ひねくれいろは! (アイロハ)
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ひねくれいろは いち!

 

 

私の名前は一色いろは この春から、第一志望であったS大学にストレートで進学する、未来ある女性なのである。

 

S大学は就職率95%、それも全員が名だたる大企業や公務員に羽ばたいていくという、この国でも有数のトップ大学である。

 

なぜ私がココに進学できたのか? それは単純に勉強しまくったからである。

 

総武高校では可もなく不可もなくといった成績だったが、生徒会長を2年間経験し、2年生の後半からは優秀な成績をおさめてきた。 ふっ、私に死角はないのだ…

 

それもこれも、彼の横に立つためだ。

 

彼ーーーー

 

比企谷八幡先輩に!

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

総武高校・卒業式

 

この日は、雪乃先輩、結衣先輩達が卒業する日だ。

 

私は生徒会長として、祝辞やプログラムの最終確認をしている。式が終わって、一段落したら奉仕部でささやかな打ち上げをする予定だ。

 

さて、特に問題もないし、ささっと終えて、あの場所に行こう!

 

ーーー在校生代表、一色いろは

 

はい!

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ふぅ、終わったー…卒業生代表の挨拶は…ちょっと泣きそうになっちゃった。

 

でも、まだ涙は取っておく。私にとっては、これからが本番なのだ!

 

ふぅー…

 

…いざっ!

 

「入らんのかよ」

 

「うやっ!?…先輩、私の後ろに立たないでくださいよ。先輩みたいな声出たじゃないですか」

 

「入り口で固まってるお前が悪い。というか、俺みたいな声って、あの『うやっ』て声か?普段からそんな声だしてたのか俺…」

 

「せっかくの門出でネガティブな事、あまり言いたくないんですけど、普段はもうちょっと気持ち悪い声だしてますね」

 

「嬉々として言ってるよ…普通は祝うところだろ、何で最後に傷をつけようとするの…」

 

「何ですか俺の事傷つけるのは今じゃなくてもいいということ暗に伝えていつでも会えるよアピールに繋げようとしてるんですか狙いは悪くないのですがタイミングが悪いのでやり直してください、ごめんなさい」

 

「…はいはい、ごめんなさい。入るぞー」

 

「くっ…無視ですか、このせんぱい…」

 

ガラガラガラ…

 

「うっす」

 

「こんにちはー」

 

通い慣れた部室に入ると、お二人はすでに座っていた。

 

「やっはろー!」

 

「こんにちは、一色さん、比企谷君。紅茶、すぐに淹れるわね」

 

「ありがとうございますぅ!」

 

「っす…」

 

「比企谷君、あなた礼の一つもまともに言えないのかしら?普段から誰にも感謝せず生きているのがバレバレよ」

 

「くっ、何故ばれた…だが、待て!俺は人に感謝するシーンがない。誰にも認識されていない俺が、誰かに世話してもらうなどできやしないだろう。つまり、俺ではなく社会が悪い!あー感謝したいのになー…」

 

「あら、ならば今ここで感謝なさい。美少女3人が、あなたと時間を共にするもの」

 

「び、美人て…ゆきのんに言われたら、何か照れるね…」

 

「わぁ結衣先輩顔赤っ!かわいいです!」

 

思わず抱きつこうとするが、結衣先輩に抱きつくとストレス溜まるんだよなー… 私には無い、さぞ立派な脂肪をお持ちだそうで…ケッ

 

…まぁ気持ちいいし、当分会えないから今日は触っておこう。

 

ダキッ!

 

「わっ、いろはちゃん!?びっくりしたー…」

 

「えへへ…ゆーいせーんぱーい♪」

 

ムフー。ちょっと幸せなのです。 さて、先輩の反応は…

 

「あぁ、確かにそれは感謝せんといかんな。この先、お前らみたいな美少女と集まるなんて機会無さそうだし」

 

「「「!!!??」」」

 

せ、先輩が素直に褒めた!?

 

やば、ニヤケるのが止まらない…じゃなくて! 今、チャンスじゃないか?言質、いくつとれるかな…

 

「もう、わかってるじゃないですかー!先輩♪ち・な・み・に…この中から未来の奥さんを選ぶとかもアリじゃないですかー?」

 

「一色さん!?」 「いろはちゃん!?」

 

「…それは別の話だろ。第一、俺の理想は高いしな」

 

「へー、せんぱい、今、狙ッテル人、イルンデスカ…?」ハイライトオフ

 

「いない…けど…」

 

「それは朗報ですね、先輩!ちなみに、この中だと誰が第一候補になりそうですかー?」

 

ビシッ! 結衣先輩が綺麗に手をあげる。積極的だなぁ…というかこの人、こんなにあざとかったっけ? いや、考えないでおこう。天然だろうし。 しかも先輩、見てないし。

 

「にゃ、なにを、言ってるのかしら、一色さん…この男に選ばれても、少ししか嬉しくないのだけれど」

 

照れ隠し下手かよ。呼び方も情緒も安定していないな、この隠れポンコツゆきのん。はっきり言ってめちゃくちゃ可愛いです。 綺麗に可愛いって反則ですよ…

 

「…一色、これ解答は強制か?」

 

「いえいえー、そんなことはありません!ただ、この学校で会えるのは今日で最後でしょう。ついうっかり、思い出話をしてしまいそうですねぇ…」

 

「思い出…ハッ!…くそ、一色のやつ姑息だな…」

 

「先輩、聞こえてまーす!で、どうしますか?」

 

「はぁ、わかった言うよ。…そうだな、この中なら一色かな」

 

「「!!!!??」」

 

「…ふぇ!?わ、私ですか!?」

 

才女の雪乃先輩でも、聖女の結衣先輩でもなく!? すぐにでも泣きそうなくらい嬉しいんですけど、この場ではちょっとなぁ…お二人も呆然としてるし

 

「ち、ちなみに理由を…お聞きしても…?」

 

「あぁ、まず雪ノ下は許嫁とか出てきそうだから、第一に候補は外れたな」

 

うわ、また微妙に諦めきれない理由だな… 雪乃先輩も今日一複雑な表情してるし

 

「で、二人が残ったわけだが、そこからは消去法だ。俺の夢は養ってもらうこと。つまり、大企業勤めか公務員が好ましい。大学なら…そうだな、S大生あたりになるのか?この時点で由比ヶ浜はアウトだ」

 

「良かった…頭が悪いっていうだけで好み云々じゃないんだね…なら、まだ挽回はできそう!よしっ」

 

結衣先輩?可愛いんですけど、本人目の前にして、よくできますね。メンタル鋼ですか。

 

「で、残ったのが一色ってわけだ。納得したか?」

 

まさか最後に、嬉しくなる言葉を貰えるとは思っていなかった。これが卒業式マジックというやつなのか… 私、感激です…

 

 

しかし!

 

私は私で一味違いますよ!今日は特別大感謝されたいデーなのです!

 

「ふむ…でも先輩?現実的な部分の考察は良くできていると思いますが、まだ足りない部分もありますよね?」

 

「…と、いうと?」ヒキッ

 

ひき笑い…警戒してますねー。でも一歩、遅いですね。尋ねた時点で終わってます。

 

「先輩の好みとか、先輩との…あ、相性とか…人間的な部分が何も出てきてません!」

 

「…確かに、そうか」

 

「はい、なので現実部門では一位でも、それだけで妻になれるとは限りません。なので先輩の好みを添えて、採点し直しです!」

 

「まじか…」

 

ふふふ…悩んでください。今回はどう転んでも私に得があります!

 

 

 

そう、私はこの卒業式を利用して、先輩方を応援しようと企んでいる。 この奉仕部から、私は感謝しきれないくらいの贈り物を貰いました。 生徒会長の件、恋愛相談、勉強、プライベート…何の輝きもなかった学生生活に色をつけてくれた。そんな先輩方に、最後だけでもお礼がしたかった。

 

私は…私の熱は、ひっそりと胸にしまおう。 大好きな先輩達が輝くように、そう覚悟を決めて準備をしてきた。

 

お二人に有利となる情報を、先輩から聞き出す!今日の目標と覚悟をしっかり確認して、ようやく待った先輩の言葉はーーー

 

「ふむ、それでも一色かな」

 

 

青色。私の世界は凍りついた。

 

 

…待って言葉が、出ない……

 

代わりに目から涙が溢れそうだ。

 

 

 

チガウ……チガウ……

 

私が求めた言葉じゃない! ここで喜んでは、駄目!

 

「…意外に高い評価で驚きです、先輩。ちなみに理由を聞いても?」

 

「…あくまで、俺だけの基準だぞ…。ここにいる三人は等しく『人としての』評価が高い」

 

そこまで言うと先輩は深呼吸をして続けた。

 

「由比ヶ浜は自分を汚いと言っていた。だが、普段から周囲を意識し、繋ぎ、気遣う姿を見ていると、決して汚くはない。人は、自分の幸せだけを願うのが普通だが、由比ヶ浜は周りの幸せも願える。可愛くて優しいやつだ」

 

「雪ノ下は自分が正しいと思える姿を体現しようとしている。毅然とし、清く正しく生きる様は傲慢に見えるが、俺にはとても気高く美しく見える。負けず嫌いが過ぎるのも、自分と自分が大切にしているものさえ失わなければ…別に良いんじゃないか?」

 

うわ、うわぁ… 顔暑い!普段の先輩からは考えられないほどドストレートな称賛の嵐!

