自己評価の超低い、内面ひねくれまくってる癖して外面は気弱な女子がCiRCLEスタッフをさせられる話 (#NkY)
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主人公・登場予定人物紹介

※オリジナル人物群は千代田区から取る。

 

紺屋(こんや) 千夜(ちよ)

「ごめんっ! 私、青春遊びとか、したくない……からっ!!」

 

花咲川女子学園の高校一年生。

 

自己評価の超低い、内面ひねくれてる癖して外面は気弱な女子系主人公。

 

親の裕福さに甘えて、とりあえず内部進学して適当に何か仕事に就こうと考えている。

これ以上何か学ぼうという気力もないため、大学進学の希望は一切ない。

 

最初から物事を諦めがちな性格。努力や青春が大嫌い。普通が一番。

無気力な自分の自己評価はかなり低く、ひねくれにひねくれた性格をしているが、根は真面目。

 

頼まれた仕事は何だかんだできっちりやってしまうし、それどころか常に全力で手を抜けない性格。

失敗するのが嫌で、やらなければならないことはちゃんとやる。

出来ないことをよしとしない努力家(本人はそれを努力と認識していない)。

 

楽器歌音ゲー問わず、とにかく演奏センスが壊滅的という致命的な弱点がある。

弱点を本人も認識しており、そんな自分が音楽を楽しんでいいのか、という不安がある。

音楽を聴く耳自体は悪くないためマイクテストや音量テスト等は普通にこなせる。

 

無理やりに近い形でライブハウス『CiRCLE』の手伝いをすることに。

オーナーである父に反抗している。

 

一個上である北沢はぐみと面識あり。

お姉さん的な存在で頭が上がらない。

 

 

 

※設定だけ作っていて登場予定未定。出るとしても多分ちょい役。名前すらまともに出ない可能性有。

 

スカイ・ラブ・フラウ

花咲川女子学園高校一年生3人によって結成されたスリーピースガールズバンド。

ドラムの佐久間空音が中心となり、ギターボーカルの花岡恵里菜、ベースの岩本愛が巻き込まれる形。

元気いっぱい楽しくぶっ叩く空音のドラムがグイグイ引っ張って、そこに恵里菜の控えめながらも柔らかく透明感のあるボーカルが乗っかり、それを愛のベースが無難に無難に支えていく。

由来は『空』音・『愛』・『花』岡。空音のネーミング。

 

 

佐久間(さくま) 空音(そらね)

 

花咲川女子学園の高校一年生。

 

「元気いっぱい、楽しくぶっ叩く!」

 

空の色をした少しだけ長めな髪を、ほんの小さく後ろで縛っている。

天真爛漫で行動力がある。コミュ力の塊。

『スカイ・ラブ・フラウ』というスリーピースバンドを結成。担当はドラム。

主に女性が歌うアニメソングのカバーをやっている。しかしあんまりうまくない。

 

 

花岡(はなおか) 恵里菜(えりな)

 

「待ってよ空音ー! 置いていかないでー!」

 

花咲川女子学園の高校一年生。

 

黒髪ミドル、銀縁眼鏡が似合う超普通系女子。吹奏楽部に所属、楽器はクラリネット。

実は中学時代に何か色々あったらしいが、完全に克服している。

 

『スカイ・ラブ・フラウ』に巻き込まれる形で参加、ギターボーカルを務める。

 

 

岩本(いわもと) (あい)

 

「岩本。名前は愛。ベース。よろしく」

 

花咲川女子学園の高校一年生。

 

淡い紫色で長い髪をしたロングヘアが特徴的な、落ち着いている不思議系女子。

神出鬼没。気づいたら『スカイ・ラブ・フラウ』にベースとしていつの間にか馴染んでいた。



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プロローグ 高望みしてない夢すらたった一言で破れてしまう、こんな世の中なんて!

 高校という場所が私は嫌いだ。

 高校生という肩書が私は嫌いだ。

 15歳~18歳という時期が私は嫌いだ。

 

 つまり、私の今の身分が大大、大っ嫌いだ!!

 

 なんでって? そりゃー外野がとにかくうるさいんだよ、この時期っていうのは。

 やれ勉強だ、やれ部活だ、やれ青春だ。そうやって頑張って汗垂らして、涙流して、笑顔溢れさせて。それを見て世の大人たちは『青春っていいよなあ』って好き勝手につぶやく。今を生きてる私は見世物じゃないってのにさ。

 

 あー、腹立つ。仮に見世物だとしてもさ、そんなのどこがいいんだか。

 だって自ら辛いこと苦しいことにめんどくさいこと、そしてめんどくさくてめんどくさーいことにわざわざわざわざ飛び込んでいくとかさ、高速道路を走行中の自動車から喜んで路上に飛び降りるような行為に他ならないでしょ?

 それでもってさ、当然泣いて、私には理解不能なんだけど笑って、私には全く意味不明なんだけど『あの時は楽しかったなー』って懐かしんで気持ち悪く感慨にひたひたするんでしょ?

 それが世の中の大人様がたが偉そうにありがたーくご高説を仰っていただいている、『青春』というやつ、なんでしょ?

 

 ほんと。ほんっと、ほんっっとーに。

 気持ち悪い、気持ち悪いよそんなの。ドドドMのドドド変態。

 

 そんでもってさ? その『青春』とやらをさ? 私たちのことを1mmも知らないくせに自分が経験してるから知ってる振りしてる大人たちからさ? いっぱいいっぱい、いーっぱい強要されるのが高校という場所なんでしょ?

 だから私は高校が嫌いなんだよ。まあ私は高校入りたてなんだけど、それでもそういう場所なんだって分かってるんだから。

 

 青春しなければ何が残るか、だって? ……何も残らなくていいよ、そんなの。どうせ私みたいな底辺人間が頑張ったところで、何か出来るなんてあり得ないんだから。無駄にしかならないよそんなの。

 

 だから全部が全部無駄に終わるような私は、ただただこの3年間をなるべく目立たずに過ごして、波風立てずに穏やかに卒業して……それでごくごく普通でごくごく適当で、最低でも私が邪魔にならないような職に就けばそれでいいんだ。

 そうやって山なし谷なしの人生を送って、緩やかに、だいたい3、40歳くらいで死ぬのを待つ。それが私のあと20年くらいの人生プラン。極力世間に私の場所を取らない省エネスタイルな人生だから、誰かの迷惑にもなりにくい。まさに完璧な計画。

 JK始めたてなのに、既に人生の終わりまで考えている人なんてそうそういなんじゃないかな? 唯一自慢できるところ、かもね。こんなゴミみたいな私が。

 

 ……でもさ。

 

千夜(ちよ)。部活は入らないのだろう?」

「……そうだけど」

「ならば、明日からライブハウス(CiRCLE)の手伝いをして来い」

「は……?」

 

 私の思い描いていた終活プラン。

 それが父のしょうもなく下らなさすぎる思い付きのせいで早々に崩れ去るとか。

 

 ……何かの冗談ですか?



