緑のアイツ (くらうす)
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キャベツ編
はじまり


降りて来たら更新する予定

大体週一を目処にしたいと思っています


雲一つ無い空、青々と生い茂る草木

 

今日も世界は平和である

 

 

 

 

 

俺の心の平穏は無いがな、畜生が!

 

 

 

 

 

突然だが、俺は一度死んだ

 

なら此処にいる俺は何なのかと問われるならば、当事者たる俺とて解りはしない

 

一つ確かな事は

 

 

「キャベ、キャベ」

 

俺の周囲には黄緑色の丸い物体。いや、小難しい事で誤魔化すのは止めよう。俺の悪い癖だ。率直に言えばキャベツが沢山いる

 

 

この世界?のキャベツは飛ぶことも出来る様だ

世界って広いんだなー。と最初は現実逃避していたが、やはり慣れるものだ

今となっても思うことはあるが、以前程気にならなくなった

 

 

で、どうやら俺もキャベツらしい。というのも、近くの湖?に行って水面で確認したら、見事に黄緑色のキャベツでした

他の個体と違うとすれば、明確な意思を持つことと、デカイ事位だろう

 

通常のキャベツに対して、俺のサイズは大体小学生低学年位ありそうなのだ

 

勘弁してつかあさい

 

 

いや、不幸中の幸いというか声は出るには出る。もっともエライ掠れた声であるが。悲しいかな会話する相手等居ないので徐々にコミュニケーション能力が乏しくなっている様に感じている

 

 

まぁ、以前からコミュ障の節はあったし、このナリで人と会うことは叶うまいから然程に気に病む事では無いかも知れんが

 

 

とりあえず、何かキャベツ達に懐かれているし、面倒でもみるかな

 

 

 

 

 

 

 

人里から遥かに離れた辺境にキャベツ達が大きな群れを成していた

 

キャベツは食糧の為に、近くの魔物等が襲ってくる事は良くあった

 

故にキャベツが移動する時期になるまでは大きな群れをつくる事はない

 

一応彼等とて体当たり等で多少の自衛は出来る。しかし、少しでも知恵が回るか、力が強ければ彼等にはどうしようもなかった。本来ならば

 

 

キャベツ達の中に特に大きな個体がいた。彼?はゴブリンやジャイアントトード、果ては一撃熊ですらも追い払う事が出来ていた

 

体当たりなのは変わらない。が、その大きさと並みのキャベツを凌駕する速度から繰り出される体当たりはゴブリンならば即死するものである

 

一撃熊やジャイアントトードには近くの森や湖に誘いこんで対応していた

 

最終的には湖へと突き落とし、湖のブルータルアリゲーターの餌とする事が多い

 

元々はブルータルアリゲーターもキャベツを補食する事が多かったが、彼?により一撃熊が度々供給されるので以前よりもキャベツへの被害は減っていた

 

 

キャベツ達は外敵からの脅威を然程に受けずにすくすくと育っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャベツ達が大きくなり、前世?で知っている大きさ位まで育った

 

やはりあの小さかったモノが大きくなったのを見ると感慨深いものがある

 

 

 

 

 

俺と小さいキャベツ達だけとなった

 

どうやら本能の様で一斉にキャベツ達は移動して行った

 

 

正直、悲しくはある。が仕方ないのかも知れない

 

せめて彼等に幸せな最期が訪れん事を願うばかりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険者の街、アクセルには定期的にキャベツの大群がやってくる

 

このキャベツの質は良いために求める声が絶たず、冒険者達へのクエスト『キャベツ捕獲クエスト』としてアクセルのイベントとなっていた

 

キャベツは最後には大陸の何処かで看取られずに朽ちていく。と伝えられており、アクセルの街の冒険者を総動員して残さず捕獲する一大クエストと化している

 

 

この時のキャベツの質は例年にくらべてもかなりの高品質であり、冒険者達の懐を大いに潤した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャベツ達が大勢出ていってからそれなりの時がたつ

 

時計やカレンダーも無いのでどの位の時間が経過したのかはさっぱり解らん。があの時には小さかったキャベツ達が多少大きくなったので、それなりの時がたったのだろうと思うが

 

色々と旅をしてみたい気もしないでも無いが、キャベツ達を放って行くのも気が咎めるし、どうしたもんか

 

 

 

当人は真面目に考えているが、端からすると青年位サイズのキャベツが身動ぎもしないのだから、シュールを通り越してホラーでもあったが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我輩は悪魔バニル

 

一応は魔王軍に所属して幹部をしているものである

とはいえ、このままで我輩の夢が叶うかどうかと言えば難しい気がしてならぬ

 

全く、なんちゃって幹部になったアヤツを羨ましく思うことになるとは

 

 

 

実は我輩には夢があるのだ

 

 

巨大なダンジョンの最深部にて冒険者達を待ち受ける

当然、ダンジョンには仕掛けや魔物を放ち、様々な障害を用意する

それを乗り越えた冒険者と戦い、我輩は負けてしまう

そして我輩を倒した冒険者達は宝箱を見つけるのだ

 

強大な我輩を倒した後に現れる宝箱

当然、然るべきものが入っていると確信して宝箱を開ける冒険者

しかし『何も無い』

そんな一瞬の茫然自失とした後の悪感情。それを見ながら消える我輩

 

考えただけでも素晴らしい

 

 

まぁ、我輩は悪魔なので残機が一つ減るだけなのであるが

 

 

 

が、良い場所が無い故にこうして散策を兼ねて調査しているわけではあるのだが

 

この辺りは人里より距離が有りすぎる

仮にダンジョンを造ったとしても冒険者を呼び込むには厳しいかも知れぬな

 

辺境にある魔王軍の幹部が居るダンジョンと言うのも心惹かれるものがなくもないが

 

 

 

 

 

 

何か来た

 

 

いつも通りキャベツ達を森の中の池に漬けて見廻りがてらに湖の方に行った

 

普段ならブルータルアリゲーター達が湖面から顔を出すのにそれも無かった

 

不思議に思ってたら仮面を付けた紳士服?の妙な奴が歩いてきた

 

怪しいが、キャベツの俺も大概だし。話してみるか

 

 

 

久々なので、上手く声、出るかなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

ここにキャベツと悪魔が出会った

 

 

 

なにかが外れる音がした

 

 




というわけで導入部となります
文量が少ないのは、ごめんなさい

原作?カズマ?主人公がアレな時点でどうもなりませんorz

完結はさせます

まーた馬鹿がいる。等と生暖かい目でみるか、放置していただけると幸いです


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愉快な魔王軍

興がのって連続投稿


早速の感想とお気に入りで白目を向きそうなくらうすです

バニルさんは動かし易い


駄文ですが、読んで頂けるとありがたいです


悪魔バニルは困惑していた

 

いきなり森からキャベツが飛び出して来たと思ったら、話しかけてきたのだから

 

「えっと。聞こえてますかね?」

か細い声である

 

他の声などがしていれば聞こえるかも怪しい位に小さい。しかし、目の前のキャベツが喋ったのだ

 

バニルの驚きは魔王軍の資金が1日で半分になった事を魔王から直接聞いた時と同じか、それ以上だった

 

「ふむ。キャベツが喋るとは随分と珍しいものだ

貴様から感じる感情は困惑と恐怖。少しの希望か」

 

バニル達悪魔は他者の感情を読み取る事が出来る

その負の感情を得、食糧としているものが多いのが悪魔という種族である

 

「えっと、俺には名前が無いので名乗れないのですが、どちら様ですか?」

キャベツは小さいながらも聞こえやすい様に訊ねてきた

 

「名がない。ふむ、確かにキャベツであるならば当然であるな

が、貴様は転生者であろう?生前の名前位はあるのではないか」

 

 

バニルが語った『転生者』

何ともバニルには理解し難いが『別の世界』から来た者達の総称である

ほとんどの者が身の丈に合わない力を有しており、魔王軍に敵対している

 

魔王が言うには『女神』により、此方の世界で第二の人生を送っている者でもあるらしい

 

 

 

つまりは目の前のキャベツも力を授かっている筈である

 

にも関わらず力の片鱗が見えない

しかも何故キャベツなのか、悪魔生活の長い場合バニルにも理解出来ない

 

確かに通常のキャベツよりは大きいだろうが、それがどういう利点なのかわからないのだ

 

「て、転生者ですか。何となく前世?の知識はあるのでそうかもしれませんね

生前の名前もさっぱり思い出せません」

キャベツは不安そうにしていた

 

 

 

これは転生した際に転生特典を選択した時に理由があった

 

彼の転生する前の人間が転生特典を決めるまで時間をかけすぎたのだ

 

結果彼は転生特典の選ぶ時間もほとんど与えられず、勝手に特典を決められて送り込まれた

 

 

余談ではあるが、後にそれが発覚し担当していた女神は厳重注意を受けている

 

 

 

「うむむ。転生者であれば有無を言わさずに保護するのが良いやも知れぬが、どうしたものか」

バニルも頭を抱える

 

「あ、いいですよ。御迷惑かける訳にもいきませんし

キャベツ達の面倒を見てやらないといけませんから」

キャベツはあっさりとしていた

 

「む、構わぬのか?

我輩としてはキャベツ位保護するのは容易いが」

 

「いえ、それに此処は落ち着きますし」

キャベツは自然体であった

感情にも揺れは無かった

 

「そうか

おっとすまぬ。我輩とした事が自己紹介がまだであったな

我輩は悪魔バニル。魔王軍の幹部をしている」

バニルとしては言いたい事が無いわけでもないが、先に自己紹介だけをしておいた

 

「バニルさん、ですか

って魔王軍?え、え」

キャベツは狼狽している

 

「別にどうこうしようとは思っておらぬ故、落ち着くがよい

我輩が思うにこの地に居座るも良いが、何か変化を求めるが吉と見るぞ」

バニルは転生者といってもキャベツを始末しようとは思わない。が折角知り合えたのなら色々としてみたくなった

 

悪魔自体が混乱を少なからず求める本能を持っている。バニルはそれに加えて悪感情を好んでおり魔王軍の幹部でありながらも魔王軍内部で色々とやらかしている

 

こんな見通すのが難しいが、何があっても面白くなるようなモノを放置する理由はなかった

 

全ては自分の愉しみの為なのがキャベツに知られなかったのはキャベツの不幸である。が、バニルの興味を惹いた為にキャベツに何かあればバニルは自身の愉しみの為にキャベツを守る事になる

 

「何も知らぬでは何も出来ぬな

よし、我輩が知り合いを連れて来てやろう

其奴に色々と教えて貰うがよい」

バニルはそう言い残しテレポートで去っていった

 

呆然としたキャベツを残して

 

 

 

 

 

 

魔王軍の本拠地魔王城にて

 

 

「相変わらず堅物の様に見えてセクハラ三昧。その結果、相手が魔王城から出ていって内心気落ちしている騎士擬きよ、久し振りであるな」

バニルは目の前の男?に話しかけた

 

「何の事だ?

貴様が話しかけてくるなど録な事ではあるまいが」

鎧を纏った男ベルディアはバニルが話しかけて来たことに若干警戒しながら答えた

 

なお、少しばかり汗をかいた事とバニルの話には関係ない事をベルディアの名誉(笑)の為に言っておく

 

「死霊騎士【デュラハン】になったとしても貴様は騎士であろう。弱いものは助けるのが道理ではないか?」

 

「弱いもの?冗談は止せ。魔王様すら凌駕するとすら噂される貴様が弱い等と笑えぬ冗談だ」

 

 

ベルディアが言う通り、バニルは魔王軍の中でも強者の部類であり、魔王すら上回るとまで言われている

 

 

「おっと。我輩とした事が話を急いでしまったか

ベルディアよ。キャベツは喋ると思うか?」

バニルは愉しそうに話す

 

「キャベツが喋る。だと?

気でも触れたか」

ベルディアは呆れていた

 

「ふむ。つまり貴様は喋るキャベツ等居ないと言うのであるな」

 

「当然だろう

キャベツが喋るならば食べれたものではない」

 

「ほうほう。ならば我輩と賭けをしようではないか

喋るキャベツが居れば我輩の頼みを一つ聞く

居なければ逆に我輩が貴様の頼みを一つ引き受ける

どうだ?」

尚も愉しそうにバニルは提案する

 

「態々負ける賭けを仕掛ける等理解できんな」

ベルディアは嘆息した

 

「何、勝てると思うならば断る理由も躊躇う理由もあるまい」

 

あまりに強気とも見えるバニルにベルディアは居るのではないかと少しだけ思った

 

が、あり得ないと思い直し

「いいだろう。ならば精々面倒事でも押し付けてやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後にベルディアは語る

「この、性悪悪魔が!」

 

 

なお、

「フハハハ。特大の悪感情、美味である!」

とご満悦の悪魔がいたとか




キャベツに魔王軍の幹部がついてきた

というわけで第二話です


時系列としては本編の始まる少し前となります


御一読ありがとうございました


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キャベツの里

主人公の名前、キャベツのままだと不便な気もするのですが、どうしようか

うちのバニルさんはマイルドテイスト

ベルディアさんは元騎士だから立派な人に相違ない(涙)

ブルータルアリゲーター等への独自設定があります

駄文ですが、読んで頂けるとありがたいです


魔王城での話の翌日、バニルとベルディアの姿はキャベツの里にあった

 

キャベツの里とはバニルが魔王へと報告した際に地名が無いのは不便とした魔王によりつけられたものである

 

 

転生者の話を魔王にしたバニルだったが、魔王の予想外の反応に困惑してしまっていた

 

 

一部を抜粋すると

「バニル。どうした」

 

「実は転生者と思われるキャベツを発見しましてな」

 

「良くやった

待て、キャベツと言ったか?」

 

「その通り。キャベツですな」

 

「キャベツ、キャベツかぁ」

 

その後魔王は10分程思考停止した

 

 

 

精神、物理を問わずダメージで言えば、キャベツは魔王に深手を負わした世界初の人物?になっただろう

 

最もキャベツ、魔王双方に得など無いので意味は無いのだが

 

 

再起動した魔王によりキャベツの居る一帯をキャベツの里と呼称すると共にバニルが管理する事になった

 

周辺にはゴブリン、ジャイアントトード、ブルータルアリゲーター、一撃熊が棲息しているが、おおよそキャベツが対策しているので問題ない

 

いざとなればバニルさん人形を少数配備すればこと足りるだろう

 

 

 

バニルはベルディアを連れてキャベツの里へと赴いた

「あ、バニルさん

こんにちは」

湖の傍で一撃熊を湖に突き落としたキャベツが寄ってきた

 

「うむ、キャベツよ。元気そうであるな

一撃熊も憐れな事よ」

バニルは満足していた

 

来て早々に一撃熊の絶望と憤怒の悪感情を得ていたからだ

 

傍のベルディアは眼を剥いていたが

 

 

 

 

バニル達が来る少し前の事

 

 

一撃熊はキャベツの里に着いた

 

偶々遠出していたキャベツの一匹?の後をつけてきたのだ

 

一つ一つは小振りでも量があるならば問題ない

 

自分より格上もいないようだった

 

一撃熊は歓喜した。早速、手近にいたキャベツを一つ食べる事にした

 

 

キャベツ達は一つの方向に逃げ出した

 

 

熊はそれを追いかけた

追いつけない速度差はない。少したてば、また食べれる。そう思っていた

 

 

熊はいきなり真横からの衝撃を受けて吹き飛んだ

 

 

そちらを見れば大きなキャベツが他のキャベツを庇う様にして其処にいた

 

熊は怒った。キャベツごときに攻撃されてダメージを受けたのだ

 

大きなキャベツは逃げ出した

他のキャベツよりも自分を傷付けたキャベツを追いかけた

 

そして憐れな熊は湖の傍に誘い出されて湖に突き落とされた

 

だが、熊は諦めていなかった

 

湖から上がれば復讐するつもりだった

 

最も、上がれば。の話だが

 

 

 

 

次の瞬間には一撃熊の姿は無かった

 

 

 

 

 

 

ブルータルアリゲーターの会話(イメージ)

 

「お、またアイツがとんできたぞ」

 

「メシか」

 

「この前の蛙は沢山いて良かったなぁ」

 

「でも熊も美味しいだろう」

 

 

彼等の中ではキャベツが飛んでくると獲物が来る事は確定事項となっていた

 

彼等は今まで食して来たキャベツよりも食べ応えのある肉を喜んでいた

 

別に大きなキャベツと会話できる訳ではないのだが、頻繁に湖へと落とす獲物は彼等の貴重な食糧である

 

 

別にキャベツとしては殺しきれないから止めをブルータルアリゲーター達に任せているだけなのだが、彼等からは獲物を貰っている。という意識があった

 

 

 

この為獲物が来るまで湖の深い処に留まっていた彼等の中で数頭が湖面近くにてキャベツが来るか監視する様になっていた

 

最初の頃は皆が深い処に居たために獲物を食い損ねた苦い経験によるものである

 

 

「おい、熊だ」

一頭が気付く

 

「今日はさっきの蛙に熊か。腹一杯だぞ」

 

「取りに行くのも良いが、取れるかわからんからありがたいな」

 

 

彼等ブルータルアリゲーター達の棲む湖は大きく、キャベツ達の居る場所と反対側にて狩りもしている

 

態々獲物を譲ってくれるキャベツを敵に回す理由はないのだから

 

一応はブルータルアリゲーターも陸に上がる事は出来る。が、水中程の能力は発揮出来ないから獲物を獲れないことはよくあることなのだ

 

だからこそ、キャベツが落とす獲物を逃す気は無かった

 

 

「落ちたぞ」

 

「仕留めろ!」

 

水中は彼等の狩り場なのだから

 

 

 

 

 

 

ベルディアは驚いていた

 

 

バニルの、言う通り喋るキャベツがいたことも驚きではある

 

それ以上に驚くべきは一撃熊の仕留め方だ

 

あれは狩りだ

偶然とも取れなくもないが、ベルディアは遠目にブルータルアリゲーターが数頭湖面から顔を出していたのを見た

 

キャベツが一撃熊を湖に落とした瞬間にブルータルアリゲーターが群がった

 

一撃熊に対処する時間は無かったろう

 

キャベツが追い込み、ブルータルアリゲーターが狩る。そんな役割分担であった

 

アンデットであるデュラハンになる以前は騎士であったベルディアだから解る

あれは『知恵』を持っている、と

 

ベルディアは知らず知らずの内に口の端を上げていた

 

 

 

「ところで、其方の方は?」

キャベツはベルディアを見て声をかける

 

「バニルに聞いているかも知れないが、我が名はベルディア。デュラハンのベルディアと言う

バニルと同じく魔王軍の幹部をしている」

 

「はぁ、キャベツです。宜しくお願いします」

キャベツには理解し難いのか挨拶を返してきた

 

「仕方あるまい。いきなり魔王だ、魔王軍だの言われても貴様には縁の無かった話よ」

バニルが珍しくフォローする

 

「それでバニル。喋るキャベツがいた以上貴様の勝ちだが、何をさせる気だ?」

ベルディアは少し不愉快そうだった

 

今なら解る。バニルは不条理の塊のコイツを見たからあの様な賭けを持ちかけたのだ

 

そして乗った瞬間に敗けは決まっていたのだ。ベルディアならずとも不愉快になろう

 

「おっと貴様の悪感情、大変美味である」

 

「バニルさん、なにしてるんですか」

キャベツも呆れていた

 

「このキャベツの事よ

こやつはこのキャベツの里より出ることが出来ぬ

が、何も知らぬでは不都合もあろう

ベルディア、騎士だった貴様ならば知識もそれなりにあろう。暇な時にでも色々と教えてやると吉」

バニルは早口で捲し立てた

 

「む、それは構わないが、魔王軍の仕事もある以上頻繁には出来ん。それでも構わないのだな?」

ベルディアは確認する

 

「問題あるまい。構わぬだろう、キャベツよ」

 

「俺としてはありがたいので文句なんてないです」

キャベツは喜んでいた

 

「ならば、時間をみてやって来るとしよう

魔王様にも許可を取らねばな」

 

「既に取っておる故、心配いらぬ」

ベルディアの心配事を一刀両断するバニルである

 

 

キャベツの里の名称について後でキャベツが訊ねたのは完全に余談である

 

 

 

 

「すいません。あまりおもてなしできず」

キャベツは申し訳なさそうに詫びる

 

「構わんさ。よろしく頼む」

 

「我輩とて暇な時には顔を出すとしよう」

ベルディアとバニルは去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうお友達になるなら、悪魔でも良いかな」

 

「ちょっと、待ってー」

 

紅魔族の娘と出逢うまでもう少し

 

 




ゆんゆん登場までもう少し

今週中には書くぞ

週一更新といいながら 

まぁ、グダグダです

ではお読み頂きありがとうございます


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友達

やはりゆんゆんとめぐみんを上手く表現仕切れない

文才無いのは百も承知していたが、辛い

駄文ですが見て頂けるとありがたいです


紅魔族とは魔法使いとしての才に溢れ、皆が上級魔道士たるアークウィザードになれる

 

 

その紅魔族の長の娘にゆんゆんという少女がいた

 

ゆんゆんは紅魔族の魔法学校を優秀な成績で卒業し、時期里長としての経験を得るべく紅魔の里を飛び出した

 

 

ゆんゆんは冒険者としての実績は重ねつつあった

但し『ソロ』の冒険者として

 

 

彼女は個性的とは言えず、唯我独尊を地で行く紅魔族の中では珍しく、他人からの目線や相手の立場を考慮出来る性格だった

 

少々行き過ぎる部分も在りはしたが

 

学校で最も親しかっためぐみんとは互いに競いあう間柄ではあったが、よく食事などを取られたりしていた

 

これはめぐみんが悪いのではなく、めぐみんの家庭の事情があったので一概に悪いとはいえない。また、めぐみんもゆんゆんの事を口には出さないが友人としてみていた。余りにも理不尽な目にゆんゆんが会うならば相手を打ちのめす。位の事はしていた

 

が、悲しいかなゆんゆんは徐々に自己評価の低い性格となっていた

故にめぐみんの不器用な優しさや好意は伝わっておらず、ゆんゆんはめぐみんとはライバル関係とは認識していたが、友人としていいのかは解りかねていた

 

 

人間関係の構築が学校という集団生活で学ぶべきものであったが、ゆんゆんはその点のみは学び切れていなかったのだ

 

だから、人と接する時にも必要以上のコミュニケーションを避けた

 

結果、孤高を愛する冒険者。とのゆんゆんの望みとは正反対の評価を受ける事になった

 

 

だが、ゆんゆんは一緒に冒険したり笑い合うような友達が欲しかった

 

 

 

 

ゆんゆんは人里からかなり離れた土地で禁忌ともいえる行動をしようとしていた

 

悪魔召喚である

 

通常のアークウィザード程度では到底叶わない事ではあるが、ゆんゆんは強大な魔力を有する紅魔族であった為に実行できるのであった

 

 

実行しようとする土地の名前をゆんゆんは知らなかったが『キャベツの里』と魔王軍は呼んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

キャベツは里の中を散歩していた

他のキャベツは水分の補給の為に森にある池に漬け込んであった

 

要は暇なのである

 

 

 

バニルとベルディアが里に来て暫くすると、里の上空を纏まった数の大型の鳥が旋回する様になった

 

彼等はキャベツは瞬殺したゴブリンや湖に落とせずに倒さざるを得なかったジャイアントトード、一撃熊の死体を食べていた

 

 

キャベツとしては邪魔なモンスターの死体を処理してくれるならば放置する事にした

 

元より数は少なかったがその様な鳥はいたのであるから他のキャベツへの実害が無いならばどうでも良かった

 

 

彼等はキャベツに利用価値を見出だしたのか、キャベツ達の傍に外敵が迫ると、鳴き声で警告し始めた

 

更にキャベツが戦っており、手が回らない時には彼等が上空から攻撃を仕掛ける事になり、キャベツの巡回の必要性は低下した

 

 

 

バニルより

「実は人間の友人が欲しいが、ほとんど諦めているキャベツよ。明日、里の向こうを散策するが吉と出た」

とも言われていたので、キャベツは其処に向かっていた

 

 

 

 

 

 

キャベツは黒髪の少女を見つけた

 

何やらブツブツいっていたが

「もう、悪魔が友達でもいいよね」

と聞こえたので、全速力で少女に向かいながら

 

「ちょっと、待てー」

とキャベツなりに叫んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんは誰も居ないはずのここで他の人の声が聞こえたので俯いていた顔を上げた

 

其処には、ゆんゆんと同じか少し大きいキャベツがいた

 

「うえぇっ」

変な声が出た

 

「とりあえず、落ち着こう、な」

優しい声がした

 

 

 

 

 

 

黒髪で赤目の紅魔族の少女ゆんゆん

ゆんゆんより少し大きい位のキャベツが向き合っていた

 

 

端から見るとシュール極まる光景であるが、当人達は至って真面目だった

 

 

 

 

 

 

 

「そっか。友達か」

 

「はい。私何をしてもお友達が出来なくて

もう、どうすればいいのか」

ゆんゆんは目の前のキャベツに話していた

 

「でも、ゆんゆんが言うめぐみんって娘はゆんゆんの事を友達と思っていると思うけど」

 

「でも」

ゆんゆんは不安そうに呟く

 

「難しい年頃だからね

そのめぐみんって娘も恥ずかしいんじゃないかな」

 

「そう、でしょうか」

 

「友達をつくるのが、こわい?」

 

「そうかも、知れません」

 

 

「んじゃ、俺と友達になってみる?」

キャベツはゆんゆんに提案した

 

「ええっ、いいんですか」

 

「ゆんゆんと俺が友達になりたいからお願いしてるんだから、良いも悪いもないでしょ。まぁ、人間所かキャベツだから困るかもしれないけど」

 

「は、はい。私なんかでよければ」

 

「俺はゆんゆんだからお願いしたんだから、もっと自信持って

友達になってもほとんど会えないだろうから、そこは申し訳なく思うけど」

キャベツは謝った

 

「いえ、私もキャベツさんとお友達になりたいです」

 

人間とキャベツが友人関係となった

 

 

 

 

「ところでゆんゆん。帰りはどうするの?」

 

「あ、大丈夫です。テレポートで此処を登録しますから何時でも来られます」

ゆんゆんは笑った

 

「そっか。なら大丈夫だね

そういえば、お腹減ってない?」

 

既に夕刻である。昼過ぎからキャベツとゆんゆんは話をしていたので、流石に元人間としてキャベツも心配になっていた

 

「だ、大丈夫です」

きゅー

 

ゆんゆんの台詞に被せる様に可愛らしい音が聞こえた

ゆんゆんは真っ赤になった。

 

キャベツは微笑ましく思いながら、自身の外皮、つまりキャベツの皮を何枚か落とした

 

「キャ、キャベツさん!?」

 

「ほらほら。落ちてるのじゃなくてさ、少し内側なら汚れてないだろうから食べてみてよ」

 

 

一応キャベツとて元人間。流石に何日も風呂に浸かれないのは我慢出来なかった。その為、里の端にある滝に毎日打たれており、鮮度も抜群の筈であった

 

 

なお、最初に食したバニルは

「ふむ。旨いのは間違いない。間違いないのだが、些か我輩達悪魔には食せまい」

と言っていた

 

 

と言うのもキャベツも転生したさいに女神の加護を少量ながらも受けており、それによる弊害であった

 

 

 

 

「は、はい。いただきます」

ゆんゆんは恐る恐る口にすると

 

「お、美味しい。美味しいですキャベツさん」

と目を紅く光らせながらキャベツに言った

 

 

 

以前アクセルの街のキャベツは高品質といったが、勿論理由がある

 

先ずは生まれ育った環境。次に適度な水分とその水質。最後に生きた?年数である

 

アクセル産のキャベツは食べると経験値を得る。といわれるのはこの三点が高水準であるためである

 

 

では、それを踏まえてキャベツを評価すると一番と二番は同じキャベツの里なのでクリア

三番は寧ろ彼?は里の最長老である

 

 

結果、他のアクセル産キャベツよりも取得経験値は多くなるのだ

 

 

悪意ある人間ならば、キャベツをそのまま捕らえる事もあるが、ゆんゆんに友達をどうこうする考えを持てる筈も無かった

 

この事実は当分先まで秘密となっていく

 

 

 

 

「あの、また来てもいいですか?」

あの後も暫く話をしていたが、既に周りは暗くなっていた。名残惜しそうにゆんゆんはキャベツに聞いた

 

「いいよ。何時でも」

 

「あの、あのな、何か持ってきましょうか?」

 

「ゆんゆん。俺キャベツなんだけど」

興奮するゆんゆんに苦笑するキャベツだが、二人とも楽しそうだった

 

「また、明日でも来ますね」

 

「ああ、おやすみ。ゆんゆん」

 

「っ!はい、おやすみなさい、キャベツさん」

 

テレポートで消える前のゆんゆんは笑顔だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、紅魔の里に一通の手紙が届いた

 

 

親愛なるふにふらさん、どどんこさん

 

お久しぶりです。ゆんゆんです

私は今アクセルの街で依頼を受けながら生活しています

 

突然ですが、お友達が出来ました。キャベツさんといって優しい人です。私の話を朝から晩まで楽しそうに聞いてくれます

キャベツさんは少食なのか、あまりご飯を食べませんが元気な人です

昨日は一緒にジャイアントトードと一撃熊を討伐しました。キャベツさんは出来る事が少ない。と言っていましたが、とても強い人です

 

話は変わりますが最近、アクセルの街でめぐみんの話を聞きます。めぐみんは色々なパーティーに入っている様ですが上手くいっていない様で心配です

 

ふにふらさん、どどんこさんもどうかお体には気をつけて下さい

 

 

 




ゆんゆんが書けた

が、不満は残る。

明日の活動報告に読者の皆様へのご相談を書きますのでよろしければご協力いただければと思います

今回も御一読ありがとうございました


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ヒト

キャベツの里の防衛力が上がりつつある罠


優しい世界


もし、よろしければ御一読ください




ゆんゆんとキャベツが友達になった翌日、早速ゆんゆんは朝からキャベツの里に来ていた

 

 

 

キャベツの里では相変わらず普通のキャベツ達が飛び回り、それをゆんゆんとキャベツが眺めていた

 

 

「凄いですね」

ゆんゆんはそう溢した

 

「そうかな?俺には普段通りの光景だからかな、思うことはないかなぁ」

 

「そうなんですか?」

 

 

キャベツは既に一年以上生きているらしい

 

と言うのもゆんゆんが言うには、前回あったアクセルの街のキャベツ収穫クエストは一年程前にあったらしいからである

 

 

大体一年周期くらいでクエストは発生するのはアクセルの冒険者達も承知しており、彼等はクエストを心待ちにしているそうだ

 

 

 

キャベツは中身は元人間だが、身体?はキャベツである

 

ならば、何時まで生きていられるかはわからない

別に目立った異常は見られないが、だからといって野菜?である以上はそこまで長持ちするとも思い難い

 

 

 

「ピィー」

 

突然、上空の鳥が鳴いた

 

 

「えっ、えっ?」

ゆんゆんは驚くが

 

「またか。上の奴等はご飯に困らない様でご満悦だな

ちょっと行ってくる」

キャベツは戸惑うゆんゆんに、そう言い残すと飛んでいった

 

「え、キャベツさん」

 

 

 

今回はジャイアントトードである

 

 

彼等は地中に潜むから捕捉は一見すると難しそうに見える。だが、潜むだけで其処までスムーズに動けない

 

仮に土竜の様に地中をスムーズに移動出来るならば、相当の脅威であるが、そうではない

 

今まではそうだった

 

 

 

 

だが、今度は少し事情が異なる様だ

ジャイアントトードが複数いる

 

今までは単独、ないしは2体であったが、少なくとも4体はいる

 

 

初心者用のクエストに討伐依頼が出るため誤解されがちだが、ジャイアントトードは決して雑魚ではない

事実としてジャイアントトードには打撃の効果は薄い。それでも魔法で対処出来るし、金属製の防具を装備すれば脅威は激減する

 

つまり、対策さえ施せば初心者の冒険者でも討伐出来るのだ

 

それでも、ごく稀にだが、ジャイアントトードに補食されそうになる者もいるそうだが

 

 

打撃への高い耐性とて、数を頼めば処理出来る。現にキャベツはそうしてきた

 

悲しいかな、彼の場合はそれしか出来ないのだが

 

だが、1体に時間を費やせば、他の個体が完全にフリーになる。他のキャベツ達は逃げているとはいえど避難は完璧ではない

 

上空の鳥達も支援してくれるだろうが、やはり打撃による一撃離脱なので厳しいだろう

 

 

しかし、やるしかない

キャベツが覚悟を決めた、その時

 

 

 

 

 

 

「ライト・オブ・セイバー!」

友達の声がした

 

 

 

 

 

 

 

時を少しだけ戻す

 

 

ゆんゆんはキャベツの後を追っていた

昨日知り合ったばかりだが、キャベツは落ち着いた人?だとゆんゆんは感じていた

そのキャベツが慌てていたように見えた

 

何か力になりたい。ゆんゆんはそう思ってキャベツの後を追いかける

 

キャベツは友達だから

 

 

 

 

突然の声と共に『ナニ』かが、ジャイアントトード1体を両断したのをキャベツは見た

理由は分からない。が、声の主は分かる

 

「ゆんゆん!ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんは感激した。友達のキャベツにお礼を言われたのだから

 

 

 

 

断っておくが、別にゆんゆんがお礼を言われた事がない。等と言うわけではない

 

だが、友達から言われたのは、随分と久しぶりなのだった

 

 

 

 

 

ゆんゆんはワンドを持ち、キャベツの傍に来た

「大丈夫ですか、キャベツさん」

 

「ほんとどうしようかと思ったけど、ゆんゆんが居てくれて良かった

悪いけどさ、手伝ってくれる?」

 

「はいっ。頑張りますね」

 

 

その後、蛙達ははゆんゆんの魔法でほぼ一掃された

 

1体だけは餌としてキャベツが湖に落としたが

 

 

 

 

 

ジャイアントトードの群がいなくなった事でキャベツ達は再び集まり、思い思いに過ごし始めた

 

 

 

 

 

ジャイアントトード達を退治したキャベツとゆんゆんはまったりしていた

「何はともあれ、平和が一番」

キャベツはしみじみと語る

 

「そうですね」

ゆんゆんも同意する

 

 

 

 

ゆんゆん達紅魔族は独特な感性を持つイメージがある。

まぁ、名乗りを上げた後に上級魔法を全力で撃ち込む者が多いのもいる。燃費が最悪と言われている爆裂魔法を極めようと、スキルポイントをそれ以外に使わない者すらいるのだ。更には家庭を持ちながらも自身の信念を曲げずに使いづらい魔法具を作り続けて家庭の財政を悪化させ続ける人物すらいるのだ、否定できる筈もないが

 

 

そこに好戦的な性格がセットされているのだから、変わり者と言われても仕方あるまい

 

キャベツはバニルとベルディアから「一般的な紅魔族に関わるのは止めておけ」と真顔で警告されるのも宜なるかな

 

 

 

 

幸いと言うべきか、キャベツの友達のゆんゆんはそういった紅魔族に当てはまらない稀有な人物である。当人のゆんゆんに自覚があるかは怪しいが

 

 

 

 

キャベツとゆんゆんがのんびり話をしていると

 

「おお、これはこれは。念願叶って認めて貰える友人が出来て内心舞い上がり、叶うならば此処に住もうか。等と考えている娘ではないか」

 

「おい、止めてやれ」

と声がした

 

 

「だ、誰ですか。貴方達は

そ、それにキャベツさんだけだと大変じゃないですか。お友達としてキャベツさんを守るのは当たり前です。だから、私が此処に住んだ方がいいんです」

と言いながらキャベツを後ろに庇った

 

「ええい。だから貴様は直ぐに相手の内心を暴露するのは止めろと言っているだろうが!」

 

「何を言うかと思えば、我輩は悪魔バニルである。ならばそれ相応の立ち振舞いというものがあろう

何と言ったか、そう様式美というらしいぞ」

 

「だ・ま・れ。貴様に任せると面倒にしかならん

すまんな、紅魔族の少女よ。俺はベルディア、魔王軍の幹部をしている」

漆黒の鎧を着た男、ベルディアと仮面の男バニルは言い争っていた

 

 

 

「えっ、魔王軍のベルディア!それにバニルって地獄の公爵バニル!

でもキャベツさんの為にも敗けられない!」

とゆんゆんは魔王軍の幹部相手にも退く気はなかった

 

「あ、あのゆんゆん「大丈夫です。私も直ぐに逃げますから、キャベツさんは先に逃げて下さい」

いや、だからね「勝てなくてもお友達の為にもがんばります」」

キャベツは知り合いだと告げようとするもゆんゆんに言葉を遮られる

 

「ええい、娘。貴様も落ち着け!

バニルも煽ろうとするな!

キャベツ、貴様はもう少し粘らんか!」

 

「ふむ。だが、ベルディアよ。貴様とてこの様な骨のある相手ならば多少思うところはあろう?」

 

「無いでもないが、今することではないだろう!」

三者にツッコミしながらもバニルの言葉に少しだけ心揺さぶられるベルディアだった

 

「いや、ゆんゆん。この人?達知り合いだから、ね」

キャベツは眼を紅く光らせるゆんゆんに話しかける

 

「ふぇっ」

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハ。魔王軍の幹部から友人を守ろうとしたが、実は友人の知人であった事を知り、穴があったら入りたくなる程の羞恥心を持つ紅魔族の娘よ。その悪感情、非常に美味である」

バニルは絶好調であった

 

「ううう。は、恥ずかしいです

キャベツさん、ベルディアさん御免なさい」

ゆんゆんはまた顔を真っ赤にしていた

 

顔が真っ赤。成る程、紅魔族とはこういうものか

キャベツは内心で納得していた

 

「おい、キャベツよ。貴様下らん事で納得していないか?」

キャベツの内心を察してかベルディアがツッコミをまたいれる

 

「というより、何故我輩には謝罪せんのだ、紅魔族の娘よ」

 

「だって、原因ですから」

バニルの指摘をさらっとかわすゆんゆんである

 

「ふん。紅魔族の娘が友人とは

しかし、まともそうだから良いのか?」

 

「ゆんゆんは優しいですから」

ベルディアの疑問に答えになっていない答えを返すキャベツ

 

 

 

悪魔、アンデッド、人間、キャベツ。全く異なる種族が遠慮なく話している、不思議な空間だった

 

 

 

 

 

 

 

 

因みにこの後にゆんゆんが故郷の紅魔の里の友人達に送った手紙の返信を記す

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりだね、ゆんゆん。あるえだ

 

 

 

元気そうでとりあえず安心している

 

ふにふらとどどんこが私の元に君からの手紙を血相変えて持ってきたので、私が代筆させて貰っているよ

 

ふにふら、どどんこそして私の共通の疑問だが、キャベツさんとは名前なのだろうね。

いや、別に疑う訳ではないのだがね。君が里にいた頃に花に話しかけていた。とどどんこがいうもので

 

まぁ私達紅魔族が言うのも何だが、個性的な名前だと思う

ゆんゆんならしないと思うが、名前に触れる事をあまりおすすめできない

 

 

ああ、ふにふらとどどんこはボッチに友達をつくれるわけない。本当の事を言え。等と言っているが気にしてはいけないよ

 

 

 

めぐみんの事だが、ひょいざぶろーさんもゆいゆいさんもこめっこちゃんも心配している

何かあれば連絡してくれるとありがたいと思うよ

 

君の更なる活躍と健康を祈っているよ

 

 

 

 

 

 




というわけで、魔王軍の幹部とゆんゆんの出会いでした


本作のベルディアさんは極一部を除いてマジ騎士の鏡

バニルさんは確信犯にして愉快犯で知能犯。マジ始末におえない


御一読ありがとうございました

何か気になる事などございましたら、ご質問いただければと思います



御名前は差し控えさせて頂きますが、この様な作品に評価やお気に入り登録して下さった方には厚く御礼申し上げます


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ベルディア

新しく感想頂いて、ヒャッホーなので投稿します

見てくださる人が予想より多くて白目剥きそう

では、駄文ですが、お付き合いください


 

兎に角、バニルとゆんゆんをどうにか宥めたキャベツ、ベルディアだった

 

特にベルディアは挑発するバニルと興奮するゆんゆんの間に立って説得したので、疲労困憊である

 

キャベツは自身の葉を差し出すも、ベルディアは自分が望んだ事。更にバニルと一緒に行動する時から覚悟はしていたので気にするなと一笑した

 

その後に

「奴のやらかしはこんなものではないのだ

魔王軍の幹部だけでも頭が痛いのに、魔王様のご息女すらからかう始末

そのせいか、「魔王軍の真の敵はバニルでは?」とまで一部に言われているのだぞ」

 

「う、うわぁ」

ベルディアのカミングアウトにキャベツは心から引いた

 

 

事実、被害にあった魔王の娘と某デッドリーポイズンスライム、某キメラは魔王にバニルをどうにかしてくれ。と懇願した

 

これと同時期に魔王軍の資金の半分が消し飛んだ事も相まってか魔王は頭痛で三日寝込んでしまっている

 

以来、バニルの件は魔王に相談しないようにしている

 

割りと優しい魔王軍である

 

 

 

「ふむ。我輩とそこの紅魔族の娘を仲裁する事で、キャベツより尊敬と同情されて内心複雑なベルディアよ

貴様とて褒められた事でない事をしていたろうに」

バニルは揶揄する

 

「な、ナンノコトダ。オレニハマッタクオボエガナイゾ」

ベルディアは目に見えて怯む

 

「えっと、本当なんですか。いまいち信用出来ないのですけど」

自己嫌悪から立ち直ったゆんゆんが訊ねる

 

 

まぁ、ゆんゆんとキャベツから見れば今のところはバニルのストッパー役に見える

 

特にゆんゆんはバニルを好んでいないので、疑問に思うのは仕方ない

 

「おっと、我輩を嫌おうとしながらも、そこのキャベツが気になっている紅魔族の娘よ

我輩は真実を言っておる」

 

「ベルディアさんが?俺には信じられませんけど」

キャベツも懐疑的である

 

「む、ならば語るしかあるまい

相手の評価には客観的な事実が必要であるからな」

 

 

 

バニルは語る

 

少し前まで魔王城にいたリッチーのアークウィザードにベルディアが様々な方法でセクハラしていた事を

 

 

 

 

「ベ、ベルディアさん」

キャベツは二の句が継げなかった

 

「・・・最低ですね」

ゆんゆんは屑を見る様にベルディアを見た

 

「フハハハハ。見事な悪感情、美味である」

 

「お、己バニル!余計な事を」

 

「おお、紅魔の娘のみならず、ベルディアよりも悪感情が。いやはや、我輩に取って素晴らしい事だ

して、キャベツよ。貴様は悪感情を持っておらぬ様だが?」

ゆんゆん、ベルディアからの悪感情を得てご機嫌なバニルだった。が、キャベツからの悪感情が無いので弄る事にした

 

「・・・・まぁ、ゆんゆんの言う通り最低なんだけど、やっぱり元男としては理解出来なくもない、かな」

 

「キャベツさん!?」

キャベツの理解ある態度にゆんゆんは悲鳴をあげる

 

「キャ、キャベツ」

ベルディアは少し救われた気がした

 

「でも、良く考えたらベルディアさんって元騎士でしたよね?

流石に不味いか」

 

「グハッ」

折角、同情してくれたと思っていたキャベツの不意打ちでベルディアは遂に崩れ落ちた

 

 

 

 

ベルディアがようやく回復したので、4人?4人は話をする事になった

 

「我輩が言った通りであっただろう?」

 

「そうですね、それでゆんゆんと出逢えました」

 

「キャベツさん」

バニルは先日言ったアドバイスは役にたったといい、キャベツはゆんゆんとの出逢いを喜んだ

ゆんゆんはそれを聞いて若干、感動で涙が出た

 

「素晴らしいものだ。人と人ならぬものでも心通わす事が出来るのだな」

 

「あ、黙ってくれませんか、女の敵」

 

「上手く纏めようとしても貴様が女性?うむ、一応女性か。の下着を見ようとした事実は覆らぬが?」

ベルディアが綺麗に纏めようとするが、ゆんゆんから一刀両断され、バニルから追撃を受けた

 

2人とも否定するだろうが、案外相性がいいのかも知れない。と密かにキャベツは思った

 

 

「にしても、紅魔の娘よ。貴様、上級魔法は1つしか覚えていないのか?」

バニルは訊ねる

 

 

確かにバニルとゆんゆんが少しバトっていた時、ゆんゆんは『ライト・オブ・セイバー』のみを使っていた。中級魔法は取得していたが、上級魔法は1つだけしか覚えていない

 

「そうですけど」

バニルに対するゆんゆんの歯切れは悪かった

 

 

勿論、ゆんゆんとしても冒険者として活躍する以上は手札は多い方が良いのは確かだ

 

だが、上級魔法を取るスキルポイントが足りない上に、誰かに手本を見せて貰う必要がある

 

 

「成る程な。スキルポイントにせよ、誰かに見せて貰うにせよ、一朝一夕で出来る話ではないか」

戦闘のプロだったベルディアはゆんゆんの懸念を言い当てた

 

「それって俺の葉では解決出来ませんかね?」

キャベツは訊ねる

 

 

スキルポイントはレベルの上昇に伴い増えていく

それ以外ならば、スキルポーション等により取得するのが常識であった

 

「む、それは止めておけ

確かに貴様の葉で経験値は得れる。だが、上級職のアークウィザードともなればレベルアップに必要な経験値も膨大よ

下手をすれば、貴様の半分がなくなるだろうな」

バニルはキャベツの提案を却下した

 

「そ、それは駄目です。確かに上級魔法は欲しいですけど、キャベツさんと引き換えになんて出来ません」

ゆんゆんは涙目だった

 

 

 

 

この日はゆんゆんの冒険者としての話や、ベルディアの生前の話等で盛り上がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハ、久しいなポンコツ店主よ!」

 

「えっ、バニルさん!」

 

 

キャベツの1つの提案が様々なものを動かし始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、この日より暫く後に、アクセルの街に『自称女神』を名乗るアークプリーストと冒険者の少年が現れた

 




ベルディアさんの株が上がった?
気のせいです

バニルさん、マジバニルさん

ゆんゆんは重いんじゃない。不器用なだけ!


キャベツの名前、真面目にどうしようか


等と雑談を垂れ流しましたが、お目汚し失礼しました

今回も御一読ありがとうございました

あ、完結まで以外と速くなりそうです


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隠し事

とりあえず、一段落です

どうしても話の都合上、1話当たりの文量は少なめですが御容赦ください


予定のメインキャラは出し終えたと思います

駄文ですが、読んでもらえると嬉しく思います


初心者冒険者が集まるアクセルの街の一角にそれはあった

 

『ウィズ魔道具店』

以前凄腕のアークウィザードだった人物が冒険者を辞めた後に開いたお店である

 

ただし、店主のウィズの独特な感性で仕入れられた品物は正直に言えば使いづらいものばかりである

使えるものは初心者冒険者の手の届かない高額なものばかり

「何がしたいの?」

 

恐らくは商売を真面目にしている人間からすれば、理解に苦しむだろう

 

利益が上がらないのだから

 

 

当然、客足も遠退く

 

ウィズの見た目が良いために遠くから眺めるものは少なくないのだから、それを利用すれば良いのだが、全く気付かないウィズであった

 

某悪魔が

「この、ポンコツが!」

等と言うのも成る程。納得出来る話だ

 

 

なお、一応は魔王軍の幹部である。あるのだが、以前魔王軍の資金の半分を浪費?した為に魔王城より体よく追い出されていた

 

本人は元人間なので街に居る方が気は楽。だそうだが

 

 

魔王軍の幹部として魔王城の結界を維持しているが、ウィズにはほとんど制約はない

 

あるのは、直接的に魔王軍の幹部と対立しないように『出来れば』する事である

これは魔王が人間の街にいる以上は魔王軍と敵対せざるをえない状況に配慮した為である

 

 

 

 

 

ウィズは暇だった

 

魔王城よりアクセルは街に拠点を移して、生活しているが、店は開店休業状態。話し相手すらいなかった

 

ついこの前までは紅魔族のゆんゆんが時々訪れては商品を購入していた

その為に多少はご飯も食べれたが、ここ一週間位はゆんゆんも来ておらず、収入源がなかった

 

最近は水と砂糖で生活している

 

 

 

だからか

「おお。これはこれは、相変わらずのポンコツ振りで我輩安心したぞ」

突然の声に反応が遅れた

 

「え、バニルさん。どうして?」

ウィズが驚くのも無理ない話である

人間の拠点である街には悪魔等を検知する結界があり、バニルクラスならば直ぐにバレる筈た

 

「む、結界の事か

何、紅魔族の職人の作品に『魔力を感知させない』ものがあってな。問題としては使用者の魔力行使を阻害する事か」

バニルは事も無げにいう

 

なお、バニルは嘘は言っていないが全てを語ってもいない

正確には『一定以上魔力を持つ者の魔力を感知させない』魔道具である。デメリットは『使用者の魔力行使を阻害する』であっている

 

が、少し考えて戴きたい

 

製作者は『紅魔族』である。つまりは紅魔族から見て『一定以上の魔力』なのである

 

そう、『紅魔族の一定』という基準以上だ

 

紅魔族は非常に高い魔力を有している

 

はっきり言ってしまうと

「え、そんな人外居ます?」レベルの魔力が基準なのだ

 

更にそんな魔力を持っているのに魔法を行使しない事は考えにくい

極論だが、紅魔族に魔法を使うな。というようなものである

 

 

 

 

これは酷い

 

 

これを作った職人によると

「作ったはいいが、どう使うのかは分からない」

と言っていた

その後に嫁さんにしばかれていたのは、割りとどうでもいいかも知れない

 

無論、バニル自身が購入したのではなく、ゆんゆんに購入してきて貰った

 

バニル自身が頼んでも叶わないのは分かっていたので、キャベツにお願いして貰った

 

流石は悪魔である

 

 

余談だが、紅魔族の職人の名前はひょいざぶろーといってゆんゆんのライバル、めぐみんの父親でもあったりする

 

ついでに『使うとテレポート出来るが、暫く魔法が使えなくなる』魔道具をゆんゆんはひょいざぶろーから押し付けられた

 

ひょいざぶろー曰く

「作ったのはいいが、気に入らない」

そうだ

 

 

 

 

おい、商売しろよ。と言いたくなる話だろう

 

 

ゆんゆんがその話をキャベツにした時に突っ込もうとしたが、目に光の無いゆんゆんを見て諦めたそうである

 

 

ゆんゆんからすれば、ひょいざぶろーのその拘りがめぐみんの家の家計を圧迫しているのは明らかだ

それにより、めぐみんから食事を学生時代に取られていたのだからなおのことだろう(実は勝負の代価だったり、商品だったりとゆんゆんにも落ち度はある)

 

 

 

 

「そうですか。それで何か御用ですか?」

色々と言いたい事はあるが、ウィズは飲み込んでバニルに訊ねた

 

「うむ。全く商売できぬポンコツ店主には勿体ない話であるな」

バニルは明らかに不本意そうだった

 

「はぁ」

 

「まあ、良かろう

手伝いを申し出たのは我輩である故

暇ならば手伝うが吉」

バニルは要件を言わずに協力を求めた

 

「流石に内容を聞かない事には、何とも言えないのですが」

ウィズは難色を示した

 

 

当たり前と言えば当たり前である

常識的に通る筈もない

 

相手がバニルでなければ

「ほぅ。そうか、それは悪かったな

最近食事を取っておらずに貧困に喘いでいると聞いた故に話を持ってきたが、要らぬ世話であったか」

バニルは踵を返して出ていこうとした

 

「ま、待って下さい!ど、どうしてそれを」

 

「やれやれ、少し会わぬ内にボケてきたか

まあ貴様もそれなりに歳を食っておるからな」

 

「だ、誰が年寄りですか!

私はまだ若いです」

 

「と言いつつも、最近訪ねてくる紅魔族の娘を見て、内心複雑な気分であろうに」

慌てるウィズに呆れるバニルだった

 

「わ、分かりました

でも、人間に何かをする訳ではないんですね?」

ウィズとして譲れない部分だった

 

「悪魔バニルの名に誓って無いと断言しよう」

 

 

 

 

 

この後何日か『ウィズ魔道具店』は臨時休業となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャベツの里にて

 

「バニルさん。これ、キャベツですよね」

ウィズは目の前にあるキャベツの群れに圧倒されていた

 

「他に何に見えるというのだ

だが、手を出すな。ロクな事にはならんぞ」

一応バニルは制止しておく

 

「は、はあ」

ウィズは戸惑うばかりだった

 

 

すると、ウィズとバニルの上からナニかが降ってきた

 

「いらっしゃい。バニルさん

無理を頼んで申し訳ないです」

 

「なに、我輩から協力すると言い出したのだ

気にするな」

上から降ってきた大きなキャベツとバニルは自然と会話していた

 

「え、え、え?」

ウィズは混乱した

 

 

ウィズもリッチーになる前には凄腕のアークウィザードとして冒険しており、それなりに知識や経験もある

 

だが、『会話するキャベツ』等と誰が想像出来ると云うのか。出来る人間がいたとすれば、明らかに『頭おかしい』人認定である

世間ではアクシズ教の信者や紅魔族がこれに当てはまるが、もしそんな人間がいたのなら、彼等ですら可愛くみえるだろう

 

 

 

「ふむ、ポンコツ店主は話が出来そうにないか

キャベツよ。これが我輩が言った心当たりだ

名前をウィズ。魔王軍のなんちゃって幹部で凄腕のアークウィザードだったリッチーよ」

 

「ありがとうございます、バニルさん」

バニルとキャベツはのんびりと話をしていた

 

 

 

「はじめまして、ウィズさん。貴女にお願いしたい事があります

お話だけでも聞いて頂けないでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

後にウィズは語る

「キャベツさん。ですか

面白い人ですね。友人は選んだ方が良いと思いますけど」

 

 

 

 

 






このファンでひょいざぶろーさんを見ましたが、割りとツボでした。ちぇけらの挨拶で爆笑しました

これは出すしかないと思っています


原作も動き始めたので、割りとこれからは大変ですが、のんびりやっていきますので生暖かい目で見守って頂けたなら幸いです



なお、キャベツのイメージは作者の中では木原くんです

御一読ありがとうございました


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スキル

キャベツの名前が決まりました

案をくださったディヴァ子様には感謝致します


今回も駄文ですが、読んでもらえると嬉しく思います


キャベツの里にてウィズは混乱の最中にあった

とりあえずキャベツと離れてバニルと話をしている

 

「えっと、あっちにいるのは」

 

「キャベツの大群であるな」

ウィズの問いかけにとりあえず答えるバニル

 

「で、彼方の方は?」

 

「ふむ。キャベツである」

バニルはさも当然の様に答える

 

「可笑しいですよね!何でキャベツなんですか!

既にキャベツは野菜の名称ですよね!

何でそのままの呼び名なんですか!」

ウィズは取り乱したようだ

 

「では、貴様が名前をつければよかろう」

 

「へ?」

バニルの発言にウィズが固まった

 

「最も、ポンコツ店主の貴様が出来るとは思えぬが」

 

「で、でも」

ウィズも流石に躊躇う。初対面の人物?に名前をつけるなど無茶苦茶である

 

「確かに我輩とて不便さを感じておらぬ訳ではなかったが、それをキャベツが受け入れているのだから、放っておいただけの事」

 

「それに異を唱えるならば、それもよかろう

が、行動や言動には責任が伴うのだ。吐いた唾は飲み込めぬであろう」

バニルはウィズに言い切った

 

『不満をいうならば、責任を持って最後までしろ』と

 

 

 

 

 

「えっと、お待たせしました」

 

「いえ、お手数をかけているのは此方ですから、お気になさらず」

ウィズは待たした事を詫びるが、逆に謝られた

 

 

「あの、何時までもキャベツのままだと不便だと思うんです」

ウィズは暫く躊躇ったが、切り出した

 

「そうですね。確かに不便だとは思うのですが、何分あまり気にしない性質でして」

キャベツは恥ずかしそうに言う

 

「でしたら、ミドリカワさん。ではどうですか?」

 

「ミドリカワ、ですか?」

ウィズの提案にキャベツは聞き返す

 

「はい。このキャベツの里でしたか。ここの川は少し緑がかっています

そこから取りました」

 

 

ウィズの言う通り、キャベツの里の川や湖はやや緑色に染まっていた

 

というのも、キャベツ達を漬けていた池から川を経由して湖に注いでいるからである

 

野菜などを長時間漬けていると色素が染み出る様なモノである

まして、キャベツ達は数にすると相当な数になる

そしてそれが1年以上継続して行われていたのだ

池や湖すらも染めるのには充分な時間といえた

 

 

「ミドリカワですか。では俺はキャベツの里のミドリカワですね。ウィズさん、ありがとうございます」

納得したのか、キャベツ改めミドリカワは嬉しそうだった

 

「ふむ、ならば改めてよろしく頼むとしよう、ミドリカワよ」

 

「では、ミドリカワさんよろしくお願いしますね」

 

 

 

こうしてキャベツの名前がミドリカワとなった

 

 

 

 

 

 

「実はウィズさんにお願いしたい事があって、バニルさんにお願いしたんです」

ミドリカワは用件を切り出した

 

「私で力になれるなら、構いませんが」

 

「このキャベツの里には宝石類があります。

大きな亀みたいなものが落としていきまして」

 

「亀、ですか?」

 

「ふむ、恐らくは『宝島』であろう

最近はめっきり見なくなったが」

ウィズは知らなかったがバニルは知っている様だった

 

「キャベ、いやミドリカワが言う通り、亀の一種でな、甲羅の部分に宝石類を有している。だが奴は邪魔に思っているのか、それを他の者に攻撃させて落として行くのだ

宝島の由来も宝石類を運んでくる事に因んでいるらしきがな」

とバニルは語る

 

「よく攻撃出来ましたね」

 

「ウチのキャベツ達や、上のあいつらがやってくれましたよ」

ミドリカワの台詞にウィズは上空を見ると、小さな影と大きな影が旋回していた

 

「とりあえず見に行きましょう」

ミドリカワは他の2人を先導した

 

 

 

 

「す、凄い」

 

「ほぅ。これは中々」

ウィズとバニルは思わず息をのんだ

 

 

何せ、1つの小屋位に宝石類が山と積んであったのだから

 

 

「これをウィズさんに売って欲しいんです

勿論、売上の半分はウィズさんに差し上げます」

ミドリカワは告げる

 

「む、ポンコツ店主に渡した処でロクな事にはならぬだろうが」

 

「バニルさんは確かダンジョンを作りたいんでしたね

お宝として幾らか持ち出して構いませんよ」

バニルの呟きにミドリカワは提案した

 

「むぅ、そこまで言われては反対も出来ぬか

では、幾らか貰っていくとしよう」

 

「でも、いいんですか?」

ウィズは訊ねた

 

これはミドリカワの物である。態々他人に渡すメリットは無いだろうとウィズは思う

 

「いや、こんなナリで買い物なんて出来ませんし、食事も要りませんから」

 

 

ミドリカワが言う通り、彼は食事も睡眠も不要である

必要なのは、日光と水分のみだ

そしてこの里にはどちらも充分にある

 

 

「唯、売上の半分でスキルポーションを買えるだけ買って欲しいんです

残りはその手間賃と言うことで」

 

「流石に多すぎるのですが」

 

「ならば、ミドリカワよ。スキルでどうか?」

ミドリカワの提案に尚も困惑するウィズだったが、バニルが助言した

 

「こやつはポンコツでも冒険者としては凄腕のアークウィザードだ。得るものはあろう」

 

「バニルさん。ありがとうございます

ウィズさん、俺の友達にスキルを教えて貰えませんか?」

バニルの助言を受けてミドリカワはウィズに頼み込んだ

 

「分かりました。それでも多すぎるのですが、お受けします」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後ウィズは王都に赴き、宝石類を全て売却した

 

量が多すぎたが、ウィズが凄腕のアークウィザードだったこともあり、問題視されなかった

 

その足でウィズは王都にてスキルポーションを買い漁った

 

その数実に十五本である

 

もう1つのミドリカワからの頼みをウィズは済ませた後、アクセルへと戻った

 

 

 

 

 

 

 

なお、キャベツの名前を決める際に居なかったゆんゆんが凄くいじけてしまい、ミドリカワは苦労した事は全くの余談である

 

 

 

 




と言うわけでウィズさんが合流となりました

と言ってもそうそう絡みが多くなる予定はありませんが


因みに宝島はネット小説版に登場します

では、御一読ありがとうございました


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IFルート紅と緑の魔法使い

ほんの少しだけ、『ずれた』世界のお話


今回は題名にある通りifのお話です

割りと救いのない話ですので、少しばかり今までとは違ったお話です

あらかじめ御承知の上でご覧下さい


キャベツの里にゆんゆんが来た。ウィズさんからアークウィザードのスキルを教わったらしい

 

冒険者として徐々にだが、

いろんな人とパーティーを組む様になって、あまりこちらに来れない事を謝ってきたが、俺としては友達が元気ならそれでいいのだ

 

ウィズさんから受け取ったスキルポーションをゆんゆんに渡したら、ゆんゆんはビックリしていた

 

 

「ほい、ゆんゆんあげる」

 

「え、こんなにスキルポーションが

だ、駄目ですよ。これはミドリカワさんが」

 

「キャベツにどうしろと」

 

 

まぁ、こんな感じでゆんゆんは渋ったが、無理矢理押し付けた

 

 

 

 

 

最近はベルディアさんもバニルさんも忙しいらしいから、元の生活に戻った様な感じになった

 

 

 

 

キャベツの里にいたキャベツ達は旅立って行った

 

最後に俺の周りをぐるぐる回っていたのは別れの挨拶だったのだろう

 

 

 

以前の様に小さな種キャベツも居ない

 

 

そのせいかジャイアントトードや一撃熊もいなくなった

 

 

空を飛んでいた鳥たちも次第に姿を消しているから、遠くない内にいなくなるだろう

 

 

 

恐らくはもうかつての様にキャベツ達で賑わう事も無いだろう

 

 

 

 

 

 

 

バニルさんとウィズさんが久しぶりに来た

 

2人とも浮かない顔をしていたが、俺を見て驚いていた

 

 

 

ベルディアさんが冒険者パーティーに倒されたらしい

 

人間達にとっては魔王軍の幹部だったんだろう

 

俺にとっては優しく、立派なヒトだったが

 

 

里の一角にバニルさんとウィズさんとでベルディアさんのお墓を作った

 

 

ウィズさんが頻りにどうにかならないのか聞いて来た

 

元々の身体がキャベツなのだ

寧ろ長生きしたと思う

 

バニルさんは何も言わなかった。でも寂しそうだった

 

 

バニルさんとウィズさんが帰る時にゆんゆんに伝言を頼んだ

 

あの娘の泣くところは見たくない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近は起きているのも、億劫になってきた

 

でも、まだ生きているから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィズさんの所でバニルさんが手伝いをしていると久しぶりに来た2人から聞いた

 

ゆんゆんは最近、王都でのクエスト等で活躍しているらしい

 

ウィズさんの所にはゆんゆんから手紙が来ているそうだ

 

「早くアクセルに帰ってキャベツの里で俺に逢いたい」

らしい

 

ゆんゆんらしいとは思うけども恐らくはもうゆんゆんには会えないと思う

 

ウィズさんは泣いていたし、バニルさんは仮面越しでも分かる位に無表情だった

 

俺は素敵な友人がいた事を再認識した

 

 

 

 

 

湖面に見える自分はボロボロで、茶色になっている

 

もう自分で飛ぶこともほとんど出来ない

 

今居るところは初めてゆんゆんと出逢った所だ

 

少し俺が入れる祠みたいなのをベルディアさんに作って貰っていたものだ

 

この祠の奥にはベルディアさんに代筆して貰った俺の遺書と最後の贈り物がある

 

 

 

 

 

 

ああ、こんなにも空は青い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんはミドリカワに会ってから少しずつクエストに誘われる様になっていった

 

ゆんゆんとしてはミドリカワに会いに行きたいが、冒険者としての生活を優先すべきと当のミドリカワに諭された

 

そうして、アクセルの街から王都に拠点を移す固定のパーティーに入った

 

パーティーに入った以上単独行動は難しくなるし、仮にキャベツの里を知られたら大変な事になりかねない

だからゆんゆんは会いたいのを我慢していた

 

その代わりにスキルを教えて貰ったアクセルのウィズに暇があれば様子を見に行って貰える様に頼んだ

 

ミドリカワは冒険の話をとても楽しそうに聞いてくれる。だから、ゆんゆんはしっかりクエストを受けていた

 

 

ある日、ウィズからの手紙でなるべく早くキャベツの里に行くように。との一文があった

 

日付を見ればもう一月も前のものだ

 

この世界ではそこまで物流がしっかりしておらず、管理体制も杜撰な為にそこまで珍しい事ではなかったから、ゆんゆんも気にしない事にした。

 

パーティーメンバーに話せば、暫く休みをくれるというので、ゆんゆんはキャベツの里に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんは我が目を疑った

 

あれだけキャベツ達で賑わっていたキャベツの里には何もいなかった

 

上空の鳥もいない

 

ゆんゆんは寒気を覚えて、いつもミドリカワがいる場所に向かった

 

 

 

誰もいない

 

 

ゆんゆんは半ばさけびながらミドリカワを探した

 

 

 

ある祠の前にウィズとバニルが立っていた

 

「ゆんゆんさん」

ウィズは泣いていた

 

「来たか、紅魔族の娘よ」

バニルは呟くような声で言った

 

ゆんゆんは嫌な予感がした

祠の中を見たくなかった

 

 

それでも見てしまう

 

 

 

 

そこには茶色でボロボロになったミドリカワだったものがあった

 

 

 

 

ゆんゆんは泣き叫んだ

 

どうして?どうしてミドリカワさんが?

 

 

 

 

 

 

 

気絶したゆんゆんを辛そうに見るウィズとバニル

 

「マクスウェルの仕業か」

バニルは呟く

 

『辻褄合わせのマクスウェル』

元アクセル領主アフダープに使われていた悪魔である

 

 

実はゆんゆんへの手紙と同じタイミングで王都へとアフダープの悪行を記した書類が送られており、マクスウェルの力により『なかった』事にされていた

 

マクスウェルの力の影響がなくなった為に王都へと配送されゆんゆんの元へと届いたのだ

 

 

『見通す悪魔』の能力を使えば何か出来たかも知れないが、アクセルには『忌々しい女神』と『それに近い』何かがいる

迂闊に能力を行使しようものなら、どちらかに捕捉されるのは間違いなかった

バニルだけならば、残機が減るだけだが、ウィズもリッチーである以上危険だった。『忌々しい女神』はカズマがどうにかできるが、もう1つの方が問題だった

『女神アクア』がいた以上『女神エリス』がいないとは言い切れない

そしてエリス教はアクシズ教より悪魔等に厳しい

最悪問答無用で始末される可能性は高かった

 

 

だが、ゆんゆんの状態を見るとバニルとてリスクを承知してでも能力を使うべきだったと後悔していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後目が覚めたゆんゆんは祠の中で見つけた手紙と贈り物を見て泣き崩れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんへ

 

 

 

多分これを見ているなら俺は死んだんだと思う

 

元々長生き出来るとは思っていなかった

 

この手紙も偶々ベルディアさんに体調の悪いところを見つかって書いて貰っている

 

多分、ゆんゆんは自分を責めているだろうけど、責めないで欲しいかな

 

俺は楽しかった

 

元々別の世界で死んでから此方に転生したらしい

 

だから、あまり気にしないで

 

 

後同封している物を最後に贈らせてもらう

 

最後に

 

 

 

 

ありがとう

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんは同封している物を見た

 

中央に高品質のマナタイトがあるネックレスだった

 

 

 

ゆんゆんは声を上げずに泣いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後年、偉大な魔法使いとして必ず名前が上がる人物がいた

 

『紅と緑の魔法使いゆんゆん』

彼女はある時から冒険者を辞め、辺境の森や湖を護り続けた

 

それと共に人間を襲わない魔族や魔物を保護した

 

理由を聞かれると「友達との思い出」を護りたいからと必ず答えたという

 

 

彼女は生涯独身であり、死ぬ間際に

「私、頑張りましたよ。いっぱい褒めて下さい」

と言い残し、安らかな表情で永眠した

 

死後は墓を建立される予定もあったが、生前から彼女の希望で里の一角にある祠に埋葬された

 

不思議な事にその祠はゆんゆん氏の移住前から存在していたと伝わる

 

 

 

 

余談ではあるが、彼女の葬儀には著名な人物が参列したとされる

『魔王を倒した英雄』サトウカズマ、その仲間でゆんゆん氏の親友でもあった『爆裂魔法の申し子』めぐみん、『守護騎士』ララティーナ、『氷の魔女』ウィズ等である

 

 

 

 

 




『とある人物』の協力を得れなかった場合、こうなります。というお話

誰も幸せになれない世界です



御一読ありがとうございました


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贈り物

ifの話を書いたなら、更新せざるをえない!

というわけで本編です

今さらながら独自設定多いですね


よろしければ読んで下さい


 

キャベツの里にて

ゆんゆんは少しだけ機嫌が悪かった。アクセルの街で知り合いのウィズからアークウィザードのスキルを教えて貰っていたにも関わらず、である

 

 

 

というのも、ゆんゆんの友達のキャベツがミドリカワと名前を改めた事が原因だった

キャベツ呼びでは不便だからとの理由だ

 

勿論、ゆんゆんもキャベツ呼びでは不便に感じていた

 

名前をかえるのに不満はない。でも、友達の自分に相談してくれても良かったのでは無いか?

 

 

そう思ってしまう自分が嫌だった

 

 

 

 

「おお、自分の友達の名前が自分の知らぬ所で決まってしまい、内心複雑な娘ではないか」

 

「おい、やめてやれ

貴様は一々煽らねば話が出来んのか!」

いつもの悪魔と変態かと、ゆんゆんは内心ため息をついた

 

 

ゆんゆんはバニルが嫌いではないが、苦手である

 

元々、コミュニケーションは若干不得意とするゆんゆんである。その内心を赤裸々に暴露されるのは、かなり堪える

 

だが、何よりもバニルを苦手とするのは、相手の我慢の限界を的確に見抜く事にある

 

 

バニル達悪魔は他者の悪感情を糧とする

言ってしまえば、からかう相手は食事の供給者である。この為に必要以上に相手を怒らすことは滅多にしない

 

もしも、相手が弄られたり、からかわれたりする事に快感を覚える上級の変態がいるならば、素敵な関係を築けるかもしれない

もっともそんな人物がいるはずもないが

 

 

ベルディアは下手に紳士的であったのが災いして、ウィズへの変態行為が分かってからは割りと辛辣な態度を取っていた

 

なお、被害者がウィズとスキルを教わる時に判明した。その後でウィズとは悪魔と変態の愚痴を言い合った事で仲良くなった

 

その時は

「バニルさんも悪いヒトでは無いのですが」

 

「でも、趣味が良いとは思えませんけど」

ウィズのフォローをゆんゆんは一刀両断したり

 

「そうですね。ベルディアさんはちょっと」

 

「元騎士だから、悪魔よりはマシですよね?

まぁ、変態ですけど」

ベルディアに苦手意識を持つウィズにはフォロー?をしたりしていた

 

 

 

 

「だが、ミドリカワと名前が出来た事は喜ぶべきことだろう?

ゆんゆん。経緯はどうあれ、貴様とてわかるだろう」

 

「ベルディアさんの言うことも分かってはいるんですが」

 

「ふむ、それで臍を曲げておるわけか

ミドリカワの奴は寂しそうであったが」

 

「バニル。慰めるならハッキリとそうしろ」

複雑な心境のゆんゆんを慰めるベルディアとバニル

 

なんだかんだ言っても彼等はミドリカワとゆんゆんを気に入っているのだ

 

悪魔のバニルは元々だが、元人間のベルディアは魔王に助けて貰ったとはいえ、やはり思うところはある

 

2人を見ていると、人間だった頃の優しい気持ちになれるベルディアだった

恐らくはウィズも同じ様に感じるだろう

 

だから、今の様にミドリカワから逃げたゆんゆんを放っておけなかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ミドリカワはアクセルから来たウィズと会っていた

 

「これが頼まれていたスキルポーションとネックレスです」

 

「ありがとうございます、ウィズさん

俺が言うのも何ですけど、ちゃんと食事は取ってくださいね」

ウィズから頼んでいた物を受け取ったミドリカワはお礼と共にそう言った

 

「あはは、善処します」

ウィズは苦笑いした

 

「では、お店がありますので失礼します」

 

「お手数おかけしました

また来てください」

 

ウィズはテレポートでアクセルへ戻った

 

 

 

 

 

なお、ミドリカワより言われたことが堪えたのか、教会から墓地のゴースト退治の依頼を受けている

 

それが後にある冒険者達と出会う事になるが、それは別の話である

 

 

 

 

 

 

 

ベルディアとバニルに話をしたゆんゆんはミドリカワと話をするために彼の元に戻った

 

「あ、ゆんゆん」

 

「ご、ごめんなさい」

声をかけるミドリカワにゆんゆんは謝った

 

「大丈夫だよ。ゆんゆんの気持ち嬉しかったし」

 

「でも」

それでもゆんゆんは申し訳なかった

 

「ああもう!

それよりさ、これ見てよ」

ミドリカワは自身の身体をどけて、隠していた物を見せた

 

「スキルポーション!どうしてこんなに

それに、これ」

ゆんゆんは驚いていた

 

 

スキルポーションはスキルポイントをレベルアップ以外で獲得出来る数少ないものだ

 

勿論それなりの値段がする

 

スキルポーションの隣には中央に石の嵌め込まれたネックレスもあった

 

魔道具等に詳しいゆんゆんには中央の石が高純度のマナタイトである事も分かった

 

 

 

「いや、まあ。ゆんゆんは冒険者だし、俺の初めての友達だから、何か出来ないかなって」

 

「ミドリカワさん」

照れているミドリカワに感激しているゆんゆん

 

 

暫く2人は何も話さずにいた

 

 

 

 

 

少し離れた場所では

 

「む、中々の羞恥の感情、悪くはない」

 

「まさか、ミドリカワが金策してゆんゆんに贈り物とは、やるではないか」

少し微妙な表情のバニルと感心しているベルディアがいた

 

「しかし、ベルディア。まさか2人を見守ろうと貴様が言うとは我輩、少し意外だが」

 

「なに、俺もヒトだった。それだけだ」

バニルの意外そうな指摘にベルディアは答えた

 

「む、一撃熊か。無粋な事だ」

魔眼にて一応警戒していたベルディアが少しばかり苛立った様に呟く

 

「全く、これだから中途半端に知能のある魔物は困る」

バニルも苛立っていた

 

 

なお、いつもは警告を発する鳥達も今回は警告をしなかった

 

「往くぞ」

 

「おう」

悪魔と死霊騎士は無粋な輩を始末するべく向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上空の鳥達視点(イメージ)

 

「お、何か喧嘩してるぞ」

 

「娘さんがどっか行った」

 

「別の女が来たぞ」

 

「二股、二股なのか」

 

「いかん、いかんぞそれは」

 

「え、何か置いてテレポートした」

 

「お、娘さんが帰ってきた」

 

「娘さんに渡してる、のか」

 

「娘さんがキャベツに抱きついた」

 

「エンダァァァー」

 

「熊が来たぞ」

 

「「「「何だと」」」」」

 

「熊野郎、マジ無粋」

 

「蛙も居やがる」

 

「遠い所の蛙から殺るぞ」

 

「「「「ブッコロ」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後

 

「えっと、ゆんゆん。離れてくれると」

 

「嫌です」

 

「でもこ「嫌です」」

キャベツに抱きついた少女の姿があったが、それを知るのは悪魔と死霊騎士。それに鳥達とブルータルアリゲーターのみだった

 

 

 

 

 

 

 

 

尚これを後から聞いた某リッチーは

「どうして、私を呼んでくれなかったんですか!」

と悪魔と死霊騎士に怒ったそうな

 




優しい世界


因みにこのあとゆんゆんはバニルにノリノリでからかわれた

御一読ありがとうございました


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紅魔族


とりあえず、走れそうなので投稿してみた

サブタイトルつけるのが、しんどい


いつもの様に駄文ですが、読んでいただけると嬉しく思います


 

 

 

ゆんゆんは今紅魔の里に帰って来ていた

 

魔王軍のシルビアが攻めて来て、名乗りをあげたぶっころりー達、紅魔族のニート軍団が中心となってボコボコにしている

 

平常運転である

 

実家にも顔を出してから、とある場所に向かった

 

 

 

 

ここは、紅魔族随一?の職人、ひょいざぶろーの家である

 

ゆんゆんにとってはライバルのめぐみんの家。のイメージが強いが

 

「こんにちは」

ゆんゆんが扉を開けて声をかけると、奥から幼い少女が出てくる

 

「あ、ボッチのお姉ちゃん」

 

「あはは、久しぶり。元気にしてた?こめっこちゃん?」

 

 

割りとナチュラルに人の気にする事を言っている幼女はこめっこ。めぐみんの妹であり、ひょいざぶろーの娘である

 

少し前のゆんゆんならば

「ボッチじゃないからぁ!」

と涙目になっていただろうが、今は確実に友達と言えるミドリカワがいる。ウィズもいる

なんだかんだと言っても話をするバニルとベルディアもいるのだ

 

ゆんゆんは割りと今の関係を楽しんでもいた

 

(あれっ?でもバニルさんとベルディアさんは魔王軍の幹部だよね。ウィズさんも

私の周りのヒト、魔王軍関係者多くない?)

