装甲娘小説 転生隊長奮闘記 (kajoker)
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プロローグ

装甲娘をプレイしていて、久しぶりにダンボール戦機にハマってしまい、小説を書いてみようと思い、書いてみました。

所々、文章がおかしいところもあるかもしれませんが楽しんで頂ければ幸いです。

それでは、本編をどうぞ!


「う…ん…あれ?ここどこだ?」

 

ふと、目を覚ますとそこには辺り一面が真っ白な光景が広がっていた。

 

え?マジで何処だここ…確か、俺は久しぶりにダンボール戦機のプラモを買いに行くために近くの店に向かっていたはずだけど…

 

そこまで思い出して、突如として記憶が甦ってきた。

 

甦った記憶は店へ向かう途中で俺に向かって車が飛び込んでくる記憶…そして、そのまま俺が命を落とした記憶だった。

 

「そうか…俺は死んだのか…じゃあ、ここはあの世ってことか」

 

そう言葉を口にすると同時に自然と涙が零れてきた。

 

思い出すのは日々の幸せ…家族や友達と語らい、当たり前のようにご飯を食べて、風呂に入って…寝て、明日を迎える。

 

そんなありきたりではあるが幸せな日々だ。

 

「…はぁ、まだまだ生きたかったなぁ…」

 

「では、第二の人生を歩むのはどうじゃ?」

 

「えっ…!?」

 

不意に聞こえてきた声に思わずそんな言葉を口にする。

 

第二の人生…?どういうことだ?転生させてくれるとでも言うのか?

 

「いかにも!お主を転生させるつもりじゃ」

 

そう言いながら俺の前に姿を現したのは神々しいオーラを放つ老人。世間的にイメージされる神様のような人物だった。

 

「転生…本当なのか?」

 

「もちろんじゃ!それにしてもお主のような人間は久しぶりじゃな…大抵、この手の話はすぐに信用する人間が多いんじゃが」

 

「転生なんて、本当にするなんて思ってなかったし…何より、自分が死んだっていう事実だって受け入れられてないんだから、無茶言わないでください」

 

「それはすまんかったな…さて、話を戻すが転生する気はあるか?」

 

「まぁ、転生できるならしたいですけど…転生する世界を選べたりはするんですか?」

 

自分が死んだという事実をとりあえずは一旦飲み込み、そう尋ねる。

 

「残念じゃが、お主の転生先はすでに決まったおるんじゃ…今更、変えることはできぬ」

 

「そうですか…ちなみにどんな世界なんですか?」

 

「それは…今は教えることができんのじゃ。ただ、過酷な世界というのは間違いない」

 

過酷な世界…一体どんな世界なんだ?というか何で教えることができないんだ?

 

いくつもの疑問が頭に浮かぶが、とりあえず今は選択の余地はなさそうだ。

 

「わかった。色々と混乱してるけど、転生させてください」

 

「うむ、承った!じゃが、その前にお主には修行をしてもらう」

 

「修行…?何でそんなことをするんだ?」

 

「お主が転生する世界は過酷な世界だと言ったじゃろ?だから、お主に何の経験も積ませないまま転生させるわけにはいかんのじゃ…すまんの」

 

「な、なるほど…正直、不安しかないけどやるしかないか…」

 

それにしても、修行する必要がある世界って…本当にどんな世界なんだろうか…怖すぎるんだけど。

 

「では、さっそく始めるつもりじゃが…心の準備はできたかの?」

 

「…あぁ、なんとか」

 

「では、始めるぞよ!修行開始じゃ!」

 

神様がそう口にすると同時に辺りの景色が変化していく。

 

そうして、気づけば俺は荒廃した街の中に立っていた。

 

そして、10体ほどの大きな機械達が俺の目の前に出現する。

 

出現した機械達はどれも3メートル〜4メートルほどはあり、いくつもの銃火器を装備している。

 

(これは…!なんだろう、すごく嫌な予感がするぞ…)

 

そう直感的に感じ取り、近くの路地裏に全力で飛ぶ。

 

すると、その瞬間に大きな爆発音が響き、俺は自分の直感が正しかったことを理解した。

 

(何だよ!今の!あんなの喰らったら、絶対死ぬって…!これが修行…?冗談キツいって!)

 

「どうする?どうする?どうすれば良いんだよ!くそっ!ふざけんなよ!あの神、戻ったら絶対一発ぶん殴る!」

 

(とりあえず、一旦落ち着け、俺…今はこの状況を切り抜けるのが先だ。)

 

そう考えながら、何か武器はないかと辺りを見渡す。

 

そうして、自分がハンドガンと剣の柄のようなものを装備していることに気がついた。

 

「銃はまぁわかるけど…この剣の柄みたいなのは何だ?何かライトセーバーみたいだけど…スイッチみたいなものは…あった!」

 

そうして、スイッチを入れると光の剣が飛び出した。

 

「すっげー!マジでライトセーバーみたいだ!…っと、そろそろ場所を移動しないと!敵がいつ来るかもわかんないからな…」

 

そうして、光剣を展開しながら路地裏を抜ける。

 

だが、路地裏を抜けた先に居たのは機械の軍団…数は半分ぐらいになってはいるがそれでも十分脅威だ。

 

「嘘だろ!ここであの機械達かよ!…くそっ!どけーっ!!」

 

そう叫びながら、地を蹴り空中に飛ぶ。そして、一回転して敵の攻撃を回避し、その勢いのまま目の前の敵を一刀両断する。

 

続けて、サイドステップで左右の敵に近づき、そのまま切りふせる。

 

その直後、敵の銃撃が放たれる…それを回避して敵の懐に潜り込みそのまま撃破する。そして、残った敵に光剣を投げつけすべての敵を掃討した。

 

「はぁ…はぁ…やった?俺がやったのか…?ふぅ〜…」

 

敵をすべて倒しきり、安心感を感じると同時に疲労がどっと押し寄せてきて、思わず地面に座り込んだ。

 

「し、死ぬかと思った…あ、そうだ…まだ終わってないんだった…座り込むにしてももう少し安全な場所に行ったほうが良いな」

 

そう考えて立ち上がり、落ちていた光剣を回収しつつ近くの建物に身を隠すことにした。

 

//////////////

 

「…はぁ…はぁ…ふぅ…これで最後か」

 

ようやく最後の機械を倒し終え、一息つく。

 

あの後、建物に隠れつつハンドガンで1体ずつおびき寄せて撃破するという方法を取り、何とかすべての敵を倒しきった。

 

ったく…いきなりこんなことさせるとかどういうつもりだよ…本気で死ぬかと思ったぞ。

 

いやまぁ、すでに死んではいるんだけども……多分転生する前にこんなことさせられたのなんて俺ぐらいなものじゃないだろうか。実際どうか知らないけど。

 

『どうやら生き残れたようじゃな…ひとまず安心したわい』

 

「声だけ!?今どこに居るんだ!とりあえず一発ぶん殴らせろ!」

 

『落ち着くのじゃ!説明不足に関しては謝罪するがこれには深い訳があるんじゃ!ともかく今は修行に集中してくれ!まだ終わりではないからの…』

 

「まだ終わりじゃないのか…勘弁してくれよ」

 

『大丈夫じゃ…お主ならできる!きっと、切り抜けられるはずじゃ!』

 

「根拠のない自信!!…あぁっ!くそっ!わかったよ!やってやるよ!やれば良いんだろ!こうなりゃヤケクソだ」

 

『うむ!その意気じゃ!期待しておるぞ』

 

その言葉を最後に頭に響いていた声が聞こえなくなり、再び辺りの景色が変化していく。

 

ここから先の戦い、俺は生き残れるんだろうか…だけど、やるしかないよなぁ…もうなるようになれだ。

 

俺はそんなことを思いながら次の戦いに向かうのだった。

 

――――――――――

 

―――――――

 

――――

 

「うーん…」

 

「あ、隊長…起こしちゃった?」

 

「あぁ、おはよう…カリナ」

 

俺に声を掛けてくれたのは綺麗な金色の髪に碧色の瞳を持つ美少女、ミカヅキカリナ。俺の率いているチームアテナスの装甲娘で、コードネームはアキレスだ。

 

どうやらいつの間にやら眠っていたらしい…それにしても、随分懐かしい夢を見たな。

 

本当にあの修行は地獄だったぜ…巨大な機械を相手にするはめになるわ、ファンタジー世界に出てきそうなモンスター達と戦うことになるわ…他にも、とにかく色んな敵と戦うことになったからな。

 

その都度、一応攻略方法を神様が用意してくれてたけど、自分で考えてその方法を見つけださなきゃならなかったし、そこまで持っていくのが超大変だった。

 

だけど、おかげさまで俺は戦いというものを知ることができたし、敵の特徴を分析して、その敵の対処方をすぐに考えられるようになる力が身についたけどな。

 

そういう意味ではあの神様には感謝している…まぁ、あまりにも説明不足過ぎたのはどうかと思うが。

 

「うん?どうかしたか?カリナ」

 

俺がそんな風に過去を思い出していると、カリナが何やら驚いた顔をしていたので声を掛けてみる。

 

「隊長があたしの名前を普通に呼んでくれたからびっくりしちゃって…」

 

「おっと、すまん…コードネームで呼ばなきゃだな…寝ぼけてたってことで許してくれ」

 

「いや、全然良いよ!むしろ、どんどん名前で呼んで!そっちの方があたしとしても嬉しいし…」

 

「そうなのか?わかった。なら、今みたいに周りに誰も居なさそうだったら、極力名前呼びすることにするか?」

 

「うん、そうしてほしいかな…」

 

「了解。さて、時間も時間だしカリナもそろそろ寝ろよ…俺はもう寝る…それじゃあお休み」

 

「はーい。隊長もゆっくり休んでね……お休み」

 

カリナのそんな言葉を聞きながら、お休みの意味も込めて軽く手を振りながら俺は自室へと向かう。

 

このままソファで寝ても良いんだが、正直寝づらいんだよな…まぁ、あまりに疲れが貯まりすぎてる時は大して気にならないんだけど。

 

それに、エンペラーに余計な心配を掛けるかもしれないし、自室で寝るのが妥当だろう。

 

…さぁて、明日も朝早いしさっさと寝るかな。

 

俺はそんなことを考えながら自室で眠りに着いた。

 

 




といった感じのプロローグでした!

最近、ダンボール戦機のアニメを見返して見たんですが、やっぱり良いですね!それだけに装甲娘の世界でアニメで見た街並みが荒廃しているのを見ると心にくるものがあります…それでは今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます。


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初陣前夜

どうしよう…前書きが思いつかない!最近、小説を書く時に前書きと後書きの内容を考えるのに時間が掛かる今日この頃です。

とまぁ、それはさておき…ゲームの方で新章が配信され、少しだけ進めてみたんですが、オーバーセンスってダンボール戦機で言うオーバーロードみたいなものだったりするんでしょうか?

まぁ、進めて行けばわかることかもしれませんが。

さて…それでは、本編をどうぞ!




「ふむ、彼は順調にあの世界で生きているようじゃな」

 

彼、天野晴哉を装甲娘の世界に転生させた張本人である神は彼の様子を眺めながらそう言葉を零す。

 

普段であれば、転生した後のことは本人の問題であるため、わざわざこんな風に様子を見ることはほとんどないのだが、この神にはそうしなければならない訳があった。

 

それは、晴哉を転生させた理由にある。

 

実は、彼の転生した装甲娘の世界は少々事情が異なる。本来なら、装甲娘の世界には隊長と呼ばれる存在が必ず居るのだが、彼の転生した装甲娘の世界には隊長が存在しなかったのだ。

 

このままでは、世界が正しく存続することができない…故に、神はそのタイミングで、偶然車の事故に巻き込まれ命を落とした天野晴哉を装甲娘の世界に転生させることにした。

 

要は本来の装甲娘の世界との帳尻を合わすために彼を転生させたということだ。

 

ただ、思いっきり神様側の事情であるため、それに晴哉を巻き込むことに罪悪感を覚えた神はせめてもの償いとして、1年間彼を修行させたり、装甲娘の世界では必須であるLBCSのメンテナンスの仕方を教えた。

 

まぁ、晴哉には事情を一切説明していないのだが。

 

「本当に彼にはすまないことをしたのぉ…だから、せめて彼がピンチの時は儂が助けてやらねばな…まぁ、今のところその心配はなさそうじゃが」

 

そう口にする神の視線の先には晴哉が装甲娘達と楽しく談笑している姿が映っていた。

 

「晴哉、お主の行く末を見届けさせてもらうぞ…お主の道に幸あれ」

 

神はそう言葉を紡ぎながら、晴哉の様子を再び眺めるのだった。

 

/////////////

 

「ふぅ〜、ようやく終わった…エンペラー、手伝ってくれてありがとう。俺1人じゃ絶対終わらなかったよ」

 

「いえ、隊長のお役に立てたなら嬉しいです!」

 

そう言って、エンペラーことカタクラソフィアは笑みを浮かべる。

 

大人っぽい見た目ではあるが、その笑みは年相応でとても可愛いと思う。

 

彼女はファーストケース選考試合から防衛隊からアテナスへ来てくれた装甲娘で、今はチームアテナスのリーダーを務めてくれている。

 

「そうか…だけどエンペラー、あんまり無理するなよ…ただでさえ、お前は他にも色々と仕事をこなしているんだからさ」

 

「心配してくださり、ありがとうございます。ですが、本当に大丈夫ですから安心してください…隊長のお仕事を手伝うのも私がそうしたいからそうしてるんです」

 

「そうなのか?なら、良いんだが…」

 

だが、このままでは俺の気がすまない…うーん、せめて何かしてあげられないだろうか?

