羽沢家の長女 (Cross Alcanna)
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コラボ&Extra
【Extra】『羽沢家の長女』 設定集 ※ネタバレ注意


どうも、Cross Alcannaです。

オリジナル設定中心にここに書いていこうと考えています。原作キャラの説明は書かないことにしました。因みに、本編を読まないでここを読むと、ネタバレの恐れがありますので、ご注意下さい。

では、どうぞ。



[オリキャラ]

 

 

[羽沢 夏(はざわなつ)]

 

性別:女 年齢:21

身長:167cm 学歴:高卒

職業:メイクアップアーティスト

趣味:音楽・料理・弓道

担当楽器:キーボード(メイン)orその他全楽器(サブ)

 

妹ガチ勢。つぐみも満更ではない反応をするため、シスコンが加速。周り曰く、「見てて癒されるから止める必要がない」との事。

 

元気で活発だが、母性溢れる性格。基本怒ることはない。商店街の人からは、『なっちゃん』と呼ばれている。

 

元バンドマンなので、音の聞き分け、ミス判別、演奏が得意。因みに、バンド時代に『音神』『ラスボス』等と呼ばれていた(この呼び名で実力はわかるかと)。本人はまだ未熟だと思っており、バンド時代は練習を欠かさなかった。バンドで使わない楽器まで扱えるようになったのは、好奇心が故である。

 

職場では、トップ3に位置しているとかいないとか。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

[氷川 楓(ひかわかえで)]

 

性別:女 年齢:21

身長:154cm 学歴:高卒

職業:小説ライター

趣味:園芸・絵描き

担当楽器:ギター(メイン)

     キーボード(サブ)

 

氷川家の長女。とてもお淑やかで、とんでもない美人。肌が白いせいでアルビノと勘違いされがちだが、生まれつきであり、アルビノではない。

 

元はキーボード(ピアノ)をメインにしていたが、新しい楽器をやってみたいとの本人の意思でギターを始める。その結果、ギターをメインにするように。

 

書いている小説は結構売れているらしく、それを家計の足しにしたり、妹達に色々買ってあげている(誕生日とか)。

 

バンド時代は、ギターから出てるとは思えない繊細かつ綺麗な音色とその容姿から、『氷輪の姫』と呼ばれていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

[奥沢 躑躅(おくさわつつじ)]

 

性別:男 年齢:21

身長:167cm 学歴:大学在学中

職業:大学生

趣味:釣り・ネットサーフィン

 

奥沢 美咲の兄。美咲がミッシェルとして活動している事を知っている。

 

バンド活動をしていた頃にエゴサをしていたためか、それが派生してネットサーフィンをよくするようになる。

 

大学の講義の合間に釣りをするようになってから趣味にまでなった。たまに美咲を釣りに連れていったり。

 

バンドでは男性ボーカルとドラムを担当している。

 

[花園 桜(はなぞのさくら)]

 

性別:女 年齢:21

身長:159cm 学歴:高卒

職業:公務員(役場)

趣味:ファッション・読書

 

花園 たえの姉。たえとは違い、生真面目な性格。風紀委員長でもないのに風紀委員長まがいの振る舞いをしていたために、何故か"真の風紀委員長"だったり"桜様"と呼ばれるように。

 

意外にも、ちょっとしたシスコンが混じっており、たえにはかなり甘い。

 

バンドでは女性ボーカルとギターを担当しており、たえにもギターを教えている。

 

[丸山 竜胆(まるやまりんどう)]

 

性別:男 年齢:21

身長:165cm 学歴:高卒

職業:花屋(自営)

趣味:ゲーム・園芸

 

丸山 彩の兄。花屋を自営しているため、現在は1人暮らし。彩が甘えん坊な性格のため、住んでる家にはあまりいない(実家に行っている)。

 

無愛想と思われがちだが、夏と同等に感情豊かである。ゲームは様々なジャンルをプレイしており、ネット友達もぼちぼちいる。

 

彩のライブには毎回行っており、彩に練習にも連れてかれることも。

 

バンドではベースを担当しており、彩のバンドであるPastel*Palettesの白鷺 千聖にベースを教えている。

 

 

[To the dream world]

 

羽沢 夏を始めとした5人で結成されたバンド。命名者は氷川 楓。当時は『最高のバンド』と称されていた。

 

しかし、皆の進路の事を考え、円満解散に至った。忙しいせいで、連絡がほとんど取れていない(夏だけ)。

 

曲によって担当パートを替える変わった形式をとっている。

 

Vo.奥沢 躑躅or花園 桜

 

Gt.氷川 楓&花園 桜

 

Ba.丸山 竜胆

 

Dr.奥沢 躑躅

 

Key&その他.羽沢 夏

 




更新した時は、本編の後書きに書いておきます。

2020/6/22 羽沢 夏イメージ絵

2020/8/4 氷川 楓イメージ絵


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【コラボ】訳あり

どうも、Cross Alcannaです。

今回はコラボ回となっています。こちらから依頼したのですが、相手方のキャラを上手く書けるかが心配です。私なりに上手く書こうとは思っていますが。最後にアンケートを新設しますので、良ければお応え下さい。

では、本編を開始します。



[ショッピングモール]

 

 

「何処行こうかな?……やっぱ無計画で外出るもんじゃないね」

 

 

今日は暇だったから、ふと外に出てみたわけだけど……何となくでここに来ちゃった……。どこか店にでも……ってあれ?あそこにいる子って…

 

 

「……?あの子って確か……」タッタッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これとか似合いそうだよね!」

 

 

「……かれこれ1時間は経ってるよ?まだ続ける?」

 

 

「うん!」

 

 

「……はぁ」

 

 

片方は誰かわかんないけど、あっちの女の子は……

 

 

「オーイ!リサちゃーん!」フリフリ

 

 

「あっ!夏さん!!」フリフリ

 

 

あれ?自己紹介したことあったっけ?私はネットの情報とかで知ったから知ってるけど……あっちもそんな感じかな?

 

 

「なんだかんだ言って、初めましてかな?」

 

 

「はい!羽沢 夏さんですよね!?私は今井 リサです!」

 

 

「そうだね、私は羽沢 夏だよ!……隣の男子は誰?……彼氏?」

 

 

「そういうのじゃないんで」キッパリ

 

 

あれぇ?違ったみたい。…つまんないって言ったらいけない気がするから言わないけど。

 

 

「……紡木 綾斗(つむぎあやと)です。今日は今井さんに無理矢理連れてかれただけですので」

 

 

「も~、つれないなぁ~」

 

 

「まぁまぁ、ここで話すのもなんだし、別のとこに移動しよっか」

 

 

「はい!あ、この服置いて来ますね!」タッタッ

 

 

結構な数持ってたね、リサちゃん。ちょっと時間かかりそうだね。っと、綾斗君が不意に話しかけてきた。

 

 

「助かりました」

 

 

「そう?」

 

 

「はい……1時間はあの状態でしたから」

 

 

「女の子って、ああいうの時間かけたがるからねぇ~」

 

 

私はどっちかというと感覚で買うタイプだから、下手したら男性よりすぐ終わるんだよね~。私も綾斗君と同じ事よく言ってたからね~、気持ちはわかるよ!

 

 

「……ねぇ、綾斗君?」

 

 

「何でしょう」

 

 

「君、()()()だね?」

 

 

「っ!……何の事でしょうか」

 

 

……あくまで隠し通したい、と。なら、詮索はしない方が良いかな?()()()()()()()()()、ね。

 

 

「いーや、何でもないよ!」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[カフェ店(羽沢珈琲店ではありません)]

 

 

「綾斗君は何頼む~?」

 

 

「コーヒーで」

 

 

「オッケー!夏さんはどうします?」

 

 

「そうだね……久々にブラックでも飲もっかな?」

 

 

「わかりました!すみませーん!」

 

 

流石にあんなとこで立ち話ってのもなんかね……と思ったから、モール内のカフェに場所を移した。

 

私はブラックを頼んだ。美味しいよね、あの苦味!脳がシャキッとする気がして好きなんだよねぇ。

 

 

「にしても今井さん、夏さんと会ってからテンション高くないですか?何でです?」

 

 

「え!?綾斗知らないの!?」

 

 

「何がさ」

 

 

「夏さんはバンド界の中では凄い人なんだよ!?」

 

 

「そうかな?」

 

 

「その演奏から"音神"とか"ラスボス"なんて呼ばれてるんだよ!」

 

 

改めて目の前で言われると、なんか恥ずかしいなぁ。まあ、悪い気はしないけどね!…ラスボスって。

 

 

「へぇ~。……因みに何の楽器を?」

 

 

「そうだね~、一応バンドで使う楽器は全部出来るけど……メインはキーボードだよ」

 

 

「うわぁ……」ドンビキ…

 

 

あっ、引かれた。なしてさー!!(*`Д´*)

 

私、そこまで変じゃないってばぁ~!

 

 

「綾斗君は何かやってるの?」

 

 

「ギターを少し。今は氷川さんに教えてもらってます」

 

 

「へぇ~」

 

 

楓の妹にね……まず間違いない人選だね、安心。……妹の方じゃなければ、だけど。まぁリサちゃんと知り合いなら多分姉の方だと思うから、大丈夫かな?

 

 

「夏さん、これからライブは沢山やるんですか?」

 

 

「え?バンド組んでるんですか?」

 

 

「そうだよ!……そうだね~、ボチボチやろうかな、とは思ってるかな?」

 

 

あんまり頻度は高くないかなぁ。いつ緊急の仕事が飛んでくるかわかんないしね!…仕事、やりたくないなぁ~。

 

 

「じゃあ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[道中]

 

 

帰り道、私は綾斗君を送っている。本当は逆なんだろうけど、私の方が年上だし、ね?

 

 

「……なんでついてきたんですか?」

 

 

「あまり話出来てなかったからね~。それに、夜道に1人って危ないでしょ?」

 

 

「男ですから、大丈夫ですよ」

 

 

「……訳あり、なのに?」

 

 

「……っ!」

 

 

やっぱり、この話題には警戒するよね。

 

 

「……何を知ってる」

 

 

「……」

 

 

とと、まさか口調を変えてまで警戒するとは。予想はしてたけど、威圧的になってるね。ま、私には意味無いけどネ!

 

 

「あんたは……何を知ってる」

 

 

「何にも知らないよ?ただ、私と同じ感じがしてね」

 

 

そう、綾斗君はどこか危ない感じがする。()()()()()()()()()。何かあることだけはわかる。さっきの反応といい、今の反応といい、この子、わかりやすいよね。

 

 

「深くは聞かないよ。知られたくないって顔してるし。……そうだね。私も少し……いや、かなりの訳ありでね」

 

 

「……」

 

 

「私ね?…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……片眼がないんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 

「そうだね……綾斗君には担当医っているかな?」

 

 

「……はい」

 

 

「その人に聞いてみると良いよ。羽沢 夏って人について聞きたいって。私から許可は得てるって言えば、教えてもらえると思うから」

 

 

「……考えておきます」

 

 

っとと、進藤 夕香(しんどうゆうか)さん(綾斗君曰く、担当医の人らしい)の家についたね。

 

 

「じゃあね、綾斗君。無理はしないでね~」フリフリ

 

 

「…はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[夕香宅 食卓]

 

 

「今日はリサちゃんと出かけるって聞いたけど、さっきの女の人は誰なの?……もしかして彼女?」

 

 

「断じて違います。…リサさんの知り合いみたいです」

 

 

「へぇ~、リサちゃんの……」

 

 

そういえばあの人、どうして担当医がいるなら聞けなんて言ったんだ……?

 

 

「…………あの」

 

 

「ん?何かな?」

 

 

「……羽沢 夏って人、知ってます?」

 

 

「……!?」

 

 

いつも動揺なんて滅多にしない夕香さんが、目に見えてわかるくらいに動揺してる……?

 

 

「……綾斗君、どうしてその人の名前を?」

 

 

「え?さっきの人に言われたんですよ。担当医がいるなら、私の事を聞けば教えてもらえるって。それでもダメなら、私から許可をとったって言えば良いって……」

 

 

「……私?」

 

 

段々夕香さんの顔が曇り始める。やがて、その顔色は青くなっていき……

 

 

「綾斗君、さっきの人って……まさか」

 

 

「?羽沢 夏さんですか?」

 

 

「!?だ、大丈夫だった!?」ガタッ!

 

 

「うわっ!?ど、どうしたんですか!?」

 

 

「……あの子は、確かあそこに送られて……いやでも、それからの事は聞かなかったな……」

 

 

「ゆ、夕香さん?」

 

 

珍しい。夕香さんが小声でブツブツ呟くなんて。

 

 

「……良い?今から言う事は他言無用よ?それでも良いなら言うわ」

 

 

「……はい」

 

 

意を決したような顔をする夕香さんは、衝撃の事実を告げた。僕が言葉を発せず、固唾を呑んだことは、言わなくてもわかることだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーあの人は、狂人よーー

 




ということで、コラボ回が終わりました。

今回はENDLICHERIさんとのコラボ回でした。因みに、かなりシリアスな感じになりましたが、本編にかなり関係するとても重要な事です。次回もコラボ回が続くような終わり方でしたが、続きません。もしかしたら、夏についての話が追々書かれるかも知れません。後、アンケートを新設しますので、良ければお応え下さい。

次回『皆の頼れるお姉さん』


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【コラボ】束の間の憩い

どうも、Cross Alcannaです。

今回は本編から逸れますが、コラボ回となります。また私からの依頼なのですが、相手方のお方も快く承諾してくださいました。お相手さんのキャラを立てつつ、しっかり話を展開できるかが心配ですが、頑張ります。

因みに時系列的には16話と17話の間という扱いになりますので、ご注意を。

そして、イモッティさん、お気に入り登録ありがとうございます。

では、本編を開始します。



[CiRCLE カフェ]

 

 

「ん~、ここの商品も美味しいんだよね~!」

 

 

今日はCiRCLEに付属(?)してるカフェに来てるわけだけども…それにしても……

 

 

「…ライブハウスにカフェ、挙句の果てには隅のほうにある足湯…CiRCLEは何を目指してるんだろう…?」

 

 

たまにここに来るんだけど、来るたびにそう思うんだよねぇ~。ライブハウスなのかカフェなのか、はたまた別のものなのか…CiRCLEに抱く疑問点の1つだったり。

 

 

「…あれ?あの子って…」

 

 

ふと1人の男子が視界に入り、私の脳内思考を奪った。私の目が可笑しくなかったら、確かあの子だったはず…

 

 

「でも、今仕事中っぽいしなぁ…少し待ってみようかな?」

 

 

仕事中に話しかけられても迷惑になりそうだし、一段落つきそうになるまで待つことにしようそうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…まさかカフェの方を手伝わされるとは…まりなさん、僕の事こき使い過ぎじゃないか…?」

 

 

いつものように…とはいかないけど、今日も今日とてCiRCLEでバイトをしている。いつもと違うところと言えば、カフェの方で仕事をしていることだ。まぁ、もうじき終わるみたいだし、その後はCiRCLEの方で働くんだけど。

 

 

「…あ、やっぱり川俣君だ!やっほ!」

 

 

いつも聞くガールズバンドの人達の声じゃないことに一抹の不安はあったものの、その声に聞き覚えがあったので、振り返る。すると、予想した人がそこに立っていた。

 

 

「夏さん!」

 

 

「先日は…お互い大変だったね」アハハ

 

 

この前(『主人公とガールズバンドのなんでもありdays』第5話参照)に会ったばかりの夏さん。この前…トマト…ウッアタマガ

 

 

「そういえば、この前と口調違いますね」

 

 

「この前は、気が動転してたから…つい敬語になっちゃったんだよね~。こっちが本来の喋り方だよ~」

 

 

「そうだったんですか」

 

 

この前は、何だかんだ大変だったから、こうしてお互いのんびり話をすることは出来なかった。ちょうど休憩時間だし、このまま話が出来ないだろうか…

 

 

「あの、よかったら話をしませんか?」

 

 

「良いの?私もそのつもりで来たから、寧ろこっちからお願いしたかったけど…」

 

 

結局、お互い話をすることになったので、休憩がてら僕の飲み物を持ってくることにした。夏さんは…ブラックかぁ、大人だなぁ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先日はホント大変でしたよ、つぐみさんにも聞かれて心折れましたもん」

 

 

「あ、ごめんね?ついつぐに話しちゃって…」

 

 

「いえいえ、気にしないで下さい。もう終わったことですから」

 

 

「そう言ってもらえて良かった~」ホッ

 

 

こうして話を弾ませて、5分くらい経ったが、今は先日の件について話していた。あれは……うん、忘れよう。それにしても…

 

 

「夏さんって、つぐみさんのお姉さんだったんですね。でも、店で見かけたことなかったんですよね…」

 

 

「あ~、私厨房の方にいるからね~、接客の方はやってないんだ」

 

 

「成る程、そうだったんですね、納得しました」

 

 

どうりで見かけないわけだ。…ん?てことは…

 

 

「あの料理って、全部夏さんが?」

 

 

「全部ってわけじゃあないけどね~、3割くらいは私が作ってるけど」

 

 

ってことは、知らず知らず夏さんの料理を食べてるわけか…。まぁ、だから何だって話だけど。

 

 

「いやぁ、こうしてゆったりするのなんて、いつ振りだろうなぁ…」

 

 

大袈裟に聞こえるかも知れないが、実際こうしてゆっくりできたのがいつ以来か、思い出せないくらいバタバタした毎日だった。ひまりさんと入れ替わったり、変なワニのおもちゃのゲームをやったり…今思うと、どうしてこんなに慌しいんだろう。もういっそこのままで良いんじゃないかな。

 

 

「そんなに?前のは…確かに大変だったけど…」

 

 

「はい、いつも変なことになるんですよ。気が休まらないんですよね…」ハハハ

 

 

いつも変な方向に行くからか、今も尚警戒してるから、気を休めてはいないのだが。それでも、気の毒そうに心配してくれる夏さんのその気持ちがとても嬉しい。

 

 

「…あっ、もうバイトの時間が始まりそうなので…」

 

 

「もうそんな時間?早いね~」

 

 

はぁ、またまりなさんにこき使われるのかぁ…まぁ、ゆっくりできたし、今日は頑張ろう。そう思って席を立とうとした時だった。

 

 

「そうだ…川俣君」

 

 

「はい?どうしましたか?」

 

 

夏さんに呼び止められた。何だろう…まさか、いつもの様に変な方向に話が行くのか…?

 

 

「疲れたり愚痴を零したい時は、私のところに来て良いよ。空いてたらいつでも相手するから」フフッ

 

 

「…!ありがとうございます!」

 

 

僕の心情でも見透かしたかのようにそんな提案を繰り出す夏さんに、僕は食い気味に縋った。

 

 

「じゃあ、バイト頑張ってね」

 

 

「はい、今日はありがとうございました!」

 

 

そう挨拶を交わしてお互い離れる。…いやぁ、今日は良い日だなぁ。…よし!しばらくは頑張れる!さて、まりなさんに怒られる前に行こうっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[羽沢家 夏の部屋]

 

 

「ねぇ、つぐ」

 

 

「?どうしたの、お姉ちゃん」

 

 

あれから時間は経ち、晩御飯を食べ終え、私の部屋でつぐとゆっくりしていた。しかし、私は1つ気にかかってた事があった。

 

 

「川俣 修一って子、知ってる?」

 

 

「うん、何回か会った事あるけど…修一君がどうしたの?」

 

 

話してみてわかったけど、川俣君は結構大変な毎日を過ごしている気がする。実際、()()()()()()()()()()()()

 

 

「彼が羽沢珈琲店に来たら、私を呼んで欲しいんだけど…良いかな?」

 

 

「良いけど…どうして?」

 

 

「彼、大変な毎日を過ごしてるみたいだからさ…私がたまに話を聞いてあげようって約束したんだ」

 

 

…お節介かも知れないけど、生憎、ああいうのって放っておけない性格なんだよね。知り合いなら尚更。

 

 

「…うん、わかった」

 

 

「つぐもさ、たまに話聞いてあげて?それだけでだいぶ変わるからさ」

 

 

「わかった!」

 

 

健気なつぐ、可愛いなぁ。そう思いながら、ここにいない彼の平穏を祈る私だった。

 




ということで、コラボ回が終わりました。

今回は、グルーブロッゾさんの『主人公とガールズバンドのなんでもありdays』とのコラボでした。ああいう破天荒な感じが私には出せない味わいがあって、私は好きです。こちらからの依頼も快く受けて下さり、本当にありがとうございました。尚、次回からは再び本編に戻ります。

新設したアンケートに不備がありましたので、改めて作り直しました。尚、今までの票はこちらで控えていますので、しっかりカウントします。申し訳ありませんでした。

グルーブロッゾさんのマイページはこちら

『主人公とガールズバンドのなんでもありdays』はこちら


次回『偽りのモノ』


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第1章 彼女を取り巻く世界
【本編】反応が見たかった。反省はしてないッ!


どうも、Cross Alcannaです。

新作を始めました。今回は日常系です。どちらかと言えばシリアスの方が得意なので、日常はあまり自信がないです。が、頑張って書いていきます。

では、本編を開始します。



[羽沢珈琲店]

 

「ふぅ……」

 

 

「お疲れ様、つぐみ」

 

 

「お父さんも、お疲れ様」

 

 

今日も私は店番。忙しいけど楽しい、そんな毎日を過ごしている。幼馴染みの皆とバンドを組んで、今ではライブをするようにもなった。……あぁ、お姉ちゃんがいたらなぁ……なんて思っていると、"Close"と書いた札を出したはずの店の扉から、誰かが来店したような音がした。

 

 

「…?今日はもう店じま…………!!」

 

 

「?お父さん、どうした…の…………!!」

 

 

「……ただいま!つぐみ!お父さん!」

 

 

……夢でも見てるのかと疑った。でも、夢じゃない。間違いない!……お姉ちゃんが…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前

 

 

「ふぅ、着いたね。……懐かしいなぁ」

 

 

私、羽沢 夏(はざわなつ)は、ファッション会社に勤めていて、先程海外出張から帰ってきたところだ。……もう海外出張なんてしたくないけど。疲れるし。

 

 

「……皆、驚くかな?」

 

 

私は、家族に今日戻る事を言っていない。所謂サプライズってやつだ。驚いた顔が見てみたかったので、わざと伝えておかなかったのだ。…旅行中とかで不在…とかないよね?不安になってきた……でもまぁ、仕方ないか!

 

 

「さて、帰るとしますか!」

 

 

どんな顔をするのか、想像しながら電車に乗った。……久しぶりに家族の顔を見るなぁ……。楽しみで仕方ない。

 

 

「そういえば、つぐみの幼馴染み達は元気にしてるかな?つぐみに聞いてみようっと」

 

 

色々な事を考え、太陽で照らされた風景を見ながら、私は電車の中で揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた~!」

 

 

懐かしの町!いやぁ~、相変わらずの賑わいぶりだね~この商店街!……あっ、あれ買っていこっと!そう思い、北沢精肉店に立ち寄る。

 

 

「久し振り!北沢さん!」

 

 

「……おお!なっちゃんじゃないか!久し振りだな!」

 

 

「うん!あ、コロッケ4つちょうだい!」

 

 

「よし!ちょっと待ってな!」

 

 

やっぱりいい人だ、皆。私は小さい頃から"なっちゃん"と呼ばれている。……こらそこ!どっかのジュースの名前と同じじゃんとか言わない!気にしてるんだから!o(*`ω´*)o

 

っとと、おじさんが来たみたい。

 

 

「はい!これで良いかい?」

 

 

「うん!ありがとう!」

 

 

……まだ時間あるし、商店街見て回ろうかな!そうと決まれば、レッツゴー!どこ寄ろっかなぁ~?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方

 

 

「……少し寄り道し過ぎちゃった……かなぁ?」

 

 

色んなとこに顔を出して駄弁ってたら、いつの間にか夕方になっていた。……私ったら、ドジッ子ね!(*´・ω-)b……イタいとか言わないで!

 

……コホン。じゃあ、今度こそ家にゴー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[羽沢珈琲店]

 

 

「……久し振りだなぁ、本当に」

 

 

思わず、声が漏れちゃった。……皆、元気かな?扉を見ると、"Close"と書いた札がかけてあった。…ホントにいるかな?

 

 

「……よし!」

 

 

意を決して、ドアに手をかける。……うっひゃあ、緊張するなぁ~……

 

その緊張を振り払い、扉を開ける。すると、お父さんとつぐがいた。片付けの最中かな?

 

 

「…?今日はもう店じま…………」

 

 

「?お父さん、どうした…の…………」

 

 

「……ただいま!つぐ!お父さん!」

 

 

……どうだ!?見た感じ、驚いてるように見えるけど!?

 

 

「お姉ちゃん!」バッ!

 

 

「おっと、相変わらず甘えん坊だね~!」ダキッ

 

 

この感じ、成功では!?ヤッタネ!(*≧∇≦)ノ……疲れた顔してるねぇ、2人とも。……よし!成功だぁ!!

 

…って、疲れてるね、2人とも。この感じだと、お母さんも疲れてるかな?じゃあ…

 

 

「今日は私が腕を振るうね!」

 

 

「わぁ!お姉ちゃんの料理食べれるの!?」

 

 

「…夏、疲れてるんじゃないか?」

 

 

「疲れてる顔してるお父さんには言われたくないかなぁ~?」

 

 

「……相変わらずかなわないな。……頼んで良いかな?」

 

 

「うん!あ、そういえばお母さんは?」

 

 

「今来ると思う」

 

 

そう言うと、タイミング良くお母さんが奥からやってくる。…やっぱり疲れた顔してるね。私の読み、合ってたね~

 

 

「あなた~?今日は何にす……」

 

 

あっ、お母さん固まっちゃった。……そういや、言ってなかったの忘れてた♪と、お母さんが勢い良くこっちに向かってくる。

 

 

「まぁ!夏じゃない!お帰りなさい!!」

 

 

「ただいま!お母さん!……あ、今日は私が料理するよ!」

 

 

「あら♪ならお願いしようかしら!」

 

 

「うん!…………つぐ?」

 

 

「……」

 

 

……何か、つぐみが頬を膨らませてるんだけど。可愛い(可愛い)。……でも、これで料理は流石に無理だよね~?…よし、心を鬼にして…

 

 

「つぐみ?離してくれないと料理出来ない……」

 

 

「や」

 

 

何この可愛い生物?……本当なら頭撫でて愛でたいんだけど、そういうわけにもいかないし……

 

 

「つぐ、後でならいくらでも甘えて良いから、ね?」

 

 

「……むぅ」

 

 

あ、離れた。……何か涙目なんだけど?最後まで罪悪感たっぷり(圧倒的ト○ポ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……相変わらず料理の腕凄いな、夏は」

 

 

「本当ねぇ~、お店出せるんじゃないかしら?」

 

 

「うん!お姉ちゃんの料理も美味しい!」

 

 

あれ?ここに天使がいるんだけど?…にしても、店云々は言いすぎじゃないかな~?私からしたら、まだまだ改善の余地ありなんだけど…

 

 

「そうかな?もうちょっと出来た気がするけどなぁ~」

 

 

「……この店、夏に任せたいわ……」

 

 

「全くだ……」

 

 

あれ?2人とも呆れた顔してる。……Why?なんか納得いかなーい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[夏の部屋]

 

 

「よしよし~!」

 

 

「~♪」

 

 

今私は、つぐみを全力で愛でてる。あぁ~可愛いぃ~!ずっと出来ちゃうね~!

 

 

「……そういえばお姉ちゃんって、またどこか行くの?」

 

 

「ううん、しばらくはいるよ!……ずっとって訳ではないけど」

 

 

「……忙しいんだね」

 

 

「まぁ、大人だからね?後それなりに良い立場だからね」

 

 

まぁ、社長に「しばらく海外出張止めて下さい(白目)」って言ったら同情されて休暇を貰った。でも、仕事あっても会社は近いから、別に会えない訳じゃないんだけどね?

 

 

「しばらくはここでゆっくり出来るよ」

 

 

「本当!?」

 

 

「ホントホント~」

 

 

露骨に嬉しそうにしてくれると、私も嬉しくなるね!休みをとった甲斐があるね~……そうだ!

 

 

「また今度、つぐが行きたいとこにでも出掛けよっか♪」

 

 

「うん!」パァァ!

 

 

明日は蘭ちゃん達に挨拶しないとね!どんな顔するかなぁ?

 

 

「さて!つぐみ、そろそろ寝ようか?」

 

 

「……今日はここで寝たいな」

 

 

「わかった、準備してきて?」

 

 

「うん!」

 

 

明日からは、楽しい事が待ってるぞぉ!!……待ってるよね?ね?因みに、つぐみの寝顔可愛かったです、はい。

 




ということで、第1話が終わりました。

早速ですが、アンケートを貼っておきますので、回答していただけると助かります。どうでしたか?ちゃんと書けているか、とても心配です。またクオリティは上げるよう努めますので、気長に待っていただけると幸いです。

次回『バンド組んだらしい』


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【本編】バンド組んだらしい

どうも、Cross Alcannaです。

2話になりますが、やはり日常(コメディ)は書くのに時間がかかりますね。実際、毎日投稿がもたないかもしれないです。まぁ、私のペースでやらせていただきますけれども。

では、本編を開始します。



「つぐみ?私はあの4人と挨拶に行くのであって、ライブを見に行く訳じゃないんだよ?Do you understand?」

 

 

「知ってるよ!ここに蘭ちゃん達がいるんだって!」

 

 

……え?あの子達、そんなにライブ観賞が好きなの?…………え?(困惑)

 

 

「……あれ?今日ライブやってなくない?(ボソッ)」

 

 

見てみると、イベントのポスターがあるわけでもなく、これと言って観客……ってか、人が全然いないジャン!!隣のカフェ的なとこの方がまだ人いるじゃん!ワケガワカラナイヨ!(錯乱)

 

そんな疑問で頭がパンクしかけている私を引っ張り、中に入っていくつぐだったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[CiRCLE 3番スタジオ]

 

 

「……そうなってるとは、思わなかった」

 

 

要約すると……あの子達、バンド組んだみたい。……わかるか!(食いぎみ)

 

……え?発案者つぐみなの!?凄い!(小並感)

 

 

「にしても、皆久し振りだね!」

 

 

「はい!夏さんも元気そうでなによりです!」

 

 

「お久し振りです!」

 

 

「……」

 

 

「蘭~?」

 

 

……あっちゃ~、蘭ちゃん怒り心頭かなぁ?「連絡くらい入れてよ」とか言いたげな目で見てるなぁ……蘭ちゃん達にくらい連絡入れとけば良かったかなぁ…

 

 

「ごめんね!蘭ちゃん!皆を驚かそうと思ってのは謝るから、許して!!」

 

 

うん、素直に謝るしかないね、これ。会社で色んな人見てきたからわかる。謝るときはちゃんと謝らないとね!

 

 

「……別に、怒ってないし」

 

 

……あら意外。怒ってなかったんだ。……にしても…

 

 

「相変わらず可愛いなぁ!蘭ちゃんは!」バッ!

 

 

「ちょ!ちょっと!」ダキッ

 

 

可愛いから、思わず抱きついちゃったけど……私は悪くないよね!うん!蘭ちゃんが可愛すぎるのがいけないと思います!

 

…ホントに皆変わってないねぇ~。…あ、そういえば…

 

 

「そういえば、何ていうバンド名なの?」

 

 

「Afterglowです!」

 

 

「何だっけそれ……確かぁ……"夕焼け"だったかな?」

 

 

「そうですよ~」

 

 

やっぱ海外行ってたからね!ここで言えなきゃ恥だよね!……まぁ、海外でAfterglowなんて言ってる外国人いなかったけど。あんまり使わないのかな?

 

 

「Afterglowかぁ……何かエピソードはあるの?」

 

 

「はい!例え喧嘩をしても、5人で一緒にバンド名を考えた日を思い出せるようにって思ったので、その時に見た夕焼けからこの名前にしたんです!」

 

 

「青春してるねぇ!」

 

 

楽しそうで何より!……え?私はどうなのかって?忘れた!結構前だしね!でも、バンドはやってたよ!……皆元気かな?

 

 

「夏さん!いい加減離して!///」

 

 

「あ、ごめんごめん」バッ

 

 

うっかりしてた。ずっと蘭ちゃん抱きっぱなしだった。つぐみの次に抱き心地良いからね、仕方ないね!ワタシワルクナイ!

 

 

「皆、練習するよ!」

 

 

「おっけ~。じゃあ何の曲からやる~?」

 

 

「アスノヨゾラ哨戒班にしようよ!」

 

 

「カプリチオはどうだ!?」

 

 

「前回の復習からしない?」

 

 

良いねぇ~、このワイワイとした雰囲気。バンドやったことあるからわかるけど、この雰囲気大事なんだよね~凄く!

