僕とテストと幻想郷-幻想郷での話- (あんこ入りチョコ)
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序章 出会いの章
始まり、そして出会い


初めましての方は初めまして。あんこ入りチョコです

あらすじにもある通り、この作品は別で投稿している『僕とテストと幻想郷』という作品の幻想郷側での話になります。

それでは、本編をどうぞ


小学校を卒業したばかりの少年がいた

 

その少年は交通事故に遭い、孤独になった

 

親戚もおらず、頼れる人もいない

 

最初は必死に孤独に耐えていたが、次第に孤独に耐えられず、不登校になっていった

 

ある日、少年は「消えたい」と呟いた

 

その日、『吉井明久』の存在が消えた

 

 

これは、吉井明久が幻想郷に居る時の話…

 

 

???side

 

 

私は藤原妹紅。健康マニアの焼き鳥屋…なんてよく誤魔化しているが、『蓬莱の薬』を飲んだ不老不死の人間だ

 

私の住んでいる『迷いの竹林』は、とにかく迷いやすいから、私は日課としている竹林のパトロールと行っていると、誰か人が倒れていることに気づいた

 

「あれは…人間か?少年、大丈夫か?

ふむ、寝ているだけ…か?とにかく、放置すると妖怪に食べられる危険性もあるし、仕方ない私の家に連れていくか…」

 

私は放置しておくのはまずいと思い、倒れていた少年を私の家に連れて行った

 

「それにしてもこの服装…外来人か?」

 

外来人、幻想郷の外からやってきた人間を指す言葉だ

私は幻想郷ではまず見ないような服装を見て、そう思ったのだった

 

 

少女移動中…

 

 

「あれ…ここは…」

 

少年を私の家に運んで数時間、どうやら少年の目が覚めたようだ

 

「少年、目が覚めたか。とりあえず…君の名前を教えてくれないか?」

 

「僕の名前…?明久。吉井明久です

あの…お姉さんは?」

 

ふむ、明久か

 

「私か?私は藤原妹紅だ」

 

「妹紅…さん。あの…ここは?」

 

「ここは幻想郷。人や神、妖怪といった人々に忘れ去られた者が住む場所だよ」

 

明久が質問をしてきたので、私はそう答える

 

「幻想郷…」

 

「そう、幻想郷。普通、人間は幻想入りなんてしないが…一つだけ心当たりがある

…八雲紫、見ているんだろう?神隠しって呼ばれる現象はたいていあんたが絡んでいるって聞いたが…明久もあんたの仕業か?」

 

私は、虚空に向かってそう叫んだ

人が消える現象、神隠しは妖怪の賢者、『八雲紫』が気まぐれで行っているって噂を聞いたことがある

恐らく、八雲紫の仕業だろう

 

「あら、よく気が付いたわね」

 

そうすると、先程まで何もなかったところに大量の瞳のようなものが見える穴が開き、そこから一人の女性が現れる

八雲紫だ

 

「少し視線を感じてな。幻想郷に連れ込むだけ連れ込んで放置されてる。しかも迷いの竹林なんて危険な場所に…監視してないと思う方がおかしいだろう」

 

「???えぇっと…お姉さんは誰?」

 

「私?私は八雲紫。この幻想郷を管理している妖怪よ。そして、貴方をこの幻想郷に招待した張本人も私」

 

明久が八雲紫に尋ねると、八雲紫はそう返す

 

「なにが『招待した』だ。迷いの竹林なんて危険なところに放置していたくせに」

 

「それは勘違いよ。私は人間の里に連れて行こうとしたわ。でも、何かに干渉されて連れていく座標がズレた。そこに貴女が来たから、彼は貴女に任せようと思ったのよ」

 

八雲紫は胡散臭い表情でそう語った

 

「とにかく、明久を外の世界に返してやれ。困ってるだろう」

 

「あら、それは彼に聞くべきじゃないかしら?少なくとも、私は彼の願いをかなえるために幻想郷に連れ込んだのだから」

 

…どういうことだ?

 

「吉井明久、貴方に尋ねるわ。このまま元の居場所に帰るか、それともここに少し住んでみるか…」

 

「僕は…ここに住んでみたい。今の僕に、元の場所での居場所はないから…」

 

「というわけよ。そこで、藤原妹紅。貴女に提案があるわ」

 

明久の答えを聞き、八雲紫は私に話を振る

 

「…提案だと?」

 

「そう。彼、吉井明久の面倒は貴女が見なさい」

 

「ちょっと待て、なんで私なんだ?」

 

八雲紫の提案に、私は驚いた

 

「貴女が最初の発見者だし、それがいいでしょう。それに、この様子だと彼は少しとはいえ、貴女に心を開いてるようだから」

 

「…明久。お前はどうしたい」

 

八雲紫の言葉に驚きつつも、私は明久に尋ねる

 

「僕は…妹紅さんがいいなら」

 

「…ハァ、わかった。その役目、引き受ける」

 

「そう、それはありがたいわ」

 

八雲紫は、胡散臭い笑顔を張り付けたままそう返事をする

 

「だが、あんたに聞いておきたいことがある。悪いけど明久、少し外に出ておいてくれないか?私はこいつと二人で話しがしたい」

 

「うん、わかった」

 

そう言うと、明久は外に出た

 

「それで、彼を外に出してまで話したいというのは何かしら?」

 

「簡単なことだ。明久についていろいろ聞いておこうと思ってな。あんたがわざわざ幻想郷に連れてきたんだ。明久には何かあるのか?」

 

私は、明久について聞きたかったことを聞いた

 

「そうね…貴女は彼の保護者になるわけだし、教えておきましょう。彼は家族も親戚もいない、今では孤独な存在で、孤独に耐えることができずに消えることを願った。だからここに連れてきた。というわけよ」

 

八雲紫はそんな返事をする。だが、私が聞きたいことはそんなことじゃない

 

「それは何となくわかってた。だが、聞きたいのはそんなことじゃない。その程度の理由で幻想郷に連れてくるなら、今頃幻想郷は外来人だらけだ。明久に宿る力…何か強大なものなのか?」

 

「…伊達に長生きしてないってわけね。そう、彼に宿る霊力は、かなりのものよ。それこそ、博麗の巫女にも匹敵するんじゃないかというくらいには」

 

『博麗の巫女』幻想郷における人間と妖怪のバランス、そして幻想郷の存在の軸である『博麗大結界』を代々制御している存在だ

そして、そう意味も含めて幻想郷で最強の存在でもある

明久は、霊力だけでいうとその博麗の巫女に匹敵するというのか…

 

「つまり、もしそんな存在が自殺なんてしたらもったいないから連れてきた。そんな感じか?」

 

「まぁ、大体はそんなところね。それに、彼の人間性もなかなかのものよ。彼は他人を惹きつける何かがある。だから、そんな存在が自殺なんてしてしまう前にそれを留めるために幻想郷に連れてきた…」

 

なるほどな…まぁ、大体は予想通りだ

 

「それと、貴女にもう一つ教えておくわ。彼が幻想郷に来たことによって、彼に眠っていた能力が覚醒した。そうね…いうならば、『学習能力を強化する程度の能力』かしら」

 

「学習能力を強化…ねぇ」

 

「つまり、彼の才能を生かすも殺すも、保護者を請け負った貴女次第よ

それと、頼んだのは私だから、お金くらいの支援はするわ。彼のこと、頼んだわよ」

 

そう告げると、八雲紫は穴を閉じ、その場から消えた

 

明久の能力を生かすも殺すも私次第、ねぇ。頑張るか…

 

「明久ー、もう戻っていいぞー」

 

「もう話は終わったの?」

 

「終わった。じゃあ、明久の保護者になるわけだし、改めて自己紹介をしよう

私は藤原妹紅。とある理由で不老不死になってしまった人間だよ。よろしくね」

 

「藤原?不老不死?…どこかで聞いたことがあるような…」

 

うっ、鋭い。これも能力のおかげなのかな?

 

「あっ!藤原不比等?蓬莱の薬…かぐや姫?」

 

「いやー、これだけのヒントでよくそこまでたどり着いたね。明久、今何歳だ?」

 

「うーんと、12歳!」

 

うん、12歳にしては思考回路が尋常じゃない

 

「ま、隠してたわけじゃないけど、バレたなら仕方がない!明久の予想通り、私は藤原不比等の娘だ

ちなみに、かぐや姫もこの幻想郷に居るから、そのうち紹介するよ」

 

いつ紹介するかはわからないけど!アイツに明久を紹介なんてまだするものか

 

「そうなんだね!」

 

「とりあえず、今日はそこそこ時間も遅いし、今日はご飯を食べて寝よう!幻想郷について詳しく説明するのは明日!」

 

「わかった!」

 

 

これが私、藤原妹紅と、幻想郷の外から連れてこられた人間、吉井明久が出合った日の物語…




誤字脱字ありましたら、報告お願いします

次回は一応のキャラ設定と補足、この作品の世界線(というか、自己解釈の部分など)の予定です


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キャラ設定と、この作品の幻想郷についての補足

吉井明久

 

本作品の主人公

 

12歳

 

二つ名

『幻想に誘われし人間』(序章時点)

 

能力

『学習能力を強化する程度の能力』

自身の学習能力を強化する能力。

この能力は幻想郷に来たことによって本格的に覚醒した能力だが、外の世界でも潜在的に発動していた

それによって、12歳にしてはありえないような知識量を誇る

ただし、この能力はあくまでも『学習能力を強化する』ことなので、記憶力等は本人次第であり、単純な知識量は、『稗田阿求』の『一度見たものを忘れない程度の能力』等の完全記憶能力には劣る

また、学習能力を強化することで演算能力も強化されるのか、物事を考えるスピード等も強化されている

 

また、この能力を使用することで自身で再現可能なスペルカードなどは再現することができる(イメージ的には学習したことを書き出す感じで)

 

まだ覚醒してはいないが、この能力から派生する能力もある

 

設定

幻想入りする数か月前に交通事故で家族を亡くしており、両親の親族も一人っ子が多く、全員他界していたため、引き取り手がおらずそのまま一人で過ごすことに

一人になった最初のころは、家事等で気を紛らわせていたが、次第に一人の寂しさに気づき、中学校入学から数日で不登校になった

世間ではゴールデンウィークになったころに『消えたい』と思った結果、その願いを妖怪の賢者『八雲紫』が察知し、普通の人間にはありえないような潜在能力を持った明久に興味を抱き、幻想郷に連れ去られる(その時明久は寝ていた)

連れ去られる際、不祥事により迷いの竹林に放り出され、その後『藤原妹紅』に拾われ、そのまま妹紅にお世話になることになった

 

住んでいる家にかなり広い書籍があり、そこに古典や歴史書等の本が多く、ほぼすべてを読み終わっており、歴史に強い(藤原不比等と蓬莱の薬に気づいたのはこのおかげでもある)

 

一人の時に家事をしていて、気を紛らわすために本格的な物を勉強し、潜在的に発動していた能力(上記)のおかげで、家事スキルはプロも驚きのものになる

 

 

 

藤原妹紅

 

本作品のサブ主人公(?)

 

二つ名

『蓬莱の人の形』

 

能力

『老いることも死ぬこともない程度の能力』

要は不老不死

この能力のおかげで、死んでも蘇り、甦る場合『魂』を起点として再生するため、元の肉体がなくても蘇るし、別の場所で甦ることも可能

 

設定

幻想郷にある『迷いの竹林』に住んでいる

普通の人間は迷いの竹林に迷いやすく、抜け出せないことが多いので、そんな人間を竹林の外に送り出すということを日課としており、そんな人間がいないかパトロールをしていると、明久と出会う

最初は明久を外の世界に送り出そうとしていたため、名前しか明久に教えなかったが、紫の説得、明久の言葉により折れて、明久の保護者役となる

保護者になった以上、名前以外のことも教えるという決意を決めて、恐れられないかという内心を持ちながら、明久に自分のことを伝えると案外あっさり受け入れられたことにほっとする

 

主人公とは言ったものの、実際主人公のような扱いになるかはわからない()

 

 

 

 

ここからはこの作品でのオリジナル設定や自己解釈の部分について説明します

 

まず、この作品では霊夢が知らないだけ(忘れている)で一部のキャラは人間の里を出入りしている

(妖々夢でのアリス、茨歌仙での華扇への対応から、一部のキャラは単純に存在を忘れていただけと解釈)

 

公式年齢は不明なので、霊夢や魔理沙等、妖夢、小鈴、阿求は序章時点では12歳で明久と同い年という設定。

酒を飲んだりしているのは幻想郷にそんなルールはないから

 

 

人間の里関連の原作キャラについて

 

慧音の寺子屋、鈴奈庵は明久が幻想入りした時点では経営している

この二つの場所は営業し始めたのが不明なので、すでに営業しているという設定にします

また、魔理沙が人間の里に居た頃は慧音の寺子屋で勉強をしており、小鈴も本格的に家を継いだのはこの頃で、小さい頃は慧音の寺子屋で勉強をしており、魔理沙と小鈴は一応ここで知り合っている

 

『稗田阿求』はまだ幻想郷縁起を書いている途中で、阿求に転生してすぐ位にたまたま『鈴奈庵』に寄った時に小鈴と出会い、友達になる

また、阿求が転生する前の『稗田阿礼』が『藤原不比等』と同一人物という学説があるようですが、この作品では同一人物ではないという設定にします

 

華扇は明久が幻想入りする数年前くらいから人間の里を出入りしており、稀に説教をしたりしている

 

 

異変などの本編は、ゲームだと霊夢や魔理沙の自機の単独解決が多いですが、都合上団体での行動やオリジナルのストーリーも入ります

 

 

 

それから、登場するキャラクターは基本的に『東方紅魔郷』から『東方風神録』までのキャラクター及び書籍キャラクターが主となります。ただし、その物語が始まるまで関連のキャラクターが登場することはないと思います

旧作もあまり詳しくないので、旧作キャラも出てきません

 

悩んでいるんですが、『東方緋想天』以降のゲーム作品まで投稿するかはわかりません




誤字脱字ありましたら、報告お願いします

また、『ここが説明されてないからわからない!』、『これの補足はないのか!』みたいなことがあれば言ってくださると助かります


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幻想郷の説明と適用

明久side

 

 

僕、吉井明久はある日突然、幻想郷という場所にたどり着いた

そこで出会ったのは、藤原妹紅という女性

そして、いろいろあって妹紅さんの家に住むことに

その日、僕の幻想郷での生活が始まった

 

 

~明久が幻想入りした翌日~

 

 

「明久、お前にはまず、幻想郷についていろいろと教えておく」

 

妹紅さんは、僕に幻想郷について教えてくれるそうだ

 

「わかりました、妹紅さん」

 

「あー…その妹紅さんってのと丁寧な言葉遣いはやめてもらえる?

