開拓系母港 (ムメイ)
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始まり

ざざーんざざーんと寄せては返す波

燦々と輝く太陽とそれを受けて白く輝く砂浜。

ここはどこだと言われれば紛うことなき島。

 

「ひゃーまっさらですねー」

「まっさらだな……ジャベリンの胸みてぇに」

「ちょちょ、指揮官それはどういう意味ですか!?」

 

ここはロイヤル所有の無人島だった場所。

外洋に出ていて基地を作るには丁度いい塩梅の場所。

しかしながら無人島で往来には船以外に手段が無い。

 

「とりあえず住居を作るぞ、明石は居るかい?」

「ここに居るにゃ~資材搬入は終わったから仮拠点を作るにゃ」

 

そう、無人島だった場所なので一切のインフラ、設備が無いのである。

木々は生い茂り桟橋などもあったものではない。

大型船から上陸艇で乗り上げただけ。

早急に桟橋や拠点を作る必要があった。

幸いにして心強い味方として工作艦の明石が同伴していた。

金にがめつい反面金さえ払えばしっかりとした仕事をしてくれる。

時たま好奇心に負けて余計なことをしでかすがそれはご愛嬌というものだ。

 

「風雨がしのげればいい、俺も手伝う」

「助かるにゃ~じゃあこの図面通りに穴を掘って欲しいにゃ」

「了解、ジャベリンは周囲警戒を頼むぞ」

「はーい、お任せくださいっ!」

 

使える機材はそう多くない、扱えるのも明石のみ。

人員は指揮官、ジャベリン、明石の3人だけ。

指揮官は海軍所属の男だ。そう、男。

ガチガチでは無くとも屈強な身体を持った男なのだ。

であれば顎で使うのではなく自ら進んで力仕事をするものであろう。

軍服は脱いで暫く過ごすことになるだろう仮拠点の設営に取り掛かったのだった。

 

 

 

 

組み上げるのはいくつかの支柱と板から成り立つプレハブ住宅だ。

ある程度の強度と居住性、組み立てやすさを考慮した結果がこれだ。

指揮官がせっせと掘った穴に明石が自身の艤装を用いてアンカーボルトを打ち込み

その上に鉄製の支柱を立てる、この支柱がそのまま住居の角になるのだ。

支柱に掘られた溝に沿って外壁となる板を差し込み最後に天井を乗せれば完成である。

もっと手軽なのではテントがあったが見た目の年齢が離れているとは言えど男女が共に寝るのはどうか?

そう指揮官が遠慮したために初期投資が多くなったがこうなったのである。

 

「出来たな」

「出来たにゃ、次は桟橋の施工に取り掛かるにゃ」

「いや、今は少し休んでくれ」

「にゃ~?心配性だにゃ~もう少し働けるにゃ」

「いや、資材資材」

「世知辛いにゃ」

 

最初に持ち込んだのは一週間分の食料とプレハブの材料。

そして飲水確保のための貯水タンクの材料だった。

生活拠点が確保できなければ基地など作れたものではない。

しかしながら大人数を割けるほど現状の戦況はよろしくなかった。

少人数でこっそりと軍拡できれば良い程度の認識だったのだ。

 

「周辺海域の偵察終わりましたー」

「ご苦労、ジャベリンの眼からみてどうだった?」

「のどかそのものでした!桟橋予定地も結構な大きさだったので問題は無いと思います!」

「ん、そりゃ良いジャベリンも休んでくれ」

「はーい♪」

 

木々生い茂る無人島にぽつんと建ったプレハブ住宅。

電気も何も無い状態だがその中は和気あいあいとした明るいものだった。

 

「こんな折りたたみベッドで悪いが」

「いえいえ、地面に寝るより全然いいですよ!」

「それより指揮官が寝袋ってどうなのにゃ?」

「まぁまぁそれは良いじゃないか、じゃ午後は貯水タンクとフィルター設置だ」

「了解にゃ~」

「はいはい!ジャベリンはどうしましょう?」

「ジャベリンは俺と一緒に力仕事だ」

「うえぇぇぇぇ……」

 

ほそぼそと続くだろう開拓は始まったばかり。

 

 

 

 

人であろうとKAN-SENだろうと水と食料は重要な物だ。

特に飲水の確保が出来なければ一週間の生存は難しい。

手頃な水で海水?バカを言うな塩分が多く逆に水分を持っていかれる。

浄水装置?そんな物は最初に持ち込んでは居ないのだ。

上陸艇に積載できるモノなど限られている。

3人を養うのに態々大掛かりな浄水装置などコストが合わないのだ。

もっと原始的な物で対応するのがお決まりなのだ。

 

「雨樋との接続完了だ」

「フィルターの設置もOKです!」

「あとは雨とか夜露が溜まるのを待つだけにゃ~」

 

自然界では水が循環している。

空気中にだって水は浮かんでいるのだ。

ではそれから不純物を取り除くだけでも良い。

 

「でも我慢できそうにないなら言ってくれ」

「ペットボトルの水は貴重だけど使わないのもダメにゃ」

「数少ない資源ですものね!」

「それもそうだが湖の水を汲んでくるからな?」

 

この無人島には湖が存在し細いながら川も流れている。

危険な動物は居なく食用に適した植物が散見されるのだ。

それは軍部の先行調査で明らかになっている。

ただそこまでの道のりは未整備なのでそこは自分で開拓しろとのこと。

 

「アズールレーン全体が大変なのは分かるが……」

「それにしたって無茶がありますよね」

「でもやれっていうのが上の指示にゃ」

「まぁやれるだけやろう、逆を言えば俺たちの好きに出来るんだから」

 

そうこうしているうちに日が暮れ、夜の帳が降りる。

プレハブ住宅で火を起こせる訳でもなく簡単な食事を作って今日は終わりである。




見切り発進なんだ
続くかどうかは私次第


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試みは続く

日が昇る、夜の終わりと共に鳥たちの囀りが聞こえだす。

 

「しきか~ん、起きるにゃ」

 

腹を空かせたネコが飼い主を起こすのもまた然り。

ダボダボな袖をゆらゆら揺らしながら指揮官の寝ている部屋へと入る明石。

その表情は眠たげに細められているが……

ぐーぐーと鳴る腹の虫が原因かもしれない。

 

「あーさーにゃ、起きるにゃ~」

 

しかし指揮官は起きない、この指揮官絶望的なまでに朝に弱いのだ。

低血圧も相余って朝はとことん弱い。

明石が揺さぶっても全然起きる気配がない。

それどころか明石の鈴の転がるような声が原因でさらに眠りを深めようと―――――――

 

「しっきかーん!!!おはようございます!!!!!」

「んごっ」

「にゃぁっ!!!!?」

 

大音量かつ元気溌剌な眠気駆逐艦、ジャベリンが入ってこなければ話は終わっていた。

のんきに鼻提灯が出ているかと思った指揮官もコレには飛び起きた。

余波で明石は耳鳴りを患ったのは言うまでもない。

 

「さぁさぁ起きましょう、朝ごはん食べてから今日は桟橋づくりですよ!」

「わかったから、わかったから耳元でがなるな……」

「にゃぁぁぁ……耳が……」

 

軍部の見事なまでの采配である。

指揮官の素行は正直な所朝の弱さだけが問題視されていた。

そこで早寝早起き朝からテンションMAXのジャベリンを宛てたのだ。

見事な反応を示して指揮官を朝から引っ張り出したのだ。

これにはエリザベス陛下もニッコリ。

 

「あー……OKOK、朝飯食って桟橋づくりだな……」

「にゃー……朝はなにかにゃ?」

「明石の好みそうなヤツ」

 

明石、ネコの好物と言われると魚を思い浮かべる事だろう。

しかし現実は食い慣れたものを好んで食べるようになる。

この明石が食い慣れているモノ?雑食なためにそんなモノは有り余る程ある。

その中でもコレというものがあるのか?

 

「サバ缶にゃ?」

「手頃だし貯蔵も出来るからな……」

「やっぱりにゃ……昨日の晩もそれだったにゃ」

「コンビーフにしますか?」

「「胃もたれるからいい(にゃ)」」

 

世知辛いにゃ……とつぶやく明石、それも物流が生まれればそうもならない。

下地が出来上がれば生活も楽になる、頑張り時なのだ。

 

 

 

「よし、それじゃあこの木材で桟橋を組んでいくぞ」

「にゃー海上は明石とジャベリンでやるから指揮官は板打ちをお願いするにゃ」

「ジャベリンいっきまーす!!」

「元気いっぱいだなぁ……本当に……」

 

海上では二手に分かれて桟橋の基礎を組み上げることに。

ジャベリンが遠洋側、明石が陸側から基礎を突き立てる。

そして出来上がった基礎の上に指揮官が板を打ち込んで仕上げていくのだ。

桟橋予定地と仮拠点はほど近く出来上がれば物資搬入も楽になる。

そうなれば拠点の発展や軍備も進むものだ。

人口が増えればそれだけ内需というものも生まれてくる。

そこから先は明石の好きな金儲けの話しになってくる。

 

最初はとても簡素でもいい、無いよりはマシである。

木組みの桟橋はKAN-SEN二人と指揮官一人でそうかからず完成した。

工作のスペシャリストが一人居たのが幸いしているが……

それ以上に……

 

「いっぱい動き回った後のご飯は最高ですね♪」

 

元気印のジャベリンが大張り切りで仕事をしたからである。

基礎打ちが早々に終わると指揮官の仕事を奪う形で板打ちまでし始めたのだ。

その姿は兄の真似事をしたがる妹か。

 

「でも本当に助かったよ、ありがとうなジャベリン」

「いえいえー♪」

「予定より早く終わったから後一個は施設を仮組み出来るにゃ……」

「工廠機材を組み立てるとしようか」

「にゃ、明石の根城になるにゃ」

 

海からの玄関口が出来上がれば次は陸地の整備。

補給路の心配はほぼない。

アズールレーン勢力下でありセイレーン出没の報告例はごく少数に留まる。

あくまでテストケースの開拓である、いわゆるイージーモードだ。

簡易工廠が出来上がれば最低限の母港としての機能は発揮できるだろう。

寝食と貯蔵はプレハブ住居が担い海への玄関口は桟橋が、そして整備開発は工廠が担う。

 

「ついでに簡易照明も組み立てれるか?」

「多分いけるにゃ」

「じゃあこっちは発電機の調子を見ておこう」

「ダメそうなら言ってくれにゃー修理は明石に任せてにゃ」

 

無人島に文明の日が灯ろうとしていた。

 

 

 

 

「仮設とは言えまぁ様になってきたな」

「にゃー、水と電気も確保出来たし万々歳にゃ」

「これで快適に過ごせそうですね!」

「明日は路面の整備だな」

「うにゃぁ……骨が折れる作業になりそうにゃ」

「道具ありましたっけ?」

「鎌とショベルならあるぞ」

 

翌日はさらなる利便性を持たせるべく開拓は続く。




続きました。
けど更新は気まぐれですので悪しからず。

需要が少しでもあるならやりますとも


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最低限の母港

「今日はしっかり目が覚めたにゃ、指揮官」

「流石にジャベリンが居るんじゃ目覚めるしかねぇ…」

「ちょっとそれってどういう意味ですかー」

「ジャベリンには敵わないって事だよ」

 

朝に弱い指揮官であったが流石に懲りた様子で朝からしっかりと目を覚ましていた。

連日突撃ジャベリン砲を食らっていては身が持たないのだろう。

でも寝坊しそうな時にはおそらく飛んでくるのだろう。

指揮官の明日はどうなることか、知る由も無い。

 

「じゃあ朝飯食ったら路面の整備だ」

「主に草刈りだにゃ」

「今日も一日頑張りますよー!えいっえいっおー♪」

 

今日の開拓は出来上がった仮拠点と桟橋を繋ぐ路面の整備が主である。

これが終わる頃には第二波の支給品が届く予定でまた新たな開拓が始まる。

 

「トイレの問題は早急になんとかしないとな」

「今のは流石に長くは使いたくないにゃ」

「ジャベリンも同じですー……」

 

支給品の中には汚水処理の設備が含まれている。

なぜそれをと言えば毎日排出される糞尿の処理に困るからだ。

現在の仮拠点にもトイレは設置されているが……その実ただ穴を掘っただけ。

いずれは溢れてしまうものだ。汲み取り業者なんてものは存在しない。

誰もやりたがらないし指揮官がやろうものならそれはそれで問題。

早急な汚水処理施設の開設が必要だったのだ。

 

「もし催したらまた使うしか無いんだがな」

「セクハラぁ……」

「す、すまん……」

 

デリケートな話しなだけにあまり扱えないのだ。

無自覚とは言え振ればセクハラになるのだ。

将来有望な指揮官なだけにセクハラで即刻クビ等にはならないが……

度重ねれば流石に軍部も動かざる得ないことになる。

 

「今日の朝飯は……」

「にゃ、インスタントのご飯と味噌汁にゃ」

「重桜のご飯ですね、美味しそうです!」

 

水の確保は容易になっているので気軽にお湯などは使えるのは現状良いことか。

お風呂は流石に無理があるがシャワー程度であれば全然使えるのだ。

 

 

 

 

「よっせ……あー腰に来るな」

「指揮官~早くするにゃ」

「そう急かすな……」

「明石さーん、この草も食べれるんですかー?」

「その葉っぱはアク抜きしてから天ぷらにすると美味しいにゃ、取っておくにゃ」

 

ざっくざっくと手鎌を持って鬱蒼と生い茂る草を刈り取っていく。

指揮官はといえば力任せに土を掘り返しては根ごと掘り出す。

除草剤などを撒くのも手ではあるがそんな物は存在しない。

すべて手作業でやらねばならないのだ。

そしてこうして刈り取った草の中に可食部位があればそれを持っておく。

食用に適した物は無駄にする訳にはいかないのだ。

 

「ふぃー……掘っては根っこを取り出して戻して均して……辛いなぁ」

「指揮官頑張るにゃ、出来上がればアクセスがよくなって後々が楽にゃ」

「ジャベリンもがんばりますからもう一息ですよー!」

「おう、お前らが頑張ってるんだからな……!」

 

均して出来た舗装路は人の他に物資を載せた船……それから降ろされた貨物が通っていく。

今均しておかなければ貨物運搬に支障が出る。

桟橋……後の港へのアクセスのしやすさも変わってくる。

しかしやっていることは完全な土木作業だ。

 

「指揮官になってするのが開拓とは……分からねぇもんだ」

「それを言ったらジャベリンはどうなるにゃ」

「これはこれで楽しいじゃないですか♪」

 

指揮官はあまり良く思っていない様子だがKAN-SEN二人はそうでも無さ気である。

もともと工作が仕事の明石はともかくジャベリンは戦闘が主任務のハズだ。

畑違いも良いところのハズだが本人の底抜けな明るさと前向きさが活きているのだろう。

 

「あー……正午だな、休憩しよう!」

「にゃ、指揮官がおにぎりを作ってきたからみんな寄るにゃ」

「指揮官のおにぎりですか!?わーい♪」

 

その日の昼飯は大きめの塩にぎりであった。

具材は缶詰から出したコンビーフでそこそこ好評だった様子。

 

 

 

 

「ふぃー……なんとか間に合ったな」

「指揮官、汗を拭いてください」

「あー……悪いな、臭い?」

「そんな事はないですよ?」

 

ギリギリになったが路面の整備は完了した。

指揮官は汗だくで首に提げていたタオルで顔をグシグシと拭く。

ジャベリンと明石は涼しい顔をしている。

身体能力は流石にKAN-SENには負けてしまうのだ。

 

「にゃー納入品目にゃ、チェックしてにゃ」

「おう……よしよし計画通りだな」

「母屋の機能拡充が今回は主だにゃ」

「建造機の納入は流石に早いと思うがな……」

「母港として動かすんだから早いに越したことはないにゃ」

 

納入した品目は母屋の電気を司る発電機、汚水処理の設備

貯蔵を司る冷蔵庫、及び戸棚などの家具。

そして工廠の心臓部分になる建造機であった。

また、食料品はまだ余裕があるとは言え貯蔵しておくに越したことはないので追加納入されていた。

キッチン等も追々納入される予定ではあるが……

 

「とりあえずで俺のキャンプ用品を寄せてもらったからこれで簡単な調理はできる」

「でも料理できる人員が居るかにゃ?」

「ジャベリンは簡単な調理くらいなら出来ますけど……」

 

