仮面ライダーカブト〜ワームに恋するカブトムシ〜 (桂ヒナギク)
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Episode 1

 彼の名は赤井(あかい) 光一(こういち)。都立高校に通っている。

 光一の高校は校則が(ゆる)く、バイクでの登校ができる。

 光一は免許を持っており、バイクの運転ができる。

 今はホームルーム中。

 教鞭台の前に端正な顔立ちをした長髪の女の子が立っている。

「今日から新しく加わる柊木(ひいらぎ) 真理絵(まりえ)さんだ。仲良くしてやれよ」

「柊木です。よろしく」

 真理絵はお辞儀をすると、教師に促されて空席に着く。そこは光一の隣だった。

(可愛い子だな)

 光一は真理絵を見るとそう思った。

 真理絵が視線に気付いて光一を見て微笑んだ。

「……!」

 光一は恋に落ちた。

 ……。

 …………。

 ………………。

 放課後、真理絵が帰路に就いていると、ZECTという対ワーム組織の武装した隊員に囲まれた。

「ワームだな!」

 銃を乱射するZECT。

{Clock up}

 電子音と共に、ライダーフォームにキャストオフした仮面ライダーカブトが、目にも留まらぬ速度で乱入すると、真理絵を抱き抱えてZECTの輪から救出した。

「やったか?」

{Clock over}

「……!?」

 ZECTが音の方向を見る。

「カブトだ!」

「あなたは?」

 真理絵の問いにカブトは無言のまま、カブトクナイガンの銃口をZECTに向ける。

「ワームに寝返るとは、ZECTの恥晒し目!」

 ZECTがカブトに銃を乱射する。

 カブトはサイドバックルを叩く。

{Clock up}

「消えた!? クロックアップか!」

「気を付けろ! どこからく……うわ!」

 隊員が一人宙に舞う。

 そして、一人、また一人と、次々に隊員たちが宙を舞う。

 カブトは真理絵をお姫様抱っこすると、その場から離れる。

{Clock over}

 クロックアップの世界から戻ったカブトは、安全を確認してから真理絵を下ろすと、その場から去ろうとする。

「待って。あなたは誰なの?」

 立ち止まったカブトは後ろを見るが、無言を回答に去っていく。

(誰なんだろう?)

 真理絵は疑問に思いながらも帰路に就いた。

 ……。

 …………。

 ………………。

 光一はCBR1000RRを駆っている。

 一軒家の前にバイクを止めると、それから降りてガレージを開けて中にしまうと、家に入った。

「お兄ちゃん、おかえりー!」

 小学生の妹である(かなで)が出迎える。

「奏、いい子にしてたか?」

「私はいつもいい子だよ」

「違いねえ」

 光一はリビングに移動した。

 テレビをつけると、報道番組をやっていた。

 番組によると、ZECTが開発したカブトがワームに寝返った、というニュースをやっていた。

 



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Episode 2

 報道ニュースでカブトがワームに寝返ったという情報が流れている。

「バカな……」

 映像に驚いた光一はそう呟いた。

「お兄ちゃん、なにが『バカな』なの?」

「なんでもないよ」

 光一はテレビを消した。

 ガレージに移動し、サンドバッグに回し蹴りを叩き込んだ。

(一体どういうことなんだ?)

 光一はCBR1000RRのタンクバッグからライダーベルトを取り出す。

(こいつは俺が持っていた。なのに、なぜ……?)

 そこへカブトゼクターがジョウントしてくる。

「ワームか?」

 光一はガレージを開け、エンジンをかけてバイクを駆る。

 カブトゼクターに先導され、戦場に駆けつける。

 そこでは、ZECTがカブトらしきライダーと戦っていた。

 そのライダーは黒く、装甲に配線のようなものが見え、複眼は黄色だった。

 仮面ライダーダークカブト。

「あれは……」

 光一はライダーベルトを巻く。

「変身」

 カブトゼクターをバックルにセットし。

{Henshin}

 光一はカブトのマスクドフォームに姿を変えた。

 カブトクナイガン・ガンモードをダークカブトに向ける。

 弾丸を放ちながら、接近した。

 ダークカブトとZECTの戦闘員が振り返る。

「カブトが、二人……?」

 戸惑うZECT。

{Clock up}

 サイドバックルを叩いたダークカブトが目にも留まらぬ速度でカブトに迫る。

 カブトは吹っ飛ばされ、宙を舞い、工事中のフェンスに突っ込んだ。

 クナイガンで付近のカーブミラーを粉砕し、サーチライトを照射。

 粉々になった無数の鏡の破片にサーチライトが反射すると、そこにダークカブトの姿が浮かび上がる。

「は!」

 カブトは突っ込んできたダークカブトの腹部にクナイガン・アックスモードを叩き込んだ。

「ぐ!?」

 ゼクターが外れ、ダークカブトの変身が解ける。

 マスクの下から現れたのは、見覚えのない男の姿だった。

 カブトは男からライダーベルトを奪い取る。

「く、クソ!」

 男はワームに姿を変えた。

「ふ!」

 カブトはクナイガンの刃をワームに叩き込む。

 ワームは緑色の血飛沫(ちしぶき)をあげて爆裂霧散した。

 カブトはCBR1000RRの元に戻る。

 ハンドルに触れた瞬間、CBR1000RRはカブトエクステンダーに姿を変えた。

 カブトエクステンダーに跨り、現場から去るカブト。

 ……。

 …………。

 ………………。

 買い物帰りの真理絵と光一はすれ違う。

 光一はバイクを止めた。

「柊木さん?」

「え?」

 振り返る真理絵。

「赤井くん!……?」

 真理絵は光一が巻いているベルトに気付く。

「もしかして、あれあなたなの?」

「うん? なんの話?」

「だってそのベルト」

「君はこれがなにか知ってるのか?」

「いや、さっきそれと同じベルトをしてる人を見て」

「どこで見たんだ?」

「学校帰り。なんか変な連中に囲まれたと思ったら、その人が助けてくれて」

「その人、どういう格好だった?」

「うーん……、人っていうか、カブトムシ?」

(なるほど。そういうことか)

「それは変な話だな」

「変、といえば、変な連中が私のこと、ワームって」

(……!)

