美醜逆転アズレン世界における色物系Yongshiber SHIKI-KAN☆TV (SHIKI-KAN)
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#01アズレン世界に強制転移しました!全然余裕で適応出来ますけど!

 あ…… ありのまま、今起こったことを話すぜ……。

 気が付くと、俺以外の人間が全員、鬼になっていた……。

 何を言っているかわからねーと思うが、俺も何を言ってるのかわからねー……。

 

 いやまじでいったい何が起こったんだよ!!!

 俺さっきまで新年の初詣でに近所の神社行ってただけだよね!? ……しかも1人で!!!

 何でいきなり周り全員が鬼になってんの?? 俺いつの間に地獄に落ちたの!? いきなり世界がバグったの?? 俺なんか悪いことした??

 

 確かにさぁ神様に願ったことはちょっとあれだったよ!?

 『世界の人間み〜んなっ♡全員っ♡俺以下の不細工にな〜れっ彡☆』

 とか願っちゃったよ!?

 

 しかもさぁなんか声が出ちゃってたらしくて、隣で拝んでた爺さんが、

 『ふぉっふぉっふぉ、若いって良いのう。ワシも若い頃はじゃなぁ……』

 とか話しかけてきたからガン無視してダッシュで逃げてきただけなんですけど!?

 いきなり話しかけられたらビビるじゃん!? ダッシュで逃げても仕方ないじゃん!? 

 

 そんでダッシュで鳥居を抜けたらそこは地獄絵図で、まわりは全員鬼だらけでした〜とかふざけんな???

 

 確かにさぁ見ようによっては全員俺より不細工になったけども。みんな金剛力士像とか閻魔様みたいな顔になってるけども。

 

 でも男女関係なく閻魔様になったら俺が1番不細工じゃなくなっても全く意味無いんだが??

 ここまで完全に鬼だともう雄雌の区別もつかねーよ。何で全員筋肉ムキムキなんだよ。怖いわ。

 

 しかも体長がヤバいくらいでかい。小さい奴でも俺の倍、3mは軽くある。でかい奴は5m以上ありそうなくらいでかい。デコピンされるだけで俺でも確実に粉微塵になる自信があるね。早く逃げないと命が危ない。冗談抜きで。

 

 取り敢えず、まずは家に帰ろう。周りの鬼神様たちもいきなり襲ってくるような短期なお方達じゃないらしい。

 ……なんかめっちゃジロジロ睨んでくるけども。鬼神の眼力、味わってるけども。

 様子見してるだけかも知れない。早く立ち去ろう。

 こんな危ない所にいられるかっ! 俺は家に帰るぞっ!!!

 

 

 

 

 ……で、ここはいったい、何処なんでしょーか???

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 ふぅ、なんとか家にたどり着けたわ。いや~、危なかったね。帰るまでにラスボスみたいな鬼神様と50体はエンカウントしたわ。マジでギリギリの戦いだったわ。まあ何もされなかったんですけど。

 

 とりあえず家の場所は変わってなくて良かったわー。外観はもうこれでもかってくらい変わってるけども。なんか京都の観光名所を1000年くらい古くして建物を3倍くらい大きくして10倍くらい豪勢な感じにしたらこうなるかな~ってくらい? 正直ヤバすぎて語彙力が追い付かねえ。

 

 家の中まで変わってたらどうしようとかと思ってたけど、中は家を出た時と変わってなかった。家具もテレビもPCもちゃんとある俺の部屋だ。ギリギリセーフ。

 

 よし、ネットも普通に使えるみたいだ。ひとまず安全は確保できたし、ちょっとネットで何が起きたか調べてみようかな~。鬼だらけになったの俺の周りだけかもしれないし。

 

 

 ……。

 

 

 …………。

 

 

 ………………やべえ、ここたぶん『アズールレーン』の世界だわ。

 だって俺の住んでるところ日本じゃなくなってるし。『重桜』って国になってるし。イギリスとかドイツとかアメリカも『ロイヤル』とか『鉄血』とか『ユニオン』って国になっちゃってるし。マジかよ。

 

 調べたら『セイレーン』も『KAN-SEN』もちゃんと存在してるらしい。なんか半年くらい前からいきなり世界中の海にセイレーンが現れて色んな場所で暴れ始めたらしい。

 人類側もすぐに応戦したけどまだ戦いは続いていて、今もまだ全世界の海域の9%くらいがセイレーン側の支配下に置かれてるらしい。マジかよ。

 

 じゃあKAN-SEN側も人類連合『アズールレーン』を結成してセイレーンに対抗してるのかなって思ったけど、そうはなってなかった。なんかKAN-SEN達はいるけど、セイレーンとはあんまり戦ってなかった。この世界はアズールレーンなんて単語ググっても出てこなかった。

 

 なんでやねんと思って動画サイトで『【高画質】10分でわかる人類vsセイレーンの対決まとめ』っていう動画を見てみた。正直ヤバかった。なにがヤバいって、人類側の戦力がヤバいのだ。

 

 まず『重桜』の戦闘がヤバい。外を歩いていた3~5m級の鬼神さん達が片手に金棒、お腹にダイナマイトを巻いて、救命ボードみたいな感じの奴に乗って敵艦に突っ込んでく様子が映ってた。敵艦は横っ腹に大穴が開いた後、鬼神さん達に内部を金棒でボコボコにされ、最後は大爆発して轟沈していた。突っ込んでった鬼神さん達はみんなでバタフライしながら帰って来てた。マジヤバい。

 ロイヤルの戦闘シーンではなんか、The☆悪魔! って感じの奴らが空飛びながらビーム撃って敵艦を薙ぎ払ってるし。鉄血のシーンだとなんかドワーフみたいな髭もじゃの奴らがKAN-SENみたいな装備つけて、「ワシがガンデムじゃあっ!!!」とか言いながら敵艦隊を蹂躙してるし。ユニオンの場面に至っては軍服着た豚さんがこれでもかってくらい全身に砲台乗っけて、『(火力を)だせないブタは、ただのブタだぜ』っていう字幕と共に全身の砲台を一斉掃射して画面全体を火の海に変えてた。マジヤバい。

 

 

 ……いや、これはKAN-SEN必要ねーわ。人類側? の皆さんが強すぎる。

 セイレーンの皆さま方は来る世界を間違えましたね。ご愁傷様でーす。

 

 せっかくなので、『【高画質】敵勢力の技術に対抗!? KAN-SENの戦闘シーンまとめ』とかいう動画も見てみた。

 なんか豚さんの一斉掃射後の再装填まで、ユニオンのKAN-SEN達が敵の弾除けになってるシーンが映ってた。 ……まああの火力があったらそうなるわな。 

 ロイヤルのKAN-SENは戦闘すらなく、なんか教会らしき場所で悪魔さん達に見守られながら花壇を一生懸命整えてるシーンが映ってたし、鉄血に至っては1秒も尺が取られてなかった。

 重桜のKAN-SEN達が鬼神さん達の手によりお腹にダイナマイトを巻き付けられ、涙目で敵艦に突っ込んでいくシーンに差し掛かった所で動画をそっ閉じした。コレイジョウハイケナイ。

 

 ……うん、KAN-SEN達もみんな元気にやってるねっ! 良かった良かった。

 いや良くはねーわ。うん、この世界はKAN-SEN達にとってはちょびっとだけ厳しい世界らしい。つらいけど頑張って生きてください。俺は頑張らないけど。

 

 実際まだ俺もこっち来たばかりだしね! KAN-SEN達を心配するよりまずは自分自身の心配をしないとマジで危険が危ない。スマホは使えるけど親にもバイト先にも電話通じないし。今俺がいるこの部屋以外は全部が全部前の世界に置き去りにされたらしい。

 はぁ、頑張って集めた漫画コレクション全部実家に置いてたのはまずったなー、読めないと思うとマジで読みたくなってくるから困る。

 大丈夫かな~、はぁ~これからどうすっかな~。

 

 

 

 「にゃ~、にゃ~にゃ~」

 

 

 

 おやおや? 俺がこの世界の真理について考えてたらいつの間にか近くに2頭身くらいの猫耳が生えた幼女みたいな生き物が寄ってきてますねー。

 はーい違いまーす犯罪とかじゃないでーす。こいつはさっき帰ってくるときに道端に落ちてたから拾って来ただけでーす通報はやめてくださーい。

 この娘は多分『オフニャ』って種類の生き物だと思う。アズレンのゲーム内だと、なんか一緒に行動してるKAN-SEN達の能力を上げてくれたりする謎生物だった気がする。

 詳しくは知らん。

 

 いや~、さっきの帰り道の途中でボッコボコになった段ボールの中から「にゃ~にゃ~」って聞こえてきたからさぁ。

 段ボール開けたらこの生き物がマジでボロボロで死にそうな感じになってるんだもん。そりゃ持ち帰って看病しますよ。こんな可愛い猫耳幼女を見捨てるなんて人としてあり得ないね。

 

 名前も即考えてつけてあげた。『ビシャマル』って名前にした。なんか全体的にびしゃまる~って感じがするし。俺が考えました。

 ていうかお前回復するの早いな。さっきまでマジで死にそうだったじゃん。傷だらけだったじゃん。なにお前ミルク飲んだら傷も即回復すんの? 傷どころかなんか破れてた服とかも治って来てるし。まぁそんくらいじゃないとKAN-SENと一緒に出撃なんて出来ないのか~? いやーえらいな―お前は。

 

 ってかクサっ!! めっちゃ臭うわお前!! なんか牛乳拭いたぞうきんを2~3日放置してその後5回くらい踏みつけた様な臭いすんぞお前の体から! さっき家まで運んでる時も思ったけどこの臭い段ボールじゃなくてお前のだったんかいっ!

 

 オラッ! 怪我が治ったんならさっさと身体洗うぞっ! このまま放置したら部屋中ぞうきんだらけの臭いになるわ! よし早くこっちに来いっ! てかお前の服どうなってんのこれ!? なんか体に引っ付いて離れないんだけど!? なんなのお前の毛皮なのこれ? いやバカバカバカお前暴れるんじゃねえシャワーが俺にもかかるだろうがっ! 痛ったバカお前蹴んなよいや痛くはないけどお前が暴れるせいで俺もう全身ずぶ濡れなんだよ猫耳生えてるならせめて猫パンチにしてくr痛たたたたたたたた痛い痛い指噛むのは反則だからマジで痛いからっ! 痛い痛い御免なさい洗う洗いますっ! 優しく洗うから痛くしないで下さいマジで調子乗ってました勘弁してください何でもしますからぁっ!!!!!

 

 

 

 ……あー、疲れた。今日一日分の全エネルギーを消費したわ。厳しい戦いだったわ。ギリギリで俺が勝ったけど。

 ちなみにビシャマルは洗い終わったらぞうきんの臭いからビシャマル♪って感じの良い匂いに変化しました。う~ん、平安京。

 

 一仕事終えたし、俺も今後の事考えないとなぁ。今はまだ前の世界でバイトしてた貯金が残ってるけど働かないとその内どうしようもなくなるな~。せめてどっかでバイトしないと……。

 

 せっかくこの世界に来たんだから出来ればKAN-SEN達と一緒に働きたいなー。彼女達も境遇は変わってたけど容姿は変わってなかったし。ていうか彼女達を除いたら後は全員見た目モンスターだし。あの鬼神様達に交じって仕事するとか生きていける気がしない。マジで。

 

 取り合えずネットで何かバイト募集ないか探してみるかなー。重桜の軍隊かなんかで短期バイト募集してないかなー。できれば何のスキルもいらなそうな奴。簡単な内容なら宿舎の清掃でも何でもするからさぁ。

 

 おっ♪ あるじゃんあるじゃん重桜軍隊の短期バイトがっ!

 なになに~内容はっと……。

 

 

 

 

 【誰でも簡単♪】重桜軍隊 短期アルバイト募集!!【手軽に高収入♪】

 

 何の仕事をしようか悩んでいる貴方に朗報ですっ♪

 貴方も屈強な重桜軍隊の皆様と一緒に、敵艦隊へ突撃してみませんかっ!?

 ダイナマイトの爆発によるリラクゼーション効果で、日頃鈍った貴方の体もこれでスッキリ解消っ♪

 大音量と共に敵艦を轟沈した時の快感は病みつきになりますっ♪

 さあ、そこの貴方も! 重桜軍隊の皆と一緒にっ♪ レッツ☆ダイナマイッ♪

 

 

募集内容:腹部にダイナマイトを装着し、敵艦に突撃して轟沈させるだけの簡単なお仕事です。

 

採用条件:①敵の銃弾やダイナマイトの爆発に耐えられる屈強な体の持ち主。

     ②轟沈した敵艦から泳いで戻ってこれる程度の水泳能力の保有者。

(①、②について資格や証明書は必要ありません。自己申告で大丈夫です)

 

賃金内容:突撃1往復当たり 1回 5,000円

    (現地までの交通手段、ダイナマイト、突撃ボートは当社から支給致します。)

 

 

詳細はこちらをクリック♪

 

 

 

 

 

※なお、敵艦隊への突撃により体や精神に何らかの障害が発生しても、当社は一切の責任を負いません。

 

 

 

 

 

 

 ………………ッス。(そっ閉じ)

 いやー、ないわー。これはムリだわー。やるとしても最後の手段だわー。この世界とオサラバするための手段としては最適だわー。

 ……すいません。正直ナメてました。世界は色々変わったけどなんだかんだ言って結局なんとかなるんじゃねと思ってました。

 でもムリです。腹マイト突撃なんてしたら死んでしまいます。ていうか他のバイトも似たようなのばっかりです。1回で命が散るような奴ばっかりです。

 

 

 は~、詰んだわこれは。この世界で俺がお金を稼げる気がしない。いや元の世界も短期バイトでギリギリ食いつなぐ様な生活しかしてなかったけども。主に容姿のせいで。

 

 あー、なんかもうどうでもよくなったわー。この世界で生きていける気がしねー。もう残った時間自由にゲームとかして過ごそうかなー。結構積みゲー溜まってたしなー。あー、ゲームしたりダラダラしてるだけで稼げる様な仕事ないかなーそれだったらちょっと本気出しちゃってもいいんだけどなーないだろうなーあー。

 

 

 

 

 ……あるんじゃね? そんな仕事。ていうかさっきも見てたじゃん。そんな仕事してる奴らがいる動画サイト。

 そうだよ!!! この世界にもあるじゃん!!! 名前はちょっと変わってYongshibeとかになってるけど!!! 動画を上げて広告費で稼ぐサイトが!!!

 

 

 よし、ちょっとやる気出てきたわ。取り合えずその方向で生きる事を考えてみよう。

 まず、俺が動画を出した所で稼げるだろうか。当然元の世界ではムリだろう。俺の顔面崩壊偏差値をナメてはいけない。いや怖いもの見たさでの再生はあるかもだけど。広告費を稼げるほどにはいかないだろう。

ではこの世界ではどうだろう。もし、俺がこの世界に来た理由が神社でのあの願い事だったとしたら。

 

 『世界の人間み〜んなっ♡全員っ♡俺以下の不細工にな〜れっ彡☆』

 

 ………。

 

 いや改めて見るとひでーわこの願い事。頭沸いてんじゃねーの願い事した奴。

 あ、俺だったわ。

 

 ……とにかくっ! もしこの願い事が叶っているのだとしたら、この世界の人間は全員俺より不細工に、つまり俺は今世界一のイケメンになっているという事である! やったぜ! 化け物達にモテモテだね! 嬉しくねぇ!!!

 まあそんなわけで、俺が世界一のイケメンであるかどうかは取り合えず置いといて、この世界の人間からみて、俺はある種の隔絶した容姿の持ち主である事は疑いようがない事実っ!

 

 ……そんな俺が面白い事をする動画を出したらどうなるか! ……恐らくウケルっ! いや多分だけどもっ! 動画なんて作ったことないし! でもたぶん元の世界で同じ事するよりは話題になるはずっ!!!

 

 それに俺は1人ではないのだっ!!! そうっ!! 俺の隣には今もっ!!! 残り少ない貴重な食料であるチーカマを呑気に齧っているこのビシャマルちゃんがいるのだっ!!!

 

 猫の力は偉大だ。某有名ユーチューバーさん達も人気の底上げに取り合えず猫を飼うのが王道みたいな選択肢に入るくらいには人気が出るのだっ!!!

 

 しかもビシャマルちゃんは普通の猫じゃないっ! 外見は完全に猫耳が生えた2頭身の幼女なのだっ!!! この容姿で人気が出ない!? いいや、ないねっ!! そんな世界の真理に真っ向から喧嘩を売るような現象はっ!!!

 

 とりあえず初手でビシャマルちゃんを可愛い可愛いしてる動画を配信するっ! そんでもってある程度人気が出たところで元の世界のユーチューバーさん達がやってた事をおもいっきり真似するっ! これでこの世界でも金が稼げるっ!

 鬼神の皆さんも面白い動画が見れてにっこり!

 俺もお金が稼げてにっこり!

 ああ!! 皆を笑顔にして食う飯がウマい!!!

 

 

 そうだ!!! このキチガイじみた残酷な世界の中で俺たちは成り上がる!!! 成り上がって見せる!!!!!

 

 俺が!!!! 俺たちが!!!!!

 この世界初のYongshiberだ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 




続きます


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#02 配信前です! 全然緊張なんてしてません!

 

 よし、準備完了っ! 配信環境も完璧だっ!

 

 Yongshiberの配信者名はSHIKI-KAN。チャンネル名はSHIKI-KAN☆TVにした。なんでそんな名前かって? それは俺の名前が四季 漢(しき あや)だからさっ!

 いや~、前の世界でもあだ名は指揮官だったなぁ。別に指揮なんて得意じゃないのに。

 ていうか人と話すのも面倒なのに指揮なんて出来るわけないだろいい加減にしろ?

 ちなみにアヤちゃん♪とか呼んできた奴は俺の口臭を盛大に吹きかけてやった。

 SHIKI-KANの臭い息!(相手は死ぬ)

 

 

 いや~ここまで来るのにかなり時間がかかってしまった。大体こっち来てから半月くらい。やっぱここ日本と似てるけど異世界だわ。同じようなもんでも全然違うわ。

 まずスーパーに入店して初手で目に飛び込んでくるコーナーが生鮮食虫コーナーな時点でお察しですわ。ケージの中でイナゴさんやコオロギさんが元気良くピョンピョン飛び跳ねてんの。俺の心臓とSUN値もピョンピョンですわ。

 鬼神さん達は虫が大好物なんですね~。虫が究極の栄養食って本当なんですね~。俺は食べませんけど。

 

 

 

 「にゃ~、にゃ~にゃ~」

 

 

 

 おや~?♪ ビシャマルちゃんどしたのかな~?♪ お腹でもすいたのかな~?♪

 

 もしかしてビシャマルちゃんもこの世界の鬼神さん達と同じで虫さんが大好物なのかなぁ。しょうがないにゃぁもう。でも俺は虫さんがこの世界でも大大大大だ~いっ嫌いなんだぁ。俺の目が黒い内はお前の口の中に虫さんが入ることはないと思えよこの野郎絶対食わさんからなマジで億が一でも口に咥えて持って来でもしたらそれはもう酷いからな非道い事するからな一日中体撫で廻してやるから覚悟しとけよマジで袖に付いてるリボンみたいなの延々と撫で廻すからなお前の弱い所はもうわかってるんだよだからマジで虫とか咥えて来ないでくださいお願いしますお願いします念のため取り合えず土下座しておきます。

 

 

 あ、ゴハンねはいはいお食べ~。伝説の傭兵さんもお気に入りのバランスの取れた栄養食ですよ~。味も前の世界と同じで、うますぎるっ♪ って感じたから安心してお食べ~。

 あー良かった良かった。日本と同じような食品があって。商品名はGallolyMateだけど。Savanna(ネット販売店)で安かったから段ボールで箱買いしてしまったわ。

これで評価☆1とかマジでこの世界の皆さんの味覚はどうなっているのでしょうか。俺は今後が心配です。

 

 うん、取り合えず食糧問題はどうにかなったし。GallolyMateと水だけで1か月はいけるはず。あと果物とかも存在はしてるからネットで注文して今はお届け待ち状態だ。

 スーパーに売ってる? 何言ってるんですかあそこはスーパーという名の動物園ですよ? もう二度と行かねえ。

 

 まあ他の事は概ね順調だったし。俺がこの世界の食糧危機問題を憂慮してる間にWebカメラとかTVキャプチャボードとかその他配信用機材もバッチリ届いたし。高かったけど。

 やっぱり世界的な問題に対して目を背けずに挑む事は大切だわ。救おう、世界。

 

 

 う~ん、暇だな~。3日前に開設したmanjutterでも見てみようかな~。いやでも開設したのは良いけど呟いたのは俺とビシャマルちゃんがそろってGallolyMate齧ってるだけの写真1枚と今日のYongshibe配信告知だけなんだよな~。絶対何も変わってないよな~。

 

 って! ええっ! なんかフォロワー15人になっとる!!! 前の世界のフォロワー数を既に突破しているだと!?? なんてパワーだっ!!! これがビシャマルちゃん効果なのか!??? ありがとうビシャマルちゃん!!! お礼に今日のGallolyMateはチョコ味をあげよう!!! 俺のお気に入りだから大切に食べるんだぞ!!!!!

 

 ああーやばいやばい。この調子だと初配信でもリアタイで見る人が来てしまうのだろうか。どうせ最初は誰も見ないだろと思って配信内容なんてビシャマルちゃんと戯れる以外何も考えてないのに。ちょっとYongshibeの配信待機画面も見ておくか……。

 

 エエッ! 待機勢10人!!??? ナンデ!!?!? 10人ナンデ!?!!?

 いったい全体この人達は何を期待して俺の初配信なんかを待機していらっしゃるのでしょうか!!???? 簡潔に3行でまとめて教えてください!!!! 先生は貴方たちの気持ちがわかりません!!!!!

 

 ていうか配信開始まであと5分切ってるし!!!!! はぁ!?!? だれだよ俺の貴重な時間を切り取った奴は!!! 神か!? 神がまたなんかやったのか!??? おのれ神め!!! すみませんでしたぁっ!!!!!

 

 あー、ちょっと今日調子悪いわー。さっきまでは調子良かったんだけどなー。急に来たわー。これはもう配信できる気分じゃないわー。これは癒しが必要だわー。もう今日は配信取り消してビシャマルちゃんと戯れるだけでいい気がして来たわー。待機中の人もきっとわかってくれる。そうだ、頑張るのは明日からでいい。明日から頑張ろう。ねー、ビシャマルちゃーん。

 

 

 

 ……あれ? ビシャマルちゃんがこっちを見てる??? つぶらな瞳で俺を見てる!?!? 画面の向こうじゃないっ!!! 現実にいるビシャマルちゃんがこっちを見ているぞっ!!!!! いやっほおおおおおおおおおおおう!!!!! 世の中まだまだ捨てたもんじゃないんだねっ!!!!!

 そうだ!!! 俺は一人じゃない!!! 失敗してもきっとビシャマルちゃんが絶対何とかしてくれる!!! 俺を信じるな!!! 俺の信じるビシャマルちゃんを信じろ!!!!! よーし!!! 頑張れビシャマルちゃん!!!! 俺は応援しているぞ!!!!!

 

 よーし配信するぞっ! すぐ配信するぞっ!! 絶対配信するぞっ!!!

 

 

 ほ~ら、時間だぞっ!!!!!!!!

 

 



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#03【癒し動画】初めまして! 新人YongshiberのSHIKI-KANです! よろしくお願いします!【オフニャ】

※配信開始予定時間 19:00

 

:そろそろか?

:後3分だ。

:てか10人も待機中とかクソワロタwwwお前ら暇すぎだろwwwwww

:サムネの美少年に釣られて来ますたw

:このサムネ絶対フォトショで加工しまくってるだろ。CGでもいないわこんな顔。

:技術は認める。だからワシは来た。

:オレはmanjutterの写真から。何食べてんのアレ

:アレは多分俺の国の栄養食だ。味はゲロマズ。何でアレ喰ってんのかは知らん。

:まあもう始まるしwww後は本人に直接聞くべwwwwww

 

 

 

『……ぁ"あ"〜〜、ア"ー、アア"〜!聞こえてますかぁ……』

 

 

 

:キターーーーwwwwwwww

:聞こえるぞ。

:感度良好。

:声可愛い♡でももっとお腹から声出して♡

 

 

 

『……良かった、聞こえてるんですねー。ぶっつけ本番だったので正直緊張しました……。いや今も緊張はしてるんですけど……』

 

 

 

:てか顔ヤベエwwwサムネのまま動いてんじゃんwww誰だよCGとか言った奴 wwwwww

:はあ???何これどうなってんの?????

:無加工じゃったか……。信じられん……。

:顔も可愛い♡もっと良く見せて♡

:うむ。良い顔だ。……半分グロ映像で埋まっているのが少々残念だが。

:バッカお前www画用紙で画面半分隠せば美形しか見えねえだろうがwwww

:!? ……ここに天才がおるぞっ!

 

 

 

『……あっ。 ……そ、そうですよね。みんな俺になんか興味ないですよね。 ……すみません今カメラ動かしますね。 ……はい、こちらが今日の主役のビシャマルちゃんでーす!』

 

 

 

:ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!

:グロ注意。

:開 始 1 分 で 放 送 事 故

:こやつ、出来るな。

:自分より先にグロ謎生物を紹介する新人配信者がいると聞いてw

柚:ワラです

 

 

 

『えっ! ……おかしいなカメラ動かしたのに。……あれ? 配信画面にはちゃんとビシャマルちゃんが映ってる。え? え? 皆さんには一体何が見えてるんですか?』

 

 

 

:何が見えるって!!? お前がその手に持ってるグロ謎生物がドアップで見えてんだよ!!! ていうか近づけるんじゃねー!!!

長嶋さん:うわー。グロいねー。わたしも人の事は言えないけどー。

:てかそいつ半年前から現れ始めた謎生物だろwwwなんで名前付けてんだよwwwwww

 

 

 

『ええっ! 皆さんからはこの娘がそんな風に見えてるんですか!? おかしいな……。こんなに可愛いのに……。 ……あ、どうも、申し遅れましたが今日から新人YongshiberとしてデビューしたSHIKI-KANです。よろしくお願いします』

 

 

 

:いやいや可愛くないよw何言ってんのw

:グロ謎生物紹介のついでにサラッと自己紹介を済ませる男。

:俺でなきゃ見逃しちゃうね。

:てか自分をお菓子のおまけみたいに適当に紹介してんじゃねーよwww初配信だろこれwwwwww

長嶋さん:でも〜、おまけが本体みたいなお菓子もあるしね〜。

:なるほど。一理ある。

柚:草生えるです

 

 

 

『えーと? これは俺の紹介がもっと欲しい感じですか……? 困ったな……、何にも考えてないぞ……。ビシャマルちゃんの可愛さについてなら1時間くらい余裕で話せるのに……。えーっと、俺は今年の1月からこの国、えー…、重桜に引っ越して来て生活してます。今はこのビシャマルちゃんと一緒に2人で生活してます。他に家族は居ません』

 

 

 

:そのグロ謎生物を人間単位で数えるんじゃねー!!!

:シキカンは重桜住みか。俺と同じ国だな。もしかして近所か?

:言うて重桜も広いからな。流石に近くに住んでる可能性は低いだろ。

:シキカンは家族が居ない。グロ汚物を除けばシキカンは1人っきり……。ブヒヒッ♡

:ていうかシキカンその謎生物の事好きすぎだしwwwそいつとの間に一体何があったんwwwwww

 

 

 

『えっ!? ビシャマルちゃんですかっ!? この娘はこっちに引っ越して来た初日に出会った娘なんですよー! それ以来ずっと一緒に居て、俺の心を支えてくれて……。正直この娘が居なかったら今日こうやって元気に配信する事すら出来なかったですねー! 今ではもう最高のパートナーですよっ!』

 

 

 

:ブヒッ♡笑顔ガワ"イ"イ"♡デモ"、トナリ二グロ汚物。可愛…グロカワグraJmdgutgajtjjnjnaj

:逝ったか……。

:もう戻って来んなよ。

:シキカンいきなりテンション上がりすぎだろwwwマジぱねぇwwwwww

長嶋さん:いいねー。最高だよー。

柚:可愛い……です。

 

 

 

『えっ……。あ、ありがとうございます。俺の容姿そんなに良い感じなんですか? 今まで容姿についてはバカにされる事しかなかったので、正直自分では良く分からないのですが……』

 

 

 

:は??? その容姿でバカにされるとか今まで何処の未開の地に住んでたんだよ!!!

:むしろそんな地域がこの惑星に存在するのか?

:いや待て、放送見る限りシキカンは身長も低い。もしかしたらまだ子供かも知れん。

:幼き子供は容姿の良し悪しに関係なく、自分らと違うだけで集団から排除するからのぅ。

長嶋さん:小さい子は言いたい事ズバズバ言うもんね〜。わたしもたまに泣きたくなるの〜。

柚:シキカン……可哀想……です。

 

 

 

『えっ??? 何で俺がいつのまにか小さい子供だって事で話が進んでんの??? 俺これでも20歳なんだけど???』

 

 

 

:は???

:その容姿で20歳wwwまじパネエwwwwww

:シキカン、大丈夫? ふくし? の大学? とかに通ってたりしない?

:おいやめろ。

 

 

 

『はー??? いやもう俺完全に大人ですけど??? 俺が子供だって言い張るんだったら具体的に何処がそう見えるのか説明してくれないと納得出来ませんー。残念でしたー』

 

 

 

:遂に言葉遣いまで子供にw

:そういうとこだぞ

長嶋さん:ついに〜、しょうたい現したの〜。

:いや実際子供でしょwwwシキカンどう見ても身長160センチ前後にしか見えんしwwwそれで大人とか鉄血の人間かよwwwwww

:ワシらの所にこんなに痩せた奴はおらん……。

:顔だけは何処となく俺らと同じ重桜の血が入ってそうだが。肌は白いからユニオンとも混じってそうだな。

:顔にブツブツあるのは俺ら東煌人の特徴だ!!! でも髪の毛はどう見ても北方連合の奴らのだろ!!!!! 真っ黒だし!!!

:確かに黒髪はオレの国では珍しくないが……。シキカンの様に漆黒の髪は中々見ないぞ。

:てかシキカンのその体の紅い斑点何?wイレズミ?w超カッケーんだけどw

 

 

 

『え……。いや……。これは子供の頃火の近くに行ったら火傷して……』

 

 

 

:火傷www火傷とか漫画かゲームの中だけの怪我だろうがwwwwww

:火の中で炙られるだけで格好良くなる怪我とかそれなんてチート

:いや実際シキカンは漫画の中から出て来た存在と言われてもオレは納得出来る。それくらいの美形だ。

:この世界の全種族の良い所だけ集めましたって感じだしな

柚:シキカンはすごい……です。完璧……です。

長嶋さん:とっても格好良いの〜。こんな人〜、ゲームの中でもあんまり見ないの〜。

 

 

 

『えぇ……。いや、あの、ありがとう……? あの、皆さんが俺の事を褒めてくれてるのはわかるんですが、そろそろ話題変えませんか……? その、なんというか、褒め言葉が、心にグサグサ刺さるんで……。 ……何か別のお話ししよう? ビシャマルちゃんとか』

 

 

 

:照れるな照れるな

柚:照れてるシキカンもすごく可愛い……です。

長嶋さん:普段褒められてない感じがして〜、凄く良いの〜!

:言うてもそのビシャマルちゃん? だっけ? 謎生物の事なんて話す事ないしなー。

:半年前にセイレーンと名乗る害獣共とほぼ同時期に世界中に現れ始めた未知の生命。攻撃性は無いが農家の作物や町の備品等を齧るため現在は駆除対象にある……。と言った所かのぅ。

:殺して役所に持ってけば1匹500円で引き取ってくれるんだぜw

:子供に残酷な事教えるのはヤメて差し上げろwwwシキカン泣いちゃうだろうがwwwwww

 

 

 

『えぇー……。この娘たちの扱いって今はそんな感じなんですね……。たしかに出会った時はボコボコの段ボールに梱包されててこの娘自身もボロボロだったけれども……』

 

 

 

長嶋さん:あー……。それはー……。

:気持ち悪すぎて触れないから段ボールに詰められた奴だろきっと!!! 仕方ないから段ボールごとゴミ捨て場にポイッだ!!!

:あいつら中々死なないしな……。

:頭潰してもしばらく生きてるくらいしぶとい

:あの生命力に関してだけは称賛するわい……。

 

 

 

『……そっかー。俺もだったけどあの時はお前もギリギリだったんだなー。よしよし、もう怖くないぞー。お前は俺が絶対に守るからなー。 ……はぁー、出来れば他の娘も助けてあげたいなー』

 

 

 

:シキカン。そういうセリフはもっと可愛いらしい生物に対して使おうな?

:オレに使ってくれてもいいぞ。

柚:言われてみたい……です。

:こいつ容姿だけじゃなく感性もぶっ飛んでんなーw

:ていうかシキカンは守る側じゃなくて守られる側だろwww体貧弱すぎwwwwww

:ビシャマルを守るシキカンをワシが守るっ! これで万事解決じゃっ!

:そんなに好きなら住所晒してくれれば謎生物見かけたらすぐ段ボールに詰めてシキカンの所へ送ってやるよw着払いでなw

:ちょwww住所特定しようとした挙句に嫌がらせしようとすんなしwwwwww

 

 

 

『あー、送ってくれるのはありですねー。この娘たち結構頑丈だから梱包して送られるくらいなら耐えられそうだし……。いや、でも今はムリですねー。部屋も狭いしこの娘だけで手いっぱいな感じなので。もしそういう環境が整えばお願いするかもしれないです』

 

 

 

:オイお前らネタはやめろ。純粋なシキカンが本気にしはじめたぞ。

:なにこのシキカン純粋すぎひん? 博愛主義者かな?

:素で言ってるんだとしたらマジですげえ奴だわ。

柚:尊敬する……です。

長嶋さん:シキカンさーん、その子たちの事そんなに好きなら〜。ちょっとこのゲームやってみない〜? 『飛び出る!? オフニャコの島』っていうゲームなんだけど〜。

:それ重工堂が最近出した本格ホラーゲームじゃんwww子供がやるゲームじゃねえからそれwwwwww

 

 

 

『え? なんですか? ホラーゲーム? ……あー、なるほどー。オフニャたちがいっぱい出てくる村作りゲームみたいな感じですねー。面白そうですねー』

 

 

 

:違えよw化け物達が住む無人島に1人置き去りにされる本格ホラーサバイバルゲームだよw

:CERO-18指定で子供には向かんゲームじゃが……。こやつならあるいは……。

:シキカンのこの態度が本物なら余裕でプレイできるな

長嶋さん:シキカンさーん。どうするのー。このゲームやるー?

 

 

 

『えっと、そうですねっ! 次やることもまだ何も決めてなかったので、次回はこのゲームをやる事にしますねっ! 頑張って無人島を開拓してみようかと思います! ……ではキリがいいので今日はこの辺で終わりますねっ! ありがとうございました! 次回もよろしくお願いします!』

 

 

 

:結局次回オフ島やるんかいwwwこいつやりおるわwwwwwww

長嶋さん:わ〜い。楽しみに待ってるの〜。

:さて、これでシキカンのこのムーブが本物かどうかわかるな。

:どっちに転んでも面白そうだわw

:オフ島による犠牲者がまた新たに追加されてしまうのか……。胸が熱いな。

:面白かった!!! また来てやる!!!!!

 

 

 

『それでは皆さんさようならっ!次回もまた見て下さいねっ! ……ほら、ビシャマルちゃんもちゃんと挨拶してっ!!!』

『にゃ~』

 

 

 

:おま

:ギャアアアアアアアアアシャベッタアアアアアアアア!!!!!!!

:そいつアップにすんなって言っただろうが!!!

:最後まで爆弾投下を忘れない配信者の鏡。

長嶋さん:初配信でこのムーブはすごいの〜。

柚:次回も楽しみ……です。

 



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#04 配信終わりました!!!正直言って余裕でしたね!!!

 

 

 あー……。あーー……。配信終わったーー……。

 

 しんどかったわー。みんなの反応が事前に思ってた感じと全然違うんだもん。まさかビシャマルちゃんたちがこの世界であんなひどい事になってるとはなー。もうなんか皆から黒い悪魔的な存在として扱われてたじゃん。こんなに可愛いのに。

 

 ビシャマルちゃんの仲間たちもどうにかしてあげたいんだけどなー。配信観てた人たちも着払いなら送ってくれるって言ってたし。でもこの部屋に大量に送られたらたぶん配信どころか普通の生活すら出来なくなるからなー。せめてゲームのオフニャ専用寮みたいな場所が確保できればいいんだけど。

 

 とにかく、オフニャちゃんたちが非道い事されてても今の俺には何も出来ない。ちょっと厳しい環境だけどオフニャちゃんたちは挫けずに頑張って生きて下さい。今の俺は力が足りません。想いだけじゃ世界は何も変えられないのです。現実ってきびしいね。

 

 それに、俺の容姿に対する反応もすごかったなー。みんな一生懸命褒めてるつもりだったっぽいけど全然嬉しくなかったし。なんなんだよ。この世界の全種族の良いとこ取りの容姿って。究極生命体かよ。俺元の世界でそんなに酷い容姿だったの? 流石にそこまでではなかったと信じたい。でも、現実はきびしい。はぁ……つらい。

 

 でも、どうやらこの世界では俺の容姿がめちゃくちゃ格好良く見えるらしい。少なくとも配信を見に来ていた人たちにとっては。 ……どうしよう今回見に来てた人たちが全員ブス専の特殊性癖持ちとかだったりしたら。ネットの闇の中には普通にそういうコミュニティもあるから困る。特に今回は俺が適当に上げた写真と告知だけで来てくれた猛者だったし。次の配信でボロクソに叩かれたらやだなー。はあー……。

 

 

 

 

 あーーー!!! だめだだめだ!!! テンションあげろ俺!!! 

 テンション下がるとすぐマイナス思考になっちゃうからね!!!

 ポジティブに考えるんだ!!! そうだよ!!! たとえ特殊な方々だったとしても俺のファンになってくれた事は確かだ!!! また見に来てくれるってコメントしてくれた人も何人かいたしね!! なんか行き詰まったりしたらとりあえずビシャマルちゃんを盾にしたらコメント欄も盛り上がるってわかったしね!! よーし!!! 次も頑張るぞ!!! ねっ!!! ビシャマルちゃんっ!!!!!

 

 

 

 

 あれ? ビシャマルちゃん?? どこいったのかなー???

 

 

 

 

 あーいたいた。ベッドの下かー。まったくもー。いなくなったのかと思って一瞬心臓がジャンプしちゃったぞー。いったいそんな所で何をしてるのかぬぅうあああ!!!!???ええ!!?? ほんとに何してんのビシャマルちゃん!!! それ食べちゃダメ!!! それ俺がめちゃくちゃ大切にしてる本でしょ!!?? 薄いけどこの世界ではもう絶対100%二度と手に入らないお気に入りの本なのっ!!! それ食べちゃったら俺にまた食糧危機が来ちゃうのっ!!! 全部食べちゃったら俺これから鬼神さんをおかずにしなくちゃならなくなるの!!!! それはマジでやだから!!!!! 死活問題だから!!!!! 紙なら本棚にいっぱいあるでしょ!!??? なんでそこピンポイントで狙ってくるのビシャマルちゃん!!! やめてっ!!! ガジガジしないでっ!!! なくなっちゃう!!!! 俺が消えちゃうからあああああああ!!!!!!

 

 

 

 

 

 ……失ったものもあったけど、今日はビシャマルちゃんがいつもより多めにモフモフさせてくれました。なので明日も頑張って生きていこうと思います。

 SHIKI-KANより。

 



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#05【重工堂】飛び出る!? オフニャコの島やりますっ! 絶対に151匹集めきります!【SHIKI-KAN☆TV】

※配信予定時間を過ぎました。配信者を待機中です。

 

:もうすぐか?

:もう時間じゃが

:シキカン遅刻かよ!!! こっちは楽しみにしてたんだぞ!!!!

:配信2回目で遅刻とかwwwシキカン大物杉内wwwwww

長嶋さん:ま〜ま〜。みんなおちつくの〜。たぶんシキカンさんも〜、準備で忙しいんだよ〜。

:まあ初心者だとTVゲーム画面をPCに流すのも苦戦しそうだしなー。

柚:さっきmanjutterで呟いてたです。きっとすぐ来る……です。

 

 

 

『あ“~~~、あ”~~~~~~、あ~、あ~、……聞こえますかー』

 

 

 

:遅い!!!遅刻だぞっ!!!!!

:5分遅刻か。まあギリギリセーフだな。

柚:シキカン……。待ってた……です。

 

 

 

『あーー、すみません。5分遅刻しちゃいましたね。なんか配信前になったら急にビシャマルちゃんが興奮しちゃって。GallolyMate食べさせたら今は落ち着きました』

 

 

 

カッちゃん:アーカイブでも見たけど……。その生き物ホントに膝に乗せてる……。

長嶋さん:でもなんか〜、とっても絵になるの〜。

:あれじゃねwww少年とエイリアンが一緒に自転車乗って空飛ぶユニオンの映画に似てんじゃねwwwwww

カッちゃん:G.T……だね。

赤茶:なんでコイツこんなナツいてるニャ……。バグったのかニャ……?

:それやっぱGallolyMateだったんだな。なんでそれ食べさせてんの? 謎生物専用食?

 

 

 

『GallolyMateですか? えーっと……、正直まだこの国に引っ越してきたばかりで現地の食事が合わないというか、まだあまり慣れていないので。今はこのGallolyMateと水だけで生活してます。ビシャマルちゃんもなんだか好きみたいだし。それに美味しいですしね。あ、ビシャマルちゃん俺に一本くれるの? ありがとー、モグモグ』

 

 

 

:それ軍隊専用のレーションだぞ。GallolyMateと水だけで生活とかそれなんて拷問。

:重桜軍隊の奴らが戦場でこれ食ってる映像見たことあるわwww死にそうな顔しながらwwwwww

:成分表を見ると確かに必要な栄養素は取れるのじゃが……。

カッちゃん:シキカンはなんなの……? 修行僧なの……?

 

 

 

『まあ栄養は取れるのでしばらくは大丈夫かなーと。俺の好きな食べ物もネットで注文したのであと少しで来ると思いますし。 ……はいっ! じゃあ食べ物の話はこれくらいにして、今日はこの【飛び出る!? オフニャコの島】っていうゲームをやっていきたいと思いまーす』

 

 

 

:キターーーーwwwwww

:ショタ顔美少年が泣き叫ぶ姿が見られると聞いてw

:ホントにやるんだな……。こんな子供みたいな奴がこのゲームを。

:この映像に出てくる登場人物は全員18歳以上ですっ! シキカンは自称20歳だからねっ! 何も問題ないねっ!

長嶋さん:おもしろい反応を〜、期待してるよ〜?

赤茶:今回はかなりの力作だニャ。世の中のニンゲン共は全員恐怖に慄くといいニャ。

:なんか開発者も来てね?

 

 

 

『おおう……。なんか思った以上に期待されてる……。まあパッケージの説明見たくらいで何にもわかってないので適当にやっていきまーす。はい、じゃあスタート。 ……おー、いきなり無人島からのスタートですかー。緑が豊富だし川も流れてて良い所ですねっ! ……おっ!? 早速正面に第一村人発見ですねっ! ……あれ? ここって無人島って設定だったよね? なんでもう人がいんの?』

 

 

 

:出たなクソ猫。

:親切な対応してプレイヤーに近づくこの島の悪意そのもの。

:チートモンスターキターーーーwwwこいつ何やっても絶対倒せないんだよなwwwww

:こいつに勧められてカブ買ったら次の日半額になって買い取られた!!! 絶対ゆるさん!!!!!!

:こいつ絶対この島の支配者だよな。

赤茶:お前ら! ふざけんニャッ!! ネタバレは止めるニャッ!!!

長嶋さん:ネタバレしたら〜、面白くならないの〜。ぶ〜ぶ〜。

 

 

 

『あれ? 良くわからないですが、コメント欄の方がネタバレで溢れてる感じですか? じゃあちょっと申し訳ないけど今からコメント欄は出来るだけ見ないでやりますねー。 ……よーし、じゃあ話しかけてみますねー。 ……ネコ耳付いてて可愛いなこの娘』

 

『……。 ……よく来たニャ、ニンゲン。 ……歓迎はしないニャ。 ……どうせお前もニンゲン社会で罪を犯して、この島に送られて来たニンゲンだニャ。 ……精々この島で毎日恐怖に怯えながら生きていくと良いニャ』

 

『うおー、なんかめっちゃ不穏な事言ってきますねこの娘。でも今の所ホラー要素なんて何一つ無いですねー。普通の無人島生活がはじまる? みたいな。案内人っぽいこの娘も可愛い見た目してますし』

 

 

 

:今まさにホラー要素の真っ最中だよ!!! 目の前の化物見えてねえのかシキカン!!!

:いや多分普通に見えててこの反応だぞシキカンは

:うげえ、この化物ドアップは色んな配信で何度も見てるけど全然慣れないな

赤茶:ハァ!? そのキャラは明s赤茶が全力で作った渾身のキャラだニャ!! 見たくないけど鏡まで持ってきて全力で作ったニャ!!! それを可愛いってなんニャ!!!

バカにすんニャ!!!!!

:すげえこのシキカン。化物ドアップでも全く反応しねえ。

長嶋さん:普通の配信者なら〜、この場面で何回か絶叫するのにね〜。

:謎生物を膝に乗っけてるだけあってグロ耐性はスゴイな

柚:シキカンはすごい……です。

 

 

 

『……フン、まあいいニャ。せめてもの慈悲ニャ。この島で必要最低限の生活が出来る程度の知識くらいは授けてやるニャ。 ……簡単に死なれてもツ マ ラ ナ イ、からニャ。 ……こっちニャ。 ……早くついてくるニャ。 ……モタモタしてると置いてくニャ』

 

『おー、なんか今からチュートリアル的なものが始まるっぽいですねー。この娘もなんだかんだ言って、追放されて来た人間に島での生活を教えてあげる優しい娘っぽいですねー。ツンデレかな? この流れだとたぶんホラー要素はチュートリアル中かその後からですかね。サクサクいきましょう』

 

 

 

:いやいや怖いから。怖いシーンだからここ。

:セリフごとにカメラアングル切り替える程の力の入れようだしな。

:声もマジで怖い。声優さん力入れすぎ。

:良い声優選んだよな。まるで本当に怨念籠もってる様な演技してくれてるし。

カッちゃん:シキカン反応おかしくない……? デレ要素一個もなくない……?

:ツンどころか殺意しかないセリフにデレを見出すシキカン。

赤茶:どうしてニャ!? 絶対怖く作ったはずニャ!! どうしてこのシキカンとか言う奴は全然ビビらニャいのニャ!??? こんなの絶対おかしいニャッ!!!!!

:開発者さん乙でーすwwwシキカンはこの程度じゃ全然ビビりませーんwwwwww

柚:草生えるです

 

 

 

『……見つけたニャ。 ……アレが、これから先、一日中、寝てる間もズット、お前がこの島で一緒に生きていく事になる生物。【オフニャ】だニャ。 ……怖いかニャ? でも逃げ場はないニャ。 ……この島にいる限りお前はこれから一日中、あいつらに監視されて恐怖に怯え続ける運命にあるのニャ』

 

『あー、出てきましたねー。あれがこのゲームに登場するオフニャちゃんですか。ビシャマルちゃんと違ってなんだか白い饅頭みたいな感じですねー。Nレア~って感じが出てます。何かはわからんですけど。へー、この子たちと一緒に生活とか楽しそうですねー。やっぱこれ普通の村作りゲームじゃないんですか?』

 

 

 

: もうわかってたけどなそういう反応しそうなのは。

:あのラスボスクソ猫でビビらないんだったらオフニャでビビるはずもないか。

:シキカンはもう既にオフニャの親玉みたいなのと生活してるしな。

赤茶:嘘だニャ……。そんなはずないニャ……。

 

 

 

『……しょうがないニャ。そんなに怖いんだったら、一時的にでもこいつらを追い払う方法を教えるニャ。 ……そこにバールの様なモノが落ちてるニャ? ソレを拾ってこいつを思いっきり叩くニャ。頭が潰れれば流石にこいつも生きてはいけないニャ。 ……恐怖から逃れたければソイツを殺るしかないニャ。 ……さあ、やるニャ。 ……オマエが今まで島の外で殺ってきたようにっ! 思いっきりっ!! 残酷にっ!!! ソイツの頭をブッ叩くのニャ!!!!!』

 

『ええー……。いきなり何言いだしてんのこの娘、怖っ! 初めてホラー要素出てきたわ。追い払う要素がバールでブッ叩くしかないってどういう事だよ。ちょっと抱いて道端に避けるくらいでいいじゃん。ええー……。これ進めなくちゃいけない奴―? やだなー。 お? 自由行動できるようになってんじゃん。もうこのチュートリアル無視しようかなー。 ……よし無視しよう。案内人ちゃんせっかく教えてくれたのにごめんなー。説明の途中だったけど俺ちょっと他の所に用事出来ちゃったわー。いやーホントは聞きたいんだけどなー。用事出来ちゃったからなー。 ……じゃあなっ!』

 

『……逃げるのかニャ? ……逃げてもいいケド、その先にはもっと恐ろしい事が待ってるニャ。生き残る方法も、もう二度と教えてあげないニャ。 ……もう二度と助けてあげたりなんかしないニャ。 ……それでも、本当に逃げていいのかニャ?』

 

『ええー。ここで選択肢? いやー、もう教えてくれなくなるのは困るけどなー。でもオフニャ撲殺するのもなー。まあ選択肢あるって事はこっち選んでもなんかあるって事だろうし。無視する方選ぶか―。 ……あっ! 勘違いしないでね案内人ちゃんっ! これは逃げてるんじゃないからねっ!? ただ用事思い出しただけだからっ!! いきなりお前の負けとか言わないでね?? 俺はまだ勝ってるから!!! 』

 

 

【この場から逃げる】が選択されました。

 

 

『いや逃げてねーからっ!!! 何言ってんのっ!!!』

 

 

 

:いやいやお前が何言ってんのwwwwwww

:初 手 ナ イ ト メ ア モ ー ド

長嶋さん:あ〜! そっち選んじゃったの〜? いいよいいよ〜!

