クラス召喚されて、何の能力もないと思われ、いじめられていたらプレイしていたエロゲのキャラを呼び出せるようになった件~メイド・クリエイター~ (KEY(ドS))
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クラス召喚ってなんでするの??博打打つ前にもっとするべきことがあるでしょ??
前略。とある高校のクラスが、異世界にある王国によって召喚され、
拉致された。
現代的社会からすれば立派な拉致行為に相当するものの、
既に異世界に連れてこられてしまった以上、生殺与奪を握っているのは王国側であった。
王の側近である白髭を蓄え、頭が身長が160cmほどの小柄な老人が、
淡々と連れてこられて戸惑っている生徒及び、教師に対して説明をしている。
「---どういうことなんだ!?俺たちを帰してくれよ!!」
「そうです!!」
ぎゃあぎゃあとわめくクラスの生徒たちや、その担任達。
だが、どれだけ騒ごうとも現状が容易に変わることはなく、
それどころか王族たちからの心証が悪くなる一方であった。
冷めた目で呼び出した道具たちの価値を見定めている王は、
騒ぐ生徒たちに対して、何かを言うまでもなく、
傍に立っていた大臣に対してあごで何かを指し示すと
再び押し黙り、ことのなりゆきを見守っていた。
「・・・・大臣よ」
「はい。マルク様。」
マルク、という男に呼ばれた大臣は、
にへら、と愛想笑いを浮かべながら生徒たちに対して説明を述べる。
「---ええ。皆さんがおっしゃる気持ちもわかりますです。はい。
・・・・ですが、呼び出してしまった以上、すぐに帰すことはできず、
帰るにはとある敵を倒していただくしかありません。はい。」
「・・敵、とは誰ですか?」
クラスメイトの一人、花咲結というクラスの中心的人物は、
冷製に大臣の方に鋭い目線を送りつつ、いぶかしむ様子を見せながら
質問する。
現状、彼らにとって王国の人間たちは信頼するに値しない人間であり、
大量拉致を実行した犯罪者でしかない。
ゆえに、警戒するなというほうが難しい状態であった。
「---我が国は5大国の機嫌を損ねないよう立ち回るしかない弱小国家でありまして・・・。はい。・・・・例えば、中央の"リーダス帝国"の有力貴族が我が国に振興でもしてきたら一貫のお終いなのですよ、はい。」
慇懃無礼に、いひひひ、とでも笑いそうなほほまで釣りあがった笑みをにたりと浮かべながら、大臣は説明していく。
この大陸、"リア大陸"において君臨する五大国。
極寒の地、傭兵国家の、北のリルド王国。
灼熱の砂漠が続く、交易地、西のアルス王国。
樹海が人の営みを隠す、南のローグ連合国。
100年の鎖国を続ける、東の軍事国家、アルバーツ連邦。
そして拡張主義にして、中央の最強国家、リーダス帝国。
それ以外の国は弱小国家として認識されており、
弱小ゆえの立ち回りをしなければ、すぐさま潰されることは目に見えていた。
酔狂もいえる、過去にあった"勇者召喚"なるものを実行した際には、
自国の有力貴族たちからの反発もあったが、それらを抑え込んだうえで実施したのにはわけがあった。
「---ご安心ください。異世界の勇者様たちは、高いステータスを持っているという伝説があります。召喚された貴方たちにも同様の才能がおありでしょう。はい。」
大臣の言葉に先ほどとは別の意味でどよめくクラスメイト達。
その言葉に一抹の希望を見出し始め、まるで修学旅行にきたときのような高いテンションで騒ぎ始める男子生徒も出始めていた。
「・・・納得されましたかな?それでは、ステータスを確認するのでこちらへ・・・。」
そう言って大臣の後をついていく生徒と担任達。
その中でも、中心に位置する生徒たちはこそこそと内緒話をし、
先ほどの発言に対して考えていた。
『・・・どう思う?結』
『そもそも、こんなわけのわからんところに無理やり連れてこられた時点で、
信用できる思う??』
『ですよねー。・・・・他のあほたちは・・・ああ、素行が悪いやつらが力をもって増長するのが目に見えるぜ・・・はあ・・。』
『女子に手を出さないように釘をさしとこう。私が女子をまとめるから、
カナタが男子をお願い。』
『りょーかい。・・・はあ、こういう場合って、もっと気楽に異世界を楽しめるもんじゃないのかよぉ・・・。』
『ここまで考えることができる時点で、あの騒いでいるアホどもとは違う。
だから、カナタ。一緒に生き残ろう。絶対に。』
『・・・おう。』
花咲結の隣に立ちながら答える、今時風に茶髪に染めた髪をツーブロックに刈り上げ、スポーツ刈りの髪型をしている幼馴染の米崎奏多はため息を吐く。
これから先、王族から仕掛けられるであろう罠と、それを回避するためにクラスメイトをまとめあげる労力の重さを想像し。
この話は、そんな彼らの苦労談----
(・・・・ああ。俺のハーレムがぁ・・・。400時間かけてクリエイトした俺のメイド達がぁ・・・。)
--ではなく、クラスの日陰者、カースト最下位の非モテ男。
角谷隆のエロい異世界物語である。
????「なんか、俺以上のクソザコが召喚された気配がする。」
??「なんか、俺と同じ匂いのする人間がやってきた気配がする。」
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ノータレントであって、ノージョブではない。ここ大事
授業中、机の下で隠しスマホしながらエロゲプレイしていたら、
いつの間にかクラスごと異世界に召喚されていた件について。
なんでや。
スマホの充電を気にしつつ、辺りを見回していると、
なんか偉そうな椅子に座った冷徹な視線のおっさんと、
その真横のこれまた豪華な椅子に座っているお姉さん。
そして、白いひげを蓄えた、明らかに怪しいへへへ・・・とちょっと含み笑いして気味が悪く感じるおじいさんがいた。
きょろきょろと周りを見ていると、おじいさんが説明を始めた。
曰く、この大陸がどんな場所であり、どのような国が存在していて、
どんな理由で俺たちを呼び出したのか。
答えは簡単で、この弱小国家が生き延びるために、
とある"敵"を倒してほしいのだという。
そいつらを倒せば俺たちはこの世界から元の世界に戻れるし、
また、多くの人類が救われることになるという。
で、俺たちはいわば昔話に出てくる勇者たちと同じような能力を持っているはずであり、大丈夫のことだ。
何が大丈夫かは全く知らないが、ステータスを測るから別の場所についてこい、と言ってきたおじいさんに先導され、まずは担任と、クラスの中心人物である花咲結、米崎奏多がそのあとを追い、迷うそぶりを見せていた他のやつらもそれに従うように歩いていく。
俺も、単独行動などさすがにする気はなかったので、みんなに置いていかれないようにあわてて後を追う。
ここは、どこかの城の中だろうか。
時折、外が見える通路に出ると、中庭らしき空間があるところが見え、
そこでは、銀の鎧に身を包んだ兵士が、30人ほどの白の鎧に身を包んだ兵士たちに何かを叫び、訓練のようなものをしている姿が見えた。
あれは、兵士を鍛えている・・・のか?
しかし、ただの高校生である俺にそんなことがわかるわけでもなく、
すぐさま通路を通り過ぎると、兵士たちの掛け声も聞こえなくなり、
そして目的地に着いたらしいじいさんがとある部屋の前で立ち止まる。
全長が5mはあろうかという巨大な扉を開け、じいさんが中に入っていく。
そのあとからついていった俺たちは、巨大な本棚がいくつもあり、
天井が吹き抜けになっている図書館のような場所にたどり着いた。
「----さてと。早速ですが、こちらの水晶に順番に手をかざしていただけますかな?はい。ステータスを見るためなので、はい。」
どよどよ、とステータス、という言葉にまたざわつき始める生徒たち。
じいさんの言葉で、本当にここがファンタジーの世界であるという実感が今更ながら俺も浮かんできたのか、心臓の鼓動が思わず早くなった気がする。
しかし、いきなり水晶に手をかざせと言われても誰もがすぐに動くことはなく、
互いに顔を見合わせ、お前が先に行けよ、とけん制し合うばかりであった。
そんな時に担任の女性教師、天田恒美先生が前に出て、
水晶に手をかざし始める。
「まずは、私からお願いいたします。」
気丈にふるまっているが、それでもやはり怖いのか、
顔が緊張で眉が釣りあがっており、若干かざしている手が震えているようにも見えたが、すぐさまステータスらしき表示が彼女の前に映り出てきた。
「---ほう。これはなかなか素晴らしい・・・。はい。」
「そ、そうなんですか?」
先生のステータス表記は
Lv.1
タレント:調教師 Lv.1
と表示されているのが盗み見れた。
平均値がいくらかはわからないが、弱いようには見えない。
普通だったら、一桁が妥当だと思うし。
たぶん、成人しているというのもあるんだろうけど。
というか、調教師ってなんだ?
エロい響きがするんだが・・・。
眼鏡をかけているからか?むちむちのナイスバディだからか?
・・・・いや、今考えるべきことじゃないなと頭を振るって冷静になる。
でも、茶髪セミロングクール系眼鏡女教師・・・・。
元の世界に帰ったらちょっと作ってみるか。
タレント、が何かについて疑問がわいていたが、
じいさんが補足し始める。
「タレント、・・おお、素晴らしい・・!これは、モンスターを手なずけることのできるタレントですな。・・・・通常であればLv.0からなのですが、貴女はどうやら生まれつきの才能があるようです。はい。」
「そうですか・・・。」
そして、先生が手をかざして大丈夫だったことがわかった他の生徒たちが同じく、手をかざしていく。
同じようにステータスが表記されていき、とあるものは剣士としての才能を、魔導士としての才能を、また、生産職っぽいタレントを持つものと様々いた。
魔法については、基本の五大属性というものがあるらしく
他の希少属性という魔法系統はすべてそこから派生しているものと説明がされた。
積極的なやつら、陽キャたちの判定が終わり、隠キャ組の判定が始まると、
やはり軒並み高い才能と、ステータスを持っているらしく、
誰もが自身の持つ可能性に対して驚きの表情を浮かべ、
何度も自分のステータスを見返していた。
「---さて。最後は貴方ですね。はい。」
とうとう俺だけになったので、じいさんの近くまで歩いていく。
誰?と周りからは言われているが気にしない。
黙って水晶に手をかざす。
すると、ステータスが表示され、
空中に浮かび上がった。
Lv.1
タレント:メイド・クリエイター Lv.1
「・・・・・・・・・・・・???」
「・・・・・・・・・・・・???
俺とじいさんは互いに顔を見合わせ、首を傾げる。
あれ?と。なんだこれ??と。
目を合わせて、あれ?と問いかけると、首を静かに横に振られた。
どうやら見間違いでもなく、思い当たる節もないらしい。
というか、見間違いでなければタレントのところに、
俺が一番知っているものが書かれていたような気がした。
「・・・えー。これで全員分の判定が終わりました。つきましては今後の生活について・・・。」
じいさんが、何やら今後の方針についてクラスメイト達に説明し始める。
皆が座り始めるので、俺も座って事の成り行きを見守ろうとしていると、
何やら声が聴こえた。
『---スター?マスター。』
「・・・・?」
辺りを見回すも、自分に話しかけてきているような人間はいない。
だが、今なお声は聞こえ続けている。
そして、その声がどこからではなく、自分の頭の中から聴こえてきたのに気が付く。
『・・・マホを。見てください。』
・・マホ?・・・・スマホ?
ごそごそ、とポケットに入っていたまだ電池が残っているスマホを取り出し
画面を見て、俺は絶句した。
『---やっとお会いできましたね。我が麗しのマスター。』
そこには、俺がプレイしていたエロゲ、『メイド・クリエイター』で作ったマイキャラ。自分の性癖を詰め込んだキャラ。
黒髪、長身、グラマー。二次元でしかありえないような造形の超美女。
ルゥ・キャロンがスマホの画面から俺に向かって話しかけてきていた。
・・・・・は?
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性癖が周りにばれたら誰だって死にたくなるでござる
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・????」
角谷隆は再び首を傾げ、スマホの画面に映る美女について考える。
自分が作り上げた最高傑作のクリエイト・メイド、ルゥ・キャロン。
身長190cm、Jカップ、黒髪ロング、そして、ツンデレ、クーデレ、ヤンデレとあらゆるデレを詰め込んだ自身の性癖集合体。
そのキャラクターがにこやかに手を振りながら、隆の方を見て話しかけてきている状況に、思考が完全に停止する。
(・・・え?・・・何・・・これ・・・・?)