「ワームだと?」

「なんのことかわからないんだけど」

(柊木さんがワーム? ということは、オリジナルは……)

「赤井くん?」

「うん? なに?」

「赤井くんはなにか知ってる?」

「いや、知らないな」

「そっか。じゃ、私はこれで」

「送ってこうか?」

「ううん、大丈夫」

 真理絵はそういうと去っていった。

 光一もバイクを走らせ、家へと戻った。

 



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Episode 3

 その日のこと。

 光一がバイクを駆っている。

「……?」

 路地裏で何者かがワームと話しているのを見かけた光一はバイクを止めた。

 話し終えたのか、その何者かが路地裏から出てくる。

「……!」

 何者かの正体は真理絵だった。

(柊木さん!?)

 光一は真理絵の後を追った。

 

 

 真理絵がZECTに囲まれる。

「ワームめ! もう逃さんぞ!」

 真理絵はワームに変態すると、クロックアップでゼクトルーパーを翻弄する。

「うわあ!」

「ぎゃあ!」

 次々に空中へ舞うゼクトルーパー。

 その一部始終を見ていた光一の周りをカブトゼクターがクルクルと飛び回っている。

(柊木さん……)

「……!?」

 クロックアップ空間から戻ったワームは光一の存在に気付いた。

「赤井くん!?」

「柊木さん、ワームだったのか」

「どうするの?」

 光一は飛び回るカブトゼクターを掴んだ。

「君がワームなら……」

 光一はカブトゼクターをベルトにセットした。

{Heshin}

 スーツが形成され、カブトに姿を変える光一。

 クロックアップするワーム。

 カブトは目にも留まらぬ攻撃を受けて宙に舞い上がり、地面へと叩きつけられる。

「キャストオフ」

 カブトはゼクターホーンを展開した。

{Cast off}

 ファンデルワールス(りょく)でくっついていたマスクドアーマーが弾け飛び、ライダーフォームが(あらわ)になると、ライダーホーンが立ち上がった。

{Change beetle}

「きゃあ!」

 飛散したマスクドアーマーがワームを襲い、クロックアップ空間から放り出される。

「本気なんだ?」

 ワームはクロックアップする。

「クロックアップ」

 カブトがサイドバックルを叩く。

{Clock up}

 カブトもクロックアップ空間に入り、ワームと応戦する。

 だが、戦況は劣勢だった。

 カブトの攻撃も虚しく、壁へと追いやられてしまう。

{Clock over}

 クロックアップ空間から追い出されるカブト。

「私の勝ち、ってことでいいかしら?」

「強いんだな」

 殺せよ——と、続けるカブト。「戦いに於いて敗者には死だろ?」

「いや、殺さない」

「どうして?」

「事情があってね」

「事情?」

「それは言えないわ」

「なんなんだよ事情って?」

「しつこい!」

 ワームがカブトを殴り飛ばした。

「うわ!」

 弧を描き、地面に落下するカブト。

 ゼクターが外れ、変身が解除される。

 ワームも真理絵の姿になる。

「私、ワームだけど、人間でもあるんだ」

「え?」

「お父さんが人間なの」

「ハーフなのか?」

「お母さん、さっきの人たちに殺されちゃった。だから、私はあいつらを許さない」

「復讐、するのか?」

「もちろん」

 光一は真理絵にライダーベルトを投げた。

「これは?」

「ZECTとやりあうにはそいつが必要だろ? とっとけ」

「いや、そういうことじゃなくて、どうしたの?」

「別のワームが持ってたから奪い取った」

「それってもしかして、目が黄色の?」

「ああ」

「そのワームは?」

「粉砕した」

「そうなんだ」

 あ!——と、なにかを思い出す真理絵。

「いけない! 晩のおかず買わないと!」

 それじゃあね!——そう言って去っていく真理絵。

 光一はバイクに跨がり、帰路に就くのであった。

 



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Episode 4

 学校。

 光一は昇降口で真理絵と出会(でくわ)す。

「おはよう、赤井くん」

「ああ、おはよう」

 教室に向かい、席に着く。

 光一は真理絵を見る。

(柊木さん、産むのは卵なのかな)

「うん? なに?」

 光一の視線に気付いた真理絵が振り返って訊ねた。

「え? あ……いや、なんでもないよ!」

 前を向く光一。

 教師が入ってきてホームルームが始まる。

 

 

 昼休みのことだ。

 光一は一人屋上で食事をしていた。

 そこへ真理絵が弁当を持ってやってくる。

「なんだ?」

「一緒に食べようと思って」

「ワームって何食べるの?」

「人間の肉?」

「ブフー!」

 光一は口に含んでいたものを吹き出してしまう。

「いや、冗談だって。人間と同じもの食べるよ。まあ、人間食べてるやつも中にはいるけどね」

「笑えねえよ!」

 弁当箱を開ける真理絵。

「ん? なんだそれ?」

「うん? カエルのからげだよ」

「え……」

「カエル美味しいよね」

「普通は食べないな」

「え、そうなの?」

「食べるとしても中国人ぐらい」

「マジか」

 それより——と続ける真理絵。「魔法の鏡って知ってる?」

「魔法の鏡?」

「この学校にあるんだけど、その鏡の前でお願い事を言うと願いが叶うんだって」

「怪しいな」

「私もそう思う。確かめてみようか?」

「放課後でいいか?」

「うん。じゃあ、放課後に」

 食べ終えた二人は空の弁当箱を手に教室へと戻る。

 