 

そんなことを考えているうちに始まったっぽいね。じゃあ、ゆっくり聴くとしますか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄いね!皆!」

 

 

「やったぁ!」

 

 

「当然~、モカちゃんですし~」

 

 

「よし!今日も問題ないな!」

 

 

「…別に。いつも通りだし……///」

 

 

ほんと、色んな反応が返ってくるなぁ。……あれ?そういえばつぐみの声が聞こえない?

 

 

「…………」

 

 

……ありゃ、凹んでる。満足いかない演奏だったのかな?……よし!お姉ちゃん、一肌脱ぎましょう!

 

 

「つぐみ、何処が出来なかったの?」

 

 

「……お姉ちゃん。……サビのこの部分」

 

 

「……わぉ、これは難しいね!よし!今から()()()()()()見て技術を盗んでね!あ!わかんなかったら言ってね!教えるから!」

 

 

『…………え?』

 

 

うっひゃ~、久々に触るなぁキーボード。出来るかな?……とにかくやるっきゃないよね!

 

確か…こんな感じだったっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、凄い……」

 

 

私のアドバイスの為に弾いてくれてるのに、聴き入ってしまう。音が違う。まるで、グランドピアノの音色みたいに綺麗。……凄いなぁ、お姉ちゃん。

 

 

「~♪……っと!こんな感じね!どう?何か掴めたかな?」

 

 

「うん、ありがとう!お姉ちゃん!」

 

 

「おぉ~よしよし!」ナデナデ

 

 

「……♪」ナデラレ

 

 

あんな満面の笑みでこっち見られたら耐えれません(真顔)

 

……およ?4人共、固まっちゃってる?どうかしたのかな…?

 

 

「……夏さん、どうしてそんなにキーボード出来るんですか!?」

 

 

「……あ~、言ってなかったね」

 

 

『?』

 

 

「……私、バンドやったことあるんだよね」

 

 

『…………え?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えぇぇぇ~~~!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからあんなにキーボード出来るんだね」

 

 

「そうなるね~、つぐみにキーボード教えたのも私だしね!」

 

 

「そうなの?つぐみ」

 

 

「うん!お姉ちゃんの演奏を自分もしてみたいって思ったんだ!」

 

 

「バンドマン冥利に尽きるね~!」

 

 

つぐみがそう言ってくれるだけで、お姉ちゃん、嬉しいです!そんなことを考えている一方では、蘭ちゃんが切り替えるかのように声を上げた。

 

 

「じゃあ、続きやるよ、皆!」

 

 

『うん!/ああ/おっけ~』

 

 

この後メチャクチャ演奏聴いた。……久々にライブしたくなったなぁ~!ソロでやっちゃう?……想像したらなんか悲しくなった。うん、やめとこ!

 




ということで、第2話が終わりました。

終わり方が少し変なのは許して下さい……。上手く書けなかったので。話は変わりませんが、そろそろ設定集をあげようかと考えています。夏のイメージ絵が完成したので。

次回『孤高と秀才と氷輪と』


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【本編】孤高と秀才と氷輪と

どうも、Cross Alcannaです。

今回は、2人登場します。バンドの皆との邂逅が最初ではないので、悪しからず。設定集は、ある程度進んでから出そうと思います。そして今回か次回、オリキャラが新登場します。

では、本編を開始します。



翌日

 

 

[公園]

 

 

「ふんふふ~ん♪」

 

 

今日は何の予定もないから、何となくぶらついてるんだ!……じっとしてると、なんか落ち着かなくてね~!ということで、公園にいるわけだけど……

 

 

「……お?猫だ」

 

 

懐かしいなぁ~、中学生の頃ここに来て猫と戯れてたんだっけ!……そういえば、あの子は今も猫と遊んでるのかなぁ?…ん?視線を感じる。

 

 

「……」|д゚)ジー

 

 

……わお。なんか銀髪の子がこっち見てる~。……あれ?確か……『孤高の歌姫』じゃないかな?あの子。

 

 

「……おいで」チョイチョイ

 

 

「……」トテトテ

 

 

あら、可愛い。……あの子に雰囲気似てるなぁ。…ん?

 

 

「……ふふ、にゃーんちゃん♪」

 

 

「…………へ?」

 

 

……あれぇ!?今気付いたけど…『孤高の歌姫』だよね!?クールって聞いたんだけどぉ!?…………って、やっぱりあの子なのかな?

 

 

「……ねぇ?貴女、ゆきちゃんでしょ?」

 

 

「……やっと、思い出してくれたのね、夏姉さん」

 

 

「やっぱり!どこか雰囲気が似てるって思ったんだよねぇ~!」

 

 

湊 友希那(みなとゆきな)、愛称:ゆきちゃんは、私が猫と戯れてた時に会った猫好きの子だ。……まっさか『孤高の歌姫』だったとは思わないよね!

 

 

「……姉さん、どこに行っていたのかしら?」

 

 

「海外に出張行ってたよ~」

 

 

「……そう」

 

 

ゆきちゃん、無愛想に思えるでしょ?そうでもないんだよね、これが。…くるぞぉ!!

 

 

「……久々に、あれをやってくれないかしら?」

 

 

「可愛い奴め~!うりうり~」

 

 

「んっ……♪」

 

 

ゆきちゃんは私と会うと、必ず顎の下を撫でるようねだってくる。可愛い(可愛い)

 

……そういえば、バンド組んだって噂流れてたなぁ~。……聞いちゃう?聞いちゃおう!(即答)

 

 

「ゆきちゃんって、バンド組んだの?」

 

 

「……ええ、そうよ」

 

 

「大変だけど、頑張ってね!」

 

 

「…………聞かないの?」

 

 

「?」

 

 

……突然、トーンが1つ下がった感じかした。……あれ?地雷踏んだかな?っていうか、私何も言ってないんだけどネ。

 

 

「……私が、音楽始めた理由とか」

 

 

「言いたいなら別だけど、私から聞こうとは考えてないよ。……訳ありっぽいしね」

 

 

「……姉さんには、頭が上がらないわ」

 

 

「そんなことないと思うんだけどなぁ~」

 

 

あの時は、ゆきちゃんの悩みや愚痴を聞いてたなぁ。その時にゆきちゃんとの接し方はわかったからね!ゆきちゃん、不器用だからゆきちゃんから話すのを待つのが基本!これ大事!(小並感)

 

 

「……実は…」

 

 

ね?……さて、どんな事情かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……という訳なの」

 

 

「……そっかぁ」

 

 

わお、結構重かった。安易に聞かなくて正解だったね!……でも、私は専門外かなぁ、それ。……でも、何も言わないのもなぁ。

 

 

「ゆきちゃんは、後悔してない?」

 

 

「……ええ、後悔してるとは思ってないわ」

 

 

「……じゃあ、大丈夫だね!きっと出来る!」

 

 

「…………ふふっ」

 

 

あぁ~!ゆきちゃんに笑われた~!なっちゃん、泣いちゃうぞ!…でも、ゆきちゃん、元気になったみたい。

 

 

「ありがとう、姉さん。……少し、気が楽になったわ」

 

 

「なら良かった!」

 

 

ま、ゆきちゃんが元気になったなら、それで良し!終わり良ければ何とやら!

 

 

「……あら、もうこんな時間なのね。私はそろそろ帰るわね」

 

 

「そっか!じゃあね!ゆきちゃん!」

 

 

「ええ、それじゃ」タッタッ

 

 

ゆきちゃんが帰ってった。……どうしよう、いつの間にか猫もどこか行ったみたいだし。……暇だぁ(*´-`)

 

 

「……楽器の練習でも、しようかなぁ?」

 

 

楽器はうちにあるやつ使えばいっか!そうと決まれば、家にゴー!( =^ω^)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[CiRCLE 受付]

 

 

「さてと……あっ、先客いる」

 

 

仕方ない、少し座って待ってよっと。……ギターの弦の替えあったっけ?……確認確認!

 

 

「……あの、受付空きましたよ?」

 

 

「……あっ、ごめんね、わざわざ」

 

 

「いえ、お気になさらず」

 

 

さっき受付にいた子だね。……この子もギターかぁ。

 

 

「ところで……貴女はギターを弾くんですか?」

 

 

「ううん、今日はギターの練習をするんだ。いつもはキーボードだよ」

 

 

「……失礼ですが、演奏を聴かせてもらっても良いでしょうか?」

 

 

もしかして、下手だと思われてるのかなぁ……?それはそれでなんかやだなぁ。

 

 

「いいよ!ええと……」

 

 

氷川 紗夜(ひかわさよ)です」

 

 

……ん?氷川?…………まさか!?

 

 

「ねぇ紗夜ちゃん!貴女、お姉ちゃんいる!?」

 

 

「は、はい。いますけど……」

 

 

「その人って、氷川 楓じゃない!?」

 

 

「!!」

 

 

ビンゴ!!この反応は間違いない!!楓に会えるかも!!

 

 

「……知り合いですか?」

 

 

「知り合い……というより、同級生だよ」

 

 

「……まさか、羽沢 夏さんですか?」

 

 

「うん!そうだよ!」

 

 

「…………えぇ!?」

 

 

あっ、驚かれた。……そういえば、私達のバンドヤベェ人達の集まりだったね(私が筆頭だけど)。

 

……楓の影響で始めたのかな?確か楓もギターだったもんね!

 

 

「とりあえず、スタジオ行こっか、紗夜ちゃん!」

 

 

「は、はい!」

 

 

ガチガチだね~、可愛いなぁ。初バンドの時の私を見てるみたい!あ、しっかり受付は終わらせておいたよ!喋りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[CiRCLE 2番スタジオ]

 

 

「……本当に演奏、聴いて良いんですか?」

 

 

「寧ろ人がいた方が指摘とかくれるからね!見た感じ紗夜ちゃんはギター担当っぽいし!」

 

 

「そうですか……」

 

 

そろそろ始めよっか!チューニングして……っと!よし!……紗夜ちゃんにボロクソに言われないようにしないと……緊張するぅ……(;^∀^)

 

 

「それじゃあ、この曲で行くよ~!『ベノム』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何……これ…」

 

 

凄い。それ以外言葉が出てこない。ギターの音もさることながら、歌声も透き通ってる。湊さん……以上かもしれないわ。

 

……やはり、お姉ちゃんの言ってた通りね。お姉ちゃんは「……紗夜、もし夏の音楽が聴ける機会があったら……聴いてみなさい。夏の音楽は……もはや神域に達しているわ」って言っていたけれど、本当だったわ。

 

 

「……これで、メインの楽器じゃない……?……成る程、それなら『音神』なんて呼ばれるのも無理ないわね」

 

 

『音神』。それは目の前の人、羽沢 夏のバンド時代の呼称。この人の音楽は、全ての演奏を凌駕し、全ての人を魅了すると言われた。私は当初、そんな人はいないと一蹴したけれど…本当だった。

 

 

「~♪どうかな?ブランクあったから、ちょっと自信ないんだけど……」

 

 

「いえ、完璧でした。改善点の探しようもないくらいに」

 

 

「良かった~!……あっ、紗夜ちゃん」

 

 

「は、はい?」

 

 

「良かったら教えてあげよっか?ギター」

 

 

「い、いいんですか!?」

 

 

願ってもない事だ。寧ろ、こっちからお願いしたい。ここまでの人に教授いてもらえる機会なんて、一生にあるかないかだろう。

 

 

「楓の妹だしね!私にも妹いるから!なんか面倒見てあげたくなるんだよね!」

 

 

「……妹さんが、いるのですか?」

 

 

「うん!羽沢 つぐみっていう子なんだ!」

 

 

「……羽沢さんのお姉さんなんですか!?」

 

 

「そだよ~!」

 

 

それは知らなかった。……って、羽沢さんと呼ぶと、どっちの事かわからなくなりそうですね。

 

 

「あの……」

 

 

「ん?どうしたの?」

 

 

「羽沢さ……つぐみさんと混同するので……その、夏さん……と、お呼びしても宜しいですか?」

 

 

「全然良いよ!寧ろウェルカム!」

 

 

……とても気さくな方ですね。姉さんとつるんでいるのが不思議です。

 

 

「そうだ!せっかくだし、今から練習しようか!」

 

 

「はい!」

 

 

……私は、この人と姉さんに近付いてみせます!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで紗夜ちゃん」

 

 

「はい、何でしょう?」

 

 

「これから紗夜ちゃんの家に行ってもいいかな?」

 

 

「…………え?」

 




ということで、第3話が終わりました。

タイトルを変更しました。タイトルと今話の内容が一致しなかったので、お許し下さい。しばらくアンケートは貼っておいたままにしておきます。終わり方も少々雑になりましたが、すみませんでした。

次回『夢の世界へ』


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【本編】夢の世界へ

どうも、Cross Alcannaです。

今回で新オリキャラが登場します。設定集がもうそろそろ出せるかもしれません。

お知らせ……という程でもないですが、この"羽沢家の長女"とコラボをしたい人を募集します。因みに、私からコラボしたいと言って了承して下さった方がいますが、落ち着いてからコラボ回を出そうと思っています。コラボについては、感想のところか直接メッセージを送って下さると嬉しいです。

では、本編を開始します。



[氷川家 扉前]

 

 

「ごめんね、紗夜ちゃん。どうしても楓に会いたくて……」

 

 

「……いいえ、大丈夫です」

 

 

急に提案したので、頼んだときはかなり焦っていた様子の紗夜ちゃん。……ホントにゴメンね?楓に会いたいの!!そして、私だけ連絡とれない(って噂の)ことについて問い詰めるんだから!

 

そう意気込んだ私は、インターホンを押す。ちょっとしたら、目の前の扉が開いた。

 

 

「……お帰り、紗夜。…………夏、もう少し時間のある時に……会いに来て欲しかったんだけど」

 

 

「楓!どういうこと!?何で私だけ皆の連絡先知らないの!?なんかそんな噂聞いたんだけど!?」

 

 

「……貴女、私達の中で一番忙しいでしょ。私達が電話しようとしても出ない上に……電話履歴見もしないで消してるでしょ?……私達、電話は何回もしてるのよ?」

 

 

「うっそぉ!?」

 

 

確認しないと!……あ、少し前の不在通知が1件。いつもなら消してるのに…忙しかったから消し忘れてたのかな?良かったのか悪かったのか……

 

 

「……それ、躑躅の番号じゃないの。……貴女、どれだけ忙しかったのよ……」ハァ……

 

 

溜め息つかれたぁ!酷い!確かに9:00~18:00まではいつも仕事あるし、私結構上の立場だからいっつも残業してたけどさ!!おかげで結構懐潤ったけどね!( ´∀` )b

 

 

「……私の部屋に案内するわ。……紗夜、貴女も来る?」

 

 

「……良いの?」

 

 

「……うん、紗夜がよければね。……ね?夏」

 

 

「ん~?私は別に構わないよ!寧ろあがらせてもらう立場だから何も言わないよ!」

 

 

「……じゃあ、そうするわ」

 

 

「……わかったわ、ついてきて」

 

 

おっ邪魔しまーす!……っていうか楓、まだゴスロリの服なのね……。まだ控えめのやつだからまだマシだけど……(^^;

 

……もしかして、その服で外出てないよね…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[氷川家 楓の部屋]

 

 

「……これで全部ね」

 

 

「ありがとね、楓!」

 

 

「気にしなくて良いわよ。……それにしても、貴女どんな生活してるのよ?」

 

 

「……え?えっと……9:00~18:00まで仕事で…残業はほぼ毎日だね。あ、結構良い立場だから出張とか結構な頻度であったね!」

 

 

……え?なんか、楓がお口アングリしてるんだけど?……別に変わった就業内容じゃないよね?(ブラック企業思考)

 

……確か楓は小説ライターだったっけ?そこそこ得れてるとか言ってたけど。

 

 

「……はぁ、どうりで連絡がつかないわけよ。……私達4人は貴女ほどスケジュールは埋まってないわよ」

 

 

「うそん!?」

 

 

「……私は締め切りこそあれど、毎日かっつかつでやってる訳じゃないからね」

 

 

えぇ~、羨ましいなぁ!私なんて、直談判してようやく休暇もらったのに!!まぁ、少し提言すれば考えてはくれそうだけど。生憎、うちの会社忙しいからネ!

 

 

「躑躅は今大学に行ってるけど、単位はある程度とってるから隙間時間はある方だし、桜は役所で仕事してるから貴女程忙しい訳でもなく予定も空いてるし、竜胆は自営の花屋をやってるから、定休日もちゃんとあるわよ。貴女くらいよ、海外出張に行くまで忙しくて立場が高い人は」

 

 

「あれ?1人は音楽アーティストにでもなってると思ったのに!皆、音楽でくっていけるくらい上手いでしょ!?」

 

 

「……貴女に言われたくないわね」

 

 

「?どーゆーこと?」

 

 

「……はぁ」

 

 

もぉ~!こうなったら、ほっぺつねっちゃうからね!!(`Д´)

 

 

「……なふ、やふぇふぇひょうひゃい」グニィ

 

 

「なんか楓の対応が塩っぽいぃ!!む~!」

 

 

「……ふふっ」

 

 

「……ふぁよ?」

 

 

紗夜ちゃんが笑ってる!どうしたんだろう?

 

 

「姉さんがこんなに楽しそうにしてるのを見てると、こっちも楽しくて……つい」

 

 

「ちょっ!紗夜!?///」カァァ

 

 

「……楓はツンデレだねぇ~!」ツンツン( ´∀`)σ)゚Д゚;)

 

 

「夏っ!ちょ、やめなさい!///」

 

 

思わずほっぺつついちゃうくらい可愛かったです。(昇天)

 

あ、楓が照れ始めてからほっぺはつねるのをやめてるよ!……あ、紗夜ちゃんもほっぺ突っつき始めた。

 

 

「紗夜!?貴方まで……っ///」

 

 

「……ふふふ、楽しいですね、夏さん。姉さんが可愛いです」

 

 

「だよね!わかってるぅ!!」

 

 

「……いい加減に…しなさぁい!///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう!限度があるでしょう!全く……」

 

 

はい……2人仲良く拳骨貰いました。うぅ、痛い。前からそうだったけど、楓は恥ずかしさが限界突破するとちょっと性格が変わるんだよね。何時ものクールな感じはなくなる。カワイイ

 

 

「……私は貴女に話があったのよ。それもあって家にあげたの」

 

 

「話?」

 

 

あっ、元通りだね。でも、ちょっとだけ真面目な雰囲気。なんだろう?

 

 

「……バンド、復活させようかって話が出てるのよ」

 

 

「…………えっ?」

 

 

私と連絡がつかない間にそんな話があったんだ……。……でも、ちょっと考えちゃうなぁ。

 

 

「……私、今こそ休暇があるけど……ほとんど参加できないと思うよ?」

 

 

「……皆そうよ。私達もそれくらい承知の上で言ってるのよ?」

 

 

「……そっか!じゃあ、私は賛成だよ!」

 

 

……そうだよね!皆忙しいのは事実だもんね!私がしょげてたって仕方ないよね!うん!やろう!

 

 

「……復活させよう!『To the dream world』を!」

 

 

そうと決まれば善は急げ!さぁ!再出発だ!……夢の世界を、もう一度!!

 




ということで、第4話が終わりました。

次回は、To the dream worldのメンバー全員が登場します。今回は新オリキャラの氷川 楓が登場しました。後、設定集がもうじき完成すると思いますので、お楽しみに。

次回『やっぱ楽しいや』


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【本編】やっぱ楽しいや

どうも、Cross Alcannaです。

今回でTo the dream worldのメンバー全員が登場します。そして、今話の投稿後、設定集の更新を行います。また、近いうちにアンケートを新設しますので、是非答えていって下さい。

では、本編を開始します。



[道中]

 

 

「ひっさしぶりに皆と会うなぁ……。楽しみ!」

 

 

どれくらい楽しみかと言うと、喫茶店の開店時間までつぐみを撫で回る行動を抑えられなくなるくらい楽しみなんだよね!やっぱつぐみの頭は撫で心地が良いんだよね!…それはそうと、

 

 

「CiRCLEだよね、確か。……SPACEは今なくなったんだっけ?…あの人に挨拶、したかったなぁ」

 

 

楓曰く、SPACEは私が来る前に最後のライブを経て閉店したらしい。私達もあそこによくお世話になったからねぇ……どうせならそのライブ見たかったなぁ……( >Д<;)

 

 

「……本当に復活するんだ……実感がまだ湧かないや!」

 

 

コンビニ行こう感覚で始まったあのバンドが皆に愛されて…沢山ライブして…バンドやりすぎてテストで皆の顔が青ざめてたり……どれも楽しかったんだよね!

 

……皆どんな姿になってるんだろうなぁ……。あぁ~!!早く行こう!!走ろう!うん!

 

 

「行っくぞ~!!」ビューン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[CiRCLE 受付]

 

 

「まりなさん!皆来てる!?」

 

 

「うん!1番スタジオにいるよ!」

 

 

「ありがとう!」ビューン!

 

 

……あっ、挨拶してない!ごめんなさい!!また今度菓子折りか何か持っていきますので~!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[CiRCLE 1番スタジオ]

 

 

「皆!おまたせ!」

 

 

「……昨日ぶりね、夏」

 

 

「最後はやっぱり夏なんだね」

 

 

「夏さん、お久しぶりです」

 

 

「夏か、久しいな」

 

 

わぁぁ!!皆変わんないや!躑躅も桜も竜胆も!

 

 

「久しぶり!皆変わんないね!」

 

 

「夏の方が変わってないと思うよ」

 

 

「そうかな?あ、さっきの含みのある言葉は何かな?」

 

 

「き、気にしなくて良いよ」(;゚∇゚)

 

 

「この~!また私をバカにして~!」グリグリ(*`Д´*)

 

 

「痛い痛い!!」アァァ!

 

 

今私がこめかみをグリグリしてる相手は奥沢 躑躅(おくさわつつじ)。この中で唯一の進学組。パッと見クールな黒髪男子に見えるんだけど、蓋を開けるとそうでもない。親しい間柄だけかもしれないけど。なんか知らないけど、私だけをやたらバカにするんだよね。何でだろう?私の方が学力は上だったはずだけどなぁ……

 

 

「な、夏さん!もう良いと思いますよ!」

 

 

「そうかな?個人的にはこれでも足りないんだけどなぁ」

 

 

躑躅へのお仕置きをとめるよう提言したのは花園 桜(はなぞのさくら)。私達相手でも敬語で話す礼儀正しい子。私とは正反対の性格だね!

 

桜は昔学校で『桜様』って言われてたね。容姿と振る舞いも相まって学校中の人がそういっていたとかなんとか。

 

 

「少しは落ち着いたらどうだ?」

 

 

「いっつも私ばっかりなんだもん!」

 

 

人一倍大人な雰囲気を醸し出しているイケメンは丸山 竜胆(まるやまりんどう)。ダンディーな21歳。会うといつも「ホントに同い年かなぁ?」なんて思うこともしばしば。

 

桜とよく私達をセーブしてくれるブレーキ役。それに、一見口数が少なくクールに見えがちだけど、実はそんなこともなく、結構感受性豊かな方。なんなら言動に出せないだけで、私とおんなじくらい感受性は豊かなんだよね!

 

 

「うぅ……にしてもさ、何で夏だけ連絡がとれなかったのさ?連絡はしたはずだけど」

 

 

「……あまりにも忙しかったらしいから、着信履歴も見ないで消していたのよ」

 

 

「そんなに忙しいのか?俺でも多少の休みはあるぞ?」

 

 

「そうですね、私も休みはちゃんとありますし……夏さん、1日のスケジュールを聞いても?」

 

 

「別に良いけど……そんなに忙しいのかな?基準がわかんないし……」

 

 

ということで、私は皆にいつものスケジュールを伝えた。仕事時間や残業、有給等々……あれ?皆頭抱えてるぅ~!?ナンデ!?おかしくないと思ったんだけど!?

 

 

「……経営してる側の意見として……こんなシフトはブラック企業に値するな」

 

 

「素直にとんでもない仕事量ですよ……夏さん」(;・ω・)

 

 

「僕でもわかる、これトンデモシフトだね」

 

 

「うそっ!?」(゜ロ゜)

 

 

どうやらブラックに分類されるみたい。……そーなの?(社畜脳)

 

……でも、こんな話より大事な事があるからね!うん!こんなどーでも良いことなんて置いといて!

 

 

「そんな事より!バンド復活させるんでしょ!?」

 

 

「その予定だったんだが……大丈夫なのか?夏」

 

 

「問題ないよ!仕事が始まったらあまり出来ないかもしれないけど」

 

 

「…なら、活動再開の方向で話を進めるわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[帰り道]

 

 

「ん~!楽しかった~!」

 

 

あの後は、CiRCLE復活ライブをする事になって、それに向けて合わせ練習をした。え?何の曲をやったかって?それは当日のお楽しみ!

 

 

「ブランクあったからどうかなって思ったけど、想像より出来たな~」

 

 

スケジュールの都合で明日になったけど、私達なら余裕だもんね!チケットは当日券だけだけど多分大丈夫でしょ!(謎の自信)

 

某青鳥のライブアカでツイートしたしね!いやぁ!どれくらい来るかな?

 

 

「アフロの皆の分も貰ったし、配りに行くかな!」

 

 

そうと決まれば、皆の家にゴーゴー!いやぁ、当日が楽しみになってきたよぉ!!

 




ということで、第5話が終わりました。

次回はお察しの通り、To the dream worldのライブ回となります。そして、あの人物が姿を……?TTDW(To the dream worldの略称)復活に、他バンドは何を思うか?あ、設定集を更新しましたので、是非見に行って下さい。

次回『花咲きて、夢の一時を与ふ』


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【本編】花咲きて、夢の一時を与ふ

どうも、Cross Alcannaです。

今回は、まさかのキャラが登場です。正直、出すなら今しかないと思ったので、今回出すことにしました。薄々わかった人もいるかと思います。わかった方もわからない方も、是非見ていって下さい。

では、本編を開始します。



[CiRCLE 控え室]

 

 

「いよいよだね!」

 

 

「……相変わらず緊張しないのね」

 

 

緊張?しないよ!だって久し振りに皆でライブするんだよ!?寧ろ楽しいじゃん!!( ノ^ω^)ノ

 

 

「……久々なので…正直緊張してきました……」

 

 

「……恥ずかしながら、俺も緊張してる」

 

 

「いや、寧ろ緊張してないのは夏だけなんじゃ……?」

 

 

え?マジで?……本当だぁ。皆緊張した時に出る癖みたいなの出てる。特に躑躅なんて凄く癖出てるしねぇ~!

 

 

「でもさ、楽しみでしょ?皆さ!」

 

 

「……まぁ、ね」

 

 

「5人でライブなんたから……楽しみに決まってるでしょう?」

 

 

「そうですね、この日が待ち遠しかったです」

 

 

「……緊張と同時に、高揚感もある」

 

 

やっぱり!そこは皆一緒だ!!ああ~!早く始めたいなぁ!!

 

 

「TTDWの皆!会場の準備が終わったよ!」

 

 

「うん!じゃあ……行こう!」

 

 

『ああ!/ええ/はい!』

 

 

よし!レッツゴー!!((o(^∇^)o))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[CiRCLE ライブ会場]

 

 

「……つぐみ、あのバンドってD()J()()()()?」

 

 

「ううん、いなかったはずだけど……」

 

 

ライブ開始を待つ者達は、皆同じ疑問があった。そう、D()J()()()()()()()()事に疑問を持っているのだ。

 

TTDWには、DJ担当がおらず、今まででDJが登場したことがなかった。ある者は新メンバー加入を、ある者はメンバー交代を疑っている。

 

 

「そろそろ開始時間だね~」

 

 

一同『……!?』

 

 

観客を照らしていた電気が全て消える。声を出してパニクる者もいれば、キョロキョロと周りを見る者も。だが、その理由はすぐにわかる事となった。

 

直後、DJの機器が、前奏を奏で始める。まだ、照明はついていない。

 

 

THE CLOCK STOPPED FOREVER AGO

 

 

HOW LONG HAVE I BEEN UP IDN

 

 

聞こえ始めた歌声は、その場の全てを震撼させる。誰も、声を出せない。それほどの歌声であった。

 

 

I CAN'T GET A GRIP,

 

 

BUT I CAN'T LET GO

 

 

THERE WASN'T ANYTHING

 

 

TO HOLD ON TO, THO

 

 

誰もが心の中で歓喜に入り浸っていると、照明がつき出す。そこには、驚きの人物が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、()()() ()()()()だった。

 

 

WHY CAN'T I SEE???

 

 

WHY CAN'T I SEE???

 

 

ALL THE COLORS THAT YOU SEE??

 

 

PLEASE CAN I BE PLEASE CAN I BE

 

 

COLORFUL AND…free?

 

 

「……す、凄い」

 

 

「……うん」

 

 

海外に行くこともあり、夏の英語はとても流暢だ。それこそ、英語教師と良い勝負だろう。

 

 

WHAT THE HELL'S GOING ON?!

 

 

CAN SOMEONE TELL ME PLEASE--

 

 

WHY I'M SWITCHING FASTER THAN

 

 

THE CHANNEL ON TV

 

 

I'M black THEN I'M white NO!!!

 

 

SOMETHING ISN'T RIGHT!!

 

 

MY ENEMY'S INVISIBLE,

 

 

I DON'T KNOW HOW TO FIGHT

 

 

THE TREMBLING FEAR IS MORE

 

 

THAN I CAN TAKE

 

 

WHEN I'M UP AGAINST THE ECHO

 

 

IN THE MIRROR  ECHO

 

 

「……凄すぎるわ。1人だけでここまでの演奏……普通じゃ有り得ない……」

 

 

「……これが、"音神"……」

 

 

音神は君臨した。数年の時を経て──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おいおい、アレンジまで加えるのか……」

 

 

そう、夏はほぼ必ずアレンジを加える事で有名である。"これはアレンジしない方が良い"と思わない限り、違和感なくアレンジを入れる。*1これが、"音神"と呼ばれる要因の1つである。

 

そして、もう1つは……

 

 

「……キーボードまで使い始めるか……」

 

 

殆ど全ての楽器をそつなく扱え、かつ複数の楽器を同時に弾いてしまう事である。ギターとベースの様な組み合わせは身体の構造上、手が足りないので出来ないが、DJとキーボードなら、()()()()でこなせる。

 

これが、"音神"羽沢 夏である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その1曲は終わり、拍手喝采が飛び交う。そして、再び照明が消える。

 

 

「……つぐ~。凄いね~、夏さん」

 

 

「キーボードまで弾き始めた時は、目を疑ったけどな……」

 

 

「……うん」

 

 

その演奏は、まるで幻想。演奏の仕方、クオリティ、メンバー個々の能力、これら全てが織り成す一時の夢物語。To the dream world(夢の世界へ)。このバンドは、人々に一時の夢を与える。

 

 

「とっても綺麗な演奏だったね!つぐ!」

 

 

「……うん!」

 

 

しかし、()()()()()()()()()。さっきの演奏は、謂わば余興である。

 

再度、照明がつく。今度は5人全員がスポットライトを浴びながら、そこに立っていた。

 

 

『!!』

 

 

客にコメントさせる時間を与えず、音が鳴り始める。ここからが夢の世界へのご案内である。

 

 

扉開けば 捻れた昼の夜

 

 

昨日どうやって帰った 体だけが確か

 

 

おはよう これからまた迷子の続き

 

 

見慣れた知らない 景色の中で

 

 

2曲目は、『Hello,world!』である。「夢の世界よ、こんにちは」という意味を込めて選ばれている。TTDWの最初(余興除く)は必ずこの曲なのだ。

 

 

もう駄目って思ってから

 

 

わりと何だかやれている

 

 

死にきらないくらいに丈夫

 

 

何かちょっと恥ずかしい

 

 

やるべきことは 忘れていても解る

 

 

そうしないと とても苦しいから

 

 

顔を上げて 黒い目の人

 

 

君が見たから 光は生まれた

 

 

TTDWのボーカルは、躑躅と桜の2人。メインでない方も、サブボーカルとして参加する。これが、TTDWのやり方だ。

 

 

選んだ色で塗った 世界に囲まれて

 

 

選べない傷の意味はどこだろう

 

 

ご自分だけがヒーロー 世界の真ん中で

 

 

終わるまで出突っ張り ステージの上

 

 

どうしよう 空っぽのふりも出来ない

 

 

『ハロー どうも 僕はここ』

 

 

「……すご」

 

 

「……こんな演奏……生まれて初めて聴きました……」

 

 

「……綺麗な音色で、それでも力強さがある……こんな演奏が出来るなんて……」

 

 

気付けば、最後のサビに突入しようとしていた。

 

 

選んだ色で塗った 世界に囲まれて

 

 

選べない傷の意味はどこだろう

 

 

ご自分だけがヒーロー

 

 

守ったものがある

 

 

恐いのは その価値を知っているから

 

 

塞いだ耳で聴いた 虹の様なメロディー

 

 

砕けない思いが内側で歌う

 

 

悲鳴をあげたヒーロー 世界の真ん中で

 

 

終わるまで出突っ張り 自分が見ている

 

 

だからもう 死んだふりも意味ない

 

 

『ハロー どうも 僕はここ』

 

 

曲が終わる。拍手喝采が鳴り響く。だが、余韻に浸る事を許さない勢いで、3曲目が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、凄い!」

 

 

「……あの技術力……とても真似出来ないわね」

 

 

「あたしでも無理だな~。特に、さっきDJとキーボードやってた人のは誰も真似できないと思うなぁ……」

 

 

日菜ちゃんにここまで言わせるなんてね……彩ちゃんのお兄さんが凄いのは勿論なんだけど、それ以上にあのキーボードの人が異常なまでに上手い。

 

……アレンジを入れていたように感じた。違和感なく。……あれが、"音神"。確かに、神様みたいな手腕ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おたえ~!おたえのお姉ちゃんのバンド、凄いね!」

 

 

「うん、お姉ちゃんは私の目標だから」

 

 

「……にしても、あのキーボードの人スゲェな……さっきDJもやってたのに、キーボードまでこのレベルかよ……」

 

 

……有咲には言えないかな?あの人、キーボードがメイン担当だってこと。……でも、やっぱり凄い。お姉ちゃんから聞いてた以上かもしれない。……ギターも出来るのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ!!皆ぁ!!元気かな~!?」

 

 

お客さんが、猛烈な歓声をあげている。企画者として、嬉しい限りだね!

