俺が虚の女王様?! (修司)
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俺が虚の女王様?!
自分が思うに、神様とはそこまで大層な存在ではないと考えている。というのも今自身が体験していることこそがその証明となるからだ。
「・・・・・・」ジー・・・
「・・・・・・」
もうお察しだろう。私は転生した。
転生させた存在曰く、命が増えすぎてあの世が満帆になり始めたためらしい。これをそのままにしておくと現実世界で死者が遺体に憑依し生きてるものの温もりを求めて群れをなすという。そのため現在の魂をあらゆる下の次元世界にばら撒きあの世のパンクをふせぐのだとか。
やってることは人間と変わらない。外来種を持ち込み放流するのと一緒だ。
とはいえ自分とて真っ当に暮らしてきた男。流石に自分の生きた世界に地獄が顕現となると協力せざるを得ない。
「・・・・・・」スリッ
「・・・・・・⁈」
転生させる世界はくじ引きによって決められた。箱の中から一つカプセルを引いて、それを開けた瞬間目の前はもう異世界って寸法だ。なるほど。そういうバラエティを入れることも転生を楽しませる一つの手というわけだ。
「・・・・・・」ムニムニ
「・・・・・・⁈⁈」
・・・・・・
そろそろ本題に入ろう。
虚の世界に転生しました。
「あ、あの・・・・」
「・・・・・」ジー
短編!
ブラック★ロックシューター
さて、まず知らない読者諸君のために説明せねばなるまい。
虚の世界とはアニメ「ブラック★ロックシューター」において登場する主人公ブラックロックシューター等思念体の少女たちの暮らす世界である。
この世界は数多の現実世界の少女達の思念によって生まれた世界でそこに暮らす少女達は彼女達のマイナス思考を背負って戦い続けている。
自分の名はハイプリエステス。タロットカードにおける女帝に相当するカードの名前を持つ男だ。
なぜ男なのに女帝なのかって?それにはまず自分の存在について語らねばならまい。何度も言うようにこの世界は少女達の思春期の様々な思いによって構成される。思春期となれば誰しも一回は考えるだろう。
そう、恋愛である。
この体は数多の少女達の青春全力疾走の青臭い妄想によって生まれた理想の体なのだ。
しかしそれだけではただの入れ物。命は生まれない。だがその体に自分の魂が入り込んだことで本当の意味で生まれることになった。まずこの世界は数多の少女の思念で出来ている。つまりこの世界において虚の少女達こそが戦士である。その戦士たちとは正反対という意味でこの名を授かった。
ハイプリエステス誕生の瞬間である。
(いつまでこのままなんだろう・・・)
「・・・・・♩」
目が覚めた瞬間は驚いた。
あたりは薄暗く機械のいばらのようなものがあたり一面に広がっている。地面は黒と白の格子模様がどこまでも続きその至る所が崩れかけている。
『あ、あれ?俺生き返ったんじゃ・・・・』
当然困惑した。目が覚めたらまるで地獄や気分が悪い時に見る夢みたいな世界が広がっていたのだから。
しばらくはその衝撃によってその場を動かなかったが、やがて心細さを感じてあたりの探索を始めた。
『危険な世界なのかな・・・・』
一面どこを見渡してもその景色は続く。そして考える。自分はどの世界にうまれたのだろうかと。実はこの世界はすでに何かを終えた後で自分はそんな世界でたった一人生きていくことになるのではないかと。
そんなマイナス方向に考えが進み出したその時
コツ
少し離れた場所から何か硬いものが落ちたような音が響いた。
『(!人?それとも獣?)』
思わず音の下方を向いたまま固まってしまう。動物とは想定外の事態が起こった時、なぜか身体が固まる。
どんな世界かもわからない今の状況で自分のこれは自殺行為。わかっているはずなのに状況を見極めようと視線が音のした方向へと向いてしまう。
『な、何が起こった?この世界の第一住人?頼むからそうであってくれ・・・』
そうしてゆっくりと視線を向けたその先にいたのは
瞳に蒼い炎をともした少女だった。
自分のテリトリーに何かがいる。
そのことに気づいたのはつい先程のことだ。
自分は宿主である少女を守るため、その少女の痛みを背負うために生まれた。その為の自分の世界に何者かの侵入。これはつまり敵対する存在がいる可能性がある。
駆け足にて現場へと急ぐ。
幸いそこまで距離は離れていなかったため目的の存在はすぐに見つけることができた。
一度大きくジャンプしてその存在の近くに立つ。そして目の前の存在を視界に入れた瞬間ーーーー
世界が変わった。
話のテンポを無視して解説を入れることを許して欲しい。この世界で生まれた少女達に感情はない。あるのは戦い続ける本能のみ。
そう本能。
彼女達には本能のみ。生物における本能および欲求とは主に三つある
食欲、性欲、睡眠欲である。
食欲はない。なぜなら彼女達は何かを口にせずとも生きて行けるからだ。
では残りのふたつは?
その答えはーーーー
「あの、黒岩さん?」
「・・・」ぷにぷに
あれから目の前に現れた少女の姿を見てここがどの世界かわかった。最初は死ぬかと思った。というのもこの世界において自分は異物。勝手にテリトリーに入っておいて無事でいられると思わなかったからだ。
だが彼女は自分を見て一度目を大きく見開いた後自分に背を向けて歩き出した。疑問に思った思ったのも束の間、彼女は一度後ろを振り返る。
(ついてこい、ということだろうか)
再び前を向いて歩き出した彼女を見て早足についていく。そうしてしばらく歩いているうちに比較的崩れていない道にたどりつく。すると彼女は腰ほどの瓦礫を指差すと自分に視線を向けた。
(?すわれ、ばいいの、かな・・・?)
