この素晴らしい馬鹿共に青春を! (チャチャSUN)
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1話

続けばいいな〜(他人事)


「なぁ、千紗」

 

「どうしたの?蒼太?」

 

千紗と言う名前に返事を返したのはこのダイビングショップ『Grand Blue』の看板娘の1人であり、小、中、高、そして、大学と腐れ縁が続く幼馴染だ

 

「確か、今日から伊織がこっちに来るんだよな?」

 

「そうだけど……どうしたの?」

 

「いや、この惨状を伊織に見せると思うとな……」

 

「あ〜…」

 

流石の千紗も思う所があったらしく、微妙な反応をする

それはそうだろ……だって

 

「店内で野球挙して、ほとんどの人が全裸の男の集団の絵面はヤバイよな〜」

 

そう、それが俺と千紗が頭を抱える原因である。しかも、その集団が今度進学する大学の先輩達で、俺と千紗が入ろう(俺は強制)で入る予定のサークルなのである。……くそ、なんでこんなことに

 

「私、買い物あるからちょっと出るけど、蒼太はどうするの?」

 

「おい、待て。この状況で店を離れていいのか?看板娘」

 

現在、この店には俺と千紗……認めたくないが、存在を認知したくないが、全裸の集団だけである

本来なら、ここに店長の千紗のおやっさんと姉の奈々華さんがいるのだが…生憎、おやっさんは伊織の迎えに行き、奈々華さんは海に行ってるためこの場にはいない

 

「だから、蒼太がいるじゃん?」

 

「そこで俺を起用するのやめてくれませんかね?」

 

「あっそ、なら、お姉ちゃんにあることないこと言「謹んでお受けさせてもらいます!」よろしい」

 

そこで奈々華さんは卑怯やでぇ…

 

「はぁ、店番やるからさっさと行ってこい。そして、出来るだけ早く帰ってこい」

 

「ん、いってきます。……お客さんにそんな目つきしたらダメだから」

 

「お前が言うな」

 

そう言って、千紗は買い物に出かけた

目つきの悪さを言われても仕方が無いだろ?生まれつきなんだし…

そして、入れ替わるように2人の大男が俺の座っているカウンター席にやってくる

 

「よう、蒼太相変わらず目付き悪いな〜今日も店番を頼まれたのか?」

 

「寿先輩、パンツ履いてください」

 

「その様子だと、またいつも通り千紗ちゃんに脅されたのか?」

 

「時田先輩、パンツ履いてください」

 

「細かいことは気にするな、蒼太」

 

「そうだ、体だけデカいと言われるぞ」

 

「全裸のどこが細かいかそこんところ教えてくれませんかね?」

 

これである、いつも言ってのだがこの人たちは良い人たちなんだが全然話を聞いてくれない

 

「それで、さっき遠くからちょくちょく耳に入ってきたんだが、誰か来るのか?」

 

「あ〜今日からここに千紗の従兄弟が伊豆大の進学に伴って下宿で来るらしいですよ」

 

「なるほど、伊豆大か、つまり…」

 

「伊豆大……つまり」

 

「「新人GETのチャンスだな!!」」

 

哀れ、伊織…お前の青春メモリー(大学編)はモザイク規制がかかったぞ

いや、売るつもりは無かったんやで?本当に割とマジで

 

「それで、どんな奴なんだ?」

 

「どんな奴って言われても、最後に会ったのは10年前ですからね…」

 

あの頃は小さかったし、たまたま俺がここに遊びに来てた時に偶然会って遊んだだけだしな

 

「そうですね、今はどんなか知りませんが強いて言うなら「違う!俺が望んだ新生活とこの光景は180度真逆なんだよ!」……あんな感じです」

 

俺が指差し先には件の男、『北原伊織』が膝を付いて嘆いていた

 

やはり、この光景は異常に見えたらしい

 

「お、悪いな蒼太

いつも店番してもらって」

 

「いつものことなんで大丈夫ですよ、おやっさん」

 

「礼と言っちゃなんだが、飯でも食っていくか?」

 

「いや、悪いですよ流石に…今日は伊織がいるし」

 

「今更何を言ってるんだ、蒼太はこの家の家族みたいなものだろう?」

 

これだ、おやっさんは俺を家族の一員として見てくれる

そして、俺はそれが嬉しくてたまらない

本当にずるい人だと思う

 

「……分かりました。今日もお世話になります」

 

「おう、それで良いんだよ。」

 

「ところで、伊織と先輩は?」

 

「ん?ああ、今、伊織が叫びながら外に出て行ったから2人は伊織の後を追って出ていったぞ?多分、ホームシックなんだろう」

 

多分、家が恋しいから出て行ったんじゃなくて、目に映る光景(全裸の集団)から逃げたんだろう

てか、先輩2人は裸のままで行ったのだろうか…ま、いつものことだしどうでもいいか〜(適応)

 

ガチャ

 

「あ、思ったよりも早かったですね」

 

「おかえり伊織

ホームシックは治ったか?」

 

「まぁ 男はいずれ親元を離れるもんだ、すぐになれるさ」

 

「困ったことがあったらなんでも相談してくれ」

 

「待ってください

どうして俺に原因があるかのような話になってるんですか」

 

「違うのか?」

 

「違いますよ!店に入ったらいきなり全裸の人たちがいたから驚いて逃げたんです」

 

気持ちは分からなくない

 

「なんだ後輩

お前は俺たちが好きでこんな格好をしていると思っているのか?」

 

「違うんですか?」

 

「否定はしない」

 

否定しろよ!

