逆柱は嫌われている (星天さん)
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プロローグ

pixivでたまたま嫌われ主人公を見て書きたくなったので書かせていただきました。
投稿配分は

幽霊に呼吸を習いました

呪われし魔神の少年

卍解!!って言ってみたいよね!

この作品って順で投稿していくんでよろしくお願いいたします!


「御影!!姫乃への嫌がらせを止めたらどうだ!!」

 

「おい御影、俺の四人目の嫁(予定)に迫ったそうだな?」

 

「男の風上にも置けないな御影...甘露寺と姫乃に近づくな!」

 

「姫乃さんに近づかないでくれませんか?」

 

「「「「とっとと柱を引退したらどうだ(です)!」」」」

 

「大きな声を出すな鬱陶しい」

 

鬼殺隊・逆柱(さかばしら)である俺...御影透也は、鬼殺隊の9割の奴らに嫌われている。何故、嫌われているのかを説明する前に俺の事について少し話そう。

 

 

 

 

 

突然だが──俺、御影透也は転生者と呼ばれるものだ。

 

いきなり何言ってんだ?って思うかもしれないが事実だ。

小説、二次創作小説、ゲーム・アニメ等でよく見られるが、まさか俺自身が体験するとは夢にも思わなかった。転生する前は一般的な高校生でごく普通なスクールライフを送っていたある日の夜、家に帰ろうと歩いていると暴走したトラックにはね飛ばされ死んでしまった。

死んでしまった俺の目の前に神と名乗る男が現れ転生させると言った。神は俺に二つの転生特典をくれて──何故か大正時代に俺を転生させた。

ちなみに神様から貰った転生特典は...。

 

○平子真子の能力(虚化・斬魄刀込み)

 

○鬼道の詠唱が書かれている本

 

この二つをもらい、農家の一人息子として新たな生が始まった。一人っ子の俺は優しい両親から愛されながら、鬼道や鍛錬をしながら育ったんだが──俺が8歳になってから数日後の夜、俺を愛して育ててくれた両親を鬼に殺され、平凡な日々が180度変わって鬼を狩る血なまぐさい日々に変わった。ちなみに、両親を殺した鬼は憤怒に支配され、怒り狂った俺が斬魄刀『逆撫』でバラバラに斬り殺した。

その出来事がきっかけで俺は力を求めて剣を指南してくれる人を探し求めた。

 

「童、強くなりたいのなら儂の所に来るがよい」

 

両親を埋葬してくれた隠に育手の紹介を頼んだら──護廷十三隊の総隊長・山本元柳斎重國に姿や声、話し方がまるっきし同じの爺さんを紹介された。名前も同じで、初めて会った時はびっくりして声が出なかった。

 

「爺さん、あんたの所で修行したら俺は強くなれるか?」

 

「それは童次第じゃ」

 

「分かった...俺は御影透也、よろしく頼むぜ爺さん」

 

「儂は山本元柳斎重國。これからは師範と呼べ童!」

 

こうして、俺は爺さんの所で三年間戦い方や刀の扱い方を学び、11歳で最終選別を受けて鬼殺隊に入隊した。

鬼殺隊に入隊してからコツコツと鬼を殺して、12歳で鬼殺隊を支える柱の一人『逆柱(さかばしら)』に登り詰めた。

 

 

ここからは、俺が嫌われ居ることについて話そう。

逆柱に登り詰めてから10年が経ち、俺が22歳の時に新しい柱が二人入ってきた。

 

花柱・胡蝶カナエ

 

愛柱・愛崎姫乃

 

この二人が柱入り・・・正確には愛柱・愛崎姫乃が柱入りした事によって俺に不運が降り注ぐ事になった。二人の柱入りを柱合会議で発表されてから、柱同士の親睦を深める為に開かれる親睦会を断って、一人屋敷に帰ろうとしたら愛柱・愛崎姫乃が着いてきていた。

 

「何の用だ?愛柱・愛崎姫乃...」

 

「あんた私と同じ転生者よね?鬼滅の刃であんたみたいな陰キャ見たことないし」

 

「陰キャ…まあ俺は転生者だが?」

 

「ハッキリ言うけど、あんたの存在邪魔なのよね。10年も逆柱やってるみたいだけど引退してくんない?逆ハー狙ってるから邪魔なのよ」

 

愛柱・愛崎姫乃も俺と同じ転生者みたいだが、向こうはこの世界について詳しいみたいだが、全く微塵も興味が無く適当に生返事をしていると愛柱・愛崎姫乃は満足気な顔をして親睦会に向かって行った。

 

そして──二人が柱入りしてから二年が経ったある日の夜。

24歳になった俺が、嫌われる理由となった事件が起きた…。

胡蝶カナエと上弦ノ弐が戦っていると報告が入り、直ぐに救援に向かった。

戦闘がおきている場所に辿り着くと、血濡れの胡蝶カナエと屈託の無い笑みを浮かべている上弦ノ弐が居た。胡蝶カナエが殺される前に介入して、胡蝶カナエを庇いながら戦っていたら、何処からか現れた愛柱・愛崎姫乃が胡蝶カナエを抱えてこの場から去っていった。

 

「あらら、可愛い女の子を持ってかれたし帰るよ 」

 

「逃がすと思ってんのか?」

 

「思ってるよ!最後に君の名を教えてくれないかい?俺は童磨だよ!」

 

「逆柱・御影透也だ」

 

「御影透也ね...覚えたよ!今度会うことが出来たら君も救ってあげるね!」

 

童磨はその言葉を最後に三味線の音とともにこの場から消えた。

 

その翌日──。

 

○逆柱は花柱・胡蝶カナエを囮に使い上弦ノ弐から逃げ帰った

 

○逆柱は瀕死状態の花柱・胡蝶カナエを襲おうとした

 

○逆柱は女を見境なく手を出す獣

 

そんな噂が流れ、胡蝶カナエの妹である胡蝶しのぶに殴られそうになったり、風柱、炎柱、双水柱の片方、蛇柱が事実確認をしに屋敷へ殴り込みに来て、本当にやってないのかと聞かれ、やってないと答えた時──

 

「う、嘘つかないでください!!あの晩、私も救援に向かった時に──御影さんがカナエちゃんを囮にした後、弱った所を襲おうとしている所を見たんですから!」

 

胡蝶カナエを抱えてあの場から去った愛柱・愛崎姫乃が目にうるうると涙を浮かべながらそう言った事により、俺の言葉は速攻で嘘だと言われ、その日を境に俺は嫌われる事となった。




読んでいただきありがとうございます!!


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原作開始
第1話 逆柱・御影透也


胡蝶カナエの事件から二年が経ち26歳になっていた。三年間で更に噂が流れ、噂を否定し続けたが信じてもらえなく、段々と否定するのが面倒になり適当に話を流す事にしていた。

 

「透也君、大丈夫?」

 

「大丈夫ですよ蔦子さん。心配してくれてありがとうございます」

 

「姉さんだけでなく俺も透也を心配してるからな...」

 

「ありがとうな義勇」

 

嫌われている俺だが、所有している逆屋敷に二人の客が来ていた。一人は双水柱の一人・冨岡義勇、もう一人は冨岡義勇の姉・冨岡蔦子さんが遊び来てくれていた。

義勇と蔦子さんの二人とは俺が逆柱になったばかりの時、任務が終わり藤の家に向かう途中で鬼の気配を察知して鬼の元に向かった。鬼の気配を察知した場所に辿り着くと鬼に襲われて、腕から血を流している蔦子さんを発見して、早急に鬼を殺して義勇と共に保護したのが始まりだった。

 

「何時も言ってるけどよ、言われっぱなしでいいのかよ師範?」

 

「信じてくれる仲間が居るからどうでもいい…。言いたい奴には言わせとけばいいんだよ獪岳」

 

俺の継子である獪岳は、俺の返答に少しだけ嬉しそうな表情を見せてくれたが、やっぱり納得ないようで嬉しそうな表情から不満気な表情に変わった。

 

「いいか獪岳、俺が真実を話した所で誰も聞く耳を持たないし、仮に真実を知って謝られても俺はそいつらとは関わりたくないからいいんだよ」

 

不満気な表情をしている獪岳の頭に手を置き、撫でながら言うと「そうかよ...」とボソッと言い、大人しく撫でられ続けた。獪岳を撫でていると...何故か義勇と蔦子さんにもやる羽目になった。

 

「そろそろ昼餉にしようか。義勇が好きな鮭大根を作っているからな」

 

「鮭大根!?」キラキラ

 

相変わらずの鮭大根好きの義勇は、鮭大根の単語が出てきただけで目をキラキラさせて微笑んでいた。そんな義勇の姿に蔦子さんは「やっぱり義勇は可愛い!!」と言いながら抱きしめ、ほのぼのとした空間になり、有意義で楽しい時間を過ごした。

 

 

その日の夜...。

冨岡姉弟と一緒に夕餉を食べていた時だった、俺の鎹鴉『蓮』が御館様からの伝令を持って戻ってきた。御館様から早急に来て欲しいとの事だったから、急いで出掛ける準備を始めた。

 

「食事中にすまないな皆。獪岳、義勇と蔦子さんが泊まるから客間に案内と布団をよろしくな」

 

「客間の掃除、布団はきちんと太干してあるんで大丈夫ですよ」

 

「獪岳はよく出来た継子だな透也...」

 

「自慢の継子だよ、それじゃ行ってくる」

 

「行ってらっしゃい透也君!」

 

三人に見送られながら逆屋敷を出て産屋敷邸に向かった。一体、何の話なのだろうかと考えながら瞬歩で産屋敷邸に向かっていた。

 

 

「お待ちしておりました透也様」

 

「そんな畏まらなくていいぞあまねさん」

 

「ふふ、分かりました透也君。早速、耀哉様の元に案内しますね」

 

俺とあまねさんは、柱になってからの付き合いだから10.11年くらいの付き合いになる。あまねさんは、あの噂がたっても全く気にもせずに、話してくれるとても優しい人だ。あまねさんと屋敷の中を歩いていると御館様がいる部屋に辿り着いた。

 

「お呼びに参上致しました御館様」

 

「私達だけの時は耀哉って言ってくれって何時も何時も言ってるよね透也?」

 

「そう怒るなよ耀哉、お決まりの冗談だ」

 

「全く...」

 

耀哉とも、あまねさんと同じく長い付き合いだ。俺が柱に成り立ての頃、前御館様──つまり耀哉の父親から、耀哉と歳が近いから仲良くしてくれと頼まれ、接する内に仲良くなっていって、今のような関係になっていた。

 

「それで?俺を呼び出した理由は何だ?」

 

「透也には次の柱合会議まで、ある隊士の動向を見守ってもらいたいんだ」

 

「一隊士に俺が行くって事は訳アリか?」

 

「この手紙を読んでくれるかい」

 

耀哉から綺麗に折り畳まれた手紙をもらい広げて読んだ。送り人は、元水柱・鱗滝左近次──俺の育手、を山本元柳斎重國の友人からの手紙だった。手紙の内容は、鱗滝の爺さんが育てた竈門炭治郎の妹・竈門禰豆子が鬼舞辻無惨によって鬼にされた事、二年間も人を喰っていない今まで見たことない鬼だと言う事────そして竈門禰豆子が万が一、人を喰うことがあれば、鱗滝の爺さん、義勇、真菰、双水柱の片方、兄である竈門炭治郎が竈門禰豆子を殺して切腹すると書いてあった。

 

「人を喰わない鬼か...」

 

「そう、透也には竈門炭治郎と竈門禰豆子を次の柱合会議を開くまで見守ってもらいたいんだ」

 

「分かった...その任務を受ける」

 

「ありがとう透也、早速で申し訳ないけど明日からお願いするよ」

 

「はいよ」

 

耀哉からの用件はもう終わりだろうと思い、部屋から出ようとしたら呼び止められた。耀哉の方に振り返ると悲しそうな顔で俺を見ていた。

 

「どうした耀哉?」

 

「透也...私は君の噂を消したい!兄の様に慕っている貴方を悪く言われたくない!」

 

「そんな事しなくていいと前にも言った筈だ...」

 

「でも...」

 

「今消したところで、逆に『逆柱は御館様を利用している』と、また出てくるだろ?それに、今の隊士の原動力は、一刻も早く俺を柱から引きずり下ろす事だしな。そのお陰で鬼殺率も生存率も上がってる」

 

「透也君はそれでいいの?」

 

「ああ、それでいい。何時も心配してくれてありがとう耀哉、あまねさん」

 

「お礼なんて...」

 

「そう不貞腐れるなよ。耀哉とあまねさんが信じてくれるから頑張れるんだからよ」

 

「そう言われたら何も言えなくなるじゃないか透也」

 

「全く狡い人ですね」

 

「10年くらいの付き合いだから分かってるだろ?」

 

三人で少し笑いあってから耀哉とあまねさんの三人で月を見ながら酒を酌み交わした。

 

 

 

〜月見酒中のちょっとした会話〜

 

「全く、何で俺が小娘共を襲わなきゃなんないんだよ...襲うなら、蔦子さん、あまねさん、珠世さんみたいな歳上のお姉ちゃんを襲うっての!」

 

「透也?蔦子さんや珠世さんの事は目を瞑るけど、あまねは襲わせないからね?それに旦那の前で普通に言うかい? 」

 

「例えだよ、愛柱って18だろ?歳下過ぎて無理!歳下は最低でも21!歳上は28まで!」

 

「珠世さんはどうなんだい?ひゃ「言わせないぞ耀哉!珠世さんは永遠の28歳だ!」」

 

御影透也と産屋敷耀哉は互いに酔い潰れるまで、くだらない男話をしていた。その様子をあまねは楽しそうに見てお酒を飲んでいた。




読んでいただきありがとうございます!!

カナエについて。

カナエは透也の姿を見たと同時に気を失った為、噂が本当なのかどうかと考えている。透也との付き合いが短く、透也をよく知らないから考えている。透也本人に当時の事を聞きたいが、しのぶが透也に蝶屋敷の出入りを禁止した為、会うきっかけを無くし、透也の屋敷に訪ねても誰も居らず聞くに聞けない状態になっている。


御影透也の味方

・悲鳴嶼行冥

・冨岡義勇

・冨岡蔦子

・鱗滝真菰

・鱗滝左近次

・桑島獪岳

・産屋敷耀哉

・産屋敷あまね

・産屋敷家の子供達


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第2話 邂逅

胡蝶しのぶと和解するか・和解しないかの200人アンケートで

・和解する 107人

・和解しない 93人

胡蝶しのぶと和解するに決まりました。
アンケートに御協力ありがとうございます!!

御影透也の味方について
甘露寺と時透兄弟を入れ忘れてしまったので甘露寺を追加します。

原作死亡キャラ生存について

・鱗滝錆兎(御影側の人間ではない)

・鱗滝真菰(御影側)

・冨岡蔦子(御影側)

・時透有一郎(御影側)

・胡蝶カナエ(思考の渦に囚われている)



耀哉から任務を言い渡されてから翌日...。

朝早く起きて、五番隊隊長羽織+隊服から服屋に頼んでオーダーメイドで作ってもらった紺色のワイシャツ、黒ネクタイ、黒色の長ズボン、最後に茶色の帽子を被って着替えを完了した。

 

「師範──その服装は何ですか?」

 

「似合ってるだろ?」

 

「似合ってますよ...」

 

「ありがとうよ。獪岳は、鬼殺隊で初めてこの恰好を見た最初の人間だ」

 

朝餉が出来た事を知らせに来た獪岳は、初めて見せる俺の恰好に驚いていた。獪岳に似合ってるかを聞いたら、照れくさそうに似合ってると言ってくれた。

 

「料理が冷める前に食べましょう師範。水柱様と蔦子さんは、師範が来るまで待ってますよ」

 

「そうか...なら、早く行かねぇとな。獪岳お手製の飯が冷めちまう」

 

獪岳を先に部屋を出てもらってから、俺も部屋から出て居間に向かった。居間では四人分の朝餉が用意されていて、義勇と蔦子さんがお茶を飲んで待っていた。

 

「おはよう透也君。その服装よく似合ってるね!」

 

「ありがとう蔦子さん。この服装は、これから遂行する任務用に動きやすくする為に作ったんだ」

 

「そうか....透也の新しい服装を見られた」ムフフ

 

「師範の服装については、もう終わりにして食べましょう」

 

収拾がつかなくなりそうな雰囲気に獪岳が収拾をつけて、皆で朝餉を食べ始めた。食べている途中で獪岳に暫くの間、任務で逆屋敷を開ける事、俺が居ない間の逆屋敷には、面倒くさそうな柱を絶対に入れない事を伝えた。

蔦子さんと義勇には俺が留守の間、獪岳の様子を見て欲しいと頼んだ。

伝える事を伝え終わった所で、耀哉の鎹鴉がやってきて、竈門炭治郎と竈門禰豆子が何処に向かっているかを教えに来てくれた。竈門炭治郎と竈門禰豆子は浅草方面に向かっている様だ。

 

「獪岳、留守を頼むぞ」

 

「分かりました師範」

 

「透也君、体には気をつけてね」

 

「また会おう透也」

 

「じゃあ、行ってくる。任務が終わったらまた会おう」

 

三人に見送られながら逆屋敷を出て、浅草へと向かった。浅草に向かう道中で鬼殺隊隊士と何度かすれ違ったが、誰にも気づかれることは無かった。

 

 

 

俺の名前は竈門炭治郎だ!

鎹鴉からの情報で、鬼が潜んでいると噂がある東京・浅草に来ていた...。

浅草に来てみたものの、建物の高さ、人の多さ、夜なのに明るい都会に気疲れしてしまった。

 

「すみません....山かけうどんを一杯ください...」

 

明るい浅草を出て、静かな道に出た。少し歩くと屋台のうどん屋があって、山かけうどんを一杯頼んで長椅子に腰掛けた。長椅子に腰掛けると、禰豆子はウトウトしていると俺の肩に頭を乗せて眠っていた。

 

「山かけうどん出来たぞ」

 

「ありがとうございます」

 

禰豆子をそのまま寝かせて、出来たての山かけうどんの汁を飲んで落ち着こうとした時だった──浅草の方から家族が殺された時に家に残っていた知らない誰かの匂いがした。

手に持っていた、山かけうどんを地面に落としてしまったが、一刻も早くその匂いの元に行こうと日輪刀を持って走った。

人混みを掻き分けて走り続けて...匂いの元に辿り着き、匂いを発している人物を俺の方に強引に振り向かせると、青白い顔をして瞳の色が真っ赤な西洋の格好をした鬼舞辻無惨だった。

 

「だぁれ?」

 

目の前の鬼舞辻無惨に日輪刀を構えて何時でも首を斬り落とそうと準備をしていると、鬼舞辻無惨は一度前を見てから再び俺の方に向くと小さな女の子を抱えていた。

 

「知り合いがご迷惑かけてすみません、お嬢さんにご夫妻」

 

俺の家族を奪い、禰豆子を鬼に変えた鬼舞辻無惨が小さな女の子を抱えている事に戸惑っていた時だった。突然、後ろから優しく頭に手を乗せてきて俺と知り合いと言った、黒色の髪に、鬼舞辻無惨と着ている物は違うが西洋の服装をした男性が立っていた。

 

「突然掴まれて驚いただけですので大丈夫ですよ」

 

「そうですか、でも、顔色が良くなさそうですよ?一度、病院に行かれてはどうです?」

 

「え、ええ...ご心配どうもありがとうございます。それでは私達は失礼します」

 

「こちらも失礼します」

 

黒色の髪の人と話終わると、鬼舞辻無惨はこの場から去ろうとして、それを追いかけようとすると止められた。

 

「場所を考えろ、こんな所で戦えば周りの人が死ぬぞ...」

 

その言葉を聞いて、冷静になる事が出来た。

 

 

竈門炭治郎を見つけて声をかけようとしたら鬼舞辻無惨に会えるとは思わなかった。とりあえず、鬼舞辻無惨に今にも斬りかかりそうな竈門炭治郎に冷静さを取り戻してもらい、静かな場所で話をしようとした時だった、鬼舞辻無惨とすれ違った人が鬼にされて暴れ回っていた。

 

「色々と聞きたい事がありそうだが、今は後回しだ」

 

「分かりました。俺、竈門炭治郎と言います!名前だけでも教えてくれませんか?」

 

「俺の名前は御影透也。お前と同じ鬼殺隊だ」

 

互いに名前だけ自己紹介して、鬼の元に走った。浅草で暴れ回っている鬼の首には爪で引っ掻かれた後があり、隣に居る女性に噛み付こうとしていた。

 

「縛道の一・塞」

 

鬼に触れて、塞を発動させ手足の自由を封じた。女性の安否を確認したら、女性は鬼にされた男の妻だと言った。夫がどうなったのか、何が起きたかを聞かれ、どう答えていいか考えていると、俺、炭治郎、鬼を花が囲んでいた。

 

「御影さん!」

 

「安心しろ炭治郎...。これは俺の味方だ」

 

俺達を囲んでいる花に警戒している炭治郎を落ち着かせると、俺達の前に一組の男女が寄ってきた。

 

「お久しぶりですね透也さん」

 

「久しぶりだな透也」

 

「珠世さんは相変わらず美人だな!愈史郎は相変わらず背が伸びねぇな」

 

「貴様!俺が気にしている事を!」

 

「うん、元気だな。それより、珠世さん」

 

「分かってますよ」

 

珠世さんは俺の頼みが分かってくれてるようで、鬼にされた男の人とその奥さんを連れてこの場から隠れ家へ連れていってくれた。

 

「さて、俺達の役目は終わったから少し話そうか炭治郎」

 

「はい──あ!?禰豆子を置き去りにしてしまった!」

 

「何!?早く置き去りにした場所に戻るぞ炭治郎!」

 

「はい!」

 

炭治郎の後に着いて、竈門禰豆子を置き去りにした場所へと向かった。

 

 

ズルズル──

ズルズル──

 

禰豆子を置き去りにしたうどん屋に戻って来ると、うどん屋の店主がカンカンに怒っていた。皿を割ってしまって金を払おうとしたら余計に怒ってしまった。皿を割った事よりも、うどんを食わなかった事に怒っていて、もう一度山かけうどんを頼んだ。禰豆子にも食べさせようとしてきた店主に御影さんが食べると言ってくれてその場は収まった。

 

「お前の妹...本当に鬼か?」

 

御影さんの言葉に体が固まった。

 

「御影さんは禰豆子が鬼って事を知ってるんですか?」

 

「ああ、お前らの兄妹の事は聞いている」

 

そして、御影さんは俺と禰豆子を監視する任務を受けている事を話してくれた。

 

「お願いします。禰豆子を殺さないでください!!」

 

「アホか、俺はお前らの監視に来てるだけで殺さねぇよ。逆だ、お前らを殺されないようにする為に俺が来た訳だ」

 

御影さんは禰豆子を鬼では無く、人だと言ってくれた。その一言と御影さんから発せられている、とても優しい匂いに自然と涙か溢れてきた。

 

「よく頑張ったな炭治郎」

 

「はい...はい...ありがとうございます」

 

俯いて泣いている俺を御影さんは、そっと俺の頭を自分の胸に抱き寄せて優しく頭を撫でてくれた。御影さんの手は暖かく、小さい頃に撫でてくれた父さんと似ていた。




読んでいただきありがとうございます!!

愛柱・愛崎姫乃(転生者)

歳︰18

特典︰ヒロイン補正

身体能力強化

容姿を鬼滅の刃に出てくる女キャラより上の美少女

愛柱側の人間

・宇髄天元

・煉獄杏寿郎

・伊黒小芭内

・鱗滝錆兎

・不死川実弥

・鬼殺隊隊士達(約8割)





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第3話 一幕①

二千字以内は少なかったので編集して再投稿しました。
お気に入り登録509人もして下さりありがとうございます!!


絶望的な状況でも、諦めずに前に進んだ炭治郎に労いの言葉をかけたら泣いてしまった。炭治郎の泣き姿に父性本能?みたいなのが働いて、気づいたら自分の胸元に抱き寄せて、泣き止むまで優しく頭を撫でていた。

 

「ムー!」

 

炭治郎を撫でていると、妹の禰豆子がジッと俺を見ていた。

 

「お前も来るか?」

 

「ムー!」

 

ジッと見ている禰豆子に来るか?と聞くと禰豆子は、自分を殺すかもしれない俺の膝の上に、何の警戒もせずに座った。

俺の膝に座った禰豆子は俺の手を自分の頭に置いて、上下に動かしながら撫でてと言わんばかりに見てきた。炭治郎と同じように撫でると禰豆子は嬉しそうにムームーと言いながら足をパタパタと動かして喜んでいた。

 

「涙で濡らしてすみません御影さん...」

 

「気にしなくていい、お前と同じ様に涙で服を濡らしてきた奴がいるからな」

 

暫くして炭治郎は泣き止んだ。泣き姿を見られたのが恥ずかしかったのか炭治郎は顔を真っ赤に染めながら、シャツを涙で濡らした事を謝罪して来た。

炭治郎が落ち着いてから、二人を珠世さんと愈史郎の元に連れて行く為に霊圧感知で探しながら二人の手を引いて探し歩いていた。

 

「遅いぞ御影透也!!」

 

「そう怒るなよ愈史郎」

 

あの夫婦を珠世さんと一緒に隠れ家へ連れて行ってから、愈史郎は俺達が来るのを待っていたみたいだ。

 

「わざわざ来てくれてありがとう愈史郎」

 

「ふん!珠世様から頼まれたから来てやっただけだ」

 

「あの...御影さん、この方は?」

 

「お前の嗅覚で正体は分かってると思うが、目の前に居る愈史郎は鬼だ──禰豆子と同じく人を食わない鬼だ」

 

炭治郎は、禰豆子以外にも人を食わない鬼に初めて会って驚いていた。炭治郎に愈史郎との関係を聞かれて、ある薬の開発する為の協力者であり、親友だと答えた。

 

「だ、誰がお前と親友だ!」

 

「何だ?照れたのか愈史郎?」

 

ツンデレ系少年の愈史郎に、照れているのかとニヤニヤしながら聞くとそっぽ向いてしまった。そっぽ向いた後に、愈史郎が炭治郎と禰豆子を見て、禰豆子に醜女と言い、炭治郎が必死になって否定すると言う茶番が行われた。

 

「愈史郎、頼みがあるんだがいいか?」

 

「なんだ?」

 

炭治郎と愈史郎の茶番劇が終わり、おちゃらけていた俺は真面目な雰囲気を出して、愈史郎に話しかけた。愈史郎は、俺が真面目モードになったのを察知してくれて話を聞いてくれた。

 

「採血短刀を今すぐ二本くれないか?」

 

「!?、お前...まさか」

 

「ああ、そのまさかだ。こんな機会は中々ないからな」

 

「奴がいる所を把握してるのか?」

 

「霊圧感知で常に場所は把握している」

 

愈史郎との話が終わると渋々だが、懐から鞘付き採血短刀を取り出して渡してくれた。愈史郎から鞘付きの採血短刀を受け取ってから、ズボンの左右のポケットに一本ずつ入れてしまった。

 

「御影さん、何処に行くんですか?」

 

「さっき会った鬼ぃさんに挨拶しに行ってくる」

 

「!?、だったら俺も「炭治郎」はい...」

 

「家族の仇討ちをしたいお前の気持ちは分かる...。だが、今から会いに行くのは今のお前より格上だ、刀を抜く前に殺されるのがオチだ」

 

「はい...」

 

「家族の仇が近くに居て、何も出来ないのはとてつもなく悔しいと思う。今はグッと堪えて強くなれ、どんな敵でも倒せるように...。愈史郎、二人を頼むぞ」

 

炭治郎は、強く拳を握りしめ悔しい気持ちを抑えながら、小さく首を縦に振り頷いてくれた。愈史郎とこれから出会う珠世さんに迷惑をかけないようにと伝え、愈史郎に2人を頼み、瞬歩でその場から去り霊圧感知で常に場所を特定している──鬼舞辻無惨の元に向かった。

瞬歩で去り際で、愈史郎に「生きて帰って来い.....」とツンデレ発言をいただきました。

 

 

炭治郎の元を離れてから、俺は浅草の人気のない裏通りに来ていた。裏通りには、見るも無残な仏さんが三つ出来上がっていた。

 

「貴様は!!」

 

「来るのが遅かったか...」

 

この三つの仏さんを作り出した張本人、鬼舞辻無惨は俺に憎悪の視線を向けてきた。鬼舞辻無惨に恨みを買うような事をした覚えが無く何故あんな視線を向けてくるのか、考えても思いつかなかった。

 

「俺、アンタに何かしたか?そんな憎悪丸出しの視線を送られる覚えが無いんだが?」

 

「何かしたか?だと...貴様は言った!顔色が悪いとな!病弱に見えるか?死にそうに見えるか?言ってみろ!!」

 

鬼舞辻無惨は、青筋をぶっ立てながら怒鳴り散らしていた。顔色が悪いと言っただけで、病弱とか死にそうとか鬼舞辻無惨は被害妄想が激しい奴だと、俺の中で認定した。

 

「アンタ、虫の居所が悪そうだから目的果たして退散するわ」

 

逆撫を左手で抜刀し、右ポケットから採血短刀を持ち構えた。逆撫と採血短刀を構えると、鬼舞辻無惨は何故か笑いだした。

 

「日輪刀...別名・色変わりの刀。貴様の刀を見る限り、色は変わっていないようだな!呼吸の適正が無く色が変わらない、餌が何をしようとしている?」

 

「あんまり他者を見下さない方がいいぞ──足元を掬われるからな」

 

鬼舞辻無惨にそう言いきってから、瞬歩で懐に入り込んで逆撫で鬼舞辻無惨の右腕を斬り落とした。右腕を斬り落とされ、驚愕の表情をしている鬼舞辻無惨の腹に蹴りを入れて後ろに吹っ飛ばした。

 

「グッ!!貴様!!」

 

「油断は禁物だぜ?海藻頭君」

 

小馬鹿にした言い方で話してから、斬り落とした右腕に採血短刀を突き刺して奴の血を回収した。血の回収と言う目的を達成してから、帰る前に鬼舞辻無惨と向き合った。

 

「目的を達成したから帰らせてもらうわ。アンタが何の為に放ったか分からない鬼を退治をする為にな」

 

「無事に帰れると思っているのか!黒死牟!!」

 

ベベンッ!!