 

 放課後だ。

 光一と真理絵は例の鏡の前に立っていた。

「なんの変哲もない普通の鏡に見えるけどな」

「これのどこが魔法の鏡なのかしら」

「とりあえず、なんか願ってみる?」

「そうね……」

 真理絵は考える。

「お母さんに帰ってきてほしい!」

「いや、無理だろ」

 ……………………。

 なにも起こらなかった。

「何も起きないね」

「帰るか」

 二人は帰路に就く。

 光一と別れ、家に帰ってくる真理絵。

「ただいまー」

「お帰りなさい」

 出迎えてくれたのは。

「お、お、お、お母さん!?」

 驚き戸惑う真理絵。

「ゆ、幽霊……じゃないよね?」

「何言ってるのよ」

「だって、だってお母さんはZECTに殺されて……!」

「そんなこと……」

 母親の顔に影が差さる。

「違う……」

「え?」

「お母さんじゃない。あなたはお母さんの姿をした別の人」

「何言ってるの? 明子よ。正真正銘あなたのお母さんよ」

「嘘! だったら私がどうやって産まれたか言ってみなさいよ!」

「お腹から産まれて……」

「違う! 私はお母さんが産んだ卵から孵化したのよ! お父さんから聞いたわ! 人間から卵が産まれるなんて、最初は驚いたらしいけど! それでお父さん、お母さんの正体がワームだって知って、お母さんが殺されたとき教えてくれたわ! 流石のワームでも死後の記憶は読めなかったみたいね!」

「あら、残念。なにも感じないうちに入れ替わってもらおうと思ったけど」

 明子と名乗る女性がワームに変貌する。

「思う存分痛めつけてから交代してもらおうかしら!」

 明子だったワームの元にさなぎワーム、もといサリスが現れる。

 真理絵は家を飛び出した。

 追いかけてくるワームとサリス。

 真理絵は取り出したベルトを腰に巻き、ダークカブトゼクターを呼び出す。

「へ……」

 変身しようとした真理絵にワームがクロックアップで攻撃する。

「きゃあ!」

 壁に激突する真理絵。

「嫌な予感がしてついてきてみたら、やはりそういうことかよ」

「……!?」

 声のした先をワームとサリスが振り返ると、光一がゆっくりとこちらに迫ってきていた。

「貴様は……」

「柊木さんのクラスメイトだよ」

「何者だ?」

 光一は飛来したカブトゼクターを掴む。

 空が曇り始め、雨が降り出した。

「変身」

{Henshin}

 カブトに変身した光一は襲いかかってくるサリスにカブトクナイガン・アックスモードを叩き込んで粉砕した。

 仲間を殺され、怒り狂ったワームがカブトを襲う。

 攻撃を受け、転がるカブト。

 ワームの追い討ちが立ち上がったカブトに炸裂し、再び倒される。

「赤井くん! どうして!?」

 でくの坊と化したカブトに真理絵が問う。

「あなた、まさか!?」

「どうする? 決めるのは君だ」

 ワームが真理絵を見る。

「私を消したりなんかしないよね? あなたは私の自慢の娘なのよ」

「……もうやめて! カブト、頼んだわ!」

 カブトは立ち上がる。

「キャストオフ」

 ゼクターホーンを展開し、ライダーフォームに移行する。

{Cast off——Change beetle}

「クロックアップ」

 サイドバックルを叩くカブト。

{Clock up}

 電子音と共に、降り頻る雨粒が空中で静止すると、カブトの怒涛の反撃が始まった。

 カブトはワームの攻撃の一切をかわし、カウンターを浴びせて確実に弱らせていく。

 そして、ゼクターについている三つのフルスロットルを押した。

{One two three}

 ゼクターホーンをマスクドフォームの状態に倒し。

「ライダーキック」

 再度展開する。

{Rider kick}

 電子音に合わせ、背後から迫りくるワームに回し蹴りを叩き込む。

 ワームは吹っ飛び、地面に転がる。

{Clock over}

 立ち上がったワームが真理絵に手を伸ばす。

「真理絵……!」

 刹那、ワームは大爆発を起こして霧散した。

 雨が止み、カブトの変身が解ける。

 光一は無言のまま真理絵を見つめていた。

 



