あなたにメリットはないと思うのだけれど」

 

「ゆきのんメリットがないってどういうこと?ヒッキーの本音を聞けるしメリットはあると思うんだけど…」

 

「ええ確かにその点で言えばメリットでしょうけど私たちにそれを提案する理由はないのよ。別に一人で生徒会の仕事がと言って呼び出してさりげなく聞けば私たちに対して大きなアドバンテージになるのよ。実際一色さんに言われるまでこんなこと思いつきもしなかったもの」

 

「…そっか確かにいわれてみれば…」

 

「…正直私も一人でやることも考えました。でもちょっと考えてみたんです。先輩って割と言ってることは辛辣で不器用ですけど優しいじゃないですか」

 

「ええ、そうね」

 

「その優しさって深くかかわらないとわからないんですけど先輩ってあんなだから人を寄せ付けずこれまではそれに気づく人もごく少数でした。でも…」

 

「これからはそれが前面に出るから気づく人がでると…」

 

「ええそれでライバルが増える可能性ってかなり上がると思うんですよね。実際周りの先輩を見る目ってかなり変わってると思いますし、それにぶっちゃけ雪乃先輩や結衣先輩だけでも危ないのにこれ以上増えるのはあまり望ましくないんですよ。現時点でもあの誑しまだ何人か誑かしてるっぽいですし」

 

「誑かすって…でも確かにヒッキーのいいところが認知されるのはいいことだけどそれは嫌かなあ…」

 

「でしょう?なのでここは協力関係を持ち掛けます」

 

二人は少し考える素振りを見せ賛成の意を述べた。

 

「じゃあ誰が選ばれても文句はなしってことで」

 

話がまとまった一色たちは八幡の帰りを待った。一人表情に陰りを見さながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも149です。久しぶりに投稿してこんなにコメントがもらえると思ってなくて嬉しかったです本当にありがとうございます。コメントにもあったのですかどの作品もこのまま一生放置する気はありません。ただほんとにその時モチベがある作品しか書かないのでその辺はご了承いただけるとありがたいです。あと続けるとは言いましたが割と路線を変えているのである程度のところまで急ピッチで進めています。展開が早くて読みにくかったらすいません。それでは閲覧ありがとうございました。次回またお会いしましょう。


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