 

今のところ関係なかったから顔が暑いだけで済んでるけど… はっ、そうだ!二人は無事か……?

 

「気高く…美しい…そんな…照れるわ…」ウットリ

 

「かわっ…!ひ、ひっきぃ、そんなこと思ってくれてたんだ…エヘ、エヘヘヘヘへ…」プシュー…

 

駄目だ、完全にトリップしてますね。直撃は危険だ。私の覚悟が揺らげば、この作戦はできなくなる…

 

先輩たちへの恩義、自分の欲望… これを天秤にかければ、普通は自分に傾く。

 

当然だ、私も欲しいものは、欲しいから。 それでも『この三人』となると話は別だ。 だって、私の人生を変えるきっかけをくれた人たちだから… 自分の欲望は、いずれ別の形で満たせるだろう。でも、このお三方に恩を返せるのは今日だけかもしれない!

 

だから必死に、涙も苦悩も押し殺してきたのに それなのに…

 

「一色は…」

 

くっ、ついに来たかっ…! 聞きたいけど聴きたくない… 乙女かよ!

 

「一色は…そうだな、人一倍努力できる強い人間だ。妬むやつはいるかもしれないが、自分を良く見せることも、周りを使うことも、一色の努力の賜物だと俺は思う。」

 

「ぁひ、ありがとう… ございまう…」カァァァ

 

恥っずかし!嬉し!何これ、やだ本当… ぐうぅぅ…悔しいけど、捻デレはやっぱり最高ですね。

 

これも今日で最後かぁ… うん、覚悟は、まだ、解けてないかな。

 

どう誘導していくべきかなぁ… 人間的な部分は一律で、現実的な部分で競りかったってことかな? なら、難しいな…えーっと、じゃあ…

 

「それに、一色の事は甘やかしたくなる。普段は見せないようにしてるが、責任感が強すぎてな、それも可愛いんだが」

 

…!追撃!?

 

やばい、何か嫌な予感がしてr…

 

「だから、大変な事とか、大事な部分に関しては、自分で抱えてしまうことになるんだろうな。だからもし身近な人になれたら…支えてあげたいかな…」

 

あぁ、あぁ… 焦燥感が生まれる。見透かされている事がわかる度、徐々に覚悟が揺らいでいく。私は、強くないから。

 

今の先輩の言葉は、きっと、明確に私の覚悟を優しく解こうとしている。

 

だめ、それだけはーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我慢しなくていい、俺には、ぶつかってこいって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

欲望を押さえつけていた覚悟という鎖が 容易く、音をたてて壊れた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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ひねくれいろは にっ!

 

 

 

鎖が解き放たれて、自由になった心は

それはそれは軽く、

持ち主の意志など関係なく、動き回る。

 

 

 

…なんて、詩人めいた事を言っても先輩は頭から離れてくれなくてー

 

(こんな気持ち、知らないままなら幸せだったのかなぁ…)

 

あぁ駄目、今日の主役は先輩たち。

私は別れを惜しみつつ送り出す為に来たのに

 

本当に、憎い。この先輩はー

だから、好き。この先輩がー

 

 

 

私の胸中は穏やかではないもので満たされようとしていた……

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー!私、ヒッキーのこと大好きだよ!」

 

穏やかじゃない私の胸中とは裏腹に、部室は静寂に包まれていた。そんな中、結衣先輩が急に大声を上げた。

 

…羨ましいな

 

「ゆ、由比ヶ浜さん?急にどうしたんだ?今日はそういうの無しな雰囲気なんじゃないの?ハブられてるの俺だけ?」

 

「ヒッキーのせい!あんなに嬉しいこと言われたら、さ…我慢する身にもなってよ、ばか!」

 

「罵倒してるのか褒めてるのかどっちだよ…」

 

「ルール違反、由比ヶ浜さんは一回ペナルティね」

 

「えっ!?ゆきのん、ひどい!」

 

……なんか、私以外の三人が通じあってる

拗ねてもいいかな?

 

「はぁ…何か勘違いしてるだろ、一色。あとで言おうと思ってたんだが二次会用意してんだよ。お前も含めて、世話になった人呼んでな。まぁそいつらにとっては一次会になるわけだが…それまで色恋沙汰はNG、全員がいる前で宣言してこそ…」

 

 

「…本物ってことですね、先輩」ボソッ

 

「…まぁ、ソウイコトダ……」

 

「ん?というか、私は大丈夫ですか?割りとNGな話題ふってますよね?」

 

「知らないやつにNGは流石に厳しいだろ。」

 

「それもそうですね。ではでは、次からは気を付けますねー」

 

そうか…もしかしたら、公開告白とか考えてるのかな?この先輩たち。

 

だとしたら、私が頑張る必要もないよね。

私は私で楽しもう!

 

「ちなみに、ペナルティって何をするんですかー?」

 

「そういえば、内容は聞いていないな。確か、雪ノ下が考えてきてるんだったか?」

 

「ええ、そうよ。さっそく一枚引いてもらおうかしら」

 

雪乃先輩が鞄からカードを取り出す。

たかが罰ゲームの小道具なのに、トランプみたいな素材で作られている。

 

「雪乃先輩、本気で作りすぎてません?」

 

「興が乗ったのよ。姉さんに言ったら大学の友人を紹介してくれたの。私だけだと、どうしても罰ゲームの内容が物理に寄ったのよ。それでお願いしたら、先輩方と盛り上がっちゃって…」

 

業者に依頼するまでになったと…

というか物理的な罰ゲームってなんですか?

雪乃先輩、将来的にDVしたりしないですよね…

 

「あら、普段は精神的な方が好きよ?あなたも受けてみる…?」

 

ゾクッ!?

 

恐る恐る振り向くと、目が笑っていない雪乃先輩がいた。だめ、表情だけで堕ちそう…

 

「ひぇっ…ど、どうしたんですか、雪乃先輩…突然…」ガクガク…

 

「えぇ何でかしら?私、別にDVしそうとか思われた事に腹をたててはいないのだけれど」

 

怖いっ、やられる!?

こんなときは先輩に限る!

 

「八幡先輩助けてください。助けてくれたら…その…何でもしてあげます…よ?」

 

「ゴクリッ…なん、でも…?」

 

「はい…好きに、してください…」ウルウル

 

ふっ、ちょろいな

 

「はい一色、アウトだな。不純異性交遊にひっかかりそうな言動をしたためペナルティだ」シラー

 

んまっ!?

いたいけな後輩に容赦ないカウンターですか?

 

あ、でも顔は赤い…ふふっ、可愛い…

 

「えぇ、そうね。では、由比ヶ浜さん、一色さん、カードを引いてちょうだい」

 

ぐっ…引くしかないんですね。

このストレスは二次会とやらで発散させてもらいますよ!

 

悪態をつきながらも、指示された通りカードから一枚めくった…

 

「…へっ!?何ですかこれ…」

 

「ゆきのぉん…ほんとに、これやるの…?私にさせるの…?」

 

 

 

一色いろはが引いたカード

『近くにいる異性に壁ドンし、身体を密着させて愛を耳つぶ』

 

由比ヶ浜結衣が引いたカード

『好きな異性を指名し、あすなろ抱き5分(引いた人が抱きしめてね)』

 

 

 

(は、はぁぁぁぁ!?みみみ密着!?先輩にっ!?しかも愛を耳元で呟くって…えぇ!?)

 

(うぅ…ヒッキーを後ろから抱きしめるのかぁ…胸、当たっちゃうなぁ…引かれないかなぁ…)

 

 

「さぁ、どちらから行くのかしら?両方とも異性が絡むから、比企谷君お相手お願いね」

 

「まて、俺のメンタルが持たないんだが…」

 

「あら、なら他の男性を連れてきてもらえるかしら?あなたが望むなら」

 

ーっえ…?

うわ、先輩の前で他の人に愛囁くんですか?

嫌です、血ヘド吐きそうです。

でも先輩ならやりかねない…阻止する方法は結衣先輩を利用する!というか、すでに結衣先輩動いてる!はっやっ!

 

「…そこまで嫌じゃないから、別に探しに行かなくていいだろ…二回しかないし、お前らなら平気だ…たぶん」

 

 

 

わぁーわぁー、何ですか、この男!

今日に限って素敵すぎるでしょ!

間違えた!素直すぎるでしょ!

 

うぅ…顔あつい…

 

ダキッ!ムギュ…

「えへへ…嬉しいな、ヒッキーありがと…」

 

「っむゅ…あ、あぁ…というかいきなり抱きつくな…準備ができていない…」

 

はっ!顔をあげると、結衣先輩は既にあすなろしてた。

 

いいなぁ、位置変わりたいなぁ…

結衣先輩の胸が背中に押し付けられるのって、どんな感じなんだろう?知りたい。

 

……後でお願いしよう。

 

そんなことを考えていると、雪乃先輩がタイムを計りだす。

 

「5分間ね。ちなみに、比企谷君もペナルティよ。異性3名を口説くなんて、節操ないわね」

クスクス…

 

まさに秀才!

最初から泥試合になると見て、序盤は口を出さなかった雪乃先輩が、ここぞとばかりに動き出した!

そして、先輩にカードを3枚おしつける…ん?3枚も?