指揮官個人所有の道具を一式揃えて送ってもらったのだ。

間に合せでしか無いがそれで完成するまでの間は過ごそうというのだ。

 

「この人員がそのまま残ってくれりゃなぁ…」

「無い物ねだりは良くないにゃ」

 

搬入には多くの人員が割かれていた、しかし全員本土へと戻る。

人員の増員はどう頑張っても……

 

「建造機、回すか?」

「設営したら早速やってみるにゃ」

 

 

 

 

「ご機嫌麗しゅうございます、貴方が私のご主人さまでしょうか?」

「ぉーぅ……ナイスな人員だけど」

 

明石が喜び勇んで即座に設営、試運転がてらにメンタルキューブを投入した所だ。

建造機から出てきたのはロイヤルが誇る軽巡洋艦、ベルファスト。

願ったり叶ったりな人員に指揮官も言葉に悩む。

 

「ともかく共に開拓する仲間として心強いな」

「は、開拓……ですか?」

 

ベルファストにして開拓というワードには困惑が生まれるようだ。

しかしすぐに順応するであろう。




評価を入れていただきありがとうございます。
また誤字報告は大変ありがたいです。


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無人島の資源

今更になりますが作者の解釈バリバリですのでご注意を。
あとタイトルはテキトーに決めてます


「今日は母屋の電気工事と配管をするにゃ、近寄るとバチバチするにゃ」

「電気工事で手伝える事はあるか?」

「危ないから明石が頑張るにゃ、後で指揮官のダイヤで何か買ってくれたら嬉しいにゃ」

「OK、考えておこう」

 

朝から明石が行動指針を決めていた。

指揮官としても電気が使えないことには夜が心許ない。

書類仕事は今の所来ていないが来るようになれば書類仕事を夜中も捌かなければならない時が来る。

その時に手元を照らすのが蝋燭の灯りだったらどうだろうか……

とても見えづらい、指揮官はまだ若く視力もしっかりしているが悪くなる懸念が生まれる。

 

「じゃあ食事が終わったらジャベリンとベルファストは俺について来てくれ」

「何をするんですか?」

「この島の探索だ、軍部が下調べはしてくれてるが自分の目で見るのが良い」

「なるほど」

「畏まりました」

 

朝食は指揮官の道具を用いたベルファストによって作られた。

より良い食事をというのがメイドの意見でありそのまま朝から豪勢なものを……とは行かなかった。

備蓄の事も合わせて簡単なもので良いと言う指揮官の強い要望にベルファストが折れた。

 

「それでも俺たちだけだったら考えられない豪華なもんだよな」

「このオムレツとか最高ですよ!」

「おにぎりも美味いにゃ」

「恐縮でございます」

 

ホテルの朝食メニューにありそうなモーニングプレートがずらりと4人分。

そう、4人分。指揮官が特に言わなければベルファストは自分の物を用意しなかっただろう。

 

「徹底したメイド根性だけど今は俺のワガママに付き合ってくれよ」

「お優しい御主人様に恵まれ幸福の至です」

 

そのまま和やかな雰囲気で朝は過ぎ去り……

 

 

 

「ジャベリンとベルファストは日焼け止めはしっかりしたな?」

「勿論です!昨日もしてたんですからね」

「抜かり無く、準備万端でございます」

 

この無人島はそう大きく無く本格的な開発が始まればあっという間に舗装やら電気工事やらは終わるだろう。

開発予定では鬱蒼と生い茂る森を切り拓きそこに飛行場と格納庫を建設する予定になっている。

その他は現状の拡張を繰り広げるばかりである。

 

「ただ森の奥にちょっとした山があるんだ、ソコはあまり調べられてない」

「となりますと登山になるのでしょうか?」

「これが実は火山だったりしたら大変なんでな……行って調べる」

 

島の成り立ちは恐らくの推論であるが溶岩の隆起で出来上がった火山性の物。

森が生い茂る程であるし麓には湖もあるほどなので長い期間噴火などはしていないと思われる。

しかしながらそのカサブタが剥がれたりした場合が怖いのだ。

虎穴に入らずんば虎子を得ずではないが知るには行って調べるしかないのもまた……怖い所である。

 

「山と言っても……丘が近いかも知れないな」

「標高はそう高くなさそうですね」

「食事も持ってますしピクニックみたいですね!」

「はは……」

 

ジャベリンの一言に指揮官もそうかもな…と苦笑交じりに頷く。

ベルファストお手製の昼飯があるため間違ってはない。

 

「レジャーシートも拝借しております」

「準備良いなオイ」

「恐縮でございます」

 

指揮官のキャンプ道具のグランドシートをベルファストは持ち出していた。

用意周到さ加減に舌を巻きつつも心強さを感じていた。

 

「危ないと思ったらすぐに引き返すぞ」

「噴火などしましたら海への避難はベルファストにお任せを」

「頼りにしてるぞ」

 

鬱蒼と生い茂る森、それから小高い山……もとい丘へと向かう一行。

その先ではちょっとしたサプライズが待っていた。

 

 

 

「なぁ」

「これは……」

「凄いですね、間欠泉ですー!」

 

丘の上に到達してみればいくつかの穴とむき出しな土に身構えたが

何ということかそこから湧き出ているのは間欠泉であった。

そう温泉源が地下に埋まっている可能性が出てきた。

 

「掘って温泉を引っ張ってくるのもありだな」

「重桜式の物が素晴らしいと聞きます」

「明石に相談してみるか……」

 

仄かに香る硫黄の匂いは紛うことなき温泉を暗示している。

地質調査は後々必要にもなってくる。

拠点付近に温泉源があれば最高だが……

 

「これで母屋の下にあったら大変だよなぁ」

「地震への備えがし辛くなりますね」

 

基本的な建築方法には自然災害が多い重桜式を採用する。

地震への備えとして構造物を建築する際はアンカーボルトを硬い地盤まで掘り抜き埋め込む。

その上にコンクリート等で建築する方法を採る。

硬い岩盤が何処にあるかはボーリング工事をしてサンプルを採る。

結局は掘ってみて確認するしか無いのだ。

そこで温泉源を掘り抜いた場合内圧から吹き出てしまうものだ。

そうなると地表は水浸しになってしまう。

 

「その辺含めて相談だなぁ」

「ふふ、しかし楽しみでもありますね」

「温泉に毎日入れるとなると凄いですね♪」

 

指揮官達が帰る頃には電気、配管工事は終了していて明石は呑気に日向ぼっこをしていた。

ネコの本能か……眠くなってしまったらしい。

それだけこの環境に安心しているのかもしれない。




おトイレ、電気の次はお風呂ですね。
そしてお風呂関係はご都合主義的な所があります。
活動拠点にするなら何らかの資源的な価値が無いとお取り潰しもありえますしね。
温泉とかあれば前線の休息拠点になれば良いなと考えた次第です。


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文明の灯り

「にゃぁ?それで地質調査を早めるのかにゃ?」

「そうそう、明石も温泉はあったほうが良いだろう?」

「にゃ~、急務じゃないから後回しでも良いけどにゃぁ……もし出てきたら硫黄の濃度も気をつけないといけないにゃ」

 

戻った後呑気に昼寝をしていた明石が起きるのを待ってから相談した指揮官。

しかしその返事は芳しい……モノではなくどちらかと言えば渋り気味だ。

温泉はたしかに嬉しいものだが副次的に硫黄の問題が出てくる可能性がある。

温泉と一緒に湧き出る硫黄の濃度が濃ゆければ生活出来たものではなくなるのだ。

 

「それより発電機の組み立てに入っていいかにゃ?」

「OKだ、ただその後」

「ボーリングはするにゃ、温泉掘り当てても資材が無いから垂れ流しになるにゃよ?」

「その時はその時だ、あったら毎晩の風呂は困らないだろ」

「魅力的なのは確かだけどにゃ……」

 

電気工事は終われどその心臓部である発電機はまだ手つかずだったのだ。

小さな母屋に必要な電力はそう多くない。

納入された発電機は大きな風力発電機と潮力発電のセットだった。

両方ともに結構大掛かりであるが半永久的に発電出来るのが魅力だった。

 

「となると櫓とかを建てるのか?」

「いーや、違うにゃ、潮風を利用するから海岸に建てるのにゃ」

 

一般的な風車と違いどの方向からの風でもダイナモを回せるタイプが納入されている。

それでも最効率なのは海岸に立てて海風を利用するのだ。

ついでに言えば潮力発電もそこそこ大掛かりになる。

電線も通さなければならない、そのバイパスに風力を利用するのだ。

 

「じゃあ指揮官とジャベリンには着いてきてもらうにゃ」

「ベルファストには夕飯を作ってもらわないとな」

「そゆ事にゃ、働けばご飯も美味しいにゃ」

 

明石もベルファストの昼食ですっかり餌付けされてしまったのだ。

作り置きであってもメイドの作った食事は美味であった。

 

「道具はちゃんと持ったな?」

「勿論にゃ、ジャベリーンこっち来て欲しいにゃ~」

「はいはーい!すぐ行きまーす!!」

「ベルファストーこっちは作業に出かけるから夕飯を任せた!」

「承りました、気をつけて行ってらっしゃいませ」

 

元気印も合流し着工しようとする一行は出かける。

 

 

 

 

「こんな感じか?」

「多分大丈夫ですよ!」

 

陸地では指揮官とジャベリンが水平儀を用いて水平を取りつつ支柱を打ち込んでいた。

重機等はない、工具、工事はすべて明石頼りなので陸地で出来ることはその程度。

 

「一般的な風車と違う形状だけど、これで回るのか?」

「縦ですしこう……この外側の羽が受け止めるんじゃないですか?」

 

成形されている風車は合計6枚の羽がついたものだった。

ドラムのようにも見えるそれが風車として動くものなのか

二人して眺めていたがそれは考えられて作られたものだ。

無事に完成した時には今も頬を撫でている風を受けてくるくると回るだろう。

 

「にゃ~建ててくれたかにゃ?」

「ご覧の通りだ」

「水平も出てる、バッチリにゃ」

 

水平線から上陸してきた明石が電線を引っ張って来た。

潮力発電はそれを仕込んだブイを設営するだけだから簡単なのだ。

ただブイを設置する場所を考えないと発電効率は悪くなる。

おまけに簡単と言っても適切に設営しなければ流されていってしまう。

それをささっと終わらせられるのは明石だからか。

 

「じゃあ組み立てるからしきか~ん……肩車してにゃ」

「あいよ……」

 

高所作業をする際は明石のクレーンを使っても良いのだが……

肩車を所望するのは単なる明石の甘えか。

明石本人は軽いのだが全備重量はそこそこあるために……

 

「くっくく……」

「重いなんて言ったら悲しいにゃ」

「この程度軽いもんだ……!!」

 

指揮官は部下を悲しませない為にやせ我慢をしなければならなくなった。

幸いにして明石の作業は早く安全監視としてジャベリンも居たのでスムーズに進んだ。

 

 

 

 

 

「いやー、疲れたが夜にこう明るいのは良いな」

「明石をうーんっと褒めて欲しいにゃ」

「よーしよしよし、お前は本当に出来る子だなぁ!」

「指揮官、ジャベリンにも!」

「いいぞぉ、元気印!!」

 

夜は蝋燭の灯りと月明かりが頼りだったプレハブにも電気が通り照明が点いた。

ダンボールをそのまま食卓として使っての食事にも慣れたもの。

身を寄せ合い食事を取りつつ指揮官はそれぞれの労をねぎらう。

特に功労者である明石は念入りに頭を撫でこんでいた。

 

「ベルファストも美味い飯を作ってくれてありがとうな、今はこんな状態で悪いが」

「メイドには勿体無きお言葉です」

 

奥ゆかしいメイドにも労いの意を込めての頭なでが敢行された

ほんの少し口角が上がっているのは気のせいだろうか?

 

「……ふふ♪」

 

気の所為では恐らく無いであろう。

こうしてまた夜が更けていく。

 

 

 

 

「あ、いけね建造機動かしてない」

「明日2回動かせばいいにゃ」

 

指揮官はおっちょこちょいの気があるのかもしれない。




さて建造では誰が来るでしょうね?


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処理と使用先

前回動かしたときは明石の艤装から電力を受けての稼働だった建造機。

さて、それが幸いしてかベルファストが建造されたが……

 

「今日の運勢も出るかねぇ」

「完全にランダムだからにゃぁ……」

 

使用する資材はメンタルキューブのみとなるが

副素材として鉄鋼、弾薬等を入れ込めば狙えなくもない。

しかしそこまでする余裕は無く結果的には……完全な運だより。

海域の安全を確保しようとすると出撃する必要がある。

しかしながら現状主戦力となる戦艦、空母が在籍しない。

そこで狙うはそのどちらかとなる、メンタルキューブは2個投入した。

 

「じゃあ動かすにゃ」

「頼む」

「れっつごーにゃ」

 

稼働スイッチを押すと低く唸る音と共に建造機が動き出す。

同時に出てくるのは建造にかかる残り時間だが……

 

「4時間と25分か」

「うーん……指向性は空母に設定したはずだから空母かにゃぁ?」

「何が出てくるかはわからないか?」

「そこまで頭に入ってないにゃ」

「ドリルはまだ残ってるか?」

「あー……高速建造材のことかにゃ?アレはまだまだあるにゃ、使うのかにゃ?」

「使っちまおう、腐らせるには勿体ない」

「あいあいにゃー」

 

一見するとドリルに見えるそれを建造機脇に設営された工廠用倉庫から取り出し

建造機に空けられている穴に差し込みぐるりと回す。

するとどうだろう内部の反応がかなり良くなり残り時間の表示がみるみる減っていく。

高速と言うより音速と名乗らせても良いのではないだろうか?

そう指揮官は思いつつ見守る。

建造機のスモークグラスで覆われた排出口に人影が出来上がった。

艤装もしっかりとある、シルエットから鑑みるに空母だ。

 

「ユニオンの最新鋭空母・エセックス、正式に着任しました」

「や、やりぃ!でかしたぞ空母で最新鋭だと!」

 

大当たりを引き当てたのは良いが……開拓に向いた人員かといえば……

 

「出撃は……は?開拓?それにエンタープライズ先輩が不在?」

「怖い顔するなよ……そういう母港なんだ、今は……とにかくよろしく頼む」

「そう……ですか、わかりました」

「とりあえずそこの母屋でジャベリンとベルファストに挨拶してきてくれ」

「了解しました……はぁ、期待には応えようと思いますけど開拓……かぁ」

 

バトルジャンキーの気があるような空母に開拓はどうであろうか……

不承不承そうではあるが上官の命令には従う様子でプレハブ住居へと入っていった。

 

「にゃー……これで次エンタープライズとかだったら」

「やめてくれ……とにかくもう一回だ」

「あいあいにゃー」

 

その次に表示されたのは4時間と20分、指向性は変わらず空母や工作艦が出る設定。

そして排出されたのは……

 

「ハロー~私、ホーネット!あっ、遠慮はいらないから、私のことをホーネット様って呼んでいいよ~」

「あー……よろしくな、ホーネット」

「なんというか……発展途上?」

「ご明察、開拓中の母港でな……貧相な施設なのは許してくれ」

「なるほどーこれは大変そうな場所に着任しちゃったかにゃー?」

 

どうやら今日の運勢はユニオンよりでそこそこ良い運勢だったようだ。

ホーネット曰く手先は器用だから役には立てるだろう。

 

「とにかく今日の作業に移るか……」

「にゃ、汚物処理の機材を組み立てることにするにゃ」

 

 

 

 

 

汚水処理となれば相当大掛かりな物が本来は必要である。

しかしそれをすぐに組み立てることは叶わない。

であれば少人数の出す汚水、汚物を処理できるだけの物を組めば良い。

 

「小型の反応池と沈殿池とかの混合装置にゃ」

「便利なものがあるもんだなぁ……」

「汚泥もしっかり乾燥させて肥料にもなるにゃ、一石二鳥にゃ」

「あー……畑も作るもんな、そうかそうか」

「そういう事にゃ」

 

現状6名の出す汚水、汚物を処理できればOKなのだ。

汚水処理施設は追々この母港が発展した時に設営すればよいのだ。

問題は水質汚染に繋がるような物の中和と汚泥の処理だ。

それさえできる機材を組み上げればOKなのだ。

 

