型月の毒牙にかかったオリジナル戦国大名の末路 (皆さんはFGOのガチャ、当たりましたか?)
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第一話 召喚されたが女だったなんて聞いてない!

生前編を書くのは恐ろしく労力を消費するので、幕間か藤丸立香の夢の中だけになります。


 ずうっと薄暗い世界で、ひとまずの安置として休憩がてら、またもうひとつの理由で立ち寄った、もうここ(亜種特異点F)では見慣れた廃家の中。所長から手渡された三つの石を握りしめて立つ。

 

 今から、この特異点で共に戦ってもらうサーヴァントを召喚するのだ。そう、共に戦うのである。

 

 どうして僕がこんなことにとか、そういう弱い思いを抱かない訳では無い。

 

 しかし、まずはここを乗り切らない限り、先は無い。死ぬのはゴメンだし、僕のせいで大勢が不幸になるのも嫌だったから。

 その為に、過去の偉人の力を借りる。

 もしかしたら、人間に悪意を持つサーヴァントかも知れないし、意思疎通が出来ないサーヴァントかも知れないと、予め所長は言っていたが、もしそうなった場合に真っ先に死ぬのは僕だろう。

 

「先輩、行きますよ⋯⋯」

「う、うん。マシュ、お願い」

 

 緊張が汗となって滲む。

 所長が成り行きを見守る中、マシュ(後輩)の視線に応えて、虹色に輝く金平糖のような不思議な形をした石、聖晶石を三つ、煤けた地面の上に置かれた大きな盾に放り投げる。

 盾に向けて投げた聖晶石が分解されるように消えてゆき、盾の上から現れた三つの輪っかがそのまま空中に浮び上がる。

 

「っ!?」

「⋯⋯っ、これは凄いのを引き当てたみたいね」

 

 突如として辺りのものを吹き飛ばすような突風に襲われ、両手で顔を覆う。

 腕と腕の隙間から覗けば、三つの輪は虹色に輝きを放ち回転していた。

 

『ふ、藤丸君! 凄い反応だよ!?』

 

 ドクターの驚愕の声、たとえそれが無くとも、魔術のまの字も知らない僕にも分かるような強大な力の奔流が、廃家の中で荒れた。

 

 次の瞬間、視界を埋め尽くすような眩い光が放たれ───

 

 

「サーヴァント、ライダー、ここに推参。これより、貴卿の臣として力を振るう所存」

 

 

 ───そこに居たのは、真っ白な肌とは正反対の漆黒の髪を靡かせる美しい女性(・・)

 細いながらも体型を隠すような鎧甲冑を身に纏い、刀を腰に提げる姿はイメージに紛れもなく武将(・・)そのもので。

 何を抱いているのか、一般人の僕じゃ図り知ることなどできないような、濁りの無い黒の眼が僕を見詰める。

 

 ───お前は、本当に世界を救うマスターとして、覚悟を決めているか?と。

 

 

「⋯⋯ふむ。ならば、我が手を取り立つと良い。私が貴卿を守る盾となり、貴卿の道を拓く一振りとなることをここに誓おう」

 

 いつの間にか腰が抜けて地べたに座り込んでいた僕の前に、さも当然と言わんばかりに差し出された篭手を纏う手が、今の僕にどれだけ頼もしく見えたことか。

 

 しかしそれ以上に、この人から守る対象としてしか見られていないのだろうという確信じみた直感に、何か胸が針で刺されるような痛みを感じた。

 

 

 

 ▽

 

 

 

 ───転生して戦死したと思ったら、また転生した件。いや、転性(TS)した件。しかも、霊的存在(サーヴァント)だったんですけど。

 

 そして、目の前に居るのは前前世で見たことのあるソシャゲの主人公(藤丸立香)と、その後輩(マシュ・キリエライト)、そして上司(オルガマリー・アニムスフィア)。上司がいるということはチュートリアルステージがまだ終わっていない頃合か。

 未だ放心する主人公と後輩に、何やらはしゃいでる上司。そして、私。ここはどこかの家の中だな。なんか散らかってて凄いことになってるけど。

 

 ⋯⋯冷静に分析したが、ショックから立ち直れていない。なんとか、平静を装って主人公に声を掛けることが出来たのでそこは良し。

 

 だが、私は何故、英霊なんてモノに?