 

 

「うんうん!皆元気だね!じゃあ、1回目のMC始めるよ~!」

 

 

よかった~!皆の反応からして、腕は落ちてないみたい!

 

 

「まずは、メンバーの紹介から!まずは……TTDWのベース、丸山 竜胆!」

 

 

ベースを弾く。結構歓声が湧いてる!良いなぁ……(・ε・` )

 

 

「次は……ギター、氷川 楓!」

 

 

わぁ、高速で弾いてる!本気のやつだね!

 

 

「そして……ボーカル&ドラム、奥沢 躑躅!」

 

 

躑躅も2人に負けじとドラムを叩く。良いね!こういうの!

 

 

「そして!私達のリーダー!ボーカル&ギター、花園 桜!」

 

 

楓と同じく高速で弾く。流石リーダーなだけあって、歓声が凄い!

 

 

「じゃあ話を始めよ……」

 

 

「いや!お前の自己紹介もやれよ!?」

 

 

「……いる?私の」

 

 

「当たり前でしょ?ほら」

 

 

あっ、マイク取られた。(・ε・` )

 

 

「では!TTDWのキーボード、羽沢 夏さんです!」

 

 

まぁ良いか!とりあえず弾いておこう!!こうして……こう!!…おわぁ!?凄い歓声!

 

 

「…夏、見ろ。お前の時が一番湧いてるぞ」

 

 

「…ホントだ~!」

 

 

こうして喜んでくれると、嬉しいね!うん!

 

 

「じゃあ、マイクとMCは夏さんに任せます」

 

 

「りょーかい!」

 

 

といっても、雑談みたいなものなんだけどね!

 

*1
今回は、MesさんのECHOを参考にしています。




ということで、第6話が終わりました。

想像より長くなりそうなので、ある程度分けることにしました。後、終わり方がまた変になりました。すみません……。因みに、3曲目は、『ダイスキ。』です。使用曲の題名を書いておきますので、良ければ聴いてみて下さい。

次回『興奮覚め止まぬ』

登場曲

・ECHO

・Hello,world!

・ダイスキ。


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【本編】興奮覚め止まぬ

どうも、Cross Alcannaです。

前回に引き続き、ライブ回となります。さて、今回はどんな曲が登場するのでしょうか?因みに、文章量の都合で作中で書かないものもありますが、後書きには題名を書いておきます。

では、本編を開始します。



「そういえばさ、結局躑躅ってどこの学部に行ったの?大学生なんでしょ?」

 

 

「文学部だよ、前から興味あったからね」

 

 

「へぇ~、成績は?」

 

 

「僕の大学事情はもう良いって!//」

 

 

「えぇ~」

 

 

漫才を見ているかのような笑い声を、お客さんらがあげている。

 

そうだなぁ~……じゃあ、曲の話でもしよっかな!

 

 

「じゃあさ!皆の好きな曲教えてよ!」

 

 

「……そうね…」

 

 

意外と聞いたことなかったからね!この機会に聞いちゃおう!

 

 

「…私は『まちがいさがし』が好きね」

 

 

「そうなんですか?てっきりバラード系が好きだとばかり……」

 

 

「……昔はそうだったけど、ギターを弾くようになってからは聴く曲のジャンルも変わったのよ」

 

 

「へぇ~……あ、僕は『Shangli-La』だね」

 

 

「いつも言ってたからね!私も聴いたけど、あれは良い曲だよね!」(*´・ω-)b!

 

 

「だろ?」

 

 

今では仕事帰りとかによく聴いてるんだよね~!他のも聴くけど。

 

 

「私は『Hello,world!』ですね」

 

 

「和の曲とかじゃないんだな」

 

 

桜「ライブ毎に演奏してるので、自然と好きになりましたね。以前は『アゲハ蝶』が好きでしたけど、今では『Hello,world!』の方が好きですね」

 

 

アゲハ蝶ね~!私も好き!あの歌詞がクるんだよね!心に染みるっていうか!

 

 

「俺は『道行き』だな」

 

 

「……聴いたことないな」

 

 

「そうだろうな。何せこの曲はゲームの曲だし、非公式(恐らく)のだからな」

 

 

「あれは感動するよね!私も最初聴いた時は泣きそうになったもん!」

 

 

「そんなに感動するんですか?」

 

 

「ライブ終わったら聴いてみて!」

 

 

勧められて聴いた時は本当に泣きそうになったなぁ。竜胆の家だったから、何とかこらえたけど。

 

 

「……で、夏の好きな曲は何なんだ?」

 

 

「貴女、あまり自分の事は話さないものね、早く聴かせて?」

 

 

「わ、わかったから」

 

 

そんなに気になるの?……やっぱあれかな?

 

 

「私は『雨とペトラ』だね!ダントツだよ!」

 

 

「……意外だな。てっきりもっとポップな曲なんだと思ってた」

 

 

「私が凄く悩んでた時に出会った曲でね、その時の私とすっごく似てたんだ。そう考えたらさ、親近感みたいなのが湧いてね?好きになったんだ!何かあるとこの曲を口ずさんでるんだよね!」

 

 

「……それ、いつの事?」

 

 

「皆に会う前だよ!確か……高1の頃かな?あの頃は私も少し病んでたからね~。家族には沢山迷惑かけたよ……」

 

 

……しんみりしちゃったかな?じゃあ、雰囲気を変えがてら演奏に入ろうかな?

 

 

「じゃあ、そろそろ次の曲にいこうかな!MCはもっかいあるからね!」

 

 

……よし!皆の準備も良さげだね!

 

 

「今度は私がボーカルやるよ!『地球最後の告白を』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん……」

 

 

「夏さんにそんな時期があったんだ……」

 

 

「うん……あの時のお姉ちゃんは生気がないっていうか……魂がないって感じだった」

 

 

あの頃のお姉ちゃんの眼を、私は今でも覚えてる。それは私にとって、雷よりも怖いものだ。……勿論今でも。

 

そんなことを考えるのも、、ひまりちゃんの声を機に終わりにした。

 

 

「あ!次の曲始まるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして君が知らずに

 

 

幸せな灰になった後で

 

 

僕は今更 君が好きだって

 

 

「……優しい音色だ~」

 

 

「懐かしいな…この曲」

 

 

私がキーボードを始めるキッカケの曲。たまたま聴こえたキーボードの音色を辿ると、お姉ちゃんが弾いてる姿があった。その姿に、その音色に魅了されて、お姉ちゃんにキーボードをやりたいって言ったんだっけ…。恥ずかしかったから、お姉ちゃんに「何で急に?何か理由でもあるの?」って聞かれたとき、思わず誤魔化したんだよね。

 

 

「大人になりたくないよ」なんて

 

 

大人ぶってさ  駆けた少年の日

 

 

どうやら僕に訪れた悪戯いたずらは

 

 

相当タチの悪い不老不死のおせっかい

 

 

神様ステキなプレゼントをありがとう

 

 

なんて到底的外れな

 

 

幼い冗談の奥に 大事に隠した

 

 

片思いは察してくれないんだ

 

 

私は、この曲が一番好き。言ってしまえば、一目惚れしたんだと思う。歌詞に、音に、キーボードに。

 

 

追い越してく 戻れない憧憬

 

 

『好きな人に さよならを』

 

 

いつか見た夕焼けは

 

 

あんなにキレイだったのに

 

 

恋なんて呼ぶには

 

 

『穢れすぎてしまったよ』

 

 

そして 君が知らずに

 

 

幸せな灰になった後で

 

 

僕は今更

 

 

『君が好きだった』

 

 

って気付いたよ

 

 

周りを見る。一番が終わったが、既に涙を流す人もいた。……あ、ひまりちゃんと巴ちゃんも泣いてる。

 

 

百年前の同じ日に君のおばあちゃんは

 

 

同じ事を言ったんだ

 

 

君の孫の曾孫ひまごのその最期に

 

僕はまた一人になる

 

 

移ろってく メトロポリスと

 

 

『君の名に花束を』

 

 

いつか見た夕焼けは

 

 

あんなにキレイだったのに

 

 

恋なんて呼ぶには

 

 

『穢れすぎてしまったね』

 

 

そして 血が流れて

 

 

世界が灰になった後で

 

 

僕は今でも

 

 

『ふいに君を思い出すんだ』

 

 

ここからがこの曲の佳境。私が最も好きなところだ。葛藤する歌中の少年のお話に、終わりが来る。始めも今も、それが私には1つの小説に感じていた。読んでいて、聴いていて楽しい、1つの小説のように。

 

 

誰もいない 枯れた世界で

 

 

悪戯の 意味を知ったよ

 

 

臆病 でも今なら言えるんだ

 

 

地球最後の告白を

 

 

ここからは音が上がり、盛り上がるところだ。歌詞も音も、私の生涯において、これに勝るものはないと言えるほど、私が好きでたまらない箇所である。

 

 

いつか見た夕焼けは

 

 

あんなにキレイだったのに

 

 

恋なんて呼ぶには

 

 

『遠回りしすぎたよ』

 

 

そして 何もかもが

 

手遅れの灰になった後で

 

 

僕は今更

 

 

『君が好きだって』

 

 

君が好きだったって言えたよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さっきまでとは打って変わって優しい曲調…。あのバンドは、本当になんでもありね」

 

 

「……日菜とのすれ違いがあった頃なんですが…」

 

 

「紗夜?」

 

 

誰に言うでもない独り言のように、紗夜が語り始める。

 

 

「私は、姉さんにも日菜と同じ感情を抱いてました。…でもそれを察したらしく、ある日姉さんが私を部屋に呼んでこう言ったんです。『……ごめんね。私が、貴女の足枷になってたのね……。本当に……ごめんね…』と。……その時の姉さんは、顔をクシャクシャにして泣いてました。それを見て、私は日菜に謝ろうと決意したんです。そんな時に、姉さんがふとこの曲を聴かせてくれたんです」

 

 

私達が知らないあの件の裏話を、紗夜が次々に語りだす。

 

 

「『…私の親友の1人の演奏を聴いて、元気を出してちょうだい。この子は、聴く人を元気付ける力があるから』と言って。それが、この曲でした。……姉さんの言った通り、私は元気を取り戻しました。それと同時に、こんな演奏がしたいとしっかりした目標が出来ました。……私は、私だけの演奏がしたいと、その時に初めて思ったんです」

 

 

「氷川さん……そんなことがあったんですね…」

 

 

「……あの人たちは、私達が思っているよりも、ずっと近くて遠い存在です。それこそ、超える日が来るかもわからないほどに…」

 

 

「それでも、私達は超えるわよ。Roseliaならそれが出来ると、私は本気で思っているわ」

 

 

「……そうですね」

 

 

わたしにとってこの曲は、特別な曲。私の運命を、平気で変えてくる曲。それでも……

 

 

「……本当、憎めないですね」

 

 

「?紗夜さん?何か言いましたか?」

 

 

「…いえ、何も言ってませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「続けていくよ!今度は躑躅のボーカルだよ!『Divine intervention』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…この曲か……結構コアなのを選んだな」

 

 

俺も最近になってアニメを観るようになったが、あのアニメは結構前のやつだったはず……。…まりなから聴いた通り、新旧問わない曲選なようだ。……面白い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて!次が終わったら2回目のMCだよ!桜のボーカルで『TEMPEST』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ませ!

 

 

いきなり強烈な勢いで始まる。まるで、嵐の様に。

 

 

Majesticなその姿 瞳に宿すは願い

 

 

眠らない夜に歌おう

 

 

Dramaticに巻き込んで 光も暗闇さえも

 

 

恐れない明日も笑うため

 

 

やはり、観客らは既に聴き入ってる者が過半数を占める。それ程、彼女らの演奏が凄いのだろう。

 

 

本当の優しさって孤独なんだって 

 

 

キミを見て知った

 

 

もっと心近づきたいのに

 

 

そう、まだ遠いまま

 

 

どんな運命にジャマされても立ち向かうよ

 

 

キミと選んだ勇気で羽ばたいてこう

 

 

見つけた希望に胸が今震える

 

 

響いてるよ move my heart

 

 

隠した本音の裏に潜んでる

 

 

誰より強い眼差しで

 

 

Majesticなその姿 瞳に宿すは願い

 

 

眠らない夜に歌おう

 

 

Dramaticに巻き込んで 光も暗闇さえも

 

 

恐れない明日も笑うため

 

 

明日を笑うために目の前のものを恐れず進む事を訴えるこの曲がこの空間を支配するのに、さほど時間は要しなかった。既に、全ての者が支配されていた

 

 

本当の優しさって勇敢なんだって

 

 

キミが不意に言った

 

 

そっと視線あわせた瞬間

 

 

もう、また違う顔

 

 

どんな絶望もすぐとなりで塗りかえてく

 

 

キミのリアルにいつだって救われてたい

 

 

見つめた希望が伝えてくれるもの

 

 

感じてるよ steal my heart

 

 

交わした言葉は何気なくたって

 

 

チカラにできる気がしてる

 

 

Majesticなその未来 瞳が捉えた熱で

 

 

終わらない夜を歌おう

 

 

Dramaticを重ねてく 弱さも躊躇いさえも

 

 

怯まない今日を生きるため

 

 

ここから、この曲の佳境となる。その盛り上がりは限界を超えようとしていた。

 

 

もっと強く吹いて

 

 

心に迷いなんて 残らないくらいに

 

 

見つけた希望に胸が今震える

 

 

響いてるよ move my heart

 

 

隠した本音の裏に潜んでる

 

 

『誰より強い眼差しで』

 

 

見つめた希望が伝えてくれるもの

 

 

感じてるよ steal my heart

 

 

交わした言葉は何気なくたって

 

 

チカラにできる気がしてる

 

 

Majesticなその姿 瞳に宿すは願い

 

 

眠らない夜に歌おう

 

 

Dramaticに巻き込んで 光も暗闇さえも

 

 

恐れない明日も笑うため

 

 

『始めよう 目を覚ませ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、MC2回目始めるよ~!」

 




ということで、第7話が終わりました。

『TEMPEST』の語りが少し少ないように感じますが、良い解説が浮かばなかったので……。次回でライブ回は最後となります。先に言っておくと、ライブ回の後はコラボ回です。思ったより早く入れそうでしたので、そうすることになりました。次回登場する曲は、私のかなりのお気に入りの曲なので、期待して下さい。今回出た曲の題名は書いておくので、良ければ聴いてみて下さい。

次回『理由が、あるから』

登場曲

・地球最後の告白を

・Divine intervention

・TEMPEST


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【本編】理由が、あるから

どうも、Cross Alcannaです。

ライブ回も、最後になりました。今回で、あのキャラが登場します。果たして、誰なのでしょうか?タイトルで今回登場する曲のうち、1つがわかると思いますが、答え合わせがてら見ていって下さると嬉しいです。

では、本編を開始します。


「……話題浮かばない」

 

 

「おい」

 

 

本当にさっきの話題以外ないんだよなぁ~。うむむ……どうしようかなぁ?……あ!あった!

 

 

「皆が楽器を始めた理由とかは!?私知りたい!」

 

 

「……今考えると、そんな話は今までしなかったわね」

 

 

「結構な付き合いなのに、不思議ですね」

 

 

「親しいからこそ、そういった話をしない人だっているぞ。俺らも、もしかしたらそういう類いなのかもしれん」

 

 

私がバンドに入った時は既にその楽器をやってたからね。それに、あの頃の私の状態も相まって……結局今の今まで聞くタイミングがなかったんだよね!

 

 

「私は元々キーボードをやってたのよ。でも、新しい事に挑戦してみたら?って日菜に言われてね。どうせならバンドではギターをやってみようって考えて、今に至るわ」

 

 

「へぇ~、やっぱキーボードメインだったんだね」

 

 

「…まぁね」

 

 

私がキーボードをやってる時にアドバイスをくれたのは、そういう事だったんだね!納得した!( ´∀` )b

 

 

「俺は単純に、ベースの演奏に衝撃を受けたからベースをしようと思った。……他は特にないな」

 

 

「あれ?千聖ちゃんは影響してなかったの?」

 

 

「会ったのはベースを始めた後だったからな」

 

 

「へぇ~」

 

 

ちょっと意外だな~。なんかもっとストーリーあるものだとばかり……。でも、竜胆らしいっちゃ竜胆らしいけどね!

 

 

「僕は学校の授業で初めてドラムを見た時にやりたいって思ったのが最初だったかな?」

 

 

「中学?少なくとも高校じゃなかったよね?」

 

 

「いや、小学だったかな。ドラムも小学から始めてたし」

 

 

「うっそ!?意外!」

 

 

わぁお!メッチャ意外だ!小学の躑躅かぁ……どんななんだろ?

 

 

「私は妹がやりたいなって言ってたので、気になって始めたのがキッカケですね」

 

 

「桜ってば、私ほどじゃないけどシスコンだもんね~?」

 

 

「ちょ!?夏さん!!///」

 

 

こう見えて、桜はたえ大好きっ子だからね~。ま、私が言えたことじゃないけど!

 

 

「私はなんとなくやってみたいな~って思ったからやってみたって感じかな?」

 

 

「夏らしいな」

 

 

「でしょ~?……あ!時間が押してるね!演奏に戻ろうか!次で最後だよ!」

 

 

観客の方から終わりを惜しむ声が聞こえてくる。多分だけど、またライブするかもだし…ね?

 

 

「ごめんね!…じゃあ、行くよ!『Connecting』!」

 

 

 

Find a reason to sing 君に逢いたい

 

 

歌うこと教えてくれた君に

 

 

 

 

誰かが零すメロディーを 誰かが拾って

 

 

また誰かが運んでく

 

 

名前も顔も分からない 繋がる奇跡が

 

 

誰かを幸せにする

 

 

画面越しただ眺め羨んでばかりいた

 

 

『今までは』

 

 

Find a reason to sing 君と歌えば

 

 

時間を忘れ夢中になれたんだ

 

 

『Find a reason to sing たったひとつの』

 

 

神様に与えられた才能(おくりもの)

 

 

『Connecting, Connecting with your song』

 

 

『Connecting, Connecting with your dream』

 

 

『Connecting, Connecting with your life』

 

 

Connecting with you

 

 

僕らは何と戦い 何に敗れて

 

 

何を失ってきただろう

 

 

名前も顔も分からない 歪んだ言葉が

 

 

誰かの日常を奪う

 

 

永遠に通じ合う事はないと思ってた

 

 

『今までは』

 

 

『Find a reason to sing 君と歌えば』

 

 

独りじゃないと初めて感じたんだ

 

 

『Find a reason to sing いつか話そう』

 

 

ちゃんと目を見て「はじめまして」を言うよ

 

 

『Connecting, Connecting with your song』

 

 

『Connecting, Connecting with your dream』

 

 

『Connecting, Connecting with your life』

 

 

Connecting with you

 

 

 

 

Everything's too hard for me right now

 

 

その乾いた日常に夢を Download

 

 

Everything's a little crazy right now

 

 

その感情のままに投げつけろ Upload

 

 

どうして 人は巡り逢うのだろう

 

 

こうして 笑って祝って繋がって

 

 

そうして 次は何が起きるのか

 

 

『Maybe nobody knows』

 

 

 

 

誰かの叫ぶ声がする 行き場を無くした

 

 

あの頃の僕のように

 

 

名前も顔も分からない 君の優しさに

 

 

どれだけ救われただろう

 

 

画面越し

 

 

手を伸ばし

 

 

次は僕が誰かを繋げる番だ

 

 

 

 

Find a reason to sing 僕と歌おう

 

 

時間を忘れ夢中になれるなら

 

 

Find a reason to sing それはきっとね

 

 

神様に与えられた才能(おくりもの)

 

 

 

 

『Find a reason to sing 君に逢いたい』

 

 

歌うこと教えてくれた君に

 

 

『Find a reason to sing 一緒に歌おう』

 

 

何もないけど君への言葉(おくりもの)

 

 

『Connecting, Connecting with your song』

 

 

『Connecting, Connecting with your dream』

 

 

『Connecting, Connecting with your life』

 

 

Connecting with you

 

 

『Connecting, Connecting with your song』

 

 

『Connecting, Connecting with your dream』

 

 

『Connecting, Connecting with your life』

 

 

Connecting with you

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後まで、ありがとうございました!また次のライブでお会いしましょう!!」

 

 

そうして、お姉ちゃんたちのバンドのライブが終わった。……まだ聴きたいなぁ。

 

 

「いやぁ、凄かったな!夏さん!!」

 

 

「うん…また今度、ボーカルのこと教えてもらおうかな……」

 

 

「……アンコール!!アンコール!!」

 

 

『!?』

 

 

私……まだ聴きたいっ!!せめて後1曲くらいは!

 

 

「つぐ……」

 

 

「……皆!」

 

 

『うん!』

 

 

『アンコール!!アンコール!!』

 

 

……気づけば、皆がアンコールをしていた。やっぱり、皆も聴きたいんだ……

 

 

「ありがとう!じゃあこの曲で締めるよ!『くちづけDiamond』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄かったですね!」

 

 

「……正直言って、今の私達では到底勝てないわ。よりハードな練習をしないといけないわ」

 

 

宇田川さんと湊さんがそれぞれ感想を述べている。そんな中、今井さんが口を開けた。

 

 

「皆、とりあえず会場出ない?それから考えようよ!」

 

 

「そうですね、では……」

 

 

突然、照明が消えた。機械の故障でしょうか?

 

 

『えっ?』

 

 

「これは……キーボードの音色?」

 

 

「……まさか、もう1曲?」

 

 

……そのまさか、のようですね。やはり立っているのは、またしてもあの人だけですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこから話せばいいんだろう

 

 

待ちくたびれても

 

 

終わりだなんて言わせないから

 

 

書きなぐった無意識の衝動をつれて

 

 

何かもかも壊したら

 

 

不可能を始めればいいんだ

 

 

There’s a reason that we came across in this world

 

 

There’s a reason that we caught the magnetic wave

 

 

傷つけ合う世界はどこへ

 

 

So 愛のために泣けるのは

 

 

君がそこにいるから

 

 

君だけを呼び続けるから

 

 

愛のために歌うのは

 

 

そして共に生き抜く事

 

 

ずっと 君と

 

 

 

 

青色した空と波ひとつない鏡のような海を見てた

 

 

どんな場所にいたって どんな形になって

 

 

どんな時代にいたって 見つけだす

 

 

じゃあ、やりますか?

 

 

宙吊りにした運命に逆らって

 

 

There’s a reason that we came across in this world

 

 

There’s a reason that we caught the magnetic wave

 

 

引きよせ合う二人はどこへ

 

 

So 愛のために進むのは

 

 

君とここにいるから

 

 

僕だけが君を守るから

 

 

愛のために願うのは

 

 

そして誰も傷つけずに

 

 

ずっと となりで

 

 

 

 

僕らは超えてゆく

 

 

すべての憎しみを

 

 

ニセモノの正義など棄ててしまえ

 

 

So 愛のために泣けるのは

 

 

君がそこにいるから

 

 

We will always be together

 

 

 

 

愛の 愛のために進むのは

 

 

君とここにいるから

 

 

僕だけが君を守るから

 

 

愛のために願うのは

 

 

そして共に生き抜く事

 

 

ずっと

 

 

We’ll always be together

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[帰り道]

 

 

「いやぁ~、大成功!」

 

 

「うん!本当に凄かったよ!」

 

 

「ホントですよ!!今日のライブ、行って良かった~!」

 

 

今はライブを終えて、アフロの皆と帰ってる最中。すると、私達の向かいから、誰かが来る。……あれ?あの人って……!

 

 

「お、お姉ちゃん!?どうしたの!?」

 

 

私はなりふり構わず走った。だって、あの人は……!

 

 

「刄さんっ!!」

 

 

「……む、久しぶりだな……夏」

 

 

()()()()()()()()だもんね!

 

 

「あれ?刄さんじゃないですか!」

 

 

「……刄さんって、夏さんとどういう関係なんですか?」

 

 

「……師弟関係だ。昔色々あって教える事になったんだ」

 

 

「えぇ!?」

 

 

うんうん、やっぱりつぐみも驚いてるね!何せ誰にも言ってないからね!

 

 

「…俺より良くなったな。流石は"音神"だな」

 

 

「えへへ~」

 

 

観に来てくれたんだぁ!嬉しいけど、少しむず痒いなぁ……

 

 

「俺達も復活ライブをするつもりだ。……是非来てくれ」

 

 

「はい!勿論!」

 

 

師匠の復活ライブ、楽しみだなぁ!!

 




ということで、第8話が終わりました。

刄がまさかの形で登場しました。これにて、ライブ回が終了しました。これからは、時々刄が登場します。次回は、恐らくコラボ回になるかと思います。

次回『訳あり』

登場曲

・Connecting

・口づけDiamond

・THERE IS A REASON


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第2章 それぞれの日常
【本編】皆の頼れるお姉さん


どうも、Cross Alcannaです。

今回は少し多めにキャラが登場します。原作キャラもオリキャラも登場しますので、誰が登場するか楽しみにして下さい。

では、本編を開始します。



[CiRCLE 特別練習スタジオ]

 

 

「こんなとこあったんですね、まりなさん」

 

 

「普段は特別な許可が必要なんだけど、私のバンドも練習したいって言ってるし、他のガールズバンドも練習したいらしいから、今回は特別にね!」

 

 

まりなさんって、知り合うと融通利かせてくれるからね!何だかんだ優しいんだよ!((o(^∇^)o))

 

 

「ふむ……夏、ここのアドバイス貰えるか?」

 

 

「はーい!ちょっと待って下さいねー!」

 

 

そんなまりなさんをはじめとした、私の師匠である刄さんがいるバンド、Grand Diamondの皆さんは、よく私にアドバイスを求めるんだよね。……何でだろう?ま、いっか!

 

 

「ここなんだが……」

 

 

「ここはこう……演奏してはどうです?少しアップテンポで弾いても問題ないと思いますよ?」

 

 

「……相変わらず凄い手腕ですよね。まりなさん、もしかしたら刄さんを超えてるのでは?」

 

 

「かもね~。私も今では聞く側だからね~」

 

 

「あっ!華穂さん!お久し振りです!」(*≧∇≦)ノ

 

 

「えぇ、お久し振りです。夏さん」

 

 

轍さんと椿さんは……あっちで練習してるね、うん!集中してるっぽいから、そっとしておこう!

 

 

「……そうだ。夏、俺の代わりに他のバンドの指導に向かってくれないか?流石に6バンド全部は見れそうにない。……そうだな、アフロとパスパレ、Roseliaを見てもらいたいんだが……良いか?」

 

 

「はい!任せて下さい!じゃあ、早速行ってきます!」ビューン!

 

 

「……フフッ、本当に変わらないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[パスパレ 練習スタジオ]

 

 

「ごめんね!パスパレの皆!刄さんの代わりに私が指導する事になったから、今日は宜しくね!」

 

 

『はい!』

 

 

「じゃあ、早速指導に入るよ!まずは演奏を聴かせて?」

 

 

「わ、わかりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……という感じね!わかったかな?」

 

 

『はい!』

 

 

「じゃあ、私はアフロの方に向かうから、練習頑張ってね!」ビューン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[アフロ 練習スタジオ]

 

 

「ということで、今日の指導は私になったから宜しくね!」

 

 

『はい!/は~い』

 

 

「それじゃあ、1曲演奏してみて!そこから指導するから」

 

 

いっそがしい!こんなことなら走るんじゃなかった……ちくせう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!後は各自で練習してね!私はRoseliaの方にも行かないといけないから!」

 

 

「お姉ちゃん、無理しないでね?」

 

 

「わかってる!じゃあ、頑張ってね!」タッタッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[Roselia 練習スタジオ]

 

 

「始めましてかな?」

 

 

「そうですね、始めましてです。私は……」

 

 

「あ、皆の事は知ってるから大丈夫だよ。私の事は……」

 

 

「勿論知っているわ」

 

 

「よし!なら話ははやい!早速指導に移るよ!」

 

 

『はい!/ええ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、休憩にしよっか!…………ふぅ」

 

 

「大丈夫ですか?バタバタしてるみたいですけど……」

 

 

「……そうだね、少し疲れてるかな~……。今日CiRCLEに来てから1秒も休んでないからなぁ……」

 

 

「大変じゃないですか!今すぐ休んで下さい!」ガタッ!

 

 

「……大丈夫らよ…うん」フラフラ

 

 

あぁ…………頭がボーッとしてきた……。ちょっと気持ち悪い…かも。

 

 

「呂律も回ってないじゃないですか!湊さん!夏さんの右肩を支えて下さい!今井さんは左肩の方をお願いします!」

 

 

「え、えぇ!」

 

 

「わ、わかった!」

 

 

ありゃ~?倒れてない、私…

 

 

「白金さんはTTDWの皆さんを呼んできて下さい!宇田川さんはおでこにのせる氷を!」

 

 

『は、はい!』

 

 

あ~……意識が……もた………な……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

 

「…………う~ん……」

 

 

「夏さん!大丈夫ですかっ!?」

 

 

あれ……皆いる…?……あ、私倒れたのかな?最近動きっぱなしだったからかな……?

 

 

「……夏、すまなかった。疲れてるお前に仕事を頼んでしまった……」

 

 

「いえ、気にしないで下さい。やりたくてやった事なので」

 

 

「……前々から感じてはいたけど……まさか、ここまでとはね……」

 

 

「……どういう事ですか?姉さん」

 

 

……多分、バンドメンバーは勘づいてる感じかな?なら、隠さなくても良いかな。

 

 

「……私ね、精神が少し変なんだ」

 

 

『…………』

 

 

「お姉ちゃん……」

 

 

つぐみの優しい眼差しが私に向く。……心配してくれてるのかな……?そうだと嬉しいけどね。

 

 

「私ってば、精神不安定らしくって……昔から病院に通院してるんだよね」

 

 

「…だから、会社から暇を貰ったのか?」

 

 

「うん。社長曰く、『このままじゃブラック企業に勤める人達と同じ思考になる』って言われてね。精神が安定しないから、仕事とかもつい人以上にやっちゃうんだよね……わかってはいるんだけどね?」

 

 

「……もしかして、俺のところに弟子入りした頃から……か?」

 

 

「それより結構前からですね。でも、弟子入りは私の意思ですよ?」

 

 

「……なら良いのだが」

 

 

精神が安定しないと、色々な弊害が起こったりする。その1つが、判断能力の異常。自分ではわかってるのに、結局「まぁいいか」で済ませてしまう。これは、私の性格でもあるけど……それにこれが合わさると自分で制御するのが難しくなる。仕事を沢山やるのも、これの例の1つ。今はこれしか目立った弊害がないものの、他にも沢山あったりする。病院の人は、お手上げ状態だとか。

 

 

「……ごめんね?バンド練習の合わせ……出来ないかも」

 

 

「……今日はゆっくり休んでなよ?結構キツいんでしょ?」

 

 

「あはは……バレちゃってるみたい。……そうだね、今日はゆっくりしておくよ」

 

 

「それはそうと、精神の方はもう大丈夫なの?」

 

 

「どうなんだろ?……大丈夫だとは思うけど」

 

 

正直、精神の安定不安定なんて自分じゃよくわからないのが現実。周りよりは多少わかるだけで。

 

 

「……お姉ちゃん」

 

 

「ごめんね、つぐ。……心配かけちゃって」

 

 

「ううん、気にしてないよ。……でも、今日はちゃんと休んでね?」

 

 

「うん。……終わったら教えてね?」

 

 

「わかってるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

「どうした?楓」

 

 

「……端から見れば夏は、皆にとって頼れるお姉さんのようなのだけど、私達も意識を改める必要があるかもしれないわ」

 

 

「……出来るだけ自分達で解決して、夏さんの精神への負担を減らす事が必要……と?」

 

 

「恐らくね」

 

 

……一応、ここにいる全員はこれから夏との交流が深くなる事がありそうだし、言っておく必要があるかもしれない……。

 

 

「……まだ、治ってなかったのね……夏」

 




ということで、第9話が終わりました。

前回に続き、少しシリアスになりました。さて、夏の核心に迫るのは一体いつになるのでしょうか?夏の症状は、良くなるのか?因みに次回はTTDWの内の1人の家族回になります。

次回『圧倒的エゴサ』


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【本編】圧倒的エゴサ

どうも、Cross Alcannaです。

今回は、タイトルの通りのキャラと、その家族が出ます。……特にこれといった話題もないので、さっそく始めます。

では、本編を開始します。



[丸山家 リビング]

 

 

「……お兄ちゃ~ん、どこか出かけようよ~!」

 

 

とある休日。今日はお兄ちゃんも家にいる。……正直、今とても暇だからお兄ちゃんと出かけたいんだけど……。

 

 

「彩、お前はアイドルだろ?例え俺が彩の兄だとバレてても、男と一緒にいるのはあまり良くないだろ?この前も千聖に言われてただろう…?」

 

 

「うっ……!」

 

 

「…はぁ」

 

 

そう、私はアイドルだから、異性と一緒で行動するのは極力避けるよう千聖ちゃんには口すっぱく言われる。……でもでも!一緒に行きたいんだもん!!お兄ちゃん、自営業始めてから私にかまってくれることも減ってるし!