「じゃあ早速だけどホーネットに手伝ってもらうにゃ」

「アイアイ、マム」

「マムじゃないにゃ、指揮官はそうだにゃぁ……」

「そういや鍬があったな……実際にちょっと耕してくるよ」

「了解にゃ、じゃあホーネットは明石に着いてきて欲しいにゃ」

 

自称手先が器用との事であるホーネットが補佐に入った。

指揮官はといえば畑にできそうな土地を耕そうとして鍬と人員確保に向かった。

 

「エセックス……は嫌そうだな……」

「ソンナコトナイデスヨー?」

「まぁまぁ……やってみれば案外楽しい物だぞ、ほらちょっとこっち来な」

「思ってた艦隊とちがーうー!!」

 

デカい駄々っ子が引きずられて行っていた。

なお身体を動かすのはそう嫌ではなかったらしく動き出すと嬉々としていたのをココに記しておこう。




というわけでエセックスとホーネットをチョイスしました。
完全に作者の好みです

エセックス、このちょっと残念感ある感じが僕は好きです


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拡張工事・1

開拓が進む母港の朝は他の母港と同じで早い。

 

「指揮官おはようございます……って眠そうですね」

「おはようエセックス……いやな、俺は朝が弱いんだ……」

「そんな調子で書類仕事大丈夫なんです?」

「やってる内に目が醒めるさ……」

「いつもの事にゃ、ほっとけばシャッキリするにゃ」

「ジャベリンが起こしに行けば一発ですけどねー!」

 

早朝からフラフラとしているのはこの母港の責任者である指揮官。

遭遇したエセックスが心配する程であるが……

慣れた様子のジャベリンや明石を見て大丈夫なのだろうと納得する他ない

 

「今日は物資が納入される日だ、予定通りならばキッチンと母屋の拡張建材が入る予定だ」

「ほほー、本格的な住居にするんだ?」

「今のプレハブの基礎はまぁ急ごしらえだからな、ボーリングもしてしっかりしたのを横に併設するんだ」

「なるほど、でも人員は?」

「本土から饅頭が寄越されるから安心しろ」

 

ひよこのような不思議なナマモノ、饅頭

決して食べ物ではないが人語を理解しKAN-SENとの親和性も高い謎の生き物。

複雑な仕事は出来ないが単純な仕事や物量が必要な仕事にはうってつけの労力だ。

人員として登録されているが正確な報酬等は軍部の上層部以外知らぬ存ぜぬだ。

ホーネットはどうも別な所に母屋を新しく建てると思っていたらしい。

しかし計画は違う、プレハブに作った物は無駄にしない様にするのだ。

増設するのは主にKAN-SENの寝泊まりする個室になる。

最初に建てるのは広く普及しているユニオン風の寮になる。

そこからさらに増築を重ねていきプレハブをH型で囲うように4大勢力の寮を建てるのだ。

国家間の仲がよろしい重桜と鉄血、ユニオンとロイヤルの並びである

そしてそれらが出来上がった後に本格的な指揮所を建てる予定だ。

本来であればそれらは逆だが指揮官たっての希望でそうなっている。

 

「作戦指揮の機材は小ぢんまりしてるほうが落ち着くんだよな……」

「そもそもですが出撃する事この母港ではまだ無いんでは?」

「そうだがね……現場指揮はお前らの方が良いだろうし

出撃しても中立的な指揮が必要な時とか全体の意思決定くらいだもんなぁ……」

 

現場指揮の理想形は各々の勢力の頭、クイーン・エリザベスやエンタープライズ、ビスマルク、長門などが上げられる。

ぶっちゃけた話戦闘指揮に置いては指揮官はあまり口出し出来ないのだ。

口出しや指示を出すときと言えば出撃中の艦隊の戦況から見た進軍の舵取り、潮時の見極め等だ。

あとは国家の思想に囚われずに指示を出す必要があるときだ。

各々の勢力の頭となれば自勢力を第一にしてしまうものだ。

 

「食事前のお茶でございます」

「おー……さんきゅ、ベルファスト」

 

心なしか気分が良さげなベルファストが食前の飲み物を各々に配膳する。

 

「キッチンはロイヤル王室御用達のを選択したからベルファストにとっちゃ馴染み深いだろうな」

「お気遣い痛み入ります」

「なんのこったよ?」

「モロバレにゃ……」

 

何を隠そう指揮官がそう選択したのだ。

隠しているつもりだがどこで知ったかベルファストと計画握っている明石にはモロバレである。

在籍してくれているKAN-SENの事を大事に思うが故か

上機嫌なベルファスト以外からはニヤニヤと生暖かい目で見られながら食事することになった指揮官だった。

 

 

 

 

 

 

「さてさて~じゃあボーリング作業に入るにゃ」

「掘り抜く頃には物資が来ているか」

「多分そうだにゃ~」

 

硬い岩盤に当たるまで掘り進むのだが一回一回がかなり時間がかかる。

それらが完了している頃には物資の搬入も完了している事だと思われる。

ぱぱっと組み立てられた調査用機材で掘っていく。

 

「一応温泉とかが掘れた場合の資材も納入予定だ」

「掘れなかったらどうするにゃ~……」

「その時は間欠泉から引っ張ってくれば良いんじゃないか?」

「手間だにゃぁ~……」

 

間欠泉が存在している事から源泉があるのは間違い無さそうだが……

それを掘れるかどうかは運次第なのだ。

 

「じゃあ指揮官は今日の建造任務かにゃ?」

「おう、動かし方はホーネットが覚えているんだっけか」

「一応KAN-SEN全員が動かせるにゃ、指揮官の認可は絶対だけどにゃー」

「OK、じゃあ行ってくる……明石、頼んだぞ」

「あいあいにゃー」

 

ふりふりと袖を振って指揮官を見送る明石

しかし掘っていく機械を見るのは退屈であり……

 

「うにゃー……zzz……」

 

ぽかぽか陽気にも当てられうたた寝をし始めてしまったのだった。

その間にも機械は小気味よいエンジン音を響かせながら掘り進めていく。

地下深く、何百メートル、何千と……

 

 

 

 

「エセックスー今暇ー?」

「ホーネット先輩……なんですか?」

「指揮官に許可貰ったから建造機回してみようって話ー」

「指揮官はどうしたんですか……って書類仕事ですかね?」

「軽いサインした後畑耕しに行ったみたい」

「なんだそりゃ……」

 

指揮官はホーネットに任務を委任したようだ。

建造するのは小型艦、それと戦艦狙いだそうだ。

それで一応の1艦隊は結成できるようにするのが狙いだ。

ホーネットは一人で動かすのは手持ち無沙汰で暇になるだろうと道連れを探していた。

現在は組み立てる物もなく待機命令と言う名の自由行動が許されている。

指揮官のキャンプ道具を興味深そうに見ていたエセックスに声をかけたのだ。

当の指揮官はまだ少ない書類仕事をささっと終わらせて畑を耕しに向かった。

土仕事は任せろとのこと、エセックスを引っ張っていったが案外考えなしに鍬を振り回していて

洋服を汚すかもしれないし着替えが届いてから誘うことにしたらしい。

 

「空母狙いじゃないんですね」

「エンプラ姉にそんなに会いたいかにゃ?」

「それは……まぁ……」

「ま、指揮官の指示だからしょうがないよ、次の拡充任務で意見具申したら?」

「そうですね」

 

ぽいぽいとメンタルキューブが入れ込まれる。

すこしぎこちなくだが問題なく建造機を動かしていく。

 

「軽巡洋艦と重巡洋艦だね、こりゃ」

「高速建造剤はどうするんです?」

「使っちゃえ」

「使っちゃえって……指揮官の指示は!?」

「資材の使用は任せるってねー」

 

建造機には2つ排出口がある。

それぞれに艤装が組み立てられていくが……高速建造剤を投入するとあっという間に……

 

「ふぅ……あては長良って……あれ?指揮官は?」

「およ?ここはどこなの……?って指揮官さんは?私はサフォークって言うんですけど……」

 

二人のKAN-SEN、長良とサフォークが出来上がった。

 

「指揮官ならあっちに行った先で畑を耕してるよー、あ、私はホーネットだよー」

「開拓中の母港へようこそ、私はエセックスです……歓迎しますよ」

「ほぅ、サフォークですか。丁度いいです、こちらへ」

「うぇっメイド長!?」

「開拓中に畑……?ふぅん、面白い母港なんねーえへへー♪」

 

新しい仲間を加えて母港は拡張を迎える。

 

 

 

 

 

「んにゃ……あ、寝てたにゃ……ボーリングは終わってるにゃ?」

「おはよう、明石……よく眠れたな?」

「んにゃっ……指揮官……これは、その」

「まぁいい、ココの所働き詰めだからな、しょうがないから多目に見ておくよ」

「にゃー……面目ないにゃ……んにゃ?」

「ん?」

「これ温泉じゃないかにゃ?」

 

時は進みボーリング作業が終わった所。

搬入が終わっても明石が来ないことに不審に思った指揮官が見に来たところだった。

キッチン設営は主にホーネットが設計図見ながらせっせと動き

労働は本土から移住してきた饅頭が行っていた。

そしてボーリングはというと……サンプルを取った所だが……

どうにも泥水に硫黄の香りがするではないか。

 

「指揮官、多分ビンゴにゃ温泉がこれあるにゃ」

「まじか!じゃあ……」

「温泉楽しみ放題だにゃ、機材を片付けてアンカー打つついでに掘るにゃ」

「まてこれ湧き出てないか?」

「にゃ、にゃー!まずいにゃ建材とかはどこにゃ!?」

「しかもこれ熱い!!!」

 

なお機材を片付けた途端に源泉が出てきて大騒ぎになった。

ドタバタはあったものの無事指揮官達は快適な温泉を手に入れた。




作者の完全趣味です。
こうして毎話増やしていけたらなと思ってます。


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お風呂、心の洗濯……?

「んにゃ~、みんな喜ぶにゃ、今日からお風呂は温泉で決まりにゃ」

 

納入された建材はちょうどいい塩梅だった。

掘り当てた温泉はアルカリ性のモノでKAN-SENには嬉しい美肌の湯となりそうだ。

硫黄の噴出も心配されたほどではなく長時間入っていても問題は無い。

寮の建設は一時見送られ温泉設営に尽力された。

その結果夜の帳が下りる頃には立派な温泉施設が出来上がっていた。

源泉かけ流しの温泉は少々熱く40度近い温度だ。

 

「プレハブのすぐ脇にあるのはちと違和感あるがな……」

「そこはご愛嬌にゃ」

 

温泉はいくつかに分けられた。

室内は大きな浴槽が3つ、屋外に露天風呂が1つ設営された。

連絡通路から建屋に至るまで純重桜風に仕立て上げられていて浴槽も檜を使用。

肩まで浸かればほのかな硫黄と木々の香りが鼻孔を満たす。

他にも明石が販売するのだが湯上がりの飲料も仕入れられていた。

休憩ラウンジも併設され憩いの場として最適な空間が出来上がっていた。

 

「ただ問題は男女の区分けが無いんだ、時間をズラすから……」

「あの~そこは遠慮せずに混浴でも良いんじゃないでしょうか、重桜には裸の付き合いという文化もあるみたいですし」

「いやいやいや……」

 

問題を提起するならば男女の区分けが無く時間帯でずらすほか無い。

区分けするほど男女の均衡が無いからだ。

男は現在指揮官一人、他の住民はKAN-SENばかり……そう女ばかり!

饅頭に関しては性別不明……そもそもだが正体不明のナマモノである。

生態系が違うしどちらに入ろうが問題はないのだ。

指揮官は配慮して時間をずらすことで解決しようとしたが……

そこに待ったをかけたのは建造されたばかりのサフォーク。

着替えなどと一緒に納入されたものの中にあったのは湯浴み着。

一応混浴を考えられているのは明白だが……指揮官は頭を振る。

KAN-SENに慣れ親しみ国家に左右されない環境で育てられた青年ではある。

しかし若く色々と溢れている男なのだ、女体とかなり緊密になれば……堪ったものではないのだ。

 

「お前らが良くても俺が良くないの!」

「ははーん……そういう目で見ちゃうんだ?」

「ベルファストはご主人様のご意向に沿います……」

「エッチなのはイケないと思います!」

「混浴は流石に……」

 

からかい半分で指揮官をどつくのはホーネット。

混浴と言う言葉に些か迷う反応をしたが狼狽える指揮官を見て落ち着きを取り戻したのだ。

そしていつもの調子でからかってクスクス笑っている。

しかしながら反対意見が多く挙がった。

ジャベリンはそもそもそういった事は良くないと言いエセックスは拒否反応。

余程の事が無い限りは混浴というのは無さそうだ。

 

 

 

協議の結果指揮官の入る時間だけ制定してソレ以外はKAN-SENが入るような時間とした。

しかしうっかり入ってしまうことも有り得るので湯浴み着の着用は義務付けられた。

 

「よっぽどの事がない限りは……大丈夫だな」

 

指揮官がそうつぶやく先には出来上がったばかりの大浴場。

早速利用するKAN-SENが居た。

働き詰めだった明石がまっ先に入りに行きホーネット、エセックスも続いた。

サフォークも後に続こうとしたがベルファストに首根っこ捕まえられ連行されていた。

メイドが先に休んでどうするのかとお小言を入れていた。

 

「にゃー!先に身体を洗うにゃ!!」

「えー?そんな決まりがあるの?」

「湯が汚れるからとかじゃないですか?」

 

風呂場の防音はそう良くない。

のぼせて倒れられた時に察知しやすくする目的がある。

聞こえてくる姦しい音声に指揮官がくっくっ……と喉を鳴らして笑う。

一応そういう不文律があるのは指揮官は知っていた。

ユニオンやロイヤルのKAN-SENには馴染みが無い文化だろう。

 

「後で立て看板でもしておくか?」

「それがよろしいかと思います」

「うぉっ……ベルファストか、今日の仕事はもうないだろう?」

「ふふ、ですのでご主人様の身の回りの事に専念致します」

「あー……左様で」

 

一日の家事が終了したベルファストが指揮官の傍についていた。

全く気配を感じさせず自然なまでにそこに居た。

仕えられる事に慣れていない指揮官は驚いてそちらを向く。

するとベルファストはなんともイタズラな笑みを浮かべていた。

 

「と言っても後は風呂入るだけだぞ」

「ですのでそちらのお世話を」

「混浴の話は無しだぞ」

「心得ております」

 

 

 

時間は少し進み指揮官が入る時間となった頃。

 

「だから着替えくらいは俺出来るから、良いから」

「では畳むのはお任せください、サフォークはご主人様のお体を」

「は~い」

「いや、あの」

 

お世話といって混浴になるとは限らない。

ベルファストは堂々とメイド服のまま入りあれこれと世話を焼こうしていた。

混浴ではない、甲斐甲斐しいお世話である。

当然指揮官は困惑するし追い出そうとするが……

 

「俺一人で入らせてくれない?」

「お世話は余計でしたか……?」

「あー……いやー……あー……」

「ではこのまま続行させていただきます」

 

結局指揮官は押し切られた、見慣れた物ではあるが見目麗しいメイドに世話されて嬉しくないわけがない。

まだまだ若い指揮官、明鏡止水の心で挑む風呂となった……




きっとベルファストはこういう我の通し方はすると思います。

このSSではこう動くだろうな……で書いてます、齟齬はご容赦を


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寮建設開始

豪雨が心配されますが皆様どうお過ごしでしょう?
これを見ているということは安全な場所に居るということでしょうけど
気を抜かず警戒情報はしっかりチェックして身の安全を確保してくださいね。


指揮官は朝からせっせと動いていた。

今日は早速ながらロイヤルの寮を建てていく。

そこがKAN-SENの住まいになるし饅頭たちの住まいにもなる。

そして自分の仮住まいにもなる。

そのための指示計画書の取りまとめ、本日分の任務の受注、収支報告書等を書いていた。

 

「まだ少ないのが助かってるんだけどな……ふぁーぁ……」

 

大あくびしながら書き進めていく。

朝食は摂ったばかり、胃に血液が行って眠たくなるのも仕方がない。

ソレとは別に指揮官は寝不足になっていた。

仕事ではない、主に女性関係で寝不足だった。

 

「アイツら距離感が近すぎるんだよ……くそぉ……」

 