私としては、実質家族になるんだし、ある程度砕けた話し方の方が助かるからさ」

 

どうやら、僕の話し方を妹紅さんは気に入らなかったようだ

 

「うん、わかったよ。妹紅」

 

「んー…まぁいいか。まず、幻想郷だけど、昨日ここには人々に忘れられた神や妖怪が住む場所って言ったでしょう?なんでだかわかる?」

 

妹紅は僕にこう質問してきた。うーん…なんでだろう…

でも、家にあった本で、昔の本には比較的妖怪とか、神様とか多かったし、もしかして…

 

「幻想郷でいう外の世界の人々が神様とか、妖怪とかを信じなくなった…とか?」

 

「うん、かなり鋭いね。ホントに12歳?

まぁ、大体あってるよ。妖怪やお化け、神様みたいな存在は、存在するためには忘れられないこと、成り立ちとかがしっかりしていることが大事なんだ。だから、存在を否定されたり、空想だと思われたりするほど、存在することが難しくなる。だから、昨日会った妖怪の賢者『八雲紫』は、特殊な結界を作って、幻想郷を忘れられたものが存在することの楽園として、存在を隔離したってところ」

 

「うーん…じゃあ、日本中を探したら実は幻想郷を探すことができるってこと?」

 

「そうだねぇ、普通じゃ認識されないけど、大体そんな感じだね」

 

なるほど…

 

「例えばだけど、昨日明久が言った『かぐや姫』。あれも、言い伝えられたのはおとぎ話としてだろう?」

 

「うん、そうだね」

 

かぐや姫は有名なおとぎ話だと思う

 

「だけど、その話が本当だとしたら、どうなっていると思う?」

 

『かぐや姫』がおとぎ話じゃなくて本当の話だったとしたら…

 

「うーん…驚くかな?でも、妹紅が昨日言ってたよね?『幻想郷にかぐや姫がいる』って」

 

昨日、妹紅は僕にそう言ったはずだ

 

「そう、言った。でも、明久はおとぎ話としてしか知らないだろう?言い伝えられているとしても、その物語にはモデルがいる、みたいな感じで」

 

「…確かに」

 

確かに、童話『かぐや姫』は『竹取物語』という原文があって、そのモデルになったとされる人物がいる作り話だって、いろんな本に書いてあった

 

「でも、実際にそんなことが起こっていたら、いろいろとパニックになるだろう?だから、語り継いだ人はおとぎ話として事実を捻じ曲げ、隠したんだ。それによって、本当にあった話は作り話になった」

 

ふむふむ

 

「つまり、本当の出来事を知っているのは、当事者たちだけで、語り継がれたのは空想の産物である『かぐや姫』。つまり、本物は存在を忘れられたことによって、存在をまともに保つことができないんだ。だけど、幻想郷にある結界『博麗大結界』の内側は外の世界にとっての非常識の塊だから、存在を保つことができる…長くなったけど、伝わったか?」

 

「うーん…だいたいは…」

 

すごく難しい…

 

「まぁ、順応性を高めるんだ。あるがままを受け入れろ

短く言うと、幻想郷に外の世界の常識は通じないから、考えるよりも慣れろ」

 

「うん、わかったよ」

 

とりあえず、考えすぎないようにしよう。ここでは外の常識は通用しないというのはわかった

 

「ここからは幻想郷でのルールだけど、幻想郷の中では妖怪と人間の数は決まっているんだ」

 

「?決まっている?」

 

どういうことだろう

 

「んー…?決まっているというよりも、幻想郷ができるころから『人間の里』っていう幻想郷にある人の集落に住んでいる人間と、幻想郷の妖怪の数のバランスは保たれないといけない…って感じかな?」

 

「そういうことか。つまり、その『人間の里』に居る人が減りすぎると幻想郷の維持が難しくなる…?」

 

「そうそう、そんな感じ。だから、今の幻想郷は人間と一部の妖怪の友好関係はいい感じなんだよ」

 

なるほど…

 

「これによって妖怪が人を襲うことが少ないんだが…これで妖怪の力が少し弱くなってね。それに付け込んだように最近ある事件が起きたんだよ」

 

「ある事件?」

 

「そう、それが『吸血鬼異変』」

 

吸血鬼異変…?

 

「幻想郷の外から力のある妖怪…吸血鬼が幻想郷にやってきて、幻想郷の妖怪をたちまち部下にして幻想郷の支配をもくろんだってところだね」

 

「それって大丈夫だったの?」

 

「事件自体は解決したけど、これによって一部の妖怪たちが危機感を覚えたみたいで、幻想郷に新しいルールが生まれたんだ」

 

「新しいルール?」

 

「そう、それが『スペルカードルール』。これが今の幻想郷の戦い方だよ。これがそのルールの内容」

 

そう言って、妹紅が一枚の紙を渡してきた

 

 

 

-----スペルカードルール-----

 

・スペルカードとは自分の得意技に名前を付けたもので、使うときは宣言してから使う必要がある

 

・お互いカードの枚数は予め決闘前に掲示しなければならない

 

・手持ちカードがすべて破られると負けを認めなければいけない

 

・勝者は事前に決めた報酬以外は受け取らない。相手が掲示した報酬が気にらなければ決闘は断れる

 

・勝者は敗者の再戦の希望を、積極的に受けるようにする

 

・不慮の事故は覚悟しておく

 

----------------------------

 

「これは知り合いがざっとまとめたものなんだが、これによって妖怪が人間を襲っても不慮の事故以外で死人が出ることはないってわけだ」

 

「なるほど…」

 

「で、明久にはこのスペルカードルールでの戦い方を覚えてもらう」

 

「…えっ?待って、僕は普通の人間だよ!?」

 

ぼくが戦い方を覚える必要があるの!?

 

「大丈夫だ。明久には戦う力が眠ってるし、私がいつでも近くに居るとは限らないからな、自衛手段を持ってるのはいいことだ」

 

「ぐぬぬ…って、僕に戦う力があるってどういうこと!?」

 

「あぁ、それも説明してなかったな」

 

そうやって妹紅は忘れてたといいながら説明を始める

 

「明久がここに連れてこられた理由には明久の潜在能力がすごいものがあるんだって八雲紫が言ってたんだ」

 

「そうなの?」

 

知らなかった

 

「あぁ、幻想郷の能力的に言うと『学習能力を強化する程度の能力』。それから、スペルカードや弾幕を扱うために使う『霊力』は幻想郷でも高い方みたいだ」

 

「学習能力を…強化?」

 

どういうことだろう

 

「自覚はないかもしれないが…同世代の他の人から『勉強ができる』とか、『物分かりがいい』とか言われたことはあるか?」

 

「あるよ」

 

そういえば僕は小学校でよくそんなことを言われた

 

「つまりはそう言うことだ。能力によって明久の学習能力はかなり高い。そしてその能力は使い方次第でもっと強くなれるそうだ」

 

「そんな能力が…」

 

「ってことで、明久には今日から体と能力を鍛えてスペルカードルールで戦うようになってもらう。時間はかけてもいいから、焦らずやっていこう」

 

そういうことなら…やるしかないか

 

「わかったよ!」

 

こうして、僕の特訓と幻想郷での一日目が始まった




誤字脱字ありましたら、報告お願いします

自己解釈もあるので、少しおかしいところがあるかもしれません


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いざ人間の里へ

明久side

 

 

「明久、今から人間の里に行くぞ」

 

幻想郷に来て数日。妹紅の特訓でスペルカードルールも程度理解できた頃に妹紅は突然そう言った

 

「人間の里に?」

 

「あぁ、そろそろ食材だったりも買いに行きたいし、私の知り合いに明久の事を紹介しておこうと思ってね」

 

どうやら、先程のお昼ごはんで食材がそこそこなくなってきたようだ

ここは筍が取り放題で、ほぼ毎日筍だらけだったのだが、時期も時期なので筍は減ってきて、それ以外の食材は人間の里に買いに行かないといけないらしい

 

「ってことで、人間の里に行くよ」

 

「わかった!」

 

僕と妹紅はそんなやり取りをして家を出た

 

 

少年達移動中…

 

 

「ここが人間の里だ。迷いの竹林で迷わなくなったら一人でここに遊びに来るようにしてもいいぞ」

 

僕は妹紅の後ろを追いかけて人間の里に到着した

ちなみに、僕はまだ迷いの竹林で迷子になったりするので、妹紅はあまり僕を一人にしたくないようだ

 

「ここで私の知り合いが寺子屋をやってるんだ。今日は休みのはずだし、とりあえずそこに行こう」

 

妹紅の知り合いは寺子屋を経営してるらしい。外の世界では学校って呼んでるけど、幻想郷は明治時代から結界によって隔離されてることで色々と差異がある

 

「ここだよ。おーい、慧音ー。いるかー?」

 

寺子屋に到着した妹紅は、大声で叫んだ

 

「妹紅。あまり大声で叫ぶと迷惑だと何度言ったら…うん?そこの君は…」

 

「こいつは吉井明久。ちょっと訳があって私が預かることになった外来人だ」

 

「なにがどうなって外来人が迷いの竹林に…私は上白沢慧音。この寺子屋で教師をやってるよ。よろしく」

 

「吉井明久です。よろしくお願いします。慧音さん」

 

この女性は上白沢慧音さんと言うらしい

 

「それで妹紅、今日は何の用だい?」

 

「とりあえず、明久を紹介しておこうかなと。明久が迷いの竹林の道に慣れたら慧音の寺子屋に通わせてもいいなーっては思ったけど…明久ってどのくらい勉強できるんだ?」

 

「ハァ…知りもしないで通わせようとしていたのか…吉井君、今何歳だい?」

 

「12歳で、今年で13歳になります」

 

「だったら、問題を作ってくるから妹紅と待っていてくれ。どのくらい勉強ができるかだから難易度は少し難しめにするが、いいかな?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「わかった。少し待っててくれ。妹紅、待合室で一緒に待ってて」

 

「了解ー」

 

そう言って、慧音さんは寺子屋の中に戻っていき、僕は妹紅に連れられて寺子屋の待合室に向かった

 

 

数分後

 

 

「待たせたね。これを解いてくれ」

 

慧音さんが戻ってきて、僕に紙と鉛筆を渡してきた

 

「わかりました」

 

僕は紙と鉛筆を受け取り、問題を解き始める

 

 

さらに数分後

 

 

「出来ました」

 

僕はそう言って、慧音さんに紙を渡す

 

「思ったより早かったな。ふむ…」

 

慧音さんはそう言いながら採点を始めた

 

「…これは寺子屋には通わなくてもいいんじゃないか?そこそこ難しく作ったつもりが満点とは」

 

どうやら全問正解できていたようだ

 

「吉井君、君は既に勉強ができるし、この問題が全て解けるなら私が教える必要はないだろう」

 

「ありがとうございます?」

 

褒められたのかな?

 

「うーん、やっぱりかー」

 

妹紅は予想通りといった感じで声を上げた

 

「妹紅、やっぱりってどういうことだ?」

 

「八雲紫曰く、明久の能力は『学習能力を強化する程度の能力』らしくて、幻想郷に来てはっきりと覚醒したけど、外の世界でも潜在的に発動してたらしいんだよねー。能力の副作用的な感じで頭の回転も速いらしい」

 

「そういうことは早く言え!」

 

慧音さんが思い切り妹紅に頭突きをした。痛そうだ

 

「いたた…だったら、明久は幻想郷で勉強することはないね。幻想郷のこと以外は」

 

「そうだな…もしよければ、私が一人紹介しようか?そこに行けば、幻想郷についても学べるし、それ以外も学ぶことができると思うよ」

 

慧音さんは僕にそう言った

 

「じゃあ慧音、それは任せた。私は買い物をしてくる」

 

妹紅はそう言い残して寺子屋を出ていく

 

「全く…妹紅の方はいいようだが、君はどうする?」

 

「お願いします。幻想郷のことをもっと知りたいですし…」

 

「だったら決まりだな。ついてくるといい」

 

そう言って慧音さんは立ち上がる

 

「わかりました!」

 

僕も追いかけるようについていった

 

 

少年達移動中…

 

 

「ここだ。すみません、阿求はいますか?」

 

「こちらです。ついてきてください」

 

そう言ってたどり着いたのは、すごく大きなお屋敷だった

慧音さんは近くにいた使用人さん?に話しかけて道案内をしてもらう

僕はそれについていった

 

「阿求様、お客様がお見えです」

 

「入れてください」

 

使用人さんは扉の向こうに声をかけて、返事が返ってくる

 

「では、どうぞ」

 

使用人さんは扉を開けて、中に入るように促す

 

「失礼します」

 

「失礼します」

 

慧音さんがそう言って中に入るので、僕は真似して中に入る

中にいたのは、着物を着た僕と同じくらいの年齢(見た目)の少女だった

 

「貴女が訪ねてくるとは、どうかしましたか?っと…そちらの方は?」

 

「私の知り合いが預かることになった吉井明久です。どうやら外の世界から来たらしく、幻想郷について知りたいと」

 

「吉井明久です。よろしくお願いします」

 

「そうでしたか。私は稗田阿求、千年以上の歴史がある稗田家の現当主です」

 

少女は稗田阿求というらしい

それにしても、稗田…何か聞いたことがあるような…

 

「稗田…なんか聞いたことあるような…どの本だっけ…」

 

「吉井君?どうした?」

 

「うーん…千年以上前の本…古事記…稗田阿礼?」

 

そうだ、古事記の編集者の一人と言われてる人物が稗田阿礼…稗田だったような

 

「!?」

 

そう考えていて顔を上げると、慧音さんは何やら驚いたような顔で、阿求さんはなにやら面白いものを見るような顔でこちらを見た

 

「まさかこれだけでそこまでたどり着くとは…慧音が連れてくるわけです

貴方の予想通り、私は稗田阿礼の転生体で、九代目です。といっても、転生前の記憶があるかと言えばとぎれとぎれなのですが…」

 

まさかの僕の予想は当たりらしい

 

「ま、まさか予想が的中するなんて」

 

「それで、幻想郷について知りたいんでしたね。まだ書いてる途中ではありますが、九作目の幻想郷縁起と、過去の幻想郷縁起ならありますが、読みますか?」

 

「幻想郷縁起…?」

 

なんだろう。話の流れから幻想郷について書いてある本だとは思うけど

 

「簡単に言えば、幻想郷の記録だよ。歴代の御阿礼の子…阿求や転生前の阿求がその代で記録したものだ」

 

慧音さんが補足してくれたなるほど

 

「大まかに言えばその通りですね。幻想郷関係の本も複数あるので、読みたいだけ読んでください」

 