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Episode 5

 ビルの屋上。

 ライダーフォームの仮面ライダーザビーが地上を見下ろしている。

 視線の先には真理絵の姿が。

「ふ」

 ザビーは姿を消した。

 そんなこともつゆ知らない真理絵は、お昼の買い足しをするため、近所のスーパーにやってきた。

 店内を周り、食糧を買うと、スーパーを出て家路に就く。

「うわああああ!」

 悲鳴が聞こえる。

 真理絵は悲鳴の元に向かった。

 広場で男性がサリスに襲われていた。

「やめなさい!」

 サリスの前に躍り出る真理絵。

「邪魔をするな」

 サリスはそう言って、真理絵を攻撃する。

 真理絵は攻撃をかわし、ワームに変態すると強力な一撃をサリスに浴びせた。

 渾身の一撃の瞬間、サリスは脱皮し、クロックアップで去っていった。

 ワームは真理絵に戻る。

「大丈夫ですか?」

「う、うわああああ!」

 男性は悲鳴を上げながら逃げていった。

「ほお。ワームがワームと敵対したか」

「……!?」

 真理絵は男の声に驚いて振り返る。

 ベンチに座っている男が読んでいた新聞を下ろす。

 新聞を畳んでベンチに置くと、男は立ち上がった。

「あなたは?」

「俺か? 俺は……」

 男の手にザビーゼクターが降りてくる。

「ライダー!?」

 男はゼクターをライダーブレスにセットする。

「変身」

{Henshin}

 男はスーツに身を包まれ、蜂の巣のような姿に変えた。

 仮面ライダーザビー。

「あなたとは戦うつもりはないんだけど」

「そっちになくても、こっちにはあるんだよ。ワームは全て、倒さなくてはならない。それがZECTの目的だからな」

「ZECT……」

 真理絵の元にダークカブトゼクターが飛来する。

「貴様?」

「変身」

 真理絵はゼクターをベルトにセットした。

{Henshin}

 スーツが形成され、ダークカブトに変身する真理絵。

 ダークカブトはクナイガン・ガンモードでザビーを銃撃。

 被弾したザビーはよろめく。

「キャストオフ!」

 ザクターウィングを起こしたザビーはザビーゼクターを回転させる。

{Cast off}

 マスクドアーマーが吹き飛び、ライダーフォームが露になった。

{Change wasp}

「クロックアップ」

 トレーススイッチを操作し。

{Clock up}

 クロックアップするザビー。

 ダークカブトは目にも留まらぬ速さで接近するザビーにマスクドアーマーの嵐を浴びせ、ライダーフォームになった。

「クロックアップ」

 サイドバックルを叩き、クロックアップするダークカブト。

 両者とも互角の戦いを見せ、なかなか勝負が決まらない。

「強いのね」

「戦闘訓練を積んでるからな。だがこれで終わらせる」

 ザビーはフルスロットルスイッチを押した。

「ライダースティング!」

{Rider sting}

 ザビーはダークカブトの懐に潜り込むと、ゼクターニードルを相手に突き刺す。

 ダークカブトの胸部にザビーの必殺技が決まり、勢いよく後方に吹っ飛んだ。

「ぐ!」

 壁に背中を叩きつけられるダークカブト。

 ゼクターが外れ、変身が解ける。

「消えろ」

 真理絵はクロックアップで襲ってくるザビーを間一髪でかわし、胸部を押さえて逃げる。

「逃げたか。まあいい」

 真理絵は命辛々逃げ延び、家へと帰宅する。

「う!」

 玄関先で倒れる真理絵。

 気が付くと、病院のベッドの上だった。

 父親がそばにいる。

「気が付いたか。何があったんだ?」

「ZECTのやつにやられて……」

「対ワーム組織か」

「ライダー一人だった」

「そうか。まあ、とにかく今は休め」

「ねえ、お父さん」

「なんだ?」

「クラスメイトの赤井くんを呼んでくれない? 番号はこれに入ってるわ」

「ああ、わかった」

 スマホを渡す真理絵。

 父親が赤井に電話すると、彼はすぐに飛んできた。

「それじゃ、父さんは仕事に戻るからな」

 父親がスマホを食台に置く。

「赤井くんだっけ? あとは頼むよ」

「はい」

 父親は去っていった。

「柊木さん、大丈夫なのか?」

「なんとか。痛……!」

 真理絵が胸を押さえる。

「あの蜂のライダー、強かった」

「そうか」

「赤井くん……」

「なんだ?」

「私を超えて」

「実力では君には劣らないはずさ」

「でも勝てなかったじゃん」

「ああ、あれは……」

 頬を赤らめる光一。

 どうやら真理絵を好きと言う気持ちが光一を手加減させてしまったようだ。

 コンコン、と窓越しにカブトゼクターがガラスを叩いた。

「行って」

「あ、ああ」

 光一は病院を出ると、バイクを駆る。

 カブトゼクターが光一を先導する。

 辿り着いた先では、ワームがザビーに追い詰められていた。

 光一はカブトに変身すると、ザビーがワームを粉砕した後、攻撃を仕掛けた。

「性懲りもなく貴様!」

「何言ってる? 俺はお前と戦うのは初めてだぜ」

「な? やつじゃないのか」

「やつとは柊木さんのことか?」

「貴様、あのワームとつるんでるんだな?」

「向こうがフレンドリーに接してくるんでな」

「貴様も、敵とみなす」

 ザビーがカブトを乱打する。

 カブトはザビーの猛攻をマスクドフォームで防御している。

「なぜだ。なぜキャストオフしない?」

「この姿で十分だ」

「なめられたものだな!」

 ザビーはフルスロットルスイッチを押す。

「おら!」

 ザビーのライダースティングがカブトを襲う。

「うわ!」

 カブトは吹っ飛び、地面に転がる。

「トドメを刺してやる」

 ザビーはもう一度スイッチを押して跳躍した。

 空中からのライダースティングを覚悟したカブトだったが、サリスが現れて彼を庇った。

「な!?」

 サリスは爆裂霧散する。

 そこに他のサリスが複数現れ、カブトの盾になるかのようにザビーの前に立ちはだかる。

「姉さんに頼まれて、あなたを援護します」

「ワームが徒党を組むとは……」

 多勢に無勢。分が悪いと思ったザビーは離脱しようとする。

{Rider kick}

 いつの間にかキャストオフしていたカブトが、サリスの上を飛び越え、必殺のライダーキックをザビーに繰り出してきた。

 ザビーはクロックアップでかわし、脱兎の如く逃げ出した。

 



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Episode 6

 ライダーキックが不発に終わったカブトは体勢を整えて着地した。

 サリスたちは去っていく。

 そこへ、別のサリスが一体現れる。

 カブトは振り返り身構えた。

「お前、仲間、殺した」

 片言の日本語を放って襲ってくるサリス。

 カブトはカブトクナイガン・ガンモードでサリスを銃撃する。

 被弾して怯むサリス。

「は!」

 隙を突いてサリスにカブトクナイガン・クナイモードの刃を突き刺す。

 サリスは悲鳴を上げながら爆裂霧散する。

 カブトゼクターが外れ、カブトは光一の姿へと戻った。

 