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第1話 その場所は、本当に地獄でしかなくて

 紺屋(こんや)千夜(ちよ)。自分で言うのも中々に痛いけど……あえて言うんなら限りなーく底辺で、限りなーくモブ適性の高いJK(女子高生)1年。

 そんな私が願った限りなく普通な高校生活は、開始早々父の手によって超凄惨に完全破壊された。

 

 ライブハウス『CiRCLE』。抵抗の余地もなく、私はそこの手伝いをすることになってしまった。

 オーナーの父曰く、CiRCLEはガールズバンドのためのライブハウス、らしい。それを反映してか、客層は女子中高生中心。しかも、青春という荒波に勇んで足を踏み入れるような人ばかり。……私とは、正反対の人種。

 

 だから、私にとってこの場所は、本当に地獄でしかなくて。

 

 好き勝手でけたたましくやかましいだけのバンドの騒音。きゃいきゃいと楽し気に話す声。

 その真逆で、それこそメジャーのCDから流れるような洗練されたサウンド。その上真剣そのもので、時にただ事でない空気を醸し出すグループ。

 本気度も空気感もそれこそ十人十色、しかし全てが『青春』。そんな数多の青春模様が私を責め立てて苦しめた。

 

 別に仕事自体は嫌ではなかった。機材のセッティングだとか、清掃だとか、そういうのはむしろ好きだ。一人で目立たず、手順の決まっているものを黙々とこなすというのは、どうやら私の性に合っているようだった。

 ただ、その場所の空気が、どうしようもなく嫌だというだけ。むさ苦しくて、暑苦しくて、それなのに彼女たちに対して劣等感を抱いて……。

 

 でも、私にはあいにく拒否権がない。その上ライブハウスっていうのは接客サービス業でもあるから、嫌悪感を顔に出すなんてことは出来やしない。

 それでも極力お客さんとはなるべく遠目の距離感を保ちながら、よそでやっていることだと思い込みながら……ただひたすら、自分の仕事を覚えていく毎日を送る。

 嫌々とはいえ手は抜かない、というか抜けるわけがない。だって……どうしようもなくダメダメな私のせいで迷惑を掛けることは、私が許せなかったから。

 

「千夜ちゃん、お疲れ様!」

「あ、月島(つきしま)さん……お疲れ様、です」

 

 月島まりなさん。私の先輩にあたるスタッフ。『CiRCLE』の仕事なら何でもやってしまうすごい人。

 本人も忙しいのに、その隙間を縫って私の面倒を見てくれる。そこまでする価値が私にあるとは到底思えないけれど。

 

「それにしても千夜ちゃん、お仕事覚えるの早いね。女の子なのに力もあるしすごく助かっちゃう」

 

 疲れも忙しさも全く見せずに微笑みかける月島さん。

 まだまだミスも多く仕事も遅い私にこんな言葉をかけてくるなんて、一瞬で私は社交辞令だと思った。でも、変に関係を悪くしたくないから一応当たり障りのない返答をしておく。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 本当は『嘘なんて付かなくていいです、もっと冷たくしても構いませんよ』と言いたかった。でも、正直嫌われたくなかったからこんな無難な返答に収まってしまう。

 

「さすがはオーナーの娘。出来てるなー」

 

 けれど、この発言に対してはハッキリとNOと言わなければならない。ゴキブリの100万倍くらい嫌だから。

 

「え、えっと!」

「ん? どうしたの?」

「その……オーナーの娘、とかって言うのは、やめてもらえませんか……?」

「あ、ごめんごめん。嫌だった?」

「……嫌、です」

 

 自分が出来る思いっきりむすっとした顔を向けてやったが、月島さんの涼しげな顔を見るにあまり効いてないようだ。

 これが大人様がこく余裕ってやつか。基本的に私は月島さんのことを仕事のデキるカッコいい女性として見ていて結構尊敬しているのだけど、そういうのはちょっとムカつく。

 

「ところで千夜ちゃん」

「はい……?」

「楽器とかバンドはやらないの?」

 

 ライブハウスに勤めているのであれば、そしてJK1年……つまりここの客層と私が同じ年代であるならば、当然こういう質問は飛んでくる。

 でも、私はもう心に決めてある。

 

「……ごめんなさい、そういうのには興味がなくって……」

 

 楽器だとかバンドだとか、そういうものには一切手を出さない。決まってないものを表現するとか、そんなの私には到底できやしないし……何より大人がうらやむ『青春』なんてものを私は送りたくないのだ。

 私の人生は決して物語ではない、誰かに共感してもらいたいものなんかじゃない。たとえばゲームとかアニメとか漫画とか……小説、とか。

 

「ふーん……興味がない、ねえ」

 

 果たして私の言ったことは届いてるのか? 興味がないって言ったばっかりでしょ。

 なのに月島さんは何かを探し始めて……持ってきた。私が持ってきてほしくないものを、的確に。

 

「え」

 

 絶句と呆れ。

 差し出されたのは一本の真新しい黒のギター。確か、ライブハウスのレンタル品だった気がする。

 

「ギター。触ってみる?」

 

 そうやって月島さんが勧めてくるけれども、私の答えは当然のごとく決まっていて。

 

「結構です……」

「ものは試しだって。ね?」

「……結構ですって!」

 

 あんまりにもしつこいから私は思わず声を張り上げてしまった。

 ……ああ、やってしまった! だから私はド底辺なんだ……!

 しかし、ド底辺のくせして無駄すぎるプライドだけは持ち合わせてしまっている私。言ったことの撤回はしたくなくて……私はうつむきながら、声を落として言う。

 

「ごめんなさい……本当に、興味がないんです、私……」

「そっか」

 

 月島さんはそんな私に優しく笑いかけた。そして、それ以降楽器を勧めることはなくなった。

 それでよかったんだ。それで……。

 

「……はあ」

 

 ……私、子供だからって甘えてるな、多分。月島さんの人のよさに、さ。

 尾を引きずる感情の正体に気づいて、私はため息を深くついた。

 

 果たして大人が嫌いなのか、大人に構ってほしいのか。

 わけわかんないよ、私自身が……。



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第2話 逃げ続けることなんて出来やしないのに

 私、紺屋(こんや)千夜(ちよ)花咲川(はなさきがわ)女子学園という、結構大きめの学校に在籍している。ちなみに中等部からの内部進学だから、JK(女子高生)になったばかりとはいえある程度人間関係は持ち越している。

 

 ただ、まあ……何となく察することが出来ると思うけど、私は特別仲のいい友達がいない。いるはずがない、だって私はそういう風になるように振る舞ってきたんだから。

 別に私はそれで苦労したことはないし、むしろ楽だとも思っている。裏返せば特別仲の悪い人間もいないということだし、もっと言えば私はこういうキャラだって周りが分かってくれてるということでもあるし。

 

 もし無駄に友達がいてしまったら私は、私のためにもならない人間関係維持のための面倒ごとに私の貴重な時間をわざわざ割かなければならない。

 つまり、嫌でも平穏の枠の外に引っ張り出されてしまうということ。平穏な生活を何よりも望む私にとって、それはすごくすごくすごーく嫌なこと。

 だからこの高校3年間も、ほどほどな人間関係を保ちつつ空気のように卒業したい。そしてここにいる誰もが将来私の事を一切気にかけずにいてもらいたい……そう思っていたんだ。