 

「…多くないか?」

 

「あら、言わなかったかしら?ここにいる女性を口説いたのだと…ここにいる女性は3人…ならペナルティも3回分だわ」

 

「くっ、ルール上は正しいな…わかった。だが、今みたいに異性とか相手がいるカードを引いた場合、1人を選んで実行することにしてくれ。3人ずつやるのはペナルティが重すぎる」

 

「えぇ、いいわよ。ただし同じタイミングでペナルティが発生した場合、個人を指定できる回数は対象となるカードに依存する事も追加ね」

 

「…例えばだが、今回俺がカードを引いていくなかで、全てに相手を指定する必要があった場合、雪ノ下を2回以上指定できないということか」

 

「その通りよ。不平等さを減らすためにね」

 

「くっ…了解…」

 

諦めはやっ!……でも、これ普通の男子なら喜ぶところじゃないのかなぁ?

 

「……ムゥ」

 

?おや、結衣先輩の様子が…?

 

「…エィ」ムギュ

 

「ぬぁ!?ゆ、ゆいが、はまさん!?」

 

先輩の頭半分、結衣先輩に食べられた!

 

「グググ…」

 

雪乃先輩は目から血を流しそうな勢いで睨んでる。かくいう私も心中穏やかではないんですけどね!

 

「ふ…フフフ、ヒッキーどう?キモチイイ…?」

 

「…あぁ…」ポー…

 

先輩、昇天しかけてません!?

…はっ、3人とも意識ここにあらず…

ということは、次に先輩が引くカードをいじれるのでは…

 

 

 

 

……ゴクリッ

 

へ、変なのが来たら嫌だからね…

確認するだけ…

 

ペラッ

 

『異性とディープキス』

 

……ペラッ

 

『異性に胸を1分間触らせる』

 

……………ペラッ

 

『2人を指名し、3分間イチャイチャさせる指令を出す。拒否権はなし。イチャイチャしているかは指示を出した人が判断する』

 

……………フゥ

 

いや

 

いいんだよ?

 

 

 

いいんだけどさぁ…

 

 

 

 

 

王様ゲームかよっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思ったより欲望に忠実な札に、私の恥ずかしさは消失していた。

 

あれだ、緊張しているときに自分よりも焦っている人がいたら妙に冷静になる感じに似ている。

 

「はい、5分間たったわ。今すぐ出て…離れなさい」

 

「意外に足りないなぁ…もっと…シタイ…」スポッ

 

「はっ!………俺は、何を…」ハァ…ハァ…

 

…格差社会って、どうにかならないかなぁ?

 

そんなことを考えていると、いよいよ私の番がきた。

 

えっと、先輩を壁ドンして、耳元で囁けばいいんだよね…

 

「ではでは、先輩?壁際まで移動してください」

 

「………」ポー

 

ムッ、次私の番なのに!意識ここにあらずじゃないですか!

 

…面白くないなぁ

 

「先輩っ!」グイッ

 

「おっ、おぉ!?」ダンッ

 

手近にあった机に先輩を押し倒す。

 

「先輩……?私だって、先輩の事………」コゴエ

 

「いっ、しき……今はヤバい…」コゴエ

 

「あはっ、ヤバいですねぇ……んっ、私の太ももに何か、かたぁい…モ・ノ当たってますよ………?」コゴエ

 

「それはベルトだ……!って、そうじゃなくてっ…」コゴエ

 

「ね?先輩……」

 

「………」ゴクリッ

 

「……だいすき」

 

 

 

 

 



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ひねくれいろは さん!

過去から現在に戻ってます!


 

 

 

なつかしいなぁ……確か、あのあとは先輩が罰ゲームして、私たち三人はトテモいい気分で終えたんだっけ。

 

 

んー!雪乃先輩と結衣先輩は元気かなぁ?

二人とも、今は恋敵じゃないから安心して先輩を狙いにいけるし…

 

ま、せっかくS大に入ったんだ。

得れるものは多いに越したことはない。まずはサークルとか、じんみゃ…友人作りから始めていこう。

 

「ねぇ、そこの君!かわいいねー、どこからきたの?何学部?」

 

でたー…軽く誉めながら情報引き出してくる『俺、君に興味あるんだ』アピール!

顔は悪くないけど、言い慣れてる様が『どう?他のやつと俺は違うぜ』って言ってる感じがして気持ち悪い。

 

「………」スタスタ…

 

「……あ、れ?」

 

ふふふ…三十六計逃げるに如かず……

どうですか、この戦法!

以前も似たようなことがあって、やんわりと断ったことがありました。そのときは後から女子A~Cにイチャモンを付けられて遺憾を覚えたことがあります。

 

なら、初めから無かったことにすれば誰も文句は言わないでしょう!つまり私なんぞに話しかけないでくださいという強い意志をもって…

 

「おい、急に駆け出して…飯行くんだろ?」

 

「あぁ、すまない八幡。普段、お前が話してくれる子のイメージが似てて…思わず」

 

 

ピクリッ

 

はち、まん…?

 

それに、このやるせないボイス……

 

ハッ!

 

 

 

 

「ん…?おぉ、久しぶりだな、いろ…一色」

 

 

 

先輩だっ!

 

 

 

 

 

……じゃなくて!

今、さらっと私の名前言おうとしてなかった?

……確認したいけど、ストレートに質問すると私が意識してるみたいじゃない!それは嫌!

でもそれ以外の方法が……はっ

 

「お久しぶりです。ていうか、何ですか先輩さらっと名前呼び掛けましたけど知らない間に周囲に名前で呼びたいアピールをした挙げ句本人を目の前にしてテンション上がって口から出ちゃった感じですか、ときめきかけましたけど後3回くらい呼んでから口説いてくださいごめんなさい!!」ハァ…ゼェ…

 

「お、おぉ…すげぇマシンガン…」

 

「これはこいつのお家芸だ。というか、いろはは何してるんだ、こんなところで?」

 

っ!また!また言ったよ!?

しかも今度は包み隠さずストレート!?

 

「わ、私もS大受かったんで、今日は…下見に…マタナマエ、ヨンデクレタ…」

 

「へぇ…やるじゃねぇか、いろは」ポンポン

 

あ!た!ま!

いきなり頭ポンポンしてきましたよ!この人!

デリカシー無さすぎるでしょ!先輩だからいいですけどぉ!

頭の中身ポップコーンかってくらいハジけてますね!

 

「……うぅ…先輩…あたま…ハズカシィデス……」

 

「すまん、つい久しぶりに会えて嬉しくてな。何やかんやで、お前が一番かわいかったし」

 

「かわっ!?」カァァァ

 

顔あっつ!心臓うるさっ!

この人、本当に比企谷八幡先輩??

 

違う……なんか、ちがうけど良い!

でも嫌!もう離れたい!

 

「ーーっ!シツレイシマスマタアシタ!」ダッ

 

「あ、あぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なに?

 

何なのあの素直すぎる先輩、卑怯でしょ……

前までは何処と無く頼りなく、でもいざという時は頼りになる、ひねくれぼっちだった。

 

でも今はザ・リア充みたい。さして仲良くないのに互いに名前で呼びあい、平日は夜通し飲んでは女の子を持ち帰って、休日は彼女とイチャコラ…して…

 

はっ!もしかして先輩、彼女いるのでは?

……そう考えたら色々と辻褄が合う。元々リア充な明るく元気な彼女に夜な夜な引きずり回され、半年も色んな経験をつめば、ある程度はリア充になれるだろう。

もう、先輩も色んな人と寝たのかな…リア充だし…

 

 

……あーあ…終わったのかなぁ…私の初恋。

 

これから先、どうしよう……ま、歩きながら考えますか…

 

私はとりあえず家に帰ろうと一歩ふみだーー

 

「あぶねぇ!いろは!」グィッギュッ

 

「くふっ!?」

 

ブゥゥン…!

 

目の前を車が横切る。

危なかった、誰かが後ろから引き寄せてくれなければ、次に目が覚めるとしてもベッドの上だっただろう。

 

「んぅっ!?」

 

「…いっ、しき…一色…!」ギュウウウウ

 

ちょ、くるしっー!

何この人、助けてくれたのは嬉しいけど、力強い!しかもお腹から上に力がきてるから、ちょっと胸に当たりそう!実は変態か?

 

「ンゥ……んぁ……ふっ…く、くるし、で、す」

 

「…あ、す、すまん……つい…」

 

つい、で人を抱き潰さないでください!

これ、喉にお餅とか詰まったときにやるやつですよね?

しかも抱きしめるのは解放してくれないし、なにこの変態!

 

…って、この声…

 

「へんた………先輩?」ハァ…ハァ…

 

「おい、今なんで別の言いかけたんだ?」

 

おっと本音が混じりましたね。

というか本当に先輩なんだ…

 

「あ、あぅ…ありがとうございます…その、そろそろ離してくれると……」

 

「…わかった。ただ、今の一色は放っておけん。家まで送るぞ。それが条件だ。」

 

これは!送り狼!?

わ、私…食べられちゃうのかな!?

そりゃあ先輩ってわかった瞬間にギュッてされてるのは気持ち良…安心したけどさ

 

でも…でも…順序はしっかりしたいし、何より不特定多数の人と同じは嫌だ。私は本物しか要らない!

 

「ふぇ!?……せ、せん、ぱい…それって…その…」

 

だめだ!上手い切り返しができないよぉ…

この1年、女子としか喋ってない弊害がでてる。どうしよう…

 

…はっ!これだ

 

「その……彼女さん、とか……心配するんじゃないですか…?」ズキン

 

言ってて凄い胸が苦しい。でも、どうですか!?この上目遣い!