 

鬼舞辻無惨が叫ぶと何処からか三味線の音が聞こえてきたと同時に扉が現れた。突然、現れた扉が開くと中から六つ目の強そうな鬼が出てきた。

 

「お呼びでしょうか無惨様...」

 

「あそこに居る人間を殺せ!!」

 

鬼舞辻無惨が黒死牟と言った鬼の瞳には上弦ノ壱と書かれていた。血を回収してから、直ぐにこの場から去れば良かったと多少後悔をしていた。

 

「随分と強そうな鬼を出してきたな海藻頭君」

 

「また言ったな貴様!!行けッ黒死牟!!奴をバラバラに殺せ!!」

 

鬼舞辻無惨の指示を受けた黒死牟は、目玉が複数も付いている刀を抜き向かってくる。鬼舞辻無惨の血を回収した採血短刀をしまい、逆撫1本で黒死牟を迎え撃つ。

 

「月の呼吸壱ノ型 闇月・宵ノ宮」

 

「!?」

 

上弦ノ壱が刀を握った瞬間にとてつもなく嫌な予感がして、瞬歩で距離をとって攻撃を避けようとしたのだが──何時の間にか左肩を軽く斬られていた。

 

「良い勘だ...。今の一撃で仕留めるつもりだったのだが、避けられてしまった...」

 

「馬鹿か...今の一撃で左肩を斬られたわ」

 

「俺にとっては...その程度の傷を傷とは言わない...」

 

「随分と強気な発言だな。なら、少しだけ本気出させてもらうぞ上弦ノ壱」

 

「来るがいい...鬼殺の剣士」

 

逆撫を右から左手に持ち替えて、左ポケットに入っている採血短刀を取り出した。鬼舞辻無惨の時の様に上手くいくか分からないが、上弦ノ壱の血も手に入れようと考えた。

この場で鬼舞辻無惨と上弦ノ壱を仕留められるとは考えていない俺は、八十番代の鬼道を駆使して上弦ノ壱の血を採取次第、直ぐに立ち去る算段を考えていた。




読んでいただきありがとうございます!!
透也のヒロインについてアンケートをとっています。
透也のヒロインにして欲しいキャラを活動報告にお書きください。


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第4話 一幕②

コメント欄で御指摘頂いた事を参考にして、編集して再登校になります。


「竹を噛んでいるからそう見えるだけで、禰豆子は町一番の美人と言われてるんです!醜女な筈は無いでしょ!!」

 

御影さんと別れてから、愈史郎さんの後ろについて歩き、珠世さんの元に辿り着いた。珠世さんの元に行く道中で愈史郎さんは禰豆子を醜女と言い、俺は愈史郎さんに禰豆子が醜女と言った事に撤回を求めて禰豆子について語った。

 

「戻りました珠世様」

 

「おかえりなさい愈史郎...。そして、初めまして珠世と申します」

 

「俺は竈門炭治郎と言います!隣に居るのは妹の禰豆子です!」

 

お互いに自己紹介をしてから、浅草で鬼にされた男性と一緒に居た女性の様子について聞いた。女性の方は何の異常も無いらしいが、男性の方は飢餓状態の鬼になってしまい地下にある牢屋に閉じ込める処置にしたと言った。

 

「あの...人の怪我を手当して辛くありませんか?」

 

「人の怪我を手当していてもつらくないですよ?普通の鬼よりかなり楽かと思います。私は、私の体を随分弄っていますから鬼舞辻の呪いも外しています」

 

「かっ、体を弄った?」

 

鬼になった以上、人の血を見てしまったら人を食べたいと思うのが本能だが、珠世さんは自分の体を改造して飢餓状態にはならず、少量の血だけで満足して鬼舞辻無惨の呪いも外していると話してくれた。愈史郎さんも同じなのかと聞くと、愈史郎さんは珠世さんが200年の歳月と研究によって、たった1人だけ鬼にしたらしい。

 

「愈史郎を鬼にしたのは、死にそうだったこの子を延命措置の為にしました。私は鬼舞辻無惨の様に、鬼を増やそうとは考えていません」

 

この言葉を発した時の珠世さんからは嘘、偽りの無い清らかな匂いがしていた。その匂いで、珠世さんは信用出来る人だと判断した。

 

「珠世さんは鬼を人に戻す方法を知っていますか?」

 

「はい、鬼を人に戻す方法を知っています」

 

「本当ですか!?教えてください!!」

 

鬼を人に戻す方法──鬼舞辻無惨によって鬼にされた禰豆子を人に戻す方法を知っていると言った珠世さんに、その方法を聞こうと近づいたら愈史郎に投げ飛ばされた。

 

「愈史郎...」

 

「殴ってはいません!投げただけです!」

 

「それもいけません」

 

珠世さんから改めて、鬼を人に戻す方法について話してくれた。

 

「どんな傷にも病にも、必ず薬や治療方法があるのです。ただ、今の時点では鬼を人に戻すことは出来ない。ですが、私たちは必ずその治療方法を確立させたいと思っています。治療薬を作る為にはたくさんの鬼の血を調べる必要があります」

 

鬼を人に戻す薬を作るには多くの鬼の血を調べなくては行けないらしく月に2、3回、透也さんに鬼の血の採取を頼んでいると言った。

 

「禰豆子は、他の鬼と比べるとどうなんですか?」

 

「禰豆子さんは今極めて特殊な状態です。二年間眠り続けたとのお話でしたが恐らくはその際体が変化している。通常それ程長い間人の血肉や獣の肉を口にできなければ、まず間違いなく凶暴化します。しかし、驚くべきことに禰豆子さんにはその症状が無い。この奇跡は今後の鍵となるでしょう」

 

禰豆子の状態について詳しく教えもらった後、透也さんとは何時から協力関係になったのか聞こうとした時だった...。

 

「伏せろ!」

 

ドンッ!!

 

愈史郎の声で全員が伏せた瞬間、突然家の中に毬が投げ込まれた。投げ込まれた毬はまるで生き物の様に暴れ回っていた。

 

「キャハハッ、矢琶羽のいうとおりじゃ。何も無かった場所に建物が現れたぞ」

 

「巧妙な物を隠す、血鬼術が使われていたようだな。そして鬼狩り達は鬼と一緒にいるのか?どういうことじゃ。それにしても朱紗丸。お前はやることが幼いぞ!お前のせいで着物が汚れたではないか!」

 

「うるさいのう、私の毬のお陰ですぐ見つかったのだから良いだろう。たくさん遊べるしのう。それに着物は汚れてなどおらぬ神経質めが」

 

愈史郎さんの血鬼術が施されていた札がヒラヒラと地面に落ち、俺と禰豆子が入ってきた所に二体の鬼が立っていた。

 

 

 

「香しい匂い…今まで出会った稀血とは比較にならない美味」

 

上弦ノ壱の攻撃を完全に防ぎきることが出来なかった俺は、体の所々に斬り傷を作っていた。俺は鬼にとって極上な血を流している稀血、今まで会ってきた稀血より美味いらしく、鬼舞辻無惨は俺を生け捕りにして、俺の稀血ドリンクサーバーを作りたいなんてほざいていた。

 

「名を聞いておこう」

 

「名を尋ねる前に自分から言うもんだぜ?」

 

上弦ノ壱と鬼舞辻無惨に手の内をあまり見せず、血を採取するだけで体は斬り傷だらけになっていた。斬り傷だらけになったお陰で、血の採取に成功し上弦ノ壱についての情報を集める事が出来た。上弦ノ壱は戦闘時、月の呼吸を使う事──そして、元鬼殺隊士である事だ。

 

「十二鬼月...上弦ノ壱・黒死牟...」

 

「鬼殺隊逆柱・御影透也」

 

「逆柱...貴様は一人を除いて今まで出会ってきた柱より強い...誇っていい」

 

「鬼の中で最強の上弦ノ壱に褒められるなんて光栄だな」

 

炭治郎達の所に向かった二つの鬼の気配は一つに減ったし、そろそろ潮時だな。鬼舞辻無惨と黒死牟の視界を潰して逃げる準備を始めた。

 

「悪いが、俺は此処で引かせてもらうわ...。破道ノ三十二・黄火閃」

 

避けられないように、瞬歩で黒死牟の目の前に接近して黄火閃を放ち、鬼舞辻無惨のいる所まで下がらせた。

 

「やはり...お前の放つ鬼道という術は厄介だ...」

 

「鬼殺隊にこんな厄介で不快な奴が居るとは!!」

 

「そりゃどうも、次に会った時は倒させてもらう──破道ノ九十・黒棺」

 

黒死牟を鬼舞辻無惨の元まで下がらせたのは、二人纏めて黒棺の中に閉じ込める為だ。俺の作戦は成功して、黒死牟と鬼舞辻無惨を黒棺の中に閉じ込める事に成功した。

黒棺の中から二人の苦しむ声が聞こえたのを確認してから、足跡を残さないように、空中を走って炭治郎の元へと向かった。

 

 

愈史郎さんのお陰で、両手の平に目があり、血鬼術で矢印を飛ばしてくる鬼に辛勝する事が出来た。ただ、矢印の鬼が死に際に放った矢印の血鬼術で体はボロボロになり、這って動く事しか出来なくなった。

 

「辛そうだな炭治郎」

 

「み...かげ...さん」

 

「相当苦戦した様だな──よく頑張ったな炭治郎」

 

御影さんは優しい声で労いの言葉をくれた。御影さんもボロボロで斬り傷だらけなのに、動けなくなった俺を抱えて禰豆子達のいる所まで運んでくれた。

 

「お許しください!!お許しください!!」

 

もう一人来ていた鬼が、何かに恐怖をしながら泣き叫んでいた。愈史郎さんが言うには、珠世さんの血鬼術で泣き叫んでいる鬼に、鬼舞辻無惨の名前を呼ばせて呪いを発動させたと言った。

 

「炭治郎、ちょっと下ろすぞ」

 

御影さんは、ゆっくりと俺を地面に置いて帯刀している刀を抜き、泣き叫んでいる鬼に近づき首を斬った。首を斬られた鬼は、御影さんに感謝の言葉と毬でもっと遊びたかったと言い残して灰になって消えた...。

 

 

「改めて、お久しぶりですね透也さん」

 

「こうしてちゃんと会うのは二年ぶり位だな、元気そうでなによりだ」

 

「透也さんは──ボロボロですね」

 

「まあな...。それよりも、そろそろ日が昇るから建物の中に入った方がいいぞ?」

 

「日が昇る前に地下室に行きましょう、そこで透也さんと炭治郎さんの治療をします」

 

珠世さんと愈史郎は眠りこけている禰豆子を連れて地下室に向かって行った。俺は、少し回復した炭治郎に立ってもらい、立ち上がった炭治郎に背中に乗ってもらい背負って地下室に入った。地下室に着くと禰豆子は目覚めていて、珠世さんに抱きつきながら愈史郎の頭を撫でようとしていた。

禰豆子の行動は、鱗滝の爺さんがかけた暗示で二人が死んだ家族に見えているらしい。

 

「炭治郎さんの治療をお願いしますね愈史郎、私は透也さんを治療します」

 

「分かりました珠世様!」

 

炭治郎は極度の疲労とあばら骨が折れていると診断され、俺の場合は、無数の斬り傷に血を少し流して貧血と診断された。珠世さんに包帯を巻いてもらいながら、今後についての話を聞いた。鬼舞辻無惨に場所が割れてしまっているこの屋敷を手放して別の場所に移動するらしい。珠世さんと愈史郎の今後の話を聞いてからポケットに入れていた採血短刀を渡した。

 

「鬼を作り出している張本人、鬼舞辻無惨の血と鬼舞辻無惨に多くの血を分け与えられた上弦ノ壱・黒死牟の血だ」

 

「!?、ほ、本当に採取したのですね...。愈史郎から聞いた時はとても驚きましたが...」

 

「かなり骨が折れたな。鬼舞辻無惨だけを採取するつもりが、上弦ノ壱を呼び出されたからな」

 

「透也さんのお陰で、鬼を人に戻す薬の研究がかなり進みます。炭治郎さん、禰豆子さんを人に戻す日はかなり近いと思います」

 

「本当ですか!?」

 

「透也さんが鬼舞辻無惨、上弦ノ壱の血を苦労して手に入れてくれたお陰で研究がかなり進みますので必ず禰豆子さんは人間に戻れます」

 

禰豆子が近いうちに人に戻せると聞いて喜んでいた炭治郎に珠世さんは、炭治郎に禰豆子を預けないかと提案をした。珠世さんの提案に、炭治郎は禰豆子と互いに顔を見合わせて少しだけ考える素振りを見せて答えを出した。

 

「珠世さん、ありがとうございます。でも、俺たちは一緒に行きます。離れ離れにもなりません。もう二度と」

 

「わかりました...。では、貴方達の武運長久を祈ります。透也さん、新たな住居に移転次第、茶々丸に手紙を届けさせます」

 

「分かった。治療、ありがとう珠世さん」

 

「じゃあな、俺たちは痕跡を消してから行く。お前らも、もう行け!!」

 

禰豆子を箱の中に入ってから、地下室を出ようと階段の方へと向かい、俺と炭治郎は珠世さんと愈史郎に再度礼を言ってから階段を登ろうとしたら、愈史郎が炭治郎の名前を呼んだ。

 

「炭治郎!!お前の妹に醜女と言った事を訂正する...お前の妹は美人だ」

 

「当然です!なんて言ったって町一番の美人ですから!」

 

炭治郎は嬉しそうに言いきって、階段を登って行った。

 

「素直になったな愈史郎」

 

「う、うるさい!お前もササッと行け!御影透也!」

 

「はいよ、またな珠世さん、愈史郎」

 

今度こそ、珠世さんと愈史郎に別れを告げてから地上に出た。地上に出ると、太陽が登っていて地上を照らしていた。

 

「御影さん!次の任務に行きましょう!」

 

「はいよ...。今行くから大きな声を出すな、肋折れてるだろ」

 

「長男なんでこの位我慢できます!」

 

「全く...我慢するなよ炭治郎。お前が長男だろうと、この場は歳上の言うことを聞いて甘えろ」

 

あばら骨が折れている筈なのに、元気に振舞っている炭治郎に溜め息を吐きながら次の任務場所へと向かった。次の任務は炭治郎と同じ新人隊士との合同任務らしい。 見込みのある面白い奴が良いなと、まだ見ぬ新人隊士に期待していた。

 

 

大正コソコソ話①

 

ボロボロになった透也の服は、透也が色んな事が起きると想定して二着色違いを持っている!!

 

大正コソコソ話②

 

炭治郎は珠世さんが笑みを浮かべる度に見惚れていた!

 




読んでいただきありがとうございますm(_ _)m


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鼓屋敷編
鼓屋敷...①


御影透也のヒロインについて

・甘露寺蜜璃 ・冨岡蔦子 ・鱗滝真菰 ・栗花落カナヲ

・神崎アオイ ・胡蝶カナエ(和解後) ・胡蝶しのぶ(和解後)

透也のヒロインを募集した所、上記七名全員をヒロインにして欲しいと来ました。鬼滅の刃ヒロイン全員は、鬼滅の刃二次創作史上初になる試みですので頑張りたいと思っています。


「頼む!!頼む!!俺と結婚してくれよ〜」

 

俺と炭治郎の鎹鴉に付いて次の任務地へと向かっている道中で、面白い事が起こっている。田んぼ道のど真ん中で、たんぽぽ頭の少年が三つ編みで可愛らしい女の子にしがみついて、結婚してくれと泣きながら頼み込んでいた。たんぽぽ頭の少年から求婚を受けている女の子は困った顔をしながらしがみついているたんぽぽ頭の少年を引きがそうとしていた。

 

「御影さん...あれは何でしょうか?」

 

「ククッ...さあな?一つ言うなら、可愛らしい女の子にたんぽぽ頭の少年がしがみついて求婚している場面だな」

 

俺は笑いを堪えながら、炭治郎の質問に答えた。炭治郎は変なのに関わらずに、どうやって前に進もうかと俺に聞いてきた時、俺と炭治郎の元に一羽の雀がやって来た。

 

「チュン!チュン!チュン!チュン!!」

 

「ふむふむ、なるほど...。御影さん!この雀はあそこにいる人の鎹雀みたいです!そして、さっきから女性を困らせてるから助けて欲しいそうです!」

 

「みたいだな、それじゃ止めに行くか炭治郎」

 

困っている雀ちゃんの為に、俺達はたんぽぽ頭の少年に近づいた。炭治郎がたんぽぽ頭の少年を女の子から引き剥がし、俺は引き剥がした拍子で尻もちを着きそうになった女の子を支えた。

 

「道の真ん中で何をやっているんだ!!その子と雀を困らせるな!!」

 

「え、お前は最終選別の...」

 

たんぽぽ頭の少年は炭治郎の同期で、今回の合同任務の相方のようだ。たんぽぽ頭の少年を炭治郎に任せて、俺は掴まれていた女の子に話しかけた。

 

「知り合いが迷惑かけてすまんな、もう大丈夫だから行きな」

 

「はい!ありがとうございました」

 

「ちょ!その子は俺と結婚するから勝手なことするなよ!その子は俺の事が好─グフォ!!」

 

たんぽぽ頭の少年は最後まで言い切る事無く...怒りマークを頭に付けた女の子にビンタをお見舞された。女の子は、頬に一発ビンタをしても満足してない様でビンタの嵐を浴びせ始めた。

 

「お、落ち着け」

 

炭治郎はたんぽぽ頭の少年を、俺は女の子を軽い羽交い締めでビンタの嵐を抑えて少し距離を取ってから、羽交い締めを止めた。

 

「何時、私が貴方を好きと言いましたか!!道の真ん中で蹲る貴方を心配して声を掛けただけです!」

 

「ええ!?俺の事が好きだから声をかけてくれたんじゃないの!?」

 

「違います!!私には結婚を約束している人がいますので有り得ません!!それに私は貴方より、後ろの人の方と結婚しますよ!」

 

「ええ!?」

 

「そんなに元気ならもう平気ですね!さようなら!!」

 

笑いを堪えながらプンプンと擬音が付きそうな位、怒って帰って行く女の子を見送った。見送ってから直ぐの事、たんぽぽ頭の少年が俺と炭治郎にしがみついて結婚出来なくなった責任を取れと泣き叫び始めた。

 

「お前らが邪魔するから結婚出来なくなったじゃないか!!いいか!俺は凄く弱いんだ!俺が結婚出来るまでお前達で俺を守れよな!」

 

「俺の名は、竈門炭治郎だ!」

 

「俺の名は御影透也、24歳だ」

 

「歳上に生意気言ってすみません!!俺は我妻善逸です!」

 

善逸──前に獪岳から聞いた事のあった名前だった。

善逸は、女に騙されて背負わされた借金を育手が肩代わりする変わりに鬼殺隊の世界に足を踏み入れた様だ。善逸は、過激な妄想癖があるみたいで、鬼に生きたまま耳から脳髄を吸われて殺されると、ブリッチをしながら泣き叫んでいた。

 

「どうして善逸は恥を晒すんだ?」

 

「言い過ぎだろ!」

 

「ククク...」

 

「あんたは笑いすぎだ!」

 

炭治郎の辛辣な言葉と、そのやり取りを見て笑っている俺に善逸がツッコミをかましてから再び大声で泣き叫び始めてしまった...。

 

 

 

 

「カァ...(面白いご主人様だなチュン太郎)」

 

「チュン!(善逸には、もう少し自分に自信を持ってもらいたいです蓮兄さん)」

 

「カァー!(俺の所は面白いぜ蓮アニキ)」

 

透也、善逸、炭治郎のやり取りの裏で、三人の鎹鴉は主達の事を話していた。




読んでいただきありがとうございます!!


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鼓屋敷...②

まさかの禰豆子までもヒロインと言う事になり、鬼滅の刃の女性キャラ全員がヒロインということになりました(*゚∀゚)アヒャヒャ
カップリング重視している方は大変申し訳ございません!


善逸を泣き止ませてから次の任務地へと向かっていた。善逸は今回の合同任務の相手だったみたいで、田んぼ道を三人並んで歩いていた。しばらく歩き続けていると、隣に居る善逸が腹の虫を鳴らした。

 

「はぁ...。落ち着いたら腹が減ってきた...」

 

「何か、食いもんを持ってないのか?」

 

「無いです...」

 

腹を空かせている善逸の前に、次の任務地に行く道中で買っていた笹の葉で包んでいる三つのおにぎりを差し出した。本当は二つだけ買ったのだが、気前の良い店主におまけと言われて三つになったから善逸に上げる余裕が出来たんだ。

 

「左から昆布、おかか、梅干しのおにぎりだ。好きなのを一つ選べ」

 

「いいんですか?」

 

「おう、これから任務をするのに腹が減ってちゃ戦えないだろ?炭治郎も持ってけ」

 

「ありがとうございます御影さん!」

 

善逸は昆布、炭治郎はおかか、俺は梅干しのおにぎりを取り、歩きながら食った。善逸がおにぎりを食い終わると、少しだけやる気を出してくれた様で、泣き言の数が減り、少しだけ静かになった。

 

 

 

 

俺、炭治郎、善逸の三人で、鎹鴉達の後に付いて歩き続けて田んぼ道を抜け、山の麓に来ていた。蓮からの情報では、この山の中に鬼達の根城があるとの事だった。

 

「御影さ〜ん!俺、すっごく弱いから守ってください!!」

 

「善逸、雀だけでなく御影さんを困らせるな!どうしてそんなにも恥を晒せるんだ?」

 

「言い方酷すぎだろ!?」

 

俺の後ろで、炭治郎と善逸は田んぼ道でやっていた面白可笑しいやり取りを再び始め出した。二人のやり取りをBGMに、山道を登っていくと少し先に一件の屋敷が見えてきた。

 

「血の匂いがする...。それから嗅いだことない匂いも」

 

「何か匂うの?匂いは感じないけど屋敷から変な音が聞こえない?」

 

善逸は、炭治郎同様に五感の1つが優れている様だ。善逸は聴覚に優れている様で、俺や炭治郎には聞こえない音が聞こえていみたいだ。

 

「まあ、今は屋敷の事よりもあの子らをどうするかだ」

 

俺達三人がこの屋敷の前に辿り着いた時には既に居て、木の影に隠れてこちらの様子を伺っていながら、怯えて震えている兄妹に視線を向けて屋敷の様子を見ている炭治郎と善逸に声をかけた。

 

怯え震えている兄妹を炭治郎に宥めてもらい、何故こんな所に居るのかと尋ねた。兄妹には、もう一人兄がいるらしいんだが、その兄が鬼に連れてかれ、兄妹は兄を取り戻そうと鬼の後をつけてこの山にいると話してくれた。

 

「二人とも怖いのに、よく頑張ったな」

 

自分達が鬼に喰われるかもしれないのに、連れ去られた兄の為に行動した兄妹に労いの言葉をかけた時だった...。善逸が、さっきよりも屋敷から聞こえてくる音が変と言いだし、俺や炭治郎にも聞こえる鼓の音が屋敷から聞こえてくる。

 

パタンッ!!

 

屋敷の二階にある窓の開く音が聞こえた瞬間、服が血塗れの男が投げ出された。血塗れの男が宙に浮いている間に、瞬歩で近づき受け止めた。

 

「せっ…かく...外に...出られたのに...死ぬのか...死に...たく...ない...」

 

「すまない...。俺達がもう少し早く来ていたなら」

 

血塗れの男は、俺の腕の中で息を引き取った。斬魄刀や鬼道を使えていても助けられない人は沢山いる、何度も自分の無力さに打ちひしがれた。血塗れの男を地面にゆっくりと下ろしてから、兄妹にこの人は兄かと尋ねたら違うと返ってきた。

 

 

御影の質問を兄妹が答え終わると同時に、屋敷の中から鬼の咆哮が響き、善逸と兄妹は怯え、炭治郎は驚きの表情で屋敷を見ていた。

 

「ホンマに...うるさいやっちゃな...」

 

御影は言葉を発すると同時に、屋敷の中にいる鬼達への威嚇として霊圧を解放して、霊圧を解放した御影の周りに重圧が生じて擬似的な地震を起こした。御影の威嚇は成功して、咆哮を上げていた鬼達は静かになった。

 

 

「御影さん、今のは一体...」

 

「それは後だ。それよりも、この屋敷の中で人間が二人いるのを確認した。お前達の兄は生きてる可能性が高い」

 

「ほ、本当ですか!?兄ちゃんは、生きてるんですか!!」

 

「可能性な、今から生存者を救出に行ってくる」

 

「あ、俺も行きます!」

 

「お前は怪我人だろ炭治郎?」

 

肋を折ってる炭治郎には、兄妹達と共に留守番をしてもらおうと思っていたのだが、鬼殺隊士として責任を果たすと言って、聞いてくれ無さそうだから連れていく事にした。炭治郎は、善逸も連れていき、兄妹の兄を救う効率を上げようとしていたが、善逸がずっと拒否し続けていると般若顔になった炭治郎が怖かったのか、渋々着いてくる事になった。

 

「二人とも、この箱と此処で待っててくれないか?この箱は、俺の命よりも大事なものだから守っててくれ」

 

兄妹に禰豆子が入っている箱を預けてから、俺が先頭で屋敷の中に潜入した。屋敷の中に入って中を散策しようとしたら、何故か禰豆子入りの箱と待っているようにと言った兄妹が入ってきた。

 

「何で入ってきた!」

 

「だ、だって...。あの箱からカリカリと不気味な音が聞こえてきて」

 

兄妹は禰豆子入り箱を外に放置して、俺達の所に来たらしい。今すぐに引き返す様に言おうとしたら、ポン...と鼓を叩く音が聞こえてきて──俺は一人何処かの部屋に移動していた。




読んでいただきありがとうございます!!


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鼓屋敷...③

鼓屋敷編は次回で終わりです!
鼓屋敷編が終わり、番外編を一話投稿したら...那田蜘蛛山編に入ります!


空間移動系統の血気術によって、強制的に移動させられ炭治郎達と離れ離れになり、1人だけになった俺は霊圧感知を使い炭治郎達の居場所を常に把握しながら屋敷内を彷徨い歩いていた。

 

「しっかし、いくら歩いても炭治郎達の所に辿り着けないな」

 

霊圧感知で炭治郎達の居場所は把握出来ているが、鼓の音が聞こえると、あっちこっちに飛ばされ炭治郎達と合流する事が中々出来ずに居た。霊圧感知も、霊圧が無限にある訳でも無く、これ以上消費する訳にもいかなくなり霊圧感知を閉じて探す事にした。

 

「ごの匂い、稀血だ!稀血だ!」

 

「なんや?かなりデブい鬼やな」

 

鼓の音が聞こえてこない内に、炭治郎達と合流する為に屋敷内を探索していると、少し先に巨漢のデブ鬼が現れた。

俺は死神の力のお陰で、人間200人分位の栄養を持った稀血になっていて、鬼達にとって俺は最高級の食材に見られている。

 

「悪いが、お前に食わせる肉と血は持ち合わせてない」

 

俺を喰おうと、徐々に近づいてくるデブ鬼の首を刎ねる為に逆撫を抜いた時だった...。俺の背後から、何かが猪突猛進と言いながら走って来る音が聞こえた。後ろを振り返ると、頭に猪の頭を被り、両脇に包帯で巻かれている二振りの日輪刀を差している上半身裸の奇天烈な人間が居た。

奇天烈人間は、俺を喰おうと近づいてくる鬼へ猪突猛進と叫びながら接近していた。

 

「屍を晒して俺の踏み台になれ!!」

 

我流──獣の呼吸参ノ牙・喰い裂き!!

 

奇天烈人間から独特の呼吸音を発しながら、両脇に差している日輪刀を抜き包帯が解けた。包帯が取れ顕になった日輪刀は、ギザギザでノコギリの様な形状をしていた。日輪刀を持っていると言う事は、この奇天烈人間は鬼殺隊士だと言う事は分かったが、こんな奇天烈な隊士には1度も見かけた事も無かったから新人隊士と推理した。

奇天烈隊士は、ノコギリの形状をした日輪刀で鬼の両腕を斬り飛ばし、首を斬り飛ばした。

 

「動きに無駄が多いが、中々の動きだ...」

 

「おいお前!」

 

奇天烈隊士を観察していたら、正面を向いていた奇天烈隊士が勢い良く、俺の方に振り返り日輪刀の剣先を向けた。何で剣先を俺に向けたのか不思議に思っていると、突然走ってきて斬りかかってきやがった。迫り来る二振りの日輪刀を逆撫で抜き防いだ。

 

「いきなり何だよ」

 

「俺と勝負しろ金頭!!」

 

「俺は金頭じゃねぇ、御影透也だ」

 

「俺様は山の王!嘴平伊之助だ!」

 

人生で鍔迫り合いになりながら、自己紹介をするのは初めての経験だなと溜め息を吐いて心内に思っていた。奇天烈隊士──改め、嘴平伊之助は、鍔迫り合い勝負に勝とうと全体重かけてゴリ押しをしてきたが、俺の育手...山本元柳斎重國(クソジジイ)に鍛えられた俺には、この程度の事に苦は無く、伊之助を押し返して後方に下がらせた。

 

「ガハハ!中々やるじゃねぇか蜜柑!」

 

「御影だ、全く...血の気の多いやっちゃな」

 

「行くぜ平目!我流獣──」

 

伊之助が仕掛けようとした時だった...。

ポン...と、しばらく聞こえなかった鼓の音が聞こえ、今いる位置から再び強制的に移動させられた。

 

「また移「御影さん!!」ん?おお、炭治郎!やっと合流出来た」

 

次に移動させられた部屋で、炭治郎、てる子、屋敷に入る前に感知していた子供が居た。その子供は、正一、てる子の兄の様で、てる子が泣きながら兄の清にしがみついていた。てる子達の兄が鬼達の巣窟に居ても生きられていた理由は、この屋敷の主である鼓を体から生やしている鬼が落とした、強制的に移動させられる鼓を鬼が来る度に叩いて逃れていたらしい。

 

「さて、鬼は残り一匹。徐々に俺達の方に向かって来ている様だし...炭治郎」

 

「はい!何ですか御影さん?」

 

「俺が、残り一匹の鬼を倒す。お前は、その子達と一緒に居てくれ」

 

炭治郎達と合流出来、善逸達の居場所を把握しようと霊圧感知で探した。善逸達は、外に出ているようで屋敷にはいなかった。三匹居た筈の鬼も一匹に減っていた。

 

「この匂い...極上の稀血の匂いがする...」

 

隣の部屋に眼球が裏返っていて、かなりホラーな鬼が俺の匂いを嗅ぎつけてやって来た。俺は迎え撃つ為に、炭治郎、てる子、清の居る部屋を出て隣の部屋に移った。隣の部屋に移り、清に鼓を叩く様に言おうとしたら、炭治郎が俺の方に来てしまい、この部屋に炭治郎が入った瞬間に清が鼓を叩いた。

 

「何故、来たんだ炭治郎?あの子達と居ろと言ったはずだぞ?」

 

「すみません御影さん!どうしても御影さんの戦いが見たくて!」

 

「はぁ...まあ、しゃーないな。さっさとこの1匹を倒してあの子達を外に出すぞ」

 

「はい!」

 

「極上の稀血...。貴様を喰らい...俺は再び十二鬼月に戻るのだ!」

 

炭治郎に戦いへの参加は絶対にするなと、念押しの為に肋を軽く押して言った。炭治郎は、うずくまりながら首を縦に振り了承した。




読んでいただきありがとうございます!!


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鼓屋敷...④

今回で、鼓屋敷編は終わりとなります!

番外編を1話か2話くらい投稿してから那田蜘蛛山編に入ります!


清に鼓を叩いてもらい、てる子と共に別の場所へ移動したのを確認してから眼球が裏返っている鬼と対峙していた。肋骨を骨折しているのにも関わらず、俺の戦いを観たいと言って着いてきた炭治郎には俺より前に行くなとキツく言い後ろに控えさせている。

 

「いいか、炭治郎。俺より前には絶対出てくるなよ?それと、奴の血鬼術がお前の方にも影響が出たらちゃんと避けろよ?」

 

「俺の事は大丈夫ですから!御影さんは気にせず戦ってください!!」

 

再度、炭治郎にきちんと俺より前に行くなと釘を刺してから、逆撫を抜き、鬼に視線を向けた。

────やっぱり何度見てもホラーすぎる鬼だ。

普通の鬼とは違い、眼球裏返っているし、体から鼓を生やしているし、こんなのが夜にいきなり現れたら、一般人はショック死するだろうと考えていた。

 

「稀血ぃ...貴様を喰らえば、小生は再び十二鬼月に戻れる」

 

「アンタの口ぶりからして元十二鬼月って事だな」

 

「稀血ぃ...」

 

ポンポンポンポン!

 

鬼は体に生えている五つの鼓の内、右肩、左肩、右腿、左腿に生えている鼓を叩くと部屋が右や左と傾いたり回転したりと、中々厄介な血鬼術だ。

 

ポン!

 

そして腹に生えている鼓は、爪の引っ掻きの様な攻撃が来る。腹の鼓を叩かない限りは、鬼からダメージになる攻撃は来ない様だ。

 

「アンタの血鬼術は把握出来た...。中々厄介な能力だな──俺以外の隊士にとってはな」

 

 

 

「アンタの血鬼術は把握出来た...。中々厄介な能力だな──俺以外の隊士にとってはな」

 

御影さんは笑みを浮かべながらそう言うと、俺の目の前で不思議な事が起こった。地に足つけて居たはずの御影さんが、宙に浮いていた。あまりの光景に夢なのかと思い、頬を何回か引っ張ったり、ひっぱ叩いたりしたが、御影さんは宙に浮いたままだった...。

 

「な、なんで宙に浮いているんですか!?」

 

「炭治郎...」

 

「は、はい!」

 

「これは、宙に浮いているんじゃ無くてな、宙に立ってるんだ」

 

宙に浮いているんじゃ無くて...宙に立っている?