 

等とたまに考えるが、ご愛嬌である

 

 

 

「はい、お土産

それでひょいざぶろーさんはいる?」

 

「うん!

おとーさん。ボッチのお姉ちゃんが来たよー!」

 

止めて下さい。幾らメンタルが強くなっても大声で言われるとゆんゆんには効きます

 

 

まぁ、この幼女はとある未来では姉のめぐみんが帰省した際

「おとーさん、おねーちゃんが男連れて帰ってきた!」

と発言した猛者なのだ

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだね。ゆんゆん君

君が物を買ってくれたお陰で妻からの視線が少し和らいだ。礼を言わせてくれ」

 

「いえ、私の知人に必要だったものでしたから。その節はありがとうございました」

ひょいざぶろーの礼にゆんゆんもお礼を返す

 

「すみません。それで頼んでいたものは、どうでしたか?」

 

「ああ、『魔力を使う事で対象の状態を維持する』魔道具なら出来ている

もっとも、人間には効果が無いのだが。よかったのかね?」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「それは良かった

にしても、素材を手に入れるのには相当苦労しただろうに」

 

「いえ、協力してくれるヒトがいましたから」

 

 

 

ゆんゆんは以前ひょいざぶろーより魔道具を買い付けた際に依頼していた事があった

 

友達のミドリカワはキャベツだ

本人も言っていたが、身体はキャベツの為に長生き出来ないだろう、と

 

そこでゆんゆんはそれをどうにか出来ないかバニルに『見て』貰った

 

そして、めぐみんの父親のひょいざぶろーならば可能性があることを告げられた為に魔道具の依頼をしていたのだ

バニルに支払った額とひょいざぶろーに支払った製作費用は決して安くはない

 

だが、ゆんゆんは躊躇わなかった。その為にソロでクエストを受けて資金を貯めた

その間はミドリカワに会えないのは辛かったが

大事な友達の為

 

いやこれはゆんゆんの我儘である。ミドリカワは死ぬことを受け入れている。だが、ゆんゆん には到底納得出来なかった

 

 

魔道具の材料には明らかに高難度のクエスト並みに調達の難しいものがあった。だが、ベルディアが助けてくれた

 

「死にゆく友人を助ける為に奮闘する貴様を助ける事に問題はないだろう

俺は死霊『騎士』ベルディア。騎士として、またミドリカワと貴様の友人として手伝わせてくれ」

と言われた時には変態であることを忘れそうになった程の衝撃を受けたが

 

思わぬベルディアの協力を受けた事で手早く材料を手にいれて、ひょいざぶろーに渡したのだ

 

 

 

「そうか。長は君の事を心配していたが、心配要らなかった様だ」

ひょいざぶろーはしみじみと言う

 

「本当に良いヒト達に恵まれました」

 

「うむ」

 

 

 

この後、無事に魔道具を受け取ったゆんゆんは暫くひょいざぶろーとめぐみんと事などを話した

 

 

 

 

 

 

ひょいざぶろーとの取引が終わったゆんゆんはテレポート屋に向かっていた

 

 

そのゆんゆんに声が掛かる

「おや、ゆんゆんじゃないか。帰って来ていたのかい」

ゆんゆんと同じようなローブに身を包んだ眼帯を着けた少女である

 

「あるえ。久しぶり」

ゆんゆんは嬉しそうにした

 

 

あるえはゆんゆんやめぐみんと紅魔族の魔法学校『レッドプリズン』の同期である

 

本人も語る様に同期で一番の発育を誇る美少女だった

 

 

「ああ。今はちょっと小説の内容に詰まっていてね。何かネタになるものはないかと思っていたんだが」

 

あるえは小説家志望であり、既に紅魔の里のガイドブック『エターナルガイド』を執筆している

紅魔族らしい書き口で里の紹介をしているのだが、ゆんゆんには少しばかり解りにくかった

 

 

「そうなの

大変ね。私だったらとても無理だと思うわ」

 

「そうでもないと思うけどね

そういえば、以前貰った手紙にあったキャベツさんは元気にしているかい?」

あるえは気になっていた事を聞いた

 

「キャベツさん?

ああ、今はミドリカワさんと呼んでいるけど、元気にしているわよ」

 

「・・・ゆんゆん、ちょっとまってくれるかい?

キャベツと言うのは名前では無いのかな?」

 

「えっと、信じられないと思うけどね『キャベツ』のミドリカワさんよ」

あるえの質問に衝撃的な答えを返すゆんゆん

 

(いや、待ってくれ。キャベツさんは名前でない?

ミドリカワと言うのが名前?

つまり、種族としてのキャベツ、なのか

いやいや。そんなわけないだろう。流石に小説家を目指す私にも想像がつかないのだが)

 

絶賛混乱中のあるえだった

 

 

「あるえ、もしよかったら会ってみる?

ただ、黙っていて欲しいけど」

あるえをみかねたのかゆんゆんはそう提案してきた

 

「良いのかな。流石に悪い気もするんだけど」

言葉では断りつつもあるえの眼は紅く染まっていた

 

「大丈夫よ。皆良いヒト達だし

今からでもいいかな?」

 

「時間なら幾らでもあるさ。とは言ってもぶっころりー達程ではないだろうがね」

 

 

あるえは内心?喜びながらゆんゆんに同行する事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫く後

 

 

「あれが、ミドリカワさんが守っているキャベツ達で、湖にいるのはブルータルアリゲーター。それに空を飛んでいるのは、何だったかしら?」

 

「ゆんゆん。待ってくれ。いや本当に

常識的だった君は何処へ行ったんだい!」

 

キャベツの里に同級生を招待して、色々と紹介するゆんゆんとひたすら困惑するあるえの姿があったとか

 

 





あるえは可愛い、が苦労人。ひょいざぶろーさんは素敵大人。な話

このファンであるえをレギュラーにしている私にあるえを出さない理由はなかった


御一読ありがとうございます

よろしければ一言でもいただけると有り難く思います

では次回で


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ゆんゆん

今回は外伝的な話なので何時もより更に短いです


それでもよければ、どうぞ


冒険者ゆんゆんについての評価

 

ギルド某職員

「アクセルに来られた当初からソロが多い人でしたね。けれど、アークウィザードだったのと紅魔族の方に珍しく協調性もありましたから、助っ人依頼もありました。ただ人付き合いが苦手な様な印象を受けましたね

 

最近は自分から以前組んだ事のあるパーティーの方と話をされていたり、助っ人として手伝う事も有るようでギルドとしても依頼成功率が上がって嬉しいですね」

 

中堅冒険者のパーティーリーダー

「ゆんゆんか。はじめは付き合いにくかったな

どう話しかければいいのか、わからなくてな

最近は話しやすくなったし、うちのパーティーメンバーとも上手くやってるから、出来ればパーティーに入って欲しいが」

 

ゆんゆんの泊まる宿の主人

「ゆんゆんちゃん?良い娘だよ

最初はおどおどしていて心配だったけど、最近は出かける時も帰ってきた時も笑顔だからね

お陰でゆんゆんちゃん目当ての食堂の客も増えてきてるし、本当にありがたいよ」

 

 

 

 

 

ギルドの食堂でめぐみんはゆんゆんの最近の評判を纏めてから

「え、だれですか?

同姓同名の別人ですか?」

と困惑した

 

 

めぐみんもようやくパーティーに加入出来て少しばかり余裕が出来た

 

だから、同郷のゆんゆんが気になって話をしようとしたのだが、アクセルにはあまりいないらしく会えなかった

 

仕方ないからゆんゆんの評判を聞いて回ったのだが、紅魔の里にいた頃のゆんゆんとは全く違う評判だった

 

 

「めぐみん。何かあったのか?」

困惑するめぐみんを見て話しかける金髪の美しい女性

 

「ああ、ダクネスでしたか。実は同郷の知人と最近会っていなかったので、色々と話を聞いて回ったのですが、私の知る知人とは全く異なる評価でしたので、少し混乱してしまって」

めぐみんは金髪の女性、ダクネスに答える

 

「そうなのか?

しかし、めぐみんの知人ということは紅魔族なのだろう。私が知っている紅魔族はゆんゆんという娘しか知らないが」

ダクネスは首を傾げる

 

「おや、知っていたのですか。そうですね、そのゆんゆんですよ」

 

「最近では冒険者の間でも特に評判が良いと、クリスが言っていたから知っているだけだが」

 

「そうですか」

 

 

「お前な!勝手にクエスト受けるなって言っただろうが!」

 

「なによ。ゾンビメイカーの討伐なんて、この『女神』アクア様なら余裕よ、余裕」

 

「そう言って、ジャイアントトードで失敗しただろうが!」

蒼い髪の女性と茶髪の男性が言い争いながら、めぐみんとダクネスの元にやって来た

 

「やれやれ。アクアもアクアだが、カズマも落ち着けばいいだろうに」

 

「そうですね。しかしゾンビメイカーでは我が爆裂魔法を撃つ機会はなさそうです」

ダクネスはため息をつき、めぐみんは自分の活躍の場がないことを嘆く

 

お金に余裕はないが、割りと楽しんでいるめぐみんの日常だった

 

 

 

 

 

 

 




あるえではないが、ゆんゆんと言えばめぐみん


そんな訳でめぐみん主体の話でした


因みに原作と少しだけイベントの順番が異なるのは仕様です

キャベツ捕獲クエストは少し後になります

では御一読ありがとうございました


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動きだす時

とりあえず、今回で日常回は一時ストップ

これからはシリアスが混じり始めます

相変わらずの駄文ですが、読んで下さると有り難く思います


紅魔の里でゆんゆんと再会したあるえは彼女が言うミドリカワさんに会うためにキャベツの里へ来ていた

 

「・・・・・・」

あるえには言葉もなかった

 

 

目の前にはキャベツの群れがあり、上空には鳥と共に明らかに鳥といえないサイズの影があった

 

加えて、傍の湖にはブルータルアリゲーターらしき姿も見える

 

紅魔の里から出ることのほとんどないあるえにはとても信じられない光景だった

 

いや、仮に里から出て魔王軍の偵察等といつも寝言を言っているぶっころりーでも見たことはないだろう

 

それくらい現実味のない光景だった

 

「あるえ、あっちに見えるのがミドリカワさんが守っているキャベツ達です。上にいるのが、鳥と鳥っぽいので、湖にいるのがブルータルアリゲーターです」

ゆんゆんが丁寧にあるえが理解を拒んでいた光景を説明する

 

「待ってくれないか

キャベツの群れは、まぁ分かる

上空の鳥らしき群れとブルータルアリゲーターの群れも納得は出来ないが、有り得なくもないのだろうさ

 

だが、何故それが共生しているんだい?

普通ならキャベツが食べられているだろうに!

というか、ミドリカワという人物は何者なんだ!」

いつもの冷静さ等放り捨てたかの様に捲し立てる

 

「何故と言われても、ここの普通ですから。としか言えませんけど」

ゆんゆんは首を傾げる

 

 

 

通常ならばあるえの主張が概ね正しい。が、あるえにとっては不幸な事に物事には『例外』があるものだ

 

そして『例外中の例外』にあるえはまだ出会っていない

 

 

 

 

 

あるえが何とか落ち着こうとしていると、あるえに影がさした

 

思わず見上げると黄緑色の物体が迫っていた

 

 

 

ドゴン! とそれなりの重量を思わせる音を響かせて『ソレ』は墜落した様に見えた

 

 

「あ、ゆんゆんいらっしゃい

お客さんかな?」

この声を聞くまでは

 

 

 

 

(へ、あ、いや、ちょっと待ってくれ。もうお腹いっぱいなんだが)

あるえは内心泣きそうになっていた。彼女の中のキャパシティを明らかに越えていた

ぶっちゃけ、overKILLである

 

 

 

頭を抱えたあるえを見て

「ゆんゆん、大丈夫かな。この娘」

と心配するミドリカワ

 

「あるえは小説家志望ですから、大丈夫だと思いますよ」

ゆんゆんは自分は直ぐに受け入れられたから、あるえも大丈夫だと本気で思っていた

 

 

 

第三者が見れば

「いや、アンタは悪魔召喚しようとしてたから!アンタも大概だからね!」

とツッコミが入りそうだが、残念ながらキャベツの里の関係者には自称常識人はいても、常識人はいなかった

 

何せ、キャベツを筆頭に紅魔族、悪魔、デュラハン、リッチと、見事にカオスな顔触れである

 

全く世界観は異なるが、某金ぴかの慢心王がいればさぞや爆笑しそうな話かも知れないレベルである

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くしてあるえが落ち着いたのを見て取ったのか

「あるえ、大丈夫?」

ゆんゆんは声をかけた

 

「ああ、未だ整理しきれてないがね」

あるえの笑みにも力がなかった

 

「そりゃ、一大事だ。ゆっくり休むことをお勧めするよ

、あるえさん

はじめまして、ミドリカワです。見ての通り、キャベツやってます」

 

「ああ、ゆんゆんの学生時代の同期、あるえだ

しかしキャベツやってます。とは聞けば正気を疑いそうな話だね」

ミドリカワの挨拶に力なく返すあるえだった

 

 

その後少しばかり3人で雑談した

 

 

 

 

 

 

 

そこに

「ふむ、久しぶりにあった友人からネタを仕入れようとして心底後悔している紅魔族の娘よ。悪い事は言わぬ。此処では固定観念を捨てる事をお薦めしよう」

 

特大の爆弾が降ってきた

 

 

 

 

 

 

 

「正直なところ、もう驚くだけの体力も余裕も無いよ。一体どうなっているんだい?

何時から私は小説の中に入っているのか」

遂にあるえは現実逃避を始めた

 

「何を言うかと思えば。確かに魔王軍の幹部である我輩を見ればそうもなろうが、まだデュラハンとリッチが残っているぞ」

バニルは呆れた

 

「・・・・・・・事実は小説より奇なり。とは謂うけどもまさか実際に体感するとは、ね」

あるえは諦めた様な口調で呟く

 

「まぁ、良くある話でしょ?」

 

「そんな話がぼろぼろ転がっていてたまるものか!」

ミドリカワのフォロー?にあるえがついにキレた

 

 

 

 

 

だが、初心者の街アクセルには『鬼畜?転生者』、『女神』、『爆裂狂』に『ドM』というキャベツの里もビックリなパーティーがいる。これを知らなかったことははたしてあるえにとって幸運だったのかは、誰にも分からない

 

 

 

「現実から逃げたとしても、結局は現実から逃れられんよ

それにこの里が可笑しいのは認めるが、貴様達紅魔族とて大差あるまい

アルカンレティアの『頭おかしい』アクシズ教徒もいるのだ。そこまで騒ぐことではなかろうに」

バニルはアドバイスをしてから呆れた

 

 

 

 

話に出たアクシズ教徒とは女神アクアを信仰する集団であり問題児の集まりである

 

この世界で最も信仰されているエリス教の教会へ妨害活動したり、本拠地アルカンレティア等での強引な勧誘活動と言った割りと洒落にならない事をしている

 

故に世間では、誰にも触らぬアクシズ教徒に祟りなし。と云われる始末

 

 

 

 

「ええっ、でもアクシズ教徒の方にも良い人はいますよ」

 

「「いや、それはない」」

ゆんゆんの抗議にバニルとあるえは声を揃えて否定した

 

 

日頃の評判って重要。そんな話

 

 

 

 

 

 

「何やら楽しそうだな

元気にしていたか、ミドリカワにゆんゆん」

ベルディアも来た

 

「さっき、そこの悪魔がデュラハンと言っていたからまさかとは思っていたが、此処は魔王軍の拠点かな?」

半ば諦めながらあるえはゆんゆんに聞いた

 

「そんなことない。ないですよね、ミドリカワさん」

 

「ナイナイ。つか、意味がないでしょ」

あるえに聞かれて自信が無くなったのか、不安そうにミドリカワにゆんゆんは訊ねるも、ミドリカワは全く動じていなかった

 

「うん?はじめましての者がいるようだな

我が名はベルディア。魔王軍の幹部をしているが、ここのミドリカワとゆんゆんとは友人だ。何かするつもりはないから安心しろ」

 

「我が名はあるえ。紅魔族随一の発育にして、やがて作家に至る者さ」

ベルディアの挨拶にあるえは紅魔族流の挨拶をした

 

「おお」

何やら感銘を受けたのか、ミドリカワの目が輝いているようにゆんゆんには見えた

 

「わ、我が名はゆんゆん!ミドリカワさんの友達で上級魔法を操るアークウィザードにして、やがて紅魔族の長となるもの!」

 

「おお。ゆんゆんカッコいい」

ミドリカワは興奮して跳び跳ねていた

 

 

 

「あるえとやらの挨拶で興奮していたミドリカワが気にいらなかった様だな」

 

「うむ、友達である自分を見て欲しい。少ないが、質の良い悪感情であるな」

ベルディアとバニルはゆんゆんに温かい視線を送る

 

「ふ、2人ともうるさいですよ!」

それに気付いたのか、ゆんゆんが声をあげる

 

 

「ふふ、ゆんゆんは良い友人を見つけたようだね」

 

「だね。ま、人外ばかりなのがどうかと思うけどね」

 

「他ならぬ君が言うのかい」

その光景を見てあるえはほっとする

 

 

 

紅魔の里にいたときのゆんゆんはボッチと言われていた。しかしあるえはそうは思わない。ゆんゆんは本当に良い娘なのだ

 

ただ、純粋すぎるところや素直すぎるところが空回りしがちな面が目立っていただけなのだ

 

本人は気付いていないだろうが、里から出ていったゆんゆんの話題は居なくなっても尽きる事はなかった

皆ゆんゆんをよく見ていたのだ

 

よく勘違いされがちだったが、ふにふらとどどんこもゆんゆんを心底心配していた。ただ表現が上手くなく、ゆんゆんの誤解もあって双方にとってよくない方向にいっていただけなのだ

 

 

 

 

「本当に良いヒトに巡り会えたんだね」

あるえは嬉しそうに微笑んだ

 

 

 

 

 

 

「実は少し気になる事があってな。暫く此方に来れそうにない」

場が収まったのを見てベルディアは用件を話す

 

「そうですか、寂しいですね」

ミドリカワは落ち込んでいる

 

「何、ただの調査だ。終わり次第暇になる

戦闘になる事もないだろう。心配するな」

 

「何かあったんですか?」

ミドリカワを慰めるベルディアにゆんゆんが訊ねる

 

「すまんな。流石に答えられん

一応は魔王軍の仕事だからな」

ベルディアは申し訳なさそうに謝る

 

 

 

ベルディアの言葉に嘘はない。ただ今回の仕事は『アクセルの街』の調査である

そこの冒険者であるゆんゆんには余計な負担をかけたくなかった

 

なんでも、少し前にアクセルの街の周辺から強い聖なる力が確認されたらしい

 

万が一にも『女神降臨』等があった場合、魔王軍の脅威となる

 

最近はミドリカワ達『転生者』も以前に比べて確認されないが、王都方面では『魔剣の勇者』なる者も確認されている

 

念には念を。そういう事だろう。目下動ける幹部はベルディアとバニル。それ以外ならばデッドリーポイズンスライムのハンス位だろう

 

スライムのハンスに調査依頼は適任に見える。が、明らかに民に被害が出るだろう。だからベルディアが魔王に掛け合って代わりに命を受けた

 

 

 

実のところベルディアは彼等に価値を見出だしていない

確かに『転生者』は力を持つ者が多い。それは膂力だったり、魔力だったり武器だったりする。成る程、脅威となるかもしれない。だが総じて彼等は『未熟』なのだ。まるで与えられた力に振り回されているかの様に

 

ベルディアは生前、騎士にまで実力でのしあがった人間だ

当然死を覚悟するような死闘も経験している

 

だが、彼等にはそれがない。格下や自分の土俵では強いが、それ以外になると途端に狼狽、困惑、果ては恐怖する

 

力を使いこなせていないのだ。まるで誰かに対価なく与えられたものであるかの様に

 

だからベルディアは大半の転生者には興味ない

 

だが、抗おう、闘おうとする者には敬意を払うのだ

彼がミドリカワやゆんゆんを気に入っているのは『ソコ』なのだ

 

ミドリカワは戦える身体でないにも関わらず、外敵からキャベツ達を守った。ゆんゆんは勘違いとはいえ、魔王軍幹部2人を前にしてもミドリカワを護ろうとした

 

 

 

どちらもベルディアの目指した騎士の理想、そのものだった

 

 

 

 

 

目の前ではゆんゆんがあるえにからかわれて、ミドリカワが仲裁している。バニルは少し離れて口端をあげて見守っていた

 

 

 

ベルディアは誓う。喩えアンデッドを堕ちたとしても目の前の光景だけは命ある限り、護ろう。と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日より暫く後アクセルの街に魔王軍幹部ベルディアが現れる事となる

 

 




あるえ、本格参戦!

キャベツの里は魔境?

ベルディア動く!

でした。これから暫くはベルディアがメインになる予定です

というか、ミドリカワメインだとほのぼのしか書けない気がしないでもない


では、御一読ありがとうございました

次回もよろしく(ボソッ)


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前哨戦

さあ、シリアスタイムです

少しばかりめぐみんとカズマを非難する内容なので御注意を

タグは早急に追加します

それでも、読んだるわ!という方はお付き合い下さい


 

 

 

ベルディアは魔王軍の幹部の中では温厚な部類に入る

 

 

 

スライムのハンスは論外、キメラのシルビアも煽られると多分、無理だろう

 

バニルは煽る側、温厚とかそういうレベルではない

 

ウィズ?怒らすとガチで怖い

 

 

 

そんなベルディアが真面目にキレそうになっていた

 

 

 

 

 

 

所変わってキャベツの里

 

「それは、酷い」

ミドリカワはベルディアから聞いた話を聞き終えて、思わず溢した

 

「だろう、そうだろう。何考えているのか分からんし、人間辞めてからそれなりに時間が経つから常識がかわったのかと思ったが」

 

「それは、ない」

ミドリカワの同意を受けてベルディアは自身の不安を話すとミドリカワに一刀両断された

 

「というか、随分と寂しくなったものだな」

ベルディアは周りを見渡して呟く

 

「だね。また、暫くは憂鬱な日々になりそうだよ」

ミドリカワも寂しそうに言う

 

 

現在のキャベツの里には沢山居たキャベツの姿はなかった

 

恐らくは最期を悟って出ていったのだろう。

 

 

 

 

余談になるが、魔王軍の幹部が近くの廃城に居るにも関わらずキャベツがアクセルに到来した事をギルド職員は不思議に思っていた

 

が、冒険者達はクエスト不足の中の臨時収入イベントに沸き立った

 

なお、一番張り切っていたのは蒼い髪をしたアークプリーストであり、パーティーリーダーの冒険者に怒られていたが

 

 

ギルド職員は知る由も無いが、キャベツ達にはベルディアは見知った顔であり、警戒する必要がなかった為にこのような事態となった

 

 

 

 

 

 

「まぁ、キャベツの種(小粒のキャベツ達)をのんびり育てるさ」

ミドリカワは気を取り直していった

 

「そうか」

 

「行くの?」

 

「ああ」

簡潔な遣り取りだったが、それで良かった

 

「気を付けて。なんて可笑しな話だけど」

 

「いや、その言葉だけで充分だ。また会おう」

ベルディアはそう言い残すとキャベツの里を去った

 

 

 

 

 

 

「本当に、儘ならないよな」

ミドリカワは呟いた

 

彼には解ってしまった

ベルディアは帰ってこれないことを覚悟している事を

 

 

「異世界かぁ

本当に、儘ならない」

寂しそうなミドリカワの呟きだけが残った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセルの街ではキャベツ収穫イベントで皆の気分が緩んでいた

 

しかし

「緊急警報、緊急警報。冒険者の皆さんは大至急アクセルの南門前に集合して下さい!」

ギルド職員の悲鳴にも似た放送で破られた

 

 

 

南門前

 

アクセルの街の周辺にはアンデットナイトの大軍とベルディアがいた

 

「我が名は魔王軍幹部、『デュラハン』の『ベルディア』我が拠点への先制攻撃、見事だった」

ベルディアが名乗りを上げると

 

「ベルディア?」

 

「何だってそんな大物が」

 

「先制攻撃って何の事だ」

 

冒険者達はざわめいた

 

そんな中から

「僕は『魔剣の勇者』ミツルギ!

魔王軍の幹部ベルディアが何の用だ!」

と1人の青年が前に出た

 

「ミツルギさんだ!」

 

「勇者ミツルギ」

 

「これで勝てる!」

 

「勝ったな、ガハハ」

 

 

「ほぅ、貴様が『魔剣の勇者』とやらか。貴様に用はない。爆裂魔法の遣い手がいる筈だ。その者に用がある」

まるでミツルギに興味が無い。と言わんばかりにベルディアは対応した

 

「なっ、ミツルギはあんたなんかにまけないわよ!」

 

「そうよ。ミツルギなら直ぐにあんた位倒せるのよ!」

ミツルギのパーティーメンバーと思われる女2人は喚いた

 

「ほう、ならば暇潰しに相手をしてやろう

予め言っておくが、王都付近のアンデット達と俺が一緒だと思うなよ

さあ、ミツルギとやら。掛かってこい、死ぬ覚悟が出来たのならば、な」

ベルディアはミツルギに忠告した後に挑発した

 

「いくぞっ!」

ミツルギは斬りかかった

 

 

 

 

それから五分程経っただろう

ミツルギは只管に攻撃するも当たらず、ベルディアは一切反撃しなかった

 

(そんな!この『魔剣グラム』なら当たれば勝てる筈なのに!あたらない!)

ミツルギは焦っていた

 

 

 

戦いを見守る冒険者達は絶句していた

あの勇者ミツルギが手も足も出ないのだから

 

 

「いい加減飽きたな

然程に期待していなかったが、この程度か」

ベルディアは初めて剣を一閃した

 

「うぐっ!」

ミツルギは咄嗟に剣を盾にしたが、冒険者の方まで後退した

 

「全くの期待外れだな。言っておいてやろう、貴様程度で倒せる魔王軍幹部などおらん

諦めて、王都で雑魚掃除をしながら勇者とでも持て囃されておけ」

ベルディアは宣告した

 

「な、なによ!」

 

「私達だっているんだから!」

ミツルギのパーティーの2人は騒ぐが

 

 

「たかが、前衛職1人に後衛職1人。しかもそこの勇者に守られているだけの小娘2人がよくも言えたものだ

よかろう。死にたいならば、楽にしてやろう」

ベルディアは2人に斬りかかろうとした

 

 

「待って下さい!」

1人のローブと独特な三角帽子をつけた少女が前に出てきた

 

「ふん。漸くお出ましか

逃げたかと思っていたが、それなりに気骨はある様だな」

ベルディアが楽しそうに笑う

 

「我が名はめぐみん!紅魔族のアークウィザードにして、爆裂魔法を操る者!」

 

「成る程な。紅魔族ならばあの馬鹿げた威力にも納得がいく

で、我が拠点への攻撃はどういった意図があったのだ?よもや知らなかった等ですまされる話ではないぞ?」

めぐみんの名乗りを聞いてめぐみんの真意を尋ねた。

 

『詰まらない理由ならば只ではすまさん』との意味を込めて

 

別にベルディアとしては最初は怒っていたが、今となってはどうでも良い

 

 

だが、看過できないのは彼女のいるアクセルの街は『初心者冒険者』が集まる街だ。もしも魔王軍幹部を怒らせて攻撃されたならば、首尾良く撃退出来たとしても甚大な被害が出るだろう

 

その被害を考えているなら、よし。考えていないならば、少しは灸をすえてやらねばならない。そうでなければ何時か取り返しのつかない失敗に繋がるから

 

「それは」

めぐみんが口ごもる

 

 

 

「めぐみん!お前、何先に行っているんだ!

待てって言ったろう!」

 

「カズマ」

めぐみんに声をかけた冒険者、カズマとやらはどうやら彼女のパーティーメンバーらしい

 

「其処の冒険者よ。カズマとかいったな?

貴様はこの娘の行動を知って放置していたのか?」

 

「・・・・ああ。一緒にいた。今考えれば軽率だったと思うよ」

ベルディアの追及にカズマは後悔している様な表情をしていた

 

「分かったなら、次はしない事だ。貴様達冒険者は周りの力を借りて戦えるのだ

みすみすそれを捨てる必要はあるまい」

ベルディアは分かりにくいが微笑んでいた

 

(さっき我武者羅に突っ込んできたミツルギとやらより余程見所がありそうな男だ)

 

 

普通の冒険者なら魔王軍の幹部の目の前にわざわざ来ないだろう。カズマは実力に自信があるように見えない。多分、自分の責任も自覚しているだろうが、中々出来るものでは無いし、敵である自分の意見も真摯に受けとる事が出来るのだから

 

 

 

「その姿勢に免じて、今日の所は引いてやろう」

ベルディアが踵を返そうとした時

 

 

「めぐみん!カズマ!無事か!」

 

「うわ、アンデットだらけなんですけど」

2つの新しい声がした

 

 

 

 

 

 

カズマは後悔していた。仲間のめぐみんと爆裂散歩をしたことでは無い。事前に確認を怠った事だ

 

今、めぐみんを庇ってベルディアという魔王軍の幹部に相対しているが、はっきり言って逃げ出したい

 

でも、後ろのめぐみんは顔面蒼白で震えているのだ。護れるのは自分だけだと何とか気合いで持ちこたえる

 

幸いというべきか、相手は話こそするが、攻撃の意思はないように見える。油断は出来ないが

 

其処にダクネスとアクアが来た。相手も見逃してくれそうだったから、油断した

 

 

 

 

「・・・・残念だ。カズマとめぐみんとやら。貴様達を見逃す理由が無くなった」

ベルディアが宣告した

 

 

 

 

 

 

 

 

空気が変わった

 

 

この場にいる冒険者全てがそう感じた。今までは魔王軍の幹部と言っても話が出来る程度の余裕みたいなモノが少しはあった

 

だが、皆は感じている

『油断したら死ぬ』と

 

 

 

 

「カズマとやら。俺は貴様を素直に評価している。実力差を理解しながらも、そこのめぐみんという娘の為に体を張って護ろうとする貴様をな

そこの金髪の女よ。餞として名乗って逝くがよい」

 

「私はダクネス。クルセイダーだ

私がいる限り、仲間には手を出させん」

 

「見事な気迫よ。ダクネスか、覚えておこう」

 

「くらいなさい!『ターン・アンデット!』」

 

ベルディアがダクネスと話をしている最中にアクアが仕掛けた

 

「ぐっ!成る程な。流石というべきか

アンデットナイト達よ、他の冒険者を抑えよ!」

 

「嘘!効いてない」

アクアの一撃に耐えたベルディアはアンデットナイト達に指示を与えた

 

「生憎だが、俺にも譲れぬもの、護りたいものがあるのでな!」

ベルディアは即座にアクアに斬りかかる

 

「アクア!下がれ!」

 

「カズマ!まかせろ!」

カズマの指示でアクアは下がり、ダクネスがアクアの前に出た

 

「フフ。どうやら楽には勝たせて貰えんか

だが、このベルディア!簡単に破れると思うな!」

 

「来るぞ!」

ベルディアとカズマの叫びが響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いは始まった

 

 

 




当作品でのベルディアさんは騎士、紳士度マシマシとなっております。後れ馳せながら御注意ください

では、御一読ありがとうございました


また次回もよろしくお願いいたします


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サトウカズマ

とりあえずベルディア戦、中盤でした

上手く書けたか疑問ですが


アクセルのすぐ傍で行われている戦いの戦場は2つ

 

カズマ達とベルディア。ミツルギ達アクセルの冒険者とアンデットナイト達である

 

 

 

 

ミツルギ達アクセルの冒険者達はアンデットナイトの連携を崩せずに苦戦していた

 

間の悪い事にアクセルの街で有名な高レベル冒険者のウィズは商品の仕入れに、ゆんゆんは何処かに出かけており不在であった

 

それでもミツルギをアタッカーに据えて戦えばどうにかなると思っていた冒険者達はベルディアの覚悟を甘く見ていた

 

 

ベルディアは拠点への爆裂魔法での攻撃を察知すると、単身魔王城に赴き、魔王へとアンデットナイト用の装備の追加を要請した

 

此れにより、攻撃特化型の槍や剣、弓を持つアンデットナイト。防御特化型の盾持ちのアンデットナイト。そしてどちらにも劣るモノの双方の特性を備えた短槍や短弓、ダガーと小盾を持つアンデットナイトに追加し編成した

 

更に、各特性持ちのアンデットナイト1体を指揮官とし、その下に分隊長クラスを配置。正にアンデット騎士団といえる集団に仕上げた

 

勿論、アンデットナイトは骸骨なのでそこまで難しい思考は出来ない。が、魔王直々に各指揮官と分隊長は強化されており、冒険者達には予想外の連携を見せる事になる

 

特に王都の戦線でアンデットナイトと対峙した事のあるミツルギには効果的であり、ミツルギが不調になることで冒険者自体の火力も減少していた

 

 

だから、膠着状態となっていた

 

 

 

 

 

 

 

一方のカズマ達とベルディアは

 

「『セイクリッド・ターン・アンデット!』」

 

「効かぬわ!」

 

「アクア、撃ったら下がれ!

ダクネス、大丈夫か?」

浄化魔法を使用するアクアだが、然したる効果が出ず、カズマの指揮で辛うじて均衡を保っている有り様だ

 

「カズマ、まだいけるぞ」

 

「何で効かないのよ!」

 

「ダクネス、悪いがお前が命綱だ。頑張ってくれ

アクア!めげずに何度も繰り返せ!

全く効果が無いわけじゃないはずだ!」

ダクネスを気遣い、アクアには檄をとばしながら必死に考える

 

(くっそ!何だよ!アクアにはああいったが、効いてないのか!

どんだけ対策してんだよ!此方は初心者の街の冒険者だぞ!)

内心では悪態をつきながらもカズマは必死に指示を出す

 

「カズマ。やはり私が」

 

「馬鹿な事言うな!

そんな事させるかよ!」

 

 

めぐみんは1つカズマに提案した。自分が斬られたらどうか、と

切欠はめぐみんが作った。だからベルディアもそれで退くのではないか?

 

カズマは絶対に認めない。幾ら厳しいからと仲間を犠牲にするなんて事は

 

 

 

 

 

 

サトウカズマは日本で死んでから、転生した

 

日本ではいわゆる引きこもりだった

 

当然友人は離れていったし、家族との距離も離れていった

 

 

だからこそ仲間を見捨てるなんて出来る筈もない

 

もしかしたら、仲間を見捨てないといけない場面があって見捨てることで『英雄』になれるとしてもサトウカズマはそれを選ばない

 

どれだけ見苦しくもがいても、足掻いても仲間達と一緒にいたいのだ

いつもは軽口や悪態をついても、仲間を疑う事と見捨てる事は絶対にしない

 

誰にも言わないサトウカズマの誓いだった

 

 

 

カズマは知らない。決して諦めない。前に進もうと先頭に立つものを人は『勇敢なる者』、『勇者』と呼ぶ事を

 

 

 

ベルディアはカズマ達と戦いながら

 

(見事なものだ。荒削りながらも、光るものを全員持っている。もしも、もし仮に彼奴等といたならば戦わない未来もあったのかもな)

 

だが、今のベルディアは『魔王軍の幹部』だ

容赦は出来ない

 

 

 

ベルディアの胸がチクリと痛んだ

 

 

 

 

 

一向に変化しない。いや、ダクネスとアクアの消耗分だけカズマ達は不利になっていく

 

 

 

 

「どうやら、ダクネスとやら貴様を相手にしていては埒があかぬ様だな

戦士として、元騎士として、そしてヒトとして敬意を表するとしよう」

ベルディアはダクネスに語りかける

 

ダクネスは既に持っている剣も中程から折れ、鎧もあちこちが欠けていた

「魔王軍の幹部から褒められるとは、光栄だ

だが、例え剣が砕け、鎧を失おうとも私は貴様を止める」

ダクネスは悲壮とも言える覚悟を口にした

 

「そうだろうな。剣を交えれば多少は分かる

おそらく死ぬ瞬間まで護ろうとするのだろうな」

ベルディアは切なそうに語る

 

「だから、貴様達の中心を殺らせてもらおう!」

ベルディアはカズマに斬りかかった

 

「カズマ!」

 

「嘘っ!カズマ逃げなさい!」

悲鳴をあげるダクネスとアクア

 

丁度アクアが障害となってカズマには届かない。速度ではベルディアに軍配が上がるため、仮にアクアが居なくともダクネスでは間に合わない

 

「カズマ!逃げて下さい!お願いです!」

めぐみんは泣きながら叫ぶ

 

だが、カズマは間に合わないと思い、せめて後ろのめぐみんだけは護ろうとした

 

「この状況でも、仲間を思うか!

敵ながら見事!さらばだ『勇者』カズマよ!」

ベルディアは叫びながら大剣を振り下ろす

 

 

「「「カズマァッ!」」」

 

 

 

 

三人の悲鳴が響き渡った

 

 




切ります


ぶっちゃけ、この後のプロットは出来ていますが、書くのが辛い事になりそうです


今日の深夜か明日にでも更新します

御一読ありがとうございました

よろしければ次回もお付き合い下さい


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逝くものと遺されるモノ

書けてしまったのだから、仕方ない。投稿しましょ、そうしましょ

前言を翻した事を深く、深くお詫び申し上げます(土下座)

もう、投稿予定は言わない様にします

と言うわけでベルディア戦ラストです

よろしければ読んで下さい


少しばかり時間は遡り、ベルディアがアクセルに到着する少し前の事

 

 

ゆんゆんはまた紅魔の里に来ていた

 

今回ひょいざぶろーにあるえ経由でお願いしたものを取りに来たのだ

 

本来ならば依頼主のゆんゆんが直接赴くのが筋ではあったが、明らかに素材が稀少なものばかりの為にあるえに頼んだのだ

 

今回ばかりはゆんゆん1人では間違いなく手に余るのは確定していた。その為にウィズとバニルにも協力を求めた

 

ウィズは快諾したが、案の定、バニルは協力を渋った

 

最終的にゆんゆんが土下座しようとしてバニルが折れた形となった

 

 

ゆんゆんとウィズにバニルを加えた3人を以てしても素材集めは難航し、ひょいざぶろーに届けた際には

「まさか、生きている内にコイツを拝めるとは」

と絶句させる程だった

 

 

其れが完成したと連絡を受けてゆんゆんは急いで取りに向かった

 

 

ただし、それを見送るウィズとバニルの痛ましそうな顔を見なかった事を、ゆんゆんはずっと後悔する事になる

 

 

 

 

ひょいざぶろーとの話をそこそこに切り上げ、ゆんゆんがアクセルに着いたときには既にベルディアとカズマ達が戦っていた

 

ベルディアがアクセルに来たことを知り合いから聞いてショックを受けたゆんゆんだったが、覚悟を決めて戦場へと向かった

 

 

 

 

戦場は2つあったが、ゆんゆんは迷いなくベルディアの方へ向かった

 

念のためにライト・オブ・セイバーの詠唱を終わらせて発動を待機させたまま

 

 

 

そして

 

「「「カズマァッ!」」」

と声が聞こえた瞬間、ベルディアに向けて魔法を放った

 

「セイバー!」

 

 

 

 

カズマは死んだと目を瞑ったが、金属音が鳴り響いた為に目を開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

めぐみんはまだ涙の止まらない目でカズマの無事を確認した

 

だが、ダクネスやアクアでは間に合わない。カズマも死を覚悟していたのに、誰が助けたのだろうか

 

 

 

 

ベルディアは動きを止めていた

 

その向こうに見馴れた姿があった

 

 

「ゆんゆん」

めぐみんはそれだけ呟いた

 

 

 

 

 

 

ベルディアはカズマを仕留めたと思っていた

 

自らの大剣を弾かれた時は頭の中が真っ白になった

 

 

そして、出来れば来ないで欲しかった。会いたくなかった友人の姿を見た

 

「そうか。これも運命か」

ベルディアは誰にも聞こえない位、力ない声で呟いた

 

 

 

 

 

「馬鹿者!何故逃げなかった!」

 

「そうよ!何で逃げなかったの!

もう死んだら終わりなのよ!次なんてないの!」

 

「カズマ!生きているんですね、本当に生きているんですね!嘘じゃありませんよね!」

 

カズマはダクネス、アクアにめぐみんから詰め寄られていた

 

「大丈夫だから、まずはベルディアをどうにかしようぜ」

カズマがおどけてみせると

 

「カズマ!お前という奴は

良かった。本当に」

 

「あんたが死んだらどうすんのよ。もっと自分を大切にしなさいよ!

あんたが死んだのも、元は自分を大切にしなかったからでしょう!

遺される方の事も考えなさいよ!」

 

「ごめんなさい、カズマ。私が、わた、私が」

ダクネスは泣き崩れ、アクアもカズマに掴みかかっていたが、泣き崩れた。めぐみんはカズマの足にすがり付いて泣いている

 

 

 

 

 

「仲間、か」

カズマ達を見つめながら、ベルディアは呟く

 

 

ベルディアにも騎士だった頃には仲間がいた

 

モンスターを討伐しては笑い合い、騎士団長に怒られれば仕返しをしてまた怒られる。同僚が結婚すれば祝い、死んだ同僚の為に皆で供養した

 

アンデットになってからは感情を忘れそうになった事は一度や二度ではなかった

 

ギリギリの所で踏み留まっていたが、何時それが壊れるのかを怖れていた

 

 

キャベツの里で過ごしていくうちに忘れそうになったモノを少しずつ取り戻していった

 

魔王にも

「アクセルの件。忘れても誰にも責めさせぬ」

と言って貰った

 

 

 

だが、それでも

俺(私)は騎士なのだ

 

仕える者に命を惜しまずについていく

 

ベルディアは友人に剣を向けた

 

 

 

 

ゆんゆんにもベルディアの考えが少しばかり伝わったのか、ワンドを構えた

「我が名はゆんゆん!紅魔族の長の娘にして、友達を護り抜くもの!」

ゆんゆんの声は震えていたが、はっきり言い切った

 

 

「我が名はベルディア!魔王軍の幹部にして、未来に種を遺すもの!

いくぞ!紅魔族の娘よ!」

 

強くなった。素直にそう思う。少し前のゆんゆんならおそらくは立ち向かえなかっただろう。だが、今の彼女は心にぶれない芯がある

 

遺されるミドリカワが心残りではあるが、ゆんゆんがいる限り、心配ないと今確信した

 

ならば、この身に出来る事は1つだけ。ベルディアは遺すモノを定めた

 

 

 

 

ゆんゆんは距離を取りつつ上級魔法を放つ

 

ベルディアには効果がないように見えるが、既にベルディアの鎧に隠されている体の半分以上が機能を失っている

 

今は何とか魔力で無理矢理動かしている有り様だった

 

 

 

拮抗状態は長く続かなかった

ベルディアが体勢を崩した所にゆんゆんのカースド・ライトニングが直撃して、ベルディアはついに倒れた

 

 

ゆんゆんは泣きながらも堪えて戦ったのだ

 

 

 

 

「敗けたか」

ベルディアの声には明るささえ含んでいた

 

「ベル、ディア、さん」

ゆんゆんは喋るのも限界のようだった

 

「全く、ゆんゆん。貴様は勝ったのだぞ

もっと誇らしくしたらどうだ?」

 

「む、無理で、す」

泣き止む様子のないゆんゆんだったが

 

「あ、あのこ、これなら助かるかも」

ひょいざぶろーより受け取った魔道具を差し出した

 

「気持ちは嬉しいが、ゆんゆん。俺には効果がない」

 

「え」

 

「それは元有る命に効果のある魔道具だろう?

命のないアンデットである俺には、な」

ゆんゆんの差し出した魔道具をベルディアは断った

 

「そ、そんなの」

 

「お前のその優しさだけで俺は十分だ

これ以上は俺には重すぎる」

ベルディアの体が光の粒子となり始める

 

「べ、ベル、ディアさん」

 

「ミドリカワと仲良くな

あっちから見守っているから」

 

「まさか、こんなに清々しい気持ちで最期を迎えられるとはな。全くわからんものだ

随分と待たせたかも知れん。みな、やっと会える」

その言葉を最後に魔王軍幹部ベルディアは消滅した

 

 

『我が友ゆんゆんのこれからに幸あらん事を』

 

 

ベルディアの声がゆんゆんには聞こえた気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルディア討伐は成功した

 

 

 

相当数の怪我人は出たが、死者はなし

 

ベルディアの消滅に伴いアンデットナイトも消滅した

 

アクセルの街の人々は冒険者達の功績を讃え、冒険者達はベルディアに立ち向かったカズマ、アクア、めぐみん、ダクネスそしてベルディアを討伐したゆんゆんを盛大に祝った

 

 

宴会は三日三晩続き、アクセルの街から灯が消える事はなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルディアが討伐された場所より少し離れた場所に2つの影があった

 

「ベルディアさん」

1つの影はウィズ。アクセルの街では魔道具店を営む傍ら魔王軍の幹部も勤めている

 

ウィズはベルディアが嫌いではないが、苦手だった。が、それでもキャベツの里等での付き合いがあり、騎士としての誇りを持つ彼の事を見直していた

それだけにやはりショックを受けていた

 

 

 

「ふん。格好つけおって。魔王自ら逃げ道を用意したというのに」

もう1つの影はバニル。ウィズと同じく魔王軍の幹部であり、魔王にも直言できる数少ない人物だ

 

今回の魔王からの逃げ道もバニルからの報告があったからこそである

 

悪魔は消滅しない。残機が減るだけだ

 

 

 

 

だがら少しだけ満足に逝けたベルディアが羨ましく思えた

 

 

 

 

 

 

 

その後の事を少し語ろう

 

 

友人であるベルディアを討伐せざるを得なかったゆんゆんは体調不良を名分に宴会を途中で抜けた

 

「そっか。ベルディアさん、逝ったのか」

ゆんゆんから話を聞いたミドリカワは悲しそうであった

 

「でも、ゆんゆんは思い詰めないで

ベルディアさんもそれは望んでないと思うよ」

ミドリカワは続けた

 

「どうして、そう思うんですか?」

ミドリカワの隣で膝を抱えて俯いているゆんゆんは気になった

 

「俺は、さ。ベルディアさんの最期を看取った訳でも、二人の戦いを見ていた訳でもない」

 

「・・・はい」

 

「ベルディアさん、最期どんな顔をしてた?」

 

「あ」

 

ベルディアは消滅する間際にゆんゆんでもわかるくらい

 

「微笑んでました」

 

「受け売りだけどさ、遺すものを受け継く、又は受け取るヒトがいるだけで幸せらしいよ」

 

「あ、あ」

ゆんゆんは聞いたのだ。確かに

 

『我が友ゆんゆんのこれからに幸あらん事を』と

 

 

「ううっ、うああ、うわぁぁぁん!」

ゆんゆんはミドリカワに抱き着いて泣いた

 

 

 

 

 

 

 

アクセルの街では

 

「カズマ、カズマ。何か食べますか?」

 

「うむ、ならば何か飲み物を用意しよう」

 

「じゃあ私、外で何か買ってくるわね」

 

「いや、お前らなぁ」

カズマは頭を抱えていた。確かにベルディア戦で無茶をしたのは認めよう。心配もかけた

 

だからって、めぐみんもダクネスも終いにはアクアまで何考えてんだ

 

別に怪我はしてないのに、あんなに甲斐甲斐しくお世話されても、正直困るのだ。こう男の都合というか、何というか

 

 

 

ベルディア戦ではゆんゆんが合流してからカズマ達は何もしていない

 

3人が全く動けなかったのだ。カズマも3人にしがみつかれてしまい、ゆんゆんに全てを押し付ける形となってしまった

 

ゆんゆんは勝って感動して泣いていると皆は言うが、違う気がした

 

 

とりあえずカズマは3人を何とかしようと決意した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳でもかなり迷いましたが、ベルディアさんが退場と相成りました

書くのがしんどかったです

原作通りにカズマ達に倒させるのも迷いましたが、ここはゆんゆんの成長の為にこうなりました

批評、感想よろしければ頂けると助かります

半分は越えたのでエタる事は無いと思います

では御一読ありがとうございました


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繋がるもの、失うもの

ベルディアがゆんゆんに討伐された事でストーリーが全くかわります

ま、まあ、覚悟はしてましタヨ(白目)

今回は特に独自設定が目立ちますが御容赦ください


某キャラへのヘイト?が酷い事になっております。御注意の上でご覧いただきますようにお願いいたします



キャベツの里でミドリカワとゆんゆんは祠を作った

 

「ベルディアさんはアンデットでしたから、遺体も残りません」

ゆんゆんが悲しそうに話すと

 

「せめてお墓だけでも作ろう」

ミドリカワはゆんゆんに提案した

 

崖の真下にミドリカワが加減した体当たりで孔を空け、ゆんゆんが威力を調整した魔法で加工する

 

とても不恰好だが、ミドリカワとゆんゆんはベルディアならば笑って許してくれると思っていた

「やっぱり腕なり無いと、不便だな」

 

「私ももうちょっと綺麗に作りたかったのですが」

ミドリカワの愚痴にゆんゆんも合わせた

 

そこに

「私もお手伝いしてもいいですか」

花を持ったウィズが現れた

 

 

 

3人でベルディアのお墓を作り、それぞれ供え物をした

 

ミドリカワはキャベツの里でベルディアが気に入っていた花を

ゆんゆんはベルディアとの戦いで壊れた愛用のワンドを

 

ウィズは以前ベルディアが好んでいたお酒を

 

バニルはウィズに花を託しており、それを供えた

 

 

 

「ベルディアさんは強かったですか?」

 

「はい。おそらくめぐみん達がダメージを与えていなかったら勝てなかったと思います」

ウィズの呟くような問いにゆんゆんが答えた

 

「困ったヒトだったんですよ

隙有らばセクハラしてくるヒトでしたから」

ウィズは懐かしそうに話す

 

「まぁ、男ですから、気持ちはわかりますよ」

ミドリカワは苦笑した

 

 

 

その後3人で暫く談笑した

 

 

 

 

 

 

ミドリカワ達がキャベツの里で談笑していた時にバニルはベルディアの元拠点の廃城にて何かを待っていた

 

「ほほぅ。流石は『転生者』という駒を用いてこの世界の問題を押し付ける、傲慢な女神よ

そいつらに与えた『神器』の回収か

・・・・・反吐が出るわ」

バニルは最初こそ、普通の話し方だったが、最後には憎悪を顕にした

 

「悪魔か。これは天界に回収しなくちゃならない

あって良いものではないし、況してや魔王軍の手に有ってはならないものだ」

銀髪の少女クリスは嫌悪感を全面に出した

 

「はっ。元々貴様ら神のお陰でこの世界の魂は、平和な世界へと転生しておる

その補填に全く関係ない世界から力のみを与えて此方の世界に転生させ、バランスをとっているのだろう

そして、其奴等が死ねば与えた力を回収する

いやはや、我輩たち悪魔ですらも躊躇う事を実施するとは流石は女神だ

そして、女神であることを隠してこそ泥の真似事とは、女神エリスも堕ちたものよ」

バニルはさも当たり前の様にこの世界の秘密を語る

 

「私が女神エリスであることすら知っているとは」

クリス、いやエリスは警戒した

 

「何、知り合いに少しばかり長生きの過ぎる転生者がいるものでな、其奴から教えて貰っただけの事

だがな、小娘」

バニルの気配が明らかに変わる

 

「此処は我等が友の遺品の残る場所

こそ泥の真似事しか出来ぬ女神ごときが立ち入ってよい所ではない。失せろ」

 

「『神器』の回収は私の仕事です。邪魔はさせません」

 

 

悪魔と女神。互いに相容れないモノが人知れず激突した

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し過ぎ、ゆんゆんはアクセルの街のギルドに呼び出されていた

 

「ゆんゆんさん。すいません、お呼びして」

ギルド職員の女性ルナはゆんゆんに詫びる

 

「いえ、構いませんから」

ゆんゆんは全く気にしていなかった

 

「おいおい。今日その娘にベルディア討伐の支払いするんじゃねぇのかよ」

金髪の柄の悪い男ダストがテーブルから口をだす

 

「ちょっと、ダスト!」

それを咎めるのはリーン。ダストと同じパーティーでゆんゆんと同じアークウィザードだ

 

「その筈だったんですが」

ルナは言葉を濁す

 

「ご苦労だった。私はセナ。冒険者ゆんゆん、貴様には魔王軍との内通の嫌疑がかかっている

同行願おうか」

 

 

ギルド内が一瞬静まりかえった

 

 

「は、てめぇふざけてんのか!

このゆんゆんはベルディアをたった1人で相手したんだぞ!

頭おかしいんじゃないのか!」

ダストが怒りだす

 

「そうだ!第一王都の連中だか知らねぇが、あんな戦いをしてまでアクセルを守った人間にすることか!」

 

「そうだ、ふざけんな!」

 

ギルド内が怒号に包まれた

 

「領主殿からの報告にあった

それが根拠だ」

 

 

 

「馬鹿か!領主なんぞ出てきてもないし、私兵も一切出してないのに何でわかんだよ!」

 

「そうだ!まずそっちを調べろよ!」

 

 

 

「少し待ってくれよ、皆

落ち着かないと話も出来ない」

 

「カズマ!お前らだってベルディアと戦ったんだろ?」

 

「わかってる」

 

ベルディア討伐の当事者カズマは皆を落ち着けた

 

不満はあったが、カズマは最前線でベルディア討伐の指揮をとったのはアクセルの冒険者なら誰もが知っている

 

 

「セナさん。でしたっけ、俺はカズマ。皆の言う通りベルディアと戦いました」

 

「冒険者を宥めてくれたのには、感謝します。カズマ殿。しかしこれは危険な事なのです。冒険者の中に魔王軍の内通者がいるなどと」

 

「お尋ねします。心して答えて下さい

返答次第では冒険者達が今後魔王軍と戦わない事もありますから」

カズマは感情のこもらない眼でセナを見つめた

 

「その情報は領主から。との事ですが、裏付けは取っていますね?

だとすれば誰からですか?お答え下さい」

 

「そ、それは」

セナは言葉に詰まる

 

「領主からの報告。だとしても、このアクセルの領主の評判は勿論、ご存知ですよね?

つまり、命を張ったゆんゆんよりも、いや冒険者よりも評判の悪い筈の領主の意見をとったのでしょう?

なら納得のいく説明は必要でしょう?

それとも、冒険者の意見なんて聞く必要がないとでも仰るのですか?」

カズマは淡々と告げる

 

「それに俺が聞いた話では報償金は即座に支払われる。と聞きましたが?」

 

「それは魔王軍の」

 

「順番が違うのでは?

確かに普通のクエスト位の報酬なら、多少遅れても仕方ないでしょう

ですが、魔王軍の幹部討伐の報酬は王家から出ると聞きました

そして、俺の知り合いに貴族の方がいましてね。その方に確認して貰ったところ『既に支払われている』そうですが、勿論ご存知ですね」

カズマは特大の爆弾を投げ入れた

 

「マジかよ!カズマ!」

ダストは思わず確認した

 

「ああ、ダスティネス家の御当主に確認して貰った

てっきりその話だと思ったんだけとな」

ダストに軽い口調で話してこそいるが、カズマはセナに鋭い視線を向けたままだった

 

 

 

 

 

カズマはベルディア討伐の功労者の1人となったが、宴会以降苦しんでいた

 

ベルディアを倒す時にゆんゆんは既に泣いていた

が、それを知るのはカズマ1人であった。他の3人はカズマに泣き付いてそれどころではなかった。王都に行ったミツルギを始めとした冒険者もアンデットナイトの対応でそれどころではなかったのはカズマやめぐみん達が確認した

 

何があったのかは、わからない。ゆんゆんと話した事もほとんどない

 

それでも仲間のめぐみんの信用する人物だ。カズマから見ても善い人物に見える

 

だから、カズマは墓まで持っていこうとしているし、そのゆんゆんを陥れるならば、容赦出来ない

 

その為に自身の素性を明かしたダクネスの伝手を頼り、疑問点や怪しいところを今まで集めていた

 

 

 

 

カズマは自分が立派な人間とは思っていない。だが、自分の事を『勇者』と言ったベルディアや大切な仲間達に胸を張れるだけの人間であろうとしている

 

 

「先程から顔色が優れませんが?

体調が思わしくないなら、お休みになっては?」

口調こそ丁寧だが、カズマは

「調べてから、出直せ」

と言っていた

 

 

「・・・・分かりました

此方の調査不足の様ですね

この件はまた後日させていただきます

失礼します」

セナは青い顔をして護衛と共にギルドを去っていった

 

 

 

「すげぇぞ、カズマ!」

 

「やるじゃねぇか!」

 

「スカッとしたぜ!」

 

カズマはセナが出ていった直後に冒険者達に囲まれて賞賛された

 

「ちょっ!カズマはまだ本調子ではないのですよ!

酒を勧めないで下さい!」

 

「やるわね、流石、カズマ!

こういう事はカズマが一番ね!」

 

「うむ。協力したとはいえ、わたしでは彼処まで出来なかっただろう」

めぐみんはカズマに酒をすすめようとするのを必死に止め、アクアはカズマの活躍を素直に褒めた。ダクネスも頻りに感心している

 

 

「カーズーマ!カーズーマ!」

 

暫くギルド内がカズマコールに包まれた

 

 

 

 

その喧騒を尻目にゆんゆんは宿に戻っていた

 

「そう、だよね。私は魔王軍の幹部の人達と仲がいいから、迷惑だよね」

 

 

 

次の日ゆんゆんはアクセルの街から消えていた

 

 

 

 

 

 

 

ミドリカワはキャベツの里に大荷物で来たゆんゆんに驚いていた

 

「今日から私もここに住みます」

 

「はい?」




と言うわけでゆんゆん移住?となりました

領主は次かその次には始末します

クリスとバニルの亀裂はどうもならないレベルになりましたが、大丈夫?です

御一読ありがとうございました


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新しい住人?

アクセルの様子は次回です

とりあえず、引っ越しイベントとなります


いつも通りの駄文ですが、読んで下さるとありがたいです


ミドリカワは困惑していた

 

 

 

いつもの様にゆんゆんが来た

問題ない

 

大荷物

判断保留

 

ここに住む

ナンデスト?

 

簡単には纏めるならば、こうなる

 

とりあえず話を聞こう

 

 

 

 

ゆんゆんが言うには魔王軍との内通の疑いを持たれたらしい

 

否定したいが、嘘でもベルディアさんの事を悪く言いたくはないらしい

 

アクセルの街にいたら、迷惑がかかる

 

だから、キャベツの里に住もう

 

 

待って、明らかに1つだけ飛躍してないかな

 

 

「ミドリカワさん、駄目でしょうか?」

 

それは卑怯だ。涙目のゆんゆんの要求を却下出来た試しがないんですけど!

 

「駄目、ですか?」

 

「いや、駄目とかじゃないけどさ、此処は住める環境じゃないでしょ?

生活するには、家がいる。食事もしないと駄目。清潔な環境が必要だよ

そりゃあ協力はするけども、今日明日で済む話ではないと思うけど」

ミドリカワは目に見えて混乱した

 

「ならば、ヒトを増やせばよかろう

我輩やポンコツ店主は仲間外れか?」

 

「そうですよ。困ってるなら言って下さい

お手伝い出来る事は手伝います」

 

「全く、めぐみんからの速達でゆんゆんがいなくなったと聞いて来てみれば。水臭いじゃないか

私も手伝うよ」

 

「「え」」

ミドリカワとゆんゆんは揃って驚いた

 

そこにはバニル、ウィズ、あるえがいた

 

 

ゆんゆんがアクセルの街に居ない事を知っためぐみんだったが、もしかしたらゆんゆんが戻ってくる可能性を考えて、紅魔の里でも比較的常識的なあるえに連絡した

 

因みに速達とは個別にテレポート屋を使って最優先で配達するサービスであるが為に割高である

 

めぐみんは割高の為に諦めようとしていたが、カズマからのすすめもあり、速達を利用したのだった

 

 

 

 

「何を間の抜けた顔をしておる

我輩達がいる事がそんなに驚くことか」

バニルは楽しそうに問いかける

 

「いや、いいの?」

暗に魔王軍と敵対してしまったゆんゆんの事を一応は聞いてみた

 

「我輩の道は我輩のものだ。例え魔王とて邪魔はさせぬ。それに今ここにいるのは、貴様達の友人バニルであって魔王軍とは関係ないからな」

悪戯っぽい笑顔をバニルは見せた

 

「バニルさんもかわりましたね」

 

「む、それは心外だな。確かに我輩は無駄は好まぬ

が、友人の為ならば多少は容認しよう

それに、我輩達悪魔は長生きするのだ。人間の一生位の寄り道等問題あるまい」

 

「ふふ。そうですね」

ウィズの指摘にバニルは屁理屈を言う

 

「あるえ、いいの?」

 

「ああ。そのかわりに私もここに住ませて欲しいね」

 

「ファッ!」

あるえの突然の申し入れに聞いていたミドリカワが奇妙な声をあげた

 

「どうして?」

 

「何、大した理由ではないさ

ゆんゆんとミドリカワ。それにその周りのヒト達を間近で見ていたいのさ」

 

「小説のネタ?」

 

「それもあるね」

ゆんゆんの疑問とミドリカワの疑問に軽く答えるあるえだった

 

 

「いや、住むと言っても家がないのですが」

ミドリカワは懸念を口にする

 

「フハハハハ。ミドリカワよ、貴様は我輩達の職業を知っているだろうに」

 

「え」

バニルの言いたいことがわからず困惑するミドリカワ

 

「ミドリカワさん。私達、バニルさん以外はアークウィザードですよ

テレポートが使えます。勿論バニルさんも」

ゆんゆんがフォローする

 

「それに私は一応は魔道具店の店主です

色々と便利なんですよ?」

ウィズも補足した

 

「というわけだよ。資材の調達はウィズさん。運搬は私とバニルさんで行い、こちらで場所を決めるのがキミとゆんゆんだ。その後で少しずつ組み立てていけばいいだけだろう?

手早く終われば、私達も手伝うよ」

あるえは微笑んだ

 

 

「と言うわけだ。さっさと始めなければ今日は野宿だぞ」

バニルは号令をかけた

 

「ちょっと待って下さい」

ミドリカワが引き留めた

 

「む、どうした?」

 

「流石にテレポートを乱発するなら、マナタイトを持って行って下さい」

バニルの疑問に予想外な答えを返したミドリカワだった

 

 

キャベツの里の北にある洞窟

 

そこには加工こそされていないが、マナタイトの原石が1つの小山を形成していた

 

「これは凄いです!

純度の高いマナタイトですよ」

ウィズは魔道具店の店主としての性なのか若干興奮していた

 

「これ」

 

「凄いな。紅魔の里でもこんな量は見たことがない」

ゆんゆんとあるえはその量に圧倒されていた

 

 

「これはやはり、奴か」

 

「ええ。ベルディアさんが」

ベルディアは最期の挨拶に来た時にこれを置いていった

 

 

 

 

ベルディアとミドリカワは押し問答をしていた

 

 

「いや、悪いですよ、ベルディアさん」

 

「そう言うな。これは俺なりのお礼なのだ

ミドリカワ、お前とゆんゆんのお陰で俺は立派に戦える。もし、敗れて滅んだとしても胸を張って逝けるのだ

。アンデットになってから初めての気分だ」

 

「ベルディアさん」

 

「それに、な。案外嬉しいものだぞ。自分の事を忘れないでくれると信じられる友人がいるのは

1人でも過分なのにおそらくお前とゆんゆんの2人もいるのだ。はじめてアンデットになった事に感謝すらしている

だから、貰ってくれ。お前とゆんゆんの未来の為に使ってくれたなら、俺は嬉しく思う」

 

 

 

 

 

 

「本当に俺なんかには勿体無い位凄い人でした」

 

「奴もおそらく満足しているだろう」

 

「そういえば、バニルさん。仮面、変わりました?」

 

「まぁな、少々手こずったが」

 

「気をつけて下さいね

これ以上、身近なヒトを亡くしたくはないですから」

 

「心しておこう

さて、さっさとはじめるぞ」

 

 

 

 

 

これから半日後に最低限の建物は出来た

 

こうして、キャベツの里に新たな住人が加わる事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、ゆんゆんとあるえがキャベツの里に住みます

次回はアクセルの話メインです


御一読ありがとうございました


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アクセルの街にて

素敵な領主の最期


今回は割りと非難を受けそうな構成となっております
ご了承の上でご覧下さい


ミドリカワとゆんゆん達がキャベツの里にて家を作っている頃、アクセルの街には動きがあった

 

 

ベルディアを倒したゆんゆんが失踪

 

これを決定的な証拠としてアクセルの領主アルダープは裁判を要求した

 

被告人不在の裁判等、本来ならばあり得ないし、そもそもゆんゆんへの罪状がいつの間にか『国家反逆罪』となっていた

しかも状況証拠のみにも関わらず、裁判は3日後に行われる事になった

 

アルダープは即日の裁判を要求したが、それは担当者のセナが受け入れず、温情として猶予を与えられた形となった

 

 

 

アルダープは自宅で激怒していた

 

「何が、決定的証拠がない。だ

儂が言っているのだぞ!

ええぃ、マクスウェル。どうにかならんのか!」

アルダープは部屋にいるマクスウェルへ怒鳴り散らした

 

「ンー?無理だね、アルダープ

幾らなんでも『辻褄』を合わせる人間や、範囲が大きすぎる」

彼は『辻褄合わせ』のマクスウェル。様々な悪行を重ねながらもアルダープが投獄や処罰を免れて来た原因である

 

「今までは出来たではないか!

何故今回に限って出来ぬのだ!」

 

 

アルダープとしては、冒険者ゆんゆんには早く消えて欲しかった

何せ、ベルディア討伐の報酬3億エリスをアルダープが横領したのだから

 

今はアクセルの街にいないそうだが、いつ戻るかは不明だ

仮にゆんゆんとやらが、報酬に言及すれば、マクスウェルの辻褄を合わせた事が明るみになりかねない。明るみにならなくとも、アルダープへの捜査が入りかねなかった

 

ならば、当事者を犯罪人として始末すればよいのだ

今は始末出来なくとも、犯罪人とすれば必ず何時かは捕まり処刑される

 

そうすれば、報酬の話はマクスウェルの力で誤魔化す事も出来るとアルダープは判断していた

 

 

「これまでとは、少し規模が違うからね」

 

「生け贄ならば、幾らでも用意しよう

あの愚息も少しは役に立ったしな」

アルダープは単純に生け贄が足らないのだと判断して、増やす事を提案した

 

なお、アルダープの息子は聡明であったが、アルダープに歯向かった為、アルダープはマクスウェルへの生け贄とした

 

「残念だけど、幾らなんでもこの街全体にまで影響を及ぼすのは不可能だよ

しかも、最近になって結界が街全体に張られているから活動にも支障が出てくるだろうね」

マクスウェルは言う。既に話がアクセルの街全体に拡散されている為に不可能だと

 

なお、話を拡散させたのは、カズマの指示を受けたアクアとダクネスであったりする

 

 

 

そもそもの話だが、人間の記憶というものはこの世界はいうに及ばず、転生者達のいた世界でも全て解明しきれていない

 

記憶改竄を少し変化させているのが、マクスウェルの能力だが、一度の効果範囲は狭い

今までは個別に対処したからこそ、1人あたりの能力も浸透したのだ

 

仮にアクセルの街に能力を行使出来たとしても個別に対処出来る訳がない

かといって時間効率を優先した場合、1人あたりの効果が低くなり、矛盾が露呈しやすくなる

 

そして矛盾等の切欠でマクスウェルの能力が弛むのだ

 

誰でも経験したことはあるだろうが、ふとした何気ない事で連鎖的に何かを思い出す事があると思う

 

それと一緒なのだ

 

現に執行官のセナにかけた能力は、既に綻びを見せており、アルダープへの疑念を抱いている

幸いと言うべきかそれでもアルダープの意見をまだ受け入れているのが、アルダープにとっての救いだが

 

そして一度かけた相手には暫くは能力が効かなくなる

 

 

後は魔力に任せてブレイクスペル等で解除も出来なくもないが、マクスウェルクラスの魔力が必要となる

 

 

更にアクセルの街全体に張られている結界は、ベルディアの拠点だった廃城でバニルと戦ったクリス、もといエリスが神託を通じて指示を出した

 

 

余談ではあるが、これによってアクセルの男性冒険者の憩いの地であるサキュバス経営こ喫茶店は閉店を余儀なくされた

ウィズも近い内にアクセルの街から退去する事を決めている

 

サキュバス達はバニルとウィズの紹介により、とある辺境の里へと避難している

 

 

 

この結界により、上級悪魔の一角であるマクスウェルは迂闊に能力の行使が出来なくなっていた

 

「結界についてはエリス教の教会に抗議しておこう

マクスウェル、とりあえずは3日後までにどうにかしろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でカズマ達も裁判を待つつもりなんて全くなかった

 

「んで、アクア。悪魔の気配がするのか?」

 

「間違いないわね。不快な感じがするもの

ただ場所ははっきりと分からないけど」

 

「しかし悪魔がいるとしても、証拠がないと厳しいのではないですか?」

 

「アクアの感覚を疑うつもりは無いが、それだけでは国も動けないだろう」

カズマ達はギルドの食堂にて頭を捻っていた

 

 

「それなら多分領主の所だね」

ぼろぼろになったクリスが話に割って入る

 

「クリス!どうしたんだ、その格好は」

 

「ダクネス、落ち着け。アクア、回復を頼む。めぐみんは替えの服を買ってきてくれ」

驚くダクネスを制止してカズマは指示を出す

 

 

 

 

 

 

クリスが回復したのを見計らい、カズマはクリスに話を聞く

 

「で、クリスがさっき言っていた領主って、アなんとかだったか。其所に悪魔がいるのか?」

 

「カズマ、アルダープですよ

しかしクリス。良くわかりましたね。悪魔を使役しているなんて表沙汰になれば、確実に死刑ですよ」

 

「・・・気に入らない奴から聞いたんだよ」

カズマとめぐみんの質問にクリスは心底嫌そうに答える

 

 

 

というのも、廃城での戦いで何とかバニルを撃退した際にバニルより

 

「しかし、女神も役にたたぬものよ

自分の足元すら見えぬとは。おっと、貴様の体型で足元が見えぬはずかなかったか

そうか、ならばその目が節穴なだけであったか。いや失礼な事をいったものだ」

等とほざくから調べたのだ

 

 

 

 

「でも、悪魔といっても相当力のある悪魔のはずね

でないと、この街のプリースト達が見つけているはずでしょ」

 

「マクスウェルだよ」

アクアの疑問にクリスは答えた

 

「マクスウェルですか!あの『辻褄合わせ』の!大物ですよ」

 

「そうなのか?」

 

「ええ、力でいえば魔王軍の幹部に匹敵するでしょうね」

クリスの答えに驚愕するめぐみん。あまり理解していないダクネスにめぐみんがその脅威度を教える

 

「魔王軍の幹部クラスはキツくないか

いや、待てよ。」

カズマは呟くと考えを纏め始めた

 

 

 

 

 

その後、アルダープの屋敷は謎の爆発で全壊

 

 

 

領主アルダープは悪魔使役の罪で王都に連行される

 

だが、王都にて処刑を待つアルダープはいずこへと姿を眩ました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




マクスウェルとの戦闘シーンは割愛します

あくまでも過程と結果が必要でして(言い訳)


まぁ、この作品の主旨から外れますので


御一読ありがとうございました


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引っ越し!

お気に入りが増えていて、チキンな私は震えます

ですが、完結までもう少しですので、お付き合いくださると嬉しく思います

ではいつも通りの駄文ですが、どうぞ


アクセルでは領主アルダープの悪行が公表され、アルダープも処罰を受けた

 

 

 

しかし、冒険者のゆんゆんはアクセルの街に帰って来なかった

 

更にアクセルにおいて現役からは退いたとはいえ、有数の冒険者であり、魔道具店を営んでいたウィズも遠くの街へと引っ越したとされた

 

アクセルのギルド関係者は持てる手段を駆使してゆんゆんとウィズの行方を捜した

 

 

ウィズは高レベルで経験豊富なアークウィザードであり、有事の際にはギルドもあてに出来る人物だった為である

 

ゆんゆんに至っては魔王軍の幹部ベルディア討伐の功労者。如何にアルダープが悪魔の力を使って暗躍していたとしても、英雄ともいえるゆんゆんを追いつめて、追放した様に見えてしまう以上問題になるのは明白だった

 

 

 

今回の件はアクセルのギルドにとって相当のダメージとなった。戦力的にも初心者の街にそういないアークウィザード二人を同時に失ったのだから

 

 

なお、冒険者を束ねるギルドとして『冒険者の保護』の責務が存在する。これは冒険者といっても悪質な依頼者が不当な要求やクレーム等をされた場合に個人で対処出来ない事が多いからだ

その責務があるからこそ、緊急クエスト等で冒険者を集める権利を与えられている

 

ところが今回のギルド側の対応は、ベルディア討伐の報酬についての徹底が為されておらず、本来ならば弁護すべきはずの冒険者ゆんゆんへの弁護もしていない

執行官のセナが退いたのは、あくまでも冒険者カズマが反論したからである

 

アルダープの一件が解決したのも一部の冒険者の活躍であり、ギルドの関与はなかった

 

この為、事情を知っているダスト他アクセルの冒険者の一部からは不満も出ている

 

 

王都のギルドは慌てざるを得ない。ギルドへ不信感を抱かれたら、イザというときの協力がされなくなる

 

あまり知られていないが、冒険者のクエスト報酬の一部はギルドの運営費に回されている。王国よりの支援だけでは遣り繰り出来ないのだ。それ故に冒険者からの反発は何としても回避すべきだったのだ

 

 

王国としても、王国軍の戦線を支えている冒険者の不満は有事の際の連携不足や協力自体の拒否もありえた

それに魔王軍の幹部を倒した冒険者に何の報酬も与えていないとなれば、今後の魔王軍との戦いでの士気にも関わる

 

 

そういう事情もあり、王都のギルドと王国はアクセルのギルド責任者への処罰を検討している

 

 

アクセルのギルドとしては、なんとしてもゆんゆんとウィズを捜し出す事が必要だったのである

 

 

 

更に前述の領主アルダープが悪魔を使役していながらも、その事実を全く察知出来ていなかったのも問題にしかならない

 

これについてはエリス教の教義にも関わる問題としてエリス教の内部でも問題視された

 

況してや悪魔の討伐にエリス教のプリーストが全く関わっていない事でアクセルの教会への視察も検討された

 

まあ、墓地のゾンビメイカーの浄化すらギルドに依頼していた位だから、視察で明らかになれば、アクセルの教会のプリーストは左遷待ったなしだが

 

 

 

 

とまぁ、アクセルが混乱していた頃、キャベツの里では、ミドリカワ達の手で平屋の集合住宅が出来ていた

 

「や、一軒家でよくないですかね?」

 

「そうですよね。大きすぎるような」

ミドリカワとゆんゆんの疑問に

 

「確かにそこの元ボッチ娘と妄想娘だけならば、問題あるまい」

 

「少し待ってくれ。妄想娘とは、私の事か?」

 

「元ボッチ娘って私ですか?バニルさん、酷いです!」

とバニルの発言にあるえとゆんゆんが抗議したり

 

「バニルさん、流石に酷いのでは?」

 

「ほぅ、言うではないか。宿無しのポンコツが」

 

「ええっ、私住めないのですか?