これなら、彼女の有無によって柔軟に行動できる!断ることもできれば、家に連れ込んで誘惑することもできるのだ!我ながら完璧…

 

「今はお前が一番大事だろ」ギュッ

 

「……へ、へ?」カァァァ

 

コレ、ドッチ!?わかんない!また抱き締めた!

でも何か嬉しい……けど……

 

優しい先輩だし、私だけじゃないんだろうなぁ…

 

……何か、素直に信じれない…ひどく疑って、こんなんじゃ本物って呼べない気がする……

 

「…せんぱい?私は本当に大丈夫ですよ。ちょっと、初日だから緊張してて、疲れてただけです。帰るまで気を引き締めれば全然いけます帰れます、離して、ください…」

 

「……はぁ、わかったよ」パッ…

 

「ありがとう、ございます。すみません、わがまま言っちゃって…」

 

「まったくだ……まぁ、お前がワガママなんてのは、俺がよく知ってる」ポン

 

「なんですか私の事何でも知ってるし頑張ってるのもわかってるから俺にだけは素直になれよって言いたいんですか?さっきから抱きしめたり頭ポンポンとかスキンシップが激しすぎるのでそういうのはしっかり告白してからにしてください、ごめんなさい!」

 

「……くくっ、久しぶりだな、それも…ま、悪かったよ」

 

そう言って頬に手を添えて、先輩が顔を近づけてくる。

 

「へ、せんぱ…?」

 

「ま、これからもよろしくな?俺に触られるの慣れてくれ…」小声

 

「あっ…うぅ…」

 

耳元……甘く低い声で囁かれて、私の膝が一瞬カクッてなる。

頭がクラクラしてきた、もう、帰らなければやられる!

 

「ではさよならです!」ダッ!

 

「あいよ、また明日」

 

駆け足気味に歩きだす。今度は車が来てないことを確信して…次、引かれそうになったら私はこの人に抱かれる、間違いなく。

 

 

 

そうして、5分ほど歩くと、無事に家にたどり着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

ーーーくぅぅぅ!

 

 

 

私の事知ってるって!先輩に言われた!

抱きしめてくれて、囁きも甘くて…

 

嬉しかったのに!嬉しかったのに!

 

 

 

帰ってきてから、私はベッドの上で1人で悶えていた。

 

S大から徒歩10分くらいのところにある、1LDKのマンション…そこの最上階に私の家がある。

この大学は県外からも優秀な学生を集めたいのか、住宅補助がある。なんと、家賃の3/4だ。

 

それゆえに、普通なら手が出せないような賃貸物件を借りることもできるのだ。

オートロックも付いてて、お部屋も広い。部屋もリビングと寝室があるし、シャンプードレッサーや浴室乾燥機まである。文句の付け所が言ない新築物件だ。

 

しかも、防音もしっかりしている。それ故に呻きながら悶えることもできるのだ。

 

「んぅぅぅ!私……素直に先輩を信じて送ってきてもらえれば……今頃はここでせんぱいと…」

 

…はぁ、今日は疲れた。

眠くなってきたし、お風呂入って寝よう。

 

 

 

風呂上がり

何の気なしにスマホを見ると、先輩から着信とメールが一件ずつ入っていた。

 

一つ、息をついて私はベッドに入った。

明日見よう。

 

別に頬が熱いとか、舞い上がってる時に見たら勘違いするから起きてからに見るとか、そういうことじゃあない。

 

私は疲れたの!

 

 

 

 

 

 

 



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ひねくれいろは よん!

 

 

【一色家】

 

 

 

 

 

はぁーーー!わぁーーー!

 

 

先輩のせいで遅刻した!

別にドキドキしすぎて寝れなかったとかじゃないけど……でも先輩のせい!

 

これを利用して先輩をドキドキさせる?

でも、どう説明しよう?

んー……

 

『せんぱいのせいで、ドキドキして寝れませんでした……責任とって、添い寝してくれませんか……?』ウルウル

 

 

 

ふふふ……良いではないか……

っあ!?でも、そんなことすると

 

『そんなに俺の事、意識してたのか?ふっ、いいぞ、寝てやるよ……』グィッ

 

 

っあ、だめ先輩…意外に強引……

 

じゃなくてっ!

私から好きって言ってるようなもんじゃないの!

 

だめ!私は男を手玉にとってなんぼの人間!

故に『私から行ってる』事態はナンセンス!

 

……でも、どうなんだろうなー…

今の先輩、モテそうだしな。

そう…例えるなら、毒が無いフグとか、骨がない川魚とか?

細々した鬱陶しさがない感じがするんだよねぇ…

 

むぅぅ……先輩の良さはわかりにくいところがミソ…知る人ぞ知る名店であってほしい。

 

 

はぁ……こうしてる間にも、講義がせまってる。

早めに支度して、化粧してー……

 

行くか、うん。

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

【S大学】

 

「おはよー」

 

「「「おはよう、いろはさーん!」」」

 

 

たはは…ほんと、どうでもいい存在は軽いなぁ…

男どもは機嫌とりしかしてこないし、どことなく嘘っぽい。なんというか、身体と顔を見てきてるんだよなぁ…私を見てないって表現すれば良いのかな?

 

美貌に恵まれた人と寝たとか、かなり経験が多いとか…そりゃ、そういったことに興味はあるけど、男子に興味がわかない。

 

「……ふぅ」

 

「どうしたの?元気無いねー?」

 

「保健室いく?それとも休憩所いく?」

 

「休憩所ってどこやねーん」ケラケラ

 

あぁうるさいイラッてくるなぁ……!

 

「……」プイッ

 

「……あ?」

 

「はっ、ふられてやんのー」

 

スタスタ…

 

とっとと講義室に入る。

あ、友達いた。

 

「あっ、いろはー!はよ!」

 

「おはよー!席隣いい?」

 

「もちっ!……どした?寝不足?」

 

「…ちょっとねー……」

 

「ほーん…まぁほどほどにね。ところで聞いた!?2年にイケてる先輩がいるって!」

 

「ふーん…どんなん?」

 

「一人は、金髪で美形!明るい雰囲気と話術で目でも耳でも女の子を楽しませてくれる……【身近にいるバーテンダー】その名もユウ先輩!」

 

「何その紹介……」

 

「もう一人は、一見地味だけど良く見ると顔が整ってる黒髪ボーイ!底抜けの優しさから、一度はまると抜け出せない……通称【恋愛沼】その名も……」

 

いやーな予感がする……

 

「ーーハチマン先輩!」

 

あのやろぉ、大学に入ってリア充になりやがりましたね!?

沼って!?言い得て妙なりですけど、何かドロドロしてそうで嫌だ!先輩成分が入って…何か嫌だ!

 

 

 

ぐぬぬ…心配してた事態がおきてた。

進化した先輩はモテる!

 

どうすればいいんだろう…

 

とりあえず、授業受けとこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

昼休み

 

 

【食堂】

 

「ングング……いろは、サークル決めたん?」

 

「ンム…いんや、まだぁ…」

 

あれから講義を受け終えた私は友達と食堂に来ていた。とりあえず、お腹は満たさないとね…

 

「おう、いろは」

 

「おはようさん、一色さん!」

 

はぁ…また機嫌とりーズかな?

 

……って、この声は!?

 

「ンム!?せ、先輩!?」

 

やっぱり、比企谷先輩!っていうか名前!

しれっと貫き通す気マンマンだ!

 

「こ、こんにちは先輩方…」

 

「へぇ!?い、いろは!?この人たちって…まさか、ユウハチコンビ!?」

 

何その呼び名…

 

「おっ、知っててくれたんだー!嬉しいねぇ…一色さんの友達?」

 

「はい!……」

 

向こう盛り上がってるなぁ…良く見れば、昨日話しかけてくれた金髪先輩だ。ふーん…ユウ先輩って言うんだ…

 

「お前、大丈夫か?」クイッ

 

「ぃえぃ!?」

 

顎、つかまれて…この先輩はぁ!?

 

「ペイッ!乙女の柔肌に気軽に触れないでください!」ブンッ

 

「ペイッて…口に出して言うなよ…」

 

「ククク…ハチ、苦戦してんなぁ…」

 

「あ、えとユウ、先輩でしたか?昨日はすみませんでした」ペコリ

 

「おぉおぉ、こちらこらこそ、昨日はすまねぇな。無事に帰れたか?」

 

「はい、おかげさまで。お気遣いありがとうございます!」

 

「ハチ……良い子見つけたな、ほんとに」ボソッ

 

「まったくだ……あげねぇぞ?」ボソッ

 

「わぁってるって……独占欲すげぇな……」ボソッ

 

あぅ…先輩同士で何話してるんだろ?

 

「……」ジー

 

「な、なんですか先輩…?」

 

「やっぱり、顔色が悪いな。まだ授業あるのか?」

 

の、覗き込まれて…顔近っ

 

「ひ、ひへ……何も、ないぇす……」カァァァ

 

「今日は送る。それとも遠ければ俺んちに寄るぞ。どうする?」

 

「ふぇ…?」

 

ナニイッテルノ?コノセンパイ?

でも、私の家片付けてたっけ…?

