転生したら紅世の王:Re (シニカケキャスター)
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第1話 転生したら紅世の王

 やあ (´・ω・`)

 はじめましてまたはお久しぶり。

 うん、なんかゲームしたまま寝落ちしたらこんなところにいたんだ。

 な、なにを言ってるかわからねーと思うが俺も何を言っているかよくわからない。頭がどうにかなりそうだった。

 これっていわゆる転生ってやつなんだろうなと思う。死んだ覚えなんて全くないけど。

 あめんぼ赤いなアイウエオ。まぁそれはおいておくとしよう。

 

 俺の名前は“群頸の長蟒(ぐんけいのちょうぼう)”ヤマタノオロチ。

 うん、みんなもそうだと思うけど、なんか紅世の徒みたいな名前だなーって思った。近くにいた奴もこんな名前だった。おまけに“祭礼の蛇”とか“天壌の劫火”なんてのもいる。これはもう確定だね。

 そう!ここは!紅世だったのだ!ハッハッハ…やべえぞこれ。

 うん、俺の記憶では紅世って過酷なところだったと思う。実際過酷なんだよね。

 さっさと現世に行きたいけど、まだこの世界には『狭間渡り』がない。いったいいつの時代だァァァ!

 そもそも現代から数千年前に両界の狭間に放逐された“祭礼の蛇”が、現世どころかまだ紅世にいる時点で察するべきだった。一生の不覚。

 

 これはまずいぞどうしよう。本格的に困ったことになったゾ。一刻も早くこんな世界から出て行きたいというのに。

 …まぁいいや。今のうちに自在法でも練習しておくか。生き残るためにも必要だしね。

 頑張るぞ!えいえいおー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はい、そういうわけでオリジナルの自在法を作りました。あれ?俺って実は天才じゃね?とか思ったけどオリジナルの自在法持ってる奴って結構いるからそうでもないよね。

 

 名前は『帥鴉』と言って、鴉型の燐子を大量に使役する自在法。もの探しとか遠距離攻撃とかに使える。めちゃくちゃ便利だねこれ。今のところは100羽を操るのが限界だけど、練習すればもっといけるはず。

 作るのにそこそこ時間かかったけどこれなら自在師も夢じゃない!ドンドンいこー!

 

 って感じで調子乗ってもう一つ作りました。

 その名も『長城』!そのまんまな名前だね!

 馬鹿でかい城壁を一瞬で築く自在法だ!すごい頑丈だからあの“壊し屋”カムシンが暴れても大丈夫!…なはず。ハッハッハー!私は無敵だァァァ!

 

 …とはいってもまだ紅世の中だから出せないんだけどね!

 

 

 

 

 

 

 やあ (´・ω・`)

 まだなんだ。まだこの世に渡る術がない。一体いつになるのやら。

 今日も今日とて自在法を練習する。…あっ自分で作ればいいじゃん(啓示)

 

 

 

 

 

 

 まぁその発想に行き着いたのはいいんですよ。問題はそのあと。

 …『狭間渡り』どうやって作ろうか。

 

 そう!私は!行き詰まっている!ハッハッハー!(深夜テンション)

 ねえ知ってる?アンパンマンの頭に入ってるあんこはつぶあんなんだって!俺はこしあんの方が好きだな!

 どーでもいいですね、はい。

 

 自在師なんて簡単になれる、『狭間渡り』なんて簡単にできる、そんなことを思ってた時期が私にもありました。

 

 そもそも今まで作ってきた自在法とはわけがちがう。

 だってあれ世界渡る自在法じゃーん。俺みたいなやつにできるわけないじゃーん。

 だがしかし、ここで諦める訳にはいかないからまだまだやりますよ、やってやりますよ!私は最高だァァァ!できるできる私ならできるゥゥゥ!

 

 

 

 

 

 結局狭間渡りが完成したのはそれからかなり後のことであった。

 




初めまして&お久しぶりです!シニカケキャスターです!
今回は以前書いた作品である『転生したら紅世の王』をリメイクさせていただきました!


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第2話 この世

 『狭間渡り』は人間たちの感情を目印にして両界の狭間を渡る自在法だ。

 そして俺はついに作り上げた。簡単で使いやすい『狭間渡り』を。

 つまり何が言いたいのかと言うと…

 

 ヒャッハー!やっとできたぜえええ!

 待っていたぜェ!この瞬間をヨォ!

 みんな準備はいいか!?行くぞおおお!!

 

 

 

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 ハイ!そんなわけで狭間渡りが完成!やってきました!この世!

 ヒャッハー!やっぱり娑婆の空気はうまいぜェェェ!娑婆だばだー。

 

 苦節…何百年だろうか。まぁすごいかかった!

 オレ!顕現!

 そして改めて思う!オレDEKEEEEEEEE!

 “群頸の長蟒”ヤマタノオロチという名前に恥じないデカさだ。

 そもそもこの真名にはたくさんの首を持つ巨大な蛇のドンという意味がある。まんまだね!

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 今の俺の体は八つの首のある馬鹿でかい蛇だ。ほんとに名前のまんま。名は体を表すとはよく言ったものだね、うん。ただし全身黒っぽい霧に包まれているが。

 黒っぽいっていうのは、黒に近いんだけどなんか別の色も混ざってるっぽい。何が混ざってるかわからんけどね☆俺は画家じゃないっぽい!

 …自分で言っててあれだけど、俺がこんな語尾だと気持ち悪いな。こういうのはかわいい女の子じゃなきゃダメだな。ただし美少女に限る的な?

 後、俺の固有能力としてあらゆるものを高純度の存在の力に変換できる。人食わなくていいよ!やったね、た◯ちゃん!てゆーか徒としてはかなり異質な存在なんだな、俺って。

 

 

 

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 まさかこの俺が景色に感動することになるとは思わなかった。

 それっぽく行ってみると、時よ止まれ!世界は美しい!みたいな?とにかく世界が美しいんだよ。うん

 自覚はあるけど説明ヘタでごめんね!

 まあ狭間渡りを紅世で広めたからこれからいっぱい徒が来ると思う。みんなこの世界見てどう思うのだろうね。楽しみだ!

 

 

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 さーて!今日は絶好の拠点作り日和!

 山の中にちょうどいい大きさの盆地を見つけたからここを拠点とする!

 まずはこの巨体をどうにかして隠さないとないとだな!変に伝承になっても困るし!やっぱり拠点作るんだったらでかいのがいいよね!

 ならば!城を作るしかあるまい!

 『長城』を応用すれば簡単だ。問題はどんな城にするかだ。

 外観を日本風にするか、西洋風にするか、中華風にするか。和洋中だね!悩むねこりゃ。ってか城のデザインで悩むってかなり贅沢だな。

 …あっ、俺まだ人化してねーや入れないね。

 

 

 

 

 

 というわけで人化してみました。

 黒髪に黒に近い赤色の瞳の男だ。顔は生前よりも整っているし身長も180センチはありそうだ。後、城は西洋風に決定した。

 

 

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 はいできました~。

 城と言いつつ要塞ですな、うん。まず壁から説明しよう。

 高さはおよそ30メートル。外周およそ5000メートル。幅およそ10メートル。さらに上に取り付けたカタパルトとバリスタ型の燐子が自動で敵を迎撃する。

 

 次に門。高さはおよそ32メートル。横幅10メートル。

 遠距離から動かなくとも開けることができる。ようするに遠隔操作式。

 で、中は、玉座の間や寝室、実験室や庭園もある。もちろんすべてかなりの大きさになっている。残り?空き部屋だよ。見え張ってデカくしたけど誰もいなくてさみしくなったボッチがここにいますよ。

 さらに!この城は空を飛ぶ!そう!空中要塞だ!空中要塞は男のロマン!ビームも出るよ!ロマンだねー。

 どうぞご覧下さい!これが技術を持った変態が作り上げたラ〇ュタだ!滅びの呪文を唱えても壊れないけどね!

 

 

 




ブーーちゃん様、ツンツルテン様、daisann様、高評価ありがとうございます!
皆様のおかげでルーキー日間10位、二次創作ランキング20位!感謝感激雨霰!


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第3話 いい国作ろう

 前略。“祭礼の蛇”さんに招待されました。なんでも徒の国を作るんだとか。

 

 うん、それ大縛鎖のことですね、俺知ってる。俺は詳しいんだ。

 確か“祭礼の蛇”さんはそこに招かれたフレイムヘイズによって両界の狭間に追放されたんだっけ。

 人を食らわなくてもいい場所を作るっていう発想は良かったと思うよ、うん。そこは俺も大賛成。ただ作るのに大量の人柱がいるってのがなー…。

 

 フレイムヘイズにも祝福してもらえると本気で思ってたみたいだし、なんといいますか“祭礼の蛇”は良かれと思ってやったことが裏目にでるタイプだと思う。

 

 まあ招かれたからには行くけどね☆巻き込まれること確定だけど。とりあえず逃げる用意だけはしておこう。

 

 

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 やってきました大縛鎖〜。

 うーんすごいね、このメンツ。

 “皁彦士”オオナムチに“甲鉄竜”イルヤンカ、さらに三柱臣(トリニティ)もいる。さらにティスとかカムシンとか名のあるフレイムヘイズもうじゃうじゃいる。

 はっきり言ってヤバイです。プレッシャーっていうか強者のオーラがすごい。

 そしてやっぱりフレイムヘイズもたくさんいる。名のある討ち手もバッチリおるやん。

 『狭間渡り』広めてから人食いが横行してるし、フレイムヘイズに恨まれてるかも。ていうか絶対恨まれてる。俺は人食ってないから許して。

 襲われたらどうしよう。そこそこ強い自信はあるけどカムシンあたりには負けそうだ。クソゥやっぱり来なきゃ良かったぜ。

 

「“群頸の長蟒”ですね?」

 

 そんなことを考えていると水色の髪の少女に名前を呼ばれた。

 

「ああ、そういう君は“頂の座”だね?」

 

 声をかけて来たのは、みなさんご存知かわいいヘカテーだ。今は女媧を名乗っているけど。

 

「我等が盟主があなたに感謝したいとおっしゃっています」

 

「感謝?ああ、『狭間渡り』か」

 

 俺が“祭礼の蛇”から感謝されることなんてこれくらいしかないだろう。

 

「はい。おかげでこの世の美しい風景が見られた、と」

 

「それは良かった」

 

 俺が感動した絶景は、どうやら祭礼の蛇もお気に召したらしい。

 

「それにしても、わざわざそんな小さな体になるとは…」

 

「こんな姿にも利点があるのさ」

 

 本来の姿の100分の一にも満たないサイズだが、普通に暮らすならばこの姿の方がいい。人の姿ならば手を器用に動かせるし、移動の際に周りのものを破壊することもないし。

 

 本来の姿ならば敵の恰好の的になってしまうが、人の姿ならば攻撃をかわすことができる。それに生前は人だったのだ、首が八つの大蛇よりも体に馴染むというものだ。

 

 

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 やっべー始まったよ始まっちゃったよどうしよう巻き込まないで俺は自在師なんだ研究者なんだ戦闘担当なんかじゃないんだ!

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 一人のフレイムヘイズが俺に斬りかかってくる。

 だが俺のハイスペックボディならば焦ることもなく避けられる。内心めっちゃ焦ってるけどね!

 

「ぐはっ!」

 

 だが、ただ躱してもまた攻撃してくるだけなので一本背負いの要領で地面に叩きつける。

 近接戦闘は不利だと悟ったフレイムヘイズたちが炎弾で攻撃してくるが、『帥鴉』を用いて当たる前に燐子たちに撃ち落とさせる。

 その間にもイルヤンカたちがフレイムヘイズを潰して、燃やして、殺して行く。うっひゃーえげつねー。

 どちらかといえば徒側が優勢だ。

 

「てやぁぁぁ!」

 

 そんな中二人の奮闘が目にとまる。一人は“冥奥の環”アシズのフレイムヘイズ、『棺の織手』ティスである。彼女は『清なる棺』を駆使して攻撃を防ぎつつ、徒達を倒して行く。

 

 もう一人は“不抜の尖嶺”ベヘモットのフレイムヘイズ、『儀装の駆り手』カムシン・ネブハーウである。ガ◯ダムみたいな音を出しながら進撃し、マ◯ンガーZみたいにロケットパンチを繰り出し徒を蹴散らしている。パンチなのに蹴散らすとはこれいかに。

 

 それはさておき、大きな犠牲を出しながら祭礼の蛇を倒したフレイムヘイズたちが撤退して行く。それを追う血気盛んな徒は全員叩き潰された。

 

 とりあえず俺は帰ることにする。しばらくはこんな戦闘御免だ。

 




碧氷様、絡操人形様、杉崎鍵、フォルテシモ様、高評価ありがとうございます!