その岩の面を手で少しはらいゆっくり腰を下ろす。一体何なんだろう?そう考えた瞬間ーーーー
「⁈⁈え?!」
現在の状況を説明しよう。彼女ーーーーブラックロックシューターは岩に座ったのを確認すると膝にまたがってきたのだ。
しかも背中を向けているのではない。自分の方を向いてじっと見つめてくる。
(どういうこと⁈)
瞳を見たかと思ったら急に顔を近づけてきたり
「ちょ、近い!」
急に太ももを撫でてきたり
「⁈⁈」
二の腕を揉んできたり
「⁈⁈?⁈」
まさにされるがままにされていた。
「あのー、えっと・・・ちょっと近いかなー・・・・なんて」
「・・・・・」ジー
(うう・・・・いい匂いと血生臭い匂いが・・・・)
主人公ことハイプリエステスは現在ブラックロックシューターに驚くほど接近されている。本体が中学生とはいえ流石はアニメの主人公。その顔はとても高いレベルで整っている。
思わず赤くなるが時折漂う血生臭さによって恐怖も同時に上がってきている。まさに混乱状態である。
「・・・・黒岩さん?あの、はんのうにこまるとぶうぅ」
今度は両頬を摘んでむにむにしてくる。あれからだいぶ時間が経つが後どのくらいまでこのままなのだろう。
(この人喋んないし足痺れてきた・・・役得だけどそろそろ離れてほしい)
しかしそれは予想外に早く終わることになる。
(ん・・・・・?)
唐突に摘んでいた手をはなし両頬に手を当てる。そして再び彼女はじっと自分に視線を遣す。なんだろう、と思ったのも束の間。
「え?!ちょ、近い近い近い!黒岩さんマジで近いです!」
今度は先程とは比べ物にならない勢いで顔を近づけて来たのだ。その勢いに思わず上体を後ろに下げてしまう。一瞬視界からブラックロックシューターが見えなくなるがすぐまた目の前に現れる。
気がつけば、彼女にまたがられていた。
え・・・
近、顔・・、
綺麗
相手は中学生
なんで
また、え、
混乱状態!
当たり前だ!主人公はただこの世界を歩いていただけである。にもかかわらず目の前の少女はあってまもない男の顔に急接近している。
読者の方々はこれを見て安っぽいラブコメと考えるかもしれない。
だが!かんがえてみてほしい!
最初に記載した通り彼女達には三代欲求のうちふたつはいまだに残っているのだ。ではなぜこれまで彼女達は平気だったのか。
それはこの世界に男がいなかったからだ!
女性といえど性欲は少なからず存在する!それがこれまで平気でいられたのは性欲を知らなかった。男がいなかったからにほかならない。
しかし彼女が目にしているのは数多の少女達が夢見る超がつくほどの美形!
その上虚の世界には似合わないほどのおっとりとした雰囲気!
なんだろう。目の前の存在を見ていると、胸の奥がおかしい。
冷たいはずのこの体に異様に熱が篭る。
これは何?
触れているのが心地いい。
もっと触れ合いたい。
もっと
もっと
もっと
ブラックロックシューターの脳内は現在これまでに感じたことのない多福感と湧き上がる何かを制御できずにいた。
ハイプリエステスの脳内はもはや混乱しすぎて機能しておらず、ブラックロックシューターの脳内も自身を制御する気がない。
二つの影はどんどん近づいてゆく。
そしてそれらがついに重なり合う。次の瞬間
轟音と共に地面から巨大な剣が生えてきた。
「ええええええええええええええええええ!?」
衝撃によって空に跳ね飛んだハイプリエステスは再び起動した脳を動かし現場を理解する。
そう
「今のはまさか・・・!ということはこの世界はまだ、第一話⁈」
地面を貫いた剣。その根本に巨大な赤い瞳がこちらをのぞいている。その瞳は先程のブラックロックシューターと同じく驚愕を示しているがハイプリエステスはそれに気づかない。
「うわあああああああああッ!死ぬ死ぬ死ぬぅ!」
気付くわけがない。彼は絶賛大混乱中である
彼は元の世界ではごく普通の中学生だった。これまで生きてきた15年の人生において天高くまではねあげられるなんて経験あるはずがない。
せっかく転生したのにこれで終わり?
視界の端に赤の瞳に向かって専用の大砲ロックカノンを撃ちまくるブラックロックシューターが映る。
もしかしたら助けてくれるかも!本来で有れば彼はそんな単核的な考えはしない。しかし今この状況、自分の身体能力を考えても助かるのは不可能。
先程の反応を見る限り彼女は自分に対して友好的?だった気がする。
このまま死ぬよりかは!
そう思ってブラックロックシューターに助けを呼ぼうとした瞬間。
「おぼぁ?!こ、今度は一体」
瞳の向こう。炎の上がる地面の向こうから大量の鎖が自分の体を巻き取ったのだ。そうして全身をぐるぐる巻きにしたかと思ったら今度は凄まじい勢いで引っ張ってくる。
その際ブラックロックシューターと目が合う。彼女は自分に気づくと最初に出会った時のように瞳を見開きながら自分に向かって手を伸ばした。
しかし時すでに遅し。
「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
転生してまだ2時間もたってないのに
いったいどうしてこんなことに?
これからいったいどうなっちゃうんだ?!
あらゆる物語史上もっとも早くトラブルに巻き込まれた男、ハイプリエステス。
彼はこれから自信を狙う5人の少女達を相手に奮闘することになる。
そんな彼にどんな未来が待ち受けているのか・・・・。
小鳥飛ぶのは青の空。
海に映るは空の青
絵空の青に空の涙
涙の青に小鳥飛ぶ。
「いや飛べませんけどぉおおおおおお?!」
ブラック★ロックシューター二次小説!
作者のラブコメ練習作
俺が虚の女王様?!