駄目ですか、ミドリカワさん」

バニルの発言を真に受けるウィズがいたりもした

 

 

 

結局は集合住宅にゆんゆん、あるえ、ウィズにアクセルから避難してきたサキュバス達が入居する事となった

 

 

 

 

食料については、ミドリカワもゆんゆん達の事を考え、複雑な心境であるが、キャベツの供出を申し出た

 

それ以外にも里の付近にはジャイアントトードがいる上に、キャベツを漬けていた池やその周辺の川にも食べる事の出来る魚がかなり生息している為に食料も直ぐに危険にはならないことを確認した

 

それでも足りないものは洞窟に残っているマナタイトを売却。その資金であるえが王都や紅魔の里で物資を調達する事になる

 

「いや、だからそうじゃない」

というミドリカワの発言は皆揃ってスルーしていたが、概ね問題は解決したといえよう

 

 

 

 

余談ではあるが、キャベツの里の上空の鳥の一羽がミドリカワを捕獲?してレタスのいる場所が判明した

 

その際に眼を紅く光らせた娘が魔法を乱射しながら追いかけていた

 

 

 

 

 

鳥?サイド(翻訳済み)

「いや、コイツ重いな!」

 

「ちょっ!何かエライ剣幕の娘が魔法乱射しながら、追っかけてくるんですけど!」

 

「いや、俺レタスの所に案内してるだけなのに!」

 

こんな事があったそうな

 

彼?はミドリカワをレタスの所に投下した後無事に逃げ切れたそうな

 

 

 

 

その後

 

「ハァハァ。だ、大丈夫ですか!ミドリカワさん」

 

「いや、ゆんゆんの方が大丈夫じゃなさそうですが」

 

という会話があったとか

 

 

 

 

 

 

 

キャベツの里は新しい住人を迎えて、新たな時を刻みはじめた

 

 




という訳でアクセルのその後とキャベツの里でした

キャベツ食べるから、ゆんゆんとあるえは強くなりそうです

ここだけの話、レタスの存在を忘れていました


では、御一読ありがとうございました


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自然の掟

さて、風呂敷を畳む準備します

よろしければ読んでやって下さい


あるえは王都に買い物に来ていた

 

少々遅くなったが、めぐみんにゆんゆんの無事を知らせる手紙を送り、サキュバス達の普段着を買いに来たのだ

 

 

 

「いや、もう勘弁してください」

とサキュバス達にミドリカワが涙声で頼み込んでいたのを偶々あるえが目撃したのが、悪かったのか

 

 

ミドリカワに聞けば、サキュバスの服は露出が多くて目の毒らしい

 

いや、キャベツだから問題ないと思ったが。あまりにも.哀れに見えたので王都に来た

 

 

同性から見ても露出が高くはあったが、彼女達の仕事着らしいから気にしなかったのだが

 

「いや、チェリーにはキツいので」

とミドリカワは言っていたが、何故さくらんぼが関係するのかが、あるえにはわからない

 

あと、サキュバス達の同情するような視線をミドリカワに向けていたのも気になる

買い物が済んだらミドリカワに聞いてみようと思う

 

 

 

 

 

あるえが買い物を済ませて王都から出ようとすると

 

 

 

 

「いやぁ、このアクセルのキャベツ!年季の入ったものですね!

え、他にもある?

是非見せて頂けませんか?」

と何やら店の前で騒ぐ男がいた

 

「キャベツなんて、アクセルのならどれも一緒さ」

 

「とんでもない!

キャベツの出来た年数が古い程、経験値が多いのです

キャベツの人工的な繁殖も試行錯誤しながら進めていますが、まだまだわからない事が多いのです!」

店主の言葉に男が反論する

 

「そもそも、アクセルのキャベツは他の産地のキャベツよりも経験値が多く手に入ります!

これはおそらく環境の」

 

「ハイハイ。わかったからお金出しなよ」

男の話などどうでもよさそうに店主は代金を求めた

 

 

 

 

 

「なんだい、あれは?」

思わずあるえは口にした

 

「ありゃ、『キャベツ狂い』のレフェルだ」

 

「『キャベツ狂い』?」

あるえは近くの住民に訊ねた

 

「ああ、何でもキャベツを人の手で繁殖させようとしている変わり者だよ

初めは軍が資金を提供していたらしいが、今じゃ誰も相手にしない」

 

「そうなのかい?」

あるえは疑問を持っていると

 

「おお、紅魔族のお嬢さん。キミもキャベツに興味があるのかな?

もしそうならお話しをしないか?」

レフェルという男が話かけてきた

 

 

 

王都のとあるカフェにて

「改めて私はレフェル。人からは『キャベツ狂い』なんて呼ばれているがね」

 

「私はあるえ。見ての通り紅魔族だよ

しかし、キャベツを繁殖させるなんて、出来るのかい?」

 

「あるえ君の疑問はもっともだ。だが、可能だ

その証拠に機動要塞デストロイヤーを造ったノイズという国が養殖していたとの記録がある

そして、キャベツは特定条件下で巨大に成長するとも書かれていた」

 

「巨大に?」

 

あるえは思わずミドリカワの事を想像した

 

「そうだ。ノイズでも巨大なキャベツは貴重だったとされていたそうだ。レベルが少なくとも10は上がる為に常に争いの元だったらしい」

 

「それは、仕方ないだろう」

 

中級冒険者の指標がレベル30と考えると、10レベルが如何に破格かがよくわかるだろう

 

「だが、どれだけ資料を当たっても、キャベツの寿命を伸ばす事には触れられていない

折角養殖しても、普通のキャベツではアクセルのキャベツには到底及ばないのが問題だ」

 

「キャベツの寿命だって?

そんなものがあるのかい?」

 

「キャベツとて生き物さ

相当管理しても、2、3年保てば上等らしい」

レフェルはとんでもないことを口走った

 

「それ以上は無理なのかな?」

 

「さて、デストロイヤーすら造れたノイズで出来なかったのなら、おそらく不可能だろう

繁殖させてみてわかったが、キャベツが寿命に近づくと、上の部分から茶色に変色するようだね

それから半月もしない間に急速に朽ちていく

この現象の解明と延命も課題だが」

 

「しかし、それだけの事なら資金も相当かかるだろうに、よくできるね」

 

あるえは動揺を押さえ込みながら話を続ける

 

「ああ、隣国のエルロードの支援もあるからね

あちらは軍みたく予算をけちらないからたすかるよ

っと、長話が過ぎたかな。あるえ君、いい気分転換になったよ。ありがとう」

レフェルはあるえに礼を言った

 

「いや、此方こそありがとう」

 

 

 

 

 

 

あるえはそうと見えないように急いで王都の郊外の森へと向かった

 

人目につくところで、テレポートはしづらいからだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャベツの里では

 

 

ミドリカワが少し大きくなったキャベツ達の世話をしていた

 

といっても池に漬けるだけだが

いつも通り力を抑えた体当たりでキャベツ達を池に沈める

 

すると直ぐに浮き上がり、そのまま暫く休むのだ

 

 

 

 

 

「ミドリカワ。少しいいかな?」

 

眼を少し紅くしたあるえがそこにいた

 

「その様子だと、バレたかな?」

 

「私が何を言いたいのか、わかっている。そういう事と受けとるよ?」

敢えて明るく言うミドリカワにあるえは怒気すら含んだ声で答えた

 

「皆が此方に移り住む少し前からかな

何か身体がダルくて、頭もはっきりしなくなってきた」

 

「ゆんゆんから貰った魔道具は身に付けているんだけど」

 

「どうする、気だ」

 

「どうもしないよ」

 

「何故」

 

「俺はキャベツだ

生まれ、地に還る。それだけさ」

 

「ゆんゆんはどうする?」

 

「出来れば、死に目は見せたくないね」

 

「勝手だろう」

 

「否定はしない

けど、キャベツ達もそうなんだろう。死ぬところを見せたくないんだ」

 

「ゆんゆんは、お前を」

 

 

 

 

 

 

その日それ以上の会話は二人の間にはなかった

 

 

 




どこまでいっても逃れられないモノ

そんな話


では御一読ありがとうございました


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この素晴らしい友達に祝福を

とりあえず本編完結となりました


いつも通りの出来ですが読んでいただければありがたいです


ミドリカワと話をしたあるえはその日の夜、湖の畔で悩んでいた

 

 

 

ゆんゆんに伝えるか、伝えないかを

 

ミドリカワはゆんゆんに最期を見せたくないと言っていた

確かにそれは、ゆんゆんに癒えない傷を残すのだろう

 

しかしあるえはそれでもゆんゆんには最期に逢わせるべきではないかと考える

ゆんゆんに恨まれるとか、そんなのではなく、ゆんゆんも伝えたいことがあるはずだから

 

 

先程の食事の時も

 

「ミドリカワさんは本当に何も食べられないのですか?」

 

「だから、俺はキャベツなんですが」

 

「でも、口は動きます。身体も動かされているからお腹は減ると思います」

 

「ゆんゆん。俺のお腹は何処にあるのさ」

 

「え、えっと。でも試してみませんか?」

 

「あ、何か既視感が」

頻りに食事をミドリカワに勧めるゆんゆんと、楽しそうに自虐的な発言をするミドリカワだった

 

「ふむ、まだまだ青いな

そこの娘は貴様の為に料理を作りたいのだ。そのくらいは察してやれ」

 

「な、な、な、ナニをイッテイルノデスカ。バニルさん」

 

「フハハハハ、久しぶりの羞恥の悪感情美味である!」

さりげなく?ゆんゆんの本心をばらすバニル。それに動揺して真っ赤になるゆんゆんだった

 

「そういう事ですか

ミドリカワさんはキャベツだけに青く

ゆんゆんさんは紅魔族だけに赤くなった、と」

 

「バニル式殺人光線!」

何か納得したかの様に話すウィズに光線を放つバニルだった

 

 

「だ、大丈夫なのかい?」

 

「いつもの」「事です」

 

あるえは心配するが、ミドリカワとゆんゆんは全く意に介さない

 

「こ奴はこれでもリッチよ。この程度で死ぬならば、冒険者だった頃に死んでおる」

バニルも全く心配していない様子であった

 

 

 

 

 

 

「どうするのが、いいか。なんて分かる筈もない、か」

 

しかしあるえは決めなければならない

たとえ、誰も知らなくともあるえ自身が知っている。そして流されたままでは、後悔するだろう

 

 

 

「悩んでいるようだな。友人の想い人の死期を知り、誰にも打ち明けられない娘よ」

 

「バニルさんか

やはり知っているのかい」

 

「元より我輩だけでなく、ウィズと今は亡きベルディアも知っている」

 

「どうにか出来ないのかな」

 

「木々は枯れ、そして新たなモノを育む礎となる

そうして、世界は形を成すのだ

我輩程度でどうにかなるものか」

 

「そうか」

 

「アレは死にたくないと言っていたか?」

 

「それは、言っていないが」

 

「我輩が引き合わせとは言え、今思い返せば少々酷な事をしたのやも知れぬな

あの娘の未来はあのまま行けば好ましいモノにはならなかった

常に誰かに依存する一方で、その者からは都合良く利用される。そんな未来だった」

 

「そんな事が」

 

「貴様の故郷でも、その兆候はあったであろう

そしてミドリカワは誰にも気付かれず、必要ともされずにただ朽ちて逝く」

 

「・・・」

 

「全く、元より女神等は好きではない

だが、転生させておきながら、何一つアレには与えられていなかった

よくもあれだけひねくれずに育ったものよ」

 

「転生?」

 

「貴様とて知っておろう?『魔剣の勇者』の事は」

 

「確か王都辺りでは有名なソードマスターだったかな」

 

「あれも転生したものよ

方や魔剣を持って名声を獲ている

かと思えば、人間ですらなく、キャベツとして生を受け、そして死んでいく」

 

「納得出来ないね」

 

「一度だけ聞いたことがあるが、転生するときに『特典』とやらが選べたらしい」

 

「何を選んだんだろう」

 

「選ぶ時間がなかった。そう言っていたぞ」

 

「神というのは、勝手だね」

 

「ロクなモノではあるまい

あるえよ。貴様はミドリカワと話した事を忘れよ

それがよかろう」

 

「冗談にしては、笑えないね」

 

「生憎、冗談は言う場所を選ぶでな」

 

「ことわ「ごめんなさい、あるえさん」な、」

バニルの言葉に警戒したあるえだが、ウィズに不意を突かれて気絶させられた

 

「・・・済まんなウィズよ」

 

「いえ」

 

「いいのかい、バニル?」

 

「構わぬ、我々悪魔は憎まれるのも仕事だ

頼むぞ、マクスウェル」

 

「アルダープを渡してくれたお礼だよ」

 

 

 

 

 

 

 

この日の正確な記憶をあるえは生涯思い出す事はなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日早朝

 

 

 

「えっ、紅魔の里にですか」

 

「暫く忙しくしてたし、アクセルの事もあるからさ

一度家族とゆっくりしてきなよ」

 

「でも」

ゆんゆんはミドリカワから帰省の提案をされて、戸惑っていた

 

「そうだね。少なくとも長達も心配しているだろうし、一度顔を出すのは賛成かな」

あるえは帰省に乗り気のようだ

 

「それに折角、時間が空いたのですからいいと思いますよ」

ウィズも賛成した

 

「わかりました

でも、明日には帰ってきますから」

ゆんゆんは帰省を決めた

 

 

 

 

 

 

「見送りなんて」

 

「いや、たまにはね」

ゆんゆんはミドリカワが見送りしてくれるのが嬉しかった

 

「あれ、ミドリカワさん

頭の方の色が可笑しくありませんか?

なんだか、少し茶色のような」

ゆんゆんはミドリカワの頭?付近の色が変色しているように見えた

 

「あれ、そうかな?

自分ではわからないけど」

 

「帰ってきたらお手入れしましょうね」

 

「・・だね。ゆんゆん気をつけて」

 

「はい、行ってきます」

 

「行ってくるよ」

 

ゆんゆんとあるえはテレポートで転移した

 

 

 

「ごめんね、ゆんゆん。さようなら」

 

 

 

これがミドリカワとゆんゆんの最期の別れとなった

 

 

 

 

「な、何とか、誤魔化せ、ましたか」

息も絶え絶えにミドリカワは喋る

 

「何か、言い遺す事はあるか」

バニルは表情を消したまま訊ねる

 

「い、いい、え。あ、ありがと、うゆんゆ」

 

それを最後にミドリカワは動きを止めた

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔の里では魔王軍の幹部ベルディアを倒した事が伝わっており、ゆんゆんは大歓迎を受けた

 

 

 

「やるな!ゆんゆん

だが、このぶっころりーが幹部シルビアをたおす!」

 

「まずは仕事しろ」

 

「またニートが夢見てるゾ」

 

「妄想乙」

 

「つか、ゆんゆん可愛くなったな」

 

「ゆんゆんprpr」

 

「ゆんゆんハァハァ」

 

「変態がいるぞー」

 

「族長呼べー」

 

「少し、話をしようか」

 

 

等と宴会は混沌としていた

 

 

「え、ゆんゆん好きな人いるの?」

 

「前の手紙本当だったの?」

 

「そうだね。仲良くしているね」

 

「へぇ、いいわね」

 

ガールズトークも盛り上がっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会は終わって深夜になっていたが、ゆんゆんは占い師でもあるそけっとと話をしていた

 

「そう。良かったわね。皆心配していたけど、安心ね」

 

「あの、そけっと。私とミドリカワさんの事を占って欲しいのだけど」

 

「ええ。勿論よ」

 

 

 

 

そけっとが占い始めてから暫く経つが彼女は何も言わない

 

そして

「ゆんゆん。直ぐにミドリカワさんの所へ戻りなさい」

 

「え」

 

「急いで!」

 

「あ、うん」

ゆんゆんはテレポートでキャベツの里へ戻って行った

 

 

「どうして、ゆんゆんがこんな目にあうの」

そけっとは泣いていた

 

 

 

 

 

 

 

キャベツの里に戻って来たゆんゆんはミドリカワを探した

 

「帰ってきたか」

 

「ゆんゆんさん」

明らかに様子のおかしいバニルと泣いているウィズがいた

 

「何が、あったんです」

聞きたくないと、思いながらもゆんゆんは訊ねる

 

 

「・・・」

バニルもウィズも答えない

 

「っ!」

ゆんゆんは二人を押し退けて見た

 

 

 

 

 

 

 

そこにはボロボロのミドリカワの姿があった

 

 

 

 

 

「ミドリカワさん、嘘、ですよね

悪い冗談、なんですよね?

ねぇ!答えて下さいよ!

ミドリカワさん!ミドリカワ、さん」

ゆんゆんは泣き崩れた

 

「どうして、なんで、何で、ですかぁ」

 

「ミドリカワさぁん、イヤです。嫌です。居なくならないで」

ゆんゆんはミドリカワの亡骸に抱きついてひたすら繰り返す

 

 

 

 

 

 

 

長い夜が明けた

 

 

 

 

ゆんゆんはミドリカワの傍から一歩も離れようとしなかった

まるで、離れたらナニかを失う事を恐れているかのように

 

 

 

 

 

 

「バニルさん」

 

「わかっている。このままならゆんゆんも保つまい」

気落ちしているウィズにバニルも力なく答える

 

 

 

今のままなら下手をすれば、明日にもゆんゆんまで死んでしまいそうな位に弱っている

 

ゆんゆんを死なせるのはミドリカワは喜ぶはずもない

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方になってもミドリカワの亡骸から離れないゆんゆんだったが

 

「そのままで構わぬから、これを読んでおけ

それでも貴様が死にたいのならば、最早止めん」

バニルはゆんゆんに手紙を差し出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんへ

 

これを読んでいるなら、俺は死んでいるだろう。優しいゆんゆんだから泣いてくれていると思う

 

いつも言っていたと思うけど、俺はキャベツで君は人間だ。同じ時を少しは歩けても最後まで一緒にいられない

 

仕方ない事だと思う。君には残酷な事だとも思う

 

ごめんね。一緒にいられなくて

ごめんね。君を支えてあげられなくて

 

それでも僕には君という友達がいてくれた事は何よりの宝物だったよ

 

ありがとう、一緒にいてくれて

ありがとう、僕を支えてくれて

 

 

 

最後に一つだけ

 

この素晴らしい僕の友達に祝福があることを

 

 

 

 

 

 

ありがとう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!何で、教えてくれなかったんですか

私はただ貴方と一緒にいたかっただけなのに

どうして、どうして」

ミドリカワの遺書を読んだゆんゆんはどうしようもなかったと思いながらも泣くしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、一つの生命が消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

とある空間

 

「ミドリカワさん。貴方は寿命にて死んでしまいました

 

本来得られるべきものを与えられず、この様な事になり、申し訳ありません」

銀髪の女性、エリスはミドリカワに謝った

 

「いえ、楽しい人生を送らせていただきました

此方からすれば、一度死んでいたのですから寧ろ感謝しかありません。ありがとうございます」

 

「そう、ですか

では、蘇生出来るとしても、望まないのですか?」

 

「魅力的なお話ですが、人生は一度きりだからこそのモノと思います

女神様の目の前で言う話では無いと思いますが、僕の友人のベルディアさんも生を生き抜かれました

それに倣いたいと思います」

 

「では、日本に転生するか、天国にて過ごすかのどちらかになりますが」

 

「天国ですか。分不相応な気がしてなりませんが、其方で」

 

「何もなく、ただ時間が経つだけなのですよ?」

 

「死ぬとはそういうものと思っていますから

ただ、もし叶うならばゆんゆんの人生を祝福していただけると有り難いです」

 

「わかりました。では、天国へとお送りします

お元気で」

ミドリカワをエリスは転移させた

 

 

「人生ですか」

エリスは独り呟く

 

 

 

この世界ではカズマは一度も死ぬことなく、人生を終えた

 

皮肉な事に彼もエリスに転生を望みはしなかった

 

 

 

 

 

生物はいつかは死ぬ

 

だが、遺るものがあるならば、それは救いなのだろう




と言うわけで後はエピローグ的なものを書いて一先ずは完結となります

このような作品を評価、お気に入り、そして読んで下さった皆様には改めて御礼申し上げます

読みづらいと思いながらも、書き続けて先ずは完結させる事を優先させていただきました

ではエピローグでお会いできれば幸いです


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芽吹くモノ

エピローグとなります

今までお付き合いいただきまして、ありがとうございます


では、どうぞ


ミドリカワが死んだ後、ゆんゆんは一週間ほど塞ぎこんだが、何とか持ち直した

 

 

しかしキャベツの里を離れる事だけは頑なに拒んだ

 

 

 

 

 

 

アクセルの街に機動要塞デストロイヤーが襲来した際には、ゆんゆんはあるえとウィズを伴い、デストロイヤー攻略戦に参戦。

 

アクアのセイクリッドブレイクスペルによる結界破壊後にめぐみんとウィズは爆裂魔法にてデストロイヤーの脚部を破壊した。ゆんゆんとあるえはカースドライトニングの連射によってデストロイヤーの駆動系を完全に破壊しきった

 

その後は冒険者カズマの指揮により、デストロイヤーの攻略は進み、最後はゆんゆん、あるえとウィズの三者によるカースドクリスタルプリズンによってデストロイヤー自体を氷漬けにした。

その氷塊は後にめぐみんの爆裂魔法により粉砕。デストロイヤー攻略は成功する事になる

 

 

デストロイヤー攻略に沸き立つ冒険者達を尻目にゆんゆん達はキャベツの里に帰還した。彼女達はアクセルに戻る気はなかった

 

 

 

 

 

 

「ゆんゆん、貴女は」

 

「めぐみん。私はめぐみんが羨ましい」

 

「なら、アクセルで私達と一緒に」

 

「めぐみん。私はね、守りたいものがあるから

ごめんね」

ゆんゆんはそう言い残すと、テレポートで何処かへと転移していった

 

 

 

 

アクセルの冒険者達も様子の変わったゆんゆんとウィズを見て、アクセルに戻る事を言い出せなかった

 

 

 

 

 

 

それからカズマ達によりアルカンレティアで魔王軍の幹部ハンスが討伐されたが、かろうじてハンスは生き残った

ハンスはキャベツの里にて体勢を立て直そうとして、キャベツ達を襲おうとしたが、ゆんゆん、あるえ、ウィズにバニル。更にはサキュバス達やブルータルアリゲーターすらも参加して大規模なハンス討伐戦が行われ、ハンスは完全に消滅した

 

 

 

 

「ぐっ、ウィズのみでなく、貴様までだと。どういうつもりだバニル!」

 

「ほう。どういうつもり、だと

此処はな、我等の友たちが眠る地よ。手をだすならば魔王とて容赦せんだけだ」

 

「貴様は魔王軍の幹部だろうが!」

 

「知らんな。魔王に借りがあるから協力すれども、幹部の貴様等に対して特に思う事など無いのでな」

 

 

との会話があった

 

 

 

 

それからは、紅魔の里にシルビアが攻めて来た時にゆんゆん達も参戦

 

里のぶっころりー、ふにふら、どどんこ、そけっとにひょいざぶろー、ゆいゆいまで参加してカズマのパーティーと連携し、シルビアを討伐した

 

 

 

 

 

 

 

最終的には魔王の討伐にもゆんゆん達は貢献し、魔王は討伐される

 

残った魔王の娘はキャベツの里に保護し、ゆんゆんの戦いは終わった

 

 

 

 

 

ミドリカワとベルディアの墓の前で

 

 

「ミドリカワさん、ベルディアさん。やっと終わりましたよ。ミドリカワさんのかわりに魔王討伐の手伝いをしました」

とゆんゆんは語りかける

 

 

ゆんゆんはただ示したかった。ミドリカワが遺したものは、愛した人の生きた意味はあったのだと

 

彼の生きた意味、ベルディアの誇りを証明したかった。だから、苦しくとも足を止めなかったのだ

 

 

 

でも、辛くて泣きそうな時は此処で泣くことにしていた

 

 

 

 

 

ゆんゆんはお墓の掃除をしていると、ミドリカワの亡骸を埋めた所に若芽が生えてきているのをみた

 

 

 

ゆんゆんはそれを大切に育てよう。そう思い、微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後世に伝わる書物に当時の人物についての記載がある

 

『冒険者』カズマ

最弱の職業、冒険者でありながらも、持ち前の機転等を駆使して遂に魔王討伐を成し遂げた。魔王討伐後は冒険者稼業を続けながらも後進の育成やアクセルの街の発展に尽力する

後にアクセルのギルドマスターとなる

 

『女神』アクア

前述のカズマや後述するめぐみん、ダクネスと共に魔王討伐に多大な貢献をした、アクシズ教の女神

理由は不明だが、この世界に降臨した。カズマのパートナーとして彼を支えた

 

『深紅の爆裂女王』めぐみん

前述のカズマ、アクア。後述のダクネスとパーティーを組み、魔王討伐に貢献した紅魔族の人物

紅魔族の魔法学校に在籍していた頃より爆裂魔法に傾倒し、生涯それを貫き通した『求道者』の側面も持つ

紅魔族の優秀な頭脳を活かして爆裂魔法無しでもパーティーに貢献した

後に冒険者カズマと結ばれる

 

『大陸一の盾』ダクネス

前述のカズマ、アクア、めぐみんとパーティーを組み、魔王討伐に貢献した人物

実は貴族の息女であるが、それを感じさせない気さくな女性

カズマの作戦において盾としてパーティーを守り抜いたクルセイダーの理想ともいえる人物であった

 

『氷の魔女』ウィズ

元はアクセルの魔道具店の店主だったが、諸般の事情によりアクセルより退去し、キャベツの里にて生活を送ったとされる

しかし、有事の際にはパーティーを組むゆんゆん、あるえと共に戦場で活躍した

 

『仮面の悪魔』バニル

『見通す悪魔』とも呼ばれる魔王軍の幹部

しかし幹部でありながらも時として人間側、特にゆんゆんには協力的だったとされる

 

『紅の少女』ゆんゆん

元はソロの冒険者だったが、とある時期を境に様々な冒険者のパーティーへと一時的に所属した

魔王軍の幹部ベルディアを討伐するものの、アクセルより半ば追い出される形となる

その後はキャベツの里にてあるえやウィズと共にパーティーを結成。冒険者カズマの魔王討伐に協力したとされる

なお、容姿も整っており、性格も温厚な為に交際の申し込みが後を絶たなかったが、彼女は一度として受け入れなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草木は枯れ、種を遺す。それは新たな生命の始まりであり、それは続いていく。

 

ほとんどの者が知らなくとも、私達は知っている。優しい少女と『緑のアイツ』の物語を

 

せめて、彼が安らかに眠れる事を私は一人の友人として切に願う

 

紅魔伝『紅の少女』作者あるえ




皆様のお陰で完結することが出来た事を感謝しております

まさか、夢に出た設定を使って此処までこれるとは思ってもみませんでした

これも偏に読者の皆様のお陰だと思っております

なお、別ルートを近日中に上げますので、お付き合いいただけるなら、幸いです


この作品の主旨はあくまでもゆんゆんの成長でありましたが、私の描写や表現力の不足により書ききれていないと痛感しております

これも機会をみて改稿するつもりですが、この作品は残すつもりです

長々と書きましたが、本当にありがとうございました


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レタス編
転生?何それ?


アンケートへのご協力ありがとうございました

という訳で別ルート始めます

性懲りもなく始めます


よろしければお付き合いください


吾輩は猫である。ごめんなさい、嘘です

 

 

気が付いたら、よく分からない所にいました

 

誘拐?拉致?携帯を探ろうにも、手がない!

 

 

いや、待って、お願いします。何でもしますから

 

 

 

 

 

落ち着け。パニックになって良い事はない

 

そう、俺は冷静沈着。慌てな、い?

 

 

アレ?俺は誰だっけ?

 

いやいや、有り得ないでしょ!手がない。何者かも分からないとか!洒落にならんわ!

 

 

 

 

 

 

落ち着け、そうCOOLに。閣下も仰っておられた『事は全てエレガントに』と。取り乱すなど閣下の信望者にあるまじき醜態

 

 

 

 

考えても何も分からないですorz

誰か助けてクレメンス

 

 

 

 

 

 

 

世の中は非情である

 

が、少しずつ思い出してきたような気がする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、えーっと、○○○○○さん、貴方は死んでしまいました

何だっけ?

ああ、何か病気で亡くなったの」

 

「は?」

 

「で、貴方には異世界に転生して貰います

特典は、ええっ!もうこんな時間?嘘でしょ

さっきの人が時間使いすぎたから

こほん。では新しい生活を楽しんで下さい」

 

 

 

 

何かこんな感じで、急いで放り出された様な気がするんだが

 

 

 

 

その通りであった

 

彼女は女神アクアに一時的にかわって貰ってノルマを消化していた

彼女自身がいい加減な対応しかしていない為に、上司は彼女のノルマを達成させる気がなかった。させたとしてもロクな仕事をしない為である

 

だが、彼女は知り合いの女神アクアに頼み込み、『ノルマ達成』の為にアクアの仕事をしていた

 

当然、丁寧な説明等をしていない。彼女がいう時間をかけすぎたのも、彼女の説明に不備や必要な話が抜けていた為だった

 

時間も制限はあれども、それは『一人にかける』時間であり、前の時間がかかったからと後の転生する人間への時間を削る事などあってはならない

 

が、彼女に言わせれば、仕事の時間をオーバーするのはありえないものであったが為に勝手をしているに過ぎなかった

 

そしてあろうことか、転生先の指定や特典も行わず、それを報告すらしていないのだった

 

 

 

そして当然だが、かわった女神アクアも、ノルマ達成の報告を受けた上司もその事実を知る事はなかった

 

不審に思った上司が女神アクアを訪ねてようやく事態が発覚し、原因となった彼女は無期限の勾留とされた

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で彼は身一つで異世界に挑む事になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、ナニコレ。キャベツなの?

え、キャベツが飛んだり動いたりするの?

 

待って、待って。いやいや、何がなにやら

 

 

 

説明プリーズ!

 

 

 

 

 

 

 

この日、紅魔族の少女ゆんゆんはアクセルの街で占い師に会っていた

 

「あの、どうです?お婆さん」

 

「うん、二つ見えるねぇ」

 

「二つですか?」

ゆんゆんの質問に曖昧な答えを出す占い師

 

「一つはお嬢ちゃんが一人で冒険者をする道

もう一つは、何だろうね?何かお嬢ちゃんの傍に丸いものが見えたよ」

 

「丸いもの。ですか?」

 

「そうだねぇ。だけとお嬢ちゃんは笑っていたようだから、此方をお薦めはするよ。しかし、悪いが私レベルの占い師じゃあこれが精一杯さ。すまないねぇ」

 

「あ、いえこちらこそ」

ゆんゆんはお金を渡そうとするが

 

「代金はいらないよ。お嬢ちゃんの悩みを解決出来なかったからねぇ」

 

「で、でもお願いしたのは、私の方ですから

それに知り合いの占い師志望の人が言ってました。『占いで人の人生が変わる事もある』って。それでも教えてくれたお婆さんには、キチンとお支払いしたいです」

占い師に拒否されても、引き下がらないゆんゆんに

 

「お嬢ちゃんは良い娘だね。わかった

丸いものが気になるなら、此処に向かうとええ」

占い師は代金を受け取ると、簡単な地図を渡した

 

「ここ、ですか

ありがとうございます。お婆さん。失礼しますね」

ゆんゆんは占い師に頭を下げてから、立ち去った

 

 

「本当に良い娘だね」

占い師はゆんゆんの去った方を見て、呟くと店じまいを始めた

 

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんは紅魔族の族長の娘で、アークウィザードとして中級魔法を習得している

 

紅魔族は戦える年齢になると魔法学校『レッドプリズン』にて様々な事を教わる

 

紅魔族に必要な名乗りのルール、格好良くするためのやり方等を其処で学ぶ

 

更に熟練のアークウィザードが同行して『養殖』と呼ばれるレベル上げをおこない、ウィザードだった生徒をアークウィザードに転職出来るレベルまで引き上げるのだ

 

そこでゆんゆんはライバルのめぐみんと並び、同期では抜きん出た能力を有していた

 

 

 

だが、ゆんゆんも人間である。ライバルのめぐみんが威力は高いが運用が難しい『爆裂魔法』に傾倒する様に、ゆんゆんにも問題があった

 

それは、人付き合いが致命的なまでに下手な事である

 

 

ゆんゆんは紅魔族には珍しく、自己主張はあまりしない。人がよすぎる部分があった

 

ゆんゆんのお金目当て、とまではいかないが、それを切欠にしようとした者もいた。が、ゆんゆんの純粋というか天然ともいえる受け取り方で敢えなく目論見は潰えてしまう事も多々あった

 

その内、ゆんゆんを見守る空気が出来上がってしまい、その空気を壊せない為にゆんゆんから近付く事も出来なかった

 

唯一の例外のめぐみんは年頃の娘らしく、素直になることが出来ず、いざというときにしか、友達と呼ばなかった

 

 

無論、大人達もどうにかしようとする動きもありはしたが、紅魔族特有の楽観的な考えからついぞ、実行されなかった

 

 

 

 

この様な経緯から、ゆんゆんは冒険者としてスタートしたにも関わらず、里にいた頃と同じ様な孤独感を味わっていた

 

それからの脱却を目指すべく、占い師に自分の今後を占って貰ったのだ

 

なお、故郷の占い師志望のそけっとは

「占いはあくまでも切欠にすぎない。最終的に貴女が何かをしないと駄目」

といってゆんゆんに言っていた

 

ゆんゆんも分かっている。だが、怖いのだ

だから、道標が欲しかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなゆんゆんは占い師の地図を元に指定された場所に向かっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

キャベツ?は取り敢えず落ち着いた

 

やはり、閣下の『エレガント』は偉大だと、キャベツは感銘を受けていた

 

 

 

ならば

 

 

周囲確認!

 

森の中!ヨシ!

 

前方!森!後方!湖!

 

右!森!左!崖!

 

周囲確認ヨシ!

 

 

 

キャベツは冷静ではなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんは湖の傍の森の中にいた

 

「この辺、よね?」

不安そうに思わず呟く

 

当然、返事はない

 

 

だが

「グオオッ!」

ゆんゆんの側にいつの間にかモンスターが忍び寄っていた

 

「きゃあっ!」

ゆんゆんは驚いてワンドを思わず向けてしまう

 

「ガアッ!」

 

「うっ!」

向けられたワンドをモンスターは払いのけるとゆんゆんから苦悶の声が上がる

 

バキャァッ!

 

勢い余ったモンスターの腕が近くの樹を薙ぎ倒した

 

 

「あ、ああ」

ゆんゆんは恐怖で震えた

 

 

 

 

 

 

 

キャベツは大きな音がしたような気がした

 

独り言が多かったので、上手く聞き取れなかったが

 

 

やることもないので、そちらに跳ねて向かった

 

 

 

 

 

 

 

「ゴアアッ!」

 

ゆんゆんの目の前でモンスターが腕を振りかぶる

当たれば間違いなく死ぬだろう。でもワンドは遠くに飛ばされてしまった。それにゆんゆんは諦めてしまっていた

 

 

ただ

 

「お友達、欲しかったな」

それだけがゆんゆんの悔いだった

 

 

 

 

「させるか!オルァッ!」

そんな声がした

 

 

 

 

 

 

キャベツは取り敢えず少女に攻撃しようとしていた熊?の側面から体当たりした

 

他に攻撃手段はないし、考える暇もなかった

 

「おい!無事か!」

キャベツは少女に声をかけた

 

 

 

ゆんゆんは誰かから声をかけられた気がして、そちらを見た

 

キャベツがいた

 

「ふぇっ」

ゆんゆんは驚くしかなかった

 

 

 

 

何やら少女が驚いているが、それどころではない

 

「グルル」

どうやら、お冠の様である

 

キャベツは少女を庇う様にして

「大丈夫か?」

と声をかける

 

 

 

声をかけられたゆんゆんは

「あ、ありがとうございます」

と返事した

 

目の前のモンスターは一撃熊。名前の通り、膂力が強く下手な冒険者ならば一撃で倒せるほどの力を持つモンスターだ

 

万全のゆんゆんならば勝ち得るモンスターだが

 

「お、大丈夫そうだな。で悪いけどアレ、どうにか出来そう?」

目の前のキャベツ?は視線は一撃熊から外さずに聞いてきた

 

「はい、ワンドがあれば、大丈夫です」

 

「ワンド?ああ、あそこにあるやつか

じゃあ、俺が注意引くから回収よろしく!」

 

キャベツはそう言って一撃熊に突撃した

心配だが、ゆんゆんに出来る事がない以上、ワンドの回収に向かった

 

 

 

「グワアッ!」

 

「いや、怖いな」

軽口を叩いているが、キャベツは恐怖でどうにかなりそうだった

何か口にしていないと、恐怖に圧し潰されそうだ

 

「キャベツさん!いきますっ!

ライトオブセイバー!」

 

光が一閃し、モンスターは倒れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャベツと少女。この出会いは何をもたらすのか

 

まだ、誰にも分からない

 

 

 

 

 

 

 




キャベツ再び!

今回はキャベツにも活躍して貰います


また懲りないな、とか思われるとは思いますが、突っ走ります

よろしければこれからもお付き合い頂けると有り難いです

御一読ありがとうございました


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紅魔族の少女

明日、久しぶりの仕事なので投稿します

前に比べてかなりキャベツが弾けてますが、ご了承の上でご覧下さい

オリジナルキャラクターの設定は後から公開するスタイル


辛くも一撃熊を撃退したキャベツとゆんゆんだったが、

「ふへぇ、ちかれた」

とキャベツが力無く呟いた

 

「だ、大丈夫ですか?

怪我は?」

とゆんゆんは慌てて、キャベツの傍に駆け寄った

 

「何とか大丈ぶっ!」

キャベツに衝撃が走った

 

 

 

 

 

美少女である。文句ない美少女だ

艶のある黒髪、美しく輝く紅い瞳。スタイルもいい

 

生前、女性はおろか、女子にも縁の無かったキャベツにとってゆんゆんは眩しすぎた

 

しかも、髪フェチを自負していたキャベツの好み、どストレートである

 

 

 

「本当に大丈夫ですか?」

いきなりビックリして動きの止まったキャベツを心配するゆんゆんである

 

「だ、だ、だ大丈夫デスヨ?

キャベツウソツカナイヨ」

明らかに大丈夫で無いくらいに動揺しているキャベツに

 

「よかったです」

と満面の笑みを浮かべるゆんゆん

 

 

 

(これだけの美少女、見逃す手はないでしょう

さぁ、助けた事に恩をきせて、お近づきになるのです!)

キャベツの中の天使が囁く

 

(何を寝言を!いきなり距離を詰めるなどナンセンスだ!

まずは、話をするのだ!)

悪魔も囁く

 

(はっ、そんなチキンだから、彼女が出来ても手を出せなかったのでしょう、これだから悪魔は)

 

(抜かせ。第一、22歳で16歳に手を出せば明らかに事案でだろうが!)

 

(何を言うかと思えば、同じ高校生同士、何の問題がありましたか?)

とキャベツの中で天使?と悪魔が戦っていた

 

 

「き、君こそ大丈夫だったの?」

 

「あ、はい。私は大丈夫です。助けて貰いましたから。それと私はゆんゆんと言います」

 

「よかった。ゆんゆんさんか。俺は、キャベツかな?」

 

「えっと、キャ、キャベツですか?」

 

「そう。キャベツ」

 

「そ、そうですか

改めまして、よろしくお願いしますキャベツさん

え、キャベツさん、どうしたんですか」

 

 

 

 

 

 

キャベツはゆんゆんのあまりの可愛さに遂に意識が飛んでしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、王都

 

ここにある変わり者がいた。その男の名はレフェル

王都の人からは『キャベツ狂い』と呼ばれていた

 

 

 

彼には秘密があった。彼はここと違う世界から転生とやらでこの世界に来た

 

その説明をする天使だかは非常にやる気がなく、説明をロクにせず送り込もうとした

 

腹をたてた彼は只管に説明不足な点を責め立てた。転生特典とやらについても詳細に聞き出し、同じ転生者がそれなりの数いることも把握した

 

転生特典は嘗て失われた国家『ノイズ』にまつわる資料を貰った

 

魔王を倒してほしい。等と寝言を言っていたが、御免こうむる

 

何故、一度死んだのに死地に赴かねばならないのか

事実、転生特典を貰って喜び勇んで魔王軍に挑み、死んでいった者の多い事

 

レフェルには理解し難かった

 

そして同じ転生者どもに見つかるのも都合が悪いだろう

 

下手に巻き込まれるだけならば、まだ許せるが、転生特典を奪う輩がいないとも限らないのだ

 

王都には転生者が多いだろうが、彼等は隠す気さえないのか、前世の名前をつかっているから、分かりやすい

 

王都で最近有名な『魔剣の勇者』ミツルギとやらは間違いなく転生者だろう。何やらハーレムパーティーだと聞くが、別に構うことはない

 

彼等はあくまでも高次元の存在である、女神や天使からすれば、使い捨ての駒だろうから

 

でなければ、転生するときに特典だけ渡して、はいサヨナラ。等と出来る筈もない

しかも、一部の『神器』はつかい回されているとレフェルは考えている。高々、駒の為に一々神器を生み出すとは考えにくい

 

更にいえば、機動要塞デストロイヤー。あれも転生者が関わっている

 

馬鹿げている。所詮は魔王と戦うなら女神どもの狗として死ぬのだ

 

 

だから、レフェルは『キャベツ』を養殖しようと試みる

 

力無きものにはこの世界は冷淡なのだから

 

 

 

 

 

 

「お、ここは?」

 

「あ、目が覚めましたか?」

 

「んぎゃ」

目が覚めたキャベツはゆんゆんの声を聞いて、目を開けて変な声を出した

 

「?どうしたんです?」

 

 

 

膝枕されているのか、目の前におやまがありました

 

キャベツには目の毒どころか、猛毒でした

 

 

「ああ、大丈夫、大丈夫」

 

「あ」

ゆんゆんの膝枕から逃れたキャベツだが、ゆんゆんは悲しそうな声を出していた

 

 

 

 

 

キャベツ(チキン)と美少女(孤独の)旅はこれから始まる

 

 

 

 




と言うわけで別ルート二話目です

ゆんゆんはマジで可愛い。な話

キャベツの過去設定は自分と友人の過去を融合した結果です(笑)


因みにチキンは自称です

では、御一読ありがとうございました




2ヶ月の給料の手取りが二万以下って、どういう事なの?


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天界

今回は閑話的な扱いの話です

キャベツ?を放り出した天使と天界のお話です

独自設定、解釈が多分に含まれますが、御堪忍頂きます様お願い致します



キャベツ(チキン)とゆんゆんが出逢いをはたしていた頃、天界は騒ぎになっていた

 

 

 

天界のとある場所

 

 

「あんの問題児め。余計な事しかしない!」

 

「しかし、女神アクアにも責任があるのでは?

一概に彼女のみの責任とするのは、如何かと」

 

「女神アクアはあの者の事を知らなかった。敢えて女神アクアの落ち度をあげるならばこれだけよ」

 

三人はそれぞれ意見を出しあっていた

 

「しかし彼女とて、ノルマを達成しようと努力した結果ですし」

 

「努力?努力と言ったか!その努力のお陰で異世界から此方に引き込んだ転生者がどれだけ消費された!

女神エリスを宥めるのも限界があるのだぞ!」

 

「落ち着け

努力とは本来ならば、我々神の系譜にある善なる行為よ。己が力を高めようと、改めようとする称賛すべき行為だ。たとえそれが実を結ばずとも、それは未来に繋がる素晴らしき行為なのだ

 

その前提を敢えて確認した上で、問うとしよう

しかと覚悟して答えよ

かの天使の行為。それは貴殿の認識では、努力と映る。そう聞こえるが、相違ないか?」

 

最後の人物の発言で場は静まりかえる

 

 

今回の彼等が集まった理由

それは、最近の転生者の異常ともとれる発生にあった

 

 

転生は女神エリスが管理するモンスターの蔓延る世界で命を落とした者達が、新たな生命を授かり、世界へと戻る事を本来は指していた

 

だが、あまりに弱者に厳しい世界でもあった為に、女神エリスは相談の上で、平和な世界へと生まれ変わらせた

 

女神エリスや他の神の系譜の者達にしても、然程に問題無かった筈であった

 

 

だが彼等は人の弱さを知らなかった

 

理不尽な死を遂げた者だけに留まらず、エリスの世界からの平和な世界への人間の流出が止まらなくなった

 

神達は慌てた

彼等が高次元の力を手にいれている根源は人間等の生物からの信仰に依る部分が多い

 

そして人間は生物の中でも取り分け、信仰に厚い者が多く、組織として信仰する為に、減少は避けなければならなかった

 

しかし神とは善なる行為を範とする

故に女神エリスは平和な世界へと行きたがる死後の人間を止める事は出来なかった

 

 

そこで、彼等は平和な世界から不幸な死を遂げ、生前の境遇に不満を持つ者を女神エリスの世界へ転生させる事で、釣り合いをとろうとしたのだ

 

彼等にとって好都合だったのは、平和な世界での神への信仰は自分たちの世界よりも格段に低かった

 

故にそちらの世界にも彼等から送り込み、自分たちの世界への転生システムを創り上げたのだ

 

 

これにより、問題であった世界からの流出は少しずつ収まり始めた

 

ところが転生した者が強大な力を振るう様になってしまう

その為に転生システム自体を問題にするものも現れた

だが、一部の意見であった為に放置され、逆に力を振るう転生者を新しく彼等が力を授けた転生者に倒させる

それにより更なる信仰を獲られるのでは?と考えた。だが、危険を伴う上に直ぐに消費するのは都合が悪い為、強力な力『神器』を与える事が推奨された

 

更に元の住人の中でも力を持つ者には、女神エリスが蘇生させる事も併せて行う事で、流出にも配慮した

 

 

 

 

勿論、善性の女神エリスにはそれとなく誤魔化してである

 

結果として神様は信仰を取り戻した

 

が、これにより、女神エリスと向こうから転生させる女神に信仰が集中するという彼等には皮肉な結果となった

 

 

 

纏めるならば、転生システムは二つの世界のバランスを持つために創られた

 

転生者に与えられる特典は脅威、即ち転生者も含む。者を排除する為に与えられる

 

転生に関わる女神や神にのみ信仰が集中した。と言うことである

 

なお、信仰されていたにも関わらず邪神や悪魔に転じたものは彼等を信仰するものが別世界へと転生した為であったりもする

 

 

その転生システムの根幹ともいえる転生者が最近、転生しても直ぐに消費されているのは大問題だった

 

それを調査すれば、なにやら一人の天使が関わっているとの事。敢えて混乱を避ける為に駄天使と呼称する事とさせて頂く

 

駄天使を追求するのは、彼女の直接の上司であった。彼女は元々やる気のない仕事ぶりだったので、この際ノルマを達成させずに処分するつもりだったらしい。

 

なお、天界における処分は軽い方から勾留、処刑、天界よりの追放である

 

 

 

駄天使を擁護するのは、反エリス派閥の一人である。女神エリスと女神アクアを失脚させ、力を失いつつある自分たちが後釜に座ろうとする者達の代表として来ていた

 

今回の件をアクアにも責任を被せて、先ずはアクアの立場を奪うつもりの様である

 

 

そして最後に恫喝ともとれる言い方をしたのは、前者二人は天使であるのに対して、神の一柱であった

 

 

 

「そ、その儀については、お許しを」

 

「ならぬ。答えよ」

 

反エリス派の天使の懇願など一顧だにしない

 

転生システムは現在の天界を支える支柱なのだ。それを一介の天使が揺るがす事など許容される筈もない

それを利用して自らの権威を上げる者は、語る必要を持たなかった

 

 

「答えぬか」

 

「・・・」

神の追及に反エリス派の天使は沈黙せざるをえない

 

努力と認めたが最後、彼女のみならず彼女の派閥も危うくなる

そうなれば、派閥は彼女を切り捨てるだろう

 

努力と認めなければ、この場で偽りを語った事を認めた事になり、良くて勾留。悪ければ処刑もあり得た

 

 

 

「恐れながら、此処はあの馬鹿者の始末を優先すべきでありましょう

その後で議論するが宜しいかと」

 

駄天使の上司はそう提案した

 

「よかろう。但し、件の天使は天界追放とする

これは決定事項だ。よいな?」

 

 

「「はっ」」

神の発言に二人は頭を下げた

 

 

 

 

 

 

駄天使は天界の牢獄の中にいた

 

彼女から見れば突然、なんの罪もない自分が不当な扱いを受けたのだ。不満しかなかった

 

「出しなさいよ!私はこれから休暇を楽しむはずだったの!

そこの下っ端、さっさと私を出すのよ!」

 

「お断りします」

彼女は自分より格下の天使に拒否されて腹をたてる

 

 

「騒々しい。何事か?」

重苦しい声と共に彼女の処分を決定した神が現れた

 

そして

「貴様は女神アクアの職務を代行しながら、転生者への度重なる違反行為を繰り返した

よって天使の資格なしとみなし、天界より追放する」

彼女にとっての絶望を口にした

 

 

彼女は少しの間、呆然としていたが

「お待ち下さい。私が、女神アクアの職務を代行していたことは事実でございます

ですが、転生者への違反行為をした覚えなどありません。何かの間違いではございませんか?」

と神に反論した

 

「報告書にも記載しておらぬからと、誤魔化せると思っておるのか

まぁよかろう。貴様は今後『リフェ』と名乗れ」

 

 

神が名前を口にした瞬間、彼女は自分にかかる圧力を感じた

 

 

この世界の神や天使は名前がない

 

何故ならば名前によって枷がつけられ、力を制限されるからだ

 

女神『エリス』、女神『アクア』

彼女達は力を信仰という形で供給される為に名を得たのだ

 

しかし、天界追放に伴う名前をつけられる事は天使や神にはあってはならない事である

 

天使の力に枷がつけられる。それだけならば、下界に降りても、支障はない

 

だが、『天使』である事を否定されている

これは天使の力を残さず取り上げられる事を意味する。天使は下界にて何らかの功績を挙げた際に、他者からの称賛などで力を獲られるが、それも取り上げられる

 

 

 

つまりは、『無力な』存在に成り下がって、下界に追放されるのだ

 

「お、御許し下さい。必ず、これまでの行為の償いを致します!」

天使改め、リフェは半狂乱しながらも懇願する

 

「遅いわ。精々、貴様が送り込んだ者達の立場を味わうがよい」

神はリフェを下界に送った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リフェは何処かの平原で目を覚ました

「ううっ、兎に角移動しないと」

リフェは魔力を使おうとするが

 

「つ、使えない。やっぱり。何とか天界に戻らないと」

リフェは宛もなく歩き始めた

 

 

 

神はリフェの天界の知識は残した

 

力があった頃の事と現実の落差を思い知らせる事。力があったから、それに拘る為に出来る事すら見えなくなる事等を期待したからである

 

 

 

 

 

 

神とは慈悲深く、残酷なのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エリスとアクアも大変。な話

序でに転生者について私なりの解釈で書いて見ました

駄天使改めリフェは、暫く閑話のみの登場となる予定です

御一読ありがとうございました


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紅魔族二人

ゆんゆんと知り合いには個性的な人が沢山、な話(当人がその最たる者である事からは目をそらす)


では、いつも通りのクオリティですが、よろしければお付き合い下さい


キャベツとゆんゆんは二人で話していた

 

「えっと、この世界では魔王がいて、魔物もいます

キャベツさんの世界に比べると危ないですよ?」

 

「いや、でもね?」

ゆんゆんとキャベツが何やら言い合いをし始めた

 

「ですから!危ないんです

キャベツさんはキャベツ?ですし、おひとりで生きていくなんて無理とは言いませんけど、難しいですよ」

 

「いや、でもさ。ゆんゆんさんに迷惑かける訳には」

 

 

ゆんゆんからすれば、命の恩人であり、占いに出ていた人物?なのだ

 

彼と共にいたい

とも思う一方で自身をキャベツと思っている事から全く余裕がないと感じられる彼を放っておきたくなかった

自衛の手段などありはしないのだから

 

 

キャベツ?からすれば、ゆんゆんは紛れもない美少女である

お近づきになりたいが、持ち前のチキンハートのお陰でそれも叶わない

 

仮に叶ったとすれば、彼の平常心が持たない事は間違いなかった

 

自称『チキンofチキン』或いは『キングofチキン』は伊達ではないのだ

 

 

つまりお互いに譲れないから、言い合いになっている

 

 

「ですから、危険なんです。せめてお手伝いはさせて下さい」

 

「いや、ゆんゆんさんは美少女だし」

ゆんゆんの剣幕に思わず本音が出てしまうキャベツ

 

全く、これだからチキンは。と言いたくなる

 

 

「び、美少女?」

 

「あ」

キャベツの予想外の答えに真っ赤になるゆんゆん

 

 

 

 

暫くの間、沈黙が支配した

 

 

 

 

 

「わ、私だけで駄目なら他の人を連れてきます」

 

「え、ちょっと、ゆんゆんさん?」

ゆんゆんはそう言い残し、テレポートで去っていった

 

 

なおゆんゆんは、一撃熊の時に咄嗟に上級魔法を習得しており、今回のテレポート習得と併せて彼女のスキルポイントは無くなっている

 

 

 

 

 

紅魔の里

 

ゆんゆんは街に戻り、テレポート屋を利用して紅魔の里に戻っていた

 

ライバルのめぐみんを誘う事も考えたが、彼女は感情的になりすぎる

 

いざというときに冷静に判断出来る人物の方が適任であるとゆんゆんはかんがえていた

 

 

まぁ、少しばかりは、ゆんゆんと同じくパーティーが組めないめぐみんにマウントを取りたい気持ちが無かったとは言わないが

 

ゆんゆんは散々負け続けた為か、そこら辺は気にする様になっていた

 

 

 

 

そこでゆんゆんは知人のねりまきが看板娘をしている酒場へと向かった

 

紅魔族の魔法学校在籍中に、ねりまきが自分のアルバイトしている酒場にあるえが来ている事を遠くから聞いた

 

ねりまきがあるえに酒場に来るなら、注文してほしい。と言っていた様な覚えがあるからだ

 

 

「お邪魔します。ねりまき、あるえはいるかな?」

 

「あ、ゆんゆんじゃない。ひさしぶりね。帰ってきたの?

あるえ?奥にいるけど、注文はしてね」

 

「あ、うん。じゃあシュワシュワお願い」

 

「はーい、シュワシュワありがとうね

相変わらず、あるえ小説書いてるけどね」

ゆんゆんがねりまきに挨拶してからあるえについて訊ねると、やはり此処だったようだった

だが、注文無しは許してくれないようだが

 

 

 

 

 

「何か違うか

さて、どうしたものやら」

紅魔族の少女、あるえは悩んでいた

 

書きたい物のイメージはある。だが、いざ文章にしてみると表現が陳腐化したり、自分の思うようなイメージに繋がる文章が書けないのだ

 

知人の占い師見習いのそけっとは数をこなして経験を積む事を勧めた

服屋のちぇけらは本ばかりでなく、外に出て刺激を受けるのもいいだろう。と言っていたが

 

正直、気乗りはしない。しないが、此のままだとぶっころりーの様なニートに成りかねない

 

それだけは、勘弁だった

 

 

 

そこへ

「あるえ、久し振り」

懐かしい声がした

 

 

 

 

ゆんゆんは浮かない表情をしているあるえを見て、驚いた

 

学生の頃は何というか、常に余裕を持っていた

そんなあるえにもこんな顔をする事があると思うと、ゆんゆんは親近感を覚えた

 

 

 

「おや、ゆんゆんじゃないか。久し振りだね。いつ帰ってきたんだい?」

ゆんゆんの挨拶にあるえは少し楽になった顔で応える

 

「帰ってきた訳ではないかな。あるえにお願いがあって」

 

「随分珍しい事もあるものだね。ゆんゆんが私にお願いとは」

 

 

あるえが言うのも無理はない

 

ゆんゆんという少女は人から頼まれる事はあっても、頼む事はほとんど無かった

 

ゆんゆんが優秀なのも当然あるが、じつのところは、他人に頼む事が出来なかった為に自分でせざるを得なかっただけである

 

 

「実はね、あるえ。私、力になりたい人がいるの」

 

「ほぅ、どんな人かな?」

 

ゆんゆんは素直だからか、騙されやすいし利用されやすい。その様な話ならばあるえにも看過出来ない

 

「えっと、人というか、人じゃないというか」

 

「何だって!人でなしだって!」

思わずあるえが大声をあげた

 

 

あるえの中では何故かキャベツは人でなし認定された

 

 

まぁ、間違いと言い切れないが

 

 

「わかった。ゆんゆん直ぐに行こう」

 

あるえは怒っていた。確かに学生時代にあるえも含めてゆんゆんをからかいはしたが、誰もゆんゆんを嫌ってはなかった

 

そんなゆんゆんを騙そうとする人でなしならば、容赦出来るわけない

 

 

あるえは人でなしに一撃食らわせようと決意した

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、あるえ?何か勘違いしてない?

ねぇ、ちょっと!」

 

なお、制止しようとするゆんゆんの声は聞こえていなかったりもする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君がゆんゆんを騙す、人で、な、し、か?」

 

あるえが自分の勘違いで真っ赤になるまで、もう少し

 

 




スマホを落として、画面が割れた。編集中のデータがとんだ

なら、次回に回そうとする作者でした

合流するのをめぐみんと迷いましたが、やはりカズめぐは譲れないので、あるえになりました

あるえはこれから、ゆんゆんとキャベツ?のツッコミに苦労してくれる事でしょう

ま、小説のネタになるなら、あるえとて本望でしょう

では、御一読ありがとうございました


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誤解

前回の物語と大幅に違う部分があります

御注意の上で御覧下さい


ゆんゆんが悪い人(あるえはほぼ男と見ているが)に騙されていると確信したあるえはゆんゆんと一緒にその人物の居る森の中へ向かう事になった

 

途中、テレポート屋を利用する為に時間があり、ゆんゆんとその話に自然となっていった

 

 

 

「だから、あるえは何か勘違いしてない?別にその人は私を助けてくれた人で、悪い人じゃないから」

 

「だが、ゆんゆんにそう思わせる為にその様な事をした。とも考えられはしないかい?」

 

「そんなことで一撃熊の前に出るとは思えないよ」

 

「しかし、そんなにタイミング良く現れるのは不自然ではないかい?

それに合流する場所が森の中というのも、おかしな話だろう?」

 

「そ、それはそうだけど

でも、その人は私をか、可愛いって言ってくれたし」

 

あるえの誤解を解こうとするゆんゆんだが、流石は小説家志望と言うべきか、的確に反論する

 

「ゆんゆん。それは悪い人間の常套句ではないかい

確かにゆんゆんは可愛らしいがね」

 

最早あるえの中のイメージは可愛いゆんゆんを騙そうとする悪い男で固まりつつあった

 

 

 

テレポート屋を利用してアクセルの街に着いたゆんゆんは、街の外れに行くと、あるえと共にテレポートで転移した

 

「そういえば、その男の名前を聞いていなかったね」

 

「キャベツさんよ」

 

「は?」

 

転移間際にこんな会話があったとか

 

 

 

 

 

 

 

キャベツはゆんゆんがいなくなってから、どうするべきか考えていた

 

彼女は他の人を連れてくる。と言った

 

確かに美少女のゆんゆんと二人きりは、前世?でチキンな上にチェリーな自分には耐えきれまい

 

 

だが、初対面の人物を前にしてキチンとした対応が出来るかは怪しかった

 

キャベツの前世は人付き合い関係は上手くいった試しがなかった

 

 

実はこの男もまた、『ボッチ』に近しい者であったのた

 

ボッチでチキンにチェリー。明らかに無駄な物が付きすぎているような気も本人もしていたが、事実なので仕方ない

 

 

かといってゆんゆんが戻ってくると言った以上、この場を離れるのはよろしくない

 

もしもそんな事を知れば、ゆんゆんは悲しむだろうし、初めてあった娘にそんな思いをさせたいとは思わないから

 

しかし、それでも明らかに人外な自分がゆんゆんと一緒にいるのはゆんゆんに取っても不利益になる事も間違いない

 

 

キャベツの転がりながらの苦悩は、ゆんゆん達が到着するまで続く事になる

 

 

 

 

 

 

 

「ここかな」

 

テレポートしたゆんゆんとあるえは森の中にいた

 

「いや、此処かな。じゃなくてキャベツさん?とはどういう意味だい?

流石に独特な感性を持つ私にも普通でないのは分かるのだが」

 

「へ?だからキャベツさんよ

えっとあっちかな?」

あるえの困惑等、気にも止めないゆんゆんだった

 

「いや、ちょっと待とうか

キャベツとは普通の名前か?いや違うだろう

仮に両親からその様な名前を付けられたなら、間違いなくグレるだろう

つまりは、そういう人物の可能性も残っている、のか?

 

いやいや、落ち着け、私

どんな感性を持てば我が子に野菜の名前を与える?

『キャベツ採れた』、『キャベツ食べよう』とか明らかに虐めというレベルではないだろう

 

まさか、キャベツ自身?

まてまてまて、幾ら何でもそれはあり得ないだろう」

あるえは様々な可能性を小声で呟いていた

 

 

 

彼女の不幸な点は、彼女のあり得ない予想の中に真実が入っていた事であろう

 

 

 

「あ、ゆんゆん」

 

「キャベツさん。どうしたんですか?」

木の影で隠れているが、誰かとゆんゆんは会話している

 

 

 

気を取り直してあるえはゆんゆんを守るべく、その人物へと声をかける

 

「君がゆんゆんを騙そうとす、る、人で、なし、か?」

あるえの言葉が途切れ途切れとなる

 

 

それも仕方ない。ゆんゆんと話をしているのは、緑色の物体なのだから

 

だが、それよりもあるえには言いたいことがあった

 

「君がキャベツさんか

敢えて言わして貰うが、君はレタスじゃないか!」

 

 

 

あるえの発言にゆんゆんとキャベツ?は止まった

 

 

 

 

 

そうなのである。実はキャベツと主張していた彼の種族?はキャベツではなく、レタスだった

 

ゆんゆんもわかっていたが、自身をキャベツと主張する彼を傷付けたく無くて、否定出来なかったのだ

 

 

優しさは時に人?を傷つける。そんな話だった

 

 

 

 

キャベツとレタスを間違える?と思われるかも知れない

 

が、この世界に来たばかりで知識もない上に、多少正気を失いつつあった彼には仕方なかった

 

なお、メタな話になるが、本来の物語においても某女神はキャベツとレタスを間違えた事を考えるとあり得ない話ではないのかも、知れない

 

 

 

 

 

「そっか、俺キャベツだと思ったけど、レタスだったのかあ」

キャベツと名乗っていた男?はショックを隠せない声色で呟く

 

「だ、大丈夫です。キャベツさんがレタスだったとしても私がいます

ずっと、傍にいますから」

 

「ははは、ありがとうゆんゆん」

さらっと重い発言のゆんゆんに空虚な声で応えるキャベツであった

 

 

 

 

「えっと、私が悪かったのかな?」

あるえは二人の様子をみながら、冷や汗をかいていた

 

 

 

 

 

 

 

「いやよかったよ。ゆんゆんを騙す、人でなしと思っていたからね。勘違いしていたようだね。すまない」

 

「えっ、俺人でなしなの!」

 

「あるえ!酷いよ」

あるえの謝罪の内容にキャベツ改めレタスはショックを受けていた

 

「しかし「人じゃない」と言われたなら、そう受けとる事も出来るだろう」

あっさり開き直るあるえだった

 

「まぁ、いいですけど。確かにニュアンスは似ていますから、勘違いするのも仕方ないの、か、も」

レタスは硬直した

 

 

 

 

 

ここで今の状況を説明すると

 

レタスと美少女のゆんゆん。そこに『紅魔族一の発育』を誇るあるえがいる

 

美少女のゆんゆんに対して、同年代ながらも美女とも取れなくもないあるえ

 

 

はたして、チキンでチェリーなレタスに耐えきれるか?

 

今までは自身の根幹に関わる事で興奮と混乱していた為に大丈夫だった。しかし、冷静になると無理なのだ

 

 

 

 

つまり

「きゅー」

レタスは失神した

 

「え、レタスさん?どうしたんですか?」

 

「やれやれ」

 

焦るゆんゆんと呆れるあるえの声が森の中に響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言うわけでキャベツでは無くてレタスだったという話

何かありましたら、感想の形で御意見いただけると有り難いです


では、御一読ありがとうございました


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名前をつけろ!

キャベツ(仮)からレタス(真)になりました

割と前回の物語とは違うテイストでお送りします

宜しければ御一読下さい


「ごめん、美女と美少女がいるので、つい気絶してしまった」

 

「もう。前もそうですけど、心配したんですよ。あるえは仕方ないでしょうけど、私には早く慣れて下さいね?」

 

「いや、だから待ってくれ。美女と美少女?

というか以前にもあったのかい?

ゆんゆん何で君は少し嬉しそうなのかな?

というか、ツッコミどころが多すぎると思うのだけど」

 

キャベツ改め、レタスの言い訳にゆんゆんは自分のアピール混じりで返し、あるえはレタスとゆんゆんのツッコミに忙しくなっていた。というか既に泣きが入っていてもおかしくなさそうだ

 

「え、美少女はゆんゆんで、美女はあるえ?さんだけど、問題あったかな?」

 

「えっ、そ、そ、そんな事ナイワヨ」

 

「ゆんゆんは落ち着いた方がいい。明らかに動揺しているのが丸わかりだよ

何故、疑問的な呼び方なのか気になるが、私はゆんゆんと同い年だよ」

 

「えっ、え?

マジですか」

あるえを美女認定するレタスに、動揺しているゆんゆん。レタスの認識を改めようとするあるえだった

 

「何故、そんなリアクションになるのか、後で聞くとしよう

そうだね、自己紹介しようか

 

 

我が名はあるえ。紅魔族一の発育にして、やがて作家をめざすものだ」

紅魔族風の自己紹介をして、やや胸を張るあるえ。それを見て、明らかに動揺するレタスであった

 

「ええっ!あ、あるえ、それするの?」

 

「勿論たろう?何のためにレッドプリズン(魔法学校)に行ったと思っているんだい?」

 

「少なくとも、名乗りの為じゃないと思うけど」

 

「ゆんゆん、知らないのかな?

校長に聞いたら微妙な顔で、養殖と名乗り方、それにかっこよさを学ぶ目的で我が母校は創られた事を教えてくれたが?」

 

「何それ」

 

 

残念ながら、これは事実だったりする。

 

元々、紅魔族の里に対して頻繁に魔王軍の襲来がある

これに対応するための養殖である

 

更に紅魔族のアイデンティティとも言える、名乗りをかっこ良くするための教養。それを学ぶための集まりが高じて学校となったのだ

 

 

 

「さて、我が母校の教えを実践する意味でも、自己紹介をしようか、ゆんゆん」

 

「うう、本当にするの?」

 

「勿論だとも。それに君の友人も目を輝かせているようだけど?」

躊躇うゆんゆんに、レタスも期待している事も伝えるあるえ。逃がす気はないようだ

 

「で、でもレタスさ、ん」

ゆんゆんの言葉は最後まで紡げなかった

 

というのも、ゆんゆんの方を明らかに期待している眼差しで見つめているレタスがいたからだ

 

 

 

ボッチにチキンにチェリー。そこに中二病まで加わると最早、闇鍋である

 

生前のレタスの友人ならば

「属性過多もええ加減にせぇ」

と言いそうな話であった

 

 

「わ、我が名はゆんゆん!紅魔族のアークウィザードにして、上級魔法を操るもの」

と若干顔を赤くしながら、自己紹介をする

 

「我が名は、あれ?名前がなかった」

 

あるえとゆんゆんに感化されたのか、名乗りをあげようとするレタスは、肝心の名前が無いことにショックを受けた

 

「えっ、名前が無いんですか?」

 

「これは酷いね」

ゆんゆんとあるえの発言が痛いレタスだった

 

 

 

 

「という訳でレタスさんの名前を考えましょう」

ゆんゆんは名前を考える事を提案した

 

「いや、別にレタスでいいような」

 

「いや、流石に同意できないね

名前とは個を示すもの。安直に過ぎる

そもそも、センスの欠片もないだろう」

 

思考放棄気味なレタスの発言をバッサリ切るあるえ。作家志望として、言葉に妥協したくはないようである

 

「ふむ、レタスの亜種にナムルという物があったらしい。合わせてナタルでは、どうだろうか?」

 

「えっと、いいと思います」

あるえの真っ当な提案にゆんゆんは同意した

 

 

決してゆんゆんの付けようとした名前がアレだったからでは、ない。決してだ

 

やはりゆんゆんも紅魔族だったという事である

 

「ナタルか。うん、いいかな

これからは、ナタルと名乗ろう」

レタス改めナタルは嬉しそうに言った

 

 

なお、ナタル自身はグリーンボールとかサニーレタスからサニーとかの案があったが、言わなくて正解だったと安堵している

 

 

「我が名はナタル!レタスにして、やがて野菜王?を目指すもの!」

ナタルはノリノリで名乗りをあげた

 

 

馬鹿は死んでも治らないらしいが、チキンとチェリー、中二病もそうらしい

 

 

 

 

ナタルの名付けも終わった一同は今後の事を話し合う事にした

 

「幸い、ナタルさんはそこまで大きくないので、街に連れて行けると思うんです」

 

「流石に無理があると、思うね

ならゆんゆんが此方に住む方が早いだろう」

 

「いやいや、それはどうですかね、あるえさん」

 

少し暴走気味なゆんゆん。ゆんゆんを落ち着かせる為に少々無理な事を言うあるえ。それに反論するナタルであった

 

あるえの計算違いはゆんゆんは友人が絡むと暴走しやすい事を考慮しなかった事だった

 

 

「わかりました。私も此処に住みます」

 

「「えっ?」」

ゆんゆんの発言に思わず声を揃えてしまうあるえとナタルだった

 

「以前ふにふらさんが言っていました「大事な者からは離れない方がいい」って」

 

「いや、その理屈はおかしくない?ゆんゆんさん」

ナタルはゆんゆんの発言に頭を抱える

 

「あのブラコンは何をゆんゆんに言っているんだ」

あるえは一部で『紅魔族一のブラコン』と呼ばれている友人の事を思い出して、頭をおさえた

 

 

 

なお、当人の名誉(笑)の為に言っておくと、ふにふらはブラコンを否定しているが、もっと性質が悪い

 

四六時中とまではいかないが、結構な頻度で弟に接している。世話好きと彼女は言っているが、明らかに尋常ではないらしい

 

ゆんゆんは参考にする人物を選ぶべきであろう

 

 

 

 

暴走するゆんゆんを止めるべく、あるえとナタルは共同戦線を組んだが、結局ゆんゆんの主張を受け入れる形となった

 

 

なお

「だから、森の中で生活するのは厳しいだろう

現に一撃熊に襲われたんだろう?」

 

「そうかも知れません。なら、あるえと一緒なら大丈夫だよね?

あるえも小説のネタになると思うけど」

 

「・・・・ああ。それならば悪くないかもしれないね」

 

「いや、悪いからね!主に俺の精神の安定面で!」

 

懸念を示すあるえに、あるえを見事に説得するゆんゆんだった

紅魔族の高い知性の無駄遣いである

 

傍で叫んでいたレタスの主張は二人にスルーされたが

 

 

 

「何、魔物避けの効果のあるテントは多少値が張るとはいえ、売っているからね」

 

「お風呂とかもその内揃えたいですね

確か王都に組立式のお風呂を見たような気がします」

 

「それは是非欲しいね」

あるえとゆんゆんは既に暮らすための道具を打ち合わせていた

 

 

某レタスは金が一銭もないので、発言権はなかった

 

 

 

 

「では、アクセルの街に買い出しに行ってこよう

まだ、夕刻には早い。日が暮れるまでには戻れるだろう」

 

「その間にテントを建てる場所を決めておきますね」

 

と言うわけであるえはアクセルへ買い出し。ゆんゆんとナタルは場所選びとなった

 

 

 

 

 

アクセルの街で食料や日用品等を買い込んでいたあるえに声がかかった

 

「おや、あるえではないですか。貴女が紅魔の里から出るなんて、初めて見ましたよ」

 

「久しぶりだね、めぐみん。そういえばアクセルの街にいるとゆんゆんが言っていたね」

 

魔法使いらしい三角帽子に片眼を隠す眼帯をした小柄な少女、めぐみん。にあるえは応える

 

「ゆんゆんですか。それにしてもゆんゆんは相変わらずのボッチですかね。少々心配ですが」

 

「そういう君も随分とやらかしていると聞いたんだが?

紅魔族というだけで微妙な扱いを受けている理由は君とゆんゆんのせいだと思うけどね」

 

「うぐっ、し、しかし仕方のないことではありませんか!」

 

「君の真っ直ぐな精神は凄いとは思うが、爆裂魔法でやり過ぎるのはどうかと思うよ」

 

「そ、それよりもゆんゆんです。あのままで冒険者を続けるのは難しい様な気がします」

 

 

 

 

『アクセルの街の紅魔族には近づくな』

最近、アクセルの冒険者達の一部で言われている話だ

 

クエストに行けば敵を見るなり、爆裂魔法で吹き飛ばすめぐみん

 

クエストに言ってもひたすら慌てていて、実力を発揮できないゆんゆん

 

 

上級職のアークウィザードながらも周囲からの評価は厳しかった

 

ゆんゆんはソロでも出来るが、めぐみんはソロの場合は確実に死ぬ事になるために出来ない

 

ギルドとしても、頭の痛い問題だったりする

 

 

 

「まぁ、相変わらずで安心もしたけどね」

あるえは苦笑した

 

「ああ、それとゆんゆんには友人が出来たよ

中々面白くなりそうな人だよ」

 

「え」

あるえのカミングアウトにめぐみんの表情が消えた

 

 

 

 

 




レタスの名前はナタルとなりました

今回、案を頂きましたルマンド様、並びに前回の名前を頂きましたディヴァ子様には深く御礼申し上げます

御一読ありがとうございました



お気に入りの多さにびっくりする毎日ですが、駆け抜ける所存です


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理想と現実の狭間で

アルダープにもスポットライトを当ててみよう。な話





あるえとめぐみんが話をしていた頃

 

 

 

「全く、忌々しい奴等だ」

アクセルの街の領主アルダープは窓の外に見える馬車を見下ろしつつ、苦々しく呟いた

 

 

つい、先程までアルダープと話をしていたのは、王都の貴族連中の一人であった

 

 

彼等は王都の反王室派とも言える勢力に属していた

 

 

 

現在のベルゼルグ王国は魔王軍の攻勢にさらされてはいるが、双方ともに決定打にかけており、結果として膠着状態となっていた

 

だが、一方で財政は予断を許さない状況であり、エルロードなどの諸国からの支援を充てにせねばならなかった

 

 

 

アルダープからしたら、こんな国の権力を掌握したところで旨味はないと思う。だが彼等、反王室派は権力を握りたいらしい

 

 

 

 

アルダープはかつては唯の商人だった

当時の彼はベルゼルグ王国の資金力を何とかして、取り戻そうとしていた青年だった

 

何の因果か、取引のあった反王室派からの力添えを受けて、アクセルの領主となった

 

 

彼は冒険者達の利益の一部を自分を介して王国に還元すべきと考え、冒険者ギルドに対して税の支払いを命じた

 

その他にも『初心者の街』であるが故に曖昧な制度を改め、それもまた徴税の対象とし、ベルゼルグ王国に納める事にした

 

 

 

ところが、最近になってアルダープは初めて知ったが、王国に納めるべき資金は反王室派の元に全て納められていた

 

アルダープは領主とはいえ、大貴族のダスティネス家の様に王家との繋がりはなかった

 

自分を領主にした反王室派への義理もあったので、彼等を窓口にしたのだが、それが裏目に出てしまった

 

 

 

先の貴族は最近、アルダープからの献金の無いことに派閥のトップが不満を持っている事を告げて、早急の献金を求めるとだけ言い残して帰っていった

 

 

 

 

「今まで私のしてきた事は何だったのだろうな」

アルダープは自嘲した

 

 

冒険者や領民に負担をかける以上は、アルダープとて贅沢はしていない

 

一応は応接間や使者等を通す場所だけは最低限取り繕ってはいたが

 

 

しかし、それを知らない領民や冒険者達。更には王都の良識派の貴族からは不当に財を集める悪徳領主。と見られている

 

 

 

 

アルダープは最早、笑うしかなかった。自分は唯のピエロだったのだから

 

 

 

 

 

ならば、奴等のいう通りに悪徳領主として振る舞ってやろう

 

 

王国?領民?知ったことか

 

 

 

 

アルダープの中でナニかが外れた

 

 

 

 

 

 

この時を境にして、アルダープは邸宅に悪魔やモンスターを密かに集め、逆らうもので目障りな者は目立つ事なく始末していく様になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に来るのかい?めぐみん。正直、おすすめはしないよ」

 

「何を言っているのですか。あのゆんゆんに友人が出来た等と言うならば、その友人を確かめる必要があります」

アクセルの街から少し離れた森であるがとめぐみんは話をしている

 

「はっきり言うなら、常識で考えると色々とおかしい話だから、本当に来るのかい?

止める事をすすめるよ?」

 

「何度言っても無駄ですよ、あるえ

そもそも本当に友人がいるならば、そこまで隠す必要はないでしょう?