「ありがとうございます!」

 

「それと、あまり硬くならないでください。私が転生を繰り返しているとはいえ、今の私…稗田阿求は貴方と同じくらいしか生きてません、なので普通に友達感覚で接してください。そのほうが嬉しいです」

 

阿求からそんな申し出があった。どうやら僕は少し距離があるような話し方だったようだ

 

「うん、わかったよ阿求!」

 

「それでいいんです。では、こっちについてきてください」

 

阿求は少しうれしそうにそう言い、僕はそれについていく

 

「吉井君。私は先に寺子屋に戻っておくから、五時頃になったら寺子屋に戻ってきなさい。妹紅にはそう伝えておくから」

 

「わかりました!」

 

慧音さんの言葉を受け取り、僕は阿求の後ろをついていき、慧音さんと別れた

 

 

少年少女移動中…

 

 

「ここです。そうだ、彼は五時頃に寺子屋に戻るそうなので、そのぐらいになったら呼びに来てください」

 

「かしこまりました」

 

すごく大きな書斎に着くなり阿求は近くにいた使用人さんに声をかける

まだ昼頃なのにそう声をかけておくということは、かなりの量の本がるのだろう

 

「そうですね…とりあえず、今の幻想郷を知るには書いてる途中の幻想郷縁起の方がいいですね…」

 

そう言って、阿求は奥の方から巻物のような資料を持ってきた

 

「これは?」

 

「これは『幻想郷縁起』と言って、その代の御阿礼の子が書いている物です。いわば幻想郷の資料集のようなものですね」

 

「なるほど…」

 

感心したように幻想郷縁起を見つめる僕に、阿求は続けた

 

「私はまだこの体に転生して十年ほどしか経っていないので、まだまだこの量ですが、もう少し情報が集まれば、本として完成するわけです」

 

「すごい…これを全部阿求が…」

 

「といっても、今代の幻想郷縁起は今までの『妖怪から人を守る書物』というよりも『読み物』に近いものですが…」

 

「それでもすごいよ!いろんな場所だけじゃなくて、一部の妖怪や、妖怪の種類ごとの解説まで…」

 

かなりすごい…いろんな場所や妖怪の種類ごとの細かい設定まで…

 

「そういえば、明久は外の世界からやってきたといいましたね。外の世界について教えてくれませんか?」

 

「んー…僕もあまり詳しいわけじゃないけど、それでもいいなら」

 

 

そんな話をしながら、僕と阿求の時間は過ぎていった

 

 

数時間後

 

 

「阿求様、失礼します。五時になりましたのでお知らせに参りました」

 

書斎の扉が開き、使用人さんの声が聞こえる

 

「もうそんな時間でしたか」

 

「時間って過ぎるのが早いね~」

 

僕は最新の幻想郷縁起と、二代前までの幻想郷縁起を読み終え、ある程度幻想郷への理解を深めることができた

 

「明久、ここにはいつでも来てください。」

 

「えっ、いいの?」

 

「いいんです。友達なのですから、好きな時に来ていただいて」

 

友達…その言葉に、僕は少し嬉しさがあった。外の世界ではあまりできなかった存在…

 

「わかった!また来るね!」

 

「ええ。またいつか」

 

その言葉を最後に、僕は阿求と別れた

 

 

妹紅と合流して、竹林にある妹紅の家に帰り、ご飯の時に今日の出来事を妹紅に話た

少し不安だった幻想郷での生活も、悪くないのかもしれないと思いながら…




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登場、普通の魔法使い!

明久side

 

 

初めて人間の里に行ってから一ヵ月ほどが経ち、僕は迷いの竹林で迷うこともなくなってきて妹紅から最終試験的な感じで一人で人間の里におつかいに行ってこいとのことだった(六時までに帰ってきたら今後一人で自由に人間の里に行ってきていいと言われた)

 

「うん、何とかなったね。これなら一人でも大丈夫そうだ」

 

この一か月でだいぶ慣れたのか、意外と簡単に竹林を抜け出せた

ちなみに、現在は一時頃で人間の里を五時頃に出ると時間に間に合う計算だ

 

「さてと、まずは慧音さんのところに行くんだっけ」

 

妹紅に課せられたおつかいは二つ、まず慧音さんに会いに行くこと(これは信用していないわけではないが本当に一人で大丈夫だったかの証言にするため)、もう一つは一週間分の食材を買いに行くことだ

それさえ果たせば、空いた時間は何をしてもいいらしい

 

とりあえず僕は寺子屋に向かった

妹紅曰く今日は寺子屋が休みらしいし、とりあえずは行ってみよう

 

「慧音さん、いますか?」

 

「うん?誰かと思ったら明久じゃないか。妹紅はどうしたんだい?」

 

慧音さんはすぐに出てきて、僕が一人だったことに疑問を持ったようだ

もしかして妹紅、何も話してない?

 

「実は…」

 

僕は慧音さんに妹紅から言われたことを伝える

 

「なるほど、ここまで来れてるということは、一つ目の課題はクリアということかな?」

 

「だと思います」

 

「そうだ君は今、妹紅に修行をつけてもらっているんだったね。今、私の元教え子が人間の里に来ているみたいでね、稽古をつけるように聞いてみようか?少しは役に立つと思うんだが…」

 

「邪魔するぜ!」

 

「おや?噂をすれば…」

 

慧音さんの予想通り、誰かがやってきたようだ

 

「久しぶりだな、魔理沙。そっちから訪ねてくるとは珍しいね。ちょうどよかったお前を探しに行こうとしていたところだったんだ」

 

「私を探しに?ところで、そっちの奴は誰だ?」

 

「彼は吉井明久君だ。訳ありで私の知り合いのところに住んでいてね、魔理沙に彼の稽古をたまにはつけてもらおうかと思ってね」

 

「ほぉ?私と同じくらいの人間か、珍しいな。私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ!」

 

慧音さんが紹介しようとしていたらしい人だったみたいだ

…普通の魔法使いって、なんだ?

 

「初めまして、吉井明久です。よろしくお願いします」

 

「明久か。見たところ私と同じくらいだが、何歳だ?」

 

「12歳です」

 

「おぉ、私と同い年じゃないか!だったら、そんな堅苦しい話し方じゃなくて、もっと気軽に話してくれ!」

 

どうやら彼女は、なかなかフレンドリーな性格のようだ

 

「そう?だったら、改めてよろしく、魔理沙!」

 

「おう!…で、私に稽古を、だっけ?」

 

「ああ。私の知り合いの戦い方はどちらかと妖術寄りで、魔理沙に魔法での戦い方も教わるといいだろうと思ってね。彼は人間だが、魔法の知識を得るのも悪くないかと思ってね」

 

どうやら妹紅の妖術と違い、魔理沙は魔法で戦うらしく、魔理沙に魔法を教わる。それが慧音の狙いだったようだ

 

「まぁ、私でよかったら構わないが、明久の時間は大丈夫か?」

 

「うーん…今日は六時までに帰らないといけないから、五時にはここを出たくて、それで買い物もあるから…」

 

「買い物は私が代わりにしておこう。明久は魔理沙と一緒に行ってくるといい。ここに五時までに帰ってくると問題ないだろう」

 

慧音さんから意外な提案があった。確かに、その方法だったら少し長く時間が取れるだろう

 

「決まりだな!明久、行くぞ!」

 

「えっ、ちょっ、うわぁ!」

 

魔理沙は僕の手を取り、持っていた箒にまたがって空へと飛び上がった

 

「まずは魔法の森に住んでいる私の知り合いに明久を紹介して、私の家で魔法を教えてやるぜ!五時までには人間の里まで送ってやるから、安心しな!」

 

そう言って最初にたどり着いたのは、人間の里を出て少ししたところにある森の入り口にあるお店だっただった

 

「香霖ー!邪魔するぜー!」

 

寺子屋で初めて会った時のように大声をあげながらお店に入っていく魔理沙についていく

 

「まったく…そんなに大声で叫ばなくても聞こえてるよ。魔理沙、今日は何の用だい?

…って、見慣れない顔を連れてきたね」

 

お店の奥から出てきたのは眼鏡をかけた白髪の男性だった

 

「こいつは吉井明久、人間の里に行ったら慧音先生に稽古をつけてやってくれ!って言われて連れてきたんだ。私の家に行くからついでに香霖とアリスにも紹介しとこうと思ってな」

 

「魔理沙が彼に稽古ねぇ…まぁいいか。僕は森近霖之助、ここ香霖堂の店主をやっているよ。よろしく」

 

「吉井明久です、よろしくお願いします!」

 

どうやら森近霖之助さんというらしい。魔理沙が香霖って呼んでたけど、お店の名前をあだ名にしてるのかな?

 

「魔理沙が連れてきた割には行儀のいい子だね。魔理沙の影響で悪い子にならないか心配だ…」

 

「失礼な!そんなことしたら私が慧音先生に怒られるからそんなことには私がさせない!」

 

「彼女は怒ると怖いからね。ところで、突然なんでそんなことを言われたんだ?」

 

「なんか、明久は慧音先生の友人にお世話になってて、その人が妖術使いだから私が魔法を教えてやれって。私もよくわからん」

 

不思議がる霖之助さんに、魔理沙は慧音さんに言われたことを軽く説明した

 

「突然そんなことを頼まれるなんて、どう考えたって訳ありじゃないか…」

 

「うーん…慧音さんが魔理沙を紹介してくれたわけだし、一応説明しておくと僕、いわゆる外来人ってやつで…」

 

そういえば、慧音さんは魔理沙に僕のことを詳しく説明してなかったと思い、そう言った

 

「外の世界だって?それは完全に訳ありじゃないか…」

 

「それで、どうして修行を?まずは元の世界に帰ろうとするだろ?」

 

二人ともそれに疑問に思ったのか、そんな質問をしてくる

 

「ちょっと訳があって元の世界には帰りたくなくて…そしたら、一緒に住んでる人が『それなら戦い方を学ばないとここに居ると死ぬ』ってことで…」

 

「それで今に至るというわけか」

 

「なるほどなー任せろ!魔法の知識は私がばっちりつけてやるぜ!」

 

魔理沙は改めて僕に了解の返事をくれた

 

「僕に手伝えることはあまりないが、ここは見ての通りいろんなものを取り扱ってる道具屋だ。幻想郷では珍しい物も入荷してるからたまに見に来るといいよ」

 

「ありがとうございます!」

 

「香霖、邪魔したな!」

 

「お邪魔しました」

 

そう言って、僕たちはお店の外に出た

 

「さて、もう少し飛ぶから私の後ろに乗れ!」

 

魔理沙はそう言って箒の後ろに乗るよう言ってくる

 

「それが…さっきは言う暇がなかったんだけど、飛ぶ方法はわかってて…」

 

「何?」

 

僕は人間の里を飛び立つ前に言えなかったことを魔理沙に伝えると、不思議そうな返事をした

 

「僕が一緒に住んでる人が『人は飛び方を理解すれば意外と飛べるものだ』って言いながら飛び方を伝授されて…」

 

そう、僕は妹紅に空の飛び方を教えてもらったのだ。力の使い方とか、そういうのの加減で飛ぶことができるらしい

 

「そうだったのか!じゃあ、私の後ろをついて来い!」

 

流石幻想郷、魔理沙は特に戸惑うことなく、空へと飛び立つ

僕は慌てて後ろをついていった

 

森の奥の方へ飛んでいくと、白い洋館が見えてきて、魔理沙はそこへ降りていった

 

「アリスー、いるかー?」

 

「何よ大声出して…って、人間?」

 

洋館の入り口で魔理沙が叫ぶと、中から金髪の女性が出てきた

 

「人間の里に行ったら慧音先生にこいつの稽古を任されてな、今から家に行くところだったからついでに香霖とアリスに紹介しに来たんだ」

 

「吉井明久です。よろしくお願いします」

 

「魔理沙が魔法の教師をねぇ…私はアリス・マーガトロイド。ここに住んでいる魔法使いよ

よろしくね、明久」

 

アリスさんは魔法使いだそうだ。さっきの霖之助さんもどこかで見たことがあると思ったけど、阿求に見せてもらった幻想郷縁起にそんな名前が出てきた気がする

 

「とりあえず今日は明久を紹介しに来たんだ!私たちはそろそろ行くぜ、じゃあな!」

 

「あ、待ってよ!失礼しました!」

 

魔理沙はアリスさんにそう告げるとすぐに飛んで行ってしまった。僕は慌てて後を追う

 

「…彼って普通の人間よね?なんで飛んでるのかしら…」

 

アリスさんが何かつぶやいてた気がするけど、気のせいだろ

 

 

数分後

 

 

「ついたぜ!ここが私の家だ」

 

魔理沙の後を追ってたどり着いたのは、霧雨魔法店と書かれた看板の置いてある家だった

 

「ここが魔理沙の家…お邪魔します」

 

「それで、魔法を教えるんだったな。本を取ってくるから少し待っててほしいぜ」

 

魔理沙はそう言うと、奥の部屋へと入っていった

 

妹紅の家でも思ったが、周りに家があまりないから修行するには便利そうだ

 

「待たせたな、とりあえず初心者用の魔導書を持ってきたから、今日はこれを使って説明していくぜ」

 

こうして、魔理沙による魔法の授業が始まった

 

 

数時間後

 

 

「さて、そろそろ時間だな。今日はここまでだ!そろそろ慧音先生のところに戻った方がいいだろう」

 

「えっ、もうそんな時間?」

 

どうやら夢中になってる間にかなり時間が経過していたようだ

 

「それにしても、明久は吸収が早いな。これだったら、魔法使いくらいなら簡単になれるんじゃないか?」

 

「そう?でも、僕は人間を辞めるつもりは無いから、なるとしても魔理沙みたいに人間にとどまれるくらいかなー」

 

僕はまだ、人間を辞めるつもりは無い

 

「なるべくその方がいいぜ。さぁ、人間の里に戻るか!」

 

「うん!」

 

こうして、僕と魔理沙は人間の里に向かった

 

 

数分後

 

 

「二人とも、戻ってきたか。時間通りだな」

 

僕と魔理沙が寺子屋に降りると、慧音さんが外で待っていた

 

「慧音先生に怒られるのは勘弁だからな!それにしても、明久の吸収速度はとんでもなかったぜ。初心者用の魔導書の説明はほとんど終わっちまった」

 

「さすがは明久だな。魔理沙に頼んで正解だったよ

明久、これが頼まれていたものだ。そろそろ帰るといい」

 

「あ、ありがとうございます。慧音さん

魔理沙も、今日はありがとう。今日は楽しかったよ!」

 

慧音さんから荷物を受け取り、改めて二人に礼を言う

 

「私も楽しかったぜ!また遊ぼうな!」

 

「わかったよ!じゃあね!