始まります!
「まとさあああん!助けてくれええええええええ!」
・・・・むくり
「・・・えぇ・・・何?今の夢・・・」
まとー!遅刻するわよー!
「あ、はーい!」
評価が良ければ続けるかも?
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チャリオッツ
「・・・・・」ポト、ポト
「あ、ありがとう・・・」
口に広がる甘い味に意識を向けながら改めて目の前にいる少女に目を向ける。
その少女も言わずもがな、虚の世界の住人の一人である。
重厚そうな鋼でできた薔薇の王冠をブロンドの髪の上に乗せ、両手は鋭いスパイクのついた鎧。両足には車輪がついており傍に時計の針のような剣を置いている。
彼女の名はチャリオッツ。
タロットカードのチャリオッツを冠する出灰カガリの思念体である。
「・・・・・・♩」ポトポトポトポトポト
「ちょ!?早い早い早い!」
受け渡されたマカロンを食べ終わった瞬間彼女は再び大量のマカロンを俺に渡してきた。そのあまりの多さにマカロンは両手からこぼれ落ちほとんどが地面に落ちてしまった。
「・・・・・・」ニコニコ
(虚の世界の住人って感情がなかったんじゃなかったっけ・・・・?)
受け取ったマカロンを食べる自分を見て薄ら笑を浮かべるチャリオッツ。なぜこんな状況になっているか。話は前回まで遡る。
『うわあああああああ目が回るうううううう!?』
鎖によってぐるぐるまきにされた自分はそのまま凄まじい勢いで持ち主のとこまで飛ばされていた。ただあまりに遠いところからの捕獲だったのか体の節々が建造物の角にあたってしまっている。とても痛い。
『ぐぇぇ、こ、この鎖ってもしかしなくても・・・・』
鎖の勢いがだんだん緩やかになってゆく。それと同時に鎖の彼方の方に一人の少女が立っているのがわかる。それはやがて姿をはっきりさせ、目の前まで来た時点で自分の体を受け止めた。
『や、やっぱデッドマス』
どさり
『だぁ?!』
受け止めたと同時に体を地面に落とす。
彼女の名はデッドマスター。今は詳細は伏せるが、彼女は現在とある思念体によって支配されている。鎖が体に巻きついたときは考えがまとまらなかったが、この少女が自分を連れてきたということは・・・
『おろしたと思ったら今度は何!?』
地面が動いている。否、地面を覆い尽くすほどの何かの上にハイプリエステスは尻餅をついていた。そしてその正体はうずらの卵はどのサイズの機械仕掛けの蜘蛛で、ハイプリエステスを載せたまま新たな世界へと向かって行く。
霧が出て、辺りが暗く。
周りのものが少なくなり、光と共にそれは現れた。
「・・・・」
「え、この人形を持てばいいの?なんだか怖い顔してんな・・・・」
現状を説明しよう。今自分は絨毯のようなものが敷かれたスペースにて目の前の少女、チャリオッツと人形遊びをしている。
あの光の後に現れた世界ーーーーーチャリオッツの世界に放り出された俺は彼女の前に連れてこられた。
そのあとの流れはお察しの通り。
目を見開いたかと思ったら子蜘蛛に乗せられ絨毯の場所に案内され今に至る。
流されやすい、と皆さんが攻める気持ちはわかる。しかし考えて見てほしい。目の前の彼女達はその気になれば一瞬で自分をバラバラにできる力を持った存在なのだ。
なぜか今のところ会っている少女達は自分に対して好意的?だがこれがいつ牙を向くか分からない。
なんなら戦いの余波で死ぬことだってあるかもしれないのだ。
「えーと、君って喋れる?もしくは言葉わかる?」
「・・・・・」ニコニコ
(反応がない・・・・)
勘弁してくれ。俺はまだこの世界に来て2時間もたってないんだ。
好意的?なのはこの世界ではありがたいけど俺寿命までまだ長いんだぞ。このままじゃ体がもたないよ。
(せめて何か喋ってくんねぇかなぁ・・・この世界の人たちみんなクールすぎるんだよなぁ)
チャリオッツは飽きたのか人形を投げ捨てると自分にその無骨な手を差し出してくる。手を繋げ、ということだろうか。いざ差し出してみると正解らしくそのまま足の車輪を動かし始めた。
「おっとっと・・・喋んないなぁ。危ないし。」
急に動き出した為急いで立ち上がり彼女の後ろをついていく。そして周りを見渡しながら改めてこの世界の外観について考える。
(まるでまどかマギカの魔女の結界。いや、というより病気の時に見る悪夢をそのまま形にしたみたいだ。いや、この子の精神性の形がある意味・・・)
「ん?」
ふと手の引っ張る力が無くなったのを感じて前を向く。目の前の通路、その道はまだきちんと整えられてないためかクッキーや陶器のぬいぐるみによって荒れ果てていた。
「こ、ここに何かあるの?」
「・・・・・」
チャリオッツは俺の言葉に少し視線をよこす。すると今度はこちらを向き両手を広げた姿勢で上目遣いを向けた。
「?ん?え、どういうこと?」
「・・・」
チャリオッツの表情からは何かを掴むことはできない。しかし道、自分、道、自分と視線を交互にさせたことでようやく何をしてほしいのか察することができた。
「あ!もしかして抱っこして運んだほしいの?」
「・・・・・」こく
よく考えたらチャリオッツの両足はローラースケートの如く車輪がついており整えられた道でなければ進むのは難しいのだろう。
(君でも普通にジャンプしたり歩いたりできたんじゃ・・・?)
