総統の弟 (鈴木颯手)
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番外編
番外編Ⅰ「ユリ-シャ・Ⅰ」


2199開始時点で
ルーベルは25歳
ユリ-シャは19歳
とちょっと年の離れた兄妹のような感覚
因みに番外編は少しギャグ風味で進みます


 これはルーベル・デスラーが軍属になる前の話。まだ幼く、兄であるアベルトの庇護下で生活していた時の事である。

 

「は? ユリ-シャが来る?」

「はい。そこで殿下にはガミラスを代表して対応してほしいと思いまして……」

「断る」

 

 ガミラス帝国においてナンバー2に位置するヒス副総統の低姿勢での頼みをルーベルは一蹴した。ソファに体を預けてふてぶてしく座り、チェスに似た電子ゲームを行いながらというまさに人の話を聞く気がない態度に流石にヒスも困り果ててしまう。

 ガミラス人にとって崇拝とも言える感情を向けるイスカンダル人の対応はまさに国を挙げて取り組むべき問題である。それもイスカンダルの女王の末妹ともなればそれにふさわしい相手を出すほかない。そう、アベルト・デスラーの弟であるルーベル・デスラー以外に適任者はいないと言ってもよかった。

 

「殿下、何とかお願いできませんか?」

「ふざけるな。俺はイスカンダルが嫌いなんだ。それもあのガキみたいな奴……」

 

 まるで世捨て人のような行動を取る女王スターシャにそれらを支援する二人の妹。そんな彼女達をルーベルは嫌っていた。イスカンダルへの感情は崇拝どころか嫌な相手を見るかの如き感情を抱いており態々そんな奴らの相手をする気などなかった。

 そしてこれはヒス副総統にとっては予測できたことだった。何しろアベルト・デスラーも「ガミラスの中で唯一イスカンダルを嫌っているルーベルが引き受けてくれるとは思わない」と言っているのだから。

 それ故に、ヒスは仕方ないと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。思わぬ人物の登場にルーベルの瞳は見開かれ、硬直した。そんな彼にユリ-シャは笑みを浮かべた。

 

「ルーベル! 久しぶり!」

「……副総統殿?」

「殿下、これはユリ-シャ様の願いであり、総統の命令でもあります。『ルーベルは少しイスカンダルを嫌い過ぎだ。兄としてイスカンダルに好意とは言わずとも友好関係を築けるようになってほしいと願っている。その点、ユリ-シャ殿はお前を気に入っているからな。ガミラスに滞在する3日間はともに過ごすように。少しでも距離を取ろうとするのならイスカンダル星で1か月は過ごしてもらう。その間星を出る事は出来ないようにする』との仰せです」

「あにうええええええ!!???」

「ルーベル、あそぼ!」

「はぁっ!? なんでお前みたいなガキと遊ばないと……! って、抱き着くな! 離れろおおぉォォォッ!!!!」

「いーやー!!!!」

 

 腰に抱き着くユリ-シャとそれを力づくで引きはがそうとするルーベルの姿を見てヒスはひっそりと部屋を出た。まるで兄妹のようなやり取りに少し微笑ましく感じてお邪魔虫は去るべきだろうという感情を持った事も起因していた。そしてそれをルーベルが一切望んでいない事など考慮していない。自分は総統の命令を実行しただけなのだから。例え恨まれようともアベルトが何か言えばそれ以上は何も言わなくなるだろう。

 

『くそっ! 俺はお前なんて嫌いだぁぁっ!!!』

『私は好きだよ!』

『俺は嫌いなんだよ! ヒス! こいつを……、って! アイツ何処に行きやがった! いなくなるならこのガキを連れていきやがれ!』

『ルーベルー! これなにー?』

『あーーーー!!!! それはさわ……!』

 

 何やら後方から騒ぎ声と物が倒れる音がするがヒスは気にしない気にしないと公務に戻るのだった。

 

 

 

 その後、ユリ-シャはガミラスでの滞在を大満足で終えるがルーベルはげっそりとやせ細り、二度とお守りはごめんだと思うのだった。アベルトの暗殺未遂が起こる前後の話である。

 



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第1章【D.A.82~90】
第1話「ルーベル・デスラー」


私は兄であるアベルトを心から尊敬している。私より7つ上の兄上。貴族たちは兄上より長兄のマティウスを褒め称えているが私は兄上の方が好きだ。私が遊びたいと言えばいつでも一緒に遊んでくれた。マティウスは忙しいとかでほとんど遊んでくれなかった。

だからだろう。マティウスが死んだと言われても悲しみはなかったし葬儀の中でも一度も泣かなかった。むしろ怒りを感じていた。兄上を無視しマティウス(死体)に話しかけ最終的には虚空に話しかける母上(クソババァ)、兄上が死ねば良かったなどとほざく貴族(凡愚)ども……。背中から感じる兄上の悲しみは私の心を怒りで燃え上がらせた。

……それが8年前の事。当時は6歳だった私も14となり兄上は21となった。兄上は亡きマティウスの後継者として内乱状態に陥ったガミラスを統一し大ガミラス帝国として再建国した。

まもなく、その兄上による演説が行われる。ああ、私が尊敬してやまない兄上。兄上が何を心に思っているのか、私には分からない。だが、私は決して兄上を裏切ったりはしません。我が心は、兄上と共に……。

 

 

「親愛なるガミラス帝国の臣民諸君。宇宙の恒久的平和を実現するには、イスカンダル主義の拡大と浸透が必要である。それは神の意志であり我らガミラス民族に課せられた崇高なる使命である!

可能な限り早く、可能な限り多くの惑星をガミラスの傘下に収めよ!マゼラン銀河の外にも目を向けよ!拡大せよ!」

 

『『『『『『『『『『ガーレガミロン(ガミラス万歳)ガーレデスラー(デスラー万歳)!』』』』』』』』』』

 

 

この日より、大ガミラス帝国はガミラス帝星を出て拡大していくことになる。私も将来兄上を支えられる逸材になるために勉学に励んでいる。戦術書、戦略書を片っ端から読み漁り知識として蓄えて行く。白兵戦闘の技術も学び、盗み取り込んでいく。全てはガミラスの為に、兄上の為に。

 

「……ルーベル、本当に軍に入るのか?」

「ええ、勿論です。兄上」

 

帝都バレラスの総統府の兄上の寝室にて私は兄上に呼び出されその様な事を聞かれた。態々深夜に呼び出して何かあったのかと警戒してしまった。最近は兄上を狙った暗殺が起きている。中には俺を新たな総統に祭り上げようと近づいてくる者もいるほどだ。勿論、近づいた者は全て天への片道切符を持たせている。二度と戻って来ることはないだろう。

 

「……ルーベル、君は私と違い自由だ。何でもできる。だから」

「だからこそ、ですよ。私はガミラス民族の一人としてガミラスの事を考えています。貢献するなら軍人となるのが手っ取り早いでしょう?」

「……そう言う事なら私たちは上司と部下になる」

「構いません。兄上に命令されるなら本望ですよ」

「……君は昔から変わらないな」

「兄上も昔と変わらず凛々しいですよ」

「嬉しい事を言ってくれる。……話は以上だ。今日は寝なさい」

「はい」

 

私は兄上の部屋を後にする。総統府の窓からは他惑星へと侵略する航宙艦隊の姿が見える。いずれは一軍人としてあれらに乗り込み大宇宙へと打って出るのだろう。……望むところだ。私は、いや俺は心の中でそう決心を固め自室へと向かっていくのだった。

 



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第2章【D.A.93~95】
第2話「ジレル人」


「……兄上、彼女達は?」

「ああ、たまたま収容所で拾ってね」

 

俺は久しぶりにガミラス帝星へと帰還した兄上を出迎えていたがその後ろに見える二人の幼女を見て疑問を口にした。結果、返ってきたのは動物を拾ってきたとでも言うような兄上の言葉であった。俺は兄上の言葉を受けて改めて彼女たちを見てみる。

ガミラス人とは違い白い肌、尖った耳……。確かジレル、だったか。特殊な能力を持つ人種だったか。

 

「……この者たちをどうするのですか?」

「ふむ、育てようと思っている、が何分私は忙しいのでね。ルーベル、君が代わりに面倒を見てはくれないか?」

「……俺が、ですか?」

 

驚きのあまり固まってしまう。そんな俺に兄上は続けて話す。

 

「ルーベル、君は書物を読むあまり人とのコミュニケーションに難がある。その改善の一環と思えばいい。別に何から何まで任せる訳ではない。妹の様に一緒に過ごせばいい」

「……それは総統としての命令ですか?」

「いや、兄としてのお願いだよ。ダメかね?」

「いえ、問題ありません」

 

そう言われると俺は断り切れない。普段はお願いなどしない兄上からのお願いは俺には効果抜群すぎる。俺は総統としての職務に戻る兄上と別れてジレル人の二人を連れて自室に戻る。その間二人は一言も話さずただただ付いてきた。

そして自室に入り二人をベッドに座らせ俺は椅子に座った。……しかし、何をすれば話せばいいのか分からずにただ二人を見る事しか出来なかった。そんな俺を怖がってなのか二人は抱き合って震えている。いや、片方は若干口角が上がっているが。

因みに俺の容姿は兄上と似ているが怖い顔でもあるとの事。恐らく常によっている眉のせいだな。これのせいで睨んでいると思われたこともあったが別に問題ないだろう。それよりも今はこっちが優先だ。

 

