盃兄弟の最年長は非能力者 (ろみぃ)
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???話 それは20年先の未来から
色々あって(主に挫折が原因で)、IDすら消していたんですけど、この度再登録の上再投稿することにしました。
ONEPIECE本編も進展し、ロジャーの過去も明らかになった今、主人公の年齢などを微調整して書き直しています。それにあたって、一話目は中途半端な形で終わりますのでご了承ください。
初めての方も最後まで見ていってくれると嬉しいです。
ポートガス・D・エースが処刑される。
その知らせを聞いたのは溜めに溜めきった有休を消化した後、久々に本部に帰ってきた直後のことだった。ちょうど、ニュース・クーによって全世界にその情報がばらまかれたのと同時期であり、七武海にも招集がかかり始めていた。
海が荒れていた。
海軍本部マリンフォードで行われるはずだったポートガスの処刑は、予想していた白ひげ海賊団の乱入と予想外の第三勢力の登場によって当初の予定を大きく外れることとなった。
最初の内は海軍優勢で戦況が進んでいた。いくら四皇白ひげと言えど、地の利の差を簡単に埋めることは出来ず、攻めあぐねているという印象を受けていた。国引きの子孫が出てきたときはヒヤリとしたが、七武海たちの能力により事なきを得た。
このままいけば予定通り処刑を進められるだろうなと考えながら遊撃をしていた。途中途中白ひげ海賊団の隊長クラスと接触することもあったけど、何とかここまで無傷で行くことが出来た。
そろそろ“作戦”が始まる時間かという頃、空からの乱入者。現れたのは海軍の軍艦に乗った囚人たち。加えて元を含め七武海が二人に革命家とよくわからないオカマたち。
そして、いろいろと話題に事欠かない
そこから、戦況は怒涛の勢いで移り変わっていった。
それまではあまり動いていなかった七武海たちが積極的に動き始め、最新の人間兵器であるパシフィスタが戦場に大量投入された。かと思えば白ひげ傘下の海賊団船長の一人があろうことか白ひげを刺し、全てが仕組まれこの戦争は茶番だと言い始める。
ああ、サカズキ大将の口車にでも乗せられたか、と少々哀れに思ったが、少しの間を持って立て直し、それまで動かなった白ひげがとうとう戦場に降り立った。
そして作戦は進み、防護壁が作動する。氷漬けにされた湾内に閉じ込められた海賊たちはサカズキ大将の流星火山で足場を奪われ、海に落ちて身動きが取れなくなったところを防護壁に備え付けられた大砲に襲われる。
だが、防護壁は完璧ではなく、倒れた国引きの重みで作動しなかった一か所から一気に広場へとなだれ込まれてしまう。
一気に海賊側が有利になった戦場。持病により白ひげが膝をつき、それを皮切りに隊長クラスが次々に戦闘できない状態となっても、麦わらが発動した覇王色の覇気により立て直し、更に、ばらばらだった白ひげ海賊団と第三勢力とが麦わらを中心にまとまっていき、手に負えない状態となってしまった。
処刑台へと続く道は開かれ、海軍の英雄を吹っ飛ばした麦わらはポートガスを解放。後は逃げるだけとなったのが今の状況。
「お前らと俺はここで別れる!!!!全員!!必ず生きて!!!無事新世界へ帰還しろ!!!」
そう言ったのは白ひげ。自らを時代の残党と言い、大事な
「――ハハッ、やっぱかっこいいな、
ポツリと呟いた言葉は方々から聞こえてくる戦闘音によって掻き消された。こんな事、過激派の海兵に聞かれでもしたらただじゃすまないだろうけど、少なくとも“海兵”には聞かれていない状況下なのだから許してほしい。
『まったく、それには同感だ。ぼくも死ぬときはあれくらいかっこよく死にたいものだね』
呟きに反応したのは誰だったか。目の前の相手か、もしくは自分の心の声だったのか。
白ひげを残し、海賊たちは海へ向かう。それを追う海兵を一騎当千の力で薙ぎ払う白ひげ。これはもう、海軍の負け確定だな、なんて厄介な人物の相手をしながらのんきに考えていた時、戦いが始まってから常時発動していた見聞色の覇気が嫌なものをとらえた。
「―っの馬鹿!!」
『おいっ!?』
気付いた瞬間、反射的に駆け出した。特に何かを考えていたわけではない。そうしないと後悔することを本能的に理解したから動いただけどあって、それからどうするかなんて全然まとまってない。“作戦”だってある。今はまだその時じゃないってわかっていたはずだ。
でも―――
ここを逃すと私の目的は達成できないから。
「
覇気で見た景色に割り込んだ時、何かが私の腹を焼いた。
中途半端ですがここで終了!