 

今居るのは俺の自室だ…俺が1人で仕事をしている所にエンペラーが来て仕事を手伝ってくれて今に至るわけだけど…しかし、こうして改めて見ると俺の部屋って本当に簡素だな。

 

最低限、生活に必要なものぐらいしか置いてない…唯一の私物と言えば、神様が渡してくれた特別なLBXぐらいなものだ。

 

LBXバトルは今はできないしな……うーん、どうしたもんかな。

 

そういえば、下に紅茶とかお菓子がまだあったよな…それを持ってきて、ティータイムにでもするか。

 

「エンペラー、ちょっと待っててくれ、下で紅茶を淹れてくるよ。ついでにお菓子も持ってくるから、仕事終わりのティータイムといこう」

 

「あ、ありがとうございます!では、隊長がいらっしゃるまでお待ちしております!」

 

「あぁ、待っててくれ」

 

そう告げて、俺は自室から下の階へと向かった。

 

―――――――

 

―――――

 

―――

 

「隊長ちゃん、何してるんら?」

 

「うん?ジョーカーか…見ての通り、紅茶とお菓子の準備だよ」

 

俺がティータイムの準備をしているところに声を掛けてきたのはジョーカーことミクリヤマココ。

 

一見、幼い子供のような容姿ではあるが立派な女子高生である。舌っ足らずで『だ』を『ら』と言ってしまう。

 

…まぁ、今はあまり関係のないことではあるな。

 

「誰かとお茶でもするのかな?かな?」

 

「あぁ、エンペラーとな。いつも彼女には色々と手伝ってもらってるから、たまにはリラックスさせてあげたくてな」

 

「なるほど、エンペラーちゃんと…ふ〜ん、へぇ〜…」

 

「何だ?ジョーカーも一緒にお茶したいのか?なら、一緒に行くか?」

 

「いや、遠慮しとくのら。さすがのジョーカーもそれぐらいの空気は読めるのら」

 

「空気を読む?何の?」

 

「隊長ちゃんは気にしなくて良いのら!それじゃあエンペラーちゃんとのティータイムを楽しんで来てね〜!」

 

「あっ!ちょっと待って!」

 

「どうしたんら?」

 

そう言いながら、首を傾げるジョーカーにクッキーが入った袋を手渡す。

 

「こ、これは…!」

 

「いつも何だかんだお前にも助けられてるからな…そのお礼だ。いつもありがとなジョーカー」

 

「隊長ちゃん…!ま、まぁ!隊長ちゃんがくれるっていうなら遠慮なくもらっておくのら!…あ、ありがとう」

 

「どういたしまして。それじゃあ、俺は部屋に戻るよ」

 

そう言って、俺は紅茶とお菓子を持って自室へと歩を進めた。

 

 

 

 

「これ…ラッピングされてるってことは、元々ジョーカーに渡してくれるつもりらったってことらよね…うぅ、そういう所本当にずるいのら…隊長ちゃん」

 

/////////////

 

「お待たせ、エンペラー…」

 

「スー…スー…」

 

「あれ?寝ちゃってるのか…まぁ、無理もないか」

 

ティータイムをしたかったところだけど、エンペラーを起こすのも悪いし、このまま寝かせてあげよう。

 

ただ、そうなると紅茶とお菓子をどうするかが問題だな…ハンターにお裾分けしに行こうかな…いや、それはエンペラーに少々悪い気がするな。

 

「しょうがない…エンペラーが目を覚ますまで待っていよう。最悪、お菓子は明日に回せば良いか…紅茶は今飲むしかないけど…」

 

そう口にしながら、紅茶に砂糖を入れてスプーンでかき混ぜてから紅茶を飲む。

 

この世界の状況的に紅茶を手に入れるのだって一苦労だから、味わって飲まなくちゃな。

 

…いよいよ明日が初陣か…この世界に来てから本当に色々なことがあったな。

 

この世界に来たばかりの頃は、神様から詳しい説明を一切されなかったせいで俺の知ってるダンボール戦機の世界とは違うというのもわからなかったから、とりあえず防衛隊に入って情報を集めることにしたんだよな。

 

それで、しばらく防衛隊に所属した後に、民間の警備会社、つまりアテナスを立ち上げて今に至る。

 

最初はなかなか試験に合格できる装甲娘がいなくて少々寂しい思いをしたものだが、そこからクノイチが入ってきてくれて、ジョーカーが来て、ハンターが来てくれて…アキレスにリボンがやってきて…ファーストケースになった。

 

今では、エンペラーもアテナスに来てくれて…随分と賑やかになったもんだよな。

 

…明日の初陣、いや、多分これから先も俺は彼女達を守り、導かなくてはならない…正直に言えば、俺にそんな大役が務まるのか不安でしょうがない。

 

でも、泣き言ばかり言っても変わらないのも事実だ…彼女達の命を預かっている以上俺も覚悟を決めないとな。

 

クノイチにも絶対に誰一人死なせないと約束したしな…約束は守らないとだ…こんな俺を信じてくれた皆の為にも。

 

「う…うん…はっ!私、もしかして寝てましたか?」

 

俺が改めて決意を固めていると、ベッドで寝ていたエンペラーが目を覚ました。

 

「おはよう、エンペラー…もう寝てなくて大丈夫か?」

 

「は、はい!おかげさまで何だかスッキリしました!」

 

「そうか、それは良かった」

 

「それよりも、申し訳ありません!隊長が、せっかくお茶の準備をしてくださったのに私ときたら…」

 

「いや、気にしなくて良いよ…むしろ、エンペラーの寝顔が見られたから得した気分だ」

 

「あぅぅ…!は、恥ずかしいです…まさか、隊長に寝顔を見られるとは…これはもう責任を取ってもらうしか…」

 

何やら小声で呟いているが、よく聞き取れない。

 

何か気にさわることでも言ってしまっただろうか?一応、謝罪しておいた方が良いかもしれないな。

 

「なんかごめんな…変なこと言っちゃったか?」

 

「へっ!?い、いえ!隊長は悪くありません!だから、お気になさらないでください!」

 

「そ、そうか?なら良いんだが…あっ、そうだ!紅茶、温かい内に飲んでくれ…今からゆっくりティータイムといこう」

 

「はい!喜んで!」

 

そう嬉しそうに返事をし、エンペラーは俺の席の前に座る。

 

そうして、予定より少し遅くなったがエンペラーとのティータイムが始まった。

 

そして、エンペラーと他愛ない会話を交わしながら初陣前の夜はゆっくりと過ぎていった。

 

 




といった感じの初陣前夜でした!

もうすぐ、装甲娘のゲームで新しいイベントが始まるようなので、今からとても楽しみです!

それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!


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激突!キラードロイド!

水着アキレスが当たらない…水着ジョーカーも当たらない。

ピックアップとは?等と思う今日この頃です。やはり課金するしかないですかね。

さて、この話はここまでにして、本編をどうぞ!


とある市街地で、装甲娘部隊ファーストケースがミゼレムと激戦を繰り広げている。

 

そのファーストケースの隊長、天野晴哉はアキレスこと、ミカヅキカリナを抱えて、眼前の敵を睨みつける。

 

その敵は人より遥かに大きいミゼレムであり、彼のよく知る存在にとてもよく似ていた。

 

「くっ!キラードロイドが元になってるミゼレムか…厄介な!」

 

キラードロイド、ダンボール戦機Wにおいて山野バン達の前に幾度となく立ち塞がったLBXキラー。その強さはLBXを遥かに凌駕しており、どれほど山野バン達が強くなっても油断できない相手であった。

 

「さぁて、どうしようかね…」

 

そう口にしながら、晴哉は苦し紛れの笑みを浮かべる。

 

自らを鼓舞し、この状況を切り抜ける為に。

 

――――――――

 

――――――

 

――――

 

そもそも、どうしてこのような状況になったのか、それは少々時間を遡る。

 

俺達は対ミゼレムの初の実戦部隊として、ミゼレム討伐に励んでいた。

 

訓練の成果か、ミゼレム討伐にはほとんど苦労することがなく、順調としか言いようがなかった。

 

実際、アテナスの皆も和やかに世間話をする程度には余裕があった。

 

しかし、あのキラードロイド型のミゼレムの出現により、事態は悪化していった。

 

ここまでの戦いで苦戦せず勝利してきた故か、アキレスはエンペラーの静止も聞かずにキラードロイド型のミゼレムに1人で突っ込んでしまい、逆に窮地に立たされてしまう。

 

そんなアキレスを救うべく、俺は彼女を庇うように抱えて、近くの物陰へと身を隠した。

 

元よりこうなる可能性を危惧していて良かったと心から思う。

 

本当に俺に修行をつけてくれた神様には感謝だ…俺は常に苦戦ばっかりだったからな…おかげさまでこういう可能性を想定する癖がついた。

 

…さて、とりあえず、今はこの状況を何とかする方法を考えるとしよう。

 

/////////////

 

(とまぁ、こんな感じで今に至るわけなんだけど)

 

「本当に、どうしようか…」

 

考えろ…何とかこの状況を切り抜ける方法を!

 

ここで、思いつかなかったら皆が死ぬかもしれない…考えろ!考えろ!

 

アキレスは多分今の戦いで初めて感じた死の恐怖のせいで、軽くパニックに陥っている…今すぐ立ち直るのは難しいだろう。

 

そうなると、エンペラー、クノイチ、ハンター、ジョーカーの4人で戦うことになる…だが、相手はキラードロイドを元にしたミゼレムだ…簡単に勝てる相手じゃない。

 

あいつの恐ろしさは嫌というほど知ってるからな……うん?待てよ?キラードロイドを元にしてるってことは弱点も同じだったりするんじゃないか?

 

だとすれば、チャンスはまだある!

 

ただ、あのミゼレムはキラードロイドで言うワイバーンなんだよな…さすがにあの大きさで飛べるとは思えないけど、万が一にでも飛べるようなら詰みだ。

 

「あぁ!くそっ!マイナスに考えてもしょうがない!とりあえずやるしかないって!」

 

そう自分に言い聞かせるように声を上げ、エンペラー達に指示を飛ばす。

 

「聞こえるか?皆?」

 

『えぇ、聞こえていますよ!隊長!しかし、この状況は少々…厳しいですが』

 

『エンペラーの言う通りだぜ…こいつ、今までのミゼレムより強い!』

 

「わかってる。だから、今から言う指示を聞いてくれ…ジョーカーとハンターも聞こえているか?」

 

『こ、こちらジョーカー!聞こえているのら!ただ、やるんならできるだけ早くやってほしいのら!』

 

『こちらハンター!聞こえてます!どうすれば良いんですか?隊長さん』

 

「まず、エンペラー、クノイチ、ジョーカーの3人はあのミゼレムの注意を引きつけてくれ、そして、3人が注意を引きつけてくれている間にハンターにはあのミゼレムの足を狙撃してほしい」

 

『足ですか…?』

 

「あぁ、あの巨体だからな、足を攻撃すればバランスを崩せるはずだ…それで、上手くバランスを崩せたら全員で一斉に攻撃を仕掛けてくれ!」

 

『でも、あのミゼレム…今までのミゼレムよりも早くて、なかなか攻撃を当てられなくて…』

 

「安心しろ、ハンター。それも踏まえての作戦だ…確かにあのミゼレムの動きは早い…だけど、皆が引きつけてくれている間はミゼレムの向かう方向は皆の所だ。つまり、進行方向が限定されるってことだ」

 

『…なるほど!確かにそれなら何とかなるかも…わかりました。任せてください、隊長さん!必ず当ててみせます!』

 

「あぁ、その意気だ!それじゃあ皆、作戦開始だ!」

 

『『『『了解!!』』』』

 

指示を出し終え、軽く息を吐く。

 

果たして、この作戦は上手く行くだろうか…?アニメでキラードロイドは足の剥き出しのコードを攻撃されると怯んで動きが止まった。

 

あのミゼレムがキラードロイドを元にしているのであれば、弱点も同じである可能性が高い…ただ、その弱点をいつまでも晒したままとは思えない…だが、そうだとしても足を狙ってバランスを崩すというのは間違いではないはずだ。

 

あぁ…怖いな。俺の指揮のせいで誰かが死ぬかもしれない…そのプレッシャーに押し潰されそうだ。

 

…いや、今は泣き言を言ってる場合じゃないな…万が一に備えて他の作戦を考えよう…俺自身が戦うことも視野に入れて。

 

絶対、誰一人として死なせるもんか!

 

――――――――

 

―――――

 

―――

 

「では皆さん、隊長の指示通りに!」

 

「わかってるのら!」

 

「おう!やってやんぜ!」

 

エンペラー、ジョーカー、クノイチの3人は、先ほど隊長から受けた指示通りにミゼレムを引きつける。

 

なるべく敵が一定方向に動くように、時には攻撃を仕掛け、そしてそのまま後ろへ下がる。所謂、ヒットアンドアウェイの戦法で敵を引きつけていく。

 

そして、ついにハンターの射程範囲へミゼレムが姿を見せる。

 

(来た…!後は隊長さんの指示通り、足を狙ってバランスを崩す!)