 

 真理絵は退院した。

 病み上がり早々、学校に登校する。

 教室に入る真理絵。

「柊木さん、ちょっと来て」

 光一が真理絵を屋上へ連れ出す。

「なにかあったの?」

「例のライダーと対峙した」

「え……」

「俺も標的になるかもしれない」

「そうなんだ」

「だから俺、ZECTに潜入する」

「え?」

「前々からZECTを不審に思っててな」

「どういうこと?」

「実は俺の両親、ネイティブに殺されてるんだ」

「ネイティブ?」

「サリスに似た姿の怪物さ。それでそいつが言ってた。もうすぐ地球はネイティブのものだって」

「……?」

「その後、渋谷に隕石が落ちて、ワームが発生した。でもそれ、初めてじゃないんだ」

「え?」

「35年前にも、隕石が二つ落下してたらしくてね。記録によると、ネイティブはその隕石に乗っていたんだ」

「もう一つの隕石は?」

「少数ながらもワームが乗ってた。ひょっとしたらワームはネイティブを追ってきたのかもしれない。その真相を明らかにするため、ZECTに潜入するんだ」

「そう。気をつけてね」

「ありがとう」

 二人は教室に戻っていった。

 

 

 放課後、帰路に就いた光一は、ZECTに向かった。

 本部で入り口の警備員に止められる。

「本部長に会わせてくれ。入隊したいんだ」

「君はまだ高校生だろう?」

 そこへ、白髪の男がやってくる。

「なんの騒ぎだ?」

「はい、こちらの高校生が入隊したいとのことで……」

「通してやれ」

 光一は白髪の男に長官室へ案内された。

「私は猪俣(いのまた) 聡一(そういち)。長官をしている」

「あんたが本部長か」

「少々言葉遣いが悪いな」

「すみません」

「構わん。で? 入隊したいのか?」

「はい」

「……いいだろう。君は腕が立ちそうだ。特殊部隊に入れてやる」

「はあ」

「そうと決まれば早速行ってこい。場所はここだ」

 猪俣が光一に印をつけた地図を渡す。

「ここには何が?」

「部隊の拠点がある。ここは絶対にワームには知られるな。いいな?」

 光一は指定された基地へと向かう。

 内部は洋風の作りになっていた。

「お前が新しい隊員だって? まだ高校生じゃないか」

赤倉(あかくら) 総司(そうじ)っす」

「そうか。たっぷり可愛がってやるから覚悟しとけ?」

 サイレンが鳴り響く。

 本部からの通達でワームが街中に出現したようだ。

「おい、新米。初の実戦だ。死ぬなよ」

「はい」

 光一は車で特殊部隊の隊員に紛れて現場に急行する。

 車から降り、持ち場に着く。

 複数のサリスたちが、街中で暴れている……ようにも見える。

 ワームに見つからないよう、殺害された被害者に近づく光一。

「……!」

 被害者の血は緑色だった。

(そういうことか)

 どうやら、ワームは人ではなく、ネイティブのみを選別して襲っているようだ。その証拠に遺体の擬態が解けてネイティブになっている者もいる。

 戦闘員の一人がザビーに変身した。

「あいつは!」

「これよりワームを掃討する!」

 キャストオフし、クロックアップでサリスを一掃するザビー。

 光一はカブトに変身し、ザビーの前に出た。

「貴様!」

「よう、また会ったな」

 戦闘員は、「カブトだ」と、戸惑っている。

「お前に一つ教えてやる。ZECTは対ワーム組織じゃない」

「知ってるさ。地球侵略のためやってきたネイティブが追ってきたワームに対抗すべく作り上げた組織だ」

「合点がいったぜ。お前も、ネイティブなのか?」

「それは貴様の知るところではないな」

 ザビーはカブトに攻撃を仕掛けた。

 カブトは攻撃をいなし、カウンターを繰り出す。

 互いの拳がぶつかり合う。

 互角のためか、なかなか勝負はつかない。

「勝負はつかぬか。この戦い、預けておく」

 立ち去ろうとするザビー。

 カブトはザビーの背後から跳躍によるライダーキックを放った。

{Rider sting}

 ザビーが必殺技でライダーキックを相殺した。

 反動で後ろへ吹っ飛ぶカブト。

「後ろから狙うなんて卑怯な真似をするのか」

 カブトは体勢を整え、着地と同時に地面を滑る。

「知るかよ」

「やはりお前はここで潰しておくか」

 ザビーはクロックアップでカブトの懐に潜ると、拳を乱打して敵を追い詰める。

{Rider sting}

 ザビーの必殺技がカブトに炸裂する。

 ライダースティングをまともにくらったカブトは、倒れると同時にゼクターが外れ、変身が解けてしまう。

「お前は赤倉じゃないか」

「赤倉……じゃない。赤井……光一……だ……」

「赤井? そうか。お前の目的はなんだ?」

「ZECTの素性を知るため潜入した」

「それで? 成果は得られたのか?」

「大体はな」

「そうか」

 連れて行け——というザビーの言葉で光一は戦闘員に捕らえられ、基地の取調室に連行される。

「なぜお前がライダーベルトを持っている?」

 拘束されている光一に、ザビーの資格者の男が訊ねる。

「腹減った」

 光一の言葉に男は机を叩いた。

「貴様……!」

「取調と言ったらカツ丼だろ。出せ」

「立場を弁えろよ!」

 男は光一を蹴り飛ばす。

 ガタン!