次からは過去、幼少期の話になりますので、この続きは遠い未来にて。
拙い文ですが、読んでいただきありがとうございます。
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序章 コルボ山の悪童兄弟
001話 海賊王の子供
多分この章が一番手古摺ると思うので更新は不定期になると思います。
前回の話に追いつくまで一体どれくらいかかるだろう…。
ひとまず、気長に待ってくれると嬉しいです!
海賊王“ゴールド・ロジャー”が処刑された。
彼が死に際にはなった言葉がきっかけとなり、大海賊時代が始まった。
富、名声、力、そして何よりそれらを手にするというロマンを追い求め、人々は海に出て、結果的に海賊たちは増えていった。それに比例する形で民間人を襲う絵に描いたような悪い海賊も増えていって、その被害にあう町や人達も現れた。
結果、この時代の原因となった海賊王を恨む人たちが増えた。
しかし、死人を裁くことはできない。恨みの矛先は彼の親族に剥くのは必然だった。
と言っても、海賊王の出身は
人々は行き場のない恨みを抱えていた。
『“もし、海賊王に子供がいたら”だってぇ?』
町へ出た時、裏路地でたまっていた如何にもガラの悪そうな男たちに聞いたことがあった。
少し邪険にされたが、しばらく答えを待っていると笑いながら答えてくれた。
『そんなもんが本当にいるなら、生まれてきたことを後悔させるくらい痛い目に合わせてよ、最後に“生まれてきてごめんなさい”って言ってこの世を去ってもらいたいもんだ!!』
『あんな奴がいたせいでこの時代が出来たんだからな!その子供っていうなら何しても罰は当たらんだろうしなぁ!』
『親の罪を償うのは子どもの務めってかぁ!!(笑)』
男たちはそう言ってギャハハと下品に笑っていた。
他にも、いかにも貴族そうな人たちに聞いたこともあったが、帰ってきたのは同じような言葉。総じて、“海賊王の子どもは死ね”。そう言っていた。
そして最後は必ずこう言うのだ。
『まあ、子供なんているわけないけがな』
「ただいまぁ」
日が沈みかけ、東の空が群青に染まり始めた頃、山の一角にある小屋のような家の扉を開けた。そこには仁王立ちの巨女がまさにドドンッといった感じで待ち構えていた。
「一体何時だと思ってんだい!!?こんな遅くに帰ってきやがって…!!」
私の姿を確認するなり怒声を浴びせてきたその顔は怒り一色で、後ろの方では彼女――ダダンさんの部下たちがハラハラした様子でこちらを見守っていた。見るに、助け舟を出してはくれなさそうである。
「仕方ないじゃないですか。今日の獲物大きすぎて持って帰るのが大変だったんですよ」
「獲物だとぉ?」
扉を大きく開いて後ろにあった存在を見せつけるとダダンさんは何とも言えない呆れた表情を見せた。
そこには体長3m近くありそうな熊がいた。標準的な
「ったく、お前の規格外さは知ってたつもりだったが…。ここ前で来ると驚くことすら馬鹿らしくなってくるね」
「えー、それほどでもぉ」
「別にほめちゃいねぇよ。ほらお前ら!そんなとこで固まってねぇでさっさと解体作業に取り掛かるぞ!」
厭味ったらしく照れて見せれば冷たい言葉と共に一蹴されてしまった。そして私が何か言うまでもなく作業の指示を出し始めたダダンさんに、この状況にもだいぶ慣れたんだなと思ってしまう。
「おいノア!お前も突っ立ってねーでさっさと飯を作りやがれ!!」
っと、怒られちゃった。
それじゃあ私も美味しいご飯を作るとしますか、と少し気合を入れて改めて家の中に入るとお腹のあたりにポスンと軽い衝撃を受けた。
「おっと」
「ねーちゃん、おかえり!」
「お、エース!ただいま」
それは五つ下、まだ四歳の弟が抱き着いてきた衝撃で、エースは笑顔で私を見上げていた。
「きょうはなにをとってきたんだ?」
「今日はねぇ、おっきい熊を取って来たよ!ご飯は熊肉のステーキだ!」
「くま!おれくまにくすきだ!」
無邪気に笑うエースを抱きかかえてやればうれしそうにまた笑った。ああ、本当私の弟可愛いなぁ!天使だよ天使!正直このまま思いっきり愛でていたいけど、あんまりやるとダダンさんが怖いだよな…。今もビシビシ感じるし。
「よし、それじゃお姉ちゃんはご飯作るけど…。今日もお手伝いしてくれる?」
「もちろん!」
「じゃあまずはダダンさんたちが切り分けた肉を台所に運んできてくれるかな?」
「わかった!」