 

ハンターはそう考えながら、一度大きく深呼吸する。

 

(大丈夫…進行方向が限定されているから、速度が早くても動きは予測できる)

 

「……あと少し…3、2、1!今です!」

 

そうして、ハンターが放った弾丸はそのままミゼレムの足へ直撃する。

 

そして、足に攻撃が直撃したことによりミゼレムは大きくバランスを崩し断末魔を上げながら地面へと倒れ伏す。

 

『今だ!皆、一斉に必殺ファンクションを叩き込んでやれ!』

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

「喰らいなさい!インパクトカイザー!!」

 

「これで終わらせてやる!つむじ風!!」

 

「すっごいの行くらよ!デスサイズハリケーン!!」

 

「これで終わらせます!スティンガーミサイル!!」

 

4人同時に放たれた必殺ファンクションが混ざり合ってミゼレムへと直撃し、大きな爆発が巻き起こる。

 

そして、ミゼレムは完全に機能を停止した。

 

 

 

「ふぅ〜〜…上手く行って良かったぁ〜!」

 

余談だが、エンペラー達がミゼレムを倒した所を見届けたファーストケースの隊長は安心感のあまり思わず地面へとへたり込んだのだとか。

 

/////////////

 

「アキレスのやつ大丈夫かな?」

 

そう独り言を口にしながら俺はアキレスを探す為に歩を進める。

 

あの戦いの後、やはりアキレスはまだ立ち直れていなかったようで、基地に戻ってきた後も目に見えて元気がなかった。

 

まぁ初めて、死闘と呼ぶべき戦いを経験したんだから当然と言えば当然だが。

 

だって、いくらLBCSを纏って戦えるとは言え、まだ高校生の少女なんだから…もし、ミゼレムのことがなければ普通に友達と語り合ったり、この世界でなら多分皆でLBXバトルをしたり、そんなありきたりではあるが幸せな日々を過ごしていたはずなんだ。

 

…もちろん、今の世界の現状を受け入れなければならないことは理解している。だけど、どうにもやりきれない。

 

だから、せめて彼女達が辛い時は力になりたい。

 

そんなことを考えていると、河原を見つめる寂しそうな背中が目に入り、静かに声を掛ける。

 

「あ…隊長……」

 

「どうした?アキレ…カリナ。こんな夜中に1人で…風邪引くぞ?」

 

「あ、その呼び方…約束覚えててくれたんだ」

 

「まぁな…周りに誰も居ない時は、極力名前で呼ぶって約束したからな…それで、こんな夜中にどうしたんだ?」

 

「…何か怖い夢を見て目が覚めちゃって……あの…今日は本当にスイマセンでした」

 

「うん?何で謝るんだ?カリナも大活躍だったじゃないか。謝ることなんてひとつもないだろ」

 

「でも、最後の戦いで戦意喪失しちゃって…隊長に危ないところを助けてもらったのに…結局、何もできずに陰でずっと縮こまってました」

 

彼女のその言葉を黙って聞く…やっぱりそのことで悩んでいたのかと思いつつも、今は俺が何か言葉を発する時ではないと判断して、彼女の言葉の続きを待つ。

 

「実戦がこんなに怖いなんて…あたし、こんなんでこの先やっていけるのかな…」

 

「カリナ……」

 

実戦が怖い、か…その気持ちはとてもわかる。俺も似たようなものだったからな…だけど、そのおかげで学べたこともある。今は、カリナにそれを伝えた方が良いかもしれないな。

 

「カリナ、今日お前は初めて戦闘が怖いと心と身体で理解した。それは立派な成長なんだぞ?」

 

「え…怖がることが成長…なの…?」

 

「あぁ、怖いからこそどうすればリスクを回避できるのか考えるようになるし、どう準備すればその恐怖に打ち勝てるようになるか考えるようになるんだ…訓練一つにしてもその意識があるかないかでは、得るものもまったく違うんだ…ほら、立派な成長と言えるだろ?」

 

「訓練は準備…恐怖を克服するための準備……隊長もそうやって恐怖を克服したの?」

 

「…まぁ、そうだな…俺の場合はカリナとはちょっと違った恐怖だけど」

 

「あたしとは違った恐怖…?」

 

「うん…俺はアテナスの隊長だからさ、みんなの命を背負う立場にあるわけだ…だから、俺の指揮のせいで誰かが死ぬかもしれない…そういう恐怖があったんだ」

 

「そっか…隊長も怖いって思ってて、それを乗り越える為に…あたし達を誰一人として死なせないために、色々と作戦を考えたり、いざという時に助けることができるように一緒に戦場に立ってくれてるんだ…」

 

「まぁ、そういうことだ…ただ、どれほど準備をしても不足の事態は起こりうる…そんな時に頼りになるのが仲間だ。互いに助け合い、背中を預けることができる仲間…カリナ、お前は1人で戦っているわけじゃない、頼りになる仲間が居るんだ…それを忘れちゃいけない」

 

「うん…そうだね。確かに、あたしには心強い仲間が居る…」

 

「あぁ…どんな困難な状況も仲間が居ればなんとかなるもんだ…世界を救う正義のヒーローだって、たった1人で戦ってるわけじゃないしな」

 

 

「確かにそうだね……あたし、バカだ…ちょっとできるからっていい気になってた…周りのことあんまり見えてなかった。今日だって、あたしが無理に突っ込まなかったら、あんな目には…」

 

「そうだな…だけど、あんな目にあったのにお前は無傷でここに居る」

 

「LBCS……」

 

続けて何故無傷でいられたと思う?と聞こうとする前にカリナがそう口を開く。

 

大体、俺が何を言おうとしているのかわかってきてるのかもな…よし、この調子で話を続けよう。

 

「その通りだ…技術の粋を集めて作られたLBCS、それは戦うための剣であると同時に、お前の命を守る鎧でもある。その性能は知っての通りだ」

 

「訓練、装備、仲間を信じる…エンペラーさんの言ってたことってそういうことなんだね」

 

「ようやく実感できたか?戦場ではそういう後ろ盾を信じて戦っていくんだ。怖さを知れたお前はこれからさらに強くなっていくだろう…憧れている世界を救う正義のヒーローにだってなれるぞ」

 

「あはは…あたし、一応女の子なんだから、そこはヒロインって言って欲しかったかなー」

 

「おっと、それは悪かった…」

 

そうだよな…女の子だもんな。ヒーローじゃなくてヒロインと呼ぶべきだった。

 

俺がそんな風に心の中で反省していると、カリナがこちらを真っ直ぐ見て、言葉を紡いだ。

 

「うん…何か勇気出てきた!あたし、また戦えるかもしれない!」

 

「そうか、それは良かった…あ、そうだ!最後に一つ言わせてくれ」

 

俺はそう言って、少し間を空けてからカリナの目を真っ直ぐ見て言葉を続けた。

 

「俺を信じてほしい。俺は絶対にお前を死なせるような指揮は取らない!だから、俺に命を預けてくれ!もちろん、俺は本気だ…もし、誰か1人でも死なせてしまったら俺は自決するつもりだ」

 

「そ、そんな!自決なんて…でも、そっか…それが隊長の覚悟…」

 

「あぁ、俺はそういう覚悟で戦っている…だから、どうか俺の指揮を信じてくれ」

 

「うん…信じる。隊長に、命を預ける…わたしも覚悟を決めるよ」

 

「ありがとう…カリナ」

 

「こっちこそありがとうだよ…隊長。これで安心して眠れそうだよ」

 

「そっか、それじゃあ後はゆっくり休んでくれ…明日も早いからな」

 

「うん。隊長もあんまり無理しないで、ゆっくり休んでね…お休み」

 

「あぁ、お休み…」

 

そう言って、手を振りながらカリナの背中を見送る。

 

その背中はさっき河原を見つめていた時とは違い、とても嬉しそうな背中だった。

 

…何はともあれ元気になって良かった。

 

少しでも、ヒロイン復活の助けになれたなら嬉しい限りだ。

 

俺はそんなことを思いながら、雲が晴れ、いつもよりも輝きを増した三日月を眺めるのだった。

 

 



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初陣翌日

今回はちょっとした閑話です。

初陣翌日の一幕といった感じの話になっています。

それでは本編をどうぞ!


「ふわぁ〜…眠い…」

 

昨日アキレスを励ました後、部屋に戻った俺はなかなか寝つけずについついLBXを弄ってしまい寝るのが遅くなってしまった。

 

神様が俺にくれたLBXは、どうやらミゼルのハッキングを受けないようで、今までこっそり遊んでも乗っ取られたことが1度もない。

 

まぁ、油断は禁物だから普段は厳重にロックを掛けているが。

 

「隊長、どうしたの?何か眠そうだけど」

 

「あぁ…リボンか、おはよう…実は、昨日LBXのメンテナンスに時間がかかってさ」

 

「いや、LBCSじゃないんかい!まぁ、隊長のLBX好きはよく知ってるけどさ…」

 

そう呆れまじりに口にしたのは、レッドリボンことオカノシタイチゴ。

 

アキレスと同期の装甲娘で、俺の中ではちょっとした悩みなんかも思わず話してしまう、一番話しやすい少女である。

 

「良かったら、アタシが膝枕でもしてあげよっか?」

 

からかうような表情をしながら、リボンはそんなことを口にする。

 

「うん…正直そうしてもらえると助かる」

 

「えっ!?そんなに眠いの?…はぁ、しょうがないな〜…ほら、隊長…膝枕してあげるよ」

 

そう言って、リボンは自分の太ももを、俺を手招きするようにポンポンと叩く。

 

えっ…!?軽い冗談のつもりだったんだけど…だが、リボンの親切心を無碍にするのもな…よし、ここはお言葉に甘えて…って、待て待て!さすがにそれは不味いのでは?

 

うん、今回はやめておこう。

 

「いや…やっぱり大丈夫だ。俺のせいでリボンの足が痺れたら申し訳ないし」

 

「もしかして、隊長ってば照れてる?」

 

「違う」

 

「ぐふっ…!そこまではっきり言われると傷つくわ〜…いや、隊長のことだからこれも照れ隠しか」

 

「はいはい、もうそれで良い」

 

「隊長さん、コーヒーが入りましたよ。どうぞ」

 

「ありがとう…ハンター、頂くよ」

 

俺がリボンと会話している所にさりげなくコーヒーを持ってきてくれたのは、ハンターことミナセリノ。

 

我ら、チームアテナスの女神である…元々、スナイパーが戦場では女神と呼ばれていることと掛けてそう呼んでいたが、個人的にハンターは本当に女神だと思っている。

 

俺のことをさりげなくサポートしてくれたり、歌声がすごい綺麗だし、優しいし…ハンター、マジ女神。

 

まぁ、女神と呼ばれると彼女は恥ずかしがってしまうため、あまり呼ばないようにはしているけど。

 

「そういえば、他の皆は?まだ起きてないのか?」

 

「どうでしょう…早起きして朝から訓練しているだけかもしれませんし…」

 

「まぁ、確かにその可能性もあるな」

 

それならそれでしょうがないか…昨日の謎のネコ型アンドロイド…シータって言ったっけ、あのアンドロイドの話を改めて相談したかったんだけど。

 

昨日、初陣から帰ったばかりの俺達にミゼレム側の情報を教えるつもりで基地まで付いてきたという謎のアンドロイド、シータ。

 

正直、怪しすぎる奴だが、あいつが言うにはミゼレム側には疑似装甲娘だけでなく、人間の装甲娘も居るらしい。

 

確かに、装甲娘の最終選考に落ちてしまった少女達がLBCSを纏って活動しているという話を聞いたことはあった…だけどその情報は一般には伏せられていたはずなんだが…何故、シータがそれを?

 

「うーん…やっぱり怪しいよなあのネコ型アンドロイド…」

 

「昨日のシータっていうネコちゃん?」

 

「あぁ、そうだ。ただ、敵ではない気がする…直感だけどな」

 

本当にこれはただの直感だ、だけどシータは敵ではない気がする…まぁ、最悪敵だったとしても情報をくれるというのであればありがたいし、今は気にしなくても良いか。

 

それよりも、以前から気になっていたことがある。

 

この世界が俺の知っているダンボール戦機の世界ではないことはとっくにわかっている…だが、ミゼルトラウザーが爆発して、バン達を初めとする世界中のLBXプレイヤー達のおかげで被害が最小限に抑えられた所までは本来のダンボール戦機Wと同じだ。

 

つまり、何かしらの分岐点によってこの世界、装甲娘の世界へと分岐したと考えるのが妥当だろう。

 

だが、その分岐点がよくわからない…それさえわかればミゼレムの正体にも近づけるかもしれないんだけどな。

 

確か、LBXが軍事利用されるようになったのは、ネットにミゼルの残滓が発見され、近い内にミゼルが復活するかもしれないってことで装甲娘プロジェクトが始まったんだよな。

 

ということはそれが大きな分岐点か…ミゼルの残滓、それが出現するか否か、それが装甲娘の世界とダンボール戦機の世界の違いか。

 

ミゼルの残滓か…なんだってそんなものが…

 

「おーい、隊長。なに難しい顔してんだ?リボンとハンターも困ってんぞ」

 

「おぉ、クノイチか…おはよう。すまない、ちょっと考え事してた」

 

俺に声を掛けてきてくれた少女、クノイチことトウモトケイにそう言葉を返す。

 

彼女はアテナスに一番最初に来てくれた装甲娘で、皆の中では一番付き合いが長い。

 

エンペラーがアテナスに来る前はアテナスのリーダーを務めてくれていたり、何かと俺達を支えてくれている彼女には感謝してもしきれない。

 

「考え事…?そんな悩むことでもあんのか?」

 

「何か、昨日のシータちゃんについて悩んでるみたいよ」

 

「あぁ、なるほどな…確かに、あの昨日のネコ?は怪しすぎるもんな…隊長が頭を抱えるわけだぜ」

 

「まぁ、隊長は怪しいけど敵ではないって感じてるみたいだから尚更かもね」

 

「敵ではないか…ま、隊長がそう言うんならそうかもな」

 

そう言って、クノイチは笑みを浮かべる。

 

「なんらなんら?何の話をしてるんら?」

 