「---それでは、各自に部屋を割り当てさせていただきましたので、
給仕の者に案内させます。」
スマホの画面に意識を取られていた隆は、大臣の言葉に顔をあげ、
すぐさま持っていたスマホをポケットにしまいなおした。
なぜだかわからないが・・・これを見られるのは非常にマズイような気がした。
そんな確信から、とっさに隠し、自分の案内人となる給仕さんの後をついていく。
(・・・・どういうことだ?あの、タレント名もそうだし・・・。それに、このキャラクターは・・・。)
電源を落としておいたスマホの画面に、自分がエロゲの"クリエイト・メイド"で作ったお気に入りのキャラ、ルゥ・キャロンが確かにそこにいた。
それに、まるで生きてるかのように笑いかけ、話しかけもしてきていた。
タレント名に自分がプレイしていたエロゲのタイトルが表示されたことも相まって、隆はさらに頭を悩ませながら給仕の案内についていく。
そして、うんうん、と頭を悩ませながら歩いていったところで、
目的地に着いたのか、とあるドアの前で給仕が立ち止まり、
それに気が付いた隆も慌てて立ち止まる。
「---こちらが、貴方様のお部屋となります。夕食時にまたおよびいたしますので、
どうかごゆるりとお過ごしくださいませ。」
「あ、はい・・・・。」
それだけいって、おじぎをぺこりと一度。
給仕は次の仕事に向かうために、足早に立ち去って行った。
「・・・・・・・。」
すぐさま部屋の中に入ると、鍵を閉めベッドに顔からダイブする。
色々あって疲れたからか、今の彼は、とにかく体を休めようとだらりとベッドに体重を預け、横になる。
そして、先ほどいじっていたスマホを再びポケットから取り出し、
もう一度画面を確認すると、同じようにルゥが少し怒った表情で隆のことを見つめていた。
『---マスター?無視するなんてひどいです。』
「あ、ああ・・・ごめん・・・。」
ルゥが生きている人間のように表情をころころと変えることに戸惑いつつも、
彼は恐る恐るといった感じでルゥに問いかける。
すなわち・・・確認をするために。
「・・・念のため聞くけど、お前は俺の知っている"ルゥ・キャロン"でいいんだな?」
『・・・当たり前ではないですか。』
隆の言葉にふふん、と胸を張ってそう答えるルゥ。
ぶるん、とJカップの爆乳が揺れ思わず目を奪われる。
すげぇ・・・自分で作っておいてなんだが、プロポーションやべぇな・・・と
鼻を抑えながら隆は続ける。
「・・・・あー。あのな。・・・・その・・・俺のこと・・・・どう思っている?」
『え?』
(・・・ば、馬鹿か俺は!!?なんてこと聴いている!!?)
よりにもよって、ゲームのキャラクターに対してそんなことを聴いた羞恥心に包まれた隆は両手で頭を押さえ、ごろごろと狭いベッドを器用に転がる。
他の人間に聞かれたら死にたくなるようなことを言った自分に対して、
自責の念にかられながら、ああああとうめき続ける。
『---べ、別に・・・・マスターのことなんて・・・。』
(・・・あれ?)
ん?とルゥの態度に隆は首を傾げた。
自分が作ったキャラとはいえ、なんだか顔を紅くし、もじもじと身を揺らしながら、
熱い視線を送ってくる従者の態度に一抹の希望を抱く。
(・・・あれ?これ、もしかしたら・・・?・・・いや、でも・・・。)
『・・・と、とりあえず!!嫌いではないですから!!勘違いしないでくださいね!!あくまで、嫌いではないってだけですからね!!』
「あ・・・・ああ・・・。」
ルゥの剣幕に押され、自身の予測も気のせいだと片付け、
隆はものすごい早口でまくし立ててくるルゥの姿を見ながら考え続ける。
(・・・ツンデレ・・・か?俺がやっていたゲームの通り、ルゥの性格は同じ・・・・。そして、更に気になることがある・・・。)
スマホの画面で、自身に話しかけるルゥを無視してもう一度タップすると、
"slot2~4 empty"と表示がされ、エラーメッセージが浮き出てくる。
(・・・・なんで、俺が作った他のキャラはいないんだ??・・・・・。)
自分が作った他の3キャラが存在しておらず、empty、と表記されることに彼は首を傾げる。
タレント、というレベルについて隆は考える。
レベルがあがるほど高度なスキルを扱うことができる。
"クリエイト・メイド"というタレントのレベルが上がればすなわち・・・。
『--とにかく!!私以外の女の子に鼻の下を伸ばしてはいけませんからね!!
・・・で、でも、どうしてもというなら、私のおっぱい見せても・・・。』
「!!!」
がたり、とルゥの言葉に隆は立ち上がり、枕にスマホを立てて、
す、と正座をする。
そして、頭をさげて深々と土下座をした。
「・・・おねがいしやぁす!!!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、えっち!!・・・・・でも、マスターならいいですよ・・・・。』
---その日、隆はもう死んでもいいと思ったという。
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本当の意味で二次元の嫁に見抜きさせてもらったってばよ※R18シーンアリ
「・・・ル、ルゥ・・・・。本当に・・・いいのか・・・?」
『・・・い、今更怖気ずいたのですか?・・・ほら。早くマスターの恥ずかしいおちんちん出してください。』
まさか、ルゥがおっぱいを見せてくれるとは。
思わず聞き返すと、ぷい、と頬を朱に染めながら、
顔をそむけ、しかし何かを期待するような視線をこちらに投げかけてくるルゥに対して、俺はズボンを降ろす。
『・・・・うわぁ・・・♡』
ルゥを見ているだけでバキバキにそり勃たったペニスを見て、
彼女が感嘆の声を漏らす。
異性に自分のモノを見られるのは初めてだが、
どこかおかしかったりしないだろうか。
問題なければいいんだが・・。
『・・私のおっぱい想像しただけでこんなに・・・?♡変態マスター♡いつも私を犯しているところ想像しながらおちんちんカチカチにしていたんですか?♡』
「うう・・・。」
やばい・・・・。ルゥがメイド服を脱ぎながらこちらを罵倒してくる。
上だけ脱いで、下はそのままであり、黒のガーターベルトを履いたまま、
黒のブラジャーに包まれた胸を強調するように腕を組み、こちらを挑発してくる。
たまらずに、右手で自分のペニスをつかみしごき始める。
「ルゥ・・・ルゥ・・・ああ・・・・。」
『わ♡♡本当におちんちんしごきはじめた・・・♡♡ほーら♡♡おっぱいゆっさゆっさ♡♡』
「はあっ・・・はあっ・・・うう・・・ルゥ・・・ルゥ・・・。」
彼女が上下に少し体を揺らすだけで、強調された胸も上下にバウンドし、
ぶるん、と跳ねる。
それを見るたびに精子が体の奥からせりあがり
しごいているペニスから放出してしまいそうになる。
ルゥに見られながらオナニーしている。
その事実が俺に背徳感を与え、一人でするのでは得られない気持ちよさとなる。
「はあう・・・やばい・・・・もう・・・・」
『えー?♡♡もうイっちゃうんですか?♡♡・・・ふふ♡♡いいですよ♡♡ほら♡♡白くてどろっとしたの、いっぱい出しちゃってください♡♡』
「ああ・・あああ・・・」
『ほらっ♡♡イけっ♡♡イけっ♡♡イけっ♡♡』
「ああぐぅ・・・っ!」
びく、と開いた足が軽くはね、それと同時に亀頭の先から精子が吐き出された。
ルゥの胸に出しているところを想像すると、更に精子がせりあがってきて、
おさまらずに湧き出る。
「あっっ・・・まだ・・・出るぅ・・・・!」
『すごい・・・♡♡精子の水たまり出来ちゃいます・・・♡♡
一体、どれだけルゥのこと妊娠させたいんですか?♡♡』
「あうう・・・ルゥ・・・好きだ・・・ルゥ・・・好きだ・・・」
『・・・♡♡しょうがないですね♡♡マスターは♡♡ほら♡♡私以外で使用する予定のないみじめチンポ♡♡もっともっとこすって私だけのために精子、出してください♡♡』
「ああ・・・また・・・すごっ・・・おさまらないっ・・・!」
まるでルゥに本当に絞り取られているような気持ちよさに、
また精子がチンポから出ていってしまう。
体の倦怠感があるのに、それでも興奮が収まらず、
またペニスが勃起してしまう。
「あー・・・」
『あはははは♡♡マスター♡♡これからは私がマスターのおちんちん管理してあげますからねー♡♡』
ぼうっとする頭の中、嬉しそうなルゥの言葉だけが耳に届く。
どんな形であれ、ルゥに見られながらオナニーしてしまったことに今更ながら羞恥心を覚え、顔が熱くなる。
『・・・ふふ♡♡ゆっくりおやすみなさい、私のマスター♡♡』
「・・・・・・。」
射精後のけだるさに身をゆだね、
ささやいてくるルゥに甘えつつ、横になって休むのだった。
????「うらやましい(血涙)」
??「なんか、彼とは仲間になれそうな気がする」
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戦闘とかしたことないってばよ。というかいじめはやめ(ry
「おおお・・・・。」
空っからになるまでルゥに搾り取られて、
腰ががくがくと震える。
セックスをしたわけではなく
見抜きでオナニーしただけでこれである。
一体どんなサキュバスなんだ、こいつは。
とはいえ、自分が好きなものを詰め込んだ夢の塊にあらがえるわけもなく
ルゥの音声に従ってしごいているうちに寝てしまい、朝になってしまったようだ。
窓の外からは日の光が差し始め、夜が明けたことを示している。
『--くすくす♡本当に一晩中私の体でお猿さんみたいに盛るなんて・・・♡♡
マゾの上に童貞早漏チンポなんですか?♡♡』
「うるせぇ・・!」
あざける様に笑ってくるルゥにそう言い返すも、
体は正直でありまだぶるぶると少し震えているような気がして締まらない。
俺の従者の癖に生意気だ。
というか、一体なんでこいつは俺の元に現れたのだろうか。
見たところ、俺と同じような能力を持った人間は早々いないし、
珍しいにもほどがある。
そして、気になることがある。
「--なあ。一つ聴いていいか?」
『なんですか?』
メイド・クリエイターは文字通り、自分の好みのメイドを想像し、
創造すること。前世のエロゲではかなり名の知れたゲームであり、
モデリングの素人でも自分好みのキャラを作れるという傑作だ。
ルゥは俺がこのメイド・クリエイターを買った時に、
一番最初に作ったキャラであり、いろんな様子を試験的に詰め込んでみたキャラクターでもある。
声はプロの声優が用意した素材をもとに、合成して好きな声にすることができる。
その中で、俺は自分好みの声を何百回と模索し、
性格もデレがつく要素を混ぜ込み、その結果誕生したのが彼女、ルゥである。
「----お前って、スマホの中にずっといるけど、こっちの世界には出てこれないの?」
『--正直なところ、わからないんです。』
俺がルゥに尋ねると、彼女は困ったように眉尻を下げ、
説明し始める。
『いつもみたいにマスターにいじっていただいてたところ、
急にマスターと話ができるようになって、嬉しさがこみあげてきたのですが、
どうもそちらには今のところ行けないみたいでして・・・・。』
「・・・そうか。」
うーん、と両腕を組んで頭をひねる。
彼女の話が本当であれば、彼女はもともと"意思"を持っており、
人間のように考えて動くことができるということだ。
AI・・・にしては高度すぎるし、何よりもどうしてこんな能力が俺に備わったのか。
それが一番の謎である。
他のやつらも何らかの能力を持っているとのことだが
俺のような力はまずもっていないだろう。
というか、この能力を他人に見せる気もしない。
スマホの画面を見せたら、きっともともと入れていたゲームアプリだと難癖付けられて、からかわれるのがオチだ。
学校での立ち位置もいいとは言えず、発言力もないし。
どちらかというとヤンキーとかにいじめられるカースト下位のため、
下手に目立つこともしたくない、というのが偽らざる本音である。
ああだこうだ考えていると、こんこん、とドアノックされる。
『----おはようございます。朝食の準備ができましたので、
支度がお済みになりましたら、外までお願いいたします。』
「あ、はい。」
そういえば、もう朝になっていたな、と外からのノックで気が付き、
すぐさま返事をする。
色々考えることは多いが、とりあえずは俺も食事にありつかないと。
「---とりあえず、ルゥ。人前では静かにしてろ。バレるとまずいかもしれないからな。・・・極力、お前の存在は秘密にしておきたい。」
『--わかりました。マスター。あ、私と話したいときは片耳にそのワイヤレスのイヤホンをスマホにつけてもらえれば大丈夫です。』
「ああ。わかった。」
念のため、スマホに持っていたワイヤレスのイヤホンをつけておき、
左耳に聴こえるようにしておく。
ルゥが入っているスマホをポケットに入れて、
俺は廊下に出るのだった。
????「ちなみに、俺のレベルは万年1だぞ。・・・15年近くもな!!(ヤケクソ)」
??「五大国以外には小国がいくつかあって、この主人公を呼び出した国もそのうちのひとつだね。
もちろん、五大国に戦争を吹っ掛けられたらこうした国はお終いだから、従属するか、不利な貿易を強制させられてでも付き合っていくか、上手く距離を取って立ち回るかしないといけない。」
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いじめは良くないっていうけど、いじめられたことも、いじめたこともないって人はいないよね!
