東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん! (因田司)
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「各部のメンバー、集結ですよー!」
恋のキッカケ~the Reason of Lovers~


ラブコメディ、第一話……とは言ってみましたが、
最初は此のカップルが出来た経緯を紹介します。

現在、とある洞窟の中、物思いに耽っていた鈴仙。
其は彼女が妖夢と出会い、此処までを共に歩んだ
記憶を辿っていたからなのであった……

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


鈴仙No.1~とある洞窟

♪~♪~~

 

……やっぱり、良い曲ね……「東方妖々夢~Ancient Temple」……

 

みょんさんはもう寝ちゃったようですね……

半霊にくるまって、気持ち良さそうね……

 

!…………そう言えば……

私とみょんさんが初めて出会ったのは、

あの夜……ちょうどあの満月の様な月夜でしたね……

尤も、偽物の月でしたけど…………

 

 

~永遠亭(過去)

 

鈴仙「……ふふふ。月の事ばっかに気を取られて……

既に私の罠に嵌まっている事に気が付いていないのかしら?」

 

妖夢「!?」

 

鈴仙「貴方の方向は狂い始めている。もう真っ直ぐには飛んでいられない!」

 

妖夢「そういえば、幽々子さま。

なんであいつが鳥なんですか?兎じゃぁ……」

 

幽々子「兎は、皮をはいで食べると、鳥になるの。覚えておきなさい」

 

鈴仙「嘘を教えるな。っつか、無視するな!

私の目を見て、まだ正気で居られると思うなよ!」

 

 

鈴仙No.2~とある洞窟

……あの時は、師匠や姫様の邪魔をさせないために

必死だった……

当時は、人間という生き物が怖くて仕方がなかった……

 

次に彼女と出会ったのは、花の異変の時……

みょんさんが今度は一人で異変調査の為に

永遠亭にやって来たのよね……

 

 

~永遠亭(過去)

 

妖夢「……誰か居ないのかな」

 

鈴仙「また勝手に上がり込んで!

今日は何の用?」

 

妖夢「あ、貴方じゃなくてもう少し

知識のありそうな方を探しているのです」

 

鈴仙「喧嘩を売りに来たのね」

 

 

妖夢「言い方が悪かったです。

幻想郷に詳しい人を探していたのですが」

 

鈴仙「残念ながら、うちの人は花の異変に

何故か無関心なんですよ」

 

 

鈴仙No.3~とある洞窟

……わざわざ一人であんな竹林にある

永遠亭に来るかしら……?異変調査とは言え

彼処に用事を持ってくるなんて……人間ってきっと……

私は、密かに好きになっていった……

 

あ……私もみょんさんと白玉楼の階段で

会いましたっけ……?

……どちらにしても、あの時は酷い事を

言ってしまったなぁ……まだ謝れてないし……

また明日に謝ることにしましょう……

 

そして今回の異変……

私がてゐと師匠が使う薬の調達をしていた時に

奇病にかかったアリスさんに直接睨まれて……

 

 

~玄武の沢(過去)

 

鈴仙「てゐ!

そんなとこに落とし穴掘らないで!

はやく師匠に買った薬届けなきゃいけないのに……」

 

てゐ「鈴仙、いいじゃないの。

ここは誰が通って落ちるか私は知りたいんだウサ。

もう少しで終わるから……待ってほしいウサ」

 

鈴仙「帰るよ、……あら?

何かしら、あの黒い影……?」

 

アリス「!!」

 

鈴仙「!!………………………………」

 

 

てゐ「……鈴仙?……まさか帰ったの?」

 

 

てゐ「よいしょ、フゥ……

えっ?黒い影……?」

 

アリス「~~~~………………」

 

てゐ「行っちゃう……

……何だったんだウサ?」

 

鈴仙「……………」

 

てゐ「って鈴仙!!どうしたウサか!?

 

鈴仙「……………」

 

てゐ「わぁ、目が、鈴仙の目が…………

い、急いで永遠亭に戻らないと!!」

 

 

鈴仙No.5~ とある洞窟

……恐ろしかったわ……

あれ程視線を恐ろしく感じる事は無かったわ……

私も、目で人を狂わせられるけど、

其以上に命に関わるような眼力を……

 

私が師匠の元で看病してもらった時に、

私の安否を確かめに、みょんさんが駆けつけてくれた……

道中でマリス達に阻まれようとも……

 

 

~迷いの竹林(過去)

 

鈴仙「みょんさん!」

 

妖夢(!……う、うどん……さん……?)

 

鈴仙「大丈夫ですか!?

……はい、私の解毒薬を!」

 

妖夢「~~……!?ゲホッ!!」

 

鈴仙「……良かった……」

 

鈴仙(マリス)「…………チッ……」

 

妖夢「……私は、無用の長物……では……?」

 

鈴仙「何を言ってるの!?

そんなこと、 思うはずがないわ!!

其は偽者の誘惑!マリスの罠よ!!」

 

妖夢「!マリス……ですって!?」

 

鈴仙「私は貴方を呼び捨てにはしませんよ!?

それに、私の目に関知はありません!

……本当は……本当は私は………」

 

妖夢「!」

 

鈴仙「……ですが、その前に……

……此処で寝ていてください…………

私が……みょんさんの敵をとってみせます!!」

 

 

鈴仙No.6~とある洞窟

……嬉しかった……

私の事を気遣ってくれる人が此の世にいたなんて……

 

その時私には仕事がたくさんあって

一緒に行けそうにもなかった……

でも、師匠が許可をくれた……私に気を遣って……

 

そうして私は、みょんさんと一緒に旅を始めたのよね……

 

マリスを利用する悪者を倒したり、

異世界の剣士さんと共に戦ったり、

他にも、道中で悪さをするマリス達を討ち倒したり……

厳しい二人旅だったけど、楽しかったわ。

 

でも、まだ異変は終わっていない……

師匠や霊夢さん達も頑張っている……

私達も……やれるだけの事をやる……其だけよ……!

 

……もう夜も遅いですね……

みょんさんに迷惑をかけたらいけませんし、

私も寝るとしましょうか……

 

 

!……みょんさんの半霊……気持ち良さそう……

 

///…………私も…… くるまらせて貰おうかしら………

 

 

 

 

 

 