もしかしたら、御影さんが実は鬼なのかもしれないと匂いを嗅ぐと普通に人間の匂いがするし、御影さんの発言から嘘の匂いもしなかった。

 

 

 

 

宙に立っている俺を見て、炭治郎は分かりやすく混乱していた。俺の能力については、産屋敷家、鱗滝の爺さん、桑島の爺さん、山本の爺さん、行冥、獪岳しか知らん。

 

「俺については、あの鬼を倒してから教えてやるから待ってろ」

 

「わ、分かりました!!御影さんが教えてくれるまで待ってます!」

 

炭治郎の混乱が解けて、前に居る鬼に意識を向けた。まだ、この屋敷内で怯えながら俺達を待っている兄妹、怪我をしている炭治郎を早く休ませる為に、瞬歩で一気に鬼の懐に入り、首を刎ね飛ばした。

 

 

 

 

「稀血ぃ...」

 

「悪いな ...。アンタにかける時間が無いから── 一瞬で終わらせる」

 

そう言った御影さんはこの屋敷の中に入る前に見せてくれた、目で追えない程の速さで鬼の懐に一気に入り込んで首を刎ねた。御影さんは鬼に何かを聞かれて答えると、鬼は嬉しい匂いを纏わせながら、灰となって消えていった。

 

鬼が灰になるのを見届けた御影さんから──とても悲しい匂いがしていた。

 

 

 

 

「一つ聞きたい...。小生の血鬼術はどうだったか教えてくれ...」

 

逆撫を鞘に収めて、炭治郎の元に戻ろうと振り返って歩き出すと、首を刎ねた鬼が俺に見せた血鬼術はどうだったと尋ねてきた。

 

「かなり強い血鬼術だと思う...。一般隊士だったら間違いなく敗れていた──流石は元十二鬼月に居ただけはある」

 

「そうか...ありがとう」

 

振り返らず鬼にそう言うと、少しだけ嬉しそうな声色で礼を言い気配が完全に消えていった...。後ろを振り返ると鬼の体は完全に消えていた。鬼の首が転がっていた場所は、血では無い何かで濡れた跡が残っていた。




最新作品

★カカシ先生!!になりました

ハイスクールDxDとNARUTOのクロス作品になります!

良かったら読んで見てください!


今回も読んでいただきありがとうございます!!


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一悶着

投稿が遅れてしまい申し訳ございません!!
他作品も執筆していますので、投稿ペースが遅くなりますがご了承ください!


体から鼓を生やした鬼を倒した事により、屋敷内全体に影響していた血鬼術が解かれ部屋の位置などが元通りに戻っていった。屋敷内が元通りに戻ってから俺と炭治郎は、てる子と清の元へと向かった。

 

「てる子!清!鬼はこの人が倒してくれたからもう大丈夫だぞ!」

 

てる子と清は別れる前の部屋で俺達を待っていてくれたお陰で、直ぐに合流する事が出来た。部屋の中心で互いに抱きしめ合いながら居た二人に、炭治郎が鬼を倒した事を伝えるとてる子と清は安堵の表情を浮かべた。

 

「炭治郎、てる子と清を連れて先に外に出てろ」

 

「御影さんも一緒に行かないんですか?」

 

「この屋敷内で放置されている遺体を外に運び出す...。だから、俺は後から出る」

 

てる子と清の元に向かう途中で鬼に殺され、放置されていた七体の遺体を発見していた。てる子と清の事は炭治郎に任せて、俺は遺体のある方へ向かう事にした。

 

「てる子と清を外に連れて行ってから俺も手伝います!」

 

「おう、頼んだぞ炭治郎」

 

炭治郎達は屋敷の出入り口へ向かい、俺は七体の遺体を一箇所に集める為に1番奥から遺体を担いで炭治郎達と別れた場所に置き、それを六回繰り返した。

 

 

 

 

御影さんは不思議な人だ...。

てる子、清と共に外に向かいながら御影さんの事を考えていた。御影さんの事は同じ鬼殺隊員である事、とても優しい匂いがしていて禰豆子を受け入れてくれた優しい人という事しか知らない。

 

────オラァ!!さっさとどきやがれ!!

 

────絶対に嫌だ!!

 

徐々に出入り口へ近づいて行くと、外から騒がしい声が聞こえてきていた。外で一体何が起こっているのかが気になり、少しだけ歩を早く進め外に出たら──猪の被り物をしている鬼殺隊員が禰豆子が入っている箱を守っている善逸を殴っている光景が目に入った。

猪の被り物をしている鬼殺隊員に殴られた善逸の顔には所々から血が少し流れ、左目に青痣が作られていた。

 

「退かねぇなら!!お前事串刺しにしてやる!!」

 

日輪刀を振り上げ善逸と禰豆子を刺そうとした瞬間、俺は呼吸で脚力を強化して二人を刺そうとしている奴へ一気に近づいた。懐に入り込み、日輪刀を振り上げて無防備になっている腹に固めた拳を叩き込み、殴り飛ばした。

 

バキッ!!

 

「骨折った!?」

 

鬼殺隊員の腹を殴り飛ばした時、骨が折れる音を聞いたみたいで、そう呟いた。流石にやり過ぎてしまったと思ったのだが、殴り飛ばした鬼殺隊員は笑いながら立ち上がった。

 

 

 

 

「よし、これで全部だな!」

 

炭治郎達と別れてから一人黙々と七体の遺体を一箇所に運んでいた。七体の遺体を一箇所に運び終わり、あとは炭治郎が戻って来て一緒に外へ運び供養する流れなんだが、炭治郎がてる子と清を外に連れて行ってから中々戻って来なかった。

 

「中々戻って来ない...。何か問題でも発生したか?」

 

戻って来ない炭治郎が気になり、外に行く次いでに一体の遺体を抱えて出入り口に向かった。出入り口に近づいて行くと、外から、喧騒が聞こえてきたんだが──俺が外へ出た瞬間に静かになった。

 

「一体...何があった?」

 

外に出ると上半身裸の美少年が額から血を流して仰向けに倒れていて、善逸は顔の所々に血が出ていたり左目に青痣作っていたり、炭治郎は炭治郎で、顔から少し血が出ていた。

 

「誰か、1から説明してくれないか?」

 

この現状に説明を求めると、正一がこの現状に至った経緯をきちんと話してくれた。正一が説明してくれた事を要約すると、禰豆子が入った箱を伊之助から守っていた善逸が伊之助にボコされているのを炭治郎が見て、止める為に殴ったらそのまま乱闘になり殴り合っていたが、俺がその乱闘を見る前に炭治郎が伊之助に頭突きをくらわせて脳震盪を起こして気絶させた様だ。頭突きをした炭治郎は、脳震盪にならずにピンピンしていた。

 

「はぁ...全く。とりあえず炭治郎!八体の遺体を埋める穴を掘るぞ!」

 

「分かりました御影さん!」

 

「あ、俺も手伝います!」

 

俺、炭治郎、善逸の三人で八体の遺体を埋める穴を掘り、外にある二体の遺体を埋めた。脳震盪を起こして気絶していた伊之助は二体の遺体を埋め終わったと同時に目覚めた。

 

「ウォオオオオオ!!勝負!勝負!」

 

「イヤァー!」

 

伊之助は、目覚めてから近くに居た善逸を追いかけ回していた。追いかけ回されていた善逸は俺の後ろに隠れて『苦手だぁ...』と呟いていた。

 

「あ?何やってんだ?」

 

「埋葬だよ」

 

俺達が今やっている事を聞いてきた伊之助に炭治郎が埋葬をしていると答え、手伝いを伊之助に頼んだ。俺達がやっている事を聞いた伊之助は、『生き物の死骸を埋めて何の意味がある!』と言って手伝いを拒否した。

 

「そうか...。傷が痛むから手伝いが出来ないんだな...」

 

「ブフッ」

 

ピキ...

 

「は?」

 

炭治郎の見当違いの考えに、思わず吹いた。

伊之助は多分野生児で人も動物も同じく生き物だから、わざわざ埋めて埋葬する意味は無いという事を言ったのだが、炭治郎は傷が痛むから手伝えないと思っている様だ。

 

「傷の痛みは人それぞれだ、伊之助は休んでいるといい。埋葬は俺達がやっておくから!」

 

【ズレてる...】

 

「はあぁぁぁぁ!!舐めんじゃねぇ!!人の100人!200人埋めてやらァ!」

 

炭治郎のズレてる感に、善逸、清、正一、てる子の4人は引きつった顔で炭治郎と伊之助を見ていた。伊之助は炭治郎の言ったことに太い青筋をぶっ立てながら屋敷の中に入って行き、残りの六つの遺体を運び出し掘った穴に埋めて行った。

 

「クククッ...。本当、お前らを見てると凄い面白いな」

 

炭治郎、伊之助、善逸達を一人一人を見て呟いた。面白い新人隊士が入ったと思ったと同時に、この三人は必ず強くなると予感した。




読んでいただきありがとうございます!!


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藤の花の家紋の家

読み返していて、書き忘れていた部分があったので書いて再投稿しました。

★最新作

・無個性だからって諦められるかよ!!
(僕のヒーローアカデミア×ワンピース)

・もう一人の煉合消防官
(炎炎ノ消防隊・第2世代と第3世代のハイブリッドオリ主)



一悶着あったが、八体の遺体を埋葬する事が出来た。埋葬した遺体に俺達は黙祷を捧げていたが、黙祷を捧げている俺たちの後ろで伊之助は頭突きで炭治郎に負けたのが悔しかったのか、近くにある木に何度も何度も頭突きをしていた。

 

「カァー!カァー!モウスグデ夜ニナル!山ヲ降リロ!」

 

死者への黙祷が終わると、炭治郎の鎹鴉から山を降りるようにと指示が出た。蓮からも、山を降りるように言われ、三兄妹と新人隊士三人組を連れて山を降りた。

 

「本当に送っていかなくても大丈夫か?」

 

「はい、大丈夫です!走っていけば、夜になる前には帰れるので!」

 

山を降りている途中で、三兄妹を家まで送り届けようとしたけど、自分達で帰れるらしく断られた。自力で帰る三兄妹に蓮に持ってきてもらった、藤の花の匂い袋、家で炊る藤の花のお香を渡した。鬼にとって、藤の花は毒らしく、藤の花の匂い袋やお香を炊くと鬼は絶対に寄り付かない。

それらを渡してから三兄妹と別れ、蓮と炭治郎の鎹鴉に次の目的地の案内を頼んだ。次の目的地は藤の花の家らしく、炭治郎、善逸、伊之助の三人が負傷しているから、治るまでの休息みたいだ。

 

「どうした炭治郎?何か聞きたい事があるんだろ?」

 

「その...御影さんについて教えて欲しいです!宙に浮いたり、その日輪刀とは違う刀について教えて欲しいです!」

 

藤の花の家に向かっている中、隣を歩いていた炭治郎は、何か聞き出そうな顔をしてチラチラ見てきていた。俺が炭治郎に見せてきたものについて、知りたがっていた。

 

「俺もちょっと知りたいかも...」

 

女の子にしか興味無さそうな善逸が、意外にも俺の事が気になった様で、炭治郎同様に教えて欲しいと言われた。伊之助は言葉を発してはいなかったが、俺の事を凝視していた。

 

「まず、俺の事を話す前にお前達は霊力って知ってるか?」

 

「え、霊力って、昔、陰陽師が使っていたとされている霊力ですか?」

 

「その通りだ善逸。霊力ってものは人間、誰しもが持っている。その霊力を、俺は上手く使えているから、こうやって不思議な事が出来る」

 

説明の最後に炭治郎達の目の前で空中に立ち、実演した。空中に立っていると、伊之助がピョンピョン跳ねながら興奮していた。斬魄刀についても聞かれ、ひねくれ者の意思のある刀と答えた。炭治郎の質問に全て答えると満足したのか、それ以上は何も聞いてこなかった。

 

 

 

 

「さて、そろそろ目的地に着きそうだぞ」

 

俺達の所から少し先に大きな屋敷が見え、その屋敷の門には藤の花の家紋が大きく描かれていた。俺以外の三人は藤の花の家に入るのが初めてらしく、俺が先陣を切って、先に屋敷内に足を踏み入れた。俺が先に中へ入ると、炭治郎達も続いて中に入った。

 

「久しぶりだな婆さん、何日か休ませてもらいたいんだが、いいか?」

 

「お久しぶりで御座います逆柱様。休まられるのは四人で宜しいでしょうか?」

 

「まぁ、一応四人で頼む」

 

「畏まりました。お風呂の準備が出来ていますので、先にお風呂へお願い致します」

 

婆さんに今日から四人で泊まる部屋に案内してもらい、荷物を置いてから風呂場へ直行した。風呂場に着くと、ズボンしか履いてない伊之助は一瞬でズボンを脱ぎ、体を洗わずに湯船に飛び込もうとした所を止めた。

 

「何すんだよ蜜柑!」

 

「俺は御影だ。それよりも、体を綺麗にしてから湯船に入れ」

 

湯船に入る前の作法を知らない様で、俺は仕方なく、伊之助に湯船に入る前の作法を教えながら頭を洗ってやったり、背中を流してやった。頭や背中を洗っている時の伊之助は、首根っこを掴まれて大人しくしている猫の様だった。

 

「ほら、湯船に浸かっても大丈夫だぞ?」

 

「・・・ハァッ!?ホワホワさせんじゃねぇ!」

 

洗い終わり、湯船に浸かっても良いと伊之助に言ったのだが、何故か呆然としていた。呆然としていた伊之助だったが元の野生児に戻り、訳の分からん事を言って湯船へと飛び込んで行った。

 

「あの...御影さん」

 

「どうした善逸?」

 

「さっき、お婆さんとの会話で、御影さんが逆柱って呼ばれてましたけど...も、もしかして御影さんの階級って柱ですか?」

 

隣で体を洗っていた善逸から、階級は柱なのかと聞かれた。

別に隠している事でも無い事だし、普通に階級は柱だと答えると、善逸は大声を出して大袈裟に驚いた。

 

「突然大きな声を出してどうしたんだ善逸?」

 

「うるっせぇぞ紋逸!!」

 

「俺は善逸だ!誰だよ紋逸って...それよりも!御影さんが柱なんだぞ!俺達より強くて偉い人なんだぞ!驚きとか無いのかよ!」

 

「やっぱり強いのか!!勝負しろ蜜柑!!」

 

「風呂場は暴れる所では無いぞ伊之助!」

 

俺が柱かどうかの話から、伊之助が俺に勝負を挑む為に暴れだしたお陰で、騒がしい入浴時間を過ごした。暴れる伊之助を静かにさせ、柱と知ってから態度を変えている善逸に今まで通りでいいと言って風呂場を出た。

 

 

 

 

全員風呂から上がり、部屋に戻ると四人分の飯が用意されていた。それぞれの場所に着いてから、飯を食べ始めた。伊之助は用意されていた飯の中で、天ぷらを気に入ったらしく、ガツガツと素手で食べていた。

野生児である伊之助は箸の使い方なんて分かる筈もなく、俺と炭治郎で伊之助に箸の使い方を教えていた。箸の使い方を教える時、伊之助は覚える気が無さそうだったが、『出来ないのに無理言って悪いな』って挑発すると、プライドの高い伊之助は、簡単に引っかかり箸の使い方を必死で覚えようとした。

 

「えぇ!?御影さんも爺ちゃんの修行を受けたんですか!?」

 

「まあな。桑島の爺さんだけでなく、鱗滝の爺さんにも扱かれた事がある」

 

炭治郎が思い出したかの様に、俺の育手はどんな人だったかを聞かれた。俺の育手である山本の爺さんには、俺を含めて弟子を10人持っていた。その弟子の中に、鱗滝の爺さんと桑島の爺さんもいた。俺の修行時代、山本の爺さん、鱗滝の爺さん、桑島の爺さんというジジイトリオに扱かれていた。

 

「じゃあ!御影さんは、俺の兄弟子なんですね!」

 

「一応そうなるな」

 

「おい!さっきからお前らだけで何話してやがる!」

 

俺、炭治郎、善逸だけで話していると、俺達の会話が気になった伊之助が尋ねてきた。四人で食事しているのに伊之助を少し除け者にしてしまったから、四人で話せる内容を見つけ出して、雑談をして、飯の時間を過ごした。

 

 

 

 

「うん!君達三人とも重症だね」

 

飯を食い終わると婆さんが呼んでいた医者が部屋に入り、炭治郎、善逸、伊之助を診察し始めた。診察の結果、三人とも重症で肋骨が折れていると診断をもらった。

 

善逸...肋骨二本

 

炭治郎...肋骨三本

 

伊之助...肋骨四本

 

「お前らな...鬼を狩る以外で肋骨折ってどうすんだよ」

 

炭治郎達三人組は、絶対に安静にしているように医者から釘を刺され、肋骨が治るまで任務に出られなくなった。炭治郎の監視役として居る俺も、休みになった。

絶対安静と言われてから寝るまでの間に、箱の中にいた禰豆子を見た善逸が、炭治郎に嫉妬して追いかけ回す等の一悶着あった。

 

 

 

 

散々走り回って疲れたのか、炭治郎、善逸はぐっすり眠りについた。伊之助は、二人が走り回る前に眠りについていた。

俺はというと、縁側で満月を眺めながらの月見酒を一人で楽しんでいた。月を眺めながら酒を煽り、獪岳は一人で大丈夫なのか、体調を崩してないかと、ちょっと心配をしていた。

 

「ムー?」

 

「ん?起きたのか禰豆子?」

 

月見酒を始める前に禰豆子を俺の布団に寝かしつけたのだが、寝れなかったようで、部屋から出てきて俺の所にやって来た。禰豆子は体を3〜4歳位の子供位まで縮ませて、胡座をかいている俺の足の真ん中にちょこんと座り込んだ。

夜は少し冷える為、禰豆子の子供体温がとても温かった。

 

「眠れるまで、一緒に月でも見るか?」

 

「ムー!」

 

禰豆子は、竹を噛んでいて『ムー』しか話せないが、何となくだが言いたい事が伝わってくる。俺と禰豆子で月を眺めてしばらくすると、禰豆子がうたた寝をし始めた。

 

「眠くなったか禰豆子?」

 

「ムー...」

 

「布団まで運ぶぞ?」

 

「ムームー」

 

眠たそうにしている禰豆子を布団まで運ぼうとしたのだが、禰豆子は浴衣を掴みながら首を横に振って、まだここに居るという意思表示をしていた。禰豆子は俺の胡座の中で寝始め、俺は浴衣の上に羽織っていた羽織を禰豆子に掛けた。

 

「そのまま...。いい鬼でいてくれよ禰豆子...俺はお前を斬りたくないからな」

 

すやすやと胡座の中で眠る禰豆子に、そう呟きながらサラサラの髪の毛を撫でていた。




読んでいただきありがとうございます!!

コメントで、冨岡義勇にヒロインを付けないのか?と言われまして、アンケートをとることにしました。


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那田蜘蛛山
次なる任務へ


最新作!!

★無個性だからって諦められるかよ!!
(僕のヒーローアカデミア×ワンピース×オリ主)

無個性の少年が諦めずにヒーローを目指す物語。


アンケート結果で義勇にヒロインは無しで行きます!


藤の花の家紋の家に留まってから、数日が経った…。

留まっている間は賑やかで、怪我も治ってない伊之助に勝負を挑まれたり、善逸に獪岳が俺の継子と教えると騒ぎ出したり、禰豆子の遊び相手になったりと退屈しない日々を送っていた。

 

「うん!完治です!」

 

「ようやく治ったか...」

 

最初の検診から数日の休養を取ってから検診をしてもらうと、三人の肋骨はしっかりくっ付いて完治したと診断をもらった。完治の診断をもらってから一息ついていると、炭治郎の鎹鴉が次の任務を持って飛んできた。

 

「北北東!北北東!次ノ任務ハ北北東!四人ハ那田蜘蛛山ヘ向カエ!」

 

「治った途端に任務かよ!」

 

「ガハハ!腹が鳴るぜ!!」

 

「それは腕が鳴るぜ!だと思うぞ伊之助」

 

俺達は次の任務先である那田蜘蛛山へと向かう為に、何時でも出発出来る様に身支度を整えた。全員の支度が終わり、婆さんに那田蜘蛛山へ行く道中に食べられる様に、笹の葉に包まれたお握り二つを四人分を渡された。婆さんに門の所まで見送られながら藤の花の家紋の家を出た。藤の花の家紋の家を出てから、婆さんに切り火を切ってもらい、那田蜘蛛山に向けて出発した。

 

 

 

 

御影達一行が那田蜘蛛山付近に辿り着くと、日が完全に落ち、辺りは暗くなっていた。唯一の救いは今日が満月だったお陰で、完全な暗闇ではなく月光に照らされていた為、少しだけ明るかった。

御影達は那田蜘蛛山へと1歩、また1歩ずつ進むと、少し先に鬼殺隊の隊服を着ている隊士が道のど真ん中でうつ伏せに倒れていた。倒れていた隊士は御影達に助けを求めたが、那田蜘蛛山を根城にしている鬼によって付けられた糸に引っ張られ、那田蜘蛛山に引きずり込まれて行った。

 

「俺は行きたくないよ〜。何かいっぱい動いている音するし、グジュグジュって気持ち悪い音が聞こえてくるよ〜」

 

善逸は御影の服を引っ張りながら、怖くて行けないと泣きべそをかきながら訴えた。那田蜘蛛山から濃い死臭を嗅ぎとった炭治郎は、那田蜘蛛山の中に居る隊士を一刻も早く助けに行きたいと歩を進めた。炭治郎に続き、伊之助も那田蜘蛛山に入る事になった。

 

「悪いな善逸…。俺も行くわ、善逸は此処で待ってな」

 

御影、炭治郎、伊之助の三人は、善逸を道の真ん中に置き去りにして、那田蜘蛛山の内部へと進んだ。道のど真ん中で置き去りにされた善逸は呆然先に進む三人を膝を抱えて見ていた。

 

 

 

 

「ありがとうございます御影さん…伊之助」

 

「あ?」

 

那田蜘蛛山の中に進んでからしばらくして、炭治郎が突然立ち止まり、礼を言った。那田蜘蛛山に入る前に嗅いだ死臭で少し竦んでいたらしい、俺と伊之助が着いていくと言った時に安心感を得られて竦みが治まった事に対しての礼みたいだ。

 

「ん?あれは…村田か?」

 

少し先に、何かに怯えながら慎重に動いている村田が見えた。炭治郎と伊之助も村田に気づいた様で、俺達三人は村田に接触する為に、村田へ近づいた。

村田との距離が、あと数cmの所で村田は刀に手を掛けて勢いよく後ろに居た俺達の方に振り返った。

 

「み、御影さん!応援に来てくれたんですか!」

 

「此処に居る二人と一緒にな、それより、此処で何が起きたか状況を説明してくれるか?」

 

俺達が那田蜘蛛山に到着する1時間前…。

村田の他に9人の隊士で那田蜘蛛山に入ったらしいのだが、先頭を歩いていた奴が突然様子がおかしくなり、日輪刀を抜いて近くに居た隊士を斬り殺し始めたと、村田は震えながら俺達が応援に来る前に起きた事を説明してくれた。

 

村田の状況説明が終わった時だった…。

木の影から村田と一緒に那田蜘蛛山に入った隊士達が、虚ろな目をしてユラユラと俺達に近づいてきた。近づいてくる隊士達の手には日輪刀が握られ、俺達を斬り殺す気満々で日輪刀を構えて襲いかかってきた。

 

「俺達を殺す気満々の団体さんのお出ましだぞ」

 

「もう少し焦ってくださいよ!」

 

俺の発言に、村田は泣きそうになりながらツッコミを入れてくれた。襲いかかってくる隊士達を迎え撃つ為に、俺は逆撫、村田、炭治郎、伊之助の三人は日輪刀を抜き応戦した。

 

 

 

 

 

「普通さ...三人で俺を説得して一緒に行く流れでしょ?何で、三人とも俺を道のど真ん中に置き去りにして、先に進んじゃうの?」

 

善逸は、先に進んだ三人に対してブツブツと文句を言っていた。そんな善逸に対して、善逸の鎹雀であるチュン太郎は励ましたり、仲間を助けに行くようにと伝えた。だが、チュン太郎の言っていることが分からない善逸は、チュン太郎の気持ちが伝わらず、チュン太郎にくちばしで、手の甲を抓られていた。

 

「は!そう言えば、炭治郎の奴!禰豆子ちゃんを山の中に連れていったよな!」

 

フェミニストな善逸は、危険な山に女の子である禰豆子を炭治郎が連れて行ったことに怒り、那田蜘蛛山へと突撃した。




読んでいただきありがとうございます!!


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それぞれの役割

御影、村田、炭治郎、伊之助の四人は、襲いかかる隊士を相手に傷つけないように立ち回っていた。御影と炭治郎は襲いかかる隊士との戦いの中で、隊士達の背中に蜘蛛の糸がくっ付いているのを発見し、隊士達は蜘蛛の糸で操られている事に気づいた。御影と炭治郎は隊士を操っている蜘蛛の糸を斬るが、そこら中に居る蜘蛛達がくっつけるせいで、キリがない戦いを強いられていた。

 

 

「斬ってもキリがないな...」

 

「今すぐに、隊士達を操っている鬼の匂いを嗅いで向かいたいんですが、変な匂いのせいで鼻が上手く機能しません!」

 

隊士達を操っている鬼が居る場所を炭治郎の嗅覚で探してもらおうとしたのだが、風に乗って変な匂いが山に充満しているみたいで、鼻が効かないみたいだ。縛道で操られている隊士の動きを封じるのは簡単だが、俺はあくまでも炭治郎と禰豆子の監視、炭治郎の任務先で何かあれば死なない程度に援護するのが耀哉からの指示だ。だけど、流石に埒が明かないからどうするかと考えていたら、悠々と戦う伊之助が目に入った。

 

「おい伊之助!」

 

「何だ!水羊羹!」

 

「御影だ!それより、お前は鬼が何処に居るのか見つける事が出来るか?」

 

炭治郎は鼻、善逸は耳、今現在、俺の周りには五感の内の一つが優れている人間が近くに居る。もしかしたら、伊之助も炭治郎や善逸の用に、五感の内の何か一つが優れているかもしれないと刀を振っている伊之助に声をかけた。

 

「あ?出来るぞ?」

 

「なら、鬼を見つけて炭治郎と一緒に行ってこい!」

 

「はあぁぁ!!なんで俺様が権八郎なんかと!」

 

これから伊之助と炭治郎は合同任務になる事が有りそうな予感がしていたから、少しでも連携が取れるようになってもらいたくて一緒に行く様に言ったのだが、一人で行くと言って断られてしまった。仕方が無いから、伊之助に奥の手を出した。

 

「この任務が終わったら、腹一杯になるまで天麩羅を食わせてやる」

 

「本当か!?直ぐに片付けに行くぞ権八郎!!」

 

藤の花の家紋の家で食べた天麩羅を伊之助が気に入った様で、藤の花の家紋の家に滞在中は、毎晩ずっと天麩羅ばかりを伊之助は食べていた。伊之助は二本の日輪刀を地面に刺すと、両手を大きく広げて呼吸を整えていた。

 

 

 

 

「獣の呼吸・漆ノ型 空間識覚!!」

 

御影から腹一杯になるまで天麩羅を食わしてやると言われた伊之助は直ぐにやる気を出し、地面に二本の日輪刀を刺して大きく両腕を広げた。御影が思った通りに、伊之助は炭治郎達と同じ様に五感の一つ・触覚に優れていた。伊之助は自分で作り出した獣の呼吸で、優れた触覚を更に研ぎ澄まし隊士達を操っている鬼が何処に居るのかを探した。

 

「見つけたぜ!」

 

「炭治郎!!此処は俺と村田で引き受けるから、お前は伊之助と共に鬼が居る場所に行け!」

 

「で、でも御影さん!2人だけじゃ...」

 

「迷うな!今、お前がするべき事は俺らの心配じゃ無いだろ!!それに、俺らはお前に心配される程、弱くない!さっさと自分の責務をはたせ!!」

 

この場を御影と村田だけに任せて離脱する事を躊躇っていた炭治郎は、御影に喝を入れられていた。御影の言葉に炭治郎は糸で隊士達を操っている鬼の元へ伊之助と向かう事を決意し、伊之助と共にその場から離脱して鬼の元へと急いで向かった。

 

 

 

 

「行ったか──縛道ノ六十一・六杖光牢」

 

炭治郎と伊之助が完全にこの場から離れてから、糸で操られている隊士の動きを六杖光牢で封じ込めた。糸で隊士達を操っている鬼は、突然動かなくなった隊士に焦っているようで、隊士を必死に動かそうと糸を動かしているのが見えた。

 

「あいつらに任せて大丈夫なんですか?御影さんが行けば直ぐに終わるでしょ?」

 

「あのな...。そんな事してたら新人隊士が育たないだろ?死にそうになれば助けに入るが、死にそうじゃないなら新人に戦闘経験を積ませる為に戦ってもらうのが俺のやり方だ」

 

操られている隊士達の動きを封じ込める事が出来たことに、村田は安堵して地面にヘタリ込みながら、鬼退治に行かせた炭治郎と伊之助の事を心配していた。だが、村田の心配は杞憂に終わり、隊士達を操っていた糸は全て切れた。六杖光牢を解くと操られていた隊士達は、糸が切れた操り人形の様にグッタリしながら地面に倒れていった。

 

「休憩はお終いだ。さっさと次の所に行くぞ!」

 

此処より少し離れたところから、雷の音が聞こえてきた。満月が光り輝き、空には雲一つも無い夜に聞こえてきた雷の音を俺は雷の呼吸の使い手...道に取り残した善逸が来ていると判断した。あの三人が鬼と戦っている間に、存命している隊士を救助する為に動いた。

 

「あ、待っ────」

 

村田は自発的に来ると思って、少し前を歩いていたら村田の声が聞き取りずらくなった。村田が居る後ろに振り返ると、村田が居た所に糸の塊が出来ていた。糸の塊の横には、全身真っ白の美少女と言っても過言では無い女の鬼が立っていた。糸の塊からは村田の助けを求める声が微かに聞こえてきた。




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捻くれ者の刀

作品紹介

★五条先生になりました
(ハイスクールD×D × 呪術廻戦[五条悟系・転生オリ主])

★無個性だからって諦められるかよ!!
(僕のヒーローアカデミア × ワンピース[覇気、剃、月歩を使うオリ主])

★幽霊に呼吸を習いました
(鬼滅の刃二次創作×継国縁壱系オリ主)


さっきまで聞こえていた村田の声が突然途絶えた…。

村田に何が起きたのかと、多少心配しながら後ろを振り返った。振り返った先には村田の姿は無く、デッカイ真っ白な球体と、その横には髪、肌、服装が全部真っ白な美少女と言っても過言では無い女鬼が居た。

 

「なあ、美人な()(ねえ)さん。その白い塊の中に、さっきまでそこに居た奴入ってる?」

 

「ええ、此処に居た鬼殺隊士ならこの中に入ってるわよ?」

 

耳を澄ませば、デッカイ白い球体から村田の声が聞こえる。まあ、霊圧感知を使えば一発で分かるけどな。村田が閉じ込められている球体からは村田の声以外にも、ちゃぽちゃぽと水の様な音が聞こえていた。念の為、目の前に居る鬼に尋ねたら、球体の中には人をゆっくり溶かしていく液体が入っていると答えた。

 

「村田ァ!!」

 

『何ですか御影さん!!』

 

「直ぐに助けるから待っとけ!」

 

俺は逆撫を顕現させ、逆撫を鞘から抜いて構えた。この鬼からも血の採取をしようと、愈史郎から新たに貰った採血刀を袖に忍ばせた。相手の出方を見ようとしていたら、鬼がスンスンと匂いを嗅ぎ、俺の方を舌なめずりして見てきた。

 

「貴方…稀血ね?それも極上の稀血…ねえ、この糸玉に入っている隊士を出してあげましょうか?」

 

「本当か?それは助かるな〜鬼とは言え、女を斬るのは抵抗があるからな!」

 

「ふふ。でも、その代わりに貴方が私のモノになるのよ?」

 

美人に言われて嬉しい台詞なんだけど…鬼なんだよな。何か滅茶苦茶俺を喰う気満々だし、俺が喰われた後、絶対村田が糸玉に閉じ込められている未来しか見えない。

 

「とても魅力的な相談だが、断る」

 

「そう…残念ね。貴方を殺して稀血を啜らせてもらうわ!」

 

鬼が俺に向けて手を翳すと、大量の糸が俺に襲いかかって来る。糸を躱す為に左に移動すると、糸も俺の動きに合わせて左に方向を変え追尾してきた。斬ってもキリが無さそうだと判断し、五十番代の鬼道・廃炎で追尾してくる糸を焼き尽くした。

 

「今の何なのかしら?その刀の色を見る限り、貴方には炎の呼吸は無い筈…」

 

「俺はちょっとした特殊人間だから出来るんだよ。他の連中には出来ないけどな」

 

「特別な事が出来るみたいだけど、貴方を貪る考えは変わらないわ!」

 