 椅子の倒れる音と共に崩れる光一。

「違法な取調だな」

「とりあえず、こいつは回収させてもらう」

 男がライダーベルトを手に去っていく。

「閉じ込めておけ」

 去り際の言葉通り、光一は鉄格子の中に放り込まれた。

 



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Episode 7

 鉄格子の中に放り込まれた光一は、腕時計の時間を確認している。

「うわああああ!」

 悲鳴と共に、見張りの男が吹っ飛んできて気絶する。

 その直後、見覚えのない青いライダーがやってくる。

 青いライダーの両肩には、バルカン砲がついている。

 仮面ライダーガタック・マスクドフォーム。

「赤井くん、助けに来たよ」

「君、柊木さん?」

 ガタックが鉄格子をガタックバルカンで破壊し、ライダーベルトを光一に渡す。

「はい、これ」

「それどうしたんだ?」

「研究棟から盗んできた」

「捕まるぞ」

 光一はベルトを巻き、檻を出る。

「侵入者だー!」

 戦闘員が大勢駆けつけてくる。

 光一もカブトに変身し、ガタックと共にやってきた戦闘員を叩きのめす。

 その時、どこからともなく呻き声が聞こえてきた。

 呻き声の元に向かうと、仮面をつけられ、拘束されている何者かの姿が鉄格子に向こうにあった。

「ううー! ううー!」

 暴れる仮面の何者かだが、拘束具はびくともしない。

「柊木さん、破壊してくれ」

 ガタックはガタックバルカンで鉄格子を粉砕した。

 拘束具を断ち切り、仮面を外してやる。

 そのマスクの下にあったのは……。

「あなたは?」

 男は天を指差す。

「天の道を往き、総てを司る男……天道(てんどう) 総司(そうじ)だ。俺は異世界から迷い込んだ。迷い込んだはいいものの、組織に捕まり、ベルトまでをも奪われてしまった。お前がつけているそれと同じベルトだ」

「俺のと、同じ……?」

「ああ。俺は元いた世界では、カブトだった」

 話は後だ——と、天道は続ける。「まずはここを出るぞ」

「ああ」

 カブトとガタックは天道を連れて基地を脱出する。

 

 

 赤井家に真理絵と天道を招き入れる光一。

「それにしても信じられないな。俺たちが生きる世界の他に別の世界があるなんて」

「俺がここに来たのはこれが原因だ」

 天道がハイパーゼクターを取り出した。

「これは?」

「俺の世界にあったカブトの強化メカだ。これだけは何がなんでも奪われる訳にはいかなかった。元の世界に戻るために必要だったからな」

「あなたはこの世界には何か目的があって来たんですか?」

「戦友を助けにな」

「戦友?」

「ああ。加賀美(かがみ) (あらた)という男だ。ガタックだった男だ」

「そのお友達はどうして?」

「全ての戦いが終わった後、権藤と名乗るやつが現れ、ガタックの力が必要だと言って連れて行かれたんだ。そいつには世界を行き来する力があってな。だからハイパーゼクターの力を使って追ってきたのだが……」

「そこでZECTに捕まった?」

「ああ。権藤はこの世界のZECTと繋がってるはずだ」

「それ、俺たちが調べてあげますよ」

「ならこれを持ってろ」

 天道が緑色の石を光一に渡す。

「これは?」

「持っている人間をネイティブに変える石だ。お前たちは顔が割れてるだろう? だからそいつを使って別の人間になって紛れ込め。不本意だが、状況が状況だ」

 天道はもう一つ石を取り出す。

「いや、私は……」

 真理絵は一瞬、ワームの姿を見せた。

「変わった組み合わせだな」

「よし、行こう!」

 光一がネイティブの姿になる。

「あ……」

 自分の体を見るネイティブ。

 次の瞬間、ネイティブの体が光一ではない、別の姿に変わった。

 



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Episode 8

 光一の姿が、精悍な顔立ちの男に変わる。

 それを真似てか、真理絵も別の女性に変態した。

 すると、二人の中にモデルとなった人物の記憶がそれぞれ流れ込んできた。

川越(かわごえ) (あきら)か」

「私は三沢(みさわ) 恵子(けいこ)