赤茶:馬鹿めニャッ! そっちは一番怖いルートニャッ!! もう戻れないニャッ!!!

:シキカン口調が崩れてきたな。こっちが素か。

柚:こっちの口調も良い……です。男の子らしい……です。

:流石にシキカンもこの展開に動揺しはじめたか。もしかして怖がる要素もワンチャン?

カッちゃん:このシキカン……。なんの勝負してるの……?

:それは誰にも分らん。

 

 

 

『いやー。酷い目にあったわー。俺逃げてないのになー。言いがかりだわー。この島で生活する手段を探す用事を思い出しただけなんだけどなー。 ……よし、気を取り直して探索するか―。島ってくらいだから海があるはずだよなー。まずは海の方へ行くか―。なんか落ちてるかもしれないし。 ……おー、最初の森抜けたらすぐ近くに海あるじゃん。なんか良いもん落ちてないかなー。生活がある程度便利になりそうなので良いんだけどなー。空気清浄機とか落ちてないかなー。 ……おっ、なんか落ちてんじゃーん。どれどれ?』

 

 

【簡易テント】を手に入れました。

 

 

『おおー、簡易テントかー。都合よく良いもの落ちてんなー。これで寝る場所確保するのかー。よし、早速設置しよっかなー。場所はどこにしようかなー。 ……めんどくさいから砂浜の前とかでいっかー』

 

 

【簡易テント】が設置されました。

 

 

『……よし、設置完了っ! はいっ! これでもうこの島全部が俺の領地です! だって俺しかいないし! 無人島だしねっ! この島に住みたければ俺の許可が必要ですっ! 案内人ちゃんはすぐに俺の所に居住許可を取りに……ってうおおおおおおお!!???? 俺のテントがオフニャだらけに!!?!?? え!!???!? なにこいつら!!?? なんでこんなに集まって来てんの!??!?! あっ!! おい食べるな!!! 俺のテントを食べるんじゃねえ!!! 自分の家持って10秒でホームレスとかシャレになんないから!!! ああーーー!!!! 全部食われたーーーー!!! 俺の家がーーー!!!』

 

 

【簡易テント】を失いました。

 

 

 

 

:wwwwwwwwwwwwwww

:オ フ ニ ャ に よ る 洗 礼

柚:草ですw

:ナイトメアモードはプレイヤーが何か物を設置したとたん喰われるからなー。

:しかも一度襲って来たオフニャはプレイヤーの後ろをずっと憑いてくるしな。

:食料とかも持ってるだけで奪われるから最後は力尽きて死ぬしかないという。

:反撃したら全員で向かってきて、プレイヤーが喰われるしな。

:餓死か喰われて死ぬ以外のルートはまだわかってないんだっけ???

長嶋さん:普通に選択肢間違えちゃった〜、バットエンドルートって事だと思うよ〜?

赤茶:どうニャ! これがナイトメアモードニャ!! シキカンはもう終わりニャ!!!

 

 

 

『うわーびっくりしたー。いきなり俺の家喰われるんだもん。どうしたーお前らー。そんなお腹空いてたのか―? テントより旨い物なんてその辺に沢山ありそうなんだけどなー。うーん、テント無くなったのは痛いけどしょうがないなー。まあまだ設置しただけで中も確認してなかったし。実は内装が最悪だったかもだし。 ……よし、拾わなかったものとして考えよう。簡易テントなんてなかった。いいね? ……はい、それじゃあ今からこの無人島を探索していきたいと思いまーす。今から初めて探索するので不安だけど頑張りまーす。 ……おっ? お前らついてくるのか? ナニコレ? お前らテント食べたら俺の仲間になんの? ……まぁいいかー、よーしお前ら、一緒にこの島を探索しに行くぞーっ!!!』

 

 

 

カッちゃん:えぇ……?

:仲間(敵)

赤茶:なんだこれニャ……。

:化物に囲まれてるのに普通に楽しそうにしててワロタ

:思ってた展開と違いすぎて困惑しかないんだが

:しきかんポジティブすぎひん?

:ポジティブなのかこれは?

:このオフニャ一匹だけもグロいのにそれがうじゃうじゃいるから画面が凄い事にw

カッちゃん:うぅ……。気持ち悪い……。

:おかしいな。シキカンが怯えるはずだったのにいつの間にか俺らが攻撃されてるぞ

:でももう詰んでるだろこれ。これは死んだらもう一回だなー。

 

 

 

『よーし、とりあえず仲間も増えたしこれでこの先何が襲ってきても平気だわー。俺の代わりに戦ってくれる奴がいるってだけで安心度が違うからなー。よし頼んだぞお前らっ! この先化物が出たら真っ先に戦ってくれっ! 俺は遠くから応援するしか出来ないけど! ほら俺シキカンだから。戦闘能力ないから』

 

 

 

:オフニャ盾にしようとしてて草

:もし敵に襲われたらそいつらも全部敵になるんだよなー。

:自分の味方が敵の味方

:人狼ゲームかな?

:まあ現実のシキカンは本当に戦闘能力なさそうだし仕方ない。

長嶋さん:シキカンさんが〜、強そうな化物に襲われてても〜、わたしだったら迷わず助けちゃうの〜!

柚:シキカンは私が守る……です。頑張る……です。

 

 

 

『おっ! ヤシの木はっけーん。これ揺らしたりしたらヤシの実落ちてこないかなー』

 

 

【ヤシの実】を手に入れました。

 

 

『これは食べ物っぽいなー。よーしこれでHPがちょっと回復できるぞー。ってうわぁ!!!!』

 

 

【ヤシの実】を失いました。

 

 

『……盗られたわー。これも食べちゃうのかよ。食欲旺盛すぎだろこいつら……。これはこいつらの食糧探すのが先だなー。どっかに何か食べ物がまとまって落ちてたりしないかなー。 ……おっ? なんか違う種類のオフニャがいるじゃん。なんか倒れてるけど。あー、これビシャマルちゃんと同じ種類の娘っぽいなー。なんかSSレアーって感じがでてるし。この娘助けたら何か良い事ありそうな気がするわー。ちょっと話しかけてみよーっと』

 

 

【オフニャが倒れています。殺しますか?】

はい

いいえ

 

 

『は??? こわっ!! 何この選択肢!? このゲームちょっとオフニャに対して殺意高すぎじゃね!?? いきなり殺すて……。こんなの【いいえ】しか選べないじゃん。 ……ふう、取り敢えず何も起きないっぽいな。 ……もう一回話しかけたらどうなるかやってみるか。もしかしたら選択肢が変わるかもだし』

 

 

【オフニャが倒れています。潰しますか?】

はい

いいえ

 

 

『いやだからっ!!! 怖いからっ!!! 一緒じゃんさっきと!!! ちょっと表現変えただけじゃん!!! 結果は変わってないじゃん!!! こんなもん全力で【いいえ】だよ!!! ……はあ、でも一応選択肢に変化はあったからな。 ……もう一回だけ』

 

 

【しつこいニャ。殺すか潰すかさっさと選べニャ】

はい

いいえ

 

 

『ええっ!!! いきなり口調変わったんだけど!?? システムさんどうしちゃったの!?? これさっきの案内人ちゃんの口調だよね!?? 案内人ちゃんこの島のシステムまで管理権限持ってんの!?? ていうかさっき殺すも潰すも【いいえ】にしたよね俺??? 何で逆にキレられてるの!?? 納得いかないんだけど!? ……【いいえ】だよもうこれもっ! 俺はこの娘を助けたいのっ!!! ……ええー、もう話しかける事すら出来なくなったんだけど。 ……マジでどうすればいいのこれ』

 

 

 

:おー、ここの死亡フラグは取り合えず回避か

赤茶:……チッ! 運の良い奴ニャ。

:これ一回でも【はい】選んだらオフニャに囲まれて即死なんだよなー。

長嶋さん:シキカンさんはすごいの〜。普通オフニャみたいな化物が倒れてたら〜、わたしだったら絶対罠だと思って近づかないの〜。

:こういうホラー系ゲームに慣れてないだけじゃね?

 

 

 

『はー。どうしようかなこの娘……。倒れたまま放置するのも可哀想だよなー。何とかならないかなこれ……。ビシャマルちゃんと同じだったら食べ物与えれば多分復活すると思うんだけどなー。さっきヤシの実あったなー。でもあれ採っても5秒くらいで周りのオフニャちゃん達にすぐ盗まれちゃうし。どうにかこの娘ヤシの木の近くまで持ってけないかなー。 ……おっ? なんかこの娘押すとちょっとずつ動くんだが。これでヤシの木の近くまで持ってけないかなー。 ……めっちゃ時間かかりそうだけど。 ……えいえいっ! はよ動けっ! ていうかこの主人公頑なにオフニャに触ろうとしないなっ! その動きでどうやってこの娘動かしてんの? 足で蹴ってんのそれ?? 可哀想だからせめて手を使ってあげよう???』

 

 

 

赤茶:ハァー???????

カッちゃん:そいつ動かせるんだ……。知らなかった……。

:イベントが終了した後の化物の残骸を弄ぶシキカン。

:生存競争そっちのけでゲームのデバッグしはじめてワロタwwwwww

柚:シキカン……、主人公そろそろ空腹で死んじゃうです……。

長嶋さん:まあ〜、もうどっちみち死にそうなの〜。最期くらい自由にさせてあげよ〜?

:コメント見てないしな

 

 

 

『えいえいっ! もうちょっとだぞっ! 頑張れオフニャちゃんっ! これゲームだから見た目変わらないけど実際こんな運び方したらめっちゃボロボロになってそうだけどっ! 俺は悪くないからっ! 悪いのはこの主人公君だからっ! 間違っても俺を悪く思わない様にっ! いいねっ! 俺はお前の命の恩人だからっ! 実際に主人公君動かしてるのは俺だからっ! ……じゃあ俺が悪いじゃんっ!!! なんなんだよもうっ!!! ……なんか画面赤くなってきてるし!!! あれこれ主人公君もうすぐ死んじゃうんじゃね??? 早く動いてオフニャちゃんっ!!! 君も瀕死だけど俺も瀕死だから!!! これで何もなかったら一蓮托生の運命だからっ!!! ……よーし、なんとかヤシの木の近くまで運んだぞー。これでヤシの木を揺らして―』

 

 

【ヤシの実】を手に入れました。

 

 

『よーしこれですぐさまこの娘に投入っ!!!』

 

 

【オフニャが倒れています。ヤシの実で潰しますか?】

はい

いいえ

 

 

『違えよっ!!! 潰そうとすんなしっ!!! 武器じゃねえからそれっ!!! 【いいえ】だよこれはっ!!!』

 

 

【オフニャが倒れています。ヤシの実を与えますか?】

はい

いいえ

 

 

『……おおー、やっとまともな選択肢が出て来たわー。よしこれで【はい】だなー。どうなるかなー。助かると良いなー』

 

 

 

:なぁにこれぇ。

カッちゃん:ええー……。

:新展開過ぎてついていけない。

赤茶:嘘ニャ……。絶対誰にも気づかれない様に作ったはずニャ……。

:バグじゃなくて仕様かよ。

:初プレイで未確認ルート開拓とかこいつ凄すぎない?

長嶋さん:おお〜! どとうの展開なの〜。面白くなってきたの〜!

 

 

 

『……お? 起き上がったぞ? 元気になったのか―、よしよし。 あとはそのつぶらな瞳で仲間になりたそうにこちらを見ればって全然見てねええええ!!! どこ行くねえええぇん!!! えっマジでどこ行くのオフニャちゃん!? 助けたの俺だけどっ!? せめて何か恩返し的な物置いて行って!? 俺もうすぐ死んじゃうんだけどっ!? 待って!!! 置いてかないでオフニャちゃん!!! ……あ、すぐ止まったわ。なになにー、どうしたのこんな岩壁しかない所に止まってー。そこで俺は何をすれば良いのかなー?』

 

 

【岩壁の隙間にスイッチがあります。押しますか?】

はい

いいえ

 

 

『おおー。なんかスイッチあるわ。押してみようかなー。 ……押した瞬間オフニャちゃん潰れちゃったりしないよね? なんか上から岩石とか落ちてきたりして。 ……さっきの選択肢群を思い出すとあり得るから怖いわー。 ……まあもう主人公君瀕死だし押すしかないか。【はい】っと。 ……おー、なんか岩壁が開いて入口っぽいドアが出てきたわ。とりあえず入ってみるかー。もうそれしかないし』

 

 

 

赤茶:あぁ……。そんニャ……。

:おおー。

:そこの岩壁開くんかい。

:いや俺が正規ルートプレイした時は何もなかったぞ。

長嶋さん:たぶん〜、あのオフニャがフラグなの〜。

:あとは入って何があるかだな。起死回生のイベントがあるかどうか。

柚:シキカン……、頑張れ、です……。

 

 

 

『……おおー。中はなんかめっちゃ可愛い部屋になってるなー。The☆女の子の部屋って感じ? 周りに飾ってあるのはオフニャのぬいぐるみかなー? めっちゃリアルじゃん。可愛いなー。もしかしてここってあの案内人ちゃんの部屋かなー? ……いや勝手に入っちゃったのはしょうがないから。犯罪じゃないから。緊急避難だったから。むしろ案内したのはオフニャちゃんだから俺は悪くないから。 ……っていうか主人公君のHPもうミリじゃん。 ……あの冷蔵庫に何か入ってないかなー』

 

 

 

:いや怖えええええええよ

長嶋さん:うわ〜…。

:この部屋見てそんな感想出てくるのはシキカンだけだぞ☆

:あのクソ猫ラスボスの部屋ってこうなってたんか……。

:まじでマッドサイエンティストの部屋って感じだな。

:なにあれ? オフニャのはく製? リアルすぎて怖いわ。

赤茶:なんでニャ……。明石の部屋、みんな怖いって言ってたニャ……。シキカンはなんでそんなこと言うニャ……。もう何もワカラないニャ……。

 

 

 

『さあ何か入っていてくれっ! 頼むぞっ! 案内人ちゃんっ!』

 

 

【イナゴの佃煮】を手に入れました。

 

 

『……えぇー。ここに来て虫ちゃんですか? ……あー、そういえばここってそういう所だったわ。 ……案内人ちゃんの主食はイナゴかー。なるほどねー。まあ食べるの俺じゃないし。主人公君だし。頑張れ主人公君。さっさと食べないと死んじゃうぞ』

 

 

【イナゴの佃煮】を食べました。

【HP】が全回復しました。

 

 

『いやイナゴの佃煮パワー凄いな!? 流石究極の栄養食なだけはあるな!? 俺は絶対に嫌だけどね!? 頼まれても食べないけどね!? ……まあ、HPも回復したし後はこの部屋をもうちょっと探索すr『何してるニャ……っ!!』 ……うわ怖っ! 案内人ちゃんいつのまに主人公君の後ろ立ってんの? いやこれはですね説明すると長くなるといいますか緊急避難的なあれと言いますかとにかく違うんですよ貴方が思っているような事は決してやってないというかこれからしようかな? と思っちゃったというか兎に角すみませんでしたああああ!!!』

 

『……どうやってここに入ったニャ。 ……ここは島でも一部のオフニャにしか教えてない場所だニャ。 ……偶然で入れる場所じゃ絶対ないニャ。 ……オフニャに教えてもらった? ……そんなはずないニャ。 ……オフニャは全員、お前らニンゲン共の敵ニャ。 ……ちょうどいいニャ。 ……ここまでたどり着いたのニャら、この島の真実を教えてやるニャ。 ……それを見て絶望すると良いニャ。 ……こっちニャ、ついて来いニャ』

 

『おおー……。なんかこの島の真実を教えてくれるらしいですよ。俺まだこの島で何もしてないのに。テント喰われてオフニャ助けたくらい? まあ教えてくれるって言うんなら教えてもらいましょう。無料ですしね。後でお金請求されても俺もこの主人公君も払えませーん。一文無しでーす。 ……ていうかこの娘もチュートリアルの最後でもう何も教えないとか言ってたけど結局教えてくれるんだなー。やっぱツンデレだなー』

 

 

 

赤茶:……っ!! そういう意味じゃないニャ!!! シキカンはなんでそうなるニャ!!! もうワケが分からないニャ!!!

:ついに明かされるこの島の真実っ!

:(なおシキカンは真実どころか表面上も何も知りません)

:いきなり真実とか言われても訳が分からないよなー。

カッちゃん:どうせロクな真実じゃない……。この島は悪意の塊……。

長嶋さん:どうなるのかな〜。わくわくするの〜!

柚:シキカン……。頑張る、です……。

 

 

 

『おー、すごい。部屋の奥にエレベーターがありました。これは地下に行くのかなー? ……おー、なんかすごい。 ……なにこれ? 工場? なんか変な丸いボールみたいなの生産してますねー。なんだろーこれ』

 

『……驚いたかニャ? ……ここは製造工場ニャ。……何の製造をしてるのかって? ……それはお前もすでに知ってる奴ニャ。 ……今まで散々見てきた奴だニャ。 ……そう、ここは、この島に沢山、たーくさん生息してる、オフニャたちの製造工場なんだニャ。 ……驚いたかニャ?』

 

『へー、そうなんだー。 ……いや驚いたけどね? そんな2回も繰り返さなくても。いやでも感想そのくらいしか出てこないしなー。へー、オフニャってこうやって製造されてるんだなー。なんか自然に生まれる良くわからない生物って思ってたんだけどなー。ふーん。 ……ビシャマルちゃんもこうやって製造されたの? ……あ、うん。わからない? ですよねー……』

 

『今、世界中で、お前らニンゲン共を恐怖のどん底に落としているオフニャたちは、全部、みーんな、この島から生まれたのニャ。お前らがいくら殺しても、お前らがいくら潰しても、この島とこの工場がある限りオフニャたちは増え続けるのニャ。お前らの行動なんて、全然、全く、これっぽっちも意味のない行動だったんだニャ』

 

 

 

長嶋さん:そういう展開なんだ〜。なるほど〜?

:もしかして現実のオフニャもこんな感じなんか?

カッちゃん:ゲームと現実をごっちゃにしちゃ…… ダメ……。

:現実のオフニャは全然怖くないしな。キモいけど。

:攻撃力が全くないもんな。近づいて甘噛みしてくるから精神的にはキツイが

:キモいけど割れば役所で500円貰える貯金箱って感じだな

赤茶:お前ら…… 言いたい放題…… 言うんじゃないニャァ……。

 

 

 

『……この工場を止めたいのかニャ? ……絶対に嫌だニャ。 ……お前らニンゲン共が、ワタシに、ワタシタチに、今まで散々、ズット続けてきた行為を反省しない限り、ワタシはこの工場を止めないニャ。

……さあっ!!! 謝るニャ!!! ゴメンナサイって!!! もうしませんって!!! ワタシタチの分もっ!!! オフニャたちの分もっ!!! 殺した数だけっ!!! 潰した数だけっ!!! 全部っ!!! ぜーんぶっ!!!!! 謝るニャ!!!!!!』

 

『えぇっ!? 何でいきなりキレたのこの娘っ!! 俺なんか悪い事した!? よくわかんないけど取り敢えず謝っときます申し訳ありませんでしたぁっ!!!!! ……いやでもこの娘たしかワタシとオフニャを殺した数だけ謝れとか言ってたよね? 俺この娘もオフニャもゲーム内で一回も殺してないよね? え?? 何で謝罪させられたの俺??? 納得いかないんだけど???』

 

『……もういいニャ。 ……どうせこんな事言っても無駄ニャ。 ……現実は何も変わらないニャ。 ……ワタシももう疲れたのニャ。 ……おい、ニンゲン。 ……せっかくここまで辿り着いたご褒美に、選択する権利をやるニャ。 ……この工場をワタシごとブッ壊すか。 ……それとも、この島でワタシと、オフニャたちと、ずっと一緒に暮らしていくか、の2択をニャ』

 

『ええー……。ここまでたどり着いたご褒美がそれー? ご褒美ならそういう権利とか気持ちとかじゃなくて何か金銭的なモノが欲しかったなー。ほら、主人公君も無一文だし。何も持ってないし。何か形になるものが欲しいなー。チュートリアル後に貰えるはずだった奴でもいいからさー。チュートリアルクリアしたって事で。なに貰えるかわからないけど。 ……ていうか工場爆破か一緒に暮らしてくか選べとかもうそれ実質1択じゃない? 別に俺オフニャちゃんたちが増えても問題ないし? 島の外の世界の人達も余裕で対処出来てるし? この状況で工場爆破したら主人公君まで死んじゃいそうだし? 可愛い案内人ちゃんと一緒に暮らせるとか最高だし?』

 

『……そこに爆破用スイッチがあるニャ。 ……それを押せば、この工場は木端微塵になって跡形もなくなるニャ。 ……当然、今いるオマエとワタシも一緒にニャ。 ……オマエとワタシの二人分の命が消えるだけで、人類の脅威がひとつ消えるニャ。 ……良い話だと思わないかニャ?』

 

『ほらやっぱ主人公君も爆発に巻き込まれて死ぬんじゃんっ!!! はーい、嫌でーす。その爆破スイッチは絶対に押しませーん。主人公君はこの島で案内人ちゃんとオフニャちゃんたちに囲まれながら幸せな家庭を築きまーす』

 

『……なにを躊躇っているんだニャ? ……もしかして、まだ想像出来てないのかニャ? ……オフニャが世界中に溢れるとどうなるかって事がニャ。 ……想像出来ないって言うなら、教えてやるニャ。

 ……世界中がオフニャで溢れるって言うのはっ!!! こうなるって事なんだニャ!!!!』

 

 

『!? うおー、びっくりしたー。 ……いきなり画面全体がオフニャちゃんたちで埋まりましたねー。もうなんか、オフニャだよ?全員集合♪ みたいな感じになってますねー。おー、スゴイにゃーにゃー鳴いてる』

 

『わかったかニャ!!! これがオフニャで溢れるって事ニャ!!! これから逃れたかったらさっさとボタンを押すニャ!!! お前がボタンを押さない限り画面はずっとこのままニャ!!! サアッ!!! サアッ!!!!! なんでも良いから早くボタンを押すのニャ!!!!!!』

 

 

 

:ぎゃああああああああああああああああ

:グロイグロイグロイグロイグロイグロイ

カッちゃん:しきかん……! はやく……! ボタン押して……! もう……! 耐えられないから……!!

:俺もうだめだわ……。後でこのシーン飛ばしたアーカイブみよ……。

:もはや放送事故だろこれ……。アーカイブすら残らなそう。

長嶋さん:……シキカンさんはすごいねー。 ……この状況でもまだ全然余裕そうなのー。

柚:シキカンはまだ頑張ってる……です。綾波も、何があっても絶対目を逸らさない……です。

赤茶:これが最後ニャ!!! シキカン!!! 早くボタンを押すニャ!!! どうなっても知らんニャ!!!!!

 

 

 

『おー、SSレアっ娘たちもちゃんといるなー。 ……おっ、この娘はさっき助けたオフニャちゃんじゃないか? うーん、綺麗な金髪に空みたいな蒼い眼してて可愛いなー。よーしこの娘は【おすかー】ちゃんって名付けよう。俺が考えたんだからちゃんと覚えてるんだぞー。こっちの薄紫色の髪の毛がモフモフーって感じの娘は【ライム】ちゃんって感じだなー。そんでこっちの元気ハツラツっぽい感じの娘は【しゅている】ちゃんかなー。今は病んだ眼でにゃーにゃー言ってるけど……。いやー、どんどん名前が出てくるなー。まるで元々あるかのようだ。でも名付けたのは俺だからなー。君たちはちゃんと俺を名付け親として認識するようにっ! シキカンからの命令ですっ! そんでこっちの娘はーっt痛たたたたイタイイタイ!! ビシャマルちゃん!? いきなりどうしたの!? お指噛まないで!! ほらみてほらっ!! ビシャマルちゃんもちゃんとあそこに居るでしょ!? なんか病んだ眼しながら睨んで来てるけど!!! 睨んだ顔も正直言って可愛い痛ったああああイタイイタイ止めてビシャマルちゃん!!! お指ガジガジしないでっ!!! 謝るっ!!! 謝るからっ!!!! ちゃんとゴメンナサイするからっ!!! ゆるして下さいっ!!!!!』

 

 

 

:しきかんーーーー!!!! 早くボタン押してくれー!!!!!!

:もうだめだこのシキカン。絶対ボタン押す気がない。

:ごめんもう無理だわ……。死ぬ……。

カッちゃん:うぅ……。出ちゃった……。

長嶋さん:視聴人数がどんどん減ってる〜。リタイア続出なの〜!

:逆にまだ残ってる奴かなりの猛者じゃね?この画面見続けられるんだから。

:どうという事はない。シキカン以外の画面を隠せばよい。ワシは経験を活かすのじゃ。

:ていうかシキカン、オフニャに齧られて血が出てねえか?

:オフニャに齧られて血を流すとかwwwシキカン流石に貧弱すぎだろwwwww

赤城:シキカン様の血は紅いのねぇ。フフフッ♪ 美味しそうだわ~♪

鸞:姉様。ここではコードネームを使うようにとあれほど……。

:人数減ってきたけど変なのも増えてきたな。

蓮:シキカンの動画は鍛え抜かれ選ばれた者たちしか見れないのだ! 雪風様はこれくらい余裕なのだ! 画面隠して音を消せば何も問題ないのだ!

:それ何も見てないのでは?

柚:綾波は逃げない……です。これくらい全然平気……です。 ……うぷっ。

赤茶:……なんでニャ。 ……なんでそんな平気な顔してるニャ。 ……そのオフニャもなんなんニャ。なんでそんな楽しそうなんニャ。なんでニャ…… ナンデ……

 

 

 

『……なんでニャ。 ……何で押そうとしないニャ。 ……オマエはこの世界がオフニャで溢れても良いって言うのかニャ? ……それなら何で、ワタシをいっぱいイジメるニャ。 ……何でオフニャをいっぱい殺すニャ。 ……ニンゲン共はワタシタチを醜い生き物だと思ってるんじゃないのかニャ? ……せめて潔く死なせてくれニャ。 ……ワタシはもうどうしたら良いかワカラナイニャ。 ……誰でも良いから、教えてほしいニャ。 ……誰でも良いから。 ……助けて、欲しいニャ。 ……ニャア。 ……ニ“ャア”ア“。 ……ニ”ャア“ア”ア“ア”ア“』

 

 

『っほら! ビシャマルちゃん! ちゃんと膝に座ってて! 今日はGallolyMateもう一箱食べていいから! 大人しくしてて下さい! いいね!? ……ふぅ。 ……あれ? なんか気づいたらこの娘泣いちゃってますねー。えーっと? ……なるほどー。ログ読む限りなんだか皆からイジメられてたみたいですねー。こういう場合は慰めればいいのかな? 取り合えず自由行動できるようになったんで、ちょっと話しかけてみましょう』

 

 

【ワタシが泣いています。殺しますか?】

はい

いいえ

 

 

『ええっ!? いきなり物騒なこと言わないでよシステムさん!? ていうかこのシステムたしか案内人ちゃんが出してるっぽかったよね!? なんで自分を殺させようとしてんの!? とりあえず【いいえ】だよこれはもう!』

 

 

【ワタシが泣いています。潰しますか?】

はい

いいえ

 

 

『いや潰すて! さっきのオフニャちゃんの時と一緒じゃん! この状況で潰すて! 逆にどうなるのか見てみたいわっ! いや見ないけどね!? 【いいえ】だよこれもっ!』

 

 

【ワタシが泣いています。

 

 

 

 

 

 

慰めますか?】

はい

いいえ

 

 

『おー。やっとまともな選択肢になりましたねー。ちょっとバグってるけど。はいはい、慰めますよー。よしよしー。今までこの島に1人きりで寂しかっただろうけど、これからは主人公君が一緒ですよー。だから泣かないで―。怖くない怖くない』

 

 

【本当に?

 

 

 

 

 

 

こんな醜いワタシなんかと、ずっと一緒に居てくれますか?】

はい

いいえ

 

 

『おー、はいはい。これからはもうずっと主人公君と一緒ですよー。今はまだオフニャを蹴って運ぶような酷い事する奴だけど、きちんと俺が教育しとくから。オフニャちゃんは蹴るものじゃなくて膝の上に乗せて愛でるものですよーって。だから安心してねー』

 

 

『……本当ニャ? ……ワタシ、こんなに醜いのニャ。 ……オフニャを世界中にバラ撒くような酷い事もしたのニャ。 ……それでも、本当に、ワタシとずっと一緒にいてくれるのかニャ? ………………わかったニャ。 ……そこまで言うなら、しょうがないニャ。 ……お前はもうずっとワタシと一緒ニャ。 ……この島に沢山いるオフニャたちと共に、ずっと、二人っきりで、ワタシと暮らすのニャ。 ……嫌だって言っても、もう遅いニャ。 ……断る場面はいくらでもあったんだからニャ。 ……もう、絶対逃がさないニャ。 ……もう、絶対離さないニャ。 ……ずっと、ずっと、ずーーーっと、一緒ニャ。 ……覚悟を決めるニャ。ニンゲン』

 

 

 

『……。 ……おー。スタッフロールが流れ始めましたねー。これで終わりかー。いやー、なかなか楽しめましたねー。ホラーゲームって聞いてたからちょっとビビってましたけど。実際は島に独りぼっちで居る、寂しがりの可愛い女の娘を救う良い感じなストーリーの話でしたねー。 ……おー、最後は可愛い1枚絵が出て終了ですかー。 ……ちょっとコメント欄を復活させますねー。 ……よっと』

 

 

 

:イイハナシダナー……。ってなるわけねえええええええ!!!!!!

:化け物達に囲まれて終わる超絶BADENDじゃねーか!!!!!

:もう最後の方ずっとシキカンの思考についていけなかったんだけど???

柚:終わった……ですか? 綾波、頑張ったのです……。でも、もう、ダメです……。

カッちゃん:もう二度と見たくない……。

:いやこのルートは開拓できなかったわー。オフニャ助けようとするって考えがもう理解できん。

:シキカンみたいな感性持ってる奴にしか無理なルートだよなこれ。

:開拓されてもやる気でねーわこれは。とりあえず新ルートとしてwikiに乗せとくけど。

長嶋さん:今表示されてる絵も〜、全然可愛くないよ〜? シキカンさんには〜、いったい何が見えてるの〜?

:サイコパスが描いたようなめちゃくちゃな絵だよな。

:酷すぎてわからんがラスボスクソ猫とオフニャがめっちゃ邪悪な顔で笑ってる事だけはなんとか解読できる。

赤茶:…………。

 

 

 

『そうですか? 俺にはこの絵がとても優しい絵に見えますねー。確かに子供が色鉛筆で描いた様な拙いものですけど。主人公君も案内人ちゃんも手を繋いですっごく良い笑顔で描かれてますし。周りのオフニャちゃん達もなんだか楽しそうですしね。 ……きっとこの娘も本当は人間達とこうやって仲良くしたかったんじゃないかと思います。セリフはちょっと怖かったですけど、結局1度も主人公君を害する様な事はしませんでしたしね。根は優しい良い娘なんだと思います。こんな娘とずっと一緒にいられるなんて、主人公君はとても幸せ者ですね』

 

 

 

赤茶:あ……。

:??? そんな解釈になる普通???

柚:……何を言ってるですか? 綾波には、シキカンの考えが良くわからない……です。

長嶋さん:なるほど〜。シキカンさんは〜、そういう風に考えるんだ〜。

:もうシキカンがそう思うんならそうでいいよ。シキカンの中でなら。

 

 

 

『……えーっと。とりあえずゲームも一応これでクリアしたっぽいし、今日はこの辺で終わりにしましょうか。別ルートもあるそうですが、それはまたの機会にという事で』

 

 

 

:おーう。またなー。

:なんだかんだ言って良いもの見れたしなー。

:自分一人じゃ絶対プレイ出来ないもんなー。

:シキカンの反応でなんとか見れてた感じ。

長嶋さん:ちょっと予想外だったけど〜、これはこれで面白かったの〜!

柚:シキカン、今度はもうちょっと、優しい感じのものをやって欲しい……です。

蓮:シキカン! 今度は『セイレーンハンター』とかするのだ! そういうのなら雪風様も得意なのだ!

:反応が新鮮だから別のホラゲーやらせてみるのも面白そうだな。

カッちゃん:こんなの連続はちょっとムリ……。

赤茶:……シキカン、最後に一つだけ聞かせて欲しいにゃ。シキカンはこの案内人の娘、明石の事を、好きなのかにゃ……?

 

 

 

『おー、皆さんリクエストありがとうございます。次何やるかも後で考えてみますねー。赤茶さんはたしかこのゲームの開発者さんでしたっけ? 良いゲームを作って頂いてありがとうございます! えーっと? 案内人の娘についてですか? この娘の名前は明石ちゃんって言うんですねー。そうですねー、さっきも言いましたが、基本的に優しい心を持った娘っぽそうなので、もし俺がこの娘と一緒に暮らしたとしても、幸せに過ごせるんじゃないかなーって思いますね。なんだかんだ色々とお世話も焼いて貰えちゃいそうですし。俺は明石ちゃんの事大好きですよ』

 

 

 

カッちゃん:シキカン、その考えは間違っている……! シキカンはアイツの本性を知らない……!

:いやでも、このルートだけプレイしたらこういう感想になるのか?

:いや、ならんやろ。

:シキカンには是非正規ルートもプレイして貰いたい。そして現実を味わってほしい。

長嶋さん:本性出るのは〜、正規ルートの方だよね〜。

赤茶:……シキカン、アリガトにゃ。 ……明石も、シキカンの事が大好きだにゃ。 ……きっと、絶対、そう思ってるはずにゃ。開発者であるこの赤茶が保証するのにゃ。

 

 

 

『おー、ありがとうございます赤茶さん。こんな可愛い娘に好かれて俺も嬉しいです。皆さんがおっしゃってる正規ルートの方も後でやってみますねー。 ……それでは皆さん、今日はこの辺でさよならです。 ……バイバーイ! ……ほらビシャマルちゃんもっ!』

『にゃ~』

 

 

 

:すごい、ビシャマルちゃんがアップになってももう何も感じなくなった。

:今回で視聴者のグロ耐性が一気に上がったな。

:今ここに残ってる奴らだけだし、しかもあんまり嬉しくないけどな。

長嶋さん:またね〜、シキカンさ〜ん!

蓮:シキカン! あんたの反応は面白かったのだ! また見に来てやってもいいのだ!

カッちゃん:うーん、まあ……。次も見よう……、かな。

赤城:シキカン様、ねぇ? 覚えたわぁ。……また会いましょう?

鸞:姉様……。コードネームを……。

柚:次も絶対に見る……です。頑張る……です。

赤茶:……やっと見つけたにゃ。 ……やっと出会えたにゃ。 ……もう、絶対、逃がさないにゃ。 ……シキカン、ダイスキにゃ。

 

 

 

―――――――配信終了――――――――

 

 

 

 

 

 




明石ちゃんの心はダイヤモンドに変わりました。


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#06注文していた果物が届きました! これで世界の食糧危機も解決です!

 

 

 ふぅー。今日もなんとか1日生き残る事が出来たなー。ギリギリの戦いだったなー。まあゲームしかしてないんですけど。

 

 オフ森も面白かったなー。結局あの後オフニャちゃんを殴っちゃう方のルートもやっちゃったし。 ……いや、俺もちょっとは躊躇したよ? でも案内人ちゃんがヤれって言うんだもん。仕方ないじゃん? ……俺は悪くねえっ! ……だって案内人ちゃんがっ!

 

 まあ、正規ルートやってわかったのは、視聴者のみんなが案内人ちゃんの事をなんでクソ猫呼ばわりしてたかって理由だけだったけど。

 

 ……確かにね? 最初は凄い親切に色んな事を教えたり安価で便利なものを売ってくれたりしてたよ?

 だけど時間が進むと便利な物の値段がどんどん高くなるし、さらにいい商品があるって無理やり買わされるし、お金が足りなかったら借金もあるニャって言ってくるし、最終的に借金が返せなくなった主人公君が簀巻きにされてダイナマイトで爆破されて肉片全部オフニャの餌ENDってルートまで進んだし。

 

 ……最初にやったルートはやっぱ特殊だったんだなー。これが本来の案内人ちゃんの顔だったんだなー。

 ……やっぱり人との付き合いはちゃんと考えてしないとねっ! 開発者の赤茶さんにはあの時、案内人ちゃんの事『好き』ですよって言っちゃったけど、今は『知り合い』から始めましょうってレベルまで落ちちゃったし。

 ……そのくらい酷い対応されたし。

 ……もう誰も信じたくないニャ。

 

 まあ俺にはビシャマルちゃんがいるから。

 ねー、ビシャマルちゃーん。

 

 

 

 

 

 『チーッス、熊蜂印でーす。宅急便お届けに参りましたー』

 

 

 アッ ハーイ イマイキマース……。

 

 

 ……ふぅー、鬼神さんと対面するのは未だに慣れないなー。今の宅急便の鬼神さんなんかは特に筋肉の盛り上がりが凄かったし。

 

 ハンコ押す時なんて、『……ここやで』トンッ トンッ ……って感じじゃなくて、『……ここやで』ズボッ! ズボッ! ……って感じだもんなー。穴空いてんじゃん。ハンコ押せねーよ。ていうか段ボール傷付けんな。

 

 あの宅急便の鬼神さん絶対秘孔突けるよなー。指先一つでダウンだよなー。はぁー、俺はこれからダイナマイトだけじゃなくて鬼神さん達の指先一つ一つに注意を払わないと爆散させられる運命にあるのかー。やっぱ外に出るのはまだ勇気いるよなー。もうしばらく引き籠ろう。

 

 さーて、何が届いたのかなー。

 あー、これは前注文してた果物かー。ようやく届いたなー。まあ生産場所遠かったからなー。しかも配達はこの会社しかやってなかったし。この世界果物全然生産してないんだもん。

 

 よしよし、えーっと中身は―? 桃にリンゴに梨にミカンに柚にブドウに……。おぉー、注文したもの本当に全部入ってる。季節感バッラバラなのに。これ全部1か所で生産してるんだからすごいよなー。やっぱ元の世界と違ってこの世界独特の技術が発展してそうだよなー。家の外にある建物からして普通じゃないし。まあ便利なら何でもいっかー。生産者の皆さんありがとうございまーす。これからも俺のために果物の生産頑張ってくださーい。

 

 

 うーん、この果物何か配信で使えないかなー。この世界の人味覚もおかしいから果物料理の配信とかしたら受けそうなんだけどなー。

 ……まあ果物使う配信はとりあえず保留にしよう。もとの世界ではスーパーの惣菜ばっかだったから料理道具とかもあんまりないし……。

 

 とりあえず次回は配信の最後辺りにお勧めされた『セイレーンハンターH』にしようかなー。うん、4人で協力してセイレーンを狩るゲームね。まんまあれじゃん。モンスターをハントする人達の奴じゃん。よーし、次はこのゲームで決定だっ!

 

 

 よーし、次回も配信がんばるぞいっ! ねっ! ビシャマルちゃん!

 

 

 



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#07 【狩りゲー】『セイレーンハンターH』やりますっ! 全員でセイレーンをボコボコにしますっ!【SHIKI-KAN☆TV】

 お話の都合上苦渋の選択でしたが、強制ボイチャのモン〇ンなんて実際発売されたら阿鼻叫喚ですね。でもどうしてもSHIKI-KANとKAN-SEN達をおしゃべりさせたかったのです。ゆるしてね。



 

 

 

 

※配信開始予定時間 17:00

 

:もうすぐ時間だな。

柚:わくわくするです……。

赤茶:シキカン、早く来るにゃ! 明石は前回の配信からずっとうずうすしてもう待てないにゃ!

 

 

 

『ア”~~~~~~~、あ“~~あ”~~~……。皆さん聞こえますかー?』

 

 

 

長嶋さん:シキカンさん〜、聞こえるの〜。

カッちゃん:大丈夫……。良く聞こえる……。

赤茶:ッ!! シキカン!! こんにゃちは~、だにゃ!!

柚:シキカン、こんにちは……です。

 

 

 

『おー、反応ありがとうございます。えーっと、皆さんどうもこんにちは、新人YongshiberのSHIKI-KANです。今日は前回の動画でお勧めされたこの【セイレーンハンターH】の4人協力プレイを、視聴者の皆さんと一緒にやっていきたいと思いまーす。 ……俺は別の似たような狩りゲーはやった事ありますが、このゲームはやったことないです。ですので、初心者でも助けてあげるぞって方は是非協力プレイをやりに来て下さーい。よろしくお願いしまーす』

 

 

 

蓮:シキカンがこの雪風様のリクエストを聞いてくれたのだ! 絶対参加してやるのだ!

赤茶:この赤茶もにゃ! 絶対参加してやるにゃ!

長嶋さん:今度は狩りゲーか〜。シキカンさんは〜、こういうゲームは得意なの〜?

カッちゃん:ホラーゲームは慣れてなさそうだったけど……。

赤城:このゲームなら私もやりこんでるわぁ。シキカン様、一緒に戦いましょう?

鸞:姉様……。コードネーム……。

 

 

 

『……おおーっ! もう何名か参加したいって方がいて良かったです! 最悪ソロプレイになるかなーって思ってましたしね。 ……はい、それでは早速プレイしていきたいと思いまーす。 ……はいスタート! ……なるほどー、主人公のハンター君がセイレーンの住む島に船で向かうムービーからスタートですかー。 ……時間がもったいないのでこの辺は全部スキップしましょう。今日は皆さんとの狩りがメインですしね。ムービーとかは後でゆっくり見まーす。はいスキップ連打連打連打連打……。 ……おっ! 終わりましたねー。 ……何故か主人公のハンター君がこの世の地獄みたいな所にいますねー。 ……さっきまで大海原だったのに、本当に一体何があったんでしょう。 ……え? ……ここが初期村なの? ……まじかぁ。 ……まあ地獄でも村なら多分安全でしょう。 ……チュートリアルの案内役みたいな鬼神受付嬢さんが溶岩の中で待っていますが、どうせ受けるのはオンラインの方のクエストなので関係ないですね。チュートリアル鬼神受付嬢さんはそのまま2、3時間くらいそこで待機お願いしまーす。 ……それじゃあオンライン部屋を作りますねー。 ……えーっと、部屋作成はこれかな?』

 

 

【このゲームのマルチプレイはボイスチャット専用です。よろしいですか?】

 

 

『……ええー?? ボイチャ専用ゲームとかあるぅ? ボイチャ専用なんて人狼ゲームくらいしか思いつかないんだが?? まあ仕様なら仕方ないか。 ……皆さん、配信に参加者さんの声が乗ってしまうかもしれませんが、それでもかまわないという方だけご参加お願いします。 ……これは最悪1人プレイかなー。 ……とりあえず部屋作ってみるかー。パスワードはどうしようかなー。 ……うん、よろしくお願いしますって事で、【4649】って感じで設定しま【らふぃー が入室しました。】【蓮 が入室しました。】【柚 が入室しました。】 ……はやっ! え!? まだ部屋作って2秒くらいしか経ってなかったよね!? みんな入ってくるの早すぎない!? なんなの!? 予知能力者なの!?』

 

 

 

赤茶:ばかにゃ……。入れなかったにゃ……。

カッちゃん:全員入るの早すぎでしょ……。

長嶋さん:うーん、ちょっと油断してたの〜。まさかこんなに〜、やりたい人がいるとは思わなかったの〜。

赤城:嗚呼ッ! シキカン様! どうか私が参加するまでは終わらないでくださいませ!!!

鸞:姉様……。きっと何度か参加する機会はありますので……。どうか落ち着いて……。

 

 

 

『シキカン……、おはよう……、ふあぁ』

 

『シキカン! あんたのためにこの雪風様が来てやったのだ! 泣いて喜ぶのだ! ハッハッハー!』

 

『……なんとか入れたです。シキカン、よろしくです』

 

 

『……うおお!? めっちゃ可愛い女の子の声がしてきた!? ええ!? 3人共!? このゲームそんなに女子に人気あるの!? ……まあ、偶然か? ……え〜と、とりあえず、らふぃーちゃんおはよう? でも今もう夕方だよ? まあ俺も昼夜逆転は何回も経験した事あるけど。 ……えーと、こっちの2人の名前はなんて読むのかな? はす? ゆず?』

 

『ラフィーはらふぃーだよ』

 

『……可愛い声なんて言われたのは初めてなのだ。 ……この雪風様の名前は蓮(はす)って言うのだ! 基地の外ではこの名前を使わないと後で物凄く怒られて非道い事されるのだ! 雪風でも蓮でもどっちでも好きな方で呼ぶと良いのだ!』

 

『綾波の名前は柚(ゆず)と言うです。 ……シキカン、よろしくです』

 

 

『……なるほどー、らふぃーちゃんに蓮ちゃんに柚ちゃんね。 ……んん? ……ラフィーに雪風に綾波? ……これ全員アズレンの娘じゃ。 ……言われてみると声も似てるし。 ……いやでもあの娘達がこんな所で俺とゲームなんてしてるはずないしな。 ……同姓同名? ……いやでもそんな偶然が?』

 

『シキカンどうしたのだ? アズレンってなんなのだ?』

 

『アズレン? ……聞いた事ない名称、です』

 

『シキカン、早くゲーム、しよ?』

 

 

『……うーん、まあいっか。取り合えず今はゲームに集中しないとね。よし、みんなの自己紹介も終わったし、クエストでも選ぼうかなー。 ……どれにしようかなー。うーん、最初に選択できるのは【はちみつ15個の納品】、【小型セイレーン20匹の討伐】、【大型セイレーン1匹の討伐】、かー。納品クエや小型モンスター討伐は4人でやると早いけど配信でやる様なものじゃないしなー。ここは【大型セイレーン1匹の討伐】で良い感じかなー。 ……みんなもそれで良い?』

 

『ラフィーは大丈夫だよ』

 

『綾波は特に希望はないので、シキカンに任せる……です』

 

『ハッハッハー! 初期のクエストなんてこの雪風様にかかればお茶の子さいさいなのだ! なんでもござれなのだー!』

 

 

『……よーし! じゃあ出撃するクエストはこの【大型セイレーン1匹の討伐】で決定! 各自の準備が出来たらこのクエストに出撃します! ……ちなみに3人はこのゲーム既にやりこんでたりする?』

 

『綾波は前に他の人の配信動画を見て、ちょっとだけやったくらいです』

 

『ラフィーも、このキャラはさっき作ったばっかり』

 

『雪風様は結構やってるのだ! あと少しでH級なのだ!』

 

 

『おおー、1人でも経験者が来てくれてよかったです。さすがに4人全員初心者だと結構グダリそうだったからねー。頼りにしてますよっ! 蓮さん!』

 

『……蓮さん、頼りにするです』

 

『蓮、がんば』

 

『当然なのだ! 分からない事があったらこの雪風様に何でも聞くのだ!』

 

『はちみつください』

 

『はちみつなんて幾らでもくれてやるのだ! 雪風様に感謝するのだー! ハッハッハー!』

 

 

『おー、らふぃーちゃん良かったねー。 ……はちみつなら俺もちょっとだけ欲しいな』

 

『シキカン! 雪風様は今機嫌がいいから、あんたの分も用意してやるのだ!』

 

 

【蓮】から【はちみつ】を10個貰いました。

【蓮】から【回復虫さん】を10個貰いました。

【蓮】から【元気ドドリア】を10個貰いました。

【蓮】から【閃光爆弾】を貰いました。

【蓮】から【シビレ地雷】を貰いました。

【蓮】から【落とし網】を貰いました。

【蓮】から【斧ブーメラン】を貰いました。

【蓮】から【アッツドリンク】を貰いました。

【蓮】から【サッムドリンク】を貰いました。

【蓮】から【50,000ゴォルド】を貰いました。

 

 

『蓮ちゃん!? 多い多い!! 貰いすぎだよこれ!? いや便利グッズばっかりだけども!? でも今から行くのってただの平地だよね!? 多分だけどドリンク類はいらなくない!? しかもこのゲームお金まで渡せるのかよ!? 仕様ゆるゆるじゃん!!』

 

『勢いであげちゃっただけなのだ! つべこべ言わず貰っておくのだ! そのお金でついでに店で売ってる装備も買うのだー!』

 

 

 

カッちゃん:シキカン……。早速姫プされてる……。

長嶋さん:シキカンさんは〜、とっても可愛いからね〜。貢がれてもしょうがないの〜。

赤茶:現実でならこの赤茶がいくらでも姫プしてやるにゃ……。シキカン、一体どこにいるにゃ……。

 

 

 

『……よーし、始めたばかりだけど蓮ちゃんのおかげで装備も店で買える一番強い奴で整え終わったぞー。 ……なんか装飾は夢☆カワ♡風コーデみたいな感じだけど。こっちではコレがカッコいい? いやちょっとグロく見えるんだっけ? ……まあいっか! 俺装備の見た目にはこだわらない派だしねー。 ……よし、これで準備オッケーだっ! 皆の方はどうかなー?』

 

『雪風様はとっくに準備出来てるのだ!』

 

『準備完了……です』

 

『状態良好……。行こ』

 

 

『よし、みんな準備出来てるみたいだね! ……じゃあ今から初めてのセイレーン狩りに出発しまーす! よろしくお願いしまーす!』

 

『よろー』

 

『よろしくなのだー! 雪風様の勇姿を存分に見るのだ!』

 

『よろしくお願いしますです。 ……頑張る、です』

 

 

【セイレーン討伐クエストに出撃しました】

 

 

『……おおー! 流石最新作のゲームですねー。平地マップもめちゃくちゃグラフィックが綺麗です。空の方もめちゃくちゃ綺麗な蒼い世界が広がっています。 ……さっきの地獄村とは大違いですねー。これはセイレーンとの戦闘も期待できるな―。よーし、頑張るぞー。 ……出撃した後で聞くのもなんだけど、みんな武器は何を持ってきたのかなー? 俺はオーソドックスに大剣だけど』

 

『ラフィーはハンマーだよ? どーん』

 

『雪風様はチャージアックスなのだ! ガッシャンガッシャン変形して超カッコいいのだ! この雪風様にぴったりな武器なのだ!』

 

『綾波は太刀なのです。現実で使い慣れているので大丈夫なはず……です』

 

 

『なるほどー。みんな示し合わせたように被らなかったなー。良かった良かった。らふぃーちゃんはハンマーかー。上手い人だと大型モンスでもスタンずっと取りながらボコボコにするよねー。初心者でも当たればダメージは凄いから良い武器だと思うよー。蓮ちゃんはチャアクかー。剣盾から斧に変形する時めちゃくちゃ格好良いよねー。ちょっと慣れが必要な武器だけど蓮ちゃんは経験者だし大丈夫かなー。柚ちゃんは太刀かー。居合切りカッコいいよねー。 ……柚ちゃん現実で太刀使ってるって一体何してるのかな? 剣道でもやってるのかな? ……うん、深く聞かない事にしようかな。なんかまたカルチャーショックを受けそうな気がするし。現実で気に入っている武器ならそれで良いと思うよ? 極めればなんでも強いしね。 ……よーし! じゃあセイレーンを倒しに行くぞー! まずはどのエリアにセイレーンがいるか探さないとね! あと途中の小型モンスターでちょっと操作の練習かなー。初心者3人がいきなり大型はきついと思うし』

 

『それならこっちの道がセイレーンに近いのだ! 案内はこの雪風様に任せるのだ!』

 

『蓮さん、案内よろしくお願いします……です』

 

『ごーごー』

 

 

 

カッちゃん:シキカン武器の仕様にもの凄く詳しい……。もしかして経験者……?