ゆんゆんに頼まれでもしたんですか?」

あるえは心から忠告しているが、めぐみんは全く聞き入れない

 

「やれやれ、ここまで言っても聞かないなら、仕方ないね

ただし、くれぐれも勢いに任せて変な事をしないで欲しいね」

 

「大丈夫ですよ。そこまで猪突猛進ではありませんよ」

あるえは内心でため息をつきながら、めぐみんの同行をゆるした

 

 

 

 

 

 

めぐみんはあるえに連れられて、ゆんゆんの元に着いた

 

着いたのだが

 

「な、な、な、なっ」

めぐみんは驚愕の余り、言葉が出なかった

 

「あれ?めぐみんじゃない。どうしたの?」

 

「あ、お帰りなさい、あるえさん

お客さん?」

 

「ああ、戻ったよ、ナタル。彼女は私とゆんゆんの同級生でね」

 

「ええー」

 

目の前でゆんゆんとあるえが緑色の物体と話をしていた

 

「何なんですか!あなたは!」

めぐみんは絶叫した

 

「めぐみん、ナタルさんに失礼だよ」

 

「まぁ、気持ちは解る」

 

「え、妹さんとか、後輩じゃなくて同級生!」

ゆんゆんは抗議し、あるえは遠くを見ながらめぐみんに同意した

ナムルはめぐみんとあるえの同級生だということに疑問を持った

 

「おい、私がゆんゆんとあるえの同級生であることに何か問題があるのなら、聞こうじゃないか」

めぐみんはナタルの発言に噛みついた

 

「え、いや、まぁ、うん。・・・・・ファイト♪」

何やら躊躇った後に応援されためぐみんだった

 

 

 

 

 

 

「離して下さい!この目の前のレタス?に思い知らせてやるのです!

というか、乙女として、ここは譲れません!

だから、離すのです!あるえ!」

激昂しためぐみんがナタルに飛び掛かろうとしたので、あるえは取り押さえた

 

「駄目ですよ!女の人にそんな事を言ったら!」

 

「はい。申し訳ないです」

 

少し離れた所ではゆんゆんがナタルに説教していた

 

 

「というか、あるえ!あまり体をくっつけないで下さい!幾ら私でも泣きたくなります!」

 

「いや、離したらナタルに襲いかかるだろう?

流石にやりすぎだろう」

 

「あるえにはわからないのですよ!幾らモノを食べても成長しない人間の気持ちは!」

 

 

「あ、えっと、めぐみんさん」

恐る恐る荒ぶるめぐみんにナタルが話しかける

 

「・・・・・何ですか」

どうにか言葉を絞り出すめぐみん

 

「ごめんなさい。失礼だったよね」

 

「当たり前です。デリカシーのない男?ですね」

 

「うん。だけど、これだけは言わせて欲しい」

 

「はぁ。何ですか」

 

「俺の知ってる名言

貧乳はステータスだ!希少価値だ!」

 

「ブッコロ!」

 

 

 

 

この後、めぐみんによってナタルはボコボコにされましたとさ

 

 

 

 

 

 




悪ふざけした気もするが、仕方がない。人間だもの


めぐみんファンの皆様、申し訳ない



まぁ、私もファンですけども



では御一読ありがとうございました


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能力

さて、ナタルの転生特典?が決まりました

役に立つかどうかは、別ですが


「痛たたた」

ナタルはめぐみんによってボロボロにされていた

 

ボディがレタスの為にレタスの葉っぱを剥かれて、何時ものサイズの半分位までサイズダウンを果たした

 

 

最初はめぐみんに同情して、手を出さなかったゆんゆんとあるえも流石にやりすぎ。ということでめぐみんを止めに入った

 

 

 

 

そこのレタスの自業自得と言えば、そうなのだが

 

 

 

 

「めぐみん、いくらなんでもやり過ぎよ!」

 

「そうだね。彼?に非があったのは間違いないが、少しばかり過剰に見えるよ」

 

「うっ、すみません

少々やり過ぎました」

ゆんゆんとあるえの追及にめぐみんも素直に謝るしかなかった

 

 

 

 

 

今回の件はナタル、めぐみん、双方に非があるとして、お互いに謝る事で決着した

 

 

 

 

「しかし、喋るレタスとは、驚きましたね」

 

「それはそうだろう

私の場合は最初はキャベツさん、と言われていたから、めぐみんよりも困惑したよ」

しみじみと語るめぐみんにあるえも同意する

 

「キャベツさん、ですか?私にはレタスに見えるのですが?」

 

「悪かったねぇ!動揺していたんだよ!」

めぐみんの疑問にキレ気味に返すナタル

 

「というか、ゆんゆんは訂正しなかったのですか?

いくらなんでも、ゆんゆんがその様な呼び方をするとは思えません。となれば、ナタルさんが自分で名乗ったとなりますから」

 

「えっ、あ、その、見た目がレタスなナタルさんがキャベツって主張しているのを見ていると言いづらくて」

 

「気持ちはわからなくもないけど、そこは否定する所だと思うよ」

ゆんゆんの言い分にあるえは多少非難した

 

 

 

とはいえ、自分でキャベツなんて言っているレタスというのも、想像しにくい話であるし、面と向かって否定するのも確かに憚られる

 

更にそれが対人関係の能力が低いゆんゆんならば、仕方がないと言えなくもない

 

 

 

 

 

「そ、それは済んだことだ、ね」

ナタルは必死に止める話題の変更を求めた

 

「ふふ、そういう事にしておこうか」

 

「そうですね」

 

「あ、あるえ。テント買って来たよね?」

 

「テント?何故テントが要るのですか?」

 

「ああ、ゆんゆんがナタルさんと離れたくないようでね。私も付き合うけども」

 

「成る程、だからモンスター避けの大型テントなんですか」

唐突な話題の変更だったが、めぐみんは納得したようだった

 

「そういえば、何処にテントを張るつもりだい?」

 

「あ、それは」

 

「そっちの竹林の中です」

あるえの疑問に応えるナタル

 

「竹林、ですか。しかしタケノコがいますので、危険ではありませんか?

まだ、季節ではありませんが、安全とは言えないでしょう」

 

 

 

この世界では、ナタルのいた世界と色々と違う点がある。サンマは畑で獲れたり、キャベツとレタスは空を飛ぶ。食卓に並ぶ野菜も活きがいいのか、動く。人より大きなカエルもいる

 

とまあ、転生者は此方の常識に慣れるのには苦労するらしいが、めぐみんの言うタケノコもまた、この例に漏れない

 

タケノコは地中より急に飛び出して捕食者に攻撃するのだ

 

 

 

「あ、それならタケノコ達を説得しましたから、問題ないですよ?」

 

「は?説得?どういう事かな?」

 

「えっと、ナタルさんが声をかけたら、タケノコ達が一斉に出てきて、言うことを聞いていました」

 

「いや、ゆんゆん。流石にそれはないでしょう」

ナタルの発言を補足するゆんゆんに、否定的なあるえとめぐみん

 

「じゃあ、実演しますよ」

 

 

 

一行は竹林の中に来た

 

「んじゃ、やりますか

タケノコ達、出てきてくれ」

 

 

ボコッ、ボココッ

という音と共に未だ小さいタケノコが地中から出てきた

 

 

「「は?」」

あるえとめぐみんの声が揃った

 

「あはは、そうなるよね」

 

 

 

 

「どうです?」

あるえとめぐみんが落ち着くのを待ってから、ナタルは聞いてみた

 

「と言われても、ナタルさんはどれだけ常識を破壊したら気がすむのかな」

あるえは疲れた様に呟いた

 

 

なにせ、このナタルと出会ってからはあるえの常識はほとんど通用しなかった

 

確かに小説のネタは欲しかったが、ここまで疲れるのは予想だにし得なかった

 

それでも、好奇心が勝るのは紅魔族としてのサガか、物書きとしてのものなのかは、わからないが

 

 

「・・・・・・もう、何があっても驚かない気がしますよ

ゆんゆんのボッチやあるえの妄想癖なんて目ではないですね」

めぐみんは呆れを通り越して、悟りきった様な表情をしていた

 

「ボ、ボ、ボッチじゃないわよ!」

 

「妄想癖とは心外だね。空想と言ってくれないかな」

ゆんゆんは抗議し、あるえはここは譲れない。とばかりに訂正を求めた

 

 

 

 

 

なお、ナタルのこの能力は天界にて某駄天使が追放された後で急遽付与されたものである

 

駄天使の一連の騒動を聞き付けた女神アクアが、後輩の女神エリスと天界の上層部に抗議した結果だった

 

 

上層部としては数少ない信仰を得ている両女神を敵にするのは得策でないとして、能力の付与に至った

 

 

 

 

余談ではあるが、女神アクアはそれから半年後に下界へと降臨するはめになるが、これはまた別の話

 

 

 

 

 

「しかし、タケノコを操る能力ですか。ピンポイント過ぎて、何とも言い難いですね」

 

「いや、めぐみん。それは早計だろう。あくまでも現在把握しているのが『タケノコを操る能力』だ

もしかしたら、他にも能力があるかも知れないし、例えなかったとしても能力の転用が効くかも知れない」

 

「でも、あるえ。それを調べるの?」

 

「勿論だろう。ナタルさんの今後にも関わる問題だからね。しっかりと検証しよう」

 

「いや、別に要らない様な」

能力について考察するめぐみんとあるえ。やや不安そうなゆんゆんに全く乗り気でないナタルだった

 

 

ナタルとしては、異世界なのは間違いないから興味はある。だからといってゆんゆん達に面倒をかけるのは憚られた

 

一方で割と検証などが好きなあるえは、この機会にナタルの秘密を調べる気であった

 

 

「ゆんゆん。こうなったあるえは止まりませんよ

とはいえ、もう夜になりますし、明日にするべきではありませんか」

 

「そ、そうだよね」

あるえを止める事を諦めたゆんゆんとめぐみんだった




実は割とマッドなあるえでした

まぁ、求道者ですからね


というわけで、御一読ありがとうございました


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番外編 もしも、雪精に転生したら

キャベツやレタスでなく雪精に転生した場合の話


私は雪精と呼ばれるもの

 

 

冬を呼び、春の妨げとなるもの

 

 

毎年、冬の訪れと共に出でて、春の訪れと共に消える

 

 

この世界ではキャベツやレタスですらも戦う術を持つが、私達雪精には備わっていない

 

私達雪精は春の訪れを妨げる。つまり、雪精を倒せば冬を短くし、春の訪れを早く出来るだろう

 

しかし、それは自然の摂理に反する行為だ

 

 

故に冬という現象を護るべく、自然界は一つの強い精霊を生み出した。とはいえ、幾ら強かろうが、問題があった訳だが

 

なお、一般的には精霊は物質でなく、魔力的存在と言われている。これは正しくもあり、間違ってもいる

 

精霊と言っても上位から下位まで幅広い

 

下位の精霊は人間に知覚できないものであり、彼等が『精霊』と呼ぶものは中位以上のものを指す。この辺りから物質に干渉出来るだけの魔力素を有する

因みに一応は私達雪精もこのカテゴリーになる

 

風なども精霊の動きに依るものであり、人間が認識していないだけである。彼等は下級の精霊であるが、結合する事で物理的干渉を可能としている

 

 

 

とはいえど幾ら強い。といってもそれだけでは大した力をふるえなかった。結合が甘いと物理的干渉能力が低い為である

 

ところが、ある冒険者がその精霊をこう呼んだ『冬将軍』と

 

 

名を与えられた精霊は器を持つことで、多数の精霊を集める事が出来る。それにより、強固な魔力的な結合に至り、大掛かりな物理的干渉も出来る様になった

 

 

なお、『冬将軍』は私達より強いが、精霊としては若い部類に入る。その為、歳上で冬を維持する私達雪精を守る事になった

 

 

結果、人間たちは雪精に手を出せなくなったのだ

 

 

人間が言っているらしい『冬将軍は土下座?すれば見逃す』というのも、甚だ間違っている。唯単に雪精以外の魔力を感知して攻撃している彼のセンサーより下にいるだけの事

別に情けをかけたとかそういう話ではない

 

但し武器や敵意には自然界の物だけに反応する為に敵対する冒険者の被害は増える事になる

 

 

私達はただひっそりと生きて、死ぬ。それだけなのだ

 

 

 

 

最近は来なかった冒険者が性懲りもなく現れた

 

冒険者は4人

 

ぱっと見た感じは4人の中では印象に残りにくそうだが、リーダーらしき男

 

何かエライ眩しい青髪の女性。リーダーからは『アクア』と呼ばれている

どうやら同胞を密かに捕獲している様だが

 

可愛いフードを着た少女。杖を持っているところを見るにおそらくは魔法使いなのだろうが、一向に魔法を放つ気配がないのが、不思議である

 

何やら残念な事を言っている美女

寒いはずなんだけど「この寒さもまた、イイ!」とか「たまりゃん!」とか言っているのですが、大丈夫なのだろうか?

 

リーダーの胃袋?ストレスで胃潰瘍とかにならないのかが、非常に気になる

 

 

 

訂正しよう。あの魔法使いの少女も大概だった

 

え、何?『爆裂魔法』?

いやいや、パーティー組んでるんだよね?臨時のパーティーじゃないよね?

何で燃費最悪のネタ魔法取ってるの?

 

同胞8体と魔法使い1人離脱。どう見ても釣り合わないでしょうに

 

 

 

因みに何でか、基本知識?は頭の中にある

意識共有ではないけども知識共有なのかは分からんが

 

 

 

おう『冬将軍』が来ましたよ

さて、どうす、る?

 

 

 

駄目だこの冒険者達

 

アクアとかいう女性は即座に土下座、わかる

魔法使いの少女はガス欠で死んだふり、わかる

残念美女はモンスターに頭を下げられない。とか言ってる

 

いやアンタ同胞に攻撃しても掠りもしなかったよな!

何で『冬将軍』に挑もうとするのさ!

 

 

 

 

 

ええ、冒険者のリーダーが死んだよ

残念美女の頭を押さえつけた時に首チョンパ

 

酷いってレベルじゃないだろう

 

今はリーダーの亡骸に魔法使いの少女と残念美女が泣きながらすがりついている

 

幾ら言っても遅いよ

 

私達雪精みたいに死んでも来年には戻る。なんて事は無いんだし

 

 

 

 

 

嘘でしょう

 

アクアとかいう女性が蘇生魔法でリーダーを蘇生させた

 

 

蘇生魔法なんて、使える人間は居ないはずなのに

もしかして、『女神アクア』?

 

そういえば転生の時に見かけた様な気も

 

 

 

 

彼、または彼女は『転生者』とよばれており、その身に強大な力を授けられる事がほとんどである

 

便宜上彼と呼称するが、彼が転生する際の担当は正規の担当の女神アクアではなく、ある天使だった

 

 

 

とある空間にて

 

「ええっ、変わっていいのかしら?」

 

「大丈夫です、アクア様。私もノルマを達成しないと不味いので問題ありませんよ」

 

「じゃあ、せめてそこの人は終わらせてからお願いするわね」

 

「いえいえ。私がキチンとしておきますから、アクア様は安心してお休みください」

 

「・・・うーん、わかったけど、キチンとお願いね」

 

「はい。万事この私にお任せを」

 

 

アクアが去った後

 

「ふー、アクア様って抜けているのに、以外と責任感あるんだ

あ、そういえば、もう時間じゃない!

ま、適当にしても人間にはなるだろうし、いっか」

 

 

 

 

彼が転生のタイミングでこのような事があった為に雪精に転生したのだ

この際に女神アクアを少しだけ見ることが出来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼はアクアによって『捕獲』され、冒険者のリーダーカズマ達の屋敷にて保冷剤の役割を担う事になる

 

彼はいつもカズマ達の生活を見て楽しんでおり、冒険者としては生きていけなかったが、それでも満足していた

 

 




浮かんだので書いてみました


が、想像以上に書きにくかったです

次回からは本編?にもどります


では御一読ありがとうございました


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距離感

人間関係は難しいって話


あるえによるナタルの能力検証は後日となった

 

それについては約一名程不満をもっていたが、好奇心の権化(あるえ)と、とりあえずゆっくり休みたいめぐみん

この二人のストッパーとしてはゆんゆんには荷が重かった

 

 

 

「さて、テントは張れたし、明日の事を考えるとそろそろ休む事にしないかい?」

 

「そうですね。今日はとても疲れましたから、あるえに賛成です」

 

明日の検証に差し支え無いように早めに休む事を提案する、あるえ。とても精神的に疲れためぐみんである

 

「そうね。そうした方がいいわよね?」

 

「じゃ、俺は外で休むので、ごゆっくり」

 

「え?ナタルさんも一緒に休まないんですか?」

 

納得しかけたゆんゆんだったが、ナタルの一言で驚いた

 

 

「まって。いつの間に俺までテントで休む事になったの?

そんなわけないでしょう、常識的に考えて」

 

「さて、どうしたものかな」

 

「困りましたね。まぁ、私としてはどちらでも構わないのですが」

 

逆にゆんゆんへ反論するナタルに割とどうでもよさそうなあるえとめぐみんだった

 

「え、でもナタルさんの大きさも小さくなったから、テントに入ってもいいと思うけど」

 

 

ゆんゆんがいう通り、ナタルはめぐみんによって大幅なサイズダウンが行われていた

 

最初は1メートルくらいあったにも関わらず、今は半分位にまで小さくなった。元のサイズならば諦めていただろう。しかし、ゆんゆんからすれば、テントに入れれるサイズになったのである

 

ゆんゆんの密かな?願いである『お友達と仲良くテントで一泊』が叶う好機であった

 

 

 

「いやいや、何度もいうけどさ、ゆんゆん達はもう少し自分の容姿に自覚を持つべきだよね!」

 

「はぁ」

ナタルの主張をめぐみんは呆れた様に流す

 

「ゆんゆん、美少女。あるえさん、美少女?めぐみんさん、美少女

しっかり、自覚を持つべき」

 

「あ、ありがとう、ございます」

 

「うん?私のところだけ、おかしくなかったかな?」

 

「まぁ、ほめられるのは嬉しいですね」

ナタルの評価に顔を赤くするゆんゆんとめぐみん。ナタルの発言の裏を感じて怪訝そうにするあるえだった

 

「それで、ナタルさんが私達を美少女と思うこととテントに入らない事に何の関係があるのですか?」

 

「ああ、めぐみんは知らなかったか。ナタルさんがいうには、チキンでチェリーらしいよ」

 

「というか、あるえ。鳥と果物よね?ナタルさんはどちらかと言えば野菜。じゃないの?」

 

めぐみんの疑問に答えるあるえ。その答えに改めて疑問を持つゆんゆんである

 

「チキンは臆病者。そんな意味だったと思う

チェリーは里のぶっころりー達が酒場で言っていた気がするんだが、聞いてみるべきだったかな?」

 

「止めたげてよぉ!」

 

あるえの返答に思わず悲鳴をあげるナタルであった

 

 

 

もしも件のぶっころりーという人物に出会えたならば優しくしようと密かにナタルは誓った

 

 

残念ながら、ぶっころりーはチェリーでニートだったとしても、決してチキンではないのだが、ナタルには知る由もなかった

 

 

 

「つまり、ナタルさんはチェリーという意味をしっているのですね?」

 

「成る程、確かにそうなるね」

 

ナタルのリアクションを見てめぐみんとあるえは確信した

 

「え、でもナタルさんだって言いたく無いことはあるでしょう。無理に聞かなくていいんじゃ」

 

「おや、ゆんゆん。『友達』の事を知りたくないのですか?」

 

「それは駄目だろうね、『友達』だからこそ、知っておくべきではないかな?」

 

ゆんゆんの控え目な抗議だったが、『友達』を殊更強調してめぐみんとあるえは丸め込みにかかった

 

(あ、これヤバイ)

ナタルは不穏な空気を感じとり、その場を離れようとしたが

 

「逃がすわけがないだろう?」

あるえに取り押さえられた

 

「ちょっ!?あるえさん、離して!」

 

「それは無理な話だね。ゆんゆんの友達が何処かへ行くのを見逃すのは、さ」

 

「なら、その満面の笑みはなんなんですかねぇ!」

 

あるえの心底楽しそうな笑顔に全力でつっこむナタルであった

 

 

「あ、あるえ?」

 

「良く考えてもみて下さいよ、ゆんゆん

『一番の友達』である貴女にも知られたく無いことですよ?

逆に私達は知らなくても、ゆんゆんは知っておくべきではありませんか?」

 

 

 

(そんな理屈は)ないです。と言える人間はこの場にいなかった

 

元々社交性に欠けているきらいのあるゆんゆん、めぐみんは当然だが、比較的常識人のあるえとても対人関係は常識外れであった

 

独特な感性を持つ紅魔族であり、魔法学校『レッドプリズン』にて知らず知らずの内にその感性を磨きあげていたのだから、仕方なかったと言えるのだが

 

 

 

「そ、そうかな」

 

「ええ、そうですとも」

 

ゆんゆんはめぐみんに説得されてしまったのである

 

 

 

 

もう一方では

 

「はな、離せぇ!」

 

「ふふ、無理な話だよ」

 

哀れなレタスが美少女に取り押さえられていた

 

 

なお、取り押さえられているのは『チェリー』である

そんな人物?が美少女に密着されている以上は、色々と(精神的に)ヤバかった

 

 

 

そして

 

「あ、あのナタルさん。『チェリー』って、何なんですか?」

 

ゆんゆんからの質問という名の拷問となった

 

「げっふぅ」

 

「え?」

 

「は?」

 

「ちょっ!」

 

 

キャパシティをオーバーしたナタルは気絶した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、あれ?」

 

ナタルは自分を包む温かさで目が覚めた

 

「ゆんゆっ!」

慌てて叫びそうになった己を自制出来たのは奇跡だった。と後にナタルは述懐する

 

 

目の前にゆんゆんの寝顔があったのだから

 

 

 

 

 

 

「え、ナタルさん!ナタルさん!

ど、どうしようあるえ、めぐみん。ナタルさんが気絶しちゃった」

 

「だ、だい、大丈夫だゆんゆん。まずは脈を測ろう」

 

「いや、ゆんゆんは気絶した。と言っているでしょうに。ゆんゆん、とりあえずテントに入りましょう。安静にさせるのが、一番でしょうから」

 

取り乱すゆんゆんとあるえ。それに呆れながらも冷静に判断するめぐみんだった

 

 

 

 

その後で紆余曲折あって、ゆんゆんがナタルと同じ布団に入る事となったのである

 

 

 

 

 

「あーあ。どうするかなぁ」

 

ナタルの呟きがテントの中に響いた

 




些かキャラ崩壊しているのかが不安です

このファンであるえの声優が名塚さんと知って、ヒャッハーしたくらうすでした


では、御一読ありがとうございました



次回より諸々の事情により更新が滞るやも知れませんが、完結はさせますので、気長にお待ちいただければと思います


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ロマンを求めて

シリアスは売り切れです

再入荷か未定となります

予めご了承の上で御一読ください


ナタルにとっては長い夜が明けた

 

 

ゆんゆんという美少女と一緒の布団で同衾。キングofチキン&チェリーなナタルにとっては拷問であった

 

ただし

 

「俺、レタスで良かった!」

 

もしも、ナタルに某宇宙世紀のマスコットロボのアンソロジーの様に手があったならば、億に、いや兆に一つは間違いがあったかもしれなかった

 

とはいえ、寝顔と寝息のWコンボで早々に失神できたのもまたナタルにとっては幸いであったりもする

 

 

今も早朝で布団から出たくはあるが、ゆんゆんに抱きつかれているので脱出不可能である。最難関は越せども予断は許さなかったりもしているが

 

 

なぉ、あるえとめぐみんも寝息をたてていたが、目の前のゆんゆんで限界だったナタルには知るよしもなかったが

 

 

 

因みに気絶していた時にみた夢でナタルは某戦艦の副長をしていたり、某四足の機動兵器に乗っていたりしていて、目が覚めた時いろんな意味で泣きそうになったのはここだけの話

 

 

 

 

「う、ううん」

 

ゆんゆんがどうやら目をさます様であった

 

「あ、おはよう、ゆんゆん

出来れば離してほしいかなぁ。なんて」

 

「・・・っ!ナタルさん!」

 

目を覚ましたゆんゆんはナタルの無事を確認してナタルを抱き締めた

 

「ちょっ!ゆんゆん、ストップ、ストップ!

大丈夫、俺、大丈夫だから!」

 

「本当ですか?」

 

確認するように訊ねるゆんゆん。その目は真っ赤であり、泣き腫らした様になっていた

 

「あ、うん。大丈夫だから」

 

 

 

というよりも、高々『チェリー』の意味を訊ねられた程度で失神するメンタルこそ問題がありそうではあるが

 

 

 

 

 

「やれやれ。朝から騒がしいものだね」

 

「あるえ、いいではありませんか。ゆんゆんにとっての大切な『友達』ですから」

 

やや不機嫌そうなあるえを宥めるめぐみん。心なしか嬉しそうである

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、とりあえずは『チェリー』については棚上げしておこうか」

 

朝食を終えたあるえはそう切り出す

 

「というより、まだ気になるのですか?当人が言いたくないのならばいいと思いますが」

 

「そ、そうだよあるえ。めぐみんの言う通りじゃない?」

 

あくまでも拘るあるえに同意しかねるめぐみんとゆんゆん

 

「私は作家志望だよ。『言葉』に拘りがなくてはね

が、仕方がない。里に戻ったら、そけっとからぶっころりーに聞いてもらうとしようか」

 

(ごめん、ぶっころりーさん。無力な俺を許してくれ)

 

あるえの発言に内心で詫びるナタルだったが、声には出さなかった。流石に二度は遠慮したかったから

 

 

 

なお、ぶっころりーが密かに想いを寄せてるそけっとに聞かせるあたりに、あるえの意地の悪さが見えなくもなかったり

 

 

 

 

 

これから暫く後に紅魔の里でそけっとがぶっころりーにした質問で、里の男たちはぶっころりーに同情したそうな

 

 

 

 

「さて、ナタルさんの能力だが、どの程度応用がきくのかの検証をしようか」

 

「しかし、検証といっても今のところ判っているのは、タケノコを操れる事だけです。何から手をつけるのですか?」

 

「というかめぐみん、貴女も参加するの?」

 

ゆんゆんはめぐみんの参加に驚いていた

 

 

めぐみんも紅魔族らしく、『我が道をいく』タイプであり、あまり馴れ合いを好まないとゆんゆんは思っていたからだ

 

 

「ええ。今は暇ですからね。たまにはいいでしょう」

 

「ふふ、以外と寂しがり屋なのかな?」

 

「いや、めぐみんさんは優しいだけでは?」

 

めぐみんに思い思いの発言をするあるえとナタルである

 

「というか、めぐみんは大丈夫なの?

あまりアクセルの街でいい評判を聞かないけど」

 

「う、そ、それはゆんゆんだって同じでしょう。『孤高の冒険者』なんて呼ばれているそうではありませんか」

 

「なっ、めぐみんは『爆裂魔法』だけじゃない!中級魔法は取ったの?

私はソロでも出来るけど、めぐみんはソロも出来ないでしょう」

 

「うう、しかし『爆裂魔法』は私の目指す道なのです!これをやめるなど出来ません!」

 

「はいはい、二人とも落ち着いて。ヒートアップしてたら、話も出来ないだろ?」

 

熱くなるゆんゆんとめぐみんに割って入って仲裁するナタル

 

「というか『爆裂魔法』って何?

凄いロマンを感じる響きだけど」

 

「まぁ、ロマンといえばそうだろうね」

 

「おや、ナタルさんは爆裂魔法に興味があるのですか?

ならばお見せしましょう!我が爆裂魔法を!」

 

爆裂魔法に興味を持ったナタルに詰め寄るめぐみんと呆れるあるえだった

 

「ちょっと、めぐみん!」

 

「めぐみんさん、近い、近いよ!」

 

 

 

めぐみんも美少女なので近付かれると狼狽するナタルである

 

もう、ヘタレでいいんじゃないかな

 

 

 

 

 

 

 

「ならば見せましょう!我が爆裂魔法を!」

 

 

 

 

めぐみん達は森からかなり離れたところにある崖に来ていた

 

崖の上に廃城があり、そこを狙うらしい

 

 

「廃城だからって、いいのかなぁ?」

 

「廃城は廃棄されているから、問題ないはずだけどね」

 

「でも、何か怪しくないですかね?」

 

「おや、何かあるかい?」

 

「態々崖に城を造る理由が理解できないのですが

攻め込まれたら逃げ道ないですよね」

 

「そういえば」

 

「確かにね」

 

「別にどうでもいいではありませんか

そこに立ちはだかるモノは我が爆裂魔法で粉砕するのみ!

いきます!『エクスプロージョン!』」

 

 

 

めぐみんの詠唱により、巨大な火球が廃城目掛けて落下した

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おおおお」

 

「これは」

 

「凄いんだけど」

 

目を輝かせるナタルにその威力に絶句するあるえ。それでも納得のいかないゆんゆん

 

「凄い!いや、凄いよめぐみんさ、ん?」

 

興奮したナタルだが、めぐみんを見て困惑する

 

「ふふふ。我が爆裂魔法はその絶大な威力故に魔力を使い果たすのです

つまり、今の私は動けません。あるえかゆんゆん、背負ってくれませんか?」

 

「成る程ね。『ネタ魔法』とは良く言ったものだ」

 

「だから!なんで!他の魔法を取らないのよ!

一撃で仕留めても足手まといになるじゃない!」

 

めぐみんの様子を見て納得のあるえと激昂するゆんゆんだった

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ。これではナタルさんの能力検証どころではないね」

 

「どうして、こうなのよ」

 

結局めぐみんを背負ったあるえは検証を断念せざるを得なかった

流石に満身創痍のめぐみんを連れて能力検証は危険と判断する他なかった

 

一方、魔法学校で成績を争っていたライバルの『アレ』な姿にゆんゆんは打ちのめされていた

 

「いや、でも凄いよ!めぐみんさん!

ロマンを感じるね!」

 

「ほぅ、爆裂魔法にロマンを感じますか

成る程、唯のレタスではなかった様ですね」

 

興奮し続けるナタルにニヤリと不敵な笑みを浮かべるめぐみん

 

めぐみんがあるえに背負われてなければ、それなりに格好はついただろうが

 

 

 

「おし、決めた。俺は爆裂魔法を覚えるぞ!」

 

「ん?」

 

「ええっ!」

 

「ほほぅ」

 

ナタルの問題発言に三者三様の反応を返すゆんゆん達

 

「そもそも君はスキルを会得出来るのかな?」

 

「出来ても爆裂魔法はどうかと思いますけど」

 

「貴方も爆裂道を極めますか!

ならば、色々と教えてあげましょう!」

 

とりあえずスキル会得に疑問を持つあるえ、内容に不満があるゆんゆん

爆裂道の同士を見つけて興奮するめぐみんだった

 

 

 

 

 

 

「うっし、目指せ!爆裂魔法!」

 

 

 

こうしてレタスの爆裂魔法挑戦の旅が始まったとかなんとか

 

 

 

 




ミドリカワはシリアスと無情!

ナタルは勢いと熱血!でお送りします


なお、ストッパーのあるえとゆんゆんは相当苦労するでせう


ま、増えるけどね


暫くは熱中症との格闘の毎日となりますので、更新は不定期となりますが、ご了承ください

では御一読ありがとうございました


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エンカウント

大雨でしたので、投稿します

今回も独自設定や解釈がございますのでご了承の上で御一読ください


 

 

めぐみんの爆裂魔法に魅せられたナタルは爆裂魔法習得の為に行動する事になった

 

 

「しかし、結局は廃城を破壊していないのだから、『一撃必殺』とはいかないのだろう?

運用にはかなり気を使うだろうね」

 

「というより、砲台役のウィザードが一発で行動不能になるのは致命的じゃない?」

 

「『一撃必殺』それこそがロマン!

ロマンを追い求めずして、何が冒険か!」

 

「確かに爆裂魔法は決して運用するのに容易なものではないでしょう

しかし!私は爆裂魔法を極めるのです!

それが、あの日の光景に誓った事なのです!」

 

爆裂魔法の運用の難しさに頭を抱えるあるえとゆんゆんに対し、ロマン故に暴走するナタルと爆裂魔法への熱意を語るめぐみん

 

はっきり言ってカオスであった

 

 

 

「めぐみんの誓いは理解できない事もないけども、こうして人に背負われるのはマイナスだろう?

余裕があるならまだしも、切迫した状況では致命的な隙になりかねないだろう?」

 

「・・・・そうですね」

 

「かといって切迫した状況になり難いパーティーなら、爆裂魔法の価値が低くなるだろう

下手をすれば無理矢理にでも中級か上級魔法を取らされる事も無くはないだろう

それを断るならば、パーティーから追い出される事は間違いない」

 

 

 

あるえの分析は間違いではない

 

ウィザード、特に上級職のアークウィザードは様々な中級、上級魔法による高火力が期待されるものである

 

爆裂魔法の様な常軌を逸した超火力は魅力的ではあるものの、貴重なアークウィザードの戦線離脱と引き換えとなると二の足を踏むだろう

 

まして超火力故に使用出来る状況も限定的になる

 

つまりはダンジョン等の屋内では自滅覚悟でしか使用出来ない以上、持ち味の火力も活用しにくい

かといって屋外ばかりの戦闘とは限らない

 

某『氷の魔女』の様に余ったスキルポイントで取るならばいざ知らず、めぐみんの様に爆裂魔法ありきの立ち回りは不可能に近かったし、周囲の理解を得る為には難しいというレベルではなかった

 

 

 

なお、平行世界でのめぐみんはパーティーに恵まれているとしかいえないものであるのは、言うまでもない

 

爆裂魔法に理解があり、かつ効果的な運用を出来るカズマ。些か軽率であるとはいえ、並みのアークプリーストを遥かに凌駕するアクア。爆裂魔法の直撃に耐える事の出来るクルセイダー、ダクネス

 

はっきり言ってしまうと、『有り得ない』レベルの『幸運』である

 

 

 

「ナタルさんの場合はスキルを習得する機会すらも怪しいんです

確かにギルドで冒険者登録すれば、スキルカスタムが出来ますから出来なくはないかも知れないですけど」

 

 

ゆんゆんの言う通り、冒険者登録をすることで冒険者カードが取得出来れば、時間はかかろうとも爆裂魔法の習得も夢ではないかもしれない

 

だが、ナタルはレタスである

 

レタスはキャベツに比べるならば取得経験値は圧倒的に少ない。があくまでも少ないだけなのだ。レタスでも経験値は入る以上はナタルの安全が保証されるかが、非常に怪しい

 

更にレタスは野菜でありながらも、モンスターであるのだ。荒くれ者達の代名詞である冒険者がモンスターを見逃すとは考え難いし、ギルドも放ってはおけないだろう

 

最悪の場合はギルドに入るどころか、アクセルの街に入れるのかすらも怪しい。仮に入れたところで見た目レタスのナタルを受け入れるか?と聞かれれば十中八九は無理だろう

 

ナタルにとっての幸運だったのがファーストコンタクトがゆんゆんであったことなのは間違いないだろう

 

 

 

 

 

廃城近くの森の中

 

 

「兎に角、一旦アクセルの街にめぐみんを送って来よう。その後でまた考えるとしよう」

 

「すいません、ナタルさん。後クエストも見てこないと」

 

満身創痍のめぐみんは宿に送る事にしたあるえとクエストをギルドで確認するゆんゆん

 

別に金銭面では不自由していないとはいえども、ゆんゆんも冒険者である以上はクエストをする義務はある

 

流石に何日もギルドに顔を出さないのはゆんゆんとしても後ろめたいので、ギルドへと行くついでに簡単なクエストを受けるつもりだった

 

 

 

「んじゃあ、俺は此処で待ってた方がいい?

それともテントの建てたところまで戻ってようか?」

 

悲しいかな、ナタル自身には危機感はあまり無かった

 

「いえ、クエストを受けたら直ぐに戻ってきますから、此処に居てくれた方がいい、よね?」

 

「そうですね。ゆんゆんの言う通り、迂闊に単独行動は控える事をオススメします

ナタルさんは例え初心者冒険者でも討伐されかねませんから」

 

「ゆんゆんとめぐみんが言っている様に今は個人で動くのは推奨できないね

私とゆんゆんは用事が終わり次第、直ぐに戻るからこの場に居てくれた方がいいだろうね」

 

「わかった。そうするよ」

 

 

こうして、ゆんゆん達はアクセルの街に戻り、ナタルは待機する事となった

 

 

 

 

 

 

 

 

所は変わり、魔王城にて

 

 

 

「ふむ。中々面白そうな事になりそうだな」

 

仮面のスーツを着た男は一人呟く

 

「バニルよ。何かあったか?

いや、起こりそうか?」

 

仮面の男、バニルに話しかける玉座に座る男

 

「そのようであるな。しかし、我輩の力をもってしても正確には見通せぬ。興味深い」

 

「お前で見通せぬならば、女神関連の者であろうよ

『転生者』かも知れぬな」

 

玉座の男は嘆息した

 

「む、『転生者』とはアレか。他所の世界から特典と非日常を餌に此方に呼び込まれた輩のことか」

 

「耳が痛いものよな。その通りだが」

 

「確か『魔王』たる貴様とて『転生者』であったか?」

 

「全く、当時の私を止めることが出来たなら、殺してでも止めるだろうよ

我ながら迂闊に過ぎたわ」

 

「仕方ない部分もあろうよ

誰しも見知らぬ世界や誰もが持ち得ぬ力には抗い難いである故な」

 

「としても、な。嘗て人間だった身としては後悔しかないものよ」

 

 

実は魔王軍のトップたる魔王自身もまた『転生者』であった

 

彼は今は滅んだ国である『ノイズ』の生み出す脅威に対するカウンターとしてこの世界に転生した

 

 

紆余曲折を経て魔王となり、魔王軍という『人外』を保護する組織を創り出した

 

が、魔王である彼とて末端まで掌握出来ずに人間側との敵対関係となってしまった

 

魔王自身は必要以上の殺生を好まず、現在の幹部であるベルディアやウィズ等の元人間も保護していた

 

 

幸いにして、元人間の彼等は力もあった為に周囲の魔物達との軋轢を防ぐ意味でも、幹部とする事で内部での諍いを封じた

 

 

 

 

魔王である彼からすれば現在の『転生者』達は『同朋』であるものの、彼の『仲間』を守る為に倒さねばならなかった、本人の想いとは裏腹に

 

だが、敵対的な行為を取らない限りは『転生者』と判明しても放置していた

 

 

 

だが、彼の行動は天界から脅威に見える為に、更なる『転生者』を招く結果となったのは、皮肉としか言い様がなかった

 

 

 

 

「まぁ私の後悔はよいとして、『転生者』ならば一度接触してもらえないか?バニルよ」

 

「言われるまでもない。興味深い故な」

 

 

 

 

 

 

 

 

魔王城での話をしている頃、アクセルの街にゆんゆん達は到着していた

 

「さて、アクセルについた訳だがめぐみん。キミの宿への案内を頼むよ」

 

「わかりました。あるえ、よろしくお願いします」

 

「じゃあ私は簡単なクエストを受けてくるわね」

 

ゆんゆんとしては爆裂魔法習得の手伝いは難しいが、ナタルに冒険を体験して欲しかった

レタスである彼には冒険者としての活動はおそらく出来ない

 

 

ゆんゆんなりの気遣いだった

 

 

 

 

 

 

「暇ダナー、といっても、ゆんゆんとあるえさんから言われているからなぁ

でも暇だー」

 

ナタルは一人ごとを言いながら地面を転がっていた

 

そして、ナニかに当たった

 

 

「グルルル」

 

そこには大きな熊さんがいました

 

「あはは、ごめんなさい」

 

「グアアッ!」

 

「ですよねー」

 

ナタル視点熊さん(正式名称、一撃熊)が襲いかかってきた!

 

 

 

 

 

 

 

「うひゃー」

 

ナタルは逃げ出した!




爆裂魔法への道は険しい!

さあ、ナタルよ。様々な壁を乗り越えよ!


とりあえずは人にはなれません。させません


下手すると魔王軍ルートもあり得なくもなかったり
まだ、決めかねてますが

先ずは、この物語を終わらせてからになりそうです


梅雨が明けると熱中症に注意しないと不味いです
今年はコロナもありますが、皆様くれぐれも御自愛下さい

では、御一読ありがとうございました


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キャベツ

バニルが助っ人する事も考えましたが、今回は止めにしました

マンネリ化は良くない文明


知り合いにこの小説がバレて「頭沸いてんな」と言われましたが、続けます

今回も独自設定と解釈が乱舞しますが、ご了承の上で御一読ください


 

 

 

「ガアッ!」

 

「いや、わるかったとおもいます。あやまりますから、ゆるしてくれませんかねぇ!」

 

 

現在ナタルは生命の危機にあった

 

 

一度元の世界で死んでいるが、本人の記憶にない以上は初めての事である

余裕など有りはしない

 

 

 

 

そう考えると、原作でのカズマの文字通りの『捨て身』はとんでもない話だろう

 

幾ら『蘇生』されるとしても、恐怖はあるだろうし、万一にも蘇生出来ない可能性もあるのだから

 

 

 

 

 

「グオッ!」

 

「いや、木を砕くとか、マジこいつ何なの?」

 

 

 

 

一撃熊です(真顔)

 

 

お怒りの一撃熊はナタルを狙って爪を振り下ろすも、ナタルが小さい為に命中しない

だから更に猛る。冷静さを失う

そして攻撃を外すのである

 

 

仮定の話ではあるが、『初心者殺し』ならばナタルの命は既に無かっただろう

 

 

ナタルが大きいままだったらば間違い無く仕留められていたのだが、幸いにもめぐみんによるサイズダウンにより九死に一生となっていた

 

 

「ヒェッ」

 

だからといってそれがナタル本人にとっての救いとは限らないが

 

 

 

 

森の中をひたすら逃げ回るナタルと追いかける一撃熊

 

デスレースはまだ続く

 

 

 

 

 

 

 

「ほほう、面白い事になっておるな」

 

そんな命懸けの鬼ごっこを遠くでバニルが見ていた

一応は魔王からの頼みという建前。本音は自身の好奇心によって動いていた

 

「しかし、レタスと一撃熊の鬼ごっことは中々に見れるものではないな」

 

 

当たり前である

 

 

「レタスの逃げる先には

ほう、キャベツの群れか

さてどうする?

此処で死ぬようならば、我輩の期待はずれ。その程度だっただけの事だが」

 

バニルを状況を見守る事にした

 

 

 

 

 

「結構逃げてるのに、しつこすぎませんかねぇ!」

 

「ガアッ」

 

「未だ元気ですか?そうですか、畜生が!」

 

必死で逃げて相手の縄張りから逃れようとしているナタルである

 

残念ながらナタルの思惑ははずれており、一撃熊は『強者』の部類に入る

邪魔な者は排除するだけ。縄張り等に固執する必要はないのだ

 

 

一撃熊はアクセルのクエストでもそれなりの難易度となっている

初心者冒険者でも討伐?出来る雑魚モンスターとは文字通り『格』が違うのだ

 

悲しいかな『無知は罪』なのである

 

 

 

 

「は?」

 

「キャベ?」

 

「キャベ!」

 

少し距離を離したナタルが見たものは緑色の物体の群れであった

 

「ナニコレ」

 

 

貴方が自分だと勘違いしていたキャベツ(真)です

 

 

「ってか、ぼさっとしている場合じゃない!

奴が来る前に」

 

「グルルル」

 

「来やがった!どうする?」

 

 

かなりの距離を追いかけて来た以上、見逃される事がないのはナタルにも理解できた

 

周りのキャベツにも目をくれずにナタルのみを狙う様子は異質とも見えた

 

 

 

 

だが、一撃熊からすると普通に抵抗しても、大して手間のかからないはずのレタスが自分を翻弄している。一撃熊の強者としてのプライドがナタルという存在を許せなかった

 

自然界では力の上下関係はほとんど変わる事はない

『例外』等存在しえないし、してはならない

 

 

 

もしも『初心者殺し』ならば、手間を惜しんで手を退くだろう

 

『知能』とは時に自然の摂理すらも崩すものなのだから

 

 

 

 

「逃げても無駄。ゆんゆん達に助けて貰うとしても、待ち合わせの場所から離れすぎた

やるしか、ないのかよ」

 

幾ら時間をかけようとも相手よりも自分を追い詰めるだけと判断したナタルは、一撃熊と相対した

 

既にスタミナは切れかかっており、相手は怒りで我を忘れている様に見える。スタミナ切れを狙うには明らかに不利だった

 

 

「キャベ?」

 

「キャーベ」

 

「キャベッ!」

 

何故か離れる様子のないキャベツ達に注意を払う余裕などあろう筈もなかった

 

「畜生!折角、ゆんゆん達みたいな美少女と関われたのに

こうなったらヤケだ。『突撃』だ!」

 

ナタルは無謀にも一撃熊へと突撃をかけた

 

 

ところが

 

 

「キャベ!」

 

「キャベッ!」

 

「キャーベ!」

 

「キャベベッ!」

 

「ギャッ!」

 

 

 

何と周辺のキャベツが一斉に一撃熊へと体当たりし始めた

 

一撃一撃は軽くともキャベツは『群れ』である

正に『塵も積もれば山となる』の見本の様に瞬く間にダメージが蓄積していく一撃熊は悲鳴を上げた

 

 

「はい?」

 

 

 

 

十分後には一撃熊は物言わぬ屍と成り果てていた

 

最初は抵抗していた一撃熊であったが、キャベツの突撃により目を負傷し、視界を奪われた

 

後はリンチ。まさしく『数の暴力』であった

 

 

 

 

「キャベ?」

 

「キャーベ」

 

「キャべべ?」

 

一撃熊を討伐?したキャベツ達はナタルの近くに寄ってきた

 

「え、ナニコレ怖いんですけども」

 

怯えるナタル

 

しかし、キャベツ達は襲いかかる様子もなかった

 

「え?助けてくれたの?なぜに?」

 

困惑するナタルだった

 

 

 

 

 

 

 

緊急クエスト

 

『一撃熊を倒せ!』

 

クリア!

 

 




ミドリカワ編では闘わないキャベツが参戦しました

なんか、こうレイド戦みたいになります

やったね、ナタル!冒険者らしい事が出来るよ!


とりあえず今日か明日には続きを投稿しますので、よろしければお付き合いください


お気に入り登録が百件を越えました

その内に記念小説を上げたく思います
皆様のお陰で此処まで来れた事に改めて御礼申し上げます

では、御一読ありがとうございました


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邂逅

キャベツ再登場

サブタイトルのセンスがないので、更新するのが難しくなりそう

誰かオラにセンスを分けてくれ!



 

 

一撃熊をキャベツ軍団による集団リンチにて撃退したナタルであったが、困惑していた

 

 

「キャベ?」

 

「キャーベ」

 

「キャ、キャベ?」

 

 

ナタルは初め唯の鳴き声?にしか聞こえなかった

 

 

 

ところが、である

 

「キャベ?(あれ?)」

 

「キャーベ(ありゃ)」

 

「キャ、キャベ?(え、お父さんどうしたの?)」

 

と聞こえる様になったのだから

 

「あ、あれ?俺、疲れてるのかな?

何か幻聴が聞こえるのだが」

 

 

ナタルが疲れているのは当然である

 

 

 

元の世界で幾らボッチとは言えども、周囲に人がいる生活を送っていた

 

しかしレタスになってからは、人との関わりはゆんゆん、あるえ、めぐみんのみである

 

 

そのゆんゆん達は異性であり、しかも美少女

 

チキンを自称するナタルにとっては多大なストレスとなっていた

かといって、ゆんゆん達を遠ざければ元人間として『ナニか』が失なわれそうな恐怖があった

 

仮に同姓の友人が一人でも居るならばよかったが、それは叶わなかった

 

だが

 

「キャベ!キャ、キャベ!(お父さん!違う、違うから!)」

 

「キャ、キャーベ。キャべべ(まぁ仕方ないだろう、落ち着いて欲しいが)」

 

ナタルの状態に現実は関係なかったが

 

 

 

 

「うし、少し落ち着いた。様な気がする」

 

「キャキャキャべべ。キャベ?(仕方ないとは言え、大丈夫ですか?父上)」

 

「あ、うん。何とかね。それで俺の言葉がわかるんだよな?」

 

「キャベ(父上の仰る通りです)」

 

「そっか。それで何で俺が『父親』なのさ?」

 

「キャベ、キャベベッ!キャベ?(何故と聞かれましても、父上は父上かと。よもや認めて頂けぬのでしょうか?)」

 

「キャベ!キャベッ(お父さん!捨てないでー)」

 

「キャベベッ(そんな事はないだろう)」

 

「キャベ!キャベベッ、キャーベ(お前たち!少し落ち着け。父上が困るだろうが)」

 

ナタルとキャベツの一人?が話をしていたが、父親と呼ばれた事に疑問を持つと他のキャベツが話に入ってきた

 

それをナタルと話しているキャベツが宥めている

 

 

 

カオス、再び。であった

 

 

 

 

 

 

 

レタスとキャベツの歴史上初の会談(笑)がなされていた頃、ゆんゆんとあるえはナタルの待っている筈の森へと戻っていた

 

「ど、ど、どうしようあるえ。ナタルさんが居ない」

 

「はぁ。せめて待っていて欲しかったんだ、が?」

 

ナタル不在に動揺するゆんゆん。頭を抱えるあるえだったが、ふと気がついた

 

「え、あるえどうしたの?ナタルさんを捜さないと」

 

「どうやら私達が居ない間にモンスターに襲われたようだね」

 

「えっ、嘘」

 

あるえの視線の先には中程から折られた巨木があった

 

明らかに不自然な折られ方。人ならばこの様な折り方は出来ないだろうものだった

 

「一撃熊よね」

 

「だろうね。この辺りにいるモンスターの中でここまでの怪力となると一撃熊か初心者殺しのどちらか」

 

「でも初心者殺しなら、こんな派手な痕跡は残さない。そうよね?」

 

「だろうね。後を追うとしよう」

 

「うん。ナタルさんなら簡単には負けないと思うけど」

 

「間違いなく逃げてはいる。だが、戦うのは無理だろうね

言ってはなんだが、めぐみんがナタルさんを強制ダイエットさせなければね」

 

「それはそうだけど、早く追いかけましょう!」

 

ゆんゆんとあるえはナタルを助けるべく一撃熊の破壊の痕を辿り始めた

 

 

 

 

 

「成る程ね。つまり神の加護を受けている俺は野菜やモンスターではなく、精霊のカテゴリーに入るんだ」

 

何故かキャベツ達の中心にある石の上に乗ってナタルは確認する

 

「キャベ。キャベベッ、キャーベ(恐らくはそうかと。そして我々の様に力を持たないモノはその庇護を受けようと本能的にします。それが偶々『父親』という認識となったかと)」

 

「自然の掟みたいなものか。感心するところなのか?」

 

「キャベベッ(難しいところかと)」

 

「しかし、俺しかわからないのはどうにかならないのかな?」

 

 

端から見るとレタスがキャベツに話し掛けているのだ。マトモな感覚を持つものならば、失神しても責められない光景である

 

意思疎通はナタルとしても多少気になるところであった

 

「キャベ。キャベ、キャーベ、キャキャベッ!(それは難しいかと。本来ならば種族間での意思の疎通は出来ますが、父上の様に他種族との意思疎通が出来るものはそうはおりますまい)」

 

「逆に君が喋るとか?」

 

「キャベキャベベッ(何とも言えません。もしかしたら可能なのかも知れませんが、私には想像もつきませんよ)」

 

 

 

二人?して頭?を抱えてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

「わあ、凄い」

 

「ゆんゆん。君は私達の中では常識的だと思っていたのだが、違ったのかな?」

 

「どうして?

それより凄い光景じゃない、あるえ?」

 

「・・・・・・・凄い光景なのは認めるよ。しかし、頭が痛くなる光景でもあるだろうね」

 

 

ゆんゆんとあるえは一撃熊が破壊した痕を追いかけて来た

 

そして森の中の開けた場所が見えたが、そこにはキャベツの大群がいた

 

 

アクセルの街ではキャベツ収穫クエストがあり、回数こそ少ないがゆんゆんも参加した事がある。あるえも小遣い稼ぎに参加した過去がある

 

とはいっても、キャベツの大群に遭遇するなど滅多にない事なのは確かである

 

 

だが、それだけならばあるえは頭痛等感じる訳もない

 

作家志望として周りを注意深く観察する癖を今ほど呪った事はなかった

 

 

 

「何故、キャベツの中心に君がいるのかな?ナタルさん!」

 

 

あるえの絶叫が響き渡った

 

 

 

 




キャベツの登場

しかし、名前が浮かばない。どないしよ


なんだかんだいって続いてる事実に驚きながらも続きます

では御一読ありがとうございました


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能力?

あるえは苦労人である。な話


あるえは目の前のレタス擬きに出会ってから頭痛に悩まされてきた

 

はじめはゆんゆんの知り合いと聞いたから

。それに良くも悪くも興味を持ってしまった為だった

 

それからは小説のネタになると思い、ゆんゆんと行動してきたがそろそろヤバイ

 

 

あるえの中にあった常識が破壊されつつあったからだ(その常識自体が世間一般のそれとは剥離しているが、それには目を向けない事とする)

 

「めぐみんを道連れにするべきか?いや、常識的な人物の方が助かるから、ブレーキの壊れているめぐみんはまずい

ならばふにふらかどどんこ?

 

それも難しいか?二人ともどこかずれている

 

残りはねきまきとそけっとか。二人とも他の人間に比べるまでもないくらいマトモだろう

 

私の苦労を理解してくれるだろうが、果たして紅魔の里から離れる事を由とするか?

ねきまきは恐らくは無理だろう。彼女は酒場の看板娘だから

そけっとはどうだろうか?あれで案外恋愛の話には食い付きが良い部分もある。ゆんゆんとナタルさんの関係で釣れないだろうか?」

 

 

独り言を呟くあるえの精神的な消耗は並みではないようであった

 

 

 

 

 

「凄いですね、ナタルさん」

 

「これを凄いの一言で片付けられるゆんゆんの方が凄いと思うけど」

 

キャベツに囲まれたナタルを見てのゆんゆんの感想にやや呆れ気味のナタルである

 

「キャベ?キャベベベッ(父上?此方の方はどなたですか)」

 

「ん、ああ。この娘はゆんゆん。俺の大切な友達だ」

 

「っ!ナタルさん」

 

キャベツの質問に答えるナタル。ナタルの発言に感極まったような顔をするゆんゆん

 

「キャベ?(お母さんなの?)」

 

「キャベベベッ、キャベ(そうなるやも知れないが、今はまだ早いだろう)」

 

ゆんゆんの動揺に気をとられている隙に小声で話をするキャベツ達だった

 

もしも、この会話をナタルが聞いていたならば中々に面白い事になったであろう

 

 

 

 

 

 

そんな喧騒を遠くから視ていたバニルは

 

 

「ふむ。やはり貴様にはその様に暖かい場所が似合うようであるな

さて、我輩も『仕込み』をせねばなるまいて」

 

口元を歪ませたまま魔王城へと帰還していった

 

 

 

 

 

 

魔王城にて

 

 

「戻ったか、バニルよ」

 

「やはり『転生者』であった」

 

「キャベツか」

 

「いや、レタスよ」

 

「・・・・・・『今度は』レタスか

『中身』はどうだったのだ?」

 

「かなり変質していたが、間違いあるまい

あのボッチの紅魔の娘がいた上に妄想娘もいたからな」

 

「賢しいことばかりしおる。我等は遊戯盤の上の駒ではないのだが、それも理解できぬと言うことか」

 

苦々しく魔王は吐き捨てた

 

 

 

「それはよいが、一つ頼みがあるのだがな」

 

「やれやれ、バニルからの頼み事とは珍しい。可能ならば構わんぞ」

 

「ある『神器』を貰いたい」

 

「ふーむ。よかろう、好きなものを持って行け」

 

「感謝しよう、魔王よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は戻り、ゆんゆんとあるえが冷静になったところでナタルとの情報交換となった

 

「・・・つまりなんだい、きみはタケノコだけでなくキャベツも操れるのかな?」

 

「操れるというのは多分正確ではないかと思うけどね」

 

「凄い」

 

「さて、検証が必要だろうがきみは野菜を操る事が出来る。そう考えられるね」

 

「些か早計な気もするけど?」

 

「と言ってもね。群生する野菜の前に君を連れていくのはリスクが高いだろう?

前回と今回は偶々人の目の無かっただけ。栽培している野菜の側にナタルさんを連れていくのは不味いと思うけどね」

 

「そうかもなぁ」

 

「キャベ、キャーベ、キャベベベッ(確かにそうでしょうね。私達や父上は人間からすると経験値の塊。おいそれと人前に出るのは避けるべきかと)

 

「あの、あるえ?」

 

「何かな、ゆんゆん?」

 

「どうしてナタルさんだけを見ているの?」

 

この場にはナタル、ゆんゆん、あるえにキャベツがいた

キャベツ達は少し離れて貰っている

 

いつもならば、周りを見て話をする筈のあるえなのにナタルから視線を外そうとしない。ゆんゆんには不思議でならなかった

 

「キャベベベッ、キャーベ(そっとしておくのも優しさですよ、ゆんゆんさん)」

 

「ああ、そういう事なのか」

 

キャベツのフォローを聞いたナタルは遠い目をした

 

 

 

幾らナタルで耐性がついたとしても、自称常識人のあるえには意思疎通を図ろうとするキャベツの存在はキツすぎたのだ

だから意図的に視線をナタルに固定しなければならなかった

 

 

 

逆にゆんゆんは割と早くに適応していた

 

 

 

 

流石は別次元の世界では悪魔やマダオを友達にしているだけの事はあるといえるだろう

 

 

 

とりあえずはあるえも自分なりに精神の安定を維持出来ていた

 

 

尤も

 

「あの、あるえさん?流石に凝視されると照れるのですけども」

 

「気にする必要はないさ。私が(精神の安定の為に)君を見ていたいだけなのだから」

 

「ちょっと、あるえ!どういう事よ」

 

「」

 

「キャーベ(父上が白目を剥いておられる)」

 

 

約一名の犠牲を考慮しなければ、だが

 

 

 

 

 

「別にナタルさんにそういう感情は無いから、心配しなくてもいいだろうに」

 

「そ、そ、そういう感情ってナンノコトヨ」

 

「おや、言っても構わないのかな?」

 

「だ、駄目に決まってるでしょ!」

 

 

流石にナタルを見つめていたことが恥ずかしいのか、ゆんゆんをからかい始めたあるえだった

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャベ、キャベ(やれやれだな)」

 

キャベツの呟き?が虚しく響いた

 

 

 

 

 

 




キャベツの会話が書きづらいのでどうにかしたい


では、御一読ありがとうございました


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悪意

ほのぼの路線のナタル達ですが、割とヤバげな奴等の話


相変わらず独自設定、解釈が乱舞しますので御注意を


 

ナタル達が混沌とした状況になっている頃、王都の一角にて

 

「・・・つまりご支援はこれまでと」

 

「貴殿の主張には軍としても注目すべき事には今も変わらぬ。しかし、だ。キャベツの養殖に目処が立たない以上はどうしようもあるまい

無論、目処が立ったならば再度の支援もあり得よう」

 

「・・・軍務卿の仰る事は道理でございましょう

では如何程の進展が見られるのがお望みですか?」

 

「ふむ、最低でも規模は問わないが、キャベツの養殖が出来ている事が条件となろう」

 

「畏まりました。ならばその暁には報告させて頂きます」

 

「うむ。貴殿の成功を祈っておる」

 

 

 

 

 

「ふざけるな!養殖の為には用地等の環境が必要なのだ!一介の市民にどうこう出来る話ではないのだぞ!だからこそ、軍に態々レポートを上げたのだ!

そもそも、そう簡単に上手く事が運ぶならば、誰も苦労はしないというに」

 

 

先程まで話をしていた軍務卿が退出した後に男は怒鳴り散らした

 

男、レフェルはキャベツの人工養殖による王国軍主導の魔王軍討伐を主張していた

 

その養殖したキャベツを使って王国軍の大幅なレベルアップを図ろうというのだが

 

 

 

 

ベルゼルグ王国は魔王軍の領地と接している為に対魔王軍の最前線を担っていた

 

王国は当初は王国軍のみで対応にあたっていたが、度重なる損耗等により冒険者を積極的に動員することになった。それにより、魔王軍の侵攻は防ぐ事に成功したが、常に冒険者という協力者を動員する事による国費が発生する事にもなった

 

唯でさえ魔王軍との交戦により治安の低下が懸念された為に王都の民衆への対応の為に資金が必要だった上に、である

そこで当時の王国宰相は対魔王軍での戦果の少ない王国軍の予算の一部を、冒険者動員の資金に転用する事にしたのである

 

宰相からするならば、王国軍が十分対応出来ていたのなら必要のない経費である以上、軍への負担は至極当たり前の事と言えたのだろう

 

だが、当事者の王国軍からすれば現状でも装備の開発、補充等で足りない予算を持っていかれるのは我慢出来る筈もなかった

当時の会議において満座の中で「王国軍の力が及ばない故に冒険者を動員する以上は王国軍の予算を削るのは当たり前」と宰相が発言した事で、軍務卿は面目を失う事となった

 

更にめざましい功績を挙げた冒険者に『勇者』の称号を与え、王配とした事も王国軍の冒険者への隔意へと繋がる事となった

 

 

しかし、ベルゼルグ王国は魔王軍関連の予算により国庫を常に圧迫されており、財政は厳しかった

幸いにして、ベルゼルグ王国以外の諸国よりの財政支援により致命的なものとはなっていないが、決して楽観視出来る状況ではなかったが

 

 

 

そんな王国軍にとっては鬱屈する中でレフェルの主張する『キャベツの人工養殖による王国軍再建』は少なからず彼等の興味を引くこととなった

 

だが、レフェルが要求するものは『王都付近の用地、運用資金、この件に関わる人員』であり、決して潤沢とはいえない軍は二の足を踏んだ

故に軍はレフェルに対して、先ずは多少でもいいから成果を見せる様に要求するのは当然といえた

 

だが、転生者であるレフェルは軍には予算が豊富にあるという思い込みがあった

その為にレフェルと軍務卿での話が上手くいかなかったのだが

 

 

「くそっ、隣国のエルロードにも話をもちかけたが、あの陰険な宰相に一蹴された

かといって、俺自身には大した戦力はない

冒険者を雇うにしても、最悪横取りされかねない」

 

基本的に他人を信用しないレフェルであるが故に荒くれ者のイメージのある冒険者、一応は同郷である筈の転生者。どちらも当てにしたくはなかった

その割には名誉や栄誉には拘る為に他者を蹴落とす事はあれど、他者を気遣う等の考えは一切ない

 

 

 

「あのー、レフェルさん?ちょっといいかい?」

 

そのレフェルだが、外面は取り繕っているので近所の住人からは頼られてはいた

 

「どうされました?何かお困りですか?」

 

「実は、近くの道具屋に『天使』とか言うのが来ていたらしくて」

 

「『天使』ですか?

それはまた、エリス教徒やアクシズ教徒に見つかれば面倒事になるでしょうに」

 

「ええ、とりあえずは警察の方に連行してもらいはしたのですが」

 

「・・・私の知る限りでは覚えがありませんな

力になれず、申し訳ないですが」

 

 

嘘である

 

彼は転生した時にふざけた天使に会っており、その記憶もある

面倒なのが嫌いなだけであった

 

 

「いや、こちらこそ申し訳ありません。では失礼します」

 

 

訪問者が去った後でレフェルは考える

 

「『天使』か。あの糞天使を思い出すと今でも腹が立つ。まぁ、利用出来るのならば保護するのも吝かではないが」

 

 

 

 

 

レフェルは知らない

 

自身の転生特典の中に『天使』を利用した外法が記載されていたことに

 

 

そして資金調達で売りに出したその書物がとある街で混乱をもたらす事も

 

彼は知らなかった

 

 

 

 

 

 

 

とある街の領主の館

 

「しかしこの『古代文字』か。まさか王都の冒険者ごときが知っておるとはな

ほう、悪魔召喚?面白い。上手くいくならば儂がこのアクセルの街の支配者ともなれる

 

その時には、ダスティネスは。クククク」

 

 

この領主は『古代文字』等読めなかったが、とある転生者が大金に釣られて教えてしまった

その転生者は何処かへと消え、転生特典は領主の元に残った

 

 

「む?『天使』を利用した魔法だと?

馬鹿馬鹿しい、『天使』等居るわけもないだろう

 

いや、待てよ?『古代文字』とやらはニホンゴと言っていた。女神にも会ったとも言っておった

いるのか、『天使』が。本当に?」

 

 

 

この領主の元に暫く後に報せが届く事となる

 

 

『王都にて天使を名乗る者が収監された』と




駄天使がアップを始めました

転生者と某領主もアップを始めました

暫くはほのぼのは一休みな予定


シリアスになると文量が増えると思いますので、更新は途絶えるかもしれませんが、御容赦下さい

ユニークアクセスが一万を突破しましたので、記念小説を書こうと思いますが、気長にお待ちいただけますと有難いです


では、御一読ありがとうございました


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生きるということ

今回は些か不快になる表現が含まれます

くれぐれも納得の上で御一読ください


時を戻し、リフェが天界より追放された後

 

 

 

自身の不始末により天界からの追放刑をうけた天使改めリフェは呆然としていた

 

彼女は反体制派、つまり反エリス、アクアの派閥においては中堅どころの天使だった

さぼりがちな性格ではあったが上にへりくだり、下の天使や体制派には高圧的に接していた

 

正直なところ関わりたくない部類の天使であったのだ

 

更に天使としての力量も平均的であり、本来ならば倦厭される事はあっても、優遇されるものではなかった

 

 

 

しかしながら真面目なエリスと異なる、少々不真面目な点もあるアクアには少なからずの交流があり、アクアからの信用を勝ち得ていた彼女であった

 

故に体制派の重要な女神アクアとの関係を重視した派閥の上層部は彼女の横暴を黙認した。然るべき時には女神アクアの声望を落とす為のカードとして

 

本人はその様な事情は知らずに、横暴を極める事となり結果として天界の上層部に危険視され、天使の力を剥奪した上での追放となった

 

 

なお、余談となるが彼女が追放された直後に天界にて大幅な『整理』が行われ、反体制派の上層部は身動きがとれなくなった

 

 

 

リフェからすれば、いつも通りにしていたらいきなり厳罰をくらったのである

 

「天使の力も、魔力も使えないなんて、本当に無力な人間になったの?

嘘でしょ?何で私がこんな目にあうのよ」

 

 

職務怠慢、体制への批判。この二つのみでも天界では重罪なのだが、好き放題していたリフェが解る筈もない

 

 

「な、何?か、蛙?」

 

王都付近では珍しいジャイアントトードである

 

対応策さえとれば、初心者冒険者でも討伐出来る

が、下界の事など知るはずもないリフェに解る訳もなかった

追放刑である以上、金属製の防具などない。それどころか、平服であった

 

加えて、リフェの戦闘スタイルは力によるごり押しである。修行等よりも他者を利用する事で今まではなんとかしてきた

 

当然

 

「な、なによ。私は天使なのよ。アンタみたいな下賎なモンスターなんかとは比較にならないものなの

ちょっ、舌を伸ばして何する気?」

 

 

 

勿論、目の前の小うるさい『餌』を食べる為である

 

 

「わ、わかった。下賎なモンスターなんて言って悪かったわよ。だから、ね?」

 

 

この状況でモンスターに交渉しようとするリフェだったが

 

「え、ちょっ、マジ、や、やめっ」

 

 

パックンチョ♪

 

そんな擬音のしそうな程に見事に補食されました

 

 

 

はっきり言うなら、リフェは此処で死んだ方がマシであった

 

だが

 

「おいおい、ジャイアントトード?珍しいな」

 

「いやいや。今誰か食われただろ?

助けないと」

 

「おま、マジで言ってんのかよ。弱いやつは死ぬだけだろ?ほっとけよ」

 

「そうもいかないだろ?おりゃっ!」

 

二人組の冒険者が偶々通りかかり、渋る相方を無視してリフェを助けた

 

 

「う、うぐっ」

 

「大丈夫ですか?」

 

「美人だが、粘液まみれかよ」

 

ジャイアントトードより助けられたリフェだったが、粘液まみれである。それでも心配する冒険者とリフェの容姿を気にするその相方だった

 

「あ、ありがとう」

 

「いえ、無事で何よりです

もう少し早く助けていればこのような目には会わなかったでしょうに、申し訳ない」

 

「・・・」

 

お礼は言うリフェとすまなそうに謝る冒険者

 

「とりあえず、王都まで行きましょう。そこで」

 

「悪いな」

 

 

ザシュッ!

 

「な、何、を」

 

「いやいや、こんな美人で今なら抵抗も出来そうにないだろ?お前は邪魔だから、死んでくれよ」

 

いきなりリフェを助けた冒険者を切りつけた男は歪んだ笑みで話す

 

「アンタにゃ世話になった

だが、モブキャラには用は無いんでな」

 

 

ザシュッ!

 

男は冒険者の首を切り落とした

 

「ひっ!」

 

「まぁ、そう怖がるなって」

 

仲間を殺しておきながらも全く悪びれない男

 

 

 

 

彼もまた転生者

 

皮肉にもリフェが転生の担当をしたものであった

リフェの容姿が少しは変わっていたのが幸いだったのかも知れないが

 

「アンタには怨みは無いんだ。が、転生の時に見たクソ天使に似ている自分の容姿を恨むんだな」

 

「ち、近寄らないで!」

 

「は、丸腰で粘液まみれの女に何が出来んだよ

大人しくしてるなら、殺しはしねぇ

ああ、王都ならあっちだぜ?逃げれるもんなら、逃げてみな?」

 

男は後ずさるリフェにゆっくり近づきながら王都の方向を示す。まるで意味の無いリフェの抵抗を愉しむかの様に

 

 

だが、男は気付くべきであった。リフェが男が殺した『冒険者の死体』に向かって後退りしていた事に

 

故に

 

「さてと、何時までも遊んでたら近くに冒険者が居たら面倒だ、から、な?」

 

「ふ、ふざけんじゃ、ないわよ!」

 

男は冒険者の落としていた短刀にて心臓を刺されていた

 

「こ、この、クソお、ん、な」

 

男は息絶えた

 

 

 

この後、リフェは死んだ冒険者と殺した男の装備やお金等を奪って王都に向かって行った

 

 

 

 

 

 

 

その後王都に着いたリフェは粘液まみれの体を宿で綺麗にした後で道具屋に行った

 

其処で店主に買い取りを頼み、済ませたまでは良かったのだが。天使について聞いてみたところ、エリス教徒である店主は知らなかった為に口論となり、警察へと連行された

 

連行と言っても、1日ばかり騒動の罰として警察署で過ごして終わりの筈であった

 

 

 

 

しかし、リフェは王都の至るところで自分が天使である事を吹聴して回った事により、王都の貴族の物好きが反応した

 

 

 

 

「ですから、犯罪者と言うほどではありません」

 

「しかし、軽いとはいえど『犯罪』を犯したから警察署に収監されておるのであろう?

加えて、身元引き受けもおらぬとか」

 

「そ、それは確かに」

 

「であるからこそ、貴族である私が保護しようと言うのだよ

身元引き受けが居ないのでは、何時までも収監せねばなるまいて。署長たる君にも負担であろう」

 

「・・・」

 

リフェが収監されて、暫く後に警察署へ一人の貴族が訪れた。彼はリフェの身元引き受けを要求していたのだ

 

彼は所謂『好事家』であり、珍しいものは手に入れたくなる性分だった

天使と名乗るリフェの噂を聞き付けて態々警察まで来たのである

 

「何、君や警察には迷惑はかけぬよ」

 

「明日までお待ち頂きたい。明日の解放の時間になっても身元引き受け先が見つからない場合はご連絡しますので」

 

署長の精一杯の譲歩だった

 

本人は女神アクアの知り合い等と言っていたが、かといってアクシズ教徒に確認するのも疲れる

 

『彼等には話が通じない』王都の前にアルカンレティアの警察署長を勤めていた彼はそう確信していた

 

 

一方でギルドや街中の至るところにリフェの似顔絵を掲示し、身元引き受け先を捜させていた

 

 

今は昼過ぎであり、解放の時間は明日の夕方である以上は署長たる彼にはリフェの身元引き受け先を探す義務があると思っていた

 

たとえ、貴族の意に反するとしても

 

 

「そうですな。署長である貴殿の立場を考慮すべきでしたか

承知しましたぞ。もしも引き受け先が見つからない時には連絡頂けるのですな?」

 

「必ずや」

 

「うむうむ。王都の治安を守る警察のトップが貴殿の様な人物である事は民衆にとっては心強い事でしょうな。今回の非礼については申し訳ない

ではこれにて、失礼するとしよう」

 

「ご要望に沿えず、申し訳ありません」

 

「なんのなんの」

 

 

 

こうして、リフェの身柄が貴族に渡る可能性を残したまま、解放の時間を迎える事になる

 

 




転生者とて、悪い方に転がるものもいる。という話

リフェが危うく への扉を開きかけたのはくらうすの未熟故

まぁ、ここまでお読み頂けたなら「何を今更」でしょうが


後一、二話はナタル達がお休みとなりますのでご了承ください

後、本日の活動報告にちょっとしたものを書きますので、よろしければ御覧ください

では御一読ありがとうございました


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謀攻

陰謀フェイズ

ほとんどネーム付きのキャラクターは出ませんのであしからず



警察署を後にした貴族を近くの建物の一室より見張っていた二人の男がいた

 

 

「これで依頼は完了。でいいんだよな?」

 

「ああ。その通りだとも

この場に居続けるのはよろしくない。場所をかえてから報酬を貰うとしよう」

 

「だな。何もしてなくても、冤罪で捕まる事や処罰される事もあると言ってたからな」

 

片方は黒髪、黒目の男。もう一人は仮面をつけている男らしき人物だった

 

彼等は『とある人物』より『警察署の監視』を依頼されており、身元不明の『天使』と自称する女性が収監されてからは一切この建物より動いていなかった

 

 

「しかし、旦那。『天使』なんているんですかね?」

 

「む、巷で有名な冒険者達の中には『女神』と会った等と言う輩もいると聞く

もし、仮に事実ならば『天使』の存在も否定できないだろうがな」

 

部屋を片付けながらの男の疑問に仮面の男は自分なりの見解を示した

 

 

リフェが自身を『天使』と吹聴して回った際には、丁度魔王軍の迎撃に転生者の冒険者達は出ていた

 

リフェの不幸の一つは話の分かる転生者に会えなかった事であろう

 

とはいえ、転生者に一度襲われかけているリフェが転生者を信用するとも思えないが

 

 

 

件の転生者達とて転生して直ぐには立場を持たない者である

 

そこで彼等の一部は敢えて『女神』の話題を出すことで同じ境遇の先輩転生者を見つけようとした

 

この狙いは上手くいったが、王都の住民は『女神』に会ったという転生者達の一部に不快感を与えてしまってもいた

宗教においての神に会った等と言うのは熱心な教徒程、神への不敬と受け取れる話でもあったからだ

 

 

このときに『女神アクア』ときちんと説明しておけば、王都に多いエリス教徒はアクシズ教徒とのかかわり合いを嫌って反発も少しは和らいだのだが、転生したての者達にとっては転生時の担当『女神アクア』しか知らない者が多い

一方、エリス教徒にとっての女神は『女神エリス』であるが為に認識のズレから誤解が生じてしまっていた

 

 

 

故に元々は温厚な人物の多いエリス教徒であっても『女神』等の発言に神経を尖らせていた

 

そこに『自称天使』のリフェが現れたのだから、割と過激な対応にも繋がってしまっていたのである

 

 

 

 

「旦那はあの与太話を信じるんで?」

 

「さてな。だが、『女神』と会ったと言う者達には不思議な程に似通った点が多い

『女神』かどうかは知らんが何かしらの秘密があるのだろうよ」

 

「そりゃそうですな

俺の親父も変な物を持っていますね、そういえば」

 

「そういえば貴殿の黒髪黒目は王都では珍しいな。王都の出身なのか?」

 

「まさか。アルカンレティアの近くの町の出ですよ」

 

「そうか

さて、片付いたし依頼主の元へ行くとしようか」

 

 

 

 

男二人は部屋を後にした

 

 

 

 

 

 

警察署を後にした貴族は屋敷に戻っていた

 

 

彼は貴族としては珍しく自身の趣味に金がかかる事を理解している為に普段の生活などは平民に近かった

 

一応は執事と使用人を数人雇って体裁を保ってはいたが、彼等には屋敷の維持のみを任せており食事などは自分で用意していた

 

 

「しかし解せぬ。『天使』等と何故必要とするのだ?