「---はっ!!はっ!!」
「よーし!!いいぞ!!後50!!」
「はいっ!!」
王宮の中庭にある訓練場にて、異世界に召喚された生徒たちはこの王国、
リガルに騎士たちに武器の扱い方を教えられていた。
ただ、ひたすらに槍をかかしに突き続けるもの、
剣をまっすぐに振り上げては、降ろすもの、
何か呪文のようなものを唱えて、魔力を解放させるものとさまざまであった。
そして、その中で、角谷隆は何をしているのかというと----
「--ふんいぎぎぎぎぃ!!あ!今ちょっと剣持ち上がった!?あがりましたよね!?」
---剣を振るおうとして、数回しか降ろせない状態であった。
これには、付き添って居る騎士も苦笑いし、そ、そうだな・・・と
遠い目をし始めていた。
食堂にて食事を終えた彼らは中庭まで案内され、
この世界で生きていくために、戦う技術を教えられていた。
昨日の水晶によるステータス判定により、
それぞれが何の才能を持っているかもわかり、
何の能力を伸ばしていけばいいかは、方向性が定まったからである。
もちろん、担任である御門有佐は生徒を戦わせることに異議を申し立てたが、
ファンタジー世界にやってこれて浮かれている一部の生徒の賛同によって押し切られ、ならばとせめて一緒に訓練に混ざり、武器を振るっている所であった。
そして、角谷隆のタレントは"メイド・クリエイター"。
つまり、メイドを作成し、従える能力なのだが・・・・・。
唯一の従者であるルゥ・キャロンはいまだにスマホの世界にいるばかりで、
姿を現すこともなく、彼は役立たずの烙印を押されかけていた。
ちなみに、他にも戦闘面の才能に恵まれなかった生徒たちも
これから先、戦闘で役に立たないとみなされ、
クラス内ではぞんざいな扱いをされ始めていた。
「---よーし!!昼の訓練はこれまで!!それじゃあ、各自!!部屋で休んだら次は夕食なので食堂に遅れるなよ!!」
訓練長らしき角付きの兜をかぶった人がそう声を張り上げると同時に、
生徒たちも手を止めて、それぞれが部屋に戻り始めた。
疲れで身動きが取れない者もいたが、少し休むとまた動くことができるようになり、
同じく場内へと戻っていく。
「----し、しぬぅ・・・。」
「・・・大丈夫か?」
隆は訓練用の刃が潰された剣を地面に突き立ててて支えにし、
震える両足で地面から辛うじて立ち上がり、寝転がずに
踏ん張っていた。
思わず、それまで訓練を見ていてた兵士がそう声をかけてしまうほどに、
彼はぷるぷると身を震わせていた。
「・・まあ、聞いたところじゃお前らこういうこと、したことないんだろ?
無理もない。」
「争いとは無縁の生活を送っていたので・・・。」
『えっちぃ妄想ばかりの性活でしたもんね。』
自信の従者の軽口に、誰が上手い事を・・・と反論する気も起きず、
彼はついに地面へと倒れ伏した。
「お前くらいの息子がいる身としちゃ、複雑な気分だけどな・・・。」
「・・・・え?結婚してるんすか?」
まさかの事実に驚愕の表情を浮かべ隆が兵士の顔を見返すと
ああ、と神妙そうに一度首を動かして兵士がうなずく。
「うちの村にいる妻と息子に仕送りするために宮仕えしてんのさ。
・・・といっても、単に一兵士としてだがな。」
「はへー・・・。」
自分と同じくらいの息子がいるという兵士に対して、
どこか気の抜けた返事を返す。
嫁どころか、結婚相手もいない隆にとっては現実味がなく、
一生独身であると思ってのことであった。
『---マスター?マスターには私がいるではないですか。』
(いや、そうなんだけどさ・・・。さすがに見抜きオナニーだけじゃなく、
もっとえっちぃことしたいって男なら思うし・・・。)
「?どうしたんだ?」
「いえ。なんでもないっす。」
ぼそぼそ、とルゥに話しかける隆を何の事情も知らない兵士はそうか、
と一言だけ返し、立ち上がり、食事には遅れんなよ、と一言だけ告げると、
自信の装備をもって、兵舎がある方角へと去っていった。
「---なあ、ルゥ。お前から見て、俺の戦い方はどうだった?」
『オブラートなのとマゾにとってご褒美な言い方、どっちがいいですか?』
「お前、いい性格してんな・・・・。オブラートで。」
AIというか、そういう観察とかが得意そうな機械でルゥに対して隆が尋ねると
ルゥが気まずそうに顔をそらしながら告げる。
『---正直なところ、恵まれているとはとても・・・・。』
「・・・そうか。」
ふー、と隆は息を吐くと、肩を何度も上下させ、何かをこらえるように目をつむる。
彼自身、薄々と気が付いていたことだがはっきりと自分の相方に言ってもらって肩の荷が下りたのようなすっきりとした表情となった。
「--ま、それはそれでどうでもいいわ。んなことよりエロいことだ。エロいこと。・・・・何か、他の服に着替えたりとかできないん?」
『---チャイナ服とか行けますよ?』
「マジで!!?」
『でも、その代わり10回は出さないと許しませんから。』
「---と思ったけど、たまには自重も必要だよな!!うん。」
『・・・・・・』
いくら性欲真っ盛りの男性高校生とは言え、
二桁はきついものがあった。
????「は?うらやましい。俺もあんなメイドが欲しい。」
??「俺も魔力あんまないし・・・。」
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そろそろモンスター討伐ってころだけど、不安だってばよ
「---それでは、皆、準備はいいな?」
兵士長が集められたクラスメイト達に向けて告げる。
数日間の集中訓練は終わりをつげ、これからは実戦である。
それぞれが王国から支給された装備を持ち、これからダンジョンとして指定された区域に立ち入り、モンスターを討伐する。
初めての戦いに向かう途中、生徒たちは緊張した表情を浮かべ、
落ち着かない様子で辺りを見回しながら兵士長の案内に従って
歩を進める。
手につかんだ武器で、これから本物の殺し合いをすると考えるだけで、
一介の高校生に過ぎない彼らにとっては恐怖以外の何物でもない。
『---どう?』
『---何とか扱えそうだ。"剣術"のタレントレベルが0から1まであがったぜ。・・・』
花咲結は自身の隣で歩き続ける米崎奏多に問いかけると、
奏多はぼそぼそ、と彼女の耳元で小さな声で返答する。
奏多には剣を扱う才能、"剣術"のタレントレベル1を持っており、
結は、"魔法"のタレントレベル1を所有していた。
お互いにレベル0のタレントでしかなかったが、勇者による成長補正によってか、努力のたまものか、すぐにレベル1へと到達していた。
『私たちみたいな戦闘の才能がある人間はいいけど・・・・そういうのがない子たちはちょっとまずいかもね・・・。』
『明らかにクラスの雰囲気が変わってきているからな・・・。』
そう言って、彼らは戦闘の才能に恵まれなかったクラスメイト達に視線を投げる。
そこには、明らかに肩を落とし、これから戦地に行くことに抵抗感を覚えているであろう少年、少女たちの姿があった。
支援系や、生産系のタレントに恵まれたばかりに、
闘いに向かないと判断され、素行の悪いヤンキーたちに絡まれている者たちだ。
いうなれば、非力と言わざるを得ない弱者である。
この世界において、戦闘系のタレントや、能力を持っていない人間は多数おり、
そうした人間でも生きていける道はいくらでもあるが、やはりというか
戦闘の才能がないと判断されたばかりに軽んじられはじめ、
陰湿ないじめが多発していた。
『---不良組の伊藤幸助、浜崎美緒。こいつらは要注意だな・・・。』
『私たちが止めなかったら何するかわからないもんね。』
二人の話す人物。それは、不良組の中でも特に素行悪いペアのことである。
この世界に来る前から恫喝や暴行を働いていたという噂もあるのだが、
中々尻尾をつかませず、少年院送りにされずに済んでいる厄介な相手だ。
単に馬鹿というわけでもなく、自分の身を護れるほどの小賢しさを兼ね備えているのが、伊藤と浜崎の強かなところである。
『--よし。じゃあ、いつも通り俺が先陣切るから、結が後方支援してくれ。』
『わかった。・・まあ、兵士長さんの指示に従えば大丈夫そうだけど・・・。』
「---ついたぞ。」
そう言って、兵士長がとある廃墟の中で歩みを止める。
石造りのようだが、すでに相当の年月が経っており、建物の表面にはうっすらと緑のコケが生えている。
兵士長が建物の近くに行き、ガラス細工の丸い球体に触れると、
その隣にある30mほどの円形の石が光り輝き始める。
ざわわ、とその光景を見て驚くクラスメイト達をしり目に、
兵士長が叫ぶ。
「よし!!じゃあ、昨日割り振った3人グループに分かれてくれ!!
それから2グループずつこの円盤に乗って、中に入るぞ!!
---お前たちはここで、私たちの退路を護れ。」
「「了解です。」」
兵士長の言葉に、二人の兵士が円盤の隣に立ち、槍の下側を地面に突き立て、
構える。
万が一のことを考え、外にも人を配置しておき、スムーズに撤退できるようにするためである。
そして、そんな中、角谷隆は何をしているのかというと----
(もう、マヂ無理・・・・。生身の人間とコミュとか・・・。
ルゥみたいな長身爆乳のおんにゃのこならともかくさぁ・・。
仲良くもない人が相手ッて・・・。)
「・・・。」
「・・よろしくなぁ?」
絶賛、いじめをしてきている伊藤と、その伊藤にいじめられているクラスメイトの男子と同じグループになってしまっていた。
隆もの伊藤いじめの対象になって居るだけに、いたたまれなくなり、
今すぐに家に帰りたいと念じていた。
『----私が外に出れるのであれば、その男をすぐさま殺してやるところなんですけどね。』
(物騒なこと言わんといて・・・。・・・・ああ、やっぱりルゥのチャイナ姿でヌいときゃよかった・・・。)
『--今からでもします?』
(皆が命がけで戦っているところにいきなりオナニーしだすとか、通報不可避なんだよなぁ・・・・。)
びくびく、と伊藤におびえながら円盤に乗る隆とクラスメイト達。
そして、全員乗ったところで円盤がまた再度発光し、
下に降りて行った。
---ダンジョン "捨てられた神々の遺跡" 推奨レベル 5以上 危険度ランクE
彼らを地底で待つのは、地獄か、それとも----
それは、誰も知る由のないことであった。
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ダンジョンでエンジョイできるなんて思っていなかった。知ってた
「前衛は敵を引きつけ、後衛がカバー!!一人が切りつけたらすぐ後ろに下がれ!!もう一人の前衛がモンスターを攻撃してフォローしろ!!」
兵士長が3人組でグループを組んでいる生徒たちに向かって的確に指示を出していく。
前衛で腰が引け、血の気のない顔をしながらも、どうにか前に踏み出して敵に切りかかる生徒。
後衛は、そんな前衛よりはモンスターと距離があるため幾分かマシな顔つきをしているが、やはり自分に向かってきたらどうしようという不安がぬぐえず
冷や汗が止まらない状況である。
敵はファンタジー世界で有名なモンスターのスライム。
体型は1mほどでそこまでの力はないが、武器を扱い、徒党を組んで戦うことから
厄介なモンスターとして知られている。
「うあああっ!!」
のろのろ、と近づいてくるスライムに対して生徒が持っている槍を突き立てる。
両腕に込めた力をさらに強め、突き抜けるために力むも、
見た目以上に硬いのか、それとも単純に力が足りないのか、
数十センチほど刺さったところで槍の先っぽが止まる。
「せいやああっ!!」
槍を突き立てた生徒がすぐに引き抜き、後ろに下がると、
それと代わるようにもう一人の生徒が剣で切りつける。
スライムの体が3分の2ほどまでスライスされ、先ほどまでよりも動きが遅くなると、
後ろで魔力を貯めていた女子生徒が右腕をかざし、発射する。
「---"魔法の矢"!!」
細く集中して線のようにまとまった魔力が一直線にスライムにめがけて放たれる。
そして、一発だけでなく何発も連射され、スライムの体が穴だらけとなり、
ぼこぉ、と音を立てて崩れ落ち、塵となる。
「・・・はあ・・・。はあ・・・。・・うう・・・すげぇ怖かった・・・。」
「でも・・・上手く行ったわね・・・。」
「お前たち、いいぞ。初陣とは思えん。恐怖に耐えながらよくぞ前に進んだ。」
「・・・・。」
兵士長がモンスターを初めて倒した生徒たちにねぎらいの言葉をかけると、
休んでおけ、と一言いい、それまで戦っていた3人の生徒たちを下がらせる。
体力的にはまだ問題ないものの、初めて命のやり取りをして精神を消耗しているからか、疲れが見える彼らを休ませておくためである。
何よりもダンジョンから帰る際にも、余力がなければ撤退は厳しい。
そのため、全員が疲れないように自分で走って逃げられる程度の力を残らせようという判断は適切であった。
スライムが倒れた後から青色の魔力の塊が立ち込め、
倒した生徒たちに注がれる。
「・・・あ、これって・・・。」
「モンスターを倒せば、魔力を得ることができる。・・・すなわち、レベルアップに必要な経験値と言われるものだ。喜べ。お前たちはそれを自分たちの力で得たんだ。」
「・・・・。」
自身の中に取り込まれていった魔力の塊に対して、
体のあちこちをせわしなく見る生徒たち。
強くなった、と自惚れはしないが、それまで張りつめていた緊張の糸が達成感によって緩み、どかり、と腰を降ろしてふう、と息を吐いた。
(・・・・・あれが、経験値か・・・。)
『---マスター。』
(・・・・おう、どうした?)