マリス・マーガトロイドNo.1~とある洞窟入口

~~~~グゥ……!

ヤット見ツケタト思ッタラ……

寝ル時マデイチャイチャトォオ……!!

アノママダト、イズレギリギリアウトナ事ニナッテ……

 

~~私ト………

私ト魔理沙ガ会エナイノヲ尻目ニィイィ~~~~!!

 

ソンナ事ハサセナイワ……

二人ノ仲ヲ……恋慕の情ニ手ヲ出サナイd、イヤ……

出スカモシレナイワ……!マァイイ!

トニカク引キ裂イテヤルワ……!

 

此ノ先アノ二人ガ行ク所デ、

恋愛感情ニトッテ致命的ナイタズラヲシテヤルワ……

 

 

明日ガ楽シミネ……クヒヒヒヒヒ…………!

 




如何でしたか?

孤傀劇を優先しますので、
不定期になってしまうかもしれません。

次回から、目一杯砂糖を撒いていきますよ!

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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ファースト・デーティング・ウィズ……◎

今回からいよいよ、うどみょんの恋愛劇が
始まっていきます!

朝を迎え、近くの里で朝食をとることにした妖夢と鈴仙。
しかし、其の先ではマリスの擬態による
二人の妨害が待ち構えていた……

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


未明の葛藤

~とある洞窟

 

妖夢「……んん……ん~~!!…………フゥ……」

 

 

妖夢「!……東の空が……もうすぐ朝ですか……」

 

妖夢(!いけない……幽々子様の元にいた時の癖が……)

 

鈴仙「Zzzz……Zzzz……」

 

妖夢「…う…うどんさん……!?私の半霊に……」

 

鈴仙「Zzzz……Zzzz……」

 

妖夢「……………」

 

 

 

妖夢(そう言えば……あれからかなりの月日が経った……

幽々子様は元気でいらっしゃるのでしょうか……?)

 

妖夢(……あの御方が召し上がった料理はすべて私の手料理……

其の私が居なければ…………)

 

鈴仙「Zzzz……Zzzz……」

 

妖夢(……とは言え、そう動こうにも

うどんさんが居て出られないし、其以前に

私はうどんさんを守らなければなりません……)

 

 

 

妖夢「……幽々子様……御許し下さい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~とある道中

 

幽々子「待ちなさ~~い!!」

 

ミスティア「イヤァア~~!!

夜明け前なのに……寝させてよぉ!!」

 

幽々子「妖夢が居なくても、何とかするもん……

異変終わらなくてももう我慢できないわ……!今度こそ捕まえてあげる!」

 

ミスティア「か、勘弁して~~!!

焼き鳥だけには……焼き鳥だけにはされたくないわ!!」

 

 

幽々子「……桜符『完全なる墨染の桜‐開花‐』」

 

 

ミスティア「!!せ、扇子が……!

本気だぁあ……た……た、助けてぇえぇえ~~!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

~とある洞窟

 

妖夢「……………」

 

鈴仙「……んん………フワァア~~……」

 

妖夢「!……起きましたか……」

 

鈴仙「!?みょんさん……早いんですね……」

 

妖夢「はい、かつて幽々子様の元にいた時は

早起きをずっと繰り返してきましたから……」

 

鈴仙「……!!ご、ごめんなさい……!あな、貴方の半霊を……//!」

 

妖夢「大丈夫ですよ。其よりも……昨夜はよく眠れましたか?」

 

鈴仙「は、はい……しかし……気持ちいいですね……」

 

妖夢「私の半霊は普通の幽霊よりは冷たくはないんです。

半分幽霊であり……半分は人間なのですから」

 

鈴仙「凄いですね……モフモフですぅ……羨ましいですぅ…………」

 

妖夢「!!//~~う、うどんさん……朝食はどうですか?」

 

鈴仙「!!わ、忘れてました……!つい……す、すみません……!」

 

妖夢「此の山の麓に行き付けの里があります。

其処で食べる事にしましょう」

 

 

 

 

 

~人間の里入口

 

鈴仙「!ひ、人がいっぱい……恐いです……」

 

妖夢「大丈夫ですよ。うどんさん、手を……」

 

鈴仙「!え……?」

 

妖夢「私がついてますから……」

 

鈴仙「あ……////…………」

 

妖夢「!……い、行きましょう」

 

 

 

~人間の里中央部

 

妖夢(……手を繋げば、大丈夫だと思いましたが……)

 

鈴仙「////~~…………」

 

妖夢「……そ、その……//……うどん…さん?」

 

鈴仙「!!ななな……何でしょう……?」

 

妖夢「あの……私の後ろに……ぴったりくっつく……と言うのは……」

 

鈴仙「!!あわ……ごめんなさい……!手を繋いでいるのに……!!」

 

妖夢「此処の皆さんは、私を知ってます。

活気もありますからマリスはそう簡単に近付けませんよ」

 

鈴仙「!そ、そうなんですか……?」

 

妖夢「幽々子様のお使いでよく此の里に

訪れてましたから判るんです……」

 

 

 

妖夢「!見えました……彼処です」

 

鈴仙「?民家の様ですが……大きいですね……」

 

妖夢「此の里唯一の飲食店なんです。

同時に色んなジャンルの店も中にあるんですよ」

 

鈴仙「其は便利ですね……みょんさんが通うのも納得できますね……

……何と言うお店ですか?」

 

妖夢「『望龍亭』です」

 

鈴仙「!……カッコいいですね……しかし、何故其の名前に……?」

 

 

 

 

妖夢「此を見て下さい」

 

鈴仙「!此は……龍神……ですか?」

 

妖夢「ええ。此の里の中心には幻想郷の最高神である、

龍神の石像があるんです」

 

鈴仙「!もしかして……」

 

妖夢「はい……店先から『龍』の像を『望』める……

其処から『望龍亭』の名が付いたんですよ」

 

鈴仙「成程……!」

 

 

 

 

妖夢「更に此の像は目の色によって

此の先の天候が判るんですよ」

 

鈴仙「!ほ、本当ですか……!?」

 

妖夢「はい。白い時は晴れ、灰色は曇り、青色は雨……

当たる確率は七割と聞いていますが、凄く役に立ちますよ」

 

鈴仙「!目が……赤くないですか!?」

 

妖夢「赤色は……予測不能、主に異変が起きている時ですね」

 

鈴仙「……マリスが影響してるんですか……」

 

妖夢「恐らく……私達も頑張らなければならない様です……」

 

 

 

 

 

住民「おっ、冥界の嬢ちゃんじゃあないかい!」

 

妖夢「!お久しぶりです」

 

鈴仙「!!(小声で)だ……誰…………です……?」

 

妖夢「此の方が店主ですよ」

 

住民「?其の……後ろの嬢ちゃんは誰だい?」

 

鈴仙「!!~~~…………」

 

妖夢「!え、えぇ……」

 

住民「!分かった、何処かの里長の娘さんだ!

其の方の護衛してるんだろ?御苦労さんだねぇ」

 

鈴仙「!?い、いえ……私は……」

 

妖夢(は、話を反らさないと……!)

「此方では大丈夫ですか?マリスの被害にあってませんか?」

 

住民「あ?嗚呼……今のところ問題は無いよ」

 

妖夢「そうですか……其は何よりです」

 

住民「……にしても最近世の中物騒になってきてるなぁ。

人に化ける化け物……マリス……だっけか……

ソイツ等が彷徨いてるって噂だろ?

だが、俺達みたいな此の里の男達はその程度じゃうろたえないし、

出てきたところで、里総出で退治するだけさ」

 

鈴仙(ほ、本当です……みょんさんの言った通りです……)

 

 

 

住民「!そうだ、俺の店で喰ってけよ!

こんな時間に来るって事は朝飯食ってないんじゃないか?」

 

妖夢「え……?ええ……そうですが……」

 

住民「其なのに一人で護衛もやってて大変だろう……

今回特別に奢ってやるよ!」

 

妖夢「!え……ど、どうも……」

 

鈴仙「!!あ……ありがとう……ございます…………」

 

住民「腹が減っては何とやら……さあ、入りな入りな!」

 

 

 

 

~人間の里中央部 望龍亭内

 

鈴仙「あのお兄さん……親切なんですね……」

 

妖夢「ええ…此処等辺りでは特に親しい間柄ですから」

 

鈴仙「あの……みょんさん……」

 

妖夢「?」

 

鈴仙「さっき……庇ってくれて……ありがとうございます…」

 

妖夢「!///~~せ、席も此処にしましょうか!」

 

鈴仙「!は、はい……そ……そそうですね……!」

 

 

 

 

 

 

 

鈴仙(マリス)(……トコロガ、ソウハ問屋ガ

卸サナインダヨネェ……アッサリ侵入ヲ許シチャッテサ……ケケケッ……)

 

鈴仙「其にしても……みょんさんって博識ですね!

私、感動しちゃいました……!」

 

妖夢「!ありがとうございます……

為になって下されば……何よりです」

 

鈴仙(マリス)(……妖夢ガ此処ニ連レテ来テルノハ知ッテタ……

本体ノ私モ、此処ニ通ッテイタモノ……何回モ会ッテ話モシテタンダカラ……)

 

鈴仙「あ……飲み物と食べ物、頼んできますね?」

 

妖夢「!御願いします」

 

鈴仙(マリス)(ダガ……直接襲ッテモ勝テル望ミハ薄イ……

何セ……ドチラモ強者ヲ護ル従者ナノダカラ……

其ニ、此ハ住民同士ノ結束モ堅イ……

マダ他ノ『私』ヲ呼ビ寄セラレナイ今ハ、タコ殴リニサレルカモシレナイ……)

 

妖夢「………………」

 

鈴仙(マリス)(マア……遠クカラ見逃サナイ様ニ、朝食食ベナガラ

ジックリ計画ヲ立テルトシヨウカシラ………サアテ……ドウシヨウカナ……)

 

 

 

 

 

鈴仙「お待たせ……買ってきましたよ」

 

妖夢「!……………」

 

鈴仙「……?どうしました?」

 

妖夢「……………」

 

鈴仙「?飲み物がどうかしましたか……?

もしかして、飲み物……要らなかったですか?」

 

妖夢「!い、いえ……そうではないんですが……その……」

 

鈴仙「?……?、?……」

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢「君の瞳に……乾杯……かな……?」

 

鈴仙「!!」

 

鈴仙(マリス)「!?」

 

妖夢「~~///…………」

 

鈴仙(マリス)(ハァアア!?~~ク、果物絞ッタ飲ミ物デ

何デ其ノ台詞ガ出テクルノヨ!!?

普通、醸造シタ飲ミ物デ言ウベキデショウガ……!!)

 

 

鈴仙「~~嬉しい……」

 

鈴仙(マリス)(其処デ納得スルカ!!?)

 

鈴仙「私……一度も言われた事がないんです……嬉しいです……」

 

 

 

鈴仙「い……頂きます//……!!」

 

妖夢「!!!」

 

鈴仙(マリス)「!!!」

 

妖夢「~~う……うどんさん……??其……私の…………////」

 

鈴仙「チィィ~~~~……!!!」

 

妖夢「!?わ、わぁああ………!の、飲みすぎです……!!」

 

鈴仙(マリス)(オイオイオイオイ……!!

!アノ兎……モシカシテ自分ガ何シテルノカ気付イテナイノ……!!)

 

妖夢「……あの…………//こ、溢れそうで……//」

 

鈴仙「!!○×%□☆~~!?

(謝ってる様だがストローくわえてる為、何言っているのか判らない)」

 

鈴仙(マリス)(アァ、見テランナイワ……ト言ッテモ

後ロ姿ガ正面ニアルカラ、視線ヲソムケヨウニモ……)

 

 

鈴仙「…………////」

 

妖夢「……え?うどんさんのを……私に……」

 

鈴仙「//~~……(コクコクッ)」

 

妖夢「……チィィ……

!!お、美味しいです……!」

 

鈴仙(マリス)(~~自分等ノ飲ミ物ニ、一口モ手ヲツケナイッテ

ドウイウ了見ヨォオォ~~~~!?)

 

コップ「グシャァア!!!」

 

鈴仙(マリス)(コンナ朝ッパラニ訳判ラナイ、

デモギリギリナ事シテンジャナイワヨ!

其ノ後間接キッスニデモ持チ込ムツモリ……!?

子供連レモ来テルノヨ!?不埒ヨ!!FU☆RA☆CHI!!)

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

子供「おかーさーん……あのウサギねーちゃん、こわーい……」

 

鈴仙(マリス)(!!身体中ニ目ガ……!マズイ……

イツノ間ニカ擬態ガ解ケカケテ……!)

 

子供「……コップつぶしてるよー」

 

母親「そうね……きっと、嫌な事があったのね」

 

鈴仙(マリス)(~~ホッ……見ラレテナカッタ様ネ……)

 

 

 

子供「おかーさーん、ユリの花がさいてるー」

 

母親「んー?何処に咲いているの?」

 

子供「ほらー、あのおねーさんたち。さいてるー」

 

母親「!!??」

 

鈴仙(マリス)「!!」

 

母親「~~ど、何処で……其の言葉を覚えたのー?」

 

子供「だってー、おかーさんが読んでたもん」

 

母親「!!!」

 

鈴仙(マリス)「!…………」

 

母親「~~あ……貴方も何れ……分かるわ…………

さ、さあ……帰りましょ……何か……買ってあげるわ」

 

子供「!やったぁー!」

 

鈴仙(マリス)(ソウカ……其ノ手ガアッタカ……此ヲ利用スレバ……!)

 

母親「ご、ご飯……美味しかった?」

 

子供「うん!」

 

鈴仙(マリス)(フフフ……アンタ……

子供ノ癖ニ、ナカナカディープナ要素ヲ知ッテルジャナイノ……)

 

 

 

鈴仙(マリス)(ヨーシ……ソウト決マレバ……!)

 

 

 

 

 

 

鈴仙「すみ……す……す……すみません……!!

め……目を瞑ってたので……」

 

妖夢「い……いえいえ…////い、良いんです……」

 

?「ねーねー」

 

妖夢&鈴仙「!?」

 

鈴仙「此の子も知ってるのですか?」

 

妖夢「いえ……知らない子ですが……」

 

子供「おねーちゃんたちってー、どーしてここにいるのー?」

 

鈴仙「!えっと……」

 

妖夢「私達は、少し旅にくたびれたから休んでるんですよ」

 

子供「ふーん……じゃあねー………」

 

 

 

 

子供「おねーちゃんたちって『ユリ』なの?」

 

妖夢&鈴仙「!!?」

 

子供「そーなの?ゆーり!?」

 

妖夢&鈴仙「///~~~………!!」

 

子供「おにーちゃんはいないのー?

おにーちゃんと、おねーちゃんでぴったりなのにー!!

おねーちゃん二人ってさー!『ユリ』なのぉ!?」

 

鈴仙(こ、此の子……////……!)

 

子供「ねーねー、ど・う・な・の!?ゆ・り・な・の!?」

 

 

 

妖夢「……よく聞いて貰えますか?」

 

子供「んー?」

 

妖夢「ゆりと言えば、そうなりますが、

そうと言えない場合もあるんですよ?」

 

子供「!?ア………ちが……う……の……?」

 

妖夢「貴方も、きっと……判るときが来ますよ」

 

子供「!!~~ウゥウ………!!」

 

妖夢&鈴仙「!!」

 

 

 

子供「!!ウワァア~~~~ン!!!

おねーちゃんたちのブァカァァアア~~~~!!!!」

 

 

 

鈴仙「……走っていきました……」

 

妖夢「何か……罪悪感が……」

 

住民「ああ……あの子、戻って来てたんだな」

 

妖夢「!どういう事です?」

 

住民「前は俺ん店にちょくちょく遊びに来てたんだが、

ここ数日ぱったり来なくなってたんだ。

引っ越したのかと思ってたんだが……」

 

妖夢「……………」

 

住民「御免な。アイツはよく人の都合に口を突っ込むんだ。

必ず誤解してな……勘弁してやってくれんか?」

 

妖夢「はい…………」

 

鈴仙「?どうしました、みょんさん?」

 

妖夢「!いえ……何でもありません……

ご飯も食べましょう。冷めてしまいますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

妖夢「御馳走様でした」

 

鈴仙「御馳走様でした……」

 

住民「此処等では其の刀を抜く必要はないから、

気楽にゆっくりして行きな?」

 

妖夢「ありがとうございます」

 

住民「護衛も頑張れよ!」

 

 

 

 

 

 

鈴仙「あの……何度も助けて下さり………すみません……」

 

妖夢「……………」

 

鈴仙「……あの子の事ですか?」

 

妖夢「!はい……」

 

鈴仙「大丈夫です、きっと……あの子も判ってくれますよ」

 

妖夢「そうだと良いのですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~人間の里 とある路地裏

 

子供「~~チ//……畜生……///!!」

 

 

子供(マリス)(何……何ナノヨ……!?居ヅラクシテヤロウ

ト思ッタノニ開キ直リヤガッテ……!!

何デ……子供ニ、コンナ健ゲナ子供ニ何テ事ヲ教エ込モウトシテルノヨ……!?

愛ハ此処マデ人……イヤ、妖怪ヲ盲目ニスルノ…!?)

 

 

 

 

?「おいおい……其の程度かよ?」

 

子供(マリス)「!?」

 

?「正体は判ってんだ。其のままで良いぜ?」

 

子供(マリス)「!アンタハ……」

 

?「アイツ等を引き剥がすのは至難の技だ。

だから、私が協力してやる」

 

子供(マリス)「……何ノツモリ?」

 

?「私にも倒したい奴が居るんだ。

此の先に多分、アイツ等と合流する筈なんだ……

倒したい奴が居合わせれば、互いに協力するのが当然だろ?」

 

子供(マリス)「……私ヲ知ッテルノ?」

 

?「勿論。其にお前等の凄さも充分伝わってるしな」

 

子供(マリス)「……利用シヨウトシテルノネ?」

 

?「とんでもない。きちんと使役されてやるさ」

 

子供(マリス)「襲ウカモシレナイノニ?」

 

?「喰われれば強化されるんだろ?むしろ大歓迎だ」

 

子供(マリス)「……良イワ。デモ其ノ前ニ……

別ノ『私』達ヲ呼バナクテハ……」

 

 

 

?「待ってろよ……今度こそてめえをブッ倒し、

私がのし上がってやる……!!」

 

 

 

 




如何でしたか?
マリスの嫌がらせにも動じないほどの愛!流石です!

マリス達は新たな手段を用意する様ですが……

次回は、妖夢達に新しい仲間(?)が加わる予定……
になると思います。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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ウィスプの諫言、プリマヴェーラの嘆き

……書いていたらスイッチ入って
本編を待たずに二回も投稿……

不定期とは言っても流石に此は……
本編でコラボ近づいてるのに
何やってるんでしょう、僕……

今回は此の小説では少ないであろう
戦闘シーンがありますが、戦闘と言えるでしょうか……
僕自信も少々心配です。

朝食を済ませ、人間の里を
後にしようとしていた妖夢と鈴仙。
しかし、早朝の里に響く着信音と悲鳴が
彼女達の歩みを進ませなかった……

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


妖夢No.1~人間の里 中央部

…あの子供………何か引っ掛かる……「望龍亭」の

店主さんも言ってた……

「ここ数日ぱったり来なくなってた」と……

 

来なくなってた子供が戻って来ることがあり得るのか……?

親達が禁止してた来店を解禁したとは考えにくい……

こんな危険な世の中なら尚更だ。

 

其に子供にしては……あの言葉……あり得ない……あり得ない…………

!!もしかして……!

 

 

 

 

!携帯に着信が……!

こ、此の着信音は……す、「墨染の桜」……!

ま…まさ…まさか……!!

 

!すみません……うどんさん……!

電話がかかってきた様で……失礼致します……

 

 

 

 

 

 

TEL;西行寺幽々子→魂魄妖夢

~人間の里 中央部

 

妖夢「も……も…しもし……?」

 

幽々子「もしもしぃー?よーむー?」

 

妖夢「!~~は……はい……

ゆ…ゆゆゆ……幽々子…様……?」

 

幽々子「元気してるかしら?」

 

妖夢「!げ、元気……してっ!おぉおおります……はい……」

 

幽々子「紫から聞いたわよ、貴方達?今回の異変の

元凶である蒲焼の側近を倒したんだってー?お手柄よ!」

 

妖夢(?蒲焼……?もしかして竜宮の使いである

永江衣玖の事かしら……?とすると……側近とはあの狼女……)

 

 

 

~迷いの竹林(過去)

 

影狼「……今の私は機嫌が良いから、

一つ交渉しようと思うの……」

 

妖夢「……?」

(交渉?……今更……)

 

影狼「衣玖様の計画を邪魔をしないのだったら、

貴方達を此処から立ち去らせてあげるわ……!」

 

鈴仙「!衣玖様……?」

 

妖夢「確か……あの竜宮の使いですね……」

 

影狼「……但し…あくまで邪魔をするなら、

この竹林ごと貴方達を薙ぎ払ってあげるわ!

そして…………」

 

鈴仙「……!」

 

 

影狼「貴方達で晩餐をしてあげる……

自分のためのね…………」

 

 

 

~人間の里 中央部(現在)

 

妖夢「いえ……あれは咲夜さんや慧音さん……

其に……うどんさんの……お陰です……」

 

幽々子「実はね?御褒美あげようかなーと思ってたけど、

来ないから渡せないわ?どうしましょう?」

 

妖夢「!!も!!申し訳ございません……!!

いずれはあ!…貴方様の元に馳せ参ずる事を……!!」

 

鈴仙(……みょんさんがしきりに謝ってます……御主人様からでしょうか……?)

 

妖夢「私には……まだ先代より受け継ぎし意志が…残っております……!!

決して……自ら其の使命の灯火を……己で吹き消すと言う愚行は……!!」

 

幽々子「固い固いー。で?『いずれ』っていつかしら?」

 

妖夢「!!みょ……?!」

 

幽々子「フフフ……怒ってないわよー?」

 

妖夢「!!!ヒッ……!」

 

 

 

幽々子「!そうそう、よーむー。

晩御飯はしばらくは困る事なさそうだからねー♪安心してー」

 

妖夢「へ……?そ、其は……いったい……ど、どういう……事で?」

 

幽々子「ほらほら、声を聞かせて頂戴?」

 

ミスティア「助けてよぉお~~!!!」

 

妖夢「!……鳥か……」

 

ミスティア「また其の反応か!勘弁してぇ!!」

 

鈴仙「……波長を調整します。聞こえなくなる筈です」

 

妖夢「!ありがとうございます……」

 

ミスティア「!~、~~!!~~!~、~~!!

(!違った、今逆さ釣りなのよ!!頭に血が上りそう!た、助けて~~!!)」

 

妖夢「!本当ですね……流石です、うどんさん!」

 

 

 

幽々子「挨拶も終わった様ね?」

 

妖夢「!!は……はい…………はい………………」

 

幽々子「じゃあ本題。妖夢、貴方に言いたい事があるのよ」

 

妖夢「!?な……何でございましょう……?」

(~~まさか……うどんさんとの……別れ話を切り出せとでも……!?)

 

幽々子「其はぁ……」

 

妖夢「~~ゴクゥッ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

住民「キャァアアアアァァアーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

妖夢&鈴仙「!?」

 

幽々子「フフフ……異変解決も頑張らないといけない、て事かしら?」

 

妖夢「!え……?え?」

 

幽々子「そゆ事よ、フフフ……じゃあねぇ♪」

 

妖夢「!!お、御待ち下さい……幽々k」

 

ガラ携「ブツッ、ツーッ、ツーッ…………」

 

妖夢「……………」

 

 

 

鈴仙「みょんさん……!」

 

妖夢(幽々子様は……私達を応援して下さってる……

其の御期待に……答えなくては!)

「ええ……!此の先から聞こえましたね……行きましょう!!」

 

 

 

 

 

VS〈春を告げる妖精〉リリーホワイト

~人間の里 中央部

 

リリーホワイト「うぅうぅ~~……!!!」

 

鈴仙「!リ、リリーホワイトさん……!?」

 

妖夢(二人の住民に、抑え付けられてる……!)

 

住民①「此の妖精!~~凶暴だぞ……!?」

 

住民②「二人でも……お、抑えきれん……!」

 

 

リリーホワイト「わぁああああーーーー!!!!!」

 

 

住民①&②「!?わぁあ!??」

 

住民③「!あんた……だ、大丈夫……!?」

 

妖夢(……みょんですね……

リリーホワイトさんが攻撃する時は

興奮した時だけで、人を襲う事は滅多にないと言うが……)

 

リリーホワイト「うぅう……うぅうぅぅうう~~……」

 

妖夢(其に……最後に宴会で会った時と比べて

明らかに様子がおかしいですね……

顔もやつれきって、目も血走ってて……)

 

リリーホワイト「うぅう~~……」

 

妖夢「うどんさん、皆さんを避難させてください!」

 

鈴仙「!?みょ、みょんさんは……?」

 

妖夢「私が相手をします!」

 

鈴仙「でも……」

 

妖夢「皆に怪我を負わせる訳にはいきませんし、

妖精一匹、どうって事ありませんよ?」

 

住民④「!冥界の嬢ちゃん……!」

 

妖夢「皆さん、私が相手になります!下がってて下さい!!」

 

住民⑤「みんな、離れろぉ!!

勝負の邪魔になるぞ!!」

 

リリーホワイト「……!!」

 

妖夢(……此方に気付いた……仕掛けてくるか?)

「うどんさん!御願いします!」

 

鈴仙「判りました!さあ、此方へ……!」

 

住民①「!す…済まんnイテテテ……!」

 

住民②「悪いね……妖精一匹まともにやりあえんなんて……」

 

住民⑤「気を付けてくだせえよ、嬢ちゃん!

其の妖精、マリスに喰われてる可能性があるぞ!」

 

妖夢「承知の上です!」

 

 

 

 

リリーホワイト「あぁああぁあ……は……る……だぁあ……」

 

妖夢「え?」

 

リリーホワイト「春です春です春です張るです春です春です

HALです春です貼るです春です春ですか春だす春です春です春です春です

春です春death春です春です春です春春はるはるハるはるはる

はるはルはるハルはるはれはるはるぱるはるはるはる」

 

鈴仙「みょ……みょんさん……!」

 

妖夢「大丈夫ですよ……来い!!」

 

 

 

リリーホワイト「はぁああああーーーーーーーるっっっっ!!!!!」

 

 

 

 

住民③「!真っ直ぐに来るよ!!」

 

妖夢(ギリギリまで……引き寄せて……!)

 

 

 

 

妖夢「しっかりしろーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

リリーホワイト「!!?ガッ……??」

 

住民達「!」

 

リリーホワイト「~~?、??~~?~~…………」

 

妖夢「御安心下さい……柄で頭を突いただけですから」

 

住民達「おぉおおおーーーー!!!!」

 

鈴仙「みょんさん……!」

 

妖夢「心配かけましたね……もう大丈夫ですよ」

 

リリーホワイト「~~~~…………」

 

妖夢「どうやら……此の様子からすると

マリスには浸食されてなかったようですね……」

 

 

 

 

 

リリーホワイト「う、うぅ~~ん…………」

 

妖夢「!……気が付きましたか……」

 

リリーホワイト「!よ、妖夢さん……鈴仙さん……!」

 

妖夢「お久しぶりですね……こんな形で

再会したくはありませんでしたが……」

 

リリーホワイト「御願いです!!た……助けて下さい……!!」

 

妖夢「!?」

 

鈴仙「何があったんです?」

 

 

 

リリーホワイト「実は私……貴方達が白玉楼を出て直ぐに

妖怪の山に春を告げに行ってました……

こんな事態になってても春告精の役割を果たさないと、と思って……」

 

鈴仙「?其と……何が関係してるんでしょうか……?」

 

リリーホワイト「其の途中で休憩の為に

一本の桜の木の根元に腰掛けたら……其の木は

潜伏してたマリスの擬態だったんですよ!」

 

妖夢&鈴仙「!!」

 

リリーホワイト「食べられそうになって……命からがらで逃げ切れましたが……

マリスの浸食で木々が……春の木々がどんどん枯れていってるんです……」

 

鈴仙「人だけでなく、物質まで……」

 

リリーホワイト「今年の春が無くなってしまうと思うと、

気が気で無くなって……気付けば此処に……」

 

妖夢(成程……春を失うという恐怖からの自己の喪失……此が原因ですか)

 

 

 

リリーホワイト「今……貴方達から……春を感じます……」

 

妖夢&鈴仙「!!」

 

リリーホワイト「御願いです!私を……傍に置かせて欲しいの……!

春が失われていくと思うと、生きた心地がしないのです!

まだ春を充分告げられていないのに……私、終わりたくありません!!」

 

 

 

 

妖夢「良いですよ、付いてきてください」

 

鈴仙「!」

 

リリーホワイト「!ほ……本当ですか…?」

 

鈴仙「でも……大丈夫なんですか?」

 

妖夢「彼女を此処から連れていけば、里の住民達も

安心できるでしょう?」

 

鈴仙「!……そうですね」

 

リリーホワイト「私……二人の護衛を頑張ります!」

 

妖夢「人間の里を出るとしましょう……

皆さん、お騒がせしました……」

 

住民④「いや、俺達も助かったよ。嬢ちゃん達のお陰で

大事に至らなくて良かった。三人も此から気を付けてな」

 

妖夢「はい。御二方も御大事に」

 

リリーホワイト「すみませんでした……!」

 

住民①「良いって……妖精さんもマリスには注意しろよ」

 

住民②「頑張って春、告げて来いよ!」

 

妖夢「では、失礼します。行きましょう……うどんさん」

 

鈴仙「!はい……///……」

 

 

 

鈴仙No.4~人間の里 中央部~人間の里 出口

……みょんさんは本当に凄いです……

あんなにたくさんの人と接することが出来るなんて……

 

……私も……師匠の薬を売る為に来た事があるけど……

やっぱり人間は怖かった……うまく話が出来なかったなぁ……

 

でも……みょんさんと居れば、何も怖くはない気がする……

今度人を見かけたら……勇気を出して話してみようかしら……?

 

 

 

今回はリリーホワイトさんもいる……此の旅……

何だか楽しくなりそうですね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~人間の里 出口付近物陰

 

マリス「フゥン……本当ニ合流シタワネ……

デ?アイツガアンタノ言ッテタ『倒シタイ奴』ナノ……?」

 

?「嗚呼……そうだ……春告精、リリーホワイト……

調子こきのプリマヴェーラ野郎だ」

 

マリス「……カク言ウアンタモ春告精デショ?ネェ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリス「リリーブラック?」

 

リリーブラック「リリーホワイト……てめえの時代は終わりを迎えるんだよ……

捻り潰して、今年こそ私が……此の世に黒い春を届けてやるぜ!!」

 

 

 




如何でしたか?

妖夢側には、リリーホワイトが
マリス側にはリリーブラックが仲間になった!
……メンバーに加わりました!

リリーブラックは原作にはいない
二次創作キャラですが、原作に一応(?)出てきましたので起用。
性格は想像ですが……ブラックな事には変わりありません。

次回からは、リリーブラックが加わって
エスカレートしていくマリス達の妨害を
妖夢達が面白おかしく恋色たっぷりで乗り越えていきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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If;ブランとノワール

今回は、なんと……!
「東方麗霊想」「東方緑妖想」「東方月咲想」を
手掛けていらっしゃる和菓子屋蜜柑さんが
リリーホワイトとリリーブラックが初登場した前回のお話を
蜜柑さん風にアレンジして書いてくださいました!


それでは、ゆっくりしていってね♪



「妖夢、なんだか最近、春が遅くない・・・?」

 

「そう・・・ですね。春雪異変の時とはちょっと違うみたいですけど、春が少し遅い気がします・・・」

 

「・・・何か心あたりはある?」

 

「すいません、鈴仙さん・・・。春告げ妖精のリリー・ホワイトをまだ見てないくらいしか、わかならないです・・・」

 

「ん、そっか・・・。でも、旅に出て、そろそろ消耗品も切れてきてるし、1回人間の里に入って補給しつつ、情報を探ろうか」

 

「そう、ですね。医療品も少しずつですが、底が見えてきてますし・・・」

 

「それじゃ、決まり。一番近い人間の里は・・・」

 

「こちらですよ、鈴仙さん。」

 

「流石、妖夢!頼りになるね!」

 

鈴仙は妖夢に抱きつくと、妖夢はみょんな鳴き声を上げた

 

「みょん!?」

 

「ど、どうしたの?」

 

「な、なんでも、ないですよ!?」(れ、鈴仙さん、いい匂いするっ)

 

同じ女性としても羨ましい彼女の菫色の髪はサラサラでいい匂いがし、胸だって私よりも、大きい。それに、薬の調合だって出来る

 

「妖夢・・・?どしたの・・・?」

 

「な、なんでもないですよ!?そ、そんな事より、ほ、ほら、鈴仙さん!人間の里、見えてきました!!」

 

「あ、ホントだ!」

 

「は、早く行きましょう!!」

 

私たちは人里に付くと、まず消耗品から買い漁った

 

「おじさん、これ10個買うからおまけできませんか?」

 

「お、可愛い嬢ちゃんだから、それで売ってやるよ」

 

「みょん・・・そ、そんな可愛いなんて・・・あ、そうだ、おじさん。最近何か気になることってありますか?」

 

「そうだな・・・。嫁の好きな花が咲かないし、何より、桜が咲かない・・・事だな。嬢ちゃん、妖怪だろう?リリーちゃん、見なかったか?」

 

「リリー・・・って、リリー・-ホワイトの事かしら?」

 

「そうだぜ、兎の嬢ちゃん。まだ、あの子の春を告げる姿を見てないんだ」

 

「やっぱりそうですか・・・」

 

「まぁ、ただ遅いだけかもしれねぇしな。あ、そうだ、嬢ちゃん達、これやるよ」

 

渡されたのは、二枚の券

 

「ウチで大量に買ってくれた礼だ。この里の甘味処で使える券だ。甘い物でも食べてゆっくりしていってくれ」

 

「わっ!ありがとう!おじさん!」

 

「ありがとうございます」

 

「いいって事よ。それじゃ、まいどあり」

 

ーーー

 

「れ、鈴仙さん!「妖夢っ!」

 

店を出てすぐに私と鈴仙さんは同時に名前を呼んだ

 

「わ、わわ、れ、鈴仙さん、お先にどうぞ」

 

「よ、妖夢を方こそっ」

 

「い、いえ、鈴仙さんの方こそっ」

 

こんなやりとりが少し続き、「それじゃ・・・と」鈴仙さんが話を切り出した

 

「ね、妖夢。さ、さっきもらった券で甘味処・・・行きたいなぁ・・・なんて・・・」

 

ぴょこぴょこと兎の耳が私の反応を伺うよう、動いている

 

「も、勿論です!私も鈴仙さんと一緒に食べれたらいいな・・・って思ってたんです!」

 

そう、彼女に言うと鈴仙さんはまるで、向日葵が咲いた・・・かのように笑い、私の片手を取り走り出した

向かうは甘味処。

甘味処まで来ると、外からでもわかる餡の甘い匂いがわかった

上品な甘い香り。

店の中に入り、席に着くと、温かいほうじ茶が出された

 

「お茶なんて久しぶりだね、妖夢」

 

「そうですね、鈴仙さん」

 

ずずず・・・と飲むとほうじ茶の独特な渋みとうまみの味。

幽々子様もお好きだったなぁ

 

「ね、妖夢。注文何にする?」

 

「あ、そうですね。それじゃ、私は白玉ぜんざい・・・にします」

 

「外からでも餡のいいにおいしてたもんね。んー。妖夢が白玉ぜんざいなら、私は、あんみつにしよう」

 

注文して、しばらくお茶を飲んでいると白玉ぜんざいと、あんみつが出てきた

 

「「いただきます」」

 

一口、白玉と粒あんを口の中にいれると、餡の上品な甘さが口の中に広がる

もちもち、と白玉が口の中で良い塩梅の甘さ。

ふと、向かい側に座っている鈴仙さんを見ると、手で頬を押さえながら幸せそうに、あんみつを頬張っていた

 

「ね、妖夢。そ、その白玉ぜんざい、一口・・・くれないかな・・・なんて・・・」

 

「あ、どうぞ、どうぞ」

 

皿を差し出すと、美味しそうに食べる鈴仙さん

 

「んー!妖夢の白玉ぜんざい、美味しい!ね、妖夢、こっちも食べて見て?」

 

鈴仙さんは何気なく、匙にあんみつを掬い私の口元に運んできた

 

(こ、これって!!え!?か、間接キス(接吻)!?)

 

ぷしゅう・・と音がするような勢いで顔が赤くなっていくのがわかる

 

「わわわわ、、、れっ、鈴仙さんっ!?」

 

「はい、妖夢」

 

多分、鈴仙さんは気がついて居ないなのだろう。

わ、私だけが意識してるの?

でも、こ、ここで食べなかったら、多分鈴仙さんは悲しそうな顔をするかもしれない

そ、それだけは避けないと

 

意を決し鈴仙さんの匙からそのままもらう

その瞬間、餡の甘さと密の甘さが口の中で広がるが、同時に熱くなった頭もどんどん、更に熱くなっていく

 

「お、美味しいです・・・」

 

その一言が精一杯

 

「でしょ!全部終わったら師匠や姫様、てゐを連れてこよう。あ・・・でも、妖夢と二人だけの秘密なのもいいかも」

 

身体が熱すぎるのを自覚しながら無心で白玉ぜんざいを食べ終わる頃だった

何かに見られている

熱かった身体が一気に冷え、ピリリと嫌な視線に反応すると、鈴仙さんも同じだったらしい

小声で話しかけてくる

 

「妖夢。気づいている?」

 

「はい。急いで支払いして、出ましょう」

 

「そうね、急ぎましょう」

 

券を店員に渡し、すぐに店を出る。

ねっとりとした嫌な気が私たちを見ている

 

「・・・鈴仙さん、走りましょう。里の外まで」

 

「了解。妖夢」

 

なんとか、里に被害が無く里の外まで出ると、その瞬間、黒い弾が私たちの方に放たれた

 

「っ!!」

 

反応し、抜刀と同時に、弾を切り裂く

 

「・・・出てきなさい」

 

鈴仙さんも同時に構え、背中合わせでフォローする形で陣形を取る

 

出てきたのはリリーホワイトの服をまるで墨で染め上げたかのような真っ黒な服を着たうり二つの人物と、マリス。

 

「アンタタチ、ナニイチャツイテンノヨ!!」

 

「あんた達の春も黒くしてやるっ!!」

 

「マリスっ・・・。それに、リリーホワイト・・・?」

 

「やっぱり、あんた達だったのね!春を奪っているのはっ!!」

 

「アンタタチ、バッカリニ、イイオモイナンテサセナイッ」

 

リリー(仮)とマリスが間髪入れず弾幕を撃ち込んできた。

リリー(仮)の弾幕は凄まじく、大量の弾幕を放ってくる

それだけならいいのだが、複数のマリスが逃げ道に弾幕を張り、除除に追い詰められた

なんとかかいくぐってきたが、鈴仙の背中に黒い弾幕が迫る

 

「鈴仙さん!避けてっ!!」

 

駄目だ。間に合わない

 

鈴仙さんが被弾する直前、他の弾が黒い弾を弾いた

 

「っ!?」

 

「春ですよー」

 

「「リリー!?」」

 

「私はリリーホワイトですよー。ブラック、いい加減諦めたらどうですか?」

 

「五月蠅いっ!今度こそお前を倒し、黒い春を幻想郷に届けるんだっ!」

 

「ど、どうなってるの・・・?リリーが二人・・・?」

 

「も、もしかしたら同じリリーさんでも、別人なのかもしれないです・・・」

 

リリーホワイトがリリーブラックの弾幕を邪魔してくれたおかげで、離れていた鈴仙さんと急いで合流し、彼女の怪我を確かめる

よかった・・。大きい怪我はないようだ。

本当に良かった

 

「・・・はぁ、えーと、妖夢さんに鈴仙さん。彼女の世話は私が引き受けますので、そちらの顔色の悪い方をお願いします」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ありがとう!」

 

「いえ、こちらにも彼女を放って置いた非がありますからねぇ~。それでは、始めましょうか」

 

再びリリーブラックはもの凄い量の弾幕を張り、それを迎撃するかのように、リリーホワイトが弾幕を張る

完全にリリーブラックを、りりーホワイトが押さえててくれ、マリスに集中することが出来た

 

「コノ、リアジュウガアアアアアアア!!!!」

 

マリスの弾幕は避けづらいものが多く、二人で背中合わせで弾を捌き、弾幕が開けた瞬間、妖夢がマリスに突っ込み、周囲の弾幕を鈴仙が打ち落とす

増殖していくマリスをリリーホワイトとブラックの弾幕の残滓に飲まれ、上手いこと増殖が出来ていないようだ

 

「マリスっ!これで最後っ!」

 

妖夢と鈴仙が同時にマリスと撃ち、そして切り刻み、最後のマリスを滅ぼす

 

「クソッ!オボエテロ!!」

 

「ちくしょ・・・また、負けた・・」

 

そのときには既に、リリーホワイトの方もブラックに打ち勝ち、戦闘が終わっていた

チンッと、鯉口をならし、威嚇しながら被弾し、落ちたブラックに妖夢は近づいた

 

「ひぃ!」

 

「・・・リリーホワイトさん、彼女、切りますか?」

 

「いえ、大丈夫ですよ、これから、レティのとこに連れていって、お仕置きしてもらいます」

 

そのとき、ホワイトの笑顔がブラックに見えた・・・

 

「それでは、そろそろ私はいきますね~。春ですよ~」

 

リリーホワイトはブラックを小脇に抱え、そのまま去っていった

 

「は、春の件は、これで解決・・・かな?」

 

「そ、そうですね・・・」

 

「ね、妖夢。今度こそゆっくりお茶しに行かない?」

 

「そ、そうですね!今度は何食べようかな・・・」

 

里に戻るため、走ってきた道を戻り、二人は甘味処に戻っていた




如何でしたか?

Ifにするのがもったいない……
素晴らしいです!砂糖が……!
そして、とても分かりやすいです……!
僕も挑戦してみましょう!

和菓子屋蜜柑さん、
本当に、本当にありがとうございました!

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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Evil Lecture

今回は、 うどみょんより
敵側にスポットが当たると思います。

新しくリリーホワイトを連れ、旅をする妖夢と鈴仙。
しかし、影で新たに仲間をつけたマリスが
其の様子を見ていたが……

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


~とある道中

 

妖夢「……どうですか、リリーホワイトさん?」

 

リリーホワイト「大分良くなりました!」

 

鈴仙「良かったわね」

 

リリーホワイト「助かりました、やはり貴方達は凄いです!」

 

妖夢&鈴仙「!!////…………」

 

リリーホワイト「私は護衛を頑張りますので、

気にせず旅をしてて下さい!」

 

 

 

 

 

 

 

?「あら、貴方はいつぞやの……」

 

妖夢「!……誰だ?」

 

 

 

 

影狼「久しぶりね、二人とも」

 

鈴仙「!!あ、貴方は……影狼……!今泉影狼……!」

 

影狼「!名前を言ってくれるなんて嬉しいわね」

 

妖夢「当たり前じゃない。貴方達の名前は

今や幻想郷全域に知れ渡ってるわ。でも……」

 

 

 

~迷いの竹林(過去)

 

影狼「衣玖様の計画を邪魔をしないのだったら、

貴方達を此処から立ち去らせてあげるわ……!」

 

鈴仙「!衣玖様……?」

 

妖夢「確か……あの竜宮の使いですね……」

 

影狼「……但し…あくまで邪魔をするなら、

この竹林ごと貴方達を薙ぎ払ってあげるわ!

そして…………」

 

鈴仙「……!」

 

 

影狼「貴方達で晩餐をしてあげる……

自分のためのね…………」

 

 

 

~とある道中(現在)

 

妖夢「……貴方達は私達の手で幻想郷転覆を

目論んだ罪で、牢屋に入れられた筈……」

 

影狼「釈放されたのよ。何故かね。他の皆もそうよ」

 

妖夢「!あの閻魔様が……貴方達を許したと……!?」

 

影狼「私達も困惑してるのよ。此だけの事をして

何で釈放されたのかってね……」

 

 

 

 

 

 

影狼「聞いたわよ、貴方達が最近噂になってるカップルだって?」

 

 

妖夢「!うどんさんには手を出させんぞ……!!」

 

影狼「!?待って待って!剣を構えないで……

今其どころじゃないから……!」

 

妖夢「!……どういうつもりだ?」

 

影狼「私達は、正邪を探してるだけなの!」

 

鈴仙「!……龍宮の使いの腹心だった妖怪ね?」

 

影狼「そう、そうよ。もしかしたら

逃げたのかもって、皆で血眼になって探してたのよ」

 

リリーホワイト「!あれ……もう一人いませんでした?」

 

影狼「!あぁ、雷鼓の事?そうよ。 一度小槌の力から自立した彼女も

いなくなってたって時はびっくりしたわ」

 

鈴仙「そうだったんですか……」

 

 

影狼「まあ、貴方達も頑張りなさいよ?じゃあね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影狼「頑張ってさぁ!……結婚しなよぉぉ…………!!」

 

妖夢&鈴仙「!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢「……た……大変なんですね……敵の方も……///……」

 

鈴仙「そ……///そう…ですね……」

 

リリーホワイト「……春ですねぇ~~……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴仙(マリス)「……フン、ムカツク……」

 

リリーブラック「?何がだ?」

 

鈴仙(マリス)「アノ閻魔ガアイツ等ヲ許シタ事ヨ。

アイツナラ普通、斬首位ハ言イ渡ス筈ナノニ……」

 

リリーブラック「そういえば、逆賊の頭領の龍宮の使いの腹心

二人が行方不明と聞いたが……お前が持ってるんだろ?」

 

鈴仙(マリス)「其ノ通リヨ」

 

リリーブラック「へっ……仕事がはええな、相変わらず」

 

 

 

 

 

リリーブラック「!折角だ……お前達に少し、教えておきたい事がある」

 

鈴仙(マリス)「ソンナ事シテル暇ハ……!ホラ……行ッテシマウワ……!」

 

リリーブラック「てめえ等……分裂できるだろうが」

 

鈴仙(マリス)「!ア…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

椛(マリス)「……デ、追跡スレバ良イノ?」

 

リリーブラック「其の天狗の千里眼で追うんだ。良いな?」

 

椛(マリス)「判ッテルワヨ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリーブラック「さてと……まずお前達に見せたいものがある」

 

鈴仙(マリス)「何ヲヨ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリーブラック「人形劇だ」

 

鈴仙(マリス)「…………ハ?」

 

 

 

 

 

 

 

リリーブラック「お前達は、あの二人を潰したいんだろ?」

 

鈴仙(マリス)「!エ、エェ……ソリャア……」

 

リリーブラック「奴等はどのようにして距離が

縮まってしまうか……私が人形劇で再現しようと思う」

 

鈴仙(マリス)「何デ、イキナリ……?」

 

リリーブラック「今から私が、レクチャーするから!

よーく聞いとけ!!分かったな!?」

 

鈴仙(マリス)「ハイハイ……」

 

 

 

リリーブラック「ちょっと待ってろ……準備…するからな!」

 

鈴仙(マリス)「!舞台マデ……其処マデ本気ニナラナクテモ……」

 

リリーブラック「よいしょ……よし、できた……やるぞ!」

 

 

リリーブラック「どういう処で距離が縮まってしまうか!?

さっきの光景の様に、二人が道を歩いてたとする!」

 

 

 

 

 

Evil Lecture

~とある道中

 

リリーブラック「チャーンチャチャ……♪チャチャチャーララァン……♪」

 

鈴仙(マリス)(……ナンデ出始メガ『青空の影』ナノヨ……?)

 

 

 

鈴仙人形(リリーブラック)「遅いわ……もう待ち合わせの時間、来てるのに」

 

鈴仙(マリス)(!ウッワァ……ヘタクソナ人形ネ……子供ノ落書キカ……?)

 

 

 

妖夢人形(リリーブラック)「やぁ、待たせたね、セニョリータ」

 

鈴仙(マリス)「チョイ待チ!!」

 

リリーブラック「!いきなりなんだよ?」

 

鈴仙(マリス)「ナンデ『セニョリータ』ナノヨ!?

奴等ハ互イニ『うどんさん』『みょんさん』ッテ呼ンデルワ!!」

 

リリーブラック「…人形に関しては細けえな……

言葉使い位どうでも良いだろうが……チッ、分かったよ、全く……」

 

 

 

 

 

 

Evil Lecture(Take2)

~とある道中

 

妖夢人形(リリーブラック)「やぁ、待たせたね、うどんさん!」

 

鈴仙人形(リリーブラック)「!みょんさん……!もう!

どうして遅れたのよ!?プンプンっ!」

 

妖夢人形(リリーブラック)「いやぁ、すまんね……剣を磨いてて

遅くなってしまった……君を守る為のね」

 

鈴仙人形(リリーブラック)「!!みょ……みょんさん……///」

 

鈴仙(マリス)(……モウ……此ノ際、黙ッテオコウカ……)

 

妖夢人形(リリーブラック)「さあ、おいで……」

 

鈴仙人形(リリーブラック)「はい……!」

 

 

 

リリーブラック「とぉこぉろぉが!!

此処で異変は発生する!!」

 

鈴仙(マリス)「!?」

 

 

 

鈴仙人形(リリーブラック)「!?キャァア、蹴っつまづいて……!」

 

妖夢人形(リリーブラック)「!!みょ……!!?」

 

鈴仙(マリス)「!!!」

 

 

 

 

 

鈴仙人形(リリーブラック)「いたたたぁ……!?///あ…………」

 

妖夢人形(リリーブラック)「……お、重いです……うどん……//さん……」

 

鈴仙(マリス)「!!」

(~~イケナイ……構図…………!!)

 

 

鈴仙(マリス)「『イリュージョナリィブラスト』!!! 」

 

 

リリーブラック「!?ワワッ……!!?」

 

鈴仙(マリス)「~~~~!!!…………」

 

 

 

リリーブラック「い……いきなり何するんだよ!!」

 

鈴仙(マリス)「ハァ……ハァ……其ノ小生意気ナ兎人形ノ……

首ヲ抉リ取ッタダケヨ」

 

リリーブラック「!ぅお……本当だ、凄いコントロールだな……!」

 

鈴仙(マリス)「ハァ……ハァ……!クッ……!」

 

リリーブラック「………どうだ?歯がゆいだろ?悔しいだろ?」

 

鈴仙(マリス)「~~ク、クソォオオオ……!!!」

 

リリーブラック「こういう事態が連続で起きることにより、

二人の距離が縮まってしまうんだよ……

さて……此の事態に陥ってしまった原因を探ろうか……」

 

 

リリーブラック「しかし簡単だ……

原因はたったひとつ……此だ!!!」

 

鈴仙(マリス)「!!?」

 

リリーブラック「此の!!石っころが!!悪い!!!」

 

鈴仙(マリス)(……妖夢人形デ叩クナヨ……)

 

リリーブラック「此が、二人の距離を縮めてしまったと

言っても過言じゃない。こんな小さな石ころでさえも

簡単に恋愛の道具になってしまう……皮肉なもんだ」

 

鈴仙(マリス)「……………」

 

リリーブラック「其に……奴等は私の見る限り奥手だ。

余程の事が起きない限り、奴等の距離感は縮まらない……

だが、逆に何か起こればソイツは一気に縮まる……じゃあどうすれば良いか?」

 

鈴仙(マリス)「……………」

 

 

 

 

 

 

リリーブラック「簡単だ……コイツ等を取り除けば良い」

 

 

 

 

 

鈴仙(マリス)「!!」

 

リリーブラック「其の原因を取り除けば

奴等の距離は縮まらず、ずっと平行線を保つ筈だ。

そうなれば、自然に愛は冷めていく」

 

鈴仙(マリス)「!成程……其ナラ……!」

 

リリーブラック「まだある。其が人間なら、お前達が食えば、

擬態のレパートリーを増やせるだろ?より多くの住民を欺ける様になる」

 

鈴仙(マリス)「!!」

 

リリーブラック「そして奴等から春が無くなれば、リリーホワイトも弱体化し、

叩きやすくなるしな。まさに一石三鳥って奴だな」

 

鈴仙(マリス)「……………」

 

リリーブラック「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴仙(マリス)&リリーブラック「イヒヒヒヒヒヒ……!!」

 

 

 

鈴仙(マリス)「ワハァハハハハハハァ……!!!」

 

リリーブラック「イヒェヘハハァハハハァ……!!!」

 

 

 

 

~少女爆笑中~

 

 

 

 

 

鈴仙(マリス)「フフフ……アンタッテ…トンダ策士ネ……!!」

 

リリーブラック「分かって下されば……アハハ……嬉しいぜ……!!」

 

鈴仙(マリス)「ソウトナレバ……早速実行ヨ!!」

 

リリーブラック「よし、追いかけるか!!

だが、先に行っててくれ!コイツ等片付けるから……!!」

 

鈴仙(マリス)「!ジャア手伝ウワ!!」

 

リリーブラック「お?悪いな……!」

 

 

 

 

 

 

 

鈴仙(マリス)「トコロデ、気ニナッタンダケド……」

 

リリーブラック「?何だ?」

 

鈴仙(マリス)「……リリーホワイト人形ハ?」

 

リリーブラック「論外」

 

 




如何でしたか?

リリーブラックのキャラが安定してませんね……