そもそも狂言の可能性の方が高いだろうに」

 

 

実は彼がリフェを求めたのではなく、彼が懇意にしている貴族よりの依頼であった

 

『好事家』として知られる彼ならば『天使』と名乗る小娘に興味を持っても不自然ではないという事である

 

 

「最近は国王陛下の御体も優れぬと聞く。第一王子様は魔王軍討伐の為に近衛を連れて出撃なさっておられるから帰国するのも難しいだろう。今はアイリス様が留守を守っておられるが」

 

 

貴族の男はため息をつく

現在のベルゼルグ王国は国王は病に倒れており、後継者の第一王子は少し前に遠征に出ている

 

留守を預かる宰相はアイリス王女の名声を以て混乱を鎮めようとしているが、主流から遠ざかっていた貴族達はこれを機に復権を企んでいる

 

アイリス王女の元には現在二人の貴族令嬢が仕えている

 

一人は大貴族シンフォニアの当主。もう一人は元平民の中級貴族である

その人選にも不満があるらしい

 

 

彼自身はベルゼルグ王国の貴族である以上、王家に忠誠を尽くすべきと考えて行動している

 

もしも内乱などになって魔王軍に敗れでもしたら意味がないのだから

 

 

 

 

 

 

 

とある貴族の邸宅

 

 

「その話は本当なのだな?」

 

「間違いない様です。念のために拷問にかけて情報を吐かせましたから」

 

「俄には信じがたい話よ

最近活躍している冒険者は『女神の加護』を受けているなどと」

 

「公爵閣下の仰る事は尤もにございます」

 

部屋にはソファーに腰を下ろしている恰幅のいい男と、その足下に膝をついている壮年の男性がいた

 

「つまり女神はこのままでは人間が敗ける。そう判断なされたのだな

それ故に彼等を送り込んだ」

 

「あの者の言っていた事が正しいならば、間違いなく」

 

「つまり、現王家は女神に見放された訳か

しかしこの『古代文字』が解読出来ていたとはな」

 

「アルダープ殿のお手柄ですな」

 

「うむ。金庫以外にも使い道があったのは結構な事よ」

 

「そうですな

ですが『天使』を生け贄にした召喚術式ですか」

 

 

 

彼等がとあるルートから入手した書物には古代の国『ノイズ』で開発が検討されていた術式が記載されていた

 

それは古代文字で書かれていたが、アクセルの領主アルダープからの古代文字の解読の一覧がもたらされる事で解決したのだ

 

この術式は『天使』を構成する魔力自体を純粋な魔力へ特殊な魔法陣を用いて還元し、その魔力を『餌』として強大な悪魔を召喚するものである

 

なお天使などは高純度の魔力で構成されているとされており、古に伝わる『天使の加護』等はこの魔力の一部を譲渡する事で能力を底上げしているとされる

 

 

「悪魔召喚は禁忌よ

だが、このままでは王国がもたぬ。外法を用いようと魔王を倒さねばならぬのだ

儂が地獄に落ちる程度で魔王が死ぬのならば安いものよ」

 

「閣下が仮に死出の旅へと旅立たれるならば私がその道を打ち払いましょう。騎士として主君を死なせたままおめおめと生き長らえようとは思いませぬ」

 

「すまぬ」

 

「何を仰いますか。平民だった私を拾って頂き、騎士として遇して頂けたのです。その御恩に比べれば」

 

「そうか

兎に角、先ずは『天使』の確保だな。あの『好事家』で有名なあ奴に任せはしたが」

 

「念のために監視も付けております

問題ないかと」

 

 

彼等が『天使』を探していた最中にリフェが王都に現れたのだ

 

半信半疑であったが、リフェの身柄を押さえる事にした

 

 

「監視役も程なく始末出来るでしょう」

 

「そして一つの貴族も潰れるか

やむを得ぬか」

 

「この件に関しては何よりも情報の秘匿を優先しなければなりませぬ

万に一つの失態が命取りになります」

 

「任せる」

 

「はっ、お任せ下さい」

 

 

王国の闇は深い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言うわけで主役不在の回はとりあえず今回までです


リフェが元天使なのに運が悪いのは、仕様です

というか、追放する際にリフェの無駄に高かった幸運は没収されました

神達はリフェの生存など望んでいませんから


では御一読ありがとうございました


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名付け

熱中症でダウンしていましたが、回復したので投稿します

皆大好き?某教徒がアップを始めました


舞台をナタル達に戻そう

 

 

「キャベ、キャキャベ?(父上、落ち着かれましたか?)」

 

「ああ、ありがとう」

 

キャベツの心配に疲れているかの様に答えるナタル

 

 

 

美少女に見つめられるだけで消耗するとか、このレタスは一回、爆発してもいいと思わなくもない

 

 

 

「今更だけど、意思疎通が出来るみたいだね」

 

「ナタルさんみたいに喋らないんですか?」

 

 

諦めモードなあるえとナタルの様に喋らない事に疑問を持つゆんゆん

 

 

「いや、俺が言うのもなんだけどさ。普通、レタスやキャベツは喋らないよ」

 

「本当に君が言うなという話だね」

 

ゆんゆんにツッコミを入れるナタルに更にツッコむあるえ

 

「キャベ、キキャベッ(成る程、『おまいう』とやらですか)」

 

「え、君転生者じゃないよな?」

 

「キャキャベッ(中には誰もいませんが?)」

 

ナタルからすると妙に聞き覚えのある単語を連発するキャベツに不安を覚える事になる

 

 

 

実際にはキャベツの言葉の真意は分かるが、言い回し等はナタルの解りやすい様に自動翻訳されているだけなのだが

 

 

「えっと、ナタルさん?一つ提案があるのだけど」

 

「おそらくゆんゆんの言いたい事と私が言いたい事は一緒だろうね」

 

「と、いうと?」

 

「ナタルさんも初めはそうでしたけど、キャベツ呼びは混乱すると思うんです」

 

「名前を決めるべきだろうね」

 

「あー。名前かぁ」

 

 

現在はナタル、ゆんゆん、あるえにキャベツで話し合い?をしている

だが、遠巻きにキャベツの群れがいるのだ。ナタル達には判別出来ない上に全てがキャベツでは混乱するのは当然である

 

ナタルは自身がキャベツと自称していた事を思い出して複雑な気分になっていた

 

 

 

「キャベ(名前?)」

 

「キャキャーベ(お前だけずるいぞ)」

 

「キャベ、キャーベ(ファミチキ、下さい)」

 

 

 

 

ゆんゆん達の会話を聞き取ったのか、一部のキャベツが騒ぎだした

 

 

「キャベ!キャーベ、キャキャベ!(お前たち!不満は解るが父上方に負担をかけるつもりか!)」

 

キャベツが他のキャベツ達を一喝した

 

「キャベ、キキャベ、キャーベキャキャーべ(父上、お気持ちは有り難く思いますが、私達はキャベツです。その様な配慮は無用かと)」

 

一喝した後にキャベツは辞退しようとする

 

「あ、うん」

 

返答はナタルの歯切れの悪い答えだった

 

 

 

 

 

「名前か。さてどうしたものか」

 

「うーん。グリーンさんとか?」

 

「ゆんゆん。流石に安直に過ぎるだろう」

 

「あるえ。めぐみんにも協力して貰うのはどう?」

 

「めぐみんか。どうだろうね」

 

ゆんゆんとあるえは頭を悩ませていた

 

 

 

 

「さて、真剣に考えてくれてるあの二人にそれを言えと?」

 

「キャベ(なんでもありません)」

 

その光景を見たキャベツは自身の発言を撤回した

流石に好意を無下にするのは出来ない様である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みにアクセルの街では

 

 

「めぐみんさん。お久しぶりですね。さぁ、お姉ちゃんと言ってくれてもいいのよ?」

 

「うっ、セシリーさんですか」

 

「ええ。相変わらず素晴らしいロリっ子ぶり!

一緒にご飯を食べましょう。そしてこの入信書にサインを」

 

「ですから、アクシズ教には入りませんよ

というかロリっ子呼ばわりするのは止めて下さい」

 

「そんな事を言わずに。ね、ちょっとだけでもいいんですから」

 

少し体力の戻っためぐみんはアクシズ教の某シスターと再会していた

 

 

 

 

 

閑話休題

 

「だが、めぐみんのネーミングセンスは大丈夫なのだろうか?」

 

「え、えっと」

 

 

微妙である

 

黒猫にちょむすけと名付けている事を知っているゆんゆんは言葉を濁した

 

 

 

なお、平行線の世界においては某冒険者の剣にちゅんちゅん丸と名付けていたりしている所から、ネーミングセンスが微妙である事は間違いないようである

 

 

 

「あるえ。ナタルさんの時みたいにしたらどう?」

 

「うん?ああ、料理等と組み合わせるのか

となると、さてどうしたものか」

 

「最近王都の方で人気のオムレツ?とかどうかな」

 

「となるなら、キャベツとオムレツでオムツ?違うか。キャレ?しっくりこないな。キベレ?いまいちだね。ふむ、難題だな」

 

「ねぇ、あるえ。キベムってどうかな?」

 

「うん?キベムか。成る程、いいかも知れないね」

 

等と女性陣によるキャベツの名前の話し合いの傍で

 

 

 

 

 

「キャベ?キキャベ?(父上?どうされました?)」

 

「いや、悪いんだけど、俺にはネーミングセンスが無いので話し合いに参加するのは憚られて」

 

 

なお、ゆんゆんがあるえに一蹴されたグリーン以外に名前の思い付かなかったのはナタルだけの秘密である

 

 

「キャベ(成る程、母上が名付けて下さるか)」

 

落ち込んでいるナタルにはキャベツの呟きは聞こえなかった

 

 

 

「そうだね、キベムで提案してみるとしようか」

 

「そうね」

 

結論は出たようである

 

 

 

 

 

 

と言うわけで、キャベツのまとめ役としてキベムの名前が与えられた

 

なおこれ以降、キベムやキャベツ達はナタル達の前では言わないが、ゆんゆんを母上と呼ぶことになったのはナタル達には知る由もなかった

 

 

 

 

 

 

 

なお

 

「え?ナタル?めぐみんさんに悪い虫がついたの?

めぐみんさん!直ぐに連れて行って下さい。貴女の様な貴重なロリっ子を誑かす等とエリス教徒が認めても私達アクシズ教徒は許しません!」

 

「いや、ですからナタルさんとはそういう関係ではありませんし、なることも無いですから」

 

セシリーと食事をしていた際についナタルの名前を出してしまった為にセシリーが暴走していた

 

「その様な事を言っていて悪い男の毒牙にかかった女性は世の中に溢れているのです!

その様な事が許される筈ありません!」

 

「ゆんゆんの想い人に手を出すわけがないでしょう」

 

動揺していたのか、つい余計な事を口走ってしまっためぐみん。とはいえ、ナタルがレタスである事を喋らなかっただけ幾分かマシではあったりするが

 

「めぐみんさんだけでなく、他の女性にも手を出しているなんて!ますます放置出来ません!」

 

 

 

結局、セシリーには行く手段がないとして何とか宥めることが出来た

 

 

「はぁ、疲れました。後であるえかゆんゆんに暫くの間アクセルの街に来ないように言うしかありませんね」

 

 

めぐみんは深いため息をついて宿に戻っていった

 

 

 

 




と言うわけでキャベツの名前がキベムとなりました

案を下さったルマンド様には改めて感謝申し上げます


まさか、三話もナタルが出なかったのは本人も驚いています

思いつきで走るものではないようです


そろそろ原作主人公がログインします


では御一読ありがとうございました


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誤解と和解

さあ、このすばにおける問題集団が動き始めました

なお、作者はアクシズ教ゆんゆん派を自称しています

何となく浮かんだので更新してみました


今後は少しずつ長くなりますが、よろしければお付き合い下さい


突然だが、人生でこれ以上ないほどに後悔したことはあるだろうか?

 

進むべき進路を誤った時?恋人と些細な行き違いで別れた時?家族と喧嘩したまま死に別れた時?

人それぞれ色々あるだろう

 

現在めぐみんは人生においてこれ以上ないほどに後悔していた

 

「貴女がゆんゆんさんとあるえさんね?

さあ、貴女達を誑かしているナタルという人の所へ連れて行って下さい!

貴女達の様な美少女を毒牙にかけようとする悪人をとっちめないと」

 

「・・・」

 

「いや、だから何故ナタルさんの事を知っているのかな?」

 

セシリーに詰め寄られているゆんゆんとあるえの目が紅くなっているから

 

特にゆんゆんは全く喋らないが、めぐみんが今まで見たことがない位に目が紅い

 

そう、『喋らない』のだ。めぐみんを睨む訳でもないが、虚空を睨んでいる

 

「それはめぐみんさんが教えてくれましたからね」

 

(ちょっ!それを言われるとマズイのですが

というか、ゆんゆんは、ヒエッ)

 

あるえの疑問にセシリーは胸をはって答える

その瞬間、ゆんゆんの視線がめぐみんへと向いた

 

此処がアクセルの街中でなければ、魔法を撃ちかねないほど殺気だっているゆんゆんがそこにはいた

 

 

「・・・めぐみんから?

しかし無関係の貴女が私達の交友関係に文句をつけるのはどうかと思うが?」

 

「前途有望なロリっ子のめぐみんさんのみならず、貴女方まで騙そうとするナタルという人物に色々お話しようかと」

 

「人の話を聞いているのか?貴女は無関係。であるならば、口出しは無用だ」

 

あるえは淡々と喋ってはいるが、セシリーへの敵意を隠そうともしなくなっていた

 

「ねぇ、めぐみん?何でナタルさんの事を喋ったの?」

 

やっと口を開いたゆんゆんはめぐみんへと質問している風に装いながら、暗にめぐみんを責めていた

 

 

 

『何故話した?』と

 

 

 

ナタルは間違いなく『異端』なのである

だからこそ、アクセルの街中等の人がいるところには連れて来れない

 

今回、ゆんゆんとあるえが揃ってアクセルの街に来たのはナタルがめぐみんを心配していたからなのだ

 

『ロマンの体現者』であるめぐみんにはナタルは敬意を持っており、弟子入りすらも考えている程である

 

 

にも関わらず、めぐみんが他人しかもアクシズ教徒にナタルの事を喋ったのだからゆんゆんの怒りはマトモなレベルではなかった

 

 

そもそもエリス教、アクシズ教どちらも『モンスターや魔族』に対しては『倒すべきもの』として扱っている

 

特にエリス教は『悪魔や魔族』は排斥しようとする考えを持つものが多い

 

アクシズ教は良く言っても『独特』な人物ばかりであり、一般人からするとアクシズ教徒は関わり合いになりたくない集団であった。が変わり者揃いでもモンスターや魔族を討伐しているのも事実である

 

更に冗談の様な話であるが、アクシズ教の総本山アルカンレティアにはアクシズ教徒で凄腕の冒険者やアークプリーストが多数いるのだ

 

 

魔王軍をして「紅魔族とアクシズ教徒は頭おかしい」と言わしめる程である

 

 

そんなアクシズ教徒にめぐみんが故意でないだろうが、口を滑らせたのだからゆんゆんの怒りも当然であった

 

 

「すいません」

 

めぐみんは謝る事しか出来なかった

 

 

 

 

 

結局、何とかセシリーを説得したあるえと共にゆんゆんとめぐみんは一度ナタルと話し合いを行うべく、ナタルの元に向かった

 

 

だが、彼女達は知らない

 

アクシズ教徒が『頭おかしい』と言われる所以を

 

 

 

「今回ばかりは擁護出来ないよ、めぐみん

ナタルさんは表沙汰にした場合良くて実験材料、悪ければ即討伐だろう。決して共存とはいかないだろうね」

 

あるえは周囲を警戒しながら、めぐみんに諭す

 

いつもならば、アクセルの街から少し離れたところでテレポートを使うところだが、めぐみんと話をするために徒歩でナタル達の元へと向かっていた

 

 

 

この時についてくる人物に気付かなかった事を三人は後悔する事となる

 

 

 

 

 

 

「という訳なんだ。暫くは此方に来れなくなると思うんだが」

 

「ごめんなさい、ナタルさん」

 

「申し訳ありません」

 

アクセルの街での経緯を話すあるえと謝るゆんゆんとめぐみん

 

「いや、仕方ないって

それにめぐみんさんが謝る必要はないし、ゆんゆんも謝る必要ないからね」

 

「ナタルさん」

 

 

 

 

 

「え、何あれ?レタス、ですよね?

レタスと会話しているの?え、え?」

 

遠くからこれを目撃していたセシリーは混乱の最中にあった。さしものアクシズ教徒であるセシリーもレタスと会話している様にみえる光景には戸惑うしかない

 

「あ、でも変身能力を持った悪魔とか安楽少女みたいなものなら危険ですよね」

 

そう、モンスターや魔族には効率よく獲物を捕らえる為に擬態能力を有するものも存在する

ナタルがその一部と考えるのは可笑しくはなかった

 

 

 

 

「そこまでです!邪悪なモンスターよ。可憐な美少女達から離れなさい!」

 

「ん?」

 

「ちょっ!」

 

「はぁ」

 

「・・・・」

 

 

 

 

この後ぶちギレたゆんゆんによってセシリーは追いかけ回された

 

最初はセシリーを止めようとしたあるえとめぐみんだったが

 

 

 

「ドウシテ、ジャマスルノ?

ネェ、ナタルサンガナニカアナタニシタノ?」

 

というハイライトが何処かにお出かけしたゆんゆんの迫力に二の足を踏んだ

 

しかしセシリーは

 

「それはモンスターです!貴女達を騙そうとしているに決まっています!女神アクア様にかわって倒します!」

 

等と燃料を投下した

 

 

「ソウ。ナタルサンヲキズツケルツモリナンダ

ナラ、アナタハワタシノテキ。ナタルサンヲキズツケルモノハユルサナイ」

 

と言って、冒険者カードを取り出したゆんゆんは何やらスキルを習得した後にセシリーへとワンドを向けた

 

 

普通にライトオブセイバーやカーズドライトニング等をセシリーに向けて躊躇いなく放った事でセシリーも危険を察知したのか逃走しようとしたが、ゆんゆんが追撃した

 

 

「いやさ、俺の事を心配してくれるのは嬉しいよ?

でもゆんゆんが俺の為に人を傷つけるのは見たくない

それにゆんゆんも後で傷つくだろうから、ね?」

 

「はい。ごめんなさい」

 

これを止めたのはナタルだった

 

ナタルは追いかけていたゆんゆんに手加減した体当たりを食らわせたのだ。それによりゆんゆんの意識を一時的に奪った

 

 

「先程も言ったと思うがね。これは私達の問題であって、部外者の貴女が口を出す問題ではない

言ってしまえば、余計なお世話だ

というか、こんな事をするから貴女達アクシズ教徒は嫌われるのではないかな」

 

「で、ですけど」

 

「ですけど、なんだい?

彼ナタルはゆんゆんの危ない所を助けたと聞いている

私は少なくとも貴女よりはナタルさんの事を知っているつもりだ。彼は私が知る限り、人間に危害を加えた事はない。それなのに彼とは初対面の貴女が彼を危険視出来るのかい?

そうならば、こちらの納得のいく答えを聞かせて貰おうじゃないか。アクシズ教のプリーストの貴女がその様な事をする以上はそれなりの理由があるのだろうね?」

 

セシリーを正座させた上であるえはセシリーを詰問していた

 

あるえの目の色は深紅に輝いており、彼女の怒りの程をあらわしていた

 

 

「セシリーさんが私達の事を心配してくれたのは嬉しく思います

ですが、此方の言い分を聞かずに一方的にナタルさんを害そうとした事は明らかに間違いではありませんか」

 

めぐみんは他の二人よりは落ち着いて話をしている

 

「しかしね、めぐみん。下手をすればナタルさんが死んでいたのかもしれない。況してやこちらがナタルさんを隠していたにも関わらずこの様な事を仕出かしてくれたんだから、謝ってはい終わり。とはいかないだろう?」

 

「では、どうしますか?

セシリーさんを此処で殺すとでも?

それをナタルさんは許すとは思いませんが」

 

実のところ、めぐみんも冷静そうに見えてかなりキレていた

 

元々、自分の失言から始まったと言うことでセシリーにも多少は気を使ったにも関わらずこのざまだ

 

それにめぐみんとて知り合いを傷つけられそうになっていて黙ってすませるたちではないのだ

 

だから自然と表現も過激になる

 

 

 

 

「ゆんゆんが俺に傷ついて欲しくないように、俺もゆんゆんに傷ついて欲しくないんだ

幸いにも俺に怪我はないんだから、ね?」

 

「はい」

 

ナタルとの話で既にゆんゆんは涙声だった

 

自己嫌悪とナタルが助かった事による安心でゆんゆんの頭の中はごちゃごちゃになっていた

 

 

「でも、ゆんゆん。ありがとう。俺を守ってくれて」

 

「ナダルざんっ!」

 

ゆんゆんは涙を堪えきれずにナタルを抱きしめた

 

「ごめんな。心配かけて」

 

「いえ、私、私こそごめんなさい」

 

「ゆんゆん。本当にありがとう。怪我がなくてよかったよ」

 

「ナタルさん」

 

 

暫くの間、ゆんゆんはナタルを抱きしめたままだった

 

ナタルの温もりを確かめる様に

 

 

 

 

「あー、うん。間が悪かったって事で、ヨシ!」

 

落ち着いたゆんゆんから解放されたナタルはあるえ達の元へ行き、そう総括した

 

「・・・色々と言い足りないが、ナタルさんが許しているなら私が言う権利はないね」

 

「いや、あるえさんの気持ちは嬉しかったよ。ありがとう」

 

「・・やれやれだ。一番落ち着かなければならない場面だったのにね」

 

「私の失言のせいで」

 

「いやいや。めぐみんさんも悪くないって。本当にタイミングが悪かっただけでしょ?

それでも気がすまないなら、また爆裂魔法を見せてくれたらそれでいいよ」

 

「ふふっ、分かりました。また我が爆裂魔法をお見せしましょう!」

 

「セシリーさん?でしたっけ

あまり気にする必要はないですよ?多分俺は例外中の例外でしょうし」

 

「ですが」

 

「えっと、ならセシリーさんって司祭なんですよね?」

 

「?そうですが」

 

「じゃあ、宗教について教えて貰ってもいいですか?

此方の世界の宗教に興味がありますので

 

「え!」

 

「いや、それは」

 

「ちょっと、待ってください」

 

ナタルは三人をそれぞれ納得させる為に話をしていた

あるえとめぐみんは良かった。がセシリーへの頼みにゆんゆん達は動揺した

 

 

「アクシズ教の話を聞いて貰えるのですか?」

 

「そのアクシズ教について全くしらないもので。というか、世間一般の常識も知らない部分が多いのでそれも含めて教えて貰えると助かるんですけど」

 

「わっかりました!ならばアクシズ教の教典を今日にでも、いえ今日これから街に戻ってからでは時間が足りませんね。明日でいいでしょうか?」

 

「ええ。セシリーさんがよろしければ明日でも大丈夫ですよ

何分、レタスですので毎日が休みですから」

 

「では明日必ず此方に伺います

その時にアクシズ教や色々な話をしましょう

ああ、アクア様。貴女の教えがついに人間以外にも広がる事になります

っと、では改めましてアクシズ教のプリーストをしておりますセシリーと申します。今回の無礼、誠に申し訳ありませんでした」

 

深々と頭を下げるセシリー

 

「あ、これはご丁寧に。レタスをやってますナタルと申します。現在はただのニートですね」

 

 

 

「えっと、セシリーさんとナタルさん凄く仲良さそうなんだけど」

 

「ついさっきまでナタルさんを排除しようとしてたとは思えないね」

 

「というか、いいんですか?ナタルさんが最悪アクシズ教徒になりそうですが」

 

「「うーん」」

 

 

 

 

 

 

 

後の宗教関係者は語る

 

ここが大きな転換期だったと

 




と言うわけで原作屈指の問題集団がダイナミックエントリーしました

割と好きなんですよ、アクシズ教の皆さん


なお、ミドリカワはキャベツ農家の真似事をしていましたが、此方のナタルは現在無職となっております

その内、ナタルにも仕事をさせないとマズイと思いながら、続きを書いていきます

では御一読ありがとうございました


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黒きモノ

仕事が暇なので投稿してみた

今回は某人物に対するヘイト的な表現が含まれます

また、作者自身の考えが大いに強調されています

それでもよい方は御覧下さい


あ、それといつも通りの文量です


ナタルとセシリーが約束をしていた頃、王都では一つの騒ぎが起こっていた

 

 

貴族の中ではそれなりに有名だった『好事家』として名の知れた貴族の屋敷が全焼。屋敷の主以下全員の焼死体が発見された

 

更に屋敷の側には黒髪黒目の男性の死体が発見されており、警察と軍は事故と事件の可能性を調べている

 

 

だが、王都で噂になっている理由はそこではなかった

 

その屋敷に保護されていたと噂があった自称『天使』の死体が発見されなかったとされたからである

 

 

これは警察による尋ね人の掲示により発覚したものであり、元々『天使』等と触れ回っていた気狂いとしてそれなりに有名な事が原因である

 

 

保護した貴族を屋敷もろとも始末した。等という風評もいつの間にか流れていた為に王都の民は少しの恐怖と多大なる好奇心を向けていた

 

 

 

 

 

そんな時期に王都近郊のとある有力貴族の屋敷に『人が入る程の大きさの荷物』が届けられた

 

 

 

「苦労であったな」

 

屋敷の主である貴族の男は自室に入って来た人物を労う

 

「はっ、有り難き御言葉」

 

貴族の男に労われた仮面の男は緊張した面持ちで返事を返した

 

彼は警察署の側で殺された男と共に張り込みをしていた人物だった

 

「何か異常や気になる点はあったか?」

 

その男に壮年の男が質問する

 

「実は天使等と吹聴していた割には明らかに一般人と変わらない程度の抵抗しか見せませんでした

私もアレを使うまでも無く制圧出来たことを踏まえると狂言の可能性が高いかと」

 

「ふむ、そうか

それは後で調べるとしよう。幸いにもそれに適した『神器』とやらがある」

 

「しかし、『神器』は本人でなくば十全に使えないと聞きますが?」

 

「貴様が心配せずともそこら辺は抜かりない」

 

「・・・・はっ」

 

「うむ。今回も苦労であったな

報償金を出すゆえ暫くはゆっくりせよ」

 

「有り難く」

 

 

報償金を貰った仮面の男は、その後足早に屋敷から去っていった

 

 

 

「腕は立つが信用ならぬ男よ」

 

「ええ。おそらくは奴も王都の『魔剣の勇者ミツルギ』と同じではないかと思われます」

 

「同じ境遇の者を躊躇いなく手にかけるか

あの手の人間は此方の隙を伺っている。隙を見せれば平気で裏切るだろう」

 

「間違いなく」

 

貴族の男とその部下の壮年の男は仮面の男を全く信用していなかった

 

 

 

彼は冒険者ギルドに登録するや直ぐに頭角を表した

 

しかも『ソロ』でありながら、次々と高難度のクエストをこなしていった

 

だが、一方で協調性などは皆無であり、平気で人を見下す、騙す、陥れるなどの行為を繰り返した結果、同業者である冒険者達に襲われ、顔に重傷を負った

 

その後はギルドに一切行かず、所謂アウトローな仕事ばかりも請け負う事になった

 

 

 

そうじて、人とは突如として与えられたモノを使いこなすのは中々に難しいものである

 

宝くじやギャンブル等で突如大金を有した人物、元々家が金や権力を持っていた人物

 

これ等は余程自身をコントロールしなければすぐに悪い方向へと傾く

 

 

大人ですらそうなのに、転生する前が学生だったりする転生者が『転生特典』というものを与えられて果たして一般的な行動がとれようか

 

しかも、文字通り『異世界』という今までの常識の通じない所で

 

 

原作でも凄腕の冒険者となっていたミツルギが女神アクアの扱いについてカズマに抗議した時も、彼は『グラム』という強大な力を与えられたから初心者冒険者として通るべき『貧しさ』を認識出来なかった

 

無論、彼とて努力はしたのであろうが、カズマが彼よりグラムを奪っただけで勝負に負けた事を見ると、グラムありきの努力であったと思われても仕方ないだろう

 

対するカズマはアクアという転生特典があったとはいえ、基本的には自助努力していたと思われる

 

 

 

誰かが言ったか『大いなる力には責任が伴う』というのは間違いではないのだ

 

 

 

力を得て増長しないように自制するのは間違いなく並大抵の苦労だと思うが

 

 

 

「消しますか」

 

「利用価値はあるが」

 

「下手をすれば計画の妨げとなりましょう

今ならば手こずる事はあっても間違いなく始末できましょう」

 

「・・・・・いや、もう少し利用する」

 

「はっ。出過ぎた真似をして申し訳ありません」

 

「構わぬよ。だが、鎖はつけておけ

狂犬とて飼い慣れせばよいが、飼い主に牙を剥くようならば」

 

 

 

 

 

「天使ねぇ?くだらない事だ」

 

屋敷から出た男は一人呟く

 

「ま、金払いはいいからな。暫くは使われてやるか

さてと、何時もの店で一杯やるか」

 

彼は今馴染みの店に通っており、一人の女性に入れ込んでいた

 

何処かの村から出てきたそうだが、そうとは思えない程の美貌を持ち、周囲から嫌われている彼にも嫌な顔一つしない

 

彼女に会うのが、最近の彼の楽しみだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリーとの歓談が終わったナタルであったが、今日はゆんゆん達もアクセルの街に戻ると聞いて見送る事にした

 

「また、明日も来ますね」

 

「ゆんゆん。気持ちは有り難いけどさ、生活大丈夫?」

 

「はい。最低限のクエストは受けてますし、宿には先にお金を支払ってますから」

 

「ゆんゆん。多分ナタルさんが言っているのはそういう意味ではないと思うのですが」

 

割と頻繁にナタルへ会いに来るゆんゆんが心配になったナタルだが、どうやらめぐみんの発言からすると通じていないらしかった

 

「とはいっても、私も来るのだけどね

めぐみんはそろそろクエストを受けないとマズイと思うけどね」

 

「うっ、た、確かにそうですが」

 

「大丈夫ですよ、めぐみんさん。いざとなったらエリス教の教会でパンを配ってますから、それを貰いに行きましょう」

 

ちゃっかり明日も来ると宣言するあるえと懐具合が苦しいめぐみん

普通に炊き出しに行くことをすすめるセシリーだった

 

「いや、炊き出しって」

 

「アクシズ教徒はこういう事を平気でするからね」

 

少しばかり引くナタルだった

 

 

「では、また明日お会いしましょうね、ナタルさん」

 

「あ、はい。忙しかったら後日でいいんですよ?」

 

「いえいえ。折角アクア様の教えに興味を持ってもらったのですから明日は洗剤も持ってきますね」

 

 

 

 

 

ゆんゆん達が帰った後

 

「洗剤をどうしろと?」

 

途方に暮れるレタスが一人?いた

 

 

 

 

 

 

 

レフェルは考えていた

 

キャベツを養殖するのは効率よく、しかも危険のリスクを下げてレベル上げをする為である

 

つまりは危険のリスクさえ下げてしまえば、別にキャベツに限定する必要はないのだ

 

しかし、簡単に言えるとしても実行する方法が見つからないのであれば意味はない

 

「そういえば、転生者の一人が経験値について何か言っていたような」

 

 

「だ○らよ、○じ○生○な○ば○○値は○ん○りも○え○んだ○て」

 

レフェルは必死に思い出そうとするが思い出せない

 

 

仕方なくレフェルは金を稼ぐために道具屋でバイトをすることにした

 

 

 

 

 

レフェルの記憶が戻らない事を切に願う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけでいよいよきな臭くなってきた一方でアクシズ教徒のレタスが爆誕しそうな話

爆裂魔法に憧れてアクシズ教徒のレタスとか、いや本当に何なのコイツ?

と思いながらも続けていきたいと思います


石を片手に見守って下さるとありがたいです

では、御一読ありがとうございました


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異世界の理

今回は特に独自解釈が全面に押し出されています

予めご了承の上で御覧ください


何もない空間に少年佐藤和真はいた

 

彼は何故此処にいるのか分からなかった

 

「佐藤和真さん。貴方はとある事故で亡くなってしまいました。残念ですが貴方の人生は終わってしまったのです」

 

「へ?」

 

蒼い髪をした美しい少女は彼が死んだことを口にした

 

「いやいや、俺が死んだって?

え、ちょっ、本当に?」

 

「戸惑うのも無理はありません

申し遅れました。私は女神アクア。貴方の様な方を導く女神です」

 

「・・・・・・・そっか、俺死んだのか」

 

彼は生前は学生でありながら、とある事情で引きこもりをしていた

 

家族に迷惑をかけているのは薄々わかってはいたのに、結局は家族には何も返す事が出来なくなった事に落ち込んだ

 

出来る限りの事をして、何とか彼をしようと色々な事を試みてくれていた家族

 

彼は自然と涙を流していた

 

 

 

 

 

 

「すいません」

 

「いえ、御家族を思う気持ちは尊いものです

称賛することはあっても、非難することはありません」

 

そう言って微笑む女神アクアに彼は一瞬見惚れた

 

「えっと、導くってさっき言ってましたけど」

 

「ええ、貴方には幾つかの道があります

まずはこのまま天界に行って過ごす事。ですが、これはおすすめはしませんけど

次に再び貴方のいた世界へと生まれ変わる事。尤も年代等が変わる上に記憶も消去しますので、貴方の人格は消滅します

 

最後はあまりすすめたくはないんですけど、それでも聞かれますか?」

 

彼の問いかけに女神アクアは答えた

 

 

なお、天界に行く場合は一度魂を再構成する都合上、ほぼ人格が消滅する上に、仮に人格が維持できたとしても退屈な生活であるのですぐに魂が磨耗する事になる

 

生まれ変わるとは仏教でいうところの輪廻転生にあたるが、人間に生まれ変わるかどうかは未知数である。更には平和な時代とは限らない

 

 

「えっと、最後の選択肢はどうして言いたくないんですか?」

 

「これは私達天界の都合の産物なの

それに少し前に色々あって流石に胸を張ってすすめようとは思わないのよ」

 

「一応、聞かせて貰ってもいいですか」

 

「分かりました

最後の選択肢は貴方のいた世界とは違う世界。貴方の分かりやすい表現をするなら異世界へと転生してもらいます

その場合には転生特典としてこちらから用意できる範囲で用意します

ただし、モンスターや魔族、魔王の居る世界です。貴方のいた世界よりも死は近くにあるでしょう」

 

「RPGみたいな感じですか?」

 

「そう解釈して貰っても構いません。一度死んだら終わりな事以外は」

 

「う、それは」

 

「直ぐに結論を出す必要はありませんから、ゆっくり考えて下さい。どうか、後悔のない選択を」

 

 

 

 

 

 

 

和真は暫く考えた後

 

「女神様、俺の記憶はどうなりますか?」

 

「異世界に転生する場合は記憶は残しておきます

もしかして、異世界に転生するつもりなの?」

 

「あ、はい。他の二つよりはマシな様な気がしますから」

 

「はっきり言わせて貰いますけど、貴方の様な方を何度も私は異世界へと送りました

ですが、亡くなった方もそれなりにいます。それでも希望しますか?」

 

「はい」

 

「はぁ、本当に異世界へと余所の世界から送るなんて辞めればいいのに

分かりました。佐藤和真さん。貴方の意思は変わらないようですので、転生特典の一覧をお渡しします

熟読の上で選択して下さい。これが貴方の生命線になることもあるのですから」

 

と女神アクアはカズマに辞書の様な物を手渡した

 

「え、こんなに種類があるんですか?」

 

「ええ。貴方の前に転生した人達からの意見などを参考にして作り上げたリストよ」

 

「えっと、武器に防具に道具か

あのすいません。能力のブーストとかはないんですか?」

 

「え?ああ、そういえば上から許可が降りなかったのよね。どうしてかしらね

悪いとは思うけどリストにあるもので我慢してくれるかしら?」

 

「あ、はい

えっと、『魔剣グラム』?あ、これは誰かが使ってるのか。❌がついてる

『古代国家ノイズの関連書籍』?何だこれ?でもこれも❌がついてる

えっと最後のページには、え?」

 

「どうしたのかしら?

前とは違って時間制限なんてないから落ち着いて決める事をおすすめするわよ」

 

「時間制限あったんですか」

 

「色々あって、廃止になったけどね

でどうしたの?」

 

カズマがリストを確認していると最後のページに予想外な事が書いてあった為に驚きの声を上げた

それを女神アクアは不思議そうに訊ねる

 

「あの、最後のページに『女神アクア』って書いてあるんですけど、本当ですか?」

 

「私?まあ私でよければ構わないけど、いいのかしら

もっと貴方の役に立つものもありそうだけど」

 

「それでもお願い出来ますか?」

 

カズマとしては見知らぬ世界へと一人で行くのは抵抗がある。幸いにも目の前の女神様は優しそうで、女神というからには強いとも思っていた

 

「えっと、私はいいんだけど、どうしたらいいのかしら」

 

女神アクアも突然の事に困惑していると

 

「構わぬよ。女神アクアよ佐藤和真と共に行くと良い

後の事は我々が責任を持って務めよう」

 

と直視出来ない程の光を纏った何かが現れた

 

「それとお前も例の件、気に病んでおったろう

故に転生特典にお前を加えたのよ

さて、佐藤和真よ。汝は女神アクアの同行を望むのであるな?」

 

「はい。女神様にお願いしたいです」

 

「うむ、良かろう。なれば貴殿の旅路に祝福のあらんことを願わせて貰うとしよう」

 

 

女神アクアと佐藤和真はその言葉と共に何処へと転移させられた

 

 

 

 

「よろしかったので?」

 

カズマ達を送り出した存在に一人の天使が声をかけた

 

「うむ、彼の者は中々に面白い」

 

「そうではなく、女神アクアの現界を許した事です」

 

 

リフェの件以降、女神アクアは精力的に自身の仕事をこなしていった

 

これには後輩の女神エリスも驚く程であった

 

 

「女神アクアはあの愚か者が仕出かした事による被害者達を探そうと必死であった

職務にも一切の緩みが見られなかった

なればこそ、女神アクアの現界を許したのだ」

 

「左様でございましたか

では今一つ、転生者に能力ではなく、神器を与えるのは何故にございますか

神器とて具現化するのに労力を使います。それに神器は回収の必要性がありますが」

 

「ふむ。貴様はどう見るのだ?」

 

「神器であれば見える形で『神の加護』を示す事が出来ますのではないかと」

 

「それも無くはない

が、本当の理由は他にあるのだ」

 

天使へと説明を始めた

 

 

「そもそも人間のみならず、我々の様な精神体ともいえるものにも内なる器があるのだ

精霊や我々は通常の生物より少々異なる事があるが、今は置いておく

そして例外なく生物には魔力が備わっている。力の大小はあるがな

その内なる器に注ぎ込む魔力を人間達は『経験値』と呼ぶ

だが、この内なる器は不思議な物でな。拡張もすれば収縮もするのだ

つまりは内なる器が魔力を基準の量より多く注がれる事により内側から外側へと力がかかる

それにより、内なる器が拡張されるのだ。人間達の呼び方でいうならば『レベルアップ』というわけだ

ここまでは、良いか?」

 

「はっ、ですがその理屈では生物が食べている物にも魔力、つまりは経験値が含まれる事になりますが」

 

「うむ、その通りよ

ここで問題になるのが、内なる器が基準量を上回る魔力を体内に放出する事と生物にも種類があることよ

器とて常に許容値一杯の魔力を注がれては壊れてしまう。だからそれを体内に散らす。散らされた魔力は各所にて少量ながらも魔力ブーストの効果を与える

つまりは内なる器は少なからず、魔力を通す訳よ

生物は空腹時とある程度食欲が満たされた時の動きは違うのはそういう事だ

ついでにこれは、レベルアップで基礎能力が上がる事に繋がるのよ

 

生物には完全な物質、精霊と物質の間にいる者、精霊に大まかに分類できる

さて、我々神や天使、それに悪魔どもは何で構成されていたか?」

 

「魔力ですな。悪魔どもは悪魔界から出る際に魔力量の一部を使い物質化しますが」

 

「そうよな。悪魔が討伐された時に経験値が多い理由は悪魔は人間界において半精神体であるが故だ」

 

「成る程」

 

「では逆に器が収縮する場合とはどの様な時か?

自身より圧倒的な魔力を内包した存在に対峙した時よ

本来ならば、肉体という防壁によりかなり軽減されるのだが、この場においては転生者たちは剥き出しの魂

かかる負荷は尋常ではない。勿論、女神アクアとて、しかと力はセーブしていたとしてもな

 

それに加えて、これは我々の世界の理。まだそれに適応していない魂等に能力を与えればどうなる?」

 

「あちらの世界には魔力はありませぬ

そして、器が収縮していると

!!そういう事ですか」

 

「そうよ。その状態の器に能力という魔力を流し込めば適応出来ていない上に収縮している器が崩壊しよう

であるからこそ、原則的に能力はやれんのだ」

 

 

因みに異世界の言語を習得する際に最悪頭がパーになる理由も此処にある

 

言語体系を一種の能力として既に付与する事が決まっている

 

これのみでも器に負担がかかる為にそれ以上の負荷等は認められないのだ

 

 

あくまでも転生者達は二つの世界のバランスを保つために異世界へと向かうのだから

 

 

 

「では、同じ個体でも経験値が違うのも」

 

「当然、同じ個体とて食べる物は違うであろう

長生きすればするほどに食べる量は増える

長命種である程に力が強く、経験値が多い訳よな」

 

「もしも、器が壊れたらどうなりますか?」

 

「最悪は廃人等になり、到底生きているとは言えなくなろう」

 

「もしや天界規定による蘇生の制限も」

 

「うむ。器が壊れる以上は蘇生したとしても、完全な復元は余程魔力の行使に精通せねば無理な事よ

回数を重ねる毎にそのリスクは跳ね上がる

その様な事を容認は出来まいて」

 

 

 

 

魔王軍幹部のリッチーのウィズとデュラハンのベルディアで比較すると分かりやすいだろう

 

 

 

ウィズはリッチーに成りはしたが、人間性を失っていない

これは生前のウィズが凄腕のアークウィザードであり、魔力の扱いに精通していたからだと思われる

 

 

 

逆にデュラハンのベルディアは騎士であったにも関わらず、己の我欲に負けてセクハラを繰り返している

 

おそらくはデュラハンとして再び生?を受けたものの器が一部破損してしまったからと考えられる

 

 

 

 

「成る程」

 

「後、言っておくがこれは転生者全員に当てはまる事のはずだ

器に負荷を掛けられたのが初めてで、かなりの負荷を掛けられたのだから仕方ないのだがな」

 

「あの愚か者はそれすらも」

 

「理解しておらぬし、加減もしておるまい

大方、自身の偉大さ等を強調したかったのだろうが」

 

 

 

事実、リフェが転生の担当をした内で人間として転生出来たのは僅か三名

しかも何れの人物も人格などに悪影響を及ぼされている

 

リフェが担当したのが二十名弱であったにも関わらず僅か二割にも届いていない

 

他の人物はナタルの様な人語を喋れるものはおらず、自身が転生者と知らぬままに死亡している

 

 

「あれが少々まずい事になっておりますが」

 

「捨て置け。未だに天使である事を頼みにしている上に人を殺してもおる

助ける理由も価値もない」

 

 

一応は天界でもリフェの行動は監視されているが、あくまでも天界に決定的な不利益をもたらさない限りは不干渉であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という事で遂に皆さんのカズマさんがエントリーされました

勿論、経験値とか魔力は捏造ですのでご理解下さい

何故か仕事中に閃いたので採用しました



では、御一読ありがとうございました


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アクシズ教

最近、熱中症になりかかるので投稿します

何時も通りのクオリティですが、それでもよければどうぞ

最後の方に少々不快になるかもしれない表現がございますので御注意下さい


セシリーと再会の約束をした翌日の早朝、アクセルの街の宿から周囲を見渡して、辺りを警戒しながら進む二人の紅魔族の娘がいた

 

「というか、此処までするのかい?」

 

呆れたようにあるえは小さく呟く

 

「こうでもしないと、セシリーさんと鉢合わせしないとも限らないでしょ」

 

「まぁ、そうだが」

 

「それとも何?あるえはナタルさんがアクセル教に入ってもいいと思うの?」

 

ゆんゆんの質問にあるえは想像を働かせる

 

キャベツ達にアクシズ教を布教するナタル

今まで以上に自由に動き回るナタル

終いには爆裂魔法を撃ちながら「エリスの胸はパッド入りぃ!」等と叫ぶナタル

 

「・・・すまない、ゆんゆん。私が悪かったよ

全力で阻止しよう」

 

あまりにもヤバい未来を想像したあるえはゆんゆんへの協力の意思を示した

 

(それはそれで悪くないのかも知れないが、何故だろうね。私が苦労する未来が見えてくるのだが)

 

別にあるえは友人の占い師の様に未来は見えない筈だが、本能が全力で警鐘を鳴らしている

 

まあ、今までのあるえの立ち位置からすると間違ってないのが、何とも言えないのだが

 

 

とにかくゆんゆんとあるえはセシリーよりも早くナタルとの合流を目指した

 

 

 

なお余談となるが、怪しげな紅魔族の娘二人を見たアクセルの住人は『爆裂娘』『孤高の魔道士』と並んで、『変な女性』とあるえを認識する事になる。それにより紅魔族が『変人の集団』と確定されたのだが、あるえ達がそれを知るのはかなり後の事となる

 

 

 

何とかセシリーとエンカウント?せずにアクセルの街から出たゆんゆんとあるえは急いでナタルの元に向かった

 

ナタルをアクシズ教の魔の手から守る為に

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、「アクシズ教徒はやれば出来る子」ですか」

 

「ええ、その通りです。その後に「出来ないのは社会が悪い」と続きます」

 

「はぁ」

 

「詳しくはまた後日改めて説明しますが」

 

「えっと「汝、老後を恐れるなかれ。明日の自分は笑っているか、それは神にすら分からない。なら今だけでも笑いなさい」あ、これ凄く良い言葉ですね」

 

「ええ、ええ。そうでしょう、そうでしょう

私達アクシズ教は常に前向きな考えを推奨しています

貴方は聞けば以前は人だったと聞いています

今は、その」

 

「レタスですね(笑)」

 

「い、一応言いづらかったのですけど」

 

「いや、まあ、仕方ないっしょ

ついでに元ボッチでチェリーのオプションも付いてきますけど(笑)」

 

「えっと、そのオプションは要るのかしら?」

 

 

 

 

「ちょっと待ってー!」

 

普通に会話してアクシズ教の教えを布教されているナタルを見てゆんゆんは絶叫した

 

「いや何で、もういるんだい?」

 

あるえの疑問は尤もだった

 

アクセルの街は初心者の冒険者が集う街ではあるが、門は深夜は閉鎖されている

モンスターや犯罪者の危険を考えてであった

これは領主アルダープの発案であったりもする

 

一応は門の外に詰所があり、事情によっては深夜でもアクセルの街へ入れなくもないが、その場合は直ちに警察ないし翌日冒険者ギルドへの速やかな報告が義務付けられていた

 

これは以前は時間問わずアクセルの街の門を解放していた事により、少なくない犯罪者がアクセルの街へとやって来た為に行われた措置である

 

尚、この門外の詰所の設営やかかる経費は領主のアルダープが以前は負担していた。が、現在はダスティネス家が負担している

 

 

あるえとゆんゆんは門の解放時刻きっかりにアクセルの街を出た

にも関わらずセシリーは先に着いていたのだから、あるえの疑問ももっともだった

 

「え?セシリーさんなら、あの後、アクセルの街に戻って直ぐに来られたけど」

 

「は?」

 

「え?」

 

思わず間抜けな声を出すあるえとゆんゆん

 

「それはそうでしょう

アクア様の教えを人間以外にも拡げる好機なのですから!」

 

「いやだからって野宿までしますかね、普通?」

 

 

そうなのであった

 

セシリーはアクセルの街の教会に戻り布教用の資料と着替えを持って直ぐにナタルの元に戻ったのだ

 

その後は普通に野宿して夜を明かして明け方から文字を教えたり、アクシズ教の教義のさわりを教えていた

 

「そこまでするの?」

 

「流石は我々紅魔族と並び立つと言われるアクシズ教か」

 

困惑するゆんゆんとある意味納得したあるえだった

 

 

 

なお、あるえは紅魔族と並び立つと称したが、ぶっちゃけると『頭おかしい』意味ならば流石の紅魔族もアクシズ教の足元にも及ばないのである。流石は機動要塞デストロイヤーが通った後ですら残るとされるアクシズ教である

誇れるかどうかは甚だ疑問だが

 

 

またまた余談だが、魔王軍幹部の一人はアクシズ教の面倒くささに正攻法での攻略を諦めさせる一方で某幹部は紅魔の里をひたすら攻撃している事からもアクシズ教の方が紅魔族よりもヤバいのは察して頂けると思う

 

 

更に余談だが、作者は某動画の英国面の人物を崇拝しており、作者も割とヤバい人扱いされていたりするが、完全な余談である

 

 

「しかし、全く違う宗教体系というのも、中々興味深いっすね」

 

「全く、ですか?」

 

紅魔族二人の困惑を放っておいて会話を続けるレタスと狂信者

 

「いや、アクシズ教って女神エリスも認めているんですよね?」

 

「?はい。否定する必要もありませんし、なんだかんだ言ってもこの世界での最大宗教ですからね

それを否定するのは大多数の人の拠り所を奪う事になります

私達アクシズ教は別に他の教えを否定するつもりはないですからね」

 

セシリーの言うこともある意味では正しい

 

が、エリス教はレジーナ教等の少数派の宗教については『邪教』として迫害していたりもする

 

 

がナタル達の居た世界に比べるならば、割と宗教間の対立は少ない様にナタルには感じられた

 

ナタルや大多数の転生者達は元の世界では無神教であり、この辺りは馴染み易くなる一因でもあったりもした

 

 

 

 

 

 

ナタルがアクシズ教の教えを受けている頃、アクセルの街に二人の人物が到着していた

 

「此処が異世界ですか?」

 

「ええ、そうね。初心者の街として有名なアクセルの街よ」

 

「あ、そうなんですか」

 

「・・・ねぇ、貴方。その言葉遣いどうにかならないかしら

堅苦しいのは私、好きじゃないのよ」

 

「いや、でも女神様ですし」

 

「今の私は貴方の仲間なのよ?

そんな言葉遣いされてると、壁を感じるのよ」

 

アクアはカズマに少々膨れながら主張する

仲間だから、対等でいたい。と

 

「あ、えっと、じゃあ、アクアで良いんですか?」

 

顔を膨らましながら抗議するアクアに若干ときめきながらカズマは尋ねた

 

「当たり前でしょ

じゃ、これからよろしくね。カズマ♪」

 

満面の笑みを浮かべるアクアに

 

(女神かな?

いや、真面目に女神だけど!)

 

と内心動揺しまくるカズマだった

 

 

 

 

 

 

カズマ達が異世界に降り立つ少し前にとある貴族の屋敷の地下牢に一人の少女の姿があった

 

「え、何?

どういう事なの?」

 

困惑する少女リフェ

彼女は『好事家』として有名な貴族に保護されていた筈であった

 

その貴族はリフェを不当に扱う事はせずに、それなりの自由をリフェに許していた

 

リフェもその待遇には多少の不満はあったが、おおよそ満足していた

 

 

 

にも関わらず気がついたら、牢獄の中

混乱するのも仕方なかった

 

 

「お目覚めですかな?『天使』殿」

 

牢獄の外よりリフェに声がかかる

 

「だ、誰よ。アンタ」

 

「これはこれは。流石は『天使』殿だ

我々人間等歯牙にもかけぬご様子

・・・ですが、些か貴女は自身の立場をご理解なさっておられぬ様ですな」

 

「えっ、な、何?

キャアアアッ!」

 

リフェは突然の激痛に悲鳴をあげる

 

「流石は『神器』ですな。『天使』たる御身にも効果があるとは」

 

貴族の男は満足そうに呟く

 

リフェの首元に嵌められている首輪。これは装備した相手の神経に直接痛みを与える『神器』だった

 

元々リフェが担当していた転生者にリフェ自身が与えたものである

 

とはいえ、目録には存在せず、彼女の派閥から手に入れた天界においても『禁制品』であるが

 

 

授けられた転生者は別の転生者により始末され、この品は紆余曲折を経て貴族の元に来た

 

「さて、貴女にはこれから此方の用意したモンスターと戦って頂く

それで貴女が死ぬならば仕方ない

まぁ、精々生き延びる事ですな」

 

「あ、あ」

 

貴族の男の発言にも痛みからまともに反論出来ないリフェ

 

この後、彼女は文字通り命懸けで貴族の用意したモンスターと殺し合いをする事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アクシズ教のレタスのフラグが進行中

カズマ異世界に立つ

リフェ生命の危機

の三本でお送りしました


?文章量が少ない?
ハハハ、何時もの事ですネ


では御一読ありがとうございました


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現世という名の地獄 異世界という世界

仕事が空いたので投稿します

今回も割と暗めな話となっております

というより温度差が激しいですが、どうぞ


あの後リフェは最低限の食事を与えられ、最低限の武器や防具を与えられて貴族の男が用意したモンスターとひたすら戦わされていた

 

「う、うわぁぁぁっ!」

 

泣き声を上げながらもモンスターを必死に倒していくリフェ

 

貴族の男もそこまで危険度の高いモンスターは用意しておらず、幸いにもリフェでもどうにかなるレベルであった

 

「痛い、痛い、痛い!」

 

モンスターとの戦いの後には必ず尋常でない痛みがリフェに襲いかかる

 

 

というのも、リフェはレベルが上がらない為に内にある器がダメージを受けているからである

 

 

以前天界の者達が話していた様に、本来ならば内にある器は経験値を得る事で拡張する筈である

 

だが、リフェは忘れがちだが『罪人』である

リフェを現界させる際にレベルアップを防ぐ為、器には固定化の細工を施されていた

 

故に限界値を越える経験値はリフェに激痛をもたらす事になる

普通の生物ならば、その時点でマトモではいられなくなるか、死亡する。がリフェは元とはいえども天使である

 

天使や悪魔は魔力で構成されている以上、魔力の扱いには精通している

 

だからこそ、リフェは何とか生きている。それだけである

 

そして時間と共に経験値という名の魔力は器から染み出していく為に激痛は収まる

だが、その魔力は全身に行き渡る頃には一般的なレベルとは比較にならないほど減衰しており、目に見える形での能力向上には繋がらない

 

レベルアップによる身体的能力の向上は全く見えないのであった

 

 

 

 

 

 

 

「閣下。あの者は本当に天使なのでしょうか?

既に相当数のモンスターを討伐させているにも関わらず、一向にレベルアップや能力向上の様子が見られませぬ」

 

貴族の男に仕える壮年の男は疑問を述べる

 

「ジェスターよ、やはり貴様もそう思うか

確かに妙だな」

 

貴族の男も同意する

 

「冒険者登録でもさせれば分かりやすいのですが」

 

「その場合アレをギルドに連れて行かねばならぬだろう。それは無理であろうよ

かと言っても騎士団に連れて行くわけにもいくまい」

 

「そうですな

それと閣下。例の話は如何しますか?」

 

「む?

ああ、あのキャベツの養殖の話か

ジェスター、貴様はどう見る?」

 

「理屈は理解出来ます

されど、実用化するまでの障害が多いのではなかろうか、と」

 

「だが、妄言と取るには些か以上に勿体ない話だろうな

 

仮に成功すれば、王国軍にも貸しが出来る上に王家にも優位に立てる可能性もあろう」

 

「閣下の言われる事は理解出来ますが」

 

 

 

 

貴族の男は王国でも屈指の影響力を持つ大貴族である。そして、現体制に公然と反発しても処罰されないだけの政治的な権力もある

 

彼は魔王軍と戦う事にほぼ国力を使いきってしまう現状に不満があった

 

時が経つにつれて際限なく増えていく戦費。進まない魔王軍の攻略。常に予算の奪い合いをする軍人と文官の対立

果ては追加の支援の為だけに隣国エルロードへと王女を嫁がせようとする一部の動き

 

停滞する魔王軍との戦いを何とかしなければこのベルゼルグ王国はそう遠くない内に崩壊しかねないと思う程度には危機感を持っていた

 

 

それ故に彼は外法とも云える『悪魔召喚』を目指しているのだ

 

絶大な力を有する悪魔だが、彼等は契約には忠実であると聞く

ならば、魔王とまではいかずとも幹部クラスを討伐させることにより、魔王軍の侵攻を弱めようとしているのである

 

その為の媒介として天使である筈のリフェを必要としているのだ

 

 

なお、正確には『強力な魔力』であり、必ずしも天使である必要はないのだが、彼等は誤解していた

 

 

 

 

 

 

キャベツ狂いとして名を馳せるレフェルは研究の為のパトロンとして王国でも屈指の権勢を誇る貴族の元に来ていた

 

一度話をした際には微妙な対応だったために諦めていたが、相手方から呼び出されたのだ

レフェルならずとも期待するのは仕方ない事だろう

 

 

「態々すまぬとは思う

で、貴殿の発案する計画はどの程度完成しておる?

また、かかる費用は目処がついておるのか?」

 

「恐れながら公爵閣下

私の計画は未だ机上の空論と云える段階でございます

しかしながら、成功は間違いないかと

費用については用地の確保、秘密を洩らさない人員の選抜が最もかかるかと」

 

「かかる費用や手間についてはこの際、貴殿は気にせずとも良い

実際にどの程度の支援が必要なのか、具体的に話せるのか?」

 

おや?とレフェルは内心首を傾げた

今までの相手とは話の進み方が明らかに違うのである

 

「具体的でございますか」

 

とはいっても相手はこの国きっての大貴族。不興を買えば唯の一般人であるレフェルにはどうしようもない

その不安から容易な答えが出来なかった

 

「・・・貴殿の懸念するところは理解は出来る

が、儂の名誉と名前に誓う。貴殿が如何なる発言をしようとも貴殿を害する事はない

それでも信じられぬならば誓約書を交わす事も構わんが」

 

「いえ、失礼しました。公爵閣下に対して失礼でありましたな。我が非礼をお許し願います」

 

レフェルの懸念を察知した公爵の決意に変わり者として有名なレフェルも謝罪する

 

「では先ず用地ですが、一般的な貴族の邸宅程度の広さは必要ではないかと愚考します」

 

「ふむ、なるほどな。確かにキャベツは活発に動き回るものだ。狭い場所では厳しかろう

となれば、それなりの警備に充てる人員が要る訳か」

 

「仰る通りです」

 

「その程度ならば造作もあるまい

ジェスターよ、用意するならばどの程度の時間がかかるか?」

 

レフェルの話に同意しながら、準備期間を同室している騎士の男に尋ねた

 

「レフェル殿。用地と柵以外に必要とするものはありますか?」

 

「当座はそれで良いかと思っております」

 

「なれば4日程頂ければ問題ないかと」

 

レフェルへの追加の注文を確認したジェスターは主君に報告すると部屋より退室した

 

「ふむ、よかろう

して、レフェル殿。キャベツの手配は如何するつもりかね?」

 

「はっ、アクセルの街から少し離れたところで数匹のキャベツが確認されたとの噂を聞きました

先ずはそれを調べるべきかと」

 

これはアクセルと王都を往き来する商人から聞いた噂であった

 

曰く、アクセルの街から少し離れた森にキャベツが居たと

 

「となれば、アクセルまで少しばかりの戦力を送るとしよう

確認され次第、追加で戦力を送る。それとアクセルの領主アルダープにも私兵を出させよう」

 

「有り難き幸せ」

 

「では、そうだな。レフェル殿にも簡易的であるが住居を用意しよう

出来る限り近くで経過を見たいであろうからな」

 

「公爵閣下のお心には感謝に堪えません

では、早速準備をしたいので今日は失礼させていただきます」

 

「うむ、ご足労かけた事感謝しよう

キャベツの事が判明次第連絡させる」

 

 

 

 

 

レフェルは公爵の屋敷から自宅に帰るまでの間、上機嫌だった

 

自身の野望が叶いそうなのだから、当然ではある

 

「まさか、公爵の協力を得られるとは」

 

薔薇色の未来を幻視するレフェルだった

 

 

 

 

 

 

一方、以前公爵からの監視の依頼を受けていた仮面の男はとある部屋で地に伏せていた

 

「あ、が」

 

「ごめんなさいね?

別に貴方の事は嫌いではなかったのだけど」

 

と美しい銀髪の女は男に語りかける

 

「ただ、ね?

どうも貴方は危険らしいのよ。残念だけど、ね」

 

「て、テメェ」

 

男は今にも視線だけで人を殺せそうな視線を女へと向ける

 

「あら、怖い

貴方にはしっかり貢いで貰ったから、このままでも良かったのだけどね?

幾ら凄んでも貴方を刺したナイフには遅効性の猛毒が塗ってあるの

意識はあっても体は動かないでしょう?」

 

女は少し気落ちした様な顔を一瞬したが

 

「あと一時間もしない内に貴方の命は終わる

本当に残念」

 

と言い残して部屋を後にした

 

 

 

 

ここはとある草臥れた宿

 

主人も今は買い出しでおらず、男を始末するには最適であった

 

「何をしたのかは知らないし、知りたくもないけどね」

 

彼女は二階から一階への階段を降りながら呟く

 

 

男は確かに『良い』人間ではないだろう。だが、彼女なりに好意を持っていた

 

だが、『命令』には逆らえない

 

 

一階に降りた彼女は焦げ臭いと思った

 

 

 

 

 

 

公爵の領地の僻地にある草臥れた宿がこの日焼け落ちた

 

焼け跡からは二つの遺体が見つかっている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この頃、アクセルの街で佐藤和真は女神アクアと共に労働に勤しんでいた

 

「おい、カズマ!次はこっちだ!」

 

「はい!」

 

カズマはスコップを片手に穴を掘っていた

 

「カズマ!水はきちんと飲めよ!倒れたら洒落にもならんからな!」

 

「うっす!」

 

同僚達と声を掛け合いながら不慣れな作業をしていた

 

元々引きこもりのカズマには些か以上に荷が重いものではあったが、それでも何とかこなしていた

 

 

「アクアの嬢ちゃん!次は向こうだから、終わったら頼むぞ!」

 

「わかったわ!もう少しで終わるから」

 

向こうでもアクアが壁に塗料を塗っていた

 

 

 

何故、異世界に来てカズマ達が建築現場で働いているかと言うと、『お金がない』からである

 

 

 

 

この世界に来たカズマとアクアは直ぐに冒険者ギルドへと向かった

 

が、登録料が払えなかった為に2人して途方に暮れていた

 

 

そこに偶然、建築現場の親方が現れカズマとアクアの話を聞いた

 

地方から来て無一文の2人に同情した親方は自身の現場で働く事を提案した

 

本来ならば、既に昼時であり半日分の給料であるにも関わらず1日分の給料を出すと言ってである

 

 

カズマとアクアは一生懸命働き、親方や同僚からも気に入られた為に今も働いていた

 

 

 

「うっし、今日もご苦労さん

カズマもアクアの嬢ちゃんもしっかりやってくれているから、少しだが給料を上げておいた

また明日も来てくれるとありがたいぜ」

 

「「ありがとうございます!」」

 

「おう。お疲れさん」

 

「「お疲れ様です!」」

 

 

 

仕事を終わらせた2人は親方の好意により、シャワーで汗を流した後、ギルドへと向かった

 

 

「「かんぱーい!!」」

 

2人で乾杯し、夕飯をギルドの隣の酒場で食べていた

 

「今日はどうだったの?カズマは」

 

「ああ。親方が褒めてくれたよ「お、いい感じに速く正確になってきた」ってさ

アクアはどうなんだよ?」

 

「やったじゃない!おめでとう

私?職長が「ムラなく綺麗に仕上がってる」って褒めてくれたわ」

 

「良かったじゃないか」

 

仕事中の話をしながら、笑顔の2人だった

 

「で、アクアには悪いんだけど」

 

「え?ああ、登録の話でしょ。別に急がなくてもいいと思うわよ」

 

「それもだけど、馬小屋ってのも」

 

「気にしないで良いのよ!

別に野宿するのだって冒険者になるならあり得る話じゃない

それに比べたら雨風を凌げるだけマシと思うけど」

 

「いや、でもなぁ」

 

アクアはこう言っているが、カズマとしては女神であるアクアにはきちんとした宿に泊まって欲しかった

 

だが

 

「嫌よ!

私は貴方の仲間なのよ?貴方が馬小屋なのに私だけ宿に泊まるなんて絶対に嫌!」

 

と言って聞き入れてくれない

その上

 

「それに冒険者になったからって直ぐにお金に余裕が出来る訳じゃないんだから、そんなお金を使う位なら貯金しましょう」

 

と言われてしまうとカズマも反論しづらい

 

「それに折角助けて貰ったんだから、直ぐに冒険者登録しないっていうカズマの主張も分かるのよ」

 

 

 

そう、カズマは親方に助けて貰った事から少なくとも一月は建築現場にて恩返ししようと考えていた

 

彼は既に家族に恩返しが出来ない状態である

だから受けた恩は返しておきたいのだ

 

その話をおそるおそるアクアにした時に

 

「いいじゃない!そういう考えなら私は賛成よ!」

 

と満面の笑みで肯定された時にカズマが真っ赤になったのは仕方ない事なのだろう

 

 

冒険者ギルドのすぐ隣にある酒場で冒険者以外のカズマとアクアが飲食しているのは割と目立つ

 

だが、誰も声をかけない

 

 

 

正確には声を掛けられないのだ

 

 

一度、美人のアクアを平凡な見た目のカズマが連れていた事と冒険者になるお金に困っていた事を知っていた金髪のチンピラ冒険者がカズマに難癖をつけた事があった

 

曰く「冒険者になるお金に困っているのに美人の姉ちゃんを連れ回すなんて良いご身分と」

 

ところが

 

「ふざけないでよ!カズマは自分のペースで頑張っているの!

貴方にとやかく言われる筋合いはないわ!」

 

と絡まれているカズマでなく、アクアが怒ってしまい、カズマは危うく殴りかかるアクアを必死に止めた事があるからだ

 

その後何とか怒りを収めたアクアだったが、この騒ぎを放置していたギルド職員にも文句を言った

 

「冒険者を管理しているなら、止めに入るくらいしなさいよ!」

 

カズマはアクアに「いや、当事者が言うなって」と頭を少し小突いたが

 

 

以来、カズマとアクアには近づかない様にギルドからも注意が出ていた

 

 

 

因みにこの注意のせいで迂闊に近付け無くなった紅魔族の少女がいたのだが、今回は割愛させて頂く

 

 

カズマとアクアの冒険者としての活躍はあと一月程後の事になる




とりあえず、戦線離脱していたVita君が蘇生したので喜びの投稿

コロナ第二派っぽいせいでまた仕事が激減しそうな予感

もう無理

暫くは頻繁に更新出来る様に頑張ります

では御一読ありがとうございました


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お気に入り百件突破記念 短編集

題名通りです

本編との関連はあったり、なかったり


完全にノリで書いたので「こまけぇこたぁいいんだよ!」の精神でご覧下さい




転生失敗?

 

 

ミドリカワ編でのお話です

 

 

 

 

俺は『最強』を選んだ筈だった

 

確かに『最強』だろう

 

 

 

『鳥』の中ではな!

 

 

 

何だよ、あの天使!

俺も人間とは言わなかったけどさ、何で鳥?

 

せめて魔族とか亜人ならどうとでもなったのに、鳥だぞ!

 

鳥が冒険者になれる訳ないだろう!いい加減にしろ!

 

 

一応は『擬人化』みたいなものを試してはみたが、無理だった

 

ならば、魔法が使えるかと思えば使えない

 

何が出来るんだよ、これ

 

 

 

試行錯誤を繰り返すのもいいのだが、食糧の確保が難しい事に気がついた

 

最近はキャベツばかりで空腹感が凄いので早めに対処しないと

 

 

 

 

なんか、妙なムーブをするキャベツ?がいた

しかもデカイ

 

ゴブリンとかデカイ蛙は体当たりで殺すわ、熊とかは湖に突き落として、ワニに食わせるわ。えげつない

けど効率はいい

 

 

いや、まてよ?

キャベツの倒した死体をゲットすれば、食事に困らないのでは?

 

やってみるか

 

 

 

 

ナイス!俺

ワニと分け合う形だが、飯の安定的な供給先を見つけた

 

独占とはいかずに、他の連中が来たのは腹が立つがやむを得ないだろう

 

ただ飯も良いが、キャベツの群れを囮として、俺達が上空から警戒すればもっと効率はよくなるだろう

これも生存競争に勝つため。デカイキャベツとはお互いに利用し合うとしよう

 

 

周りの鳥たちが少々グズったが、何とか協力させた

キャベツの群れに敵が近づけば警告と合図を兼ねて鳴く

下で対処仕切れない奴等は俺達が連携して狩る

 

俺の望む生活とはほど遠いが、現状は悪くない

ならばよしとするとしよう

 

 

 

 

デカイキャベツを女の子が抱きしめた際に思わず『ロッキー』を思い出したが仕方ない

 

つか、キャベツに抱き付く美少女とか訳がわからんな

 

 

 

 

 

 

 

 

傲慢なる者達

 

 

ナタル編のお話

 

 

天界より落とされたリフェは天使としての力を奪われたのみに留まらず、天界の関係者にあたる『女神エリス』『女神アクア』への接触を阻まれていた

 

エリスとアクアは善良であるが故にリフェの窮状に同情しかねない為の措置である

 

 

つまりこの世界の主流たる『エリス教』並びに『アクシズ教』への自発的な接触自体ができないのである

 

リフェは何とか王都までは来たが、あてがあろうはずもなかった

 

 

実は王都に来るまでに何人かの転生者らしき者達を遠目に見かけた

リフェは自身が天界の天使だと明かして協力を求めたようとしたが、確たる証拠を提示出来ない上に既に人を殺めている

更には返り血も少なからず浴びている

話を出来る状況とは言い難い

 

尤もリフェがこの時に相手と話をしたところで協力体制を築けたか?と言われると些か以上に怪しかっただろうが

 

これはリフェが転生させた者達が人間以外に転生するか、リフェに悪感情を持っていた事によるものだった

 

転生者同士の交流はそこまでおおっぴらにはしていない上に、数少ない交流している者達の中で『自分達を粗末に扱う天使』の情報が出回っていた

 

故に『天界の天使』と自称するリフェは常人からは狂人と呼ばれ、転生者達は天界の事情を知っているが為にリフェを嫌悪した

 

「どうして、こうなるのよ」

リフェは天を仰いだ

 

「おい、何か困ってるが」

 

「止めとけ止めとけ。あれは『自称天使』のリフェだ

関わるだけ損だぞ」

 

「そうだよ。よりにもよってエリス様の知り合いなんて言う狂人さ」

 

「おいおい。どんな狂人だよ」

 

「幾ら見た目がよくともなぁ」

 

王都の住人は聞こえる様に話す

 

 

エリス教の女神エリスに近い存在。等と言えば、啓蒙なエリス教徒程嫌うものである

 

例えこれがアクシズ教の総本山たるアルカンレティアでも変わりはしないだろうが

 

 

「ん、何処かで見たような

ああ、天界の屑天使か」

 

遠くからリフェを見たレフェルは吐き捨てた

 

「大方、落とされでもしたか

いい気味だな。精々素敵な異世界生活を満喫するといい

 

あの様子では生き残れるかも怪しいだろうが」

 

レフェルはその場を立ち去った

彼からすれば天使等どうでも良い

 

そんな事よりもキャベツの養殖を考えるべきなのだから

 

 

 

 

異世界でのボッチとの出会い

 

 

オッス!おらナタル!

少し仮眠を取ってたら、見慣れない場所に居ました

 

一応は森の中ではあるのだが、ゆんゆん達と会う約束があるのに、どうしようか?

 

「やれやれ、こんなに空は青いのに俺はレタスか」

 

言っていて泣きたくもなるが、我慢しよう

 

そう!俺はレタスでも強い?レタスになるんだ!

野菜王に、俺はなる!

 

 

あ、あくまでも野菜ですからね?決してや、さ、いの順番を変えては❌です。イイネ?

 

ナタルさんは非力なレタスですからね

某王子みたいな事は出来ませぬ

 

 

ナタルは途方に暮れていた

 

「ああーどうすっかねぇ」

 

「えっ、モンスター?」

 

「ん?」「え?」

 

その時、二つの視線が交差する!

 

「きゃあああっ!モンスター?野菜?が喋ったー!」

 

「ちょっ!そこなるエルフっぽい人、逃げないでー!」

 

 

 

やっとこさエルフ?の少女が落ち着いてくれた

 

「あ、ご、ご、ご」

 

「ご?」

 

「ごめんなさいっ!

あのわたしこの森に住んでいるんですけど突然植物や動物達が騒ぐもので、その」

 

「とりあえず落ち着こう、ね?」

 

「あ、すいません」

 

(なんかこのテンパり具合といい、人との距離の取り方といい、ゆんゆんに似てる?

つまり、この娘もボッチ?)

 

とナタルは密かにエルフ?の少女が知り合いの少女の出会った頃に似ている事を少し考えた

 

「いや、別に構わないよ。寧ろ攻撃されなかっただけ、有情だろうし」

 

「ええ(困惑)」

 

 

 

 

「そっか、友達かぁ」

 

「そうなんです。一応練習はしているのですが」

 

エルフの少女の悩みを聞いたナタルは内心ため息をついた

 

少女にはあえて名乗らない様にしていると説明している

どうにも違和感が拭えなかった為であった

 

実際に話を聞けばどうやら異世界らしい

 

 

既に異世界で人外、しかもレタスに転生したナタルである。今更異世界に迷いこんだ程度では小揺るぎもしない

 

よくも悪くも人は慣れる生き物故に

 

 

 

「うーん。でも君は可愛いし、少しの踏み出せば直ぐに友達出来そうだけどなぁ」

 

「そうですかね」

 

「え、だって俺なんかは殴り合いした相手と後に友達になったし」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「そ。人間関係なんて切っ掛けさえあれば割とどうにかなるもんさ

無責任な言い方だけど、そんなものさ

後は相手の事を思って行動すればいいのさ」

 

「そうでしょうか?」

 

「あんまり考えすぎても堂々巡りさ

それより、先ずは行動あるのみ!」

 

「が、頑張ります!」

 

「ファイト♪」

 

『あ!やっと見つけたわよ!』

 

「へ?」「はい?」

 

『ごめんなさい。ちょっと此方とそっちの世界が一時的に繋がって、貴方が此方に放り出されたのよ

直ぐに戻すわね』

 

「え、戻すって?どういうことで、キャッ!」

 

 

エルフの少女は突如明るくなった視界に驚き、再び目を開けると

 

「え、野菜さん?」

 

其処には何も居なかった

 

「そっか、帰っちゃったんだ

せめて名前位は聞いておけばよかったなぁ」

 

 

 

 

 

その後、エルフの少女は記憶喪失の少年と出会い、様々な経験をする事になる

 

その少女の家にはキャベツのような造形の人形が大切に保管されていた

 




クロスオーバーは先達の方がおられますので自重します

とはいえ、ボッチ二人とキャベツかレタスとか機会があれば是非とも書いてみたい

ま、カオス一直線である事だけは間違いないでしょうが(苦笑)


では御一読ありがとうございました


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絡み合う思惑

久々の更新です

忘れられてないよね 


待たせた割には何時ものクオリティ

ややはっちゃけてますが、ご了承の上で御一読ください


魔王軍の幹部『見通す悪魔』バニルは今不機嫌であった

 

何時も通りに魔王の娘や元レジーナ教のプリースト等をそれなりにからかったまでは良かった

 

 

 

だが、『とある場所』に来た上機嫌だったバニルの機嫌は急降下した

 

「ほほう、この『見通す悪魔』である我輩の領域にて無法を働くとは、中々に勇気があるようであるな」

 

とある祠の中をその舌で荒らし回っていたジャイアントトードに言い放つ

 

が、仮面をしていても分かる程の怒気を放っておりジャイアントトードは一目散に逃走を企てる

 

本能が叫ぶ「このままでは死ぬ!」と

 

だが

 

「生憎だが此処を荒らした以上は生かして帰さん

程度の低いたかが蛙ではあるが、容赦はせん」

 

 

 

 

 

 

数秒後には焼け焦げたジャイアントトードの姿が其処にはあった

 

 

「やはりバニルさん人形を守護につけておくべきかも知れんな」

 

バニルは祠の中を掃除しながら一人呟く

 

「此処には何もない

だが、確かにあったのだ」

 

バニルは切なそうに呟く

 

 

 

 

 

 

 

レフェルはキャベツ捕獲の為の公爵が用意した兵隊と共にアクセルの街へと向かう事になった

 

目標はアクセルの街近郊にいるとされるキャベツ

 

出来る限り騒ぎを起こさず、それでいて秘密裏に王都の近くの公爵領まで輸送しなければならない

 

 

何せアクセル付近に居るキャベツを捕獲したことが露見すると最悪、アクセルの冒険者ギルドと対立しかねない

 

アクセルでのキャベツ捕獲クエストは初心者冒険者を多数抱える冒険者ギルドにとって生命線の一つである

 

更に初心者冒険者や低レベル冒険者の受けるクエストは報酬が少ない為にギルドの受け取れるマージンも自然と少ない

そんな中でキャベツ捕獲クエストは安定した収入を冒険者とギルドの双方にもたらすのだ

 

故にアクセル側に漏れない様に極秘に行わねばならないのだ

 

 

「レフェル殿、本当にいるのでしょうな?」

 

公爵の部隊の指揮官が不満そうに言う

 

彼からすれば部外者のレフェルにあれこれ言われるのは主君である公爵の命とはいえ納得し難いものがある

 

更に今回の任務はキャベツの捕獲である

彼には全く必要性を感じなかったから尚更だ

 

 

「少なくとも私はそう聞いているが」

 

「ならば事前に確認すべきでしょうに

幾ら我が公爵家とはいえども、この様な事を何度も出来る訳ではないのですぞ」

 

「だが、公爵殿よりはそう命を受けているのだ。従ってもらう」

 

(ふん。事の重大さの解らぬ輩はこれだから困る

もう少しは視野を広く持てば良かろうに)

 

レフェルは内心ごちる

 

 

 

 

そこに

 

「隊長!キャベツがいました!」

 

「何!いたか!」

 

「おお」

 

レフェルは感嘆の声を上げた

 

そこには少なくとも十体以上のキャベツがいたのだ

 

 

 

 

彼等?はナタルやキベムの知らない一群であり、ナタルの様な規格外やキベムの様な統率力を持つ個体は不幸にも存在しなかった

 

「総て捕らえて下さい!」

 

「言われずとも!