:別のゲームはやったことあるって言ってたが。このゲーム『H』が初じゃないの?

長嶋さん:半年前に出現した〜、セイレーンを題材にした奴だしね〜。

:似たようなゲームって事じゃ? 何かはわからんけど

 

 

 

『ここを抜ければセイレーンが出没するエリアなのだ! シキカン! あんたも早く来るのだ!』

 

 

『……おおー。広大でなだらかなエリアだなぁ。戦いやすそうで良いけど。 ……ん? あの正面にいる生き物なに? 何かオフニャのセイレーン版みたいな感じの娘達がたむろってるんだけど。 ……うわこっち向かって来た!』

 

『シキカン、そいつ敵』

 

『沢山向かって来てる……です』

 

『ただの小型セイレーン共なのだ! 弱いけどほっとくとプレイヤーの動きを邪魔してくるのだ! 今のうちに倒しておくのだ!』

 

 

『……なるほどー。 ……じゃあ可哀想だけど倒しちゃおうか。 ……そいっ! そいやっ! ……うわー、血飛沫めっちゃ飛んでる。こう言う表現はこっちだとどうなってるんだろう。 ……可愛いエフェクト? 見たいな感じかなー。まあ気にせずやっちゃいましょう。んー、なるほどー、武器攻撃モーションは全く同じっぽいなー』

 

 

全員の【HP】が回復しました。

 

 

『んんっ!? なに!? 何の効果!? このゲームセイレーン攻撃するとHP回復するの!?』

 

『ハッハッハー! この雪風様の粉塵を喰らうがいいのだー!』

 

 

全員の【HP】が回復しました。

全員の【HP】が回復しました。

 

 

『ちょっ! 蓮ちゃん!? 過剰過剰っ! 俺もみんなも既にHPMAXだから! さっき蓮ちゃんから貰った【回復虫さん】も持ってるから! なんならさっき【はちみつ】と調合したら【回復虫さんグゥレイトゥ!】まで進化しちゃってるから! ビタミンパワーのエネルギーもバッチリ採れちゃう感じだから! 蓮ちゃんが今使ってるそのアイテムって多分貴重品だよね!? もったいないよ!?』

 

『大丈夫なのだ! この雪風様に抜かりはないのだ! 調合材料も全部持って来てるから使いたい放題なのだ! 回復はこの雪風様に任せるのだー!』

 

『わかった、回復は任せる』

 

『蓮さん、頼りにするです』

 

『ハッハッハー! 味方のサポートはこの偉大で頼りになる雪風様に全てお任せするのだー! あんた達は安心して戦うがいいのだー!』

 

 

 

長島さん:お〜、蓮ちゃんが〜、粉塵と一緒に〜、心も舞い上がっちゃってるの〜!

カッちゃん:楽しそう……。

:まあ実際初心者に頼りにされるのは嬉しいしなー。頑張ろうとするのはわかる。

赤茶:ぐぬぬ……。この蓮とかいう奴調子に乗ってるにゃ……。後で覚えてるといいにゃ……。

 

 

 

『そっかー。じゃあ今回は蓮ちゃんにサポートお願いしようかなー。蓮ちゃんよろしくね!……おっ! あっちに巨大な奴がいるぞっ! あれが今回の大型……。 ……ええー。 ……なんか角と砲台としっぽが生えた巨大なセイレーンが四つん這いになって動いてるんだけど。 ……あれが討伐対象なの? なんかやだなぁ』

 

『シキカン、あんたにも苦手なものがあったのだ? 確かにあれは気持ち悪い生物なのだ』

 

『いや苦手とか気持ち悪いとかじゃないんだけど……。まあいいか、ゲームだし。可哀想だけど今回セイレーンちゃんには大人しく刀の錆になって貰いましょうっ!』

 

『……うん。ラフィーも、がんばる。多分』

 

『命が惜しくなければかかってこいなのだ! この雪風様が相手してやるのだ!』

 

『ついに、シキカンを守れる時が来た……です。頑張る……です』

 

 

 

長嶋さん:お〜、さっそく大型セイレーンと対決なの〜!

赤茶:シキカン!そんなセイレーンなんて早くやっつけるにゃ! そして次は赤茶とやるにゃ!

赤城:シキカン様ぁ? お手並み拝見致しますわぁ。

鸞:シキカン……。姉様をこれほど狂わす男……。その実力、この眼で確かめてやろうぞ……。

 

 

 

『おっ? おぉっ? ……なるほどー。 ……うーん、突進前の足摺りとか尻尾回転動作とかは見たことある奴だなー。でも時々二足で立ち上がって爪攻撃とかもしてくるのかー。色んなモンスターの動作が混じってる感じがするなー。これは少し様子見してパターンを見極めないといけ 『どーん』 ……ってうぉお!? どうしたのらふぃーちゃん!? 何でいきなりシキカン打ち上げたの!? いやそういう事もできる武器だけどそれっ! シキカン今セイレーンの事分析してたでしょ!? どうしたのいきなり!?』

 

『これ、面白い』

 

『らふぃー! やめるのだっ! シキカンは今勉強中なのだっ!』

 

『どーん』

 

『ぐわああああっ! やめるのだーっ!』

 

『みんな空へ飛んでく……です』

 

 

『らふぃーちゃんやめてっ! みんなをどーんどーんしないでっ! ……いや、でもさっき打ち上げられた時に空中で攻撃動作出来たな。 ……空中攻撃あるって事は乗りシステムもありそうな感じか? ……よし、らふぃーちゃん! もう一度俺を打ち上げてくれ! 今度はあのセイレーンの方に!』

 

『わかった、やる。 ……どーん』

 

『ぐわああああっ! って良し! 方向バッチリ! これで、縦切りすればーーっ!!』

 

 

【セイレーン】に乗りました。

 

 

『よーしっ! 乗り成功っ! 後は頭の方へ移動してー。 ……よしここで攻撃っ! 攻撃っ! 攻撃っ! これでダウンとれたらダメージかなり取れそうだぞ……。 ってちょ!? ビシャマルちゃん!? 何で俺の頭の方によじ登ってくるの!? あっ痛い痛い!! ビシャマルちゃん!! 頭攻撃しないで!! 俺が指示出したのはビシャマルちゃんじゃなくてゲームの操作キャラの方だからっ!! ビシャマルちゃんやめてっ!! アタマポカポカしないでっ!! 乗り失敗しちゃう!! 振り落とされちゃうからぁ!』

 

 

 

:モンスターの上で乗りをしているシキカンの上で乗りをしているモンスターの図

:これもうわかんねぇな

長島さん:カオスな状況なの〜。

赤茶:……あのオフニャやっぱりちょっとおかしいにゃ。これは修理が必要そうだにゃ

 

 

 

『A"a"A"a"A"a"A"a"A"a"!!!!』

【セイレーン】から振り落とされました。

 

 

『あ、あああああぁ~ッ!』

 

『シキカンが飛んで行った、です……』

 

『振り落とされちゃったのだ……。シキカン格好悪いのだ……』

 

『シキカン、どんまい』

 

 

『……ビシャマルちゃんっ! もうっ! ダメでしょ暴れちゃ! ちゃんとお膝の上に座ってて下さい! ……ふぅ、まあ振り落とされたけどダメージはないし、まだまだこれからだよねって……。えぇっ!! らふぃーちゃん!? そこで何してるの!?』

 

『お肉焼いてる』

 

『いやわかるけどっ! お肉ぐるぐる回して焼いてるのはわかるけどっ! ここ戦場の真っただ中だからねっ!? すぐ隣でセイレーンが柚ちゃん蓮ちゃん達とめっちゃ戦ってるからね!? なんなら今セイレーンの尻尾攻撃当たりそうだからねっ!?』

 

『スタミナ切れた』

 

『スタミナ切れなら俺が【元気ドドリア】あげるからっ! さっき蓮ちゃんに貰った奴だけどっ! これで多分スタミナ回復するからっ!』

 

『……上手に焼けた。シキカンにあげる』

 

『いや大丈夫だからっ!? シキカンは【元気ドドリア】食べて元気いっぱいだからっ! らふぃーちゃんスタミナ減ってるんでしょ!? らふぃーちゃんがせっかく焼いたんだしらふぃーちゃんが食べようっ!?』

 

『シキカン、やさしい。 ……じゃあラフィーが食べる。モグモグ』

 

 

『……ふぅ。とりあえずセイレーンから攻撃されなくて良かったー。 ……あれっ? セイレーンどこいったの? さっきまで2人と戦ってたのに。エリア移動でもした? ……あれ? ……なんか地面からおtアッーーーーーー!!!!!!』

 

『おー、高い』

 

『シキカンー!!! らふぃー!!!』

 

『シキカンとらふぃー、地面の下から突き上げられて、また飛んでいった……です』

 

 

『……うおおおおお!? らふぃーちゃんと俺のHPめっちゃ減ってる!! ヤバいヤバいすぐ回復しないとっtええええええええ!!! 二人ともここでピヨり!? ヤバいヤバい死ぬ死ぬ死ぬ死ぬっ!!!』

 

『粉塵つかって』

 

『はやく』

 

『やくめでしょ』

 

『わかってるのだ!!! 今調合中なのだ!!! 少し待つのだ!!!』

 

『ッ!! ……綾波が敵を引き付けるですっ! ……その隙にっ!』

 

 

 

:楽しそう(小並感)

:こいつらなんで戦いの最中に漫才やってんの?w

カッちゃん:一応みんな真剣にやってるんだよ……。たぶん……。

:らふぃーちゃんのムーブが素人を通り越してもはや玄人

長嶋さん:いいな〜、わたしもはやく〜、シキカンさんと一緒にプレイしたいな〜。

 

 

 

『調合出来たのだっ!すぐ使うのだっ!』

 

 

全員の【HP】が回復しました。

 

 

『……ふぅー、ピヨリも治ったし、HPも回復できたわー。蓮ちゃんありがとー! 柚ちゃんもセイレーンを引き付けてくれてありがとー! ……もうっ! らふぃーちゃん! だめでしょ戦場でふざけちゃ! もう少しでシキカン達死にそうになっちゃったでしょ!?』

 

『……少しやりすぎた。ラフィー、反省』

 

 

『……まあ初心者だし仕方ないか、誰も死ななかったしねっ! 今から気をつけてくれれば大丈夫だから! よーし、気を取り直してセイレーンをボコボコに……、って、あれ? セイレーンからなんか赤いオーラ出てない? うわ!? なんか攻撃めちゃくちゃ速くなってるんだけど!? なにあれ!? 怒り状態!??』

 

『こいつ怒ると動き変わる』

 

『シキカン! 気を付けるのだ! 怒ると攻撃力も上がるのだ!』

 

『ッ!! シキカン、危ないですっ!! ここは綾波がっ!!!』

 

 

『うおぉぉおめっちゃ速いめっちゃ速い!! いやでもパターンもどっかで見た事あるし、慣れればすぐに対応出来そう……、って!! えっ!? 柚ちゃんっ!? 痛い痛い!! シキカンの近くで太刀振り回さないで!! 守ってくれてるのはわかるけど!! シキカンコケちゃうから!! 動けなくなっちゃうから!! って、え? なんかセイレーンがチャージ動作に……、うぉおおおおおおおお!!?!?!??』

 

『あっ……』

 

 

【SHIKI-KAN】が倒れました。

【柚】が倒れました。

 

 

『シキカンーー!!!! 柚ーー!!!』

 

『……2人とも、倒れちゃった』

 

『……シキカンが ……綾波の ……せいで』

 

『……うおー、なんだよ今の攻撃。チャージ後に全方位ビーム攻撃とか完全に初見殺しじゃねえか。そういうのはもっと終盤のモンスターが使ってくる奴だろ……』

 

 

 

『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ』

 

『二人共やられちゃったのだぁ……。もうだめなのだぁ……。おしまいなのだぁ……』 

 

『……シキカン、ごめんなさい。ラフィーが、遊んでたせい』

 

 

 

『……えっ!? あれ!? いや皆なんでそんな落ち込んでるの!? 大丈夫だよ!? 柚ちゃん入れてもまだ2乙だから! あと1回倒れたらクエスト失敗だけどまだ大丈夫だから! 俺も柚ちゃんもベース基地で復活したから!』

 

『綾波のせいで、綾波のせいで、綾波のせいで、綾波のせいで、綾波のせいで、綾波のせいで、綾波のせいで、綾波のせいで、綾波のせいで、綾波のせいで、綾波のせいで、アヤナミノセイデ、アヤナミノセイデ、アヤナミノセイデ、アヤナミノセイデ、アヤナミノセイデ』

 

 

 

長嶋さん:あ〜、シキカンさんが〜、乙っちゃったの〜。

:あれは初見殺しだよなー。見慣れれば余裕で対応出来るけど。

:セイレーンのHPもまだ半分以上は残ってるんじゃね? ここで2乙はきびしい。

カッちゃん:なんだか空気も、悪くなってる……。

:柚って子なんだか病んでね?

:まあ助けようとして逆に足引っ張ったらかなり精神に来るよなー。

赤茶:シキカン、どんまいにゃ。もうあきらめて次に行くにゃ。

 

 

 

『柚ちゃん!? 大丈夫だから!! 俺もあの攻撃は初見じゃ避けられなかったから!! もう前動作も見たから今度は避けれるから!! 元気になろう!?』

 

 

『……でも。 ……綾波のせいで。 ……綾波は、シキカンを、助けようとして。 ……でも、逆に、足を引っ張って』

 

 

『大丈夫だよ柚ちゃん!? さっきは失敗しちゃったけど今までめっちゃ助かってたしね!? なんなら俺とらふぃーちゃんがピヨってた時に柚ちゃんがセイレーン引き付けてくれてなかったら既に2乙してたしね!? そんな自分を責めなくて大丈夫だから!!』

 

 

『……でも、もう、綾波は。 ……自分が、信じられない。 ……です。 ……あの時みたいに。 ……また、死んでしまう。 ……です』

 

 

『……うーん、これは重傷だなー。 ……よし、わかった。柚ちゃん、無理に自分を信じなくていい! 自分を信じられなくなる時は誰にでもあるしね! 俺もしょっちゅう信じれてないし! なんなら今も自分を信じてなんかないし! 俺が信じてるのはビシャマルちゃんだし! ……そういう時は自分を信じるんじゃなくて、他の誰かを信じれば良い! 今だったら、俺とか、らふぃーちゃんとか、蓮ちゃんとかだね! みんな最初は初対面だったけど、今はみんな一緒に戦ってる仲間だし!』

 

 

『自分じゃなくて……。みんなを、信じる……ですか? ……でも、こんな綾波なんかが、信じても、みんなきっと迷惑に思うはず……です。 ……シキカンも、本当は、迷惑に思ってるはず……です。 ……今まで、ずっと、そうだった……です。 ……今回も、きっと何も変わらない……です』

 

 

『……そんな事ないよっ!? 少なくとも俺は柚ちゃんを信じるから!! あれだけ動けてたらもう大丈夫だから!! 柚ちゃん!! 俺を信じて!! そして俺の信じる柚ちゃんを信じるんだ!!』

 

『……柚、元気出して? ……大丈夫、次はラフィーも、本気出す』

 

『……大丈夫なのだ! 今度はこの雪風様も気を抜かないのだ! 柚っ! あんたもこの偉大な雪風様を信じるのだー!!!』

 

 

『……シキカン。 ……らふぃーさんと蓮さんも。 …………もう大丈夫なのです。 ……シキカンたちのおかげで、力が溢れてきたのです。 ……もう一度だけ、信じてみるです。 ……自分じゃなくて、みんなを。 ……綾波と一緒に戦ってくれる仲間を信じるです!』

 

 

『……よーし、その意気だ!! 柚ちゃんも元気になったし、みんなもう一度頑張って、セイレーンを倒すぞー!! ……ところで蓮ちゃんとらふぃーちゃんは今セイレーンと戦ってるの?』

 

『雪風様とらふぃーは今セイレーンがいる前のエリアで待機中なのだ!』

 

『ペイントペンキ投げた。これで敵の位置が分かる』

 

『よーし、じゃあみんなでもう一回挑戦だー! ほらっ、柚ちゃんも行くぞー!』

 

『……みんなと一緒に、頑張る……です! ……もう絶対に負けたりしない、ですっ!』

 

 

 

:おー。みんな立ち直った。

:シキカンすげー。普通この空気だったらここで解散もありえたのに。

長嶋さん:シキカンさんは〜、慰めるのがとってもうまいの〜。

カッちゃん:あんなこと言われたら……。もう一度頑張るしかない……。

赤茶:……なんでにゃ? なんで赤茶はあのメンバーの中に入ってないにゃ? バグなのかにゃ?

 

 

 

 

『目標確認……。自己リミッター解除……』

 

『ふん! 雪風様の真の力を見せてやるのだ!』

 

『……綾波は、今度こそどんなことがあっても生き延びて、シキカンのもとに帰るのですっ!』

 

『……みんな気合いは十分だねっ! よーしっ! イクゾー! ……じゃあまずはこの【閃光爆弾】を使ってッ!!』

 

 

【閃光爆弾】を使用しました。

 

 

『よしっ! セイレーンの目が眩んだぞ! みんな今のうちにセイレーンに近づいて攻撃だ! らふぃーちゃんは出来るだけ頭を攻撃してスタンを狙って! 柚ちゃんはセイレーンの尻尾を攻撃する事に集中して! 蓮ちゃんは2人の攻撃が当たらないように胴体付近で頑張って! 俺は遠くからセイレーンの動きを見て臨機応変に対応するからっ! みんな、今の指示で大丈夫!?』

 

『ラフィーは大丈夫だよ?』

 

『……任せるです! ……もう絶対に失敗しないです!』

 

『任せるのだ! この雪風様の華麗なチャアク捌きを見るがいいのだ!』

 

 

『よーし、じゃあ俺は遠くから……、遠くから何しよう……。なんかなかったっけ……。あ、蓮ちゃんから貰った【斧ブーメラン】とかあるじゃん。これ投げたら……。うお!? 【斧ブーメラン】強っ! 普通に攻撃するくらいダメージ出るじゃん! よーし、これでっ…… うわっ! セイレーンがまた怒り状態に! みんな気を付けて! ……あっ! みんな武器仕舞って! 緊急回避態勢! あのチャージ攻撃が来るぞ!』

 

『ッ! そんな攻撃! この雪風様には当たらないのだー!』

 

『ッ! もう絶対に当たらない……ですッ!』

 

『とーうっ』

 

 

『……よーし! みんな回避出来たなー! それじゃ攻撃再開―! 【斧ブーメラン】! 【斧ブーメラン】! ……あ、ブーメラン壊れた。 ……でもセイレーンの砲台も片方潰したから、あの攻撃も威力落ちてるはず』

 

『どーん、どーん、……ばしーん』

 

 

『……おおっ!! らふぃーちゃん!! スタンナイスゥ!! よしみんな、セイレーンが倒れてる間に一斉突撃だー!!』

 

『ふはははー! 雪風様の勇姿を見るのだー! この斧攻撃を食らうのだー!!』

 

『ッ! 鬼神の力を、味わうがいい……!!』

 

 

『……おぉー!! 柚ちゃんも尻尾切りナイスー!! このまま押し切るぞー!!』

 

 

 

:……おー、ようやく尻尾も切れたかー。

:確かこいつはHPが残り少なくなると尻尾切れるようになるんだっけ?

:まあHP残り3割は確実に切ってるな

:てか、らふぃーって奴凄くね? さっきからハンマー全部的確に頭部に当ててるんだが?

カッちゃん:あの動き……、討伐RTA動画で見た事ある……。

:蓮って奴も動き格段に良くなったよなー。攻撃に集中し始めたからか?

:まあ普通に操作大変なチャアク装備しながら味方サポートもしてたもんな。慣れたばっかの中級者じゃ動き悪くなって当然だわ。

:柚とかいう子も最初に比べて太刀の扱いめっちゃ上手くなってるな。

:全員ひとつの事に集中してるからなー。シキカン指示出すの上手いし。

赤茶:これは討伐もいけるにゃ? ……シキカン頑張るにゃ!!!

長嶋さん:シキカンさんと〜、みんなも〜、とにかくがんばれ〜!

 

 

 

『うおお!? 起き上がったっ!! ヤバいみんなちょっと離れて……。おっ!? こいつもう足引き摺って逃走体勢じゃん! よーし、じゃあ逃げる先にこの【シビレ地雷】を設置して……』

 

 

【セイレーン】が【シビレ地雷】にかかりました。

 

 

『よし! 引っかかったぞっ! ……みんなラストスパートだ! 全員でこいつをボコボコにするぞー!』

 

『見るのだ! これが雪風様の全力なのだー!!!』

 

『どーん、どーん』

 

『綾波を信じてくれた、シキカンと、みんなのためにっ! ……全力で、いくです!!』

 

 

『……倒れろ倒れろ倒れろーっ! ってシビレ地雷が壊されたぁ!? くっそ!! もう罠設置してる暇もないし、みんな最後はゴリ押しで 『もーいっかいー、ばしーん』 ……うぉおお!? スタン2回目!? この短時間で!? らふぃーちゃん超絶技術過ぎない!? ……ええいっ! みんなっ!! これで本当に最後だっ!!! いっけええええええええええ!!!』

 

『どーん、どーん、ばしーん』

 

『鬼神の力を、……超えてみせるですっ!!!』

 

『……これでッ!!! 終わりなのだああああああああああッ!!!!!!』

 

 

 

 

『A"a"A"a"A"a"A"a"A"a"……』

【セイレーン】を討伐しました。

【メインクエスト】を達成しました。

 

 

『……やったのだあああああああああああああああ!!!!!』

 

『目標殲滅……、ふあぁ……、眠い……』

 

『勝った……ですか? ……シキカン、綾波は約束を守った、です。 ……褒めてくれると、嬉しいのです』

 

 

 

:うおおおおおおおおお!? 討伐成功したあああああ!?

:やるな、シキカン。

カッちゃん:凄い……、本当に討伐した……。

長嶋さん:最後あたりの〜、どとうのラッシュは〜、とってもすごかったの〜!

赤城:真剣にゲームするシキカン様かわいい♡見るだけでやけどしそう♡

鸞:ふん……。姉様が認めている男だ……。当然この程度は出来てもらわなければ困る……。

赤茶:シキカンシキカン! 早く次やるにゃ! 赤茶はもう待ちきれないにゃ!

 

 

 

『……よっしゃあああああああっ!! 討伐成功っ!!! ……みんなも良くやってくれたね! みんなの活躍が一つでも欠けてたら、正直言って最後の罠を壊された辺りで誰か倒れてたかもしれなかったしね! ……らふぃーちゃん! 蓮ちゃん! そして、柚ちゃんも! 手伝ってくれて本当にありがとう!』

 

『ハッハッハー! この雪風様の本来の実力が発揮出来れば、こんなセイレーンなんてイチコロなのだー!』

 

『ラフィーも、頑張った。この結果は当然。 ……でも、もっと褒めて?』

 

『綾波は、特別な事は何もしてない……です。ただ、みんなのために頑張っただけ……です。でも、褒めてくれて嬉しい……です。 ……ありがとうです、シキカン』

 

 

『……うんうんっ! みんな本当によく頑張ったよ! ありがとうっ!! ……じゃあ、最後にフレンドカード交換しようかっ! このカードを交換してればまた何時でも一緒に出来るしねっ!』

 

『当然なのだー! この偉大な雪風様とフレンドカードを交換しないなんてそんなのありえないのだ!』

 

『ラフィーも、交換する』

 

『フレンドカード……ですか? でも、綾波は、今まで友達なんて、居た事無い……です。フレンドになっても、何をすれば良いのか、わからない……です』

 

 

『いやいやっ!? 柚ちゃんそんなに難しく考えなくても大丈夫だよ!? フレンドになったからって特別何かを強制されるわけじゃないしねっ! 今日みたいにまたみんな一緒に遊ぼうって約束できるのが友達だから!』

 

『そうなのだ! 柚も今日の動きは目を見張るものがあったのだ! 特別にこの雪風様の家来にしてやっても良いのだぞ?』

 

『ラフィーは、みんなと友達になりたい。 ……柚も、ラフィーとお友達になろ?』

 

『そう……ですか? なら綾波も、みんなと友達になる……です。 今日みたいに、みんなと一緒に、もっと色んな事をしてみたい……です』

 

 

『……よしっ! じゃあ決定! ……よーし、これでみんな今日から友達だ! また一緒にやろうね! ……じゃあ、なんだか他の視聴者さん達も俺と狩りたいみたいだし、みんなとは今日はこの辺で! 手伝ってくれてありがとうね、お疲れ様っ!』

 

『お疲れ様なのだー! シキカン! あんたの事は気に入ったのだ! 何かあればまたこの雪風様を呼ぶのだ! それではサラバなのだー!』

 

『シキカン、お疲れ様……です。綾波も、必要になったら何時でも力になる……です』

 

『……シキカン、ばいばい』

 

 

【蓮 が退室しました】

【柚 が退室しました】

 

【らふぃー が退室しました】

 

 

『はいはいみんなお疲れさまー! よし、それじゃあ次の 【赤城 が入室しました】 【鸞 が入室しました】 【赤茶 が入室しました】 ……だから早っ! みんな早すぎない!? 視聴者の中で早打ち競走中なの!? ……まあ人が来ないよりはいいけどね!? えーっと、じゃあ今度はこの人達とまた狩りに行きたいと思いまーす。えーっと皆さんはー………………』

 

 

 

…………………。

 

 

 

…………。

 

 

 

……。

 

 

 

『……いやー、皆さん沢山のご参加ありがとうございました。初めの3人もそうでしたが、その後に一緒にやってくれた方も相当レベル高かったですねー。赤城さんと鸞(らん)さんなんて、2人の弓の曲射攻撃で殆ど一方的にセイレーン狩れちゃいましたし。長島さんとカッちゃんさんのボウガンなんて、素早いセイレーンだったにも関わらず、ほぼ100%全部の弾を見事に当ててましたしね。あと赤茶さんも笛のサポートありがとうございました。やっぱりサポートあると体力やスタミナを余り気にせずにセイレーンに突っ込めますね。滅茶苦茶役に立っていたので、そんなに落ち込まないで下さいねー』

 

 

 

赤茶:そ、そうかにゃ? シキカンの役に立ってたなら、赤茶はそれで満足にゃ! 褒めてくれてありがとにゃ、シキカン!

カッちゃん:別にこれくらい……、普通だし……。

長島さん:ふっふっふ〜。わたしの本当の実力は〜、まだまだこんなものじゃあないんだけどね〜! シキカンさんも上手かったの〜!

赤城:嗚呼ッ! シキカン様は見処が有りますわぁ……! やはり私の運命の人……!

鸞:姉様……、コードネームを……、本当にもう……、バレたらどうなるか……。

:もうバレてるぞ。お前ら2人共、後で腹マイト2往復な。

赤城:……。

鸞:……。

 

 

 

『皆さんご感想ありがとうございますっ! 俺も今日は皆さんと一緒に狩りが出来てとても楽しかったです! また機会がありましたら続きをやりたいと思いますので、その時はまたよろしくお願いします! ……それでは、キリがいいので今日はこの辺で。 皆さん、さようならー、また観に来て下さいねー! ……はい、ビシャマルちゃんも一緒に! ……バイバイ』

『にゃー』

 

 

 

赤茶:シキカン! お疲れさまだにゃ! 次の配信も絶対観に来るにゃ!

長嶋さん:しきかんさんは〜、とっても面白いから〜、次回の配信も期待してるの〜!

カッちゃん:また観に来ても良い……かな。

蓮:シキカン、やっぱりあんたは最高だったのだ! この雪風様の力が必要になったらいつでも言うのだ! どこに居てもすぐに馳せ参じてやるのだ! 感謝するのだー! ハッハッハー!

らふぃー:シキカンはいっぱい、ラフィーのことかまってくれた。 ……また遊ぼ?

柚:……シキカン、あなたがいれば、綾波はもう迷わないです。 ……もう、どんな事があっても、絶対に、シキカンのもとに帰れるです。 ……綾波は、今のこの気持ちを、ずっと大切にしたいです。 ……この先も、ずっと、シキカンのそばにいたいです。 ……シキカン、ありがとう、です。

 

 

 

―――――配信終了――――――

 

 

 

 




綾波ちゃんに友達が出来ました。


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#08 お金が無くても余裕ですっ! 無くなる前に奪いますっ!

 

 

 

 はー、楽しかった。『セイレーンハンターH』意外と良作だったなー。

 

 いやー、この世界は他のみんなの価値観がおかし過ぎるから、もうまともなゲームは遊べないと思ってたんだけど、面白いゲームもあって良かったわー。

 

 

 ……でもこれは1人でやるゲームじゃないよなー。 ……いやたぶん、この世界では俺に限定してだけど。

 

 

 ……だってモンスター全員セイレーンだよ? この世界の人たちは普通に怪物殴ってる気分だろうけど、俺にとっては可愛い女の娘を寄ってたかってボコるゲームにしか見えなかったし。

 

 しかも規制とかも全然無いもんだから部位破壊なんてしようもんなら最新ゲームに相応しい高画質セイレーンちゃんのアレがアレしながらアレしてアレになってそんでもって怒り状態で暴れだすんだもん。アレだけされたらそりゃ怒るよ。もう見てらんない。

 

 SHIKI-KANは可哀想なのでは出来ません。色々と。

 

 

 ……まあでもなんだかんだでゲームも楽しかったし、今日配信で一緒に遊んでくれた娘たちもみんな良い娘ばっかりだったなー。配信してて初めて良かったと思えたわ。今までのは謎の悪口にしか聞こえない褒め殺し配信と案内人ちゃんのせいで正規ルートはロクな死に方しない無人島生活ゲームだったもんなー。

 

 というか今日の配信に来てた娘たちの中にKAN-SENっぽい娘達も居たよなー。配信中は出来るだけ気にしない様に振舞ったけどあれ絶対KAN-SENだよなー。言動がモロにそうだもん。

 

 でも、どういう事なんだろうなー。もしかしてKAN-SEN達もこの世界ではゲームやるくらいには余裕を持って生活出来ているのだろうか。KAN-SEN達が厳しそうな状況だったのは俺の勘違いだったのかなー。そうだったらいいなー。 ……でも現実はきびしい。多分。

 

 

 ……でも、もしかしたらこのまま行けば現実でもKAN-SEN達に会えちゃったりするのか?

 

 

 ……いやいや、深く考えるのはやめておこう。 ……もし万が一、オフ会なんて開いて視聴者の皆と交流だーみたいな事しても、実は俺の勘違いでしたって事になったら目も当てられない。来たのが全員KAN-SENちゃんじゃなくてKI-SHIN様だったらもうそこで俺はおしまいだ。 ……たぶん、恐らく、絶対に命が終わる。 ……知ってるか? 鬼神様からは逃げられない。

 

 まあゲーム配信は好評だったみたいだし、このまましばらくはゲーム配信を続けようっと。オフ会とかは命を投げ捨てる覚悟が決まったらやるって事で。絶対来ないけどな。今の所、多分。

 

 

 さーて、次は何のゲームやろうかなー。 ……おっ? なんかYongshibeから通知が来てる。 ……なになに~なにぃいいいいいいいいいいい!!???????

 

 なんかYongshibeからスペシャルチャットとメンバー入隊可能のお知らせが届いてるんだけど!? え!? もう!? 早くない!? 俺まだ3回しか配信してないけど!? なんなの!? なんかの日なのか!? バーゲンセールなのか!???

 いやっほおおおおおおおおおおおおおおう!!!? 何はともあれこれで俺も金が稼げるぞ!? ……稼げるよね? ……稼げて欲しいな。

 

 

 ……とにかくっ! これは思わぬ誤算だ! もう残りの貯金も2か月持つかどうかになっちゃったし。このままお金稼げなかったら俺は2か月間ビシャマルちゃんと2人で残り少ない余生を過ごすしかなくなるんだし。

 

 

 ……よーし、明日はスペチャとメンバー入隊の解禁配信に決定だー! 頑張るぞー!

 

 ほらっビシャマルちゃんも一緒に―! えいっ! えいっ! にゃ~!

 

 

 

 

 



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#09【祝!】スペシャルチャット&メンバー入隊解禁です! 皆さん本当にありがとうございます!【SHIKI-KAN☆TV】

カウントダウンをスペチャさせたくてこの小説を書き始めました。許して下さい。



 

※配信予定時間 19:30

 

 

 

赤茶:まだかにゃ? シキカンまだかにゃ?

長嶋さん:こんなに早くスペシャルチャット解禁とはね~。シキカンさんはやっぱりすごいの~。

カッちゃん:まあ、ゲーム配信は審査通りやすい方だし……。

柚:……シキカン、早く来るです。今日も一緒に、綾波とおしゃべりするです。

 

 

 

『あ“~~、あ”~~~~~~、……皆さん聞こえますかー?』

 

 

 

赤城 がメンバーに入隊しました。

柚 がメンバーに入隊しました。

赤茶 がメンバーに入隊しました。

らふぃー がメンバーに入隊しました。

蓮 がメンバーに入隊しました。

カッちゃん がメンバーに入隊しました。

ゆにこーん がメンバーに入隊しました。

鸞 がメンバーに入隊しました。

 

 

 

『……ええっ!? いきなりメンバー入隊がこんなに!? 皆さんありがとうございます!! あ、どうも皆さんこんにちは! 新人YongshiberのSHIKI-KANです! 今日はスペシャルチャットとメンバー入隊が開始したので、そのご報告配信をしたいと思います!』

 

 

赤茶   ¥30,000

遂に赤茶の資金力を活かす時が来たにゃ! シキカン! 受け取るにゃ!

 

らふぃー ¥50,000

ラフィー、お金いっぱい持ってるから、シキカンにもあげる。 ……また遊ぼ?

 

柚    ¥2,525

シキカン、今回のお友達代……です。受け取ってくれると嬉しい……です。

 

 

 

『うおお!? いきなり赤スペ!? 赤茶さんありがとう!? 赤茶さんはゲーム作ってるみたいだしお金持ちっぽいけど、無理に投げなくても良いですからね? ……そしてらふぃーちゃんは大丈夫? それちゃんと自分のお金だよね? 何かイケナイ事とかしてないよね? シキカンめちゃくちゃ心配になるんだけど? ……で、柚ちゃん!? お友達に料金は発生しないからね!? そんなの逆にお友達じゃないからね!? 柚ちゃんは何処からそんな情報を手に入れたの!? その情報はワザップだから絶対に忘れようね!?』

 

 

 

らふぃー:大丈夫。ラフィー、えらい。 ……シキカンも褒めて?

赤茶:……まさか赤茶の他にもお金持ちがいるにゃ? ぬぐぐ、これはニンゲン共からもっと搾り取る必要があるにゃ……。まずは課金ゲームの料金設定見直しを……

柚:ワザップ……ですか? ……綾波には良くわからないです。 ……でも、シキカンが言うなら、忘れるです。

 

 

 

蓮     ¥3,333

らふぃーと柚が払うのならこの雪風様も払うのだ! 配下に奉公金を払うのは上に立つものとして当然なのだ! 感謝して受け取るが良いのだ! ハッハッハー!

 

赤城    ¥4,444

シキカン様? これが私の愛の結晶ですわぁ。是非受け取ってくださる?

 

鸞     ¥200

姉様……。それは今月の……。

 

長島さん  ¥10,000

う~ん、じゃあせっかくだから~、わたしも投げちゃうの~! シキカンさ~ん、いつも面白い動画配信ありがとなの~!

 

カッちゃん ¥5,000

なんだかんだ言って、いつも楽しいし……。 この際だから私も投げておくわ……。

 

ゆにこーん ¥1,000

 

 

 

『うおー……、皆さん本当にありがとうございます。 まさか解禁日にいきなりこんなに沢山スペチャを貰えるとは思っていませんでした……。 貰えなかったらちょっと面白い芸とか要望とかに応えちゃったりしちゃおうかなーって思ってたぐらいですから。 正直生活資金も、もうギリギリになって来ていたので本当に助かりました。 ありがとうございます!』

 

 

 

赤茶:いいにゃいいにゃ。こんな金額くらい、赤茶から見たらお賽銭感覚と変わらないにゃ。シキカンの生活がこのくらいで良くなるなら赤茶は大満足だにゃ。

らふぃー:シキカンの、生活、そんなにツラいの? ……ラフィーが、何とかする?

長嶋さん:まあ~、シキカンさんの体型だと~、出来そうな仕事も限られてくるの~。

カッちゃん:シキカンは、肉体労働とかでお金稼げるオーラ出てないよね……。

 

 

 

蓮     ¥3,333

芸をするのだ!? シキカン! あんたは『雪風様の家来になります!』と言って、3回廻って わぅ! と鳴くのだ!

 

 

 

『……おっ!? 蓮さんからなんかリクエストが来てますねー。 なるほどー。

……俺は雪風様の家来になりまーす!!! ……3回廻って~! わぅッ!』

 

 

 

蓮:ほ、本当にやってくれたのだ……! じょ、冗談だったのに……。

赤城:シキカン様ぁ? 貴方はこの赤城の運命の人ですよ? この様な犬畜生に媚びを売る必要なんてないですわ?

鸞:姉様……、少し落ち着いて下さい……。

 

 

 

赤茶   ¥10,000

シキカンシキカン!

3、2、1、0、0、0、0

この数字をゆっくり、優しく、読んでほしいのにゃ♡

 

 

 

『なるほどカウントダウンですか……。 ……それじゃあ行きますねー。

さ~〜ん、に~〜い、い〜~ち、ぜ~〜ろ、ぜろ、ゼロッ!!!

ゼロォオォオ”ォ“オ”ォ“オ”ォ“オ”オ“オ”オ“オ”オ“ッ!!!』

 

 

 

赤茶:んにゃああああああああああああ!!! シキカン激しいにゃああああああああああああ!!!!!!

:スペチャ勢みんな頭おかしくなって来てるぞ

赤茶:っは!? これは違うのにゃ! 気づいたらスぺチャしてただけにゃ! 明石はどこも悪くないにゃ!

長嶋さん:もうみんな~、ちょっとはっちゃけすぎなの~。 シキカンさんも~、無理して読まなくて良いからね~?

 

 

 

『……まあ、このくらいなら大丈夫ですよ。俺も色んな配信を見てるので耐性がありますし。変なスペチャ読むとか、服を変えるとかくらいなら大丈夫ですよ。 ……需要があるかは知らないですが』

 

 

 

るまらん  ¥200

服を変えるッ!? ……ぐへへへへ ……D・V・D!! D・V・D!!

 

赤茶    ¥10,000

シキカンシキカン♡早く服を脱いでにゃ♡ 明石がもしもの時に備えて、指揮官の体を研究しておくにゃ♡

 

赤城    ¥4,444

フフフッ♡シキカン様がシたいなら、姉妹たちを呼んでみんなの目の前でしてもいいですよ~♡

 

 

 

鸞:姉様……。そのような事をこの様な場で申しては……。

長嶋さん:こういう流れは良くないの~、みんなやめようよ~。

赤茶:なんでにゃ! 今のは全年齢対象の健全なセリフにゃ! 明石はシキカンの事を心配してるだけにゃ! 明石は何も悪くないにゃ!!

柚:……綾波が信じたシキカンに卑猥な事をさせるな、です。 ……死にたいのですか?

赤茶:なんでにゃ! シキカンは明石の事大好きって言ってくれたにゃ! 大好きな人の言う事ならきっとなんでも聞いてくれるにゃ!!

柚:お前に何がわかる……です。綾波はシキカンの配信を一番最初からずっと見てたです……。シキカンのmanjutterもまだフォロワーが一桁の頃にフォローしているのです……。お前のようなニワカとは違うです……!

赤茶:ふんっ! それがどうしたにゃっ! お前は偶然最初からシキカンを見つけただけにゃ! こういうのは長さよりも深さが大事なんだにゃ! ただの古参程度が粋がるんじゃないのにゃ!

柚:……っ!! ……どうやら本当に死にたいらしい、です! 表へ出ろですっ!

赤茶:明石が表へ出たところでお前には何もできないにゃ~。残念だったにゃ~。

カッちゃん:なんかケンカが始まってる……。しかも低レベル……。

長嶋さん:もう~2人共~、コメント欄で喧嘩はよそ~よ~、ここはシキカンの配信だよ~?

 

 

 

『……うおー。 ……なんかコメント欄で喧嘩が始まっちゃったみたいですね。 ……すみません俺がふざけたせいで。 ……なんかこんな流れになってしまって。 ……しかも喧嘩してるのは柚さんと赤茶さんですか。 ……2人ともよく俺の配信見に来てくれてるし、スペチャもいっぱいしてくれたからなー。 ……うーん、なんか仲直りする方法ないかなー。 …………。 ……そうだっ! ちょうど俺やってみたいゲームがあったんですよ! ……この【MOBG】っていう100人でやるバトルロワイヤル形式のFPSゲーム! これで決着を付けましょう! はい、決定! はーい、じゃあ今からこのゲームをやりまーす! このゲーム内で100人で撃ち合って、最後に生き残った人の言う事に俺は従いまーす! ……とりあえず皆さんそれで納得してくださーい!』

 

 

 

柚:シキカン、何を言ってるのです……? ……こんな奴放っといて良いのです。

赤茶:にゃ!? シキカンが、なんでも言う事を聞くにゃ!? ……やるにゃ!! やってやるにゃ!! 誰でもかかって来いにゃ!!

長嶋さん:……しきかんさ~ん、いいの~? そんな約束なんかして~。

カッちゃん:シキカン……。それは火に油を注ぐ行為じゃ……。

 

 

 

『……はい! じゃあ今から突発でこの【MOBG】っていうバトロワFPSゲームをやりたいと思いまーす! これで最後まで生き残った人の言うことを何でも聞きまーす! ……キクダケデスケド ……スペチャ記念枠でやるのもなんだし枠取り直しますねー! ……それではっ!』

 

 

 

柚:……やってやるです。 ……シキカンと約束したのです。 ……今回も絶対に生き残って見せるです。

赤茶:やって見せるにゃ! 明石はもうどんな事にも負けないにゃ!

蓮:……なんだかわからないけど面白そうなのだ! シキカン! この雪風様が勝ったらあんたをずっと雪風様の家来にして置いてやるのだ! 光栄に思うのだぞ?

らふぃー:おー、ラフィーも、やりたい。

赤城:シキカン様♡ 目障りなものはこの赤城が全て『ソウジ』してあげますわぁ。 そして、終わったら2人っきりでゆっくりと親睦を♡ ……フフ、フフフ、アハハハハハハ!!

鸞:姉様……、ですから少し落ち着いて下さい……、机が揺れますので……。

長嶋さん:も~、……しょうがないの~。

カッちゃん:……仕方ない。 ……なるべく早く、終わらせる。

 

 

 

――――――配信終了―――――――

 

 

 

 

 



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#10【バトルロワイヤル】突発『MOBG』やりますっ! 全員フライパンで皆殺しにしますっ!【SHIKI-KAN☆TV】

まともな【PU〇G】を期待していた方は申し訳ありません。 完全に作者の趣味が出ました。



※配信開始時間 20:10

 

 

『……はい! 皆さん改めましてこんばんは! 新人YongshiberのSHIKI-KANです! 今回はさきほどの配信で言った通り、この【メタル・オフニャ・バトル・グラウンド】、略して【MOBG】というFPSゲームをやっていきたいと思います! これから俺と視聴者の皆さん合わせて計100人が無人島に降り立って、最後の1人になるまで戦いまーす! そして俺は今回最後の1人になった方の言葉に従いまーす! 何でも言う事を聞くシキカンになりまーす! 嘘じゃないでーす! ……キクダケデース』

 

 

 

赤茶:……シキカン待ってたにゃ! 絶対勝ってやるにゃ! 勝ったらシキカンは赤茶とズット一緒に暮らすにゃ!

蓮:ハッハッハー! この雪風様が全員お陀仏にしてやるのだ! 冥途の土産なのだ!

柚:綾波が、絶対に、シキカンの一番になる、です……! 最古参の力を、味わうがいいです……!

らふぃー:シキカンと遊べて、ラフィーは嬉しい、なんて思ってない。 ……思ってない。

赤城:フフフッ♪ シキカン様ぁ♪ 私が勝った暁には、シキカン様には身も心も私のものになって頂きますわぁ♪

鸞:姉様……。我々には穀潰しを養う余裕など……。

るまらん:我は浪を駆ける空想、「エレガント」なるヴィシアの邪しき剣―――駆逐級ル・マラン。我が勝った暁には、そなたを命に従えしもべとせん。

ゆにこーん:yuni

カッちゃん:せめて、こいつらだけには1位を取らせない様にしないと……!

長嶋さん:おぉ~、みんなすごいやる気なの~。

 

 

 

『……はいっ! なんか皆さんやる気十分ですねー! そんなにやる気出さなくていいですからねー! ちょっと遊んでみようかなーってくらいで十分ですからねー! ……ちょと怖いのでそこの所マジでお願いしますねー。 ……はい、それでは始めて行きたいと思いまーす。 とりあえずロビーを作ったので入ってきて下さーい! 番号は【4649】でーす! 後これからゲームする人は俺の配信画面を一旦閉じるかミュートして画面を見ないで頂けると助かりまーす! 他の人が俺の画面に映ったら不利になっちゃいますので! ……おー、100人集まりましたね。 人数割れかと思ってたのに。 ……はい! それじゃあ始めまーす! よろしくお願いしまーす!』

 

 

 

:おー、はじまった。

:ようやっと静かになったか。清々するわい。

:騒いでたやつらが一気にゲームに向かったせいで、コメント欄が一気に平和になったな。

:シキカンwwwもうあいつら放っておいて他の事しよーぜwwwwww

 

 

 

『……いや、流石にそれすると後でもっと荒れそうなので。 ……とりあえず俺も普通にゲームしていきたいと思いまーす! ……さーて、最初は航空機からのジャンプですねー。 おー、皆さん、次々と降りていきますねー。 ……俺もそろそろ降りよ―かなー。 ……せっかくだからど真ん中の街にしよーっと。 どうせ最初の方で撃たれて後はデスカメラですから。 ……パラシュート開いて―、そーれ、ぐいーん、ぐいーん! ……よしっ! 無事に着地成功ですねー。 ……おー、既にそこかしこで銃声が聞こえますねー。 ……殺っとるなー。 ……俺も取り合えず家に入って何かアサリますねー。 おっ! これは噂のフライパンじゃないか!』

 

 

【フライパン】を手に入れました。

 

 

『よし、フライパンを手に入れました! これでもう俺の勝ちですね! フライパンの攻撃力は近接でトップクラスって聞きましたし! フライパンさえあればどんな弾もハジけますからね! ……フライパンに当たればですけど。 よーし、これで俺も銃撃戦に殴り込みに……、ってあれ? ……なんか静かになってますね。 もう争いは終わったのかな? ……うーん、取り合えず敵さんは居なくなったみたいなので、アサリを継続しますねー。 ……おっ? これは何だろう? 双眼鏡かな?』

 

 

【高性能双眼鏡】を手に入れました。

 

 

『……おー、最大10倍ズームまで可能で、さらにはズーム先の音まで聞こえる収音効果付きかー。 スゴイなこの双眼鏡。 ……おっ! あの辺にプレイヤーが歩いてるじゃん。 ちょうど良いからこの双眼鏡使ってみるかなー。 ……どれどれ―。 ……おー、ズームするとプレイヤー名まで表示されるのかー。 ……今荒野を歩いてるのは【ゆにこーん】って人かー。 【KiLL 0】って表示は倒したプレイヤーの数かなー。 なるほど、こうやって強いプレイヤーがわかるシステムなのかー。 ……あっ、ゆにこーんさんが頭打ち抜かれてやられちゃった。 ……おー、やった人はあっちのバギー乗ってる人っぽいなー。 ……凄いな、あんな遠くからスナイプ出来るとか。 ……あれ? バギー乗ってる人がこっち近づいてきた。 あー、これは俺もやられるなー。 それでは皆さん、俺はここで死ぬと思うので、後はデスカメラでお楽しみください。 …………。 ……あれ? なんかバギーが目の前に止まったんだけど?』

 

 

『シキカン……。ここにいると危ないから……、早く乗って……』

 

 

『……えーっと? 【カッシン】さん? おおー、【KILL 8】ですか。 序盤でこれは凄い腕のある人っぽいなー。 ……なんでカッシンさんは俺を助けてくれるんですか? ……これバトルロワイヤルですよね? 俺を助けてていいんですか? ……特に今回は完全に見物人感覚でやってるので、俺は今フライパンしか持ってないですけど。 何も手伝えないですよ?』

 

『いいから……! シキカンを倒すのもあれだけど……、誰かに倒されるのを見るのも嫌なの……! 取り合えず、私が死ぬまでは生き残りなさい……』

 

 

『……えーっと。 ……じゃあ、お言葉に甘えて? ……取り合えずカッシンさんが守ってくれてる間はなるべく死なないようにします。 ……せっかくゲームしてるのに、デスカメラでずっと見てるだけなのもアレですしね!』

 

 

 

:なんだなんだ? チーミングか?

