野球少女たちのシンデレラストーリー〜白球のメッセージ〜 (nothing)
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送りバント Sunday!
プロローグ


まずプロローグです。短いですお許しを。
あと、久川姉妹の口調や雰囲気が難しい……。ご指摘があれば甘んじて受け入れますので、ご遠慮なくよろしくお願いします


──カキーーーーン!!

真っ青な空に一粒の白点が舞う。先程まで割れんばかりの大歓声が響いていたグラウンドは、一転して静まりかえっていた。

選手も、観客も、審判でさえ息を呑んでその一球の行方を追っている。

万を有に超える視線に押されるようにグングンと高度を上げていった打球は、やがて最高点を越えて落下し始める。天を貫かんばかりの勢いだった大飛球もついに大地に墜ちてくる。

そして───

 

『試合終了ぉぉぉーー!!球史に残るであろうこの大舞台!熱戦を制したのは──!』

 

鳴り響くサイレンの中、抱き合い涙を流すナインの姿がそこにあった……。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

──ジリリリリ!!

早朝の爽やかな空気を裂くように響く轟音。『貴様が起きるまで俺は止まらない』とばかりに耳元で鳴り続ける鐘の音に、銀髪の少女が顔をしかめる。

 

「ん〜〜!う〜る〜さ〜い〜!」

「うるさいのははーちゃんです。転校初日くらい早起きしないとゆーこちゃんが怒っちゃうぞ」

 

少女が我慢ならぬといった様子でベッドの上で声を上げると、開いたままのドアから少女と瓜二つの顔がのぞく。

双子の姉妹、久川凪と久川颯。無表情気味の姉と表情豊かな妹という対照的な2人だが、姉妹仲は良好で自他共に認める仲良しコンビなのだ。

 

「……まだ眠い〜」

「早く顔を洗ってご飯食べてください。あまり時間もないですし。これがけつかっちんか」

「え、今何時……?」

 

朝食の用意をしていたため凪は制服にエプロン姿だ。対して今の今まで寝ていた颯は、もちろんパジャマのままで髪型も乱れている。

現在の時刻は午前7時40分。2人は先日この愛増(あいます)市に引っ越してきて、今日から近くの美城中学校に転入することになっているため、遅刻はできない。身嗜みや朝食のことを考えると余裕があるとは言えない。

 

「もー!なんでもっと早く起こさないの!なー!!」

「凪は何度も起こしました。『あと5分……』と言い続けて起きなかったはーちゃんが悪いのだ」

 

ドタバタと洗面所に駆け込む颯。その間に凪は朝食のベーコンエッグを温め直し、トースターにパンをセットする。数分ほどで颯がリビングに入ってきたが、それと同時にパンが焼き上がった。生まれたときから一緒の双子ならではの時間感覚である。

 

「ごちそうさま!」

 

いつも通り、凪の用意してくれた朝食を平らげた颯は先程まで寝ていた自室で制服に着替える。時刻は午前8時を少し過ぎた頃。

今日から2人が通う予定の美城中学校までは徒歩約10分ほどではあるが、信号などの事情を考えると優雅に歩いて登校できる時間ではない。

 

「ほら急いで、なー!」

「凪はとっくに準備OK。はーちゃんが遅かっただけです」

 

慌ただしく家を出る2人。開かれた玄関を潜る瞬間に、息のあった「行ってきます!」が響いていた。

 



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Trinity Field〜白球は蒼く輝く〜
設定


高校生組の設定資料です。都度修正していくつもり


【スタメン】※成績はプロ野球でのものを想定しております。本編では使用しません。

 

             

1 ニ 北条 加蓮 右右 .358 12 43

2 中 神谷 奈緒 左左 .309 06 52

3 遊 渋谷  凛 右右 .346 21 90

4 三 佐久間まゆ 右両 .291 44 101

5 左 大槻  唯 左左 .301 33 80

6 一 一ノ瀬志希 右右 .325 14 61

7 捕 城ヶ崎美嘉 左左 .273 15 44

8 右 双葉  杏 右右 .284 04 28

9 投 速水  奏 右右 .092 00 04 

          防御率1.52 19勝3敗

 