指揮官とて男だ、美人、美少女に囲まれ嬉しくないわけがない。

しかし距離感が近すぎるのも問題だ。

あれこれ勘違いしそうになるしふとした拍子にスタイル抜群な肢体を見てしまう。

悶々とするのだ、しかし発散する場所もない。

する機会も狭い開拓地には訪れない……深夜にでもならない限り。

 

「寝不足ですか、御主人様?」

「……多分な、近いぞベルファスト」

「あら、失礼しました」

 

距離が近い勢代表格が戦闘、家事なんでもござれのメイド、ベルファスト。

2歩後を歩くような絶妙な距離を保ってくれては居るが……時折触れるほどに近くに来る事がある。

何度か肩が触れたり手が触れたり、初心な指揮官には刺激が強い。

ベルファストを始めとしてKAN-SENは大概スタイル抜群なのだ。

見ているだけでも毒、触れるとなれば?猛毒だ。

わざと狙っている節もあるベルファストに頭を抱えてしまう指揮官。

 

「ふふ、お困りのお顔が可愛らしくて、つい」

「さいで……よし、書類は終わり、建造に向かうぞ」

「お供致しましょうか?」

「じゃあそれとジャベリンを連れてきてくれ」

「畏まりました」

 

今の所指揮官の癒しは明石とジャベリンになりつつある。

 

 

 

 

 

 

「にゃー、今日はロイヤル狙いかにゃ?」

「いんや、何となくだよ……そんじゃ特殊艦2回おねがいな」

「あいあいにゃー」

「歓迎の紅茶は用意しております」

「誰が来るんでしょうね、楽しみです!」

 

ふんふんふーんと鼻歌を歌いながら明石が資材を投入していく。

願掛けみたいなもので随伴してもらうKAN-SENを選ぶ指揮官も居るらしい。

しかしここの指揮官は完全な思いつきで随伴してもらっている。

ベルファストが居るので出迎えの一杯は用意されている。

 

「それじゃあ稼働させるにゃー……にゃ?」

「これはこれは……」

「2時間と4時間20分でございますね」

「片方は重巡洋艦でしょうか」

「もう出来上がってきましたね、さすが高速建造剤ですー」

「こいつらが出来上がったら次は寮の建設に入るから総動員だぞー」

 

指揮官の声に各々が応える。異論を唱えるものは居ない。

出来上がったKAN-SENが排出される……

思わず指揮官は膝を打った。やったと歓喜したのだ

 

「はーい、工作艦ヴェスタル着任しました~」

「ヨークタウン級航空母艦2番艦、エンタープライズだよろしく頼む」

「エセックスとホーネットは工廠に来い!!」

「はい?呼びましたか指揮官?……ってエンタープライズ先輩!」

 

エセックス待望の先輩が来てしまったのだ。

指揮官的には前者、ヴェスタルの着任は大きい。

たまたま近くで土いじりをしていたエセックスがすぐに来た。

そしてとても嬉しそうな反応を示している。

 

「皆様、ささやかながら紅茶をご用意しております。着工前にいかがでしょう?」

「着工……?指揮官、何か工事をしているのか?」

「すぐに分かる……ヴェスタル、早速だがお仕事は多いぞ……」

「あらあら、それは困りましたねぇ」

 

ベルファストの淹れた紅茶で早速歓迎会が始まった。

ホーネットとサフォークも合流しこの母港全員での歓迎となった。

ヴェスタルはと言うと困惑気味。

 

「修理が必要なKAN-SENは居なさそうですけど……お仕事が多い?」

 

修繕と思っていたらしい。

 

 

 

 

 

「ふむ、なるほど……戦闘以外の職務が多いのだな」

「今の所はな、体勢が整ってきたら出てもらうことになる」

「はーい、それはこちらに持ってきて。そうそう、ありがとう♪」

「にゃーアンカーは打ち終わったにゃ」

「指揮官ーこっち手伝って欲しいかなー」

「あいよ、すぐに行く!エンタープライズはエセックスの手伝いに回ってくれ」

「了解した、指揮官」

 

現状を理解したエンタープライズとヴェスタルは早速建設の手伝いに入っていた。

ヴェスタルは勝手知ったるなんとか、饅頭に指示を飛ばしつつ自分はせっせと建設。

明石もこの心強い味方に士気を上げて手早く基礎を打ち終わる。

しかしエンタープライズはというと……この手の作業は……

 

「うわっと……」

「ぎゃんっ!?先輩、足元を気をつけてください!」

「すまない……不慣れなものでな」

 

建材を運んでいる最中に躓いてよろけ巻き添えでエセックスも倒れる始末。

戦闘以外ではコツを掴むまではあんまりなのかもしれない。

心做しかペットのハクトウワシ達もアチャー……とでも言いたげ

 

「ぅごっ!?」

「……ヘルメット被りましょうか」

「そうだな……」

 

ラッキーEと言われたエンタープライズだが陸上ではそうでもない様子。

饅頭が高所から落っことしたヘラ爆弾を貰っていた。

 

「俺は上は見ないしできるだけ高所作業をだな」

「命綱がないからダメですよ」

「そうです!そういうのはジャベリンにお任せです!」

「お前らスカートだろうが……」

 

指揮官の方も割と深刻な問題が発生していた。

建設は前途多難のようだ。




評価が増えていましたね、ありがとうございます。

しかし感想の存在というものは大きいものですね。
モチベーションが段違いです。


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寮1F建設と路面舗装

「所で指揮官」

「ん?質問はなんだ、エンタープライズ」

「何故ロイヤルからなんだ?」

「あー……寮の建設だろ?理由はな……近く本土からエリザベス陛下が視察に来るからさ」

「なるほどな、それならば仕方ないか」

 

建設が進められるロイヤル様式の寮。

その建設順序を決めたのは本土からの視察にあった。

ワガママで有名なクイーン・エリザベスが癇癪を起こさない為に用意している。

幸いにして出迎えはロイヤルが誇るメイド長、ベルファストが居る。

その配下のサフォークも居る、後足りないのは設備だ。

キッチンはロイヤルから取り寄せたものが既にある。

寛ぎ謁見するためのロイヤル式の住居が無いだけだ。

そこで建てるならばロイヤルから……そうなった次第だ。

基礎は既に作られコンクリートが固まるのを待っている段階。

幸いにして日はカンカンに照っていてコンクリートを敷き詰めてから24時間でカチカチにはなる。

それから1階の組み立てに入り今はプレハブから溢れ出る程に押し込められている調度類の設営に入る。

全3階になる大掛かりな寮になる予定で敷地もプレハブ母屋の縦横共に3倍はあろうというもの。

早急に作られるのは1階部分、ここが完成すれば調度類はそちらへ移動。

生活拠点も切り替わり寝食はそちらで暫くすることになる。

 

「今のうちに配管と電気配線だけはしておくにゃ」

「基礎には既に埋め込んでいますけど出来ることは限られていますからね~」

 

工作艦二人がかりで設計図どおりに配管、電気配線の設営に入る。

こうなれば専ら独断場みたいなものだ。

その他はといえば……饅頭がせっせとレンガを積み上げてはモルタルで固めていっている。

このモルタルも乾燥するまでは下手に弄ることができない。

 

「じゃあ他の皆は連絡通路の整備だ」

「了解だ、指揮官」

「エンタープライズは暇そうにしてる奴らを集めてきてくれ、俺は資材運んでるから」

「逆じゃないか……?」

「エンタープライズ、キミが運ぶと怪我するかもしれんからだ」

「……そうか」

 

基礎作りにしでかしている事がしでかしている事なので残当である。

 

 

 

 

 

 

エンタープライズがプレハブ、及び畑もどきを歩き回り招集した結果

集まったのはホーネット、エセックス、ジャベリンの3人。

元気いっぱいのジャベリンは張り切っているしホーネットもやる気十分。

エセックスはといえばエンタープライズの一挙一動を見守っている。

 

「よーし集まったな、じゃあ桟橋から母屋までの道にレンガを敷き詰めていく」

「よく均されている道だったが……更に強固にするのか?」

「それもあるし雰囲気を良くするためだな軽く踏んづけておけばいい」

「後で重機で押し込むんですか?」

「その予定、アスファルトなんかを伸ばす機材が入ってるんでな」

 

指揮官はといえば暇を持て余していた饅頭を招集して先に敷き詰めていた。

まずはガイドとして側を敷き詰めていき帰りに路面を敷き詰める。

そんな手立てで手押し車にレンガを山積みにしていた。

 

「暑くなると思うし水分補給、休憩は各々早めにとれよ。それじゃ開始!」

「「「「了解」」」」

 

指揮官が号令をかけると各々動き出す。

ホーネットは指揮官とほぼくっついて阿吽の呼吸で並べていっている。

仮留めの踏んづけも絶妙な力加減だ。

 

「指揮官、私が踏んづけてるのは良いけどさぁー……上見ないでよ?」

「分かってる……逆になろうか?」

「指揮官が楽しようってー?それは無いなー」

「そう言うと思ったよ……ったく」

「あっははー♪」

 

軽口を叩き合いながらせっせとレンガを敷いていく

 

「先輩、それは力の入れすぎです!」

「む……そうか?」

「そうですよ、ジャベリンちゃん次をください」

「はい、どーぞ」

「では逆に……」

「先輩にこんな事させれますか、私がやります!!」

「……どうしろというんだ」

 

逆サイドは姦しい事になっているが大体良い感じに進んでいる。

 

「ホーネット、お前の姉はいつもああなのか?」

「慣れない事してるからだよ、きっと」

「そうだよな……」

 

 

 

 

 

 

「指揮官たち遅いにゃ、どこほっつき歩いてたにゃ?」

「1階部分は完成しましたよー♪こちらにはシャワールームがつきましたから指揮官はこちらを利用しても良いかも知れませんね」

 

せっせとレンガを敷き詰めて往復した指揮官たちを出迎えたのは大掛かりな寮の1階部分と一仕事終えた明石たちであった。

日は夕暮れに差し掛かっている、早速キッチンではベルファストとサフォークが夕飯を作っているのだろう。

とてもいい匂いが鼻孔を満たしていく。

 

「今日も良いメシにありつけるな……」

「この匂いはビーフストロガノフでしょうか?」

「オニオンスープもありそうだな」

「何でも良いよーベルっちが作るの美味いし!」

「それよりお風呂にしません……汗だくでもう嫌です……」

「それなら明石達も一緒に入るにゃ」

「ふふ、裸の付き合いですね」

 

夕飯の匂いから献立を予想するものから働いた後の汗を流したいもの

各々好き勝手に言うが……そろって大浴場の方へと向かっていく。

 

「先にコーヒー牛乳代を払っておこうか」

「あ、ジャベリンもそうします!」

「まいどありにゃー♪」

「明石、後で俺も買いに行くから、ほいこれ」

「にゃー、なら明石が運んでおくにゃ、シャワールームは分かりやすいと思うから脱衣室に置いておくにゃ」

「助かる、んじゃまたな」

 

一仕事終えた集団は汗を流しに行く……

 

「げぇっベルファスト!?なんでココに!!!」

「無論、お世話の為でございます」

 

一波乱はあったとかなんとか……




次はまた建造予定です、誰を追加しましょうかね



感想いつもありがたいものです、励みになります。


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2Fと人員補充

「おはよう、皆……今日は引き続き寮の建設を行う」

「でも今日は補給船の来航日じゃなかったかにゃ?」

「それもあるがそいつが来るのは昼間だ、それまでは集中できるだろ?」

「それもそうだがにゃぁ……あ、建造サボってないかにゃ?」

「建造機動かしてる暇なかっただけだろ、その分まとめてやりゃ良いんだ」

「ベルファストさん、今日も美味しい朝御飯ありがとうございますー!」

「ロイヤル式の朝はこんなに豪勢なのだな……」

「今度はユニオン式にしてみない?エンプラ姉も料理くらいは出来るでしょ」

「え゙っ……あー……そうだな」

 

朝から姦しいのは無人島に母港を建設中の指揮官一行。

プレハブ住宅から生活拠点をロイヤル式の寮へと移しての朝。

ロイヤル御用達のキッチンは移設されてベルファストとサフォークは大張り切り

 

「はふー……少し休んでもいいですよねー……」

「ダメです、洗い物が待っています」

「そんなー!」

 

訂正、サフォークはのんびりしたいようだ。

しかしベルファストがそれを許すわけもなく連行されていく。

メイドに休みが来るのはいつなのだろうか……

しかしベルファストも愚鈍ではなくサフォークが本当に限界を迎えつつあれば休みを許可している。

 

「そういえばあの仮設はどうするのかにゃ?」

「寮が完成した後あれは取り潰しにして指揮所を新たに建設する」

「ふむふむ、そこが更に言えば指揮官の住居になるんですね?」

「そうだ、仕事場兼家になるな」

 

仮設住宅として建てたプレハブ住宅はそのまま利用する案もあったが

それを棄却して一度解体してから新たな司令所を建設する流れとなった。

 

「そもそもこの試みって活かされるんですかね?」

「上の判断待ち、先遣隊がちゃちゃっと組み上げるのが主流だしそっちとのリスクとかの計算するんじゃね?」

「そういうものですか」

「こっちの利点は気付かれないように最小限度に留めりゃ向こうが気づかない内に戦力を確保出来ること」

「ただし時間がかなりかかりますよね」

「そことの兼ね合いだな、だから俺達で実験してんだろ」

 

つまりは上層部の判断と言う名の気まぐれに左右されているだけである

この開拓が活かされるかは不明である。

 

 

 

 

 

「明石とヴェスタルと饅頭達に建設は任せたし」

「私が引き抜かれて建造に付き合っているのは何か思うところがあるのか、指揮官」

「……だって、エンタープライズ……ぶきっちょじゃん」

「うぐぅっ……!!」

 

こと、この母港では陸上のポンコツとして扱われているエンタープライズ

建設に入ればエセックスがまた巻き添えを食らう可能性が高い

そこで指揮官が引き抜いて建造に付き合わせている

エンタープライズ的には嬉しい反面悔しい所。

 

「まぁまぁ、建造機の動かし方くらいは出来るだろう?」

「それくらいは出来る」

「じゃあやってみようか」

「コレくらいは簡単だ、うむ……」

 

数をこなすつもりで資材は抑えめ、つまりは小型艦狙いになる。

エンタープライズが建造機と格闘していると動きはじめて

とても晴れやかな笑顔でエンタープライズが振り返る

 

「出来たぞ!」

「よしよし良くやった……それで、時間はっと……」

「42分と55分だな」

「それくらいなら待つか、それが終わったら即座に開始出来るように資材を投入しておいてくれ」

「それも小型艦か?」

「んにゃ、大型艦……戦艦とかの方向で」

「わかった」

 

恐らく軽巡洋艦二人となる、いい具合だと指揮官も上機嫌。

そして本日分のとして大型艦の予定を入れてから投入。

建造機からKAN-SENが排出された後自動的に再稼働する手筈だ。

問題は何が建造されるかは見張っていないと分からない所か

 

「じゃ、建設の手伝いに戻るぞ」

「了解だ、指揮官」

 

なお手伝いに入った途端に運搬中の外壁用レンガをぶちまけたエンタープライズであった。

 

 

 

 

 

「二階部分もなんとか様になってきたな……エリザベス陛下を迎える頃には完成してるだろうな」

「といってもまだ乾燥を待ってる段階ですから移動とかは厳禁ですね」

 

外壁を彩るレンガはモルタルで固定されている。

当然乾燥を待たねば強度は出ない、自然乾燥に任せるほかない。

 

「そういやこの足場って誰が組んだんだ?」

「饅頭達に決まってるにゃ、あのちっこい身体で力持ちにゃ」

「へぇ」

 

我々がやりましたと言わんばかりに饅頭達が力こぶを作るポーズで居る。

かなり万能な上量も居る、ただしオツムが残念……

 

「饅頭達もありがとうなー」

 

むふー!と聞こえてきそうなほど達成感ありありとした様子で応対してくる饅頭

饅頭達とのコミュニケーションも指揮官には求められるスキルだろう。

 

「ふーん、ここがタシュケント達が住む予定の寮?」

「メイド長が居るならダイドーも安心して給仕できます……ふふ……捨てられたりはしないですよね?」

「あら、素敵なキッチン。お菓子作りも捗りそう」

「へぇ……歓迎会ねぇ、私の分もあるの?」

 

新たに建造されたのは北方連合所属、タシュケント

ロイヤルメイドのダイドー、そしてヴィシア所属のダンケルクになる

タシュケントは暑がりでつっけんどん、しかし言動の節々から見える良い子ちゃんさが惹きつける。

ダイドーは少しばかり卑屈が過ぎる部分があるがその能力は優秀の一言。

ダンケルクはと言えば人格、性能共に成熟している、良い戦艦だ。

さらにサプライズとして本土より送り込まれたのは鉄血の重巡洋艦、プリンツ・オイゲン

鉄血自慢の堅牢な重巡洋艦は前線においては頼もしい限りであろう……

開拓においては蠱惑的で掴みどころがない言動が困惑を招くのだが……

 

「今日も歓迎会だな、それじゃあ皆今日もお疲れ様ー!」

 

無人島だった島に活気が出てくる

人員は増えていく一方だが……致命的なまでに男女比率が崩れていく。

 

「ウォッカはあるの?」

「指揮官、ビールかウィスキーはある?」

「お前らなぁ……あとプリンツ、近い!色々当たってる!!」

 

更に酒飲みが増えたお陰で嗜好品の補給も急がねばならないだろう。

指揮官の悩みのタネも相応に増えていくのであった。




端折りすぎた感がありますが次話で補間できたらと存じます。
補給船の中身とかも触れてませんでしたから
プリンツ・オイゲンは絶対に出したかったんです、大好きなんですもの


ふと見れば評価に色がついていました、ありがたいことです。


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ロイヤル寮の完成

「本日の予定は寮の3階部分及び天井の設営でございます」

「御主人様の行いが良いお陰で天候にも恵まれましたね」

「あの、ベルファスト、ダイドー……近いっす」

 

朝から指揮官はメイドに挟まれてスタートしていた。

サフォークはコレ幸いにと朝から二度寝をかましている。

ジャベリンはベルファストによってやんわりとお引取り願われていた。

つまりはメイドの独断場、両脇にスッと従いている。

少し横を見れば見慣れたものの男を魅了……いや、女であろうと魅了する美貌が……

ダイドーも負けず劣らず、憂いがあるその顔がとても綺麗に映る。

 

「……勘弁してくれ」

「ロイヤル様式に準えている宿舎において妥協は許されません」

「ごめんなさい、捨てないでください……」

「捨てねぇよ……だから近すぎるんですぅ……」

 

早朝から女人の柔らかさに動きがぎこちなくなる指揮官であった。

どうしてロイヤルメイドがこうもグイグイ来ているのか?