:いやシキカンとチーミングしても意味ないだろ。むしろ今のシキカンは足手まといにも程があるし。

:ゴースティングもされそうだしな。シキカン注意してたけど、守らないで配信見続ける奴も居そうだし。

:……ていうかカッシンさんってあのカッシンさん? ユニオンのプロゲーマーの。

:こいつプロゲーマーかよwwwそりゃ既に8KILLも取ってるはずだわwwwwwww

:結構大会で活躍してるよな。常に上位には食い込んでるイメージ。

:顔はモンスターだけどな。まあゲーマーの世界は腕が全てだから関係ないが。

:こいつがほぼ優勝候補って事か。シキカン連れてるからわからんけど。

 

 

 

『……つかぬ事をお聞きしますが、カッシンさんってあのカッシンさんですか? ユニオン所属の』

 

『確かに私はユニオンに住んでるけど……。 何……? シキカンは私の事知ってるの……?』

 

『え〜と……、知っていると言うか何というか……。 カッシンさんってアレで合ってます? 身長140〜150cmくらいで黒髪で片目が義眼のグダーっとしてる人で合ってますよね? ……身長3m超えてたりとかしないですよね?』

 

『なんでそんなに詳しいのよ……。 私殆ど顔出ししてないのに……。 確かに全部私の特徴だけど……。 身長も3mなんて超えてないわ……。 片目が義眼だって事は誰にも言った事もないのに……。 何? シキカンはこんなグータラ娘なんかに興味あるの……?』

 

『そっそうですか! いやー、今までもそうかな〜って娘は居たんですが、確信が持てたのはカッシンさんが初めてです! ……あ、いや、えーと。 ……とにかく! 簡単に言うと俺はカッシンさんのファンと言う事になりますね! グータラ娘にも興味ありまぁす!!』

 

『ファッ! ファン!? ……冗談は良しなさい。 ……私のFPSの腕に惚れたんじゃなく? 容姿に? 下らない……』

 

『いやいやそんな事ないですよ! 少なくとも俺はカッシンさんの事をとても可愛いって思ってますよ! 一緒にゲームが出来て光栄です!』

 

『かっ可愛い!? ……も、もうっ! い、今は戦闘中よ……! し、集中力を切らせる様なことは言わないで……! お願いだから……!』

 

『あ、そうですね、すみません……。 えーと、皆さん! 取り敢えずしばらくの間は、この可愛いカッシンさんに守って貰いながらゲームしていきたいと思いまーす! よろしくお願いしまーす!』

 

『ッ!! だから……! そう言う事を言わないで……! お願い……!』

 

 

 

:おいシキカンが女の娘口説き出したぞ。しかも配信中に。

:カッシンさん顔ヤバいけどシキカンの趣味ならドストライクなのか……

:まあ不細工を引き取ってくれるならどうぞどうぞって感じだけどな。

:カッシン良かったな。引き取り手が見つかったぞ

 

 

 

『シキカン……! 近くに敵がいる……! ちょっと待ってて……』

 

『え!? 敵!? 何処にいるの!? ……え? ……カッシンさん? そっちは何もないけど? ただみかんの段ボール箱が置いてあるだけで。 ……え? なんで段ボール箱に気球なんかを 『に“ゃ”あ“あ”あ“あ”あ“ぁ“あ”あ“ぁ”ぁ“ぁ”……ぁ“……』 ……ええ!? 段ボール箱がもの凄い勢いで空へ!? しかもなんか猫の鳴き声したし!? え!? 何!? どう言う事なの!?』

 

『気にしないで……。 アレはただの【アフリカハシリバコ】って言う生き物だから……。よく段ボールに擬態していて、放っておくと危ないからキャプチャーしただけ……』

 

『へ、へぇー、成る程ー。 そんな生き物いるんだー。 た、ためになるなー』

 

 

 

赤茶:……死んじゃったにゃ。 ……なんでにゃ。 ……このゲームは段ボールに隠れてたら絶対バレないって教わったにゃ。あれは嘘だったのかにゃ?

:それ出来るの伝説の傭兵さんだけだぞ

 

 

 

『……チッ! 今の気球で何人かに気づかれたわね……』

 

『……あ、ホントだ。何人かプレイヤーがこっちを狙って……。 『ゴロゴロ~~~~~!!!!』 ……うわっ!? なんか坂の上の方から変なのが転がって来た!? 何アレ!? ドラム缶!? ……いや違うなっ!? めっちゃモフモフして……! うわぁ、受けた銃弾全部吸収しながらプレイヤーをなぎ倒しまくってる……。 何アレ?』

 

『あれは超反発お布団ね……。 勢いが付いている状態で体当たりされると一定時間気絶させられるわ……。 弾も一定数は吸収するわ……』

 

 

『……見ましたか! これが超反発おふとんの力! 速さもあって火力もある! ……そして私は気持ち良くゴロゴロ出来る! これがル・ファンタスク級駆逐艦ル・マランの最終戦闘形態です! ヴィシアの悪しき剣の力、その身に受けなさい!』

 

 

『ええっ!? なんでそんな自信満々なの!? 何か凄くカッコいい感じで言ってるけど!? お布団に包まれてるせいで全く格好良くないよ!? あとそれ剣じゃなくて布団だからね!? 殺傷能力ないからね!?』

 

 

『……ゴロゴロ〜〜〜!!!』

 

『うわこっち向かって来た!? ……それ本当に気持ち良いの!? FPS視点だと目が回りそうだけど!? 大丈夫!? 我慢してない!?』

 

『……大丈夫です! おふとんに包まれてればこのくらい! ……うぷ』

 

『ほら絶対我慢してるんじゃん!! もうそれ止めて普通に戦おうよ!!』

 

 

『シキカン、こっちに、段差の上に登って来て……。そうすればアレは登れないから……』

 

『えっ、あ、うん……。 ……ホントだ。もうこっち来れないみたい。 ……あ。 さっき気絶した人達が……、るまらんちゃんの方に……』

 

 

『……くっ! 卑怯ですよ! 正々堂々と平地に降りて来て戦いなさ……、な、なんですか! 貴方達はっ! ちょっ! 一度止まったのでまだ勢いが! まっ! 待っt』

 

 

『……うん、るまらんちゃん退場でーす。 お疲れ様でしたー。 敗因はお布団から出なかったせいでーす。 これからはちゃんと布団から出て戦う様にましょうねー』

 

 

 

るまらん:……負けた。……貴重な休養日に頑張って起きてまで本気出したのに。……もう寝るぅ。……おふとぉん。

赤茶:アレで本気だったのかにゃ? ヴィシアの悪しき剣が聞いて呆れるにゃ。

 

 

 

『……あっ。 るまらんちゃんを倒したプレイヤーがまたこっちに。 カッシンさんどうする……。 カ、カッシンさん? どうしたの? いきなり銃を空に掲げて……』

 

『スゥ〜……。 ……太陽ォオオオオオオオ!!!』

 

『カッ!? カッシンさん!? どうしたのいきなり!? なんで太陽に向かって吠えたの!?』

 

『仕方ないじゃない……。 このソーラーガンはこういう仕様なんだから……。 この武器は太陽に向けて叫んだ分だけエネルギーがチャージされる仕組みなのよ……。 じゃあ、ちょっと行って倒してくるから……。 シキカンはここで隠れてて……』

 

 

『……おー、凄い。 複数人相手に余裕で対処出来てる。 カッシンさんやるなー。 ……お? 遠くからまたプレイヤーが近づいてきてる。 ……えーっと、なになに~。 ……おっ! あれは【蓮】ちゃんじゃないか! 【KILL 6】かー。 頑張ってるなー』

 

 

『……あっ! シキカン! あんたもまだ生き残ってたのか!? 雪風様は当然生き残ってるのだ! あんなヘナチョコ共の弾がこの雪風様に当たるわけがないのだ! ハッハッハー!』

 

 

『シキカン、下がってて……。 アイツも仕留めて来るから……』

 

 

『……お? この雪風様に挑もうとは中々骨のある奴なのだ! 軽く手首を捻ってやるのだ! かかって来るが良いのだ!』

 

『……太陽ォオオオ!!!』

 

『ふーんだ! この雪風様にそんな弾当たらないのだー! 余裕なのだー!』

 

『……太陽ォオオオオ!!!』

 

『ほらほらー! こんなの後ろ向いてても当たらないのだー! この雪風様の幸運にかかればこんなのちょいちょいなのだー!』

 

『くっ……、動きが全然予測できない……!』

 

 

 

:スゲー、あいつトッププロの弾余裕で避けてやがる。

:距離が離れてるのもあるが、あの動きじゃ予測できないよな。ギリギリで全部躱されてる感じ

:チートかと思ったけど動き見てると違いそう。動いた場所が結果的に弾が来ない位置になってる。

赤茶:未来予測でもしてるのかにゃ? これは研究が必要そうだにゃ。

 

 

 

『ハッハッハー! この雪風様にはどんな攻撃も当たらな【ドォォォン!】 わぅっ! び、びっくり……。 なんなのだ!? 迫撃砲!? 一体どこ【ドォォォン!】【ドォォォン!】なんなのなのだ!? なんなのなのだ!?【ドォォォン!】【ドォォォン!】』

 

 

『……フフッ♪ ハハハッ♪ アハハハハハ♪ ……まるでプレイヤーがゴミの様ね。 ソウジのし甲斐があるわぁ♪』

 

『姉様……。 流石にそろそろ此処を離れなければ……。 スナイパー等もおりますので……』

 

『あら? 加賀? そんな事ではシキカン様の一番になる事は出来ませんわぁ。 ゴミは全てソウジしなければ♪』

 

『姉様……。 ですからコードネームを……』

 

 

 

:見ろ。あれが本当のチーミングだ。

:堂々としすぎて逆に普通のタッグマッチに見える。

:まあランクマでやったらもう即通報ものだけど、ここはシキカンの個人部屋だからな。

:それでもやっちゃダメだけどな。2人でやれば単純に考えて火力も索敵も2倍なんだし。

 

 

 

『……うわー。 すごいなー。 赤城さんと鸞さんが迫撃砲を交互に連射してる……。 蓮ちゃんの周辺もう空爆地域みたいになってるじゃん』

 

『あれは本当の反則技ね……。 でも丁度良かったわ……。 あっちはあっちで人力チートだし……』

 

 

『くっ! こんなのこの雪風様にかかれば【ドォォォン!】【ドォォォン!】……ふ、ふん! ここで倒れる姿は忍びんなのだ! こ、今回は見逃して【ドォォォン!】【ドォォォン!】のだーーーー!?【ドォォォン!】【ドォォォン!】【ドォォォン!】』

 

 

 

蓮:……やられたのだー! あんなの反則なのだー!

赤茶:どんまいにゃ。負け猫部屋にようこそだにゃ。

蓮:違うのだ! 雪風様は負けてないのだ! 猫でもないのだー!

 

 

 

『……それそれそれぇ♪ 加賀? この調子でこの辺り一帯を火の海に変えてしまいましょう? そうすればシキカン様も喜んd『((どーん))』』

『ッ!!! 姉様嗚呼あああ!!! オノレよくもねえさま“【ターンッ】』

 

 

『……うぉおお!? 赤城さんがめちゃくちゃでかいオフニャに踏みつぶされた!? ……あれは俺が名付けてあげた【おすかー】ちゃんじゃないか!? ……鸞さんはなんかスナイプされたっぽいけど』

 

 

 

蓮:……なんなのだあれは! 大型ロボなのだ! オフニャだけどグロいのが逆にかっこいいのだ!

赤茶:……そういえば、とりあえずどこかにオフニャを出しとけって開発に言ってたにゃ。

赤城:……アレは何なのかしらぁ? ……流石に反則だと思わない? ねぇ、加賀?

鸞:姉様……。我々が言える立場では……。それに、そろそろ深夜バイトのお時間ですので……。姉様も早く御支度を……。

 

 

 

『……N“Y”A“A”A“A”A“A”A“A”A“A”A“A”A“A”A“!!!!!』

『((どーん、どーん、どかーん))』

 

 

『……なにあれぇ? めちゃくちゃ巨大なおすかーちゃんが両手にミサイルランチャー持ってばんばん撃ちながら口からビーム出して周囲を焼け野原にしてる……。 もはやMMOのレイドボスじゃん……。 しかもおすかーちゃんの中かららふぃーちゃんの声がするし……。 マジでなにアレ? チート?』

 

『アレは……。 巨大兵器オフニャントロプス……。 このマップに一つしか存在しない謎の巨大兵器よ……。 運営がノリで作ったとんでもない難易度の試練を1人でクリアしなきゃ手に入らないはずなのに……。 あのらふぃーって娘、何者……?』

 

 

『((ん、シキカン、やっほー。ラフィーは元気だよ? 多分))』

 

 

『……うぉおおお!? らふぃーちゃん危ない危ない! 元気なのはわかったから! ビーム撃ちながらこっち向かないで! 今シキカンのキャラの真上にビーム通過したから!』

 

『((ラフィーの、ゴキゲンアピール))』

 

『ゴキゲンすぎるから!!! ゴキゲンすぎてシキカンの周り大炎上中だから!!! ていうかこれだけビームとミサイル撃たれて逆に良く当たらないなってくらいだから!!! らふぃーちゃんやめて!!! ミサイルバシュバシュしないで!!!』

 

 

『シキカン……! 先にバギーに乗ってて……! さっき岩陰に隠したから、まだ壊されてないはず……! 取り合えずあれから逃げないと……!』

 

『え!? おっけー、わかった! ……けど、どうやって逃げるの? たぶんあのミサイルやビーム撃たれたらバギーも壊れちゃいそうだけど』

 

『デコイを撒いて……、アイツを引き付ける……!』

 

 

『……カッシンさん!? どうしたのフリスビーいっぱい投げて!? それデコイなn『((待たせたにゃ))((待たせたにゃ))((待たせたにゃ))((待たせたにゃ))((待たせたにゃ))((待たせたにゃ))((待たせたにゃ))((待たせたにゃ))((待たせたにゃ))((待たせたにゃ))..』 ……うるせええええええ!? なんかフリスビーが変形して人型になったんだけど!? しゃべってるし!! ていうかこのデコイの顔なんかオフ島の案内人ちゃんに似てない!? 気のせい!? ……うわー!! めっちゃミサイルで打ち抜かれてく!! 案内人ちゃんがっ!! ……案内人ちゃんならいいか。俺も簀巻きダイナマイトされたし』

 

 

『((どかーん、どかーん。 ……む、いっぴき打ち逃した。もっかい))』

 

『よし、気がそれた……! 今のうちに……!』

 

 

 

:久々にオフニャントロプスみたわ。

:普通の奴が1人で試練やると制限時間内に終わらないしな。 あれは複数人クリア前提。

:あれ手に入れるのも一苦労だけど、動かすのも大変だった気が。

:少なくともあんな狙った所にミサイルやレーザーは打てないな。 標準ブレッブレだし。

:またらふぃーって奴か。あいつマジで何者?

 

 

 

『((……シキカンが、ラフィーにかまってくれない。 ……シキカン、どこ?))』

 

 

『…………。 取り合えず、どうにか撒いた様ね……』

 

『……いやー、あのおすかーちゃんは反則でしょう。 どう見ても単騎じゃ倒せそうにないですね。 ……俺も手伝ってあげたいですけど、武器はフライパンしか持ってないですし』

 

『シキカンはここで待ってて……。 この場所は高台にあるし、格納庫の中ならミサイル撃たれても平気だから……』

 

『わ……わかった……。 でも、カッシンさんはどうするつもり? あれは流石に銃とかで倒せるレベルじゃないと思うんだけど』

 

『これを使うわ……。 そのためにこの格納庫まで来たんだもの……』

 

『これは……。 おおー! カッコいい戦車ですね! このゲーム戦車まであるんですね! 凝ってるなー』

 

『これでもアイツを止められるかはわからないけど……。 じゃあ、行ってくるわ……

……パンツァーー!!! フォーーー!!!』

 

『カッ、カッシンさん!? 時々元気だよね!? 今の掛け声は絶対いらないよね!? 何!? カッシンさんはもしかして大声だしてストレス解消してるの!? 日頃そんなにストレス溜まってるの!? 大丈夫!? ……あー、行っちゃった。 ……大丈夫かなー』

 

 

 

:おぉー、オフニャントロプスvs戦車かー。

:戦車じゃ厳しい気がするが、カッシンさんならいけるのか?

:相手もオフニャントロプス乗り慣れてそうだし、わからんな。

:おー、撃ってる撃ってる。カッシンの方は的確にオフニャントロプスに当ててるな。

:……でもやっぱ戦車じゃだめかー。あの弾幕は流石に避けられん。

:砲台壊れたな。これはカッシン厳しいぞ。

 

 

 

『あー! カッシンさんの戦車が煙吹き始めた! これは流石に厳しいか……。 あ、戻ってきた……』

 

『く……。 やっぱり戦車だけじゃダメみたいね……』

 

『((……シキカン、見つけた。 今そっちに行く。 ……ラフィーと、遊ぼ?))』

 

 

『……カッシンさん! どうする!? らふぃーちゃんがこっち来るけど! ……カ、カッシンさん? なんで戦車の後ろ側に【C4爆弾】なんかセットしてるの? ……それも8個も』

 

『今から、【ごっつん作戦】を決行する……! シキカンは離れてて……!』

 

 

『……え? ごっつん作戦……? いったい何を【ドドドドドドドドォオオオオン!!!】 ……うわー!? 戦車が飛んでった!?』

 

 

『パンツァーーッ!!! フォーーーーーーールッ!!!』

 

『カッシンさん!? また叫ぶの!? うわっ!! 巨大おすかーちゃんの口の中に戦車が落っこちて大炎上してる!? 何!? アレがごっつん作戦!? カッシンさんのごっつん作戦めちゃくちゃ豪快過ぎない!? アレはもうごっつんじゃなくてゴッシャン作戦だよ!?』

 

『これくらいしないとアイツは倒せない……。 それにまだ動いてる……。 早くとどめを……』

 

 

『……うわー、おすかーちゃんが口から煙吐きながらまだ立ち上がろうとしてる。 ……あれ? ……なんか刀持った人がおすかーちゃんを駆けのぼって。 ……うわー、おすかーちゃんが。 ……なんだかとっても惨い事に』

 

 

 

らふぃー:……やられた。でも楽しかった、また遊びたい。

蓮:らふぃー! 惜しかったのだ! 流石この雪風様の家来なだけはあるのだ!

赤茶:あの刀持ってる奴、動きがオカシイにゃ……。一体なんなのにゃ……。

 

 

 

『シキカン、やっと見つけた……です。 ……その隣にいる奴はなんなのですか? ……そこは綾波の場所なのです。 ……もう誰にも渡さないです。 ……邪魔な奴は全員消えるです』

 

 

『えーっと? ……この声は柚ちゃん? ……【柚】に【KILL  13】ね。 ……す、凄いKILL数だね? ……ど、どうしたのその恰好? ……なんか半分サイボーグみたいになってるけど? ……なんか体と刀から電気がビリビリ走ってるし』

 

 

『あれは……。 デンライスーツにデンライソード……。 近距離攻撃しか出来ないけど、その代わりに様々な恩恵があるわ……。 全く……! どいつもこいつも面倒な……! シキカン、とりあえずいったん離れるわよ……!』

 

 

『シキカン……? ソイツと何処かへ行くのですか……? 綾波をおいて……? ……そんなの許さない……です。 ……シキカンは綾波の友達……です。 ずっと、そばに、居なければならない……です。 ……ヒトリボッチは、もうイヤ……です』

 

 

『……シキカン。 どうやら逃げられそうにないわ……。 取り合えずあの娘を退場させるから、ちょっとここで待ってて……』

 

 

『わ……、わかった。カッシンさんも気を付けてね。 ……なんか柚ちゃん変な感じになってるし。 ……大丈夫かなぁ。 ……うおーはじまった!? なにあれ!? 柚ちゃん動き速すぎない!? でもカッシンさんもフライパンでガードしてる!? ……あれ!? 俺のフライパンがいつの間にか無くなってる!? このゲーム盗むのも出来るのかよ!?』

 

 

 

赤茶:なんだあれにゃ……。もはやFPSの動きじゃないにゃ……。

蓮:凄いのだ! ビリビリしてて超カッコいいのだ!

らふぃー:柚も、カッシンも、すごい。

:このゲームマニュアル操作にすれば格ゲーレベルで動き操れるからなー。

:1on1近距離専用大会とか開かれたりしてるしな。

 

 

 

『……邪魔するなです! シキカンは綾波の友達です! ずっとそばに居たいのです!』

 

『友達だからって……! そんなの強要出来るわけないじゃない……! 少し頭を……! 冷やしなさい……!!』

 

『……でもっ! もう戻るのは嫌ですっ! あの暗い世界にっ! あの怖い世界にっ! ……迷子になるのは! もうたくさんです!!!』

 

『ッ!! ……なら! 少しはシキカンの事も考えてあげなさい……! 貴方が喧嘩なんてしてるから……! シキカンが困ってるじゃないの……!』

 

『大丈夫……ですっ! 綾波はシキカンをずっと見てきたですっ! シキカンはとても優しいのですっ! 綾波にもとても優しくしてくれたですっ! シキカンはこんな事じゃ怒らないはずですっ!!!』

 

『怒らないからって……! シキカンの迷惑になる事をして良いはずが無いじゃない……! このわからず屋……!!』

 

『……ッ!! ……うるさいです!! そんなの聞きたくないですっ! 綾波はシキカンさえ居れば良いです!! 邪魔する奴は全員消えるですっ!!!』

 

 

『……あれ? ……もしかして今度はあの2人で喧嘩になってる? ……オカシイな。この俺が考えた【なんか空気悪くなったからみんなでゲームして全部何もかも有耶無耶にな〜れミ☆】作戦は完璧で穴なんて無かったはずなのに……。 一体何処で手違いが……?』

 

 

 

:シキカンやっぱ何にも考えずにこのゲーム提案してたんじゃねーか。

赤茶:シキカン? その作戦は穴だらけにゃ。明石でもたぶん修理出来ないにゃ。

蓮:でもゲームやるのは楽しいのだ! あの空気が続くよりずっと良いのだ! 雪風様はその作戦で良かったと思うのだ!

らふぃー:シキカンとゲームするの楽しい。ラフィーもまたやりたい。

 

 

 

『もう、あきらめなさい……! 初心者にしては頑張ってる方だけど、それでも私には届かない……! 私がどれだけゲームしてると思ってるの……!?』

 

 

『……たとえ腕が敵わなくてもっ! ……それでも綾波は! 綾波はぁあああ!!!』

 

 

『くっ! この娘、もう自分のダメージも顧みず……! ッ! しまっ! フライパンが……!』

 

 

『ッ!! これで、終わりですッ! 綾波の、シキカンを想うキモチをッ! 味わうがいいです!!!』

 

 

『……きゃあっ!!』

 

 

 

:……うおー。柚とか言う奴、世界プレイヤーに勝ちやがった。

カッちゃん:なんなのよ……、あの娘……。

蓮:柚っ! あんたは凄いのだ! 流石はこの雪風様の家来なだけはあるのだ! 褒めてやるのだ!

らふぃー:柚、すごい。ラフィーも、また戦いたい。

赤茶:ばかにゃ……。これじゃ本当にアイツが1番取っちゃうにゃ……。

 

 

 

『……シキカン。 ……綾波はヤったです。 ……約束を守って、シキカンのモトへ帰ったです。 ……これからも、ズット、シキカンと一緒です。 ……褒めてくれると嬉し【ターンッ!】』

 

 

『……あー。 ……勝ったのは柚ちゃんでしたけど、最後にスナイプされちゃいましたねー。 ……あれ? 残り人数が後2人って事は、もうあのスナイパーさんと俺しか残ってない感じですか? ……あっ! スナイパーさんがこっちに来た。 えーっと、【L・I】さんですか? ……えっ!? 【KILL 28】!? めちゃくちゃ強い人じゃないですか!! ……ちょっと名前に覚えがないですが、俺の配信を観に来て下さってる方ですよね?』

 

 

 

柚:……そんな。 ……負けちゃったです。 ……もう、アヤナミは。 ……シキカンの隣に、居られない、ですか? ……ソンナノ、イヤデス ……ヒトリハ、イヤ。

蓮:柚も惜しかったのだ! ……あと、シキカンのそばに居られなくなるわけないのだ! また一緒に遊べば良いだけなのだ!

らふぃー:……柚、元気出して?

カッちゃん:全く……、この娘は……。

赤茶:……どんまいにゃ。 ……おしかったにゃ。

:……ていうか【L・I】さんってアレ? 【FPS界のゴースト】って言われてる。

:ああー、最近のFPSソロ大会ではほぼ無双状態の人か。

:相手の画面に映る間もなくスナイプしまくるからなー。撃たれた方はデスカメラになるまで誰にやられたかもわからないという。

:てか実際の姿も見た事ある奴いないしwwwリアル大会は絶対に厚着とフルフェイスマスクで参加してるしwww俺は声すら聞いたことないわwwwwww

:そんで付いたあだ名が【幽霊】か。そんな奴もシキカンの配信観てるんだな。

:あのKILL数だと本物っぽいのぅ。

 

 

 

『……おぉー。 コメント欄を見るとなんか本当に凄い人っぽいですねー。 そんな人も俺の配信を観てくれてたんですねー。 ありがとうございま……って。 え? L・Iさん? なんで手榴弾を真上になんか投げて……。 あーーーっ!!!』

 

 

【ヤッタ! ヤッタ! ワ・タ・シがナンバー・ワン☆イェイ!】

 

 

『……ええー? ……俺が1位? ……いやいやどう考えてもさっきのL・Iさんが優勝でしょう。 ……これはちょっと納得出来ないですねー。 ……えーっと。 ……あっ! まだロビーに残っててくれてる! ……これ通話とか出来ないかな。 ……あっこのボタンかな? ……もしもーし、L・Iさーん。 聞こえますかー? シキカンでーす! 聞こえたら返事して下さーい!』

 

 

『……………………………………』

 

 

『……あれ? オカシイな。 通話は繋がってるはずなのに。 ……もしもーし! L・Iさーん! 聞こえてたら返事お願いしまーす! L・Iさんは俺の視聴者さんですよねー!? 俺の知ってる人ですかー!? 良ければ名前を教えて下さーい!』

 

 

『…………………………………………長嶋さんなの~』

 

 

『……おおー! やっと返事が来た! というかL・Iさんは長嶋さんだったんですね! いつも配信観て頂いてありがとうございます! さあっ! 1位を取ったのは俺でしたけど、勝ったのは長嶋さんですよ! さっきの自爆なんかじゃ俺は納得してないので! 何かお願い事があるならどうぞ! 俺が出来る事なら何でもしますので!』

 

 

『…………もう~! 幽霊さんは~、しゃべらないの~! ……もぅ~、しょうがないの~。 ……この配信の1番は〜、やっぱりシキカンさんだから〜。 ……みんなも〜、シキカンさんが気持ちよく配信出来る環境を整えてあげよ~? ケンカはしないで~、仲良くね~? ここはシキカンさんの配信なんだから~。 ……本当にシキカンさんを1番大事に思ってるなら~、みんなシキカンさんをそっちのけにしてケンカなんかしないでね~。 ……これが~、わたしからのお願い事かな~』

 

 

 

柚:…………。 ごめんなさい……です。綾波はまた、自分の事ばかり考えていた……です。 ……これからはもっとちゃんと、シキカンの事を考えるです。 ……綾波は、シキカンの事を、大切に思っているですから。

赤茶:……ふん。確かにお前の言う通りにゃ。赤茶もシキカンを困らせてまで自分の要求を通すつもりはないにゃ。 ……さっきはちょっとどうかしてたにゃ。 ……柚、お前にもあやまるにゃ。悪く言ってすまなかったのにゃ。

柚:……いえ、こちらこそ、すみませんです。綾波も、少し頭に血が上っていたのです。 ……これからは、赤茶さんと、他のみんなとも、もっとちゃんと仲良くなるです。 ……みんな、シキカンの事を観に来ている、大切な仲間……ですから。

 

 

 

『……うんうん〜! これでみんな仲直りだね〜! みんな仲良く、シキカンさんの配信を見ようね〜! ……シキカンさんも~、こんな感じで良かったかな~?』

 

 

『……長島さん、本当にありがとうございました。 この場が上手くまとまったのは長島さんのお陰です。 ……というか、長島さんもずっと俺の配信を観に来てくれてますよね。manjutterのフォローを1番最初にしてくれたのも貴方ですし。 ……初めてのフォロワーだったので、めちゃくちゃ嬉しかったのを覚えてます。 ……あれ? よく見たらメンバー入隊も長島さんが1番最初に入ってくれてるんですね! 解禁枠配信の前に既に入ってくれてたって事ですか!? 本当にありがとうございます!』

 

 

『ッ!! も、もう〜! シキカンさ~ん! そういう事は~、気付いても言わないで欲しいの〜! 言われちゃうと、もの凄く恥ずかしいの〜! 1番になれたのは~、本当にたまたまだったから~』

 

 

『そ、そうですか? すみません。 ……いや、でもこういった時じゃないとお礼なんて言えないしな。 ……長島さん、やっぱり俺、貴方のお願い事を何かひとつくらいは聞きますよ。 貴方ならそんなに無茶なお願い事をしないだろうし。 今思いつかないなら思い付いた時で良いですので。 それくらい感謝してます。 何時も観ていてくれて本当にありがとうございます!』

 

 

『わ、わかったわかった~! ……じゃあ~、何かしてもらいたい事を思い付いた時には~、シキカンさんにお願い事を聞いてもらう事にするの~。 ……じゃあ~、言いたい事も終わったし~、もう通話切るの~。 ……バイバイ、シキカンさ~ん』

 

 

『……長嶋さん! 本当にありがとうございました! 約束の方は忘れずに待ってますね! ……それでは皆さん、今日はこの辺で。 皆さんもこれからは喧嘩とかせずに仲良く俺の配信を見てくれたら嬉しいです! これが俺からの皆さんへのお願い事って事にしておきますね! それでは、さよならです。 っはい! ビシャマルちゃんも一緒に! ……バイバイ』

『にゃ〜』

 

 

 

蓮:シキカン! バイバイなのだ! また遊ぶのだー! この雪風様はいつでも大丈夫なのだ!

らふぃー:ラフィーも、いつでも平気。シキカン、ずっと配信しよ?

赤茶:シキカンッ! 今日はすまなかったにゃ! 赤茶はもうシキカンの嫌がる事はしないにゃ! だから嫌いにならないでにゃ! お願いにゃ!

カッちゃん:シキカン、本当に私の事を可愛いと思ってるの……? それなら……、私は……。

柚:シキカン、綾波は間違っていた……です。 今までは、ただ、シキカンの動画を長く観てただけで、良い気になっていた……です。 シキカンの事をなんにも考えていなかった……です。 これからは、もっと、シキカンの事を考えて動画を観る……です。 ずっと、ずっと、観る様にする……です。

長嶋さん:……バイバイ、シキカンさ~ん。 ……お願い事は。 ……その内考えておくね。 ……もし、シキカンさんが本当のわたしの姿を見つけてくれたら。 ……もし、本当のわたしの姿を見ても驚いたりしなかったら。 ……その時は、本当に、わたしのお願い事を聞いてもらうね。 ……期待してるよ、シキカンさん。

 

 

 

―――――配信終了―――――

 

 

 

 

 




 ……はい、生き残ったのはロング・アイランドさんでした。 ……ロックを外して退役操作をしていない限り、秘書艦変更画面で入手時間順に並べ替えると、どの指揮官も絶対にこの娘が1番に来るんですよね。 ……主人公選択も、建造の演出もなく、本当に、いつのまにか、指揮官のそばにいます。 ……まるで幽霊のように。 ……相当なヤンデレさんですね。 ……普段はなのなの言いつつ、いたずらしてきちゃうだけで、決して表に出しませんが。


……作中のネタは9割位が伝説の傭兵さんネタです。わからなかった人はごめんなさい。どうしても気になる方は活動報告を。


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#11 突発イベントが起きても大丈夫ですっ! 余裕で対処できますっ!

 



 

 

 ……うーん! 良い朝だ! 太陽も真上にあって日差しも強いし! 

 ……ってもう午後やんけっ!

 

 

 ……昨日配信終わった後、フレンドになった長嶋さんやらカッシンさんやらと結局朝までMOBGやっちゃったからなー。俺は殆ど役に立ってなかったけど。だって俺が見つける前に敵が倒れるんだもん。数時間やって、結局最後の試合まで、俺は響く銃声の音と倒れた敵の残骸しか見れなかったわ。完全にただの弾薬と救急セット他便利グッズの荷物持ちでしたわ。マジであの二人強すぎだろ。

 

 

 いやー、でも昨日の配信で、ついに、ついに確実に、この娘はKAN-SENだってわかる娘とフレンドになれたのは良かったなー。あの後カッシンさんにめちゃくちゃお願いしたら、しぶしぶながら自分の写真も送ってくれたし。KAN-SENのカッシンさんで間違いなかったし。めっちゃ嫌そうな顔して写ってたけど。

 

 長嶋さんは頼もうとする前に、絶対に自分の姿は見せないと念を押されました。あの人もたぶん、声からしたらロング・アイランドさんだと思うんだけどなー。ゲームでは初期の初期からいるのに。こっちでは姿すら見せてくれないとは。くそう、確証が欲しい。

 

 

 ……それにしても昨日はスペチャも凄かったなー。

 俺が名前を覚えてた人達はみんなスペシャルチャット送ってくれたし。1日で10万円以上も貰えるとか。これで広告費とかも付いたら結構行くんじゃないんだろうか? 何割がYongshibeに取られるかわかんないけど。

 

 

 ……この調子でお金を稼いで余裕が出来てきたら、こっちからKAN-SENちゃんたちに会いに行ってみるのもいいかもしれないなー。

 

 取り合えず、近くにある重桜の基地とかに行けばKAN-SENちゃん達も居るだろうし。

 柚ちゃん蓮ちゃん赤城さん鸞さんあたりが本当にKAN-SENだったら、重桜の基地で働いているはずだ。

 

 

 ……人違いだったら怖いけど、取り合えず見かけたら遠くから手を振ってみて、知らない人を見るような眼をされたら速攻で逃げればいいだけだし。

 

 

 ……よーし! なんだかこっちの世界でも俺が生きれる目途が立ってきたぞ! 希望が湧いて来たぞ! これからも頑張ろう! ねー! ビシャマルちゃーん!

 

 

 

 

 

 

【ピ~~~ンポ~~~~~ン】

 

 

 

 ……おっ? なんだなんだ? 宅急便かな? ……なんか頼んだっけ?   

 GallolyMateの補充注文でもしたかな?

 

 

 

 

 

『……こんにちは……です。 ……わたしは綾波というです。 ……シキカン、ですか? …………本物……です。 ……本当に居た……です。 ……画面の中だけの、存在じゃ、なかった……です』

 

 

 

 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?

 

 

 …………は? え? ちょ? なに? どういう事? なんで綾波ちゃんがいきなり俺の家に来てんの? あれ? 俺住所バレるような事した? 配信で言ってた? ……いや、言ってないよな? ……え? え? マジでどういう事? ていうか綾波ちゃん可愛すぎない? なにこれ? Live3Dっていつの間に実装されたの?

 

 

「……突然お邪魔して申し訳ない……です。 ……昨日の配信の後、綾波はずっとシキカンの動画を観ていた……です。 ……今度は、自分が楽しかった場面だけじゃなくて、本当に全部の配信動画をずっと観てた……です。 ……そうしたら、後ろの方に、小さく映ってる段ボールに、……本当にちっちゃく、シキカンの住んでる住所が書いてあった……です。 ……それに気づいてしまったら、もう、居ても立っても、いられないくらい、気持ちが、変になって……。 ……ごめんなさい……です。 ……昨日あれだけ言われたのに。 ……綾波は、また。 ……シキカンの迷惑になる事を」

 

 

「……な、なるほど~。 ……住所が書いてあったのはアレかな? ……ネットで注文してた食料とかが入ってた段ボール箱かな? ……しまったなー、配信に映っちゃってたかー。 ……えーっと? ……取り合えず玄関で立ち話もなんだし? ……家の中へどうぞ? ……段ボールだらけで散らかってるけど? ……それでもいいのなら?」

 

 

「………………シキカン、ありがとう、です。 ……お邪魔する……です」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 ……えーっと。 ……どうしてこうなった?

 

 

 ……まあ、落ち着こう。 まずは状況の整理だ。

 とりあえず、今の状況は、俺と綾波ちゃんが、俺の部屋の中で、何故か正座して、お互い無言で、対面している状態だ。

 ……正座している綾波ちゃんも可愛い。 もうなんなの? お人形さんなの?

 

 

 ……はっ! 危ない危ない。 また思考が逸れる所だった。

 ……いやでもね? 仕方ないよね? 俺がこの世界に来てから今までの間で、俺が直接対面して出会っているのはビシャマルちゃんを除くと99割が鬼神さんだからね? KAN-SEN達も写真や映像でしか見た事無かったからね? ついつい思考が逸れちゃっても仕方ないよね?

 

 

 ……それにしても、配信画面に住所が映ってたか―。 さっき綾波ちゃんにその場面を教えて貰ったけど、もう本当にちっちゃく、少しの時間しか映ってなかったし。 俺の上でビシャマルちゃんが暴れてる時に、俺の背後にあった段ボールに書かれてる宛名が1~2秒映ってただけだし。 

 

 これを見つけるって、綾波ちゃんはどれだけ俺の動画を真剣に観てくれてたんだよ? あんなふざけてゲームやってるだけの動画を。 いつも観て頂いて本当にありがとうございます。

 

 

 ……で、その後、取り合えず座って話そうかって事になって、今のお見合いな状況に戻るわけだけども。

 ……綾波ちゃんもそれっきり話そうとしないし。 なんかずっと俯いちゃってるし。 表情も心なしか曇ってる様な感じだし。 そんな綾波ちゃんも可愛いし。

 

 

 ……一体この娘は何をしに俺の所へ来たんだろうか。

 ……いや、俺に会いに来たというのはわかる。 なんか玄関で俺に会った時凄い感動してたし。 画面の中の存在じゃなかったとかそんなこと言ってたし。 俺も感動してたし。 綾波ちゃん可愛いし。

 

 

 ……でも、流石にただ俺に会いに来ただけって事はないはずだ。 確か、居ても立っても居られないって言ってたし。 俺に何かをしてもらいたい、という気持ちは何となく伝わってきている。

 ……正座でのお見合い状態が始まってから、この娘の方から、ずっとそんなプレッシャーがビシビシ伝わってくるんだもん。 無言のプレッシャーだもん。 プレッシャーを放ち続ける綾波ちゃんも可愛い。

 

 

 ……なんだ? ……俺に何を期待してるんだ? ……配信で言ってたのは、一人は嫌、とか、離れるのは怖い、とか、ずっと一緒に、とかだった気がするけど。

 

 

 ……あれ? ……綾波ちゃんもしかして本当に俺とずっと一緒に居たい感じ? ……ネタじゃなくて? ……あれゲームやアニメでも良く言ってたから綾波ちゃんの口癖かなーって思ってたんだけど? ……俺は全然ウエルカムだけど? むしろドントコイですけど?

 

 

 

「……えーっと? ……綾波ちゃんは本当にずっと俺と居たい感じですか? ……配信中にも何回か言ってたのを聞いたけど?」

 

 

「……………………はい……です。 ……綾波は、シキカンと。 ……本当に、ずっと、一緒に居たいと思ってる……です。 ……嘘なんかじゃ、絶対ない……です」

 

 

 

 ………………スゥ~~~~………ハァ~~~~……。

 

 

 ……あれ? ……俺、今、告白成功した? ……ていうか告白された? 綾波ちゃんに? ……ずっと一緒に居たいって事はそういう事だよね? ……永遠の愛を誓うとかそういう事だよね?

 

 

 ……あれあれ? 俺いつの間にケッコン指輪贈呈してたの? ていうかいつの間に好感度が『愛』状態にまでなってるの? 俺ゲームの配信してただけだけど?

 

 これがイケメン効果ですか? 放置するだけでどんどん好感度が上がって行く系ですか? 放置DE少女な感じですか?

 

 

 ……これはもしかして本当にワンチャンあるんじゃないか? ワンチャンどころかツーチャンスリーチャンバッターアウトくらいまでは行ってるんじゃないか?

 

 もしかしてあれですか? 今日から綾波ちゃんといちゃいちゃラブラブなケッコン生活が始まる感じですか? 新章突入しちゃう感じですか? ラブラブ編がスタートですか? それだったら俺は大歓迎ですけど?

 

 

 

 ……いや、でも。 ……それにしては綾波ちゃんが元気無さ過ぎるというか。 ……すんごい暗い雰囲気を醸し出してるというか。

 

 たしかに、ゲーム内でも無表情が多かったけど。

 ……でもタッチとかしたらちゃんと反応してくれたし。 表情も多少は変わったし。 ちょっと困りながら照れたり怒ったりする綾波ちゃんめちゃくちゃ可愛かったし。

 

 

 ……これは本当に手を出していいのか? なんかちょっとゲームの綾波ちゃんとふいんき(何故か変換できない)が違うんだが? 先にお悩み相談とかした方が良い気がするんだが?

 

 だ……だめだ、わからない。 ……俺には経験が無さ過ぎる。 ……経験人数が何人とか過去に彼女が居たとかそういうレベル以前に、女の娘としゃべった記憶がお店の店員さんくらいしか思い出せない。

 

 ……クックソ! ……この状況。 ……一体どうすれば。

 

 

 

闇の心AR:閣下……。何を戸惑う事がある……。目の前で可愛い駆逐艦が困っているのだぞ……? 男子たる者、身も心も慰めてやるのが当然ではないのか……?

 

 

 

 ……おっお前はっ!? 闇の心AR!? クソッ! なんでこんな時にこいつが!!

 

 

 

闇の心AR:駆逐艦在る所に私在り。困っている駆逐艦がいたら、当然の如く守ってやるのが、駆逐艦を愛する者としての責務というものだぞ?

 

 

 

 ……それは、そうだけど ……でも、守るって言ってもどうやって ……俺にそんな力はないし。

 

 

 

闇の心AR:閣下の耳は節穴か? 彼女はこれまで何と言っていた? 『一人は嫌』、『ずっと一緒』、『もう失いたくない』と言っていたのだぞ? 彼女が何を求めているかなど、聡明な閣下なら理解できるはずだが?

 

 

 

 ……人のぬくもりを ……人のあたたかさを ……求めている?

 

 

 

闇の心AR:そうだ、人の温もり、温かさだ。 ……彼女は閣下に出会うまで、その温もりを知らずに生きてきた。 ……しかし、閣下に出会って、知ってしまった。 ……人と一緒に楽しむ温かさを、温もりを。 ……彼女は今、一度知ってしまったものを、また失うかもしれないという気持ちに支配されている。 ……その気持ちは、時に、何も知らずに居た頃よりも辛いであろう。

 

 

 

 ……綾波ちゃんが ……こんな事になってしまったのは ……俺の、せい?

 

 

 

闇の心AR:……そうだ、閣下のせいだ。 ……彼女は今まで画面の中の閣下でずっと我慢していた。 ……しかし所詮それは一時的なものに過ぎん。 ……閣下の配信が終われば、彼女はまた独りぼっち。 ……先ほどの彼女の発言からするに、閣下の配信が終わった後も、必要な事をする以外はずっと、閣下の動画のアーカイブを観ていたのだろうな。

 

 

 

 ……そんな ……俺はいつの間にか ……そんなにも綾波ちゃんを追い詰めて。

 

 

 

闇の心AR:……そして、ついに、彼女は見つけてしまった。 ……閣下の住所を。 ……実際に閣下が居るかもしれない場所を。 ……彼女は耐えきれなくなったのであろう。 ……あれだけ配信内で、閣下の迷惑になるような事はしないと誓っていたにも拘らず、それを破るくらいには。 ……彼女は今、一度手に入れた温もりをまた失うかも知れないという恐怖と、閣下との約束を破ってしまったという罪悪感で、今も心が押し潰されそうになっているのだ。 ……慰めてやるのが、当然であろう?

 

 

 

 ……そんな ……でも ……慰めるったって ……どうすれば

 

 

 

闇の心AR:……簡単な事だ。実際に人の温もりを与えてやれば良い。 ……彼女は今、閣下の目の前に居るのだぞ? ……画面越しではなく、手を伸ばせば触れ合える距離に。 ……さあ、閣下よ、後は簡単な事だ。 ……彼女を抱きしめ、人の温もりを与え、その後思う存分に可愛がるが良い。 ……欲望のままに。 ……恐らく彼女は、何の抵抗もせずに受け入れるであろう。 ……閣下のためになら、どんな事でもするであろう。 ……さあ! 閣下よ! この駆逐艦の娘を! この可哀想な少女を! 身も心も閣下のものにしてしまうが良い!!!

 

 

 

 俺が…… 抱きしめて…… 可愛がるだけで…… 綾波ちゃんを救える……?

 

 でも…… 俺は…… 俺はぁあ……! 

 

 

 

 

 

:…………けないで ………… 負けないでっ!! シキカン!!

【パァアアアアアアアアアアア!!!】

 

 

 

 ……きっ君は!? 光の戦士PLちゃん!?

 

 

 

光の戦士PL:シキカン……! 闇の心になんか負けちゃダメ……! 今の綾波ちゃんはすっごく悲しんでる……! あの娘はインディちゃんと一緒……! 無表情だけど感情の起伏はとっても激しい娘よ……! インディちゃんだって私がうるさいと怒るし、嬉しい時はちゃんと嬉しいって言ってくれるわ……! 安易に体で慰める事なんかしちゃだめ……! もっと綾波ちゃんの気持ちを理解してあげて……!

 

 

 

 でも…… 俺は…… 女の子と付き合ったも事ないから…… 無表情の娘の気持ちなんて…… 読めないし……

 

 

 

光の戦士PL:シキカンの心の中にあるスローガンは一体何……!? お願い……!! 思い出して……!!

 

 

 

 …… 『可哀想なのでは…… 出来ない……』

 

 

 

光の戦士PL:そう……!! それよ……!! じゃあ今の綾波ちゃんの状況を見て……!! 完全に目からハイライトが消えてるじゃない……!! まるで秘書艦にして右上を見させた時みたいに……!! その目で俯き続けさせるなんてLive2Dの綾波ちゃんでも出来ないわ……!! 絶対に心が病んでいる証拠よ……!! 可哀想だとは思わないの……!?

 

 

 

 それは…… でも…… 俺…… 綾波ちゃんと…… イチャイチャもしたいぞ……

 

 

 

光の戦士PL:そんな事まだしちゃダメ……! 綾波ちゃんは『愛』状態の時でさえエッチな事をしようとするとプンプンするのよ……!? 今の絶望している状態の綾波ちゃんにエッチな事をしたらどうなると思うの……!? シキカンに依存はしてくれると思うけど、もう絶対に心は助けられなくなるわ……!! それでも良いの……!? シキカンはあのちょっと困った様な怒り顔でプンプンしてる綾波ちゃんを2度と見れなくなっても良いの……!?

 

 

 

 それは…… 嫌だ…… そんなの絶対に、嫌だ!!

 

 

 

光の戦士PL:お願い! シキカン! エッチな事は後回しにして! 今は綾波ちゃんの心を救ってあげて! そんな事は心を完全に救って雁字搦めにしてもうどんな事をしても2度とシキカンから離れられない様にこれでもかってくらい依存させた後でメッチャクチャのグッチャグチャになるまで好きなだけすれば良いんだから!! お願い!! シキカン!! 自分の心に!! 闇の心なんかに!! 負けないで!!!

 

 

 

 ……ありがとう、光の戦士PLちゃん。危うく俺は取り返しのつかない事をする所だったよ……。

 ……さあ! 覚悟しろ!! 闇の心AR!! 俺はもう絶対にお前なんかに惑わされたりしないぞっ!!

 

 

 

闇の心AR:ふん……。閣下に何が出来る……。私は闇の心……。駆逐艦を愛する心がある限り、私もまた常に生まれ続ける存在……。閣下程度がドウコウする事など出来ぬ……。

 

 

 

 ……オレキュアッ!! オープンマイハートッ!!

 

 ……闇夜に蠢く一輪の触手(ハナ)ッ! キュアオーレッ!!

 

 ……俺の心に棲まう闇くらい、俺自身でなんとかする!

 ……力を貸してくれ! 光の戦士PLちゃん!!

 

 

 

光の戦士PL:わかったわ! ……えいっ! ……シキカンさん! もうこれでアイツは逃げられませんよ! さぁ! 今日こそ駆逐艦の本当の魅力を、あの駆逐艦バカに徹底的に叩き込んであげて!