原作とは違う感じで出してますから……


それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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「春は、私が手に入れる!!」(文体変更)
ロマンス・スナイパー


本編で書き方を変えましたので
此方も書き方を変更することにしました。

うどみょん第Ⅱ弾!!……に出来るほど
話数があまりにも進んでいませんので、途中からになります。
ご了承ください。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪



YOUMU

~とある道中

 

私達は、木々に囲まれた道を歩いていた。

 

私、みょんさんこと、魂魄妖夢と

うどんさんこと、鈴仙・優曇華院・イナバさん、

そして、リリーホワイトさん。

 

三人で人間の里を離れ、旅を続けている最中だった。

 

リリーホワイトさんもすっかり元気になって

楽しそうに私達と話していました。

 

すると突然……

 

 

 

「二人とも!!危ないですよ!!」

 

 

リリーホワイトさんが、私達の前に来て両手を拡げた。

其も後ろ向きで。

 

 

「リリーホワイトさん…!?」

 

 

何があったんでしょうと、

背を向け立ち塞がる彼女の前を見て驚いた。

 

大型のミサイルらしき物体が飛んできていたからだ。

 

某配管工のゲームに出てくる

砲弾を一つ目にしたような風貌だ。

 

幽々子様も其の砲弾によく苦戦されていた事を覚えている。

 

 

!いや、そんな事より今は……!!

このままだと、リリーホワイトさんに!!

 

私は必殺技を発動した。

 

 

「『反射下界斬』!!!」

 

 

リリーホワイトさんの前に、水色のバリアが出来る。

ミサイルは彼女の前で其のバリアにぶつかった。

 

作用により少数の弾幕とともに

ミサイルは反射され、飛んできた山の中腹に向かって飛んで行った。

 

そして次の瞬間、

 

 

 

ピィッッチュドォオオッォオォオーーーーーン!!!!!!!!

 

 

 

紫色の大爆発が山で起こった。

 

……誰か、被弾した?

効果音が似てるような……??

 

 

!だから、それどころではありません!!

 

 

「大丈夫ですか、リリーホワイトさん?」

 

 

リリーホワイトさんの前に回り込んで尋ねる。

 

彼女は目をギュッとつぶっていた。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

リリーホワイトさんが目を恐る恐る開けた。

その瞬間、顔から汗がどっと出ていた。

 

 

「ありがとうございます……

貴方が気付いてくれなかったら私達は……」

 

 

相当怖かったらしく、震えていた。

 

 

「…みょんさん、今のは……」

 

「間違いありません、マリスですね……」

 

 

…私達も狙われているという事ですか……

 

 

「リリーホワイトさんの緊張をほぐしましょう。

何処かで隠れて休みます?」

 

「そうですね、急ぎましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LILY BLACK

~とある山腹

 

 

「……なあ、さっき恋愛を邪魔するものは先に始末するといったよな?」

 

「エェ……ソウネ」

 

「じゃあ、邪魔するのが今のところなくて私達だけだったら?」

 

「ドウスルノヨ?」

 

「遠慮なく私達がいかせて貰うにきまってんだろ!!」

 

 

名前の付いているかどうかも分からない山の中腹、

そこに設置されたマリスで出来た砲台に乗って私は叫ぶ。

 

 

私は、善を潰す先輩の立場として

突如幻想郷に出没した愛を憎む後輩達に

恋愛の距離はどう埋まるのか、人形劇でレクチャーしたばかりだった。

 

ソイツはさて置き……

 

 

マリスでできた席に座り、砲台マリスの標準の様な二つの目に

私の目を合わせ、目標と着弾点を確認する。

 

一つからは並んで歩く一人と一匹、其にリリーホワイトを確認した。

 

もう一つから見えたのは、何もない地面だった。

私が奴等が此の先必ず通ると推測した道だ。

 

微調整をしながら再び砲台に話しかける。

 

 

「……今私をバカだと思ったろ?」

 

「イエス」

 

「正直でよろしい。だがな、どうしてこんな事をするか判るか?」

 

「判ラナイ」

 

「もし、此のまま何もなかったら、奴等は稀に自分で

其の出来事を作ってしまう事がある。姑息な事にな」

 

「!成程…可能性ハ無イ訳デハ無イノネ?」

 

「そうだ……だが、私は其のわずかな可能性が怖えんだ。

だから此方から一発で、ダイレクトで終わらすんだよ!

相手の名前も呼ばす間もなく、静かに、だがあっという間に終わらせる。

そうすれば、二人ともお前の本体の人形だ」

 

「……リリーホワイトハ?」

 

「其はダメだ。アイツは私が人形にする」

 

 

マリスの二つの目を通して標準を合わせる。

一人と二匹が通るポイントの地面に着弾する様に

標準を合わせた。

 

もう一つの目で再び目標を見た。

 

ズームしたリリーホワイトを見ると胸糞が悪くなる。

特にあのふざけた笑顔……

 

思わず歯ぎしりが出る。

呆けた面で、のうのうと飛び回りやがってぇ……!!

 

 

 

「死ね」

 

 

 

バッッシュウゥゥウ!!!!

 

 

……自由研究の時みたいな音だな。

ペットボトルのロケットか?

 

とりあえず、砲台マリスの砲口からミサイル型のマリスが出てきた。

 

そのまま私が定めていた着弾点に向かって飛んで行く。

 

 

あのミサイル、私も発射前のデザインを見せて貰ったが、

流石に恐ろしかったな。

紫色のミサイルの先端にひとつ目しかなかったからな。

 

狙いは正確に計算した。

何もなきゃ必ずアイツ等にブチ当たる。

 

もし失敗して避けられてもミサイルマリスが自分で追尾する。

奴等に勝ち目は……無い。

 

だがあんなのが飛んできたのが気付けば…

気付けばだが……アイツ等発狂でもするんじゃねえか?

 

 

「イヒヒヒ……」

 

 

思わず笑いがこぼれる。

 

 

 

 

 

 

 

………ゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウ

 

 

「?」

 

 

飛んで行ったはずのミサイルマリスがこっちに飛んできていた。

 

 

「は?」

 

 

そして次の瞬間、

 

 

 

ピィッッチュドォオオッォオォオーーーーーン!!!!!!!!

 

 

 

紫色の大爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~~~マ、まサカ……反射シテ来るトはァ……!!」

 

 

 

 

あタリ一面紫色の粘液デ覆わレテいた。

着弾スレば、内蔵したマリスデ追い打ツモノだっタらシイ。

 

当然、着弾点に居タ私モ範囲内ダった。

 

 

「……デ、ドウ思ウ、此ノ結果ヲ?」

 

 

突然粘液の一角ガ盛り上ガリ、一つの姿が作ラレた。

 

目標ノ一人だッタ兎だ。

粘液かラ足を引き抜キ、溜息ヲつカレた。

 

 

「オイ…先に…此ヲ何トかシてクレェえぇぇ……!

粘付イて取れん……!!」

 

「判ッタワヨ…チョット待ッテ」

 

 

スルと兎マリスノ左耳が大きク裂ケ、

巨大ナ口となッて私ニ襲いカカっタ。

 

 

アぁ……アの剣士も…こうイう風に襲わレタら良イのニ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……助かったぜ」

 

 

私は左耳に、骨までじゃないがしゃぶり尽くされたあと、大きく伸びをした。

 

 

「話ハ終ワッテナイワ。此ノ結果ヲドウ見ルノヨ!?」

 

 

兎マリスが詰め寄って来た。

ワニみてぇな左耳からよだれが垂れている。

 

 

「仕方ねえ……アイツに反射できる技があるなんて

知らなかったんだからよ……」

 

「私ハ知ッテタワ?二人トモ戦ッタ経験ガアルモノ!!」

 

「!?なんで教えてくれなかったんだ!」

 

「……アンタ…アノカップルハ最近チマタデ話題ニナッテイタノヨ?

アンタノ事ダカラ、テッキリ調ベテタト思ッタノヨ!!」

 

 

少し怒ってるな……顔の半分だけ擬態が解け、別の奴に擬態していた。

コイツは……紅魔の魔女か……

 

 

だが、私が話題になっていたのを知らなかったのは事実だった。

幻想郷のいろんな情報を網羅してた私が……

多分すごく最近に話題になったんだろう。

 

 

「……チッ」

 

 

舌打ちが出た。

 

 

 

「此でも駄目なら………」

 

 

……仕方ねぇ。

 

 

「究極だが…私でもやりたくなかったが……

あの手段を使うか……?」

 

「!何ナノ……其ノ手段ハ?」

 

 

だが……今は大っぴらには出来ない……

 

 

「……耳貸せ」

 

 

兎マリスが顔を戻し、耳を傾けた。

予想通り、裂けた左耳を大きく開けて……

 

私は耳の口の中にそれを話した。

いつ首を持っていかれるか内心ビクビクしながら。

 

 

「!!」

 

 

……予想通りの反応だ。

 

 

「だが、もう少し様子は見るとしようか……」

 

 

今むやみに動いてもダメだ。

其に……奴等の情報も知りたいしな。

 

 

「追うぞ」

 

 

私は飛んで、敵を追いかけた。

兎マリスも巨大なひとつ目のハエに変身し、私の後を追った。

 

 




如何でしたか?

うどみょんでは、こんな感じでいくと思います。

……だんだん、うどみょんではなく、
敵側のリリーブラックが主演になってきている様な……

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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マリスが恐れた唯一の人物~前編

今回は、此の小説初の二編構成の回です。

そして、マリス達より
うどみょんがメインになりそうです。
正直嬉しいです!

また、初出演の方もございます。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


LILY BLACK

~魔法の森

 

私達は、大分離れた草むらの中から

やっと追い付けた目標を見ていた。

 

視線の先には、私が目標にしているリリーホワイト、

そしてマリスが目標にしている一人の剣士と一匹の兎が

大木の根元に腰かけていた。

 

 

「ドウヤラ、休憩シテイル様ネ……」

 

 

隣には、敵の一匹である兎、鈴s……(名前が長くて呼びにくい)

~~もういい…!!兎に擬態したマリスがいた。

 

まあ、いつもの事だったから気にしない。

 

 

「……ネエ?」

 

「?何だ?」

 

「アノ手段ッテ、イツニ使ウノカシラ?」

 

「!まだ待て……あれはいざという時、ここぞという時に使うんだ。

むやみに使って失敗すれば、全てがおじゃんになりかねん……!!

其にしばらく奴等の勉強をさせろ…!さっきの二の舞はまっぴらd」

 

「!誰カ来タワ……!」

 

「!?」

 

 

視線を前に戻した。

 

アイツ等の前にある草むらから一人の女性が出てきていた。

 

 

私が見たことがない奴だった。

 

またしても私はイライラした。

~~どうして此処は、私の知らない事ばかりなんだ……!?

 

しかし、赤いな……

背中には紫の禍々しい翼まである…

身長からして妖精じゃねえな、アイツァ……

 

 

「お前、アイツを知ってるか?」

 

 

……返事が来ない。

 

 

「?おい?聞いてなかったのか?」

 

 

首を曲げて再びマリスを見た。

 

 

兎マリスの様子が変だった。

 

青い瞳が今まで見たことがないくらいに縮んでいて、

さっき怒っていた時よりもさらに擬態が解けかかっていた。

身体のあちこちが黒色に戻っている。

 

 

(!コイツ、怯えてやがる……!!)

 

 

私はひと目で判った。

 

だが、幻想郷の各地を襲い、破壊と侵略の限りを尽くすマリスが

此ほど怯えるなんて余程のことだぞ!?

アイツ、いったいどんな人物なんだ?

 

 

「……ワヨ」

 

「え?」

 

「逃ゲルワヨ……!早ク……!!」

 

「!?おぉおい…おい……!!」

 

 

私は兎マリスに羽を引っ張られ、その場を退場した。

羽!引っ張るな!デリーケートゾーンだぞ、其処!?

 

……出番も無いまま退却かよ……?

訳わかんねぇな、ったく…………

 

 

 

 

 

 

 

 

YOUMU

~魔法の森

 

私は、魔法の森にある一本の大木の根元にもたれかかっていた。

 

傍ではうどんさん、そして彼女に抱かれた

春告精、リリーホワイトが眠っていた。

 

 

私達が此処で休憩している理由は、

このリリーホワイトさんが先刻の出来事で止まらなくなった

体の痙攣を療養する為だった。

 

うどんさんいわく、見た事もないものに対する

恐怖が痙攣の原因らしかった。

リリーホワイトさんだと、さっき私達に

飛んできたミサイル型のマリスがそうらしい。

 

人を喰い、其の姿や能力をコピーするマリスが

ひとつ目をギラつかせ、目の前まで高速で

近付いてくる様子を想像した。思わず身震いをする。

決して武者震いではない。

 

 

(マリスが、トラウマにならなかったら良いんですけど……)

 

 

眠るリリーホワイトさんを見ながら、そう思う。

 

私が起きていた理由は、言うまでもなく二人の護衛だった。

二人に何かあってはいけない……

其の事が頭にあったのか、起きずにはいられなかったのだ。

 

リリーホワイトさんを見ていると

彼女を抱いているうどんさんにも当然視線が移る。

 

 

(……可愛いですね……寝顔……)

 

 

思わず顔が綻ぶ。

敵が来ないかという緊張も緩んだ。

 

 

!?いけない……

こんな時に敵が来たらどうする……!

 

油断してる時を突かれたら、

うどんさんを…二度と見られなくなる……!

其だけはいけない……あってはならない……!

 

 

其に私は誰かの護衛をする事にある一種の誇りを感じていた。

誰かを守る事が私、魂魄妖夢にとって誇りだったのだ。

 

私は、以前まで幽々子様の護衛をしていた時を思い出す……

が、頭を振ってすぐに其等を閉めだした。

最近此の事を思い出すと、うどんさんに申し訳ないと思い始めていた。

 

 

(だから今は…心を鬼にする時だ……!)

 

 

私は周りを見渡し、敵の襲来を警戒した。

 

すると、

 

 

 

ガサガサ……

 

「此処……『森』っていうのかしら……?

随分複雑な構造をしているのね…?」

 

「……此の場所……さっき通った場所と同じよう気がしますが?」

 

「そう?私からしたら全然違う場所に見えるけど?」

 

 

私達がもたれている大木からそう遠くない目の前の草むらが揺れ、

話し声が聞こえた。

声からして女の子が二人のようだ。

 

 

「誰だ!?」

 

 

私は腰を半分あげ、背中の二本の剣の柄に手をかけた。

 

こんなところに普通人間は来ない……

まさか、此処までマリス達が捜しに来ているのか?

有力な住民の能力を可能な限り喰い尽くすために……

 

 

「!ねえ聞いた?人がいたわよ!」

 

「ですが危険ですよ…もし襲って来ましたら……

私が先に突入します。貴方様は後から……」

 

「大丈夫よ、此処は私に任せて……」

 

 

そして草むらの中から一人の人が出てきた。

 

 

今まで見たことがない人だった。

 

身長は私やうどんさんよりも高く、大人の女性の雰囲気が漂っていた。

…まるで仏様の様な微笑が顔にあったからかもしれない。

 

赤いゆったりとしたローブのようなものを着用している。

髪の毛は銀色で、木漏れ日を反射して光っており、

一か所だけ髪の毛が結われていた。

 

背中には紫色に光る、六枚の翼が広げられ、

六枚全てに紅色の禍々しい模様が浮き出ていた。

 

 

その翼からして、種族は人間ではない事は明らかだ。

 

じゃあ妖精か…?もしくは、紅魔館の吸血鬼

レミリア・スカーレットさん達のお仲間……?

 

いや…妖精にしては大きすぎるし、

第一、吸血鬼という事はあり得なかった。

……まだ昼下がりに入ったばかりなのだ。

 

 

「……もう一人いるんでしょう?

どうして私達から隠しているんです?」

 

 

二本の剣…楼観剣と白楼剣を抜きながら、私は尋ねた。

会話からもう一人いることは既に把握できていた。

ならばソイツと戦う為に、霊力を温存しておかなくてはいけない。

 

其の人は剣を見て少し驚いたようだった。

しかしすぐに表情を戻し、恥ずかしそうに言った。

 

 

 

「あのね……私達ね……迷っちゃったのよ」

 

 

 

 

カランッ、カロォン……!

 

 

 

楼観剣と白楼剣を取り落してしまった。

 

すぐに拾おうとするが、手が動かせず拾えない。

 

 

(!え……??)

 

 

視線は相手に向けたまま、

体が硬直してしまっていた。

 

 

其の人物は微笑んでいた。

 

が、其の薄く開けている目からは

私では形容する事が出来ない、「何か」を感じた。

 

私はすぐに何が起こったのかを理解した。

 

 

(射すくめられた……!?)

 

 

何故だ……?ただ一言かけられただけなのに……!

 

その時私は、蛇に睨まれた蛙さながらの様だった。

 

 

(何をしている……!

誰かの護衛をずっとこなし、沢山の強敵と

戦って来たのに、たった一人の敵に気圧されるなんて……!!)

 

 

そう言い聞かせても、やはり無駄だった。

 

私はすっかり怯えてしまった。

 

 

其の人が足を一歩、私達の方に踏み出した。

私は無意識のうちに其に合わせて一歩下ろうとした。

動かせる事から、身体の硬直はどうやら解けたようだ。

 

だが解けたばかりだからか、うまく動かせず、

バランスを崩して、お尻から地面に落ちた。

其のまま手と足で無様に後ずさる。

 

その瞬間の私には誇りもへったくれもなかった。情けない…

 

 

その人は歩を止め、途中私が落とした二本の剣を拾い上げる。

 

信じられない……長すぎて並の人間では扱えない楼観剣を、

片手で軽々と持ち上げるなんて……

 

 

「ふむふむ……此処には

こんな素晴らしい剣があるなんてね……」

 

 

二本の私の剣を、まるで値踏みでもするかの様に眺めている。

 

 

「まあ良いわ」

 

 

そして、ニ本とも両手に持って再び此方に歩いてきた。

 

私は嫌な予感がした。

まさか……其の剣で……!?

 

だが、白楼剣は私達、魂魄家しか使えない筈……

其を知ってるかどうかは判らなかったが、

あの様子からだと………

 

 

(本当に……何者だ……?)

 

 

もし…白楼剣が使えるのなら……

私の知らない…魂魄家の者か?

 

其とも、マリスが襲い、手に入れて擬態した新しい姿なのか?

 

其とも……?

 

 

剣をニ本とも取られてしまったら、もはや私になす術がない……

 

せめて……うどんさん達は守らないと……!!

 

 

私は震える体に鞭を撃ち、

リリーホワイトさんを抱いて眠る、うどんさんの前に移動した。

半腰になり、少しでも彼女達を敵から隠せる様に尽力する。

 

汗をすごくかいているのが判る。

だが、其を拭う時間など私にはない事は判っていた。

 

 

其の人が、遂に目の前に立った。

顔は相変わらず笑っていたが、私を見下ろす目は何処までも冷たかった。

両手は、私の剣の柄を握っていた。

 

右手に楼観剣を持っていた。

 

覚悟を決めて、目をつぶった。

まぶたの裏で私の剣が、私に対し振り上げられる様子を想像していた。

 

 

どちらで斬るのか……白楼剣か?楼観剣か?はたまたは両方か?

だが、どれにしても幽霊の性質を半分持っている私には

致命的である事に違いはない。

 

だが、そんな事はどうでも良かった。

うどんさん達が切りつけられるよりはずっとマシだと思っていた。

 

 

 

 

其の時私の脳裏にもう一人、浮かんだ人物がいた……

 

 

(…幽々子様……)

 

 

……貴方様を思い出す事を拒んできた……

こんな…不甲斐無い私を……御許し下さい……

 

 

 

 

カチャッ……

 

 

金属音がした。

 

私はますます目を堅くつぶった。

 

 

 

 

そして、風を切る音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「チェェイ!!!」

 

 

「!?ィダ……!!」

 

 

私は両方の剣の柄で頭をしばかれていた。

 

 

「アハハハ……大丈夫よ、そんなに怯えなくても……!」

 

 

目の前で笑い転げている。

まったく訳が分からなかった。

頭も痛かった。

 

 

「……?い…いったい……??」

 

「!痛かったの……?ごめんなさい……!

それほど強く振ったつもりは無かったんだけど……

あ、此返すわね?」

 

 

気付けば、両手に白楼剣と楼観剣の柄を握らされていた。

本当に訳が分からない……

 

 

「出てきて良いわよ!ちょっと休憩してただけみたい!」

 

 

其の人は、先ほど自分が出てきた草むらに声をかけた。

 

其処から出てきたのは……

 

 

「!?咲夜さん…!?」

 

 

いや、咲夜さんとは少し違うところがある……違う人物か…?

 

咲夜さんが銀髪なのに対し、偽メイドは金髪で

青ではなく赤を基調としたメイド服を着ていた。

 

 

「私は神綺。此方は自信作の夢子ちゃん!」

 

 

!?え…?「自信作」……!?

 

 

「夢子でございます……

神綺様、お言葉ですが『自信作』は……」

 

「!ゴメン、流石にダメよね……取り消しっ!」

 

「…恐縮です」

 

 

……追いつけない……展開も…コントも……

 

 

「みょ…みょんさん……!」

 

 

 

はっと後ろを振り返る。

 

うどんさんが起きていて神綺さん達におびえた目を向けていた。

忘れていた…うどんさん、人見知りなんだっけ…!

 

リリーホワイトさんも同じだった。

むしろ、うどんさんに締めあげられて苦しそうだ。

 

 

「そ、そそ…其の…人達は……!?」

 

「だ…だ……だーれでーすかぁ……??」

 

 

ガタガタ震えている。

拍子でトラウマが再発したら大変だ……!

 

 

「え…と……神…綺さん?」

 

「?んん~~?」

 

「もう一度…自己紹介……」

 

「!よし来た、良いわよ!私は神綺。此方は夢子ちゃん!」

 

「夢子でございます」

 

「簡単に言うとぉ………私、魔界を創った人ね!

因みに夢子ちゃんは魔界のメイドさん!!」

 

「!?魔界ぃい…!????」

 

 

私達は見事に度肝を抜かれてしまった。

 

 

「!其より、貴方達……アリスちゃんが何処にいるか知らない?

あれから随分見てないけど…元気してるのかしら……?」

 

!?アリスさん……!?

私は耳を疑った。

 

 

此の人達、もしかして……アリスさんの過去を知っている……!?

 

 




如何でしたか?

旧作から魅魔様に引き続き、神綺様と夢子が初出演です。

ですが、おそらくリリーブラックと同じく
うどみょん小説限定の出演になると思います。

次回は、後編です。
神綺様の話を聞いていきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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マリスが恐れた唯一の人物~後編

今回は後編です。
敵勢力は登場しません。

神綺様がアリスとの過去話を
うどみょん達に繰り広げていきます。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪



YOUMU

~魔法の森

 

 

「神綺さん!」

 

 

恐怖が和らいできたのか、

私の喉から出てくる声はさっきと比べ、震えが少なくなった気がした。

 

 

「?何~?」

 

「アリスさんの話……詳しく聞かせて下さい!」

 

 

私は思わず神綺さんに頼んでいた。

そしてすぐに二本の剣をしまってないことに気付き、

慌てて背中の鞘に戻した。

 

アリスさんが「孤毒」にかかってしまった理由の一つに

「強い孤独感、深い心の傷」だと、永琳さんがテレビで仰っていた……

其を幽々子様と見ていた事を思い出した。

 

今度は閉め出さなかった。

私の中にある大切な情報……

 

 

アリスさんが其の感情を抱いた理由……

もしかしたら、アリスさんの過去にあるのかもしれない。

 

ならば、是非とも聞かなければ……!

 

 

「……続き、気になったのね?」

 

 

突然神綺さんが半目になった。

半腰の私の前でしゃがむ。

 

私はまたもや動けなかくなった。

今回は目と呼吸のために喉しか動かせなかった。

 

一方神綺さんは、半目のまま私のじっと見つめる。

 

そして、左手で私の顎を少し押し上げ、

右手の人差し指と中指、薬指の三本で私の喉をくすぐり始めた。

 

 

遊んでいるのか……

 

くすぐったくて仕方がない。其に……怖い……

もしかしたら、此処からいきなり手刀で

喉を貫かれるんじゃないか……?

 

つばを飲み込もうとしてもその為には喉は動かせなかった。

 

 

(うどんさん……)

 

 

私は、うどんさん達の方に目だけを動かした。

 

ただ、助けを求めたわけではなかった。

 

 

 

 

 

 

(私の方は大丈夫ですから、

貴方はリリーホワイトさんを守っていて下さい。

もう一人は何をするか分かりませんから……)

 

 

という、テレパシーでも伝わるかどうか怪しい

アイコンタクトをしたいが為だった。

 

 

しかしどうやら其が伝わったらしく、うどんさんは

リリーホワイトさんを堅く抱えながら、夢子さんの方に目を向けた。

 

夢子さんは瞬きもせず私の方を見ていた。

 

 

「さて、よーし……話そうか!」

 

 

神綺さんは私の喉から手を離して立ち上がった。

 

途端に、私は動けるようになった。

 

 

此が、魔界を作った神綺さんの……力なのか……?

其とも、只単に其の圧力に晒されて……緊張してただけなのか……?

 

さっきまで触られていた喉に手を当てながら考え込む。

 

 

「じゃあねぇ……三人とも、良い??」

 

 

突然神綺さんが「一番っ!!」って言うかのように

右手の人差し指高くあげた。

 

完全に油断していた。

 

考え込んでいた私は其を始終見ていたうどんさん達に比べ

反応が遅れてしまった。顔を急いで上げる。

 

しかし、其の指は既に下ろされ

ある言葉と一緒に私達に向けられていた。

 

 

 

 

「正座っ!!!」

 

 

 

ババッ!!!!!

 

 

正座には慣れていた。幽々子様のもとで働いていた時、

あの御方の前では無礼のないよう、いつも正座だった。

 

うどんさんも永琳さんの前で座る時はそうだったんだろう。

私の隣で正座をしていた。

 

 

「リリーホワイトさん、此処に座って下さい」

 

 

うどんさんが其の瞬時の出来事に呆気に取られていた

リリーホワイトさんに膝の上に来るよう急いで小声で催促してた。

彼女は其に答えてフヨフヨと飛んで其処に着陸した。

 

 

「速いわね……其のスピード、結構好きよ?

さてさて……」

 

 

正座する(リリーホワイトさんを除く)私達の前で、

静かに立つ夢子さんの隣で、神綺さんは話し始めた。

 

自らの翼を黒く変色させながら…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さっきも言った様に、私は此処とは違う

魔界という世界を作ったの。つまり私は其処の神様っていうわけ」

 

 

何度聞いても驚いてしまう。

この人は、幻想郷とは違う次元で

幻想郷とは違う世界をたった一人で作り上げてしまった…

 

私が腰を抜かしてしまったのは、訳ない筈だったと

今更だが痛感した。

 

 

「そして、其と同時に私は、魔界に暮らす住民達も作ったの。

其の中で最強クラスなのが……此処にいる夢子ちゃん!」

 

 

神綺さんの隣で夢子さんがメイドらしくお辞儀をする。

人を……作り上げた??夢子さんも……!?

 

!だから、さっき神綺さんは彼女を「自信作」と言っていたのか……

 

 

「実はアリスちゃんも、魔界出身なのよ」

 

「!!じゃあ、アリスさんも……貴方が……!!」

 

「まぁ、そんな感じね……」

 

 

私は絶句した。

 

此の人が……アリスさんを……魔界の何もないところから……?

 

 

「あ、質問する時は手ぇあげてね?判った?」

 

「はい……」

 

 

従わないとマズそうだ……気を付けよう……

 

 

「で、私達はそんなこんなで楽しく暮らしてたのよね……」

 

 

ふと話を止め、神綺さんは両手を後ろに組んで

さっきまで私達がもたれていた大木を見上げた。

 

まるで、その時の魔界を思い出すかの様に………

 

 

 

 

 

「ところが、そんな中で突如異変が起きてしまったの」

 

「!?」

 

 

視線を私達の方に戻した神綺さんの顔が突然暗くなった。

其の目付きは、さっき私が感じたものと似ていた。

 

殺気すら感じた。

 

 

「幻想郷と言われている此処、人間界から

四人の人間と妖怪がやってきて突然暴れ出したのよ。

其の者たちの名前は……博麗霊夢、霧雨魔理沙、魅魔、幽香」

 

「!!」

 

 

れ、霊夢さん達が……神綺さんの世界で暴れた…!?

 

 

「ですが……どうして……??」

 

「!質問は手を上げて言う事っ!!……でも、良い質問だから答えてあげるわ」

 

 

……今のは流石にマズかった……次からは本当に気を付けることにしよう……

 

 

「どうやら、魔界の民間旅行会社の者達が、

魔界人を此の世界に勝手に送り出していた事が原因らしかったのよね……

其を訴えるために此方に乗り込んできたのよ」

 

 

?旅行会社……?

そんな企業が、あちらには存在するのか……

 

でも、これ以上深追いするのもアレだった為、

其処は黙っている事にした。

 

 

「私達は、暴れられるのはたまらないから

其を食い止めようと戦ったんだけれど、負けちゃってね……

もう魔界人を人間界に来させないと無理やり約束させられて

私は此処と、魔界を通ずるゲートを閉じたわ。

其で異変は終わりを告げ、魔界は平穏を取り戻したかのように見えた……」

 

 

 

 

 

 

「ところが、其を黙ってなかったのがアリスちゃんだったの」

 

「!」

 

 

突然アリスさんの名前が出てきたので、私達はびっくりした。

此の異変に、アリスさんがどう関わっていたのだろうか?

 

 

「魔界での防衛戦の際、霊夢達に負け、

さらに一方的に此方のせいにされたのがたまらなかったらしくて、

リベンジをするべく、もう一度彼女達に勝負を挑んだのよ」

 

「でももう一度コテンパンに返り討ちにされてね……

其の後、勝負をした彼女達に酷い事をされたらしいのよ。

何でも、雑用として酷使されたり、縛られて本を盗まれたり……

メイド服を着させられたり、ストーカーされたあげく

究極の魔法をラーニングされたりとか……」

 

 

内心苦笑いをする。

 

……霊夢さん達のことだ……

喧嘩を売ってきたアリスさんを正当防衛と称して成敗し、

逆に自分達のために利用したに違いない。

 

アリスさんもいろいろと苦労をしてたんだな……

 

 

「アリスちゃんは其でもぉう…完っ全に頭に来た様で

ある日、私の前でこういったのよ……

『アイツ等をブッ殺して!!神綺様、そして魔界の皆の屈辱を晴らすわ!!』

そして魔界を抜け出して、それっきり……連絡も一切来なかったわ……」

 

 

神綺さんは力なくうなだれた。

 

そんな事があったのか……

アリスさんはこうしてこの幻想郷にやってきたのか……

魔界に着せられた汚点を払拭するという、大きな使命を背負って……

 

 

(!もしかして……!)

 

 

アリスさんは霊夢さん達に三度やられるきっかけ……

西行妖の異変を起こした幽々子様を凄く憎んでいた。

もしかしたら其処に、其の人間界への怨み、そして個人での怨みが

彼女を後押ししてたのかもしれない……

 

 

ふと、私の頭にある疑問が浮かんできた。

 

 

「神綺さん……」

 

 

私は今度は手を挙げながら声をかけた。

 

 

「?んん?まだ質問があるの?」

 

「はい……魔界からの入口は閉じられたのに

貴方達は……どうして此処に……?」

 

「!あ……」

 

 

声を出したという事は、うどんさんも其に気付いたんだろう。

其から慌てて両手で口を塞いでいた。

 

 

「!其もいい質問ね!私が聞いてほしかったところ、

ピンポイントで指してくる!貴方、最っ高よ!」

 

 

ベタ褒めだった。

疑問に思ってくる。此の人は本当に魔界の創造神なのか……?

 

いや、さっき私は其を二度、その身をもって味わっただろう……!

 

神綺さんが質問に答え始めた。

 

 

「私達が敗れた後、私が人間界へのゲートを閉じたと言ったわよね?

もう、魔界の者が人間世界に来られないように。

でもその後、魔界人達は勝手に、しかも自力で人間界に行ける魔法を開発したの。

結局あの約束は知らぬ間に破綻を来してたってわけ」

 

 

……懲りないんだな、其の魔界の人達……

其程幻想郷に来たかったんだな……

 

 

手をあげてもう一言。

 

 

「……其で、神綺さん達も……?」

 

「そう!もう、無効になってるんだったら

私達もやっちゃえ!!……っていう雰囲気だったわね」

 

 

なんて……ルーズな……

思わず本当に苦笑いをしてしまう。

 

 

「!そうそう……人間世界からもう一回、

訪問者があったわ。其もとてつもなく大きい船に乗ってきてね」

 

「!?船……?」

 

 

リリーホワイトさんが声を出す。

 

しかし、神綺さんは其を気に留めなかった。

 

 

「でも今度は、私達とは関係がないらしいのよ。

何でも人間たちに恐れられ、人間たちの手により此方に封印された、

とある大魔法使いを復活させるために来たらしいのよね」

 

 

私は、其の話に聞きおぼえがあった。

 

手を挙げる。

 

 

「神綺さん…」

 

「!質問ね…どうぞ?」

 

「其の人って……もしかして、尼さんではありませんでした?」

 

「!確かそんな事を話してたわね…でも、どうして知ってるの?」

 

 

確信した。

 

其の人物は、最近幻想郷に建立した命蓮寺の住職、

聖白蓮さんに違いない。

 

私は前に幽々子様が仰っていた話を思い出す。

 

 

伝説の僧侶であり、弟である命蓮の絶命により死を恐れ、

妖力に近い術によって若返り、不老不死、長寿の力を手に入れた白蓮さん。

人間、妖怪と分け隔てなく接していたが妖怪との共存する事を望み

妖怪に加担していたことが人間達にばれ、悪魔扱いされ、遂には封印された。

 

其処が……神綺さんの創り上げた、魔界だったなんて……!

 

 

「……何を驚いているの?」

 

「!?い、いえ……!すみません、なんでもありません……」

 

「まぁその時は、其の人を連れて帰っておしまいだったんだけど……

アリスちゃんがいる事を聞いておけば良かったなぁ……」

 

 

 

そして私は、手を挙げた。

 

 

 

「?また質問ね?さてさてぇ……今度はどんなポイントを突いてくれるのかしら?」

 

「……いえ……質問ではないのですが……」

 

「?じゃあどうしたの?トイレに行きたいの?」

 

 

隣から、うどんさん達の視線を感じた。

神綺さんに気を配りながら隣に顔を向ける。

二人とも不安そうな目だった。

 

私は頷く。

 

うどんさん達も頷き返す。

 

 

此は……此だけは、言わないといけない……!

 

 

 

「アリスさんは……此の世界にいます。元気ですよ」

 

「!?本当!?」

 

 

神綺さんが、途端に表情を変えた。

傍で静かに話を聞いていた夢子さんも思わず反応していた。

 

 

「ただ……その……」

 

「!どうしたの!?なら場所も判るでしょ!?

お願い、言って!アリスちゃんが何処に居るかを…!」

 

 

神綺さんが私の肩を掴んできた。

 

懇願している。

まるで誘拐された子供の場所を知りたがる母親のようだった。

 

うどんさん達が半分立ち上がり、身構えた。

私は首を振った、二人を制した。

 

 

「大丈夫よ!アリスちゃんを誘拐して

身代金……っていうつもりじゃないから!

只会いたいだけなのよ……!だから……!!」

 

 

……此を神綺さんが聞いたら……どう思うだろう……?

 

 

「今の所在は………誰も判らないです」

 

「!!え………」

 

 

神綺さんが一瞬表情を凍りつかせた。

そしてそのまま膝をついた。

 

私の肩からも手が離れる。

 

 

「其に彼女は……此の世界を……幻想郷を、支配しようとしているんです」

 

 

そういってハッとする。

言い過ぎてしまったかもしれない。

 

神綺さんはうつむいてしまったまま動かない。

髪で完全に目が隠れていた。

 

 

「?……神綺様?」

 

 

夢子さんが後ろから神綺さんに声をかけた。

其の額には大量の汗をかいてる。

 

本当に余程の事をしてしまったかもしれない。

 

 

私は神綺さんから距離をとり、

背中の楼観剣の柄に手をかけた。

 

隣にうどんさんも同じく距離をとって手をピストル状にしていた。

リリーホワイトさんは不安げな表情で、彼女の背中に捕まっていた。

 

 

 

 

すると、突然神綺さんが顔をあげた。

 

 

「良いもんっ!!そんなに会いたくないなら良いもんっ!!

此方から探し出してあげる!!」

 

 

顔を赤くして、頬を膨らませてすねていた。

 

私達は呆気に取られた。

リリーホワイトさんは此で二度目になる。

 

……本当に、本っ当に魔界を一人で創ったんだよね?

 

 

「行くわよ、夢子ちゃん!!」

 

「!か、かしこまりました……!!」

 

 

神綺さんが小さくジャンプした。

するとその足下に大きな穴があいた。

 

紫様のとは別のものだ……!

 

其のまま、穴の中に落ちていった。

夢子さんも慌てて其の中に入る。

 

 

そしてすぐに二人の上半身が出て来た。

ギョッとする。

 

 

「あ!アリスちゃんの事、教えてくれてありがとうね?バイバ~イ!!」

 

「し、失礼しました……!」

 

 

再び穴に入り、穴は消えてしまった。

 

 

茫然としていた。

どれだけ豆でっぽうを喰らった事だろう?鳩ではないが。

 

しばらくして穴のあった処を見ながら、私とうどんさんは一言。

 

 

「「……道、迷わなかったんじゃあ?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達は森の出口に差し掛かっていた。

此の先にさっきとは別の人間の里がある筈だ。

 

 

「……アリスさんにあんな事があったなんて……」

 

「ええ……何だか、可哀想になってきました」

 

 

アリスさんは、魔界の数えきれない人全てを代表し、

其の人達を不遇により付けられた汚名から守ろうとしたのかもしれない。

 

そう、さっき私が命を賭してまでうどんさん達を守ろうとした様に………

 

 

其を思っていると、

私は、ある感情にとらわれている事に気が付いた。

 

 

 

 

泣きたくなっていたのだ。

 

アリスさんが可哀想だと思ったのもあるのかもしれない。

でもその時私には、別の感情があった。

 

 

「……みょんさん?」

 

 

知らない間に立ち止まっていた様だ。

うどんさんが振り向いて立っていた。背中のリリーホワイトさんも此方を見ていた。

 

 

 

 

「~~怖かった………!」

 

 

正直に言うと、其が本音だった。

 

あれほどの恐怖は此の先そうないかもしれないが、其程怖かったのだ。

 

相手はどれだけ滑稽に振る舞ってくれようとも、

私から畏怖の念が払われる事はなかった。

神綺さんの目から何かを感じたのも、其が原因だったのかもしれない。

 

泣いてはいけない、泣いたら情けないぞ……そう思っても、涙は止まらなかった。

 

私の脳裏に再生されていく……

 

神綺さんの冷たい瞳。自らの剣を振り上げられる音。

喉をくすぐる指の感触。

そしてうつむき、髪で目の見えない神綺さんの横顔。

 

 

 

 

「みょんさん……」

 

 

 

 

声がして、私は顔をあげた。

 

うどんさんが私の前に立っていた。

両手を広げている。

 

 

「来て下さい……みょんさん……」

 

 

躊躇いは不要なかった。

 

 

 

 

 

 

 

此の魔法の森での出来事は、今後も私の中でずっと残る事になるだろう。

 

だから其の分、うどんさんの胸の中は暖かく、安心できた。

 

うどんさんは、優しく頭を撫でてくれた。

リリーホワイトさんは何も言わずにうどんさんの後ろで

目一杯、自らの羽根を伸ばしていた。

 

そのせいか、まるでうどんさん自身が妖精になったかの様だ。

 

 

 

 

「……私も、貴方のピンチに気付く事が出来なかった……

ごめんなさい……みょんさん……」

 

「……二人が…二人が無事で……良かったぁぁ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春の午後の日差しが、何処までも暖かだった。

 

 

 




如何でしたか?

全体的にシリアスでした。
たまには……良いですよね?


旧作ですので、神綺様と夢子さん
想像になっているのはご了承ください。

此の先でも再び彼女たちに出会う事があるでしょう……



次回は、其のころあの人は何をしていたかを書こうと思います。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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黒は、黒で、黒なりに…

今回は、一話ぶりに復活のあの人…妖精が主役です。

相も変わらず大暴走します。
見る人によっては少々ヤバそうな表現が
ありますが御了承下さい。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪



LILY BLACK

~影の森 黄昏の沼地下

 

 

「あぁ~~あ……」

 

 

テーブルに立つ「パソコン」の前に置かれた一冊の本。

椅子の上から其の本を読みながら、私は溜息をついていた。

 

 

怯える兎マリスにより

リリーホワイトが混じってた連中から離れた後、

たまたま近くにあった一か所の隠れ家に、私はマリスを案内した。

 

因みに、魔法の森の外れにある此の辺りの森は、

既にマリス達が木々を含む、全ての生物を完全に浸食し尽くしたらしく、

「影の森」と呼ばれ、誰も近寄らない場所になっていた。

 

其処にある「黄昏の沼」のほとりに地下の隠れ家に続く入り口がある。

 

!おっと、隠れ家は此処だけじゃないぞ?

幻想郷の各地に、私の隠れ家は存在するからな!?

 

 

……にしても、あれだけ乱雑に羽を引っ張ってくれるとは……

途中、いろんな意味で危なかったぞ、ありゃ……

 

 

そんな私の後ろからは擬態を解き、分裂して新たに三月精に擬態した

三体のマリスが、一緒に私の見ていた本を読んでいた。

 

タイトルは『幻想郷縁起』。

転生を繰り返し、今は九代目になったという稗田のガキが編纂したという代物だ。

 

 

「……俺も危険度『極高』になりたいけどなぁ……」

 

 

今私は花の妖怪、風見幽香のページを見ていた……ていうか、

いつも其処しか見てなかった。

 

其処に載っていた危険度『極高』の二文字は私の何よりの憧れなんだよな……

人間友好度『最悪』は私も同じようなものだったから良いけど。

 

同時に花の異変の時、彼女と対峙した時も思い出していた。

 

出現出来たと思えば襲ってくる、避けようのない弾幕の雨あられ……

「いとも容易く行われるエゲつない行為」とはまさにあの事だと思う。

 

 

「……なあ、どうしたら『極高』になれると思う?」

 

 

試しにマリス達に聞いてみる。

 

コイツ等は人間も襲うし、其の姿を利用して二次災害も引き起こせる。

『極高』くらい行ってもおかしくはない筈だ。

……普通のアリスより、危険じゃねえか?

 

すると、サニーミルクに擬態したマリスが、

 

 

「……逆ニ其ノ姿デイル理由ガ知リタイワ?」

 

 

顔の右からこんな質問をかけてきた。

 

 

確かに今、私の姿は周りを取り囲む三匹の妖精マリスよりずっと大きかった。

恐らく人間の大人の女性くらいの大きさはあるだろう。

コイツ等いわく、博麗の小娘よりも大きいと言ってるが。

 

其に黒い角縁の眼鏡も掛けている。

イカすだろう?ひと昔に流行ってたリケジョって雰囲気だ。

…白衣は何故か嫌だったから着てないが。

 

 

「私は、自分のアジト内では此の姿の方が落ち着くんだ。

口出しはしないでほしいがな……」

 

「ダカラ、ドウシテ其ノ姿ニナレタノカガ気ニナルノヨ!」

 

 

今度は左からルナチャイルドに擬態したマリスが

問い詰めてきた。…ったく、クリみたいな口しやがって……

 

 

「此はクスリの影響だ。アジトに入ると必ず服用してる」

 

「?アンタ妖精デショ?其ノ姿二ナル理由ッテアルノ?」

 

 

いちいち質問が多いな………

 

思い切って俺はカミングアウトをしてみる。

 

 

「…私は自分の身体が小さいのが一種のコンプレックスになってんだ」

 

「?ドウシテヨ?」

 

「前までな、よく里でうろついてる人間のガキ共に

『チビ、チビィ!!』って馬鹿にされてたんだよ。

買い物に行く時なんかしょっちゅうだぜ?アレはムカついたな……

『てめえ等の方もチビのくせに、よくそんな口が叩けるなぁ!!!』

って怒鳴ったらよ。ピーピー泣いちまって、親バカ共にボコられる始末だ」

 

「……其ハ、自業自得ヨ」

 

 

私の頭の上からスターサファイアに擬態したマリスが

冷たく言い放ちやがった。

 

 

「五月蠅えな…どうでも良いだろ……

てか、もともとお前らには関係の無い話だろうが」

 

「何デ屋外デハ服用シナイノ?」

 

「こんな姿だと目立つし、やってる事にも目を付けられやすくなる。

俺は隠密派なんでな……外では私情を殺してるってわけよ」

 

「……色々大変ナノネ、アンタモ」

 

 

!同情か?……少し嬉しいかも……

 

 

「デモ大丈夫……扁平……其モステータスダカラ……」

 

「……ひじきのりにしてやろうか、てめえ等?」

 

 

…いきなり何でそっちに話を移すんだ?

よりによって一番気にしてたところを……こうもあっさりとド真ん中を……

 

 

そう、クスリを利用してアジト内のみ毎回身体大きくしてるのは良いものの、

何故か胸だけはそのままだった。絶壁そのものだった。

 

はぁ……どうしてこう……全体には作用されないんだろうか……

身体を見下ろして、もう一度溜息をついた。

 

 

そして目を本、そして「パソコン」の画面に移す。

 

画面にはさっき目標達に近付いていた、銀髪の女性の顔写真があった。

 

 

(……神綺、ねぇ……?)

 

 

情報によるとコイツは此の幻想郷とは違う世界、「魔界」を創造したボスらしい。

 

そして驚いたのは、其処の住人達……生命体も創り、

其の中には、コイツ等の本体であるアリスも入っている事だった。

だから、アイツには逆らえないのか……納得した。

 

見ていた画面から、妖精マリス達に目を移した。

私が持つ『幻想郷縁起』の幽香のページから先のページへめくらせようと頑張っている。

 

 

……コイツ等は何もないところから創られた生命体の、感情が具現化したモノに過ぎないのか……

自分が創ったヤツの復讐心が、一つの世界に滅亡をもたらしてるとなると、

どう思うだろうな………悲しむだろうな………俺には関係ねぇけど。

 

 

ぼんやりそう思いながら画面に目を戻し、「マウス」を使って画面を「スクロール」させる。

となると…創られた魔界人はまだいる筈だが……

 

 

すると一瞬体が震えた。此は……

 

 

「?ドウシタノヨ?」

 

「!マサカ…副作用ガアル訳…!?」

 

「……違ぇよ、トイレだ」

 

 

私は『幻想郷縁起』を閉じて立ち上がった。

 

傍にあったトイレの扉を開けて、入り、そして閉めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、見せかけてもう一度開く。

 

 

「いろんなものを下手にいじるなよ!!?

特に其処の棚の中は絶対にな!!」

 

 

そうして扉を閉め、鍵をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

案の定だ……やっぱりこうなると思った。

 

 

私がトイレから出てきて真っ先に目に飛び込んだのは、

目の前で不完全に融合し、化け物状態になった三月精マリスの姿だった。

私の足元にはかなり大きめの瓶が、割れてはいないが転がっている。

 

 

『ヂョッドォオォオ……ドウナッデルノオォオォ……!!??』

 

 

三匹の声が不協和音になってる……背筋が凍りそうだ。

 

 

「言わんこっちゃねぇ…悪戯も大概にしろよ……擬態すると思考まで同じになるのか…?

まぁ、幸い薬同士調合するまではしてねえみたいだが……」

 

 

かがんで足元の瓶を拾い上げる。

 

 

「コイツは……『融化剤』だな。溶けにくい薬同士を互いに溶け易くするもんだが、

重くて持てず、他のヤツに引っかけたんだろう?

んで、拭こうとしてくっつき、マリスが誤って溶けだし、其の様になった……

……やる事が単純なんだよ、妖精風情は…」

 

『!!妖精ハ、アンタデジョウガァアァ……!!!』

 

「俺を他の妖精と一緒にするな。

しばらくしたら元に戻る筈から、其のままでいろ……反省するついでにな」

 

 

背を向けた。まったくガキも……妖精も嫌いだ。

 

 

「はぁ……コイツ、結構重要なのに……

また失敬し直さなきゃいけねえじゃねえか……畜生…!」

 

 

悪態をつきながらさっきの「パソコン」がある机に向かった。

其の上に空瓶を置く。

 

 

すると、

 

 

 

 

「フフフ……フフフフフフフフ……」

 

「?どうした、そんなに笑って……そんなに自分がやらかした事が可笑しいか?

それとも自分の姿にか?

まぁ、融合に失敗したお前等は可笑しいどころか、逆にキモいが……」

 

 

そう言いながら振り返ってみた。

 

三月精の様な化け物マリスは消えていた。

だが、かわりに一人の妖怪が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風見幽香が…………立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔には本で見続けていた、あの笑顔があった。

本で持っていた、純白の傘をたたんで持っていた。

 

 

「!!!」

 

 

面喰ってしまった。な…何で此処に!!?

思わず「アイエェ(ry」と叫びたくなるが、流石に抑える。

 

!だが待てよ?……!此処にいるっていう事は……!!

 

 

「ま、まさか……幽香まで……やったのは本当だったのか…!?

私は……てっきりガセネタかと……!!」

 

「!私ハアイツヲ知ッテタノヨ?ズゥ…ット昔カラネ?

サテ……悪口ニツイテ、何カ言ッテオキタイ事ハアルカシラ?」

 

 

シャキィィーン……!!!!!

 

 

突然幽香マリスの持っていた傘の先端から、ドス黒い鎌の刃が飛び出した。

其の根元には、向日葵の花びらを纏った大きな目玉があった。

 

やべぇ……狩られちまう……!

 

!まさか…さっきの「融化」と幽香、掛け合わせてるつもりじゃねえよな…?

ヘヘ……こりゃぁ座布団どころの騒ぎじゃねえぞ…!?

 

 

!?~ま、まま待った……傘の持ち方……バットみたいになってる……!

まるでリサイタルに来なかった……眼鏡をしばくガキ大将じゃねえか……!!

 

 

!!そうだ……!

 

 

「お、おい!……大人の女性を襲うつもりかよ……?

幽香に…流石にそんな事をさせるつもりは……?」

 

 

よし……殺し文句だ……!

 

いくら幽香に擬態したとはいえ、此を言えば、

ヤヴァい事を行えなくなる筈……!

 

 

ところが…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「…此デ逆ニ喜ンデ下サル方モイラッシャルノヨ?」

 

 

…まさにブーメランだった。

 

 

「其ニ私ハ…コイツトハ屈辱的ナ思イ出シカナイノヨ?ストーカーサレタノヨ?幽香ニ…!」

 

 

~~こうなったら使いたくはなかったが……最後の手段か……!

 

 

 

「~~だ、だからって……他人にそんなことをするの?暴力はいけないワ!!

お願いよぉ……そんな事しちゃダメェ………!」

 

「…色気ヲ使ッテモ無駄。所詮アンタハ妖精ナノヨ」

 

 