KAN-SENの指揮官になる人材はそう多くなく各国家は確保に躍起になっている。

各々のKAN-SENの魅力を使っての誘惑、地位、金……

どれで靡くかを推し量っている所もある。

この指揮官は誠実で自制心がかなり強い方なのでそうそう靡く物ではない。

が、しかし長く誘惑紛いの事をしていれば堕ちるだろうという算段か。

 

「ふふ、お困りのその顔が大変可愛らしくて、ついつい♪」

 

否、このメイド長は完全に自分の欲で動いていた。

あまり欲を出さないベルファストの欲である。

指揮官がそれを強く拒むことが出来ないのを踏まえている。

 

「じゃあベルファスト達メイド隊は家事をいつもどおりよろしく」

「「承りました、ご主人様」」

「はー……慣れねぇ……」

 

庶民感覚が強い指揮官に従者が従くというのは慣れないものだ。

ロイヤル風味が強い指揮官であればすぐに順応出来たのだろうか?

たぶん否だと思われる。

 

 

――――――――――――

 

 

寮の建築も大詰めを迎えているが……先日の物資で届いた物も組み上げなければならない。

各陣営の特徴とも言える飲料の製造機械だ。

ユニオンのコーラ、ロイヤルの紅茶、鉄血のビール、サディアのワイン、北方のウォッカ。

更に言えば今は桟橋しか設営されていない港の拡張工事だ。

そこを整備しないことには大規模な出撃など出来たものではない。

本格的な工廠もそこに設営されることになる。

やることはいっぱいある。今は明石とヴェスタルの二人が居るので分散も出来るが……

 

「流石に手先が器用って言っても工事までは出来ないからねぇー」

「という訳でヴェスタルには港側に来てもらった」

「はーい、それじゃあやって行きましょうか」

 

寮の完成の目処は立った、そうなれば指導・作業する工作艦は一人居ればいい。

人員を半分に割いてから港整備に当てたのだ。

といっても最初は港付近に物資を置くための大型倉庫の設営だが……

 

「エンタープライズちゃんは危険観察員としてそこで全体を見ていて」

「重要な仕事なのか?」

「とーっても重要よ」

 

一番懸念材料であるエンタープライズは観察員という全体で危険がないかを見る観察塔に。

コンクリートをまた扱い迂闊なことが出来ないのだ。

 

「じゃあ指揮官と饅頭ちゃん達はここでコンクリート練ってもらえます?」

「おう」

「ホーネットちゃんとエセックスちゃんはこっちへ」

「「了解」」

 

ミキサー?そんな物は一個しかない。

明石が寮建設に使っている為手作業でやるしかない。

指揮官と饅頭による人海戦術だ。

コンクリートが出来上がるまでの間にKAN-SEN達によって水平が採られ

基礎になる鉄筋などが組まれていった。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「タシュケント、今日は暑い中頑張ったのよ、もっと褒めてくれてもいいんじゃない?」

「面白い試みしてるって聞いてやって来たけど、こりゃひと味もふた味も違うわね」

 

倉庫の基礎作りが終わった後寮の方へと戻ってみれば立派な寮が出来上がっていた。

と言ってもまだモルタルの乾燥待ちだが……住むには耐える物だ。

文句を言いながらもせっせと動いてくれたのは先日建造されたばかりのタシュケント。

そして本土からやって来たプリンツオイゲンの二人、明石が言うには口も多く動いていたけれど身体もそれ以上に動いていた。

 

「それについちゃ考えてるんだなー……ダンケルク!」

「大盤振る舞いしていいって事だから動いていた皆にはスイーツビュッフェが」

「あっそ、どれくらい食べていいの?」

「お供にビールが欲しくなるわ……チョコレートはある?」

「好きなだけ食え、あとチョコレートは……」

「勿論ありますよ、パフェもあるからお腹いっぱい食べても良いのよ?」

「パフェ!ジャベリンにそれ1個ください!!」

「はいはい、パフェは逃げないわよ、安心して?」

 

スイーツの事なら任せろと豪語したダンケルクがキッチンに籠もっていたのだ。

食料物資は十分ある、微量ながらに畑の方も稼働をはじめて自給もできるだろう。

一番大変な時期に来てくれた相手には相応の待遇をするのが良い。

指揮官はそう判断していて大盤振る舞いだ。

しかめっ面のタシュケントもこれには微笑み甘味にありつく。

 

「美味いけどやっぱり故郷の味ってのが恋しくなるよねー……ね、エンプラ姉」

「たまにエネルギーバーが恋しくなるな」

「それは先輩だけだと思います……あ、このマカロン美味しい」

 

動いた面々といえばユニオンの3空母。

しかしホーネットは故郷のジャンクな味が恋しいらしい。

食事はほぼロイヤル式、スイーツはサディアと来るならばさもありなん。

 

「皆ー喜ぶが良いにゃー、質はともかくとしてドリンク製造機械が出来たから好きな飲料飲めるにゃー」

 

と、緑茶片手に仕事を終えた明石がやって来た。

室内に運び込まれるのは何やら怪しげな材料が接続されたドリンクサーバー。

より快適な生活を送るために組まれたものだ。

この日は一層盛り上がり……そして大量の二日酔いが出ることが予想された。




飲料一つでモチベは大きく変わると思うんです。
そしてお酒は飲めない日が続いた後に飲めると……グイグイ行っちゃうと思うんです。

その結果が二日酔い軍団なんですけどね?


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お酒は程々に

「指揮官、起きてー朝だよー」

「おぁー……」

 

ユサユサと揺さぶられる指揮官、今日は特に酷い寝起きだ。

なんせ先日のどんちゃん騒ぎでは大いに飲んでいて前後不覚になるまであった。

 

「起きないとあて、キスしちゃうよー?」

「おきますおきます、だからすこし待ってくれ……」

 

そんな指揮官を起こすのは漂う幼馴染感が強い長良。

ここ数日間はもっぱらメイド隊の補佐に入っていた。

服装も制服からベルファストに貰ったメイド服である。

かなりお気に入りになってしまった模様。

そして起こし方もロイヤル仕込か……それとも重桜もなのか。

 

「起きる気配が無いじゃないの、えへへーそんなにキスしてほしい?」

「違うんです、違うんです……」

 

グイグイ行くのはKAN-SENならではなのかもしれない。

 

「冗談はさておいて、起きないと朝御飯冷めちゃうよ?」

「頭が痛いんですぅ……」

「お水飲まないとダメだよぉ、あてが支えるからほら起きるの」

「あー……うー……」

 

結局指揮官自力では起ききれずに長良に支えられ起きる。

成人男性くらいは余裕で支えられるのがKAN-SENだ。

頭痛に悩まされる指揮官を支えて指揮官の寝室を出る。

 

「にゃー……皆昨日ははしゃぎ過ぎたにゃー……明石もちょびっと頭が痛いにゃ……」

「あっはっは、皆グロッキーだねー」

「ホーネットは元気だな、エセックスは……うわ、大丈夫か?」

「エンタープライズ先輩も元気ですね……うぅっ……平気です……」

 

宿舎の一つが完成した祝にと騒いだ結果多くのKAN-SENが二日酔いに。

工作艦の明石も二日酔いなのは結構な痛手だ。

 

「ヴェスタルはどうした……」

「ヴェスタルなら寝室でまだおねんねよ、同志ちゃん」

「今日は駄目かもしれんな……」

「あっそ、アレくらいで二日酔いになるなんて軟弱ね」

 

酒豪が多い北方所属のタシュケントは駆逐艦の身でありながらピンピンしていた。

むしろ飲み足りないと言わんばかり、その身に流れるのはウォッカか……

ともかく工作艦二人がほぼダウン、工事は一旦ストップとなった。

 

 

――――――――――――

 

 

「あー全員食いながらで良い、返事も無しで良いから聞いてくれ」

「んみゃんみゃ……にゃ?」

「二日酔いのメンバーが多いため今日の活動は中止、休養とします、OK?」

 

なんとか全員起きてきて青い顔元気な顔それぞれが並ぶ。

給仕に入っているベルファストも心做しか眉にシワが

指揮官が飲むと良いといって渡した酒が中々強かったのだろう。

その結果メイド隊も含めて酒精が回っていたのだ。

唯一飲んでなかったのは苦手と言って拒んだ長良だけか。

全員に告知が行き渡った所で指揮官もノロノロと食事を摂り始める。

 

「ダンケルクは元気そうだな……」

「そこそこお酒には強いから、指揮官はダメみたいね……」

「意外なのがプリンツだな……あんなに酔ってたのに」

「何よ」

 

国家の特色も出ているのだろうか?

酷い二日酔いになっているのはロイヤル、重桜が多くある。

鉄血のプリンツは酷い酔い方をしていたが二日酔いにはなっていない。

 

「絡み酒だから今後は控えてくれ……」

「それなりに考えておくわ」

 

プリンツの酒癖は酷い絡み酒でテンションが少しおかしくなっていた。

指揮官にとってはあまり心休まる感じではない。

KAN-SEN誰しも美人でありスタイルが大変良いのが多い。

プリンツも例に漏れず美人でスタイル抜群だ。

それが絡んでくるのだから堪ったものではない。

 

「あー……それでは指揮官、今日は何するんですー……?」

「建造機回しておしまい」

「本当にほぼ何もしないんですね……」

 

元気印のジャベリンでさえこの始末、今敵が攻めてきたら大打撃は免れないだろう。

アズールレーン勢力圏内だったから良かったものだ。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「設定は小型1に特殊1でいいん?」

「そうそう」

 

指揮官は基本的に立ち会うものだとされていて建造機を動かす際は何か理由がない限りは立ち会う。

二日酔いで頭が痛い中長良に付き添ってもらって立っている。

普段なら近いと言って照れているがその余裕がない様子。

 

(長良のシャンプーのニオイ良いな……身体も柔らかいし)

 

かなり欲望に素直になってさえ居た、ダメだこの指揮官。

長良はそんな指揮官の胸中は露知らず……気遣いながらテキパキと建造機の設定を行い……

ちゃんと起動させてから資材を放り込む。

 

「何が出来るんかなー?」

「さぁな……」

 

浮き出ているディスプレイ表示には26分と3時間50分

前者は恐らく駆逐艦、後者は空母が生産されるのだろう。

 

「メンタルキューブは謎だらけだが……こうして味方が出来上がっていくから人類の味方で良いんかねー」

「あてもよく分からないけど……きっとそうなんじゃないかなー」

「高速投入」

「あいあいさー♪」

 

高速建造剤を投入され建造機が本気を見せる。

精細な動きを見せながらも超高速で動き浮かんでいる人影に艤装を組み付けていく。

いつもこうであれば楽なのだが……高速建造剤もそう多く量産されているわけでもない。

封入されるエネルギーが多いのだと思われる。

あっという間に出来上がったのは……

 

「コホン!元大型巡洋艦にして、正規空母のグロリアス、着任しました」

「ラントレピート級のル・テメレールだよ!よろしくね!」

「おー……こりゃまた」

 

駆逐艦はル・テメレール、見るからに元気印になりそうな娘だ。

ジャベリンと相性は良さそうに見える。

空母の方はロイヤル出身のグロリアス、気概たっぷりだが……

 

「残念だがグロリアス、ここじゃ戦闘とかめったに無いからな」

「そんなっ!?」

 

エセックス辺りと会わせれば良さそうな娘だと思った指揮官であった。

して、この子開拓作業出来るのであろうか?甚だ疑問である。

とても空回りしてドジやらかす感じがして来る。

 

<ヘックシュ!!

<センパイ、ティッシュデス




諸事情で明日はまるっと一日何も手を付けられないので

お酒は飲んでも飲まれるな、ですね。


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ポンコツ、イタズラ、おこおこ

「ご主人様、本日の予定はどうなさるのですか?」

「ん?港の方の整備だな、張り切ってやろうか」

「分かりました、本日は暑くなる予報ですので追って冷たい飲み物をお持ちします」

「助かる、人数分用意しておいてくれ」

 

二日酔いに付随する体調不良が蔓延して一日休みとなった遅れを取り戻すべく指揮官は朝から張り切っている。

家のことはメイド達に任せるとして作業には腕っぷしや活発なKAN-SENを引き連れて……

 

「グロリアスさん、足元気をつけてください!」

「え?きゃわぁっ!?」

「あーあー……がっしゃーんです」

「ダイドー、あれ掃除しておいてくれ……」

「かしこまりました……」

 

参入したばかりのグロリアスが早速その本質とも言える物を発揮していた。

張り切って家事やら工事やら手伝おうとするのだが……

気概が先を行き過ぎてせかせか動きすぎ、その結果失敗に繋がっている。

皿を割るのは可愛いもので着任当日は……

 

「まさか俺が使用中の風呂に突撃してくるとは思わなかったよ」

「流石にあれは予想外でございましたね、ご主人様」

「止める間もなくお掃除です!とかいって行っちゃいましたからねー……」

 

栄光という名に恥じない働きをというのがあるのだろうか?