総員、速やかに捕獲せよ!」

 

 

 

キャベツ達を捕獲したレフェルと公爵の兵士達は速やかに公爵領へと引き上げる事にした

 

 

 

 

 

一方で元駄天使ことリフェは公爵の屋敷の地下でいよいよ明らかにヤバい事をさせられていた

 

「おいおい、公爵さんよ。こんな別嬪さんを好きにしていいのかい?」

 

「貴殿が勝てば好きにすれば良かろう」

 

「二言は無し、だぜ?」

 

「言葉を違える気はない」

 

 

 

「え、嘘?」

 

リフェは今まではモンスターを倒してくれば良かった

 

だが、今日からは『人間』を殺す様に言われたのだ

 

出来ねば破滅

 

 

「う、うわぁぁぁぁっ!」

 

 

 

リフェはその時から狂った様に公爵が用意した『モノ』を殺し始めた

自分が生きる為、自分を守る為

 

そう言い聞かせて

 

 

 

 

 

 

「こ、これは」

 

「不味いな。このままではアレが『堕天』する」

 

「し、しかしヤツは既に天界の者ではありませぬ」

 

「ヤツの器は間違いなく天使のものよ

それに色々細工して天使の力は封じたが、それでもアレは天使として生を受けたのだ」

 

天界では騒ぎになっていた

 

それもそうだろう。天界から追放した大罪人が更なる罪を重ね、遂には『堕天』のおそれが出るなど前代未聞である

 

今までは追放された元天界の者は慎ましく生をまっとうするか、その前に命を失うか。そのどちらかであった

 

追放したリフェは後者だと思っていたにも関わらず、予想の更に下をいったのだから彼等の混乱も無理はなかった

 

「かくなる上は女神アクアか女神エリスに助力を願っては?」

 

「それでは過度の介入に当たろう」

 

「『堕天』するまでには死ぬのでは?」

 

 

この後も天界は無様に混乱するだけとなってしまう

 

 

なお『堕天』した場合は魔力の質が変わる為に天界でかけた枷が意味を為さなくなる

 

つまり、リフェは『堕天使』としての力が十全に使える様になる

 

ただし、『堕天』する場合は人間がアンデッドになるのとは全く比較にならないレベルでの変化であり、嘗ては『再臨』と呼ばれる程のものになる

 

天使としての自我を保つ事は億どころか兆に一つの可能性もない

 

災厄レベルの力を撒き散らすだけの化身に成り下がるということだ

 

 

 

 

 

そんな破滅へのカウントが動いているとは知る由もない新人冒険者サトウカズマはいよいよクエストを受ける事になった

 

「えっと、ジャイアントトード?ナニコレ」

 

「ジャイアントトードっていうのはおっきな蛙のモンスターよ

牛とかを一呑みするらしいわね」

 

「は?ちょっとアクアサン?

それ新人冒険者が受けていい依頼なのか?」

 

「えっと、知らないわよ」

 

「知らないのかよ!

いや、俺も冒険者目指しているのに調べもしなかったけどさ!」

 

カズマとアクアがクエスト板の傍で騒いでいると

 

「ジャイアントトードは確かに新人冒険者が何も知らなければ危険なクエストです

ですが、きちんと対策をするなら大した事はありませんよ」

 

「「へ?」」

 

カズマとアクアが声のした方に視線をやると

 

 

 

身長は低く(ミニマムッ!)

 

体の起伏はあまりなく(つるぺたすとーん)

 

見た目幼い(ロリーン⭐️)

 

正にthe魔法使いといった風貌の眼帯をつけた女の子がそこにいた

 

 

「えっと、どちら様でしょうか?」

 

「ふっ、

我が名はめぐみん!

アークウィザードにしてやがて爆裂魔法を極める者!」

 

 

「「ええ・・」」

 

 

 

 

 

 

「っと俺はサトウカズマ。冒険者だ」

 

「私はアクア。一応アークプリーストね」

 

衝撃のめぐみんの自己紹介の後三人はギルドの隣の食堂にて改めて話をすることにした

 

「えっと、カズマさんとアクアさんですか

というか、アークプリーストになれる程ならジャイアントトードの対策位は知っているかと思いましたが」

 

「あ、えーとアクアはまだ冒険者を始めたばかりなんだよ、な?」

 

「うぇ?え、ええそうなのよ」

 

「そうなのですか。私達紅魔族でもある程度のレベルにならないとアークウィザードにはなれないのですが、その様な事もあるのですか」

 

(どうしよう、カズマ!凄い不審がられてるんですけど!)

 

(いやだからって素直に「女神アクアです」なんて言って信じて貰えると思うか、普通?)

 

「まぁその辺りはいいでしょう

(私の知り合いにも常識の通じないヒトが居ますし)

それよりもジャイアントトードを討伐するならば金属製の防具を身に付けるのが一番ですよ」

 

「へぇーそうなのか、ありがとうございます」

 

「いえ、流石にあそこまで困っているのに放置は気が咎めますから

では、ジャイアントトード討伐頑張ってください」

 

(ねぇ、カズマさん。このめぐみんって娘アークウィザードよ仲間に入ってもらったら?)

 

(アークウィザードって凄いのか?アークって上級職みたいだけど)

 

(the魔法使いってやつよ)

 

「えっと、めぐみんさん?

もしよかったらパーティー組んでみないかな?」

 

カズマの発言に虚を突かれた様な顔をするめぐみん

 

「お気持ちは嬉しいのですが、私はアークウィザードの中でも変わり者です

私の爆裂魔法は一撃撃てばそれで動けなくなりますよ?

明らかにお荷物になると思いますよ。それでも構わないのですか?」

 

「いや、別に俺やアクアだって足を引っ張るかも知れないんだし、パーティーってそういうものだろ?」

 

「そうよ。別に元ヒキニートなカズマと世間知らずな私のパーティーなんだから、貴女位個性的な方が良いと思うの」

 

「そうですか、では一度クエストを受けてみましょう

その後でお互いに考えると言うことで」

 

「じゃあ、明日の朝此処でいいよな?」

 

「ええ、ではよろしくお願いします」

 

 

 

 

「なんていうか、礼儀正しい娘だったな」

 

「そうね」

 

カズマとアクアがめぐみんの態度に感心していた頃

 

 

 

 

「聞いて下さい!ナタルさんにゆんゆん、それにあるえ

遂に私もパーティーに誘われる事になりましたよ!」

 

「お、師匠。おめでとうございます」

 

「そ、そうなの。よかったわね」

 

「やれやれ、私はついでなのかい?

それとゆんゆん、顔色が悪いよ」

 

「ふっ、これで冒険者としてボッチの貴女よりパーティーに入った私の方が難しい事を為した事になりましたね!

全く、初めて男友達が出来た事がゆんゆんに先を越されるなど予想外にも程がありましたが」

 

「うう、ナタルさぁーん」

 

「ああ、もう。師匠はゆんゆんをからかわないで下さいよ」

 

「というか、レタスに師匠と呼ばれる紅魔族とは」

 

「どうですか、あるえ。これも間違いなく紅魔族初の快挙でしょう!」

 

「そ、それでもナタルさんと私が知り合ったからでしょ!

それに師匠って言われているけどナタルさんに爆裂魔法を教えれてないじゃない!」

 

「うぐっ!

ゆんゆん、言いましたね?」

 

「言ったわよ!」

 

「はいはい、ゆんゆんも師匠も落ち着いて」

 

「やれやれ。紅魔族二人がレタスに宥められているとか流石に本にも出来やしないだろうね」

 

「あ、それとあるえさん。アクシズ教に入信しませんか?今ならセシリーさんが飲める洗剤をくれるらしいですよ」

 

「いや、私はいいからね

ゆんゆんでもすすめたらどうだい?」

 

「あ、あるえ。私はもう入信しているし」

 

「ちょ!ゆんゆん。君は何をしているんだい!」

 

「だって、ナタルさんが入信してますし」

 

「ナタルさん!流石にこれはないだろう!」

 

「あ、うん。ごめん

ゆんゆんにすすめたのセシリーさんなんだ」

 

「あーもう!これだから、アクシズ教は!」

 

頭を抱えるあるえだった

 

 

 

 

「あるえも少しは常識を捨てたら良いのですが」

 

「師匠の言う通りですけどねぇ」

 

「それが出来ないからあるえなんでしょ」

 

「「「常識人(笑)」」」

 

「よし、分かった。三人とも覚悟したまえよ」

 

「逃げろぃっ!」

 

「きゃーっ!」

 

「全く。さて鬼のあるえから逃げますか」

 

「誰が鬼だい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騒がしい毎日。これが何時までも続く

 

そのときの私はそう信じていました

 

 

 

 

 

 

 

 




さて暫くはシリアスとシリアルの両方を書こうと思います


あ、自分の技量に似合わないのは承知してますので御容赦ください、ね


では御一読ありがとうございました


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交わる道

何となく浮かんだので投稿します

最近は酷暑が続きますが、皆様お気をつけ下さい

いつもの独自設定、解釈が乱舞しますが

では、どうぞ


ギルドにて衝撃(笑)の出会いをしたカズマとアクアとめぐみんは翌日ジャイアントトード討伐のクエストの為にアクセルの町から少し離れた場所へ来ていた

 

「ここらでいいんだよな?」

 

「良い筈、よね?」

 

「何故疑問系なのですか。間違いなく此処ですよ」

 

「と言っても」「居ないものね」

 

「ジャイアントトードは地中に潜む事もありますからね。傍目には何も無いように見えますが」

 

「えっと、めぐみん?

確かジャイアントトードって牛とか丸呑みするんだよな?」

 

「はぁ、そうですが?」

 

「おかしいだろ!何でそんな図体の奴が地中に隠れれるんだよ!」

 

「カズマ。貴方の言いたい事は解るけど、これが普通なのよ。きっと、多分」

 

荒ぶるカズマにフォローになるのかならないのか微妙な事を言うアクア

 

「そう言われましても、これがジャイアントトードですので」

 

若干の呆れの含んだ言い方をするめぐみんである

 

(とりあえず、いきなり無一文でクエストを受けていないだけマシではありますが、ジャイアントトードにこれだけ動揺するとは一体何処の出身でしょうか、この二人は)

 

実のところアクアのステータスが登録の際に原作では騒がれていたために多少の注目があった為に非常識である事も周知されていた。しかし、こちらではその様な事はなかった為にカズマとアクアの非常識さを認識する機会に恵まれなかった

 

めぐみんが事ある毎に自分を師と仰いでくれるナタルの所へとそれなりの頻度で通っていたのも、カズマ達の異質さを知らない原因でもあるのだが

 

 

 

「うおっ!出てき、た?」

 

「これがジャイアントトード、なの?」

 

地中から出てきたジャイアントトードの大きさに驚きの余り思考停止する二人だった

 

 

「とりあえず離れて下さい!

やむを得ません、我が爆裂魔法を放ちましょう!」

 

渋々と言葉では言っているが明らかに興奮しているめぐみんである

 

流石は爆裂狂である

 

「穿て!エクスプロージョン!!」

 

 

 

 

 

爆裂魔法を放ったあとにはまさしく何も残っていない。比喩抜きでペンペン草も残らない様な有り様だった

 

 

「うわ」

 

「凄い、わね」

 

「ふふふ、どうですか我が爆裂魔法は」

 

「あ、うん。凄いとは思うけどさ、もしかして動けない?」

 

「昨日も言いましたが爆裂魔法を放った私はこうなります。自分でも立って歩けませんよ」

 

「まぁでもこの威力なら仕方ないわね」

 

「だな

んじゃ、めぐみん背負うぞ?」

 

「え!え、ええ、お願いします」

 

 

 

 

「カズマさん!カズマさぁーん!ジャイアントトードがまた出てきたわよ!」

 

半泣きのアクアである

 

「・・・・・おお!出てきたな」

 

一瞬凛々しいアクアが泣いているのを見て心奪われそうになるカズマだった

 

大丈夫?そっちに行ったら戻れなくなりますよ?(原作のカズマ的な意味で)

 

 

「アクア!どうにか出来ないか?

此方はめぐみんを背負っているから対応しづらいんだけど」

 

「っ!そうね、私がどうにかするわ!

見てなさいよカズマ!

これが私の必殺技の『ゴッドブロー』!」

 

 

『ゴッドブロー』とは高いステータスにより繰り出された打撃である

 

唯の打撃と侮るなかれアクアのステータスは割りと常軌を逸しているので並みのモンスターならば容易く倒せるだろう

 

そう、並みのモンスターならば

 

なお、発展技に『ゴッドレクイエム』が存在する

 

 

「・・・・・へ?」

 

「は?」

 

てっきり自信満々に攻撃したアクアなので余裕かと思っていたカズマとめぐみんは思わず声を漏らす

 

 

「え?」

 

残念ながらジャイアントトードに打撃は効かないのである。特に腹部には

 

 

 

此処で美しく可憐なアクア様は

 

 

1、素晴らしいアクア様は華麗な解決法を思い付く

 

2、素晴らしい仲間であるカズマが助けてくれる

 

3、現実は非情である。残念!アクアは食べられてしまった!

 

 

 

 

 

 

「えっと、カエルって良く見たら可愛いと思うの」

 

とりあえず媚を売ってみるアクアだが

 

パックンチョ☆

と効果音がしそうな程にあっさり捕食された

 

 

 

「ちょっ!アクアー!」

 

「アクアさん!」

 

カズマとめぐみんは絶叫した

 

 

 

 

 

「いや、でオチってレベルじゃないだ、ろっ!」

 

アクアを捕食していたジャイアントトードはいきなり喉元に衝撃を受けた

 

確かにジャイアントトードは打撃耐性はある

が、かといって喉元の様な所は実のところ打撃でもダメージが通るのだ

 

とはいえ、普通に打撃以外で倒せるので殆どの冒険者は知らないだろうが

 

 

思わず捕食していたアクアを吐き出したジャイアントトードだが

 

「ライトオブ、セイバー!」

 

次の瞬間には光の刃で両断されていた

 

 

 

 

 

 

アクアがジャイアントトードに捕食された時にカズマは無様に狼狽えるだけだった

 

だが、アクアは生きている

 

誰かが助けてくれたのだろうとカズマは声のした方向へと視線をやると

 

「へ?」

 

 

 

 

 

「お、無事っすか、師匠?」

 

そこには緑のアイツがいた

 

 

 

 

 

 

 

「キャ、キャベツなのか?」

 

「?おや、君はあれかな?

自分で買い物はしない主義かい?

ま、いいか。残念だが、キャベツではなくレタスだ!

覚えておいて欲しいね☆」

 

動揺するカズマに訳の解らない事を言う自称レタスである

 

このレタスは自分でもキャベツと誤解していた事は誤魔化す積もりの様である

 

 

「めぐみん、無事なの?

あ、うん、無事ではない、かな?」

 

「何故、ナタルさんとゆんゆんが此処に?」

 

「一応、私もいるんだけどね」

 

めぐみんの無事?を確認するゆんゆんと疑問を持つめぐみんにアクアを連れてきたあるえも合流した

 

 

 

 

 

 

「え゜、ナタルさんも日本人なんですか?」

 

ひとしきりの自己紹介を終えた後にカズマは驚愕した

 

「そ、元日本人で現在はレタスライフを楽しんでる」

 

「君は性格が変わりすぎではないかな?」

 

「もう少しナタルさんは落ち着いた人だと思ってたんだけど」

 

「HAHAHA、それはすまないね

何となくハイって奴だね☆」

 

 

 

実はナタルとて駄目天使による転生により人格に深刻な問題を抱えていた

 

 

一つは自分の安全を考える事がなくなった事

 

これは傍目無謀な行動が増えている所からも予測出来なくもない

 

 

もう一つはナタルという人格は複数の人格から構成されている事である

 

所謂『多重人格』の様なものであると認識して構わないだろうが。または『分裂症』とも言えなくもないかも知れないが

 

 

閑話休題

 

 

因みに日本人の確認方法は割りと酷いものであった

 

 

 

 

「ドイツの科学力は?」

 

「世界一ィィィ!」

 

「・・・貧乳は」

 

「ステータスです!希少価値です!」

 

「うるさい!うるさい!」

 

「くぎゅゅうぅぅ!」

 

 

というものであった。なお、某爆裂マスター候補は青筋を立てていたが

 

後でナタルはめぐみんに説教された。しかたないね

 

 

 

 

 

「じゃあ貴方が私の不在中にあの娘が色々仕出かした人なのね。ごめんなさい、私のせいで」

 

アクアは泣きそうな顔をしてナタルに頭を下げた

 

「・・・色々言いたくはありますけど、結果としてゆんゆんやあるえさん。それに師匠にも出会えましたから怒れませんよ」

 

ナタルは落ち着いて話す

 

「確かに俺は人ではなくなりました。どれだけ努力しようが、人間社会には入れなかったでしょう

でも彼女達がいたから、俺はおかしくならずに済んだんです

だから、貴女を信仰するアクシズ教に入信した訳ですしね」

 

「え゛そうなの?」

 

最後に特大の爆弾を落とすナタルだった

 

シリアスはこの男?には似合わないようである

 

 

 

 

 

アクアの謝罪によりアクアが女神である事が明らかとなったが、アクアは唯の冒険者として扱って欲しいと皆に願った

 

カズマは元々そのつもりであったし、ボッチ気質のゆんゆんは友達が作れない状況をイヤと言うほど理解している為に即座にアクアの願いに応じた

 

あるえ、めぐみんも別に女神であろうが、然程に気にしない求道者独特の気質の為にゆんゆんに同意した

 

ナタルは最後まで渋ったが、ゆんゆんを始めとした者達に説得されて渋々ながらも同意した

 

 

 

 

 

「兎に角ありがとう、ナタルさん!」

 

「ま、一応は異世界ライフの先達だからね、そのくらいはするさ」

 

改めて頭を下げるカズマに苦笑混じりに答えるナタル

 

傍目から見るとレタスに頭を下げている少年という訳の分からない絵面であるが、当事者達は気付いていない

 

 

 

もっとも

 

 

 

「えっと、何て言うか」

 

「ふむ、これは酷い。という奴だろうね」

 

「私が原因でもありますから、コメントはしないことにしますよ」

 

「ア、アクアさん、あるえにめぐみんもカズマさんとナタルさんは真剣なんだから茶化さないの」

 

女性陣はゆんゆん以外ひいていたが

 

 

 

 

 

「えっ!じゃあ森の中で生活しているのかよ?」

 

「まあレタスですし、おすし

流石に人里に行って無事とは思えないからなぁ」

 

謝罪を終えたカズマはナタルの現在の境遇に驚いていた

 

カズマとて馬小屋で寝泊まりしているが、それでもアクセルの街の中である。危険はそうない

 

だが、ナタルは屋外で寝泊まりする他ない

聞けばキャベツやレタスは普通?の野菜に比べて含有経験値が高いらしく、冒険者に見つかれば穏便な解決は難しいとの事

更にモンスターもいる以上は街の中とは比較にならない程の危険度であろう事は流石のカズマにも解る

 

 

 

 

「だから、紅魔の里に一緒に行こうと誘っているんだけど」

 

「いやいや、ゆんゆんの気持ちは嬉しいけどね

やっぱり迷惑はかけられないよ」

 

「そうかな?

ゆんゆんはこれでも紅魔族の里長の娘だ

君を受け入れる事も難しくなさそうだけね」

 

「そうですね。これでも族長の娘ですからね、ゆんゆんは」

 

「二人とも褒めてないよね?

何で私、そんな風に言われるの?ねぇ?」

 

「「ソンナコトナイヨー」」

 

「棒読みだよ、この二人」

 

以前からナタルを紅魔の里に誘っているゆんゆんはここぞとばかりにナタルを誘うも、ナタルはいつもの様に遠慮する

 

それにフォローする気があるのか微妙なフォローをするあるえとめぐみん。通常運転であった

 

 

 

 

「なんか楽しそうだな」

 

「そうね。それだけは救いね」

 

カズマとアクアは割りと楽しんでるナタルを見て安心した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カズマとナタルが出会った頃、とある公爵の屋敷では異変が起きていた

 

「何だ、この魔力は?」

 

「閣下、あの天使の様子が」

 

「何だと!」

 

 

 

 

 

 

 

「私はリフェ

憎い、ニクい、ニクイ

スベテガニクイ」

 

公爵の指示にて人間を殺し続けた結果、リフェは天界の懸念通り『堕天』しようとしていた

 

もしも堕天しようものならば、一応天使である以上、浄化魔法に対する抵抗力が高すぎる為に効果が見込めない

 

更に元々リフェは他者に対して攻撃的な性格であったが堕天すれば、それはとんでもないレベルの攻撃衝動となる公算は非常に高い

 

更に間の悪い事に、現在公爵領内でキャベツの人工的養殖を試行されていた

未だ成果は出ていないが問題は魔力の塊に近いキャベツがリフェの傍に多数存在する事である

 

堕天した天使の討伐は極めて難易度が高く、旧くは魔道国家『ノイズ』にて堕天使の討伐が成功した程度である

 

それとて、ひたすら遅滞戦術により堕天使の消耗を待ってから討伐している

 

だが、キャベツという補給物資があるならば難易度は格段に跳ね上がる

 

 

不幸にも公爵やその配下、キャベツ養殖を担当するレフェルはそれを知らないのだ

 

 

 

破滅への階段を公爵達はゆっくりと下り始めようとしていた

 

 




異世界にて、元ヒキニートとレタスが出会った

うん、文字にすると酷い


さあ、堕天使の暴走がまもなくとなりそうな予感がします


なお、ナタル編は後五話程で完結する予定になっておりますが、よろしければお付き合いください


では、御一読ありがとうございました


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レタスの畑

タイトル詐欺ですが御容赦ください(涙)


タイトル考えるのも大変です(白目)


今回はシリアス抜きのギャグテイスト?でお送りします


シリアス?知らない子ですね

では、どうぞ


初めてのクエストを何とか無事?に終わらせたカズマ達はアクセルのギルドへと報告に向かった

 

「にしても、俺は恵まれていたんだよなぁ」

 

しみじみとカズマは溢す

 

当然である

転生特典がどう。どころの話ではない

 

転生したらレタスだった、とかカズマならば恐らくは耐えられないだろう

 

何とか生きていけたとしても、あそこまで明るく振る舞えるとは全く思えないのだ

 

「恵まれていたとかそういう話ではないのよね

私がきちんとしていたら」

 

意気消沈するアクア。自身が直接関与していないとは云えども、彼がああなったのは間違いなく自分の責任である

 

アクアとしては罪悪感を覚えざるをえない

 

「しかし、カズマが転生者とやらだとは思いませんでしたよ

それにアクアがまさか『女神アクア』だったとは驚きです。ナタルさんとゆんゆんだから良かった様なものでしたね」

 

めぐみんはカズマの出自に驚く一方でアクアの正体には納得していた

 

元々、アークウィザードにせよ、アークプリーストにせよ上級職になるためには高いハードルがある

めぐみんは元々の魔力が高い紅魔族であり、かつレッドプリズンにて教育として養殖を行い、安全で効率的なレベリングをしているが故にこの若さでアークウィザードとなっている

ゆんゆんやあるえ等の里の若手もその様な教育を受けているからこその上級職である

 

本来ならば上級職になるためには相当の期間をかけて鍛練する必要があるのである

 

それが初心者冒険者がいきなりアークプリーストである。アクアは紅魔族でもなく、ジャイアントトードの件からも熟練の冒険者に師事したとも考え難かった

 

だが、女神の様な高次元の存在ならばその実力と比例しない世間知らずにも納得がいくのだ

 

 

「え?何でナタルさんとゆんゆんが出てくるんだよ?」

 

「?ああ、成る程

カズマはこちらの常識には疎いのでしたね

女神アクアを信仰する宗教がこちらにはあるのですよ。名をアクシズ教といいます

ナタルさんとゆんゆんはアクシズ教徒ですからね

一般的なアクシズ教徒ならば即座に祭り上げられますよ、間違いなく」

 

「え?そうなの?」

 

カズマの質問にめぐみんが答え、その答えにアクアが驚く

 

「とはいえ、別に敬虔なアクシズ教徒という訳ではありませんよ

唯、ナタルさんとゆんゆんの出会いは女神アクア無くしては叶わなかったと二人は思っていますので」

 

ナタルがレタスに転生したことはさておいて、女神アクアが彼をこちらの世界へと転生させなければ二人は出会えなかった

 

故に二人はアクシズ教徒になったのだ

 

 

「あのさ、二人は付き合ってるのか?」

 

「いえ、カズマが誤解するのも無理はありませんが、ナタルさんが受け入れませんよ

ゆんゆんは人間でナタルさんはレタスですからね

私やあるえとしては、二人が付き合うならば賛成しますし、邪魔するならば叩き潰すつもりですが」

 

カズマの当たり前の疑問にめぐみんは否定の答えを返す

。最後がやや物騒なのはご愛嬌である

 

 

だが、めぐみんとあるえからすれば、ナタルはレタスであることを除けばゆんゆんと上手くいくと確信していた

 

 

何気に暴走しがちなゆんゆんを普通に止められるナタルは紅魔族の里の中に含めても珍しい人物?である

 

無論のことであるが、レタスである事はナタルから切り離せない根本的な問題であるが、これにはあるえが心当たりがあるらしい

 

めぐみんはあるえの心当たりという単語に凄まじく不安を覚えていたが

 

 

例えるならば、明日激戦に赴く冒険者が戦いの後の事を語るような感じであったが、敢えて目を背けた

 

めぐみんだって逃げたくなるときもあるさ、人間だもの

 

 

 

 

因みにあるえの心当たりとはめぐみんの父親、ひょいざぶろーに魔道具の開発を頼むことである

 

勿論、ひょいざぶろー一人では難しかろうが、あの里には暇人や好奇心が天元突破したような趣味人が多い

 

ひょいざぶろーが抱える難題を聞けば嬉々として参加すると踏んでいた

 

なんだかんだ言っても優秀なら紅魔族である

ある程度目を瞑れるならば解決策の一つ位は出るだろうとの考えであった

 

 

 

まぁ、被害を受けるのが最近色々とストレスの元になっているナタルであるから問題視していない。等と言う事は決してない。ないのだ

 

 

 

「そうよね!やっぱり恋の力は凄いのよ!」

 

何故かアクアのテンションが上がる

 

 

アクアは天界で転生の担当をしている為にある程度は現世の事情を把握する必要がある

 

とは建前で暇な時には現世の様子を見て楽しんでいた

 

その中でもやはり恋愛事には目がなかった

女神とて、女性ということなのだろう

 

 

 

しかも相手が自身の不手際のせいで既に他の転生者よりも不幸な境遇にある人物?なのだ

この幸せになる機会を逃して欲しくはなかった

 

 

「とはいえ、直接的介入は今のところ避ける事にしていますが」

 

「え?そうなのか?」

 

「ゆんゆんはまぁ、誤魔化せますがナタルさんは無理かと思いますよ。あれで結構鋭いですし」

 

 

 

誤解である。単純にあるえとめぐみんの痛恨の勘違いである

 

そもそも、人付き合いにおいてはゆんゆんがボッチという二人だが、実のところはゆんゆんと大差なかったりする

 

悲しいかな。ゆんゆんよりは多少マシ。程度の対人能力である

 

 

 

で、対象のレタスだが、当人が最初の頃に言っていたようにアレもまたボッチであり、またチェリーでもある

 

どうして他人の感情の機微に聡い等と言う事があろうか?

 

 

ナタル的にはゆんゆんが色々としてくれるのは、『初めての友達』であるからと言う意識が強い

 

 

余談ではあるが、現在のナタルの全高は僅かに一メートルあるかないかである

ナタルは何時も目のやりどころに困っているのだが、不幸な事に紅魔族三人は気付いていなかったりもする

 

 

あくまでもゆんゆんやあるえに対するスタンスは妹とかそんなレベルである

 

 

時々、意識しそうになるのを必死で堪えているのは同じ男性として慚愧にたえない(邪笑)

 

 

 

全く見当違いの見地から出した答えが正答に結びつくだろうか?いや、ない!

 

 

「余計な手出しは無用って事か」

 

「そうね。下手に手を出して拗れたら大変だものね」

 

「ええ。カズマとアクアにもそうしてもらえたなら有り難いです

尤も手伝って欲しいときは頼らせて欲しいのですが」

 

納得のカズマとアクア。それに頼み事をするめぐみん

 

「別にいいさ。助けてもらったしな」

 

「 私も協力するわよ」

 

実はめぐみんが言わなかったらアクアは後輩の女神エリスに祝福を授けて貰おうとしていた

 

せめてこの世界で幸せになって欲しいから

 

「そういや、ナタルさんが見せたい物って何なんだろうな?」

 

カズマはナタルの楽しそうにしていた話を思い返しながら、ギルドで成功報酬を貰いに向かった

 

 

 

 

 

 

あるえの依頼を受けたひょいざぶろーは頭を抱えていた

 

 

「モンスターが人間に成れる、又は一時的に人間に変身できる魔道具、か」

 

あるえは娘のめぐみんの同級生であり、悪い娘でないのはひょいざぶろーも知っていた

 

だが、理由を聞いても「私達の友人の幸せの為には必要」の一点張りである

 

では、そのモンスターを連れてきて欲しいと言っても「すぐにとはいかないと思いますが、それでもよければ」である

 

娘の関係でなければ受ける事はなかっただろう

 

 

だが、最近の爆発ポーションシリーズで在庫ばかりが嵩んでおり、妻のゆいゆいの機嫌は絶賛急降下であった

 

あるえが持ってきた依頼金は彼女がアークウィザードであることを考慮しても破格のものであった

 

更にアクセルの街のお土産まで持参してきており、次女のこめっこがすぐに文字通り食い付いたのだ

 

 

まさかお土産を食べておきながら、依頼を受けないとは言えなかった。妻も怖いし

 

期間も指定がなく、時間はかかってもいいらしいがひょいざぶろーとて職人の端くれである

 

娘と同年代の少女の好意に甘える等と娘を持つ父親としても許容できない

が、悲しいことにアイデアが浮かばないので酒場に来ていた

 

 

 

依頼金というか支度金の様な物に早速手をつけたひょいざぶろーを見るゆいゆいの視線は怖かった

 

あの視線を受ける位ならば何時もの魔王軍の襲来に一人で立ち向かう方がマシだとすら思う

 

 

「お、ひょいざぶろーじゃないか、どうしたよ?」

 

「ああ、ちぇけらか。少しな」

 

「おや、めぐみんさんのお父さんのひょいざぶろーさんではないですか、珍しい事もありますね」

 

酒場に来たひょいざぶろーに目敏く気付いたのは服屋を営むちぇけらとめぐみんの恩師であるぷっちんである

 

普段は家の工房から出ない出不精のひょいざぶろーが酒場に来るのは非常に珍しいので声をかけてきたのだ

 

「いらっしゃいませ、ひょいざぶろーさん

御注文は何にしますか?」

 

「とりあえずはシュワシュワを頼む」

 

「はい、分かりました」

 

看板娘のねりまきはひょいざぶろーから注文を取るとキッチンへと下がった

 

「どうも、行き詰まってな」

 

「魔道具か?」

 

「ああ。何でもモンスターを人間に変える魔道具が欲しいらしいが」

 

ちぇけらの質問に思わず返すひょいざぶろー

 

「穏やかではありませんね。モンスターを人間に変えようなどとは」

 

「いや、お前さんの教え子に悪魔を召喚して友達にしようとした娘がいなかったか?」

 

ぷっちんの常識的な発言にちぇけらが茶々をいれる

 

「確かひろぽんの娘だったか」

 

「発想は悪くないな

だが、友達にするというのはなぁ」

 

「ですなぁ、召喚した悪魔を倒すならば紅魔族的には最高でしょうが」

 

 

ひろぽんとは現在の紅魔族の里の族長の名前である

つまりゆんゆんが里でやらかした事を話している訳である

 

ゆんゆんが此処にいたならば泣くこと間違いなしであろう

 

「意外にモンスターと友達になったとか、ないか」

 

「「・・・・・」」

 

ちぇけらの冗談だが、ゆんゆんの行状を見る限り否定出来なかった

 

「でもゆんゆんは意外と人を見ていると思いますよ?

それに学校でも次席でしたから、そうそう変な人に騙されないと思いますけどね」

 

シュワシュワを持ってきたねりまきは彼等の懸念を一蹴した

 

確かにゆんゆんは騙され易いがゆんゆんの回りには彼女を心配する人間が必ずいた

 

行き過ぎた行為は必ず止められて来た、筈である 

 

 

「しかし、ひろぽんの娘絡みならばあるえ君が依頼してきたのはどうなんだ?」

 

「あるえなら間違いありませんね

意外かもしれませんけど、あるえは友人を大切にしますからね」

 

ひょいざぶろーの疑問でねりまきの推測はほぼ確信に至った様だ

 

「つまりは紅魔族の未来の為ということか!」

 

「確かに、その通りですねちぇけらさん!」

 

何やらスイッチが入ったかの様に目を紅く光らせるちぇけらとぷっちん

 

「いや、待て」

 

「こうしてはおられん!

すぐに里の皆を集めねば!」

 

「私もお手伝いします!

ねりまきさん、支払いは私につけて下さい」

 

ひょいざぶろーの制止も虚しくちぇけらとぷっちんは支払いを済ませるなり酒場から飛び出していった

 

 

 

 

この少し後、紅魔族の里のほぼ全員が集まり、魔道具の開発に邁進することになるが、また別の機会に語るとしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

「」

 

カズマは絶句していた

 

「ま、そうなるよな」

 

カズマのリアクションにナタルは苦笑混じりで納得した

 

目の前では人の頭くらいあるサイズの蜂が飛んでおり、畑からサンマを収穫していたのだから

 

「サンマは畑から獲れる

良いことをしったな、カズマ」

 

明らかにドヤ顔をしていそうな言い方のナタルである

 

「いやさ、キャベツとレタスが空を飛ぶし、目の前のレタス(笑)は喋るからある程度は異世界だから納得するさ

 

でもな、畑からサンマが収穫出来るとか、何で素直に蜂がレタスに協力してるとか、あんなにレタスがいるとか、何なんだよ!」

 

「カズマ、あれはレタスではなくキャベツよ」

 

「し・る・か!」

 

異世界と元の世界の常識の差に頭を抱えるカズマだが、丁寧にアクアが訂正している

 

違う、そうじゃない!

 

カズマの心境はその一言で説明出来る

 

 

「キャベ?キャーベ、キャベッ!(おや、見知らぬお客人ですか?私はこの里を父上から任せられていますキベムと申します、以後お見知りおきを)」

 

キャベツの纏め役のキベムは丁寧に挨拶する

が悲しいことにカズマには通じない

 

「え?何言ってるんだよ?」

 

「挨拶してくれているのよ、カズマ

キベムっていってこの里を管理しているらしいわね」

 

「ブゥーン、ブゥー(終わったぞー、サンマくれ)」

 

「あ、いつもご苦労様。今日は三匹でいいか?」

 

「ブゥーン(お、何時もより多いな)」

 

「キャベッ!(此方も助かっておりますからな)」

 

「ブブ(また来る)」

 

蜂は器用にサンマを三匹捕獲して去って行った

 

彼?はこの里の畑の収穫担当をしている

 

 

 

 

 

「そろそろ私は怒ってもいいと思うんだが」

 

「ナタルさんですからね、諦めましょうあるえ」

 

「でも凄いと思うんだけど」

 

遠目で珍百景を眺めているあるえ、めぐみん、ゆんゆんである

 

「凄い?ああ凄いと思うよ

だけどね、キャベツが蜂を使役して、その上キャベツのトップがレタスとか訳が分からない」

 

「しかもあれ、ヘビーホーネットではありませんか

確か凶暴で二、三匹でオークすらも倒せるという」

 

「え?そうなの、めぐみん」

 

 

 

 

「あ、お疲れ安楽さん」

 

「ナタルの旦那か、人間を連れてきていいのか?」

 

「彼等は信用出来るよ」

 

「・・・ま、私は此処に居させて貰っているから別に構わないけどな

ああ、そこの少年。私は安楽少女、覚えておきな」

 

「え、あ、はい」

 

儚そうな見た目とは裏腹に姉御と呼びたくなるような口調である

 

「私ら安楽少女はな、明らかに弱そうなフリをして庇護欲を煽るのさ

で、近付いてきても暫くは我慢する

が暫く通い続けたら手遅れさ。養分になる。精々冒険者になるならば気を付けるこった」

 

「アッハイ」

 

 

 

 

 

「あ、カズマ。動くなよ?」

 

「へ?うぉっ!」

 

「ただいま」

 

(タケノコが地面から出たり入ったりしている)

 

「タ、タケノコ?」

 

「そ。美味しいらしいよ」

 

「いや、食べんのかよ!」

 

「俺は食えないけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サトウカズマの日記

 

 

父さん、母さん。俺は今、異世界で冒険者を始めました

 

けれどいきなり心が折れそうです

 

 

パーティーを組んでいるアクアとめぐみんは凄く優しいし強いんです、悲しいけど俺よりも

 

でも異世界の先輩の一人?が明らかに普通じゃないんです!

 

人間でなく、レタスだし、何かキャベツの仲間がいるし、蜂を使って畑でサンマを育てているし、近くの森には危なそうな安楽少女とかいうモンスターがいるし、その森にはタケノコが生えてくるし、何かヤバそうな熊みたいなのもキャベツとタケノコが倒すし、池に落とした大きな蛙ジャイアントトードはワニのブルータルアリゲーターだかに喰われるし、近くにある岩が爆発するし、え?爆○岩なの?○ガ○テ使うの?

 

 

 

これからの異世界生活が不安でなりません(涙)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まもなく終わろうと言うのに全力で横道に逸れていくスタイル!

ま、くらうすなので仕方ないです


というか、なんとなく降りてきた野菜たちによる楽園がテーマだったり


次回より胸糞展開へと戻ります

御一読ありがとうございました


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目覚めの刻 迫る刻限

何か長くなった(;´д`)

とはいえ、ラストスパートに向けて加速せざるをえないので仕方なくはありますが


予定としては九月中にはナタル編は完結するつもりです


今回も特定のキャラクターへのヘイトがありますので、御注意を


元天使であるリフェであったが、度重なる殺生により自身が変質していくのが解っていた

 

元来、天使や悪魔は魔力には敏感であり、天使はその魔力を自身の存在の固定に使い、悪魔は本体を地獄におきながらも端末を現界させながらも自身の能力向上にも転用していた

 

これは殆んど変化のない天界と生き抜く為にはある程度の力を求められる地獄の環境の差の表れともいえる

 

 

だが、リフェは自身の変質を受け入れ始めていた

 

 

 

『今のまま』では何一つ思い通りにならない

力が、圧倒的な力が欲しいと願っていた

 

リフェは自分が『堕天』するだろうと思っていた

だが『堕天』し、『堕天使』となれば『天使』として天界でかけられた枷が外れるのではないか?と期待していた

 

もしも外れなくとも実力で破れるのではないかとも思ってはいたが

 

 

『堕天使』になれば元には戻れないこと位はリフェとて聞き及んでいる

 

が、自分に不当な扱いをした忌々しい人間や天界の者達へと復讐出来るならば構わない。とすら思い始めていたのだ

 

 

 

 

だから、今は人間の言う通りにテキを殺し尽くす

 

何れ力を得た暁には必ず、その報いを与える為に

 

 

 

 

 

 

リフェは若い上に余り周囲から好まれる人物ではなかった為に知らなかったが『堕天使』になればリフェ程度の精神力では『変質』する精神に抗う事は出来ない

 

天界において何故『堕天』が嫌悪されていたのか?

リフェはそこを甘く見すぎていた

 

 

 

 

 

 

 

一方でキャベツの養殖に励んでいるレフェルは絶賛不機嫌であった

 

上手くいかないのだ

 

彼はキャベツから摘出したキャベツの種子を使い、キャベツを育てようとしたが、僅か一日ももたずに枯れてしまった

 

最初の内は大目に見ていた公爵側も遅々として進まないレフェルに対してプレッシャーをかけ始めた

 

公爵としてはレフェルとリフェの同時進行であるが、かといって無駄飯食らいを許すつもりなど到底有りはしなかった

 

人員が削られ、費用が削られ、終いにはレフェルは一人で難題に取り組む事になった

 

 

これはレフェルが謙虚ならば公爵側も多少は考慮しても良かったが、レフェルは責任者になるなり人員を顎で使い、資金を湯水の如く使っていた為に反発が酷かったせいである

 

それでも一定の成果を出せるならば公爵とて我慢しようが、その成果すら出せないならばレフェルに対して冷淡になるのも仕方ない

というのも、レフェルが短い期間に使った資金は億まではいかずとも数千万には及ぶからである

 

レフェルの様に何の成果のない一市民に支払える額では到底なかった

 

故にレフェルは崖っぷちであった訳である

自業自得ではあるが

 

 

 

 

 

 

 

そんな事態を知らぬ我等がレタスは現在危機に陥っていた

 

 

 

「ナタルさん?」

 

今まで見たことのない位に眼を紅く光らせているゆんゆんの存在である

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

情けない事ながらにナタルには思い当たる節がなかった

最近は同郷のカズマと色々と話をしているだけであるのだが

 

ゆんゆんとあるえもめぐみんとアクアとガールズトークなるものをしていたらしく、ヘタレレタスと元ニートにその会話に割って入るなど出来よう筈もなかったのは当然といえよう

 

 

 

内容についてはカズマもアクアやめぐみんに聞いても教えて貰えなかったらしい

 

ナタルがゆんゆんに聞けば

 

「ナ、ナ、ナ、ナナンデモナイデスヨ?」

 

と明らかに何かありそうなリアクションをとられた

 

ではあるえに聞いたら

 

「さてね、キミに言ったところで意味がないような気もするからね」

 

とはぐらかされる始末である

 

 

なのでカズマと馬鹿話に興じていたわけであるのだが

 

「何でですか!」

 

(いや、何が!)

 

泣きそうになっているゆんゆんだが、ナタルも泣けるものなら泣きたい気分である

 

あの温厚なゆんゆんがここまで怒るとなると余程の事であるだろう。自分では鈍感レベルはカンストしていると自負している情けないレタスである

 

だからとて、ゆんゆんが泣きそうになっているのを見るとやはり悲しくなる

ナタルとしてはゆんゆんの笑顔が好きである為に笑っていて欲しいと思っているのだが

 

「何でいつもいつもカズマさんばかりなんですか!」

 

「はひ?」

 

ゆんゆんの予想外の主張にナタルも吃驚した

 

「カズマさんと出会ってからいつもカズマさんばかりと話をしています!

私と話するのは嫌なんですか!」

 

「お、おう?」

 

「落ち着きなよゆんゆん

君がカズマさんに嫉妬しているのは、このレタス(笑)にも分かっただろうしね」

 

多分に毒の含んだ発言だが、一応はゆんゆんを宥めようとするあるえだった

 

「し、し、嫉妬なんて」

 

「どう見ても嫉妬だろう?

ナタルさんがカズマさんばかり相手するのが不満だったんだろうに」

 

「うう、違わないけど」

 

ナタルはやっと納得できた

確かにカズマは同郷であり境遇的にも似通っている部分は多い

 

だからといってゆんゆんを放っておいた訳では決してない。が、相手に伝わらなければ意味などありはしないのだ

 

だから、

 

「そっか、ごめんなゆんゆん

そういうつもりは無かったとはいえ、ゆんゆんを傷つけてしまって」

 

「いえ、あの、その、私も・・・・ごめんなさい」

 

ゆんゆんは初めて出来たナタルという友達に依存しているところがあった

それを今、ゆんゆんは自覚したのだ

 

「本当にごめんなさい!」

 

「いや、というより別に謝る必要なくね?

俺も悪かったからね、お互い悪かったって事で」

 

「ナ゛タ゛ル゛ざんっ!」

 

「やれやれだね」

 

「ああもう、ゆんゆん泣かないの、な?」

 

 

 

何時も通りの光景であった

 

 

 

 

 

 

とりあえず落ち着いたゆんゆんとあるえがアクセルの街に戻っていった

 

時々野宿?をしようとするゆんゆんをあるえと共に止めているナタルであるが、悲しいかな勝率は四割程度であり負け越していた

 

ストッパー(笑)としてあるえも泊まる事になるが、重ねて言うが元チキンでチェリーのレタスに美少女であるゆんゆんへ手を出す勇気等はありはしないし、あってはならないとナタルは自制していた

 

 

 

所詮はレタスである以上、人間と結ばれる等有りはしないし、あってはならない

 

人間であるゆんゆんより野菜であるナタルは必ず早く朽ちるのだから

 

 

 

 

でも、中身は元とはいえ人間である

 

やはり寂しくはあるのだ

 

 

遠くのキャベツ達を眺めながらナタルは黄昏ていた

 

 

 

 

 

 

 

「レタス?か

妙なものだな」

 

「っ!」

 

突然声を掛けられたナタルは思わず其方を見た

 

 

 

 

 

そこには黒い鎧を纏った首なし騎士『デュラハン』がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔王軍幹部の一人、『デュラハン』のベルディアは少々苛立っていた

 

というのも

 

「何を苛立っておるのか皆目見当がつかぬが、どうしたのだ、ベルディアよ?」

 

目の前にいる愉快犯のせいであった

 

「さてな、どこぞの愉快犯のせいで今の魔王城の空気が悪いのだがな」

 

魔王城では、他の幹部や魔王の娘すらからかう愉快犯のせいで全員が揃う事はまず無かった

 

今回も会議であったが、デッドリースライムのハンスは欠席しており、シルビアと魔王の娘が愉快犯の被害にあっている

 

「成る程、だが吾輩は悪魔故に他者の悪感情が必要なのである、必須ではないが」

 

「止めろとまでは言わぬ。が、少しは自重したらどうなのだ?」

 

「ふむ、なれば一つ頼み事をしてもらえるならば考慮してもよいだろう」

 

「聞く理由にはならんな」

 

「確かにそうであるな

だが、『理不尽に抗う』者の話ならばどうだろうか」

 

「ほう」

 

ベルディアの双眸が僅かに光を帯びる

 

 

 

今はアンデッドとなったベルディアであるが、生前は高潔な騎士であった

 

民を思い、常に範たろうと自身を律していた

 

残念ながら上から嫌われたのか、当時の魔王軍幹部へと単身挑まされて武運つたなく敗死したが

 

 

 

その後に魔王によりアンデッドとして蘇生されはしたものの常に『何かに抗う者』への敬意だけは欠かした事はなかった

 

故に

 

「貴様の話にのるなど業腹ではある

が、興味深い話ならば聞かせて貰おうか」

 

「フハハハハ、やはりそうでなくてはな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というやりとりの後にバニルの依頼を受けたベルディアは指定された場所へと向かった

 

 

一つだけベルディアの予想外な事があるとするならば、そこにはレタスしか居なかった事であるが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レタスか?

妙なものだな」(ハァ?レタス?どういう事だこれは!)

 

「っ!」

 

「反応はまあまあか、だが周囲への警戒を怠る時点で落第だがな」(え゛レタスがまともな反応してるんだが!変わり者とは聞いていたがこれは変わり者というレベルの話ではないだろうがぁ!

あの、愉快犯の倒錯趣味の持ち主が!)

 

なお、悲しい話ではあるが、女性(某リッチー)の下着を覗こうとしているお前が言うな!とのツッコミ待ったなしの盛大なおまゆうである

 

「だ、誰ですか?」

 

「ほう、喋るレタスとは珍しいな(アイイエ?レタスが喋った?

何で?何故?ホワイ?)」

 

どうやら混乱のあまりに変な電波を受信している様である

敢えていうならば「ベルディア、貴方疲れているのよ」と憐れみを込めて言われる事、待ったなしである

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず荒ぶる内心を抑え込んだベルディアは一ダース程、某悪魔に対する愚痴を内心溢す事で精神の安定を保った後、目の前のレタスと話をする事にした

 

「・・・ん゛ん゛っ!

失礼した、俺は魔王軍幹部の一人死霊騎士『デュラハン』のベルディアだ」

 

「アッハイ」

 

明らかに混乱処か錯乱していた事はどうやら触れない方が良さそうだとナタルは判断した

 

「どうやら悩みがあるように見えたが、何を悩んでいるのだ?」

 

「(え?レタスの表情の違いが分かるの?このヒト)まぁ、悩みはありますけども」

 

尤もらしく言っているがどこぞの愉快犯の入れ知恵である

 

「どの様な悩みなのだ?

俺は魔王軍の幹部とは言え、かつては騎士だった身だ。秘密は守るし、よもや人間と共に我々魔王軍に敵対しようとは思えまい?」

 

「あ、いや、どうなんでしょうか。もしもゆんゆんやあるえさん達が手伝って欲しいと言ったら

それにカズマやアクアさん、師匠に頼まれたら、どうしようか?」

 

ベルディアにとっては意外すぎる答えである

 

「む?貴殿は言っては悪いがレタスでしかないだろう

にも関わらず人間に協力すると言うのか?」

 

「傍目からすれば馬鹿な話ですよね

でも、守りたい人達が出来たので」

 

この異世界に来てからゆんゆんを始めとして、あるえ、めぐみん、キベム、セシリー、カズマにアクア。一介のレタスには勿体ないような出会いがあった

 

当初はこんな身体ではどうにもならないと諦めていた。だが、ゆんゆんに出会ってからナタルの異世界生活は色付き始めたのだ

 

 

確かに異世界に来た切っ掛けは物凄く納得出来ないものであったのは確かである

 

だが、今なら間違いなく断言出来る。「レタスになったとはいえ、素晴らしい異世界生活だ」と

 

ならば、例え勝てない戦いであったとしても、ナタルは請われるならば微力を尽くしたい。そう思うのだ

 

その結果、自身がどうなろうとも

 

 

 

 

「うむ・・・・」

 

ベルディアもナタルなりの覚悟を見てとったのか、感心していた

 

今も昔もこの様な人物にはベルディアは好感を持つと共に敬意を払う。その力の大小でなく、その覚悟に

 

 

「とはいえ、貴殿はレタス。幾ら何でも困難を打ち破る力はないだろう」

 

「デスヨネー」

 

実際問題として、ナタルが能力を万全に使うには自身のフィールドで戦うしか方法はない

勿論、フィールドに誘い込んだとしても、相手の実力如何によっては能力が通用しない事もあろう

 

ナタルが使役出来る野菜達とてあくまでも自衛の為の戦う力であり、相手を屈服させるものではないのだから

 

加えてナタル自身もめぐみんとの初対面でのやらかしのせいで大幅なパワーダウンとサイズダウンを果たしており、体当たり程度ではどうにもならないだろう事は容易に想像出来る

 

それらの事情もあり、めぐみんを師として仰ぎ、爆裂魔法を習得しようとしているのだが、上手くいっていないのが現状である

 

ただめぐみんの求道者としての姿勢に感銘を受けた事も理由ではあるが

 

 

残念ではあるが、ナタルがレタスであるが故に冒険者登録が出来ずに冒険者カードを取得出来ない為である。他にも王国軍や紅魔族の里にある魔法学校『レッドプリズン』でも取得出来なくも無いが、やはりナタルの外見が妨げとなっていた

 

最近では紅魔族の里長の娘であるゆんゆんがどうにかしようとして、あるえとめぐみんにとめられていたりもする。流石に里長の娘のゆんゆんだとしても、一応レタスとてモンスターの区分にギリギリ入る

 

そんなものを里に持ち込めばゆんゆんの立場は確実に悪くなるだろうという二人の考えからであった

 

 

「だが、貴殿の様な者は恐らく諦めまい

ならば、良いものがある。使うかどうかは貴殿が決めればいいだろう」

 

ベルディアは一冊の本をナタルの前に置いた

 

「これはスキルの書だ。これを使えば一つだけスキルが手に入る

代償として、これを使用した後は如何なるスキルも習得出来ない事。更にこの書で習得したスキルを使うと『今まで習得したスキル全て』が使えなくなるものだ

人間ではデメリットにしかならないだろうが、レタスである貴殿ならばメリットにもなろう」

 

「・・:良いんですか?」

 

「構わんさ、元々こちらではもて余していた物だからな」

 

「ありがとうございます

どうすれば良いんですか?」

 

「スキル習得は音声で出来るらしいが、試す訳にもいかんだろう」

 

「『爆裂魔法』を習得します」

 

「何?」

 

「オンセイニュウリョクヲカクニン

ホントウニシュウトクシマスカ?」

 

「はい」

 

「いや、ちょっと待て!」

 

「デハ、バクレツマホウヲシュウトクシマス

コノスキルヲシヨウシタバアイ、スベテノスキルヲウシナイマスノデゴチュウイクダサイ」

 

「待て!スキルの書よ!」

 

制止するベルディアをよそにナタルの全身が光に包まれる

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ベルディアとナタルは少し話をした後に別れた

 

 

 

「確かに色々と大した精神性だな」

 

ベルディアは苦々しく一人呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険者サトウカズマは今、怒っていた

 

 

カズマは初クエスト以来、順調にクエストをこなしていった

 

とは言っても、カズマ自身は最弱の冒険者。仲間のアクアは戦闘では少々考えなしなフシがある。めぐみんは冷静に物事を考えるが使える魔法は爆裂魔法のみというロマン仕様

 

自然と受けるクエストの選択も慎重になる

 

 

上級職のクルセイダーのダクネスという女性も新たにパーティーに加わったのだが、こちらは防御に全振りのドM仕様であった

ダクネスの友人という盗賊のクリスの方にも声を掛けたが「やるべき事がある」とかで断れている

 

 

 

で、新たなメンバーを加えて湖の浄化クエストに来ていたのだが

 

「君の様な最弱職の冒険者にアクア様を任せるなんて出来ない!」

 

等と目の前の人物が言ってきた

 

 

 

クエストの遣り方としては多少問題があったことはカズマとて否定しない

 

アクアを檻に入れて湖の中に沈める。要約するとこういう事になる

 

誓って言うが、カズマの発案ではない。めぐみん、ダクネスの提案ですらない

当事者のアクアよりの提案だったのだ

 

曰く「モンスターに邪魔されない様にしたいから」らしいが、お陰でカズマがギルド職員から白い目で見られる事になってしまった

一応必要な風評被害として割り切りはしたが

 

 

クエスト自体は上手く言ったのに目の前のイケメン野郎のせいで檻は壊され、現在進行形でウザ絡みされている

 

 

 

「聞いているのか、サトウカズマ!」

 

「あ、わり、いきなり喧嘩腰で絡んで来るやつに礼儀なんていらないだろ?」

 

「ぐっ!そ、それは悪かったと思うが」

 

「それに、自分のパーティーメンバーを目の前で引き抜こうとされているのに、怒らないと思ってんのか?」

 

カズマが冒険者である事を知り、アクアとめぐみんが馬小屋で寝泊まりしている事を知ったミツルギとかいう男は自分のパーティーへと誘ったのだ

 

もっとも

 

「私は別に困っていないし、貴方にはその『グラム』を渡したのだけど。カズマは私との冒険を望んでくれたのよ、悪いとは思うけど断らせて貰うわね」

 

「はぁ。貴方がどう考えるのかは自由ですが、私にそれを押し付けないでくれませんか?

私は今の環境に納得していますし、満足もしていますから」

 

「あまり感心できないな

私達はこのパーティーでやっているのだ。いきなりその様な事を言うのは失礼ではないのか?」

 

 

と三者三様の答えで断られているのだが

 

 

 

「だが!女神であるアクア様にその様な不自由な生活をさせていて、恥ずかしくないのか!」

 

「あ゛。恥ずかしいのはどっちだよ

その魔剣グラムだったか、それを使って冒険しているんだろうけどな、自分がどれだけ恵まれた環境に居るか分かってんのか!」

 

「恵まれているだって?

君とて転生特典をキチンと選べば」

 

「ふざけんな!それを選ぶことも出来なかったヒトもいるんだぞ!

それでもこの世界を生きているんだ!」

 

カズマの脳裏にはナタルの姿があった

 

 

 

調子にのりやすく、ノリも良い。でも人間ですらない

 

ナタルは言っていた「やっぱ月並みだけど、異世界にいるなら冒険はしてみたいよな。ま、このレタスボディでは無理だけどな」と

 

 

 

 

 

 

 

結局ミツルギとの話は平行線であった

 

 

「んで、自分の得意分野に持ち込む訳か」

 

「僕も君も冒険者だ。実力は必要だろう」

 

「はいはい。最弱の冒険者相手にマウントを取るソードマスターとか格好悪いにも程があるだろ」

 

「・・・・そうかも知れない。だが、アクア様を君に任せる訳にはいかない」

 

「んで、何時始めるんだ?」

 

「何時でも構わない」

 

心底呆れていたカズマだったが、ミツルギのこの一言で

 

「じゃ、行くか!

『スティール!』」

 

 

スティールとは盗賊のスキルで相手の物を盗む

盗む物はランダムに決まるが、幸運値が高い方がより良い物を盗むことが出来る

 

クリスの下着とカズマの風評を犠牲にして手にいれたカズマの力である

 

 

「くっ!」

 

「悪いけどな、手加減は無しだ!」

 

ミツルギより魔剣グラムをスティールしたカズマはそのままミツルギを峰打ちにした

 

 

 

「カズマ、勝ったのね」

 

「相変わらず、何と言えば良いのか難しい戦い方をしますね、カズマは」

 

「しかし見事なものだな

流石にソードマスター相手では正面から戦っても勝ち目はないだろうからカズマの戦い方は理にかなっている」

 

カズマの勝利に対してほっとするアクアと称賛するめぐみん、ダクネスだった

 

 

 

 

 

「卑怯者!」

 

「そうよ!正々堂々と勝負も出来ないの!」

 

逆にカズマを非難する女性二人、戦士のクレメアと盗賊のフィオである

 

 

 

 

 

「卑怯とそちらは言うが、むしろ卑怯なのはそのミツルギ?だろう

魔剣装備のソードマスター相手に普通?の冒険者のカズマがどうやって抵抗するのだ?」

 

「ダクネスのいう通りでしょう

それに貴女方はモンスターと戦うときにも言うつもりなのですか、卑怯だと

そもそも、この戦い自体がそちらのマツルギ?でしたか、が言い出した事でこちらには何一つ利益はないのですよ?

貴女方の我儘に付き合わせた挙げ句、そちらのルールで戦えなどと随分と都合の良い事ですね」

 

クレメアとフィオの発言にダクネスとめぐみんは反論する

 

というよりも、勝手に自分達を巻き込んだミツルギに対してダクネスもめぐみんもアクアでさえも好意は持てない

 

 

確かにカズマは最弱職の冒険者である

 

だが、カズマは必死にこのパーティーの為に動いているのを三人は知っている

 

アクアからは初級魔法を、めぐみんからは知識を、ダクネスからは剣技をそれぞれ学んでいた

 

異世界に来て少しばかり無意識の内に甘く見ていたカズマだったが、レタスになったナタルを見て気を引き締めた

 

 

多少スティール等で剥かれた三人であるが、これも会得したスキルを確認したいと三人の方から言い出した事であり、流石に責めるつもりにはならなかった

 

 

 

 

「でも、マトモに戦えばミツルギがそんな冒険者に負けるわけない!」

 

少しは落ち着いたクレメアを余所にフィオはなおも主張する

 

「ではモンスターの目の前でもその様な世迷い言を言うのだな?」

 

少々苛立っているダクネスは剣を握りしめた

 

「いや、何しようとしてんだよ、ダクネス!」

 

「し、しかしだな」

 

「言いたい奴には言わせとけよ

どうせ言っても無駄だろうからな。それよりさっさとギルドに戻って報告しようぜ。壊した檻の事もあるからな」

 

「カズマはそれでいいの?」

 

「良くはないけど、時間の無駄だろ」

 

「・・・分かりました。カズマがそう言うのなら」

 

「些か以上に不愉快だが、当事者のカズマが言うならば仕方ない」

 

 

これ以上のやり取りは時間の無駄としてカズマ達はギルドに向かった

 

 

 

 

 

 

 

そんな地上とは異なり天界では関係者を集めて話し合いが始まっていた

 

 

「つまりは天界より追放した咎人が地上にて堕天する恐れがあると?」

 

「はい、人間はどうやら悪魔召喚の触媒としてアレを利用しようとしておった様です

ですが、枷があるためにその懸念は無いと思っておりました所」

 

「うむ、だからとて容易に天界の者を遣わす訳にもいかぬであろう?

今、地上に居るものは?」

 

「女神エリスと女神アクアでございます」

 

「面倒な事だな」

 

女神エリスと女神アクアは地上にて信仰されている女神である

 

女神エリスを信仰するエリス教は地上における最大派閥であり、女神アクアを信仰するアクシズ教は数こそ少ないものの一人一人の信仰はエリス教よりも高い

 

加えて行動力までもアクシズ教徒は高い水準を有している

 

両女神を動かせば事態の鎮静化は今の段階ならば時間の問題だろう

 

 

だが、それによる両女神への信仰の高まりは彼女達に反感を持つものからすれば不都合極まりない

 

両女神の影響力を削ごうとしているにも関わらず、両者の力を上げる手助けになるなどと悪い冗談である

 

 

「元は女神アクアの足を引っ張るためにアレを使っていたが余計な事ばかりしおる」

 

彼は天界における重鎮でありながらも、現在の主流派へ反感を持っていた。勿論、表に出すような真似はしていないためにリフェ追放直後の粛清からは免れていたが

 

 

ここまで影響力を落とした反主流派ではあるが、何とかして復権を目論んでいた

 

だが、リフェが堕天使になろうものなら、面倒な事になる

 

 

 

 

因みに悪魔召喚自体を放置するのは儀式自体に欠陥があるためである

 

 

通常の悪魔召喚は魔界にいる本体でなく、その端末を呼び出す

 

だが、今回の儀式は本体そのものを召喚しようとしていた。たとえリフェが天使の力を封じられていなくとも、リフェ程度の魔力では悪魔を現界させたとしても、もって数分で現界を維持出来なくなる

 

都市の一つは消し飛ぶとしても、その程度なのだ

 

彼らからすれば取るに足らない話である

 

 

 

 

「では、両者に伝えますか?」

 

「ならぬ。それを知ったら女神アクアはともかく、女神エリスは黙っておるまいよ」

 

「しかしながら、放置するには危険かと」

 

「何、本当に危険ならば精鋭を現界させる

人間には精々絶望して貰いたいものよな」

 

 

彼はリフェが堕天使になって破壊を振り撒く事を密かに期待していた

 

人間が絶望するほど、獲られる信仰は大きくなる。女神エリス、女神アクア以外は邪神呼ばわりされる地上で信仰を獲得する好機ととらえていた

 

 

「が、即応できる様に準備はしておけ」

 

「はい」

 

全ては失った物を取り戻す為に

 

 

 

 

 

 

リフェ、公爵、天界それぞれの思惑を含みながら時は刻まれる

 

 

 

その先に何があるのか?

 

 

 

 

 

まだ、わからない

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リフェは割りとヤバい

レタスとデュラハンの出会い

カズマとミツルギの出会い


という話でした


評価して下さるのは光栄ですが、感想くれてもいいのですよ?

誤字の指摘ありがとうございます
割れた液晶では厳しいのかもしれません(笑)


では、御一読ありがとうございました


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常世の夢

何だかお気に入りが増えてて怖い 

と、とりあえず風呂敷は畳みますよ?

アンケートは締め切らせて頂きました
皆様、ご協力に感謝します


天界では今だもって積極的介入に対して慎重論が多勢を占めていた

 

曰く「地上の混乱が続くほどに女神エリス、アクアへの声望が下がり、介入した神や天使の信仰が上がる」

 

曰く「あの『出来損ない』が堕天使等という高次の存在になれるはずがない」

 

曰く「地上には既に女神エリスと女神アクアがいる以上は両者に介入させるべき」

 

といった意見が出てきており、統一性に欠けていた

 

 

更にリフェの属していた派閥の残党はリフェの討伐を自身の派閥の手の者にさせる事による発言力の復活すら考えていた

 

 

 

結果、彼等は何も出来ぬままに無為な時間を過ごす事となる

 

 

 

 

 

 

カズマ達はミツルギのパーティーを放置してギルドへと報告していた

 

「すいません、貸してもらった檻なんですが」

 

「・・壊れて、ますね」

 

カズマの報告に顔をひくつかせるギルド職員の女性であった

 

 

貸与した檻はブルータルアリゲーターの攻撃には耐えうる耐久性を有しているが、ギルド側としては多少の損傷は仕方ないとしていた

 

ところが、檻の鉄格子の一部が明らかに人の手によって損傷していた

 

というよりも鉄格子が斬られていた

 

 

流石にこれをクエストによる損傷とはギルド側も認め難い

 

とはいえ、カズマ達のパーティーは多少派手な事をしでかす事があるとはいえど、問題児二人を抱えているにも関わらずクエストの成功率は高かった

 

ギルドの上層部はアークプリーストであるアクアの功績と見ているが、実情を知る現場の職員はパーティーリーダーにして冒険者のカズマのお陰と認識していた

 

そのため

 

「えっと、サトウカズマさん。どうしてこの様な事になったのかだけ説明してもらえませんか?

貴方方のパーティーでこんな事が起きるとすれば、理由があると思いますが」

 

カズマとアクアはギルドに冒険者登録する前に一月程、建築現場にて働いていた

 

この時の棟梁は二人をことのほか気に入っており、冒険者を始めた後も冒険者ギルドへ二人を指名して依頼する事も多々あった

 

その依頼の頻度こそ余り多くはなかったが、ギルド側としても初心者冒険者ながらに指名の依頼をこなす二人への評価はそれなりに高くなった

 

更に『爆裂娘』と『性癖を拗らせたクルセイダー』というギルドにとって頭の痛かった冒険者をパーティーに入れてもクエストの失敗が殆んどない事で現場からの信頼があった為にギルド職員も配慮した形だ

 

 

「え、はい

変な奴に絡まれまして、それで」

 

「確かアクアさんを檻の中に入れて湖の浄化をされたんですよね?

アクアさんのお知り合いですか?」

 

「えーっと、知り合いというか、何というか」

 

流石にアクアが女神である事を公言は出来ないし、転生させる時にアクアが担当した。というのも荒唐無稽に過ぎる話である

 

カズマとしては頭を抱えた

 

 

 

 

「見つけたぞ、サトウカズマ!」

 

そんなギルドの中にミツルギ達のパーティーが入って来た

 

「見つけたわよ、この卑怯者!」

 

「そうよ、もう一回勝負しなさいよ!」

 

 

どうやらミツルギとカズマの勝負の結果に不満がまだある様であった

 

 

 

 

「えっと、あの人達は?」

 

ギルド職員の女性がカズマに尋ねる

 

「まだ言いますか、全く済んだ事を何時までも」

 

「うむ、めぐみんのいう通りだな

過程はどうあれ、勝負はついている筈だ。しつこいな」

 

「幾ら何でもしつこ過ぎると思うんだけど」

 

めぐみん達は辟易している様である

 

 

 

「ミツルギとかいう冒険者ですよ」

 

「ミツルギですか?

もしかして、王都で最近有名なミツルギさんですか?」

 

カズマの答えに職員は驚く

 

 

 

 

が忘れてはいけないが、ここは冒険者の集まるギルドである

 

カズマ達だけではないのだ

 

 

 

「おい、兄ちゃん達

カズマの奴が何かやったのか?」

 

「いや、その」

 

冒険者の質問にミツルギは言いよどむ

 

 

 

 

当たり前であろう

 

『上級職』のミツルギが『魔剣』を使って『冒険者』のカズマに勝負を挑んだ

 

これだけでも普通に恥である

はっきり言えば弱いもの虐めである

 

ミツルギはアクアの事で興奮していた為にあの様な暴挙に出たが、多少冷静になれば明らかに非はミツルギにあるのは明白だ

 

で、油断して負けた挙げ句に勝負の結果に不満があるなどと恥知らずも良いところであった

 

ミツルギとしてはカズマと話し合いをしようと追いかけて来たのだが

 

 

「こいつがミツルギの武器を奪ったのよ!」

 

「で、無抵抗のミツルギを気絶させたの!」

 

と言わんでと良い事を声高々に主張するミツルギのパーティーメンバーの二人

 

 

 

「「「はぁ?」」」

 

ギルド中の冒険者の呆れた声が響いた

 

 

 

 

 

「つまりなんだ、そこのソードマスターの兄ちゃんが冒険者のカズマに勝負を挑んで来たと」

 

「そうだよ」

 

冒険者の一人の確認に心底面倒そうにカズマが答える

 

「んで、いつでも良いと言ったから、スティールで武器を奪ったと」

 

「その通りです」

 

 

 

 

「アホか」

 

一言である

 

「そもそもだ、どんな事情があるかは知らんがクエスト中の相手の都合も考えず、話も聞かずに勝負を挑んで負けたら文句とか論外だろうが」

 

なお、それによりクエストが失敗したならば、ミツルギ達はクエストを妨害したと見なされてギルドから処罰を受ける

 

たとえ王都で多少有名だとしても、だ

むしろ有名だからこそ、普通の冒険者よりも処罰は重くなる可能性すらある

 

 

アクセルの街のギルドは初心者冒険者や駆け出し冒険者が多い。それに対して王都のギルドは魔王軍との最前線に近いため高レベルの冒険者が多い

 

 

だが勘違いしてはならないのが、だからとて王都のギルドがアクセルのギルドよりも立場が上。という事にはならない事

 

 

確かにクエストの難度は王都が上であるが、その王都で活動する冒険者の殆んどがアクセルの街で冒険者としての経験を積む

 

まあ、一部ミツルギの様な例外といるにはいるが

 

 

王都のギルドとしてはアクセルで経験を積んだ冒険者を供給して貰っている立場とも言える

 

 

 

既にアクセルの街に居残る中級冒険者も発生している現状で王都ギルド所属の冒険者がアクセルのギルドの冒険者に対して問題を起こすというのは王都ギルド側には看過出来ない話であった

 

 

「そう、ですね」

 

「それにソードマスターのあんたが冒険者のカズマに挑むとかやってはならない事だろう」

 

 

これは上級職についた時に説明される事項である

 

その様な事が横行すれば、冒険者になろうと志願する人間が減る恐れがあるからだ

 

 

 

ミツルギ等の転生組は基本的な事項について聞き漏らす事が多かったりもする

 

なまじ大きな力を始めから有しているから、ある程度の無茶が効くと勘違いしているのだ

 

 

実際、王都のギルドで転生組の冒険者は『使い難い』との評価を受けていたりするのだが、当の本人達は知らなかったりする

 

 

「でもスティールなんて」

 

それでも納得のいかないフィオは文句を言う

 

「んじゃ、盗賊の嬢ちゃんは相手が遥かに格上で、マトモに戦ったらほぼ間違いなく死ぬ状況で手段を選んでられるのか?」

 

「うぐ」

 

盗賊のスキルであるスティールは使い方次第ではその効果を高める事が出来る

 

元々戦闘向きでない盗賊にとっては死活問題であるのだが

 

「それでも」

 

尚も言い募る戦士のクレメア

 

「そこまで言うなら、戦士の嬢ちゃん単独で一撃熊でも討伐してきな

正々堂々に拘るなら、それ位は出来るんだろ?」

 

処置なし。そう仲裁している冒険者はミツルギのパーティーに対して評価した

 

「な、それは危険だ」

 

「いや、あんたはそれ以上危険な事をカズマにしようとしたんだがな」

 

 

 

 

流石に周囲の冒険者達からの非難の視線を受けてフィオ、クレメアも黙るしかなかった

 

全く納得はしていないが

 

 

 

 

 

 

「ところでミツルギさん、でしたか?

つまり貴方がこちらの檻を壊されたのですね?」

 

話が一段落ついたと判断したギルド職員はミツルギへと話を振る

 

「え?あ、そうですが」

 

「となると、先ずは弁償してもらいます

その後で王都のギルドへは厳重抗議をさせて貰います」

 

「そ、それは」

 

 

弁償は当然だが、厳重抗議は本来ならばしなくても良かった

 

が、冒険者達に今回の一件が知られた以上、何もしないというのはアクセルのギルドへの信用を落とす事になる

 

つまり、余計な事をミツルギ達がした事でミツルギ達への罰則が増える事になったわけだ

 

全く笑えない話だった

 

 

 

 

 

カズマはミツルギと話をする事自体が無駄であると判断し、仲間達と共にギルドを後にした

 

 

今回の一件により、カズマ達のパーティーからミツルギ達は毛嫌いされる様になるが仕方ない事である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナタルは悩んでいた

 

 

とりあえず『スキルの書』で力は手に入ったが、やらかした感が強かった

 

 

だが、このレタスは「ま、いっか」とあっさり思考放棄した

 

 

力は手に入れたが、使わなければ良いのである

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんとあるえは故郷である紅魔族の里に帰省していた

 

帰省等と言っているがあるえはそれなりに帰っているので表現的にどうかとは思うが

 

 

とりあえず二人はめぐみんの実家に向かう事にした

 

 

 

 

「あ、妄想のお姉ちゃんとボッチのお姉ちゃんだ。いらっしゃい!」

 

「も、妄想のお姉ちゃん?

いや待ってくれないか。こめっこ、君は誰からそんな話を聞いたのかな?」

 

「ボ、ボッチじゃないから!

もうボッチじゃないの!」

 

こめっこからの先制攻撃により二人は精神的に大ダメージを受けた

 

「えっとね、ニートのお兄ちゃん!」

 

「ニート?

よし分かった、ちょっとぶっころりーを絞めてこようかな」

 

「ぶっころりー?って誰だったかな?」

 

全く隠す気もないこめっこのカミングアウトであるえはぶっころりーへの敵意を顕にした

 

一方でゆんゆんはぶっころりー自体の存在を認識していない様である

 

「いや、待てよ。ならばそけっとに無いこと無いこと吹き込んでおくほうが良いかも知れない

よし、そうしよう」

 

武力行使でなく、メンタルを殺しに行くあるえ。最近元ボッチ娘とレタスによってストレスマッハな彼女は都合の良いサンドバッグを見つけた様である

 

補足するとそけっとは里一番の占い師であり、ぶっころりーの想い人である

 

つまりは、そういう事

 

 

ドンマイ、ぶっころりー♪

 

 

 

「あ、こめっこちゃん。これお土産なんだけど、ひょいざぶろーさんいるかな?」

 

「おとーさん?

おとーさんは最近皆で話をしているよ」

 

仕切り直してお土産をこめっこに渡しながら本来の目的の人物の所在を尋ねる

 

あるえは未だダークサイドからの帰還がかなわない為にゆんゆんはあえて放置している

 

決して怖いからではない。そう、怖い訳ではないのだ

 

 

 

 

 

 

話題のひょいざぶろーは里長の家で家主のひろぽん、ちぇけら、ぷっちんと話し合いをしていた

 

「家の娘がどこぞの馬の骨どころかモンスター等と」

 

「まあまあ、ひろぽんさん

ゆんゆんさんも優秀な子ですから大丈夫ですよ・・・多分」

 

「そこは言い切らんか」

 

「というか、やっと纏まったか」

 

疲労困憊のひょいざぶろーである

 

というのもぷっちん、ちぇけら、ねりまきにより面白そうな話としてひょいざぶろーの魔道具の開発案が持ち込まれた

 

しかも大量に、である

 

 

 

無駄にどこかの宗教の教徒と同じく行動力がある紅魔族だ。必要な素材までセットで用意する始末である

 

一部の女性陣は「ゆんゆんに男の影、だと?」と戦慄していたり「ならば全力で応援しないと!」と普段は里から出ない連中まで素材確保に赴く事態となった

 

 

 

間の悪いことに魔王軍の定期便が襲来して

 

「ヒャッハー!新鮮な素材だ!」

とか

 

「紅魔族の未来の礎となれる事を誇るがいい!」

 

等と何時もよりも五割増しの戦力で瞬殺したのは此処だけの話だ

 

 

 

余談ではあるが、折角揃えた軍勢を数分で溶かされた某幹部は

 

「何よこれ、何なのよ!」

 

と絶望しながら逃走したらしい

 

 

 

一部の紅魔族は

 

「ちっ!貴重な素材を逃がしてしまった!」

と言って、魔王城付近まで追撃するも、結界により泣く泣く撤退したそうな

 

 

 

因みにその追撃班にひょいざぶろーの妻らしき人物が居たと言う話はひょいざぶろーは聞かなかった事にしている

 

 

 

「とはいえ、あの『グロウキメラ』を逃がしたのは痛かったですね」

 

「だな。あのヘタレ魔王軍幹部め、もっと性根を入れて掛かって来れば」

 

魔王軍の幹部すらも素材扱いするぷっちんに幹部シルビアの不甲斐なさを嘆くちぇけらである

 

 

 

 

魔王軍幹部シルビアの名誉の為に言っておくが、仕方がなかったのだ

 

誰が眼を紅く光らせた紅魔族の集団に挑もうというのか?