 輝と恵子は家を出た。

 向かう先はZECTの本部。

「なんだ貴様ら!?」

 本部の前に立つ警備員が二人を止める。

「どけ」

 警備員を突き飛ばし、中に入ろうとする輝。

 警備員はワームに姿を変えた。

 更にそこへ複数のサリスが。

 輝はカブト、恵子はガタックに変身した。

「ふ!」

「は!」

 カブトとガタックはサリスたちを瞬殺していく。

「とどめだ!」

 カブトのアバランチブレイクが最後のサリスに決まり、爆裂霧散する。

「おのれ!」

 ワームがクロックアップで二人を襲う。

「うわ!」

「きゃあ!」

 地面に転がる二人のライダー。

「そこね!」

 起き上がったガタックがクロックアップ中のワームをガタックバルカンで仕留める。

「うぎいいいい!」

 悲鳴を上げながら木っ端微塵になるワーム。

 そこへ、ザビーが現れた。

「誰かと思えば赤井 光一くんではないか。そっちの青いライダーは……?」

「残念だったな」

 カブトの変身が解ける。

「俺は川越 輝だ」

「おや? 資格者が変わったのか? まあいい。どうせ死に行くんだ。変身しろ。生身で殺したら意味がないからな」

 ガタックがガタックバルカンを連射する。

 無数の弾丸が音を立てながら、ザビーの胸部で火花を散らす。

 ザビーはバインドリングを展開。

「キャストオフ」

 ゼクターを半回転させた。

{Cast off}

 アーマーが弾け飛び、それによって輝の体が宙に舞い上がる。

{Change wasp}

 ライダーフォームが顕になったザビーは、クロックアップでガタックに襲いかかる。

「キャストオフ!」

 慌ててゼクターホーンを展開するガタック。

{Cast off}

 アーマーが弾け飛び、左右のガタックホーンが起き上がった。

{Change stag beetle}

「クロックアップ!」

 サイドバックルを叩き、クロックアップするガタック。

{Clock up}

 宙に舞い上がった輝が地面に落下するまでの一瞬。

 ガタックダブルカリバーでザビーを斬り付けていくガタック。

 ザビーは武器を持っておらず、苦戦を強いられている。

{Rider cutting}

 ザビーをダブルカリバーで挟み込む。

「ぐ……!」

「ライダースティング!」

 ザビーはゼクターのフルスロットルを押した。

{Rider sting}

 ライダースティングをガタックの顔面に叩き込み、その体を吹っ飛ばしてダブルカリバーから逃れるザビー。

「うわああああ!」

 後方へ吹っ飛んでいくガタック。

{Clock over}

 地面に転がり、変身が解ける恵子。

「女ライダー! いいねいいね! だけど……!」

 刹那、ザビーの体が吹っ飛んだ。

「ああ!?」

 何かに吹っ飛ばされたのか、ザビーが目を向けるとそこには、カブト・ハイパーフォームの姿があった。

(あれは……?)

 地面に叩きつけられた輝がハイパーカブトを見つめる。

 



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Episode 9

 ハイパーカブトは、無言のまま、どこかへと去っていく。

「待て!」

 後を追うザビーだが、ハイパーカブトの姿を見失ってしまう。

「退却するぞ」

 輝はそういうと、恵子を連れて撤退し、赤井家に戻った。

「で、どうだったんだ?」

「カブトがもう一人」

 天道がハイパーゼクターを取り出す。

「そうそう。これを腰につけてた」

「未来から来たお前自身かもな」

「未来の、俺?」

「ああ。ハイパーゼクターには世界を行き来する以外に、時間を旅する能力があるんだ」

「時間を移動できるのか?」

「俺も、過去や未来を行き来して世界を救ったんだ」

「そうか」

 天道が輝にハイパーゼクターを差し出す。

「お前に託そう。加賀美を連れ戻せたら、返してくれ」

 輝はハイパーゼクターを受け取ろうとするが、しかし、時空を超えて消え去ってしまう。

「嫌われてしまったようだ」

 そう言いながら苦笑いする輝。

 

 

 音楽会館で歌を歌う女性、霧島(きりしま) ひとみ。

「お疲れ様です」

 公演を終えたひとみが、舞台裏で挨拶をする。

「ひとみさん、今日もばっちりでした」

「ありがとうございます」

「この後はどうされるんですか?」

「真っ直ぐ帰ろうと思います」

「そうですか。気をつけて帰って下さい。最近、怪物が現れるって話題になってますから」

「ええ」

 ひとみは音楽会館を出た。

 そこに、シオマネキの能力を持ったウカワームが現れる。

「は!?」

 驚き戸惑うひとみ。

 ひとみはウカワームに首を切り飛ばされて殺害され、そいつが彼女に擬態する。

 ひとみは何事もなかったかのように、自分の家へ向かって歩き出す。

 トン。

 曲がり角で、有名なメイクアップアーティストの風間(かざま) 和樹(かずき)とぶつかる。

 ひとみは。

 和樹を見て。

 恋に落ちた。

「ん?」

 和樹がひとみを見る。

「ごめんよ」

「あ、あの、私の方こそちゃんと見てなくてごめんなさい」

「いや、気にしないでくれ」

 立ち去ろうとする和樹。

 ひとみは離れていく彼の背中を見て思う。

(カッコイイ。また会えないかな)

 ひとみは和樹のことを考えながら、家へ向かう。

 そこに、ネイティブが現れる。

「殺したな」

 ネイティブはそう言って、ひとみに襲い掛かろうとする。

「……!?」

 びっくりしたひとみは、ネイティブの攻撃をなんとかかわした。

「殺したって、なんのことよ?」

「とぼけたって無駄だ。お前が擬態している女だよ」

 ネイティブがひとみの息の根を止めようと、腕を伸ばした瞬間、その体に弾丸が被弾して怯む。

 弾丸の飛来した先を見ると、仮面ライダードレイク・ライダーフォームの姿があった。

「女の子に手を出すとは、ワームであろうと赦さん!」

「ち!」

 ネイティブは舌打ちをして退散する。

 ドレイクグリップからゼクターが外れ、ドレイクの変身が解ける。

 仮面の下から、和樹の顔が現れた。

(嘘でしょ!?)

「大丈夫かい?」

 ひとみに歩み寄る和樹。

「あれ? 君は先程の……」

「霧島 ひとみです」

「風間 和樹。君はなんで襲われたんだい?」

「わからないです。いきなり襲ってきて」

「そうか。俺が君を安全に家まで送り届けてあげよう」

「あ、ありがとうございます!」

 ひとみは、和樹に付き添われ、帰路に就くのであった。

 