エースを下ろしてやって簡単なことを頼めば任せろとダダンさんたちの方へと走っていった。
「転ばないようにね!」
「はーい!」
本当エースはいい子だ。まだ五歳にも満たないのにこうして家事の手伝いを率先してやってくれるし、いやいや期もあまりなくて素直だし。まぁ、素直なのは私の前だけで、ダダンさんたちの言うことはあんまり聞いてないみたいだけど。
「さて、エースのお手伝いが終わる前に野菜の下ごしらえを終わらせないとね」
気合を入れる為に行った後、私は台所に向かった。
ゴール・D・ノア。世界の大半の人から恨まれる海賊王“ゴール・D・ロジャー”の娘にて、九歳でその事実に気付きながらも平穏な暮らしを追い求める少女。それが私だ。
私の夢はただ一つで、弟のエースと一緒に幸せに暮らすこと。それが出来なくても、エースだけでも幸せであらせること。それが亡き母の願いであり、私自身、エースにあげたいものだから。
そのためなら私はこの命でさえも投げうって見せる。
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002話 弟と私
長らくお待たせしましたが最新話の投稿です!
幼少期編はどうしても書きたいところが限定的過ぎて上手く話を繋げられず手古摺っていますが、どうにか更新を頑張ろうと思います。
今回の話から3000~5000文字を目標に書いていこうと思うのですが、どうでしょうか?
ご意見があればよろしくお願いします。
ゴール・D・ノアの朝は早い。
まだ空が朝焼けを残す頃に起床し、家の者が寝静まっているうちから朝食の準備を始まることから始まる。それはダダン一家に世話になるようになってから一番に任せられた仕事だった。
「――よし、それじゃあ作り始めますか」
寸胴鍋に小さいサイズのフライパン、ボウルといった数々の調理器具を前に、いつものように一人宣言した。私は別に料理が好きってわけじゃないから、こうやって気合を入れないと作る量が多くて気が滅入りそうになる。
食糧庫にある食材から考えるに、今日のメニューはメインにオムレツ、スープはコンソメ、付け合わせにサラダと、主食は買い置きのパンがあったはず。そういえば何かの間違いで大量購入してきたイモは芽が出そうになってたし、どうにかそれを使わないと。とりあえず夜にポテトサラダでも作ろうか。
オムレツは後からでも大丈夫だから、とりあえずスープから取り掛かろう。
鍋にはもう水を汲んであるから、入れるのは玉ねぎ、にんじん、グリンピース…は嫌いな人いた気がするけどとりあえず入れちゃおう。今日は買い出し行くとか言ってたし量のある玉ねぎは多めにしよう。
人数多いから毎回寸胴鍋使ってるけど、今の身長じゃ台を使わないと使えないってのが難点なんだよね。沸かすのも時間がかかっちゃうし。
お湯を沸かしている間に食材は切っておいて、ついでにサラダ用の葉物野菜も切って水にさらしておく。そこまですると窓から差し込む光から朝焼け色が抜け落ていた。
そろそろ起きてくるかな。
「ねーちゃん、おはよー…」
「おはよう、エース。ほら、顔洗っておいで」
予想を立てたと同時に寝ぼけ眼のエースが起きてきた。光がまぶしいのか目をこする姿は可愛いけど、目を傷つけるからやめようね。
私の返答に間延びした返事をしたエースは洗面所に行くためにいったんリビングに消えた。
ダダン一家にお世話になり始めて早四年。当時はまだ赤ちゃんだったエースも“お手伝い”を率先してやってくれるようないい子に育った。ここ一年くらいは朝食作りを手伝うって言ってくれて、私の次に起きてくるようになってくれて…。もう、ほんといい子過ぎて天使!こんないい子で可愛い弟を持つなんて、私ってなんて幸せ者だろう。
今日は何をやってもらおうかな。せっかくだしポテトサラダ用にイモの準備を手伝ってもらおうか。とりあえず水で一通り洗ってもらって、ナイフは危ないから使わせられないけど、湯がいた後に潰してもらうのとか…。ああでも、結構数があったし、朝食作り終わるまでに水洗いは終わらないだろうから、それは食べ終わった後になるだろうなぁ。それまでは別のことを―――
ゴボッ、と低い音がした。
「ん?え、あ!ヤバ、めっちゃ沸騰してる!?」
エースに気を取られている間に寸胴鍋のお湯がすごい勢いで湧き上がっていた。
エースが生まれてすぐに自覚したブラコンだけど、ある程度抑えないとそのうち火事とか引き起こしちゃうかもなぁ。
冷静に火を止めながらそんなことを思った。