 

 

「彩」

 

 

「何?お兄ちゃん」

 

 

「支度してこい。…行くぞ」

 

 

「……うん!!」パァァ!!

 

 

わ~い!!久々にお兄ちゃんとのお出かけ~♪そうと決まれば支度しないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ショッピングモール]

 

 

「どうだ?決まりそうか?」

 

 

「決まらないよ~!!お兄ちゃん!助けてぇ!!」

 

 

「はいはい」

 

 

ショッピングモール(服屋)で買い物をしてる訳なんだが……相変わらず彩は服を選んでいる訳なんだが……。まぁ、選べないって言って結局俺に助けを求めるのが、最早テンプレになってるんだよな……。それで良いのかアイドル兼我が妹よ。

 

 

「お兄ちゃん!これとこれ、どっちが良いかな!?」

 

 

「そうだな……こっちの服に…これを合わせたらどうだ?」

 

 

「わぁぁ~!凄く良い!着てみるね!!」タタタ

 

 

……彩の服を見繕って以来、「女子力高いね!」なんて言われる事が多くなった。いつだったか、千聖から「彩ちゃん、お兄さんに女子力で負けてるわよ……?」なんて言われる始末だしな。テレビの撮影時の私服も俺が見繕ったやつだったりする事もある。

 

……頭痛くなってきたな。せめて服くらいは自分で買えるようになって欲しいものだ。等と考えていると、少し意外な人物と出会った。

 

 

「あれ?竜胆さんじゃないですか!」

 

 

「イヴか。こりゃまた偶然だな」

 

 

「1人でお買い物ですか?」

 

 

「いや、彩に出掛けようと言われてな。付き添いで来ている」

 

 

「そうなんですか!」

 

 

こうして出かけた先で知り合いに会うのも、俺の楽しみの1つだったりする。たまにバンドメンバーがいたりもする。……あれ?……嘘だろ?

 

 

「じ、刄さん!?」

 

 

「ん?……竜胆じゃないか。こうして会うのは初めてだな」

 

 

ラッキーだった。まさか、あの夏の師匠である刄さんにプライベートで遭遇するなんて……。

 

 

「刄さん!珍しいですね!」

 

 

「イヴ?初対面じゃないのか?」

 

 

「はい!TTDWの皆さんが来れない日に私達の指導をしてくれてるんです!」

 

 

羨ましい事この上ないな。刄さんに直接指導してもらってるなんて……。全バンドの目標の1つであるGrand Diamondのメンバーの指導……俺たちもやってもらえないかな?

 

 

「…そうだ、これも何かの縁だ。そっちが良ければバンド練習を見に行きたいんだが……良いか?」

 

 

「良いんですか?」

 

 

「ああ、ここ最近は夏のバンド練習見れてなかったからな。TTDWの練習風景も是非見てみたいと前から思ってたもんでな」

 

 

「寧ろこっちからお願いしたいくらいですよ。……日程はどうしますか?」

 

 

運よく練習日程表を持っていた。それを取り出して、確認しながら問う。

 

 

「そうだな……この日に行かせて貰おうかな。皆来ると思うが、良いか?」

 

 

「全然問題ないですよ」

 

 

「そうか。イヴ、割り込んですまなかったな」

 

 

「いえいえ!構いませんよ!」

 

 

…帰ったらメンバーに連絡いれないとだな。その前に日程表に書いておこう。一応と思って持ってきて正解だった。

 

 

「じゃあ、俺はこれで失礼しよう」スタスタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃ~ん!終わったよ~!!……あれ?イヴちゃん?」

 

 

「彩さん!こんにちは!」

 

 

イヴちゃんも買い物に来てたのかな?

 

 

「イヴちゃん!偶然だね!」

 

 

「彩、残念だったな」

 

 

「へ?」

 

 

「刄さんがここに来てたみたいでな、今度俺らの練習に来てくれるよう約束までしてもらったぞ」

 

 

「えぇぇ!?」

 

 

何それぇ!?お兄ちゃんだけズルいよ!!……あっ、お兄ちゃん達がいないとき、私達練習見てもらってたんだっけ。

 

 

「…あ!私もそろそろ行きますね!では!」タタタ…

 

 

イヴちゃん、用事でもあるのかな?

 

 

「彩ちゃん?異性と行動するのは慎んでって言ったわよね?」ゴゴゴ…

 

 

「うっ!……ち、千聖ちゃん」

 

 

今は会いたくなかったなぁ……。というより、私とお兄ちゃんが一緒にいると、決まって千聖ちゃんと会うような気が……。

 

 

「竜胆さん、少し彩ちゃんを借りますね?」

 

 

「……程々にな?」

 

 

「はい、わかってます。……じゃあ彩ちゃん?行きましょうか」ゴゴゴ…

 

 

「うぅ……は~い」トボトボ

 

 

……彩、ドンマイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後……

 

 

「お兄ちゃ~ん」ヨヨヨ

 

 

「千聖、加減したのか?」

 

 

「しましたよ?」

 

 

彩……これからのお前が心配になるな。

 




ということで、第10話が終わりました。

タイトル詐欺になった気もしますね。すみませんでした。入れる箇所がなかったもので…。2000字までいきませんでしたが、ご勘弁を。趣味の時間もとらないと持たないので……。ですが、この投稿ペースは極力守るので、暖かい目で見守っていただけると幸いです。今は、オリキャラの絵を描いてるので、アップした際にはお知らせします。

次回『邂逅』


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【本編】邂逅

どうも、Cross Alcannaです。

今回も、前回に引き続きオリキャラ回になります。さて、誰でしょうか?後、お知らせですが、大学の対面講義が始まるので、投稿ペースが更に落ちる可能性があります。極力ペースは守りますが、レポート等があるため、どうしても投稿できない時もありますので、ご了承下さい。

では、本編を開始します。



[花園家 たえの部屋]

 

 

「お姉ちゃん、こんな感じでどうかな?」ジャーン

 

 

「もっとこう……強めに弾いたらどう?」ジャーン!

 

 

「わかった、やってみるね」

 

 

今日はポピパの練習がなくて、TTDWの練習もない。そういう日は、こうしてギターの練習を見てもらってる。

 

 

「……こうかな?」ジャーン!

 

 

「そうそう!やっぱりおたえは飲み込みが早いね」

 

 

「そうかな?お姉ちゃんの教え方が上手なんだと思うよ?」

 

 

お姉ちゃんはよく謙遜するけど、普通に説明が上手。役所で仕事してるから、人に教えるのは何回もやってると思うし、それの影響かな?

 

 

「そうだ、お姉ちゃん?」

 

 

「?どうしたの、おたえ?」

 

 

「バンドメンバーと、どうやって知り合ったの?」

 

 

ふと、前々から興味があった事を質問してみる。……あのメンバー達とお姉ちゃんとが、とても気が合うとは思えないのが、正直なところだけど。

 

すると、お姉ちゃんの顔つきが変わった。…真面目な話をするときの顔だった。

 

 

「……そうだね、少し長い話になるけど、良いかな?」

 

 

「うん」

 

 

「わかった、じゃあ話すね。あれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

[花咲川学園高等部 1-B]

 

 

「桜、ちょっとここについて教えて欲しいんだけど」

 

 

「良いですが、何処です?」

 

 

「ほら、この……」

 

 

いつもと変わらない学校でのある1日。元々躑躅とは小学校からの同級生で、いつの間にか授業のわからないところを教え合うようになり、気づいたらこんな仲になっていた。私がいつものように躑躅に教えようとした時だった。

 

 

「躑躅、ここを教えて欲し……ああ、先客がいたのか。悪かった、出直そう」

 

 

「別に良いよ。……桜はどう?」

 

 

「私も構いませんが……」

 

 

「だってさ」

 

 

「申し訳ない。……確か、花園 桜だったか?」

 

 

「別に構いませんよ。後、その名前で合ってます」

 

 

この後から、私は躑躅の紹介を経て竜胆さんと関わるようになっていった(本人に名前で呼ぶよう言われた)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「竜胆?もう暗いわよ……あら?」

 

 

「ひ、氷川さん」

 

 

竜胆さんは1-Cだが、氷川 楓さんは1-Aの人だ。この人とは何回か話した機会はあったけど、いつも緊張する。雰囲気が独特で、そうなってしまうのだが。

 

 

「同学年だから、名前で呼んでちょうだい?何かむず痒いわ」

 

 

「そ、そうですか……楓さん」

 

 

どこかこう……マイペースなところがあるのが、おたえと同じだけど、おたえのマイペースさとは少し違う。何て言えば良いかわからないけど、私とはあまり合わない雰囲気……と言えば良いのかな?

 

 

「……そういえば竜胆、今日の夏の調子はどうだったの?」

 

 

「いつもと変わらなかったな。……()()()()()()

 

 

「そう……やっぱり、心配ね」

 

 

「何の話?」

 

 

……躑躅ったら、相変わらずグイグイ行くその姿勢……控えなさいっていつも言ってるのに……はぁ。

 

でも、私も正直気になる。その、夏って人……確か、先生達が一目置いてるなんて噂もあるくらいだし……

 

 

「今日はもう帰るわよ。夏ももう先に帰ってるでしょうし」

 

 

「……一応、帰ったかの確認しておくか」

 

 

「そうね」

 

 

……少し、過保護過ぎでは?身内でもない、ましてや他人であるまでなのに、どうしてそこまで肩入れ(?)しているのだろう?

 

 

「……少し、過保護ではないですか?」

 

 

「……あ~、そうね……一応、これには深い訳があるのよ?」

 

 

「訳?どんな?」

 

 

「いたらの話になるが、見た方が早い」

 

 

『……?』

 

 

見た方が早い?益々わからない。……まぁ、行けばわかるって事……なのだろうか?…というより、こんな時間まで待っているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[花咲川学園高等部 1-C]

 

 

「……まさか、いるとは思わなかったわ」

 

 

「すまない、夏。長くなってしまった」

 

 

「…………気に、しないで…。来るって……思ったから」

 

 

「次からはなるべく早くする」

 

 

……彼女が、あの羽沢 夏?……控えめに言って、死んだ目をしてる。生気を微塵も感じない。

 

 

「楓、見た方が早いって……」

 

 

「そうよ。……夏は入学当時からずっとこうらしいわ。今は担任から竜胆が側にいるよう言われてるわ」

 

 

「……あの、夏……さん?」

 

 

「…………はい」

 

 

微かに聞こえた返事。……何故だろうか、どこか疲れた感じの声に聞こえる。

 

 

「初めまして、私は花園 桜。竜胆さんと楓さんの知り合いです」

 

 

「同じく、奥沢 躑躅だ。宜しく、夏」

 

 

「ちょっと!?躑躅!!」

 

 

流石にマズイ。この状態の人にそんなラフに話したりなんてしたら……何か地雷でも踏み抜きそうに思えて仕方がない。

 

 

「…………羽沢……夏…です」コク

 

 

「……あ、よ、宜しくお願いします」

 

 

杞憂で本当に良かった。でも、関わるときは細心の注意を払わないといけない気がする。

 

 

「珍しいわね、夏。2人は大丈夫なのかしら?」

 

 

「…………」コクリ

 

 

「……良かったわね、2人とも。夏は、話す人を選んでるから」

 

 

「?何でさ」

 

 

「それに関しては、俺達もわからない。その話題になると、夏が話したがらないのか、黙り込んでしまうからな」

 

 

「……聞かれたくない、って事なのですか?」

 

 

流石に、躑躅も真剣な顔つきになっていた。……こういう時は出来るのに、どうしていつも出来ないのだろうか?

 

 

「恐らくはね。……さぁ夏、帰るわよ」

 

 

「待たせてしまったからな。少し早足で行くか」

 

 

「…………」コクリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

「これが、私達の最初の出会いね」

 

 

「……何だか意外。夏さん、今と全然違う」

 

 

「私も、その辺りの事はまだ聞いたことないから、わからないわ。……聞いても教えてくれるかどうか……」

 

 

あまり詮索するべきじゃないのはわかってるけど、正直私も気になってはいる。

 

 

「……おたえ?気になるのはわかるけど、聞かない方が夏さんの為よ?」

 

 

「……うん」

 

 

いつか、聞ける日が……そのくらい信用される日が、来るといいけれど……

 




ということで、第11話が終わりました。

これを入れるのをいつにしようか考えていたので、ここで導入しておきました。前話のような絡みを期待していた方には、大変申し訳ありません。次回は日常的な回になるので、そちらを楽しみに待って下さると助かります。

後、夏のイメージ絵を更新しました。また訂正したりすると思うので、その都度お知らせします。

そして、重大なお知らせがありますので、活動報告を確認してもらえるとありがたいです。

次回『苦労人とのんびり』


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【本編】苦労人とのんびり

どうも、Cross Alcannaです。

先に言うと、今回は奥沢の2人の回です。今回こそ、のんびり回を……!突然のお知らせになりますが、イメージ絵が思ったより進めれないので、もう少々お待ちください。

では、本編を開始します。



[奥沢家 躑躅の部屋]

 

 

「ふぅ……」

 

 

今日は日曜日。大学もないし、レポートも今しがた書き終えたところだ。バンド練習も今日はないので、暇になった。さて、どうしたものか…

 

 

「……久々に釣りでも行くか」

 

 

大学に入ってから、何だかんだ空き時間が増えたので、何か始めようと思い、始めたのが釣りだった。幸い、大学の近くに釣り堀があるので、大学に通いながらでも釣りが出来る。暇なときにできるし、何より楽しい。始めてからハマるのに、時間はかからなかったような気がする。

 

 

「そうと決まれば、釣りの用意を…コンコン……ん?空いてるぞ~」

 

 

そう思い、行動しようと立ち上がろうとした時、ノックが聞こえたので、開いていることを伝える。すると、扉が開いた。

 

 

「お兄ちゃん、今日暇?」

 

 

おぉ、珍しいな、美咲が来るとは。

 

 

「そうだな……暇だから釣りにでも行こうかと思ってたとこだな」

 

 

「……私も行って良い?」

 

 

「良いぞ、準備してきな?」

 

 

「うん!」タタタ…

 

 

今日はバンドの練習休みだったのかな?……にしても、本当に久々だな、こうして2人で出掛けるなんて。僕らがバンドを始めてからは、空き時間が合わないなんてしょっちゅうあったから、一緒に出掛ける機会もめっぽう減った。何気に数ヶ月ぶりとかじゃないかな?

 

 

「……楽しみだな」

 

 

おっと、いけない……準備しないと。美咲を待たせることになるのはゴメンだしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[街 道中]

 

 

「ところでお兄ちゃん」

 

 

「ん?」

 

 

街中を歩いていると、美咲が何かを聞いてくる。何だろう?

 

 

「……いつ告るのさ、いい加減言った方が良いと思うけど?」

 

 

「……それかぁ」

 

 

…耳が痛い話だ。…そう、ここだけの話、俺には好きな人がいる。もうかれこれ何年経つんだろうな……。

 

 

「わかってはいるんだけどな……」

 

 

「……この話、やめにする?」

 

 

「そうしてくれると助かるかな」

 

 

うん、やめにしよう。……正直、恥ずかしいったらありゃしないからね。それに、僕の精神がもたないし。

 

 

「そういえば、バンドの方はどうなんだ?」

 

 

「大変だよ」キッパリ

 

 

あらら……。でも、顔は楽しいって訴えてる気がするんだけど……。

 

 

「でも、最近は楽しいよ」

 

 

「…そっか」ニコ

 

 

楽しいなら何よりだ。あのバンドはかなり個性が強いからなぁ……、疲れるのも無理はないが、楽しいって言えるなら問題ないかな?っと、もうそろそろ着く頃合いかな?

 

 

「さて、そろそろ着くかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[河川敷]

 

 

今日は大学付近の釣り堀じゃなくて、お気に入りの河川敷で釣る。ここは釣りがちゃんと認められているらしく、景色や川の水も綺麗なので、飽きが来ない。

 

因みに、美咲とここに来るのは初めてではない。バンドを始めてから2、3回は来ている。偶々両方のスケジュールが埋まってなかった休日に、ここに来ては釣りをしたものだ。

 

 

「さてと、今日は何が釣れるかな?」

 

 

「大きい魚が良いとは言わないけど、釣れないっていう事態にならないと良いね」

 

 

「……だな」

 

 

それは避けたいところだ。釣れなかった日の帰りのあの気分は……なんとも言えない。釣れない日もあったが、あの気分は好きじゃない。

 

それに、せっかく久々に来たんだ。小さくても、何か釣りたいな。

 

 

「よし、始めるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3時間後

 

 

「美咲の方はどうだ~?」

 

 

「小さいのが何匹か釣れたかな~!」

 

 

僕と同じ感じかな?因みに僕は、ニゴイ2匹とギンブナ3匹といったところだ。……釣れないよりは全然良いかな……うん。久しぶりにしては、まぁまぁ良い方なんじゃあないかな?

 

 

「そろそろ帰るぞ~!」

 

 

「うん~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[帰り道]

 

 

「楽しかったね」

 

 

「だな」

 

 

今は美咲と家に帰る途中だ。因みに美咲の釣果は、ギンブナ4匹だそうだ。この時期はやっぱあまり釣れないなぁ。

 

 

「……お兄ちゃん」

 

 

「ん?」

 

 

「……また行こうね」

 

 

「勿論!」

 

 

こういう時間は大事だからな。美咲の妹の方にも構えてないからなぁ……頑張って時間作ろっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[花咲川病院 地下収容治療室]

 

 

「……」

 

 

まるで"狂暴な生き物を閉じ込める"ために作られたかのような地下の1室の中に、1人の女医がいた。

 

 

「ここは私の管轄だけど……正直、二度と使いたくないわね……」

 

 

苦虫を噛み潰したような表情。どうやら、前に使われたようだ。

 

 

「……大丈夫かしら、あの子」

 

 

この一室を作り、使用する事になった事件を知る者らは、こう言ったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそれは、地獄だったとーー

 




ということで、第12話が終わりました。

日常を書くと、どうしても文字数が少なくなるんですよね……。シリアスならいくらでも書けるんですけど……。あ、お知らせですが、アンケートを新設しましたので、是非お答え下さい。

次回『仲良し三姉妹』


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【本編】仲良し三姉妹

どうも、Cross Alcannaです。

最近、2000文字で読者が読みやすいのか気になって仕方ないです。アンケートとった方が良いですかね?もし良ければ文字数に関してのコメントを書いて下さい。可能な限り要望に応えようかと思います。因みに、今は大体2000文字くらいです。

では、本編を開始します。



[氷川家 楓の部屋]

 

 

「おねーちゃん~、暇だよ~!!」ムー

 

 

「……だからって、抱き着くのはどうかと思うわよ」アツイ

 

 

「……日菜、姉さんから離れなさい」ハァ……

 

 

私が小説を書こうとした時だった。日菜が入ってきて、すぐに後ろから抱き着いてくる。あすなろ抱きみたいな感じだ。…いつもの事だけど、私が仕事をしようと思った時に限って日菜が私の部屋に入ってくるのよね。……別に嫌ではないんだけど、タイミングってものがあるわよね……?

 

 

「出掛けたりはしないのかしら?天気も出掛けるには絶好じゃないの」

 

 

「せっかくおねーちゃんが家にいるんだから、一緒に行きたいのぉ~!!」ムゥゥーー!

 

 

……痛いから、これ以上力を強めないで欲しいのだけれど。…そして紗夜、諦めたような顔をしないで頂戴?

 

 

「……諦めたほうが良いと思いますよ」

 

 

「貴女……随分と神経が図太くなったわね……?」

 

 

「ね~ぇ~おねーちゃん~!!行こ~よ~!!」ウデツカマリ

 

 

日菜?貴女はもう少し遠慮というものを覚えてちょうだい?…はぁ、こうなったら仕事なんてできそうにないわね。

 

 

「……準備するから、一回部屋から出てもらえるかしら?」ハァ

 

 

「やったぁ!!」ピース!

 

 

「…いつもすみません、姉さん」

 

 

「……まぁ、結局のっかる私にも非はあるし、何せ日菜だもの、そこまで気にしてたらもたないわよ?」

 

 

実際問題、日菜に振り回されるなんて最早日常の一部。もうとっくに慣れたものだ。……というより、小さい頃は紗夜も日菜に似た性格だったから……そりゃあもう……ね?(白目)

 

 

「……原稿は、徹夜になりそうね」ハァ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ショッピングモール 服屋]

 

 

「久々に来たわね、服屋なんて」

 

 

「……姉さんはスタイル良いんですから、もっと身なりに気を配った方が良いですよ」

 

 

「あら、貴女から言われるとは思わなかったわ」

 

 

まさか、風紀委員である紗夜から言われるとはね。紗夜の事だし、知り合いだったり同級生なら「貴方!風紀が乱れてます!」なんて言い出すとばかり思うのだけれど。でも、それを加味しても服なんて特に気にしたことなかったわね。ただ、この格好(一般的に"ゴスロリ"の類いの服)は好きだけど。…相変わらず変な目で見られるのよね、どうしてかしら?

 

 

「ねぇねぇ!こんなのどうかな!?」

 

 

そんなことを思っていると、店の服を自分の前にあて、似合うかどうか聞いてくる。……あら、結構似合ってるじゃない。服を選ぶセンス、あるんじゃないかしら?

 

 

「似合ってると思うわよ?ね、紗夜?」

 

 

「そうですね、日菜らしくて良いと思うわよ」

 

 

「本当!?じゃあこれは買いだね!他のも探してくる!」ビューン!

 

 

本当にアグレッシブだこと。……よくよく考えれば、私の周りの兄妹だったり姉妹だったりって、思ったより似てない事が多いわね。まぁ、その典型的なのが私達なのだろうけど。

 

 

「……そういえば姉さん、聞きたいことがあるんですけど」

 

 

「何かしら?」

 

 

「今こそバンドのメンバーの皆さんと馬があってるように見えますが、知り合って間もない頃はどうだったんですか?」

 

 

……これはまた唐突ね。しかも答えづらいものを……。

 

 

「…唐突ね、何か理由でも?」

 

 

「いえ、ふと思っただけです」

 

 

「そう、あの頃ねぇ……」

 

 

あの頃は……うん、ヤバかったわね。主に夏が。

 

 

「言うほど変わってないわよ、皆。私も含めてね」

 

 

「そうなんですか」

 

 

「桜は今より堅かったわね。竜胆と躑躅と私はほぼ同じ感じね」

 

 

「…?羽沢さんは……?」

 

 

……言って良いものなのかしら?正直、ちょっとした地雷な感じもするのよね。……まぁ、紗夜なら大丈夫かしら。

 

 

「……今とは真逆だったわよ」

 

 

「…………え?」

 

 

今の夏しか知らない人は、大方こんな反応なのかしら。無理もないけど。

 

 

「細かいことは省くけど、夏は()()()()わ」

 

 

「病ん……で?」

 

 

「そう、それこそ……生気なんて無いに等しかったわ」

 

 

あの時の夏は忘れない。……いや、忘れられない。あんな人、今までに見たことなかったのもあるのでしょうけど。

 

 

「私と竜胆に夏を見ておくよう、先生から言われたのよね」

 

 

「そんなに……酷かったんですか?」

 

 

「そうだけど、それ以外はかなり優秀だったわよ?勉強然り、運動然り、それこそ音楽もね」

 

 

最初は私達も少し戸惑ったけど、しばらくすると慣れてきたのを思い出すわね。夏が話す人を選ぶと知らなかった時は大変だったのよね。何で話しても応えてくれないかが全くわからないから。

 

 

「恐らく私達と会う前に何かあったらしいけど、聞いても夏は一向に話さないのよ……今でもね」

 

 

「……かなり訳ありなんですね」

 

 

今でも応えてくれない理由こそわからないけど、何かヤバいくらいはわかる。それこそ、()()()()()()()()があるんだろう。

 

 

「……これ以上は雰囲気が重くなりそうだし、やめにしましょうか。さて、紗夜も服選んで来なさい?今日は私がもってあげるから」

 

 

「え?……いいですよ」

 

 

「たまには厚意に甘えなさい。私だって忙しくて貴女達に構ってあげられてないのに罪悪感があるのよ」

 

 

「……ありがとうございます、姉さん」

 

 

「はいはい、ゆっくり選んで来なさい」

 

 

……もう少し、妹達に構う時間を増やそうかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後は、2人が私をコーディネートしたり、ファミレスで昼食をとったり、帰りに楽器店に寄ったりした。

 

……結構楽しかったわね。……やっぱり、仕事減らしてでも時間を……いえ、やめておくのが賢明でしょうね。

 

 

「……今度、何か買ってこようかしら」

 

 

まぁ、そんな事を考えたところで、原稿を書かないといけないことは変わらないけれど。……徹夜ね(絶望)

 

 

「……頑張ろう」ヨシ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[羽沢家 夏の部屋]

 

 

「……これでよしっと!!」

 

 

日課の日記が書き終わった~!!この日記帳、何冊目だっけ?

 

そんなことをちょっと考えていると、つぐの声が聞こえてきた。ご飯ができたみたいだね。

 

 

「今行く~!!」

 

 

っとと、もうそんな時間だったんだね。じゃあ、降りますか!窓は……開けたままでいいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏が下に行って、机に上の手帳が風によって捲られていく。そして、とあるページで止まった。

 

 

○月○日

 

 

どうしてだろう?最近、記憶がなくなる事が増えた気がする。……もしかして、また……ううん、深く考え過ぎかな?

 




ということで、第13話が終わりました。

次回は羽沢家の回です。次回以降からはどうなるか、まだわかっていません。アンケートを反映するのか、オリジナルストーリーを展開するか。次回までには決めておきます。

次回『喧騒の中に』


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【本編】喧騒の中に

どうも、Cross Alcannaです。

今回でオリキャラ家族回も最後です。次回からは、アンケート結果で多かったキャラの回を進めようと思います。今話にも、またアンケートを貼るので、そちらにも回答をお願いします。

では、本編を開始します。



[羽沢家 つぐみの部屋]

 

 

「商店街でイベント?」

 

 

「うん!」

 

 

暇を持て余している私の元に妹が持ってきたのは、商店街のイベントについて書かれた紙だった。そして良い笑顔もついでに持ってきたみたいだね、この子。うん!100点満点の笑顔!!

 

 

「Afterglowの皆でお姉ちゃんも誘おうってことになったんだ!」

 

 

「嬉しいねぇ~!確か明日だっけ?」

 

 

「うん!……お姉ちゃん、一緒に来て?」ウワメヅカイ

 

 

わお、上目遣いとかどこで覚えてきたのかな?私、教えた覚えないんだけどなぁ?……ひまりちゃんかモカちゃんあたりかな?……問い詰めようかな?

 

それは置いといて、イベントかぁ……最近行けてないもんなぁ……よぅし!

 

 

「そうだねぇ、明日はこれといった用事もないから……うん!一緒に行こうか!」

 

 

「やったぁ!!」ピョンピョン

 

 

あらやだこの子可愛い(尊死)

 

というか、行かない理由もないし、蘭ちゃん達ともあまり関われてないからね、最近。今回のは丁度よかったね。蘭ちゃん達とお話でもしたいなぁ~。

 

 

「じゃあつぐ、課題終わらせよっか」

 

 

「うん!」

 

 

いつもは渋々やる課題も、イベントのためなのか進んでやろうとしてる。イベントって凄いねぇ(小並感)

 

さて、私もテレワーク終わらせよっと。一応、会社から自宅での仕事って言われてテレワークをやってるけど、結構楽だねこれ。これからもこれが良いなぁ(本音)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

[商店街 入り口]

 

 

「あっ!夏さんだ!!」オーイ!

 

 

お、皆いるね。いやぁ~、皆本当に大きくなったねぇ~。前一回バンド練習のときにお邪魔したときは、あまりちゃんと見れなかったけど、巴ちゃんとか凄く大人っぽくなったんだね!!

 

……私より大人っぽいような……?なんか悲しいなぁ。ピエン

 

 

「前に一回皆に会ったけど、皆大きくなったねぇ~」

 

 

「……どうしてアタシの方ばっか見るんですか?」

 

 

「いやぁ、皆成長したとは思ったけど巴ちゃんだけ私より大人になっててビックリしたと言うか……」

 

 

自分で言ってて泣きそうになるね、うん(涙目)

 

まぁ、そんなことは置いておこうか!

 

 

「確か蘭ちゃん達のライブまで多少時間あるんだっけ?」

 

 

「うん、だから一緒に回ろうってひまりとつぐみが提案してきたんだ」

 

 

あら、いい子に育ったんだねぇ~。お姉ちゃん、嬉しいな!そんな良い子には、私から撫で撫でをプレゼントしちゃいます!…ま、ただ私がしたいだけなんだけど。

 

 

「そっか、2人共、ありがとうね!」ナデナデ

 

 

「えへへ~」

 

 

「わっ……ふふ」

 

 

相変わらずこの2人は撫でると小動物みたいになるねぇ。可愛いから良いけどネ!

 

 

「それなら、早く行って思う存分楽しもうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[商店街 ステージ]

 

 

「やっぱり成長したんだね~、クオリティ上がってるじゃん!」

 

 

今はAfterglowのライブの真っ最中。前に聴いたのよりも断然良い。何しろ、皆楽しんでるしね!

 

 

「あ~あ、私もやりたいな~」

 

 

こういうのを見ていると、こっちもやりたくなるんだよね!わかる人いるかな?かな?

 

 

「……随分と見違えるくらい変わったね」

 

 

「あ、お久しぶりですね、紫葉さん」

 

 

いやぁ、本当に久々に再会したなぁ……と、私が懐かしんでいる横で蘭ちゃん達のライブを見ているのは、美竹 紫葉(みたけしよう)さん。

 

苗字で察しの通り、蘭ちゃんのお父さんだ。前は蘭ちゃんに家業を継がせるために、バンドを辞めるよう言っていたらしいが、今ではそんな面影はない。寧ろ、一見するとファンにしか見えない。てか、ファンだよね?これ?

 

 

「挨拶に行けなくてすみません…何分、しばらく忙しい日が続いたので……」

 

 

「いや、特に気にしてはいない。そこまで気負うことはない」

 

 

紫葉さんは不器用なだけで、思いのほか優しい。それを蘭ちゃんに向けてあげて欲しいのはあるけど……。

 

 

「君の話は蘭から聞いている。……元気でやっているようで何よりだ」

 

 

「そうですね……()()元気でやってますよ」

 

 

「……何か含みのある言い方なのが気になるが……元気なら良い」

 

 

今更だが、紫葉さんが私に敬語を使わないのは、私がそうお願いしたからだ。……自分でも、何でそう頼んだのか…今でもわからないのだが。

 

 

「……今は行っているのか?」

 

 

「いいえ、しばらく行ってないですね」

 

 

「…行かないのか?」

 

 

「行く暇がなかった、の方が正しいですけどね…」

 

 

そう、行こうと思っても行けなかったのが正しいのだ。まぁ、行く暇があっても行かなかったとは思うけどネ!