「……とりあえず名前を言え」

「……ミーゼラ。ミーゼラ・セレステラ」

「……ミレーネル・リンケ」

「ミーゼラにミレーネルか。分かった。取り合えず先ほど兄上が言っていた通りだ。まぁ、デスラー家に育てられるんだ。光栄に思うといい」

「……あの」

「あ?」

「ひっ!……そ、総統閣下は貴方様の兄、なんですか?」

「ん?あー、そうだな。総統アベルト・デスラーは俺の兄だ。それがどうした?」

「い、いえ……」

「?変な奴だな」

「……」

 

それから、俺たちの生活はスタートした。二人は俺の隣の部屋に私室を与えられた。そして大ガミラス帝国の優秀な臣民となるべく様々な勉学を行っている。それこそ俺以上に厳しい程だ。少しでも間違えれば暴言が飛び反論すれば叩かれる。あまりに酷いので教育係を変えさせたほどだ。多分ガミラス人じゃないからストレスの捌け口にしたのだろう。

とは言えゆっくりとだが歩み寄ったおかげで二人との距離は大分近づいたと思う。そのおかげで二人の事が何となくだが分かってきた。

ミーゼラの方は兄上に恋心を持っているようだ。叶わぬ恋だと思うが兄上はずっとスターシャを想っている。そうしている限りは独身だろうからチャンスはあるかもしれない。

ミレーネルはミーゼラを愛している様でたまにミーゼラを襲っているのが隣から聞こえてくる。一方でガミラス人の事はあまり好いていないようだ。一番接している俺にすらよく思ってないのが分かる。別に反抗しない限り問題ないだろうけどな。

 

「ルーベル様、総統閣下は次は何時来られるのですか?」

「ルーベル様、総統閣下に会うなど恐れ多いので来られるときはミーゼラと一緒に自室にて待機しています」

 

ミレーネルのガミラス人への警戒はかなり強いな。いずれその気持ちが消える事を祈る事しか出来ないな。

 



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第3話「暗殺未遂」

「無様だな。エリザ殿」

「くっ!」

 

煙が上がる総統府前の演説場にて俺は取り押さえられているエリザ・デスラーを冷徹に見下ろしていた。こいつはマティウスの妻であり現体制に不満を持つ者たちの一人だった。俺にとっては嫌いな人物の一人だ。

 

「ルーベル!目を覚まして!アベルトはただの独裁者よ!」

「だからどうした?」

 

俺はディッツ提督とタラン参謀次長に取り押さえられながらも喚くエリザの前に膝をつき銃を構える。

 

「貴様は反逆者だ。貴様の言葉に耳を貸すほど愚かではない」

「アベルトがやっている事は間違っている」

 

兄上が見ている前でここまで喚くことができるあたりこの女は阿呆だな。

兄上が導かなければ未だにガミラスは内乱状態だっただろう。そうなれば俺も死んでいたかもしれない。貴族の神輿として何も出来ない日々が続いていたかもしれない。

そんなのは……死んでもごめんだ。

 

「マティウスでなく、アベルトの方が死んでいれbっ!」

「黙れ!」

 

俺は容赦なく女の顔を蹴りつけた。女は口から血を吐き歯が数個口から出る。しかし、そんな事はどうでもいい。こいつは!今!兄上を侮辱した!しかもマティウスの代わりに死んでいればだと!?ふざけるな!

俺は心の中で叫びながら何度も、何度も!踏みつける。こいつは敵だ!生きてはいけない敵だ!ここで死ね!兄上に逆らった事を後悔して死ね!詫びろ!敬い称えろ!兄上は!最高の人物だと!出来ないなら死ね!今すぐ死ね!それが出来ないなら死ね!

 

「……ルーベル、そこまでだ」

「っ!?何故ですか!?こいつは!この女は!」

「皇族と言えどなんの地位も持たないお前に裁く権利は、ない」

「それは……!」

「もう一度だけ言う。それ以上は止めろ」

「……分かり、ました」

 

俺は青い血が大量に付着した足を退ける。女は顔が変形しており腫れ上がっていた。顔の周りには血がべっとりと付いている。女は辛うじて息をしている。……後少しで止めを刺せそうだがこれ以上は兄上を怒らせるだけだな。

 

「エリザ……。君の判決は追って降す。それまでは牢に、いや治療を行ってやれ」

「……死刑になる反逆者にそんなもの……」

「ルーベル、黙れ」

「っ!失礼しました」

 

俺は兄上の視線を受け謝罪する。どちらにしろ兄の決定だ。覆る事はないだろう。ならせめてあの女の最期ぐらい見ておこう。俺と兄上を捨てマティウスを取ったあの女の様に……。

部屋に戻るとミーゼラとミレーネルが怯えた様子で立っていた。部屋が隣と言う事もありたまに部屋に勝手に来る事もあった。今回もそうだったのだろうがどうやら外での出来事を知っているようだ。

俺は二人を無視して椅子に座り込む。そして二人には部屋を出るように言い二人が出てから壁を殴る。一回だけではなく二回、三回、四回!血が出ても殴り続ける。そうする事でしかこの怒りを抑える事は出来ないから。

俺はこの時ほど地位と言う物を求めた事はない。地位さえあれば兄上に意見を行える地位があれば!

俺は血で染まる手を握り締めながら必ず地位を手に入れると心に誓うのであった。

 



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第4話「BB-199」

「今日からこのBB-199の艦長となるルーベル・デスラー大尉だ。よろしく頼む」

「着任確認しました。私はヤーヒム・グラナー中尉です副艦長として同行します」

 

あの日の誓いから一年と少し、俺は軍に入った。俺は決してコネなどを使うつもりはなかったが少しでも早くより大きな地位を得るためにコネを最大限使用した。おかげで今日俺はデストリア級航宙重巡洋艦BB-199の艦長となることができた。配属先は銀河方面軍所属だ。大マゼランも小マゼランもまだ統一にはなっていないのに銀河系に侵攻するのはどうかと個人的に思うが何も言うまい。

こうして俺の艦長生活は始まったが正直楽しい物では無い。そもそも銀河方面には大ガミラス帝国とまともに戦える国家が存在しない。殆どが生物すら住んでなかったり宇宙に出るほどの技術力を持たない野蛮な惑星ばかりだった。ザルツ人の様に勇猛ならまだ使えるがそう言うのはほとんどおらず大半が民族ごと根絶やしにしている。

 

「艦長、バラン鎮守府より入電。一旦帰還せよ」

「漸くか。一方的な殲滅か警邏ばかりで気が滅入っていたところだ」

「ですがどうやら休暇は取れなさそうですよ?」

「どういう事だ?」

「新たに見つけた恒星系の調査だそうです」

「はぁ?何隻でだ?」

「本艦を含めて10隻ほどです」

「それだけか?いくら何でも少なすぎるだろ……」

「どうやら新たに赴任したゲール少将はあまり優秀ではないようです」

 

副艦長の言葉に俺は内心舌打ちする。大マゼランや小マゼランに比べれば敵がいないこっち方面に凡愚を回したという事か。まだ基地司令とは会った事はないが副艦長の様子では余程らしい。

正直ミーゼラとミレーネルの様子も気になるしそろそろガミラス帝星への帰還なりビデオレターの作成なりした方がいいかもしれないな。

 

 

 

 

「初めましてゲール司令。デストリア級航宙重巡洋艦BB-199の艦長ルーベル・デスラーです」

「銀河方面軍作戦司令長官になったゲールである」

 

バラン鎮守府に帰還した俺は直ぐに新たな司令長官であるゲールに挨拶を行った。個人的な印象では凡愚と言うのは確定だな。能力は分からないが少なくとも善人よりも低いのは確かだろうな。

 

「ゲール司令。恒星系の調査と聞きましたが……」

「うむ、その通りである。ルーベル殿には貴官のBB-199の他に9隻を率いて調査を行ってもらいたい」

「……率いて?」

「その通りだ。ルーベル・デスラー大尉。現時刻を持って貴官を少佐に格上げの上で第3調査艦隊の司令長官に任命する」

 

まさかの司令長官宣言に俺は固まる。それもそのはず俺は軍に入隊して半年ほどしか経っていない。にも関わらず少佐への異例の出世。……明らかにゲール司令の独断という事が分かるがここは従順に受けて置く。正直司令長官になったからと言ってこの銀河方面で何か起こる筈がない。最悪の場合は撤退するなりすればいいしな。

……俺はこの時そう考えデストリア級航宙重巡洋艦1隻、ケルカピア級航宙高速巡洋艦1隻、クリピテラ級航宙駆逐艦8隻を率いて恒星系、太陽系の調査を開始するのであった。

 



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第3章【D.A.96~103】
第5話「接敵」


「艦長、いや司令。第3調査艦隊司令長官任命おめでとうございます」

「副艦長、ありがとう。正直入隊してから一年にも満たない俺が務まるとは思えないがな」

「司令の昇進が異常に速いのは認めますが構わないのでは?どうせゲール司令の独断でしょうし」

「だが正式に総統府から昇進が届いたぞ」

「……それは、おめでとうございます?」

「通信先でゼーリック元帥に散々嫌味を言われたがな」

「……大変でしたね」

「たく、あの旧体制の亡霊が。さっさと死ねばいいものを……」

 

俺は心の中でゼーリックに対して罵詈雑言を行う。あの(エリザ)の様に分かりやすく暗殺をしてくれれば堂々と処刑出来るのに……。さっさと裏切るか死ね!