慧音さんもまた今度!」

 

「ああ。また来なさい」

 

そう言って、僕は寺子屋を出た

 

 

数分後

 

 

僕は迷いの森に入り、妹紅に家にたどり着いた

 

「おかえり。時間も六時、間に合ったみたいだし、今度から修行のない日は人間の里に自由に言っていいよ」

 

「ありがとう!それでね、今日はこんなことがあったんだ!」

 

僕は妹紅に今日あったことをいろいろと話した

 

「魔法を習った、ねぇ。これで魔法の知識もある程度ついたってわけだ」

 

「うん!簡単な魔法だけど…」

 

「ま、明久には明久に合う戦い方があるはずだし、じっくりとその戦い方に磨きをかけるんだ。幻想郷にはまだまだいろんな奴がいるはずだからな」

 

「わかった!」

 

「じゃ、そろそろ飯にするか!」

 

 

そんなささやかな日常だけど、僕はこの日常が嫌いじゃない

外の世界ではもう得ることのできない日常…そんなことを心の奥底で考えながら時間は過ぎていくのだった




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不思議な貸本屋と山の仙人

一応、今回で序章は終了となります


明久side

 

妹紅に人間の里への行き来の許可をもらい、一か月ほど経った

妹紅との修行や、魔理沙の魔法の稽古を繰り返していくうちに、僕はどんどん強くなっていった(妹紅談)

 

今日は修行も何もなく、たまには人間の里でもウロウロしようかなと、人間の里に来ていた

ある程度眺め終わり、何も考えずに歩いていると、目の前に見知った顔がいることに気づいた

 

「阿求!」

 

「あら、明久じゃない。久しぶりね」

 

彼女は稗田阿求、僕が幻想郷に来た頃に出会った友達だ

 

「久しぶり~。今日は何もないから、人間の里のお店をいろいろ見てみようと思ったんだけど、阿求はどうしたの?」

 

「私は資料の作成のために借りてた本を返しに行くところよ」

 

本を返しに?貸本屋なんてあるんだ

 

「ここには貸本屋もあるの?」

 

「ええ。流石に稗田家だけにすべての本が集まってるわけじゃないから、ないものはその貸本屋で借りてるのよ。ちょうどそこよ」

 

「鈴奈庵…」

 

阿求が指さした場所には鈴奈庵と書かれたお店があった

たまに通りかけたときに、いろんな意味で少し変わった雰囲気を感じるお店だと思ったけど貸本屋だったなんて

 

「明久はこういうお店は初めて?」

 

「うん。今までは食料の買い出しとかでしか人間の里に来なかったから、それ以外の場所はあまり知らないかな…」

 

「なるほどね…とりあえず入りましょう」

 

僕と阿求は、のれんをくぐった

 

「いらっしゃいませ…って阿求と…誰?」

 

「ハァ、いくら片方の客が知り合いだからと言ってその態度はないでしょう、小鈴」

 

「いやぁ、阿求の顔が見えたからつい…で、そっちは本当に誰?」

 

「彼は私の友達の吉井明久。最近この近くに住み始めてて、たまたま会ったからここに案内してきたのよ」

 

「吉井明久です。よろしくお願いします!」

 

阿求の言葉に続けて、僕は自己紹介をした

 

「阿求の友達!?珍しい…私は本居小鈴。ここ鈴奈庵の店番をやってるよ、よろしく」

 

「失礼ね。とりあえずこれ、借りてた本よ」

 

「これで全部ね。中を確認するからちょっと待ってて」

 

そんな二人のやり取りを横目で見ながら、僕はお店の中を眺めた

 

「へぇ~。いろんな雑誌や経典…いろんな本がある」

 

「お、中を見ないである程度内容を知ってるなんて…もしかして、結構外来本を読んだことがある?」

 

「外来本?外の世界から来た本ってこと?」

 

「外来本が何なのかを知らないなんて、意外だねぇ。まぁ、大体そんな感じだね」

 

外来人みたいな感じで外から来た本を外来本って呼んでるのか。でも、確かにそうやる特別がつけやすいのかな?

 

「うわぁ、『ノストラダムスの大予言』なんてある。久しぶりに見るな…」

 

「おっ、明久はその本が何なのか知ってるんだ!外の世界から流れてきた預言書!実際は外れてるけど…」

 

知ってるも何も、ノストラダムスの大予言はそこそこ話題になっていた本だ。…と言っても、僕が生まれたころにはもう少しで予言した日だったから、話題性は薄いけど

 

「そういえば言ってなかったわね。明久は外の世界から来たそうよ」

 

阿求がそうやって口をはさんだ。そういえば言ってなかったや

 

「そうなの!?これはまた珍しい!ってことは、外の世界のものとか持ってない?」

 

僕が外の世界出身だと聞いて、小鈴のテンションが上がる

 

「うーん…残念だけど、持ってない…かな。外の世界の実家にはあるんだけど、家には帰りたくないし、持ってこれるかわからないし…」

 

「そっか~、それは残念」

 

それにしても、さっきから感じる不思議な感じ、この本かな?

 

「なんだかこの本、ちょっと変わった感じがするんだけど…」

 

「妖魔本にまで目をつけるなんて、明久はただものじゃないね!」

 

妖魔本…なんだろう

 

「なにそれ?」

 

「主に昔の妖怪が書いた本の事よ。その中には、ただの落書きだったり古典、魔導書だったりするみたいだけどね」

 

「だいたいは小鈴の言うとおりね。それにしても、普通の人間である明久が妖魔本の妖気を感じ取るなんて、敏感すぎないかしら?」

 

「うーん…日頃の特訓のしすぎとか?」

 

妹紅は妖術を使うし、そういうのがあるのかもしれない

 

「そういうものかしら…まぁ、そういうことにしておくわ」

 

「そういうこともあるんだね~…阿求、確認終わったよ!」

 

「そう。それならそろそろ帰るわ。時間もいい感じに過ぎたことだし」

 

そう言って阿求は時計を見る

もうすぐ五時だ…って五時

 

「うわっ、僕もそろそろ帰らなきゃ

二人とも、またね!」

 

「そう、じゃぁ、二人ともまた来てね~」

 

そう言って、僕は外へ出る

 

「今からならまだ六時までには間に合うかな…」

 

鈴奈庵で話し込んでいる間にかなりの時間が経っていた

妹紅は竹林と人間の里の行き来を認めてくれたが、門限は六時だ

それまでに帰れなかったら怒られる…!

 

「ちょっと、そこの君!」

 

そんなことを考えながら人間の里を出ようとすると、近くにいた右腕に包帯を巻いた女性に呼び止められた

どうしたんだろう

 

「こんな時間に一人で里の外へ向かおうだなんて何考えてるの!」

 

「いや、僕は家に帰ろうと…」

 

「人間が人間の里の外に住んでるわけないでしょう!ちょっとこっちに来なさい」

 

そう言って、女性は僕をつかんで里の中心へと引っ張る

この人、力が強い…!

 

「君、どこの人?」

 

「いやだから、僕の家は迷いの竹林の…!」

 

「だから人間が人間の里の外に住んでるわけないって言ってるでしょう!」

 

この人、僕の話を全然聞いてくれない…

 

「だったら、寺子屋の慧音先生が僕のことを知ってるんで、とりあえずそこに行ってください!」

 

「寺子屋?まぁいいわ。寺子屋に行けばいいのね」

 

とりあえず慧音さんに事情を説明してもらおう

 

「外が騒がしいと思ったら、明久か…また珍しい人と一緒に居るね」

 

そう言いながら、寺子屋の中から慧音さんが出てきた

 

「助けて慧音さん!この人が家に帰してくれない!」

 

「失礼ね、私はこんな時間に里の外に出ようとした人間を保護しただけよ」

 

「あー…山の仙人よ、その子の言ってることは本当だ。迷いの竹林に私の知り合いがいてな、そこに住んでいるんだ」

 

「…えっ」

 

どうやら、ようやく理解してくれたようだ

 

「実はな…」

 

 

先生説明中…

 

 

「本っ当にごめんなさい!」

 

慧音さんの説得のおかげで解放された僕は、目の前の女性に謝られていた

 

「いえいえ、わかってもらえたなら大丈夫です!」

 

「自己紹介がまだだったわね。私は茨木華扇、山に住んでいる仙人よ。茨華仙共呼ばれているわ」

 

「僕は吉井明久です。よろしくお願いします、華扇さん」

 

「私のことは華扇でいいわ。気軽に呼んでちょうだい」

 

「ところで明久、時間は大丈夫かい?もうすぐ六時だが…」

 

えっ、それはまずい

 

「大丈夫じゃない…」

 

「本当にごめんなさい!私もいっしょに行って謝るわ。今回は完全に私が悪いんだし」

 

「私もいっしょに行こう。一応、第三者が居るのもいいだろう」

 

大丈夫かな…妹紅、怒ってないかな…

そんな不安を抱きながら僕たち三人は人間の里を出た

 

 

少年達移動中…

 

 

「ただいまー…」

 

「…明久、今何時だと思っているんだ?私は六時までには帰るようにといつも言っているよな?」

 

うっ…すごく怒ってる

 

「ごめんなさいっ!彼を怒らないで上げてください。私のせいです!」

 

僕の後ろにいた華扇が妹紅に対して頭を下げる

 

「…あんた誰だ?」

 

「まぁまて、妹紅。今から事情を説明するから、怒るのはその後でも遅くはないだろう」

 

「はぁ、慧音まで居るってことは、ほんとに何かあったんだな…」

 

「実は…」

 

妹紅は少し落ち着いたようで、僕は説明を始めた

 

 

少年説明中…

 

 

「明久が悪くないのはわかった。仙人も、明久の事をよくわかってなかったんなら仕方がない。今回は仕方ないということにしておくけど、次はないからな!私がどれだけ心配したと思ったんだ!」

 

「…ごめん」

 

どうやらかなり心配をかけていたようだ

 

「…妹紅も保護者代わりと言っていたが、これは完全に保護者だな(ボソッ)」

 

慧音さんから何か聞こえたような気がしたけど、気のせいだろう

 

「とりあえず、時間も遅いし、慧音たちもご飯を食べてく?」

 

「そうだな。私はお邪魔しよう」

 

「私は遠慮しておくわ。私のせいで心配させておいて一緒にご飯は…ちょっと気まずいから」

 

そういうと、華扇は家の外に出ていこうとする…って、一人で大丈夫だろうか

 

「華扇、一人で大丈夫?」

 

「私を誰だと思ってるの?仙人よ?」

 

そういうと、華扇は家を出て去って行った

 

「…大丈夫かな?」

 

「まぁ、迷ったら泣きついてくるだろう、放っておいてもいいんじゃないか?」

 

「山の仙人、茨華仙は動物と話せるという噂があるから、もし迷っても動物に聞いたりするだろうし、問題ないさ」

 

うーん、そんなものかな?

 

そんなことを思いながら、僕たちは夕食にした

 

途中、お酒に酔った妹紅が心配したぞと泣きついてきて大変だったけどそれだけ心配してくれたのだろう。心配させないためにも、しっかりしないと

 

 

そして、およそ一か月後…幻想郷全体を、紅い霧が覆う僕にとっての初めての異変が発生するのだが、その時の僕は、そんなことが起きて心配をかけるなんて思ってもいないのだが…




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終わり方が相変わらず雑ですが、これで序章終了です

まだ霊夢が出てないじゃん!と思うかもしれませんが、霊夢が出るタイミングは紅霧異変が発生して、その時にあんた誰!みたいな感じにしても面白いなと思い、まだ登場させてません
現時点での明久の強さは、最低限の強さ、伸びしろに期待といった感じです

次回からは紅霧異変!と行きたいところですが、序章とはいえ一章が終了したため、明日からは一旦バカテス側の物語、清涼祭編に入ります
なので、清涼祭がどれくらいで終わるかわかりませんが、紅霧異変は一か月ほどお待ちください(話数次第なので、半月ほどかもしれませんが…)


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紅霧異変の章
プロローグ


お久しぶりです
本日から紅霧異変に入ります
…と言ってもプロローグなので短いですが…それでは、どうぞ!


明久side

 

 

幻想郷にやってきて数ヶ月が経ち、季節は夏になっていた

 

「明久、買い物に行ってきてくれ」

 

もはや日常と化した言葉が妹紅から出る

妹紅がおつかいを頼むのは基本的にお昼ご飯が終わった頃で、今日もその時間だ

 

「わかったよ。買ってくるのはいつもの?」

 

妹紅がこうやって頼むのは、大抵が食材が切れた時で、慣れたものだ

 

「ああ。それと、最近おかしな雰囲気があるから、気をつけるんだぞ。近いうちに何かが起こるかもしれない。霧も濃くて天気はあまりよくないし…」

 

妹紅が言うには、ここ数日で大きな力が感じ取られるらしい

もしかしたら、大きな異変が発生するかもしれないということだ

 

「わかったよ!それじゃ、行ってきます!」

 

僕はそう言って、家を出た

妹紅の忠告をあまり重く受け止めずに、軽い気持ちで…

 

 

少年移動中…

 

迷いの竹林にもだいぶ慣れて、人間の里に向かう

人間の里へのおつかいは、基本的に寺子屋に行って慧音さんに挨拶をすることから始めるのがいつもの事となっていて、僕はいつも通り寺子屋に来ていた

 

「明久か。この時間ということは、いつものお使いか?」

 

「はい、いつも通りです」

 

「そうか。気をつけて行ってくるんだぞ」

 

「分かってます!」

 

そう言って僕は寺子屋を出ると、そこに見慣れた姿があった

 

「魔理沙?」

 

「お、明久!」

 

そこに居たのは霧雨魔理沙、普通の魔法使いと名乗っている人間だ

そして、僕の魔法の師匠でもある

 

「魔理沙がここに居るなんて珍しいね。何かあったの?」

 

「買い物をしに来たんだ。そしたら明久っぽい気配を感じたから、こっちに来た」

 

どうやら魔理沙は、買い物ついでに僕が寺子屋に居ることに気づいてここへ来たようだ

そこへ慧音さんもやってきた

 

「明久がまだ外にいると思ったら、魔理沙か」

 

「慧音先生、こんにちはだぜ」

 

出てきた慧音さんに、魔理沙が挨拶をする

そんな感じで話をしていると、霧が一層濃くなっていった

 

「あれ?霧が濃くなっていってない?」

 

「…この霧、普通のきりじゃないな。濃くなったことで分かったが…わずかに妖力を感じる」

 

「妖力だって!?ってことは、妖怪の仕業だな!この霧雨魔理沙がとっちめてやるぜ!」

 

慧音さんの言葉に魔理沙が食いつき、箒にまたがって空へと飛ぼうとした

 