 

 でも。『ライブハウス(CiRCLE)の手伝いをして来い』という父の呪いは、そんな私の望みさえもたやすく断ち切ってくれやがったのだった。

 

 

 

-※-

 

 

 

 学校での昼休み。

 教室の無駄にやかましくかしましい喧騒から命からがら逃れた私は、静かな場所を求めて図書室に向かうため、廊下を歩いていた。

 

 このあと、私はこの安直な行動をひどく後悔することになる。

 もし私がすぐに廊下に出ていなければ、こんなことにはならかったのに。

 

「ねえ! キミ、『CiRCLE』に最近入ったスタッフの子だよね!? 花咲川の生徒だったんだー……!」

「おい、香澄(かすみ)! いきなり後輩に話しかけるんじゃねぇ! びっくりしてるだろ!?」

 

 真正面。ネコミミとしか形容できない特徴的な髪型をした2年生の先輩にいきなり話しかけられた。そして、その隣にはややくすんだ色の金髪ツインテールの人がネコミミの先輩を抑える。距離感から、おそらくこの2人は同級生なんだと思った。

 

 それに2人とも、この前ライブハウスで見た顔だ。

 そう言えばここの制服だったな……あー……。

 

 私は失念していた。完全に失念していた。

 ああ、そういうことも起こってしまう訳かぁ……!

 

「だ、大丈夫ですよ。はい、私が――」

 

 そして、店の外とはいえ、学校という環境の違いがあるとはいえ……ライブハウスのお客さんであることには変わりがないのだから、『嫌われたくないから』と嫌な感情を向け切れず無難に応対してしまう私。

 無駄に営業スマイルを使ってしまう。ライブハウスのスタッフという立場が私の行動を強制してくる。

 

 ああ、命運は決した。私はもうモブではいられない。

 だって、青春ロードをガンガン突っ走っているようなバンドの人間と、しかもよりによって非日常が大好物だって全身にくまなく書いてあるような人間と……ハッキリとした関わりを持ってしまったのだから。

 

 

 ネコミミの先輩の作った流れに乗せられてしまい、それなりの時間を会話に費やしてしまい、連絡先まで交換してしまい……何だかんだで私と仲良さげになってしまった2人の先輩方と別れた。

 

 会話の余韻がすっと引いた。――一体全体、何をやってるんだ私はーっ!

 

 図書室についた……本もとらずに席につくと、私は文字通り頭を抱えてうずくまった。

 もし私がライブハウスのオーナーの娘じゃなかったなら、今頃普通を満喫出来てたんだろうな……。

 

 普通に生きたい。たったそれだけの願いすら、叶わないとか。ほんと。

 

紺屋(こんや)の家に生まれなきゃよかった……」

 

 この世界は、神様は、私に優しくない……!

 

 

 

-※-

 

 

 

 あの後の学校は何事もなく普通に終わってくれた。が、この後が普通に終わるなんてことが保証された訳なんかじゃない。

 私の手伝い先、ライブハウス『CiRCLE』。その場所に行かなければいけない限り、私は『青春』の嵐の洗礼を受けなければいけなかった。

 

 そして。

 

「いらっしゃいませ――」

「やっほー!」

 

 やはり、と言うべきか。手を振って親し気に挨拶してくるのは、あの時ばったり会ってしまった2年生のネコミミの先輩。背中にギターケースを背負っている。

 

「えっと……戸山(とやま)さん、ですね」

「香澄でいいよー」

 

 この先輩の名前は戸山香澄と言うのだが……とにかく人との距離の詰め方がもの凄い。ごくまれに見るような人間。当然私とは正反対の人種で……関われば関わるほど私自身のことが嫌になるような、そんな気がする。

 だから私はささやかな抵抗をした。ここのスタッフとしても理にかなっている行動を取ることによって。

 

「……3番スタジオ、時間は今から18時までです」

「冷たいなーもー」

「……わ、私はCiRCLEのスタッフとしてお仕事中なのでっ! だから……プライベートな会話はまた後で、お願いします……っ」

 

 私はこの先輩から距離を置こうとした。

 でも……こんなみみっちい抵抗じゃ、この先輩が私を離してくれるわけがなくって。

 

「じゃあ終わったら色々話そー!」

「ええっ!? 私が上がるのは21時ですよ……?」

「えー、じゃあ約束! 明日お昼休み中庭ね! 一緒にご飯食べよ?」

 

 押しの強すぎるにも程がありすぎる、戸山先輩の圧倒的強力な提案。

 そんな提案に、自己主張と意志が極めて脆弱な私に抵抗なんて出来るわけもなく。

 

「……分かり、ました」

 

 気が付けば、約束をされてしまっていた。

 

「あー……まずいな、これ……」

 

 戸山先輩たちがスタジオに向かった後、私は頭を抱えたくなった。

 何で私は、こういうのを断りきれないのだろう。

 ……いや、違う。今回に関しては――戸山先輩の雰囲気が、何というか、『そんな感じ』だったからで。上手く言えないけど。

 

 だから、実質不可抗力。そうだ、今回に関してはもはや抗いようのなかったイベントだったのだ。とにかく、そういうことにしておこう。

 じゃないと、意志の弱い私への嫌悪感で、私自身が持たないから……!



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第3話 『それ』と向き合わなきゃいけない時

 断り切れなかった戸山先輩が所属するバンド5人との昼食の提案。

 そこで、戸山先輩は。

 

『今日有咲(ありさ)の蔵でクライブやるんだ!』

 

 私を『クライブ』なるものへといきなり招待してきた。

 

 

 

-※-

 

 

 

 ……来てしまった。断り切れずに来てしまった。

 戸山先輩のブレーキ役である金髪ツインテールの先輩、市ヶ谷(いちがや)有咲の家に。

 まだ知り合ってから全然経ってないし、だからといって濃密な時間を過ごしたわけじゃない。

 

 なのに私は他人の家にいる。今まで他人の家に一歩たりとも足を踏み入れたことのない私が、だ。

 

 ああ、もう、本当ダメだ私。底辺近い私に戸山先輩のバンドメンバー5人全員が期待のまなざしを向けて来ないかって勧誘してくるのはやっぱり異様で、それでも超強烈なプレッシャーで……断れるわけない。

 

 私が空気になることはもう許されないことなのか。……許されないこと、なんだろうな。戸山先輩に目をつけられた時点で、もっと言うには『CiRCLE』の手伝いをさせられることになった時点で、さらに言うのなら私が紺屋(こんや)姓に生まれてきてしまった時点で、さ。

 

 

 質屋を営んでいるという市ヶ谷先輩の家。私の父がライブハウスのオーナーであるから、一応私の家もそれなりの大きさだ。が、市ヶ谷先輩の家はそれ以上だ。かなり大きいし広々とした敷地だった。