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第4話 能力の活用

『水色の星』を読んで一言。

悠ヘカ尊い。


 ティスとカムシン率いるフレイムヘイズ軍団の襲撃から命からがら逃げ延びた俺は、現在城に引きこもっている。ちょっとはしゃいでただけじゃないか許してくれよ人的被害出してないんだからさ。ついでになんであんたら一致団結してるんだよフレイムヘイズは群れないんじゃなかったのかよ。俺実はとんでもない大罪人?

 

 ほとぼりがさめるまではしばらくこうしているつもりだ。外出してカムシンにたたき潰されたらたまらない。

 まあちょっと外出してカムシンに遭遇するなんて普通ならありえないだろうが。

 …あれ?こうして振り返ってみるとここ最近遭遇したフレイムヘイズほとんどティスとカムシンじゃん。なんでさ。

 

 前者はまあいいとして、後者はやばくね?とんでもなく強い縁で結ばれているのか、単に俺の運が悪いだけか。はたまたその両方か。

 まあ運がいい方ではない自覚はあるよ?生前だってピックアップガチャですり抜けとか結構あったし。確定演出で全然違うキャラきた時の感覚は筆舌に尽くしがたいよね。なんかこう、来るものがあるよね。泣きたくなる。うん。

 

 まあただ引きこもっているのはよろしくない。こんな時こそ、時間を有意義に使わないともったいない。人生は短いってだれかが言っていた気がする。まあ俺には寿命なんてないんだけど。時は金なり、タイムイズマネー、だ。

 

 

 

 

 

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 というわけで、新しい自在法を作ることにする。

 

 俺固有の能力として、あらゆるものを高純度の存在の力に変換するというものがあるのだが、これには色々と制約がある。

 まず神器や宝具は存在の力に変換できない。燐子や普通の武器なんかは変換可能なのだが。普通のものとは一線を画しているということなのだろうか。

 もうひとつは変換に少々時間がかかるというものだ。これが結構いたいのだ。

 なぜかというと、以前戦闘中にこれをやったことがあるのだが、隙がでかくて攻撃を食らってしまった。もともと耐久力は高いためほぼ無傷で済んだのだが大技ブッパなたれたら流石にやばいっす。

 

 長々と書いたが結局どういうことかというと、能力を応用した戦闘にも使える自在法を作りたい、ということだ。

 

 まず最大の問題である時間の長さをどうにかしなければならない。具体的には変換時間を1秒くらいにまで短縮する。やっぱり早いに限るよね。

 これは自在式をいくつか組んでいくうちに早く存在の力を流せるように簡略化する事で対処した。だがこれはさっき言った通り簡略化したものだ。優れた自在師ならば打ち破る自在法を作ることも出来るだろう。やはり戦闘で使うのならば不破の自在法の方がいいだろう。そして不破の自在法は総じて凄まじく複雑だ。瞬時に使えて、なおかつ攻略されないようにするには、やはり相応の時間と努力が必要なようだ。

 ぶっちゃけきつい。だがやらねばならない。俺がやらなきゃ誰がやるというのだ。そもそも自分のだし。まあ引きこもっているから時間はたっぷりとある。根気よくやろうや。頑張るぞー!おー!

 

 

 

 

 

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 ハッハッハー!ついに!破られないほど複雑難解な自在式が完成したぞぉぉぉ!やったぁぁぁ!もうどのくらいかかったかわからないぞ!だが!俺はやった!やったぞぉぉぉ!だが!俺は!これで満足しない!

 なぜならこの自在法の効果が及ぶ範囲が狭いからだ。包囲され、一斉攻撃を受けたら為す術がない。

 よって目標は効果範囲の拡大だ。これができれば戦闘能力は跳ね上がるだろうし、ついでに存在の力を食らう際の効率も上がるから一石二鳥だろう。

 まあこれは自在式を拡大すればいいのだが、ついでにもうちょっと改良することにする。やっぱり性能は高いに限る。

 

 

 

 

 

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 はいできましたー。半径100メートル内にあるものを存在の力に変換出来るようになった。

 それに加えて自在法もしくは自在法で作られたものも存在の力に出来るようになった。ある意味で自在法殺しの自在法になったな。

 

 まあそうは言ってもメリヒムの『虹天剣』みたいな効果範囲外から攻撃出来る自在法とは相性が悪いが。威力も高いから光線をうまく存在の力にできないしね。

 

 自在法自体を封じる自在法でも作ろうかなぁ、なんて思ったりしながら俺は眠りについた。

 

 

 




乃木様、十埜様、寄生メガネ様、高評価ありがとうございます!


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第5話 とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)

 自在法の研究で行き詰まっていた俺は、今現在欧州の小さな町に来ている。なぜかって?観光だよー。別に怪しいことはする気ないよー。死体を利用しようとか考えているだけだよー。これも全て研究のためなのです(ゲス顔)

 

 うんまあ仕方ないのでちゃんと説明しよう。俺は死体を燐子に出来ないかと考えていた。

 人形を燐子に出来るのならば死体だって出来るだろう、と。鳥や虫で試したところ、あまり傷んでいないものならば可能なことが判明した。

 で、次の段階に進むため状態が良好な人間の死体をここに探しに来たというわけだ。

 まあ観光も目的のひとつなんだけど。てゆーかー観光の方が優先順位高いんだよねー死体探しの方がついでなんだよねー。フレイムヘイズに追われる立場だからたまには羽を伸ばしたいんだ。

 

 

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「やめてください!」

 

「まあまあいいじゃねえかヨォ〜」

 

 町中を歩いていると、路地裏でチンピラども約10人に絡まれている少女を見かけた。

 こうゆうのは大概薄い本が厚くなるような展開になる。あとサスペンス気味になるかも。

 まあどっちにしろ見かけてしまったのだから、見て見ぬふりをせずに助けてあげよう。

 

「おい、あんたら何してんだ?」

 

「あぁん?なんだてめーは?」

 

 おいこら。質問に質問で返しやがったな?テストじゃゼロ点。とりあえずボコるの決定。

 

「幼気な少女を囲んでいったい何してんだって聞いてんだよ」

 

「フン!てめーが知る必要なんざねーよ。やっちまえ!」

 

 リーダー格のチンピラの声に従い、ナイフを持ったチンピラどもがこちらに突っ込んで来る。はーい正当防衛成立ー。ボッコボコにしてやんよ。

 

「破ァ!」

 

「グエッ!」

 

 チンピラAのみぞおちに拳をくらわせた。チンピラAは気絶した!

 

「野郎!」

 

「ていっ」

 

「」

 

 ヤマタノオロチの金的蹴り!チンピラBは動かなくなった。ただのしかばねのようだ。

 

「ギャッ!」「グエッ!」「ゴハッ!」「ギャン!」「あがっ!」

 

 途中からめんどくさくなってテキトーにボコる。

 

「ひっ、化け物!」

 

「逃げろ!」

 

 俺の無双を見て、運よく生き残ったチンピラたちは一目散に逃げ去った。根性のない奴らだ。ついでに薄情。

 

「おい嬢ちゃん、大丈夫か?」

 

「え、あ、ああはい大丈夫です!ありがとうございます!」

 

「どーいたしまして」

 

 ちゃんとお礼の言える子は嫌いじゃないよ。

 

「あ、あの!」

 

「うん?」

 

 さっさと帰ろうかと踵を返そうとすると、少女から声をかけられてしまった。

 

「お兄さん!ぜひお名前を教えてください!」

 

「名前?」

 

 しまった、考えてなかった。どうしよう、ヤマタノオロチのどっかからとるか?それともてきとうにマンガの中の登場人物の名前にしようか、ほんとどうしよう。

 

「…ロー、だ」

 

 結局ヤマタノオロチのロからとった。我ながらなんのひねりもないな、うん。

 

「ローさんですね!私はノトブルガと言います!」

 

 適当に返事をして、さっさと帰りたいアピールをするが全然気付いてくれない。それどころかお礼がしたいと言ってくる。そんな大したことはしてないんだけどなあ。

 

「でも私何ももってないし…こうなったら体で…」

 

「まてまてやめろ脱ごうとすんな。自分をもっと大事にしなさい」

 

 何白昼堂々脱ごうとしとんじゃ。俺そんな趣味ないし君も恥ずかしいだろーが、顔赤いぞ。

 

「止めないでください!」

 

「止めますよ!てか君絶対ヤケクソになってるだろ!」

 

 頼むからやめてくれ。俺ロリコンじゃないから。

 

「わたしの何が足りないっていうんですか!」

 

 年齢。

 

 たしかに君かわいいよ?でもまだ10歳前後だろ?そんなちっちゃな子に手を出すつもりはない。お兄さん捕まっちゃいます。

 

「いや、でもお礼を…」

 

 なかなか強情だなこの子。嫌いじゃないわ!

 

「そんなの次会った時でいいから」

 

 そう言って俺は立ち去ったが。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!ローさん!また会いましたね!」

 

 その翌日にまた遭遇した。なんでさ。

 

「ローさん!今日こそお礼をさせてもらいます!」

 

 そう言ってミサンガみたいなものをくれた。

 

「夜なべして作ったんです、受け取ってください!」

 

「あ、ああ…」

 

 うん。受け取るのはいいんだけど、ちゃんと寝なよ。よく見ると目の下にくまができている。肌が白いからちょっと目立つな。

 

「じっとしてろよ」

 

「ふえっ!?」

 

 仕方ないので自在法でとってやる。自在法マジ便利。

 

「ななな、何を!」

 

「魔法で目の下のくまを取っただけだ。」

 

 自在法はある意味魔法だからね。こういった方が理解できるだろう。

 

「ローさんって魔法つかいだったんですか!?」

 

「まあそんなもんかな。みんなには内緒だよ?」

 

「は、はい!」

 

 どっかの魔法少女みたいなことを言ってみた。まあ知られても逃げればいいんだけど。

 

「えっと、ありがとうございます!」

 

「そんな大したことしてないよ」

 

 とりあえずさっさと帰る。結局死体は手に入らなかったよ。

 

 

 

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 あれからしばらくして俺はまたこの町に来たのだが、なんと燃えている。どうやら徒に襲われたようだ。

 多分生存者はいないだろう。フレイムヘイズも徒もいなかったし。まあダメ元で探索の自在法を使って見ると、この町を襲ったであろう徒とフレイムヘイズを見つけた。

 徒の方はかなり気配がでかい。おそらく王に片足突っ込んでいるレベルだ。

 一方フレイムヘイズの方は気配はあまり大きくない。おそらく新人だろう。新人にコイツの相手は荷が重いじゃないかな。とりあえずフレイムヘイズの方を手伝ってあげよう。

 

「くっ!」

 

「お前ごときがこの俺様に勝てるわけねーんだよ!」

 

 案の定苦戦しているようだ。いまさら見捨てられない。ここは『帥鴉』を使って援護しよう。

 

「グアァァァ!?」

 

 改良済みの我が燐子たちの攻撃は熾烈だ。やはりかなり効いているようだ。

 

「ほら、援護してやるからさっさと攻撃しろ!」

 

 どさくさに紛れて新人フレイムヘイズに自在法の威力が上がるようにバフを掛ける。

 

「はっ、はい!」

 

 やっぱり徒の討滅はフレイムヘイズの仕事だろう。俺の声に反応した新人フレイムヘイズが『炎弾』を撃つ。

 

「グワァァァ!」

 

 直撃だったようで徒はそのまま炎を上げて消えてしまった。討滅完了といったところか。

 

「あっ!ローさんじゃないですか!」

 