 

僕の腕を掴んで

 

 

「さぁ、行くぞ明久!」

 

「えっ、ちょっ、どういうこと!?」

 

「結構鍛えてやったんだ。後は実践あるのみ!この異変を解決しに行く!」

 

「明久!」

 

「おぉっと、これは…?」

 

魔理沙につかまれて飛び立った僕に、慧音さんが何かを投げてきた

 

「そうなった魔理沙は止められないから、それを渡しておく。何度か見せた私のスペルカードだ。明久なら使いこなせるだろう。妹紅には私が伝えておくから…生きて帰って来いよ」

 

「…はい!」

 

「安心しろ、明久は私が絶対死なせないからな!」

 

こうして魔理沙はスピードを上げる

 

「そうだ、香霖からこれを預かってたんだ」

 

人間の里を抜けたころに、魔理沙が僕にナイフくらいの大きさの木刀(?)を渡してくる

 

「これは?」

 

「みての通り木刀らしいが、力の伝達効率?を上げてくれるらしい。まぁ、私は前も見せた『ミニ八卦炉』で『マスタースパーク』を使ってるんだが、明久の場合それをベースにして『マスタースパーク』を使うって感じにするのがいいんじゃないか?ってことだと思うぜ」

 

『ミニ八卦炉』とは、魔理沙の持つマジックアイテムの一つで、小さいけどとんでもない火力が出るアイテムだ

そしてその『ミニ八卦炉』を用いた魔理沙の十八番が『マスタースパーク』である

僕も真似すればできないこともないが、木の棒などの先端に霊力を集めて砲撃のように撃ち出す感覚だったので、どうも発動までに時間がかかる

恐らく、それを知った霖之助さんが作ってくれたのだろう。ありがたい

 

「それは…今度お礼を言いに行かないとね」

 

「だな。さて、こっちの方に行くと霧が濃くなっているから、多分こっちだろうな。ここからは何が起こるかわからないから、気を引き締めておけよ?」

 

「…わかった」

 

 

これが、僕の初めて体験する異変解決の始まりだった




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ということで紅霧異変のプロローグになります

始まり方が少し雑ですが、明久を介入させるためとなるとこうするしか…

次回からは戦闘が多少は入る…はず


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博麗の巫女との遭遇

明久side

 

 

僕と魔理沙は異変の原因を探るべく、濃い霧の発生源へと向かっていた

 

「霧はこの湖の方から発生してるみたいだぜ」

 

「ってことは…この湖の奥に何かがあるってこと…?」

 

たどり着いて目の前に広がるのは、大きな湖。霧で視界が悪いからか元からなのかわからないけど、かなり大きく見える

 

「とりあえずまっすぐ行ってみるぜ!」

 

「わかった、行こう!」

 

魔理沙がそう言って、僕達は湖の中心の方へ向かって飛んでいく

 

「うーん…何もないね…」

 

「霧で視界が悪いからそれもうっとおしいぜ」

 

湖を少し飛び回ったけど、何も見つけることができない

…ここじゃないのかなぁ…?

 

 

ドオォォン!

 

 

そんなことを考えると、違う方角から大きな音が聞こえてきた

 

「この音…そしてこの感じ…そうか、あいつも来てたのか。明久、こっちだ!」

 

「わかった!」

 

魔理沙はその音と少し感じ取れた霊力でそこに誰がいたのか感じ取ったようで、その方角に向かって飛び立つ

僕は慌ててそれを追いかけた

 

そこからしばらくすると、湖の畔に大きな建物の陰と、その入り口に二人の人(?)を見つけた

片方は勝負に負けたのか倒れている

 

「霊夢、やっぱり来てたのか!どおりでこの辺に居るはずの妖精とかがいないと思ったぜ」

 

「ん?あぁ、魔理沙ね。それと…」

 

「こっちは吉井明久。私の弟子の人間だぜ」

 

「よ、吉井明久です!」

 

魔理沙に霊夢と呼ばれた少女は、赤と白の巫女服を身にまとっていて、頭には大きなリボンをつけていた

 

「私は博麗霊夢よ。博麗神社で巫女をしてるわ

…って、人間!?ちょっと魔理沙!なんで普通の人間なんて連れてきてるのよ!?殺す気!?」

 

「そ、それはだな、そろそろ明久にも実戦経験を積ませた方がいいと思ってだな…」

 

霊夢の気迫に圧されて少し詰まりながら説明する魔理沙

まぁ、そうなるだろう

 

「アンタねぇ…はぁ…明久は私と一緒に行動しなさい?この魔理沙(バカ)と一緒に行動したら死にかねないわ」

 

「おい霊夢!バカとはなんだバカとは!」

 

「バカに決まってんでしょ!鍛えてるとはいえ、いきなり実戦経験なんて!」

 

「二人とも落ち着いて!とにかく、異変を止めないと!」

 

この二人…このまま放ってたら止まらないよね…

 

「わかったわ、さぁ行くわよ!」

 

「おま…明久もそらすなよ!」

 

「二人ともこのままだとそれどころじゃなかったでしょ…」

 

うん、やっぱり止めて正解だった

二人は言い合いを止めて建物の中に入っていく

 

「…もしかしたらだけどこの館、空間を操作してあるな?

一階から入ったはずなのに、ここはたぶん地下だ」

 

建物に入ると、魔理沙がそう呟く

そういうものって、感知できるものなのだろうか?

 

「…確かに、そのようね。入り口から入ったはずなのに、後ろに扉がないわ」

 

魔理沙の言葉に後ろを振り向きながら霊夢がそう続ける

確かに、さっき入ったはずの扉がない

これはもう、先に進む以外の選択肢は無くなった

 

「さぁ、行くわよ。特に明久は、気を引き締めてね」

 

霊夢が僕の方を見ながら、そう告げてくる

 

「…うん!」

 

僕の返事と同時に、僕達は先へと進む

しばらく歩いても廊下のままだ

 

「どうなってるのよこの館、外から見た時はこんなに広くなかったのに…」

 

「それも入り口から入ったのに地下にたどり着いたのと同じだぜ。館の内側を広くしてあるんだろう」

 

「…ってことは、それだけのことができる能力の持ち主がいるってことだね」

 

凄く広く感じる。この館の人はそれだけのことができるのか

 

「能力で思い出したわ。明久は能力を持ってるの?」

 

「うん。『学習能力を強化する程度の能力』って言うんだって」

 

霊夢が質問をしてきたから、僕は素直に返す

 

「『学習能力』、ねぇ。役に立つの?それ」

 

「明久の能力の根本はそこじゃないぜ、霊夢。明久にいろいろ教えて二ヵ月ほどしか経ってないんだが、私の魔法もかなり習得したし、純粋に霊力が多いんだ。タイプ的には『幽香』に近いな」

 

「『幽香』に似たタイプ…まぁいいわ。とりあえず気をつけなさい。『スペルカードルール』とはいえ、当たりどころが悪ければ死ぬし、相手が乗ってくるかもわからないわ」

 

魔理沙から僕の能力について聞いた霊夢は、僕に改めて注意をしてくる

確かに、比較的平和な『スペルカードルール』とはいえ、相手がそれに乗ってなかったら意味がないからね…

 

「さぁ、黒幕かはわからないけど、最初の部屋よ!二人とも、覚悟しなさい!」

 

「「うん(ああ)」」

 

そういって扉を開ける霊夢

そこにあったのは、とても大きな書斎だった

 

初めての戦闘は近い…




誤字脱字ありましたら、報告お願いします

すみません、戦闘入れてないです

次回こそは戦闘を入れます

そして風見幽香の名前は出しただけで、まだまだしばらく出てきません

また、紅魔館に入ると突然地下というのも捏造設定です(というか、原作でも紅魔館に入ると突然、地下にあるはずの図書館スタートっていったいどういう…)


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紅魔館に住む魔女

明久side

 

 

赤い舘に入った僕達が最初に辿り着いたのは、大きな書斎だった

 

「凄い本の量…」

 

「本当だな、これだったら一冊くらい盗んでもバレないんじゃないか?」

 

いや、盗んじゃダメだからね?

 

「二人とも気をつけて!誰かいる…」

 

書斎の大きさに漠然としていた僕と魔理沙に、霊夢が声をかける

…どうやら気が抜けてたみたいだ

 

 

「どうやらネズミが三匹迷い込んだみたいね…そこに居るのはわかってるわ。出てきなさい」

 

 

そして、どこからか僕達に向かって声をかけられる

どうやら既にバレていたみたいだ

 

「霊夢、どうする?」

 

「…行くしかないようね…人数もバレてるってことは、不意討ちも通用しにくいでしょうし…」

 

僕達は話し合って、声がした方へと出ていく

 

「その見た目…一人は博麗の巫女ね。あとの二人は…知らないわ」

 

そうやって言ってくるのは、紫色の髪に、全体的に紫色の服装の女性だった

 

「その言い方だと知ってるようね。私は博麗霊夢。異変解決の専門家よ!さぁ、観念して黒幕を出しなさい!」

 

霊夢はそのまま相手に向かってそうやって宣言する

ある意味悪役みたいだ

 

「…レミィに会わせるわけにはいかないわ。貴女達はここで倒す!」

 

そう言いながら、相手の女性は魔導書を取り出した

 

「そういえば、自己紹介がまだだったわね。そんなものは必要ないでしょうけど…

私はパチュリー・ノーレッジ。ここ、紅魔館に住む魔法使いよ」

 

そうやってパチュリーさんは自己紹介をする

…意外と律儀なのだろうか?それとも天然なのかな?

 

「霊夢はさっき自己紹介したから、今度は私達だな!私の名前は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ!そしてこっちが吉井明久。私の弟子だ!」

 

「吉井明久です!」

 

そうして魔理沙も自己紹介をしながらスペルカードを取り出す

 

「…貴女達はどうでもいいわ。魔法を使う人間ごときが、本物の魔法使いに勝てるなんて思わないことね!火符『アグニシャイン』!」

 

「それはどうかな?人間だって進化してるんだぜ!見せてやる、これが人間の力の結晶だ!行くぞ明久!魔符『ミルキーウェイ』!」

 

「悪いですけど、こっちも異変解決がかかってるので…一気に決めさせてもらいます!魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 

パチュリーさんがスペルカードを宣言し、魔理沙の合図と同時に、僕と魔理沙もスペルカードを宣言する

 

パチュリーさんからはあまり規則性のない動きの炎の弾幕が、僕と魔理沙からは星状のカラフルな弾幕が派手に、そして規則性をもって飛び出る

 

だけど、忘れてはいけない。これだけのやり取りをしていたけど、僕達の味方はもう一人いる

僕達の攻撃は、その味方を少し隠すというのも含んでいる

 

「悪いけど、こっちは三人いるの。さっさと通してもらうわよ!霊符『夢想封印』!」

 

パチュリーさんの背後に回り込んだ霊夢が、スペルカードを宣言して色とりどりの光弾を撃ち込む

 

「そんなことだろうと思ったわ。水&木符『ウォーターエルフ』!」

 

パチュリーさんはそれを呼んでいたようで、焦らずに新たな全方位スペルを宣言し、僕たち三人のスペルカードを相殺し始める

ぐっ…かなり自信があったみたいだけど、本当に強い…

 

「おっと、明久、このくらいで焦るなよ?焦らず、冷静にだ。そして、弾幕はパワーだぜ!さっきの攻撃が防げても、この攻撃は防げるかな?恋符『マスタースパーク』!!」

 

魔理沙は僕に声をかけて、帽子にしまっていたミニ八卦炉を取り出してパチュリーさんに向けて構える

そして、魔理沙の十八番であるスペルカードを宣言する

 

「っ!なんて…威力…私の魔法が押されてる…!?きゃぁっ!」

 

パチュリーさんは魔理沙の攻撃を避けるのではなく相殺しようとして被弾してしまう。そのまま落下して、気絶した

 

「よしっ!私達の勝利だぜ!」

 

魔理沙は僕の方を向いてピースサインを作る

 

「さっさと次に向かいましょう。ここは薄暗くて埃っぽいから移動したいわ」

 

霊夢はマイペースに次へ行こうと促す

 

「そうだね、先を急ごう!」

 

そうして僕達三人は先に進んだ

 

またしばらく歩くことしばらくして、階段を見つけた

 

「うーん…地下に行く階段と上に行く階段かぁ…どうする?」

 

「私は上に行くわ。黒幕はたぶん上にいるでしょう」

 

「お、霊夢の勘か?だったら上だろうな。だが私はあえて地下に向かうぜ。ここからは別行動だな。ここに入る前に決めたから、明久は霊夢と行動してくれ」

 

霊夢の言葉を聞いて、魔理沙は僕にそう言ってきた

 

「わかったよ。お互い無事でまた会おう!」

 

「おう!」

 

魔理沙はそう言うと地下に向かって行った

 

「じゃあ、私達は上に向かいましょう」

 

「うん、わかった」

 

僕と霊夢は上に向かう階段を歩いていく

 

 

ここで別れて行動したことで、運命は大きく変わるのだった…




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相変わらずの駄文ですみません…


それと、『プロローグ』で慧音が明久にスペルカードを渡してましたが、アレはお守り的感覚で渡してます。実際に渡したからと言ってスペルカードが使えるのではなく、明久は再現可能なので使えます(そのスペルカードは今後使う予定です)


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時の奇術師

明久side

 

 

異変解決を目指して行動する僕、魔理沙、霊夢はこの異変の黒幕が居ると思われる大きな館、ここに住んでいる人曰く『紅魔館』に来ていた

 

紅魔館の中に入るなり、地下へと転送された僕達は奥へと進んでいった

そこにあったのは大きな書斎と、一人の魔法使い、『パチュリー・ノーレッジ』だった

パチュリーさんと戦闘になるもなんとか勝った僕達は、先を急ぐ…

 

そして進んで見えてきたのは上の階に続く階段と、地下へと続く階段だった

 

魔理沙は下に、僕と霊夢は上の階に進むために、別れて行動するのだった…

 

 

「そいうえば、明久はどこに住んでるの?」

 

階段を昇りながら、霊夢がそうやって質問をしてきた

そういえば、ここ数ヵ月幻想郷で過ごしてわかったことだけど、妹紅はあまり他の人との交流をしようとしない。これは…妹紅のことを伏せて伝えることを決めた

 

「迷いの竹林に住んでるんだけど、わかる?」

 

「迷いの竹林!?あそこ…人間が住める場所じゃないでしょ…」

 

霊夢はそうやって驚愕する

…まぁ、普通の反応だよね

 

「あはは…いろいろあってね…」

 

詳しい事情はここで話すようなことじゃないだろうと思い、僕は苦笑いして誤魔化した

 

「っと、着いたみたいね」

 