朝食も終わり、ダダンさん達は仕事に出た。買い出しにも行くためか今日は珍しく、山賊達を全員引き連れて行ってしまい、残ったのは私とエースの二人だけ。
「ねーちゃん、きょうはなにするんだ?」
「そうだね…、エースは何がしたい?」
「しゅぎょー!」
「修行?毎日エースも飽きないねぇ。…そっか、じゃあいつもみたいにお仕事終わって、お昼を食べたら修行しよっか」
いつのころからか、強くなりたいと言い始めたエースに答える形で始めた修行。と言っても、私も森の獣程度しか相手したことないから独学なんだけど…。とりあえずは家の周りを走ったり大きめの木の棒を振ったりで体力と筋力を鍛えてもらっている。
「とりあえずエースは朝の続きでイモ洗いしてくれる?それが終わったら洗濯物」
「わかった!」
言うや否やエースは外に出て行った。
うーん、やっぱりいい子。あんなに聞き分けの良い子供、今まであった同年代の子たちの中には居なかったな…。ちょっと素直過ぎて危なかっしい所もあるけど、けど、あのまま成長してほしいなぁ。
って、私は親戚の年寄か!?やだぁ、私まだ九歳…、まだ一桁分しか生きてない幼女…って幼女は言い過ぎか。
「はぁ…。こんなこと考えるよりも、さっさと仕事終わらせないと」
エースが手伝ってくれるって言っても、量が多いと洗濯物も結構重労働だからある程度は戻ってくるまでに終わらせないとね。
そして、“仕事”という名の家事を終わらせ、食糧庫にあった量の少なくなった野菜、肉の切れ端(とは名ばかりで普通に大きいけど)なんかで作った炒め物、それに朝のスープをリメイクして作ったポタージュスープ擬きとご飯を合わせて昼食にして、エースの希望通り、それからは“修行”時間になった。
「ほらエース、振りが小さくなってきてる。もっと大きく腕を振らないと筋肉付かないよ~」
「わかってる!!」
場所は家の前。私は扉の前にある切り株の椅子に座って、素振りをする木の棒で素振りをするエースにいろいろと教えていた。
始めた頃よりも体力はついたとはいえ、筋力の方はまだまだ。そもそも成長途中、発展途上って感じだから、気長に鍛えていくしかないと思ってるけど、たぶん、もっといい鍛え方はあると思うんだよね。
「あと十回、九、八――――――――――――二、一、そこまで!」
「っは、は、はぁ…」
「エース、深呼吸。吸ってー、はいてー」
全力の走り込み十五分、素振り五十回をワンセットにして、これで五セット目が終了。だいぶ疲れたみたいだけど、最初の頃は一セットでも音を上げていたから確実に成長している。
ちなみに、私も鍛え始めの時は同じメニューをこなしていた。
「はい、水分。落ち着いたら柔軟して終わりね」
「えっ!?けどおれ、まだできるぞ!!」
「体力使い切って倒れたらどうするの。確かに鍛えることも大事だけど、ちゃんと体を休めるのも大切なの。また明日、付き合ってあげるから」
だから今日は終わり、と言ってやれば、少し拗ねて頬を膨らませてしまったけど小さく頷いてくれた。それがあまりに小さかったので、悪戯に膨らんだ頬を突いて『分かったらならちゃんとお返事しようねー』と言ってやれば素直に分かったと言ってくれた。ちょっと顔が赤くなって、怒り気味だったけど、それもまあ、可愛いよね。
「そういえばさ、エースはどうして強くなりたいと思ったの?」
鍛錬後の柔軟を手伝いながらふとした疑問を問いかけた。
男の子だし、と今まであまり気にしていなかったけど、考えてみればどうしてそう思ったのかなんて聞いたことがなかった。思い返してみても、その頃にきっかけになるような出来事なんて無かったように思うし…。
エースは少し考えるそぶりをした後、予想外のことを口にした。
「ねえちゃんさ、いっつもおれをまもってくれてるだろ?」
「………え?」
「ねえちゃんはやさしいし、ごはんわけてくれるし、じいちゃんのむちゃぶりからおれのことまもってくれるし、かっこいいし、ごはんくれるし…。そんなねえちゃんのことだいすきだけど、おれだっておとこだし、ねえちゃんのことまもりたい!けど、おれねえちゃんよりこどもだからまもれるほどつよくない。だからつよくなりたい」
拙い言葉で紡がれる理由は予想だにしていなかった“
エースは私が思っていた以上に私のことをよく見ていたみたい。そのうえで守りたいと言ってくれるのはとてもうれしい。こんな弟の姉なんて、私ってなんて幸せ者だろう(二回目)。
「ねえちゃん?」