「うえっ?」

 

 へんな声が出てしまった。フレイムヘイズを見てみると、どっかであったような顔をしていた。ああ名前が出てこない!ノ、ノ、のしろじゃなくて、えーと・・・。

 

「ノトブルガです!覚えてませんか?」

 

 そうそうノトブルガだ思い出した。ちょっとは成長したようだがせいぜい140センチくらいしかなさそうだ。

 

『まさかお前のような奴と知り合いだったとは』

 

 ノトブルガが契約したであろう紅世の王の声が響く。名前は“秘説の領域”ラツィエルというようだ。

 

「えっと、知ってるの?」

 

『知っているも何も、此奴は紅世でも有名だぞ』

 

 まあ狭間渡りを広めたから有名だろう。

 

「ローさんも紅世の徒なんですか!?」

 

「まあそうなるのかな?俺の名は“群頸の長蟒”ヤマタノオロチ。一応紅世の王だな」

 

「そう、なんですか…」

 

 どうやらノトブルガは俺が紅世の王と聞いてショックを受けたようだ。悪かったね、人外で。

 

「どうして私を助けてくれたんですか?紅世の徒なのに」

 

 その疑問ももっともだ。紅世の徒にとってフレイムヘイズは同胞を狩る敵だ。普通は助けない。

 

「単純にあいつが気に食わなかったからかな?あとは生まれたばかりのフレイムヘイズを死なせたくなかったから、とか?」

 

 ショックから立ち直ったノトブルガが聞いてくる。助けた理由なんてそんなもんでいいんだよ。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「自己満足だからお礼はいらないよ、じゃあこれで」

 

 面倒になりそうなのでさっさと帰ろうか。

 

「あ、あの!」

 

「うん?」

 

「まだそれ、持っててくれてるんですね」

 

 俺の右腕についたミサンガに目を配り、そういった。

 

「ああ、一応もらったものだからな」

 

 

 

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「“群頸の長蟒”ヤマタノオロチよ」

 

 家に帰る途中、いきなり聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「どうか私の頼みを聞いてくれないか」

 

 声の主はアシズだった。ただ前会った時と違い、契約していたティスがおらず、青い天使のような姿で顕現していた。

 

「…ティスは死んだのか」

 

「…ああ」

 

 アシズは悲しげに答えた。

 

「で、俺に頼みってなんだ?」

 

 俺は露骨に話題を変える。

 

「じつは―――」

 

 アシズはやはりティスを復活させようとしているらしい。そのために、死体の燐子化をしていた俺を頼ってきたのだ。

 

「そうは言ってもフレイムヘイズで試したことはないしなぁ」

 

 通常、フレイムヘイズの肉体は死亡すると炎になってしまう。消えてしまうのだから燐子化はできないのだ。ただ今回の場合、『清なる棺』によって肉体の喪失を免れているため燐子化できないことはないだろう。

 だが仮にできたとしても、それはティスではなくティスの皮を被った燐子だ。全くの別人になってしまうのだ。

 

「残念だが俺にはティスを甦らすことはできない」

 

「そうか…」

 

「だがまあ、頼りたくなったらいつでも言ってくれ。力になろう。」

 

 俺はそう告げてこの場を立ち去った。

 

 

 




焼き抹茶様、可愛い=世界様、jorgeotex1234様、高評価ありがとうございます!


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第6話 強制契約実験

時系列を本来のものに戻しました。


「教授、例のものはできたか?」

 

「もぉーちろんですよォー」

 

 俺は教授に顕現する際に消費する存在の力を0にするものを作ってくれないかと頼んでいた。

 この体ははっきり言って燃費が悪い。できるだけ矛盾が発生しないようにちまちま木の葉を食べていたのだが全然足りない。

 これから色々あるだろうに、これでは生き残れそうにない

 

「そーの名も『因果の殄滅』!顕現時のそぉーんざいの力をなァァァんとゼェェェロに!さァァァらに!存在の力をちょぉぉぉっとだけ生み出す機能付き!さァァァらにさらに!こぉーこのスイィィィッチを押すとなぁーんと!ドォォォォリルになるのでぇーす!」

 

「うんありがとう、なんで大剣型なのかとかなんでドリルになるのかとかいろいろと言いたいことがあるけどとりあえずありがとう」

 

 俺の理想としては指輪とかネックレス型が良かったのだが自在法で小さくすれば問題ないだろう。

 

「そぉーれからこーれもごらんくーださーい」

 

「うん?」

 

「そーの名も『討滅の獄』!紅世の王と人間をー強制的に契約さァァァせる宝具でェェェす!」

 

「とりあえずこれは破壊する!」

 

「なーんとー!?」

 

 悪い文明!

 どっかーん!

 

「どうせこれで俺を誰かと契約させるつもりなんだろ!」

 

「なぁぁぜわかったのでぇぇすか?」

 

「やっぱりか……」

 

 とりあえず目下の危機は去った。

 

「そーれでもわーたしぁあーきらめまーせんよぉー?」

 

「とりあえず俺たちを巻き込まないでくれ……」

 

 

 

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「なんなんですか、それ」

 

「教授に作ってもらった道具」

 

「またですか……」

 

 またなんです、はい。だいたい全部教授が悪いんだ!(責任転嫁)

 

「なんで大剣型なんですか?」

 

「教授がドォォォォリルをくっつけたから」

 

 つまり私の趣味だってやつだ。

 剣を全くと言っていいほど使わない俺には宝の持ち腐れになっている気がしないでもないんだけど。

 まあ他の機能が便利なので持ったままにするけどね☆

 

「そもそもローさん剣なんて使わないじゃないですか。ちゃんと使えるんですか?」

 

「…頑張って使えるようにする」

 

 俺だって練習すれば人並みに使えるはず!やってやんよ、やってやろうじゃねぇかぁ!

 

 

 

 

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 もーねーこれひどいですわ。うん。

 正気を失った男性がナイフを持って走ってるし、同じく正気を失った女性がブツブツ呟いている。時々爆発している奴もいるしなんかもう悪い意味でカオスですね。

 ダメだな俺、紅世の王になってから生に頓着しなくなっている。若干サイコパス的な思考になってる。

 うんまあ現実逃避はやめよう。また教授がやらかしたらしい。どうしてこうなった。

 たまたま居合わせたんだけどさ、なんかさ、こんな感じになってたんすわ。ダメだ、逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。

 とりあえず正気で無事な人を探して保護することにしよう。

 

「もーどうしてこーなっちゃったの?」

 

『うん私も知りたいな』

 

「まあとりあえずそこの人に聞いてみましょー?」

 

『うんそうね、ちょっとそこの人』

 

「すいませーん」

 

 第一正気人発見。

 

「おう、やっとマトモな人見つけたぞ」

 

「あ、ほんとに大丈夫そうだねー」

 

『そうねー、紅世の王だけどマトモそうだね』

 

「初対面でなんて事言うんだこの子、とゆーかやっぱフレイムヘイズなのか」

 

 なかなか自由な子たちだなぁ。などと思いつつ、これが教授の強制契約実験である事を確信する。

 

「私はメルセデス・クリストよ~」

 

『私は“麗鱗の蛟”デイビーよ、あなたは?」

 

 なんともまあ息ぴったりだこと。むちゃくちゃ相性いいんじゃないのこの子たち。あとキミ巌窟王のファン?

 まあそれは置いといて自己紹介。

 

「俺は“群頸の長蟒”ヤマタノオロチ、さっき言われた通り紅世の王だよ。よろしく」

 

「うん、よろしくー」

 

『それにしても、あなたほどの紅世の王がなんでこんなところにいるのかしら?』

 

 やっぱりこの子たち仲良いだろ、かなり性格そっくりだよこの子たち。

 

「うん、たまたま居合わせたんだけどこんな事になってた」

 

「ほんとどーしてこんな事になっちゃったの?」

 

 まったくだ。やはり教授ははた迷惑な存在だな。だが嫌いじゃない。

 

「そういえばキミらなんでここにいるのさ」

 

「友達に誘われたのー」

 

『私もそうね』

 

「つまり元凶は知らないと」

 

『じゃああなたは知ってるの?』

 

「知ってるというか心当たりがある」

 

『「誰?」』

 

「教授」

 

『あぁ~』

 

 これで通じるって相当だと思うよ教授。もっともこの世の人間だったメルセデス、ちょっと長いなメリーと呼ぼう。メリーは知らないようなので説明しよう!

 

「正確には“探耽求究”ダンタリオンと言って、一言で表すなら変人だね」

 

「へー?」

 

『言い得て妙ってやつね』

 

「だろぉぉぉ?」

 

 ほかになんと表そうか、変態とかマッドサイエンティストとかかなぁと思ったり。

 

「これからどーしよーかしら〜?」

 

『そうね、どーしよーかしら?』

 

 どうしたもんかなぁ。

 

「とりあえずゾフィー・サバリッシュのとこに連れて行くかな」

 

 フレイムヘイズの保護と言う点で言えば、一番の安全牌だな。我ながらいい選択だな、うん。

 

「じゃあ連れてってー」

 

『歩くのめんどくさ』

 

「おまえは歩かんじゃろーが」

 

 なんだかんだ言いつつこの二人とは仲良くなれそうだな。

 




alpha1397様、ネクスト12様、哲林様、瀬川理央様、大和8281様、高評価ありがとうございます!


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第7話 紅世の王とフレイムヘイズ

「アアアアアアアアア!!!」

 

「うるさい、死ね!」

 

 暴走したフレイムヘイズを蹴散らしていく。みんな雑魚ばっかりだ。

 ほんとに紅世の王と契約してんのかねぇ?

 戦闘経験がないからとはいえ、こんなのばっかりなのか…?

 

『それー!』

 

「えーい!」

 

 いやーメリーちゃんちょっと強くない?ほんとに新人なの?

 実はあの時神殺しに参加してた歴戦のフレイムヘイズとかじゃないの?

 水を刃にして切り裂くとかえぐいじゃないか。ウォーターカッター!

 

『あらかた終わったかしら?』

 

「意外と弱かったねー」

 

「そりゃあろくに徒と戦った経験のない奴らだったからな」

 

 うん、やっぱ強くねキミ?

 あまちゃんとはいえフレイムヘイズを鎧袖一触とかやばいよね。それに人型したやつをあっさり殺せるあたり精神力えぐいな。ほわほわしてるように見えて侮れない。

 あと数千年生まれるのが早かったらイルヤンカとかオオナムチも倒せたかもしれないな。

 俺?瞬殺されそう。ハハッ!

 

「じゃあ早く行きましょー?」

 

「そうだな、さっさといくとするかな」

 

 とりあえずこのヤベーやつをゾフィーに押し付けよう。

 ただでさえノトブルガの教育で忙しいのにこんな子の面倒なんてみてらんないよ。

 

『で、どこにいるか知ってるのかしら?』

 

「…あ」

 

 残念ながら俺どこにいるか知らないのよねー。どうしようかなー。

 

「とりあえず探すか」

 

『やっぱり知らなかったのね…』

 

 あははごめんねー。

 さあ、『帥蜂』と『帥鴉』を使って探索だ!こういう時は人海戦術なのだ!

 困った時の数頼み。戦いは数だよ、兄貴!

 

「それいってこーい!」

 

 鴉はおよそ1000羽、蜂はおよそ1000000匹。すごいだろー。どやっ!

 

「すごーい!」

 

『さすが、紅世最狂の自在師ね』

 

「ふっふっふ、もっと褒めてくれてもいいんだぜ?あとデイビーよ、俺が紅世最狂の自在師ってどーゆー事?」

 

 俺のどこが狂ってるんだ!俺は教授と相対的に見てもかなりまともなはずだ!

 

『あの教授とお友達なのよ?狂人以外何があるのよ』

 

 わーい反論できない。なるほどそうゆう事なのか。ガチで教授なにやってんだよ。

 

『でもそれで見つかるものなの?』

 

 うーんどうなんだろうね。俺ゾフィーにあった事ないのよねー。

 外界宿(アウトロー)にいるかもー、とか思ったけどその外界宿(アウトロー)も『テッセラ』という宝具によって隠されている。室内に入ればさすがにわかるのだが、蜂はまだしも鴉が室内に入るってのは少々無理がある。

 そもそもまだドレルがいないのだから外界宿(アウトロー)も組織として満足に機能していないだろう。ほんとどうしよう。

 

『もう、あなたが面倒みればいいじゃない』

 

 なん……だと……?