それまで、まだ待機している組であり、他の生徒たちがモンスターと戦っているのを見守りながらルゥと話している隆は、彼女に話しかけられ、小声でぼそぼそと返答する
『どうやら、あのスライムはレベル4相当と演算結果が出ました。』
(・・・・俺らってレベル1だよな??)
『はい。・・・ですが、タレントの能力が強ければ強いほど、
レベル差が多少あっても戦えるようです。』
(・・・ちなみに、俺は?)
『---ご安心ください。もちろんレベル1のままです。』
(知ってた。)
自分が最初に戦う人間でなくてよかった、と胸をなでおろしながらほっと落ち着く隆は、ルゥとモンスターの強さ、そして兵士たちと生徒たちの強さを比較し、
この世界の在り方について観察をしていた。
ルゥはAIに近い存在であるからか、合理的な判断を下すのが速く、
適切に決断を下す際に役に立つ、と隆は考えていた。
つまり、彼自身のレベルはいまだそこまで高くなくても、
彼女の補助があれば大分マシになると踏んでいるのだ。
("剣術"あたりのタレントもっていりゃあなぁ・・・。)
『タレントレベル1を持っていれば、レベルが5あがったのと同じになります。
レベル1でも、"剣術"タレント1を持っていれば、レベル6までの敵と戦うことは可能ですね。』
(だなぁ。・・・で、俺の相方たちはどうよ?)
ちらりと隆が横目で近くに立っているスリーマンセルを組む生徒たちに対して、
ルゥに意見を求める。
大体の予想はついているが、彼女の演算があればさらに心強いと感じているためであった。
『片方の髪で片目が隠れている生徒に関しては特に悪意は感じられませんね。・・・しかし、もう一人の方が厄介です。あれは、他人を道具として使う人間の目です。』
(・・・やけに実感がこもっているじゃん。)
『ええ。毎日ご主人様に性欲を発散する道具として見られておりますから。』
(本当にお前、俺のメイド??)
軽口どころか、生意気余って主に憎らしい口を叩くメイドに対して、
ひくり、と頬をひきつらせながら隆が突っ込むと、
近くに寄ってきていた、彼と一緒に組むジャージ姿の生徒があの・・・と隆に話しかける。
「お、おう。どうした?」
「さっきから何か小声で話しているみたいだけど・・・。大丈夫?」
「あ、すまん。気にしないでくれ。」
傍から見たら不審な挙動を繰り返していたからか、
隆に対して疑惑の目を向けつつも、そ、そっか・・と引き下がる生徒。
(・・・・ちなみに、あの子、なんて名前だっけ?)
『確か、御堂杏、ですね。』
(何それ、かっこいい・・・。俺の名前なんて角谷隆だぞ??
絶対あっちの子の方が主人公じゃん・・・・。しかもかわいい系っぽいし。)
『大丈夫です。マスター。性欲ならマスターのほうが上でしょうから。』
(お前・・・。もしこっちの世界に来たら絶対に押し倒してやるからな・・・。)
『・・・搾り取ってもいいんですね???』
片眼が隠れているが、よくよく見ると顔かたちは女子のようであり、
なんだか主人公っぽい名前の上に、声まで少年系っぽい声優ボイスという美少年に対して、隆はジェラっていた。
自分の髪を洗うときに楽、という理由で切ってしまった坊主頭をなでながら、
うーむ、と彼は考え込む。
(・・・・なんかさ、ちょっときな臭くね?)
『・・・きな臭い、とは?』
(いや、何てーの?・・・上手く行きすぎじゃね??)
他の生徒たちも兵士たちの指示、フォローによって危なげなく討伐を果たしている姿を見て、隆は首を傾げた。
彼がこのダンジョン、"神々に捨てられた遺跡"と書かれていた看板を見た際には、
"推奨レベル5以上"と書かれており、間違ってもレベル1では勝てるような相手ではないと思っていた。タレント込みとはいえ、初めての戦闘で勝って、
だんだんと慢心して、談笑にふけっている生徒たちの姿を見て、
隆は危機感を募らせていた。
いまだに自分たちはダンジョンの上位層におり、
一向に下に降りようとはせず、同じ階で延々と狩りをし続けている。
(・・まさか、下にやべぇのがいんのか??)
『・・・・情報がないので判断しかねますが、その可能性は高いかと。
下層に強いモンスターがいるとなれば、上の方にいるのは、それらを避けて逃げてきたモンスターということでしょう。』
遺跡の入り口を護る兵士たちの姿。そして、入った直後にがっちりと生徒たちをいつでも逃がせるようにするためなのか、常に辺りを警戒している様子の忙しない兵士たち。それらが意味するものを連想した結果、行きついた想像である。
つまり、そうした事態が起きるかもしれない、と備えているように見えるのだ。
あくまで、"推奨レベル"が示しているものが、ダンジョンの一階のみを指し示しているのであれば・・。
「--よし。それじゃあ、そろそろ休憩に・・。」
兵士長が号令をかけ、昼休憩を取らせようとしたところ
それは聴こえてきた。
「----ゴアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
---彼らがいるフロア。その真正面の10mほどの道の方から、
この世のものと思えない、大きな叫びが部屋に響いた。
しん、と一瞬静まり返った後、先ほど聴こえてきた声について、
ざわざわ、と生徒たちが騒ぎ始める。
ドドドド、と地面が揺れ始め、何か大きな質量が彼らのもとに近づいてきており、
兵士長はすぐさま気を取り直し、剣を抜刀して、叫ぶ。
「---何か来るぞ!!4名ほどこの場に残って俺と共に足止め!!!残りは彼らを連れて、元いた道を引き返せ!!急げ!!!」
「「「「了解!!」」」」」
うああ・・・と取り乱しながらも、兵士たちの誘導に従って走り出す生徒たち。
隆も兵士たちの誘導に従って、逃げようと足を動かす。
(畜生!!いった傍からこれかよ!!!)
『マスターのせいですね。』
(んなわけあるかぁ!!)
はっは、と運動不足気味の体をどうにか動かして逃げるさなか、
隆は近づいてくる音の正体が気になり、後ろを振り返り、
---絶句した。
「----ゴアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
----全長が何Mあるかどうかもわからない大きな紅い蛇が、口を開きながら、
こちらに向かってきている姿が見えてしまった。
(・・・嘘おおおおお!!!??)
『あ、これ死んだかもしれませんね・・・・。』
ルゥが紅い蛇のレベルを測定した結果でた数値を見て、
思わずそうこぼした。
????「俺だったらそもそもあんまモンスター討伐行かないわな。
薬草探しとか、行商人と交渉して仕入れたものを知人に売ったりした方が安全だし。」
??「ルビーに比べて、俺は才能そんなないし、彼らはいいよなぁ・・・。」
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死にたくないなら逃げましょう
「あああああ!!!」
「死ぬ死ぬ死ぬぅ!!」
後ろからものすごい勢いで追いかけてくる、巨大な蛇。
口を大きく開け、道中に立ちはだかる雑魚モンスターたちを飲み込みながら、
逃げる生徒、兵士たちの背中を追いかけ続け、捕食戦と迫る。
彼らが死ぬ気で走り続けること数分。
最初に入ってきた入り口までやってきて、急いで円盤の上に乗ろうと押しかける。
「おい!!押すなって!!」
「どけっ!!タコ共!!」
「ちょっ・・・うわあああっ!!」
我先にと詰め寄るが特に体格のいい天田が自分が入るためのスペースを確保し、
そのために周りにいた生徒たちを蹴落として乗った。
落ちてしまった生徒は再び昇ろうとするが、同じように焦って乗ろうとする生徒同士で争い合い、中々うまく上に上がれない。
そして、隆も天田によって落とされてしまい、
背中から地面に堕ちてしまう。
「いっつぅ・・・・う?」
彼が後ろを振り返ると、巨大な紅い蛇が黄色く光る眼をぎらつかせながら、
大きな顎を開き、自分たちの方に向かってきているのが見える。
「・・・・上げろ!!早く!!」
他の人間をあげている暇はないと判断したのか、
兵士長が号令すると、一瞬貯めったようなそぶりを見せながらも、
近くにいた兵士が円盤の中央に埋められている水晶に触れると、
ゆっくりと上昇を始める。
「やっばやっば!!」
「ちょっ!!俺たちも乗せてくれーーー!!」
置いてかれ、手を伸ばして叫ぶも、それも叶わずについに見えないところまで
円盤は上昇して、消えていってしまう。
(ぎゃあああ!!おいてかれたあああ!!!)
『---マスター!!』
「うおわっ!?」
「ぎゃああっ!!」
去っていってしまった円盤に気を取られていた隆は、巨大な蛇によって飲み込まれそうになるもルゥの掛け声によって真横に飛び跳ねて回避する。
そして、すぐ近くにいた兵士が丸呑みにされ、心臓の鼓動が早まるのを感じながら、隆は脂汗を額に浮かべ、ルゥに問いかける。
(・・・・どうしたらいい!?)
『---あの円盤が返ってくるまで時間がかかります。その間、あの蛇の攻撃を躱し続けるのは不可能でしょう。・・・ならば。』
そういって、スマホの画面越しにルゥは、巨大な蛇の胴体が伸びてきている通路を指し示し、退避を促す。
(・・・まじかよ。それしか手はないか!?)
『--マスター!!』
「うあああっ!!!」
ためらっている間にも置いて行かれた他の生徒たちが丸呑みにされていき、
げふ、とうまそうに息を吐く蛇。
確実に数が減っていく中、逃げようとした彼は、
先ほど話していた御堂が腰を抜かしているのか、
あう・・・あう・・・と涙を目に浮かべている姿が、
隆の瞳に映った。
(・・・・いや、俺には助ける力なんてない・・・。)
「・・・あ・・・あ・・。」
巨大な蛇がやってきた通路の方に行き、その巨体の横に空いているすき間をうまく
走り抜け、立ち去ろうとしたその時、大きな声が聴こえた。
「---たすっ、助けて!!・・・誰かっ!!」
「--っ。ああもうっ!!」
『---マスター!!?』
あと一息で丸呑みにされるというタイミングで、隆は腰を抜かして座っていた御堂を抱えて退避し、お姫様抱っこしてはあはあ、と息を切らしながら、
叫んで走る。
「畜生!!なんでだ!!なんで俺はこんなことしてんだ!!?」
女ならともかく、同じ男を助けてまるでヒーロー気取りに助けようとしてしまった
自分自身を責めるかのように、後ろから聴こえてくる断末魔を振り払い、
頭を振るいながら走り続ける。
「もおおおおお!!!俺のタレントは使えねーし!!クラスからはハブにされるし!!!かわいいヒロインとは知り合えないし!!!ちきしょーーー!!!」
『マスター!!そのまま走ってください!!蛇の胴体が伸びている先とは別の通路を選んで!!!』
「あいよおおおおお!!」
「あう・・・あう・・・。」
えぐえぐ、と半泣きになりながら表情を曇らせる御堂を抱えながら
隆は走り続ける。ルゥのサポートによってどうにか的確に通路を走り続け、
蛇から逃げようとするが、他の人間を食べ終わったのか、今度は蛇が通路を戻ってきて、隆たちの選んだ道を後ろから追いかけてきた。
「ちきしょう!!なんでこっちの位置がバレる!!?違う道を選んだだろ!!?」
『---マスター!!おそらく熱探知か、魔力を探知して追ってきているのかと!!』
「逃げきれねぇのか!!?」
「グルアアアアアアア!!!!」
大きな顎を開け、威嚇するように声を上げながら自分たちを執拗に追ってきている蛇から逃げ続けると、人間よりも優れた五感を持つルゥがその音に気付き、
隆に向かって叫ぶ。
『そちらの通路ではなく!!こちらへ!!』
「わ、わかったぁ!!・・うおあっ!?」
自分が行こうとした道に行かず、立ち止まって振り返り、
ルゥが指し示す方へ転換する。
先ほどまで自分がいた場所に巨大な蛇が口を大きく開けて、
ばくん、と閉じて食べようと襲ってきたのを間一髪で回避する。
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・!!