「それは──俺に勝てたらの話だろ?」

 

俺は霊圧を高め、逆撫を鬼に向け始解の解号を唱えた…。

 

 

──────倒れろ…逆撫

 

 

 

 

 

 

──────倒れろ…逆撫

 

御影が逆撫の始解解号を唱えると、逆撫の形状に変化が現れた。柄の先には大きな円状の持ち手が現れ、刀身には複数の穴が空いていた。御影が円状の持ち手に触れると、逆撫はひとりでに回り始めた。

 

「刀の形が変わった?」

 

「それだけじゃないぜ?──ほら、何かいい匂いがしてこないか?」

 

鬼は周囲の匂いを嗅いだ瞬間、言葉に出来ぬ恐怖を感じ、その場に蹲った。多くの隊士を殺し、血と腐敗臭しかしない山にも関わらず、御影の言う通り、いい匂いがしている事に鬼は状況が飲み込めなかった。

 

「そんな所で蹲って無いで周りを見てみろよ?」

 

「な、なに…これ…」

 

鬼が周りを見ると、視界に映るもの全てが逆さまになっていた。鬼が踏んでいた大地は頭上にあり、空が鬼の真下に変わっていた。御影も鬼と同じ目線で立っていた筈なのに、今では逆さまになって立っていた。

 

「ようこそ──逆さまの世界へ…」

 

「何なの…何なのよ貴方!!」

 

「俺は…鬼殺隊逆柱・御影透也。短い間だけど宜しくな」

 

鬼は目の前に居る人物が鬼殺隊の最高戦力である柱と知った瞬間、全身から血の気が引いた…。御影がニヤリと笑うと、鬼は後ずさった。そして、鬼の脳内には一刻も早くこの場から逃げる事だけしか頭になかった。鬼は逃げ出そうと走り出したが…同じ所に戻ってきていた。鬼は何度も何度も御影から逃れようとするが、逃げられず同じ所に戻ってきていた。

 

「ど、どうして!」

 

「不思議だろ?俺の能力は、ただ逆さまにする訳では無い。相手が認識する上下左右前後、それと嗅覚、見えている方向・斬られた方向の感覚を全て“逆さま”にする。お前が逃げようと、俺がこの能力を発動している限り、逃げられないという訳だ」

 

御影から逃げられないと言われ、退路を絶たれた鬼はその場で膝を着き、御影に首を差し出した。

 

「楽に殺して…」

 

「分かった…。水の呼吸伍ノ型・干天の慈雨」

 

一応、呼吸の技が使える御影は鬼の要望通りに、痛み無く死ねるように干天の慈雨で首を斬った。首を斬られた鬼は、鬼になる前の過去を思い出し涙を流した。体が灰に変わる前に、御影への遺言で十二鬼月がこの山に居ると言い残して消えていった。

 

 

 

 

鬼からの遺言を聞き終えると、鬼は満足そうに灰に変わって消えた。鬼を倒し終わり、糸玉に閉じこられている村田を出す為に、糸玉を斬った。糸玉を斬ると、中から全裸の村田が泣きながら出てきた。

 

「糸から全裸で生まれた村田郎?」

 

「最初っから全裸じゃ無いですよ!!糸の中に閉じこめられている間に隊服を溶かされたんです!」

 

俺のボケに村田が鋭いツッコミを入れてくれ、満足していた所に誰かがこっちに向かってきているのを感じた。10秒もしない内に俺達の所にやって来た人物は、俺があまり会いたくない…というか顔を見たくない人物だった。

 

「お久しぶりですね御影さん」

 

「悪い村田、俺はそろそろ他の所に行くわ…」

 

「え、あ、は、はい…」

 

話しかけてきた奴を無視して、村田に別れを告げてからその場を立ち去ろうとして1歩踏み出すとシャツを掴まれた。仕方なく、シャツを掴んで居る人物の方に振り返り、何がしたいのか目で訴えた。

 

「少し…少しだけでも話を──「断る」ッ…」

 

「俺はお前と話をする程、親しくないし、話に割く時間は無い。自分の役割を果たしたらどうだ蟲柱?」

 

「・・・・・・」

 

俯く蟲柱を気にもとめずに、俺はその場から去った。

遠くから落雷の音が聞こえたりと、完全に那田蜘蛛山は戦場と化していた。霊圧感知を那田蜘蛛山全体に張り巡らせたら、炭治郎と禰豆子が、多分十二鬼月と戦っているのを感じた。

 

「行くか…」

 

俺は炭治郎と禰豆子が戦っている場所へと向かった。




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招集

これにて那田蜘蛛山編を終了とさせていただきます。
次章は[柱合会議編]に入らせていただきます。

柱合会議に入る前に現柱を紹介します。

岩柱・悲鳴嶼行冥 逆柱・御影透也

双水柱・冨岡義勇 ・鱗滝錆兎

炎柱・煉獄 杏寿郎 風柱・不死川実弥

蟲柱・胡蝶しのぶ 恋柱・甘露寺蜜璃

愛柱・愛崎姫乃 霞柱・時透無一郎

蛇柱・伊黒小芭内 霞柱補佐・時透有一郎

以上が現鬼殺隊柱になります。


村田の元を離れ、薄暗い那田蜘蛛山の中を駆け抜け、炭治郎の元に急いだ。那田蜘蛛山に入る前に霊圧感知で感じた気配は4つ、4つの中で一際大きな気配を感知していた。大きな気配を持つ鬼の所に、炭治郎と禰豆子が居る事を感知した。あの鬼が残した遺言が正しければ、炭治郎と禰豆子が戦っている鬼は十二鬼月だ。炭治郎達にとって強敵だ、この戦いで炭治郎と禰豆子は必ず生還出来るって根拠は無いけど…何故か分からないが二人は必ず生還すると勘が訴えていた。

 

「透也…」

 

「驚いた…義勇か。お前も那田蜘蛛山に来ていたのか」

 

「ああ、御館様からの命でこの山に来た。透也は長期任務では無かったのか?」

 

「竈門炭治郎及び竈門禰豆子の監視をする任務だ」

 

普段から無表情の義勇だが、俺が炭治郎達の監視をしていることを伝えると動揺していた。目をキョロキョロさせながら何かを言おうとオロオロしている義勇は、小さい子が迷子になって困っている様な感じで可愛い…。

 

「耀哉から禰豆子を監視しながら守ってくれと言う任務だから、二人に危害を加えたりしないから安心しろよ」

 

「そうか…」

 

二人に危害を加えるつもりは一切ないと伝えたら、義勇は安心したのか、ホッと息を吐いた。とりあえず、義勇に炭治郎の元に増援に向かうと伝えると、義勇も一緒に行く事になった。

 

「そういえば…」

 

「どうした義勇?」

 

「透也に会う前…猪の頭を被った人間?に会った…」

 

義勇は俺と合流する前、鬼に顔を握り潰されそうになっている伊之助を助けて来た事を話し始めた。俺は伊之助の命を救ってくれた事に感謝すると、任務が終わったら鮭大根を作って欲しいと頼み込まれた。義勇の頼みを承諾したら、ムフフと不気味な笑い方をしていた。

 

軽口を叩き合いながら薄暗い那田蜘蛛山の中を移動していると、炭治郎と禰豆子の気配が徐々に近くなっていた。1分もしない内に炭治郎と禰豆子の元に辿り着くと、二人は地面に倒れ伏せ、全身真っ白な鬼だけが立っていた。倒れている炭治郎に真っ赤な糸が覆いかぶさり、炭治郎に次々と傷を与えていた。

 

「義勇!」

 

「分かっている!」

 

炭治郎に覆いかぶさっている真っ赤な糸を義勇に斬らせ、俺は炭治郎と禰豆子を回収した。炭治郎と禰豆子を回収した俺は、義勇の間合いに入らないように下がり、二人を地面にゆっくりと降ろした。

 

「み…かげさん…」

 

「良く…頑張ったな炭治郎、禰豆子」

 

「後は任せろ…」

 

「次々と現れて僕の邪魔をするゴミめ!!」

 

俺達の登場に全身真っ白な子供の鬼が怒りだし、攻撃を仕掛けようと俺達に向かって手を翳した。手を翳すと真っ赤な糸が渦を巻きながら現れた。

 

「僕の邪魔をするゴミは殺す!! 血鬼術・刻糸輪転!!」

 

鬼が放った血鬼術は俺達に近づくにつれ、大きくなっていた。迫り来る血鬼術に俺と義勇は全く動揺せずに、当たったら体がバラバラになりそうな血鬼術を対処する為に動いた。

 

「透也は炭治郎の治療を頼む…」

 

「はいよ」

 

俺は珠世さんから貰っていた消毒液を自分のハンカチに垂らし、糸で切られている顔や手足の傷を拭いた。消毒液が染みて痛そうにしている炭治郎には我慢してもらい、傷ついた部分を全て拭いてから包帯を巻いた。

炭治郎の手当が終わる頃、義勇は鬼を倒し終わっていた。義勇が倒した鬼は首と肉体が離れ灰になりそうにも関わらず、鬼の肉体は俺…いや、炭治郎と禰豆子の元に来ようとしていた。だが、灰に変わる方が早く、俺達の元に着く前に鬼の体は灰に変わり、その場に残ったのは鬼が着ていた衣服だけになっていた。

 

「那田蜘蛛山から鬼の気配は無くなったな…」

 

「そうか…。任務はこれで終わりの様だ…」

 

「そうだな、あとは炭治郎と禰豆子をどうするかだ。もう1人来ている奴にバレたら面倒だ」

 

俺がそんな事を言った瞬間、面倒事が俺を嘲笑いながらやって来た。負傷している炭治郎と禰豆子を抱えようとした時、蟲柱が禰豆子を殺そうと、刀を抜き襲いかかって来た。俺は蟲柱の刀を弾こうと逆撫を抜こうとしたが、義勇が蟲柱の刀を代わりに弾いてくれた。

 

「何故、邪魔をするんですか冨岡さん?今、御影さんが抱えている女の子は鬼ですよ?」

 

「チッ!! 面倒なのが来やがった。義勇、俺はこの二人連れて逃げるから後はよろしく」

 

「待ってください御影さん!刀を収めますので、話を聞いてください!」

 

「この場は俺が持つ…二人を頼む」

 

今更何の話するのか検討はつかないが蟲柱を無視して、義勇にこの場を任せて、炭治郎と禰豆子を抱えて移動した。

 

 

 

 

 

私は罪を犯しました…。

ちゃんと貴方の言葉に耳を貸さず、柱合会議で会う度に傷つける言葉を吐き続けていた自分を殴りたいと思う程後悔をしていました。

 

「あの鬼は殺さないので、そこをどいてもらえませんか冨岡さん?」

 

「先程、透也に話があると言った…。透也に何の用だ?」

 

「ただ、聞いて欲しい話が「また、透也を傷つけるつもりか?」違います!! 私は御影さんと話がしたいだけです!!」

 

「聞いて欲しい話?罵倒の間違いでは無いのか? 他の柱と共に透也に柱を辞めるようにと迫っていたのは誰だ…。 また、透也を傷つけるつもりなのか?」

 

冨岡さんの言ったことに私は反論出来ず、ただただ俯く事しか出来なかった…。冨岡さんの言った通り…私は他の柱達と一緒に柱を辞めるようにと、御影さんに言ったことがありました。当時の私は唯一の肉親である姉を傷つけられ、まともな判断が出来ておらず、噂を鵜呑みにしてしまい、御影さんを傷つけた。

 

「俺にとって、透也は大好きな姉を救ってくれた大恩人。俺はお前とは違い、姉を救ってくれた大恩人に対して感謝が出来る人間だ…。だから、透也を傷つける人間を、透也に近づけさせる訳にはいかない!!」

 

更にかけられた冨岡さんの言葉に私は、鎹鴉からの指示が来るまでその場から動けず固まっていました。

 

 

 

 

俺と禰豆子は、御影さんに抱えてもらいながら那田蜘蛛山の中を移動していた。ヒノカミ神楽で体中に痛みが走っている俺の体を御影さんは労わってくれて、優しく抱えてくれた。

 

「ごめんなさい御影さん…。御影さんも疲れているのに運ばせてしまって」

 

「お前ほど疲れてねぇよ。それより、舌噛むからあまり喋らない方が良いぞ?」

 

御影さんの指示通りに止まるまで話さないようにしようとした時、空から女の子が降ってきた。降ってきた女の子の手には刀が握られ、禰豆子を斬ろうと刀を振り下ろそうとした。御影さんに避けるよう言おうとしたけど、俺が言うよりも早く刀を避けた。

 

「あっぶな!」

 

「・・・・・・」

 

女の子は一度だけ刀を振り下ろしただけで、それ以上は刀を振るう事は無かった…。女の子が攻撃してこないと分かった御影さんは、再び俺と禰豆子を抱えたまま動き出そうと足を動かそうとした時…チャリンという音が聞こえた。

その音が聞こえた瞬間、足を動かそうとしていた御影さんの足が止まり、嬉しい匂いと悲しい匂いが御影さんから感じた。

 

「待ってください御影さん…。私を覚えてますか?」

 

「ああ…覚えてる。大きくなったなカナヲ…それをまだ持ってるとは思わなかった」

 

御影さんは暖かく優しい表情で、女の子の問いに答えていた。

 

 

 

 

 

─自分で決められなかったら、この銅貨で決めたらいい

 

─カナヲはシャボン玉好きか?

 

─これはラムネって言ってな、甘くてシュワシュワで美味いぞ

 

私の記憶にある御影さんの顔は、何時も優しい表情をしていた。私が何かをした時、褒めながら撫でてくれた手はとても暖かった。だけど…ある日を境に御影さんは蝶屋敷に来なくなった。

 

○逆柱は花柱・胡蝶カナエを囮に使い上弦ノ弐から逃げ帰った

 

○逆柱は瀕死状態の花柱・胡蝶カナエを襲おうとした

 

○逆柱は女を見境なく手を出す獣

 

カナエ姉さんが上弦ノ弐との戦いで負傷し、蝶屋敷に帰ってきてからそんな噂が流れていた。その噂を耳にした師範は、御影さんに蝶屋敷への立ち入りを禁じた。蝶屋敷の立ち入りを禁じてから今日まで、御影さんには一切会えなかった…。

だけど、今日会う事が出来た。やっと会う事が出来た御影さんの顔は、あの時と変わらず優しい顔だった。

 

「御影さんの噂を聞きました…」

 

「そうか…」

 

「私は…御影さんがあんな事する筈無いと思ってます…」

 

『カァー!伝令!竈門炭治郎 及ビ 鬼ノ女ノ子 竈門禰豆子を捕縛シ本部へ連レ帰レ!!』

 

鎹鴉からの伝令を聞き、私は日輪刀を収めた。私が日輪刀を収めると、御影さんは抱えている二人をゆっくり降ろした。二人を降ろすと、御影さんは抱えていた女の子に小さくなって木箱の中に入る様にと優しい言葉遣いで指示していた。

 

「何故此処に逆柱様が?」

 

「任務だ、それより炭治郎達を回収に来たんだろ?丁重に運べよ?」

 

「は、はい!!」

 

二人を回収しに隠がやって来た。

御影さんは二人を丁重に運ぶ様に隠に指示を出すと、隠は強くうなづいて二人を御影さんから受け取り、本部へ連れて帰って行った。二人が連れてかれると、御影さんは自分の鎹鴉から何かを言われていた。鎹鴉の話が終わると、御影さんはゆっくりと私の元に来て、私の頭に手を乗せた。

 

「ありがとう…カナヲ」

 

感謝の言葉と同時に、頭を撫でてくれた。私の頭を撫でてくれた御影さんの手は、とても暖かかった。




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柱合会議編
柱合裁判…①


炭治郎と禰豆子を隠に預け、俺は一人静かに那田蜘蛛山を降りていた。那田蜘蛛山を降りる際、カナヲが何故か着いてこようとしていた。蟲柱の方に戻る様に言ったのだが、俺ともう会えなくなるじゃ無いかと思って着いてこようとしていた様だ。自分をこんなにも慕ってくれている事を嬉しく思いながらも、カナヲには蟲柱の元に戻る様に言い、また今度会う約束をして蟲柱の方に戻ってもらった。

 

「おーい、戻ったぞ獪岳!」

 

「お帰りなさい師範!!」

 

久しぶりの我が家に帰ると、獪岳が何時もと変わらずに出迎えてくれた。逆屋敷から美味しそうな匂いがしてきて、何をしているのかと尋ねたら、俺が帰る事を[蓮]から聞いたらしく、帰って来る俺の為に色々と料理を作ってくれていたみたい。

 

「一休みしたい所だが、これから柱合会議に顔を出さなくちゃならなくなった…」

 

「柱合会議終わったら、休めるように布団を引いておきます」

 

「ありがとう獪岳…」

 

柱合会議へ行く支度をする為、一度、屋敷の中に入った。何時もの死神スタイルに戻る前に俺は風呂へ向かい、那田蜘蛛山で付いた汚れを落とす事にした。風呂に向かうと、湯船に湯が張られていた。俺が帰ってきたら風呂に入ると予想していた獪岳が湯を張ってくれたようで、獪岳のお陰で冷たい水で体を洗う事態にならずに済んだ。

風呂が済んでから自室へと向かい、死覇装に着替え羽織を羽織って支度を済ませた。柱合会議へ出席したくないが、炭治郎と禰豆子が耀哉の屋敷に連れていかれている以上、柱合会議に参加せざるを得ない。

 

「行ってくる…」

 

「待ってるんで、早く終わらせてきてください」

 

獪岳に見送られながら、俺は柱合会議が行われる産屋敷邸に向かった。

 

 

 

 

産屋敷邸──。

鬼殺隊の長である産屋敷耀哉が住んでいる屋敷に、御影を除く柱達、そして隠に運ばれる途中で眠ってしまった炭治郎がその場に居た。隠達は柱達の前で眠っている炭治郎を叩き起し、柱の御前だから姿勢を正すようにとキツく言い渡した。

 

「禰豆子は何処ですか!善逸、伊之助…御影さんは何処に居ますか!」

 

自身が傷を負っているのにも関わらず、炭治郎は仲間の安否を心配していた。炭治郎は他者から見れば優しい心の持ち主だと分かるが、数名の柱達からは炭治郎が御影とどのような関係なのかが気になっていた。

 

「落ち着いてくださいね竈門炭治郎君?」

 

仲間の安否が気になって騒がしくしている炭治郎の元に、柱の一人である愛柱・愛崎姫乃が声をかけた。

 

 

 

 

なんだろうこの人は──。

御影さん達の安否を聞きたい俺に話しかけた女性の柱から、とても甘い匂いがしていた。その甘い匂いを嗅いだ瞬間、頭がボーッとしてクラクラする…。

 

「大丈夫か…?」

 

「冨岡さん?」

 

甘い匂いで頭がボーッとして意識が遠のきそうになっていた俺の肩を、冨岡さんが強く叩いてくれたお陰で遠のきかけた意識を元に戻せた。

 

 

 

 

「お久しぶりですね冨岡さん!お元気にしていましたか?」

 

「ああ…」

 

愛柱・愛崎姫乃は義勇に話しかけるが、義勇は一言だけ返事をするとその場を離れ、誰もいない所に行きポツンと一人で立っていた。義勇が離れた事に、炭治郎は愛崎姫乃を警戒して匂いを出来るだけ嗅がないように細心の注意を払っていた。

 

「冨岡さん!そんな所に居ないでこっちで集まりましょうよ!」

 

「結構だ…。御影が来るまで此処に居る」

 

「おい義勇、姫乃が誘ってくれているんだからこっちに来たらどうだ?」

 

「うむ!鱗滝の言う通りだぞ冨岡!」

 

愛崎姫乃の誘いに乗らない義勇に対して、義勇と同じ水柱の鱗滝錆兎、炎柱・煉獄杏寿郎は愛崎姫乃の好意を受け入れる様に迫っていた。

 

「あの…冨岡さんがそこで良いと言っているので、無理に呼ばなくても良いんでは無いでしょうか?」

 

「南無…。甘露寺の言う通り、冨岡がそこで良いと言うのであれば、無理強いをする必要は無い」

 

恋柱・甘露寺蜜璃、岩柱・悲鳴嶼行冥の二人から無理強いする必要は無いと言われ、愛崎姫乃、鱗滝錆兎、煉獄杏寿郎の三名は、それ以上義勇に何も言えなくなり黙った。

微妙な空気になり、状況が飲み込めない炭治郎はオロオロとしていた。

 

「今は冨岡よりも、そこの地味な奴についてだ」

 

「隊律違反を犯したんだ、即刻鬼と共に斬首した方がいい。鬼を連れている奴だ、鬼の仲間かも知れない」

 

微妙な空気の中、音柱・宇髄天元は隊律違反を犯した炭治郎に話題を変えた。宇髄天元が話題を変えると、蛇柱・伊黒小芭内は隊律違反を犯した炭治郎、鬼である禰豆子を即刻斬首にするべきだと言った。

 

「ま、待ってください!! 禰豆子は確かに鬼ですが、人を一度も食べた事はありません!! それに禰豆子は鬼殺隊の為に戦えます!!」

 

炭治郎は禰豆子の斬首を回避すべく、禰豆子が人を食べない事や鬼と戦えると伝えるが、鬼に強い恨みを持つ柱には信じてもらえなかった。

 

「オイオイ、何か面白い事になってるなぁ。鬼を連れた馬鹿隊士ってのはお前かい?」

 

炭治郎が必死に訴えている中、鬼殺隊風柱・不死川実弥が禰豆子が入っている箱を手に持って現れた。不死川の後ろから、女性隠が現れ、禰豆子が入った箱を渡して欲しいと頼むが、不死川は女性隠の話を無視した。

 

「不死川さん、勝手な事をしないでください」

 

炭治郎に目線を合わせながら話を聞いていた胡蝶しのぶが立ち上がり、不死川の勝手な行動に意見するが、不死川は同じ柱である胡蝶しのぶも無視して炭治郎に話しかける。

 

「なあ坊主、鬼が鬼殺隊として人を守って鬼と戦える?そんな事は有り得ねんだよ馬鹿が!!」

 

不死川は腰に差している日輪刀に手を掛け、禰豆子が入っている箱を刺そうとした────だが、日輪刀が箱に到達する寸前、不死川が手に持っていた箱が大玉のスイカに変わっていた。

 

「!?何故箱がスイカに変わった!! 」

 

「プフッ…」

 

不死川は箱が大玉のスイカに変わった事に困惑し、禰豆子の血気術によるものだと疑った。不死川の様子を見て、甘露寺蜜璃は笑ってはいけない場面なのは分かっているのだが吹いてしまった。

 

「箱は何処────御影透也!!」

 

禰豆子の箱を探していた不死川は、産屋敷邸の縁側に腰掛けている人物──御影透也を見つけた。産屋敷邸の縁側で林檎を食べている御影の横には、不死川が先程まで持っていた禰豆子が入っている箱が置かれていた。

 

「てめぇ…その箱には鬼が入っているって分かっているよな?その箱を守るって事はてめぇも冨岡と一緒で隊律違反を犯してるって事だよな?」

 

「俺は御館様から与えられた任務を遂行しているだけだ。竈門炭治郎 及び 竈門禰豆子を監視し、柱合会議まで護衛するという任務だ。 もし、二人を傷つけようとするなら…俺が相手になるぞ?」

 

御影から発せられた威圧感に、誰も異議を唱える事が出来なかった。錆兎、小芭内、杏寿郎、天元、実弥、姫乃の六名は、御影を忌々しく思っていた。そんな事は露知らず、御影は林檎を軽快な咀嚼音と共に美味そうに食べていた。

 

「南無…お前の話は分かった。御館様が来るまで待とう」

 

「話が早くて助かる。それと、久しぶりだな行冥」

 

「ああ、久しいな御影。お互い多忙の身、中々会えないものだな」

 

産屋敷邸の縁側に座ったまま、禰豆子が入っている箱を守っている御影の元に行冥が近づき話しかけた。

 

「なら、今日飯食いに来いよ。獪岳がいっぱい料理作ってくれてるみたいで、お前の好物の炊き込みご飯もあるぞ?」

 

「ご相伴に預からせてもらおう」

 

御影と行冥は互いに鬼殺隊の古株であり、合同任務をそれなりにこなしていて仲は良好である。年齢では行冥の方が上だが、鬼殺隊歴は御影が上の為、合同任務が終わると御影はよく行冥を食事処に連れて行っていた。

 

「お、お久しぶりです御影さん!」

 

「久しぶりだな蜜璃。良かったらお前も行冥と一緒に来るか?」

 

「良いんですか!」

 

「屋敷に俺と獪岳では食えない量の食材があってな、俺も料理するから食ってくか?」

 

「ご、ご迷惑でなければ!」

 

(や、やった!御影さんの御屋敷に行けるわ!)

 

甘露寺蜜璃は、御影の屋敷に行ける事を表情に出さずに喜んでいた。甘露寺蜜璃が喜んでいると、霞柱・時透無一郎と無一郎の補佐をしている時透有一郎が御影の元に訪れた。

 

「「お久しぶりです御影さん!」」

 

「久しぶりだな無一郎、有一郎」

 

「俺と無一郎も御影さんの屋敷に行っても良いですか?」

 

「別にいいぞ?食材は大量にあるし食べに来いよ」

 

御影が甘露寺、悲鳴嶼と会話をしていると、自然に義勇、時透兄弟も話に入り、義勇、時透兄弟、この場にはいないが蔦子も逆屋敷に行く事になった。その光景に愛崎姫乃は面白くなさそうに、6人を見ていた。逆ハーレムを狙っている愛崎姫乃は、義勇、行冥、時透兄弟を引き入れたいが御影側に行ってしまっている為、話しかけられずにいた。

そして、胡蝶しのぶも御影に話しかけたいが見向きもされない為、複雑な気持ちを持ちながらその場に立っていた。

 

「「御館様の御成です」」

 

突然聞こえてきた声に、柱達は1箇所に集まり片膝をついて頭を下げた。炭治郎は何が起きたか分からず、困惑していると御影から真似るようにと言われ、柱達と同じ様に炭治郎も頭を下げた。




大正コソコソ話…①

甘露寺蜜璃が鬼殺隊に入る前に透也と会っているぞ!

大正コソコソ話…②

那田蜘蛛山から蝶屋敷に戻ったカナヲはアオイに透也と会ったことを自慢し、ちょっとした揉め事が起きてしまった!


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柱合裁判…②

「「御館様の御成です…」」

 

ひなき、にちか、二人が耀哉の手を引いて現れると俺を含めた柱達は横一列に並び、片膝をついて頭を下げた。鬼殺隊に入ったばかりの炭治郎は、どうしていいのかが分からない様でオロオロしていた。オロオロしている炭治郎に俺と同じ様に頭を下げれば良いと教え、炭治郎は俺を真似て頭を下げた。

 

「よく来たね。私の可愛い剣士たち」

 

相変わらず、落ち着いた良い声をしている。さっきまで俺や禰豆子に憎悪を持っていた連中は、耀哉の声を聞いた瞬間に憎悪が収まった。

 

「お早う皆。今日はとてもいい天気だね。空は青いのかな?顔ぶれが変わらずに半年に一度の柱合会議を迎えられたこと。嬉しく思うよ」

 

「お館様におかれましても、御創建で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」

 

「フフッ…。ありがとう御影」

 

あの野郎…俺が珍しく挨拶してやったのに、笑いやがった。幸い、他の奴らには耀哉の笑い声には気づいてないようで、ずっと頭を下げていた。ただ、蜜璃から耀哉への挨拶をしたかったと視線で訴えてきた。

 

「恐れながら御館様、柱合会議の前に竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士についての御説明をしていただきたく存じますが、よろしいでしょうか?」

 

風柱は耀哉に、炭治郎についての説明を求めた。耀哉は炭治郎と禰豆子の事を知ってから、二人を容認していたと言った。耀哉が二人を容認していた事を知ると、柱達に動揺が走っていた。耀哉が柱達に二人を認めて欲しいと言うが、耀哉の提案に賛成側と反対側に別れた。風柱に至っては、俺、義勇、炭治郎の処罰を求めた。賛否両論の中、耀哉は鱗滝のじいさんからの手紙を1部抜粋して、ひなきに読ませた。万が一、禰豆子が人を食った場合、鱗滝のじいさん、義勇、真菰、片方の水柱、炭治郎が切腹するという一文で締め括られた。

 

「切腹するから何だと言うのか、死にたければ勝手に死に腐れよ!何の保証にもならない!!」

 

風柱の一言に炎柱が同調した。

耀哉は禰豆子否定側に、禰豆子の為に五人の命がかけられ、禰豆子否定側にかけられた命に釣り合う何かを差し出せるのかを尋ねた。耀哉の一言に、禰豆子否定側は何も言えなくなった。

 

「それに炭治郎は──鬼舞辻と遭遇している」

 

炭治郎が鬼舞辻無惨と遭遇したと分かった瞬間、音柱、風柱は炭治郎に鬼舞辻無惨の能力、姿、根城を聞き出そうとしていた。だが、鬼舞辻無惨と戦っていない炭治郎に姿以外の事が分かるはずも無く、炭治郎は俺に助け舟を出して欲しそうな表情で見てきた。仕方なく、耀哉に柱達を鎮めるように目で訴え、耀哉に鎮めてもらった。

 

「やっと見せた鬼舞辻の尻尾を掴み損ねたくない…。炭治郎達を認めてくれるね?」

 

「人間なら生かしますが、鬼は出来ません。鬼を滅してこその鬼殺隊、鬼は殺すべきだ」

 

「御影…私が君に命じた任務の報告をしてくれるかい?」

 

風柱は頑なに認め無かった…面倒臭いと溜め息をついていると耀哉が俺に任務の報告をする様にと言うと、全員に視線が俺に向いた。愛崎姫乃は憎悪丸出しで俺を睨み、愛崎姫乃教の信者である奴らは俺が今から言う事を信じないって顔をしていた。

 

「御館様から命じられた竈門炭治郎 及び 竈門禰豆子の監視任務の報告をさせていただきます…。竈門禰豆子は紛れもない鬼ですが、人を襲う素振りは全く無く、年相応の少女と言っても過言では無い行動をしていました。そして、那田蜘蛛山では竈門炭治郎と共に傷を負いながら十二鬼月である下弦の伍と戦いました。下弦の伍との戦闘により血を流していた禰豆子は、飢餓状態になっても可笑しくない状況にも関わらず、近くに居た俺、義勇、血を流していた炭治郎を襲う事は無かったです」

 

耀哉から命じられた任務の報告を終えると、一瞬だけ場が静まり返った。場が静まり返ったのは一瞬だけで、俺の報告に信憑性が無いと風柱を筆頭に愛崎姫乃教の信者達が批難してきた。非難する声を無視して、俺はその場を立ち上がり、耀哉に近づいた。

 

「にちか、大きめの桶を持ってきてくれるか?」

 

「え、あ、はい、分かりました」

 

俺は屋敷の中に入りながら、近くに居るにちかに大きめの桶を持ってきてくれる様に頼んで陽の光が入らない奥に進んだ。耀哉の屋敷に入った事に煩く騒ぐ風柱達を無視して、禰豆子が入った箱を優しく畳の上に置いた。

 

「桶で何をするつもりだい?」

 

「禰豆子が人を襲わない証明」

 

「持ってきました御影さん!」

 

「ありがとう、にちか。それじゃ、始めるからにちかは耀哉の隣に戻りな」

 

にちかを耀哉の隣に戻らせてから、禰豆子に出てきてもらう為に箱を数回叩いた。箱を数回叩いてから直ぐに、禰豆子は少し眠そうな目をしながら箱から出てきてくれた。

 

「ムー?」

 

「眠いところ悪いな、今から禰豆子が人を襲わない証明をしなくちゃいけないから協力してくれるか?」

 

「ムー!」

 

禰豆子がこくりと頷き、俺は逆撫を抜いた。

 

「ウッ…」

 

「ムー!?」

 

俺は逆撫で自分の腕を斬り、畳に血が付かないように、にちかが持ってきてくれた桶の中に血を垂らした。俺が腕を斬ると思ってなかった炭治郎、禰豆子、耀哉達、柱達が驚愕した表情で見ていた。俺の血は稀血の中でも極上、先の戦いで血を流していた禰豆子にはご馳走の筈だが──禰豆子は泣いていた。

 

「鬼が…泣くだと?」

 

禰豆子が泣いた事に誰もが驚きを隠せず、目を見開いて禰豆子を見ていた。禰豆子が泣いて、俺は直ぐに腕を止血して持っていた包帯で斬った腕に巻いた。

 

「ムー!ムー!」

 

包帯を巻き終えると、禰豆子は俺の胸をポカポカと殴った。まるで[自分を大切にして]と訴えているみたいに、ポカポカと殴ってきた。俺は禰豆子にごめんと一言謝りながら、目に溜まっている涙を拭き取り、箱の中に戻ってもらった。

禰豆子が泣くという驚きはあったものの、禰豆子が人を襲わないという事が証明され、禰豆子の斬首は無くなり、柱合裁判は終わった。炭治郎と禰豆子の二人は治療の為に蝶屋敷へと運ばれ、産屋敷邸から居なくなった。

 

「これから柱合会議を始めようと思うんだけど、腕は大丈夫かい御影?」

 

「ちょっと斬り過ぎて縫わないといけないみたいだ。まあ、蔦子さんに後で縫ってもらうから大丈夫だ。柱合会議くらい参加出来るから出るぞ?」

 

「無理はしないようにね?」

 

「ハイハイ」

 

ひなき、にちかの二人からも心配されながら柱合会議を行う部屋に移動した。移動している間、蟲柱はずっと俺の腕を見てくるし、愛崎姫乃は炭治郎を逆ハーレム要因に加えたいのか、余計な事をしやがってと言う様な視線を向けてきていた。




大正コソコソ話!