 しかも立派ではあるが決して派手ではなく、和風で落ち着いた雰囲気。私の家よりもここが好きだ。人間関係抜きにするなら今すぐにでも家出してここに引っ越したいとも思うくらいに好きだ。実に平和な空間っぽい。

 

 そして、市ヶ谷先輩の家の敷地内に『蔵』があった。私はそこの地下室に案内される。人の家独特のくせのある和風っぽい匂いに私は少しひるんだ。

 その匂いとは裏腹に、キーボード、ドラムセット、アンプ類にエフェクター。バンド練習には十分すぎる機材がそこには揃っていた。しかも地下にあるから防音もある程度出来る。まるで夢のような環境だ、とバンドを組んでいる人なら言うだろう。別に私はどうでもいいけどさ。

 

『ポピパ、ピポパ、ポピパパピポパ~!』

 

 そして私は……小さな小さなステージのたった一人の観客として座っていた。

 ライブというからには他にもいろいろな人を集めて行うんじゃないのかとも思ったのだが、どうやら今回は他に人はいないらしい。

 まさか。いや、そんなわけ。こんな私にそこまでする価値なんて。

 

「今日はスペシャル編! 千夜(ちよ)ちゃんのためだけの『クライブ』!」

「え……?」

 

 そんなわけあった。嘘でしょ……?

 

「うん! だって……私たちの『キラキラドキドキ』、あなたにもたっくさん分けてあげたいから!」

 

 ぐさり。痛い所をえぐられる。

 戸山先輩は私に向かって眩しい笑顔でそう言い切った。

 

 ……見透かされてる。

 私が、何もかも全てを諦めた空っぽな人間だ、って。

 

「それじゃあみんな行くよー!」

 

 ガツン。

 

 戸山先輩の髪型のような、とんがった変な形の赤いギター。

 それが一つジャーン、とストロークされれば……歪んだ音が私の内側を容赦なく殴ってきた。

 

 戸山先輩たち5人(Poppin' Party)が、普通であることを望み、夢も将来も全て諦め尽くした私の背中を。

 戸山先輩たちのバンドサウンドによって、思い切り、激烈に――押し出した。

 

 本当は軽く聴き流して日常に戻るつもりだった、けれど……そんなことさせないとばかりに5人の『青春』が私の身体を揺さぶった。

 

 なんで? え? なんで、そんな……こと……?

 

 私は音楽が分からない。分からないけど、多分技術的にはそこまで難しいことはしていない。

 でも……そんな私でも、彼女たちの音を通じて分かってしまう。

 

 すごく、楽しそうだ……って。

 しかも、楽しいことに、楽しそうに見せることに一切の手を抜いてなくって。

 その溢れんばかりの楽しさが思い切り音に出てて、5人の表情に出てて。

 そして、そんな音は何もかも空っぽの私さえも突き動かす、何かすごいものを秘めていて。

 

 ……しかもそれが、他の誰にでもない。私一人だけに向けられているという事実。

 

 悔しいけど、こんなことをされたら認めなきゃいけない。彼女たちの『青春』の音というものを。

 私があんなに毛嫌いしていた『青春』が……今、目の前で繰り広げられていて。

 

 そして、私にダイレクトに……120%、注入されていく。

 

 ……もう、意地張るのは止めよう?

 私は……私、は……!

 

 

 

 演奏が終わる。身体がひりひりする……。

 意志を持たない私の手が、ひとりでに動いて拙い拍手をしていた。

 

 何か、言わなければ。震える声で、なんとか……言葉を紡ぎだす。

 

「わ、私なんかの言葉じゃ、絶対に響かないかもしれないですが……すごく、すごく……すごく、良かった、です……っ」

 

 喉の奥から絞り出した言葉、貧弱で薄っぺらい言葉……それこそディストーションが掛かりまくって歪みに歪みきった私の心がひねり出した言葉を、なんとか、なんとか戸山先輩たち5人に伝えた。

 我ながらありきたりでベッタベタな、すごくペラペラとした上っ面だけの言葉。それなのに……信じられないことにたったそれだけで、こんな地べたに這いつくばる私の言葉だけで……5人はそれぞれ喜びを表現したんだ。

 

 さらに、戸山先輩が私の肩を掴んで、ずいっと近づいて。

 

「私なんか、じゃないよ。……千夜ちゃんは千夜ちゃんだから!」

 

 キラキラとした笑顔を、惜しげなく私に向けてきて……その笑顔があまりにも輝いていたものだから、私は不覚にもドキドキしてしまった。

 

 けれど。

 

 私は、私……か。

 そうだけど。そう、なんだけど……さ……。

 

 確かに嬉しかった。確かに楽しかった。こんなひねくれまくった私でも素直に感じたこの感情。

 でも。割り切れない思いというのは心の奥底に確かにあった。気持ち悪く、しつこく、こびりついている。

 

 ひとは、そう簡単には、完全にひっくり返されない。

 今までずっと自分をこき下ろしてきた人生を送ってきたけど……多分この時が一番、自分自身が嫌になった瞬間だった。

 

 普段意志脆弱なくせしてさ? 何でこんな時だけ強情になるの? 私っていう救いようのないゴミ人間は……!




小説という媒体で序盤から複数人のキャラを読者に認知させつつ動かすのは中々に難しいので、動かすキャラの人数を絞りました。
出てくるキャラは少しずつ増やしていきます。たぶん。


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第4話 場違いな期待は私を待ってくれない

 クライブの後、自己嫌悪は相変わらず収まらないものの……『青春』への耐性が何となくついてきた気がする。

 つまり、以前よりかはライブハウス『CiRCLE』でのお手伝いも楽にはなってきた。気持ち的に。……とはいえ父に無理やりやらされているのには変わらないから、その辺モヤモヤはしてるまんまだけど。

 

「ありがとうございましたっ……!」

 

 カウンターで近頃バンドを組んだばかりらしい3人組の同級生を見送ると、月島さんに話しかけられる。

 

千夜(ちよ)ちゃん」

「は、はいっ」

「何というか、ちょっと柔らかくなったよね」

「……そんなこと、ないです……」

 

 私は照れながら意地張って否定した。月岡さんの口角がほんのり上がった気がするけどきっと気のせいだ。

 

「そんな千夜ちゃんに私から提案があります」

「何で、しょうか……?」

 

 月島さんは壁掛けカレンダーを指さした。今週の日曜日にイベントの予定が赤いペンで書かれていた。

 

「今度の日曜日に『Afterglow(アフターグロウ)』っていうバンドが主催するライブイベントがあるんだけど……ステージ演出、やってみない?」

 

 一応ステージの設備をいじらせてもらったことはあるにはあるが……突然の提案だった。

 

「えっ!? こんな私が……ですか?」

「もちろん、いきなり千夜ちゃん一人にやらせるわけじゃないよ。でも、きっと楽しいと思う。

 ステージの演出っていうのはね? 色んなバンドのもう一人のメンバーになって、一緒にライブを作り上げるの。ね、素敵だと思わない?」

「もう一人の、メンバー……」

 