そんなくだらない話をしながら第3調査艦隊は恒星系に向かってジャンプを行う。長距離の移動にはこの次元跳躍は絶対に欠かせない。これのおかげで大幅な時間短縮が出来るのだから。

そうやってジャンプした先には岩と氷の壁があった。情報によるとここから先が恒星系の内部になる。

 

「全艦警戒を怠るな。ここから先は未知の領域だ。何が起きても直ぐに対応できる様にしろ!」

『『『『『『『『『ザー・ベルク!』』』』』』』』』

 

俺の指示に全艦は素直に従う。確かBB-199以外はザルツ人という事だったが彼らは素晴らしいな。ガミラス人の次に使える人材だ。

そんな事を考えていると青い星が見える。惑星と言うよりは準惑星だろう。

 

「あの惑星にドローンを投下しろ。我々はこのまま進む」

「きちんと調べないので?」

「恒星系を浅くでも全体の把握しておきたい。調査中に奇襲を受けたとかではやってられないからな」

「成程。分かりました」

 

その後は次の惑星にも同じようにドローンを投下して進む。するとレーダーに反応が現れた。

 

「レーダーに艦影!前方から未確認の艦隊!」

「数は!?」

「凡そ……50!真っすぐこちらに向かってきます!」

「全艦戦闘態勢に移行!そのまま待機!」

 

予想外の航宙艦には驚いたが別に敵対意志があると決まった訳ではない。奴らの領域に近づいたためにやってきたのかもしれない。まぁ、今は相手の出方次第だな。

 

「っ!敵艦発砲!」

「全艦回避運動!」

「ダメです!間に合いません!」

「くっ!近づきすぎたか……!総員衝撃に備えろ!」

 

敵のビームと思われる緑色の光線が近づいてくる。そしてそれはBB-199の艦首に当たるが鈍い音と共に弾かれた。

……どうやら敵艦の攻撃能力はかなり弱いようだな。なら、今度はこちらの番だろう。

 

「全艦に通達!目の前の艦隊はガミラスに敵対意志がある!敵に我らガミラスの強さを教えてやれ!」

「ザー・ベルク!」

「艦首魚雷発射!一番砲塔は右を、二番三番は左の敵の一掃せよ!」

「攻撃開始します!」

 

俺の指示に従い第3調査艦隊は戦闘に入る。我らがガミラスのビームは敵にあたれば一撃で粉砕していく。魚雷も寸分たがわず敵に当たり敵の損害を増やしていく。敵の攻撃は全く通らずこちらの攻撃が一方的に通るのはある種の快感を覚えるな。

 

「味方駆逐艦大破!敵の魚雷を受けたようです!」

「何だと?流石に無傷という訳にはいかないか」

「ああ!轟沈しました……」

 

だが、流石に敵の魚雷は至近距離ならダメージはあるようで味方の駆逐艦が呆気なく沈んでしまった。とは言え敵は既に半数、いやもっと減っている。戦果としては十分だろう。今は追撃よりもこの情報を届けることが先決か。

 

「全艦一斉回頭!我らはバラン鎮守府に帰投する!」

「敵残存艦艇の殲滅は行わないので?」

「必要ないだろう。今は宇宙進出できる国家が銀河系に存在するという事を伝えるのが先決だ」

「……かしこまりました」

「しかし、敵があれで全てとは思えん。まだまだ出てくるだろうな」

「そうなれば今回の戦況から言って狩りとなるでしょう」

「ふ、それは楽しみだ。勲章がやってくるんだからなぁ!」

 

俺は今後の展開に胸を躍らせるのであった。

 



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第6話「殲滅」

見切り発車で書いたせいで主人公のキャラがブレまくる(いつもの)。せめてもう少し文字数増やさないと。


銀河方面で新たに接敵した敵をテロンと名付け侵攻を開始した。銀河方面軍作戦司令長官のゲール少将は俺をテロン方面司令長官に任命しある程度の艦隊の引き抜きも出来るようになった。既に率いる艦隊は100を超えておりちょっとした大艦隊となっていた。

そんな大艦隊の司令になった俺は早速艦隊を率いてゾル星系と名付けられたテロンの存在する恒星系にやってきていた。調査により8つの惑星と1つの準惑星が存在していることが明らかとなった。既に準惑星には前線基地の建造が開始しており完成後はここを拠点に活動していく事となるだろう。

 

「ルーベル少佐。テロン艦隊が向かってきています。その数は約200以上」

「ご苦労。ふむ、前回の4倍近い数か」

 

部下からの報告に俺は考える。因みに俺はデスラー家の人間の為ルーベルで呼ぶように言っている。

前回の艦隊が敵の主力艦なら今回も楽に勝てるはずだが慢心はいけない。ガミラスの敵である以上情けも慢心もせずに全力で叩き潰す。

 

「副艦長、ザルツ人の艦を前衛に戦闘態勢を取れ」

「ザルツ人を、ですか?」

「そうだ。彼らの実力なら例え敵の艦が予想を超えてきても問題ないだろう」

「分かりました」

 

指示に従いザルツ人の乗艦する艦が前衛に行く。やがて敵の艦影が見えてくる。……ふむ、前も薄々思っていたが奴らにはジャンプの技術がないのか?ジャンプが必要ない程航行速度が速いとも思えない。やはり奴らは恒星間航行の技術を保有していないのか。

 

「副艦長、テロンをどう見る?」

「はっ、私見ですが宇宙進出を行ったばかりの蛮族。私にはそう見えます」

「ふ、俺も同じ意見だ。……つまり奴らは我々より弱いという事だ」

「……完全にそうとは決まった訳ではないですが……」

「それもこの海戦で分かるだろう。全砲門開け!目標!前方のテロン艦隊!撃てぇ!」

 

俺の指示に従い赤いビームが放たれる。テロン艦隊は回避運動を取るも次々と破壊されていく。一通り撃つと半減期とばかりに緑の閃光が放たれるが装甲を抜けず鈍い音を響かせるのみだった。そして一方的な攻撃はその後も続く。

 

「駆逐艦中破!」

「後続と交代、いや後続は前進。敵艦隊の懐に潜り込む!」

「ザー・ベルグ!」

 

俺の乗るBB-199に軽くGがかかるが特に問題などない。敵艦隊は高速で進む我が艦隊に追いつけず見当違いな方向に攻撃を行っている。敵が照準を合わせるころには我らは既に懐に潜り込んでいた。

 

「よし、砲撃開始!魚雷、ミサイルも撃ちまくれ!テロンの艦を一隻たりとも逃がすな!」

 

赤い閃光が壊滅間近のテロン艦隊に止めを刺す。先程よりも距離が短い分ビームは艦を貫きその後ろの艦にもダメージを与えていく。魚雷、ミサイルは一発で敵艦を破壊し逃げる暇など与えない。

 

「敵艦反転!逃亡を開始しました」

「逃がすな!徹底的に破壊しろ!」

 

背を向け逃げる艦には容赦なくビームを浴びせる。速度を上げればミサイルが追いかける。殿を務めようと攻撃してくる艦は魚雷で沈める。

テロン艦隊はただガミラスの艦隊の前に成すすべなく破壊され艦と乗員の命を散らしていく。

……ふ、フハハハハハ!!!!ガーレガミロン!ガーレデスラー!

我らが大ガミラス帝国は全宇宙の支配者である!フハハハハハ!

 

 

 

 

 

結局テロン艦隊は数隻を残し全滅した。俺はこれ以上の追撃より基地建設の防衛を優先し必要以上の追撃はしなかった。度々数十隻のテロン艦隊がやって来るが呆気なく破壊していった。これなら小マゼランに侵入しているガトランティスの方が精強だろう。せめて至近距離からの魚雷攻撃以外に有効打を持ってほしいところだ。

どちらにせよ基地が完成すればテロンへの本格的な侵攻が開始されテロンの命は消え失せるだろう。その時を楽しみにしておくか。

 



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第7話「アイン・デウスーラ・1(アル)

「ゼルグート級戦艦か……。気に入らん」

 

俺は建造された冥王星基地にて本国から送られてきた報告書を読んでいた。内容は急激な領土拡大によって不足する兵士の代替えとしてガミロイド兵の大量投入という事と最新鋭戦艦ゼルグート級戦艦の建造と言う事だった。

ゼルグート級戦艦はスペック上ならこれまでのどの船よりも装甲、火力が高いらしく一番艦にゼルグートⅡ世。二番艦に兄u……デスラー総統の座乗艦となるデウスーラとなっているようだ。

……何であn、総統閣下の座乗艦を一番艦にしない!?何故二番艦にした!?これもあの糞野郎(ゼーリック)の陰謀か!?あんな血統至上主義のくずなどさっさと死ねばいいのだ!兄上の許しさえいただけるのなら今すぐにでも艦隊を率いてぶち殺すものを……!

 

「シュルツ!シュルツはいるか!?」

「はっ!なんでしょうか?」

「ザルツ人の技術者はガミラス人にも負けない程優秀だったな?」

「……そのように自負していますが……」

「今すぐに技術者を可能な限り集めろ!今すぐにだ!」

「は、はい!」

 

俺は最近部下になったザルツ人のシュルツに銘じて技術者を集めさせる。ここに来るまではドメル将軍の下で艦を動かしていたらしい。ドメル将軍配下だったという事もあり彼はかなり優秀だ。いずれテロンの殲滅後はここの基地司令に任じてもいいかもしれない。

因みに技術者を集めさせたのはゼルグートなど足元にも及ばない戦艦の建造をさせるためだ。

シュルツの行動は早かったようで一月も経たずに技術者がこの基地にやってきた。

 

「諸君らの中でどれだけ聞いている者がいるか分からないが本国にて最新鋭戦艦が建造されることになった。スペック上なら前ガミラス艦を上回るらしい」

 

最新鋭戦艦の建造と言う言葉にざわめきが起こるがそれを制して話を続ける。今は技術者のざわめきを待っている余裕はない。

 

「そこで私は諸君らに最新鋭戦艦に負けない戦艦の建造を依頼する。期限は無期限、と言いたいが十年以内だ。資源、資材、資金。全て俺が負担しよう」

 

俺は兄上から十分な額の金銭を貰っている。それは軍に入隊した今も変わらない。ただ、欲しい物は特になかったし手を付けていなかったからかなりの額が溜まっている。それこそ星を買えそうなくらいにはね。

 

「また、建造に成功すれば諸君らの家族も含めて一等臣民になれるようにしよう。……無論、諸君らは拒否をしてもいいし断ったからと言って何かするつもりもない」

「最新鋭戦艦に対抗できる戦艦か……。面白そうだな」

「ザルツ人の実力を見せるチャンスだな!」

「俺はやるぜ!」

「俺も!」

 

どうやら技術者たちは乗り気のようだな。……だが、ガミラス人の技術者も呼ばないとな。彼らの知らないゲシュ=タム機関の製造などあるだろうしな。それとa……総統閣下にも報告をしなければいけないな。

 

見ていろよ、無能デカブツ(ゼーリック)!貴様の艦など直ぐに旧式艦にしてやる!