透也は仲の良い柱には名前呼び、仲の悪い奴・どうでもいい奴は○柱 又はフルネームで呼ぶ!

大正コソコソ話!!

禰豆子が泣いた時、透也は誰よりもパニックになっていた!






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柱合会議

作品紹介

・幽霊に呼吸を習いました
(鬼滅の刃二次創作 × 継国縁壱系オリ主)

・五条先生になりました
(ハイスクールD×D × 呪術廻戦[五条悟系オリ主])

・無個性だからって諦められるかよ!
(僕のヒーローアカデミア × ONEPIECE[覇気+剃+月歩]オリ主)



柱合会議を行う部屋に入ると中はロウソク二本だけの明かりしか無く、とても薄暗かった。柱達は中庭と同じ様に横一列に並んで居たが、俺は柱達から距離をとって胡座をかいていた。

 

「さて、柱合会議を始めようか。御影、蓮からの報告によれば──御影は鬼舞辻、そして上弦ノ壱と戦ったんだよね?」

 

【!?】

 

「まあな、お陰で強さと能力を知る事が出来た」

 

俺が鬼舞辻無惨と上弦ノ壱と戦ったと柱達が知ると、全員の視線が俺に集まった。俺に集まった視線は様々だったが、愛崎姫乃は下唇を強く噛みながら睨んできていた。愛崎姫乃が見せた表情に、俺は内心薄ら笑いをしながら優越感に浸った。

 

「オイ、鬼舞辻と上弦ノ壱の能力を知ってるなら話せ!」

 

「鬼舞辻はどんな能力を持っていた!」

 

「うむ!上弦ノ壱の能力についても教えてくれ!柱である御影は情報を共有する義務がある!」

 

自己主張が激しい風柱、音柱、炎柱に俺は溜め息が零れた…。此処で言わなかったら付き纏われそうと思った俺は、面倒臭いが鬼舞辻と戦った時の事を話した。現柱で鬼舞辻と戦えるとしたら、俺、行冥、義勇、無一郎、有一郎だけだと思っている。

 

「ハッキリ言うが、俺、行冥、義勇、無一郎、有一郎、以外の柱では鬼舞辻と上弦ノ壱の戦いにおいて戦力外だ。それと、上弦ノ壱だが…無一郎、有一郎の先祖の可能性が高い」

 

「「え…」」

 

「何故、上弦ノ壱が無一郎、有一郎の先祖だと、そう思ったんだい?」

 

「上弦ノ壱の戦闘方法が──有一郎と同じ月の呼吸を使っていたからだ」

 

「俺と同じ月の呼吸…」

 

上弦ノ壱が無一郎、有一郎の先祖である可能性が高い。無一郎からは聞いた事が無いが、有一郎から夢の中で月の呼吸って言うのを見て、月の呼吸を使っていると一緒に鍛錬していた時に聞いた事があった。上弦ノ壱と有一郎が使っている月の呼吸は、呼吸方法、型が全て一致していた。

 

「まあ、何にしても上弦ノ壱との戦いには有一郎の力が必要不可欠になる「ちょっと待てよ」ハア…」

 

「何故、俺達を抜きにして勝手に話を進めている?」

 

「俺が戦力外とはどういう事なのか説明を求める!!」

 

「そのままの意味だ…。風柱、片方の水柱、蛇柱、愛柱、炎柱、音柱、蟲柱、お前らじゃ力不足だ。雑魚鬼退治には使えるが、上弦相手は無理だな」

 

愛崎姫乃教の信者達に面と向かって戦力外通告を伝えると、直ぐにキレて飛び掛ってきそうだったが、耀哉がそうなる前に止めてくれたお陰で何も起こらずに済んだ。

 

「あ、あの〜、私はお力になれないんでしょうか?」

 

「蜜璃は微妙な所だな。稽古をつければ上弦相手に通じる」

 

「分かりました!」

 

「他の柱達も上弦ノ鬼と戦えるように強くなって欲しい。頼んだよ、私の可愛い子供達…」

 

耀哉の一言で、柱合会議は締め括られ終わった。

柱合会議が終わり、俺は直ぐに立ち上がり無言で部屋を出た。腕に巻いていた包帯が真っ赤に染まり、急いで屋敷に帰ろうとしたら片方の水柱がわざわざ俺の肩を掴んで呼び止めてきやがった。

 

「なんか用か?」

 

「炭治郎と禰豆子を守ってくれた事に感謝する…。だが、お前が犯した罪を許した訳では無いから勘違いをするなよ」

 

「くだらない事で話しかけるな。柱合会議だから俺はお前らと話したが、柱合会議が終わった今、お前らを視界に入れず、さっさと屋敷に戻りてぇんだよ」

 

俺の肩を掴んでいる手を退かし、今度こそ屋敷に戻ろうとしたら次は蟲柱が俺の前に立ちはだかった。何なんだよコイツら、俺は一刻も早く屋敷に戻りたいのに次から次へと邪魔しやがって…こっちは早く屋敷に戻って治療したいんだよ!

 

「邪魔だ退け」

 

「斬った腕の治療をさせてください…」

 

「断る…。前に自分から治療拒否しただろ?俺には主治医が居るから結構だ。それに、治療と称して何してくるか分からん相手に頼むかよ」

 

「そんな事は…」

 

蟲柱が何かを言おうとしているが、それを無視して横を通ろうとすると次は愛崎姫乃が立ちはだかった。

本当に何なんだよ?四天王制なのか?愛崎姫乃の話が終わったらまた別の奴が来るのか?俺はうんざりしながら、愛崎姫乃が俺の前に立ちはだかった理由を尋ねた。

 

「どうして感謝と善意を素直に受け取らないんですか!錆兎君は弟弟子である炭治郎君と禰豆子ちゃんを庇ってくれた事に感謝しているんですよ?」

 

「アーハイハイ。カンシャノキモチ、ウケトリマシタ」

 

「何ですかその適当な感じ…。それに、しのぶちゃんが治療すると買って出たんですから、さっきの発言は酷いと思います!しのぶちゃんに謝ってください!」

 

「アーハイハイ。ドウモ、スミマセンデシタ」

 

愛崎姫乃の相手をするのが疲れた俺は、全てカタコトで返事をしていた。愛崎姫乃も蟲柱同様に無視して、今晩屋敷に来るメンバーに一声かけると行冥から頼み事があると言われ聞く事になった。

 

「南無…。御影、獪岳の時の借りを返してもらおうと思うが良いか?」

 

「別に構わないぞ?借りは何時返せば良い?」

 

「夕餉前には済ませたい。一時間程したら御影の屋敷に向かう」

 

「分かった。無一郎、有一郎、蜜璃は悪いんだが夕方に来てくれ」

 

義勇には蔦子さんに治療を頼みたいから、直ぐに来てもらうように頼んで産屋敷邸を出た。後ろでギャーギャーと何かを言っているが、俺は一刻も早く斬った腕を縫ってもらう為に逆屋敷に戻った。




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それぞれの一時
継子


俺の師範はとてつもないお人好しで、優しい方だ…。

『基本の型である、壱ノ型が出来ない落ちこぼれ』と周りの連中が俺の事をそういう中で、師範は俺を継子にしてくれた。継子にしてくれただけでなく、俺が帰る場所、満たされる事が無いだろうと思っていた心の穴を埋めてくれた。

 

『桑島のじいさんの所で学んだのか?なら、俺はお前の兄弟子だな!』

 

『霹靂一閃が出来ない?なら、他の型で戦えば良いだろ?』

 

『良くやった獪岳!今日は祝いとして美味いもんを食いに行こう!』

 

基本の型である壱ノ型が出来ないと相談すれば使える型を極めろと言われ、任務を終えれば何時だって暖かく出迎えてくれた。俺は師範のそういう所に触れ、カスに少しは優しくしてやろうとさえ思った。

 

師範がお人好しと思ったのは過去の罪を話した時だった…。

岩柱である行冥さんが所有していた寺で育ててもらった時の話を師範に話した。俺のせいで鬼が寺を襲撃して、行冥さんに多大な迷惑をかけ、寺に居た俺と同じ境遇の子供達を殺した事を話した。師範に継子を下ろされると覚悟して話したが、師範は何も言わず、目を瞑ってうなづいた後、俺を連れて行冥さんの元に連れてかれた。

行冥さんの元に連れてかれ、行冥さんに俺の事を紹介した。行冥さんはあの時の事を怒っていた。俺はあの時の事を謝ろうとしたが、聞き入れてもらえず行冥さんが俺に会いたくないと言って門を締めようとした時────師範が地面にも関わらず、土下座をした。

 

『頼む行冥!!少しでも良い、獪岳の話を聞いてやってくれないか!俺も獪岳から昔の事を聞いた。獪岳のした事は決して許される事では無いだろう…だけど、獪岳はあの時の行いを悔いている。少しでも良い、獪岳の話を聞いてやってくれ』

 

突然の事で頭が追いつかなかった…。

だが、次第に思考が現状に追いつき、俺は自分のしでかした事なのに師範に土下座をさせてしまっている事に気づき、俺も師範同様に行冥さんへ土下座をした。

 

『頭を上げてくれ御影。お前に土下座をされては聞かない訳にはいかない。中に入れ…』

 

行冥さんに中へ入る様にと促されるが、師範は俺一人で行冥さんと話すように言って屋敷に戻ってしまった。その場に残された俺は行冥さんの屋敷に入り、許されない行いをした事について、頭を下げて謝罪をした。

 

『獪岳…今の段階でお前を信じる事は出来ない』

 

そう言われるのは覚悟していた。

 

『だから、証明してくれ。お前が本当に悔いているのであれば、鬼に怯える者達を助けろ獪岳』

 

『はい!』

 

行冥さんとの話が終わり、俺は行冥さんの屋敷を出て、師範が待っている屋敷に戻った。屋敷に戻ると、師範は俺の顔を見て、満足そうな顔をしながら出迎えてくれた。この一件で俺は師範に一生着いていこうと、心に誓った…。

 

○逆柱は花柱・胡蝶カナエを囮に使い上弦ノ弐から逃げ帰った

 

○逆柱は瀕死状態の花柱・胡蝶カナエを襲おうとした

 

○逆柱は女に見境なく手を出す獣

 

愛柱って言う柱が入ってきてから、師範の根も葉もない噂が流れていた。継子をしている俺はこんな噂を信じなかったが、他の連中はこの噂を信じきって、師範に誹謗中傷を浴びせた。この噂が流れた時、師範は悲しげな顔をしていた。

 

『獪岳は俺の継子を辞めた方がいい…お前にまで被害がいくかもしれない』

 

「そんな事知ったこっちゃねぇ!!俺は継子を辞める気なんて無いですから!!」

 

師範は俺に色々なものをくれた、だから次は俺が師範に恩を返す番だ。師範を傷つけようとする連中を近づけさせないようにしたり、何度か屋敷を尋ねてきた蟲柱と元花柱を追い返したりもした。

 

俺は何時も優しい師範であって欲しい──だから…

 

「何で柱合会議に出てそんな傷を負うのか、聞かせてもらっても良いですか師範?」

 

柱合会議から腕を血塗れにして帰ってきた理由を教えてくれませんか?

 

 

 

 

 

禰豆子が人を襲わないと証明する為に腕を斬って、逆屋敷に帰ってきた御影は獪岳と後から来た蔦子に治療を受けながら説教を受けていた。腕を斬る経緯を二人に話した御影だが、斬りすぎだと、更に説教を受けた。

 

「全く、何を考えてるんですか師範…」

 

「傷を縫う時、骨が見えてたわよ?ちゃんと力加減わかってるの透也君?もう少し強かったら切断よ?」

 

二人に言われた事に何も言い返せない御影は、ただただ二人に謝罪をしていた。そんな光景を義勇は無言、義勇達に着いてきた真菰はクスクスと笑いながら見ていた。

 

「まあまあ二人共、御影さんも反省している事だし、許してあげようよ?」

 

「真菰…」

 

真菰の助け舟のお陰で、御影への説教は終わった。説教が終わり、御影は鬼殺隊に入ってから色んな繋がりが出来た為、獪岳と二人では食べきれない量の食材が運ばれるようになっていた。今晩、逆屋敷にて食事会が行われる為、御影は獪岳と共に有り余る食材を使って更に料理を作ろうとした時、逆屋敷の門がコンコンと叩かれた。

屋敷の主である透也が門を開けると、行冥が立っていた。

 

「南無…今、いいだろうか?」

 

「構わな…い…。何でソイツらも居るんだ行冥?」

 

御影の言うソイツらとは、行冥の後ろに居る胡蝶姉妹を指していた。




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真実

行冥が蟲柱、元花柱を連れて逆屋敷にやって来た…。

何のつもりで二人を連れてきたのかを尋ねたら、行冥は二人の話を聞いてやって欲しいと言った。俺としては、この二人とは二度と関わりを持つつもりは無く、行冥の頼みを断った。

 

「頼む御影…。どうか…この二人の話を聞いて欲しい…」

 

「!? 行冥…」

 

行冥の頼みを断り、屋敷の中に戻ろうとしたら、行冥がその場で両膝をついて土下座を始めた。蟲柱、元花柱の二人は行冥が土下座をした事に驚き、俺は獪岳の話を聞いてもらう時に土下座をした時の事を思い出していた。

 

「頼む御影…。この二人の話を聞いてやって欲しい…」

 

「師範!何をやって────え…」

 

俺が中々帰ってこないと心配をしてやって来た獪岳は、行冥が土下座をしている状況を目の当たりにして固まっていた。土下座までして頼み込む行冥の頼みを無碍に出来る訳もなく、行冥に土下座を辞めてもらい、話を聞く事にした。

 

「此処で話す内容じゃないだろ…。さっさと屋敷の中に入れ、獪岳は三人分の茶菓子と茶を準備しておいてくれ」

 

「はい…」

 

とりあえず三人には屋敷の中に入ってもらい、俺を含めて四人だけで話せる様に客間に案内した。居間には蔦子さん、義勇、真菰がいる為、客間で話し合いを行う事にした。客間に向かう途中、廊下で義勇が俺を心配そうな顔をして見ていた。話し合いをするだけだから心配するなと告げると、義勇は居間に戻って行った。

 

「お茶と茶菓子をお持ちしました…」

 

「悪いな獪岳。あと、居間で待っててくれるか?」

 

「分かりました…」

 

獪岳には悪いが居間に行ってもらい、客間は四人だけになった。獪岳が淹れてくれたお茶で喉を潤しながら、話を聞いて欲しいという蟲柱、元花柱に視線を向けた。俺の視線に気づいた二人は、覚悟を決めた顔をして口を開いた。

 

「今まで御影さんに言ってきた暴言の数々、大変申し訳ございませんでした…」

 

「私も…御影さんの噂を耳にした時、直ぐに否定出来ず、すみませんでした」

 

二人の第一声は謝罪の言葉だった…。

第一声に謝罪の言葉がくるだろうと予想していたが、何故二人は行冥に頼んでまで謝罪をしに来るのかが分からなかった。

 

「蟲柱は俺に柱を…鬼殺隊を辞めて欲しかったんじゃ無いのか?それなのに何故、行冥に頼んでまで謝罪に来た?」

 

蟲柱は元花柱が上弦ノ弐によって瀕死状態で運ばれてきた時、大好きな姉が瀕死状態でパニックを起こしている時に愛崎姫乃から俺が元花柱を囮に使ったと言う嘘を聞いて信じたらしい。その事と謝罪がどう繋がっているのかと尋ねた。

 

「御影さん、上弦ノ弐との戦いで私が気を失った後のことを教えてくれませんか?今更かも知れませんが、私は御影さんがそんな事するとは思えません…」

 

「お願いします…」

 

「信じるか信じないかはお前らで判断しろ」

 

俺は仕方なく、元花柱が気を失った後のことを話した。

元花柱が気を失った後、元花柱を喰おうとした上弦ノ弐と対峙し、そのまま戦闘になった。元花柱を庇いながら、上弦ノ弐との戦いは滅茶苦茶キツかった。元花柱を庇いながら戦い続けていたら、物陰にずっと隠れていた愛崎姫乃が飛び出してきて、無言で気を失った元花柱を抱えて、この場を去って行った。

 

「そして、俺が元花柱を囮に使った、元花柱を性的に襲った等の噂が流れたという訳だ」

 

あの時の事を話終えると、二人は言葉を発さずに俯いていた。

 

 

 

 

「南無…。これで分かっただろ?御影は柱を14年務めている男だ…仲間を囮に使う様な男では無い。自分の事を顧みず、常に仲間が明日の朝を迎えられる様に動く男だ…」

 

行冥の一言に、二人は御影と任務を共にした時の事を思い出していた。鬼に怯え固まっていた隊士を庇いながら戦っていた事や、癸だけで編成された小隊が鬼に囲まれたと鎹鴉から報告を受ければ直ぐに駆けつけていた事を思い出していた。

 

『鬼と仲良くなりたい? 別にいいんじゃないか?周りがどう言おうと、カナエが決めた事に口を出す事は出来ないだろ?』

 

カナエは自分の夢を肯定してくれた御影の言葉を思い出し。

 

『鬼の首を斬るだけが鬼殺って訳じゃない。鬼を日光に当てて灰にする戦術もある。しのぶは薬について詳しいだろ?だったら鬼を殺せる薬…又は毒薬を開発してみたらどうだ?そうすれば、しのぶの様に首を斬れなくて悩んでいる奴らの為になるだろ?』

 

しのぶは育手に鬼の首を斬れる筋力が無い事で見捨てられた自分に、今の戦い方に導いてくれた時の事を思い出していた。二人は御影から与えられていた優しさを忘れていた事に、酷く後悔をしていた。特にしのぶは御影への暴言を吐き、御影の心に傷を与え続けていた自分を強く恨んでいた。

 

「許しを乞うなんて烏滸がましい事は思いません…自分の罪から逃げようと思いません…。今の自分が蟲柱で居られるのは、御影さんが居てくれたお陰です…。多大なる恩を仇で返す様な事をしでかし、大変申し訳ございません」

 

しのぶは深々と頭を下げて、御影に謝罪をした。カナエもしのぶと同じ様に、深々と頭を下げて御影に謝罪をした。嘘偽り無い二人の謝罪に御影は溜め息を吐くと、土下座をしている二人に頭を上げるように言った。

 

「行冥の顔を立てるが…直ぐに前の様には関わる事は無いからな」

 

御影は嘘偽り無い謝罪をする二人に、遠回しな言い回しで許すと言った。許されない事をしてしまったと自覚している二人は、行冥の顔を立てるとはいえ、御影から許されるとは思わなかった。しのぶとカナエは再度御影の器の大きさを目の当たりにし、頭を深々と下げながら、許してくれた事に感謝をした。

 

「話が終わったら、さっさと蝶屋敷に戻れ…。怪我や病気している隊士を治療に行きな」

 

「蝶屋敷にまた来てください…カナヲやアオイ、なほ、きよ、すみ達が会いたがってます」

 

「私としのぶも御影さんが蝶屋敷に来る事を待ってますから!」

 

「機会があればな…。それと、愛崎姫乃との付き合いは変えるなよ?色々と面倒になるからな…」

 

御影は二人に、愛崎姫乃との付き合いを変えないようにと言い、那田蜘蛛山での任務で発生した怪我人、他の任務で怪我を負った隊士の治療をする様にと言って、しのぶとカナエに蝶屋敷へ帰るようにと言って客間を出て行った。

御影は客間を出て行ってから、しのぶとカナエは患者の治療をする為に客間を出ようとしたら、包みを持った御影が戻って来た。戻って来た御影は、しのぶとカナエに料理が入ったお重を包んだ風呂敷を渡して、獪岳に二人を外まで送るように言ってから行冥と共に居間に向かった。

 

「師範は許したようだが、俺はアンタらを信じた訳じゃない。もう一度、師範を傷つけたら俺は絶対に許さねぇ…」

 

「同じ過ちを二度と犯しません。継子である貴方にも信用を得られるように努力します」

 

「私もしのぶと同じで、同じ過ちはしないわ。御影さんを裏切る様な真似は決してしないわ」

 

「それが口だけじゃなきゃ良いな」

 

獪岳はしのぶとカナエを屋敷の外まで送ると、獪岳は門を閉めて御影の元へと戻った。逆屋敷を後にするしのぶとカナエは、これから愛崎姫乃とどのように接すれば良いのかと考えていた。




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蝶屋敷

後二話投稿しましたら、無限列車に入ります!


蝶屋敷で治療を受けてから数日が経っていた。那田蜘蛛山で負った傷はすっかり治り、しのぶさんから機能回復訓練?というものを明日から受けてもらうと言われた。俺と伊之助は明日から機能回復訓練を受けるけど、善逸は那田蜘蛛山で鬼の毒を受けてしまい、俺達より治りが少しだけ遅く、善逸が機能回復訓練を受けるのは少し後になるみたいだ。

禰豆子は俺や伊之助より早く傷が治っていたが、ここ数日間の禰豆子は心ここに在らずって感じで元気が無かった。

長男として、禰豆子の兄としては、妹の悩みを解決してあげたいと思っているんだけど、年頃の女の子の悩みが分からず、どうすればいいのか分からずに居た。

 

「嫌だー!その薬苦いから飲みたくないよ〜」

 

「駄々をこねてないで飲んでください!」

 

善逸の薬を飲む時間が来たみたいで、隣に居る善逸は泣きながらアオイさんが持ってきてくれた薬を嫌がって飲もうとしなかった。今日もアオイさんを困らせていたから、薬を飲むようにと言おうとしたら、出入り口の方から桃が飛んできて、騒いでいた善逸の口を塞いだ。

 

「ピーピーうるせぇよカス」

 

「もご!?」

 

桃が飛んできた出入り口の方を見ると、見知らぬ男の人が立っていた。いきなり桃を投げてきた人は誰なんだろうかと考えていたら、善逸から驚きと嬉しそうな匂いがした。善逸に知り合いなのかと尋ねると、桃を口にくわえたまま頷いた。

 

「あの!俺は竈門炭治郎と言います!貴方の名前を教えてくれませんか?」

 

「桑島獪岳…そこに居るカスの兄弟子だ」

 

「久しぶりに会ったのにカスカス言うなよ獪岳!泣くよ?俺、めっちゃ泣くよ?いいの?獪岳の名前を言いながら泣くよ?」

 

「どんな脅し方だよカス…。それより、周りに迷惑と生き恥を晒すんじゃねぇよ」

 

「生き恥ってなんだよ!」

 

この人が善逸の兄弟子か…善逸の話で聞いていたよりも優しそうな人だった。獪岳さんが此処に来た理由を尋ねると、獪岳さんは御影さんから俺達の見舞いに行くようにと言われて来たみたい。

 

「お前からは強い気配をビンビン感じるぜ!!俺と勝──」

 

獪岳さんに勝負を挑もうとしていた伊之助は、何時の間にか背後に回っていた獪岳さんによって気絶させられベッドに寝かされていた。一瞬の出来事に、俺と善逸は目を見開いて獪岳さんを見ていた。

 

「ったく…。うるせぇのはカス一人で十分だ」

 

「あの!」

 

獪岳さんが伊之助を気絶させ終わると、アオイさんが意を決して恐る恐る獪岳さんに話しかけた。

 

「御影さんは御元気でしょうか?体調をくずされたり、大怪我を負ったりはしてませんか?」

 

「何故、師範の事を聞いてくるんだ?」

 

「いえ…偶に町中で会ったりするのですが、ここ最近は御影さんの姿を見ていないので心配になって」

 

アオイさんは獪岳さんに御影さんが元気なのか、どうしているのかを聞いていた。御影さんの事を聞いている時のアオイさんから、不安、心配、寂しいといった匂いがしていた。表情からでも、御影さんを心配しているアオイさんを見た獪岳さんは、御影さんが元気に過ごしている事を伝えた。

 

「そうですか…柱で任務が大変だと思いますが、体調をくずされませんようお元気でお過ごしくださいと宜しくお伝えください」

 

「ああ、分かった。この包は師範からこの屋敷で働いている人に渡せと言われた物だ。中には師範が作ったものだから有り難く食え」

 

「有り難く頂きます」

 

獪岳さんはアオイさんに包みを渡すと、アオイさんは包みを持って部屋を出て行き、獪岳さんは俺の方に視線を向けた。どうしたのかと尋ねようとしたら、俺が口を開くよりも早く、獪岳さんが口を開いた。

 

「竈門炭治郎、お前の事は師範から聞いている。お前の境遇には同情する…お前達兄妹の為に師範も命を賭けている」

 

「御影さん…」

 

「師範が命を賭けている以上、俺もお前達の為に命を賭ける。こう言っては重荷になるが、自分の役目から逃げるなよ?妹を救いたいなら強くなれ」

 

俺と禰豆子の為に多くの命が賭けられていることを、俺は改めて実感した。俺は、俺と禰豆子の為に命を賭けてくれている人達に恩を返す為にもっと強くなろうと決心した。

 

「おいカス」

 

「な、何だよ!まだ何かあるのか!」

 

「さっさと治して復帰しろ…。鰻屋に連れて行ってやる…」

 

獪岳さんは善逸に一言かけると、善逸の返事を待たずにこの部屋から出て行ってしまった。優しい善逸の兄弟子だと思って、善逸に話しかけようとしたら口を開けておかしな顔をしていた。

 

「どうした善逸?そんな変な顔をして?」

 

「い、今の聞いた!? 獪岳が!獪岳が鰻屋に連れて行ってくれるって! 何時もカスカス言ってきた獪岳が鰻屋に連れて行ってくれるって!」

 

「分かったから落ち着け善逸!他の患者に迷惑だろ!」

 

この後、目覚めた伊之助が獪岳さんを探して部屋の中を暴れ回ったせいで、俺達三人はしのぶさんとアオイさんの二人に説教されるはめになった。




読んでいただきありがとうございます!!


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機能回復訓練

作品紹介

・五条先生になりました
(ハイスクールD×D × 呪術廻戦[五条悟系オリ主])

・無個性だからって諦められるかよ!!
(僕のヒーローアカデミア × ワンピース[覇気・月歩・剃])

・幽霊に呼吸を習いました
(鬼滅の刃二次創作×継国縁壱系オリ主)


機能回復訓練を受けてから、俺と伊之助の心は折れた…。機能回復訓練ではやる事が三つあって、固まっている筋肉を解す柔軟訓練、薬湯の入った湯飲みを相手にかけ合う反射訓練、アオイさんとカナヲを鬼ごっこの様に追いかける全身訓練だ。

柔軟訓練は、なほちゃん、きよちゃん、すみちゃんが協力してくれて行っているのだが、三人に全身をあらゆる方向に伸ばされ、俺と伊之助は声にならない悲鳴を上げた。

反射訓練ではカナヲに1回も薬湯をかける事が出来ず、俺はカナヲに一方的に薬湯をかけ続けられた。機能回復訓練でヘトヘトになり、自分達の病室へ帰り、無言のままベッドに横になると善逸が俺達二人に何があったのかと不安そうな声で聞いてきた。

 

翌日から善逸も機能回復訓練に参加したんだけど、アオイさんから訓練内容の説明を聞き終わると、何故か善逸に説教を受けた。説教の内容は訓練という建前で女の子に触ったり、触られたり出来るのに、訓練から生気無く帰ってくる理由が分からないと説教をくらった。

善逸の訳の分からない説教が終わってから、三人で機能回復訓練に挑んだ。善逸は俺と伊之助が苦しんだ柔軟を少し気色の悪い笑顔で乗り越えたり、アオイさん相手の反射訓練や全身訓練を軽々と乗り越えた。

 

だが…アオイさんからカナヲに変わった反射訓練、全身訓練では一度も勝つ事が出来なかった。毎日毎日、俺達三人は負け続けて、アオイさんからカナヲに変わってから五日が経ち、伊之助と善逸は機能回復訓練に参加しなくなってしまった…。

 

「あ?機能回復訓練を受けてんの竈門炭治郎だけか?」

 

「獪岳さん!」

 

善逸と伊之助は機能回復訓練に来なくなってしまったが、俺は諦めずに機能回復訓練を受けていた。カナヲにどうやったら勝てるのか、薬湯でずぶ濡れになりながら考えていると、大きな風呂敷を持った獪岳さんが現れた。

来てくれた獪岳さんに近づこうとしたら、薬湯臭いから臭いを落としてこいと言われてしまった。アオイさんから一度休憩をとった方がいいと提案され、少し休憩を取る事にして薬湯の臭いを落としに風呂場に向かった。

 

「やっと来たか」

 

「お待たせしてすみません!」

 

風呂場で薬湯の臭いを落として戻ったら、獪岳さんが縁側でお茶を飲みながら俺を待っていてくれた。獪岳さんの左隣にはカナヲが腰掛けていた為、俺は獪岳さんの右隣に腰を下ろした。俺が縁側に腰を下ろして直ぐ、獪岳さんからお萩が乗っているお皿を渡された。

 

「師範がわざわざ作った差し入れだ」

 

「このお萩を御影さんが?」

 

「ああ、味は店より美味いぞ」

 

御影さんが作ってくれたお萩を一口食べた。

お萩の餡子が甘すぎず程よい甘さ、もち米は完全に潰さずにつかれていて、獪岳さんの言う通り、今まで食べてきたお萩の中で一番美味かった。

御影さんが作ってくれたお萩に舌鼓を打っていると、アオイさんがお茶を持ってきてくれた。持ってきてくれたお茶を受け取ると、アオイさんはカナヲの隣に座り、御影さんが作ってくれたお萩で一息ついていた。

 

「機能回復訓練…上手くいってないのか?」

 

「え、あ、はい…。反射訓練、全身訓練、カナヲには一度も勝つ事が出来てないです…」

 

カナヲに一度も勝てていない事を獪岳さんに言ったら「そうだろうな」と言われた。俺はカナヲと同時期に鬼殺隊に入った筈なのに、カナヲと俺では何が違うのかと獪岳さんに尋ねた。

 

「お前と蟲柱の継子との違いは…全集中・常中が出来ているかいないかだ」

 

「全集中・常中ですか?」

 

初めて聞く言葉に首を傾げながら、全集中・常中とは何なのかと獪岳さんに教えてもらった。全集中・常中とは睡眠中を含む二十四時間常に全集中の呼吸を維持し続ける身体活性化の高等技術みたいで、柱は全員出来ると獪岳さんは言った。

 

「これが出来る様になれば、お前は更に強くなる。妹を守りたいなら全集中・常中を覚えろ」

 

「全集中・常中を会得するにはどうすれば良いですか!」

 

全集中・常中は地道で過酷な鍛錬の積み重ねが必要不可欠らしいのだが、獪岳さんは御影さんから教えてもらった方法を教えてくれた。獪岳さんが教えてくれた方法とは、普段やっている走り込み、素振りをしている時に全集中の呼吸を意識しながらする事だった。

 

「師範はそうやって全集中・常中を使える様になったと言っていた。勿論、俺も師範に教わったこの方法で全集中・常中を1週間で会得した」

 

「全集中の呼吸を意識する…」

 

「この方法がお前に合うのかは分からないが、やってみる価値はあると俺は思うぞ」

 

「俺…やってみます!! 教えてくれてありがとうございます、獪岳さん!」

 

獪岳さんは湯飲みに入っているお茶を一気に飲み干すと、空になった湯飲みをアオイさんに渡して立ち上がった。立ち上がってから、「帰る」と一言言って獪岳さんは玄関に向かおうと歩き出した。

 

「獪岳さん!善逸には会って行かないんですか!」

 

「機能回復訓練から逃げたカスに話す事なんて何もねぇ。もし、カスと話すとしたら…カスが復帰してからだ」

 

獪岳さんに善逸には会って行かないのかと尋ねたら、会いに行かないと言った。獪岳さんは御影さんの継子として、色々とやる事があるらしく、そのまま帰ってしまった。俺は獪岳さんの背中が見えなくなるまで見送ってから、再び機能回復訓練を始めた。

 

 

 

 

 

獪岳から全集中・常中を会得する方法を聞いてから15日が経ち、炭治郎は御影や獪岳の様にはいかなかったが、全集中・常中が徐々に出来る様になっていた。

その日、炭治郎は鱗滝から学んでいた肺を休めながら行う座善を蝶屋敷の屋根で行っていた。

 

────もしも〜し

 

────集中しているみたいだし、邪魔しちゃダメよしのぶ?