「ジョーカーも起きたんだな、おはよう。なに、昨日の謎のネコ型アンドロイドの話をしていただけだ」

 

クノイチに続いてやってきたジョーカーにそう声を掛ける。

 

これで、まだ来ていないのはアキレスとエンペラーだけか。

 

まぁ、あの二人のことだし朝から走り込みでもしているんだろうけど。

 

「昨日のあれか…そういえば、アキレスちゃんは大丈夫なんかね?」

 

「あぁ、それに関しては大丈夫だ…」

 

「おろ?随分自信満々らね〜…もしや隊長ちゃん、昨日アキレスちゃんと何かあったろ?」

 

ニマニマしながら、ジョーカーが俺にそう聞いてくる。

 

「いや、別に何もなかったぞ…」

 

「ほれほれ、ジョーカーにだけ話してごらん…大丈夫、誰にも言わないから」

 

「誰にも言わないという言葉ほど信用ならないものはないから言わないぞ。それ以前に何もなかったしな」

 

いやまぁ、何もなかったわけではないけど、色々と踏み込んだ話だったしアキレスに許可もなく話すわけにはいかないからな。

 

「…むぅ、これは口を割りそうにないか…なら、しょうがない。今回はそういうことにしておくのら」

 

「助かる。ありがとう…ジョーカー」

 

「そ、そんな真面目に返されると反応に困るのら…まぁ、隊長ちゃんのそういう所…嫌いじゃないけろも」

 

俺とジョーカーがそんな会話を交わしていると、アキレスとエンペラーが基地へと帰ってきたようで、元気な声が基地へと響き渡る。

 

「おはよう、隊長!みんな!」

 

「おはようございます!皆さん、お揃いのようで何よりです」

 

「あぁ、2人ともおはよう。アキレスも元気になったようで良かったよ」

 

「うん!おかげさまですっかり元気になったよ!隊長!」

 

そう言って、アキレスは元気な笑顔を見せる。

 

…大丈夫だとは思っていたけど、こうして改めて元気な姿を見せてくれるとやっぱり安心するな。

 

「むむっ…心無しかアキレスさんと隊長の距離が縮まっているような…まさか!?昨日、何かあったのでは…」

 

「隊長ちゃ〜ん、皆揃ったわけだしそろそろ朝食にするのら。ジョーカー、もうお腹ペコペコなのら」

 

「そうだな。そろそろ朝食にするか」

 

「それなら、私もお手伝いしますね隊長さん!」

 

「ありがとう、ハンター。エンペラーも手伝ってくれるか?」

 

「へっ!?は、はい!お手伝い致します!隊長!」

 

そうして、俺はハンターとエンペラーの2人と一緒に朝食作りへと向かった。

 

 

 

 

「ナイスだ、ジョーカー…上手いこと話を逸らせたな」

 

「あのまま修羅場突入とか笑えんからね…まぁ、そんなことにはならないとは思うけど、念の為ってやつら」

 

「なるほどな…やれやれ、鈍感な隊長を持つと大変だな」

 

「まったくら…まぁ、後で隊長ちゃんにはたっぷりと報酬をもらうつもりらけどね〜」

 

「ちゃっかりしてんな…お前」

 

 

後に、ジョーカーの言葉通り、晴哉は大量のおやつを報酬として要求されることになるのだが、それはまた別の話。

 

 




といった感じの閑話でした!

これはまだ悩んでいる途中なのですが、この小説でオリジナルの要素を出そうと思っています。

その名もLBSS(仮)リトルバトラーシンクロシステムの略です。

LBCSの簡易版のようなもので、主人公に使わせるのもアリかもしれない…何てことを考えています。

まぁ、実際どうするかはわかりませんが。

それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます。


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発電所を守れ!〔前編〕

もうすぐ第9章が配信されると聞いて、ワクワクしている今日この頃です。

怨嗟の氷解というタイトルから考えると、アキレスディードと和解する感じなんでしょうか?

リボンの真意も明かされるそうなので楽しみです。

それでは本編をどうぞ!


「よし、準備完了…皆も準備はできたか?」

 

出撃の準備を整え、皆にも声を掛ける。

 

どうやら、皆も準備は整っているようで俺の言葉に頷く。

 

「よし、それじゃあ行こうか!」

 

「うん、行こう!隊長!」

 

「気合十分だな、アキレス」

 

「まぁね!…あれ?隊長、その手に持ってるのって何?」

 

そう言って、アキレスは俺が手に持っている黒い箱を指差す。

 

「これか?これは後のお楽しみだ」

 

「えぇー!良いじゃん、教えてくれたって!」

 

「楽しみは最後まで取っておくものだぞ?」

 

「むふー…それはそうかもしれないけどさ…そこまで隠されると逆に気になっちゃうよ」

 

頬を膨らませながらアキレスがそんなことを口にする。

 

そんなに気になるのか…これは見せるまでひたすら言ってくるパターンだろうか?それはちょっと困るな。

 

「…はぁ…しょうがないな…教えてやるからこっちに来い」

 

「良いの?やったー!」

 

そう嬉しそうに言いながら、アキレスが俺の側にやってくる。

 

俺達の会話を聞いていたのか、他の皆も近くにやってくる。

 

そうして、皆が集まってきたのを確認し、俺は箱を開く。

 

「これって…LBX!?すごい!見たことないLBXだよ!これって隊長のLBXなの?」

 

「あぁ、俺のLBX…イプシロンだ」

 

「イプシロン…カッコイイ…!」

 

アキレスが目をキラキラ輝かせながら、感嘆の声を零す。

 

神様が俺に渡してくれたLBXはイプシロン、ゲーム限定のLBXで一応、バン専用の機体である。

 

ゲーム限定の機体であるせいか、軽く主人公機であることを忘れられがちだが、見た目はカッコイイし、使い勝手も悪くないLBXだ。

 

「確かにカッコイイけろも、何でLBXを持って行くんら?」

 

「そうだな…いくらなんでもミゼレムにLBXで対抗するなんて無理があるしな」

 

ジョーカーとクノイチがそんな疑問を口にする。

 

まぁ、その疑問は当然と言えば当然だな。

 

「…その辺りの疑問は話すと長くなるから、指揮車で移動しながら話す。だから、とりあえず指揮車に乗ってくれ」

 

そう言って、俺は指揮車へと乗り込んだ。

 

/////////////

 

「それで結局、さっきのLBXってなんなんら?隊長ちゃん」

 

指揮車に乗り込み、しばらく経った後、ジョーカーが先ほど質問した内容を口にする。

 

「実は、今…俺はあるものを開発中でな」

 

「あるもの、ですか…一体何を開発していらっしゃるのですか?隊長」

 

「LBSSっていう、まぁLBCSの簡易版みたいなものだ」

 

「えるびーえすえす?」

 

俺の言葉にアキレスがぽかんとした様子で首を傾げる。

 

まぁ、いきなり意味不明な単語が出てきたらこうなるよな。

 

「LBSS、リトルバトラーシンクロシステムの略だ。まぁ簡単に言えば武器だけLBCSだ」

 

「武器だけをLBCS化したものということですか?」

 

「あぁ、そうだ…通常のLBCSとは違って装甲として纏ったりはせず、武器だけを装備する。これなら俺でも使えるし、もっと皆の助けになれると思って開発を始めたんだ」

 

「なるほどな…って、さらっと言ってるけどそれってかなりすげー発明じゃね?だって、そのLBSSってのが完成したら、装甲娘じゃなくても戦えるようになるかもしれないってことだろ?」

 

クノイチの言葉に他の皆が唖然とした表情をする。

 

「た、確かに…!隊長さんがあまりにもさらっと口にするから、まったく気付きませんでした!」

 

「えぇ、そうですね…よくよく考えれば武器だけをLBCS化するなんて…一体どんな技術を用いているのでしょうか?」

 

「隊長ちゃん、すごいのら…それが完成すればウチらも大分楽になるのら」

 

「確かにすごいかも…けど、装甲がないってことは生身で戦うってことだよね…それはちょっと危ないんじゃ…」

 

「そうだな…アキレスの言う通り、そこがLBSSの課題だ…それは追々突き詰めていくつもりだ…ま、今の所は俺専用みたいな感じで使っていくさ」

 

実際、今のLBSSを使いこなせるのは俺ぐらいのものだろうし。

 

…やっぱり、山野博士に相談してみた方が良いだろうか?山野博士なら良いアイデアをくれそうだし。

 

「うん?そういえば隊長ちゃん、シンクロシステムとか言ってる割にはシンクロ要素が一つもないのら、一体どの辺がシンクロなんら?」

 

「それはLBSSを使用する時は、LBXとのシンクロ率の高さが重要なポイントになるからだ」

 

「LBXとのシンクロ率…?」

 

「あぁ、この場合のシンクロ率というのはLBXとの絆の強さと言い換えても良い…LBXとの絆が強ければ強いほどLBSSの力は最大限に発揮されるんだ」

 

例えば、イフリート戦でバンの想いに応えるように戦っていたオーディーンのような状態…所謂、LBXの声を聞くというやつだ。

 

俺はその現象はLBXとそのプレイヤーの絆の強さが引き起こしているのではないかと考えている。

 

まぁ、まったく科学的根拠とかないんだけどな…でも、俺はそういうものがあると信じている。だからこそ、このLBSSにはLBCSにはないあるギミックも搭載してある。

 

「…ま、詳しくは実際に見てもらった方が早いな。ミゼレムと戦う時にでも見せるよ」

 

「…!レーダーに感ありです!ミゼレムの大軍をキャッチしました!」

 

「…噂をすれば何とやらだな…ハンター、場所はどこだ?」

 

「ま、待ってください……えぇと、あ、わかりました!どうやら臨時の仮設発電所に向かっているようです!」

 

「今ある発電所というと、エターナルサイクラーを使っているところではありませんか!?…隊長!」

 

「あぁ、総員シートベルトを着用してくれ!飛ばすぞ!」

 

そう言って、仮設発電所へと向けて指揮車を走らせる。

 

エターナルサイクラーを使っている発電所を襲撃するつもりとか…ミゼレムの奴ら、何てとんでもないことを…

 

もし、発電所が破壊されたらその被害は尋常じゃないぞ…近くには避難所だってたくさんあるんだ、何としてでも阻止しなくちゃな。

 

俺はそう決意をしながら全速力で目的地に指揮車を飛ばした。

 

//////////////

 

「皆は先に発電所に近づいているミゼレムを討伐してくれ!俺も準備を終えたら、すぐに向かう!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

発電所に辿り着いた俺達はすぐさま戦闘準備を開始する。

 

「まさか、こんなに早くこれを使うことになるとはな…」

 

そう口にしながら腕にガントレット状の装置を身に付け、LBSSを起動させる。

 

「LBSSコネクト!イプシロン!」

 

《承認…プレイヤーネームハルヤ。LBXとのシンクロ率を確認…シンクロ率82%、規定値クリア。シンクロシステムを起動します》

 

そんな機械音声が流れ、イプシロンに装備されていたイプシロングレイブ、イプシロンガーダーが巨大化し、俺に装備される。

 

「さて、早く皆と合流しないと!」

 

―――――――

 

―――――

 

―――

 

「よし!良い調子!LBSSも特に問題なさそうだし、これならなんとかなりそうだ」

 

俺がそうひと息ついていると、ミゼレムがこちらに攻撃を仕掛けてくる。

 

(やば!油断しすぎた…!)

 

「おらぁ!」

 

防御が遅れた俺を庇うようにクノイチが目の前のミゼレムを撃破する。

 

「大丈夫か!?隊長!シンドイならあんま無理すんなよ…ただでさえ、生身で戦ってんだから…」

 

「悪い、助かった。もう大丈夫だから安心しろ」

 

「そうか?なら良いけどよ…本当に気をつけろよ?隊長がいなくなったら、オレ達絶対立ち直れないからさ」

 

「それは、俺だって同じさ…だから、この状況、必ず切り抜けるぞ!」

 

「当然!あんたの為なら何だってやってやる!」

 

そう口にし、クノイチは武器を構える。

 

本当に心強いな…頼りになる。

 

…さて、どうするべきか…この発電所は何としても守り抜かなくてはならない。だが、ミゼレムの数が多い…このまま行けばジリ貧になるのは間違いないだろう。

 

そういえば、発電所に行く道中でジョーカーがミゼレムはエターナルサイクラーに反応するのかもとか言ってたな…そうだとすれば……ちょっとした賭けになるけどやってみるか。

 

「エンペラーとジョーカーは1度LBCSを解除して、ミゼレムの大軍の外側に向かってくれ!ミゼレムがエターナルサイクラーに反応するなら、LBCSを解除した状態なら気づかれないはずだ」

 

「なるほど、ミゼレムの特性を利用するというわけですね!了解しました!」

 

「あぁ、道は俺が切り開くから安心しろ!行くぞ!ハァア!必殺ファンクション!グングニル!!」

 

槍にエネルギーが集中し、巨大な槍の形を成す。

 

そして、それをそのままミゼレムの大軍にぶつける。

 

「よし!道は拓けた!走れ!」

 

「「了解!!」」

 

そうして、エンペラーとジョーカーはLBCSを解除して走り出して行った。

 

「上手くいったか…」

 

『大軍を抜けだせたのは良いけど、これからどうするんら?隊長ちゃん』

 

「外側と内側から同時に攻撃を仕掛ける。俺が合図したら、2人で同時に必殺ファンクションを放ってくれ」

 

『了解なのら!』

 

ジョーカー達にそう指示を飛ばし、再び武器を構える。

 

…後は、できる限り敵を引きつけないとな。

 

「よし…数を減らしつつ、ミゼレムを引きつけるぞ!」

 

「「「了解!!」」」

 

そうして、ミゼレムを倒しつつ引きつけていく。

 

(よし、後もう少しだ…3、2、1…今だ!)