 受付だったり、スタジオのことだったり、バンドの機材のことだったり……今までの私の仕事というのは、『青春』の場所を提供するだけの立場だった。

 でも、今回の仕事は違う。一緒に『青春』を作り上げるという仕事。それも一つじゃない、十人十色の様々な『青春』の中に入って、それをより伝わるように頑張る立場となる。

 

 ……今まで『青春』を軽蔑してきた私なんかに務まるわけがない。

 それに、新しいことへの思い切った挑戦と言うのは……失敗がつきもの。特に、私なんかは。

 そんな私なんかに『青春』を預けるなんて、そのバンドが限りなく可哀そうだ。

 

 月島さん。あなたって人は、実は頭が悪いんでしょうね。

 だって、こんなダメダメな私を謎に買いかぶって……場違いな期待を抱いているんですから。

 

「ごめんなさいっ……少し、考えさせてください」

 

 私の心に問うと、当然のごとく出てきたのは後ろ向きの答えだった。月島さんは私の答えを聞いてがっかりするわけでもなく、ただ優しくこう言ってくれて。

 

「……うん。私も無理には言わないよ。千夜ちゃんの考え、私は尊重するから」

「……ありがとうございます」

 

 多分、色々顔に出てしまっていた。

 ああ、私、やっぱり月島さんに甘えてる……。

 

 浸りたくもない自己嫌悪にいつも通り浸っていると、スタジオの一室から練習を終えた5人組バンドが出てくるのが見えた。その全員がここの近くにある学校の一つ、羽丘(はねおか)女子学園の制服を着ている。

 

(らん)ちゃん、練習終わり?」

「はい。今日は終わりです――」

 

 ギターケースを背負った、黒髪ショートに赤メッシュを入れた子が月島さんと何か話している。何か目が鋭くて、怖い……。

 

「千夜ちゃん、紹介するね。この子たちが『Afterglow』。幼馴染5人組でバンドを結成しているんだって」

「幼馴染、ですか」

 

 幼馴染。私はその言葉に反応して、しばし考え込んでしまう。

 

 幼馴染のいない私のしょーもない妄想ではあるが……一番めんどくさい関係性なんじゃないか、幼馴染っていうのは。ただの友達とかそういうのじゃない、特別強い拘束力がありそうな――。

 きっと学校だって、本来自由に選べるところを幼馴染という縛りで一緒にせざるを得なかったとか、そういうんじゃないだろうか。この5人は羽丘で、そこも確か中高一環だったから……きっと中学選びの時に縛りにあったのだろう。

 

「こ、こんにちは。最近ここのお手伝いをさせていただくことになりました、紺屋(こんや)千夜と申します」

「よろしく。あたしは美竹(みたけ)蘭。『Afterglow』のギターボーカル担当。それで――」

 

 でも、今目の前で私に自己紹介をしてくれている5人は、きっと……そんなめんどくさいこと、全く思っていないんじゃないんだろう。さもこの縛りの強すぎる関係性を当たり前のように受け入れてそうな……そんな雰囲気。

 ああ、きっとこの人たちも私とは真逆に位置する人種に当たるのだろう。そんな人たちと関係を作らなければいけないんだから――本当、この場所は疲れる……。

 

「それで、まだ決まったわけじゃないけれど……この子に、今度のライブイベントのステージ演出を手伝ってもらおうって思っているの」

 

 まだ決まったわけじゃない話を持ち掛ける月島さん。決まったわけじゃないって言ってるのに、美竹さんが早速私を睨んでくる。

 私でも分かる、明らかにけん制している。人とか面倒ごととかから逃げてきた私は負の感情というのを明確に向けられるのを慣れていない。私は目を逸らして後ろで手をぎゅうっと組んで不安をごまかそうとする。

 

「……『いつも通り』が出来るのなら、構いません」

「ちょっと蘭ちゃん、もうちょっとオブラートに包もうよ。だってこの子、まだ入ったばかりだよ?」

 

 ベースを背負った、薄ピンク色の二つ結びの髪型をした子――上原(うえはら)ひまりさんが美竹さんをいさめる。たったそれだけのやり取りなのに、幼馴染の距離感という空気が感じられる。つくづく私には縁遠い関係性だ。

 

「だって、あたし達はどんなステージだろうといつも本気でステージをやってる。違う、ひまり?」

「そうだけど……」

「だから当然手を抜くなんてことはしないし……ましてや中途半端な演出であたし達の本気を邪魔されるのはものすごく嫌」

 

 しかし、美竹さんは簡単に上原さんの意見を退けてしまう。彼女には……いや、彼女たちには、きっとバンドをやるにあたって『譲れないもの』というのが明確にあるんだろう。

 私にはない。あるはず、ない。あったならば、少なくともこんな最低な人間にはなってない。

 

「紺屋さん」

 

 美竹さんの目が私を不意に射抜く。

 

「は、はいっ……!」

「もし、やるんだとしたら」

 

 そして。

 

「『本気』でやって」

 

 こんな言葉を喉元に付きつけてきた。

 私という底辺人間から最も遠い、こんな言葉を。



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第5話 意味の分からない二文字が、私を苦しめる

「『本気』って、何……?」

 

 今まで意識もしていなかった言葉、意識して私から遠ざけていた言葉が頭の中をぐるぐると回る。

 『本気』だとか『真剣』だとか『頑張る』だとか、そうやって意識したところで……元々の能力が足りなかったりとか、運がなかったりとかで結果が結びつかなかったら本当に(むな)しいだけ。

 

 本当に。本当に空しかったし……。

 

 私はそうなるのが怖い。だから逃げて逃げて逃げ続けるんだ。『本気』という概念から。

 

 ……あれ。そもそも何で、私……真面目に考えこんじゃってるの?

 

『もし、やるんだとしたら『本気』でやって』

 

 昨日に言われたばかりの美竹さんの言葉が、身体の内側から響いてくる。私の目を射ってきた紅の瞳が今でも脳裏から見つめ続けてくる。

 首をややきつめの力でじわじわと締め付けられるような苦しさ。……あの時私は、あんなに強い意志を向けられていたのか。

 

 それを私は敏感に感じ取って、私らしくもない考えを彼女から刷り込まれて……まるでそれをプログラミングされたロボットのように、動かされてしまっている……?

 

 ミシリ。

 

「っ……!」

 

 右肩が不意に痛んで、思わずうずくまってしまう。この期に及んで、あの黒歴史はまだ私を――!