~~~……黒すぎる笑顔が言葉の追い打ちをかける……!

 

 

 

あぁあ……もう、ダメかも……

 

 

「~~なら…せめて……モザイク不必要な程度にしてね……優しくしてね……ね?」

 

「!ソウネ…ジャァ……マズハ…貴方ノ服ヲォ……」

 

 

 

 

 

「ッテ、スルカァアァアアァァアァアァァアァァアアーーーー!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

ズッピチュウゥゥウピチュゥゥピチュピチュピチュゥゥゥゥンンンン!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……マ、此処マデニシテアゲルワ……

此以上バラバラニスルト、イクラ妖精デモ再生シ辛イデショ?」

 

「ありがとうございますっっっ!!!!!」

 

 

……ヤベェ……新境地「ユウリリ」……誕生しそうだった………

まぁ、其もアリっちゃあ、アリだったかも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでよ……奴等をきちんとマークしてるんだろうな?」

 

 

数分後、再生した身体を触って確かめながら、私は幽香マリスに訪ねていた。

 

 

「!勿論ヨ、偵察用ノ『私』達ヲ配備シテオイタワ」

 

 

薄く開けた瞼の下から、普段覗かない筈の青色の瞳が俺を見る。

うへぇ……瞳は違うが何度見ても迫力は変わらねぇな……

 

 

「…流石……私の後輩だな……」

 

「勝手ニ決メナイデヨ」

 

「で、ソイツ等は今何をしてる?」

 

「………………」

 

 

顔をしかめてる。何があったんだ?

 

 

「……森ノ出口デハグヲシテル」

 

 

当然驚かなかった。あの後、異世界のお偉いさんと謁見でもしたんだろう。

怯えたカップルは終わった後、そうすると踏んでいた。所謂「吊り橋効果」ってヤツの影響だな。

!もしかして、謁見の途中にもしてたか?

 

だが其より気になる事は……

 

 

「……リリーホワイトはどうしてる?」

 

「何モシテナイワ……只…羽ヲ伸バシテルワネ」

 

 

だと思ったよ……俺はウンザリした。

 

あの脳無しめ…春告精と言われながら、春というもの全てを理解しきれてねえんだ…

だからそういう場面にあったらろくに対応すら出来ない。

 

せめて、演出ぐらいしてやれよ……同じ春告精として嘆かわしいったらありゃしない。

……其の雰囲気をブチ壊すのが俺の趣向だけど。

 

 

「なら、ラブラブ全開のところにお邪魔するとするか……

そろそろ薬が切れる頃だし……直行するぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、紫色に染まった森から小さくなった私と

一匹の大きなハエマリスが飛び立った。

 

あの最後の手段を使うなら、マリス達の情報だけじゃ足りねえ。

奴等の特徴をもっと知る必要がある……其の為には、奴等に接近する事も必要だ。

 

知らない間に、私は口の端で笑っていた。

 

 

…本当に久々だが…勉強するついでに教えてやるとしようか……

 

 

 

「お前達の春は……絶対に栄えないとな……!!」

 

 

 

 




如何でしたか?

リリーブラックのアジトの存在と其処での生活を明かしてみました。
他に何かあるようですが、其は後に紹介する予定です。

そして大☆大☆大☆大暴走でした。
一話出ていない分、溜まりに溜まってたんでしょうね…

次回から、うどみょん達にいつもどおり、
嫌がらせを始めると思います。


そして次回は、リリーブラック達が直接うどみょん達に挑戦します。
此処では珍しく、まともな戦闘シーンになる……予定です。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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え?嵐の前って静かじゃないの?Byこいし

今回はリリーブラック達が妖夢達に直接出会う場面をお送りします。

すみません、前回言ってました戦闘シーンは
もう少し先になりそうです。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


YOUMU

~人間の里

 

 

……目が痛い。

泣きすぎて真っ赤になってるに違いない。

 

 

私達は、人間の里を歩いていた。

勿論、うどんさんと朝食をとり、リリーホワイトさんと出会った

里とは別の里である。

 

リリーホワイトさんもすっかり痙攣が治ったらしく、

私達の周りを元気そうににフヨフヨと飛び回っていた。

其の笑顔を見ると、思わずほっこりとした気分になる。

 

すると同時に私は、隣で一緒に歩いているうどんさんが視線に入った。

 

そしてさっきの出来事が頭に浮かんだ。

 

 

 

森の出口で抱きしめたあの感触……

私を胸に預けてくれたうどんさん……私は…………

 

 

 

 

思わず顔が真っ赤になる。

其を隠す様にうどんさんから視線を離し、うつむいた。

 

 

其の時だった。

 

 

 

 

 

 

「よう……頭が春満開のパッパラパー野郎共」

 

 

私達の上から声が聞こえた。

思わず私達は見上げた。

 

私達の前方上空から、一匹の妖精が降りてきていた。

 

 

前に花の異変の時に無縁塚で戦った妖精だ。

リリーホワイトさんの衣装を黒くしたような風貌だった。

 

だが、顔つきは前より変わっていて

黒い瞳に白眼は赤く、目の下には薄くクマがある。

 

 

「真っ盛りのカップルに寄生して……気分は良いか、リリーホワイト?」

 

 

其の妖精が、皮肉そうに口をゆがめて言った。

 

すると、笑っていたリリーホワイトさんの表情がガラリと変わり、

一気に無表情になった。

 

其の口から出てきたのは……

 

 

 

「……やはり貴方が原因でしたか……薄々は感じていましたが。

まだ生きてたんですか、リリー『バラック』?」

 

「!俺をいつも死んだ者扱いするのは止めろ!あと、『ブラック』だ!!

粗い仮小屋と一緒にするんじゃねぇ!!」

 

「口が粗いからそう呼ぶんです。其に妖精と違うなら死ぬじゃないですか…

私は貴方を私から蔑ろにしたいから、好きにそう言ってるんです」

 

 

今迄に聞いたこともない様な、侮蔑のこもった口調だった。

 

其を聞いていた黒い妖精は怒りに震えていたが、

直ぐに勝ち誇ったような表情になって言った。

 

 

「だが、私が木を倒した他に、マリスって奴の影響でお前、

相当衰弱してたようだな?別の里で暴れてるのを見て、良い気分だったぜ」

 

 

リリ-ホワイトさんは、其の話題を完全に無視した。

 

 

「此処にきて、また命がけの窃盗でもするんですか?……『買い物』と称して」

 

「!俺はてめえ等の様な野良妖精とは違うんだよ!

三月精みてぇにそんな悪戯に、其処まで命もかけてねえし!!」

 

「…リ、リリーホワイトさん……あの妖精は……?」

 

 

私の隣にいたうどんさんがリリーホワイトさんに質問をした。

 

彼女は無表情のまま早口で答え始めた。

 

 

「リリー『バラック』です。似てほしくはなかったのですが、私の服を黒っぽくした姿です。いがみっぽくて、乱暴で、いつも私を消すことしか考えていない脳筋さんですよ。

趣味は永遠亭から盗みに盗んだ、大量の薬での危ない実験です。まさに幻想郷不適合者そのものといっても過言じゃありません。

私は『アレ』と一緒の役割を持ってると思うと、嘆かわしいったらありゃしないです。春告晴の役割をろくにこなした事も見た限り……見た限りでは無いですのに」

 

さっき訂正を求められたのにもう直ってる。

相手を相当嫌ってるようだ。言い過ぎにも程がある。

 

でも其が本当なら、ろくでもないなと思った。

 

 

「成程…師匠が最近薬の減りが速いと仰ってたと思ったら……

貴方の仕業だったんですね!?」

 

 

うどんさんが叫んだ。

 

 

「!おいおい……一番弟子の兎さんよぉ。失敬してるのは普通医療に使わねえ

薬ばっかりだろう。其にお前!そこまでばらす必要はねえだろ!?」

 

「同じでいたくないですが、同じ春告精として互いを知っておくべきだと

思いましてね。さらけ出すのは意外と大事なんですよ?」

 

 

私はその言葉が胸に引っ掛かった。

 

互いを……知るためにさらけ出すんですか……?

 

 

 

 

 

「ですが、もっと情報は提供するべきでは?」

 

 

リリーホワイトさんは不意に懐からピンク色の最新の携帯機器を取り出して

少し操作して画面をリリーブラックに見せた。

 

其を見たとたん、リリーブラックの目の色が変わった。

 

 

 

「ゥアアアッッッ!!!???其、お……俺様の……!!!!!」

 

 

 

そして、リリーホワイトさんは其の画面をそのまま私達に見せてくれた。

 

 

其処にうつっていたのは目の前にいるリリーブラックが

まるで、今の姿から大人に急成長したかような姿だった。

 

此方に向かってポーズをとっている。

 

 

「いたるところにあるアジトの中で盗んで合成した薬を使って、

自分の身体を大きくして生活してるんですよ。妖精とは違うと自分を信じ込ます為にですね」

 

「~~~~~てめぇは変態か?何処まで私の事を……!!!」

 

 

当の本人は、沸点を既に通り越していた。

顔に青筋が立ち、赤い白眼が更に血走っていた。

 

しかし、次の一言は……

 

 

「此の写真は、貴方がメールに添付して送ってくれたものじゃないですか。

大きくなる薬を見つけたって自慢する為に」

 

「!?は……!???」

 

 

……悪い事企んでいるけど、其の分相当なマヌケと見た。

送信した写真の存在を忘れていたとは……

 

 

「~~~私を馬鹿にするのもいい加減にしろよ、

スペルも持たない雑魚妖精がぁ……!!!」

 

「其は貴方も同じですよね?」

 

「!!!」

 

 

……にしても、リリーホワイトさんがどれだけ嫌ってるのかが分かる。

相手が言う事をことごとく論破して行っているのだから。

おまけに暴露か皮肉を必ず付けくわえて。

 

……無視した部分もあったが。

 

 

「~~~~~~!おっと、こんな事を話をしに来たんじゃなかった……

話があるのは、カップルの……君達だ」

 

 

……どうやら、リリーホワイトさんの相手をするのは無理だと判断したらしく、

今度は私達に話を振ってきた。

 

 

「私がリリーホワイトを嫌ってるのは判ったろ?

だからソイツを使って実験をしてやろうと思うんだ。

お前達も、本当は邪魔で邪魔で仕方がないだろう?

だから……その……何だ……ソイツを此方に渡してくれると…

幸いなんだけどな……ダメか?」

 

「『憑坐の縛』!!!」

 

ゴオォォッッッッ!!!!!!!!

 

 

何故か恥ずかしがりながら要求を言ったリリーブラックの顔面に

私が指示して飛ばした半霊が直撃した。

 

 

「『イリュージョナリィブラスト』!!」

 

 

更にうどんさんの目から放たれた赤い光線が

追い打ちをかける様に彼女を飲み込んだ。

 

 

「!???ォゴッフェエエェエェェ……!!!!」

 

 

そのまま彼女は吹っ飛び、地を転がってうつ伏せに倒れた。

 

 

「……遠慮しておきます」

 

 

私は地面に伸びた妖精にこう言い捨てた。

 

リリーホワイトさんの身体を使って悪い実験をすると明言したからには

奴に彼女を渡すつもりは更々ない。

其に私達は、リリーホワイトさんを邪魔だとは微塵も思っていない。

 

リリーホワイトさんが静かに拍手をしてくれた。

 

 

いつの間にか私達の周りには、騒ぎを見にきた里の住民達が集まっていた。

 

 

 

 

「~~ゲフ……!!~~き、貴様等が…其の…気なら……俺にも考えがあるぞ!?」

 

 

リリーブラックが、いそいそと立ちあがると、

 

 

パチンッッ!!!

 

「来い!出番だぞ!!」

 

 

指を鳴らしながら怒鳴った。

 

すると、

 

 

 

 

 

 

 

 

シュタァッッ!!!!

 

 

上から誰かが落ちてきて、

私達と黒リリーの間に着地をした。

私達は身構えた。

 

青い目で腋の空いた白い服に、大きな剣と楯を持っている。

楯には大きな紅葉のマークがある。

 

 

(!此の人は……!)

 

 

私は白楼剣の柄に手をかけながら思った。

此の人物を前に書物の中で見た事があったからだ。

 

確か……妖怪の山で警備をしている、白狼天狗の一人か……!?

他力本願で、用心棒でも雇ってたのか……?

 

 

だが、次の瞬間、その考えは瞬く間に覆された。

 

 

 

 

 

「ヴォォオオォオォォォォオォォオオォォオオーーーーーー!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

突如吠えた。女の子の口から出るとは思えないし、

狼のものとでも思えない凄まじい咆哮だった。

 

私達や、取り巻いていた住民達は、たまらず耳を塞いだ。

 

だが私は耳を塞ぎながら、其の天狗のある変化を見ていた。

 

咆哮をあげるその口の中に並ぶ歯が、

みるみる尖っていき、真っ黒に染まっていった。

 

まさか……!

 

 

「マリス……!!」

 

 

うどんさんが私が想像していた、彼女の正体の名前を口にした。

 

 

「そうだ!!私はコイツ等と同盟を組んだのさ!!

てめえ等を……確実にブチのめす為になぁ!!!」

 

 

マリスが吠えるのを止め、楯と剣を構えた。

 

私も耳から手を離し、背中の剣を二本とも引き抜いた。

 

 

「其を聞いたからには黙ってられません……

そのマリスとともに、殲滅されて貰います!!」

 

「だから俺は死なねぇんだって!!今更謝ろうたってもう遅いぞ!!?

さてさて……さっきは失敗したが……今度こそ成功させてやる……!

成仏する覚悟は出来てるか!!えぇぇ!!???」

 

 




如何でしたか?

リリーブラックがひどい扱いをされていますが、
いつもの事ですので御安心下さい。

次回はまともな戦闘シーンになりそうです。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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Love Berserker◎

今回は、此の小説で初の戦闘シーンを紹介いたします。

……グロテスクと思うシーンもございますので、
閲覧される際は御注意ください。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪




YOUMU

~人間の里

 

マリスの突然の出現に里の住民達が騒いでいた。

 

 

「……とはいっても、てめえ等に武器なしじゃあ不平等だからなぁ……」

 

 

黒妖精は其の喧騒を気にもせず考え込んでいる。

 

すると思い直したように、

 

 

「おい!一式寄越せ!!」

 

ズボォァァァアアァ!!!!!!!

 

 

なんと、擬態したマリスの背中に両手を突っ込んだ。

 

 

「!?」

 

 

見ていた観客からざわめきが起こる。

私達も構える。何をするつもりだ……?

 

 

すると黒妖精は天狗マリスの背中に入れた手を思いっきり引き抜いた。

 

 

「!!!」

 

 

其の手には、黒い剣と盾を握っていた。

 

どちらも禍々しい黒色で統制されて、刀身や盾の表面に

蒼い目玉を模した装飾が施されていた。

擬態した身体の中で収まっていたとは思えない大きさだ。

 

 

「よっ……重い…な………!?」

 

 

其等を重そうに持ち上げるリリーブラック。武器と身体の大きさが

かなり不釣り合いだ。

 

 

「さてさて……最後にかわしたい言葉はあるか?一言だけ許してやる」

 

 

最後というつもりにはするつもりは…無論ない。

 

私は前に進み出ながら、後ろのうどんさん達に声をかけた。

 

 

「うどんさん…近距離は私に任せて下さい……

後ろから援護射撃をお願いできますか?」

 

「判りました……気をつけて下さい、みょんさん…!」

 

「私も頑張ります!!」

 

 

リリーホワイトさんがうどんさんの隣で返事をするのが聞こえた。

 

見えない二人の言葉を聞いて安心出来た半面、相手を見る目付が余計

険しくなるのが自分でも判った。

 

 

「!あぁあぁ………最後に告白かと思えば…作戦確認かよ……つれない野郎共だな。戦いしか頭にねぇのか?てめえ等が脳筋だろうが。俺はがっかりだぜ?」

 

「貴方達が負ける前提で作戦立てたんですよ。其位も察せられないのですか?

まあ、無理でしょうね……脳筋ですから」

 

「!?~~お前は、二人をスプラッタにしてからたっぷりといたぶってやる!!!」

 

 

リリーホワイトさんの言葉に対して返した、其の言葉を聞いた……

 

其の時だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブヂィンッッ…………!!

 

 

 

 

何処からかそんな音がした………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう……考えるのは止めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

REISEN

VS〈春を告げる妖精〉リリーブラック

〈攻めゆく閉塞心〉マリス・ソードロイド

〈守りゆく閉塞心〉マリス・シールドロイド

〈影のテレグノシス〉犬走椛

~人間の里

 

 

「……………」

 

 

……みょんさんがすっかり黙ってしまった……

 

戦いに備えて、精神を統一してるのでしょう。

 

 

「俺様が!!その奇麗な顔を切り刻んでやろう!!!」

 

 

不意にリリーブラックが天狗マリスの後ろから飛んできて、

みょんさんに向かって、マリスで出来た剣を突き出してきた。

 

みょんさんは即座にしゃがんでその一撃を避けると、

 

 

「……『成仏』」

 

 

其処から背中の楼観剣を引き抜きながら切り上げ、前と後ろに伸び切った

リリーブラックの両腕を、

 

 

ズバァアアァ!!!!!!

 

 

マリスの剣と盾ごと切り落とした。

 

 

「!?ぐわぁあああ!!!両腕がぁあぁ……!!?」

 

 

そして其のまま、みょんさんに足の裏で蹴り飛ばされ、再び地を転がった。

どうやら、剣を使い慣れていない様ですね……馬鹿な事を……

 

 

「!何シテルノヨ!?」

 

 

見ていた住民達の歓声の中、天狗マリスが後ろに転がって行った

黒妖精に向かって叫んだ。

 

当の本人はうずくまっていた。

 

 

「両腕を切り落とされたぁ……時間稼ぎをしてくれぇ……!!!」

 

「…再生スル気ネ……無茶スルカラヨ」

 

 

そして私達の方を向き、

 

 

「感覚ヲ狂ワセタラドウナルノカシラネ?」

 

 

突然、盾と剣を持つ手を入れ替えた。

 

 

「!?」

 

「本人モ出来ナイ事…持チ手ヲ変エル事モ出来ルノヨ?」

 

 

マズい……あのまま感覚を狂わされたまま剣を振られたら

みょんさんが対応出来ずに斬撃が…!

 

 

「妖夢さん!私達が狙撃しますよーー!下がって下さい!!」

 

 

リリーホワイトさんも、其に気付く事が出来ていたらしく

みょんさんに向かって声をかけた。

 

でも、其を聞き入れる様子がなかった。

 

 

「!みょんさん……?」

 

 

マリスがみょんさんに向かって走りだした。

 

みょんさんが持っていた楼観剣を鞘に収めた。

其でも動かない。

 

 

「みょんさん!早く……!!」

 

 

マリスが距離を詰めてくる。

 

其でもみょんさんは動かない。

 

マリスが剣を振り上げ、そして振り下ろしてきた。

 

其でもみょんさんは動かない。

 

 

「みょんさぁん!!!」

 

 

私は我慢できずに、右手の指をピストル状にして

みょんさんの後ろからマリスに狙いを定めた。

 

まさに斬られる……其の時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「……『霊斬』」

 

 

 

 

 

 

 

みょんさんは踏み込みながら、一度しまった楼観剣を素早く抜いて

 

 

ザァンッッッッ!!!!!!!!

 

 

すれ違いざまに敵の左手を剣ごと切り落とした。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

「ギォアァアァアァァアアァーーーーーーーー!!!!!!!!」

 

 

痛みで悲鳴が上げるマリス。どよめく住民達。

 

其の時、私は見てしまった。

後ろで痛みに呻くマリスを見る、みょんさんの目を……

 

 

みょんさんの目が……完全に光っていなかった。

まるで死んでいるかの様な目だった。

 

さっきまで何もなかったのに……何があったの…みょんさん……?

 

 

 

 

 

 

「~~~グゥ……ナラバ……!」

 

 

すぐに左腕を人外の形に再生させたマリスは足を発条のようにして高く跳躍し、

近くの民家の屋根に乗った。

 

私達や、観客達が目でその動きを追った。

 

 

「牙符『咀嚼玩味』ィイ!!!」

 

 

擬態しているマリスの黒い牙が、更に黒い雷を覆い始めた。

 

そして、

 

 

 

「マズ数ヲ減ラシテカラダァアアァーーーーーー!!!!!!」

 

 

 

何と、私達の方に飛んできた。

みょんさんを諦め、私とリリーホワイトさんの方に狙いを定めてきたらしい。

 

 

ブチブチブチィイ……!!!!!