やべぇ・・・!!た、体力がぁ・・・!!」
『もう少しです!!マスター!!』
通路の先を奥まで急いで走り続けると、少し開けた場所へとやってきた。
崖のように20m下には水源が上にあるのか川が流れており、
ドドド、と音をあげながら激流が走り続けている。
「行き止まり!!?」
『飛び込んでください!!』
「はあっ!!?」
まさか、行き止まりでしかも飛び込め、と言われるとは思わず、
思わずそう叫ぶも、後ろからは先ほどの蛇が迫ってきており、
選択肢はないも同然の状態である。
そして、自分の胸元にしがみつき、震えながら泣き顔で自分の顔を見つめてくる御堂の顔を何度も見返し、息を大きく吸い、隆はヤケクソ気味に大声で叫びながら地面を大きく蹴り、飛び立つ。
「--しっかりとつかまれよ!!!!」
「ゴアアアアア!!!!」
「---糞蛇ぃいい!!!てめぇ、絶対に覚えてろよおおおおお!!!」
---三下じみた捨てセリフを吐きながら、御堂を抱きしめつつ、
隆はせせらぐ川の激流に飲み込まれていった。
????「俺がエンカウントしたら死ぬな」
??「うちの"十王"並みに強いんですけど・・・・。」
レッド・スネーク
Lv ???
スネーク4 魔力操作(炎)4 統率3
詳細不明
KEY(ドS)
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流された先で、ど座衛門
「----う・・・・。」
「・・・・。」
ぴちゃり、と隆の耳に水が跳ねる音が響き、
顔に感じる冷たさによって意識が覚醒する。
瞼を開けた彼が最初に見た者は、自分の隣で死んだように目をつむり、
動かない御堂の姿であった。
「・・・?・・・あ・・・。・・・お、おい・・・!」
自分が一体どうしてこんな状態になっていたのか、
意識がぼんやりとしていたがすぐに思い出し、
隆は御堂の近くに近寄り、彼の体を軽く両手で肩からゆする。
「あ・・・うう・・・。」
「よかった・・・。生きてる・・・・。」
自分と一緒に川に飛び込んだ御堂が生きてることにほっと胸をなでおろしていると、
彼のポケットがぶるぶると震えだし、彼は慌ててそのポケットからスマホを取り出す。
『---マスター!!ご無事でしたか!!』
そこには、いつものすました顔でなく、
今にも泣き出しそうな、というよりはすでに泣いていたのか目が紅く晴れている
ルゥが、自身の主人の生存を確認し、叫ぶ。
ああ、と隆はルゥに軽く返事をすると、きょろきょろと首を横に振って、
辺りを見回す。
湖らしき河川の下流。そこの浜にちょうど良く打ち上げられたらしいのが、
隆には推測できた。
「・・・あの蛇は・・・・いないか・・・。逃げ切れたか・・・・。はあ・・・。」
『・・・生きた心地がしませんでしたが、良かったです・・・・。』
「・・・うう・・・。」
「・・・・あ。そうだ。・・・御堂!!大丈夫か!!?」
自分が助けた相手が生きてはいるものの、顔色を悪く、寒そうに震えながらいまだに横になっていることに気が付くと、隆は御堂を両腕で抱えながら浅瀬から立ち上がり
近くの上陸できる地面へと昇る。
その近くには、半径1mほどの青の球体と、横幅3mほどの大木と、その隣には木造りの小屋らしきものがあった。
そして、更に小屋の右前には慰霊碑のような石が打ちたてられており、
何が書いてあるかは隆にはわからなかったが、上から10人分の名前らしき文字が書かれていることだけはわかった。
「・・・小屋・・・?」
『・・・人が生活しているような跡は見えませんが・・・・。』
「・・・ええい!!迷っている場合じゃない!!おらぁっ!!」
『ちょっ』
隆はドアを右足で蹴飛ばし、ずかずかと中に入る。
中は10畳ほどの部屋造りとなっており、
真ん中には楕円形のテーブルと、椅子が二つほど置かれていて
更にその奥にはベッドが一つ設置されている。
ベッドまで御堂を抱えたまま隆は歩き、そっとベッドの上におろし、
おでこに右手を当てて、体温を測る。
若干、熱があるように彼は感じた。
「----風邪ひいてんのかもな・・・・。」
『・・・しばらくは安静にさせてあげたほうがよろしいでしょうね。』
「・・・ああ。・・・・あ、そうだ。服も濡れてるし・・・・脱がさないとまずいよな?」
『・・・・正気ですか?』
「?いや、脱がさないと悪化しちまうだろ??」
『・・・そういうことではなく・・・。・・・ふん。どうぞお好きに。』
「あ?」
それまで一緒に協力していた相方が、突然眉を吊り上げ、不機嫌そうな表情を浮かべて一方的に画面からいなくなったことをいぶかしみながらも、彼は苦しそうにうめく御堂の体から服を脱がそうと両手をかける。
(・・・全く。一体なんで急に・・・・。さっきまで手伝ってくれていたじゃないかよ・・・。)
ごそごそ、と御堂が来ているジャージを脱がそうと思わず胸に触れた瞬間、
ふにゅん、と柔らかな感触が彼の手に伝わった。
「・・・????」
あれ?こいつ結構太ってる??着やせしてんのか??と頭の中に極大の?マークを浮かべつつも、彼がジャージの上着を脱がせたところでさらに違和感は強くなる。
---明らかに、体操着の胸部分が膨らんでいた。
「・・・・??????」
あれあれあれ??とさっきまで以上に頭の中にて大量の疑問符を浮かべつつ、
彼は右手を自分のおでこにやり、思考する。
御堂杏。隆は特に親しくもない、話したこともなく、この世界にきて初めて接した相手。
そして、男か女かも知らなかった人物。
「-----女ぁぁぁ!!!?」
すぐさま胸に触れてしまっていた手をばっとふりほどき、触れてしまった右手に罰を与えるように、左手でぺちぺち、と自分の右手を叩きながら後ずさりし、
テーブルの角に腰の後ろをぶつける。
まさか男だと勝手に思っていた相手が、実は女だったなんて・・・。
そういえば、男にしては肌がきれいだったし、目はパッチリしているし、声は高かったし、いいにおいしてたし、小柄だった、スタイル良かったし、かわいかったし・・・と気づく要素はいろいろあったし、見間違うほうがどうかしているレベルだったのだが、
色々と余裕のなかった彼は、ようやくここにきてその事実に気が付くのだった。
????「は?ギルティ。」
??「大人なしめの女性・・・。うらやましい・・・・。うちは肉食ばっかだから・・・・。」
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謎と、謎と、謎の人影と
「---ふうううううう。・・・ふうううううう。・・・ふ、ふうううう。ふうううううう・・・・。」
『マスター。呼吸の仕方が気持ち悪いです』
あまりに取り乱してしまったからか、何回も深呼吸していて、
不審者のような息の継ぎ方になってしまっている自分のマスターに対して、
辛辣な言葉を投げるルゥ。
いつもなら反論する隆も、それどころじゃないのか、
壁に右手を当てて、気持ちが沈んでるのかうなだれていた。
「・・・意識のない女子の胸を・・・体を・・・触っちまった・・・。」
『・・・生娘の体をちょっと触ってくらいでなんですか。私とは見抜きエッチしているくせに。』
「それとこれとは別なんだよあほぉ!!オナニーとエッチじゃ全然違うだろぉ!!?」
両腕で頭を抱えてごろごろと転がる。
自身の従者相手であれば、気兼ねなくそういうことはできるものの、
さすがに単なるクラスメイトの娘相手に対して触ってしまうことについては、
罪悪感を覚えていた。
服を脱がせて、小屋の中にあった毛布をかぶせて寝かせているから体を隠せているものの、御堂が目が覚めたら自分が痴漢扱いされるのではないかと隆は怯えるのであった。
「---うし!!この話はいったんやめ!!やめやめやめ!!!」
『---まあ、これ以上追求しないでおきましょうか。』
自分の裸を見た時以上に取り乱しているマスターに対して、ジト目を向け、
はあ、とため息をつく隆に対して気を取り直すようにルゥは話題を切り替える。
『--それにしても、やたらきれいに整えられてますね。この小屋。』
「・・ああ。それは俺も思った。人が生活しているような跡はないのに、
なぜか毛布とか、着替えとか、後、使えそうな道具がしまわれているしな。」
そういって、隆が部屋の隅に置いてあった四角形の木箱の中をのぞくと、
ランプ、ロープ、着替え、毛布、そしてなんだか缶詰っぽいものがいくつかは言っていたり、水筒みたいな金属の筒がしまわれていた。
「人の気配はしないんだけど、まるで、誰かが定期的に掃除でもしているような感じだよなぁ・・・・。」
『・・・・こんなダンジョンの奥底に?一体だれが?』
「・・・・わからん。あと、あの慰霊碑みたいなやつも・・・・。
あれは何なんだ?」
隆が言っているのは、小屋の隣に立てられている石造りの慰霊碑に関してである。
この世界の文字に詳しくない彼にとってはまだ読めない代物であるが、
上から順に名前のような文字が10個書かれているのだけはわかった。
小屋の外に出て、石をじっと見るも、やはり何かがわかるわけでもなく、
謎は深まるばかりである。
「・・・・ま、それはいいとして、後はこれについてだよなぁ・・・。」
隆がそう言ってみた先には、1mほどの青い球体がふよふよ、と浮いていた。
何か動くわけでもなく、ただただ空中に漂っているだけなのだが、
見ているだけでぴりぴりと肌に刺すような痛みを感じていた。
指先で触れようとするも、寸前でぴたりと伸ばした手を止め、
自身の従者に尋ねる。
「・・・これ、触れても大丈夫か??」
『・・・おそらく。・・・それに、何かここから脱出する手掛かりになるかもしれませんし・・・。』
「・・・・・・・・・うし!!!おらぁっ!!!」
ええい、ままよと目をつむりながら、隆は止めていた手を再び球体に伸ばし、
その手で触れる。
すると、碧い球体が光だし、辺りを照らし始めた。
「うおっ!!?やべぇ爆発する!!?」
慌てて小屋の中まで逃げ、そーっと首だけのぞかせながら外の様子を隆がうかがうと、
そこには、碧い人のような影が球体から投射されているのが見えた。
最初はざざざ、とノイズ混じりであり、碧いだけの人影もだんだんと輪郭がはっきりしてきて、徐々にその形がはっきりと浮かび上がる。
『・・・・・。』
「・・・・?男・・・?」
『・・どうやら、記録映像らしいみたいですが・・・。』
白衣を身にまとい、碧いナイフを左腰につけている坊主頭の青年が、
何かをつぶやくようにその口をパクパクと開いていた。
何を言っているのか最初はわからなかったが、次第にノイズが収まり、
記録映像らしき人物が話している言葉が隆とルゥに聴こえるようになっていく。
『---ねんながら、"破壊神"と"魔人"に加担していた奴を取り逃がしてしまった。
"破壊神"と"魔人"の撃退には成功したが、奴はいまだにこの大陸のどこかに潜伏し、力を蓄えていることだろう。』
「・・・・なんのこっちゃ?」
『・・・いえ、お待ちください。マスター。』
隆にとってはよくわからないことであったが、王城の人間から自分のマスターが講義を受けている時に一通りの歴史について情報をインプット、記録していたルゥは、記録映像が話している単語について思い当たる節があった。
『・・・・おそらく、2000年前に勃発したと言われる"神話大戦"・・・・。
世界を滅ぼさんとした"破壊神"、それに従う"魔人"。そして、世界を護らんとした"創造神"、"十王"・・。おそらく、それらのことかと・・。』
「はー・・・・。・・・ん?でも、それって2000年前のことだよな??」
『記録によれば、そのはずです。』
「・・・じゃあ、この映像って、2000年前の・・・?」
隆が再び記録映像の方を見ると、男は一方的に自身が持っている情報をしゃべり続けており、とても2000年前のものとは思えない相手であった。
「世界は平和になったんだろ?奴って誰だよ?」
『・・・・残念ながら、私はそう長くはない。友よ。
ゆえに、ここを知る君がやってきたときには、おそらく死んでいる事だろう。』
隆の質問にも答えず、映像は一方的にまくしたてる。
そして、それまで話していた男が、ごほごほ、と突然せき込み始め、
手で口を押える。
「お、おい!?」
『--だから、最後の頼みがある。奴は死んだと思われているが、私にはわかる・・・・。アレを作ったのは私なのだから・・・・。あの戦争を再び起こし、世界を手中に収めんとするであろう奴を、どうか止めてほしい。』
ごほごほ、とさらにせき込み、手で押さえている指の隙間からは血が流れ始めている。
手で血だらけの口をぬぐい、彼はふらつく体をしっかりと抑えながら、
それでも目だけは死んでおらず、しっかりと前を見据えている。
自分が目の前の人物に見られているわけでもないのに、
隆はその目から視線を外すこともできずに、合わせ続けた。
そして、その青年は件の人物の名前を述べた。
『---奴の名前は、マルク。・・・きっと、どこか人間が集まる場所で魔力を集め続けているはずだ・・・・。・・・後は頼む。・・・・ここに記録を残しておく。・・・"レイ・ザルドルフ"より』
それだけ言って、ぷつり、と記録映像は止まった。
「・・・・・・・・・・・・。」
何が何だかわからない、といった顔で隆は両手で顔を覆い
混乱する頭を整理しようとする。
「‥‥世界の危機?止めてくれ???・・・ザッケンナコラー!!」
--そして、先ほどまで映像を投射していた球体に対して右足で蹴りを叩き込む。
何度もげし、げしげしげし、と執拗に、怒りで紅くなった顔のまま、
叫びながら蹴りを放ち続ける。
「召喚されて!!ただでさえ混乱していて!!その上ダンジョンで死にかけて!!