 

 

「そろそろ終わりそうですし、私はやることがあるのでお先に失礼しますね!」タタタ

 

 

蘭ちゃん達を労うために飲み物と食べ物の調達に行かないとね~。紫葉さんには悪いけど、そろそろ行かないと間に合わない気がするし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……気のせいだったら良いのだが……」

 

 

「……いいえ、多少の綻びが見えますね」

 

 

「…来ていたのですか?……東さん

 

 

そこには、とある女性がいた。まるで、事前にここで2人が会話することを予見していたかのように。

 

 

「……一度は目で確認しておきたかったので。…貴方の言うとおり、帰ってきていたんですね」

 

 

「本人曰く、忙しくて来れなかったと言ってましたよ」

 

 

「まぁ、バンドを復活させたらしいのでそれは本当ですよ。ですが、暇があってもこっちには来なかったでしょうね」

 

 

「……もうあんなことにはならないと良いのですがね…」

 

 

「…えぇ、もうあの部屋は使いたくないので

 

 

イベントの喧騒とは裏腹に、大きな懸念を抱える。果たして、それは杞憂に終わるのか、はたまた……

 




ということで、第14話が終わりました。

何やら気になる人物が登場しましたね。彼女は一体どう関係してくるのでしょうか。さて、前書きの通り、アンケートを新設するので、良ければ回答していって下さると助かります。そして次回から数話は、アンケートのキャラと夏の回になります。

次回『最強の音楽とは』


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【日常】最強の音楽とは

どうも、Cross Alcannaです。

今回は、アンケートキャラ回となってます。まぁ、題名を見ればすぐに誰かわかると思います。しばらくはアンケート回が続きますので、あらかじめ連絡しておきます。これ以上書くこともないので、早速始めます。

では、本編を開始します。



[スーパー内]

 

 

「後は確かあれが必要って言ってたっけ~?」キョロキョロ

 

 

ただ今店の買出しの真っ最中!結構買い揃えたけど、まだ買い終わってないんだよねぇ~。確かこの辺に置いてたはず……ん?

 

 

「…商店街の方が安いじゃんこれぇ!」

 

 

商店街で見たことあった商品だからわかるけど、これ高くない?ピエン

 

…とりあえず、用事を早く終わらせよっと!

 

 

「…会計しようかな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

In 家

 

 

「いつもすまないね」

 

 

「別に良いって~」

 

 

ということで、帰宅!!ふぃ~、重かった!やっぱもう少し体力と筋力あったほうが良いかなぁ~?…筋トレでも始めようかな?

 

 

「……あっ!あれ買い忘れたぁ!!」

 

 

「わぁっ!?ど、どうしたの?お姉ちゃん」

 

 

「あっ、ごめんね?ちょっと買おうって思ってた私物買い忘れたの思い出して……」

 

 

別の用事で買い物に行くと、私用の買い物忘れるんだよねぇ……皆あるよね?本当は今から行くのはちょっと面倒なんだけど……ないと困るし、行こうかな。

 

 

「ってことで、行ってくるね~」

 

 

「気を付けるんだぞ?」

 

 

「は~い」タタタ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[江戸川楽器店]

 

 

「え~っと……あ、みっけ!」

 

 

買いたいもの見つけた!いやぁ~、見つけるのに5分程かかるとはねぇ…。……あれ?あの子って……?

 

 

「……どっちが良いかしら…」

 

 

「あのぉ~、もしかしてチュチュちゃんかな?」

 

 

「What?誰よこんなとき……に…」

 

 

「あ、やっぱそうだね」

 

 

よかったぁ~間違ってなくて!これで違ってたら恥ずかしいってレベルじゃないからね!!

 

 

「…What!?貴女……まさか…夏!?」

 

 

おおぅ、いきなり呼び捨てかぁい!ま、その方が親近感あって私は良いけど。

 

 

「そうだよ~、たまたま見かけたからちょっと話しかけたんだけど…何やってたの?」

 

 

「…ちょっと見に来ただけよ」

 

 

今更だけど、私達初対面でこの話し方って凄いよね。両方共タメ口っていうね!どっちも気にしてないから良いんだけどね!!

 

 

「……そうかな?何か悩んでるのかとばかり……」アレェ?

 

 

「っ!」ビクッ!

 

 

やっぱりね。何でか知らないけどそういうのを見分けるのはわりかし得意なほうなんだよね。

 

でもチュチュちゃんってあんまり悩んでる様子ないイメージないんだけど……あっ、偏見で判断はダメか!それに、チュチュちゃんってリーダーだし立場的にも悩み多いか。反省反省っと!

 

 

「……良ければ相談に乗るよ?」

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[チュチュ宅]

 

 

「……良いの?まだ初対面なのに易々と家に上げて……」

 

 

「No Problem!私が良いって思ったから良いのよ!」

 

 

なら良いんだけど……ちょっと無用心だよ?お母さんとか心配しそう(確信)

 

チュチュちゃん、怒られないと良いけど……あ、そうだ、悩み聞くんだっけ。

 

 

「そっか。……で、何が悩みなのかな?」

 

 

そろそろ本題に行かないとまたしばらく話が進まない気がしたから、さっさと行こう!…………すっごい今更だけど、お節介だったかな?だとしたらゴメンネ!

 

 

「……私達がRAISE A SUILENとして活動してるのは知ってるかしら?」

 

 

おっ?意外とあっさり話し始めたね。結構思い詰められてたとみた。

 

 

「うん、知ってるよ。私達も注目してるからね」

 

 

「……Thanks」

 

 

ちゃんとお礼を言える辺り、礼儀はあるのね。てっきりツンデレタイプかと思ってたよ、私。

 

 

「私達の目的は、"ガールズバンド時代を終わらせる"事と"最強の音楽を作り上げる"事。そのために活動してるわ」

 

 

ちゃんとしてるかと思ったら物騒な思考がチラついてるんだよねぇ(・・;)

 

……そこだけ何とかならないものかな?深い経緯とかあるならまた別だけど。

 

 

「でも……最近、わからなくなってきているの」

 

 

「……そっか~」

 

 

なるほどね、こういうタイプが陥る典型的なやつだ。……刄さんから聞いただけだから何とも言えないけど、友希那ちゃんだっけ?と似てる気もするね。

 

 

「そうだね~、1つ聞きたいんだけど……良いかな?」

 

 

「……?」

 

 

()()()()()()()()?」

 

 

「……What?」

 

 

何を言ってるんだって思うかも知れない。でもね?そもそもの話、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が無いと達成はほぼ不可能なんだよ。最強じゃあないけど、私も似たことで悩んだ事あったからね、他の人よりは詳しい自信あるし。

 

 

「厳しいことを言うかも知れないけどね、自分の思う最強の輪郭が見えないと、今のチュチュちゃんみたいになるんだ。私とかそうだったしね。…で?チュチュちゃんの思う最強って、何かな?」

 

 

「……決まってるわ!今頭角を現しているガールズバンドを下し、全バンドの頂点に立つレベルの音楽よ!!」ビシッ!

 

 

「…じゃあ、後はそれを目指すだけだよ」

 

 

「…あっ」

 

 

なぁんだ、しっかり持ててるじゃん。私より良い素質持ってるね、チュチュちゃん。

 

 

「……でも、時々迷うの。これで本当に最強に近づいてるのかって」

 

 

「……チュチュちゃん」

 

 

「……何かしら」

 

 

意志があるなら、決して遠ざかってないんだよ

 

 

「……!」

 

 

これは、私がバンドを経て得た持論の1つ。目標に対しての意志を持ってる以上、絶対に遠ざかってることはない。まぁ、裏を返せば近づいてない場合もあるってことだけど。

 

でも、今はこれだけで良い。チュチュちゃん達は個人的に応援したいから、ここで折れて欲しくない。寧ろ、今回の事を経て、成長して欲しい。

 

 

「……まだまだね、私も。こんな簡単なことに気づけないなんて」

 

 

「私より立派だと思うよ。私はチュチュちゃんよりずっと長く悩んだから」

 

 

「……Thank you,夏。おかげで自信がついたわ」ニコッ

 

 

「どう致しまして」ニコッ

 

 

あ、そろそろ帰らないと。皆心配するかもだし。よっこいしょっと……

 

 

「あっ……夏!」

 

 

「…?どうしたの?」

 

 

「いつか対バンしましょう!私の最強を貴女にも見せてあげるわ!貴女達も私達が超える壁の1つなのよ!!」

 

 

「…勿論、受けて立つよ!!」

 

 

これからが楽しみだね!ここまで闘志剥き出しにされたら、私達も応えないとね!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[羽沢家 夏の部屋]

 

 

「ふぅ、今日も楽しかったなぁ~」

 

 

今日も日記を書いて……っと!よし!出来た!

 

 

「じゃあ寝よ……」

 

 

そう意気込んだ矢先、スマホが鳴る。誰かな…?

 

 

「?電話?…もしもし?」

 

 

「あっ!夏ちゃん?」

 

 

「…こんな遅くにどうしたんですか?社長」

 

 

電話の相手は私の会社の社長。何でこんな夜に…?……何か嫌な予感がするんだけど…?

 

 

「突然で悪いんだけど……明日月ノ森女子学園に行ってくれる?」

 

 

「……相変わらず突然ですね、まぁ、良いですけど」

 

 

「ごめんね?休み少し増やしたげるから」

 

 

「はいはい」

 

 

休みくれるだけマシだよなぁ。とにかく明日は仕事……っと。

 

 

「じゃあ、お休み~」

 




ということで、第15話が終わりました。

どうして夏が仕事で月ノ森に行くことになったのかは次回わかります。今回は前回のアンケートで多かったチュチュ回でした。夏のありがたいお言葉もありましたね。あれ、私の持論の1つです。今回に合うかなと思い、使いました。

そんな余談は置いておいて、イメージ絵ですが、8月以降になる事が予定されています。早く作成したいとは思っているのですが、想像以上に忙しいので、もう少し遅れます。因みに、まだ手すらつけれていません。頑張って作成するので、気長にお待ちください。

次回『自信は後から』


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【日常】自信は後から

どうも、Cross Alcannaです。

今回は月ノ森女子学園回です。誰が登場するかは、見てのお楽しみです。モニカに関してはまだ勉強出来てないところがあるので、若干の差異があるかと思われます。それでも良い方は、是非見ていって下さい。

では、本編を開始します。



[羽沢家 夏の部屋]

 

 

「……よし、身なりは問題ないね!」

 

 

今日は月ノ森に視察に行く日。あそこすんごいお嬢様高校だからなぁ~……ラフな格好で行けないのがキツいかな。流石にスーツで行った方が良いかな?その方が仕事に来てるってみてくれで伝わると思うし。

 

因みに、どうして私が月ノ森に行くのかというと、今年から月ノ森の制服デザインを一新するからデザインをお願いしたいと月ノ森の校長から依頼されたんだよね。そう、今年からの制服、私のデザインなのです!フフン

 

だから、実際に着ている姿を見たり校長の意見を聞きに行ったりするんだ!他の会社ではあんまりやってないのかな?わかんないけど。

 

 

 

「さて、好評だと良いんだけどねぇ~!んじゃ、行きますか!」オー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[月ノ森女子学園]

 

 

「やって来たぁ!!」オォ!

 

 

やって来たぞォ!!何か変な人を見る目で見られてる気がするけど、気にしないよ!!…さて、校長室はどこかな?……あの子に聞いてみよっと!

 

 

「あの~」

 

 

「……何でしょうか」

 

 

わお、クールビューティー…すっげぇや。…って違う違う。

 

 

「校長室って、どこかな?」

 

 

「…どうして校長室に?」

 

 

「視察で来ていてね。まずは挨拶しないとと思って」

 

 

「……そうですか。…こちらです、ついてきて下さい」

 

 

おっ、案内してくれるみたいだね。よかった~!……あ、ついでだし聞いてみようかな?

 

 

「そうだ、名前…なんていうのかな?」

 

 

「……八潮 瑠唯(やしおるい)です。そちらは?」

 

 

「羽沢 夏だよ~、宜しくね」

 

 

「…………はい」

 

 

名前も聞いたことだし…さぁて、校長室にレッツゴー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[月ノ森女子学園 校長室]

 

 

瑠唯ちゃんがノックをする。動作1つ1つからわかるお嬢様感。同じ性別なのに、こうも違うんだねぇ。っと、中から声が聞こえてきたね。

 

 

「はい」

 

 

「八潮 瑠唯です。視察に来た人を連れてきました」

 

 

「瑠唯さんね、助かったわ。入ってきて」

 

 

「はい、失礼します」ギィィ

 

 

……中に入ってみたら、凄いね。校長室すっごい煌びやかじゃないの。……こんなとこで勉強したら、今頃どうなってたんだろうね。まぁ、私なら戸惑って勉強ところじゃないだろうけど。

 

 

「羽沢 夏さんですよね?話は社長さんから聞いてますよ」

 

 

「あれ?てっきり初耳って言われるかとばかり……」

 

 

「…社長さん、相変わらず信用されてないんですね」

 

 

「視察に行くように言われたの、昨日の夜だったもんで」

 

 

「……社長って、それで良いんでしたっけ?」

 

 

「ダメですね、はい」

 

 

こんな感じで話すのは、傍から見たら「何やってんだ」とか言われそうだけど、何回も視察に来ると自然とこうなってたんだよね~。オトモダチ!

 

因みに、結構な回数ここには視察に来てるんだ。え?じゃあどうしてまっすぐ校長室に行かなかったかって?…単に忘れてました、ハイ。回数はそこそこあるけど頻度は高くないから、学校の間取りとか覚えれないんだよね。それに、視察は他にも沢山あるし。

 

 

「……あっ、瑠唯さん、下がって良いですよ。気づかなくてごめんなさい」

 

 

「…いえ。……では」

 

 

そういって去っていく瑠唯ちゃん。悪いことしちゃったかな?

 

 

「今日はどんなスケジュールで視察するんです?」

 

 

「今日は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

 

[月ノ森女子学園 中庭]

 

 

「ふーすけ~!何か良い事あったの?」

 

 

「ふふん!実はね……」

 

 

昼になり、最近始動したと噂になりつつあるMorfinoicaの面々が中庭に集まり、昼食を摂っている。

 

 

「…………」

 

 

「…?るいさん?どうしたの?」

 

 

「……いえ、何でもないわ」

 

 

少し難しい顔をしていた瑠唯に、モニカ(Morfonicaの略称)の1人である倉田 ましろ(くらたましろ)がどうかしたのか気になり、様子を尋ねる。はてさて、何を考えているのか……。

 

 

「……ちょっと聞きたいことがあるのだけど」

 

 

「何々~?るいるいから聞きたいなんて珍しいね~」

 

 

「るいさん?どうしたの?」

 

 

各々していたことを止め、瑠唯の方に注目する。そして、瑠唯が投げかけたある1つの問いは、一同を騒がせることになる。

 

 

「……羽沢 夏さんって、どんな人か知ってるかしら?」

 

 

『……え?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エェェェェェェェェェ!?!?

 

 

月ノ森の他の生徒曰く、とんでもない叫び声が中庭から聞こえたと、後日有名になったとか何とか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ!?まさかルイ、夏さん知らないの!?」

 

 

「いえ…聞いたことある気がするのだけど……思い出せなくて」

 

 

「るいるいなら知ってるはずだって思ってたから、驚いたよ~」

 

 

夏がどんな人物か知ってる読者であればわかると思うが、夏は常軌を逸した才能の数々を持っている。そこから考えると、全国で有名になっているのはすぐわかると思う。因みに、夏は世界でも注目されている。それ程の実力を持つ人の事を、よもや瑠唯程の人物が知らないのは、彼女らにとっては驚きに値するのだろう。

 

 

「あれ?ここの高校でも中庭でお昼とか食べるんだね」

 

 

「……え?この声って……」

 

 

「やっほ!」

 

 

『…夏さん!?』

 

 

噂をすれば何とやら。噂の張本人である夏がやってきた。自作に見える弁当を持っているのが見える。

 

 

「あ、瑠唯ちゃん、さっきはありがとね」

 

 

「いえ、お構いなく」

 

 

「えぇ~!?ルイ会ってたの!?ズルイって~!!」

 

 

瑠唯が質問の集中砲火を浴びている中、その中に混ざっていないましろのもとに、夏が来る。

 

 

「どうしたのかな?元気ないみたいだけど」

 

 

「……夏さん」

 

 

「よかったら話聞くよ?今なら私しか聞いてないから、話しやすいと思うしね!」

 

 

「…実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ま「…ということで」

 

 

夏「なるほどねぇ……」

 

 

話を聞く限りだと、バンドを始めたはいいもののネットでは批判の声が多いらしく、どうしようか悩んでいる、との事だ。私らもそうだったっけ……って言うか、どんなバンドも最初はそうだとは思うんだけど……。寧ろデビューしてすぐに好印象を持たれる方が珍しいと思うけど。

 

 

「…ましろちゃん」

 

 

「……はい」

 

 

この前にもあったね。悩みを聞くっていう機会。今回はちょっと違うけど。……この言葉で良いかな…?

 

 

評価されないって思い続けることも大事だよ

 

 

「……え?」

 

 

わからないよね、最初は。これも私の持論だし、ここまでの考えに行き着く人ってほとんどいないからね。

 

 

「元々、皆は期待して見聞きするわけだし、勝手がわからないうちは評価なんてされないのがほんとんどだからね。何でもそうだよ?"初心者歓迎"ってうたっても実際は実力がある人に人は教えたくなるもんだしさ。それに、最初からそう思っておくと精神的に楽にもなるからね」

 

 

「……そうなんですか」

 

 

勿論、これが正解なんてことはない。あくまで1つの道を教えただけ。後はましろちゃんがどう考えるかにかかってくる。

 

 

「最初は辛いかもしれないけどね、何かがやりたい以上は避けられないんだよ」

 

 

「……」

 

 

「それに、私は応援してるからさ、ここで止めて欲しくないんだよね、正直」アハハ

 

 

「え?……本当ですか?」

 

 

「伸びしろを感じるからね、それに、音楽性も私の好みだからね~」

 

 

そう、何だかんだ言って、モニカの皆にはここで止めて欲しくないっていうのが本音。このバンドは化ける、絶対に。

 

 

「じゃ、そろそろ時間だから行くね!頑張ってね!」

 

 

残りのご飯を急いで食べ、視察の続きに行かないといけないね。ましろちゃん、頑張ってね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

最初は評価されない……、それでも夏さんは私達のバンドに止めて欲しくないって言ってくれた…。

 

 

「…もっと頑張ろう」

 

 

これくらいで挫けたらダメだ。夏さんに見せる顔がない。それに、夏さんの期待を裏切ることになる。ファンとして、バンドマンとして、それだけはしたくない。だから、今こそ頑張らないと……

 

 

「……ありがとう、ございました」

 

 

「シロ~?どうしたの?もうすぐ授業始まるよ~?」

 

 

「あっ……今行くね!」

 




ということで、第16話が終わりました。

わかりにくかったかと思いますが、今回はましろ回です。どう絡ませようか悩んだ結果、こうなりました。少し物足りないとの声が多かったら、また改めてましろ回を製作しようと思います。

話は変わりますが、アンケートを締め切りました。次回からの2話は、今回のアンケートのキャラ回になります。今回が少し話の展開が上手くいかなかった分、次回で巻き返せればと思います。

次回『意外ですね』


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【日常】意外ですね

どうも、Cross Alcannaです。

前回ああ言ってしまったせいで多少ハードルが高くなった気がしますが、まぁ、頑張ります。

話は変わりますが、☆を付けて評価して下さる方の紹介をいつもしていないのですが、勿論大変嬉しく思っておりますし、必ず目を通しています。しかし、いつも前書きを最初に作ったり、投稿頻度が早いので、感謝を伝える機会があまりありませんでした。これからはしっかり感謝をここ等に書くよう努めます。

遅くなりましたが、名前は不明ですが、☆1評価をして下さった方、ありがとうございます。まだ私の小説のクオリティが良くないのか、読者の好みに合ってないのかわかりませんが、クオリティを上げようという意識に繋がりますので、大変ありがたく思っています。

因みに、お気に入りの方ですが、こちらも同様にこれからはしっかり紹介します(名前がわからない人は紹介できません。申し訳ないです)。

遅くなりましたが、renasuartさん、イカルガさん、水姫さん、なそらぎさん、shimayukiさん、響クレハさん、酔生夢死陽炎さん、衛藤可奈美大好きさん、使露さん、輪廻転生さん、製糸場のラブライバーさん、黄昏の空さん、鬼龍院翔さん、レミレイさん、Takiyasyaさん、ミンハナさん、フォルトゥーナさん、かぐらすすさん、のむらさん、madiliaさん、まるぱな♪さん、叢雲神さん、ENDLICHERIさん、夕緋さん、よっしー★さん、長瀬楓さん、ヴァンヴァさん、ユウキにゃんさん、セバスちゃんさん、ウィザードMKさん、腹黒白兎さん、ほっきーさん、カラス先生さん、ポテトヘッダーさん、はるvさん、酒乱さん、バンドリーマー[ハクア]さん、鳳空神さん、ツグポテさん、帆高さん、TAKAHIRO1さん、げねぽさん、ぽてぇいとぅさん、黒鐵焔さん、daisuke0903さん、龍狼さん、アサシンしゅんさん、冷たい雨さん、妖魔 桜さん、トートリオンさん、雪の進軍さん、ピエトロ Type RSさん、お気に入り登録ありがとうございます。中には私の別作品もお気に入り登録して下さっている方もいますね。感無量です。勿論、お気に入り登録もモチベに繋がっております。大変嬉しい限りです。

では、本編を開始します。



[羽沢家 夏の部屋]

 

 

「今日は本当に暇だなぁ~」ノビー

 

 

今日はテレワークも買い出しも用事もない。こういう時間って、久し振りだなぁ~。まぁ、いざこうなるとどうしたら良いのかわからなくなるんだけどね。

 

 

「あっ、確かあれが……」

 

 

パソコンの……ここに……おっ、あった!で…あ、入ってるね。

 

 

「NFO!久々だなぁ~!」

 

 

パソコンのゲームで、最近話題になってるMMORPG。操作性もさることながらグラフィック、アバター設定、装備の見た目等々……挙げたらキリがない程だ。仕事の合間に~って思って前に始めてみたら、ハマっちゃってね!最近は忙しかったから出来てなかったけど今日は暇だからつい出してみたけど……ホントいつぶりだっけ?

 

 

「……よぉーし!やろっと!」

 

 

久々のゲームに、何だか心踊ってるみたい。そういや久々にやるわけだし、リハビリがてら軽めのクエからやろうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[NFO 広場]

 

 

〔さてと……本当に久々に見たね、この街も〕

 

 

1年……とまではいかないけど、それに近いくらいはやってないもんなぁ。…私、本当に忙しかったんだなぁ。今実感したよ、うん。

 

 

〔じゃあ簡単なクエでリハビリしますか!!〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏がクエストに行っている頃、広場ではとある2人が話し合っていた。

 

 

〔りんりん~、今日はどのクエストに行く?〕

 

 

〔今日はこのクエストのレアドロップ率が上がってるから、これにしよう?あこちゃん(*´ω`*)〕

 

 

〔うん!……あれ?りんりん、このクエスト3人以上のクエストだって!〕

 

 

〔1人……足りないね〕

 

 

〔どうしよう~!?〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

〔とりあえずまともに戦えるくらいまでは感覚取り戻せたかな?〕

 

 

採集クエでひたすら武器やら立ち回りやら試したけど、何とかなりそうかな?

 

…ふぅむ、クエストどうしようかな…特段欲しい素材はなかった気がするし、野良のクエにでも混ざって……ん?

 

 

〔このクエの素材は次のイベントに使える武器が作れるから……でも後1人足りないし……( ´~`)ゞ〕

 

 

あそこで何か2人突っ立ってるね。何してるんだろう?

 

 

〔あの~、どうかしました?〕

 

 

〔あっ、実はクエストの人数が後1人足りなくて……〕

 

 

おっ、ラッキー!ならここに入れてもらおうかな?

 

 

〔じゃあ私が入ってもいいかな?〕

 

 

〔良いんですか?ありがとうございます_(._.)_あこちゃん、この人が手伝ってくれるから、クエスト受けれるよ(*≧∇≦)ノ〕

 

 

〔ホント!?ありがとうございます!!〕

 

 

……ん?"あこ"?"りんりん"?どっかで聞いたことあったような……。気のせいかな?あ、そうだ、周回するのか1回だけなのか聞いておこうかな。それによっては装備変えてみたり。

 

 

〔周回する?〕

 

 

〔はい……(;^∀^)良いですか?(*>д<)〕

 

 

〔構わないよ~〕

 

 

〔ありがとうございます!(* ̄∇ ̄)ノあこちゃん、行こうか(*σ>∀<)σ〕

 

 

〔うん!〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔ふぃ~、結構回ったねぇ~〕

 

 

〔Natsuさん凄かったです!!〕

 

 

〔凄い動きでしたね…( ; ゚Д゚)さっきの動きとかベテランの人の動きでしたしね!(;゚∇゚)〕

 

 

〔そうかな?さっきリハビリしたばっかだったんだけど……寧ろ変な動きした場面あったから私としては消化不足って感じかな?〕

 

 

〔Natsuさんって、イベントとか上位なんですか?〕

 

 

〔前は確かそうだったかな?今はほとんど触れてないからイベントなんて参加できてないけどネ!〕

 

 

今日こうして再開したわけだし、またイベントに参加しようかな?……上位取れるかな?

 

 

〔あ、ごめんね、私抜けるよ!〕

 

 

〔はい(*´∀`)ありがとうございました!(*´・∀・)〕

 

 

〔じゃ~ね~!〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ログアウト後

 

 

[羽沢家 食卓]

 

 

「いやぁ、久々にゲームなんてやったよ~」

 

 

「休まなくて大丈夫なの?心配で仕方ないわ…」

 

 

「心配しすぎだって~」

 

 

ただいま昼食中。今日は店の定休日だから、久々にこうして皆で食事を摂ってる。店、だいぶ繁盛してるからねぇ~、こういう休みは貴重なんだよねぇ!

 

 

「お姉ちゃん、ゲームするんだ……ちょっと意外」ヘェー

 

 

「昔ちょっとね。仕事の合間とかにやってたんだ~」

 

 

そういえばつぐには言ったことなかったっけ?私って仕事ばっかしてるイメージもたれてるっぽいね。…ちょっと不服だけど。

 

 

「あ、明日は用事あるから店の手伝いできないかな」

 

 

「……本当に大丈夫なのか?」

 

 

「うん、私だって倒れたくないからね~。無理はしないよ」

 

 

「……そうか、気をつけるんだよ」

 

 

「はぁ~い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

[CiRCLE 1番スタジオ]

 

 

「はい!じゃあ休憩にしようか!」

 

 

『はい(!)』

 

 

昨日言った用事はRoseliaの指導。何でも、刄さんが急用が出来たみたいで、代わりに指導して欲しいとの事だったので、今こうして指導をしてる。……この子達、ガチだね。教えがいがあって良いね!……そうだ、NFOのイベント情報出てるか確認しとこっと。

 

 

「夏姉~…あれ?NFOのサイト?」

 

 

「うん、今回のイベントに出ようかなって思ってて」

 

 

「……えぇ!?夏姉NFOやってるの!?」

 

 

『……!?』

 

 

「…そんなに意外…かな?」

 

 

何でだろう、ここまでの反応をされると流石に傷つく。…今度、私のイメージでも誰かに聞いてみようかな……。

 

 

「意外でしたよ。夏さんはゲームとかする時間なさそうですから」

 

 

「はい……とても意外です」

 

 

「……私も人の事は言えないけれど、意外だったわ」

 

 

「…ちょっと驚いてます」

 

 

……あれ?てことは……

 

 

「…皆NFOやってる感じ?」

 

 

「はい…1度…あこちゃんが誘った……ので」

 

 

「なら、フレンド登録しておく?」

 

 

「良いの!?」

 

 

「うん、素材集めとか困ったら言ってね。私も手伝えたら手伝うから」(*゚∀゚)=3

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

そしてこの後、私とあこちゃんと燐子ちゃんは、昨日の夏、RinRin、聖堕天使あこ姫が、私、燐子ちゃん、あこちゃんだった事に驚いたのでした♪

 




ということで、第17話が終わりました。

次回もアンケート回となります。その次からはしばらくキャラ関連のアンケートをしない予定です。……ここでお知らせするのも変ですが、新作を書こうか悩んでいます。それに関してのアンケートを貼っておきますので、回答お願いします。

次回『感覚派』


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第3章 生と呪、愛と哀
【日常】感覚派


どうも、Cross Alcannaです。

今回でひとまずアンケート回は終わりになります。次回からはストーリー進行になりますので、シリアスが展開されます。ここからのストーリーは、かなり重要な部分になりますので、より気合いを入れて書こうと思います。なので、期待してお待ちください。

話は変わりますが、☆4:おべさん、☆評価ありがとうございます。やはりまだまだなところがありますかね……。個人的にもそうは思っているのですが、中々すぐに上手くなるものでもないので……。当然努力はしますが。

そして、月季さん、お気に入り登録ありがとうございます。こうして着々とお気に入り登録をしてくださる人が増えるのは、ハーメルンをやっている身としては嬉しい限りです。宣伝のようになりますが、良ければ他の作品も見てくださると、本当にありがたいです。

では、本編を開始します。



[商店街]

 

 

「えぇ~と……」

 

 

今日もまた買い出しに来たよ!本当はつぐが行く日だったんだけど……急遽バンドの練習が入ったみたいで、私が代って来てるんだ!

 

……てか、やっぱ働きづめ(?)になるのね…。知ってた(白目)

 

 

「あっ!夏さん!」

 

 

「あ、やっほ!ますちゃん!」

 

 

今いる八百屋の店主の娘こと佐藤 ますきちゃんは、ますちゃんが小さい頃からの知り合い。最近はRASに入ってバンド活動してるみたい。それでいてこうして店の手伝いもたまにしているようで、何だかんだ言って優しい子。後、可愛いもの好きだ。このギャップ、良いよね!

 

 

「今日も買出しですか?」

 

 

「うん、つぐが急用できちゃったみたいでね~、代わりに来たんだ!」

 

 

「休んでるんですか?」

 

 

「もっちろん!倒れるとか御免だしね!」

 

 

そこはぬかりありませんとも!えぇ!(*゚∀゚)=3

 

…あ、今日これ安いじゃん!買おう!

 

 

「あ、これと…これ3個ずつちょうだい!」

 

 

「ちょっと待ってください、今入れますから」エェト

 

 

こうしているますちゃんを見てると、"狂犬"の二つ名(みたいなもの)が本当なのか怪しいよね!まぁ、そう呼ばれる理由も知ってるし、私もちょっと指導したから、よくわかってるつもりだけド!

 

 

「はい、夏さん、どうぞ」

 

 

「ありがとね。これお金ね!」

 

 

「ひぃ、ふぅ……ちょうどですね。毎度あり」

 

 

「またね~」

 

 

さて、用事も済んだことだし、家に帰ろうっと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ショッピングモール 服屋]

 

 

「…これの方が良いかな?それとも……」ムムム

 

 

買い出しを終えてそのまま寝ようかなとも思ってたけど、新しい服買わないとと思ってたのをすっかり忘れてたから、今日買おうと思ってここに来たけど……

 

 

「どっちの方が良いかなぁ~、悩むなぁ……」ウーン

 

 

「あれ?夏さんだー!!」

 

 

ん?どこか聞き覚えがある声……って、こっちに向かってくるね。

 

 

「おーい!夏さぁーん!」タタタ

 

 

「あ、日菜ちゃんかぁ!」

 

 

前合同練習で指導したから覚えてるけど、確かトンデモな才能持ちだったよね。私が教えたことの大半出来るようになってるんだもん、嫌でも覚えるよね(別に嫌じゃないけど)!

 

 

「最近忙しいって聞くけど、今日は仕事休みなんだね」

 

 

「うん!今日はおねーちゃんと出掛けようって思ったんだけど、おねーちゃん今日バンド練習あるから行けないって~」ムー

 

 

可愛い(可愛い)。つぐ程じゃないにしろ、可愛い。妹だったら愛でてるね、うん( ^∀^)

 

 

「あ、そうだ」

 

 

「?」クビカシゲ

 

 

「せっかくだし、良かったら私と服見ない?」

 

 

「良いの!?」

 

 

「うん、せっかく会ったのにちょっと話してバイバイはヤだしね」

 

 

「わーい!夏さんとお出かけだー!」ワーイ!