「ははっ、何カッコいいこと言ってるの!」
「うわぁ!!?」
何も言わない私を不思議に思ったエースが見上げてきて、その頭を思いっきり撫でてやったら驚きながらも喜んでくれた。ああもう、その笑顔だけで姉ちゃん強くなれるよ!
「だったらいつか、姉ちゃんのこと助けられるくらい強くなってね」
「おう!」
空がオレンジ色に染まり始める中、私たちはそうして笑いあった。
と、言うわけで今回はエースとの話を。
幼少期、実際には随分とひねくれていた彼ですが、まだ自分の父親のことを詳しく知らず、年の離れた頼れる姉がそばにいる状況下ではきっと素直ないい子だと思うんです。そういうエースに夢を見るんです!
余談ではありますが、じいちゃん(=ガープ)は半年に一回のペースで襲来しては海兵になれと無茶ぶりをしてきます。それはもう、ある程度成長していたノアはともかく、小さいエースには出来ないような無理難題を、です。
それを守っているうちにノアは立派なブラコンへと成長しました。その逆もまたしかり。
ノア的には守っているという意識の方が強いのでカウントしていませんが、外から見ればガープとも戦っています。手加減されているうえにいつも負けますが。
ちなみに、大量のイモはこの日の夜にポテトサラダとポテトコロッケとして消費されました。
長くなりましたが、次の話も楽しみにしてくれると幸いです。
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003話 おじいちゃんとかそんなの知らない
それは昼下がりのこと。
いつも通り朝食の準備、洗濯物、それから昼食の準備と仕事を済ませ、ダダンさんたちもこの日二度目の仕事に出かけた後のこと。家を離れて森の少し奥の方まで来ていた。
「えっと…確か、この葉っぱがヨモギで、煎じると傷薬に使えて、で、こっちが虫刺されに効くアカザ。はぁ…、この森、結構草木が多いと思ってたけど、ほとんどが薬効無しか毒草ね。結局二種類しか見つからなかった」
今日はちょっと前から興味を持ち始めた植物の効能について、知識の確認がてら森の調査に来ていた。
と、言うのも、たまたまダダンさんの部屋で眠っていた植物図鑑を見たのがきっかけだったんだけど。聞いてみたら使ってないから好きにしていいって言われて、こうして実物と確認するために使っている。
この本、薄いから持ち運びには便利だけど、その分情報量が少ないのが難点なんだよね。
「ねえちゃん、ねえちゃん!よもぎみつけた!!」
少し離れた所から声をかけてくるのは、一緒にいることが当たり前になってるエース。本当は留守番していてほしかったんだけど、手伝う、ついて行く、と手を付けられなかったので、絶対に一人でどこか行ったりしないことを条件に連れてくることになった。まあ、いつもは修行ばかりだからこういった息抜きのようなことも必要でしょう。エースは私が見てない所でも色々やってるみたいだし。
「お、どこどこ……、ってそれはウルシ!!エース、絶対に触らないで!!」
呼びかけに応じて指さす方を見てみればそこにあったのは灰白色の木に青々とした葉のついた植物。耐性が無ければほぼ間違いなくかぶれてしまうアレ。
「エースぅ、ヨモギはこういう葉っぱで木についてる葉っぱじゃないの。エースの見つけたあれはウルシって言って、触ると赤くなって痒くなるやつね」
先にいくつか採っていたヨモギと比べさせて説明してみるけど、どうやらあまり興味がない様子。まあ、確かにエースは“座ってお勉強”よりも“強くなるために鍛える”の方が好きそうだもんね。修行つけてって率先して言うくらいだし。
けど、ヨモギとウルシの葉を間違うのはさすがにどうかと思うよ?ヨモギってあれだよ、特徴的な形をした葉だよ?ウルシみたいな細長だけど絵に描くような弧を二つ合わせたような分かりやすい形の葉と間違うのはちょっと…。姉ちゃん、エースの将来が少し心配だ。
「はぁ…、まあ無理に覚えろなんて言わないけどさ、せめて道端の草とか食べたりしないようにね」
「そんなことしねぇよ!」
含み笑いでちょっと茶化していってみたけど、実際やらかさないか心配になる。こう、大きくなった時とかどこかで遭難して、食料が底をついてしまって、どうしようもなくなった時とか。いや、そんなこと起きないに越したことはないけど。
これがまだ、形の似たものと間違えたんだったらまだ望みがあるかもだけど…。例えば…トリカブトとか…、ってそれはそれで危ないね!