 

「今だ!エンペラー!ジョーカー!」

 

『『了解!!』』

 

その声が聞こえると同時に2人の必殺ファンクションがミゼレムの大軍に直撃する。

 

「俺達も行くぞ!必殺ファンクション!グロリアスレイ!!」

 

「うん!必殺!ライトニングランス!!」

 

「これでも喰らえ!つむじ風!!」

 

「行きます!スティンガーミサイル!!」

 

外側と内側の同時攻撃により、発電所を破壊しようとしていたミゼレム達は全滅した。

 

「ふぅ…何とかなったか…」

 

やっぱり敵の数が多いと苦労するな…今回みたいな、一か八かの賭けは二度としないようにしないと。

 

今回はミゼレムのエターナルサイクラーに反応する性質を逆手に取れたから良かったものの、下手をすればエンペラーとジョーカーが危険な目に遭っていたかもしれない。

 

「隊長、どうしたの?何か元気ないけど…」

 

「アキレス…いや、何でもない。まだ新手が来るかもしれないから警戒しておくべきだと思っていたんだ」

 

「そうだね…まだまだ気をつけないと!隊長もあんまり無理しないでね」

 

「あぁ、ありがとう…アキレス」

 

「うん!どういたしまして!」

 

そう言って、アキレスは笑顔を見せる。

 

本当にありがとうな、アキレス…よし!おかげで気合入った!

 

 

 

「…うん?何だあれは…?ミゼレムと装甲娘!?皆、戦闘準備だ!新手が来たぞ!」

 

「了解しました!隊長、あれはまさか…」

 

「あぁ、あの謎のネコの言っていた敵側の装甲娘だろうな」

 

まさか、こんな所で会うことになるとはな…正直、想定外だ。まぁ、今は状況を把握するのが先だな……敵は装甲娘が2人にミゼレムが多数か。

 

装甲や武器から察するに、アキレスディードとマッドドッグの装甲娘だろう。特にアキレスディードの方は素のスペックも高そうだし、何より気迫が段違いだ…おそらく、今の皆では勝つことは難しいだろう。

 

それに何だ?ディードからアキレスへの強い敵意を感じる…もしかして、カリナの知り合いか?

 

だけど、カリナはそこまで誰かに恨まれるようなタイプではない気がするが…まぁ、それに関しては今は後回しだ。

 

俺はそう思考し、続いてマッドドッグへと視線を移す。

 

マッドドッグの方はディードほど強いとは思えないが、LBXのマッドドッグと同じように透明になることができる可能性があるから油断は禁物だ。

 

…さて、どうすべきだろうか…敵の装甲娘への対処はもちろん、ミゼレムを放置するわけにもいかない。

 

………よし、決めた!

 

「俺と、アキレスの2人で敵の装甲娘を食い止める!他の皆はミゼレムの討伐を!それでミゼレムを倒し終えたら、俺とアキレスの援護を頼む!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

「行けるか?アキレス」

 

「もちろん!隊長が一緒なら負ける気がしない!」

 

「それは心強いな…よし、行くぞ!」

 

そうして、想定外の邂逅をした装甲娘達との戦いが始まった。

 




というわけで、悩んだ結果LBSSを出すことにしました。

LBSSについては、後々詳しい説明を入れようと思っていますが簡単にまとめるとこんな感じです。

・LBSSを装備するには、LBXとのシンクロ率(絆の強さ)が重要。

・あくまで武器を装備するだけであり、装甲は纏わない。

・ガントレットはLBSSを装備する為の装置であり、LBSSの力を引き出す役割も持つ。

・必殺ファンクションは自分のLBXにセットされているものを使用可能。

・LBSSにはある特殊なギミックが搭載されている。


それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!



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発電所を守れ!❲中編❳

本当は前編と後編で終わらせるつもりだったのですが、思いの外長くなってしまい、中編ということにしました。

そういえば、ハカイオー絶斗のガチャを回してみましたが、当たりませんでした…これは、私のガチャ運が悪いのか、それとも確率が低すぎるのか…

…まぁ、それはさておき、本編をどうぞ!



「やるぞ!アキレス!」

 

「うん!」

 

その掛け声と共に、俺とアキレスは敵の装甲娘に攻撃を仕掛けて。

 

アキレスはディード、俺はマッドドッグとそれぞれ戦いを始める。

 

「あんた、それで私と戦う気なの?」

 

「そうだ。武器だけだと思って甘く見るなよ」

 

「ふーん、どっちにしろ倒すことに変わりはないし、容赦なくやってやるわ!」

 

そう言いながらマッドドッグが攻撃を仕掛けてくる。

 

その攻撃をバックステップで回避し、即座に反撃に移る。

 

だが、さすが装甲娘というべきかマッドドッグはそれを防いでくる。

 

さらに、防いだ後そのままカウンターを仕掛ける。

 

俺はそれを上手く回避し、距離を取った。

 

(…やっぱり、装甲娘と真正面からやり合うのはきついな…1度でも攻撃を喰らったらやばいし…そういやアキレスの方は大丈夫か?)

 

そう考え、アキレスの方に視線を移す。

 

「くっ…!銃撃のせいで、なかなか攻めきれない!」

 

どうやら、ディードの銃撃のせいでなかなか攻撃が通らず苦戦しているようだ。

 

…むしろ、俺はあっちの方が戦いやすそうな気がするな。

 

「よそ見してるんじゃないわよ!」

 

「…っと、そうだな」

 

アキレスに視線を移していた俺にマッドドッグが殴りかかってくる。

 

それを盾で防ぎ、受け流すように回転し後ろの槍でマッドドッグを突き刺す。

 

「なっ…!きゃん!」

 

俺の攻撃を受けたマッドドッグはバランスを崩し、そのまま地面に倒れ伏した。

 

「アキレス、頼んだ!そいつとは俺が戦う!」

 

「隊長!?うん、わかった!任せて!」

 

「逃がすか!」

 

こちらに向かってくるアキレスにディードが銃を向ける。

 

それを阻止する為にイプシロングレイブをディードに向けて投げつける。

 

それは、ディードの右手に一直線に向かっていき、そのままディードの銃を叩き落とした。

 

そして、跳ね返ってきた武器を手に取りディードに斬りかかる。

 

「ぜぁああ!」

 

「くっ!」

 

その攻撃をディードは後ろに跳んで回避する。

 

だが、そこまでは狙い通りだ!

 

「今だ!アキレス!」

 

「任せて!ハァアッ!」

 

後ろに跳んだディードにアキレスが攻撃をぶつける。

 

「ぐぅっ…!な、なぜ…」

 

「もう、隊長!あれはちょっとわかりづらいよ…」

 

「悪い…でも、本当によくわかったな。アキレス」

 

「うん、なんとなくだけどね…隊長、あたしに頼むしか言わなかったから何かあると思って、あの人と戦うって言ったから、もしかしたらあたしに援護してほしいのかなって」

 

「その通りだ…本当に助かったよアキレス」

 

「えへへ!どういたしまして!」

 

いや、本当によくわかったものだ…確かにディードにそれを悟られないようにするために、あんな曖昧な言い方をしたんだが、それを理解して俺に合わせてくれたというんだからすごいもんだ。

 

『隊長!ミゼレムの掃討が完了しました!』

 

「そうか、よくやった!このまま援護に来れそうか?」

 

『はい!今から援護に向かいます!』

 

「あぁ、頼んだ!」

 

ちょうど、エンペラー達もミゼレムを倒し終えたみたいだな…よし、後はこのまま敵の装甲娘達を―――――――

 

「くっ…!な…なかなかやるじゃない!次は本気出すから!」

 

「アキレス…次は倒す…」

 

さすがに、分が悪いと判断したのかマッドドックとアキレスディードが撤退していく。

 

「逃げるなコラー!口ほどにもないぞ!」

 

「待て!アキレス!深追いは禁物だ!」

 

「うぅ〜…隊長がそう言うなら…」

 

俺の呼びかけに応えてくれたアキレスはLBCSを解除し、ディード達を追うのをやめる。

 

ふぅ…良かった。深追いするとロクなことにならないからな…実際、マッドドッグはどうかしらないがディードは本気じゃなかった。

 

一撃を浴びせることができたのも、ディードの不意をつけたからだ…本気のあいつと真正面からやり合っても勝てるかどうか。

 

「隊長!ご無事ですか!?」

 

「あぁ、大丈夫だよエンペラー。そっちも無事で何よりだ」

 

俺がディードについて考えていると、エンペラー達がこちらに合流する。

 

どうやら全員無事みたいだな…疲労しているようにも見えないし…良かった、とりあえず一安心だ。

 

「にゃ?居たでしょ。ちゃんとした人間の装甲娘」

 

そう言いながら姿を見せたのは謎のネコ型アンドロイドであるシータ。

 

「うわっ。また出たのら!」

 

「やっぱり、人間だったよね?あたしはむしろアンドロイドより戦いやすかったけど。でも、どうして?」

 

「…会敵してしまったならしょうがないか。皆、装甲娘の適性検査は覚えてるか?」

 

「え〜と…確か学校で受けたのは簡単なパッチテストとDNAパターン検査?とかで注射されて…」

 

「どっかの施設で、シンクロテストとか言って脳波計測もされたのら。その後の性格診断みたいな筆記もめんどくさかったらろ」

 

「確か、シンクロの条件が『感性的に多感で、直情的、奔放的であることが望ましい』でしたかしら」

 

「そうだ。精神感応で動かすLBCSにはそれらの要素が必須なんだが…人によってはその、ちょっと行き過ぎてる場合があってな」

 

「アイツちょっと頭おかしいって言われちゃうタイプら?」

 

「いや、さすがにそこまでは言わないけど…まぁ、感情の起伏が激しかったり、他にも感受性が高い故か心の脆さがあったりしてな。それでそれらの要素が基準値より高いせいで、LBCSの操縦適性があっても最終選考で落ちてしまう少女達が結構居るんだが…」

 

多分、さっきの装甲娘達もミゼレム側の誰かにそういう心の脆さをつかれてしまったのではないかと思っている。

 

シータなら、その誰かの正体についても知ってそうだけどな。

 

俺はそう考え、シータに言葉を掛ける。

 

「…シータ、お前何か知ってるだろ?」

 

「にゃ、なかなか鋭いにゃ…まぁ、その通りにゃ。ヤツはそういうコの心の脆さにつけこんでくるのにゃ。言葉巧みに不合格になった少女達をたぶらかし、盗んだ設計図から作ったLBCSを与えて、ミゼレムに引き込んでいるんにゃ」

 

「嫌な奴だなそいつ…詐欺師みたいだ」

 

「そうにゃ!『君は今の自分の状況に満足してるにゃ?』とか、『世の中の間違いを正したいと思ったことはないにゃ?』とか。ムーディな月の下で少女達に呟くんにゃ。まったく、キザで嫌なヤツなんだにゃ!」

 

「なるほどな…で、ヤツってのは一体誰なんだ?まさか、ミ―――――」

 

「おっと、またミゼレムが押し寄せてきたにゃ。発電所護るんにゃ?せいぜいがんばるにゃ〜!」

 

まさか、ミゼルじゃないだろうな?そう聞こうとしたのを遮り、シータはそんな言葉を残して、またどこかへ行ってしまった。

 

「ま、待て…!くっ!みんな、戦闘配置につけ!ミゼレムを迎撃するぞ!」

 

あのネコめ…重要なことをはぐらかして行くなよ!次に会ったらもっと詳しく話を聞かせてもらわないと。

 

俺はそんなことを考えながら、ミゼレムとの戦闘を開始した。

 

――――――――

 

―――――

 

―――

 

「ふぅ…敵影が少し途切れたな。みんな、一旦休憩だ!水分補給をしっかりしておけよ!」

 

「隊長さんもゆっくり休んでください。多分、一番疲れているのは隊長さんですし」

 

そう言って、ハンターが俺に飲み物を手渡す。

 

おぉ、何という気遣い…やっぱりハンターは優しいな。本物の女神みたいだ…まぁ、いつも女神だけど。

 

こういう気遣いは本当にありがたい…正直、疲労がないと言えば嘘になるし。

 

「ありがとう、助かるよ。ハンターもゆっくり休んでくれ」

 

「はい。お気遣いありがとうございます」

 

そう口にして、ハンターも休憩に入る。

 

…それにしても、想像以上に疲れたな…こんな風に大量の敵と戦うことは初めてではないんだが。

 

やはり、指揮をとりながら自分も戦うという経験があまりないからだろうか?

 

神様の修行の時も基本的に1人ばかりだったからな…一応、指揮の訓練なんかもしたが、その時は俺が戦うことは禁止されてたからな。

 

……これからの戦いはますます厳しくなるだろうし、その辺もしっかりしないとな。

 

俺がそんなことを考えていると、みんなの話し声が聞こえてくる。

 

「そういえばさ、さっきの装甲娘になれる条件……っていうの?感受性がーとか、奔放性?がどうだとか…それって装甲娘があたし達くらいの女の子しかいないのと何か関係あるのかな?」

 

「えぇ、結構な検証をしたらしいのだけど、早い話、思春期の女の子が一番LBCSとのシンクロ率が高かったんですって。その上で身体的にもある程度の成熟を求められるので、結果的に私達みたいな高校生が多くなるわよね」

 

「ちょっ…おま……エ、エンペラーって高校生だったのか!?」

 

「聞き捨てなりませんわね。なんだと思っていたのですか?」

 

「ずっとOLさんだと思ってたのらー」

 

「違います。れっきとした高校2年生です」

 

クノイチもジョーカーも今さら何を言ってるんだ?