【備考】

・北条加蓮

右投げ右打ちのセカンド。センター神谷とショート渋谷と共にクールトライアングルを築き、チームコンセプトである『鉄壁守備』を完成させる重要選手。

打撃においても数字を残し、初回から得点のチャンスを生むことができる。走力も高く、虎視眈々と盗塁を狙う。

怪我が多いのが玉に瑕か。

 

・神谷奈緒

左投げ左打ちのセンター。前述のクールトライアングルの一角を担う。広い守備範囲を誇り、打撃においては小技よりヒッティングを好む。ケースバッティングも上手い。足が速く走塁技術も高いため、塁に出すと止まらない。

 

・渋谷凛

右投げ右打ちのショート。クールトライアングル最後の一人。走攻守揃った好選手。堅実な守備と高い打率でチームを牽引する。初回での得点率が高い。自分の失敗が許せず努力しすぎる一面も。

 

・佐久間まゆ

左投げ両打ちのサード。球界でも珍しい両打ちのスラッガーで3割近い打率と44本・101打点の好成績を残した。1・2・3番が凡退することはほぼないため高確率で初回から打順が周る。

欠点は三振率がやや高いことくらいか。

 

・大槻唯

左投げ左打ちのレフト。高い身体能力を誇り、強肩で走者を釘付けにする。足は速いとは言えないが、高いミート力でヒットを狙う。調子の振れ幅が大きく、首脳陣はオーダーに悩んでいるだろう。

 

・一ノ瀬志希

右投げ右打ちのファースト。ランナーがいる場面に滅法強い掃除屋タイプ。低い弾道で守備の間を抜いていくアベレージヒッター。5番大槻と同じく調子の幅が大きい。だめな日はとことんだめ。

 

・城ヶ崎美嘉

左投げ左打ちのキャッチャー。キャッチャーには珍しい左投げ。広い視野と高い配球能力でバッターを翻弄する。打撃でも低くない成績で、『打てるキャッチャー』として人気を獲得している。

 

・双葉杏

右投げ右打ちのライト。身体能力はさほど高くないが、駆け引きがうまく、あらゆる局面に強い。『球界一のクセ者』の呼び声高く、その選球眼でピッチャーを苦しませる。

 

・速水奏

右投げ右打ちのピッチャー。アンダースローにも関わらずMAX141kmを誇り、多彩な変化球を併せ持つ本格派。決め球は打者の胸元を貫くライズボールと切れ味鋭く沈む高速シンカー。三振も取れるし打たせて取ることもできる『計算できるピッチャー』。

 

【未定】

小早川紗枝・本田未央・前川みく・高森藍子・緒方智絵里・赤西瑛梨華・及川雫・西川保奈美・堀裕子・長富蓮実・藤原肇・依田芳乃・安斎都・脇山珠美・浅野風香・岡崎泰葉・工藤忍・今井加奈・三村かな子・小日向美穂・多田李衣菜・島村卯月・綾瀬穂乃香・若林智香・古澤頼子・諸星きらり・道明寺歌鈴・吉岡沙紀・日野茜・海老原菜帆・井村雪菜・北川真尋・榊原里美・難波笑美・白雪千夜・中野有香・桐生つかさ

 

 

 

 

 



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プロローグ

高校生組のプロローグです。TPの3人を主人公にしています。


気温が零度を下回り、吐く息が凍りつく寒空の下で3人の少女たちが不安そうな面持ちで顔を見合わせている。今日は、彼女たちが受験した私立三色(みしき)高校の合格発表日で、あと十数分後には合否が確定する。

 