・・・・なのに、次は世界の危機を救ってくれだぁ!!?ふざけんなぁ!!!」
『・・・・。』
あまりの理不尽さに切れる隆。
ただの男子高校生だというのに、召喚されて、
闘いに巻き込まれ、巨大な蛇に追い掛け回され、
川に飛び込んで死にかけ、男だと思っていた相手は女で、
その上これである。
ついに爆発した。
「---はあ、はあ・・・。」
『・・・・マスター。先ほどの映像の話ですが・・・。』
「・・・なんだよ。」
ひとしきり怒ったことによって少しは気が晴れたのか、
蹴りを放つのをやめ、肩で息をしながらはあはあ、と呼吸を乱す
自身の主人に対してルゥが、気づいたことを話そうとしたとき、
小屋の方から甲高い叫び声が聴こえた。
「----きゃあああああ!!!?」
「・・・・あ。」
そういえば、御堂が寝ているんだった・・・と彼は彼女の存在を思い出す。
あんだけ大声出せば起きるよな・・・・と両手で顔をまた抑えつつ、
隆はルゥに対してぼそりと告げる。
「---服、脱がしたのバレた・・・?」
『・・・・ご主人様。死なない程度に殴られてきてください。』
「・・・・俺のヒロインはどこぉ・・・。」
--結局、裸を見られて取り乱した御堂を落ち着けるのに30分ほどかかり、
隆はさらに疲れ、死んだようにテーブルに突っ伏して、
ふて寝するのだった。
????「何その球体。知人に売りさばくから俺にくれ」
??「(あれ・・・"十王"って・・・・?)」
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脱出作戦開始ぃ!!
「---おらぁっ!!」
『--ご主人様!!後ろです!!』
「うおっとぉ!!?」
「---"ファイア・アロー"!!」
モンスターに斬りかかり、一匹倒したはいいものの、
すぐ後ろから別の敵が来ていたのをルゥのサポートによって気づき、
振り向こうとした瞬間、火の矢がモンスターを射抜き、焼いた。
「--あー。こわ。・・・御堂、あんがとな。」
「---えへへ。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むううう・・・。』
自分を助けてくれた御堂に対してお礼を隆が言うと、
彼女は笑顔を浮かべて喜ぶ。そして、そんないい雰囲気を醸し出す二人に対して、ルゥは頬を膨らませながら、やきもちをやいているようにうなり声をあげ、
二人をにらみつける。
二人が最下層まで流されてから行く数日もの時間が経ち、
こうして脱出するために外へ向かっているのだが、中々出口までたどり着けず
未だにモンスターを倒して、散策して、また小屋に戻るという日々が続いていた。
「あの糞蛇にいつエンカウントするかと思うと気が気じゃないが・・・・。」
「そうだね・・・・。」
二人が死んだような目をしながら初日のことを思い返す。
湖がある最下層のほとりを出て、更に下に続く階段を進み、
迷宮を歩いて他のモンスターと戦っているところ、
またあの大きな紅蛇が乱入してきて、逃げざるを得ない状況になっていた。
「あいつだけは絶対に許さねぇ・・・・。」
「うん・・・・・。」
『---お二人のレベルですが、計測したところ以下のようになっております。』
ルゥがめらめら、と闘志を燃やし、レッド・スネーク死すべしと震える二人に対して冷静に述べる。
彼女の演算能力によって、モンスターや人間のレベルを測ることができ、
彼らはルゥのサポートを受けながら脱出の手掛かりを探すと同時に、
レベルアップに勤しんでいた。
現在は以下の状態である。
角谷隆
レベル 7
メイド・クリエイター1
御堂杏
レベル 9
魔力操作(炎)3 魔力操作(浄)2 体術2
ちなみに、隆には戦闘系のタレントがなかったため、
御堂のほうが幾分も強く、男としてのプライドを削られている状態であった。
メイド・クリエイターなるタレントはいまだにその真価を発揮しておらず、
どうすれば扱えるのかもよくわかっていない状態である。
「・・・・戦闘系のタレントが欲しいいい・・・・。」
「だ、大丈夫だよ!!いざとなったら、私が守ってあげるから・・・!!」
『御堂様。それはご主人様のプライドにとどめを刺しております。』
善意とは、時に悪意よりも人を傷つけることをつゆ知らず、
命の恩人である隆に対して好意的な御堂は、ふんす、と胸を張って
隆を慰めようとするも逆効果であった。
何よりも、御堂が魔力操作もできる上に、そこそこ体術を扱って
素手での戦闘もこなせるようになっていったため、
完全に隆は御堂にタレントでも後れを取っているのがさらに追い打ちをかけていた。
そして、今日も捜索範囲を広げながら迷宮の中を歩き回っていると、
ドドドドド、と地響きのような音がして、すぐさま二人はその方角とは別の砲口へと全力疾走する。
「---ゴアアアアアアアアア!!!!!」
「走れ走れ走れーーー!!あいつが来るぞおおおお!!!」
「うわああああん!!!もうやだあああ!!」
結局、また小屋がある湖のところまで撤退を余儀なくされるのであった。
◆
「---作戦会議ー。」
「い、いえーー。」
『・・・・ぱちぱちぱち。』
テーブルの上にルゥが映るスマホをどん、と置いて、
隆が壊れたようなテンションで告げる。
御堂もこういうノリはそんなに得意ではないが、
ノっておこうと考え、顔を赤らめながらもぱちぱちぱち、
と拍手を送る。
ルゥはマスターのこういう姿を見るのに慣れていたため、
真顔で拍手している。
「じゃあ、議題は"あの糞蛇をどうやってぶっ殺そうかって"話しなー。・・・・マジでそろそろキれそう。」
思い出すだけでも腸が煮えくり返る思いなのか、
隆は右こぶしを握り締め、怒りを抑えるように静かに述べる。
叫びたいのはやまやまだが、御堂もいるため、
自制をしているのだった。
「・・・えーと。ルゥさん?あの蛇ってどれくらい強いの?」
『・・・何度か出会うことによって、正確な計測をすることができました。・・・わかったところで絶望的ですが。』
そういって、ルゥがスマホの画面に巨大な紅い蛇、"レッド・スネーク"のステータスを表示させると、隆と御堂は絶句する。
レッド・スネーク
レベル 120
スネーク4 魔力操作(炎)4
「」
「・・・これを、倒すの・・・・?」
『・・・動きがそんなに早くない巨体のため、今は何とか逃げ切れておりますが、正面から戦えば傷一つつけられずに死ぬでしょうね。』
「いやいやいやいやいやいやいや!!?なんで!!?ここ、最初のダンジョンだろ!!?なんでそんな強いのがいんの!!??」
さすがにレベル三桁など想定していなかった隆は、
思わずテーブルを両手でばん、と叩き、ルゥに詰め寄る。
御堂もこれほど強い相手と思っていなかったからか、
ぶるり、と身を震わせ、顔色を青くしている。
『おそらく、数千年生きているうちに莫大な成長を遂げ、
ただの蛇がここまでの力を持つに至ったのでしょう。』
「もっと別のダンジョン行けやおらぁ!!」
「・・・戦うのは・・・・無理・・・・。」
うがあああ、と結局叫んで鬱憤を晴らす隆と、
それと対照的に両腕で自分の体を抱きしめながら、
レッド・スネークとは絶対に戦いたくない、とつぶやく御堂。
『--地道にレベルアップを重ね、逃げ足を速めると同時に、
ここでの長期間生活することも覚悟した方がよろしいかと。』
「・・・・・・・それしか、ねえか・・・。」
「・・・・・怖いけど・・・・。仕方ないよね・・・・。」
ルゥの言っていることが正論であることをわかってはいるものの、いまだに脱出の糸口さえつかめない現状に対して、二人はため息を吐く。
---彼らの長い"ダンジョン・脱出大作戦"がここに幕をあげるのだった。
????「レベルあがるとかいいよなぁ・・・」
??「あの蛇、今の俺の3倍くらい強いんですけど・・・。」
感想、くれ
マジでほしいからくれ
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【幕間】~王城にて~クラスメイト達のその後+脱出に向けて
「・・・・・・・。」
ダンジョン、"神々に見捨てられた遺跡"にクラスごと召喚された生徒たちが
挑戦して、撤退してから数日後。
女子グループのまとめ役、花咲結は自室で布団を頭からかぶりながら、
枕に顔を押し付け、寝転がっていた。
生き残った者、死んでしまったもの、死んではないが傷を負ってしまった者。
彼女も死んではいなかったが、クラスメイト達が大蛇に飲み込まれるところを目撃してしまい、心に傷が残ってしまった人物であった。
そんな彼女の自室のドアをコン、とノックする音が一回。
しかし、部屋の主である咲は動こうとせず、布団に潜ったまままである。
「--入るぞ。」
がちゃり、とドアが無遠慮に開けられ、
中に入ってきたのは彼女の幼馴染である米崎奏多であった。
後ろ手にドアをがちゃり、と閉めると咲がもぐっているベッドの近くまで歩み寄り、
ため息を吐きながら話しかける。
「・・・・結。大丈夫か?」
「・・・・。」
奏多の言葉に対して、結は答えずにサイドテールにまとめていた髪もおろした姿のまま、奏多の方を布団から首だけ出して、視線を投げかける。
「・・・あんなことがあったんだ。無理もないが・・・。」
「・・・・・・・わかってる。・・・・わかってるけど・・・。」
奏多の慰めの言葉に対して、彼女はぶつぶつ、と自分を納得させるかのように布団を両手の指先でぎゅっと握りしめ、震わせる。
この世界に来るまで、生死がかかった戦いを経験したことがない彼女たちにとって、
今回の件はあまりにも刺激が多く、こうして落ち込み、暗い表情になる生徒も少なくなかった。
奏多も少なからずメンタルにダメージを負ってはいるものの、
ふさぎこみかけている結を見て、それどころではないと立ち上がり、
連日彼女のもとに通っているのだった。
「・・・私たち才能があるって、浮かれてて、それで、大丈夫だと思って、そしたら、あんな、あんな大きな蛇が・・・。」
「・・・・・・。」
結の左手をそっと奏多は握り、彼女のつぶやきを黙って聞いていく。
彼も決して余裕があるわけでもないが、男としてのプライドか、
それを表面に出すこともなく、真顔で彼女が気持ちを吐き出すのを
何でもないように受け止めていた。
「・・・死にたくないよ。・・・・死にたくない・・・。」