だめだ、頭がふらふらしてきたや…

 

「私…の、へや……だ……め」

 

「わかった。なら、俺んちに寄るぞ。意識がボンヤリしてるだろうし、文句なら後で聞くからな」ダキッ

 

「…あぃ」

 

体重を先輩に預けて歩きだす。

眠たいなぁ。あ、荷物とか……持ってくれた。

 

「しばらくの辛抱な」

 

「ぁぃ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、わぁ……これが沼の入り口ですか…?」

 

「い、いや……俺もここまで献身的なハチは初めて見る。普段も人は助けるが、家まで送ったりとかは絶対にしない。ましてや行き先がハチの家っていう選択肢は、俺ですらない」

 

「ってことは…両想い?」

 

「だろうな。ハチはわかりやすいが、元々ネガティブだから、そういう考えはないんだよなぁ…頑張って振り向かそうとしてるって状態だ」

 

「ふぅん…いろははいろはで、ハチマン先輩とそれ以外って感じで態度が顕著なんですよねぇ。聞いてるこっちが恥ずかしくなるほど、先輩の好きなところ言ってきますし」フゥ

 

「…君も苦労してるね、お互い様だ」ニコッ

 

「そうですねー」

 

「こりゃハチと絡む時間減るかもな……良かったら今からカラオケとか行かない?」

 

「え!行きたいです!いろはといく予定だったんですよねー」

 

スタスタ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

ガチャリ

 

「…っと、いろは、ベッドに乗せるぞ」

 

「ふぃ……ふぅ」トスン

 

「…軽いな、しっかり食べてんのか?ったく……」

 

何か、良いにおいする……

眠たくなって……きた……

 

あ…頭暖かい…駄目だ、意識、が……

 

…………スー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

「んむ……ふぁぁ…」グゥゥ…

 

目が覚めた。けど、何だろう…この違和感?

良い睡眠とれたけど、いつ寝たっけ?

 

と、いうか……

 

ここどこだ!?

 

周りを見渡す……殺風景で男の部屋って感じがする。いや、先輩の部屋以外入ったことないけど…

 

でも良いにおいがしたってのは覚えてる。

友達が運んでくれてたのかな?

 

ガチャ

 

意識がはっとなる。そして、身構える…

 

(ロクでもないやつが来たら、雪乃先輩に教わった護身術で何とかするしか……携帯はポケットにあったし、大丈夫かな…)

 

「お、いろは起きたのか」

 

せん!ぱい!

 

焦ったー!違う男の人だったらどうしようかと思いましたよー!

 

心置きなく、叫べるね!

 

「な、な、な、何で!上脱いでるんですかーーー!?」

 

 

私の気苦労は続きそうだ…

 

 

 

 

 

 

 



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ひねくれいろは ごー!

 

【比企谷宅】

 

 

「な、な、な、何で!上脱いでるんですかーーー!?」

 

目が覚めて声がしたので振り替えると、そこには先輩が上半身裸で牛乳を飲んでいた。

 

まさか…私、やられた!?

その牛乳は勝者の美酒ってことですか…!?

 

くそっ、なんで私覚えてないの……

これをネタにして、先輩への攻略を進めることができたかもしれないのに…

 

「ん?あぁ、ちょっと汗かいたんでな。しばらく起きないと思って、風呂入ってたんだよ。すまん、一人暮らしの癖でな。下は脱衣所に持っていってたんだが……」

 

………

 

知ってましたよー。わたし、先輩がそんなことする人って思ってませんし。むしろヘタレなんで、手を出してたら驚きが勝ちます。

…チッ

 

「そうですか、てっきり襲われるのかと…ケッ」

 

「態度と言葉が噛み合ってないんだが…?心配してたんだよね?なんで悪態ついてんの?」

 

「ま、ヘタレな先輩には手も出せないでしょーね!付き合っても3ヶ月はプラトニックな交際してそうです。で、ようやくキスをして、そこから先は更に3ヶ月」ケラケラ

 

「ふーん…」スタスタ

 

ん?嘲笑ってたら、何か近づいてきた。

表情見えないなぁ…うつ向いてるし。

 

 

……嫌な予感がしてきた

 

 

「せ、先輩?今のは…「ヘタレじゃないって言ったら、どうする?」

 

「へっ?」アゴクイッ

 

ちっかい!

昨日から何なんですかこの人は!?

 

「………」

 

「しぇ……んぱ……ぃ?」

 

く、く、くる…どうするんだっけ?目を閉じれば良かったんだっけ……

あぅぅ……!んっ!

 

ピトッ

 

「ひゅう…!?」

 

ちらっと目をあけると、私の頬と先輩の頬が重なってた。もちろん、先輩の表情なんて見えないわけで…

 

「いろは…」ボソッ

 

「ふっ……!?……ぁい…?」ピクッ

 

「……他の男に、こういうこと、やってないよな……?」

 

「ひぅ……ひ、して、ません……」ビク…

 

謝るから耳元で囁かないで…

 

ぐっ…でも、やられっぱなしで終わりたくない……

 

……っは!

 

「せ…んぱい?こういうことって……なんですか?」

 

ふはは、慌てふためくがよい!

 

「…ん?教えてほしいのか……?いいぞ」スルッ

 

「ひゃぃ…!?ち、ちょっ……」ピクッ

 

しまった、もう先輩は昔の先輩じゃないんだった!

隙を見せると、私が食べられてしまう……!

 

でも、足から触ってくるんだ……何か、やらしい…

 

「ちょ……ごめ、んっ…なさ、い……せ、んぱっ…!」ピクッピクッ

 

「ん?教えてほしいんだろ?ほら、力抜け…」

 

んんんんん!

謝ります!謝ればいいんでしょ!?

 

というか太ももまで上がって来てるし……あ!お腹!逆の手で服のなかに手を入れて…そこはだめ!

 

「しぇ、せんぱぁっ……ぃぃ……なんでも、しますから、ゆるしへ……」ガクガク…

 

「…ん?今、なんて?」ピタッ

 

と、止めてくれた!チャンス!

 

「な、なんでもしゅ、するから……や、やめて、くださいって、言った、んですよ……」ハァ……ハァ……

 

…ここまで言えば、今の先輩なら許してくれるはずですよね……

 

「へぇ……なんでも、ねぇ…」

 

 

 

 

 

はっ!

 

瞬間、見上げると先輩が無表情で私を見つめていた。

つ、冷たい…というより、人を刺すような目付き……

 

これは、失望?それとも意志が強いだけ?

 

「……」ゴクリッ

 

思わず、喉が震える。

どうしようもなく喉が渇いてくる。

こんな目、見たことない……

 

「一色」

 

あ、これ駄目だったパターンだ。

名字呼び……先輩はこう見えて特別な存在を大切にしまくるタイプだ。小町ちゃん然り、奉仕部然り…それは態度や言動に如実に表れる。

 

つまり、私は先輩の何かに引っ掛かったのだろう……ネガティブな意味で。

 

 

 

怖い

 

 

 

先輩が私のことを認識しなくなるのが怖い

 

 

 

 

ただの後輩に戻りたく、ない

 

 

何をしてでも………

 

 

それこそ、求めてくれるなら…何でもしていい。してくれて、いい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、自分のこと大切にしてるか?」

 

「はぇ?」

 

 

 

何を聞いてるのか、この先輩?

 

「なんつーか……見てて、無防備すぎ。高校と違って、大学生はタガを外しても咎められん部分があったりで、危ないこともあるんだ。いろはは身持ちも固いし、不特定多数と仲良くはするが一定の線を引くって思ってたんだが…最近の言動が合わんくてな」

 

……なに言うてんの?

急にお父さんみたいな事言い出した。なんか、理解されてる分、むず痒いのはどう処理したらいいんだろう…

 

「ま、あくまで俺が知ってる、いろはってだけだけどな。もし今、困ってるとかなら言えよ」ガシガシッ

 

あーたーまー!乙女の頭をガシガシしないでください!年下扱いされてる感じがして悪くない!

 

「わぅ……先輩、乙女の髪を急に触るのはどうかと…うぅ…」

 

「っと、すまんな。つい」スッ

 

「離れるの早いです」

ゆっくりするとか、ほんと下心ないなぁ…

 

っは!?本音と建前が逆に……

 

「ん?まだ触っててもいいのか?」

 

「違いますっ!もう…!」プイッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

素直になれば良かったーーーー!

くそぅ……私って………

 

 

 

 



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ひねくれいろは ろく!

 

 

 

 

 

侵し掠めること火の如し

 

かの有名な孫子兵法の一つだ。

風林火山と称されるそれは、恋愛においても活用できる。

 

 

最近、先輩にはやられてばっかりなので、このあたりでギャフンと言わせなければいけない。

 

私にも矜持がある。

男を手玉にとり、ちょうど良い距離感を保つことに定評があった。だが、その自信が揺らぎ始めているのだ。

 

こうなれば、戦争しかない。

孫子兵法と私の頭脳で先輩を陥落させ、

私を取り戻す!

 

 

 

「ふふ、ふふふ…見ててくださいね、先輩ぃ…!後悔させてあげますよぉ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママ、いろはが……」

 

「だめよパパ。乙女は強くあるべきなの」

 

「……あ、あぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

疾きこと風の如し

 

思い立ったが吉日だねっ!

あれ?違う?

 

まぁいいや。

とにかく、先輩の確保は迅速にしないと、他の人に取られてしまう。

 

 

 

 

先輩陥落作戦…コードSKSを開始します!