 

座禅をしていた炭治郎の耳に、蝶屋敷の主である元花柱・胡蝶カナエ、蟲柱・胡蝶しのぶの声が聞こえてきた。炭治郎は二人に挨拶をしようと目を開けると、二人は何時の間にか炭治郎の両隣に座って炭治郎を見ていた。炭治郎は何時の間にか隣に座っていた事に驚いていたが、美女二人に挟まれて顔を赤くしていた。

 

「全集中・常中の修行をしているの?」

 

「はい、獪岳さんから教わった事を実践している所です!」

 

カナエの問に、炭治郎は獪岳から教わった事を実践していると答えた。全集中・常中を会得しようと頑張っている炭治郎に、カナエとしのぶは頑張るようにと応援をした。二人に応援されている炭治郎だったが、しのぶとカナエと話せる機会が出来たと思い、炭治郎は柱合会議での柱達が御影に向けていた感情について二人に尋ねた。

 

「炭治郎君は鼻が良いんでしたね」

 

「はい…。あの時、あの場に居た半数の柱が御影さんに向けて憎悪の匂いを発していました。俺は何故御影さんに憎悪が向けられているのかが分かりません…」

 

「これから話す事は他言無用でお願いします…」

 

しのぶとカナエは四年前に流れた、御影が憎悪を向けられる原因となった噂を炭治郎に話した。その噂を一時的に信じてしまい、御影に対して暴言を吐いた事もしのぶは炭治郎に話した。数日間一緒に居て、御影はそんな人間に見えないと炭治郎は二人に言った。炭治郎の言った事に二人はすぐに肯定して、噂は根も葉もない噂だと炭治郎に言った。

 

「なら、何で噂を直ぐに消さないんですか?その噂を消せば、御影さんが憎悪を向けられずに済む筈です!」

 

「それが出来ないんです…他の柱や隊士達は噂を流した愛柱である愛崎さんの言った事は絶対という方達なんです…」

 

「それに、私としのぶで噂を消そうと行動を起こそうとした時に御影さんから止められたの…」

 

しのぶとカナエは御影と和解し、御影の為に噂を消そうと行動しようとして御影に止められていた。今の鬼殺隊の均衡は、御影を柱から引きずり下ろして愛崎姫乃からの寵愛を受けたいという隊士達が、鬼を狩り続けて居るお陰で形を保たれている。御影は愛崎姫乃を断罪すれば、確実に鬼殺隊は崩壊するだろうと予想していた。

愛崎姫乃を断罪して鬼殺隊が崩壊すれば、現・産屋敷家当主である産屋敷耀哉の代の鬼殺隊は史上最悪という肩書きが付く、そんな肩書きを付けさせる訳にはいかないと御影は噂を消すことを止めた。

 

「御影さんは鬼殺隊が崩壊すれば鬼舞辻無惨にまで辿り着けなくなるから、言わせたい奴には言わせとけと言っていたの…」

 

「私も炭治郎君と同じで納得は出来ません…。でも、御影さんがそう望むなら御影さんに従いましょう。噂は一人歩きして色々と変わりますが、私達は御影さんをただただ信じましょう」

 

「そうですね…御影さんがそう望むならそうします」

 

御影の事を聞いた炭治郎は例え御影の噂を耳にしようが、噂に惑わされずに御影の事を信じると心に誓った。その後、鬼と仲良くしたいと常日頃から思っているカナエは、炭治郎に禰豆子と会わせて欲しいと頼み込んだ。カナエの頼みを聞いて、カナエを禰豆子に会わそうと、禰豆子の部屋に行くと元気無く、部屋の隅に座っている禰豆子が居た。炭治郎、しのぶ、カナエは、元気の無い禰豆子を心配するが、可愛い物が大好きなカナエは禰豆子に抱きついたり、頭を撫でたりと元気付けようと色々としていた。

 

 

 

 

そして──獪岳から全集中・常中の鍛錬法を教わってから20日で炭治郎は全集中・常中を会得した。




読んでいただきありがとうございます!


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新たなる任務へ!

作品紹介

・五条先生になりました
(ハイスクールD×D × 呪術廻戦[五条悟系オリ主])

・無個性だからって諦められるかよ!!
(僕のヒーローアカデミア × ワンピース[覇気・月歩・剃])

・幽霊に呼吸を習いました
(鬼滅の刃二次創作×継国縁壱系オリ主)




今回でこの章は終わりになります!
次回からは無限列車に入ります!名前だけしか出てこなかった愛柱・愛崎姫乃が登場しますのでよろしくお願い致します!



獪岳さんのお陰で、俺は全集中・常中を会得する事が出来た。善逸と伊之助にも会得してもらおうと声を掛けたが、カナヲに手も足も出なかった事を引きずっていてベッドから動こうとしなかった。俺は善逸がやる気を出してくれるか分からないけど、獪岳さんが全集中・常中の会得方法を教えてくれた日、獪岳さんは善逸が復帰する事を待っていると善逸に伝えた。

獪岳さんの事を伝えると、ベッドの上で寝ていた善逸はベッドから起き上がった。

 

「炭治郎…全集中・常中を俺に教えてくれ!!」

 

元々教えるつもりで居た俺は、真剣な表情で頼み込んできてくれた善逸に喜んで教えると伝えた。伊之助は、急にやる気を出した善逸に戸惑っていたけど「子分がやるなら親分である俺もやる!」という事で、伊之助もやる気を出してくれて、全集中・常中の会得に向けて三人で修行をする事が決まった。

獪岳さんから教わった修行方法を二人に伝えてから、直ぐに全集中・常中の修行を始めた。走り込み、素振りをする際に、全集中の呼吸を常に意識しながら修行を行った。修行を続けて9日で善逸と伊之助は、俺が全集中・常中を会得した期間より早く全集中・常中を会得した。

 

 

 

全集中・常中を会得した炭治郎達三人は全集中・常中の精度を高める為に、更に修行を重ねていた。全集中・常中の精度を上げる修行をしていた炭治郎と伊之助に、那田蜘蛛山での戦闘で破損した日輪刀を二人の日輪刀を担当している刀鍛冶が持ってきてくれるとの報せが入った。

 

「鋼鐵塚さんと会うのは久しぶりだな」

 

炭治郎はこれから新しく打ち直した日輪刀を持ってきてくれる鋼鐵塚と最初に会った時の事を思い出しながら、蝶屋敷の門の外で鋼鐵塚が来るのを楽しみに待っていた。

蝶屋敷の門の外で待つこと数分後、炭治郎はひょっとこ面を付けて此方に向かって来ている二人を見つけた。ひょっとこ面を付けている二人の内一人は鋼鐵塚と分かり、手を振っていると鋼鐵塚は何かを両手で持ち、炭治郎を目掛けて走ってきていた。

 

「鋼鐵塚さ────「殺してやる!!」ええ!?」

 

鋼鐵塚は怒りに燃えながら、自身が打った包丁を持って炭治郎を追いかけ回した。鋼鐵塚が怒りに燃えているのは、炭治郎が鋼鐵塚が打った日輪刀を破損させてしまったのが原因だ。

 

「あらあら、何だか賑やかになっているわね〜」

 

「新しい鍛錬でしょうか?」

 

「炭治郎さんが殺されそうになっている様にしか見えないのですが…」

 

鋼鐵塚から逃げる炭治郎を見ていたカナエとしのぶは、それぞれが的外れな事を口にすると、アオイがカナエとしのぶに冷静なツッコミを入れた。

 

────相変わらず…騒々しいな蛍

 

「その名を呼ぶんじゃ──って御影か」

 

「おう、久しぶりだな蛍!」

 

鋼鐵塚は刀鍛冶の里長をしている鉄地河原鉄珍から「蛍」と名付けられたのだが、本人は可愛すぎる名前に不満を持ち、名前で呼ばれるのを嫌がっている。そんな鋼鐵塚を名前で呼び、鋼鐵塚は名前を呼んだ奴の顔を見ると、唯一名前を呼んでも怒らない御影透也が立っていた。

 

 

 

 

獪岳から炭治郎達が全集中・常中を会得した事を聞いた俺は、炭治郎達の顔を見に行こうと久しぶりに蝶屋敷に行く事にした。炭治郎達と蝶屋敷の住人に差し入れを持っていこうと、団子屋で大量に団子を購入して獪岳と共に蝶屋敷に向かった。

蝶屋敷の門に着いたら中が騒がしく、様子を見ようと門を潜ると蛍が包丁を持って炭治郎を追いかけている光景が目の前で起こっていた。(いか)れる蛍を宥める為に大好物である、みたらし団子を渡して怒りを鎮めた。

 

「ありがとうございます御影殿。私一人では鋼鐵塚さんを鎮めるのは大変でして」

 

「お疲れ様です鉄穴森さん」

 

鉄穴森さんは伊之助の刀担当をしているみたいで、蛍と共に那田蜘蛛山で破損した伊之助の刀を持ってきてくれた様だ。鉄穴森さんと一言挨拶が終わると、蛍の抑制係としての役割を果たすべく、蛍の元に行ってしまった。炭治郎にも刀を受け取る為に鉄穴森さんと共に、先に行ってしまった蛍の元に行く様にと言って後を追わせた。

 

「御影さん!!」

 

鉄穴森さんと炭治郎が行ってから後ろの方で俺を見ている、しのぶ、カナエ、アオイに挨拶をしようとしたら横から勢い良く俺の方に向かってくるカナヲが飛び抱きついてきた。勢い良く突っ込んで来るカナヲを受け止めたが、カナヲが突っ込んで来た衝撃は強く、俺は尻もちを着いた。

 

「「「カナヲ!?」」」

 

「やっと来てくれた…」

 

「カナヲ?熱烈な歓迎はとても嬉しいんだが…この状況は見知らぬ人が見たら新しい噂が流されちゃうんだが?」

 

「噂を流されても私は信じます…。だから、もう少しこのままで居たいです」

 

尻もちを着いている26歳の男の上に16歳の可憐な少女が馬乗りになって乗っている絵面は、知らない人が見れば即通報ものだ。退いてくれる様に頼んだけど拒否されてしまい、どうすれば良いのかと考えているとアオイが助け舟を出してくれたお陰でカナヲを退かす事に成功した。カナヲを退かす事は出来たけど、今度は腕にくっ付いて離れようとしなかった。

 

「全くカナヲは羨ま──いえ、御影さんに迷惑を掛けて!」

 

「びっくりはしたが、迷惑だと思ってないから気にしなくて良い。それより、久しぶりだなアオイ」

 

「は、はい!お久しぶりです御影さん!」

 

噂のお陰で疎遠になっていたカナヲにもアオイにも嫌われてなくて、内心ホッとしていた。カナエとしのぶにも名前呼びをして一言挨拶をして、カナヲを腕にくっ付けたまま炭治郎の元に向かった。炭治郎の元に着くと、今度は鉄穴森さんが暴れようとしていた。炭治郎に助けを求められ、カナヲに離れてもらってから鉄穴森さんを抑えた。鉄穴森さんが暴れようとしていた理由は、鉄穴森が打った日輪刀を伊之助が庭にある石を使って凸凹にしたのが原因らしい。

 

 

 

鋼鐵塚と鉄穴森の両名は、炭治郎と伊之助に打った日輪刀を渡す仕事を終えて刀鍛冶の里へと帰って行った。刀鍛冶達が帰り、炭治郎は改めて御影と対峙した。

 

「御影さんが考えた全集中・常中の修行方法のお陰で会得する事が出来ました!有難うございます!」

 

「本当は修行中に来たかったんだけどな、やる事が多すぎて獪岳に任せっきりにしてごめんな?獪岳も有難うな」

 

「いえ、継子である俺は師範から頼まれた仕事をしただけなんで」

 

「柱である御影さんはとてもお忙しいのに、俺達の事を考えてくれただけで嬉しいです!」

 

炭治郎が全集中・常中の修行をしている間、御影は体調を崩した耀哉の為に看病をしていた。現代の知識を持っている御影は、知識を駆使して体を弱らせている耀哉に栄養価の高い料理、薬膳料理等を振る舞った。透也の持つ現代知識のお陰で、耀哉の体は徐々に回復していった。ある程度回復した耀哉に御影は、少ない体力でも出来る運動として太極拳を教えていた。

 

「あ!御影さんと獪岳が来てる!」

 

一人だけ厠に行っていた善逸だけが御影と獪岳の二人が来ているとは知らず、二人が来ていた事に喜びながら近づいた。善逸は御影が持ってきた団子が視界に入ると、御影に自分も団子を食べても良いかと尋ね、御影は食べても良いと許可を出すと団子を食べ始めた。善逸が団子を食べ始め、御影か獪岳と勝負するか団子を食べるかで無言で悩んでいた伊之助も善逸が美味しそうに団子を食べる姿を見て、伊之助は団子を食べる方を選択した。

 

「ちゃんと皆の分を残せよ?」

 

「師範の言うことを聞けよカス?」

 

なほ、きよ、すみ達もやる事を終えて縁側に集まり、蝶屋敷の住人と炭治郎達が一同に集まった。なほ、きよ、すみ達も御影と強い関わりを持っている為、三人が御影の姿を見るととても嬉しそうな表情でピョンピョンと兎のように飛び跳ねていた。

 

「御影さん!禰豆子に会ってくれませんか!」

 

「ん?別にいいけど?」

 

炭治郎と御影だけで禰豆子が居る部屋に向かう予定が、カナヲを筆頭に全員が禰豆子の部屋に向かう事になった。先に部屋に入って欲しいと言われた御影は、炭治郎の言う通りに部屋に入り、薄暗い部屋の中を進んだ。薄暗い部屋の中を進むと腹に強い衝撃が入り、カナヲが飛び込んできた時と同様に後ろに倒れ、尻もちを着いた。

 

「ムー!!」

 

「久しぶりだな禰豆子…そしてデジャヴを感じさせるこの体勢は…」

 

カナヲの時の様に尻もちを着いている御影の上に禰豆子は馬乗りで御影に跨り、御影の胸に禰豆子は頭をグリグリと擦り付けていた。その光景にカナヲとアオイは静かに嫉妬の炎を燃やし、善逸は大声を上げて羨ましがっていた。炭治郎は禰豆子が元気になった事を喜び、伊之助は禰豆子がやっている頭グリグリを面白そうだと思い、御影の背中に自分の頭をグリグリと擦り付けていた。しのぶとカナエの二人は、カナヲの時にも感じたモヤモヤ感が何なのか考えていた。

 

「ムー!ムー!」

 

「俺の腕を触ってどうしたんだ?」

 

「多分、禰豆子は柱合裁判の時に斬った腕が大丈夫かどうか確認しているんだと思います!」

 

「ムー!!」

 

炭治郎が言った事に禰豆子は首を縦に振った。禰豆子は自分が他の鬼とは違うと証明する為に、御影が自分の腕を斬った事に罪悪感を持っていた。禰豆子は御影が斬った腕に優しく触れ、傷は治ったのか?もう痛くないのか?と不安そうな表情をしながら確認をしていた。

 

「もう傷は塞がったし、痛みもないから大丈夫だ。心配をしてくれてありがとう禰豆子」

 

御影は禰豆子の頭を優しく撫でながら感謝の言葉を口にした。数日間だけしか禰豆子と関わっていない御影だが、柱合裁判の時に見た泣き姿の禰豆子が苦手になっていた。御影は禰豆子の頭を暫く撫で続けると、禰豆子の瞼が徐々に下がり、静かに寝息を立てて眠った。御影は眠りについた禰豆子を起こさないようにベッドへ運び、炭治郎達と共に静かに部屋を出た。

 

「さて、炭治郎達に会えたし、そろそろ帰るわ」

 

「もう…帰ってしまうんですか?」

 

「俺も色々と忙しい身でな、また来るからそんな顔をするなよ」

 

炭治郎達と会う目的を果たした御影は、再び業務に戻るべく帰ろうとしていた。御影が帰ってしまう事に蝶屋敷の面々は少し寂しそうな表情になったが、御影がまた来ると約束すると寂しそうな表情は一瞬で消えた。

 

「炭治郎、善逸、伊之助、これから大変な任務が次々と来ると思う────期待しているぞ」

 

「俺も一応期待しておく────カスを含めてな」

 

御影と獪岳は炭治郎達に一言言って、蝶屋敷を後にした。御影達から期待された炭治郎達は、二人の期待に絶対に応えようと心に誓った。




読んでいただきありがとうございます!!


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完全版・転生者設定

作品紹介

・五条先生になりました
(ハイスクールD×D × 呪術廻戦[五条悟系オリ主])

・無個性だからって諦められるかよ!!
(僕のヒーローアカデミア × ワンピース[覇気・月歩・剃])

・幽霊に呼吸を習いました
(鬼滅の刃二次創作×継国縁壱系オリ主)


名前︰御影透也(みかげとうや)(転生者)

 

年齢︰26歳

 

鬼殺隊階級︰逆柱

 

使用する呼吸︰霊圧を体に纏わせ身体能力強化している為、呼吸は使ってないが、全集中の呼吸・常中は出来る

 

隊服:他の鬼殺隊士とは違い、BLEACHの死覇装

 

羽織︰五と書いてある、護廷十三隊・五番隊長の羽織

 

能力︰霊圧、虚化、鬼道

 

武器︰逆撫(鬼を殺せます)

(相手が認識する上下左右前後見えている方向・斬られた方向の感覚を全て“逆さま”にする )

 

解号︰倒れろ逆撫....

 

逆撫の容姿︰ハイスクールD×Dのオーフィス

 

卍解︰逆様邪八宝塞(さかしまよこしまはっぽうふさがり)

(能力︰敵と味方の認識を逆転させる)

 

容姿:炎炎ノ消防隊・新門紅丸

 

概要︰転生者である御影透也は鬼滅の刃の原作知識は無く、無意識で死亡キャラを救済していた。逆ハーレムを狙っている、愛柱・愛崎姫乃によって、身も蓋もない噂を流され、それを信じた大半の柱、鬼殺隊隊士に嫌われる。

 

御影側の人間

 

・悲鳴嶼行冥 ・冨岡義勇

 

・冨岡蔦子 ・桑島獪岳

 

・鱗滝真菰 ・甘露寺蜜璃

 

・時透有一郎 ・時透無一郎

 

・産屋敷耀哉 ・産屋敷あまね

 

・珠世 ・愈史郎

 

・胡蝶カナエ ・胡蝶しのぶ

 

・神崎アオイ ・栗花落カナヲ

 

・竈門炭治郎 ・竈門禰豆子

 

・我妻善逸 ・嘴平伊之助

 

 

名前︰愛崎姫乃(転生者)

 

年齢︰18歳

 

鬼殺隊階級︰愛柱

 

使用する呼吸︰愛の呼吸

 

転生特典

 

・ヒロイン補正

 

・容姿をハイレベル美少女

 

・身体能力強化(下弦ノ鬼を倒せるレベル)

 

 

概要︰御影透也とは違い、鬼滅の刃の原作知識を持って転生した。鬼殺隊に入ったら、死亡しているキャラが生存していて驚いていた。同じ転生者である御影透也に、逆ハーを狙っているから邪魔をしないように釘を刺した。御影透也も容姿がいいから、ハーレムの一人に加えてあげると言ったら、興味無いと言われ、思い通りにならない御影透也を嫌っている。

御影透也がカナエを庇いながら、上弦ノ弐と戦っているのを利用して、自分がカナエを救ったかのように見せて、御影透也の悪い噂を流して嫌われ者に仕立てあげた。

 

 

愛崎姫乃側の人間

 

・不死川実弥 ・宇髄天元

 

・伊黒小芭内 ・鱗滝錆兎

 

・煉獄杏寿郎 ・鬼殺隊隊士

 

 

今作品を投稿した時、主人公を平子真子容姿にしましたが投稿していくうちに、平子真子容姿でハーレムの想像が出来なくなってきたので、名前と容姿を変えるということにしました。

 

今現在、オリ主の名前を平子真子→御影透也に変えている途中なので、少々お待ち下さい。

 

次の章の無限列車編は他の作品の話がある程度進んだら投稿を再開しますので、少しだけこの作品は休憩を致します。

 

オリ主の容姿、名前が大幅に変わり、それが気に入らないと思う方が沢山いらっしゃると思いますが、投稿していきますので宜しくお願い致します。




読んでいただき誠にありがとうございます。


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無限列車
先見の明


投稿が遅れてしまい申し訳ないです!


蝶屋敷でのちょっとした騒動から翌日…。

炭治郎達が次の任務地へ行くのを獪岳と蝶屋敷で一緒に見送り行き、見送ってから屋敷に戻ろうとした俺達にカナエとしのぶに折角なら蝶屋敷で休んでいかないかと誘われた。俺も獪岳も次の任務までやることも無かったので、蝶屋敷で少し休んでいく事にした。蝶屋敷の門を潜ろうとした時、俺の元に耀哉の鎹鴉が鳴きながらやって来た。耀哉の鎹鴉は俺の肩に止まり、耀哉からの大至急屋敷に来て欲しいという呼び出しの伝令を預かってきていた。

 

「すまないが俺は耀哉の元に行く。獪岳、お前も着いてこい」

 

「分かりました師範!!」

 

誘ってくれたしのぶとカナエには悪いが、俺は直ぐに獪岳を連れて産屋敷邸に向かった。俺を呼び出す理由に皆目見当もつかないが、きっと何か嫌な予感がしたのだろうと思いながら足を速めた。蝶屋敷から暫く走り続けて、ようやく目的地である産屋敷邸に辿り着いた。到着した産屋敷邸の門の前に、あまねさんが立っていた。俺と獪岳はあまねさんに近づき、門の前で待たせた事を謝った。俺達の謝罪にあまねさんは、俺達が来る1分前に門の前に来たから気にしなくて良いと言った。長時間待たせてなくて少しホッとしてから、あまねさんに耀哉の元へ案内をしてもらった。

 

「突然呼び出してすまないね」

 

「いや、別に気にしないが。それより大至急って何かあったのか?」

 

「少し嫌な未来を予知をしてしまってね…」

 

産屋敷耀哉…と言うよりは産屋敷家の男には少し先の未来を予知する【先見の明】という能力が顔に広がる呪いの痣と共に代々受け継がれてきた。耀哉も例外なく【先見の明】をしっかり受け継いでいる。

 

「透也は無限列車の事は知ってるよね?」

 

「ああ…。無限列車に乗った乗客、調査に向かった隊士が行方不明になっていると報告があった列車だろ?」

 

「無限列車に杏寿郎と姫乃の柱二人を向かわせ、合流する形で炭治郎達を向かわせたのだが…」

 

「その無限列車に嫌な予感がしたから、俺に行ってきて欲しいって事か?」

 

俺の問いに耀哉はゆっくりと頷いた。

耀哉の頼みでも、俺はあいつらの顔を見たくは無いし断ろうとした。だが、無限列車に炭治郎達が行くことが分かり、炭治郎達の誰かが命を落とす可能性があるかもしれないと思った俺は、獪岳と一緒に行く事にした。俺の本来の任務は、吉原の遊郭で忽然と姿を消す遊女の調査に向かう予定だった。無限列車の任務が終わり次第、遊郭の任務に行くことになった。

 

「二人共、頼んだよ」

 

「はいはい、行ってくるよ」

 

 

俺と獪岳は一度屋敷に戻り、軽い身支度を始めた。

怪我人に応急処置ができるように、消毒や包帯などを箱に詰めたりしていた。身支度をしている間、義勇と蔦子さんが屋敷にやって来た。もてなしてあげたいが、二人にはこれから任務で無限列車に向かう事を伝えた。無限列車の事は蔦子さんにも伝わっているみたいで、危険な任務に赴こうとしている俺を心配してくれた。

 

「何故、透也が無限列車へ?遊郭の調査では無かったのか?」

 

俺が遊郭へ任務に行く事を知っている義勇が蔦子さんに暴露しやがった。遊郭へ任務に行くことを蔦子さんが知った瞬間、白玉の様に白い肌がみるみるうちに赤くなって行った。赤くなって行った蔦子を可愛いと思いながら、任務で客として店に潜入するが決して体を重ねる事は無いと断言した。蔦子さんに遊郭への任務を理解してもらおうと話していたら、隠の後藤が車に乗って俺達の所にやって来た。

 

「透也さん、駅まで送りますので乗ってください」

 

「悪いな後藤…。それじゃ、俺と獪岳は任務に行きますんで話はまたで」

 

「2人共、絶対に生きて帰ってくださいね」

 

「武運を祈る…」

 

蔦子さんと義勇に見送られながら、後藤の車で俺と獪岳は駅へ向かった。現代から過去へ転生した俺は、改めて車の凄さと有難みを実感した。車に乗ってから数分で、無限列車が停車する駅に着いた。

 

「ありがとうな後藤」

 

「いえ、ご武運を祈ります。任務が終わり次第、迎えに来ます」

 

後藤が去っていくのを見えなくなるまで見送り、俺達は切符を購入して停車している無限列車へと乗り込んだ。




読んでいただきありがとうございます!


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無限列車

無限列車に乗り込んだ俺と獪岳は柱二人と炭治郎達にバレないように細心の注意を払いながら、空いている座席に腰を下ろした。鬼が何時現れても対処出来るように周りに警戒をしながら、俺は無限列車の窓の外を流れる夜の景色を眺めた。

 

「御館様の命とはいえ、なんで引き受けたんですか?」

 

「耀哉の先見の明は先代を超える程の精度だ…。この無限列車で悪い事が起きるって言うなら行くだろ?」

 

炎柱、愛柱の両名はどうなろうが知ったことでは無いが、柱二人と合流する炭治郎達が心配でこの任務を引き受けた。獪岳も弟弟子である善逸の事が心配のようで、支度をしている時に俺がこの任務は別に来なくても良いと獪岳に言ったが、獪岳は俺も行くと言ってこの任務に同行した。

 

「俺達は鬼殺隊として一般人を鬼から守り抜くのが仕事だ。この任務で何が起ころうが私情を挟むなよ?」

 

「分かってますよ…」

 

無限列車に揺られながら獪岳に、この任務での俺達の立ち回りを説明をした。説明を終えてから再び窓の外を流れる夜の景色を眺めながら、耀哉の先見の明が外れて欲しいと心の中で祈っていた。

 

 

俺、禰豆子、善逸、伊之助の四人で次の任務先である無限列車に乗り込んだ。鎹鴉の指示では炎柱と愛柱の二柱と合流して任務を行うと言った。車内に入り、2人を探していると「美味い!!」って大きな声が聞こえて来た。大きな声に近づくと、柱合会議で見た二人が並んで座っていた。

 

「あ!炭治郎君!久しぶりだね!私の事覚えているかな?」

 

「愛柱様ですよね?」

 

「愛柱様なんて硬っ苦しいから姫乃って呼んでね?そっちの二人は誰かな?」

 

「あ、我妻善逸です…」

 

「俺様は嘴平伊之助だ!!」

 

やっぱり…この人の近くに居るとボーっとして頭がクラクラしてくる。あの時は冨岡さんが肩を叩いてくれたお陰で治ったけど、どうすればこの状態を治せるかとクラクラする頭で考えていると、善逸と伊之助が肩を叩いてくれた。

 

「大丈夫か炭治郎?」

 

「何ボーっとしてんだ権八郎!!」

 

二人のお陰で何とか意識を持ち直すことが出来た。

姫乃さんからは甘くとても優しい匂いがするけど、何故か怒っている匂いが混ざっていた。透也さんの事もあるから、俺は姫乃さんへの警戒を更に強めた。

 

 

 

初めまして、鬼滅の刃へ転生した愛崎姫乃です。

私はとある理由で自ら命を絶ち、転生神に転生特典と転生する世界を鬼滅の刃に選んだ。私が転生したこの世界では色々変わっていた。

冨岡蔦子、時透有一郎、錆兎、胡蝶カナエが生存しているし、何より私の知らない柱…逆柱・御影透也が存在していた。原作を最終話まで見た私にとってイレギュラーな存在だった。

私は直ぐに御影透也に接近して、転生者である事を確認した。本人は直ぐに転生者と認め、この世界の事は何も知らないと言った。逆ハーを狙う私の邪魔をしないように釘を刺した。

暫くは新参者って事もあり、チヤホヤされてたけど…行冥さん、冨岡さん、時透兄弟から全く相手にされず、それどころか4人は御影透也の所に常に居た。

 

「ねえ、アンタって彼女居ないでしょ?」

 

「それがどうした?」

 

「私ってスタイルも良いのよね…だからアンタも私のハーレムに入りなさいよ!アンタの顔ってかなりのイケメンだし、私のハーレムに入る資格はあるわ!」

 

「何言ってんだ?容姿がいくら優れていようと中身が空っぽのお前に興味は無いから遠慮させてもらう」

 

御影透也を私のハーレムに加えれば、あの四人も私のハーレムに加えられると思ってもう一度接触したけど、ボロクソに言われた上に断られた。そして私は上弦の弐と御影透也が戦っている隙に気を失ったカナエを持って逃げ、御影透也がカナエを囮に使い、弱って気を失ったカナエを襲おうとしたとバレないように噂を流した。この噂であの四人が御影透也の元を去ると思っていたら、四人は去ることはなく余計に絆が深まってしまった。炭治郎達も御影透也を慕っているみたいで、私の考えていた事が殆ど上手く行っていない。

 

「どうした姫乃!」

 

「え、あ、ちょっと考え事をしていまして」

 

「そうか!悩みがあれば話すといい!!姫乃の相談は何時でも乗るぞ!」

 

「ありがとうございます杏寿郎さん 」

 

ムカつく御影透也の事は一旦忘れて、これから起こるであろう出来事に備える事にした。

 

 

「チッ…」

 

「どうしたんですか師範?いきなり舌打ちして?」

 

「なんかムカついた」

 

「はあ…そうですか」

 

俺と獪岳は車内販売をしていた弁当とお茶を購入して、飯を食っていた。列車内から鬼の気配はちゃんと感じているが、全く襲ってこようとする気配が無かった。俺も獪岳も不思議に思いながら弁当を食べ、腹を満たした。

 

「切符を拝見させてもらいます」

 

弁当のゴミを片付けていたら車掌さんが検札鋏を持ってやって来た。弁当のゴミを急いで片付けてから、車掌さんに切符を見せた。獪岳が先に検札鋏で切符に穴を開けてもらい、最後に俺が検札鋏で開けてもらった。

 

パチン…

 

検札鋏で切符に穴を開ける音が耳に響いたと同時に、目の前が突然真っ暗になった…。




読んでいただきありがとうございます!