そうやって話しているうちに、僕達はエントランスのような場所に出た

とても広い

 

 

「ここまでくるなんて、流石は博麗の巫女といったところかしら?」

 

 

そして、エントランスの上の方から、僕達へと声がかけられる

 

「っ!誰!?」

 

「私の名前は十六夜咲夜。ここ紅魔館でメイド長をしています---」

 

突然の声に霊夢は警戒する

 

「---そして、貴女達にはここで消えてもらいます」

 

「っ!!」

 

そして、先程の声の主は突然僕達の目の前に現れて、ナイフを投擲してくる

ぎりぎりで回避する僕と霊夢。一体どうなってるんだ?さっきまで誰もいなかったのに、突然目の前に現れるなんて…

 

「あら、外してしまったわ。意外とやるのね

興味ないけど、名前くらいは聞いておきましょうか」

 

目の前の人物、十六夜咲夜は銀のナイフを構えながら僕達に名前を問う

 

「博麗霊夢、知っての通り博麗の巫女よ!」

 

「…吉井明久」

 

僕と霊夢は小さな木刀とお札を構える

 

「そうですか。では、さようなら…幻在『クロックコープス』!」

 

咲夜さんはスペルカードを宣言すると、米粒弾をばらまいてくる

 

「その程度の弾幕、敵じゃ---

 

---ないわ…って、何よこれ!」

 

霊夢がそう言っていると、突然目の前に無数のナイフが出現する

僕と霊夢は迫りくるナイフを弾き、回避する

だが、そうしているうちにもナイフは増える

 

「っ…回避する場所が制限されて…って、うわっ!」

 

僕は回避に集中していると、背中に何かが当たる

 

「あんた、私の回避の邪魔しないの!」

 

どうやら霊夢だったようで、少し怒り気味の声が後ろから聞こえてくる

 

「っご、ごめん!霊夢!少しだけ時間を稼いでもらっていい?どう攻略すればいいか、頭で整理するから!」

 

一旦、考えを整理しておきたい。どうすればこれを打ち破れるか…

 

「仕方ないわね!少しの間よ!夢符『二重結界』!」

 

霊夢はスペルカードを宣言する。僕と霊夢を中心に一枚の結界ができて、そこから少し離れた場所にもう一枚の結界が張られる

霊夢は結界に向かってお札を投げて、お札が一枚目の結界に向かって投げると、一枚目の結界を通過したお札は二枚目の結界から出てきて、一枚目の結界に向かって飛ぶ

そして、二枚目の結界から一枚目の結界に向けて飛ぶお札が一枚目の結界を通過すると、今度は二枚目の結界から外に向かって飛んでいく。そして、そのお札は次々とナイフや米粒弾を打ち払う

 

…空間がゆがんでいるのだろうか?原理がわからない

 

…っと、こんなことを考えてる場合じゃない。せっかく霊夢が時間を稼いでくれているんだ。今のうちに対策を考えないと…

咲夜さんはとても速いのか、それとも瞬間移動をしているかがわからない。能力がわからないから何とも言えないけど…

 

そして、ふと正面を見ると、咲夜さんの姿が見える

 

…あれ、咲夜さんの服ってあんなに破れてたっけ?

最初はもっときれいな服装だったと思うけど、今はメイド服のスカート部分が少し破れてるような…

 

…ということは、咲夜さんは瞬間移動しているんじゃなくて高速で移動をしている…?

だったら…

 

「霊夢、敵の動きを封じるスペルカードってある?」

 

僕は霊夢に声をかけた

 

「あるけど…もしかして、攻略法が見つかったの?」

 

「多分…動きさえ封じれば、何とかなるはず…」

 

僕は霊夢に、僕の考えを耳打ちした

 

「…なるほど、そういうことね。わかったわ!あんたの推測が正しいことにかけてやろうじゃない!夢符『封魔陣』!」

 

霊夢は二枚のスペルカードを宣言し、全方向に向かってお札を飛ばす

 

「…まだ倒れませんか、しつこいですね。幻世『ザ・ワールド』!」

 

咲夜さんも二枚目のスペルカードを宣言して、ナイフを飛ばしてきた

さっきのナイフは規則性があったけど、今回のナイフには規則性がないように感じる

 

そして、霊夢が拘束するのが役目なら、僕の役目は弾幕を相殺することだ

 

「その弾幕、綺麗に撃ち落としてあげます!国符『三種の神器 玉』!」

 

僕は慧音さんに教えてもらったスペルカードを宣言した

三種の神器の玉とは八尺瓊勾玉のことで、このスペルカードは慧音さんが寺子屋の教材としてたまに使っているスペルカードだ。慧音さん曰く、慧音さんのスペルカードは成り立ちなど、歴史を知れば扱えるらしい

 

こうして、僕は攻撃を弾き続ける

 

「私の攻撃を弾くだけでも、意味のない攻撃をしても結果は同じです---

 

 

---って、これは…!動きが…封じられて…!」

 

そして、咲夜さんの動きが止まった。どうやら成功したようだ

 

「…どうやら何とかなったようね。私達の目的は、最初からあんたの動きを止めること!あんたの動きを封じるためのお札を私のスペルに混ぜて飛ばしていたのよ!」

 

そう、僕達の最初の目的は咲夜さんの動きを止めるために行っていたのだ

 

「これでとどめです!恋符『マスタースパーク』!」

 

僕は木刀を咲夜さんに向けてスペルカードを宣言する

木刀の先端に力を集中させて、一気に放出する

 

「っ…きゃぁっ!」

 

僕の放ったマスタースパークは咲夜さんに命中し、咲夜さんは壁に激突して気を失った

 

「ふぅ、なんとかなったわね。あんた、結構やるじゃない」

 

「ありがとう。霊夢もすごいよ!」

 

「当り前よ。さぁ、こんなに強い奴がいたし、そろそろ黒幕の場所にたどり着くはずよ!」

 

「うん!頑張ろう!」

 

僕達は先へと進んでいく

 

この異変の黒幕との対面まで、あと少し…




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紅魔館の主

すみません、少し遅れました

そして、異変の黒幕戦なのに短いです…


明久side

 

 

紅魔館のエントランス部分で『十六夜咲夜』を撃破した僕と霊夢は、黒幕の居る場所を目指していたーーー

 

「多分こっちね」

 

ーーー霊夢の勘を頼りに

ここにきている間に聞いたことだけど、霊夢の勘は結構当たるらしい

 

霊夢について行って辿り着いたのは、いかにもな雰囲気を出している扉の前だった

 

「…ここよ。この扉の奥から、とんでもない気配を感じるわ

明久は不味いと思ったらとにかく回避に専念しなさい。ただでさえ実戦経験の少ない人間がこの重圧の中、まともでいられ続けるのは難しいと思うわ。わかった?」

 

「…わかった」

 

確かに、なんだか重圧のようなものを感じる…

 

「さぁ、行くわよ!」

 

霊夢はそう言いながら、扉を開いた

 

 

「あら…珍しい客ね」

 

 

そこにいたのは、翼の生えた一人の少女

…いや、普通の少女じゃない。扉越しでも感じたとてつもない重圧は、この少女から出ている

 

「博麗の巫女と普通の人間ね?ここまで来るなんて、何の用かしら?」

 

「アンタが邪魔だから、退治しに来たのよ!さぁ、覚悟はできてる?」

 

そう言いながらにらみ合う二人。空気がなんだかピリピリしている

 

「突然やってきて迷惑だなんて、随分と横暴な巫女ね。ここは私の家よ?」

 

「そんなことは関係ないわ!異変の黒幕なら退治するだけよ!」

 

霊夢が少女に向けてお祓い棒を向ける

 

「博麗の巫女と言えど、所詮は人間!この誇り高き吸血鬼、レミリア・スカーレットには敵わないわ!」

 

少女---レミリアも威圧するように先頭の態勢に入った

…僕はこの重圧の中、立っているのが精一杯だ

 

「こんなに月も紅いから本気で殺すわよ」

 

「こんなに月も紅いのに---」

 

「楽しい夜になりそうね」

 

「---永い夜になりそうね」

 

そう言いながら、霊夢とレミリアが動き出し、弾幕を展開する

僕も必死に足を動かし、弾幕を撃ち出す

 

「さぁ、我が弾幕の前に散りなさい!天罰『スターオブダビデ』!」

 

先にスペルカードを宣言したのは、レミリアだった

レミリアを中心にレーザー弾と、輪っかのように並んだ丸弾を放ってくる

僕は木刀で弾きながら、霊夢に言われた通り必死に回避行動をとる

 

「…明久の方は…やっぱりここじゃ無理そうね(ボソッ)。仕方ない、早めに終わらせてもらうわ!霊符『夢想封印』!」

 

霊夢は僕の方を見ながら何かを呟き、パチュリーさんを相手に使っていたスペルカードを使う

色とりどりの光弾はレミリアのレーザーを打ち消しながら、レミリアに迫る

 

「流石は博麗の巫女、なかなかやるようね。でも、そっちのお荷物の人間をかばいながらじゃ、厳しいんじゃない?冥符『紅色の冥界』!」

 

レミリアはそう言いながら、二枚目のスペルカードを宣言する

米粒弾がレミリアを中心に回転しながら打ち出される

その弾幕の速さは先ほどの弾幕よりも早く、回避し辛い。それに、弾幕は僕の方に多めに飛んできた

 

「っ!明久っ!」

 

霊夢はとっさに僕の名前を叫ぶ

 

「…っ!まずいっ…」

 

僕は何とか第一波を回避したが、続けて第二波が飛んでくる

 

その時、僕の頭の中で変化が起きた

 

なんだ?相手の攻撃が…どうやって飛んでくるかが見えるぞ…?さっきまでは何とか回避していただけなのに、視界がクリアに…

 

さっきまでは必死に回避していたのに、弾幕の軌道が見える。相手がどこに向かって弾幕を飛ばそうとしているかがわかるように

そして、さっきまで感じていた重圧も少し軽くなったように感じる

 

もしかして、重圧に慣れてきた…?それとも…

 

とにかく、僕は弾幕の薄い場所へ移動するように攻撃を回避して、反撃に出る

 

「!明久!?(嘘…動きがさっきとは別人みたい)」

 

「どうしてっ…!?なぜ貴方の運命が見通せないの…!?貴方は一体…何者なの!?」

 

動揺しているのか、レミリアからそんな言葉が投げかけられる

 

「僕は吉井明久!普通の魔法使いの弟子で、普通の人間だ!そして、これが貴女を倒すスペル!恋符『マスタースパーク』!」

 

僕はレミリアにそう返して、スペルを宣言して木刀を構える

 

「普通の人間ごときに…負けてたまるかっ!神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

 

レミリアは三度目のスペルカードを宣言する

そしてレミリアの手には深紅の槍が握られており、その槍をマスタースパークめがけて投げてくる

 

「霊夢っ!今っ!」

 

それを見た僕は、とっさに叫んだ

 

「わかってるわ!これでとどめよ!霊符『夢想封印 集』!」

 

霊夢の二度目のスペルカードの宣言、先程の夢想封印よりも大きそうな光弾が、レミリアに向かって集中して飛んでいく

 

「…っあぁっ!」

 

レミリアは頭に血が上っていたのか、回避することなく光弾がレミリアに命中し、レミリアはその場に倒れた

 

「…ふぅ、これで黒幕は倒せたわね。なんなのよ、結構動けるじゃない」

 

「いや…僕も何が何だか…実は…」

 

レミリアが倒れたのを確認した霊夢は、僕の方にやってくる

僕は霊夢に先ほどの出来事を説明した

 

「ふーん。敵の動きが急に見えるように…ねぇ。もしかしたら、明久の能力が関係してるんじゃない?相手の攻撃パターンを学習した…とか?」

 

「うーん…どうなんだろうね?」

 

僕と霊夢はそんな会話をする。結局はよくわからなかったけど、とにかくこれで異変解決のはずだ

 

「さて、異変の黒幕も倒したし、魔理沙のとこに向かいましょう?」

 

霊夢は窓から外を見て、霧が晴れていくのを確認して、そう言った

 

「うん、そうだね」

 

こうして、僕達は来た道を引き返し、魔理沙と別れた場所に向かった

だけどそれは、新たな戦いの始まりだった…




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レミリア戦なのに短くてすみません…

そして、申し訳ないですけど今週は用事が色々ありまして、もう投稿できそうにありません
次の投稿は来週の月曜日となります
楽しみにしてくださっている皆様、申し訳ありません…


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悪魔の妹

お久しぶりです


二人で協力し、異変の黒幕であるレミリアを倒した明久と霊夢

しかし、戦いはまだ終わっていなかった…

 

時は遡り、明久と霊夢が魔理沙と別れ、咲夜と戦っている頃…

 

 

魔理沙side

 

 

私は霧雨魔理沙。明久と霊夢の二人と別れて地下への階段を進んでかなりの時間が経ったはずだが…

 

「どうなってるんだ?この建物…進んでも進んでも先が見えないぜ」

 

進んでも進んでも先の見えない階段があるだけ。この建物は実はそんなに深いところまで作ってあるなんてことは無いだろうが…

 

そんなことを考えながらひたすら進んでいると、変化が起きた

 

「っ!っとと、なんだぁ?」

 

私の目の前に壁が突然現れたのだ

 

「こんなところに壁なんて見えなかったが…って、なんだ?こんなところに扉が…」

 

壁によって半ば強制的に止められて、辺りを見渡すとそこには大きな扉があった

 

「もしかして、空間を弄ってた奴を明久達が倒したのか?」

 

そう考えると色々と納得がいく

外から見たこの建物はそこまで大きそうじゃなかったのに中はとてつもなく広いし、入った時も別のフロアに飛ばされたんだ。この扉を隠しておくためにこの地下への階段を長く感じるようにしてたのだろう(そうなるとなんで地下への階段の入り口を画してなかったのかが疑問になるが…)

 

「ま、いいか。これだけ苦労させられた階段だ。きっと何かいいものがあるはずに違いないぜ!」

 

そう思って私は扉を開き、中に入った

 

そして、その部屋にあったものは---

 

「なんだこりゃ…子供部屋…?」

 

---中の物が壊れ、散乱した子供部屋のような部屋だった

そして、その中央には棺のようなものもある

 

 

「あなたは…人間?」

 

 

すると、部屋の中から声が聞こえた

そこに居たのは、背中から七色の宝石のような羽根の生えた少女だった

 

「…あんた誰だ?」

 

「人に名前を聞くときは…」

 

私が問うと、少女はそう返してきた

…あいつが先に聞いてきた気がするが…

 

「ああ、私か?私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ!」

 

「ふぅん、魔理沙。私はフランドールよ」

 

目の前の少女はフランドールと言うらしい

 

「それで、あんたなにものだ?こんなところで閉じ込められるようにすごして」

 

私は疑問に思ったことをフランドールに問う

 

「閉じ込められるように、じゃないわ。閉じ込められてるのよ。495年くらい」

 

「なんだと…?」

 

フランドールの言葉に驚愕する

495年もこんな部屋に閉じ込められていたのか…?