 

 

 

 

 

 

 

我が尊敬する兄上へ

兄上は元気にしておりますか?俺は銀河方面軍で艦隊を率いてガミラスの存在を知らしめております。最近はテロンの活動も落ち着いており前線基地の建設も完了しました。まもなく侵攻を行う予定です。

それとくs……ゼーリック国家元帥殿が最新鋭戦艦の建造を行ったと聞きました。兄上の座乗艦もその二番艦で決定しているとか。俺としては兄上の艦は一番艦の方がいいと思います。

なので俺も対抗して作る事を決めました。ガミラス人の技術者など一部こちらに連れてきますがお許しください。必ずやあの屑野郎の艦をダサくて弱い旧式艦にして見せます!良い報告をお待ちください!ガーレガミロン!ガーレデスラー!

 

 

「……総統、今のは?」

「親愛なる弟からのメッセージだよ、ヒス君」

「で、ですが(国家元帥を屑野郎……)」

「問題ないだろう。若気の至りと言う奴だ。好きにさせておけばいい」

「予算などは一体……」

「私が上げていた金銭から払うようだ」

「……一体どれくらい出したのですか?」

「さてね、この前金額を見たら軽く星を買える値段が入っていたよ」

「……総統、エリザ殿の件といい身内に甘すぎませんか?」

「そんな事はないさヒス君」

「……できれば明後日の方を向かずに私の方を見て言って欲しい物です」

 



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第8話「二度の火星沖海戦」

皆さんお久しぶりです。最近実写版のDVD買ってまた自分の中で盛り上がり始めたので書きました。半年ぶりに書いたから少しダイジェスト気味になってしまいましたが……


「諸君、会議を始めるぞ」

 

俺の言葉に従い会議が始まる。出席者は俺以外はほとんどザルツ人だが元々ドメル将軍の下で行動していたシュルツを始め優秀な人材が多い。むしろ純血のガミラス人よりも勤勉な彼らの方が時と場合によっては上回るだろう。

 

「まずはD.A.97前期に行われた第4惑星での戦闘は我らの勝利に終わった」

 

この戦闘は比較的楽であった。こちらの艦隊に対し相手は物量で押し切ろうとしたようで何倍もの戦力を出してきたが元々艦の性能はこちらが圧倒的に上なのだ。敵のビーム砲はこちらの装甲を貫通出来ず、こちらの攻撃は当たれば確実に破壊できる。唯一懸念すべき敵の魚雷攻撃も肉薄させない限りは問題ない。

結果、こちらの損害は0に抑えつつ敵の艦隊を殲滅した。確認できる限り戦艦と思われる艦一隻以外は全て轟沈させた。

 

「だが、問題は次だ」

 

その半年後に行われた海戦はこちらの敗北に終わった。……とは言ってもあちらの艦隊損耗率の方が多い。だが、だが!こちらはこれまでとは違い20近い艦を失った。その全てが駆逐艦であり先行部隊だったとはいえ初めての損害だ。

 

「敵の艦は確実に減り、支配地域も減ってきている。この海戦が行われた第4惑星の基地や都市は全て破壊し、敵をテロンのみまで押し込んでいる。だが、敵もこちらにそれなりの被害を出せる程度には手ごわいことが判明した。駆逐艦とは言え艦が沈められるのは避けたい。ゲール少将もこちらばかりに優先して艦を回せるわけではないからな」

「つまり今回の議題は艦の損耗を抑えつつ敵を叩く策を考えるという事ですか?」

「そうだ。アイン・デウスーラはまだ設計図の作成段階だし、惑星間弾道弾も数に限りがある。……というより我らはそもそも持ってきていないしそんな物を置いとけるほどこのプラード(冥王星)基地は大きくないからな」

「……ならば面白い兵器がございます」

「何だシュルツ?」

「反射衛星砲です」

 

そう言ってシュルツは詳細なスペックを提示してくる。……確かにこれは素晴らしいな。兄上の望むガミラスフォーミングにも適している。多少準備に時間はかかるが現状の資材で作成は可能だ。

 

「素晴らしい!これはザルツ人の兵器か?」

「はい。残念ながら機動戦術を用いるドメル将軍とは相性が悪い兵器なので使用はしませんでしたが、この状況には適していると判断しました」

「敵がロングレンジ攻撃を止めようとすれば必然的にこちらが待ち構える立場になる。敵の魚雷を用いた潜伏奇襲もやり辛くなり艦隊の損耗も防げる……。よし!シュルツ、すぐに作成を行え来年にはどんどん放てる状態にするのだ!」

「ザー・ベルク!」

 

他にも議題はいろいろとあったがどれも順調に消費した。今回の会議で一番良かったのはやはり反射衛星砲だろう。それにこれは兵器にも転用できる。絶対に攻撃が来ないと思われる箇所から奇襲ともとれる攻撃を行う事が可能だ。兵器用に出力を向上させたものも作ってもいいかもしれないな。

 

 

 

 

 

そうして時は流れ、ガミラスがテロンと呼ぶ惑星・地球は遊星爆弾により真っ赤な土地と化した。これを止める術を地球は持っておらず、ただただ自分たちの故郷が変貌していく様を見ている事しか出来なかった。

だが、そんな彼らを神は見捨てていなかった。とある異星人(・・・・・・)とのコンタクトを取った地球は残存戦力を冥王星へ向けて出発させた。時にD.A.103、西暦2199年の事であった。

 



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第9話「プラード(冥王星)沖海戦」

「司令、シュルツ副指令の艦隊とテロン艦隊が接敵しました」

「よし、戦闘を開始するように伝えろ」

「はっ!」

 

俺がこのテロン方面司令長官となり早8年が経過した。この間に我らは反射衛星砲を用いた遊星爆弾の点火によりロングレンジ攻撃を行いつつテロンをガミラスフォーミングし続けた。結果テロンは青い星から真っ赤に干上がった星となっている。地上にはガミラスの毒素を放出する植物が生い茂りテロン人を苦しめている。だが、奴らはしぶとく生き残っており最近では艦隊同士の戦闘こそないもののテロンの監視を行っている空母や戦闘機が撃墜されたりしている。

それでも確実に追い詰めておりテロン人はやけになったのか6年前の様に艦隊を差し向けてきた。だが、今度の狙いはこのプラードだった。遊星爆弾を生み出しているのはここで間違いないし、ここを破壊できれば遊星爆弾が来ることはない。とは言えそんな事をさせるほど俺は甘くはない。

出撃したテロン艦隊には途中途中で艦載機や少数の艦隊による攻撃を行った。これらは敵を倒すのが目的ではない。道中で損耗を少しづつ与えながらやせ細ったところを大艦隊で殲滅する為だ。その為撃破出来なくてもいいから攻撃するように言っている。敵との遭遇、戦闘だけでも乗っている船員の疲労を募らせることは可能だ。これまでの調査からテロンは全て人によって艦隊が動かされている事が分かっている。我らガミラスの様にアンドロイドは用いていないらしい。その為疲労を蓄積させることは十分に効果を発揮するだろう。

そして、先程プラードを離れ敵艦隊の虚を突く様に左右を挟み込むようにシュルツが指揮する艦隊が展開した。十分な距離を保っている事から同士討ちの危険性は無いうえに敵は挟み込まれ戦術的に不利な状況へと陥らせることに成功した。

ここからは基地で待機する俺ではなくシュルツの分野だ。俺は大人しく勝利という報告を待っているとしよう。

そう言えばアイン・デウスーラは順調に建造が行われている。大量に口出しをしたせいで艦は肥大化、重武装化が進んだうえに技術者によると「兵器に出力持っていかれて航行できません!」と言われてしまったがそこは既に解決済みだ。アイン・デウスーラを引っ張る足専門の艦艇を作らせたのだ。タイア・ホンドと命名したこの艦はガミロイド兵のみで運用する。アイン・デウスーラはゼルグート級戦艦を超える装甲を持っているため確実にタイア・ホンドを敵は狙ってくるだろう。そうなれば損耗率は高くなる。故にいくらでも替えが効くガミロイド兵のみで構成する。タイア・ホンドも何十隻も作らせ破壊されようとも減らない状況にする。

費用が想定の十倍くらいになったがそこは兄上に頼み込みだしてもらった。これにはヒス副総統から長々と説教を喰らったが後悔はしていない。完成した暁には度々ちょっかいをかけてくるガトランティスだろうと何だろうと殲滅してこの艦の力を見せつけてやるさ。

 

「司令!第8惑星を未確認の飛行物体が通過しました!」

「何?隕石か?」

「ち、違います!識別不明ですが宇宙船と思われます!テロン方面に向けて高速で飛行中!」

「何だと!?つまり外宇宙から来たというのか!?それに識別不明という事はガミラスの物ではない……。まさか!?」

「っ!その船がテロン艦隊に向けて何かの信号を発しました!」

「やはり……!この艦隊は囮か!その宇宙船を攻撃させろ!」

「ダメです!早すぎます!今ゼダン(土星)を通過しました!」

「馬鹿な……!早すぎるぞ……!シュルツに連絡!敵艦隊を確実に沈めろと伝えろ!一隻とて逃すなと!」

 