しかし彼女は虚の世界の少女である。大体の無茶は行えるくらいの身体能力はあるはずだし実際劇中にてブラック★ロックシューターとこの世界で渡り合った猛者である。
(うーん、彼女の本体のカガリちゃんも歩けるのに車椅子に乗ってたし・・・。もしかしたらその分身である彼女も合わせているのかも)
「・・・・・」
(えぇぇ・・・この子って一応俺と同じで中学生くらいなんだよな。いや、何を意識してるんだ俺!いくら可愛らしくて仕草に愛嬌があって懐いてるようであったって意識する程のことでもある気がしてきた)
チャリオッツが腕を広げた姿勢で固まりハイプリエステスも屈んだ姿勢のまま固まって。そんな状況が20秒ほど続く。ハイプリエステスの表情は虚の世界とは似合わないほど奇妙な顔を浮かべ目の前の少女に対してどのように接するかを考えた。
しかし待ちくたびれたのだろう。彼女は足の車輪を動かしそのままーーーーーーーー
「うおお?!」
ハイプリエステスに抱きつく形で飛び込んだ。
ハイプリエステス。彼も前世は彼女達と同じく中学生であった。しかし異性との触れ合いなど思春期の彼には遥かに遠い場所の出来事と考えていた。そして現在抱きついてきているのはかなりレベルの高い女の子である。
(うわああああああああああ!?)
当然こうなる。
ブラックロックシューターの時はあまりの出来事に正常に思考することが出来なかったが今回はそうではない。
(え!?これこのまま持ち上げればいいの?だ、どこを持てば・・・太腿から抱えて、いや痛いかもああああ柔らかい感じががが)
正常に思考できるからこそ今の状況に対応しきれない。しかしその混乱をハイプリエステスは表情にはあくびにも出さない。第三者が見たらハイプリエステスの表情は少し戸惑いを見せている困った顔でしかない。
このままというわけにもいかない、とは思ったのだろう。
ハイプリエステスは混乱した状態のままチャリオッツを持ち上げるとその荒れた道を歩き始めた。
チャリオッツの表情は感情がないはずなのにどこかご満悦な様子である。
(落ち着け、落ち着け。そうだ。慌てることはない。この子はあくまで甘えている子供と同じさ。誰だってふとした時に人肌恋しいことくらいあるさ。今は動揺より、この後どうするのかを考えるーーー)
カプ
チャリオッツはデッドマスターの連れてきたその存在を見て自身の中に何かがわき起こるのを自覚した。自分たちに感情はない。あるのは戦うという本能のみだ。
初めて触れる自分たち以外の存在。わきあがる何かははその存在が自身に近ければ近いほど湧き上がってくるのを知った。
そしてそれに抱きついたとき視界に肌の露出した首が映った。この衝動。心地いい気がするが、それと同時に解消したいとも感じた。
そしてチャリオッツは、わきあがる何かと自分の感に従ってーーーーー
ハイプリエステスの首を甘噛みした。
「ぬぁっ?!な、なになになに?!」
思わず落としてしまいそうになるのをなんとか立て直す。
急に訪れた未知の感覚。それがチャリオッツに首を甘噛みされていることに気付いたハイプリエステスはその場から動けなくなってしまった。
「ちょ、ちょっと待って!急になんで!?」
慌てるハイプリエステスに構わずチャリオッツは甘噛みを続ける。あくまで首に歯を当てるような力加減で首筋に沿って歯形をつけて行く。鈍い痛みと同時に唇の柔らかな感触が跡を追うように皮膚を這い、くすぐったいような感覚が襲う。
「や、やめてくれ!くすぐったいし力抜けちゃうから危ない!うあぁ、首筋に沿って噛まないで!」
「・・・・・・」
しかしチャリオッツは止める気配はない。もはやハイプリエステスは恥ずかしいやらくすぐったいやらで顔は真っ赤になり目元に涙すら浮かべている。それでも構わず、むしろ勢い付け甘噛みを続けるチャリオッツ。
涎に濡れますます敏感になった首筋に息が当たりまた別の感覚を刺激する。
ただ噛むだけではない。噛んだことで口に浮き出た皮膚に今度は舌先を這わせ出した。それによりこれまでとは比べ物にならない刺激がハイプリエステスを襲う。そして舌を首筋に大きく這わせ、最後に付いた涎を全て取るかのように首筋に吸い付いた。
「まって・・・ほんと待って・・・!これ、なんか、変だ、よ・・・・!」
落とさないように彼女を持つ腕に力が篭る。が、足に力が入らなくなったハイプリエステスはその場の瓦礫にチャリオッツを抱いたまま両膝をついてしまう。そしてそれを見届けたチャリオッツは漸く首筋から口を離し座り込んだハイプリエステスを見た。
息が荒くなり真っ赤になりながら座り込むハイプリエステスを眺める。ハイプリエステスも急に離れたチャリオッツに上目を向けた。チャリオッツの表情は相変わらずの無表情である。
しかし、自分を眺めるその瞳。金色に輝くその瞳に、最初とはまったく違う何かを秘めているのは誰が見ても明らかだった。
噛まれた首筋には歯形がいくつもついており、何回か吸い付いた為か丸く腫れた後まである。
両者が目を合わせていた。
(何これ・・・!こんなの、どうしてこんな・・・!)
もはやハイプリエステスは正常に物事を把握できない。
自分よりもはるかに小さい彼女にもはや抵抗する気も起きずにいた。そしてついた歯形に指先を沿わされたことで再び刺激が走った。
「ッ・・・・・・!?」
その刺激により身体が震えた。
指は上へと上がってゆきやがて頬に当たり、それと同時に両手で頬を挟んだ。
そして混乱するハイプリエステスに、再び近づこうとした瞬間ーーーーーー
轟音と共に青い炎の弾丸が彼女を貫いた。
俺は何を書いてるんだろう・・・?
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取り合い
皆さんは性的欲求が湧いた時どのようにして発散しますか?