しかし酷い有様である、じっとしていればロイヤルレディらしいのだが……

従者であるはずのベルファスト、サフォークをして微妙な顔である。

 

「……なんだ、ホーネットとエセックス揃って私を見て」

「ご同類だよー、エンプラ姉」

「いえ、すいません……」

「(´・ω・`)」

 

余波でまだマシな方のエンタープライズにまで視線が行っていた。

朝からこの扱いにエンタープライズが凛々しい顔を崩してしょんぼり顔である。

 

「この母港、発展途上ですけど、雰囲気とっても良いですね!」

「でしょう、私もすぐに気に入ったの、テメレールちゃんもすぐに気にいると思ったの」

 

アイリス、ヴィシアのコンビがそんな様子を見て朝からお菓子をつまんで微笑み合っていた。

 

 

――――――――――――

 

 

「ふぅん、最初はこの倉庫からねぇ」

「物資を置くのに必要にゃ」

「あっそ、そこに積まれてるコンクリートブロックは?」

「それは護岸整備用です、後からアンカーを打つんですけど……」

「そこの二人は酒を置いてこい……」

「「イヤよ」」

 

作業を手伝うけれどもひとクセあるのがこの二人。

タシュケントとプリンツ、共にスキットルに入れているのが良心的か。

収納に困るボトルなんかで持ってこられていた日には目も当てられない。

そうなれば指揮官も怒るだろうから引き際を弁えているのかもしれない。

 

「まぁまぁ指揮官、これはタシュケントとプリンツにとっての命の水にゃ」

「酔って手元が狂うなんてことは無いようにしてくれよ……」

「はいはい、同志ちゃんほど軟弱じゃないから平気よ」

「これくらいだと変わらないわよ、ねぇ?」

「コークハイをこっちに飲ませないようにしてねー?」

「チッ……」

 

不安が積もる指揮官だがこれは仕方ないかとも思われる。

タシュケントは変わらぬ顔で作業開始している。

プリンツはといえば持ち込んだコークハイとヴェスタルに飲ませて引きずり込もうとしている。

缶コーラに見えるそのパッケージには見覚えがあるのかヴェスタルは即座に切り捨てたが。

飲んだくれ二人を監督しながらとなると……

 

「エンタープライズ、あの飲んだくれ二人を監視しておいてくれ」

「分かった、もしもの場合は?」

「取り押さえてくれ」

 

作業に関してはポンコツ気味のエンタープライズだが腕っぷしに関しては右に出るものは居ない。

睨みを効かせていれば暴走はしないだろう……と指揮官は考える。

 

「えーっとここにこの分量だけコンクリートを……」

「グロリアスさん、コンクリートを流し込みながら書類確認しないでー!!」

「ふふ、おっちょこちょいさんね」

「あ、あぁ……すいません……」

「先が思いやられる……なんだこりゃ」

 

人数が増えたは良いが癖が強すぎるメンツに指揮官が頭を抱えた。

フォローアップに回れるダンケルクを配置したのは正解だったようだ。

ダンケルクが入れない場合は長良だろうか。

指揮官が目を光らせていてもすぐにフォローに回れるかと言えば……微妙だ。

指揮官は一つのタスクで精一杯になる、本来の仕事である作戦指揮であれば別かもしれないが……

 

 

――――――――――――

 

 

工事は程々に進み倉庫の屋根と支柱までは組み上がった。

しかしその作業終了後だ。

プリンツとタシュケントが指揮官に呼び出されていた。

 

「プリンツ、タシュケント共に正座な」

「同志ちゃん?ちょっと顔が怖いわ」

「仕事はしたじゃない、何よそんなに怒ること?」

「グロリアスを酔わしたのはどうなんだ、あぁん?」

「……」

「おう、黙るって事は悪いって思ってんだろ、コラ」

「すまない、休憩中に混ぜ込むイタズラは見抜けなかった」

「エンタープライズは良い、異変に気づいて即座に取り押さえてくれたからな」

「……そうか」

 

面白そうだからと結託してグロリアスをターゲットにしたイタズラが結局成されてしまった。

当然グロリアスは寮へと戻されて待機、下手人二人はしこたま叱ってから作業に戻したが……

作業中も酒を手放さなかったので反省の色無しと判断。

プリンツに至っては絡み酒を発揮して作業の進行を妨げ気味に……

流石にこれには指揮官、結構怒っている。

 

「おう、考えを改めないならこっちにも考えがあるぞ」

「……例えば?」

「解体」

「「すいませんでした」」

 

ドスの利いた低い声は実行に移す凄みを効かせていた。

そしてその口から放たれたKAN-SENにとってのある意味流刑宣告、解体。

これには二人も悪ふざけを速攻で止めて土下座である。

 

「罰則は港完成まで禁酒、素行が悪けりゃ延長も辞さない、良いな?」

「はーい……」

「まぁ流石にああなるのは予想外だったし……冷えてきたわ」

 

根が捩じ曲がってるわけではないのでここでしっかり反省の色が出ている。

やってる最中は案外そのへんが欠如する物だ。

 

「ねぇ、プリンツちゃん、グロリアスの所行ってお話しない?」

「あら奇遇、話すことがあったのよ……」

「さっさと行ってこい、ダンケルクが菓子でも作ってるだろうから持っていけ」

 

謝りに行くのは明白、ダンケルクとベルファストが美味しいお菓子を用意している。

ならばそれを持ち寄って仲直りのお茶会になるのは必至か。




ただで作業を手伝うタマかな……となってたらこうなってました。
次はちょっとあのポンコツさんを入れようかと思ってます
何処か抜けている人って魅力的ですよね


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革命の国より

「ご主人様、本土より電文です……一名KAN-SENが来るそうです」

「えぇー?」

「どの陣営の方かは……明記されてはいませんが」

「まぁ良い、食料の残りは?」

「潤沢にございます、歓迎会ですか?」

「そうだな」

 

早朝より指揮官宛てに本土から電文が飛んできていた。

それを受け取ったのはいつ眠っているのか不明なベルファスト。

同じくメイドとして動いているダイドーにすらいつ休んでいるのか気取らせない。

それで十全に職務を全うしているので末恐ろしい物。

寝起きの指揮官はあまり回っていない頭で司令を出して目をこする。

 

「寝起きのコー……紅茶を頼む」

「かしこまりました」

 

指揮官は大凡酷い味でないなら何でもイケる口であり、朝は苦味の強いコーヒーを頼む傾向が強い。

しかし連日コーヒーを頼んでいるとベルファストが心做しか残念そうに見るのだ。

ダイドーにそれとなく聞いてもダメ、サフォークに聞いてみるとこんな返事が帰ってきた。

 

『メイド長は紅茶に自信ありありですからね~それより泥水が良いって言われるとそうなりますよ~』

 

ロイヤルの中にもコーヒー愛好家は居ると思われるが往々にして紅茶こそが良いとされている。

実際にベルファストを始めとするロイヤルメイド隊の淹れる紅茶はかなり美味。

紅茶に対して造詣が深いわけでもない指揮官も思わず唸った。

ただの眠気覚ましに飲むのが憚れるような物だったのだ。

無意識化にそうして遠ざけていたのだがそれがベルファスト的には気掛かりだったようだ。

というのがサフォークの言であり……実際に寝覚めに紅茶を頼むようになってみればベルファストはかなりご機嫌に見える。

 

「……コーヒーは自分でやるか」

 

引っ込んでいくベルファストの背中を見送り見えなくなった所でポツリつぶやく。

コーヒーを淹れている瞬間というのも楽しいものだ。

特に娯楽が少ないこの母港では大事な事なのだ。

 

「なんか言われる前に趣味って事で通しておこうか……」

 

母港開設当初大活躍だった使い込まれたキャンプ道具をちらり見てからそう言って肩を落とした。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「自給自足するためにって言ってたけど……本当にこんな広さでどうにかなるのかしら?」

「さぁ?同志ちゃんの趣味なんじゃない」

「予定ではもう少し広くするらしいんですけどね、ほら手が止まってますよ」

「あっそ、動けば良いんでしょ動けば……あつぅぅぃ……」

 

飲んだくれ二人は建設に置けないと指揮官が追い出した先はエセックスが主にやっている畑仕事。

プリンツは中々これはこれで面白いとザックザックと鍬を振り回している。

タシュケントの方は小柄+暑がりなのもあってバテ気味である。

そもそも服装が暑そうである、もうちょっとマシな恰好したら良いものなのだが……

 

「肥料の方も埋め込んでますし後は経過観察ですね」

「何を植えたのよ?」

「ジャガイモと人参ですね、ちょうど同じ時期に植えたら良い感じなんですよ」

「あとは玉ねぎとかあれば良いわね……」

「カレーとかにするの?お肉が無いじゃない、どうするの……あと熱いのはイヤよ」

 

植えた作物はちょうど季節的にも良いとされる作物。

それに芋は痩せた土地でも育つ逞しい物で土壌環境を見るには良いだろう。

肥料の方も用意は出来ている、後は時間が経てば分かること。

しかしながらタシュケントが茹だりそうな雰囲気を醸し出しているのでプリンツが口を開いた。

 

「そのモコモコな服を脱ぎなさいよ……」

「……えっち」

「……ですって」

「指揮官に新しい衣装の購入を打診しておきますね……」

 

これにはエセックスもプリンツも顔を見合わせる。

どうやらタシュケント、そのモコモコの下は見せれないような恰好の様子。

悪戯心がプリンツの中で膨れ上がりかけるが……指揮官の般若の顔が思いうかび即鎮火。

 

「お昼ごはん出来たよー、お仕事きりが良いところで切り上げて食べよ?」

「お菓子もちゃんと用意してるから、英気を養って」

 

長良とダンケルクの声が、それぞれ仕事は一旦中止、楽しい昼飯の時間と相成った。

 

 

――――――――――――

 

 

早朝に言っていた人員が一人来た、港予定地の桟橋に降り立ったその人は……

 

「ふむ、もう少し見窄らしい港かと思ったがそこそこに整備されているな」

「お待ちしておりました~こっちへどうぞー」

 

純白のコートに身を包んだ長身のKAN-SEN

ソビエツカヤ・ロシア、北方が誇る戦艦の一人であった。

主に指揮官の戦闘補佐として派遣されたが……ここは開拓中である。

果たしてこの戦艦が開拓に置いてどれだけ役に立てるかは未知数である。

サフォークが緩い感じで案内をしていくが……

 

「このレンガ敷きの歩道も中々良いな」

「良いですよね~指揮官も頑張ってましたし」

「ほう、勤労意欲の高い同志か、それは良い事だ」

「そう言えば北方の人ならタシュケントちゃんも喜びそうですねー」

「ほうほう、同志タシュケントも居るのか、それは喜ばしい事だ!」

 

冷たい第一印象だったがどうも好印象の事柄を聞いている間に地が出てしまってるのだろうか

子供のように表情をコロコロ変えてはウンウンと頷いて機嫌を良くしている。

サフォークから見ても主君のクイーン・エリザベスを彷彿とさせていた。

 

「あちらが寮になります~」

「アンバランスだな……我ら北方風の寮は計画にあるか?」

「今の所無いですね」

「何だと……これは抗議しなければならんな……ん?この匂いはなんだ?」

「それは中に入ってのお楽しみですね」

 

たどり着いたのは夕暮れ時、夕飯を食べてもいい頃合い。

ロシアの腹の中もいい具合に空いていた。

真っ先に案内された寮の中に入れば……

 

「だーかーらー、同志ちゃんは分かってないわ」

「度数の高いウォッカをウェルカムドリンクに出すバカが何処に居るんだ?」

「こういう時のタシュケントの直感は馬鹿にできないわよ」

「ほぉ、これはこれは……」

 

本土よりの客人?それとも配属かはさておいて進められていた歓迎会の喧騒が聞こえてきた。

聞き馴染みのある声にロシアの口角もつり上がっていた。

 

「ではいつ入ればぁ!?」

「あー……段差があるから気をつけてくださいねー」

「言うのが遅い、このうつけ者!うぅ……」

 

どことなくエンタープライズやグロリアスを彷彿とさせる一面が見られた。

サフォークにはどうしても指揮官がまた頭を抱えるビジョンが見えてしょうがなかった。




\デェェェェン!!!/

はい、という訳でポンコツ3人目の登場です。
あと畑の方も始動したということでエセックスが張り切ってます。
次で倉庫は終わらせて港の工事に入りたいですね


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サプライドロップ

「ねぇ~同志ちゃ~ん……あつぅぃ~……」

「わかった、わかったから引っ付くな、こっちも暑くなる」

 

母港が建設されている島の位置は赤道直下……と言うわけでもない。

大西洋のロイヤル側に近い島、比較的北側に位置するのだが……

今は太陽の位置的に日照時間が長くなり暑くなりがちだ。

さらに時間が経てば雨期が来て工事も滞るようになりそうだ。

さてそんな暑い島に居るKAN-SENは基本的に制服で居る事が義務付けられている。

私服等の持ち込みもOKではあるが……そも島にブティックなんてものは無い。

建造されて間もないKAN-SENが大半を占めるこの島において私服=制服なのだ。

ここで問題になって来ているのが北方のKAN-SENの保温率になる。

ぶっちゃけ防寒着になる制服を着ている北方のKAN-SEN……タシュケントとロシアは茹だっていた。

特にタシュケントは暑がりで扇風機等で涼を取ろうにもダメだ。

 

「指揮官、指揮官朗報にゃー」

「来たか!」

「タシュケントもちょうど居るにゃ……ちょっとこっち来るにゃ」

「ちょっと、裾引っ張らないで!イヤー!!めくれるぅー!!」

「……俺は何も見てなーい」

 

早朝にエンジンの轟音が空を駆けた。

その轟音に驚いたのは他ならない空母KAN-SENの面々。

エンタープライズとエセックスが揃って気を引き締めた顔で飛び出していき……

遅れてホーネット、グロリアスが飛び出していきこの母港初となるスクランブルとなった……

だが指揮官が呑気なモノで音をきっちり聞いた上で大騒ぎな寮にノロノロ出ていきタシュケントに捕まったのだ。

それもそうだ、セイレーンの使う戦闘機のエンジン音ではないのだ。

アズールレーン全般的に広まっているレシプロエンジンの輸送機の音だ。

本土より結構な距離海を隔てて居るこの島に速達便となれば空輸以外にない。

滑走路等はまだ整備されていない、ではどうするかとなればエアーサプライだ。

 

「俺のサイフが軽くなったが……まぁ良いや」

 

その中身の購入費用は指揮官の給与から天引となる。

基本的には作戦指揮、軍事行動には不要とされる補給の為だ。

無論KAN-SENとのコミュニケーション、士気向上の為には大変効果的ではあるが……

上層部としてはKAN-SENはモノ扱いであり……

 

「喜んでくれたら良いがねぇ」

 

現場の指揮官との意識の差はかなり深いが指揮官は呑気なものだ。

 

 

 

――――――――――――

 

 

「うむ、これで指揮官の書類仕事も手伝えるというものだな」

「涼しいわ、ありがと同志ちゃん」

 

補給品は目下一番の問題とも言えた北方二人組の衣服がメインであった。

そう、衣服。本土では嗜好品として購入が許可されているモノの一つだ。

尤も二人に支給されたのは北方発案の監獄、対拷問訓練に使用された物だ。

要件としては身内から裏切り者が出た、敵地にて投獄された場合を想定した訓練だ。

二人ともに傍目から見ればOLにも見えなくはない。

モコモコ制服から考えれば劇的に環境改善になっただろう。

 

「これ、私の私服……それにこれはGAMAHAの……」

「私の私服もあるな、GAMAHA R1もか……指揮官は気前がいいな」

「私はこれ……ドレス?着る機会あるのかなぁ?」

「ふぅん、私にも随分あるじゃない……水着?着てほしいのかしら」

「えへへー指揮官ありがとうねー」

 

そのついでにと他のKAN-SENにもいくつか衣服が支給された様子。

私服、フォーマルドレス、水着等など選り取り見取り。

フォーマルドレスは恐らく来るクイーン・エリザベス来訪の際に着て欲しいのだろう。

一応制服もフォーマルな恰好と見做されるが指揮官の見栄なのかもしれない。

一部それに合わせて趣味の備品も補給されて士気はバッチリ上がるだろう。

 

「おぉーこれは私の勝負メイド服……むん、気合が入りますね」

「ベルファスト……必ずやご期待にお応えします」

 

一部では気合が入りすぎて空回りが起こりそうだが……

 

「うんうん、よしよし……んじゃあ雨期が来る前に港整備するぞー」

 

指揮官の見立てでは十分な費用対効果は期待できる反応。

気力十分な間に作業に移ろうと号令をかける。

皆揃って気力十分な返事を持って応えてくれた。

 

 

――――――――――――

 

 

母港の倉庫の建設は概ね終わったも同然であった。

屋根は設営が終わり壁の方も設営されモルタルが完全に固まるのを待つ状態。

それはもう皆意気揚々とテキパキこなしてくれた……

 

「うぅ……どうしてこう私は……」

「いやな、同志指揮官……全力でクレーンの締め忘れを見つけようとしているんだがな……」

「私だって役に立ちたかったんだ、分かってくれ……」

 