 

 

マリスの口が皮膚の限界に逆らって大きく裂け、黒くてらてらと光る牙が

ズラリと並んでいるのが見えた。其の奥には無数の目玉がのぞいている。

 

 

あれで噛み付いて、浸食する気ね……?

 

 

私は片手でリリーホワイトさんを抱え、

あいている方の手の指をもう一度ピストル状にして、弾幕を発射しようとした。

 

と、

 

 

 

「!?」

 

「!!…ヨ…妖夢……!?」

 

 

私達の目の前に低い姿勢でみょんさんがいた。

素早い身のこなしで、私達とマリスの間に割り込んできたのだ。

 

 

さっき左腕を切りつけた楼観剣をマリスに向け、

 

 

 

「『霊突』」

 

 

 

踏み込みながら勢いよく突き出し、おぞましく開けられたマリスの口の中に

其の刃を思いっきり入れ込んだ。

 

 

ドズゥウ!!!!!!

 

 

そしてダメ押しにみょんさんは刀の頭を掌で強く叩き、更に相手の喉の奥深くに

一気に刀身を押し込んだ。

 

 

ズバァアァア!!!!!!

 

 

マリスの後頭部分から切先が出た。

 

急所を貫かれた天狗マリスが目を見開いているのが、みょんさんの肩越しに見えた。

驚愕した顔の擬態が解け始め、黒ずみ、沢山の目玉が見開かれ始めた。

 

そして、溶けて黒い霧のようになり消滅していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みょんさんは足下に黒い霧が充満する中で黙ったまま、楼観剣についた

黒い染みを、刀を振って払い落した。

 

 

「妖夢さん……何があったんですかー……!?」

 

 

リリーホワイトさんの声に気付き、此方を振り向くみょんさん。

 

瞳は黒かった。何も見てなかった。

 

私は悲しかった。

 

 

「みょんさん……!!」

 

 

私はみょんさんの肩を掴んだ。私を見てほしかった。

正気に戻って欲しかった。

 

其でも、みょんさんは何も見てなかった。

 

リリーホワイトさんや、住民達が心配そうに見ていた。

 

 

「みょんさぁん……!!!」

 

 

顔をうつぶせる。私は悲しかった。

 

もう…見てくれないんですか?

 

 

「正気に戻って下さい……みょんさぁん……!!」

 

 

 

 

 

「!//う、うどんさん………!」

 

 

声を聞いて、顔を上げる。

 

 

みょんさんが私を見ていた。目も死んでいなかった。

 

顔を赤らめながらも、しっかり見てくれていた。

 

 

「みょんさん……!!!」

 

 

安心したからか、私の目から涙があふれた。

 

此は…嬉し涙…ね……?

 

 

「良かったです、いったい何があったんですか……?」

 

 

リリーホワイトさんがみょんさんに訪ねた。

 

みょんさんは表情を暗くした。

 

 

「…私、私達を殺すと脅されてから……其処からの……あの……」

 

「……記憶ですか?」

 

「!!は、はい……//……そう…です……」

 

 

 

「私は…頭に血が上ってたんだと思います……私だけでなく、

うどんさんも殺すといわれて……」

 

 

私はみょんさんの肩をもち直して、じっと見た。みょんさんは其に呆然として

私を見つめ返す。

 

自分は言った。

 

 

 

 

 

「御願いです……怒りでなく…貴方自身で守って下さい……!

怒りにまみれた貴方は……私は見たくないんです………!」

 

「!……すみません……」

 

 

みょんさんが申し訳なさそうに言った。

 

私は頬が緩んだ。

 

 

「でも、貴方に何度も助けられた……もう、数え切れないほどに……

ありがとう……みょんさん……」

 

「うどんさん……!」

 

そして周りを見渡した。

 

 

リリーホワイトさんは笑顔で見ていた。

 

住民達も、その後ろで大歓声を上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?キャァアァーーーー!!!」

 

「!!?」

 

 

一人の住民の突然の悲鳴で振り向いた先……足元の薄れていく黒い霧の中から、

ゆっくりと立ち上がった影があった。

 

 

足元の霧が渦巻き、その影を取り巻き始めた。

 

 

「……ヘ……ヘヘヘ……ヘヘヘヘヘ………!!」

 

「リリー…ブラック…!」

 

 

声からして判った。

私達は今度は並んで構えた。取り巻く薄い黒霧ではっきりとは見えない相手を

見据える。

 

 

 

しかし其の霧が晴れ、はっきり見えた敵の姿………其はもはや、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「感動ノ抱擁は……済んダか、リア充共?」

 

 

 

 

リリーブラックという身体を突き破った、化け物だった。

 

 

 




如何でしたか?

今までのマリス達の戦いでは、セリフだけで詳しい様子が分かりませんでしたが、
詳しく書くと実際はこんな感じの戦いを繰り返していました。

相手が擬態していた偽者とはいえ……かなりエグいです。

次回は、リリーブラックと対峙します。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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浸食の脅威

今回は、マリスによって恐ろしい変貌を遂げていく
リリーブラックとの戦闘を紹介していきます。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪




REISEN

VS〈影を告げる妖精〉ケイオスブラック・アルフ

~人間の里

 

 

私達は、黒い霧から立ち上がった妖精を見据えていた。

 

 

その姿は、妖精の時とは比べ物になれないほどに大人びていて、身長も私達を

遥かに上回っていた。

リリーホワイトさんが見せてくれた、あの写真と同じくらいの頭身だった。

 

だが、その長く伸びた両脚は不自然に紫色に染まっていた。

切り落とされた筈の両手は、更に人の様な手ではない異端の化け物のものに

なっていた。

 

透明の妖精特有の羽も大きくなり、うす紫色に変わっていった。

 

 

「グギヒヒヒヒヒヒ………」

 

 

小首を方にむかって少し左に曲げ、ニヤリと邪悪に笑ってきた。

顔の左半分が髪ごと、両腕と同じ紫色に染まっている。

 

其の時、私達は其の浸食された目の部分を見てしまった。

 

 

 

 

 

ありえない……左目の眼窩に、目玉が三個も入っているなんて……!?

 

まるで無理やり押し込んだ様に入れられた其の左目達は、

充血したリリーブラックのものではなく、瞳が青かった。

其等がそれぞれ違う方向を見ていた。

 

思わず口を押さえて吐き気を堪える。

あれが、マリスに身体を委ねた結果……?

 

 

「!大丈夫ですか、うどんさん……!?」

 

 

前にいるみょんさんが心配そうに声をかけてくれた。

 

私を面白そうに見ながらマリス妖精が言った。

 

 

「癒着って言葉ヲ知っテるカ?アレっテ便利だよナぁ??…治りを早メテくれル…妖精ノとろい

自然治癒よりもナ……妖精でアる事を忘れさせてクれるゼ」

 

「…自分で…マリスを摂取したのですか…!??」

 

 

よく見ると両腕には、さっきまで持っていた剣と盾の特徴があった。

 

さっき持っていたマリスの剣と盾を、自分の腕代わりに…!?

大人の体形になったのは、おそらく其の浸食での変異が原因……

 

なんて…馬鹿な事を……!

 

 

「……オぉおォ……俺が醜いカ?馬鹿ナ事をしタと思っテるか?

だがナ、変貌ハ其なりニ覚悟してイたし、私にとっテ得にナルなら、其は馬鹿ナ事にハ

ナらねぇヨ」

 

 

そう言うと黒妖精は姿勢を低くし、

 

 

 

ビィィィイィイィィイィィーーーーーーー!!!!!!!!

 

 

 

羽音を立てながら飛んで来た。

 

 

「グヒヒヒヒ……モう雑魚だなンテ呼ばセて堪ルか!!

俺ハ……妖精とイウ枠を……越えテ見せタんだよォぉお!!!!!」

 

 

そう喚きながら右手の、剣を四方向に分けた様な四本爪を突き出してきた。

 

するとみょんさんが私達の前に進み出て、

 

 

 

「『炯眼剣』!!」

 

 

カキィィィーーーーーン!!!!!!

 

 

 

即座に抜いた白楼剣で、爪を受け止め、

 

 

 

「カウンターです!!」

 

 

 

もう一方の楼観剣で其の肘を叩き切った。

 

 

 

キィィイィィーーーーーーン…………!!!!!!

 

 

 

だが其の刃は、魔精の肘に喰い込まず、弾き返された。

 

 

「!?堅い……!」

 

「へっ……ソウ何度も腕ヲ斬リ落さレるとでも?」

 

 

今度はリリーブラックの盾の様な左腕の先が割れ、四本の指の様に折れ曲がり、

其をみょんさん顔に突き刺そうとした。

 

今のみょんさんは剣を弾かれて隙が……危ない……!!

 

 

私は思わず指をピストル状にして、敵に弾を撃った。

 

 

 

ガガガガガッッッッッッッ!!!!!!!

 

 

 

売った五発は全弾、黒妖精の頭を正確に撃ちぬいた。帽子に穴がその数だけ開く。

 

 

「!!!カッ…………」

 

 

マリス妖精がよろめいた。

 

 

「みょんさん、今のうちに此方に…!!」

 

「!助かります…!」

 

 

みょんさんが隣に戻ってくる。

其の間も、私はみょんさんを後ろから襲わせないように敵をマークしていた。

 

魔精はしばらく痙攣してたが、すぐに体勢を立て直した。

 

 

「…フゥ…刺激的な五発ダッタな……エ?オイ」

 

「頭を撃ち抜かれて平気でいられるとは…驚きですね……」

 

「ア?妖精とイう種族でハ、日常茶飯事だろウが??」

 

 

そして、左目の三つの蒼眼が一斉にこっちを向き、

 

 

「一匹ずつハ面倒ダが……コイツはどウダロうなぁ!??」

 

 

バキバキバキィィイィイィ…!!!!

 

 

黒妖精の紫色の右腕が肘まで四方向に裂けた。其の腕を此方に向けると、

 

 

 

 

「末永ク……爆散しやガれぇエぇエエーーーーーー!!!!!!!!!」

 

ドォォォオォォ!!!!!!!!!

 

 

 

其処から紫色の大玉弾幕を一発、発射してきた。

 

 

「うどんさん!もう一度任せて下さい!!」

 

 

みょんさんが再び前に来て、

 

 

「『反射下界斬』!!!」

 

 

青白い結界を発生させ、大玉を弾いた。

 

 

「!!」

 

 

弾いた大玉は上空に飛んでいき……

 

 

 

ドッカァアァァァアーーーーーーーーーーン!!!!!!!!

 

 

大爆発を起こした。

 

黒妖精は舌打ちをしながら、

 

 

「そウか……やッぱり私ノミサイルの弾イたのハ、お前か…」

 

 

其の言葉に私はピンときた。

 

みょんさんが放った言葉から、みょんさんも同じ考えだった様だ。

 

 

「!あの急襲してきたマリス…貴方の仕業だったんですね!?

リリーホワイトさんは、アレのせいでショック症状を起こしたのよ!?」

 

 

だが、

 

 

「!ソリャァ、俺様ニとってハ朗報だ!!アハァハハハハッハッハ!!!!!!!!!」

 

 

里に、哄笑が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

バンッッッッッ!!!!!!!!!!!!

 

 

気がつけば、私は左手をピストルにして三個のうち、一番目尻側の左目を

撃ち抜いていた。

 

 

「アグァァァアァアオォオォオオォォ!!!!!!!!!!」

 

 

哄笑がたちまち悲鳴になり、左目を左手で抑えながら敵は跪いた。

 

 

「うどんさん……?」

 

 

みょんさんが私を心配そうに見ているのが判った。

でもその時私は、多分苦虫を噛み潰した様な顔をしてるに違いない。

 

みょんさんが怒りで我を忘れていたのも判る気がする。

 

 

マリスは……本当に姑息で、狡猾だ。

自分の怨みを晴らすために手段は選ばない。

 

 

魔精が立ち上がった。手を離した顔左部分には元の様に三つ目玉が動いていた。

あの間にもう再生したらしい。

 

 

「~~~痛ってェな、クソガキがァ!……一度痛い薬ヲくれテやラネぇといけネえ様だナ!?」

 

 

そう言うと、右手の砲台を真下の地面に向けた。

 

 

「さぁて、コイツを最大パワーデ撃つト、どうナるのカな…?」

 

「!?何を……」

 

 

私は言葉をよどませた。地面を撃とうというの…!?

でも…其の体勢では、撃つ自分ごと……

 

リリーブラックの腕の砲口から、黒色の光が漏れてきた。

 

 

 

「!!」

 

 

嫌な予感がした。

 

 

「まさか………道連れ!?」

 

「ソウ……忌々しイ妖精トマリスの驚異ノ再生力デ、俺様は完全ニ死なナくナった……

死ぬノハ……オ前達だケだァあ!!!」

 

 

其を聞いた周りの住民達がパニックを起こしていた。

 

 

 

 

 

「そんな事…させませんよ!!」

 

「!みょんさん!!」

 

 

みょんさんが走りだした。手には白楼剣が握られている。

 

向かってくるみょんさんに向かって、半分化け物の妖精が吠えた。

 

 

「モウ遅い!!直接マリスヲ取り込んダ、此のリリーブラック様がァ…!!

貴様等をぉ…里ゴトあノ世マで送っテやるよォお……!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「其処までだよ」

 

 

声が聞こえた。

 

そして次に聞こえたのは、

 

 

 

 

 

 

 

ズァアズウゥゥウウゥゥ!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

魔精の身体が、頭から真っ二つにされた音だった。

 

みょんさんがあと少しのところまで迫った瞬間の出来事だった。

 




如何でしたか?

突然の乱入者です。が、リリーブラック……改め、ケイオスブラックを
攻撃したところから味方だと思うのですが、或いは……

次回でマリス達との戦いも終わり、此の章は終結します。

其では、次回もゆっくりしていってね♪


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White and Darkness◎

今回で、ケイオスブラックとの対決が終わり
此の章は終了します。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


 

【挿絵表示】

 

 

 

YOUMU

VS〈影を告げる妖精〉ケイオスブラック・アルフ

~人間の里

 

何が起こったか判らない私の前で、化け物と化したリリーブラックが左右二つに切り離されていた。

 

当の本人も表情から、完全に予想外だと思っていたようだった。

 

 

「キキャァァアァーーーー……………」

 

 

擦れ声とともに裂かれた身体は二つとも私の前に、ばったりとうつ伏せに倒れた。

 

 

 

 

 

 

「外見が随分と変わって一瞬誰かと思ったけど……」

 

 

其の後ろに誰かが立っていた。

 

 

「またあんたかい……リリーブラック」

 

 

赤いトンボでツインテールにしており、癖のある赤髪。

服装は半袖にロングスカートの着物のようなものを着用して、銭の付いた腰巻をしている。

 

そして手には大きな鎌。

 

 

 

 

 

「!小野塚小町さん!」

 

「!おやぁ、アンタ達かい……噂には通り、やはりラブラブの様だね」

 

 

いつの間にかうどんさんとリリーホワイトさんが隣に来ていた。

私は顔が赤くなるのを感じて、隣に目を向けるとうどんさんも顔を赤らめていた。

 

慌てて話をそらした。

 

 

「~~ど、どうして此処に…また、サボりですか?」

 

「いや、ばっちり仕事さ…通報が来たんだ。此処でコイツによる襲撃があったってね」

 

 

小町さんが動かない魔精の左半身を、鎌でつつきながら言った。

 

 

「通報してくれたのが誰か……知ってるかい?」

 

「私です」

 

 

声を出し、手が挙がる。其は……

 

 

 

「!リリーホワイトさん!?」

 

「別のマリスが最初に吠えた時に私が通報したんです。咆哮もばっちり聞かせてあげましたしね」

 

「!もう一匹いたのかい!?ソイツは今……?」

 

「妖夢さんと鈴仙さんが倒してくれました」

 

「そうかい……とにかく、三人とも礼を言わせて貰うよ」

 

 

小町さんが礼を言った。

 

 

 

 

 

 

すると黒妖精の切り口から黒い手が、互いの半身に向かって大量に伸び、

中央でがっちりと握りあった。

 

 

「!!!」

 

 

 

手はそのまま二つの半身を互いにに引きよせ、中央で身体をくっつけ完全に癒着した。

 

 

「マダダァ……終ラセルカァア……!!!」

 

 

其のまま立ち上がりながら剣と盾の腕を構えて私達の方に伸ばしてきた。

 

 

「おっと、そうはさせないよ!?」

 

 

だが、小町さんが其の背中に鎌の刃を突き立てて、其のまま引き寄せて組み伏せた。

 

 

「!?エグェ……!??」

 

「もうあんたを逮捕するのは飽き飽きしてたのに……今度は化け物になってるじゃないか……面倒くさいね」

 

 

 

「じゃ、早速コイツの出番かね……?」

 

 

小町さんが魔精を組み伏せたまま、懐から取り出したのが……

 

 

注射器の様だ。中味に乳白色の液体が入っているのが判った。

 

 

「喰らいな、化け物!!」

 

 

其のまま敵の首筋に荒く突きさした。

 

 

ドスゥ!!!!!

 

「!??!ギォアァアァアア……!!!????」

 

 

其の瞬間変化が起こり始めた。

 

身体の紫色がみるみる引いていき、腕の剣や盾も消滅して普通の手になった。

三つの目で肥大していた眼窩も小さくなり、元の目に戻っていった。

 

元の大きさに戻った黒妖精は、再びそのままばったりと倒れた。

 

 

 

「ほう……なかなかの効き目だねぇ…こいつぁ」

 

 

首から注射器を引き抜きながら、小町さんが呟いていた。

 

うどんさんが目を丸くした。

 

 

「~~そ、其は……!?」

 

「驚いただろう。最近完成されたといわれるマリス用ワクチンのプロトタイプだ」

 

 

小町さんは空になった注射器を振って、得意そうだった。

 

うどんさんが歓喜の声を上げた。

 

 

「師匠……ワクチンを完成させたんですね!?」

 

 

だが私は疑問の声を上げた。

 

 

「ですが……どうして貴方が其を……?」

 

「!嗚呼、其はだね……」

 

 

小町さんが其の問いに対して説明を始めた。

 

 

「前に、地獄の三途の川のほとりで変な黒い三頭犬二匹と遭遇してね……退治したが、其の時地上では、アリスの心の闇……えっと………何だっけな……」

 

「……マリスですか?」

 

「!そう、それそれ……其のマリスという化け物がうろついて、永遠亭ってとこが其の本体

の情報を求めているっていう事も聞いた。

本体は判らないが、一応報告っという事で其で映姫様の許可を貰って行ったところ、数本分けてくれたのさ」

 

 

地獄にまでマリスが侵攻してたとは……止まる様子は無いのか……

 

私は苦虫を噛み潰していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ………!!」

 

 

リリーブラックが気が付いた様だった。痙攣しながら身体を動かしている。

 

するとリリーホワイトさんがフヨフヨと其処に近付いていった。

 

 

「リリーホワイトさん……!」

 

 

私が呼び止めようとした時には、既に拘束されていたライバルの前にたどり着いていた。

 

 

「私を滅するという方法を変えない限り、何度やっても同じ事ですよ?」

 

「~~また……今年も……負けてしまったのかぁ……!」

 

 

リリーホワイトさんの顔は見えなかったが、私達には判った。

最初にライバルと出会った時と同じ、あの何所までも続く様な無表情に違いない。

 

 

「此処までですね、リリー『ブラック』……牢獄で大人しくしてて下さい」

 

「……………」

 

 

黒妖精は黙ってしまった。だが歪ませた表情には目の前にいる

白妖精さんに対する憎しみしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、連行の準備をしな!」

 

「かしこまりました!!」

 

 

小町さんが立ち上がって退いた直後には、数十匹の裁判妖精達がリリーブラックを素早く縛っていた。

黒い妖精達が、黒い妖精を拘束した。

 

 

「さて、里の皆には迷惑をかけたな……道を開けてくれないかい?」

 

 

人だかりが別れて道が開いた。

 

 

「!そうそう……言い忘れていた事があった……!」

 

 

小町さんが何か思い出したかのように私達の方に歩いてきた。

 

そして私とうどんさんに近付くと、私達の耳元でこう囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前さん達も、上手くやっていきなよ?」

 

 

顔を離した小町さんはウィンクをしていた。再び顔が赤くなるのを感じる私達。

 

いそいそと戻って行った小町さんは号令をかけた。

 

 

「よし、じゃあ出発するよ?最初の目標は無縁塚だ!!」

 

 

そして、黒い魔精だった妖精を連れ、退場して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったんですね……」

 

「私達も行きましょう」

 

 

騒動が終わり、まばらになりつつあった人だかりから、私達も離れた。

 

其の時私の左手は、うどんさんの右手は自然につながれていた事に私達は気が付かなかった。

 

 

 




如何でしたか?

此でリリーブラックが逮捕、退場という結果になりました。

次回から新しい章に入り、やっとうどみょん達だけの
ラブコメ的展開に入っていきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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魔精の解説①
紹介されてやる!感動して泣きやがれぇ!!◎


今回は、此の作品の中でのリリーブラックを解説していきます。
妖夢達と戦った時の浸食された方の解説もしようかと……
いわゆる「影達の解説」の出張版です。

他の皆様の作品、イラストではツンデレ、リリーホワイトとは可愛いライバル関係、百合の関係と、素晴らしい設定が多い中、僕のところはどうしてこんなに堕ちてしまったのか……

そして今まで散々な憂き目を見たあげく逮捕されての退場。
…せめて紹介してあげないとなんだか可哀想な気がしまして……

ですが此の解説で、もしかしたら先の展開が判ってしまう可能性がありますので、
見て下さる方は、気を付けて御覧下さい。


前回、
「次回から新しい章に入り、やっとうどみょん達だけのラブコメ的展開に入って」いく予定だと
軽く言ってしまいました。期待しておりました皆様には
本当に申し訳ございませんでした。

次回から本当にラブコメ展開に入っていきます。
次回以降に是非、御期待下さい!






〈春を告げる妖精〉リリーブラック(Lily Black)

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

リリーホワイトと同じ春告げ晴。

 

しかし、性格は正反対、春告げ晴なのに逆に春の崩壊を望んでいる。

 

其の目的はリリーホワイトの衰退、そして彼女を失脚させ、

一年でも多く春を勝ち取ろうとする事である。

そしてリリーホワイトが負ければ、春を戻し、謳歌しようという算段らしい。

 

リリーホワイトを倒すためなら手段を選ばず、時には其の計画に他者の命が

かかっていても厭わない。此の事により地獄からは常に警戒視されている。

 

 

マリス出現までにした悪事の一例(本人談)

 

 

・リリーホワイトに爆弾の入ったプレゼントを届けた。

 

・リリーホワイトの居る里に、妖精と合成薬による生物兵器を数匹けしかけた。

 

・リリーホワイトの棲み家があると言われる山の近くの桜の木を全て

チェーンソーで斬り倒した(自分も弱体化するにも関わらず)。

 

・リリーホワイトの棲み家を捜し、完膚なきまで破壊しつくそうとした。etc……

 

 

だが目標であるリリーホワイトのフリーダムさ故、計画はいつも失敗し、

其ばかりか其の代償はいつも自分に返ってくる事が多かった。

 

また、自分の計画を邪魔した者は、弱みを掴んで徹底的に叩きのめさないと

気が済まない性質である。

 

其の性格と横暴のせいで、幻想郷の住民からの評価は著しく低い。

時には人間の大人たちはおろか、子供からも鬱憤晴らしの捌け口にされるほど。

 

 

容姿はリリーホワイトを黒くした姿で、目は充血、目の下にはクマが出来ている。

此は度重なる実験での薬品の煙が影響していると見られる。

 

実は左利きだったりする。

 

一人称は「私」、「俺」、稀に「俺様」と安定しないが、

怒ると後者の二つが多くなる。

 

口調は至って尊大。其も相手が誰であろうと関係が無い。

 

趣味は、悪党らしく泥棒と幻想郷の人物の情報収集である。

 

盗みは主に永遠亭にある医学用の薬に対して働き、

其等を違法に調合し、自分の計画の一端を担っている。

 

情報収集とはいっても、対象の名前は覚えられない…というか覚えない。

理由は本人曰く「弱点が知りたいだけで、名前は興味無い」との事。

 

 

彼女は幻想郷のあちこちに自分のアジトを作っており、其等を点々と渡る生活を

繰り返している。

アジトの中には、盗んだ薬や最新鋭の機械、捕まえた妖精を閉じ込めた容器が数多く存在する。

 

また、自分が妖精だという事をコンプレックスとし(人間達に弱い者扱いされるのを嫌っているため)、薬で擬似的に身体を大きくして大人の女性に近づけて活動しているらしい。

但し、周りの目を気にしてか自分のアジトの中でしか大きくしないらしい。

 

 

そして今回、マリス達と出会い、結託するという事になった(ブラックはホワイトを、マリス達は妖夢と鈴仙を狙うため)

マリス達より先に悪事を働いていたためか、彼女達を「後輩」呼ばわりしている。

 

意外にも愛についてこだわりがあり、生半可な愛は認めない主義。

其の為、「百合」という彼女にとってはタブーに等しい恋愛をしていた

妖夢と鈴仙を陰では許せなかったらしく、リリーホワイトと纏めて付け狙っていた。

 

 

現在では、遂に妖夢達と真っ向から対峙したものの敗北、

通報により地獄の者に逮捕され、其のまま地獄で拘留されている。

 

 

 

 

 

〈影を告げる妖精〉ケイオスブラック・アルフ(Chaos Black-α)

〈リリーブラック+マリス・ソードロイド+マリス・シールドロイド〉

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

対峙した際、両腕を妖夢に切り落とされたリリーブラックが、

最後の手段として事前まで持っていたマリス・ソードロイド、

マリス・シールドロイドを腕代わりに癒着させ、其のまま浸食された姿。

 

其の浸食の変異の影響か、小さい服のまま身体が大人の姿となっており、服の所々が

破れている。

 

薬によって大きくなったリリーブラックと体格は変わらないが、

身体の所々が浸食により紫色に変色、右目の眼窩にはマリスのものと思われる

三つの目玉があるというグロテスクな姿となった。

素材が素材のため、腕はとてつもなく堅くなっている。

 

両腕となった両方のマリスを展開し、新たな四本の指を獲得した。

未展開時は、普通の剣と盾として使用が出来る。

 

基本は其の両腕による接近戦を得意とするが、剣となった腕を

刀身全てを展開し、其処から弾幕を放つという芸当もこなす。

 

そして妖精としてもともと持っていた再生能力とマリスの再生能力が合わさり、

真っ二つになっても再生しすぐに活動出来る程の、とんでもない生命力を有する様になった。

 

通常マリスに浸食される時は苦しみを伴う事が多いが、

リリーブラックはあまり苦しんでいない。

恐らくマリスと結託していただけでなく、其を前々から覚悟し、逆に所望していた

為だと思われ、むしろ楽しんでいる様子も垣間見える。

 

 

名前の由来は「純粋な」を意味するリリー「lily」に対して、

「混沌の」を意味するケイオス「chaos」、そしてアルフは最初のギリシア文字である

アルファ「α」の最初の三文字である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり……此はマリスによる彼女の初期段階の変異と言える。

 



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「みょんさん、私………」
サンセット・スウィンガーズ


今回から、うどみょん達でほのぼの、ギャグ、
そして恋愛色強めで御送りしていきたいと思います。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


YOUMU

~無名の丘

 

 

 

 

 

 

 

「…………うどんさん……」

 

「はい…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……奇麗ですね」

 

「そうですね………」

 

 

 

 

 

 

私達は今、木から二本の紐に吊るされた、不思議な一枚の板に乗って

其処から夕陽を見ていた。

 

 

此処は、幻想郷の僻地といわれる『無名の丘』。

 

沢山の鈴蘭が咲き誇り、丘の一番高い処には一本の大きな木が植わっている。

私達は、其の木の太い枝に板を吊るして座っていたのだ。

 

近くにある妖怪の山よりは低いが、幻想郷を見渡せる絶景だった。

 

うどんさんは過去に起きた花の異変の時に一回、此処を訪れた事があるらしい。

其の際此処で毒を撒く、生きた人形と戦ったとか。

だが私達が訪れた時には、其の姿は見当たらなかった。

 

座っている私の膝元で、リリーホワイトが座っていた。眠っている。

 

春減少による暴走の最中での邂逅、長時間の移動、リリーブラック達の襲撃……

私達と出会ってから今日一日大変だったからな……

 

私はリリーホワイトさんを見下ろし、座っていた板にも目を落とした。

 

 

実は私達が座っている此の板は、最初から木に吊るされてはいなかった。

此の木の傍に来た時、根元に紐と板の一式が置かれていたのを組み立てたのだ。

 

其の傍には置手紙もあった。

 

 

 

【素敵な御二方へ

 

此、外の世界では『ブランコ』というらしいわよ?

本当はもうちょっと豪華なの用意したかったけど、流石に時間が無かったわ。ゴメンね。

吊るす作業は大変だけど、其処からの風景は格別だからね。

 

頑張ってね♪私も、幻想郷の為にやるべき事をやらないと……

 

 

                   ロマンチックなひと時を♡

                       素敵なスキマさんより】

 

 

 

 

紫様………紐を握る力が強くなった。

私達の為に、わざわざ………

 

だが、最近紫様からの連絡が無い。どうなされているのだろうか……

今も何処かで、マリス達と戦っているのか……或いは……

 

 

!いや……そんな事は考えないようにしよう……

あの御方は、此の幻想を築かれた賢者だもの…そんな事が起きる筈は……

 

 

「みょんさん……」

 

「!どうされました……?」

 

 

唐突に名を呼ばれ、隣に目を向けるとうどんさんが此方を見ている。

 

 

「仮にです……仮にですよ?私が……」

 

 

そう言うと、うどんさんは右手で自分の右目を隠し、左の人差し指で左目尻を

思い切り横に引き延ばした。

 

 

あ……此の顔は…………

自分の顔が青ざめていくのが判った。

 

そしてうどんさんは口を横に伸ばし、

 

 

「スタァァァァァズ………!!!!」

 

「ひぃい……!!」

 

 

意外に低い声が出てきてびっくりした。

おもわずブランコから転げ落ちそうになって、紐に捕まった。

 

 

「!あぁあ……!大丈夫ですか……!?」

 

 

うどんさんが顔から両手を離して、片手でリリーホワイトさんを、もう片方で

私を落とすまいと支えてくれた。

腕に力を入れ、何とかブランコの上に戻る事が出来た。

 

激しく揺れたにも関わらず、リリーホワイトさんはスゥーッと、大きな寝息を立てた。

 

 

「すみません……フフフ……にしても私の此のネタ、判りましたか?」

 

「ええ……紫様が外の世界から買って来ましてね……

私と幽々子様、双方が暇だった時に悲鳴を上げながら遊びました。

よく…彼で死んだものです」

 

 

暫くの沈黙。

 

 

「………フ…フフ……」

 

「フフフフ……」

 

 

堪え切れずに二人で笑った。私達以外誰もいない丘に私達二人の笑い声だけが

響いていった。

 

 

するとうどんさんが笑うのを止めた。私も止めてしまう。

 

そして暫く二人で夕陽を見ていた。

 

 

 

 

 

 

「もし……もしもですよ?」

 

 

徐々に赤くなる陽の光に目を細める私の耳に、うどんさんの言葉が入って来る。

 

 

「私が…再び『孤毒』によって堕ち、今度は貴方を襲うなら………どうしますか?」

 

 

其の言葉に驚いてうどんさんの方を見ると、彼女もまた私を見ていた。

私が映る赤い瞳には、冗談とは別に不安の色も見えていた。

 

其の目を真っ直ぐに見て言った。

 

 

「……何と言おうと…何をしようと……うどんさんはうどんさんです。

ですが……もう、うどんさんをマリスに喰わせはしない……」

 

 

私は……うどんさんに擬態したマリスを叩き斬った、あの迷いの竹林で誓ったんだ。

 

もう…幻覚には騙されない……狂ってでも良い……

 

 

……守り通すんだ、と……

 

 

「私が……御守り致します……どんな苦難が襲おうとも……」

 

 

 

……共にいるんだ、と……

 

 

 

「例え…此の幻想が滅しようとも、貴方だけは滅ぼさせはしません!魂をかけて……絶対に!」

 

「うどんさん………」

 

 

うどんさんが私の胸に寄り添ってきた。

私は其を優しく受け止め、優しく抱きしめた。

 

其の時、寝ていたリリーホワイトさんから、微かに春の匂いが漂った気がした。

 

 

遥か遠く、静かに沈みゆく夕陽だけが私達を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが……

 

 

 

 

!?…………

 

 

「!……どうしました、みょんさん?」

 

 

うどんさんは私の変化に気付き、声をかけた。

 

私は口をうどんさんの耳に近づけ、小声で言った。

 

 

「………気を付けて下さい……気配がします」

 

 

私がそう言うと、うどんさんも目だけで周りを見渡し始めた。

するとすぐに其の顔つきが変わっていった。どうやら気付いた様だ。

 

こんな僻地までも……追手か……?

 

 

 

 

何処に居る……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!みょんさん!上!!」

 

 

弾かれる様に上を見上げた。

 

私達の居る木を囲んで紫色と黄色の渦巻き状に彩られた、五つの球体があった。

其の球体の中心にそれぞれ大きな目玉があり、全て此方を見ている。

 

 

「!うどんさん、リリーホワイトさんを……!!」

 

 

即座に私の膝からリリーホワイトさんが抱えあげらげた。

 

 

「くっ……!?」

 

 

囲まれている……其も、今まで見た事もない敵だ。

 

私達は急いでブランコから飛び降りた。

木の根元に近寄り、置いていた剣を取ろうとした。

 

其の時、声が聞こえた。

 

 

「見つけた……頼める相手……信用できる相手……」

 

「!?」

 

 

その言葉に剣を取ろうとした手を止めた。

すると私達を包囲していた五つの球体の後ろから、それぞれ黄色の糸が伸びて

私達の目の前で交差し、混ざり合って一つの形が造られた。

 

 

「!………少女!?」

 

 

数秒の後には、目の前に黄色い輪郭でしかないが女の子がしっかりと立っていた。

私は其の姿をはたと睨んだまま言った。

 

 

「貴方……マリスですね?」

 

 

其の輪郭の口の部分が動き、声が発せられた。

 

 

「違う……マリス……違う……私……ユウゲンマガン……」

 

「!ユウゲン……?」

 

「マガン……?」

 

 

私達は思わず復唱した。……彼女の名前か……?

 

声は続けて聞こえてくる。

 

 

「……魔界の……者……」

 

「!魔界?……!神綺さんの!?」

 

 

神綺さんが創ったとされる魔界の住人が……どうして私達のもとへ……?

 

 

「……神綺様……御存知……感心……」

 

 

輪郭しかない少女が嬉しそうに両手を合わす様に動いた。

だが、油断は出来ない。

 

 

「私達を此処まで追ってきたという事は……」

 

 

私は止めていた手を動かし、傍に置いていた白楼剣を持った。

そして鞘から抜き、黄色い線の少女に突きつける。

 

 

「私達を始末するつもりですか!?」

 

 

相手は驚いた様に慌てて両手を振るように動いた。

其の動きに合わせて浮遊する目玉も、微かに揺れ動く。

 

 

「違う……謀殺……違う……」

 

「でしたら、どうして私達の処へ……!?」

 

 

うどんさんの言葉に、振っていた手を下ろして無表情の様になった。

……様な気がした。

 

 

「……頼みあって……来た……」

 

「!頼み…!?」

 

「尾行……過激……謝る……御免……」

 

 

後ろをちらっと後ろを見て二人の確認をした。

手をピストル状にして相手に向ける、うどんさんの片手に抱かれて

リリーホワイトさんが寝ているのが判った。

 

前に視線を戻して魔界の住民を見ながら、剣を戻して木の根元に戻した。

 

 

「……何です、頼みとは……?」

 

 

一応信用してみる。だがもし、少しでも変な動きをすれば………

 

 

「言う……其の前に…………」

 

 

ユウゲンマガンと言った彼女の右手の輪郭が、私達の傍にあるブランコを

指差すみたいに動き、

 

 

「……一緒に乗って……良い?」

 




如何でしたか?

再び魔界から旧作キャラが新登場です。
其も正真正銘、東方第一弾「東方靈異伝」からです。
セリフは完全に予想です。

そして僕は二人に、どれだけしがらみを用意すれば気が済むんでしょうか……?

次回は、うどみょんがユウゲンマガンの相談に乗ります。
……ギャグ回になりそうな気が……

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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幸福の黄色い糸

今回は、二人が突如現れた魔界人から頼みを聞きます。
かなり短くなっています。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


REISEN

~無名の丘

 

 

 

 

 

 

 

「…………うどんさん……」

 

「はい…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうなっていますか、私?」

 

「判りません………」

 

 

 

 

 

 

私達は今、木から二本の紐に吊るされた、不思議な一枚の板に乗って

其処から夕陽を見ていた。

 

 

此処は、幻想郷の僻地といわれる『無名の丘』。

 

沢山の鈴蘭が咲き誇り、丘の一番高い処には一本の大きな木が植わっている。

私達は、其の木の太い枝に板を吊るして座っていたのだ。

 

近くにある妖怪の山よりは低く長時間居座ると危険そうだが、幻想郷を見渡せる絶景だった。

 

私は過去に花の異変の際に二回、内一回は師匠と共に此処を訪れた事がある。

そしてどちらも此処で毒を自在に操る人形と遭遇した。

でも今回私達が訪れた時には、其の姿は見当たらなかった。

 

座っている私の膝元で、リリーホワイトが座っていた。眠っている。

 

春減少による暴走の最中での邂逅、長時間の移動、リリーブラック達の襲撃……

私達と出会ってから今日一日大変だったからね……

 

私はリリーホワイトさんを見下ろし、隣に座っているみょんさんに視線を移した。

 

 

みょんさんの全身に黄色い糸が体にくっつかない距離を保ちながら、纏わりついていた。

まるで黄色い包帯で全身をグルグル巻きにされている様だった。

 

其の後ろ……みょんさんの背中に当たる部分から背中の部分から五つの糸が伸びていた。

私は其を目で辿る。

 

やがて其の先端は巨大な五つの目玉に繋がっていて、私達を背後から見ている事が判った。

怖くなって視線を前に戻す。

 

するとみょんさんの口に当たる部分の糸が口の様に動いた。

 

 

「二人乗り……だけど……私……気にしてない……」

 

 

みょんさんではなく、糸が喋ったものに間違い無い。

 

中からみょんさんが泣きそうな声を出す。

声が聞き取りにくかった。

 

 

「やっぱり、変ですよ……此…」

 

「……大丈夫……口……塞いでない……息……出来る」

 

「いえ…みょんさんが言ってるのはそういう事では………えっと……」

 

「ユウゲン……マガン……」

 

「!!そ、そうでした……ユウゲンマガンさん……どうして……

身体に纏わりつくので…しょう…か…?」

 

「二人しか乗れない……私……乗れない……此で……乗った感じ……体験……」

 

 

…確かに、此の身体は便利かもしれない、けど……

 

 

「……其に……ズレてる……主旨」

 

「!そ、そうでした……!」

 

 

すっかり忘れていた。みょんさんが尋ねた。

 

 

「…頼みとは何ですか?」

 

 

するとユウゲンマガンさんは黙った。

 

 

 

 

そして前を向いたまま言った。

 

 

「最近……目玉……暴れている……」

 

「!!」

 

 

彼女が誰を言おうとしているかはすぐに判った。

 

 

「マリス……」

 

「!マリス……そう……怨恨……アリスの……地上で……話題の……」

 

 

首を此方に曲げずに喋った。

多分、中のみょんさんへの懸念が原因だろう。

 

 

「アリスさんは、魔界人だという事を知ってるんですね?」

 

「知っている……旅立った……人間界に……復讐に……」

 

 

アリスさんが魔界を出て行った事は、魔界の間でも相当浸透しているらしい。

もしくは神綺さんが言いふらしたのかも知れない。あの性格だったら……やりかねないかも。

 

 

「魔界……風評被害……絶えなくなる……復讐……意味ない……ますます悪化……」

 

 

するとみょんさんの身体から黄色い束が離れ、私達の目の前で再び少女の形となった。

 

私達の後ろにいた五つの目玉も、いつの間にか形をとった彼女の後ろに来ていた。

 

 

「……魔界……友好的……魔界……人間界……襲わない……

興味があるから……楽しいから……」

 

 

何だか……魔界人が無理をしてでも、此方に来た理由が判った気がした。

 

 

「彼女……阻止して……誤解……解いてほしい……

神綺様に……援護……引率……要請する……魔界……協力する……」

 

 

 

 

 

 

「判りました。御任せ下さい!」

 

 

みょんさんが言った。

何処までも真っ直ぐな目で、ユウゲンマガンさんを見ながら。

 

私も頷いた。

 

 

魔界のみなさんの為にも、アリスさんは何としても止めなくてはいけません!

 

 

 

ユウゲンマガンさんは笑ったかのように見えた。

その瞬間、少女の形が崩れ、五本の糸となって其々の目玉の後ろの部分に収納されていった。

 

 

「!!……」

 

 

そして、完全に糸が見えなくなった瞬間、

 

 

 

 

 

「しゅーくほー」

 

ブァッコーーーーーン!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

突然目玉が全て上を向いたかと思うと、黄色と紫色の極太のレーザーを発射した。

 

 

「!!???」

 

 

完全に不意を突かれて肝を潰された私達の前で、夕焼け空に五本の柱が立った。

 

 

 

 

 

 

そして此方を向き、再び目玉達が私達を見た。

 

 

「カップル……御二方……頑張って……魔界……貴方達も……援護する……

ついでに……皆に……知らせる……」

 

 

ユウゲンマガンさんの声が聞こえる。

 

 

「赤飯……準備……準備……」

 

 

そして五つの目玉は振り返り、夕方の空を一丸となって飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………!!!???

 

 

 

「「お願い!!其だけは知らせないで下さぁぁーーーーーーーい!!!!!!!!!!!」」

 

 

 

 

 

私達以外誰もいない丘に私達二人の叫び声だけが響いていった。

でも、後の祭になっていた事は言うまでもなかった。

 

夕陽のはるか上、暗くなったいた空に明るい五つ星が浮かんでいた。

 

 




如何でしたか?

ユウゲンマガンから依頼を受け、援助(御衛?)も来てくれるようになったのは
良かったものの、あらぬ勘違いのせいで大変恥ずかしい展開になりそうな気が……
そして今回、リリーホワイトが完全に空気になっていましたね。

次回からも恋色を強くしながら御送り出来たらなと思います。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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天衣無縫な移転者

今回は久しぶりにあの人が登場します。
そして一部、というより序盤はきわどい(?)表現がございます。
御注意下さい。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


LILY WHITE

~無名の丘

 

 

 

「…ん…んん……?」

 

 

 

私、リリーホワイトは薄目を開けてました。

其の視界の半分を草むらが埋め尽くしています。

 

どうやら……寝ていたようですね、私……

其に此の姿勢……仰向けですが、此の視界……顔を横に向けていたようです。

 

ですが変ですね……あくびもしないでぼんやりと考え始めました。

 

私は最後に妖夢さんの膝の上で寝ていたのですが……

今は草むらの上で寝ています。

 

では……妖夢さん達は何処に……?

 

 

 

すると、頭の後ろから声が聞こえました。

 

 

 

「ん、んん~~~……!!」

 

「~~う、うどん……さん……!」

 

 

 

…………え……?