闇の心AR:グッ……! 何をする……! やめろぉ……!

 

 

 

 ……集まれっ! 触手(ハナ)のぱわぁあっ!

 ……触手群(フラワー)タクトッ!

 

 ……触手(ハナ)よっ! 蠢けっ!

 オレキュアッ!!!

 

 ギガァアア……! 触手ゥウウ……!

 ……ブレイカァアアアアアアアア!!!!!

 

 

 

闇の心AR:ぐわぁあああああっ!!!

 

 

 

 ……ハァアアアアアアアアアア!!!!

 

 

 

闇の心AR:……ポワワワワワ〜ン♡

 

 

 

 ……ハァアアアトッ! キァァァッチ!!!

 

 

 

………………………………

 

 

……………………

 

 

…………

 

 

 

「……綾波ちゃん。 ……君の気持ちは分かった。 ……でも、今はずっと一緒にはいられない。 ……今の綾波ちゃんは、俺じゃなくても。 ……一緒に居てくれるなら、他の誰でもかまわないって、雰囲気を感じるから」

 

 

「……ッ!! そ、そんなことない……です! 綾波は、ずっとシキカンと一緒に居たいです! 他の誰でも良いわけじゃない……です! シキカンさえ居てくれれば……! 綾波は……!」

 

 

「……そうっ! その『俺だけ居れば』っていう考えがまず良くない。 綾波ちゃんは俺以外の皆が居なくなってもいいの? らふぃーちゃんとか、蓮ちゃんとか、俺の他にも友達になってくれた人がいるのに。 その人達も本当に居なくなっていいの?」

 

 

「それは……。 嫌……です……。 でも……シキカンと、もう会えなくなるくらいなら、綾波は他のどんな事だって受け入れる……です」

 

 

「……俺と会えなくなるなんて事はないよっ! ……俺が死なない限りはねっ! ……現に今、綾波ちゃんは俺に会いに来てくれてるじゃないか! ……たぶん住んでる所も俺の家から近いんだよね? 同じ重桜に住んでて、ここまで来れるって事は」

 

 

「それは……はい……です。 ここから……1時間くらいで……綾波が住んでる場所に着く……です」

 

「だったら! もう何時でも会えるねっ! 俺は殆ど部屋から出ないし! 綾波ちゃんが寂しくなった時にはまた何時でも来て良いから!」

 

 

「……本当に、何時でも来て良いですか? ……綾波は、もう、誰かと一緒に居なければ、耐えられない……です。 ……もう、自分の部屋に居ても、怖くなってしまう……です。 ……きっと、またすぐにシキカンの所に来てしまう……です。 ……それでも、本当に、綾波がここに来ても、良いのですか? ……ここに居ても……良いのですか?」

 

「おっけーおっけー! 鬼神さんだったらアレだけど、綾波ちゃんだったら俺はいつでも大歓迎だから! むしろ目の保養になるから! それくらい綾波ちゃんは可愛いから! もっと自信を持って!」

 

 

「……綾波は今までの動画を全部見てる……です。 ……もしかしたら、シキカンは、綾波の事も可愛いと言ってくれる……と思っていたです。 ……でも、本当に言ってくれるとは、思っていなかった……です。 ……シキカン……ありがとう……です」

 

「うんうん! 大丈夫! 綾波ちゃんは可愛い! ……少なくとも俺にとってはだけどね! これからは何時でも俺の家に遊びに来て大丈夫だからね! ……多分、今の綾波ちゃんには友達と楽しく遊んだり、色んな人と仲良くしたりって経験が圧倒的に不足してるんだよ! これから楽しい事を沢山経験していけば、きっと独りぼっちの時でも辛くは無くなるから! また楽しい経験をしたいから頑張ろうって気分で居られるから! ……そこまで行くには結構時間がかかると思うけど、寂しくなったら俺の所に何時でも来て大丈夫だから! これからも一緒に楽しい事をしていこう! よし、決まり! ……えーっと、今日はどうしようか。 ……もう帰る? ……それとも、もう少しここに居る?」

 

 

「綾波は……出来れば、もう少しここに居たい……です。 今日、初めて、ホンモノのシキカンに会えた……です。 この日を大切にするために、もっと思い出が欲しい……です」

 

 

「……お、おっけーおっけー! ……じゃ、じゃあ今日は俺の家に泊ってく? ……俺も1晩くらいは大丈夫だし! あの闇の心は駆逐したしね! ……多分またすぐに復活するけど。 アイツは駆逐艦がいる限り何度でもすぐに甦るからなぁ」

 

 

「……はい……です。 ……不束者ですが……よろしくお願いします……です」

 

 

「……そ、それは、ちょっと意味が違うと思うよ? ……あ、綾波ちゃんはワザップに騙されがちだなぁ! ……ま、全くも~! ……よ、よし! ……じゃ、じゃあ今日はとことん遊ぼうか! ……取り合えず、前にやったセイハンHの続きしようか! ……いや、これ協力がオンラインだけだから今は綾波ちゃんのキャラがいないかー。 俺のキャラを交代しながらやる? ……それともオフニャコの島でもやる? ……これならローカルで協力プレイも出来るっぽいけど」

 

 

「綾波は、怖いのは少し苦手……です。 ……でも、シキカンのお役に立つなら、やりたい……です! ……今日はシキカンといっぱい一緒に遊ぶ……です!」

 

 

「……よ~し! じゃあ早速やるぞ~! はいっ! ビシャマルちゃんもそんな隅っこに居ないで! こっち来て! 俺と綾波ちゃんがゲームしてる所を一緒に見ようね~!」

 

「ビシャマルさん……。 よろしく……です。 これからお世話になる……です」

 

 

「……よーし! 準備できた! はい、じゃあ行くよー! はい、スタート! ………………」

 

 

………………………………

 

 

……………………

 

 

…………

 

 

 ……やっべぇええええええ!!! 

 

 ベット1つしかないの忘れてたぁあああああ!!!

 

 俺が床で寝るって言ったら綾波ちゃんが断固拒否るし!!

 

 もう今は2人してベットの中だし!!

 

 綾波ちゃんめっちゃ震えてるし!! どうしてくれるんだ!! 案内人ちゃんのせいで綾波ちゃんに新たなトラウマが植え付けられたぞ!!! 2人揃って重りを付けられて川に投げ入れられた後そのまま水中ダイナマイト花火ENDとか鬼畜過ぎるだろ!!! 誰だよオフニャコの島やろうって言ったのは!! ……俺だったわ。

 

 

 ……そんで綾波ちゃんがなんか腕にめっちゃ引っ付いてくるし!!

 

 普段はタッチするとプンプンする所がめっちゃ腕に当たってるし!!!

 

 

 

 ……なにこれ? マシュマロ? いや、そんな表現が烏滸がましい! なんなんだこれは! 一体この娘は何で出来ているんだ! ……あ、メンタルキューブか。 ……凄いぞ! 人々の想いの結晶! 全ての人類が求めていたマシュマロが此処に在るぞ! 俺は今、人類が求めていた最高到達点に立っているぞ! いやっほおおおおおおおう!!!

 

 

 ……だ、だめだ! ……闇の心を倒したはずなのに! ち、ちくしょう! 沈まれ俺の心! この娘はまだ全然心が満たされてないんだ! ここで手を出したら光の戦士PLちゃんの言った通りになる! 頼む! 耐えてくれ! 俺の 『あーくろいやる:くっちくっかん! くっちくっかん! くっちくっかん!』 ……うるせえええええ!! もう闇の心でも何でもねえええええ!! お前は出てくるんじゃねえええええ!! 対象年齢が+3されちゃうだろうがああああ!!! 頼むから静まってくれええええ!! お願いだからあああああ!!!

 

 

 

 

 

 ……結局この後朝までめちゃくちゃ『くっちくっかん!』された。

 ……アイツまじで許さねえ。

 

 

 

 




 
SHIKI-KANの家に主人公艦綾波が着任しました。


AR:アークロイヤル
PL:ポートランド


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#12 重桜基地の見学へ行きます! 軍隊が進軍して来たら迎え撃ちます! 前編

 

 

【……チチュン! ……チュンチュン!!】

 

 

 ……耐えきった。激しい戦いだった。マジで死ぬかと思った。もうなんか、一晩中、無限に湧き出る闇の心ARを延々と倒し続けるループに嵌ってたし。途中からRPGのBADENDカルマルート的な雰囲気が漂ってたし。光の戦士PLちゃんが支援してくれたから頑張れたけど、1人だったら絶対負けてたし。ありがとう、光の戦士PLちゃん。

 

 ……でも、支援の途中でインディちゃんの薄い本を広げて一緒に読ませようとするのはやめてね? あれでシキカンの理性が一時的に崩壊しかけたから。俺の大切な薄い本はビシャマルちゃんの胃袋の中で消化されちゃったからね? そんな時にあんな薄い本見せられたら俺マジでどうにかなっちゃうからね?

 

 ……なんなら後で複製して貰えませんか?

 ……あ、うん、だめですよね。実体が無いですもんね。

 ……しょうがない。インディちゃんの薄い本は俺の心の中に大切に保管しておこう。

 大切なものはいつも心の中に! 忘れないで、大切な世界を。

 

 

 

 「……シキカン。おはようございます、です。シキカンのおかげで、昨日は久々に、ぐっすりと眠る事が出来た、です。シキカン、ありがと、です」

 

 

 「……綾波ちゃんおはよう? ぐっすり眠れたみたいで良かった良かった。俺も死闘を繰り広げた甲斐があったってもんだよ」

 

 

 「……昨日やったゲームは怖かったですけど、でも、シキカンが居ればもう大丈夫、です。綾波は、シキカンが居れば、もう平気、です。 ……今日も、なんだか、力が漲ってきている、です。今日は、何があっても、頑張れる気がする……です。 ……シキカンは、綾波が眠っている間に何かと闘っていたのですか? ……気が付かなくて、ごめんなさい、です。シキカンは綾波が守る、と決めたのに。 ……もう、闘いは終わったのですか? ……綾波に出来ることがあったら言って欲しい、です。なんでもする、です。」

 

 

 「ま、まあ、まだ闘いは続いているんですけどね? 綾波ちゃんが俺の腕に張り付いて頂けている間は常に終わりのない死闘が繰り広げられていますけどね? むしろ、今の耳元の囁きボイスで、闇の心さんが一層活性化してまた暴れだしましたけどね? ロイヤルネイビー初の空母としての実力を遺憾なく発揮中ですけどね? ……物凄く名残惜しいけど、出来ればベッドから出て、立ち上がって頂けると幸いでございますね? 今の状態だと俺動けないしね? ……何時の間にか、腕だけじゃなくて足まで絡め捕られちゃってるですからね?」

 

 

 「……シキカンは、綾波がそばに居ると、困る、ですか? ……たしかに、綾波は、余り人へ近づくと、煙たがられる、です。お前からは変な臭いがするから近づくな、とよく言われる、です。 ……シキカンも、綾波がそばに居て欲しくはない、ですか? ……それなら、離れる、です。 ……ごめんなさい、です」

 

 

 「い、いや!? そんな事はないよ!? むしろ綾波ちゃんは良い匂いだけど!? ほのかな海の香りに混じって、柚の名に相応しいなんだかとってもフルーティな香りが漂って来てますけど!? 出来ればもうずっとこのままで良いんじゃね? とか考えちゃってるけども!? でもそれだと何の解決もしないのでっ!? 俺は綾波ちゃんの心を助けると決めたのでっ!? 出来れば今日は一旦離れて頂けると嬉しく存じますのでっ!? よろしくお願いしますっ!?」

 

 

 「そう、ですか? ……シキカンが、そう言ってくれるなら、良かった、です。 ……綾波はもう、シキカン以外の人から、自分の臭いの事を言われても、気にしない、です。 ……本当に大切な人が気にしないで居てくれるなら、それで十分ですから」

 

 

 「……よ、よし、じゃあ取り合えずベッドから出ようか? 俺は今ほぼニート状態だから何時起きても大丈夫だけれども。 ……聞いてなかったけど、綾波ちゃんは重桜軍隊で働いてるんだよね? それとも何か他の事をして生活してる感じ?」

 

 

 「……綾波は今、重桜軍隊に所属して働いている、です。 ……仕事内容は、殆どが雑用のお仕事で、たまにセイレーンの討伐に出撃するくらい、です。でも、生活出来るだけのお金は稼げてるので、今はそれで十分、です。 ……たしかに、そろそろシキカンの家を出ないと、朝の点呼に間に合わなくなってしまう時間、です。 ……名残惜しいですが、一旦離れる、です」

 

 

 「ふ、ふう……、これで奴とは一旦、停戦条約を結ぶことが出来る。 ……綾波ちゃん、君は今、ひとつの大いなる戦争を終結させたんだ。もっと誇りを持って良いんだよ?」

 

 

 「……? ……良くわからないですが、シキカンのお役に立てたのなら嬉しい、です。 ……それでは、綾波はもう行く、です。 ……寂しくなったら、またシキカンの所へ戻ってくる、です。 ……それまで、ずっと、綾波の事を待っていて欲しい、です。 綾波は、シキカンの事を、信じている、です」

 

 

 「……お、俺は何時でもこの家に居るから、寂しくなったら何時でも遊びにおいで? ……じゃあ、いってらっしゃーい!」

 

 

 

 …………………待てよ? ……折角、重桜軍隊の関係者の綾波ちゃんと一緒に居るんだから、このまま一緒に重桜基地まで行けば、基地の様子や他のKAN-SENの娘達を見れるのでは……?

 

 

 「……綾波ちゃん、ちなみに、重桜の基地って一般人が入ったり、見学したりしても大丈夫? それとも厳重な警備が敷かれてたりする?」

 

 

 「……重桜の基地は基本的に、一般の方は立ち入り禁止、です。年に何回かは、一般の方でも見学可能なお祭りが、開催されてはいる、です。でも今は、まだ時期ではない、です。重桜基地自体は、鉄網のフェンスで囲われているだけ、です。外から見ようと思えば、基地の中は見ることが可能、です。警備なども、特に厳重ではない、です。他の一般の方々も、時々、基地の周りを散歩していたり、ランニングしていたりするので、シキカンが基地の周りを歩いていても、特に問題はないはず、です」

 

 

 「な、なるほど……。まあ、基地の中に入れなくても、俺は遠くから様子を見るだけで良いかな? そんなに詳しく知りたいわけじゃないし」

 

 

 こんな機会でもないと俺、この家から一生出ないし。

 

 

 「シキカンが、一緒に基地まで来てくれる、ですか? ……それなら、綾波は嬉しい……です。 ……特に、面白い所ではないですが。 ……シキカンが来てくれるなら、休憩の合間にも、シキカンと会えるです。 ……迷惑じゃなければ、一緒に来て欲しい……です」

 

 

 「じゃ、じゃあ重桜の基地まで綾波ちゃんに連れていって貰う事にするよ! ……1人だとマジで外なんて怖くて出歩きたくないしね」

 

 

 外は鬼神さんだらけで怖いし。公共の交通機関なんて使ったら常に死と隣り合わせな状況が確実だし。案内役が居なかったら目的地に辿り着く前に息絶えそうだし。

 

 

 「……外を歩くのが怖い、ですか? ……確かに、シキカンは外を歩いていると、襲われそうです。 ……それくらい、シキカンは格好良い外見をしているですから。 ……大丈夫、です。 ……綾波のそばに居る限り、シキカンは私が守る、です」

 

 

 ……そうだった。俺は皆の目から見ると格好良く見えるんだった。自分の事なのにまだ認識が追い付いてないけど。

 

 

 「……じゃあ、基地までの護衛よろしくね? 道順さえわかれば、次からは俺でもなんとか行けると思うし」

 

 

 「……了解、です。案内は任せて欲しい、です。シキカンのお役に立つ事が出来て、綾波は嬉しい、です。 ……では、出発する、です」

 

 

 おお~。耳付き黒フード……。やはり存在していたのか……。でも、昨日は着ていなかったな。なんでたろ?

 

 

 「昨日俺の家の前で待ってた時はそのフード被ってなかったよね? どうしたの? 途中で脱いだの?」

 

 

 「……シキカンには、ありのままの綾波を見て欲しかった、です。 ……シキカンなら、こんな綾波の姿を見ても、受け入れてくれると思ったから……。 ……迷惑だった、ですか?」

 

 

 ぐわー! なんとなく聞いただけなのに予想以上に重い答えが返って来てしまった! いや受け入れるけど! 可愛いけど!

 

 

 「……そ、そんな事無いよ!? ……いや~、フードを取れば可愛いし、フードをしたら格好良いし! 綾波ちゃんは完璧だな~! ……よし。それじゃあ、基地に向けて出発だ~!」

 

 

 「はい、です。 ……頑張ってシキカンを守る、です。よろしく、です」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「……シキカン、ここが重桜基地の正門……です。ここから先は、関係者以外立ち入り禁止……です。綾波が案内できるのは、ここまで……です。 ……綾波は、シキカンのお役に立てたですか?」

 

 

 「……綾波ちゃん、ありがとう! ……正直、物凄く助かった! ……綾波ちゃんが居なかったら、外国人・小人専用車両とか絶対知らずに、普通の車両に乗って圧死してたよ!」

 

 

 「そう……ですか。シキカンの役に立てたのなら、綾波は満足、です。 ……それでは、綾波はもう行く、です。 ……何かあったらすぐに電話して下さい、です。何があっても、すぐに駆けつける、です」

 

 

 「そ、それじゃあ、俺はこの基地周辺を散歩してるから。 ……ちなみに、この基地には綾波ちゃんの知り合いとか居る? 顔見知り程度でも良いんだけど。 ……例えば蓮ちゃんとか赤城さんとか鸞さんとか、そんな感じの人達を見た事無い?」

 

 

 「……ごめんなさい、です。 ……綾波は基地の中では殆ど、人としゃべったりはしないので、知り合いとかは居ない、です。 出撃も、いつも1人ですので。 ……蓮、と、鸞、というコードネームの人達は名前を聞いた事がある、です。 ……ただ、シキカンの配信に来ていた人達とは、少し違う感じがする、です。 ……綾波は、その人達と話したことも無いので、詳しくはわからないですが……。 ……お役に立てず、申し訳ない、です」

 

 

 「……そうかー、まあ、ちょっと期待してたんだけど、そんなに上手く他のKAN-SEN達とは出会えないかー。 ……まあ折角来たんだし、俺は予定通り、この基地の周りを散歩しながら中の様子を見学させて貰う事にするよ! ……綾波ちゃんもお仕事頑張ってね!」

 

 

「……ありがと……です。頑張って働いてくるです。 ……シキカンの、ために」

 

 

「……いやいや!? 別に俺のために無理して働かなくて良いから! ちゃんと自分のために働いてね!? 俺はまだ大丈夫だから!」

 

 

 ……あー、行っちゃった。

 

 ……なんだか綾波ちゃんが俺に献身的すぎるぞ。

 

 ……何処でこんなに好感度が上がったんだよ。ゲームでも出撃1回で上がる好感度は0.1未満なのに……

 

 

 

闇の心AR:それは閣下の魅力に当てられたから、に決まっているだろう? 彼女は今、閣下の事しか見えていないぞ?

 

 

 

 ……えぇー? お前本当に俺の心に常駐すんの? さっき停戦協定結んだじゃねーか。お前の好きな駆逐艦も、もう此処には居ないぞ。

 

 

 

闇の心AR:フッ。閣下、ツレない事を言うものではないぞ? 私は閣下の心から生まれた闇。話し相手も現状、閣下しか居らんのだ。 ……何、閣下の考えを邪魔するつもりはないよ。駆逐艦綾波による、あの無自覚な猛攻撃を掻い潜った閣下には、称賛と尊敬の念を抱いている位だ。 ……多少、私が戯言を喚いた所で、閣下であるならば、最早この程度の事などなんともあるまい?

 

 

 

 ……まあ、それはそうだけど。 ……と言うか、お前は綾波ちゃんの事気持ち悪いと思わないの? ビシャマルちゃんがあんなに酷い言われ様だったから、こっちの世界だとKAN-SEN達もかなり容姿が悪く見えてそうなんだけど? なんなの? それも駆逐艦愛の為せる技なの?

 

 

 

闇の心AR:まあ、勿論、私の駆逐艦愛の為せる技でもあるが、此れについても閣下が私に大きな影響を与えている。 ……私は閣下の心。当然、価値観も閣下と変わらない。閣下が醜いと感じたモノは醜く、美しいと感じたモノは当然、私も美しいと感じるのだ。 ……閣下はこちらの世界に来て、価値観の違いに苦悩していただろう? 時には同じ価値観を持つ者同士で語り合う事も大切だとは思わないか? ……仕方が無いから、私が閣下の話し相手になってやると言うのだ。感謝されこそすれ、蔑まれる謂れは無いと思うが?

 

 

 

 ……本音は?

 

 

 

闇の心AR:閣下を誘導すれば可愛い駆逐艦達が自分から寄ってくるのだ! 閣下と感覚共有すれば私も駆逐艦達に囲まれているも同然! この機を私が逃す筈もない! 待っていろ!! まだ見ぬ駆逐艦達よ!! 私が閣下を誘導して守ってやるからな!! うおおおお!!!

 

 

 

 ……触手達の大宴会(フラワーカーニバル)!!!

 

 

 

闇の心AR:……ちくしょう、はめられた! ぐわああああああポワワワワワ〜ン♡

 

 

 

 ふぅ……。マジで油断も隙も無いなアイツは。何か正論っぽい事を言ってる様に見せ掛けて、結局は駆逐艦とイチャイチャしたいだけじゃねえか。

 

 ……いや、俺も出来ればイチャイチャしたいけどね? でもアイツの言葉に従っていたら、確実に何かが詰みそうな気がする。BADENDルートに全力で走って行く、みたいな。

 

 ……これからも気を抜かない様にしなければ。

 

 

 ……さて、当初の予定通り、基地の周りを散歩しながら、中の様子を伺ってみようかなー。まあ、この基地もパッと見広そうだし、早々にKAN-SEN達を見つけられるとは思わないけど。

 

 うーん、どうしようかな。とりあえず、海の方へ向かって歩いてみるか。KAN-SENと言えば海だしね。誰か海の上で何かの練習とかしてるかもしれないし。煌めく浜辺で、水に濡れたKAN-SEN達が頑張ってる姿を拝めるかもしれないし。遠くから見てるだけなら通報もされなさそうだし。ちくしょう望遠鏡持ってくれば良かったし。あのMOBGの高性能双眼鏡がリアルでもあれば良いのだし。なんだか期待が高まって来たし。早く行こうし。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 ……海だあああああ!!

 

 ……うみだぁ。

 

 ……はあ疲れた。

 

 この基地広すぎだろ。なんやねん。海に着くまでに体感5kmくらい歩いたぞ。周りの建物も規模が違うし。流石5m級の鬼神さんが利用する施設なだけはありますね。何もかもがデカすぎますね。でも俺の器量は小さいですよ? ここまで歩くので一日の体力ほぼ使い果たしたからな? 引きこもりナメんな? 海のバカヤロー!!

 

 

 ……はぁ。自転車とか持ってくればよかったな。あとでネットで買っとこう。この世界だと俺のサイズは小学生用? の自転車になるけど。

 

 ……さて、目当てのKAN-SEN達は居るかなー?

 

 ……お? なんだか、海辺に整列してる人たちが居るぞ。

 

 ……朝礼中かな? 

 

 ……んん? 隊長らしき鬼神さんの正面にチラホラと小さい人影が……!?

 

 ……おお!? あれはKAN-SEN達じゃないか!? おおー!? なんか沢山居る!? 少なくとも10人は見えるぞ!! 隊長鬼神さんの影に隠れてあんまり見えないけど!! やっぱ綾波ちゃんの他にもKAN-SENいるじゃん!!! これを確認出来ただけでもここまで来た甲斐があったぜ!!! よっしゃああああ!!! 偉大なる海さん!! 先ほどはバカヤローなんて怒鳴ってすみませんでしたあああああ!!! これからKAN-SEN達の生のお姿を拝見したく存じますうううう!! よろしくお願いしますううう!!!

 

 

 

 ……朝礼が終わった!? なんかやるみたいだぞ!? 

 

 ……えーっと? なにあれ? 何しようとしてんのあれ?

 

 ……KAN-SEN達がなんかスーパーで売ってそうな20kgぐらいの米袋的な何かを持って海に浮かび始めたんだけど? え? ホントに米袋じゃないよね?

 

 ……あ、なんか海の方にセイレーン艦隊っぽい模型? 張り子? が出て来たぞ? お、KAN-SEN達が動き出した。 なにすんのその米袋で。

 

 ……おー? なんか米袋をセイレーン艦隊の模型に向かって投げだしたぞ? なにこれ? なんの練習?

 

 

 『お前らっ!!! もっと力強く投げんかいっ!!! そんなんじゃダイナマイトの爆発に巻き込まれんぞお!!! お前らは俺らより脆いんだからな!!! 腹マイト出来ねえ奴はこの技術を身につけねえと戦場で生き残れねえぞ!!! 死にたくなかったら死ぬ気で覚えろ!!!』

 

 

「「「「ハイッ!! 教官ッ!!!」」」」

 

 

 『声が小さああああああい!!!! もういっかあああああい!!!』

 

 

「「「「ハイッ!!!!!!

 教官ッ!!!!!!」」」」

 

 

 

 ………………………………ナニアレ?

 

 

 ……マジでナニアレ? 何の練習? ダイナマイト投げる練習? セイレーン相手に?

 

 

 ……マジで動画で見た通りじゃねえか。本当にKAN-SEN達がダイナマイト要員で働かされてるじゃねえか。なんなの? 重桜の軍隊の皆様はKAN-SEN達の能力をわかってないの? 自分達が腹マイト特攻得意だからってKAN-SEN達も同じやり方が良いとは限らないんですよ? その戦法じゃ1ミクロンもKAN-SEN達の能力を発揮出来ませんよ? なんなの? 鬼神様達は全員体だけじゃなくて脳も筋肉なの? もっとKAN-SEN達の事も考えてあげよう?

 

 

 ……うわー。よく見たらKAN-SEN達の目が死んでる。みんな目が死んでる。声は大きかったのに。そりゃこんな戦法無理やりさせられたら目くらい簡単に死にますよね。俺でもごめんですよ。1発で命が終わりますので。

 

 

 ……うーん、どうしよう。想定してた光景と680°くらい違う光景が広がってたぞ。煌めく太陽と美しい海の上でKAN-SEN達が死んだ目しながら米袋投げる訓練してるとか誰が想像出来るんだよ。なんなのこれ。俺がさっき偉大な海さんを馬鹿にしちゃったから起きた光景なのこれ。それなら謝るから。ゴメンナサイするから。めっちゃ謝るからどうかこの地獄みたいな光景をどうすれば解決できるか俺に教えて下さいお願いします。

 

 

 ……あ、あれは蓮ちゃん、いや雪風ちゃんじゃないか? おおー、凄い可愛い。煌めく海に輝く白髪がとても可愛い。でも目が死んでる。もはや、無、って感じがビシビシ伝わってくる。目どころか表情すら全く動いていない。なにあれ? お面? 無表情で淡々と米袋投げてる姿がシュールを通り越して痛々しいんですけど? 俺はあんな雪風様を見に来たわけじゃないんですけど? 元気いっぱいな姿を見に来たはずなんですけど? なんなんですかこれは。

 

 

 ……あ、ちょっとだけこっち見た。完全なる無表情だけど。よし、手を振ってみるか。あれが本当に俺の配信に来た雪風ちゃんなら俺の姿を見れば気が付くはず。

 

 ……よし、フリフリ―? 雪風ちゃん元気―? 絶対元気じゃないのはわかるけどそれ以外にどう声かければいいかわからないのー。笑えばいいと思うのー? 今笑ったらそれこそ致命傷になる気がするのー。お願い気づいて雪風ちゃ……うお気づいた!? なんかめっちゃ目を見開いて!? うわこっち来た!? は、はや!?!?

 

【グワッシャアアアアアアアアアアン!!!】 

 

 

 「シ、シシシシ!? シキカン!?!? なっ!? なんであんたがここに居るのだ!? なんで手を振ってたのだ!?!? 雪風様なのだ!?!?! わたしに振ってくれてたのだ!?!? シキカンはわたしが分かるのだ!?!?!?」

 

 「うおおお!? ゆ、雪風ちゃん!? 落ち着いて!? めっちゃフェンス軋んでるから!! そんな興奮しなくて大丈夫だから!! 俺は鬼神さんと虫さん以外からはあんまり逃げないから!! 取り合えずフェンスに張り付くのやめよう!? それ絶対あとで顔に痕が残るよね!? むしろ既に残ってるよね!? 折角の可愛い顔が台無しだからね!? 取り敢えずフェンスから降りて話し合おう!?」

 

 「わぅ!? ……わ、わ、わかったのだ!? 取り敢えず降りるのだ!? ……目を離したらシキカン急に居なくなったりしないのだ? ……幻とかしゃないのだ? ホントに存在してるのだ?」

 

 

 「……し、してるしてる! 存在してる! 俺はちゃんと此処にいるから! 雪風ちゃんが見てる幻とかじゃないから! 取り敢えず落ち着こう……?」

 

 

 ……あー、びっくりした。無表情死んだ目雪風ちゃん状態から、いきなり偉大で元気な雪風様になるんだもん。

 

 

 「……えっと、俺はさっきの訓練? 演習? の様な得体の知れない何かが始まった時から、雪風ちゃんを見てたんだけど。もしかして、普段はいつもあんな感じなの? 雪風ちゃんも他のみんなも目が死んでる状態でお仕事してるの?」

 

 「……アレもシキカンに見られてたのだ? ……そうなのだ。 ……雪風様は基地ではいつもあんな感じなのだ。 ……今、あそこに集まってる奴らもみんなそうなのだ。ダイナマイトの爆発に耐えられない人は、みんなああやって爆発に巻き込まれない訓練をするのだ」

 

 

 「そ、そうなんだ。 ……でも、雪風ちゃんはそう言う戦法向いてないよね? どちらかと言えば、敵の攻撃避けながら射撃したり、攪乱したりする戦法の方が合ってると思うんだけど。 ……そう言うのはやらせてくれたりしないの?」

 

 

 「……雪風様も最初は言ったのだ。この戦法はわたしに向いてないって。 ……でも聞く耳すら持たれなかったのだ。それどころか言い訳するなって、物凄く怒られて、非道い事されたのだ。それ以来雪風様は抗議なんてした事ないのだ。しても無駄だと分かったのだ。アイツラは雪風様の運に相応しくないのだ」

 

 

 

 『……コードネーム【蓮】! そこで何をしているっ! 早く訓練に戻れっ! サボっているなら、処罰の対象とするぞっ!』

 

 「……うるさいのだっ! 今シキカンと話してるのだ! 邪魔するななのだ!!!」

 

 

 「ゆ、雪風ちゃん!? なんかヤバイ雰囲気だけど!? 一旦戻ろう!? 俺は雪風ちゃんが処罰される所なんか見たくないからね!?」

 

 

 「嫌なのだ!! せっかくシキカンと会えたのだ!! もっといっぱい話す事があるのだ!!!」

 

 

「わ、わかったわかった! 雪風ちゃんは休憩時間とかないの!? それまでは俺この辺ブラブラしながら待ってるから!! 今日の俺は1日中暇だから!! 話すなら休憩時間にゆっくり話そう!? 今だと絶対に何か大変な事が起きちゃいそうだから!?」

 

 

 「……わかった……のだ。 ……今日はこの訓練の後にも色々あるのだ。 ……でもお昼なら1時間くらい休憩があるのだ! そ、それまで絶対に待っていて欲しいのだ! い、居なくなったりしたら絶対に嫌なのだ!」

 

 

 「お、おっけー! お昼ね! じゃあ12時になったら基地の正門っぽい所で待ってるから! ……よし、じゃあさっさと退却だ! 雪風ちゃんも早く戻ってね! 俺もすぐ此処を離れるから!」

 

 

 「シキカン!! 約束なのだ!! 絶対にお昼に会うのだ!! わたしは絶対に会いに行くのだ!! 絶対に待ってて欲しいのだー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……うおー、焦ったー。まさか雪風ちゃんがあんな風になってるとは。想定外過ぎるぞ。だって俺の配信じゃあ元気な声しか聞かなかったし。実際は能面無表情状態だったとか分かるわけないやん。なんなんだよ一体。

 

 ……雪風ちゃんと一緒に居たKAN-SEN達も、雪風ちゃんが暴走してるのに全く興味を示さなかったし。

 

 なんなの? この世界はKAN-SEN同士の繋がりが全くないの? 助け合いの精神ゼロなの? そりゃあみんな目が死ぬよ。あの環境に居たら俺も5秒で目が死ぬよ。ついでに命まで持ってかれるよ。

 

 

 ……まあでも、あの鬼神教官さんが近くに居たら何も反抗出来ないのかなあ。動画で見る限りだと、セイレーンのビーム攻撃喰らっても傷ひとつ付いて無かったし。

 

 雪風ちゃんも最初は歯向かったけど、ワカラセられて気力を無くしちゃってる感じだったし。

 

 さっき集まってたKAN-SEN達もみんなそうなのかなー。それだったら嫌だなー。マジでどうする事も出来なくなるじゃん。負の連鎖から抜け出せない状況になるじゃん。

 

 ……せめて鬼神さん達がKAN-SEN達をまともに運用してくれてたらなー。 ……どうにか出来ないかなー。 ……でも俺には権限も、コネも、何もないし。

 

 配信で呼びかけたとしても、じゃあお前が面倒見るの? とか言われたらお終いだしなぁ。俺もKAN-SEN達に射撃や回避訓練なんて教えられないし。俺が知ってるのは、誰が何を得意かって情報を少し覚えてるだけだし。

 

 そもそもセイレーン勢力が常に瀕死だから、KAN-SENを正常に運用したとしても待遇はあまり変わらなさそうだし。

 

 ……KAN-SEN達にはもう戦闘業務じゃなくて、何か別の仕事をさせた方が良いんじゃないのか?

 

 ……いや、この世界でそんな仕事がホイホイあるかワカラナイけど。

 

 ……あー、あー。ダメだー。考えがまとまらねー、もうどうしようもないわー。これは無理だわー。絶望だわー、あー。

 

 

 

 

 

 ……あーーもう!! やめやめ!! ショッキングな場面を見過ぎて、またネガティブモードになってたわ!

 取り敢えず、今の俺にはKAN-SENを全員助けるなんて無理だ!

 目の前の出来る事だけに集中しろ!

 お昼になったら、あのちょっと様子がオカシイ雪風ちゃんが俺に会いに来るんだぞ! 責めてあの娘だけでも何とかしてあげないと!

 

 ……俺に出来る事は今の所、元気付けるとかしか出来ないけど。それでもやらないよりは良いはず! 雪風ちゃんもなんか俺と話したいって言ってたし! 悩みを聞くだけでも気持ち的な何かが解消されるかもしれない!

 

 ……よし! 方針は決まった! と言うか現状、俺はこれしか出来ない! 取り敢えず、正門に戻って雪風ちゃんを待とう! 具体的な事を考えるのは話を聞いてからでも遅くは無い! 話を聞いて、俺でも解決できそうな事なら助けてあげよう! そして無理そうなら無理って言おう! 俺は許容範囲を超える事を無理矢理任されても、結局ダメになる事が多いしね! 特にこの世界では気をつけないと、一瞬で命が散るからね!

 

 ……まずは正門に行って、雪風ちゃんが来るまで待機だ!

 

 ……はあ、またこの5kmある基地の外周戻るのかあ。

 

 ……つらたん。

 

 

 

 




長くなってしまったので分割します。


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#13 重桜基地の見学へ行きます! 軍隊が進軍して来たら迎え撃ちます! 後編

 ……よし、そろそろ12時か。なんとか正門前に到着したぞ。間に合って良かった。ダラダラ歩いてたせいでギリギリになってしまった。

 

 ……だってしょうがないじゃん? 基地の中を見て歩いてたら、チラホラとKAN-SENらしき娘が基地内を歩いてるのが見えるんだから。凝視するしかないじゃん? みんな超絶可愛いし。目は死んでるけど。

 

 

【ゴォオオオオオオン……  ゴォオオオオオオン……】

 

 

 おお? なにこれ? 12時の鐘? お寺の鐘じゃねえか。こう言う所は日本じゃなくて重桜って感じが出てるよなあ。日本でも地域によってはありそうだけども。

 

 

 ……お? 正門奥から小さい人影が走って……って! ちょちょちょちょちょッ!?

 

 

 「ス、スタァァァップ!!! 雪風ちゃんスタァァァップ!!! その勢いで突っ込まれたら俺は確実に致命傷になる!! そうなったら雪風ちゃんが法を犯して罰金払わされて牢屋に入れられちゃう事になるから!! 止まって止まって!!」

 

 

 「……ッ!? ……そ、そうだったのだ。シキカンはか弱い存在だったのだ。忘れてたのだ」

 

 

 「……お、おう。 ……俺も元居た所では普通だったんだけどね? なんかこっちではか弱いの基準がオカシイと言うかね? 闘技場のリングを担いで持って来れない奴は全員B級未満のか弱い奴って認識されてそうだからね? ……と、取り合えず門の前で話すのもあれだからちょっと木陰に移動しようか? なんか門番鬼神さんがジロジロ見てきて怖いからね」

 

 「……わかったのだ! 雪風様もシキカンとはゆっくり話したいのだ! あっちの静かな所で話すのだ!」

 

 

 

 「……ふぅ。 この辺なら大丈夫かな? ……いやー、さっきはごめんね? 俺が手を振ったばっかりに、訓練中なのに対応させちゃって。 ……大丈夫だった? 怒られてないよね?」

 

 

 「……大丈夫なのだ! むしろ手を振ってくれなかったら、雪風様はあんたに気が付かなかったのだ! 走って駆け寄ったのも雪風様の意思なのだ! シキカンは何も悪くないのだ! …………むしろ、シキカンはなんでわたしに手を振ってくれたのだ? ……シキカンは。 ……雪風様の事を。 ……知って、いたのだ?」

 

 

 「え、え~っと? 俺は偶然ね? この重桜基地に【蓮】って人が所属してるって噂を聞いてね? もしかしたら俺の配信を観に来てくれていた雪風ちゃんかな~? と思ってね? 何となく来てみただけというかね? 確証はなかったと言うかね?」

 

 

 「……それは。 ……それは凄い、偶然なのだ。 ……そんな情報だけで、ここに来るなんて。 ……わたしに、会いに来てくれるなんて。 ……そして、実際に、会えるなんて。 ……そんなの、凄い偶然なのだ。 ……物凄い。 ……幸運なのだ」

 

 

 「い、いや~!? ホントにたまたま! たまたまだからね!? ちょっと噂を聞いただけだからね!? 雪風ちゃんの容姿も、ちょっと噂で知ってたから、もしかしたらそうかな~って感じで手を振っただけだからね!? そ、そんな大袈裟な事じゃないからね!?」

 

 

 「………………シキカン。 ……あんたは。 ……あんたは、わたしの。 ……雪風様の、噂を。 ……知ってる、のだ?」

 

 

 「……え、えーっと? ……う、噂というかなんというか。 ……俺が知ってる噂は、偉大で可愛い雪風様がこの基地に居るかもって事だけなんだけど? ……雪風ちゃんは、この基地でも有名だったりするの?」

 

 「………………シキカン。 ……あんたは、わたしが。 ……この雪風様が、他のみんなから、なんて呼ばれてるのか、知ってるのだ? …………『悪運の強い奴』、 ……『人の運を吸い取る化物』、 ……『仲間を盾にする人でなし』、 ……挙げ句の果てには、『疫病神か死神の化身』……だなんて、呼ばれて、いるのだ。 ……誰も、雪風様の事を、『幸運』な奴、だなんて、呼んでくれないのだ。 ……幸運で無敵な雪風様、なんて言うのは、全部、わたしの自称なのだ。 ……わたしは仲間を盾になんて、した事ないのに。 ……他の人を見捨てるどころか、助けてやったりもしてるのに。 ……敵の弾も、頑張って敵を観察して、危ない場所に行かない様に、避けているだけなのに。 ……本当はわたしに、運なんて、あんまり、ないのだ。 ……本当に運が良かったら、こんな所で、こんな風に、なってたりなんか、しないのだ」

 

 

 「雪風、ちゃん……?」

 

 

 「……でも。 ……シキカン、あんただけは違ったのだ。 ……最初は、本当に偶然だったのだ。 ……わたしは、Yongshibeの実況者なんて、普段は殆ど見ないのに。 ……たまたま、ライブ中の画面が出てたから、本当に、気まぐれに、観てみただけなのだ。 ……最初にあんたを観た時は、コイツはヤベー奴だ、としか思わなかったのだ。 ……ホラーゲームなのに、全然びっくりしないし。 ……オフニャなんかを膝に抱えてるし。 ……でも、あんたの反応を聞いている内に、もしかしたら、と思ったのだ。 ……もしかしたら、この人は、わたしの事も、この雪風様の事も、悪く言わないんじゃないかって。 ……あんなホラーゲームのキャラの事も、悪く言わないし。 ……開発者さんにもお礼を言っていたのだ。 ……あんたなら、わたしを。 ……この雪風様の事を、ちゃんと見てくれる、と思ったのだ」

 

 

 「それは……、まあ……。 ……それで、オフニャコの島配信の時は最後辺りでコメントしてくれてたんだね。 ……喧嘩腰とかで絡んでくる人ならともかく、俺の配信を観に来てコメントまでしてくれてる人達に対して、流石に悪い事なんか言わないよ?」

 

 

 「……実際、その通りだったのだ。 ……いきなり配信に来ただけの、わたしのリクエストを聞いてくれるし。 ……一緒に、ゲームをして、遊んでくれたのだ。 ……わたしは、あのゲームが、好きなのだ。 ……見た目で差別なんかされないし、助けてあげたらちゃんとお礼も言ってくれるのだ。 ……現実とは、大違いなのだ。 ……ただ、それでも、声が気持ち悪い、とか、お前だけ攻撃が当たらなすぎ、サボっているのか、とかはよく言われたのだ。 ……でも、それくらいの事は言われ慣れてるのだ。 ……今さら、そんな事は気にしないのだ。 ……それよりも、わたしが、誰かの、助けになっているっていう、実感が欲しかったのだ」

 

 

 「……そんな事無いって! 実際、雪風ちゃんのサポートは、ちょっとぎこちなかったけど役に立ってたしねっ! いっぱいアイテムもくれたし! 正直アレが無かったら最初はグダグダの配信が続いてたと思うし!」

 

 

 「……シキカンは、本当に、わたしが思っていた通りの人だったのだ。 ……わたしの声を聴いても、気持ち悪いだなんて言わなかったのだ。 ……それどころか、か、可愛い、声……なんて事まで、言ってくれたのだ。 ……わたしの声を聴いて、そんな事を言ってくれた人は、今まで居なかったのだ。 ……正直、ちょっと、動揺してしまったのだ。 ……普段は見せないような、ハイテンションのわたしで、隠すくらいしないと、落ち着けないほどだったのだ」

 

 

 「……うん、俺はあの時の雪風ちゃんしか知らなかったから、逆に今日の病んでる姿を見てびっくりしたんだけどね? いや、気持ち悪いとかじゃなくて、配信時とのギャップでね? ……容姿は想像してた通りだったから。 むしろ、想像を軽々と超えるレベルだったから。 もう完全に、雪風様なのだ! って感じの、可愛いオーラが出っぱなしだから」

 

 

 「……ありがとう、なのだ。 ……シキカンは、いつもわたしに、優しくしてくれるのだ。 ……ゲームで少し手間取っても、文句も言わないで、助けたらお礼まで言ってくれたのだ。 ……フレンドカードも、雪風様のカードを、その場限りじゃなくて、ちゃんと消さないで、ずっと取って置いてくれてるのだ。 ……他にも、こんな雪風様の、ずうずうしいお願い事まで、色々と聞いてくれたのだ。 ……雪風様の家来になれ、だなんて、完全に冗談だったのに。 ……シキカンには、わたしの。 ……この雪風様の言葉が。 ……雪風様の気持ちが、ちゃんと伝わってるのを、感じるのだ。 ……伝えたら、ちゃんと、返ってくるのだ。 ……言って欲しかった言葉が。 ……やって欲しかった事が。 ……わたしは、それが、とても、とても嬉しいのだ」

 

 

 「……うん。フレンドカードなんて1回交換したらわざわざ消したりしないよ? せっかく雪風ちゃんのフレンドになったんだから。それに雪風ちゃんのお願い事って言っても、俺にとってはそんな大した事をしてた記憶はないしね。家来になれってスペチャとかも、逆に面白いリクエストくれてありがとうって感じだったし。 ……そ、そんな大袈裟に考えなくて大丈夫だからね?」

 

 

 「……そんな事、ないのだ。 ……雪風様とフレンドカードを交換する人は少ないし、交換しても次の日には消えてることが、多いのだ。 ……シキカン、あんたはやっぱり、ちょっと変な奴なのだ。 ……でも、そんな人と、わたしは、出会えたのだ。 ……やっと、出会える事が出来たのだ。 ……これまで、雪風様は、自分が本当に幸運だなんて、信じてなかったのだ。 ……幸運だ、なんて。 ……本当は、陰でわたしが頑張ってるのを、みんなが認めてくれないから、自分で勝手に、言ってただけなのに。 ……でも、シキカンは違うのだ。 ……配信を見つけた時も。 ……一緒にゲームが出来た事も。 ……雪風様のリクエストを聞いてくれた事も。 ……そして、今、ここで、こうしてわたしと、シキカンが、話せている事も。 ……雪風様は何もしてないのだ。 ……本当の、本当に、ただの幸運が、重なっただけなのだ」

 

 

 「……そ、そんな事は、な、無いと思うけど? ……確かに、雪風ちゃんが俺の配信を見つけてくれたのは偶然だったかもしれないけど。その後はもう完全に雪風ちゃんの意思で、俺の配信を観に来てくれてたんだから。 ……ここで会えたのも、もしかしたら実際に雪風ちゃん達と会えるかもって、俺が思ったから来ただけだしね」

 

 

 「……それでも、すごい幸運なのだ。 ……わたしがこの基地じゃなくて、他の基地に居たかもしれないのに。 ……今日は休暇を取ってたかもしれないのに。 ……演習じゃなくて、セイレーン討伐に出撃して、この基地に居なかったかもしれないのに。 ……本当に、今の雪風様は幸運なのだ。 ……こんなに自分の幸運を実感したことは、今までなかったのだ。 ……たぶん、今日が。 ……シキカンに出会えた、この日が。 ……この雪風様の、今まで頑張ってきた、全ての運が、集まって来ている日なのだ。 ……今日を逃したら、もう、これ以上の幸運なんて、やってこないのだ。 ……この、雪風様の気持ちを伝えるには。 ……雪風様のお願い事を聞いて貰うには。 ……今日、この日しか、あり得ない……のだ」

 

 

 「……え? ……えっと? ゆ、雪風サン? そ、そんなに意気込んで、どうしたのかな? いや、俺も雪風サンの事を助けてあげたいとは思ってるけど? 出来る限り力になりたいと思ってるけど? ……で、でも、あ、あんまり凄いお願い事とかは、か、叶えられないと、思うけどな~?」

 

 

 「……大丈夫、なのだ。 ……シキカンにとっては、簡単な事なのだ。

……このわたしを。 ……雪風様を。 ……どうか、シキカンに。 ……貰って欲しい……だけなのだ。

 ……ずっと、シキカンと。 ……一緒に居させて欲しい……だけなのだ。

 ……今までは、ずっと、我慢して居たのだ。 ……シキカンと一緒に遊べるだけで、自分は幸運なのだって。 ……これ以上の幸運なんて、望んだらダメなのだって。 ……でも、もう、ダメなのだ。 ……直接、こうやって会ってしまったら、もう、我慢できないのだ。 ……今日を、逃したら、絶対に、ぜったいに、後悔するのだ。

 …………シキカン! お願いなのだ! ……このわたしを! 雪風を! ずっとシキカンのそばに置いて欲しいのだ! ……その為ならなんだってするのだ! シキカンの迷惑にならない様に、一杯、いっぱい、頑張るのだ! こんな、雪風の、全然役に立たない幸運なんかも!! 全部!! ぜんぶっ!! シキカンにあげるのだ!!!

 ……だから!!! シキカン!!! お願いなのだ!!!

 ……こんな雪風と!!! わがままなわたしと!!! ずっと一緒に!!! 居てください!!!!!

 ……………………なのだぁ。

 ……………わぅ。……わ“ぅ”ぅ“! わ“ぅ”う“う”う“う”う“う”う“!!!」

 

 

 「ぐっほおおおおおおおおおお!?!? ゆ、雪風サン!? いきなりタックルしな……痛たたたたた!? ぐわあああああ痛い痛い!? 雪風サン!? ちょ、落ち着いて!?