 

「そーねー、それがいいわー」

 

 メリーさん、おまえもか。

 

『ほらー』

 

「ほらほらー」

 

「ぐぬぬぬぬ…!」

 

 くそっ!ここまでか…。

 

「…わかった、とりあえずキミらの世話をしてやる」

 

『「やったー!」』

 

「ただし!」

 

 俺は諦めない!諦めてたまるか!

 

「50年は面倒見るつもりだが!50年の間にゾフィーを見つけたら即刻押し付けるぞ!」

 

『「えー!」』

 

 えー!じゃない!むしろここで捨てていかないことに感謝の念を持ってもいいと思うんだけど!

 

「…まあいっかー」

 

『そうね、捨てられないだけマシかもね』

 

 わかってるじゃないか君たち。

 

 

 

__________

_______

____

 

 

 

 うん、ずっと探してるんだけど全然見つからないよー!(泣)

 なんでさ!

 

『ほら、そこはもうちょっと弄った方がいいわよ』

 

「はーい」

 

 こっちはこっちで自在法の練習をしていた。なんなのさいったい。

 

「あー、もうだめだー」

 

 もう大の字になって寝そべる。草原だからか、結構気持ちいい。やばい。

 

「あー、このまま寝たい…」

 

 俺はそのまま意識を手放…

 

「えーい!」

 

「ゴボボボ!?」

 

 …せなかった!

 なにをするだー!寝させろ!水ぶっかけんなやコラ!溺れたらどうすんじゃ!

 

「なにしやがんだおまえら!」

 

「寝よーとしてたからついー」

 

「ついじゃねーよ」

 

 寝かしてーな、ほっといてーな。俺に安眠をクダサーイ。

 

『あなた全然面倒見てないじゃない』

 

「なんだよ!悪いかよ!」

 

『悪いわよ』

 

 こんなのゾフィーが見つからないのがいけないんだ!(責任転嫁)

 俺は悪くねぇ!

 

「ほらー面倒見てよー」

 

 メリーが抱きついてくる。

 めんどくさい!絡まないでください!などといっても絡んでくるんだろうな、こいつ。

 別にいやではないが、何度も絡まれるとさすがにウザい。仕方ないからここはうなずいておこう。

 

「わかったよ全く、自在法ちゃんと教えてやるからそこに直れ!」

 

「わーい!」

 

『やったわね!』

 

 チクショウめ!教授がやらかしてなかったらこんな面倒なことを引き受けなくてもよかったのに!一人ならまだしも二人も面倒見れるほど俺は器用じゃないんだ!おのれ教授!チーズに頭ぶつけて悶えてしまえ!




NoEla様、埋まる系グフ様、とある達人の筋肉無双様、高評価ありがとうございます!


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第8話 壮挙

少し更新速度が遅くなっています。申し訳ありません。


 俺は今、来るべき戦に備えて戦闘用の自在法を開発している。いつフレイムヘイズが来るかわかったもんじゃないかビクビクしながら作っているが。

 あと『帥鴉』って燐子使ってるから『ダンスパーティー』使われるとやばいじゃん!ということを最近になって気がついた。遅いよ俺!

 

「ローさんみてください!できました!」

 

 しかもノトブルガの自在法の鍛錬にも付き合っている。

 これはなんか、コイツ戦ったらすぐ死ぬんじゃない?って思ったからだ。一応だが一緒に戦った仲だからほっとけなかった。え、メリー?あの子は一人でもやってけますよ。

 まあかなり覚えがいいので、もう並の徒相手ならば数人でかかってこようがまず負けないだろう。

 

「じゃあ次は防御用の自在法をやってみよう」

 

「はい!」

 

 割と素直な子なので教え甲斐がある。今度オリジナルの自在法でも作らせてみようか。割とすぐできる気がする。

 

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 どうしてこうなった。そう言わざるを得ない。

 

「ローさん、おはようございます!」

 

 ノトブルガが朝食を作ってくれた。それはいい。

 朝は和食派なのに洋食を食う羽目になるのもまあいい。

 作ってくれたのは感謝している。だが!

 

「えーっと、このパンは手作り?」

 

「はい!倉庫に片栗があったので作ってみました!」

 

 いやいやパンを片栗粉で作るな!小麦粉あっただろ!

 

「倉庫って、どこの?」

 

「右の方のです」

 

 それ片栗じゃなくてトリカブトじゃない!?あそこ有毒植物しか置いてないよ!?

 

「そろそろ食べません?冷めちゃいますよ?」

 

 この猛毒パンをどうしろと言うのだ。わしにしねというんじゃな?

 そこで問題だ!ノトブルガと俺が穏便に事を済ませるにはどうすればいいか?

 

①:ちゃんと教える

 

②:だまっておく

 

③:一人で全部食べる

 

 最善は①なのだろうが、この子がショックを受けるのを考えるとちょっとねぇ?

 ②は論外だな。俺だけじゃなくノトブルガも危ない。

 残るは③なのだが、そんなに食って俺の体は大丈夫なのだろうか。紅世の王だし大丈夫だと思うが…。

 大丈夫だ、大丈夫に決まっている。俺は強大なる紅世の王、“群剄の長蟒”ヤマタノオロチ!やってやんよ!ええい南無三!

 

「どうですか?」

 

「うん、今度俺が料理教えてやる」

 

 猛毒パン含め全部食べたが美味しくなかった。やはり料理下手らしい。

 アアアアア!やっぱキツイ!ふざけんなこのやろう全部存在の力に変換してやるよこのやろう!

 

 

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 俺はアシズに呼び出され、『とむらいの鐘』の拠点に来ていた。ちなみにブロッケン要塞はまだできていない。

 アシズ曰く、俺に『壮挙』ヘの協力をして欲しいのだとか。

 まあ手伝うと言っちゃった以上、しょうがないからやりますよ、うん。ちゃんと自分の発言には責任持ちますよ?

 

「私はティスの願いを叶える」

 

 アシズはまさに愛に生きる紅世の王と言えるだろう。まあそのせいでフレイムヘイズと敵対することになったのだが。

 ほんとにいい奴なんだけどなぁ…。

 

 『大挙』によって『両界の嗣子』、つまりアシズとティスの子どもを誕生させるにはかなりの量の存在の力と『大命詩篇』の断片を起動させるほどの能力が必要になる。

 存在の力の方はアシズが『都喰らい』で用意、自在式の起動はとっ捕まったリャナンシーを略奪してやらせるとか。

 じゃあ俺はなんで呼ばれたのかと言うと、簡単に言えばフレイムヘイズ兵団との戦闘での時間稼ぎだ。

 とりあえず個人的に目下の障害だと思う『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールを足止めすれば良いかな?

 『騎士団(ナイツ)』を消せるし、『長城』による超耐久力を持つ俺は意外と優位に立てるのだ。すごいだろ。一応強大なる紅世の王だし、めっちゃ強いし。

 まあぶっちゃけ俺一人でも『大命詩篇』の起動もできる。研究仲間のダンタリオンにこっそり見せてもらったことがあるしね。

 ティスの体全部とアシズの体の一部があれば『両界の嗣子』を生み出せる。足りない部分は俺の存在の力をぶっ込めば良い。

 あれ?これもうほとんどティスと俺の子どもじゃん。アシズに殺されるな、やばいなおい。

 

 そんなことを考えていたがとりあえず一旦帰るとしよう。

 

 

 




たいやんき様、つくもず様、水羊羹量産計画様、高評価ありがとうございます!
そして日間ランキング22位!皆様のおかげです!本当にありがとうございます!

筆者的自在師としての技量

ダンタリオン=リャナンシー>『越えられない壁』>ヤマタノオロチ>アシズ>デカラビア

だと思います。


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第9話 大戦前

 突然だが『九垓天秤』遊軍首将の“戎君”フワワが討滅された。

 下手人はあの『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメール。

 

 いやこれはまずい。『都喰らい』やったから来るだろうと思ってたけど、想定より到着が早い。

 もう何か月か猶予があると思ってたんだけど、これはそろそろ大戦がはじまるぞ。

 メリーからも『震威の結い手』ゾフィー・サバリッシュや『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルが軍を整え始めていると聞いた。

 

 本格的にまずいぞこれは。ただでさえフレイムヘイズが増えているのに、フレイムヘイズへの抑止力の一角が落ちるとは。

 これは痛いぞ。

 

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 アシズの陣営が宝具『小夜啼鳥(ナハティガル)』、つまり“螺旋の風琴”リャナンシーを捕えたそうだ。

 そろそろ『大挙』を宣布する頃だろう。そうなると『大戦』が起きるのはほぼ確定だろうな。

 

「これから徒とフレイムヘイズの間で大規模な戦争が起きるだろう」

 

 とりあえず同居しているフレイムヘイズのノトブルガに伝えておく。

 そんじょそこらのフレイムヘイズよりも強い彼女ならば大戦に参加する様に言われてもしょうがないだろうし。

 

「ローさんも行くんですか?」

 

「ああ、徒側としてだけどな」

 

 前にも言った通り俺はアシズにつく。約束はきっちり守るぞ俺は。

 

「じゃあ、私たち敵同士なんですか?」

 

「まあ俺が相手するのは『炎髪灼眼の討ち手』か『万条の仕手』くらいだな。少なくともお前さんと戦う気はない」

 

「そう、ですか…」

 

「まあ、俺一応強いから大丈夫だろ。お前も『九垓天秤』に会わない限りは生き残れるだろうさ」

 

 一応俺が鍛えたんだからな、そんな簡単に死なないだろう。よほど運が悪くない限り大丈夫…なはず、うん。

 それにメリーにも金髪と茶髪が混ざった少女を見つけたら一緒に戦うように言っておいたから問題はないと思う。

 メリーほどの討ち手ならきっとほかのフレイムヘイズを守りながら戦える。

 

「ローさん、ちゃんと私の家に帰ってきてくださいね?」

 

「大丈夫大丈夫…ってかいつからここお前の家になったんだ?」

 

「え、違うんですか?」

 

 違うにきまってるだろ!?

 

「言っておくが、ここは100パーセント俺の家だからな!お前はどっちかと言うと居候だからな!」

 

「えー?」

 

 図々しいぞノトブルガ。この土地見つけたのもこれ建てたのも俺だぞ?

 

「じゃあわたしが先に帰ってきたら、わたしの家ってことで」

 

「おいこらまてや」

 

 やめろ、たぶん俺は生き残ったとしても後始末に追われてるだろうからノトブルガの方が先に帰ってくる可能性が非常に高い。

 

「ふふ、今度こそおいしい料理作りますからね!」

 

「へいへい」

 

 若干死亡フラグな気もしないでもないが、俺たちはそのまま城を出た。

 

 




つばめっこ様、ギャラクシー様、高評価ありがとうございます!


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第10話 大戦

 俺の隣には『小夜啼鳥(ナハティガル)』に囚われたままのリャナンシー。

 暇つぶしの話し相手くらいにはなるかと思ったが、ずっと無気力状態なので話もできない。これならアクアテラリウムの魚を眺めていた方がずっと暇をつぶせる。

 さらにまずいことに戦いの余波に巻き込まれないように四方を『長城』で囲んだせいで、伝言なんて来ない。俺やらかした。

 こればっかりは自分で自分の尻を拭う他ないので、昔酒の肴にガヴィダから聞いたドナートの話を一部改編して伝えた。

 

「で、お前さんはここから出てくのか?」

 

「うん。私は見たい、私は触れたい、私は確かめたい。ドナートの描いた、私の絵を。だから、私は出ていくよ」

 

「わかった」

 

 それが聞ければ十分。

 俺は自在式を消して鳥籠を破壊した。

 

「…いいのかい?私を出して」

 

「構わないさ。それよりさっさと行きな。これ以上ここにいると戦いに巻き込まれるぞ」

 

「…そうか。因果の交差路でまた会おう」

 

「機会があればね」

 

 消えた『長城』の跡を後目に、リャナンシーは去って行った。

 

「…『大命詩篇』、俺が起動させるのか」

 

 今気が付いたバカがここにいる。

 

________

______

____

 

 

 

「アシズ!さっさとしろ!」

 

「今やっている!」

 

 今俺はアシズとともにいる。『両界の嗣子』を生むために必要な過程のうち、アシズとティスの一部を合わせるまではすんでいるのだが、肝心の両者の融合がまだ出来ていない。

 しかもフレイムヘイズ兵団がブロッケン要塞の近くまで来ている。これはかなりやばいな、うん。まったくもって時間が足りない。

 

「チッ!『炎髪灼眼』が来たか!」

 

 ここで『天破壌砕』を使われたらここまでの苦労が水の泡だ。させるわけにはいかない…!