こうなった以上あの宇宙船が何なのかは分からないし追いかけようにも早すぎる上に大半はテロン艦隊と戦闘中だ。まさか数少ないであろう艦隊を囮に使うとは……。それだけ重要な事なのかもしれない。今はこの怒りをテロン艦隊の全滅と言う形で発散させよう。

しかし、テロン艦隊は一隻だけ取り逃がした上に最後まで抵抗した敵駆逐艦により陣形を崩され艦を一隻失ってしまった。

その後その駆逐艦は被弾しゼダンの第8衛星(エンケラドゥス)に不時着したところを包囲し生存者全てを捕虜としてガミラス帝星に送る事となった。

そしてこれより暫くして地球より一隻の船が出発した。その名はヤマト。後にガミラスを多いに引っ掻き回しルーベル・デスラーが「いつかぶっ壊す」と誓う事になる船はイスカンダルに向けて旅立つこととなるのだった。

 



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第10話「アイン・デウスーラ・(ベオ)

1年ぶりです。色々と構想は考えていましたが形にはなりませんでした。自分も遂に社会人となり、執筆活動の時間が大幅に減ってしまいましたがこれからも続けていこうと思っています


「は?主武装以外に高火力の武器を積めと?」

「そうだ」

 

 惑星ベラード。銀河方面の辺境にあるこの惑星は現在アイン・デウスーラ建造の為のドックが置いてある。元々この惑星は無人で戦略的価値も低かったため書類上でのみ領有権を持っているだけの星だった。しかし、それは同時にここに密かにドックを建造すればそのステルス性は格段に上がる事を示している。

 そして現在はここで本格的なアイン・デウスーラ建造を行っているが、俺が言った一言で研究者は驚きの声を上げた。

 

「本気ですか? それを行えばエネルギーが足りなくなりますよ?」

「そんな事は問題ない」

 

 当然のように反対する研究者に対して俺は毅然と言い切る。本来、高火力の武装を積んでも問題はないエンジンを設計、完成させている為このような問題は起こらないはずだった。しかし、俺は全ての武装に使うエネルギーを2倍近く増やし、火力を上げるように言っている。目指すは遠距離からゼルグート級の正面装甲をぶち抜く事だ。

 それ故に、更に武装を付けるとなるとエネルギーが必然的に足りなくなる。研究者が聞き返すのも妥当だろう。現状では推進力用のエネルギーが不足しているからな。

 

「簡単な話だ。態々この艦に航行能力を付与する必要はない。他の艦に曳いてもらえばいいからな」

「……つまり殿下は他の艦に曳かせることで圧倒的な火力を優先させるという事ですか?」

「ああ、そうだ。その為の補助艦艇建造も行う。牽引に特化した艦艇をな」

「……」

 

 研究者が絶句しているのが分かるが実際、そうでもしないと理想に近づける事は出来ない。むしろこの案は最適な方だと思うのだがな。

 

「……殿下が言いたい事は理解しました。ですがジャンプはどうするのですか? この艦ではジャンプに必要な速度が得られませんよ?」

「それについてはまだ完成に至っていないものの、次元を無理やりつなげ短いトンネルをつくる技術がある。それを使う」

「……完成には至っていないのですよね?」

「製作者曰く1年~2年で完成させるらしい」

 

 それが事実ならこの艦の航行問題は解消されるという事だ。尤も、これは別に新しい技術ではない。やっている事はバラン星の亜空間ゲートがある。あれの亜種で小型版と考えればいいだけの話だ。

 

「予算の方は心配しなくていい。兄u……総統閣下に頼み予算は潤沢に貰う事が出来た。後は諸君らの腕とやる気次第だ」

「……分かりました。そう言われてしまえば仕方ありません。我々の全てを用いて完成させてみましょう」

 

 こうして急な予定変更となったもののアイン・デウスーラは形作られていく。この艦が完成するのが何時になるのかは分からない。だが、完成すれば糞y……ゼーリック元帥殿の艦よりも素晴らしい艦になる事は間違いない。何しろ敬愛する兄上を思って造っているのだからな。

 

 

 

我が敬愛する兄上へ

元気にしているでしょうか? 私はこの辺境の惑星で自分なりに元気に過ごしています。最近、兄上が演説している映像が届き、感極まったあまり涙を流し、シュルツなどに迷惑をかけてしまいました。ですが私はここでの勤めを立派に果たしております。

それはそうとアイン・デウスーラの建造は順調です。様々な工夫を施すあまり奇抜な艦艇となりそうですが完成に向かって順調に建造が進んでいます。近いうち、と言いたいですが直ぐには完成しないとおもいますが完成した際にはガミラス本星に向けて出発し、帝都バレアスの民衆や兄上にお披露目したいと思っています。その時を楽しみにしていてください。

 

 

「……総統? この不自然な金の動きはどういう事でしょうか?」

「ヒス君、不自然とは口が悪い。それは我が弟が建造している艦艇の予算さ」

「……ゼルグート級が10隻はつくれそうですね」

「何、それだけの価値があると判断を下したまでさ」

「……それとは別に8回ほど送ってますよね?」

「弟には不自由をさせたくないのさ」

「次国家予算から引いたらただじゃおきませんよ?」

「……」

 



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第11話「無題」

 プラード(冥王星)沖のテロン艦隊との海戦に勝利したものの、敵の本命らしき小型船を取り逃がしてしまった。あれが一体なんなのか、それを把握するのは今からでは不可能だ。そもそもあれがテロンのものなのか、それ以外のものなのか、最悪の想定とする裏切り者によるものなのかさえ分からない。そうである以上あれの考察は止めた方が良いな。時間の無駄だ。

 

「シュルツ、例の残骸はどうだった?」

「はっ! 司令の読み通り偽装船でした。あの船は生きています」

「ふむ……」

 

 数日前に見つけた古い船の残骸らしきもの。船体の形は整っている事からもしやと思ったがやはり偽装船だったか。となるとあれは敵に残された数少ない艦と言う事になる。早めに叩き潰すのが吉か。

 

「ロングレンジで叩く。惑星間弾道弾を用意しろ」

「了解しました。バラン星のゲール司令に報告はした方がいいでしょうか?」

「必要ないだろ。破壊できたならそれでよし。いつも通りだ。だが、あれが惑星間弾道弾を回避、若しくは迎撃出来る様なら報告は必要だろう」

 

 つまりこの一撃を以て敵の戦力を図る。この状況でテロンが普通の雑魚艦艇を造るとは思えない。何か特別な艦の可能性が高い。例えば、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「俺はアイン・デウスーラの様子を見てくる。研究者たちに提案することがあるからな。結果が出たら連絡してくれ」

「ザーベルク!」

 

 よし、後の事は任せてアイン・デウスーラの様子を見に行くか。主武装以外の武装に補助艦艇など、載せたい案はたくさんあるからな。

 

 

 

 

 

 

 

「……行ったか」

「司令がこれほどのめり込むアイン・デウスーラ。一体どれほどの艦艇なのでしょうか」

 

 冥王星基地のシュルツ副指令はルーベル・デスラー司令が出て言った扉の方を見ながら一言呟いた。シュルツにとってはゲールなど比べ物にならない最高の上官と言えるルーベルは冥王星基地を離れることが最近は多くなっている。それもアイン・デウスーラに意識が割かれているからであり基地の業務をシュルツに丸投げしている事が多い。

 それでも今回のように敵の些細な事に気付くなど凡愚と言う訳ではなく、ドメルとは違った戦術眼を持っていると思っていた。

 

「分からない。だが、総統の名を付けるだけの艦艇だ。ゼルグート級並みのスペックを誇る艦艇になるだろう。それに、アイン・デウスーラは我々(ザルツ人)にとっては無関係な艦艇ではないからな」

「仰る通りですね」

 

 アイン・デウスーラの建造は設計段階からルーベルを除けば担当しているのは全てザルツ人を含む二等ガミラス臣民たちである。彼らにとってはまさに千載一遇のチャンスと言えた。自分たちの実力を買ってくれたルーベルへの恩返しに始まりガミラスが誇るゼルグート級を超える艦艇を自分たちが作り上げる。一等ガミラス臣民が悔しがる姿が見られると誰もが注目をしている艦艇だ。

 

「そうである以上我々は我々の仕事を完璧にこなし、司令が自由に動ける時間を作るぞ。ガンツ、惑星間弾道弾の用意を急がせろ!」

「ザーベルク!」

 

 自らの副官であるゲルフ・ガンツに指示を出したシュルツは赤き大地となったテロンにある残骸に艤装された船の映像を見る。あの船がテロン人にとって何を意味するのか今のシュルツには分からないものの自らの上官と自分たち(ザルツ人)の為に破壊させてもらうぞと心の中で呟いた。

 

 

 

 

 しかし、惑星間弾道弾を迎撃し、たった一隻で広い宇宙に飛び出してくるその船と長い付き合いになる事は今のシュルツはおろかルーベルにも分からないのであった。

 




次話の前に外伝として他のキャラクターとルーベルの絡みを書く予定(現状だと大分キャラクター同士の接点が薄いので)


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第12話「無題」

 惑星間弾道弾によるロングレンジ攻撃による偽装船の破壊。ルーベルが指示を出したこの攻撃は失敗に終わった。偽装船は惑星間弾道弾の着弾前に起動し、高威力砲撃によって直前で破壊したのである。