抱きついてるつもりだろうけど!? もはやサバ折り状態だから!! このままだとお願い聞く前にシキカン死んじゃうから!!! 取り合えず力緩めて欲しいのがあああ!?!?! 雪風サンにするシキカンの最初のお願いだから嗚呼ああああ!!?」

 

 

 「わ“ぅ”う“う”う“う”うう“う”う“う”う“!! わ”ぅ“う”う“う”う“う”う“う”う“! ……わぅうう。 …………わぅ」

 

 

 「よ~~~しよしよし。落ち着いて~~。大丈夫だからな~~。そんなに強くサバ折らなくても俺は逃げないからな~~。 ……うわ~、ケモ耳モッフモフだな~~! でも触り心地抜群だな~~! すっごいサッラサラだし! 雪風様はやっぱり凄いな~~! 尊敬しちゃうな~~!」

 

 

 「……わぅぅぅ。 ……そんなに、頭を撫でないで欲しいのだ。 ……物凄く、くすぐったいのだ。 ……シキカンはわたしの、この雪風様の、一生に1度しか言わないお願いをちゃんと聞いていたのだ? ……はぐらかすなら、いくらこの雪風様でも、承知しないのだ!」

 

 

 「……痛たたたた!? ……聞いてた、聞いてたよ! ものすっごい魂の叫びみたいな告白みたいな何かを! ……でもなぁ。 ……なんか雪風ちゃんも、同じそうなんだよなぁ。 ……人との関係が圧倒的に足りていないというか、なんというか。 ……俺と一緒にいるだけで解決出来そうなら良いけど、そうでも無さそうなんだよなぁ」

 

 

 「……何を言ってるのだ? ……雪風様はシキカンさえ居れば満足なのだ。 ……それ以上を望むなんて、いくら雪風様が幸運でも、叶うはずがないのだ。 ……神に逆らうレベルの事なのだ。 ……シキカン、あんたは、雪風様と一緒に居るのが。 ……いやなのだ?」

 

 

 「いやいや! 雪風ちゃんと一緒に居るのが嫌なわけないよ!? むしろバッチコイやぁ! ナンボでも相手してやるけん! みたいな感じだけども! ……でも、俺だけじゃぁなぁ。 ……ちなみに、雪風ちゃんは仲が良い人は居ないの? たとえば、この基地内とかに」

 

 

 「……そんなの、居るはずないのだ。 ……わたしはこの基地内でも、かなりの嫌われ者なのだ。 ……仲が良い人どころか、たまに話す人さえ、殆ど居ないのだ。 ……わたしも、もう自分から話しかけようとかなんて、思ってないのだ」

 

 

 「……そうか~。 ……じゃあまず、雪風ちゃんのお願い第1弾は、この基地で仲が良い人を見つける事からかな~。 ……まあ、でも、丁度良かったかな! ……よし! 雪風ちゃん! ちょっと待ってて! これから俺の友達をここに呼ぶから!」

 

 

 「……な、なんなのだ!? ……シキカンの友達!? ……シキカンはこの基地に初めて来たんじゃないのだ!? もう知り合いがいるのだ!? ……や、やめるのだ!! ……そ、そんな人を呼んでも、きっとわたしの事を悪く言うだけなのだ!! シキカンも、わたしも、その人も、みんなが傷つくだけで終わるのだ!! 残念な結果なのだ!!!」

 

 

 「う~ん、たぶん大丈夫だと思うけどな~。取り合えず呼んでみるよ。 ……え~っと、綾波ちゃんの番号は……これか。よし、ちょっと電話かけるから待っててね~。 ……【プルr『はい綾波ですシキカン大丈夫ですか今行くです直ぐ行くですどこに居るです』 ……はやっ!? ……まあすぐ来てくれるのはありがたいけど。 ……え~っと、ここは綾波ちゃんと今朝別れた門から、ちょっと離れた日陰になってる所n「来たです。シキカン、大丈夫ですか。何かあったですか。綾波に出来る事ならなんでもするです」 ……だから早いって!? もうなんなの!? 綾波ちゃんは忍者なの!? 縮地とか出来る系なの!?  綾波ちゃんもしかしてずっとそばに居たりしてたの!?」

 

 

 「……ここからは少し離れていましたが、シキカンに何時呼ばれても良い様に、休み時間はずっと待機してたです。綾波は通信を聞き逃す、なんて事は、もう絶対にしないです」

 

 

 「……あ、ありがとうね? でも休み時間は休憩取ろうね? 待機とかしてなくて良いからね? そんなに緊急な連絡をするなんて殆どないからね?」

 

 

 ……ううむ、綾波ちゃんの迅速すぎる行動で話が逸れたぞ。まあ、ありがたかったけど。

 

 

 「……えーっと、綾波ちゃんはこの娘のこと知ってる? この娘は雪風ちゃん、というか蓮ちゃんなんだけど。俺の配信で一緒にセイハンHやった娘なんだけど。 ……覚えてる?」

 

 

 「……この人が、シキカンの配信で一緒にゲームで遊んだ、蓮さん……ですか? たしかに、この人は、この基地に所属している蓮さんで合ってるですが。 ……基地に居る時は、雰囲気が全然違うですよ?」

 

 

 「え~っと。 ……この娘も綾波ちゃんと同じで、基地に居る時はしゃべらなかったと言うか、なんか除け者にされてたと言うか。 ……兎に角、この雪風ちゃん……蓮ちゃんは、綾波ちゃんと遊んだあの娘で間違いないよ? 話してみた感じ、俺の配信に参加してくれてた娘で間違いないみたいだし」

 

 

 「……そうですか。 ……綾波も、基地内での交流は殆ど無いので、あの蓮さんだったとは気づけなかったです。 ……蓮さん、まともに話すのは、初めまして……です。 ……私は綾波、シキカンの配信では柚と名乗ってた……です。 ……あの配信では、蓮さんにも、とてもお世話になった……です。 ……綾波と友達になってくれて、ありがとう、です」

 

 

 「……あんたが、あの配信で一緒に遊んだ、柚だったのだ? ……確かに、そんな名前の奴もこの基地にいたのだ。 ……でも、本当に、あの柚だったなんて。 ……雪風様には、信じられないのだ」

 

 

 「綾波ちゃんはあの柚ちゃんで間違いないよ。配信の内容も全部知ってるしね。今日もこの綾波ちゃんにこの基地まで案内して貰ったんだしね。基地を見たいって言ったのは俺なんだけど」

 

 

 「……シキカンと柚は知り合いだったのだ? ……配信だけの仲じゃなかったのだ?」

 

 

 「……え、え~と? ……柚ちゃんも昨日、俺と偶然? いや必然? 的な感じでバッタリご対面したというか? それでオハナシし合った仲というか? やましい仲ではないというか? ……ほら俺配信で顔も出してるしね? ご対面したら流石にわかるよね? 雪風ちゃんも俺を認識したらマッハで駆け寄って来てくれた位だしね? ……まあでも、ここまで来れたのは綾波ちゃんのおかげではあるけどね?」

 

 

 俺1人だと、電車の中でオシクラオフニャンされて潰されるまであったからね。

 「……柚が、シキカンを、ここまで連れて来てくれたのだ? ……柚のおかげで、わたしはシキカンと会えたのだ?

 …………柚っ! ……わたしにっ! この雪風様にっ! 本当の幸運を運んできてくれたのはあんただったのだ!? ……それなら雪風様はあんたに感謝するのだ!! ……わたしと、シキカンを!! 今日、この日に、出会わせてくれて!! 本当にありがとうなのだ!!!」

 「……いえ。 ……綾波は、シキカンが案内して欲しいと望んだから、ここまで連れてきただけ、です。 ……何も特別な事はしていない、です」

 「……柚は、この雪風様が蓮だった事を聞いても、嫌いにならないのだ? ……この基地に居るのなら、雪風様の評判くらい、聞いてるはずなのだ。 ……ここは、ネットやゲームの中じゃないのだ。 ……偉そうにしてても、実際は、こんなに酷い容姿で、みんなからも蔑まれる存在だったのだ。 ……それなのに、なんで、お礼なんて、言ってくれるのだ?」

 「……? ……蓮さんの噂、ですか? ……すみません、です。 ……綾波はこの基地でも、殆ど1人で行動してるですから。 ……正式な業務連絡ならともかく、噂とかは、綾波には届かない、です。 ……有名な人だったら、申し訳ない……です。 ……容姿の方も、特に気にはならない、です。 ……容姿については、綾波もあまり人の事は言えないですし。 ……それに、酷い容姿にいちいち驚いて、嫌っていたりなんかしたら、シキカンの配信をまともに見れない、です。 ……綾波はもう慣れた、です。 ……蓮さんこそ、綾波の容姿を見て、驚いたりしないのですか? 綾波は配信内で、みんなに、あんなに迷惑をかけてた……です。 ……それなのに、容姿も、実際はこんなに酷い……です。 ……蓮さんこそ、綾波を嫌って当然なはず……です」

 「……そんな事、ないのだ。 ……たしかに、柚の容姿も、この雪風様と同じくらい、アレなのだ。 ……でも、柚は、この雪風様を見ても、何も悪口を言ったりしてないのだ。 ……それどころか、助けた事に感謝すらしてくれたのだ。 ……そんなあんたを、この雪風様が嫌うなんて事は、絶対に無いのだ!」

 

 「……そう、ですか。 ……そう言って頂けるなら、綾波は嬉しい……です。 ……蓮さんも、綾波の大切な友達、です。 ……綾波が周りの迷惑を考えずに暴走して、ゲームで負けて落ち込んでた時も、コメントで綾波の事を励ましてくれてた……です。 ……そんな蓮さんが、こんなに近くに居たなんて、綾波は気付けなかった……です。

 …………蓮さん。 ……もし、良ければ。 ……この綾波と、こっちでも、友達に、なってくれます……ですか? ……ゲームの世界だけじゃなくて……現実の世界でも。 ……そうしてくれたら、綾波は。 ……此処でも、もっと頑張れる気がする……です。 ……どう、ですか?」

 

 「……そんなの、お安い御用なのだ! この偉大な雪風様が、慕ってくれてる家来を無碍にするなんて、そんなのする筈ないのだ!

 ……柚っ! あんたも今日からこの雪風様の家来……、じゃないっ! ……わたしの大切な友達……なのだ! 今日からこっちでも、よろしくするのだ! 何かあったら、いつでもこの雪風様を頼るが良いのだ! 偉大な雪風様の幸運をあんたにも分けてあげるのだー! ハッハッハー!」

 

 

 「……良かったです。 ……配信の時の蓮さんです。 ……蓮さん、これからもよろしくお願いするです。 ……蓮さんと一緒なら、綾波は、シキカンと離れている時でも、少しは大丈夫になるはず……です。 ……ありがとうございます……です。

 ……シキカン、ごめんなさいです。 ……蓮さんとかなり長く話し込んでしまった……です。 ……シキカンは綾波に何か用事があったですよね? ……どんな用事か、まだ聞いていなかったです。 ……蓮さんと、何か協力してやる事でもあるのですか? ……それなら、綾波は頑張る……です。 ……任せて欲しい……です」

 

 

 「……え、え~っと。 ……俺は取り合えず、2人を出合わせてみればなんか上手い事行くんじゃないかな~って思って、綾波ちゃんを此処に呼んだだけというか。 ……険悪な雰囲気になりそうなら、間に入って仲裁しようかな~ってくらいには考えてたんだけど。 ……なんか予想以上にスムーズにいったと言うか、なんというか。 ……凄いね、2人共」

 

 

 ……こんな環境なのに、なんか物凄い誠実というか、心が真っ直ぐというか。まあちょっと病んじゃってたのは仕方ないとしても。

 

 ……俺だったら絶対心が歪みそうな環境に居たのに、そんな事を言い合えるなんて。なんなの? 2人共実は天使なの? いやこっちでは天使は悪口なのか?

 

 ……なんなの? 2人共実は魔人なの?

 

 

 「……そんな事無い、のだ。 ……シキカンが柚を紹介してくれなかったら、雪風様は絶対この娘があの柚だなんて、気づかなかったのだ。話しかけようとすら思わなかったのだ。 ……雪風様はそんなに良い奴じゃないのだ。シキカンは雪風様の事を買い被り過ぎなのだ。猫に小判なのだ」

 

 

 「……綾波も、そんなに良い子ではない、です。 ……自分が大切に思っている事を傷つけられそうになると、しょっちゅう周りが見えなくなる……です。 ……でも、シキカンが、綾波の事をそう想ってくれているのなら、綾波は嬉しい……です。シキカンの理想の綾波に近づけるように、これからも、もっと頑張る……です」

 

 

 「……う、うん。2人共自分に自信がないのは相変わらずか。 ……まあ性格が歪んでないなら、これもその内元通りになるのか……な? ……兎に角! 2人がこっちでも友達になれて良かった! これからは基地であんな能面みたいな表情してたらダメだからね!? アレは俺でも精神に来るレベルの表情だったから!」

 

 

 「……シキカン、ありがとうなのだ。 ……本当は、わたしが、雪風様が、シキカンのために何かをしたかったはずなのに。 ……また、シキカンに助けられたのだ。 ……シキカン! あんたから貰った、この借りは絶対、ぜったいにいつか返すのだ! どんなに借りが大きくても! どんなに時間がかかっても! この雪風様は、借りを返さないなんて事はしないのだ! だから、シキカン!! それまであんたは、絶対に、この雪風様の前から居なくなってはダメなのだ!!

 ……約束、するのだっ!!!」

 

 

 「……うわっ! 雪風ちゃん!? いきなり飛びつかないでね!? 俺もそんなに体格良くないからね!? 勢い強いとコケちゃうから!! ……わかったわかった! 大丈夫大丈夫! 俺は雪風ちゃんの前から居なくなったりしないから! 俺の家からここまで直ぐに来れるって事はわかったしね! なんなら俺の家にも何時でも遊びに来て良いくらいだから! だからちょっと落ち着こうか!?」

 

 

 「……ッ!?!? シ、シキカンの家に遊びに行ってもいいのか!? ゆ、雪風様が!? ほ、本当に良いのだ!? ほ、他の人の家に、遊びに誘われるとか、雪風様は一度もないのに!?」

 

 

 「お、おっけーおっけー! 大丈夫だから! 俺は何時でも大歓迎だから! まあ流石に寝る時間は欲しいけど、現状ほぼニートだしそんなの何時でも取れるから! 雪風ちゃんも綾波ちゃんと一緒に遊びに来て良いからね!? ……えっと、綾波ちゃんもそれで良いかな?」

 

 

 「………………はい、です。 ……シキカンと、2人きりの時も良いですが。 ……みんなと、一緒に遊ぶのも、綾波は好き、です。 ……蓮さんと一緒なら、この先もきっと楽しくなるはず……です。蓮さん、これからもよろしく……です」

 

 

 「シ、シキカン……! ゆ、柚も……! ……ありがとうなのだ!! ……わたしも! 雪風様も! ずっとみんなで、こんな風にしたかったのだ!! こんな風に、遊ぶ約束とかをしてみたかったのだ!! ……今日はやっぱり、雪風様が想ってた事が、全部叶う日なのだ!! やっぱり、今日が、わたしにとって一番幸運な日なのだ!! シキカン!!! 柚っ!!! 本当に、本当にありがとうなのだ!!!」

 

 

 「……おおう! なんだかこっちの雪風ちゃんは幸運の閾値が物凄く低いみたいだなー。 ……でも! 今日からは違うからね! 今日までの幸運なんて、逆に不幸だったんじゃないかって思わせる位には楽しく過ごそう! ……まあどんな事しようかはまだ何も考えてないけど。 ……2人共、これからよろしくね!」

 

 

 「……シキカン、蓮さんも。これからもよろしく……です。 ……みんなで、一緒に、いっぱい、遊ぶです。綾波も、楽しみにしてる……です」

 

 

 「……遊びの事なら雪風様に任せるのだ! いっぱい、いっぱいやってみたい事があるのだ! みんなと一緒に、沢山遊んでみたい事があるのだ! これから、思う存分、やってやるのだ!! シキカン!! 柚もっ!! これからも、ずっと一緒なのだ!!!」

 

 

 「……よし! じゃあまずは、この3人でリアル友達同盟結成だ! この調子でどんどん増やしていくぞー! みんな一緒に頑張ろう! えい、えい、おー!!」

 

 

 「「えい! えい! おーーー!!」……です」

 

 

あーくろいやる:駆逐艦ばんざああああああああああああああああああああああああああああい!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 ……お前の席はねえからああああああああああああああ!!!!!

 

 

 

 




綾波と雪風がリア友になりました。


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#14 夜のコンビニって怖くないですか? 俺は怖くないですけど。

 
 
闇の心さんが便利過ぎて手放せません。


 

 

 

 「シキカン、休憩時間がもうすぐ終わるのだ。 ……名残惜しいけど、雪風様はそろそろ戻るのだ! ……今日の仕事が終わったら、早速あんたの家に行ってもいいのだ? 雪風様はもう待ちきれないのだ!」

 

 「いいよいいよ。さっきも言ったように俺は大歓迎だから! ……ビシャマルちゃんも家に居るけど、それでも良ければ家に来て!」

 

 

 「……ビシャマルも、最初は怖か……怖くはなかったのだ!! 雪風様はオフニャなんかで怖がらないのだ!! シキカンの配信を観てたら嫌でも慣れるのだ!! 余裕なのだ!!」

 

 「そ、そう? それなら良かった。じゃあ今日は家で遊ぼうか! 俺も今日はもうある程度目的は果たしたから、これから自分の家に帰るつもりだしね!」

 

 

 「……シキカン、綾波も。 ……今日もシキカンの家にお邪魔しても、大丈夫ですか? 綾波も一緒に、みんなと遊びたい……です」

 

 

 「おっけーおっけー! 綾波ちゃんもおいで! 1人も2人も変わらないしね! 寧ろ賑やかになって良い位だし! というか雪風ちゃんは俺の家の場所わからないだろうから、綾波ちゃんが案内してあげたら一石二鳥だしね! 今日は2人で俺の家に来なよ!」

 

 「……ゆ、ゆz。 ……や。 ……あ、綾波は。 シキカンの家を知ってるのだ? それなら案内してほしいのだ! よろしく頼むのだ!」

 

 

 「……了解……です。 ……蓮……さん。 ……いいえ。 ……雪風……さん。綾波も、みんなで遊ぶ方が、楽しくなると思うです。綾波は、盛り上げるのが下手……ですから」

 

 

 「……ッ!! ……綾波ッ! 雪風様と綾波はもうリアルでも友達なのだ! 雪風様にさん付けはいらないのだ! 名前だけで呼んで欲しいのだ!」

 

 

 

 「……わかった……です。 …………雪風。 ……雪風! これからも、よろしく……です!」

 

 

 「こちらこそよろしくなのだっ! 綾波ッ!」

 

 

 「おおー、凄い。友情を確かめ合ってる。やっぱこの2人を合わせたのは正解だったなー。この調子でどんどん仲間が増えてけば良いんだけど。 ……まあそんなに上手くは行かないか。 ……取り合えず、2人共これから仕事の続き頑張ってねー!」

 

 

 「わかったのだー! 頑張ってくるのだー! シキカンは家で帰りを待ってるのだー! 仕事が終わったら寄り道しないですぐに行くのだー!」

 

 

 「綾波も、午後の仕事を頑張ってくる……です。 ……シキカンも、気を付けて、帰るです」

 

 

 「了解―! 大丈夫! 綾波ちゃんのおかげで帰り道もバッチリだから! それじゃあいってらっしゃーい!」

 

 

 

 ……………………ふぅ。行ってしまった。 ……というか、なんかこの構図おかしくね? ただのニート配信者が、見た目中学生レベルの女の娘のKAN-SENを仕事に送り出して自分は暇してる構図とか。冷静に見てヤバくね? 俺ヤバくね? まあ既に俺のヤバさはぶっちぎってるから関係ないか。細かい事は気にしない様にしよう。この世界ではKAN-SENちゃんを働かせるのは通常。平常。平壌運転! よし、自己暗示完了!

 

 

 

闇の心AR:閣下よ、良いではないか。本来ならば守ってやらなければならない、可愛い駆逐艦の妹達から養われる生活というのも。これが噂に聞くバブみという奴ではないのか? 私は理解できるぞ。

 

 

 

 ……うるせえ。そんな、この世の闇の塊みたいな属性を理解してるんじゃねえ。いや、こいつは闇の心だったわ。 ……闇でも俺の心じゃん。半分は俺もバブみ理解してるって事じゃん。やだなぁ。そもそも俺バブバブしてないし。これはバブみとはちょっと違うんじゃない?

 

 

 

闇の心AR:……そうだな。これはバブみではないな。どちらかというと、共依存に近いか。閣下よ、良かったな。駆逐艦綾波もいずれ、今日のパチスロ代よ、と言ってお金を恵んでくれるようになるぞ。というか閣下は既にスペチャされていたな。流石は閣下だ。この私の考えの先を常に突き進んでいる。

 

 

 

 ……それ違う方の人だから! ダメ提督製造機の方だから! しかも結構評価分かれてる価値観の奴だから! 色んな闇を掘り起こすのはヤメロ下さい! 俺はそんな展開望んでいません!

 

 

 

闇の心AR:……ふむ。まあそういう事にしておこうか。 ……さて、閣下よ。考え事を邪魔して悪かったな。今回は私の方から引くとしよう。夕方からは駆逐艦綾波と雪風による宴の開催が予定されているのでな。それまでに力を蓄えて置かなければ。 ……何かあったら呼んでくれ、何時でも閣下の力となろう。

 

 

 

 ……お前はその宴に呼んでないけどな!? 絶対出てくるなよ!? マジで出てきたら承知しないからな!? 出てきた瞬間ハートキャッチだからな!? 覚悟しとけよ!?

 

 

 ……マジで消えやがったなアイツ。何の為に出て来たんだよ。定期的に俺の心を乱してくるな。

 ……今は心を平静に保ててるけど、俺の心が乱れた時にアイツが来たらマジでヤバそうだぞ。

 ……ちょっと光の戦士PLちゃんと相談して対策を練っておかねば。

 

 

 ……さて、俺もそろそろ帰ろうかな。あんまり遅くなると帰宅ラッシュに巻き込まれそうだし。そうなったら俺が帰宅するのは自宅じゃなくて地獄になる可能性大だし。よし、さっさと帰ろう。

 

 

 ……お? あんな所にコンビニがあるぞ? しかも通常サイズ(俺にとって)の。

 ……あれかな? 外国人とか小人専用かな?

 やっぱ基地ってくらいだから5m級の鬼神さんだけじゃなくて色んな人が来るんだろうか? ていうかKAN-SENもいるんだからそのサイズのお店もあるに決まってるのか。感覚がマヒしてたわ。

 ……せっかくだから見に行ってみるか。配信の時に重桜の軍隊さんがGallolyMate食べてるって聞いたから、もしかしたら俺の味覚に合う食品もいくつか売っているかもしれない。

 よし、漢は度胸! 何でも行ってみるもんさ! シキカン! コンビニ入りまーす!

 

 

 

 【テレテ↓レテレ↑~ン♪ テレ↑テレ↓テーン♪】

 

 

 

 ……からあげ君下さい。

 

 

 

闇の心AR:閣下、それは違う場所だ。それに、心の中で言っても私にしか聞こえないぞ。

 

 

 

 うるさい。黙って。

 

 

 

闇の心AR:了解した。

 

 

 

 「いらっしゃいませ~♪ こんにち……わっはぁ!?」

 

 

 

 ……んん!? なんか店員さんがびっくりして……ってうお!?

 

 ……あれ赤城さんじゃね? 一航戦の。空母赤城じゃね?

 

 ……なんかコンビニの店員服着て、般若のお面で顔隠してるけど。完全に耳と尻尾が隠せてませんよ?

 な、なるほど? 赤城さんはコンビニで働いてるのか。 ……軍隊の仕事は良いのだろうか。

 

 ……ちょっと声かけてみるか。

 

 

 「……あ、あの~? ……もし人違いだったら申し訳ないのですが。 ……赤城さんでいらっしゃいますか?」

 

 

 「……!? ……へぇ!? な、なんで私がわか!? ……ん! んんッ!!

…………あ、赤城? ど、どなたでございましょう? わ、私は存じ上げておりませんわ? ……ね、『ねえむぷれいと』にもちゃんと『鳳(おおとり)』と記載されて御座いますわよ? ひ、人違いじゃ御座いません?」

 

 

 「……え? ……そ、そうですか? でも、声とかも完全に赤城さんな気がするのですが?」

 

 

 「ゴ、ゴホンゴホン! わ"、私"は"赤"城"で"は"ご"ざ"い"ま"せ"ん"わ"」

 

 

 「……ええー、いきなり声が変に。 ……わかりました。俺の勘違いだったみたいですね。すみません、仕事の邪魔をしてしまって。俺は店内を観させてもらいますね。 ……それでは」

 

 

 「ど、どう"ぞごゆ"っく"り"~」

 

 

 

 ……うーん。どうみても赤城さんだ。しゃべり方も声もそのまんまだもん。なんか隠そうとしてたけど。

……なんで隠そうとしてるんだろう。俺にコンビニで働いてるってバレるのが嫌なのか?

 ……赤城さんならありえそうだな。誇り高き一航戦がコンビニでアルバイト等~とか言いそう。むしろ俺が居なくても言いそうなのに。 ……なんでコンビニで働いてるんだろう。

 ……まあ、あの重桜軍隊の惨状を見たら、こうなっても仕方ないか。綾波ちゃんは最低限の賃金は稼げてるって言ってたけど。どう見てもブラック職場だもんアソコ。3Kどころか5Kくらいありそうだもん。キツい、汚い、危険、苦しい、怖い、鬼神、くらいありそうだもん。俺なら絶対嫌だね。コンビニバイトの方が百倍マシだわ。逆になんで軍隊のKAN-SENはあんな場所で耐えてるんだって言うね。みんなもう他の職を探す気力すら起きないのかな。 ……うーん、わからん。

 

 まあ、赤城さんもバレたくないって事ならそっとしておくか。出来ればお話ししたいけど。居場所が分かっただけでも儲けものって思う事にしよう。よし、今日から此処が俺の行きつけのコンビニだ。片道1時間かかるけど。ニートだから問題なし。

 

 

 さーて、商品は何が売ってるかなー。 ……うわー。ごめんなさい。行きつけのコンビニって言った事を5秒で後悔し始めました。はぁー、ここもか。ここも野生動物保護協会さんの特区か。なんでアナコンダみたいな巨大な蛇の丸焼きが棚に置いてあるんだよ。軍隊さんの食生活豪快過ぎだろ? こんなのジャングルでサバイバル生活に慣れてる傭兵さんしか美味しく頂けないよ。ここは小人専用コンビニじゃなかったんですかね? ……良く見たらお客さんも俺以外誰もいないし。たぶん俺サイズの人はアナコンダ食べませんよ? 仕入れ間違ってませんか? 潰れますよこのコンビニ。

 

 ……いや、まだ希望を捨てるな。きっと何かあるはず。俺がこのコンビニに通えるだけの何かが欲しい。頼む! 何か俺にとっての普通があってくれ!!

 

 

 ……ん? あれ? なんかあるぞ? ……!? ……普通の和菓子があるぞ!? 棚の奥のめちゃくちゃ目立たない位置にだけど! なんだこれは!? ……あれ!? 形も普通だぞ!? なんか羊羹っぽいのが置いてあるぞ!? と、となりは……!? ……なにこれ? ヒヨコ? なんか饅頭って書いてあるけど。これ実物? ……でもお菓子コーナーに置いてあるって事はお菓子だよな。いやでもこの世界はヒヨコをお菓子として食すかもしれん。 ……ちょっと店員さんに聞いてみよう。

 

 

 「……あのー? 店員さん? ちょっと聞きたい事があるんですけど」

 

 

 「……!? は、はひっ。な、何でございましょう?」

 

 

 「えーっと、このヒヨコの形をした饅頭って商品なんですけど。これは本物のヒヨコですか? それともお菓子ですか?」

 

 

 「!? ……そ、それは!? ……それはヒヨコではありませんわ。饅頭というお菓子でございます。私のおススメの商品で御座いますよ?」

 

 

 「え!? 本物のヒヨコじゃないんですか!? ……よ、良かった。 ……じゃあ、このヒヨコ饅頭と、この羊羹のお会計を、お願いして良いですか?」

 

 

 「……ま、饅頭だけでなく、羊羹まで……? わ、わかりましたわ。少々お待ちくださいませ? ……はい、2点で、250円になりますわ」

 

 

 「ありがとうございます! ……はい、250円です! 取り合えず1個ずつで。美味しかったらもっと買いますので! ……うおー、形はまんま羊羹だなこれ。もうここで食べて行くか。 ……あ。すみません、あの店内のテーブルで食事しても良いですか?」

 

 

 「か、かまいませんわぁ? ど、どうぞごゆっくりぃ?」

 

 

 「ありがとうございまーす! じゃあ利用させて貰いまーす! 赤城さんありがとうございまーす!」

 

 

 「!?!? ……で、ですから!? 私は赤城でなく鳳でございますわ!? シキカ、お客様ぁ!?」

 

 

 「さーて、早速食べるか。 ……お願いだ! 味も普通であって下さい! マジでお願いします!

 …………………うまっ。 ……え? 普通に美味しい。 ……マジで? マジで普通の羊羹じゃん。 ……こっちのヒヨコ饅頭も普通に饅頭じゃん。普通どころかめちゃくちゃ旨いじゃん。日本だったら高級老舗店で限定販売出来るレベルじゃん。気合い入れすぎだろヒヨコ饅頭」

 

 

 「……し、しき。お、お客様は、そちらの商品が、お気に召したのでございますか?」

 

 

 「あ、赤城さん、どうも! このコンビニ凄いですね! こんな美味しいモノが売ってるなんて! これどこのメーカーから発売されてるんですか!? 俺このクオリティの商品なら是非大量に購入したいんですけど!」

 

 

 「で、ですから私は……! ……はぁ、もう、赤城で良いですわ。 ……シキカン様に、鳳、と呼ばれたくもないですし。 ……シキカン様はどうして私の事を一目で赤城だと分かったのですか? この様に般若の面で顔を隠してもいるのに。 ……もしかして本当に、私との愛の力が働いたのでしょうか?」

 

 

 「え? えーっと? それは前から赤城さんの特徴を知っていたというかなんというか。 ……説明がめんどくさいので、愛の力が働いたって事にして置いて貰っても良いですか? 俺赤城さんの事好きですし。ゲームではお世話になってましたし。3-4は200周以上させられましたけど」

 

 

 「へっへあ!? シ、シキカン様が!? 今好きと!? 私の事を好きと仰いましたか!?!? な、何故でございましょう!? シ、シキカン様が本当に私に好意を抱くなど!? わ、私はシキカン様にまだ何も、与える事が出来ておりませんのに!?」

 

 

 「……え、えーと。それはまあそうなんですが。……なにも与えていないというのは違くないですか? スペチャしてくれてましたし。 ……それに、ここでは。重桜では、赤城さんが存在してくれて居るだけで、俺はありがたいというか。心の癒しになると言うか。お礼を言いたくなると言うか。 ……配信でも積極的に俺の事を手伝って頂けましたし。ちょっとMOBGの時は反則技とか使っちゃってましたけど。まあアレは遊びみたいなモノだったので。 ……いつも俺の配信を観に来てくれて、ありがとうございます。赤城さん」

 

 

 「そ、そんな、お、お礼を言われるほどの事は何も……。 ……シキカン様は、本当に、私の事を慕ってくれておりますの? ……私は、こんな体ですのよ? 醜い、どころか、忌まわしき存在、とまで言われる見た目ですよ? 本当に、こんな私に、好意を抱いておりますの?」

 

 

 「赤城さんの見た目ですか? ……忌まわしいどころか可愛らしいですけど? ……いや、今はコンビニの店員服を着ているせいで魅力が半減していますが。 ……それでもなんか神々しいオーラが出てますよ。隠せてないですよ。主に耳と尻尾から存在感が出てますよ。 ……あとはその般若のお面だけ、外して頂ければ最高なんですが。そのお面だけはめっちゃ怖いんで。なんでそんなリアル般若してるんですか。職人芸ですか。人間国宝が彫ったりしたんですか。まるで生きてるみたいですよ? さっきと表情変わってませんか? ……出来ればちょっと、般若面を外して頂けるとありがたいのですけど?」

 

 

 「…………………………こう、で、ございましょうか?」

 

 

 「……おおー! 赤城さんだ! 完全に赤城さんだ! とても凛々しいですね! 大人の女性って感じです! やっぱ黒髪に紅眼は似合うなー。俺の中では金髪碧眼と並んでの2大巨頭ですよ!」

 

 

 「……シキカン様。 ……ワタシ、キレイ?」

 

 

 「……えーっと。 ……キレイですよ?」

 

 

 「……ワタシ、キレイ。 ……シキカン、サマガ、ワタシヲ、キレイと。 ……フフ、フフフ、フフフフフ」

 

 

 「……あ、赤城さん? ど、どうしました?」

 

 

 「……シキカン様ぁ? 先ほどのお菓子でございますけど? あれは赤城の家で製造している商品でございますわぁ。非常に、非常に残念な事に、もうこのお店には在庫が御座いませんの。 ……シキカン様がよろしければ、私の家にご招待いたしますわぁ? どうぞ、いらっしゃって下さいまし。精一杯のオモテナシを致しますわぁ♡」

 

 

 「……え、えーっと。でも、いきなり家にまでお邪魔するのはご迷惑じゃ」

 

 

 「そんな事ありませんわぁ♡ 私の家は、此処から歩いて直ぐの所に御座いますの♡ シキカン様にお手間をお掛けする事など御座いませんわぁ♡ どうか♡ どうか♡ 私の家にいらっしゃって下さいまし♡」

 

 

 「わ、わかりました。そ、そこまでお願いしなくても、俺は行きますよ。別に断る理由もありませんしね」

 

 

 「そ、そうで御座いますか! ありがとうございますわぁ! こ、これで、私と、シキカン様が、私の家で。 ……フフ、フフフ、アハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

 「あ、赤城さん!? いきなりどうしたの!? 今はお客さん俺しか居ないから良いけど、店内でそんな大声だしたら怒られちゃいますよ!? いや、既に俺とこんなに話し込んでる時点でアレだけれども! と、とにかく、落ち着いて下さい!?」

 

 

 「フフフ♡ こんな雑貨店の事など、後でどうにでもなりますわぁ♡ さあさあ、シキカン様、早く私の家に行きましょう♡ 今すぐに♡ さあさあ♡」

 

 

 「ええー。良いのかなー。後でめちゃくちゃ怒られても知りませんよ? ああー、もう店の外に……。しょうがない。お饅頭と羊羹の在庫を買い取ったら直ぐに戻れば大丈夫だろ。 ……うん、赤城さんが不穏な事言ってたけど。大丈夫だ問題ない。 ……問題ないかなぁ? ……なんか怖いなぁ? ……死亡フラグ建ってないこれ? ……もう逃げられなくない?」

 

 

 「シキカン様ぁ~~~♡♡ 早く行きますわよ~~~♡♡」

 

 

 「……うん、とりあえず、何とかなるだろう。多分。 ……なんとか、なって、欲しい、なあ。 ……ナントカナッテクダサイ」

 

 

 

 

 

 




ナントカなりますん。


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#15 一航戦の家にお呼ばれしました! 今日から俺も一航戦です!

 


 「シキカン様ぁ! 到着いたしましたわぁ! 此方が私の住居で御座います! さあさあ! どうぞ中へお入りくださいませ♡」

 

 

 「おおー。本当に直ぐ近くにありましたね」

 

 

 ……なんだか凄い景観の家だなぁ。和風と中華風を混ぜた様な外観と言うか。神社とお寺と中華街を足して3で割って2倍くらい豪華にした感じと言うか ……うん、何も伝わらないね。仕方ない、本気でレビューしてみるか。

 

 まず赤城さんの上半身は、緑と白と水色の縦縞が入ったコンビニ店員服を着ていらっしゃる。でもその服が歪むくらい胸が出ている、飛び出ている。店員服に乳袋なんてないもんだから前のボタンがはち切れそうになっている。それどうやってボタン止めたんですか? 最近のコンビニ店員さんはスイカを胸の中に入れて温めるサービスもやっているんですか? 凄いですね。俺も温めて欲しいです。しかも胸で店員服が持ち上げられ過ぎている性で、御ヘソの方もチラチラとご尊顔をお見せしていらっしゃいます。なんですかあれは。もはや犯罪ですよ。俺の理性暴行罪ですよ。逮捕して下さい、俺を。

 

 そして下半身は普通の紺色のズボンを履いていらっしゃる。でも後ろには尻尾がこれでもかというほど主張していらっしゃる。モッフモフの9本の尻尾が思いっきり存在感を放っていらっしゃる。めちゃくちゃ触りたい。尻尾の付け根どうなってるんですか? 穴が開いているんですか? 少し閲覧させて頂いてもよろしいでしょうか? 捕まえてください、俺を。

 

 うん。総合的に判断すると、赤城さんはどんな服を着ていても美人であるという事が判明しました。カッコ綺麗です。流石です。

 ……家の外観? それはもう神社とお寺と中華街を足して3で(ry

 

 

 「……ここが赤城さんの家ですか?」

 

 

 「はい♡ そうですわぁ♡ 正確には私と、私の姉妹である加賀の2人で生活しておりますが。私は栄光なる一航戦。身窄らしい住居に住まうなど、この私の矜持が許しませんわぁ!」

 

 

 「そ、そうですね! 俺もこの家は好きですよ! 少し派手過ぎる感じは出ていますが。少なくとも周りの鬼神さん達が住んでる、巨大な地獄の裁判所みたいな家よりは、こちらの方が好きですね!」

 

 

 周りも周りで自己主張が激しすぎる家ばかりだからなぁ。屋根は剣山みたいになってるし。中の庭に見える池は血の池だし。そのせいで赤城さんの家が余計に目立っていますけど。

 

 

 「シキカン様も気に入って頂けているご様子、それだけで私は満足ですわ♡ さあさあ、中へどうぞ♡ 赤城の家も、シキカン様が入って来られるのを今か今かと待っておられますわぁ♡」

 

 

 「……では、家の中にお邪魔します! 失礼しまーす!」

 

 

 おおー! 中は普通に純和風って感じだなー! 廊下も木造だし。部屋の中には畳もあるぞ! あ、でも所々の飾りつけは中華風だなー。金色の装飾された赤い提灯みたいなのが吊るされてたりとか。赤い背景に金色で大吉って書かれたデカいお札とか。センスが独特ですね。これはどっちのセンスなんだろう。赤城さんかな。加賀さんかな。

 お? 奥の方に人がいるな。 ……あ、あれは! あの凛とした狐耳と! サラサラで真っ白な御尻尾は! か、加賀さん! 加賀さんじゃないか!!

 

 

 「……む? 誰だ? 此処は見世物小屋等では……。 ……お前は。 ……シキカン? ……何故お前が、私と姉様の家に」

 

 

 「……加賀? シキカン様は、私がこの家に御招待したのです。丁重にオモテナシして頂けるかしら? 私はまずこの身窄らしい服を着替えて参りますわぁ」

 

 

 「……姉様。 ……姉様はまだ雑貨店の勤務時間中では? 何故戻って来られているのですか」

 

 

 「あら? あの様な雑貨店など、少々店員が居なくてもどうとでもなりますわぁ。どうせ大きな催し物がある時以外は、利用者は私達の様な体の小さな者達だけですもの。それよりも、折角シキカン様との運命の出会いを果たしたのですから、其方を優先するのは当然というモノ。これは自然の摂理ですわぁ。 ……加賀こそ、家に居ながら何をしているのかしら? 貴方こそ、油を売っているのではなくて?」

 

 

 「私は、管理しているアフィリエイトサイトが炎上しているので、その火消しを……。 姉様があんな写真を上げるから悪いのですよ? 野球ボールをぶつけられた位であの様な……」

 

 

 「あら? 私は不届きモノを『ソウジ』した写真を投稿しただけですよ? あの不届きモノもキレイにソウジされて、とても喜んでいましたわぁ。あの程度で火の海になる等、私ではなく、貴方の管理サイトの民度の問題ではなくて? ……加賀? 私は着替えて参ります。貴方はそれまでシキカン様のお相手をして頂けるかしら? くれぐれも失礼の無い様に、ね? ……それでは、シキカン様ぁ♡ 少々お待ちくださいませ♡ この赤城はシキカン様の為に、お色直しをして参りますわぁ♡」

 

 

 「あ、はーい。俺の事は気にしないで良いですよ。どうぞお構いなく」

 

 

 ……なるほどー。赤城さんは外でバイトして、加賀さんは家で副業か。それともさっきの話を聞く限り、それも交代でやってるのだろうか。

 というか加賀さんの姿勢が違和感過ぎる。真っ白な和服を着ている、凛とした佇まいの加賀さんが、畳の上でちゃぶ台の前に正座して、ちゃぶ台の上に乗っているデスクトップPCを御弄りになっていらっしゃる。対面のデスクトップPCは赤城さんの奴かな? そういえば配信中に赤城さんが暴れているときに、加賀さんが机が揺れるとかコメントしてたな。この配置じゃあ揺れますよ。ちゃぶ台はデスクトップPCを置くのに向いてないですよ? ちゃぶ台っていうのは、怒った親父が直ぐに引っ繰り返せるように作られた代物ですからね? 安定性に関してはゼロですよ? ちゃんとしたPC机買いましょう? ……でもお金が無いのかな。この家を見る限りそうでも無さそうなんだけど。

 

 

 「……姉様ッ! ……はぁ、姉様にも困ったものだ。もう少し冷静になって頂ければ、この加賀が全く及ばぬ知性を発揮して頂けるモノを。 ……雑貨店にも直ぐに連絡が必要だな。幸い、あと数十分で本来の交代勤務の時間だ。急用の為という事であれば、1度程度なら何とかなるだろう。 ……シキカン。お前がどのようにして、赤城姉様と出会ったかは知らぬが、全く面倒な事をしてくれたものだ」

 

 

 むむ。加賀さんが怒っていらっしゃる。赤城さんの雑貨店業務を勝手に放り出されて、さらにアポなしで家にまで押し掛けられるまでされたら、流石に怒りもするか。無表情っぽく見えるけど、凄い睨まれてる気がする。加賀さんのKOOLな目が俺に突き刺さっている。流し目がカッコ良すぎる。

 

 

 「え、えーと。 ……すみません、加賀さん。赤城さんには少し、コンビニ? 雑貨店? の商品で、俺が欲しいモノがあったので在庫を売って欲しいとお願いしたら、家に有るとの事でしたので。ヒヨコの饅頭と羊羹なのですが」

 

 

 「饅頭と羊羹……だと? ……姉様がお戯れで御作りになられたアレか。 ……お前はアレを購入してどうする気だ? 配信にでも使うのか? ……毒物で使用するならまだしも、アレを食べる等、以ての外な代物だぞ」

 

 

 「ええ? 毒物? ……そ、そんな感じは受けませんでしたけど。美味しかったし。も、もしかして遅効性の毒とか?」

 

 

 ……いや、食べてから結構経ってるし、大丈夫かな? 流石にコンビニで毒物は売ってないだろう。食品コーナーにあったし。 ……配信に使うのもありかも知れないな。普通に俺が食べたいから買っただけだけど、配信内で食べたりすれば、みんな興味を持つかもしれない。

 

 

 「……あの代物が美味い……だと? ……お前は何を言ってるんだ? アレは姉様が腕によりをかけた……」

 

 

 「シキカン様ぁ! お待たせしましたわ! この赤城の正装をご覧くださいませ! これが栄光なる一航戦赤城の、本来の姿ですわ!」

 

 

 「おおー! 赤城さんの正装衣装ですね! 先ほどのコンビニ店員服もある意味、味があって良かったですけど、やはり赤城さんは着物姿が似合いますね! 格好良いです!」

 

 

 うん、赤城さんと言ったらやっぱりこの黒と紅の和装衣装だよなぁ。 ……胸の主張が激しすぎてかなり目の毒ですけれども。なんですかあれは。少し動いたらズレちゃうんじゃないですか? 大事な所が見えちゃうんじゃないですか? 見えたら見ますよ俺は? 怒られても見ますよ? むしろ怒って下さい?

 それに和装なのにミニスカってどういうことですか? ミニ過ぎて屈んだだけで大事な所が見えますが? 見ますよ俺は? それに、薄い黒ニーソ? 黒ストッキング? か何かわからないですけど、太ももに絶対領域が形成されてますよ? 和装なのに。あらゆる箇所で理性を崩壊させに来てますね。流石は赤城さんです。一航戦です。尊敬します。 

 

 

 「……フフフ♡ 私の本来を見ても驚きもしないどころか褒めて下さるなんて♡ 流石はシキカン様♡ 私の全てを受け入れてくれますわぁ♡ ……さあ、シキカン様ぁ♡ 私の手作り料理の新作を持って参りましたわぁ♡ 是非召し上がって下さいませ♡」

 

 

 「えーと、……なんですかこれ? 黒いメンタルキューブみたいな形してますけど? ……なんか嫌な予感しかしないんですけど? ……醤油のキューブとかじゃ無いですよね?」

 

 

 うわあ。なんかデロっとしてる。デロっとしてるのににカチカチにも見える。しかも冷気も放っている。そしてその真っ黒な正方形の食べ物らしきものに爪楊枝が刺さってる。ナニコレ。本当に黒いメンタルキューブ? 流石に光ってはないけど。でも食べ物には全然見えないぞ。

 

 

 「シキカン様? 何を言っているのかしらぁ? これは醤油では御座いませんわぁ。これは遠い異国の地よりシキカン様の為にお取り寄せした『かかお』なる実を材料に、シキカン様の為に赤城が腕によりを掛けて作った『ちよこれいとキューブ』で御座いますよ? ……シキカン様なら勿論、この赤城の愛を受け止めて頂けますわよねぇ?」

 

 

 「……シキカン、止めておけ。赤城姉様がお作りになられたソレはもはや食べ物では無い。口に入れようものなら即座に苦しむ事になるぞ。 ……私も1度挑戦させられたが、その後数日間の記憶が朧気になってしまった。 ……悪い事は言わん。もし此処でお前が倒れても、私はお前を助けぬぞ」

 

 

 「……加賀ぁ? 余計な事は言わない様にして欲しいのだけれど? シキカン様ならきっと、この赤城の愛を、美味しく頂いてくれますわぁ!」

 

 

 「……な、なんだぁ。チョコレートのキューブでしたか。ソレなら多分大丈夫だと思いますよ! 俺チョコレート大好きですし! GallolyMateもチョコ味が1番気に入ってますしね! 赤城さんが俺の為に作ってくれたんなら、有り難く頂戴致します!」

 

 

 「フフフッ♪ 流石はシキカン様ですわぁ! では、あ〜ん、をして下さいませ♡ はい、どうぞ、で御座いますわ♡」

 

 

 うおお!? 赤城さんが爪楊枝黒キューブを手にして俺の目の前に! 凄い! 存在感が凄い! ピンと立った黒い狐耳が可愛すぎる! そして深紅の瞳に吸い込まれそうになる! なにこれ宝石? ルビーなの? 上目遣いとか反則でしょう? ……そしてその下には豊満な胸部がこれでもかって位に曝されておりますけれども? もう実質見えてますよ? 服の意味ないですよこれ? 大丈夫ですか赤城さん?

 

 

 「あ、あ~んですか? ……め、めちゃくちゃ恥ずかしいんですが。 ……い、いやでもこんな機会滅多にないぞ。 ……よ、よし。 ……わかりました、や、やります。 ……あ、あ~ん」

 

 

 「はい♡ 召し上がれ♡ フフフ、私の手料理を食べて下さってるシキカン様も可愛い♡ ……私の手料理のお味はどうですか? 美味しく頂けましたか?」

 

 

 「……うん、うん! 赤城さん! これとっても美味しいですよ! 久々に美味しいチョコレートを食べる事が出来ました! 赤城さんはお菓子作りが得意なんですね!」

 

 

 マジで普通のチョコレートだわこれ。赤城さんの事だから何か変なモノ入ってるんじゃないかと思ったけど、少なくとも味は美味しいわ。真っ黒だったのは、カカオ成分多めだったからかな? ちょっと苦いけど、でも美味しい。中のキューブはわらび餅か? ヒンヤリしたわらび餅が甘い味付けな御かげで、カカオ成分多めのチョコレートと相まって、凄い美味しいぞ。わらび餅チョココーティングとか発想が素晴らしい。赤城さんはお菓子作りの天才か?

 

 

 「……あらぁ♡ シキカン様のお口に合って良かったですわぁ♡ ああ……そんなに喜んで頂けるなんて、シキカン様の愛は今、この赤城の胸の中で滾っていますわぁ♡」

 

 

 「……馬鹿な。 ……姉様の料理を食して、その反応、だと? ……シキカン、お前は、無理をしているのではあるまいな? ここで本心を隠すと、身の為にならんぞ?」

 

 

 「……ええっと? そんな事は? ……そうかー、こっちだとチョコレートは不味い料理の部類なのかー。 ……赤城さんにそんな属性あったっけ? ……いやでも、俺としてはありがたいですね! 少なくとも俺の口には、赤城さんの作るお菓子が合います! 無理なんて全然してないですよ!」

 

 

 「フフフフフ♡ シキカン様はやはり、私の全てを受け入れてくれますわぁ♡ ……これは、私側も、自身の全てを差し出さなければ、不条理というモノ。 ……加賀? 今から何があっても、これからシキカン様と私がスる行為を咎める事を禁じます。 もはやこの愛は、誰にも止める事は出来ませんわぁ♡」

 

 

 「姉様……、流石にそれは……」

 

 

 「あら? シキカン様と私の愛の営みを邪魔するつもりなら、例え姉妹でも容赦しませんわ? ……加賀? 私が本気だという事は、貴方なら分かるはずだけれども」

 

 

 「……承知しました。 ……姉様がそれで良いと言うのなら、私は止めませぬ」

 

 

 「……ええ!? 加賀さん!? 引き下がっちゃうの早くない!? 赤城さんかなり過激な事を仰ってますけど!?」

 

 

 ……なんだか雰囲気もヨロシクないぞ? 危険が危ない香りがするぞ? 赤城さんの目付きも完全に俺を獲物として捕らえてますけど? 良いんですか加賀さん? 大惨事になりますよ?