 

「アシズ!俺は『炎髪灼眼』を足止めしてくる!その間にティスの同化だけでも終わらせろ!」

 

 さて、どのくらい足止めすれば良いのだろうか……。

 

 

________

______

____

 

 

 

「ふう…」

 

『あとは『九垓天秤』だな。』

 

「そうね」

 

 今、『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールは『とむらいの鐘』の徒をあらかた片付け、ひと息ついていた。最強のフレイムヘイズと呼ばれる彼女にも休息は必要だ。

 だが、敵はそんな暇を与えるつもりはない。今まで倒して来た徒の存在が霞むほど大きな気配を持つものが急接近する。そう、俺だ。俺は周囲を炎で囲み、マティルダの逃げ場をなくす。

 

『黒紅色の炎だと!?』

 

「なに、アラストール!」

 

『なぜ今まで気が付かなかったのだ!』

 

 さあ始めるとしよう。

 

「『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメール、“天壌の劫火”アラストール。こんなところで会うとは思わなかったぞ?」

 

 気配を隠しながら、背後から声をかけた。

 

「ッ!あなたは!?」

 

 いきなり背後から声をかけられて驚いたようだ。飛び退き剣を向ける。

 

『“群頸の長蟒”ヤマタノオロチ!』

 

 名乗ろうとしたのに先にいわれてしまった。かなしみ。

 

『気を付けろマティルダ!奴は『九垓天秤』以上の紅世の王!気を抜けば殺されるぞ!』

 

 どんだけ警戒されてんの俺。そんなにフレイムヘイズ殺したっけ?ティスとかカムシンから逃げた覚えしかないよ。

 

『貴様!何故ここにいる!』

 

 アラストールが問う。

 

「アシズに協力してくれと頼まれたからだ。ここにいる理由などそれだけで良いだろう?」

 

「…あなた、変わってるって言われない?」

 

「ははは、実は結構ある」

 

 まあティスとアシズの子どもを一目見てみたい思ってるのもあるけどね☆

 きっとかわいい子なんだろうな。もう親戚のおじさん気分だ。

 と言うわけでお前らの邪魔をさせてもらうワケダ。悪く思うなよ?

 

「さあ、勝負だ!」

 

 俺は『因果の殄滅』を構え、マティルダは『騎士団(ナイツ)』を展開する。

 だがそれは悪手だ。

 

 マティルダの『騎士団(ナイツ)』が黒紅色の炎を上げて消えてゆく。

 

「『騎士団(ナイツ)』が!」

 

『いったいなにをした!』

 

「ふふ、俺の自在法、『悪食』はいかがかな?自在法や燐子を喰らう、自在法だ。」

 

 名前はいま考えた。

 

「なら!」

 

 マティルダが大剣を持って突撃する。

 

「喰われる前に仕留める!」

 

 こちらも『因果の殄滅』で受け止め、数瞬でマティルダの大剣が消え、そのまま後退させるために剣を振るう。

 

「さすがにすぐには喰えないようね」

 

 あっさり弱点を見抜かれた。さすが。だが俺の自在法はそれだけではない。

 

「じゃあこれはどうかな?」

 

 『帥鴉』でマティルダを取り囲む。さすがに逃げ場をなくされてはどうしようもないだろう。

 

「このっ!」

 

 マティルダが『炎弾』を放つ。が、俺に当たることなく消える。

 

「やっぱり燐子をどうにかしないとだめみたいね」

 

「できると思うか?」

 

「やって見なきゃわからないじゃない」

 

 よく言うよ。

 

「ハァ!」

 

 大剣や槍を消える前に振るい、燐子を破壊する。一点突破。割とあっさり包囲網を抜けて見せた。

 

「口程にもないわね」

 

「まさか罠を用意していないとでも?」

 

 マティルダが立っている地面が爆発する。

 

「なっ!?」

 

 爆発に巻き込まれる前に退く。

 

「さあ襲え!」

 

 『帥蜂』によって生み出された無数の蜂がマティルダを取り囲む。

 マティルダは『騎士団(ナイツ)』を展開し、一匹でも多くの蜂を撃破しようとする。

 実際消える前に紅蓮の炎になって蜂を焼いている。虫だから炎に弱い。

 もしかしたら策士策に溺れるってやつか?俺ちょっとやばいな。『帥鴉』と合わせて襲わせる。

 まあぶっちゃけ蜂も鴉型の燐子も存在の力の供給がある限り無限に増える。

 そして『悪食』でマティルダの『騎士団(ナイツ)』を存在の力にしているため、俺が供給する必要はない。

 つまりマティルダが『騎士団(ナイツ)』を展開をやめなければ延々と蜂と鴉が襲うのだ。さあこれに気がつくのはいつだろうか?さっさとタネを見抜かなきゃそっちが疲れるだけだぜ?

 

 

 などと調子に乗っていたらいきなり七色の光線が飛んできた。直撃したらまずい。  『長城』を斜めに配置して受け流す。

 

「マティルダ・サントメールは俺の獲物だ、お前なぞに狩らせはしない」

 

 来ましたメリヒム。どんだけマティルダ好きなんだよあんた。

 

「わかったよ、好きにすれば良いさ」

 

 客将の俺が最高幹部のメリヒムに突っかかるメリットはない。サッサと立ち去ることにする。

 

 

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____

 

 

 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!

 俺は今、『両界の嗣子』となる青い結晶を持って全速力で戦場から逃げている。

 何故かと言うとマティルダが『天破壌砕』を使用してアラストールが顕現したからだ。一応アシズが戦っているのだろうが力の差がありすぎる。無謀だ。

 てゆーかお前なんで5パーセントしか融合させてねーんだよふざけんな。

 ティス50パーセントアシズ5パーセントとかおかしいだろせめて10パーセントにしろよ後の45パーセントどーすんだよ!まさか俺の存在の力ぶっこめってか!?そんなことしたらほぼティスと俺の子じゃん!お前それで良いのかよ!まあ悪くてもやるけどさ!呪うなよアシズ!

 

 十分戦場から離れた俺は、探知や覗き見をされないように自在法で結界を張った。これでシャヘルの神託は下らない筈。

 青い結晶に己の存在の力を注ぐ。膨大な存在の力を持つ俺でも少々キツイ。

 

 

 

 青い結晶はやがて赤ん坊の姿に変わり、産声をあげた。ここに“一人の少女”と“紅世の王”の『愛』がカタチとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺に子守しろってか!?なんてこったい!どうすりゃいいんだァァァァァァ!!!

 

 

 



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第11話 紅世の王の子育て日記

「ローさんどうしたんですかこの子!…まさか!」

 

「拾ってきた子だから!

 別に隠し子とかそんなんじゃないからな!」

 

 ティス50パーセントアシズ5パーセント俺の存在の力45パーセントの子だから俺の子じゃないと思う。うん。

 

「で?この子どうするんですか?」

 

「うちで育てるしかないだろ」

 

 下手に外に出して存在がバレたら大変だから城の中で育てるしかないだろう。こればっかりはどうしようもない。

 

「子育て経験あるんですか?」

 

「ない!」

 

「わたしもありません」

 

「……」

 

「……」

 

 どっちも経験なし。初心者だ初心者!だが誰だって最初は初心者なんだ、やるっきゃないぜ!

 

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______

____

 

 

◼︎月●日

 

 我が家に新しい家族がきた。名前は産みの親たるティスとアシズからとって“ティア”とした。元気な女の子ですよー。髪の色は青、二人の炎と同じ色だ。俺がしっかり育てるから安らかに眠るといい。

 

▲月×日

 

 ミルクはその辺で取っ捕まえてきたヤギの乳だ。牛乳よりそっちの方がいいって聞いたことがある。結構すごい勢いで飲んでる。俺はヤギ乳苦手だけどな。

 

X月Y日

 

 立った!ティアが立った!ティアが立ったぞやったあああああああああああああ!

 

◯月◇日

 

 ティアが俺のことパパって呼んだ。ほんとのパパじゃないけど嬉しいよおおおおおおおお!

 

 

 

(^○^)月( ̄^ ̄)ゞ日

 

 今日はティアの誕生日、②歳になりました。もう②歳ですよ!子どもの成長って早いねぇ。

 

 

( ^∀^)月٩( 'ω' )و日

 

 今日はティアに自在法を使わせてみた。やっぱりティスとアシズの子どもだからか、かなり上手い。そもそも紅世の王とフレイムヘイズに育てられているのだから存在の力の扱いが上手いのも当然なのかもしれない。

 

(ノД`)月・゜・。日

 

 ティアにフリフリな服を着せようとしたらノトブルガに怒られた。解せぬ!

 

 

 

 

(*≧∀≦*)月Σ(゚д゚lll)日

 

 ティアが5歳になりました!せっかくなので七五三に着るような着物を着せた。いやーかわいいですねいいよいいよかわいいよ念写だ念写!この姿は永遠だ!そうだ他のもきてみようか例えばこ♯ここから先は血が滲んで読めない♯

 

 

 

(´;Д;`)月(;_;)日

 

 ティアが反抗期だ。「パパなんて大っ嫌い!」って…。あはははは、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!こんなパパでごめんなさい!

 

 

 

^_^月(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)日

 

 どうやら俺が実の親でないわかってショックだったらしい。よかった嫌われたわけじゃなくて。

 

 

(*´∀`*)月( ^∀^)日

 

 ティアが俺にご飯を作ってくれた。あきらかに危険な匂いがしていたが全部食べた。今度一緒に作ろうか。

 

 

:(;゙゚'ω゚'):月٩( ᐛ )و日

 

 ティアに燐子を作らせてみた。できたのは馬鹿でかい蜘蛛型の燐子だった。3メートルくらいあったね。かなり高性能だった。ノトブルガが悲鳴をあげて破壊してたけど。今度は鳥型にしよう。

 

 

(´・ω・`)月( ˘ω˘ )日

 

 ティアが俺をお父さんと呼び始めた。これも成長なのだろうか。少し寂しい。

 

 

 

ヽ(・∀・)月(*´∀`)♪日

 

 ティア10歳になりました〜。こんなに大きくなっちゃって……。

お父さんもう感無量ですよ!いやーやっぱりティスはかわいいですねぇ、目に入れても痛くないと思う。

 

 

 

 

 

________

______

____

 

 

 

 

「ねえお父さん。」

 

「どうしたティア?」

 

「じつは……。」

 

「うん?」

 

「お父さんに紹介したい人がいるの!」

 

「…………なんだって?」

 

「ちょっときて〜◯◯くん!」

 

「うえっ?」

 

「どうも、お義父さん。」

 

「……オトウサン?」

 

「娘さんとお付き合いさせていただいています。」

 

「……オツキアイ?」

 

「娘さんを僕にください!」

 

「えっちょおまふえっおおおおおおおお!?」

 

「お義父さん!どうかお願いします!」

 

「うわああああああああああああああああ!!!!」

 

 

________

______

____

 

 

 

「はっ!ゆ、夢か……。」

 

「お父さん大丈夫?」

 

「ああ、うん大丈夫だよ。」

 

 そうだそうだそうだそうだあんなことが起こるはずがないティアに近づく悪い虫は俺の燐子で駆逐してやる!