 

 

可愛い奴めぇ。でも、天真爛漫さ加減が著しく激しいからねぇ……。ま、こころちゃんほどじゃない(らしい)けど。

 

 

「じゃあ早速なんだけど………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして

 

 

「いやぁ、2人とも沢山買ったね~!」ドッサリ

 

 

「だねー!」ドッサリ

 

 

結構買ったね、2シーズン跨げそうだなぁ~。日菜ちゃんも、私ほどじゃないけど買ったもんね~。プチ大人買いってやつだね!

 

 

「明日皆に自慢しよーっと!」

 

 

「?自慢?何か特別な服でも買ってたっけ?」

 

 

「違うよー!夏さんとお出かけしたことだよー!」

 

 

「……ゑ?」

 

 

思わず古典で使う方の"え"を使っちゃった( ; ゚Д゚)

 

……え?私と出かけるのが自慢?何でWhy?全くわかんないんだけど……。

 

 

「夏さんとこうしたいって人多いんだよ?何だったらパスパレの皆夏さんと出かけたいって言ってたよ?」

 

 

「……うそん、初耳」

 

 

いつの間にか人気者になってた件。……え?そんな挙動見せた子誰もいなかったけど……。

 

 

「忙しそうって皆遠慮してたけどねー」

 

 

「あぁ、成る程把握」

 

 

顔に出てたのかな?それとも雰囲気で忙しいオーラ出しちゃってたかな?私としてはそういうお誘いは寧ろウェルカムなんだけどなぁ~(*つ´・∀・)つ

 

 

「別にそこまで気にしなくても良いのにね~」

 

 

「じゃあまたお出かけとかは!?」ガバッ

 

 

「予定さえ合えば良いよ」( ´∀` )b

 

 

会社の仕事もあんまり回さないよう言ってるし、店番に関しては満場一致で皆に「休んで!」って何回か言われる始末だし。

 

 

「皆にも言って良い!?」

 

 

「おけおけ~」(*´∀`)♪

 

 

そう言った途端にスマホを打ち始める日菜ちゃん。歩きながらは止めよっか、うん。

 

 

「流石に止まってから打とうか、日菜ちゃん」

 

 

「はーい」(  ̄▽ ̄)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あら?」

 

 

「あ!おねーちゃんだぁー!」ダダダ!

 

 

紗夜ちゃんを見つけた途端に走り出す日菜ちゃん。ホントにお姉ちゃん大好きっ子だね。……段々犬に見えてきた。

 

 

「紗夜ちゃんはバンドの帰りなのかな?」

 

 

「はい、ついさっき終わったので」

 

 

「おねーちゃん!今日夏さんとお出かけしたんだー!」

 

 

「…夏さん、日菜がすみません…」

 

 

「いいよ、別に気にしてないし。寧ろ今日みたいに誰かと出かけることなんてなかったからちょっと新鮮だったし」

 

 

私自身、もっと話したりしたいからね。こういう機会は沢山あったほうが嬉しいんだよね( =^ω^)

 

 

「では夏さん、私達はここで失礼しますね」

 

 

「夏さんバイバーイ!!」

 

 

「またねー」(*・ω・)ノ

 

 

そうだなぁ~、また今度アフロの皆でも誘ってみようかな?流石にいきなり他バンドから行くのは…ね?さて、もうすぐ家に着くかな?

 

 

「さ、帰ろっと!」タタタ

 

 

 

 

 

ジ…ジジ……

 

 

 

――また……1人……――

 

 

 

――……どう…して…――

 

 

 

 

 

「ッ!!」フラッ

 

 

ふと頭をよぎる。……まだ忘れられてないみたい

 

 

「…帰ろう、寝れば良くなる…はず」タ…タ…

 

 

頭が重い。フラフラする。ついでに吐き気も。……はぁ。

 

 

「…出来れば行きたくなかったんだけどなぁ…」

 

 

…明日は、久々にあそこに行かないといけないかもしれない。

 

 

「……再発、なんてことにならないと良いけど……」

 

 

とてつもなく重い足をどうにか動かし、私は家を目指した。帰宅後、家族にかなり心配されたのは言うまでもない。

 




ということで、第18話が終わりました。

さて、アンケート回も終わり、次回以降は本編に戻ります。最後のあれは一体……?気になりますね。ここからは一気にシリアス方向に展開されます。日常は……今のところ未定です。
後、今のアンケートは締め切らせていただきます。回答して下さった方々、ありがとうございました。そして、氷川 楓のイメージ絵のリメイクを設定集に出しましたので、お知らせします。

次回『Nightmare awakening』


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【本編】Nightmare awakening

どうも、Cross Alcannaです。

予告通り、ここからはシリアス全開でいきます。ぶっちゃけ、もう頭の中ではこの作品の投稿前から考えていたシナリオでして、こうして書くのが楽しみです。

そして、名も無き名前へさん、熊抹茶さん、お気に入り登録ありがとうございます。何度も言っていますが、お気に入り登録や☆評価は、執筆の励みになります。良い意見も、厳しい指摘も、私にとって経験値になりますので、とてもありがたいです。

では、本編を開始します。



翌日

 

 

[羽沢家 リビング]

 

 

「心配ね……」

 

 

「そうだな…。何だかんだ結構無理してたようにも見えたしな」

 

 

「お姉ちゃん……」

 

 

朝から我が家に重苦しい空気が流れる。…実は昨日、お姉ちゃんが苦しそうにしながら帰ってきた。うちに帰ってきてからはまだそんな症状は出てなかったため、安心していた矢先だった。

 

勿論、私達はとても心配したが、いつもみたいな誤魔化しだったりや軽く流したり等がなかった。……結構な重症なのかもしれない。一応、お姉ちゃんは今日病院に行くって言ってたけど、心配だ。現に、いつもは早起きなのにも関わらず、今日はまだ起きてこない。

 

そんな心配がリビングを支配していると、廊下の方の扉が開く音がした。

 

 

『!!』

 

 

「…おはよ~」ファァ…

 

 

……寝起きがどんな風なのかがわからないため、見てくれでは体調がわからない。でも、昨日よりは大分良くなってるように感じる。

 

 

「お姉ちゃん、大丈夫なの?」

 

 

「うん…寝たら良くなったよ~」ノビー

 

 

「病院は……」

 

 

「うん、行くよ。午後にでも行こうかなって」

 

 

「…そうか、なら良かった」ホッ…

 

 

茶化しながら「行かない」って言わなかったことに、お父さんが安堵の息を漏らす。流石に危ないってお姉ちゃん自体も思ってるのかな?

 

 

「朝ごはん食べる前に顔洗ってくる~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[夏の部屋]

 

 

「ふぅ……食べた食べた」

 

 

今日の朝ごはんは私の体調に合わせてくれたのか、結構軽めだった。私としてはなんか物足りない感じがしたので、結局沢山食べてしまった。本末転倒だわ、うん。

 

 

「…あの人、絶対苦笑いか嫌そうな顔するよね~」アハハ

 

 

…今だからそんなことが自分で言えるけど、当時の私はヤバかった。私…というか、本人がそう言うんだから、間違いない。……今考えると、メッチャ迷惑かけたなぁ。

 

 

「…元気なのかな?まぁ、私みたいな病人に心配されるような人でもないかな」

 

 

…うーん、こういう自虐ネタは言いなれてないからなぁ…自分で言いながらちょっとクるねぇ。これしてる人、メンタル凄いね(;・ω・)

 

 

「…早いうちに準備済まそうかな……何もなかったら良いんだけど」ヨット

 

 

大丈夫だろうって言い聞かせても、心のどこかでは不安が残る。…治りきってないから、そりゃそうなんだけど。

 

 

「……さて、何しようかな…?」

 

 

まだ結構余裕あるんだよね、実は。結構早めに準備しちゃったからね。つっても今ある時間で出来る事なんてあんまないしなぁ……

 

 

「……音楽でも聴いてよっと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[花咲川病院 診察室]

 

 

「……やっと来たのね」ハァ…

 

 

「だって私が来るとヤな顔するでしょ?」

 

 

「貴女の思っていることじゃないんだけどね……まぁ、貴女は厄介だからね」

 

 

ほれみぃ!やっぱこんな顔するじゃん!厄介って断言までしてるしぃ!

 

 

「患者に向かってそれはないと思いまーす!」( `Д´)/

 

 

「事実だから仕方ないでしょ…?いいから始めるわよ…」エエト…

 

 

そう言いながらカルテを取り出す私の担当医(の様な立ち位置の人)である東 修一(あずましゅういち)さん。昔にも、訳あってお世話になったことがある。その頃からだろうか、私は厄介者として医学界で有名なんだとか。ピエン

 

ま、理由はその内話すとして……

 

 

「で?調子はどうなの?…まさか、兆候が出てるのかしら?」

 

 

「…………」…コクリ

 

 

この前のは、恐らく兆候だろう。そう考えたので、私は躊躇しながらも頷く。すると、東さんが溜め息を漏らしつつ、頭を抱える。

 

 

「……ヤバいわね、再発も時間の問題かしら…?」

 

 

「…今から……」

 

 

ふと当時のことを思い出す。…またああなるのかと想像すると、思わず言葉が漏れる。

 

 

「……程度にもよるけれど…貴女の意見を尊重したいのもあるのよね…」

 

 

「…私としては、まだ良いかなって……でも…」

 

 

「…皆に迷惑かけるのが、怖い?」

 

 

……そう。今回の件については、人一倍警戒している。何せ、()()()()()()()()()()()事が、一番怖い。

 

言ってしまえば、何を起こすか解りかねない。記憶がないなら、自身の行動を把握していないとも言える。だからこそ、自分で行動が制御できない恐れもある。

 

 

「……そうね…今回は、保留にしましょうか。次何かあったら来なさい」

 

 

「……はい」

 

 

「うーん、とりあえず精神安定剤でも処方しておくわね」

 

 

……何か、怖いなぁ。何も無いのが一番なんだけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏が去った後

 

 

[花咲川病院 休憩室]

 

 

「……本格的に、危ない感じね」

 

 

「…どうかね」

 

 

休憩室で、夏さんのカルテを見ていると、院長が私の元を訪ねてきた。

 

 

「…院長。……直に、何かあると思ったほうが良いかと」

 

 

「……すまないね、東君。君にしか対処できないとは言え…こんなことまで任せてしまって……」

 

 

「いえ、期待されている、という意味では名誉なので」

 

 

「…そう言ってくれると、私も罪悪感が薄れるものだね」

 

 

そう、夏さんは生半可な医者には任せられないのだ。何せ、医学界の重鎮らが、匙を投げるレベルなのだ。勿論、この人も例外ではない。

 

…正直、私も匙を投げたいのだが。夏さんには特に嫌だとかの感情はない。寧ろ私としては、好意的に思っているくらいだ。

 

……しかし、持ってる病気の方が、今までの医学内でもないようなものなのだ。これといった治療法もなく、言ってしまうと、()()()()()()()()()()()()()()持ちなのだ。

 

 

「…研究のほうは、進んでるんですか?」

 

 

「…いや、研究はしているけれど、どれも行き詰っていると聞いたよ」

 

 

「今は、それが頼みの綱ですからね。頑張ってもらいたいんですけどね…」

 

 

「ここまで特徴がわからないものも、今までにあまり見なかったからね。そういう意味でも苦戦しているのだろうね」

 

 

「……ふぅ」

 

 

思わず、ため息が漏れる。紫葉さんから聞いてたよりも酷かったため、思った以上に疲れたのだろうか。それとも、その後に兆候が現れたのだろうか……考えるだけで、気が滅入りそうだ。

 

 

「…今日はもうあがりなさい。疲れているだろうからね。彼女の事が気になるかもしれないが、今はしっかり休むべきだ」

 

 

「……助かります」

 

 

……院長からもこう言われたのだし、今日くらいはしっかり休みましょうか。そうと決まれば、帰る支度をしないと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[羽沢家 夏の部屋]

 

 

「……暇だなぁ」

 

 

病院から帰ってきてから、ベッドの上に横になり、ずっとこの調子だ。さっきのこともあって、何もやりたくない。でも、暇である。

 

 

「つぐ達に何かあったら嫌だし…少し行動するのを控えようかな……」

 

 

大事な用事以外は断ろうかな……?等とぼんやり考えていると、不意にスマホの着信音がけたたましく鳴り出した。…もう少し音量下げようかな?にしても、誰だろう…

 

 

「はい、もしもし?」

 

 

「すまない、突然なんだが…」

 

 

師匠から?珍しい、どうしたんだろう…

 

 

「明日なんだが、一緒にRoseliaの練習に来てくれないか?今回は夏の意見もあった方が良いと思ってな」

 

 

「そういうことですか、良いですよ」

 

 

「助かる。時間なんだが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、師匠との約束をし、電話を切った。……あ。

 

 

「結局、こうなるんだね……」アハハ…

 

 

……気をつけよう、うん。そう思い、今日は昼寝をすることにした。

 




ということで、第19話が終わりました。

本編が再開しましたが、いきなり危険な予感がしますね。何も起こらないと良いのですが……。さて、予めお知らせですが、バンドリの小説は、本編完結したら次の作品が投稿される(ある程度ですが)事を、先にお知らせします。本編完結は、その話の後書きにてお知らせする予定です。ですが、本編が完結しても、たまに投稿されるかも知れませんので、そこは間違えないようお願いします。

次回『オモテとウラ』


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【本編】オモテとウラ

どうも、Cross Alcannaです。

……今回は特段話すこともありません。プライベートで何かあったかと言われると、ヴァイスシュバルツのバンドリ1Box買って、友希那さんのサインカードが出たくらいですかね。8Boxに1枚くらいの確率と聞いて、テスト中もずっとビビってたくらいです。

そして、東方魔術師さん、マレイさん、お気に入り登録ありがとうございます。いつも言っていますが、こういう評価は、良いものも厳しいものも私の小説を見直せる良いキッカケとなりますので、大変嬉しく思います。

では、本編を開始します。



翌日

 

 

[羽沢家 食卓]

 

 

夏「ということで、今日は予定入ってるから手伝えないから……ごめんね」

 

 

羽母「予定ばっかで心配だけど……気をつけるのよ?」

 

 

夏「うん、しばらくは予定入れないつもりだから」

 

 

今日はいつも通りの食卓。お姉ちゃんが今日も用事ありなのが、少し心配だけど……

 

 

夏「……大丈夫だよ、つぐ」ナデナデ

 

 

つ「あっ……」ナデラレ

 

 

声に出てた……?だとしたら、凄く恥ずかしいんだけど……。

 

 

夏「つぐったら、相変わらず顔に出やすいね~そう心配しなくても大丈夫だよ」

 

 

つ「……うん」

 

 

顔に出てたみたい。…もしかして、蘭ちゃん達といる時もそうなのかな…?……顔に出さない練習とか、してみようかな?

 

 

夏「ごちそうさま~」オイシカッタヨー

 

 

羽母「もう行くのかしら?」ソレハドウモー

 

 

夏「もう少ししたら行くよ」

 

 

羽父「気をつけてな」

 

 

夏「はーい」タタタ

 

 

さてと、部屋に行って準備っと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[CiRCLE 2番スタジオ]

 

 

刄「あこ!また走ってるぞ!!」

 

 

夏「燐子ちゃん!音の主張が弱いよ!!」

 

 

あ・燐『は、はい!!』

 

 

師匠の依頼で、今はRoseliaの指導をしている。にしても、前からかなり成長してるね。近い内に伸びそうだね(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)

 

 

刄「リサ!今の時期で音を外すのは論外だ!!」

 

 

リ「はい!」

 

 

こうして見ると、師匠の言葉って棘があるんだよね。音楽になると途端に性格が変わるのは、今でも健在みたい。……あっ

 

 

夏「紗夜ちゃんと友希那ちゃん!!サビ前でミスはダメ!!もっと集中出来るでしょう!!」

 

 

どうやらあの部分は難関ポイントらしく、前回も同じところでミスをしていた。

 

本来なら励ますところだけど、相手はRoselia。()()()()()()()()()()()()()()()()事を心しているため、強く指摘する。私も妥協とかは好きじゃない性格だからね。

 

 

夏「あこちゃん!!今度は遅くなってる!!」

 

 

あ「はいぃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刄「…じゃあ、少し休憩にするぞ」

 

 

あ「はぁ~、疲れた~」

 

 

夏「お疲れ、あこちゃん」ハイ、タオル

 

 

そして、休憩中は優しく。これが私の指導方法。メリハリをしっかりつけさせる事に重きを置いたやり方でもある。TTDWの練習は私が主に担当しているが、そっちでもこのやり方をとっている。

 

 

刄「どうだ?夏から見て、どこか大きな改善点は見られたか?」

 

 

夏「……本人達には辛いでしょうけど、ほとんど全部、ですかね」

 

 

刄「……それはまた、大胆な意見だな?」

 

 

夏「そうですかね?頂点に立つなら、私達と良い勝負になるところからが本当のスタートラインだと思いますし」

 

 

前に一度、刄さんから聞いた情報の中に、"頂点に立つ"という目的があった。ならば、このレベルが()()()()()()()といったところだろう。

 

本当ならもっとレベルを上げても良いところだが、Roseliaの皆は高校生でもある。これ以上ハードな練習ともなると、精神的に心配だ。だから、このレベルで留めている。

 

 

リ「夏さん!」

 

 

夏「ん~?」

 

 

不意に、リサちゃんが話しかけてきた。どうしたのかな?

 

 

リ「ここ、教えて下さい!」

 

 

夏「…………」

 

 

…これには、驚かざるを得なかった。自身が皆に劣ってると思っての行動なのか、はたまた単に教わりたいだけなのかはわからないが、やる気の高さは伝わってくる。

 

……本当に頂点を目指したいんだなぁと、強く痛感させられる。

 

 

リ「…夏さん?」

 

 

夏「……あぁ!ごめんごめん!いいよ、じゃあベース持ってきてくれる?」

 

 

リ「はい!」

 

 

懐かしいなぁ。私もあんな感じで師匠に教わってたもんなぁ……。

 

 

刄「…昔の夏を思い出すな、夏」

 

 

夏「そうですね、面影ありますしね」

 

 

どうやら師匠も当時の私を思い出していたようで、懐かしんでる顔をしている。……とと、リサちゃんもこっちに来てることだし、指導に集中しないとね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指導終了後

 

 

[帰り道]

 

 

刄「今日はすまなかったな」

 

 

夏「いえいえ、楽しかったですし」

 

 

ファミレスで反省会(なのかな?)をした後、私は師匠と帰路に立っている。綺麗な夕焼けも見え始めている。……こうやって、歩きながら夕焼けを見るなんて、何時ぶりだろうか。……もしかして、学生時代から見てなかったっけ?覚えてないや。高校はバンドで忙しかったし、中学は……

 

 

ズキン!!

 

 

夏「…ッ!…ぅあ……」

 

 

刄「……夏?」

 

 

頭が痛い。吐き気もする。息もしづらい。心拍数も上がってる気がする。

 

 

ザ…ザー

 

 

テレビの砂嵐のような映像が脳内に出てくる。……何だろうか。

 

 

刄「…!…い、………り…ろ!」

 

 

ザァー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーねぇねぇ、あの子…

 

 

ーーあぁ…あいつ、今日も学校きたのか

 

 

ーー来なくて良いのに…気持ち悪いし

 

 

ーーだよな、天才っつっても限度があるだろ…

 

 

ーーそれな!!

 

 

……あの頃の…中学の…記憶。

 

 

ーー調子乗ってんじゃねぇぞ!!

 

 

ーー何でも出来るからって私達には興味ないって感じ?

 

 

ーー……腹立つのよ!!

 

 

数々の罵倒、暴力……。どれも、私が受けてきたもの。

 

 

ーーいるだけで腹が立つんだよ!!

 

 

ーーそうよ!死ねばいいのよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏「…………アは」

 

 

刄「夏!……夏?」

 

 

夏が喋らなくなり、心配になった俺は夏に呼びかけていたが、返ってきたのは応答ではなく……

 

 

夏「あハハハはハははハハ!!

 

 

……誰が聞いてもわかるほど、狂った笑いだった。

 

 

……そういえば…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

[花咲川病院]

 

 

刄「…東さん」

 

 

東「?どうしたのかしら?」

 

 

少し前に、俺が入院していた時に担当医としてお世話になっていた東さんに、気になっていた事を聞いてみた。

 

 

刄「……この前、病院の中を歩いていたら…"立ち入り厳禁"って書いてある重そうな扉があったんですが…あれは何なんですか?」

 

 

東「……」

 

 

それまでの東さんの雰囲気はどこ行く風。一転して暗い雰囲気を醸し始めた。

 

 

東「……知りたいの?」

 

 

多少の威圧も入っているようにも感じたが、気になっているのも事実。何となく、引きたくないと思った。

 

 

刄「……」コクリ

 

 

東「……他言しないと約束できるなら、良いわよ」

 

 

意外にも早く、東さんの方が先に折れた。元々他言する気は毛頭ないため、二つ返事で承諾する。

 

 

東「先に聞くけど、羽沢 夏って知ってるかしら?」

 

 

ん?夏の事か?どうして今出てくるんだ…?

 

 

刄「…知ってますが、どうして夏の名前が出てくるんです?」

 

 

東「……あそこは、夏さん専用の治療室なのよ

 

 

刄「…………え?」

 

 

驚いた、声が出ない程には。専用の部屋があるのにも驚いたのだが……

 

 

刄「…どうしてあんなに厳重な扉なんですか?」

 

 

そう、わざわざ()()()()()()()()()()()()()扉にまでする理由がわからない。明らかに重たそうな鉄の扉。人に対するものでもないように感じる。

 

 

夏「…そこまでは言えないわ、患者のプライバシーにも関わってくるでしょうし」

 

 

と、気になるところで止められた。…まぁ、仕方ないことか。寧ろ、それが聞けただけでも収穫だろう。

 

 

東「……貴方に、お願いしたいことがあるんだけれど…良いかしら?」

 

 

交換条件だ、と言わんばかりのタイミングでの頼みごと。…本人にはそういった意図は無いのかもしれないが。

 

 

東「夏さんに何かあったら、すぐにこの病院に連絡して欲しいの。夏さんの病気は、今のところ私しか対処できないらしいから」

 

 

……最初にも思ったことだったが、やはりこの人はとんでもない医者なのだろう。今の一言だけでも、それが伝わってきた。

 

 

刄「…わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

刄「…こういうことなのか」

 

 

今も尚、狂気に満ちた笑いを辺りに響かせている夏をよそに、俺は夏についてのことを思い出した。……なら!

 

 

刄「…今だったら、繋がるはず…!!」プルル…

 

 

すかさず電話をかける。勿論、電話先はあの時渡された東さんの連絡先だ。

 

 

プルル…ガチャ

 

 

東「刄君、どうしたのかしら?」

 

 

刄「至急救急車をお願いします!夏が…」

 

 

東「夏さんに何かあったのね!?わかったわ!」

 

 

夏、というワードを言った途端、声色を変える。…やはり、専用の部屋があるってことは、かなりの厄介案件だったってことなのか。

 

 

東「そこがどこか教えてちょうだい!すぐに向かわせるわ!!」

 

 

夏「わかりました……」

 

 

大方場所を伝えたところで、東さんから何か聞かれる。

 

 

東「…無力化、できるかしら?……恐らく、脳が正常に動いてないでしょうから……前回と同じだとすると…脳が20%覚醒していると思うわ」

 

 

脳が20%覚醒?だとすると……

 

 

刄「…身体能力が上がってる、ってことですか」

 

 

東「そうね。それに加えて感覚も制限・遮断出来るわ」

 

 

……下手に怪我をさせるわけにもいかないし、そうなると……

 

 

刄「ひたすら避ける…しかなさそうですね」

 

 

東「強力な麻酔も持っていかせるわ。前回も効いたやつだし、大丈夫だと思うけれど……一応もう一段階強いものも持たせておくわ」

 

 

刄「それなら…なんとかできそうですね」

 

 

東「…本当に危険なのは承知してるわ。だけど……貴方にしか頼めない。…お願いできるかしら」

 

 

刄「やるだけやってみます」

 

 

東「…ありがとう、じゃあ、急ぐから切るわ!」

 

 

刄「はい!」

 

 

そうして、電話が切れる。と同時に、夏が俺に気づく。

 

 

夏「あっハハ!アはハハは!!」ダッ!!

 

 

向かってくる夏を見て、俺は…

 

 

刄「…死なないように、しないとな」

 

 

あの時以上に、死を感じていた。

 




ということで、第20話が終わりました。

次回は戦闘(?)描写が入るかと思いますが、あまり期待しないで下さい。何分、技とか立ち回りとか、わからないことだらけですので…。今回の話は、『幸せになって欲しくて』とリンクしている部分がありますので、そちらと併せて読んでいただけると、より理解が深まるかと。少し遅れてですが、アンケートを貼りました。別作品にも次回の投稿と同時に貼るので、回答お願いします。

次回『夏狂殷辛(かきいんしん)


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【本編】夏狂殷辛(かきいんしん)

どうも、Cross Alcannnaです。

そろそろこの小説も佳境に入ったかなといったところです。この小説が完結し次第、次の作品を投稿する予定です(時間はかかりますが)。本編完結後は、思いついたネタやアンケートを中心にやろうかと思っています。今のアンケートは8/31いっぱいで締め切ります。その後すぐに、新しいアンケートを新設します。そちらも、回答お願いします。

そして、larkspurさん、グルーブロッソさん、お気に入り登録ありがとうございます。もうすぐ完結するこの作品が、未だに愛されていることが、何より嬉しいです。

では、本編を開始します。



「…っ!速いな…っ!」

 

 

女性相手にこんなことを言う日が来るなんてな……なんて考えてはいるが、実際問題余裕なんて無いに等しい。戦闘経験でもあるかのような立ち回り。…アスリートでも相手にしてる感覚だ。

 

 

「あハハはハははは!!」バッ!

 

 

ただ、動きは単純だ。俺めがけて掴みに来る。時々顔だったり関節を狙う回し蹴りや拳が飛んでくるくらいしかパターンはない。ただ……

 

 

「一発でも喰らったら終わりな上にッ!周りに注意が行かないように立ち回らないといけないなんてッ!ジリ貧もいいところだろうなッ!!」

 

 

そう、読んで字の如くの状況なのだ。世間では、人間の脳が20%覚醒すると身体能力の著しい向上及び痛覚をはじめとした感覚の制限・遮断が可能になるとも言われている。それが果たして正しいのか、そんな実験例がある…なんてことはない。それ故、下手に攻撃に当たったり、腕を掴まれたりした暁には、無事に生きているかの保障なんて無いに等しい。

 

そして、こんな力を持っている(と考えられる)夏を、他の人に狙わせる事はつまり、ターゲットになった人の死を意味する。つまるところ、援軍なしで且つ攻撃に当たらず、自身にターゲットが行くように立ち回る必要がある。…はっきり言って、無謀にも程がある。俺もよくこんな依頼を受けたものだ。

 

 

「…おい!聞こえてるのか!?」

 

 

「あハははハはハハは!!」

 

 

…俺の声が聞こえていないのは、不幸中の幸いなのかもしれない。仮に聞こえているとしたら、ポッと言ってしまったことから墓穴を掘る、なんてことにはなりかねない。だが、そんなものはあまり足しにもならないような気もするが。

 

 

「ッ!来る!!」

 

 

「あハハハははハ!!」

 

 

足関節を狙った回し蹴り。いなす…ことは難しい。ここは片足は地面につけながら……もう片方の足まで来たらそっちを浮かして回避!両足を浮かせて飛ぶと、飛んでいるところに攻撃されかねないし、着地後の隙も多い。片足さえ地面についていれば、最悪どうとでもなる。

 

 

「次は……っと!」

 

 

顔面を狙ったフック。遠心力を利用した通常のパンチより幾分か威力の高いパンチ。これは横に避けて……!!…っていうか夏、こんな本格的に格闘技出来るのか…!?技1つを見ても、隙がほとんどなく、次に繋げる事を意識しているかのようだ。この状態でそれが出来るってのが怖いが……素面の時がどうなのかの方が考えただけでも怖いところだ……なッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あハハははははハハ!!」

 

 

「少しは…疲れても…おかしくないだろうにッ!!」

 

 

あれから5分近く経っただろうか。あれだけの狂人であろうとも、女性の体であり、そもそも人間である以上あれ程動いたのならば、疲れの1つを見せても良い頃合いだ。しかし、夏(狂人)はその素振りを見せない。それにだ、()()()()()()()()()()()()()()()ときた。

 

一方、こちらは疲弊を隠せないほどである。これが何を表すかというと……

 

 

「戦況が変わりそうにない…なッ!!」

 

 

疲弊による有利不利の変化は望めない、ということだ。行動パターンが特に変わらなさそうだということのみが、幸いと言わざるを得ない。…ただ、限界が来るのも時間の問題でもあるが。

 

 

「アははハはははハ!!」

 

 

そんなことなどお構いなしに、夏は攻撃をかましてくる。一発で気絶でもさせれる技でも習得していれば話は変わるのだが、生憎とそんな技は習得していない。

 

そんな一瞬の煩悩を脳内で払い除け、再び回避に専念する。こちらは疲弊の一途を辿っているが、あっちはまだピンピンしている。先程よりも、気が抜けなくなっているのが、現状だ。

 

 

「ここでッ!一生分動くことになりそうだなぁッ!!」

 

 

そんなことをしない方が集中出来るのだろうが、こんな状況に愚痴でも零さないとやってられなかった。…東さんに頼んだ人らが来る時間はまだなのだろうか?応援といっても、格闘とは無縁の一般人。今の夏には近づけれない。…支援は期待しないほうが、良いのだろうか。

 

 

「──伏せてください!」

 

 

刹那、誰とも知らない者の声がした。が、俺は自分の直感に従い、その場で伏せた。ちょうど、夏に隙ができていた瞬間だった。伏せた数刻後、俺の頭上を何かが素早く横切った。そして、小さくプスリと音を立てた後、人が倒れる音がした。指示に従ったはいいものの、隙を作ってしまったと焦り、すぐに体勢を立て直し、夏の方へと向き直る。

 

が、俺の視界に入ってきた情景は、俺の予想を裏切るものであった。一瞬自身の目を疑い、頬を叩く。痛みが頬に来る。…現実のようだ。

 

 

「夏が、倒れてる?」

 

 

そうして呆けている俺のもとに、数人の担架を持った人らが近づいてきた。東さんの応援が、この無謀とも言える攻防に終止符を打ったことに、たった今気付かされた。

 

 

「遅れてすみません…助かりました」

 

 

「いえ、こちらこそ助かりました。正直、あれ以上は凌ぎきれる自信がなかったので…」

 

 

ふと、担架の上にいる夏を見る。…成る程、あの時言ってた麻酔を吹き矢で首に当てたわけか。…狙って首に当てたのなら、相当な腕前だ。夏相手には、それ程の人員が必要だと踏んでの人選だろうか。

 

そんな考察を1人で繰り広げていると、さっきの人とは違う人が、俺に対して質問してきた。

 

 

「私達はこれから病院に向かいますが…白金さんも一緒に来られますか?」

 

 

「…行けるのであれば、行きます」

 

 

知り合いだからというのもあるが、俺個人として心配なのもある。関わるだけ関わって途中で去るのは、どうも歯切れが悪い。一度関わったのなら、せめて見届けるべきだろうと、俺は思っている。

 

その旨を伝えると、わかりました、と言い俺を救急車に乗せてくれた。その時に隊員が電話しているのが見えたが、恐らく病院か東さんだろう。そう思っていると、夏を救急車に運び終えたらしく、救急車は発進しだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[花咲川病院 ???]