この母港のドジっ子3人を除いて……ではあるが。

グロリアスはのっけから饅頭を踏み潰しそうになったり壁に大穴を開けかけたり……

ロシアは機械に強いと豪語したので倉庫内クレーンの設営を任せればネジが数本余ったと宣う。

エンタープライズは重桜の古いコントみたいに角材で他のKAN-SEN……主に心配したエセックスやホーネットの頭をぶん殴りそうになったり。

エセックスも流石に適応してきたか回避術を覚えてきたが惨事になりかけていた。

 

「うーん……適任な仕事がないかねぇ……」

「危なくない頭を使うお仕事は今の所無いですし……」

「あんまり動かさないほうが良いが海上パトロールが適任か?」

「哨戒なら駆逐艦か軽巡洋艦の随伴が欲しいですね」

 

見事にドジっ子は主力艦隊、後衛に属するKAN-SENばかり。

戦闘に置いては恐らくドジは発揮しないだろうが……随伴として軽快な艦が欲しい。

しかして人手はそう割ける程潤沢では……まだ無い。

 

「拡充任務まだだったな……補佐は……」

「差し支えなければベルファストめにおまかせを」

「お、おう……」

 

機会があればグイグイとくるメイド、ベルファストが名乗りをあげた。

基本的に一歩下がった位置でお世話となればグイグイである。

 

「近いんですが、当たってるんですが」

 

物理的にも近くにグイグイである。

指揮官が指摘しても笑顔を浮かべたままより押し付けるばかり。

自分の武器を把握した上で全力で攻略に掛かっている様子であった。

なおそれを見て己の胸を見下ろすKAN-SENも少なからず居た、指揮官はどうなることか。




ベルファストに給仕されたい人生ですね

モコモコな衣装はどうするか?スキンがあるじゃないですか。
あとは捏造私服とかでね、どうにかするんですよ。
そしてこういう時のための空輸です

次は人員補給です
まだ未定ですが陣営は決めております
パスタの国と紅茶からピック予定です


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建造、たまにエラー

「指揮官は任務の処理に集中するにゃ、工事は明石とヴェスタルでなんとかしておくにゃ」

「と言っても後は護岸整備ですからぱぱぱーっとやっちゃっておしまいです」

 

早朝より指揮官は事実上締め出しを食らった。

マンパワーは饅頭の他にKAN-SENが多数いるので問題なし。

指揮官が率先して動くのも良いがだからといって任務がおざなりになってはならない。

建造は指揮官が原則立ち会う物である、ココ数日拡充任務がほったらかしになっていた。

それを指摘したのは何を隠そうポンコツ気味なソビエツカヤ・ロシアだ。

労働に関しては恐らくこの母港イチと言っていいほどの熱意がある女性だ。

自身は少しばかり抜けている面があるがそこさえ目を瞑れば優秀なのだ。

任務がおざなりになっているのを指摘された指揮官は何も言い返せず締め出しを食らった。

 

「港が完成したら次は開発ドックだっけか……ウチに必要になるのかねぇ」

「前線基地、母港として十全な機能を持たせるには必要なモノです。ご主人様」

 

母港に必要なモノはいくつか存在する。

既に建っている寮、指揮所。整備中の港

母港内での娯楽を司る購買部……そして開発を司る工廠とそれ専用のドック。

開発ドッグでは主に計画で止まったKAN-SENの製造に使われる。

メンタルキューブの研究が進んだ結果出来るようになった物だ。

何故必要か?各母港に存在しなければその計画艦は生産出来ないからだ。

本国で開発して送り込めば早いかもしれないが運用データを用意するのに手間がかかりすぎる。

手っ取り早く確実なのが工廠内にドックを建設してそこで一人づつ完成させていく事。

この計画艦こそが対セイレーンにおける切り札となりうるのだ。

故に各母港に必ず建設されるのだ。

 

「まぁいい、じゃあベルファストはついて来てくれ」

「仰せのままに」

「次は……いや、そもそも次なんてあるんでしょうか……ダイドーは……」

「ダイドーは次任せるから、落ち着け」

 

言われずも従いてくるかもしれないが指揮官が声をかけ任務の一つである拡充に向かう。

ダイドーが少し拗らせかけたがすぐにフォローがされて鎮火することに。

サフォークもそうだが現状ベルファスト以外のメイドがクセがあって扱いに困っている指揮官であった。

 

 

――――――――――――

 

 

「極々低確率で相当反抗的だったりセーフティが外れてたりするKAN-SENが出るんだっけ?」

「重桜を代表する方々が良い例かと」

「……本国でデータを見たな、赤城とか強烈みたいだし」

「一般的には戦場で発見されたメンタルキューブを元に復元したら現れるそうですが……」

「じゃあウチは無縁かもしれないな」

「そうとも限りませんよ、ご主人様」

 

メンタルキューブの元となった記録は不明瞭で何が製造されるかは完全に分からない。

解析しようにもどの計測器でも解析が進まない。

分解しようにもどんな手段に対しても耐性を持っている。

手のつけようが無いのが現実で現存する唯一の利用手段が建造機に他ならない。

 

「まぁとりあえず……空母と軽巡目当てで……」

「ご主人様、素材のセットは終わりました」

「ありがとさん、それじゃあ動かしてみるか」

 

すこしぎこちなくも指揮官が始動させる。

もしもの際に備えてベルファストが控えているが……

 

「あら、こりゃぁ……ぶっ壊れたか?」

「予定時間が……分かりませんね」

 

建造機に表示された建造残り時間が奇っ怪な文字列に変わっていた。

どうやらその低確率を引いたらしい、印字されているのは小型艦建造指定のスロット。

 

「高速建造剤は?」

「ダメです、ご主人様……受け付けられません」

「あっちゃぁ……マジか」

「こちらのスロットは正常に動作しました……完成致しました、ご主人様」

「おー……あ、こりゃ空母じゃないな、まぁ堅牢な前衛……になってくれると良いな」

「そもそもですが……ご主人様、私達に出撃任務が下る事がございますか?」

「……低いな」

 

浮かぶシルエットに飛行甲板らしきものは一切存在しない。

左右対称な艤装のシルエットから察するに重巡洋艦と思われる。

狙っていたのは制空権の兼ね合いから空母であったが重巡洋艦でも悪くはない。

それもこの基地では活かされる事は恐らく無いが。

エアーの抜ける音と共に開放されたのは……赤い髪がとても印象的で例に漏れず抜群のプロポーションの……

 

「チャオ、ザラ級重巡洋艦のネームシップ、ザラよ」

「こらまた破壊力のあるのが出てきましたなぁ」

「ご主人様、ご覧になられるのでしたらメイドが」

「ぐいぐい押し付けるでない」

「あらあら、お熱いわね」

 

エラーを吐き出しているスロットはさておき新たに加わったザラ。

指揮官とベルファストが母港について粗方説明して回ることに。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「それで、私と同期になる筈のKAN-SENがコレ?」

「一応完成の文字が出てるが……大丈夫なのか?」

「念の為です、ご主人様はお下がりください」

 

浮かび上がるシルエットは空母と思わしきモノだが……えらく小さい。

そう、小さい。駆逐艦であるジャベリンと同等かそれ以下にも見える。

どんなKAN-SENが飛び出てくるか不明なためにベルファストが警戒しながら前に出る。

指揮官の認可が降りた為建造機が開放され中から飛び出たのは……

 

「ごきげんよう!ロイヤルのイラストリアスですわ」

「なんと愛らしいお嬢様なのでしょう……」

「同期には恵まれたかもしれないわね、ふふ♪」

「ごきげんよう、でいいのか?しかしまぁ……」

 

白いとても眩い……幼女だった。

データに存在するイラストリアスというKAN-SENはそれはもうザラに負けず劣らずな抜群のプロポーションを持っている。

空母の中でもさらに特殊な装甲空母、その耐久性は光るものがある。

しかし今建造されたイラストリアスは……どう見てもローティーンギリギリ行くか行かないかな幼女。

豊満のほの字も無くそのボディラインはほぼ一直線。

溢れ出るオーラも清楚……というよりは愛らしい子供そのもの。

ベルファストが真っ先に陥落しザラも思わずにっこり。

指揮官は流石に困惑して脳裏であれこれ探る……このような現象が報告されていたか?

 

「あぁ、リトル系統のKAN-SENか」

「リトル……系統ですか?」

「メンタルキューブの解析の副産物で生まれでた一つの可能性だな……」

 

俗っぽく言えば子供版というものだ。

KAN-SENに子供時代は存在しないがその可能性を……とかなんとか。

これでリトルではないイラストリアスが来たらパッと見の子持ち夫妻が出来上がってしまう。

若しくはリトル版ベルファスト等……

 

「お嬢様、好き嫌い等はございませんか?」

「ありませんわ、なーんでも我慢して食べれます!」

「偉いわね、イラストリアスちゃん」

「えへへー♪」

「しかしこりゃ開拓にゃ連れてけないな……あーダイドーか長良に世話を任せるか」

 

ジャベリンが元気印であるならばリトル・イラストリアスはマスコットか。

母港のKAN-SENの士気向上の一助にはなりえるかも……しれない。




長らく合間を開けてしまいました。
少々虚無に陥っていました……

さて今回は予定通りに2名参入させました。
エラー表記に関してはリトル系の発生……あとは未だ建造落ちしてない娘やドロップ艦の参入用のでっち上げです。
次回は肉まんを予定しようかと、はい。

作者の趣味が出てしまいますがご容赦を


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再構築後
Re1


改定して再開します。
改定前とはかなり雰囲気が変わってると思いますが基本はのんびりのほほんと進めていくつもりです。



戦争の火種はあれど表立った争いは小さいものに限られる、比較的平和な世の中であった。

世界は陸海空それぞれで繋がり合い互いに助け合い成長を続けていた。

そんな平和な世の中にそれは突如として現れた。

前触れも無く海を往く貨物船は尽く撃沈させられ物流は止まった。

飛行機も同じだ、海より飛来した砲弾によってエンジンを撃ち抜かれ緊急着陸を余儀なくされた。

何が原因か?各国の軍隊は血眼になってそれらを引き起こした相手を探った。

 

それらはセイレーンと自ら名乗った。人類に仇為し陸地へと縫い付けた。

それと同時にもたらされた物があった。正体不明の青く光る正方体。

人々はそれに惹かれ手に取り解析しようと試みた。しかして何ら理解らず……

何処からか入った怪しげな資料を元に試行錯誤を繰り返した。

曰く起死回生の鍵である。その資料には断片的なことしか書かれていなかったが……それは明記されていた。

既存の技術で作られた兵器ではセイレーンに打撃を与えることは叶わない。

藁にもすがる思いで各国研究を続け……そして偶発的にもそれは産まれた。

後にKAN-SENと呼ばれる過去の大戦で生み出された軍艦の魂とも言える物を宿した美女、美少女。

それらは人に尽くし人の為に砲火をセイレーンに浴びせた。

次第にセイレーンは駆逐されていき……徐々にセイレーンの技術も解析されていった。

人類の技術が百年単位で前進した、しかしそれがまた大きな火種となった。

その技術は危険であるとして破棄……ないし徹底的に監視下に置いて触れるべきではないとする勢力。

先進した技術を取り込んで更なる発展のために振るう事を良しとした勢力。

世界はこれらに二分された。アズールレーンとレッドアクシズと呼ばれる勢力に分かれて……

 

 

 

 

 

 

ざざん、ざざんと波が奏でる音は何を思わせるか。

遠くを見てもうっすらとボヤける海原が見えるばかり、大陸とは本当に遠く離れた小島なのがよく分かる。

本当に終わったのかな…と思わなくもないが放逐された身としてはもうどうだっていい。

セイレーンの驚異は去って残された技術をどうするかで揉めた後……丸く納めた俺は厄介払いでこんな離島に左遷。

これが人類の選択とは思いたくねぇけどねぇ……ま、いいやいいや。

 

「指揮官、運び込みは終わったわよ」

「ん、ご苦労さん……っつーか俺についてこなくても良かったんだぞー?」

「それこそ冗談でしょ?アンタって指揮官以外の下に就く気はサラサラ無いの」

「あっそ……こーんなのの何処が良いんだかねぇー?」

「全部よ、全部」

 

俺は――指揮官、そう呼ばれていた人間だ。

ある日ロイヤルのど真ん中で倒れていた当時18のクソガキだった。

戦争が激化していく中で使い捨てにしてもいい兵士としてシバき倒されて……前線の現場指揮担当として出されたヤツだ。

当然同期と呼べるヤツはボコボコ死んでいったしそいつらの下に居たKAN-SENも散り散りになることが多かった。

俺もそうなるかなーってぼんやり考えていたけれども俺の下についたKAN-SENがこれまたつえーのなんの。

ただボッコボコにされるのも珍しくねぇし労ったり看病するのに俺は必死だったよ。

作戦指揮って言っても殆どはKAN-SENから持ち上がってくるのを整理してやるくらいなんだよな。

あとKAN-SENは基本的に人類に味方するようにプログラムされているらしい。

決定権が結局自分たちにはあまりない。だから人間に決定を委ねる。

あとこれは俺の実感から言うけれどもKAN-SENは人間……指揮官と認めた人間との絆を大切にする。

ぶっちゃけスペックにかなり影響が出るくらいにだ。それを分かってない軍人が多かった。

KAN-SENはどうあがいても兵器って扱いを拭い去れなかったヤツが多い。

あとはあくまで良く似た人間に近い存在っていうのがネックで拒絶反応を示すヤツも居た。

普通に接しているのは異端とされた、まぁそんな訳でKAN-SENの扱いに長けた人間って言ったらオレ含めて数人程度。

終戦間際にそいつらもくたばっちまって五体満足で残ってるのはオレだけ。

 

「とりあえず寝床さっさと確保するぞ」

「了解、明石も行くわよ」

「合点にゃー」

 

ま、なんにせよもう俺には関係ないこった。

左遷先のこの島付近で石油やら鉱物資源が出てくるのはリサーチ済み。

指揮官としてバリバリ働いていた時の給料叩いて必要な物資も買い揃えている。

あとはこの島でそいつらを組み立ててっと……

 

「明石、こりゃなんだ?」

「あーそれは一応名目上は母港だからって渡されたものにゃ、中身はリュウコツ製作用の機材とKAN-SEN製造用の機材にゃー」

「あぁそう……メンタルキューブを渡す気ねーのにご苦労なこった」

「そう言ってる指揮官がよーくわかってるくせににゃー」

「うるせ」

 

まぁわかってるっちゃわかってる、くっだらねぇ権力争いやら民族差別、宗教差別とかから離すためにここに送ったんだろーよ。

確証はねーけど……そういう処遇にしておけばだーれも文句は言わねぇ。

貴族主義過ぎて平民上がりな上に戸籍不明の俺に酷く噛み付いてきていたヤツとか最たる例だ。

 

「ん……もうついたのか……」

「おめーは起きるのが遅い、ねぼすけ姫。寝床を作るぞ、とっとと起きろー」

 

わかりやすい証拠としちゃぁ重鎮と言っても良い明石やオイゲン、そしてコイツ、信濃が俺についてきている事だ。

こいつらそれぞれの国家の重要ポストと言っていい、さらに言えばロイヤルからもベルファストにフォーミダブルが来ている。

ベルファストは文句も出さねぇだろうがフォーミダブルは不平不満が出そうなもんだなぁ。

あの貴族KAN-SENの妹をよく送りつけてきたもんだわ。あーめんどくせーこと。

 

「今日のお勤めは……」

「自分の寝床の用意だ、ほれたったかやるぞー」

 

ひとまず、運び込んだ資材の中からこの人数が寄り添ってなんとか寝れるサイズの母屋を建てる。

幸いにして労働力には心配はない。これまた不思議な存在の饅頭共が居る。

指揮官とKAN-SENの言うことはよく聞いてくれる掃いて捨てるほどに出てくるひよこのような何かだ。

それに明石謹製のオフニャの存在もある、労働力には困らねぇ。

 

 

 

この離れ小島は大西洋のど真ん中にポツンと浮かんでいる。

こんな小島に来る人間なんて居やしない、ましてやセイレーンとの大戦があって渡航手段は近ごろまで無かったしな。

そこそこの規模があって軽い村程度なら形成可能な大きさだ。

そして何より……森林が鬱蒼と生い茂っていて囲っている。

それだけ生い茂っているって事は何処かに水を蓄えこんでいるってことに繋がる。

小規模でも湖があれば良し、動植物の類は生息が確認されても乱獲はご法度。

幸いにして一応任務としてここに赴任となっているから食料物資の定期補充はある。

ロイヤル、鉄血、重桜の3カ国から……ロイヤルのクソマズメシはどうでもいいが食材はまぁイイからな。

あと重桜からの補充をなんとか出来たのはデカい、重桜……つーか日本の食文化が非常に馴染んでるからな。

醤油、味噌がねーとやってらんねーよ。あとラーメンにうどん、定期的に食いたくなるからなー。

 

「この当たりで良いか、木を切り倒すぞ」

「戦闘より野蛮ではありませんけど……私はどこかでサボ」

「じゃあ帰るか?」

「冗談に決まっているでしょう、もう」

 

堂々とサボりをしようとしたのは言わずもがなお貴族KAN-SENのフォーミダブル。

コイツ本性はお嬢様っていうよりは悪戯っ子で甘えん坊なガキンチョって所だ。

あと結構な面倒くさがりでそこはオレと同じようなもんだ。

 

「他のやつもやってんだからほれ、やるぞー……オレだってサボりてーよ」

「あとでいっぱいよしよししてくださいね?」

「はいよ……毎度でけぇ娘をもった気分だ」

 

木を切り倒すのに使うのは原始的な斧だ、男のオレはともかくKAN-SENはどうなのか?