 

 私が活躍したあの時代は、織田も上杉も女じゃなかったし⋯⋯。

 というより、名有りの武将は全員イケメンかダンディか御老人で、私もイケメンの類だったから浮かれこそすれ、この世界が型月であるだなんて微塵も思わなかったが⋯⋯いや、多分世界線が丸々違うなこれ。

 

『⋯⋯お初にお目にかかります、私はロマニ・アーキマン。そちらの三人のバックアップを務める者です』

「うむ。よろしく頼む」

『はい。こちらこそ、ご助力下さり光栄です』

 

 おお、オーバーワークの黒幕(風評被害)(Dr.ロマン)だ。

 

『高名な方とお見受け致しますが、差し支えなければ真名をお聞きしてもよろしいでしょうか』

 

 真名、真名か。

 もしかしたら、私、この世界じゃ無名どころか存在してすらいない可能性もあるから、あまり明かしたくないんだけど⋯⋯。

 いやしかし、主人公と後輩と上司の期待の眼差しに応えないのもなんだかなあ。まあ、なんか凄い大名になって後世に名を残したいだけで戦ってたから、名乗るのも吝かじゃないし、いっか。

 

 

「我が真名は、月城。四国の賢将、西の勇者、月城千景なり」

 

 

 真名を述べた途端、しんと静まりかえる周囲。

 

 あ、やらかした?もしかして、イタイ奴だと思われたか?やば、恥ず。

 ちゃんと戦場でこの耳で聞いた二つ名だったんだけど⋯⋯伝わってない感じ?それとも、やっぱり私この世界に居ない?

 

『⋯⋯凄い。凄いぞ藤丸くん! これは、間違いなく最高格のサーヴァントだ! 何せ、西の勇者月城千景と言えば、あの東国無双の本多忠勝とも渡り合った力の持ち主だよ! ⋯⋯まさか女性だとは思わなかったけど⋯⋯』

「⋯⋯本多⋯⋯懐かしい名だ」

 

 そう言えば、お忍びで徳川のとこに行った時に正体バレて、本多と一騎打ちさせられたこともあった。あの時は死ぬかと思ったが、多分あれでも本気じゃなかったと思うからその話は当てにならないと思うけど⋯⋯まあ、言わない方が良いか。

 持て囃されて嬉しくないわけじゃないし。

 でも、その最後の言葉は聞こえてるからな!私は男だ!

 

「しかも、戦国の世に珍しい怪異殺しとしての逸話もあるわ! ⋯⋯大和撫子だったのは予想外だけれども」

「⋯⋯うむ」

 

 いや、それはただの虎だったから。後、でっかい蛇。多分海外産。何も怪異殺しなんてしてないからね?

 てか、聞こえてるから!大和撫子とか言うな!鳥肌立つわ!

 

 あ、やばい。イキったせいで、主人公と後輩の目が輝いてる。

 私、こんな人外が跋扈する世界でサーヴァントとしてやって行けるほど強くないのに⋯⋯!多分、あのでっかい目玉ぐらいが関の山だわ!

 取り敢えず、余裕の演出⋯⋯!

 

「⋯⋯期待には応える。それが、臣下というもの。貴卿の臣下として、私を存分に使うと良い」

「⋯⋯ありがとうございます、月城さん!」

 

 や、やめてくれ⋯⋯ハードルを上げないでくれ!私はそんなに強くないから!親衛隊も居ないから、肉壁にもなれないし!

 

「⋯⋯私のことはライダーと呼ぶように」

「あ、わかりました!」

 

 素直でよろしいですな。

 女になってるのは甚だ遺憾だけど、取り敢えず、所長は無理でもこの二人だけは助けないといけないな。ここでゲームオーバーされたらヤバ過ぎる。

 それにキャスターとはいえ、あの青タイツの兄貴にも会ってみたいし。

 

 

「それでは、行くとしよう。何、心配するな。私でも、それなりにやれるさ」

 

「⋯⋯はい! よろしくお願いします!」

 

 

 私の受難は始まったばかりであった。




後書きとは僕の考えた設定を垂れる場所。

クラス ライダー(適性はライダー>セイバー>アーチャー)
属性 中立・善
真名 月城千景
時代 戦国、安土桃山時代
地域 日本
筋力 B 耐久 C
敏捷 B 魔力 D
幸運 C 宝具 B
知名度補正があると別だが、基本的に彼女(彼)のステータスは凡庸なサーヴァントの域を出ない。

感想やアドバイスが来ると、その内、R18に突入します。


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