いや、言わなくてもいい。なぜならここは18禁ではないですからね。なぜ唐突にこんな事聞くのか?それはチャリオッツの行動に関係している。
肉体的接触の究極、それは皆さんご存知の通りあれである。しかしそれを行うには相手を見つける他に様々な経験や知識を築く事で成り立つ。
何度も口にしてると思うがこの世界の住人は戦いしか経験がない。なんの知識もない状態である。
そんな中でも彼女たちの脳裏にはなんとなくではあるが『一つになりたい』という欲求自体はある。
そう、一つになりたい。
欲求は身体をくっつけることである程度は満たされた。ではその先は?
その答えこそ前回の通り、甘噛みである。
口という粘膜を相手に触れさせる。
それによってチャリオッツはこれまで以上の多福感に包まれた。
口に首を含んだまま目の前の相手に視線を向ける。初めて出会う自分たちとは違う何かは自分が口をつけた瞬間びくりと身体を震わせて顔を耳まで真っ赤にさせた。
そっと首筋に舌を這わせる。
それによってふるふると身体を震わせる。
歯を軽く当てる。
それによって甘い声を上げ自分の耳をくすぐる。
歯形のついた首筋を吸い上げる。
それによって自分を支える手に力がこもる。しかし決して不快ではない。
現在チャリオッツは形容し難い感覚に支配されていた。
目の前の自分とは違う何か。それがなにかをするたびに自分の中の何かを掻き立てる。
へたれこんだ何かを見下ろす。汗をかき、瞳に涙を浮かべながら身体を震わせる。そして頬をこの世界ではあまり見られない赤に染め上げ自分を見上げている。
視線がこちらを捉えていると分かった瞬間チャリオッツは自分の中で別の何かがゾクリと湧き上がるのを感じた。
その何かにしたがい目の前の身体を震わせた者の頬に手を当ててーーーーーー
瞬間横合いから突っ込んできた流星に貫かれた。
(・・・・・・殺すッ!!!!!)
その時チャリオッツは、生まれて初めて殺意を抱いたという。
轟音と共に先ほどまで手を這わせていたチャリオッツが吹っ飛んでゆく。
いきなりのことで混乱する頭をよそに、砲撃の犯人は自分の目の前にコツリと高い足音を響かせて着地した。
「え・・・黒岩さん・・・?」
その正体はこの世界で最初に出会った少女ことブラックロックシューター。爆風によってツインテールを揺らす彼女は砲撃の先から自分に視線を向け、それと同時にその動きを止めた。
「・・・・?あ、あぁ・・・」
改めて自分の格好を思い出してハイプリエステスは身なりを隠す。
現在彼は肩を裸させており、そこから見える肌にはうっすらと汗をうかばせている。瞳は涙を浮かべ息をあらくし、首筋は赤く腫れている。その腫れに視線を向けるブラックロックシューターの瞳は、無表情ながら動揺している事を伺わす。
(すごい格好を見せてしまった・・・。うぅ・・・急にあんなことするなんて)
ハイプリエステスは童貞である。まぁ前世も含めて彼はまだ10代前半ほどの年齢であるし、その年で未経験なのは珍しくはない。
そんな中で先程チャリオッツから受けた甘噛みは、これまで女の子と深く関わってこなかった彼からすれば刺激が強すぎた。
(チャリオッツちゃん吹っ飛んでいったけど大丈夫かな・・・。てかこれって助けに来てくれたってことかな?)
もしそうなのだとしたらなんだか申し訳ない気分になってくる。
せっかく助けに来てくれたのに肝心の自分は初めて出会う女の子と形容し難い行為をしている。
そんなの普通はイラっとする。作者だってイラっとする。
服を整えてブラックロックシューターに視線を向ける。
そしてその一瞬の間に浮かぶ疑問符。
(あれ?なんか黒岩さん動かない?)
そう、こうして複雑な衣服を治している間何故だかわからないがブラックロックシューターは動かずになぜかじっとしていた。
警戒している?
否
その考えは視線の先のブラックロックシューターの顔を見て覆される。
「え、え?!どうしたの?」
「・・・・・・・」
そうして視線を向けた先、彼女はツーと鼻血を流しながら固まっていた。思わず自分の服の裾で拭ってやる。
「い、岩でぶつけちゃったのかな?こ、これは酷い・・・」
「・・・・・」
幸い抵抗はされなかった。
さて、察しのいい方ならわかると思うが彼女はハイプリエステスの艶やかなその有り様を見て思わず血圧が上がってしまった。
本来興奮したからといって粘膜の毛細血管はそう簡単に破れない。ではなぜ鼻血を流すのか。
まぁ作者が興奮のわかりやすい描写が出来なかっただけだが。
ブラックロックシューターはハイプリエステスに鼻血を拭いてもらうと再び射線上の先にいるであろうチャリオッツに視線を向ける。土煙のたつ大地の向こう側、その中からたまに聞こえてくる機械音。
(なんとか無事っぽい?てかこのままだともしかして巻き添え?逃げるか隠れるかしたほうがいいかな・・・?)