「ともかく、今日はそろそろ帰ろうか。夕食の準備しなきゃいけないし」
少し早い気がしたけど、これ以上手伝わせて取り返しのつかないことになったら大変だし、そんな気持ちを込めて手を差し出せば、まださっきの言葉で拗ねてたみたいだけど握り返してくれた。こういう素直なところを考えると、耳にタコができるほど言い聞かせればどうにかなるかな?
そういえばこの森の植物、持ってきた図鑑に載ってないものが結構あったな。それに毒草は毒草でも、狩りとかに使えそうな痺れ薬とか、そういったものの材料になりそうなものもあったし…。うーん、もっと別な本も欲しいかもなぁ…。
「――ん、おいし。料理はこれでオーケーだから、後はダダンさんたちが帰ってくるのを待つだけ…っ!?」
エースと一緒に植物調査に行ってから数日。午前の仕事を終わらせて、昼食も作り終わったちょうどその時、肌が泡立つような、ゾクリとした寒気が背中を走った。いやな予感がする。
「ねえちゃん、どうかしたのか?」
反射的に玄関の方を見てしまったからエースが不審な顔を向けてきた。同時に壁掛けのカレンダーが目に入って…、
そういえばもう、そんな時期だったか。
思わず深いため息をついてしまった。
「ねえちゃん?」
「エースは家の中にいて。興味があるなら見ていいけど、絶対に外には出ないように」
困惑するエースを横目に笑って見せて直ぐに外に出た。
陽は頂点。そこにはいつも通りの庭と森とが広がっていて、いつもと違うところと言えば、普段干してある洗濯物がもうしまわれているところと、森の動物たちが少し騒がしいことくらい。
今日は天気が特に良くて空気も乾いていたから午前中の内に洗濯物が乾いてくれたんだよね。けど、まあ、後者の理由はこれから来るであろう人物のせいだろうけど。
ジリッ、と視線を感じた。それを合図に全身の力を抜いてゆるく構える。
ドタドタ、と大型の肉食獣が闊歩するような音が聞こえた。同時に拳を握り足に力を入れる。
ドンッ、と視線の先の茂みから黒い足が見えた。瞬間地面をけり出して跳躍、出てきた足に繋がっている胴体めがけて思いっきり蹴りかかった。
「先手必勝!!」
「――――甘いわっ!!!」
少ししゃがれた声が聞こえてきたと思ったら時には足を掴まれていた。え、と思う暇もなく身体は宙を舞って視界が回った。
嘘でしょ!?完全に不意を突いたと思ったのに!!それも渾身の蹴りを片手でっ!!?
ぐらついた重心をどうにか捉えて体勢を立て直し、難なく着地したけど、思い通りにいかなかったこと、正直かなり悔しく思った。表には全く出てないと思うけど。やっぱりまだ筋力が足りないのかな。理想のイメージに体が追い付いてない感じがする。
「はっはっはっはっ!!良い蹴りじゃったぞ、ノア!」
「その“良い蹴り”を完璧に防いだ人に言われたくないね、
まったく、嫌みにしか聞こえないね!そんな気が全くないことは知ってるけど!