 

 

「助かったよ、ありがとう」

 

 

「正直、ずっとヒヤヒヤしてましたけど…どうにかなってよかったです」

 

 

ところ変わって、俺と東さんは放送室らしき部屋に来ている。俺がこんな関係者しか入れないような場所にに来て良いのだろうかと聞いたところ、貴方は当事者で立派な貢献をしてくれたから問題ない、と言われた。ありがたい話ではあるが、それでいいのかとも思ってしまう。

 

 

「…それにしても、ここは何なんですか?それに、どうしてモニターが…」

 

 

そう、この部屋やここまでの道は、とても病院の中とは言えないほど暗く、頑丈なつくりになっている。夜になれば、幽霊の類が出てきてもおかしくはないだろうし、寧ろ出てきた方がっぽいまである。扉から感じた雰囲気をそのまま具現化した、といえばいいだろうか。

 

 

「…前も話した通り、あの扉の先は夏さん専用の治療室。…でも、それだけじゃないの」

 

 

もうあんな狂人を相手にしたから、もう並大抵の事では驚くまいと意気込んでいた俺は、次の一言で意気込みを崩されることになった。

 

 

「この地下エリアは…夏さん専用の治療施設もとい…研究施設なのよ」

 




ということで、第21話が終わりました。

今回はバチバチのシリアス回でした。恐らくこのままシリアスが続くかと思います。後、活動報告と前回辺りから言っていたアンケートも前書きの通り継続中です。活動報告につきましては、結構重要なので、目を通していただけるとありがたいです。

次回『望まぬ過去をもう一度』


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【本編】望まぬ過去をもう一度

どうも、Cross Alcannnaです。

続いてシリアス回です。今回はオリジナル設定の説明が多いので、見てる皆様がつまらないと思わないよう頑張りましたので、どうか読み進んでいただけると嬉しいです。…ですが、ここの内容を理解しないと、次回以降所々チンプンカンプンになるかもしれません。

話は変わりますが、コラボが決定しました。今回も私から依頼しました。今回コラボを受けて下さった方の作品も、私の作品よりもずっと面白いので、(名前とコラボ先の作品はコラボ回投稿時にお伝えしますが)是非見に行ってみて下さい。

そして、SNOWRoelia推しさん、黒の迷い猫団長 サクヤさん、お気に入り登録ありがとうございます。

では、本編を開始します。



「…………」

 

 

言葉が出ない、とはこのことだろうか。知り合いがそこまでの重症だったこと以上に、こんな施設が実在することの方が驚きだった。目の前にある物々のほとんどが、都市伝説で語られるようなものばかりで、それこそ、研究・監視施設と謳った方が納得がいきそうなまである。

 

そんな呆然と立ち尽くす俺を置いて、東さんは続けて言う。

 

 

「言ってしまえば夏さんにとって最後の砦と言ってもいい施設よ。ここがないと、夏さんの治療は不可能に等しくなるわ。そうでないにしろ、治療は大幅に遅れてしまいかねない。医学界で認められた、合法的なものではあるけどね」

 

 

…正直、本当かと思ってしまう。SF世界の中にいるような錯覚をしてしまうこんな施設、合法だとは到底思えない。…まぁ、暗黙の了解的ジャンルなのだろうとは想像がつくが。

 

 

「私達がいるこの部屋は、所謂夏専用治療室監視室ってやつよ。このマイクもモニターも、夏さんが今いる治療室に繋がってるわ」

 

 

淡々と説明している。これではプライバシーなんてあったものじゃない、と最初は思ったが、あの状態の夏と対峙したからだろうか、次第に仕方ない処置なのだろうかと思っていた。

 

 

「…私も、本当はこんなことしたくなかったのよ?ただ、あの病気は、わからないことが多すぎて危険なのよ。あれを普通の病室に置こうものなら、人が死ぬわ。それは、医者として看過できない」

 

 

最もな正論だ。職業柄、仕方の無いことなのだろう。見てくれこそ褒められたものではないかもしれないが、動機が真っ当なものなのは、その一言で十分理解できる。

 

 

「…夏の病気の研究も、ここで?」

 

 

「一応、専門のところがあるけれど、こっちでもやってるわ。…進捗こそないけどね」

 

 

新種の病の研究がどれくらいの速さで進むのかは、一般人からしたら知らないはずだが、その表情から察するに、進みが悪いのだろう。精神が絡んでくる病気は、大体複雑なイメージがあるが、今回もそうなのだろうか。

 

すると、東さんがマイクの電源に手をかけ始める。夏の様子が気になり、電源がついていたモニターを見やる。どうやら、さっきまでの狂人染みた様子ではなくなってるように見える。

 

 

「…今から放送をかけるから、静かにしてもらっていいかしら?」

 

 

「わかりました」

 

 

俺の返事を聞いた東さんは、マイクとスピーカーの電源をつけた。

 

 

〔夏さん、聞こえるかしら?聞こえるなら、返事をしてちょうだい?〕

 

 

「……聞こえ、ます」

 

 

夏の言葉には、今までのような活気はなく、今にも消えてしまいそうな声量だった。きっと、何をしたのか、大雑把に察しているのだろう。

 

 

〔…疲れているでしょう、しっかり休んでおきなさい。症状が良くなったら面会と退院も視野に入れるから〕

 

 

「…はい」

 

 

そんな短い会話を最後に、モニターと部屋の電気以外が切られた。

 

 

「…色々と疲れたでしょう?今日は帰って休むと良いわ。面会は…出来るようになったら知らせるわ」

 

 

「…わかりました。色々ありがとうございました」

 

 

俺も正直疲れていたので、帰ることにした。…夏、頑張ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[治療室]

 

 

「…………」

 

 

再発してしまった。この部屋にいることが、それを表す最大の証拠だ。…誰かを傷つけてないだろうかと、自身の心配より他人の心配をしてしまうのは、相変わらずだ。自分の方が、余程重症だというのに。

 

 

「……はぁ」

 

 

溜め息しか出ない。さっきの放送で、東さんが私を気遣ってくれるのがわかったが、そんな親切ですら真に受けれない。…寝た方が良いのだろうか。

 

 

「……前も、こんな感じだったっけ…」

 

 

ふと、昔同じ事になった時の事を思い出す。中学生だった頃、一度だけこうなった事がある。…場所は覚えてないが。昔は確か、皆の悪口がトリガーだった。我慢してきた私も、限界を迎え、狂ってしまったんだ…と思う。何分、私自身記憶がないので、確信して言えることも少ない。

 

そして今回は、それのフラッシュバックがトリガーだった。こっちは覚えている。何故かはわからないが。

 

 

「……うっ」

 

 

頭痛と目眩、吐き気が襲う。精神が磨り減っているのだろうか、それとも嫌な事をわざわざ思い出したからだろうか。…これ以上考えるのは止めた方が良い、そんな気がしてくる。

 

 

「…寝よう、うん…」

 

 

現状と自身の精神の惨状から目をそらさんとばかりに、私は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──夢なら、覚めて欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[羽沢珈琲店]

 

 

「…遅いな、夏」

 

 

「何かあったのかしら…?」

 

 

店も終わり、片付けが今さっき終わったところで、お姉ちゃんがまだ帰ってきていなかったことを知る。

 

そんな私達の心配を煽るように、店の電話が鳴る。何故だか、不気味な音に感じてしまう。お父さんが出たのだが…

 

 

「……本当ですか!?」

 

 

尋常じゃない程の焦りを見せる。それを見守る私とお母さんも、次第に焦りが強まる。そうして電話を切ったお父さんが、私達を絶望に陥れる一言を、悲しい表情をしながら告げた。

 

 

「……夏が、花咲川病院に搬送された」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[治療室]

 

 

「…………」

 

 

昼に寝入ってしまったため、夜になっても眠気が来ない。精神面が云々とかではなく、ただ単に眠くないだけなのだ。

 

 

「……暇だなぁ」

 

 

夜に出かける…というよりも、この部屋から出ることなど、到底出来やしない。そのため、こういう時間は暇で仕方ないのだ。どうしようもない事ではあるのだが。

 

 

「……ホント、夢だったら…どれだけ良い事か」

 

 

こうして、何かを考えるまでには良くなっている…というのは、私の強がりに過ぎない。けれど、今の言葉には強がり等は一切無い、紛れも無い本音だ。夢なら、いつか覚める。けれど、無情にもこれは現実。治るかもわからない病気に苦しんでいる今は、未だに覚める気配が無い。

 

 

「…こういう時に望む夢が、その人の真の夢だったり…なんて」

 

 

つくづく、そう思ってしまう。…いけない、またネガティブになってきている。自分でわかるのに、無意識にそう考えてしまう。私の悪い癖だ。

 

 

「こういう時こそ、気をしっかり持たないと…」

 

 

またすぐにそうなってしまうのが目に見えている。それでも、こうして言葉にして、どうにか頑張ろうと自分を奮い立たせる。…明日は、何をするのだろうか。

 

 

「…寝よう、多分…寝れるはず…うん」

 

 

またしても自分に言い聞かせ、ようやくベッドの上で眠りにつく。明日への一抹の不安を胸に抱きながら…

 




ということで、第22話が終わりました。

次回も本編…と言いたいところなのですが、コラボ回を導入しようと思います。このタイミングで書かないと書くタイミングがないと思いましたので、本編を期待していた方には申し訳ないですが、ご了承下さい。

次回『束の間の憩い』


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【本編】偽りのモノ

どうも、Cross Alcannaです。

前回はコラボ回でしたが、今回からはまたシリアス全開の本編です。もうすぐ本編も完結しますので、次回作もお楽しみ下さい。

そして、お気に入り登録:ダイキ・リハヴァイン提督さん、お気に入り登録ありがとう
ございます。まだまだ未熟者ですが、日々精進していく所存です。

では、本編を開始します。



翌日

 

 

[治療室]

 

 

「う~ん…っはぁ~…目覚めは良いのになぁ…」アハハ

 

 

朝になって良い気分で起きたけど、景観があまりよろしくないせいで…良い寝起きとは言えないという何とも言えない事になった寝起き。一応、しっかり寝れたんだけどね?

 

 

「時間は…6:26かぁ。いつもならここまでは寝ないから、ちょっと新鮮だなぁ」

 

 

仕事なり店の手伝いなりで何だかんだ早起きをしていたから、この時間でも私的には少し遅く起きたなぁという認識なのだ。あんまりこういうタイプって周りにいないよね。

 

 

「…さて、少しストレッチでもしとこうかな」

 

 

恐らく今日から検査が続くと思う。一応、あれを置いてほしいとかの要望は可能な限り叶えてくれるから、キーボードでも置いてもらおうと思ってるけど、そうなると体を動かす機会が減ってしまう。それは嫌なので、朝にストレッチをして、運動の変わりにしようって思ってる。

 

多分、病院が始まる前にやると思うから…あまり時間がないなぁ。よし、今のうちに済ませよう。

 

 

 

 

 

 

 

「…っと、これで一通り終わったかな」

 

 

10分くらい経った頃、私はストレッチを一通り終え、ベッドに横たわっている。一日分の運動をカバーしようと思ったため、結構ハードなものにしてみたけど…キツいね。ま、これから微調整すれば良いかな。

 

そうして考えを巡らせていると、放送が入った。

 

 

〔夏さん、おはよう〕

 

 

「おはようございます」

 

 

顔こそ見えないけれど、しっかりと挨拶を交わす。昔も含めてかなりお世話になっているので、感謝と申し訳なさを忘れない、という意味でもこの挨拶は欠かさない。…東さんの方は特に何も思わず挨拶してるとは思うけど。

 

 

〔じゃあ早速だけど検査を始めるわよ〕

 

 

その一言を境に、私達は質疑応答式の検査を始める。病院側の立場として、患者の検査は決して欠かしてはならないらしい。でも、私はこんなだから、近くで検査していたら危ないことこの上ない。あ、ご飯はしっかり運んでくれるよ。

 

そんなこんなで、あっちの安全を考慮した結果、私に対する検査はこういった形に落ち着いている。

 

 

〔…じゃあ今日の検査はこれで終わりね。何か要望はあるかしら?〕

 

 

「あ、キーボードをお願いしたいんですけど…私の家のって…持ってこられますか?」

 

 

〔キーボードね。分かったわ、今日自宅から持ってきて貰うから、明日にはそっちに置いておくわね〕

 

 

東さんのその一言を聞いたところで、放送は切られた。…今更ながら、厚かましいことこの上ない頼みだった。それでも、何も無い状態で過ごすのは、それはそれでストレスになる。それを東さんも想定して了承している。

 

…とはいえ、今日は何も無い状態で過ごさないといけないんだけど。

 

 

「…そういえば、()()…ズレてないかな?」

 

 

そういえばと思い、左目の方を触って確認する。…実はというと、私の左目は前に一度この症状が出た時に()()()()()()()()()()。あの時はまだ麻酔もなかったため、狂人みたいになったままこの治療室に入れられた。そんな自我の無い状態で、私は左目を潰していたらしい。

 

東さんから聞いたことだから、恐らく事実なんだろうけど…私が覚えていないのと、その時に近くに誰もいなかったせいで、本当なのかどうかが証明できないのも、また事実。

 

 

「…ズレてはない、かな?」

 

 

あの時は、自我が戻ってそれを知ってからは、ずっと気が沈んでいたのを今でも覚えている。…今回で、もう片方を潰すとかは洒落にならないから、我ながら止めてほしいものだ。狂人状態(仮称)の時は、記憶が全く無いため、余計にたちが悪い。

 

 

「……やだなぁ、こんな状態のままだったら、一生誰かと結婚とか出来ないじゃん……」

 

 

ほとんどの人がしたいと思う結婚も、こんな体質を持っていると心配でしょうがないから、出来っこない。かといって、1人で暮らすとしても、症状が悪化した時に対処が遅れる心配もある。結局、こうした監禁状態が、私にとっても周りにとっても、最善な手段だと思う。

 

だから、正直なところ、私は何事も純粋に楽しめない。つぐを撫でるときでさえ、"いつかこれも出来なくなるんだろうなぁ"とか、"つぐともう会えない状態になったら…"なんて常々考えてしまう。残念ながら…バンドも、である。

 

 

「…ただただ楽しむことも、すっかり忘れちゃったもんなぁ…」

 

 

この病気は、解明はおろか、研究すらも進捗がままならないんだそうだ。そもそも、精神に関する病気は身体関連の病よりも難解…らしく、それに加え、事例も私1人なので検証実験も出来ずじまい。結果、進捗の停滞となっている。

 

ほら、鬱とかって完治出来るの?って思うでしょ?そんなイメージ。…まぁ、かく言う私もネガティブ思考寄りなんだけれども。

 

 

「…バンド、どうなるのかな。私だけ抜けて…皆で続投して貰おうかな…」

 

 

こうも症状が出てくるとなると、おちおちライブも練習も出来やしないだろう。そうなると、皆に迷惑がかかる。仮に、皆が「そんな事ない」と言ってくれたとしても、バンドである以上、時間は限られているし、至極当然ながら時間は待ってくれない。それを加味すると、その言葉に甘えるという事は、遅かれ早かれツケが回ってくる結果を招く事になるだろう。

 

 

「…それは、嫌だなぁ」

 

 

私のこの一言には、2つの意味を孕んでいた。私自身、バンドは楽しいし辞めたくないのが本音。仮にこの状態をどうにか出来ると言うのなら、問答無用で続けるだろう。それくらい、バンドは…というより、皆といるのは私にとって良いものになっていったのだ。

 

しかし、それと同時に、"皆に迷惑をかけたくない"という思いも持っている。よく、"迷惑をかけない事は出来ないからこそ、かけ合って生きるもの"みたいな事をよく耳にするけど、私がかけかねない迷惑は尋常じゃないレベルのもの。それを皆にかけろというのは、私にとっては酷な事だ。

 

 

「…もう、どれが本音なのか…わかんないや」

 

 

沢山の考えが巡り、脳がグチャグチャになっていく。考えることもままならなくなっている事を自覚できた時には、もう自分の本当の思いがどれかなんて、判別できなくなっていた。そんな惨状から目をそらさんとするかのように、私は静かに夢の世界へと逃亡していった。

 




ということで、第23話が終わりました。

突然ですが、次回作から進めるバンドリの小説を1つにしようか検討しています。理由ですが、別ジャンルの小説の制作を決定し、現在作成中だからです。どうも私の書き方は、バンドリの世界観に合わないと考え始めたのも、理由の1つです。今後どうするかにつきましては、活動報告を新しくあげて連絡しようと思います。

次回『1ピース欠けた未完成パズル』


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【本編】1ピース欠けた未完成パズル

どうも、Cross Alcannaです。

今回は夏以外の人物の目線の話になります。そして、前回と前々回と同じ時間帯の夏以外のキャラの回です(全員は出ません)。誰がどう動き、何を思うのか、そこに注目して、見ていただけると、より楽しめるかと思います。

そして、お気に入り登録:kazusanさん、ドコカに居る他人さん、彩染 空さん、お気に入り登録ありがとうございます。もうすぐ完結しますが、最後までご愛読いただけると幸いです。

では、本編を開始します。



夏が搬送されてから少し経った頃

 

 

[花咲川病院]

 

 

「…夏は無事なんですか?」

 

 

「はい、安全を考慮した結果、再び隔離にはなっていますが…」

 

 

「…そうですか」ホッ…

 

 

時は少し遡り、夏が花咲川病院に搬送されて少し時間が経過した頃、病院には羽沢家の3人が来ていた。3人は少し特別な部屋に通されており、そこで話をしている。夏の方は、今は寝ている頃だろうか。

 

 

「最低でも退院には1ヶ月かかる見込みですが…場合によっては延びるかもしれません」

 

 

「あ、あの!」

 

 

そんな会話にしびれが切れたのか、つぐみが覚束ない様子で修一に尋ねた。「どうしたの?」と優しく聞く修一に、つぐみは間髪を入れずに聞く。

 

 

「面会とかは…出来ないんですか?」

 

 

「面会…ね。今はまだ無理ね、少なくとも2週間は面会謝絶の方針だから」

 

 

「…そうですか」

 

 

希望が断たれたかの如くショックを隠せないつぐみを他所に、修一は続ける。

 

 

「今は多少落ち着いてる方ですが、いつ変化するかこちらも検討がつかないので…退院や面会が可能になるのは遅くなるつもりでいて下さい」

 

 

「…わかりました」

 

 

その後は、また細かいことについて話をし、今日のところは帰ることにした羽沢家一行。

 

 

「…お姉ちゃん……」

 

 

そんな弱々しいつぐみの一言は、誰にも届くことなく虚空に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[CiRCLE 2番スタジオ]

 

 

「…ふぅ」

 

 

「…ダメね。私含めて、音にいつもの覇気がないわ」

 

 

「…夏がいないだけで、僕達がこうなるなんてね…」

 

 

羽沢家一行の件から時間が経った頃、CiRCLEではTTDWが(やるかは未定だが)次のライブに向けて音を合わせていた。…が、そこに彼女の姿はない。

 

 

「皆さん、心配なのはわかりますが、私達が元気でいないと、夏さんに怒られますよ!…私も心配で仕方ないのは同じですが、夏さんが帰ってきた時に笑って迎えられるように、私達がシャンとしないと!」

 

 

桜はこう言っているものの、彼女自身も3人と同じ気持ちなのには変わりない。…所謂空元気だろう。せめて上辺だけでも元気に振る舞って、夏をいつも通りに迎えようという魂胆から来ているものと思える。

 

 

「…それもそうね。私達だけ引きずってたら、夏も良い気持になれないわよね」

 

 

「…そうだね」

 

 

そんな見え透いた空元気も、今だからこそなのか効果があったようで、各々が活力を取り戻していく。…そんな中、とある発言により、この雰囲気が崩壊する。

 

 

「そういえば躑躅、まだ夏に告白してないのか?」

 

 

「!?」カァァ///

 

 

「え?貴方まだ言ってないの?」

 

 

そう、躑躅は夏の事が()()()()()好きなのだ。いつもの夏に対する態度も、よく聞く"好きな人にはそういう態度を取ってしまう"というものの典型的なものなのだ。

 

 

「相変わらずのヘタレですね…」

 

 

「ウッ…ぼ、僕だって言いたいさ!でも…」

 

 

「断られたらって考えると言い出せない…と?」

 

 

図星だったのか、再び情けない声を出してしまう躑躅。3人は呆れているのか、溜め息を漏らしていた。

 

 

「しばらくは面会出来ないらしいからな、面会出来る時までに覚悟を決めておけ、躑躅。夏は男性受けが良いから言い寄ってくる奴が出てきてもおかしくはないぞ?」

 

 

「嘘!?」

 

 

「普通に考えてわかるでしょ?…寧ろ今まで誰にも言い寄られてないのが不思議なのよね」

 

 

親友というフィルターを抜きにしても、夏は美形であり活気もある。店の手伝い(厨房での料理)もしていることから、料理も出来ると推測される。それ以外の家事の出来はわからないが、ここまで出来るなら男としては理想に近いという者も多いだろう。

 

 

「やはり、バンドをやってるから下手に言い寄れない人が多いのでしょうか?」

 

 

「恐らくはな。そういう点においては躑躅の方が有利だな。バンドをやってるうちは言い寄る輩も少ないだろうしな」

 

 

例外がいないとは言い切れないが、と付け加え、話すことを止める竜胆。一方で、考えている様な雰囲気を醸している人が1人。しかし、いい加減しびれが切れたのか、楓が声を大きくして言い放つ。

 

 

「いい加減に覚悟を決めなさい、躑躅。貴方の思いは、断られるからって言うのを止めるようなそんなちっぽけなものなのかしら?」

 

 

「ッ!」

 

 

いつもの楓からは想像もつかないその一言に、思わずたじろぐ様子の躑躅。それに続けるように言ったのは、桜だった。

 

 

「何だかんだ言って貴方の1番悪いところは、そういうところです。本当に言いたい事を言わないで、最終的にお茶を濁す。いつもならここまでは言いませんが、今回のは見ていられません。一度、伝えて下さい。貴方は、もう少し勇気を持つべきです」

 

 

日頃から躑躅に注意してきた桜の一言も、彼に響いたのか、躑躅もより一層険しそうな表情になる。そして、竜胆も口を開いた。

 

 

「お前はこのバンドで、様々な事を学んだはずだ。時にはリスクの高い事もやってきた。バンドで出来て、個人になったら出来なくなる程、お前は弱くないはずだ」

 

 

「…僕が、弱くない…?」

 

 

「当たり前でしょ?何だかんだ、貴方は色々な事をこなしてきた。FWFだって、誰かが欠けていたら優勝出来なかったわ。勿論、貴方も例外じゃないわよ」

 

 

「私もそう思ってます。貴方は強いです。だからこそ、貴方はTTDWに欠かせないくらいの人になったんです」

 

 

皆の言葉が意外だったのか、強い衝撃を顔に出す躑躅。そんな彼に、最後の一言が。

 

 

「伝えてこい。お前なら、出来るはずだ。…とは言っても、まだ面会は出来ないからな。今のお前の課題は、伝えるという気持ちを、面会する時まで持ち続ける事だ」

 

 

「……わかった、伝えるよ」

 

 

躑躅を除く面々は、疲弊した様子だった。躑躅が夏を好きだという事は、態度を見て察せたため、見てる側としてはもどかしい事この上なかったのだろう。それに、伝えると、彼の口から言わせるのにこれだけの時間を要したのだ。肩の荷が下りた、といったところだろうか。

 

 

「なら丁度いいし、今日はこれで解散にしましょう。しばらくは自主練ですから、しっかり取り組んで下さいね」

 

 

その問いかけに、三者三様の答えが返った。それを最後に、4人はこのスタジオを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[羽沢珈琲店]

 

 

「どうしたの~つぐ~?元気ないね~」

 

 

「そうだぞ、つぐ。何かあったなら相談に乗るぞ?」

 

 

病院での一件から一夜明け、ある一軒の一角では、気が沈み切っているつぐみを筆頭としたAfterglowもとい幼馴染み集団が話をしていた。

 

 

「実は……お姉ちゃんが入院しちゃって…」

 

 

「え!?夏さんが!?」

 

 

「うん…」

 

 

初めて知ったのか、つぐみ以外の面々は驚愕の表情を浮かべている。その会話に間髪を入れずに、巴が問いかける。

 

 

「夏さんには会ったのか…?」

 

 

「…ううん、しばらくは面会できないんだって」

 

 

「しばらくって、どのくらい…?」

 

 

「…少なくても2週間はダメだって」

 

 

「…長くない?普通数日とかじゃないの?」

 

 

と、不思議そうに問いかけるのは、蘭だった。というのも、一般的に面会謝絶の期間というものは、そこまで長くないものだ。…病状の重くない限り、ではあるが。

 

 

「…夏さん、症状が酷いの?つぐ」

 

 

「……」コクリ

 

 

肯定するように小さく頷くのを視認すると、4人は表情を暗くした。5人のいる場所は、次第に店の賑わいとは異質の空間へと変貌していった。

 

 

「…でも!いつかは面会は出来るんだよね!?」

 

 

「…うん、多分ね」

 

 

「ならさ!私達がしょげてたらダメだよ!夏さんの前で今みたいな表情してたら、夏さんだって余計に悲しむかもしれないじゃん!」

 

 

ひまりがかけたその一言に、一同は納得したかの表情を浮かべる。そして、段々と表情に明るさが灯っていった。

 

 

「…そうだな!ダメだダメだ!夏さんだって不安だろうしな!アタシらまで不安がってたら、夏さんにも気を遣わせるかもしれないし!」

 

 

「…そうだね。ひまりにしては、良い事言うじゃん」

 

 

「ちょっと蘭~!?どういう事~!?」

 

 

気付けばいつも通りに逆戻り。…とはいかない様子。未だに暗いままの人物が1人。

 

 

「つぐ~?」

 

 

「…モカちゃん」

 

 

そんなつぐみに声をかけたのは、意外や意外、モカだった。相も変わらずいつものようなおっとりした声で、つぐみに話す。

 

 

「夏さんの事、信じて待とう~?」

 

 

「…そう、だね」

 

 

その一言が少し効いたのか、つぐみの雰囲気が多少和らいだ。他の皆も、ホッと胸をなでおろしている。

 

 

「…大丈夫、お姉ちゃんだもん!」

 

 

そんな見え透いた空元気を口に出し、つぐみは最愛の姉を信じて待つことを決心したのだった。

 




ということで、第24話が終わりました。

今回は、夏の身近にいる人達の回でした。衝撃の事実も発覚しましたね。勿論、伏線は貼っていましたが。そして、アンケートも締め切りが近くなってきました。ご回答がまだの方は、是非ご回答下さい。

次回『思いを乗せて、音は行く』


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【本編】思いを乗せて、音は行く

どうも、Cross Alcannaです。

今回もガチガチのシリアス…というより、この先はずっとシリアスと思っていただければ良いかと。さて、新作のアンケートも終わったということで、いよいよ新作か…と思ってくださっている方もいるかと思いますが、実はそうではないのです。詳しいことは、後書きに書きますので、まずはお話をお楽しみ下さい。

そして、お気に入り登録:イモッティさん、shimayukiさん、はるvさん、黄ムの介さん、クルルヤックさん、お気に入り登録ありがとうございます。自分の小説がこうして皆さんのお気に入りになっているという事実が、とても嬉しいです。もっと多くの人のお気に入りになるような小説が書けるように精進します。

では、本編を開始します。



[治療室]

 

 

「ん……ふぁぁ~」

 

 

独房まがいの一室に、1つの呑気な声が反響する。その声の主は紛れもなく、その部屋にいる、羽沢 夏だった。寝起きだからだろうか、目も少々虚ろに見える。

 

 

「んぅ…あ、キーボード置いてくれてる。…ホントすみません…」アハハ…

 

 

ここにはいない自身の担当医に向けて、彼女は謝るも、当然の如く返答など返ってこない。ただ部屋に反響して消え入るだけに終わった。

 

そんな事に彼女は気を留めず、少々錆び付いたベッドから身を外に投げ出し、起床した。お世辞にも美味しいとは言い難い部屋の空気を吸い、自身が起きたことを、改めて身に叩き込む。

 

 

「う~ん、検査まで時間あるなぁ…どうしようかな」

 

 

無機質な鉄の壁にかかる時計を見ながらボソリと一言。それもまた、誰にも届くことはない。さて、何をしたものかと悩む彼女が、辺りをキョロキョロと見渡すと、目に映るのは1つだけだった。

 

 

「…弾こうかな?」

 

 

こんな寂れた一室に暇つぶしできるものがあるかと言われれば、彼女の目に今も尚映るキーボード以外ないと言っても過言ではない。

 

この部屋に置かれている物々は、担当医が必要だと判断したものと夏が要望したものが全てであり、裏を返せば、夏が何かを求めない限りはこの部屋に(生活必需品以外)物は来ない状況なのだ。

 

…他人事だからこそ言える事だが、危険生物の扱いそのものと言える境遇だ。しかし、本人含め大方が納得しているため、一応合意の下でこうしているのは、言うまでもないだろうか。

 

 

「……♪」

 

 

ついに我慢の限界点に達したのか、彼女はキーボードに手をかけ、音を奏で始めた。その音は、この凍てついた雰囲気とは対極で、温かみを孕んでおり、この部屋は2つの真逆のモノに包まれるという、何とも不思議な空間へと成り果てた。

 

 

〔…あー、演奏中のところ悪いんだけれど…〕

 

 

「…あ、すみません」

 

 

水を差すように鳴った放送からかけられた声は、担当医の修一その人だった。水を差したと本人も思っているのか、少し申し訳なさが言葉から滲み出ていた。気恥ずかしかったのか、夏の方もどこかタジタジである。

 

 

〔…じゃあ、いつもの始めるわよ?〕

 

 

「…お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

検査の方は順調に進んでいた。その後も何の滞りもなくそのまま終わるのか、という雰囲気は担当医の一言で終止符を打つ事になる。

 

 

〔…1つ聞きたいんだけれど、良いかしら?〕

 

 

「…?はい」

 

 

〔…音楽活動、とかやってるの?〕

 

 

先程聞いた彼女のキーボードのレベルを確認するかのような、そんな声色で質問が投げられる。はい、バンドを最近再開しました、と少し恥ずかしそうに、それでもどこか嬉しそうにしながら答える声が1つ。その表情1つを以てしても、彼女がいかにバンドが好きなのかが見て取れる。

 

その表情と声を見聞きして、どこか納得したような、あるいは満足したような声でまた言葉を紡ぐ。

 

 

〔…そう、良かったわ。自分が楽しいと思えるものがあるのは、精神的にも支えになるし、何せ楽しい人生になるだろうしね〕

 

 

「…はい」

 

 

その一言が嬉しかったのか、彼女は笑顔を浮かべた。見る誰もが、美しい、綺麗だ、と言うだろう優しい笑顔を。女性である担当医までもが、思わず見惚れてしまう程に、その笑顔は綺麗であった。

 

ハッとした担当医が検査を終える事を告げ、プツリとスピーカーの電源が落ちる音だけが無機質の部屋に数瞬残る。そうして少し経った後に、彼女は再びキーボードに手を伸ばした。再び部屋の雰囲気が2つの対となるモノに包まれるのに、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[休憩室]

 

 

「…ふぅ」ギシ…

 

 

件の検査が終わってから数時間が経ち、彼女にも休憩の時間が回ってくる。いつも以上の激務に緊張が抜けないようで、鉄製の椅子に座るとすぐに、零すつもりのなかった溜め息が1つ零れる。今の彼女は休憩中の時間帯なのだが、真面目な性格なのか、とある患者のカルテを見ている。…とある患者が誰かについては、最早言う必要もないだろうか。

 

 

「…東君、休憩時間中くらいは休憩しないと…私も心配になるよ」

 

 

「…院長」

 

 

一介の休憩室にはいると思われない人物が、忙しそうに且つ疲れていそうにしている彼女を心配したのか、歩み寄ってきた。予想だにしなかったのか、表情に少し驚きが表れているように見える。

 

 

「調子はどうなのかな?暴れたり何だったり…何か変化の兆しとかはないのかな?」

 

 

「はい、悪い方には今のところ変化はないようです」

 

 

「…そうか」

 

 

この病院ではよくある事なのだが、夏の話になると、夏の一件について知っている者同士の会話は、多少なりとも雰囲気が変わる。ある者はピリついたり、ある者は少し身震いしたり…等々、人によって違うものの、その者々の変わり様だけを見ると、架空の恐ろしい生物の話をぶり返されているようにも見える。

 

…身震いする者がいる、と言う言葉に、疑問符を持つ者もいるかもしれないが、至って単純、前回の夏の暴走で酷い目を見た職員が、そうなってしまったのだ。

 

 

「…激務を指示している私が言うのもおかしな話だが…しっかり休養は取ってくれ。君に倒られると…考えるだけでもゾッとする」

 

 

「…肝に銘じておきます」

 

 

他愛なんてどこにも見られないような会話を交わした後、院長は去る。そこに残された彼女は、再びカルテを見始める。そうしたかと思えば、今度は1つの溜め息。

 

 

「…そう、休んでも…いられないのよ」グシャ…

 

 

まさに精神百面相と言わんばかりに、今度は焦燥と苛立ちを浮かべ、無意識にもカルテの端をクシャリとしてしまう。その心情は、しばらく彼女の顔から抜ける事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[治療室]

 

 

「~♪」

 

 

あれから結構な時間が経とうとしているも、キーボードを弾く手は一向に離れる事を知らない。音楽を奏でる事が使命だ、とでも言わんばかりの演奏ぶりだ。その手の持ち主も、どうやら満更ではない様子…どころか、鼻歌までも交え始め、更にヒートアップさせんばかりの勢いを醸している。

 

 

「…ふぅ」

 

 

しかし、一区切りついたのだろうか、その手が演奏を続ける事はなく、弾き続けた疲れを吐き出すかの如く、溜め息を1つ。少しの静寂の後、彼女は頬を軽くペチンと叩き、自身に問いかけるかのように一言ポツリと呟いた。

 

 

「…あの曲でも…弾いてみようかな」

 

 

その一言をスタートの合図と見なしたのか、再び彼女の手がキーボードに置かれ、その指は鍵盤上を走り出す。走り出した指に押された鍵盤は、綺麗な音色を奏で、それらが混ざり合う。結果、美しさを体現したかの音となる。

 

その旋律から判別するに、彼女が弾いている曲というのは、『雨とペトラ』だろうか。彼女曰く、自身の心情と歌詞が幾つか重なる箇所があった事から、次第に好きになったとのこと。

 

重なるのが嫌になるのではなく、逆に好きになる辺り、感覚が少しズレているのだろうか。はたまた、彼女が変わっているだけなのか…。それはともかくとして、彼女にとってこの曲が、心の拠り所になっていたのは紛れもない事実だろう。

 

 

──雨が降ったら 雨が降ったらきっと 頬を濡らしてしまう 枯れてしまった色ですら 愛しくなるのに

 

 

サビに入り、さぁここでというところで、彼女が口ずさんだ歌声は、キーボードの音色よりもずっと悲壮感を帯びた声だった。どこか憂うような、どこか慈しむような。歌詞を自身の過去と紐づけながら歌っているのだろうか。

 

 

──目を瞑ったら 目を瞑ったらもっと 遠く霞んでしまう 煩くなった雨の音 笑い飛ばしてくれ!