 

 

 

「!?痛い…!みょ、みょんさん……ハァ……そ、其処…じゃあ……!」

 

「!え……?じゃあ…こ、此方……でしょう……か……??」

 

 

 

………………………

 

 

 

!!!?うわわわ………

 

え…え……!?あれれ……!??此……は……!????

 

 

 

「!!そ…そう!!其方……!其処に………~~早……く……!」

 

 

 

!!!ま、ま、まま……まさか……!!わ、私が寝ている…間に……!!!!!!

 

 

 

「!も、もう………少し…です………あとぉ………少…し……!!」

 

「~~~ダメ……もう……限……か………い…………!!!」

 

 

 

~~~どどどど、どおぅしましょう……!!

ふ、ふり返る……勇気が………!

 

 

 

ですが…………!!

 

此処は…春告げ晴として………最後まで見届けなくては……!!

 

 

そして勇気を振り絞って起き上がり、ふり返りながら叫びました。

 

 

 

「は……//は、は~~るで~~すn」

 

「「!リリーホワイトさん!!危ない!!!」」

 

 

………え?

 

 

ですが其の瞬間、私は頭に一撃を浴びて意識を失ってしまったのでした……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其の数分後、意識が戻った私は鈴仙さんに頭に絆創膏を貼って貰っていました。

私が寝ていた間、何をしていたのかを妖夢さんに聞いたところ……

 

 

どうやら、私が寝ていた時に新しい魔界の人が来て一緒にブランコに乗ったら、

其の後で紐が外れてしまった様なのです。

 

其処で、最初に設置した様に鈴仙さんが妖夢さんを肩車をして結び直そうとしていたのですが、

バランスがとれずに難航し、其の内に鈴仙さんが重みに耐えきれずに

私の上に倒れたというのが真相でした。

 

 

思わずホッと息をつきました。

 

………私の妄想でした。御覧になっていた皆様には深く、御詫び申し上げます。

 

 

すると其の瞬間、

 

 

 

 

 

妖夢さんが消えました。

 

 

「!?」

 

 

妖夢さんのいた所にはぽっかりと穴が開いていました。

ひと一人が入れそうな穴です。

 

 

「みょんさん!!」

 

「妖夢さん!!」

 

 

私達は穴の縁から中に声をかけましたが、返事が返ってきませんでした。

 

すると其の瞬間、

 

 

 

「ぱんぱかぱ~~~ん♪」

 

 

 

中から勢いよく一人の女性が飛び出してきました。

 

 

「「!???」」

 

 

私達はびっくりしてしまい、思わず仰け反って尻もちをついてしまいました。

 

飛び出してきた女性は浮遊しながら、私達の反応を見て面白そうに言いました。

 

 

「フフフ……びっくりした?」

 

 

水色のワンピースの上から羽織っている襟のある白いベスト。

 

ですが何よりも目を引いたのは、ウェーブのかかったボブの青髪を、頭頂部で

不可解な形で結っていた事とベストの更に上から羽織っていた半透明の羽衣でした。

 

其の女性がふわりと地面に着地しました。

 

 

「~~ゲホッ……ゲホッ……!!」

 

 

其の後ろから妖夢さんが這いずり出てきました。顔が泥にまみれています。

 

 

「!みょんさん……!」

 

 

鈴仙さんが慌てて駆け寄り、妖夢さんの身体を持って引っ張り上げました。

 

 

「だ…大丈夫ですか!?」

 

「はい……ですが……」

 

 

引っ張り上げられ、地面に足を付けた妖夢さんは先程の女性を訊ねたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こんな処で何をしているんです………邪仙、霍青娥さん?」

 

「!あら、久しぶりね……半人半霊の剣士さん。私と同じく、生死を超越した剣士さん」

 

 

私は妖夢さんが名前を知っている事に驚いて思わず訊きました。

 

 

「!知り合いなんですか…?」

 

「ええ……過去の異変の時に、少し……」

 

 

鈴仙さんにハンカチで顔を拭われながら、答える妖夢さん。

どうやら彼女とは面識があるようでした。

 

其を受けて青娥と呼ばれた仙人が、私と鈴仙さんに自己紹介を始めました。

 

 

「そう!私は霍青娥!通称、青娥娘々ですのよ♡仙人もやっているんですもの……」

 

「……其のプレッツェル、むしり取って良いですか?」

 

「!?……其、ジョークですよね?」

 

 

イライラした顔で刀を抜こうとする妖夢さんを慌てて押し止める青娥さん。

 

 

「完全に斬ろうとしてますよね……!?」

 

「……其はともかく……」

 

 

多分斬るに足りない者と判断した妖夢さんは刀から手を離し、

 

 

「……配下のキョンシー……えっと……宮古…芳香さん…ですか……?

彼女はどうしたんです?いつも一緒にいるんじゃあ……?」

 

「え…?ああ……芳香ちゃんは今、別のところで活動中よ。とある理由でね」

 

「!…『とある理由でね』……?」

 

 

鈴仙さんが最後の言葉を繰り返しました。私も気になった部分です。

 

 

「……何です?」

 

「とある理由と言えばとある理由よ。其のまんまでしょ?」

 

 

 

 

 

「!あらやだ……!」

 

 

其処で鈴仙さんと妖夢さんが並んでいる姿を見て、ようやく気付いたようです。

 

 

「もしかして貴方達だったの?有名なカップルは……懐かしいわ…

私にもそういう時代があったわね……」

 

 

最後の言葉は小声でしたが、離れていた私にもはっきりと聞こえました。

……どういう事でしょうか……?

 

ですが其以上は何も言わず、青娥さんは妖夢さんと鈴仙さんから離れて

其のまま私の方にも近寄って来ました。

 

眉を細め、明らかに嬉しそうではありませんでした。

 

 

「そして、貴女は……」

 

「~リ、リリーホワイト…ですが……」

 

「!リリーホワイト……?」

 

 

そう言うと小首をかしげ、

 

 

「別者なのね?私はてっきりイメチェンでもしたのかと……」

 

 

少し安心したように見えました。

 

其の言葉を聞いた私は思わず顔を歪ませました。

もしかして……

 

すると妖夢さんが、代わりに訊いてくれました。

 

 

「!リリーブラックを……知っているのですか!?」

 

「其はもう……」

 

 

青娥さんは溜息をつき、

 

 

「私が邪仙だ、悪事を重ねているだのと情報を嗅ぎつけるなり、

『青娥様!俺様を弟子にしてくれ!!』なんて場所を突き止めて訊ねてきてね……」

 

 

其処で溜息をつき、

 

 

「断っても断っても来たものだから……じゃあ一つ、何か者を盗んで来なさいって……

ほら、私って壁抜け出来るでしょ?此を使って……」

 

 

そう言うと髪に差していたかんざしを触りながら言いました。

 

 

 

 

「だから、貴方にも出来るのかしら?ってとある人間の里に連れて行って実践させたけど、

其のやり方がもう、私以上に酷くて……」

 

「酷い?其はいったい……?」

 

 

妖夢さんが尋ねると、青娥さんはまた溜息をつきました。

 

そして不快そうに目を細め、

 

 

「……自前の配合薬で異形にした妖精を何匹も放って襲撃させ、里がパニックに

陥った隙に盗みだすという荒業に出たのよ……流石に慌てて止めたわね」

 

「!!」

 

「此のままだと私にも風評被害が及びそうだったから、すぐに縁を切ったって訳。

其でもまだ迫って来た事もあったから、ある意味死神よりも恐ろしかったわね……」

 

「其じゃあまるでストーカーじゃないですか!」

 

「でも、今日くらいに逮捕されたって噂を聞いたから、其はもう……」

 

 

胸を撫で下ろしている青娥さん。

仙人をも震えあがらせるとは……やってくれますね……

 

 

「!っと……其の話は此処までして……」

 

 

彼女は再び私達に近寄って来て、

 

 

「暫くだけど、貴方達と一緒に同行しても宜しいかしら?」

 

「「「!!え……?」」」

 

 

でも私としては……飛び方と良い、喋り方と良い……

此の人、危ない雰囲気が漂っているんですけど……

 

 

「だってぇメタ過ぎますが、まだ一話しか出ていないもん」

 

 

!た……確かに…メタ過ぎます……其の発言……

 

 

「フフ……良い寝所を知ってますわ。其処に案内してあげましょう」

 

 

そう言うとさっきと同じ様に、髪に差していた鑿を抜き、

 

 

「そぉれ、魔法の始まりよぉ……」

 

 

其を使って近くの地面に円を描きました。

すると、其の形にくり抜かれる様に其処に穴が開いた。

 

 

「「!!!」」

 

 

私と鈴仙さんは驚いて飛び退いた。

ですが一度は見た事があるらしく、妖夢さんは其を訝しげに見ていました。

 

どうやって地面が開くのかを、見極めようとしたのでしょうか……

 

 

「ささっ、参りましょう、御二方?」

 

 

穴の傍で御辞儀をし、最初に妖夢さん達を誘いました。

妖夢さんと鈴仙さんは怪訝そうに顔を見合わせましたが、

 

 

「こんな開けた場所で寝るのは流石に危ないですしね……」

 

「……そうですね」

 

 

納得して穴の中に入って行きました。

 

 

どう考えてもあの人、絶対二人をいぢる様な気が……

良い展開が想像できない様な気がするんですけど……

 

 

次に私を誘ってきました。

其の時に見せた流し目は、同性の私でさえも思わず息をのむほどでした。

 

ですが………何かあれば、二人を守るのは私なんです。

 

春は……必ず守って見せますよ!

 

 

そう思って私も穴に入りましたが……

 

 

 

 

其の穴の中から青娥さんの顔を見上げた時、私は驚きました。

 

 

「?……どうしたの?」

 

 

彼女は笑顔で私を見返してきました。

私も笑い返そうと思いましたが、口角が上がらず上手く笑えませんでした。

 

そして穴の中に入りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

汗が止まりませんでした。

地面の中が湿気で覆われているのもありましたが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は……見てしまったんです……

 

あの時、穴の縁で青娥さんが一瞬だけ見せた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐ろしく残虐な、そして……邪悪な笑みを………

 

 

 

 

 

 

 




如何でしたか?

序盤、場面が場面でしたらほぼアウトでした。
そして青娥さんが新しく同行する事になりましたが……

次回は、青娥さんが教えてくれた寝所での出来事を紹介していきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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春ですけど夏ですから……

今回は、青娥娘々が妖夢達に用意した場所での様子を紹介します。

……あれ?見た事があるぞ、此…的な表現も含まれていますので
閲覧の際は御注意下さい。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


REISEN

~とある一室

 

 

私達は、私達にしては豪華すぎる部屋の中にいた。

 

ベッドが四つあり、テレビもあった。清潔な一部屋だった。

 

 

「フフフ……スウィートルーム、御気に召しました?」

 

 

感心する私達の後ろから、青娥さんが声をかけてきた。

 

 

「ささっ、私は芳香ちゃんを捜しに行かないとね……じゃ、ごゆっくり~~」

 

 

そう言うと、這い上がってきたあたりの床にまた穴を開けて中に入ってしまい、たちまち穴は塞がってしまった。

 

部屋に取り残された私達。

 

 

「……お二人とも……」

 

 

するとリリーホワイトさんが近付き、小声で私達に囁いてきた。

 

 

「私、嫌な予感がするんですけど……」

 

 

…実は其の事については私も、穴に入る時には薄々感づいてはいた。

うどんさんも気付いていたに違いない。

 

しかしあそこで下手に拒むと、相手が相手だったため何をされるかは判らなかった。

 

其にあんな開けた場所で戦闘を行えば、巡回しているマリス達に気付かれてしまう

可能性も高くなる。

其処で仲間を沢山呼ばれてしまえば、助かる可能性は零に等しい。

 

ふとうどんさんは、テレビの黒い画面を見ながら言った。

 

 

「そういえば現在のMHKニュース、どうなったんでしょう……」

 

 

最近一人に烏天狗、射命丸文さんを含む二人の天狗で司会を行っていた途中に

マリス達の襲撃に遭い、其のまま放送終了というハプニングを起こしていた。

 

其から所持していたガラパゴス式の連絡器のワンセグ機能で毎回確認はしていたが、放送休止のままだった。

 

……今の状況で何故そう思ったのかは判らなかったが。

 

 

「確かに……此の間に、何か情報を掴まないと……」

 

 

そう言って私はテレビの近くに置いていた、黒いすずりぐらいの大きさのものを掴んだ。

此がリモコンに間違いはない。

 

本来私はリモコンというものは判らなかったのだが、白玉楼にいた頃にテレビを観る際、

幽々子様がいつも所持、占領していたので其の形や操作方法もはっきりと覚えていた。

 

幽々子様がやっていた様にリモコンの一番上の端にある、赤いボタンを押しながら其を画面に向けた。

 

すると暫くして電源が点き、黒い画面が一気に彩られた。

 

 

 

【…天狗が最も怖いと思ったランキング第1位…〈潜む影〉】

 

 

「!?エ"……!??」

 

 

ホラー番組だった。思わず顔を歪めてしまった。

私は半人半霊という家系の者ながら、幽霊系統が大の苦手なのであった。

 

いそいでリモコンの別のボタンでチャンネルを変えようとした。

 

が………

 

 

「……!あれ……?」

 

「…どうしました?」

 

「……チャンネルが変わらない……」

 

「!え……!?」

 

「変ですね……幽々子様は、いつも此で変えていたのですが……」

 

 

何度押しても、変わらなかった。

 

すると、リリーホワイトさんが、

 

 

「!妖夢さん、テレビを消せばいいじゃないですか?」

 

「!そ…そうでした……」

 

 

もう一度赤いボタンを押しながら、リモコンをテレビに向けた。

 

だが………

 

 

「!電源が…切れない……!?」

 

「!?え……!?」

 

 

リモコンでも、更にテレビに直接ついている電源を押しても無駄だった。

 

 

「こ、怖いですよ……」

 

「……暫く、我慢するしかない様ですね……」

 

 

其処で私達はベッドの上の一番奥に体育座りをし、出来るだけ三人で身体をくっつけて見た。

 

身体がまた震えていた。しかし私だけでなく、うどんさんもリリーホワイトさんもそうだった。

 

 

 

 

【とある昼下がりに遊んでいる、五人の妖怪少女……一人が遊ぶ四人の姿を撮影している】

 

 

ナレーションと同時に、其の通りの光景が画面に映し出された。

 

其の時私は、その遊ぶ少女達の一人に見覚えがあった。

 

 

「……影狼…?」

 

「!え……!?」

 

 

顔にモザイクがあるものの、其の姿は明らかに狼女、今泉影狼だった。

以前に迷いの竹林で一戦を交え、更にその後にもう一度出会ったので忘れる筈が無かった。

 

となると撮影者含む、残りの四人は……

 

 

【彼女達の奥にあるのは、どうやら廃神社の様だ】

 

 

!うぅ…紫色の『廃』と赤色の『神社』の文字………

何て毒々しい色のテロップを使ってるんだ……

 

そう考えていると、

 

 

【『ねぇ、私も混ぜてくれない?』

 

『じゃあ其処にカメラ置いて来たら?一緒に写れるしさ』

 

『……そうね』

 

 

そして撮影していた少女もカメラを傍に置き、彼女達に加わった】

 

 

……集団に駆けていくあの姿……指名手配にもあったろくろ首…赤蛮奇…だっけ……

彼女に違いなかった。

 

今は全員無罪になったと、影狼は言っていたけど……

 

 

【しかしカメラは、彼女達の他にいた、不可解なモノも映してしまった】

 

 

そう言うと、五人が遊ぶ姿が映し出されたまましばらく時間がたった。

しかし、私には何も変化は見えなかった。

 

ふと、隣を見るとうどんさんの顔が青くなっていった。

リリーホワイトさんも口があわあわしていた。

 

 

「?どうしました……二人とも?」

 

 

そう訊ねると、

 

 

「……いた……さっきいましたよ……!!」

 

「私も…見付けてしまいました」

 

「!?うそ…何処に……!?」

 

【お判り頂けただろうか……】

 

 

そういうといつの間にか、画面ではリプレイに入っていた。

 

 

【置いたカメラに映し出された少女達と廃神社の本殿。其の本殿に御注目頂きたい……】

 

 

唾を飲み込んだ。汗が滝のように流れてきたのが判る。言われて通りに其処に注目する。

 

!あ…………

 

 

 

 

 

 

【奥から真っ青な服を着た、うつむく少女の姿が…!】

 

 

「キャァアァアァアーーーーー!!!!!??????」

 

 

思わずうどんさんにすがり付きながら大声をあげてしまった。

 

 

【彼女は…いったい……?】

 

 

しかしすぐに、私がうどんさんに抱きついている事が判ると、思わず顔が赤くなった。

 

 

「~~//ご、御免なさい…うどんさん……つい……」

 

 

そう言ったが、

 

 

 

 

 

「……うどんさん?」

 

 

返事が無い。うどんさんが顔をうつ伏せたまま黙っていた。

 

 

「うどんさん……どうしたんですか?」

 

 

肩を揺すると、彼女は其のまま座っていた布団に倒れた。

 

 

「!?」

 

 

全く動かない……気分が悪くなったのか……!?

 

 

「リリーホワイトさん!うどんさんが……!」

 

 

すぐにリリーホワイトさんの方に向いたが、

其処にはいつの間にか地面に落下し、動かなくなっていた彼女がいた。

 

 

「!リリーホワイトさん……!?」

 

 

……いったい…何が……!?

 

 

 

すると、私は部屋にある違和感を感じた。

 

此は……異臭?…………

 

 

「!?しまっ……!」

 

 

しかし、気付いた時には既に遅かった。

 

 

 

 

私の意識は、静かに下に、下に、堕ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 




如何でしたか?

………はい、劇中で出てきた番組は、実際にでも酷似しているものがあります。

因みに今回のサブタイトルにもあります様に、此の出来事一帯は春の間に起きているという設定です。
何と言う今更感でしょう……

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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邪仙の計画~前編

……最近は夏季休業中ながらも忙しく、更新ペースが猛烈に乱れつつあります、因田司です。
出来る限り普段どおりのペースに戻していこうと頑張りますので、宜しくお願いします。

今回からは、二編に分かれて此からの出来事を御送り致します。
まずは前編です。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


YOUMU

~???

 

 

頬に感じるひんやりとした地の感触に、私は目を開けた。

 

 

「~~~~…………」

 

 

どうやらうつ伏せに寝ていたらしい。

ゆっくりと地面に手を突き、身体を起こす。

 

 

「お目覚めかしら……幻想郷のオスカルさん?」

 

 

だが声が聞こえ、一変して弾かれる様に立ち上がり、其の出所を探す私。

 

其は上空から聞こえていた。

 

 

「!青娥さん!!」

 

 

気持ちが悪い程にニヤニヤしている。そして其の隣には……

 

 

「!!うどんさん!!リリーホワイトさん!!」

 

 

まるで鳥籠の様な浮遊物の中にうどんさん達が閉じ込められていた。

 

 

「此は……何のつもりですか!!」

 

「そう怒らない。其より此処は何処だか、判るかしら?」

 

 

そう言われて初めて周りを見渡した。暗い洞窟の中の様だが……

だが私は此処が何処なのかに気付いた。

 

 

「『神霊廟』……!!」

 

 

命蓮寺の地下に存在する『夢殿大祀廟』の内部に在り、かつて私達が解決に挑んだ

神霊異変の黒幕、豊聡耳神子さんが祀られ、彼女との決戦の場ともなった場所だった。

……後に、あの異変は青娥さんが本当の黒幕だった事が判ったが。

 

今は廃墟と化し、一般人でも立ち入れる様になっていたが、

最終的には野良妖怪の溜まり場になったと聞いている。

 

おそらく、壁抜けを利用して侵入し、私達を連れてきたに違いない。

 

 

すぐに剣を抜こうと背中に手を伸ばしたが、

 

 

「!剣が……!?」

 

 

其処には剣が二本とも無く、鞘も無くなっていた。

 

 

「お探しの物は此で……?」

 

 

青娥さんが私の方に出した其の手には二本の剣が握られていた。

 

気絶している間に盗られたのか……!

 

 

「……貴方達は生温いのよ……」

 

 

私の剣……あの長さから楼観剣の方を抜き、眺めながら青娥さんは話し始めた。

 

 

「さっき私言いましたよね……『私にも貴方達みたいな時代があった』って……

私にも恋愛経験があるのよ」

 

 

!?……何と……??

 

 

「あの時代はかなり壮絶だったのよ…?其に比べて今は……」

 

 

そうか……青娥さんが見たいのは……

 

 

「私達の親愛度を……?」

 

「そう。だから、貴方が此の娘の間にはどれ程のモノをあるのか、訓練してあげるって訳」

 

 

そして剣を鞘に収めた。

 

 

「ありがたく思いなさいよ?」

 

 

何がだ……内心では、暇潰し程度にしか考えていないのは見え見えなんだぞ……

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、私の可愛~い部下が相手よ!」

 

「!!……」

 

 

ふと、前に視線を戻すと、

 

 

 

「くんれんじゃ~~~!!くぅんれんん~~~~!!!!」

 

 

青娥さんの配下のキョンシー、宮古芳香さんが立っていた。

今判った。芳香さんが活動していた理由は、此の為の準備だったんだな……?

 

 

「……良いでしょう……うどんさんは必ず助け出します!」

 

 

其処で致命的なミスに気付き、慌てて修正する。

 

 

「!リ、リリーホワイトさんも……助け出します!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

YOUMU

VS〈忠実な死体〉宮古芳香

〈壁抜けの邪仙〉霍青娥

~夢殿大祀廟内 神霊廟

 

 

「カァアァァ!!!!!」

 

 

芳香さんがいきなり口を開けて飛びかかって来た。

私はジャンプし、其の頭を踏みつけた。

 

 

「!?おぉ……!」

 

 

其のまま踏み台にして大きくジャンプする。

 

離れた場所に着地し、素早く振り向く。

芳香さんは頭を踏まれた衝撃で、つんのめっていた。

 

其処を素早く近付き、其の背中にタックルをかました。

が、ビクともせず逆に私の肩に痛みを感じた。

此ではただ敵に居場所を漏らしただけになってしまっている……!

 

すぐにバックステップで距離をとる。

間一髪、私のタックルに気付いた芳香さんが、振り向きざまに爪で薙ぎ払っていた。

 

 

白楼剣と楼観剣が無い今、私には半霊による弾幕しか攻撃手段が無い。

しかし、あれはあくまでも斬撃に繋げる為の牽制用であり、其の威力は低い……

ましてや、痛みや怯みを知らないキョンシー相手ではほとんど効果をなさないだろう。

 

だからといって操っている青娥さんを狙おうにも、うどんさん達がいる。

盾にされる可能性も高く、うかつには手を出せなかった。

 

 

「芳香ちゃん!毒爪『ゾンビクロー』よ!!」

 

 

すると青娥さんの命令を聞いた芳香さんは両手をあげた。

其の両手の先がみるみるうちに紫と赤色に染まった。

 

先程テレビに出ていた、あのテロップと同じ色だった。

 

 

「か~~~くごしろ~~~!!!!!」

 

 

芳香さんは其の両手を交互に振りながら近付いてきた。

私はバック転の連続で後ろに下がりながら、次々に其をかわしていく。

 

壁まで辿り付くと、勢いを付けたまま空中で足を付けた。

前を見ると芳香さんが両手を同時に振り下ろしてくるのが判った。

 

思いっきり壁を蹴って頭上を飛び、縦に回転しながら敵の後ろに着地した。

 

 

「!?どこだぁ~~~~!!???」

 

 

後ろにいて状況が判らないが、多分急に視界から消えて戸惑ってるに違いない。

 

私は其のまま振り向きながら低い姿勢で足払いを放った。

 

 

「!?おぉおぉ~~~!???」

 

 

脚は見事に芳香さんの両足をすくい、横向きに倒した。

私は其処からジャンプし、着地と同時に拳を相手の脇腹に叩きつけた。

 

 

「!??~~~……」

 

 

痛い……そして堅い……やはりキョンシー相手に、肉弾戦は効かないか……

 

殴る際底になった小指をさすりながら後退する。

芳香さんはまるでつつかれたダルマの様に立ち上がり、此方に身体を向けた。

 

 

「ムムムゥ……!!」

 

 

私の動きに翻弄され、自分の攻撃が当たらない事にイライラしている様だった。

 

 

 

 

 

 

すると、青娥さんが、

 

 

「……やはり芳香ちゃんだけでは物足りない様ね……じゃあ……」

 

 

そう言うと、右手を上げ、

 

 

「出番よ!出て来て頂戴!!」

 

 

其の瞬間、地面から大量の人が穴を掘り、這い出てきた。

 

 

「!?ヒィイ……!??」

 

 

私は悲鳴を上げてしまった。

どれも死体だったからだ。其も少なくとも百体……否、其以上はいるだろう。

 

 

「!みょんさん!!」

 

 

檻の中からうどんさんの声が聞こえた。

 

だが、此じゃあ……まるで勝ち目が無い……丸腰の私が物理の効かない、

おまけに苦手な屍達にどう対処しろと……!?

 

 

でも、此処でうどんさん達を諦める訳にはいかない…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

其の瞬間、上から大量の剣が降り注ぎ、私とキョンシー達の間に刺さった。

 

 

「!?皆……止まるのよ!!」

 

 

突然の剣の柵の出現に、青娥さんが慌ててキョンシー達に制止を命じた。

其の命に従い、止まるキョンシーの軍団。

 

すると私の前に、一つの影が降り立った。其は……

 

 

 

 

 

 

 

「!夢子さん!!」

 

 

魔界の創造神、神綺さんの腹心ともいえるメイドさんだった。

 

 

「どうして…此処に……!?」

 

「ユウゲンマガンから話は聞きました。

神綺様より貴方達を援護するようにと命じられ、参りました」

 

 

上空にいる青娥さんを真っ直ぐ見据えながら答える夢子さん。

 

 

「……直に神綺様が大勢の魔界の者を連れ、此処に来られるでしょう」

 

 

心強い……魔界の住人達が、私達の援護に………

 

夢子さんは懐から二本剣を取り出し、周りにも数十本もの剣が漂い始めた。

ナイフを扱う咲夜さんと違い、夢子さんは剣を扱うのか……

 

其を見た私はすぐに彼女にある事を頼んだ。

 

 

「夢子さん……剣をどれか二本、貸してくれませんか?自前の剣が取られてしまって……」

 

「構いませんよ。どうぞ御取り下さいませ」

 

 

前方に走り、柵を形成していたうちの二本を引き抜いた。

そして夢子さんの元に戻り、其の剣の感触を確かめた。

 

此の重量感……剣にしてはなかなか上質なもので、初めて握る私からしても扱えない事はなかった。

 

其の様子を見ていた青娥さんが顔を歪めていた。

 

 

「まさか……貴方達、魔界を味方につけていたのね……

邪魔が入った様だけど……まだ試練は終わっていませんわ……」

 

 

そして片手を上げ、叫びながら私達の方に振り下ろした。

 

 

「さぁ、行きなさい!!」

 

 

其を合図に制止していたキョンシー達が、一斉に雄たけびを上げた。

私達も剣を構える。

 

 

「行きましょう、妖夢さん!」

 

「ええ!」

 

 

 

待ってて下さい……うどんさん……!!

 

私達は剣の柵を倒し、押し寄せる屍の群れに走って行った。




如何でしたか?

…正直なところ、肉弾戦を使う妖夢も悪くないと思います、はい。
娘々は一応妖夢達の為に試練を課している様ですが、逆に魔界人の介入で大事に発展しそうな予感です。

次回は妖夢がそんな夢子さんと一緒に鈴仙達を救い出す為に戦います。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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邪仙の計画~後編

すみません。長らく御待たせ致しました。
今回は後編を御送り致します。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


SEIGA

VS〈半分幻の庭師〉魂魄妖夢

〈魔界メイド〉夢子

~夢殿大祀廟内 神霊廟

 

 

「………面倒な事になったわね……」

 

 

私、霍青娥は、げんなりしていました。

 

 

其の理由は目下の剣士、魂魄妖夢さんに対する、思わぬ助太刀でした。

 

 

「気を付けて下さい、夢子さん……相手は死体。痛みも怯みも知らない恐ろしい存在です!」

 

 

其の見た目は紅魔館のメイド、十六夜咲夜さんの色違いのようでした。

 

そして私が妖夢さんから奪った剣の代わりとなる剣を彼女に渡していました。

 

 

「うぅ……!」

 

 

妖夢さんは、怖いものは苦手という事は変わりはない様です。

 

 

「!大丈夫ですか?」

 

「私……怖いものが苦手で……」

 

「そうでしたか……なら、代わりに……」

 

「!!い、いえ、御気になさらず……」

 

 

!……どういう事?怖いのに、なんで……?

 

 

「私が手下を相手にします。夢子さんはあの仙人をお願い出来ますか?」

 

「了解致しました」

 

「奇襲に気を付けてください……あの仙人は壁の中には入れます!」

 

 

実は此の娘達を見張るのに、私はあまり動けないのですから……

恥ずかしい話ですから直接口には出しませんが。

 

でも、おかしいわね……彼女は怖いものは苦手なのは把握済みなのに……

あえて私ではなく怖いであろう屍達の方に向かうなんて……

 

 

 

 

「彼岸剣『地獄極楽滅多斬り』!!!」

 

 

そうこう考えるうちに妖夢さんが芳香ちゃん率いる屍達の群れに突っ込んでいきました。

 

 

「!!!」

 

 

目を疑いました。

 

自分のものでない剣を扱い、スペル名から予想していたものとは明らかに異なる、

鮮やかな立ち回りでキョンシー達を次々と……!!

 

一撃を喰らい、吹き飛んでいく可愛い手下達。

 

 

「!!!………」

 

 

今、はっきり判ってしまいました。隣の檻の中の少女達を見ます。

 

彼女は、此の娘達を助け出す為ならば、

例え怖いものが相手でも、例え不慣れな武器でも……!

 

剣を振る、妖夢さんの顔は半ば泣きながらも、頑なな意思の様なものを感じました。

 

 

~~す、素晴らしいですわ……此処までのものだった、とはね……

 

 

思わず見とれていると、

 

 

「!!」

 

 

自分の前方から多量の剣が飛んでくるのが目に入ってきました。

 

 

「~~せ、仙術『壁抜けワームホール』!!」

 

 

スペルで慌てて傍の壁の中に入り、剣をかわしました。

 

 

「脇見している場合ですか?」

 

 

壁から戻った私の前に、さっきのメイドさんがいました。

 

 

「……とはいえ、壁の中に入れるの流石に厄介ですね」

 

「夢子さん!」

 

 

隣の檻の中から聞こえます、剣士の愛人の声。

 

 

「貴方、紅魔館のメイドさんではないのかしら?姿がそっくりですが……」

 

「?何を言っているのか、私にはさっぱりです。ですが……」

 

 

其の目付が変わり、其の両手には剣が握られていました。

 

 

「神綺様の命故、邪魔はさせません……其の方々を解放して頂きましょうか!」

 

 

 

 

 

すると、剣を構えていた彼女の表情が変わりました。

 

 

「!??………」

 

「………??」

 

 

どうしたの、かしら……?

なんだか急に竦み上がったようになりましたが……

 

 

「……神綺…様……!?」

 

「!?」

 

 

もしや、新手…!?

 

そう思い、後ろに振り向きました私の横顔に、殺気と共に強い衝撃が走りました。

 

 

「!???~~~~~………………」

 

 

其のまま私は下に弾き飛ばされ、意識をも吹き飛ばされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SEIGA

~夢殿大祀廟内 神霊廟

 

 

 

頬に感じるひんやりとした地の感触に、私は目を開けました。

 

 

「~~~~…………」

 

 

どうやらうつ伏せに寝ていたらしいですが……

ゆっくりと地面に手を突き、身体を起こしました。

 

すると、頬に激しい痛みを感じました。

 

 

「お目覚めですか……幻想郷の……えっと………」

 

「……メフィストフェレスあたりが妥当じゃないかしら?」

 

「!成程、い、良いですね……流石です、神綺さん……」

 

 

声が聞こえ、ゆっくりと立ち上がり、声の出所を探します私。

 

其は頭の上から聞こえてました。

 

 

見上げると、銀髪の六つの翼をもつ少女が此方を見下ろしていました。

 

其の顔に浮かんでいた、目の笑っていない笑みで思い知りました。

 

 

「貴方が……わ、私の頬に……」

 

 

そして、其の隣には妖夢さん達も私を見ていました。

ですが私にパンチをした彼女の事を気にしているようでした。

 

その後ろには細切れにされ、無惨に散らばる檻の残骸がありました。

 

そして私達の周りには今まで見た事のない人達が御喋りをしていました。

魔界のさらなる援軍に違いありませんでした。

 

 

「オォオ~~動け~~~ない~~~!!!!」

 

「!芳香ちゃん……!?」

 

 

檻の近くでは全身を縄で縛られた芳香ちゃんが横倒しにされ、

数人の魔界の方々が其の周りを取り囲んでいました。

 

他のキョンシー達の姿がありません。私の気絶している間に全て征伐されたのでしょう。

 

 

「……神綺様……捕獲……成功……」

 

 

五つの目玉から伸びた黄色い糸が、まるで少女が敬礼したように動いていました。

 

 

「ありがとう、ユウゲンマガン」

 

 

銀髪の少女が答えました。

其の更に隣には、先程まで対峙していたメイドさんがいました。

 

其を聞いた私はハッと自身を見下ろしましたが、縛られてはいませんでした。

 

でも周りを見渡すと少なくとも、魔界の方々は十人以上は確認出来ました……

 

 

「ちょっと……遊びが過ぎたようですわね……」

 

 

そう言って頭に手をやった私は、鑿が無くなっている事に気付きました。

 

 

「お探しの物は此ですか?」

 

 

そう言って差し出した妖夢さんの手に、其はありました。

不覚にも、私がやった事を其のまま返されましたわね。

 

そして其の背中には私が盗っていた刀が鞘に収まっていました。

 

 

(……詰んだわね、此は……)

 

 

そう思い、両手を上げて降参のポーズを取りました。

 

 

「為にもならなかったわね……こんな訓練……」

 

 

すると彼女は、

 

 

「私達の為に、わざわざ此の試練を用意してくださったのなら、感謝致します」

 

 

私に鑿を返してくれました。其もわざわざ手渡しで。

 

其を受け取りました。……大したものね……

 

 

「どうしてこんな事をしたのかしら?」

 

 

神綺と呼ばれた、銀髪の少女が詰め寄ってきましたが、

 

 

「良いんです……どうやら、悪気は然程無かった様ですから」

 

 

妖夢さんがなだめ、

 

 

「……貴方が言うなら、構わないけど……」

 

 

其以上は追及しようとはしませんでした。

 

 

 

 

 

「!一つ情報がありますわ……彷徨していた先で聞いた事なんだけど」

 

「!!」

 

「此の頃、幻想郷を侵略する影……マリス…でしたっけ……ソイツ等の力が

ますます強まってきていると聞いたわ」

 

「!?」

 

 

フフフ……驚いてくれてるようね。

でも一同がどよめくのを見て、笑みを浮かべる事はしませんでした。

 

 

「どうやら、発生源で何か良くない事が起きているみたいですわn……」

 

「アリスさんに何か起こったと…!?」

 

「アリスちゃんですって!??」

 

 

今度は妖夢さんと神綺さんが同時に詰め寄ってきました。

 

 

「みょんさん!神綺さん!……此は聞いた話だって!」

 

 

ですがすぐに鈴仙さんになだめられていました。

 

すると神綺さんが他の魔界人らしき少女達に何かを伝え、其を受けた者は

芳香ちゃんの縄を解き、起き上がらせ、此方に連れて来てくれました。

 

 

 

 

「外に案内しますわ」

 

 

其処で鑿を円形状に動かし、壁に穴を開けて、と……

 

 

「本当に良い宿泊室があるの。紹介出来ますけど……」

 

 

しかし後ろを向くと、彼女達はまだついて来ていませんでした。

 

 

「?……来ないのかしら?」

 

 

すると、妖夢さんが、

 

 

「!あ、申し訳ないんですが……私達は神綺さんに外に出ますので……」

 

 

………思わず、固まってしまいました。

 

 

「!!あ、只……その……神綺さんの方が速いって、仰ってましたから……!!」

 

 

見ると神綺さんが弁解する彼女の隣で、

 

 

「エヘンプイッ!」

 

 

と言わんばかりになっていました。

 

 

「~~そ、そう……」

 

 

そう言って、私は芳香ちゃんとトボトボと穴の中に入って行きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達の此からが楽しみね……

始終を見たいけど……此方も、暇ばかりじゃないですしね……

 

穴を掘り進みながら、そう思っていました。

 

 

「青娥様~~!私がいるから心配な~~いぞ~~~!!」

 

 

隣で芳香ちゃんがなぐさめてくれました。

 

 

「…ありがとね、芳香ちゃん………」

 

 

 

 

 

「でも本当……いろいろ空回りで、残念ですわね……」

 

 

思わず、溜息が出てしまうのでした。

 

 




如何でしたか?

うどみょん達の為だと思っていて、悪気はなかったですね。
ですが逆にあだとなり、いろいろ損な役回りとなってしまった娘々でした。

次回からはコラボとなる新章を予定しています。
うどみょん達はしばらく出番がありません。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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黒魔精大捕物帳(コラボ中心)
Requests;リリーブラックがアップを始めたようです


募集終了から更新が大変遅れてしまいました。申し訳御座いません。
ようやくコラボ開始です。

今回コラボして下さる方々は、
芳花紫陽花さんの「東方幼妖談 ~ Immature Massacre」より九賀神矢君、
高速でゆっくりなぺぺさんの「東方自然神」より瀬戸尾凌君、
シャイニングさんの「恋を知らない少年と幻想世界の少女達」より龍神王牙君、
聖魂のマキシさんの「東方聖霊夜」より神崎駆真君です。

そして今回ですが……ゲストの方々は登場しません。
いわばプロローグみたいな回になっております。

本当にすみません。次回からゲストの方々が登場していきます。

それでは、ゆっくりしていってね♪


LILY BLACK

~地獄 勾留所

 

 

「……………」

 

 

俺様、リリーブラックは鉄格子の中から外の相手を睨んでいる。

 

 

「……………」

 

 

睨まれている相手もこっちを見ている。若干半目だ。

 

 

「てめえは此処が担当じゃねえだろ。船漕がねえのかよ」

 

「今は漕がない。だからと言って、お前にオールを渡すわけじゃあない」

 

「『お前が消えて喜ぶ者』だからな、俺様は」

 

 

ケラケラと嗤ってやる。

 

 

「お前さんがあまりにも過ぎた事するから、専属の看守も任されたんさ」

 

「サボタージュの泰斗にとっちゃあ良い苦薬だ。様ぁ見ろ。此の、紅髪ツインサボッテール」

 

「何だい其。あたいにツンデレを求めてるのかい?」

 

「求めねえよ。気持ち悪ぃ」

 

 

はぁ、と溜息をつかれる。

 

 

「私は小野塚小町だ。本当に名前覚えないね。ず~…っと世話になってるって言うのに」

 

「名前を覚えるだけの脳があるなら、其の分も俺様の為に使うだけだ」

 

 

今俺様は、地獄の中にある、勾留所の中にいる。

精密検査を受け、地獄で閻魔様の裁判を受けるまでの間、ブチ込まれているって訳だ。

 

 

「其に仕事が増えたんだから、寧ろ甘い薬さね」

 

「へっ、甘いものに頼ってると、ほっぺどころか首まで落ちるぞ」

 

「!忠告をするなんてらしくないじゃないか」

 

「見てぇんだよ。あの閻魔から直接リストラされる瞬間をよ。

んで、ついでに制裁されて、首チョンパのバーラバラにでもされろ」

 

 

そう言った途端、相手の目付が一気に変わった。

 

 

「……前倒しで処刑にされたいかい?」

 

 

椅子から手を伸ばし、壁にかけていた鎌を掴んだ。

 

 

「ヤれるもんならヤってみろよ。死神の鎌って、単なる飾りだって聞いたけどなぁあ?」

 

「さっき実際に斬ってやったじゃないかい」

 

 

そう言いながら女は鎌を壁に掛け戻す。

やっぱり斬る気無ぇじゃねえか、此の腰抜け。

 

 

「そんな昔の事は忘れた」

 

「……やっぱ妖精だよ、お前さんは」

 

「!んだとゴラァア!!!」

 

 

妖精……最も嫌いな奴等と一緒にされた俺はブチ切れて、格子を両手で掴み

ガンガンと揺らした。

 

他の囚人はとっくに寝静まっている時間だが、俺様だけは別の牢獄に隔離されていたから

気にする事も無かった。

 

 

「はははは!怒ってる~~。頭に血が昇ってるね~~」

 

 

そんな俺様をみて腹を抱えて笑っている、生意気なサボリ魔。

 

 

「今度も絶対に脱走して、てめえの首をぶっ飛ばしてやるからな!!!」

 

「あはは…今回は警備もだいぶ強化したからねぇ。前みたいに生物兵器を遠隔操作で送ってきても撃退出来るさ」

 

 

私は鉄格子を突き離し、荒々しく奥の方に戻った。

ベッドの上に這い上がり、壁に向かって体育座りをした。

 

其の背中に声をかけられる。

 

 

「あの爬虫類みたいな奴等、もともと妖精だったんだってね?」

 

「……死亡解剖した結果か?」

 

 

後ろを見ずに応える。馬鹿にされたが仕返しすらままならない。おまけに白黒の縞模様

という、白の混じったセンスの欠片も見当たらない囚人服まで着せられる始末だ。

 

チッ、不愉快で仕方無え。

 

 

「薬で細胞の成長を無理矢理操作して……どれだけ妖精を犠牲にしたんだい?」

 

「死神でも判る筈もねえ桁程」

 

「なら、どちらにしろ極刑も範疇って事になるねえ」

 

「犯罪は重度且つ多数な程、裁判は長引くって聞いたぜ。すぐには決まらねえ。

何せ罪は慎重に決めねえとなぁ……だろ、コマチナ?」

 

「野菜みたいに言うな。嗚呼、後さあ」

 

 

唐突に話の腰を折りやがった。

 

 

「お前さん自身も薬で身長を伸ばしていたみたいじゃないか。そんなに小さいのが嫌いか?

其処まで自分自身の種族を嫌う必要があるのかい?」

 

「……てめぇ、尋問係でもねえのに其処まで首を突っ込む必要があるか?」

 

「いやあねえ」

 

 

其処で少し間を置いたが、再び声をかけた。

 

 

「お前さんがライバルに負ける理由が其処にあるかもしれない、と思ってね」

 

 

其の言葉を聞いた私の頭に、見覚えのある奴等の顔が浮かんだ。

 

 

幸せそうに歩いている二人の外道、そして憎たらしげな笑顔をしたリリーホワイトだ。

其のシーンがぐるぐると頭の中を回り出した。

 

最悪だ。構わず舌打ちをする。

 

 

アイツ等は俺様の目の前で堂々と同性愛という、タブーを見せびらかした。

そして春告精である筈のリリーホワイトは其にあやかり、活気を取り戻すという

醜態までさらした。

 

其どころかアイツ等のせいで戻りたくも無い処に再び放り込まれ、辛酸を舐めさせられた…!!

 

怒りでワナワナと震え始めた。

 

 

「あんの、ド腐れ共ぉお……!」

 

 

そう押し殺した声で言った俺は、怒りに任せて拳で壁を殴った。

 

指が数本折れたがすぐに再生した。

妖精の力が働いた。其の事が更に私をイライラさせてくれた。

 

 

だが、同時に自分の顔がニヤけていくのにも気が付かなかった。

 

 

何も怒る事は無いか……もうすぐ、此処から出られるんだからな。

 

 

後ろの死神にとってはがっかりしているようにしか見えない。

だが、俺様が画策をしている事までは知らない様だった。

 

俺様だって何年も、何十回も捕まっていれば巧妙な対策は練る様にはなる。で、相手も

脱走を防止しようと策を練る。

だが、今回ソイツが奴等の今までに施した対策が全て無駄になる、驚きの作戦となるだろう。

 

死神の名折れめ……てめえの首が飛ぶのが楽しみだ……そして、次は

あの三馬鹿の首を飛ばす事になる。

 

 

 

「待ってろよ、ガキ共……今度こそ、お前達の春を終わらせに行ってやる……!」

 

 

 

 

すると、

 

 

「!へ……?」

 

 

急に身体が落ちていった……というより、落とされた。

 

 

 

誰がやったのかは判った。が、どうして今なのかは判らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LILY BLACK

~亜空間

 

 

 

「……………」

 

 

 

落ちていく。何処まで落ちるんだよ、此?

 

因みに翅は使わなかった。使った時は負けだと思っている。

自分を妖精だと認めちまう。

 

 

そう思っていた途端、思いっきりケツを打った。

 

 

「!!!ア"ァ"ア"~~…………!!!」

 

 

激痛に呻いてる私の傍らで足音が聞こえた。目だけを向けると足が見える。

 

痛みに堪えながら其の方向を見上げる。

 

 

「~~と…唐突だな……もう、そんな時間か?」

 

 

立っていたのは俺が標的にしていた、一匹の月兎だった。

が、其の目は蒼く、身体の一部は擬態が解けて黒いヘドロみたいになっていた。

 

 

「……当然、俺様の擬態は、置いてきたんだろうな?」

 

「デナケレバ、トックニバレテ騒ギニナッテルワ」

 

 

其の黒い部分に新たに開かれた蒼い目が、瞳を動かして此方を見た。

 

 

「今、其の擬態で来られると殺意が増すんだけどな……」

 

「ジャア仕方無イ……別ノ姿ニナルワヨ」

 

 

そう言うと、其の姿は溶けて本格的に黒いヘドロみたいになった。

そして暫く蠢くと、別の人の形をとり始めた。

 

 

「!?」

 

 

其の姿に見覚えがあった。

 

黒と白、そして赤い前髪、そして矢印をあしらった衣装。

そしてその顔は不機嫌そうに歪めた、見慣れたものだった。

 

 

「せ、正邪様…じゃねえか……!!」

 

 

幻想郷で謀反を起こし、追われた天邪鬼。青娥様に次ぐ、俺様の憧れる人物だった。

 

だが、すぐに気付いた。

 

 

「お前…まさか正邪様まで……!?」

 

「龍宮ノ使イノ人形ハ、晴レテ『私』ノ人形ニナッタノヨ」

 

 

普通なら尊敬する人物に手を出して怒る場面だろうが、

 

 

「そうか…流石は俺様の後輩だ……」

 

 

俺様を弟子にしなかった、其の罰があたったと思えば良かった。

 

弟子に相応しいかを試す際にする、度が過ぎた凶行にひかれ、いつも断られていた。

青娥様の時もそうだった。

 

 

 

「!ソウソウ、脱出ヲ早メル理由ダケド……御客様ガ御見エニナッテルワヨ」

 

「?御客様だぁ?」

 

「ソウ、アンタニ助太刀シテクレルソウヨ?」

 

 

其の言葉を合図に、後輩の奥から誰かが出てきた。

 

 

「!?お、お前……」

 

 

俺様が全く予想もしていなかった奴だった。

知ってるやつとは明らかに様子が違い、無言だった。

 

だが、其の状態を見た私はピンときた。

 

 

「……そう言う事か。なら、話は速ぇ」

 

 

其でもソイツは黙っていた。

フードの奥の眼光が鋭い。流石の俺も思わず震え上がっちまった。

 

 

「ヘヘ、何か……暗躍者みたいで、感じ出てるじゃねえかよぉ」

 

 

どうやら、名乗る必要も無さそうだった。後輩達が私の事を、充分に伝えてくれているに

決まっている。そうに違いない。

 

 

「まさか、君が私の味方をしてくれるとはねぇ……ふぅ~ん……」

 

 

少し、調子に乗り始めた俺様。其の人物の周りを歩き、品定めをするかの様に観察し始めた。

 

そして指を鳴らし、

 

 

「よぅし!…本名は隠して…今からお前を……」

 

「名前ハ決マッテイルワ。『クルム』ヨ」

 

 

思わず水を差してきた後輩の方に、顔を向けた。

 

 

「もう、決まってるのかよ……じゃ、じゃあ、そう呼ぶか」

 

 

喰えねぇな……もう少しムードに付き合えっての。台無しじゃんかよ。

そう思って顔をしかめたが、

 

 

「妖夢達ノ場所ハ、捕捉シテイル」

 

 

其の情報を聞いた俺は、すぐに接近する方法を考え出した。

 

 

「なら、近い場所にワープして徒歩で近付いて叩くぞ。

いきなり懐に出てきた処で、警戒されていたら流石に勝ち目が無えからな」

 

 

薬の調合や機械に慣れている俺様からすれば、どれが一番好都合で効率的なのかはお見通しだった。

 

 

「元霊嬢ノ警護役、ソシテ元エリート揃イノ月ノ兎……確カニ、其ガ一番良サソウネ」

 

 

後輩からも太鼓判を貰えたところで……さて……そろそろ始めるかな?

 

 

 

 

 

「じゃ、頼むぜ?」

 

 

そう言うと俺は服の袖をめくり、自分の腕を後輩に向けて出した。

 

マリスは再び其の形を崩し、広がりながら腕に殺到した。

そして表面を小さく切り、其の傷から私の身体の中に侵入した。

 

其の様子を、クルムが無言で見ていた。

 

 

「!……」

 

 

腕から体じゅうに皮下に冷たいものが伝い、根を張って行くのを感じた。

 

 

「クヒ…!!」

 

 

善良な、平和ボケしている連中には絶対に判らない『浸食』の感覚だ。

何せ後輩達と敵対する奴等は、意識も奪われて行くんだからな。こんなの、感じる余裕も

無えだろうに。

 

と、同時に顔の右半分が一段と冷たくなり、そして右目だけ視界が広がっていくのが判った。

 

コイツァ……其の目を指で触っていく。

其の手も指の先から手首までが冷たく、濃い紫色に変色していた。

 

 

「……また三つかよ」

 

 

前もそうだったから別に気にする事は無かったが、見つかって騒動になるのが

面倒だし、一応包帯を巻いておかないとな……

 

そして身長が伸びていることにも気付いた。

此は薬要らずだな…だが、ビリビリに破れちゃったし、新しい服が必要か……

 

そう思っていると、

 

 

「!」

 

 

不意に目の前の空間が裂けた。其の先には、夜の森が口を開けていた。

 

 

「相変わらず、良い仕事してくれるじゃねぇか……スキマさんよぉ?」

 

 

近くにいる筈のソイツに声をかける。今の俺同様、後輩に漬けられてる大妖怪だ。

 

傍では新参者がまだ黙っていた。

 

 

「其じゃあ、行くか……クルムさんよ」

 

 

無言で頷いてくれた。凄ぇ、こんな奴が俺の味方かよ…!?

思わずヒャア、と心の中で歓んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギひ…さぁア、覚悟しヤがレよぉ……?」

 

 

そして俺様、リリーブラックは新参者と共にシャバへ歩いて行った。

 




如何でしたか?

……リリーブラックが、どれ程の凶悪で小物かが御判り頂けたでしょうか?
此の妖精が今回の相手です。
そして彼女についた謎の人物も鍵を握っていそうです。

次回からいよいよゲスト達が登場します。


それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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Requests;キャプチャー オリエンテーション

……コラボを希望していました高速でゆっくりなぺぺさんが
アカウントロックを受けていました。

大変遺憾に思っていますが……瀬戸尾凌君は外させて頂きます。
申し訳ございません。

今回は遂にゲストの方々の登場です。
彼等に戦う相手であるリリーブラック、そしてマリス達についてを
『蒼魔塞』の紫が説明する回です。

ゲストの御一人、竜神王牙君の視点で紹介していきます。
キャラ崩壊を起こしていましたら、申し訳御座いせん。


原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


OUGA

~魔法の森

 

 

「皆、今回は集まってくれてありがとうね」

 

 

夜の薄暗い森の中、俺を此処に連れてきた金髪の少女が声をかけた。

 

いや、正確には彼女ともう一人、俺の隣には俺と同じくらいの男の子が立っている。

見た目は現実世界で言う、普通の中学生だ。

 

 

異なる事があるなら……左腕が無い。

肩からすっぽりと抜け、服だけがはためいている状態だった。

 

 

「アイツも遂に脱走か……元気な奴だな……」

 

 

そう呟いている。

 

 

「竜神王牙君、九賀神矢君」

 

 

少女は俺達と少年の名前であろう名前を言った。

 

 

「私は、八雲紫。幻想郷の賢者として此処を守っている者よ」

 

「えっと、其はもう、知ってますけど?」

 

「一応よ。一応」

 

 

神矢と呼ばれた少年の言葉に応じると、紫と名乗った少女は周りを見渡し、

 

 

「後一人……確か、神崎駆真君が来るけど……」

 

「!駆真が来るんですか、紫さん?」

 

 

神矢が声を上げた。

 

 

「ええ……でも、諸事情で少し遅れるらしいから、とりあえずは此の二人で

行動して貰うわ」

 

 

諸事情……?どういう事だ?

だけど俺が抱いたそんな疑問に関わらず、紫は言った。

 

 

「今から、今回の相手……リリーブラックについて説明するわ」

 

 

そう言うと紫は少しの間黙り、説明を始めた。

 

 

「相手はスペルカードも持たない妖精一匹……でも、彼女には

恐ろしい後ろ盾がいるらしいのよ」

 

「?後ろ盾……?何者でしょうか?支援する人物がいるんですか?」

 

 

神矢が聞くと紫は静かに首を振った。

 

 

「いえ、違うわ。其の後ろ盾は人間ではないのよ」

 

「じゃあ誰なんだ?強力な妖怪か?」

 

 

今度は俺が聞くと紫はまた首を振り、そして言った。

 

 

「非常に珍しい病気の副産物……負の感情の塊よ」

 

「!病気の……?」

 

「そうよ」

 

 

彼女は其処で一旦溜息をつき、

 

 

「其の感情達は影みたいな姿をしていて、個体によっては強さにバラつきがあるらしいけど、

共通して恐ろしい能力を持っているのよ」

 

「?能力?」

 

 

ホルスターから出ているドラゴガン一丁の持ち手を触りながら訊く。

 

 

「他の生き物の中に入り込み、洗脳する」

 

「!!」

 

「其の宿主の意識を奪い、其の身体を言い様に利用出来るのよ。そしてあげくの果てには、

宿主の姿を変異させ、身体の各部位、あるいは全身をまったく別の生き物の様にも変貌させる」

 

「何だソイツ等は……寄生虫の類か?」

 

「性質はそうだけど完全に別種らしいのよ」

 

「壮絶だな……そんな病気が蔓延していたのか、此の幻想郷は……」

 

 

今度は完全に持ち手を握りながら言った。

 

 

「神矢君、貴方は見た筈よ。其の負の感情達を操る本体を」

 

「?本体?」

 

 

紫にそう言われた神矢は腕組みをして考え込む。

 

 

「本体なんて……いましたっけ?………」

 

 

するといきなり腕組みを解き、

 

 

「あの一つ目が…!?」

 

「そう、負の影達は珍しい病気を患う人形遣い、アリス・マーガトロイドから

排出される。そして其の精神は一つ……すべて彼女が影達を統制している」

 

「本体なんているのか……じゃあ、ソイツの病気を治せば……」

 

「影達は消滅する…んだったけど……」

 

 

紫は上を見上げた。つられて俺達も見上げる。

木々の間から見える夜空には赤い月が昇っている。

 

紅い夜……紅霧異変を思い出すな。アスラとの激闘も思い出す。

 

 

「『此の世界の』私も其をしようとしたけど、失敗したの……

結果、其の感情達に侵され、現在本体のアリスの腹心にされている」

 

「!あぁ…手合わせた事がありましたが……ナイトみたいになってた様な……」

 

 

彼の言葉を聞く限り、どうやら、神矢は此の世界に来た事がある様だ。

 

 

「だから別の世界の私が、代役で貴方達を連れて来たって訳よ」

 

「紫いないと不便ですね、此処の幻想郷は……って、妖精の話はどうなったんです?」

 

「!話が逸れたわね……続きよ」

 

 

一つ咳払いをして話が戻される。

 

 

「リリーブラックには恐らく、既に影達を体内に入れている」

 

 

紫が俺達の顔を見た。

 

 

「遭遇すれば、必ず其を利用して貴方達を襲撃してくる。