森から現れたのは白髪交じりの黒髪にひげ面の、体格のいい初老の男、モンキー・D・ガープさん。私たち姉弟を“山賊”なんていう非常識な場所に預けた張本人(もちろん、ダダンさんたちは山賊の中ではいい人たちだけど)。
膝をついたせいで汚れてしまった服を払い、軽くジャンプした後もう一度駆け出した。
それが戦闘開始の合図となる。
「――はぁ、はぁ、っは、はあぁぁぁぁあぁ…。疲れたぁ!!」
「これくらいでへばるなんぞ、まだまだじゃなあ!」
年端もいかない少女に何を求めてるんだ、この人は!!!
かれこれ一時間ほど経っただろうか。ずっと全力疾走かつ本気で戦ってたから息が限界まで上がって、呼吸することすら辛くなった。全身の筋肉が悲鳴を上げているのが感じられる。普段から結構動かしているつもりだけど、明日は筋肉痛になるかもなぁ。
それにしても、
「じゃが、前回戦った時よりも確実に強くなっておる。この調子で鍛えて立派な海兵になるんじゃぞ!!」
同じ時間動いてたっていうのになんでガープさんは息切れ一つ落としてないかなぁ。年齢差、体格差、体力差に経験の違いなんか含めて私の方が弱いことくらい分かってるけど、それでもお互いかなりの運動量になってると思うんだけど、疲れた様子が全くないっておかしくない?あ、よく見れば汗もかいてない…。
私って本当に強くなってるのかな?…ああ、もうこのままふて寝でもして…
「よし、次はエースじゃ!ほれ、さっさと出て――」
「エースに何させようとしてんじゃ、ゴルァ゛!!!」
「ぐふっ!!」
不穏な言葉が聞こえてきて脊髄反射で出た足は見事にガープさんの鳩尾に入った。威力こそなかったものの、今度こそ完全な不意打ちだったおかげで結構猛絶してる。ハッ!ざまぁww
…はっ、私は一体何を。
なんだかすごく口が悪くなった気がする。
「ようやく終わったか…」
「あ、ダダンさん」
いつの間にか帰ってきたらしいダダンさんが声をかけてきた。そこで昼食の前にガープさんが襲来したことを思い出して、思い出したら急激にお腹がすいてきた。
今までの流れ的に会ったら即戦闘、ってことが多かったから、早く終わらせてご飯を食べよう、と思い至って奇襲攻撃をしたはずなのに、戦闘でいっぱいいっぱいで完全に忘れてた。そりゃ昼食完成から一時間もたてばダダンさんたちも返ってくるよね。
「ったく、いつまで続くのかと思ったよ。さっさと昼飯食っちまおうよ」
「あはははは…。それもそうですね、お昼早く食べちゃいましょう!」
「ねえちゃん!」
「エース!ちゃんと部屋の中にいた?」
「ああ!はじめてたたかってるとこみたけど、ねえちゃんすごくかっこよかった!」
「え、ほんと?」
「かっこよかったしきれいだった!!かみのけがこう、キラキラーってしてさ!」
跳びかかってきたエースを抱きとめてやれば嬉しいことを言ってくれる。髪の毛がキラキラって言うのは多分、この金髪が陽を反射して輝いて見えったってことだろうけど…、女子である以上、綺麗って言われるのはかなり嬉しい。
ひとまず昼食をとるため、私たちはそろって家の中に入った。一時間も経ってるわけだし、料理温めなおさなくちゃ。
「わしのことは無視かい……」
未だ痛みが残っているのか、お腹あたりを抑えたままのガープさんが後ろで何か言ってたけど、そんなの知らないデス、はい。
というわけで(ちょっと扱いがひどいですが)ガープさん登場です。
前回の後書きでも書きましたが、ノアはブラコンです。本人もそれを自覚しています。
そのため、最後にエースを巻き込もうとしたガープにブチ切れて口調が一瞬、思いっきり悪くなりました。一応言っておきますが完全な無意識です。そのあと置いて行ったのはわざとですが。
呼び方の違いについては、まあ、察してください。
あと、前半の植物は普通に現実の植物から引用してきました。ワンピース独自の植物ってほとんどなかったのでこれくらい言かなと思いまして…。知識としてはかじった程度なので間違ったことを書くかもしれません。指摘してくれると嬉しいです。
それでは、今回も少し長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。
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