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儚い夢

日間ランキングで26位にランクインするとは思ってなかったのでめちゃくちゃびっくりしました‼️
今作品を読んでくださる読者様、誠にありがとうございます。


車掌さんが検札鋏で切符に穴を開けた瞬間、目の前が真っ暗になった。目の前が真っ暗になってから少しして、少しずつ目の前が明るくなってきていた。暗かった視界が完全に光を取り戻したら────俺は懐かしい匂いがする家…俺が鬼殺隊に入る前まで両親と暮らしていた家だった。無限列車に乗っていたはずの俺が、こんな所に居るのかと考えていた時だった。

 

「あら、やっと起きたのね透也?」

 

「母さん…?」

 

「お母さん以外誰がいるのよ?寝ぼけてるの?」

 

俺の目の前に…鬼に殺された筈の母親が家の扉の前に立っていた。声、匂い、そして…俺にいつも向けてくれた優しい笑みを浮かべている母さんが居た。驚きと混乱で言葉が出ない俺に母さんはゆっくり近づき、優しく抱きしめて頭を撫でてくれた…。

 

「どうしたの透也?何か怖い夢でも見たの?」

 

俺は優しい母さんの声色を聞いた瞬間、母さんを強く抱き締め泣いた…。涙を流さないように必死に堪えたが、無理だった。いい大人が何泣いてんだと言われても気にしない位、俺は泣いた。形振り構わず泣いていると家の扉が強く開けられ、父さんが家に入ってきた。泣いている俺に父さんは心配そうな顔をして近づき、母さんと同じように抱き締めてくれた。母さんと父さんの匂いと温もりを感じ、俺の涙は止まらず流れ続けた…。

 

 

「もう、急に透也が泣き出すからびっくりしたわ!」

 

「もう大丈夫か透也?」

 

「迷惑かけてごめん…」

 

俺が泣き止んでから、母さんは飯を作ってくれて三人で食卓を囲んだ。あの日以来、俺は両親と一生食卓を囲む事は出来ないと思っていた俺は、両親と食卓を囲む事が出来て胸がポカポカと温かくなるのを感じた。父さんと母さんと食事しながら色々と話したり、甘えられなかった分を甘えたりと、あの頃から二度と味わえないと思っていた夢のような時間を過ごした。

 

両親が寝静まった深夜…。

2人にバレないようにこっそりと家を出て、外へ出た。外も懐かしい木や草、土の匂いがして目が潤んできた。また泣きそうになるのを堪えながら、俺はこの世界を歩き回った。

 

『泣いてスッキリでもしたか主サマ?』

 

「うるせぇ…お前には関係ねぇだろ」

 

『おいおい、つれない事言うなよ?俺様はお前でもあるんだぜ?』

 

俺に話し掛けてくるコイツは、真っ白な俺の容姿をしている虚…白也(びゃくや)。俺が白也を認識したのは先代の御館様から柱になって欲しいと言われ、逆柱になってから精神世界に現れた。黒崎一護と同じように戦い、白也を倒して屈服させた。白也を屈服させてから、白也は時々俺の前に現れたりするようになった。

 

「ここが現実世界では無い事ぐらい分かっている…。頭で分かっていても、心はそうじゃない…この世界には俺が取り戻したくても取り戻せなかったものがある…」

 

『こんな偽りの世界に何の価値がある?現実世界でのお前は精神をすり減らして生きている事は知っている。だが、偽りの世界に閉じこもって守りたいものを守れなくなるんだぞ?』

 

「そんな事は分かっている…だが、俺が失って取り戻せないものがこの世界にはある。偽りの世界だろうと、この世界に居たいと思ってしまった」

 

しっかりしやがれ!!逆柱・御影透也!!

 

白也に殴り飛ばされた…。

白也は殴られて地面に倒れた俺の胸ぐらを掴んで持ち上げ、俺に現実から逃げるなと怒鳴った。俺が此処で逃げれば、救いを求めている奴らの手を掴むんだと言われた。

白也に言う通り、俺が此処でこの世界に閉じこもっていたら乗客は誰が助けるのか?獪岳、炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助…未来あるあの子達を誰が守るのか?居心地の良いこの世界に閉じこもろうとした俺は自分の両頬を力いっぱい叩き、甘ったれた自分に喝を入れた。

 

「悪いな白夜…。お前に大きな借りが出来た…礼を言う」

 

『俺に勝って屈服させた奴が腑抜けになっていたのが許せなかっただけだ…。この世界を出るにはお前が死ねば出られる…』

 

「ありがとうな白也…」

 

白也はこの世界から脱出する方法を教えてから、俺の前から姿を消した。

 

「来てくれ逆撫…」

 

白也が居なくなり、その場で1人になった俺は、自分の斬魄刀である逆撫を呼び出した。

逆撫を呼び出すと俺の目の前が光り輝き出し、その光が徐々に収まると目の前には黒髪ロングでゴスロリに身を包んでいる幼女が居た。

 

「透也、大丈夫?」

 

「ああ、もう大丈夫だ。心配かけて悪かったな 」

 

「ん、罰として頭撫でる」

 

逆撫は俺の手を掴むと自分の頭に乗せて、罰として撫でろと催促してきた。逆撫にも心配をかけた俺は、素直に逆撫の罰を受けた。逆撫の頭を撫でていると、艶があってサラサラとしている髪に撫でるのが癖になりそうだ。

 

「逆撫、俺は一刻も早く現実世界に戻らなきゃならねぇ。刀に戻って協力してくれ」

 

「ん、わかった…」

 

頭から手を離すと名残惜しそうな表情をするが、逆撫は直ぐに擬人化から刀の姿に戻ってくれた。刀の姿に戻った逆撫の柄を握り、鞘から逆撫を抜いた。

 

「こんな所で何をしているの透也?」

 

「急に居なくなったから驚いたよ?さあ、夜は危ないから家に帰ろ?」

 

逆撫を抜いた所で、背後から両親が俺を心配して声を掛けてきた。俺が居なくなったのに気づいて探しに来てくれたみたいだ。だが俺は、後ろに振り返る事なく両親の問いを答えた。

 

「母さん…父さん…。俺にはやらなきゃならない事が山の様にある。だから…やる事を片付けに行ってくるわ」

 

両親の返事を待つこと無く、俺は逆撫で自分の首を斬った…。自分の首を斬った瞬間に、車掌さんが切符に穴を開けた時と同じ様に目の前が真っ暗になり、真っ暗から光を取り戻すと無限列車の座席に座っていた。横には獪岳が居て、俺より先に目覚めたらしく心配そうな顔をして俺の肩を揺らしていた。

 

「悪いな獪岳。ちょっと寝すぎたわ」

 

「心配させないでくださいよ師範…」

 

獪岳にも心配かけた事を謝り、クソったれで良い夢を見せてくれた鬼に御礼参りをしようと俺は座席から立ち上がった。




透也の内なる虚の名前は白也です!
この名前にした理由は白透也から透を抜いて安直ですが『白也』と命名しました。

続いては逆撫のモデルについてです。
艦これの龍驤にしたのですが、ハイスクールDxDに登場するオーフィスをモデルにすることにしました。

今回も読んでいただきありがとうございますm(_ _)m


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それぞれの役割

白也が協力してくれたお陰で血鬼術が解け、居心地の良かった世界から抜け出すことが出来た。俺が目覚めるのを心配そうに待ってくれていた獪岳に一言謝り、状況を判断しようと周りを見渡した。

血鬼術に掛かる前は綺麗な内装の無限列車だったが、今では気持ち悪い程肉々しい内装に変わっていた。変わったのは内装だけでなく、肉壁から生えてくる触手が未だに眠っている乗客に襲いかかろうとしていた。

俺と獪岳は触手が乗客へ襲いかかる前に、刀を抜いて気持ち悪い触手を斬った。

 

「どうしますか師範!!」

 

「俺達は此処から後ろの車両に乗っている乗客を守るぞ!!前の車両は炭治郎や柱二人が戦っているみたいだ!!」

 

前車両で炭治郎達や柱二人が戦っているのを霊圧探知で感じ取った。人員が足りている前車両は任せ、手薄になっている後ろの車両を守る事にした。俺達は直ぐに行動を移し、無限列車の所々から眠っている乗客を狙って生えてくる触手を斬った。

 

「何故、此処にお前がいる──────御影透也!!」

 

「歳上の先輩には敬語付けろ炎柱?」

 

俺はその場に留まり獪岳を先に最後尾の車両に行かせ、挟み撃ちにしていく形で触手を斬っていたら、物凄い速度で俺の元に炎柱がやってきた。俺を見るや否や、めちゃくちゃ嫌そうな表情で見てきた。俺もこいつとは会いたくなかったから、同じ様に嫌そうな表情で炎柱を見た。

 

「姫乃を傷つけ、図々しくも柱の座から降りようとしない輩に敬う気持ちが無いから敬語は付けん!!」

 

「あっそ…」

 

「それよりも俺の質問に答えたらどうだ!!何故、この無限列車にお前が乗っている!!」

 

「はあ…。答えないと面倒くさそうだから言うが、御館様から直々に頼まれたから此処に居る」

 

耀哉からのお願いだから無限列車に来ているだけで、誰が好き好んでお前らと一緒の列車になんて乗りたくなかった。吐きかけた言葉をグッと飲み込んで、愛崎姫乃教の信者の質問に答えてやった。耀哉からの指令で来ていると炎柱に言ったら、疑いの目で俺を見つつも、俺が此処に居る理由に納得してくれた。

 

「お前が此処に居る理由は分かった。だが、くれぐれも俺の邪魔や姫乃には近づかないと誓ってもらおうか!!」

 

「はいはい…邪魔をしませんし、愛柱にも近づかないんで…さっさと責務を真っ当しろクソガキ」

 

「お前に言われずともそうする!!」

 

耳が痛くなる様な馬鹿でかい声を出して、炎柱は俺が居る車両から居なくなってくれた。苛つく気持ちを発散させる為に、俺は無限に生えてくる触手を斬り刻んだ。

 

 

獪岳と共に乗客を狙う触手を斬りまくっているが、次から次へと生えてきてキリが無かった…。やはり、この触手地獄を終わらせるには触手を操っているであろう鬼を倒すしかない。鬼を霊圧探知で探していると、伊之助と炭治郎が運転席に居るのを確認した。

 

「獪岳、今しがた炭治郎と伊之助が運転席に居るのを確認した。二人が居る所に鬼が居るはずだ!!お前は今から運転席に向かい、二人を援護してこい!!」

 

「俺が此処を離れると師範が一人に!!」

 

「俺の心配は要らねぇよ。だから、二人の事を頼む」

 

獪岳は師範思いの良い奴だと、胸を張って自慢を出来る程優しい奴だ。俺の指示に渋々だが聞いてくれて、炭治郎と伊之助の元へ行ってくれた。

 

「さて、もうひと踏ん張りするか…」

 

炭治郎、伊之助、獪岳に鬼討伐を託して、俺は鬼が倒されるまで乗客の命を守り続ける為に刀を振るった。

 

 

俺と伊之助は列車と融合した下弦ノ壱の首を斬る為に、列車の運転席に来ていた。互いに技を出して運転席の床を斬るが、鬼の首に届かず表面の肉しか斬れ無かった…。鬼の血鬼術で夢の世界に飛ばされては戻ってくるの連続で、どうすれば鬼の首を斬れるのかを考えていた。

 

「辞めろ…俺の邪魔をするな!!」

 

安全な所に避難させていた運転手が、鋭利な物を持って走ってきた。運転手は自分の近くに居た伊之助を鋭利な物で刺そうとしていた。伊之助を守ろうとした時、運転手の背後に黒い影が一瞬見えた。運転手の背後に黒い影が見えた瞬間に、運転手は突然力無く前のめりに倒れた。

 

「全く…何をしてんだお前ら」

 

「獪岳さん!!」

 

「お前は貝殻!!」

 

運転手の背後に見えた黒い影は獪岳さんだった。

獪岳さんがなぜ無限列車に居るのかと聞いたら、御館様からの指令で透也さんと一緒に俺達にはバレないように無限列車に乗り込んだと話してくれた。獪岳さんは、透也さんから俺達の援護に向かえと言われて来てくれたみたいだ。

 

「さて、後輩であるお前らに花を持たせてやるから鬼の首を斬るぞ」

 

「獪岳さんが斬った方が早いのでは?」

 

「妹を助ける為に強くなりたいんだろ?十二鬼月の首を斬る経験を積んでおけ炭治郎」

 

獪岳さんに鬼の首周りにある目と自身の目が合うと、強制的に血鬼術に掛かってしまうと説明した。説明が終わると獪岳さんは【見なきゃ問題は無い】と言い、獪岳さんは目を閉じた。

 

「雷の呼吸…陸ノ型・電轟雷轟」

 

獪岳さんは目を閉じたまま、鬼の首がある中心に飛び込み、周りにある目が付いている触手を全て斬った。目を閉じたまま正確に目が付いた触手を全て斬った事に、伊之助と共に驚いていた。

 

「お膳立てはしたんだ、さっさとこいつの首を斬れ!!」

 

「は、はい!」

 

「わ、分かってるわ!」

 

獪岳さんの凄さを実感していたら、早く首を斬れと怒られてしまった。俺と伊之助は直ぐに呼吸を整えて、鬼の首に技を繰り出す準備を整えた。伊之助から表面の肉は斬るから、俺は鬼の首を斬るように言われた。伊之助が最初に動き、鬼の首周りの肉を斬り、骨を顕にした。

 

「ヒノカミ神楽・碧羅の天!!」

 

俺の刃は鬼の首に届き、列車と共に鬼の首を斬った。

鬼の首を斬った瞬間、鬼の凄まじい断末魔ととてつもない揺れが襲った。鬼と融合していた列車は線路を脱線して、横転しそうになった…。

 

──────縛道の六十一・六杖光牢

 

横転しそうになる列車の両側面に光り輝く何かが、横転しそうになる列車を支えた。一体何が起きているのかと考えていたら、列車を支えている光り輝く物は透也さんがやったと獪岳は言った。

 

「炭治郎く〜ん!!大丈夫!!」

 

遠くの方から姫乃さんと煉獄さんが此方に向かっているのが見えた。二人を見た獪岳が小さく舌打ちをして、透也の元に戻ると言ってこの場から姿を消した。獪岳さんに御礼を言い忘れ、また会えたら獪岳さん、獪岳さんに俺達の援護に向かうように言ってくれた透也さんにもきちんと御礼を伝えようと思いながら、ヒノカミ神楽の影響で動かせなくなった体を休ませた。




読んでいただきありがとうございますm(_ _)m


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上弦ノ参 襲来 (+質問コーナー)

載せ忘れていた質問があったので、書き足して再投稿しました。


原作通りに炭治郎達が魘夢を倒してくれた。

私も炭治郎達と一緒に倒そうとしたけど、あの透也の継子になった獪岳が乱入してきたお陰で刺されそうな炭治郎を助けに入れなかった。折角の好感度アップのイベントだったのに、獪岳に出番を取られた。だけど、獪岳のカッコイイ所を見られて良かったわ。

 

「皆、よく頑張ったね!」

 

獪岳が居るのに透也が姿を見せないのを不思議に思いながら、炭治郎達に優しい声色で労いの言葉をかけた。善逸と伊之助は私からの労いの言葉に少し照れていたけど、炭治郎だけは私を警戒するような目で見ていた。

 

「もう少ししたら隠が来るから、みんなで帰りましょう!」

 

やっぱり透也を取り込まないと私の理想を達成出来ないと改めて実感した時だった…。

私達のすぐ近くでズドォーンと爆発音に似た音と共に砂煙が舞った。砂煙が晴れると…そこにはこの無限列車イベントの最大の敵である上弦ノ参…猗窩座が姿を現した…。

 

 

列車と融合していた鬼を炭治郎達が倒してくれたお陰で、触手が眠っている乗客を襲う事は無くなった。襲う事は無くなったが、列車と融合していた鬼が首を斬られた事で、断末魔を上げながら暴れたせいで列車は線路から脱線した。

 

「全く…静かに死んでくれよ…」

 

列車が横転すれば間違い無く乗客は怪我をする。

後藤達の仕事を増やすわけにはいかないと思った俺は、六杖光牢で横転しそうになる列車を支えた。六杖光牢で支えている間に歩ける奴は自分で歩いてもらい、怪我人は俺が運んで乗客を列車の外へ避難させていた。

 

「師範!!」

 

「ん、お勤めご苦労さん獪岳」

 

「ありがとうございます!俺も乗客の避難を手伝います!」

 

獪岳の手伝いのお陰で無事に乗客全員の避難が完了した。

炎柱と交わした約束通りに俺は獪岳を連れて撤収しようとした時、先頭車両の付近で爆発音に似た音が聞こえてきた。霊圧で視力を強化させて先頭車両の方を見たら、瞳に上弦ノ参と書かれている鬼が居た。

 

「獪岳…急いで乗客を此処から遠くに避難させるぞ!」

 

「どうしたんですか師範?それにさっきの大きな音も聞こえてきましたし」

 

「さっきの音は上弦ノ参が現れる時に地面に着地した音だ。そして、先頭車両の方に上弦ノ参が来たみたいだ」

 

「な、何で上弦ノ参が此処に…」

 

獪岳が疑問に思う事は分かるが、今は乗客を少しでも遠くに避難させるのが先決だ。俺の鎹鴉「蓮」に頼んで後藤に早く来て欲しいと伝言を預けて飛んでもらい、俺と獪岳は怪我人を運びながら乗客達をこの場から少しでも遠くに避難するように声を掛けて誘導を始めた。

 

 

 

痛い…痛いよ…。

猗窩座イベントが始まってから杏寿郎さんと一緒に猗窩座と戦った。呼吸無しで下弦ノ鬼を倒せるフィジカルを貰い、そのフィジカルを呼吸で更に強化したけど、結果は猗窩座にダメージを与えられず、私は日輪刀、右腕、肋骨、左足を折られた…。炭治郎達は猗窩座に怯えて動けず、杏寿郎さんが猗窩座と戦っている姿を見ているだけだった。

 

「鬼になると言え杏寿郎!!その役立たずの女の為にお前は死にかけているのだぞ!」

 

杏寿郎さんはボロボロになった私を守って、腕や肋骨を折る等の重症を負わされた。原作みたいに片目も潰され、杏寿郎さんは満身創痍で猗窩座と戦っている。このままじゃ、杏寿郎さんが原作通りに死んでしまう。

杏寿郎さんを助けたい!!どうすれば助けられるのか考えていたら…。

 

──柱二人も居てそのザマかよ…

 

アイツの声…透也の声が聞こえた…。

一体何処に居るのか探すと、透也が刀を肩にかけて列車の上に立っていた。透也の横には継子である獪岳も立っていた。

 

 

「乗客避難させて来てみれば、随分とボロボロにされてるな?」

 

乗客を避難させて来てみたら、上弦ノ参に可愛がられてボロボロ姿の炎柱と愛崎姫乃が居た。愛崎姫乃に至っては骨を折られて地面に這いつくばっていて、この状況だけど爆笑しそうになった。

 

「何故ここへ来た?」

 

「不甲斐ない柱二人のせいで、未来あるこの子達が死んだら困るから来ただけだ。戦えそうにない満身創痍の柱はさっさと下がってろ」

 

「俺はまだ──「俺と杏寿郎の戦いを邪魔するな!!」」

 

こいつをさっさと退場させようとしたら、上弦ノ参の拳が俺に向かってきていた。俺は咄嗟に逆撫の腹で上弦ノ参の拳を受け止め、炎柱の胸倉を掴んで愛崎姫乃に目掛けて投げた。

 

「お前も杏寿郎と同じ柱だな!お前から流れている闘気は杏寿郎を凌駕している!俺の名は猗窩座!!お前の名はなんと言う!」

 

「鬼殺隊逆柱・御影透也だ」

 

「御影透也だと…。浅草であの方を侮辱した柱だな!」

 

「まあ、そうなるな」

 

上弦ノ参の問に素直に答えたら拳を強く握って構え始めた。

俺も逆撫を構え戦闘態勢に入り、視線は上弦ノ参を見たままで後ろに居る獪岳に炭治郎達と柱二人の応急処置を頼んだ。

 

「炭治郎達は分かりましたが…この二人の治療なんてしたくありません!!どうして師範を侮辱する輩に治療なんてしなくてはならないんですか!!」

 

「私情を捨てろ獪岳…。鬼殺隊という組織にとって重要な事だ」

 

「ですが!「これは師範命令だ獪岳!!」!?」

 

「お前が俺を思ってくれるのは嬉しい…。だが、鬼殺隊に属している以上、組織の為だと思ってやってくれ…頼む」

 

「分かり…ました…」

 

獪岳は渋々ながら了承してくれた。

後ろは獪岳に任せる事が出来たお陰で、俺は上弦ノ参だけに集中出来そうだ。

 

___________________________________________________

 

○質問コーナー

数々の質問が寄せられたので、この場で答えていこうと思います。

 

Q1.愛崎姫乃は猗窩座を逆ハーのメンバーに加えようとしていますか?

 

A.逆ハーに加えようとしていません!

 

理由:愛崎姫乃は鬼滅の刃原作の読破者で狛恋のカップリングが好きなので狙ってません!

 

Q2.御影透也は隠と刀鍛冶の里との関係はどうなのですか?

 

A.隠は古株とは良好 刀鍛冶の里とは良好

 

理由:隠の古株、刀鍛冶の里の人達は透也の性格をよく分かっているので噂に流されずに透也との関係は良好です。

 

Q3.愛崎姫乃の最後はどうなんですか?

 

A.あまりネタバレはしたくありませんが、最後は鬼のようにちゃんとした過去を出しつつ透也とぶつかり合う予定です。

 

理由:この物語を書き始めた頃から決めていたので、バットエンド希望の方は大変申し訳ないです。

 

Q4.宇隨天元の嫁三人は透也のハーレムに入りますか?

 

A.入らない予定です

 

理由:宇隨天元の嫁三人は姫乃に会う前の天元を知っていて、何時かはちゃんと元に戻ると信じている設定にしているので、透也側には行かないと思います。宇隨と違って嫁三人は透也を見かければキチンと天元の代わりに謝罪をしています。

 

Q5.甘露寺蜜璃、時透兄弟が透也側について

 

A.甘露寺は鬼殺隊入隊前に出会っていて、時透兄弟は命の恩人

 

理由:これに関しては番外編で投稿しますのでお楽しみに!

 

Q6.杏寿郎は透也への対応が悪いのに父親と母親から勘当をくらっていないのか?

 

A.透也が止めたからです。

 

理由:鬼殺隊の戦力である杏寿郎が暴れて内部分裂を防ぐ為に、透也は槇寿郎と瑠火さんの二人が作った透也への借り使って何もしなくていいと頼み、透也の頼みのお陰で煉獄家に居ます。

 

Q7.鬼道を使う透也は周りから鬼だと思われないのか?

 

A.一応、鬼道については鬼と間違われないように先代の御館様に頼んで説明してもらっています。

 

理由:透也も人間が異能を持っている以上、鬼と間違われる可能性を危惧して柱になった当時の御館様に自分から話して、周りへの説明をしてもらっています。

なので、透也の噂には「逆柱・御影透也は生まれながら異能を持っている」という噂が流れています。

 

以上が寄せられた質問でございます。

また、何かあればコメント欄にお書きくださいm(_ _)m




読んでいただきありがとうございます!


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さらなる刺客

少し編集して再投稿しました。


猗窩座との戦いは熾烈を極めていた…。

俺を殺しにかかってくる猗窩座に、二人の爺さん*1に叩き込まれた呼吸、鬼道を駆使しながら戦っていた。猗窩座が繰り出してくる体術の血鬼術が後ろへ行かないように全て防いでから攻撃に転じて鬼道や逆撫で斬りつけてダメージを与えるが、傷を負った傍から再生していく鬼の肉体に致命的なダメージを与えられなかった。

 

「殺すには惜しすぎる…。透也!!あの方に頭を下げ詫び、鬼になれ!!」

 

「俺は鬼殺隊を支える柱だ!!ワカメ頭に謝るのも鬼になるのも断る!!」

 

「何故鬼にならない透也!!老いて醜く死んでいくより、永遠の命を手に入れ、俺と永遠に戦おうではないか!!」

 

無惨に謝罪して鬼になれという申し出を断ったが、猗窩座は勧誘を辞めることは無く、しつこく俺に無惨に謝罪をして鬼になれと言ってくる。そして、隙あらば後ろで治療している獪岳達を狙って使っていた血鬼術を俺一点に集中して繰り出してきた。猗窩座が繰り出す血鬼術を逆撫で防いだが、全てを防ぎきる事は出来ず、猗窩座の繰り出してきた血鬼術をくらった。猗窩座の攻撃をくらった箇所から血が流れ、骨が軋むような痛みが走った。

 

 

俺は師範の指示に従い、嫌だが炎柱と愛柱、炭治郎達の治療をしていた。俺の後ろでは師範が上弦ノ参と戦いながら、俺達の方へ上弦ノ参の攻撃が行かないように攻撃を一人で防いでくれていた。

 

「俺達を治療してくれて感謝する」

 

「うるさい…。好きでアンタ達の治療をしている訳じゃない、師範の命令だからやっているだけだ」

 

治療の最中に話しかけてきた炎柱にきつい口調で返した。

何時でも鬼殺隊の事を第一に考えている師範にありもしない噂を流した女、その噂を信じて師範に対して最低な言動をする男何かと話なんてしたくなかった。

 

「アンタらは何考えてんだよ…」

 

「何がだ?」

 

「師範に対して何を考えているかって聞いてんだよ!!鬼殺隊の事を第一に考え、今でも上弦ノ参の攻撃が俺達の方へ行かないように戦ってくれている師範に対してどうして酷い事ができるんだよ!!」

 

俺はこいつらに思いの丈をぶつけた。

こいつらは俺の言葉に返事をする事無く、バツの悪そうな表情をしながら顔を俯かせた。こんな奴らを生かしておいても意味は無いんじゃないかと思いながら、師範に言われた様に二人の治療を続けた。

 

 

 

分からない…。

俺は男の風上にも置けないと思っていた奴の継子に治療を受けながら考えていた。元花柱・胡蝶カナエを囮にして上弦ノ弐と戦っていたと噂や姫乃が言っていたが、今目の前で起きている事は噂とは正反対だった…。

御影透也は負傷している俺や姫乃を囮にする事無く、継子に治療を任せ、俺達を守りながら戦っている。

継子の一言、そして今の奴の姿を見て、俺は噂が間違っているのか、それとも俺達の前で良いように見せているのか分からない…。

 

『鬼殺隊の事を第一に考え、今でも上弦ノ参の攻撃が俺達の方へ行かないように戦ってくれている師範に対してどうして酷い事ができるんだよ!!』

 

奴の継子から言われた言葉に俺は顔を背け、何も答えることが出来なかった…。ただ、俺が奴の事について理解出来たのは、継子から慕われている事だけだった。

 

 

「それほどの力を有していながら何故鬼にならない!!歳をとり、醜く老いていけばその力は廃れていくのだぞ!!」

 

「可哀想な奴だな猗窩座…」

 

「なんだと?」

 

「人間は必ず歳をとり老いる…だから俺は次の世代という若葉の養分となり、力や意志を託して育てるんだよ…。お前ら鬼達に無い人間の生き様と止まることの無い進化だ!!」

 

戦闘が始まってからずっと受け身だった透也が攻勢に出た。

透也は猗窩座の懐に瞬歩で一気に接近し、逆撫を振るって猗窩座の左腕を斬り飛ばした。左腕を斬り飛ばされた猗窩座は即座に透也から距離を取り、左腕を再生させた。

 

「貴様!?今までが本気では無かったのか!!」

 

「今までは俺の継子が怪我人を治療していたからな、攻撃が後ろへ行かないように配慮してたんだよ。継子が怪我人の治療が終わり、継子が動けるようになったお陰で後ろを気にする事がない今、お前に集中できる」

 

獪岳が怪我人への治療を終え、獪岳が自由に動けるようになった事で、透也は後ろへ攻撃が行かないように配慮する事が無くなり、猗窩座へ集中する事が出来るようになった…。透也は再び攻撃を仕掛けようと猗窩座の元へ接近した矢先、横から無数の斬撃が透也を襲った。透也は襲い来る無数の斬撃を断空で防ぎ、斬撃が飛ばされてきた方へ視線を向け、そこに立っていた人物に目を見開いた。

 

「猗窩座に加えてお前も来るとはな────黒死牟」

 

透也に向けて斬撃を放ったのは、浅草で邂逅を果たしている上弦ノ壱・黒死牟だった…。

 

 

俺は弱い…。

ヒノカミ神楽の影響で体を動かせない俺は、透也さんが上弦ノ参と戦っている姿を見ながら思った。自分が弱いと思ったのは俺だけで無く、両隣に居る伊之助と善逸も同じ様で拳を強く握り締めながら悔しそうに透也の戦っている姿を見ていた。

上弦ノ参を相手に透也さんは、獪岳さんから治療を受けている俺達を守りながら戦ってくれた。透也さんの援護をするだけの力が無い自分が恨めしい…。

 

『人間は必ず歳をとり老いていく…だから次の世代に繋げていくんだよ猗窩座。自分が次世代という若葉の養分となり、力や意志を託して育てるんだよ…。お前ら鬼達に無い人間の生き様と止まることの無い進化だ!!』

 

この時、透也さんは俺達の方に視線を向けて言った…。

透也さんの言葉で自分の不甲斐なさに打ちひしがれていたけど、もっと強くなろうと強く決心した。

 

「おい…炭治郎、善逸」

 

「伊之助?」

 

「伊之助がちゃんと名前を呼んだ!?」

 

「うるせぇ!!黙って話を聞きやがれ!! ハッキリ言って俺達は弱い…鬼と戦っているあいつに援護も出来ねぇ程弱い…。だから、もっと…もっと俺達は強くなるぞ!!」

 

伊之助の言葉に俺と善逸は静かに頷いた。

浅草から俺と禰豆子を守ってくれた透也さんへ恩返しが出来るように強くなろうと決心をした時だった…。

─────むせ返るような血の匂いがした…。

上弦ノ参と戦っている透也さんの右側から無数の斬撃が透也さんに襲いかかった。透也さんは何かを呟くと、斬撃が透也さんの前で何かと接触した様な音を立てて消えた。

透也さんを襲った斬撃が飛んできた方へ目を向けると、そこには六つの目がある鬼が居た。

六つある目の中に上弦ノ壱と書かれていた。

 

 

予想外だ…。

猗窩座だけでも予想外だったのに黒死牟まで来るとは思わなかった。足手まといの柱二人が居るのに黒死牟と猗窩座の上弦ノ鬼二体を()()俺が相手にするのはキツすぎる…。浅草の時は無惨が黒死牟に戦闘を任せっきりだったから切り抜けたが、今回はかなりヤバいかもしれない…。

 

「緊急事態だからな…やるしか無いな…。獪岳!!後ろの事は任せるぞ!!」

 

引き続き獪岳に後ろを任せ──────俺は右掌を顔にかざした。

*1
鱗滝左近次、桑島慈悟郎




読んでいただきありがとうございます!!

読者様にアンケートを取りたいことがありまして、逆撫で月牙天衝を撃つかどうかのアンケートに御協力ください。
何故、逆撫で月牙天衝なのかと言いますと、愛染と戦っていた黒崎一護の父親・黒崎一心の斬魄刀が斬月では無いのにも関わらず月牙天衝を撃ったので透也にも撃たせようか悩んだのでアンケートを取る事にしました。


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苦肉の策

今回で無限列車編は終わり、次回は番外編を少しやって次の章に移ります。


読者様にお願いがありまして、今話で何か指摘があれば教えて頂けますでしょうか?

「何か此処が変」

「こういう書き方の方がいい!」

アドバイスがありましたらドシドシ感想欄に書いてください!