 

「それにしても、人間なんて初めて見たわ。さぁ、魔理沙!私と遊びましょう!」

 

フランドールは少し、先程とは違うような雰囲気を出しながらそう叫んでくる

 

「いいざ、遊んでやろうじゃないか。いくら出す?」

 

フランドールの言葉に、私はふざけ半分で返答する

 

「コインいっこ」

 

「一個じゃ人命も買えないぜ」

 

コイツ、意外とノリがいいな

 

「貴女がコンテニュー出来ないのさ!」

 

「コンテニューなんてするつもりは無いぜ!」

 

 

こうして、私とフランドールの危険な弾幕ごっこが始まった

 

 

私は箒にまたがり、スペルカードを取り出す

 

「行くぜ!魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 

手始めに簡単なスペルカードを宣言して弾幕を飛ばす

私の周りに魔法陣が現れて、そこから星状の弾幕が回転しながら出現し、フランドールに向かって飛んでいく

 

「へぇ、人間も意外とやるのね!でも、その程度じゃ私には勝てないわ!禁忌『クランベリートラップ』!」

 

フランドールは涼しげな顔で私の弾幕を回避して、反撃と言わんばかりにスペルカードを宣言してくる

 

私の周りに魔法陣が現れ、私に向かって弾幕が飛んでくる

くっ、495年監禁されるだけはあるな…弾のスピードは速いし、威力もすごいな…当たったらひとたまりもないだろう

 

「あはは、これを避けるんだ、すごいすごい!だったら、これはどう?禁忌『カゴメカゴメ』!」

 

回避する私を見てフランドールは楽しんでいるのか、拍手をしながら二枚目のスペルカードを宣言する

困ったやつだ。連続でスペルカードを唱えるなんて、乱暴にも程がある

 

そんなことを考えてると、私はあっという間にフランドールの弾幕に囲まれてしまう

そして、弾幕に囲まれている私に向かってフランドールは別の大きな弾幕を飛ばしてきて、私を囲っている弾幕ははじけるように崩れていく

 

かなり無茶苦茶な奴だな、同一人物の弾幕が干渉しあうと制御が聞かなくなることがあるんだが…そんなことはお構いなしだ

回避すること自体は何とかなるが、フランドールが無茶苦茶だ

 

「これも避けきるなんて…すごいね!それなら…これはどうかな?禁忌『スターボウブレイク』!」

 

何とか避けきっている私に対し、フランドールは無慈悲にも三枚目のスペルカードを宣言する

私の周りに七色の弾幕が生成されて、私に向かって降り注ぐ

なんて綺麗な弾幕なんだ。そう思いつつも回避に専念する私

そして、回避に専念しすぎたのか、私は私はいつの間にか壁へと追いやられてしまっていた

 

「っ!しまった!」

 

「さぁ、魔理沙。これでおしまい!禁忌『レーヴァテイン』!」

 

私の背後に来ていたフランドールは、次のスペルカードを宣言する

その手に握られていたのは、大きな…いや、大きすぎる炎剣だった

 

フランドールは、狂気に染まった眼と笑っている三日月の口を傾けて、その炎剣を振りかざした




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感覚的には
咲夜が空間を操作してフランの部屋を隠していたけど、倒れたことで一瞬空間操作が途切れて、魔理沙はフランの部屋を認識したからその空間に居たままって感じです


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決死の戦い

異変の黒幕であるレミリアを倒し、魔理沙の元へと向かう明久と霊夢

 

そして、地下で戦う魔理沙とフランドール

 

壁へと追い込まれ、炎剣を構えられた魔理沙は絶対絶命な状態へと陥っていた---

 

 

魔理沙side

 

 

フランドールは私に向かって炎剣を振り下ろす

…こんな時こそ冷静に…慌てすぎたらそのまま斬られるだけだと思い、私は思考を落ち着かせる(そのせいでこんな状況になっているのだが)

明久が言っていた。いったん頭を落ち着かせると、見えなかったものが見えてくることもあると…

 

そして私は気づく。今追い込まれている壁は入り口の扉がある面だと

 

こうなったら、危ない賭けだろうがやるしかない!

 

「まだまだ遊びは終わらせないぜ、フランドール!恋符『ノンディレクショナルレーザー』」

 

私はパチュリーの通常弾幕を思い浮かべながらさっき作ったスペルカードを宣言する

 

私を中心に複数の魔法陣を出し、外側に向かってレーザーを射出する

 

「っ!まだそんな手を!」

 

フランドールはほぼゼロ距離で放った私の攻撃を回避していたけど、今回の狙いは攻撃(そっち)がメインじゃない

 

「さぁフランドール、ついてこい!ここよりも広い場所で遊ぼう!」

 

私は箒に跨り、さっきの攻撃で開けた壁の穴から部屋の外に出て、さっき降りてきた階段を昇る

 

「待てっ!」

 

私を追いかけるように、フランドールもついてくる

さて、広い場所でとは言ったが、どこに行こうか。さっきの書斎は…珍しい本がたくさんあったから暴れるには物足り合いな…

とりあえず、逃げながら決めるか

 

後ろに気を付けながら逃げること数分、私はエントランスのような場所に出た

 

よし、ここなら思う存分戦えそうだ

 

「あ、魔理沙!」

 

そう思っていると、フランドールとは別の方向から私を呼ぶ声が聞こえた

 

「お、明久じゃないか!それに霊夢も。異変の黒幕は見つけたのか?」

 

そこには、明久と霊夢がいた

 

「うん。なんとかね」

 

そうか、それはよかった

 

「追いついた、私と遊びましょう、魔理沙!って…そこのお兄さん達は…誰?」

 

明久と話していると、後ろには追い付いたフランドールがいた。結構早かったな

 

「僕は吉井明久」

 

「…博麗霊夢。あんた、レミリアとかいうやつの知り合い?」

 

明久と霊夢はフランドールに名前を答える。そして、霊夢は知らないやつの名前も口にした

レミリアって誰だ?

 

「私はフランドール。レミリアは私のお姉様よ」

 

霊夢の質問にフランドールは肯定する。フランドールには姉がいたのか

 

「っと、明久と霊夢は適当に休んでてくれ。私はコイツと遊んでるんだ」

 

「私は構わないわ、そこの二人が一緒でも。お姉様を倒したのなら、歯ごたえがありそうだし」

 

人間も舐められてるなぁ

まぁいいか

 

「よし、行くぞ明久!霊夢!」

 

「えっ、どっ、どういうことかわからないけどわかった!」

 

「ハァ…まったく…吸血鬼ってこんなのが多いのかしら…」

 

フランドールから言い出したことだ、卑怯なんて言わせないぜ

 

 

こうして、私とフランドールの弾幕ごっこは三対一となった

 

 

魔理沙side out

 

 

明久side

 

 

魔理沙と合流した僕と霊夢は、突然弾幕ごっこに巻き込まれた

相手はフランドール、レミリアの妹らしい

 

「三対一なら、このスペルカードよね!禁忌『フォーオブアカインド』!」

 

フランドールはいきなりスペルカードを宣言する

すると、フランドールが四人に増える

…本当に何でもありだなぁ…まさか分身するなんて…

 

「ほんっと、こいつらなんでもありね…面倒くさいし、サクッと終わらせるわよ!霊符『夢想封印 散』!」

 

そう言いながら、霊夢は色とりどりの光弾を四人のフランドールに向けて放つ

 

「相手が増えたんだ、私も全方位に攻撃するぜ!魔空『アステロイドベルト』」

 

霊夢に続くように魔理沙もスペルを宣言する

アステロイドベルトはパチュリーさんとの戦いで使っていたミルキーウェイの上位に当たるスペルカードだ

魔理沙が上位スペルを使うということは、既に強敵と認めているということになる(だからと言って普段から手加減をしているというわけでもない)

だったら僕の場合、最初から飛ばさないと危ないかも…

 

「国符『三種の神器 鏡』!」

 

僕も続いてスペルカードを宣言する。これも慧音さんに教えてもらったものだ

三種の神器の鏡と言えば、八咫鏡のことで、三種の神器の中でも特に強い力を持っているものだ

僕は四方へと小型の弾幕と飛ばす

 

「二人も結構やるね!だったら!」

 

「「禁弾『カタディオプトリック』!!」」

 

「「禁弾『過去を刻む時計』!!」」

 

四人のフランドールは笑いながら、スペルカードを二種類宣言した

二つのスペルカードは弾幕がちりばめられ、床や天井、壁に当たると反射してくる

もう二つは十字のレーザー弾が回転しながら移動する

 

同じスペルカードが二つずつ…かなり移動しにくい…

 

「ったく、避け辛いなぁ、まずはフランドールを減らすのが先だな!霊夢、守りは任せた!明久、一気に消し飛ばすぞ!恋心『ダブルスパーク』!」

 

「わかってる!境界『二重弾幕結界』!」

 

「わかった!恋符『マスタースパーク』!」

 

僕と魔理沙で合計三つのマスタースパークを、霊夢は防御も併せた二重の結界と大量の弾幕を繰り出す

 

「「「っ!」」」

 

部屋が(三対四の構図にしては)狭いのもあるのか、分身のフランドールはあっけなく消滅した

 

「へぇ…これでもダメなんだ。だったら…禁忌『恋の迷路』!」

 

自分の複数のスペルカードを破られたフランドールは、笑いながら新しいスペルカードを宣言する

 

 

この戦いの終了まで、あと少し…




誤字脱字ありましたら、報告お願いします

雑な終わり方ですみません…


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最後の激突

皆さんこんばんは、お久しぶりです

投稿ペースを更新しています。詳しくは活動報告をご覧ください


地下にあるフランドールの部屋で戦っていた魔理沙

魔理沙は何とか地下を飛び出し、一回にあるエントランスへたどり着く

 

そこで合流したのは、レミリアを倒した明久と霊夢だった

 

魔理沙と明久、霊夢は三人で協力してフランドールに挑む---

 

 

明久side

 

 

「禁忌『恋の迷路』!」

 

一人に戻ったフランドールは、新たなスペルカードを宣言する

 

フランドールを覆うように大量の弾幕が生成され、弾幕の外側にはまるで入ってこいと言わんばかりに人一人が通れるような穴が開いている

 

「私は先に行くわよ!」

 

それを見た霊夢は、真っ先に弾幕の中へと飛び込んでいく

これは…行くしかないかな

そう思いながら僕は魔理沙の方を向いた

 

「なんだ、不安なのか?」

 

僕の視線に気づいた魔理沙は、僕にそう言ってきた

 

「…そうなのかも」

 

「それはそれでいい、でも、もっと気楽にいこうぜ。相手がとんでもないとはいえ、これは弾幕ごっこで遊びなんだ。辺りどころさえ気を付けたら死にはしないさ。とにかく、楽しもうぜ!さぁ、行くぜ!」

 

魔理沙は僕に笑いながらそう言ってきた

…そっか、そう考えるといいのか。僕は、おびえすぎていたのかな…

 

迷いなく弾幕の中に飛び込んでいった魔理沙の後をつけるように、僕も弾幕の中に飛び込む

 

弾幕の中に飛び込むと、中は迷路のようになっていた

しかも、その迷路も回転し続けていて、通るための穴も移動し続けている

 

僕は周囲の弾幕に気を付けつつ、目の前の魔理沙を必死に追いかける

 

何層もの弾幕で出来た変化し続ける迷路を切り抜けた僕と魔理沙は、ようやくフランドールの元へとたどり着いた

 

その中では、先にたどり着いた霊夢とフランドールが戦っていた

 

「皆たどり着いたんだ、な~んだ」

 

たどり着いた僕と魔理沙に気づいたフランドールは、そう呟く

 

「じゃぁ…ゲームオーバーの時間だよ!秘弾『そして誰もいなくなるのか?』」

 

フランドールは弾幕の迷路を解除し、新たなスペルカードを宣言する

 

すると、フランドールの姿が消え、複数の大きな光弾が現れ、僕達に向かって小さな弾幕を生成しながら飛んでくる

 

それにしても、『そして誰もいなくなるのか』…なんだか聞いたことがあるけど、なんだったっけ

 

頭の片隅でそんなことを考えながら、僕は弾幕を回避する

 

「なんだ?この程度の弾幕か?」

 

魔理沙は余裕そうな表情で、そう言った

 

確かに、これで終わりと言っていたけど、これでは簡単すぎる。油断はしないようにしないと…

 

 

『うふふ、まだまだこんなものじゃないわ!』

 

 

どこからかフランドールの声がしたと思うと、一気に大きな光弾の数が増えて、僕達に襲い掛かってくる

 

「うおっ、こういうタイプか…」

 

「魔理沙、油断ばっかしないの!少しは明久みたいに落ち着きなさい!」

 

「霊夢、アレは落ち着いてるんじゃなくてビビってるだけだから見習わない方がいいぜ」

 

「そういうのは言わないでいいの!」

 

色々話しながら会費を続ける魔理沙と霊夢…すごいな

 

そうやって回避しながら辺りを見渡すと、壁や床、天井が少し光っているように見えた

…あれって、もしかして…

 

そう思っていると案の定、その光は弾幕として、壁や床から放たれる

そのことに、魔理沙も霊夢も気づいていないようだった

 

「魔理沙!霊夢!危ない!」

 

僕の体はとっさに動いていた。弾幕の動きを予想し、弾幕のない方へと魔理沙と霊夢を突き飛ばす

 

「っ、明久!---」

 

魔理沙のその言葉を最後に、僕の意識はブラックアウトした

 

 

明久side out

 

 

魔理沙side

 

 

クソッ、油断した!

明久のやつ、私達をかばうだなんて、無鉄砲すぎるにもほどがある!

気絶しているだけみたいだが、所々血が出てたりもするな…

 

こうなったら遊びどころじゃない、さっさと終わらせないとな!

 

「明久はもうギブアップ?それなら…魔理沙も霊夢も、これでおしまいだよ!QED『495年の波紋』!」

 

フランドールはこれで十枚目のスペルカードを宣言する

壁や天井から、さっきとは違った並びの弾幕が波紋のように広がってくる

 

そろそろ、これで最後のスペルカード…だといいな

 

「悪いけど、こっちも最後の攻撃とさせてもらうぜ!『ブレイジングスター』」

 

そう思って、私はスペルカードを宣言して、箒に跨りミニ八卦炉を後方に向かって構え、マスタースパークの勢いを使ってフランドールに向かって突っ込む

周りの弾幕に対しては、星状の弾幕をばらまいて相殺する

 

「そんな直線的な攻撃、無駄だよっ!」

 

私の攻撃に対して、フランドールは軌道上から離れることで回避する

私は勢いそのままにフランドールの横を通過していく

一対一なら、その対処は正解だ

 

でも、今回は二対一なんだぜ?