 その様子はプラードの基地から確認できており、ルーベルは予想外の事態に驚愕していた。

 

「……テロンめ、一体何を手に入れた?」

「……惑星間弾道弾を正面から迎撃し、爆風から無傷で済む艦艇はガミラスにも存在しません。この艦艇は強度の面において我々以上かと」

 

 これまでのテロンの船では考えられない強度を持つ船に少なからず動揺が走るもルーベルは苛立ちを感じつつも冷静に分析を行う。

 

「これは謎の船から受け取ったものなのか、それともテロンが元々開発していたものか……。どちらにしろ惑星間弾道弾を正面から迎撃出来る威力を持つ砲を積み、我々以上に頑丈な船と言う事だ。下手に動かない方がよさそうだな」

「ではこのまま見ていると?」

「今は、な」

 

 シュルツの言葉に含みを持って返答する。テロンをこのまま防衛する動きを見せるなら遊星爆弾を今以上に降り注げばいいし、この基地にやって来るのなら罠を以て返り討ちにすればいい。全てはテロンの船次第だとルーベルは考えた。

 そして、テロンの船は母星を離れて宇宙へと進み始めた。たった一隻による特攻か、とルーベルは嘲笑するような笑みを浮かべて迎撃のプランを考え始めた。その間にも観測が行われておりテロンの船が本格的に母星を離れ始めたのを見たルーベルは一度思考を中断する。

 

「シュルツ。俺はこの船の事を兄上……総統閣下に報告する。ついでにゲールにもな。後の事は任せる。何かあれば言え」

「ザーベルク!」

 

 後の事はシュルツに任せ、ルーベルはプラードに存在する自らの部屋に戻る。部屋を利用する事はあまりない為私物はほとんどなく、壁に掲げられたガミラスの国旗とビデオレターの再生機、他は兄であるアベルト・デスラーと直通で通信できる装置くらいしか存在していなかった。

 ルーベルはその中から通信装置を起動し、アベルトにつなぐ。十数秒の待機時間の後に椅子に座ったアベルトの姿が映し出された。ルーベルの方を見る事無く手元に集中している事から政務中という事がうかがえた。

 

『ルーベルか。どうした?』

「少し報告があり通信しましたが、忙しいのであれば後にしますが……」

『構わないさ。古い時代に固執する愚か者どもを処罰していただけだ。それで何の用だ?』

 

 そう言うと手を止めてルーベルの方を見るアベルトの表情は柔らかかった。

 

「私が現在対応しているテロンから一隻の船が出たのですが……。惑星間弾道弾を正面から迎撃し、その爆風に晒されて尚表面上は傷一つない装甲を持つ船です」

『ほう、それは凄まじいな。ゼルグート級でも無傷で耐える事は出来ないだろう』

「現在は内惑星を航行中で、予測進路は今のところ分かりません。遊星爆弾を生成するこの基地か、それとも別の目的があるのか。今の段階では判別が出来る状態ではないです」

『分かった。報告ご苦労だった。くれぐれもそのテロンの船には用心したまえ。お前は私の大切な弟なのだから』

「私とてこんな所で死ぬつもりはありません。……次に報告する時は吉報を持ってこれるようにしたいと思っています」

『楽しみにしているよ』

 

 それを最後に通信は切れたものの、報告するべき事は全て言えたとルーベルは息を吐く。そしてガミラスの国旗に目を向けると厳しい表情で呟いた。

 

「テロンは一体何を目指している? この基地か? ……いや、自分たちが助かるべき道だ。ならば……」

 

 ルーベルはブツブツと様々な予測を立てては否定しき、シュルツから緊急の報告が入るまで考察を続けるのであった。

 



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第13話「無題」

話すすまない……


「ジャンプだと!?」

「はい。敵は内惑星を超え、ズピストに現れました。現在は浮遊大陸にて停泊中です」

 

 シュルツからの報告は予想外のものだった。ここまでのテロンとの戦闘から敵にジャンプ技術は存在しないと思われていた。しかし、ここにきてまさかのジャンプである。広大な宇宙を進むにはかかせないこの技術を使ったという事実にルーベルは目を見開いて驚くが直ぐに気を引き締める。

 

「ならばテロンはここに来る可能性どころか天の川銀河を越えてくる可能性もあるな」

「それはつまり、大ガミラス帝星に直接乗り込んでくる可能性もあるという事ですか?」

「なくはないな。そこを叩けばガミラスは少なからず混乱するだろうし、最悪崩壊するだろう。一か八か種の存亡をかけて挑んでくるというのならあり得なくはないからな」

 

 故に、とルーベルは硬い口調で続ける。

 

「テロンの船はここで沈める。確かここにも基地があったな?」

「はい。補給基地故に艦艇は4隻しかありませんが……」

「充分だ。それらをぶつけろ。破壊できれば良し、失敗したのなら次に生かせばいい」

 

 しかし、ルーベルはこれらでは破壊するには力不足だろうと感じていた。4隻の艦艇もガミロイド兵で構成されている為潰されても問題はない。むしろそれらだけで実力を調べられるのならお釣りがくるとさえ思っていた。

 

「アイン・デウスーラが完成していたのならぶつけられたのだがな」

「完成には至っていないのですか?」

「予算以外は全て足りていない。人員も物資も、時間もな」

 

 最近ではオルタリア星の二等ガミラス臣民も使って建造を行っているがどうしても作業に遅れが出てきていた。生まれ故郷で起きている民族主義者による暴動やクーデター疑惑に嫌気をさして逃げて来た彼らは何の差別も警戒もなく受け入れてくれたルーベルに恩を返すべく頑張っているものの、技術がない一般人や軍人ばかりであり作業効率は悪かった。

 

「まぁ、それもこれも俺があれこれと要望を追加しているせいだからな。遅れているのは甘んじて受け入れるしかない」

「……」

 

 シュルツは肩をすくめるルーベルを見ながら「技術者たちが発狂していたのはそれが原因か」と疑問に思っていた事が思わぬ形で解消され、なんとも言えない気持ちになるのだった。

 

 

 

 

 

 アイン・デウスーラ建造は大ガミラスに属する者にとって誰もが噂に聞く話となっていた。総統の弟が計画し、二等ガミラス臣民たちがそれらを現実に変えている。更には総統より多額の予算を与えられているともなれば誰もが興味を持つのは自明だった。

 政府関係者で言えば軍需国防相のヴェルデ・タランはアイン・デウスーラの規格外の兵装に興味を持つと同時に呆れており、ガル・ディッツはただただ呆れて予算の無駄遣いだと酷評している。ギムレーは総統の弟と言う事で特に反応は見せず、セレステラはルーベルとの交流があるために手放しで褒め称えているが予算に関しては全くと言っていい程触れる事はなかった。

 そして一番反応を見せたのは副総統であるヒスと中央軍総監のゼーリックである。ゼーリックは自ら主導して作り上げたゼルグート級を超える大戦艦に苛立ちを示し罵詈雑言を吐き出しまくったという。ヒス副総統は知らず知らずのうちに国家予算の一部が消えている事に無表情となり無言で総統を見たという。最近では胃薬を服用しているらしく体調を崩す事が多くなってきているとの事だった。

 一方で軍人の間では新たな兵器に興味を持つ者とそれらを運用できるのかという疑問視する声の二つで分断されており文字通り賛否両論の状態となっていた。

 これらガミラスを統治、守護する者達で意見が分かれている一方で新たなガミラスの象徴と言えるアイン・デウスーラは民衆の間で歓喜を以て受け入れられていた。これぞ大ガミラスに敵は無し、と。ルーベルの人気は少ない功績と遠い宇宙にいるにも関わらずにドメル将軍と並ぶ人気を見せていた。

 そしてこれらが後にルーベルの力となっていくが今はまだ熱に浮かされる民衆でしかないのだった。

 



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第14話「無題」

今回は短いです


 テロン人というのは予想外の出来事を次々と引き起こしてくる。一回目は最初に会った時。まさかいきなり発砲してくるとは思わなかったがテロンは恒星を出た事がないのだろう。初めての異星人との接触と言う事で警戒していたのなら理解は出来る。

 次が2回に及ぶ第4惑星沖海戦の時だ。一回目は先行し過ぎた駆逐艦が撃沈され、二回目は敵の新型砲塔によって少なくない犠牲を出した。連発は難しいのだろうがそれを補って余りあるほど砲撃の威力はすさまじかった。駆逐艦どころか巡洋艦すら沈めるあの威力には流石に度肝を抜かれた程だ。

 そして、3回目が今回だ。結果だけ言えばズピスト(木星)の基地は()()()()()()()()()()。何度もズピストの映像を見たが表面は大きくえぐれたような姿になっている。アイン・デウスーラの最大火力でさえ一撃では無理だ。明らかに基地を潰すだけにはあり得ない威力だが試射だと思えば説明がつく。

 

「本当にテロンはこちらの想像を軽く超えてくる」

「……船を出しますか?」

「いや、それよりも先ずは情報収集だ。今のままでは敵の目的さえ定まらない」

 

 一体何をしようとしている? 本当に大ガミラス帝星を叩くつもりなのか? それともここ(プラード)か? 遊星爆弾を降らせるのを阻止するつもりなのか? 敵の意図が全く分からない。攻撃しようにもあの船には大陸すら消失させるだけの火力がある。連発は出来ないだろうが態々沈められる為に攻撃するわけにもいかない。基地の船は有限なのだから。

 最近はBB-199ではなく新たにメルトリア級航宙巡洋戦艦ルレイムが兄上から届いた。なんでもアイン・デウスーラ建造までの間の代用品と言う事らしい。俺の好みに合わせてチューンアップされていて満足のいくものとなっていた。後で礼を言っておかないとな。