 

「千夜ちゃん、どうしたの!?」

「あ……っ」

 

 たとえどんな人間にも見られたくなかった場面。私の唾棄すべき急所。

 しかし……何という不運か、偶然通りかかった戸山先輩が心配そうに見つめていた。

 考えうる中で、一番見られたくなかった人間。

 

「……な、なんでもない、ですっ」

「何でもなくないでしょ?」

「っ……」

「だって、ひどい顔してる」

 

 眉をハの字に曲げてくれている。こんな私のために。私の下らなさすぎる黒歴史ごときに起因するしょうもない発作のため、だけに。

 私はその事実が耐えられない。私らしくもなく、早口でまくし立てた。

 

「えっと……今の事、内緒にしてもらえますか」

「えっ?」

「私は大丈夫ですから。今までこんなことたくさんありましたし、実際今までなんとかなってますし……だから、心配は無用なんです」

 

 でも、戸山先輩は全く動じることもなくにこりと笑って。

 

「そっか。それなら……これは私からのプレゼントってことで」

 

 私がどう答えても元から手渡す予定だったのだろう。戸山先輩はどこからか一枚の紙きれを取り出し、私に手渡してきた。

 

「これって……」

「そう、ライブのチケット。私たちは出ないんだけど、今度知り合いがライブをするからって貰ったんだ。ちょっと急だけど」

 

 見る限りここではない別のライブハウスのチケットだった。出演するのは8バンドだが、規模自体は小さめらしい。

 一応私はライブハウスの手伝いをしている。たとえ動機がひどく後ろ向きなものであろうと手伝いは手伝い、ライブハウスの顔。いざ私が演出等をやるとして……いや、たとえやらなくても、実際にライブイベントの空気感を味わっておくのは絶対に必要なことだろう。

 

 だから、私がライブイベントに行くこと自体は嫌ではないのだ。行くことを渋る理由は別にある。

 

「でも、明日の夜って……私、ここに来て手伝いをしなければいけないんです」

 

 しかし、その問題はあっという間に解消されてしまうことになる。

 

「いいよ、千夜ちゃん。行っておいで」

「月島さん、聞いていたんですか……?」

 

 いつの間にかそばにいた月島さんにOKを貰ってしまった。

 

「今度のライブイベントのこととか、あとは私の知らないこととか……色々悩んでいるみたいだったから。そういう時は何か刺激を得てみるのもいいと思うよ」

 

 今まで自覚はなかったけれど……もしかしたら私って、分かりやすいんだろうか。私の思っていることとか本質だったりとか、結構色んな人に見抜かれてる気がする。

 けれど、それだと今度は月島さんの負担が大きくなってしまう。

 

「でも……」

「それじゃあ私と一緒に行こう?」

 

 違うの、戸山先輩。そういうんじゃなくて、私は……。

 

「いいね。香澄ちゃんと一緒ならもっと楽しいと思うよ? 行ってみたらどう? ……私なら、大丈夫だから」

 

 月島さんがニッと笑って、渋る私の背中を押してきた。

 まるで私が月島さんの言葉を欲しいと思ってしまっているよう。ああ……私、本当に甘えてる。

 

「……はい。行きましょう」

「ホントに!? やった、みんなきっと喜んでくれるよ!」

 

 私ごとき一人で。

 私ごとき一人で、喜んでくれるの……?

 

 わっと湧き出た疑問が胸の中で渦巻いているというのに、戸山先輩の勢いに押されて中途半端にうなずいてしまった。

 自己嫌悪。ああ、いつもの。

 

 でも、私はもう流されるしかないんだろう。私が今までそうしてきたように……戸山先輩と月島さんが作った流れに流されて、ライブハウスに行くほかないんだろう。

 

 だって、こんな失敗人生を送り続けている私に抵抗する力なんて……あるわけないじゃない……。



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第6話 私から一番遠い言葉を探しに

 よくこんなんを人前で見せられるね。逆に感心するよ。

 

 戸山先輩に連れられてやってきた人生初ライブハウス。最初の3人バンド――昨日CiRCLEのスタジオを借りに来たバンドの初めの一音を聴いた私の感想がこれだった。

 ライブが始まるや否や最前列にすっ飛んでペンライトを振りまくる戸山先輩をよそに、私は後ろに突っ立ってぼーっとその様子を眺めていた。

 むしろ下手な演奏を聴かされているのにもかかわらず、何でみんな冷めないんだろう、あんなにも楽しそうに熱中出来るんだろう。不思議に思う。

 

 私の関心を引くバンドは一向に現れない。どれもこう、何というか響いてこない。戸山先輩たちのバンドにあった魅力というか、周りを巻き込む力というか、そういうものが全然伝わってこない。ライブステージに立っている、人に聴かせる音楽をやっているっていうのに、まるで自分たちが楽しむためだけに音楽をやっているようなバンドばかりだ。……そんなんじゃダメだろう。音楽に詳しくない私でも分かる。

 

 ……自分は『本気』から逃げておいて、周りには『本気』を求めるのな。私。これは擁護できないクズだ。

 

 あっという間に7バンドの演奏が終わった。興味も関心も惹かれない自分本位なバンドばかりだったから、心底つまらない時間だった。

 前にいた戸山先輩がこっちに駆け寄ってくる。聴く側なのに、なぜだか息を切らせていて汗をものすごくかいていた。それだけ興奮する要素、あったか……?

 

「千夜ちゃん、次で最後のバンドなんだけど、これが私オススメのバンドなんだ! せっかくだから前に行こ? ねっ!」

「戸山先輩ちょっと待って……うわわわっ……!」

 

 当然私に抵抗などできる力なんてない。結構な力で腕を引っ張られ、強制的に最前列の人ごみへと送還される。

 元々人ごみが苦手な私、それに今までのパフォーマンスの総和で蓄積していった体温と汗の温度がダイレクトに私を襲う。不快な熱さを感じて、思わず顔をしかめた。

 

「ここのバンド、カッコいいバイオリンの子がいるんだよ?」

「バイオリン……ですか? バンドに?」

「そうだよ、珍しいでしょ……あ、ほら、出てくる!」

 

 舞台袖からバンドのメンバーが姿を表すと、きゃあ、と黄色い声がライブハウスの空間をいっきに満たす。

 一目見て私はびっくりした。全員で揃えたアイドルさながらの衣装を着て出てきたのだ。白と黒のツートンカラーを基調にしていて、ちょっと軍服っぽいかなと私は思った。そして薄い水色のひらひらが丁度いいアクセントになっている。

 派手さはない落ち着いた衣装だが、鍵盤のモチーフが差し込まれていたり、左胸に気品ある蝶のアクセサリーがワンポイントで飾られている辺りすごくオシャレだと思った。作った人のセンス、とんでもない気がする。

 

「衣装かわいいー……!」

「は、はい……すごい、ですね……」

 

 戸山先輩の問いに見事に語彙力が死んだ。これが私たちと同じ高校生のやること? どう見たってテレビで見るようなアイドル衣装とそん色のないレベルじゃあ……。

 

 セッティングを行う5人。まだちょっとしたノイズになるような音しか鳴っていないのにも関わらず、今までのバンドとは出てくるオーラが比べ物にならなかった。

 出てきた瞬間から分かり切っていたけど……多分このバンドは……すごい。演奏技術とかそんなんじゃなくて……どのバンドよりも『本気』ということなんだろう。

 

 そして、そのバンドは当然のごとく『オリジナル曲』という単語をマイクに乗せて、それを演奏した。

 衣装も曲も全部自分たちで作る。たったそれだけの事実に押されてしまう。

 

 しかし……やはり結成したてのバンドということもあってか、技術面ではそれほど光るものは感じなかった。

 まず一番に気になった点は……5人いる割には楽器構成的に音が薄い所。ボーカルの子がギターでもやって補強すればいいのかもしれないけれど……いかにもボーカル始めたてです、って感じがしていて歌うのに精一杯な感じがしている。今の状況でギターボーカルに挑戦してもあまりよくはならなそうだ。