 

作戦1『五感を奪う』

 

視覚、嗅覚、触覚、聴覚をいろは色に染めれば、防御力は下がるはず!そして、そのまま主導権を握れば戦局はこちらに傾くでしょう。

 

…流石に味覚は私そのものは無理かな。舐められるとか、まだ早い。その内、ね。

 

しかし、嗅覚かぁ。これは恥ずかしいな。

今日は午前中にテニスしたし、不安が凄い。

 

 

………!

ターゲットA確認、自宅に戻る模様。

コンタクト!まずは、先手をとる!

 

 

 

「せーん、ぱい!」ニコッ

 

「おぉ、いろは。元気そうだな。どした?」

 

「いえ、たまたま見かけたので…ふぅ」パタパタ

 

着ているテニスウェアのボタンを1つ外し、襟をつかんで胸元に風を送るようにする。

ちょっと疲れたふりして前屈みに…

 

「……」ゴクリ

 

 

 

 

ふふ…今、喉が鳴りましたね。

視覚はこれで奪えたかな?

 

「…今日、テニスしてたんですよねー。みなさん上手くて、熱中しちゃいました」

 

「謳歌してんだな…良いと思うぞ」

 

…お?若干嫉妬してる?

声が低くなったし……

 

 

 

 

うん、楽しくなってきた!

 

「こうみえて、ある程度動けますからね!そう言えば先輩、テニス部でお知り合いの方いましたよね?」

 

「あぁ、彩加だな」

 

「ですです、可愛らしい方でしたよね。テニス教えて欲しいんですけど、連絡先とか知りません?」

 

さらっと名前で呼んでることは置いといて…

これは単純にテニスを上達させたいからだ。楽しかったし、少しだけ本気でやってみたい。

 

「…あるにはあるが……」

 

「??」

 

歯切れ悪いですね。最近の先輩じゃないみたい。

 

「…その、二人で、やるのか?」

 

 

 

…ふむ……

 

 

 

うわぁぁぁ!デレたぁぁ!

拗ねてぇる!先輩拗ねてぇるぅ!

捨てられた子犬みたいな表情だし、保護欲だか母性がくすぐられますねぇ……

 

「……あ、先輩が嫌なら、やめときます。その代わり練習相手、先輩がしてくれませんか?」

 

「別に、嫌とは言ってない。その、彩加も近くに住んでるみたいだし……ただまぁ、呼び出すのもアレだし、俺でよければ相手になる。素人よりは上手いぞ?」

 

珍しく饒舌だなぁ…隠しきれてませんよっ!

 

「……では、お願いしますね。今からとかでも大丈夫です?」

 

「体力あるな…いいぞ」

 

 

 

ふふふ……図らずもチャンス到来ですね。

デートに誘って、ボディタッチしながら意識を私色に染め上げる予定でしたが、こういうのも悪くありません。

 

それに、私も漫画読んでますし、知識はばっちりです!

 

先輩の五感、奪いますねっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

………結論、負けました。

 

6ー2

 

とりあえず、タイブレーク形式で試合をして、どの程度できるか見てもらった。

その結果がこれだ。おかしい。

 

私は今、両膝をついて口で息を整えている。

 

午前で疲れたっていうのもありますけど、先輩のテクニックが凄かった。ほぼ経験者のそれに近い動きをしてましたし…

 

片足でスプリットステップしてるし、サーブも回転がかかってて跳ね方が普通じゃない。

 

あと……私の嫌なところを突いてくるというか、

絶妙に届く所に打ってきて、私を走らせてくるんですよね。かと思えば、ドロップショットでギリギリ届かない所に落としてきますし…

 

極めつけは、最初の2点ですっ!この間、先輩は私を観察しながらプレイしていたとしか思えません!

 

実際、0ー2の時点で私は「先輩チョロい」って思ってましたもん。素人にしては確かに上手いくらいにしか感じなかったのに…

 

「そろそろいくか」みたいなことを言ってからは別人のようになって、私の身体を弄び始めやがりましたからね!

 

ぐうぅぅぅ…くやしい、しんどい、足痛い…

 

 

 

「いろは、大丈夫か?」

 

「………だれの、せい、です、か……」ハァ…ハァ…

 

喋りたくないくらい、息を切らしてる人に質問するとか、先輩鬼畜ですか?

 

「…くふぅー……もう、たてま、あっ」グラッ

 

「おいっ?」ダキッ

 

「んむっ!?」

 

 

 

わ、わわわわ!

足がもつれて、地面との接吻を覚悟してたら先輩の首にキスしてしまった!

 

「!!!???」

 

「…しばらく支えてやるから、息整えろ」

 

無理です!現在進行形で息が乱れてます!

先輩に抱かれてる…あ、やばい興奮してきた。

 

先輩も汗かいてるけど、いいにおいだなぁ…

安心するのじゃなくて、ドキドキする感じ…

 

「…ふぇんはひ……」

 

首にも力が入らないから、先輩の首に唇があたったままだ。変な声しか出ない。

 

「っ……どうした、いろは」クイッ

 

あ、支えてくれた。でも、また顎クイかぁ…

よし、顎クイは慣れてきた

 

「ありがとうございます。先輩すみません、私、汗かいてるのに身体貸していただいて…」

 

「俺は気にせん。だが、すまんな、俺も汗かいてるのに…いろはが気にするなら体位変えるが?」

 

体位って、言い方別にしてください。変態ですか?想像させないでください!

 

「私も、先輩なら気にしません。ただ…」

 

そう言って私は先輩に顔を近づけて…

 

「こっちのが、楽です」

 

 

 

顔の横に顔を置き、先輩の肩に埋める形で抱きつく。

 

ふふふ…焦ってますねぇ先輩。私も焦ってますよっ!

 

何故なら私たちは五感の大半を共有してるに近いから。

 

抱きついてるから…触覚が

耳元で呟きあってるから、聴覚も…

そして、嗅覚はお互いのにおいで包まれて…

視界はお互いしか写っていない。

 

 

 

 

 

…テニスコートの中で何やってるんだろう?

 

 

 

まぁ、心地良いし、気持ちいいから

気にしなくていっかぁ……

 

 

 

 

 

はっ!

これが、動かざること山の如し?

 

 

 

「…いろは、そろそろ歩けるか?」

 

ぶち壊すなよ、おい。

ぐぬぬ…だけど、今回は敗者ってこともあるし、譲ろう。目的は果たした。

 

 

「…いけそうです」

 

「……よし、なら水分補給しつつ、片付けて帰るか。練習は次からだな」

 

「はい、よろしくお願いしますね」

 

 

ゆっくりと離れ、片付けを始める。

 

とは言っても、片付けるものも少ないので、あっという間に帰路につくことができた。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

先輩、妙に静かだな……

 

ま、いっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

テクテク…

 

 

 

 

あれから飲み物を奢ってもらい、帰り道…

特に話すこともなく、私の家につく。

今日はお礼も兼ねて、先輩に手料理を振る舞いたいので家に連れてきたのだ。

 

「…本当に良いのか?どっちかというと、今日は遊んだだけだが」

 

「これから教わることになりますし、先輩もお腹すいてますよね?私、料理も上達させたいので、ついでに協力してください」

 

 

 

嘘である。料理は死ぬほど練習した。

受験勉強をしながらも、晩御飯は自炊し、家族にも評価してもらっていた。確かな腕前になってから、小町ちゃんにも手伝ってもらい、先輩の好みをレクチャーしてもらっているのだ!

 

私に死角はない。これで味覚も私で満たす!

胃袋はいただきますっ!

 

 

 

ガチャ

 

「どうぞ先輩」

 

「あぁ、お邪魔します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふふ……家に入りましたね?

今日は帰しませんよ…!

 

 

 

 

 

 

 

徐かなる事、林の如く

 

 

 

 

先輩、私に染められてくださいね?

気づかないまま……

 

 

 

 

ゆっくり………

 

 

 

 

 

 

 

 



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ひねくれいろは なな!

 

【いろはの家】

 

 

 

 

 

 

トントントントン…

 

グツグツ…

 

 

 

 

よし、できた。

 

ふむ…我ながら良い出来です!

 

先輩に「何食べたい?」と聞くと案の定「何でもいい」と返ってきたので、先輩が嫌いなトマトは使わないメニューをご用意しました!

 

ビーフシチューをソースにして煮込んだハンバーグをメインに、シーザーサラダとコーンスープ、それにお漬物で完璧な布陣です。

 

一応、お米もお酒も用意しています。

先輩の好みに合わせます。

 

 

これで胃袋はいただきますですっ!

 

 

 

「せんぱーい、できましたー」

 

「おぉ、運ぶの手伝うわ」

 

 

新婚さんみたい、きゃっ!

 

「…へぇ、凄く旨そうだな。バランスもいいし、漬物が良い存在感を出してる」

 

「ふふっ、ありがとうございます。これでも修行中なので、味の感想はお願いしますね」

 

「あぁ、だが、俺も素人だからな?…よし、米貰って良いか?」

 

「はい、あなたっ、茶碗」スッ

 

「ん、さんきゅー。いろはは?」

 

「あ、じゃあ私のもお願い」スッ

 

「ほいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

完全にスルーされてる?

 

「あなた呼び」と「後輩からため口」ですよ!?

特別な関係にしか許されないであろう、この二つの禁じ手を使っているのにも関わらず反応なしですか!?

 

ぐっうぅぅぅぅ!

抵抗も拒絶もされないことに嬉しさを感じつつも、作戦がうまくいってないので素直に喜べないぃ!

 

 

 

 

…なんか、虚しくなってきたなぁ……

ここまで来たら脈なしって思っちゃいそう。

 

 

よしっ、もう今日は先輩に感謝する日として頑張ろう!それも、一興です!