 

エンペラーはどう見ても女子高生だろう。

 

そんなことを思いつつ、みんなの会話の続きを聞く。

 

「わ…若さだけは勝ってると思ったのに、お、同い年だったなんて…!?」

 

「あ、ワリィ………ダブり?」

 

「タブってもいませんし、何らかの理由で入学が遅れてもいません!私は順当なる高校2年生です!そっ…祖母がフランス人なので、多少は周りの人と比べて成長が早く見えるのかもしれません…しれませんけどね!?」

 

「あぁ、クォーターなのか。どうりで名前がソフィア…」

 

「一体、何なんですの!皆、私を見るなりOLだの先生だのコスプレだのと!好きで老け顔に生まれたわけではありませんのよー!私だって…私だって思春期の女の子なのにーーー!!」

 

「エ…エンペラーちゃんがキレた……」

 

「しまった…まさか、そんなとこに地雷が潜んでいたとは…オレ達は触れてはいけない禁断の箱を開けてしまったようだ…」

 

…さすがに、そろそろフォローに入ろう。このままじゃ、いくらなんでもエンペラーが不憫すぎる。

 

そう考えて、声を掛けようとするとハンターが口を開いた。

 

「わ、私は転籍時の書類を見ていたので知ってますよ!?だ、大丈夫です!エンペラーさんお若いです!美人だし!」

 

ハンター!?それフォローになってない!むしろ、とどめ刺しちゃってるから!

 

「…大丈夫って、何が大丈夫だって言うんですか……もう、辞めてやるこんな会社…防衛隊に…帰る…」

 

まずい!エンペラーが拗ねちゃってる…!

 

まさか、皆がこれほどまでエンペラーを大人として見ていたとは…!

 

ここは俺が隊長としてしっかりしないと。

 

「まったく、さっきから聞いてたけど、みんなして何言ってるんだ?ソフィアはどう見たって高校生だろ?」

 

「「「「え…?」」」」

 

エンペラーを除く皆が、驚いたようにこちらを見る。

 

「…いや、何で驚いた顔してるんだよ。確かに、ソフィアも言ってたみたいに大人びて見えるかもだけど、笑った顔は年相応で可愛いし…沈着冷静に見えて、さっきみたいに感情を爆発することもあるし…どう見たって普通の女子高生だよ」

 

そう言って、ひと呼吸置いてから言葉を続ける。

 

「まぁ、そういうソフィアだからこそ側に居てほしいと思うわけだが……って、こういうのはなかなか恥ずかしいもんだな」

 

「た…隊長…!あ…ありがとうございます!そうでした…私、隊長に命を捧げたのでした…!ずっと…ずっとお側でお仕えいたします!」

 

「あぁ、よろしくな。ソフィアが側に居てくれたら、俺としても嬉しいし」

 

俺がそう言うと、エンペラーは元気よく頷いた。

 

…どうやら、元気になってくれたみたいだな…良かった。

 

「これはエンペラーちゃんがチョロいのか…それとも隊長ちゃんがすごいのか、一体どっちなんら?」

 

「そうにゃー、うちのセンサーによると、エンペラちゃんは肌年齢15歳くらい!ピッチピチのプリプリにゃ」

 

「うわ、またまた出たのら」

 

「まぁ、あなた実は良いネコだったんですのね!ずっと居てくれてよろしくってよ♪」

 

「というか、何でお前がここに居るんだ?まぁ、色々と聞きたいことがあったから、ちょうど良いけどさ」

 

またまた突如として現れたシータに驚きつつ、そう声を掛ける。

 

「そのことについてはまたあとで話すにゃ。今はまだ油断できない状況にゃ?」

 

「…確かにそれはそうかもな」

 

ふと、周りを見るとエンペラーの掛け声を聞いて、みんなが元の配置についているのが目に入る。

 

アキレスは何か虚ろな目で歩いてるけど…どんだけエンペラーと同い年だったことに驚いてるんだよ。

 

…まぁ良いか、多分戦闘になったら元の調子に戻るだろうし…さて、俺もそろそろ配置につくとするか。

 

俺はそんなことを考えながら、配置につくのだった。

 

 

 

 

「あー、ビックリした。ネコ、ナイスフォローだったぞ」

 

「シータにゃ。こんくらいお安い御用にゃ」

 

「ところでさ…オレのも測ってみてくれよ…その……肌年齢」

 

「うちにそんな機能はないにゃ。しらんけど」

 

「お前、ホント良い奴だったんだな…」

 

 




といった感じの中編でした!

どうしてもあのエンペラーのくだりは入れたくて、ついつい長くなってしまいました…あのシーンのエンペラーも個人的にはかなり好きなので。

それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!



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発電所を守れ!❲後編〕

何とか後編を書き終わることができました。

それにしても、最近はようやく夏らしくなってきましたね…ただ、その代わりに暑い日が続き、若干ダウンぎみの今日この頃です。

皆さんも体調管理には充分に気をつけてください。

それでは、本編をどうぞ!


「せいっ!!」

 

次々現れるミゼレムを撃破し、ひと息つく。

 

「ふぅ…ようやく終わりか…?」

 

そう口にしながら辺りを見渡すと、ミゼレムの姿は見当たらず、ようやく一区切りといったところだろう。

 

おそらく、これ以上ミゼレムが来ることはないだろう。

 

まぁ、油断は禁物だけど…うん?今のは?

 

「…っ!危なっ!」

 

「へぇ、今のを防ぐのか…やるね」

 

「いきなり、銃撃は卑怯じゃないか?アキレスディード」

 

まさか、いきなり不意打ちをしてくるとは驚きだ。

 

咄嗟に反応できたから良かったものの、最悪の場合、死んでたかもしれないな。

 

「さぁ、行くよ!一体君はどこまで耐えられるかな?」

 

「くっ…!」

 

「隊長!待ってて、今助けに―――――」

 

「あんた達の相手は私よ!」

 

ディードの攻撃をしのぎながら、皆の状況を把握する。

 

どうやら、マッドドックが数体のミゼレムと共に皆を妨害しているようだ。

 

(これは、しばらくは俺1人で切り抜けるしかないな…)

 

「よそ見をしている場合かい?」

 

「速っ…!」

 

一瞬で俺に接近し、ディードが蹴りを喰らわせに掛かる。

 

それを何とか防ぎ、カウンターを仕掛ける。

 

だが、それはバックステップでかわされ、下がると同時に銃撃が放たれる。

 

「甘いよ!」

 

「わかってる!」

 

かわされるのは想定の範囲内、だからここは銃撃を防ぎながら突撃する。

 

そうして、そのまま攻撃を続けて、ディードの攻撃を回避しては反撃、回避しては反撃を繰り返し、隙をついて接近して攻撃を仕掛ける。

 

「はぁあっ!!」

 

「くっ…!なかなかやるね…」

 

「そっちこそ!だからこそ、余計に気になる…何でお前みたいなすごい装甲娘がミゼレム側についてるんだ?お前ほどの装甲娘なら、より多くの人達を助けられるだろ?」

 

「っ…!君に何がわかる!」

 

そう叫びながら、彼女は俺を蹴り飛ばし、そのまま距離を取る。

 

「あんな…あんな奴らと一緒に戦えるか!ましてや、それを守るなんて…そんなことできるはずがない!」

 

そう声を張り上げる彼女の姿はどこか悲しそうで、それでいて苦しそうに見えた。

 

「ディード…お前……すまない、いくらなんでも踏み込み過ぎたな」

 

「何で謝るんだ…別に君が原因というわけじゃない」

 

「そうかもしれないが、俺の一言でお前の心の傷を抉ってしまった気がするからな…そのことの謝罪はしっかりしないと」

 

「…何か魂胆でもあるのか?」

 

「魂胆?いや、特に何もないが?」

 

「なっ!?本当にただ、謝罪しただけなのかい?」

 

「え…?むしろ、他に何があるんだ?」

 

何故か、ディードが驚いた顔をしていたので、思わずそんな風に聞き返す。

 

「本当に…?だとすれば、君はただのバカか、相当なお人好しだね……まったく、君と話していると調子が狂う」

 

そう口にしながら、ディードは俺に向けていた銃を下げる。

 

「戦いはやめか?」

 

「あぁ、君との戦いはね…ただ―――」

 

「隊長!お待たせ!大丈夫だった?」

 

「アキレス!あっちは大丈夫なのか!?」

 

「大丈夫!みんなが戦ってくれてるから。多分、すぐに合流できると思う!」

 

「わかった!俺はちょうど今、あいつと話して――――」

 

「ただ、アキレス…お前は別だ!」

 

「ディード!?」

 

アキレスがこちらにやってくるとディードがすさまじい速度でアキレスに向かっていき、戦闘を開始していた。

 

だが、ディードの実力はアキレスよりはるかに上であり、アキレスは徐々に追い詰められていく。

 

「つ、強い…!」

 

「こんなものか…これなら、まだ君達の隊長の方が手応えがあったよ」

 

「くっ、まだまだ!」

 

「アキレス!」

 

ディードの猛攻を受けているアキレスの前に出て、盾で防ぐ。

 

それに合わせて、アキレスがディードに攻撃を仕掛ける。

 

「アキレス!2人でやるぞ!俺も彼女にはまだ聞きたいことがある!」

 

「わかった!行くよ!隊長!」

 

「あぁ!」

 

俺の声と共にアキレスが駆ける。それに合わせて俺も地を蹴る。

 

互いにアイコンタクトを取りながら、ディードに連携攻撃を仕掛けていく。

 

(…それにしても、阿吽の呼吸っていうのか?アキレスの動きが手に取るようにわかる。多分、アキレスも俺と同じなのかもしれないな)

 

(わかる…わかるよ!隊長が何を考えているか、どうやって動こうとしているのか…なんか不思議な感じ…)

 

「アキレスの動きが、さっきよりも格段に良くなった…これも、あの隊長のおかげというわけか…」

 

(なるほどね…今のアキレスの実力は僕には遠く及ばないが、隊長と連携すれば、何倍もの力を引き出せるということか…)

 

「アキレス…この程度か。勝負は預けたよ。あぁ、そうそう…これだけは聞いておきたかったんだ。隊長、君の名前は?」

 

「俺か?俺の名前は晴哉だ」

 

「晴哉か…良い名前だ…覚えておくよ。機会があればまた会おう」

 

そう口にして、アキレスディードは撤退していく。

 

「逃げた…っていうか、逃げてくれた…かな。あの人、強かった……隊長と一緒だからなんとか戦えたけど…」

 

「そうね…正直私でも勝てたかどうか…あんなコが居たなんてね」

 

アキレスディードとマッドドック…ミゼレム側の装甲娘か…今回は特に問題はなかったが、彼女達が本気で攻撃したらDフィールドが壊されていたかもしれない。

 

実際、LBXのアキレスディードもDエッグによって展開されていたバトルフィールドに穴を開けて脱出したことがあったし。

 

…もし、これを考えてやっているとしたら…やっぱり、指揮系統のような存在があると考えるべきだな。

 

「それに引き換え、コッチはチョロかったろ」

 

そう言って、ジョーカー達が連れてきたのは、悔しそうに泣いているマッドドックの装甲娘だった。

 

「うぅ〜ちくしょう〜…グスッ…えぐっ…」

 

「さ、聞かせてもらいましょうか。一体どうしてこんなことをしたの?」

 

そう、エンペラーに問われ、マッドドックは口を開いた。

 

彼女が言うには自分バカにした連中を見返してやりたかったのだそうだ。

 

元々、彼女は皆からチヤホヤされたくて装甲娘になりたかったらしく、初期選考にも通り、周りの皆にも自慢をしていたらしい。

 

まぁ、動機こそ不純ではあるが一応初期選考にも通り、途中までは順調だったようだ…だが、最終選考に落ちてしまった。

 

彼女の周りの人達は励ましてくれたらしいが、裏では笑っていて、どうしたら良いかわからなくなった…そう言った。

 

「そしたら…アイツが…諦めることないって……ムシャクシャした気持ちをぶつけてやれって…LBCSを…」

 

「アイツ…?」

 

「アンタにはわかんないわよ!ちゃんと装甲娘やってるアンタには!私の気持ちなんか!」

 

「当たり前でしょ!!わかるもんですか!わかりたくもないです!チヤホヤされたくて装甲娘になりたいなんて不純甚だしい!しかも、こんな簡単にたぶらかされて…だから、最終選考で落ちるんです!因果応報です!」

 

「うっ……うぇえ〜!ごべんださい〜!…わがっでだの…こんなじゃ…だべだって〜…!」

 

ついに、泣き出してしまった…一応、反省?はしてるみたいだし根っからの悪人ってわけじゃなさそうだな。

 

「チ…チヤホヤされたいのダメですか……でも、隊長…このコ、どうしましょうか?」

 

「…とりあえずは基地で保護だな…その後、しかるべき所に預けよう」

 

「そうですね…それが良いと思います」

 

俺とハンターの会話を聞いて、エンペラーが皆に帰投準備を始めるように指示をする。

 

それを聞きながら、俺も帰投準備を始め、皆に声を掛ける。

 

「帰り道にもミゼレムが潜んでいるかもしれない。皆、警戒を怠るなよ!」

 

…基地に帰ったらマッドドックから話を聞いて、カカムに連絡するか…あいつの仕事を増やすような感じがしてちょっと悪い気がするけど。

 

…それにしても、女子社会の闇を見た気分だな…もしや、アキレスディードも彼女と似たようなことがあったのだろうか?でも、カリナがそんな陰湿なことをするとは思えないし。

 