そんな事を考えながらも視線は離さない。
新たに人外として生まれ変わった彼とて、元は一般人。目の前で見目麗しい女の子が砲弾で吹き飛んだのだ。彼女達がいかに超人であろうとそんなものを目にして心配しない男はいないだろう。
しかしそんな彼の心情など知ったことかとばかりに自体は急変する。
「こ、これってまた⁈」
突然ハイプリエステスの体に鎖が巻きつく。
ブラックロックシューターもそれに気づいたのか大急ぎで彼に巻きついた鎖を切り裂こうとする。
一度見た技だ。2度も同じ手はくわない。そんな無意識の考えも、煙の中から巨大な蜘蛛型戦車メアリーに乗ったチャリオッツが登場した事で中断される。
ハイプリエステスとブラックロックシューターが飛ばされるのは同時だった。片やブラックロックシューターは戦車に引かれたまま彼方に飛んでゆき、片やハイプリエステスは鎖の主である少女の腕の中に収まる。
知的さを感じさせるメガネに黄緑を強調するウェディングドレス(あるいは喪服か)頭にはベールを被り、しかしてそれ以上に存在感を示す機械の角。とこどころにフリルやリボンが飾りつけられており、片手には巨大な鎌(デットサイス)を携える。
彼女こそ小鳥遊ヨミの思念体、デットマスターである。
「黒岩さん!」
彼女の腕の中に囚われたハイプリエステスは吹き飛ばされたブラックロックシューターに向けて声を上げる。
なんにせよわざわざ自分を助けに来てくれた恩人が彼方に飛ばされる光景を目にしてあせる。
(ど、どうしよう・・・!このままでは黒岩さんが・・・でも自分にはなにもできないしむしろ足手纏いに・・・)
そんな事を考えながらも、それでも今の状況をどうにかしようと身体を動かす。
「うぐぐ・・・!は、はなして!って、え?」
しかしそんな事を叫ぶ俺の予想を大きく外れ、デットマスターは意外にも簡単に鎖を解いてくれた。
「・・・・・・・」
「え、と・・・・」
簡単に話してくれたことに思わず呆気に取られるハイプリエステス。
そんな彼をデットマスターはこの世界では当たり前の無表情で見つめる。
ハイプリエステスが一歩前に出る。
それとは逆にデットマスターは一歩後ろに下がる。
「あ、これってもしかして・・・」
その様子にハイプリエステスは前世で見たアニメを思い出す。
彼女の本体、小鳥遊ヨミはブラックロックシューターの本体黒井マトと仲良しになろうとするが、二人の間には チャリオッツの本体こと出灰カガリが立ちはだかっている。カガリは何かとヨミを束縛し、 彼女に近づこうとするマトにマカロンと陰湿な言葉を用いた牽制を行っていた。
そしてそれと同じく骸の世界のチャリオッツもデットマスターを束縛して共にブラックロックシューターと戦っている。
(もしかして、怖がっている?)
そう、彼女はハイプリエステスを恐れていた。チャリオッツのお気に入りの自分たちとは違う存在。束縛され、支配下にあるデットマスターにとってハイプリエステスの機嫌を損ねることはチャリオッツの機嫌を損ねることにつながりかねない。
目の前の存在、私たちの何かを掻き乱す。
このせいで彼女や、自分の本体に何か影響があってしまったら?そんなことになればきっと自分は耐えられないだろう。
ほんの一瞬浮かべた悲壮の表情。
しかしそれを、ハイプリエステスは見逃さなかった。
正直言って、この世界に来てから自分はなんだかんだで美味しい目に合っている。美少女と言っても過言ではない女の子達から受けるアプローチ。そんな出来の悪いラブコメみたいな目にあう自分。
彼女達は二人とも無表情ながら、なんだか楽しそうにしていた。
しかし目の前の少女、デットマスターが一瞬浮かべたその表情にハイプリエステスが申し訳なさを感じさせるのは十分だった。
彼はデットマスターの瞳を見つめ、その言葉を紡いだ。
「ごめんね。急に大声出してびっくりさせちゃったね。でも、俺もう行かないと・・・」
そう言うとゆっくりと後ろに下がりハイプリエステスはやがて走り出した。その言葉に思わず目を見開いたデットマスターは走り去るハイプリエステスに手を伸ばそうとして、立ち止まる。
今あれはなんと言った?
ごめんと言ったのか?こんな目に合わせた自分に対して?
デットマスターの内心は困惑に埋め尽くされた。
彼女達は言葉は理解しているが喋ることというのはほとんどない。というのも彼女達は本体の負の感情を背負って戦う戦士である。そこに交わされる言葉はなくただ戦い続けるのみである。
故に彼から放たれたその言葉にデットマスターは驚愕したのだ。
ふわりとした雰囲気の存在である彼。初めて知るその存在に抱いた恐怖、そんなことはその瞬間頭から吹き飛んだ。
先程は言葉と語ったが訂正しよう。
彼女はその自分を気遣う(やさしさ)に、この世界では決して得られるはずのないその心に衝撃を受けたのだ。
そしてだからこそーーーーーー
「・・・・・・♡」
これはある意味必然だったのだろう。
総受け系サブカルクソ主人公め
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蹂躙
「・・・・あの、2人とも?」
「・・・♪」
「・・・♡」
「俺さっきまで走ってて汗とかかいてるからさ、あんまり近づかないで欲しいな、なんて・・・」
「・・・・・」ギュッ
「・・・・・」ピト
「ううぅ・・・・」
現在俺ことハイプリエステスは両手を鎖で縛られた状態でボロボロの屋敷に軟禁されておりそんな自分の両脇には金髪の美少女と緑がかったウェーブの髪の美女に引っ付かれている。
どうだ。羨ましいか?