 

 

 「……姉様が決めた事だ。 ……姉様は1度考えを決めたら梃子でも動かぬ。 ……シキカン、お前は精々、姉様を満足させる事に尽力を尽くすが良い」

 

 

 「フフフ……やはり加賀は良い子ね……。そこで私とシキカン様の行いを目に焼き付けておきなさい? 私とシキカン様に穴が空きそうになるくらい♡ ……フフフ……シキカン様? これで、2人っきり、ですわね? ……シキカン様の胸の中、シキカン様の笑顔、シキカン様の匂い、全部、全部が、これから私のモノになるのよ? モチロン、シキカン様にも、この私の全てを、ナニモカモを、捧げますわぁ。 ……さあ、シキカン様! どうぞこの赤城を存分に使って、己の欲望を発散して下さいませ! 赤城は全て受け入れて見せますわぁ!」

 

 

 「……わかりました。俺も男です。赤城さんにそこまで言われて、黙っているわけにはいきません。お望み通り、俺の好き放題にさせて頂きます。 ……良いですね? ……俺もヘタクソかもしれないので、もし本当に嫌だったら、途中で拒絶して頂いても良いですからね?」

 

 

 「……フフフッ♡ シキカン様がヤル気になって頂いて、赤城はとても満足しております。私がシキカン様を拒絶する様な事はありませんわ。どうぞ、思う存分、この赤城を、可愛がって下さいまし」

 

 

 

 「……わかりました! ……それでは、このシキカン、今から全力で行きます! ……では、思う存分触らせて頂きます! ……赤城さんのケモ耳を!!!」

 

 

 

 「……へ? み、耳? シ、シキカン様? ソレはどう言う……!?!?!? はっひゃぃいいいい!? シキカン様ぁ!? や、やめ!? ふぃいいいい!?!?!! そ、そこはダメで御座いまっひゃああいいいい!?!?!?」

 

 

 「……おおー!! すっごいモッフモフですねー!! いや~! 最初見た時からずっと赤城さんの耳を触らせて貰いたかったんですよ~! まさか許可を頂けるとは思ってませんでした! ビシャマルちゃんはモッチモチで、綾波ちゃんはツッルツルで、雪風ちゃんはサッラサラでしたけど、赤城さんはモッフモフですねー! THE☆正統派ケモ耳って感じの感触です! 触り心地も抜群ですね!!」

 

 

 「んなぁあああ!? シ、シキカン様は何をおっしゃっておりぃいいいひぃいい!? あ、赤城の耳は、け、穢れと、ぶ、侮蔑の!? 象徴でございまひゅぅう!? そ、その様な所をお触りになりゅなどおぉお!? い、いきゅらシ、シキカン様でも、ダメでございまひゅぅうううはぁわああああああ!?!?!?」

 

 

 「ええっ!? いやいや、こんな可愛いケモ耳が穢れと侮蔑の象徴!? 誰ですかそんな事を言っている人は!! こんなに愛くるしいケモ耳なのに!! 俺はそんな権力には屈しませんよ!!!」

 

 

 「……シキカン、姉様の仰っている事は本当だ。私と姉様の耳は穢れと侮蔑の象徴。この様な耳を持って生まれたモノは、本来の名とは別に、必ず『コードネーム』が与えられる。 ……畜生以下の存在だという証明としてな。姉様は断固としてコードネームで呼ばれることを拒否していらっしゃるが、その場合は処罰の対象となってしまうのだ」

 

 

 「な……なるほど。だから重桜の、耳が特殊な形の方々は、俺の配信でコードネームって奴を使用していたんですね。な、納得しました。いや納得はしてないですけど。 ……まあでも俺には関係ないですね! 俺は赤城さんの耳をめちゃくちゃ触りたいと思っていますし! ……いや~! ケモ耳が生えた女性が、思う存分ケモ耳を触らせてくれる許可をくれる機会なんて、マジで中々ないですからね! ……ビシャマルちゃんはあんまり触るとお指ガジガジしてくるし! 綾波ちゃんはちょっと触っただけで俺の理性を直接破壊してくる様な危険な声を出すし! 雪風ちゃんは触ると物凄く、くすぐったそうにした後、物理攻撃してくるので! このモフモフを許して受け入れてくれるなんて、流石は栄光なる一航戦と名高い赤城さんです! ……俺の今まで貯めていた想いを! この気持ちを! この機会に全てブツけてみせます! 行きますよ! 赤城さん!!!」

 

 

 「し、しきかんしゃま!?!?! まっひぇくださいませ!?!?! あ、赤城はすべて受け入れるとおっしゃいまひたがぁあはぃいい!?!? こ、このような事ににゃるとはぁあ!? しょ、そうてひしてなひっひいいいい!?!?!?!? 」

 

 

 「姉様……。御自分でおっしゃったお言葉です。シキカンの欲望がこの様なモノだとは、私も想定外でしたが。 ……一航戦の名に懸けて、耐えて下さいませ」

 

 

 「……ッ!! と、当然ですわはぁあ!? こ、この赤城が!? こ、この様な事で屈するにゃどっふゅううういいいい!? シ、シキカン様がはひゃあい!?!? なされる事ならぁああ! わ、私は、す、全て受け止めましゅふゎあはああああああ!?!?!?!」

 

 

 

 

 

 【……いちじかんご】

 

 

 

 

 「……ふひゅうぃいい……! ふひゃあぃいい……! シ、シキカン様ぁ……!? そ、そろそろ、ごまんじょく、頂けまひたきゃいぃいぃ……!?」

 

 

 「なるほど~、ここをこう撫でると、コリコリしてる所がこの辺にくるから……。こうしたらもっと良い感じでモフモフ出来そうだな~……。 ……あれ? もしかしてもう1時間くらい経っちゃってました? ……でもまだ俺は微妙に満足できてないからなぁ。 ……赤城さん! もう少しだけ触らせて下さい! 赤城さんも、もっと心地よくさせてあげますので!!!」

 

 

 「……しょ、しょんな……! ま、まだご満足頂けないのでしゅか……!? シ、シキカン様の体力は無尽蔵でごじゃいまふかぁは嗚呼ぁあああ……!」

 

 

 「……えっと、俺は赤城さんの耳を触ってるだけなので。 ……赤城さんがご承知頂けるなら何時間でもモフモフさせて貰いますけど。 ……赤城さんがお疲れの様でしたら、止めましょうか?」

 

 

 「……しょ、しょんな事は、無いですわぁ……! 赤城の、シキカン様への愛が……! この程度で折れるはずは、無ひふひゅいいいいいい……!」

 

 

 「……シキカン、良い調子だ。新しい撫で方をいくつか思いついた。シキカン、これも試して頂けるか?」

 

 

 「……なるほど〜、こういう指の形にすればココとココを同時に撫でられるのか〜。やりますね! 加賀さん! ……え〜っと? こうかな? ……よし、良い感じで赤城さんの弱そうな所を撫でられそうだぞ! ……この手の形は『6番 鵯越えの逆落とし(ひよどりごえのさかおとし)』と名付けよう! さあ、赤城さん! 行きますよー! ……モフモフ〜!」

 

 

 「はっひゃああああああ!?!? か、加賀!? な、なんて事を!? なんて事をシキカン様に教えているのですか!? わ、私とシキカン様の行為を邪魔するなとあれほど……!?」

 

 

 「姉様。これは邪魔ではありません。寧ろ、これはシキカンと姉様の愛を深める行為を助力しているに過ぎませぬ」

 

 

 「……んなぁっ!? そ、そんな言い訳が通ると……ふっひゅぅうううう!?!? シ、シキカン様!? ま、待って下さいませ!? その撫で方はっひゃぃいいいい!?」

 

 

 「姉様こそどうしたと言うのですか? シキカンの行為を全て受け入れる、と言ったあの言葉は紛い物であったと言うのですか? もう屈服なされるおつもりで?」

 

 

 「ふひゅい!? ……そ、そんな事は断じてあり得ませんわぁ……! こ、この栄光なる一航戦の名にかけっひゃあいっ!! わ、私がシキカン様の行為を拒むなどぉおひぃいい!? ……あ、ありえませんわぁあはぁあああ!? シ、シキカン様!? そ、その様に奥まで指を入れられれてては!? あ、赤城のっ! 赤城の耳がっひゃいいいいいいい!?」

 

 

 「もふもふ~~! もふもふ~~! ……いや~~! 赤城さんの耳は最高ですね! もうずっとモフモフ出来ますよ! モフモフしてるだけで俺の精神力がどんどんと回復していくのを感じます!! 今だったら闇の心が現れても一瞬で消し炭ですよっ! これが一航戦のバフ効果ですか!! 凄いですね!!! ……ふぅ、でもちょっと休憩しようかな。流石に一時間モフりっぱなしだと指もちょっとだけ疲れて来たし」

 

 

 「……ふひゅぃい……。 ……はひゅひぃ…………」

 

 

 「……シキカン、サボるんじゃない。まだ終わっていないパターンが幾つもある」

 

 

 「……おぉ~。 ……なんか何時の間にか、加賀さんが巨大なマトリクス表を作成していらっしゃる。 ……なるほど~。 ……右の48手と左の48手を組み合わせると、全部で2,304パターンにもなるのか。 ……これは研究のやり甲斐があるな~。 ……この『◎』とか『△』とか『×』とかの印はなんですか?」

 

 

 「それはお前の両の手の組み合わせパターンによって、姉様がどれだけ反応したかを記号で表したものだ。私ほど姉様を常日頃から観察して居るものなどおらぬ。姉様の表情や声の反応から、シキカンの手技巧が姉様にどの程度の影響を与えているか読み取る事など、私にとっては造作もない」

 

 

 「……おぉ~! 流石は加賀さん! 赤城さんの事を良く見ていますね! もし、俺だけだったらこんなに詳細な分析は出来ませんでした! ……なるほど、赤城さんはこういう手の形に弱い傾向があるのか。 ……なら右手は『48手35番 流鏑馬(やぶさめ)』。 ……左手は『48手40番 鶯の谷渡り(うぐいすのたにわたり)』。 ……これで理論上は弱点特攻4倍ッ! ……シキカンッ! 全力でッ! 行きますッ!」

 

 

 「……ッ!!! シ、シキカン様ぁ!? す、少しだけこの赤城にご休憩をっほぅいいいいいいいひゃああああああああ!?!?!?!?!? にゃ!?!?! にゃああ!?!?! にゃんでございまひゅかこりぇはっはあぃいいいいいいいいい!?!?!?! こ、こりぇまでとはあああああはぃいいいい!!!??!?!?? きゅ、くりゃべもにょにぃっひゅうういいあああああ!?!?!?!?」

 

 

 「……おぉ~~!! 流石です加賀さん!! 分析の通りです!! 赤城さんがこんなに気持ち良さそうにしてくれています!!! 俺も俄然やる気が出てきました!!!」

 

 

 「……ふむ。やはり姉様はこの手の形に弱かったか。だが、それだけではこの様に姉様を気持ち良くさせる事は出来ん。シキカン、お前の技巧があってこそ、今の姉様があるのだ。私の助言等、ほんの些細な事だ。お前のその技術は、姉様をご満足させるに相応しいモノだ。十分に誇って良いぞ」

 

 

 「もふもふもふ~~!! もふもふもふ~~~!! ……むむっ!! コリコリの位置が少しズレましたね!? ……でも、甘いですね!! 逃がしませんよ!? ここは左手を『23番 時雨茶臼(しぐれちゃうす)』に変更しつつ続行です!! 右手はこのまま川を流れる水の如く!! 『34番 岩清水(いわしみず)』です!! もっふもふ~~!! もっふもふ~~!!」

 

 

 「へっひゃぁああああああああ!?!?!? しゅ!!! しゅきかんしゃま!?!?! ど!?!? どうかおじひを!?!?!?! このあかぎにおじひを!!?!?!? くだしゃひましぇへぇえええ!?!?!?」

 

 

 

 

 【……ぷらす、さんじっぷんご】

 

 

 

 

 「……………………あ……あきゃぎはぁ……。 ………くっし……ま……。 …………きゅぅぅ……」

 

 

 「……ああ~。 ……赤城さんがダウンしてしまわれた。 ……流石にちょっとやり過ぎたかな? ……でも気持ち良かったな~」

 

 

 「……姉様を本当に屈服させるとは。 ……シキカン。 ……お前こそ、私が追い求める勇者である事は間違いない様だ」

 

 

 「……ええ!? 加賀さん!? そ、そんな大袈裟な。俺はただ赤城さんの耳をモフモフしてただけですよ? こんなの勇者じゃなくても、誰でも出来ますよ」

 

 

 「……言ったであろう。我々の耳は穢れと侮蔑の象徴であると。この様な箇所を好き好んで触るものなど、お前以外は存じぬぞ。 ……私から見れば、お前は穢れ等を決して厭わずに突き進み、己の願望を満たす為に動き続ける、勇気ある者にしか見えぬわ」

 

 

 「……え、えっと。ありがとうございます? なんだか加賀さんの中で俺の株が急上昇してるんだけど。そんなに凄い事してるつもりもないのに。 ……加賀さんもありがとうございました! あのマトリクス表はとても役立ちました! 後でコピーして貰いたいくらいですよ!」

 

 

 「……かまわん。何事も分析し、研鑽を積まなければ、戦場で生き残る事は出来ぬ。戦場で生き残れるのは強き者だけだ。 ……この資料も後でまとめて、お前にくれてやる。 ……なに、今は走り書き程度で文章がごった返しているが、まとめ上げれば2万文字程度には収まるであろう。これでお前もさらなる研鑽を積むが良い」

 

 

 「……あ! ありがとうございます! ……じゃあ俺も今日のレポートを原稿用紙20枚分くらいにまとめて、加賀さんにお送りしますね! 俺は赤城さんの耳の感触だけじゃなくて、ビシャマルちゃんとかの感触も堪能しているので! この数値もまとめてフーリエ解析に掛けたら、もしかしたら相関関係もあるかもですしね! まとめ上げが終わったら『一航戦赤城の獣耳及び他種族獣耳との相関性について』というレポートにまとめて加賀さんに提出致しますね! その後はまた2人でデータの擦り合わせと検証を行いましょう!」

 

 

 「……ふむ。その努力と研鑽を怠らぬ姿は、やはり見どころがある。私もお前に負けぬよう、さらなる研鑽を積まねばならぬな。 ……これはボーナスだ。お前の努力の成果でもある。取っておけ」

 

 

 「え……、何この封筒。 ……うわ!? 10万円も入ってる!? ええ!? 良いんですかこんなの貰って!? 加賀さん達も生活が苦しいんでしょう? こんなの貰う訳には……」

 

 

 「構わん。それは私のヘソクリだ。現状、金子(きんす)の管理は全て私に任されている。姉様に直接渡すと、1日で1か月の賃金を全て使い切ってしまうのでな。生活を切り詰めてはいるが、仕事は掛け持ちしているし、預金の運用も行っている。 ……姉様には借金で家計が火の車だと伝えているので秘密だが。 ……実際にはかなり、貯蓄には余裕がある。 ……運用を怠ればすぐに無くなる程度だが。 ……その程度の金額ならばくれてやる余裕もある。安心して受け取るが良い。 ……配信中に渡すと姉様にバレる上に、Yongshibeとやらに幾らか持っていかれるのであろう? 姉様がダウンしている今しか渡せん。さっさと受け取れ」

 

 

 「そ……そうですか。流石は加賀さん。しっかりしていますね! ……ではこのお金は有難く貰っておきます! この借りは必ず! 直ぐに赤城さん獣耳レポートを提出してお返ししますね!?」

 

 

 「……うむ、待っているぞ。 ……ただ、赤城姉様は本来、とても聡明で、強いお方だ。 ……現状はお前への想いと、今の環境のせいで、少々空回っておられるが。 ……お前がこれからも姉様を化物だと見下さず、1人の人間として接していけば、いつか、きっと姉様も。 ……それまではこの加賀が姉様を支える。お前もそれまでは自分を磨き、精進するが良い。 ……もし、姉様の期待を裏切る様であれば、姉様が手を下す前にこの加賀がお前を噛み砕き、喰ろうてやるぞ。 ……精々、対応に気を付けるのだな」

 

 

 「……赤城さんを化物扱いだなんて、俺は絶対にしませんよ。こんなに綺麗で可愛くて格好が良い人なんですから。それに、加賀さんもです。赤城さんの言う事になら、なんでも従う人かと思っていましたけど。赤城さんが暴走しても大丈夫な様に、その裏で、引き締める所はしっかり引き締めて対応されていたんですね!」

 

 

 「……それほど大袈裟な事はしていない。 ……ただ、本来の私は征服者だ。 ……誰に対しても。 ……赤城姉様には少々頭が上がらないが。 ……しかし、強き者同士、苦手な分野を補う事が出来れば、更なる力を手にする事が出来る。 ……赤城姉様と私は、これからも、共に生きていく。 ……栄光なる、一航戦としてな。 ……シキカン、お前も、ある意味では強き者となる素質を持っている。 ……我々と肩を並べる程、強き者となる事が出来た時。 ……お前も、一航戦という群れの中に迎え入れてやる。 ……『人生短し、心の征くまま進むがよし』。 ……精々、足掻き、苦しんで。 ……強き者となるが良い、シキカン」

 

 

 「……どんな環境でも、赤城さんと、加賀さんは、変わらないんですね。 ……俺がお二人と肩を並べられるまで、強くなれるかはわかりませんが。 ……それでも、精一杯生きていきたいと思います!

 ……加賀さん! ……それに、今は倒れちゃってるけど、赤城さんも! これからも、俺の事を観ていて下さい! 不可抗力とは言え、自分で願った世界です! 精一杯、足掻いてみせますので! ……可能な限り、幸せな結末を迎えてみせます!」

 

 

 「……ふむ、シキカン。お前も、私にはわからないナニカと、既に闘っているのだな。 ……それでこそ強者よ。 ……安心するが良い。もしお前が倒れたとしても、仇くらいは取ってやろう」

 

 

 「……そ、そこは助けてくれるとかじゃないんですね。 ……まあ、加賀さんらしいと言えばそうですが。 ……では、俺はそろそろ帰ります。 ……あ、帰る前に、加賀さんにこのメモを渡しておきますね! 俺の電話番号とLIMEアドレスが書かれていますので! 是非連絡して下さいね! 何時でも待ってますので! ……それでは、帰ります! ……加賀さん! 赤城さん! 今日は本当にありがとうございました! またお会いしましょう! さようなら~!」

 

 

 

 ………………。

 

 …………。

 

 ……。

 

 

 

 「……行ったか。 ……なんとも奇抜な男よ。 ……だが、彼の様な存在でなければ、私と姉様を受け入れる事も出来ぬ……か。 ……ふん、強き者は惹かれ合う運命……という事か。  ……それならば、お前が本物の強者となった時。 ……私も、運命と自分の本能に従わせてもらおうか。 ……姉様、共々、な。 ……期待しているぞ、シキカン。 ……フフ ……フフフフ」

 

 

 

 




赤城姉様&獣耳研究会が発足しました。


みんなも「JUUSTAGRAM 赤城」で検索して、赤城姉様の耳を研究しよう!







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#16 重工堂からお手紙貰いました! ヤギさんにあげたらどうなるでしょう!?

 
 
ルビ振りを習得しました。そしてついでに特殊タグも覚えました。でも乱用は今回の一部の箇所だけです。多分。


 

 

 

 な、何とか自分の家の前まで戻って来れたぞ。

 疲れた。重桜の基地を見に行っただけなのに。

 

 でも、おかげでKAN-SEN達の状況は(おおむ)ね理解できた。

 俺が見たKAN-SEN達の状況は大まかに分けて2種類だ。

 

 まず、綾波ちゃんや雪風ちゃんのように、辛い状況でもそのまま軍隊に所属して働くタイプ。

 

 俺から見たら完全に超ブラックな職場だけど、一応生活できるレベルの給料は貰えてるらしい。もう他の仕事を探す気力がないKAN-SENは、大体が軍隊に所属して雑務をしているようだ。

 

 もうひとつは、赤城さんや加賀さんの様に、籍は軍隊に置いているけど、仕事は完全に別の事をして、お金を稼いで生活しているタイプだ。バイトとかアフィリエイトとか資金運用とかで。

 

 一応、籍は軍隊なので、規約違反をしたら罰則があるらしいけど、他の仕事をするのは別に構わないようだ。ワークシェアリングって奴だろう。日本でも推奨している会社がいくつかあったはずだ。

 

 仕方ないね。軍隊に所属していても仕事ないもんね。セイレーンさん達はKAN-SEN達の為にもっと脅威活動を頑張ってください。俺に被害が来ない程度で。

 

 まあ、大体のKAN-SENの状況もわかった。雪風ちゃんと赤城さんと加賀さんの居場所もわかった。みんなそれぞれ苦労していたけど、なんとか頑張ってるみたいだ。良かった良かった。

 いや良くはないわ。やっぱりこの世界はKAN-SENに厳しすぎる。

 

 まあ交流していけばその内、俺でもKAN-SEN達の助けになりそうな良いアイディアを思いついたりするだろう。赤城さんとか和菓子店開いたら繁盛しそうじゃないか?

 

 

 ……でも、加賀さんのあの反応聞くと、俺以外にはあの和菓子も、クソまずなお菓子になってそうだな。ううむ、この世界の人達の感覚がまだ掴めていない。まずは俺もこの世界の常識を知る所から始めなければ。

 

 というか赤城さんから和菓子の在庫を購入するの忘れてたわ。家に帰ってきちゃったよ。

 

 まあいいか。またコンビニに行く口実が出来たし。とりあえず今日は家でゆっくりしよう。

 

 

 ……ただいま! 俺の家! 俺は修羅場を越えて帰って来たぞ!

 

 

【……カチッ! ……ガチャ!】

 

 

 「……シキカン、おかえりなさい、です。 ……ずっと待ってた、です」

 

 

 ……おやおやぁ? なんで家の中に綾波サンが居るんですか? 俺の家鍵かかってましたよね? 今ドアの鍵開けたばかりですよね? 何故既に家の中にいらっしゃるのでせうか? なぜ部屋の中央で三つ指をついて正座でお辞儀していらっしゃるのでしょうか? お辞儀してるのに俺のことガン見ですね? 流石は三つ指式ですね? というか綾波サンの隣に雪風ちゃんもいるじゃん。なにこれ? どうなってるの?

 

 

 「シキカン! お帰りなのだ! この雪風様を待たせるとは良い度胸なのだ! ……でも今回は許してやるのだ! 雪風様は偉大だからなー。ハッハッハー!」

 

 

 「……? ……シキカンから、今日の朝とは少し違う臭いがしてくる、です。 ……何処かに寄っていたのですか?」

 

 

 「……そ、そんな臭いする? 自分ではわからんのですけど? ……あの後、綾波サン達と別れた後に、ちょっとコンビニにね? そこで欲しい商品があったから、その後店員さんに在庫のある場所に連れて行って貰ってたんだけど。 ……その後も色々あって、結局欲しい商品は貰い忘れちゃったけどね。まあ売ってる場所は分かったし、その商品はまた、重桜基地に行った時にでも買おうかなって思ってた所なんだけど」

 

 

 「……そうですか。シキカンに何かあったと思って、綾波は心配していた、です。でも、何もなくて本当に良かった、です。何かあったらまたすぐに、綾波に連絡して欲しい、です。どこへでもすぐに駆け付ける、です」

 

 

 「この雪風様にもすぐに連絡するのだ! 何処に居てもこの偉大な雪風様がすぐに参上するのだ! 雪風様にお任せなのだー!」

 

 

 「そ、そんな危険な状況は、早々無いと思うけどね? でも本当に必要だったら呼ぶ事にするよ。2人ともよろしくね?」

 

 

 ……あれあれ? なんだか綾波さんが少し怖いんですけど? 朝の臭いと違うって何? 臭いで誰と会ってたかバレるの? 怖くない?

 

 

 ……うん。まあでも、女の子は臭いに敏感だって聞くし? 全国のお父さんが『明日からお父さんの下着は私のと別々にして洗ってよね!』って娘さんから言われるのは通過儀礼らしいし? 臭いで誰か分かるのは普通なのかな? うん、普通普通。普通って事にしておこう。心の平穏の為に。

 

 

 ……というか、改めて思うんだけど、2人ともなんで俺の部屋に居るんだろう。俺、鍵とか渡したっけ? ……渡してないよな? 朝もちゃんとドアのカギ閉めたよな? ……どうやって入ったの? 窓とか開いてたの? それとも無理やり?

 

 

 ……ちょっと聞いてみるか。

 

 

 「えーと。お二人はどうして俺の部屋にいらっしゃるのでしょうか? 家のドアの鍵は確かに閉めたはずなんですけど? ど、どこか戸締り忘れてた? 部屋の窓とか開いてた?」

 

 

 「……今日の朝、シキカンの家を出る時、シキカンが2秒ほど、ドアのそばにある植木鉢の方を見ていた、です。ですので、綾波も見てみたら、植木鉢を2cm程動かした跡があったので……。植木鉢の裏を調べたら、鍵が出てきた、です」

 

 

 「綾波は天才なのだ! 雪風様だけだったら絶対に気付けなかったのだ! 綾波は探偵の才能があるのだ!」

 

 

 「な、なるほどぉ……? 良く気付いたね……? 流石は綾波さんですね? でもそれ俺の家の予備の鍵ですので? 出来れば返していただけるとありがたいのですが?」

 

 

 「……わかったです。シキカンが帰って来たら、返す予定でしたので。 ……どうぞ、です。お返しするです。全部で3本あるので、1本は綾波が持っておく、です。 ……あと、もう1本は、雪風に渡して置く、です。これで何時(いつ)でも、シキカンの家に遊びに来れる、です」

 

 

 「ありがとうなのだ! これで何時(いつ)でもシキカンの家に突撃出来るのだ! 綾波は流石なのだ!」

 

 

 「……お、おやおやぁ? オカシイなぁ? 植木鉢の下に隠しておいたのは1本だけのはずだったんですけど? どうしていつの間にか、俺の家の鍵さんが、そんなに増殖していらっしゃるのでせうか?」

 

 

 「……先ほど、近くの鍵屋さんで複製して貰った、です。簡単な鍵でしたので、すぐに終わった、です。シキカンの家の周りの地理は、既にほぼ把握済み、です。綾波の、情報処理能力と、通信設備の状況は完璧、です。」

 

 

 「……そ、そっかぁ。複製しちゃったかぁ。 ……まあ良いけどね? 綾波サンと雪風サンになら、渡して置いてもね? なんだか少し怖いけどね? 出来ればもう、鍵さんの増殖は止めていただけると助かりますけどね?」

 

 

 「……了解、です。シキカンがそう言うなら、鍵の複製はもうしない、です。綾波はシキカンの言う事なら、全て従う、です」

 

 

 「雪風様も複製なんてしないのだ! これは雪風様の宝物にするのだ! 誰にも渡さないのだ!」

 

 

 「う、うん。よろしくね? いや~。2人が良い子で助かったな~」

 

 

 ……いや、良い子じゃないだろこれ。なんなの、この2人の行動力は。半端ないんですけど? 特に綾波さんは俺の事見過ぎなんですけど? 俺が2秒凝視してただけで、その場所を調べられるの? 俺これから綾波さんが居る時は視線にも気を配らないといけなくなるの? マジで?

 

 

 ……まあ、別に良いのか? 綾波さんも俺の言う事になら一応従うって言ってるし。言ったら止めてくれそうだし。見られて困る薄い本は既にビシャマルちゃんが食べちゃったし。まあ本当に危険な状況になったらその時に考えよう。うんそうしよう。

 

 

 「あっ! シキカン! そういえば、あんたが家にいない間に宅急便が届いていたのだ! しょうがないから雪風様達が受け取っておいたのだ! 感謝するのだ! ハッハッハー!」

 

 

 「あ、ありがとう? そうかー! 俺が居ない間に宅急便も届いてたのか―! 本人じゃないのに、良く受け取れたね?」

 

 

 「……あそこの棚に、シキカンの認印が入っていたので、それをお借りした、です。荷物の中はまだ何も見ていない、です。綾波はシキカンのモノを、勝手に盗ったりなんかしない、です。安心してほしい、です」

 

 

 「な、なるほどですねー! 家の中のモノも既に把握済みですかー! いやー! 綾波さんは仕事が早いですねー! 情報収集能力も抜群ですねー! 良い秘書艦になれますよきっと! す、少しだけ方向性の修正が必要になりますけどね?」

 

 

 「……そうですか? ……シキカンが褒めてくれて、綾波は嬉しい、です。もっとシキカンの力になれる様に頑張る、です。何かあったらすぐに言って下さい、です」

 

 

 「……綾波だけじゃなくてこの雪風様にも頼るのだ! シキカンに会ってからは、なんだか本当に幸運が上がってきた気がするのだ! 運が絡むことはこの雪風様を頼ると良いのだ!」

 

 

 「……わ、わかったから! 俺の力になってくれるのは十分わかったから! そんなに張り切らなくて大丈夫だから! 逆になんだか少し不安だから! 普通で大丈夫だから! は、はい! この話はおしまい! ……さ、さーて荷物は何が届いたのかなー? ……うーん、『差出人:株式会社 重工堂』?」

 

 

 ……重工堂から? 俺、何かしたっけ? ゲームしてただけだよね? 何の応募もしてないよね?

 

 まあネットプレイの為に重工堂Onlineで住所登録とかはした気がするけど。一体何が届いたんだろう。

 

 

 ……取り合えず、中を見てみるか。

 

 

 ……おぉ? なんか重工堂のゲームソフト一式が入ってるぞ? やりたいと思ってたから物凄く嬉しいけど。

 

 なんかのキャンペーン? でも応募した覚えもないよな? なんだこれ?

 

 あ、ソフトと一緒になんか手紙も入ってる。なになに~?

 

 

 

 

 

 

 

 

【必読】【御当選】【敷金礼金無料】【必ず見るにゃ】

【簡単】重工堂からの大切なお知らせ 【高収入】

【重要】【熱烈歓迎】【満員御礼】【絶対来てにゃ!】

 

20XX年 1月29日

四季 漢 様

 

 

謹啓(きんけい)

 平素より重工堂Onlineをご愛顧(あいこ)いただき、誠にありがとうございます。

 この度、お客様がご遊戯していただきました、弊社(へいしゃ)のゲームソフト『飛び出る!? オフニャコの島』に()きまして、前人未到のエンディングを達成致しました事、心よりお祝い申し上げます。㊗㊗㊗

 つきましては、弊社の代表取締役より、感謝の意をお伝えする為、ささやかな☞歓談(かんだん)(うたげ)☜を(もよお)したいと存じます。

 ご多忙中恐縮(きょうしゅく)でございますが ご臨席賜(りんせきたまわ)れば幸甚(こうじん)でございます。

【シキカンも忙しい事はわかってるにゃ!でも絶対来て欲しいにゃ!損はさせないにゃ!約束するにゃ!】

 略儀(りゃくぎ)ながら書中をもってご案内申し上げます。

敬白(けいはく)

 

☯♨☯♨☯♨☯♨☯♨☯♨☯♨☯♨

【ぬいぬいの文章は固すぎにゃ。明石が可愛くしてやったにゃ!】

☯♨☯♨☯♨☯♨☯♨☯♨☯♨☯♨

 

株式会社 重工堂【明石が創ったにゃ!】

【強靭にゃ!】代表取締役【無敵にゃ!】

【最強にゃ!】社長【最強にゃ!】

【どうにゃ?】赤茶 明石【明石はとっても偉いのにゃ!】

 

 

 ……なにこれ? ガッチガチな文章なのに色鉛筆で凄く派手な装飾がされてる。これ文章考えた人と装飾した人は別人だろ。絶対に背後にゴーストライターがいるだろ。そしてそのゴーストライターさんは怒っても良いと思います。ていうか手紙の上に色鉛筆で書いただけなのにどうやって文字動かしてるの? 色鉛筆担当の方は特殊技能持ちですか? 凄いですね。

 

 

 ……えーっと、内容は、パーティのお誘い? 代表取締役から?

 

 なんで? ゲームのエンディング1個見つけただけで? そんなに凄い事したの俺? あのゲームは完全に適当にやってただけなんですけど?

 

 というか代表取締役社長の名前が『赤茶(あかちゃ) 明石(あかし)』になってるんですけど? 赤茶さんそんなに偉かったの? 普通のゲーム開発者の人だと思ってたんだけど? ていうか明石ってKAN-SENの明石? なんでKAN-SENがゲームなんて作ってるの? 作るならKAN-SENの装備を作れよ。

 

 

 ……いや、この世界ではKAN-SEN装備の需要なんて無いのか。暇を持て余し過ぎてゲーム開発者になったのか。まあ腹マイト特攻よりはゲーム作ってる方が良いですよね。俺もそう思います。

 

 うーん、明石社長からのお誘いかー。まあ折角だから行ってみようかなー。無料だし。ゲームソフトも沢山くれたし。行ったらなんかお土産とかもくれそうだし。大企業の社長とコネ作っといて損はないし。なんなら俺が社長になるし。

 

 

 ……いやそれは面倒そうなのでやめておこう。

 

 

 ……兎に角、祝ってくれるって言うのなら、俺に損はなさそうだ。是非とも参加させていただこう。

 

 お、2枚目に開催日時とか重工堂本社の場所とかが書いてある。

 

 

 ……って開催日時が明日じゃねえか! 急過ぎだろ! 俺が手紙に気づかなかったらどうするつもりだったんだよ! まあ俺はニートだから暇なんですけど! 是非とも行かせていただきますけどね!?

 

 

 「シキカン、一体何が入っていたのだ? ……おお! ゲームソフトなのだ! しかも沢山入っているのだ!」

 

 

 「重工堂のゲームソフト、ですか。綾波は普段、あまり重工堂のゲームはやらない、です。怖いものが多いので。 ……でも、入っているソフトを見る限りでは、怖くないゲームもいくつかあるみたい、です」

 

 

 「うん。なんだか、重工堂からゲームソフト一式が送られて来たみたいだね。なんか『オフニャコの島』の隠しエンディングを発見した報酬? みたいな感じで。エンディング発見したらこんな物を貰えるなんて知らなかったけど。なんかのキャンペーン中だったのかな?」

 

 

 「確かに、あのエンディングはシキカンしか発見できなかったのだ! あのゲームの攻略組が探しても、発見するのには大分時間がかかってたはずなのだ! 発売して直ぐにアレを発見出来る人がいたら、祝われてもおかしくないのだ!」

 

 

 「……アレは綾波でも絶対発見できなかった、です。綾波はあのゲーム自体が少し苦手、です。ゲーム会社さんからお祝いされるなんて、シキカンはやっぱり凄い、です」

 

 

 「いや、そんなに祝われる事をした覚えはないんだけどな。 ……まあ、祝ってもらえるなら祝われに行くけどね。 ……よーし、じゃあ折角だし、みんなで何か重工堂のゲームでもしようか! これだけあればみんなで出来る協力ゲーム位あるでしょ。 ……えーっと。 ……お? これなんて良さそうじゃないか? 最大4人協力プレイって書いてあるし。 ……えーっと、タイトルは。 ……『伝説の☆のオフーニャ』ね」

 

 

 うん、なんか見た事あるぞ。多分アレだろう。まるかいて、おまめがふたつ、おむすびひとつ、あっという間に描けるピンクの悪魔さんが活躍するあのゲームだろう。

 

 表紙はオフニャだけど。オフニャが大口開けて敵を吸い込んでるけど。

 

 お? 裏表紙にゲームの説明が書いてあるぞ。なになに~。

 

 

 『199X年。世界は核の炎に包まれた。文明社会は消え去り、世界は暴力が支配する弱肉強食の時代へと突入した。 ……しかし、オフニャ達は全滅していなかった! ……核の力により、突然変異したオフニャ達は、吸い込んだ物の能力を奪い取る新たな力に目覚めたのだ! ……オフニャ達とNIN-GEN達との、生き残りを賭けた闘いが、今始まる!!』

 『※この製品は限定版です。限定版には【等身大オフーニャを購入する権利】が与えられます。購入をご希望の方はこちらにご連絡ください。XXX-XXXX-XXXX』

 

 

 ……思ってたのと大分違う設定が書かれてるぞ? ジャンルも【ホラーアクションアドベンチャー】になってるし。この世界ではオフニャが出てくるゲームは全部ホラーになるのかよ。

 

 しかも等身大オフ―ニャを購入する権利ってなんだよ。オフニャのぬいぐるみでも送られてくるのかよ。しかも付属じゃなくて権利だけかよ。欲しいので後で連絡します。

 

 

 ……まあ、ゲームシステムはピンクの悪魔と同じそうだし。気になるから今日はこれで遊んでみよう。

 

 

 「……『伝説の☆のオフーニャ』なのだ? ……なんだか怖そうなパッケージなのだ」

 

 

 「……また、ホラーゲーム、ですか。 ……でも、シキカンがやりたいなら、綾波は頑張る、です」

 

 

 「あ、あれ!? 2人からはそんな風に見えてるの!? こんなに可愛いパッケージなのに。 ……どうする? 2人が嫌だったら別のゲームにするけど」

 

 

 「こ、この雪風様に怖い物なんて、あ、あるはずないのだ! きょ、協力するゲームなら雪風様は得意なのだ! 余裕なのだ! 楽勝なのだ!」

 

 

 「綾波も、大丈夫、です。 ……今回は、シキカンだけでなく、雪風もいる、です。余裕、です」

 

 

 「……2人が大丈夫なら俺はやってみたいけど。ピンクの悪魔のゲームも好きだったし。 ……じゃ、じゃあこのソフトで行くよ? ……よし、ゲーム起動完了! ……じゃあ行くよー! はい、スタート!! …………」

 

 

 

……………………

 

 

 

…………

 

 

 

……

 

 

 

 

 「雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵雪風は無敵ユキカゼハムテキユキカゼハムテキユキカゼハムテキユキカゼハムテキ」

 

 

 「一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌一人は嫌ヒトリハイヤヒトリハイヤヒトリハイヤヒトリハイヤヒトリハイヤ」

 

 

 

 ダメだった―――――!!!!

 

 2人とも病んじゃったー!!!

 

 今度は2人して俺ごとベッドにINしちゃったー!

 

 完全に両腕ロックされちゃったー!

 

 

 右に綾波、左に雪風!!!

 

 そしてお腹にビシャマルちゃん!!

 

 もう1ミリも動けねーーーーーー!!!!

 

 

 ……ま、まさか2人があんなにビビるとは。内容も完全にホンワカしてたのに。オフニャコの島みたいなバッドエンドも無かったのに。終始明るい感じのゲームだったのに。

 

 なんなんだ? 確かにオフニャがNIN-GENを飲み込んで咀嚼してるシーンはアレだったけども。2人ともそこで顔がかなり引き攣ってたけども。

 

 でもかなりデフォルメされてましたよ? いつものピンクの悪魔オフニャさんでしたよ? あれでもダメなの? むしろデフォルメがダメなの? どうなの?

 

 

 ……ぐ、ぐわあああ! あ、綾波さんの人類最高峰のメンタルキューブマシュマロがまた俺の右腕に! き、昨日より多めに引っ付いておりまぁす!! 引っ付きすぎて、形が変わっておりまぁす! た、隊長! どうするでありますか!

 

 

 

心の闇AR:かまわん、やれ。

 

 

 

 ……やれって何をやれと言うんですか! 俺は何も出来ません! というか動けません!

 

 

 ……ぐ、ぐわああああ!? ひ、左腕に!! 左腕にぃ! 雪風さんの柔らかいのが左腕にぃ! こ、この感触は!? ゆ、雪見大福ですか!? あったかホカホカ雪見大福ですか!? あったかすぎて中身が溶けてますよ!? 大丈夫ですか!?

 

 

 

心の闇AR:大丈夫だ、問題ない。

 

 

 

 問題大ありです! このままだと大事故に繋がります! 心の闇ARさんは何もわかってない! 危険予知訓練が必要ですよ! 事故は心の中で起きるんじゃないんです! 現場で起きるんです!

 

 

 

心の闇AR:……フッ。閣下も強情な男だ。やはり、その精神力は称賛に値する。だが、今日は駆逐艦が2人。つまり、私の力も昨日の2倍、という事になる。閣下よ、これがどういう事か、わかるか?

 

 

 

 ……ど、どういう、ことですか?

 

 

 

心の闇AR:……駆逐艦の温かく力強いマシュマロが、私に力を与えてくれるんだ! 両腕に2人の駆逐艦を装備している今日の閣下に、最早勝ち目は無いという事だ! さあ、閣下よ! そろそろ、ご退場願おうか! ……ソードフィッシュ中隊! 発進!

 

 

 

 ……ぐわあああああ! 俺が……!? この俺が……!? 心の闇なんかに……! こんな事が……! こんな事がぁ……! ……ちくしょーーーー!!!

 

 

 

心の闇AR:はーはっはっは!!! はーはっはっは!!!

 

 

 

 …………なんちゃって!

 

 

 

心の闇AR:……は?

 

 

 

 ……忘れたのか? 今日の俺は、昼間の赤城さんと加賀さんのおかげで、一航戦バフがかかっている事を! 

 

 この程度の攻撃、なんともないぜ!

 

 

 

心の闇AR:ば、馬鹿なッ! 駆逐艦2体が両腕に装備されているのだぞ! そ、それで理性を保てるはずもあるまい! 閣下よ! やせ我慢もいい加減にするんだ!

 

 

 

 ……確かに、駆逐艦2体を装備している俺の理性は、今も悲鳴をあげている。

 

 だが、悪い事だけじゃない! 何故ならこの2人には、それ以上の力が眠っているのだから!

 

 

 

心の闇AR:……なん……だと?

 

 

 

 ……心の闇AR! お前に見せてやる!

 

 これが! お前の闇のソードフィッシュ中隊を打ち砕く!

 

 俺とKAN-SENとの、心の絆だ!

 

 

 

 ……エンハンス・アーマメント!

 

 

 ……顕現(けんげん)せよ、心意(しんい)(かいな)

 

 

 ……鬼神剣(きしんけん)綾波(あやなみ)』!

 

 

 ……氷雪剣(ひょうせつけん)雪風(ゆきかぜ)』!

 

 

 

心の闇AR:りょ、両腕のKAN-SEN達を、心意の力で具現化した、だと!? し、しかもそれは!? 『双KAN-SEN流』スキル!? 全SHIKI-KANの中でも、最も反応速度が速い者にしか発現しないそのスキルを、何故閣下が!?

 

 

 

 ……『一航戦』スキルで強化されている今日の俺に、不可能は無い!!

 

 

 ……そして、これが!

 

 

 ……俺とKEN-SEN達との、心の絆の、真の力だ!!

 

 

 ……リリース・リコレクション!

 

 暴れ廻れ!! 鬼神の刃よ!!

 

 狂い舞え!! 氷雪の風よ!!

 

 

 

心の闇AR:……ぐぅううう!? だ、だがしかし! この程度で今日の私は!

 

 

 

 ……これで、終わりだッ!

 

 『双KAN-SEN流』奥義ッ!

 

 

 ……スタァァバァアアアアスト!

 

 ストリィイイイイイイイム!!!

 

 

 

心の闇AR:ぐわあああああああポワワワワワ~ン♡

 

 

 

 

 

 

 ……このあと朝までめちゃくちゃソードで芸術を描いた。

 

 

 

 

 




シキカンの部屋に雪風が着任しました。



#18まで、1日1話更新します。


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#17 重工堂本社に潜入します! 内部から乗っ取れば俺が社長です! 前編

 

 

 

【……チチュン ……チチュチュン ……ホーホーッホッホー】

 

 

 

 「シキカン。おはようございます、です。とても良い朝、です」

 

 

 「シキカン! おはようなのだ! もう朝なのだ! さっさと起きるのだー!」

 

 

 「……2人トモ、オハヨウ、ゴザイマス。 ……昨日ハヨク、眠レマシタカ?」

 

 

 「はい、シキカンのおかげでぐっすり眠れた、です。綾波は今日も、力が(みなぎ)っている、です」

 

 

 「雪風様も良く眠れたのだ! 昨日はゲームしてる途中からの記憶がないけど、こんなにスッキリしてるなら多分平気だったのだ! 多分途中で寝ちゃっただけなのだ!」

 

 

 「ソレハ、良カッタ、デスネ」

 

 

 ……俺は良くないけどね。アレから結局2人とも朝まで両腕離してくれなかったしね。昨日の夜はずっと心の闇さんと闘ってたからね。時間の体感感覚を1000倍に伸ばされた上で、心の闇タワー100階層クリアするまで開放されなかったからね。あの野郎、最後はチートまで使いやがって。俺が心の管理者権限持ってなかったら大変な事になってたぞ。心の中でも体力は消耗するんですよ。心の闇さんはいい加減に大人しくしてて下さい。

 

 

 「……じゃあ、雪風様達はそろそろ仕事なのだ。シキカン、サラバなのだ。 ……また、遊びに来ても良い、のだ?」

 

 

 「……適度にね? 2人と遊ぶのは楽しいけど、やっぱり適度が大事ですよね? 一週間に2、3回くらいでお願いしますね? 俺も配信とかあるしね? 連絡とかはいつでもして大丈夫ですからね?」

 

 

 ……綾波さんの時はいつでも来て良いよって言ったけどな。こんなに体力を使うとは思わなかったわ。心の闇を完全討伐するまでは休業日が必要だわこれは。

 

 

 「……わかったのだ。 1週間に2、3回でも、会えないよりは全然良いのだ!」

 

 

 「……綾波も、シキカンがそう言うなら、そうする、です」

 

 

 「……2人とも、ありがとう。 ……じゃあ、いってらっしゃい!」

 

 

 「……いってくるのだー! シキカンも配信とかいろいろ頑張るのだー!」

 

 

 「いってきます、です。 ……綾波も、頑張ってくる、です。そして、また……」

 

 

 

 

 

 ……行った、か。疲れた。

 

 

 ……今日の明石さんとの歓談は夕方からか。それまで寝ておこう。なんかお迎えの時間を指定したら重工堂の社用車が迎えに来てくれるらしいし。どれだけVIP待遇なんだよ。

 

 

 ……それでは、寝ます。シキカンは、夢の中でも元気だよ、多分。おやすみぃ。ふぁぁ。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 【ドゥウン!ドゥウン!】

 

 

 ……!?!?!?!?

 

 

 なにごと!? 空襲!? 砲撃!? セイレーン!?

 

 

 『シキカン様ー!? シキカン様のお宅ですかー!? 重工堂の迎えの者でーす! いらっしゃいますかー!?』

 

 

 「い、いまーす! 準備するので少しお待ちくださーい!」

 

 

 うわー! もう午後2時じゃん! 俺が指定してた迎えの時間じゃん! 寝すぎちゃったじゃん! ていうか重工堂のお迎え係は鬼神さんかよ! ノックの音が爆撃だよ! 良く扉壊れなかったなあの音で!

 

 

 ……すぐに支度しないと。とりあえずシャワーを3分で浴びて、それからそれから。 

 

 

 ……ていうか社長との歓談って何を着てけば良いんだ? スーツ? 紳士服? そんなの持ってないぞ?

 

 ……まあ良いか。明石さんならきっとわかってくれる。俺の配信をいつも観てるんだし。いつもの服で大丈夫だろう、多分。

 

 変に着飾ると、こっちの世界の常識が分からないせいで逆に失礼になりかねない。普通普通。ノーマルが一番。

 

 

 ……よし、猛スピードで支度したぞ。完全に手ぶらだけど。スマホしか持ってないけど。でもこれ以上お迎え係りの鬼神さんを待たせると危ない。重工堂へ案内される前に地獄の底へ案内される。扉を開けた瞬間に瞬獄殺(しゅんごくさつ)される。鬼神さんを待たせてはいけない。

 

 

 「た、大変お待たせいたしましっってふぉあ!?」

 

 

 な、なんじゃこりゃあ!!!

 

 迎えの車ってこれ!? これが車!? 和風だな!? 平安京の馬車みたいな形だぞ!? そして車輪に顔と火が付いてますけど!?

 

 

 ……あ! あれだ! なんか見た事あるぞこれ! 

 

 火車だ! 妖怪の火車だ! 火車が車輪になっている! 鬼神さんに合わせてるせいで規模は3倍くらいデカいけど! そして外見もグロイけど!

 

 

 『さあ、シキカン様。どうぞこちらへ、お座りください』

 

 

 「アッハイ。ドウモー」

 

 

 ……うわあ。中も地獄だ。地獄絵図だ。ていうか車内に地獄絵図が書かれている。逆に芸術性を感じる。

 

 椅子も変だぞ? ぞわぞわするぞ? 座るだけでSUN値が削れる感触だぞ? でも座らないと危ないぞ? これがこちらの世界のVIP車ですか? でしたら俺は結構ですけど? リアカーとかで大丈夫ですけど?

 

 

 ……うわー。飛んだよ。空飛んだよこれ。縦横無尽に飛んでるよ。領空権大丈夫かよこれ。揺れないから良いけどさ。飛ぶなら車輪の意味あるのこれ? 完全にただの飾りじゃん。

 

 これならすぐ重工堂に到着しそうだな―。もっと移動に時間かかると思って、早めに迎え指定しちゃったけど。まあ早めに到着する分には良いか。時間まで重工堂の社内見学とかすれば。

 

 取り合えず今はこの火車の移動に耐えよう。移動は快適なのに精神は快適じゃない。なんだこれ。はよ目的地に着いて下さい。お願いします。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 『到着いたしました。こちらが重工堂本社です。長時間お疲れ様でした』

 

 

 「アッアリァトゥゴザィアシァー」

 

 

 そんなに長時間でも無かったけどね? 時間としては20分とかだったけどね? 精神的には長かったけどね? 俺的には今後はもう少し控えめなお車をご用意していただけると助かりますけどね?

 

 

 ……そしてここが重工堂の本社かー。なるほどねー。

 

 

 ……なるほどねー。

 

 普通のビルを想像してたんだけどねー。そんな事は全然ないですよねー。

 

 なんだろう。ラスボス? ラスボスとかが住んでそうですね? なんで螺旋状になってるんですかね? なんで黒塗りなんですかね? なんで上の方で稲妻が光ってるんですかね? 流石は大企業のゲーム会社ですね。発想が奇抜ですね。俺には理解できませんね。

 

 

 ……もう既に嫌な予感しかしないんですけど。本当にここで宴が開催されるんですかね。宴と書いて魔宴(サバト)と読むとかじゃないですよね。もう帰りたいんですけど。

 

 ……でも取り合えず、ここまで来たんだから入ってみるか。一人で家に帰れる気がしないし。帰りも送ってもらわないと。今度は普通の車で。

 

 

 ……うん。入口は普通のガラスの自動ドアだし。中はきっと普通だろう。では失礼しまーす。

 

 

 

【……ズ、ズズ、ズゴゴゴゴゴゴゴ】

 

 

 

 ほらもうラスボスじゃん。ラストダンジョンじゃん。ガラス張りの自動ドアが開く音じゃないもん。なんで自動ドアの形なのに観音開きなんだよ。そしてどこから鳴ってるのこの音は。演出か? 演出なのか?