「・・・安心しろ。・・・死なせない。お前は俺が守る・・・。」
---40人いたうちの半分が消え、20人のうち、その過半数は心に大きな傷を負う結果となった。
彼らがまた、立ち上がるにはもう少し時間が必要となるのだった。
◆
「おらぁっ!!」
「---えっ、えいっ!!」
隆の突き出した右手によるストレートパンチを左手でさばいて内側に態勢を崩し、
そしてそこから関節技をかけ、極める杏。
タレント、体術レベル4が成す柔術に近い柔の技である。
レベルではそこまで差がないとしても、タレントによって杏に攻撃を捌かれ、
全てカウンターを取られるか、関節技を極められるかして、
やられていた。
「いだだだだだ!!・・・・あ、でもちょっと幸せあだだだだ!!?ちょっ!!!やめろ!!強めるな!!!」
「---え、えっち!!!」
背中に胸を押し当てられ、思わず本音を漏らしてしまった隆は、
顔を真っ赤にして、頬を膨らませて眉を吊り上げて取り乱す杏にぎぎぎ、と腕がきしむほど極められ、苦悶の声を漏らす。
ぎぶ、ぎぶ、と隆が謝りながらギブアップを宣言すると、
杏がぱっと腕を離し、隆の胴体に右足で蹴りを入れて数mほど弾き飛ばして、
距離を取る。
「いっだぁ!!・・・つ、つよい・・・。」
「・・・もっ、もうっ!!・・・そ、そんなに私のおっぱい好きなの・・・?」
まだ怒っているのか、きっ、と鋭い目線で隆をにらみつけ、
しかし、そんな表情を緩め、両腕で自分の体を抱きしめ、
胸が強調されるポーズを取りながら、小声でつぶやく杏。
「---はい!!大好きです!!!」
『---マスター・・・?』
「ヒッ」
杏の誘惑するような表情と、つぶやき声に対してがばりと立ち上がって、
そう力説する隆に対して、棒読みだが、冷徹に感じられる機械音声で自身のマスターに対して、瞳孔の開いた目つきでにらみつけ、糾弾するルゥ。
そんな彼女の顔を見てしまった隆は思わず怯えたような声を出した。
『---今は修行中ですよね??真面目にやってください。』
「す、すまん・・・・。」
「・・・・・・・・・・・むうう・・・。」
自分の従者にそう淡々と諭され、素直に謝る隆。
しかし、今度は杏がそんな風に仲良くやり取りをしているルゥと隆の姿を見て、
彼女が嫉妬するようにぷるぷると震える。
「・・・うし!!・・・?あれ、杏どうした?」
「・・・・なんでもないもん。・・・次は、寝技の練習ね。」
「え。でも、モンスター相手なら必要なくね??」
「・・・一緒にやるの!!」
隆はそう言って断ろうとするも、後ろから杏がぴょん、と隆の背中に飛びつき、
地面へと引きずり倒しぎゅうう、と首を腕で軽く締めながら、
胸を隆の顔に当てる。
「お・・・おおお・・・。」
「・・・・ふふふ・・・♪ほーら、早く抜けないとどんどん絡み取られちゃうよー」
人生で初となる、女性の胸に顔をうずめるというシチュエーションに対して、
隆は抵抗することもなく、だらり、と両腕を下げて無抵抗となる。
『---マ・ス・ター!?』
「・・!!う、うおらああああ!!!」
「きゃっ!!」
ルゥが今度は隆の耳元で怒りの声を上げ、それで意識を正常に取り戻した隆が、
力をふりしぼり、杏の拘束を逃れる。
『---おめでとうございます、二人とも。またレベルがあがっているようです。』
「・・・・お、おお。そうか・・・。」
「・・・・むううう・・・・・!」
ふふん、と鼻を鳴らし、そう告げるルゥと、またうなるように声を上げる杏。
その間に挟まれ、何が起きているかよくわからないが、
身の危険を感じつつも、隆はレベルアップしたことに対して喜びの声を小さく漏らす。
(・・・ルゥは焼きもちを妬いてんのか??・・・・俺が作ったから俺に対して好意を持つように刷り込まれてんのか。・・・・なんか、あれだなぁ・・・。)
ルゥみたいに自分好みのナイスバディが好意を寄せていることに気づきつつも、
しかし、あくまでそれが自分が彼女の創造主にすぎないから、と結論付けた彼は
はあ、とため息を吐く。
杏の態度も、ここ数日でさらに親しいものになったのだが、
隆はレベル上げのことで頭がいっぱいであり、そこまで気が回らない状態であった。
「・・・・俺たちのレベルも15を超えた。・・・そろそろもっと奥のほうまで行ってみるか?」
『・・・リスクは高まりますが、妥当かと。ずっとここにいられる保証もありません。』
「・・・・そうだね。・・・・今日は休んで、準備したら明日、出発する?」
「おう。」
悲観しながらも、着々と脱出の準備を進めていた彼らは、
明日、さらにダンジョンの奥まで遠征し、
脱出を本格的に目指すことになった。
---その決断がどのような結果をもたらすことになるのか。
未だ、誰も知る由はないのだった。
????「え・・・?体術レベル4持ち・・・?なにそれ怖い・・・・。うらやましい・・
・。」
??「俺の持っているタレントと同じだ。」
感想、くれ
れれれのれ
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大脱走的なアレ
「---うし。」
ごそごそ、とレイ・ザルドルフと名乗る人物が使っていた小屋になったものを物色し、麻作りの袋に詰めて荷物をまとめる隆。
今まではこの小屋を拠点にレベルアップをしつつ、脱出への準備をしているところだったが、二人ともレベルが15を超えたことで、今日はさらにダンジョンの奥深くまで潜り、あわよくば脱出することにしたのだった。
彼の隣では、同じように小屋の中を整理し、
使えそうなものを持って行こうとする杏。
そして、いまだにスマホの中にいるルゥは、そんな二人に指示をしながら、
おいていった方がいいもの、使えそうな物を判断し、
助言をしていく。
「ルゥ。こんなもんでいいか?」
『はい。マスター。』
「・・・うんしょっ、と・・・わわっ。」
「おっと。・・・気をつけろよ。」
「あっ。・・えへへ・・ありがと・・・。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
袋を背中に背負い、立ち上がろうとした杏がよろけ、
それを後ろからそっと両手で支える隆。
二人がちょっといい雰囲気になり、ルゥはまた頬を膨らませ、
ぶすー、と不機嫌そうな表情を浮かべる。
「---とりあえず、こんなもんか。・・・ルゥ。文字の解読は出来たか?」
『---最低限度はわかるようになりました。・・・しかし、難解な文字については今しばらくの時間がかかるかと。』
スマホの中にいるルゥに向かってそういう隆。
彼は、ルゥにこの小屋の外にある慰霊碑の名前を解読するよう、
ルゥに命じていた。
なんの意味があるかはわからないがこの世界の文字であるならば、
今のうちにルゥに解析し、分解してもらうことにより、
将来、彼女からこの世界の文字を教わろうという魂胆である。
『・・・あの慰霊碑の一番下、"機械王"レイ・ザルドルフと書かれた名前は、
映像記録の人物が名乗っていた名前と一致いたします。』
「・・・そうか。しかし・・・"機械王"ね・・・。お前も体を持てるように、そっち系の手掛かりが欲しいところだな。」
『・・・・エッチなことをするためにですか?』
「エッチなことをするために決まってんだろ。・・・・お前は俺が作った最高の女だからな。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・そ。そうですか・・・・・・。』
まさか、ストレートに褒められるとは思っていなかったルゥは、
顔を真っ赤に染め上げ、ぷしゅうう、と蒸気が経ちそうなほどに羞恥心を覚え、
下を向き、自分の緩み切った表情が見えないように隠そうとするルゥ。
言外に、お前が一番だ、と自分のマスターに言われた彼女は、
エラーが起きそうなほどに演算を続け、マスターが喜んでくれそうな言葉が何かを探し続けるも、隆の方をちらりと盗み見るだけで、声をかけようとしても喉に言葉が詰まってしまい、上手くできないのだった。
「・・・・むう。ほら!隆くんっ!いこっ!!」
「うおっ!!ちょっ!!お前の方が力が強いんだから、もうちょっと手に込めた力を緩めてくれよ!」
「だめ!!・・・・女の子に向かって力が強いとか、あんまりいわないほうがいいよ?」
『・・・・・・・むううううう・・・。』
自分が体を持たないばかりに軽々しくマスターを触れ合うことができず、
見せつけられてうなるルゥ。
対して、杏は自分のアドバンテージを活かすかのように
精神的に隆と距離が近いルゥを出し抜くために、精一杯アプローチをしていた。
「(・・・・・・・・・???あれ?これってモテ期・・・・?
・・・な、わけないか。)」
答えに一瞬たどり着いた隆は、すぐさま自身の結論を撤回し、
気のせいだと誤解するのだった。
好意を異性から浴びたの事ない男にとって、
女子の気持ちを察することは不可能に等しかった。
◆
ダンジョンの最下層、レイ・ザルドルフの小屋がある湖地帯から、
更に下のほうまで進む2人と1人のAI。
下に行けば行くほど強い敵がさらに出ているような気もしているが、
進めそうな道をとりあえず進んでいるだけで、
上よりも下からの脱出ができないか模索している所であった。
「・・・でも、本当に上に行かなくっていいの?」
「ん?ああ・・・・。」
隆は首を傾げながら尋ねてくる杏に対して、答える。
「あの湖から、更にどこに水が流れているのか。・・いや、そもそもさらに下流があるのか。小屋の周りを歩き回って調べてみたんだが・・・。」
ばさり、と隆がスマホをぴぴ、と押すとスマホの画面から立体映像が投射される。
まさかの機能に驚いた表情が感嘆の声を漏らす杏。
「え?!なにこれ!!?」
「レベルアップしたおかげなのか、なんか今日使えるようになっていたわ。」
『・・・お二人のレベルは15を超えました。おそらく、この世界ではレベルがあがればあがるほど、タレントでできることが増えていくのでしょう。・・今回は、疑似的な地図を作り、それをマップとして空中に出すことができるようになったらしいです。』
「すごーい!!」
ぴ、ぴ、とスマホの画面を指でスライドさせ湖のはじっこ、
更に水が流れている先について地図を移動させ、とんとん、と二回スマホをタッチすると拡大される。
「ほら。この湖のはしっこからさらに下に流れているだろ?