 

「司令! テロンの船が進路を変えました! 目標は第6惑星ゼダンです!」

「ふむ、何か不測の事態でも起きたか? ……シュルツ、あそこには偵察揚陸艦が一隻あったよな?」

「はい。出撃させますか?」

「ああ、捕虜を取れ。敵の狙いを知るためにな」

「ザーベルク!」

 

 偵察揚陸艦の乗員もガミロイド兵だ。失った所で痛手ではないからな。ザルツ人などを用いるよりも危険な事に投入しやすいのが利点だな。

 

「シュルツ、ゲール司令に報告しておいてくれ。俺はアイン・デウスーラの方を見てくる。偵察揚陸艦の結果が出たら連絡してくれ」

 

 俺はそう言って司令部を出る。最近ではテロン人に振り回されている様でならない。……そして、あのテロンの船は今後も俺たちを脅かすような存在になりそうな気がしてならない。そんな事ないと思いたいがジャンプをしていて強大な火力を有している。防御力に関しては未知数だが少なくともこれまでのテロンの船と同列に扱っていい船ではない。何かしらの対策をしなければいけない相手だ。……これならガトランティスなどの雑魚どもの方がマシだな。

 

 

 

 

 

メルトリア級航宙巡洋戦艦ルレイム 詳細スペック

全長303m

ゲシュ=タム機関

430ミリ三連装陽電子カノン砲塔×2(艦橋前方)

330ミリ三連装陽電子カノン砲塔×3(両舷に一つずつと後方)

280ミリ三連装陽電子カノン砲塔×1(艦底)

魚雷発射管×6門(艦首)

魚雷発射管×8門(艦底)

魚雷発射管×4門(艦橋後方)

概要

アベルト・デスラーがルーベルの為に建造させた特注品。メルトリア級ではあるがルーベルの好みである大艦巨砲主義に合わせて全体的に武装の強化と大型化がされている為別の船と考えることも出来る。アイン・デウスーラ完成までのルーベルの座乗艦となる。

 



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第15話「迎撃準備」

 テロンの船はヤマトと言うらしい。偵察揚陸艦を送り込んで分かったのはそれくらいだ。結論から言えば任務に失敗した。捕虜を取る事も出来ずに通信を傍受した記録とヤマトの姿が映る映像だけを送って全滅したのだ。あまりにも使えない。まるで無駄死にではないかとさえ思える失態だ。

 とは言えそれなりの収穫もあった。映像には機関を停止しているらしいヤマトが映っている。にも拘わらずに偵察揚陸艦は戦車諸共破壊された。つまりヤマトと言う艦以外にこちらを攻撃出来る存在、それこそ航空機のようなものが存在すると考えられる。それがどれだけの力を持っているかは分からないがこれまでの航空戦からも制空権を奪わせないだけの性能がある事が分かっている。決して無視する事は出来ない存在だ。

 

「ヤマトはここに来ると思うか?」

「十中八九来るでしょう。奴らとてテロンの惑星をあのように変えた遊星爆弾を止めたいでしょうから」

「……ならば迎え撃つ準備をするぞ。シュルツ、艦隊を率いて正面を固めろ。俺が別動隊を率いて後方から奇襲を……」

「お待ちください。私にいい考えがあります」

 

 俺がヤマトの撃沈計画を話しているとシュルツが提案をしてきた。その内容は遊星爆弾を作るのに用いている反射衛星砲を用いて迎撃するというものだ。確かにあれを使えば死角なく攻撃する事が出来る。プラート周囲が全て射程圏内だから近くに居ればどこからでも、何処にでも攻撃できる。

 

「確かに名案だな。となると艦隊は邪魔になるか……。よし、ヤマトがいつ来ても良い様に反射衛星砲は完璧に稼働できるようにしておけ」

「ザーベルク!」

「ああ、勿論艦隊も動かせるようにして置け。反射衛星砲は敵を直接攻撃するための兵器ではない。破壊し損ねる可能性もある。そうなったときは艦隊を用いて叩き潰す」

「反射衛星砲で止めを刺せばいいのではありませんか?」

「シュルツ、お前は確かここに来る前はドメル中将の下にいたな?」

「ええ。殿下と同じように上官として申し分ない方でした」

 

 宇宙の狼の異名を持つガミラス最高の将軍。彼の下にいたのなら名前を出した時に分かって欲しかったが、仕方ないな。

 

「ドメル中将のモットーは臨機応変だ。反射衛星砲に固執して仕留め損ねたでは意味がない。確実にヤマトを仕留める気で挑むんだ!」

「失礼しました。ならばその様に指示を出します。……機械化兵による白兵戦も想定した方がよろしいでしょうか?」

「一応は、な。砲撃戦で仕留められないときは接近して直接乗り込むという方法もありだろうからな」

 

 まぁ、ヤマトがこのプラートごとこちらを葬るつもりならあの巨砲を打ち出してくる可能性もあるがな。テロン人がそんな愚かな真似をする者達ではないと信じるしかないな。

 

「司令、ゲール少将より連絡が入っています」

「ん? 繋げ」

「はっ!」

 

 通信兵からの言葉に俺は即答する。最近はゲール少将にではなく兄上に直接報告する事が多かったからな。ゲール少将の相手はシュルツに任せる事がほとんどだった。

 

「ゲール少将、どうされましたか?」

『おお!? これはこれはルーベル殿下! お久しぶりです!』

 

 俺が相手だと分かった途端通信開始時に見せていた偉そうな態度を変えて媚びを売って来るゲール少将に少し呆れてしまう。背をのけぞらせ、こちらを偉そうに見てくる態度だったのを一転させて猫背で手もみをするなんとも情けない姿になった。とは言え俺がここまで短期間で出世出来た要因でもあるからな。少しは我慢しないとな。彼の忠誠心に間違いはないからな。

 

「久しぶりだな。悪いが今はテロン艦の迎撃準備を行っている最中です。要件があるのなら手短に」

『まさしくそのテロン艦に関してです。何か分かった事はありますかな?』

 

 どうやら定時連絡を受けに来たようだな。俺は軍務どおりにヤマトの詳細とこれからプラート基地で迎え撃つ事を話した。するとゲール少将は少し慌てたような表情になる。

 

『で、殿下自らですか? もし何かあったら……』

「そのもしもが起きないように準備をしている。安心しろ。俺だってこんな所で死ぬつもりはない。だが、もし何かあればアイン・デウスーラ及びその関係者は誰であろうときちんとした保護をしてくれ」

『はっ! その場合は必ず保護すると約束します!』

「ああ、頼んだぞ。他に言う事はあるか? ないなら準備に入りたいのだが……」

『私からは有りません! お手数をおかけしました!』

 

 それを最後にゲール少将との通信は切れた。これではどちらが上官なのか分からないが。

 ……さて、プラートをヤマトの墓標にするべく準備をするか。

 



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第16話「ヤマト迎撃作戦1」

 いよいよこの日を迎えた。ヤマトは進路をこちらにとり、今は直ぐ近くまでやってきていた。ヤマトは真っすぐとこのプラートに向かってきており確実にこちらを狙っているのが分かる。

 

「シュルツ! 射程に入り次第反射衛星砲を発射せよ! いいか? ここ(プラート)からの攻撃だと思わないような方向から当てるんだ」

「勿論です。お任せください」

 

 ヤマトがゆっくりとこちらに近づいてくる。反射衛星砲は準備万端だ。後はヤマトがこちらの射程圏内に入るだけだ。

 

「ヤマト! 反射衛星砲の射程圏内に入りました!」

「反射衛星砲、発射!」

 

 俺はそう叫ぶと同時に発射スイッチを押す。瞬間、紫の光が空へと進んでいく。途中までは目視で終えるがそれ以降は惑星を大まかに記した作戦マップを頼りにする。俺が指示した通りプラートとはほぼ反対方向からヤマトに直撃したが撃破には至らなかった。予想はしていたが想定以上に頑丈なようだ。もしかしたらアイン・デウスーラ並みの装甲を持っているかもしれん……。

 

「反射衛星砲は兵器としても使えるな。これはいずれ他の場所でも使うようになるかもな」

「ありがとうございます。しかし、ヤマトの装甲は予想以上ですな。一撃とはいかずとも半壊出来ると予想していたのですが……」

「うちの艦艇なら今ので一撃だ。ヤマトが可笑しいのだろう。次弾装填急がせろ! このまま畳みかけるぞ!」

 

 ヤマトは攻撃を受けた方向から死角となる位置に退避を始めているが反射衛星砲はこのプラート全てに死角はない。距離的問題は有れど死角的問題は、ない。

 

「反射衛星砲、次弾装填完了!」

「反射衛星砲、発射ぁっ!!」

 

 再びスイッチを押し反射衛星砲を発射させる。その砲撃は死角に入り込んだと思い油断していたヤマトに直撃した。やはり致命傷となる一撃には程遠いダメージしか与えられていないようだ。ヤマトの装甲は頭おかしいレベルで硬いな。

 

「ヤマト、氷結した湾に不時着しました」

「だが沈むには早い。反射衛星砲次弾装填! ……それとシュルツ、艦隊も出撃させろ。反射衛星砲だけじゃ後何発必要になるのか……」

「ザーベルク!」

 

 このプラート基地には20隻以上の艦艇がいる。それらと反射衛星砲を組み合わせれば……。流石にヤマトも損傷を受けていない訳ではない。この調子なら破壊する事が出来るだろう。

 

「反射衛星砲、次弾装填完了!」

「発射ぁっ!」

 