 

 

しかし、サビの終盤になるにつれ、悲壮に満ちていたその声は、次第に活力を取り戻していった。過去を笑い飛ばせと、自身に訴えかけるようにも聞き取れる。

 

彼女のこの曲に対する思い入れは、この一コマだけでもわかった事だろう。しかし、彼女の手と口は音を出す事を止めなかった。さながら、音に自身の内に秘めた思いを、音に乗せるかのように、彼女はひたすらに歌い、弾き続けた。

 




ということで、第25話が終わりました。

前書きにも書きました事について説明しますと、新作小説を出しはするのですが、バンドリの小説ではないです。…そうです、他ジャンルの小説を投稿する事に決定しました。前々から書こうか悩んでいましたが、投稿を決意しました。
バンドリ小説を期待していた方には申し訳ないです。本当はバンドリの新作も出そうかと思ったのですが、これから忙しくなる事を加味すると、小説3つをかけ持つのは大変ですので、今回はこうした措置を取らせてもらいました。より詳しい詳細は、この話と同時にあげた活動報告を確認していただければと思います。

次回『ワタシという1ピース』


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【本編】ワタシという1ピース

どうも、Cross Alcannaです。

後何話で完結するかの目途は立っていませんが、3~5話くらいになるかと思います。新作の執筆も進めていますので、そちらもお楽しみ下さい。このジャンルとは違った描写を心がけておりますので、新鮮な感じで楽しめると思いますので。

そして、お気に入り登録:ほっきーさん、カラス先生さん、ポテトヘッダーさん、TAKAHIRO1さん、げねぽさん、龍狼さん、ピエトロ Type RSさん、お気に入り登録ありがとうございます。他小説から来て下さる方が増えてきた印象ですね。

では、本編を開始します。



2週間後

 

 

[治療室]

 

 

〔じゃあ今日はこれで終わりね。…あ、そうそう、今日から面会OKになったわよ〕

 

 

「…あ、もうそんな経ったんですね」

 

 

彼女が入院してから2週間経った頃、症状も言う程悪くならなかった事もあり、面会を許可する方針になった。夏の方はというと、実感がなかったような調子で軽く呟いた。

 

 

〔今日は…家族の皆が面会したいって来たわよ。…一応、貴女の許可を取ろうと思ってね。…良いかしら?〕

 

 

「え、別に許可はいらないのでは…?」

 

 

〔…あらそう?じゃあ面会時間になったら連絡するわね〕

 

 

そう淡々と一言告げた後、静かにプツリとスピーカーを切る音が響く。ふぅ…とボソリ溜め息をつく。その溜め息には何の念が籠っているのか、まさに夏のみぞ知るところだろうか。

 

 

「…とりあえず、キーボードでも弾いてようかな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[診察室]

 

 

あれから時間は経過し、病院に羽沢家一行がやってきていた。少し話をしたのだろうか、今は面会をする為に移動しようとしているように見える。

 

 

「…じゃあ行きましょうか」

 

 

『…はい』

 

 

そうして少々気まずい雰囲気の中、羽沢家一行と修一は例の厚い鉄扉の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[面会室]

 

 

「夏……!」

 

 

「良かった…!」

 

 

面会室に通された一行は、夏の姿を見るなり様々な反応を見せる。嬉しかったのか安堵の息を漏らしたり、方やヘナヘナと地面にペタリと尻もちをついてしまったり、泣く者まで現れる始末。

 

 

「…とりあえず、落ち着かない?」

 

 

周りがこうだと取り残された者は冷静になる、などとは言うが、今の夏がまさにそれにあたるだろうか。困惑の表情を多少含みながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…落ち着いた?」

 

 

「……ええ」

 

 

混乱がようやく収まってきた所で夏がそう尋ね、それに代表して答えたのは、彼女の母だった。

 

それに続くように、父も言葉を1つ2つと紡ぎ出す。

 

 

「……苦しくないか?退屈してないか?」

 

 

「うん、部屋にキーボード置いて貰ったから多少は…ね」

 

 

無理はするなよ、と心配の声を続けてかける父に、夏はうんと一言言っただけだった。その後には、沈黙が空間を支配していたが、それを破ったのは、つぐみだった。

 

 

「お姉ちゃん…皆心配してるから、早く戻って来てね…?」

 

 

「…うん、勿論だよ」

 

 

いつもの癖か、夏の手は無意識のうちにつぐみの方へと向かうも、透明な仕切りに手が当たってしまい、その手はつぐみに届くことはなかった。

 

それをようやく自覚したのか、ハッとした表情で夏は行き場所を失った手を自身の方へと戻す。それを傍から見ていた家族は、悲しそうな、辛そうな、そんな顔をしている。

 

 

「…お姉ちゃん……」

 

 

〔…面会の時間は終わりね。今そちらに向かいますので〕

 

 

そんな一時の会合も、時間によって無情にも終止符を打たれた。その後、面会室の空間が静寂に包まれたのは、言うまでもないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別日

 

 

[面会室]

 

 

「…夏さん」

 

 

ある日の面会。今日はTTDWのメンバーが来ていた。開始早々桜が心配の声を1つ。それに答える声は、あまりにも衰弱していた。

 

 

「…大丈夫だよ…うん」

 

 

「全然大丈夫そうに聞こえないぞ」

 

 

自身の状態をここまで露わにしているその一言は、当然のことながら、親友によって一蹴される結果に。他の面々も、心配しているような表情を浮かべているのは、火を見るよりも明らかである。

 

 

「キーボードも置いてもらってるし…大丈夫だって」

 

 

「…そんな顔で言われて納得する阿呆はいないわよ」

 

 

今にも死にそう、と言えば十分伝わるだろうか。修一曰く、栄養や運動不足等ではないらしく、どうやら精神が参ってきているのではないのか、との事。病院側も早く退院させたいのだろうが、何分抱えている病気が病気で、慎重に対応しなくてはならないのだろう。それがわかっているからか、TTDWの面々の表情が悔しさで満たされている。

 

 

「…夏」

 

 

「……何?」

 

 

やはり弱々しい声は健在の模様。今も尚衰弱しているように感ぜられるのは、気のせいなのだろうと思わざるを得ない一行。

 

 

「…いや、ごめん。何でもない…」

 

 

「……」

 

 

おいおいとでも言わん表情を浮かべているのを見る限り、まだ少しの余裕はあるようだ。そうして、面会の時間も終わり、TTDWの面々は去っていく。後に来た職員によって、夏は面会室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[治療室]

 

 

「……」

 

 

治療室に連れられ帰ってから、彼女はずっとこの調子。上の空ともとれるような、考えるのを止めているような。一向に衰弱し続けているのを、隠す気もない彼女に、元気なんてあったものではないだろう。最早今の彼女に、キーボードを弾くことも視野にないようだ。

 

 

「……はぁ」

 

 

ふと零れたその溜め息は、まるで鉄塊のような質量を帯びているように感ぜられる程重いものだった。表情との相乗効果によって、雰囲気までもが重くなっていく。夏以外がここにいたら、なんて感じるのだろうか。気まずすぎて吐いてしまうだろうか、それとも夏がトラウマになってしまうのだろうか。

 

 

「……寝よう…かな」

 

 

今こそ現実から逃げようと、早々とベッドに潜り、眠りに落ちようと試みる夏。その思いが届いたのか、すぐさま彼女は寝息を立て、深い深い眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[院長室]

 

 

「…これはマズいと思いますよ」

 

 

「…ふむ、そっちの方でか…起きてほしくなかった事態が起きたね……」

 

 

病院の中でも極めて広いその一室で、とある2人が重い雰囲気の中で会話を繰り広げていた。言わずもがな、その内容は夏の話に他ならない。

 

 

「…そろそろ仕切りを取っても良いかと思ってるんですけど」

 

 

「そうだね…状態から察するに、取った方が良いかもね」

 

 

病の再発はしっかり防いでいるものの、その弊害として精神に限界が来ている事を確信し、今後の対応をどうするかを相談している、といったところだろうか。慎重に対処しないといけないと思っていても、今の状態では、別の方向で大変な事になりかねないとの判断と取れる。

 

 

「じゃあ明日からはそうしますね」

 

 

失礼しますと言って去っていく彼女の背を見送る院長。それを見ていると、これから嫌な事が起こるのではないのだろうかと思ってしまう。

 

 

「…何もないと良いんだけどね」

 

 

不穏な空気の中、彼は仕事を再開し始めた。

 




ということで、第26話が終わりました。

残り数話での完結も本当になりそうですね。不穏な空気がバチバチですが、どういった結末になるのか、是非最後までお楽しみ下さい。完結後、たまにアンケートでも貼るかを検討中です。

次回『思いを込めて、君に贈る』


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【本編】思いを込めて、君に贈る

どうも、Cross Alcannaです。

最近体の調子が優れない日が多いですが、完結までは頑張って投稿します。シリアスも頂点になっているところで、今回はどうなるのか、是非お楽しみに。

では、本編を開始します。



[治療室]

 

 

「……はぁ」

 

 

あれから少々日は経ち、今も尚私の精神は参ったまま。自分でわかってて尚、そうなっていく事を、最早自身も止められないのがもどかしい。そうして葛藤して一日が終わってしまうのが、最近の私の生活。堕落しきっているのが、小学生でもわかりそうな程わかりきっている。

 

 

「…キーボード」

 

 

ふと、結局さほど触らなかったそれに、私の目は行った。あの時弾いて以来、触れる気になれなかったそれは、少々埃をかぶってしまっていた。私もそれに初めて気付いたからか、ちょっと驚いてしまった。こうなってから感情の起伏がほとんどなかったため、多少の新鮮さを抱いた。

 

 

「……今なら」

 

 

…その気になったらその時の内に、なんて言ったり言わなかったりするし、今弾いたらどうなるのだろう。そんな微量の好奇心が勝り、ついに私はそれに手をかける。ふと、懐かしさが湧いた気がした。

 

 

「……これ、かな?」

 

 

そうして私が弾き始めたのは、『DANCE DANCE BUNNY』。ダーティーな曲調と歌詞が、私の感性に訴えかける。そうしていつの間にか、私の好きな曲の1つになっていた。

 

 

「……♪」

 

 

楽しい。他の感情は何も無いのに、どうしてか楽しさだけが私を支配している。目に見えないナニカが弾き続けろと訴えてきているのかはわからないが、それに任せて私の手は、弾くことを止めない。

 

 

「……楽しいなぁ」フフ…

 

 

その楽しさ故に、思わず久々に笑みを浮かべる。何だかんだ言って、好きなんだなぁ…キーボード。

 

 

「……ふぅ」

 

 

感傷にふけっていると、既に曲が終わっており、やり切ったという思いと共に、息を漏らす。何のしがらみも感じず、こうして弾く事も無くなったからか、今も尚新鮮な感覚だ。

 

 

「…もっと弾いちゃおうかな」

 

 

気付けばあれだけズタズタだった精神も、次第に和らいでいく。完全にって訳でもないけど、大分楽になっている感覚がある。

 

 

「…今日はゆっくり寝れるかな」

 

 

ポツリと一言。そんな小さな幸せを未来に願いながら、私は音を奏で続けた。…うん、()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[面会室]

 

 

「あまり無かったんじゃない?躑躅と私の2人っきりって」

 

 

「…だね、何だかんだ誰かがいたしね」

 

 

仕切り無しで面会が出来るようになって、僕の予定もない今日、少し遅くはなったけどようやく来れた。夏に言われてから思ったけど、夏と2人っきりなのって、何気に初めてな気がする。

 

 

「…大丈夫なの?前は酷く参ってたみたいだけど」

 

 

「うん、今は多少マシにはなったよ」

 

 

当たり障りのない会話をする。僕にとってこの会話は、夏の様子を知る為のものだけど、見た感じと喋り方からして、あれから持ち直したみたいだ。…良かった。

 

 

「そっちは大丈夫なの?」

 

 

「うん、バンドの方は特段問題も無いよ」

 

 

「…ううん、違う」

 

 

「…?」

 

 

違う?どういう事だ?バンドの心配じゃなかったら一体何の……と思考に暮れていると、夏の方から答え合わせがなされた。

 

 

「躑躅の方だよ。何かいつもと違う感じがするから、何かあったのかなって」

 

 

「……」

 

 

驚いた。僕の事を心配していたという事にも驚きだけど、何かある事を見破られる位僕の顔がわかり易かった事に、驚きを隠せなかった。

 

夏は人の変化に敏感な方だけど、ここまで早く気付いたって事は、恐らく僕の方がわかり易い顔をしていた事になる。…顔に出さない練習とかした方が良いかな…?

 

 

「…今日はさ、夏に言いたい事が合ったから1人で来たんだ」

 

 

「言いたい事?」

 

 

「うん、ちょっと待って」

 

 

そうして夏に待ってもらい、僕は1つ大きな深呼吸をする。……よし、覚悟は出来た。……言おう。

 

 

──夏の事が、好きです。付き合って下さい──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──夏の事が、好きです。付き合って下さい──

 

 

その一言は、私の脳内を真っ白にするには十分過ぎるものだった。予想云々よりも、自分が告白される事も眼中に無い位だったから、驚きしか出ない。…今の私の顔、変じゃないよね?

 

…で、告白されたからには返事をしないといけないわけだけど……そもそもの問題よ?

 

 

「…どうして私?」

 

 

「……一目…惚れ……」

 

 

「へ?」

 

 

「…一目惚れだったんだよ!」

 

 

「…うぇぇ!?」

 

 

嘘ん!?じゃあ何?あのからかいとかって"好きな人程いじめたくなる"理論の典型的なやつ!?……そう考えると、何か恥ずかしいなぁ……顔もきっと真っ赤だよね、私。…躑躅の表情からして、本気みたいだし…

 

 

「…躑躅」

 

 

「……」

 

 

…待ってる、私の答えを。それを示すかのように、躑躅の双眸が私を捉えて離さない。…私の思うことをそのまま言おう、うん。

 

 

「…私ね、付き合うとか結婚するとかさ、出来ないって思ってるの。こんな体だしさ、かける迷惑が過ぎるって考えてるの」

 

 

「……」

 

 

この答えが果たして躑躅の望む答えかはわからない。でも、ここで遠慮した答えを出すのも、違う気がする。だからと心に言い聞かせ、私は言葉を紡ぐ。

 

 

「最近こうなってからね、その事ばっかり考えてね…先の事が心配に…なって…ぇ…」ヒック…

 

 

私の頬に伝うのは、私の意識とは乖離した大粒の涙。それも沢山。それがわかってから、私の中のモノが全部吐き出そうになってるのがわかった。それでも、私の自制心では止められないのもわかってしまっていた。

 

 

「だからぁ……嬉しいけど…躑躅に迷惑……かけられないからぁ……」エグ…

 

 

そう言った瞬間だった。私を、温かい何かが包んでいた。流石の今の私でも、それが躑躅のハグだったと理解はできた。そんな状態に、私は思わず「ぇ……?」と零す。抱く力は強くなっているものの、私を気遣ってくれているのか、どこか優しさがあった。

 

 

「…僕が、一緒にいるから。夏を、支えるから…」

 

 

その一言に、私の心は限界を迎え、私は人生で初めて大声を上げて、泣いた。他の誰でもない、躑躅の温かい胸の中で。躑躅もそれを受け入れてくれて、泣く私の背中を、ずっとさすってくれた。……ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、躑躅?」

 

 

「…どうした?」

 

 

あれからどれだけの時間が経ったのだろうかわからないが、私が泣き止んで躑躅の肩に頭を乗せている今、私は尋ねる。

 

 

「…ホントに、私で良いの?」

 

 

「当たり前だろ?夏の事情全部を加味しても、夏が良かったんだ」

 

 

「……♪」

 

 

躑躅が言ってくれる一言一言が、私の心を満たしてくれる。…この短時間で躑躅に入れ込んでるなぁ、私。…メンヘラとかヤンデレとかにならないと良いんだけど。そう考えている私に向けて、躑躅が一言。

 

 

「夏、そろそろ面会時間終わるんじゃないか?そろそろ離れ…」

 

 

「…もう少し、このままでいさせて?」

 

 

「……もう少しだけな」

 

 

「……♪」

 

 

今日は躑躅に一杯食わされたからね、今日くらい甘えても…良いよね。…まぁ、結局この状態を東さんに見られたのは、言うまでもないだろうけど。

 




ということで、第27話が終わりました。

遂に結ばれましたね。夏の心持も、ここいらから変化してきているのでしょうか。それは後にわかってきますので、最後まで見て行って下さると、嬉しい限りです。後、この小説の本編後のストーリーが見たいかのアンケートを新設しますので、良ければご回答お願いします。期限はアンケートに記載します。

次回『トンネルを抜けるとそこは』


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【本編】トンネルを抜けるとそこは

どうも、Cross Alcannaです。

さて、何回も言っていますが、完結まで後少しです。新小説の方が進んでいきますので、そちらも是非読んで下さると嬉しいです。尚、まだバンドリ小説は書きますので、そこはご心配なく。

そして、お気に入り登録:フユニャンさん、お気に入り登録ありがとうございます。

では、本編を開始します。



[休憩室]

 

 

「凄いわね、精神も回復してるどころか、寧ろ調子も良くなってる…」

 

 

夏さんの退院も近くなった某日、私は休憩室で1人そう呟いていた。夏さんはある日を境に体調や病状がガラリと豹変し、一般人と同等の健康状態にまで回復していた。…十中八九あれが原因なのだろうけど。

 

 

「…まぁ、元気になったのなら何よりね」

 

 

…私と夏は、()()()()()()()()()()。言ってしまえば、私の従姉妹に当たる関係になる。尤も、私は忙しいし、夏も忙しい(らしい)のも相まって、私達が会うのは、いつも実家でなく病院になってはしまうのだが。

 

 

「……良かったわね、夏」

 

 

私は夏より歳上なので、仕事でない時はわざわざさん付で呼びはしない。…まぁ、あっちはせいしんなトラウマのせいか、私にも線引きして接しているのだけれど。

 

担当医として寄り添っているからそれは承知の上ではあるけれど、従姉妹とお互いに親しく接せれないのは、少々思う所があるのも、また事実。

 

 

「…いつか、貴女と……」

 

 

いつ叶うかも分からないそんな願いも、次第に口に出す事を止め、中途半端な言葉が響く。

 

 

 

 

 

──いつか、貴女と……心の底から笑って…話したいわね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

退院当日

 

 

[花咲川病院 入口]

 

 

「すっかり元気になって良かったわ、こっちも内心ヒヤヒヤしっぱなしだったのよ」

 

 

「せっかくの退院なのに、そんな湿気た事言わないで下さいよー」( *¯ ³¯*)ブ-

 

 

「そこまで言う余裕があるなら、大丈夫そうだね」

 

 

「躑躅まで〜!?病み上がりの人に対して辛辣過ぎでしょ〜!」ε٩(๑>ω<)۶зモー!!

 

 

夏が退院する日になって、私が躑躅君と夏を見送る事になり、こうして冗談を交わしながら、(私だけかもしれないけど)別れを惜しむ。

 

病人に対して、もっと一緒にいたいと思うのは病人に失礼だとわかっていても、どうしてもそう思ってしまう。…私も、人が恋しいのかしらね。

 

 

「…躑躅君、夏の事…宜しくね」

 

 

「……はい」

 

 

真剣な面持ちで行われたたった二言の会話は、その短さとは裏腹に、互いの想いが交差したものとなる。目線だけで、固い握手が交わされたみたいに。

 

 

「……元気でね、夏」

 

 

私には仕事がある。このままずっと話していたいと思っていても、時間や仕事がそれを許さない。それを知っているから、別れを惜しみながら、夏の多幸を祈る一言を言う。

 

……私が傍にいれるのは、夏が病人である時だけ。傍にいたくても、やはり互いの仕事が阻んでくる。…結局、夏の壁はそのままだったわね。それも、心残りかしら。

 

 

 

 

 

──そう思っていた刹那だった。

 

 

「…うん、またね!しゅーさん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……夏」

 

 

夏が病院を後にしてどれくらい経ったのか。私は、その場でずっと立ち尽くしていた。…ここにいると、他の人に迷惑になるのだけど、その時の私には、それを自覚する程の余裕はなかった。

 

最後の一言。言ってしまえば他愛のない別れの言葉に過ぎない。だけど、私にとって、その解釈は違うものだった。

 

 

「……しゅーさん」

 

 

そう、()()()()()()()()()()のだ。先述した通り、夏は人と接する時、ほぼ全ての人に一線を引いて接する。それは、私も例外でない。……筈だった。

 

夏が一線を引かないのは、父母と妹、そしてバンド仲間だったりする。もっと増えているかもしれないけど、生憎私はそれ以上を知らない。

 

そんな中で、私に対しての一線がなくなった。それが何を意味していたのか知るには、思考能力を取り戻しつつある私の頭なら、十分過ぎた。

 

 

「…夏……」

 

 

そう呼びかける私の頬に滴っていくモノが、1つ2つと、次第に数を増していく。そして私は、止まりそうもないソレを、数え切れなくなった。

 

 

「……夏……ぅぅ…」

 

 

人目も気にせず泣く私は、周りから見ると、さぞ滑稽だっただろう。それでも尚、私は数多流れ落ちるソレを止めることも無く、唯々静かに泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[羽沢珈琲店]

 

 

「つぐ、元気になったみたいだね〜」

 

 

「だな!」

 

 

所変わって羽沢珈琲店。いつもの様にある一角に座るAfterglowの面々。少し前のあの雰囲気とは打って変わって、今日はいつも通りな様子。

 

つぐみの方も、仕事がある為せっせと動いているが、その姿にはどこか元気そうな雰囲気が感ぜられる。時折見せる笑顔が、それを物語っているとも取れようか。

 

 

「今日は夏さんの退院日、だっけ」

 

 

「うん!何だか私も楽しみ〜!」

 

 

通常運転な喋り方をする蘭も、今日は何処か優しい雰囲気を感じる。対するひまりの方は、読んで字のごとく、いつも通りである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し経ち、客の波も一段落し、つぐみも幼馴染の席に着いていた時だった。

 

幼馴染5人組だけがいるこの店の扉のベルが鳴る。客が来たのかと立ち上がるつぐみを余所に、扉が開く。そうして入って来た人はと言うと……

 

 

「ただいま!つぐ!」

 

 

「やっぱ落ち着く雰囲気だね、ここ」

 

 

彼女らが待ち望んでいた人物その人と、その番だった。皆が皆、様々な反応を示すものの、そのどれもが嬉しさを持っていたのは、言うまでもない。

 

 

「元気だったみたいだね!」

 

 

「夏さんの方こそ、体調はどうなんですか?」

 

 

そう心配そうに尋ねる蘭に対し、「大丈夫だよ!」と元気に返す姿を見て、一同はホッと安堵の息を零す。

 

 

「あれ?夏さん、どうして躑躅さんと一緒に?」

 

 

「……そうだね…実は……」

 

 

そう切り出したのは躑躅の方だった。少々しどろもどろになっている彼の姿を見て、夏は笑っていた。

 

 

「私達、付き合う事になったんだ!」

 

 

躑躅の説明までの隙間時間に我慢できなかったのか、本題の方を切り出した夏。躑躅の方はと言うと、やり切れないといった表情をしている。

 

 

『えぇぇぇぇ!?!?』

 

 

一同驚愕。奥の方からも聞こえる事を加味すると、父母も聞いていた模様。…退院してきた者が、いきなり彼氏を連れて来たのだ、無理もない。

 

 

「本当なのか!?夏!」

 

 

「うん!因みに相手は躑躅だよ!」

 

 

「どうも、夏のお父さん、お母さん」

 

 

優しい声色でペコリと一礼。反射的に、ペコリと一礼を返す父母。しかし、一瞬でその雰囲気は変わり果てた。

 

 

「……君は、本気で夏を支えられるのか?」

 

 

父の刃物のようなその一言に、思わず息を飲む一同。躑躅も例外ではないが、彼の目は、真剣な眼差しそのものだった。そうして放たれた一言は──

 

 

「はい、支えてみせます」

 

 

──肯定の意を持ったモノだった。真っ直ぐな、芯の太いその一言に、彼もどうやら問題ないと思ったのか、「…夏を、宜しく頼む」と、いつもの雰囲気に戻って言った。

 

 

「ヤッタネ!これで親公認だね!」

 

 

「…はは、そうだね」

 

 

そう一言ずつ交わす2人は、いままでのどの瞬間よりも、輝いていた。

 




ということで、第28話が終わりました。

いよいよ完結間近です。というより、もしかしたら次回で完結するかもしれません。私の執筆具合によって変わりますが、どの道次々回には完結しているかと。ともかく、バンドリ小説は一旦あの日に絞ります。

次回『夢の世界へ』


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【本編】夢の世界へ

どうも、Cross Alcannaです。

さて、今話をもって本編は終わりとなります。感謝の意は後書きに書くとしまして、この小説に関わりませんが、完結後もコラボ等は受け付けますので、したいと思って下さった方は、是非お声をかけて下さると嬉しいです。

そして、☆10評価:心太とお団子さん、お気に入り登録:心太とお団子さん、評価及びお気に入り登録ありがとうございます。最終回ですが、こうして評価して下さる事が大変うれしかったです。最後までありがとうございます。

では、本編を開始します。



[羽沢珈琲店]

 

 

「躑躅!これ持っていって!」

 

 

「わかった!」

 

 

某日、ある1軒の珈琲店にて。店員が忙しなく動いている中でも、一際浮いた存在がいた。

 

そう、躑躅だった。あれから大学を中退し、この店を継ぐ事に決めたらしい。親の説得には、さほど時間を要した訳でもないらしく、寧ろ応援されたとの事。

 

 

「お待たせしました、日替わりランチです。ごゆっくりお楽しみ下さい」

 

 

「ありがとうね〜」

 

 

躑躅を初めて見た常連客は、初めこそ驚いていたものの、今では看板娘…的なものとして話題になっているのだとか。

 

 

「夏、他にやる事は無いか?」

 

 

「じゃあこれ作ってくれない?厨房も人が足りなくて……」

 

 

「わかった、早速取り掛かるよ」

 

 

2人のこの阿吽の呼吸も、密かにこの店の名物となっている。ここに来る客の大半以上は、2人を温かく見守っている。

 

と、2人がせっせと作業をしていると、店の扉が開き、ガヤガヤと擬音が付きそうな会話と共に姿を現したのは…

 

 

「夏さん!躑躅さん!今日も来ちゃいました!」

 

 

「お〜、繁盛してますな〜」

 

 

「…大丈夫なの?」

 

 

「夏さん!躑躅さん!調子はどうですか?」

 

 

「わっ!お姉ちゃん、躑躅さん、私も手伝うね!」

 

 

Afterglow(いつもの5人組)だった。この繁盛ぶりを見たからか、店の手伝いをしようとつぐみが言う。が…

 

 

「つぐ、大丈夫だよ!私達に任せて、皆とゆっくりしてて!」

 

 

「うん、僕も頑張るから、つぐみちゃんはゆっくり皆と過ごしててね」

 

 

優しさの権化でもある2人に阻まれる結果に。つぐみは人の優しさを無下に出来ない性格なので、渋々そうする事に。

 

 

「もしホントに大変だったら、私に声掛けてね!」

 

 

『うん!/わかったよ』

 

 

そう言葉を残し、幼馴染の元へかけていく。残された2人は少し互いをじっと見ると、再び作業に戻った。こうして、今日も羽沢珈琲店は、夏と躑躅という歯車によって、活力を増していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[CiRCLE 1番スタジオ]

 

 

「……っと!」

 

 

「少し休憩にしましょうか」

 

 

またある日。ライブハウスで合わせをしているバンドが1つ。桜の一言によって、休憩の許可が出る。各々休憩をし始める中、復習をしている者が1人。

 

 

「…夏、大丈夫なの?」

 

 

「うん!適度に休んでるし、皆に追いつかないと!」

 

 

「相変わらずだな」

 

 

夏は、件の事で皆に迷惑をかけた上に、自身の音楽のクオリティが落ちていると思っているのか、今までより一層練習に励むように。

 

それ自体は良い事なのだが、如何せん周りはまたいつ倒れないかが心配で、それどころでは無い様子。

 

 

「…夏?無理はしないでね?」

 

 

「うん!私も、またああやって皆に迷惑かけるのは嫌だからね!」ピース!

 

 

等と言いながら、彼女は笑顔とピースサインを皆に向ける。ただ、そんな事で心配が拭える訳が無いのだが。

 

 

「……やっぱダメ、休憩して」

 

 

「えぇぇ!?何でぇ!!」

 

 

やはり心配になったのか、休憩するよう促す躑躅と、それに若干の反発を口にする夏。2人の言い合いは、いつの間にか痴話喧嘩に発展していた。

 

 

「…やっぱり変わったわね、2人共」

 

 

「だな」

 

 

「…良い意味で、です?」

 

 

「……どうかしらね」

 

 

そうお茶を濁し濁され、彼彼女らは再び痴話喧嘩を見守る。優しい目と、祝いの気持ちを持ちながら。今日もTTDWは、2人の喧しいBGMのような会話によって、活力を増していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数年後

 

 

[???]

 

 

「…あっ、動いたかも」

 

 

「ホントに?大丈夫?」

 

 

「うん、私は大丈夫だよ」

 

 

某日某所にて、そんなのほほんとした会話が交わされている。方やパートナーを心配しており、方や落ち着いた雰囲気を醸している。

 

そんな会話が再び紡がれるかと思いきや、それはなされなかった。何故かというと……

 

 

「お姉ちゃん!調子はどう!?」

 

 

「大丈夫だよ、()()

 

 

彼女の妹であるつぐみと、両親の訪問によってだった。声に出る程に心配するつぐみとは裏腹に、両親の方はさほど心配していない……訳でもないらしく…

 

 

「夏、大丈夫なのか?吐いたりとかは……」

 

 

「ないよ、体調も問題ないし」

 

 

やはり心配で仕方ない様子。母の方も顔色を見れば、心配していると分かる。

 

 

「いつ頃産まれるんだ?」

 

 

「10月中頃ですよ」

 

 

「私よりしっかり覚えてるんだね、躑躅」

 

 

「当然だろ?何せめでたい日になるかもなんだし」

 

 

こうして、和気藹々とした会話が交わされている辺り、夏の病気も現在は落ち着いているようだ。そして、第一子がお腹にいるようで、時にはお腹を摩っている。

 

 

「……名前、どうしようかな?」

 

 

「せっかく皆がいるんだし、皆で考えないか、夏?」

 

 

「…そうだね、そうしようか」

 

 

こうして、夏らは今ある幸せを謳歌する。これからどうなっていくかは誰にも分からないが、彼女らは今を謳歌する。

 

──それが、より良いこれからを紡いでいくと信じて──




ということで、本編完結です。

個人的には、長いようで短かったです。今のご時世も相まって、こうした小説を読む方も増えたのではないかと思います。私もそうでした。ですが、こうして皆様に小説を提供する側になり、大変さと楽しさを実感する日々です。

この小説を読んで、少しでも多くの方々が楽しく思って下さったのなら、私としてもこの小説を執筆した甲斐があります。尚、この小説は残ります故、まだまだお楽しみいただけるかと思います。気まぐれで日常回を投稿するかもしれませんので、その時は、どうか皆様が楽しんでいただければと願うばかりです。

それでは、ここまで『羽沢家の長女』を読んで下さった皆様、ご愛読ありがとうございました。また他の小説にてお会いしましょう。


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