 ティアは俺が守るんだ!だが俺よりティアを想っていてなおかつ俺より顔も良くてなおかつ俺より性格が良くてなおかつ俺より強い奴がティアの前に現れたらどうしよう、いやいやそんな都合のいい奴いるはずないじゃないかないないないないありえないあっていいはずがないのです!仮にそんな奴がいたとしても俺が始末してやる!

 

「お父さんほんとに大丈夫?」

 

「ああ大丈夫だ、問題ない。」

 

 心配かけてしまったらしい。

 

「それよりお父さん、紹介し「うわあああああああああああああああああ!!!」お父さん!?」

 

 野郎ぶっ殺してやるうううううううう!!

 




ズバット555様、北隅川しゃけ様、いのり様、タークみん様、高評価ありがとうございます!


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第12話 ちょっと早くね?

 うえーい!今現在フレイムヘイズに襲われてまーす!

 

「今日こそ逃がさないわよ!」

 

『喰いちぎってやるぜェ!』

 

 フレイムヘイズ屈指の殺し屋として知られる『弔詞の詠み手』マージョリー・ドーだ。いやーやばいよやばいよ。『悪食』使わんとあかんかね。

 

「キツネの嫁入り天気雨、っは!」

 

『この三秒でお陀仏よ、っと!』

 

 トーガの分身が炎の雨に変わる。

 やめてー燃えるー。火除けの指輪欲しいー。

 

「くらえ『悪食』!」

 

 さすがに丸焼きは勘弁。そんな時は全部食っちまえば良いのだ!群青色の炎は黒紅色に変わる。

 

「なっ!?」

 

 俺の『悪食』はこんなこともできるのだ!まあ調子に乗って痛い目にあいたくないのでさっさと逃げる。にーげるんだよー!

 

 

 

 

__________

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____

 

 

 

 

 

「強者…」

 

「俺、強者じゃないです!」

 

 史上最悪のミステス、天目一個に遭遇しました。最近運悪いよね、俺。

 コイツ自在法効かないから俺、ひいては自在師の天敵と言っていい。

 うん、やばいねこりゃ。逃げるぞ俺!こんなところで死にたくない!

 

「強者…」

 

「だあああああ!?」

 

 天目一個の上段斬り!俺はサイドステップで右に避け事無きを得る。あぶねえよ!なんなのさこの鎧武者!さっさと成仏しやがれええええええ!

 

「我、強者求む…」

 

 お前の求めてる強者はここにはいないよ!もしかしたらまだ生まれてないかも!というわけで俺は背後に向かって全速前進!剣士の素質ないね!

 

 

 

「我、逃げる者、追わず…」

 

 

 

__________

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 また会ったな、天目一個。『天道宮』を追いかけていたらまた遭遇しました。

 さっきオルゴン斬ってたよ。あぶないあぶない。まあアラストールの力に惹かれているので気配を隠している俺には気付かない。

 これに付いて行って『天道宮』に乗り込むことにしよう。いやっはー!

 

 

 

 はい、着いた!メリヒム斬られた!ハッハッハざまぁ!←

 まあそれはそうとして、アラストールのとこに後にシャナとなる少女が行ってしまうよー。

 メリヒムさっさと復活しな、男だろ!?天目一個はもう行ったぞ。あの子の初めてが奪われちゃう!←

 

 

 

 やめろ落書きされたフルフェイスライダー。炎弾を乱射するな、俺に当たる。とりあえずぶん殴って黙らせる。

 

 シャナちゃんは契約完了したようだ。包帯ぐるぐるだけど。

 なかなか犯罪臭のする格好だよね。だが、それがいい。

 そして天目一個の入場。ウィネは食われたようだ。別に惜しくもないやつを亡くした。

 それにしてもこうして見ると二人の体格差すごいよね。こんなのと渡り合う女の子を育てるなんてあの二人は兵士の育成とかうまそう。

 

「はっ!」

 

 シャナちゃんは天目一個の攻撃を避ける。ちっちゃいしすばしっこいから当てにくい。

 俺だったら『帥蜂』で取り囲んでじわじわとダメージを与えるね。なんて思ってたらシャナちゃん天目一個倒しちゃったよ。意外と早い。

 メリヒムもオルゴンを消し飛ばし終えたらしくこちらに向かってくる。鉢合わせても面倒だし戦いの余波でやられるのも嫌だ。ここはおとなしく退散しようじゃないか。

 

 

 

 

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「アラストール!」

 

『うむ、どうやら紅世の王のようだな』

 

 どうやら俺の気配を察知したらしい。もっとも今俺は自在法で気配をいじくっているので、並の王程度にしか感じない。

 とはいえ『贄殿遮那』のフレイムヘイズは、まだ契約して数年しか経っていないにもかかわらずあのオオナムチを討伐にかかり、実際に討滅してしまったのだ。

 初陣が並の王でも構わないだろう。

 

「さて、意外とあっさり釣れたな」

 

 案の定こちらに向かってくる。ならば迎撃しようじゃないか。

 皆さんご存知『封絶』を張る。これでアラストールも誰に喧嘩を売ろうとしたかわかるはず。もちろん逃しはしないけどね。

 

『黒紅色の炎だと!?』

 

「どうしたのアラストール?」

 

『罠に嵌められたか!』

 

 前回の反応から察していたけどやっぱり慌ててるな!

 

「久しぶりだな“天壌の劫火”、そしてはじめまして、新たな『炎髪灼眼の討ち手』よ。」

 

『“群頸の長蟒”ヤマタノオロチ!なぜ貴様がここにいる!?』

 

 ハッハッハーなんでだろ~?

 

「さて、なぜだろうか?」

 

 ちょっとくらいおちょくってもいいじゃないか。

 

「それにしても契約するには早かったんじゃないか?すこしばかり未熟に見えるぞ?」

 

 あと3年くらい経ってから契約したらよかったんじゃない?俺ロリコンじゃないからさ、うん。

 アラストールはロリコンとかいう噂が広まっちゃうよ?まあ俺が広めるんだけどね☆

 

「未熟かどうか試してみる?」

 

 挑発に乗っちゃったな、煽り耐性低いの?

 

「いいだろう、お前が『炎髪灼眼の討ち手』に相応しいか試してやろうじゃないか」

 

 フハハハハ!契約したてほやほやあまちゃんなお前程度に負けるものか!お前なんか怖くねえ!野郎ぶっころしてやる!(野郎じゃないし殺す気もない)

 

『待て早まるな!』

 

「やあああああ!」

 

 アラストールの制止も聞かず、あちらは防御を捨てて上段で斬りかかってくる。

 なめちょんのかー?

 この程度なら余裕で避けられます。受け止める必要もなし。

 

「はっ!」

 

 横薙ぎ。予想していたので避けるのは簡単。ジャンプして回避、そのまま後ろに跳ねて距離を取る。

 

「どうした、それだけか?まさか『炎弾』も使えないなんて言わないよな?」

 

 煽ってく〜!俺にだってそこそこの煽りスキルはあるんだぜ?

 

「はあッ!」

 

 若干ムキになって『贄殿遮那』を振り下ろす。

 ハハハハハ、そんな大雑把な攻撃が当たると思うか!?

 勢いあまって地面に叩きつけられた『贄殿遮那』を踏みつけ、そのままシャナもとい『炎髪灼眼の討ち手』の鳩尾を殴る。

 

「ぐうッ!?」

 

 顔パンじゃないからセーフだ。セーフなはず。

 よろけながらも立ち上がり、『贄殿遮那』を構える。

 

「まあこのくらいで退散しよう。だがまだ君はとても『炎髪灼眼の討ち手』と呼べないな。また会おう」

 

 試合終了、俺の勝ち。次会うときはもっと強くなっているかな?

 




山つう様、高評価ありがとうございます!


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第13話 御崎市へ

 嵐は突然やってきた。

 

「お父さん、私学校行ってみたいの」

 

「なんだって?」

 

 ティアちゃん制服デビューですか。いいですね、うん。絶対かわいいとおもいます。

 …じゃなアアアい!どうしてそういうことになったんだ!?一般教養は俺がちゃんと教えたし大丈夫だと思うけど!?まさか俺のじゃ足りないからというのか!?

 いやいやいや待て待て待て。落ち着くんだ俺。

 たとえティアがかわいくてクラスの飢えたオオカミどもの歯牙にかかるようなことがあってもティアならきっと大丈夫だ。ミンチよりひどい状態にしてくれるはずだ。…だけどティアはやさしいから友達とか人質に取られたらうなずくしかない…やめろお前ら!俺のティアになにさらしてんだ!

 

「私も行きたいです!」

 

「私も~」

 

 思考してるうちになんか増えたァ!?

 …まあそれはいいとして。

 

「それにしてもなんで突然学校に行きたいなんて言い出したんだ?」

 

 俺学校楽しいなんて言ったことないよ?楽しくなかったよ?

 俺いじめられてたし。おかげで二次元にどっぷりだよ。ふはははは。

 …自分で言ってて悲しくなるな、やめよう。

 

「テレビで観て楽しそうだなーって思ったから」

 

 おのれ、テレビ!学校なんて映しよって!

 あ、でもこの子たちいじめっ子打倒しそうだな。

 …でもなーノトブルガはちっちゃいし、いつの間にかなじんでるメリーはちょっと世間知らずだし、ティアはやさしすぎるからなあ…。

 

「ねえ、行ってもいいよね?」

 

 上目使いで俺の顔を覗く我が娘。やめてくれ、ティア。その眼差しは俺に効く。

 

「わかったわかった!行ってもいいよ!」

 

「「「やったー!」」」

 

 こうしてみると美少女3人がはしゃいでるようにしか見えないんだよなあ。実年齢400歳オーバーだけど。ロリバbゲフンゲフン!合法ロリということだ。

 

「じゃあ早速行ってみよー!」

 

「「おー!」」

 

「待て待て待て待て!」

 

 君ら学校をなんだと思ってるの!入学手続きとかあるんだよ!受験とかもあるんだよ!学校舐めんな!

 

「色々書類を偽装しないとな…」

 

 戸籍もパスポートもないし、この三人娘は髪の色がバラバラだ。

 ノトブルガはまだ割といるような髪の色だ。だがしかしティアは青色で、メリーに至っては燻んだ銀色だ。明らかに目立つ。

 姉妹という設定も無理ですね。よくて養子。自在法で髪の色を誤魔化そうかなあ…。

 

 

 

 

 

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____

 

 

 

 やってきました、御崎市!やっと原作の舞台に来たよ!

 住居はかつての住人がトーチになってそのままフェードアウトして空き家になった豪邸を買い取った。ちなみにだがアニメで近衛史菜が住んでいたところとは別だ。おk?

 あとついでにハ◯ルの動く城の如く我が家と繋いだ。ノブを回せば出口を変更できる。

 どうだ!結構再現度高いだろ!ヲタクが技術を持った結果がこれだよ!

 

 閑話休題

 

 三人娘は坂井悠二が通うことになる御崎高校に受験なしで入学することになった。いやなんでやねんと思ったそこのあなた、これは私の自在法のせいでございます。

 まあこのままいきますとあれですね、シャナ…『贄殿遮那』のフレイムヘイズと絡むのかねぇ?

 あっちからすればかなり強いフレイムヘイズ二人に両界の嗣子がいるなんておかしいだろってなると思うので、普通の人間に見えるように存在を偽装させていただきました。

 まだ『審判』を使えないシャナにバレることはまずないだろうな。でもまあラミーとか教授にはバレると思うが。

 フリアグネは…どうかな?そういう宝具があってもおかしくないからとりあえず警戒しておこう。

 

「お父さん、どうかな?」

 

 うんうんティアちゃん似合ってるよ、制服が眩しいね。スカートが短くてちょっと恥ずかしがってるのもいいね。かわいい。とてもかわいい。かわいいは正義なり。Q.E.D.

 

「ローさん、どうですか?似合ってます?」

 

「どーかなー?」

 

 うんみんな似合ってる似合ってる。

 ただノトブルガはまだしもメリーは少しくらいおとなしくした方がモテると思うよ。おっとりしてるのに落ち着きがない。どういうことなの…?

 

 

 …おっと、フリアグネの燐子が人を喰らい始めたな。ちょっとくらいならとっちめてやってもいいかな?