そりゃぁアホみたいな力であっという間に切り倒してくれるわ。

他にも饅頭がせっせと斧振り回しているしさっさと終わることだろうよ。

娘発言でフォーミダブルが渋い顔したが……まぁ分からんでもない。

こーんな草臥れたオッサンの何処がいいんか分からんが好意を持たれている。

分からんオレじゃない、アプローチもされてるしなー……どうすっかねー……

ま、こういう考えは母屋出来たあとに考えるか。




登場キャラは基本4陣営のKAN-SENになるかなと思います。
まぁこれはあくまでも予定ですけど。


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Re2

本土からこの島に持ち込んだ資材はあまり多くはない。

せいぜい20人程度が寝泊まりできる程度の小屋を作る資材。

俺についてきたKAN-SENは今ん所はそんなに居やしないからそれで事足りる。

饅頭の寝泊まりに関しちゃそれぞれが勝手になんとかする。

まぁ大体はKAN-SENのベッドだったり俺の布団に潜り込んできたりする。

ネコっつーかなんつーか……微妙に温いんだよな。

デザインはかなぐり捨てた効率重視、ハコ住宅になるな。

これからさらに拡張するとしてもやりやすいようにな、鉄血の機能的なものだな。

俺は鉄血の機能重視のところ好きだぜ、うん。

 

「とりあえず土台工事はこの程度でいいんじゃないか?」

「この島は地震とかは無さそうだけどにゃぁ」

「アンカー深すぎワロチ、重桜じゃねーんだぞ」

 

基礎工事は災害大国重桜の明石がやる、これで盤石も良いところよ。

ある程度拡張する事は織り込み済みでかなり広い基礎工事している。

規模的にはこりゃ……200人は行けるぞコレ

 

「こんなにはいらねーだろ、せいぜい50程度で良いんじゃね?」

「いーや、絶対にこれくらいは行くにゃ」

「そうよ、鉄血の皆も連れてこないと行けないんだし」

「ロイヤルのお嬢様方もコチラに招かなくてはなりません、足りないくらいです」

「冗談勘弁してくれや……」

 

明石、オイゲン、ベルファストが口を揃えて必要だって言いやがる。

いやいや、閑職与えられてるこっちに来るヤツァ少ねえだろ……

それに本土防衛っていうのもある、一定数のKAN-SENはそれぞれの国家の本土に残るだろ。

 

さて、切り倒した木々は暫くの間は生活燃料とかに使う事になるな。

電気ガスは暫く無いからな、風力発電に潮力発電の設備を整えるまでは電気は無理。

ガスも海底資源を掘り当てないとダメ、つまり暫くは原始的なことをしなきゃならん。

開拓の為に切り倒した木は大事な大事なエネルギー源なんだ。

 

「んじゃあ組み上げ入ろうか、饅頭共出番だぞー」

 

俺の発言で一斉に出てくる饅頭達。頭にゃ工事ヘルメット、胴体には大工用品詰めたベルトが巻かれてる。

同じ様な装いをしたオフニャも出てくる。設計図は明石がしっかりと握っている。

音頭役の饅頭にオフニャが明石の設計図を見ながらあちこち指示を飛ばし始める。

まぁそれだけに任せておくわけじゃない。俺達も動く。

 

「指揮官はそっちの柱を支えてほしいにゃ」

「ん、任された」

「それから、もうちょっと……こっちだにゃ」

 

饅頭達はそこそこ力持ちだしオフニャもアホみたいに筋肉モリモリのが居たりする。

だが精密な作業っていうのは俺たちがしたほうが早い。というか意思伝達が早い。

饅頭の仕事は悪くないんだが精度を求めたらちょっと時間を要する。

 

「そこで良いにゃ、オフニャ達ぱぱっと留めちゃってにゃー」

「「「ニャッス!!」」」

 

威勢の良い返事と共にむさ苦しいオフニャがトンテンカンテン……顔はゆるいっつーのに……

まぁこれくらいが良いのかもしれんね、これで難色示したらオイゲンあたりがぬるっとやってきて……

 

「押さえ方がゆるいんじゃない?もっとこう」

「身体を押し付けるなバカチン、当てるな惑わすな」

 

とまぁコレ幸いにと誘惑してくる、悪い気はしないし役得なんだが今はそれどころじゃない。

オフニャ共も顔を赤くしてあらやだ……みたいな顔すんな。

コレ見かけた他のKAN-SENが顔真っ赤にするからよろしくないっつーか……

後でこぞって同じ様に抱きついてくるから俺が非情に困るんだよ!

 

「そろそろ夜抱いてくれてもいいのよ?」

「良くねーわボケ」

「あいたっ……もう、意気地なし」

「つべこべ言ってないで作業に戻れ」

「はいはい」

 

まぁこれは戯れ付きの一種だ……まともに受け取ってたらそれこそ笑いものだ。

とにかく今はちゃっちゃか母屋を建てる。これに尽きる。

 

 

 

で、たったか建て終えてオフニャ達が家具を運び込んでいる。

早朝に上陸して一日で終わらせられる範囲っていうのは限られてるが……

いや、一日でこんだけやれるKAN-SENとセイレーン技術の応用よ……

人間には過ぎた物だと思うねぇ……平和利用できてりゃ文句は出ないだろうけどよ。

 

「おつかれさん、今日のトコロは予定はないぞー各自好きにしなー」

 

好きにしなと言っても寝具はまだ運びきってない。暫くはこの大広間でなんとか時間をつぶすしか無い。

さて、左遷される俺についてきた物好き共が一同に会している。

見渡してみれば……全員俺を見てやがる。目が語ってる……なにか褒美をくれと。

こうなったら外見年齢とか関係なしに甘えん坊な子供になるんだよなぁ……

 

「あー、全員アレか、ナデナデ待ちか?」

 

おぉ全員頷きやがった……まぁ頭なでを許してもらえるのはありがたいんだがな。

まぁまずは……明石だな、コイツが居なかったら洒落にならなかったし。

マジMVPよ、あとネコっていうのがデカいな。ネコは撫でてなんぼだろ。

 

「にゃー……ごろごろ……」

「ありがとさん、マジ助かったぞー……ほれ、首まで撫でてやろうか?」

「んにゃー……それはまた今度にゃー……」

 

名残惜しそうだがすすーっと離れていったな……

さて、次はっと……いや、普通に迫ってくるなコイツら……メンツはまぁ眼福な連中が多いんだけどなー。

特に信濃とか胸元ガン見えだからなぁ……我慢だ、耐えろ俺。

 

「にゃー、皆お風呂の用意が出来たにゃー」

 

あ、全員さっと引いた。汗の匂いは気にするよねぇ。

 

「指揮官がさっさと入ってにゃー」

「え、俺?普通逆じゃね?」

「良いから入るにゃ」

 

ぐいぐい押し込まれた……風呂?ドラム缶風呂だよ。

これ信濃入るのか?ってサイズだが……まぁなんとかするんだろ……



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Re3

風呂はさっさと作っておかないとな、五右衛門風呂形式で入るにしても数に限りがある。

現状出来上がってるのは本当に寝泊まりするだけの母屋しかできちゃいない。

上下水道は当然無い、電気もない。料理も常温保存になるので当然質素になる。

所謂レーションで暫くは食いつなぐ必要があるな。

レーションに関しては各国のレーションが配給されているから当分問題はなし。

 

「ニャス!」

「ん、おぉオフニャ達もご苦労さん。今日は猫ハウスでゆっくりしな」

 

夜の帳がすっかり落ちきった、灯りにしているのは昔ながらのランタン。

持ち込んだ燃料で燃やすろうそくの火が灯りだ。

順繰り順繰り風呂に入ってはキャーキャー騒ぐついてきたKAN-SEN共の喧騒を耳にゆったりと過ごしていた。

戦争が終わり一時の平和をこうして味わうのは感慨深い物がある。

もともと平和も平和な日本でのうのうと生きていた頃が懐かしい。

家財の搬入が終わったオフニャ達が敬礼と共に一鳴き、報告を挙げてきた。

家財の中には当然オフニャが寝泊まりする猫ハウスも存在している。

一仕事終えたオフニャ達はそれぞれのびのびとし始めた。

 

「やぁ指揮官、何をしているんだ?」

「ん?あぁエンプラか、現在の資材状況とおめーらの配給分配を考えてた」

「そうか、少し難しい顔をしていたから心配になった」

「あーさいで、戦闘の事で気を揉むよりは全然良いから心配すんなー……それより風呂はどうだった?」

「流石に狭いな」

「だよな、風呂事情はささっと何とかしたいねぇ」

 

課題は山積み、早急に何とかしたいが優先順位は……

 

「だがそれよりも生活レベルを何とかしないといけない、だろう?」

「そのとーり、水と電気は何とかしないとなーそれまではお預けだ」

「まぁそれはそれで良いが」

「良いのかよ……ま、明日は水事情を何とかするための施設を組み上げて……余裕があれば電気だな」

「了解した」

 

もう気楽にしてもいいのにエンタープライズと来たらかたっ苦しい事で。

ただ言葉の堅苦しさとは裏腹に表情は柔らかいしオレの隣のソファーに腰掛けてこっちを見てくる。

随分と印象が変わったもんだ、マジ兵器って感じの女だったのにねぇ。

 

「指揮官、覚えているだろうか?戦争が終わったら何をするか……と問われた時の事を」

「んー?あぁまぁ、オレの隣に居るだろうってアレ?」

「思っていた通りになったな、ふふ」

「……おぅ」

 

これ見よがしに腕を組んでくる、非情に魅惑的な行動をしてくる。

これが大戦の英雄と思えるか?ただの恋する乙女だぜ?

それもこーんな草臥れたオッサンに恋してる、信じられねぇ。

 

「まぁなんだ、わかってる、わかってるから今は抑えてくれや」

「あぁ、それも分かっているよ指揮官、あまり夜ふかししないようにな?」

「おうよ、さっさと寝とけガキンチョ」

「そのガキンチョにドギマギしてたのは誰だったか」

「うっせうっせ」

 

頬を突かれた、まぁ自覚するくらいには赤くなってるな。

一回りは歳が離れてるようなもんだし似合わねーと思うんだがなー。

美女にはめっぽう弱いねぇ。

 

こうして上陸初日は過ぎていった。

 

 

 

 

「……んぁ?」

 

次の日、日が昇る前。職業軍人としての癖で起きる。

しかし身体はガッチリとなにかに押さえつけられている、何事かと首を傾げる。

急ごしらえの母屋は大きな物ではないのは計画段階でわかりきっていた。

まぁ反対はされないというの前提で大部屋一個作ってそこで雑魚寝となった……んだが……

俺は壁際でさっさと寝ていた。しかし天井を見上げれば真ん中も真ん中。

そして横を見れば……昨晩遅くまで元気いっぱいにはしゃいでいたヤツの顔が。

プリンツ・ハインリヒとフォーミダブルだ。このメンバーでは元気印と言っていい。

無邪気っ子と甘えん坊お嬢様、距離感というのが結構近い。

後者に関しちゃ今は……って注釈があるけどな。

 

「このクソガキ共……起きろ、起きんか」

「んん~……」

「……すぅ、すぅ……」

 

どうしたものか両腕はしっかり抱き込まれて抜け出せねぇし揺すっても起きる気配がない。

……いや、これたぬき寝入りだろ?

 

「本国のペーターとイラストリアスに連絡してやんねーとな……コイツらとエクスチェンジ」

「「起きてます、すいませんでした」」

「おう、さっさと起きて着替えてこい」

 

こういう事はそう珍しくはなかった。

もともと俺はロイヤル所属、セイレーンをボッコボコにする際は鉄血にも良く世話になってた。

その時にこの二人に昼寝中にこうされることは多々あった。

遊び感覚とは違う、マジで俺を落としに来てるのは分かるんだが……なぁ。

 

「まぁもうちょっと待ってくれや……」

 

この拠点が落ち着いたらその誘惑に乗ってやっても良いよな?

俺はほぼクビになったようなもんだし、軍属もほぼ解消。

ずっと我慢していた分爆発させてもいいだろ?なぁ?

……ま、この答えは絶対に帰ってこないけどよ……さてと、バカな考えは一度しまい込んで。

他はもう起きて朝の支度してるな。俺もさっさと着替えて指示に入るか……

今日は貯水槽とろ過装置の組み立てだな。人が生活する上で絶対に欠かせないものだ。

持ち込みの水も無限じゃないからな。これは最重要だ。

余剰の時間があれば風力発電装置にも着手したいな。人数は多くないし……

 

「指揮官、もう朝ごはんが……あら」

「……ガン見してんじゃねーよ、ほら行った行った」

「ふふ……ごめんなさい、つい♪ それではお待ちしてますね」

 

炊事はヴェスタルとベルファストのコンビ、まぁ間違いはない。

変なクスリを盛るようなことも無さそうだし味もバッチリ。

糧食がベースとは思えないんだよな、正直胃袋は掴まれている。

包囲網はできてるよなー……野郎の着替えを見て悲鳴をあげるでもなく見やがってたし。

 

 

 

 

 

「あー違うにゃ!その柱はそっちじゃなくてこっちに立てるんだにゃー!!」

「はい、この管を持っていてくださいねー……お面を下ろしてくださいねー」

 

貯水槽は雨天、朝霜等を集積する目的だ。ソレ用の資材も初日に持ち込んでいる。

場所をさらに切り開いて高所に設置する高置水槽を採用している。

ろ過装置も内蔵していて雨水を飲用水に変えることも出来る。

本来なら電気が通っていないと無理な溶接等使う建築だが工作艦の明石、ヴェスタルが居るからなんとかなっている。

 

「こっちは雨樋に接続しろ、今は仮止めでいい!」

「「ニャス!!」」

 

今の母屋に設営されている雨樋もフルに活用する。

その為高置水槽の他にも雨水タンクは作る。ろ過装置は雨樋に仕込むとして……

組み上げた物を接続して溶接待ちだ。組み立てるのは俺たち、持っていっていくのはオフニャと饅頭。

 

「にゃー……汗だくにゃぁ……」

「もう少しですよー……次はあちらですー」

「待ってほしいにゃぁー……しきかーん……」

「……時間はまだ余裕がある、少し休んでこい。ついでにベルファストにお菓子もらってこい」

「やったにゃぁー!ちょっと休憩してくるにゃー!」

 

両手を上げてスタコラサッサといった明石、元気ありありじゃねーか。

ま、今詰めても良くねーしな、適当に休むのが良いわ。

 

「饅頭達も他のヤツに伝えて一端休憩!……ヴェスタルも休んで良いんだぞ?」

「……では、指揮官と一緒に休憩をさせてもらいますね」

「汗くせーぞ?」

「気にしませんよ、ふふ」

 

……ま、こんな風に過ごせる事に感謝しておこうかね。

見上げる空は透き通るような青で……絶好の日向ぼっこ日和だなーとのんきに思う俺だった。

 

「右腕」

「当てているんですよ?」

「やめんか、ボケ」

 

ヴェスタルの頭を軽く叩くポコンと間抜けな音が鳴った。




割とハーレム要素が強く出ちゃったっすかね?
指揮官とKAN-SENのラブラブちゅっちゅ書きてーんですわ、ぐへへ


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