 3発目の攻撃。湾に不時着したヤマトの後部にぶち当たり大規模な爆発を起こした。これは……、誘爆したのか? 先ほどの二発とは違った手ごたえと言える爆発が見える。そしてヤマトはそのまま湾内へと沈んでいった。それを見た司令部のザルツ人たちが歓声を上げるが俺はあれで沈んだとは思えなかった。

 

「……シュルツ、艦隊を出せ」

「?ヤマトは沈みましたが……」

「それを確認させるんだ。偽装、と言う可能性もある」

「まさか……!?」

「不確定要素は放置するべきではないからな」

 

 やるなら徹底的に、それこそ塵一つ残してはならない。どんなことにもやりすぎはないのだ。ましてや現状ではテロン人唯一と言っていい我々を倒しうる艦艇だ。確実に沈んだという物証が欲しい。

 それにあの誘爆と沈み方からしても生存者がいるのは確実だ。場合によっては捕虜としてヤマトの仕組みを吐き出させる必要がある。テロン人がどうやってジャンプする技術を手に入れたのか? 提供した奴を特定するべきだ。

 

 そして、場合によってはそいつを……、例え()()()()()()だろうとガミラスの敵ならば滅ぼすべきだ。

 



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第17話「ヤマト迎撃作戦2」

 とある()()()よりもたらされた波動エンジンを積み、人類が経験した事のない広大な旅へと出たヤマトはその最初の難関とも言えるガミラスの冥王星基地への攻撃、“メ二号作戦”を開始した。

 作戦内容はヤマトが囮となって敵艦隊を引きつけ、その間に航空隊が冥王星に降り立って敵基地を発見する。その後はヤマトによる攻撃で冥王星基地を叩くという物だった。それに従い冥王星に近づく前に航空隊は戦術長“古代進”の指揮の下発信していた。

 そして囮となったヤマトだが、本来予想されていた敵艦隊による迎撃などを受ける事無く冥王星に接近する事が出来た。この動きはヤマトに一定数の警戒を与え、敵が何かを仕掛けてくると思わせた矢先、冥王星基地より発射された反射衛星砲が直撃した。波動エネルギーを利用した波動防壁を貫通しヤマトは初めて損傷らしい損傷を受けた。

 すぐに砲撃が来た箇所からは死角となる位置に退避するも続けて砲撃がヤマトに命中。冥王星の氷結した湾に不時着を余儀なくされた。そして、ヤマトが何か行動を起こすよりも先に第三破が直撃。ヤマトは船内で誘爆を起して冥王星の海に沈んだ。

 

 

……様に見せかけた。

 実際は損害こそあれど撃沈に至るようなものではなく、応急修理を行う為と航空隊の連絡を待つための時間稼ぎだった。

 そして、この時間を利用してヤマトは着々と反撃の準備を整えていた。副長である真田によって衛星を用いた砲撃であると見抜かれており対策も考えられ始めている。更に航空隊が現在も偵察中であり、冥王星基地を発見次第知られる事になっていた。

 

「っ! レーダーに艦あり! 敵艦隊が接近してきます!」

 

 しかし、そんなヤマトの時間稼ぎもルーベルの慎重さの前に無意味な物となった。ヤマトが本当に沈んだのかを確認する為、生き残りを確実に叩くために冥王星基地に存在する主力が襲来した。

 

「……艦長、残念ですがこれ以上の偽装は不利になるだけです」

「……うむ、船体を起せ! 浮上後に敵艦隊と交戦する!」

 

 ヤマトの艦長を務める沖田十三の指示に従いヤマトは再起動した。湾内から急速に浮上しつつ主砲からショックカノンを放ち一番近くにいた駆逐艦を撃破する。そのままヤマトは敵艦隊との交戦に入った。しかし、最初の一撃以降ヤマトは敵の大型艦のみを狙う方向に出た。

 これは反射衛星砲を警戒しての事であり、なるべく敵艦隊と接触することで反射衛星砲を撃つのを少しでも躊躇わせようという意図があった。そしてそれは見事に成功する。冥王星基地に駐留する艦隊はザルツ人が多く存在しており、ガミロイド兵のように使い捨てをしないルーベルは発射するのをためらってしまった。

 そしてそんな状況をかき回すように航空隊によって冥王星基地の発見報告がヤマトにもたらされた。しかし、この時に発見したのは冥王星を改造するためのプラント施設であり、基地とは無関係のものだった。本来ならそのプラントに近づいてく事になるのだろうがルーベルが艦隊を出したことでそれは躊躇された。何故なら艦隊がやって来たのは真反対の方向だったからである。ヤマトの撃沈を確認するための艦隊が態々大きく迂回するとは思えない。艦隊が来た方向に敵の基地がある。沖田艦長はそう睨んでいた。

 

「こちらアルファ1、古代進! 敵基地を発見!」

 

 沖田艦長の考えを後押しするように航空隊の指揮を執っていた古代進から敵基地の発見の報告が入った。場所はまさに敵艦隊が来た方向である。

 

「敵の砲台を無力化した後に敵基地を叩く! 総員準備に取り掛かれ!」

 

 沖田艦長の指示の下ヤマトは反撃と言わんばかりに航路を冥王星基地にとった。地球を赤く干上がった姿にした遊星爆弾を降らし続ける冥王星基地を叩くべくヤマトは反撃を開始するのだった。

 



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第18話「ヤマト迎撃作戦3」

「クソがァッ!」

 

 反射衛星砲を用いたヤマトの撃沈作戦。最初こそ上手くいっていたし一度は破壊できたと思った。しかし、蓋を開けてみればどうだ? 破壊の確認に艦隊を向かわせると奇襲とばかりに駆逐艦を砲撃で破壊され、反射衛星砲で誤射させるためか無駄に艦隊に近づき器用に武装だけを破壊していく。ガミロイド兵しか乗っていないのなら容赦なく撃ったかもしれないがザルツ人とは言え俺の部下たちだ。誤射する可能性がある状態で攻撃する訳にはいかなかった。

 そんな風に躊躇したせいだろう。基地をヤマトの航空隊に発見された。しかも遮蔽フィールドのシステム塔を破壊され、その姿をさらす事になってしまった。

 

「くそ! こうなったら誤射を気にしている余裕はない! 反射衛星砲を撃て!」

「ッ! 敵艦発砲! 着弾地点はここです!」

「何!?」

 

 観測員の報告後僅か数秒後には基地を揺らす爆音が響き渡る。それも一回ではない。二回、三回と続いていく。こちらの艦艇にも攻撃をするためか砲撃はそれほど飛んできてはいないが艦艇の格納庫に被弾すれば大惨事は免れない。……落日か。

 

「……総員、艦艇に乗り脱出せよ。この基地は放棄する」

「司令……」

「生き残るぞ。再起を図るためにも……!」

 

 おそらく、ガミラスにおいてここまでの敗北を喫したのは俺が初めてだろう。……総統たる兄上の弟である俺がこれほどの醜態をさらす、か……。これほどの屈辱は初めてだな。

 

「反射衛星砲はそのまま準備させろ! 最後の抵抗だ! 差し違いでなくても良い! 敵に少しでも損害を与えるのだ!」

「司令! 司令は直ぐに避難してください! 後は私が……!」

 

 反射衛星砲の発射装置を握ったままそう怒鳴ればヤレトラーによって発射装置を奪われた挙句に脱出の為に無理やりに動かされる。……土壇場でガミラス人である俺を見捨てるような事をしない辺り慕われていると言えるのかもしれないがそんな事は気にしていられないな。

 急いでルレイムに搭乗して基地を脱出する。その瞬間だった。反射衛星砲がある湖に敵艦の砲撃が着弾した。発射寸前だった反射衛星砲は大爆発を起こした。

 

「反射衛星砲が……」

「司令、基地は完全に戦闘能力を失いました。加えて、迎撃に出た戦闘艦が破壊され始めています。反射衛星砲を気にする必要がなくなったからでしょう。このままでは我らも危険です!」

「……クソがっ!」

 

 たった十数隻で止められる敵艦ではない。あっという間に迎撃に出た艦艇は全滅し、基地に砲撃が大量に飛んでくる。その結果だろう格納庫で誘爆し、基地全体が巨大な爆発に包まれた。

 

「逃げられたのは何隻だ?」

「戦艦3、巡洋艦5、駆逐艦20です。現在、駆逐艦10隻がヤマトの迎撃に出ています」

「……そうか。ジャンプする! 急げ!」

 

 その10隻は逃げる事は出来ないだろう。……失態だな。基地だけではなく多数の艦艇を失う結果となってしまった。俺には司令という立場は向いていないのかもしれないな。

 そんな事を思いながらルレイムを含む残存艦艇はジャンプし、ヤマトの攻撃から逃れる事に成功した。プラート(冥王星)基地及び大多数の艦艇の喪失という痛すぎる代償によって……。

 

 

 

 

「ヒス君。私は悪夢でも見ているのかね?」

「……」

プラート(冥王星)の基地は崩壊し、我が弟は少ない艦艇と共に撤退した」

「……」

「……これは由々しき事態だ。我が大ガミラス帝国始まって以来の失態と言えるだろう」

「……閣下」

「何かね?」

「ルーベル殿下を処罰するのですか?」

「そんな事をすると思うかね? 彼には自身の失態のしりぬぐいをしてもらう事になる。テロン人か。辺境の民族だと侮っていたがどうやら認識を改める必要がありそうだな」

「……」

 

 努めて冷静に話すデスラー総統だが、ヒスは知っていた。少し前までルーベルの安否を気にして取り乱していた事を。側近たちが物理的に押しとどめて居なければ自分から向かいそうになっていた事を。

 ヒスはルーベル殿下を戦場に送り出したのは失敗だったかもしれないと思いつつデスラー総統が用意した大艦隊ですら余りそうな物資を適量にする作業へと入るために部屋を出るのだった。

 



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