あっ…もしや、天然で何かやっちゃったパターンか?それならありえなくはないか…で、それが原因で周りから酷い目に遭わされて、ミゼレム側についたのかもしれないな。

 

ただ、こればっかりは俺の想像だし、本人から直接聞かないことにはわからないけど。

 

…カカムなら、彼女についても何か知っているかも…マッドドックのことを知らせるついでに聞いてみるか。

 

俺はそんなことを考えながら指揮車に乗り込み、基地に向かって走り出した。

 

//////////////

 

「もしもし?カカムか?」

 

『あら?晴哉君、どうかした?」

 

基地へ戻ってきた俺は、エンペラーと共にマッドドックに話を聞き、皆に黒い猫が装甲娘達をミゼレム側に引き込んでいることを伝え、黒い猫に声を掛けられても決してついていくなと警告をした。

 

そして、その後、カカムへと連絡をしにいき今に至る。

 

「あぁ、実はな…」

 

そうして、俺は今日の出来事を知らせ、明日の朝にマッドドックを迎えにきてほしいと頼んだ。

 

『えぇ、それぐらいお安いご用よ。じゃあ、明日の朝に迎えに行くわね』

 

「すまん、ありがとうな…あ、そうだ!カカム、アキレスディードの装甲娘について何か知らないか?」

 

『アキレスディード…今日、戦ったっていう装甲娘よね?もしかして、彼女かしら?』

 

「知ってるのか?」

 

『えぇ…少しね』

 

「教えてくれないか?…あぁ、でも彼女の過去を勝手に探るのは気が引けるし、とりあえずは名前だけで良い」

 

『わかったわ…彼女の名前はワキタイズミ』

 

「ワキタイズミ…それが彼女の名前か」

 

『えぇ。でも、どうして彼女のことを?』

 

「うーん…なんていうか、根っからの悪いやつには見えなくてさ…何かしらの事情があるんじゃないかって思えてならないんだ」

 

実際、あの時のディードの叫びには怒りや悲しみとかいろんな感情が混ざっていた…あんな心の叫びを聞かされてしまったら気になってしまう。

 

『あなたらしいわね…わかったわ、それじゃあ彼女の簡単な情報を後で送るわね』

 

「色々とありがとうな」

 

『良いのよ、気にしないで。あなたの力になれたなら私としても嬉しいから。…それじゃあ、また明日ね』

 

「あぁ、また明日」

 

そう言って、俺は通話を終了した。

 

本当にカカムには世話になりっぱなしだな…今度、お礼に何か用意しておこう。

 

俺がそんなことを考えていると、ふいに扉をノックする音が聞こえてくる。

 

「どうぞ…」

 

「あ、隊長…今、大丈夫?」

 

そう口にしながら、遠慮がちに姿を見せたのはリボンだった。

 

「リボンじゃないか…どうかしたのか?」

 

そう聞きながら、リボンを椅子へと座らせる。

 

「それで、何かあったのか?」

 

「いや、そういうわけじゃないんだけど…明日はアタシの初陣だから、緊張しちゃって」

 

「なるほど、そういうことだったのか…それなら心配ないさ、お前なら大丈夫だ!自信を持っていい」

 

リボンの言う通り、明日は彼女の初陣だ…俺は、リボンの強さが実戦で通用すると判断したからこそ、明日の初陣を認めたんだ。

 

だから、リボンはもっと自信を持っていいと俺は思う。

 

「隊長…ありがと。アタシ、頑張るよ!」

 

「あぁ!その意気だ!」

 

「…隊長は、いざというときはフォローするとか言わないの?」

 

「もちろん、いざというときはフォローするさ。だけど、リボンなら他の皆とだって肩を並べて戦えると信じてるからな」

 

「隊長ってば、相変わらずアタシに対する信頼がすごいわね…まぁ、信頼されるのは悪くない気分だけど…」

 

そう言って、リボンは照れくさそうに頬を赤く染める。

 

「あ、そういえばリボンにはまだ伝えてなかったよな。装甲娘をミゼレムに引き込んでいるやつのこと」

 

「えっ!なにそれ初耳…そのミゼレムに引き込んでいるやつってどんなやつなの?」

 

「あぁ、マッドドックから聞いた話によると、そいつは黒い猫らしい」

 

「黒い猫…!?」

 

「…何か知ってるのか?それとも、もう会ったパターンか?」

 

「いや、そういうわけじゃなくて…シータちゃんって白いネコでしょ?だから、何か関わりがあるんじゃないかなって思っただけ」

 

「そうなのか?なんか、びっくりしてたみたいだから、てっきり何か知ってるのかと思ったぞ」

 

「知ってたら、隊長にちゃんと言ってるわよ…」

 

「それはそうかもな…わかった。とりあえず、黒い猫に何か言われても相手にはするなよ」

 

「わかった。それじゃあ、アタシはそろそろ戻るから…ありがとう、隊長。おかげで、明日も頑張れそう!」

 

「あぁ、ゆっくり休んでくれ…それじゃあ、おやすみ」

 

「うん、おやすみ…隊長」

 

リボンは最後にそう口にし、部屋を後にした。

 

「…どう見ても何か隠してるよな…やっぱり、謎の黒猫に声をかけられたのか?もし、そうだとしたら…いや、まだそうと決まったわけじゃないか」

 

そう口にしながら、俺は上手く言葉で言い表せない不安を感じていた。

 

どうか、この不安が思い違いでありますように…俺はそう願いながら、1日を終えた。

 




といった感じの後編でした!

そういえば、新しくフェンリルの装甲娘を仲間にできるイベントが始まりましたね!パンドラに続きフェンリル…この調子で行けば、次はオーディーンが来てくれたりしないかなと、ひそかに期待しています。

それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!


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彼女の選択肢

今回から、ゲームでいう第3章に突入します!

それにしても、最近配信された10章は衝撃的な展開でしたね…スキンフィールドの無効化に、ダンボール戦機Wで登場した、人をスレイブプレイヤーにする首輪まで出てくるとは…

今後の展開が非常に気になりますね!

それでは、本編をどうぞ!


「みんな、昨日はお疲れさま。実は今日はちょっとした発表がある……って、あれ?リボンとジョーカーは?」

 

発電所での戦いから一夜明けて、みんなにリボンの初陣について知らせるためにみんなに集まってもらったのだが、肝心のリボンとジョーカーの姿が見えない。

 

まさか、リボン…本当に例の黒猫に?

 

「コラー!バカリボン!まーたジョーカーのパンツちょろまかしたのらー!」

 

「なっ……なによ!やめてよ!こんなところで…しょっ、しょうがないでしょ!アタシの……なんかもう全部クッタクタで…買いに行く暇とかなかったんだから!」

 

「知るかー!!お前なんかクタパン履いてろー!!」

 

「ちょ、ちょっと二人共…た、隊長の前ですよ!」

 

「いや、大丈夫だ…続けてくれ」

 

心配したのもつかの間、リボンとジョーカーの声を聞き、ひとまず安堵する。

 

…まぁ、もちろん油断は禁物ではあるんだけど。

 

「自分ちの感覚でひょいひょい人の下着使うなし!普通、姉妹でもパンツ共有とかしないのら!…しかも、今回はお気に入りのピンクのシマシマのやつ!何か良いことがあった時の為に取っておいたのにー!」

 

「だっ…だから!今日はアタシの初陣だから!こんな日ぐらい気合入れたいじゃない!」

 

「初陣だがなんだが知らんがー……って、え?初陣?リボンが?今日?」

 

「あー、うん…つまりそういうことだ。教練過程も一通り終えたし、実力的にも問題ないと判断した。よって、今日からリボンも部隊に加わることになる。みんな、チーム・アテナス全員集合だ!張り切っていこう!」

 

「やったね!リボンちゃん!隊長も言ってたけど、これでチーム・アテナス全員集合だね!」

 

「あ……あんたには随分と後れを取っちゃったけど…見てなさい!すぐに追いついて、追い越してやるんだから!」

 

「まっ、パンツがクッタクタになるまで頑張ったんだ。こりゃあ、アキレスもうかうかしてらんないな」

 

「まぁ…そういうことなら勘弁してやらんこともないのら。今度、ちゃんと新しいの買って返すんらよ」

 

「わ…わかってるわよ。もう良いでしょ、パンツの話は…」

 

みんなのそんな会話が耳に入ってきて、思わず笑みを浮かべる。

 

…やっぱりこういうのは良いもんだな。…絶対に守りぬかなきゃな…この世界の人々と彼女達を。

 

俺はそんなふうに改めて決意を固めながら、出撃までの時間を過ごした。

 

/////////////

 

「そういえば、前から気になってたんだけどさ…隊長とカカムさんってどんな関係なんだ?」

 

指揮車で目的地へ向かう道中で、クノイチが唐突にそんなことを尋ねてくる。

 

「急にどうしたんだ?」

 

「いや、今日の朝早くにマッドドックを連れて行ってくれたり、隊長に協力してくれてるっぽいから気になったっていうか…」

 

「あぁ、なるほど…それで気になったわけか。…カカムとは防衛隊時代からの友人だ。一応、彼女は俺の先輩に当たるんだけど、カカムはあんまりそういうこと気にしないタイプでな…友人になるのも時間は掛からなかったよ」

 

「へぇ〜、友人か…」

 

(なんか、ホッとしちまった…そっか、別に恋人とかじゃないんだな……って、何でホッとしてるんだよ!オレ…!)

 

「うん?クノイチ、どうかしたのか?」

 

「な、何でもねぇよ!」

 

「そうか、なら良いんだが…」

 

そんな会話を交わしていると、目的地が見えてきた。

 

「そろそろ目的地に着く、みんな、戦闘準備を始めてくれ!」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

―――――――

 

―――――

 

―――

 

目的地へ辿り着いた俺達は、ミゼレムとの戦闘を開始した。

 

俺も、いつでもみんなのサポートをできるようにLBSSを装着して戦闘に参加する。

 

「さぁ、いくぞ!みんな!」

 

そう口にし、ミゼレムへと攻撃を仕掛ける。

 

さすがに戦い慣れてきたのか、アテナスのみんなは順調にミゼレムを倒していく。

 

ただ、リボンは経験が浅いせいか、苦戦しているようだ。

 

「リボン!一緒にやるぞ!」

 

「隊長…うん!フォローお願い!」

 

「任せろ!」

 

そうリボンに声を掛け、共にミゼレムを撃破していく。

 

そうして、ここ周辺のミゼレムを倒し終えて、ひと息つくことにした。

 

 

 

「ゼーッ、ゼーッ…な、なによこれ…想定より随分キツいじゃない…」

 

「大丈夫かー、リボン。動き固いぞー」

 

「あ……アンタ達が早すぎるのよ…正直、付いていくだけで精一杯…というか、LBCSを装着してない隊長が何でこんなに強いわけ?」

 

「…俺はそんなに強いわけじゃないよ…単純なスペックだけ見れば、俺はみんなの足元にも及ばないしな」

 

「いやいやそんな冗談は良いから…」

 

「冗談ではないんだが…まぁ、リボンが苦戦するのも無理はない。ここら辺になると敵も強くなってくるからな…皆の初陣の時ぐらいの敵なら…いや、単純に経験が不足しているだけで、工夫すればリボンもここら辺の敵を倒すことはできるか」

 

実際、リボンは他の装甲娘達に比べても成長は早い方だ…まぁ、アキレスの成長速度はそれ以上ではあるんだけど…あいつは例外だ。

 

だから、リボンは少し戦い方を工夫したりすればここら辺のミゼレムを倒すことは可能だと思う。

 

それにしても…今さらながら、よくミゼレムや装甲娘と戦えてるな…俺。まぁ、LBSSのおかげなんだけど。

 

…って、ちょっと待ってくれ…何で、今までこの考えに至らなかったんだ。

 

俺の作ったLBSSはミゼレムや、装甲娘達と戦える…いや、戦えてしまう…つまり、これが悪用されてしまえば皆に、この世界に生きる人達に災いをもたらすことになるんじゃないか。

 

「そういうお世辞は良いわよ……くっ、まさか出遅れたツケがこんなとこで回ってくるなんてねー…」

 

「リボンちゃん……大丈夫?」

 

「あったりまえでしょ!まだまだこれからよ…って、言いたいところだけど…正直、皆とのレベル差は如何ともしがたいわ」

 

そんなアキレスとリボンの会話が遠くに聞こえ、思わず頭を左右に振る。

 

…今は、しっかりしないと…敵がいつ来るかもわからないんだ。

 

俺は、一旦先ほどの考えを隅に追いやり、リボンの言葉に耳を傾ける。

 

「お荷物になるぐらいならって、考えてたことがあるの。隊長!アタシ、サポートに回るってことでどうかな?回復役だったり、簡単な囮だったり、今のアタシでもできることはあると思うんだ」

 

そんなリボンの言葉に思わず目を丸くする。

 

一応、経験の浅いリボンが敵に苦戦するようなら、最終手段としてサポートに回るというのを提案しようとはしていた。

 

だが、実際にリボンの口から聞かされると驚きを隠せない…もちろん、彼女がみんなの為に自分の意思でサポートに回ると言ってくれたのは嬉しい。

 

…だけど、それで良いのだろうか?リボンはみんなと肩を並べて戦いたい、そう思っているのだと俺は感じていた。

 

だから、彼女の選択肢を縮めるような真似はあまりしたくないんだけど。

 

「隊長…?」

 

「…良いアイデアだとは思う…ちなみに、今すぐそれはできるのか?」

 

結局、考えた末にリボンの考えを尊重することにした。

 

「何度もイメージはしていたけど、ぶっつけ本番だと…いや、大丈夫!きっとできるよ」

 