 

「霊夢!」

 

「わかってる!『夢想天生』!」

 

フランドールが回避した場所に霊夢が先回りして、霊夢も切り札(と言うよりも奥義?)を発動する

霊夢の周りに複数の陰陽玉が現れ、そこからフランドールに向かって大量のお札が飛んでいく

 

「っ!まだまだ!」

 

霊夢の方を向き、霊夢に向かって攻撃をするフランドール

だが、フランドールの攻撃は霊夢に当たることなく、すり抜けて行った

 

「なっ、どうして…!?」

 

これが霊夢の切り札『夢想天生』だ

霊夢の持つ『主に空を飛ぶ程度の能力』の本質…空を飛ぶどころかああらゆる物から存在が浮くことによって、霊夢に攻撃が当たらなくなる。こうなったらお手上げ状態だ

 

「これで…とどめよ!」

 

「っ、きゃあぁぁ!」

 

霊夢の攻撃と受けたフランドールは、地に伏せる

 

 

こうして、私達の長いようで短かった紅魔館での戦いが終わった




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終わり方が相変わらずですみません…

次回からは戦闘描写がないのでもう少しまともに…なるといいなぁ


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帰還

魔理沙と合流し、フランドールとの戦いを繰り広げる明久達

 

魔理沙と霊夢の一瞬の油断から、明久が倒れてしまう

 

その後、魔理沙と霊夢の切り札で、なんとかフランドールを撃破するのだった---

 

 

魔理沙side

 

 

霊夢と協力してフラドールを倒した私は、急いで明久の元へと駆け寄った

 

…よかった、息はあるな。気絶しているだけか

 

 

「いたた…嘘みたい。私が負けるなんて…」

 

 

そう言いながら、倒れていたフランドールが起き上がる

妖怪ってやっぱ丈夫なのか

 

「ああ、割と嘘かもな。私はもう帰るけど」

 

「ホント、あんた達でたらめね。私も疲れたわ」

 

フランドールに対して、私と霊夢はそう続けた

 

「その私を倒したのはどこの誰だと思ってるのよ-」

 

「さぁ、誰だろうな」

 

 

「全く、派手に暴れてくれたようね…」

 

 

私がフランドールにそう笑いかけると、どこからか声が聞こえてくる

 

「誰だ!」

 

「あら、見慣れないのが一人増えてるわ。霊夢にフランドール、それと…人間。このぐちゃぐちゃになったエントランスをどうしてくれるのよ!」

 

「知らないわよ!そんなの魔理沙とフランドール(この二人)に言ってくれる!?」

 

その人物の言葉に霊夢が反応する

 

本当に誰なんだあいつ

 

「なぁ霊夢、あいつ誰だ?」

 

「あぁ、魔理沙は知らなかったわね。レミリア・スカーレット、フランドール(こいつ)の姉で、今回の異変の黒幕よ」

 

へぇ、こいつが

 

「それで、何の用よ」

 

「何の用って…ここは私の家なのだけど…目が覚めたらここがうるさいから来てみたのよ」

 

「ふーん、そうか。霊夢、後は頼んだぜ!私は明久を家に送ってくる!」

 

「ちょ、魔理沙!待ちなさい!」

 

私はそう残して、紅魔館を出た。霊夢が何か言っているが、放置でいいだろう

 

 

少女移動中…

 

 

さて、ああ言って飛び出してきたものの、明久の家を知らないな…

とりあえず、寺子屋に行ってみるか。慧音先生だったら知ってるだろう

 

そう思うと、私は人間の里へと進路を変えた

 

 

少女移動中…

 

 

紅魔館を出て数十分が経ち、私は人間の里にある寺子屋へとたどり着いた

 

「慧音先生ーいるかー?」

 

「上白沢慧音先生なら、今は出かけているわよ。用は何?」

 

「…誰だあんた?」

 

寺子屋の中から出てきたのは、服の前掛け部分に茨の模様が描かれており、右腕を包帯でぐるぐる巻きにしている女性だった

 

「私は茨華仙、山に住んでいる仙人よ。それで、上白沢先生には何の用かしら…ってそういうことね」

 

茨華仙と名乗った女性は、明久を見ると私の要件がわかったような顔になる

慧音先生から何か聞いてたのか?

 

「彼の家なら私が知っているから、私が連れて行くわ。貴女は自分の家に帰りなさい」

 

私が口を開こうとすると、茨華仙は先にそう言った

 

「先に帰ってろだと?私は明久が心配だからここまで送ってきたんだ、ここで買えるわけにはいかないぜ」

 

冗談じゃないぜ

 

「…いいえ。貴女はここで帰るべきです。これは忠告です、心配だからここまで送ってきた、と言いましたね?明久のことを心配しているのは貴女だけではありません。上白沢先生も、明久の保護者も心配しているのです」

 

「だからなんだ」

 

「…少しだけ明久の保護者の様子を見てきましたが…かなりイライラしていましたよ。おそらく、貴女に対して。今日、その状態の明久をあなたが連れて行った場合、彼女の怒りは貴女に向く可能性が高いでしょう。貴女のその状態で、戦闘はできますか?かなり消耗しているようですが…」

 

…この仙人、なんだか嫌だな…まるで私のことをすべて見透かされているようだ

 

「もう一度言います。貴女はここで帰るべきです。明久への謝罪も、明久の保護者への謝罪も、明久が回復してからでも遅くないはずです。…彼女が許すかどうかは別ですが…今日行っても死にかけるのがオチでしょう」

 

「…わかった。だが、あんたが私を追い返したから今日謝る機会を失ったんだ。私が謝りに行くときは、あんたも説得してくれるんだろうな?」

 

一応、聞いてみる。このことを聞かないで私が謝りに行くときに他人事のようにされるのは嫌だからな、言質は取っておかないと

 

「もちろんです。その時は、私も説得します」

 

「だったら、明久はあんたに預ける。明久の事、頼んだぜ」

 

茨華仙にそう言い、背負っていた明久を預けると、私は家に向かって飛んでいった

 

 

魔理沙side out

 

 

華扇side

 

 

ふぅ、なんとか追い返すことはできたわね

 

それにしても、まさかここまで慧音の予想が当たるなんてね

 

たまたま人間の里に来て、慧音に『しばらく寺子屋に居てくれないか?もし明久を連れた少女がここに来たら、少女は追い返して、明久を妹紅の家に連れてきてほしい』なんて言われたときは何事かと思ったけど…

 

とりあえず、明久を妹紅の家に運びましょう

 

 

仙人移動中…

 

 

ここに来るのも久しぶりね…

 

「失礼するわ」

 

妹紅の家に着き、遠慮なく玄関のドアを開ける

 

「誰だ、こんな時間に…って、山の仙人じゃない…か…」

 

玄関へとやって来た妹紅は、私の背中に居る明久を見て驚く

 

「明久っ!おい仙人、なんであんたが明久と一緒に居る!」

 

そう言いながら、妹紅は私につかみかかってきた

…よほど明久が心配だったようね

 

「落ち着きなさい。私は明久を連れてきただけよ。事情は慧音に聞いてるんでしょう?一緒に居た少女は明久の家を知らない。だから私がここまで連れてきたの」

 

「…そうか、すまない」

 

どうやら私の声を聞く余裕はあったみたいね

私が明久をこんな目にあわせた原因じゃないってわかってるからなのかもしれないけど…

 

「とりあえず、用件は終わったから、今日は帰るわ。明日、様子を見に来るわ」

 

「…わかった」

 

そう言って、私は妹紅の部屋を出て行った

 

 

華扇side out

 

 

妹紅side

 

 

仙人が私の家から去って数時間が経った

慧音は仙人が家を去った少しあとで帰って行った

 

クソッ、あの時明久に任せるんじゃなくて、私も一緒に行くべきだたんだ

少し危ないかもしれない、そうわかっていたはずだ

 

そう思えば思うほど、私は爪が手のひらに食い込むほどに自分の手を握りしめていた

 

 

「も…こう…?」

 

 

明久が目を覚まし、私の名前を呼ぶ

 

「明久ッ!気をつけろって言っただろう!なんでこんなになって帰ってくるんだ!私がどれだけ心配したと思ってるんだ!」

 

私は、私自身が怒っているのか、喜んでいるのかわからないまま明久に抱き着く

 

「心配かけたみたいだね…ごめん…」

 

「ホントに…心配したんだぞ…!」

 

「…ごめん」

 

「だから明久、お前はしばらく家の外に出るな。怪我を治すこともだけど、少しは罰も与えないとな」

 

 

そしてそう、私は明久に伝えた




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決意

明久side

 

 

妹紅から外出禁止を宣言された翌日、華扇が僕の所へとやってきた

どうやら気絶した僕を魔理沙が寺子屋まで運んで、そこからは華扇が妹紅の家まで運んでくれたらしい

妹紅は会わせる気はなかったみたいだけど、昨日のこともあるのか華扇は渋々会わせることにしたらしい(という表情を妹紅がしていたって華扇が言っていた)

 

そして、時間もお昼ご飯も近い時間だからと妹紅は料理をしていて、この部屋には僕と華扇の二人きりになっている

 

「それで、体の方はどう?」

 

「うん、体は大丈夫」

 

「そう、それはよかったわ」

 

たっぷり寝たおかげで体もかなり回復した

 

「それじゃ、私は帰ることにするわ。長居しすぎるのも申し訳ないから」

 

華扇はそう言って、立ち上がろうとした

 

「待って、華扇」

 

「…なに?」

 

僕はとっさに華扇を引き留める

 

「…少しだけ、悩みを聞いてもらえないかな?」

 

「いいわよ、思う存分言いなさい」

 

華扇の言葉にホッとし、僕は華扇に悩みを打ち明ける

 

「…僕は気づいたんだ。修行もしてるし、少しずつ強くなってはいるって。だけど、それはそう思い込んでいるだけだって…」

 

「…」

 

「レミリアと…そしてフランドールと対峙したときに、僕は足が動かなかった…魔理沙と霊夢の足を引っ張っているだけだって…」

 

「…そう。それで、明久はどうしたいの?」

 

「…僕は、もっと強くなりたい…どうすれば強くなれるかな…」

 

それが僕が今回の異変で気づいたこと。僕は霊夢と魔理沙の足を引っ張っていただけだ…

 

「そう、随分弱気に考えてるのね。霊夢と魔理沙?だっけ。その二人にあって明久にないもの。それは確かに経験よ。でも、それだけじゃないわ。明久には戦う理由がない。なぜ明久は異変解決に行ったのか。それが答えよ」

 

戦う…理由…?

 

「だって、あれは魔理沙に連れていかれて!」

 

「そうやって、言い訳するの?確かに明久は強引に異変解決に連れていかれたのかもしれない。でも、断ることだってできたはずよ。違うかしら?」

 

「そ、それは…」

 

言い返せない…

 

「明久、自分の意志で行ったのでしょう?それでいざ敵と対峙すると恐怖してマイナス思考になっている…それだったら明久の意志が弱いだけよ。そうやって、現実からも目を背け続けるの?」

 

華扇の言うとおりだ。僕は現実から目を背け続けて、言い訳ばかりしているんだ。幻想郷に来た理由もそれだということを忘れて…同じことを繰り返していたんだ…

 

「…そうだね。僕は目を背け続けていたんだね…僕は…僕はどうしたらいいかな…」

 

「…まずは現実と向き合いなさい。何事にも動じない、強い心を持つの。そして、自分が戦う理由を見つけなさい。私からアドバイスできることはこれだけしかないわ」

 

現実と…向き合う…

だったら…僕が逃げた過去と…

 

「…華扇、ありがとう。僕、決めたよ。これからすべきこと」

 

「そう?」

 

「うん。僕は…僕は外の世界に帰る。一度背けた現実に、もう一度向き合ってみる」

 

それが僕の答えだ

 

「…そう。それが明久の答えね。でも…言う相手が違うんじゃない?

 

ねぇ、妹紅?」

 

華扇は僕の言葉に頷きながら、扉の向こうに向かって声をかける

 

え?妹紅?

 

「…なんだ、気づいてたのか」

 

「バレバレよ。扉越しに私達の声なんか聞いて…」

 

「もしかして妹紅…今の、全部聞いて…」

 

全然気づけなかった…

 

「ああ、全部聞いていたさ。だが、私は明久から直接聞きたい。私に話せないような事じゃ、許可をするなんて出来ないからな」

 

「…妹紅、僕は外の世界に戻るよ。いつまでも現実から目を背けているようじゃ、僕は強く離れない…そう思った。だから、外の世界で自分を見つめ直して、精神的にも強くなりたい!」

 

僕の考えを、思い切って妹紅に伝える

 

「…そうか、わかった。でも約束だ、必ず帰ってこい。ここは明久の家でもあるんだ」

 

「妹紅…」

 

僕の家でもある…か…

 

「さて、八雲紫。どうせどこかで聞いているんだろう?こういうわけだ、明久を外の世界に返してやってくれ」

 

妹紅は誰もいない場所に向かって紫さんの名前を叫ぶ

すると、先程まで何もなかった場所に切れ目ができて、そこから紫さんが出てきた

 

「あら、気づいてたの」

 

「…気づいたも何も、明久をここに連れてきたのはあんたで、前もこんなやり取りをしただろうが」

 

「まぁいいわ。それで、明久を外の世界に返したいとのことでしたね、わかりました。それともう一つ…明久、貴方はもう一度幻想郷に帰ってくるつもりはありますか?」

 

紫さんがそう聞いてくる

…もう一度幻想郷に帰ってくる気はあるか…か。答えは決まっている

 

「うん。妹紅にも言われたけど、ここは僕の帰ってくる場所だ。僕はもう一度…ここに帰ってくる」

 

「そう、それならこれを渡しておくわ」

 

紫さんが渡してきたのは、お守りのようなもの

 

「これは?」

 

「幻想郷と外の世界の扉を開く鍵のようなものよ。これを使えば、自由に外の世界と幻想郷を行き来できるわ。ちゃんと手順は踏んでもらうけどね」

 

外の世界と幻想郷を自由に…

 

「ありがとうございます!」

 

こうして、僕が外の世界に帰ることが決まった

 

一度現実から目を背けた僕がもう一度、現実と向き合うために…




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超展開&相変わらずな雑な終わり方ですが、これで紅霧異変編は終了です

来週からはバカテス側の物語の更新になります


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