 

 

 ……そして入口から歩いて10歩でラスボスだよ。受付の奥にラスボスがいるよ。受付服着た鬼神さんが居るよ。にこやかな笑顔らしき狂気の御尊顔(ごそんがん)でこちらを凝視していらっしゃるよ。やめていただけますか? 精神力が削られますので。

 

 

 ……はぁ。あの鬼神さんに話しかけないと先に進めないのかあ。いやだなぁ。でもこの世界にいたら鬼神さんとは切っても切れない縁になるしなぁ。……話しかけるかぁ。

 

 幸い今の立場はこちらが上だし。変な事にはならないだろう。俺は今VIP待遇だし。何故か知らんけど。

 

 よし取り合えず、受付鬼神さんの所に行こう。そうしよう。

 

 

 

 『いらっしゃいませ。株式会社重工堂へようこそお越し下さいました。お客様は本日、どのような御用件でしょうか? アポイントメントはお取りいただけておりますか?』

 

 

 「アッ、ソノ。えーっと。重工堂の取締役さんから、この様なお手紙をいただいたのですが。会場はこちらで合っていますでしょうか?」

 

 

 『取締役からのお手紙、ですか? ……少々拝見させていただいてもよろしいでしょうか? ………拝見いたしました。担当の者に連絡いたしますので、少々お待ちください』

 

 

 「は、はい。よろしくお願いします」

 

 

 うわー。鬼神さんがめっちゃ丁寧に対応してくれてる。鬼神さんなのに。

 

 恐らく美人な女性受付鬼神嬢さんなんだろうけど、声が凄いダミ声なせいで全然わからん。見た目も全然わからん。男女の区別がつかん。なにその声は。それでお静かな物腰のつもりですか? 喉の奥に変声器でも入っているんですか?

 

 

 『……もしもし。こちら受付のキ・シンです。(がま)部長はいらっしゃいますか? ……お忙しいようでしたら、赤茶社長にお客様がお見えになっているとお伝えいただけますでしょうか。 ………………え? 赤茶社長の前に、蒲部長が直接お相手に? ……しょ、承知いたしました。すぐにお取次ぎいたします』

 

 

 あれ? なんか明石さんに会う前に(がま)部長とか言う人と会うことになっちゃったぞ?

 

 

 ……まああれかな? 明石さんの秘書みたいな感じかな? 受付鬼神さんも蒲部長を通して明石さんに連絡しようとしてたし。

 

 

 『お客様。大変申し訳ございません。本来は社長の赤茶へ、直接お取次ぎするべきなのですが。 ……当社の蒲の方が、どうしてもお客様にお会いしたいと申しまして』

 

 

 「い、いえいえ! かまいませんよ! (がま)さんでしたっけ? 俺に用事があるのならお会い致しますよ! 今日は一日予定が空いていますし!」

 

 

 『そう言っていただけると助かります。 ……では、あちらの階段をお上がり下さい。蒲の部署はあの階段からしか、向かう事が出来ませんので。お手数をおかけしますが、よろしくお願いします』

 

 

 「な、なるほどー。蒲さんはなにか専門的な部署にいるんですね? わかりました。あちらの階段ですね! 案内ありがとうございましたー!」

 

 

 ……あー、怖かった。何あの最後の鬼神スマイルは。3秒以上見てたら石にされるレベルだぞあれは。これだから鬼神様は。 ……あ、ゴメンナサイ調子乗りましたあんまり見ないでくださいお願いします。

 

 さて、鬼神受付嬢さんはこの階段で上に行けって言ってたな。

 

 

 ……なんだか暗い階段だけど。屋内にある非常階段みたいな感じだけど。そこはかとなくバイオなハザード感が出てますけど。まあいきなりゾンビに襲われたりしないだろ。

 

 取り合えずこの階段を上がろう。でも、もしかして、社長室までずっと階段なのか? え? このビル何階建て? 螺旋状だけど10階以上あったよな? 全部階段で上がるの? ウソォ。

 

 

 ……ま、まあ流石に途中でエスカレーターとかエレベーターとかあるよね。社長室へつながってるならあるよね。

 

 

 ……本当に社長室へつながってるのか? この階段は。

 

 

 ……よし、2階についたぞ。階段もここで途切れてるし。やっぱここからはエレベーターとかかな?

 

 

 ……とりあえず目の前の、鉄の扉を開けてみよう。

 

 向こう側にすぐ直通エレベーターがあるかもしれない。

 

 

 

 ……ん? 鉄の扉に掛札(かけふだ)が掛けてある。そして何か書いてあるぞ?

 

 

 

【食べないと進めない部屋】

 

 

 

 ……は? 何これ? 食べないと進めない部屋? 何を食べないといけないの?

 

 

 ……もしかして虫さん? 虫さん食べさせられるの? それだったら完全に詰むんだけど? 攻略不能なんだけど? ナイトメアモードなんですけど?

 

 

 ……い、いや。最悪の予想はしないでおこう。食べないと進めない部屋って事は、多分、食べなければ戻る事は出来るんだし。マジで虫さんが出てきたら戻れば良いだけだし。取り敢えず、何も考えずに進もう。進まなきゃ何も始まらない。3歩進んで5歩戻ろう。よしそうしよう。

 

 

 ……イクぞっ!

 

 

【ギギギギィ……】

 

 

 ……うわあ。めっちゃ錆び付いてる。整備されてないのかよ。いや、整備はされているみたいだな。扉はめっちゃ綺麗だし。なんなの? ワザとなの? ワザと扉に油を刺してないの? なんかの演出なの? やっぱりバイオなハザードなの?

 

 

 ……おぉー。中は和室だ。扉は完全に鉄製なのに。いきなり和室だ。扉開けたらすぐ畳だもん。しかも広い。パッと数えただけで10畳はある。奥に(ふすま)もあるし。あれも開けたらもっと広くなりそうだ。

 

 

 ……これ靴は脱ぐ必要あるよね? 流石に畳の上を靴では歩けないよ、日本人としては。

 

 あ、ちゃんと靴入れがあった。用意が良いな。しかもスリッパまである。超高級そうなスリッパまである。なにこれ? 畳の上用? 外国の人向け?

 

 さすが大企業。社屋の構造はおかしいけど。変な配慮は行き届いている。まあ、ゲーム作ってる会社はこのくらいの発想がないとだめなのかな?

 

 靴下履いてるけど、折角だし高級スリッパ使ってみようかな。よし、じゃあ履き替えてっと。それじゃあお邪魔しまーす。

 

 

 ……取り合えず、この部屋には畳以外、何もないみたいだ。正面に見えている(ふすま)を開けてみるか。失礼しまーす。

 

 

 おお、襖を開けたら和室から茶室に。掛け軸やら鎧やら茶道具やらいろいろ揃ってる部屋だ。なんだかとても懐かしい。風流を感じる。

 

 あ、誰かいたわ。茶室の中央に人間サイズの人が座布団に座ってるわ。全く動かないから置物か人形かと思ったわ。しっかり正座してるわ。

 

 

 ……あれ? これは不知火(しらぬい)さんじゃないか? KAN-SENの。重桜の駆逐艦の。

 

 

 ……うん、間違いない。不知火さんだ。黒い生地に紅の模様が入った着物を着てて、日本人形風な黒髪で片目を隠してて、うさ耳が頭から生えてて、周りに火の玉が浮かんでる人物なんて不知火さんしかいない。少なくともKAN-SENの中では。

 

 

 おおー! 購買部でいつも見てた不知火さんが正座しておられるぞ! ビシッと姿勢正しく正座なされておるぞ! ちょっと拝んでおこう! ありがたやありがたや。

 

 

 「……なにをしておられるのでせうか? (わらわ)を前に、拝んだり致して。 ……まさか、本物の大うつけでございますか? そのような方をお招きした覚えは、この(がま)にはございませぬが」

 

 

 「い、いやちょっと感動して拝んじゃっただけで、他意は特にないと言うか。 ……あれ? 貴方が蒲さんですか? 不知火さんじゃなくて? KAN-SENの」

 

 

 「……! ……ど、どうして、その名前を? わ、妾は蒲でございます。不知火などと言う名は知りませぬ。 ……受付でも、蒲とお伝え申しておりましたが? 貴方さまはやはり、大うつけでございましたか」

 

 

 「ええー。もう見た目とかしゃべり方とか完全に不知火さんじゃないですか。なんですか蒲って。またコードネームって奴ですか? 分かり難いからコードネームは出来ればやめて欲しいんですが。鬼神さんにバレなければ、本名使っても良いんでしょう?」

 

 

 「……貴方さまは、一体どこまで、妾達の事情を? ……はあ、どうせ明石にでも聞いたのでございましょうね。あのうつけ猫は、普段はしっかりしておりますが、信用した人物に対しては口がとても軽いのが、玉に傷でございますので」

 

 

 「え? いや、明石さんに聞いたわけでは無いんですが。まあ重桜のKAN-SENの皆さんがどんな状況かは大体知ってますよ。俺はKAN-SENの知り合いが多いので」

 

 

 「KAN-SENの知り合いが多い、でございますか? 貴方さま程の容姿の人物が? ……はあ、この妾を前にして、その様な嘘を法螺吹(ほらぶ)くとは。最早、付ける薬がございません……」

 

 

 「え、えーっと、嘘なんて付いてないですけど? そんな嘘ついても何の得にもなりませんし。まあ本当かどうか示せと言われると困りますが。 ……友人のKAN-SENに電話でもしてみますか?」

 

 

 「……そこまでせずとも、良いでございます。どうせ、貴方さまと妾は今宵限りのお付き合いになりますので。妾の事も、蒲でも、不知火でも、どうぞお好きな様に、お呼びくださいまし」

 

 

 「こ、今宵限りのお付き合いってそんな。 ……まあ確かに、先程がお互いに初めまして、でしたもんね。すみません、馴れ馴れしくしてしまって。 ……でも俺は、出来れば不知火さんとお呼びしたいので、不知火さんと呼ぶ事にします」

 

 

 「……はあ、やはり貴方さまは大うつけでございますね。この様な妾の呼び方にすら、その様に拘りなさるとは。 ……よろしゅうございます。それでは妾の方も、これから貴方さまの事を、シキカンさまと、呼ばせていただきませう。最近、明石が話題にするのは貴方さまの事ばかり。良い加減、妾も名前を覚えてしまうと言うモノ」

 

 

 「……俺の方は構いませんよ。どうぞシキカンと呼んで下さい。よろしくお願いします、不知火さん」

 

 

 「……はあ。 ……では、よろしゃうお願い申します。この大うつけ……シキカンさま」

 

 

 「……やっぱり不知火さんは所々に大うつけって付けるんですね。まあそんな可愛い声で言われても全然気にならないので良いですが」

 

 

 「……可愛い? ……妾の声が、可愛い、でございますか? ……はあ、大うつけにも程度がございますよ? 流石の妾も、大うつけ以上に馬鹿にする言葉なぞ、生憎持ち合わせておりませぬ故」

 

 

 「うーん、本当なのに。 ……えーと、それで。俺はここで何をしたら良いですか? 何か食べなきゃいけないんですか? 部屋の扉には、食べないと進めない部屋とかなんとか書かれていましたが」

 

 

 「……そうでございましたね。では、これでシキカンさまと妾はお別れでございます。短い時間でしたが、楽しゅうございました。 ……オフニャ。アレを持ってまいれ、でございます」

 

 

 「オフニャ? ……あ!? オフニャだ! オフニャが何か運んできてる!」

 

 

 おおー! 現実のオフニャはビシャマルちゃん以外あんまり見ないから新鮮だ!

 

 えーっと、アレは【タケマル】ちゃんかな?

 

 水色の髪とネコ耳に、(さわ)やかな剣士の和装、そして海軍帽子に付いてる王将マークがとても可愛い。

 

 そう言えばタケマルちゃんは重桜陣営だったか。不知火さんの所に居たんだなー。

 

 良かったなー、お前は鬼神さんに潰されずに済んで。外の世界はお前らにとって地獄だからなー。ちゃんと不知火さんの所で良い子にしてるんだぞー。

 

 

 

 「……御用意が整いました。此方(こちら)が、この重工堂の名物料理、『ぶぶ漬け』にございます。更にこの妾が怨念(おんねん)を……いえ、腕によりを掛けて(つけ)もうした、お漬物も御用意致してございます」

 

 

 「おおー。すごい。お茶漬けだ。こっちに来て久々に日本料理って感じのを見た気がする」

 

 

 久々って言うか初めてじゃないか? 赤城さんの所で食べたのはお菓子だったし。

 

 

 ……うん。盛り付けも完璧だ。完璧なお茶漬けだ。ご飯の上に乗ってるのは鮭とイクラかな? 海苔(のり)もマブしてあってとても美味しそうだ。しかも漬物まである。梅干しと、たくあんと、きゅうりの漬物まである。しかも、全部が単体のお皿に丁寧に盛り付けられている。食器から何から、凄い高級感溢れるお茶漬けだ。なんなんだこのクオリティは。これが不知火さんクオリティなのか。凄いぞ不知火さん。

 

 

 「さあ、どうぞどうぞ、お召しあがりを。召し上がれないとおっしゃるのなら、どうぞお引き取りを。お帰りは彼方(あちら)でございます。さあ、どうぞどうぞ」

 

 

 「あっ、これ食べて良いんですね。では有難くいただかせて貰います」

 

 

 「……は?」

 

 

 「……へ?」

 

 

 「……食べるのでございますか? そのぶぶ漬けを?」

 

 

 「……え? いただいて良いんですよね、これ。さっきの、お召しあがりを、って言葉は、凄い分かりにくい、他の言い回しだった、とかじゃないですよね?」

 

 

 あれ? もしかして本当は食べたらイケナイ系の奴なのこれ? 店頭に飾る用の偽物とか?

 

 

 ……いや、でも目の前のお茶漬けは間違いなく本物っぽいぞ。湯気も出てるし。良い匂いもするし。

 

 

 ……あれか? やっぱり遠回しな言い方のアレか? ぶぶ漬け出すから帰って下さい的なアレか?

 

 でもあの作法も実はぶぶ漬け食べない方が失礼みたいな解釈もあるらしいし。うーん、わからん。

 

 

 ……もしかして俺、不知火さんに歓迎されてない? 明石さんの手紙には熱烈歓迎的な事が書いてあったのに。

 

 なんで? どうして? 俺不知火さんに何か悪い事した? してないよね? 今日が初対面ですもんね? なんだかお互いにお互いを知ってるみたいですけど。

 

 なんですか? 明石さんから何か悪い事でも吹き込まれたんですか? シキカンは虫さん如きにビビるクソ雑魚なめくじにゃ、とか。それだったら許しませんよ? 誤解ではないですけど。事実ですけど。

 

 

 「……はあ。シキカンさまはやはり大うつけでございましたか。この妾を前にして、またしてもその様な虚勢(きょせい)を張るなどと」

 

 

 「きょ、虚勢なんかじゃないですよ。普通に美味しそうなお茶漬けじゃないですか。俺は本当に、このお茶漬けを食べたいと思ってますよ」

 

 

 「……それならば、どうぞお食べになって下さいませ。しかし、その後どうなろうが、妾には関係ございませんが。シキカンさまがこの場で倒れようがどうしようが、妾がするのは精々、社屋の外に運んで、救急車を呼ばせていただく程度でございます。それでもよろしければ、どうぞお食べ下さいませ」

 

 

 「そ、そんなに危険なお茶漬けなのこれ。毒でも入ってるんですか? ……まあ、美味しそうなので、まずはひと口だけ。 ……モグモグ。 ……うまっ! めちゃくちゃ美味い! 見た目通りの美味しい味ですよ! 不知火さん!」

 

 

 うわー! マジで美味いわこれ。イクラも新鮮だし。鮭なんて焼きたてじゃないの、これ。骨もちゃんと取ってあるし。お茶も適温だし。漬物もしっかり漬けてあるし。完璧だ。見た目通りの完璧なお茶漬けだ。誰だよ毒入ってるとか言ったやつは。謝れよ。不知火さんに。

 俺だったわ。不知火さんごめんなさい。

 

 

 「……はあ? ……な、何故? なぜその様に、おいしゅうそうに、ぶぶ漬けをいただくのでございましょうか? ……妾の味付けは完璧でございましたよ? 人間達の舌を、これでもかと蹂躙(じゅうりん)すべく、懇切丁寧に仕上げたぶぶ漬けでございますよ?」

 

 

 「な、何故とおっしゃいましても。めちゃくちゃ美味しいので、としか答えようが。 ……うん、やっぱりこのお茶漬けは不知火さんが懇切丁寧に作っていただけたんですね! お茶漬けも漬物も、ちゃんと食べる人の事を考えて作られた、完璧なものです! 折角なので全部いただきますね!」

 

 

 「た、確かに妾は、食べるお方の事を考えて、お作り申しましたが。そ、その様な反応をなさるとは、思ひもせなんだ……」

 

 

 「……よし、完食! ご馳走様でした! 不知火さん、こんな美味しいお茶漬けを食べさせていただいてありがとうございました! ……えーと、ところで。 ……食べないと進めないって言うのは、このお茶漬けの事ですか? そ、それともこれは前菜で、まだ何かあるとか?」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………」

 

 

 「……あの? 不知火さん? もしもし?」

 

 

 「……………………チッ」

 

 

 「……え!? 舌打ちされた!? 何故!? ……あれ!? 不知火さん!? どうしたんですか! 無言で立ち上がって! ……え、え!? どこへ行かれるのですか!? せめて何かお言葉を!? し、不知火さん!? しらぬいさあああん!?」

 

 

 ……行ってしまわれた。しかも無言で。なに? 俺何か対応間違えた? 何か失礼な事言ってた? 言ってないよな? な、なんで不知火さんは怒ったんだ? そもそも怒ったのかあれは? 表情が一切変わらないから感情がわからんぞ。

 

 

 ……まあ兎に角、行ってしまわれたという事は、進んでも良いという事ですよね? 食べるものも食べたし、大丈夫ですよね?

 

 

 あ、タケマルちゃん。なになに? そんなジェスチャーして。そっちに行けって事なの? 君が案内してくれるの? 一緒についてきてくれるの?

 

 優しいなぁタケマルちゃんは。いいこいいこ。

 

 

 ……あ、またなんか鉄の扉がある。しかもまたなんか掛札(かけふだ)が掛けてある。まだ続くのこれ。なんなの。なんかの試練なのこれ。社長に会うには試練の突破が必要なのこれ。ここはダンジョンかよ。

 

 

【耐えないと進めない部屋】

 

 

 ……また変な部屋が来たよ。なんだよ、耐えないと進めない部屋って。何を耐えるんだよ。拷問でもされるのかよ。そんなの5秒で()を上げますよ俺は。お腹にダイナマイト巻き付けられそうになった時点で逃げますよ俺は。勘弁して下さい。

 

 

 ……まあこれも、何が起きるか見ない事には判断が付かないし、取り合えず進んでみよう。逃げる準備は万全にして。よし、頼んだぞ、タケマルちゃん。殿(しんがり)は君に任せた。俺は何かあったら真っ先に引くから。お願いしますね。

 

 

【ギギギギィ……】

 

 

 ……うん。この扉も留め具だけが錆び付いてますね。なんなのだろう。やっぱり演出なのだろうか。不知火さんの粋な計らいなのだろうか。この音が不知火さんの趣味なのだろうか。趣味ならしょうがない。趣味は人それぞれだ。馬鹿にしてはいけない。

 

 

 おお、今度は日本風の中庭みたいな所に出たぞ! ここも凄いな! 一見さんお断りの超高級料亭の中庭って感じがする。テレビでしか見たことが無いような、ワビサビの風景だ! 池とか鹿威(ししおど)しとか小川とかもちゃんとある! 室内なのに!

 

 

 ……お? なんか中庭の真ん中あたりにある井戸の中から、誰か出て来たぞ?

 

 

 ……誰かって言うか不知火さんが出て来たぞ。直立不動で。何の前触れもなく。

 

 なにそれ? どうやって井戸から昇ってきたの? 釣瓶落(つるべお)としの桶にでも乗ってるのそれ? 自動引き上げ機能付きですか? 無駄に高性能ですね?

 

 

 「一枚……でございます。二枚……でございます。三枚……でございます。四枚……でございます」

 

 

 ……なにあれ? なんか不知火さんがお皿を数えだしたぞ? 井戸の中で。直立不動で。

 

 これはなんなの? アレなの? 皿屋敷(さらやしき)のつもりなの? あのお皿を数える有名な怪談の。

 

 でも正直なんにも怖くないですよ? 周りも照明で明るいし。不知火さんの周りも火の玉が飛んでて明るいし。着物姿をした女性が普通にお皿数えてる光景にしか見えないですよ?

 

 しかも無駄に丁寧に数えてますね? お皿1枚1枚に傷や汚れがないか、しっかりと見られておいでですね。目を皿の様にして。なんですかそれは。この後お店にでも並べるつもりですかそのお皿を。購買部で売るつもりですかそのお皿を。確かに高級そうなお皿ですけど。

 

 不知火さん、実はそれ在庫確認だったりしますか? 商品の棚卸(たなおろ)しでもしているんですか? 確かに月末ですもんね? 在庫確認のやり方も丁寧ですね? しっかりと商品を気遣っておいでです。流石です。流石は購買部の重鎮(じゅうちん)です。

 

 

 ……え? なに? 耐えるってこれ? 何を耐えれば良いのこれ? ツッコミ? たしかにツッコミどころは満載だけど。

 

 

 「七枚……でございます。八枚……でございます。九枚……でございます」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………」

 

 

 「一枚、足りないで、ございます」

 

 

 「……あ、はい」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………」

 

 

 「……一枚、足りないで、ございます」

 

 

 「あ、はい。聞こえてます。大丈夫です。」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………」

 

 

 

 ……気まずい!!! 気まず過ぎる!!!

 

 何だこの空間は! 何だこの空気は! 不知火さんは何をしようとしているんだ! この空気を耐えろと!? 確かにいたたまれない空気ですけども! なるべく早く解消して欲しいですけども! でも想定してた耐え方とは違いますよ!? 多分不知火さんもそう思ってますよね!? 必死に無言を貫いてますもんね! なんかちょっと冷や汗かいてませんか!? でも俺もどうしようもありませんよ!? どうするんですかこの空気!?

 

 

 「……い、一枚、足りないで、ございます」

 

 

 「わかりました! わかりましたから! 一枚足りないのはわかりましたから! でも、俺にどうしろと!? このまま見てるだけで良いんでしょうか!?」

 

 

 「………………」

 

 

 「また無言!? ほ、本当にどうしろと? 在庫確認を手伝えば良いんでしょうか? 足りない一枚をこの中庭から見つけるってミッションですか? そういう感じで良いんでしょうか?」

 

 

 「………………」

 

 

 「……え、えっと。では探しますね? ……あと一枚はどこかな~。 ……あれ? 不知火さん? この井戸の裏側に置いてあるの、そうじゃないですか。なんか段ボールに『予備のお皿』って書いてありますけど。在庫確認ならこれも数えないといけないんじゃないですか? 結構いっぱいあるみたいなので、数えるなら俺も手伝いますよ?」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………」

 

 

 「……あの? 不知火さん? もしもーし?」

 

 

 「……………………チッ」

 

 

 「また舌打ちされた!? どうして!? ……あれ!? 不知火さん!? どちらへ!? 何故井戸の底へ潜って行かれるのですか!? しかも無言で!? この井戸何処(どこ)へ繋がっているんですか!? 俺も行って良いんですか!? 不知火さん!? しらぬいさあああああん!?」

 

 

 ……また行ってしまわれた。この井戸、何処(どこ)へ繋がってるんだよマジで。そして俺は何に耐えれば良かったんだよ。結局ツッコミしちゃったし。

 

 

 ……まあ不知火さんが何処かへ行ってしまわれたという事は、先に進んでも良いという事だろう。タケマルちゃんも、次はこっちだよ的なジェスチャーしてくれてるし。ありがとうタケマルちゃん。可愛いぞ。いいこいいこ。

 

 よし、さっさと次の場所へ行こう、時間がもったいない。

 

 

 

 

 

 




後半へ続きます。


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#18 重工堂本社に潜入します! 内部から乗っ取れば俺が社長です! 後編

 

 

 

 ……和風の中庭を抜けたら、また鉄の扉か。そろそろこれで最後にしてもらわないと、明石社長との歓談の時間に間に合わなそうなんだけど。えっと、掛札には何が書かれているのかな?

 

 

(おどろ)かさないと進めない部屋】

 

 脅かさないと進めない部屋。ついに俺が受け手じゃなくて攻め手側に廻ってしまった。なんなのこのダンジョンは。攻守交代制なの? ドラゴンなクエスト的なあれなの? 出てくるのはドラゴンじゃなくて不知火さんオンリーですけど。俺としてはドラゴンよりこっちの方が良いですけど。ドラゴンも格好良いけどね。

 

 

 ……まあ進んでみるか。多分これで最後だろう。脅かすのもタケマルちゃんがいれば大丈夫だろう。配信ではビシャマルちゃんを見たらみんな驚いてたし。タケマルちゃんも同じ事が出来るはず。頑張れ、タケマルちゃん。俺は応援しているぞ。

 

 

【ギギギギィ……】

 

 

 はいはい。この音にも、もう慣れましたよ。完全に不知火さんの趣味ですねこれは。とても良い趣味をお持ちですね。何かこだわりを感じます。全部同じ音ですもんね。職人芸です。神業です。全く無駄のない無駄な技術です。尊敬します。

 

 

 ……そしてここは。なんだここは。雰囲気が全然違うぞ。何もない。

 

 マジで何もない。鉄筋コンクリートブロックが剥き出しの、ただの部屋だ。格ゲーの練習ステージとかでありそうな、正方形コンクリートブロックで囲まれた、灰色の空間だ。

 

 なんだろう、ついにネタが尽きたのかな。もう完全に、誰かが此処まで来ることを想定してませんって感じですよね。何の用意もされてませんもんね。用意周到な不知火さんにしては珍しい光景ですね。

 

 

 ……向かい側の扉から不知火さんが出て来た。なんか高級そうな座布団を二枚、両手で抱えながら出て来た。

 

 なんなの? 今から何が始まるの? 笑点でもはじまるの? 大喜利(おおぎり)しなくちゃいけなくなるの? この世界では大喜利すると驚くの?

 

 

 ……中央に座布団を2枚置いた。そして向かい側の座布団にお座りになられた。うむ。正しい姿勢の正座ですね。教科書に載るレベルの姿勢です。ちょっとご参考にしたいので写真を撮らせていただいてもよろしいでしょうか。悪用は致しませんので。ちゃんと額縁に入れて飾っておくだけですので。

 

 なにか圧力を感じる。無言のプレッシャーを感じる。向かい側に座れと言っている気がする。無言だけど。

 

 しょうがない。俺も座るか。失礼しまーす。よいしょっと……。

 

 タケマルちゃんはどうする……って、タケマルちゃんもいつの間にか自分用の座布団持ってる。君も用意が良いね。そして可愛いね。いいこいいこ。

 

 

 「……。正直、この部屋までいらっしゃるとは、思ひもせなんだ……。妾はシキカンさまを少々侮っていた様でございます」

 

 

 「そ、それはどうも。俺も、何が来るんだと構えていましたが、何故だかトントン拍子で進んでしまいました。 ……すみません。なんだか想定外だったみたいで。この部屋も、何も用意されていないようですし」

 

 

 「……想定外だったのは事実でございます。そして、この部屋の装飾を、何も用意していなかったのも、こちらの失態でございます。謹んで、お詫び申しあげます」

 

 

 「あ、謝らなくて大丈夫ですから! 俺は気にしてませんから!」

 

 

 「そうでございますか。 ……この様な大うつけに気を遣わせてしまうとは。陽炎型二番艦不知火の名が泣き申す。これは、この部屋で何としても、シキカンさまを食い止めねばいけませぬ」

 

 

 「……やっぱり不知火さんは、俺を食い止めようとしていたんですね。どうしてですか? そんなに俺を明石さんに会わせたくないんですか? それとも何か別の理由ですか? 俺何か悪い事しました?」

 

 

 「シキカンさまは何も悪い事はしておりませぬ。 ……今はまだ、でございますが」

 

 

 「い、今はまだって。俺はこれからも、特に悪い事はしないつもりですよ? 働かないのが悪い事って言うのなら現在進行形で悪い事してますが」

 

 いや、Yongshiberも立派な職業だ。俺は悪くない。大丈夫。まだ負けてない。逆に、働いてないから勝ってるまである。

 

 「そうではありませぬ。シキカンさまもどうせ、明石の持つ権力とお金に引かれて、あのうつけ猫に、媚びを売ったのでございましょう?」

 

 

 「そ、そんな事はないですよ? 確かに明石さんにはお世話になっていましたが。配信でも何度か、お礼も言いましたが。それが、媚びを売っているって事ならそうですが。でも、明石さんの権力を狙って、とかではないですよ。明石さんが重工堂の社長って情報は、俺も昨日知ったばかりですし。権力なんていりませんよ。お金は欲しいですけど」

 

 

 「……はあ。シキカンさまは(なお)も、その様な(うそ)を重ねるのでございますね。流石の妾も、少々頭に来て参りました。 ……妾が覚えてるだけでも、シキカンさまを含めると5名ほどが、このようにして明石に呼ばれるか、(みずか)らこの社屋まで足を運んでおります故。 ……シキカンさまより以前にいらっしゃった大うつけ共も、最初は誰もがそうおっしゃっておりました。明石の権力ではなく、その魅力にひかれたのだ、と」

 

 

 「……そんなことが? ……呼ばれたの俺だけじゃなかったの?」

 

 まあ、ゲームのエンディングを1個発見しただけで会社まで呼ばれるなんて、少しおかしいなとは思ったけど。

 

 「そして明石も、それを信じて、最初は自分をさらけ出して、大うつけ共と接してございました。あのうつけ猫は純粋でございますから。 ……ですが、すぐに気づくのです。この場に呼んだ大うつけ共は、結局うわべだけの者であったのだと。その場限りの嘘で誤魔化していたに過ぎないのだと。 ……結局、呼ばれた大うつけ共も、すぐに本性を現して、此方(こちら)に来て半日程度で、明石に追い返されてございました」

 

 

 「……俺は明石さんの本当の気持ちを知りません。正直、なんで歓談に呼ばれたかも、わかってないので。単純に俺と話をしたいだけなのかな、としか。でも、俺の知っている明石さんなら、俺は大丈夫だと思いますよ? 少なくとも、配信中に来ていただけてた、明石……赤茶さんと俺となら、気が合うんじゃないかと思ってます。一緒にゲームしてて楽しかったですし」

 

 

 「……確かに、あのうつけ猫も、何度もおっしゃってございました。シキカンは違うにゃ、と。これまでの奴らとは絶対に違うにゃ、と。 ……ですが、妾はもう見たくはないのでございます。あのうつけ猫が、ほんの少しの希望を見出(みいだ)して、そして打ち砕かれて、絶望するさまを。 ……あのうつけ猫は、少々心を砕かれ過ぎでございます。もし、アレだけ入れ込んでいるシキカンさまも、あのうつけ猫を受け入れる事が出来ぬ場合。 ……あのうつけ猫の心は。 ……明石の心は、本当に、完全に壊れてしまうでございましょう。もう、妾でも、どうしようもなくなる程度には」

 

 

 「……明石さんがそんなに追い詰められていたなんて。 ……確かに最初に配信に来ていただいた時は、少しツンツンしていましたけど。でも、それもすぐに無くなって、今では一緒に楽しく配信出来ていると思っていたんですが」

 

 

 「……確かに、最近の明石は元気を取り戻してございます。まるで、最初にこの会社を立ち上げた時のように。他のKAN-SEN達も雇える様な、大きな会社を作ってやるにゃ、と宣言していた時のように。ですが、それはシキカンさまと言う、大きな希望があるから、でございます。希望が打ち砕かれれば、今度こそ、あのうつけ猫は終わり、でございます。 ……そうならぬ様、妾は全力で、あのうつけ猫を守りとうございます。KAN-SENとしての活躍も出来ず、どうしようもなくなっていた妾を雇って会社を立ち上げ、妾の居場所を作ってくれた、あのうつけ猫。 ……明石の、ためにも。 ……シキカンさまも、どうか、希望は希望のままで、居て下さいまし」

 

 

 「そ、そこまで言われたら、俺も引き下がざるを得ない様な気が……

 

 でも、明石さんとは、どうせ今後も配信で会うしなぁ。重工堂の社長って事は、俺の住所も完全にバレてるだろうし。もし今日を回避しても、問題の先送りにしかならない気が。

 

 「……不知火さん、やっぱり俺は今日、明石さんに会いますよ。そしてちゃんと話してみたいと思います。明石さんが俺の事を、本当はどう思っているのかについて」

 

 

 「……そうでございますか。シキカンさまにはシキカンさまの考えがあるのでございますね? ……ですが、妾にも意地(いじ)がございます。この部屋を通りたくば、どうかこの妾を、驚かせていただけるでございましょうか」

 

 

 「し、不知火さんを驚かせる、ですか? 俺が?」

 

 

 「そうでございます。先ほどまでは、妾が攻め手側。シキカンさまは、受け手側に廻らざるを得ない状況でございました。やはり、それでは不公平というモノ。今回は、シキカンさまが攻め手となって、妾を驚かせていただきませう。妾はここから動きませんので」

 

 

 「……驚かせるっていったって、どうやって。不知火さんが驚いたって言う判定も曖昧(あいまい)ですし。どうするんですか? 隣に座ってるタケマルちゃんが判断するんですか? その娘、実は審判だったんですか?」

 

 

 「そのような曖昧な判定は用意してございませんが。判定は簡単でございます。ただ、妾に大きな声を出させる、この1点だけが条件でございます」

 

 

 「お、大きな声を出させる? 不知火さんに? 俺が何かして?」

 

 

 「そうでございます。この部屋には、音声認識センサーが設置されてございます。妾の声も既にその装置へと登録済み。妾がこの世に生れ落ちてから、今日(こんにち)までの人生の中で、一度も出したことのない大声を、その装置に登録してございます。その音量を超える事が出来れば、妾の後ろ側にある扉が自動的に開く仕掛け、という仕様でございます。簡単でございましょう?」

 

 

 「……確かに、言うだけなら簡単ですけどね? 条件的にはシンプルですけどね? でも、言うのとやるのとじゃ違いますよね? 不知火さんの、人生で一度も出した事のない大声を、超えさせるレベルで、驚かせるんですよね? ……こ、この状況で、俺はどうすれば良いんですか?」

 

 

 「それはそちらが考える事、でございます。妾は何も致しません。ですが、それでは流石にシキカンさまに不利でございます。……その代わりと言っては、でございますが。シキカンさまは妾に、何をして下さっても構いませぬ。叩くにしても、殴るにしても、どの様な事をしていただいても結構でございます。妾はその様な事で、声をあげるような事はございませんが。体が大破するのは、戦場で慣れておりますので」

 

 

 「た、叩くとか、な、殴るとか。……そういうドメスティックなバイオレンス的なのは流石に出来ないですよ。特に、不知火さんの様な人にそんな事したら、犯罪ですよ」

 

 

 「……でしたら、(くすぐ)るなり、(つね)るなり、如何様(いかよう)にも出来るでございましょう? 妾は特に反抗などは致しませぬ。制限時間は今宵(こよい)の宴が始まるまで。もう、半刻(はんとき)と残っておりませぬが、シキカンさまには十分なお時間でございます。あのうつけ猫から伝え聞いた事が、本当であれば、の話でございますが」

 

 

 ……どうしよう。なんだか大変な事になってしまったぞ?

 

 不知火さんを驚かせるって。マジでどうすれば良いんだよ。ゲーム内でも驚いてる反応なんてあんまり見た事ないし。イケナイ所をタッチしても、悲鳴をあげる所か、ドン引きされてる様な反応されるし。絶対あの反応は、タッチした人を虫さんを見るような目で見てる雰囲気だったし。無表情だけど。

 

 半刻って事は1時間だよな。なんか道具とか買ってこようかな。流石に丸腰では辛い気がする。近くにドン・〇ホーテ的なお店ないかな。面白グッズ的な何かが欲しい。

 

 いや、でも時間がない。この辺の地理にも(うと)い俺が、この短時間でお店を探し回る余裕がない。不知火さんにお店の場所を聞くか?

 

 いやいや、無い無い。不知火さんも流石に自分の不利になるような事に協力してくれるわけがない。

 

 どうしよう。叩いたり殴ったりするのは流石にアウトだ。無抵抗の女の娘を殴るなんて出来るわけがない。不知火さんは別に悪落ちとかもしてないし。あっちはあっちで正義があるし。そんなの殴れる様な人は、男女平等パンチが出来る人だけだし。

 

 (つね)るのもあんまりやりたくない。今は何の反抗もしないって言ってるけど、これが終わった後も反抗しないとは言ってないし。後で5000倍返しされそうだし。不知火さんの恨みは恐ろしそうだし。

 

 (くすぐ)るか? (くすぐ)ってみるか? もうそれしか選択肢が残ってないような気がするんだが。

 

 でも、自分から言うって事は(くすぐ)り耐性もあるって事だよなぁ。不知火さんが擽られて爆笑してる姿なんて想像出来ないし。

 

 うーん。でも取り合えず、選択肢はこれしかない。何かアクションを起こさないと何も始まらない。1時間もあるんだから色々と試行錯誤が必要だ。

 

 よし、最初の手段は(くすぐ)りに決定だ。

 

 問題は何処(どこ)をターゲットにするか、なんだけど……。

 

 

 ……取り合えず、今の不知火さんの状況を見よう。綺麗な正座だ。着物もバッチリと着付けられている。写真屋さんに飾られてもおかしくない程に絵になっている。今写真を撮っても怒られないかもしれない。やめておこう。後が怖い。

 

 キッチリとした姿勢のせいで、完全に脇と腰は着物で守られている。膝の上に両手を載せているのでガードもバッチリだ。足の裏も無理だろう。擽るのでちょっと腰上げてくださいって言っても、(さげす)んだ眼で『大うつけでございますか?』って言われる落ちが見える。ちょっと言われてみたい気もする。でもやめておこう。後が怖い。

 

 じゃあ首筋はどうか。ここも無理だ。着物なんだから首筋ぐらい出てるだろうと思いきや、不知火さんは首に紅いチョーカーを装備していらっしゃるので、首のガードもバッチリだ。防御力が半端ない。本当に駆逐艦ですか貴方は。

 

 もう後は、顔か、うさ耳しか残されてないんだけど。

 

 顔を擽ってもなあ。絶対何も反応しないよなぁ。俺も顔を擽られただけじゃ反応しないもん。何コイツうぜえってなるだけだもん。不知火さんにやっても冷たい瞳で見られて大うつけされるだけだもん。少しやりたいもん。でもやめとく。後が怖い。

 

 残るは耳だ。うさ耳だ。不知火さんの、()()ぎだらけのうさ耳だ。

 

 なんであんなに継ぎ接ぎだらけなの? 痛々しいんですけど。ゲームではなんだか修繕費の削減とか言ってた気がするけど、絶対他に理由があるだろ。(かたく)なに修理しない理由が何か。

 

 うーん、でも触ってみたい。どんな感触するんだあれ。普通のうさ耳か? でも、普通のうさ耳が、あんなぬいぐるみの修理方法みたいなピン止めでくっつくはずないよな。なんなんだろう。ロングアイランドさんに(のり)でくっつけて貰ったのだろうかあれは。

 

 よし、触ろう。うさ耳を触ってみよう。不知火さんも、何をしても良いって言ってたし。耳を触るくらいなら大丈夫だろう。めっちゃ睨んで来てるけど。冷たいまなざし、受けてますけど。

 

 

 ……こ、怖いので、最初はソッといくか。もう、触れてるの? 触れてないの? みたいな感じで行くか。触ったらすぐに壊れる物に触るような感じで。フェザータッチの理論で行くか。

 

 よ、よし。行くぞ。触るぞ。

 

 ……し、不知火さん? 何ですかその目は? 俺まだちょっと動いただけですよ? まだ何もしてませんよ? 絶対その目は怒ってますよね? 絶対内心ブチギレてますよね? めちゃめちゃ睨んでますもん俺を。無表情ですけど。

 

 

 ……だ、大丈夫ですよ不知火さん。そんなに痛い事しないですから。お耳を触らせていただくだけでございますから。マジで怖いですからその目。見られるだけで魂削られてますから俺が。なんで無表情なのにそんなに眼力(めぢから)あるんですか。特殊な修行を積んでるんですか。

 

 

 ……こ、これはマジで細心の注意が必要だ。俺も本気で集中しなければ。

 

 全神経を指先に集中させろ! 絶対に不知火さんに不快な思いをさせるなよ俺! 不知火さんがちょっとでも不快に思われたらその時点で俺の魂が抜き取られる! 睨むだけで魂が抜き取られる! 不知火さんは絶対に真の瞳術を極めてらっしゃる! 間違いない!

 

 

 ……そーっと触るんだ! そーっと ……そーっと

 

 

 

 ……サワサワ ……サワサワサワ

 

 

 

「……ひゃあぅ!」

 

 

【ドアさん:がちゃ!】

 

 

 「……………………」

 

 

 「……………………」

 

 

 「……………………」

 

 

 「……………………」

 

 

 「……あの、不知火さん?」

 

 

 「……………………」

 

 

 「……ど、ドアが開いたようなのですが」

 

 

 「……………………」

 

 

 「……こ、これはクリアと言う事で、良いんでしょうか」

 

 

 「……………………」

 

 

 「く、クリアで良いんですよね? ドア開きましたもんね?」

 

 

 「……………………」

 

 

 「じゃ、じゃあ俺はいきますね? ドアが開いたので!」

 

 

 「………………………【ピッ】」

 

 

【ドアさん:ばたん!】

 

 

 「あ! ドア閉められた! ちょ! 不知火さん! 今絶対何かしましたよね! 『ピッ』って音しましたもん! 『ピッ』って!」

 

 

 「……な、なんの事でございましょうか。わ、妾は存じ上げておりませぬ」

 

 

 「 此処(ここ)に来て、その反則技はありなんですか? 今までは一応、正々堂々?な闘いだったのに」

 

 

 「い、今のは少し、吃逆(しゃっくり)が、出てしまっただけで、ございます。け、決して、シ、シキカンさまの行為で出た声では、ございませんが」

 

 

 「なるほど~? そういう言い訳を使うんですね? わかりました。じゃあ俺ももう容赦しませんよ」

 

 

 「ど、どうぞご勝手にしていただいて、結構でございます。妾は痛みには、慣れておりますので。さ、先程のは偶然。そう、不幸な偶然が、重なってしまっただけでございま……」

 

 

 

 サワサワサワサ…… サワワ、サワワサ……

 

 

「……ひゃあん!」

 

 

【ドアさん:がちゃん!】

 

 

 「よし、開きましたね。では俺はこれで失礼しま【ピッ】」

 

 

【ドアさん:ばたん!】

 

 

 「不知火さん!? 2回目ですよね!? 2回目はダメですよ!? ほとんどの強キャラは同じ技を2回喰らう様な事はしませんからね! バトル物でそれやったら手痛い反撃を受けますよその行為は!」

 

 

 「シ、シキカンさまは、一体何を、おっしゃっているのやら。わ、妾には皆目見当(かいもくけんとう)もつかぬでございます」

 

 

……サワワワワ、サワワワサワワ、サワワワワ。

 

 

「……ひゃうん!」

 

 

【ドアさん:がちゃん! ……もう疲れた】

 

 

 「ほら! 不知火さん! もうドアさんも疲れてますよ! いい加減に負けを認めてください! ……あ、その手に持ってる奴がドアさんの開閉装置ですね! そんなものは没収! 没収です!」

 

 

 「あっ……。な、何故、妾が、この様に簡単に、これ程の大きな声を……。あの装置へは、妾の本気の大声を、登録したはずでございます。……シキカン様の指先には、何か特殊な装置が、埋め込まれているのではございませんか?」

 

 

 「……そんな事はないですよ? 俺の指先は至って普通ですよ。これはアレじゃないですか? 俺じゃなくて、不知火さんが敏感過ぎなんじゃないですか? 痛みには耐えられても、(くすぐ)りには弱いとかそんな感じで。先程から、痛みに耐えてやる的な感じで、なんだか物凄く集中して構えられてたようですし。神経が一時的に敏感になってるんじゃないですか?」

 

 

 「そ、その様な事は決して……。確かに心構えは、しておりましたが。このような感覚を味わうのも、初めての経験で、ございましたが。だからと言って、この様な結果になろうとは……、思ひも、せなんだ……」

 

 

 「……すみません。なんだか不知火さんの想定外だった事ばかり起こしてしまって。でも一応、この勝負は俺の勝ちですね。ドアさんも開いたし。3回も開いたし。3回勝負でも俺の勝ちです。そういう訳で、俺はこの先に進む事にします。不知火さんには悪いですが、明石さんにも一度はお会いしてみたいので。 ……それでは、失礼しま……」

 

 

 「……ま、まだで、ございます」

 

 

 

【……クイッ ……クイッ】

 

 

 

 ……んんー? なんか不知火さんが、俺の腕の袖を掴んでいらっしゃる。親指と人差し指で、そっと掴んでいらっしゃる。奥ゆかしい手つきで、俺の袖を御掴みになっていらっしゃる。

 

 なんだこれは。こんなの振り払えんぞ。少し力を入れたら一瞬で手が離れそうなのに。そんな事なんて絶対出来ない空気が流れているぞ。なんだこれは。幻術なのか? また幻術なのか?

 

 

 

 「……ふ……ふふっ。 ……ど、どうでございますか? ……こ、これが。こ、この妾の、最後の、抵抗でございます。 ……恐ろしいでございましょう? (おぞ)ましいでございましょう? ……妾の名は不知火(しらぬい)。本来ならば決して、誰にも触れる事が出来ない、不知(しらず)の炎。遠くに視えども実体は在らず、近づこうにも近づけぬ、何処(いずこ)とも無く消えゆく炎。 ……その様な、お、お化けと名高い、この妾が(みずか)ら、シキカン様の、そ、袖を掴んでいるのです。……流石のシキカン様も、これには恐怖を感じざるを得ないご様子、でごさいます。 ……さあ、この不知火から逃れたくば、どうぞ、お引き取り下さいませ。引き返すのなら、妾はそれを止める事など、ございませんので」

 

 

 「……なるほど。不知火さんは自分の事を、とても怖い存在だと思っていたんですね。だからあんな演出でも、俺が恐れをなして引き返すと思ったんですか。でも、残念でしたね。俺は不知火さんと、今日初めて出会ってから今までの間、一度も不知火さんを怖がったりはしませんでしたよ。 ……眼力以外は」

 

 

 「ま、またその様な戯言(ざれごと)を言うのでございますか? し、シキカン様には、本当に、付ける薬がございません」

 

 

 「うーん。今までの事も含めて、俺は全部心の中で思った事を、そのまま言ってるだけなんですけどね。不知火さんはお化けなんかじゃない、可愛い女の子ですよ。少なくとも俺にとってはね。 ……じゃあ俺は行きますね。なんだか明石さんにも、直接会わないといけない様な気がしてきましたし」

 

 

 「……わ、妾は、か、陽炎型駆逐二番艦不知火、でございます。か、陽炎型の誇りにかけて、シキカンさまの好きな様には、さ、させま……」

 

 

 

 「……不知火さん、失礼します」

 

 

 「……な、なんでございますか! その手の動きは! やっ! ひゃあ嗚呼ああああああああ!! ……ああ。 ……あ。 ……きゅぅぅ」

 

 

 「……不知火さん、すみません。俺は先に進まなければ、なりませんので。 ……少しだけ、眠っていて下さい」

 

 

 

 ……いや、流石にこのまま放置しておくのは可哀想だ。座布団以外、何もない部屋だし。

 

 仕方ない。背負って明石さんの所へ行くか。社長室なら高級なソファーぐらいあるだろうし。そこで寝かせておこう。

 

 

 ……軽っ!? 不知火さん軽いなっ!? ふっわふわだな!? なにこれ!? 本当に人間!? 不知火さんは本当にお化けなの!? どういう原理なのこれは!? 不知火さんは自分の体重の増減でも出来るの!? 重力使いか何かなの!?

 

 まあ、軽い分には良いか。俺にもあんまり負担ないし。

 

 お? タケマルちゃん。また案内してくれるの?

 

 あ、なんかある。『社長室はこっちにゃ』って看板が見える。社長室直通エレベーターもちゃんとある。

 

 流石はタケマルちゃん。良い仕事しますね。可愛いし。いいこいいこ。

 

 

 

 ……さあ、取り合えず、不知火さんの試練も超えたし!

 

 後は社長の明石さんに会うだけだ! 頑張るぞー!

 

 はい! タケマルちゃんも一緒に!

 

 えい! えい! にゃ~!

 

 

 

 

 




重工堂タワー、中ボス不知火さん撃破。


戦場での痛みには慣れてましたが、人から触れられるのは不知(しらず)の炎でした。


不知火さんのキャラストーリーは、明石に引っ付かれただけでしぶしぶながらなんでも言う事を聞いちゃう不知火さんが見れます。もう半分明石のキャラストなのでは?
2人の掛け合いにとてもホンワカします。


次はラスボスです。(別にラストでは無い)

……次の投稿は不定期です。
そして誤字報告ありがとうございます。とても助かっております。
何度も同じ誤字してゴメンナサイ。


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