俺は恐ろしい・・・。
「・・・」ピタピタ
「・・・」サワサワ
「頼むから汗かいた地肌そんなに触んないで代謝がいいから恥ずかしい・・・!」
「「・・・・・」」ピラッ
「ちょ裾の隙間に手を入れないで・・・・!」
こいついつもつかまってんな、そう読者が思うのも無理はないだろう。ぶっちゃけ作者もそう思っている。
彼が今の状態になったのは、かれこれ数時間前の事ーーーーーー
さて、この後どうしたものか。
現在自分はデッドマスターの素を離れて衝撃音のする方から反対の方向に向かって走っている。
このままブラック★ロックシューターの下に向かっても戦いの足手纏いになるだけだ。というのも今の自分の身体能力は前世とほとんど変わっていないためだ。
「助けに来てくれたのに離れるのは申し訳ないけど・・・今は戦いに巻き込まれないようにしなきゃ」
もちろん他にも理由はある。
このまま遠くに逃げ続けたらおそらく二人は自分を追いかけてくると思う。そうしてどちらかが自分を捕まえたらあとは追いかけっこの始まりだろう。
「・・・かわいい女の子が戦う。漫画とかでは当たり前なのに、実際見るとあんなに痛々しいんだ」
遠く離れた場所から二人を見る。現在ブラック★ロックシューターとチャリオッツはお互いの武器から弾丸と巨大マカロンを放ち、硝煙と甘ったるい香りをあたり一面に吹き出している。
とりあえず追いかけっこになれば互いに攻撃の手をやすめるだろう。先延ばしでしかない作戦ではあるがいまの自分にはこれしか思いつかなかった。
「それにしても・・・」
何故彼女達は自分に関心があるのだろうか。
あえて言わせてもらうが自分はモテたことなどこれまでの人生において一度もない。一度女の子と仲良くなったことくらいは流石にあるがここまでではなかったはずだ。
「ましてや出会って数時間しか経ってないのに」
確かに自分の顔はこの世界において整ってこそいるものの、これまでの事態はどう考えても異常だ。
考えても見て欲しい。いくら美男美女といえど道を歩いていただけでここまで過剰な反応が起こりうるだろうか。ましてやハイプリエステスの顔は美形とはいえ芸能雑誌を除けば1人か2人ほどは見つけられるくらいでしかないのだ。
「・・・音が止み始めた。2人とも気づいたかな」
目が痛くなるような道をひたすら走るハイプリエステスは破裂音や破壊音が途中から止んでいることに気がついた。
おそらくどちらかの意識がこちらに向かってきているのだろう。その証拠に今度は何か巨大なものやすごいスピードなものがぶつかるような音が響いていた。
「うぅ・・・そもそもとしてなんで男の俺がこの世界?百合の間に入るみたいで地獄に落ちそう」
訳の分からない独り言を漏らしつつも走ることはやめない。あたりにはハイプリエステスともう一つの足音が響くばかりで静まり返っている。外であるにもかかわらず風の音すらしないその空間は周りのオブジェクトと相まってよりいっそうの不気味さをーーーーーー
「ん?」
・・・・・もう一つの足音?
ふと、足を止める。
それと同時に止むはずだった足音は、何故か変なタイミングで止まったことに気づく。何かがおかしい。
「・・・・・」
目の前に伸びる自分の影、はて?自分の影はこんなふうに複雑な形をしていただろうか?こんな大鎌を持ったドレス姿のようなーーーーーーーーーー
「・・・・・・・・・・・・ッ⁈」ゾクッ
「・・・・・・・」
何故、何故この距離で気付かなかったのだろうか。ハイプリエステスは決して鈍いというわけではない。少なくとも半径5mの地点まで何かが近づいたら気配くらい感じるしましてや近づくものも完全に気配を消して近づくなんてことは不可能だ。
であるのに何故だろうか.
何故ハイプリエステスのま う し ろにいる存在は、こんなにも近づいているにもかかわらず、ハイプリエステス本人が気づいているにもかかわらず、未だ気配を感じないのだろうか・・・。
ハイプリエステスは全身から冷や汗を流しながらゆっくりと後ろを振り返る。
「ウワッ⁈」
「・・・・・・」
彼の目の前に立っていたのは先程自分を離してくれた少女デッドマスターだったからだ。
それもただの目の前ではない、パーソナルスペースなど知ったことかと言わんばかりの50cm先に彼女は立っていた。
その瞬間、響く金属音ーーー
「オグッ⁈?」
デッドマスターを完全に認識するよりも早く、デッドマスターは持っていた鎖をハイプリエステスのクビに巻きつけた。
思わずえずくハイプリエステス。それと同時に急な力が加わったため思わず瓦礫だらけの地面に尻餅をつく。
「ぐッ・・・・!で、デッドマスター、さん?いきなり何をーーーー」
いきなりの奇行にハイプリエステスは上目遣いにデッドマスターの顔を覗き込んだ。当然ではある、自分には無害とばかりに考えていた少女からの攻撃だ。何はともあれその顔色を伺うだろう。
しかし、ハイプリエステスはその行動を後悔する。
「・・・・・・」
「ヒェ」
目だ。
某ロボットアニメのような緑の螺旋を描くその瞳。デッドマスターの瞳孔が開ききっていた。
しかもそれだけではない、陽の光を知らないかのように白い肌に浮かぶ紅、僅かに震えるきめ細やかな唇の端、そこから流れる一筋のよだれーーーーーーー
完全に女の子がしてはいけない顔をして微動だにせずこちらを見下ろしていた。
「くわれる」
ハイプリエステスとて年頃の男だ。エッチなことに興味を抱く思春期である。とはいえそれはまだ一歩か二歩踏み出したかしてないか程度の知識しかない。
だがデッドマスターのその浮かべる表情を視界に入れた途端、動物の本能故か、それとも人間としての経験ゆえか、ハイプリエステスの口は自然に言葉を紡いでいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その後のこと?