 

「変態だ……」

 

「まぁ、ここで下宿するなら慣れるしかないだろ?伊織」

 

「慣れって簡単に言うけど………お前、蒼太…か?」

 

伊織は今頃気づいたのか、俺を見て目をパチクリさせる

 

「うす、10年ぶ「まともな奴が居たー!」……そんなに喜ぶことか?」

 

だが、伊織にとってはかなり嬉しかったらしく泣きながら笑っている

 

「やっと、歳が近くて服を着ているやつに出会えた…」

 

「おいおい後輩、話を聞け この格好には理由があるんだ」

 

「そりゃ理由もなく全裸になってたら文明レベルは原始時代まで遡りますよ」

 

「温故知新というやつだな」

 

「ツッコミませんからね」

 

「伊織に同じく」

 

「それで、全裸だった理由は何なんですか?」

 

「うむ、実はだな

タンク準備のジャンケンをやってたんだ」

 

「タンクって、外にあったヤツですか?」

 

「おう、それをお客さんが使う場所まで運ぶ係を決めていたワケだ」

 

「それなら、俺にも言ってくださいよ。手伝いましたのに」

 

「蒼太は店番があっただろ?」

 

確かに…でも、全裸にさせるぐらいなら俺がやるべきだった

 

「で、それでジャンケンと全裸の関係は…?」

 

「野球挙をしたら全裸になるのが常識だろう?」

 

「「貴方(先輩)方は野球挙以外のジャンケンを知らないんですか!?」」

 

「いや聞くんだ後輩、誤解しないで欲しい

俺は服を脱ぐつもりはなかったんだ」

 

「ただ自然と脱げていた………俺の言っていることが分かるよな?」

 

「いいえ微塵も」

 

「右に同じく」

 

「ほら、お前ら そろそろタンクを運んでくれ」

 

「「ういーす」」

 

おやっさんの呼びかけに応じた先輩たちはタンクを運びに外に向かう

 

「伊織も丁度いい機会だし行ってみるか?」

 

「あ、なら俺も行きます」

 

「どこへです?」

 

「「海だよ、海」」

 

そう言って、俺は伊織を連れて外に出た

 

 

〜伊織side〜

 

 

 

俺は再開した蒼太に連れられて海に足を運び、寿先輩の手伝いをしながら、成り行きで俺が泳げないからサークルの入会を拒んでることを言うと寿先輩に

 

「最初から自分ができるものだけ選んでいたら何も始まらない」

 

「大事なのはお前が興味を抱いているかどうかだろ」

 

と、そして、その後海から上がってきた美女、親戚の奈々華さんと再開した

 

「すみません、気づかなくて」

 

「10年ぶりだもんね 気づかなくてもしょうがないよ」

 

10年ぶりに再開した奈々華さんは綺麗になって正直ドキッとした

 

「俺のことはすぐ(?)に気づいたのにな」

 

「お前はまぁ…分かりやすかったからな」

 

10年ぶりに再開した蒼太は俺が思っていたよりもだいぶ男らしく変わっていて、とても体付きは良くなっていた……目付きは悪いが

 

「おい、聞こえてんぞ?」

 

「おっと、それはすまん」

 

「この分だと、千紗はどうなるのかね〜」

 

「ふふっ 千紗ちゃんとびっきりにかわいくなったからね!」

 

「へぇ…それはちょっと会うのが楽しみなような緊張するような」

 

千紗か…どうなってるんだろ

 

「それで伊織君は時田君たちのサークルに入るの?」

 

ああ、その話題か

 

「いえ、その事ならその予定はありません」

 

「そうなの?ダイビングは嫌い?」

 

「多分…-嫌いじゃないです」

 

「「???」」

 

俺の返事に疑問符を浮かべ頭を傾げる2人

俺は2人の疑問にたいして答えるようにドアノブを回しながら口を開く

 

「せっかく、男子校卒業したので距離を取りたいんですよ」

 

「距離を取るって?何から?」

 

「決まってるじゃないですか」

 

俺はドアを開け、ドア越しに響いてきた音の方を指差し

 

「いいぞ寿!負けんな!」

 

「「「おおおおおおおおお!!」」」

 

「こういう男子校のノリってやつからですよ!!」

 

なんで……どうしてこうなるんだ

 

そして、寿先輩が俺たちに気づき

 

「お、戻ってきたな後輩」

 

「片付けお疲れさん」

 

「とりあえず服を着てください」

 

「伊織諦めろ…」

 

蒼太は最早、先輩達が服を着ることを諦めてる様子で溜め息を吐く

 

「伊織、その顔は俺が先輩たちが服を着ることを諦めてるって思ってるんだろうけど、違うからな?」

 

なん……だと…こいつ、エスパーか!?

 

「なら、なんだよ?」

 

蒼太は「あ〜…」と言いつつ、とても言いづらそうに頭をかく

 

「じゃあ私は伝票整理してるから伊織君の事よろしくね」

 

…………………………え?

 

「「うーす」」

 

「諦めたさ……お前が先輩たちに連れていかれるのを止めるのをな」

 

「蒼太ぁぁぁ!!」

 

そして、俺は寿先輩に担がれて騒ぎの中心へと放り込まれた

 

 

 

 

 



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