だからもし相手がそうしてきた場合、容赦なく反撃してもいいわ」

 

「!ちょっと待て……捕縛しなくても良いのか?」

 

 

俺が思わず口を挟む。

 

 

「万が一の場合、殺してもいいと地獄から許可が下ったの」

 

「許可……其程、危険な奴なのか?」

 

 

そう俺が言うと、紫は一枚の写真を取り出して俺達に見せた。

 

 

「同種族の妖精達を生物兵器にしてけしかける程、非道で残酷よ」

 

「成程……」

 

 

其の写真には、伸長の描かれた板の前にいる白黒の囚人服を着た妖精がいた。

 

小さい身体の割に不機嫌そうに顔を歪めていた其の顔は不釣り合いに見えた。

なんか、不良みたいな雰囲気を漂わせている。

 

 

「相手は妖精本来の回復力と、体内に入れた影達の驚異の再生力で、

容易にダメージを与える事は出来なくなっている」

 

「其の上で妖精とは思えない、規格外の攻撃をしてくるのか……厄介だな」

 

 

俺は思わず眉を潜める。

 

 

「弾幕勝負なんて事は此の際忘れた方がいいわ。スペルカードを持たないとはいえ、影の異形になれば脅威なのは変わりないもの」

 

「……本気でやっても良いんだな?」

 

「ええ、思う存分やって良いらしいわ。只、捕縛は狙える限り行って、との事よ」

 

 

 

 

「!………」

 

 

すると紫は何かを察したかの様に目を開いた。

 

 

「……どうした?」

 

「もう、行くわ……私の元の世界で動きがあったみたいだから……」

 

 

そう言うと紫は後ろを向き、手を縦に静かに振った。

其の瞬間、彼女の目の前の空間が音も無く裂けた。俺達が通って来た裂け目だ。

 

すると、何か思い出したかの様に再び俺達の方に向き直り、歩いてきた。

 

 

「貴方達……此を持ってて貰えないかしら?」

 

 

其の差し出された両手には二個の紫と白の小さな球と二本の小さな注射器が乗っていた。

 

 

「此は、陰陽玉と……注射器?」

 

 

神矢が其等を一つずつ受け取りながら言った。俺も其に倣う。

 

 

「其の陰陽玉は私と通話が出来るわ。何かあったり、仕事が完了したりしたら

其に話しかけて」

 

「此の注射器は?」

 

 

俺は注射器を月にかざした。中の白く濁った液体が月の光で輝いている。

 

 

「影達に対するワクチンよ。一応、『マム』〈Ma-Mu〉っていう正式名称もあるらしいけど……

『此処の』永遠亭に事情を話して譲って貰ったの。万が一、貴方達の体内に影が

入った時、此を投与すれば死滅させられる」

 

「俺達に対する保険か」

 

「種族によっては、浸食が効かない者も居るらしいけど……一応持たせておくわ」

 

「助かるよ」

 

 

紫は三度踵を返し、今度こそ自分が開いた裂け目へと歩き始めた。

 

だが裂け目に入る一歩手前で止まり、少しだけ此方に首を曲げた。

 

 

 

「混沌に陥りつつある……此の幻想郷に、救いを……」

 

 

 

謳う様に言葉を発する其の顔は、髪に隠れてよく見えない。

 

 

 

「二人とも……御武運を祈っているわ」

 

 

 

そう言い残すと前に向き直り、八雲紫は目玉が浮いている空間の中に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、まずは自己紹介からですね……歩きながら話しましょうか。時間がもったいないですし」

 

 

閉じられていく其の空間を見ながら、神矢が言った。

 

 

「其が良さそうだな。俺も聞きたい事があるし……でも出来れば、

リリーブラックについても知ってる限りで良いから、教えて貰えると嬉しいんだけど」

 

「嗚呼、アイツね……にしてもかっこいいですね、其の銃」

 

 

 

俺達も話しながら歩き出し、夜の森の中へと入っていった。

 

 




如何でしたか?

此処からゲストの方々、そしてリリーブラック達の双方に少しだけ準備が入ります。
次回はリリーブラック側の様子を紹介いたします。

それでは、じかいもゆっくりしていってね♪


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Requests;Evils in Lab

今回から二話当たり、出会うまでの双方の準備を紹介します。

まずは、リリーブラック側を御送り致します。


原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


LILY BLACK

~玄武の沢

 

 

ドドドドォォ…………!!!!!!!!

 

 

「!滝か……」

 

 

叢を搔き分けて森から出た私達の耳に、激しく落ちる水の音が突き刺さる。

 

玄武の沢だ。本当、丁度良いタイミングだな、おい。

 

近い内に聞いた情報で、其の滝壺の裏には洞窟があって、人間の旅人が妖怪から

隠れて過ごせる絶好のスポットになっているとか。

 

 

「!あった…コイツだ……!」

 

 

そんな事は気にせず、俺は其の近くにある、大きな岩に駆け寄って岩肌に手を当てる。

 

 

「此ノ岩ガ、何ナノ?」

 

「まぁ、見てろ……で、えーっと…確か……」

 

 

俺は岩の表面を撫でて、探す。

 

 

「!、此処だ此処だ…」

 

 

周りの岩肌に似た様な構造の小さな蓋を見つけると、爪を使って取り外した。

 

其処から出てきたのは機械の一部だ。其の大半をカメラのレンズみたいな部分が占めている。

 

 

「コンナ機械ヲ、岩ニ埋メ込ンデイタノネ……」

 

「こうやって隠しておかないと、馬鹿妖怪共がいじくって壊す可能性があるからな」

 

 

そして後ろにいるクルムの方を向いて、

 

 

「ちょっと待ってろ」

 

 

と声をかけた。アイツは其の言葉に、無言で頷いた。

 

 

「悪いが、お前達マリスの目は当てには出来ん、俺様の目で行く」

 

 

岩に向き直った俺は岩肌に顔を近付けて、マリスの影響が出ていない左目だけで

機械のレンズを覗き込んだ。

 

すると其の覗き込んだレンズの奥から光が放たれた。

其の光が、目の表面を通り、光彩を読み取る。

 

光が消えると、岩から顔を離し、岩からも離れる。

岩が音も無く横に滑っていき、其の下から地下に続く鉄の階段が現れた。

 

 

「……完璧なセキュリティだろ?俺様の目が無ければ、此のアジトには入れねぇ。

尤も、俺様に擬態出来るから、お前達も侵入出来るが」

 

 

そう言いながら、鉄の段差に足をかけた。

 

 

「降りるぞ、ついて来い。着替えも兼ねて、少し準備するぜ」

 

 

今度は後ろを見ず、声だけをかけて薄暗い降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LILY BLACK

~玄武の沢 地下

 

階段を下り終えた俺は、暗い鉄の廊下を進んでいった。

後ろから別の足音が聞こえる。ちゃんとついて来ている様だな。

 

やがて緑色の光が、見えてきた。一応後ろに警告をする。

 

 

「ショッキングな光景が見えるぞ。嫌なら目を瞑っておけ」

 

 

細い廊下の両側に透明なガラスの装置……いわば培養槽が並んでいる。

 

其に満たされた光源ともなっている液体の中に妖精の裸体が一基に

一匹ずつ入れられ、浮かんでいる。

腹のへその辺りに金属の管が何本も伸び、液体の中で機械と繋がっている。

 

さながら母体と胎児みたいだ。だがいつもの見慣れた光景だ。

そんなモノには目もくれず、廊下をずんずんと歩いて行く。

 

 

そして廊下が終わり、小さな部屋に突き当たる。

 

此処にも機械が並んでいるが、俺は其の一角に置かれた、パソコンが乗った机に

一直線に近付いて行く。

机の上やパソコンが白くなっていた。

 

 

「チッ、埃被ってやがらぁ……」

 

 

すぐに手で画面の埃を払いながら画面を綺麗にする。

電源のボタンを押し、しばらく待ち、暗証番号を入力した。

 

 

「埃が入り込んで、不具合起こさなきゃ良いんだが……」

 

 

パソコンがちゃんと動くか、椅子には座らずキーボードを指で叩いて確認を取り始める。

 

 

「……オールグリーン、久々に触ってみたが異常も無さそうだな」

 

 

ほっと息をつき、机から距離を離す。

 

 

「さて、着替えるか……此処で待っててくれ」

 

 

そう言うと、奥に作ってあった扉の方に向かった。

 

其処で一旦振り返り、

 

 

「おっと、もしかして目の前で着替えて欲しいか?残念ながら絶壁だけどよ」

 

 

後退し、ドアノブに触れながらそう言った。

するとフードの奥で少しだけ目が泳いだのが見えた。

 

ヘヘヘ……やっぱ男だな、コイツ。

 

 

「じょーだんだよ、バーカ」

 

 

そう言って意地悪く笑いながら、ドアを開け、身体を中に滑り込ませた。

 

此の部屋にはトイレも洗面台も浴槽ある、言ってみればホテルにある一室みたいな感じだが、更には衣装の入ったクローゼットもある。

 

完璧過ぎる程に詰め込んでいるが、何で実験室の隣って設定したんだろうな、俺……

 

 

「さて、どれにしようか……」

 

 

ドアを閉め、クローゼットの扉を開けた。

まずは衣装選ぶ。着替えは其が決まってからだ。

 

 

「……!あぁ……コイツを着てみるかな……?」

 

 

私は、ハンガーで吊るされた衣装の内の一着を取り出した。

全体的には黒く、背中には二本の裾が伸びていた。

 

まるで………

 

 

「!燕尾服?タキシード……?アンタニ男装ノ趣味ガアルナンテネ」

 

「はぁ!?違ぇし!ドレスは重ぇし、フリルが鬱陶しいし、

女物の服は正直面倒臭ぇんだよ!

リリーホワイトの同じ服装も、嫌で嫌で仕方無かったんだからな!」

 

「ナラ、普通ニカジュアルナノデモ良カッタノニ」

 

「細けぇこたぁいいんだよ!じゃあ、コイツで決まりだな」

 

 

そう言いながらビリビリに破れた、囚人服を纏った身体を見下ろす。

 

 

「……もういいや、金輪際着ねえし、こんなダサいの」

 

 

そして、ボロボロの襟首を両手で掴み、思いっきり引き裂いて

ダイナミック脱衣を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後。俺様、リリーブラックは新たな衣装を纏い、ドアを勢い良く

蹴り開けた。

 

 

「じゃっじゃぁーん!!見てみろよぅ!!!」

 

 

だがクルムは、さっき私が使っていたパソコンの奥にある、一つの培養槽を見上げていた。

廊下に並んでいたのと同型で、中にも同じ様に一匹の妖精が緑の液体の中で

膝を抱えている。

 

 

「見てねーし………しょぼん……」

 

「……ソンナ顔文字ミタイナ顔、流行ラナイシ、流行ラセナイワ」

 

 

だが、すぐに気を取り直してクルムの方に歩いて行った。

 

 

「……気になるか?」

 

 

横に来た俺に顔を向けたが、やはり何も言ってくれなかった。

 

 

「後輩よ。コイツが何か判るか?」

 

 

何も言わないクルムに代わり、身体を見下ろしながら質問をかけた。

 

 

「……全裸ノ妖精ガ、機械ノ中デ薬漬ケニナッテイル?」

 

「そーだ。しかもだ……」

 

 

私は後ろを向き、机に腰を添えた。其処から手を伸ばし、白手袋を

した手でガラスの表面をノックする様に叩く。

 

 

「妖精の中でも取り分け強い種類を選んで来た。向日葵の花を持ってる大きめの

妖精がいるだろ?アイツ等のうちの一匹だ」

 

 

クルムの方を見ると、相変わらず無言のままだった。

 

 

「……妖精を実験体にするのが気に喰わないか?」

 

 

何も答えなかったが俺には判る。明らかに、俺に嫌悪感を抱いている。

 

 

「悪いが、コイツ等嫌いだし、其に……」

 

 

 

 

 

「妖精って人外だろ?人外を人外にして何が悪い?」

 

「……………」

 

「其にコイツ等、自然の権化だろ?要は自然を破壊しなければいくらでも

湧くんだから、利用しない手は無ぇし」

 

 

無言だった。今のクルムからしたら今俺様の顔は、最高のゲス顔に

見えてるかもしれない。だが、構う必要も無ぇ。

 

今度は其の反応を無視して、俺様は説明を再開した。

 

 

「いつもなら、此の段階はへそに繋いだ管を通して薬を投与して、生物兵器に仕立てるんだが……其処でだ」

 

 

人差し指でエンターキーを押す。するとパソコンの近くに設置していた

じょうご型の機械の蓋が開いた。

 

俺様の中で声が聞こえた。

 

 

「……入レッテ?」

 

「物分かりが良いじゃねえか」

 

 

そう言いながらじょうごの中心に空いた穴を指差した。

 

 

「一部の薬の代わりに、お前等を投与する。するとだ、いつもの奴より強い俺様の傑作をコントロール出来るって事になる」

 

 

白手袋は付けたまま、左腕の袖をまくる。其処には後輩が俺の身体に侵入する際に付けた、切り傷が残っていた。

 

 

「戦いでピンチになったら体内から逃げだせば良いし。此の妖精には心音爆弾も

埋めているからな」

 

 

其の切り傷を下にして腕をじょうごの上に出した。

 

 

「さぁ……行って来い」

 

 

すると腕の傷口から、黒い液体状の後輩が出てきた。

そして其のまま数滴が滴り落ち、じょうごを伝って管の中に入っていった。

 

ガラスに目を移すと、へそに通じる一本の管に黒い後輩達が流れていくのが判った。

 

そして其が間もなく妖精に到達しようとした……

 

 

 

が、突然其処から、黒い液体が漏れ出した。

 

 

「!?」

 

 

そして瞬く間にガラスの中が真っ黒になり、妖精の姿が見えなくなった。

 

 

「何だ……まさか、接合部分の隙間から漏れたのか!?」

 

 

私は急いで、パソコンを操作して中の液体を抜こうとした。

 

 

「問題無イワ」

 

 

突然聞こえた後輩の声で、手が止まった。

 

 

「本当か!?失敗しないだろうな!?

ちゃんと変異を起こしてるだろうな!??」

 

「只、少シ時間ガカカリソウ……」

 

 

すると、黒くなった液体の中を、何かが蠢いているのが判った。

 

 

「!?」

 

 

其の動きによって起こる液体の流動から判る。

中にいるのは少なくともさっきの妖精よりも遥かに大きい。そして

今までに作った生物兵器よりも大きい。

 

恐らく、培養槽のガラス部分の半分の大きさは占めている。今までのでも

三分の一も無かったのに……

 

コイツは、期待出来るぞ……!!

 

 

 

すると、突然後輩の声の調子が変わった。

 

 

「妖夢達ガ、近付イテイルワ……!」

 

「!?何だと……!?」

 

 

俺はすぐに視線を目の前のガラス容器から、天井に移した。

 

どうやら監視を続けていた後輩達が、アジトに近付いた事に気付いた様だ。

 

 

「直ぐ近くまで来ていたとはな……アイツ等……」

 

 

直ぐに出発の準備をしようとしたが、不意に今目の前で変異を遂げている

容器の中身をどうしようと考えた。

 

急いで行かなきゃいけねぇのに、時間がかかるとは、なんて間が悪ぃんだよ畜生……!

 

だが、其を見透かすように、後輩が体内から声をかけて来た。

 

 

「後カラ行クワ……」

 

 

思わず変色した顔の右半分に手を伸ばすが、触りはしなかった。

 

 

「ダカラ此ノ培養槽ノ液体ト、ガラスヲ取リ除ク操作方法ヲ教エテ」

 

「……また、そこらへんの物を弄るんじゃねえよな?」

 

「本体モパソコンハ持ッテルカラ、ソンナヘマハシナイワヨ」

 

 

本当かよ?そう思いながらも、俺はパソコンでの操作方法を教えた。

 

 

「判ってるだろうが、順番をしくじるなよ?薬の大洪水で機械がショートするからな。

爆発して新作もアジトも、新作の中のお前等も駄目になっちまう」

 

「薬トハ違ッテ機械ニハ慣レテルカラ、大丈夫ッテ言ッテルデショ」

 

「本当かよ?」

 

 

同じ様な感じの弁解に、今度は口に出した。

 

 

「地下にある裏口は開けてある。机の下だ。さっき抜けた森の

倒木の洞に繋がってるから其処から出ろ」

 

「何デ裏口ナノ?」

 

「表は閉めるからに決まってんだろ」

 

 

其処で、

 

 

「クルム……早速仕事だぜ?行くぞ!」

 

 

と、クルム向かって言うと、部屋をもと来た廊下を走りだした。

 

 

だが……走りながら、考える。

 

後から増援とは……今考えると良い作戦だな……

 

戦っている途中に、巨大な新作が現れたらどうなるだろうな。

奴等、きっと喜んで泣いてくれるぜ。

 

其にクルムも居る。奴等相手にどれだけの実力を発揮してくれるか、楽しみだ。

 

そしていざとなれば……

 

 

今度の戦力は充分だ。負ける気はしねえ…!

 

 

そうこう考えてる間に廊下を走り終えていた。

 

見上げると、階段の一番上にあるアジトの入口からは赤い雲と月が

浮かぶ夜空が見える。

 

 

 

「お前等は今夜、ベッドじゃなく、墓場に土に潜り込ませてやるよ……俺様にくれた屈辱……今からたっぷりと返してやるからな!」

 

 

 

階段の一番下から其の空を睨み、階段の一段を踏みながら俺様は呟いた。

 

 

 




如何でしたか?

今回のリリーブラックはかなりギリギリな行動や発言が目立っていました。
そして彼女がしていた、恐ろしい実験も明らかにされました。

次回はゲストの方々の方を紹介していきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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Requests;斥候での証明

今回はゲストの方々の準備回……と言ってしまってましたが、
大半は戦闘です。

現在活動しているもう一人のゲスト、九賀神矢君の視点で御送り致します。


原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


SHINYA

~魔法の森

 

 

「そうか……九賀神矢というのか」

 

 

俺は隣に歩く、俺と同じような年齢の青年とお互いの自己紹介をしていた。

 

彼の名は龍神王牙で、人間と龍帝王のハーフだ。

龍帝王は絶対的な力と地位を持ち、其の地位は他の神々や龍神よりも高い。つまり、神奈子様や

諏訪子様よりも偉いという事だ。

 

そんな人が俺の隣に……思わず恐縮してしまう。

 

其の腰にはドラゴガンという二丁の銃はホルスターに収められている。更にホルスターは腰に

巻いている九つの宝玉が輝くベルトに収納されていた。

其の宝玉には一個ずつに龍王が封印されていて計九柱の龍王が封印されている事になる。

封印が解けると龍王達の力を借りる事が出来、今は三柱の龍神から力を借りられるとの事。

ドラゴガンで其の力を打ち出す事も出来るらしい。

 

龍の力か……羨ましいなと感じる。俺は鬼なんだが……

 

 

すると、王牙さんの足が止まった。俺も足を止める。

 

 

「……神矢」

 

 

王牙さんが俺を呼ぶ。

 

 

「?何ですか?」

 

 

俺が訊き返すと、突然王牙さんは後ろを振り向き、素早く抜いた一丁のドラゴガンを

遠く離れた一本の木の上に向け、一発銃弾を撃ち込んだ。

 

 

「!?………」

 

 

呆気にとられて見ていると、数秒後には撃ち込まれた葉がガサガサと鳴り、間髪入れずに何かが

落ちる音がした。

 

 

「…付けられてたか……」

 

「あんなに遠くにいたのをどうやって見抜いたんです!?」

 

「尾行が下手だからすぐに判ったさ!とにかく、行こうぜ!リリーブラックかもしれない!!」

 

 

俺達は、何かが落ちた方向に向かって走って行った。

 

 

だが、其処にたどり着いて驚いた。其の木の下で横たわっていたのは……

 

 

 

 

「!?れ……鈴仙さん……!?」

 

 

永遠亭にいた、月の兎の一匹だ。

元の世界で怪我をし、永遠亭に運ばれる際に永琳さんと一緒に治療、看病と御世話になっていた。

 

 

「どうしてお前が此処に……!?」

 

 

王牙さんもどうやら彼方の世界で、鈴仙さんに出会った事がある様だ。

 

木の上から落ちて頭を打ったのか、頭を抑えながら悶えている。

さっき打ち抜かれたと思われる、右の二の腕の部分がブレザーの袖ごと溶け、黒い液体に変わって流れ出している。

 

 

「!傷の色が!」

 

 

そう言っていると鈴仙さんは素早く身体を起こし、痛みを払うかの様に頭を振った。

其に合わせて頭のウサ耳も揺れる。

開かれた其の両眼は赤色ではなく、冷たい水の様な蒼色だった。

 

 

「目が蒼い。お前、鈴仙ではないな……!?」

 

 

王牙さんがそう言うと、

 

 

「正確ニ狙イ落シテ来ルトハ、驚イタワネ……貴方……」

 

 

王牙さんに向けられた其の声は複数の少女の声が混ざった、奇怪過ぎる声だった。

聞き憶えがある……確か、雪の道や黄金の空間や、スキマの中……

そして俺のいた世界の竹林で聞いた咲夜さんの声と似ていた。

 

 

「名前ハ?」

 

「龍神 王牙」

 

 

そうか。前に戦ったあの化け物達、そして此の鈴仙さんも紫の言っていた、アリスさんの病気の

副産物か。

 

 

「憶エテオクワ……ソシテ……」

 

 

其の蒼い眼が俺に向いた。

 

 

「久シ振リネ……九賀神矢君」

 

 

確定だった。相手も俺の事を憶えていたらしい。

 

足元には右腕から滴り、足元に溜まっていた黒い液体が溜まっている。

すると突然、其等が真上に伸びて再び腕部分に集合し固まり始めた。

 

 

「!まさか、コイツは……!!」

 

 

王牙さんも其の正体に気が付いたみたいだった。

其等はある武器を宿した腕を生成し、明らかに元とは異なる形に変化した。

 

 

「あの腕は……ガトリング!?」

 

「再生って言っても、すっかり元通りではなさそうだな…寧ろ攻撃的に変化してる…!」

 

 

左腕よりも大きい右腕が俺達に向けられ、先端の発射口が回転し始めた。

 

 

「!近くの木陰に隠れろ!!」

 

 

其の王牙さんの声を合図に、踵を返して走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

SHINYA

VS〈悪意の蒼眼〉鈴仙・優曇華院・イナバ

~魔法の森

 

 

森林にしては草むらが多い道を走る俺達の後ろから、紫色の銃弾型の弾幕が通り過ぎていく。

王牙さんはあの瞬間に攻撃する隙が無いと判断したみたいだ。俺も其が賢明だと思った。

 

そしてお互いに見つけた、別々の木の後ろに飛び込んだ。其の木に容赦なく弾幕が当たる音が

響く。

貫通した弾が当たらない様に、出来るだけ身体を小さくして身を守った。

 

 

(……おい)

 

 

声が聞こえた。

 

 

「~~どうした?こんな時に……」

 

 

俺は、もう一人の俺……鬼の九賀神矢に小声で返事をした。

 

 

(リリーブラックをとっ捕まえる前のトレーニングに、アイツを倒してやれ。王牙と言う奴も

きっと驚くぜ?)

 

 

其を聞いて並んで立つ隣の木を辛うじて見る。

 

木陰で王牙さんがドラゴガン一丁を手に、敵の様子を見ようとして銃弾に阻まれているのが

見えた。

 

 

(先を越されたんだ。止めは貰うのは当然だろうが)

 

「先に越されたって……木の上にいたのを狙撃した事?」

 

(鈍いよな……あれ、俺だって気が付いたぞ?)

 

 

じゃあ何で教えてくれなかったんだよ……そう思っていると、銃声が止んだ。

夜の森が再び静かになる。

 

 

「でも、どうだろうな……俺は逆に王牙さんの実力も見たいと思うんだけど……」

 

 

木の陰からこっそり様子を見る。

 

 

「隠レテナイデ、出テ来ナサイ。其処ニイルハ判ッテルノヨ?」

 

 

発射を止めた銃口から出る紫色の煙を銃身で振り払いながら、俺達の隠れている木に向かって

歩いて来ている。

 

撃ち落とし、欠損して弱体化したどころか、まったく別の形に再生して逆に強化される。

気を付けて見ると恐ろしい副産物だな、と今更思う。

 

紫さんの言っていた通り、此は本当に弾幕勝負どころではないな……

 

だけど……

 

 

「俺にもあんな再生能力があればな……」

 

 

左腕が入る筈の袖がヒラヒラはためくのを見下ろしながら呟いた。

 

 

(…ふーん……)

 

 

もう一人の声を聴きながら、俺はあるスペルを唱えた。

 

 

其の時だった。

 

 

「フュージョン、『氷龍王』!!」

 

 

王牙さんの声が聞こえ、其の方向を見た。

 

其処には瞳も、髪も透き通るような水色となった王牙さんがいた。

周りには白い霧のようなものが立ち込めている。

 

思わず身震いをしたことで判った。そうか、此は冷気だ。冷気が目に見える程になって王牙さんを取り巻いているのか。

 

!氷龍!?……じゃあ、あれが……!?

 

 

王牙さんが木陰から飛び出しながら、もう一丁のドラゴガンも抜き、偽鈴仙さんに構えた。

 

 

「龍砲『ドラゴニックグレイシャー』!!」

 

 

双方の銃口から龍の形をしたオーラが打ち出され、敵に向かって飛んで行った。

 

だが相手もすかさず発射した黒と紫の弾幕が擦れて軌道をずらし、身体には当たらずに其の足元で炸裂した。

 

 

「!?……」

 

 

炸裂したオーラにより相手の腰から下が地面ごと凍り付き、身動きが取れなくなっていた。

 

 

「デジャヴだな。だが鈴仙を装う以上、今度は容赦はしない!」

 

「~ヴヴ……ギァアァ……!!!」

 

 

本物の鈴仙さんではあり得ない様な唸り声を上げながら変形していない片手だけで氷から

下半身を引き抜こうと気張っている。

 

 

「どうだ。氷漬けにされてしまったら最後、俺の力なしでは拘束からは解けないぞ」

 

「~~其ハ……ドウカシラ………?」

 

「!?」

 

 

すると再び氷に手をつけ、薄紫色の長髪を揺らしながら更に力を込め始めた。

 

 

「何だ……力ずくで脱出する気か……!?」

 

 

だが、其の予想は大違いだった。

 

 

 

 

ブチィィイ………!!!!!!

 

 

 

 

なんと自らの上半身を、氷漬けの下半身から完全に引き千切った。

 

 

「!?な……!??」

 

 

上半身は其のまま氷の上から落ちたが、直ぐに新たな下半身を再生させ、立ち上がった。

其は黒い毛が密生していて本来の兎に近い様な形だけど、足の長さはさっきと変わらない。

 

そして氷の中に残った古い下半身は黒く変色して形を崩し、自力で穴から外に抜け出した。

 

 

「まさか、そんな無茶な方法で氷から抜け出すなんて……!」

 

 

王牙さんも唖然としている。

脱出した元下半身の液体が両脚に纏わり付いて一体化すると、細い脚は一気に太くなり、黒い毛が逆立って棘が発生した。

 

 

「簡単ニ拘束サレル程、『私』ハ甘クハ無イワヨ…」

 

 

出来たての脚を確かめているのか、鋭い爪の生えた脚先で地面を突きながら相手は言った。

 

 

「今度は脚が……」

 

「蹴られたら、骨が折れる程度では済みそうにないな、あれは……」

 

 

でも、俺は王牙さんの方を見て言った。

 

 

「ですが……蹴られる心配は多分無いです」

 

 

其の言葉を聞いた王牙さん、そして鈴仙さん似の相手が怪訝な顔をした。

俺は敵の方に顔を向け、少し笑って見せた。

 

 

「!!」

 

 

其の俺の表情で全てを理解したらしく、慌てて俺達に右腕の生体ガトリングを向けた。

銃口が再び回転を始めるが、

 

 

「遅いぞ!衛星『ストレンジサテライト』!!!」

 

 

間もなく空に放っていたレーザーが地上に降り注ぎ、偽鈴仙さんに向かって殺到した。

発生する衝撃と砂塵から俺達は両腕で身を守った。

 

そして砂埃で、何も見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衝撃が収まり、顔の前から両腕を離した。

 

周りの叢は吹き飛び、木々には穴が開き、目の前の窪みからは土煙が立っている。

 

 

「……………」

 

 

すると其の煙の中から立ち上がった姿があった。

 

 

(……やったじゃねえか。見ろよ、穴ぼこまみれだぜ)

 

 

身体中が黒く変色し、身体中に開いた穴から黒い液体を吹き出している。

其の黒くなった部分から無数の眼球が見開き、其の青い瞳があちこちを見渡している。

だが半分吹き飛んだ顔の瞳は、俺達を睨んでいる。

 

其処から力なく膝を付き、バッタリとうつ伏せに倒れた。

 

 

「……………」

 

 

俺達が見下ろしている前で、其の異形が泡となり、黒い霧となって消えていった。

 

 

「……やるじゃないか」

 

 

其を見届けた後、王牙さんがドラゴガンをホルスターに戻しながら俺に言った。

髪も瞳の色も元に戻っている。

 

 

「だが…何時撃ってた?」

 

「さっき木に隠れていた時です」

 

 

質問に対する俺の答えを聞くと、眉をひそめながら目を泳がせ、

 

 

「!あの時か……」

 

 

さっきの流れを思い出して納得したらしく、表情を緩めて前方を見た。

今度は俺が訊く。

 

 

「王牙さん、さっきのが……!」

 

「!龍王の力を借りたのさ」

 

 

ホルスターに収めたばかりのドラゴガンとベルトを見下ろして応えた。

黒いボディーに赤いラインの入った其の銃身、黒革のベルトに収まる九色の宝玉が、月の光を反射して光っている。

 

 

「氷の力……『氷龍王』だ。他にも、『炎龍王』、『水龍王』の力も借りられる」

 

「凄いですね……あれ程の力を他にも……」

 

 

でも、其の表情はすぐに厳しくなり、

 

 

「…だからと言って油断はダメだな。まさか変身まで出来るとは……其にあんな奴等が護衛に

就いてるなら、此からが大変そうだ」

 

「リリーブラックより厄介ですね……気を付けましょう……」

 

「嗚呼、チームワークを大切にしねえと……だが、やりがいのある戦いも出来そうだな」

 

 

俺達は再び黒い奴を捜しに、黒い森を歩き始めた。

 




如何でしたか?

ゲストの御二方に、妙にクールな雰囲気が漂っていて、何だか原作でのイメージが壊れそうですが……大丈夫でしょうか……?

次回は遂に双方が出会い、本格的に戦いが始まります。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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Requests;Night Encounter

今回は遂に邂逅です。
ゲストの方々とリリーブラック達が出会ってしまいます。

もう一人の神矢君視点で御送り致します。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


SHINYA(ANOTHER)

~魔法の森

 

俺は神矢の中から二人の会話を暢気に聞いていた。

 

 

(……そうか、お前の中にもう一つ人格がいるのか)

 

(人格…と…言いますか…まぁ、色々複雑なんですよ……対応が変わると思いますので、其の時は…)

 

(判ってるさ。間違いない様にする)

 

 

……しれっと俺の事も言ってるし……まぁ、混乱しねえ為にも言ってくれると嬉しいけどよ。

 

 

其の時、突然王牙が何者かにぶつかった。

 

 

(!?)

 

 

王牙は何とか持ちこたえたが、相手は其のまま月の光の当たらない地面に倒れた。

 

 

(!?大丈夫か……)

 

 

王牙がソイツに近寄って手を差し出した。倒れた人物の顔あたりが此方を見るかの様に動いた。

 

 

(ホアァアアァアァァ………!!!!!)

 

 

突然訳の判らない声を上げると、慌てて木の陰に隠れた。

 

其の声は少女……でも、俺達の前で月の光に当たる木に隠れているのは俺達より確実に身長が高いから女性……か?まぁ、そんな風貌だ。

 

第一印象は、男装した女不良だ。タキシードを見事に着崩している。

タキシードなのは燕尾が見えていた事で一発で判った。

 

金髪もぼさぼさで艶が無い。目は真っ赤に充血し、目の下のクマも酷く、

げっそりと頬肉も落ちている。相当過酷な牢獄生活を送っていたに違いない。

 

 

(イケメンと衝突したぁ……マジ運命だろ此……!?)

 

 

口も驚くほどに悪い。

 

顔の残り半分だけは木に隠してて見えなかったが……何か秘密があるのか…?

 

 

「!」

 

 

其の出ている半分の顔は写真で見憶えがあった。

 

顔を半分木で隠しているが、コイツは……!!

 

 

(……お前……リリーブラックか?)

 

 

もう一人の俺が訊いた。流石に考えてる事は同じか。

 

 

(!何……!?)

 

 

今度は王牙が気付かなかった様だ。

やったじゃねえか神矢。此で王牙と並んだぜ?

 

其の質問をされた瞬間、相手は明らかに態度が変わった。

 

 

(!?何だ……てめえ等、俺様の名前を気安く呼ぶたぁ……)

 

 

……ビンゴ。今回の戦闘相手と見事にぶち当たった。

しかも自分からバラした。コイツは想像以上の馬鹿と見た。

 

間抜けな極悪脱獄囚は木の蔭から全身を姿を現した。

 

右半分の肌の色は暗い紫色に汚らしく変色していた。何より其の眼窩に、此でもかと言わんばかりに押し込められた三つの眼球。

其のお陰で顔の右半分をほとんど目が占領しているという、実におぞましさが醸し出されている。おまけに全部が違う方向をギョロギョロ見ているからより一層グロさが増している。

 

他人から隠したがるのも判る気がした。

 

 

(其方から出てくるなんて、有り難い限りだな)

 

 

王牙がドラゴガンを両方取り出して、其の内の一丁をリリーブラックに向けた。

 

 

(!はぁ!?此方ぁ全然有り難くねぇし!ラブコメでも無ぇぞ、

こんなキュンとする様な出会い方で、キュンともしねえクソガキ共と鉢合わせするなんて……)

 

 

両手もあげずに言い放った其の言葉に、少しカチンと来た。

 

 

「神矢……代われ」

 

 

俺は今出ているもう一人の神矢に言った。

 

 

(!……え?)

 

「良いから代われ」

 

(判ったけど、何する気だ?)

 

「良いから、黙って見てろ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

神矢と入れ替わった俺はリリーブラックに近付いてきた。

 

 

「!ふふーん、何だ坊や、早速やり合うか?」

 

 

相手は完全に馬鹿にしている表情で言った。

俺は目の前に立った……其の途端に、

 

 

「貫符『トラジカルスピア 手中』!!!」

 

 

右手に槍を召喚し、其の尖った先端を思いっきり顔面に突き刺してやった。

 

 

「!!?ギヤァアァアァオゥアェエェエェェエ!!!???」

 

 

あまりの痛さと刺した時の勢いからか大きく吹き飛び、近くの木に激突し、其のまま土の上に転がった。

 

 

「ヌガァアァ!???何モ……何モ、見エネェエェエエェ!!!!!?????」

 

 

ジタバタもがきながら出す声のトーンが無茶苦茶になっている。さっき聞いた鈴仙って奴に擬態した化け物と同じだ。

 

 

「坊やだからって舐めて貰ったら困るぜ?」

 

「~~痛ッテェエエェエナ!!!顔面ニ刺シヤガッテ顔面ニィイ!!!!」

 

 

そう喚くと顔面に盛大に突き刺さったトラジカルスピアを乱暴に引き抜いて放り投げた。

直ぐに顔の真ん中に空いた大穴から黒い液体が大量に吹き出し、服を黒く染めていった。

 

だが、たちまち黒く染まっていた顔が元通りになっていた。

元通りに鼻や目が発現していく。右目の三つ目までそっくり其のままだった。

 

 

「!?畜生……セっカく御洒落シた途端に此かよ……!!」

 

 

顔の傷が癒えていくと同時に声も元に戻っていく。

 

紫が言ってた通りだな。やっぱり、気色悪いのを体内に入れてしまってたか……

 

 

「……弱いな…」

 

 

王牙が呟く。

 

 

「さしずめ妖精と病気の治癒力、奇跡のコラボレーションだけが取り柄か……」

 

 

俺も便乗する。すると、

 

 

「!?妖精だと……服汚したうえに俺様を妖精呼ばわりしやがって……!!」

 

 

俺の妖精と言う言葉に敏感に反応し、また喚き始めた。

 

俺以上に喧嘩っ早いな……写真のしかめた顔を思い出す。成長していてもしかめた顔は

変わらないだろうな。

不良だな。本当に、ドキュンだな。

 

 

「貴様等は、俺様を怒らせた……」

 

 

ゆらりと立ち上がり、俺達二人を睨んだ。三つの蒼い瞳も全て此方に向いた。

 

本気出してきやがったな……と思いきや、

 

 

「おい、クルム!!!」

 

 

すると、其の声に反応して木の蔭から突然黒い影が飛び出して来た。

 

 

「!新手か……!?」

 

 

俺達が其の新手に気を取られた隙に、

 

 

「悪ガキ共如きに、わざわざ手を汚すまでもねぇ!!」

 

 

リリーブラックの足下の土から、大量の黒い液体が湧き出した。

 

 

「!?」

 

 

其はある形をとり、やがてリリーブラックの傍で完全な形で土を蹂躙した。

 

 

「あれは……バイク!?」

 

 

かなり大型のバイクだ。だが其のボディは黒と紫色に統一されて禍々しく、所々蠢いていた。

前後の車輪には其々蒼い瞳の巨大な眼球があって此方を見ている。

 

 

「!しまった!」

 

 

リリーブラックは素早く其の座席にまたがり、爪がある節くれ立った人の指の様な紫色のハンドルを掴み、捻った。

途端にマフラーの震動と共に、生々しい排気口から紫色の煙が勢い良く吹きだした。

 

 

「待て!!」

 

 

リリーブラックを乗せた生体バイクは急速に旋回すると森の木々の間を走り抜けていった。

 

 

「あ~~ばよっっ、精々頑張んなぁ!!!」

 

 

バイクのエンジンに揺られながら、正常な右目であかんべぇしながら共にそう言いやがった。

王牙がドラゴガンで足止めしようとしてタイヤの目玉を狙い撃ったが、届かなかった。

 

舌打ちをして発砲を止めた王牙は俺が見ている目の前の人物に視線を向けた。

 

 

「取り敢えずは、先に倒さないといけない様だな……」

 

 

其を聞いた俺は改めて新たな敵を観察した。

 

身長は俺達とほぼ同じで、全身を黒色のコート、そして黒いフードが別々になっている。

其の顔はコートと夜の暗闇のせいで全然見えなかった。

 

堂々としていた。其の場で根を伸ばして立っているかの様にも見えた。

其処から俺は判った。強いな、コイツは……

 

其の時、コートの奥から眼光が見えた。僅かに瞳も見えた。

 

鋭い……が、其の時俺は妙な感覚を覚えた。

 

 

「……神矢……」

 

 

俺は俺の中で待機している、もう一人の俺に小声で聞いた。

 

 

(?何……?)

 

 

もう一人の俺が返事をする。

 

 

「俺……コイツを知ってる気がする」

 

(!どういう事……?)

 

「フードの奥の視線に覚えがある…誰だ?」

 

 

其の時、敵が其のフードをさっと外した。

 

 

「!!」

 

(!!お……お前は……!!)

 

 

其の顔を見たもう一人の俺も気付いた様だ。

 

 

「まさか…お前だったとはな……」

 

「?誰だ、神矢……いや、もう一人の神矢、知っているのか…?」

 

 

俺と神矢の区別をしっかりつけ、王牙が訊いてきた。

 

答える代わりに、俺はソイツの名前を囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「神崎……駆真……!」

 

「!何……!?」

 

 

過去にこっちで共に戦った、異世界の奴だった。

 

 




如何でしたか?

クルムの正体がまさかのもう一人のゲストでした。
どういう経緯でマリスの下に就いてしまったのでしょうか……

次回はゲスト同士の対決となります。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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Requests;影光なる内輪もめ~Twin Side Battle~

今回は、ゲスト同士の対決を王牙君視点で御送り致します。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


OUGA

VS〈駆け抜ける神人類〉神崎駆真(クルム)

~魔法の森

 

 

「アイツが……神崎駆真……!?」

 

 

黒いコートに黒いフードのクルムと呼ばれ、突如現れたリリーブラックの腹心の様に思われた人物。まさかソイツが奴の捕獲する方だった、もう一人の異世界の奴だったとは……

 

フードを退けて見えた素顔だが、其の顔立ちから俺達とほぼ同年代と思われる。

だが其の皮膚は人間のものとは思えない程酷く紫色に変色していて、更に額には同じ大きさの一つの蒼い眼が縦に見開かれていた。

 

あれが例の病気に浸食された状態か……擬態した副産物とはまた違った

おぞましさを感じた。

 

 

「覚醒『朱雀』!!!」

 

 

いきなり駆真の背中に薄い紫色の翼が出現し、其の左手にはレイピアらしき黒い剣を持った。

 

あれが駆真の能力か…と思っていると、いつの間にか目の前にまで来ていた。

 

 

「!!??」

 

 

突き出したレイピアが顔に刺さる瞬間、辛うじてドラゴガン二丁の銃身を重ねて防いだ。其の拍子に激しい金属音が響く。

 

 

(!~~強い……!!)

 

 

そう感じながら、クロスさせた両手を前に出し、相手を突き放しながした。

駆真は何とか踏みとどまり、自分から翼を利用して更に大きく後退した。

 

俺は相手に銃口を向ける。其の時駆真が喋った。

 

 

「……初メテダガ……龍神王牙ダナ?」

 

 

俺は面喰い、思わず銃を下ろしそうになった。

 

 

「どうして俺を?……お前、俺と初対面だろ……!?」

 

 

だけどすぐに紫が言っていた言葉を思い出す。

 

 

『…病気を患う人形遣い、アリス・マーガトロイドから排出される其の精神は一つ……すべて彼女が影達を統制している』

 

 

……そうか、もしかしてさっき鈴仙に化けた副産物に教えた名前を、駆真の中の別の副産物が其を通じて教えたのか。

 

とにかく今は駆真の武装解除、其が最優先だ。リミッタ―を外して押し切るという手もあるが……別の目標がいる。

 

 

「貫符『トラジカルスピア 手中』!!」

 

 

神矢が飛びかかり、駆真に槍の先端ではなく、根元部分が当たる様に振り下ろした。駆真が

レイピアで其を受け止めた。

 

すると、神矢がある事に気が付いた。

 

 

「!!お前……其の右手は……!」

 

 

其の言葉につられて俺も相手の右手を見た。

 

黒いコートの右袖から出ている其の手も紫色だったが普通の手よりも一回り大きく、人間には

無い、先の尖った鱗の様なものに覆われていた。まるで手甲をはめているような感じだ。

 

 

「俺ハオ前ト同ジクヲ失ッタ。ダガナ……」

 

 

駆真の言葉に嫌な予感がした俺は、其の左手に向かって一発弾を撃った。

 

だが弾が到達する瞬間、素早く手を振って裏拳で弾を弾いた。

 

 

「!?」

 

 

弾かれた弾は近くの木のど真ん中を撃ち抜き、衝撃で軋みながら倒れた。

 

 

「嘘だろ……!銃弾を手で弾くか……!?」

 

「其ノ程度ノ銃弾……」

 

 

そう言いながら神矢との武器の押し合いに勝ち、突き放した。

 

 

「!お!?……」

 

 

よろめいた所を、駆真は其の腹に垂直に蹴りを入れた。

神矢は其のまま吹き飛びながら一本の木を吹き飛ばし、其の根の向こうに消えていった。

 

 

「!神矢!!」

 

 

だがすぐに悪態をつきながら素早く立ち上がった。

 

 

「~~畜生…!やりやがったな……!?」

 

 

神矢は、再び槍を手に駆真に飛びかかった。

 

其の時、駆真が右の袖をめくった。

 

 

何のつもりだ……?

 

 

そして、其処からとんでもない事が起こった。

 

 

 

 

 

 

肩から右手の先までが、突然巨大化した。

 

 

「な……!??」

 

 

其の掌が駆真の上半身を囲い込む様に覆った。指と指の間にはまるで糸を引いた様な水かきが

張ってある。

 

舌打ちしながら、今度は何度も弾を発射した。

だがいくら撃ち込んでも、喰い込みもせずに全て鱗や水かきに弾いてしまう。神矢が飛びかかりながら放った一突きもまったく効かず、逆に弾かれた衝撃で地面に転がった。

 

人の手があり得ない形状に……此も紫の言ったとおりになってしまった。

さっきの鈴仙のガトリングと言い、変形に予想が付かない。何だよ、此の病気は……

 

 

「其ノ程度カ……?アノ妖精ハ倒セナイゼ?」

 

 

駆真が手の向こうから言った。俺は銃口を向けながら眉をひそめた。

 

さっきから駆真が喋っているが……喋っているのは間違いなく駆真じゃないか……?鈴仙の時とは

言葉使いが明らかに違う。やられたら最後、洗脳されてしまうと紫からは聞いていた。

だとすれば、喋り方も女性形になる筈……

 

其処まで考えた俺はハッとした。もしかして、まだ意識が……!?

 

すると神矢が後ろに下がり、俺の隣で着地した。

 

 

「クソ……只でさえ駆真だからって迂闊に攻撃出来ねえってのに……!」

 

 

俺は二丁ともホルスターに戻し、腕の超次元転送装置を使い其処から今度はワクチンの入った

注射器を取り出した。

 

此を使えば……!俺は神矢に指示した。

 

 

「神矢!あの盾みたいな手を押さえててくれ!」

 

 

何故そのような事を言われたのかを理解したかは判らなかったが、頷いた。

 

 

「割符『アースクラック』!!」

 

 

神矢は足を振り上げ、思いっきり地面を踏みつけた。

 

其の瞬間、神矢の足下から駆真の足下まで一気に大きな亀裂が走った。

咄嗟に避けようとした左足が其に嵌まり、駆真は身動きが取れなくなった。

 

神矢は素早く近寄り、盾の様な右腕の後ろに回り込んだ。

 

 

「貫符『トラジカルスピア 手中』!!」

 

 

其処でまた槍を左手に召喚し、其を目の前の腕に向かって突き立てた。

槍は手首の柔らかい内側の貫きながら地面に深く刺さる。

 

 

「まだだ!!貫符『トラジカルスピア』!!」

 

 

今度は胸辺りからも槍の先端を召喚し、目の前にあった右肘を鱗の無い側面から射止めた。

 

二点から突き刺されていても駆真はまったく痛みを感じていない様だったが流石に引き抜くのは

至難の業らしく、必死でもう片方の腕を伸ばしながらもがいていた。

 

 

「ほら!右手は封じたから……何かやるんだろ!?早くやれ!!」

 

 

此で脅威は封じられた。正面からでもいける……!!俺は走りだした。

 

だが、

 

 

 

「覚醒『玄武』!!!」

 

 

 

 

駆真の身体の後ろから、黒い鱗を持った大蛇が出現した。

 

 

「!マズい……神矢!!」

 

 

だが蛇は神矢ではなく、俺に向かって大口を開けて紫の牙をちらつかせながら、此方に向かって

高速で迫って来た。

 

此方が危険と判断したか……だが、簡単に喰われてたまるかよ……!俺は速度を緩めなかった。

 

蛇の頭と俺、其の距離がどんどん縮まっていく。蛇の瞳が鮮明な赤色を帯びて光るのが判る。

 

ぎりぎりまで引き付ける。少しでも遅れたら失敗だ……蛇が更に開けた口を大きくした……

 

そして蛇が俺に向かって牙を突き立てようとした瞬間、其をかわして上に跳んだ。

其のまま太い綱の様な身体に飛び乗って走り、其処から駆真に向かって更にジャンプした。

 

 

「!?」

 

 

駆真が俺を見上げた。

ジャンプから着地までそう時間も無い。蛇が戻ってくる時間も僅かだ。

 

此処しかない。俺は空中で持っていた注射器を振りかざした。

 

 

「此で……どうだ!!」

 

 

俺は両足が地面に付くのと同時に手を動かし、駆真の首に注射器の鋭い針を深々と突き立てた。

 

 

「!!………」

 

 

直ぐに中の乳白色の液体が、駆真の身体に注入された。すると刺された個所から、たちまち皮膚の紫色がブチ模様の様になって消え、健全な肌色に戻っていった。

同時に右手も黒い塵となって消えていった。

 

駆真は其の場で片膝をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駆真さん!!」

 

 

入れ替わった神矢が駆真の左から肩を貸した。

 

 

「凄い効果だな……」

 

 

俺は空になった注射器を見て呟いた。周りを見て大蛇もいつの間にかいなくなっている事に

気付く。

 

 

「…大丈夫ですか!?」

 

 

神矢が声をかける中、俺は駆真の目の前に立った。

 

 

「……神矢………」

 

 

神矢の声に応え、ようやく顔を上げた。額の眼は無くなっていた。

 

 

「駆真……お前が、神崎駆真だな?」

 

 

俺の質問に彼は頷いた。

 

 

「……はい」

 

「駆真さん、右腕を……」

 

 

偽の、そしておぞましい右腕を失ったコートの右袖は、ヒラヒラと揺れていた。

 

 

「……お前も…左腕を失ってるぞ……」

 

 

駆真も言葉を返す。

 

自分が捕える方に味方をしてた……何か事情があるのかもしれない。

その見返りに失った右手を補って貰ったのか?

 

俺はもう一度訊いた。

 

 

「いったい何があった……教えてくれないか?」

 

「……判りました………」

 

 

そして大丈夫だ、と神矢に言って自力で立ち上がった。

 

 

 

 

其の時だった。

 

 

「!何だ……?」

 

 

俺達の周りの木の葉、草も一斉にざわめき始めた。

さっきまで風が吹いていなかったのに……おかしい。其の音は徐々に大きくなっていった。

 

そして月が雲に隠れたのか、俺達に影が差した。

 

 

「!来ます!気を付けて下さい!!」

 

 

そう駆真が言った途端、突然強風に煽られた。

俺達は耐え切れずにそれぞれ別の方向に大きく吹き飛ばされ、地面を転がった。

 

 

「!?~~な、何だ……!?」

 

 

訳も判らずに急いで立ち上がり、視線を上に上げた。

 

森の木々の間から何者かがゆっくり降下してきた。月が隠れているせいで大まかな姿しか

確認出来ない。

短くもしっかりとした両脚。羽ばたく度に地面に強い風圧を発生させている、巨大な両翼。

そして棘の付いた太くたくましい尻尾。

 

其の影を見た俺は思った。

 

 

(まさか…龍か……!?)

 

 

そしてソイツは先程まで俺達がいた処にゆっくりと着地した。俺達の処に二人が戻って来た。

ちょうど其の時、雲の合間から紅い月が顔を出し、其の姿を照らした。

 

相手の全貌が見えた時、俺達は………

 

 

 

 

 

「「「………何だコイツは??」」」

 

 

ほぼ同時に呟いた。

 

其処にいたのは紫色の巨大なエリマキトカゲだった。

首には其に相応しい渦の様な幾何学模様が刻まれたエリマキが畳まれている。背中には襟巻と同じ独特な形をした、だが蝶の様なヒラヒラとした羽根がある。

顔にある左右の眼は、カメレオンみたいに違う方向を見ている。

 

前足をだらんと下げ、二本脚だけで直立した其の姿は何ともひょうきんだったが、其が俺達より

少し大きいとなると、不思議とそうも言えなくなる。

 

 

「!……コイツも。病気の産物か……!?」

 

 

神矢の声に反応したのか、顔の二つの眼が此方を向いた。

 

其の時駆真が言った。

 

 

「コイツが……多分、妖精にマリスを投与して作り上げた、リリーブラックの生物兵器です!」

 

 

聞き慣れない言葉を聞いた俺は、訊いた。

 

 

「!マリス……其が病気の産物の名前か!?」

 

「そうです!本体のアリスと悪意(Malice)でマリスだそうです!」

 

「何だって妖精と病気でエリマキトカゲになるんだ……!?」

 

 

俺は神矢と駆真を交互に見た。

紫が言っていた事…更に紫でさえ言ってなかった事を口にしているところから、何度も此の幻想郷に来ている様だ。

 

妖精……確かに言われて見ると、伸長の割にはほっそりとした体型や蝶の様な羽根と、妖精の面影が残っているように見える。おまけによく見ると、頭の皮膚の

たるみが、まるで女の子が髪を結んでいるかの様にまとまっていた。

 

紫が言っていた通り、何処までもろくでもないな、あの妖晴……実際、会って見てかなりのものだなとは思ってたが……

 

 

「ギュビェエエェエ………!!!!」

 

 

するとソイツが姿勢を低くしながら割れ鐘みたいな声で威嚇を始めた。羽根を拡げ、エリマキも

一斉に逆立てる。其処には縦横に計四つの蒼い瞳の目玉が開いていた。

 

 

「話は、コイツを片付けた後になりそうだな……!」

 

 

俺の言葉を合図に、立ち直った駆真も含めた俺達は臨戦態勢に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???(ALICE ORIGINAL)

~地霊殿 アリスの部屋

 

 

「!!………」

 

 

私ハ不意ニベッドノ上デ目ヲ醒マシタ。

 

 

「……ドウヤラ、失敗シタ様ネ」

 

 

布団ヲ退ケ、上半身ヲ起コス。

 

 

「デモ、良イワ。此ノ幻想郷ガ終ワレバ……」

 

 

 

 

 

コキッ………!!!!!

 

 

「!?」

 

 

再ビ腹痛ニ襲ワレ、痛ミニ耐エル為ニ身体ヲ丸メル。

 

 

「!?~~~ア"ァ………!!!」

 

 

下腹部アタリヲ押サエ、外ニ漏レナイ様ニ声ヲ押シ殺シテ呻イタ。

 

ア…~~余リニ…成長ガ……速イィ……!!

 

 

「~~マダヨ……イ、良イ子ダカラ…大人シク!ヴゥ……!!」

 

 

小声デソウ囁クト、ヤガテ収マッタ。上半身ヲ再ビベッドニ倒シ、荒クナッタ息ヲ整エ始メル。

ヤガテ呼吸ガ落チ着イテ来タ。

 

 

「……フゥ…イズレ、全テノ次元ノ幻想郷ニ『私』ヲ送ルシ……問題無イカ」

 

 

モウ一度上半身ヲ起コシ、身体ヲベッドカラズラシテ床ニ足ヲ降ロス。

其ノ足先ガ、履キ慣レタブーツニ触レル。

 

 

「其ニ今、興味有ルノハ……」

 

 

私ハブーツノ紐ヲ確認シナガラ、ドアノ方ニ目ヲ向ケタ。

 

 

「……リリーブラック、貴方ノ方ダケドネ……クク……」

 

 

私ハドアヲ開ケ、其ノ身体ヲ彷徨ウ屍ノ様ニ歩『カセテ』行ッタ。

 

 




如何でしたか?

駆真君を無事に連れ戻せました。一時はどうなるかと思いましたが……
此でようやくゲストの方々全員揃ったと言えましょう。

次回は真剣な空気をブチ壊しにした生物兵器との連戦になります。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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Requests;ラプトル・フェアリー

今回はリリーブラックの最新作との戦いをもう一人の
神矢君の視点で御送り致します。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


SHINYA(ANOTHER)

VS LB-WFF-00/Ma

~魔法の森

 

 

「~~~………!!」

 

(?どうした?黙っているけど何があった?)

 

 

まさかの乱入に少しは驚いたけど、実は内心吹き出しそうになっていた。

リリーブラックの妖精から作っていたのがまさか、こんなヘンテコな襟付きのトカゲだったとは。

 

擦れた声で必死に威嚇していたエリマキトカゲみたいなのが、羽根や襟巻を畳んで威嚇を止めた。

 

そして見え見えの突かれたフリを止めるといきなり其のまま四つん這いになって走り出した。

此方に迫ってくる其の走り方が左右に若干フラフラしていて危なっかしい雰囲気がある。

妖精を変貌させた身体にまだ慣れてないのか、其とも元からの走り方なのか?……

 

 

「フージョン『炎龍王』!!」

 

 

すると王牙の髪と瞳の色が燃える様な赤色に変化し、身体から炎がオーラの様に溢れだした。

あれが二番目の龍の力か…

 

 

「灼熱『サンシャインブラスト』!!」

 

「烈火『フレイミングフォース』!!」

 

 

俺と王牙は頭上に火球を出現させ、其を投げつけた。

だがトカゲは、流石に其等は左右に素早く動いて回避した。二つとも着弾した途端

大爆発を起こし、勢い良く火柱が上がった。

 

するとトカゲは走りながら襟巻を開き、四つの蒼眼から紫色の音波の様な怪光線を放ってきた。

 

 

「俺が迎え撃つ!!」

 

 

其処で、駆真が前に進み出た。

 

 

「覚醒『麒麟』!!!」

 

 

すると駆真の両足が光り出し、其の額に俺達が地下で出会った、豪放な鬼、星熊勇儀の様な

立派な一本角が出現した。

 

 

「行くぞ!!」

 

 

其のまま凄いスピードで怪光線をかわしながらトカゲの方に向かって行った。病み上がりだと

言う事を全く感じさせない程の俊敏さだ。

俺達も駆真によけられ、此方まで来た光線を回避した。

 

互いの距離が縮まっていく。さっきの王牙と駆真の蛇と同じ感じだな…ギリギリまで

詰めるか……?

 

だがトカゲは駆真との距離が大分縮まった処で、突然急ブレーキをかけた。

 

 

「!?」

 

 

其の場で身を翻し、棘の付いた尻尾の先端を勢い良く駆真に突き出してきた。

駆真は、速度を落とさずに其処から前に宙返りをして紙一重で攻撃をかわす。

 

 

「!速い……!」

 

 

王牙が驚きの声を上げた。

 

其のまま敵の左側に着地した駆真は、尻尾の付け根を下から膝で蹴りあげた。

 

 

「!ギェビ!?………」

 

 

其の衝撃でトカゲの身体も地面から浮き上がる。

 

あの巨体を浮かせるか……凄い脚力だな……そう思い、今がチャンスと見た俺も、トカゲの方に走りだした。

 

 

「王牙、援護射撃を頼む!!」

 

「!よし……!」

 

 

浮き上がった身体が着地する前に、俺は駆真とトカゲを挟む様に反対側から接近し、

 

 

「トカゲと病気のコラボなら再生するか!?貫通『スロータラススピア』!!!」

 

 

俺の胸からさっきよりも更に太い槍をより素早く突きだす。

槍は目の前に伸びる尻尾を捉え、付け根から切断した。

 

 

「!?ギュビャァアァアァァ!!!!!」

 

 

トカゲは溜まらず腹這いのまま前方に跳び、地面に倒れてのた打ち回った。槍は駆真の目の前で

勢いを止めた。

 

其の切り口を見たが、妖精ならでは再生力は発揮されていない。再生しねえのかよ、俺は

そう思いながら槍を消滅させた。

 

 

「弱えな……!リリーブラックの十八番はこんなものか!?」

 

 