 あとは、なんだ。確かにバイオリンの人の技術は大したものがあると思うが……どこか音に迷いがある、そんな気がする。端的に言えば、バイオリンだけバンドから音が浮いている気がするのだ。一緒になり切れていない。

 

 ドラムが安定しないだとか、ベースが酔いしれまくってるだとか、まだまだ欠点は多い。あげようと思えば他にもいくらでもあげられる、それこそ前のつまらない7バンドと同じくらいには。

 しかし、このバンドが私を一番惹きつけたのは間違いないことだ。だって……こんな冷めきった私が戸山先輩と一緒になって、最前列でペンライトを遠慮がちながら振るくらいのめり込んだ。その事こそが、このバンドの強さだと思った。

 

 あの白い髪をしたボーカルの子……さっきも言ったように歌がすごく上手いという訳じゃないけども、それでも心にすうっと入ってくるような、透明感のある声をしていた。きっと、ボーカルを続けたらこの子は化けるんじゃないだろうか。

 そして、技術的な欠点が多いということは伸び代が大いにあるということの裏返しでもある。彼女たちが『本気』を維持出来たら、きっと……!

 

 ……何、私熱くなってるんだろう。はは、笑える……。

 演奏が終わって拍手をしながら、私は馬鹿みたいに興奮している私を脳内で嘲笑ってやった。



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第7話 覚悟は決まったの?

 ライブの翌日。柄にもなくはしゃいでしまった私は結構重要なことを見落としていたことに気が付いた。もし私が演出をやるんだとしたら、出演バンドの選り好みは出来ないということに。

 

 わざわざこんな私に『本気』を求めてきたAfterglowは多分大丈夫だろう。しかし、他のバンドたちが心底つまらないものであったとしても、私はそのバンドの演出をしなければならない。

 そして、やるからには演出の力で観客を騙してライブを盛り上げさせなければならない。それが『CiRCLE』の名前を背負っている私の仕事なんだから。

 

 ……そんなことが私に出来る? このひねくれにひねくれまくった私に? つまらないバンドだと感じたら一瞬で興味を失くしていたこの私に?

 改めて思うと、私は本当にライブハウススタッフとして失格級の人間だよね。かといって、その最低な性根をひた隠しにしていくしか私に道はないんだけれども。

 

 でも、じゃあ演出やりたくないってこと、って聞かれたときに私が答えるだろう選択肢はNOであったりする。どうしてそんな考えを持ったのだ、お前らしくないじゃないかと聞かれても、誠に遺憾なことに一切合切分からないのだけれども。私自身のことの癖してさ。

 実際私には拒否権がある。その場所から逃げても猶予があるし、許される。そもそもここを手伝っているのも自発的にやってる訳じゃなく、やらされているだけ。だから、逃げても誰も私を咎めない。少なくとも、私の身の周りの人間たちはね。勝手に私の文章読んでるあんた達のことは知らない。別にあんた達が私を咎めたって何の影響も及ぼさないし。

 

 でも、私がここで演出をやらないのは、なんか、嫌だった。単にそれだけであり、それ以上でもそれ以下でもない。まさに幼稚園児みたいな駄々こねでしかない『嫌』という感情。

 かと言って積極的にやりたい! という訳じゃないのが私らしいというか何と言うか……あー、私本当に損してるなとその辺自覚してる。

 なんてめんどくさい女。もし私と付き合う男がいたらそいつは本当に苦労しそうだな、と他人事のように思う。別に作るつもりないけどさ。ただでさえめんどくさい毎日の生活がもっとめんどくさくなるだけだろうし。私の時間を侵犯されるのはもう間に合ってます。

 

 で? 私、どうするの? って話なんだけど。

 

「……」

 

 あー、自分のことがマジでムカつく。答え、出せないんだ、私。

 月島さんの優しさに目いっぱい甘えさせてもらったのにさ。戸山先輩にわざわざライブ連れてってもらったのにさ。

 もう来るべきところまで来てしまった感じあるのにさ……っ!

 

「……あ、あの」

「っ!?」

 

 どうやら私は思考の海に溺れて、受付に来てくれた目の前のきれいな白い髪をした子すら見えなくなっていたらしい。……というか、この子昨日のライブで最後に出ていたバンドのボーカルの子だ。

 昨日ライブしたばかりなのにスタジオ練習するんだ。凄いな……やっぱり彼女たちも『本気』でバンドをやっているってことなんだろうか。としたら、私がその熱に当てられてしまったのも納得してしまう。他のバンドとの落差もあるにはあるんだけど。

 

「予約していた、倉田(くらた)、ですけど……」

 

 そのボーカルの子がおどおどした口調で受付に来る。

 意外だった。ステージを見ていた時はそんなこと一切合切感じなかったのだが、この子、だいぶ引っ込み思案な子なのかもしれない。まとっている雰囲気も、なんとなく私と似ている気が……。

 

「はい。倉田さんですね――」

 

 でも、自分の思っていることとか考えていることを仕事に持ち込むなんて言語道断。一瞬で接客モードにスイッチを切り替えて対応を終わらせる。

 受付が終わると、ぞろぞろと4人の女子高生たちが続いてやってきた。全て昨日ステージの上で見た顔だ、バンドのメンバーだろう。

 

「みんな、2番だって」

「ありがとーしろちゃん。助かったよー」

「ふーすけとは大違いだねー……? じーっ……」

「うぐっ……も、もう予約忘れないから!」

「喋ってないで早く行くわよ。時間がもったいないわ」

 

 ぱっと見でバンドの雰囲気もよさそうだ。容姿はだいぶ個性的だけど、雰囲気とかは至って普通に仲のいい女子高生バンドって感じ。

 

 ……いや、違うな。何か、気品がある気がする。立ち振る舞いとか、おしゃべりとかに。知らんけど。

 

「気になるの?」

 

 5人がスタジオに入った後、月島さんが私に話しかけてくる。知らず知らずのうちに私が視線を追っていたのを見られてしまったのかもしれない。

 まあ、隠すことじゃないし素直に言っておこ。

 

「えと……気になる、と言えば。昨日のライブで見たので」

「『Morfonica(モルフォニカ)』の演奏を聴いたんだ、いいなー」

「『Morfonica』……そういえば、そんな名前だった気がします」

「そう。月ノ森(つきのもり)女子学園の一年生で結成されたバンドなんだ」

 

 え? 月ノ森? 月島さんから出てきた単語に耳を疑う。

 

「え、月ノ森って……あの、月ノ森ですか?」

「そうだよ。名門お嬢様学校の月ノ森女子学園。テレビとかでもたまに名前聞くでしょ?」

「はい。名前は知ってましたし、この辺にあるとも分かってましたけど……実際にそこに通っている子を見るのは初めてです」

 

 道理で何となーく気品があったわけだ。そんなお嬢様学校の子たちもバンドをやる時代になってるんだ。あー、流行ってるなーガールズバンド。密接に関わっている人間の一人である癖して、私は他人事のように思う。