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【浴室】

 

シャアアアアア…

 

 

 

 

 

だ、だめだ、この先輩

綻びを見せてこないから、足掛かりがつくれないっ!

 

 

 

……おかしい、今日は割りと攻めているはず。

んー?

 

 

・テニスで汗かいた後抱きつく(事故)

・家に連れ込む

・好みに合わせたご飯をつくる

・ため口を5回ほど

・あなた呼びを3回

・頬についた米を舐め取る

・ドライヤーで髪を乾かして貰う時、あすなろ抱きをさせる

・あすなろ中、上を向いて先輩に甘える(先輩の顎にささって痛かったけど…)

・後ろからハグして胸を押し付ける(それで先輩がお茶こぼしちゃった)

・こぼしたお茶を拭き取る時、際どいところを触る(私がドキドキした)

 

 

 

 

 

 

うん、おかしい。

これだけすれば、反応は出てくるはず。

 

ちなみに今、シャワーを浴びてる先輩がいる浴室に突撃しようと決心をつけている最中だ。

文字通り、背水の陣。いや、水場は目の前にあるんだけどさ。

 

逃げることもできないし、何よりお風呂に突入して反応がなかったら、流石に立ち直れないかもという不安が……

 

米を舐め取ったあたりで変なスイッチ入ってたんだけどねぇ…

 

ここで逃げるか、それとも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……よし、私は、逃げない。

 

逃げても得るものは、束の間の安堵だけ!

 

 

 

 

 

 

 

 

…でも、バスタオルはいいよね?ね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ……恋愛強者、一色いろは

恋に明け暮れ、先輩を掴むために、参ります!

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ!

 

 

 

 

 

 

「…ふ、やっぱり来たか」

 

 

 

 

 

 

グイッ

 

 

「は、はえ?」

 

 

気付いたら、ドアの方に先輩がいて、え?

 

 

 

!?

両手も掴まれて……

 

「……って、冷っ」

 

「…あぁすまん、流石にそれはかわいそうだな」

 

あ、熱くしてくれてる…じゃない!

この状況!どういうことですかっ!?

 

両手を頭の上で拘束されて、両膝の間に先輩の膝が……って、わーわー!先輩の、センパイが……お、大きい……

 

って違う!これじゃ私が襲われに来た変態みたいじゃないか!

 

 

「せ、せんぱい……?これは流石に、犯罪じゃ……?」

 

「ふっ、声震えてるぞ?それにお前から入ってきたり、部屋に入れたのもいろはだよな?」

 

「あぁ、えと…そう、ですけど…」

 

「なら、少なくとも俺から襲ってはいないな。で、何しにきたんだ?」

 

「…その、すみません」

 

「謝らなくても、いい。何しにきたんだ

?」

 

 

 

何これ怖いっ!

せ、先輩が先輩じゃないみたい!

先輩のセンパイも普段とイメージ違うし…

 

 

考えがまとまらない。

 

 

 

「……ぁ…………ぅ………」ブルブル…

 

「…ん?答えられないのか?」

 

「…ちが……す……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息が、上がる。

呼吸が、乱れる。

 

 

 

 

 

 

 

荒い呼吸しかしない私に痺れをきらしたのか、拘束してる手に力が込められる。

 

…ちょっと、痛い。

 

 

 

 

 

 

っていうか、先輩、顔、ちかづけてきーー!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきまでの気合いはどうしたんだ?俺をその気にさせたかったんじゃないのか?」ボソッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガクッ

 

 

 

 

 

 

「おっと!…なんだ?図星か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

み、耳元で囁かれたのか…私…

めっちゃエロい声だったから、膝に力が入らなくなっちゃった。

本当にこういうことってあるんだ……

 

 

 

今、先輩めっちゃ楽しそうだなぁ。

全部バレてたし、ほんとやらしい。

 

 

 

 

 

 

ちらっと、顔を見たいから視線をあげると、目の前にセンパイが…

 

 

 

 

 

「……ひゅ……」ガクリ

 

 

「…ん、と、流石にのぼせたか?ったく、しゃーねーな」ヒョイ

 

 

 

「んっうぅ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これくらいは、してもいいか。我慢してるんだし」モミモミ

 

 

「………ふっ……」ピクッ…

 

 

「…癖になるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という夢を見たのさっ!

 

 

 

 

 

って言えたらどれだけ良かったか!

 

はっきり覚えちゃってますっ!センパイの大きさとか、その、太さ………ああぁぁぁぁ!

 

違います!私は変態じゃないんですっ!

 

ただ……先輩に振り向いてほしくて…

 

 

 

あの変態っ!鈍感!ド鬼畜先輩!

 

 

 

 

 

 

 

 

……何て、心のなかで毒づいても私の横で眠る先輩には届かなくて……

 

 

……何で、腕のなかに私を抱いて眠る先輩のことも分からない。

 

本当に私じゃなかったら蹴り飛ばされてますよ?起きたら先輩のくせ毛が目に入りそうで怖かったし。

 

しかも今、何気にピンチなんですよねぇ…

お手洗い行きたいんですよ。それが先輩の腕にすっぽり全身抱かれているので、顔と足しか動かせそうにないんですよね。

 

足は動かすと、センパイに触れてしまいそうだから最終手段。私も起きたいけど、センパイを起こすわけにはいかない。

 

だったら、顔?キスで目覚めさせる?

それが出来たら苦労してません!

 

 

 

 

 

 

んー

 

もう、いいや。色々失ってるし。

寝相うつふりしてセンパイにダイレクトアタック!

 

「……あっ…」

 

 

 

か、固っ……え!?

 

どうなってるの!?

 

 

 

ちょ、この体勢から出せる私の力じゃ、センパイに刺激与えれてない気がする。

 

というか端から見たら、ただこすって楽しんでるだけに見えなくもない。

 

 

無理だ。センパイには勝てない……

 

なら、ここは顔を使う、しか……ないんだけど、この言い方だと美人であることを自覚して使ってる感じがして嫌だ!

 

んー…耳を咥えよう。

 

 

「ぁむっ!」パクッ

 

「………」

 

「……んむんむ、んぁ、ちゅぱ」

 

「…………」

 

「うぇろ、ちゅる、じゅじゅじゅ……」

 

 

 

 

 

 

私が興奮してきた。

やばい、先輩に抱かれながら耳舐めるの、超楽しいかも…

 

 

「んちゅ♪………ぇぅあ!?」ピク

 

「起きたら耳が冷たいんだが……悪い子は、お前か?」

 

「っ……えへ?」

 

「よし、んー」

 

「……ぁ、ふっ……」

 

 

 

 

 

な、舐め返してきたぁ………

しかも丁寧に頭に手を添えて、逃さないようにしてる。

 

ん?手で私の片耳を塞いできた?

何す……

 

「チュ」

 

 

「ひゅああぁ!?」ビクンッ

 

 

 

 

 

あ、これ、まずい

 

 

 

反響して、脳が痺れる

 

 

 

 

「んーーーーー、ちゅ」

 

「ぁっ……………はっ………んっ……………ふぅ……」

 

もう私の頭の中がぐちゃぐちゃです!

先輩のモノが抜けないっ!

 

 

 

 

 

あ、いっー……

 

 

 

 

 

そう、いえば……

あれ、何て言うんだっけ?

 

 

 

 

 

そうだ、三十六計……逃げるに如かず

 

ふふっ

 

 

ガクリ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだまだ甘いな、いろは」ナデナデ

 

 

「……っ……………へ…ふ…………」ピクン…ピクン…

 

 

 

 

 

 

 

 



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ひねくれいろは はち!

 

 

「…………」

 

「………ジュルルルル………」

 

「………あ、はは……」

 

「………えぇ…………」

 

 

私は今、不機嫌だ。大好きなフラペチーノを飲んでも心は晴れない。

 

というか、何でお昼休憩を先輩、ユウ先輩、私の友人マコちゃんの四人でとってるんですかねぇ?

 

「……で、先輩?何か言うことは?」

 

「……何かって、なんだよ?」

 

 

 

 

さっきから、この押し問答が続いている。

双方自分が悪であることを認めないスタンスだ。

いや、もちろん、私は悪じゃないんですけどね?

 

でも、私だって女の子なんですよ!?

流石に……流石に………!

 

「…一緒にお風呂入ったのに!思い当たる節はないんですかっ!?」

 

「「!!!!?」」

 

なんか、ユウ先輩とマコちゃんが面白い顔してるけど、知ったこっちゃない!

 

「………お前が入ってきた、の間違いだろ?それに、その話は終わったはずだ」

 

「なに!?」

 

「百歩譲って、終わったとしましょう。けど、私が気を失ってから何をしたんですかっ!?」

 

「……へっ!?きぜつ………?」

 

「お前の身体を拭いて、ベッドまで運んだんだが?割りと軽かったな、飯食ってんのか?」

 

「拭いた!?」

 

「一緒にごはん食べてたじゃないですかっ!軽いのは元からですぅ」

 

「ご飯に、お風呂です……??」

 

「まぁ、そうか。俺の好物ばっかり作ってくれてたもんな。ありがとう」

 

「好物!?ハチの好物ってマッカンだけじゃないのか…?」

 

「…えへへ……どう、いたしまして……」

 

「ところで、ユウとマコさんはさっきから何してんだ?」

 

「何してるって……ハチよ、お前さんら」

 

「つつつ、付き合ってるんですか!?」

 

「「は?」」

 

「い、いや、さっきから同棲してるみたいな痴話喧嘩しかしてねぇから…」

 

「何言ってんだよ……この前は、いろはにテニスの動き方教えたから、その礼に飯をご馳走してもらったんだよ。こいつの料理旨いし」

 

「ですです。何でも色恋沙汰に結びつけるのはどうかと思いますよ?」

 

「「………」」

 

(マコチャン?これ、俺らがズレてるのかな?)