そう言いながら、今度はトカゲの真上に向かって飛び、

 

 

「逆巻『ダウンウォードエアカレント』!!」

 

 

地面に向かって、竜巻を発射した。

 

竜巻がうねりを上げながらトカゲの背中に直撃し、其のまま地面に強く押し付けた。

其の瞬間、紙が破ける様な嫌な音を立てて蝶の様な大きな羽根がバラバラに千切れ飛んだ。

 

 

「よし、此で飛べなくなったぞ!!」

 

 

トカゲは地面に亀裂とへこみを残しながら反動でバウンドし、錐揉み状態のまま宙高く

回転しながら近くの木に腹から激突した。

 

ヤモリみたいに幹にへばりつきはぜず、其のまま根元までズリ落ちた。

 

 

「……妖精を素体したのが間違いじゃねえか?……此じゃあ、氷の妖精でも勝てるぞ……」

 

 

そう呟いた俺は、其の時良い事を思い付いた。

 

 

「おい!王牙!!」

 

「!何だ!?」

 

 

矢継ぎ早に伸びたトカゲの背中に追い撃ちを浴びせていた王牙が俺の呼びかけに応える。

 

 

「もう一回凍らせる!今度は俺も手伝うぜ!!」

 

「!そうか……!爬虫類は寒さに弱いからな!」

 

 

王牙が発射を止めると、トカゲが手を地面に付けながらゆっくりと立ち上がった。

全開になった襟巻は怒りで小刻みに震え、木にぶつかった際に潰れずに残った襟の二つの

目玉が鋭く睨んでいる。

 

 

「今度は逃げられない様に全身を凍らせるぞ!!」

 

「俺が凍らせやすい様に濡らします!!覚醒『玄武』!!」

 

 

すると今度は駆真の目と髪の色が緑色になり、純白の蛇が其の身体に巻き付いた。

左手を下から上にあげると、トカゲの足下から地割れと共に勢い良く水が噴き出た。

 

 

「!?ギャゴポポ……!!??」

 

 

不意を突かれた敵は、ずぶ濡れになりながら足下からの洪水を振り払い、後退した。

噴水はすぐに止まり、水は勢いを弱めながら亀裂の中へ再び入って行った。

 

 

「フュージョン『氷龍王』!!」

 

 

王牙も兎もどきと戦った時と同じ様に髪と瞳が水色に変化し、周囲の空気が白くなり始めた。

 

 

「氷河期『グレイシャルピラー』!!」

 

 

返信の間に俺は、俺達と敵の間に巨大な氷の柱を出現した。其が発する冷気に伴い、周囲が一気に冷え始める。其処でトカゲの体を濡らしていた水分が音を立てて凍り始めた。

危機を察したらしく、トカゲは木の幹に昇って距離を取ろうとしたが徐々に氷は大きくなり、身体を支え切れずに体温低下も相まって動きが一気に鈍くなっていった。

 

 

「逃がすか!!」

 

 

王牙がそう叫ぶと木にすがり付いているようになっているトカゲの周りに霧が出現した。

其は周りを月の光に反射して紅くキラキラと輝いていた。

 

 

「氷霧『アブソリュートフリーズ』!!」

 

 

そう宣言し、指を鳴らした。

 

其の瞬間には霧に包まれていたトカゲは木ごと完全に凍結した。氷の中でトカゲは

まるで助けを求めるかの様に、一緒に凍った木の梢に向かって手を伸ばしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……完全に終わったな」

 

 

王牙が氷を見ながら俺の方に近付いて言った。二人の髪の色や瞳はすっかり戻っていた。

 

 

「何だ、駆真より弱いじゃねえか。拍子抜けだぜ」

 

 

肩足の爪先で地面を突きながら言う。

 

其の時、駆真が何かを思い出したかの様に俺に向かって言った。

 

 

「駄目だ!まだ、最後の……!」

 

「!何?…最後?」

 

 

すると今度は王牙の方に顔を向けて叫んだ。

 

 

「急いで氷から離れて下さい!!」

 

「!?何だか判らんが、まだ何かあるんだな……!?」

 

 

訳が判らず、俺達は氷から離れようと走り始めた。

 

 

すると、後ろから紫色の光が迸った。

 

 

「!?」

 

 

俺は振り返って見ようとしたが、

 

 

 

「来るぞ!!跳べぇえぇ!!!!」

 

 

 

駆真を訊き、三人でほぼ同時に地面にダイブする様に跳んだ。

 

次の瞬間、背後から轟音と共に衝撃波が発生した。其を諸に背中に浴び、俺達は更に前に

吹き飛んでうつ伏せのまま再び地面に倒れて転がった。

 

だが、其はすぐに収まり、森は静かになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~~何だ……何が起こった……!?」

 

 

王牙が立ち上がって言った。俺は仰向けになり視線を後ろに向ける。

 

さっきと同じ様に巨大な氷の塊があるが其の中にトカゲの姿が無い。良く目を凝らしても

確認が出来ない。代わりに氷の中には紫っぽい色の液体が満たされていた。

 

 

「……何処に消えた?」

 

「リリーブラックは……素体となった妖精の体内に心音爆弾を仕掛けたんです」

 

 

そう言った駆真は俺の前まで吹き飛んでいて、今度は王牙に助けられながら立ち上がっていた。

 

 

「!心音爆弾……心臓止まったら爆発するアレか……!?」

 

「死んだ途端に道連れにする為か…普通の氷だと俺達も危なかったな」

 

 

俺を助けながら立たせ、中身が消滅して普通の色に戻る氷に顔をしかめながら王牙は言った。

一緒に凍らされていた木も氷の中で跡形もなく吹き飛んでいた。

 

 

「逃げ切る為なら、手段を選ばないってか…笑えねえ」

 

 

俺は鼻で笑いながら言った。

 

其処で、俺はもう一つの事に気が付いた。

 

 

(……………)

 

「……どうした?」

 

 

俺は小声でもう一人の俺に訊く。

 

 

(………いや、何でもない。外道だなって、思ってただけだよ)

 

 

嘘だな、俺はすぐに見抜いた。そして今考えていた事も見抜いたが、

 

 

「……ふーん」

 

 

だが興味も無さそうに、さっきと同じ反応で返事をする。で、其のまま話題を逸らす。

 

 

「……じゃ、駆真。さっきの続きだ。聞かせてくれよ」

 

「ああ、話すよ……」

 

 

其処まで言った駆真が突然顔を上げた。

 

 

「だが、移動しながらで良いか?此のままだとリリーブラックが……」

 

「そうだな……なら事情は、其の間に聞こうか」

 

 

俺の横から王牙が言った。

 

 

「遠くに逃げられる前に少しでも追い付かないと」

 

「少なくとも、妖精の仇もとってやらねえとな」

 

 

俺は親指で氷の塊を指差した。

 

 

「…其もあるだろ?」

 

 

……さて、俺は正直リリーブラックと戦うのを楽しみにしてたが、駆真がどうして俺達と

敵対したかも興味があった。禁忌に手を染める背徳感ってのがどんなものなのか、

参考にしてみたかったのもあったが。

 

 

俺達は奴が逃げて行った方向にまっすぐに飛翔を開始した。

 

 




如何でしたか?

ゲストの方々を前に歯も立たてられず、あまりにも散々な最期でした。
リリーブラックが此を聞いたら、大泣きしてしまいそうです。

次回は、駆真君がマリス側に就いたいきさつを紹介します。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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Requests;黑闇は、見つめ返す

今回はゲストの一人、駆真君の話です。此のコラボの全日譚となっています。
此の話は聖魂のマキシさんの『東方聖霊夜』と繋がっています。其方も見せて頂くと幸いです。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪



KARUMA

~魔法の森(駆真の世界)

 

 

 

「~~ハァ……ハァ………」

 

 

俺は無くなった右腕を押さえながら夜の森を走っていた。

 

姿と存在の気配、魔力を初めとする力の気配を消して森の中を走っていた。

 

 

【君、右腕を失っちゃったね】

 

 

再び女性の声と共に、仮面が傍に現れた。

 

 

「逃げられるのならば……此位……!」

 

【随分逞しいんだね…】

 

 

仮面が紫の尾を引きながら、走る俺の隣をぴったりとついて来ている。

 

 

「俺は何もしていない……何もしていないのにどうして……」

 

【!またお迎えらしい。其も今度はかなり……おぞましいね】

 

「!おぞましい……!?」

 

 

俺は思わず仮面の方を見た。

 

 

【そう……取り敢えず、気を付ける事ね】

 

 

その言葉と共に仮面は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、目の前の地面に弾幕が直撃し、俺は其の場で踏み止まった。

 

 

「…!此奴等は……!」

 

 

見上げた其の先には武器を携えた小さな人形が数体、俺を待ち構えていた。其の目は全て

青く、冷たく俺を見下ろしていた。

 

 

「クッ……!!」

 

 

弾幕を撃つものの其の間を縫われ、次々と攻撃を繰り出された。右腕のないハンデと敵の

数により明らかに押されている。

 

 

「はぁ……はぁ……俺は本当に何もやっていない!信じてくれ……!」

 

 

 

 

 

 

「フフフ……フフフフ………」

 

 

何処からか声が聞こえた。

 

 

「口よりも体を動かしたらどうかしら?」

 

 

更に言葉が続けられると、一斉に人形達が地面の中に溶けて消えていった。

 

 

「!!」

 

「無様ね……」

 

「人形……お前まで俺を殺しに来たのかよ……アリス!」

 

 

其の名前を言った。アリスも、俺を抹殺する指名を受けたのだろうか…?

 

 

「……残念、貴方の言うアリスと私は…」

 

 

ふと目の前の木陰から誰かが此方に歩いて来た。

 

そして月の光に照らされた其の姿は……

 

 

 

 

 

 

 

「……キット違ウワ」

 

 

人形遣いのアリスだ。だが、俺の普段知っているアリスとは思えない程に変わり果てた姿だった。

 

 

「…おい……ウソだろ……!?」

 

 

其は俺が過去に戦った別次元の幻想郷で異変を起こしているアリスだった。

しかも前に会った時と比べ、更に醜く変わっている。全身に内出血した様な肌の色は更に

どす黒く、其のあちこちは陶器の様にひび割れて紫色の光が漏れている。

 

何より目を引くのは顔の真ん中にある、目。

赤く血走った白目に巨大な青い宝玉を埋め込んだ様な瞳。頬にも走るひびからの光で、不気味な

紫色のハイライトを携えていた。

 

 

「何でお前が…此処に来てるんだよ…!?」

 

 

するとアリスの目付きがキッと険しくなり、青い瞳が形を崩して白目に滲んだ。

 

 

「……オ前ガ憎イ」

 

 

其の瞳に、赤い光がちらつき始めたのが見える。

 

身の危険を察した俺は咄嗟に朱雀の力を使って辺りに炎を巻き起こす。

但し、範囲はあくまでも自分の周りだけに。

 

 

だが、パチンという音と共に俺の足元がパックリと割れた。

 

 

 

「ウワァアァアァァアーーーーーー…………!!!!!!!」

 

 

 

不意を突かれた俺は其の中へと真っ直ぐ吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KARUMA

~亜空間

 

 

「くそ…!何だ、此処は……!?」

 

 

肩で息をしながら体を起こし、立ち上がると森の中だった筈の目の前の景色がいつの間にか

変わっていた。

 

見渡す限り毒々しい紫の色をした世界。

其のところどころに池のようなものが出来ていて、底からポコポコと泡が発生していた。

 

 

「……確カニ私ハ憎イ……」

 

 

声がした方向を見ると、アリスが空中で立っている。フードの陰に潜む、充血した

巨大な眼球が俺を見ている。

 

 

「……デモ、会イタカッタワヨ……神崎駆真君♪」

 

 

其の元に戻った瞳からは好意もあり、殺意もある視線を感じた。

 

 

「…何で俺を此処に連れてきた……お前の目的は何だ?」

 

「目的?ソンナノ決マッテルジャナイ……」

 

 

アリスが発する、人間の少女としてはあり得ない声に、思わず震える。

 

 

「自分のことを探って計画の邪魔をした俺に復讐、ってとこか?」

 

「……復讐……」

 

 

アリスが黙り込んだ。

 

 

「其モ、マタアルケド……」

 

 

其の時、アリスの身体が前方に倒れ込んだ。

 

 

「!?」

 

 

だが地面にはぶつからず、空中で止まった。

目は閉じている。其は見えない海の中に身体を浮かべている様にも見える。

 

其の身体から突如、大量の黒い霧が噴き出してきた。

 

 

「!クッ……!!」

 

 

アリスの姿が見る見るうちに霧に包まれ、すっかり見えなくなってしまった。

 

 

『生キ延ビル為ニハ……戦ウシカナイ……』

 

 

霧の中から、くぐもったアリスの声が響いた。俺は霧の中で、アリスが何十人にも分身したと思った。

 

 

『抗ウ為ニハ……足掻クシカナイ……』

 

 

其の時、霧の中から何十…いや、何百もの青い目玉が出現した。

 

仮面の言葉の言う通りだ。今のアリスはおぞましい、そして酷い。とんでもない事になっている。

 

 

そしていろいろな場所を見ていた其の目が、一斉に此方を睨み付けた。

 

 

 

 

 

 

KARUMA

VS〈黑色の人形遣い〉アリス・マーガトロイド

〈滾々たる閉塞心〉ミアズ・マリス×∞

~亜空間

 

 

『……全力デカカッテ来ナサイ……』

 

 

俺は弾幕を放った。

 

朱雀のまま、炎を放った。アリスを包む霧を炎が包み込む。

 

 

『!!!イヤァア"ァア"ァ"ァ………!!!!!』

 

 

おぞましい悲鳴を上げながら周囲の霧から目玉が閉じ、消えていく。

だがわずかに残っていた霧がアリスを包んだまま炎の中から真上に一直線に伸び上がった。

 

 

「!」

 

 

霧は其のまま俺の方へ迫って来た。霧が次々と繰り出す攻撃を右へ、左へ何とか避けていく。

 

くそ……攻撃の方法がまるで予想がつかない。人形を一切使わず、代わりに周囲の目玉だらけの黒い霧を触手状に、或いは弾幕状に、変幻自在に襲い掛かって来る。

女王蜂が率いる蜂の群れとでも相手してるみたいだ。

 

 

『ヴァア……駆真ァアァア……!!!』

 

 

其に周囲の霧は吹き飛ばしても吹き飛ばしても、アリスの身体から際限無く噴き出して来る。

洒落に聞こえるが、本当にキリが無い。

 

 

なら……霧を出す前に叩くしかない……!!

 

 

 

俺は朱雀を解除した。

 

 

『?マサカ…モウ諦メタ訳ジャナイワヨネェ……?』

 

「……お前は言ったよな?……俺は生き延びる為に、戦うしかないないと……」

 

 

炎の中の霧の塊を真っ直ぐに睨み付けた。

 

 

「だったら……精一杯戦ってやる……精一杯生き延びてやる!!」

 

 

「覚醒『麒麟』!!!」

 

 

麒麟の力を開放した。

 

 

『!!ナ…!?…ソノ髪ト、其ノ角……貴方……!?』

 

 

俺は自分で放った炎を掻き分け、敵の前まで瞬間的に移動した。

 

 

『!?ヴゥ……!??』

 

 

其処から蹴りを放ち始めた。出来るだけ目玉を狙う様に連続で蹴り続ける。

 

すると霧の中からアリスの輪郭が見えて来た。其の姿は蛹の中の幼虫さながらだった。

 

 

「此処だぁ!!!」

 

 

其の腹に、右足での膝蹴りを放った。アリスの身体は大きく吹き飛ばされ地面を転がり、地面にうつ伏せに倒れた。

 

 

「どうだ、効いたか!?」

 

 

そして噴き出されていた霧もあっという間に消えて無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の周りの炎が徐々に小さくなる。

 

 

「~~ウゥ……!!」

 

 

呻き声と共に立ち上がるアリス。苦悶に視線が泳いでいる。

 

 

「俺は絶対にぃ……!」

 

 

そう言いかけた俺は片膝を付いてしまった。

しまった……今ので、力を……

 

 

「~~アハハハ……」

 

 

するとアリスが嗤い始めた。

 

 

「アハハハハハハハハ……!!」

 

「……何が、可笑しいんだ……!?」

 

 

数秒間後、アリスは嗤い終え、こう言った。

 

 

 

「合格ヨ、神崎駆真君……」

 

「ご、合格?…どういう…意味だ……?」

 

 

突然の通告に戸惑ってしまった。

 

 

「辛カッタワヨネ。苦シカッタワヨネ。私モ貴方ノ苦シミガ分カルワ」

 

 

そう言ってアリスは俺を抱きしめてきた。

 

 

「なっ!?やめろ!」

 

 

必死にもがくが右腕を失っていたのとアリスの力が予想以上に強かったのがあって

振り払う事が出来なかった。

 

 

「……私ニ…逆ラワナイ方ガ良イワヨ…?」

 

 

アリスが声を更に奇怪にして脅してきた。

 

 

「私モネ…幻想郷ニ狙ワレテイルノ………」

 

 

その言葉を聞いてもがくのをやめ、話に耳を傾ける。

 

 

「トアル病気デネ……ズット一人ダッタ……愛シイ人トモ会エズニ暮ラシテキタ」

 

 

其の時俺はアリスの視線に違和感を覚えた。

アリスではない、別の何者かが俺を見つめている……?

 

 

「其ノ人モ、貴方ト同ジ……判ルワヨネ?」

 

 

俺は其の言葉にショックを受けた。同時に別次元で見た、不気味な壁画を思い出す。

 

 

「…其は……まさか……」

 

 

だが其の名を言う前に、身体がふら付いた。もう、限界だった。

 

 

「…ダカラ大丈夫、貴方ヲ受ケ入レラレルワ……良イワヨネ」

 

 

疲れた体と心にはあまりにも甘い言葉だった。

 

 

 

 

「オイデ………オイデ…………」

 

 

 

 

俺は全身の力が抜けていき其のまま身を任せて眠りへとついてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが意識を失う瞬間、俺は見た気がした。

 

アリスの隣に突如現れた何者かが、周囲に漂わせていた黒いナニカを俺にけしかけたのを。

 




如何でしたか?
前回のコラボで一人で邪魔をした駆真君に対して、マリスはやはり捨てきれない
執着心があった様ですね……


次回、ゲストの方々がリリーブラックを追い詰めていきます。

それでは、次回もゆっくりして行ってね♪


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Special;雪空に咲きしアヴァンチュール ◎

今回、コラボの最中ではありますが、クリスマス回を投稿させて頂きます。
去年にクリスマス回を投稿できなかったのが気がかりでつい……申し訳ございません……!

因みに今回に限り、マリスは一切出てきません。リリーブラックも逮捕されていない事に
なっていますので御了承下さい。グロ一切抜きの、久々の純粋な砂糖回です。


原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪



YOUMU

~人間の里

 

今宵、稀有な出来事が起きた。私達が通り掛かった人間の里に、深々と降り積む白い光達……雪が

降ったのだ。

 

そして其が原因で、隣を飛んでいるリリーホワイトさんが大変な事になっていた。発作でも起こしたかの様に身体が痙攣している。

 

 

「……リリーホワイトさん、大丈夫ですか?」

 

「~~ヴゥブルル……レディさんが無理強いじてるのでしょうか……堪っだものじゃぁありまぜん

ん……!!」

 

 

まるで此の世の終わりとでも言う様な真っ青な顔でのシバリング。靴から膝まで出ている出た脚も

互いに擦り合わせている。

うどんさんも、少し寒そう……両手をこすり合わせ、小さく震えている。やはりブレザーだけでは

厳しそうだ。

 

どうしようかと前に向けた私の視界に、洋服屋の看板が飛び込んできた。

 

 

「良ければ、彼処で手袋やマフラー、ストッキング買いましょうか……?」

 

「!あぁあ有難う御座いまずぅう~~……!!」

 

 

もう、寒さと嬉しさのあまりで顔がくしゃくしゃになっている。私は自身の身体を半霊から少し

距離を置いた。

 

 

「ささ…あの洋服屋まで、私の半霊に包まって……」

 

「も……申じ訳……ないでずぅ……で、ではは…し…失礼…じで………」

 

 

リリーホワイトさんが私と半霊の間に飛び込み、半霊を両手でしがみ付いた。半霊に震えが

伝わり、同時に彼女の身体の冷たさも伝わった。其のあまりの冷たさに、思わず反応してしまうが

我慢する。

 

半霊自体も少し冷たいが、包まれば暖かくなる。此で少しは寒さをしのげられる筈だ。

 

私は、うどんさんの方にもスペースをあけた。半霊がいつもより長く伸びる。

 

 

「うどんさん、貴方も……」

 

「!え……?」

 

 

私を見つめ返すうどんさんの顔が紅くなるのを見た私は、つられて顔が紅くなってしまう。

 

 

「……あ、さ、寒そう…だと…//…思い……まして……///」

 

 

慌てて用意した弁解も尻すぼみになり、たちまち役に立たなくなっていく。

しまった……気を悪くしたかな……そう思っていると、

 

 

「…は、はい……では……御言葉に、甘えて……」

 

 

おずおずとしながらも間に入ってくれた。たちまち彼女の温もりも半霊から伝わってくる。

 

 

「暖かい……」

 

 

リリーホワイトさんの体温で充分暖かくなった半霊を持ったうどんさんが小さく呟いた。

 

私は、黙って右手で其の身体を寄せた。

 

 

「///……入りましょう」

 

 

私は左手で木のドアを開けた。

 

 

「いらっしゃいませ!!」

 

 

店員の声が店中に響く。

 

店内は程良く暖かい。此処ならリリーホワイトさんも元気に動けそうだ。

突然の寒さに、防寒用の衣服を買いに求める人が大勢いたが目的の物が

売られているスペースはすぐに見付かった。

 

其の手前で二人が私から離れる。半霊も元の大きさに戻る。

 

 

「何か、好きなのが見付かったら私の所に持って来て下さい。其を買いますので」

 

「はぁーい!!」

 

 

買い物に来ていた客の目を引かせながら、リリーホワイトが売り場の奥に飛んでいった。うどんさんも一礼をしてから探しに其の後を付いていく。

 

さて……私はマフラーを売っているショップディスプレイの前に立つ。上には綺麗に畳まれ、

並べられているマフラーがある。其の中から、うどんさんやリリーホワイトさんに似合いそうな

配色のものを慎重に選び始めた。

 

すると、

 

 

「みょんさん、此はどうですか?似合うと思いますよ?」

 

 

うどんさんが戻ってきた。まだ私は選び始めたばかりだというのに凄いスピードだ。

持って来たのはロゼ色のミトンと黒色のストッキングだ。でも、何故か其二組ずつ持って

いて、私に其の内の一組を見せた。

 

 

「私のと、御揃いですし」

 

「!え?…私のは大丈夫ですよ?」

 

 

そうは言ったものの、

 

 

「……貴方も…寒そうにしていましたので……」

 

 

其の一言に呆気なく轟沈させられた。

 

見破られていた。実は私も此の気象に耐えられず、密かでありながらうどんさん達と同様寒さに震えて

いたのだ。其をあっさり看破されていたとは……私は両手で火照った顔を覆いたい気分になった。

 

 

「//~~あ、ありがとうございます……」

 

「私、此が良いです!」

 

 

其処へリリーホワイトさんも戻ってきた。其の手には春らしい、子供用のピンク色のミトンと紺色のストッキングが握られている。

 

 

「妖夢さんは、何選んでいるんですか?」

 

「え?…わ、私は……御二人に似合うマフラーで、何か無いかと……」

 

 

そう、返事すると、

 

 

「せっかくですので皆で長い一枚、てのはどうですか?」

 

「「え……//!?」」

 

 

リリーホワイトさんの私達は同時に聞き返していた。

 

 

「くっ付いた方が暖かくないですか?」

 

 

そう言いながら私の前に並ぶマフラーから、私達のミトンと同じロゼ色のものを取って広げて見せたが、

当然広げきれずに床に垂れ落ちた。

 

本当に長い。私達位の少女だったら、三人は余裕で首に巻けるだろう。私達は互いに顔を見合わせる。

うどんさんの顔がマフラーと同じ様に赤くなっている。絶対に私の顔も同じ色になっている。

 

 

「うどんさん///……い//……良いですか?」

 

「え、え、ええ///……大丈夫です…が……」

 

 

私達は、再びリリーホワイトさんの方に顔を戻す。

 

 

「~~わ、判りました///では、会計の方に……」

 

 

リリーホワイトさんはニッコリと笑った。どうやら私達は、春告精を見くびってたらしい。

 

 

 

 

 

レジにて店員から値段を告げられ、財布から其相応の紙幣を引っ張り出して手渡す。お釣りを貰う。

リリーホワイトさんが早速自分の防寒具を身に付けて、喜んでいる。

 

うどんさん、大丈夫でしょうか…?誤って首が締まったりしたらどうしましょう……?

彼女を見ながらぼんやりと考えていた。

 

 

 

 

 

 

其の時、地響き、怒号と共に悲鳴が聞こえた。

 

 

「!!!」

 

 

私達はすぐに入口の方を向いた。

 

 

「!あの声は……!」

 

 

そう言った途端、入口のドアが吹き飛んだ。そして外の寒い空気と共に叫び声も

飛んできた。

 

 

「此処にいたかぁあ!!」

 

 

 

 

REISEN

VS〈春を告げる妖精〉リリーブラック

~人間の里

 

 

「てめえ等…!!……こんな雪降る夜をバカにしてんのか……!?」

 

 

小豆餡の菓子パンヒーローに毎度滅菌される病原菌が操縦してそうな真っ黒なロボットが店の入口を強引に破壊し、姿勢を低くして此方を覗き見ていた。

 

 

「異性とくっ付かず…女子同士でイチャコラとぉお……!!!」

 

 

其の顔に当たる部分のガラス製のハッチを開け、中の操縦席からリリーホワイトさんを黒くした様な妖精がいたが、リリーホワイトさんとは似ても似付かない憤怒の表情で私達を睨んでいる。

 

 

「此の俺様!リリーブラックがぁ!!そんな事を認める筈がアゲッホォオォォオ!!!」

 

 

だけど喚いている途中に、リリーホワイトに綺麗に顔面パンチを決められ、其の際に操縦桿を

手放す。操縦者を失ったロボットは後ろに傾き、店の前で仰向けになって倒れた。

 

 

「……すみません!!せっかく買って頂いたミトンを……!!」

 

 

リリーホワイトさんがみょんさんに謝った。リリーブラックに対してだけは本当に容赦はない。

同族とも見ていないから尚更だ。

 

私達は機械の脚を潜って急いで外に出る。

 

 

「~~て、てめっ……いきなり…顔パンして……汚物扱いだぁゲッホゲッホォオ!!!」

 

 

操縦席から這い出てきたリリーブラックは大きく咳をし始めた。

 

 

「……風邪ですか?」

 

「!だ、黙れ……!不純同姓交遊が蔓延る聖夜みてぇな夜を……俺様は…ぶっ壊しに来たァアクショォオン!!!!」

 

 

宣言の最中に大きなくしゃみをした。其の顔は僅かに…いえ、かなり青ざめている。どうやら

リリーホワイトさんと同じ様に、春に相応しくない気候だと著しく調子を崩してしまう様だ。

もはや自覚すらしていないらしいけど、同じ春告精だからこその宿命なのかもしれない。

其に比べて、リリーホワイトさんはミトンとストッキングを身に付け、暖かそうにしている。

 

 

「………科学発明『妖精』の間違いじゃないんですか?」

 

「!お、おま……妖精呼ばわりするなと……何度もオ"エェェエ~~……!!!」

 

 

リリーホワイトさんに反論も出来ずに、咄嗟に後ろに顔を向けて嘔吐こうとしている。

相当重症らしい。敵ながら哀れな光景だ。

 

 

「……カップルの方々の前で、薄汚いモノ出さないで下さいよ?」

 

「エ"ッホ……!ちぐぢょう……!!」

 

 

リリーブラックが涙目で振り向きながら、

 

 

「やっぱ此以上は耐えられねぇ……!!クソッ…クソッ……!!…撤退して立て直さ

ねえと……!!!」

 

 

そう言うと、苦しそうにしながらも操縦席に戻り、ガラスのハッチを閉めて操作を始めると

ロボットの顔の部分だけが外れ、首から炎が噴射し、機体を起こして急上昇を始めた。

 

 

「!!?」

 

 

只風邪のせいで操作が覚束無い影響もあってか、上昇のスピードは速いものの機体は若干

ふらついている。

 

人里を荒らしてまで私達を探しておいて……何もせずに逃げていくの波動かと思うが、やはり他人の迷惑を

考えていないとなると赦せない。

 

 

「うどんさん!力を貸して下さい!!」

 

「!みょんさん…!?」

 

 

するとみょんさんが、上昇していくマシンのちょうど真下辺りに来ると、背中から楼観剣と白楼剣

を抜き、

 

 

「『反射下界斬』!!」

 

 

目の前に蒼色のバリアが発生させた。

 

 

「うどんさん!!貴方が使用していた、貴方の最強のスペルを私に……!!」

 

 

最強の切り札にしているスペル……赤眼「望見円月(ルナティックブラスト)」に違いない。

でも、あれは弾幕ではない。バリアでも弾く事が出来ない。

 

 

「どうしてですか!?そんな事をしたら…みょんさんにまで……!!」

 

「大丈夫です!思いっきり、撃って下さい!受け止めて見せます!!」

 

 

みょんさんが叫ぶ。

 

 

「うどんさん、私を……私を信じて下さい!!」

 

 

叫びながら私を見る其の両眸に一切の狂いは無かった。心からの言葉だった。

 

私は決意を固めた。貴方がそう言ってくれるのなら…私は……!

身構え、目を閉じ、全神経を集中させ、霊力を貯める。

 

 

 

そして私は、真っ赤に染まっているであろう瞳を見開いた。

 

 

 

「赤眼『望見円月(ルナティックブラスト)』!!!」

 

 

 

眩い光が迸ると共に、巨大な鮮紅色のレーザーがみょんさんに向かって一直線に放たれた。

 

そして、紅いレーザーが蒼いバリアにぶつかる。でもレーザーはバリアを貫通せず、紅い

エネルギーの塊となってバリアの表面に溜まり始めた。

 

 

「!………」

 

 

みょんさんが顔を苦悶で歪めて歯を食いしばり、其のエネルギーを留めようとしているのが

光の中から見えた。

 

 

「手伝いますよ~~!!!」

 

 

すると其処へリリーホワイトさんが飛んでいき、後ろからみょんさんの両肩を持った。みょんさんの

表情が幾分か和らいだ。エネルギー維持の為の霊力を分け与えるのだろうか?

 

 

「~~うどんさん!……私は…構いません…!…~~続けて下さい……!!」

 

 

みょんさんの声が聞こえた。私は照射を続行した。

 

紅い光がどんどんと増していく。辺りが紅い反射光で満たされていく。

 

そしてある程度溜まったのを確認したみょんさんは、力を込めて其のバリアを斜め上に傾け、

溜めていたエネルギーを解放した。

するとまるで鏡に当てた光の様に、レーザーが真上に発射されて上空に逃げるマシンの底の部分を捉えた。

 

 

「!?ウワワ……!!!」

 

 

機体は大きく揺れ、リリーブラックの悲鳴が微かながら聞き取れた。レーザーはマシンを突き上げ

ながら、其のまま夜空の遙か上へ垂直に伸び始めた。

 

私は思わず視線を上にずらし、スペルを中断した。其でも反射されたレーザーは、勢いを落とさずに

夜空に紅い光の筋を描きながら昇っていく。

 

リリーホワイトさんに支えられているみょんさんのもとに行き、其の空を見上げた。里の住民も、皆、夜空を見上げている。

 

 

 

「己えぇえ……こ、こんな時まで魅せ付けて来やがってぇえぇ……!!!…ゲホッゲホッ!!……リア充なんて……リア充なんて、爆発しろぉおぉおぉおお~~~~~~……………!!!!!」

 

 

 

上昇の勢いでマシンから脱出できないリリーブラックの断末魔と共に、やがて雲に紛れて

見えなくなった。

 

沈黙が流れる。

 

 

 

すると次の瞬間、爆音と共に夜空に大きな花火が開いた。

 

 

紅い大きな桜の華、そして紅い大きなハートマーク……どういう原理で形を為しているのかは判らなかった

が、様々な形に開いていく。

里はやがて其を見上げていた住民達の歓声に包まれる。私達も其の光を見上げていた。

 

でも私は身体から力が抜けるのを感じ、其のまま地面に倒れた。

 

 

「!うどんさん!?……」

 

 

 

私は気絶する直前まで、遠くでみょんさんの声が聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

YOUMU

~人間の里 入口

 

期せずにあげた花火も終わり、里は再び元の賑わいを取り戻していた。其の里の入口に

ある石段の一番上に腰掛け、私は空を見上げていた。

 

かつて私と幽々子様が期せずして起こした、雪春異変を思い出す。私がまだ幽々子様を『御嬢様』

と呼んでいた、あの時を……

 

うどんさんは隣で寄り添って眠っている。疲れ果ててしまったのだろう。あの場で崩れ落ちた時は本気で泣きそうになったが、其の直後に聞こえた寝息に、心から安堵した。

 

咄嗟とは言え、無謀としか思えない作戦に乗ってくれ、ありったけの力、そして思いを私に

ぶつけてくれた。私はとても嬉しかった。

 

リリーホワイトさんも私に霊力を分け与え続けて疲れたのか子供の様に無造作に脚を投げ出し、

うどんさんとは反対方向から身体を私に預けて眠っている。傍には脱いだ帽子が置かれている。

今更になって気付いた。ストッキングのサイズを誤ったのか、爪先からブカブカの先端が石段の上に

伸びている。でも其が、寝ている姿に更にあどけなさを与えている。

 

彼女も私の手助けをしてくれた。彼女無しではあの場面は苦しかったに違いない。私は、其の頭を

そっと頭を撫でた。

 

私達は、一枚のミトンと同じ色のマフラーをそれぞれ首に巻いている。一枚のマフラーで三人は繋がっている。ならばもう一つ……私は半霊で自身ごと二人を包んだ。二人の温もりが伝わり、再び半霊が微熱を帯び始める。

 

 

「……此からも、ずっと一緒ですよね……?」

 

 

私はマフラーと同じミトンをはめたうどんさんの手を握った。すると寝ていながら、

僅かな力で其の手を握り返した。

 

最初は驚いたが、思わず微笑んだ。そしてもう一度空を見上げる。

 

 

 

空からの幽かな光達が、私達を照らしていた。

 

 

 

 




如何でしたか?

此の異変、春に起きている設定でして季節限定のイベントを当てはめらにくいです……ですので雪は、きっと何処かでレティが頑張ってるのでしょうという事で……
マリスの擬態か、本物かは想像にお任せ致します。リリーブラックは犠牲となったのだ。

イラストです。今回活躍したうどみょん、リリーホワイトです。



【挿絵表示】



そして今忙しい本編のクリスマス用のイラストも……アリスとこころです。



【挿絵表示】



次回から再びコラボを実施していきます。
リリーブラックとの決戦を御送りしていきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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Requests;俺は妖精をやめるぞ!!!

久々の投稿です。前回は予告もなしに突然申し訳ございません。
今回から再開していきます。

ゲストの方々がリリーブラックとの接触します。もう一人の神矢君視点です。


原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


SHINYA(ANOTHER)

~魔法の森

 

 

「!見付けた……彼処だ!」

 

 

俺達は駆真から今回の依頼に起きた、駆真が敵に付いたいきさつを聞いていた時、前方

に煙をまき散らしながら病気の副産物で出来たバイクにまたがり、爆走するリリーブラックが

見えた。

 

直ぐに加速して其の後を追った。まだ此方に気付いてはいない様だ。

 

 

「俺に任せろ…!」

 

 

王牙がドラゴガンを一丁だけだし、銃口を前に向けた。

 

 

「今度は逃がさない……!!」

 

 

そして発砲する。其の狙いはリリーブラックではなく、目玉の付いたバイクの後輪だった。

 

其処を見事に捉え、後輪を破壊した。

 

 

「!??」

 

 

バイクは大きくぐら付き、リリーブラックも必死にバランスを整えようともがいている。やがて

地面から生える大きなキノコに引っ掛かって大きく前に傾き、バラバラになって爆発した。

 

リリーブラックも反動で勢いよく前に投げ出された。

 

 

「!!あぁあァぁアぁアあアアァァぁァ~~~~………!!!!!!!!」

 

 

まるで本気で殴られたかの様に空中で何回転し、木や岩をなぎ倒し破壊しながら凄い勢いで

水平に飛んでいった。やがて高度が落ちて地面にも叩き付けられても、何度もバウンド

しながら砂煙をあげて転がり続ける。そして今度は地面から出ていた岩に激突してようやく

止まった。

 

ようやく追い詰めた。俺達は其の岩の前に降り立った。

 

 

「~~ア"ァ"……事故ッタァア~~……!!!」

 

 

岩の大きなひび割れの前で必死に起き上がろうとする其の身体は複雑に折れ、欠損し、

黒く変色している。服もビリビリに破れている。

 

いくらリリーブラックとは言っても、とてつもないダメージだと再生に時間はかかる

みたいだ。直ぐに体や肌の色は戻り始めたが其のスピードが余りにも遅い。

 

 

「~~痛ェヨ……痛ェ"ェエヨォオ……!!!!」

 

「其処までだ」

 

 

俺達は横たわるリリーブラックの前まで来て其の姿を見下ろした。するとピタリと痛がるのを

止め、駆真に目を向けた。

 

 

「ク、クル……いヤ、駆真……!??」

 

 

駆真が元に戻っているのを確認するや否やショックを受けていた。其の顔にゆっくりと

皮膚が張り直されている。

 

 

「オ前……!?ド…如何しテ……!??」

 

「残念だが、腹心はワクチンのおかげで元通りになった」

 

 

俺は駆真の肩に手を置いた。

 

 

「!ワ"…ワクチン……!??」

 

「此だ」

 

 

其処で王牙がリリーブラックに、駆真に使って空になった注射器を投げた。注射器は回転

しながらリリーブラックの頭にぶつかり、其のまま地面に転がった。

 

 

「!コ…此を……何処デ……!???」

 

 

完全に当惑している。仕方ない…此が答えになるかな…?俺はもう一つの支給品である

陰陽玉型の通信機を取り出し、其に話しかけた。

 

 

「おい、聞こえるか?」

 

 

すると数秒もせずに陰陽玉から聞き慣れた声がした。

 

 

『あら?其の声は、神矢君?』

 

 

間延びした声だ。何処かでくつろいでいたんだろう。

 

 

『どうしたの?何かあったのかしら?』

 

「リリーブラックを追い詰めた」

 

『!あら、御手柄じゃない。ならばあと少しね』

 

 

拍手までして喜んでいる様だが、紫が話すとあまり嬉しそうでない様に聞こえる。

 

 

『でも、油断はしない方が良いわ。最後の抵抗をしてくる……きっとね』

 

「駆真も一緒だ。色々あったが何とか合流出来た」

 

『良かったじゃない。三人で彼奴を追い詰められて』

 

「!マ、待テ……!!今……スキマ妖怪と…話してんのカヨ……!??」

 

 

ようやく理解できたのかリリーブラックが縋り付く様に慌てて声を絞り出して割り

込んできた。五月蠅ぇな。一度陰陽玉から視線を反らす。

 

 

「ソイツはモウ……後輩にヤらレテ、操リ人形じゃア……??」

 

「『此処の』紫じゃねえよ。別んとこの紫が協力してくれてんだよ。ワクチンをくれたのもソイツだ」

 

 

まさかリリーブラックも、別の幻想郷の事についてまでは知らなかった様だ。妖精を玩具に

してる暇が有ったら、そっちも研究した方が良いと思うけどな……

 

 

「そうだ、一応言っとくぞ。お前、妖精をトカゲに変えたろ?」

 

 

自分が思った事で、思い出した。其を聞いた途端、またリリーブラックの顔色が変わった。

 

 

「トカゲ!?…マたカ……デ、どうシたンダ……?何処にイる…てカ、そもソも戦ッたのか?」

 

 

ようやく再生し終えるのか縋り付く様に言う声が元に戻って来ている。

 

俺は奴に言ってやった。

 

 

「戦った。なかなかインパクトあったし、良いと思ったよ……でも平凡」

 

「!!ハイレベルじゃねぇのかよ!!?」

 

「あ、平凡どころでもなかったな。やり直し」

 

 

無意識に言った俺の言葉が余程気に入らなかったのか、

 

 

「畜生がぁあぁあ!!!!!」

 

 

キレた猿みたいに両手で地面を叩いて悔しがる妖精。見てて案外飽きない。

 

 

「エリマキで勝てると思ってたのか?舐め過ぎなんだよ」

 

「グ……!??」

 

 

危険を感じたのかリリーブラックは急いで這いずりながら岩から、そして俺達から

離れようとした。が、再生したての部位を使っていないので其の移動速度は遅い。まだ

馴染んでないのか?

 

俺は陰陽玉にもう一度視線を向けた。

 

 

「…声がするからいるだろ?とにかく、捕まえたら連絡するから。スキマ、

用意しとけよ」

 

『もう、何時でもいけるけど無茶はしないようにね。因果律が狂うと色々と面倒だから』

 

 

……本音出てんじゃねえかよ。俺は紫と話し終えて陰陽玉をしまいながら歩いて先回りし、

リリーブラックの前に立ちはだかった。奴の足元には駆真と王牙が立っている。もう

逃げ道は残っていない。横に転がっても取り押さえられる事は十分に出来る。

 

 

「観念した方が良い……ぜ!!!」

 

 

そう言いながら俺は、

 

 

 

 

 

リリーブラックではなく、向かいにいる二人に弾幕を放った。

 

駆真と王牙は慌てて飛び退き、着地を同時に土煙を出しながら後ろに下がる。

 

 

「!?神矢!?……どういうつもりだ!??」

 

「そりゃあ見りゃあね。コイツの側に付くってのも案外面白そうだな…てな」

 

 

リリーブラックの後ろに回りながら、二人を見据える。

 

 

「~~お、お前……」

 

 

目の端で黒い妖精が唖然としているのが見えた。感情がコロコロ変わるな。

情緒不安定か、コイツは。

 

 

(何してるんだ!?いきなり裏切って……!!)

 

 

五月蠅ぇな、今度は言葉に出さずにもう一人の俺に返答する。俺に任せとけ、お前は

絶対損しねぇから、そう言った。

 

 

(!お前……もしかして……)

 

 

其の質問には答えず、邪魔するなよ、と言うと黙ってしまった。

 

次はリリーブラックを見下ろす。

 

 

「じゃあ這いつくばってないで見せてくれよ。病気で変貌するんだろ?…お前もよ」

 

「!いきなりの裏切りにいきなりのオーダー……無茶苦茶じゃんかよ……」

 

 

ようやく再生した身体に慣れてきたのか、ゆっくりと俺の前で立ち上がる。

 

 

「両腕だけならあるが…仕方ねぇ。折角の服も、もうボロボロだ……もう着る価値も

ねぇ……」

 

 

そう言うと、突然唸り声を上げて、再びその場に倒れた。膝を付き、両手も手に付けて

四つん這いになったリリーブラックは身体を震わせている。何処からか骨が軋む様な

身の毛がよだつ音も響き始めた。

 

 

「頼むゼ……後…輩……!!」

 

 

そう呟いた途端、其の顔が一気に黒く変色した。

 

 

「!来るぞ……!離れろ!!」

 

 

駆真と王牙が後ろに離れ始めると、直ぐに服を引き裂きながら身体が肥大化し始めた。

両腕が肩から二本に分かれ、六本となった手足の指は巨大な鉤爪となった。

 

少しずつ後ろに下がりながら、俺も其の変貌を見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十秒後、俺が視線を上に向けていた。

 

 

「……やるなぁ」

 

 

其処にいたのは巨大な甲虫だった。

 

帽子と同じ赤いギザギザの模様が走る黒い身体が月の光を反射して光を放っている。

其の大きさは、博麗神社の本殿とほとんど変わらない。

 

前髪の一本が大きく伸びてカブトムシの角みたいになってる一方でサイドの髪の束二本は

クワガタみたいな顎に変化している。

髪の色は黄色で変わってなったが、サイドの髪を互いに打ち鳴らすと金属音が響くあたり、

もはや髪の毛と呼べない代物になってる様だ。

 

 

「カブトムシ……いや、クワガタか!?」

 

「本当に病気か?……昆虫になる病気なんて聞いたことが無い…!!」

 

 

駆真と王牙は其の姿を見て唖然としている。

 

するとリリーブラックが鉤爪みたいになった一番前の左手をさっき自分が激突した

岩の上に置き、力を加えてあっという間に砕いてしまった。

 

力の誇示か…?どちらにしても圧倒的なパワーアップをした事に間違いはなさそうだ。

 

俺は見上げていたが、さっきとは違う感情になっていた。地面を踏んでジャンプし、堅そうな其の背中に飛び乗る。

 

 

「!?ナ……俺様ノ背中ニ乗ルナ…!!」

 

「良いじゃねえか、助けてやったんだから」

 

 

最初は軽く身体を振って落とそうとしてきたが、俺がそう言うと渋々動きを止めた。

 

 

「飛んでくれ。俺が上から攻撃してやるから、其以外は何もしなくていいぞ」

 

 

そう言うと苦虫……甲虫が苦虫噛み潰したってのもおかしいけど、まぁ、そんな感じの表情

で俺を見上げた後、黒い翅を開いた。すると其の中で畳まれていた半透明の薄羽が伸び、

其が震える様に振動を始めた。

 

やがて蠅の羽音を大きくした重低音と共にゆっくりと浮上を始めた。

 

 

「さぁ……とっとと始めるとするか!」

 

 

俺はそう言うと、ゆっくりと足を上げ、

 

 

「割符『アースクラック』!!!」

 

 

思いっ切り下ろし、黒光りする其の背中を粉々に踏み割った。其の衝撃に耐えきれず、

リリーブラックは空中から墜落して地面に叩き付けられる。

 

俺は地面に衝突する瞬間に背中から飛び退き、駆真の前に着地した。

 

 

「!!?………」

 

 

突然の出来事の連続に呆然とする二人を他所に俺は立ち上がりながら後ろを見た。

 

土煙が薄れ、地面に倒れた巨体が見えてくる。墜落の衝撃で変な方向に曲がった上の翅

にも見事なひびが入り、下の薄い翅はボロボロに破れている。

 

其も直ぐに再生されて消えていった。チッ…そう上手くはいかねえか。

 

 

「お前…もしかして、さっきの一撃を叩き込む為に……?」

 

「さぁ……知らねえな」

 

 

俺は二人の顔を見ないで答えた。

 

 

「グガァア……!!?如何シテ裏切ッタ……!??」

 

 

俺の騙し討ちをまんまと喰らった元妖精の甲虫はゆっくりと起き上がり、複眼になった

目で俺を睨み付けた。

 

 

「だから言っただろ?上から攻撃してやるって…其のままじゃねえか」

 

 

俺は平然とそう言い返す。別に誰にとは言っていない。だから悪びれもしない。

間違ってはねえし。

 

 

「てか、龍とかなら良かったが…最初にそんな虫になったのが間違いだったな!興醒めなんだよ!!」

 

 

そう言ってやったけど、後ろの二人に完全に誤解されると面倒臭かったので

一言付け加える事にする。

 

 

「……最初から手を貸す気はなかったけど!!」

 

(もしかして、俺の言っていた事を……?)

 

 

もう一人の俺はそう言ったが、

 

 

「……口実にしようとしただけだ」

 

 

そう呟いて、頭を掻いた。

 

 

「フザケヤガッテガキ共ガ……纏メテ葬リ去ッテヤル!!!」

 

 

完全にキレたらしく、クワガタの様な牙を激しく打ち鳴らしながら喚いた。翅も開き、

再び飛び始めようとする。

 

 

「んじゃ、さっさと捕獲して籠の中にブチ込んでやろうぜ!牢獄という巨大な籠にな!!」

 

 

俺達は其の妖精を見上げて構えた。

 

 




如何でしたか?

リリーブラックは妖精をやめて甲虫と化しました。何処ぞの江戸で奉行所に駆除されても
おかしくないレベルです。彼方よりは大分小さいですが。

次回からリリーブラックとの戦闘が始まります。


それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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Requests;Evil Mutation

マリスにより甲虫型に変異したリリーブラックとゲストの方々の
戦闘です。王牙君視線で御送りしていきます。


原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


OUGA

VS〈影を告げる妖精〉ケイオスブラック・ベート

~魔法の森

 

巨大な黒い甲虫の様になったリリーブラックは前の一対の鉤爪みたいになった足で地面を

数回掻いた後、頭を下げて角を突き出したまま此方に向かって猛進して来た。

 

俺達は弾幕を発射したが、黒い甲殻に全て弾かれてしまった。

 

 

「!避けろ!!」

 

 

俺の声で攻撃を止めた神矢と駆真はそれぞれ横に、俺は少し助走をつけて大きくジャンプした。

 

赤いものを見た牡牛さながらに突進していく其の真上で、身体を捻りながら再びドラゴガンを

真下に構えて狙い撃つ。だが、霊力の弾丸はやはり背中や翅を空しく叩いただけだった。

其のまま地面に着地して直ぐに真後ろの敵に視線を向ける。左右に回避した二人も戻って来た。

 

敵を鉤爪で地面を抉りながら方向転換し、クワガタみたいな牙を打ち鳴らしながら俺達の方に再度突進を仕掛けてくる。俺達は再び回避する。今度は俺も、神矢と同じ方向に横転して避けた。

 

するとあまりに勢いが良すぎたのか、リリーブラックは俺達の背後にあった木に物凄い音と共に

激突し、黄色い角も深々と幹に突き刺さった。

 

 

「!?オゥ…嘘……!?ヌ?…ヌグゥヴ~~~~……!!!!」

 

 

焦ったリリーブラックは角を引き抜こうと必死になってもがき始めた。相当力んでいるらしく、

四枚の翅を全て拡げ、柔らかそうな腹が丸見えになっている。

 

 

「!……」

 

 

其に気が付いた俺は一丁だけを向け、今度は腹に発射した。銃弾は腹に食い込み、黒い体液が

噴き出した。

 

 

「腹が柔らかい!!外の殻は堅いけど、此ならダメージが与えられるぞ!!」

 

 

俺達は弾幕を発射し始めた。

 

 

「!!?~此ノ…!!レディノ尻ヲ狙ウカ……変態カ、オ前等ハ……!??」

 

 

そんなまったく見当違いな罵声にも構わず集中攻撃を浴びせていく。男勝りな言葉遣いの

凶悪犯がレディと名乗るとは…片腹痛いにも程が有る。

 

 

「~~落トサネェゾ…刺サッタ位デ……落シ物ダナンテ…絶対ニ……!!」

 

 

そして攻撃を受けながらも何か訳の判らない事を呟きながら、相変わらず角を引き抜こうと

必死にもがいている。其の腹は弾幕や霊力の銃弾を大量に浴び、自身の体液で紫色に染まって

いく。

 

何とか角を引き抜き、大きく後退した敵は後ろに不意討ちをかける様に角と牙を振りながら

此方に振り向いた。素早い動きだったが、幸いにも遠くから弾幕で攻撃していたので俺達は其の

範囲に入っていなかった。

 

更に其の大振りな攻撃モーションが仇となり、今度はすぐ横に生えていた木の幹に黄色い牙が食い込んだ。

 

 

「もう一度チャンスだ!攻撃するぞ!!」

 

 

巨体の割には小さい顔面に弾幕を放つ。腹よりは効いていないみたいだったが、目を瞑って

耐えている所から確実にダメージを与えられている事が判った。

 

 

「覚醒『玄武』!!」

 

 

すると駆真が髪と瞳を緑色にした。リリーブラックは怯みや、牙を引き抜こうと必死になって

此の変化を見ていない。

 

 

「注意をひき付けていて下さい…!」

 

 

そういうと駆真は、穴を掘って地中に潜っていった。

 

そうか……不意打ちを仕掛けるつもりか…!!俺は弾幕を打ち続けて駆真の言う通りにした。

 

木屑を撒き散らしながらようやく牙を引き抜き、三対の複眼を開いて俺達を睨み付ける。

今度は翅を広げてゆっくりと上昇し始めた。

 

そして今度は低空飛行をしたまま勢いを付けて此方に突っ込み始めた。

 

 

「玄武『グランド・ドライブ』!!!」

 

 

だが其の直後、其の真下の地面から駆真が勢いよく飛び出し、リリーブラックの巨体を

打ち上げた。

 

 

「!??ア"ァ"ァア"ヴ………!!!」

 

 

真下から衝撃を受けて少し浮き上がった敵の身体は、空中で180度回転して仰向けになり、俺達の

前に轟音を立てて墜落した。

 

すると敵に向かって神矢が走り始めた。

 

 

「俺に任せろ!!」

 

「神矢……!?」

 

 

するとリリーブラックが神矢を食い止めるために、仰向けのまま四本の足を伸ばし掴みかかって

来た。

 

 

「割符『アースクラック』!!!」

 

 

だけど神矢も其をかわしながら、それぞれの腕の関節に飛び乗り、翅を踏み割ったのと同じ要領で

次々を踏み折っていった。そして四本目を破壊した後、其処から顎に向かって大ジャンプし、

両足で力一杯踏み割った。

 

 

「!!!オォ"オォオ………」

 

 

頭部の黒い殻だけでなく黄色い髪の角や顎も砕け、破片が辺りに散らばった。神矢の足の下で

化け物の様な断末魔を上げた後、リリーブラックは六本足を抵抗するかの様に弱々しく

動かし始めた。

 

 

「!おい…やり過ぎじゃないか……?」

 

 

俺は神矢に言ったが、もう遅かった。

 

暫くもがいていた六本(不自然な角度に曲がった四本も含む)足を小刻みに震わせながら内側に

畳むと、脱獄犯はやがて割れた頭を地面に付けて全く動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい…」

 

 

俺はもう一度敵の頭に乗っている神矢を見上げて言った。

 

 

「?………!!え、死んだのか?」

 

 

今更気が付いた神矢がまさかと言わんばかりに自分が踏んでいるリリーブラックの顔を

見下ろした。散らばった顔の破片とじわじわと広がっていく体液に沈む青い瞳の六つの複眼は、

もう何も見てなかった。

 

 

「参ったな……死なねえ程度に弱らせようと思ってたのに……」

 

「どうするんだ?紫に、なんて言ったらいいか…」

 

 

其処で駆真も合流した。俺はドラゴガンを二丁ともホルスターに収納する。

 

 

「まぁ、生け捕りは出来るだけって言われてたし……そう言う事で良いんじゃねえかな」

 

 

そう言いながらリリーブラックの顔の上から飛び、黒い血溜まりを越えながら俺達の前に

着地した。

 

 

「こんな危険なカブトムシを籠に入れても、また破壊して出て来られたら面倒くさいし……」

 

「うぅん…俺も、此処の幻想郷の為に危険分子は殺しておいた方が良いと思う。此処の幻想郷は

とんでもない事が起きている。俺の所もそうなんだが……」

 

 

駆真の発言に俺は黙ったままだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ヘヘ……ヘヘヘヘ………」

 

「!!?」

 

 

不意に声が聞こえ、後ろを向くと裏返しになった甲虫妖精が、活動を再開させていた。

 

 

「此ノ程度デェ"エ……終ワッタトォ"オ……思ッテルノカァ"アァア"……???」

 

 

だけど、其の傷の再生に時間がかかっているらしい。

ひっくり返された亀みたいにもがく足の内の四本は、肘から先が情けなく揺れ、割られた頭からは

まだ黒い血が噴き出ている。

 

 

「まさか、頭を割られても息を吹き返すなんてな…」

 

「やっぱ倒せねぇか…此処まで来ると大した再生力だ。あの紫が気を付けろと言った訳だぜ」

 

 

俺は戻したばかりのドラゴガンを持ち、ホルスターから抜いた。

 

 

「覚醒『朱雀』!!!」

 

「貫符『トラジカルスピア 手中』!!!」

 

 

駆真も髪の色と目を赤色に変え、片方しかない手で炎と共に出現したレイピアを握った。

神矢も同様に手に槍を持つ。

 

すると俺達の前で瀕死の甲虫の全身が完全に黒く染まり、姿を変え始めた。

 

 

「!また変異か……!!」

 

 

骨が軋む様な音を立てながら、其の影のようになった姿が長く伸び、やがて一つの姿が現れた。

 

 

「!!!……」

 

 

唖然とする俺達の前で、妖精は大きく上に伸び上がった。

 

 

 

 

 

其は大蛇だった。

 

傍で並ぶ樹木並の太さの身体に覆われた、紅いギザギザの模様が刻まれた黒い鱗。其が月の光に

赤く輝いている。だが甲虫の時ほどはっきりと反射はせず、其の輝きは鈍い。

薄い紫色の六枚の羽が首元でフードみたいに広がり、其の腹側から四対の青い瞳の目が此方を

睨み付けていた。威嚇の為の模様ではない。紛れもない本物の目玉だ。

 

まるで猛毒を持つコブラを彷彿とさせる風貌だ。

 

 

「……何処まで妖精を止めるつもりなんだよ、コイツは……」

 

 

神矢は小さく笑いながら呟くのが聞こえた。

 

 

「俺様ハ絶対ニ捕マラネェ……!二度ト戻ルカ…ンナ糞ミテェナ牢獄ニ……!!」

 

 

擦れ声でそう言うと、大量の棘の付いた尻尾を前に出し、ガラガラヘビの様に音を出して

震わせた。

 

俺はドラゴガンの銃口を蛇の顔に向けた。其の両目は虫の時と同じ三つの眼球があったが、昆虫

特有の複眼ではなく、切れ込みの様な瞳の蛇の眼になっていた。

 

リリーブラックが前に長く伸びた口を大きく開けた。其処には虫の脚みたいに節のある牙が

ズラリと並び、それぞれがバキバキと音を立てながら蠢いている。其の内の八本が蜘蛛の

脚みたいに異様に長く、先端から紫色の液体が滴り落ちている。

 

 

「やっぱり生け捕りは無理だ!此処で殺すしかない!」

 

 

今の状況に面している俺は、駆真の言葉に反対する事はなかった。神矢も黙って頷く。

 

 

「仕方ない、作戦変更だ……行くぞ!!」

 

 

俺達は蛇とに向かって走り出した。

 

 

「絶対ニ…逃ゲ切ッテヤル……終ワッテ……堪ルカァアァアァアァアア!!!!!!!」

 

 

向かってくる俺達を迎えるかの様に、相手も虫の脚みたいな牙を見せながら、破裂音の様な咆哮を

上げた。

 

 




如何でしたか?

角が刺さったり、落し物だのと言ったり……某国民的狩猟ゲームの影響が凄いです。
更には其の作品に最近、昆虫型や大蛇型のターゲットも出現しているらしいですが……

次回は、そんな大蛇型リリーブラックと戦闘です。そして、どうやら決着の時も近い様です。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪


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