透也さんが右掌を顔の前に翳し始めると、白い何かが右掌に集まりだした。白い何かが集まる度に、暖かかった透也さんの匂いが冷たい匂いに変わっていった…。翳していた右掌を振り下ろすと、透也さんの顔に骨で作られた様な面が着いていた。

透也さんが面を着けると、上弦ノ壱が現れた時とは比べ物にならない程の威圧感を感じた…。

 

「か、獪岳さん、透也さんのアレは何でしょうか?匂いも纏っていた雰囲気も変わって別人の様です!!」

 

「あ、兄貴…俺も教えて欲しい。あの人から聞こえてくる音が何時も聞いていた音と全然違くて…炭治郎と同じく別人みたいなんだけど」

 

「俺様にも聞かせやがれ貝殻!!何時もの気配と全く別モンに変わったぞ!!」

 

善逸も伊之助も透也さんが面を着けた以外の事に気づき、透也さんの継子をしている獪岳さんに透也さんの変化について尋ねた。獪岳さんは俺達一人一人の顔を見てから、透也さんについて何を知っているのかと聞かれた。俺達が知っている透也さんは、鬼殺隊逆柱である事、透也さんは霊力を自在に操る事が出来る事、透也さんは斬魄刀と呼ばれる意志のある刀を持っているという事を知っていると伝えた。

 

「殆ど知ってるなら話は早そうだ…。師範が着けている仮面は師範の奥の手である虚の仮面だ」

 

「ほ、虚の仮面?」

 

「ああ、霊力という俺達には無い力を持って生まれた師範には…自分とは違う虚という別の存在が精神に存在していた。師範の中に居る虚は強く、精神世界で内に潜む虚との戦いに勝ち、今の姿を手に入れたと言っていた。あの姿を虚化というらしい」

 

「虚化…」

 

獪岳さんの説明を聞き終え、虚化した透也と上弦ノ鬼達が睨み合っている所を俺達は黙って固唾を飲んで見ていた。

 

 

 

黒死牟と猗窩座は透也の変化に驚きを隠せなかった…。

虚化した透也から発せられる威圧感と眼光に、二人は少しばかりの恐怖を感じた。そして、両者が一歩も動かなかった状況に透也が二人より先に動き始めた。

 

『行くぜ…』

 

一言呟いた瞬間、透也が黒死牟と猗窩座の前から消えた…否、二人が目に追えない速度で移動した。二人が次に透也を目にしたのは、自分達の目の前だった。黒死牟は刀で斬りかかろうと刀を動かし、猗窩座は術式を展開して透也を殺そうと動こうとしたが二人の攻撃より透也の方が速く、透也は黒死牟と猗窩座の両腕を斬り落とした。

 

「仮面を着けただけでこれ程まで強くなるとは面白い!!」

 

「さっきは油断をしたが…ここからは本気で殺しに行く」

 

黒死牟と猗窩座は腕を斬り落とされた瞬間に透也から距離をとり、腕を即座に再生させながら透也の分析を行った。腕の再生が終わると、二人の目が獲物を捕らえようとする獰猛な獣のような目付きに変わった。

 

 

 

虚化したお陰で、本気になっている黒死牟と猗窩座を相手に張り合う事が出来ている。黒死牟が無数の斬撃を飛ばし、飛んでくる斬撃を捌いている背後を猗窩座が攻撃を仕掛け、刀と素手という違うタイプの敵を一遍に相手にするのはキツ過ぎる…。

上弦ノ壱と上弦ノ参という十二鬼月の上位に入っている二人の猛攻を防いでは攻撃に転じ、防いでは攻撃に転じを百を超える程繰り返していた。

虚化をしていても無限に体力が増える訳もなく、百を超える攻防で体力も気力も限界に近づき、仮面にヒビが入った。

 

『ハァ…ハァ…』

 

「私達の攻撃を防ぐとは中々だ…。だが、やはり体は人間…その証拠に息が荒くなってい───その耳飾りは!?」

 

俺に何かを言おうとした黒死牟の視線が別の方へ向き、耳飾りがどうたらと言って驚き、俺は驚いている黒死牟の視線を追ってみたると、視線の先に炭治郎が居た。

 

「猗窩座…私は今すぐに殺さねばならぬ者が居る…。その者を殺し終えるまで…その男を抑えていろ」

 

黒死牟は炭治郎の耳飾りを見た瞬間に顔色を変え、炭治郎を殺そうと動き出した。俺は炭治郎を殺そうとする黒死牟を止めに動こうとしたが、猗窩座が黒死牟の元へ行こうとする俺の邪魔をした。

 

『そこを退け猗窩座!!』

 

「よっぽどあの餓鬼が大事と見えるが、お前を行かせる訳には行かないな!!お前は俺と戦い、あの餓鬼が無様に死んでいく様を見るんだ!!」

 

俺は残り少ない力を振り絞り、黒死牟の元へ行こうとすると必ず邪魔をする猗窩座に挑んだ。

 

 

 

むせ返るような匂いと恐怖が近づいて来る…。

上弦ノ壱が近づいてきているのに、俺を含め誰もが金縛りにあったように体が動かせなかった。

 

「その耳飾りをしている者は…例え女だろうとこの世から消さねばならない…」

 

上弦ノ壱は俺の頭に狙いを定めて刀を突き刺そうとした。

透也さんが俺の名前を懸命に呼んでる声がするけど、死を覚悟して俺は目を閉じた。

 

「さらばだ…縁壱の耳飾りを持つ者よ…」

 

上弦ノ壱が刀を振り下ろすのを風で感じたが…俺の頭に一向に刺さらず、頬に生暖かく鉄の匂いのする物が当たった。恐る恐る目を開けると目の前には──────上弦ノ壱の刀で腹を貫かれている透也さんが立っていた。

 

『怖い思いをさせて悪いな炭治郎…』

 

「と…うや…さん?」

 

腹を貫かれ…血を多く流している透也さんが自分より俺の事を心配して声を掛けてくれた。俺は目の前で起こっている事を理解出来ず、ただただ透也さんの名前を言うことしか出来なかった…。

 

 

 

痛てぇ…。

猗窩座を列車の下敷きにして少しだけ動きを止め、炭治郎の元へ向かった。黒死牟の刀を縛道では間に合わないと判断した俺は、炭治郎を守る為に腹を貫かせて黒死牟の刀を止めた。貫かせた刀を抜かれないように、腹に力を入れ、左手で黒死牟の腕を潰す勢いで握った。

 

『悪いがお前の思い通りにはさせねぇ…』

 

「離せ御影透也…。その耳飾りをつけている者は必ず殺す…邪魔をするな!!」

 

『冷静沈着な奴がこうも取り乱すとはな…あの耳飾りには何か特別な物なんだろうな?なら、尚更殺させる訳にはいかねぇな』

 

俺は逆撫を握っている右腕を上げ、虚化の影響で黒くなった霊圧を高めた。霊力を高めていると、列車の下敷きになっていた猗窩座が怒りながら出てきた。黒死牟は俺がしようとしていることを直感でヤバいと感じたのか、俺から離れようと必死だった。

 

『今の俺の全力だ…。月牙ァァ…天衝!!!!』

 

俺の霊圧、白也の霊圧、逆撫の霊力と三位一体となって放つ事が出来る、俺専用の月牙天衝だ…。俺の月牙天衝は完全に黒死牟と猗窩座を捕らえ、二人を飲み込んだ。月牙天衝を放ったら、虚の仮面は割れて通常状態に戻った。血を流しすぎている俺は止血をする為に、腹に刺さっている黒死牟の刀を抜き、全集中の呼吸で止血を行った。

 

 

「まさか斬撃を放つ事が出来るとはな…」

 

「やはり惜しい男だ御影透也!!」

 

透也の月牙天衝を受けた黒死牟と猗窩座だったが、腕や足が無くなっていたが生きていた。鬼の超回復により透也の月牙天衝で受けた傷はみるみる内に治って行き完治した。だが、炭治郎達の目には別の方向を見て話している黒死牟と猗窩座の姿が映っていた。

 

「この刀の能力だ…。この刀…逆撫は相手が認識する上下左右前後、それと嗅覚、見えている方向・斬られた方向の感覚を全て“逆さま”にする力がある。俺がさっき放った斬撃には逆撫の能力を乗せておいたんだ…今のうちにここから離れるぞ」

 

黒死牟が現れた瞬間に透也はこの作戦を立てて居た。

黒死牟と猗窩座に逆撫の能力が効いている間に、透也達はこの場を離れた。幸いにも太陽が登り始めている為、万が一にも効果が切れても追ってくる可能性は0だ。

ある程度まで逃げると、透也達を待っていた隠達と合流した。

 

「早く治療をしましょう師──────」

 

獪岳は治療を勧めようと透也に声を掛けたが…透也が静かに前のめりで倒れていた。透也の服を見ると血が滲んでおり、服が切れている部分からは所々が青く腫れているのが見えた。獪岳は直ぐに透也を起こしながら、脈を測った。透也の脈は弱々しく、早く治療をさせなければ命に関わると判断した獪岳は、自身の鎹鴉に透也の状態を蝶屋敷に居る人に教え、治療を直ぐに始められるように準備をして欲しいと伝え、蝶屋敷に向かわせた。

 

「か、獪岳さん…俺のせいで透也さんは…」

 

「師範は自分の責務を全うして負った怪我だと言うだろう…。だから、自分を責めるより師範に感謝の言葉を言ってくれ…その方が師範も喜ぶ」

 

「はい…」

 

自分を庇って重症の怪我を負わせてしまったと自責の念に駆られている炭治郎に獪岳はそう言うと、迎えに来た後藤の車に乗り、蝶屋敷へと向かった。残された愛崎姫乃、煉獄杏寿郎、炭治郎、伊之助、善逸の五人は他の隠達と共に蝶屋敷に運ばれた。蝶屋敷へ運ばれている間、柱二人は何かを考えて無言になり、炭治郎達は悔し涙を流していた。




読んでいただきありがとうございます!!


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一時の休息

リアルが忙しくて中々投稿出来ずにすみません!!


蝶屋敷へと運び込まれた透也は出血多量で生命の危機に瀕していたが、しのぶとカナエの二人の懸命な治療によって透也は命を繋ぎ止めることが出来た。

治療を終えた透也は、アオイが準備していた透也専用の部屋へ運び込まれた。

透也が運び込まれてから三日が経ったが、透也が目覚める事は無かった。

 

「早く…早く目を開けてくださいよ師範…」

 

「獪岳さん…」

 

透也が蝶屋敷へ運び込まれてから獪岳は毎日蝶屋敷へ足を運び、透也の側に来ては声を掛けて目覚めるのを待ち望んでいた。透也が目覚めるのを待ち望んでいるのは獪岳だけで無く、透也を慕う柱や隠、動けない自分の代わりにあまねや子供達に様子を見に行ってもらう産屋敷耀哉も透也の目覚めるのを待っていた。

 

「透也はまだ目覚めていない様だな…」

 

病室の入り口から声が聞こえ、獪岳と炭治郎が入り口の方へ視線を向けると、そこには現・炎柱の父親の煉獄槇寿郎と妻である煉獄瑠火が病室に入ってきた。

 

「お久しぶりです。槇寿郎さん、瑠火さん」

 

「久しぶりだな獪岳…息災だったか?」

 

「ええ…。俺は何も無かったですが…師範が…」

 

「透也さんの事は槇寿郎さんの鎹鴉から聞きました。透也さんが目覚めてからも言いますが…獪岳さん、馬鹿な息子に治療を施していただきありがとうございます」

 

槇寿郎と瑠火の二人は、息子への応急処置をしてくれた獪岳へ頭を下げながら感謝の言葉を伝えると同時に杏寿郎が透也の非礼の数々を謝罪した。頭を下げる二人に獪岳は慌てながら、頭を上げて欲しいと頼み込んだ。

 

「あ、あの…このお二人は何方でしょうか?」

 

「この二人は、お前が一緒に合同任務をしていた炎柱の両親だ。槇寿郎さんは元・炎柱で師範の事を理解してくれている人だ」

 

「そうなんですか!!あの、俺は竈門炭治郎と言います!!」

 

「そうか…。お前が竈門炭治郎か…お前の事は透也から聞いている。そして─────日の呼吸を知りたいって事も聞いている」

 

炭治郎が一度目の蝶屋敷での療養中にヒノカミ神楽又は日の呼吸について胡蝶しのぶに尋ねていた。胡蝶しのぶはヒノカミ神楽も日の呼吸も知らない為、炭治郎の質問に答える事が出来なかった。

そこで胡蝶しのぶは透也にヒノカミ神楽と日の呼吸について知らないかと尋ねた。

 

胡蝶しのぶに尋ねられた透也は日の呼吸について考えていたら、山本元柳斎重國の元で剣士の修行をしてた時代、山本元柳斎重國から始まりの呼吸・日の呼吸についての話、日の呼吸についての文献が元弟子だった槇寿郎の元にある事を思い出した。

日の呼吸について思い出した透也は、炭治郎は日の呼吸の手掛かりである槇寿郎の所へ辿り着くと予感して、無限列車の任務へ赴く前に、話を円滑に進める為に槇寿郎へ炭治郎の話をしていた。

 

槇寿郎の口から日の呼吸という単語を聞いた炭治郎は、槇寿郎に頭を下げながら日の呼吸について教えて欲しいと頼み込んだ。元々、透也から炭治郎に日の呼吸について尋ねられたら教えてやって欲しいと言われていた槇寿郎は、懐から日の呼吸が記載されている文献を取り出し、炭治郎に渡した。

文献を渡された炭治郎は文献を開き、槇寿郎の話を聴きながら読み始めた。

 

 

 

 

 

 

上弦の鬼二体から逃げ切り、意識を失った俺が目覚めたら自分の屋敷でも蝶屋敷でも無い、草原に俺は横たわって居た。後頭部には柔らかい感触があり、柔らかい感触の正体を確かめようと首を動かしたら逆撫と目が合った。

 

「やっと目覚めた…」

 

「逆撫?」

 

『そいつだけじゃないぜ』

 

「白也…」

 

柔らかい感触の正体は逆撫の膝枕だった。

どうやら、俺は気を失ってから逆撫によって俺の精神は精神世界へと連れてこられた様だ。俺は立ち上がる為に逆撫の膝から頭を上げようとしたら、逆撫が俺の両肩を掴んで起き上がるのを止めた。

 

「透也は頑張りすぎ…もう少し休んで」

 

逆撫は優しい手つきで俺の頭を撫で始めた。

優しい手つきで撫でられていると、自然に瞼がゆっくりと下へ下へと下がり始めた。現実世界で皆が無事かどうかの確認をしたいが、心地よいそよ風、草の香り、柔らかな逆撫の膝枕に頭撫でを食らっている俺は再び眠りについた…。

 

 

『また眠ったか?』

 

「うん…。やっぱり白也も透也の事心配?」

 

『俺もお前もコイツの為に作られたとはいえ、俺達を屈服させた奴がどうでもいい連中の為に命と体を張っているのが気に食わないだけだ…』

 

「白也、素直じゃない…」

 

頬をかきながらそっぽ向く白也に逆撫は優しい笑みを浮かべて見ていた。白也と逆撫は透也が生まれた時から一緒に居る為、今までの事を透也の中から全て見ていた。今こうしている時間がずっと続けばいいのにと思うのだった…。




読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

次回には透也が目覚めますのでよろしくお願いしますm(_ _)m


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帰還

遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。



逆撫の膝枕で二度寝してから完全に目が覚めた。

名残惜しいが…逆撫と白也に感謝の言葉を伝えてから精神世界から抜けようとした時だった…。精神世界から抜け出そうとする俺に、白也が斬撃を放ってきた。俺は直ぐに瞬歩で飛んでくる斬撃を躱して、斬撃を放ってきた白也を睨んだ。

 

「なんのつもりだ白也?」

 

『何のつもりも何も…お前から体の所有権を奪おうとしてるだけだ!!』

 

白也は俺に真っ直ぐ向かって斬り掛かってきた。白也が体の所有権を奪おうと襲ってくるのに黙ってやられる訳にもいかず、俺も白也同様に逆撫を構えて迎え撃つ体制を整えた。俺に目掛けて振り下ろされる白也の刃を防ぎ、鍔迫り合いになった。

 

『くだらねぇ連中を助けては恩を仇で返されてるのにも関わらず、助け続けているてめぇに虫唾が走る!!』

 

「お前には関係ないだろ白也!!例え、恩を仇で返されようが!!先代の御館様に託されたものを守る為に俺は戦う!!」

 

耀哉の父親…先代の御館様から俺は耀哉達の事、鬼舞辻無惨を倒して産屋敷家に代々と伝わる呪いの連鎖を終わらせて欲しいと頭を下げられ頼まれた。俺は先代の御館様から頼まれた事を無下にする事無く、耀哉達を守る為、鬼舞辻無惨を倒す為に常に実行していた。愛崎姫乃の妨害があろうが、噂を信じ罵倒をしてくる隊士を助け、先代の御館様が託したものを守っていた。

 

「先代から託されたものを忘れた訳じゃないだろ?俺は…耀哉達を守る為!!産屋敷家が代々と鬼舞辻無惨を討伐する為に作り上げた鬼殺隊に泥を塗らせる訳にはいかねぇんだよ!!」

 

鍔迫り合いを制し、今度は俺から白也へ斬り掛かった。白也に攻撃に移る余裕を与えないように攻めた。白也を追い詰めながら、鬼道をくらわせようと詠唱を始めた瞬間、俺達の手から逆撫が消えた。

 

「2人共…そこまで」

 

『邪魔をするんじゃねぇ…』

 

「透也が大事なのは分かる…。でも、これはダメ」

 

『チッ…』

 

逆撫が白也に何かを言うと、白也は舌打ちをして消えた。白也が消えてから、今度は逆撫が俺に近づいてきて抱き締められた。いきなり抱き締めてどうしたのかと聞くと、逆撫は静かに話し始めた。

 

「透也…。透也が先代との約束を守りたい気持ちは分かる…でも、透也が守りたいって思っているものが私達の守りたいものじゃない」

 

「それはどういう───」

 

逆撫の言った意味が分からず、どういう意味なのかを聞こうとしたら目の前が真っ暗になった。目の前が真っ暗になるこの感覚は精神世界から出る時に何時も起こっていた。この感覚になっているって事は、俺は逆撫に強制的に精神世界から追い出された。

 

 

 

 

逆撫でに精神世界から追い出された透也は目を覚ました。

目を覚ました透也がキョロキョロと周りを見ていると、槇寿郎が炭治郎へ日の呼吸についての話をしている横で、話を聴いていた獪岳と目が合った。

 

「師範?」

 

「よ…よぉ…獪…岳…」

 

「師範!!」

 

喉がカラカラに乾いている透也は掠れた声で獪岳の名前を呼んだ。獪岳は透也が目覚めた事に喜び、今いる所が病室である事を忘れ大声を上げて透也の目覚めを喜んだ。近くに居た槇寿郎と瑠火、炭治郎は透也の目覚めにホッとして居た。特に炭治郎は、自分の身を挺してまで守ってくれた透也が目覚めた事に、自然と涙を流していた。

 

「桑島さん?ここは病室なので静かに───透也さん!?」

 

「悪…い…み、水を…くれ…な、ない…か?」

 

「わ、分かりました!!しのぶ様とカナエ様に知らせてきます!!」

 

獪岳の大声を注意しに来たアオイは、透也が目覚めた事に驚いていた。アオイは透也から水を持ってきて欲しいと頼まれ、大至急で水を取りに行き、水を運んでいるついでにしのぶとカナエに透也が目覚めた事を知らせ、水を透也元へ運んだ。

 

「喉ってカラカラになると上手く喋れないもんだな」

 

「全く、お前って奴は…」

 

呑気な事を言った透也に槇寿郎は溜め息を吐きながら、呆れたような目で見ていた。瑠火と獪岳は透也らしいと苦笑いし、炭治郎とアオイは透也が無事に目覚めてくれた事に目を潤ませた。透也は炭治郎の頭に手を置き、無事で良かったと言うと炭治郎は泣きながら透也を抱き締め、命を張ってまで助けてくれた事への感謝の言葉を言った。

 

「「透也さん!!」」

 

アオイの報告を受けてから暫くしてカナエとしのぶが透也の病室にバタバタと駆け込んで来た。カナエとしのぶが透也の前に来ると、体の調子や痛みを感じる場所は無いかと心配そうな表情をしながら透也に尋ねた。

 

「寝すぎて体がだるい以外は何ともねぇよ」

 

肩を回しながら透也は何ともないと二人にそう言ったが、念の為に後で検査をさせてもらうとカナエとしのぶが声を揃えて言った。透也が目覚めて少し賑やかになりそうな所で、瑠火が目覚めたばかりの透也にあまり無理をさせてはいけないと言う一言で一旦解散した。槇寿郎と瑠火は「また来る(ます)」と言い屋敷へ帰り、炭治郎は伊之助と善逸にも透也が目覚めた事を伝えに自身の病室へと帰った。カナエ、しのぶ、アオイの三名も他の病人の治療やら仕事をする為に、名残惜しそうに持ち場へ戻った。

 

「心配をかけたみたいだな…」

 

「本当ですよ。産屋敷家、義勇さん、蔦子さん、真菰、行冥さん、甘露寺さん、時透兄弟も師範が目覚めるのを待ってたんですよ?」

 

「フッ…。俺の身を案じてくれて有難いな…だけど獪岳?俺が寝ている間に噂の一つや二つ程出たんじゃないか?」

 

 

透也の言ったことに、獪岳は苦虫を噛み潰したような顔になった。透也の推測通り、無限列車での任務が終わり愛崎姫乃、煉獄杏寿郎が負傷して蝶屋敷へ運ばれてから噂が流れた。

 

・炎柱、愛柱を囮に使い上弦ノ鬼を退けた鬼畜

 

透也が眠っている間、そんな噂が流れていた。

透也はそういう噂が出てくるだろうと予想していた為、噂が出てようが気にしないようにしていたが獪岳は悔しそうに拳を強く握っていた。

 

「そんなに強く拳を握ると怪我するぞ?」

 

「上弦ノ壱、上弦ノ参を相手に乗客や炎柱と愛柱を守ったのに…こんなのあんまりじゃないですか…。事実確認もしない、ありもしない噂に踊らされてる愚者なんかに…」

 

「もういい、獪岳。俺は…お前や俺を信じてくれる奴らが居るだけで十分だ」

 

透也の言葉に、これ以上何も言えなくなった獪岳は静かに透也のベットの横にある椅子に腰掛けた。自分の為に怒ってくれている獪岳に、透也は『ありがとう』と感謝の言葉を呟いた。

 




読んで頂きありがとうございますm(*_ _)m


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緊急会議

編集して再投稿させていただきました


俺が目を覚ましてから1時間もしない内に、俺の病室に大勢の人間が押し掛けてきた。病室に押し掛けてきた全員が、俺が目を覚ましてくれて良かったと口を揃えて言ってくれた。特に蜜璃、真菰、蔦子さんが無茶な事はしないで欲しいと涙目で懇願された。

柱である俺は任務に危険が付き物だが、出来る限り五体満足で帰ってくるようにすると約束をした。

 

「さて皆さん、透也さんはこれから診察を行ったりしますので今日はここまででお願いします」

 

しのぶの一言で見舞いに来てくれた行冥達は、明日も見舞いに来ると言って病室から出て行った。行冥達が出て行き、病室には俺、しのぶ、カナエ、獪岳の四人だけになった。

 

「しのぶ、カナエ、治療をしてくれてありがとう」

 

「いえ、当然の事をしたまでです。それに、少しでも透也さんに恩返しが出来て良かったです」

 

「目覚めてから二日間は入院してもらいますから、安静にしててくださいね?」

 

「医者の言いつけにはちゃんと従うよ」

 

カナエにあと二日は絶対安静にするように言われ、1度屋敷に帰ろうと思ったが無理そうだ。耀哉に手紙を書きたいと言ったら、獪岳が代わりに書くと申し出た。獪岳に俺が目覚めた事、絶対安静が解除される二日後に産屋敷家に顔を出しに行くと言う内容の手紙を書いてもらい、日向の足に括り付けて耀哉の元へ届けるように頼んだ。

 

「そう言えば…愛崎姫乃も入院してるのか?」

 

「その…姫乃さんは───」

 

愛崎姫乃は上弦ノ参との戦闘で骨を折られたと言っていたから、あいつも入院しているのかと聞いたら、1日前に退院したらしい。俺が蝶屋敷で1週間と二日程眠っていたらしいんだが、あいつは4日位で異常な速度で回復し、昨日でほぼ完治レベルにまで回復して自分の屋敷に帰った様だ。機能回復訓練をしてから鬼殺隊に復帰するみたいだ。

 

 

 

二日後…。

透也が目覚めてから二日が経ち、カナエから絶対安静解除が言い渡された。この二日間で透也は絶対安静をしながらも、透也が目覚めた時に任務で居なかったカナヲが透也の布団へ潜りこんでカナエとしのぶ、アオイに怒られたり、禰豆子が深夜に透也の部屋に忍び込んで布団に潜り込んだりと退屈しない二日間を過ごした。

 

『カァー!透也サマ!御館様ノ命ニヨリ緊急柱合会議ヲ開キマス!!』

 

「十中八九、無限列車の事だな…」

 

日向から緊急柱合会議の知らせを受けてから少しして、透也の病室に新しい隊服を持った隠の後藤がやって来た。後藤は柱合会議に参加する透也の迎え次いでに、先の戦闘でボロボロになった隊服を捨て、新しい隊服を持ってきたのだ。

透也は後藤に渡された新しい隊服に着替えていると、今度は獪岳が病室にやって来た。丁度、獪岳を呼ぼうとしていた透也は呼ぶ手間が省けて助かったと思い、獪岳にも一緒に柱合会議に参加してもらう事を伝えた。目の前のやり取りを見ていた後藤は直ぐにもう一人の隠を呼び、透也と獪岳を産屋敷邸へと連れて行った。

 

 

後藤の背中に乗って運ばれてから数分で産屋敷邸に到着した。

産屋敷邸の庭には俺以外の柱達が既に居て、行冥、義勇、蜜璃、しのぶ、時透兄弟が俺が来たことに気づくと俺の所に集まって来た。

 

「透也さんはもう動いても大丈夫なの?」

 

「まだ少し体が重く感じるが大丈夫だ。心配してくれてありがとうな無一郎」

 

「南無…。あまり無理をするなよ透也?」

 

「わかってるよ」

 

少し過保護過ぎないかと内心思っていたが、それだけ皆が俺を気にかけてくれている事が嬉しかった。心配してくれる仲間達と話していたら、屋敷の方から三つの足音が聞こえてきた。俺以外にも聞こえてるらしく、耀哉が姿を表す前に柱全員、横並びになって膝を着いて耀哉が姿を表すのを待っていた。

 

「「御館様の御成です…」」

 

 

 

ひなきとにちかの耀哉が出て来る事を知らせる一言が聞こえ、俺は行冥達との会話を辞め、獪岳と共に片膝を地面に着き頭を垂れた。産屋敷邸の奥から二つの足音が聞こえ、少し頭を上げて奥からやって来る耀哉の様子を見た。少し体調を崩しているようで顔色が悪く、あまねさんに支えてもらいながらゆっくりと来ていた。

 

「ゲホッ、ゲホッ…。みんな…忙しいのに呼び出してすまないね。今日緊急で集まってもらったのは先の無限列車での任務にて、上弦の鬼から無事に帰ってきた透也達の話を聞こうと思って呼んだんだ…」

 

耀哉は咳き込みながらも、緊急の柱合会議を開いたのは俺達の報告を聞く為にと言った。耀哉の今の体調を考慮して、早めに柱合会議を終わらせて休ませる為に俺が今回の無限列車で起こった事を報告した。やっぱりと言うか、愛崎教の信者達は懐疑的な視線を俺に向けてきた。

 

「上弦の鬼二体を相手によく帰ってきたね。無事とは言えないけど大事な子が帰ってきてくれて嬉しいよ」

 

俺に言っているかのように耀哉は見えてないはずなのに、俺の方に視線を向けてそう言った。耀哉が俺達の帰還を喜んでいると、さっきから雰囲気が暗かった炎柱が口を開いた。

 

「御館様…。御館様から頂きました炎柱を返上させていただきたい」

 

「理由は片目が見えなくなってしまったからかい?」

 

「それもありますが…先の任務で俺は自分が愚か者だと言う事を自覚させられました」

 

炎柱は代々と受け継がれてきた『炎柱』の名にこれ以上泥を塗りたくないと言って締めた。風柱や音柱達が炎柱の引退に驚く中、耀哉は炎柱が引退する事を許可した。

炎柱の今後は質の悪い隊士達を指導する指南役に徹して、鬼殺隊に貢献していくらしい。

 

「杏寿郎が柱を降りてしまうけど、杏寿郎の分も皆には頑張っ「その事なのですが、少しよろしいでしょうか?」どうしたいんだい透也?」

 

俺は自分の言葉を被せて耀哉の話を遮った。

耀哉の話を遮ったお陰で風柱達からは睨まれ、隣に居る獪岳は「何やってるんだ」って表情で俺を見ていた。

 

「炎柱が降りた今、柱に空席が生まれました。空いてしまった空席を埋めるのに適している奴が居るので、そいつを柱に推薦したい」

 

「透也が柱に推薦したい剣士(こども)は誰かな?」

 

「俺は───桑島獪岳を鳴柱に推薦したい」




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新たな柱

この会議が開かれると分かった時から獪岳を鳴柱へ推薦しようと決めていた。昔の獪岳は何処か危なっかしい奴だったが、今の獪岳ならしっかりとした柱になれると確信して推薦した。

俺が獪岳を柱に推薦すると様々な反応が見られた。行冥や義勇達は獪岳を柱に推薦する事に賛成なのか静かに頷き、一人を除いた愛柱教の信者達は反対という視線で獪岳を見ていた。

 

「え、は、師範?俺が柱って...」

 

「お前は柱になれる条件を達している。柱の席が一つ空いてしまった今、お前を柱に昇格させた方が戦力に穴を開けずに済む」

 

俺が柱に推薦した事に戸惑っている獪岳に推薦した理由を話した。俺なんかが...って後ろ向きな事を言おうとした獪岳に耀哉は優しい声色で獪岳の仕事ぶりを褒めちぎり、柱になって欲しいと頼み込んだ。

 

「御館様、俺はそいつが柱になるのを認める事は出来ません」

 

「俺も不死川にド派手に賛成だ。そいつは雷の呼吸で基本となる壱ノ型が出来ないという情報がある。柱である奴が己が使う呼吸を極めてねぇなら、他の隊士に柱が甘く見られ士気が落ちる可能性が出て来る」

 

予想通り、風柱と音柱が獪岳が柱になる事を反対してきた。風柱と音柱に続いて蛇柱も水柱の片割れも反対してきたのだが…炎柱は特に何も言わずに俺を見ているだけだった。愛崎姫乃は笑顔を振り撒きながら、自分は中立だとアピールしていた。

 

「確かに獪岳は壱ノ型は出来ない...。だが、それを補う程の力と実績を持っている。十二鬼月・下弦ノ参と陸、普通の鬼を100以上討伐に成功している。炎柱が柱を退いて空いてしまった穴を埋めるのに適した人材は獪岳の他に居ない」

 

「穴埋めなら時透兄「俺は柱になるつもりは無い」チッ...」

 

有一朗に柱にはならないと言われた風柱は舌打ちした。

俺達のやり取りを静かに聞いていた耀哉は俺が言った獪岳の実績を肯定した。耀哉が獪岳の実績を肯定した事により、獪岳の柱反対派の奴らは何も言えなくなり静かになった。

 

「何も言うことは無いかな?何も無ければ獪岳に鳴柱になってもらいたいけど受けてくれるかな?」

 

「一つ...お願いがあります」

 

「何かな?」

 

「私が鳴柱になっても師範の屋敷に住んでもよろしいでしょうか?」

 

獪岳の願いが柱になっても俺の屋敷に住み続けたいという事だった。柱になれば屋敷が支給されるのにわざわざ俺の所に居なくても良いと言ったんだが、獪岳は俺の屋敷から出ていくのなら柱を断るなんて言い始めた。そんな獪岳に耀哉はクスクスと小さく笑いながら、折角の戦力を失いたくないって事で御館様命令で、獪岳は俺の所に住み続ける事になった。

 

「これからもよろしくお願いします師範」

 

「俺とお前は対等な関係になるだろ?何時までも師範呼びはどうなんだ?」

 

「俺にとって師範は師範です!」

 

「ふふ。改めてよろしく頼むよ獪岳」

 

「鳴柱の名に泥を塗らぬ様に日々精進致します」

 

炎柱が退き獪岳が新たに鳴柱として仲間に加わった。

 

 

 

「忙しい所を集まってくれてありがとう。杏寿郎と透也はまだ傷を完治出来ていないから、怪我を治すことに専念するんだよ?」

 

「はいよ...」

 

「心遣い感謝します...」

 

緊急で開かれた柱合会議は産屋敷耀哉の一言で終了した。

透也は会議が終わった瞬間、絡まれる前に獪岳を連れて産屋敷邸から蝶屋敷へ向かった。

 

「お二人共待ってください〜」

 

蝶屋敷に向かおうとしている二人の後ろを胡蝶しのぶは素の笑顔で追いかけた。三人並んで歩いている後ろを煉獄杏寿郎が複雑な気持ちで見ていた。愛崎姫乃や胡蝶カナエに対して非道な行いをしてきたと噂されてきた男が産屋敷耀哉や一部の柱から信頼され、そんな彼に無限列車で絶体絶命の窮地を助けられ、煉獄杏寿郎は分からなくなっていた。

 

「俺は...俺はどうしたらいい...」

 

杏寿郎の呟きに誰も答える者はおらず、まだ怪我が完治していない杏寿郎も透也達の少し後ろを歩きながら蝶屋敷へ向かった。




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