 

しかも普段ならば攻撃のみなのに、明らかに妨害系の魔法が凄い速度で飛んでくるのだ

 

シルビアでなくとも尻尾を巻いて逃げるというものである

 

 

 

尚、その後に城で某愉快犯に死ぬほどおちょくられたそうな

 

 

 

 

「で?どうなんだ、成果は?」

 

ひろぽんは不愉快そうに尋ねる

 

可愛い我が子がモンスターの毒牙にかかるかも知れないのだから無理もない

 

「とりあえずの出来だな」

 

「やはりシルビアを」

 

「次に来たら逃さん」

 

とりあえずの出来である事に不満なひょいざぶろー

 

シルビアを確実に捕らえようとするぷっちんとちぇけらであった

 

 

 

 

 

その試作品を受け取ったゆんゆんとあるえは直ぐにナタルに会いに行こうとしたが、そけっととねりまきに捕まり根掘り葉掘り聞かれる事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リフェは自身が変質していくのを楽しみにしていた

 

 

 

未だ天使の力も堕天使としての力も行使できないが、自身の力が強くなっていくのだけは分かっているからだ

 

最早なにをコロシタか?等は些細な事である

 

「もうすぐ、もうスグ」

 

リフェは一人呟いた

 

 

 

 

 

 

アクセルの領主アルダープは『辻褄合わせの悪魔』であるマクスウェルを召喚する事に成功していた

 

これにより目障りな者達を一掃できると考えている

 

 

鬱陶しい王国の反体制派の貴族やダスティネス家の人間等を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、古代の国『ノイズ』の負の遺産である『機動要塞デストロイヤー』がアクセルの街へと迫っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

事態は大きく動いていた

 

 

ある者は終幕へ

 

ある者は未来へ

 

 

皆が夢を見る

 

 

 

 

 

明日という夢を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ええい!最近増えていくお気に入りがプレッシャーになっている

やめて!くらうすはプレパラートの心臓なのよ!


その内改稿しますが、とりあえずは完結を優先したく思いますので、御容赦ください

では、御一読ありがとうございました


感想くれてもいいんですよ?(小声)


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機動要塞デストロイヤーと砕かれた平穏

今回はシリアスと残酷な描写を含みます

ご了承のうえで閲覧下さい

なお、原作と致命的に時系列が異なります事をお詫び申し上げます


アクセルの領主アルダープはデストロイヤー接近の報をギルドより受けた

 

「デストロイヤー、だと

ふ、ふ、ふざけるな!何故この様な場所にデストロイヤーが来るのだ!

ええい、マクスウェル!貴様の力でどうにかならんのか!」

 

「ヒューッ、ヒューッ、無理だよアルダープ

幾ら何でも対象が広すぎる上にデストロイヤー自体をどうにかしないと」

 

流石にデストロイヤーは災害クラスであり、関わる者達は膨大な数に上る。もし、仮にマクスウェルの能力が通じたとしてもデストロイヤーがアクセルに向かっている以上は無意味である

 

「やむを得ない。儂の魔道具でモンスターを召喚して時間を稼ぐ他あるまいて」

 

「ヒューッ、ヒューッ、それをしたらアルダープ、君もただでは済まないだろうけど」

 

「ふん!儂はこのアクセルの領主だ!

儂の物に手を出すならば、それは儂の敵だ!」

 

アルダープとて意地がある

 

 

 

唯の行商人からこのアクセルの領主に成り上がった時に捨て去った筈の意地が

 

 

 

 

 

 

一方、公爵の元では異変が起きていた

 

 

リフェの様子がおかしいのだ

 

リフェの体からは黒い靄の様なモノが染み出ており、幾ら声をかけようと反応がない

 

「ええい!どうにかせんか!」

 

公爵は声を荒げた

 

 

 

すると、

 

「ナルホド、デハドウニカシテヤロウ」

 

 

 

 

 

 

「がっ!」「ぐっ!」「ぎゃっ!」

 

次の瞬間には公爵を含めたその場にいた全員が地に伏していた

 

 

皆腹部や頭部に大きな貫通痕があり、例外なく事切れていた

 

 

 

 

 

 

リフェだったものは『食事』を終わらせると公爵の館より外に出た

 

 

外にも『食糧』がいた。しかも館の中よりも上等な

 

 

 

 

彼女の視線の先にはレフェルが養殖しようとしていた『キャベツ』が数匹いたのだ

 

 

 

 

リフェだったものはまた『食事』を終わらせると公爵の館を魔力で消し飛ばした

 

まるで忌まわしいものであるかの様に念入りに

 

 

 

その後彼女は何処かへと飛んでいった

 

 

 

 

 

 

その先にはアクセルの街があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセルの街のギルドには冒険者達が集められていた

 

 

今回はタイミング良くゆんゆんとあるえも居た為に参加する事となった

 

尤もゆんゆんとしては早く魔道具をナタルの元に持って行きたかったのが本音ではあるが

 

 

しかし、デストロイヤーの破壊は今までどの組織でも成し得ない程の難事であり、話し合いの体裁をとってこそいたが、殆んど絶望的な現状の確認となってしまっていた

 

「アクセルの街を通過させないように落とし穴や防壁を作っても無理なのかよ」

 

「はい、デストロイヤーは多脚式ですので落とし穴に落としても直ぐに這い上がります

更に機動力も備わっているので障害があっても迂回するだけです」

 

「攻撃して効果はないのか?」

 

「物理的攻撃では傷ひとつつけられないと聞いています

 

魔法による攻撃はデストロイヤー自身が障壁を有する為に効果ありません

先ずはこの障壁をどうにかしないと」

 

「正しく機動要塞かよ」

 

「感心してる場合かよ!

どうすりゃいいんだよ?」

 

 

 

 

 

こんな喧騒の只中にあるギルドとは移り変わって

 

 

 

「機動要塞デストロイヤーねぇ」

 

カズマはイメージが出来ない様だ

 

「兎に角硬くて早い移動要塞です

流石に相手が悪いのですが」

 

めぐみんの歯切れが悪い

 

「でも、逃げても仕方ないと思うけど?」

 

アクアの発言は正しい

たとえ堅牢で精兵揃いの王都であってもデストロイヤーが襲来すれば陥落するだろう

 

つまり、デストロイヤーが有る限り安全な土地などないのだ

 

「カズマ達が危険と判断するならば、今すぐこのアクセルから離れた方がいいだろう」

 

「離れた方がいいってダクネスはどうするんだよ?」

 

「私は最後までこの街を守る!

それだけだ」

 

「奇遇ですね、ダクネス

私も逃げる訳にはいかないのですよ

こんな私を師と仰いでくれるヒトがいますからね」

 

街に残ると言うダクネスに同調するめぐみん

 

彼女は死ぬ気は無いが今回ばかりは分が悪いと思っていた

 

「カズマそれにアクア。こんなポンコツウィザードを仲間にしてくれた事に感謝します

このパーティーで冒険出来た事は私にとって掛け替えのないものになりました、本当にありがとうございます」

 

「そうだな。こんな足手まといにしかならない私をパーティーに入れてくれた事に感謝している

さぁ、早く逃げないと時間がないぞ」

 

めぐみんとダクネスはカズマとアクアに感謝を伝える

 

まるで最期の挨拶であるかの様に

 

「ねぇ、カズマ?どうするの?」

 

「どう?って言っても」

 

「私の事は気にしなくても良いから

カズマのしたいようにすれば良いのよ」

 

アクアはあくまでもカズマの意思を尊重する様である

 

「・・・・・・・・・・・・・・・しょうがなねぇなぁ!

アクア!めぐみん!ダクネス!ギルドに行くぞ!」

 

「へ?し、しかしカズマ。言ったでしょう、相手が悪いと」

 

「そ、そうだぞ!カズマ、気持ちは嬉しいと思うが」

 

 

カズマがめぐみんとダクネスに同行する様な意思表示をした為にめぐみん、ダクネスは思い直す様に説得しようとするが

 

「ダクネスが言ったんだろ?時間は無いって

急ぐぞ!」

 

「ちょっ!カズマ、待ってください!」

 

「カズマ!」

 

カズマはギルドの方向に駆け出した

 

 

 

 

「ふふっ」

 

「なんですか?」

 

「何故笑うのだ、アクア?」

 

カズマが去ったあとアクアは嬉しそうに笑っていた

怪訝に思っためぐみんとダクネスはアクアに尋ねる

 

「だって、貴女達が私達とのパーティーを大切に思っているのと同じようにカズマも大事に思っていたのよ

恥ずかしいみたいだから言わないみたいだけどね」

 

「カズマが?」

 

「意外、ですね」

 

アクアのカミングアウトにダクネスとめぐみんは驚いていた

 

 

クエストを受ける前にはしっかりと状況、場所、更には近くでクエストをしたパーティーに確認すらしていて、いつも面倒くさそうにしていたカズマが実はあのパーティーでの冒険を楽しんでいたなんて二人には想像出来なかった

 

「やっぱり、カズマも男の子って事よね」

 

ナタルは言っていた

 

「やっぱりさ、男ってのは馬鹿なのさ。どうしようもなく見栄っ張りなのよ

俺もさ、こんななりでもそうだしね」

 

「さて、早くカズマに追い付かないと後で怒られるわよ?」

 

アクアは悪戯っぽくウインクした

 

「そうですね」「そうだな」

 

アクア達はカズマを追いかけて走り出した

 

 

 

 

 

素直ではない、『私達の』リーダーの元に

 

 

 

 

 

 

 

カズマが三人より早くギルドに着いていたが、喧騒の中であった

 

「カズマさん!こっちです」

 

「やっぱり君も来たのかい?お互い物好きなコトだね」

 

ゆんゆんに呼ばれて近くのテーブルに着くとあるえも皮肉混じりに話しかけてくる

 

「ま、物好きな連中だからこそ冒険者やってんだろ?」

 

「クスッ、そうですね」

 

「違いないね」

 

軽口を叩くカズマに二人は同意した

 

 

 

その少し後にアクア達も合流してゆんゆん達と情報交換をおこなうことにした

 

「情報大事。軽視ダメ絶対」

とはどこぞのレタスの助言である

 

 

「要約すると、足止めも難しく、攻撃は物理が絶望的で魔法なら障壁を抜けばワンチャンって事か?」

 

「そうだね。付け加えるなら、デストロイヤー相手に近距離戦を挑むのは自殺行為だろうってところだね」

 

「でもあるえ。魔法だって障壁をどうにかしないと意味がないんじゃ」

 

「障壁なら多分どうにか出来ると思うけど?」

 

「「「「え゛?」」」」

 

「マジか!本当に大丈夫なんだろうな、アクア?」

 

「恐らくだけどね」

 

 

 

 

 

アクアの『セイクリッドブレイクスペル』が通用すると仮定してカズマ達は作戦を立てる事にした

 

「兎に角、アクアの魔法が通用するとして作戦を立てるしかなさそうだ」

 

「些かギャンブルが過ぎる気もしますが、アクアの事ですから上手くいくと思いましょう」

 

「じゃ、じゃあどうするの?」

 

「最優先としたいのは機動力を削ぐ事だろうね」

 

「確かに。そうすれば出来る作戦の範囲も広がるだろうしな」

 

「となると、火力重視だな」

 

「そうですね、私やあるえでは厳しいと思います」

 

「となると、めぐみんよね?」

 

 

 

この中と言わず、このアクセルにおいてめぐみんより瞬間火力のある者を探す方が困難といえる

 

「しかし、出来るならば四本の内半分は削るべきでしょう

前足なら前足のみを破壊できれば上手くすれば行動不能にも出来ますよ」

 

「つまり、もう一人要るって事か

爆裂魔法の使い手が」

 

めぐみんの発言を受けて皆が考える

 

 

その場にいたカズマ達は不思議とアクシズ教徒で爆裂魔法に魅せられた某レタスの高笑いが聞こえた気がした

 

 

 

「いや、無理だろ」

 

「無理よね」

 

「無理ですね」

 

「無理だろうな」

 

「無理、かな?」

 

「無理だね」

 

皆の意見が一致した

 

 

 

なお余談となるが、レタスのナタルとキャベツのキベムがエクシーズする様な謎のイメージをカズマは受信したが、気のせいと振り切った

 

(いや、キャベツとレタスでエクシーズとか何だよ

野菜戦士にでもなるってか?

いやいや、落ち着けよ)

 

 

・・・・・・失礼。振り切れていなかった様である

 

 

 

 

 

そんな訳で頭を文字通り抱えていたカズマに

 

「あの。すいません。カズマさん?

もしもーし?」

 

と声がかかった

 

「ん?あ、あれ?魔道具店の」

 

「はい、ウィズです

何かお手伝い出来るかと思って来たのですが?」

 

 

 

カズマに声を掛けて来たのは魔道具店の店主でリッチーのウィズである

 

彼女とはカズマがゾンビメイカーの討伐クエストを受けるかどうかの下調べをしていた時に出会って以来、冒険者としてのアドバイスを度々受けている

 

アンデッドの中でも高位のリッチーであるが、危害を加える様子も見られない為に一応は女神アクアの預かるところとなっている

 

「そういえば、ウィズさんも冒険者でしたね」

 

「あはは、最近は店主としての活動しかしてませんでしたからね

でも、一応はアークウィザードですから、お役に立てるとは思いますよ」

 

「ふむ、話の途中で済まないがアークウィザードならばもしかして爆裂魔法を習得してはいないだろうか?」

 

「いや、幾らなんでもネタ魔法を習得するのか?」

 

「おい、爆裂魔法がネタ魔法とはどういう事か、是非とも説明して貰いたいのですが?カズマ?」

 

ウィズとカズマの話に敢えてあるえは割って入り、爆裂魔法のスキルの有無を確認した

 

その際にめぐみんとカズマが少しばかり言い合いをしていたが、省みる余裕などなかった

 

「あ、あのカズマさんとめぐみんさんを放っておいていいんですか?」

 

「残念だが、今は二人のじゃれつきに構っている暇はないんでね。それで、どうなのかな?」

 

「ええ、一応爆裂魔法も使えますけど」

 

「となると決まりかな

さて、めぐみん。いい加減に落ち着こう

幾ら親しい異性がいるとはいえ、節度は守るべきだろうさ

もっとも、ゆんゆんの様に奥手、なのかな?でも困るのだけどね」

 

「ええっ、わ、私?」

 

 

「とりあえずは助かったよあるえさん

で、だ。アクアの魔法でデストロイヤーの障壁を破る。その後でめぐみんとウィズさんの爆裂魔法でデストロイヤーの前足を破壊する。ここまではいいよな?」

 

話が横道に逸れていたのをあるえとカズマが修正するとカズマが確認の為に作戦の概要を話す

 

 

「恐らくデストロイヤーの大きさならば要塞内に警備の為の仕掛けもあるだろう。それは私とゆんゆんで片付けるとしようか」

 

「じゃ、頼む」

 

「任されよう。ではカズマ君は全体の指揮にあたって欲しい

全体を見渡して指示を出す事が出来るのは恐らくこのメンバーでは君だけだろうからね」

 

あるえは何回かカズマ達とクエストに同行している為にカズマは指揮に専念させるのが効果的であると判断していた

 

「わかった。だけど突入は前足を破壊してもどうにもならない時だけにしようと思う」

 

カズマは不思議な事を言い出した

 

「しかし、カズマ。内部も破壊しなければ安心できないのではないでしょうか?」

 

「めぐみんの言う通りじゃないの、カズマ?」

 

めぐみんの疑問にアクアも同調する

 

「いや、あんな馬鹿でかい物を作るなら、自爆装置とかを入れている可能性もあるんじゃないか?」

 

「ふむ、確かに

うちの里の連中でもやたらと自爆させたがる職人もいるからね、あり得なくはないだろう」

 

「え、でもあるえ。それって私達だからじゃないの?」

 

「あ、でも爆裂ポーションなんてものを造られる方もいますし、有り得ない話では無いと思いますよ」

 

カズマの推測にあるえは苦い顔をして同意する。ゆんゆんは自分たち紅魔族特有のセンスと思っていたが、ウィズの賛成により沈黙した

 

 

「一応念のためだから、念頭においてくれよ」

 

 

 

 

その後カズマはギルド内でこの作戦を提案、対案もないので冒険者一同でこの作戦を行う事になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、レタスの畑には驚異が迫っていた

 

 

アクセルに向かっていた元リフェの堕天使はアクセルから針路を変えてレタスの畑へと向かっていた

 

キャベツやタケノコ、サンマ等は人間に比べても魔力で構成される割合が高く、堕天使と化したリフェにとっては最上級の代物であった

 

まして、このレタスの畑にはキャベツ、タケノコ、サンマにブルータルアリゲーターまで生息しており、格好の餌場であった

 

堕天使としては襲わない理由はなかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸か不幸かその場にはナタルとキベムは居合わせていなかった

 

 

 

 

 

だからこそ、この惨劇を止める事が出来なかったとも言えるが

 

 

 

 

 

 

ナタルとキベムがレタスの畑に戻った時には全てが終わった後であった

 

あれだけいたキャベツは一つとして原形を留めておらず、タケノコやサンマがはえていた大地は抉れ、ブルータルアリゲーター達もまたその残骸を周囲に残すのみであった

 

 

 

 

 

「な、なんだよ、これ?」

 

ナタルは目の前の光景が信じられなかった

 

僅か一時間程前まではキャベツやタケノコ、サンマが沢山いて、池のなかからブルータルアリゲーター達が隙を伺っていた

 

 

その日常は何者かによって無惨にも砕かれた

 

 

もう、あの日常は戻らないのだ

 

 

 

 

そこにボロボロになってなおも飛んでいるジャイアントホーネットが現れた

 

「ブ、ブ」

 

最早羽の殆んどを失い、それでも気力で飛んでいるのが傍目にも分かる

 

「ブ」

 

彼はそれだけを言い残して地面に落ちた

 

既に息はなかった

 

 

彼はこの惨劇を引き起こした張本人の行方を追ったのだ

 

残念ながら、圧倒的な速度差により最後まで追跡は出来なかったが、それでも彼は下手人の向かうであろう方向を報せたのだ

 

 

「アクセルの街?

っ!ゆんゆん!」

 

「キャベ!(父上!)」

 

アクセルの方向に向かったと彼の遺言を聞いたナタルは全速力でアクセルの方向へと向かう

 

その少し後をキベムも追いかける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセルの冒険者達は歓喜に沸いていた

 

 

アクアの『セイクリッドブレイクスペル』により、デストロイヤーの障壁を破る事に成功。続けてめぐみんとウィズによるダブル爆裂魔法によりデストロイヤーの前方脚部を完全に破壊した

 

これにより、デストロイヤーは沈黙したのである

 

 

 

 

アクセルの街は救われたのだ

 

 

 

 

カズマ達も安堵していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミィツケタ」

 

 

 

 

この者が現れるまで

 

 

 





前ルートと違い、死人も出るナタル編


ほのぼの路線にするつもりがどうしてこうなったのやら



では、御一読ありがとうございました


その内新たにアンケートを実施致しますのでよろしければご協力ください


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あの空の向こうへ還る

本日三話目の投稿


どういう事なの?


という訳で盛大なネタバレとなります


ツッコミ処満載ですが、よろしければ読んでやって下さい

あと、昨日から読者数が増えていて、マジで怖いとです


カズマを始めとしたアクセルの街の冒険者やゆんゆんとあるえには何が何だか分からなかった

 

唯一人を除いて

 

「あ、あ、あ」

 

「おい、アクア!どうしたんだよ!」

 

顔面蒼白でまともに言葉も紡げないアクアの様子を見てただならぬ事だと直感的に感じたカズマはアクアの意識を戻そうと声を掛け続ける

 

 

 

 

一方

 

「見つけたと言ったが、何を見つけたと言うんだ?」

 

ダクネスの疑問は皆の共通するところであった

 

 

 

いきなりデストロイヤーを倒した所に出てきて一言「見つけた」では意味が分からない

 

 

 

 

 

が、そんな雑音などどうでもよいのか、リフェの成れの果てである堕天使はデストロイヤーの残骸に手を向けた

 

 

 

「「「「「「「なっ!」」」」」」」

 

 

次の瞬間にはデストロイヤーの影も形も無くなっていた

 

ただ、デストロイヤーの残骸があったところから細かい粒子が堕天使に向かって流れ込んでいるだけである

 

 

 

 

 

傍目には何が何だか分からないが、此処にも一人だけ理解の及ぶ者がいた

 

もっとも

 

「・・・・・・・・・そんな」

 

ウィズは我が目を疑うと共にこれが現実で無いことを無駄と知りながらも祈った

 

 

生前は凄腕のアークウィザードで死後?も高位のリッチーとなったウィズだからこそ理解出来る

 

いや、理解出来てしまった

 

 

「あれはデストロイヤーを魔力に還元して、それを吸収しているんです」

 

ウィズは震える声で絶望を口にした

 

 

 

 

この世界のあらゆる物質の根源は魔力である

 

 

それを人間なら人間の型に流し込んで、外皮をつけたのが人間である

 

動物もそうであるし、天使や神、悪魔とてそうである

 

 

無機物とて魔力を核にして装甲で無理矢理形を維持しているに過ぎない

 

 

 

裏返せば、その外皮や外格、装甲をどうにか出来るならばその物質はただの魔力の塊に過ぎないのだ

 

 

 

 

 

勿論の事だが、言うほどに易しいものではない

 

本来の天使としてのリフェの実力ならば数千年経ったとして得られるものではない

 

 

が、リフェは自身の妬み、嫉妬、憤怒、等のリフェ自身の負の感情と怨み、無念、絶望といったリフェによって始末された犠牲者達の負の情念が上手く組み合い、本来ならば決して至る事の無いと高次の堕天使へ再臨を果たしたのだ

 

 

未だに意思のある生物は魔力に戻せないとはいえ、恐ろしい事には変わらない

 

 

「皆さん!直ぐにアクセルの街へと戻って下さい!」

 

ウィズは悲鳴をあげた

 

あくまでも、魔力公使の上手い『生物』は分解出来ないのであり、文字通り駆け出し冒険者や初心者冒険者では相手にすらならない

 

それどころか相手にみすみす魔力を与える事にもなりかねないのだ

 

それに考えが及んだ故の判断だった

 

 

 

 

不幸な話だが、此処にくる直前まで堕天使はその様な器用な真似は出来なかった

 

が、レタスの畑で大量のキャベツ等を摂取した結果としてこうなった

 

 

 

このアクセルの冒険者の中で対抗出来るのはウィズを始めとしたアクア、めぐみん、ゆんゆん、あるえ。

クルセイダーとして魔法防御の高いダクネスと何故か魔法防御が極めて高いカズマである

 

これ以外の人間は寧ろ足手まといにしかならない

 

 

 

しかし、アクアは実質戦力外でカズマもそれに付き添っている以上、厳しいと言わざるをえない

 

 

 

 

 

「ムシケラメ」

 

上空にいる堕天使はそう呟くと可視化できる程の障壁を展開した

 

そう、これは強度こそ違えどデストロイヤーの障壁であった

 

この世界における魔力はある意味カズマやナタルのいた世界の遺伝子に相当するものである

 

つまりは、魔力を取り込めば取り込んだモノの能力を使える様になるのである

 

 

 

 

 

 

 

 

アクアはショックを受けていた

 

 

あれは姿形が少し変わっているがリフェである事が分かってしまったからである

 

そして、彼女はもう戻れないところにまで来ている事にも

 

堕天とは堕天使になる事だと誤解されているが、あくまでも、堕天使になる事は副産物に過ぎない

 

 

堕天とは天界、地上、地獄の何れにも属する事が出来なくなる行為なのだ

 

本来ならば人間や生物は輪廻転生して再び地上に戻る

 

例外的にアクアの管轄である地球へと転生する事もあるが

 

悪魔は端末が死ぬだけで『残機が減る』と称される様に然程の影響はない

 

天界ではそもそも死ぬ様な事は余程の事でなければ有り得ない

 

リフェの様に罪を犯したとしても死ねば天界に舞い戻る事が出来たのだ

 

 

だが、堕天とはこの世界の摂理から切り離される事を意味しており、尋常ならざる力を行使できる代わりに己の魔力を常に消耗し、補充が間に合わなければ消滅する

 

比喩的表現でなく、文字通り無くなるのである

 

 

 

 

それを知っているからこそ、アクアはショックを隠せないのだ

 

 

 

 

 

 

 

アクアと別の意味で衝撃を受けているのがゆんゆんとめぐみんである

 

上空にいる堕天使の口元には野菜の切れ端が見えるのだ

 

 

 

彼女達はそこまで変態的視力を持ち合わせていない

 

 

だから

 

「ナ、タルさん?」

 

「そ、そんな訳はないでしょう!ゆんゆん、変なことを言わないでください!」

 

ゆんゆんの呟きにめぐみんは自身も思ってしまった事を振り切るかの様に叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

「ジャマダ、シネ」

 

そんな事に意を介さない堕天使の無情な攻撃が二人を襲う

 

「ゆんゆん!めぐみん!逃げて!」

 

あるえは咄嗟に叫ぶも彼女の位置からでは遠い

 

 

 

せめてめぐみんだけは助けようとゆんゆんはめぐみんを自分の影に隠そうとした

 

「ゆんゆん!何をする気ですか!やめなさい!」

 

めぐみんの怒鳴り声など最早ゆんゆんには関係がなかった

 

(せめて、大切なライバルには生きていて欲しい)

 

それがゆんゆんの行動の理由であった

 

 

 

目の前にまで迫る魔力の奔流。食らえば間違いなくゆんゆんは死ぬだろう

 

(めぐみんだけは助けないと!)

 

震える手を何とか堪えてワンドを握りしめる

 

少しだけでも相殺しようと試みる。それがどれだけむぼうであろうと

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、ナタルさん」

 

ゆんゆんの口から思わず溢れた

 

 

 

 

 

「「ゆんゆん!!」」

 

 

 

 

 

ゆんゆんとめぐみんの居た辺りは爆発の煙に包まれた

 

 

 

 

 

ゆんゆんは怖くて目を瞑っていたが、何時までも痛みも衝撃も来ない

 

 

恐る恐る目を開くと

 

 

 

 

 

「いや、酷くないかゆんゆん。何ヒトを置いて逝こうとするのさ」

 

そこには小さくて大きな背中があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナタルは少し前まで必死に下手人を追いかけていた

 

だが、相手は空を飛んでいる上にナタルは表面積こそ小さいが出力もそれに比例して小さい

 

 

「キャベ!(お待ちください!父上!)」

 

とキベムが制止の声を掛けた

 

 

 

 

キベム曰くこのままでは追い付く事もできないし、仮に追い付いたとしてもナタルでは返り討ちにあうと

 

 

そこでキベムは提案した

 

「自分を吸収しろ」と

 

 

ナタルは烈火の如く怒るがキベムは言う

 

「自分は父上の為に天界の者が造り上げたモノだ」とも

 

 

 

 

 

 

 

 

天界においてリフェの失態が明らかになった際に追跡調査が行われた

 

リフェの担当した転生者のなかでその時点での生存者は僅かに三名

 

内二名は倫理的、道義的に許容出来ない行為に手を染めていた為に特典の強化等は行われなかった

 

 

 

残るナタルはレタスであり、転生特典の野菜を操る能力も汎用性と実用性に疑問があった

 

そこでレタスであって他種族との交流の補佐としてキベムという人格が創られたのだ

 

 

 

とはいえ、吸収したからといって戦力が大幅に増大する事もない

 

ただ保有する魔力量が増えるだけである

 

 

 

 

とはいえ、許容量を越える魔力は全身に行き渡り、ナタルの基礎能力の向上に寄与する事にはなるのだが

 

 

「キャベ、キャキャベ(父上、どうかご武運を)」

 

それが魔力に戻る前、最期のキベムの言葉であった

 

 

 

 

 

そのキベムの魔力を吸収して何とか間に合ったのだ

 

 

 

 

「ナタル、さん」

 

ゆんゆんはもう泣いていた

 

「すみません」

 

めぐみんも地に伏せてボロボロになっていた

 

 

 

無事とは言えない

 

だが、生きている

 

 

ナタルは心の底から安堵した

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、リフェ

私がきちんと貴女を見ていなかったばかりに」

 

アクアは涙を流しながらも杖をリフェであったものに向けた

 

 

 

 

 

 

「ッ!」

 

危険を感じ取ったのか堕天使はアクセルの街へ向かって逃走した

 

 

「細かい話は後だ!皆、追うぞ!」

 

カズマの号令の元、急いでアクセルに戻る事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

堕天使は恐怖した

 

あの蒼い髪の女が杖をこちらに向けた時、堕天使は己の死を幻視した

 

「コノママデハカテナイ

モットチカラヲ、ツヨクナラネバ」

 

だから彼女はアクセルに行き、魔力を補給するつもりであった

 

 

そうすれば、あの女神アクア

 

 

ノイズが走る

 

(メガミアクア?ナンダソレハ、シラナイ、シラナイ、シラナイ)

 

「アタマガイタイ」

 

 

 

 

 

ところがアクセルの街の近くで予想外の攻撃を受けた

 

 

多種多様のモンスターが襲い掛かってくるのだ

 

 

しかも、途切れる様子がみえない

 

 

余裕があれば魔力に変換出来るが、その様な暇を与えてはくれない

 

 

「マクスウェル!まだやれ!」

 

「ヒュー、ヒューアルダープこのままなら死ぬよ?」

 

「構うものか、儂とて一度で良いから何かの為に戦いたいのだ!儂が死んだら、地獄でも行ってやる!やれ、マクスウェル!」

 

最早立つことすら覚束ないアルダープはマクスウェルに支えられながらもモンスターを召喚していた

 

本来ならば生け贄が必要なところを強壮剤やポーションなどで無理矢理生命力を搾り出していたのだ

 

「此処は儂の土地よ!貴様が魔王でも通しはせん!」

 

まさに鬼気迫るアルダープであった

一番恐るべき死兵にアルダープはなっていたのだ

 

アルダープは気付かないがマクスウェルの半身はボロボロになっている

 

これはアルダープに直撃する攻撃のみ『辻褄合わせの能力』で自身に当てさせているからである

 

 

「ああ、最高だよアルダープ!」

 

「ふざ、けた、こ、とを言わず、さっさと、や、らんか」

 

 

 

だが、アルダープの捨て身の努力は報われる

 

 

 

 

 

 

「追い付いた!」

 

カズマ達が追い付いて来たからであった

 

 

更にアクセルの街ではクリスが女神エリスとして降臨し街のエリス教のプリースト全員。並びアクシズ教のプリーストセシリーの説得によるアクシズ教のプリースト全員による大規模な結界を構築することに成功した

 

此処に前代未聞と言われるエリス教とアクシズ教の共同作業が行われた

 

 

 

さしもの堕天使とてアクセルの全プリーストの力を結集し、それを女神エリスがサポートする結界を破ることは現段階では不可能であった

 

 

では、アクセル以外の場所に行けば良いかと言われるとアルダープは王都やアルカンレティア、紅魔族の里にまで緊急の報せを送っており、其処も厳重な護りと化していた

 

 

 

 

更に

 

「クッ!」

 

堕天使は一時的に避難しようと試みるも

 

 

「バニル式殺人光線!」

 

 

一部の魔王軍幹部が一定以上の離脱を許さない

 

 

 

 

人間、魔王軍、悪魔から包囲される形となったのだ

 

 

 

 

 

 

だが、彼等は決してカズマ達に直接助力はしようとしない

 

それを察した堕天使は

 

 

目の前の脅威を除くべく襲い掛かる

 

 

 

 

 

「ごめんなさい。でも今の私は『セイクリッドブレイクスペル』!」

 

アクアは堕天使の障壁を破った

 

「ダクネス!」

 

「任せておけ!」

 

不利を悟った堕天使はアクアに突撃するも、カズマが指示した通り、ダクネスに阻まれる

 

 

已む無く距離を取るが

 

「『カースドライトニング』!」

 

そこにあるえの雷撃が襲い掛かる

 

 

「グウッ!」

 

直撃を受け、少しだけ動きを止めるが

 

「『カースドクリスタルプリズン』!」

 

周囲ごとウィズの魔法で氷付けとなる

 

 

しかし、堕天使は持ち前の魔力で直ぐに溶かそうとするも

 

「我が友、我が仲間に送る鎮魂歌

穿て!エクスプロージョン!」

 

ナタルによる爆裂魔法が体勢を整える時間を与えない

 

 

それでも諦めない堕天使は何とか障壁をはる

 

少しでも時間を稼げば彼女の勝ちと理解していたから

 

 

「行きますよ、ゆんゆん!!」

「めぐみんこそ、遅れないでよ!!」

 

ナタルの持ってきたマナタイトで魔力をフルチャージしためぐみんとゆんゆんが息を合わせる!

 

「行くわよ!ライトオブセイバー!!」

「我が友、我が仲間と共に我が進む未来を切り拓け!

穿て!!エクスプロージョン!!!」

 

 

ライトオブセイバーにて障壁の一部を切り裂き、其処に膨大な熱量を伴う爆裂魔法を打ち込む

 

 

 

 

 

 

「ア、アア」

 

 

 

さしもの堕天使もこれには抗い切れず全ての力を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此処に機動要塞デストロイヤーをも飲み込んだ堕天使は文字通り地に墜ちる事になった

 

 

 

 

 




ある意味で出したいキャラクターを出し切った感があります


あと本編は二話くらい、かなぁ?


後で番外編と称して色々と不足している描写を補っていく卑怯なスタイル

結果として死者は増えたけど、あくまでも、冒険だから仕方ないよね、ね?

では御一読ありがとうございました

感想おくれ(涙)


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還る者達

ナタル編、最終話となります

これまでお付き合い頂いた皆様に深く感謝致します


最後は短くなりましたが、どうぞ


知られざる戦いは終わった。天界より追放されし哀しき天使リフェは最大の禁忌を犯し、堕天した

 

かの者はベルゼルグ王国屈指の公爵を始めとして様々な命を奪った

 

その最期にはアクセル領主アルダープすら手に掛けたとされる

 

 

しかし反逆の闇に染まりし天使は冒険者サトウカズマを中心としたパーティーにより討伐された

 

天上の天使すらも道を誤る事があるのだ

 

備えよう、心構えを。伝えよう、この物語を

 

私達は未来へと歩む。先に旅立った者達の思いを背負い

 

著者不明『始まりの詩』

 

 

 

 

 

 

堕天使との戦いはかろうじてカズマ達、冒険者の勝利となった

 

だが、犠牲も出た

 

アクセルの領主で悪徳領主と言われていたアルダープは悪魔マクスウェルを使役し、モンスターを召喚するという大悪を犯しながらも自身の領地たるアクセルの街を守り抜いた

 

彼の遺体は悪魔マクスウェルが地獄へと連れ去った

 

その際にアルダープの所有していた神器は全て女神エリスに没収されたが、マクスウェルにはどうでもいいことだった

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

「ナタルさん、ナタルさん!しっかりして下さい!」

 

ゆんゆんの悲鳴にも似た声が響く

 

「ん、ああ、やったんだな、カズマ」

 

力ない声でナタルは確認する

 

エクスプロージョンを放った後、ナタルの意識は直ぐに落ちた

 

覚悟はしていた

 

 

 

 

魔王軍の幹部、ベルディアは言っていた

 

「貴様、何を考えている!

爆裂魔法というのは、強大な魔力を持つ紅魔族の魔力すら一撃で空にするのだ!

貴様の様に魔力の塊が魔力を失う事でどうなるか等、予測できぬ訳でもあるまい!」

 

ナタルは知っていた

 

自身が爆裂魔法を撃つ時。それは自分が死ぬ時と

 

 

だが、後悔は、ない

 

 

護りたい女性を護れたのだから

 

 

 

「ああ、アイツは倒したよ」

 

「そっか、よかったよ」

 

「無茶な事を」

 

あるえは吐き捨てる

 

「元々さ、俺はレタスだから、長生きは出来なかっただろうし、ロマン砲の爆裂魔法を放てたのだから後悔はないさ」

 

「貴方はっ!」

 

めぐみんは怒っていた。折角ゆんゆんを任せてもいいとめぐみんとあるえは愚か、そけっと、ねりまき、ふにふら、どどんこにめぐみんの母親のゆいゆいすらも認めていた

 

 

里の男達の説得とて上手く行くと思っていたのにである

 

 

「もしかして、貴方言葉が」

 

アクアは察した様である

 

『スキルの書』のデメリットはこれで習得したスキルを使用した場合、他のスキルを失う。である

 

 

 

異世界言語は転生時に最初に与えられる『スキル』なのだ

 

つまりは、そういうことであった

 

 

 

まさしく『乾坤一擲』、『最後の切り札』なのだ

 

 

 

 

「※○ヾ ○○?※」

 

ナタルの光を失いつつある眼は眼を泣きはらしている好きな娘の姿があった

 

最早言葉は分からずとも、意味はなんとなく解るのだ

 

 

 

僅か一年にもなるかならないかの付き合いであったが、目の前の少女はナタルにとってかけがえのない大切なヒトになっていった

 

 

実のところは自身がレタスであることを呪ったことも少なくなかった

 

でも、今はそれでいいと素直に思える

 

この娘を幸せにすることは俺には出来ないのだから

 

 

悲しくはあるし、寂しくもある

 

 

でも、最後に泣き言を言うのは嫌だ

たとえレタスの体であっても精神は男なのだから

 

 

だから、精一杯見栄をはろう

 

「ありがとう、さようなら」

 

 

 

 

 

ナタルと呼ばれ、異世界にてレタスの体で生きてきた人物の時はその刻みを止めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、カズマ達はナタルの遺体を元レタスの畑に埋葬した

 

カズマは異世界での先輩を失った事を嘆き

 

アクアは自分の横着が結果として色々な悲劇を生んだ事にショックを受け

 

めぐみんは自身の初めての弟子で、自分のライバルの想い人が失われた事を悲しみ

 

ダクネスは自身の力の無さを痛感し

 

あるえはいざという時に役に立てなかった自分に苛立ち

 

ゆんゆんは好きだったヒトが亡くなったことに悲しむ毎日が続いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一月程して

 

 

 

改めてカズマ達だけでナタル達の供養をしようとクリスこと女神エリスにも声を掛けてレタスの畑へと向かっていた

 

 

 

 

あの一件の後、女神エリスとアクアは天界を訪れ、リフェの件についての連絡が無かった事を痛烈に批判した

 

その頃にはリフェが所属していた反体制派は残党も含めて『適切に処理』されていた

 

本来ならば静観を決め込んでいた天界上層部も責任の追及を免れないところだったが、彼等は反体制派に全ての責任を押し付ける事で、反体制派の根絶と女神エリスとアクアの非難をかわそうとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリス改め、女神エリスはナタル達の墓前で謝る事を決めていたが、彼等はナタルの墓の側に来て驚いていた

 

地面が掘り返されている中でナタル達の墓の周囲に若芽が出ていた

 

それも一つ以外はキャベツの若芽であり、ナタルの墓の正面にレタスの若芽が出ていた

 

 

まるでナタルの周りに群がっていたキャベツ達の様に

 

 

墓前でそれぞれがナタル達へと報告をして終わると、最後にゆんゆんがナタル達の墓前で

 

(ナタルさん、今でも貴方が居なくなったなんて実感がわきません

 

ごめんなさい、私はまだ貴方の事を)

 

ゆんゆんは自然と涙を流していた

 

 

 

 

 

この一月はゆんゆんにとっては厳しいものだった

 

 

 

二日に一度は会っていたナタルと二度と会えないのである

 

夜中に悪夢で飛び起きた事も数えるのが億劫になる位あった

 

気がついたらナタルと一緒に過ごした場所に行っていた

 

生きている事に絶望した事すらあった

 

それでもめぐみんやあるえ、カズマ達仲間が助けてくれた

 

ゆんゆんは胸に下げている魔力のないマナタイトを触った

 

これは最後の時にナタルが用意していたものであり、ゆんゆんとめぐみんにとってはナタルの形見の様なものであった

 

 

 

(ごめんなさい、ナタルさん。私まだ、心の整理がついてないみたいです)

 

 

 

 

 

 

カズマ達はナタル達の墓の周りを今度綺麗にしようと話をしてアクセルの街へ戻る事とした

 

 

 

ゆんゆんは

 

「ナタルさん、行ってきますね」

 

と小声で呟いた

 

 

 

 

 

 

 

(行ってらっしゃい、ゆんゆん)

 

 

ゆんゆんにはナタルの声が聞こえた気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後に『野菜の園』と呼ばれる様になるアクセルの街から少し離れた所にある場所がある

 

 

そこではキャベツやレタスの自然に育ちやすい環境を用意し、冒険者サトウカズマのパーティーやエリス教徒、果てはアクシズ教徒も管理に訪れる

 

あくまでも、環境のみ準備し、人工的な養殖等は行わない事としていた

 

 

 

そんな野菜の園の一角に一つのお墓があった

 

そこにはこちらの言葉でない文字が書かれているものの殆んどの人間には読めなかった。ただ、サトウカズマのパーティーやアクシズ教のプリーストであるセシリーなどが頻繁に訪れ、お墓に物を供えたり、掃除をしていた

 

 

 

 

 

 

其処には日本語でこう書かれていた

 

 

緑のアイツが眠る場所、と





という訳で『緑のアイツ』完結となります


後は蛇足で色々と小話を投稿するとは思いますが、その際には完結のタグは消すと思います


なお、アンケートでとっていた魔王軍編はある程度のストックを溜めてから投稿するつもりです


ここよりは小話となりますので興味がない方はスルーして下さい



元々は何故かこのすばの動画を見ていたら、夢でキャベツが出てきた事から始めたこの話です

様々な方に応援を頂いたり、名前の案を頂いたりもしました

更にこの様な拙い小説擬きにも関わらず、評価して頂いたり、お気に入りをして頂いたりと本当に感謝してもしきれない位です

もう少し色々と掘り下げれば良かったのかとも考えていましたが、今の私の表現力ではこれが精一杯でした

では、最後となりますが、今までこの作品を御一読頂きましてありがとうございました!

また、機会があれば御目にかかりたく思います



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目指す空は遠くにありて

リフェの補完の小話となります


元々追放時にリフェと呼ばれた駄目天使だったが、彼女にも夢はあった

 

いや、夢と言うには些細な事だ

 

 

自分を誰かに認めて欲しかった。それだけだった

 

リフェと後に名乗る事になる彼女はいつの間にか天界にいた

 

突然、訳の分からない環境に放りこまれて適応出来る程に彼女は器用ではなかった

 

また、周囲に頼ろうにも生来の気質からか言い方や態度が酷く、協力を獲る事は出来なかった

 

だが、彼女なりに努力した結果、平均より落ちるが何とか天界での立場を得る事には成功した

 

 

だが、周囲は彼女を『役立たず』と陰で貶していた

 

 

彼女よりも立場の低い者からも陰で噂される程であるからして、どのくらい嫌われてきたのかは想像つくだろう

 

 

だが、彼女は折れなかった

 

しかし、彼女の周囲には彼女の事を真剣に考えるものは居なくなっていた

いるのは彼女を利用しようとするものばかり

 

極稀に彼女を心配するものも現れたが、彼女を利用するには邪魔である為に、全て除かれた

 

 

結果、彼女は自分勝手に出来る環境を手に入れてしまった

 

こうなると元々独善的な彼女が周囲を見渡す事などありはしない

 

 

 

 

そんな中で女神アクアと彼女は出会った

 

 

 

 

女神アクアは清廉ではない。清貧でもない

 

では賢いのかといえば、そこまで傑出している事もない

 

どちらかと言えば、彼女は不真面目であるし、冗談も口にする

 

決して天界基準で考えるなら、好ましいものではなかっま

 

 

 

しかし、彼女は女神アクアに憧れた

 

美しい外見等ではなく、その在り方に

 

女神アクアは『自然体』なのである

彼女の様に周囲の影に怯えて反発したり、威嚇したりしない

 

『あるがまま』に全てを捉えていると彼女は感じたのだ

 

 

 

そして、女神アクアの様になりたい

 

そう思うようになった

 

 

 

それ以後、彼女は時間を見つけて女神アクアと関わる様になっていく

 

女神アクアと過ごす時間は彼女が『素顔の自分』を出せる唯一の時間となっていった

 

 

 

 

 

 

そして、女神アクアに自身のノルマ達成の為に仕事をかわってもらう事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リフェは王都への道を歩きながら考えていた

 

自分が天界を追放されたのは、何故か?と

 

 

確かに手抜きをしたことは認めよう

だが、それが何だというのか?

 

彼等は自分が転生特典を貰い、超越者となる事に躊躇いが無かったのだ

 

 

ならば、それ相応の代償やリスクは承知の上であるはずだ

 

それを人間は『奇跡』と呼ぶのだから

 

 

 

だが、事実としてリフェという名前と共に、彼女は地上へと追放された

 

そして、良い人間と悪い人間に会っている

 

 

 

 

リフェの中で人間に対する疑念や不満が本人すら分からない内に積もっていくことになる

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、紆余曲折を経て公爵の元でモンスターと戦う日々を過ごす内に女神アクアとの交流で育まれていた元々少なかった彼女の善性は擦りきれてしまった

 

残ったのは相手を効率的に殺す方法と、こんな境遇を用意した公爵達への憎悪だけであった

 

 

 

 

 

 

 

そして彼女は堕天使となった

 

 

既に彼女の意識は殆んど失われていたが、それでもアクアに対峙した時にだけ意識はあった

 

 

だからアクアに近寄ろうとしたが、それは叶わなかった

 

リフェには最早肉体を動かす事すら出来ない

 

 

 

 

だから

 

 

ウィズの凍結魔法を受けても反撃はさせない

 

レタスの爆裂魔法を受けても障壁を張るだけ

 

 

これだけがリフェという存在を掛けて出来た事であった

 

 

 

 

 

そして

 

「ア、ア、(アクア様、ごめんなさい。それとありがとう)」

 

声にならない想いを残してリフェは消滅した

 

 

 

かつて彼女はアクアの髪の色を『空の色』と称した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目指した空は遥か遠く、彼女の手は終ぞ空へと届く事はなかった




この話を何処に差し挟むか分からなかった馬鹿なくらうすです

次回は次回予告?です


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プリコネ編
遥か彼方にて


突発的な試験投稿

判断が難しいので、今週中は放置します


御意見をよろしくお願いします


堕天使を倒すために、自分の居た場所を守る為に

 

そして何より、大切な女の子を護るために自らの命を捨てたナタルであったが、彼は死んでいるにも関わらず、その数奇な運命からは解放されなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはベルゼルグ王国やエルロードなどから遥か彼方の場所にあるランドソルの街のそばにあるエルフの森

 

 

 

 

その森には『神樹』と呼ばれ、森の住人であるエルフ達が『聖樹』とも呼んでいる巨大な樹があった

 

この樹は何時からこの地にあったのかは定かではない

 

ただエルフの口伝や伝承にも登場する事より遥か昔より存在していたとされていた

 

 

 

この樹が『神樹』や『聖樹』と呼ばれ敬われてきたのには永い時を過ごしてきたというだけではなかった

 

この樹は結界を自身の周囲に展開しており、魔物やシャドウと呼ばれる謎の生物を寄せ付けなかったのだ

 

自然と悪しき魔物やシャドウがいない一種のセーフティゾーンとなり、力のない動物たちの避難場所となっていた。

エルフ達は畏敬を込めて『聖域』とそこを呼び、エルフの戦士たちが定期的に聖域の近くを巡回する事で聖域は平穏を保っていた

 

 

 

 

そんな神樹の根元に一つの薄汚れた緑色のナニかがいた

 

ところどころ焼き焦げており、形も球体であったのだろうが崩れている

 

 

傍目には今にも崩れ落ちそうな酷い有り様であった

 

 

 

 

 

 

それは一月ほど其処にあり続けた

 

たまに魔物やシャドウが寄ってきても、結界を越える事は出来ない

 

何故か動物たちはこの物体には近付こうとせずに、時折神樹から流れ落ちる水により少しずつではあるが、薄汚れた物体は元の色を取り戻しつつあった

 

 

 

 

 

 

そして緑色のナニかが神樹の元に現れてから一月半が過ぎた頃のこと

 

 

 

エルフの少女、アオイは悩んでいた

 

アオイは色々な人と仲良くしたい

お友だちになりたいと思っている

 

 

だが、何の悪戯か彼女が行動を起こそうとすれば別の事が起こる

 

折角準備や覚悟しても悲しいほどにから回るのである

 

 

今となってはアオイが作った「だいじょうぶマイフレンド君一号改」が彼女のコミュニケーション練習相手という惨事であった

 

 

エルフの大人たちはアオイから踏み出して欲しいために敢えてアオイの悩みを大人たちからどうこうしようとは思っていなかった

 

 

その様な大人たちの思惑など知ることのないアオイはエルフの大人たちに嫌われているのでは?という疑念に囚われるのも仕方のない事ではあった

 

 

 

そんなアオイの最近の楽しみは『聖域』にいる動物たちとのふれ合いであった

 

 

 

 

 

 

 

時を遡る事、少し前のことである

 

 

 

 

「うう、私はどうしてこうなのでしょうか?」

 

エルフの少女アオイは項垂れていた

 

ランドソルの街へ行って買い物をしていたのだが、その際にお店のおじさんが話し掛けてくれた

 

だが、突然の事であり、心の準備が出来ていなかったアオイはいつも通りにテンパってしまい、そのまま逃げる様に店を後にしたのだ

 

 

「折角のチャンスだったのに」

 

しかもアオイとしてもいい感じだと思っていた店だけにショックも大きい

 

「これであのお店にいけませんよね、うう」

 

 

 

 

なお

 

 

 

「お、お嬢ちゃん。ありがとな

何か気に入ったモノはあったかい?」

 

「ぴぇっ!」

 

「お、お嬢ちゃん?」

 

「すいません、すいません

ご、ご、ごめんなさーい」

 

とアオイが去ってしまったのだが

 

「いや、アンタ何してんだい?」

 

「声を掛けただけなんだが」

 

「そんな訳ないだろう

可哀想に怯えてたじゃないか、あの娘さん」

 

 

と謂れ無き非難を店主が受けていたりするのだが、まあ余談である

 

 

 

 

 

 

「どうして、私はこうなんでしょうか」

 

アオイはしゃがみこむと地面を見つめて呟いた

 

 

 

実際のところ、アオイは間違いなく良い娘である

 

少々?自己評価が低い所もあるが、周りをよく見ており困っている人間にも気が付く

 

テンパる率が高いとはいっても、見る人間が見れば微笑ましいレベルであると言えるだろう

 

 

 

 

だが、当人がそれを良くないと思っているが故に相手から必要以上に距離を取ってしまう

 

アオイの気質を知らない者からすると、踏み込み難いのであった

 

 

 

これに対抗するには、アオイの気質であるボッチに精通したもの

 

或いはそれを無視できるほどのコミュニケーション能力を持ち、且つ頭もそれなりに回るもの

 

もしくは、圧倒的なオカン気質とでも言えば良いのか、面倒見の良い人物であることであろう

 

 

 

 

この様な精神的障害は意外と乗り越えるのが難しい

 

が、それから逃げれば逃げる程に、その壁は大きくなっていくような錯覚に陥りやすいものである

 

 

既にアオイ自身からの解決は困難を極めると言える程度には、彼女の中での言うなれば『幻想の壁』は大きくなりすぎていたのだ

 

 

 

 

チュンチュン

 

「へ?」

 

突然耳元からする音に思わずアオイは変な声を出したが

 

「う、わぁ」

 

その音に反応して顔を上げたアオイは感嘆の声を上げる

 

 

 

 

 

 

其処には大樹と小動物や植物が沢山いたのである

 

 

そして

 

「へ?」

 

アオイの被っていた帽子を小鳥達が引っ張っていた

まるでおいでと云わんばかりに

 

 

 

 

それから暫く後、アオイは大樹の元で小動物達と触れ合う事が出来ていた

 

 

「え、え?

ゆ、夢じゃないですよね、これ」

 

アオイは泣きそうになっていた

 

 

 

 

確かにアオイは人付き合いは苦手ではあるだろう

 

だが、彼女は善良なエルフであり、その本質は優しい娘なのだ

 

 

動物達は本能的にアオイの優しさを理解したのだろう

 

リスや小鳥はアオイの肩や頭の上で寛いでいる

兎などの小動物はアオイの足元で眠っていたり、毛繕い等の思い思いに過ごしている

 

植物達はのんびり日光浴をしている様で、そこにはアオイへの警戒など伺い知れなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、アオイはエルフの里に戻る事にした

 

 

道中

 

「凄かったなぁ、あんなに動物さんたちが一杯」

 

と余韻に浸っていた

 

 

 

 

「アオイか、よく戻った」

 

「は、はひ」

 

「にしても、珍しい事もあるものだな

アオイが『聖域』の方から帰ってくるとは」

 

「え゛?」

 

エルフの里の門番との会話の後で、アオイは努めて冷静に思い返す

 

 

明らかに大きすぎる樹木、神聖とすらいえた空気、本来なら集まるはずのない小動物と植物たち

 

「わ、私『聖域』に入っちゃってた!!」

 

 

 

アオイの絶叫が家の中に響く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で短編のつもりだったプリコネと拙作のクロスオーバーとかいう無謀な試み

身の程を知れ!等の批評は甘んじて受ける次第でございます


これはあくまでもこのすばの二次作品ですからね


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天を跨ぐモノ

取り敢えずはのんびり行きます

クロスオーバーなので慎重にいきたいと思います


何時も通りの駄作ですが、どうぞ


ナタルは眠っていた

 

 

大切な紅魔族の少女。その友達の少し苦労人で損な役回りの多い少女。自分に新たな道を魅せてくれたナタルよりも年下の師匠

 

少しお調子者で、それでも人に優しく出来る自分と同郷の少年。自分がこの状況になった事を悔いている優しくも少し抜けている女神様

 

 

こんな自分を『父』と慕い、ナタルの我儘を叶える為に総てを差し出した優しくも強いキャベツ

 

少しノリの良すぎる素敵なシスター

 

 

 

色々、そう色々な出会いがあった

 

 

 

ナタルは爆裂魔法を放ち、彼女たちを守る為に消える時も決して後悔はなかった

 

 

 

後悔なんて、前世で腐る程していたのだから

 

 

 

 

 

 

ナタルは既に輪廻から外れた存在であり、今のキャベツとしての生を終えた後には何も残らない

 

何故ならば、彼の転生はイレギュラーな要素が多く天界でもフォロー仕切れない状態だったから

 

 

ナタルの消滅と時を同じくして、堕天使こと元天使リフェも消滅した。その意識こそ永遠に無いが、彼女を構成していたマナ、つまりは魔力素は天界に還元される

 

だが、これが問題となってしまう

 

堕天使リフェを構成していたマナは堕天に至るまでの行為により『負の属性』を多分に含んでおり、それは天界という『聖の魔力』や『純粋な魔力』に満ちている環境にとっても劇薬であった

 

更には堕天使という器があったからこそ、周囲への影響は最小限に止められていたものの、堕天使リフェの消滅により、その器自体が崩壊した事により周囲への影響も少なからず及ぼす結果となる

 

とはいえ、あの現場にいた者の殆んどは魔力操作に優れた魔法使いであり、数少ない例外もまた肉体という器があり且つ女神アクアや女神エリスによる加護を受けている

 

不幸にもこれに該当しないのはリフェの消滅とほぼ同タイミングに消滅したナタルであった

 

 

ナタルは元々キャベツであり、爆裂魔法を行使すれば消滅する程度の魔力しか有しない

それが堕天使というある種の規格外な魔力をもつ者のマナと比較すれば当然ナタルは大いに劣るのは自明である

 

 

しかし、この世の生命は肉体という器が消滅した以上は余程の例外でない限りは一度天界へ導かれる(この際に所謂魂と呼ばれる物に護られて天界に行くのが常)

 

その後に転生等の手続きが行われるのが通例である

 

が、言ってしまえば言い方はよろしくないが、リフェは異物であり、これは他者にも影響を及ぼす質の悪いものである

 

リフェが適当に転生させた事により、魂という器が半ば崩壊していたナタルは爆裂魔法という魂自体に負荷のかかる要素と合わさり、中身のマナが剥き出しになっており、同地で同じタイミングで発生した堕天使リフェの負の属性を持ったマナの影響をモロに受けた

 

 

 

ぶっちゃけるならば、リフェのマナとナタルのマナが混在したのだ

 

故に天界ではそのマナを受け入れる選択肢はなかった

 

 

そこで、大元のリフェのマナの塊は『除去』したものの、リフェとナタルの混在したマナについての処置は天界でも意見が割れる事となった

 

 

 

あくまでも天界の平穏を優先する一派はそれを地獄に落とす事を主張した

 

また別の一派は今回の一件は天界側の失態であり、それを処置したものであるから『浄化』を求めた

 

 

なお、この『浄化』とは文字通りのものであり、天使や高位の神などを構成する『純粋なマナ』とする事であり、本来ならば重罪人に対する仕置きであるのだが

 

 

少数意見ではあるが、時間をかけてナタルとリフェのマナを分ける意見も存在したが、あまりにも時間を要する事と『罪人』であり『罪人の関係者』と見なされているナタルへの肩入れともとれる見には大半が反発した

 

感情論として反発したものもかなりいたが、理性的な判断からナタルへの処置に反対したものもいた

 

これは言い換えるならば白色のペンネームと黒色のペンキが不完全ながらも混合している状態から元通りにするようなものである

 

ならばいっそのこと廃棄した方が早いのも残酷ではあるが事実であった

 

それに万が一ナタルとリフェの魔力を分けられたとしても、最小単位であるマナ(魔力素)で見るならば必ず影響は残るのは確実とされていた

 

別にナタル自身が聖人君子ではないとは言えども、流石に堕天する程の魔力の影響がどの程度となるかは未知数である

 

更に言えばナタルの前世における行状は善悪で語るならば悪の分類になっていた。いくらキャベツとしては全うな生活をしていたとても、前世における負債は存在する

 

その上で負の影響を受けたとすれば如何なる変化を起こすかは天界とて想像出来なかった

 

 

 

その様な事情もあり、ナタルは大罪人リフェの残債ともいえる負に傾いたマナを内包したままに彼等の関知しにくい所へと追放となった

 

 

 

 

 

 

ここは『アストルム』と呼ばれる世界にある『女神アメス』のいる空間である

 

 

「どうしろっていうのよ」

 

そこにいる女性、女神アメスは頭を抱えていた

 

 

このアストルムは『とある事情』により世界が一度崩壊しかかった事がある

 

当時の管理者達やアメス達は必死に尽力したものの、世界などという大規模なものへの干渉は如何な管理者とて容易ではなかった。しかも、対処する時間すら殆んど与えられなかったのも不味かったといえる

 

 

そんな中で、とある別の世界における管理者たる神々が力を貸すことでどうにか致命的な崩壊は免れる事は出来た

 

 

 

だが、それにより多大なる借りをその神々にしてしまった。本来ならば世界線自体が異なる世界同士、借りを作った管理者達やアメスは勿論の事であるが貸しを作った神々とてこれを精算するなど全く思っていなかった

 

あの時点では

 

 

 

 

 

しかし、管理者達やアメス、神々の予想に反して今回その貸し借りの精算を向こうから求められた

 

向こうからの要求はただ一つ

 

「この穢れたマナ(元ナタルとリフェの魔力素混合体)を其方で引き取って欲しい」

であった

 

 

 

諸々の事情から現在のアストルムには管理者と呼べる者は女神アメス一人であり、アメスは熟考の末に此れを受け入れた

 

とはいっても、アメスとて一つの事象に関わり続けるのは不可能だった為、ランドソル郊外の森にある聖樹へと預ける形とした

 

 

アメスとしては聖樹の持つ浄化作用により、ナタルという存在の負のマナをどうにかしようと思っていたのだ

 

 

幸いと言うべきかは議論の余地があるのだが彼方から移送する際に嘗てのナタルボディ(キャベツ)を再生しており地上に降ろしたとしても影響は限定的であるとされていた

 

アメスの権能だけではその様な大がかりな事は不可能だったが、先方の協力もあり何とかナタルを地上に降ろす事も出来た

 

 

これは神々としてもナタルという面倒事に繋がり兼ねないものを穏当に『処分』するための必要経費として割り切っていたからこそ、行われた事であったりもする。常ならば異世界への干渉に当たる為に行われない行為に当たるのだが

 

 

 

「はぁ、どうにかなった・・・のかしら?

って、え゛?」

 

色々と複雑な気分であったアメスだがようやく一息つけたと思って、確認の為にナタルを見たところでらしくない声を上げた

 

「え、ちょっと待って

あそこは一応エルフ達が『聖域』とか呼んでなかったかしら?

何で傍にエルフが居るのよ?」

 

アメス自身には地上へと介入どころか監視すら出来ない身であったが、ナタルを押し付けた対価?としてナタル付近のみ見渡せる神器を預かっていた

 

そこに見えたのは聖樹の傍にいるナタルと、その傍にいる一人のエルフの少女だった

 

 

 

 

聖樹の周辺は聖なる結界の様な物が存在し、悪意や邪気のあるものは通過出来ない仕様になっている

 

それに加えてエルフ達はその結界を神聖視しており、聖域として扱っていた

そこに入れるのはエルフの中でも極一部であり、一世代に一人いるかいないかである

 

故にアメスとしても外界との繋がりを考慮する必要も無いこともあり、聖樹の傍にナタルを置いていたのだ

 

 

そして当代のエルフはギルドを立ち上げている関係上、そこまで聖域に立ち寄れないと見ていたのだが

 

 

 

 

「うーん、不味いのかしらね」

 

アメスは頭を抱える

 

 

ナタルは言ってしまえば異分子であり、アメスが加護を与えた人物とは別の意味でこの世界に影響を与えかねない

 

といっても前述した様にアメス単体では地上に介入出来ない。出来ると言えばアメスの神託を加護を与えたエルフの少女に伝える程度である

 

では、それを使って排除するかと言うと、ナタルのいる森と加護を与えた少女の里には直接的関係はなく、幾ら同族のエルフであっても聖域に立ち入らせるとも考えにくかった

 

つまりは手詰まりである

 

 

 

「あーもう。どうにもならないじゃない!」

 

アメスの悩みは尽きなかった

 

 

 

 

 

 

 

一方でナタルを追放した天界では、女神エリスと女神アクアが天界の下した処分に対して大いに反発していた

 

曰く

「天界の不始末をした功労者に対する仕打ちとは思えない」

 

「ナタルはリフェの関係者というよりも被害者

それを満足にフォローもせずに放り出すなど有り得ないしあってはならない」

 

といった主張であった

 

 

アクアより事の顛末を聞いたクリス改め女神エリスは天界への信仰の供給を止めるべきだとまで主張する始末。何とかアクアが説得したとはいえど、アクア自身もエリスが激昂していなければ間違いなく激発していただろう

 

 

 

天界側はそんな些細な事よりも早期の魔王討伐を求めており、アクアとエリスはひとまずは引き下がる事になった

 

 

 

この後、エリスは天界よりの指示である神器回収を目に見える形で遅らせる事となり、アクアはパーティーを組んでいるカズマ達と新たに加わったゆんゆんとあるえと共に魔王討伐を目指す事になる

 

 

 

 

 

 

 

そんな世界すら跨ぐ程の大問題になっていた当のレタスは未だに意識を戻さない

 

 

 

 

 

 

後に『属性の塊』と呼ばれるレタスと『○○○○』と呼ばれる少女の出会いまでもう少し

 

 

 

 




実はナタルとリフェは死んでも厄ネタと言う話


今作でのアメス様は正しく苦労人

騎士君はその内出す予定



取り敢えずエルフ関係者はそれなりに関わるかも、知れません

では、御一読ありがとうございました


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泣いて、笑って

なんとなく続いてみた


エルフの少女アオイは困っていた

 

偶然とはいえ、聖域に入ってしまったのだから

 

 

 

とはいえ、聖域へ立ち入る事が別にルールとして禁止されている訳でも無い。ただ今までの慣例として不用意に立ち入るべからずといった風潮があるだけなのだから、そこまでアオイが気にする必要も無いのだが

 

 

だが、アオイという少女の様にボッチと呼ばれている者の中には、他者を気にする余り動けなくなっている者も少なからず存在する

 

 

遠く離れた世界にもかつてボッチだった少女がいるが、彼女もまた他人を気にするあまり積極的な行動がとれなかった。そしてそれが自信のなさにも繋がり、元々引っ込み思案だったものが更に悪化する未来もあっただろう

 

もしかしたら、柄の悪い人間や質の悪い悪魔等と親しくなる未来もあったのかも知れない

 

が、彼女はライバルとしていた少女や衝撃的な出会いを果たした野菜との出会いを経て様々な人達と交流でき、今では彼女がボッチであった事を知るもの以外に彼女が元ボッチなどと見えなくなるほど見違えた

 

 

このアオイという少女も人は良いし、気配りも出来る。決して他人から邪険に扱われる人物ではなかったのだが、本人がそれを自覚していない

 

 

 

 

「あああ、ど、どうしましょう

聖域に入ったなんて知られたら。それに聖樹様にもあそこまで近づいてしまったし、あああ」

 

聖樹と呼んでいる大樹はエルフの一部から信仰を集めており、アオイもその信仰している一人だった

 

 

尤も、その信仰により少しばかり聖なる力が強かった唯の大樹が聖樹と呼ばれる程の力を獲たのであるが、誰も知ることのない話であった

 

 

 

 

 

アオイは現在森の中にいた

 

 

家で落ち込んでいてもどうにもならないと思い直したのだ

 

 

 

ここで一つだけ申し上げたい

 

アオイにせよ、ゆんゆんにせよボッチを自称しているにも関わらず、外出を躊躇わないのは凄いと元ボッチである作者は常々思っている

 

ボッチとは他者に関わるのを極度に怖れている。何故なら、他者の視線すら怖いからであると思う。それでも外出出来る彼女たちは素直に称賛するに値するものと作者は考えている

 

 

 

 

 

話がそれた

 

 

森の中を歩いているアオイだったが、被っている帽子の重みが突然無くなった事に気付いた

 

 

 

「へ、へ?うぇっ!」

 

見上げると小鳥が帽子を掴んで飛んでいた

 

「え、ちょっ、待ってください!」

 

アオイは小鳥を追いかける

 

 

 

 

「ええ、またですかぁ」

 

アオイは既に半泣きであった

 

少し前にも同じ事があったような気がするからである

 

 

 

 

 

 

「やっぱりここですよね」

 

小鳥を追いかけた結果、聖域に辿り着いたアオイは嘆息した

 

もっとも、アオイは自分が微笑んでいることに気付いていなかったが

 

 

 

 

 

 

 

「うう、ここは聖域で私はボッチですけど、やっぱり嬉しいです」

 

相変わらず小動物達に囲まれているアオイは嬉しい気持ちが大きいとはいえ、複雑な思いであった

 

「ああ、私も小動物に生まれていればボッチにならなかったのかな」

 

アオイはため息をついた

 

彼女なりに頑張っているのだが、中々人と話す事が出来ない。最近では森で迷っている人もあまりみないため、必然的に人との話すこともなくなっている

 

 

意外かもしれないが、アオイは迷い人を案内したりは何とか出来る。内心いっぱいいっぱいだが

 

 

「へ?え、ちょっと」

 

アオイが物思いにふけっていると、リスの一匹がアオイの『だいじょうぶマイフレンド君一号改』を加えて行ってしまった

 

「ま、待ってくださいぃぃぃ」

 

流石にアオイも会話の練習相手であるマイフレンド君を持っていかれるのは困る為に追いかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、女神アメスの元にナタルの元いた世界の神が来ていた

 

 

 

「あの」

 

「言わずとも分かる、女神アメス殿

何故此方に来たかということであろう?」

 

困惑するアメスに神はいう

 

放り出した身ではあるが、彼のレタスの身体はそれなりに頑丈に作ってあっても、中身の消耗が想像以上ではないか?と

 

もしも器に異常があった場合に備えて定期的に来訪する事になった、とも

 

「・・・・:え、大丈夫なの?」

 

彼の話を聞いたアメスは疑問に思う

 

そもそも、このアストルムという世界自体がまだ不安定である。そこに高次元の存在であり、魔力の塊ともいえる彼等が頻繁に出入りするのはリスクしかない気がアメスにはするのだか

 

「アメス殿のご懸念は至極当然のこと

貴殿はこのアストルムという世界の残った唯一ともいえる管理者。当たり前だが、この世界の安定を優先するのは極めて自然なことよな」

 

「はあ(え?そこまで分かっているのに、どうして来るのよ)」

 

「実はアレの器に使用したものは特殊な物ゆえ、こちらでは回収せよという者共がいてな」

 

「ええー」

 

 

ナタルに内包されている魔力は元々ナタルが持っていたものよりも遥かに大きいものとなっていた

 

ナタルの器を元通りにしたところで内部の魔力を留め切れないと判断した天界の自称良識派は、ナタルの器を再構成する際に一部特殊な物を使用した

 

この事実を知ったナタルを追放させた者達は「たかだか大罪人の為にその様な物を使うなどもっての他。速やかに回収すべきである」と主張し始めた

 

 

 

だが、自称良識派にも言い分がある

 

そもそもの原因であったリフェは現在、浄化の儀の後に再構成の儀式をおこなっている。にも関わらず、被害者である筈のナタルは別の世界へと追放では理屈が通らない

 

百歩譲って追放を是としたとしても、移送中や追放先の世界で器が崩壊し、内包している負のマナが溢れ出して現地に被害をもたらすのはどうかという事だ

 

故に器の強化は必然であると良識派は判断していた

 

 

 

ところが、反対派は追放したモノにまで責任は持てん。の一点張りである。流石に理屈が通らないと抗弁したのだが、元々反対派は一部の女神を通じて信仰を集める現在のやり方に不満を持っており、ナタルが転生者であることも相まって多数派の感情論で押しきった

 

何せ追放先のアストルムは諸々の事情から重大な爆弾を抱えており、世界が崩壊した場合ナタルの器に使用した物が失われるリスクを重要視したとも言える

 

 

 

 

では張本人たるリフェはどうするのか?と言えば、最早リフェという人格は消滅しており唯の巨大なマナの塊であり、これを自派閥に取り込もうと躍起になっていた

 

当然取り込もうとする以上は素体となったリフェだった頃の罪状等は都合が悪いという生臭い理由があった

 

 

 

であるからこそ、彼等反対派はナタルに全ての悪名を押し付け、消すつもりなのだ

 

更に今回神器を器に使用した自称良識派に対しても、神器の無断使用を追求しており、良識派は窮地に立たされていた

 

 

アストルムが崩壊したとしても、彼等の世界に影響を及ぼさないのも反対派の強硬的な行動に拍車をかけた

 

つまり「(アストルムが崩壊しても)関係ない」ということである

 

 

「え、流石にどうかと思うけど」

 

粗方の事情を聞いたアメスはドン引きした

 

当然である。明らかに被害を被った上に、問題解決に一役かった筈のナタルを自分達の都合で良いように弄んでいる様にしかアメスからは見えないのだから

 

「返す言葉もない」

 

中立である彼もアメスの言葉にはしないが、非難を受け入れる他ない

 

「で?どうするのよ」

 

「見たところ、既に負のマナは消滅しており、無色のマナとなっておる様だ

これならば、貴殿の世界への影響を最小限に抑えられよう」

 

「いやそうじゃなくて」

 

「む、アメス殿の言いたい事は分かるのだが」

 

神の返答にも苦いものが混じる

そもそもアメスとて女神の端くれである以上、ナタルの魔力が既にアストルムに与える影響が殆んどないのは分かっている

 

問題視しているのは影響がないからと消すのか?である

 

別段アメスにはナタルと関り合いは無いとは言っても、多少の罪があったとしても大功で相殺出来る話。寧ろ功績の方が高いのではないか?という心配すらあるレベル

 

 

 

彼等天界の者達は忘れているかも知れないが、彼等の力の源は魔力やマナでなく、信仰である

 

にも関わらず、アメスの聞いている話では地上との窓口である女神エリスと女神アクアは現在の天界の方針に反発しているらしい

 

そこに被害者であるナタルを追放させた上に処断したのならば、天界を見放すのではないか?とすら第三者の立場でも危惧するレベルだ

 

そのリスクを負ってまでナタルを始末する必要はあるのか?アメスはそう聞いていた

 

 

 

 

 

なお、アメスの危惧はある意味では当たっていた

 

 

今回の堕天使リフェによる騒動でエリス教、アクシズ教はその立場を更に固めた。更に両教徒間の関係改善も始まっており、特にアクシズ教のシスターであるセシリーは積極的にエリス教徒との融和を推し進めていた

 

一方で事件以前より、エリス教における女神エリス以外の神の存在も少しずつ周知され始めたにも関わらず、現界した女神エリスと女神アクアと比べて何の恩恵もなかった事により、エリス教は実質女神エリスの一神教となっていた

 

つまり、期せずして天界は信仰を獲得する機会を自ら潰したともいえる

 

結果、女神エリスと女神アクアは更なる信仰を獲得するも、天界への還元は殆んど行われなかった

 

これは女神アクアによる

「先ずはこの事態をキチンと片付けてから。そうでないと、信仰を渡すのはごめんよ」

との発言に女神エリスも同調した為である

 

 

アクア達の天界への不審は洒落にならないレベルになっていた

 

 

 

これに追い討ちをかけるかの様に転生者の間でも天使リフェの愚行は知られていたが、アクア経由で天界の腐敗っぷりも伝えられた為に、転生者という神の存在を知っている者達からも信仰を獲得出来なくなってもいる

 

 

 

魔王軍は元々神々に対して不満を持つものが多いが、今回の件でそれに拍車がかかった

 

 

堕天使リフェにより殆んどが死亡したが、数少ないナタル達と関わった生き残りの野菜や魔物達からも天界への不信感は高まっており、実のところ天界は今まで以上に信仰を失っていた

 

 

 

当の本人達だけがそれを知らないのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く気がのらぬが、仕方あるまい」

 

彼とてこんな貧乏くじをひきたくはなかった

事情を話せば女神アメスからは軽蔑されるだろうし、天界の上層部からも睨まれるだろうし、穏健派からも睨まれるだろう

 

だが、誰かがせねばならないのであれば、せめて以前上司だった者がするのがケジメだとも思っていた

 

 

そう、彼はまだリフェが天使だった頃に不始末から彼女を天界より追放した上司であった

 

今では堕天使リフェの上司として無能の烙印を押されているが、彼はそれを甘んじて受け入れていた

 

 

 

 

だがナタルへと術を発動する、その時

 

 

「え、ちょっと待って、ストップ!」

 

アメスが制止の声を上げるも

 

「な、何故エルフが?

ぐっ!」

 

彼は必死で発動した術式を制御するも

 

「まずい!間に合わんっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメス達が割りとピンチな時

 

 

「はぁー、やっとマイフレンド君を取り戻せました」

 

リスよりブリキ人形『だいじょうぶマイフレンド君一号改』を取り返したアオイは人形を地面に置いて一息ついた

 

「あれ?これなんでしょう

キャベツ、うーんレタス、かな?」

 

マイフレンド君の傍に緑色の物体があった

 

すると

 

「え、ええっ!な、な、何ですかこれぇっ!」

 

アオイの周りが光に包まれた

 

 

 

 

 

 

 

アメス達は

 

 

「む、な、何とかなった、か?」

 

「た、多分そうじゃないかしら?」

 

汗だくの神とアメスは息も絶え絶えに話す

 

いざナタルの処置をしようとしたタイミングでエルフの少女が効果範囲に入ってきたのだから仕方ない事だった

 

彼は必死に術の効果範囲から少女を逃そうとしたが、はたして

 

 

 

 

 

 

 

「う、うーん。な、な何が起きたんでしょうか?」

 

光が収まった後、アオイは意識を取り戻した

 

「あれ?レタスがない?」

 

見るとさっきまであった筈のレタス?が無くなっていた

 

「不思議ですねぇ」「だねぇ」

 

「「ん?」」

 

アオイは独り言を言ったと思ったら、誰かに同意された。不思議に思い、声の方向に視線を向けてみると

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

そこにはアオイの『だいじょうぶマイフレンド君一号改』のみであった

 

(え?いよいよ私幻聴が聞こえる様になったんですか?)