「一歩間違えれば今まで以上にその身を危険にさらすことになる…それに、却ってチームの足を引っ張ることなるかもしれない…それはわかってるよな?」

 

「あ…あうあう…それはそうかもだけど…じゃあ、一体どうしたら…」

 

「そこで提案がある。実は、防衛隊からセカンドケースの育成に協力してほしいという依頼があってな」

 

「セカンドケース…私達以外の装甲娘チームの編成をお手伝いする…ということでしょうか?」

 

 

「そういうことだ。より効率の良いミゼレム討伐やみんなの負担の軽減にもつながる、先を見越した話だ」

 

「楽になるのは大歓迎なのらー」

 

「あぁ、そうだな…まぁ、それでその育成試合…俺達、ファーストケースが胸を貸す形になるんだけど、そこでリボンのサポートの検証をしてみるというのはどうだろうか?」

 

「なるほど…教練の場なら、失敗即死亡ってことはないし、アタシにとってはすごく良いテストになるわ!」

 

「最近、出現しだした敵装甲娘対策にも、改めて対LBCS戦を復習しておくのは良いと思います」

 

そんなふうに、リボンとエンペラーの賛同を得て、方針は決まった。

 

「よし!それじゃあ決まりだ!ちょうど今は特別なゲストも来ているし、この1週間のうちにぜひとも伺っておきたかったんだ!」

 

「あぁ、確かに来ていらっしゃるようですね。でしたら、尚更良い機会かと」

 

エンペラーとそんな会話を交わしながら、俺は内心テンションが上がっていた。

 

そう、いらっしゃっているのだ…ダンボール戦機を見たことがある人なら誰もが知っているであろう、あの人が。

 

いやー、楽しみだな〜!会うのは久しぶりだし。

 

「よし!駐屯地までの道中、ミゼレムとの戦闘においてはリボンは待機、他のみんなは指揮車周辺の警戒に当たってくれ!」

 

「「了解しました!!」」

 

リボンとエンペラーの返事を聞きながら、俺達は目的地へむかう準備を進めるのだった。

 

/////////////

 

「うん?あれはアキレスか?」

 

目的地に向かう途中で避難所に立ち寄り、辺りを散策しているとアキレスが避難所の子供達にヒーローごっこの相手をさせられているのが目に入る。

 

うーん、アキレスも疲れているだろうし、少しは体を休めてほしいところだけど…なんか全力で遊んでるな…よし、手助けをしようか。

 

「おーい、君達、俺も仲間に入れてくれないかな?」

 

「えー、たいちょうのおにいさんも、いっしょにあそんでくれるの?じゃあね、じゃあね…おままごとにするー…たいちょうのおにいさんはダンナさんで、ユカがおヨメさんね」

 

「じゃあ、あたしはもう良いのかな?」

 

「だめー!アキレスのおねえちゃんはおしゅうとめさんね。はい、そこすわってー」

 

「えっ…なんかショックなんだけど…」

 

子供は純粋だからな…特になんの意図もなくそう言ってるんだろうな…まぁ、アキレスぐらいの年の子がお姑さんと言われるのは地味にショックを受けるかもだが。

 

そんなことを考えていたら、おままごとが始まり、俺も役になりきろうと構える。

 

「アナタったら、きょうもこんなおそくにかえってきて、まさかウワキしてるんじゃないでしょうね?」

 

「えっ!?いやしてない、してませんよ?」

 

「ホントにー?このあいだもオンナノコがたくさんいるチラシをもってたでしょー。そゆおみせであそんでるんじゃないの?」

 

「いや、遊んでないよ!女の子がたくさんいるからって、そういうお店とは限らないだろ!仕事だよ仕事」

 

「あはは!なんかシンクロしてるー。おっかしー!」

 

「なに笑ってんだ!アキレス!」

 

いやまぁ、確かに若干シンクロしてる部分はあるけれども…!

 

「いつもしごと、しごとって…すこしはかていのこともかえりみてほしいわ。おかあさんもなんとかいってやってくださいな」

 

「えっ?あ、あたしか…そ、そうねー…たまには一緒に遊びにとか連れてってほしいなー」

 

「なんか、すみません…」

 

確かに、みんなを遊びに連れていくとかあんまりできてないもんな…少し落ち着いたら、どこかに遊びに行くのも良いかもしれないな。

 

そんなふうにおままごとをしていると、一緒に遊んでいた子供、ユカちゃんが母親に呼ばれたらしく、そのままお開きとなった。

 

「あはは、おかしかったー。隊長も子供とか、結構好きなんですか?」

 

「あぁ、嫌いではないかな…あの子達の未来を守るためにも戦っているわけだしな」

 

「家庭かー。……ねぇ、隊長はどんなお嫁さんが欲しいの?」

 

「うーん、そうだな…俺なんかを好きになってくれて、一緒に居て楽しくて、俺の心が折れそうになった時に立ち上がらせてくれる人かな…」

 

「なるほど…ち、ちなみに例えるなら誰とかあるかな?」

 

「例えるなら?そうだな…強いて言うなら、アテナスのみんなはそうかもしれないな…今の俺の心の支えみたいなものだしな。まぁ、俺が好かれているかはともかくとして…」

 

…ていうか、恥ずかしい!絶対、何こいつキモいとか思われてるって…!あー、穴があったら入りたい…はぁ…俺はこれから1人で戦うことになるかも。

 

「アテナスのみんなってことは、あたしも含まれてるんだ…えへへ♪じゃあもっと隊長と過ごせれば……って隊長!?大丈夫?なんか魂抜けてるよ!?」

 

「…はっ!悪い…もう大丈夫だ」

 

「本当に?それなら良いけど…」

 

「あぁ、大丈夫だ。そういえば、逆にアキレスはどんな旦那さんがいいんだ?」

 

「あたしかー。そうだなぁ…優しくてー、頼りがいがあってー、使命感に燃えてる人とか良いなー」

 

「おぉ、まさに理想のヒーロー像みたいな感じだな…いくらヒーロー好きとはいえ現実にそんなやつが居たら暑苦しいだけだと思うが…」

 

まぁ、否定はしないけど…というか、実際、そういう人っているんだろうか?いるなら、ぜひとも会ってみたいもんだ。

 

「………あとね、年上が良いかなぁ。7歳ぐらい離れてても平気だな〜」

 

7歳ぐらい…俺と同い年ぐらいの人が好みということか…えっ?まさか、アキレスの好きな人って…俺?

 

いやいや、それはないな…うん。

 

「なるほどな…アキレスに好かれるなんて、そいつはかなりの幸せ者だな」

 

「むぷー…」

 

「?何で、むくれてるんだ?」

 

「もう!隊長のバカ!鈍感!結構勇気出したんだからねー!」

 

そう言って、アキレスは走り去ってしまった。

 

「行っちゃった…なんか悪いことをしちゃったかな…よくわからないな」

 

「ワケわからんのはアンタら。隊長のバカに1票」

 

「同感ね。2票」

 

「っとに救いようがねぇな…3票だ」

 

「4票です〜」

 

「5票…まったくどうしてくれようかしら」

 

どこからともかく現れた、アキレス以外のアテナスのみんなが次々にそんなことを口にする。

 

えっ?なにこの空気…俺、やっぱりなんかしちゃったのか?

 

「…俺、ちょっとアキレスを追いかけてくる!」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

何故か、驚きの声を上げたみんなの声を聞きながら俺はアキレスの後を追った。

 

その後、アキレスに追いついた俺は謝罪の言葉を掛け、今度、アキレスと一緒に遊びに行くという約束を取り付けて、許してもらうことができた。

 

 

 

 

 

「こ、これって…!た、隊長とデ、デートってことだよね!やったー!楽しみだな〜!」

 

 




晴哉はゲームの隊長に比べて、いくらか年齢が若いです。ゲームの隊長は20代後半だと思われますが、晴哉の年齢は24歳です。

カカムと隊長は同期のようですから、晴哉の年齢を考えるとカカムは晴哉の先輩に当たると考え、そう書きました。

それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!


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有り得ざる邂逅

今回は短めです。

本編を進めるつもりだったのですが、気づけばこんな展開に…

それでは本編をどうぞ!


「ふわぁ〜…眠い…」

 

アキレスと約束を取り付けた後、時間はすでに夕方を回っていたため、今日は立ち寄った避難所で休むことにし、翌日、改めて目的地を目指すことにした。

 

「なんか、目が覚めちゃったな…軽く散歩にでも行くか」

 

そう考え、辺りを散歩することにした。

 

―――――――

 

―――――

 

―――

 

「ん?誰かいるな…って、あれは!?」

 

目に入った人物に驚きを隠せず、俺は思わず駆け寄った。

 

「ワキタイズミ…だよな?アキレスディードの装甲娘の…」

 

「やぁ。まさかこんなに早く会えるとはね…晴哉」

 

そう言って、俺に微笑みかける彼女は戦った時のような気迫はなく、どこにでもいる普通の少女のように感じた。

 

「俺も驚いた…何でお前がここに?」

 

「そんな大したことでもないよ。たまたま、休憩がてらここに立ち寄ったんだ…君こそどうしてここに?」

 

「まぁ、俺も似たようなものだ…あぁ、それと先に謝罪しとく…悪い。お前のこと、少しだけ調べさせてもらった。まぁ、名前とかの簡単なプロフィールだけで、お前の過去については調べたりはしてないからそこは安心してくれ」

 

「なるほど、君が僕の名前を知っていたのはそういうわけか…だけど、なんで僕のことを気にかけてくれるんだい?」

 

「なんでと言われても…あんな顔をされたら、誰だって気になるさ…だけど、それについて俺が勝手に調べるのはお前だって良い気分はしないだろ?だから、聞くなら本人の口から聞こうと思ってたからな」

 

「…まったく、前に会った時にも思ったけど、お人好しというか、なんというか……僕らは敵同士なんだから少しは警戒しなよ。もしかしたら、君のことを殺すつもりかもよ?」

 

「そうなったら、全力で逃げるから問題なしだ。それに、今のお前からは敵意は感じないから、多分大丈夫だろ」

 

「ふふっ…!あぁ、君の言うとおりだ。僕は君と戦うつもりはないよ…ただ、君とゆっくり話しがしたいだけだよ」

 

「そうか。それじゃあ、あの石段にでも座って話すか?」

 

「そうだね、立ったまま話すというのもなんだし…」

 

そうして、俺とディードは近くの石段へと腰掛ける。

 

「それで、何について話すんだ?言っておくが、話せない情報とかは無理だぞ?」

 

「わかってるよ。そうだな…君の好きな食べ物は?」

 

おぉ、意外とシンプルな質問が飛んできたな。

 

好きな食べ物…食べ物か…

 

「カレーライスかな…隠し味とかスパイスによってはさらに美味しさが増したりするし、なかなか奥が深いからな」

 

「へぇ、意外と料理好きなんだね…君のことをまた1つ知れたね」

 

「そういうディードの好きな食べ物は?」

 

「僕はおにぎりが好きだよ」

 

「おにぎりか…良いよな、おにぎり…俺も結構好きだよ。おにぎりって普通の塩おにぎりも美味しいし、中に具が入ってると尚更美味しいよな。しかも、その具も多種多様でどれも美味しいんだよな」

 

「わかる!わかるよ…!君とは気が合いそうだ」

 

おにぎりの話をした途端、ディードはとても嬉しそうな顔をする。

 

本当におにぎりが好きなんだな…ディードの新たな一面を発見だな。

 

それにしても…こうして実際に話してみると、ディードもみんなと何ら変わらない、普通の女子高生なんだと思えるな。

 

「君と話していると、敵同士であることをついつい忘れてしまうよ…いっそ、このまま…いや、やめておこう」

 

「どうかしたか?」

 

「いいや、何でもないよ…それより、そろそろ戻ろう…あまり話し続けていたら、お互いに色々と不味いだろうし」

 

「まぁ、確かにそうかもしれないな…じゃあ、そろそろ戻るか」

 

「うん。機会があればまた会おう…晴哉」

 

「あぁ!その時はおにぎりを持っていくよ!それじゃあ、またな!イズミ」

 

アキレスディードこと、ワキタイズミにそう声を掛けて俺は指揮車へと戻って行った。

 

///////////////

 

「行っちゃったか…僕の方から帰るように提案したのに、いざ帰られると寂しさを感じてしまうな……もっと、彼と話したかったなぁ」

 

まぁ、僕と話しているところを誰かに見られたら、敵と内通しているなんて勘違いをされてしまうかもしれないから、これで良かったんだろうけど。

 

彼は優しい人だ…ほとんど話したことがない僕から見てもそれはわかる…だからこそ、心配になる。

 

おそらく、彼は人間の悪意というものに晒されたことがほとんどない…だから、真っ直ぐに人を信じることができる。

 

でも、逆に言えば悪意をぶつけられた時にその純粋な心が歪んでしまうかもしれない…例えば、今の僕のように。

 

…それだけはダメだ。彼のような人をそんな目に遭わせるわけにはいかない。

 

「いっそ、彼を僕達の仲間にできたらなぁ……って、それこそあり得ないか…彼が僕達に協力してくれるはずがない」

 

どうしようかな…一応、僕達は敵同士だから表立って助けることはできないし…仕方ない、陰ながら助けることにしよう。

 

彼のことは絶対に傷つけさせない…僕が守るんだ。

 

「晴哉…君のことは僕が必ず守るよ。例え、どんな手段を使っても」

 




といった感じのアキレスディードと晴哉の邂逅でした。

本来はこんな展開はないんですが、晴哉がディードと早い段階で関わった結果、こういう展開になったと思って頂ければ。

それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!



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