 

「昨日の演奏聴いたんでしょ? どうだった?」

 

 月島さんが瞳を輝かせて聞いてくる。私が急に一日仕事の穴をあけることになるのにも関わらず、ライブハウスに行くことを後押ししてくれたんだ。自分がそこで感じたことをちゃんと伝えないと。

 

「……なんだか、引き込まれました」

 

 目を閉じて思い返そうとした。頭の中、おぼろげに響くバイオリン混じりのロックサウンド。昨日の音が実際に聴いた音とは思えなくて……何だか夢みたいだ。

 伝えなきゃいけないのに、上手く伝えられない。この感覚。

 

「詳細については、上手く言えないんですけど。記憶がおぼろげで……」

「でも、何か貰ったんでしょ? その様子から見ると」

「何か貰った……」

 

 演出をやりたいのか、やりたくないのか……今こうして自分の気持ちすら分からないようになっているのは、間違いなくあのバンド……Morfonica、とか言ったか。その演奏を最前列で直にかぶってしまったせいだ。

 この悩みは、Morfonicaから貰ったもの。

 

「……貰ったと言われれば、そうかもしれない……です」

 

 自信なさげに返事をする。

 曖昧すぎる。私。もし私がこんな返事を返されようなら……腹が立つ。

 そして、そんな返事しかできない私に腹が立つ。

 

「そっか。それなら行ったかいがあったね?」

 

 ウインクをする月島さん。話をとりあえず合わせるため、私はまたしても曖昧にうなずくことしかできなかった。

 

 ……結局答えは出ないまま。どうすればいいんだろう、私。



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第8話 流されてしまえ、決めてしまえ

 ……どうしようか。演出、やるかやらないか。

 自分の気持ちのありかを掴めないままに、『Afterglow』主催ライブの当日を迎えた。

 眠れていない。眠れるわけが無い。目を閉じると悪夢を見そうで眠れなかった。地獄だ。

 

 布団から出ると、右肩が気持ち悪く痛んだ。不快だった。

 

 そんな地獄を越えた先で、私はまたしても月島さんの優しさに卑怯にも付け込んで甘えてしまう……すなわち、「結局分からないまま」ということをいかにも困っている風を装って伝えた。……実際に、困っているのだけれども。自分というわけのわからないいきものにさ。

 

 そんなゴミみたいな行動をする私に、月島さんは軽くこんなことを言ってきた。

 

「じゃあ、やってみればいいんじゃない?」

 

 やってみればいい。まあ、確かに……世の中には「やらないで後悔するよりやって後悔しろ」みたいな格言? がある。私は1ナノメートルも信じていないけれど、過去の経験から。

 でも、今回はそうじゃなくって……失敗どうこうじゃなく、今回は私という意味不明な一人の人間の気持ちの問題であって。

 

「で、でも……私、そんな中途半端な気持ちじゃ、ライブに出る方々に失礼だと思うんです」

 

 つまりはこういうこと、なんだ。今の気持ちが分からないものであっても、少なくとも私は『本気』じゃないんだ。

 けれども、月島さんはその言い訳を待っていたかのようにこう返してくる。

 

「じゃあ、仮に今日演出をやるとしてさ。千夜ちゃんは適当にやったりする?」

 

 ありえない。もしもやるのであれば、決して迷惑とか悪印象とか、そういうのを与えるのは絶対に嫌だ。

 端的に言えば悪者になりたくないってこと。底辺人間の癖してさ。

 

「……それは絶対にしないです」

「なら大丈夫。そういう気持ちがあるのなら、それはもう中途半端じゃない」

 

 私はハッとした。

 ……見抜かれてる。敵わない。最近つくづく思うんだ、もしかしたら私は分かりやすい人間なんじゃないかと。認めたくないけど。

 

「千夜ちゃんなら大丈夫。いざとなれば私もついてる。やってみよう」

 

 ああ、こうして私は。

 

「……分かり、ました」

 

 人に流されてしまうんだろう。

 

 でも、肯定の一言を口に出した瞬間……肩から重荷がすっと降りた気がした。まるで悪霊が消えてすっきりしたかのような、そんな感じがした。

 ……やらなければ、いけない。

 

 あれ、私。前……向けるじゃん。そうなるために人頼りにならなきゃいけないところはアレ過ぎるけどさ。

 

 

 

-※-

 

 

 

 機材の使い方に関しては前々から軽く教えてもらっていたけれど……やはり緊張するものは緊張する。手元のスイッチ一つでステージのライトが踊る。軽くて重い、その操作感。

 

 本日出されたそれぞれのバンドのセトリを見つつ、月島さんのアドバイスも聞きつつ――ほとんど月島さん頼りだが、ライトの色だとかタイミングだとかを想像する。今回のライブは規模の小さいものでリハーサルはない。音のバランスを各バンドで取る程度。

 つまり……一発勝負、ってこと。主催の『Afterglow』以外のバンドは全てコピーバンドで、なおかつ曲も全て記憶の中に叩き込んでいたものしかなかったのが幸いだった。予習ってしておくものなんだな。

 

 でも……相当なプレッシャーがあるのは事実。たとえバンドが良くても私がミスれば台無しになるんだ。特にAfterglowは『本気』のオリジナル曲。あらかじめライブを録音していたCDを聴きこんではいたものの、まだ私の頭の中に音楽が定着しきっていない。だから、怖い。

 

「緊張してるね」

 

 月島さんが私の顔を覗き込んでくる。私とは対照的でいつも通りの表情。さすが私が入るまでここをほぼ一人で回してきただけある。

 もう取り繕って意地張って違います、なんて言えない。言ったとしてもなんのメリットもない。素直に、認める。

 

「……はい」

「そっか。初めてはみんな緊張するものだよ」

 

 緊張している所が全く想像が出来ない人がそう言ってくる。聞くしかない。

 

「月島さんもそうだったんですか?」

「私? うん。緊張してたよ。でも……それ以上に、ワクワクしてた」

「え……?」

 

 ワクワク? この一発勝負の状況が? ……信じ、られない。

 

「ありとあらゆるバンドの演奏を後押しできる、もう一人のメンバーに混ざり合えるって思うと……私は、すごくワクワクした」

「ワクワク……」

 

 今の私の中には塵ほどもない感情だった。理解できない。私は今、こんなに怖いのに……。

 

「……とりあえず、千夜ちゃん」

「はい」

「思いっきりやってみよう。私もいるから」

 

 月島さんは、楽しくやろう、とは言わなかった。

 けれども、ちゃんと月島さんがいるという事を伝えてくれた。

 

「信じて、みます」

「うん。任せて」

 

 怖いのは変わらないけど……楽にはなった、気がする。

 楽しむなんて到底無理だと思うけど。それどころかステージに上がるバンドと戦う心持ちでいるけれど……そんな、適正がないとわかり切っている私だからこそ、思い切りやらなければ迷惑を掛けてしまう。

 

 もう、逃げられないんだよ。私は。

 覚悟は決まってるよね。



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