 

 

 




風風風様、ヴィヴィオ様、THE DOG様、高評価ありがとうございます!


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番外編 崩れてない日常

次回からはリメイク前とはかなり変わります。


〇 百回クイズ

 

 

「ローさんローさん」

 

「なんだノトブルガ?」

 

「ピザって百回言ってみてください」

 

「百回ィ!?ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ―――

 

 

 

 

    ――-ピザピザピザピザピザピザ!」
 

 

「じゃあこれは?」

 

「マルゲリータ」

 

「正解!」

 

「…え、なにこれ?」

 

 特に意味はない。

 

 


 

 

〇 料理下手

 

「今日は私が料理を作りますね!」

 

「ふ、不安しかないんだが…」

 

「大丈夫です!この本で勉強しましたから!」

 

「ちょっとまてそれ表紙に思いっきりLemegeton Clavicula Salomonisって書いてあるんだけど?どこに料理の要素があったの?りの字すらないと思うんだが?教えてくれ五飛」

 

「ほらここのGoetiaってところの…」

 

「悪魔召喚!?」

 

 もはや料理が下手とかそういう次元じゃない。

 

 


 

〇 料理下手Ⅱ

 

「えーっと…ここでヒキガエルと…」

 

「ちょっと待ていったんレメゲトンから離れようかそしてヒキガエルをいったん置け俺蛇だけど食わんぞ特にお前に調理された奴は!」

 

「な、なんですって!?」

 

「なんでそんなファティマの第三の予言を見たみたいな顔になってんだよ!?」

 

「どういう表現ですか!?」

 

 数日人事不省になるレベル。

 

 


 

〇 料理下手Ⅲ

 

「クロコダイルとオオタカを…」

 

「まてまてそれどこから持ってきた」

 

「捕ってきました!」

 

「そんな満面の笑みで言うことじゃないだろ」

 

「…てへっ☆」

 

「あざとくやっても無駄だぞ。年を考えろ年を!」

 

「ひ、ひどい!心は十代なんですよ!」

 

「なら料理ぐらいちゃんとやれ!」

 

「やってますよ!」

 

「ならなんで俺と一緒にやってダークマターが出来上がるんだおかしいだろ常識的に考えて!?」

 

「ちゃんと加熱しなきゃと思って…」

 

「加熱しすぎて炭化してただろうが!」

 

 暗 黒 物 質(ノトブルガの料理)

 

 


 

〇 料理上手

 

「はーい、私お手製マルゲリータよ~!」

 

「おまえ料理うまいよな。ノトブルガとは大違いだ」

 

「なっ!?私とメリーちゃんのどこにそんな差があるっていうんですか!?」

 

「何もかもだ!」

 

「ひ、ひどいっ!」

 

 むしろ差しかない。

 

 


 

〇 リベンジ

 

「リベンジします!見ていてくださいローさん!」

 

「見ているのはいいがレメゲトンをしまえ。いい加減ソロモンから離れてくれ」

 

「…わかりました。じゃあこれでどうですか!?」

 

「Clavicula Salomonisって思いっきり書いてあるじゃねえか!だからソロモン王から離れてくれ!ソロモンは料理人じゃないから!」

 

「え…だ、だまされませんよ!?こんなに素晴らしいものを書く人が料理人じゃない筈がありません!」

 

「お前の料理の概念どうなってるんだ!」

 

 ちなみにLemegeton Clavicula SalomonisもClavicula Salomonisも作者不明である。

 




rtyu様、風華様、高評価ありがとうございます!


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崩れる世界
第14話 The Gears of Fate


「ん?」

 

 始まりは唐突だった。

 

「なんだろうこれ…」

 

 少女は剣型のキーホルダーのようなものを拾った。拾ってしまった。

 

「誰かの落としものかな?」

 

 運命の歯車は動き出した。

 

 

 

 

 

 

__________

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「あ、あれ…?」

 

 歩く人、流れる水、落ちる木の葉。そのすべてが何の前触れもなく停止した。

 

「夢、なのかな…?」

 

 しかし少女は動いていた。まるで自分だけ世界から取り残されたかのように。

 

「なにが起きてるの、これ…」

 

 その風景はさながら一枚の絵画のようだ。

 美しく、儚く、そして恐ろしい。

 

「へぇ、あなたの持ってるそれ、もしかして宝具?」

 

「ッ!?」

 

 少女の背後から突如女性の声が響いた。

 その女性は滑らかな金髪を揺らしている、が、その顔は人間と呼ぶのが憚られるほどに整いすぎている。

 

「あ、あなたは…?」

 

「私はあなたとおしゃべりしに来たわけじゃないの。さっさとそれを渡して、存在の力を喰わせなさい」

 

「アハハハ!いっただっきまーす!」

 

「なっ、あっ…!」

 

 いつの間にか少女の後ろにはどこかで見たマスコットキャラクターのような巨大な人形が立っていた。

 人形はその大きな右手で、少女の細い体が悲鳴を上げるほどに握りしめる。

 

 

 

 痛い。体がミシミシと音を立てている。鉛筆のようにぽっきりへし折られてしまいそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。

 まだ死にたくない。

 やりたいことだってたくさんある。おいしいごはんを目いっぱい食べたい。友達と一緒に歩きたい。好きな人と手をつなぎたい。

 

 

 

 

 

 

 死ねない。

 まだ、死ねない。

 

「死ねない…私は…!」

 

 

 その時、世界は黒紅に染まった。

 

 

 

 

________

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『な、なんじゃこりゃあああああああ!』

 

「「「…え?」」」

 

 な、なんだこれはいったい何があった!?

 寝落ちしたら体が縮んでしまっていたってやつかこれは!?うっそだろおい勘弁してくれよいつからここは名探偵の世界になったんだそもそもここって探偵殺しの世界じゃん証拠も死体もでないしってちょっとまって囲まれてる!?

 

「く、黒紅の炎…あなたまさか、“郡剄の長蟒”ヤマタノオロチ!?」

 

 そうです、わたすがヤマタノオロチです。…ジャナーイ!

 

 やっぱり君ら燐子だろてことはここはこの世だな、良かった。また変なとこに飛ばされたのかと思った…って安心してる場合じゃねえ!?なんで俺フレイムヘイズになってるんだ!?

 落ち着け、俺、『因果の殄滅』落とした。この子、持ってる。『因果の殄滅』、教授の作品。

 …またおまえかダンタリオン!あの野郎『討滅の獄』入れやがったな!?

 

「たとえ強大な紅世の王でも、契約したてならどうとでもなるわ。やってしまいなさい!」

 

「はーい!」

 

 金髪の人形が巨大な人形を嗾ける。

 待って待って!この子初心者!戦えるわけが…。やるしかないか!

 

『バックステップだ、下がれ!』

 

「え、え!?」

 

『いいから早く!』

 

「は、はい!」

 

 急いで後ろに飛び退く少女。その体からは想像できない速度だった。

 セーフ!セーフ!大丈夫だ、まだあわてるような時間じゃない。諦めなければ試合終了じゃないんだ!メイビー!

 

「ええッ!?」

 

『驚くのは後だ!今は目の前のあれをどうにかするんだ!』

 

「でもどうやって!?」

 

 とりあえず対処法を考えないと。このままではこの子がやられてしまう。

 ここでこの子が殺されれば俺はすぐにでも自由になるだろうが、目の前で死にそうになってる奴を見殺しにできるほど俺は非情にはなれない。

 

『いいか、一度しか言わないからよく聞け!お前の体には力が巡っているはずだ!それを炎の形にするようにイメージするんだ!』

 

「え、えっと…こ、これでいいんですか?」

 

 少女の手には黒紅色の炎が浮かんだ。

 よし!一発成功!

 

『いいぞ!それを相手にぶつけるんだ!』

 

「はいっ!」

 

 ヨガファイアー!命を燃やせ!

 もちろんこんな大雑把な一撃が当たるとは思っていない。作戦は簡単。

 

『今だ逃げるぞ!』

 

「え、あ、はい!」

 

 三十六計逃げるに如かず。




毛色変わったと思った?残念いつものシニカケキャスターでした!最近は飲んでる処方箋が合わなくて死にそうです!

星のおじさま様、高評価ありがとうございます!


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第15話 絡まりあう糸

投稿したらお気に入りが減った。ショック(泣)


 なんとか燐子命からがら逃げのびた俺と少女。

 燐子相手にするのにこんなに心臓バクバクさせたのは初めてだ。あ、俺心臓ないや☆

 あと少女には俺に敬語を使わないように言っておいた。敬語キャラはノトブルガで十分。

 

『とりあえず自己紹介しておいた方がいいな、うん。

 俺の名は“郡剄の長蟒”ヤマタノオロチだ。よろしく』

 

「え、ヤマタノオロチって素戔嗚尊に殺されたんじゃないの?」

 

『いやいや伊吹山に逃げのびて酒呑童子を産ませたっていう話もあるじゃないか。あと俺は素戔嗚なんぞと会ったこともないからな?俺の姿見たやつが勝手に作り上げたストーリーなんじゃないか?』

 

 そもそもそのころは日本にいなかったから仮に素戔嗚と言う存在がいたとしても、首を切られるなんてありえないから。

 

『それよりお前さんの名前聞かせてくれ。俺だけ名乗るなんて不公平だぞ』

 

「あ、それもそうだよね」

 

 話を素直に聞いてくれる子は好きだぞー。

 

「私は平井ゆかり、よろしくね?」

 

 …what!?

 

 

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 顔を良く見てなかったし、最近記憶が薄くなってたけどこの子ゆかりちゃんだわ。まじか。マジか。

 

『致し方ない。俺たちの拠点に来い。詳しい説明はそこでする』

 

「拠点?秘密のアジトみたいな?」

 

『まあ、そんなところだな。秘密基地とかあこがれるだろ?』

 

「うん、わかる!かっこいいよね、秘密基地って!」

 

『だな…』

 

 あるぇえ?ゆかりちゃんってこんな性格だったっけ?俺の中じゃもっとおとなしめなイメージだったんだけどなー…。

 

「それよりその秘密基地ってどこにあるの?」

 

『そこまで遠くはないぞ。ほら、あそこに見えるのがそうだ』

 

「え…結構おっきい家が見えるんだけど、まさかあそこ?」

 

『そのまさかだ』

 

 目の前には御崎市に拠点を移すために以前買った豪邸。

 

「…紅世の王ってお金持ちなの?」

 

『個人差がある』

 

 俺たちみたいに一定以上の規模の組織に貢献していた徒は、だいたい金持ちだ。

 当時最大級の組織だった『とむらいの鐘(トーテン・グレッケ)』にめちゃくちゃ協力していた俺は、むこう一千年は遊んで暮らせるほどの財力を持っている。うらやましいだろ。

 さらに探索、探知系に特化した徒ならば鉱脈や油田を見つけられる。実はこの世界の実業家の何割かが紅世の関係者だという噂が出回るほどだ。

 要はそのぐらい徒の中には金の回し方がうまい奴や高給取りな奴がいるということだ。

 

 

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『ただいま』

 

「おかえりーってあれー?」

 

 出迎えたのはメリー。珍しいな、いつもはティアかノトブルガなのに。

 

「え、メリーちゃん?なんでここに?」

 

 そういえば同級生だっけ?俺のアジトだと紹介された家に同級生が居たら、そりゃびっくりだろう。

 

「ここが私の家だからよー。それよりゆかりちゃん?」

 

「な、なに?」

 

 ゆったりとした動作で近づき、耳元でこう言い放った。

 

「もしかしてゆかりちゃんも契約しちゃったのー?」

 

「ッ!?」

 

 おうおう、耳元で言ってやるなよ、ドキッとするだろ?まあゆかりちゃんは別の意味でドキッとしただろうが。

 

「“も”ってことは、まさかメリーちゃんもなの!?」

 

「そうよ~」

 

『私と契約したのよ』

 

 髪飾り型の神器から響くのは、紅世の王“麗鱗の蛟”デイビーの声。

 

「じゃあ改めて自己紹介ね。私は“麗鱗の蛟”デイビーのフレイムヘイズ『水理の開き手』メルセデス・クリスト。よろしくねー?」




朝区洋邦様、おらら様、高評価ありがとうございます!