「どどどどうしよ……!もし受かってなかったら……!」

「奈緒やめて。こっちまで不安になるから」

「凛の言うとおりだよ奈緒。もうなるようにしかならないわけだし」

 

太眉の少女はかなり緊張しているようで、声は震え目も虚ろだ。そんな姿を見て少しばかり落ち着いたのか、強ばっていた表情を緩めて彼女を鎮めようとする2人の少女。

太眉の少女が神谷 奈緒、クールな雰囲気の渋谷 凛、明るくも儚げな北条 加蓮。3人は同じ中学校に通う友人同士で、高校でも同じ学校に通いたいと受験勉強を頑張ってきた。

 

「うぅ……。人、人、人……ゴックン」

「だからもう緊張しても遅いって」

「あ、そろそろ時間だよ」

 

校内に設置されている合格者の書かれたパネルには布が掛けられているが、それが職員によって外されていく。ざわめいていた他の受験生たちも固唾を飲んでその様を見つめている。

 

「916……916……」

「……あった。はぁ、良かった」

「私も見つけた!奈緒は!?」

 

凛と加蓮は自分の番号を見つけたようで安堵の笑みを浮かべている。しかし、いまだ奈緒は番号を見つけられないらしく視線をあちらこちらに彷徨わせている。

 

「916……っ!あった!あったよ凛!加蓮!」

 

不安げな表情から一転して喜色満面の笑みで振り返る奈緒。振り返った先の2人も同じ表情をしており、抱き合うようにして喜びを分かち合う。

 

「「「やっっっったーーーー!」」」

 

彼女たちの声は冬の澄んだ空気に乗って響いていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

「「「カンパーイ!」」」

 

所変わってここは大手ファミリーレストラン。彼女たちは合格を祝う祝杯を上げていた。卓上には加蓮の注文した山盛りポテトとドリンクバー用のグラスがあり、3人は合格の喜びとこれからの展望を語り合う。

 

「いやーみんなで合格できてよかった〜!」

「そうだね、また3人一緒にいられる」

「うん、本当に良かった!」

 

ポテトをつまみながら話し続ける3人。話題は入学してからの活動に移っていく。

 

「野球部だよな?」

「うん」

「もちろん」

 

暗黙の了解をあえて指摘するような、端的な確認を奈緒が発した。その期待に反することなく凛と加蓮も頷く。凛にいたっては「何をいまさら」と言わんばかりの呆れ顔を浮かべて。

彼女たちは小学生時代から一緒のチームでプレイしてきた仲で、そのコンビネーションは他の追随を許さない精度を誇っている。この夏まで3人が所属していた最上第三(もがみだいさん)中学校野球部は昨年と今年の2年連続で全国大会に出場しており、実績も十分備わっている。

 

「でも、遂に私達も三色の野球部に入るんだね」

「春夏常連、今年の神宮*1にも危なげなく出場してる強豪の一員か〜。実感わかないよ」

 

加蓮と奈緒がそう零す。いかに全国大会経験者といえど中学と高校の差は大きい。強豪校である三色高校野球部に入部するということに、まだ現実味が無いようだ。

 

「でも、やるからにはスタメンを狙うよ」

「凛……!」

「そうだね。やるからにはスタメン、だよね!」

 

闘志のこもった言葉が凛の口から発せられ、それに触発されたのか、加蓮と奈緒の目付きも変わる。

 

「よし!あたし、バッティングセンター行ってから帰る!」

「私も行くよ」

「受験で鈍っちゃってるし。走り込みとかもやらなきゃね」

 

合格祝いの空気はすでに消え、次のステージへ目を向け始めた3人は、3ヶ月先の入学に向けて再スタートを切った。

 

 

 

そして季節は春を迎え、彼女たちは晴れて私立三色高校に入学した──。

*1
明治神宮野球大会。秋に行われる秋季大会を勝ち抜き、その先の地区大会(北海道〜九州の10ブロック)で優勝した10校で優勝を争う



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