もう大体わかってもらえるとは思うが一応説明しておく。ふつーに持ち帰られてふつーに弄ばれています。なんだこのクソ雑魚主人公と呟く作者をよそに骸の少女2人の行動はエスカレートしていく。
「・・・・・♡」
「・・・♡♡」ぐいっ
「ぐぅ・・・!き、急になんで・・・」
デッドマスターはハイプリエステスの首にかかる鎖を引っ張るとその勢いで引き寄せられた顔を自身に近づける。ハイプリエステスから見たその表情は相変わらず女の子がしてはいけない表情で見る人が見れば110番通報してもおかしくは無い様子である。
息を静かに荒げながらデッドマスターはその鎧によって包まれた指先(尖っている)をハイプリエステスの頬に僅かに突き立てる。
「ぐ、いった・・・」
「・・・・」ぺろ
「ひゃぁ!」
チクチクとした感触にハイプリエステスはみじろぎする。
そんな様子を見てなにが楽しいのかデッドマスターは笑みを強め、僅かに流れた頬の血を舐める。先ほどとは異なる未知の感覚にハイプリエステスは思わず悲鳴をあげた。
「・・・・・」むー
それを見たチャリオッツは面白くない、と言わんばかりに頬を膨らませる。
これは自分の方が先に目をつけていたのだ。
なのにこいつはそれを忘れて好き勝手に遊んでいる。確かに彼女は自分の友達だ。だが自分を差し置いて遊ぶのは気に食わない。
「・・・・・」がしっ
「うぁ・・・こ、今度はなにーーーーーー」
突然だがハイプリエステスの服装について説明させて欲しい。
彼の格好は法衣をモデルにしたかのような白い服を着ており、全身に拘束具のようにベルトが巻かれている。
一見着にくそうに見えるだろうが、実はこの服は一枚の布のみによって構成されており、それらをベルトによって拘束することによって法衣のような形にしている。
ブラック★ロックシューターが駆け寄った際に服全体がずり落ちたように肩を露出させていたのはそれが原因だ。
とはいえベルトで拘束されているこの法衣は意外に丈夫で、ちょっとやそっとでは着崩れることはない。
なぜこの説明をしたのか?
じゃま!!
服破られた。
ポテトチップスの袋開ける感じで。
「・・・え?」
ハイプリエステスが思わず惚けた声を上げる。
チャリオッツが突然自分に近づいてきたかと思いきや、いきなり自分の一張羅をポテトチップスの袋を開けるみたいな感覚で破り捨てたのだ。
それなりに丈夫なベルトと、袖にあたる部分を残しあらわになるハイプリエステスの上半身。
突然の行動にデッドマスターも思わず目を見開き、ハイプリエステス本人に至っては未だなにが起こったのかわからないとでもいうような表情を浮かべるのみである。
だがそんなことはお構いなしにチャリオッツは露わになった上半身に狂気的な瞳を向けるとーーーーーーーー
ジュウウウウウウウウウウウウッ
「ひゃああああ!?」
鎖骨のあたりに思いっきり吸い付いた。
「や、やめてチャリオッツ!い、痛いしくすぐったい!」
「・・・・・♪」
ハイプリエステスの身体に快感にも似た痛みが走る。
チャリオッツの薄く桜色の唇からは卑猥な音が響き渡りそれに伴いハイプリエステスは身をくねらせようとする。しかしその身体は前と後ろで人智を超える力の持ち主たちに拘束されているため抜け出すことはできない。
「あうっ、な、なんでこの子達いきなりこんな、うああっ・・・」
ハイプリエステスは未知の感覚によって思わずその瞳に涙を浮かべ始めた。しかしそんなことはお構いなしと言わんばかりにチャリオッツの唇はバードキスをするかの如くハイプリエステスの白い肌に赤い跡をつけて行く。
「デ、デットマスターさん、と、止めて。チャリオッツをどうk」
僅かな希望を抱きつつハイプリエステスはデットマスターに懇願した。
このまま行けば自分はどうなるかわからない。唯一動く首を真後ろにいるであろう緑の少女へと向けようと動かす。
次の瞬間ーーーーーーーーーーーー
「グァ?!」
「・・・・・・」
白魚のような指がハイプリエステスの口の中へと突っ込まれた。
「くぁ、り、りゃだぁ。く、くりゅしい・・・ひゃめろぉ・・・」
「・・・・・・・・♡」
状況を説明しよう。
ハイプリエステスはまず座った状態で正面からチャリオッツの手によって両腕を拘束され、むき出しとなった素肌に吸いつかれている。そしてそんな身動きのできない状態の背後、デットマスターの豊満な胸に押しつけた頭は左手の鎧の指により拘束され、口の中を蹂躙されていた。
対抗しようにも2人がかりの拘束は非力なハイプリエステスにはどうしようもなく、噛みつこうものならいつその大鎌によって切り裂かれるかわからない。
「あ、おぉう、あぁああ・・・」
指は喉奥、うち頬、食道の手前と苦しむハイプリエステスを無視して動き回る。
あたりにくちゅり、ぴちゃりといった音が響きそれに合わせて声にならない声を鳴らしながらハイプリエステスは思わず涙を溢れさせた。
そんな様子を見たデットマスターは口を吊り上げ白い頬を赤く染め上げた。よく見れば少し息が上がっているように見える。
デットマスターは目の前の存在の浮かべる涙を見た瞬間胸の内から何かが湧き上がってくるのを感じた。
それは先ほど感じていた感情よりもどす黒く、しかし全身を掻き立てるかのような感覚であった。みじろぎするそれは苦しいのかうめき声をあげており、その声が耳に入るたびに背筋をゾクゾクとくすぐらせた。
もっと見たい・・・
本来存在しないその考えに従い、ハイプリエステスの舌を指で掴み軽く引っ張る。
「あえぇぁぁ・・・・」
涙をぽろぽろと流しながら頬を染めうめき声と涎を洩らすハイプリエステス。
あぁ、目の前の存在が浮かべるその表情。
だめだ。これはだめだ。
これは自分を歪ませる。
もっとみせろ!
相反する二つの思考。
ダメと考えているにもかかわらず、もはやデットマスターに己を止めることはできなかった。
2人の美しい少女によってゆっくりと何かを壊されて行く少年。
デットマスターは湧き上がってしまった欲望のままに、次なる蹂躙のためにハイプリエステスへその美しい顔を近づけていった。
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