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第16話 知らないほうがいい真実

 同級生のメリー、ノトブルガ、ティアの三人が人間ではないという事実に衝撃を受けたゆかりちゃん。

 しかしそれでもしっかりと受け止めたあたりかなり強靭な精神力の持ち主だと思う。

 

『それに当たって、みんなにはこの子を育ててもらいたい。例の燐子の主にも目を付けられただろうから、巻き込まれるのは必至だし』

 

「まあ、それもそうですよね」

 

「フレイムヘイズになったんだから当然と言えば当然だよね」

 

 教授のせいとはいえ、せっかく契約したのに死なれては困る。こうなったら一流のフレイムヘイズになるように鍛えてやる。

 ただ猶予が一年あるかないかと言うのがネックだな。

 一年であのサブラクと張り合ってもらうことになるのか…最悪俺が擬似顕現して戦うべきか…。この子にまで『悪食』を使わせるわけにはいかないし…。

 

「それにしても、ローさん契約してからしゃべり方変わりました?」

 

「前はもっと軽い感じだったのにねー?」

 

『そうか?今でも十分軽いと思うんだが』

 

 うーむ、自分ではそこん所はよくわからないな。こういうのは第三者の方が察しやすいのだろうか?

 

『喋り方の話はおいておこう。まずは体術から始めるべきべきだと思うんだが』

 

「じゃあ私の出番ですね?」

 

『俺はこんななりだから教えられないしな。頼むぞノトブルガ』

 

「…やっぱりしゃべり方変わりましたよね」

 

 自覚はございませんね!

 

 

 

__________

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「初めてにしては…」

 

『上出来だろうな』

 

「いや、ボコボコにされておいてそういわれてもね…」

 

 芝の生えた広い庭に転がっているゆかりちゃん。わかる。その気持ちはすごくわかる。だけど君が初心者にしては強いのもまた事実なんだ。納得してくれ。

 

「でもこれなら毎日鍛錬すれば一人前のフレイムヘイズになると思いますよ?」

 

『そうか』

 

 できることなら住み込みで教わってほしいんだけど…あ、そうだ。

 

『ゆかり、お前さんの家に同居人はいるか?出来ることならこのまま俺の家で鍛錬を積んでほしいんだが』

 

「学校からも近いし、大丈夫だけど…家から荷物とってきていい?服とか教科書とか持ってこなきゃならないし」

 

 確かにそれは重要な案件だな、うん。

 

『それなら構わないぞ』

 

「人手がいるなら手伝うよ?」

 

 はっきり言って引っ越しになるから、フレイムヘイズの筋力があっても手が足りないかもしれない。いい判断だ、ノトブルガ。

 

「ありがと、お願いするね」

 

 友達の力は得難いものだから、こういう時には存分に頼りな。

 

 

__________

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____

 

 

 とあるマンションの一室。一人暮らしにしてはやたら広い気がしないでもないが、ここがゆかりちゃんの自宅である。

 

「あ、ノトブルガちゃん。この人預かっておいてね。下着とか見られたくないし」

 

「オッケー」

 

 現在俺はデフォルトされた蛇のネックレス型だったのに趣味じゃないからと言う理由でキーホルダーにされた神器になっている。

 ちなみにこの状態でもなぜか戦闘ができる。おそらくは教授がやらかして不完全な契約になったのだろう。自在法で援護ができるのはありがたいが、次あったら一発ぶちかますのは確定だな。

 

「ねえ、ローさん」

 

『なんだ?』

 

「これって…」

 

 ノトブルガが手に取った写真には幼い頃のゆかりちゃんと思しき人物が一人写っている。

 本来フレイムヘイズは『運命と言う名の器』を契約した王に捧げるため、喰われた人間と同様に存在は消えるのだが、それでもゆかりちゃんが写っているのは、俺が無理やり存在を固定させた影響だ。これが結構苦労したんだよね。

 転生の自在式を使うわけにもいかないから、矛盾の間にゆかりちゃんの情報を突っ込むという荒業で乗り切った。『調律』とは似て非なるものだからいけるかどうかは半ば賭けだったけど、今回はうまくいった。

 そんなわけでゆかりちゃんは存在しているわけだが、この微妙に空間が開いた写真はちょっとセンスが悪いんじゃないだろうか。大人が両端に入りそうだ。まるでそこから人が突然いなくなったような…あっ(察し)

 

『親が喰われたのか…』

 

「…触れないでおきましょうか」

 

『そうだな』

 

 そっと写真をもとの位置に戻した。

 

「おまたせ!あれ、どうかしたの?」

 

「ううん、なんでもないよ」

 

 

 

 




会社の歯車様、kurono83様、高評価ありがとうございます!


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第17話 新たな歩み

 どうしたものか…あ、そうだ(唐突)

 

『ゆかり、新しい自在法を作るつもりはないか?』

 

「最近始めたばっかりなのに?」

 

 自在法の練習を始めたのはつい一週間前。まともな奴なら絶対やらない。それぐらいは承知してる。

 だがしかし、いつ巻き込まれるかわからない闘争の渦に備えるために、それでもやらなければならないのだ。

 

『仕方ないだろ?前に言ったようにお前さんは目を付けられている。いつ捕捉されるかわかったもんじゃない』

 

 この家には自在法で結界を張っているため、内部の様子や気配を誤魔化せる。

 また、ティア達も気配を誤魔化す自在法を常時展開している。

 しかしゆかりにはこの自在法を使っていなかった。

 

『そもそもお前の場合、俺の力を全く使いこなせていないじゃないか。このまま行くとどこにでもいるフレイムヘイズとなんら変わりがないぞ』

 

「フレイムヘイズってそんなどこにでもいるものじゃないと思うんだけどな…」

 

『お前さんのクラスにも複数人いたじゃないか』

 

「言われてみれば確かに…」

 

 かつて『とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)』との戦争に参加したフレイムヘイズは数千人とも言われている。現在の人口を70億とすると、0.00005%…やっぱりそうそうないな、うん。

 

『まあお前さんには俺の力を十二分に使いこなしてもらわないと困るからな』

 

「…偉そうに言ってるけど、ヤマちゃんそんなに強いの?」

 

『ヤマちゃん言うなし。強いぞ。なんせ数千年は生きてるからな』

 

「えー、ほんとに?」

 

『本当だとも』

 

 ヤマタノオロチウソツカナイ(偽らないとは言っていない)

 

 

 

__________

_______

____

 

 

 

なぜかゆかりは今朝から鼻歌を歌っている。なにかいいことなんてあったっけ?

 

『なんでそんなに機嫌がいいんだ?』

 

 いくら考えても答えにたどり着かないので聞いてみる。

 

「ふふふ、実は今日は好きなグループのニューアルバムが発売なんだよ!」

 

『…お前、今日は放課後鍛錬する予定だったはずだが?』

 

「あ、あれ…そうだったっけ…?」

 

『そうだよ』

 

 冷汗ダラダラ流しながら目を逸らすな。忘れてたんだな?やっぱり忘れてたんだな?

 

『だそうだが?』

 

「予定はちゃんと覚えておいてほしいですね」

 

「アハハ…」

 

 ゆかりの気付かぬ間に、後ろにはノトブルガ。小学生と見間違うほどの低身長だが、かれこれ千年は戦い続けているベテランフレイムヘイズだ。新人フレイムヘイズであるゆかりに気配を察知させないことなど造作もない。

 ちなみに俺はテーブルに置きっぱなしだったのですぐわかった。

 

『まあティアも時間にルーズだし、1、2時間ぐらい許してやりなよ』

 

「ヤマちゃんってティアちゃんには甘いよね」

 

『ヤマちゃん言うなし。お前も子供ができたらわかるときがくるだろうよ』

 

「でもフレイムヘイズって子供できないんじゃないの?」

 

『実は裏技があるんだよ』

 

 ただ前もってしておくべき準備がアホみたいに大変なんだよなあ…。存在の力は『都喰らい』の真似事ができるからかき集めれば行けるだろうけど、肝心要の『大命詩篇』がないからなあ…。

 しかもバレたらフレイムヘイズどころか『仮装舞踏会(バル・マスケ)』にも袋叩きにされかねないからマジで反則(チート)行為なんだよな…。

 




ラストリア様、高評価ありがとうございます!


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第18話 襲撃

つ、ついにストックがががが
なぜかこの作品に関しては筆が乗らないので次回から不定期になるかもしれません。


 放課後。高校生たちの青春にとって重要な三大要素の一つだと個人的には思っている。ちなみにほかの二つは修学旅行と部活。異論は認める。

 

 

 

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 

 

 今ゆかりは三人娘を先に帰らせてCDショップに寄っていた。なおその途中で『零時迷子』のミステスである坂井悠二とばったり会ったと言っておこう。

 始めて彼がミステスだと知った時のゆかりの悲痛な顔は記憶に新しい。かくいう俺も胸が痛くなった。

 この通りもう調子は戻ったが。

 

「(ねえこれ見てよ、ビルボードチャート一位だって!)」

 

『(例のニューアルバムを買いに来たんじゃなかったのかよ。それにビルボードチャートってなにか知ってるのか…?)』

 

「(えっと…アメリカの奴だとしかわかんないなーてへへ)」

 

『(ほらな)』

 

「平井さんさっきからずっと黙ったままだけど、どうかしたの?」

 

「ううん、なんでもないよ」

 

 それにしても、なんか嫌な予感がするんだよな…。もしかして燐子くるのか?

 

 

 

 

__________

_______

____

 

 

 

 嫌な予感が当たってしまった。『封絶』の色は薄い白。間違いなく“狩人”フリアグネの燐子だ。

 

「え、どうして坂井君は動けてるの…!?」

 

 そりゃあびっくりだろう。俺は悠二が『零時迷子』のミステスだとは教えてないし、そもそもティアやノトブルガ達も中身が『零時迷子』だとは知らない。

 そもそもみんな宝具の知識自体そんなにないし、俺以外はあのバカップル…もとい『約束の二人(エンゲージ・リンク)』とは面識がないからな。仕方ないといえば仕方ない。

 

「なんなんだよこれ!平井さんいったいこれはなんなんだよ!」

 

「え、えと…」

 

『悠長に話してるヒマはないぞ。すぐに燐子が来る』

 

 新人フレイムヘイズのゆかりにこの世の本当のことを説明できるはずもない。ここは一度話をさえぎって目下最大の脅威に注意を向けさせた方がいいだろう。

 

「今の声は何!?」

 

「ちょっと黙ってて!」

 

 情けないなあオイ!これがあんなんなっちゃうなんて想像できんよ。まあこれは俺が『念話』を使わなかったせいなんだけどね。

 

『そこのミステスを放っておくわけにもいかない。とりあえず気配を隠して身を潜めよう』

 

「了解。坂井君も動かないで。説明は後でするから」

 

「う、うん…」

 

 たかが燐子と言えど、あの"狩人"フリアグネが作成したものだ。ゆかりにはまだ荷が重いだろうと俺は判断した。

 まあそれとは別に、これからゆかりには気配を察知する訓練をもっとさせないとダメだな。今回も決して小さくない燐子の気配も『封絶』を張られるまで気が付かなかったのだからしかたない。いやこれは俺の教育方針がまずかったのか?どちらにせよ無事に帰ったら教育方針を見直す必要がありそうだ。

 

「(…ねえ、このままじっとしてた方がいい?)」

 

 目の前まで燐子が迫っている。十中八九、これから人を襲って喰らうのだろう。

 

『(ああ。このまま戦っても勝てるかどうかわからないからな)』

 

 俺としては勝率が低い戦はしてほしくない。身内に甘くなるのは悪い癖だろうが、教授が『討滅の獄』を仕込んだせいだとはいえ、『因果の殄滅』をうっかり落とした俺にも責任があるわけで…。

 

「(そっか…。ごめんヤマちゃん、私我慢できない!)』

 

『(なっ、ちょっと待てゆかり!)』

 

 俺の制止も聞かず飛び出してしまった。

 

 




嵯峨崎様、リトバス様、高評価ありがとうございます!


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