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Episode 10

 住宅街の一角に建つマンションの一室に、ひとみの部屋はある。

 和樹と別れ、部屋に入ったひとみを頭痛が襲う。

「うっ……!」

 ひとみの脳裏にウカワームの姿が浮かぶ。

「な、なんなのよあなた!?」

「お前自身だ」

「わ、私? 何を言ってるの?」

 ウカワームの姿が消え、頭痛が治る。

「……!? なんだったのかしら?」

 ひとみは不審に思いながらも洗面台で手を洗うと、リビングに移動してテレビをつけた。

 たまたま映ったニュースに自分の写真が出ていた。

「え?」

 疑問符を浮かべながら見つめていると、何者かに首を切られて殺されたという情報が入ってきた。

「なんなの?」

 さらに見ていると、目撃情報があったということで、提供者にリポーターが確認している。

 どうやら、ひとみがウカワームに殺害されるといった趣旨の情報だ。

「嘘……? 嘘って言ってよ!」

 ひとみの脳裏にウカワームの姿が浮かぶ。

「なんなのあなた!?」

「私は地球外から来た生命体。人間たちはワームと呼んでいる」

「ワーム?」

「そうだ。お前は我々より先にここへ来ていた敵対するネイティブに擬態されていたんだ」

「擬態……?」

 ひとみの記憶がフラッシュバックする。

 本物のひとみが、ツノの生えたワーム、つまりネイティブに殺され、擬態される瞬間だ。

「二回目?」

 ひとみの体がプルプル震えだす。体が恐怖しているのだ。

 ピンポン、と部屋のチャイムが鳴る。

「致し方ない」

 ウカワームはひとみの意識を奪った。

 ひとみは玄関の扉を開ける。

「霧島 ひとみだな?」

 と、スーツ姿の二人の男が警察手帳を提示した。

「霧島 ひとみ殺害の件で話を聞きたい。署まで同行してもらうぞ」

 ひとみはウカワームに豹変すると二人の警察官の首を跳ね飛ばした。

 遺体となった警察官は灰と化して風に乗って散っていった。

 そして、たった今消え去ったはずの二人が、ひとみの元にやってくる。

 警察官に擬態したサリスだった。

「お前たちは署へ行け」

「はい」

 二人の刑事は警察署へと向かっていった。

 ひとみはリビングに戻ってソファに腰掛けると、ウカワームがその意識を返還した。

「……?」

 疑問符を浮かべるひとみ。

「私、今なにを……?」

 その頃、ZECTの管理する施設で、加賀美が拘束され、拷問を受けていた。

「やめてくれ……」

 女隊員が腹部に蹴りを入れてくる。

「ぐえ!」

 吐血する加賀美。

「いい加減吐いて楽になりな! 貴様は見たのだろう!?」

(ダメだ。俺が見たのは絶対に……!)

「まあいいわ。時間なんてたっぷりあるんだ。……そう、たっぷりな」

 



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Episode 11

 輝と恵子はサリスに追われていた。

 背後から迫るサリスの中に、ウカワームの姿がある。

「逃げても無駄だ! 川越 輝! 三沢 恵子! お前たちのしでかしたことは万死に値する!」

「しつこいやつらだ!」

 後方に手榴弾を投げる輝。

 爆発に巻き込まれ、何体かのサリスが霧散する。

 ウカワームがクロックアップで二人の正面に回り込んだ。

 挟み撃ちに遭う輝と恵子。

 万事休すか、そう思った刹那、カブトとガタックのマスクドフォームが現れて銃撃をしてきた。

 ウカワームにライダーの弾丸が被弾する。

「く! なんだ!?」

「やめろ! そいつらは人間だ!」

 カブトの仮面の下で光一が叫んだ。

「人間だがネイティブの協力者だ。お前たちが使ってるシステムも、元はこの二人がワームを殲滅するために開発したツールだ」

「なに?」

「ち、違う! 人違いだ!」

 輝と恵子は隙をついてその場から離れようとする。

「待てと言っただろうが!」

 ウカワームが二人の前に先回り。

「よもや我々ワームのクロックアップを知らないわけではないだろう?」

 その時、ウカワームが頭を抱えた。

「逃げて……!」

 ひとみの姿に変わるウカワーム。

「貴様、邪魔立てをするのか?」

 輝と恵子は逃げ出す。

「ま、待て!」

 ひとみは二人を追って振り返り、もう片方の手を伸ばした。

「ぐ!」

 ウカワームは意識を失った。

「はあ……はあ……」

 息切れを起こすひとみ。

「ひとみ様、逃がすのですか?」

「例え敵対していても、彼らは地球人よ。原住民を傷付けず任務を遂行するのが組織の命令じゃない」

「ひとみ様……」

 カブトとガタックが変身を解くと、光一と真理絵の姿が顕になった。

「助かりました。えっと……?」

「赤井 光一」

「柊木 真理絵です。あなたは、オペラ歌手の霧島 ひとみさんですよね?」

「ええ、まあ……」

「彼らは?」

「彼らはZECTでライダーシステムを開発していたものたちです。人間ではありますが、もう一人の私とは価値観が違い、彼女は彼らを消そうと」

「ZECTとは一体なんだ?」

「ネイティブが作り上げた対ワーム組織です。あなた方地球人を巻き込んでしまい、申し訳ありません」

 ひとみは真理絵を見て気づいた。

「あなたはワーム(なかま)なんですね?」

「はい」

 ひとみは光一を見る。

「……?」

「お願いです。私たちに協力してもらえませんか?」

「協力ったって、何をすれば?」

「ネイティブの殲滅」

「それは俺も考えていた」

「それでは、あなたにはこれを託します」

 ひとみは懐からハイパーゼクターを取り出した。

「これは!?」

 驚き戸惑う光一。

「私の仲間がZECTの開発部に潜入した時に見つけた資料を参考に作ったものです」

「助かる」

 光一はハイパーゼクターを受け取った。

 ゴトリ、と何かが落ちる音が聞こえる。

 一同が振り返ると、風間 和樹がいた。

「ひとみさんが……ワーム?」

 和樹はことの一部始終を見ていた。

 落としたのはドレイクグリップだった。

「俺にはできない! できない、俺にはできない!」

 和樹の周囲をドレイクゼクターが飛び回っている。

 



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