・・・ということはだ、まだ下の方があるってことだ。」
「ほえー。よく気が付いたねー。」
あそこで水源が打ち止めかどうか、隆が空き時間にルゥと調べたところ、
まだ下に水が流れ続けており、どこかにつながっていることが発覚した。
「ん?でも、やっぱり上に行った方が・・・。」
「・・・・・それもそうなんだが、ちょっと、な・・・。」
「?」
隆は最初、ルゥに相談してどこから脱出をしようか考えていた。
手堅いのは、確実に出口がある上を目指すことだったが、
今回、何が原因でここに来る羽目になったのかを思い出し、
苦い表情を浮かべる。
問題ない、とされていたダンジョンで、レベル100超えの化け物と遭遇してしまったのは、ひとえに王国側の情報力不足だと感じていた。
たまたまあのような化け物に出会ってしまったとしたら単なる不幸でしかなかったとも言えるが、そもそも、この世界にああいう怪物がいることについて彼は教わっていなかった。
レッド・スネークが到来した時の兵士たちの迅速な行動を見るに
ああいう怪物から逃げる想定はしていたはずだ。
とうなると、王国側は召喚した生徒たちに対して、まだ出していない情報があると
隆は考えていた。
つまり、情報制限し、誘導することによって王国の操り人形にしようとしているのではないかと彼は疑っているのである。
上に行けば、捜索隊として出されているかもしれない王国の兵士たちと出会ってしまい、生きていることがバレ、また王国に行かないといけなくなるかもしれない。
膨らんだ疑心暗鬼により、王国とのつながりを完全になくしたい、
接触したくない、というのが隆の考えである。
「・・・・それに・・・いや・・・これはいいか・・・。」
「?」
隆はさらにとある可能性について話そうとしていたが、
未だ確信を持てないそのことについて、下手に杏に話して混乱させないよう
口を紡ぐ。
レイ・ザルドルフが映像で告げていた、世界の敵となるその人物の名。
・・・・"マルク"。
彼は最近、その名前をどこかで聞いたような気がしたのだが、
ここ数日の怒涛のイベントによって、すっかり頭から抜け落ちてしまっていたのだった。
彼はルゥに聞いてみたが、この世界の知識、情報が足りないのか
彼女でも演算で割り出すこともできなかった。
そんな歩き続ける彼らの前に、モンスターが通路の奥から姿を現す。
サビた剣と、鎧を身にまとい、一見して普通の人間に見える生物。
・・・だが、頭は骸骨であり、それがとうに死んで、骨だけになった元人間が動いているだけであることを示していた。
『----補足。仮名、"スケルトン"と命名。・・・レベルはおおよそ20。
勝てない相手ではありません。』
「・・・下手に逃げて、他のモンスターに挟み撃ちされても厄介だな・・・。
・・・やるぞ!!杏!!」
「うっ、うんっ!!」
---ダンジョン最下層にて、たった3人の脱出行が始まりを告げるのだった。
????「俺の20倍強いのか・・・(困惑)」
??「結構強くない・・・?レベル20って・・・。」
感想くれ。
れれれのれ
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~えすけーぷ、おぶ、えすけーぷ~
「・・・・。」
「--おらぁっ!!」
ダンジョンの階層を下がり続け、下に潜り続ける二人と一体のAI。
近づいてきたスケルトンに対して、杏が矢の形を成した炎を叩き込み、
武装を燃やしたところを隆が右ストレートを骸骨の頭の上からたたき込み、
しゃれこうべを落とす。
これで3体目となる対面であったが、
まだまだいるかもしれない状態に対して、
隆は疲れたような声を出しながら、両膝に両手をついて、肩で息をする。
「はあっ・・はあっ・・・。・・・ああ・・マジで疲れる・・・。
しかも俺らよりレベル上だから初手全力で行かねーとやべーだろうし・・・。」
「大丈夫?・・・ちょっとやすもっか。」
「おう。」
周りにモンスターがいないかどうか警戒しつつも、通路の端っこで
二人とも座り、袋から水が入った水筒を取り出す。
ふう、と息を吐き、隆は壁に体をもたれかかせながら、
目をつむる。
その横では、手慣れた様子で杏が水が入った水筒を隆の前にとん、と置いた。
「----しかし、やっぱり広いな・・・ここ・・・。」
「ずっと進むつもり計画だったけど・・・・。最悪は撤退したほうがいいかな・・・?」
「ああ。・・あの小屋は、何の力が働いているかはわからないが、食べ物と水には困らないしな。」
二人の言う湖近くにある小屋について。
彼らはそこで過ごしているうちに、レイ・ザルドルフなる人物が残した
遺物の効果に思わず絶句した。
まず、何か生き物避けの結界でも張られているのか、
モンスターがあの湖地帯には寄ってこらず、
安全が確保されているということ。
小屋の近くに浮いていた球体がその役割を担っているのか。
想像はできるが、確信に至る情報はなく、
ただ、有用であることは間違いないので、
二人は安心して寝ることができていた。
そして、四角い木箱の中には一定時間たつとなぜか食料と水が
自動で配給されていること。
当初、ビスケットらしきものと水の入った水筒が入っていることに気が付いた二人は、それを食べ、いくつかはとっておいた。
次の日の朝、二人が再び木箱を除くと、最初に見た時と同じだけの物資が再び積められており、減った様子も見えなかった。
全く持って謎の力であるが、それを気にしつつも、
彼らはその力をとりあえず利用することにした。
『---ご主人様。この世界におけるデータをまとめました。レイ・ザルドルフと名乗る人物が残していた資料を解読したものとなります。』
「お。マジか。センキュー。」
創造神、女神アクライアの名前を取って作られた大陸。
アクライア大陸にて人々は生活をしている。
国は五大国に別れている。
極寒の地、傭兵国家の、北のリルド王国。
灼熱の砂漠が続く、交易地、西のアルス王国。
樹海が人の営みを隠す、南のローグ連合国。
100年の鎖国を続ける、東の軍事国家、アルバーツ連邦。
そして拡張主義にして、中央の最強国家、リーダス帝国。
2000年前に、エル・マルグスとその仲間たち、"十王"は
世界を滅ぼさんとした"破壊神"、アルバスを打倒し、平和をもたらした。
この戦争は"神話大戦"と呼ばれており
伝説として語り継がれている。
破壊神の置き土産、人間を超越した力を持つ尖兵、
"魔人"が大陸のどこかにいまだいるという噂がある。
その後、"覇王"と呼ばれていた彼は、アクライア大陸の中央にて
最初の国となるリーダス帝国を建国する。
地理的位置としては、丸型の大陸に対して、
中央にリーダス帝国が。
山岳地帯や、湖、森林、砂漠地帯と違いはあるものの、
帝国を囲むように三方に北にリルド王国、
西にアルス王国、南にローグ連合国が位置している。
東の浮島にはアルバーツ連邦が存在している。
これが、どの国でも同様に語られている歴史である。
そして、レイ・ザルドルフと名乗る人物が、
その神話大戦にて、"十王"の一人として闘い、
今も存在している"機械人"を作った"機械王"と知り、
思わず持っていたスマホを隆は落としそうになった。
「・・・あのレイっておっさん、そんなすごい人だったのか・・・・。」
『---"機械王"レイ・ザルドルフ。神話大戦にて"覇王"に協力し、
"破壊神"、アルバスをともに倒した人物ですね。』
「・・・でも、おかしいよな、それ。・・・倒したんだろ?
"魔人"ってやつらも、"破壊神"ってやつも。」
『はい。歴史通りであればそのようかと。』
「----そんな、人間が、自分が死以上に気になっていた相手、"マルク"・・・。いやな予感がするんだが・・・。」
苦い顔をしながら水をんぐ、んぐと飲み込む隆。
そして、この世界に来たばかりの時に、王国の人間が言っていたことが
頭をかすめる。
『----"敵"と戦っていただきたいのです。』
(・・・・"敵"、ねぇ・・・。俺たちが呼び出された理由・・・・。
世界を救ったレイ・ザルドルフが危惧していたこと・・・・。
ええい、わからん・・・・。なんだ・・・?なんか引っ掛かる・・・。)
「・・・・・・・・・・えい。」
難しいことを考えていたからか、眉間にしわがよった隆の顔を、
人差し指でぷに、と彼の頬をつっつく杏。
自分が何をされたのか一瞬わからなかった隆は口を開いて一瞬呆け、
そして当然の疑問を口にする。
「・・・何しとるん??」
「えへへ・・・。隆君・・・・けわしい顔つきになってたよ?」
「ん・・・。」
言われるまで気が付かなかったのか、
ばつが悪そうに視線を杏から反らす隆。
杏はそんな彼の様子を見て、またふふ、と笑いかける。
「大丈夫だよ。・・・・ルゥさんがいるし。・・・わ
私もいるし・・・・。」
「・・・・・・・・・」
『----ちょっとお待ちなさい。それは私の役目です。
・・・というか、私はマスターに触れたいのにいまだに触れられなくって、
気が気じゃないというか、早く交わりたいというか、いえ、でも私は決して安い女ではありませんし、でも、あなたのためなら肌を脱いだっていいと思っております、ええ』
隣で怪文書じみたことを述べるルゥを無視し、
くく、と笑いをこぼす隆。
自分が同年代の女子に気を遣われていると知り、
ぱん、と両手で頬を叩いて気を取り直す。
「・・・・さんきゅ。考えてもわからないことはわからねーよな。・・・今はこの場所を抜けることだけ考えるわ。」
「うん。・・・・そろそろ行く?」
『----なのでマスターの好みの服を着て、寵愛を受けることも視野に入れておりますが、その際にはやはり生涯契約書にサインをしてもらわないといけないのです。』
「そうだな。・・・・とりあえず、また壊れているルゥは置いておくとして。」
すくり、と立ち上がり、そして同じく立ち上がろうとする杏に手を差し出す隆。
その手を杏は握りしめ、隆に引き上げられて立ち上がる。
「・・・・さて。ついにこの先だな・・・・。」
「・・・・・。」
「怖いか?」
今までいた場所は、まだ知っている場所だった。
時折知らないモンスターが出ることはあっても、この数週間は
同じような場所をぐるぐると周り、レベルアップと、
時間がたつことで何かダンジョン内が変わることがないかを確認していた。
無言の杏を頭に隆は手を置く。
こうして、ここに飛ばされることがなければ決して話すこともなかったであろう二人は、背中を預け合うことがきっかけか、相手の気持ちを察し、
自然とその身に触れるようになっていた。
「・・・・うん。・・・・あの蛇みたいなのが、また来たらどうしようって・・・。」
「・・・・・そん時は逃げる!!・・・・だって、敵わねぇし。」
「・・・そこは、俺が守ってやる、とかじゃないの?」
「・・・一緒に逃げる、って言ってんだよ。」
「・・・・あう・・・。」
ちゃかすように言う杏に対して、隆は耳を若干紅くしながらも、
仕返しとばかりにセリフを吐く。
杏は、異性からこうしたことを言われなれていないからか、
両手で顔を抑え、自分の表情が見えないように俯く。
今、二人の目の前には、大きな扉がある。
二人がまだくぐったことのない、何が起きるかわからない部屋に続く扉だ。
それまでとは明らかに違う形のそれに対して、
二人は最後までその扉を開けるのを後回しにし、
他の場所をめぐっていた。
互いに、もう一人のことを案じていたのかはわからない。
だが、不思議と彼らは笑っていた。
きっと、何とかなる、と思えていた。
「・・・ほれ。手、出せ。」
「・・無理。今、こんな顔見られたくない。」
「・・・互いの泣き顔を知ってんだから今更だろ。」
「・・・あう・・・・。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
「ルゥ。お前も一緒だ。・・・サポート、頼むぞ。」
『!!!はい、マスター・・・。』
隆の右手を杏子は左手でしっかりと握りしめる。
空いた左手で隆は扉に手を掛け、体重をかけて押そうとすると、
途端に扉が横に自動で開いていった。
手をつないだまま、二人は中へと入る。
---そして、心臓が止まりかけた、いや、ほんの一瞬だが止まり、
目の前にある巨大なそれに目を奪われる。
「---グゴオオオオオォ・・・・。・・・・・グォォォォ・・・・」
---そこには、あの"レッド・スネーク"がとぐろを巻きながら、
向こう側の通路をふさぐかのように眠りこけている姿があった。
????「ラブコメってんじゃねええええ!!!!俺にもちょうだい!!!そういうのちょうだい!!!」
??「(草食系女子・・・いいなぁ)」
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~立ちはだかるレッド・スネーク~
「・・・えええ・・・」
横にいる杏が思わずそう声を漏らした。
俺だって叫びたいくらいだ。
何の因果があって、あの糞蛇が出口らしき道の前をふさいでいやがるのか。
全く持って度っしがたい。
中指を突き立てながらルゥに小声でアドバイスを求める。
「・・・・横から行けたりしないか?」
『--不可能とは断定しませんが、限りなく難しいものであると想定いたします。』
「まあ、そうか・・・。」
レッド・スネークの横、つまり後ろから辛うじて人一人分なら通れそうな
抜け穴があることを察するも、近づけば気づかれる恐れがある。
----だが
「・・・あいつがいなければ通れるんだよな?」
『?はい。』
「・・・杏。ちょっとこっち来て。」
「?うん。」
杏の手を握りながら、レッドスネークの正面ではなく、
左横のほうまで連れていき、そこで待機しているよう言う。
ついでに、ルゥが入っているスマホを持たせておく。
怪訝な顔をしながら首を傾げる二人をしり目に、
俺はレッドスネークの真正面まで移動し、
地面に視線を落として、手ごろな大きさの石を探す。
「--おっ。あったあった。」
数は一個あれば十分。
では、ピッチャー振りかぶって第一球。
「---死に晒せクソ蛇いいい!!!」
積年の恨みと、さっさと死ねという怨念を込めて、
鼻のあたりにオーバースローで投球。
口を開けたまま信じられないようなものを見ている杏は放心しながら、口をぱくぱくとさせ、こちらとレッドスネークを何度も見比べていた。
ぱちり、とそれまで気持ちよさそうに寝ていたレッドスネークは
俺の姿を視認すると、それまで眠たげに半分だけ開いていた眼をかっぴらき、
口を大きく開けていつもの通り雄たけびを上げ始めた。
「---キシャアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「・・・・杏!!先に行っててくれー!!後から追いつくからーー!!」
「何やってるのおおおお!!?」
杏の悲痛な叫びをバックに、俺はこの世界に来てから何度目になるかわからない
逃避行に勤しむのだった。
◆
「~~~~~~!!もうっ!!バカ隆っ!!」
『・・・・杏様。マスターが身を挺して時間を稼いでくださっている今がチャンスです。我々だけでも先に進みましょう。』
「わ、わかっているよ!!」
隆から渡された、ルゥが入っているスマホを右手で抱えつつ、
杏はレッドスネークがいなくなって通れるようになった通路をひた走る。
『・・・おそらく。マスターがこうすることを話さなかったのは、我々に止められると思ったからでしょう。だから、そうせざるを得ない状況にして、
我々をさらに奥へと送り込んだ。』
「止めるに決まっているでしょ!!もうっ!!私と一緒に逃げてくれるって言った癖にぃ!!」
文句を言いながらも、先の通路を進む二人。
隆が時間を稼いでいてくれるうちに、少しでも先に進むため、
走り続ける。
同じ男に好意を寄せる女二人。
文字通り、色々な意味で長い付き合いになるなど、
まだ、二人には知る由もなかった。
????「頭おかしいんちゃう・・・?」
??「(・・・俺が同じことをやったら、ルビーに監禁されるな・・・)」
感想、くれ
れれれのれ
KEY(ドS)
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