 

(いえ、ユウ先輩。私も同感です。男女の関係じゃなければ、夫婦の域です、これ)

 

「で、せんぱい?今日はどうします?」

 

「…そうだな、腰の使い方が甘いんじゃないか?そこを重点的に直してみるか?」

 

(……テニスの話だよね…?)

 

「あー、やっぱりそうなんですか?次の日、歩きにくかったんですよねぇ…妙に痛くて…」

 

(だめだ、一回意識すると、そういう内容にしか聞こえねぇ)

 

((だって、この人ら、風呂一緒に入って片方気絶してるんだろ!?))

 

「ふむ、もっと腰を落とした方がいいんですかね?」

 

「そうだな、とりあえず俺が支えるから好きなように動いてみたらいいんじゃないか?」

 

「んー…わかりました。リードしてくださいね」

 

「ん。なら、そろそろ行くわ。また、放課後に」

 

「はーい、お気を付けてー」

 

スタスタスタ…

 

 

 

 

「ふー、ほんと、先輩って頼りになるのか、ならないのか分からないよねー」

 

「…いろはちゃん?」

 

「?どったの、マコちゃん?」

 

「いろはちゃんはさ、ハチマン先輩と付き合ってないんだよね?」

 

「だから、そう言ってるじゃん」

 

「じゃあ何で、あんなに夫婦感だせるの!?それに痴話喧嘩だったよね!?裸の付き合いしといたあげく、身体を拭かれて抱っこでベッドに連れてってもらって!!何もない訳がない状況で付き合ってない!?」

 

「ま、マコちゃん?落ち着いて?私と先輩は仲良いけど交際は…」

 

「仲が良いとか、そういう次元じゃないの!!むしろ付き合ってないのにお風呂で気絶するなんて何やってたのさ!?いや、やっぱり言わないで!恥ずかしい!」

 

「えっと……その、先輩に、耳を……あぅあぅ…」

 

「かわいいけど、あぅあぅ言いたいのはこっちだよー!健全ないろはは何処に行ったのさ!?」

 

「お、落ち着こう?私はここに居るよ?」

 

「落ち着いてらんない!んがぁぁぁ!」

 

 

 

まさか、先輩と言い争いをしただけで、友人の口から「んがぁ」が出るとは思わなかった。

 

なかなか怒り狂うのは珍しいし、ストレスもあるんだろう。たまには発散させてあげよう。そうだ、先輩の良いエピソードを話したら元気になるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうやめて!私、甘いの苦手なの!食べ物も恋愛も!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【おまけ】




「……ハチ、本当に身体拭いただけで何もしてねぇの?」

「…………………あたりまえだろ、相手は一色だぞ?」

「何だ、その間?まぁいいけど」


















「………Cカップって、いいな」ボソッ

「ん?何か言ったか?」

「なんでもねぇ」





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ひねくれいろは きゅう!

謎のラジオ回


 

 

 

『はぁい!皆さん、グッドナイトしてますか?パーソナリティのYUIです!毎週土曜日のこの時間にお届けしています【ユイナイト】、今日も張り切って盛り上がって日曜日を迎えましょう!

 

まず、人気のコーナー【恋愛しナイト】!身近にある素敵な恋や愛のあるエピソードを送ってもらって、私が盛大に傷つくコーナーですね!

 

一番最初のラジオで、私が本気で落ち込んでたら反響が良くて定番化した、このコーナー…皆もディレクターさんも性格わるいしっ!

 

もぉ、今日は別にへこまないからねっ!

 

 

 

さっそく!一通目……うわぁ、パット見て長いっ!こういうのって結構私にダメージくるんだよなぁ……

 

 

 

わかった、よむ!よむからぁ……

 

 

なになに……

 

こんばんは、こんばんはー!

真中真子(まなかまこ)と申します。はじめましてー!

 

ラジオに投稿するのは初めてなのですが、採用されると嬉しいです。お、このラジオが初めてなんだ…えへへ、嬉しいなぁ… 

 

 

今回のお題が「嫉妬」ということなので、身近にある、とても素敵な(怒り)両片思いのエピソードをお送りします。

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【とある日のS大学構内】

 

 

 

 

「いろはさん、最近できたカフェ行きませんか!?」

 

「おい、いろはは俺とディスティニーにいくんだよ」

 

「はぁ、やれやれ…一色さん、ドライブでうるさい人たちから離れませんか?」

 

「…あ、あはは………」

 

放課後、一緒に帰ろうとしたら、いろはが囲まれていた。夏休み前に彼女をゲットしようと躍起になっているのだろう。

 

助けてもいいけど、私に飛び火されてもしんどいし…

 

こういうとき、いろはの先輩が来てくれればなぁ…

 

ん?あれ?居るじゃん。

あ、ユウ先輩もいた!

 

「はちー!一色さん、めっちゃ人気じゃん」

 

「あいつの容姿なら、そうだろ」

 

「…さらっと褒めるようになったな。そうじゃなくて……」

 

「……あいつの交遊関係に、俺が口挟むのもな…別に付き合ってもないし?あんな軽そうなやつらについて行くなら、一色もそういうやつってことだろ。まぁ?本当に一色が向き合った人なら別に文句はないが…」

 

「そ、そうか…」

 

うわ、比企谷先輩怖いっ!

元々口数少ない人が早口でまくし立てるのって、めっちゃ怖いよね…

 

「どもです、先輩方」

 

「おぉ、真子ちゃん、久しぶりー!」

 

「…どうも」ムス…

 

うわ、拗ねてる…

……そうだ!

 

「どうしたんですか、ハチ先輩?いろはの方向いてブツブツと…」

 

「…別に。止めんでいいのか、あれ?」

 

「私は、いろはの交遊関係に口出すつもりはありませんから。もちろん、無理矢理手を出されているっぽいなら助けに行きます」

 

「…そうか」ムス…

 

止めに行って欲しいのか!

めんどくさっ!

 

普段ぐいぐい行ってるんだから、もう行っていいんじゃない?ってかいきなさいよっ!

 

「はちー…言動が合ってないぜぇ?怖ぇよ」

 

「……………すまん」

 

「……はぁ…………あれ?」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

「痛いっ……ちょ、離して」

 

「ほら、離せって!いろはさん痛がってるだろっ!」グイィィィ

 

「貴様こそっ!一般人は引っ込め!」グイィィィ

 

「両方に言ってるのっ!…あぅ!?」

 

 

 

 

「わ、痛そう……わた」

 

ガタンッ

 

 

 

パシィッ……

 

 

ギュッ

 

 

 

「いてっ…何しやがんだ!?」

 

「…覚悟は出来てますかっ!?」

 

「…お前ら、いろはの顔、見えてたか?」

 

 

「……せ、んぱい?」

 

「「ひいっ……」」

 

「いろはの顔、歪ませたのはお前らか?腕の引っ張りあいなんざ、しやがって…」

 

「「す、すいませんでしたっ……」」

 

「わかったら去りやがれ。俺のいろはに手を出すんじゃねぇ!」

 

「「は、はぃ………」」

 

 

「……ったく、ガキみたいな事しやがって…すまんな、いろは。急に抱きしめて」

 

「………いえ、だ、だいじょぶ…です。ありがとございます…」

 

「腕とか痛くねぇか?」ギュッ

 

「んんっ!……ちょっと痛いですね。あと、気持ち悪かったので、先輩で上書きしてほしいです」

 

「りょうかい。良く頑張ったな…遅くなってすまん」ギュッ…ナデナデ…

 

「…いえ……いつもありがとございます…」ギュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつら、付き合ってないんだよなー…

ほんと、早くくっつかナイト!

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

うわ、この二人、ちょーラブラブじゃん!

でもいいですねー…好きな人をしっかり守ってくれる人って……

 

でも、意識してない人にやられるのは嫌なんですよね!それは凄くわかります!

 

 

 

この…いろはさん?とハチ先輩?

早く結ばれるといいですね!

 

 

そして真子さん、私と似たような雰囲気を感じましたので!番組オリジナルステッカーをお送りしますね!

 

 

いや、いきなり一発目から、甘酸っぱい感じのエピソード来ましたねぇ!

ちなみに私は、真子さんとユウ先輩の恋も気になります!もしかすると、友人同士が苦しんでる中、見守りあってたらいつの間にか……みたいな展開あるかもしれないしね!

 

うぅ……羨ましい…

 

あ、今回の【恋愛しナイト】は前半と後半にわけるみたいです。

 

なので、次のコーナーにうつりたいと…』

 

 

 

 

プツン…

 

 

 

 

 

 

 

あれ?私の名前、出てた?

マコちゃんの名前も……?

 

 

 

 

ふふふ、次会ったら覚えといてねっ!

 

 

 

でも胸ちょっとキュンキュンしたから、別に詰めなくてもいいかな?

 

 

 

 

 

 

とりあえず、先輩に八つ当たりだっ!

 

 

 

 

 

 

 



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