 

アオイは内心泣きそうになったが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、どーも」

 

マイフレンド君が話しかけて来た

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

 

 

 

 

アオイの絶叫が森の中に響き渡った

 

 

 




キャベツ、レタス、長ネギとくれば無機物しかねぇだろ!!(暴論)

ま、神様だって間違える事はよくある話(某水の女神を見ながら)


因みにアメスの所に来た神(元天使)は出世してますが
、うっかり属性持ちです

では御一読ありがとうございました


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いつか見た夢

アオイちゃんが可愛い過ぎて堪らない件




しかし、元祖ヒロインの存在感を上回れるのかは未知数


エルフの少女アオイは混乱していた

 

何か妙な光があったと思ったら、アオイの持つブリキ人形『だいじょうぶマイフレンド君一号改』が話しかけてきたのだから

 

「あのー?」

 

「ヒッ!」

 

「もしもし?」

 

「ヒエッ!」

 

「聞こえますかー?」

 

「ピョッ!」

 

「・・・・・」「・・・・・」

 

 

 

 

「何じゃこりゃー!!」「何ですか、コレー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

○タ○は思った

 

 

 

ん?ここどこよ?え?○○ゆ○は○○えに師○は?

 

 

あれ?そもそも、俺って誰だっけ?

 

 

 

 

 

 

アオイは思った

 

 

 

え?私の『だいじょうぶマイフレンド君一号改』が喋った?

 

え?私に話し相手が出来た?

 

え?これは夢?現実?

 

わ、私死んじゃうの?(死にません)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメスと神は焦った

 

 

 

「え?ちょっと?」

 

「 」

 

「え?何これ?」

 

「や」

 

「や?」

 

「やっちまったー!!」

 

「ちょっとー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の天界

 

 

 

 

「そろそろあやつがアレを回収している頃か」

 

「うーむ」

 

「どうされた?」

 

天界では三人?の神が話をしていた

 

「何か懸念事でも?」

 

「懸念事だと!忌々しいあの女神アクアと女神エリス以外に何があるのだ!」

 

「ふーむ」

 

「しかし、女神アクアと女神エリスの主張も尤もかと」

 

「ふざけるな!我等の力無くばあっさり死ぬ様な脆弱な人間と半人前の女神ごときが何をぬかすか!」

 

「うーむ」

 

「ええい!さっきから何だ!」

 

「どうされたのですか?」

 

「ん?ああ、何少し気になる事があってな?」

 

「貴様まで人間などとぬかすか」

 

「どの様な事でしょうか?」

 

この三人はそれぞれ強硬派、穏健派、中道派に属しているが、意見交換の為に集まっていた

 

「いや、行かせた奴さ、アレの上司だったわけよ」

 

「はぁ」

 

「それがどうした?」

 

「いや、天使の中では使える奴でな、今まで神になってないのがおかしいくらいに使えるのよ」

 

「それはまた」

 

「天使としては破格だな」

 

 

 

天界において天使の極一部は上位者たる神の数人?の推薦により神の位階へと進むことが出来る

 

 

勿論、善性を持つのは当然だが、それなり以上の能力や功績が必要となり、大抵の天使は諦める

 

 

が、アレことリフェの上司はなんだかんだ言っても、問題児たるリフェを見捨てずに監督していた。その上で自身の業務には問題を起こさせない程度には有能だったのである

 

 

「それはまた」

 

「おかしな事だな。そこまで使えるならば昇格とて問題あるまいに

何故今まで昇格せなんだのだ?」

 

「いやな、アイツたまにとんでもないポカをするからなぁ」

 

「ポカ?」

 

「とな?」

 

怪訝そうな二人に

 

「そうなのだ

いや、奴が真面目にしているのは勿論わかっておる

わかっておるのだがなぁ」

 

思わず昔の事を思い出したのかため息をつく

 

 

 

 

 

 

 

まだリフェが天界にいた頃の話である

 

 

リフェが好き勝手にしている事を不満に思っていた当時天使だった彼は反省を促す為に、とある仕事をリフェと共同で行う事とした

 

 

その上司である神はリフェが更正するとは思えなかったが彼の提案を採用した

 

 

 

 

結果からすると、『あの』リフェですらも思わず手助けするような惨状となってしまい、彼に対してはリフェも少しだけ優しくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おう」

 

「む、むう」

 

話を聞いた二人は言葉も出なかった

 

「いやな、本当に真面目だし、能力もある

向上心もある上に常に研鑽を怠らぬのだが、稀にこうなるのよ」

 

「ならば何故その様な奴に後始末を任せた?」

 

「それはそうですね、適任は他にいたのでは?」

 

「奴は曲がりなりにもアレの上司だったのだ

責任を痛感しておる奴に任せぬとは言えなかったのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、まぁ大丈夫であろう。する事はあの転生者めに宿された神器の回収のみよ」

 

「そ、そうですよ。まさかうっかりするなんて事は」

 

「そうか?」

 

「ええい、仕方ない!

私が奢るから食事でも行くぞ!」

 

「おや、珍しい」

 

「・・・・良いのか?」

 

 

余りに憔悴している状態を見てられなかったのか、強硬派の神は食事に誘うことにした

 

その提案に穏健派の神は驚きを隠せない

 

 

 

 

何せ傲慢で不遜で唯我独尊な彼が他者を気遣うなど、それこそ天界が滅んでもあり得ないと評判の彼が。である

 

 

 

 

「喧しい!さっさと行くぞ!」

 

「いきますか」

 

「う、む」

 

 

 

この日珍しく派閥の垣根を越えた三人が共に行動していたのを見た周囲の者達は驚く事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、彼等の思いは裏切られる事になった

 

 

 

 

 

「やってしまったorz 」

 

「え、何?」

 

「神器ごとあのみょうちくりんな人形の中に」

 

「ええー!」

 

落ち込むリフェの元上司の神にアメスは絶句した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

 

「む?なんだこれは?」

 

「どうしたんですか、陛下?」

 

ランドソルのとある場所で二人の人物が話をしていた

 

「ふむ、然程に脅威とは思えぬが」

 

「だから、どうしたんですか、陛下?」

 

「○○○よ。エルフの森へ行け」

 

「え?は、はい(え?シャドウでもいいんじゃないの?)」

 

 

こうして○○○はエルフの森へと向かうことになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから少し後、このランドソルに一人の青年?が降り立つ事になる

 

 

がそれはまた別の話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっとつまり、なんだ?大丈夫なんとかなの?俺」

 

「はいい、えっと『だいじょうぶマイフレンド君一号改』です」

 

「?『だいじょうぶマイフレンド君一号改』?」

 

「はい、『だいじょうぶマイフレンド君一号改』です」

 

 

正気?を取り戻したアオイとブリキ人形は改めて話をしていた

 

「えっと、アオイちゃん。だっけか?」

 

「は、はい!アオイです

一応ギルド『フォレスティエ』に所属してます13歳です!」

 

「あ、うん

ちょっと落ち着こうか?」

 

やや興奮ぎみのアオイを落ち着かせるブリキ人形

 

「あ、あのごめんなさい」

 

いつもならばここまでテンパれば逃げているが、アオイが持ち歩いている『だいじょうぶマイフレンド君一号改』相手なのが幸いしたのか、アオイもまともに会話が出来ていた

 

「や、別にいいんだけどね

最初言われた事が「あやとりだいすきあや太郎ー」って言われた時にはどうしようかと思ったけどね」

 

「あ、あう」

 

因みにアオイの名誉の為にフォローしておくと、彼女は「怪しいものではありませんが」と言いたかった

がいつも通りにテンパった結果「あやとりだいすきあや太郎ー」となっただけである

 

 

「まぁ、可愛かったからいいんだけどね」

 

「かわっ!」

 

アニメならば『ボンッ!』と擬音のつきそうな勢いで真っ赤になるアオイ

 

(んー?自分が何かわからんのは辛いけど、まぁいいか)

 

赤くなったアオイを見ながら割りと危機的状況にも動じないブリキ人形だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうするのよ?」

 

「むむむ」

 

「何がむむむよ!不味いんじゃないの、これ」

 

やらかしたうっかり神にアメスは詰め寄る

 

アメスとてナタルをそこまで知りはしない

しないが、せめて安らかな眠りだけはどうにかしようとした矢先にこれである

 

流石にナタルが不憫でならない

 

 

 

 

「・・・・・」

 

うっかり神は沈黙していた

 

「・・・・・」

 

アメスも黙る

 

 

 

重苦しい空気がアメス達のいる空間を満たした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かかかか、可愛くなんか、ないですよぉ」

 

「そっかねぇ?」

 

アオイの否定にブリキ人形は疑問の声をあげる

 

 

 

 

なお、衝撃的すぎてアオイは失念しているが、ここは聖域であり、聖樹の傍でもある

 

ここには小動物達が沢山いるのだが

 

 

 

彼等は一様に口論?をしているアオイとブリキ人形を見ていた

 

その視線には微笑ましいものを見るような温かなものが含まれているのを二人とも気づかなかった

 

 

 

 

 

 

 

「で、では個人の嗜好ということで」

 

「何か納得出来ないのだが」

 

結局、アオイが可愛いのか?の論争は双方の主張が平行線を辿った為にアオイ発案の個人の嗜好論に落ち着く事となった

 

ブリキ人形は不満な様であったが、アオイは見ないふりをしていた

 

 

 

 

 

 

「では、そろそろ帰りますね」

 

「おう、お疲れー」

 

陽も暮れてきた為にアオイは里に帰ることにした

 

「???え?」「???は?」

 

二人もとい一人とブリキ人形はお互いに疑問の声をあげた

 

「いえ、ですから帰りましょう」

 

「いや、だからお疲れ様」

 

「「??」」

 

噛み合っている様で致命的に噛み合って無いようである

 

「あの、お疲れ様って?」

 

「いや、帰りましょうって?」

 

 

 

 

 

 

「ですから、わわわ、わたっ、私の家に帰りましょうと言っているんですよ」

 

「いやだから、確かにブリキ人形だけどもさ、中身?がいるんだから、不味いっしょ」

 

「でも貴方は『だいじょうぶマイフレンド君一号改』ですよ?」

 

「いや、確かにそうだけどさ」

 

ようやくお互いの認識の違いに気付いたアオイとブリキ人形はまた口論していた

 

 

アオイはどんな形であれ、だいじょうぶマイフレンド君一号改である以上は一緒に帰るべきと

 

 

ブリキ人形は外身はだいじょうぶマイフレンド君一号改だろうと中身がいる以上、一緒にいるべきではないと

 

 

 

 

 

 

議論は再び平行線となった

 

 

「じ、じゃあ、貴方は私と居たくないんですか?」

 

アオイは瞳に涙を浮かべながら問いかける

 

「っ!(頭が痛い)」

 

ブリキ人形はアオイの姿を見て頭痛をおぼえる

 

 

 

 

アオイではない誰か

 

 

黒髪で紅い目をして優しかった少女がアオイにダブって見えた

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

様子のおかしいブリキ人形にアオイは手を当てる

 

 

 

(今のは)

 

ブリキ人形には分からない

 

それが、かつてナ○ルと呼ばれていた頃に大切に想い、想われていた少女だった事は

 

 

 

 

 

「あ、うん。ごめんな?アオイちゃん」

 

「い、いえ大丈夫ならいいんですけど」

 

謝るブリキ人形に何故か違和感をおぼえたアオイだったが、今はそれを無視した

 

 

 

 

 

 

 

アオイにせよゆ○ゆ○にせよ、ボッチといわれる人間は他の者よりも周囲を良く見ている事が多い

 

他者を自分以上に気にかけているのだ

 

 

だからこそ、ブリキ人形の細やかな変化にもアオイは気づけたと言える

 

 

 

 

 

 

「あー、うん。アオイちゃん?」

 

「は、ハイッ!」

 

ばつが悪そうにアオイに話しかけるブリキ人形

 

「お言葉に甘えるけど、連れてってくれる?」

 

「あハイッ!

 

 

 

満面の笑みを浮かべるアオイを見て、ブリキ人形は何故か目の前の少女を泣かせたく無いと思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、アオイはブリキ人形の呼び方を頭の片隅で常に考えていたが、最後まで口にする事はなかった

 

 

 

まぁ、ボッチだった少女に初対面?の相手の名前を決める等というのはハードルがとても高かったのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「微笑ましいわね」

 

「ソウデスナー」

 

一方でそれを見ていたアメスとうっかり神はそれぞれ感想を口にしていた

 

「というか、あのナタルって子はどうしたのかしら?」

 

「む、恐らくは器が崩壊した際に記憶の一部が欠損したのではないか?」

 

「の割には安定していたけど?」

 

「うむ。器の強化に使っていた神器がちょうど補強材の役目をはたしたと見ている

見る限りでは完全に元ナタルの魂と同化しておるでな」

 

 

本来ならナタルという器を壊して神器を回収する予定であったが、効果範囲への突然のアオイ侵入とうっかり神のうっかりにより、レタスの傍にあったブリキ人形の中にナタルの魂ともいえるものが固着してしまった

 

しかし、無機物に魂を宿すにはそれ相応の魂側への負担となり、ナタルの魂の一部が欠損。それを魂側か神器側かは分からないが察知して補った形となったのだ

 

 

「いやそれで良く人格としてなりたってるわね」

 

「神たる貴殿と私が言う事ではないが、正しく『奇跡』であろうな」

 

「そうねぇ」

 

「崩壊した魂の再構成等、それこそ最高位の神でなくば成せぬ御業よ」

 

アメスとうっかり神は偶然の産物とはいえ、正に『奇跡』を目の当たりにしたわけである

 

 

 

 

 

 

 

「とはいっても、神器回収が貴方の仕事だったのに、いいのかしら」

 

「構わぬさ

神器は回収する際に失われたとでも報告するとしよう

まさか危険をおかしてまでここアストルムにまで来るような物好きはおるまい

それにあの者達を引き離すのは気が咎める」

 

うっかり神のそれは実質職務放棄になるが、彼は何でも無いように話す

 

「確かにね」

 

「何、処分といっても恐らくはここアストルムへの追放になるだろう

間違いなく神器を探せと言ってくる事は目に見えているからな」

 

 

 

ここアストルムとうっかり神のいる世界はとんでもない程に離れている

 

故に往き来するだけでも命を落とす危険性すら孕んだものになっているのだ

 

幾ら神器が重要だからとて、煩いだけの強硬派が自らアストルムまで来る事はまずあり得ない

 

うっかり神は部下であったリフェの不始末の犠牲となったナタルだったからこそ、アストルムに来ただけであり、通常ならば命令でも断る話であったのだ

 

 

「な、中々言うのね」

 

「何、あ奴等に憤懣を溜めているのは女神アクアと女神エリスだけではないのでな」

 

明らかに黒い発言をするうっかり神に退き気味のアメスであった

 

 

「一度戻るが、間違いなく来ることになるだろう

アメス殿には申し訳ないがな」

 

「まぁ暇だからいいわよ」

 

 

 

 

 

その後、うっかり神は元の世界へと一時帰還していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うっかり神が居ないときに女神アメスはとある存在をアストルムへと導く事となる

 

 

 

「ほんと、あの子がどれだけ幸運だったかが良く解るわね」

 

アメスの呟きは誰にも聞かれなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、と、とと、友達ですか!」

 

「や、落ち着こうや、アオイちゃん。頼むから」

 

「あう、すみません」

 

アオイの家に着いたアオイとブリキ人形は話をしていたのだが、ブリキ人形の提案にアオイが驚愕の声を上げたのだ

 

「そんなに堅苦しく考える事も無いと思うんだけどな」

 

「いえいえ、何を言ってるんですか

何か用意しないと」

 

「しなくていいからさ」

 

アオイの相変わらずのテンパり具合にブリキ人形はもう驚かない

 

 

 

ただ

 

(どっかで聞いた事がある気もするんだよなー?

何時だったかは分からんけどな)

 

 

 

 

 

○る○と○ぐ○んと○んゆ○が話していた

 

「やれやれだ。友達を作るのにプレゼントがいるわけないだろう?○○ゆ○」

 

「まったく、いつもそんなのだからふ○○らやど○ん○などにも良いようにつかわれるのですよ?」

 

「違うから!○タ○さん、○○えと○ぐみ○の言ってる事は違うから!」

 

 

 

殆んどの台詞は出てくるのに、人の名前と姿だけがまったく分からない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だと思う?」

 

「なんで疑問文なんですかぁ?」

 

アオイの言葉に我にかえったブリキ人形である

 

「実は私友達が欲しくて、嬉しいです!」

 

「や、ブリキ人形を友達としてカウントしていいのかは分かんないけどさ」

 

「いいんです!他の人には意味が解らなくても、私にとっては大きな意味があるんです!」

 

「いや、ほんと落ち着こう?

とはいえ、人間の友達とアオイちゃんならすぐに出来るって」

 

「あ、あの手伝ってくれますか?」

 

初めての友達?が出来た事に喜ぶアオイ。それに対してアオイなら人間の友達もすぐ出来るというブリキ人形

 

 

「手伝い、ねぇ。出来る事ならするけども」

 

「ありがとうございます!

ではバイバイ、ボッチ団。略してBB 団として頑張りましょう!」

 

「アッハイ」

 

「BB団、BB団。BB団♪」

 

バイバイ、ボッチ団ことBB団がアオイとブリキ人形により此処に結成された

 

楽しそうなアオイを見て

 

「じゃ、宜しく団長」

 

「いやいや、団長なんてそんな

団長は貴方がやって下さいよー!」

 

「え?ナニソレ怖い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、エルフの少女アオイは終生の友であるブリキ人形を得ることが出来たのであった

 

 

 

 

 

 

これからのBB団の活躍にこうご期待!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で晴れてBB団結成となりました


ブリキ人形の名前、どないしよ?





では御一読ありがとうございました


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その想いは

とりあえず投稿します

が、恐らく改稿しますのでご了承下さい


今回は完全にこのすば世界での話となります


堕天使リフェ討伐の後、女神エリスは今まで以上に神器の回収を盗賊クリスとして行い始めた

 

ある意味では贖罪だったのかも知れない

 

確かにナタルの一件において、女神エリスは一切関知しておらず、エリスが事の次第を知ったのは不幸な事に今回の一件が全て終わった後であった

 

 

先輩の女神アクアは恐らくエリスを気遣って言わなかったのだろうとは理解している

 

その事に対してアクアにとやかく言おうとはエリスとしてもクリスとしても無かった

 

 

 

 

が、今回の一件においてエリスが最も怒りを露にしたのは、神器を密かに所持していたアクセルの『元』領主アルダープでも憎むべき悪魔マクスウェルでもなかった

 

 

転生者ナタルと天界より追放した元天使リフェについての情報を一切連絡してこなかった天界の者達であった

 

 

 

 

「納得がいきません!」

 

「そう言われてもな、女神エリスよ

既に忌むべき転生者ナタルの魂ともいえるものは堕天使リフェのマナの影響を受けていたのだ

それとも女神エリスよ、このような不浄な物を天界に留める。等とまさか言うのか?」

 

天界で堕天使リフェの一件を報告したエリスは天界の決定を聞き、異議を唱えた

 

「確かに転生者ナタルの魂に堕天使リフェのマナが混在しているのなら、双方の完全な分離は手間がかかるでしょう。しかし、彼の者はあくまでも私達天界による不手際によりああなったのではありませんか!

被害者とも云える人物に対して『手間がかかる』からと何もしないのは明らかに問題です!」

 

「しかし、そこまでの手間をかける価値はあるまい

確かに堕天使リフェのマナが混在したことでナタルとやらの魂は元の大きさよりも大きくなってはおろう

だが、所詮はその程度の大きさなのだ」

 

「大きさの大小を論じているわけではありません!

この様な無体な事をする事自体が問題と言っているのです!

私達はこの世界の中での魂の循環システムを維持できず、女神アクアを余所の世界へと送り、平和なその世界から『転生』という形でかろうじてこの世界を維持しているのです!

であればこそ、今回の加害者である堕天使リフェと私達天界側の罪は明らかにし、被害者である転生者ナタルや今回の功労者へのある程度の褒賞はあって然るべきでしょう!

そうでなければ、現在活動している転生者達も天界への不信感を持つことになるでしょう!」

 

あくまでもナタルという個体のマナの量から問題視しない天界側と、天界が構築した『転生システム』や倫理観等を以て発言するエリス

 

「別にナタルとやらを『放逐』した所で大した支障はあるまい?

新たに転生者を呼び込めば済む話であろうて」

 

この天界側の発言であったが、これは明らかな失言であった

 

「『放逐』?

どういう事でしょうか」

 

「ふむ、何でもない

貴様が気にする問題ではない」

 

「・・・・・・・そうですか」

 

これ以上の議論は無駄と観念したのか、女神エリスは追求を止めた

 

「では私は失礼します」

 

「ふむ、では引き続き神器の回収をすすめよ」

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この時天界側は致命的なミスをおかしていた

 

 

一つは女神エリスと女神アクア以外に下界へ送らなかったこと

これは下界においてエリスとアクアの活動を制止するものがいない事になるにも関わらず、天界側はこれを放置した

 

一つは女神エリスに神器回収を一任したこと

神器回収はすれども、エリスもといクリスが神器を下界に置いたままでもエリスは構わない。天界側は下界に対するチャンネルすら無いためにこれをどうにかする方法すらないのだ

 

 

そして、一番の失態は『転生システム』におけるカズマやナタル達の元の世界側の責任者はあくまでも『女神アクア』のままであることを失念していた事であった

 

 

アクアはリフェの失態を知った後、自身の後任に今まで通りの転生システムの運用方法等を改善するように要請した

 

そして転生システムの運用については女神アクアの承認なくして運用出来ない様にカズマと共に下界へ旅立つ前に上層部へと話し合いをしていた

 

上層部もリフェの様な混乱は天界にとっても害であると判断し、アクアの許可なくして転生システムの運用出来ない様に制度を変更した

 

 

 

元々、天界上層部は基本的に発言する事を控えており、現在の天界の方針を決めているのは所謂中層階級の者達であった

 

今回のナタルやリフェに対する処遇も上層部を通すべき案件であるにも関わらず、中層階級達で勝手に決めているのが実情であった

 

では、ナタルやリフェの件を上層部が知らないかと言えばそうではないが、彼等は神器の管理や創造、リフェ追放後の粛清等を行う事が多い

 

彼等上層部は最悪の場合、つまりこの世界の存続に関わらない限りは基本的に中立の立場を取っているのだ

 

実のところ、上層部の中では既に『選別』の動きが出ている為に敢えて放置しているだけなのだが

 

 

ではエリスとアクアはどの程度の立場かといえば、位階でいえば天界の中層階級にあたる

 

が、エリスとアクアは共に『転生システム』という重大なシステムに貢献している事から、いざと言うときには上層部へ直接物を申す事が出来る極めて特殊な立ち位置であった

 

 

アクアが転生システムにおける実質一時的な凍結を上層部へと持ち込めたのもこの特殊な立場によるものであった

 

 

 

 

とはいえ、幾らエリスとて常に上層部への直言が許されている訳でもなく、アクアの場合の様に火急の用件とも言えぬ時には煩雑な手続きを必要としていた

 

 

この煩雑な手続きは迂闊にエリスやアクアが上層部への直言を行えない様にしているのは、エリスとて理解していた。しかし、現在の体制において『女神エリス』と『女神アクア』は正しく別格の扱いを受けており、それを自覚している為にエリスは中々掟やぶりの様な行動を起こすことは出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事があったのですが」

 

「うーん、相変わらずの腐敗っぷりねぇ」

 

天界での話し合いの後、エリスはクリスとしてアクアとある喫茶店で話をしていた

 

「ま、といってもある程度は予想も出来てたけどね」

 

アクアは悪戯っぽく笑みを浮かべた

 

「え、そうなんですか?」

 

クリスはアクアのリアクションに驚いていた。と同時に

 

(ああもう、アクア先輩ってずるいなぁ)

 

そう思わずにはいられなかった

 

 

 

 

女神としてのアクアはリフェの一件があるまでは、決して女神としてほめられたものではなかった

 

割といい加減で、勢いに任せて行動するからよくエリスにも泣きついて来た

でも、不思議と嫌いになれない魅力があった

 

 

それがリフェの一件以来は真面目な部分や思慮深い面も出てきた

 

 

それでいて、今の様な魅力もあるとなれば、同じ女神としてエリスとて羨ましくもなる

 

 

 

天界においてエリスは真面目で融通が効かない。と噂れていたのは当人も知っていた

 

それに対して、アクアは不真面目で考えなしな面もあるが何故か憎めない。との評判である

 

そこに真面目さや思慮深さまで加わるのははっきり言ってしまえば、卑怯とすら思ってしまう

 

 

しかも、最近では彼女のパーティーメンバーのめぐみんから更に思慮深さを学んでいる様であり、パーティーリーダーのカズマからは物事の裏をかく方法すら学んでいるのも知っている

 

一応アクアの後輩とはいえど、複雑な心境になるのはどうしても止められなかった

 

 

 

 

 

 

「どうしたのよ、クリス?」

 

アクアは突然何か考え込んでいたクリスに驚いていた

 

「え、ああ、すいません」

 

「であっちは確かに『追放』って言ったのね?」

 

「はい、間違いなく」

 

「あまりいい感じの話とは思えないわね」

 

「そうですね」

 

エリスとアクアは揃ってため息をついた

 

 

 

「なぁ、アクアとクリス?

それってナタルさんが追放されるって事か?」

 

側で聞き手に専念していたカズマは口を開く

 

「どうして、そう思われるのですか?」

 

「何かクリスの姿でその喋り方は違和感があるんだけどな

話を聞いた限りではナタルさんを邪魔に思ってるみたいだし、リフェだっけか?あの堕天使には何かの価値を見出だしてる気がするんだけどな」

 

カズマは苦笑してからクリスの問いに答えた

 

「だとすると、不味いわね

今のところは私とエリスとカズマだけしか知らないけど」

 

「アクアさん。一応ここではクリスですよ

とはいえ、不味いのは間違いないでしょうね」

 

「ああ、こんな事がめぐみんに知れたら不味いだろうな」

 

アクアの懸念にクリスとカズマも同意せざるを得ない

 

 

 

 

リフェ討伐の代償としてナタルを喪ったゆんゆんは勿論のこと、あるえとめぐみんの憔悴ぶりは尋常ではなかった

 

 

ゆんゆんは一月以上経った今でも、事ある毎に沈んだ表情を浮かべている

 

あるえは時々紅魔の里に帰ったりしているが、其処ではやはり落ち込んだ表情を見せているとめぐみんの両親から聞いていた

 

めぐみんはナタルを喪った後、暫くの間爆裂魔法を一切使おうとしなかった

これはカズマの捨て身の作戦で何とかなりはしたものの、それ以来何か調べものを暇な時にはやっている。とダクネスやアクシズ教のプリーストであるセシリーから聞いている

 

 

カズマとアクアは何度かめぐみんに聞いてみたが、はぐらかされていた

 

とはいえ、ダクネスの実家で今のアクセル領主でもあるダスティネス家の書庫やアクシズ教の書庫、更にはエリス教の書庫までも調べている。そう聞いている以上、余程に知りたい事なのだろうとは思っているが、聞くに聞けない状態が続いていた

 

 

 

 

 

 

だが、三人に共通しているのは明らかにカズマやアクアが知っているよりも精神的に不安定になっている事であった

 

 

ゆんゆん達はカズマ達よりもナタルに近かった為に喪ったショックによる精神的な傷も深かったのだ

 

 

 

 

 

 

 

クリス達が話をしている頃、めぐみんはアクセルに新設されたアクシズ教の教会に来ていた

 

 

「これも違いますね」

 

めぐみんは1つの書物を流し読みしてからため息をついた

 

 

 

めぐみんにとっての初めての弟子で、めぐみんのライバルであるゆんゆんの想い人でもあったナタル

 

彼を喪ってから既に一月以上経過していたが、めぐみんは元より、あるえもナタルを取り戻す事を諦めてはいなかった

 

彼は言っていたのだ。自分は転生者(笑)だと

そして、エリス教やアクシズ教の書物には一度死んだものが『蘇生』されるのではなく、『生まれ変わる』事があったことが記されていた

 

いや、直接的な表現はされていなかったが、文脈やその時の状況から判断するとそうとしか思えなかった

 

勿論、この様な事は明らかに尋常ならざる事であり、有り得てはならない事でもあるだろう

 

 

 

だが、めぐみんとあるえは口を揃えて言う

 

「「知ったことか」」

 

確かにほめられた話ではないだろう

 

 

だが、それでも今でもふとした時にナタルを思い出して泣きそうになっている友人を見ているは二人とも耐えられない

 

 

 

 

これが、ナタルが自然に朽ちていったならば、めぐみんも自然の摂理と涙を飲んで諦めれる

 

が、今回の一件は(隠れて)聞いたところによると、天界とやらの失態によるものらしいではないか

 

流石に憔悴しているアクアにこれ以上追求したいとはめぐみんは思っていないが、あるえはそうではないらしい。めぐみんはあるえを何とか抑えて、天界にまつわる書物も含めて調査しているのだ

 

 

とはいえども、エリス教の本山やアクシズ教の本山や、王国の図書館でもない限りは、その様な資料が出てくるとはめぐみんは正直思ってもいない

 

だが、可能性はゼロでない以上はめぐみんも動ける範囲で資料を探していた

 

 

 

めぐみんとあるえはゆんゆんからなるべく目を離さない様にしていた

 

後追いはしないとは思うが、それでも少し前にゆんゆんがナタルの亡くなった場所で倒れていた事があった為に二人は出来る限りゆんゆんの傍にいようと決めていた

 

 

一応、紅魔の里からそけっとやふにふら、どどんこが応援に来てくれる事になっているが、彼女達はナタルを話でしか知らない以上、そこまで頼る訳にはいかない。とも考えていた

 

確かにめぐみんとあるえが揃えばどうしても亡くなったナタルを思い出すだろうが、酷ではあるがナタルの居ない生活にも適応してもらわねばならない

 

めぐみんとあるえがしている事が成功する保証など何処にもないのだから

 

 

めぐみんの苦悩は続く

 

 

 

 

 

 

 

 

魔王軍の幹部ベルディアは一月程前に人間達が堕天使を討伐した場所へ来ていた

 

「どうすれば良かったのだろうな」

 

 

ベルディアは確かにあのレタスにアイテムを渡した

 

その行為に後悔はない

 

だが

 

 

 

 

ベルディアとて自身の行動の結果、命を落とした者がいるならば、それを悼む心くらいはまだ持っていた

 

ある時、ベルディアは日頃の職務の間隙を利用してここに来たのだが

 

 

そこには、黒髪で紅い目を泣き腫らしてした一人の少女がいた

 

少女はただ只管に泣いていたのだ。声も上げずに

 

その少女は衰弱していたのか、暫く後に倒れてしまった。その為ベルディアはいけ好かない何処かの悪魔を通じて、リッチーのウィズへと連絡してもらった

 

 

 

 

 

が、今でもその光景はベルディアの心に焼き付いていた

 

 

ベルディアがまだ騎士だった頃に嫌となるほど見た光景、愛するものを喪った人そのものであったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔族の少女ゆんゆんはもがいていた

 

 

短い間ながらも濃密な時を共に過ごしたレタスであるナタルを喪ってから既に一月以上も経っている

 

かつてはボッチだった自分には、あるえとめぐみんがなんだかんだ言っても付いていてくれる

 

それは素直に嬉しい

 

 

だが、そこにナタルはいないのだ

 

 

危ない時を助けて貰って、色々な話も聞いて貰って、今までの勘違いがあったとはいえ、あるえとめぐみんと友達になれた

 

恐らくはゆんゆんだけでならば、ここまでスムーズに話はいかなかっただろう

 

 

少なくともゆんゆんはナタルのお陰だと思っている

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、ナタルを助けられなかった、助けられた自分に腹がたつのだ

 

しかも、今でもナタルを喪った悲しみから抜け出せずにいる

 

あるえとめぐみんが気にかけてくれているのは、解っている

 

だが、それでもこの弱い人間は時にヘタレで時に優しかったレタスの事を忘れられないし、その死を乗り越えれないのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクシズ教のプリースト、セシリーは最近のめぐみん達に危ういものを感じていた

 

 

 

めぐみんは聞くところによるとナタルの爆裂魔法の師だったそうだ。そしてセシリーは直接見ていないが、アクア様より聞いた話ではナタルは最期に爆裂魔法を使ったらしい

 

めぐみんの爆裂魔法にかける想いを多少なりとも知っているセシリーとしては、めぐみんの精神状態がかなり危ういと思っていた

 

が、これに関してはめぐみんとアクア様のパーティーリーダーであるカズマさんにより解決したと聞いた時には、胸をなでおろしたものだ

 

 

 

一見三人の中では最もダメージの少なさそうなあるえとて、アクシズ教のプリーストとしてそれなりに人と関わってきたセシリーからすれば、二人よりはマシ。その程度の差でしかないと見えた

 

幸いにしてと言うべきか、どうやら彼女は故郷に戻った際にある程度持ち直した様に見えており、余程の事がない限りは大丈夫だと思える

 

 

 

問題はやはりゆんゆんだった

 

元々人との関わり方が器用ではないゆんゆんである。ナタルの助けもあり、めぐみんとあるえとは良好な仲を築けていたが、その二人を見ると亡くなったナタルも思い出してしまう

 

かといって、カズマさんやアクア様と話をしても、やはりナタルの影がちらつく事になってしまうのだ

 

ゆんゆんも亡くなったナタルもアクシズ教徒である為にセシリーが相談に乗りたいのも山々だが、堕天使撃退の協力に対する報酬としてアクシズ教の教会がアクセルの街に出来た事もあり、セシリー自身も多忙な日々を送らざるをえなかった

 

 

では、アルカンレティアから増員を求めればどうにかなったかというと、それは極めて怪しい話となる

 

アルカンレティアはアクシズ教の総本山であり、多少強引な勧誘活動をおこなっていた。これをアクセルの街ですれば間違いなく住民や折角関係を修復出来たエリス教徒からも不審の目を向けられる事は容易に想像できた

 

更にアクセルの街にはアクシズ教の女神たるアクア様がおられる。これが明るみになれば、折角のアクア様の冒険者活動に支障も出るだろうし、ひいてはめぐみん達への余計な影響が出ないとも限らない

 

 

その様な事情もあり、セシリーは中々教会から動けなかったのだ

 

不幸中の幸いだったのが、めぐみんがこの教会にある書物を求めていた事であった

 

これにより、少なくともめぐみんの様子は定期的に見ることが出来た

 

だが、セシリーに出来たのはそこまでであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔族の少女、あるえは友人であるゆんゆんの事について悩んでいた

 

正確にはゆんゆんの想い人『だった』ナタルの事である

 

 

そう想い人だったのだ

既に彼は亡くなっている

 

 

ただのレタスだった彼だが、彼の喪失はあるえ達に深い傷痕を遺した

 

 

めぐみんは爆裂魔法の弟子である彼の死に直結した爆裂魔法について悩み、ゆんゆんは一月以上経った今でも彼が居ない事に苦しんでいる

 

 

幸いにもめぐみんは彼女のパーティーリーダーのカズマが何とかしてくれた様だが、あの時のめぐみんははっきり言ってしまえば、見ていられなかった程だった

 

 

だが、ゆんゆんには今もって明るい展望がないのが事実だ

 

 

気休めの言葉に意味などないのはめぐみんにもあるえ自身にも解っているからだ

 

 

 

 

あるえとナタルの出会いこそ最悪に近かったが、ゆんゆんとナタルと一緒にいた自分は間違いなく楽しかったのだから。確かに良くからかわれたり、逆にからかったりしていたが、間違いなくあるえにとって身近な異性はナタルだった

 

 

「駄目だね、筆も進まないな」

 

 

あるえは今、ナタルというヒトが歩んだ道を記そうと思っていた

 

彼はレタスで人間ではない

だが、彼は『人間らしく』なくとも『ヒト』としてあろうとしていた様にあるえは感じていた

 

 

 

 

別にレタスとしての生を過ごすのに友人はあっても良いかも知れないが、爆裂魔法やアクシズ教の教え等必要ではないだろう

 

勿論、彼が元々人間であったことも関係しているだろうが

 

 

今のあるえに出来る事はめぐみんと共にある事を調べる事と、こうして彼の存在を形にすることだと思っている

 

 

 

万人が知らなくてもいいだろう。彼は『英雄』でもないだろう

 

 

 

だが、彼の存在を知っている者が居ることは救いになるとあるえは願っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセルの領主の娘であるダクネスは鍛練に励んでいた

 

 

 

ダクネスはあの堕天使との戦いでアクアを守る事で一連の流れを維持する事に成功した

 

その結果として、堕天使を討伐しアクセルの街を守る事も出来た

 

 

が、カズマやアクア、めぐみん達紅魔族の人間の知り合いであるナタルという人物が命を落とす事となった

 

 

ダクネスがクルセイダーを志したのは、護る為だったのだ

 

確かにほんの、そうほんの少しだけは自身の趣味(カズマとアクア曰く性癖)が入っているが、何かを護る。という想いはダクネス、いやララティーナとしての本音であった

 

 

だが、今回の事で痛感した。如何に鉄壁の護りを誇ろうとも、零れ落ちる命はあるのだと

 

故にダクネスは剣技を磨く

 

 

今度こそは誰も喪わない様に、皆を護れる様になるために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上において様々な人の想いのある中、ある意味話題の中心でもある天界に、うっかり神がアストルムより帰還した

 

 

 

そこでうっかり神はナタルという存在の抹消こそ成功したが、神器については行方不明となったと報告した

 

 

この報告に対して、天界のナタル抹殺に賛成派は賞賛の声を上げるも、天界中層部としての意見としては神器の行方不明について懸念を表す者が大勢を占めた

 

 

そこで天界中層部の代表者達は一時うっかり神を謹慎処分とし、沙汰を待つように言い渡す事となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いよいよ携帯の状態がヤバイので、修理から返ってから改稿します

まことに申し訳ないです 


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楽園に至る道

このすばだけど、プリコネ要素がいるのでどうしようか懸案中ですが、仕上がったので上げてみる

尚、時系列は無視しておりますご了承下さい


あらすじ

 

エルフの少女アオイは数奇な運命に導かれた様に彼女の持つ『だいじょうぶマイフレンド君一号改』に人格が宿ってしまう

 

 

 

困惑するアオイ!

自重しないマイフレンド君!

 

 

 

頑張れアオイ!!

負けるなアオイ!

ぼっちとバイバイするのだ!

 

 

 

君の行動にアストルムの未来がかかっている・・・かも知れない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アオイとマイフレンド君はバイバイボッチ団ことBB団を結成し、団長をアオイ、副団長をマイフレンド君がする事となった

 

アオイは自分が団長をすることにかなり反対したが、マイフレンド君は一歩も譲らず、最終的にはアオイが折れる形となったのだ

 

 

 

BB団の当面の目標は

 

『キチンと他人と話が出来るようになろう』

 

である

 

 

 

副団長曰く

 

「アオイちゃんはしっかりしてるから、話さえ出来たなら大丈夫」

 

との事である

 

 

 

 

というわけで、結成の翌日に二人?は森を散策していた

 

マイフレンド君は何故か自律行動可能であったが、里の中でのそれはまずいとアオイが説得した結果、彼はアオイの懐の中に収まっていた

 

マイフレンド君としてはそれが不満らしく

 

 

 

「やーっと解放されましたわー」

 

「し、仕方ないじゃないですかぁ」

 

マイフレンド君の言葉にアオイも反論する

 

 

流石にエルフの里とはいっても、ブリキ人形が独りでに動くのは看過されないとアオイには思ったのだ

 

 

「や、まぁ、そうなんだけどねぇ」

 

謎のパゥワー(当人談)でアオイの目線の高さまで浮かび上がるマイフレンド君

 

 

 

傍目からすると、シュールを通り越してホラー染みているのだが、ここに居るのは元ボッチ?と元レタスである

 

 

残念な事だが常識など通用するはずも無かった

 

 

なお、喋る器官等は当然只のブリキ人形である『だいじょうぶマイフレンド君一号改』には備わっていないのだが、何故か発声出来ている。更に視覚も有している

 

にも関わらず、触覚や嗅覚は勿論だが、味覚も当然ない

 

とはいえ、そのあたりを話したところで解決しない為に一時的に棚上げとしたのだが

 

 

 

ドゴーン

 

 

 

「な、なな何ですか!」

 

おお、実に活きが良いのがいるようですなぁ

 

「ええー」

 

当然の轟音に驚くアオイと暢気なマイフレンド君

 

「いや、あれでしょ?

良くある事なんでしょ?」

 

「ありませんから!そんなことは!」

 

「ん?そーなの?」

 

「そうですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

和やか?なボッチ達を他所に轟音の元では戦闘が行われていた

 

「うわっ」

 

「!主様、お下がり下さい」

 

「う、うん」

 

黒髪の少年?と銀髪の幼女?が其処にはいた

 

「いっきますよぉー!」

 

「か、回復は任せて!」

 

オレンジ色の長い髪の少女とピンク色の髪の少女もおり、現在戦闘中であった

 

 

 

銀髪の幼女コッコロが黒髪の少年と出会った直ぐ後にこの様な状況となっており、此処にいる四人ともが状況を完全に把握している訳ではなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?ちょっと、なんなのよ!」

 

四人の奮闘を少し離れた場所で見ている人物は困惑していた

 

 

彼女は自身の主君から命じられてエルフの森へと調査に向かっていたのだが、その主君が身柄を抑えようとしている人物を偶然見つけた為に魔物をけしかけたのだ

 

 

標的は『あるアイテム』の為にかなりの戦闘力を有する。だが、それを維持するにはそれ相応の準備が必要であるが、彼女にとっては幸いな事に標的は一人であった

 

 

それゆえにけしかけてみたのだが、何の偶然か通りすがりの少女をターゲットとしてしまっていた

 

 

 

一応は標的も戦闘中である四人の中にいる為に目論見は成功したと言えなくもない。が、どう見ても標的一人の時よりも戦闘しやすそうである

 

 

というのも、通りすがりの少女が回復魔法の遣い手であり、更に銀髪の幼女が加わり、標的が前衛で幼女が中衛、通りすがりの少女が後衛と役割分担が出来てしまっていた

 

 

 

「こ、これはまずい。わよね

どうすればいいのよー」

 

結果論で言うならば、彼女は直ぐに撤退すべきであった

 

 

 

 

何故なら

 

 

 

「へ?

ギャッ!」

 

何処からか飛んできた野菜?が彼女に直撃したからであった

 

 

しかも運の悪いことに彼女の後頭部に見事に命中してしまい、無警戒だった彼女は気を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「どうしたんですか?」

 

マイフレンド君は微妙な声を上げた為にアオイは気になった

 

 

「いや、何かイヤな感じがしたから、とりあえず木の実を飛ばして見たんだけどさ、何かに当たったっぽいんだわ」

 

「え、感じがしたからって木の実を飛ばすとかおかしくありませんか?

それに誰かに当たったらどうするんです?」

 

「大丈夫っしょ

余程運が悪いか、油断してなきゃ当たったところで大したことないさ」

 

「そ、そういう問題じゃないような」

 

「何だろうなぁ、昔にそういうことされて悦んでいた変態の話を聞いた様な気もしなくもない」

 

「え〝」

 

 

アオイは耳を疑った

 

目の前のマイフレンド君が言うには、物をぶつけられたり、罵倒されて悦ぶ人物がいるらしいのだ

 

アオイはボッチではあるが、決して世間知らずではない

 

そんな恐ろしい人物が存在するとは到底思えない。もとい思いたくなかった

 

「じょ、冗談ですよね?」

 

アオイは懇願する様に聞く

 

 

 

「何かそういう特殊な人がいたって誰かが言ってた様な?」

 

発言したマイフレンド君も困惑していた

 

なんとなくの発言であったが、彼の記憶の大半は失われており、彼自身もその根拠がわからなかったのだ

 

 

 

 

 

因みにこれは『アクセル一のドM』ことラ○テ○○ナもといダク○○の事であり(プライバシーの保護の為に伏せ字を使用しています)、カズマとアクア、めぐみんから相談されていた為に彼も知っていた

 

 

ゆんゆんとあるえまで交えておこなった話し合いの結果「手遅れ」という残念な結論に至ったのだが、また別の機会があれば語ろうと思う

 

 

 

 

「?????」

 

記憶に無い筈の記憶の為に彼は混乱してしまい、その様子を見たアオイは里に戻る事を決め、すぐさまマイフレンド君と共に里へと戻っていった

 

 

 

 

 

 

もしも、この時にアオイが違う選択をしていれば早々に人間の友達が出来たのであるが、何の因果かそうならなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、女神アメスは少年?を地上に送った後、力を少々使いすぎた為に一時的ではあるが、活動不能となってしまった

 

 

 

「とりあえずは無事だといいのだけど」

 

アメスは少年の取り巻く状況が不明であった為にコッコロというガイド役と言う名のサポートをつけた

 

だが、現在の彼女が出来るのはその程度である

 

とある理由からこの世界は不安定であり、記憶喪失の少年を送り込む事に対してアメスも色々と葛藤があったものの、最終的に送り込む事となってしまっていた

 

 

 

「はあ、こんな時に別世界から面倒事まで持ち込まないでよ」

 

 

 

別世界の住人であったナタルというレタス。正直な話として、一応名目上は女神であるアメスであっても理解しきれていなかった

 

しかも出自も転生者であり、彼方の天界の不手際により野菜に転生した人物。

この時点でアメスはお腹いっぱいにも関わらず、これに堕天使の力を一部取り込んでいる。そこに向こう側の神器まで宿しているとなれば、厄ネタでしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

その厄ネタは現在困惑していた

 

 

というのも、アオイとはぐれてしまったからである

 

一応、エルフの領域までは一緒だったはずだが

 

御歳○○歳にて迷子という冗談にもならない状況であった

 

因みに迷子の場合はその場から動かないのがセオリーであるが

 

「うん、ヨシッ!(現場猫感)」

 

と何を納得したのか低空飛行を始めた

 

低空飛行といっても流石に草むらに隠れるのは宜しくないので、50センチくらい地面から離れていたが

 

 

 

 

 

エルフ族の少女、クロエは現在絶賛困惑中であった

 

 

というのもである

 

「は?え、何あれ?

え、ブリキの人形が飛んでんの?」

 

 

彼女が困惑してある様にブリキの人形が空を飛んでいるのだから

 

 

「は?飛んでる

ウチの見間違え、じゃないよね、知ってた」

 

 

余りの常識はずれの光景に自分の見間違えであって欲しいと、いたいけな少女の願いは二度見した瞬間に打ち砕かれてしまった

 

人の夢と書いて儚いとは良く言ったものである

 

 

 

 

少女クロエは元々ランドソルの少しばかし治安の悪いところに住んでいる

 

本来ならばこの様な場所に居る必然性はないのだが、これには彼女の家庭の事情があった

 

 

というのも、彼女には弟が複数おり、更に彼女の通っている学園『聖テレサ女学院』は所謂上流階級の子女が多数在籍する伝統ある女子校であった

 

故にそれ相応の金銭的負担をクロエの家庭に強いることになった

 

 

勿論、それにクロエの家族が不満を持つ訳でもないが、クロエ自身がどうにか家計を助けたくなるのも仕方ないことであろう

 

 

 

だが、聖テレサ女学院は歴史ある学院であり、悪く言えば古くさい伝統を重んじているともいえた

それゆえに課外活動であるアルバイトに対しては寛容ではなく、学院としてアルバイトは禁止となっている

 

 

 

そこでクロエは少しばかしアウトロー寄りのアルバイトをする事で学院にアルバイトがばれない様にしていたのである

 

都合の良いことにアウトロー寄りのアルバイト故、給料面での待遇は悪いものではなかった

 

 

 

今回此処まで来たのはエルフ達の森にしか自生しないとある植物を採集の為である

 

幸いにもクロエはエルフ族のために森のエルフからの拒絶もない

 

 

 

『予想より早く終わる』

そうクロエは思っていたのだが

 

 

 

「とりあえず落ち着こう

ウチの目的は植物採集。この際、あの妙なのは見なかった事にしよう

うん、その方が色々良いよね」

 

 

クロエはあの妙なのを無視する事に決めた

 

 

 

 

 

英断である

 

だが、彼女が彼方を認識したと言うことは逆もまた然り

 

 

 

「どもー」

 

「にゃあああああっ!」

 

 

 

 

とある人物曰く

深淵を覗いている者はまた深淵からも見られている

 

 

とさ




というわけでプリコネ界のヤベー奴とのファーストコンタクトと相成りました

といっても、クロエネキはそこまでヤバくないとも思わなくもないけども

御一読頂きありがとうございました


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果てない空

此のような小説をお気に入りして下さっている皆様

並びに読んで頂いている皆様

あけましておめでとうございます


昨年は私の小説みたいな物を読んでいただきありがとうございました

また、これから読んでやろうと思っている方へも感謝申し上げます



この話を以てこのすばとプリコネの並行した話は終わる事となります事を此処に記させて頂きます


それでも宜しければ、どうぞ


 

エルフの少女アオイは切に思った

 

 

「だ、誰か助けてくださーい!」

 

 

 

時系列は何処かのお馬鹿なブリキが余計な事を仕出かした時まで遡る

 

 

 

ブリキ人形は自分が見られている事に気付いていた

 

 

訳がない

 

 

五感のうち視覚と聴覚しかない人形が第六感を働かせられるだろうか、いや、ない!

 

 

 

 

とまれ彼?はクロエの視線に何故か気付いてしまった

 

 

気付いてしまったならば何かしないといけないという謎の使命感に駆られてしまった

 

そこで、草の背丈より上を飛行していた彼は草むらの中に潜伏した

 

 

 

 

 

ここより暫くブリキの独り言をお楽しみ下さい?

 

 

「うぉ、いったぃ!」

 

「うぬぬぬぬ」

 

「あ、そういやさ、俺ってばブリキ人形じゃん。痛いわけないなぁ、HAHAHA☆」

 

 

とまぁ、何とも言えない一人相撲の末、彼はクロエの背後に回ることが出来た

 

 

なお、クロエ嬢はその間自分の常識を守ろうと必死になっていた事を此処に記す

 

 

 

 

そして

 

 

「どもー」

 

 

「にゃああああっ!」

 

 

となってしまった訳である

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエは

 

 

「いや、なんなの。アンタさ

こんな所でさ、一人でいる女の子驚かせて喜ぶ特殊性癖の人間?じゃないよね、やっぱり

うん、知ってた」

 

「まぁまぁ、世の中には不思議が満ち溢れてるって事で良いんじゃないかなぁ?」

 

「や、確かにさ。魔法とかあるから否定はしないけど。

その不思議の塊みたいなアンタが言うのはどーなのよ?」

 

「不思議の塊みたいなの?

それはそれは興味深い

で、その珍妙なモノは何処にあるのさ?」

 

「え、なんなの

自己分析出来ない系のブリキなの?

というか、ブリキが喋るとかさ、ウチの常識粉々なんだけど。もう訴訟も辞さない話なんだけど」

 

「おや?ブリキ相手に訴訟とか多分世界初じゃないかな?

つまり君はこの部門で世界一となるわけだ

おめでとう」

 

「いや、世界一とか確かに心惹かれなくはないけどさ。もっと、こう。あるでしょ?」

 

「む?」

 

「何?」

 

クロエとブリキ人形は言葉の投げ合いをしていたが、突然ブリキ人形が止まった事でクロエは怪訝に思った

 

 

 

 

「ブリキさぁーん、何処ですかぁー」

 

「お、しまった

アオイちゃんを忘れてた」

 

「いや、そこ忘れちゃ駄目なやつじゃない?」

 

 

遠くから聞こえてくる泣きそうな声にブリキ人形は反応した

 

「んじゃ、とりあえずお嬢。迎えに行ってくるわ」

 

「はぁ

え?お嬢ってウチの事なん?」

 

ブリキ人形の言葉にまた狼狽えるクロエであった

 

 

 

 

 

「人形さーん、どこですかー」

 

アオイは必死になってブリキを探していた

 

既に半泣きである

 

 

 

当のブリキはクロエと呑気に会話していたというのに

 

 

 

「アオイちゃん、ごめんなー」

 

「ブリキさん!?

よかったぁー、無事だったんですねー」

 

「いや、ほんとごめんなさい」

 

アオイはやっと見つけたブリキ人形に抱きついた

 

流石に憔悴しているアオイを見てさしものブリキ人形もなけなしの良心が痛んだようで、真面目に謝っていた

 

 

 

 

 

 

「え?なんでウチ此方に来てんの?

いやこれ、ウチお邪魔虫じゃない」

 

心配になって追いかけてきたクロエは物陰で狼狽えていた

 

 

 

クロエという少女は些か分かりにくくはあるが、非常に面倒見の良い好人物である

 

ただ、少しばかり分かりにくいだけなのだ

 

 

 

 

 

「いや、そのね。アオイちゃん

そこの陰にいるお嬢と話してたんだよ」

 

アオイが落ち着き、クロエはその場を離れようとしたタイミングでブリキはまたぶっ込んできた

 

「ひょえっ!」

 

「はっ?」

 

 

 

 

アオイとクロエが落ち着いた後、何とか話の出来る様になっていた

 

 

なお

 

 

「いや」

 

「ピョッ!」

 

「あのね」

 

「ひょえっ!」

 

「だからさ」

 

「あうううう」

 

「・・・・・・ねぇ、ウチってそんなに怖いかな?」

 

「ごめん。ほんとっーにごめん

アオイは人に慣れてないだけだから

別にお嬢は怖くないと思うよ?」

 

「・・・・・いやまぁさ、いいけどね、別に」

 

と一人の心優しいエルフの少女がかなり傷ついていたりしている

 

 

 

 

 

そして冒頭に戻る

 

 

クロエのショックを受けた表情を見たアオイは

 

「だ、誰か助けてくださーい!」

 

 

 

と悲鳴を上げたそうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃アメス様は

 

 

「んー、大丈夫かしらね。あの子達」

 

 

コッコロと騎士君こと、ユウキが現在ギルド『サレンディア救護院』に居るのだが、どうにも二人は面倒事に恵まれている様である

 

 

「といってもねー、今の私じゃ何も出来ないのが現実なのよね」

 

アメス様の悩みは尽きない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方遠く離れた世界では

 

 

 

「と言うわけでちょっと冒険に出掛けましょう!」

 

と何処ぞの蒼い女神様が仰ったとか何とか

 

 

 

 

 

二つの世界

 

 

それを繋ぐものはあるのだろうか?

 

 

 

未だ空は遥か彼方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

人間が

 

 

「私は、会いたいです!

たとえ私を忘れていたとしても、それでも会いたいんです!」

 

「ふむ、世界の理すら越えた先にあるもの、か

興味深いね

勿論ゆんゆんだけを行かせようとは思わないから、私も行くとしようかな」

 

「で、でも」

 

「ゆんゆん

君だけ行ってどうするんだい?

確かに君は優秀なアークウィザードだろう

だが、それだけでどうにかならないなら?」

 

「う」

 

「それにね、私だってあのレタスに言いたい事は山ほどあるのさ」

 

「あ、あるえ」

 

「なに、私の『紅魔族伝説』にまた一つの話が増えるだけさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

女神が

 

 

「女神アクア、女神エリス。貴様ら正気か?」

 

「私達はね、女神なの

そして私達には彼等を見守る義務があるの」

 

「アクア先輩は転生者やアクシズ教徒を。私はエリス教徒やこの世界のヒト達を」

 

「それが神ってもんでしょう!

じゃなきゃ、私達は何のために居るのよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔が

 

 

「ふん、貴様達に力を貸すなど不愉快極まるが」

 

「ハハハ!その割にはやる気はあるようだが?」

 

「喧しい奴だ!」

 

 

 

 

 

 

とある畑で

 

 

「キャベ、キャキャベッ!」

 

「ビビ、ビ、ビ」

 

 

 

 

 

ある教会で

 

 

「アクア様、そして今回だけはエリス様

どうか、どうか、此のような最後は認められないのです。愛する者が他ならぬ神によって引き裂かれる等と

 

どうか私達の仲間であるゆんゆんさんとナタルさんに祝福を」

 

 

 

 

 

天界のとある場所で

 

 

「女神アクアと女神エリスのみに任せておいたのであれば、我々他の神や天使は何のために居るのか?

あのリフェの惨劇にも関わる事なく、唯己達は安全な所から見下ろすだけなのか?

違う!違う

そうであってなるものか!

 

 

 

 

とある里の片隅では

 

 

「娘が、娘がぁっ!」

 

「解る、解るぞ」

 

「あーあ、ゆんゆんに置いていかれたかぁ」

 

「でも良いわよね、世界すら越えてでも逢いたい人に出会えたなんてさ」

 

「ふむ、ゆんゆんは強くなったな」

 

「恩師として感慨深いか?」

 

「本当にゆんゆんは素敵な人に出逢えたのね」

 

「貴方、大丈夫なのよね?」

 

「全く、いきなりとんでもない物を作らせて

だが、大丈夫だ」

 

 

 

 

 

 

 

此処は剣と魔法の存在する世界

 

 

 

 

なればこそ、不可能というものを越えることも出来るのかも知れない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回

 

 

 

 

此処から始めよう





御一読ありがとうございました

これよりはクロスオーバーを本格化させる運びとなります

皆様のご期待に沿えぬ事も多いと存じますが、完結に向けスパートをかけて参りますので宜しければお付き合い頂けたならば幸いです


皆様にとってこの一年がより良い年であることをお祈りしております


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願う明日へ
此処から始めよう


難産でした


相変わらず読みづらい文章かも知れませんが、それでも宜しければどうぞ


 

 

エルフの少女アオイと同じくエルフの少女クロエは出会った(余計なブリキ人形も付属しているが)

 

これからどうなるのか?

 

 

 

 

 

 

クロエはアオイの必死の謝罪とブリキ人形によるフォローにより何とか精神を持ち直した

 

 

「本当にごめんなさい!」

 

「あー、うん

もう良いって」

 

「で、でも」

 

「いや、だから」

 

 

 

「その辺にしときなって」

 

恐ろしい無限ループに陥るかとクロエが内心で恐怖していたが、ブリキが割って入った事で事なきをえた

 

 

「アオイちゃんは良い娘なんだからさ、早いとこ人と緊張せずに話せるようになろうや?

お嬢、じゃなくて、クロエちゃんはもう少し分かりやすくした方が良いかもね」

 

「す、すみませぇん」

 

「あ、うん。努力はするけどさ」

 

明らかにさっきクロエと話していた時に比べて彼?は落ち着いていた

 

「え、というか何なのアンタ?」

 

「今更やね」

 

クロエの質問にブリキ人形は苦笑している様であった

 

 

「とりあえず名前は『だいじょうぶマイフレンド君一号改』

何でブリキ人形なのかは知らないし、元々何だったのかも解らない」

 

「は?」

 

 

クロエは一瞬言っている事が解らなかった

 

 

「いや、ゴメン

なんだって?」

 

「だから『だいじょうぶマイフレンド君一号改』だって」

 

「いや、そのさ、そっちも確かにアレだけど」

 

「ん?記憶がないこと?」

 

「何でそんなヘビーな事をさらっと言うのかね、このブリキ人形は

てか、アオイだっけ?

どゆこと?」

 

「あ、え、ええっと」

 

クロエはどこかズレているブリキ人形よりも話のわかるであろうアオイに話を聞こうとする

 

 

「えっと、ブリキさんが何で動けるとか、喋れるのかとか全然わからないんですけど」

 

 

「あ、そーなの」

 

「まぁ、人生色々あって事さ」

 

「えええ」

 

「いや、まぁ、いいけどさ」

 

 

クロエは理解する事を放棄した

 

 

同じエルフという境遇の少女を見つけて喜んでいる一方で困惑しているアオイと、未知との遭遇に混乱しているが表に出さないものの内心はアオイという同じエルフ(常識人)がいる事を喜んでいるクロエと、マイペースなブリキであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃

 

 

女神アクアとエリスは天界上層部よりとある許可を取り付けてきた

 

 

 

「どうにかなるものなんですね」

 

「何言ってるのよ、エリス

なるものじゃないの、するものなのよ?」

 

「いや、他の世界への介入なんて普通は許可されませんよ?」

 

「普通はそうでしょうね

けど、今回の事は私たちのミスよ

平和な世界(日本)の人間を今まで勝手に巻き込んでおいて、今更じゃないかしら」

 

「まぁ、確かに」

 

エリスはアクアの言葉に苦笑しながらも同意する他なかった

 

 

 

 

元々の問題は此方の世界の住人が死後、カズマ達の世界の様な平和な世界に転生したがった事では、決してない

 

 

寧ろ、魔王等の対処できない物に対して勝手に『転生特典』というものを押し付けて此方に呼び込んでいる事が原因である

 

 

その結果として日本側の世界の減ったモノを此方から転生させる事で補填しているだけに過ぎないのだ

 

 

 

「というか私も貴女もだけど、本当に危ないなら私たちみたいなモノが出ていけば良いのよ」

 

「それは」

 

「言いたいことは解るわよ、エリス

でもね、貴女や私を信仰してくれている皆を助けたいと思うでしょう?」

 

「そう、ですね」

 

「それが天界とかいう傍観できる場所から見てるアイツ等には分からないのよ

信仰は欲しい。でも何もしない

ふざけてると思わない?」

 

 

アクアとてカズマが特典として引っ張っていかなければ、間違いなくそんな考えは持たなかっただろう

 

だが、アクアはカズマと共に様々な経験をした

 

それゆえに自分達天界の者の考え方ではどうにもならない事が多くあることを知った

 

勿論、アクアは女神であり、アクシズ教の御神体である。全くの無知ではない。ないが、知識だけと実際の経験では大きく認識が異なる事は良くある話

 

 

別にアクアは今でも悪魔は嫌いだし、恐らくそれはこれからも変わらないだろうと思う

 

 

だけど、ウィズやあの店のサキュバス達の様なアンデッドや悪魔もいる事を初めて知った

 

彼女達は確かに天界の考え方では不浄で異端だが、だからとてアクセルの街で悪さをしている訳ではない。寧ろアクセルの街の中に彼女達の居場所は確かにあるのだ

 

そうなれば、流石のアクアとて問答無用で浄化という訳にはいかない

 

 

 

 

まぁもっとも、あの気に入らない仮面の悪魔とはいずれは雌雄を決する事になるだろうが

 

 

悪魔、アンデッド、人間、天使、神

 

種族毎に一括りにするには、余りにも皆違いすぎるのだ

 

 

 

 

そして神というものはそれを見守るべきなのだ

 

傍観者ではない、神や天使とてこの世界の一部だとアクアはカズマ達との冒険で学んだ。だが、彼等はリフェの件において如何なる働きもアクアやエリスへの連絡すらしなかった

 

 

だからアクアは天界で高みの見物をしている者達に不満しかなかった訳である

 

 

 

 

「でも良いんでしょうか?」

 

「んー、確かに普段なら通らないけどね」

 

だからこそ、他所の世界への過度な介入は慎むべきという意見もアクアとエリスの中にもある

 

 

だが

 

「幸いなんて言いたくないけど、彼の器をよりにもよって別世界へ追いやったのよ

それなのに、彼の器に使った神器だけは惜しんでいるんだから、どうしようもないわね」

 

「そうですね」

 

そこはエリスとしてもアクアに全面的に同意できる

 

 

 

彼は穢れているから、此方の世界には置きたくない。だから追放した

 

けれど、彼の器に使った神器は此方の世界の物であるから回収すべき

 

でも自分達は危ないから行きたくない

 

 

この話を聞いたエリスはアクアが止めなければ、上層部の前であっても暴言をはいていただろう

 

方や自分の存在をかけてまで愛する人を守った者。方や自分達の保身や名誉しか考えない者。どちらが穢れているのやら

 

 

 

 

「ですが、私たちは此方を離れられません」

 

「それについて聞いたけどね、あの子の元上司が回収に行くそうよ」

 

「そう、ですか」

 

女神アクアと女神エリスとしてこの世界での職務のある二人は動けない

 

だから、本来この様な話が通る道理もないのだが、リフェの上司が責任を感じているのか、神器回収にあたるとの事であった

 

 

それ故に今回の様な話が特例として認められたのである

 

 

 

「でも」

 

「そうね

私たちの都合で振り回した挙げ句、帰れるかも分からない旅路へ向かわせるのは気が引けるわね」

 

 

 

 

 

 

この神器回収との名の任務だが、アクアは彼の上司から聞いていた

 

 

「彼は記憶こそ失っているし、レタスの体ですらないが、確かに生きている」

 

 

 

それを彼女に伝えれば、彼女は迷いなく往くことを決めるだろう

 

 

 

 

 

アクアはアクシズ教に信仰されている女神である

 

 

彼女もまた信者たちを自分の子供のように思っている

 

だから、彼女の想いを尊重したい

 

 

でも、彼女は共に冒険した仲間でもある。仲間としては永遠の別れになるだろう旅路に向かうことは止めたい。況してやこの一件の責任はアクアにもあるのだから

 

 

 

 

アクアは悩んだ

 

 

多分、どちらの選択をしようとも、後悔するだろう

 

 

カズマ達にももしかしたら、軽蔑されるかも知れない

 

 

 

 

 

 

 

でもアクアは『女神』なのだ

 

 

人の運命すら左右してしまう理不尽な『神』なのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクアは彼女に上司から聞いたことと、これからアクアが出来ることをゆんゆんにだけ話した

 

 

彼女はやはり、躊躇いなく往くことを選んだ

 

 

「確かにもう帰ってこられないかも知れない

でも、どんな形でも会いたいんです」

 

彼女は涙を流しながら、そう言った

 

 

 

 

 

アクアは覚悟を決めた

 

 

たとえ仲間から恨まれようと、憎まれようと彼女を必ず彼に会わせる為に尽力すると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクアから話を聞いたゆんゆんは直ぐに紅魔の里へ戻り、両親や知り合いに話した

 

 

両親は勿論、ふにふらやどどんこを始めとした級友達も猛反対した

 

 

だが、ゆんゆんは一歩も退かなかった

 

 

そして、最終的にはゆんゆんの母とめぐみんの母親であるゆいゆいがゆんゆんの味方をした

 

 

最終的にゆんゆんの願いは叶うこととなる

 

 

 

 

ゆんゆんはアクセルの街でアクア達を待つことにした

 

 

 

 

 

 

「行ってきます」

 

 

 

里からテレポートで離れる時、ゆんゆんの目から涙が零れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿に戻ったゆんゆんだったが、彼女にはまだ関門が残っていた

 

 

 

 

 

「ゆんゆん」

 

そこには眼を紅く染めためぐみんとあるえが居た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めぐみんは最近のアクアの様子がおかしい事を気にかけていた

 

 

 

あの堕天使の事件から少し経った頃、やっといつものアクアに戻ったとめぐみんは内心安堵していた

 

彼女達のパーティーにおいてアクアは間違いなくムードメーカーであり、彼女に元気がなければパーティー全体の雰囲気も落ち込んでしまう

 

 

 

 

カズマはあの事件で自分の無力さを痛感したのか、冒険の合間を見てダスト達のパーティーともクエストを積極的にこなす毎日を過ごしていた

 

更にウィズの店にも通い、彼女から魔法のスキルを学ぶ事もしている

 

 

 

 

ダクネスは自分の実家に戻る事もあるが、カズマと同じく他のパーティーに加わる等して、攻撃と防御両方に磨きをかけている

 

 

 

 

めぐみん自身も使う魔法は爆裂魔法のみとはいえ、効率の良い運用法や戦闘における知識、モンスターの知識を集めながら、どうにか親友の想い人を取り戻す方法も模索していた

 

めぐみんの誇りであり、亡くなったナタルも好んだ爆裂魔法。

彼の想いを継ぐ意味でも爆裂魔法以外を習得する選択肢はなかった

 

めぐみんの想い『弟子が何処にいようとも誇れる。そんな偉大な魔法使いになる』

その事を守るために

 

 

 

あるえも紅魔の里や王都やアルカンレティア等に行き、知識を貪欲に求めていた

 

 

 

 

そんな中でアクアの様子がまたおかしくなった事にめぐみんは気がついた

 

 

それをダクネスに話したところ、クリスも様子がおかしい事がわかった

 

 

 

 

堕天使の事件でアクアが女神アクアであり、クリスが女神エリスであることをめぐみんは知った為に、この二人の様子がおかしい事が気になった

 

 

 

そして少し後にゆんゆんが覚悟を決めた様な顔つきをして、紅魔の里へと帰っていった事をセシリーより聞いた

 

 

 

あるえと話し合った結果、ゆんゆんの宿にめぐみんかあるえのどちらかが常に張り付く事を決めた

 

 

 

 

 

 

そしてゆんゆんが帰った事を知ったあるえの連絡を受けためぐみんは宿に急行したのだ

 

 

 

 

 

「ゆんゆん、どういう事ですか?」

 

「私は、ナタルさんに会いに行くの」

 

「・・・・方法があるのかい?」

 

めぐみんの問いに迷いなく答えるゆんゆんとゆんゆんの答えに疑問を持つあるえ

 

 

 

「・・・・アクアですか」

 

めぐみんの中で最近の様子のおかしかったアクアと目の前のゆんゆんが繋がった

 

「・・・・・あまり酷な事を言いたくはない

が、友人としてゆんゆんを心配する人間として言わせてもらう

死んだ人間は生き返らない。残酷だが、それが現実だよ」

 

激昂するめぐみんとは正反対に、ゆんゆんの発言に顔をしかめるあるえ

 

 

とはいえ、あるえの眼もこれ以上ない程に紅くなっているからどの様な感情を抱いているのかは明白だが

 

 

 

「解ってる、解ってる!

それでも、それでも会いたいの!」

 

 

 

ゆんゆんはめぐみんやあるえ以上に眼を紅く染めて、泣きながら感情をぶつける

 

 

 

ゆんゆんとて理屈では理解していた

 

 

あのヘタレで優しく、どこかズレたヒトはあの時死んだのだと

 

暫くは食事すらロクに喉を通らなかったし、今でもレタスだけは決して口に出来ない

 

 

 

 

アクアさんも「ぬか喜びにさせるかも知れないし、記憶が戻っているのかすら、怪しいの」と言っていた

 

 

 

人によってはもしかしたら、諦めが悪いというかも知れない

 

 

 

 

「・・・・そうですか」

 

めぐみんは力なくそうこぼした

 

 

めぐみんとて解っていた。ゆんゆんは決して諦められないと

 

だからこそ、めぐみんとあるえはゆんゆんに黙って彼と再会できる方法を探していたのだ

 

 

 

 

 

 

『死者蘇生』

 

それはまさに神の御業であり、全ての理屈に反する禁忌

 

 

それはいつの時代の権力者も追い求め、叶わなかった幻想である

 

アクアは女神である以上、めぐみんが知る事のない手段を有している可能性は当然あるだろう

 

一応、アークプリーストには死者蘇生の魔法もあると聞くが、当然難易度も桁外れだとも聞く

 

 

あの場に居合わせたアクアが使えたものを使わなかったということはまずないだろう

 

ということは、ナタルの死は避ける事の出来なかったということ

 

 

 

つまりはナタルの蘇生とは女神アクアの権能すら上回る難事であるということになる

 

 

 

それ相応の『代価』が必要であろうことは確実だろう

 

だが、それでもゆんゆんは諦めないだろうというのはめぐみんとあるえにも容易に想像できる

 

 

 

であればこそ、先にそれを調べた上でめぐみんとあるえ等で判断しようと思っていた

 

可能、不可能でなく、それがゆんゆんにとっての危険になり得ないかを

 

 

 

もしも、それがゆんゆんの危険となるのであれば、恨まれたとしても、それを許す気は二人にはない

 

ゆんゆんが自分や他者を犠牲にしてまでナタルを甦らせたところで、彼がよろこぶとは到底思えないのだから

 

 

 

もしも、その様な方法でしか彼と会えないのであれば、めぐみんとあるえはその方法を握りつぶすつもりであった

 

 

 

 

 

でなければ、あのナタルのしたことは何だったのか?

 

 

文字通り『存在を睹して』までゆんゆんを守った彼と会うためにゆんゆんが命を落とすなど、彼の行為全てを否定する事に他ならないと思ったからだ

 

 

 

 

めぐみんにとっては同じ『爆裂魔法』に魅せられた仲間であり、どの様な形であれど確かに『弟子』だった

 

 

あるえにとって、あのレタスはことある毎に頭を悩ませてくれた問題児であった。だが、ゆんゆんといる彼を見ていると不思議とその為の苦労も悪くないと思わせてくれる『何か』が確かにあったのだ

 

 

 

 

 

二人とも叶うなら、ゆんゆんと彼を再会させて欲しいと願っていた

 

 

ゆんゆんの目を見たあるえは

 

 

「ふぅ

どうやら私たちの危惧した様な話ではないようだね

どうだろう、めぐみん。話を聞いてみようじゃないか」

 

 

少しだけ険の取れた顔でめぐみんに提案した

 

 

 

「・・・・・わかりました

ゆんゆん、アクアから聞いたことを話してもらえますね?」

 

 

「うん」

 

少しの躊躇いの後にめぐみんはそう言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、天界にて

 

 

「女神アクアも良く言ったものだ」

 

「当然かと」

 

天界の指導者の一柱とリフェの元上司は話をしていた

 

 

 

アクアは

 

 

「言われている事は解りますが、納得は出来ません

私達は生きとし生ける者によって支えられている事を忘れてはならない筈です

それを忘れたならば、『天使』も『神』もこの世界に不要だと思いますけど」

 

 

と、一連の元ナタルの処分を聞いた後に言い放った

 

 

その時にはそれなりの数の神や天使が同席していたのだが、女神アクアは物怖じもせずに言いきったのである

 

女神エリスは視線で殺すことが出来たならば、あの時の会場で大量のマナが出たであろうと確信できる程の殺意を視線に込めていた

 

 

 

 

 

「しかし、良いのか?」

 

「元より、 神器の回収すら出来ぬ愚か者にございます

なればこそ、禁忌を犯そうとも構いますまい」

 

「む」

 

堕天使リフェの上司であった目の前の下級の神は天界においては有能であった

 

仕事は出来るし、ある程度は融通も効く

 

 

中間管理職としては、天界でも五指の中に入ると指導者は常々感じていた

 

 

その様な者が、よりにもよって異世界に追放した者が宿している神器の回収等という職務に就いている事を知った時は耳を疑った程だ

 

 

そして、今天界の禁忌を犯そうとしているのであるからして、心境は複雑といえる

 

 

 

「異なる世界に人間を同行させるなど、この天界における最大の禁忌。

永久追放となろう」

 

「覚悟はしております

もし、仮に同行者が居らずとも追放を覚悟しております」

 

 

上司はうっかりナタルをブリキ人形に魂の一部を移してしまったことを悔いていた

 

元よりナタルにはリフェの事で既に多大な被害を与えているのに、更に被害をもたらしたのであればこそ、彼が死ぬまで償い続ける事を密かに決意していた

 

 

そして、叶うならば、彼を想っている少女と彼を再会させようと

 

 

 

 

 

それが彼に出来うる罪滅ぼしと考えて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな頃、アストルムでは

 

 

 

「○○○。失敗したのね」

 

 

とある城の大広間にて一番奥の玉座に座っている女性は足元に跪いている少女に声をかけた

 

 

「は、はい。申し訳ありません、『陛下』」

 

少女は怯えた表情で女性に返答した

 

 

ふーん、どういうことかしらね

 

 

女性は興味津々に呟いたが

 

 

「へ、陛下?」

 

 

 

「まぁ、いいわ

そちらの方は放っておきなさい

 

それより、見つかったのね『王女様』が」

 

「は、はい」

 

「なら、そちらの方を上手く処理しなさい

貴女に『○○○○○○○○』の力を折角あたえたのだから、その程度はしてもらうわよ?」

 

「わ、わかりました」

 

少女は顔面蒼白で答えた

 

 

 

 

「頼むわよ、私の可愛いキャル?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交差する想いと巡る思惑

 

 

逢いたいと願う少女と、無くしてしまったモノ

 

 

 

今は未だ分かたれた道だが、さぁ此処から始めよう

 

 

 

 

 

 

 

 





御一読ありがとうございました


しかしながら、拙作も昨年より皆様に読んで頂き、150名を越えるお気に入りや多数の評価を賜り、汗顔の至りです


新年早々に生活環境が一変した為に、相当遅い更新になるかと思いますが、宜しければお付き合い下さい


最後になりましたが、現在の世情は予断を許さぬ状況にありますが、皆様どうかお体等にお気をつけ下さい



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